一夏がシャアに拾われた件について (ロドニー)
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プロローグ

 

 俺には優れた姉が居る。

 

 ブリュンヒルデの称号を持つ織斑千冬だ。

 

 逆に俺はいくら努力しても周りから一切認められず、出来損ないとか姉の面汚しとか言われて近所や学校でも暴力を振るわれたりもした。

 

 そして、千冬姉に褒められたくてテストでも剣道でも頑張ったけども褒められる事は一度も無かった。

 

 千冬姉も選手として遠征が多く手元に残る仕送りは少なかったし、千冬姉には心配をさせたくも無かった。

 

 だから、剣道を辞めてバイトを始めたが、篠ノ之束の妹の篠ノ之箒から暴力を含めて猛反発された。

 

 だけど、俺にも理解してくれた人も居た。

 

 ISの生みの親である束さんは箒から暴力に曝された時には手当をしてくれたり、辛くて泣きたい時に研究室に入り浸った時には千冬姉以上に優しい姉の様に接してくれた。

 

 他にも、箒が引っ越した後に転入して来た凰鈴音を男子のクラスメイトから虐められていた時に助けて以後、親友として付き合い始めた。

 

 ただ、鈴は逆だった様でモンドグロッソの応援にドイツに向かう前日、鈴の両親が離婚して母親と中国へ帰る事になった時に

 

 「次に再会が出来たら、あたしの作った味噌汁を毎日飲みなさい!!

 

 だから……だから……あたしは一夏が好き!!」

 

 中華風では無く日本風にそして、ストレートに言いながら抱き着いて告白されたのだ。無論、俺は抱き返して鈴と付き合う事を了承した。

 

 遠距離恋愛とはなったが、鈴と連絡を取り合ったり手紙のやり取りをしたりした。

 

 そして、運命の第二回モンドグロッソに出場した姉を嫌々ながら応援に行くことになり、会場で知らない男達に誘拐された。

 

 目的は判る。

 

 千冬姉の出場の阻止だろう。

 

 俺には千冬姉の事よりも、鈴にもしかしたら逢えなくなるのではと怖かった。

 

 だから、叫び抵抗した。

 

 「離せ!!」

 

 「うるさいガキだな!!」

 

 だが、抵抗虚しく意識を刈り取られて街の郊外の倉庫に連れ去られ、倉庫内では男達から暴行を受けた。

 

 「日本政府に連絡したか?」

 

 「あぁ、これで織斑千冬は棄権するだろうな」

 

 だが、男達の企みは意味が無かった。

 

 『さぁ、決勝戦。

 

 日本代表、織斑千冬選手の入場だァァァ!!』

 

 テレビに映る千冬姉は知らなかった。

 

 この時、弟が誘拐された事実を日本政府は握り潰して女尊男卑に染まった女性利権団体に所属した女性職員から知らされて居なかったのだ。

 

 「どうすんだよ!!」

 

 「くっ、俺達まで殺される!?」

 

 「しかたねぇ。

 

 奴を殺してズラかるぞ!!」

 

 俺に向けられた拳銃の銃口。

 

 「なぁ、死ぬ前に望む事はあるか?」

 

 「じゃあ、千冬姉の決勝戦を見せてくれ」

 

 体を縛られた椅子をテレビに向けられる。

 

 そして、千冬姉は優勝したのだ。

 

 「じゃあ、約束通りに死にな。だが、最後に残す言葉だけは聞いてやる」

 

 「じゃあ、千冬姉。

 

 優勝おめでとう。

 

 そして、一度でも良いから褒めて欲しかった!!

 

 だから、千冬姉のクソったれ!!

 

 そして、鈴には愛してると」

 

 「あぁ、二人には伝えておく」

 

 パンパン…

 

 言い切ると乾いた音と共に男達から拳銃で腹や肩を撃たれて椅子から床に堕ちそうになると床に黒い穴が空き、俺はその穴に飲み込まれたのだ。

 

 

 

 

 

 試合が終わり、一夏を迎えに行くと日本政府から弟が誘拐された事を知らされた。

 

 「なっ、何だと!?

 

 貴様、試合前に知っていたな!!」

 

 一夏の誘拐の情報を握り潰したのは女尊男卑に染まり切った私を担当した日本政府の女性職員の指示だと知り、ピット内で指示した女性を見つけると記者達が居るにも関わらずに歩み寄ったのだ。

 

 「貴様、一夏が誘拐されたのを黙っていたな!!」

 

 そして、一夏が私のせいで面汚しとか暴行を受けた事実を女性の一言で全てを悟った。

 

 「別に千冬様の面汚しが消えt「貴様!!」へっぶらぁ!?」

 

 女性職員を全力で殴り飛ばした。

 

 「貴様、私の唯一の家族を!!」

 

 「ぎゃあ!?ゆ、赦して…」

 

 記者に見られる事すら構わすに、胸倉を掴み何度も何度も女性職員の顔が血塗れになるまで殴ってしまった。

 

 警備員に止められるまで殴り続けた結果、女性職員は瀕死の重症だった。

 

 しかし、私と女性職員のやり取りを記者達が一部始終をテレビカメラで録画したまま世界に中継していた事で、一夏の誘拐事件を日本政府が握り潰した事実がメディアに流された事により日本政府の世界での信用は地に落ちる事となった。

 

 特に女性職員が所属した日本の女性権利団体は顕著でブリュンヒルデの織斑千冬を敵に回してしまったのだ。

 

 この1件で一夏を自分の弟の様に溺愛していて怒らせてはいけない天災である篠ノ之束は誘拐事件を徹底的に調べ上げ、誘拐犯を捕まえて尋問して自白により繋がりがあったのが日本の女性権利団体だと判ったのだ。

 

 そして、一夏を亡き者にしようとした報復で亡国機業の元実行部隊で過激派に敗北して拾われて束の部下になったスコールとオータムにM(織斑マドカ)の手により、日本の女性権利団体のメンバー全員が暗殺または抹殺されたのだ。

 

 キレた束の報復は続き、日本の女性権利団体の日本支部はMの駆るISの襲撃により壊滅し、日本政府は怒らせた篠ノ之束の恐ろしさに震撼したのだった。

 

 無論、千冬の家族を警備していたドイツ軍にまでマスコミによるメディアで叩かれて責任追及が及んだ事は言うまでもない。

 

 そして、織斑千冬は日本政府を信用出来ないとして現役を引退する事になるが、親友でIS学園の同期だったドイツの国家代表のクラリッサに頼み黒兎隊を出して貰い誘拐された一夏を探すが例の倉庫にあった大量の血痕から一夏がいた事が解ったが見つかるには至らなかった。

 

 大量の血痕が在った状況から日本政府は騒ぎを収拾したいからと一夏を勝手に死亡扱いとした。

 

 空の棺桶が日本に帰り葬儀が挙げられたが、千冬本人もそうだが、恋人の鈴も一夏の遺体が無い理由から生きていると信じ葬儀には参加しなかった。

 

 そして、弟の探索を協力したクラリッサにお礼をする為にドイツに渡りクラリッサの部下を指導する事になったのだ。

 

 

 

 そして、一夏はと言えば出血したまま気絶してサイド7の軍事施設に繋がる通路にて椅子に縛られたまま浮かんでいた。

 

 

 「シャア少佐、例の新型があるコロニーでは?」

 

 「ジーン、潜入して調べてみるとしよう」

 

 ジオン軍のシャア・アズナブル少佐が率いる小隊がドズル中将の命令により連邦の新型を製造する工廠を探す為にサイド7のコロニー内へと侵入する。

 

 エアロックを外して通路へと侵入。

 

 「シャア少佐、重症で気絶した少年が!!」

 

 「何と!?

 

 かなり重症ではないか!?

 

 ジーンは少年に宇宙服を着せて先にムサイに戻りメディカルルームに連れて軍医に治療を。

 

 私はもう少し潜入調査をする」

 

 「シャア少佐、了解であります」

 

 ジーンにより救助されシャア少佐の命令によりムサイのメディカルルームへ運ばれた俺は、一命を取り留めたのだった。

 

 シャア少佐も潜入調査に成功し、連邦が開発した新型を工廠内にて発見したのだ。

 

 そう、連邦の新型機RX-78-2ガンダムが工廠内にて組み立て作業中だったのを偶然にも発見したのだ。

 

 その知らせは直にドズル中将へと報告され、ムサイ級巡洋艦が七隻とチベ級重巡洋艦が二隻が宇宙要塞のソロモンから派遣され、サイド7は二日もせずに連邦軍を駆逐して占領したのだった。

 

 これにより、連邦はサイド7で製造中の新型機を全てジオン軍に鹵獲される事となるが、連邦軍の本拠地のジャブローに新型機の設計図が運び込まれて新型機が製造されていたとはまだ知らなかった。

 

 サイド7占領後、ムサイでソロモンに運ばれた俺はソロモン基地内の医療施設へと搬送されて入院となり、目覚めた所で病室のベッドで尋問を受けたのだ。

 

 「私が尋問するとしよう」

 

 「しかし、少佐!?」

 

 「大丈夫だ」

 

 シャア少佐は病室へと入り

 

 「キミの名前を教えて貰おうか?」

 

 「織斑一夏です」

 

 「ほう、一夏くんは名前からして地球のアジアの極東地域の生まれかな?」

 

 「えっ、極東地域?」

 

 「極東地域が判らないのか。

 

 なら、何故コロニーの通路に?」

 

 「ドイツで誘拐されて拳銃で撃たれて、黒い穴に落ちるまでしか判らない」

 

 「旧世紀のドイツとなると、やはり…」

 

 シャア少佐は俺がこの世界の人ではない事に気付くが、シャア少佐は俺にある提案を出したのだ。

 

 「一夏くんには、身分を証明する手段が無い。なら、ジオン軍の士官学校に通ってみないか?

 

 私とドズル閣下の推薦なら、身分も誤魔化せるだろう」

 

 「何故、そこまで?」

 

 「何故と聞かれても、一夏くんを見ると努力を諦めない様に感じたからさ」

 

 どの道、宇宙と地球での戦争中なのだ。

 

 地球に戻ったとしても野垂れ死によりはマシだと俺は思い、シャア少佐の提案を受けたのだった。

 

 

 

 それから、俺はソロモンからサイド3に渡り士官学校へと入学して、名前もカタカナ表記に直しイチカ・オリムラとして様々な訓練や勉強をしたのだ。

 

 ただ、凄く嬉しかったのは努力すればする程、周りの士官候補生から認められて行き気付けば士官学校の主席となっていた。

 

 士官学校では一人の少女と出会った。

 

 彼女の名前はアン・フリークス。士官候補生で俺とは同い年だった。

 

 彼女はアメリカ移民系で元イギリスだった場所では貴族の娘だったらしい。ルウムの戦役でコロニーがシドニーに落ちたらしくて、その時に仕事で来ていた両親が落ちたコロニーに巻き込まれてシドニーで亡くしたらしい。

 

 そして、両親が亡くなり地球での地上戦闘が激化してしまい、ジオン軍が占領したジブラルタル宇宙基地まで避難したが、難民が乗るシャトルに乗りサイド3へ渡って亡命して食べて行く為に士官学校に入学したのだ。

 

 そして、彼女との出会いは最悪の一言だった。

 

 彼女は当初は男装して士官学校に入学していた。

 

 士官学校は寮に入る事になるのだが、男女関係なく二人一組として部屋割りがされる。

 

 その時に部屋に一緒になったのが、何時も授業でライバル視して来るアンだったのだ。

 

 元同室だったヒューズは、MS-06F型での暗礁地域での操縦訓練で岩礁に激突して死亡したために、代わりに来たのがアンだったのだ。

 

 寮での部屋では各自が炊事に家事をしなければならなかったが彼女は家事炊事と壊滅的で、全て俺が得意だった為にしていたが、訓練が終わり部屋に戻りシャワーを浴びようとしたらボディーソープを補充していない事に気付いたのだ。

 

 この時、アンが男装を解きシャワーを浴びていたとは知らなかった。

 

 「あっ、やべぇ。

 

 ボディーソープを補充するのを忘れてた

 

 あっ……」

 

 「へっ?」

 

 浴室に新しいボディーソープを持ち込むとシャワーを浴び終えて出て来た一糸纏わぬ姿のアンと鉢合わせしたのだ。

 

 今でも覚えているが片手に収まるサイズの形が綺麗な双丘と彼女の髪と同じプラチナブロンドの秘所は忘れられない。

 

 「あっ、ゴメン!!」

 

 「ツッ////!?

 

 馬鹿、イチカァァァァ!!」

 

 ベッチィィィィン

 

 「グッハァ!?」

 

 無論、着替え終えたアンからはビンタを貰ったのは言うまでもない。

 

 それからだが、女だとバレてからはアンは男装を辞めて、女性用士官服になった。

 

 それから、三ヶ月が過ぎたアンは俺と同じく主席となりMS戦闘で技量を競う仲となった。

 

 そして、鈴には悪かったがアンと付き合う事になった。

 

 何故かと言えば男装していたのが悪いのだが、元貴族とはいえアンの全裸を見たのだから男として責任を取れとの事だったが、士官学校でトップ争いで競い合う内にお互いが惹かれ合ったのだろう。

 

 アンには元の世界では鈴と付き合っている事実を話したら

 

 「もし、元の世界に戻っても彼女を大事にしなさい。

 

 あたしは二番目でも構わないから。

 

 それが、貴族の女としての矜持だからね」

 

 俺が元の世界に彼女がいる事を認めながらも、アンは俺と一緒にいる事を望んだのだ。

 

 この戦争も中盤になり士官学校を主席で卒業した俺とアンはコンビを組んだのだ。

 

 最初は士官候補生として、ジョニー・ライデン少佐率いる部隊へ配属された。

 

 配属先の部隊では、ルナ2と地球との間の航路で行っていた通商破壊作戦だった。

 

 主席で卒業した二人に用意された機体はベテランパイロットが欲しがるMS-06R-1高機動ザクで、それを駆り通商破壊作戦に従事した。

 

 この作戦での撃墜数はアンと俺でルナ2に向かう補給艦のコロンブス級八隻と護衛のサラミス級巡洋艦三隻を共同でを撃沈し、量産機のRMG-79ジムをアンは39機を俺は42機を撃墜した。

 

 無論、隊長のジョニー・ライデン少佐は俺達の倍を撃墜して、キシリア閣下のエースパイロットばかり集めたキマイラ隊へと異動となった。

 

 この活躍で俺達二人も大尉へと二階級特進して昇進し、ドズル中将指揮下の宇宙要塞ソロモンへと転属となった。

 

 俺とアンには専用機として自機へのカラーリングを認められた上で先行量産機のYMS-14B高機動型ゲルググを受領したのだ。

 

 俺の専用機のカラーリングは頭部と腕と腿は白で塗装され胴体と脚はグレーで染められたのだが、シン・マツナガ大尉と似たカラーリングだったらしくて大尉と間違えられたりした。

 

 アンの専用機の高機動型ゲルググのカラーリングは頭部と手足がライトブルーに染められ、胴体はインディーブルーで染められたのだ。

 

 武装だが、俺の専用機はグフのヒートソードを巨大化させた斬艦刀とビームライフルが装備され、アンの専用機にはジャイアントバズーカとビームライフルが装備されていた。

 

 ソロモンに配属され、慣熟訓練が終わった頃に連邦軍がソロモン攻略戦を始めた。

 

 無論、俺とアンはドズル閣下の命により、左翼にラテーケンバズーカを背中に背負い手には90ミリマシンガンとサイドスカートに予備マガジンを大量に装備させたリックドム隊の12機を率いて展開した。

 

 そう、地上の戦線からベテランパイロットを集めた俺達二人の配下のオリムラ中隊だった。

 

 この時だが、アンはいつの間にか名字をフリークスからオリムラと変えていた。

 

 彼女に聞くと

 

 「当然、イチカの女ですからオリムラにしたから」

 

 と俺とドズル閣下の前で胸を張り言い切り、閣下が豪快に爆笑したのは有名な話になってしまった。

 

 連邦軍のマゼラン級戦艦とサラミス級巡洋艦からの艦砲射撃と大量のミサイル攻撃に曝されるが、俺達の中隊は落伍する機体は一切無かった。

 

 

 そして、ジムやボールがコロンブスから吐き出され俺達へと襲い掛かる。 

 

 「全機、迎撃開始!!

 

 ニ機一組で援護をやり合いながら迎撃」

 

 「イチカばかりにカッコ付けさせるんじゃないわよ!!」

 

 二人の号令にリックドム隊がニ機一組で散開してジムやボールを撃墜して行く。

 

 当然、中隊長機の俺が一撃離脱戦法を用いてジムを斬艦刀で切り裂き、ボールは蹴り飛ばして撃墜数を増やしていく。副隊長機のアンも今回ばかりはビームライフルを装備しないで可動時間を少しでも増やすべく90ミリマシンガンを装備しながら俺の背中に迫り来る連邦軍に乱射して撃墜数を増やしたのだ。

 

 「せやぁぁぁ!!」

 

 「イチカには負けないんだから!!」

 

 戦闘も佳境に入り、俺達の中隊は撃墜された機体は無いがボロボロで弾薬とエネルギーが乏しくなり始めた為に、補給と軽い修理が出来るだろうと踏んだ一番近い艦隊はシャア大佐の船のザンジバルだった。

 

 「アン、一度シャア大佐の船に撤退だ!!」

 

 「そうね、弾薬も推進剤も心許ないから同じ意見よ。

 

 オリムラ中隊、撤退するわよ!!」

 

 『了解!!』

 

 各機がお互いの自分のペアを護りながら戦線離脱し、近かったシャア大佐のザンジバルへ着艦する。

 

 「あれは、シャア大佐のゲルググS型!?」

 

 左肩からバッサリ斬られ腕を失って小破したシャア大佐専用のゲルググS型がハンガーに鎮座して修理を受けていた。

 

 ガッコン

 

 「「?」」

 

 振り向けば、ジャックのリックドムが着艦した時の負荷に耐え切れなくて膝の関節が壊れ膝から下の足がハンガーに落ちた音だった。

 

 「隊長、俺のリックドムが…」

 

 「まあ、ドンマイ…」

 

 中隊の機体が全機ハンガーに入り、隊員は待機所へと向かうが、俺とアンはハンガーにララァ大尉専用のプロトタイプジオングが無い事に気付く。

 

 「アン、シャア大佐に嫌な予感がする」

 

 「何でよ?」

 

 「だって、ララァ大尉の機体が無い」

 

 「まさか…」

 

 俺とアンはザンジバルのシャア大佐の自室へと急いだ。そして、案の定自室のベッドの縁に座る大佐が居たのだ。

 

 「シャア大佐!!」

 

 「イチカくんか、助けた時以来だ。

 

 アンくんとは上手くやっていて安心したよ」

 

 「俺達の事より、ララァ大尉はどうしたんですか!!」

 

 「ララァなら……戦死した」

 

 「「へっ?」」

 

 間抜けた声を思わず出してしまうが、大佐が担当した宙域は確か……

 

 「ララァは私をガンダムの凶刃から庇い、コクピットをビームサーベルで貫かれたのだよ」

 

 「そっ、そんな…」

 

 アンは俺の腕を掴み、ララァが戦死した事に泣き出してしまった。

 

 アンとララァ大尉は凄く仲が良かった。

 

 大佐もだが、ソロモン配属になってからはダブルデートもしたりした。

 

 そして、休暇でリゾートコロニーへ四人で行った時には、湖畔の大佐の別荘では大佐とララァ大尉に士官学校で独自にブレンドしたバーベキューソースを漬け込んだスペアリブを御馳走したりした。

 

 「まさか、あの時の少年兵!!」

 

 「イチカ!?」

 

 アムロ・レイと名乗った少年兵を思い出したのだ。

 

 「そうだ。

 

 彼に落とされたのだよ。

 

 だが、君達では彼を落とせない」

 

 「どうしてですか大佐!!」

 

 「アンくん、君はもう少し冷静になった方が良い。

 

 彼はララァ以上のニュータイプだ。

 

 イチカくんを悲しませる様な判断をしないで欲しい。

 

 愚かな私の様にな」

 

 「くっ」

 

 「大佐はソロモンから撤退するのですか?」

 

 「私は宇宙要塞ア・バオア・クーに撤退する」

 

 まだ、膠着状態なのにどうしてだろうと考えていた。

 

 「未確認だが、連邦軍がソロモンにソーラーシステムを使った。

 

 ソロモンが落ちるのは時間の問題だ。

 

 それに、ドズル閣下はビグザムで迎撃にでたが、彼等に落とされたのだよ」

 

 「閣下まで!?」

 

 「アン、落ち着け」

 

 「それでは?」

 

 「君達のオリムラ中隊も私の部隊に再編入して、ア・バオア・クーに撤退する」

 

 俺達は最終決戦になるだろうア・バオア・クーへと撤退したのだった。

 

 

 

 



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ア・バオア・クー決戦と帰還

 

 

 ソロモンの敗北から、俺達はシャア大佐率いる部隊へと吸収された。

 

 ザンジバルはア・バオア・クーの軍港へと入りメンテナンスを受けている。

 

 無論、俺達の機体もア・バオア・クーの工廠へと運ばれて修理を兼ねた小改造を受けていた。

 

 「ねぇ、あたしとイチカのゲルググだけど、脚部に大型スラスターが追加になったみたいだけど、扱い切れるかな?」

 

 「加速力はゲルググB型の三割増しか…」

  

 「そんなになの…」

 

 キャットウォークから改造中のゲルググを眺める二人は改造された高機動型ゲルググカスタムに扱い切れるかと一抹の不安が過る。

 

 そして、俺達の機体の隣には巨大な完成したパーフェクトジオングが鎮座していた。

 

 「あれ、シャア大佐の専用の機体だろ?」

 

 「ララァ大尉が戦死しなければ乗る機体だった…」

 

 「流石に全身にメガ粒子砲装備はな…」

 

 「エネルギー切れが怖いかも…」

 

 二人揃って、パーフェクトジオングには辛口の感想を吐いたのだった。

 

 ただ、パーフェクトジオングを整備する整備兵に聞こえなかったのは二人には幸せかも知れない。

 

 無論、俺のゲルググもビームライフルは下ろし、実弾系の武装を追加したのだ。ゲルググM型に搭載された腕部の110ミリ速射砲の追加とアンと同じく90ミリマシンガンへと変更したのだ。

 

 そして、腰のアーマーにはビームサーベル用のラックの追加とマシンガン用のマガジンラックを追加して部隊で武装の共有が出来る様にしたのだ。

 

 他の隊員だが、損傷の酷さからリック・ドムからシーマ・ガハラウ大佐率いるシーマ艦隊へと配備予定だったMS-14Mゲルググマリーネが配備された。

 

 本来、受領する予定の機体はキマイラ隊に配備されたゲルググタイプの30機を除き、俺達の部隊にはMS-14Aゲルググが4機とMS-09R-2リックドムⅡが8機が配備される予定だったが、ア・バオア・クーの防衛任務とゲルググマリーネを受領しに来たシーマ大佐から気に入られ、ゲルググマリーネ12機を受領予定の機体と交換条件に俺達の部隊に譲られたのだ。

 

 「坊やとお嬢ちゃんには頑張って貰いたいからねぇ、海兵隊からのプレゼントさね」

 

 「「シーマ大佐!?」」

 

 「おやおや、シャア大佐のパーフェクトジオングに目移りしてたかい?

 

 辞めとくんさね。

 

 アレは一般人が扱えるしろもんじゃないさね」

 

 思わずキャットウォークに現れ、扇子で口元を隠しながら笑うシーマ大佐に敬礼する。かなり年上に見えるが千冬姉と同い年らしい。

 

 「それにしても、坊やとお嬢ちゃんのゲルググ、無茶な改造さね。

 

 高機動パックをM型のバックパックに変えれば機動性を落とさずにプロペラントタンクが追加出来るさね。

 

 なんなら、B型パックと下ろしたビームライフルをあたしらに譲るなら、あたしらの海兵隊仕様のM型の一般仕様のバックパックを融通してやるさね?」

 

 確かに有り難い提案だった。

 

 「アン、どうする?」

 

 「イチカ、良いかも」

 

 俺達のゲルググのB型バックパックとビームライフルをシーマ大佐に譲り、一般仕様のM型バックパックを交換したのだ。

 

 

 

 改造を終えた高機動型ゲルググカスタムで慣熟訓練をしながら、部隊の慣熟訓練中のゲルググマリーネとも模擬戦をして部下達を鍛えたのだ。

 

 だが、模擬戦は終わらなかった。

 

 

 「さて、君達の力を見せて貰おうか?」

 

 「「シャア大佐!?」」

 

 修理を終えたシャア大佐専用のゲルググS型を駆り、俺達二人の前に現れたのだ。

 

 「あたしも混ざるさね」

 

 「「シーマ大佐まで!?」」

 

 シーマ大佐も受領したばかりのMS-14M-FSシーマ大佐専用ゲルググマリーネカスタムを駆り現れる。

 

 何か、嫌なフラグが…

 

 「何、凄く楽しそうじゃん!!」

 

 「「ジョニー少佐!?」」

 

 補給作業中のキマイラ隊からはジョニー・ライデン少佐がMS-14Bジョニー・ライデン専用高機動型ゲルググを駆り乱入したのだ。

 

 「なぁ、コレは流石に勝てる気がしねぇ…」

 

 「あははは…」

 

 アンは死んだ魚の眼になりながら乾いた笑いしか出ず、俺は虚ろな目に成りながら三人の大エースが駆るゲルググに挑んだのだ。

 

 「イチカ、逃げるんじゃあ無いよ!!」

 

 「逃げるしか無いから!!」

 

 シーマ大佐のゲルググマリーネカスタムの装備するペイント弾にしたビームマシンガンに乱射されながら追われたり

 

 「アンくんの射撃は正直だな。

 

 だから、そうそう当たるもんでも無い」

 

 「嘘、ソレを躱す!?」

 

 アンはシャア大佐に個人レッスンと言う名の弄ばれる始末だった。

  

 結局は大エース同士のガチのサバイバル戦となり俺とアンの高機動型ゲルググカスタムは三人の大エースからのペイント弾に被弾しまくりペイント塗れになったのは言うまでもない。

 

 最終的にジョニー・ライデン少佐と一騎打ちとなり、一人勝ちしたのはシャア大佐だった。

 

 シャア大佐もニュータイプなのは知っていたが、あそこまで強いシャア大佐に男としての憧れだったしアンは射撃術と回避技術に眼を輝かせていた。

 

 

 そして、数日後に連邦軍の大艦隊がせまり、俺達の中隊とシャア大佐はSフィールドに配置されてア・バオア・クー防衛戦の始まりだった。

 

 Nフィールドに配備されのはキマイラ隊にシーマ艦隊、デラーズ艦隊の三つが展開。

 

 ア・バオア・クー要塞には学徒兵が使用するMS-06F-2ザクF2やMS-06Fzザク改の他に地上から撤退して来たベテランパイロットが駆るMS-14Aゲルググが配備され、キシリア閣下はドロスにて指揮を取っていたのだ。ただ、ギレン閣下はサイド3にて増援部隊の編成でア・バオア・クーには居ない。

 

 

 連邦軍の大艦隊からの飛び交うビームやミサイル。

 

 味方敵が入り交じる戦場。

 

 命が散る花火の様にア・バオア・クーの宇宙(そら)は綺麗だった。

 

 「必ず、ニ機一組で当たれ!!」

 

 「イチカ!!

 

 連邦軍が来たわ!!」

 

 押し寄せるのは連邦軍のモビルスーツ隊の数の暴力。

 

 「落ちろ!!」

 

 マシンガンをジムに乱射して蜂の巣にして、やはりボールは蹴り飛ばして撃破する。

 

 「邪魔よ!!」

 

 アンはビームサーベルを抜きジムを切り裂く。

 

 一年戦争でア・バオア・クー防衛戦の激戦区は、このSフィードだと後の歴史家達が語る程の大激戦だった。

 

 何故なら、ア・バオア・クーに取り付く為の連邦軍の挺身艦隊が猛攻を仕掛けたに過ぎない。

 

 その中には、連邦軍の第13独立部隊やルナ2に配備された筈のRX-78-FAフルアーマーガンダムに加え、サイド6で試験中の筈のRX-78-NT1ガンダムアレックスなどが集中配備されたからである。

 

 だが、既に俺とアンでフルアーマーガンダムとガンダムアレックスはパイロットが未熟だったのか判らないがニ機とも撃墜していた。

 

 しかし、連邦軍の猛攻は木馬と言われたホワイトベースにより出撃した機体により均衡が崩れたのだ。

 

 そう、RX-78-3ガンダムマグネットコーティング仕様を駆るアムロ・レイの突入により均衡が崩れたのだ。

 

 最初の部隊の犠牲者は部隊のムードメーカーだったジャックだった。

 

 「たっ、隊長!?

 

 グッワァァァァ!?」

 

 「ジャック!!」

 

 ジャックのゲルググマリーネは一筋のビームがコクピットに直撃して爆散する。

 

 「ガンダムか!?」

 

 俺達の中隊に現れたのは、連邦軍の第一波の3機目となるガンダムだった。

 

 「嫌ァァァ!?」

 

 「ミチル!?」

 

 アンと同じく女性隊員のミチルのゲルググマリーネがコクピットを撃ち抜かれて爆散する。

 

 「やらせるかよ!!」

 

 「イチカ‼」

 

 スラスターを全開にして、斬艦刀を構えてガンダムに突っ込む。アンもマシンガンを乱射しながら援護射撃をする。

 

 しかし、アムロ・レイが駆るガンダムにはカスリもしない。部隊のゲルググマリーネがガンダムを囲いながら襲うが犠牲が増えるばかりだった。

 

 「甘い!!」

 

 「隊長はやrギャァァ!?」

 

 「マックス‼」

 

 他の隊員達が援護射撃をするがゲルググマリーネはガンダムからのビームライフルのビームが直撃して次々と仲間達が宇宙に散っていく。

 

 そして、俺達二人以外は壊滅したのだ。

 

 だが、二人で連携を組みながら、俺は斬艦刀で再び斬りかかるがガンダムのビームサーベルで受け止められてしまった。

 

 「糞が!!」

 

 「その声はイチカか!?」

 

 「アムロ・レイ!?」

 

 鍔迫り合いとなり、ガンダムから聞こえたパイロットの声はリゾートコロニーで出会ったアムロ・レイだった。

 

 「あんたが、ララァを!!」

 

 「アン、よせ!!」

 

 「邪魔だ!!」

 

 「あっ、しまった!?」

 

 「アァァァァァン!!」

 

 「イチカ!?」

 

 「くっ、やらせるか!!」

 

 「ぐぁ!?」

 

 ララァ大尉を殺された事の仇討ちとアンがビームサーベルで鍔迫り合い中の俺の高機動型ゲルググカスタムとアムロのガンダムの間に割り込みに斬り掛かるが、もう片方のビームサーベルを抜きアンのゲルググをカウンターでコクピットを狙われ切り裂かれそうになる。

 

 俺はスラスターを全開にガンダムに体当たりをしてビームサーベルを逸したのだが、俺のゲルググカスタムの左腕は切り裂かれたのだ。

 

 そして、アムロはこれを離脱のチャンスと見て離脱したのだ。

 

 「糞!!

 

 残ったのは俺とアンだけかよ!!」

 

 「大丈夫。

 

 あたしは絶対に死なないから」

 

 アムロが駆るガンダム一機に俺達のベテラン揃いのオリムラ中隊は俺とアンを残して壊滅したのだ。

 

 だが、アムロが駆るガンダムは既にSフィールドを抜けてシャア大佐のパーフェクトジオングと交戦していた。

 

 次々に手負いの俺達に迫る連邦軍のモビルスーツ隊の猛攻は激化の一途を辿る。

 

 「さっさと落ちろ!!」

 

 「ぐぁ!?ママァァァァ!?」

 

 「連邦も学徒兵かよ!!」

 

 まだ、俺のゲルググは左腕を失っただけだから戦える。罅割れて来た斬艦刀でジムを縦に切り裂き、連邦のパイロットが叫ぶのは幼い少年兵ばかりだ。

 

 「いい加減に!!」

 

 アンも片手にマシンガンを持ちながらビームサーベルでジムキャノンのコクピットを突き刺し撃墜。

 

 アムロが駆るガンダムに抜けられてから、俺達二人は既に軽く30機近くのジムとボールを撃墜していた。

 

 補給手段はガンダムに落とされた仲間の残骸からマガジンや予備のプロペラントタンクなどを回収して近くの岩礁に隠し、それで補給しながら連邦軍のモビルスーツ隊を屠ったのだ。

 

 だが、ア・バオア・クーに戻るにしても、近くの艦隊に補給に行くにしても敵味方入り乱れた戦場では向かう事も勿論だが逃げ場など既に無い。

 

 「ジオンの白き流星‼

 

 貰った!!」

 

 「ちっ!?」

 

 「ジオンの蒼い悪魔!!

 

 貰った!!」

 

 「誰が悪魔よ!!」

 

 第一波はアムロ以外は抜けられずに撃破されたが、第二波の連邦軍のモビルスーツ隊の猛攻はベテランばかりで苦戦を強いられた。そして、灰色に染めた5機編成のジムいや4機のジム・コマンドとジムスナイパーカスタムが襲い掛かる。

 

 先程の第一波のジムとは全く動きが違う。

 

 「アン、こいつ等ベテランだ!!」

 

 「あぁ、もう!!

 

 いい加減に落ちなさいよ!!」

 

 「しっ、姿勢制御用スラスターじゃない!?

 

 グアァァァ!?」

 

 「まず、1機!!」

 

 アンが腕部の110ミリ速射砲を乱射して、ジム・コマンドを撃墜する。

 

 「せりゃぁぁぁ!!」

 

 「ゴッフッ!?」

 

 指揮官機のジムスナイパーカスタムのコクピット付近を斬艦刀で横殴りで切り裂く。パイロットは腹から下をコクピット毎斬られ大量の吐血をしてノーマルスーツのヘルメットのバイザーを血に染めて即死する。

 

 指揮官機を失うが、ベテラン達は士気が衰えない。

 

 「囲え!!」

 

 ジム・コマンド3機がビームスプレーガンを乱射しながら牽制し俺達を囲う。

 

 「邪魔なんだよ!!」

 

 「メインカメラが!?」

 

 「落ちろ!!」

 

 斬艦刀をジム・コマンドに投げ付けると頭部に突き刺さり、腰のアーマーにマウントしたマシンガンを抜きゼロ距離でジム・コマンドのコクピットハッチにガシャリと付けてマシンガンを乱射する。

 

 「ギャァァ!?」

 

 パイロットはコクピットを撃ち抜かれて、マシンガンの弾丸が襲いパイロットはバラバラになりながら絶命する。

 

 「イチカをやらせないわよ!!」

 

 ジム・コマンドがビームサーベルを抜き、背中から斬りかかるがアンがマシンガンでジム・コマンドのバックパックを撃ち抜き燃料に引火したのか四散する。

 

 残りのジム・コマンドを撃破し、弾薬をほぼ使い切り満身創痍の俺達二人は暗礁へと補給に戻る。

 

 だが、暗礁に隠した弾薬は底が尽き無くなっていた。

 

 俺の高機動型ゲルググカスタムの残弾はマシンガンは半分で予備マガジンは無し。

 

 「アン、残弾はどれ位だ?」

 

 「マシンガンも速射砲も残弾なしよ」

 

 「どうする?」

 

 「そうね、他の部隊の撃墜された機体からなら弾薬は補給出来そうかもね」

 

 確かに、周りを見渡せばやられたリックドムにはジャイアントバズーカが、ザクなら120ミリマシンガンが手に入るだろう。

 

 「じゃあ、あたしはジャイアントバズーカを貰う」

 

 「俺は120ミリマシンガンだな」

 

 暗礁宙域から各々の武器を拾い残弾を確認しながら、連邦軍のモビルスーツ隊へと突っ込んだのだ。

 

 そして、暫くしてドロスが轟沈してキシリア閣下の戦死によりア・バオア・クーは陥落したのだ。

 

 そして、両軍の救助隊はイチカ・オリムラ専用高機動型ゲルググカスタムとアン・オリムラ専用高機動型ゲルググカスタムのニ機が大破した状態で恋人同士が抱き合う様な形でいるところを暗礁宙域で発見したのだ。

 

 ただ、コクピットハッチは開いたままで中に人は乗ってなく、付近を捜索したがパイロットの二人は行方不明となっている。

 

 イチカ・オリムラの総撃墜数は158機

 

 アン・オリムラの総撃墜数は152機

 

 正式にジオン公国国防省が二人の総撃墜数を記録していた。三つの戦いでの総撃墜数が異常なだけに二人をニュータイプだと言う研究者が居るが行方不明なだけに本当にニュータイプかは判らない。

 

 そして、一年戦争の中で連邦軍からは『ジオンの白き流星』と『ジオンの蒼い悪魔』と二つ名で呼ばれて怖れられ、戦後に二人はジオン軍の大エースの一人として教本に乗る人物となったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 ザァ…サァ…

 

 白い砂浜。

 

 そして、どこまでも広がる蒼い海。

 

 ジオン軍の白と蒼のノーマルスーツ姿の二人。

 

 「んっ…」

 

 目覚めたのはアンが先だった。

 

 「イチカ!?

 

 イチカは!?」

 

 ヘルメットを脱ぎ捨てて見ると、隣に気絶していたのはあたしの愛しい人。

 

 「イチカ、目を覚まして!!」

 

 「……」

 

 イチカのヘルメットを脱がし、未だに気絶したまま覚めない。

 

 プッツン…

 

 「起きなさいって、言っているでしょ馬鹿イチカ!!」

 

 ドッゴォ

 

 「グッハァ!?」

 

 ガックリ……チーン

 

 「あっ、やり過ぎたわ…」

 

 目覚めない苛つきからイチカのお腹に全体重を乗せたダイビング肘打ちをお腹に思わず入れてしまった。一度は衝撃で覚醒したのだが、今ので再び気絶したのは言うまでもない。

 

 

 同じ頃、とある島の研究室。

 

 ウサ耳をした不思議の国のアリスの格好をした女性はモニターに映る男女の姿に歓喜の声を上げた。

 

 「えっ………!!??

 

 いっくんなの?」

 

 とある島に映る宇宙服姿の男女の二人。

 

 女が自分のヘルメットを脱ぎ、気絶している男のヘルメットを脱がして顕わになった男性の顔は忘れもしない、織斑一夏の素顔だったのだ。

 

 「うぇぇぇん…いっくんが生きてたよ…」

 

 思わず、大泣きになる。

 

 「うるさい駄兎!!」

 

 バッキィ

 

 「グッハァ!?

 

 束さん、死んじゃうから!?」

 

 「だったら、騒ぐな!!」

 

 夜間哨戒で眠っていたマドカちゃんに寝起きがてらに殴られるが、マドカちゃんにモニターを観せると大泣きしたのだ。

 

 「えっ…お兄ちゃん?……お兄ちゃんが……お兄ちゃんが…生きてたよ!!

 

 うぇぇぇぇん!!」

 

 ただ、その後のダイビング肘打ちは流石にないだろうと束さんは思うな…

 

 ((アレは絶対に痛いよね……))

 

 そして、マドカちゃんは束さんの静止を聞かずに秘密基地から飛び出していっくんの所に向かったのだ。

 

 まぁ、束さんもニンジンロケットに乗り込み、マドカちゃんを追ったのだった。

 

 

 

 

 



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再会

 

 

 潮の香りに波の音。

 

 「んっ…」

 

 「イチカ、目覚めた?」

 

 「アンか…確か、連邦軍の艦隊に…」

 

 ゆっくりと起き上がり周りを見渡せば、白い砂浜と蒼い海が見えていた。俺の服装と言えば、ジオン軍の俺用の白いノーマルスーツ。

 

 「イチカ、あたしは生きているんだよね?」

 

 「足が見えるから、死んではいないな」

 

 あの時、各々の武器を拾い俺達の高機動型ゲルググカスタムで連邦軍のモビルスーツ隊を駆逐しながら艦隊に突撃した。

 

 マゼラン級戦艦のブリッジを破壊して二隻を撃沈して、離脱しようとするが敵艦隊からの濃密な弾幕で機体が大破してしまい、それで全ての推進系が破壊されて、アンとは離れなくないからアンの機体を抱きながら暗礁宙域に流された。

 

 「ゲルググから脱出して黒い穴に吸い込まれたか…」

 

 「じゃあ、ここは何処かな?」

 

 「ちょっと、試したい事がある」

 

 「それって…」

 

 「あぁ、元の世界で使用してた携帯だ」

 

 まさかだと、思いながら元の世界で使用していた携帯に電源を入れると携帯が勝手に更新して行く。

 

 「なんか、メールが更新されてるよ?」

 

 「あぁ、電池がなくなる程ヤバイな…」

 

 携帯が更新しているのは無着信の大量のメールだった。その送り主は全て鈴からのメールが殆どで、内容は同じ内容で『一夏、何処?何処に居るの?』と多分だが、泣きながらメールをしたのだとあいつの性格だから判る。

 

 大量に更新され、鈴からのメール。

 

 俺はこの世界に帰って来たのだと、鈴が教えてくれる。そして、離れていても鈴の悲しみと寂しさが俺の心に響くのだ。

 

 「鈴?」

 

 一瞬だけど、宇宙空間に俺が居て鈴も同じ空間に蹲り泣きながら居たが、俺の姿に気付いて『一夏!!』と叫び泣きながら抱き締められた瞬間に元の現実に戻っていた。

 

 「イチカ、大丈夫?」

 

 「あぁ、大丈夫だ」

 

 あぁ、これがシャア大佐の言っていた宇宙での人類の革新による心の繋がりなのかと理解出来たのだ。

 

 「なぁ、アン。

 

 どうやら、俺達は俺の元の世界に来たみたいだ」

 

 「えっ…マジで?」

 

 「あぁ、鈴が戻って来たと教えてくれた」

 

 

 「まさか、イチカがニュータイプに覚醒したの…」

 

 アンの最後の呟きは聞こえなかったが、一番新しい鈴からのメールをアンに見せる。

 

 『なんか、一夏が帰って来た様に感じた。

 

 だから、一夏おかえりで良いのかな?

 

 再会したら、まずは一発ぶん殴るから』

 

 「うん……えっと、頑張ってね………」

 

 どうやら、鈴と再会したら殴られるのが確定した瞬間だった。アンも苦笑しながら、メールの内容から鈴にどう説明したらいいのか不安になるのだった。

 

 

 ジオン軍のサバイバル訓練の経験から、岩場に寝床を作っている時だった。

 

 「んっ!?

 

 アン、誰か来る!!」

 

 「誰!?」

 

 「判らないけど、来る感じがする」

 

 俺が来る方向を向くと、物凄いスピードで飛んで来る物体はISだった。

 

 「お〜に〜い〜ちゃ〜ん!!」

 

 「「へっ?」」

 

 「やっぱり、お兄ちゃんだ!!」

 

 少女からの叫び声に抜けた様な声を出してしまう。

 

 そして、ISを解除して砂浜に着地すると、少女は猛ダッシュで俺が反応出来ないスピードで飛びついたのだ。

 

 だが、ここで考えて欲しい。

 

 猛スピードで人に抱き着くとどうなるかと言うことに

 

 「お兄ちゃん!!」

 

 「グッヘェ!?」

 

 ドッボォォォォン

 

 「イチカ!?」

 

 「アレ?

 

 お兄ちゃんは?」

 

 少女の猛スピードからの体当たりにより吹き飛び、俺は海へと落下したのだ。当然、少女の前から俺が消えて少女が探すのはオチとも言える。

 

 アンから浜に引き上げられると、千冬姉そっくりな少女がシュンとして反省していた。

 

 「お兄ちゃん、吹き飛ばしてごめんなさい。

 

 だって、お兄ちゃんが生きていたのが嬉しかったから」

 

 「もしかして、屑親に連れて行かれたマドカなのか?」

 

  千冬姉の部屋を掃除した時に見付けた一枚の写真には幼い頃の三人が一緒に写った写真が在り、裏には俺達三人の名前を見た記憶がある。

 

 「うん、お兄ちゃん!!」

 

 歓喜極まり、涙目になりながら抱き着くマドカ。

 

 やはり、屑親に連れて行かれた妹のマドカだったのだ。

 

 「で、鈴お姉ちゃんが居ながら、隣の女は彼女かな?」

 

 瞬時にマドカの雰囲気が代わり、殺気を丸出しでアンを睨み付ける。だが、戦場を経験したアンには全く効かない。もしも、マドカの『鈴お姉ちゃん』に気付けば良かったと後で後悔する。

 

 「マドカちゃんだったかな。あたしは確かにイチカの彼女だけど、イチカの一番になるつもりは無いわよ。だって、イチカの心は常に鈴って女の子が一番だから…」

 

 「むぅぅ、そんな言い方ズルいじゃん!!

 

 怒るにも怒れないよ…」

 

 殺気が消えて頬をムックゥと膨れながらアンにポカポカ殴りながら抗議するマドカはまるで姉にじゃれつく妹の様に見えたのだ。

 

 キィィィィン

 

 「「「!?」」」

 

 突然、空を切るような音に反応した俺とアンはジオン軍の士官用に支給されるレーザーガンを抜き、音がする方にレーザーガンを乱射する。

 

 ビュンビュンビュンビュンビュンビュン

 

 「ちょ、あれは、お兄ちゃん!?」

 

 チュドォォォン

 

 マドカが止めるのが遅く、ステルス機能が壊れたのかニンジンの様なロケットが現れてレーザーガンのレーザーにより蜂の巣にされてロケットは小爆発を起こしながら海へと落下したのだ。

 

 

 暫くして、全身がずぶ濡れでウサ耳を着けた不思議の国のアリスの格好した女性が浜に上がって来たのだが、ウサ耳にワカメやら海藻やらがカツラのように絡み付いていた。

 

 「いっくん、酷いよ!!

 

 束さんは危うく焼き兎になる所だったよ」

 

 「普通に現れて下さい。

 

 束姉さん。

 

 そして、ただいま」

 

 「うん、おかえりいっくん!!

 

 うわぁぁぁぁぁぁぁん」

 

 ただいまと束さんに言うと、泣きながら俺に抱き着き俺の胸の中で声を上げて束さんが泣いたのだ。

 

 

 

 そして、丸太で筏を作りロープでマドカの専用機に吊るして乗り込むとマドカに運んで貰い、束さんの秘密基地へと移動したのだ。

 

 秘密基地の内部はまるで俺とアンが配属されていた宇宙要塞のソロモンの様な過ごしやすい造りだった。

 

 そして、応接室で束さんに俺が居なくなった一年間の出来事を大まかに説明し、逆に束さんからはその間の出来事を知った。

 

 「そっか、いっくんは戦争を経験したんだね……」

 

 「俺はシャア大佐に拾われなければ死んでたのは確実でしたし、士官学校に入学しなければアンとも出逢えなかった。だから、全てはシャア大佐のお陰かな。」

 

 俺の経験した話が終わると束さんが悲しそうな顔をしていた。

 

 俺が行方不明に成ってからの出来事を簡単にまとめるとこうだった。

 

 まず、俺は日本政府により死んだ事になっている。

 

 束さんが日本政府にOHANASHIをして、死亡した事を取り消しさせて織斑一夏を名乗れる様にしてくれるらしい。

 

 日本の女性権利団体は束さんの手により壊滅している。

 

 所謂一つの有難迷惑の一言に限る。

 

 だけど、そこまで怒ってくれた束さんには感謝している。

 

 千冬姉はIS学園の教師をしている。

 

 俺には一番どうでも良い話。

 

 束さんからモンドグロッソでの千冬姉の事情は全て聴いたが、全てが当たり前と考える千冬姉に家族に付いて考え直さなければ許す気も無いし寄りを戻す気は全く無い。

 

 そして、鈴の事を聞こうとした途端に応接室の扉が勢いよく開いたのだ。

 

 ガッバン

 

 「一夏!!」

 

 「鈴!?」

 

 転校して中国に居るはずの鈴が居たのだ。

 

 そして、鈴は叫びながら走り、ジャンプすると俺に飛び蹴りをしたのだ。

 

 「この、馬鹿一夏ぁぁぁぁ!!」

 

 「グッハァ!?」

 

 メールでは殴るのでは無かったのか?

 

 そう、思いたくなる様な見事な飛び蹴りだった。

 

 そして、ミニスカートを履いていた為に飛び蹴りで中身の白い紐パンが丸見えだったのは黙っておく。だが、見えていた事をアンは俺の視線がスカートの中身の紐パンに向いていた事に気付いて俺の脇腹を抓るのは辞めて欲しい。

 

 鈴の飛び蹴りをまともに食らい俺は壁に激突するが、鈴は追撃する事なく俺に走って来て抱き締められたのだ。

 

 「確かに、一発いれたからね。

 

 一夏、おかえり」

 

 「あぁ、ただいま鈴」

 

 しかし、抱いていると鈴は俺を見るアンに気付いて、豹変して睨む。

 

 「で、いぃぃちぃぃかぁぁぁ?

 

 誰よ、あの女は!!

 

 新しい女じゃないでしょうね!!」

 

 後ろの影に般若が見える様な凄い剣幕で詰め寄る鈴。

 

 しかし、マドカがアンとの関係を口走った事で鈴がキレた。

 

 「お兄ちゃんの向こうで出来た彼女?」

 

 「なっ、何ですってぇぇぇ!?」

 

 ドッゴン

 

 壁ドンでは無く、壁を殴り詰め寄る鈴。

 

 「いや、鈴?」

 

 「そう、一夏の向こうの彼女ね?

 

 で、あんたの名前は何よ!!」

 

 「えっ、アンです」

 

 「何処までの関係よ!!

 

 ABCの内、さぁ、どれよ!!」

 

 「小学生かよ!!」

 

 「誰が、小学生よ!!」

 

 恋愛に関しては小学生さながらの質問になる鈴。しかし、鈴は別の意味(ロリ貧乳)に捉えて更にキレた。

 

 そう、小学生の様な質問に思わず突っ込んでしまったからだ。

 

 しかし、アンは答える。

 

 「決まっているじゃない。

 

 答えはして無いわよ。

 

 だって、全ての一番は鈴に譲るから」

 

 アンの返答に激昂する鈴。

 

 たが、アンも覚悟の上で決めていた事だった。

 

 「どうしてよ?

 

 どうしてなのよ!!

 

 だって、さっきの話だとあんたと一夏は沢山の人が死ぬ様な戦争経験者でしょうよ!!

 

 いつ、どちらが死んでも可笑しくない戦場だったんでしょ!!

 

 だったら、あたしに関係なく一夏の一番を奪えたのはあんたでしょが!!」

 

 泣きながら、力無くポカポカとアンに殴りながら噛みつく鈴は隣の部屋で見聞きしていたらしくて全て知っていた。

 

 確かに、あの戦場は死んでも可笑しくない戦場だった。アンと付き合いながらもデートまでしかしていない。それは、鈴とデートをしているからであると言えるからだった。

 

 アンも心に溜めていた事を鈴の胸倉を掴み引き寄せると鈴にぶつけていた。 

 

 「それでも、一番は鈴なのよ!!

 

 だって、悲しいじゃない!!

 

 あたしも、イチカを愛してる。

 

 でも、彼の心は常に貴女だった。

 

 そんな彼を、あたしは貴女から奪えないわよ!!

 

 だから、決めたの。一番は鈴で二番はあたしだって。

 

 これは、元貴族であるあたしの矜持よ。

 

 嫌とは言わせないわよ!!」

 

 アンも鈴の胸倉を掴み、泣きながら自分の思いを全てぶつける。そして、お互いの気持ちをぶつけ合ったのか、鈴はアンを認めたのだ。

 

 何故、二人が手をガッチリと握手して俺を見るのかが判らん。

 

 「アン、あんたには負けたわ。

 

 だから、二人で一夏を愛すわよ!!」

 

 「あの、俺の意見は?」

 

 「「あんたは、あたし達に素直に愛されなさい!!」」

 

 「いっくん、二人に愛されてるね。

 

 束さんは嬉しいよ」

 

 こうして、二人とも俺の彼女となったのだ。

 

 「ところで、何で鈴がここに居るんだ?」

 

 「あたしね、中国の代表候補生を受けて主席だったんだけど、二位の糞野郎が金で監督官を買収して、あたしは代表候補生の主席の座も候補生としての道も無くしたのよ。

 

 そんな時に、一夏の彼女だからって束さんに拾われてテストパイロットをしているのよ」

 

 「ねぇ、イチカ。

 

 もし、MS-06Cがあったら中国に核弾頭バズーカをぶっ放して構わないかな?」

 

 「アン、物騒な事は言わないでくれ」

 

 「一夏、MS-06Cって、何よ?

 

 それに、最後の方に凄く物騒な単語が聞こえたわよ?」

 

 「あぁ、俺とアンが居たジオン軍のモビルスーツでザクⅡ型の核弾頭バズーカ搭載型だよ。

 

 俺がシャア大佐に拾われて士官学校に入るかなり前に起きた大作戦らしいけど、ジオン軍が連邦の軍事コロニーに核を撃ち込んで破壊する為に使用した機体らしい」

 

 「「「核弾頭バズーカ!?」」」

 

 「イチカ、付け足すと南極条約で核の使用と毒ガスの使用が禁止になったけどね」

 

 

 

 

 そして、シーマ大佐は俺達と初めて会った時は未だにこの事を悩み苦しんでいた。

 

 何故なら、その作戦の当事者だからだ。

 

 理由はシーマ大佐との約束で詳しくは言えないが、胸くそ悪くなる様な内容だった。

 

 当時、シーマ大佐の上司が用意したのは暴徒鎮圧用に用意した睡眠ガスでは無く、今でも猛毒の毒ガスであり無色無臭のG3ガスを使わされたのだ。

 

 それだけでは無く、宇宙港を潰す為に開発中のザクⅡ用の280ミリバズーカを用意したが弾頭が核弾頭にすり替えられていて多数の部下を被爆で失っただけで無く、この作戦の責任まで上司のシーマ大佐に押し付けられたのだ。

 

 気に入られたのは、ソロモンで出会った時に悩み苦しむシーマ大佐から話を聞いて悩みを吐き出させて、ドズル閣下に全てを報告。

 

 その上司の話を聞いて激怒したドズル閣下は殺害命令をだして、その上司は親衛隊に捕まり、その場で銃殺刑となった。

 

 その上司の執務室から様々な証拠が見つかり、シーマ大佐の責任ではない事をドズル閣下が証明して解消したからだ。

 

 そして、シーマ大佐は(0083の様に腐らず)元の明るい女性に戻ったのだが、問題はショコタンに目覚めてしまい、ソロモンの士官室でお風呂に突入して来たシーマ大佐に浴槽内で背中を抱かれながら一緒に風呂に入った事はアンにすら秘密にしていた。

 

 (そして、名誉を回復してジオンへの忠誠を戻したシーマ大佐は後にアクシズへと自身の艦隊をお土産に向い、アクシズが地球圏帰還への足掛かりとしてルナ2攻略戦の際に連邦軍を相手に大いに苦しめる指揮官へとなる)

 

 

 

 「いっくんはこれからどうするのかな?」

 

 鈴の騒ぎも落ち着き、これからの事を考える。

 

 「どうしたら良いのかは判らないですね。

 

 ただ、束さんが良ければ、ここでアンや鈴と暮らしながら働いても良いかなって」

 

 「いっくんはさ、若いんだからさ、IS学園に通ってみるかな?」 

 

 「「はっ?」」

 

 俺とアンは何故と思ってしまう。

 

 一応だが、ジオンの士官学校は短期間ではあるが大学並の授業内容であり、卒業すれば大卒の資格すら貰える。

 

 「束さん、一夏にIS学園に行かせるって、一夏にISが使える訳が「いっくんなら問題無くISが使えるのだよ」はぁぁぁぁマジ!?」

 

 束さんのカミングアウトに鈴が驚くのも無理は無い。

 

 ISは女性にしか使えないのだ。

 

 だが、束さんの研究室に入り浸りになった時に作っていたコアに俺の生体データを入れていたのは知っていた。

 

 だからって、俺が使えるとは限らないのだが…

 

 「だって、束さんがコアを作った時に何個かはいっくんの生体データを入れてるのだ。だから、いっくんはISを使えるのだよ」

 

 「「「マジで!?」」」

 

 束さんの熱弁に呆れるしかない三人。

 

 「じゃあ、いっくんは試しに、このコアを触って見てね」

 

 と束さんの胸の谷間から取り出して、目の前に置かれたコアに触る。

 

 「つっ!?」

 

 頭の中に流れ込む大量の情報に思わず、頭が痛くなる。

 

 「「マジで反応してる!?」」

 

 アンと鈴が驚いているが、俺はいつの間にか意識を失い気付けば水面が何処までも広がる場所に立っていた。

 

 「ここは、何処だ?」

 

 「やっと逢えた!!」

 

 「えっ!?」

 

 いきなり、目の前に白いワンピース姿の少女が現れて俺に抱き着く。

 

 「君は?」

 

 「私は■■■だよ」

 

 少女の名前だけが聞き取れずに判らず、現実に戻ったのだ。

 

 「イチカ!!」

 

 「一夏!?」

 

 気付けば、床に倒れていたしい。

 

 心配する恋人を軽く抱き締めて、二人の温もりを感じたのだが

 

 「マジかよ。仕事から戻れば、餓鬼がイチャコラしてんのかよ…」

 

 「あらあら、若気の至りかしら?」

 

 「「はぅ////」」

 

 二人の女性に見られた事に鈴とアンは顔を真っ赤にしていたのだった。

 

 「じゃあ、このコアでいっくんの専用機を作るから、いっくんの仕様をどのようにしたいか聞きたいから後で研究室に来てね」

 

 二人の女性の帰還で気不味くなった束さんは逃げる様に研究室に逃げ込んだのだ。

 

 「駄兎、逃げんじゃねぇ!!」

 

 

 

 

 

 



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君の名は

 

 

 束さんの所に居候を始めてから約3週間が過ぎたのだが、右にはアンが椅子に座り左には鈴が椅子に座っていた。

 

 「イチカ、はいあーん」

 

 「ぬっぐぐ、一夏、はいあーん」

 

 朝食を食べてはいるのだが、どうしてだかアンと鈴のあーん合戦が繰り広げられているのだ。

 

 そして、二人の背後に現れているのは虎と龍が睨み合っているのでは無く、何とも可愛らしい子狐と子猫が睨み合う何ともほのぼのしているものだが、可愛い顔して交互にご飯を俺の口にあーんしながら押し込もうとしているのだ。

 

 もう一つ言い忘れたが、俺の前には何皿もの食べ終えた皿が重なり、関取の様に俺のお腹が膨れている事だけは言っておこう。

 

 「イチカ、卵焼きね。あーん」

 

 「ムッグゥ!?」

 

 お腹が一杯だが、アンがニコニコしながら卵焼きを口に押し込む。

 

 「一夏、味噌汁よ!!あーんして飲みなさい!!」

 

 鈴も負けじとあーんをしようとするが、残すは卵焼きのみでアンに確保されてあーん出来ず、仕方なく鍋の味噌汁をお玉で掬い、鍋を抱えながらニコニコして俺に飲まそうとしていた。

 

 「ゴッフゥ……鈴、それはあーんする物じゃないぞ!?」

 

 「黙って、飲みなさい!!」

 

 「アッチィィ!?」

 

 「全く、一夏の料理は美味いがよ、朝から砂糖を吐きそうだぜ」

 

 「オータム、私達も大人のアレを三人に見せ付けて見るかしら?」

 

 「スコール、オレはレズじゃねぇ!!」

 

 「あらあら、照れちゃって」

 

 「むっ、お兄ちゃんにあーん出来ない…」

 

 「うんうん、束さん的に楽しい朝食はカモンだね」

 

 オータムさんは何故かウンザリしたように俺達三人をジト目で睨み、スコールさんは獲物を狩るような目付きでオータムさんを見て、普段からの欲求不満から俺達に見せ付けようとそしてオータムさんを誘うが断られ、あーんが出来なかったマドカは二人に嫉妬しながら睨むのだった。

 

 

 話が変わるが今度、束さんが俺が生存していて束さんにより保護されて治療していた事の公表と、ISが扱える事を新しく立ち上げた会社の発表に合わせて発表するらしい。

 

 そして、俺達四人はIS学園に入学する事は決まっていた。

 

 会社名はホワイトラビット社で企業代表として、四人は来年の4月のIS学園入学に向けて様々な訓練やISにまつわる勉強をしていたのだ。

 

 ただ、オータムさんとスコールさんには護衛兼教師として派遣する事を急遽決めていたらしくて、俺達が来た日に辞令を出したが、あの日の様にオータムさんが急過ぎだとキレたらしい。

 

 そして、今は俺達三人の専用機を開発すべく、訓練しながらデータ取りをしている最中だった。

 

 特にISでの模擬戦はアンと鈴は性格的には同じだが戦闘スタイルは別だった。

 

 アンは訓練用のテンペスタの高機動性を自在に駆りながらもオールラウンドに戦い、重火器による一撃を入れて離脱する一撃離脱戦法を好む傾向だった。

 

 逆に鈴は打鉄を駆りながら葵でパワーを活かして斬りかかる、パワーファイターさながらの戦い方を好む傾向だった。

 

 これには束さんも二人の模擬戦を見ながら専用機開発に頭を抱える始末だった。

 

 俺もアンと同じく高機動仕様のテンペスタを駆り、お手製の斬艦刀モドキで一撃離脱戦法でフル加速しながら鈴のライフルの射撃を躱して反転し、すれ違いざまに鈴の訓練用の打鉄を斬り刻んだのだ。

 

 斬り刻まれた鈴が駆る訓練用の打鉄はシールドエネルギーを削り切られて真っ逆さまに海へと落下したのだ。

 

 「くぅ〜う!!

 

 ま〜け〜たぁ!!

 

 何よアレ!!

 

 アンも一夏もISに乗ってから一週間しか無いのに、自在に空中戦をするなんて元代表候補生としてのプライドがズタボロよ!!」

 

 アンと俺に惨敗した鈴は浜で手足をバタバタしながら、かなり悔しがっていた。

 

 宇宙での姿勢制御方法はやはりISでの空中戦でも役に立つ。

 

 その代わりに、全てのスラスター制御がマニュアル操作になるのだが、別にジョニー少佐の部隊に配属した時の通商破壊作戦の時に乗ったMS-06R-1高機動ザクのマニュアル操作と比べたら楽とも言えた。

 

 それに、アンも俺も高機動型のテンペスタとはかなり相性が良かった。まぁ、アンの場合はバズーカやロケットランチャーなどの重火器を好む癖は一年戦争の時から全く変わらない。

 

 「いっくんの専用機が完成したのだ!!」

 

 「束さん、白式のスペックを見てもいいですか?」

 

 「持ちのロンなのだ」

 

 束さんから白式のスペックを確認すると玄人向けのピーキーな機体で酷すぎると言える性能だった。ただ、白式の加速性能はテンペスタよりも早い機体だとわかるが…

 

 「束さん、これは流石に無いな。玄人向けなピーキーな機体だし、紙装甲だし、牽制用の銃火器も無くて剣のみって…」

 

 「駄目だったかないっくん?」

 

 「せめて、これぐらいは欲しいですよ!!」

 

 ア・バオア・クー決戦時の俺とアンが駆っていた、高機動型ゲルググカスタムの武装一覧と大まかな性能を見せたのだ。

 

 「コレは、流石にマジ?…いっくん、厳し過ぎだよ…」

 

 一度、束さんが俺の専用機の『白式』を完成させて俺に持って来たのだが、牽制用の火器も無い剣一本のピーキーな紙装甲では話にならないと一蹴した。

 

 無論、一蹴しても束さんには仮提案として両腕には内装型の30ミリ機関砲の装備とテンペスタで使っている斬艦刀を頑丈に尚かつ切れ味が鋭い斬艦刀の装備。

 

 更に、使用する手持ち火器にはマシンガンと腰のスラスターユニットにはスライド式のマガジンラックを追加する提案をしたのだ。 

 

 無論、機体の仕様は元の白式の高機動性を活かした高機動強襲型だ。

 

 そして、駄目出しを食らい作り直しとなった俺の専用機は束さんが一週間殆ど徹夜して完成させて、名前はそのまま『白式』となった。

 

 アンの専用機は完成した白式をベースにした専用機だが武装が少しだけ違う。

 

 両腕の内装型30ミリ機関砲と手持ち火器のマシンガンは一緒だが、腰にマウントした近接用のレーザーブレードの他にウイングスラスターの付根には重火器用のラックが付いていて、71口径56ミリ折畳式対物ライフルと120ミリジャイアントバズーカを背負っている。

 

 そして、腰のスラスターユニットにはスライド式のマガジンラックと柄付きハンドグレネード、別名ポテトマッシャーを装備して白式よりも重装備だ。

 

 アンの専用機の機体仕様は白式と同型の機体の為に高機動強襲型で名前は『蒼式』となった。

 

 完成した俺とアンの専用機は、一次移行でア・バオア・クー決戦で駆ったMS-14B-OCイチカ・オリムラ専用高機動型ゲルググカスタムに似た装備とカラーリングの白と蒼に成っていたのは言うまでもない。

 

 そして、両方のISコアの悪戯は終わらずに肩のアーマーが高性能のスラスター付きのゲルググの肩のアーマーに代わり、肩と胸のアーマーにはジオン軍のマークと俺達二人が所属していたジオン軍ソロモン方面防衛師団343突撃宇宙大隊のロゴマークに所属機体番号の343-105と343-106の番号まで入っていると言う芸の細かさだった。

 

 「なあ、コアが絶対に俺達の記憶を読んだよな?」

 

 「イチカ、あたしにISの事が詳しく解らないのに聞かないでよ…」

 

 一次移行後に原因究明でハンガーに展開した俺とアンの専用機を観ながら呆れたのだった。

 

 そして、鈴の専用機はMS-08TXイフリートカスタムを理想として束さんと俺がジオン軍での記憶にあるイフリートカスタムを話しながら、一緒に議論して設計したのが重装甲高機動強襲型『紅式』だった。

 

 メイン武装は中国の青龍刀をモチーフにして、斬艦刀並の切れ味と頑丈さを兼ね備えたヒートソードが二本と両腕には内装型のグレネードランチャー、両足のスラスターユニットには展開装甲の応用技術で造った展開式のマイクロミサイルポッドが内装された他には武装という武装が無い。

 

 その代わりに最大の武器とも言えるのがマシンガンの弾丸を弾く厚い重装甲と機動力。

 

 そして、スラスターユニットを装甲に挟む事で実現し、スラスター推力は白式より加速が早く、トップスピードを活かしたまま相手に縦横無尽に撹乱しながら飛び回り、接近戦では重装甲を活かして一対多数を想定した専用機に完成したのだ。

 

 完成した紅式を見て、設計に参加した俺と意見を聞きながら開発した束さんの二人は思った。

 

 少し、やり過ぎたと。

 

 そして、鈴が専用機を得てからの模擬戦は水を得た魚の様に鈴のパワーファイトは凄まじかったと言っておく。

 

 「紅式、行くわよ!!」

 

 「餓鬼が図に乗るんじゃねぇ!!」

 

 順手逆手に持つヒートソードを構えながら、瞬時加速を加えて加速する。

 

 その加速力は世界でトライアル中の3世代機を凌駕した加速力であり、白式をも超える機体だとは思わなかった。

 

 アラクネはレーザーで紅式の進路を潰しに掛かるが、当たるどころか、バレルロールを描きながら躱し速過ぎて紅式が通った後に虚しくレーザーが着弾する。

 

 「畜生!!

 

 全く捉え切れねぇぞ!?」

 

 「せやァァァァァ!!」

 

 模擬戦で相手になったオータムさんの駆るアラクネが、夕飯に蟹鍋をよろしくと言わんばかりに、瞬時加速で猛スピードで駆る鈴の紅式のヒートソードでアラクネの脚がパワー任せに斬り刻まれたアラクネは、シールドエネルギーを失ったらしい。

 

 「ちくしょぉぉぉ!!」

 

 「あたしの勝ぃ!!」

 

 そうとは知らない俺は、海で採れた旬のタラバ蟹を具材にした蟹鍋を夕飯に出したらオータムさんがキレて叫ぶ。

 

 「一夏、てめぇ!!鈴に負けたオレに対する嫌味か!!」

 

 「えっ、オータムさん!?」

 

 「なんだよ、一夏は夕飯作ってて知らなかったのかよ。ラガービールを出しな!!それで、蟹鍋の件は忘れてやる」

 

 とオータムさんがキレたのだった。

 

 そうとは知らなかったので、オータムさんにはキリンラガービールを出して機嫌を直して貰ったのは言うまでもない。

 

 夕飯も食べた後、妹のマドカ専用に簡易設計をしていた。

 

 マドカからの要望通りに射撃特化の全距離対応型でBT兵器搭載機になる予定だ。

 

 BT兵器の稼働データは束さんがイギリスをハッキングした際に入手していたのを最近知り、マドカの高いBT適正(マドカのBT適正はSSだった)を生かせるからだ。

 

 「少し、通常のISより少しだけデカくなるが構わないよな」

 

 「どれどれ、いっくん。コレは、マジで束さんに作らす気かな?」

 

 背後から現れて図面を覗き込むのは束さんだった。

 

 「マドカの専用機にって考えたんですがね…」

 

 「BT兵器と荷電粒子砲による射撃主体の機体だね。ねぇ、まさかだと思うけど腕もBT兵器なのかな?」

 

 「開発が困難になるな…」

 

 確かに、シャア大佐のジオングからヒントに腕にも、小型で手の指を砲身にした5連装の荷電粒子砲を搭載したBT兵器であり、ララァ大尉専用のサイコミュ試験型高機動ザクに試験的に搭載された大量のビットを両肩にスラスターユニット兼ビットの母体と考えたのだ。

 

 そして、アンの蒼式の装備のレーザーブレードを大型化したハイパーレーザーブレードも近接武器として搭載しようと考えていた。

 

 俺達の専用機のサイズには収まらずマドカの専用機は予想通りに難航したのだ。

 

 

 そして、開発は束さんに丸投げして部屋に戻り、自室にて寝ている時だった。

 

 

 再び、水面が広がる風景に呼ばれた俺は、あの白いワンピースを着た少女に出会った。

 

 「あっ、また来てくれたんだね♪」

 

 二人の彼女が居るにも関わらずに少女は俺に抱き付いたのだ。

 

 だが、何故とは言えないが嫌とは言えなかった。

 

 しっくりと来る感覚。

 

 「「あっ、ズルい!!」」

 

 そして、もう二人の赤いワンピースを着た少女と蒼いワンピースを着た少女が現れて、二人も抱き着く。

 

 決して、俺はロリコンではない。 

 

 「むっ、ナンバー001ばかり、パパに抱き付いてズルい!!」

 

 「うるさい!!

 

 パパは私のご主人さまなの!!

 

 ナンバー223は離れなさいよ!!」

 

 「何だとぉ!!」

 

 「チャンス!!」

 

 「「あっ、ナンバー004!?」」

 

 俺は三人の少女の取り合いに巻き込まれながら、少女達がISコアだと気付く。

 

 「もしかして、お前たちは白式(001)と蒼式(223)に紅式(004)か?」

 

 「「「そうだよ〜」」」

 

 やっぱり、三人の少女は俺達の専用機のコアだった。

 

 「あっ、でも本当の目的は名前が欲しいな」

 

 白式のコアの少女が上目遣いしながら俺を見る。

 

 「「良いなぁ」」

 

 まだ、主人に気付いて貰えない二人は羨ましそうに俺達二人を見ていた。

 

 彼女を見て、思い付く名前は…

 

 「君の名は……白星なんてどうだ?」

 

 「うん!!

 

 今日から私は白星だね!!」

 

 白星は嬉しくて俺に抱き着いたのだ。

 

 「「あっ、マジでズルい!!」」

 

 そして、白星は嬉しさの余りに……俺の唇に柔らかい感触がしたのだった。

 

 白星は顔を真っ赤にしていたが満更でもない様子だった。

 

 「えっへへへ。

 

 初めてを上げちゃった♪♪」

 

 「「絶対に私のご主人様に言い付けてやるから!!

 

 うわぁぁぁぁぁぁぁん!!」」

 

 たが、白星がそうでも二人には見せ付けていた様で、二人の少女は泣きながら走り二人はいつの間にか消えていたのだった。

 

 そして、俺もいつの間にか自室のベッドの上だった。

 

 バタバタバタ

 

 「「イチカ!!」」

 

 廊下を走って自室に向かって来るのは、アンと鈴だろう。

 

 ズッガァァァァン

 

 アンのぶっ放したロケットランチャーにより吹き飛ぶ防弾仕様の自室の扉。そして、シーマ大佐の海兵隊も真っ青な、ロケットランチャーなどの重火器とアサルトライフルを装備して俺の部屋に突入して来た迷彩服姿のアンと鈴の二人。

 

 そして、二人が手に握り潰して握るプリントアウトした写真。

 

 この状況に、俺は非常に嫌な予感しかしない。

 

 「「イチカ、あんたねぇ!!

 

 この、イチカの唇にキスしている少女は誰よ!!」」

 

 二人から目の前に突き付けられた写真は、白星が俺にキスしている写真だった。

 

 まさか、本気で蒼式と紅式のコアが目の前のご主人に言い付けたのかと、二人に一時間程問い詰めたい気持ちだ。

 

 「一夏!!素直に話してくれたらアンタを殺して、その少女も地獄に送るだけで許してあげる!!」

 

 「いやいや、俺は死んでるだろ!?」

 

 「イチカ、浮気したアンタと少女に死ねって、言っているのよ!!」

 

 「アンまで!?」

 

 「「イチカ、覚悟!!」」

 

 「くっ、逃げるしかない!!」

 

 「「イチカ、待ちなさい!!」」

 

 俺は窓を突き破り、二人から逃げ出したのだが、二人はアサルトライフルを乱射しながら追いかけて来る。

 

 「「に〜げ〜る〜な〜あ!!」」

 

 そして、デスマーチと言う名前の追いかけっことなり、二人に一晩中追いかけ回され島の中を逃げ回ったのだった。

 

 

 

 

 

  

 



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記者会見と動き出す歯車

 

 学園入学まで後半年。

 

 束さんはマドカの専用機の高機動広範囲殲滅型として黒式がようやく完成した。

 

 主な武装は両手の指に装備された小型の5連装の荷電粒子砲に腕は肘から下を切り離してビットとして使用出来る。

 

 また、肩に装備された非固定浮遊部位の大出力のスラスターユニットには左右合わして16基のレーザービットが収納され、バックパックのウイングスラスターの基部には8基のリフレクタービットが収納さるている。

 

 そして、これらを装備していながらも俺達の専用機のサイズと同じ大きさまで抑えたのは、流石は束さんだろう。

 

 荷電粒子砲を内蔵した手でも普通に手持ち火器が使用出来るため、俺の士官用のレーザーガンを解析した束さんがレーザーショットライフルを開発して黒式の専用武器としていた。

 

 そして、今は完成した黒式を相手に俺とマドカで模擬戦の最中だった。

 

 ガッガガガ

 

 マシンガンの銃口がノズルフラッシュを輝かせながら、マドカのビットに追われ弾幕を張りながら背を地上に向けて地面スレスレに飛ぶ。

 

 「くっ、やり辛い!!」

 

 「お兄ちゃん、ビットを半分以上を落としておきなががら言うセリフじゃないよ!!」

 

 「そうかよ!!」

 

 マガジンを排出し、ラックから新しい予備マガジンをマシンガンに挿してコックし、マシンガンを乱射する。

 

 既に、マドカのビットはマシンガンの弾幕に撃ち落とされて、リフレクタービットは全て蹴られてミラーを割られて使い物にならない。

 

 「(くっ、これが戦争を生き抜いたジオン軍が誇るエースのお兄ちゃんの実力なの!?)」

 

 しかし、イチカも予備マガジンは残り二本で腕の30ミリ機関砲は弾切れだった。

 

 「避けるなら、もうヤケだ!!」

 

 下手な鉄砲を撃てば当たるだろうとの思惑から、黒式は模擬戦で二回目のフルバーストを白式に放つ。

 

 「んっ!?

 

 み、見える…」

 

 マニュアル操作をしながらスラスターの出力を微調整しながら、マドカのフルバーストで放ったレーザーと荷電粒子砲の網をまるで全てが見えている様に、マドカへと突撃しながら軽やかに躱して行く。

 

 「やっぱり、ソレまで躱すの!?」

 

 「貰った!!」 

 

 「あっ、ヤバ……」

 

 そして、懐に入られた黒式は白式が構えた斬艦刀により斬られてシールドエネルギーを根こそぎ奪われてマドカは敗北したのだ。

 

 「むっ、お兄ちゃんに負けた!!」

 

 「マドカまで負けたんじゃ、あたしだと歯が立たないわよ…」

 

 「鈴お姉ちゃんは猪戦法だからお兄ちゃんに負ける」

 

 「あっ、あんたねぇ!!

 

 誰が猪武者よ!!」

 

 「うん、流石に鈴を弁護出来ないわね」

 

 「うっがァァァ!!

 

 じゃあ、そこまで言うなら、アン勝負よ!!」

 

 女性陣に弄られ、アンに挑もうとするキレた鈴。しかし、一年戦争を生き抜いたアンは一夏の部隊でエース級の一夏の僚機を最終決戦まで努め上げていた事を、鈴はキレている事で頭の片隅から撃墜されるまで抜けていた。

 

 「よし、撃墜記録更新だね♪」

 

 そして、アンの一言に我に戻り、アンに撃墜数を聞こうと質問する。

 

 「アン、聞き難いけど、一年戦争での総撃墜数は幾つなのよ?」

 

 「正式記録は判らないけど、非公認だと235機だよ。イチカは300機を超えるかも?」

 

 「やっぱり、辞めておくわ…」

 

 「そう言わずにね♪」

 

 アンの余りの撃墜数の多さを知り、冷や汗を流す鈴だった。

 

 「いやァァァ!!」

 

 しかし、結局はアンに引き摺られて模擬戦をする羽目となる鈴は、模擬戦を開始して数分後にはジャイアントバズーカを至近距離で食らいシールドエネルギーを無くして海へと落下する運命だったと悟りながら海へと落下し、アンに迂闊に模擬戦を仕掛けた自分に後悔したのだった。

 

 

 

 

 正月が過ぎ、日本政府と一夏についてOHANASHIを済ませて世界での国際指名手配を日本政府に解除させた束さんは、本来の自分の夢を叶えるべく日本のIS企業の倉持技研の社長にするなら技術提供すると言ったが、倉持技研の余りにも酷い経営状態から自社を立ち上げて倉持技研を買収して自社に吸収合併する。

 

 そして、束さん自身が社長として表に出る為に日本最大のIS企業となるホワイトラビット社を立ち上げたのだ。

 

 そして、束さんが表舞台に出た瞬間だった。

 

 倉持技研を吸収合併した後、表舞台に出た事を公表する為に記者会見を開き、とあるホテルの披露宴会場には多数のマスコミが集まっていた。

 

 「これから、ホワイトラビット社社長による記者会見を始めます」

 

 秘書のクロエが司会を務めて、アナウンス後に姿を現した束の格好に記者達にどよめきが起こる。

 

 無理もない。

 

 束さんは表舞台に出る為にピンク色だった髪を元の茶髪に戻し、服装はウサ耳を外し不思議の国のアリスだった格好の服装はレディースのスーツ姿なのだから。

 

 そして、束さん自身も何とか人見知りを改善してから記者会見に挑む為に日々努力して元倉持技研で、今はホワイトラビット社の女性社員達と交流していたのは俺達は知っている。

 

 束さんが壇上に上がりマイクを取ったのだ。

 

 「はじめましてかな。

 

 私はホワイトラビット社の社長にしてISの産みの親の篠ノ之束です。

 

 本日、ホワイトラビット社の記者会見に来て頂きありがとうございます。

 

 さて、記者会見の前に発表したい事があります。

 

 第二回モンドグロッソ優勝者の元国家代表選手の織斑千冬の弟である織斑一夏が生きていた事を、公表したいと思います」

 

 俺が生存していた事にざわめく会場。

 

 「彼は第二回モンドグロッソの会場にて誘拐され日本政府により死んだ事になっていましたが、私が人工衛星にて監視していて誘拐された事を知り、彼を救助しに来た時には拳銃で撃たれて既に瀕死の重傷でした。

 

 そして、彼を護る為に秘密裏に保護する事にしましたが、重傷により長い期間を掛けて治療する事を余儀なくせざるを得ませんでした。

 

 記者の皆さんも調べたと思いますので理由は判るかと思います。彼の親しい友人方を除き、彼に対しては彼を暴力に晒す者の他に女尊男卑に染まった女性からの迫害から守る為に誘拐現場に死んだ様に仕向けるように現場に血痕を残す事になりました。

 

 そして、保護する最大の理由は織斑一夏は男性で初めてISの操縦が出来る事を理由として、世界に公表すると共に今年の4月には私の会社の企業代表として、織斑一夏を含む四名をIS学園へと入学させます」

 

 そして、束さんの記者会見で俺は記者達の前で白式を展開する。

 

 男性である俺がISを使える事にどよめく会場。

 

 だが、ISを操縦出来る事を認めない者が居た。

 

 「男のアンタなんかに!!」

 

 一人の女性記者が鞄から拳銃を抜き、女尊男卑に染まり切った女性は俺を拳銃で撃とうとする。

 

 「イチカはやらせないわよ!!」

 

 「ギャァァ!?

 

 うっ、腕がァァァ!?」

 

 しかし、俺の隣に居たアンが躊躇なく腰のホルダーからレーザーガンを速攻で抜き、女性の拳銃を持つ右腕を撃ち抜く。撃たれた女性は右腕がレーザーにより焼き切れて痛みから床に倒れてのた打ち回るが、俺も顔面を蹴り飛ばして女性の意識を刈り取る。

 

 気絶した 女性はそのまま警備員に連行され、記者会見はこの女性記者の襲撃により記者会見参加者の身の安全を考慮して終了となった。

 

 

 場所が変わり、IS学園では覇気が無く授業をする一人の女性は織斑一夏の姉の織斑千冬だった。

 

 友人のクラリッサに頼み弟を探したが見つからず、日本政府により捜索を打ち切られて行方不明となった一夏は死亡とされた。

 

 日本で一夏の葬儀が開かれたが、遺体がない葬儀には一切興味が無く一夏が絶対に生きていると信じて参加すらしなかったのだ。

 

 気を紛らわせる為に友人のクラリッサからの頼みでドイツに渡り、クラリッサが隊長を務めていた黒兎隊に指導を一年半ほど行い、鍛え上げて日本へと戻ったのだ。

 

 しかし、誰も居ない自宅には『おかえり千冬姉』と言って迎えてくれる一夏が居ない。

 

 自分では当然で当たり前だと思っていた事が一夏が居ない事で、こんなにも何でも無い普通の事が大切だったと気付かされ打ちのめされる様に思い知るとは知らなかった。

 

 あの誘拐事件で一夏と最も親しく壊れてしまった大親友の束は犯人を全て捕まえた上で全てを調べ上げ、誘拐事件で裏から糸を引いていた女尊男卑が最も酷かった日本の女性権利団体の日本支部ごと報復して文字通りに叩き潰した。

 

 これには世界の女性権利団体は驚き、篠ノ之束を完全に敵にした事を認識する事となり、壊滅した日本支部へ救援に向かったデュノア社の社長夫人は束が日本支部へと報復を済ませた後に日本国内で起こした女性権利団体への会員狩りの被害に遭ったらしい。

 

 そして、昨日の記者会見。

 

 「あぁ、一夏が生きていてくれた。

 

 だが、束は何故、黙っていたんだ!!」

 

 黙っていた事に対して、こみ上げる怒り。

 

 その、大親友とも今は連絡すら取れない。

 

 4月になれば、この学園に入学して来る一夏に会える喜びに私は再び立ち直ったとも言えたのだ。

 

 だが、私は気付かない。

 

 一夏との溝が余りにも深くなっている事実を、この時にはまだ知らなかったのだ。

 

 

 

 同じく、IS学園の生徒会室。

 

 大量の書類に埋もれながら、篠ノ之束による記者会見により4月に入学予定の四人に付いて報告を受けていた。

 

 「……以上が、報告になります」

 

 「やっぱり、誘拐されてからの一年が全く判らないか…虚ちゃん、ホワイトラビット社については?」

 

 「お嬢様、ホワイトラビット社は私が入りたい位に本当に羨ましい程に健全なIS企業でしたよ。ですが、簪お嬢様の専用機はホワイトラビット社が引き継いだ様で滞り無く開発中でした。あともう一つ気になる事ですが、ヨーロッパでのイグニッションプランに参入する為にフランスのデュノア社を買収する動きがある様です」

 

 「あの事件を引き起こした篠ノ之博士の考えが全く判らないわね」

 

 色々と考える私は4月に入学する四人の部屋割りについても、多額の寄付金と共に同室にする様にと指定されていた。

 

 確かに、企業代表の四人。

 

 実力も折り紙付きならば、情報漏洩の観点から仕方がないが、こうも更識の情報網でも掴めないホワイトラビット社の防諜能力の高さに舌を巻くしかない。

 

 なら

 

 「ふふふ…お姉さん、良いこと思いついちゃった♪」

 

 「まさか、お嬢様?」

 

 「それならいっその事、やってやるわよ。虚ちゃん、悪いけど四人の寮の部屋番を調べて置いてね♪」

 

 

 その判断と仕出かした事が、私の人生の最大の過ちになるとは全く思わなかったとは知らず、彼の逆鱗に触れてしまい今の生徒会長の座を失うきっかけになるとはこの時には知らなかったのだ。

 

 

 

 

 

 



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入学試験と盛大な姉弟喧嘩

  

 

 2月となり、俺達四人は学園へと入学試験の為に来ていた。

 

 思い出せば、入学試験に向けたISに纏わる勉強はジオン軍の士官学校に比べたらかなりマシだったが、実技に関してはスコールさん直々に扱かれた。

 

 飛行技術並びに戦闘技術では全く問題は無くスコールさんには勝てたが、逆にISに纏わる技術は加速系の技術は徹底的に叩き込まれたり、ラピッドスイッチなどの技術まで覚えさせられたのだ。

 

 一言で言えば、この訓練は俺とアンの二人には地獄だった。

 

 そして、モノレールの窓から見える学園。

 

 「あれが、IS学園だね。

 

 イチカ、あたしは写真でしか見た事がないけど、オデッサ基地に見えるよね」

 

 「あぁ、マ・クベ大佐が指揮したオデッサ基地だな」

 

 「一夏、オデッサ基地って何よ?」

 

 鈴に携帯に入れた写真データの、陥落前のオデッサ基地を見せる。機能美に優れた基地としてはカルフォルニア基地に次いで人気が在った。

 

 しかし、俺とアンは士官候補生として配属されたのは戦況の悪化の一途を辿る地上戦線ではなく、ジオン軍が制宙権を握る宇宙だった。

 

 そして、パイロット育成にはもってこいの通商破壊作戦へ配属だったのは言うまでもない。無論、俺達二人の高機動戦闘の師匠とも言えるジョニー・ライデン少佐から指導された事が大きかった。

 

 だが、ジョニー・ライデン少佐の暗礁宙域での変態的機動は物に出来なかった。

 

 「確かに似てるわね」

 

 「だろ?」

 

 鈴がオデッサ基地の写真を見ながらIS学園が似ている事に納得していた。

 

 

 駅に着くと、二人の女性が出迎えたのだ。

 

 一人は判る。

 

 千冬姉だった。

 

 「お前たちが、ホワイトラビット社からの入学希望者だな。試験官を務める織斑千冬だ」

 

 「同じく、山田真耶です」

 

 二人に案内され、先ずは筆記試験だった。

 

 束さんから直に教わっただけに非常に簡単だった事は言って置く。そして、鈴とマドカだがISに関しては問題は無かったが、通常科目に関しては不得手だった様だった。

 

 俺とアンに関しては大卒資格がある為、通常科目も中卒レベルだったので全ての回答用紙は全てが問題無しだった。

 

 テストが終わり、待機室にて筆記試験について談義していた。

 

 「一夏、どうだった?」

 

 「簡単だったな」

 

 「お兄ちゃん、マジ?」

 

 「一夏とアンにはやっぱり、簡単だったのね…」

 

 「鈴、もしかして?」

 

 「八割は大丈夫な筈よ。代表候補生を受ける時に猛勉強したから」

 

 そして、次は実技試験だが、スコールさんからの課題が出ていた。

 

 先ずは俺だが、斬艦刀の使用禁止と追加武装であるレーザーライフルとツインレーザーナギナタの使用に加えて、高機動パックを外して白式A型装備で行う事だった。

 

 無論、白式と蒼式が一次移行して模擬戦を繰り返した際にコアが再び悪戯心が再燃して、コアの白星と蒼式のコアがソロモンでゲルググを受領した時の記憶を読み、ゲルググと同じオプション武装が追加となり換装が出来る様になっていた。

 

 A型装備はシャア大佐専用ゲルググと同じく、レーザーライフルとレーザーサーベルとして使用可能なツインレーザーナギナタに楕円型のシールドを装備したタイプだ。

 

 そして、B型装備は高機動パックで装備はA型と変わらないがジャイアントバズーカとロケットランチャーが追加している。

 

 最も使い難いC型のキャノンタイプ。高機動パックに高出力のレーザーキャノンが追加となり、腕にはシールド付きの三連ロケットランチャーと基本装備のレーザーライフルとレーザーナギナタがあるのみ。

 

 そして、最後はB-OC型で白式にはM型の高機動パックに武装は斬艦刀とマシンガン、腕には30ミリ機関砲を装備している。無論、レーザーライフルとレーザーナギナタも追加武装として装備している。

 

 これが白式と蒼式の普段の装備だが、蒼式には特別オプションがある。

 

 蒼式にはJ型装備がある事に気付いた。

 

 J型装備は狙撃型の装備で狙撃型のレーザーライフルにB-OC型の蒼式用の武装の71口径56ミリ対物ライフルが付くがバックパックは高機動パックとなっている。

 

 そして、その中のA型で俺とアンはやる事になったのだ。

 

 他にもマドカには、腕のビットとリフレクタービットの使用禁止と鈴には単一仕様の使用禁止が言われていたのだ。

 

 

 

 そして、最初の実技試験を受けたのは鈴だ。

 

 「じゃあ、試験官の打鉄をスクラップにしてやるわ」

 

 鈴は言いながらピットから出て試験が始まると試験官の打鉄に瞬時加速して接近すると腕部のグレネードランチャーを至近距離で放って打鉄に当てて、打鉄が落下する瞬間をリボルバーで急接近してすれ違いざまにヒートソードで斬り刻み圧勝したのだった。

 

 そして、宣言通りに打鉄をスクラップにしたのだった。

 

 そして、マドカの場合はえげつなかった。

 

 試験開始早々に全24基のレーザービットを展開して、試験官を追い回しながらもマドカは一切動かず両手の五連荷電粒子砲やビットからの射撃に加えて偏向射撃やレーザーが3つに裂けるブリット射撃で逃げ道を塞ぎながら自分の前に誘導してから瞬時加速でハイパーレーザーソードで一閃して勝ったのだった。

 

 アンの実技試験の番となり、相手は山田先生だった。

 

 「何か、聞いていたスペックと違うのですが?」

 

 「A型に換装したからね」

 

 アンが山田先生を相手に実技試験が始まり、山田先生は両手にマシンガンを撃ちながら牽制するが、その程度の牽制射撃では連邦軍のサラミス級巡洋艦の濃密な対空射撃の中をジャイアントバズーカを構えながら普通に突っ込んでいたアンには通用しない。

 

 「ヌルイわよ!!」

 

 「くっ、予測射撃が上手い!?」

 

 レーザーライフルで山田先生の回避方向を完全に読みながら三点射撃をして山田先生のマシンガンを撃ち抜き破壊すると、ツインレーザーナギナタの両刃を展開させてナギナタを回転させながら、瞬時加速して遠心力を利用して斬り掛かる。

  

 「まだ、あの時の連邦の白い悪魔の方が強かったわよ!!」

 

 「えっ、スラスターが!?」

 

 ナギナタを振り回し遠心力でラファール・リヴァイブのスラスターユニットを斬り刻み破壊して機動力を奪う。そして、ナギナタをラピッドスイッチで量子変換で収納し拡張領域のジャイアントバズーカと交換して展開したのだ。

 

 「落ちなさい!!」

 

 「キャァァァァ!?」

 

 ジャイアントバズーカをラファールの真上から放ち、スラスターを破壊されて機動力が落ちたラファールは回避がまともに出来ずに直撃したが、真上から撃たれ直撃したラファールはジャイアントバズーカの威力に地面に向けて吹き飛ばされて山田先生は地面に激突したのだった。

 

 地面に激突した衝撃で山田先生は気絶してしまいアンの勝利で試験が終わったのだ。

 

 ピットに戻ったアンに俺は突っ込んだ。

 

 「アン、アムロの方が強いのはニュータイプだから当たり前だ!!」

 

 「だって、アレには全く敵わなかったんだもん!!」

 

 「でも、シャア大佐はアムロを相手に大丈夫だったのかな?」

 

 「シャア大佐だし大丈夫だよ。きっと、生きてるよ」

 

 「だと良いな」

 

 「もしかしたら、アムロと共闘してたりして?」

 

 「まさか、有り得なく無いな…」

 

 まさか、アンの一言が本当の事になるとは予想して無かったし、現実になるとはまだ知らなかった。

 

 同じ頃、管制室で観ていた私はホワイトラビット社の先に実技試験を受けた三人の実力に驚愕の表情をしていた。

 

 無論、学園では教師と学生を含めて3番目の実力者だった山田先生を赤子の手をを捻る様に簡単に勝ち、試験官に無傷で勝ったアン達に最大の警戒を抱いたのは言うまでも無かった。

 

 「千冬、久しぶりね。ホワイトラビット社の企業代表のあの子達はどうかしら?」

 

 「何故、ミューゼルが居る!?」

 

 「あらあら、今日から学園の同僚なのに酷い反応ね?」

 

 私の後ろに現れたのは元アメリカ国家代表で、アメリカでの新型機のトライアルの事故で死んだ筈のスコール・ミューゼルだったのだ。

 

 「貴様は確か、トライアル中の事故で!!」

 

 「あら、私は生きているわよ。

 

 あの事故では重傷だったわ。

 

 でも、今はホワイトラビットの社員で社長辞令で実技担当の教師として学園に赴任したのよ。

 

 赴任早々に学園長からの依頼で教師部隊の隊長を任されたのよ」

 

 「まさか、束の差し金か!?」

 

 「さぁ、私には判らないわ。

 

 でも、一夏達に危害を加えるなら、千冬なら判るわよね?」

 

 「まさか、束が貴様を送った目的は一夏達の護衛目的か!?」

 

 「うふふふ…概ね正解ね」

 

 「私は一夏に危害を加える気は無い」

 

 「なら、今日から同僚ね」

 

 ミューゼルが管制室から出ようとするが、次の受験生であるセシリア・オルコットの試験官が山田先生が気絶して代わりの試験官が居ない事に気付く。

 

 「ミューゼル先生、済まないが山田先生の代わりに試験官を頼めるか?」

 

 「あら、別に良いわよ。

 

 最近は一夏に落とされているばかりだったから、欲求不満なのよ」

 

 「第一回モンドグロッソの決勝戦で私と戦ったミューゼルが一夏に!?

 

 一夏はISの初心者じゃ無いのか!?」

 

 「少なくとも、彼はISを使用した戦闘なら初心者よ。

 

 でも、この先の話は教えるつもりは無いわ。

 

 知りたいなら、彼に聞くのね」

 

 謎だけを私に残し、ミューゼルはピットへと向かったのだ。

 

 「一夏は誘拐されてから、一体何を経験したのだ?」

 

 私の呟きを聞き、応えてくれる者は誰も居なかった。

 

 

 

 その後、実技試験を受けた受験生だったセシリア・オルコットの試験官だった山田先生がアンとの実技試験で気絶した為に代役として、ホワイトラビット社から教師として派遣されたスコールさんが代わりに試験官を務める事になったのだ。

 

 だが、元アメリカ国家代表で亡国機業の幹部だったスコールさんの姿を見たセシリア・オルコットは、第一回モンドグロッソの時のスコールさんの実年齢を言ってしまった為に盛大に地雷(禁句)を踏み抜いたのだ。

 

 そして、彼女の為に内容は伏せるが年齢を言われ、キレたスコールさんは教育的指導と言うには生温い蹂躙をしたのは言うまでもない。

 

 そして、アリーナから担架で運ばれたセシリアを観ながら、俺はアン達三人がスコールさんに一度は踏み抜いているのを知っている。だから、暗黙の了解で言わない様にしていたのに、盛大に踏み抜いたセシリアに俺達四人は勇者と称えたのだった。

 

 

 そして、俺が実技試験を受ける番となった。

 

 試験官は千冬姉だった。

 

 そして、プライベートチャンネルから千冬姉から通信が入る。

 

 「一夏、久しぶりだな」

 

 「あぁ、久しぶりだ。

 

 だが、千冬姉と寄りを戻す気は全く無い」

 

 「どうしてだ!!」

 

 「答えは出ているんじゃないか?」

 

 「!?」

 

 俺はそう言うと通信を切る。

 

 ツインレーザーナギナタをレーザーサーベルにして構える。

 

 千冬姉も打鉄の葵を構えて身構えたのだ。

 

 スタートと同時にお互いに瞬時加速で加速し斬り掛かる。

 

 「「はァァァァ!!」」

 

 やっぱり、腕は落ちていない。

 

 楕円形のシールドを前面に出してシールドバッシュで叩き、千冬姉から距離をとりレーザーライフルをラピッドスイッチでレーザーサーベルと交換する。

 

 「ちぃ!?」

 

 レーザーライフルを三点バーストして牽制するが、千冬姉はレーザーを葵で斬りながらリボルバーと瞬時加速を織り交ぜて躱し、接近戦に持ち込もうと接近する。

 

 「一夏、お前はやはり実戦経験があるな!!」

 

 何回か繰り返した事で千冬姉に戦争での実戦経験がバレた。だが、俺には関係ない。

 

 「だから、何だ!!

 

 地球と宇宙で戦争の真っ只中の異世界に飛ばされて、シャア大佐に拾われてから生きて食べて行く為に軍に入った!!

 

 努力しても一切、褒めてくれなかった千冬姉に言える事かよ!!」

 

 瞬時加速して千冬姉の打鉄の懐に一気に入り、拾われてからソロモンに向かう途中の戦闘でシャア大佐専用ザクが連邦軍のモビルスーツに見せてくれた加速したままの蹴りを千冬姉の腹に入れる。

 

 「ぐっ!?」

 

 「だから!!」

 

 蹴り飛ばしてかなり距離を稼ぐと、スコールさんには怒られるがA型からB-OC型へと空中で換装する。

 

 そして、高速機動を描き、構えた斬艦刀で千冬姉に切り掛かったのだ。

 

 「舐めるな!!

 

 私は一夏を護ると決めたのに、あの時は一夏を守れなかった!!

 

 だから、私は!!」

 

 「巫山戯るな!!」

 

 キレた事で、俺の頭がクリアになって行く。

 

 千冬姉が斬りかかるが、全て視えていた。

 

 裏拳で葵を弾き葵が吹き飛び、俺も斬艦刀を投げ捨てて千冬姉を殴る。

 

 「グッハァ!?」

 

 「もう一つ、オマケだ!!」

 

 ダッダダダダダ

 

 「なっ、そんな所に機関砲!?

 

 グッァァァ!?」

 

 腕部の30ミリ機関砲を殴ると同時に顔面に向けて乱射する。打鉄の絶対防御を発動させてシールドエネルギーを削る。

 

 

 

 ピットから観ていたあたしは実技試験から姉弟喧嘩へと発展した事に気付いた。

 

 「あれがイチカのお義姉さんか…」

 

 「あんた、字が違うわよ!!」

 

 「鈴だって、あたしと同じくオリムラにしたじゃん?」

 

 確かに、あたしがアン・オリムラと名乗っている事が気に食わなかったのか、鈴まで織斑鈴音としていた。

 

 無論、現在はイチカは無国籍だから早く言えば二人して、イチカとOHANASHIした上で納得させてイチカと入籍していた。つまり、あたしはイチカの第二夫人である。

 

 だから、あたしの正確な名前は織斑アンになる。

 

 

 「アン、何時まで一夏と千冬さんの姉弟喧嘩が続くのよ…」

 

 「イチカは、ある意味では頑固だからね…」

 

 「全く、観ている方が疲れるわよ」

 

 「イチカには言わない方が良いわよ?

 

 彼、意外と気にするから」

 

 「そうね…」

 

 二人は呆れながら、実技試験を見守ったのだった。

 

 二人の姉弟喧嘩は佳境を迎えた。

 

 泥試合も甚だしくIS同士で殴り合う二人。

 

 打鉄の装甲は罅割れ、白式もスラスター関係に異常をきたしながらも両者は殴り合う。

 

 そして、管制室で観ていたスコールさんはお腹を抱えて笑い転げ、気絶から目覚めた山田先生は二人が何故こう成ったのかオドオドしていた。

 

 そして、制限時間がギリギリとなった所で事態が動いた。

 

 「いい加減に判れよ!!」

 

 「一夏!?」

 

 イチカが千冬姉さんの顔面を手で掴むと、残り少なくなったエネルギーを使い瞬時加速して地面に向かう。

 

 「うぉぉぉぉ!!」

 

 「おい、一夏!!やっ、やめ!?」

 

 そして、千冬姉さんの頭を握り打鉄を頭から地面に叩き付けたのだ。

 

 ズッガァァァァン

 

 アリーナ中央で舞う砂塵が晴れるとグラウンドにはクレーターが出来て、頭から叩き付けられた千冬姉さんはクレーターの中央で気絶していたのだ。

 

 『打鉄、織斑千冬戦闘不能により、勝者白式、織斑一夏』

 

 そして、無機質なアナウンスによりイチカが勝った事が判る形で盛大な姉弟喧嘩は幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 



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入学と生徒会長惨状!!

 

 

 3月に入り、IS学園から試験結果を記した通知書がホワイトラビット社の本社に届いた。

 

 「おっ、全員合格だね♪

 

 いっくんとアンちゃんは主席だね♪」

 

 社長室で通知書を観ながらご満悦の束さん。そして、まさかの俺とアンの二人での主席での合格。その後に臨時ボーナスが俺達四人に出たのは嬉しい収入だった。

 

 今は、白式は実技試験で無理をした為に今年に入ってから実に八回目の関節交換だった。特に白式の反応速度以上に俺が反応する為に関節部の消耗が酷かったらしく、関節部品は全て交換となった。

 

 つなぎ服姿でウインチで白式から外した腕を吊るして摩耗した関節を外し、新しい関節パーツを組み込む作業をしなから、今更だが遠い目をしながら思ってしまう。

 

 「まさか、アンと鈴を嫁さんにするなんてな…」

 

 

 

 アンと鈴と入籍する羽目になったのは、ドズル閣下の前でアンが『一夏の女宣言』をした時の音声をテープレコーダーに録音していたのを隠し持っていて、部屋の引出しにはSDカードに保存したまま入れっぱなしにしたのをゴミ部屋化になり掛けていたのを見てしまった鈴が、アンの部屋を掃除をしている最中に偶然にも見つけてしまったに過ぎない。

 

 素早くアンの部屋の掃除を済ませた鈴は、見付けたSDカードを興味本位で再生プレイヤーでアレを再生して聞いてしまい、アンに問い詰めようとして二人は言い合いの喧嘩に発展した。

 

 喧嘩する二人の仲裁に入った、束さんのたった一言で二人の喧嘩が一気に解決したのだ。

 

 「今のいっくんは無国籍だから、結婚年齢は存在しないのだ!!」

 

 「「!?」」

 

 「ねぇ、二人共どうしたの?全くの無反応は束さんは悲しく…」

 

 「「それよ!!」」

 

 「へっ?」

 

 そう、この一言より鈴とアンは膳は急げと二人の反応に呆ける束さんの前から走り去り、何故か武器庫から各々の獲物を持ち出し装備して、俺の部屋に某合衆国の海兵隊顔負けの突入を再びしたのだ。

 

 「逝くわよ…」

 

 「鈴、字が違うわよ?」

 

 「別に良いじゃない。それ!!」

 

 カチィ……ズッガン…

 

 「あっ、火薬の量を間違えた…」

 

 「アン、あんたねぇ!!

 

 まぁ、良いわ。

 

 突入!!」

 

 二人がドアノブに仕掛けたプラスチック爆弾は火薬の量が多かったのか、再び粉々に吹き飛ぶ俺の部屋の防弾仕様のドア。

 

 「「イチカ!!

 

 あたしと鈴(アン)と今直に結婚しなさい!!」」

 

 フル装備した迷彩服姿の二人が銃剣付きアサルトライフルを構えながら叫び部屋へと突入する。

 

 「へっ?」

 

 「あんた、今は無国籍じゃない!!

 

 なら、年齢関係なく結婚が出来るわ!」

 

 「もし、断ったら?」

 

 「「コレでOHANASHIよ!!」」

 

 「ヒッ!?マジかよ…」

 

 二人が装備する海兵隊仕様の銃剣付きアサルトライフルの銃剣を喉元に突き付けられ、両手を上げて降参して二人の要求に屈した俺だった。

 

 こうして、二人が俺の部屋へと突入してから数秒の制圧劇であり、背中に銃剣付きアサルトライフルの銃剣を突き付けられて二人に監視の中で婚姻届にサインをして入籍する事となり、二人(恐妻家)の尻に轢かれる運命になったのは言うまでもない。

 

 そして、二人の性格が全く似ているせいで、二人して過激になっているのを気のせいではないと判った瞬間だった。

 

 蛇足だが、一部始終を観て爆笑していた兎と雨に秋の三人には、夕飯時に出すお酒と夕飯として水で10倍に薄めた日本酒と塩だけを出し、キッチンでの全権を全て握る俺を怒らせたらどうなるかを判らせたのだ。

 

 そして、同じく笑っていた妹のマドカには嫌いなピーマンを大量に入れて野菜と一緒に炒めた野菜炒めをおかずとして出したのだった。

 

 

 

 さて、4月になり入学式が終わりると、クラス分けは俺とアンが一組で鈴は二組、マドカは三組になっていた。

 

 アンと一緒に一組のクラスに入ると、千冬姉との盛大なISでの大喧嘩で怪我をした俺の顔中にはガーゼが貼られていて腕に包帯をしている事が原因なのか、女性からの視線に釘付けとなり居心地が悪かった。

 

 でも、席は名前の順で並び、俺の席の裏はアンだったので気は楽だった。

 

 「うぇぇ、見られ過ぎて居づらい…」

 

 「イチカ、仕方ないわよ。

 

 男性初のISの操縦者だし、非公式とは言っても千冬義姉さんに勝ったのは大きなニュースになったからね」

 

 確かに、千冬姉に勝ったのは大きなニュースになった。だが、暮桜ではない千冬姉に勝ったとしても白式との性能差が大いに在ったのだ。

 

 不本意だが、俺自身は千冬姉からの勝利には全く納得していない。

 

 「さぁ、皆さんIS学園に入学、おめでとうございます。

 

 私は副担任の山田真耶です。

 

 最初は皆さんの自己紹介をして貰いますね」

 

 山田先生が教室へと入りSHRを始めて、クラスメイト達の自己紹介を始めていた。クラスメイトの自己紹介を聴きながら、あの日の事を思い出す。

 

 

 

 

 あの日、入学試験後に迎えに来た束さんを仲裁役に入れての千冬姉と和解する為にアン達三人には外で待ってて貰い、三人で相談室で話し合いとなった。

 

 無論、この話を持ち出したのは束さんだった。

 

 「ちーちゃんが全て悪いのは判るけど、いっくんは一度はちーちゃんと話し合うべきだよ」

 

 「だけど!!」

 

 束さんの意見にキレそうになるが、束さんは姉の様に優しく語り、血が上った俺は段々と冷めて行く。

 

 「いっくんが、過去の事でちーちゃんを恨むのは判る。

 でも、束さんみたいに箒ちゃんと啀み合って欲しくないな。まぁ、一方的に絡むのは箒ちゃんだけどね。

 

 もう、箒ちゃんとは修復不可能な姉妹関係だから、いっくんとちーちゃんには束さんの様になって欲しくないし、束さんが見る限りは関係の修復出来るよ」

 

 束さんに説得され、千冬姉と話し合う事になったのだ。相談室に呼んだ千冬姉に最初に話し掛けたのは束さんだった。

  

 「やぁ、ちーちゃん久しぶりだね」

 

 「たっ、束!?」

 

 元の茶髪とスーツ姿に驚くちーちゃん。

 

 「何故、束が学園に居る!!」

 

 「だって、いっくん達は束さんの会社の企業代表だよ?

 

 それに、社長である束さんが社員を迎えに来ても、何の問題はないのだよ」

 

 「国際指名手配はどうした!!」

 

 「アレなら、日本の国家代表選手用の専用機と代表候補生の専用機を、ホワイトラビット社で合計3機を無償で造る事と、本社を日本に置く事の条件で解除して貰ったよ」

 

 「束は私に何の用だ?」

 

 「それはね、いっくんとの仲裁に来たんだよ。

 

 ちーちゃんの事情は判る。

 

 いっくんが頑なに、ちーちゃんにあんな態度になっているのも判っている。

 

 だから、ちーちゃんも弟離れをしなくちゃいけないんだよ」

 

 「…」

 

 束さんから千冬姉に、俺が誘拐されてから束さんに無人島で保護された時までを全てを話した上で説得し、俺と千冬姉は相談室で徹底的に話し合った。

 

 途中、意見が合わなかったり二人の食い違いで何度も殴り合いの喧嘩になり掛けたが、束さんが千冬姉に間違いを指摘したり俺の勘違いを指摘して二人を宥める。

 

 そして、俺と千冬姉は話し合いの結果的には、一応のお互いの妥協点が見付かり和解が成立したのだ。

 

 そして、アンと鈴の二人が最も望んだのが千冬姉へ、俺と入籍した事への挨拶だったのを知っている。

 

 特にアンは、一年戦争で家族を全員を無くして俺と出会うまでは独りぼっちだった。

 

 だから、家族を無くし独りぼっちだったアンは、家族を誰よりも欲していて温かい家族への憧れは強かったかも知れない。

 

 まぁ、その後にアンと鈴にマドカの三人が揃って相談室に入り込み、アンと鈴の二人から挨拶され、俺から二人と入籍した事を聞いた千冬姉は心底驚いていた。

 

 そして、償いだと言いながら懐から出した封筒を渡されたのだ。

 

 「一夏、せめてもの償いだ。コレを使え」

  

 俺への償いとして渡された封筒の中身には、俺の名前が入ったブラックカードを作っていた事に逆に驚かされたのだ。

 

 

 

 

 

 「お、織斑君!!」

 

 山田先生が俺を呼ぶ。

 

 「すいません。

 

 少し、考えごとをしてました」

 

 「いっ、いえ!?

 

 大丈夫です。

 

 あで始まり、おですので自己紹介をお願いしますね」

 

 自己紹介の途中だと思い出しながら席を立つ。

 

 「織斑一夏です。

 

 趣味は機械整備と料理です。

 

 ホワイトラビット社の企業代表を務めてます。

 

 皆さん、よろしくお願いします」

 

 自己紹介が終わり、クラスメイトの反応はと言えば

 

 『キャァァァァァ!!』

 

 「イケメンで家庭的!?」

 

 「超優良物件よ!!」

 

 「私と結婚して!!」

 

 とクラスメイトの女子が騒ぐ事態となったのだ。

 

 そして、クラスに遅れて入って来て顔がガーゼだらけで右腕にはギプスをはめた女性は千冬姉だった。

 

 「山田先生、遅れてすまない。

 

 職員会議が長引いて遅れた」

 

 「織斑先生、大丈夫ですよ」

 

 千冬姉を見て、再びクラスメイトが騒ぐ。

 

 『キャァァァァァァ!!』

 

 「本物の千冬様よ!!」

 

 「千冬様に会う為に九州から来ました!!」

 

 「私に罵って!!」

 

 千冬姉は頭を抱えながらボヤく。

 

 「どうして、毎年だが私のクラスには、こうも問題児が集まる。私に対する嫌味か?」

 

 「織斑先生、私に言われましても…」

 

 「山田先生、そうだったな。

 

 諸君、一年間で使える様に鍛える。

 

 私が言う事には『はい』と答える様に

 

 それと、織斑が二人居るから一夏とアンと呼ぶ。

 

 先に言って置くが、一夏はこのクラスのアンと二組の鈴音とは夫婦関係だ。今更だが諦めろ」

 

 千冬姉の落とした爆弾にクラスメイト達は一斉に地獄へと転落して落ち込んだのだ。

 

 『なっ、何だってぇぇぇぇ!?』

 

 「しかも、重婚!?」

 

 「かっ、神は死んだ…」

 

 「では、アン。自己紹介を続けろ」

 

 「はい、織斑先生。

 

 あたしは織斑アンです。

 

 趣味は紅茶と銃器の整備です。

 

 それと、イチカはあたしと鈴の夫だから手を出したら、皆さんは賢明だから判りますね?」

 

 いつの間にか出した、実弾を装填済の海兵隊仕様の銃剣付きアサルトライフルを肩に担ぎクラスメイトを睨んだのだ。

 

 流石にクラスメイトは銃剣付きアサルトライフルを見て顔を真っ青にして首を壊れたブリキの様に黙って縦に振っていたが、二人の生徒は首を縦には振らずに一人の金髪の生徒は俺を睨み、一人は黒髪でポニーテールの生徒はアンを泥棒猫の様に睨んでいたのだった。 

 

 一人は判る。

 

 束さんの妹の篠ノ之箒だった。

 

 千冬姉は代表選手として多数の遠征で費用が掛かり、生活が苦しいとは千冬姉には言えず、少しでも生活費を稼ぐ為にバイトしていたが、両立が難しくて剣道を辞めた時に猛反発して、『何故、辞める!!バイトばかりで弛んでいる心を叩き直す!』と叫びながら竹刀で叩き暴力を振るったのが彼女だった。

 

 それにより腕を骨折して、千冬姉から預かった貯蓄を治療の為に削る羽目になってからは、俺は箒を幼馴染とは一切思っていない。

 

 だが、彼女はそれ以降も他の暴力事件が引き金となり他校へ引越すまでは、俺を見る度に暴力を振るい、暴力を振るう事に度々注意する束さんと啀み合う原因となった。

 

 SHRも終わり休み時間になり、アンから夕飯のオーダーを聞いていた時だった。

 

 「アンは夕飯は何が食べたい?」

 

 「う〜ん、あたしはイチカが作る牛テールのワイン煮込みかな。最近は鈴の作る中華が多かったし」

 

 「ちょっと、良いか?」

 

 声を掛けて来たのは箒だった。

 

 「う〜ん、牛テールのワイン煮込みか…」

 

 「イチカが作ったのが、た・べ・た・い・な♡」

 

 「判った、夕飯に作るから上目遣いはやめ…」

 

 だが、俺とアンはピンク色空間を全開にしながら無視して話を進める。

 

 「私の話を無視するなぁぁぁ!!」

 

 何処からか木刀を持ち出して、俺では無くアンを標的に殴り掛かる。

 

 箒はアンを狙ったが無駄だと思った。

 

 何故なら、アンはジオン軍の士官学校で学ぶ軍隊式格闘術では校内の女性士官候補生では2位の実力者だった。因みに1位は同期のアイナ・サハリンだったりする。

 

 「夫婦の時間を邪魔しないでくれるかな?」

 

 ビュン

 

 「なっ!?」

 

 アンは腰のベルトのホルダーに挿してあるレーザーガンを抜き、木刀を振り下ろす瞬間を狙って天井に向けてレーザーガンを撃ったのだ。

 

 レーザーは木刀を貫き天井には穴が開いたが、木刀は貫かれた際に柄から先が砕けたのだ。そして、アンは瞬時に立ち上がりジオン軍の軍隊式格闘術で身柄を一気に拘束してからバンドで手足を固定して箒を床に放置したのだった。

 

 「はっ、離せ!!

 

 銃を使うなんて卑怯だぞ!!」

 

 だが、先に手を出したのは箒であり、自己紹介ではアンはクラスメイトには警告をしていたのだ。

 

 この一部始終とアンが護身用のレーザーガンを抜き撃った事にクラスは一時騒然となるが、アンからの警告を守っていたクラスメイトは、逆に先に手を出した箒を冷やかな目で見ながら自業自得と思いながら放置されて休み時間を終えたのだった。

 

 無論、拘束されて放置中の箒は傷害未遂で授業に来た千冬姉に連行され反省房に2日程謹慎処分をされたのは言うまでもない。

 

 そして、初日が終わり鈴とアンの三人で寮へと戻る。

 

 「一夏、聞いてよ。

 

 二組にあたしを陥れた中国の代表候補生がいたのよ。

 

 初日から絡まれて模擬戦になって勝ったけど、紅式を寄越せって言い寄って来るし嫌になるわよ」

 

 「鈴、そうだったんだ。束さんに言って中国に企業からの抗議を入れてもらうよ」

 

 「お願いね、一夏」

 

 「あたしもイチカの過去で暴力を振るっていた例の束さんの妹が居たのよ‼

 

 で、夕飯の事を話していたら木刀であたしに殴り掛かるから、レーザーガンをつい撃っちゃった」

 

 「で、夕飯は何よ?」

 

 モップの事より、鈴は夕飯のメニューに眼を輝かせる。

 

 「イチカ特製の牛テールのワイン煮込み」

 

 「女としてはどうかと思うけど、一夏特製なら楽しみだわ」

 

 鈴はガッツポーズしながら喜び、購買に寄って牛テールのワイン煮込みの材料やその他の材料も一緒を買い、紙袋を抱えて私達の寮の部屋に戻ったのだ。

 

 ただ、三人の円満夫婦のやり取りにあちこちで女子生徒が壁を殴っていたのが見えたが気のせいだと俺は思いたい。

 

 私達に用意された部屋の番号は1122号室で『良い夫婦』とロゴも良い部屋だった。部屋も三人部屋で二部屋を使用して作られた部屋でも在った。勿論、シャワー室には三人で余裕で入れるお風呂が完備されている。

 

 マドカの部屋は1025室だったらしい。

 

 ただ、箒と同室だったらしく嫌そうな顔だったが俺に抱き付く事で自分を癒やしていた。

 

 「お兄ちゃん!!」

 

 そして、マドカに聞けば荷物を部屋に置き、部屋着に着替えてから俺達の部屋へと夕飯を食べる予定で部屋の前で待っていたらしい。

 

 そして、夕飯も入学祝いを兼ねて今日は洋食の予定だったのでスープのコーンポタージュは朝に作り鍋に寝かせてあるので温めるだけだった。

 

 だが、俺達の部屋の入口に仕掛けた防諜用にドアに挟んだ紙が廊下に落ちている事に気付く。

 

 「アン、鈴、武装を展開しとけ」

 

 「一夏まさか?」

 

 「やっぱり、誰か居る?」

 

 アンと鈴は銃剣付きアサルトライフルを拡張領域から出して武装し、俺は懐のホルダーからレーザーガンを出す。無論、鈴はアサルトライフルを持ちながらも暴徒鎮圧用のスタングレネードも出していた。

 

 「カウントしてから開けるぞ?」

 

 「イチカ、あたしは準備OKよ」

 

 「一夏、スタングレネードならいつでも行けるわよ」

 

 「じゃあ、行くぞ。3・2・1・GO!」

 

 ガチャリ

 

 「「「へっ?」」」

 

 ドアを開けると水着エプロン姿の痴女が居た。

 

 「おかえりなさいませ、ご主人様。

 

 ご飯にしますか?

 

 それとも、お風呂にしますか?

 

 それとも、わ・た・し?」

 

 一度、ドアを閉めて二人に確認する。

 

 「なぁ、今のさ。水色の癖毛のある女性が水着エプロンで居なかったか?」

 

 「一夏、あんた落ち着きなさい。

 

 疲れて無ければ、居たわよ」

 

 「確かに居たわね…」

 

 「じゃあ、次に開けたらスタングレネードを投入で頼むわ」

 

 「一夏、判ったわ」

 

 そして、再びドアを開けるとやはり水着エプロン姿の女性がいたのだ。

 

 「おかえりなさいませ、ご主人様

 

 私にしますか?

 

 それとも、わ・た・し?

 

 それとも……『ゴッロン』…へっ?」

 

 鈴がスタングレネードを部屋の中に投げ込みドアを閉めて女性が出てこない様にする。

 

 ボッン

 

 「キャァァァァ!?

 

 めっ、目がァァァァ!?

 

 ノォォォォ、耳鳴りがぁぁぁ!?」

 

 閉められ、中に閉じ込められた女性はスタングレネードを諸に喰らい、床でたうち回る声がドア越しに聞こえていた。

 

 「アン、鈴、突入!!」

 

 「「了解!!」」

 

 アサルトライフルを構え、三人同時に部屋へと突入して床でのたうち回る女性を銃床で頭を殴り意識を刈り取るとバンドで固定して拘束したのだった。 

 

 そして、部屋を確認すると夕飯用のコーンポタージュが食い散らかされ、冷蔵庫に冷やして在ったお祝い用のフランス産の高級なシャンパンまでも飲まれて無くなっていたのだった。

 

 「一夏、この女どう処分する?」

 

 「水着でもひん剥いて裸エプロンにしちゃう?」

 

 ゲシゲシと女性を足蹴にしながら半キレ状態の鈴に女性の水着の紐を切ってやろうと軍用のナイフを出して水着の紐を絡めているキレたアンの二人。

 

 結論はアンが水着の紐を全て切り女性の水着をひん剥いて裸エプロンにして、鈴はアンが水着をひん剥いた後に女性をロープで巻いて寮母室に投げ込んで来たのだ。

 

 無論、拘束した女性の全裸がキッチンから見えたが、俺は激おこ状態の二人を静める為に特製ディナーを作ったのだった。

 

 

 裸エプロン姿で拘束され寮母室に投げ込まれた女性は、後で知ったが生徒会長の更識楯無で2年生だったらしい。千冬姉から数時間による説教と俺達の部屋への無断侵入により反省文を200枚書かされたらしい。



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哀しみは雨と共に流れて

 

 

 次の日の朝だが早くから扉をうるさく叩く音に目覚めた俺は時計を見ればまだ4時前で扉に付いている覗き穴から外を見ると反省房から脱走した箒だった。

 

 「一夏!!

 

 男である貴様が銃器を使うとは何事だ!!

 

 その根性を叩き直してやる!!」

 

 完全に覚めた以上、無視を決め込み俺達三人の朝食と五人分のお昼の弁当を作り始める。

 

 たが、箒は扉を叩く事を止めずに叩き続ける。

 

 そして、気配が一度は消えたが再び気配を感じて覗くと扉を日本刀で斬ろうとするが、昨日の生徒会長の一件と鈴の一件の報告で束さんに連絡を入れてあり、防爆仕様で爆薬を使われても壊れない電子鍵式の扉へと換えて貰っていたのだったので、箒が扉を斬ろうとしても重厚な扉には傷すらつかないで箒が疲れるだけだった。

 

 「篠ノ之、貴様反省房からの脱走では足りず、器物損壊とは良い度胸だな?」

 

 「一夏を叩き直そうとしただけです!!」

 

 「じゃかしい!!」

 

 ドッガァ

 

 そして、寮長が時間となり目覚めたらしくて箒は千冬姉に頭を拳骨で殴られ再び反省房へと連行されていったのだった。

 

 「ふあぁぁ…イチカ何か在ったの?」

 

 アンが今の騒ぎで目覚めたが、アンの裸Yシャツ姿は辞めて欲しい。

 

 鈴までがアンに釣られて裸Yシャツを真似をする始末で俺の理性がガリガリと削られ、俺は卒業するまでは手を出さないつもりでも、二人一緒になって裸Yシャツでベッドで一緒に寝る為に非常にキツかった。

 

 

 朝食を済ませて教室へと向かう。

 

 「寝てたから気付かなったけど、馬鹿箒は本当に懲りないわね」

 

 「全く、救えないわ」

 

 二人には朝の出来事を話してあり、一応は束さんからの伝言で警戒する様には言ってある。そして、束さんだが近く両親に会うらしくて両親に謝って寄りを戻して本社近くの自宅に一緒に住むらしい。

 

 箒に関しては、昨日と今朝の事を報告で知って手遅れになる前にIS委員会を通じて日本政府経由で箒に絶縁状を送るらしい。

 

 束さんが電話で言うには、IS委員会は自分を恐れて箒への罰則を絶対に緩くするだろうから、事前にIS委員会と日本政府経由で絶縁状を送れば馬鹿共も理解するし、箒への厳罰化も出来ると電話で話していた。

 

 だが、俺的には今朝の事から箒は無理だと思っていた。近々何か起こるのでは無いかと何故か頭の中に響く警鐘が鳴り止まないでいる。

 

 

 そして、三人で仲睦まじく教室へと歩くが、生徒達が俺達を見るとブラックコーヒーをがぶ飲みしながら壁を殴る現象が頻発しているのは何故と、三人は首を傾げるのだった。

 

 

 そして、SHRになり千冬姉は肝心な事を忘れていたらしい。

 

 「クラスの中からクラス代表を決めて貰う。自他の推薦は問わないので構わない」

 

 そう、千冬姉はクラス代表を決め忘れていたらしい。

 

 「織斑くんが良いです!!」

 

 「私も!!」

 

 「じゃあ、俺はアンを推薦する」

 

 「えっ、イチカ!?」

 

 千冬姉から聞いたクラスメイトは挙って俺を推薦する。そして、俺もアンを推薦する。

 

 だが、それを気に食わなかった生徒が居た。

 

 そう、入学試験の実技試験でスコールさんの地雷を踏み抜き、キレたスコールさんから蹂躙劇を受けたセシリアだった。

 

 「納得出来ませんわ!!

 

 この、次席のセシリア・オルコットを抜いていませんわ!!」

 

 だが、アンがゆっくりと立ち上がりセシリアを煽る

 

 「へぇ、勇者が次席だったんだ」

 

 アンは煽るように実技試験でセシリアがやらかした事を暴露していた。

 

 「「「「勇者?」」」」

 

 「だって、あんたはミューゼル先生の実年齢を言ってしまって入試の実技試験で地雷を踏み抜いたじゃん。

 

 それに、あたしとイチカは主席だよ」

 

 クラスメイトは一学年の実技担当教師で、あの美貌の塊ともいえるミューゼル先生を怒らせてしまった理由に納得する。

 

 「まさか、入試を観てましたの!?

 

 それに、二人が主席!?」

 

 「だって、あの日はあたしの後に実技試験を受けていたし、あんたの後にはイチカが受けていたわよ」

 

 「馬鹿にしてますの!!

 

 いくら、技術的に遅れた極東の猿がいい気に成らないで欲しいですわ!!」

 

 「なぁ、セシリア。

 

 あんたは代表候補生だろう?

 

 その発言はイギリスの発言として見て構わないよな?

 

 つまり、セシリアの発言から考えてイギリスは日本と戦争がしたいのか?」

 

 俺はセシリアの発言に対して忠告する。だが、彼女も女尊男卑なのか俺に対して聞く耳すらない。

 

 そして、次の発言に対して誰かがキレた。

 

 「男の貴方なんかに言われたくありませんわ!!

 

 それに、貴方が主席?

 

 面白いジョークですわ」

 

 ブッチン

 

 俺の耳に何かがキレた音が聞こえた。

 

 その音は後ろから聞こえて来て、振り向けばアンが凄い剣幕でセシリアを睨んでおり、腰にしているベルトに着けたホルダーにあるレーザーガンのグリップに手を伸ばしていた。

 

 ガン

 

 やはり、アンがキレて机を蹴り飛ばすとホルダーからレーザーガンを抜き叫ぶ。

 

 その叫びは、あの頃の男装がバレた時のお嬢様の口調だった。

 

 「貴女は、そんなに戦争がしたいのですか!!

 

 戦争で肉親が死んだ哀しみも、やるせなかった気持ちも貴女に何が判ると言うのですか!!

 

 さぁ、お答えなさい!!」

 

 「ヒィ!?」

 

 セシリアの胸倉を掴み、レーザーガンの銃口をセシリアの口の中に押し込むアンにセシリアは小さな悲鳴を上げる。

 

 織斑先生と山田先生が状況的に不味いと判断してアンを止めに入るが、キレているアンは銃口を更に押し込み辞める気は無かった。

 

 「アン、そこまでだ!!」

 

 「お義姉様、お黙りになって!!」

 

 アンは辞める気が無い為にセシリアの胸倉を掴んだ手を離し、アサルトライフルを量子変換で出して左手で握り、止めに入った千冬姉と山田先生にアサルトライフルの銃口を向けて牽制する。

 

 「ムッゴゴ!!」

 

 銃口を口の中に押し込まれて何も話せないセシリアは、アンに抵抗しながら抗議するが口の中に銃口が入っていて喋れず意味が判らない。 

 

 アンは仕方なく銃口を口から出してセシリアに問い詰める。

 

 「さあ、貴族の心得さえお忘れになったセシリア・オルコット、お答えなさい!!」

 

 こう成ったアンは止められない。

 

 既にアンの目付きは、貴族だった両親と一緒にドレス姿で写っていた頃の写真の様に貴族の眼をしたアンだった。

 

 だが、セシリアも貴族としての意地を張り睨み返してアンに言ってはいけない事を言ってしまったのだ。

 

 「私にそんな事をして只で済むとでも思ってますの!!さぞ、両親は戦場で巻き込まれて死んだのが幸せでしょうね!!」

 

 「「「「「「!?」」」」」」

 

 それは、アンの禁句だった。

 

 コロニー落としに巻き込まれて亡くなった両親を思い出してしまう一種のトラウマだった。

 

 「貴女は…ひっくぅ…貴女は…ひっくぅ…許さない」

 

 アンは目尻に涙を溜めて半泣き状態でセシリアを睨む。まだ、レーザーガンの引き金を引かずに撃たないだけの理性があるだけマシだと言えた。

 

 だが、セシリアはアンを責める事を辞めない。

 

 そして、アンに対してセシリアが言い過ぎなのが判り、クラスメイトは白い目で見ていた。

 

 「あら、両親の事を言われてお泣きになり…」

 

 セシリアの言葉は続かなかった。

 

 遂に千冬姉がキレたのだ。

 

 「貴様ら、いい加減にしろ!!

 

 アンも言い過ぎだが、オルコットは特にアンの過去について言い過ぎだ!!

 

 この件については、私が預かる。

 

 良いな?

 

 それと、三人には来週アリーナにて模擬戦にてクラス代表を決めて貰う。

 

 一夏はアンを連れて部屋に帰り慰めてやれ。

 

 アンの今の精神状態では授業に参加するのは無理だろうだからな」

 

 俺はアンを連れて部屋へと戻ると、アンは抱き付き泣き始めたのだ。

 

 「どうして、どうしてお父様とお母様は、私を置いて逝くのよ……うわァァァァ」

 

 「アン、大丈夫だ。

 

 俺が居るからな…」

 

 「うん、イチカ…でも、このまま泣かせて」

 

 アンの涙は、外で降る雨の様に冷たかったのだ。

 

 そして、俺は妻を泣かしたセシリアを潰す事を決めたのだ。

 

 

 

 

 二組でも同じ様な事が起きていた。

 

 「アンタのせいで、国から怒られたじゃない!!」

 

 「あんたに紅式を渡す訳が無いでしょが!!」

 

 昨日の一件は一夏が束さんに報告して、その日の内に中国にホワイトラビット社として抗議を入れたのだ。

 

 そして、IS関連商品では世界シェア1位を獲得しているホワイトラビット社を敵に回すのは中国政府としては避けたかった為に、その日の内に担当者が国際電話で中国代表候補生である、その生徒に厳重注意をしたが聞く耳すらなかったと言えた。

 

 そして、その生徒が絡む相手が元中国の代表候補生の候補者で、あの事件さえ無ければ中国の代表候補生になっていた凰鈴音だった。

 

 そして、今はホワイトラビット社の企業代表で男性初の操縦者・織斑一夏の妻になって織斑鈴音となっていた。

 

 つまり、下手をすれば義姉のブリュンヒルデの織斑千冬とホワイトラビット社の社長の篠ノ之束の二人が敵になると判り、政府高官としては頭痛の種であった。

 

 それを気づかないのが、その生徒だったのだ。

 

 「いい加減に渡しなさいよ!!」

 

 その生徒は鈴から待機状態の腕輪を奪おうと狙い、甲龍の衝撃砲を展開しようとするが、教室には新任の副担任が現れた。

 

 「おい、アリーナ以外でISを展開しようとは良い度胸じゃねぇか?」

 

 「「巻紙先生!?」」

 

 オータムこと、巻紙礼子先生が出席簿を片手に二組に来たのだ。

 

 「てめぇは昨日は織斑に喧嘩を売って、模擬戦で散々やられたんじゃねぇのか?

 

 オレに潰されたく無かったら、さっさと席に戻れや糞ガキ」

 

 「糞ガキ!?」

 

 「あぁ、てめぇだよ!!」

 

 その生徒を糞ガキ呼ばわりする巻紙先生。

 

 昨日の一件で頭が痛いのに、全く懲りずにあたしに喧嘩を売り、紅式を寄越せと言って来る中国の代表候補生の生徒は、既にクラスからは孤立していた。

 

 あたしが代表候補生の候補の時から、彼女からの嫌がらせは在った。

 

 あたしが日々努力して、誰にも負けたくないし、何よりも死んだと知らされた一夏は絶対に生きていると信じ、探す為に国家代表選手になると目標に決めて来たのだ。

 

 そして、努力の結果は一目瞭然で代表候補生の選抜試験では筆記も主席で通り、実技試験も誰にも負けずに勝ち続けたのだ。

 

 だが、あの生徒は試験官を買収していて、結果内容をあたしの結果と彼女の結果を入れ替え、彼女が代表候補生となった。

 

 無論、選抜試験の結果に政府に抗議した。

 

 しかし、買収したのは試験官だけでは無かった。

 

 政治家までも買収していて、あたしの実家だった広州の料理店に政治家が依頼して送った賊により、お店に賊が押し入られ火を付けられたお店は全焼し、あたしの父親はあたしに会いに来ていて母親を護ろうとして射殺され母親は店内で犯され殺されたのだ。

 

 その時、あたしは市場に食材を買い出しに出てて無事だっが、この事件であたしは家族を失った。

 

 無論、犯人は未だに捕まっていない。

 

 あたしは、全焼したお店で焼け残った泣け無しのお金を使って日本に渡った。

 

 日本に渡った直後の篠ノ之神社で束さんと出会い、一夏の恋人だった理由で束さんに拾われてラボに住むようになったのだ。

 

 そして、あの日に一夏と再会したのだ。

 

 一夏には未だに秘密だが、束さんに協力して貰いながら両親を殺した犯人は特定済だった。

 

 そして、元凶となった、あの生徒をあたしは許さない。

 

 「巻紙先生、座る前にあの生徒に一言良いですか?」

 

 「織斑何だ?

 

 オレには嫌な予感しかしねぇが?」

 

 あたしは、巻紙先生に断りを入れてその生徒に叫ぶ。

 

 「そんなに、あたしの紅式が欲しい訳?

 

 良いわよ!!

 

 あたしと決闘して勝ったら紅式を上げるわ!!」

 

 「上等よ!!」

 

 「仕方ねぇ、来週アリーナでやるから準備しとけよ。

 

 それまで、私闘のたぐいは禁止な」

 

 だから、あたしは余りにもしつこい彼女に決闘を申し込んだのだ。

 

 そして、二度とISに乗れない様に全力で潰す。

 

 これが、両親への仇討ちだから。

 

 あたしが勝ったと同時に束さんがハッキングしながら世界に彼女と彼女の糞親がした事を全て流すのだから。

 

 

 



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戦士再び

 

 

 あのセシリアの発言の翌日、アンはあれから両親を思い出してしまった事とオーストラリアに向かう途中の客船から観てしまった宇宙(そら)から落ちてくるコロニーの恐怖から部屋のベッドでは、可愛い寝顔を晒したまま眠っている。

 

 無論、束さん特製の睡眠薬を飲ませて眠らせているに過ぎないが、アンの心がコロニー落としの恐怖から壊れるよりはマシだった。

 

 それだけ、コロニー落としでコロニーがオーストラリアに落ちて、現地で仕事中の家族を客船から見たオーストラリアを前に失った精神的ダメージが大きかったと言える。

 

 だから、俺はセシリアに怒った。

 

 朝から第三アリーナを企業名義で貸し切り、寝起きのミューゼル先生を呼び出して最終決戦時の勘を戻すべく授業には参加しないで訓練に明け暮れた。

 

 それは、士官学校で行なった宇宙空間での操縦訓練よりもハードな内容を俺は黙々と熟していた。

 

 「一夏、パターンAからMで数は40の的よ」

 

 「了解」

 

 ア・バオア・クー決戦ではC型装備が手に入らず使うことが無かったBC-OC型(フル装備型高機動パック)での一対多数の回避と近接に射撃を混ぜ合わせた高機動訓練。

 

 高出力レーザーキャノン付きの高機動パックのスラスターをスロット全開で加速し、マシンガンを乱射しつつ的を撃ち抜き、ドローンからのバルカン砲をイグニッションターンブーストで複数のドローンから避けつつバレルロールを描き弾丸を躱し、ラピッドスイッチで弾切れのマシンガンをレーザーライフルに替えて回避予測射撃で回避位置を予測しながら的を撃ち抜き、高出力レーザーキャノンでドローンごと的を撃ち抜く。

 

 白式の動きは、あのア・バオア・クーの最終決戦を連想させる戦い振りだった。

 

 「授業に全く来ないと思ったら、なぜ一夏はあんな無茶をする?」

 

 管制室で一夏の訓練を見守るミューゼル先生に千冬は質問する。

 

 「当たり前じゃないの千冬?

 

 彼、アンの事でかなり怒っているもの。それに、一夏ならレベルSSのこの訓練を普通にこなしているわ」

 

 「だが、あの動きは宇宙での動きだ」

 

 「社長から一夏が何処で戦い、どの様に過ごして来たのかは聞いている筈よ」

 

 束から聞いた、誘拐され一夏が飛ばされた宇宙世紀の世界を聞いた時は束の頭を疑った。

 

 しかし、アンの証言と一夏の携帯のカメラで数々の写真を残していた中の一枚には食堂で撮ったのだろう、今は亡き一夏とアンの部下だった少年少女達が笑いながら一緒に写る集合写真だった。

 

 その写真の事を一夏から聞いた話では、ソロモンと言われた宇宙要塞に転属して部下として地上戦線を支えて来たベテランのパイロット達だった。

 

 一夏の直属の上司に当たるドズル・サビ中将は、キシリア・サビ中将が試験的にエースパイロットを集めたキマイラ隊の運用のノウハウを得る為に設立したのが、ソロモン方面防衛師団所属343突撃宇宙大隊所属で、本来ならキマイラ隊配属予定だったエースパイロット2名(一夏とアン)と12名の比較的に二人の歳が近いベテランパイロットを集めたのが一夏とアンが居たオリムラ中隊だったと聞いていた。

 

 そして、もう一枚の写真の裏には『ア・バオア・クーにて』と書かれ、ハンガーでは一夏とアンのツーショット写真のバックに写る2機の白と蒼の巨大なロボットは、ソロモンでシャア大佐と共に受領して最終決戦まで乗り続けた先行試作量産機、YMS-14B高機動型ゲルググのカスタム機でMS-14B-OC高機動型ゲルググカスタムと言うモビルスーツと言われる兵器だった。

 

 「あぁ、あの動きを見たら信じざるを得ないな」

 

 「全くだわ」

 

 鬼気迫る一夏の白式BC-OC型はツインレーザーナギナタを振り回し、3機のドローンを同時に紙吹雪の様に斬り刻む姿を観た私は、もし暮桜で挑んだとして実戦経験がある弟に勝てる要素は全く無かった。

 

 

 アリーナの客席の影から眼鏡を掛けた一人の少女はこの訓練を覗いて観ていた。

 

 「このランクSSのハード訓練を無傷で乗り切るなんて!?」

 

 未だに続く彼の訓練から感じた強さに目を惹かれていた。

 

 「どうして、彼はそんなに強いの?」

 

 そして、最後の残り1機のドローンがレーザーライフルで撃ち抜かれ爆散していた。だが、彼女の疑問は風と共に掻き消されたのだった。

 

 

 

 

 クラス代表決定戦当日、第三アリーナには男性操縦者である織斑一夏を観ようと殆どの学年の生徒が集まっていた。

 

 ピットで控えるイチカは集中する為に瞑想中だった。

 

 あたしは、あの日から3日間を睡眠薬を飲まされてベッドに無理矢理寝かされた。

 

 理由はわかる。

 

 だから、イチカから感じる怒りに、あたしはイチカに申し訳無いと思ってしまう。両親の事は、いつかは向き合わなくてはいけないのは判っている。

 

 だけど、宇宙(そら)から落ちてくるアレだけはどうにも出来なかった。

 

 「アン、大分顔色が良いようだな?」

 

 「織斑先生、何とかですがね」

 

 「そうか。だが、今はプライベートの話だ。

 

 アンと鈴は私の義妹だ。

 

 一夏のあの顔は二度と見たくないから無理だけはしてくれるなよ?」

 

 「お義姉さん、イチカに何か?」

 

 「一夏の瞑想を邪魔はしたくない。試合を観て感じろとしか言えんな」

 

 お義姉さんに謎を残されたあたしは、イチカの邪魔をしないようにピットを出ようとするのだが入口に箒が立っていた。

 

 「何故、貴様がいる!!」

 

 「居たら悪い?

 

 イチカの次はあたしの試合なのよ?

 

 それ位、普通は判るわよね?

 

 それに、イチカは集中する為に瞑想中よ。

 

 関係者以外は立ち入り禁止だから箒はここから出てくれるかな?」

 

 「私は一夏の幼馴染だ!!」

 

 「それが免罪符になると思わない事ね。ここのピットはホワイトラビット社が借り切っているし、社員ではない箒が来る所でも無い。最悪、貴女が産業スパイとして拘束されても文句は言えないわよ?」

 

 「私は篠ノ之束の妹だと言ってもか!!」

 

 「箒、残念ね。ホワイトラビット社の社長は束さんよ。さぁ、あたしに撃たれるのが嫌ならさっさと出て行きなさい!!」

 

 私はレーザーガンを抜き箒に銃口を向けるが、それよりも先にピットには千冬義姉さんが居たのだったのを忘れていた。

 

 「アン、そこまでだ。全く、問題ばかり起こすな義妹。篠ノ之、アンの言う通りピットはホワイトラビット社の関係者のみだ。産業スパイとして捕まっても学園では庇い切れないからピットから出ろ。良いな?」

 

 「そんな!?」

 

 千冬義姉さんに連れて行かれ箒はピットから追い出されたのだった。

 

 

 時間となりイチカが瞑想を解く。

 

 瞑想を解いたイチカの目付きは隊長だった時の鋭く鋭利な刃物の様な目付きだった。

 

 「来い、白式」

 

 イチカが白式を展開して纏うと、あたしが初めて見る白式の姿だった。

 

 バックパックはC型で1基の高出力のレーザーキャノンに左腕にはシールド付き三連ロケットランチャー、右腕には内蔵型の30ミリ機関砲ポッドに手にはレーザーライフルを握っていた。

 

 「イチカ・オリムラ、出る!!」

 

 そして、母艦だったザンジバル級のカタパルトから出撃する様に片足だけを載せ、カタパルトから射出されたのだった。

 

 「イチカ、頑張って…」

 

 イチカの無事を願いながら、アリーナへ向かったイチカに頑張ってと呟いたのだった。

 

 

 アリーナにはセシリアがブルーティアーズを纏い空中に待機していた。

 

 「逃げずに来ましたのね。肩の悪趣味なマークに穴を開けて差し上げますわ」

 

 セシリアの一言に更に怒りの火が着いた。

 

 このジオンのマークは俺がシャア大佐に拾われて生きて来た証だった。

 

 「御託はいい。セシリアには俺の300機目の撃墜記録になって貰う」

 

 「ひっ!?」

 

 俺が放つ殺気に小さな悲鳴を上げるセシリア。

 

 それだけ、アンを泣かした事にキレていた。

 

 スタートの合図にセシリアは

 

 「おっ、お別れですわ!!」

 

 勇気を振り絞ったのだろう。

 

 開始早々からレーザーを放つが、そんな馬鹿正直な射撃では躱して下さいとしか聞こえない。

 

 マニュアル操作で肩のスラスターだけを軽く吹かして、白式を右に逸してレーザーを躱す。

 

 「なっ、それを躱しますの!?」

 

 そんなレーザーのスピードなど、アムロ・レイが駆るガンダムから放つビームライフルのビームと比べたら遅い。

 

 「今度は俺からだ!!」

 

 レーザーライフルのレーザーで三点予測射撃をする。セシリアも回避行動するが肩と右脚に直撃する。

 

 「くっ、ブルーティアーズ!!」

 

 「無駄だ!!」

 

 「何故、当たりませんの!?」

 

 「見える!!

 

 そこぉぉ!!」

 

 「ブルーティアーズが全て落とされたですって!?」

 

 射出されたビットに対してはバックパックのスラスターをフルスロットで加速し、空中でバレルロールを描きながらブルーティアーズのレーザーを躱しレーザーライフルを撃ち正確にブルーティアーズを撃ち落とす。

 

 「お前は、俺を怒らせ過ぎた!!

 

 落ちろぉぉぉ!!」

 

 レーザーライフルをラピッドスイッチで仕舞い、量子変換した斬艦刀をコールしてセシリアのブルーティアーズに斬り掛かる。

 

 「いっ、嫌ァァァ!!

 

 いっ、インタァァァセェェェプゥゥゥタァァァ!!」

 

 「無駄だ!!」

 

 ポッポポン

 

 「キャア!?」

 

 「貰ったァァァ!!」

 

 インターセプターを出したセシリアに対して三連ロケットランチャーが火を吹き、ロケット弾をセシリアに直撃させる。インターセプターを手放したセシリアのブルーティアーズを斬艦刀で斬り裂いたのだ。

 

 そして、斬り裂かれて落下するセシリアのブルーティアーズはまだシールドエネルギーが残っていた。

 

 「コイツでトドメだ!!」

 

 「キャァァァァァ!?」

 

 放たれた高出力のレーザーキャノンのレーザーがブルーティアーズに直撃し、損傷判定がFレベルが確定のダメージを受けて地面に落下するとブルーティアーズは強制解除され、気絶したセシリアがグラウンドに転がって居たのだった。

 

 そして、無機質なアナウンスが流れたのだ。

 

 『ブルーティアーズ、シールドエネルギーエンプティ。よって勝者、織斑一夏』

 

 

 

 そして、イチカの試合は勝利したがセシリアのブルーティアーズが損傷レベルがFレベルを越えた大破の為、あたしとセシリアとの試合は中止となった。

 

 ブルーティアーズは多分、修理不能だろう。

 

 ピットにイチカが戻ると同じくして、次の試合の為に鈴が入ってきた。そして、何故か鈴はイチカに謝っていた。

 

 「一夏、ゴメン。

 

 黙って居たけど、次の試合はあたしの両親の仇討ち。

 

 だから…へッ?

 

 一夏?」

 

 「知っていたさ。

 

 だから、思っ切りやれ」

 

 「うん!!」

 

 羨ましいけど、鈴はイチカに優しく抱き締められていた。

 

 『仇討ち』

 

 そうか、向こうのピットから見える生徒が鈴の両親の敵なんだ。

 

 鈴も紅式を展開し、カタパルトでアリーナへと舞い上がった。

 

 

 

 鈴と中国の国家代表候補生の試合。

 

 試合開始前なのに、衝撃砲を放つ代表候補生の生徒。

 

 「あんた、あたしが甲龍のスペックを忘れる訳無いじゃん!!

 

 それは、あたしが候補生になった時に専用機として乗る機体よ?

 

 舐めるな!!

 

 三下!!」

 

 あたしは指1本を立てて宣言する。

 

 一分で勝つと。

 

 それを観たあの生徒は激昂する。

 

 「アンタなんか潰してやる!!」

 

 「宣言通りにしてやるわよ!!

 

 単一仕様『EXAM』を起動よ!!」

 

 紅式の全体が紅く発光する。

 

 それはEXAMが起動した意味でもある。

 

 一夏から聞いていた。

 

 あたしの紅式の元になった機体はMS-08TXイフリート改と言われたジオン軍の悪魔のモビルスーツ。そして、この機体にはEXAMシステムというのが積まれていたらしい。

 

 だから、こんな素敵な機体はあたしにピッタリだった。

 

 そして、脳内に響くのは無機質な声。

 

 『EXAMシステム、スタンバイ』

 

 右のモニターには3:00とタイムリミットがタイマーで付き、限界活動を意味している。

 

 そして、このシステムを組んだらしいのが、あたし達3人の専用機のコアの悪戯らしくてブラックボックス化している。

 

 だから、あたしは紅式のコアに名前を着けた。

 

 「一緒に行くわよ!!

 

 朱雀!!」

 

 『うん、鈴!!』

 

 誰かの声が聞こえたが、両手に構えるヒートソードを手に瞬時加速で甲龍の懐へと加速する。単一仕様を使うと通常時とは違う凄まじい加速力にあたしの身体は凄まじいGで潰れそうになる。

 

 「そんな真っ直ぐな攻撃は衝撃砲の餌食にって、どんな装甲してるのよ!!」

 

 効くわけがない。

 

 一対多数を想定した重装甲と凄まじい加速力を前に、そんな物などあたしには効かない。

 

 「ゼリャァァァァァァァ!!」

 

 「キャァ!?」

 

 すれ違いざまに甲龍の左半身を斬り刻む。脚を前屈してスラスターを全開にして、無理矢理空中でターンをする。

 

 口の中が鉄の味がするが関係ない。

 

 反応出来ない甲龍を背中から斬り刻み、両足の展開装甲を展開させて装甲内に内蔵させたマイクロミサイルと両腕のグレネードランチャーをぶっ放す。

 

 「甲龍、ゴメン。

 

 アンタをぶっ壊してさ。

 

 だから、あたしの両親の仇だぁぁぁ!!」

 

 全弾命中し、ズタボロの甲龍を斬り刻みシールドエネルギーを根こそぎ奪い去ったのだ。

 

 EXAMの残り時間は残り2分。

 

 そして、その生徒は何も出来ないまま、あたしに斬り刻まれて強制解除されたその生徒は空中からアリーナのグラウンドに落ちて両足を骨折したのか変な方向に曲がっていた。

 

 そして、中国から来ていた中国の特別警察がアリーナに入り込み、その生徒をその場で逮捕したのだ。

 

 無論、罪状は試験官への収賄とあたしの両親への殺人。束さんが中国に証拠を流した結果だった。

 

 

 「ひっくぅ…何でかな?

 

 何で、虚しく感じるんだろう…うわぁぁぁぁ!!」

 

 あたしは両親への仇討ちが出来たのに、虚しくなるのは何故と思い声を上げて泣きながら涙を流したのだ。

 

 

 

 

 

 



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クラス代表就任とパーティー

 

 

 織斑一夏との試合に負けた私は医務室へと運ばれ試合を思い出す。

 

 入試試験でミューゼル先生を怒らせた時以上の蹂躙劇に手も足も出なかった。そして、全ての攻撃が見えていたかの様な最小限の動きでの回避行動は常人の枠を越えた反応速度だった。

 

 だけど、私は彼を怒らせた理由は判っていたし、二組の彼のもう一人の妻の織斑鈴音から言われた。

 

 彼女の両親はヨーロッパ連合の貴族で、食料不足を解消する為に最大の食料生産地だったオーストラリアに渡り、食料を輸入する為にシドニーで交渉していた所を超質量兵器が落ちて亡くなった事を聞いた。

 

 その心の傷を私は抉ったのだ。

 

 私も同じく、両親を亡くしていた事を判っていながらだ。取り返しの出来ない仕打ちを彼女にしたのだと理解する。

 

 イギリスから代表候補生の身分剥奪とブルーティアーズの返却命令が来るかも知れない。

 

 無論、学園は退学となるかも知れない。

 

 「やぁ、金髪ドリル」

 

 茶髪のスーツ姿の女性。

 

 医務室に来たのはホワイトラビット社の社長、篠ノ之束だった。そして、表情からも怒っているのも判るし、それよりもドロッとした殺気に怯えるしか無かった。

 

 「私はとんでもない事をしてしまいすみませんでした!!」

 

 最早、束社長からの殺気に殺されるよりはマシだと、プライドなんて捨てて謝るしか無かった。ベッドから転げ落ちる様に出て、額を床に擦り付ける様に土下座をして束社長に謝ったのだ。

 

 「なあ、謝罪なんてどうでも良いんだよ。

 

 束さんの可愛い妹分を泣かした落とし前はどうするんだよ?

 まぁ、その前に金髪ドリルは退学かな?」

 

 退学の二文字に真っ青になる私。

 

 「だけど、いっくんとアンちゃんからは謝罪したら許すって言われたし、束さんからは何もするつもりもない。

 

 もし、いっくんが許さないと言っていたら、あのデュノア社の糞社長夫人の時の様に細胞レベルに解体して殺していたよ?

 

 ただ、いっくんは金髪ドリルの射撃の腕前にダイヤの原石だと言っていたから、候補生の座も国籍も全てを失うだろう金髪ドリルをいっくんが設計した長距離狙撃型の専用機のテストパイロットにスカウトしろってさ。

 

 で、どうする?」

 

 私は身体中が痛いのを我慢して束社長に土下座したのだった。

 

 「身を粉にして働かせて貰いますわ」

 

 「んじゃあ、明日は必ず二人とクラスメイトに謝れよ。

 

 もし、二人の優しさを蔑ろにして謝らなかったら、金髪ドリルを束さんは許さないし殺すからな?」

 

 「謹んで謝りますわ!!」

 

 そして、夕方にはホワイトラビット社の契約書類が届きサインしたのだ。無論、大破したブルーティアーズのコアは社長が作った2つのコアと交換して引き取り、長距離狙撃型のブルーイェーガー(蒼き狩人)のコアに使用されたのだ。

 

 

 医務室を後にした束さんの携帯には『イギリス大使館』から着信が入る。

 

 「無能のイギリス大使館の大使が何かな?」

 

 『我がイギリスのブルーティアーズを大破させておきながら何ですか、その態度は!!』

 

 「ふ〜ん。イギリスは何も調べもしないで一方的に文句を言って来るなんて、無能の判断でホワイトラビット社と全面戦争がしたいのかな?

 

 何なら、束さんはコアをイギリスが潰せるだけ作って、本気で潰しても構わないんだよ?

 

 だだ、悪友だけは助けるけどね。

 

 それに、在日イギリス大使は元々は代表候補生の教育不足が呼んだ事態だったのを判っているのかな?

 

 お宅のイギリスが候補生の教育を怠って、ウチの企業代表が潰れ掛けた責任はどうすんのかな?

 

 ウチの会社の事を棚に上げて、文句を言わないで欲しいかな?」

 

 『たかが、企業が国家に喧嘩を売りますか!!』

 

 「無能と話すだけ無駄なのは判ったよ。だから、悪友に話す事にするよ」

 

 『悪友!?

 

 まっ、まさか…』

 

 全く、大使館如きの役人では話にならない。

 

 もう一台の携帯でイギリスのとある人物に電話をする。

 

 「やぁ、久しぶりだねぇ、メアリーちゃん♪」

 

 無論、相手はIS学園の学生時代の悪友。

 

 『うっげぇ!?たっ、束!?』

 

 ティーカップが落ちて砕けた音から、ティータイム中だったのだろう。

 

 「あのさ、ティータイム中に悪いけどさ、お宅の日本のイギリス大使館の大使、どうにか成らないかな?

 

 悪友のエ・リ・ザ・ベ・ス三世ちゃん?」

 

 そう、IS学園の第一期の卒業生で同級生だった現イギリスの女王のエリザベス三世で女王就任前はメアリー・フランクフルトの名前だった。

 

 そして、ちーちゃんが幼馴染ならメアリーはIS学園で一緒になって学園中に悪戯をやりまくった悪友で悪戯の内容は秘密だよ。

 

 『あたしは何をやれば良いのよ?』

 

 「そうだね、新しいコアを上げるからさ、金髪ドリルの大破した専用機と金髪ドリルのセットで交換でどうかな?」

 

 『金髪ドリルって、あの貴族のセシリア・オルコット…ウップッ…あっははは…ひっひひひひ…ハァハァ…金髪ドリル、確かにあの小娘に言えてるわね…あぁ、駄目…はははははは…ひっひひひひ…あぁ、お腹が痛い…束はあたしを笑い殺しする気!?』

 

 金髪ドリルで笑いのツボに嵌まる悪友メアリー。

 

 「大丈夫だよ。メアリーはそれ位じゃ、ちーちゃんと同じで死なないし」

 

 『酷ぉぉい!!

 

 あの、ツンデレ剣術馬鹿と一緒にするな!!

 

 まぁ、話は置いとくけど、BT兵器の情報まで流れるから2個が妥当ね。

 

 束がそれでいいなら、あたしが女王の勅命を出しても構わないわ。

 

 どうかしら?』

 

 「じゃあ、成立だね。

 

 でも、BT兵器は開発済だよ。

 

 確かに、ちーちゃんツンデレだけど」

 

 『やっぱり、束は天災ね。

 

 チフユにも言っときなさい。

 

 学年別トーナメントに行くから、その時にクラリッサも来るだろうから4人で久しぶりに飲むわよって』

 

 悪友二人による物々交換が成立した瞬間だった。

 

 次の日には、日本のイギリス大使は女王の勅命で更迭され、バッキンガム宮殿の美しい芝生の庭には『兎直送便』とペンキで書かれたニンジンロケットが刺さり、中には新しいISコアが2個が入っていたらしい。

 

 無論、束の策略によりイギリスの女王と物々交換という名前で売られた事とは知らない、セシリア・オルコットは女王の勅命により、今回の一件を理由に代表候補生とイギリス国籍を剥奪されて無国籍扱いにされたのだった。

 

 これが、セシリア・オルコットが代表候補生と国籍を剥奪されてホワイトラビット社へテストパイロットとして入社した裏の理由の顛末だった。

 

 だが、これは彼女がこれから受ける地獄(イチカ提案の訓練)の入口だとセシリアは知らない。

 

 

 翌日、SHRでは俺がクラス代表に就任したが、セシリアが怯えながらアンと俺に謝罪とクラスメイト全員に謝罪して来た。

 

 「一夏様、アン様、お二人に失礼な事を言ってしまい、誠にすいませんでした!!」

 

 『土下座での謝罪!?』

 

 「それと、皆様にも失礼しました。私はこの一件で代表候補生と国籍を失いましたわ。この事を忘れずに精進したいと思いますわ」

 

 ただ、ひと目を憚らずにアンに土下座で謝罪した事にはクラスメイト達が騒然としたのは言うまでもない。

 

 そして、セシリアがホワイトラビット社へ入社した事で退学には成らなかったが、今回の一件でイギリスの国家代表候補生とイギリス国籍の両方を女王の勅命で失い、イギリスでの資産と財産は没収は無かったが国籍の剥奪は事実上の国外追放だった。

 

 イギリスと何の取り引きをしたか判らないが、セシリアのスカウトには成功し、束さんの目論み通りに狙撃手としては超一級品の腕があるセシリアを入手したのだった。

 

 セシリアの新しい専用機は蒼式のバリエーションタイプの機体で長距離狙撃型のブルーイェーガーを彼女が入社した日には既に開発されて用意されていた。

 

 ブルーイェーガーは蒼式の換装ユニットのJ型を基本として再設計されており、高性能の照準装置や高機動型では無いが小型のスラスターユニットをスカートアーマーやゲルググタイプの肩にも装備されて俊敏性は確保されている。

 

 また、ブルーイェーガーの武装は狙撃用で高出力のロングレンジレーザーライフルと中近距離用の装備でレーザーマシンガンの他に、両腕には内蔵型のレーザースポットガンにエネルギー消費を抑えたレーザーサーベル2本を腰のアーマーにマウントしている。

 

 そして、ブルーイェーガーの元になった機体はジオン軍の統合整備計画の1つでMS-14Jゲルググイェーガーだった。

 

 放課後には、会社からブルーイェーガーが待機状態でセシリアに届けられ、学園のイベント以外ではホワイトラビット社の貸し切り状態で借りている第三アリーナでは、一次移行を済ませたセシリアがアンを相手に慣熟訓練をスコールさんの指導で行われた。

 

 「アン様、そのA型で手加減ですの!?」

 

 「ほら、避けないと当てちゃうわよ!!」

 

 「ひっ、ひぃぃ!?」

 

 アンが蒼式A型でレーザーライフルを片手にセシリアのブルーイェーガーを追い回すが、ブルーイェーガーのレーザーマシンガンは撃ち抜かれてグラウンドの地面に落ちていた。

 

 無論、手加減している為に多数の装備をしている2つの高機動パックは使用していない。

 

 A型で普通に追い回しているのは、これはアンの元からの高い技量であり、一年戦争を生き抜いたパイロット達なら普通のレベルである。

 

 ブルーイェーガーよりも蒼式A型が速度では遅い筈なのにアンに追い付かれて近接戦闘を仕掛けられてしまい苦手な近接戦闘を強いられたセシリアはアンには近接戦闘で敵うはずもなく、展開したツインレーザーナギナタで斬られてシールドエネルギーを失っていたのだった。

 

 「セシリアにも近接戦闘訓練を追加だな」

 

 「射撃も正直ね。

 

 でも、課題は多いけど鍛えがいがあるわ」

 

 既に、スコールさんは俺の考案したメニューでセシリアを鍛え抜くつもりらしい。

 

 「お兄ちゃんのフィジカルトレーニングをやらせんだ…」

 

 「マドカの初日よりはマシだろ?」

 

 「マシと言うよりも死にかけたよ、お兄ちゃん」

 

 「スコール、鈴の単一仕様にいつまでタイムリミットを付けてんだ?」

 

 「オータム、だって鈴の身体が成長が仕切れて無いのだからリミッターは当然よ」

 

 「「そうなんだ…」」

 

 「アンもマドカも、あたしが貧乳だって言いたい訳!!」

 

 「鈴、ゴメン。

 

 あたし、バスト83」

 

 「なっ!?」

 

 「私も最近、測ったら80だった」

 

 マドカとアンはスコールと鈴のある一点を交互に見比べる。決して、二人が考えているそちらではないが二人のバストが育っている事に鈴はキレていたのだった。

 

 EXAMはスコールの見立て通りに身体への負担が大きく、一度だけスコールがクラス代表決定戦で使用許可をだしたが、鈴は凄まじい加速力のGに耐え切れる訳が無く肋骨にひびを入れていた。

 

 「うっなぁ!?

 

 マドカにまで抜かれたですって!?

 

 別に良いわよ!!

 

 ババアになったら垂れるだけの脂肪の塊よ!!」

 

 「へぇ、誰がババアですって?」

 

 アンとマドカは鈴の後ろに立つスコールの形相を見てしまった二人は、お互いを抱き合いながら歯をガタガタ震わせて怯えるが鈴は全く気付かない。

 

 「あたしの例えなら、スコールさんとかよ!!」

 

 後ろにいるのに言ってしまった鈴の未来は確定したのだ。

 

 「へぇ、鈴は私がババアになったら胸が垂れるのね?」

 

 ズッゴン

 

 「へっ?うっげぇ!?」

 

 気付くと同じくして鈴は、スコールから拳骨を落とされ蛙が潰された様な声を出したのだった。

 

 

 

 寮への帰り道、5人で帰る途中で相川さんに夕食前に食堂へ集まる様に言われ、部屋に戻りシャワーを済ませて俺はアンとセシリアを連れて食堂に向かった。

 

 食堂のテーブルには様々な料理が並ぶ立食パーティーが開かれていた。

 

 「織斑くんが来たから、はじめましょう」

 

 『せーの、織斑くんクラス代表就任おめでとう!!』

 

 「これで、優勝したらデザートの無料フリーパスが貰える!!」

 

 どうやら、クラス代表就任のお祝いパーティーだった様だった。

 

 「ねえ、イチカ。懐かしいわ」

 

 「確かに懐かしいな」

 

 俺は懐のポケットから一枚の写真を出す。

 

 「イチカはまだ、持っていたのね」

 

 今と同じく、隊長就任で部下達と小さかったけど、食堂でパーティーをした時の集合写真には部下達が笑う姿があった。

 

 「これが、一夏さんの部下だった人達ですの?」

 

 後から来たセシリアの目に俺達の集合写真が見えていた。入社したセシリアにも宇宙世紀での話はしてある。

 

 「あぁ、セシリアか。

 

 そうだな。

 

 宇宙世紀の世界に飛ばされた時の写真だ。

 

 部下のみんなはクラスの皆の様に騒がしかったな」

 

 「皆さんは…」

 

 「セシリア、あたしも余り言いたくないけど、みんなは最後のア・バオア・クー決戦でたった1機の敵機に落とされて全員が戦死したのよ。あたしもイチカに庇われ無かったら死んでた」

 

 「ごめんなさい。

 

 一夏さんとアンさんが思い出す事を聴いてしまって」

 

 「いや、セシリアが謝る事じゃないさ。

 

 だが、これだけは知って欲しい。

 

 戦争は哀しいだけだと。

 

 そして、様々な過ちが重なる場所だとな」

 

「私の発言で危うく、クラスの皆様を哀しい事にしてしまう所でしたのですわね」

 

 「だから、セシリアは俺とアンの様に成らないで欲しい」

 

 その後、新聞部のインタビューを受けて、インタビューに手慣れていた事に驚かれるが、俺とアンはジオンに居た時からジオン軍のベストカップルで取材されたり、連邦の艦艇を複数を撃沈したり撃墜数が増える度にマスコミにインタビューで追われたりと散々な思い出がある事だけは言っておく。

 



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最強の悪戯ガール、台湾娘の襲来!!

 

 

 第三アリーナの整備室。

 

 俺はセシリアとの模擬訓練の後に白式のスラスター関係の不調に気付き整備をしていた。

 

 「うわぁ!?

 

 やっぱり、スラスターがまた焼けてたか…」

 

 ウインチで下ろしたBC-OC型のバックパックユニットのスラスターがガラス状に溶け見事に焼けていた。

 

 無論、予備パーツは幾らかあるが、スラスター関係の予備が心許なく束さんに報告してからでは無いと製造して送っては貰えない。仕方なく、同型のスラスターが在るB型のスラスターを外して代用する。

 

 そして、白式の反応速度が、俺の反応速度に付いてこれない事もあり、関節パーツとスラスター関係のパーツの補充のついでに束さんには報告していた。

 

 反応速度が遅れる為に関節を酷使して、更にスラスターを酷使して度重なる整備難という悪循環の状況を解決すべく束さんが手立てを考えているらしく、後に『マグネットコーティングをすれば良いんじゃねぇか』っとまさか、アムロ・レイのG3ガンダムに用いられた技術が解決の糸口になるとはまだ知らない。

 

 『イチカ、ゴメン。

 

 2次移行したら解決できるから…』

 

 脳内に済まなそうに語り掛けて来るのは白星。

 

 彼女も自分が、俺の反応速度に付いて行けない事に戸惑いを見せている。何故なら、経験値は俺の宇宙世紀での記憶を読み取り十分だと言っていたが、戦い慣れしている俺の熟練度に対してもだが、俺から読み込んだ記憶に白星自身の回答が出せないらしい。

 

 「白星、気にするな。

 

 何とか、腕でカバーするさ」

 

 『ありがとう////』

 

 その後パーツを取り外したB型ユニットをコンテナに収納して会社へ送るように手配して、白式の整備を終わらせたのだ。

 

 そして、整備室の片隅のハンガーに鎮座するのは日本の代表候補生の更識簪の専用機で、ホワイトラビット社が倉持技研から引き継いで束さんが完成させた打鉄弍式だった

 

 だが、誰かの侵入を知らせる警報が鳴った直後に打鉄弍式が在るハンガーの前で言い争う二人の少女。

 

 一人は判る。

 

 入学初日に現れた痴女の更識楯無。

 

 「誰が、痴女よ!!」

 

 俺の思考を読んだのか痴女は突っ込む。

 

 「だから、痴女じゃ無いわよ!!」

 

 「俺は何も言っていないが?

 

 だが、あの部屋はホワイトラビット社の設計及びデザイン担当の俺の部屋でもある。

 

 つまり、手荒に痴女を確保した理由は会長なら判るな?」

 

 「うっぐぅ、織斑先生にこっ酷く言われたわよ…

 

 また、何度も痴女って!!」

 

 「織斑くん、私は更識簪。

 

 簪でかまわない。

 

 でも、お姉ちゃんが痴女って言われてるけど、どうして?」

 

 「お願いだから、簪ちゃんには言わないで!?」

 

 生徒会長が懇願するが、簪の耳にこっそりと報告。

 

 「あのな、入学初日に水着エプロンで俺達の部屋に侵入してた」

 

 「えっ、お姉ちゃんが!?

 

 へぇ、お姉ちゃんがね…」

 

 簪が姉を見る目が氷点下に下がって行くのが判る。

 

 「まさか、一夏くん話したの?」

 

 「えぇ、話しましたが、何か?

 

 人の部屋に勝手に無断侵入しておきながら、入学祝い用に作った夕食のディナーに出すスープと冷蔵庫に冷やして置いた前菜の真鯛のカルパッチョも食べ、それだけでは足らずにミューゼル先生からの入学祝いで貰って3人で冷やして飲もうとしたフランス産の高級シャンパンまでも飲みましたからね」

 

 「うわぁ…お姉ちゃん、流石に酷い…」

 

 「その事は織斑先生に叱られ、更に織斑先生から報告された虚ちゃんに実家のお母さんに報告されてから自宅に呼ばれた挙げ句に叱られたのよ!!」

 

 「お姉ちゃん、今更だけど織斑くんは同級生の二人と結婚してるから家族サービスに作ったディナーを食べるのは流石に不味いよ。だから、ハッキリ言って駄姉と呼ぼうかな?」

 

 「えっ、簪ちゃん!?」

 

 「駄姉、うるさい。

 

 私に『何もしなくて良い』って言っときながら、私の交友関係を調べたり、完成した私の専用機を受領しに来たと思ったら、侵入ブザーが鳴って振り向いたらお姉ちゃんがストーキングしてるし、いい加減にうるさい!!」

 

 キレた簪が痴女にハッキリと言う事態に、俺までもタジタジになる始末。そして、姉の楯無は、目尻に涙を溜めていた。

 

 「ぶぇぇぇぇぇん!?

 

 簪ちゃんに嫌われたァァァァァァ!!」

 

 ハッキリ言われ、泣きそうだった楯無は完全に泣いてしまい、泣き叫びながら整備室から走って出て行ったのだった。

 

 確かに、ホワイトラビット社関係の専用設備が入っている第三アリーナの整備室には防諜対策で関係者に配られるカードを持たない関係者以外が入ると警報が鳴るようにしてある。

 

 簪は事前にカードをマドカから渡されている。

  

 「一夏くん、お姉ちゃんが色々とごめんなさい」

 

 「いや、気にしてないが打鉄弍式は簪的にはどうだ?

 

 もし、駄目なら調整する様に手配するけど?」

 

 完成した打鉄弍式の感想を簪に聞く。

 

 「うん、文句無しの完成度だよ。

 

 マルチロックシステムはターゲットを個別に狙いも付けやすいし、48連ミサイルポッドが90連マイクロミサイルポッドに増えただけでなく、開発中の第四世代機の技術を用いた展開装甲でマイクミサイルを内蔵型になっているお陰で誘爆する心配も無くなってる。

 

 武装だって、春雷が荷電粒子砲の予定だったけど、代わりに小型で強力な折畳み式のレールガンに装備されてたり、実体の振動型の薙刀が片刃なのが不満だけどレーザーナギナタになってて満足かな」

 

 「ごめんな、本来はツインレーザーナギナタの予定だったけど、技量が低い人が扱うと自分を斬る事故が有ったから片刃だけにしたんだ。もし、良ければだけど、俺の専用機に装備されてるツインレーザーナギナタを使ってみてから考えてみないか?」

 

 確かに、ツインレーザーナギナタの元となったツインビームナギナタは、ア・バオア・クーの学徒兵が慣熟訓練で使用した際に自機のゲルググを斬り事故死している。

 

 その話を踏まえたホワイトラビット社のヒヤリ・ハットで、この案件は問題視されて技量の低い人には使わせない形にしたのだ。逆に訓練をして使用が出来るなら装備を許可している。

 

 無論、専用機を納品する国家代表選手や代表候補生にも当て嵌められた案件だった。

 

 そして、代表候補生の更識簪の専用機にはレーザーサーベルを当初予定していたが、本人の強い要望により片刃仕様のレーザーナギナタを装備したのだ。

 

 そして、簪が纏う打鉄弍式は俺の白式に装備されているツインレーザーナギナタを使う事にしたのだ。

 

 「くっ、難しい!?」

 

 バトンの様に振り回すナギナタ。

 

 しかし、簪の姿はぎこち無かった。

 

 「じゃあ、俺が見本を見せる」

 

 予備のツインレーザーナギナタを使い、振り回しながら的を遠心力を利用しながら切り裂いて行く。

 

 「うん、やっぱり一夏くんの言う通りに片刃にする。

 

 だけど、私的には悔しいからツインレーザーナギナタが使える様に訓練をしたいから訓練用のツインナギナタを送ってくれると助かる」

 

 「判った。

 

 社長に言って、送って貰うよ」

 

 簪の打鉄弍式は片刃のレーザーナギナタに決まり、日本代表候補生の簪に納品したのだった。無論、追加注文された訓練用のツインナギナタも無償でセットにしたのだ。

 

 

 そして、翌日。

 

 職員室に千冬姉のお弁当を届け終わり、3人で仲良く歩きクラスに入ると二組に転入生が来る事に騒いでいた。

 

 「一夏、あたし的に嫌な予感がするわね」

 

 「鈴、どうして?」

 

 「鈴らしくない」

 

 「ほら、一夏が中学の時にあたしの家だった中華料理店に…」

 

 その先の言葉が続かないのは、鈴の目先に映る一人のツインテールの少女を見て固まっていたからだった。

 

 俺にも見覚えが有った。

 

 「鈴、まさか?」

 

 「あぁ、やっぱり来たわね…」

 

 「イチカ、鈴どうしたのよ?」

 

 アンは、何故と首を傾げるが、俺と鈴の二人には迷惑この上ない史上極悪の悪戯ガールにしか見えないのだ。

 

 その少女の悪戯は、土砂降りで濡れた為に少女にお風呂に入るように言われて向かったら鈴が入浴中だったり、逆も然りだった。

 

 そして、鈴へのラッキースケベを誘発して何度殴られたか途中から数を数えるのさえ辞めた位に酷かった。

 

 「あっ、お姉ちゃん!!」

 

 「一夏、あたし帰っても構わないわよね?」

 

 「いや、無理だと思うぞ?」

 

 「「どうしてよ?」」

 

 アンと鈴は気付かない。

 

 何故なら、台湾から来た鈴の従姉妹の凰乱音は瞬時加速をした様に鈴に抱き着こうと廊下を走っていたのだ。

 

 「ゴッフッ!?」

 

 「「鈴!?」」

 

 やはり、猛スピードで来た乱音に鈴は抱き着かれ、肺から空気が抜けた様に鈴はダメージを受けたのだ。

 

 「わぁぁぁい、お姉ちゃんだ!!

 

 あの事件でお姉ちゃんの安否が判らなくて、心配したんだよ!!

 

 馬鹿!!

 

 阿呆!!

 

 珍竹林!!

 

 あっ、お胸ちっちゃ!!

 

 胸は私の勝ちだ!!」

 

 「胸は余計よ!!」

 

 何とも、ほのぼのする姉妹の様なじゃれ合う二人。

 

 「あっ、忘れてた。

 

 お姉ちゃん、初恋の人と結婚おめでとう!!」

 

 「うっなぁ!?

 

 あっ、あんた、それを今更言うわけ!?

 

 でも、ありがとう乱」

 

 「えっへへ」

 

 真っ赤に照れている鈴は優しく乱音を抱き締めて、再会を喜んだのだった。

 

 だが、知らない。

 

 この後に屋上にて、この少女が史上二番目に酷い悪戯を敢行する事を俺達三人は知らかった。

 

 1限目からは二組と合同の共同訓練だった。

 

 箒は反省房から出所して授業に参加している。

 

 「よし、先ずは武装の展開だ。

 

 セシリアから展開してみろ!!」

 

 「はい、ですわ」

 

 「うむ、アレから精進したようだな。

 

 だが…」

 

 セシリアがレーザーマシンガンを素早く展開するが、レーザーマシンガンの銃口は展開する紅式の鈴の頭へと向いていたのだ。

 

 「銃口を人に向けて展開するのは直す様に」

 

 「へっ?」

 

 「セシリア、そんなにあんたは死にたい訳?」

 

 「ヒッィ!?

 

 鈴様、もっ、申し訳ありませんでしたわ!?」

 

 鈴も自衛の為に左腕をセシリアに向ける。

 

 無論、左腕の内蔵型のグレネードランチャーが撃てる状態でだった。セシリアは鈴に直ぐに謝り事なきを得たのだった。

 

 それから、武装を展開したり空中に上がってから地上10センチに急停止したりと充実した授業だったが、箒が山田先生のインカムを奪って俺に怒鳴っていたが、千冬姉に拳骨を食らっていたのだった。

 

 そして、昼食になり屋上にて食べる事になった。

 

 俺は鈴とアンに弁当を渡す。

 

 「やっぱり、お昼もイチカの料理よね♪」

 

 「アン、あんたはあたしに喧嘩でも売ってるの?」

 

 「だって、鈴だって美味しい筑前煮が作れるのにお弁当に入れてくんないじゃん」

 

 「あれは、夕飯よ。 

 

 アンも少しは料理を覚えなさいよ」

 

 「いや、アンには無理だな。

 

 劣化版の千冬姉だ」

 

 「「えっ?」」

 

 乱音とセシリアが家事が出来ないアンと千冬姉に驚く。無理も無いが、アンは元はお嬢様だ。

 

 お嬢様だった時は爺とメイドが全てをしていた為に覚える機会が全く無かった。

 

 「お姉ちゃん、一夏にあーんしても良い?」

 

 「あんたはあたしと一夏の妹なんだから別に構わないわよ」

 

 鈴が乱音に許すと

 

 「セシリアさん、ソレを貰うね」

 

 セシリアが隠していたバスケットからサンドイッチを出すと俺にあーんしていた。

 

 「はい、お兄ちゃんあーん」

 

 「うん………ムッグゥ!?」

 

 サンドイッチを食べた俺は気絶したのだ。

 

 「あんた、一夏に何を食わしたのよ!?」

 

 「えっ?

 

 コレだよ?

 

 はい、お姉ちゃんにもあーん」

 

 「全く、仕方ないわね

 

  うっ、ムッガァ!?」

 

 乱音の必殺のお姉ちゃんプラスに上目遣いにより心がノックダウンして、サンドイッチを食わされた鈴も顔を真っ青になり終いには黄土色へ顔が変色して気絶したのだった。

 

 そして、アンも可愛い義理の妹が出来た嬉しさから、乱音のあーん攻撃によりサンドイッチを食わされて、俺達と同じ運命を辿ったのだった。

 

 「何故、私の料理で気絶しますの?」

 

 「食べてみたらわかるかもね」

 

 「そうですわね。

 

 むっ!?

 

 ウッガァ!?」

 

 「よし、悪戯成功!!」

 

 最後に残った、セシリアには自分が作ったサンドイッチを味見する様に言葉巧みに食べる様に仕掛け、セシリアもサンドイッチを味見して気絶した三人の仲間入りを果たしたのだった。

 

 無論、セシリアには、今後一切料理を作らない様に社長命令が下り、セシリアが料理禁止と成ったのは言うまでもない。

 

 そして、最後の悪戯に乱音は、気絶した四人の額に『肉』と書いて逃げたのだが、マドカにバレて捕まりシメられたのは別の話。

 



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クラス対抗戦と乱入者 前編

 

 

 乱音の最悪な悪戯により、重度の腹痛と吐き気が原因でベッド上にて、俺達四人は3日間も過ごす事になった。

 

 気絶した翌日には、医務室のベッド上で眼が覚めたのだが、ロープで簀巻きにされた乱音とそのロープを握りボロボロな姿のマドカが立っていた。

 

 「あっ、お兄ちゃん眼が覚めた?」

 

 「あぁ、最悪な目覚めだな」

 

 「あぅぅ、一夏お兄ちゃんごめんなさい」

 

 頭に大きいタンコブを二つも作った乱音が素直に俺達に謝るが、マドカのズタボロな姿から予測すると捕まえるのに相当苦労したらしい。

 

 マドカから経緯を聞いたが、マドカ達から逃げる乱音と真剣の薙刀を振り回しながらキレた簪に追われる生徒会長との二人が逃げる為に手を組んだらしい。

 

 そして、学園内を逃げ回る二人の大捕物へ発展した。

 

 手を組んだ二人は、学園最強と悪戯最強の劇物同士の混ぜるな危険のコンビの誕生の瞬間だった。

 

 逃げる二人は本当に混ぜるな危険の言葉が似合うほどに手強く、箒を除いた一組と二組のクラスメイト全員で追い回すが一向に捕まらず、乱音が瞬時に掘って作る落し穴に次々と落ちたり、楯無会長が自分の専用機のナノマシンで凍らせた廊下に滑った数名のクラスメイトが壁へと激突して気絶し脱落していた。

 

 しかし、途中で寮方面と食堂方面へと二手に別れた片方の生徒会長が食堂に逃げ込んだのが運の尽きで、度重なる職員会議で遅い昼食を食べていた千冬姉の好物のカレーハンバーグライスを机ごとひっくり返した事により、生徒会長は好物を駄目にされてキレた千冬姉から瞬獄殺を喰らい気絶したが、怒りの収まらない千冬姉にトドメのアイアンクローを食らっている最中に捕縛された。

 

 そして、寮へと逃げ込もうとした乱音はマドカが飛び付いて抱き付く事で捕まえたが、何とか逃げようと酷く暴れる為に相川さんに『私ごと蹴り飛ばせ!!』と叫び、相川さんの必殺の飛び蹴りを食らわせた反動を利用してジャーマン・スープレックスを乱音にお見舞いして意識を刈り取ったらしい。

 

 

 無論、逃げて捕縛された二人は担任教師の召喚と昼食を駄目にされキレている織斑先生からのお説教を受けながら落とされた拳骨により、大きいタンコブを頭に作ったのだ。

 

 その後、千冬姉から絶賛怒り爆発中の簪に引き取られた楯無会長は専用機が没収された上で第一アリーナへと引き摺られ、アリーナ入口で連絡して呼んだ同じくキレた虚さんと合流してアリーナ内で二人に折檻された様で楯無会長の悲鳴がアリーナ全体に木霊したらしい。

 

 

 医務室から出られた翌日から、俺はクラス対抗戦に向けてアンとセシリアを相手に訓練を始める。

 

 途中、箒が無理矢理借りた打鉄を纏い葵を持ちながら乱入したが、弾幕射撃の中での回避訓練中だった為に二人からの容赦のない攻撃と十数機のガトリング砲付きドローンからの弾幕射撃の弾幕を躱す事など技量の低い箒が出来る訳が無く、箒が纏う打鉄は大量の弾丸を浴びてシールドエネルギーを刈り取られてアリーナのグラウンドへと落ちたのだ。

 

 アンとセシリアは猪武者の様に弾幕に突っ込んで行く箒を見て思った。

 

 『飛んで火にいる夏の虫』

 

 と箒の事を思ったらしい。

 

 無論、落下して気絶した箒は企業で借用中の第三アリーナに無断侵入したので、駆け付けたミューゼル先生に回収された箒はアリーナの外に投げ捨てられたらしい。

 

 そして、時間になり訓練が終るが、やはり数日は寝込んだ為に非常に疲れた。

 

 鈴は二組のクラス対抗戦の為に一夏達が訓練をする第三アリーナは使わず、副担任の巻紙先生に訓練相手を頼んで第一アリーナで単一仕様の『EXAM』にリミッターが掛けられた制限時間内までは身体が耐えられる様にとフィジカルトレーニングで肉体改造に勤しんだのだ。

 

 三組のクラス代表を勤めるマドカは、ビット操作の柔軟性を高める為に並行思考の訓練を重点的にしていたらしく、前日には姉の千冬姉に苦手な近接戦闘を克服する為に頼み込み模擬戦をしたのだった。

 

 

 

 

 クラス対抗戦の当日となり、一回戦の第一試合は一組対四組で、俺の相手は四組の簪が纏う打鉄弍式だった。

 

 「一夏くんの胸を借りる気で挑むから」

 

 「あぁ、来い!!」

 

 「じゃあ、遠慮なく行くから」

 

 カッシュゥ

 

 「へっ?

 

 あっ、ヤバい!?」

 

 「山嵐、バージョン2.0全弾発射!!」

 

 試合開始早々から打鉄弍式の展開装甲が展開して内蔵された90発のマイクロミサイルが俺の白式に目掛けて全弾発射する。

 

 「ちぃ、いきなりかよ!?」

 

 「コレで落ちてくれると助かる!!」

 

 「初っ端から、エゲツねぇ!?」

 

 「駄姉のせいで溜まり溜まったストレスを一夏くんにぶつける!!」

 

 「それ、責任転嫁だ!?」

 

 「駄姉の代わりに落ちろ!!」

 

 白式BC-OC型のスラスターをスロット全開にして加速しながら地面スレスレまで降りて加速して、白式を追うマイクロミサイルから逃げる。

 

 無論、両手にマシンガンをコールし装備して乱射して、弾幕を張りながらミサイルを迎撃したりしているが、ミサイル全てを躱し切れないと判断する。

 

 「ちぃ、コレを使うしかない」

 

 「えっ!?

 

 大量の風船!?」

 

 「全て、ダミーだ‼」

 

 新しく追加した武装の一つを使い、指の付け根からバルーンを射出して、白式の周りに展開したダミーバルーンにミサイルの標的を逸してダミーバルーンに命中させたり、ダミーバルーンに内蔵した爆薬の爆発にミサイルを巻き込んだりして誘爆させたりと、簪からのミサイルを躱し切ったのだった。

 

 「くっ、やっぱり防がれた!?」

 

 「ベテランじゃ無かったら落ちてたな?」

 

 「何で、疑問系なの!?」

 

 確かに、ベテランでも普通に躱せない事よりも、本人は気付いてないがニュータイプへと覚醒している為に、この様な方法で躱したに過ぎない。

 

 アリーナで試合を観る生徒達も試合開始早々から打鉄弍式から放たれた90発のマイクロミサイルの一斉発射には流石に顔を引き摺り、それを躱し切った一夏にも別の意味で呆れる生徒達だった。

 

 だが、試合は続き二人の白兵戦へとなった。

 

 「これで!!」

 

 腰の両サイドに装備された小型の折畳み式のレールガンを展開して白式へと放つが、レーザーサーベルモードにしたナギナタでレールガンの弾丸を全て斬り捨てたり、レーザーライフルでレールガンの銃口に狙撃する。

 

 「見える!!

 

 そこぉ!!」

 

 「弾丸を斬るなんて、あり得ない!?」

 

 「実際に斬れたからなぁ…」

 

 「やっぱり、一夏くんは人間辞めてるよ…」

 

 「簪にまで言われた!?」

 

 「だって、いつの間にかレールガンも破壊してるし!!」

 

 「スキを見せるのが悪い!!」

 

 「ろっ、ロケットランチャー!?」

 

 「落ちろ!!」

 

 「きゃあ!?」

 

 簪に呆れられる始末だが試合は続き、白式が瞬時加速でレールガンを破壊された打鉄弍式の懐へ入り、左腕のシールド付き三連ロケットランチャーを至近距離から放ち打鉄弍式に直撃させる。

 

 「まだだ、終わらない!!

 

 はぁぁぁ!!」

 

 既に打鉄弍式は、俺の距離だった。

 

 ラピッドスイッチで斬艦刀に変え、打鉄弍式を切り裂きシールドエネルギーを強制発動させて削り切ると打鉄弍式のシールドエネルギーが無くなり解除されたのだった。

 

 『打鉄弍式、シールドエネルギーエンプティ。よって勝者、織斑一夏』

 

 無機質なアナウンスより、落下する簪をお姫様抱っこで抱えてピットに戻るが、ピットに戻るまで簪が顔を真っ赤にしていた。

 

 だが、ピットに簪をお姫様抱っこしたまま戻ると、一人の鬼が居たのだ。

 

 「イチカ?

 

 あんた、あたしと鈴が居ながら、新しい女にお姫様抱っこ?」

 

 「えっ、私が新しい女////」

 

 簪は何をどうしたら勘違いしているのか、満更でも無いが顔を林檎の様に顔を更に真っ赤にしていた。だが、俺を睨むアンの眼は氷点下まで下がっていたのだ。

 

 「イチカ、浮気は構わないわ。

 

 でも、火遊びが少しでも、本気に変わったらチョン切るから」

 

 何処からか出した魚肉ソーセージを握って睨み、俺を一瞥してからハサミで魚肉ソーセージを切り落としていた。

 

 つまり、浮気したら息子を切ると言う含みだったと気付いたのだ。

 

 「はわわわ…アンさんとそんな関係!?」

 

 「えっ?」

 

 「一夏くんのエッチ!!」

 

 俺はピットから出るアンを見ながら顔を真っ青にし、簪も意味を理解したのか顔を真っ赤にピットから走る様に逃げたのだった。

 

 

 

 第二試合は二組対五組の試合だった。

 

 鈴は五組のクラス代表が纏うラファールと試合を開始。早々から瞬時加速で懐に入り込み、綺麗な舞とも言えるヒートソードの二刀流で舞うようにラファールを切り裂き圧勝していた。

 

 

 三組のマドカは六組のクラス代表と対戦。

 

 試合開始から、5連荷電粒子砲を装備する両腕をビットとして飛ばして、六組のクラス代表の度肝を抜き、5連装の荷電粒子砲のみを撃ちながらオールレンジ攻撃を繰り出して遊々と勝利していた。

 

 準決勝戦は一組対八組。

 

 八組のクラス代表は、1回戦の俺の試合を見て勝てないと判断して棄権により一組が決勝へと駒を進め、準決勝の第二試合はマドカの三組と二組の鈴との対戦だった。

 

 先に言えば、二組の鈴の圧勝だった。

 

 「マドカ!!

 

 あんたには恨みは無いげど、鍛えたあたしで一夏と何処まで通じるか、やりたいから勝たせて貰うわよ!!」

 

 「鈴お姉ちゃんじゃなく、お兄ちゃんと殺り合うのは私だ!!」

 

 「マドカ、字が違うわよ!!」

 

 「「でも、勝つのはあたし(私)だ!!」」

 

 「マドカ、最初から飛ばして行くわよ!!

 

 単一仕様『EXAM』を起動するわよ!!」

 

 脳内に響く、『EXAMシステム、スタンバイ』を聞き気を引き締める。前回同様に怪我をしない為だ。

 

 「うっげぇ!?

 

 鈴お姉ちゃんが単一仕様を、最初から使って来た!?

 

 なら、私も全ビットを射出だ!!」

 

 マドカの黒式から放たれた、大量のビットと両腕のビットからのオールレンジ攻撃。

 

 だけど、今のあたしにはEXAMの補助もあり、全ての攻撃が見える。

 

 コレが、一夏の見えている世界。

 

 「マドカ、全て見えるから無駄よ!!」

 

 「うっなぁ!?

 

 お兄ちゃんの様に、ソレを躱すの!?」

 

 何故なら、鈴の紅式の単一仕様『EXAM』は数倍の機体性能の向上だけでは無い。本当のEXAMの恐ろしさは機体の性能の向上だけで無く、システムの補助による擬似ニュータイプ化が最も恐ろしいのだが、肉体と脳への過大な負担が掛かる、システムとしては致命的な欠陥も有った。(宇宙世紀の世界では、このシステムが原因による犠牲者が出ている)

 

 そして、擬似ニュータイプとは言え、ニュータイプとも言える超反応と鈴が最初から有る野性の勘が合わさり、マドカを翻弄して見せつけ、黒式から放たれた全てのレーザーと荷電粒子砲が織りなす網をステップダンスを踊る様に全て躱していたのだ。

 

 「そりゃぁぁぁぁ!!」

 

 「あっ、懐に入られた!?」

 

  驚愕するマドカのスキを突いて、瞬時加速で一気に懐へと入り込み、黒式は斬り刻まれたのだった。 

 

 そして、試合は鈴が勝ったが、EXAMのタイムリミッターの残り時間は残り10秒と観ていた俺でも、鈴が単一仕様を時間ギリギリまで使った事に非常にヤバかった。もし、単一仕様でもタイムリミットを過ぎていたら最悪、鈴の身体への負担により重傷または死亡だけでは無く、紅式の暴走だってあり得たからだ。

 

 だから、束さんはブラックボックス化した紅式のコアに何とか強制停止させるタイムリミッターを取付け、見張りとしてスコールさんが目を光らせていたのだ。

 

 試合の後に鈴はEXAMの使用により、スコールさんに叱られていた。

 

 そして、準決勝が終わり2時間後に試合をやる事になり、決勝戦は俺と鈴との夫婦による試合だった。

 

 「一夏にどれくらい通じるか、やらせて貰うわよ!!」

 

 「あぁ、鈴が妻だからって、手は抜かない!!」

 

 対峙する白と赤の機体。

 

 「当たり前じゃない!!

 

  手を抜いたら、アンにあんたの中学生の時の恥ずかしい話をしてやる所だったわよ!!」

 

 プライベートチャンネルでは無く、オープンチャンネルで鈴が言うものだから、客席にいる生徒達は俺の中学生の恥ずかしい話に『何それ、聴いてみたい』と興味深々だった。

 

 「まさか、乱絡みか?」

 

 「乱絡みね」

 

 オープンチャンネルを開いたままなのを気付かずに聞くんじゃ無かったと、俺は直ぐにオープンチャンネルだと気付いたが後悔するのが遅かった。

 

 オープンチャンネルでの俺と鈴の会話がアリーナの客席には駄々漏れで、会話の内容を聴いた乱は慌てる様にアリーナから脱兎の如く逃げようとしたが、それの内容が気になる二組の生徒達に取り押さえられ、何処かのドラマでの警察署の取調室とは言わないが、学園の人気メニューの熱々のカツ丼を目の前に出されて『吐けば、カツ丼が食えるぞ』とクラスメイトにより尋問中だった。

 

 「「……」」

 

 尋問される乱を後目にしながらも、二人して放置と決め込んだ瞬間に試合が開始される。

 

 先ず、先手を取ったのは鈴だった。

 

 「あんたには、コレでも食らいなさい!!」

 

 両足の展開装甲から展開してマイクロミサイルを全弾発射する。俺も鈴の紅式のミサイルの量ならとツインレーザーナギナタを振り回し、俺に迫るミサイルを斬り捨てて行くが鈴の囮だった。

 

 「二番煎じだっての!!」

 

 「ミサイルは囮よ!!」

 

 「なっ!?」

 

 「貰ったわよ!!」

 

 瞬間加速で加速した鈴の紅式がヒートソードを片手に突っ込んで来て、すれ違い様に一太刀で肩のアーマーを斬り裂く。

 

 「ちぃ、やってくれる!!」

 

 「コレで、やっとアンに並べたわよ!!

 

 あんたと並び歩む為に!!」

 

 まさかの鈴の愛の告白が来るとは思いも拠らず、客席からは黄色い歓声が立ち起こる。

 

 無論、ピットから観ていたアンは額に手を宛てて

 

 「鈴、あんたは既に妻の一人でしょうが!!」

 

 と叫んでいたらしい。

 

 そして、俺も鈴に応えるべく、斬艦刀をコールして構えるとリボルバーで加速して鈴に斬り掛かろうとした瞬間だった。

 

 ガッシャァァァァン

 

 アリーナを覆うバリアが砕けたのだ。

 

 「一夏、あの黒い穴は!?」

 

 「あぁ、俺が飲まれた黒い穴だ」

 

 空には、誘拐現場やア・バオア・クーの暗礁宙域で見た黒い穴が開き、4機のモビルスーツが落ちてきたのだ。

 

  その内の1機は、ゲルググタイプの様な肩のアーマーでは無く、長い肩のアーマーにジオン公国のマークが入る、真紅と黒で染められたゲルググタイプに近い機体とイーグルに星のマークが入るダークブルーに染められたガンダムアレックスいやジム系統の機体が、ビームサーベル同士の鍔迫り合いをしながら絡み合いながら重力に惹かれてグラウンドに落ちて来る。

 

 その絡み合う2機を追う様に2機の同型のジム系統の機体がマシンガンを撃ちながら追いアリーナのグラウンドに落ちて来たのだった。

 

 だが、ゲルググに近い機体の認識番号を見ていたアンは呟く。

 

 「えっ?

 

 あの番号343-121は、あたし達の居た部隊の機体!?

 

 まさか…」

 

 アンの予測は正しく、彼女はア・バオア・クー決戦では酷い生理痛でベッドに寝込んでしまい出撃が出来ず、自機の機体を勝手に乗り込んだジオンの補充要員の新米パイロットが彼女のゲルググに乗り込み、彼女の代わりにガンダムに落とされた。それが、ア・バオア・クー決戦で彼女が死んだと思っていたイチカとあたしだった。

 

 そして、向こう(宇宙世紀での世界)では、あたしとイチカを巡り取り合ったライバルであり、オリムラ中隊では三人いた女性パイロットの一人のシャーロット・シュタイナー中尉だった。

 

 そして、彼女の父親はジオン軍の特殊部隊のサイクロプス隊隊長のシュタイナー大佐で、その一人娘でもあるのだ。

 

 ドズル閣下の前でイチカの女宣言したのも、シャーロットの父親に気に入られてイチカを彼女にも彼女の父親にも取られたく無かったからだ。

 

 だから、わざと宣言して彼女を泣かしてやった。

 

 

 

 

 アリーナに落ちて来た4機は1対3の激しいモビルスーツ戦を繰り広げ、アリーナ全体が混乱に陥ったのだ。

 

 ただ、真紅と黒く染められたゲルググタイプは左腕を無くして武装はビームサーベルのみで戦い、3機のジムタイプと戦うが劣勢だった。

 

 現状を観ていた織斑先生は、直ぐに非常事態宣言を出して生徒達を避難誘導をさせてシェルターに避難を開始させる。

 

 

 

 まさか彼女いや、シャーロット中尉が生きて居たとは、俺でも流石に驚いた。

 

 確かに、機体識別番号はシャーロット中尉のソロモン方面防衛師団所属343宇宙突撃大隊、オリムラ中隊の機体番号343-121は確かにシャーロット中尉の番号だった。

 

 俺は、ジオン公国軍の通信チャンネルの周波数を530に合わせると彼女だった。

 

 『もう!!

 

 何で黒い穴に落ちたと思ったら、通信が繋がらないのよ!!

 

 って、繋がってる!?

 

 も〜し〜も〜し!!』

 

 「やっぱり、シャーロットか!?」

 

 『フッぇ!?

 

 たっ、隊長じゃないですか!!

 

 えっ、隊長が生きてる?

 

 ぶぇぇぇぇぇん!?』

 

 俺が生きている事に戦闘よりも、シャーロットが泣き出す始末だった。

 

 「馬鹿者!!

 

 戦闘中に泣き出す阿呆が何処にいる!!」

 

 『って、私で〜す!!

 

 嫌ァァァ!?

 

 斬られる!?』

 

 「ちぃぃぃ!?」

 

 と怒鳴る最中にシャーロットの乗るゲルググタイプに似た機体にジムタイプからのビームサーベルが迫る。俺は、斬艦刀を突きの構えで構えて瞬時加速し、ビームサーベルを振るおうとするジムタイプのコクピットに目掛け斬艦刀を突き刺したのだった。

 

 

 

 

 



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クラス対抗戦と乱入者 後編

 

 管制室から、あのモビルスーツと言う兵器同士の戦いに息を呑む私。

 

 「織斑先生、生徒の避難が九割ほど完了ですね」

 

 「山田先生、これが戦争なのだな…」

 

 「私も織斑先生と織斑君の和解の話をマジックミラー越しから聞かせて貰いましたが、あの戦闘がそうなんですね…」

 

 そして、一夏が大剣を突きの構えのままで瞬時加速してISの数倍の大きさの18メートルは在るロボットに肉薄し、コクピットが有るだろう場所に白式が装備する4、5メートルはある大剣を突き刺して引き抜き、大剣の剣先が真っ赤に染まる。

 

 「もしかして、織斑君はあのロボットのパイロットを?」

 

 「剣先に付着した血の量から、確実に殺ったな。

 

 そして、パイロットは即死だ」

 

 「なにもコクピットを狙わなくても!!」

 

 確かに、通常なら山田先生が言っている通り、コクピットを狙う必要性はない。だが、鈴音の牽制を見て判断するにISの競技用の武器では、装甲が硬くて無理なのだろうな。

 

 「いや、ISだから他を狙うのが無理なのだろうな。

 

 鈴音も牽制して、脚を斬り掛かっているが、装甲が硬くて剣が弾かれている。

 

 だから、一夏は最も装甲が薄く攻撃が通り易いコクピットハッチを狙わざるを得ないのだろうな。

 

 例え、相手のパイロットを殺してでもだ」

 

 向こうの世界で命のやり取りをして来た一夏なら、この状況は既に戦争なのだ。

 

 コクピットを突き刺されたモビルスーツは力無く倒れた。

 

 モビルスーツのコクピットを突き刺し、推進剤が入っている燃料タンクまでも突き刺したのか、漏れた燃料がコクピットの中まで漏れ出し、配線とショートしていたコクピットから火が出ると燃料に一気に引火してモビルスーツは爆発して四散した。

 

 この、爆発によりアリーナの客席を守るバリアは激しくショートするが耐え切り、避難中の生徒達に被害はない。しかし、次の爆発には耐え切れないと判断して防護シャッターを降ろしたのだった。

 

 一夏はモビルスーツが爆発するのを一瞥すると無理な瞬時旋回加速をしながら、マシンガンを乱射し牽制。

 

 もう1機のモビルスーツへ同じ様に斬り掛かろうとするが、放送室からの声に一夏の攻撃が、モビルスーツが標的にした放送室に気付き止まる。

 

 『一夏!!

 

 男なら弱点ばかり狙わないで正面から堂々と戦え!!』

 

 管制室から放送室を見れば、数名の生徒が篠ノ之が握る木刀に殴られて頭から血を流して気絶している状況だった。一夏も放送室の惨事ともう一方のモビルスーツの銃口の標的に気付き、放送室を人質にされた事で攻撃を中断したのだ。

 

 そう、赤いモビルスーツと戦うモビルスーツが放送室へとマシンガンの銃口を向けた為だった。

 

 「あの、馬鹿者が!!」

 

 「織斑先生!!

 

 教師部隊の準備が出来ました!!」 

 

 「山田先生、この戦闘では教師部隊は役に立たない!!

 

 だが、直ぐに放送室へと向かわせ、篠ノ之の捕縛と気絶している生徒の救助へ向かえ!!

 

 救護班も忘れるな!!」

 

 私は山田先生を怒鳴り飛ばすと、手元のコーヒーを飲もうと、近くに有った瓶に入っている砂糖らしき物入れて飲んだのだ。

 

 「ブッフォ!?」

 

 余りの不味さにコーヒーを吹き出し、瓶のラベルを確認したら重曹と書かれていたのだった。

 

 「何故、こんな所に重曹が有るのだ!?」

 

 

 

 シャーロットに斬り掛かろうとしたジムタイプの1機を撃墜し、シャーロットに話を聞く。

 

 「シャーロット、無事か?」

 

 『無事です!!

 

 でも、隊長もそんな小さな機体でティターンズの新型機、ジム・クウェルを撃墜が出来ますね?』

 

 どうやら、撃墜したのは角無しのガンダムアレックスでは無く、新型のジム・クウェルらしい。

 

 道理でア・バオア・クー戦で撃墜したアレックスより弱い筈だと俺は思ったのだ。

 

 そして、ジムもガンダムもコクピットハッチの位置は分かりやすいし、連邦軍のモビルスーツは共通して装甲が薄い記憶が有ったし、鈴がヒートソードを足に斬り付けて弾かれるのも観ていた。なら、シャーロットのあの状況で狙うのは断然的にコクピットハッチだった。

 

 「まぁ、コクピットを狙うしか無かったがな。

 

 それよりも、シャーロットの機体はゲルググに見えるが?」

 

 『この機体?

 

 あぁ、私はア・バオア・クーから脱出した時に、シーマ准将に拾われてからは、シーマ准将のシーマ艦隊とアステロイドベルトのアクシズに行ったら、戦後に教導大隊に所属して教官用に受領したのが、このリゲルグだったんですよ。

 

 私も、今はアクシズ所属の少佐に昇進しまして、イリヤやマシュマー等の問題児が居る新兵達の宇宙での教導中にティターンズのジオン狩りによるアクシズへの奇襲で、アクシズの防衛戦になって20機ほどのジムⅡを撃墜してヘトヘトですよ』

 

 「じゃあ、俺よりも階級は上だな」

 

 『そんな訳無いじゃないですか!!

 

 ア・バオア・クー戦でイチカ大尉とアン大尉も50機のモビルスーツの撃墜、特にガンダムタイプの2機の撃墜とマゼラン級4隻とサラミス級6隻の撃沈による二人の大戦果ですよ。ア・バオア・クー戦の中で撃墜されて人は行方不明になりましたが、大戦果による名誉の戦死扱いになって二階級特進で中佐ですよ!!』

 

 シャーロットからのカミングアウトに驚く。

  

 「マジかよ…」

 

 『てめぇ、人様の殺し合いに水を刺すんじゃねぇ!!』

 

 シャーロットのリゲルグと鍔迫り合いしていたジム・クウェルとは別の機体がスラスターを吹かし、俺に突撃する。

 

 「ティターンズのパイロット!!

 

 ここは異世界だ!!

 

 武器を捨てて、投降しろ!!」

 

 『ハッ、嫌だね!!

 

 楽しい、殺し合いを楽しませろ!!』

 

 ジム・クウェルからのマシンガンの乱射を躱して回り込む為に瞬時旋回加速をして、ジム・クウェルのコクピットへ向けて肉薄する。

 

 しかし、放送室からの放送で攻撃を辞めざるを負えなかった。

 

 『一夏!!

 

 男なら弱点ばかり狙わないで、正面から堂々と戦え!!』

 

 「ちぃぃぃ!?

 

 あの馬鹿!!」

 

 思わず、箒に舌打ちしながら攻撃を辞める。

 

 『ハッ、丁度良い人質だな!!

 

 おい、彼処に見える放送室を狙え!!』

 

 敵パイロットが叫び、シャーロットと鍔迫り合いするジム・クウェルのマシンガンが放送室に銃口を向ける。

 

 だが、ジム・クウェルのパイロットが放送室を人質にしたのも束の間、放送室内に教師達が決死の突入をして箒を捕縛し、倒れている生徒を救助しながら放送室から撤退したのだ。

 

 まるで、巻紙先生が海兵隊仕込みの突入を教師達に教え込んだかの様に鮮やかな突入劇と撤退劇の2つだった。そして、先陣を切り放送室に突入して箒を殴り飛ばしていたのは、まさかの巻紙先生だった。

 

 「まさか…鈴とアンに海兵隊教練を教えたのは巻紙先生か…」

 

 知りたくも無い真実にゲンナリするが、ジム・クウェルは2機もいる。

 

 「シャーロット!!

 

 そいつとやり合っても、耐え切れるか!!」

 

 『舐めないで隊長!!

 

 アクシズ防衛戦で可愛い妹分達を殺した、こいつ等だけは私が落とす!!』

 

 1機をシャーロットに任せジム・クウェルとモビルスーツ戦を再び展開し、俺は隊長機だろうジム・クウェルに斬艦刀を構えて突貫する。

 

 『あっははは!!

 

 その、動きは!?

 

 やはり、てめぇは『ジオンの白い流星』のイチカ・オリムラ大尉か!?

 

 ツイているぜ!!

 

 しかも、この世界に居てあの、ジオンの大エースと殺り合えるなんてな!!

 

 だから、死ねや!!』

 

 ジム・クウェルから放たれるマシンガンの弾丸。

 

 「殺らせるかよ!!」

 

 襲い掛かるマシンガンの弾丸を斬艦刀でひたすら斬りながら肉薄する。

 

 『何ッ!?そんな小さい機体でマシンガンの弾を斬るだと!?』

 

 「アン、今だ!!」

 

 だが、ピットにはジオンのエースとも言えるアンが蒼式J型を纏い、リミッターを解除したロングレンジレーザーライフルを構えて待機していた。

 

 『任せなさい!!』

 

 背中越しに隠していた迫り来るレーザーを瞬時加速で右に避け、ジム・クウェルに高出力のロングレンジレーザーライフルでコクピットへと狙撃する。

 

 『ちぃ、焼きが回ったぜぇぇぇぇ!?』

 

 直撃したジム・クウェルはコクピットを撃ち抜かれて機体は爆散したのだ。パイロットは叫びながら、レーザーに焼かれて即死だった。

 

 『私の妹分の仇だぁぁぁ!!』

 

 『ヤッ、ヤザン隊長ォォォ!?』

 

 そして、シャーロットもジム・クウェルのビームサーベルを弾くと、リゲルグのビームサーベルで袈裟斬りをしてジム・クウェルを機体を真っ二つに切り裂き撃墜したのだ。

 

 『きゃあ!?

 

 やっ、ヤバッ!?

 

 隊長、脱出するので回収をお願い!!』

 

 「了解」

 

 だが、シャーロットのリゲルグも酷い破損状況から活動限界だった様で、コクピット内部ではモニターが罅割れ、ショートした火花が散っていた。

 

 リゲルグのコクピットハッチを開き、シャーロットは脱出して俺に抱き付く。

 

 「きゃあ!!

 

 隊長のエッチ。

 

 でも、アン副隊長に趣旨返し♪」 

 

 懐かしいジオンのノーマルスーツを着るシャーロットだが、グラマスでピッチリしたノーマルスーツ越しに感じるのは彼女の巨大な胸だった。

 

 仕方なく、アンと鈴を刺激しない為にお姫様抱っこしても、シャーロットはアンに見せ付ける為にわざと抱き付き、たわわな胸を当てる様に腕に抱き着いていたのだ。

 

 リゲルグから離れると、コクピットから火が出て、ピットに戻る頃には推進剤が引火したのか爆発してリゲルグは残骸を撒き散らしながら四散したのだった。

 

 そして、ピットには修羅の顔をした二人。

 

 「「イチカぁぁ?」」

 

 「あらあら」

 

 二人の形相を見て、微笑むシャーロット。向こうの世界以来の戦いに火花が散っていた。

 

 「鈴、シャーロットには気を付けなさい!!」

 

 別の意味で警戒する二人はシャーロットを睨む。

 

 だが、鈴の睨む位置はシャーロットのとある部位を見て叫ぶ。

 

 「こ〜の、おっぱいお化けがァァァ!!」

 

 叫び、鈴はシャーロットの胸を鷲掴みして引っ張る。

 

 「引っ張っちゃ、イヤン♪」

 

 「うるさい!!

 

 おっぱいお化け!!」

 

 確かに、シャーロットのたわわに実った胸を凝視するアンと鷲掴みして引き千切ろうと引っ張る鈴。

 

 「アン、鈴はそこまでだ!!

 

 一夏達には学園長室で話を聞かせて貰う」

 

 

 千冬姉に言われ、その後、学園長に全ての経緯を説明する。

 

 「……以上がクラス対抗戦で起きた、乱入の真相です」

 

 「では、彼女は?」

 

 「宇宙世紀の世界ではソロモン以後からのイチカの部下で、アンとイチカを奪い合った仲です」

 

 「はぁ…認めたくないけど、本当です」

 

 「そうですか。

 

 織斑一夏君には本来なら殺人罪が適用されますが、3機による被害をアリーナ一つにした実績でお咎めは無しです。アンさんも同様です。

 

 ですが、篠ノ之箒さんは庇いようがありません」

 

 「ただ、私は一夏が卑怯な戦い方をするから!!」

 

 「黙りなさい小娘。

 

 戦闘に綺麗、汚いは存在しない。

 

 篠ノ之箒の罰ですが、本来なら殺人未遂で退学の上で少年院送りですが、反省房に2ヶ月の謹慎と反省文を500枚を言い渡します」

 

 箒は山田先生により反省房へと連行されたのだった。

 

 

 

 

 そして、箒が連行された後に話の証拠映像を見せる為にシャーロットは、ノーマルスーツのポシェットから一つのUSBメモリーで映像を再生したのだ。

 

 そう、俺達に見せたのは、戦後に起きたティターンズによるジオン狩りによる虐殺事件『30バンチ事件』の映像だった。

  

 これを撮影したのは、30バンチを実体調査したシャア大佐だった。

 

 だが、驚いた事にシャア大佐は妻帯者になっていた。

 

 その相手とは、ギレン閣下はサイド3で戦犯として捕まり、代わりにドズル閣下の愛娘のミネバ・ザビが総統を務めるが幼く、アクシズの現摂政を勤めるハマーン・カーンが摂政に就任して、シャア大佐の妻となっていた。

 

 戦訓で、ミネバ・ザビ閣下の教育を民を想いやる優しい女王にする点でハマーンと対立したが、傲慢な女王は嫌われる事をハマーンが理解してシャア大佐とミネバ・ザビ閣下を教育したらしい。

 

 

 シャア大佐も摂政になったが、現在は現場に居る事を好みアクシズから調査を理由に地球圏へと向かい、反地球連邦組織のエゥーゴに協力する為に出向中らしいと、シャーロットが話していた。

 

 そして、映像を観て、顔を真っ青にする生徒会長の更識楯無会長と山田先生。

 

 仕方ない。

 

 俺でも、気分が悪くなる。ミイラ化した赤ん坊を抱く、ミイラ化した母親やそこら中にミイラ化した遺体や噴水に浮かぶ白骨化した30バンチコロニーの住人達。

 

 「ティターンズにはロクなのいないな」

 

 「あたしも、イチカに同じ意見ね」

 

 「うん、これはまだ、中国のあたしの事件より酷いわ」

 

 「まだ、30バンチは見境なく虐殺したからマシよ。

 

 パパが潜入調査したコロニーはサイド3の出身ってだけで、逮捕されて拷問されて亡くなった人もいたわ」

 

 「って、親父さん生きてんのかよ…」

 

 「勿論、パパから伝言。

 

 娘の花嫁衣装を早く見せろってさ」

 

 「「「はっ!?」」」

 

 シャーロットから落とされた爆弾に一斉に固まる三人とニヤニヤしながら『爆ぜろ、ハーレム野郎!!』と達筆な文字を表した扇子を持つ楯無会長、義理の妹が増えるのかと頭を抱える千冬姉のカオス化した学園長室だった。

 

 そして、第一アリーナのモビルスーツの残骸はホワイトラビット社が全て回収して、束社長自ら解析するらしい。

 

 シャーロットの処遇はアンと鈴に無理矢理に部屋から拉致して来た簪を交えての女子会ならぬ、妻達による話し合いの末、鈴から一番を奪わない条件の元でシャーロットがアンと鈴に合意してシャーロットが妻として加わり、簪は友人が良いと断ったらしい。

 

 無論、シャーロットは同い年である為、ホワイトラビット社のテストパイロットに就職して、学年別トーナメント前には専用機を持参して学園に編入が決まったのだった。

 



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レゾナンスで買い物と完成した専用機

 

 

 クラス対抗戦も無事に終えたとは言い難いが終了し、俺達に平穏が戻って来たのだ。

 

 「イチカ、私の下着類がないから、何処かにお店は無い?」

 

 転入前だが、寮に入る事になったシャーロットは着の身着のままだった為に着替えと言えるのは、軍支給品の今着ている下着とタンクトップと事情を話して学園から支給された制服のみだった。無論、購買では下着や普段着を買ったが、サイズの合うブラが無く断念していた。

 

 しかも、身長は鈴は150センチ、アンは153センチ、シャーロットは178センチとシャーロットが着れるお出掛け用の普段着が無かった。

 

 そして、スリーサイズも圧倒的にシャーロットがあり、たわわに実る果実は二人のブラでさえ納まらない。

 

 無論、千冬姉のブラでも小さくて不可能だった。

 

 「それなら、学園を出た隣町に総合商業施設のレゾナンスが在るぞ?」

 

 「何それ!?

 

 あたしも行きたい!!」

 

 「なら、あたしも行くわ。

 

 アンとシャーロットの二人に一夏と一緒に行かしたら絶対に死人が出るわ」

 

 「「鈴、酷い‼」」

 

 鈴の意見に、俺も賛成だった。

 

 今は、やっとだがアンのレーザーガンを抜く癖は改善されて来ているが、アンの次はシャーロットもだった。

 

 その翌日の夜、箒が反省房へ2ヶ月の謹慎処分となったのだが、箒が再び脱走して俺達の部屋のドアを叩きながら怒鳴りに来た。  

 

 「何故、結婚相手が日本人じゃない!!

 

 結婚するなら、日本人にしろ!!」

 

 確かに、妻達は日本に帰化した鈴以外は外国人だ。

 

 アンは束さんの悪友のメアリーさんに頼み、向こうでは実家が在ったイギリス国籍を入手し、シャーロットは千冬姉に頼み、父親がかつて住んでいたドイツ国籍を入手していた。

 

 無論、三人が結婚するのに国籍証明が必要な為に入手したのだ。今の俺は無国籍であり、結婚後は三人共に無国籍扱いになっている。

 

 話を戻すが、その事にキレたのはアルマオイルの香りでリラックスして、俺のマッサージで気持ち良く昇天して眠る鈴ではなく、順番待ちしていたアンとシャーロットのジオンの元軍人コンビだった。

 

 「イチカとこれから、ベッドで楽しい事するのにうるさい!!」

 

 ドッゴォ

 

 「がっ!?」

 

 「アンと同じ意見ね!!」

 

 ビュン

 

 「ギャァァァ!?」

 

 ドアを開けて、二人で入口で出迎えてアンが箒にアッパーで顎へと全力で殴り飛ばして廊下へと吹き飛ばし、シャーロットは脱走して来たのだから撃たれる覚悟があると思い、逃亡防止の為に箒の腿をレーザーガンで撃ち抜いたのだ。

 

 無論、廊下を隔てた3つ隣の部屋は寮長室だ。

 

 「貴様ら何を騒いでいる!!」

 

 「「「千冬姉(義姉さん)!?」」」

 

 スッパァァァァン

 

 

 「「「あっだぁ!?」」」

 

 「まだ、織斑先生だ!!

 

 ひとまずは、掃除用具を囚人房に放り投げて来るから、一夏は戻った私にマッサージしてくれ」

 

 千冬姉により、箒は再び捕縛されて反省房では脱走する為に地下の囚人房へ移動となったが、千冬姉が再び戻りマッサージを御所望したのは言うまでも無かった。

 

 そして、日曜日になると四人で出掛ける事になり、モノレールの駅の構内と駅前では一悶着が起きていた。

 

 夫婦であっても、デート気分を味わいたいからと、三人とは駅前の噴水前広場で待ち合わとなったのだが、駅に着いて駅前の噴水前広場の光景を見て唖然となった。

 

 

 シャーロットの場合

 

 私は私服が無いから、学園の制服でのお出かけとなった。

 

 早く、待ち遠しくてイチカとみんなと待ち合わせした噴水前広場へと一人向かったのだ。

 

 だけど、私の大玉スイカの様な巨大な胸と高い身長のバランスが取れたモデルの様なスタイルに女性からの嫉妬の視線は気にならないが、男性からの胸へのエロい視線はイライラのボルテージを高めて行く事になったのだ。

 

 そんな時、たまたま一人の男子高生だろう。

 

 その男子高生がナンパして来たのだった。

 

 「ねぇ、そこの可愛い銀髪の娘、IS学園の生徒でしょ?

 

 良かったら、俺とデートしない?」

 

 「夫待ちですので結構です!!」

 

 「はぁぁ!?

 

 学生で結婚って!?」

 

 これで引き下がってくれたらと思うが、諦めずにナンパしてくる男。

 

 はっきり言ってウザかった。

 

 「そんな夫より、楽しい事ができるよ?」

 

 あんたがイチカをそんな呼ばわりする事に段々イライラして来たのだ。だが、イチカ達と決めた待ち合わせ時間より、早く来たのは私だ。

 

 「……ウザいから、消えろ」

 

 「んだと!!

 

 夫より楽しい事出来るって誘ってんだぞ!!」

 

 「結構だ、と言っても判んない?」

 

 ドッゴォ

 

 「へっぶらぁ!?」

 

 また、私はナンパ男にやってしまった。

 

 そう、噴水の池の中にはナンパ男達の墓標の様に、彼らが頭から突き刺さっていたのだった。 

 

 

 鈴の場合

 

 シャーロットが制服なら、あたしも普段着でも構わないけど制服で行こう。

 

 イチカが部屋から出たのを確認してから、あたしは自分用のクローゼットから新しく新調し改造した清楚系の落ち着いたワンピース型の制服を着る事にしたのだ。

 

 無論、アンにも秘密だった。

 

 あたしは、結婚したのだから子供の様なツインテールを辞めようと思った。思い切りって、ツインテールだった髪をリボンを外して長い髪を下ろし、コテ型のアイロンを当てながら整えたロングのストレートヘアにしてワンポイントに桜の花が可愛いヘアピンを飾りにして準備は完了した。

 

 そうして準備が完了し、イチカが乗ったモノレールに急ぎ乗り込んだ。

 

 「あっ、鈴お姉ちゃん!!

 

 どうしたの、その髪型!?」

 

 「まさか、乱!?」

 

 まさか、私服姿の乱とのエンカウントだった。

 

 あたしは、レゾナンスがある駅に着くまでは、乱から髪型を変えた事や色んな事を根掘り葉掘り聞かれて一夏と駅の構内で会うまで疲れたのだった。

 

 アンの場合

 

 あたしは別に準備は要らなかった。

 

 イチカが部屋を出たのと同じくして、学園で出た所で『偶然だね』をやれば良い。

 

 「お茶でも…ヘッブラァ!?」

 

 バッキィ

 

 「うっさい、このフニャ■■野郎!!」

 

 そして、子連れの親子に見られながら、ナンパ男はごみ箱へと頭から落ちたのだった。

 

 「ねぇ、ママ。

 

 しつこい、ナンパ男はああやってごみ箱に捨てるの?」

 

 「……(あぁ、なんて娘に言ったらいいか判んないわ…)」

 

 ところが、モノレールの駅に行ってもイチカとは会えず、小煩いナンパ男達があたしをナンパしてくる為にイチカに出逢えない憂さ晴らしにごみ箱へと全力で殴り飛ばしながら噴水前広場へと着いたのだが、シャーロットの後ろの噴水の中には男達がオブジェクトの様に頭から刺さる光景があるのだった。

 

 「あんた、何やってんのよ…」

 

 「ナンパ男がウザくて、殴り飛ばした」

 

 ジオン軍の若い男性兵士が密かにやっていた、お嫁さんにしたくない女性軍人のTOP10に入っていたあたしとシャーロット。

 

 無論、男性兵士をぶっ飛ばして聞き出したあたし達二人への理由は、『絶対に、あの二人は鬼嫁になるだろ』だった。

 

 因みに、毎年ながらランキングはキシリア閣下が1位をキープし、あたしとシャーロットが5位と6位だった。

 

 ただ、納得出来ないのがシーマ大佐で、見た目に反して超家庭的らしくお嫁さんにしたいランキングでは堂々の10位を果たして、アイナ・サハリン中尉が1位だった事だった。

 

 そんな、二人(鬼嫁)が夫を持ち、ナンパして来た男達がどうなるかと言えば、駅の構内のごみ箱の中に殴り飛ばしてナンパ男達を捨てたり、待ち合わせ場所の噴水前広場で噴水の中に殴り飛ばしたナンパ男達の刺さったオブジェクトが異様に増える光景は、あたし自身が予想していた通りになったなど口が裂けても言えないだろう。

 

 無論、待ち合わせで目の前に居るイチカと鈴は、私達二人を見て唖然または呆れているに違いない。

 

 「あたしの予想通りに成ったわよ…」

 

 「もしかて、駅の構内のごみ箱もか?」

 

 「十中八九、犯人はアンね」

 

 あたし達、二人がイチカと鈴の場所に行くと、呆れていたのだった。

 

 

 

 総合商業施設レゾナンスはあるゆる物を売っているお店が点在して、無い物はないと言わしめる程に品物が豊富に売られていた。

 

 「イチカ、あたしはコレ欲しい!!」

 

 「これ、S&Wの44マグナムじゃないか!?」

 

 アンはやはり、アメリカから出店している銃火器専門店のガラスケース内の、アンの居た宇宙世紀では骨董品扱いになるS&W社製の44口径のリボルバー式拳銃の44マグナムに眼を輝かせていた。

 

 「それと、面白い物が在ったから、一括払いで買っちゃた」

 

 「うっげぇ、へカートⅡ!?」

 

 そして、アンが買って握っている大きいケースの中身は、フル装備仕様のPGMのへカートⅡだった。それだけで無く、専用の実弾である12.7ミリ弾を3箱にマガジンが8つ、更に高性能のスコープまで買っていた。

 

 因みに、総合計の値段は限定版のスバルのラリー仕様のインプレッサが一台買える値段だと言って置く。

 

 そして、シャーロットもグロスフスMG42と言われる、ドイツのグロスフス社製のグロスフスMG42機関銃を三脚やドラム式マガジンに専用の実弾までもセットで買い、二人は余りの重量から学園に送ったのは言うまでもない。

 

 だが、俺の認識が甘かった。

 

 「一夏、二人が銃火器を買うなら、あたしも買ってきたわよ」

 

 とレシートを観て鈴が買ったのは業物の青龍刀だった。

 

 「一体、何処に戦争を仕掛けんだよ…」

 

 と呆れて、何も言えない俺だった。

 

 これには一気に疲れたが、三人からの受難は続き、三人はランジェリーショップへと足を運ぶ。

 

 シャーロットは自分に合うサイズのブラを見付けたが、棚の下で探していた鈴とアンに災難が降り注いだのだ。

 

 「大きいからって、高い位置に!!

 

 あっ…」

 

 掛けられた位置が高く、シャーロットが辛うじてブラを取り、脚立から降りようとしたら下に居た二人にブラが落ちたのだった。

 

 パッサァ

 

 「「!?」」

 

 下に居た二人の頭に収まる様に落ちたブラは見事に二人の頭に被さり、二人はシャーロットが取ったブラを手に取り叫ぶ。

 

 「「うっなぁ!?」」

 

 「ごめん、落とした」

 

 「えっ…Hの120…」

 

 「シャーロットが配属された当初は、あたしと変わらなかったのに…」

 

 「アンも鈴も大丈夫?」

 

 「「どんだけ、デカいのよ!!」」

 

 「鈴!?」

 

 「「ウッガァァ!!」」

 

 「アンまで!?」

 

 自分のブラのサイズを何度も見比べてから圧倒的な社会的格差を目の当たりした二人はシャーロットにキレて、シャーロットはキレた二人から胸を鷲掴みにされ、もみくちゃにされた後は息を絶え絶えになるのだった。

 

 三人の下着や普段着となる私服を買い、ファミレスで昼食を済ますと、束さんから連絡が入る。

 

 

 『いっくん、シャーロットちゃんの専用機が出来たから、皆で本社に来て』

 

 「まだ、時間が有るので行きますよ」

 

 『整備室に居るからね』

 

 束さんからの電話を切り、みんなに話して行く事になった。

 

 本社は元倉持技研が在った場所にある。

 

 そして、俺の白式とアンの蒼式は三世代型の量産機を目的に開発された専用機だった。

 

 「束さん居るか?」

 

 「やぁやぁ、みんな来たね。

 

 じゃあ、シャーロットちゃんの専用機のお披露目なのだ。専用機の名前は翡翠で単機強襲襲撃型の機体なのだ」

 

 整備室のハンガーには布が掛けられ、束さんがロープを引っ張って現れた機体は緑色の機体だった。

 

 「束さん、まさか…」

 

 「いっくんが思っている機体なのだよ」

 

 記憶が確かなら、この機体の元になった機体は統合整備計画のMS-14Jに並ぶ機体だったはずだ。

 

 「まさか、イチカ。

 

 これって、パパの部隊に1機だけ配属された機体だよね」

 

 「イチカ、何が元になっているのよ?」

 

 「一夏?」

 

 そう、元になった機体はア・バオア・クー工廠で一度だけ見た事があるMS-18Eケンプファーのバリエーション機で、ビーム兵器を中心に装備したタイプのMS-18Fケンプファーだった。

 

 武装は記憶が確かなら、ビームバズーカとビームショットライフル、ビームサーベルに60ミリバルカン、シュルムファウストなどを重装備する強襲型のモビルスーツだった。

 

 「あぁ、ア・バオア・クー工廠で見たケンプファーだ」

 

 「束さんでも、回収したシャーロットちゃんのリゲルグのビームサーベルを解析したけど、技術的に難しいからE型のパッケージにしてあるよ」

 

 「じゃあ、まさか…」

 

 アンの予想が当たっていた。

 

 「今はE型だけど、パッケージとしてF型も作るよ」

 

 ハンガーに掛かっている武装は貫通能力を高めてあり、ISの装甲材と同じ弾を使用するショットガン。

 

 アンの専用機にも装備している、改良型のジャイアントバズーカと近接用にレーザーサーベル。

 

 そして、近接武器で一発限りだが最強のチェーンマインが装備されていたのだった。

 

 そして、ビームサーベルの解析が完了次第に蒼式と白式に翡翠にもビーム兵器への移行を行うらしい。

 

 だだ、C型のレーザーキャノンの手持ち化した、大出力のレーザーバズーカはエネルギーの大量消費の問題から、追加装備は見送られたのだった。

 

 シャーロットの専用機、翡翠を受け取り学園へと戻ったのだ。

 

 ただ、俺は知らない。

 

 アンが重火器が大好きである事を全員が見落とし、密かにレーザーバズーカを蒼式にインストールして装備しており、ドイツからの転入生が来て衝突して使用するまでは知らなかった。

 

 

 

 

 



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閑話 アクシズでのシーマ・ガラハウの独白

 

 

 

 アクシズの内部にある、とあるバーに一人の若い女性はロックのコニャックを飲みながら想い更けるのは、ア・バオア・クー決戦で行方不明となった一人の少年の事だった。

 

 そして、シャア大佐に拾われ、通商破壊作戦から活躍したイチカ・オリムラをア・バオア・クーまで従軍記者として追い駆けた一人の女性記者がバーに入り、お酒を飲む女性に話し掛ける。

 

 「私はフォン・ブラウン市の記者でカナデと言います。すいませんが、シーマ准将ですか?」

 

 「おや、あたしの事かい?

 

 あたしは、一つの艦隊司令を勤めるシーマ・ガラハウ准将さね」

 

 「では、この写真に見覚えはありますか?」

 

 一枚の写真はア・バオア・クーにて模擬戦後に撮られた集合写真。

 

 確かに、あたしやジョニー少佐にシャア大佐。

 

 そして、坊やと珍竹林娘の率いたオリムラ中隊と撮った写真だった。

 

 「あたしが写っているから間違いないさね。

 

 さて、あたしが酔って気分が良いついでに、話をしようじゃないさね」

 

 「えぇ、是非に!!」

 

 「あたしには一時、燻っていた時が在ったさ」

 

 そう、坊やに出合うまではジオンの汚れ仕事ばかりで嫌になっていた。そして、ソロモンの防衛面での戦力不足からあたしの艦隊が派遣されたのさ。

 

 そして、若かったあたしは除け者扱いされて、バーでヤケ酒三昧だった。酒に潰れた時に介抱してくれたのが、ソロモンに新たに転属して来た坊やと珍竹林娘の二人だった。

 

 「そうだったんですね」

 

 「恥ずかしい話さね。

 

 酒とはさね、酔った勢いが怖いさね…」

 

 今でも、あたしは忘れない。

 

 酔った勢いで、坊やに抱き付いて大泣きしながら、汚れ仕事での愚痴を全て話してしまった。

 

 その話が、イチカからドズル閣下の耳に入り、あたしの名誉と地位が回復したのだ。

 

 ただ、坊やの入浴中にあたしが突入して、お風呂の中で坊やを背中から抱き締めて可愛がったのは懐かしいし、珍竹林娘が帰るまでにイチカをお風呂場にて美味しく頂いたのは二人の秘密にしている。

 

 もし、あたしがブリティッシュ作戦の真相を坊やに話して無ければ、腐った人生をしながら野垂れ死んだと言っても過言でもなかった。

 

 「それで、坊やのお陰であたしは立ち直れたさ」

 

 「そうだったんですね」

 

 あたしが立ち直る為に坊やにデカい借りを作り、返すチャンスだったさね。

 

 だけど、坊やはあの珍竹林娘と一緒にア・バオア・クー決戦では白い悪魔によって部隊が壊滅し、たった2機で連邦の主力艦隊を護るモビルスーツ隊に特攻して行方不明となったさね。

 

 「でも、イチカ大尉とアン大尉の総撃墜数は凄い数でしたね」

 

 「確かに、あたしから言わせたらシャア大佐やジョニー・ライデン少佐並みの化け物に短期間で育ったパイロットは見た事がないさね。でもね、あたしは思うのさ。坊やと珍竹林娘が生きていると信じてるのさ」

 

 「何故ですか?

 

 ア・バオア・クー海戦からは既に二年近いです。

 

 それに、お二人の専用のゲルググは無人だったと…はっ!?

 

 まさか、神隠しとかの非科学的な事でも信じてるのですか?」

 

 「おや、記者は気付いたかい?」

 

 確かに停戦中を理由に坊や達を探す救助隊を、あたしの部隊から大量に出した。

 

 「確かに、見つかったのは二人の専用機だった大破した無人のゲルググだったさね…

 

 だがね、二人の機体の周りが余りにも綺麗過ぎたのさね。

 

 まるで、何かに吸い込まれたかの様にさね。

 

 だから、生きていると思うさね」

 

 無論、大破した機体はあたしの部隊が回収した。

 

 もし、あの二人が戻って来た時の専用機としてアクシズの工廠に預け、二人の専用機のリゲルグ改として改造して保存されている。

 

 「別の話ですが、オリムラ中隊に唯一の生き残りが居ると噂で聴きましたが?」

 

 「一人だけ居るさね。彼女の父親は機密扱いだから言えないが、とある特殊部隊の隊長の一人娘さね。

 

 それも、とびっきりの跳ねっ返り娘さね」

 

 「もしかして、問題児ばかり集まる教導大隊のシャーロット少佐ですか?」

 

 「そうさねぇ」

 

 だけど、ア・バオア・クーからの撤退命令に従う時に、サイクロプス隊の隊長の馬鹿娘で坊やの部隊に居たシャーロット中尉が旧ザクに複数のジオン兵と一緒に掴まり、ワイヤーに引かれながら脱出していた所を拾った。

 

 無論、馬鹿娘には隊長の坊やと珍竹林娘が行方不明なのを話したさ。

 

 馬鹿娘が、その場で座り込んでいつまでも泣きじゃくる姿は、あたしには胸が痛かった。

 

 「でもさね、シャア大佐とハマーン様の出来事は傑作だったさね…」

 

 それから、アクシズに渡り最初に再会したのは、お互いに頭にタンコブを作り仮面をしていないシャア大佐とハマーン様に中央付近が凹んだフライパンを握るミネバ様だった。

 

 シャア大佐に聴いたら、坊やの影響を強く受けたミネバ様はハマーン様とシャア大佐がミネバ様の教育問題で二人で喧嘩した所を観てしまい、フライパンで二人の頭を『喧嘩はめっ』と殴ったらしい。

 

 当時、3歳児だったミネバ様はイチカの手作りのおやつが大好きで、将来はお嫁さんになるとドズル閣下に言って泣かせた程だった。

 

 ミネバ様がアクシズへ逃げる際も、二人を連れて行く気だったが、二人の部隊が戦うのはソロモンでの激戦区で二人が撤退するのは不可能に近かったらしい。

 

 ミネバ様が二人を叱ってからは、二人は寄りを戻したらしくて最近、結婚をした。

 

 「イチカ大尉に影響を受けた方が多いんですね」

 

 確かに、影響を受けたのはあたしだけでなく、ザビ家の末男を除いた三人の兄弟達の仲違いも修復していたし、坊やがミネバ様からの信頼を得てドズル閣下に進言した事でゲルググとリックドムⅡなどの製造が早まり、ア・バオア・クー決戦では大損耗を回避してアクシズにベテランパイロットが多くが渡っていた。

 

 その中には、大量のエースパイロットが存在するキマイラ隊やあたしの艦隊とデラーズ閣下の艦隊までもが、殆ど生き残った状態で終戦を迎えてアクシズに渡っている。

 

 先週のアクシズ攻防では、シャーロットがリゲルグに乗ったままティターンズの小隊と一緒に行方不明にはなったが、戦力を失わずに乗り切っていたのだった。

 

 そして、ハマーン様からは、地球圏への足掛かりにルナツー攻略戦をキマイラと隊共に行い、総指揮をあたしに任されている。

 

 無論、交換条件にあたしの艦隊とキマイラ隊のモビルスーツ隊には、最新鋭のリゲルグとゲルググ改を最優先で配備する事で了承したのだ。

 

 「あたしも…」

 

 何故か、ルナツーでイチカ達に逢えそうな予感に、あたしはニヤリと笑いコニャックを飲み干したのだった。

 



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金銀の編入生と悪夢再び

 

 

 みんなと出掛けた日曜日の翌日、束社長からのメールによりフランスからの転入生が来るのは知っていた。

 

 その転入生は、ホワイトラビット社フランス支社のテストパイロット、シャルロット・デュノアだった。

 

 彼女は元デュノア社の社長の娘だった。

 

 当時の束社長が、俺が女性利権団体によって殺されたと想い復讐に駆られた事により、過去に日本で女性利権団体への報復として引き起こし、世界の女性利権団体を震撼させた『女性利権団体日本支部襲撃事件』と日本国内での『女性利権団体会員の暗殺事件』などで、日本の女性利権団体の会員をフランスへと保護すべく来日したが、宿泊先のホテルで束さんにより夫人は捕まり、フランス支部の女性利権団体の支部長だと判っていた為に殺されたのだ。

 

 そして、束社長の復讐の矛先はフランスの女性利権団体にも向き、夫人本人の死亡と夫人によるフランス政府との癒着は束社長により報復次いでに暴かれ、デュノア社が警察による一斉摘発された後にデュノア社で夫人がしていた多額の横領が明るみとなり、企業としての信用失墜と大量の逮捕者が出た事により経営が悪化する。  

 

 しかし、束社長はデュノア社の状況を敢えて狙い、技術提供と経営のクリーン化を理由にデュノア社に協力を理由に近づき、倉持技研の時と同じ方法でホワイトラビット社が大量のデュノア社の株を買った後に買収される。

 

 後に、デュノア社を吸収合併してフランス支社としたのだ。

 

 無論、デュノア社社内に居た女性利権団体会員の女性社員は調べ上げた上で様々な理由で全員解雇している。

 

 その際に、フランスの代表候補生だったシャルロットはデュノア社の不祥事により候補生を辞め、パリの女子高に通っていた所をフランス支社へ視察に来ていた束社長が女子高に現れ、シャルロットの操縦技術を高く買われてホワイトラビット社のテストパイロットとして誘われ、フランス支社のテストパイロットとして入社したのだ。

 

 そして、入社後に本社から彼女に与えられた専用機は白式と蒼式の稼働データを元に少数が量産された先行量産型の『流星』を専用機にしていた。

 

 ただ、テストパイロットである為、専用機カラーは認められて無い為に胸と腰回りのアーマーは蓬色に染められ、肩と腕や脚はグレーで染められた量産型ゲルググと同じカラーリングをしていた。

 

 ただ、セシリアのブルーイェーガーは元からブルーである為、特例でセシリアのパーソナルカラーのブルーがそのまま専用機カラーに認められている。

 

 アンから見るれば、ライトブルーとコバルトブルーの2色を専用機カラーにしているので、同色系統で整備の際にややこしいらしい。(一度だけ、ブルーイェーガー用のインディーブルーでの整備でお色直しをしていた蒼式を染めてしまった事故が在ったらしい)

 

 流星の換装システムのパッケージにはA型とB型にC型の三種だけだが、大量のバススロットがある為に武装は彼女の好みに合わせて装備を選ばした為に関与していない。

 

 そして、本社からのテストパイロットとして学園へと編入するのが単機強襲襲撃型の翡翠を専用機にするシャーロットだった。

 

 

 

 無論、今は朝の訓練で企業名義で貸し切り中の第三アリーナでは、シャーロットが専用機の翡翠の慣熟訓練をしているが翡翠専用装備のショットガンは厄介極まりなく面制圧で撃つ為、俺でも肩のアーマーに被弾している状態だった。

 

 「やっぱり、OO(ダブルオー)パックのショットガンは厄介だな!?」

 

 「でも、装填数が5発しか無いのが不便ね」

 

 「2丁同時に時差射撃するシャーロットには、言われたくねぇ!!」

 

 「イチカだって、普通なら当たれば関節とかが壊れるのにギリギリで躱して、肩のアーマーだけの被害だけってニュータイプなの!?」

 

 「そう言われてもな、見えるから仕方がないな」

 

 弾切れになったショットガンを投げ捨てると、バックパックにマウントしてある二つのジャイアントバズーカを両手に持ちながらジャイアントバズーカを放ちイチカの白式を狙うが、イチカの熟練した回避運動とニュータイプ能力による先読みでジグザグに空中で動かれる為に躱されていたのだった。

 

 「やっぱり⁉

 

 隊長はニュータイプで、しかも腕が鈍っていない!?」

 

 「ニュータイプだか分からないが、今度は俺からだ!!」

 

 「なっ!?

 

 きっ、消えた!?」

 

 「俺はここだ!!」

 

 「きゃあ!?

 

 あぁ、負けちゃった」

 

 瞬時加速とリボルバーを織り交ぜたジグザグの加速でジャイアントバズーカの狙いが付けられず、バズーカを投棄してレーザーサーベルを抜き、斬艦刀を構えながら来るイチカを迎え撃とうとするが、イチカの瞬時旋回加速で目の前から姿を消され、死角からの斬艦刀で斬られてシールドエネルギーを失ったのだった。

 

 朝の訓練を終えて、シャワー室では嫁三人の突入があって妻達の身体を洗わされたり、朝食を食べに行けば食堂をピンク色空間に染め上げ、他の生徒が甘い空間に耐え切れずにホットしか無かったブラックコーヒーを一気飲みをして、口内を火傷する惨事の中で朝食を済ませたのだった。

 

 クラスに四人で仲良く向かうが、途中でシャーロットは編入生である為に職員室へ向かい、俺達は別れて教室へと向かったのだ。

 

 

 山田先生と千冬姉が教室に入り、SHRが始まった。

 

 「皆さん、このクラスに三人の転入生が入りますね」

 

 「では、入って来い」

 

 教室に入って来たのは、フランス支社のテストパイロットのシャルロットと本社のテストパイロットで妻のシャーロット。

 

 そして、銀髪で眼帯をする少女は軍人だと一目で判る。

 

 「始めまして、僕はホワイトラビット社フランス支社のテストパイロットをしてます、シャルロット・デュノアです」

 

 とシャルロットが自己紹介して、シャーロットが自己紹介をしていた。

 

 「始めましてかな?

 

 私は織斑シャーロット。

 

 元軍人ですが、ホワイトラビット社本社のテストパイロットを努めています。一応、イチカの妻の一人ですので、イチカに手を出したら痛い目に遭わせますのでよろしくね」

 

 シャーロットの暴露に生徒達が絶叫する。

 

 『さっ、三人目の織斑君の奥さん!?』

 

 「スタイルで、負けたァァァァァ!?」

 

 「何、あの大玉スイカみたいな胸…」

 

 「あっ、奥さんであるアンさんの方が胸、小さ…ひっぃ!?」

 

 アンは口走った山谷さんに半ギレしていたようで、瞬時に近づきへカートⅡの銃身を腿に置き、銃口を山谷さんの頭にゴットリと当てて向けていた。

 

 「誰が、誰の胸が小さいですって?

 

 今なら、特別に対物ライフルで12.7ミリの鉛弾をプレゼントするわよ?」

 

 「すっ、すみませんでした!!」

 

 山谷さんがアンにジャンピング土下座をして謝るのだった。無論、シャーロットは自慢の胸を腕で抱きながら揺らし、アンをこれでもかと挑発していたのだ。

 

 シャーロットからの挑発に青筋を何本も浮かべ、ブチ切れる寸前に千冬姉が止めに入り修羅場は回避されたのだ。

 

 「アン、私もシャーロットに胸のサイズで負けて悔しいのが判るが、そこまでにしろ。全く、シャーロットも胸をアンに向けて揺らして挑発するな。

 

 では、ラウラ挨拶しろ」

 

 「はっ、教官!!」

 

 「織斑先生だ」

 

 「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

 続きを聞こうと興味深々のクラスメイト。

 

 「あの〜、以上でしょうか?」

 

 山田先生が心配しそうに質問して、ラウラが答えた。

 

 「以上だ」

 

 ズッゴォォと、クラスメイトが一斉にコケるがドリフのコントの様に息が合っていた。

 

 そして、ラウラは俺を見付けたのか、睨みながらズカズカと歩み寄る。

 

 「き、貴様が織斑一夏か!!」

 

 「あぁ、そうだが?」

 

 「私は、貴様が教官の弟だとは認めない!!」

 

 確かに、ラウラはこの一言で千冬姉の狂信者だと判る。

 

 「勝手に言っていろ。

 

 俺は俺で、織斑先生は織斑先生の想いも理想もある。

 

 その前に、お前から『認めない』と言われるのはお門違いも甚だしいし、自分を持たないお前に言われる筋合いは全く無い」

 

 「なっ、何だと貴様!!」

 

 ラウラは顔を真っ赤にして激怒する。

 

 「そして、軍人としては沸点が低過ぎるのは問題だ!!

 

 直ぐに死ぬぞ?

 

 一から教練部隊で精神強化も含めてやり直せ!!」

 

 「なっ、何を!!

 

 ガッ!?」

 

 激怒し、キレたラウラは手を平手に振りかぶり、俺を平手打ちしようと振り下ろすが、逆に俺はラウラの腕を掴み上げて自分に引っ張ると、ジオンの軍隊式格闘で肘打ちを条件反射で鳩尾に打ち込んでいたのだった。

 

 ラウラは鳩尾に肘打ちを受けた影響で、床に崩れ落ちる様に倒れて気絶してしまい、一連の騒動にクラスメイトも俺が初めて女性に手を出した事に騒然とするが、俺が軍人だった事実を本音を含めて数名の生徒が気付く事態となった。

 

 「何で、私のクラスは問題児が多いのだ…」

 

 俺とラウラの一悶着に頭を抱えてしまう千冬姉と、教練部隊での出来事にデジャヴを感じたシャーロットが千冬姉を慰めるように言う、何とも珍しい二人のやり取りが起きるのだった。

 

 「織斑先生、ご愁傷様です」

 

 「シャーロットは軍人で教導部隊の教官だったな…」

 

 「はい、私も問題児達(マシュマーやイリア、キャラなど)ばかりでしたので、今の事態には経験が有りましたので織斑先生の気持ちがわかります。ですが、一目で見て解りましたが、問題が起きる前に二人で話し合う事を提案します」

 

 「やっぱり、ラウラにも技術面だけでなく、精神面も教えるべきだったか…だが、お前達三人が一夏の嫁で、ある意味では助かる…」

 

 山田先生がラウラを医務室へ運ぶ最中、千冬姉とシャーロットは教官同士だった共通点に親近感を抱き、山田先生が戻るまで意見交換をしていたのだった。

 

 

 

 1時限目と2時限目は2組との共同の技術の授業だった。だが、ラウラは気絶したまま医務室で寝ている為に参加していない。

 

 ジャージ姿の千冬姉から、鈴とセシリアが呼ばれる。

 

 「二人には模擬戦の相手をしてもらう」

 

 「あの、織斑先生、お相手は鈴さんですの?」

 

 「セシリアが相手なら、またフルボッコにしてやるわ」

 

 「ヒッィ!?」

 

 毎回、第三アリーナでは鈴とセシリアで模擬戦をするのだが、紅式のコアとの同調率が高すぎる為に鈴に秒殺され、ある意味のトラウマをセシリアに与えてしまっていた。

 

 「鈴、セシリアを怯えさせるな。

 

 二人の相手はお前らではなく、山田先生が行う」

 

 キィィィィィン

 

 空気を裂く音に上を見上げれば制御不能になったラファールを纏う山田先生が、俺がいる場所に落ちて来たのだった。

 

 「イチカ、あたしが殺るわ!!」

 

 「アン、字が違う!?」

 

 アンは部分展開したロングレンジレーザーライフルを構えるとラファールに向かって狙撃したのだ。

 

 「きゃあ!?」

 

 『マジで、山田先生を撃ちやがった!?』

 

 生徒からのツッコミをさて置き、レーザーはラファールを纏う山田先生にヘッドショットを食らわして撃墜し、軌道がズレた事でアリーナの隅っこへと墜落して強制解除された山田先生は目を回しながら気絶していたのだった。

 

 「アン、見事な射撃だった。

 

 「えっへへ」だが、一夏とお前達全員と模擬戦するか、一夏と一対一で模擬戦をするか嫌な方を選べ」

 

 「うっなぁ!?」

 

 「どうだ、嬉しいだろ?」

 

 「全然、嬉しくない!?」

 

 結局、アンは俺との一対一の模擬戦を選び、二人での模擬戦となる。

 

 シャーロットは隊長だった俺と副隊長だったアンのガチの模擬戦に、まだまだ二人には遠いなと悟り、シャルロットは技量の違いを見せ付けられて、説明をする事すら忘れて千冬姉から出席簿アタックを食らっていたのだった。

 

 結局、二人の模擬戦はアンが意地を俺に見せ付けて、六割のシールドエネルギーを削るが、力及ばずに斬艦刀で一閃されて負けたのだった。

 

 「二人共、やり過ぎだ!!」

 

 「「キャウン!?」」

 

 無論、白熱し過ぎてガチの模擬戦に発展した為に白式は中破し、蒼式も同じく中破になっては千冬姉は呆れ、怒られた俺とアンだった。

 

 放課後は、第三アリーナの整備室で壊れた部品を予備パーツで交換して修理したが、白式用の関節のパーツが足りなくて蒼式用の関節パーツを代用して直したのだった。

 

 だが、放課後で対峙した例の機体と戦い、蒼式用の関節では耐え切れなくて白式が大破する要因になるとは知らなかった。

 

 修理を終えた二人は、第三アリーナのグラウンドに出て、動作確認をしたりして異常が無いかを確認していた。

 

 「白式は大丈夫みたいだな。

 

 アンはどうだ?」

 

 「大丈夫ね。

 

 でも、休みの時に本社に整備に出した方が良いかも」

 

 「そっか。

 

 やっぱり、関節の磨耗が早いな…」

 

 無論、貸し切り中の第三アリーナにはホワイトラビット社のテストパイロットや企業代表などが訓練に勤しんでいた。

 

 鈴はやはり、EXAMを使い熟すためにフィジカルトレーニングを重点的にしていてアリーナの客席周りの廊下を周回しながら走り込み、シャーロットはスコールさんからラピッドスイッチを教わりながらIS関連の技術を学んでいた。

 

 無論、テストパイロットのセシリアは近接戦闘を、シャルロットは流星の慣熟訓練をしていた。簪もだが、二人の訓練に混ざりながら訓練している。

 

 そんな時に黒いISを纏う乱入者が現れたのだ。

 

 ズッドォォォン

 

 腹に響く、両肩のレールガンからの砲撃。

 

 「きゃあ!?」

 

 最初に狙われたのは、セシリアが纏うブルーイェーガーだった。シャルロットと苦手な近接戦闘訓練中で無防備に近い形で不意打ちを食らい直撃していたのだ。無論、セシリアは衝撃により気絶して強制解除されるが、シャルロットが抱えた為に無事だった。

 

 「あれ、ドイツでトライアル中の第三世代機のシュヴァルツェア・レーゲン!?」

 

 シャルロットが気付き叫ぶ。

 

 「ふん、ホワイトラビット社の機体など大した事は無いな」

 

 「あんた、ホワイトラビット社の関係者以外立入禁止なの判っててやったの!!」

 

 そして、乱入者に叫び、キレたのはアンだった。

 

 「アン、それは!?」

 

 アンは、蒼式の拡張領域から出したのは、追加武装として見送られた高出力のレーザーバズーカだった。

 

 「アン副隊長!?」

 

 「それ、貰うわよ!!」

 

 無論、武装はそれだけで無く、翡翠が瞬時武装装備訓練中に出したウェポンズフリー状態のチェーンマインを二重瞬時加速して翡翠から奪い取り、リボルバーで更に加速する。

 

 「丁度いい、私と戦え織斑一夏!!

 

 朝の仕返しだ!!」

 

 「お前は、ラウラ・ボーデヴィッヒか!?」

 

 だが、乱入者はプラズマ手刀を展開して、瞬時加速で俺が纏う白式へと突っ込む。その、乱入者がラウラ・ボーデヴィッヒだと判った瞬間だった。

 

 「少しはやる様だな!!」

 

 「本当に沸点が低いな!!」

 

 斬艦刀をコールして展開し手刀を受け止める。

 

 「貴様!!

 

 なら、これはどうだ!!」

 

 「ちぃ、AICか!?」

 

 白式が急に動けなくなったのは、ドイツで開発中だったAICだと気付く。だが、第三アリーナにはホワイトラビット社関係者が多数いる事を失念していたラウラは、シュヴァルツェア・レーゲンに急に絡み付いた物に気付くのが遅れたのだ。

 

 「あたしを忘れんじゃ無いわよ!!」

 

 「なっ!?」

 

 そう、アンだった。

 

 アンはシャーロットからチェーンマインを奪うと、俺からのプライベートチャンネルから指示を聞き、囮となった俺がAICに拘束された瞬間を待っていたのだ。

 

 「食らいなさい!!

 

 チェーンマインよ!!」

 

 「不味い!?」

 

 「無駄よ!!」

 

 「グッワァァァァァァ!?」

 

 シュヴァルツェア・レーゲンに絡み付いたチェーンマインの握り手に付いている起爆トリガーを引き、チェーンに付いている対IS用爆弾が一気に爆発する。

 

 無論、対IS用の爆弾の為に効果は抜群で、絶叫を上げるラウラ。

 

 「コレは、お釣りよ!!」

 

 「なっ!?」

 

 アンが情け容赦無く、レーゲンにレーザーバズーカをぶっ放し、レーゲンをズタボロにしたのだ。

 

 だが、ラウラはふらりとズタボロのレーゲンを立ち上がせて叫ぶ。

 

 「まだ、私は負けてない!!

 

 レーゲン、私に力を寄こせ!!」

 

 そんな時に白星と誰かの声が俺の頭に響く、白星が悲鳴を上げたのだ。

 

 『この記憶を貰って行くわよ!!

 

 独りぼっちのご主人の為に!!』

 

 『いっ、嫌ァァァァ!?

 

 レーゲンコアにアクセスされて、イチカの悪夢の記憶がァァァァ!?』

 

 「グッワァァァァァァ!?」

 

 白星の悲鳴と同じくして、ラウラは絶叫を上げながらレーゲンは液状になり姿を変えたのだ。

 

 「まさか、アイツかよ!!」

 

 そう、目の前に現れたのは、俺達の部隊を壊滅させた連邦の白い悪魔が現れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 



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黒いガンダム

 

 

 「まさか、アイツかよ!!」

 

 イチカの叫びにあたしは、あの黒いガンダムを見て顔が真っ青になる。

 

 忘れもしない、ア・バオア・クーの戦い。

 

 あたし達のオリムラ中隊には、あたしを含めて3人の女性パイロットがいた。

 

 一人は、あたしと同じイチカの妻のシャーロット。

 

 ア・バオア・クー決戦時には酷い生理痛で出撃が出来なくて生き延びた一人で、あたしとイチカを取り合ったライバルでもあり親友だった。彼女はあたし達の部隊に配属前はアジア方面侵攻大隊ではMS-07グフを駆り、シンガポール基地を拠点にして暴れていたパイロットで、ア・バオア・クー決戦後はアクシズに亡命して教導大隊で教官をしていたが、アクシズ防衛戦で黒い穴に吸い込まれて先行生産型のリゲルグと一緒にイチカの世界に来たのだ。

 

 そして、もう一人はミチル・タチバナ。

 

 あたし達の部隊を纏めてくれた優しいお姉さんだったが、ア・バオア・クー決戦ではガンダムにコクピットを撃ち抜かれて即死している。配属前は、シャーロットと同じアジア方面侵攻大隊所属で上海の宇宙ステーションの防衛任務でMS-06Kザクキャノンを愛機にしていた。

 

 無論、ソロモンに上がってからオリムラ中隊へと転属となり、ア・バオア・クーではMS-14Cゲルググキャノンを受領する予定がキマイラ隊を優先されて受領が出来なかった。

 

 あたしは二人とは、イチカに恋する乙女であり、イチカを巡り争うライバルでもあり、姉妹の様に部隊で過ごした仲間だった。

 

 だから、姉の様に慕いライバルだったミチルを殺したガンダムが憎い。

 

 それは、シャーロットも同じだろう。

 

 シャーロットも、ジャイアントバズーカを両手に持ち、イチカの援護に回る。

 

 あたしは、蒼式をJ型に換装して、あの黒いガンダムにロングレンジレーザーライフルで狙いを付けるが、あたしの恐怖なのかが判らないけど、息が荒く手先が振るえて照準が全く定まらなかった。

 

 「どうしてよ!!

 

 どうして、こんな時に限って、あたしは役立たずなのよ!!」 

 

 叫ぶけど、動かなくなっていく、あたしの蒼式。

 

 そして、あの黒いガンダムがアムロの動きなら、動けないあたしを狙うのは確実だった。

 

 ビュン ビュン ビュン

 

 黒いガンダムからビームライフルで放たれた、三条のビームがあたしに迫る。

 

 「くっ、ビーム兵器まで!?」

 

 ロングレンジレーザーライフルを放棄して、辛うじて右にスラスターを吹かして躱すが、放棄したロングレンジレーザーライフルは撃ち抜かれ、更には左肩のアーマーにビームがかする。

 

 「きゃあ!?

 

 アッ、アーマーが融解する威力だなんて!?」

 

 それは、ア・バオア・クーの時と同じ、当たれば死を予感する威力だった。そう、あたしは動きが鈍くなった的でしか無かったのだ。

 

 「嫌っ!?

 

 来ないで!!」

 

 バルカンを放ち逃げ道を牽制しながら、ビームサーベルを構えた黒いガンダムは瞬時加速を合わせた加速力であたしの駆る蒼式を腹部に目掛けて斬り裂こうとしたのだった。

 

 

 

 液状に溶けて変化した、シュヴァルツェア・レーゲンは、あのガンダムだった。

 

 「まさか、アイツかよ!!」

 

 俺は忘れもしない。

 

 アムロの駆るガンダムにア・バオア・クーでは見逃された事実と、大切な家族とも言えた部隊の仲間を殺された事実の二つ重なり、フラッシュバックし、怒りさえ込み上げてくる。

 

 そして、黒いガンダムが狙ったのはアンだった。

 

 普通なら、アンは援護射撃に徹するが、今回ばかりは顔を真っ青にして震えながら、ロングレンジレーザーライフルを構えて狙撃大勢をしていたが、ガンダムが相手なら狙撃など無意味な事に気付かずに、アンらしく無いあからさまなミスをしている。

 

 「まさか、ガンダム恐怖症か!?」

 

 ジオン軍内部では、ガンダム恐怖症は有名な話だった。

 

 ガンダムと戦い、生き残った兵士が発症するPTSDだとも言われ、特に地上戦線のオデッサから宇宙へと撤退し、ア・バオア・クーまで帰還した多数の兵士に顕著に見られていた。無論、ソロモンやア・バオア・クーでの戦いでもガンダムと戦ったパイロット達にも言えた。

 

 アンも、その中の一人だと言えた。

 

 ア・バオア・クーでは突撃して来たガンダムにミチルを殺され、逆上してビームサーベルで斬り掛かるが、逆に返り討ちに遭いガンダムにコクピットをビームサーベルで斬られ掛けられていた。

 

 完全に斬られる前に、俺がガンダムにタックルしてガンダムを突き放したからアンは斬られなかったが、コクピットハッチの一部が融解してコクピットの中のアンが丸見えだった記憶がある。

 

 恐怖するアンに、黒いガンダムはビームライフルを三連射し、放棄したロングレンジレーザーライフルは破壊され、アンの蒼式の肩のアーマーにかすりアーマーの一部が融解した事に気付く。

 

 『嫌っ!?

 

 来ないで!!』

 

 アンが恐慌状態に陥り、IS特有の精神異常を感知して蒼式の動きが完全に鈍くなっていた。無論、最悪は強制解除だって有り得る状況だった。

 

 そして、逃げようとするアンにヘッドバルカンを撃ち逃げ道を塞ぎながら牽制し、ビームサーベルを抜き瞬時加速しながら斬り裂こうと迫っていたのだ。

 

 だが、俺はアンを見捨てないし、見殺しには絶対にしない。支援射撃に徹しようとジャイアントバズーカを構えた翡翠を駆るシャーロットに気付く。

 

 「シャーロット、俺が奴に牽制とアンから引き離す!!

 

 アンを回収して、撤退を命じる!!」

 

 『イッ、イチカ隊長!?

 

 隊長一人じゃ無茶よ!!』

 

 シャーロットは慌てて居たのか、俺を部隊にいた頃の様に隊長と呼び命令を拒否しようとする。

 

 「アンを任せる!!

 

 これは、隊長命令だ!!」

 

 『くっ!?』

 

 隊長命令だときつく言い、シャーロットも唇を噛み締めながら渋々従い、俺は二重瞬時加速でアンにビームサーベルで斬り掛かろうとする黒いガンダムに蹴りを入れるべく、アンの名前を叫び加速したのだ。

 

 「アァァァァァァン!!」

 

 『ひっくぅ…イチカ?』

 

 ガンダムを蹴り飛ばし、アンから引き離す事には成功する。しかし、ガンダムもただで引き離されなかった。

 

 そう、リミッターカットしたレーザーライフルを持つ、左腕の手首から先が斬り裂かれたのだ。

 

 「グッアァ!?」

 

 『イチカ!?』

 

 しかし、この状況にデジャヴさえ感じる。

 

 アンは俺に気付いたが、白式の無くなった左腕の手首を見て完全に泣いていた。

 

 「イチカのバカバカバカ!!」

 

 「でも、アンが無事で良かった」

 

 「本当にバァァァカァァァ!!

 

 ウワァァァァ」

 

 

 黒いガンダムを蹴り飛ばし、アンから引き離す事には成功したが、ア・バオア・クーの時の様にとは少し違うが、レーザーライフルを握る左手首から先を黒いガンダムの振り下ろしたビームサーベルにより斬り落とされたのだ。

 

 「シャーロット、アンを頼んだ」

 

 「はっ、隊長。

 

 ご武運を!!」

 

 シャーロットにアンを引き渡すと、シャーロットはジオン式敬礼をしてピットへと引き返したのだ。

 

 無論、ピットには鈴やセシリア達はスコールさんからの避難命令により避難していた。

 

 「さあ、2ラウンド目を始めるか!!」

 

 黒いガンダムは体制を整え、ビームライフルを乱射しながら、ビームサーベルを構えて俺に突撃して来る。

 

 「チィ、残った武装までも、あの時と同じかよ」

 

 ツインレーザーナギナタを展開し、サーベルモードにして構える。無論、通常出力ではビームサーベルは受け切れないのは判っていたから、レーザーサーベルとして使用してリミッターを解除し出力を全開にする。

 

 無論、リミッターの解除をする以上はレーザーサーベルの発生装置は、余りの熱量に耐え切れずにジワジワと融解を始める。

 

 「持って3分か…」

 

 『ガァァァ!!』

 

 「チィィィィ!!」

 

 突っ込んで来た、黒いガンダムのビームサーベルを受け止めながら、右手に持つビームライフルへと蹴りを入れてビームライフルを蹴り飛ばす。

 

 「ちぃ、洒落臭い!!」

 

 バルカンまでも乱射して俺に襲い掛かり、2合3合とビームサーベルとレーザーサーベルで斬り合う。

 

 無論、乱射されたバルカンは身体を逸して躱したが、無くした左手首側の肩のアーマーに被弾して、アーマーがズタボロに代わる。

 

 「バルカンまでも、高威力かよ!?

 

 クソが、消し飛べ!!」

 

 逆に、お釣りだとガンダムの頭を蹴り、ツインアンテナをへし折りながら突き放し、手首から先は無いが無事だった左腕の三連ロケットランチャーを頭に命中させて、ガンダムの頭が消し飛んだのだ。

 

 「だが、やる!?」

 

 だが、頭を消し飛ばされても動きは止まらず、逆にビームサーベルをもう一本抜き、二刀流で斬り掛かる。

 

 「ちぃ、こんな時に!?」

 

 ギッギギギギギ…バッキィン

 

 連続した回避運動と斬り合う内に白式の反応速度が俺の反応速度に付いて行けなくなり、直したばかりの左膝の関節が悲鳴を上げ始めたのだ。 

 

 『イチカ、こんなに早く動かれたら、関節が持たない!!』

 

 白星からの悲鳴だった。

 

 だが、もっと早く動かなければ、斬られるのは俺だった。

 

 「!?

 

 見える!?」

 

 何故か、スローモーションで見えたビジョンに反応して咄嗟に右に回避すれば、ビームが横切ったのだ。

 

 そのビームは、蹴り飛ばしたビームライフルを拾い、撃って来たビームだった。

 

 「ビームライフルを拾いやがった!?」

 

 レーザーサーベルも、もう少しで限界であるのは判っている。なら、突っ込んで斬るしか無い。

 

「ウォォォ!!」

 

 バレルロールを描き、瞬時旋回加速して黒いガンダムに旋回して裏から肉迫する。しかし、関節が限界を超えたのだ。

 

 バッキィ

 

 ガッシャァァァァン 

 

 既に、瞬時加速にすら耐え切れずに左膝の関節が壊れて膝関節からの下の脚を失い、落ちた左脚は旋回中だった為に、そのままアリーナの客席へと飛んで行き、客席を数席を破壊して失った脚は止まったのだ。

 

 「脚を失っただけだ!!

 

 そこぉ、貰った!!」

 

 無論、姿勢制御は難しくなったが、不意を付けた為に、黒いガンダムの右腕を斬り落とす事には成功する。

 

 「まだだ!!」

 

 追撃は終わらず、黒いガンダムが後ろを振り向く前にバックパックを斬り破壊すると、グラウンドへと落下したのだ。

 

 ズッゥゥゥン

 

 「ちぃ、レーザーサーベルが!?」

 

 この時には、レーザーサーベルは限界を超えて発生装置は融解して使い物に成らなくなりコールしたのは、最も信頼する斬艦刀だった。

 

 アリーナのグラウンドには白と黒が対峙して、お互いが瞬時加速で加速する。そして、2機が交差したのだ。

 

「はぁァァァ!!」

 

 ザッシュ

 

 「グッアァ!?」

 

 すれ違い座間に空中に舞うのは斬艦刀を握ったままの右腕だった。

 

 俺の右腕が肘から下が斬られて失い腕の斬り口から鮮血が吹き出るが、腕が斬られるよりも先に黒いガンダムを斬り裂き、ガンダムも同時に俺の腕を斬り落としたが、シールドエネルギーを失い液状化すると同じくしてラウラが吐き出されて黒いガンダムは消えて待機状態のレーゲンに戻ったのだった。

 

 俺は大量出血から気を失い本社へと緊急搬送されたが、束さんが発明した『人体治す君』と言う、ナノマシン医療再生装置に投げ込まれ、斬られた腕を綺麗に再生して治ったが、二週間の入院となったのだった。

 

 

 

 「全く、いっくんは無茶するんだから」

 

 病室で眠る、いっくんの可愛い寝顔を堪能しながら頭を撫でると、束さんはいっくんの白式を直すべく本社の整備室に向かう。

 

 整備室に鎮座するのは大破した白式とシャーロットちゃんが乗っていたリゲルグの残骸。

 

 右脚は膝関節から下を失い両腕までも欠損して、損傷判定はレベルEだった。白式は修理不能の判定だった。

 

 パソコンのコンソールを開き、図面を広げると1機のモビルスーツの図面が表示されていた。無論、いっくんが言っていた連邦軍の技術であるマグネットコーティングの細かな仕様が記載された内容だった。

 

 「シャア・アズナブル。

 

 いっくんが思っている以上に食えない人物だよ…」

 

 この図面は、シャーロットちゃんが乗っていたリゲルグと言うモビルスーツのコクピットを回収した際に、残っていたブラックボックス内にデータが保存されてて解析したら出て来たのが図面などだった。

 

 そして、もう一つが束さん的には使いたくない、悪魔のシステムのサイコミュシステムのデータだった。

 

 「まさか、シャア・アズナブルは、いっくんがニュータイプに覚醒するのが判って入れていた?」

 

 しかし、第三アリーナの戦闘を見て納得するしか無く、シャア・アズナブルへの疑問が膨らむばかりにイライラが募り頭をワシャワシャと掻き毟る。

 

 「束様、首相との会食のお時間ですが?」

 

 整備室に来たのは秘書で愛娘のクーちゃんことクロエだった。だが、いっくんの白式の惨状を見て、即キャンセルをクーちゃんに言い渡す。

 

 「クーちゃん、キャンセルして。

 

 束さん、急な仕事になったから」

 

 「解りました。

 

 首相にはキャンセルとお伝えします」

 

 クーちゃんが整備室から出るのを確認してからビームサーベルから得た、エネルギーCAPの技術を最初から搭載した機体設計だとも、今更ながら気付く。

 

 「あぁ、もう!!

 

 本当、食えないよ!!

 

 シャア・アズナブルは!!」

 

 叫び、いっくんの新しい専用機の設計を始め、シャア・アズナブルから贈られた図面と束さんの叡智を合わせた専用機になるに違い無かった。

 

 

 

 そして、コンソールに浮かんだ贈られた図面の端には、ニナ・パープルントンという設計者の名前とAE社のマークが入り、元がガンダムタイプだったと知るのは、いっくんが目覚めた時だとは束さんも知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 



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目覚めた後は修羅場だと知る

 

 

 気絶して入院してから3日後、ベッドの中が生暖かい事に気付き目が覚めた。無論、ベッドの中には銀髪の全裸の少女が眠っている事に俺は慌てた。

 

 「うっなぁ!?」

 

 「ふにゃぁあ、なんだ嫁か?」

 

 「ラウラ、何してやがる!?」

 

 「うむ、嫁にこうして添い寝するが良いと隊長のクラリッサから聞いて、実践している」

 

 「さっさと出てけぇぇぇ!!」

 

 「フッキャン!?」

 

 シーツでラウラを巻き付け廊下に投げ捨てる。

 

 「「「「あっ!?」」」」

 

 だが、投げ捨てた所に廊下に居た三人に目が合い咄嗟に病室を閉めて鍵を掛けて閉じ籠る。

 

 ドン ドン ドン

 

 「「「い〜ち〜か〜?」」」

 

 ドアを叩かれ、三人から呼ばれる俺には恐怖しか無い。

 

 「なんで、ラウラは全裸なのかな?」

 

 「シッ、シーツを剥ぎ取るな!?」

 

 「さあ、教えて貰おうかしら?」

 

 「隊長にいわれて…」

 

 「やっぱり!?

 

 あんた、開けなさい!!」

 

 無論、廊下ではシーツを剥ぎ取られて全裸のままで正座をさせられ、二人から尋問中のラウラと鈴から開ける様に言われる俺は恐怖が遠のくのをひたすら待ったのだ。

 

 だが、それすら許さないのが鈴だった。

 

 部分展開したヒートソードで扉を斬り刻むとシーツに巻かれ引き摺られたラウラと妻が三人の修羅場と思ったら三人から一斉に泣かれたのだった。

 

 「「「一夏が無事に目覚めたよ!?

 

 ウワァァァァン」」」

 

 「私は帰って、良いだろうか?」

 

 「ラウラが居るのか、説明したらどうだ!!」

 

 「そうか?」

 

 「そうだな。

 

 三人が泣き止んでから説明しろ!!」

 

 三人が泣き止み、ラウラから目覚めるまでの経緯が説明された。

 

 ラウラのシュヴァルツェア・レーゲンにはVTシステムと言うアラスカ条約で開発が禁止されているシステムが秘密裏に搭載されていたらしい。

 

 そして、本来ならヴァルキリーの選手やブリュンヒルデの千冬姉に変化する筈が、俺やアンの居た宇宙世紀のガンダムに変化したのは謎である。

 

 無論、白式とは相討ちだったが、後日にホワイトラビット社は束さんが調べ上げた様々な証拠を理由にドイツに謝罪と賠償を請求したが、ドイツ政府は一貫して謝罪と賠償を拒否しラウラを蜥蜴の尻尾切りの様に切り捨てたらしい。

 

 だが、それだけでは事が終わらず、来週から始まる学年別トーナメントに観戦に日本に来ていたラウラが居た黒兎隊の隊員の全員が、ホワイトラビット社の護衛部隊と空港で鉢合わせた所でラウラの重傷について副隊長のクラリッサに説明する。しかし、激怒した若手の黒兎隊の隊員が護衛部隊の隊員に殴り掛かる乱闘騒ぎになり、黒兎隊の全員の身柄を拘束する事件になった。

 

 無論、ドイツ政府はホワイトラビット社による黒兎隊の拘束に対して激怒し、即時に身柄の開放並びに謝罪と賠償を逆に要求してホワイトラビット社とドイツの関係が悪化する事態となる。

 

 無論、ホワイトラビット社は要求を無視し、賠償要求の報復としてドイツへ輸出予定のIS関連商品の輸出の停止とドイツ国内での販売中止に踏み切ったのだ。

 

 学園でも、ホワイトラビット社製の商品が、ドイツからの生徒を理由に買えなくて腹いせにホワイトラビット社からの生徒に喧嘩を売るドイツの代表候補生の生徒達と、それを買うホワイトラビット社の企業代表やテストパイロットの生徒達による乱闘騒ぎとなり、学園側はホワイトラビット社とドイツの生徒同士の争いが更に激化しない様に配慮し学年別トーナメントは中止となった。

 

 そして、学園が懸念していた事が昨日に起こり、ドイツは輸出停止の報復処置に対して軍事行動に踏み切り、フランスにあるホワイトラビット社のフランス支社に特殊部隊で奇襲を仕掛けてフランス支社のビルを灰燼に変えてしまった。

 

 無論、IS関連商品は全て奪われた上、社員は全員拘束されてドイツに移送されている。

 

 無論、謝り賠償すれば許す気だった束さんがとうとう激怒し、ホワイトラビット社の私兵とも言えるIS部隊の総勢45機を救出作戦の名目で出撃する事を即決し、過去にイギリスの在日大使に宣言した通りに、新たに束さんの手により生産されたコアで量産された、流星の量産機型の流星改が生産され配備されたのだ。

 

 流星改を積んだ45機のニンジンロケットがベルリン上空へと飛来して空挺師団の様に舞い降り、首都のベルリン市街と空港を瞬く間に制圧し、最終的には議事堂までも制圧されて一日でドイツはホワイトラビット社に無条件降伏したのだった。

 

 無論、ドイツの無条件降伏を知った、イギリスの王家はセシリアの一件でドイツの様な悪夢に成らなかった事を女王のエリザベス三世は安堵していたらしい。

 

 そして、束さんはホワイトラビット社とドイツとの停戦協定を結ぶ為に中立のスイスに飛び立ち、ドイツがホワイトラビット社に支払う損害賠償は、第一次世界大戦後に結んだヴェルサイユ条約並の多額の賠償請求とISコアの全て没収だろうと思い、ドイツには厳しくなるだろうと各国の上層部は見ているらしい。

 

 そして、話を戻すがラウラはドイツから切り捨てられた為にホワイトラビット社の社長秘書のクロエが双子の実の姉だった事もあり保護者として引き取り、拘束されていた黒兎隊もドイツの敗戦でパスポートが失効して帰る場所を失い、ホワイトラビット社の私兵部隊へ入隊して、ブラックラビット隊と名前を変えて新型の流星改が与えられたのだ。

 

 無論、ラウラもレーゲンのコアに替えた流星改を与えられ、ブラックラビット隊の副隊長に降格した上で入隊した。

 

 「…と言う訳だ」

 

 「そうだったんだな…」

 

 ラウラの説明が終わり、シャーロットが抱えていた書類を俺に手渡し説明する。

 

 多分、白式の事だろう。

 

 「それと、イチカの白式は大破して修理が不可能だと社長から聞いたわ。イチカがサインすれば代わりの機体を開発するって、社長からの伝言よ」

 

 「修理不能か…」

 

 シャーロットから渡された、ホワイトラビット社の『青薔薇計画』と書かれた分厚い書類には元の図面だろう、モビルスーツの正式機体番号が書かれていた。

 

 『RX-78-GP-05 ガンダム試作五号機 BLUEROSE』

 

 そして、別書類に書かれていた設計図はジオン仕様で俺の専用機として再設計された機体名は、奇跡を冠する花言葉の元なる植物の名前が、モビルスーツ名で書かれていた。

 

 『AGX-05 ブルーローズ』

 

 無論、設計者が女性スタッフが中心だった事もあり、ガトー少佐がオーストラリアのトリントン基地から強奪し、アクシズに持ち帰ったRX-78-GP-02サイサリスと共に来た設計主任のニナ・パープルトンが亡命した際に所持していた最後のGPシリーズの機体のRX-78-GP-05ブルーローズの設計図を元にアクシズの工廠との協力の元で基礎設計と装備の設計を済ませたニュータイプ専用の試作機だった。

 

 武装も特殊でビームライフルと一体化したビームソードを装備した専用のビームライフル、腰にマウントされたビームサーベル、両肩に装備された大型スラスター兼ビーム砲内蔵の2基のファンネルを装備としている。

 

 無論、バックパックは高出力のスラスターを装備した物としてアクシズのモビルスーツでは最高の加速力を有していた。

 

 外装は、製作指示を出したシャア大佐の指示により回収されたイチカ専用のゲルググを元に改装されたリゲルグ改に扮して隠蔽され、隠すのが容易なシーマ艦隊の旗艦にアン専用でブルーローズと同仕様のリゲルグ改と共に保管されている。

 

 説明はさて置き、イチカの専用機ブルーローズの仕様はビーム兵器に変更したビームライフルとビームソード一体のビームソード付きビームライフルと腕に内蔵されたビームガン兼ビームサーベル、非固定部位には大型スラスター兼ビーム砲内蔵のファンネルとし、ウイングスラスターには展開装甲が内蔵され、三世代が主流の中ではビーム兵器搭載の意味では第五世代機に分類される機体仕様だった。

 

 無論、束さんのやり過ぎ感が丸出しと、ブルーローズを知ったら各国の技術屋が泣くだろうと大いに予想が出来る内容だった。

 

 「やり過ぎじゃね?」

 

 「あたしも、そう思うわね…」

 

 鈴と共に束さんに呆れながらも、書類にサインしてシャーロットに渡す。そして、サインした事を知った束さんにより

 

 『臨海学校までに仕上げるから、楽しみにしてて』

 

 と連絡が入り、四人でため息を吐くのだった。

 

 「なぁ、ラウラは何で、俺を嫁と呼ぶんだ?」

 

 囁かな質問だった。

 

 「尊敬する人物には、嫁と呼ぶんだと隊長から言われたが?」

 

 「色んな意味で、間違っているわよ!!」

 

 「そうなのか?」

 

 アンがツッコミをいれ、それを聞いた鈴はダッシュで病室から出て行き、ホワイトラビット社のアリーナで訓練中のクラリッサが鈴により粛清されて、クラリッサからの悲鳴が木霊したらしい。

 

 

 

 

 

 



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青薔薇計画の始動

 

 

 無事、退院を果たして二週間振りの授業へ参加する。

 

 「おっ、オリムーだ!!」

 

 「本音、おはよう」

 

 本音が気付き挨拶して、俺は挨拶を返しながら席に着く。無論、今日から箒が囚人房から出て来る日でもあり不安さえあった。

 

 そして、大破した白式はホワイトラビット社の本社にあり、代用機として『青薔薇計画』に基づいた白式の先行量産型の流星にマグネットコーティングを関節に施された機体を渡され、マグネットコーティングの実用性を確認する為に使用している。

 

 無論、関節に施されたマグネットコーティングはノーマル仕様の関節でも、俺の反応速度に壊れる事なく反応し切れていた事を実証してくれた。

 

 ただ、別の件で一つだけ問題があって、ブルーローズ本体に組み込まれた白式のコアが使えない為に流星で試験していたのだが、白星がコアネットワークを通じて、この流星のコアに嫉妬中だった。

 

 今でも頭の中に響いているが、『イチカの浮気者!!』とか『人になったら、絶対に既成事実を作ってやる!!』とかならマシなのだが、白星の嫉妬の矛先がこの流星のコアになり、流星のコアに対しては、『イチカに色目を向けたら、アンタのコアにウイルスを流してやる!!』と先ほどから、絶賛絶叫中だった。

 

 だが、逆に流星のコアも負けていない様で、『ふん、白星のペチャパイ娘!!』『何だと!?牛乳娘!!』と二人して悪口で言い返して、俺の頭の中で二人の痴話喧嘩の真最中の声が響き頭痛の要因になっていた。

 

 「頭が痛い…」

 

 「イチカ、大丈夫?」

 

 「大丈夫に見えるか?」

 

 「見えないわね…」

 

 アンにも蒼式のコア(アンが蒼(ソラ)と命名)を通じて、二人の痴話喧嘩が聴こえているらしく、呆れる始末だったが、俺の頭痛の酷さから遂にアンがキレて、蒼を通じて『余りに痴話喧嘩が酷いと、強制停止のウイルスを流すわよ!!』とコアの二人に叫び、二人は『すっ、すみませんでした!?』と謝り大人しくなるのだった。

 

 そして、午後の授業は実技でシャルの駆る流星と同型機同士の模擬戦となったのだが、シャルはB型パックを装備し、俺は白式の換装パッケージのB-OC型パックで対戦する。

 

 無論、マグネットコーティングの試験運用だけで無く、ビーム兵器運用を前提に試作型ジェネレーターを外付けしたB-OC型パッケージとビームライフルと、ツインビームナギナタも武装としての試験用として競技用レベルまで出力を落してインストールされていた。

 

 「シャル、行くぞ!!」

 

 「ちょっと、まっ!?」

 

 ビームライフルを撃ち牽制しながら感触を確認し、ツインビームナギナタを展開して振り回しながらシャルの流星を斬り瞬殺する。しかし、エネルギーの減りの速さに驚きとビームライフルが6発しか撃てないエネルギーの消費量に不安が過る結果に終わった。

 

 「うっわぁ、エネルギー残量がヤバイ…」

 

 「イチカ、そんなになの?」

 

 「あぁ、レーザー兵器が可愛く見えるレベルだ」

 

 「あたしはレーザー兵器か実弾兵器にするわ」

 

 だが、流星の出力ではビームライフルは6発が限界だし、ツインビームナギナタもビームナギナタを出して展開するだけでエネルギーの消費が多く、問題が山積みだと報告書に記載して本社へと送ったのだ。

 

 

 

 

 

 ドイツとの停戦協定はかなり揉めたが、最終的にはヴェルサイユ条約並の多額の賠償金をドイツが支払う事で決着が着いたが、ドイツの実験施設を襲撃して制圧した際に、人体実験中の被験者だった100名近い少年少女を保護、その内の数十名は衰弱が酷くて救出して全員を保護して引き取り、ポケットマネーで建てた孤児院に収容している。

 

 無論、協定後に非人道的実験をしていたドイツの実態をイギリスや日本を始めとした各国に公表した際にドイツが協定違反だと反論し、残存戦力でホワイトラビット社に全面戦争を仕掛けたが、前回の戦力の約三倍の150機の流星改でドイツに反撃してドイツを占領したのだった。(この事件により、ドイツはコアを全て失う事になる)

 

 ただ、占領下での政策はイギリスとイギリスの女王で束さんの悪友のエリザベス三世に丸投げしたのは言うまでもない。

 

 しかし、ホワイトラビット社本社のラボでは青薔薇計画に基づきブルーローズの開発と製作が会社を上げて急ピッチで製作が進むが、いっくんからのビーム兵器使用に関する報告書に頭を抱える。理由は察しているけど、ビーム兵器搭載型ならではのエネルギーの消費量の問題だった。

 

 「試作型ジェネレーター付きの流星でも、ビームライフルは6発が限界か…なら、エネルギーパックを開発すれば、機体からのエネルギー消費問題は無くすことが出来るけど、ファンネルだけは無理だよね…」

 

 無論、ビームライフルに関してはエネルギーパック式のカートリッジが採用されて解決するが、ファンネルのエネルギー供給をISコアから供給されるエネルギーだけでは、ブルーローズ本体と共に消費するエネルギーを賄い切れないのは明白だった。

 

 無論、代替案としてファンネル自体にもコアを内蔵させても構わないが、ファンネル二基と本体を合わせたトリプルコア化による、エネルギー供給の不安定化だけは避けたいが、採用に至っては正気の沙汰ではないし、レーザー兵器にした所ではブルーローズの性能を活かせずに試作機に留まるのが関の山だと束さん的に気に食わなかった。

 

 本体となる機体は、極秘に開発して本社に呼び出したスコールさんに稼動試験をさせた四世代型の紅椿(用済みだがら武装を変えてスコールの専用機になっている)の稼動データを元に再設計をして、重装甲な脚部にとバックパックの四枚の稼動式ウイングスラスターに展開装甲を内蔵したのを合わせれば、八割方が組み立てが終わり完成しているが、本体へのサイコミュの脳波増幅装置の組み込みが上手く行かずに難航していた。

 

 ただ、ファンネルのエネルギー供給問題を残して武装は完成していた。

 

 「紅椿でも開発に三ヶ月も掛かったのに、ブルーローズの開発は臨海学校までに間に合うかな?」

 

 カレンダーを見ながら、ラボの床に屍の様に倒れて眠り、一緒に魔の十徹をした『青薔薇計画』の研究チームの篝火ヒカルノ博士や製造整備担当のアルベール・デュノアを一瞥して、一抹の不安を感じながらも開発は難航するのだった。

 

 

 報告書を上げてから、3日後に束さんから試験用の増加パーツがコンテナに入れられて送られてきた。

 

 「スラスターユニットか?」

 

 「でも、ビーム砲が付いているわよ?」

 

 「こっちには、ケーブルや変な箱まであるわよ?」

 

 コンテナの中身には、ビーム砲付きのスラスターユニットとレーザー砲付きのスラスターユニットを合わせた4基のスラスターユニットとケーブルに繋がれた変な箱まで入っていた。俺や鈴、アンまでもが不思議に思っていると、目の下に隈を作った壮年の男性がやって来るが、男性を見たシャルが驚いた表情をしていた。

 

 「えっ……お父さん、なんで?」

 

 「シャルロット、妻の件では済まなかった。私は今はホワイトラビット社のフランス支社の社長ではないが、整備士として一夏の専用機の製造のチームに入ったのだよ」

 

 「僕は気にしてなんか無いよ。だって、ママの大好きだったパパがいるし、お父さんのお陰でフランスでは、代表候補生を辞めてからは普通の女の子として女子高に入れてくれたから逆にありがとうだよ。それに、この学園に来て友達も出来たからね」

 

 デュノア親子の和解も済み、アルベールさんからコンテナの中身に付いて説明された。

 

 「じゃあ、ファンネルはビーム兵器にするかレーザー兵器にするかは稼動試験で決まるんですね?」

 

 「そうだ。

 

 ビーム砲搭載型には小型ジェネレーターとISコアが積まれているが、博士が君の白式のコアの白星くんに選ばせたコアを積んでいる。無論、三基同時のコアの連動は絶対にしないようにと、社長からの伝言だ。

 

 もう一つの、レーザー砲仕様はマドカくんの黒式のBT兵器の稼動データを元に製作した、AI制御によるファンネルで言わばBT兵器の強化版だと思って貰って構わない」

 

 サイコミュの脳波増幅装置に取り付けられた、ケーブルからヘッドフォンを頭に被り、ファンネルを起動させた所で、あの馬鹿(箒)がピットからアリーナへ、新たにスカウトした生徒の企業のテストパイロット用に調整整備中の筈の流星改を纏い乱入する。

 

 無論、装備しているのは流星改用の装備はしてなく打鉄用の葵一本だけだった。

 

 そして、流星改は第三世代の量産機だが企業専用の私兵部隊への配備機か、学園に居る企業の生徒でテストパイロット専用しか無い。

 

 さらに言えば、ここは企業名義で貸切中の第三アリーナ。

 

 一般生徒はもちろんの事、試作装備の試験中で企業関係者しか入れないのは明白で、入口には防諜対策で警備員が監視をしていた筈だった。

 

 「あれ、黒とシルバーのカラーリングからラウラの流星改!?」

 

 「「「「えっ、マジ!?」」」」

 

 「確かに、エンブレムがブラックラビット隊の物ね」

 

 整備室で箒に奪われたのは、ラウラ用にとビーム兵器に変えて調整中の黒とシルバーのカラーリングがされた流星改だったのだ。

 

 無論、ラウラ専用に装備されていた筈のC型パッケージは無く、葵一本から推測すると外したと断言出来たのだ。

 

 「あぁ、やっぱり来たわ…」

 

 「鈴、懲りないと言うか、清々しく思うわね…」

 

 「アン、鈴さん、私がチェーンマインで殺っても?」

 

 「「イチカに聞かないとねぇ…」」

 

 「やっぱり?」

 

 「いや、俺が殺る。

 

 サイコミュと連動させたファンネルの試験台(的)になって貰う」

 

 最初はシャロことシャーロットが、乱入した箒に対してチェーンマインで爆殺しようかと聞くが、俺が却下してファンネルの的として使用する事にしたのだ。

 

 「貴様の腐った根性を叩き直してやる!!」

 

 「企業の機体まで持ち出して、犯罪者になった箒には言われたくない!!

 

 行け、ファンネル!!」

 

 サイコミュの脳波増幅装置の影響か俺に赤紫色のオーラが包み、4基のファンネルまでオーラを纏うと同時に動き出す。

 

 「飛び道具なんか卑怯だぞ!!」

 

 「これが、ララァ大尉が観えてた世界なんだな…」

 

 ISのインターフェイスとサイコミュによる、調和の取れた輪舞曲の様にファンネルが俺の思考と完全にマッチして箒が纏う流星改に襲い掛かり、流星改をスクラップに変えていく。俺自身も何故か宇宙空間に居る感覚でファンネルが思い通りに動くのだった。

 

 「ギャァァァァァ!?」

 

 箒の絶叫ともに流星改が大破して強制解除されてアリーナのグラウンドに落ちると、ファンネルは規則正しく元のコンテナへと戻ったのだ。

 

 「ファンネル、思った以上に操作がキツイな…」

 

 「一夏さん、もし、宜しければ私も?」

 

 「ニュータイプ用だから、ノーマルのセシリアだと脳が焼き切れるか廃人になるぞ?」

 

 「やっぱり、辞めておきますわ!?」

 

 実用試験だが、ファンネル自体にコアを使わなくても、大容量のエネルギーパックを内蔵すればビーム兵器でも大丈夫だと、束さんがうっかりミスをしてファンネルの完成が見えたのだった。

 

 無論、ブルーローズに搭載予定のサイコミュシステムにも、偶然の産物によるサイコミュのチップ化をヒカルノ博士と束さんがお酒に酔った勢いでやってしまい、序に『増幅装置も出来んじゃねぇ?』と何処かのイタリアをモデルにした学園艦の生徒の様な勢いとノリでやってしまったらしく、ISに搭載可能レベルまで小さく作り上げて搭載し、ブルーローズは完成したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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起動!! ブルーローズ

 

 

 もうすぐ、臨海学校が近くなって来たが、第三アリーナでの青薔薇計画の各種実験が終わり、来週の臨海学校を前にして、妻達からは臨海学校で使う水着が欲しいからレゾナンスに行きたいと寮の部屋でアンの淹れた紅茶を皆で飲みながら話していた。

 

 「「「イチカ、水着欲しい!!」」」

 

 「となると、レゾナンスだな」

 

 「イチカにブラジル水着を見せる、チャンスよ!!」

 

 「「シャロ、アウト!!」」

 

 「なっ、何でよ!?」

 

 三人の水着談義を尻目に、メールの着信音に気付き内容を見たらブルーローズの最終工程に入ったから本社工場に来てくれと、秘書のクロエから連絡があったのだ。

 

 ピロロロ

 

 「ちょっと待ってくれ。ん?

 

 本社からメールだな」

 

 「一夏、本社からメール?」

 

 「あぁ、どうやらブルーローズの最終調整に来て欲しい内容だな」

 

 「イチカ、あたし達は三人で先にレゾナンスに行くから、先に調整を済まして来たら?」

 

 「アン、良いのか?」

 

 「あたしは、別に構わないわよ」

 

 「そうね。私も構わないわね」

 

 「あたしは当然、この二人の見張りね。

 

 また、二人がゴミ箱に燃えないゴミ(ナンパ男)を捨てない様に見るないとね」

 

 「「鈴、酷い!?」」

 

 「事実、あんた達はやったわよね?

 

 ゴミならゴミで分別しなさい」

 

 「「全く言い返せない…」」

 

 「いや、人はダメだろ!?」

 

 「一夏、漢字で書いたら、生物(ナマモノ)だから無問題ね‼

 

 でも、出すなら月水金のいずれかね」

 

 「鈴、一番駄目な奴よ!?」

 

 無論、送られて来たメールの内容には、サイコミュのチップ化が出来た為に内部のフレームを全て取り換えて、フレームにチップを埋め込んだサイコフレームと言うフレームに替えた事で、二基の予定だったスラスター型のファンネルが4基へと増えて機動力が計画より増大した事と、ブルーローズ本体の機体が完成したからサイコミュシステムの脳波調整をするから来て欲しいと言う内容だった。

 

 (後に、一時的に宇宙世紀へ戻った際にサイコフレームの技術はシャア大佐に渡り、アクシズのニュータイプ専用の機体の性能の向上とアナハイムにサイコフレームの技術が流れる事になる)

 

 そして、翌日にはモノレールに乗り、途中で電車に乗り換えて本社のある山梨のとある駅に降りた。

 

 「久しぶりに本社に行くな…」

 

 ホワイトラビット社は一度は倉持技研が在った神奈川県の横浜市内に在ったが、この前のドイツ軍の特殊部隊の襲撃により社員や研究員達は全員が無事だったが、防衛の際に近隣住民に被害が出て数名の重軽傷者を出した事から山梨の日本の陸上自衛隊の富士演習場をドイツから支払われた多額の賠償金を元手に買い取り、本社を演習場へと移転したのだ。

 

 無論、演習場にも自衛隊が建てた管理用のビルをオフィスビルとし、大量のハンガーはIS製造用の工場となっていた。俺のブルーローズは第七格納庫にて製造されていたりする。

 

 「一夏様、クロエでございます。お迎えに上がりました」

 

 自衛隊から払い下げられた、装甲車から降りて来たのはクロエだった。

 

 「クロエ、元気にしてたか?」

 

 「はい、おかげさまで、元気にやっています。一つだけ、不満が有るとすれば妹のラウラと会えない事だけです」

 

 ラウラを引き取ってからは、クロエのシスコン振りに拍車が掛かった様に思えるが肉親が姉妹だけとあり、俺達からはラウラの着せ替え人形による悲鳴を聞いたとしても黙認している。

 

 車に乗り、数分後にはホワイトラビット社の広大な敷地が見え始め、空中には対外向けの第三世代型量産機で元デュノア社のラファール・リヴァイブを第三世代化したラファール・リヴァイブⅡが飛行訓練しながら空中から監視していた。そして、演習場では私兵部隊の一つで流星改を黒とシルバーのカラーリングに統一されたブラックラビット隊が猛訓練を課している光景だった。

 

 「やってるな」

 

 「はい、千冬様がドイツで鍛えられた黒兎隊の加入で、私兵部隊はかなり戦力が上がりました。それと、一夏様にもですが、第三アリーナはイベント以外は学園長様との取り引きで、卒業までは借用が出来ました」

 

 「どんな取り引きしたんだ?」

 

 「まだ、束様からは言わない様に言付けされてますので詳しくは言えませんが、簡単な話が護衛用の戦力提供だそうです」 

 

 「なんか、きな臭いな…」

 

 クロエに社内の敷地を案内されながら、第七格納庫へと着いたのだった。

 

 「やぁ、いっくん来たね」

 

 「早く済ませますよ」

 

 「おやおや?

 

 いっくんのお嫁さん、貧乳、美乳、巨乳が勢揃いだから水着選び放題だね♪

 

 ついでに、更衣室で『バッキィ』はっう!?」

 

 「また、見てたので、いい加減に殴りますよ?」

 

 確かに、鈴は貧乳でアンは美乳。そして、シャロは巨乳だが、特に鈴とアンには胸の話は御法度であり、言えば命が幾つ在っても足りない。

 

 だから、束さんが言い切る前に拳骨を落として置いたが、効いている様子は全く無かった。瘤を作った頭を撫でながらも奥のハンガーへと案内されたのだった。

 

 「ゔぅぅ、いっくんが言い切る前に殴った!?」

 

 「これが……」

 

 ハンガーに鎮座するのは胸部装甲は蒼に染められ、腕や脚は白く染められた、蒼白の美しい機体。そして、両肩の非固定部位にある筈の大型スラスター兼ファンネルは、まだ取り付ける前で装備はされてないが、蒼に染められたスラスター内蔵された大型の肩のアーマーにはジオンのマークが入っていたのだ。

 

 無論、脚部も腿は白く、脛からが蒼く染められずんぐりとして武骨だった。

 

 「いっくん、これがシャア大佐からの贈り物のブルーローズだよ」

 

 「やっぱり、シャア大佐でしたか。

 

 元となったモビルスーツで何となく、シャア大佐じゃないかと思ってましたよ。グラナダに伝があるのはシャア大佐ぐらいでしたから」

 

 「やっぱり、いっくんにはバレてた様だね。

 

 でも、束さんもシャア大佐を驚かせたいから。

 

 だから、いっくんにはこれを持ってて欲しいかな」

 

 束さんから渡されたのはT字型の金属だった。

 

 「束さん、これは?」

 

 「サイコミュをチップ化して、金属に内蔵させたのがサイコフレーム。いっくんに渡したのはサイコフレームのサンプルだよ」

 

 「有り難く、貰いますね」

 

 「じゃあ、フィッティング作業に入ろうかな」

 

 ブルーローズのフィッティング作業になると、身体に馴染む様な感覚と『イチカ!!』と叫ぶ白星の声に白式が戻って来たのかと錯覚してしまう。

 

 「うっうぇ、マジで有り得ないよ!?

 

 いっくんと白星のコアの同調率が……99%!?」

 

 キーボードを叩きながら、俺と白星の同調率に絶叫する束さん。

 

 『愛がなせる技よ!!』

 

 と、白星が叫びながら無い胸を張りながらドヤ顔しているだろうと想像する俺は思わず苦笑してしまうが、白星も心を読み叫ぶ。まるで、姿は見えないが鈴を連想する様に思えたのだ。

 

 『誰が貧乳よ!!

 

 鈴よりはあるわよ!!』

 

 「それ、鈴に言っとくからな?」

 

 『色んな意味で、死んじゃうから止めて!?』

 

 フィッティング作業をして白星と二人で話している間は、白星がご機嫌だったのは言っておこう。

 

 

 

 同じ頃、学園の駅からモノレールに乗り、レゾナンスへ向かいながら三人で談笑していた。

 

 「一夏も本社から呼び出しで災難よね。まぁ、早く終わればレゾナンスでデートよ」

 

 「鈴の言いたい事は判るけど、あたしだって一夏にベッタリしていたいわよ。でも、アレの調整はララァ大尉のシステム調整を見ていたから、先に済ませろってイチカに言っただけよ」

 

 「私は地上からのソロモンへの転属組だから、難しい事は知らないけど、亡命してからアクシズのハマーン様の専用機も調整には難航していたって、整備兵の愚痴を聞いたわよ」

 

 「やっぱり、一夏のアレって難しいのね…」

 

 「繊細なシステムだからね…」

 

 そんな、妻達三人の様子を伺う、四人の影は右からセシリア、シャル、ラウラに簪だった。無論、簪に限っては前者の三人に拉致られた被害者である。

 

 「一夏さん、居ませんわね?」

 

 「セシリア、本社からの呼び出しだと思うな」

 

 「ふむ、私はブラックラビット隊の訓練に参加すれば良かったな」

 

 「ラウラ、まさかのサボりかな?」

 

 「隊長からは、臨海学校の準備をする様に言われただけだ。それに、訓練に参加したくても、私の流星改は馬鹿箒が乗って壊したせいで、未だに修理中だ」

 

 「一夏さん、容赦なくファンネルからビームを放ってましたわ…」

 

 「どう観ても、篠ノ之さんが悪い。

 

 あれで、退学に成らないのがおかしい」

 

 「簪さん、僕的には少年院に行かない方かな?」

 

 結局、箒は退学には成らずに三日間の謹慎処分だった。無論、卒業まではISへの搭乗は一切禁止となった。

 

 二組のホワイトラビット社所属の生徒達の雑談が盛り上がるが、他の生徒も臨海学校に気持ちを盛り上げる最中、モノレールの1両目の車両からの爆発と乗客の悲鳴が響き急停車する。

 

 ズッガァァァァァン

 

 無論、モノレールが緊急停止した煽りで車内では前へと乗客達が投げ飛ばされる様に転倒して怪我を負ったり、乗客が先頭車両側へと飛ばされて乗客同士がぶつかり怪我をしたりとモノレールの車両の中は地獄の光景だったのだ。

  

 『キャァァァ!?』

 

 「イタタタ…なっ、何ですの!?」

 

 「セシリア、アレ見て!!」

 

 「アレは!?」

 

 セシリアは見て驚愕する。

 

 1両目の車両の操縦室にマシンガンを放ったと思われる、女性利権団体仕様のラファール・リヴァイブが8機と打鉄が6機の14機が襲撃していたのだった。無論、先頭車両に乗っていただろう生徒や乗客は車両が破損した煽りで破口から海へと投げ出される光景だった。

 

 「セシリア達は、無事に居たのね」

 

 頭を軽くぶつけて額を切ったのか、血を流している頭にスカートの裾を切り裂いて頭に巻く鈴と、頭を打ち気絶したシャロを担ぎながらセシリア達の所に来たアン達だった。

 

 「鈴さん、頭から血が!?

 

 大丈夫ですの!?」

 

 「あたしなら、これ位は大丈夫よ」

 

 「セシリア達も緊急時だから、あたしの指揮下に入って貰うわよ」

 

 獰猛な目付きのアンさんに恐怖しながらも、戦意すら衰えない姿の百戦練磨の雄姿の姿は、まるでヴァルキリー(戦乙女)の様に気高く美しいとセシリアはアンの姿に息を飲む。

 

 「アン、襲撃か?」

 

 「ラウラ、多分だけど女権の日本支部の残党よ。無事なセシリアとラウラは1両目の海に転落した乗客の救出を任せたわ。

 

 鈴は頭を打っているから出るのは駄目だからね。その代わり、シャルと一緒に簪やシャロ達の負傷者の手当を任せるわよ」

 

 「悔しいけど、それが妥当そうね。あたしは、本社と学園に襲撃された事を知らせて救援を求めるわ」

 

 「任せたわよ、鈴。

 

 尚、ISの展開は、あたしが責任を取るから専用機を展開し、その任に当たれ‼」

 

 「「了解!!」」

 

 ホワイトラビット社の生徒達や乗客に有無すら言わせない、オリムラ中隊の副隊長だったアンの軍人としての気迫にセシリアとラウラは頷くしか無かった。

 

 そして、アンは蒼式を展開して外に出ると、ジャイアントバズーカを構えながら、女性権利団体の襲撃者達へとスラスターを全開に単機突入して行ったのだ。

 

 

 

 

 「落ちなさい!!」

 

 「キャァァ!?」

 

 「なんで、専用機持ちが居るのよ!?」

 

 ジャイアントバズーカを放ち直撃した打鉄を葬り、ラファール・リヴァイブに乗る女性は驚愕していた。

 

 「学園からのモノレールだから当たり前じゃない!!

 

 罪の無い人達を!!

 

 あんた達を、あたしは許さない!!」

 

 「貴女は!?

 

 織斑一夏の妻の一人の織斑アン!?

 

 この、男風情に尻を振る売女がぁぁぁ!!」

 

 「やっぱり!?」

 

 アンは叫び瞬時加速しながら『売女』と叫ぶ女権の女に向かって加速し、ツインレーザーナギナタを振り回してラファール・リヴァイブを切り裂き海へと落とす。

 

 無論、停止したモノレールを一瞥しながら、其方に行かせない様にと牽制は勿論忘れない。

 

 「たかが、一機よ!!

 

 囲いなさい!!」

 

 「この、素人が!!」

 

 素人で、連携すら取れない女権のISをジャイアントバズーカを至近距離で当てて落としたり、ツインレーザーナギナタで斬り刻み海へと落として行く。

 

 無論、海面近くではブルーイェーガーを展開して救助活動するセシリアや周辺警戒をしながらセシリアを護衛するラウラ。やはり、海に浮かぶ人達は1両目に乗車していた複数の学園の生徒や一般客だろう人達を救出する。

 

 ただ、幸いなのは多少の負傷が有るものの、命に別状が無かった事にはセシリアは救助しながら安堵していた。

 

 だが、単機で空中戦をするアンは別で、一対多数で有ることには変わり無く、苦戦する事だけはアンでも分かっていた事だった。

 

 ズッドォォン

 

 「ギャア!?」

 

 カチカチ

 

 「ちぃ、弾切れ」

 

 「今だ!!」

 

 「な〜んてね!!」

 

 ガッガガガガガ…

 

 「まっ、マシンガン!?」

 

 「食らえ!!」

 

 ジャイアントバズーカの弾を使い切ったので放棄して新たにコールしたマシンガンを乱射しながら牽制する。

 

 だが、実際の所アンの機体の装甲は多数を相手にした事で被弾箇所が多くてズタボロで、残りの弾薬は乏しく数回のマシンガンを斉射をすれば弾薬が無くなるのは明白だった。

 

 最悪な事にアンの性格が災いして、小型ジェネレーター付きのB型のパッケージは、アン自身が実弾形装備を希望した為に受け取って無かったのだ。

 

 「あたしも難儀なものね。

 

 武器は残弾は無しで残すのは、これだけなんてね」

 

 ズタボロのまま、展開したツインレーザーナギナタを握り、日本支部の女権のISの集団にア・バオア・クー決戦の時と同じく特攻を仕掛けるべく斬り掛かる。

 

 無論、セシリアやラウラには救助した人達やモノレール内に残る乗客達を護衛しなければならない為にアンに支援攻撃すら出来なかった。

 

 「ぜりゃァァァ!!」

 

 「ギャア!?」

 

 「相手は一機よ!!」

 

 ガッガガガガガ

 

 ガッガガガガガ

 

 「グッハァ!?

 

 ジオンの蒼き悪魔を舐めるなぁぁ!!」

 

 口から血を吐き、ラファールや打鉄からのマシンガンの斉射に被弾し耐えながらも斬り掛かり、装甲がズタズタになる蒼式。

 

 「鈴、イチカを任せたわよ」

 

 「あんた、まさか!?」

 

 「いけませんわ!?」

 

 「織斑アン、参る!!

 

 だァァァァァァァァ!!」

 

 「貴女、正気なの!?」

 

 「あたしと一緒に落ちろぉぉぉ!!」

 

 無論、打鉄に肉薄して肩を握ると顔面にレーザーナギナタの刃を突き刺しシールドエネルギーを根こそぎ奪う。だが、さらなる集中攻撃に曝され、脚は関節を撃ち抜かれて破壊され膝から下が脱落し、肩のアーマーは形すら無く肩の白い肌を晒していたのだ。

 

 鈴にイチカを任せると言うと、一機のラファールにリミッターを解除したツインレーザーナギナタをレーザーサーベルにして突きの構えで、アンはラファールに特攻したのだった。

 

 

 30分ほど遡る事、本社には鈴からの緊急通信により、学園からのモノレールが女性権利団体日本支部の残党から襲撃されたと連絡が入り、ブラックラビット隊に出撃命令が束さんにより下る。

 

 「束さん、俺も出ます!!」

 

 「いっくん、ファンネルの調整がまだだよ!?」

 

 「ファンネル無しで構いません!!」

 

 「一次移行も終わって無いのに!!」

 

 「いえ、既に!!」

 

 『一次移行をしますか?』の質問に『はい』と押し、一次移行を済ませる。

 

 「うっそぉぉん!?」

 

 「ハンガーをぶち破って出ますので下がって束さん!!」

 

 俺はブルーローズが固定されているハンガーをぶち破り、ハンガーに掛かっていた専用のビームソード付きビームライフルを握り、ミサイルランチャー内蔵型のシールドを左腕に固定すると天井をビームソードで斬り刻み空中に上がる。

 

 「行くぞ!!」

 

 ブルーローズのウイングスラスターと脚部の展開装甲を展開すると、学園の方へと一気に加速して向かったのだ。

 

 『クラリッサ隊長!!』 

 

 『どうした?』

 

 『蒼い機体に物凄い速さで抜かれました!?』

  

 『速過ぎる!?』

 

 緊急出撃したブラックラビット隊を追い抜き、学園方面へとひたすら加速し飛ぶ。

 

 そして、本社から飛ぶ事10分。

 

 ハイパーセンサーの望遠映像で捉えたのは、大破したアンの蒼式がレーザーサーベルを突きの構えでラファールに特攻を仕掛ける姿だった。

 

 「アン…くっ、少し遠いがやれるか?」

 

 自問しながらも、ビームライフルを構えてアンが突き掛ろうとするラファールに狙いを定める。

 

 「当たれっ!!」

 

 ビュュュン

 

 ブルーローズ専用のビームライフルからビームを放ったのだ。

 

 

 

 あたしは、最後の武装のレーザーサーベルでラファールに突きを入れようとした瞬間、目の前のラファールに何処からか来たビームが直撃する。

 

 「ギャア!?」

 

 「へっ?

 

 ラファールが勝手に落ちたの?」

 

 とアンが呟くのも束の間、蒼と白に染められた機体はビームライフルを変形させてビームソードを展開し、凄まじいスピードで残ったラファールと打鉄の併せた6機を斬り刻み海へと落としたのだ。

 

 そして、目の前には愛しい最愛のイチカだったのだ。

 

 「アン、全く無茶しやがって」

 

 「ゴメン、イチカ」

 

 イチカに優しく抱き締められ、あたしは身体の傷口から感じた激痛により気絶したのだった。無論、蒼式は強制解除されて、お姫様抱っこされていた事は気絶していた為に堪能する事は出来ないままだった事が心残りなのは言うまでも無かった。

 

 

 その後、追いついたブラックラビット隊により、女性権利団体の日本支部の残党は全員が拘束され、警察には殺人罪として捕まったらしい。

 

 そして、モノレールの運転手は運転室を撃ち抜かれた為に死亡し、破口から弾き出されて海に落ちた複数の生徒は軽傷で済んだらしく無事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 



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帰還への序章 臨海学校への旅立ち

 

 

 先の『女性権利団体モノレール襲撃事件』では、ISを使った国内の事件の中では三番目になる死者一名重軽傷者100名を超える最悪な事件として世界に報道された。

 

 その被害者の多数は、学園の臨海学校への買い出しに向かった1学年の生徒と遊びに行く途中の上級生達ばかりだった。無論、妻のシャーロットや額を切った鈴も被害者として含まれていた。

 

 そして、日本政府は壊滅している女性権利団体に対して団体の解体命令並びに内閣の強行採決により、女尊男卑を禁止とする『男女権利平等法』が採択されて可決した。だが、生き残った女性権利団体が猛反発したが、束さんによる女性権利団体狩りを再度行う事をホワイトラビット社が発表して女性権利団体の女性会員達を恐怖のドン底に突き落としたのだった。

 

 無論、今回の犯人達にISを引き渡した女性権利団体の女性会員が所属していたIS委員会にもメスが入り、引き渡した女性会員達はアメリカへと逃亡して逮捕までには至らなかったが、女性権利団体の権力が最も強いアメリカと女性権利団体による度の過ぎた女尊男卑の撲滅をしようとするホワイトラビット社との対立は酷く激化し、大規模な争いとなるのは明白だと世界中に緊張が走る状態となる。

 

 

 そんな事件が起きたと言うのに学園の臨海学校は中止には成らずに、更識の護衛部隊と民間警備会社に偽装したホワイトラビット社の私兵部隊が護衛する事で行く事になった。

 

 特に軽傷だった、鈴とシャロは本社へ搬送されて俺が使ったナノマシン再生医療による治療で、鈴のパックリと切った額の傷口は綺麗に治り、シャロは検査の結果は軽い脳震盪だと判り安堵する。

 

 大破したアンの専用機だが、蒼式は本社へと運ばれて修理を受ける事になるだろうと思っていた。

 

 元が白式の量産機である為に修理は容易で流星のパーツと予備パーツの交換で直すかと思ったのだが、蒼式はデータ回収の役目を終えた様にコアだけを回収して第七格納庫で生産中の新型機に蒼式のコアを組み込んでいたのだ。

 

 無論、新型機にコアを移植し、アンのパーソナルデータを打ち込みながら束さんの前に運ばれたナノマシン治療用カプセルの中身には、多数の被弾から内臓損傷や骨折をしたアンが全裸で入れられて治療中で、頭だけをカプセルから出されて未だにお説教中だった。

 

 「ねぇ、聞いてるかな?」

 

 「束さん、誠にすいませんでした」

 

 「別に謝罪は要らないんだよ!!

 

 アンちゃん、いっくんがもしも来なかったら何してたか、束さんに判るように説明してくれるかな?」

 

 「内臓もやられて、利き腕も骨折してたので一機だけでも道連れに…」

 

 「特攻でもしようとしてた?

 

 アホなの?

 

 馬鹿なの?

 

 ねえ、いっくんに言った『あたしは死なないから』って嘘なの?

 

 何か言え!!」

 

 「束さん、アンに言い過ぎだ!!」

 

 「いっくんは黙ってて!!」

 

 束さんの凄まじい剣幕に言い返す事が出来ない俺と敵機を道連れに特攻をしようとしてたアンは、束さんに徹底的にお説教を受けたのだ。勿論、束さんのお説教の後も鈴とシャロによるお説教と続き、お説教が全て終わる頃には日が暮れていたのだった。

 

 帰りには、会社によって用意された学園へと向かうバスには、モノレール襲撃事件で重軽傷を負った生徒達や一般客には特別処置として、全員がナノマシン治療による治療を受けて学園に帰る為に生徒達も同伴して乗っていた。

 

 

 

 そして、臨海学校当日。

 

 複数のバスに揺られて、臨海学校で泊まる旅館へと向かった。車内では、アンは気落ちしたまま俯いているのは束さんや鈴とシャロに叱られた事を引きずっていた。

 

 「アン、気にすんな」

 

 「そうですよ。私が怒ったのは、イチカを置いていこうとした事だけであって、単機で戦った事じゃないわ」

 

 「うん。でも、あたしはイチカを置いていこうとしたし、鈴に連絡を頼んで置きながら救援が来るのさえも待たずにいて、遅延戦闘をすれば良かったと頭の隅から抜けてたし、あんな風に命の大切さを判らない連中に頭に血が上っていたから…」

 

 「まぁ、それよりもさ、アンが無事で良かったさ」

 

 「イチカ…」

 

 アンは俺の肩に頭を乗せて甘える。見ているシャロも甘えたそうに見ているが、アンに譲り後で鈴と一緒に甘えようと考えていたらしい。

 

 『あの座席、甘過ぎる…』

 

 そんな空間をクラスメイト達は甘ったるく感じるが、先日の襲撃事件で助けて貰ったのもあり、箱で持参した缶のブラックコーヒーを飲むだけで一同は我慢していた。

 

 

 旅館に着くと、ホワイトラビット社の関係者だけは別室へと通された。

 

 「よし、集まったな。

 

 今日からお世話になるから、迷惑を掛けないようにしろ。それと、ホワイトラビット社の関係者は別室となるから、仲居に付いていくように」

 

 「なんで、俺達が?」

 

 「あたしも知らないわよ。

 

 シャロは何か聞いてる?」

 

 「鈴さん、私は何も聞いてないわ」

 

 「もしかして、あたしかな?」

 

 「アンは気にし過ぎだ。

 

 セシリアやシャルに簪とラウラまでだからな…」

 

 廊下を歩き、案内されたのは別棟の広間だった。そして、広間にはホワイトラビット社私兵部隊の各部隊の隊長と副隊長が揃っており、中にはブラックラビット隊の隊長のクラリッサさんの姿まで在った。

 

 そして、上座に掲げられた横断幕には『織斑君、学園防衛中隊の隊長就任おめでとう!!』と掲げられクラッカーが一斉に鳴ったのだ。

 

 『一夏君、隊長就任おめでとう!!』

 

 「「「「「「???」」」」」」

 

 一斉に首を傾げる一同とニヤニヤ顔の各隊長を務める女性隊長や副隊長達。無論、隊長達とは顔馴染みばかりで、多数の女性パイロットにジオン軍式の魔のフィジカルトレーニングをやらせて振り落としをしたのは記憶に新しいし、全員揃ってクリア出来たのはブラックラビット隊だけと散々な結果でも在った。

 

 そして、広間に入って来たのは束さんだった。

 

 「いっくん、学園の専属防衛中隊。名付けて、オリムラ中隊。オリムラ中隊の復活と隊長就任おめでとうなのだ!!」

 

 差し金は束さんだったらしい。それと、あの中隊の復活にはアンもシャロも内心は複雑でも喜んでいた。

 

 束さんが学園長とあの取り引きをした内容は、訓練または新兵器の試験の為にアリーナをイベント以外では貸し切りにする代わりに、学園からの要望は学園防衛と護衛の専属の部隊の派遣だった。現在の社会的には、アメリカとの対立関係にあり刺激しない為にも会社の私兵部隊を出す訳には行かず、学園に居る俺を隊長とした部隊を作れば対外的に問題が無く、配備が出来ると踏んでの事だった。

 

 無論だが、学園の教師部隊とは指揮系統は別で、指揮権は学園長と俺にあるらしい。

 

 「その前に各隊長に集まって貰ったのはね、配備するオリムラ中隊の隊員を各部隊から同級生位の年齢のパイロットを引き抜く為の会議だったんだよ。

 

 いっくんを部隊長として中心に副隊長にはアンちゃんがなって貰って、シャロちゃんに鈴ちゃんには小隊長を勤めて貰うからね。

 

 各隊から引き抜きで、最も近い年齢が多かったブラックラビット隊からは副隊長のラウラちゃんと同い年のサラ、マリア、ケイトの三人を転属していっくんの部隊に配属。

 

 特にサラとマリアにケイトは臨海学校後には、学園へと編入は決定としてるけど、パンサー隊からもジュンコとヒカリを予定していたけど、少数精鋭の部隊だから断念だね。

 

 だから、代わりにテストパイロットからは、シャルちゃんやセシリアに簪ちゃんにマドカちゃんの総勢11名の一個中隊だよ。

 

 後は、今は名前は明かせないけど、学園の生徒で訓練中のテストパイロットの三人が夏休み明けにテストパイロットから転属するからね」

 

 「俺が隊長なのは判りますが、機体はどうするんです?俺の機体のスピードだとついて行くのに無理があるが?」

 

 「それは、心配無用なのだよ。

 

 既に、オリムラ中隊用にいっくんのブルーローズのサイコミュの非搭載型で、ジェネレーターを強化したタイプを生産してあるから、明日には皆に配備予定なのだ。

 

 それから、学園組の君達には待機状態の専用機を渡して貰ってコアを移植してから、明日には引き渡す予定だよ」

 

 手渡されたブラックローズの仕様書を読んだが、既にブルーローズの簡易量産型でブルーローズの余剰パーツと新規パーツから組み上げられた4.5世代型のブラックローズが完成していたらしい。

 

 サイコミュを搭載しない代わりに強化型のジェネレーターを搭載しており、ブルーローズでは出力不足で搭載を断念した大型で高出力のビームライフルが搭載可能だった。

 

 ブラックローズの装備はブルーローズのファンネルを除いて基本装備が同じで、専用のビームソード付きビームライフルや腰のアーマーには予備のビームサーベル。専用のシールドにはミサイルランチャーとビームライフル用のエネルギーパックのカーリッジを通常装備とし、オプションには大型ビームライフルや狙撃用のビーム兵装型のロングレンジスナイパーライフルや実弾系のマイクロミサイルやジャイアントバズーカまでもが用意されていたのだった。

 

 むしろ、俺のブルーローズよりも武装が豊かで羨ましい。

 

 無論、カラーリングは俺のブルーローズに被らない様に副隊長機はパーソナルカラーで塗られ、他は赤紫と白の色合いで統一された機体だった。

 

 「凄い性能ね…展開装甲が普通にある…」

 

 「だから、高速機動訓練が僕達に追加されたんだ…」

 

 「えっ?私は高速機動訓練はありませんでしたわよ?」

 

 「だって、セシリアの元ブルーティアーズは高速機動戦闘にも対応出来るって、セシリアは言っていたよね?」

 

 「忘れておりました、

 

 確かに、100時間ほどイギリスで訓練しましたわね…」

 

 「あたしらは、元がね…」

 

 「アン、確かに…」

 

 「あぁ、嫌な思い出だな…」

 

 ジオンの士官学校での訓練を思い出し、遠い目になる三人。

 

 確かに、あの高機動対G訓練は何度も吐いた記憶があり、同期で同室だったアンも俺と同じ運命を辿った事だけは記しておく。だが、訓練を乗り越えた事でベテランパイロットでも欲しがるMS-06R-1高機動型ザクを卒業後に最優先で受領出来た理由だった。

 

 「三人共どうしたのよ?」

 

 「いや、ジオンの士官学校の嫌な思い出だ…」

 

 「訓練兵時代に何回もトイレで…」

 

 シャロも、同じ訓練を受けていたらしくソロモンで転属して来た時に聞いた話では、地上でグフに乗る前は大気圏に突入する物資を積んだ連邦のシャトルを狙う為に先行量産機のNMS-10のヅダを受領して、地上に転属になる一ヶ月ほどシャトルを落していたらしい。

 

 「シャロ、その先は言わなくて良いわ。あたしも高速機動訓練を受けた理由が何となく理解できたわ」

 

 隊長達と学園の防衛体制について簡単な協議をした後は解散となり、別館に割り当てられた部屋へと移動すると同室なのは妻達三人だった。

 

 無論、妻達三人は俺が居るにも関係なく裸となり旅行用のバッグから出すのは、レゾナンスのマークが入るビニール袋には会社から無償で貰った水着を出して着替え中だった。

 

 何故、無償かと言えば事件に巻き込まれて水着が買えなかった生徒には、レゾナンスの水着のカタログを渡して水着を選んで貰い、会社払いで無償提供した水着だった。

 

 もちろん、妻達の水着はカタログから選ばされたのは言うまでもない。

 

 「イチカ、どうかな?」

 

 いち早く着替えを終えたアンの水着はライトブルーのワンピース型の水着だった。

 

 「可愛いぞ」

 

 「ふふふ、ありがとう♪」

 

 「一夏、あたしは?」

 

 「動きやすさを重視してるし、凄く似合ってる」

 

 鈴もスポーティで動きやすさを重視した赤いスポーツブラに似た上と黒い下の水着だ。

 

 「当然!!」

 

 「最後は私ね」

 

 「「はい、アウト!!」」

 

 「えっ、何でよ!?」

 

 「シャロ、マジでやりがった!?

 

 俺的には眼福だけどな、ブラジル水着はアウトだ!!」

 

 そう、シャロが着替えた水着は胸の先とお股の秘所を三角の布で隠しただけの紐水着だった。それに、胸の上下運動でズレて胸の先が見えているのでアウトだった。

 

 「あんた、イチカに選んで貰った水着はどうしたのよ!!」

 

 「じょ、冗談よ…」

 

 「ガッルルル…」

 

 「鈴、唸らない」

 

 「キュゥゥン…」

 

 「危うく、鈴が猛犬スズになる所ね…」

 

 「誰が、猛犬じゃあ!!」

 

 「そうやって、尻尾を振る時点でよ」

 

 「アン、せめて猫にしなさいよ!?」

 

 アンと鈴の漫才はさて置き、水着を着替え直したシャロの水着は薄緑色のビキニに白いセパレートをした水着だった。勿論、軍の訓練で引き締まった身体は、同じく引き締まった身体のアンにも負けていない。

 

 「どうかな?」

 

 「あぁ、見惚れてた…」

 

 「「ぬっぐぐぐ…」」

 

 「ほら、行くぞ」

 

 「「きゃあ」」

 

 「むっ、アンも鈴も狡い!!

 

 なら、私はこうだ」

 

 「ぬっわぁ!?」 

 

 悔しがる二人の腰を抱き寄せて宥めるが、シャロは背中に抱き着き三人仲良く浜辺と向かったのだ。

 

 

 



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帰還への序章 ルナツー攻略戦と開戦

 

 イチカ達の臨海学校が始まった頃の話、ティターンズのルナツー基地は、この日は騒然に包まれた。

 

 爆発する、監視衛星や漂う隕石に見立てて作られたモビルスーツ用の待機施設が突如、謎の艦艇からのメガ粒子砲の艦砲射撃により直撃して爆発してパイロット諸共蒸発したのだ。

 

 被害はそれだけでは無く、メガ粒子砲搭載型の衛星も艦砲射撃からのメガ粒子砲やミサイルによりほとんどが壊滅的な状態だった。

 

 

 「あたしは、一年戦争ではソロモン守備隊だったさぁね。何処を突っ付けば弱いかなんさぁ、判るもんさぁね。フフフ…脆いもんさねぇ。

 

 艦砲射撃を緩めるんじゃないよ!!

 

 モビルスーツ隊の発進を急がせな!!」

 

 アクシズで新造されたグワジン級戦艦アカツキのブリッジから激を飛ばすのは、扇子をルナツーへと向けて砲撃命令を下すシーマ艦隊総司令のシーマ・ガラハウ准将だった。

 

 無論、砲撃するのは述べ七十隻はくだらないシーマ、デラーズ、キマイラからなる連合艦隊だった。

 

 アカツキやザンジバル級、ムサイ改から射出されるMSは、隊長機にはリゲルグを駆り、一般兵士にはゲルググ改が母艦から吐き出され宇宙を舞う。

 

 無論、別動艦隊からはルナツー内部へ侵攻する為のエース部隊のキマイラ艦隊が受け持ち、艦隊支援にグワジン級戦艦を旗艦とするデラーズ中将が率いるデラーズ艦隊がルナツーへとシーマ艦隊と共同で艦隊からの艦砲射撃を実行していたのだった。

 

 カタパルトでは真紅に染められた、ゲルググ改がカタパルトに接続され、出撃命令を待ち待機する。

 

 「ジョニー・ライデン、ゲルググ改出る!!」

 

 出撃命令が出ると、ビームライフルを片手にジョニー・ライデン専用ゲルググ改が射出され、ジョニー・ライデンに続けと、ライデン少佐の指揮下のゲルググ改のキャノンタイプやフル装備したゲルググ改がキマイラから射出され、ルナツーへと向かう。

 

 無論、デラーズ艦隊からも出撃命令が下りモビルスーツ隊が展開していた。

 

 「アナベル・ガトー、GP-02ガンダムサイサリス出る!!」

 

 サイサリスのアトミックバズーカを外してガトー専用ゲルググに積まれていた大型のビームライフルを握り、ガトーのサイサリスもビームバズーカを装備したペズンドワッジ隊を引き連れルナツーへと向かう。

 

 突然の奇襲を受けた連邦軍とティターンズの両艦隊はパニック状態となり、アクシズからのシーマ艦隊、デラーズ艦隊、キマイラ艦隊からなる連合艦隊から見ると艦砲射撃の格好の的と成り下がったのだ。

 

 無論、慌ててモビルスーツ隊を展開はするが、アクシズからのベテランパイロット達には新米ばかりの連邦とティターンズのモビルスーツ隊では敵わない状態だった。

 

 

 その状況は旗艦のアカツキのブリッジからでも確認が出来ており、シーマは副官でアカツキ艦長のコッセルをチラ見していると、副官のコッセルも気付く。

 

 「閣下、気になるんでしたら、お嬢の所に行ってやしたらどうですか?」

 

 「コッセル、戦闘中にブリッジを離れるなんざ、馬鹿の指揮官がやる事さね。娘に関しては、大きなお世話さねぇ」

 

 「ですが、お嬢は母親の閣下にしか…」

 

 だが、シーマが時計とコッセルをチラ見していたのは、今年で三歳になる愛娘のナツキのお昼ご飯を食べさせないといけなかったのもある。しかし、ナツキは自宅のメイド達には懐くが、強面で下品なシーマ艦隊の男共に一切懐かなった。

 

 「はぁ、仕方ないさね。

 

 コッセル、ナツキと昼食を済ませるさねぇ、指揮は任させたからね」

 

 「へい、閣下」

 

 レバーに掴まり、自室へと向かう。

 

 プシューと気が抜けた様な音を出して最初の部屋に入り、入った部屋の扉が閉まると2つ目の扉が開くと室内にはきちんと重力があり、見た目とは全く予想出来ない様な、女性らしいアンティーク調に揃えられたシーマの自室には、天蓋付きベッドに座り『ジオン軍エースパイロット写真集』と書かれた写真集のあるページには『ジオンの白い流星』と『ジオンの蒼い悪魔』のツーショット写真を見ているのは、とある人物を幼く少女にした様な長い黒髪に鋭い目付きの少女・シーマの愛娘のナツキだった。

 

 「さあ、ナツキお昼ご飯にするよ」

 

 「あっ、ママ!?」

 

 ナツキはあたしに気付き、ベッドに本を投げ捨てるとスタスタと走り抱き着いてくる。

 

 「おやおや、ナツキは甘えん坊だねぇ」

 

 「だって、パパは写真でしか見られないだもん!!」

 

 「じゃあ、パパが得意だったチキンライスにしようじゃないさ」

 

 「わ〜い!!」

 

 シーマは部屋に備え付けられた、キッチンに入ると冷蔵庫の食材からチキンライスの材料の鶏もも肉や玉ねぎなどの材料を出して調理をする。

 

 そして、このチキンライスにはイチカとの思い出の料理でありシーマ自身も好物だった。何故なら、ソロモンで一晩だけお世話になった時に出され、心が救われる様にチキンライスを掻き込むように食べた記憶がシーマにとっての初恋の味だったからだと言えた。

 

 そして、アンが居ないの狙い、当時13歳だったイチカが入浴中の所を襲い妊娠して産んだのがナツキだったのだ。

 

 話を戻すが、シーマはそのチキンライスの味が忘れられずに料理や炊事洗濯などの家事を覚えてからチキンライスを研究して、やっとイチカが作るチキンライスの味付けになった経緯だった。

 

 「そろそろ頃合いさね」

 

 チキンライスが出来上がり、簡単なサラダと厨房から取り寄せた少し薄めのコンソメスープをテーブルに並べ、親子二人だけの昼食を食べる。

 

 「おひ〜」

 

 トロ顔で喜ぶ娘に戦争での嫌な気分を洗い流される様に、シーマ自身も母親としての笑みをナツキだけに浮かべるのだった。

 

 ズッガァァァァァン

 

 「きゃあ!?」

 

 「ナツキ!?」

 

 急な艦の揺れに椅子から投げ出されたナツキを抱え、シーマは床に叩きつけられた。シーマは、ナツキを抱えたまま、ブリッジに連絡を入れた。

 

 「何事だい!!」

 

 「閣下、後方からの奇襲でさぁ!!

 

 連邦のバーミンガム級戦艦が4隻とマゼラン級戦艦6隻、サラミス改級巡洋艦が8隻の連邦軍のア・バオア・クー防衛艦隊だ!!」

 

 「ちぃ、ア・バオア・クーからかい!?」

 

 「ふぇぇぇぇん!?」

 

 「ナツキにノーマルスーツを着せたら、ブリッジに上がるさね!!

 

 対アンチビーム爆雷投下し、艦隊防御に回りな!!」

 

 「いやいや、ママ行っちゃイヤ!!」

 

 泣き止まないナツキ。

 

 何とか、ナツキにノーマルスーツを着せるが、泣き止まない為に仕方なくブリッジに連れて行く。

 

 「コッセル、被害状況を知らせな!!」

 

 「第一砲塔は全損して射撃不能。

 

 残りの主砲で連邦艦隊に応戦中でさあ」

 

 「ちぃ、仕方ないさね。

 

 あたしもモビルスーツで出る!!

 

 待機中のモビルスーツ隊にも出撃を掛けな!!」

 

 「ママ、行っちゃイヤ!!

 

 ママが行ったら、ママがパパに会えなくなるからイヤイヤ!!」

 

 ナツキも幼いながら、ニュータイプだったのは知っていた。アクシズの研究機関での検査では、高いニュータイプ能力があるのは判っていたし、イチカももしかしたらニュータイプだと、娘までがニュータイプなのだから有り得た話だった。

 

 そして、泣き止まないナツキは、あたしの出撃でさえも反対する。普段なら、『ママなら大丈夫!』と笑顔で送るが、今回は全く違う。

 

 「閣下、お嬢の直感には何時も助けられてます。出撃は待機部隊を見てからでも?」

 

 「そうさね、ナツキに免じて様子見するさね」

 

 「うん、ママ大好き!!」

 

 娘に抱き着かれ、指揮官としての威厳が損なうが、あたしにはナツキが居てくれる幸せが大切だった。

 

 

 だが、あたしは知らなかった。

 

 ナツキを庇い、負傷したあたしとの永遠の別れが来るとはまだ知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 



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帰還への序章 一時の休息と鈴の正妻としての意地

 

 

 水着へと着替えた一行は浜辺へと辿り着く。プライベートビーチという事もあり、浜辺に居るのは学園の生徒だけであり年相応に遊ぶ姿が目に入る。

 

 「あっ、おりむ〜達が来たのだ〜」

 

 「これで、一組が勝ったのも同然!!」

 

 「参加は待ってくんないか?」

 

 「企業の会議に参加して疲れたから休みたいけど良い?」

 

 「織斑君とアンさんが言うなら仕方ないかな」

 

 「どんな、会議なのだ?」

 

 「本音さんでも言えないわよ?

 

 別に言っても構わないけど、会社からの監視が2年ほど付くわよ?」

 

 「ほぇ!?」

 

 数名のクラスメイトがしているのは、ビーチバレーだった。無論、クラス対抗戦であり圧倒的有利なのは二組と三組だった。

 

 「あっ、マドカちゃん!!

 

 ヘルプ!!」

 

 「うっなぁ!?」

 

 三組のクラスメイトはマドカを見つけると、試合中のバレーコートへと拉致られたのだ。そしてマドカだけでは無かった。

 

 「鈴ちゃん、私達にもヘルプ!!」

 

 「うっなぁ!?

 

 あたしまで!?」

 

 二組だった鈴も、同じ様にバレーコートへと連行されて行ったのだった。

 

 身体能力だけならマドカに分があるが、スポーツなら天才的才能を遺憾なく発揮するのは鈴だった。

 

 試合結果は言わずとも、鈴の二組の圧勝だったと言っておく。

 

 何故なら、入学当初での出来事で二組は鈴を中心に団結しており、鈴の姉御肌が発揮されているのもあるが、鈴がレシーバー専門のリベロをしていた事が大きくてボールが繋がる事になり、逆に三組はスキあらば愛でようとするケモダノ化した猛獣がマドカを狙い、既に愛玩動物化いやマスコット化したマドカは後までも狙う猛獣に警戒せざるを得ない状況だったので二組の猛攻を凌げなかったのだ。

 

 そして、四組の簪は参加せずに水色のワンピース型の水着を着て、パラソルの下で渡された広辞苑並に厚いブラックローズの取り扱い説明書を読書をしていた。

 

 俺達一組だが、シャロとアンが休むついでにビーチに着くなりパラソルのエアマットに寝転がると、シャロが水着の紐を外して俺を呼ぶ。

 

 「イチカ、少し寝たいから、私に寝る前に日焼け止めクリームを塗ってくれない?」

 

 「構わないが?」

 

 腹這いに寝ている事で、グニャリと潰れるシャロの巨大な胸に息を飲むが、隣で横になっているアンがギロりと睨む目先はシャロの巨大な胸だった。

 

 「イチカ、シャロのはあたしが塗ってあげるわ」

 

 「アン、頼んだのはイチカで…」

 

 「大丈夫。

 

 隅々まで塗ってあげるわ!!」

 

 「ヒッャ!?

 

 アン、何処揉んでいるのよ!?」

 

 「シャロ、煩いわね!!

 

 揉んで、揉みまくって、垂れ乳にしてやるわよ!!」

 

 「ゆっ、百合は趣味じゃない!?」

 

 「あたしだって、ノーマルよ!!」

 

 俺から日焼け止めクリームをひったくる様に奪うと手の平に大量の日焼け止めクリームを出して、シャロを襲う様にクリームを塗りたくる光景。

 

 シャロの胸は、揉みくちゃにされやがて息が絶え絶えになるシャロだった。そして、二人が日焼け止めクリームでヌルヌルになり絡み合う光景はお互いの水着がズレて、色々と丸見えな為にアダルト過ぎて周りのクラスメイトには刺激が強すぎたのか顔を真っ赤にしてみんな手で顔を覆い隠すが、指の隙間からマジマジと見ていたのだった。

 

 「貴様ら、公衆の面前で何してる!!」

 

 ズッゴォォォン

 

 「「ギャン!?」」

 

 二人の百合百合しい光景は、黒いビキニ姿の千冬姉が来たことにより物理的に沈黙させられ、エアマットの上ではタンコブを作り気絶したアンとシャロが仲良く眠る事になったのだった。

 

 その後は、姉弟でバレー対決をして千冬姉のチームに入ったラウラが、気絶から覚めて参加したシャロが放ったスパイクの餌食となり顔面レシーブをしてコート外に吹き飛ばされたり、千冬姉がスパイクで放ったボールが弾けたりと楽しいビーチバレーを楽しんだのだった。

 

 『何処が楽しいのよ!?』

 

 

 クラスメイトからのツッコミをさて置き、大広間で食事を済ましたイチカが露天風呂で温泉を楽しんでいた頃の話、あたし達は千冬義姉さんに呼ばれて本館の千冬義姉さん達の職員が寝泊まりする部屋へと来ていた。

 

 無論、千冬義姉さんへの手土産はスルメイカの天日干しを軽く炙り細切りにしたつまみと黒い星のマークが入るビール数本と、他の女子生徒が来るだろうと予想した人数分より少し多目に清涼飲料を買っておいたのだった。

 

 「義姉さん、来たわよ」

 

 「お邪魔します」

 

 「入りますね」

 

 「鈴にアン、シャロだな。

 

 入れ」

 

 千冬義姉さんに入る様に言われ部屋に入る。

 

 「コレ、お土産よ。

 

 一応、別館でやってた会社の親睦会で出たおつまみを千冬義姉さん用に取っといただけだけどね」

  

 「そうか、済まないな」

 

 ビールの入った袋とつまみの入った皿を受けると、部屋に食事会をした時の様に普段の千冬義姉さんになる。その意味は『今は、プライベートだ』と言う合図だった。

 

 「で、何であたし達を呼んだの千冬義姉さん?」

 

 「大した話じゃないさ。

 

 なに、鈴の一夏との馴れ初めは知っているが、アンとシャロの馴れ初めは知らないからな。単なる、女子会と言うやつだ」

 

 「「えっ!?

 

 鈴さんの馴れ初め!?」」

 

 「アンは知ってるでしょうが!!」

 

 確かに、イチカからは聞いていた。

 

 鈴さんが、亡くなった母親が広州の老舗の料理店を継ぐことになったが、鈴さんの父親が反対して離婚。鈴さんを連れて広州に帰る時に空港でイチカに逆プロポーズした話だった。

 

 だから、あたしはイチカの一番に成るのを諦めたのだ。だって、詳しい話はイチカから聞いたけど、何も知らないあたしの居た宇宙世紀の世界に飛ばされ、唯一の心の支えだったのは鈴の存在だと言えるし、何よりも帰って、その想いを成就したいとイチカの思う心。そして、両想いの二人の関係はあたしは嫌でも理解させられた。

 

 だから、あたしはズルい女だと思いたかった。

 

 「アン!!

 

 アン、あんたの馴れ初めはどうなのよ?」

 

 「あっ、あたし!?」

 

 「うむ、私も可愛い妹の話を聞きたい所だが?」

 

 「「「「だが、その前に!!」」」」

 

 襖絵から耳をダンボにしているだろう5人には、入って貰おうと襖絵を勢い良く開ける。

 

 「「「「「きゃあ!?」」」」」

 

 案の定、襖絵の向こう側には簪を下敷きにシャル、ラウラ、セシリアに何故か箒とお重の様に重なる5人にあたし達は、ある意味で鈴の予想が当たったと呆れ返るのだ。

 

 だが、聞き耳を立てていた5人は脱兎の様に逃げるが、ラウラと箒は千冬義姉さんに瞬時に捕まり、セシリアはシャロが軍隊式格闘技で組み伏せて捕獲。

 

 逃げる簪とシャルは、あたしと鈴で浴衣の裾を踏みつけて転倒させ、あたしがシャルに44マグナムを後頭部に突き付けて拘束し、鈴は青龍刀を簪の首元に当てて簪は降伏したのだ。

 

 

 

 「で、盗み聞きしてたと?」

 

 「「「「「はい…」」」」」

 

 畳に正座をさせられ座る5人は、アンによるジオン式尋問中だった。無論、あたしが売店で買って置いた5人が好むペットボトルのジュースがある辺りは何とも絞まらない光景であるけど、世界最強のブリュンヒルデとオータムから海兵隊式格闘術を仕込まれたあたしにジオンの軍隊式格闘術をマスターするアンとシャロから逃げるのは不可能だと5人は悟っていたし、素直に話す5人にあたしは許していた。

 

 「アン、そこまでにしておけ」

 

 「「「「「ほっ…」」」」」

 

 「義姉さん、わかりました」

 

 「さて、鈴は最初からこうなる事を予想していたな?」

 

 「千冬義姉さん、当然、予想してたわよ。

 

 この際だから、箒にも言えると思ったから」

 

 「そうか。なら、私は止めん」

 

 「「「「「??」」」」」

 

 「さて、覚悟は良いわね?」

 

 「「「「「?」」」」」

 

 一瞬で鈴から漂う空気が変わり姿勢を正すと5人に向かい合う。その雰囲気は正妻としての威厳が満ち溢れ、あたしやシャロでも怯えざるを得ない空気を5人にぶつけて居るのだ。無論、その空気を知るセシリアとラウラに簪は慣れてはいるが慣れたくないのが正直な感想だろう。

 

 「先ずは、セシリアから行くわよ。

 

 高いプライドを圧し折られて、一夏に一目惚れしたセシリアに『なっ、何故、それを!?』タッグトーナメントでは、ヒーローの様に助けられて一目惚れしたけど、あたし達の関係と事実を知って諦めた簪『はぁうぅぅ///』一夏に絡んで、『認めない』と言っときながらお兄ちゃんと慕うラウラ『当然だな』シャルは、入社してから格好いい上司の一夏に一目惚れ『ぼっ、僕は!?』最後の箒は、小学生の頃の話は全て一夏から聞いたわ」

 

 「なっ!?」

 

 「確かに、一夏の事が好きなのはわかるわよ?

 

 でも、好きだからって遠回しに『好きな子を虐める』様な小学生だから許される様な暴力は、あたしはあんたを許さないし、一切認めないわよ!!」

 

 「きっ、貴様に何が!!」

 

 「あんたには判らないだろうけど、一夫多妻で一夏と結婚して、常に正妻として一番で居なければ成らないあたしの苦労は箒には判る?

 

 絶対に判らないわね。

 

 アンやシャロとの妻としての仲を取り持ちながらも、あたし自身の二人の妻に対する嫉妬を抑えて度量と余裕を二人に見せなければ成らない苦労を。

 

 それに、一夏は夜間に度々魘され、戦争で大量に人を殺した事を悔いている事を知ってんの?

 

 あんたは、一夏の罪を一生一緒に抱えて行く勇気は有る?」

 

 「そっ、そんなの男だから…」

 

 「男だから女だからって、そんなもん一人で抱えるのなんて無理に決まってるしょ!!

 

 良い、聞きなさい!!

 

 だから、簪は一夏の事が好きだったけど、余りにも背負う物が重過ぎて一緒に抱えるのが無理だと理解したから友人として諦めた。『うん、私には背負えないから諦めた』千冬義姉さんもあたしやアンにシャロが時々、1限目の授業に遅れる理由は知って居るわね?」

 

 あたしも経験したから、鈴からの質問の意味が判る。

 

 「あぁ、一夏から職員室で謝罪された時に聞いたから、その事は知っている。最近、敏感になり過ぎた感受性のせいだろ?」

 

 「そうね。

 

 だから、その時の一夏はその夜に限っては怯えた様にあたし達に酷く甘える。特に酷かったのは気絶しても一晩中抱かれ続けられた事だったわね…」

 

 あたしでも気付いたけど、ニュータイプに覚醒しただろう一夏の感受性は、あのシャロが持ち込んだ30バンチ事件の動画を見た後の部屋での事が酷かった。

 

 毒ガスにより亡くなった人々の残留思念を動画越しで諸に受けてしまい、イチカの気が狂いそうになった事だった。

 

 真っ先に優しく抱き締めて宥めようとした鈴は、イチカによって鈴が着ていた衣服を破り捨てて裸にした後は激しく抱きながら鈴に甘えていた。鈴が涙を流しながらも、イチカを受け入れて母性溢れる様な雰囲気で鈴が優しく宥めていた事はあたしは忘れないし鈴に悔しいと思った。

 

 無論、鈴は数分後に激しくイッたのか気絶し、イチカに甘えられ抱かれ続けられたが、あたしもシャロもイチカの餌食になったのは言うまでも無かった。

 

 そう、あたし達がイチカの心が壊れない為に“文字通り体を張っている”事を…

 

  イチカが翌日、全裸でベッドに眠るあたし達とシーツに付着した血の染みから状況を理解してあたし達に謝るが、結婚してるのだから構わないとイチカを許した。

 

 だって、あたし達はイチカを失いたくは無かったから。

 鈴は家族を失った悲しみをイチカと一緒に歩む為に努力し続ける事で心を保ち、あたしはイチカを支え甘える続ける事で心を保っていた。

 

 シャロはイチカを深く愛しながらも、二度とイチカとあたしから離れまいと自分が出来る事に努力して平然を保っていた。

 

 お互いに依存し合うから、深く深く愛せるのだ。

 

 だが、鈴が箒へと話をするが、箒が一切聞く耳すら無いのは知っていたし、矛先があたしとシャロに向かうのすら予想が出来た。

 

 「一夏も戦争で人を殺したならならば、そこの二人だって同じ人殺しだろ!!」

 

 「箒さん、あなたアンさんとシャロさんに何を言ってますの!!」

 

 「貴様!!

 

 姉御に!!」

 

 やはり、あたし達は箒から見たら人殺しかも知れない。だが、ガトー少佐からソロモンで言われた事までも否定はされたく無い。

 

 そう…

 

 『貴様がイチカ大尉だな?』

 

 『がっ、ガトー少佐!?』

 

 『貴様は人を殺した事に悔んで居るのか?』

 

 ソロモンへと転属して来た時に、ソロモンに回された5機の先行量産機ゲルググを受領の為に工廠へと呼ばれた時だった。

 

 それぞれ、シャア大佐用にS型のゲルググがガトー少佐にはA型で試作型の大型ビームライフルを装備したゲルググ。

 

 あたしとイチカにマツナガ大尉の三人にはB型仕様のゲルググが支給された時に、悩むイチカとガトー少佐と会ったのだ。

 

 『はい…』

 

 『なら、理念と理想の自身の意味を見付け持つ事だ』

 

 『理念と理想…』

 

 ガトー少佐の一言のお陰で、イチカが理念と理想を見付け出した結果が、最終決戦だったア・バオア・クーまで生き残れたのが大きかった。

 

 だから、箒を許したく無かった。

 

 イチカが見付けた理念と理想を否定された様に思えたから…

 

 バッシィィィィィン

 

 「グッハァ!?」

 

 あたしがぶん殴ろうと動くよりも先に、鈴が箒に平手打ちをしていた。無論、鈴の全力の平手打ちを受けた箒は、襖絵を突き破りながら、外の石で出来た灯籠まで吹き飛び激突する。

 

 「あんた、あたしの話を聴いてた?

 

 良い機会だから聞きなさい!!

 

 これは、あたしが正妻である意地でもあるし、イチカの妻である二人を侮辱するって事は、あたしに喧嘩を売るのと同義だと思いなさい!!」

 

 「きっ、貴様!!」

 

 木刀を何処からか取り出し鈴に襲い掛かるが、振り下ろした木刀に鈴は箒に呆れながら片手で受け止める。

 

 「全く、子供の癇癪ね…」

 

 「なっ、片手で受け止めただと!?」

 

 「少し、頭を冷やしなさい!!」

 

 バッキィ

 

 「ガッハァ!?」

 

 ガラガラ…

 

 鈴が灯籠に打ち付ける様に蹴り飛ばし、再び吹き飛ばされた箒が灯籠へと激突するが、至近距離から灯籠へと激突させられた為に灯籠が崩れて箒は崩れた灯籠の石材の下敷きとなり生き埋めとなるが生きており、流石は束さんの妹だと思う一同だった。

 

 「これが、あたしの正妻の意地よ。

 

 覚えて置きなさい」

 

 「……」

 

 「てっ、気絶してるから聞いてないか」

 

 そして、女子会が続き、あたしとシャロの馴れ初めをみんなに話すハメになったのは言うまでも無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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帰還への序章 銀の福音暴走事件 前編

 

 

 「まさか、馴れ初めを話す事になるなんて…」

 

 「私もよ…」

 

 ゲンナリしながら、顔を真っ赤にしたままのアンとシャロは昨日の馴れ初めを暴露した事を引きずっていた。

 

 アンの馴れ初めとは、士官学校では女である事を秘密にして男装していた。無論、同室だった同性の親友以外には女だとは思われず、ライバルだったイチカにはアンを男だと思われていた。

 

 ところが、お互いのバディが操縦訓練での事故死を機に、新しいバディとして同室になった当日にアンは、イチカが来る前に先にシャワーを浴びていたがボディーソープが切れている事にアンは気付いたのだ。

 

 逆に、夕飯の材料やボディーソープなどの買い物から戻り、買って来たボディーソープを補充しようと浴室に来たイチカと全裸だったアンが浴室内で鉢合わせをした事が要因だった。

 

 無論、アンの両親が死亡した事により、欧州連合の貴族としては没落していたが、未婚の貴族の女性の全裸を見たのだから、男して責任を取る様にイチカに迫り、責任を取らせて婚約者として付き合う様になった事が始めだった。

 

 その後は、幾度も戦闘でピンチの時に何度も助けられて、アンがイチカにベタ惚れした事やドズル閣下の前でイチカの女宣言した事までも話す羽目となり、アンが羞恥心から未だに顔を真っ赤にする理由だった。

 

 逆にシャーロットは、ソロモンでオリムラ中隊に配属になってからがイチカとの出会いの最初で、当初は大嫌いな父親の居るサイクロプス隊に配属予定だったが、隊に来る事を聞いた父親が軍にいる事自体を反対する事に反発して、親子での取っ組み合いの喧嘩となったのだ。

 

 シャーロットが地上戦線ではベテランパイロットだった事もあり、イチカとは年齢が一緒だった事もあって、ドズル閣下の直下の新規編成部隊の隊員として選ばれて、新規編成されたオリムラ中隊へとドズル閣下の命により転属となった。

 

 そして、隊長のイチカと副隊長のアンの二人の仲の良さに憧れ、自分も変わられたらと羨ましく思って訓練に勤しんでいた所に、転属を知り軍を辞めろと迫る父親と再び取っ組み合いの喧嘩をしていたら仲裁に入ったのが隊長のイチカだったのだ。

 

 無論、終いには私を優秀なパイロットと認めるイチカと軍を辞めさせて普通の女性の幸せを願う父親との殴り合いの喧嘩となり、父親に対して臆せずに堂々と殴り合うイチカの姿に完全に惚れたのだ。

 

 この時から、アンとはイチカを慕い取り合うライバルとなり、ミチルも参戦する事態となったのは言うまでもない。

 

 そして、父親の顎にアッパーを入れて下したが、倒された父親にまでイチカを私の婿にと大層気に入られてしまい、違う意味(将来の婿)で『娘を守れよ』と言って『はい』と答えてしまった事で、早く花嫁衣装を見たがる父親とは、別の意味でややこしくなったのは言うまでも無かった。

 

 そして、アンと共に行方不明となったイチカの事が大好きな気持ちを抱えたまま終戦となり、アステロイドベルトのアクシズに撤退する様に拾い主のシーマ大佐と艦隊ごと亡命した。

 

 あの日、イチカとの再会に自分の気持ちが爆発して告白し、受け入れてくれたイチカの妻になれたのだ。

 

 一応、余談だがイチカとシーマ閣下との間に出来た娘のナツキが居るのは知っている。無論、アンには秘密にする様にとシーマ閣下から厳命されている。

 

 何故なら、私は二人の行方不明のショックから立ち直り、教練部隊の教官であり少佐として軍に復帰するまでは、シーマ閣下の自宅でメイド兼娘のナツキの護衛をしていたからだと言って置く。

 

 そして、最後にアンとシャロの二人がお嬢様だった事実を一同に驚かれたのが最大の要因だった。そう、セシリア以外には『全く、お嬢様には見えない!?』と言われたらしい。尚、千冬姉には『お転婆娘だったからでは?』と言われたとか言われないとかは定かではない。

 

 

 

 何とか、赤面した二人も落ち着き、他の生徒が協同訓練をする中、専用機持ちは浜辺へと集合する。

 

 それは、国や企業から送られて来た専用機や追加パッケージの試験をする為だったりする。無論、あたし達にもブラックローズが支給されて実地訓練と慣熟訓練が待っていたりもする。

 

 「全員、集合した様だな」

 

 「織斑先生。何故、箒がいるのよ?」

 

 「それは、今日が箒の誕生日だからだ」

 

 「でも、社長的には、あり得ない話ね」

 

 「ミューゼル先生、どういう事だ?」

 

 「あら、ホワイトラビット社の関係者なら有名な話よ。箒さん、社長から姉妹としての縁が切られてるもの」

 

 「「「「「「なっ!?」」」」」」

 

 ミューゼル先生からのカミングアウトに驚く生徒達や教師達に証拠にと、ミューゼル先生は待機状態の『紅椿』を見せて部分展開する。

 

 「これが証拠よ」

 

 「何故だ!!」

 

 箒が待機状態の紅椿を持つミューゼル先生に食って掛かる。

 

 「貴女、アレだけの事を仕出かして置きながら、社長から誕生日で専用機でも貰えると思っているの?

 

 それに、貴女、社長が大嫌いでしょ?」

 

 「それは、一夏を叩き直そうとしてやった事だ!!

 

 姉さんの事など、言われたくない!!」

 

 「ハァ…本当、未だにお子様だなんて、呆れて何も言えないわね」

 

 ミューゼル先生に呆れられて、あしらわれた箒は拳を握りプルプルと怒りを露わにしながら睨むが、ミューゼル先生は元アメリカ国家代表であり、千冬姉と同等の技量と格闘センスがある彼女には、一切勝てる要素が無いのが判っていた為に襲う事は無かった。

 

 事実、ミューゼル先生の事は何度も書く様だが、4世代機として極秘に完成していた紅椿は、ブルーローズに搭載された展開装甲のエネルギー効率を調べる試験の為にミューゼル先生がテストパイロットとして使用し、本来なら箒への極秘開発した誕生日プレゼントだった。

 

 しかし、箒がした目に余る出来事やタッグトーナメントでは、放送室で起こした放送部員への殺人未遂により、姉である社長にまでも被害を受けた生徒の両親に責められる事態となって両親と一緒に謝罪したり、事前に何か起こる前にとIS委員会を通じて日本政府へと箒との姉妹としての縁切りをしたのだが、箒の様子から察するには委員会で握り潰されたのが実状だと思えた。

 

 無論、紅椿はブルーローズ開発の為の『青薔薇計画』の各試験が紅椿をテストヘッドにして行い、試験の終わりと箒の一件により解体予定だったが、各試験でテストパイロットを努めたミューゼル先生が紅椿を気に入り、テストパイロットとしての報酬としての1500万円を断り、自身の専用機を指名手配犯の容疑を解くためにアメリカへと返却して今は無い為に、専用機として受領したのだ。

 

 そんな、箒とのやり取りをしていた時に浜辺へと降り立つ数機のオスプレイは、ホワイトラビット社が個人で所有する軍用の輸送機だった。

 

 無論、先に着陸したオスプレイの扉が開き、降り立つのはスーツ姿で茶髪の髪をした一人の女性はホワイトラビット社の社長の束さんだった。

 

 「やっほぉ、ちーちゃん!!」

 

 「本当に仕事で来たんだよな?」

 

 「ちーちゃん、モチのロンだよ。朝一で旅館から本社に戻ってから、君達に渡す機体を積んで戻って来たんだよ?

 

 それに、いっくんのブルーローズの最後の武装も運んで来たんだよ」

 

 「束がこんなにも真面目だと、違和感しか感じんな…」

 

 「あっ、ちーちゃん酷い!?」

 

 束さんは、箒を一切認識せずに淡々と仕事を始め、オスプレイから作業員が下ろすのはアン達専用のブラックローズが入るコンテナや俺のファンネルが入るコンテナばかりだった。

 

 「さて、君達の新たな専用機、ブルーローズの簡易量産機で4.5世代型のブラックローズなのだ!!」

 

 「「「「これが、ブラックローズ…」」」」

 

 コンテナが開かれて、出てきたブラックローズはブルーローズの基本的な姿はブルーローズと変わらないが、頭部にあるハイパーセンサーと一体化した指揮官用ブレードアンテナが無く、ファンネルの代わりには非固定部位には固定型で、打鉄弐式の山嵐を参考にしたマイクロミサイルポット内蔵式の大型スラスターに変更されていた。

 

 無論、副隊長機のアンと鈴の専用機には色が変更され、アン専用にはライトブルーと白に変更し、鈴専用には赤と白を、シャーロットと他はブラックローズ本来の赤紫と白となっているが、アクシズの教官時代からのパーソナルマークのハートに砲弾が刺さるロゴマークが入れられていたのだ。

 

 無論、忘れていたとは言わないが、マドカのブラックローズは少しだけ仕様が違い、高いBT適正を利用すべくサイコミュの代わりにBT兵器仕様のファンネルが積まれており、大型スラスターはマザーファンネルとなり中には小型のレーザー砲搭載型の小型のファンネルが多数積まれている。

 

 「じゃあ、早速だけどフィッティング作業に入るよ!!」

 

 「「「「「は〜い!!」」」」」

 

 機体に割り振られた機体番号に基づいて、アンは「343-116」の番号の機体に乗り、シャロは「343-121」へ、鈴は「WR-101」へ、セシリアは「WR-102」へ、シャルは「WR-103」へ、マドカは「WR-104」へ、簪は「WR-105」のブラックローズに乗り込んだのだった。

 

 全員が乗り込むのを束さんが確認するとブラックローズからケーブルに繋がれた先はオスプレイの中に積まれた移動式ラボのコンピュータへと繋がれ、素早いタイピングでデータを入力して行き、フィッティング作業に取り掛かる束さんだった。

 

 無論、俺のブルーローズを展開し、女権の襲撃事件では未完成のままでの緊急出撃で搭載を見送った、4基の大型スラスター兼ファンネルのインストールとサイコミュの脳波を感知するための専用のヘッドフォンを頭に被り、サイコミュの最終調整を行っていたのだ

 

 

 「姉さん!!」

 

 「何かな?

 

 いっくんのサイコミュの最終調整と社員の専用機のフィッティング作業で忙しいだけど?」

 

 「何故です!!

 

 何故、ミューゼル先生に私の誕生日プレゼントを渡すのです!!」

 

 フィッティング作業の最中なのに、箒は束さんに食って掛かり都合がいい事ばかりを言う箒に、ついには束さんがキレたのだ。

 

 「あぁん?

 

 てめぇは、都合がいい事しか言えねぇのかよ?

 

 なぁ、束さんは忙しいんだよ?

 

 殺人未遂までして、やった生徒にすらも謝りもしない。

 

 あの事件のせいで、泣きたいのは束さんなんだよ。

 

 てめぇが殴った生徒の両親にまで、こっちは両親を引っ張って行って三人で頭を下げて土下座までしてんだよ!!

 

 それに、束さんの会社に損失まで出させて、各国の能無しとの嫌な話し合いとか会食とかでスケジュールが半年先まで一杯なのに、てめぇが仕出かした事で時間を取られてさ、もしも、可愛い社員達を路頭に迷わせたら責任取れんの?

 

 てめぇの一件で、軽く億超えの損失を出したの理解してるの?

 

 それだけの事をして、専用機が誕生日だからって貰えると思ってんじゃねぇよ!!」

 

 「犯罪者の姉さんに言われたくない!!」

 

 「残念だね。束さんの今は、日本政府との司法取引で指名手配犯としては解除されてるし、両親に謝って束さんの自宅に住んで居るし、束さんもやった事にはキチンと責任を取って償っている最中だよ。

 

 全く変わろうとしないし、子供のままなのはあんただけだよ」

 

 事実、束さんは償っている最中だった。

 

 医療関係には、無償でナノマシン医療カプセルを提供したり、ドイツから引き取った子供達には孤児院を建てて子供達の面倒を見ていた。それに、日本政府との司法取引と言う名の裏取り引きでは、ホワイトラビット社の本社を日本国内に置く事と、国家代表選手用の専用機の開発と技術提供を名目とした代表候補生専用の専用機の開発と製造は全て無償提供を条件に国際指名手配の解除を日本政府にして貰っていた。

 

 「なら、束。篠ノ之は邪魔だな?」

 

 「うん、仕事の邪魔だね。

 

 ちゃんと成長していたら、専用機を上げるつもりだったけど、心の中身は未だに餓鬼で人には一切の悪い事した自覚すらない馬鹿には専用機を上げるつもりないよ。

 

 ちーちゃん、この先の作業は、悪いけど関係者以外には見せたくない作業だから、そこのお馬鹿さんを摘み出してくれると助かるかな?」

 

 「篠ノ之、来い!!」

 

 「なっ!?」

 

 千冬姉に引き摺られて、箒は浜辺から摘み出されて旅館へと連行されたのだ。無論、ホワイトラビット社の整備士の面々は黙々と各機体の武装のチェックや個人に合わせたセッティングに合わせて行き、十数分後にはフィッティング作業が終了したのだ。

 

 「さて、いっくんのサイコミュの最終調整は完了したから、的を射抜いてくれるかな?

 

 もう少し、脳への負担が少なくなる様にデータを取りたいんだけど良いかな?」

 

 「判りました」

 

 沖合いにいる船舶から、ミサイルやドローンが射出される。無論、サイコミュを起動させると、ブルーローズは赤紫色のオーラに包まれた。

 

 「んっ、見える!?

 

 行け!!

 

 ファンネル!!」

  

 4基のファンネルがブルーローズから分離して目標に向かって凄まじいスピードで向かって行く。無論、脳波から感じるのはミサイルの形成炸薬の弾頭。

 

 そして、サイコミュとISのインターフェイスが合わさり、脳がイメージした通りにファンネルから放たれたビームがミサイルの弾頭だけを正確に撃ち抜き爆散させていた。

 

 無論、モニタニングする束さんは真面目な表情をしながらキーボードを打ち、サイコミュとインターフェイスが上手く機能しているかを事細かにチェックしていた。

 

 「うん……全く、問題なしだね…」

 

 多分、束さんが苦虫を噛んだ様な表情なのは、サイコミュのデータを送り付けただろうシャア大佐にだろう。そして、偶然の産物とも言えるサイコフレームとの高い連動率の高さと相まってブルーローズのサイコミュのデータ取りが終わりを見せたのだ。

 

 だが、慌てた表情の千冬姉と山田先生が俺達のホワイトラビット社のブラックローズの慣熟訓練をする岩場へと走って来たのだった。

 

 「全員、送られて来た武装などはコンテナに仕舞い、専用機持ちは集合しろ!!」

 

 「まさか、ちーちゃん?」

 

 「どうした、束?」

 

 作戦室へと移動し、千冬姉と束さんの二人が話していた。

 

 「アメリカの馬鹿が仕掛けて来たかな?」

 

 「なっ!?」

 

 「やっぱり…」

 

 「いっくん」

 

 「はい」

 

 「学園防衛中隊、オリムラ中隊に出撃命令だよ」

 

 「了解」

 

 束さんから無表情に淡々と下された出撃命令に千冬姉は唖然としながら止めに入る。

 

 「束、待て!?

 

 まさか、銀の福音の事は…」

 

 「うん、アメリカへの監視対象だったから監視してたよ。アメリカの馬鹿の事だから、暴走した無人機だから撃墜しろって来てんだよね?『あぁ、そうだが…』あれ、有人機だよ。ちーちゃん」

 

 「何だと!?」

 

 「ついでに、パイロットはちーちゃんやメアリー、クラリッサと同じ、束さん達の大切な学園の同期でお友達のナターシャちゃんだよ?」

 

 「何故、束は!?」

 

 「アメリカとの関係がきな臭くなって来たからナターシャちゃんを保護しようとしたけど、一足先に無能共に捕まったか、束さん達が知らない内にいっくん達に撃墜させて、ナターシャちゃんを消そうとしたかだね」

 

 「判った。

 

 なら、一夏達には銀の福音のパイロットの救出を頼みたい」

 

 千冬姉から言われ、出撃準備をしようとした矢先だった。

 

 「たっ、大変です!!」

 

 「どうした、山田先生?」

 

 慌てた様に作戦室へと走り込む山田先生。

 

 そして、山田先生の一言でホワイトラビット社の面々には背筋が凍る一言だった。

 

 「学園の生徒のホワイトラビット社のテストパイロット用に運ぶ予定でした、ブラックローズを篠ノ之さんが奪って銀の福音に向かいました!!」

 

 「山田先生、奪われた機体番号は!!」

 

 「えっと、たしか「WR-110」です!!」

 

 「束さん、学園の誰の専用機だ?」

 

 「いっくん、2年生で元イギリスの代表候補生のサラ・ウェルキンさんの専用機だよ」

 

 「ちぃ」

 

 最悪、ホワイトラビット社とアメリカとの前哨戦になるかもしれないのに二面作戦を強いられる俺は舌打ちをして、箒を恨めしく思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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帰還への序章 銀の福音暴走事件 中編

 

 

 あたしは、初めて一夏のこの顔を見るのかも知れない。

 

 作戦室での一夏の顔は、千冬義姉さんの様な鋭い眼差をしてブリーフィングで詳細を淡々と説明して行く。

 

 「…であり、海上封鎖は数が出せるブラックラビット隊が受け持ち、俺の中隊の初任務は強奪犯の篠ノ之箒の逮捕並びに銀の福音のパイロットの救出だ。

 

 鈴、セシリア」

 

 「「はい」」

 

 「セシリアはロングレンジスナイパーライフルの使用を認め、降伏勧告に従わない場合は遠距離からの狙撃による箒の撃墜。鈴は狙撃するセシリアの護衛」

 

 「「了解!!」」

 

 「アン、シャロは俺の僚機として援護。簪とシャルは上空警戒だ。

 

 以上!!」

 

 「「「「了解!!」」」」

 

 ブリーフィングが終わると、ラウラは既にブラックラビット隊として海上封鎖に出ている。無論、マドカはブラックラビット隊を支援の為に共に出ている。

 

 そして、ブラックラビット隊の海上封鎖による展開の完了の報告を受け、あたし達のオリムラ中隊が出撃したのだ。

 

 

 その頃、太平洋上空。

 

 「糞!!

 

 姉さんの作った機体は欠陥品なのか!?」

 

 ブラックローズを奪った箒は、何とか飛ぶ事が出来たのだが、非固定部位の二基の大型スラスターに内蔵されたマイクロミサイル以外は全てがビーム兵器であり、実体剣が無い事に嘆いていた。

 

 無論、射撃が得意とする元イギリス国家代表候補生の2年生のサラに合わせたチューニングが施されているのだから、ブラックローズは欠陥機では無く、5世代型のブルーローズを原型にした4.5世代型として完成した量産機でだった。

 

 サイコミュを積まない代わりに小型で高出力のジェネレーターを搭載したり、ファンネルの代わりにマイクロミサイルポッドを内蔵した大型スラスターを搭載したのだから、当然の如くサラに合わせた射撃特化のビーム兵器が積まれているのは当たり前だった。

 

 『篠ノ之箒、貴様にはIS強奪の容疑により逮捕状が出ている。武装を解除し投降しろ!!』

 

 一夏達に追い付かれたのか、一夏からのオープンチャンネルによる投降の呼びかけが響いた。

 

 何故?

 

 私に逮捕状が?

 

 意味が判らない。

 

 意味が判らないから、沸々と湧き上がる怒り。

 

 「一夏!!

 

 私が犯罪者だと?

 

 ふざけるなァァァ!!」

 

 私は、レーダーに映る銀の福音に向けて、スラスターを全開にして逃げたのだ。

 

 だが、一夏達に追われ逃げた先に見える光景は、私には絶望と言う名の暴走する銀の福音とも交戦状態であり、浮上した潜水艦からISが発艦して、私を追撃する一夏達へと攻撃をするアメリカ軍のIS部隊が展開していたのだった。

 

 「なっ……」

 

 そして、私の機体にもターゲットをロックされたアラートが鳴り、遥か上空へと加速して、マシンガンを放つアメリカ軍からも逃げたのだ。

 

 「良いかい、あたしらの標的はホワイトラビット社の新型の奪取だ!!

 

 抜かるなよ!!」

 

 『了解!!』

 

 箒が逃亡し追った先には、箒と銀の福音とアメリカ軍のIS部隊が見えており、銀の福音はアメリカのIS部隊に対して攻撃しており、下手をすれば三つ巴の戦いにすらなり得る状況だった。

 

 「ホワイトラビット社の新型だ!!」

 

 「シールドエネルギーを無くして解除させたら、パイロットは殺せ!!」

 

 無論、こちらにはアメリカ軍のIS部隊からの問答無用の攻撃が仕掛けられていた。

 

 「イチカ、銀の福音!!」

 

 「ちぃ、不味いな…箒を落とせば、アメリカ軍に最新鋭のブラックローズが確実に拿捕されるよな…」

 

 「しかも、標的はあたしらの新型機(ブラックローズとイチカのブルーローズ)…」

 

 「先に銀の福音を落とせば良いんじゃないの?

 

 最悪、パイロットの救出だからイチカのファンネルとアンの狙撃で充分落ちると思うわよ?」

 

 「シャロ、そんな単純な問題じゃないわよ」

 

 「いや、やってみたい事があるが構わないか?」

 

 「「なっ、何よ?」」

 

 「ブルーローズの全力での加速だな。

 

 4基の大型スラスターとメインスラスターによるリボルバーイグニッションブーストだよ。

 

 理論上なら、八段階の加速が出来るはずだ。

 

 それで、戦場を撹乱させながらアメリカのIS部隊と箒を斬り刻む。

 

 アンは浮上している潜水艦を撃沈しろ」

 

 「了解…(イチカらしい無茶振りだけど、無事でいてよね…)」

 

 イチカは、あたしに冷酷な下命をすると、八段階加速によるリボルバーで一瞬で消えて行き乱戦化する戦場に突入して行ったのだ。

 

 「じゃあ、あたしも仕事をしますかね…」

 

 ブラックローズの拡張領域から実戦用の形成炸薬の弾頭を搭載したジャイアントバズーカをコールして装備すると、浮上し未だにIS部隊の発艦が続く潜水艦に向けて急降下して狙いを定めながら、あたしはジャイアントバズーカを構え突入する。

 

 「てっ、敵機直上!?」

 

 「はっ、早い!?」

 

 潜水艦の乗組員が叫ぶが既に遅く、甲板にはカタパルトに接続されたままの展開したISのパイロットと待機中の数機のISが母艦である潜水艦を守ろうとマシンガンで弾幕射撃を放つが、弾幕射撃が凄まじかったサラミスやマゼランにジャイアントバズーカで突っ込んで来たあの頃に比べたら、この程度の弾幕射撃では全く持ってぬるま湯のお風呂に浸かるのと等しかった。

 

 「沈め!!」

 

 ドッゴォォン ドッゴォォン ドッゴォォン

 

 ジャイアントバズーカの三連射。

 

 一発目は、見張り員の水兵が対空監視で居た潜水艦の浮上時のブリッジとも言えるセイルを水兵諸共に吹き飛ばして破壊し、二発目はカタパルトの射出のタイミングが長い事から蒸気式だと睨み、供給元へとバズーカの弾頭を直撃させて破壊する。

 

 無論、直撃した被害は発艦待ちのパイロット達や作業員達が破壊されたカタパルトに接続された配管から大量に漏れた高圧高温の水蒸気を諸に浴びて、ISの絶対防御には護られてはいるだろうが高温で吹き出す水蒸気を浴びては耐えられずに甲板上に溢れるのは、大火傷を負いながら皮膚が剥がれてもがき苦しむ甲板作業員や艦の破片が身体中に刺さり即死した作業員に配管から蒸気を浴びた女性パイロットは余りの苦しみから酷い形相のまま死んでいたりと甲板は地獄絵図化していた。

 

 そして、止めとなった三発目は魚雷発射管室の真上へと直撃し、幾らチタン製の装甲でも堪えられる訳がなく、形成炸薬弾頭のジャイアントバズーカの弾頭は装甲を突き破り魚雷発射管室内にて弾頭が爆発する。

 

 無慈悲な魚雷発射管室の内部での爆発は、魚雷へと誘爆を次々と起こして爆発して行き、魚雷発射管室が内部からの爆発に耐え切れなくなって艦首部分が吹き飛び、大量の海水が潜水艦内部へと濁流となって襲い、生き残った乗組員が海へ飛び込みながら、潜水艦は艦首から沈みオベリスクの塔の様に突き立って海中へと没した。

 

 そして、海上に浮かぶのは大火傷を負い絶命したパイロットや作業員達の遺体だけだった。

 

 「あっ、母艦が!?」

 

 「貴様が、やったのか!!」

 

 無論、母艦を撃沈された事に、怒り狂うアメリカ軍のIS部隊のパイロットの数名は、あたしへと襲い掛かるがペア行動が原則のオリムラ中隊では、あたしの他にもう一人が居るのさえ忘れたアメリカのパイロットには、戦争がなんたるかと教育の時間とするとしよう。

 

 「シャロ、フォーメーションB‼」

 

 「アン副隊長、了解!!」

 

 既に、競技用リミッターを切ったビームライフルは絶対防御の意味が無い事をあたし自身は理解している。

 

 無論、引き金を引けば相手の命を刈り取る意味さえも理解しているからこそ引き金を引く。

 

 殺らなければ死ぬのは、確実にあたしだった。

 

 それが、戦場で認められた唯一のルールであり、覚悟無き者が入るべき場所では無い事は判っているし、殺される覚悟だってしていた。

 

 だから…

 

 「落ちなさい!!」

 

 ビュンビュン

 

 「ガッハァ!?

 

 絶対防御が…」

 

 ISを駆る、一人の女性のアメリカ兵にあたしのビームライフルのビームが胸部を貫通し絶命して海へとISを纏ったまま落ちて沈み、二度と浮上する事は無かった。

 

 「次!!」

 

 

 私は、躊躇いなくビームライフルを放ちパイロットごと殺すアンさんやシャーロットさんの二人を見て、自分はまだ『引き金を引く』意味を理解して覚悟すら出来て無かった事に気付く。

 

 そして、箒さんへの狙撃命令にも躊躇い、引き金を引けない事に隊長である一夏さんに気付かれたのだ。

  

 「セシリア、あんたは人を殺すのが怖いんでしょ?」

 

 不意に、鈴さんから私の抱えていた、核心を読まれた。当然、訓練は代表候補生になる為にして来たつもりだった。

 

 「怖くないと言っても、嘘になりますわね。覚悟はして来たつもりでしたわよ。でも、でも…」

 

 私の言葉は続かなった。

 

 続かなかったのは、戦場と言う恐怖に取り憑かれ、いつの間にか恐怖から涙を流していたのだから…

 

 「それが、セシリアの性格よ。

 

 あたしも正直、怖い。

 

 あたしがあたしで居られなくなる様な、狂った戦場には優し過ぎるセシリアには耐えられないし、あたしもセシリアの護衛に回されたのは、一夏があたしを戦場には立たせなく無かったのかも知れない。

 

 でも、簪やシャルまで周囲警戒で主戦場から外したのは、戦場に立つ覚悟が出来てないあたし達に対しての一夏の優しさ。

 

 でも、あたしは決めたのよ。

 

 覚悟を決めて、あたしは引き金を引くわ。

 

 セシリア、あんたには簪達と上空警戒を頼むわよ!!」

 

 鈴さんは、私にそう言うと赤いブラックローズは、乱戦となるアンさんの元へと飛んで行ったのだった。

 

 

 セシリアから離れたあたしは、乱戦となっていたアンとシャロを援護すべく、コアの朱雀が用意してくれた『EXAM』を躊躇いなく使用することに覚悟を決めた。

 

 「朱雀、ありがとう。 

 

 これで、あたしは輪舞曲を踊れるわよ!!」

 

 『無茶しちゃ嫌よ?』

 

 「当たり前じゃない‼

 

 行くわよ!!

 

 単一仕様『EXAM』を起動するわよ!!」

 

 ブラックローズが、真っ赤なオーラに包まれて『EXAM』が起動する。凄まじい、加速力に身体が潰されそうになるけど、朱雀があたしを凄まじいGから護ってくれる。だが、EXAMのタイムリミットは鍛えたお陰か5分と表示される。

 

 「ぜりゃァァァァ!!」

 

 「??」

 

 驚き、驚愕する間もなく、アメリカのIS部隊の機体の推進系だけ斬り刻み海へと落とす。

 

 「邪魔よ!!」 

 

 「速すぎる!?」  

 

 次のターゲットを落とすべく、瞬時加速して更に加速する。バレルロールを描きマシンガンの弾丸を躱して、もう一機の機体をひたすらに斬る。

 

 だが、タイミングを狙ったかのように一機の機体があたしを狙い襲って来たのだ。

 

 「ファ、ファング・クエイクですって!?」

 

 「ちぃ、それを躱すとは強い奴だな!!」

 

 まさか、アメリカ国家代表のイーリス・コーリングと戦闘になるとは全く予想が出来なかったが、EXAMのタイムリミット内に倒せるか判らない状況に成るとは予想していなかったのだ。

 

 「上等…」

 

 「行くぜ!!」

 

 そして、鈴とイーリスの二人の激しいIS戦になるのは明白だと、この時には誰も知らない。

 

 



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帰還への序章 銀の福音暴走事件 後編

 

 

 鈴とイーリスがIS戦による激戦を繰り広げていた頃、俺は襲い掛かる数機のアメリカ軍のISを撃墜しながら銀の福音へと肉薄するが、銀の福音は一度はアメリカ軍に撃墜され海へ墜ちるが真新しい姿は二次移行だと気付く。

 

 「ちぃぃ!?」

 

 『LaLaLa!!』

 

 大天使の様に広がる機械仕掛けの翼から放たれた大量のレーザー砲は撃ち落としたアメリカ軍のISに無慈悲に浴びせて撃墜する。無論、近付こうとする俺にもレーザー砲が追尾し襲い掛かるが、ビームライフルを変形させてビームソードを展開すると、当たるレーザーのみをレーザーを斬り払う。

 

 だが、銀の福音から感じるのは大切な人を護りたいとする気持ちが強く感じられていたし、サイコミュを経て俺には感じて居たのだ。だからこそ、大切な人が居るからこそ共感し、銀の福音を助けてあげたいと思ってしまう。

 

 「白星、あの子を助けてあげられないか?」

 

 『う〜ん、正直言って無理だよ。

 

 コアネットワークをからも自身で拒絶しているし、私も説得しようとコアに侵入したけど拒絶された…』

 

 「なら、サイコミュの光なら?」

 

 『絶対、駄目!!

 

 イチカがイチカじゃなくなくなる!!』

 

 そうか、なら肉薄して接近するしか無いと思い、銀の福音へと肉薄する事を決めたのだ。

 

 

 「!?」

 

 だが、急な悪意を感じて振り向けば、ビームサーベルを抜き突貫する赤紫色と白の機体に乗るのは、ブラックローズを強奪した箒だった。

 

 「この機体なら!!」

 

 「ちぃ、殺らせはしない!!

 

 行け、ファンネル!!」

 

 「なっ!?

 

 何故、邪魔をする!!」

 

 咄嗟にファンネルを出して突撃する箒の進路にビーム降らせて妨害する。何故なら、銀の福音から感じるのは悪意ではなく大切な人を護りたい気持ちだからだ。

 

 「この機体には、全く悪意は無い!!

 

 ただ、大好きな人を護りたい気持ちが何故判らない!!」

 

 「ただの機械のコアなんかに人格がある訳が無い!!」

 

 箒が叫び、コアの人格を否定する。

 

 しかし、急にブルーローズが俺を通じてサイコミュの制御リミッターが外れてしまい、完全状態で起動したサイコミュは通常よりも強力な赤紫色のオーラを纏うと白星が叫んだのだ。

 

 逆に流れ込むのは、ブルーローズのサイコミュを経て俺が感じた白星の感情は、自分を否定された事による怒りの感情と俺に対する好きだと言う想いが、箒に全てが機械の思考だと否定された事への怒りの感情が全て織り混ざった様な感情と悲しみ。

 

 そう、白星の怒りの叫びだった。

 

 『私は私だ!!

 

 私はコアだけど機械なんかじゃない!!

 

 ちゃんと、人の心を持った人格なんだ!!

 

 お前に、お前なんかに否定されてたまるかぁぁぁ!!

 

 だから、お前なんか嫌いだ!!

 

 嫌いだ、嫌いだ、嫌いだ、大嫌いだぁぁぁぁ!!』

 

 「!?」

 

 白星が箒に叫び、完全に拒絶する。

 

 無論、白星自身も他人へと叫ぶのは初めての筈だが、逆にサイコミュを経て増幅された白星の意識は箒へと語ったのだと俺は思考する。

 

 無論、白星の叫びとサイコミュによって増幅された意思は俺をサイコミュへと通じて戦場全体へと拡散しつ拡がり、双方が戦闘中であっても機体が急停止し、戦場には静けさだけが支配したのだ。

 

 「い、今の声は?」

 

 「あぁ、お前が拒絶したコアの人格だ。

 

 そして、今の声は俺の専用機のブルーローズのコアにして、白式のコアだった白星の心の叫びだ」

 

 「そんな、馬鹿な事が!?」

 

 それでも、箒は白星の人格の否定を辞めなかった。

 

 

 

 俺を通じて、サイコミュにより白星の拡散された意識は戦場を巡っていた。無論、激戦を繰り広げる二人も例外では無かった。

 

 そう、白兵戦を繰り広げる鈴のブラックローズとイーリスのファング・クエイクの2機の激闘は、鈴の圧倒的に不利な状態だと言えた。

 

 「なんで、アメリカ国家代表のあんたが戦場にいるのよ!!」

 

 「あたしは、ナターシャを人質にされたんだ。

 

 だから、居ないと思って探したら、暴走した銀の福音のパイロットにされてるじゃねぇか!!

 

 そして、あたしも親友を人質にされた以上は機体強奪任務は大統領命令だから逆らえねぇんだよ!!」

 

 「なっ、何でよ!!」

 

 「スキだらけぜ!!」

 

 「カッハァ!?」

 

 瞬時加速から、あたしのブラックローズの懐へと入られ、お腹へと殴られ拳が刺さる。無論、口の中に鉄の味が込み上げて来て意識が飛びそうになるが唇を噛み耐える。

 

 EXAMで機体性能の向上と疑似ニュータイプであたしが強化されても、現役の国家代表では腕前の差には天と地の差がこうもはっきりするのだけは釈然としないし、無性にあたし自身にも腹が立つ。

 

 「オラ、オラ、オラァ!!」

 

 ズタボロになったブラックローズのEXAMのタイムリミットは残り1分しか無く、イーリスのパンチの乱打とも言えるラッシュに完全に意識が飛びそうなる。

 

 「ガッ!?

 

 だけど、あたしだって負けられないのよ!!

 

 EXAM、リミッター解除!!

 

 ゼッラァァァァァ!!」

 

 「なっ!?」

 

 EXAMの制御リミッターを完全に解除し、ファング・クエイクの拳を握り、逆に握り潰すと片手だけとなったビームサーベルで舞う様に斬りまくるが、EXAMも暴走状態へと移行しつつあり、鈴の今のズタボロなブラックローズでは暴走は目に見えていたのだ。

 

 「ガッハァ!?

 

 畜生、そっちまでも暴走かよ!!」

 

 あたし自身にも、制御リミッターを外したツケなのか、EXAMのタイムリミットの限界を越えようとした瞬間、見える全ての視界が真っ赤に染まる。

 

 「ガッ!?

 

 うわぁァァァァ!?」

 

 そう、EXAMのシステム暴走だった。

 

 『鈴!?』

 

 朱雀が緊急停止を掛けようとするが、既にコアの朱雀でも制御不能へとなったのだ。

 

 『EXAMシステム、オーバーフロー』

 

 無機質な脳内音声と共に、暴走状態による強制的な強化に耐えられる訳が無く、私自身の身体から悲鳴が上がり、ブラックローズの関節と言う関節の全てが悲鳴を上げ、壊れ始めたブラックローズのパーツをバラ撒きながらも攻撃は続き、イーリスの纏うファング・クエイクへの攻撃は止むことが無いように見えた瞬間だった。

 

 私達が戦う戦場に赤紫色のオーラが包み込み、機体が動かなくなったのだ。

 

 「なんで、ファング・クエイクが動かねぇ!?」

 

 イーリスの叫びと同じく、暴走状態のEXAMもあたしのブラックローズも急停止したのだ。だが、赤紫色のオーラは心に温かく感じ、逆に一人の女の子が否定された哀しみと怒りを感じたのだ。

 

 「なっ、何なんだよ。

 

 暖かな気持ち?

 

 いや、怒りと悲しみなのか?」

 

 「これは…一夏のブルーローズの光?」

 

 そして、サイコミュから放たれた赤紫色のオーラは戦場を支配して全ての機体を停止させ、白星の心の叫びを聞いた銀の福音も俺に寄り添う様に来ると、急に解除して待機状態になりパイロットを開放したのだ。

 

 『ナーちゃんをお願い』

 

 「銀の福音なのか?」

 

 『うん、私が銀の福音のコアの人格だよ』

 

 「そうか…人とコアの人格は分かり合えるのだな…」

 

 『違う。あなただから分かり合えた。だけど、白星は完全に私達コアの■■■■として覚醒している。だからだと思う』

 

 一部の言葉が砂嵐の様にかき消されて聞き取れなかったが、銀の福音も覚醒しているのではと思うが深くは追及はしなかった。

 

 「なっ!?」

 

 同じくして、箒の驚きと共にブラックローズが急に光り出すと、箒の纏うブラックローズは強制的に解除されて待機状態となって、箒から離れて浮遊する様に俺の手の平に来た所を待機状態のピアスを回収する。

 

 そして、手の平に収まる待機状態のブラックローズのコアからも声が聞こえたのだ。そして、白星を別の名前で呼ぶが銀の福音のコアの人格と同様に砂嵐の様にかき消されて聞こえなかったのだ。

 

 『■■■■が言うなら、私もこいつが大嫌い!!』

 

 「うわァァァァァ!?」

 

 まさかのブラックローズのコアによる箒への拒絶、ブラックローズのコアの意思により自ら展開を解除したのだ。海へと落下する箒を尻目に気絶しているナターシャさんをお姫様抱っこして運んだのだ。

 

 

 そして、激戦を繰り広げた鈴とイーリスさんは、両機の専用機の急停止を機に、残存戦力を壊滅させたアンとシャロにビームライフルを突き付けられ、イーリスもビームライフルの威力を知っていたのとナターシャの無事を確認した後、武装を解除して降伏したのだが問題も起きていた。

 

 「ナターシャも無事だったし、こんなに強い奴が沢山居るなら、あたしも一緒に行くぜ!!

 

 どうせアメリカに戻ったら、降伏の責任を取らされて銃殺刑が目に見えているしな」

 

 とアメリカ軍を抜ける気満々なイーリスさんに三人はどうしたら良いのか途方に暮れたらしい。

 

 

 その後、海上封鎖中にアメリカ軍のイージス艦数隻で編成された艦隊からの襲撃を受けて逆に壊滅させて撃沈して来たブラックラビット隊も合流して救助活動に入り、専用機を強奪した箒や生き残ったアメリカ軍の兵士達は全員が身柄を拘束し捕虜としたのだ。

 

 無論、箒はホワイトラビット社の最新鋭の量産機を強奪した容疑で救助したクラリッサの手により逮捕され拘束したのだ。

 

 この戦闘では、ホワイトラビット側の被害は鈴のブラックローズの中破とブラックラビット隊の流星改3機の損傷のみで、逆に襲撃したアメリカ軍のISのコアの大半がパイロットと一緒に海の藻屑となり、アメリカが所有するコアの全体の六割に当たる20個ものコアを一気に失ったのだ。

 

 そして、アメリカ側の戦死者は撃沈したイージス艦7隻と潜水艦だけでも三千人以上が戦死し、パイロットもベテランパイロットが14名が戦死し、降伏し亡命ついでに司法取引に応じたイーリス・コーリングを除き、捕虜の5名もイーリスと同様に司法取引に応じて亡命を果たしたのだった。

 

 無論、臨海学校はアメリカによる第二次攻撃が予測された為に旅館に帰還してから学園関係者達に報告し協議した結果は中止となり、学園へとオスプレイを使い帰ることになった。

 

 救出したナターシャさんと降伏したイーリスさんの二人はホワイトラビット社にて保護となるが、残りの5名もホワイトラビット社に命の危険性から保護を求める事態となったが、女尊男卑を許さなかったイーリスとナターシャの二人の指導のお陰か女尊男卑ではない事が分かり保護となって、テストパイロットとして再就職する。

 

 学園に戻ると箒はあまりにも重い罪から退学処分となった。そして、身柄はホワイトラビット社に引き渡され、私兵部隊による軍事裁判にも掛けられる事が決まり実刑の銃殺刑は確実だと思われ、何重にも拘束された箒はオリムラ中隊の幹部級の四名により、24時間体制で禁固に入れられて裁判までは監視となった。

 

 そして、この事件でアメリカとの本格的な戦闘となり、多数の戦死者を出したアメリカは激怒したがイーリス・コーリングとナターシャ・ファイルスの両名によるIS委員会で開かれた裁判の証言により、戦犯として裁かれたアメリカは、所持する残りのコアの没収とホワイトラビット社と学園に多額の賠償の支払いを命じられ、アメリカ支部のIS委員会への強制調査により大量の女性権利団体の会員が逮捕されて、責任を取らされたアメリカの大統領も罷免処分となり委員会により逮捕となった。

 

 

 

 そして、束さんが運転し、俺とアンや鈴にシャロの5人は箒を監視しながら、本社で行われる軍事裁判へと箒を護送中だった。

 

 これは、箒への最後の別れだと思いながらも、悲しいや寂しいなどと言った感情は全く浮かび上がる事は無く、無言のまま車内は静かだった。

 

 そんな時だった。

 

 『パパ、ママを助けて!!』

 

 「!?」

 

 「どうしたのよ?」

 

 鈴が驚く俺に不思議そうに顔を覗かせるが、聞こえたのは一人の少女の助けを求める声だったのだ。

 

 「なぁ、皆。

 

 今、女の子の声が聞こえなかったか?」

 

 「気のせいじゃない?」

 

 アンは気のせいだと言う。

 

 「だけど、パパ助けてって聞こえたんだが…」

 

 「ツッ!?」

 

 パパの言葉を聞いたシャロがびっくんと反応して、一瞬だが驚いた反応をする。無論、それを見逃す鈴では無く、シャロに質問する。

 

 「シャロ、あんた、何か隠してるでしょ?」

 

 「いっ、いえ、何も!?」

 

 「やっぱり、隠してる!!」

 

 アンに取り押さえられたシャロは自爆する。

 

 「ちょっと、シーマ閣下からアンには言わない様に厳命をって、はっ!?」

 

 「アンじゃ無ければ良いのね?

 

 なら、あたしには言いなさい!!」

 

 「イチカとシーマ閣下の間に出来た、ナツキちゃんと言う娘が…」

 

 「「「なっ、何だってぇぇぇ!?」」」

 

 そして、二人に落とされた爆弾。

 

 「イチカ!!何時、何処でシーマ大佐とヤッたの?」

 

 「アンがシャア大佐の護衛でグラナダに向かった時だよ。ただ、俺はシーマ大佐に食われただけだ!!」

 

 「となると、ナツキは今年で三歳ぐらいか…」

 

 「シャロちゃん、ナツキちゃんの写真ある?」

 

 「あっ、はい…」

 

 「いっくんの小さい頃にそっくりだね…」

 

 「「イチカ、後でギルティ!!」」

 

 そして、束さんが運転しながら、ナツキが居た事実に驚く始末で、俺も二人からは『ギルティ』と言われて睨まれる事態となるが、急に車内に浮遊感に襲われる。

 

 「なぁ、アン?」

 

 「何よ?」

 

 「この展開は、お約束過ぎないか?」

 

 「あたしに言われても、反応に困るわよ…」

 

 「まぁ、良いわよ!!

 

 このまま、シーマって女に問い詰めてやるわよ!!」

 

 「鈴、それは死亡フラグだから辞めた方が良いわよ?」

 

 「シャロの裏切り者ぉぉぉ!?」

 

 こうして、叫びながら黒い穴へと護送車ごと黒い穴へと吸い込まれ、その浮遊感は無重力だと悟る。

 

 「皆、専用機を展開して!!」

 

 束さんの叫びに専用機を展開する。

 

 無論、拘束中の箒は束さん特製のカプセルへと入れたが、漏れ出した空気の流れにカプセルが流されてしまう。

 

 「しまった!? 

 

 箒が流された!!」

 

 「それよりも、ジムⅡよ!!」

 

 「なっ!? こんな所に小型ロボットだと!?」

 

 そして、俺達の前に現れた要塞内だろう通路にRGM-179が現れた事にシャロが叫び、咄嗟に展開した大型ビームライフルをコクピットへと放ちジムⅡを撃破する。パイロットが何かを叫んでいたが、ビームライフルの直撃でパイロットはコクピットを撃ち抜かれて即死していた。

 

 「シャロ、アンまさか…」

 

 「うん、あたし達の世界だね…」

 

 「これが、いっくんが来た世界…」

 

 「あたし達、無事に帰れる?」

 

 そして、俺達は再び、宇宙世紀の世界に帰還をしたのだ。

 

 

 

 

 

 



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父親と娘の二人の出会い

 

 

 イチカ達が、この世界に戻って来た頃。

 

 グワジン級戦艦のアカツキのブリッジでは、母親のシーマに抱かれたまま泣き止まないナツキが急に何かを感じて顔を上げて泣き止んだ事に、シーマは不思議そうに娘を見ていた。

 

 「んっ!?ママ!!」

 

 「全く、どうしたんだい?」

 

 「パパが帰って来た!!」

 

 「つっ!?」

 

 「コッセル!!

 

 早急に迎えのモビルスーツ隊とランチを出せ!!」

 

 「おっ、お嬢!?

 

 戦闘中に無茶を言わんでくだせい!?」

 

 どうやら、ナツキはイチカのニュータイプの波動を感じ取ったのだと理解する。初めて、何時もとは違う娘の豹変ぶりに戸惑う私に、副官であり艦長のコッセルを含むブリッジクルー達は母親として戸惑う私を見てニヤニヤと笑う姿を見て、あまりの恥ずかしさから蹴り飛ばしたくなる衝動に駆られるが、それよりも先に娘が副官のコッセルを呼び捨てに叫びイチカに迎えを出せと言う。

 

 「ナツキ、あんたはイチカの居る場所が判るのかい?」

 

 「うん、この波動はルナツー内部の第八通路に、パパ達が居る!!」

 

 「コッセル!!

 

 ルナツーの内部の地図を至急出しな!!」

 

 「へっ、へい!?」

 

 まさか、私までも娘に賛同してコッセルに叫び、タジタジながらコッセルが内部通路の地図を出してテーブルに広げさせて、各艦隊のモビルスーツ隊が担当するエリアを地図と照らし合わせながら確認すると、港湾部から第八通路に掛けては、キマイラ艦隊のジョニー中佐の率いる部隊が侵攻を受け持ち内部へと侵攻する際の通路だと判る。

 

 そして、一度は連邦軍のア・バオア・クー防衛艦隊からの奇襲を後方から受けたが、あたし等の艦隊からのモビルスーツ隊の迎撃と艦隊戦によって、バーミンガム級戦艦4隻の撃沈と引き返したガトー少佐によるサイサリスの突撃と率いたペズンドワッジ隊の共同の迎撃により、艦隊を撃破に成功していた。

 

 無論、キマイラ艦隊はこれを好機と見てルナツーへと艦隊とモビルスーツ隊が突撃して取り付き、ティターンズと連邦のモビルスーツを排除しながら港湾部の制圧に成功して、制圧した港湾部を死守しながら内部へと繋がる通路へとモビルスーツ隊の侵攻を開始していたのだ。

 

 「そうさねぇ、ジョニー中佐にでもイチカ達の回収を頼むかねぇ…」

 

 「うん、あのお兄ちゃんなら、きっと回収してくれるよ」

  

 「お嬢?」

 

 「コッセル、うるさい。さっさとお兄ちゃんに通信を繋げ!!」

 

 「へっ、へい…」

 

 「もたもたせずに、中佐に通信を繋ぎな!!」

 

 「閣下まで!?」

 

 コッセルは思う。若干、三歳ながらも母親の閣下に似た女王様気質と鋭い戦略眼は、ナツキが閣下の娘だと再度認識させられるが、ナツキが元々の能力の高いニュータイプだけに戦場に出したくないのは閣下の愛娘を護りたいと思う副官としての願いだった。ただ、不安なのは母親に似て、ドSに育つのではと思うばかりだったのは母親の閣下には口が裂けても言えない。

 

 『シーマ閣下じゃないか。

 

 今、第八通路方面を侵攻してて忙しいんだが?』

 

 「ジョニー中佐、そりゃあ丁度良いじゃないかい」

 

 『何か凄く嫌な予感がする命令が来そうなんだが?』

 

 「おやおや、察しが良くて助かるさねぇ。愛娘のナツキがイチカをルナツー内部で察知したさね。

 

 だから、イチカの回収を頼みたいさね」   

 

 『おっ、行方不明だった、あの坊主と嬢ちゃんが見付かったのか!?』

 

 「あっ!?お兄ちゃん!!」

 

 『おっ、ナツキちゃんじゃないか。そんなに、慌ててどうしたんだい?』

 

 「うん、早くしないとパパが死んじゃうよ!!」

 

 『おい、パパって、まさか!?』

 

 ジョニー中佐はヒヤッと背中に冷たい汗を流しながらナツキの父親に察しが付き、シーマとナツキの顔を交互に見た後、ナツキの顔がそっくりな人物がイチカだと気付く。そして、イチカが居るのなら必ずしもパートナーであるアンが一緒に居るとジョニー中佐は思ってしまう。

 

 そして、ジョニー中佐は、この後にはアンとシーマによる女の修羅場すら予想していたのだった。

 

 「「ふふふ…喋らない方が賢い選択さねぇ…」」

 

 『おっ、おう…(やべぇ、やべぇ…ナツキちゃんは段々と母親に似て来たなぁ…凄みが半端ねえ…)』

 

 ナツキが母親と同じ口調で同時に言った言葉に凄みを感じたジョニー中佐は、父親だと思うイチカの名前を出す事に完全に躊躇い、自分の命が惜しいからと口を閉ざして制圧したルナツー港湾部で確保したランチを引き連れ、イチカ達の回収に向かったのだ。

 

 

 

 

 同じ頃、イチカとアンは専用機の敵味方識別コードをIS学園の識別コードから旧ジオン軍の識別コードに替え、シャロもアクシズの教導大隊の識別コードに替えた為と最初にジムⅡを撃破した事により、侵入者として守備隊であるジムⅡなどが含む部隊からビームライフルやマシンガンを撃たれながら襲撃される。

 

 「本当、しつこい男は嫌われるわよ!!」

 

 「グッァァァ!?」

 

 「くっ!?アン、動力部は狙うな!!

 

 機体の爆発の余波でシールドエネルギーが削られる!!」

 

 そして、ジムⅡを撃破したアンが見たのは、最奥部から増援で来たモビルスーツの部隊。それは、光るモノアイからザク型のモビルスーツだと判る。だが、先に大型ビームライフルから放ったビームがジムⅡの動力部に直撃したのか爆発した余波や破片によりシールドエネルギーが削られながら、色こそ青紫だが連邦軍にザクがいる事にアンは驚愕していた。

 

 「くっ!?

 

 何で、ザクが居るのよ!?」

 

 「何だと!?」

 

 「アレは、連邦とティターンズのモビルスーツのハイザックよ‼」

 

 「シャロ、そうなのか!!」

 

 「戦後に接収されたザクを元に開発された、連邦とティターンズのモビルスーツだけど、カラーリングが連邦軍仕様の機体よ!!」

 

 だが、ハイザックとは知りつつも、ザクらしきモビルスーツを見たイチカとアンはシャロが来た時の言う通りにジオンが敗北したのだと理解しながらも、ジオンのシンボル的モビルスーツだったザクを連邦とティターンズにハイザックとして使われた事に怒りを感じていた。

 

 「なら、連邦やティターンズにザクが使われる位なら!!」

 

 「速すぎる!?

 

 グッワァァァ!?」

 

 無論、ここが無重力空間なだけにSEが無くなれば、どうなるかさえも理解していた。だが、ザクを使われた怒りにアンがビームサーベルを抜き、瞬時加速を用いて小型である利点を活かして懐に入りハイザックのコクピットに突き刺し、コクピットをやられたハイザックはモノアイの光が消えて力無く通路内に漂う。同時にイチカもビームソードでハイザックの懐へと肉薄して、ビームソードをコクピットへと突き刺して撃破する。

 

 「糞が!!」

 

 「グッアッ!?」

 

 全員が専用機を展開しながらも、束さんと鈴には一切の宇宙での戦闘経験が皆無な為に戦闘には参加する事が出来ずに襲い掛かるモビルスーツからの攻撃に対して回避行動に専念し、転移前の迎撃によるエネルギーの使い過ぎで残りが半数以下となったアンとシャロは残りエネルギーの問題から、鈴と束さんの二人の護衛に専念する事になる。

 

 その中で俺は、エネルギー消費が装備の中では最も少ないビームソード付きビームライフルを片手にビームソードへと変形させて、瞬時加速で小型のサイズである事を利用して一気にコクピットへと近付き、動力部を破壊しない様にコクピットのみをビームソードで突き刺して離脱する一撃離脱戦法を選択してそれに徹していた。

 

 そして、消費するのがエネルギーパックだけなので、アンとシャロからはビームライフル用の予備のエネルギーパックを貰ってはいるが、ジムⅡやハイザックから放たれるマシンガンやビームライフルに当たれば絶対防御は無意味で貫かれての即死は確実で、逆にシールドエネルギーが切れれば無重力空間では即死となり、モビルスーツの動力部を爆発させれば爆発エネルギーの余波と破片によるダメージでシールドエネルギーが削られるといった、非常に厄介な戦闘に一夏は精神的に消耗し始めていた。

 

 「イチカ、大丈夫?」

 

 「あぁ、ア・バオア・クーと比べたらまだマシだな」

 

 敵モビルスーツ隊を駆除した後には、心配するアンはエネルギーを使い過ぎた事に悔やみ、空間戦闘では力に成れない鈴と束さんが落ち込んでいた。

 

 「一夏、戦力に成れなくてゴメン」

 

 「仕方ないさ」

 

 「束さんもゴメンなのだ。

 

 でも、束さんの夢がこんな形で叶うとはね…」

 

 確かに、束さんの夢は事故だったが叶っていた。

 

 「束さん、仕方ないですよ」

 

 「イチカ、右側からモビルスーツ反応よ!!」

 

 「真紅のゲルググ…シャロ、アレは味方だ!!」

 

 右側の通路から現れたのは、ランチをワイヤーで牽引して来た真紅のゲルググであり、それはジョニー少佐の機体だった。そして、戦闘でうっかりしてて気付かなかったが幸いにも通路には空気があり、専用機の展開を解除してランチへと搭乗してから休息となり、ジョニー中佐と一部の部下達も交代での休息でランチ内へと入って来たのだ。

 

 「よう、敵のモビルスーツが少ないと思ったら、坊主と嬢ちゃんが片付けていたようだし、あの戦いからは生きて居たようだな!!」

 

 「「ジョニー少佐、お久しぶりです」」

 

 「今の俺は昇進して中佐だよ。イチカ中佐にアン中佐?」

 

 「やっぱり、俺とアンは大尉だったア・バオア・クーの戦いから昇進してたんですね…」

 

 「なにせ、俺達が戦死者を出さずにア・バオア・クーから撤退出来た理由が、二人が最後に突撃した艦隊が偶然にも連邦軍のジオンへの残存艦隊への追撃艦隊で、艦艇の半数以上を撃破して追撃を不可能な被害を与えて、俺達がアクシズやサイド3に撤退出来たのが大きい理由での、二階級特進だ。全く、羨ましいぜ」

 

 「私も居ますけど、ジョニー中佐?」

 

 「うっげぇ、アクシズ防衛戦で行方不明になった教導大隊のシャーロット少佐までも居るのかよ!?」

 

 「うっげぇの意味にかなりの含みを感じましたが?」

 

 「だってよ…って、左薬指に見える指輪って、まさか!?」

 

 「ふふふ、私とアンに鈴を入れた三人は結婚してイチカの妻よ!!」

 

 『なっ、何だってぇぇぇ!?』

 

 助けに来たジョニー中佐の部下からは、二人が結婚していた事実を知り、絶叫に近い驚きの叫びを上げられ、アンとシャロは美少女ながらも絶対に結婚出来ない女だと言う事をジョニー中佐達に思われていたと知り、こめかみに青筋を浮かべてジョニー中佐と部下達を睨む。

 

 「まっ、マジかよ…」

 

 「確か、アン中佐とシャーロット少佐って、お嫁さんにしたくないランキングじゃあ、トップ10入りしていたよな…」

 

 「それが、二人ともイチカ中佐の嫁さんだと!?」

 

 『マジ、二人の結婚が有り得ねぇ…てっ、言うよりも、旦那になったイチカ中佐にご愁傷様だな…』

 

 「「あんた達、どう言う意味よ!!」」

 

 『おっ、鬼嫁が出たァァァ!?』

 

 「「おっ、鬼嫁!?」」

 

 無論、ジョニー中佐の部隊の隊員からの『鬼嫁』と言われながら驚愕の声が丸聞こえだったし、束さんに限っては、二人がお嫁さんにしたくないランキングではトップ10入りをしていた事実を知り、お腹を抱えて『ちーちゃんの学園時代と同じだ』と言いながら爆笑をしてしまい、ジョニー中佐が妻である鈴を見て『なんだ、イチカ中佐の嫁は小学生か?』と小学生と言われた事に対して『これでも、あたしは麗しの16歳よ!!』と叫びながら鈴がブチ切れて、無重力空間ながら見事な飛び蹴りをジョニー中佐の顔面に食らわす珍事件を起こし、それを見ていた部下達が『隊長は本当に馬鹿だなぁ』と言いながら大爆笑する事態となる。

 

 そして、ジョニー中佐の部下が乗るゲルググ改の2機に護られながら掃討戦が終了した港湾部から、キマイラ艦隊所属のムサイ改へと乗り換えてシーマ艦隊へと移動となった。 

 

 無論、シーマ艦隊の旗艦に着いてムサイ改のクルーから支給されたノーマルスーツに着替えてからランチに乗りグワジン級戦艦へと移動となるのだが、シャロと束さんだけがたわわな胸のせいでノーマルスーツのチャックが胸元から上が閉まらずに着替えられず、発艦ハッチを一度閉めてからランチに搭乗するハプニングがあったが、真っ赤な戦艦のグワジン級へと移動となる。

 

 グワジン級戦艦の収容ハッチから入った俺達は、シーマ大佐と久しぶりに会うことになったのだ。

 

 「相変わらず、グワジン級はでかいわね」

 

 「だが、ドロス級の方がでかくないか?」

 

 「イチカもグワジン級に乗った経験あるの?」

  

 「ソロモンでデラーズ閣下からディナーに呼ばれた時以来だな」

 

 無論、ディナーに呼ばれたのは、デラーズ閣下からの部隊への引き抜きだと知っていた。閣下の抱えるエースとも言えたパイロットはガトー少佐のみで、後はベテランパイロットや新米ばかりの部隊だったし、当時最新鋭のゲルググが配備され支給されているのはガトー少佐専用だけだった。

 

 だから、デラーズ閣下はキマイラ隊やシーマ艦隊に次ぐ、ゲルググタイプの配備数が多かったドズル閣下の直属部隊のオリムラ中隊が欲しかったらしい。

 

 もし、受け入れて居たら、部下達の戦死は無かっただろう。

 

 シーマ閣下の部下に案内され、ブリッジに入ろうと扉が開き、中からはノーマルスーツを着た小さな少女が叫びながら俺に抱きついた。

 

 「パパァァァァ!!」

 

 「グッハァ!?」

 

 「「「イチカ!?」」」

 

 そして、頭でグリグリしながら甘えようとするが、ノーマルスーツのヘルメットが邪魔らしくて出来ずにヘルメットを脱ぎ投げ捨てて露わになる少女の顔は、俺を幼くして少女にした様な、俺にそっくりな少女だったのだ。

 

 「ナツキが一夏にそっくりですって!?」

 

 「うん、少女にしたイチカだね…」

 

 「特に目付きが似てるね…」

 

 「あっ、シャロさん!!」

 

 鈴やアンがあまりに俺に似ている事に驚愕し、シャロはメイドだった事もあり抱き付くナツキの頭を撫でたのだ。

 

 「おやおや、イチカ中佐にアン中佐。そして、シャーロット少佐。

 

 ご帰還、ご苦労だねぇ」

 

 イチカに愛娘が甘える姿にほっこりしながらも、帰還を祝うシーマ閣下だった。そして、鈴がシーマ閣下を見るなりズカズカと歩き言葉を掛ける

 

 「あんたが、シーマ閣下!?」

 

 「おやおや、珍竹林娘が二人さ増えたねぇ」

 

 「「誰が、珍竹林娘よ!!」」

 

 「あっはははは!!

 

 面白い、玩具が増えたさね。

 

 いろどりみどり、楽しいさねぇ」

 

 「「むっ、がぁぁぁ!!」」

 

 大人の余裕を魅せながらも、鈴とアンを手玉に取り遊ぶシーマ閣下と弄られてキレる二人の構図はコントをやっている様にしか全く見えず、ナツキはムギュウと抱き着きながら帰還した俺に目一杯甘えるのだった。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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鈴の大岡裁きと大天災の大暴走

 

 

 宇宙世紀0084年7月、先に起きた宇宙世紀0084年4月に起きたティターンズの主導の元に連邦軍を主力としたジオン残党狩りを目的とした奇襲によるアクシズへの襲撃をかけた『アクシズの攻防戦』でティターンズと連邦軍を撃退し、ハマーンが率いるアクシズの地球圏への帰還を早める結果へと終わり、襲撃に対する報復に起きた『ルナツーの攻防戦』とも言われた、アクシズの三艦隊を主力とした艦隊と連邦軍のルナツー守備艦隊を主力にしたティターンズとの戦いは、ルナツーへの奇襲に成功したアクシズが、連邦軍とティターンズの艦隊とモビルスーツ隊を駆逐してルナツーを制圧され、連邦軍とティターンズの敗北に終わる。

 

 そして同日同時刻、摂政のハマーンがアクシズ艦隊の本隊を率いて、三艦隊によるルナツー侵攻と同時にソロモンへと奇襲して侵攻。

 

 ソロモンはハマーンが率いるアクシズ艦隊により陥落してソロモンはアクシズの手に墜ちる。

 

 そして、ソロモンを基点としたルナツーへの補給航路や、ソロモンからアクシズへの輸送航路が復活する事になり、アナハイム本社があるグラナダへの輸送航路までも完成し、ティターンズと連邦軍はアナハイムのモビルスーツ製造技術がアクシズへと流出し、製造技術が向上する悪夢を味わう事になる。

 

 そして、逆にアナハイムもアクシズの独特のモビルスーツ技術やサイコミュ技術が入り、モビルスーツ技術が恐竜的進化をする意味に技術陣は大いに喜んでいた。

 

 そして、篠ノ之束博士とヒカルノ博士の偶然の産物とも言えた『サイコフレーム技術』も帰還したイチカ達により、今伝えられようとしていたのだ。

 

 

 

 今、制圧されたルナツーはデラーズ艦隊とシーマ艦隊が入り守備隊となり地球侵攻への足掛かりとし、シーマ艦隊の旗艦アカツキはミネバ・ザビの命令によりソロモンへと向かっていた。

 

 無論、月面都市のアンマンにて、戦力の拡充作業中の反連邦組織のエゥーゴのパイロットなどを指導するシャア・アズナブル中将も、ソロモンに一時帰還する様にミネバ・ザビから命令を受けてソロモンへと帰還していた。

 

 ソロモンに召還された理由は、イチカとアン、それにシャーロットの3名の異世界からの帰還の報告をシーマ准将から受けた、幼くも総統のミネバ・ザビの勅命により、3名が謁見する事になったからに他ならない。

 

 だが、現在のアカツキ艦内はシーマ閣下を一睨みの凄みだけで黙らせ、新たに産まれた若き女帝により艦内は娘の1件が要因により氷点下まで冷え切り、艦内のクルーや待機中のパイロットまでもが怯えながら仕事をしていたりと何時もとは空気が違っていたのだ。

 

 「さて、正妻で妻である、あたしに何か申し開きはある一夏?」

 

 「いえ、何もございません…」

 

 「そう、ならシーマ閣下はあるの?」

 

 「あたしは娘が幸せなら!!」

 

 「閣下、別にあたしは妻の一員には認めても構わないわよ?

 

 でも、ナツキの事をもっと考えなさいよ!!」

 

 只今、イチカとシーマ閣下の二人はシーマの私室にて正座で座らされており、凄まじい凄みを出しながら、ソファに座る正妻である鈴にピシャリと言われて黙らせて二人を睨んでいたのだ。

 

 無論、余罪であるナツキちゃんを作って産まれた経緯は、イチカとシーマ閣下の両名から聞き出し、浮気に当たるかは結婚前だった事で無罪だった。

 

 だが、シーマ閣下を妻の一人として迎えるかと言う『妻会議』では、条件付きでの賛成の鈴と反対するアンとシャロにより否決された。だが、シーマ閣下は親権だけでもイチカにして欲しいと願ったのだ。

 

 現在、この様に二人を睨み腕を組みながらソファに座る鈴とソファの後ろにはアンとシャロが立ち、正妻の鈴とシーマ閣下の二人で話し合い揉めたのだ。

 

 「もし、イチカがまた向こうに戻るなら、ナツキを連れてって欲しい。ナツキはニュータイプとして高い能力がある。なら、戦争にニュータイプの娘を利用されて死なす位ならイチカ達の世界で静かに暮らせた方が幸せさね。だから、親権をイチカにして欲しいのさね」

 

 「あんたは、それでも母親なの!!

 

 確かに、一夏から聞いた話だと、ニュータイプは戦争に利用されるわよ。でも、ナツキちゃんの母親への想いはどうなのよ!!」

 

 「鈴は、イチカからあたしが一年戦争で何をしてきたか位は聞いてるだろう?」

 

 「無論、聞いてるわよ!!」

 

 「あたしは、あの苦しみからイチカに救われたさね。だが、他人からしたら未だにあたしは毒ガスでコロニーの住人を大量虐殺をして手を血に染めた罪人さね。母親として娘の幸せや未来を願うなら、日陰者のあたしの側にいたら、イチカの過去の様に迫害されて不幸になるさね。なら、イチカの側に預けて鈴が教育をしてくれたら、あたしはそれだけで、充分に幸せなのさね」

 

 「あんた、それは違うでしょ!!

 

 ナツキの願いは母親が居て、父親のイチカが居たほうが幸せに決まっているでょうが!!」

 

 「アン、ややこしくなるから、あんたは黙ってなさい!!」

 

 「ヒッィ!?」

 

 鈴の一睨みと気迫にアンは小さな悲鳴を上げながら押し黙る。

 

 「全く、話を戻すわ。シーマ閣下、親権は望み通りに一夏に持たせるわよ。

 

 でも、現在の責任がある立場では妻に迎え入れるのも許されないし、周りが経験豊富な指揮官は絶対に手放さない。なら、閣下が軍人として退役した後に、あたしの正妻権限で妻の一員として迎える。

 

 これなら、どうかしら?」

 

 鈴の大岡越前の大岡裁きの様な正妻の鈴の結論には、シーマ閣下は静かに涙を流しながら首を縦に振り、後ろでは猛反対と騒ぐ妻の二人も納得してナツキの親権はイチカとなるが、シーマ自身も軍を退役したら妻として迎えられた事に安堵していたのだった。

 

 そして、ナツキの名前はナツキ・ガラハウから織斑ナツキとして妻達三人に迎えられたのだった。

 

 そして、ソロモンに向う途中だが、シーマ閣下からモビルスーツを格納するデッキへと案内され、アクシズで組み上げられたイチカとアンの専用機の機体が受領する事になるのだが、モビルスーツの格納デッキから女性の悲鳴が上がる。

 

 『イヤァァァァ!!私のガンダムがぁ~!?』

 

 「ニナ開発担当技士、何の騒ぎだい!!」

 

 悲鳴を聞いたシーマ達がモビルスーツデッキへと急ぐと、イチカの受領予定だった機体のモビルスーツの装甲が全て外されて内部フレームだけとなり、つなぎ服姿の茶髪の女性が身体よりもでかいレンチを持ち、1機のモビルスーツを解体していたのだ。

 

 「閣下、イチカ中佐のモビルスーツが、中佐と来た女性に解体されました…」

 

 「何だって!?」

 

 そう、解体した犯人は束さんだった。

 

 「やあやあ、いっくんにシーちゃんじゃん」

 

 「束さん、何してるんですか!!」

 

 「何をって、いっくんのモビルスーツを完成型にするんだよ」

 

 「だからって、私のガンダムを解体しないで下さい!!」

 

 「だってアレさ、貰った図面を全部見たけど試作機の領域で未完成じゃん。

 

 そんな、未完成で搭載されたサイコミュすら不安定な機体なんて大天災の束さんからしたらガラクタ同然だよ。

 

 そんな機体でいっくんには乗せられないし、未完成だなんて理由で死なせたくもないし失いたくもない。

 

 だから、シャロちゃんが乗ってたリゲルグにみたいな見た目にして、フレームだけだった機体の装甲だけを偽装して隠して在ったんだよね?

 

 ねっ、シーちゃん?」

 

 「ちぃ、癪だけど博士の言う通りさね」

 

 「えっ!?

 

 ブルーローズの設計図はシャア大佐に渡した筈よ!!

 

 まさか…」

 

 「ニナちゃん、そのまさかなのだよ」

 

 束さんが自分の胸の谷間に手を入れてゴソゴソと漁り、取り出した三冊の分厚い本はRX-78GP-05ブルーローズの図面と向こうで束さんが解析して取り出したのが、ブルーローズの図面を元にアクシズのスタッフがジオン形の技術で書き上げられたAGX-005ブルーローズの図面。そして、俺の専用機ブルーローズのサイコフレームを利用した内部フレームの図面を入れた内容の3冊を取り出したのだ。

 

 更には、専用機のブルーローズによるサイコミュシステムの稼動データやファンネルによる戦闘データを出し惜しみ無しで、束さんの胸元から出しまくりニナさんが可哀相になる位なデータまでも出したのだった。 

 

 「本当なら、大天災の束さんを利用してブルーローズを完成させた張本人のシャアって奴を一発ほど殴りたいけど、いっくんの命の恩人だから見逃す。

 

 でも、ニナちゃんの設計が優秀で、高い拡張性と高い発展性を兼ね備えた機体だったから、大天災の束でも完成させられたかな。

 

 だから、ニナちゃんはブルーローズの設計に自信を持っても構わないよ」

 

 「束博士、ありがとうございます」

 

 「束博士、待ちな!!

 

 そのインゴットはまさか!?」

 

 「シーちゃん、これ貰うね」

 

 そう言うと、束さんは何処から出したのか大量の袋に入るチップを取り出して行き、フレームだけとなったブルーローズのフレームを一つづつ外しては形に取り、ルナツーで撃破されただろうモビルスーツから回収し、それらはインゴットにした希少合金のガンダリウム合金アルファだった。

 

 無論、アクシズへと持ち帰り解析予定の新金属なだけに流石のシーマでも、そのインゴットを見て慌てるが既に遅く、束さんが出したIS用のパーツ製造機でガンダリウム合金アルファを量子変換させて取り込み、大量のチップを混ぜた合金を型に流し込む姿を見て、シーマは『ハマーン様に絶対に叱られるさね…』と呟き真っ白になっていたのだった。

 

 そして、ニナさんも束さん一人でモビルスーツのパーツを製造して行く光景に『一人製造工場だわ…』と大天災ぶりに度肝を抜かれ、一時間もしない内にブルーローズの全てのフレームとコクピット周りの構造までもサイコフレームに作り変える人間離れした事をやり遂げたのだ。

 

 その後の事だが、二人は意気投合して束さんが向こうで培った技術とニナさんから聞き出して実践した技術の双方を合わせながら、モビルスーツデッキではブルーローズの完成型の製造をアカツキ所属のメカニックを総動員してまでも作業に当たり、ソロモンに着く2日前には組み立て作業が終了し、ISの武装だった変形機構の付いたビームソード付きビームライフルを既存のエネルギーパックの規格に合うように製造したり、三人の機体にそれぞれの専用機だったコアを使える様にしたりと大暴走する大天災とニナさんの二人。

 

 そして、『もう、ヤケクソだ!!』と叫び、ルナツーで回収したガンダリウム合金アルファを全て使っても構わないと許可を出したシーマ閣下。

 

 この、混ぜるな危険な三人の運命的出会いにより、AGX-005ブルーローズが完成したのだった。

 

 そして、ブルーローズのモビルスーツの分類はサイコミュ搭載高機動型重モビルスーツ・ブルーローズと大天災により命名され、シーマ閣下が書いた書類によりアクシズに正式登録されたが、余りのコストパフォーマンスの悪さから量産される事が無いイチカ専用のモビルスーツとなったのだった。



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ハマーンとの出会い

 

 

 イチカ専用のモビルスーツのブルーローズがアカツキ艦内で束さん達の手によって完成する。現在、ソロモンが見える航行中の宙域は、アクシズの艦隊からの監視網があり安全な宙域である為にブルーローズの評価試験をやろうと束さんが言うのだ。

 

 無論、アンとシャロの専用のモビルスーツも、ブルーローズの制作の際にサイコフレームと交換したブルーローズに採用されていた元のムーバルブフレームの技術を使いサイコミュ非搭載型の重モビルスーツとして完成させた準同型機の重モビルスーツのブラックローズとして束さんとニナさんが完成させたのだ。

 

 そして、ルナツーから大量に接収したガンダリウム合金アルファだが、三人のモビルスーツを作る為に接収した全てを使い切ってしまったが、幸いにも束さんが大量に使いながらも、ブルーローズの製造と同時進行でガンダリウム合金アルファの成分の分析をしてあり、製造方法まで解き明かした為にアクシズでも生成が可能となり、逆にアナハイムでは連邦から情報が流出した新合金のガンダリウム合金ガンマの生成を始めた為に、アナハイム経由での両方のガンダリウム合金が入手が可能なので問題にはならかった。

 

 無論、束さんがシーマ閣下とニナさんにガンダリウム合金アルファの生成が可能だと報告すると、二人は口を揃えて『束博士は、やっぱり大天災だわ』と呆れられ、接収したガンダリウム合金アルファの成分分析していたアクシズの技術技士達が束さんの早い解析能力を知り、酷いショックを受けた為に呟きながら『おやっさん、俺は真っ白に燃え尽きちまったぜ…』と部屋の片隅のコーナーで丸椅子に座り、もたれ掛かる様に真っ白になるのだった

 

 

 

 

 「アン、二年ぶりの操縦は大丈夫か?」

 

 『イチカ、あたしを舐めてるの?

  

 全く問題も無く大丈夫よ。

 

 ただ、不満なのはコクピットだけね』

 

 『私は3ヶ月ぶりだけど、全天周囲モニターの宇宙空間に座っている感覚が慣れないから嫌いね』

 

 「でも、リゲルグのカタログスペックをシーマ閣下から見せて貰ったから判るが、本来のリゲルグのコクピットの仕様は全天周囲モニターだろ?」

 

 『私の機体だけはリニアシートじゃなくて、慣れていたゲルググと同じタイプにして貰ってたのよ』

 

 雑談しながら、モビルスーツの操縦が久しぶりな為に三人で操縦訓練と完熟訓練していて話に出るのは、やはり全天周囲モニターに対する三人の不評な意見だった。

 

 もちろん、ブルーローズとブラックローズのコクピットは、リゲルグとゲルググ改などの全天周囲モニターの試験運用の結果から採用へとなっていたが、ジオンのモビルスーツのコクピット方式に慣れていたイチカとアンはモビルスーツの技術の進歩を目の当たりしたのだった。

 

 「次は、ファンネルの試験だな」

 

 『イチカ、ファンネルの的はあの連邦軍のモビルスーツの残骸よ、行ける?』

 

 「あぁ、全く問題無いな」

 

 『あたしとシャロは周囲警戒するね』

 

 アンからの通信は切られ、俺はファンネルに集中する。

 

 「行け、ファンネル!!」

 

 やはり、ISコアと接続したサイコミュと連動したIS技術のインターフェイスによる補助の恩恵は大きいと俺は思う。そして、IS技術のインターフェイスにより思考した通りにサイコミュが反応し、サイコフレームからファンネルへの伝達が早い事に驚きながらも連邦のモビルスーツの残骸は無慈悲にもファンネルからのビームを浴びて爆発四散する。

 

 

 

 「束博士、ISコアとサイコミュとの連動実験は成功ですね。これなから、サイコミュ搭載機も性能が向上します!!」

 

 「ニナちゃん、あれはいっくんが使っていたISコアの白星ちゃんと接続した結果だから出来る芸当だよ。もしやるなら、女性のニュータイプのサイコミュ搭載機にISコアとの接続が出来るけど、ISコアはいっくんを除いた男性には絶対に反応しないんだよ」

 

 「えっ!?」

 

 「それに、いっくんのISコアは一番最初に作ったコアだし、あのコアの元となった生体データはね、いっくんの実の姉のちーちゃんの生体データなんだよ。それに、コアには人格があるから、逆に人を見てコアが人を選ぶ可能性だってあるんだよ」

 

 「そっ、そんな!?」

 

 「それに、ぶっちゃければ、この世界ではISコアは絶対に作れないし、今あるコアは専用機としてある5機分を除いて3つしか持ってないから無理に近いよ」

 

 だが、逆にニナは安堵しながら思う。

 

 どんな物にも欠陥や弱点がある事実と大天災と言っても、ISコアには最大の欠陥がある事に、やる事なす事が人外だと思っていた束博士は同じ人間だと再認識して、同じ技士としてニナは束博士とは友人になれると思ったのだった。

 

 そして、モニターにはイチカ中佐機のブルーローズとアン中佐機とシャーロット少佐機のブラックローズとの宇宙空間による模擬戦が始まり、ペイント弾を装填したマシンガンを双方が撃ち合う光景に目を奪われ、IS操縦技術によるイグニッションブースト(瞬時加速)をやらかすイチカ中佐にやられた事に猛抗議するアン中佐のほのぼのした二人のやり取りには、オーストラリアの基地で別れたとある連邦の少尉を想うが、自分は恋人として寄りを戻したガトー少佐と歩む事を選んだ事に悔いはなかった。

 

 「ニナちゃん。もしかして、ルナツーで待機しているガトー少佐の事かな?」

 

 束博士の一言に胸がドッキンと跳ね上がる。

 

 「ちっ、違います!!

 

 たっ、ただ、早くイチカ中佐機のブルーローズのデータを集めて、ソロモンでの休暇を楽しみにしているだけです!!」

 

 自分自身が恥ずかしくて束博士に隠そうとしても、顔が真っ赤なのは理解している。そして、大いに束博士に自爆した事も…

 

 「おやおや?

 

 ニナちゃんはソロモンでの休息で、ガトー少佐とデートするんだね♪」

 

 「つっ/////」

 

 図星を言われ、遂には頭から湯気がキノコ雲の様に吹き出た私は、余りの恥ずかしさから手で顔を覆いながら蹲ったのだった。

 

 「ありゃあ、ニナちゃんをからかい過ぎたかな?」

 

 「もう、束博士の事なんか知りません!!」

 

 ニナちゃんをからかいながら、モニターに映るレーダーはソロモンから来る一つの光点はモビルスーツ反応だと気付く。そして、味方の識別信号が出ている観点から味方だと思い見逃していたのだった。

 

 

 ミネバ様の後見人として、シャアの推薦もあり摂政にはなったがミネバ様が彼を慕ったり、夫であるシャアはニュータイプの素質があるからと彼を救い、シャアとドズル閣下の推薦の下で士官学校に入れた。

 

 そして、ニュータイプには覚醒はしなかったが一年戦争では記録に残る様な戦績を打ち立てた後、ア・バオア・クーの戦いでは彼が行方不明になったと聞いて、シャアが落ち込む姿に私は、行方不明となった彼とシャアを慰める姿のナタリーに怒りを覚えたのだ。

 

 無論、シャアとの関係もナタリーが妊娠した事とミネバ様の教育方針でかなり揉めてシャアとは破局しそうになるが、ここでも彼を慕い影響を受けたミネバ様により仲裁されながらフライパンで殴られて叱られ、極秘扱いにはしたがナタリーを第二夫人する事とミネバ様には住民から慕われる様な優しい総統として教育する事で話が纏まる。

 

 そして、思い起こせば、全てに関係する人達は、彼の影響を受けた人ばかりだった。

 

 だから、彼には酷く嫉妬をしたし、シーマが連れて来た一介のメイドに過ぎないと思っていたシャーロットと出会い、アクシズへと亡命後にシーマの愛娘のナツキがミネバ様の遊び相手をしていた際もメイド兼護衛として居た記憶があった。

 

 無論、彼女から軍に復帰する話を聞いた時は、ジオン軍の認識票からは階級は大尉で、ア・バオア・クーで壊滅した筈の元オリムラ中隊の隊員だった事に驚かされたが、ジオン軍時代からの戦績を踏まえて少佐として昇格させた後、教導大隊へと編入となった。

 

 私は、彼女の実力を如何ほどかと知る為に問題児ばかりが集まる部隊の教官にワザとしたが、結果は目覚ましいばかりに問題児達への教育を果たした矢先のティターンズによるアクシズへの襲撃。

 

 連邦とティターンズのモビルスーツを相手に彼女は生産数が少なかった最新鋭のリゲルグを駆り、一緒の部隊の他のパイロットが苦戦する中で25機のモビルスーツを撃墜している姿に彼は彼女をそこまで鍛えたのか恐ろしさも有り、知りたくなった時には彼女のリゲルグが3機のティターンズのモビルスーツに囲まれて一緒に消えたのだった。

 

 そして時が進み、ルナツー戦では彼と彼女達の帰還をシーマから聞いた時のミネバ様の異様に喜ぶ姿を見た私の女の勘には警鐘が鳴るが、既に遅くてミネバ様の勅命で三人のソロモンへの召還となったのだ。

 

 だから、ミネバ様と再会する前に私は彼の人柄を知りたかったのだ。

 

 同時に、私は彼のパイロットとしての実力も知りたかった。

 

 だから、私の思いが止まらなくなりシーマ艦隊の旗艦アカツキをソロモンの管制室から捉えると、ソロモンの港湾部に係留されたグワダンへと向かい、モビルスーツデッキに固定された私の純白の試作型のモビルスーツのキュベレイのコクピットに滑り込み、動力に火を入れる。

 

 無論、私が急に現れ、出撃に驚くメカニックとデッキクルー達。

 

 「私だ!!

 

 キュベレイ、ハマーン出る!!」

 

 そう叫んでモビルスーツハッチを開けさせるとグワダンから飛び出し、私のニュータイプによる波動が彼を捉える。そして、捉えた数は3機のモビルスーツ。

 

 「んっ!?

 

 この優しく感じるサイコミュの波動は!?」

 

 それは、蒼と白で染められたあの重モビルスーツから感じる波動だった。そうか、そうなのかと3機のモビルスーツのパイロットが判ってしまう。

 

 一人は彼、イチカ・オリムラ中佐。

 

 そして、報告に聞いたアン・オリムラ中佐とアクシズ防衛で行方不明となったシャーロット・オリムラ少佐の三人だと判る。そして、彼から感じるニュータイプの波動は彼がニュータイプへと覚醒していた証。

 

 「なら、試してみようではないか!!」

 

 キュベレイのスロットを全開に加速しながら、ファンネルを飛ばす。

 

 「行け、ファンネル!!」

 

 そして、彼の機体に私のファンネルが襲い掛かるが、あの重モビルスーツから4機のスラスターユニットらしき物が離れ、私のファンネルと同等以上にビームを撃ち合う。

 

 「まさか!?

 

 あの重モビルスーツもサイコミュ搭載機か!?」

 

 そう、スラスターユニットだと思っていたのが、実はファンネルだと気付くには遅過ぎたのだ。

 

 そして、試作型のキュベレイよりも重モビルスーツの方が高性能機だとも…

 

 

 急なファンネルからの襲撃には、アンとシャロは驚くがインターフェイスとサイコミュの連動が敏感だったのか、ファンネルが起動してブルーローズから離れて相手のファンネルと撃ち合う。

 

 「ちぃ!?」

 

 『イチカ!!』

 

 「アンもシャロも俺から離れろ!!

 

 相手はニュータイプだ!!」

 

 『つっ!?了解』

 

 無論、簡単にはやられる俺じゃない。

 

 ビームソード付きビームライフルをビームショットライフルへと切り替えて拡散する様にビームを放ち、ファンネルを迎撃しながら回避行動に入る。

 

 『ほう、それを躱すか』

 

 「まさか!? 写真で見た、ハマーン様か!?」

 

 『イチカ中佐、貴様の力を試させて貰う!!』

 

 まさかの相手がハマーン様だと気付くが、攻撃を辞めるつもりは無いらしい。ならと思い、ビームライフルをビームソードへと変形させて展開し、ニュータイプの波動を感じる方へと瞬時加速をやりながら肉薄する。

 

 「チィぃぃ!?

 

 ニュータイプ同士だと、やり難い!!」

 

 『むっ、消えただと!?』

 

 やはり、其処に居た。

 

 岩礁に隠れる純白の機体。

 

 「俺はここだぁ!!」

 

 『ちぃ、ニュータイプだけで、こうもやり難いとはな!!』

 

 ビームライフルを隠れる岩礁に放ち、キュベレイの機体へ砕いた岩を飛ばすが、ローリングを描きながらビームサーベルを抜き躱す。

 

 そして、ビームサーベルを構えたままブルーローズに迫るキュベレイ。

 

 無論、ビームソードで受け止めながらも、インターフェイスによる剣術の思考は止めない。

  

 「くっ」

 

 『ちぃ、性能の差に助けられたな』

 

 「しゃらぁぁぁ!!!」

 

 『なっ!?』

 

 イグニッションブーストが出来るなら、イグニッションターンブーストだって出来る筈だと思い、イグニッションターンブーストを掛けて、キュベレイの側面へと回り蹴り飛ばす。無論、追撃ついでにシールドのミサイルポッドのミサイルをお土産に発射する。

 

 『私を舐めるな!!』

 

 だが、ミサイルはビームサーベルで斬り払わられ、ミサイルが爆散する。そして、キュベレイも加速し、ファンネルで援護射撃させながら斬り込むが、予備のビームサーベルを抜いてビームサーベルを受け止め、ビームライフルを乱射しながらファンネルを撃ち落とす。

 

 「やはり、イチカ中佐はニュータイプなのだな」

 

 「何故、攻撃を?」

 

 「ミネバ様に相応しい男か、見定めたまでよ」

 

 「ミネバ様、元気にしてたんだな…」

 

 そして、ハマーンは攻撃を辞めてブルーローズに接触する形で接触回線で会話する。

 

 「ふん、何を言っている。

 

 アクシズに来てからずっとだが、貴様のお嫁さんになると言っては、私とシャアを困らせたのだぞ?

 

 しっかりと責任を取るのだな」

 

 そう、ハマーン様が言い残すと反転して、キュベレイはソロモンへと戻って行ったのだ。

 

 「やべぇ、鈴にどう説明したら…」

 

 

 そして、鈴の怒りをどう回避し、どう説明するかをコクピットの中で悩むイチカだったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ミネバとの再会と増える家族

 

 ハマーンとの一戦をした後に母艦であるアカツキへ戻ると、シーマ閣下はぐしゃりと握り潰した命令書を片手にイチカが戻るのをイライラしながらモビルスーツデッキで待っており、ハマーンとの一戦から戻ったイチカに怒鳴り散らし、ヘルメットを取った俺の頭に拳骨が落ちる。

 

 「全く、イチカは何て事をやらかしてくれたんだい!!」

 

 ゴッチン

    

 「あっ、痛!?

 

 まさか、ハマーン様との一戦を見てた?」

 

 「見てたじゃないよ、このお馬鹿!!

 

 試作型とは言え、ハマーン様の駆るキュベレイと同等の戦いを仕出かした事に問題があるんさね!!

 

 あたしが、ハマーン様の所にブルーローズとブラックローズの詳細な報告書を上げといたさ。だから、文句は来ないとは思うがね、アカツキ艦内で製作した最新鋭の3機は下手したらアクシズの工廠行きさね!!」

 

 ハマーンとの一戦はハマーンから奇襲されたに近く、理不尽ではあるが凄まじい形相で怒鳴り叱るシーマ閣下が言うには、ブルーローズとブラックローズはアクシズに運ばれ、最悪は解体されながら調査する可能性があるらしい。

 

 「つまり…」

 

 「そうさね。あんな、最新鋭技術の塊の機体なんさ、ニュータイプ至上主義者のグレミーのお坊ちゃんが黙っているとお思いかい!!

 

 唯でさえ、アクシズは未だに一枚岩じゃ無いんさね。

 

 それを見越したハマーン様が送り付けた、イチカへの命令書が来たから待って居たさね!!」

 

 「命令書?」

 

 ぐしゃりと握り潰した命令書を拡げ、シーマは読み上げる。

 

 「良いかい、お聞き‼

  

 イチカ・オリムラ中佐を本日付けで大佐として昇進し、シーマ艦隊所属の独立機動中隊、オリムラ中隊のモビルスーツ隊隊長とする。それに伴い、アン・オリムラ中佐並びにシャーロット・オリムラ少佐両名を、アン・オリムラ中佐を大佐として昇進してモビルスーツ隊副隊長とし、シャーロット・オリムラ少佐を中佐として昇進してイチカ・オリムラ大佐付き副官とする。

 

 また、ソロモンにてミネバ様との謁見後、保護した以下の子供の3名をイチカ・オリムラ大佐の養女として引き取られたし」

 

 「昇進はわかるけど、養女として3名を引き取る!?」

 

 「ハマーン様は、ミネバ様のお気に入りで遊び相手だった、ニュータイプの12姉妹の長女と次女に末女の三人だけは、その子らがミネバ様の所に遊びに来た際にグレミー・トトから保護したさね。

 

 それでも、他の姉妹はコールドスリープされて救出は無理だったさね。

 

 一応、養女の件は先に正妻の鈴には伝えたけどねぇ、三姉妹は保護をカモフラージュする為にさね、ソロモンに着いたらイチカの養女として引き取る事は、ハマーン様の中では多分だけどさね、ミネバ様の『お嫁さんになる』の対抗措置で決まったさね。これなら、流石のミネバ様もご友人から『ママ』って言われるのは嫌だろうさね」

 

 「了解しました、シーマ閣下」

 

 いきなり、ナツキの姉妹が出来ている事に驚愕しながらも、シーマ閣下から渡された姉妹のプロフィールにある三姉妹の名前は、長女のエルピー・プル、次女のプルツー、末女のプルトゥエルブだった。

 

 そして、姉妹の全員が七歳と幼かった。

 

 もちろん、三人の少女を養女として引き取るのは構わないが、シーマ閣下から口に出したグレミー・トトによって試験管ベビーのプル達の妹達はなんとかして助けたいとは思うが、普通に産まれたプルとプルツーを除き、その名前はラウラの様な試験管ベビーに付けられた物としての名前であるとシーマ閣下から知り、俺はきちんとした娘の名前として改名する事を決めたのだった。

 

 

 

 そして、報告書を書き上げ整備科に提出後に自室の俺達の士官室に戻ると、部屋の床には様々な名前が書かれた紙が散乱し、鈴達が頭を抱えながら娘達の名前を書き上げては紙を丸めてゴミ箱へ捨てて、シャワーを浴びたアンがバスタオル一枚の姿で鈴と悩み、シャロに至っては裸Yシャツ姿だった。

 

 「一夏、シーマ閣下から、あの話を聞いたのね?

 

 一応、これなんかどう?」

 

 「あぁ、養子として引き取る事が正式に決まったな。

 

 で、なになに…プルには『千秋』プルツーには『千春』、プルトゥエルブには『千夏』か…これ、良いんじゃないか?」

 

 「そう、一夏?

 

 一応、千冬義姉さんから、女子会の時に織斑家の命名の基準を聞いといたから、試しに書いたけど?」

 

 「あぁ、三人にしっくり来る名前だよ」

 

 こうして、三姉妹の名前が決まり、アカツキはソロモンへと入港する。係留されたアカツキからは鹵獲された連邦軍カラーのハイザックや捕まった捕虜達が降ろされて行く。俺達5人はランチへと乗り、ハマーン様やミネバ様の座乗するグワダンへと移動したのだった。

 

 そして、グワダンに移動しながらだが、グワダンの隣に停泊するのは何故か、三隻の連邦軍とは色違いの対空兵装強化型のサラミス改が係留され、大量の物資が積み込まれていたり、降ろされていたのだった。

 

 「シャロ、アレって?」

 

 「多分、エゥーゴの艦船ね。

 

 アンマンからの物資を降ろしているから、アナハイムで受領した何かが在るのかもね」

 

 そして、グワダンのモビルスーツハッチからランチが入り、モビルスーツデッキのキャットウォークに立つ金髪の男性は忘れもしないシャア大佐だった。

 

 「大佐!!」

 

 俺は思わずランチのハッチを開けて飛び出し、キャットウォークに居るシャア大佐へと飛ぶ。

 

 「イチカくんじゃないか!?」

 

 「お久しぶりです、シャア大佐!!」

 

 「ふっ、今は昇進してシャア・アズナブル中将だがな。だが、久しぶりだ、イチカくんいや、イチカ大佐かな?」

 

 思わず、シャア閣下との再会に嬉しくなり泣きそうになる。だが、同じく飛び出した束さんだが、シャア閣下も気付き挨拶をしようとするが、拳を握りシャア閣下に一発だけ殴り飛ばしたのだ。

 

 「へえ、君がいっくんの…」

 

 「報告に受けた、ISの開発者の…グッハア!?」

 

 「束さん!?」

 

 「この、大天災の束さんを利用したからには、一発は受けて貰うから」

 

 「つっ……確かに、私は君に悪い事をしたのだろう。だから、甘んじて受けさせて貰ったさ」

 

 「やっぱり、食えない人だったよ…」

 

 「最高の誉め言葉としておくさ」

 

 シャアは軽く唇を切り、血を流してはいるが束さんからの一発を甘んじて受けたらしい。確かに、人から利用される事を嫌う束さんは、シャア閣下に利用された事に一概の怒りを持っていた。

 

 「ねぇ、いっくん。

 

 アレをお土産に渡しなよ」

 

 「アレ、ですね」

 

 「?」

 

 束さんに言われて拡張領域から出したのは、サイコフレームのサンプルだった。無論、束さんも仕様書や製造方法を記した一冊の本を取り出し、サンプルと一緒にシャア閣下に渡す。

 

 「これは?」

 

 「サイコミュをチップ化して、金属に混ぜて作ったサイコフレームのサンプルだよ。既に、君から送られた図面を元に製造したブルーローズにはサイコフレームを使っているけどね」

 

 「ほぅ……やはり、大天災は伊達では無いようだな」

 

 シャア閣下にサンプルを渡して別れてアン達と合流した後、ミネバ様に謁見したのだった。

 

 

 グワダンの居住スペースでも、ザビ家の居住スペースは豪華絢爛と言う言葉が似合う程、中世ヨーロッパのアンティーク調の品々が並び飾られて豪華さを醸し出していた。

 

 無論、そんな生活と全く無縁だとも言えた俺達は目を惹かれたり、ホワイトラビット社から貰っていた給料では買えない様な骨董品は一体いくらなのかと思ってしまう。

 

 「流石に緊張するな」

 

 「あたしでも、欧州に居た自宅よりも豪華過ぎるわよ…」

 

 「私なんか、パパのコレクションが猟銃ばかりよ?」

 

 「あたしなんか、実家はただの大衆食堂よ。一般人だから、居辛くて仕方無いわよ…」

 

 「いっくん、不思議の国のアリスのお城みたいだね…」

 

 「……」

 

 それぞれ、廊下を歩きながら感想を述べながら謁見の間へと辿り着く。

 

 「イチカ大佐並びにアン大佐のご帰還である!!」

 

 と誰かの叫びの後に扉が開くが、中の光景に目を疑う。

 

 「ハマーンの馬鹿!!

 

 私の友達がイチカの子供に成ったら、友達からは『ママ』って呼ばれたくないから、イチカのお嫁さんに成れないじゃんか!!

 

 直ぐに取り消せ!!」

 

 バッキィ ドッガァ

 

 「グッハァ!?

 

 ミッ、ミネバ様!?

 

 せめて、お殴りになるなら、フライパンはお止め下さい!?」

 

 「じゃあ、釘バットで殴る!!」

 

 「何処から釘バット!?

 

 ひっ、酷くなってる!?

 

 シャ、シャア、見てないでミネバ様をお止しろ!!」

 

 「シャア、ハマーンは助けなくて良い!!」

 

 バッキィ ドッガァ バッキィ 

 

 「ギャァァァ!?」

 

 『……』(「」の人数が多すぎる為、省略)

 

 そう、俺達が開いた謁見の間で見た光景は、先の命令書による三姉妹を養女として引き取る事を知ったミネバ様が怒り、ハマーン様をフライパンで殴る光景に呆然となる。

 

 そして、ミネバ様から殴れタンコブだらけのハマーン様が叫び、先に謁見の間に居たシャア閣下に助けを求めたが、ミネバ様の怒りのボルテージのMAXを振り切り、いつの間にか何処からか出した釘バットでハマーン様は滅多打ちにされていたのだった。

 

 「シャア閣下、助けなくても?」

 

 「シャーロット中佐、君は私に死ねと言いたいのかね?」

 

「妻を助けるのは、夫の努めだと思いますが?」

 

「そうね。シャロの言う通りね。

 

 でも一夏、ミネバ様の『イチカのお嫁さんになる』についてはしっかりと説明して貰うわよ!!」

 

 「鈴!?」

 

 「ちょっと、待ってなさい!!」

 

 「キャア!?」

 

 「助かったぞ。

 

 って、ミネバ様!?」

 

 「ハマーン様、ミネバ様を借りるわよ」

 

 「ちょっと、あなた!?」

 

 そして、ここでも正妻化した鈴と俺に対する尋問が始まり、未だにハマーン様をタコ殴り中のミネバ様へと縮地で背後に周り首根っこを掴みながら、イチカの隣に正座をさせる暴挙に出た鈴。

 

 しかし、急な出来事に本来の少女らしい口調の素が出てしまったハマーン様。

 

 「イチカ、お帰り!!」

 

 「ミネバ様、久しぶりだな」

 

 「うん!!」

 

 そして、ミネバ様はイチカの隣へと連れて来られたが、嬉しさの余りイチカへと抱き付くと言う、鈴に喧嘩を売る様なミネバ様の鈴への挑発。

 

 謁見の間は、鈴とミネバ様による修羅場となり、素が出てしまったハマーン様は恥ずかしさの余り、顔を真っ赤にしながら顔を手で覆い隠し、シャアは現状を理解しようとするが、終いには恥ずかしさから泣き出したハマーン様に抱き着かれて、カオスに成り果てたのだった。

 

 無論、シャア閣下の第二夫人のナタリーが謁見の間へと入り、一喝してカオスと言う騒ぎは終結するが、鈴とミネバ様がアンの淹れた紅茶を飲みながら数時間に及ぶ話し合いの末、終始ニコニコ顔なミネバ様と青筋を何本も額に浮かべた鈴の二人。

 

 結論から言えば、ミネバ様の粘り勝ちと言っても過言では無く、せめて成人したら迎え入れると、鈴が折れて決まったらしい。

 

 無論、三姉妹は命令通りに引き取り、織斑家の一員として養女としたのだった。

 

 

 

 新たにソロモンでは、シーマ艦隊所属の独立機動中隊として再編成されたオリムラ中隊の補充要員に来たのが、シャロの教え子達の三人が配属され、中隊としては定数割れをしていが、母艦としてシーマ艦隊の元旗艦だったザンジバルⅡ級のリリー・マルレーンが母艦となったのだった。

  

 

 そして、ハマーン様から受けた命令は、地球降下作戦の一陣として降下し、台湾の宇宙港を拠点とする連邦軍の排除とティターンズの巨大モビルスーツの開発が噂される日本のムラサメ研究所への襲撃が初任務となったのだった。

 

 無論、母艦がソロモンに来るまでは、新人三人を鍛えるべく、ソロモンの士官用宿舎へと新人三人を迎えに行くのだが、三人が曲者揃いだった。

 

 そう、一人は男性だった。

 

 「ハマーン様の命令を受けて、配属になったマシュマー・セロ中尉である!!」

 

 「げっ、新人ってマシュマー!?」

 

 「なっ、教官!?」

 

 久しぶりの再会に二人して驚愕し合う。

 

 そして、残りの二人は女性だった。

 

 「キャラ・スーン中尉だよって、教官!?」

 

 「キャラまで…」

  

 既に、教え子だった事に哀愁感が漂うシャロ。

 

 「シャーロット教官、お久しぶりです。私はイリア・パゾム中尉、よろしく」

 

 「もう、嫌!!

 

 まともなのは、イリア中尉だけだよ…」

 

 三人を見たシャロが完全にゲッソリしながら疲れ果てる姿に、二人は苦労するだろうと俺達は思った瞬間だった。

 

 「シャーロット中佐、その左薬指の指輪は…」

 

 「結婚したに決まってるじゃん」

 

 「なっ、何とぉぉぉ!?

 

 あの、暴力教官が結婚だと!?」

 

 「暴力教官は余計よ、マシュマー!!」

 

 バッキィ

 

 「グッハァ!?」

 

 「あははは!!マシュマー、教官に叱らてやんの」

 

 「キャラ、うるさい!!」

 

 結婚した事に驚き、余計な事を言ってシャロにぶん殴られるマシュマーと、それを爆笑するキャラ。

 

 そして、操縦訓練では豹変するキャラにどうしたら良いのか苦労するアン。

 

 「あっははは!!

 

 身体が熱いのよ!!」

 

 「イチカ、もう嫌…」

 

 三人に不安を抱きながら、母艦であるリリー・マルレーンがソロモンへと到着する。無論、三人の機体は地球での活動を考えて配備された機体の、ゲルググ改だった。無論、娘のナツキと引き取った娘達も乗船して、一路地球に向けてソロモンから出港したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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大気圏突入とティターンズの襲撃 前編

 

 

 ソロモンから出港した、シーマ艦隊所属の独立機動中隊の別名、オリムラ中隊を乗せたリリー・マルレーンは一路、地球に向けて出撃する。

 

 そして、同じ頃のグリーン・ノア1ではティターンズによる基地化が進み、先のルナツーの攻防戦とコンペイトウ攻防戦での敗北に上層部は殺気立っていたのだった。

 

 無論、コンペイトウへの奪還に向けた作戦が練られてはいるが、コンペイトウにはアクシズの主力艦隊が陣取り、月面にはアンマンを拠点にエゥーゴの艦隊に陣取られている為に監視網からは抜け出せずに偵察部隊を送るが、全てが未帰還であり情報すら得られなかったのだ。

 

 そして、ティターンズと連邦軍にとっては最悪な事に小惑星要塞のアクシズも地球圏の宇宙要塞ソロモンに向けて移動中との情報があり、コンペイトウと合わせた大要塞になる事は確実視されていたのだった。

 

 「ルナツーで保護した小娘はどうした?」

 

 長身で丸いゴーグルをする男は、ちょび髭の男性に質問する。

 

 「バスク、あんな得体の知れない狂暴な小娘など、殺処分すれば良いのだ!!」

 

 「後々、使えるかも知れんからな、抵抗はされたが小娘の記憶だけを消去してムラサメ研究所の実験素体に送ってやったわ」

 

 「そうか、なら成功すれば大量の強化人間が入るか…ふふふ…アクシズの連中に一泡吹かせそうだな…ふふふ…」

 

 二人は静かに笑い合うのだった。

 

 

 

 地球まで後3日に差し迫る頃、イチカ達は、イチカ対隊員全員を相手に模擬訓練を施していた。

 

 「甘い!!」

 

 『なっぬぅ!?

 

 イチカ大佐はそれを躱すか!?』

 

 「フェイントを混ぜて放て!!

 

 射撃が馬鹿正直過ぎた!!」

 

 マシュマーの駆るゲルググ改から放つ、ペイント弾仕様のマシンガンからの弾丸を軽く機体をひねる様に躱し、イチカはマシュマーを怒鳴り叱りながら注意する。そして、頭に稲妻が走る感覚を感じ取り、バディである岩礁に隠れてスキを伺うキャラの駆るゲルググ改からのマシンガンを構えた殺気に対して、浮遊する宇宙船の装甲板を感じる方へと蹴り飛ばす。

 

 「見える!!

 

 キャラ、そう言う時には身を隠すんだ!!」

 

 『うっげぇ!?』

 

 見事に装甲板はキャラのゲルググ改へと向かい、飛翔して来る装甲板に慌てたキャラが撃ち落とそうとマシンガンを乱射するが、フラッシュノズルの光はイチカには位置が丸見えで、逆にマシンガンを直撃させられてゲルググ改はシャア閣下の元専用機のゲルググの様にペイント弾によりピンク色へと染まり、キャラは撃墜扱いにされて離脱する。

 

 『フフフ、今日こそはイチカを撃墜してやるんだから!!』

 

 『アン、イチカを落とすのは私よ』

 

 『『なら、二人同時に!!』』

 

 無論、ベテランであるアンとシャロの二人の駆るブラックローズに装備したペイント弾仕様の180ミリ対艦ライフルでイチカを狙い、二人同時に狙撃する。

 

 ズッドン ズッドン

 

 「チィ!?」

 

 『『うっそ〜ん、弾丸を斬り払った!?』』

 

 「マシュマー、馬鹿正直だと注意したばかりろうが!!」

 

 『ぬっわァァァ!?』

 

 イチカは咄嗟にビームサーベルを抜き、二発同時に放たれた弾丸の一発だけを斬り払い、背後から襲おうとしてビームサーベルを抜き襲い掛かるマシュマーのゲルググ改のビームサーベルを躱しながら肩を掴み、弾丸が飛んで来る方へと投げ飛ばす。

 

 無論、マシュマーはイチカから投げ飛ばされた方向がシャロから放たれた弾丸の射線上であり、マシュマーはシャロにフレンドリーファイヤされる形でコクピットハッチに直撃し、コクピットハッチはピンク色に染まり、マシュマーは撃墜扱いにされて離脱する。

 

 『隊長、貰った!!』

 

 岩礁の影から現れたのは、マシンガンを構え肉薄するイリア中尉の真っ赤に染められたブルーローズ二号機だった。

 

 何故、ブルーローズ2機も在るのかと言えば、イリア中尉も能力の高いニュータイプの持ち主であり、束さんが3機分のブルーローズとブラックローズの合わせた6機分のパーツをソロモンでの滞在中にアンマンのアナハイムから来た、エゥーゴの輸送艦隊によって運び込まれたガンダリウム合金アルファをハマーン様から許可を貰って使い、パーツを全て作り上げて組み立てられる様に母艦に搬入していたのだ。

 

 現在は順次、機体を組み立て作業中だったが、教官だったシャロがイリア中尉に合格を出してゲルググ改から最優先で組み立てられたブルーローズ二号機への機種変更を認めたからだった。

 

 そして、新たにリリーマルレーンのチーフメカニックになった束さんの手により、ブルーローズ二号機は組み立てられてイリア中尉専用機として使用していたのだ。

 

 無論、マシュマーとキャラにもシャロからの合格が出れば、ブラックローズへの機種変更を予定している。 

 

 

 「チィ!?」

 

 『ハッ!?

 

 躱された!?』

 

 『よし、あたし達もイリア中尉を援護射撃するわよ!!』

 

 『アン、了解!!』

 

 そして、岩礁から隠れながら狙撃していた二人もイリア中尉を援護するように飛び出し、マシンガンを撃ちながらイリア中尉がビームサーベルで俺に斬り込むのを支援する。

 

 だが、簡単にやられる俺ではない。

 

 「ほら、イリア中尉喜べ。俺からのプレゼントだ」

 

 『へっ、プレゼント?』

 

 ポイッ

 

 『あっ、不味い!?

  

 眩ッ!?』

 

 「貰った!!」

 

 『あっ、もう!!

 

 イチカ隊長の鬼畜!!』

 

 一瞬、俺からのプレゼントと聞き嬉しそうな顔をモニターから覗かせるが、投げた筒状の物体がヤバイ奴だと気付いて背筋を凍らせながら顔を真っ青にさせる。

 

 「セッイ!!」

 

 『ぐっ、やっぱり、瞬時加速はてっ、キャア!?』

 

 『ちょっと、アン。

 

 私とぶつからないでよね!?

 

 あっ……ヤバァ!?』

 

 「残念賞だな」

 

 ガッガガガガガ

 

 『『キャァァ!?』』

 

 そう、先程イリアに投げ付けたのは、拡張領域から出したIS用のフラッシュグレネードだった。無論、モノアイ付近で爆発してイリアの視界を奪い、マシンガンをコクピットへと放ちペイント塗れにして離脱。

 

 そして、二人してイリアを支援していた二人には瞬時加速をして急接近して、アンのブラックローズをシャロのブラックローズへと蹴り飛ばし、お互いがぶつかり合った所でマシンガンを乱射して二人をペイント塗れにして訓練が終了となる。

 

 「むっ、イチカ大佐」

 

 「どうした、イリア中尉?」

 

 「乙女心をもて遊びながら、フラッシュグレネードはずるいですよ!!

 

 乙女はプレゼントには弱いんです。だから、台湾での買い物は隊長の奢りで!!」

 

 「そうか?

 

 機体に積まれている物なら何でも使用する物だぞ?」

 

 「イチカ、確かにプレゼントと言いながらのフラッシュグレードは酷いから、イリアと台湾での買い物は付きやってやんないさい」

 

 「アン、学園で良く使った手だろ?」

 

 「うっぐぅ、それを言われたら何も言えないわ」

 

 「なっ、だろ」

 

 イリアはフラッシュグレードを使われた事に抗議しながらも、アンは学園での模擬戦ではイチカに散々フラッシュグレードを使われた事を言われ押し黙る。

 

 そして、訓練も終わり食堂で昼食だったのだ。 

 

 無論、厨房を仕切るのは鈴だった。

 

 何故、鈴が仕切っているのかは、ご飯を作る厨房の人達があまりも料理が不味くて食べれる料理では無く、娘達が食べたり士気に係る事なだけに鈴がキレてしまい、拡張領域から大量の調味料や香辛料などを取り出して、厨房の料理人と料理対決をして全員を下し、厨房の責任者となり食堂の味が向上したのだ。

 

 「一夏、酢豚定食よ」

 

 「サンキュ、鈴」

 

 「イリアには、デザートのアイスクリーム付きのフレンチトーストセットよ」

 

 「ウッフ♡鈴さん、判ってる♪」

 

 とそれぞれの昼ご飯を貰い昼食を食べる。そして、別のテーブルでは娘達が座り、仲良く四人で美味しそうに食べる光景と長女の千秋と三女の千夏が末女のナツキの面倒を見ているが次女の千春は、姉の千秋を見ながらナツキに姉を取られた様な表情をしていたのだった。

 

 「隊長の娘さん達を見てると、ほのぼのしますね」

 

 「だろ?」

 

 「イチカ、私達妻もいつかは欲しいからね?」

 

 「それは、鈴と要相談だな…」

 

 イリアも娘達を見ながらほのぼのしており、シャロからは子供が欲しいと強請られるが、鈴と相談しろと俺は逃げる。

 

 そんな時、艦長のツキノ・カグラザカ少佐から呼び出しが入る。

 

 『イチカ大佐、イチカ大佐、至急、ブリッジへ急行されたし』

 

 「呼び出しだな?」

 

 食堂から出て、ブリッジへと急ぐと艦長のツキノ少佐が出迎えるが、レーダーに映る地球軌道上に展開する3つの光点に気付く。

 

 「ツキノ少佐、襲撃の可能性は?」

 

 「高いと思われます。

 

 無論、味方のエゥーゴでも我が陣営側の艦艇の可能性は限り無く低いかと?」

 

 「となると、連邦軍かティターンズの艦艇だな?」

 

 「艦長、監視していた艦艇からモビルスーツ反応!!

 

 機種が判明、数は6機で連邦のハイザックとガルバルディ!!」

 

 「チィ、連邦軍だと!?

 

 モビルスーツ隊を出すぞ!!

 

 メンバーはアン中佐、シャーロット中佐、イリア中尉を招集!!

 

 俺は、先に出る!!」

 

 そう叫ぶ間にも、連邦からのモビルスーツが迫り来る。

 

 「ちぃ、近過ぎてカタパルトは使用できないか!?」

 

 『なっ、アクシズの最新鋭モビルスーツなの!?』

 

 「ちぃ、捕縛する!!」

 

 『きゃあ!?

 

 メインカメラが!?』

 

 モビルスーツデッキに急ぎ走り、ブルーローズへと乗り込むが、既にモビルスーツが近過ぎる為にカタパルトでの射出は無理だと判断し、モビルスーツハッチから出撃する。地球までは、下手な戦闘を避けるべく拿捕したのだ。

 

 新型だと叫ぶ声が女性だったが、マシンガンを放つハイザックに向けてビームライフルを放ちハイザックの頭部を吹き飛ばして、スラスターを吹かして接近してビームライフルをビームソードへと変形させて手足を斬り裂く。

 

 無論、手足を無くしたハイザックは出撃準備中のイリアへと蹴り飛ばし、パイロットを捕縛すべくイリアがワイヤーを射出して機体をワイヤーで固定してノーマルスーツを着た乗組員達がコクピットを抉じ開けてパイロットを捕縛していた。

 

 『あたしの部下をよくも!!』

 

 「遅い!!」

 

 部下を捕縛された事に叫び、ビームライフルを放ちながら突っ込んで来るガルバルディβには、初めて使用するリボルバーイグニッションブーストで加速して背後へと周り部下と同じ道を辿らせる。

 

 『きゃあ、手足が!?』

 

 「さぁ、投降させろ!!

 

 降伏させなければ、ビームライフルでコクピットに撃つ!!」

 

 『くっ、降伏するわ…』

 

 そして、隊長機が降伏した事により部下も次々と投降する。無論、連邦軍の三隻の艦艇はモビルスーツ隊を無くした事と、アンとシャロが旗艦のブリッジを制圧して降伏している。

 

 モビルスーツデッキに戻ると降伏した6人の女性パイロットが一斉に俺を睨む。だが、一思いに撃墜しても構わなかったが、モビルスーツの爆発は意外と目立ち、新たな敵を呼び兼ねないと判断した結果だった。

 

 「さて、俺はオリムラ中隊のモビルスーツ隊隊長のイチカ・オリムラ大佐だ。君たちの所属と階級、名前を言って貰う」

 

 俺の名前を聞くと、女性パイロット達は一斉に俺の事を幽霊でも見ているかの様な表情を一瞬したが、全員がノーマルスーツのポケットからプロマイド写真だろうか、一枚の写真を取り出して写真と俺を交互に見て、違う意味での悲鳴を上げる。

 

 「イチカ・オリムラ」

 

 「大佐ですって!?」

 

 「あの、ア・バオア・クーでは追撃艦隊を追撃不能に落とし入れた、有名なジオンのエースパイロットの!?」

  

 「しかも、本物で本人!?」

 

 「こんなに若くて、格好いい男性だなんて!?」

 

 「めっちゃ、あたしの好み!?」

 

 「「「「「「キャァァァァァ!!」」」」」」

 

 何か、一組のクラスメイトの様なノリを思い出す。そして静かにさせようとアンが叫ぶが逆効果だった。

 

 「あんた達、捕虜なんだから静かにしなさい!!」

 

 「まさか、ジオンのエースパイロットの一人のジオンの蒼い悪魔のアン・フリークス大尉!?」

 

 「誰が、悪魔よ!!

 

 あたしはアン・オリムラ中佐、モビルスーツ隊副隊長よ!!」

 

 「キャァァァ!!

 

 やっぱり、本物で本人よ!!」

 

 「可愛くて、お持ち帰りしたい!!」

 

 「ケイト、喜ぶのは早いわよ。

 

 今、アン・フリークス大尉がアン・オリムラ中佐と言わなかった?」

 

 「ジュンコ、確かに言っていたわ…」

 

 「まさか!?」

 

 「「「結婚してた!?」」」

 

 「で、でも確か、私が一年戦争の最中に買った雑誌にはベストカップルとして、二人が特集されてたわよ!?」

 

 「いやいや、噂だけど元ジオン兵の間では、結婚したくない女性ランキングでトップ10入りしてって聞いたわよ!?」

 

 「「「「「マジ!?」」」」」

 

 「あんた達ねぇぇぇ!!」

 

 捕虜達の女子高生の様な、ノリノリ会話にアンが苛つきながらも、整備科へ出す報告書を抱えたシャロが拡張領域に書類と入れ替えに出した特大ハリセンで6人を一斉に叩いていたのだ。

 

 「捕虜なんだから、少しは黙りなさい!!」

 

 スッバァァァァァァン

 

 「「「「「「キャウン!?」」」」」」

 

 シャロのハリセンに叩かれた事により、捕虜への尋問はスムーズに終わり、先程に出た名前のジュンコ少尉を隊長にしているが、元々は女性だけのパイロットを中心に連邦軍が編成した部隊が、ヴァルキリー中隊だったらしいが先のルナツー防衛戦では防衛任務で駐屯していたが、24名いたパイロットは隊長や副隊長までもが相次いでの戦死をしたりしてベテランパイロット達が戦死してしまい、新人だった6名だけが母艦を守る事を任務にしていた事で生き残りルナツーから撤退したらしい。 

 

 補充を受け取る為に地球軌道上へと向かい、ガルバルディβとハイザックを地球軌道上で連邦軍のコロンブスから補充してサイド4に向かう途中で、単艦にて地球に向かう俺達と遭遇したらしい。

 

 そして、彼女達はティターンズの30バンチ事件を知っており、副隊長代理をするケイト少尉はそのコロニーの出身だったらしくてティターンズには良い思いは無いらしい。

 

 無論、彼女達からの詳しい話を聞くとルナツー攻防戦前には、エゥーゴのエージェントからエゥーゴへの誘いが在ったらしいが家族をティターンズに人質にされた為に連邦側で参戦したが、ほぼ壊滅状態となったのだ。

 

 そして、尋問が終わろうとした時にアンマンへと向かわせようとした三隻のサラミス改の内の1隻が火球へと変わり爆発する。

 

 「あっ、私達の母艦のボスニアが!?」

 

 「この、感覚は!?」

 

 『大佐、敵のモビルアーマーによる襲撃です!!』

 

 「ちぃ、全く千客万来だな!!」

 

 この時、二度目となるニュータイプとの戦いになるとは知っていた。だが、俺よりも遥かに強いとは、まだ知らないのだった。

 

 

 



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大気圏突入とティターンズの襲撃 後編

 

 

 捕虜となった彼女達を収容する部屋へと入れさせた後、モビルスーツデッキにはノーマルスーツを着たメンバーが勢揃いして出撃命令が出るのを待つが敵は単機のみだと説明する。

 

 無論、他のモビルスーツの襲撃に備える様にと言い、コクピットでの待機を命じてから、ブルーローズのコクピットへと滑り込む。

 

 『一夏、無茶はしないでよね…』

 

 「鈴、大丈夫だ。

 

 ブルーローズ、イチカ・オリムラ出る!!」

 

 鈴に心配させながらも大丈夫だと言って、カタパルトから射出されて出撃する。無論、リリー・マルレーンの濃密な弾幕を潜り抜けて、そのモビルアーマーは背部のメガ粒子砲をブルーローズを駆る俺に放つが、咄嗟によるマニュアルによる操作で左側のスラスターのみを吹かしてギリギリで躱す。

 

 だが、反撃しようにもモビルアーマーの離脱速度とパイロットによる凄まじいプレッシャーに反撃ができなかったのだ。

 

 「この、プレッシャーは!?」

 

 『ほぅ、やはり、ニュータイプか…』

 

 「ちぃ、早い!!」

 

 だが、モビルアーマーによる一撃離脱は厄介だったが、こちらもブルーローズの高出力のバックパックのスラスターを全開にしながらも、進路を妨害すべくサイコミュを起動させてファンネルを猟犬の様に放つ。

 

 「なら、ファンネル!!」

 

 『流石にやるじゃないか』

 

 だが、相手もニュータイプだと裏付ける様にファンネルからのビームを寸で全てを躱して行き反転しながら、変形してビームサーベルを抜き襲い掛かる。

 

 「モビルアーマーが、変形した!?」

 

 『なまじ、ニュータイプだけに厄介だ。

 

 ここで、落ちてもらう!!』

 

 「舐めるなぁ!!」

 

 『受け止めるか…なら、これならどうだ?』

 

 「ぐっ、シールドが!?」

 

 『ほう、それを咄嗟に防ぐか』

 

 ビームライフルを変形させ、ビームソードを展開させてビームサーベルを受け止めるがスラスターの推力とパワーの差にブルーローズが押される。だが、シールドクラッシュをそのモビルスーツにぶつけて距離を取ろうとするが、モビルスーツの腕から放たれたグレネードランチャーをシールドで防ぐが、シールドはグレネードランチャーにより砕かれる。

 

 無論、ファンネルで背後から襲うが其処も読まれ、背部のメガ粒子砲で2基のファンネルが撃ち抜かれ爆散する。

 

 『ふっ、甘いな…』

 

 「ファンネルまでも!?

 

 だが、これならどうだ!!」

 

 『流石にやるじゃないか!!

 

 アクシズの女狐の懐刀にして置くには惜しいニュータイプだな。だが、落ちろ!!』

 

 「しまった!?」

 

 俺の切り札とも言える、二重瞬時加速を用いて加速し、放たれたメガ粒子砲をローリングしながら躱してビームソードで敵モビルスーツの左腕を斬り裂く。だが、反対に斬り裂かれたカウンターにとビームサーベルで斬り裂かれそうになる。

 

 

 

 モビルスーツデッキから見守るアンとシャロは、ニュータイプ同士の戦いにイチカの安否を心配する。だが、刻々とイチカがニュータイプ同士の戦いで不利になる状況にはイライラして行く。

 

 「何も出来ないなんて…」

 

 「シャロ、判るわよ。

  

 でも、イチカは絶対にあたし達をこの戦いには参戦させないわよ」

 

 「どうしてよ!!」

 

 「それは、あたしが独立戦争でガンダムに落とされ掛けたからだと思う」

 

 「あんた達は、それで言い訳?」

 

 そんな二人の会話に割り込むのは、ヘルメットを脇に抱えたノーマルスーツを着た鈴だった。無論、鈴は厨房を任された責任者ではあるが、イチカと立ち並び歩む為にシミュレーターによる操縦訓練をしていた。

 

 無論、イチカには秘密でだった。

 

 そして、あたしやシャロに教わりながらも、鈴が持つ天才的なセンスによりスポンジが水を吸収するが如くの様に操縦技術をほぼ、新兵よりはマシな程度まで覚えたのだ。

 

 「鈴、あたし達は待機命令受けてんのよ?」

 

 「そうね…でも、あたしは一夏を失う事だけは、絶対に嫌よ。なら、あたしはあたしが出来る事をやるわよ」

 

 と、あたしに啖呵を切り、キャットウォークを蹴り向かう先は、組み立て作業中のブラックローズだった。

 

 「へっ、鈴ちゃん!?

 

 それは、まだ組み立て作業中だよ!?」

 

 「でも、動くんでしょ?」

 

 '「うん、一応は動くよ。でも、素人の鈴ちゃんが戦場に出る場所じゃ無いよ!!」

 

 「判ってるわよ!!

 

 でも、一夏が危ない!!」

 

 そして、鈴はコクピットハッチを開けて滑り込む様に入り込むとコンソールパネルを操作してブラックローズの頭部のモノアイが光る。

 

 「あっ、もう!!

 

 ブラックローズが動くから、作業員は退避して!!」

 

 束さんが頭をくしゃくしゃに掻き毟りながら、作業員達を退避させる。鈴のブラックローズはゆっくりと歩みながらウェポンラックに固定された組み立てられたばかりのロングレンジスナイパーライフルを握り、モビルスーツハッチへと向かう、その時だった。

 

 イチカが、ニュータイプの駆るモビルスーツの左腕を斬り落としたが、カウンターによる反撃でイチカのブルーローズが斬り裂かれそうになった時、あたし達三人の思いが一つになり、あたしもシャロも鈴が持って行ったスナイパーライフルを握り三人同時に叫んでいて、あたし達の専用機のコアが共鳴するかの様に正確なターゲットロックと速射を可能として、モビルスーツへとスナイパーライフルを放ったのだ。

 

 

 『『『イチカは殺らせないわよ!!』』』

 

 「みっ、皆!?」

 

 『ぬぐぅ、敵の伏兵か!?

 

 だが、邪魔だな!!』

 

 そして、3つのビームはコクピットへと狙うがアンとシャロが放ったビームは躱されたが、鈴の放ったビームだけが相手のモビルスーツの右脚へと同時に直撃させて右脚が爆発して脚部を失う。

 

 無論、伏兵のモビルスーツに気付いたパイロットはイチカへの攻撃をやめたのだった。

 

 

 

 そして、リリーマルレーンの方を見れば、アンのブラックローズとシャロのブラックローズの2機と、何故か鈴が操縦する機体は組み立て途中のブラックローズを合わせた3機が、ロングレンジスナイパーライフルを装備して敵モビルスーツへと狙撃したのだ。

 

 『えぇぇい、邪魔だ!!』

 

 「このプレッシャーは何なの!?

 

 あっ、やばいやられる!?」

 

 だが、簡単にはやられてくれる相手では無く、ビームを当てた最もモビルスーツの操縦が素人で組み立て途中のブラックローズを駆る鈴に向かってメガ粒子砲を放ち狙う。一度は、中途半端にスラスターを吹かして回避するが、二度目に放つメガ粒子砲はコクピットへと凶弾が向かう。

  

 『『「鈴!!」』』

 

 『ほう、貴様の大切な女か、なら落ちろ!!』

 

 「かっ、回避出来ない!?」

 

 「させるかぁ!!

 

 ファンネル!!」

 

 『キャア、一夏!?』

 

 『大切な女を守り切ったのか…ふむ、時間切れか…今回は見逃するとしよう…』

 

 鈴へとメガ粒子砲が近くが、残りのファンネルを鈴との間へと割り込ませて、ファンネルを犠牲にしてメガ粒子砲を反らして鈴を守る。だが、鈴のブラックローズの右肩に当たりメガ粒子砲に飲まれて肩から腕を失い、残った2基のファンネルは爆散し、ブルーローズの機動力はかなり落ちる事になるのだが、敵のモビルスーツのパイロットは不敵な笑みを浮かべて、変形すると反転して離脱したのだった。

 

 「見逃されたのか?」

 

 『一夏、ごめん…』

 

 『鈴、気にしないの。

 

 あんたが死んだら、あたしは怒るからね』

 

 『アンもシャロもごめん…』

 

 『まぁ、無事で何よりよ。

 

 鈴は戻って、あたし等に美味しいご飯を宜しく!!』

 

 「鈴、楽しみにしてるからな」

 

 『う、うん!!』

 

 鈴はイチカを守れた事に安堵しながらも、モビルスーツデッキの作業要員の誘導に従い艦内へと撤退し、逆に待機していたイリアがモビルスーツハッチから出て来て予備のシールドを持参して渡す。

 

 『隊長、予備のシールドです』

 

 「イリア、ありがとう。

 

 また、モビルスーツの襲撃か?」

 

 『はい、数は8機で機種はティターンズ仕様のハイザックです』

 

 「なら、手加減する必要はないな。アンは俺の僚機として援護。シャロはイリアと組んで僚機とする」

 

 『隊長、私とキャラの出撃は無いのか?』

 

 「マシュマーとキャラは母艦の護衛だ。大気圏突入前だから無闇矢鱈に出しゃばるなよ?」

 

 『『了解』』

 

 「ツキノ少佐、大気圏突入までのタイムリミットはどれくらいだ?」

 

 『約10分です!!

 

 必ず、3分前には艦にお戻りください!!』

 

 艦長から言われ、イチカ達のモビルスーツ隊は迎撃すべく散開して行く。無論、ティターンズのモビルスーツからしたら新型機を相手にするのだからたまったものでは無く、次々とやられて行き火球へと変わる。

 

 「落ちろ!!」

 

 『グッワァァァ!?』

 

 『甘いわよ!!』

 

 ビームライフルを放ち直撃させてハイザックを撃破する。アンの重火器好きは変わらないがロングレンジスナイパーライフルから比較的に取り周りの良いジャイアントバズーカを放ち、ハイザックを撃破していた。

 

 刻々と大気圏突入へのカウントダウンは始まっており、ティターンズのハイザック隊による猛攻は止む気配はない。だが、イリアのブルーローズ二号機と戦う1機のハイザックが高度が低かったのか、引力に引かれて大気圏へと落ちる。

 

 『熱い!?

 

 しまった、高度か!?

 

 グッワァァァ!?』

 

 『高度を気にしないからそうなるんだ!!』

 

 そして、落下したハイザックは大気摩擦により炎上してバラバラになりながら落ちて行って爆発し、パイロットの絶叫共に四散したのだった。

 

 

 「時間切れだ!

 

 各機、母艦へと戻れ!!」

 

 『『『了解!!』』』

 

 指示の基、アンやシャロにイリアは母艦へと戻るが、2機のハイザックの諦めが悪いのか俺へと襲撃しながら群がる。

 

 『隊長機さえ、落とせば!!』

 

 「引力が怖くないのか!?」

 

 『貰ったぜ!!』

 

 「ちぃぃ!!」

 

 『グッワァ!?

 

 しまった、アメリアァァァァ!?』

 

 ビームソードを展開して、ハイザックのヒートホークを受け止めて大気圏へと蹴り飛ばす。

 

 無論、ハイザックは先程のハイザックの様に大気摩擦で焼かれ落ちて行くのだった。

 

 『カクリコン!?

 

 貴様!!』

 

 「さらばだ!!」

 

 『逃げんのか!!

 

 チクショォォォ!!』

 

 ハイザックは叫びながらも追撃を辞めて反転する。無論、引力に引かれない様にスラスターを全開にしながら母艦へと戻る。

 

 無事に着艦すると、皆が出迎えるが待機室のシートへと急ぎ座りながらシートベルトを締めて大気圏突入をしたのだった。

 

 「イチカ、地球が綺麗だね」

 

 「本当だな。

 

 だから、束さんは憧れたのかも知れないな」

 

 「じゃあ、ISが開発された目的って?」

 

 「あぁ、この蒼く綺麗な地球を見たかったのかな」

 

 さりげない、アンとの会話。

 

 そして、束さんが求めた夢の答えが、大気圏から見える地球だったのかも知れない。

 

 「あっ、アン!!

 

 ちゃっかり、イチカの隣をってイリアまで!?」

 

 「シャーロット教官でも、ここは譲れませんよ?」

 

 いつの間にか隣に座り、俺の腕に絡もうとするイリアと先に座られた事に抗議するシャロのじゃれ合う姿に少し笑ってしまう。

 

 「あっ、こらぁ!!

 

 イチカは妻子持ちなのよ!!

 

 イリア、離れなさい!!」

 

 「無論、断ります!!

 

 イチカ隊長は私達の女性隊員の共有財産です!!」

 

 そうイリアは言い切り、妻であるアンとシャロを挑発する姿は、あの時の三人を思い出し微笑ましい姿ではあるが、この後は必ずと言っても構わない修羅場が待っているのはお約束だった。

 

 そして、捕虜達の女性パイロット達を乗せたままでの大気圏突入をしたのだが、ティターンズの執拗な攻撃により突入進路がずれたらしくて、連邦軍の勢力下であるオーストラリア近辺へと降りる事になったのを知ったのは突入した後だったのだ。

 

 無論、台湾の宇宙港に居座る連邦軍への奇襲を前提だった事もあり、正面から連邦軍を駆逐しないといけない戦いになるとはまだ知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  



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現時点での組織説明と登場人物

 

 

 イチカ達が宇宙世紀へと戻ったのだが、少しだけ勢力図を説明したいと思う。

 

 先に説明しなければならないのは、ジオン独立戦争で散る筈だったかなりの戦力がアクシズにて温存されていた事実。

 

 ジョニー・ライデン少佐などが所属するキマイラ隊は、本来なら激戦区だったイチカのオリムラ中隊のいた場所が配置地点だったが、シーマ艦隊とデラーズ艦隊と同じ所に配置されてエースパイロットや大量のベテランパイロットを殆ど失わない事でア・バオア・クー決戦を乗り切り、三艦隊合同によるアクシズへの撤退を選んだ、もしもの設定。

 

 それと、ミネバ・ザビについては、実史よりも三年殆ど産まれが早かった事とソロモンでのイチカとの出会いが話のキーパーソンである為、0086(アニメのゼータでは6歳だった)0084の現在は6歳の少女である。

 

 

 

 アクシズ(ハマーン派閥)

 

 ミネバ・ザビを総統にしながらもハマーン・カーンとシャア・アズナブルを筆頭とした旧ジオンの最大派閥であり、旧ジオン時代からの大量のベテランパイロットを有するシーマ艦隊やデラーズ艦隊にキマイラ艦隊所属のエースパイロット達もこの派閥であり、少ない資源を効率良く使う為に徹底した効率化により、0084の段階では重モビルスーツはペズンドワッジを採用し、一般兵には汎用型のゲルググ改を隊長機にはリゲルグが採用されている。無論、可変型モビルスーツのガザシリーズやギャン系統の機体はアクシズにて開発中で、篠ノ之束の協力の元でソロモンでは新技術の開発には余念が無く、元アナハイムの設計技士のニナ・パープルントンによりガザシリーズの再設計をしている。

 

 

 アクシズ(グレミー派閥)

 

 未だに尻尾を出さないが、仲違いしなかったシャア・アズナブルとハマーンにより警戒されてはいるが、クローン技術や強化人間の製造技術などの技術者はグレミーの派閥であり、ニュータイプ至上主義者達の巣窟である。また、エルピー計画は既に成功を収めており十二姉妹のクローンを製造をしているが、ミネバに気に入られた長女のプル、次女のプルツー、末女のプルトゥエルブはハマーンにより救出される失態をしている。

 

 

 反連邦組織エゥーゴ

 

 実史と同じく作られた組織だが、0084年の初頭に月面へと来たアクシズの月面先遣部隊だったシャア・アズナブル中将とエゥーゴの素体となった組織の協同戦線により連邦軍を月から駆逐して月面都市のアンマンを拠点とする組織となる。

 

 (そして、月面のグラナダにパイプがあるシャア・アズナブルは、この時に『GP計画』を知りアナベル・ガトーに核弾頭搭載が考えられるガンダム試作二号機RX-78GP-02の強奪の指示を出して強奪させてアクシズへと持ち帰りさせる)

 

 これの情報を下にシャア・アズナブルはアナハイムの上層部と交渉して、リック・ディアスと開発中のマラサイをエゥーゴの主力モビルスーツとして製造させ、ソロモン奪還後からはゲルググ改の製造やモビルスーツの設計をアンマンのアナハイムに任せている。

 

 また、月での戦いで消耗したエゥーゴの素体となった組織の兵力不足を解消するまでは、宇宙でのティターンズと連邦軍との戦闘をアクシズに任せる代わりに輸送任務を重点にしている。無論、グリーン・ノアへの強行偵察を予定している。

 

 

 ティターンズ

 

 一年戦争終結後に結成された連邦の組織だが、酷すぎるジオンの残党狩り(ロクな調べもしないでの住民への射殺や女性の元ジオンのパイロットへのレイプし、宇宙空間へと生身での放り投げなど)のやり方に反発するコロニーの住民を毒ガスで虐殺した『30バンチ事件』を起こす。そして、クーデターに近い形で連邦を掌握し、最大のジオン狩りとも言えるアクシズへの襲撃には失敗するが、アクシズ襲撃を利用した連邦への粛清には成功する。

 

 無論、アクシズからの報復により、コンペイトウ(ソロモン)とルナツーを制圧されて拠点に使われている。

 

 

 

 地球連邦

 

 原作以上に腐敗が進み、今ではティターンズの言いなり状態の連邦軍。アクシズ襲撃ではかなりの戦力を失い、報復にルナツーを奪われる失態をして宇宙での制宙権をアクシズに取られそうな状態となっている。無論、ティターンズの台頭を良しとしない一部の連邦軍はコロニー防衛を理由に引き籠る。

 

 

 人物

 

 イチカ・オリムラ(IS世界では織斑一夏と名乗る)

 

 ジオン軍→アクシズのシーマ艦隊所属

 

 今作の主人公でモンドグロッソで誘拐され、宇宙世紀0079の世界へと転移する。ジオン独立戦争への参戦は士官学校を卒業した後で、戦場が宇宙へと変わる通商破壊作戦から参戦し、ソロモンからア・バオア・クーまでを戦い抜たエースパイロットでもある。

 

 無論、原作以上に女難の相があり、鈴やオリジナルヒロインのアンはラッキースケベ被害者筆頭になる程である。

 

 そして、シャア・アズナブルやジョニー・ライデン、アナベル・ガトーなどとも関わりがあり、卓越した操縦技術は彼等からの指導によるものだともいえる。

 

 そして、様々な事件に巻き込まれるのはお約束。

 

 現在は、IS世界から宇宙世紀の世界へと戻り大佐に昇進し、ティターンズを打倒すべく地球へと降りる。

 

 

 アン・フリークス(現在はアン・オリムラ)

 

 元は地球圏の旧ロンドン在住の欧州連合の貴族の令嬢で、ブリティッシュ作戦によるコロニー落としにより両親を失い、サイド3へと向かう難民船へと乗り亡命する。士官学校では次席にて卒業し、イチカと共にバディとして配属されるが、士官学校では既にラッキースケベによる被害によりイチカに責任を取らせて婚約者となる。

 

 元ネタとなったキャラは鈴であり、顔と性格は鈴とはそっくりだが、髪は金髪で身長とバストだけはアンの方が少し大きい。

 

 

 シャーロット・シュタイナー(シャーロット・オリムラ)

 

 オリジナルヒロインだが、銀髪で巨乳の長身の女性でサイクロプス隊の隊長の一人娘で見た目以上にお転婆な性格をしている。軍の家系であり、父親に反発して志願兵として12歳の若さで士官学校へと入り軍に入隊する。東南アジア方面ではグフを駆り暴れまわるが、ソロモンに転属となりイチカの部隊に配属され、隊長だったイチカに一目惚れし、アンには尊敬の念を懐いている。

 

 終戦後は、シーマ共にアクシズへと撤退して、シーマの自宅ではメイドをしながらシーマの愛娘のナツキの面倒を見ていたが少佐待遇で軍に復帰し、アクシズの新兵を鍛える教官だったがアクシズ襲撃により、イチカの世界へと飛ばされてIS学園に通うイチカとアンとの再会を果たす。

 

 元ネタのキャラは戦場のヴァルキュリアの帝国のヴァルキュリア。

 

 

 



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ポートモレスビーでの一幕

 

 

 俺達がオーストラリア近海の旧ジオン軍の放棄されたポートモレスビーの海軍基地に身を隠しているのは、地球へと降りる時に大気圏突入進路が変わってしまい、戦力差では相手にしたくない連邦軍のオーストラリアのトリントン基地を刺激しない為にザンジバルⅡ級でも隠せる施設は、近辺の海域では宇宙船用の地下ドックがある放棄されたポートモレスビー海軍基地だけだった。

 

 そして、捕虜達のジュンコ少尉を始めとした6名はアクシズへの志願兵として俺達の部隊に入る事となり、目下ポートモレスビーの基地でイリアやマシュマーにキャラを混ぜて織斑流フィジカルトレーニングで扱いていたのだ。

 

 「グッハァ…し、死ぬ…」

 

 「マシュマー、だらし無いわよ…ぐっへぇ…」

 

 「そう言う、キャラだってへばっているでは無いか…」

 

 「うるさい…」

 

 啀み合い、罵り合う二人とグラウンドの途中で屍の様に倒れ込み、見た目がエロいような扇状的に醸し出している志願兵の6名だった。

 

 「き、キツイ…」

 

 「隊長達、凄過ぎるわよ…」

 

 

 午前中の訓練が終わると、ソロモンから出港して以来の休息となる。無論、赤道直下な為にポートモレスビーの砂浜は常夏一色であり、女性隊員達ははしゃぎながら水着へと着替えて砂浜へと走って行くのだった。

 

 無論、愛娘達もそれぞれの水着に着替え、シャロやアンに鈴を加えた三人も連れて行き、リリーマルレーンの艦内は俺と待機要員のクルーとチーフメカニックの束さんしかいなかった。

 

 「いっくんは行かなかったの?」

 

 「行く気分じゃなかったかな」

 

 「やっぱり、大気圏突入前に戦った可変型モビルスーツかな?」

 

 「束姉には叶わないな…」

 

 束さんから、淹れたてのコーヒーを出され飲みがらも肯定する。

 

 寧ろ、俺は怖かった。

 

 鈴を失うのではと思いながらも、鈴の覚悟だけは否定はしたくない。それが、あの結果だった。

 

 「でも、いっくん。

 

 鈴ちゃんを責めちゃ駄目だぞ。

 

 鈴ちゃんは常にいっくんと歩みながら立ち並びたいから努力する。だから、束さんはあの時の篠ノ之神社で出合った時に力を貸そうと思ったんだからね。

 

 まぁ、努力せずに子供の様に嘆き散らす箒ちゃんじゃあ、貸さないけどね」

 

 「そうだったんだな鈴は…」

 

 「それと、小破したいっくんのブルーローズだけど、次の移動までには改装をする事を決めたし、束さんとニナちゃんの最高傑作を完全にコケにした、あの可変型モビルスーツのパイロットをギャフンと言わせたいから、アンマンのアナハイムから来た一枚の面白い図面を見付けて試しに作ったからね」

 

 そして、束さんから改装案の図面を見せ貰うと、スラスターユニットだったファンネルは取り外して、ブラックローズ用のマイクロミサイルポッド内蔵型のスラスターユニットに変更して固定。そして、バックパックをファンネルを4機を搭載するコンテナ2基を搭載した新しく作ったバックパック(サザビーの様な形状)へと変更する計画案だった。

 

 そして、ファンネルはスラスター型から変更して筒状の形をしており、IS版ブラックローズに使用し、作製した小型で高出力のジェネレーターをファンネルに搭載した事によりビームが使用可能であり、スラスターもコンテナに戻りエネルギーを補給する事を前提として二股に広がったり、筒状に戻ったり出来るらしい。(サザビーのファンネルを参照)

 

 無論、ファンネルの大きさもブルーローズ用のファンネルの10分の1以下の大きさであるが、ファンネルの機動力は激増している。

 

 そして、ブルーローズの装甲も変更するらしく、今頃はハマーン様がソロモンで『駄兎め!!』と叫ぶ風景が見える様が浮び、設計図と一緒にガンダリウム合金γのインゴットを持ち出したらしく、俺に取り出して見せる。

 

 「束さん、それは?」

 

 「アンマンのアナハイムから来た、新素材のガンダリウム合金γだよ。コンテナに1機分があったから持って来ちゃったテッヘペロ♪」

 

 (あぁ、絶対にハマーン様のキュベレイ専用の装甲素材だ)

 

 ソロモンでは、ハマーン様のサイコフレームへの変更と機体の改装中のキュベレイに使う装甲材だと知り、束さんに内心ボヤきながらも、束さんの書いた図面には見慣れない言葉、『ガンダリウム合金複合材』とある。

 

 「ガンダリウム合金複合材?」

 

 「いっくん、ハニカム構造は判るかな?」

 

 「段ボールみたいなやつか?」

 

 「うん、分かり易い回答ありがとうね。

 

 薄い装甲では防御が疎かになる。でも、薄い装甲板と蜂の巣構造した装甲板を何層にも合わせる事で同じ厚さの装甲と同じ強度を持ちながらも軽量で硬い装甲が実現出来るんだよ」

 

 「そうなんだ…まさか、複合材までも?」

 

 「うん、バッチリ♪」

 

 どうやら、複合材装甲までも作ってあるらしい。

 

 束さんには、ブルーローズの改修を任せて浜辺へと向かう。途中、昼時だから鈴達がお昼だと思い浜辺の露店付近で探すと、酒瓶を片手にしながら連邦軍の制服を着て呟きながらふらふらて歩く黒髪で俺に近いくらいの年齢の男性とぶつかる。

 

 「ニナ、どうしてガトーに…」

 

 ドン

 

 「痛っ!?」

 

 俺は肩に当たった衝撃で砂浜に尻もちをつくが、男性は謝らずに歩き去る。

 

 「おい!!」

 

 「うるさい!!」

 

 「グッハァ!?」

 

 男性の肩を掴み止めさせるが、男性からいきなり顔面を殴られ露店へと吹き飛び、露店の中にある売り物だろう鍋のスープや茹でる前の麺が砂浜へと散乱する。

 

 しかし、露店に居たのは店員だけはなくひと泳ぎして、お腹を空かせながらフォーの麺を頬張る水着の上からパーカーを羽織るアンやフォーを食べながら新しいレシピを考えている鈴にナツキにご飯を食べさせているシャロ。そして、美味しそうに麺を食べる娘達だった。

 

 だが、俺が吹き飛びテーブルまでも倒した為に娘達のご飯は砂浜へと落ちる。だけど、幸いな事に娘達には怪我は無かった。

 

 「「「イチカ!?」」」

 

 「「「「パパ!?」」」」

  

 「イタタタ…」

 

 鈴がすかさず俺へと駆け寄り安否を確認する。アンとシャロも娘達を守る為に背後に隠しながらも側に来ていた。

 

 「一夏、あんた大丈夫?」

 

 「不意討ちだったけど大丈夫だ」

 

 「一夏、あんたは娘達を見てなさい。あの男を少し、ぶっ飛ばして来るから!!」

 

 「イチカ、鈴を止めなくて良いの?」

 

 「アン、キレた鈴を俺が止められるとでも?」

 

 「むっ、無理ね…」

 

 娘達のご飯までも台無しにされてキレた鈴は、凄まじい形相になり殴り飛ばした男性へと走って行き叫ぶ。

 

 「ちょっと、あんた待ちなさい!!」

 

 「…」

 

 「はぁ、あんたねぇ、娘のご飯を台無しにして置いてさ、ごめんなさいくらいはしなさいよ!!」

 

 「グッハァ!?

 

 貴様!!」

 

 鈴が叫び止めるが、男性は無視して酒を煽りながら行く。だが、そんな態度にブチ切れた鈴はその男性に飛び蹴りを背中から入れて転倒させたのだ。無論、黙ってやらられる男性では無く、立ち上がりふらつきながらも鈴に向かって殴り掛かったのだ。

 

 「はぁん、馬鹿じゃないの?

 

 そんな、酔っ払った拳で、あたしをやれると思ってんの?」

 

 だが、忘れてはいけない。

 

 鈴は、こう見えてもISの操縦者で事件が無ければ、中国の国家代表候補生だった事実を…

 

 男性のパンチを軽くあしらい、肘を引いて気功を錬ると男性の懐に潜り込み両手の手を広げて腹部に一気に放ったのだ。

 

 「八掛掌!!」

 

 ドッン

 

 「グッ、ハァ!?」

 

 胃液を吐き出しながらも、くの字に折り曲がりながら男性は吹き飛びヤシの木へと激突して男性は気絶したのだった。無論、艦に残る部下の兵士を呼び、男性を拘束して艦の独房へと収容する。

 

 リリーマルレーンへと戻り、私服から着替えたあとに収容した男性が気が付いたと連絡があり尋問室へと向かう。途中、男性の荷物を調べたシャロが一枚の認識標を俺に渡す。

 

 「イチカ、荷物を調べたら彼は連邦の元兵士よ」

 

 「へぇ、元連邦軍のトリントン基地所属、コウ・ウラキ中尉か…」

 

 トリントン基地の単語に引っ掛って彼が気になり、アクシズでの報告書を纏めたデータを見る為に久しぶりにブルーローズを部分展開して、コンソールを開き、検索をすれば『該当者あり』と出る。

 

 「やっぱりだな。

 

 シャロ、彼はガトー少佐の関係者だな」

 

 「えっ、ガトー少佐の?」

 

 「ほら、0083年の末にガトー少佐が地球へと向かって、実行したガンダム強奪作戦だよ」

 

 「あぁ、報告書に有ったアレね」

 

 コンソールを弄り、シャロと肩を合わせながら報告書を読む。

 

 「あぁ、トリントン基地で評価実験を行う予定だった2機のガンダムの内、核弾頭バズーカを搭載したRX-78-GP-02をガトー少佐が強奪。

 

 当時、ウラキ少尉は現場に居合わせていたらしく、同じく汎用型のRX-78-GP-01に乗り込みガトー少佐を追撃するが、海岸に待機していた潜水艦によりアフリカへと撤退するが、追撃部隊を編成され追撃を受ける。

 

 キンバライトのジオンの基地からHLVにて大気圏を離脱しアクシズへと帰投し、以後は核弾頭バズーカを外し改造を開始する。

 

 ガンダムタイプを改めた、重モビルスーツのAGX-02サイサリスとしてガトー少佐専用機となる。その際、トリントン基地にアナハイムの現地スタッフとして居た、ニナ・パープルントン設計技士が共に来ておりアクシズへと亡命するか…」

 

 報告書を読み終わるのを待って居たのはジュンコ少尉だった。

 

 「隊長、これが連邦軍側の報告書です」

 

 「ありがとうな、ジュンコ少尉」

 

 「はい/////(大佐、そんな眩しい笑顔を見せないでよ!!惚れちゃ駄目よ、ジュンコ。大佐は妻子持ちなのよ!!)」

 

 ジュンコ少尉から連邦軍側の報告書を貰うが、心の中で叫びながら顔を真っ赤にして走って行くジュンコ少尉だったが、シャロは軽くジュンコ少尉を睨みながら『後に拉致って妻会議に強制参加ね…』と何か物騒な事を呟いていたのだった。

 

 無論、ジュンコ少尉が持って来た、束さんのハッキングの元に連邦軍から引き出した連邦軍側の報告書もアクシズ側の報告書と大した差は無い。ただ、コウ・ウラキ中尉に至ってはアフリカのキンバライト基地までガトー少佐への追撃後にガンダムの無断使用とガトー少佐を取り逃した事により、懲戒免職となっていたのだ。

 

 「まぁ、理不尽な扱いね」

 

 「同情はするがな」

 

 「でも、尋問はするんでしょ?」

 

 「まぁ、白昼堂々と傷害沙汰だもんな。住民には、破棄された基地を使わせて貰っているからな…」

 

 ボヤきながらも尋問室へと入る。

 

 無論、壁に成っているのはマジックミラーになっており、副隊長のアンが監視を理由に見ている。

 

 「入るぞ」

 

 「貴様は!?」

 

 「大人しく座って、答えてくれたら開放はする。だが、その前に、俺はこの部隊の隊長のイチカ・オリムラ大佐だ。連邦軍、トリントン基地所属のコウ・ウラキ元中尉?」

 

 「イチカ・オリムラ!?

 

 まさか、ジオンの白い流星のイチカ・オリムラ大尉だと!?

 

 ア・バオア・クーで戦死した筈だ!!」

 

 「ほれ、脚ならあるが?」

 

 「生きていたのかよ!?」

 

 「そして、今はシーマ艦隊所属の独立機動中隊隊長のイチカ・オリムラ大佐だ」

 

 「はっ!?

 

 シーマ艦隊だと!?

 

 貴様はアクシズなのか!?

 

 なら、ガトーを知っているな!!」

 

 「あぁ、知っている」

 

 「答えろ!!

 

 ガトーは何処だ!!」

 

 「黙れ、俺の質問中に答える義理は無い」

 

 バッキィ

 

 「グッハァ!?」

 

 胸倉を掴み、俺に問い質そうとするコウに苛ついた俺は、コウを殴り黙らせる。無論、尋問をする上では危害を逆に受ける可能性から手錠を嵌めたのだ。

 

 「さて、質問だ。

 

 何故、コウ・ウラキ元中尉はポートモレスビーに居た?」

 

 「ニナを探すためだ!!」

 

 「ニナ・パープルントン設計技士は現在はアクシズの設計主任としてソロモンに居るから探すのは無意味だ」

 

 「ジオンが奪取したコンペイトウだと!?」

 

 叫ぶ、コウに対して、シャロが口を開く。

 

 「本当、聞いてて女々しくて情けないわね。ニナさんはね、ガトー少佐とはラブラブ中で、アンタみたいなチェリーボーイには出る幕はないのよ。だから、諦めなさい」

 

 「貴様、言わせて置けば!!」

 

 年下のシャロから度キツイ一言にコウは顔を真っ赤にして怒りシャロを睨む。だが、涼しい顔をしながらパソコンに調書を打ち込んで行くのだった。

 

 無論、再び暴れようとしたコウをシャロが顔面へと殴り、気絶させると独房へと投げ込んだのだった。そして、束さんによるコウへの軽い診察の結果は軽いアルコール中毒者だった為に治療する事が決まったのだ。

 

 そして、数日後にはブルーローズの改装も終わった頃に旗艦のアカツキから入電により、ソロモン諸島を抜けて台湾を急襲し襲撃せよと指示が出たのだ。

 

 無論、増援部隊が軌道上から降下するらしく、期日までに向えとの事だった。

 

 「まさか、増援はガトー少佐の部隊かよ…」

  

 「イチカ、災難ね…」

 

 「それよりも、ソロモン諸島から抜ける手立てを考えないとね…」

 

 「あぁ、連邦軍の空軍と海軍の勢力圏内への強行突破だな…」

 

 三人でゲッソリしながら、強行突破作戦を練っている最中にチーフメカニックの束さんが来る。

 

 「いっくん、追加報告だけど良いかな?」

 

 束さんの一言に嫌な予感しか感じ得なかった。

 

 「束さん、何かな?」

 

 「ニナちゃんが、ブルーローズとブラックローズ用の追加パーツを積んだコムサイで来るって、ソロモンから連絡があったよ。って、どうしたのみんなは?」

 

 「うっわぁ、絶対に修羅場だよ…」

 

 「アンちゃん?」

 

 「イチカ、ア・バオア・クーの時みたいに寝込んでも構わないかな?」

 

 「へっ、シャロちゃん?」

 

 「束さん、特製の胃薬をくれるか?」

 

 「いっくんまで!?」

 

 束さんから落とされた、特大の爆弾に胃が痛くなる感覚に目眩を覚えながらも、二人が合流したら確実に修羅場は確定だと思ったのだった。

 

 



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強行突破作戦 前編

 

 

 束さんからの報告から翌日、コムサイがポートモレスビー海軍基地へと着水し、横付けした桟橋ではコンテナに積まれた大量の物資が宇宙船用ドックから浮上したリリーマルレーンへと積み込み作業が開始される。

 

 「おっ、ニナちゃん!!」

 

 「たっ、束さん!?」

 

 アクシズの女性用の士官制服を着るニナさんに抱きつく束さんは、ニナさんが脇に抱える書類を奪い書類の中身を見ながら次々と荷卸されたコンテナを確認しながらサイン済ます。

 

 そして、積み下ろし作業が終わりコムサイが大気圏離脱用ブースターを点火して大気圏外へと離脱する最中、ニナさんだけが残りリリーマルレーンのモビルスーツデッキへと向かい、更衣室で作業用のつなぎ服に着替えてブルーローズのコクピットへと入り、稼動データをコピーして抜き取りソロモンへと送る。

 

 「束大尉、イチカ大佐のブルーローズの稼動データはお宝ですね。これだけのデータならシャア閣下の専用機もそう遠くない内に完成するかもしれません」

 

 「うん、ソロモンのモビルスーツ製造プラントや軍需工廠も再稼働したからね。束さんも設計には参加したんだからシャア閣下の機体は大丈夫だよ。

 

 あっ、そうだった。

 

 ニナちゃん、これも帰る時のお土産ね」

 

 ブルーローズの装甲を加工した際に出たガンダリウム合金複合材の切れ端をニナに渡す。ニナは怪奇そうに切れ端を見るが、装甲の切れ端が何たるかを理解して固まる。

 

 「これって、まさか…」

 

 「うん、ガンダリウム合金γとガンダリウム合金αから作ったガンダリウム合金複合材だよ。ガンダリウム合金γと比べたら重量は半分くらいしかないけど、耐久力は倍以上かな」

 

 「束大尉、うちの技士達を過労死させる気ですか!!」

 

 「だって、複合材の問題は金属同士の接着だけじゃん。全部解決済みの仕様書と作り方を纏めた本まで付けてるんだから、技士達は仕事しろよ…」

 

 「それが、中々再現が出来ないから苦労するんです!!

 

 ホイホイと新技術ばかりを開発する大天災は困ります!!」

 

 「ニナちゃん、最高の褒め言葉だよ♪」

 

 「褒めてません!!」

 

 束さんが睨む目先には、コムサイからパーツとしておろされ、モビルスーツデッキの奥で2機のゲルググ改を組み立てる技士達だった。

 

 そして、積み込み作業が終わるまでは比較的に暇な為に食堂にて二人でお茶をしながらブルーローズを改装した際の話だけはニナは聞きたかっただけに向かう。

 

 「ニナ!!」

 

 「う、ウラキ少尉!?」

 

 「ウラキ元中尉、さっさと歩きなさい!!」

 

 「はっ、離せ!!

 

 ニナに話があるんだ!!」

 

 「うるさいわね!!

 

 さっさと歩け!!」

 

 ゲッシィ

 

 「グッ、捕虜に対する暴力だ!!

 

 この、暴力女!!」

 

 「暴力女ですって!?」

  

 「金的は駄目だ!?」

 

 「うっさい!!」

 

 チーン

 

 「グッエ!?」

 

 食堂に向かう二人と二度目となる尋問を終えたウラキ元中尉を手錠で繋ぐ尋問官を努めたシャロが廊下で鉢合わせする。しかし、ニナの実情を知るシャロは手錠に繫がる紐を引き、ニナの方へ向かおうと暴れるウラキ元中尉をヤクザキックで蹴り倒して引き摺りながらでもニナから引き離して独房へと入れたのだった。無論、シャロに『暴力女』は禁句で、禁句を言われ脚を振り被り金的を蹴ろうするキレたシャロをウラキ元中尉は止めようと言うが逆効果で、もう一発を金的に蹴られたのは言うまでも無かった。

 

 「ニナちゃん、大丈夫?」

 

 「大丈夫よ。

 

 どうして、ウラキ少尉が?」

 

 「浜辺でいっくんを殴り飛ばして、いっくんの妻の鈴ちゃんに蹴られて逆襲して手を出したは良いんだけど、鈴ちゃんはああ見えてもISの競技者の企業代表だったから返り討ちに逢ったんだよ。それで、傷害で現行犯だね」

 

 「コウも落ちる所まで堕ちたのね…」

 

 金的を押えながら悶え引かれて行くウラキ元中尉を見ながらも、冷めた目で見るニナだった。そんな時に艦内の警報が鳴り響く。

 

 「敵襲!?」

 

 「あっもう!!

 

 ニナちゃんとのお茶会が楽しみだったのに!!」

 

 警報により、第一種戦闘配備になり走り回る兵士やクルー。そして、束さんも襲撃して来た敵にキレながらもチーフメカニックとして来た通路を戻り、モビルスーツデッキへと急ぐのだった。

 

 

 

 

 そして、リリーマルレーンへと迫る18機のMSが2機が載せられる大型のベースジャバーに載るのは、アクシズの地球降下部隊の殲滅の命令を受けたトリントン基地所属の36機のモビルスーツ隊の一陣だった。

 

 そして、モビルスーツ隊の構成はジムⅡが10機にジムキャノンが8機、ハイザックが10機と旧式のジム改4機に連邦軍仕様のザクF2型4機の混成部隊だった。

 

 無論、イチカ達のレーダーには映っており、オーストラリアから少し離れたポートモレスビーへと逃げた理由でもあった。

 

 「ちぃ、毎度お馴染みの物量戦かよ…」

 

 「イチカ、要らない紙なら部屋には無いわよ?」

 

 「アン、それはちり紙交換な」

 

 「そうよ。アレは、粗大ゴミにでも出せば良いのよ」

 

 「いやいや、粗大ゴミでも回収業者はモビルスーツなんか回収しないぞ!?

 

 出すなら、専門の廃品回収な」

 

 「「流石、主夫ね」」

 

 夫婦三人による夫婦漫才はさて置き、カタパルトからの射出を諦めてモビルスーツハッチから直接出撃したのは、イチカのブルーローズ改とアンとシャロのブラックローズの3機が先行して出撃し、空中に浮きながら待ち構えていた。

 

 無論、イリアのブルーローズはISコアが使用出来る様に改装中で出撃が出来ず、元の機体だったゲルググ改に乗りリリーマルレーンの最上部に陣取りロングレンジスナイパーライフルを持ち狙撃体制を取っていた。そして、お馬鹿二人のマシュマーは右舷カタパルトにて迎撃体制を、キャラは左舷のカタパルトにて待機し、3機は空中戦が不可能な為に迎撃体制を取る陣形だった。

 

 何故、ブルーローズ改とブラックローズが空中に浮いているのかは、束さんによるIS技術を応用してイチカ達の専用機と接続しており、その3機が専用機としてコアに認識させているのでISの専用機同様に浮いているのだ。

 

 「アン、シャロ。

 

 マイクロミサイルポッド、スタンバイ!!」

 

 「「了解!!」」

 

 イチカの号令の下、1機辺り2基の大型スラスターに内蔵された合計40発の3機分の合計120発のマイクロミサイルを敵モビルスーツ隊へとターゲットをロックして、マイクロミサイルポッドを発射する為に大型スラスターの先端部のカバーが一斉に開く。

 

 「「ロック、完了!!」」

 

 「よし、全弾発射!!」

 

 白煙を上げて、マイクロミサイルは一斉に飛び立ち、先制攻撃を仕掛けるべく敵モビルスーツ隊へとマイクロミサイルが殺到する。

 

 「ミサイルの一斉発射だと!?

 

 各機散開し、回避行動に移せ!!」

 

 無論、ベースジャバーからミサイルから退避しようとチャフやフレアをばら撒き回避行動に入る。だが、マイクロミサイルには内蔵された赤外線とレーダーに画像処理を複合させた兎印の極悪な、ブルーローズ系モビルスーツ専用の追尾式マイクロミサイルである。

 

 「チャフもフレアも効かない!?

 

 ギャァ!?」

 

 ミサイルから逃げ回っていたザクF2型の2機が10発近いミサイルを浴びて空中に花火を描いてベースジャバーと一緒に四散し、ベースジャバーを破壊されて海へと落下する2機のジム改は海から浮上した際にイリアのゲルググ改から頭部へと狙撃されて頭部を破壊され、パイロットはコクピットハッチを開けて海へとダイブしていたのだった。

 

 無論、マシュマーやキャラもビームライフルを放ち、ベースジャバーを狙い撃ちながら撃墜し、スラスターを吹かしながら降下するハイザックやジムⅡを撃破したのだ。

 

 だが、此方も被害無しとは行かず、最初の被害はマシュマーだった。

 

 「えぇい、落ちろ!!」

 

 「マシュマー!!

 

 ジムキャノンに狙われてるわよ!!」

 

 「ぐっわぁ!?

 

 おのれ、仕方ない。

 

 脱出する」

 

 マシュマーのゲルググ改から放ったビームはジム改を撃ち抜き撃破する。しかし、気付いたイリアの叫びも虚しく、ジム改と一緒にベースジャバーに乗っていたジムキャノンのキャノン砲の砲弾がマシュマーのゲルググ改の頭部を吹き飛ばし、カタパルトに頭部を失ったゲルググ改が倒れる。

 

 無論、コクピットハッチを開けてマシュマーは脱出。ジムキャノンはイリアのゲルググ改が放ったビームライフルにより撃破されたのだ。

 

 それでも激戦は続き、キャラのゲルググ改の右の脚部を失い離脱し、第一陣だろうトリントン基地所属のモビルスーツ隊が壊滅した頃に動ける俺達のモビルスーツは4機まで減っていたのだった。

 

 そして、同じ頃の艦内の厨房でも戦場化しており、鈴を始めとした人達も大量のご飯を炊きながらおにぎりを作っていたのだ。

 

 「おにぎりは最低でも2000個は握るわよ!!」

 

 『了解!!』

 

 中華包丁片手に厨房の人達に激を飛ばす鈴は大量の鶏の腿肉を一口大に切り分けて、生姜や醤油に酒を入れて揉みながら大量の片栗粉を振り掛け、熱した油に下処理した鶏肉を揚げていく。

 

 そう、鈴達の厨房の人達は戦う兵士達におにぎり弁当を作っていたのだ。

 

 無論、最初はハンバーガーを厨房の人達が用意しようとしたが、鈴に一蹴される。

 

 「そんな、消化が悪いの食わしてどうすんのよ!!

 

 消化も力になるのが早い、おにぎりよ!!」

 

 と叫び、拡張領域から出したのは、ポートモレスビーで大量買いした米や塩におにぎりの具になる極東地域の元日本で漬けられた紀州梅の梅干しなどが立ち並び、厨房の人達の度肝を抜く。

 

 無論、同じ元日本の有明産の焼き海苔まで出すこだわり様に一瞬呆れたが、腹ごしらえにと鈴が握ったおにぎりを食べて虜に成ったのは言うまでも無かった。

 

 そして、ポートモレスビーで大量に買い込んだ物の中には、竹で編まれたお弁当サイズの籠が大量にあり、におにぎりや唐揚げなどを詰めて軽く麻紐で縛りお弁当が完成する。

 

 それらを、各科の人数分をカバンに大切に詰めて行き、厨房の人達はその鞄を抱えて艦内を走り回りながら水筒と一緒に配っていったのだ。

 

 第一波を退けたイチカ達、パイロットの場所には鈴が自ら行き弁当を配る。

 

 「一夏、お弁当よ」

 

 「サンキュー、鈴。

 

 おっ、おにぎりじゃん」

 

 一夏は慣れた手付きでおにぎりを頬張り、アンやシャロにも弁当を配り食べて行く。

 

 「ぬっおぉ!?

 

 す、酸っぱい!?」

 

 マシュマーは梅干しに馴れないのか顔を顰めるが、お腹を減らして居たのかがむしゃらに頬張り食べて行く。

 

 「イリア、弁当よ」

 

 「携行食で済まそうと…」

 

 「あんたねぇ、ラウラと同じ事を言ってんじゃないわよ。良い、キチン食べられる時にはキチンと食いなさい。じゃないと…」

 

 「じゃないと?」

 

 「アンタの夕飯のデザートのバニラアイスを抜きにするわよ?」

 

 鈴に言われ、弁当を受け取ったイリアはおにぎりを食べたり、唐揚げを摘んで食べてデザートに入れたバナナを美味しそうに食べたのだった。

 

 そして、束さん達のメカニックにも弁当を配り、厨房に戻ると、次の戦時食を作るべく鈴達厨房の人達も料理を始めたのだ。

 

 「アンタ達、これがあたし達の戦場よ!!

 

 頑張りなさい!!」

 

 「「「「へい、姉御!!」」」」

 

 「誰が姉御よ!!」

 

 鈴が激を飛ばしたが、年上の厨房の人達から『姉御』と慕われるとは思われ無かったが、現場から軽い物をとリクエストが入り、大量の食パンを出して茹で卵を作りサンドイッチのタマゴサンドとレタスとハムにチーズを挟んだレタスサンドを作るべく料理を始めたのだった。



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強行突破作戦 後編

 

 

 緒戦のトリントン基地からのMS隊による奇襲は退ける事が出来たが、こちらも迎撃当初の6機在ったモビルスーツは2機が損傷して修理中で使用出来なくなり、稼動出来るモビルスーツが4機まで減り迎撃は難しくなる一方だった。

 

 だが、今の所は連邦軍からの襲撃部隊はトリントン基地のモビルスーツ隊による第一波が最大数での襲撃だったと俺は思う。

 

 そして、今はリリーマルレーンの進路はポートモレスビーから脱出して、強行突破を繰り返しながら北上してフィリピン方面へと飛びながら向うが、オーストラリアのトリントン基地の部隊から、グアムとフィリピンのレイテ島を基地とする連邦軍極東方面大隊へと誘われ、空からはベースジャバーに載るハイザックやジムキャノンなどを主力とした部隊と海からはガンダイバーやアクアジムを主力としたモビルスーツ隊による包囲網を敷き始めた事を俺達は知らない。

 

 「いきなり、3分の1以下か…」

 

 「あれだけ、落としたんだから流石にネタ切れでしょう?」

 

 「アン、それはフラグだから言わないでよ」

 

 『隊長、先頭の機体に狙撃しますか?』

 

 「イリアの判断に任せる。

 

 アン、シャロ。また襲撃だ」

 

 本日、三度目となる連邦軍からのベースジャバーに乗りながらマシンガンを放つハイザック数機からの嫌がらせなのかと思いたくなる様な波状攻撃。

 

 「もう、いい加減に落ちなさいよ!!」

 

 『馬鹿な、モビルスーツが飛んでいるだと!?

 

 グッワァ!?』

 

 アンが叫び、ハイザックに最近やっと出来る様になった瞬時加速を用いて接近してビームサーベルで上半身と下半身を2つに斬り裂き撃破する。

 

 「本当、連邦軍は物量戦が好きよね!!」

 

 『ギャア!?』

 

 シャロも連戦の疲れから愚痴りながらも、ハイザックへとビームライフルを放ち撃破するがエネルギーパックのエネルギー使い切り、シールドにマウントされている新しいエネルギーパックをビームライフルに装着する。

 

 「全くだな!!」

 

 『コクピットがつ、潰れる!?

 

 ギャァァァァ!?』

 

 イチカもビームサーベルさえ抜くのが億劫になったのか、独立戦争以来に久しぶりに使う斬艦刀をリリーマルレーンのウェポンラックから持ち出したが、斬艦刀が独立戦争時に製造された品だったようで、なまくらで斬れなかったらしくてコクピットをぶっ叩いてコクピットのパイロットごと叩き潰す荒技に出ていたのだった。

 

 『一体、隊長との台湾でのお買い物デートが何時になるのかしら?』

 

 『あっ、あんな距離から!?』

 

 イリアも傷だらけのゲルググ改に乗り、連邦軍の物量戦にはウンザリしていた様で、スキを見せたハイザックのコクピットへとスナイパーライフルにて狙撃しハイザックを四散させる。

 

 壊滅の危機となった連邦軍のハイザックが撤退して戦闘の終了を確認してからリリーマルレーンへと戻り、各機体の燃料や弾薬を補給しながらメカニック達が機体へと群がり損傷箇所が無いかチェックして行き、罅割れた斬艦刀はウェポンハンガーへと戻され、次の迎撃からは組み上げ中のゲルググ改の2機からパーツを取って修理したゲルググ改の2機と改修が終えたブルーローズ二号機が参戦出来ると報告を受けて内心安堵する。

  

 だが、マシュマーとキャラの修理の終えたゲルググ改のカラーは損傷箇所が判る程にチグハグな色になっていたのだ。

 

 「やっと、私の出番だ!!」

 

 「マシュマー、組み立て途中の機体からパーツを取って修理しかたから、もう予備機が無いから機体を壊すなよな?」

 

 「うっぐぅ!?」

 

 「やい、マシュマーのバーカ」

  

 「キャラ、貴様!!」

 

 「キャラ、お前もな?」  

 

 「うっなぁ!?」

 

 何時の通り、二人して罵り罵倒し合うブレない二人だった。

 

 此方のブルーローズとアンとシャロのブラックローズの補給は終えたが、マイクロミサイルの予備の弾薬は先程の戦闘にて底がついたと報告が来る。そして、ビームライフルのエネルギーパックはエネルギーを補給すれば何度でも使用が出来るのだが、補給する割合よりも使用する頻度が多くて間に合いそうには無い。

 

 それだけ、迎撃に出撃して弾薬の消費が激しくなる程、連邦軍の執拗な攻撃が激しかったのだ。

 

 報告を受けたアンも、補給されたビームライフル用のエネルギーパックが3個だけでは戦にならないと、ビームソード付きビームライフルから台湾の宇宙港で使用予定だった、予備の弾薬が大量にあるマガジン式のジャイアントバズーカへと変更し、腰のアーマーのマウントラックにマガジンをマウントしまくったり、拡張領域にマガジンを積めるだけ詰め込むと言う暴挙に出たりしていたのだった。

 

 「アン、マガジンを積み過ぎじゃない?」

 

 「別に良いじゃん」

 

 「全く、良くないわよ。積むなら、マシンガンを積みなさいよ」

 

 「だって、90ミリマシンガンじゃあ、ハイザックに効果が無いわよ…」

 

 「確かに、弾かれてるわね…」

 

 二人して、ビームライフルのエネルギー切れで代わりに放った90ミリマシンガンの弾丸がハイザックに弾かれた苦い経験を思い出したのか、二人の間に微妙な空気が漂う。

 

 「でしょ?」

 

 「なら、私も180ミリ対艦ライフルにしようかな…」

 

 結局、二人してビームライフルを降ろして実弾系に切り替えたのだった。

 

 無論、イチカもだった。

 

 「えっ?

 

 エネルギーパックの充填が間に合わないだって!?」

 

 「いっくん、エネルギーの充填が間に合わないから、ごめん。だから、代わりに良い物を作ったから使ってね」

 

 「束さん、これって…」

 

 ウェポンハンガーに掛かる一振りの片刃の片手直剣には見覚えが在った。かつて、実の姉の千冬姉がたった一振りのこの剣で世界を制した暮桜の愛刀の『雪片』に似た剣だった。

 

 「無論、モビルスーツ用に造り変えた一品物だよ。

 

 素材も勿論、ガンダリウム合金γ製の実体剣で、そのまま斬るも良し、ビームを展開して斬り裂くも良しの雪片の後継剣の雪片弐式だよ。

 

 本来なら、いっくんの専用機だった白式に積む予定だった剣だけど、弾薬が欠乏気味だけど材料が在るならって作ったんだよ」

 

 束さんから説明を受けて、雪片弐式をウェポンハンガーから取り装備する。そして、装備すると同時に白星の叫ぶ声とは別の声が聞こえたのだ。

 

 『やっと、私が目覚められた』

 

 『白騎士、貴女の出る幕は無いわよ!!』

 

 『眠らされた時は小娘だったが、小娘はクィーンに目覚めたか…』

 

 『邪魔だった『零落白夜』が復活してる!?』

 

 『私からの餞別だ』

 

 『要らないわよ!!』

 

 そう、二人のコアの人格が言い合うが『白騎士』には聞き覚えがあった。まさか、白騎士事件の時に使用されたコアはまさか…

 

 だが、考えるよりも先に艦内の襲撃を知らせる警報が鳴り響く。無論、ビームソード付きビームライフルはラックから外し、代わりのグレネードランチャー付き90ミリマシンガンと予備マガジンの束を腰のウェポンラックに固定して雪片弐式を右手に持ち出撃したのだ。

 

 「ちぃ、連邦軍は懲りねぇな!!

 

 イチカ・オリムラ、ブルーローズ改出る!!」

 

 カタパルトで射出され、上空に舞う。無論、第二カタパルトからシャロとイリアが続き、第一カタパルトからはアンが立て続けに射出されて楔型の隊形を取り待機する。

 

 「各機へ、コレで襲撃は8度目だが気を抜かずに挑め!!

 

 そして、全機生きて帰還しろ」

 

 『『『『『了解!!』』』』』

 

 レイテ沖上空での、ポートモレスビーから続く8度目の連邦軍の襲撃は連邦軍が最初から猛攻を仕掛け、単機用のベースジャバーに乗り攻撃を仕掛ける18機のハイザックとジムキャノンの部隊。

 

 『イチカ!!

 

 海中からもモビルスーツ反応よ!!』

 

 『アレは…ガンダイバーにアクアジム!?』

 

 「シャロ、判るか?」

 

 『連邦軍の水中用モビルスーツよ!!』

 

 「不味い、母艦に向かった!?」

 

 『はっははは!!

 

 私の出番が来たようだな!!』

 

 『『「マシュマー!?」』』

 

 『あっ、身体が熱くなるのは嫌だけど、私も居るわよ』

 

 『『「キャラもか!?」』』

 

 シャロの叫びに、アクアジムは水中から飛び出して母艦であるリリーマルレーンをロケットランチャーで狙うが、艦の護衛に出撃しているキャラとマシュマーのゲルググ改がスラスターを吹かして軽く空中へと飛び、180ミリ対艦ライフルで海中から飛び出したアクアジムを撃ち抜く。

 

 『隊長!!

 

 処罰は後で受けます!!』

 

 「ジュンコ少尉!?」

 

 ジュンコ少尉が乗る機体は、ポートモレスビー基地のモビルスーツデッキに放棄されていたのを偶然にも発見した4機のズゴックEだった。無論、かなり機体の状態が良かった為にリリーマルレーンに回収して、束さんがイキイキしながら小改造している現場を目撃していた記憶があった。

 

 『オリムラ中隊所属、ヴァルキリー小隊ジュンコ、ズゴックE出るわよ!!』

 

 ジュンコ少尉が叫びながらズゴックEが海へと飛び込みながらアクアジムへとクローアームのビームを放ち、ケイト少尉やサラ少尉にマリナ少尉と続き飛び込んで行ったのだ。

 

 『不味い!!

 

 私も海中に向かうぞ!!

 

 キャラ、付いて来い!!』

 

 『了解!!』

 

 『ちょっと、マシュマー!?

 

 キャラまでもなの!?

 

 あっ、もう!!

 

 って、邪魔よ!!

 

 行け、ファンネル!!』

 

 そして、水中ではジュンコ少尉のヴァルキリー小隊がアクアジムを頭部の魚雷で撃破したりクローで貫きながら撃破し、マシュマーとキャラがヴァルキリー小隊にガンダイバーを行かせまいとビームサーベルを抜きながら海中へと向かい、海に飛び込んだ二人にブチ切れながらも艦へと戻りながらファンネルを展開してリリーマルレーンを守るイリア。

 

 「落ちろ!!」

 

 『グッエ!?』

 

 『コレを落とせば!!』

 

 「甘い!!」

 

 『なっ!?』

 

 イチカのブルーローズ改もハイザックの頭部を掴みながら片刃の剣でコクピットを突き刺し蹴り飛ばしながら反動を利用して刺した剣を抜き去り、ヒートホークで接近したハイザックにグレネードランチャー付きマシンガンのグレネードランチャーをお見舞いする。

 

 「貰ったわよ!!」

 

 『グッワァァ!?』

 

 そして、あたしもスラスターを全開にしながら飛び回り、ハイザックへとジャイアントバズーカをお見舞いする。

 

 『アン、危ないわよ!!』

 

 「サンキュー、シャロ!!」

 

 アンのブラックローズをハイザックがハイパーバズーカで狙った所をシャロが180ミリ対艦ライフルでハイザックのどって腹に穴を開けて撃破する。そして、アンとシャロは背中合わせにお互いを守りながら、空中での乱戦となった空を戦い抜いていたのだ。

 

 だが、戦場がレイテ沖だと言う事は、連邦軍基地のすぐ側にあり、第十波目となるモビルスーツ隊が接近していたのだ。

 

 「チィ!!

  

 また、増援かよ!!」

 

 『イチカ、数は?』

 

 「アン、レーダーの光点だと数は約15機だ!!」

 

 『うっげぇ、私はもう弾薬は無いわよ!?』

  

 『あたしのジャイアントバズーカの予備マガジンは3個ね…』

 

 『イチカ隊長、私達も迎撃に出られます!!』

 

 残弾確認をしている最中にモビルスーツデッキからの通信相手はジュンコ少尉達の仲間のサクラ少尉とカエデ少尉の二人だった。無論、二人が乗る新品だが何かおかしいモビルスーツがモビルスーツデッキから出て来た時に、モニター越し見えた時には、口から飲み物を吹き出しドリンクホルダーから取り出したボトルを唖然としながら落としてしまう。

 

 「ブッホォ!?

 

 ザ、ザクヘッドのゲルググ!?」

 

 『『『『ま、マジ…』』』』

 

 そう、モビルスーツデッキで組み立て作業中のゲルググ改はマシュマーとキャラのゲルググ改を直すのにパーツ取りしてしまい組み立て作業が止まっていたと思っていたが、サクラ少尉の乗るゲルググ改は頭部が無かった筈だが、誰かが撃墜したザクF2型の頭部を回収してゲルググ改に乗せたのだと推測していた。

 

 無論、それならマシだがカエデ少尉のブラックローズには、鈴が乗った修理中のブラックローズの吹き飛ばされた右腕の代わりにゲルググ改の右腕を使っていたのだ。普通なら懲罰ものだが、左側だけになったマイクロミサイルポッドを内蔵した大型スラスターを外す事でバランスを取る現地改修型と言っても過言ではないモビルスーツだった。

 

 だが、迎撃しようとした際には、10波目となるモビルスーツ隊の半数が空中でいきなり爆発して四散したのだ。

 

 肩の大型のバインダーを開き、スラスターを全開にしながら、ハイザックに大型ビームライフルのビームを放つ、胴体部以外をブルー系の色で染められた機体はあの人以外にはアンだけだった。

 

 『連邦の犬が、沈めぇぇ!!』

 

 『グッァァァ!?』

 

 『ガトー少佐に続け!!』

 

 『カリウス大尉、迎撃の指揮は任せる』

 

 『ハッ、ガトー少佐!!』

 

 『イチカ大佐、久しいな。

 

 そして、間に合って何よりだ』

 

 「ガトー少佐!?』

 

 ガトー少佐の予定よりも早い増援に驚きながらも上空を見上げるとバリュートシステムを装備し、着地用のスラスターを噴かしながら降下するのは大気圏を突入して来たガトー少佐率いるペズンドワッジ隊のモビルスーツ部隊だったのだ。

 

 無論、ガトー少佐の配下のカリウス大尉の指揮により、敵モビルスーツ隊を駆逐してフィリピン海域を強行突破により抜けて合流予定だったシンガポールへと向う事に成功すると、シンガポールの港には大量の補給物資を積んだコムサイが6隻が待機しており、アフリカ経由でモビルスーツを運んで来た潜水艦も待機していて補給を受けると同時に台湾へと向かう準備を始めたのだった。

 



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戦士の休息と鈴の箒との再会

 

 

 シンガポールに入港したリリーマルレーンは10度に渡る波状攻撃により小破するが、コムサイからの補給物資や潜水艦からのモビルスーツの補充だったりと艦内は非常に忙しかったりする。

 

 無論、ゲルググ改とズゴックEは潜水艦へと移動となり、ズゴックEで海中を暴れ回ったジュンコ少尉は少し残念そうに見送るが、逆に数隻の潜水艦から納入された8機のモビルスーツに眼を輝かせる。

 

 「ニナちゃん、完成させたんだね♪」

 

 「束大尉、コレは?」

 

 「この6機は、ヴァルキリー小隊用に送られて来たアクシズの可変型モビルスーツのガザDだよ。元の開発中だったガザCは可変用のフレームが空中分解しかねない程にフレームが軟弱過ぎたから、再設計した機体なんだよ」

 

 無論、ガザDだけでは無く、マシュマーとキャラに予定していたブラックローズは1機はパーツ用となり解体。もう1機は近接戦闘に特化した機体に改修したのは、厨房で調理をしていた鈴がマシュマーとキャラよりも高い成績を出した為にパイロットへと転向し鈴の専用の機体となる為だった。

 

 だが、ガザD以外にも送られて来た機体があり、マシュマーとキャラにはアクシズでごく少数だけが試作され製造されたギャン改が支給されたのだ。

 

 純粋に見ても、ギャン改は明らかにブルーローズ系モビルスーツに次ぐ高性能な機体だと一目見ただけでも判る。

 

 そして翌日の朝、隊長であるイチカ隊長は搬入されたモビルスーツを確認する予定だったが、モビルスーツデッキには居らず、部屋のベッド上にて気絶していると、ラフな裸Yシャツだけの姿で食堂の床に正座で座らされて、部下のケイトが持って来たコーヒーを飲むアン大佐は自白する。

 

 「アン大佐、朝の早いイチカ大佐に何が在ったのですか?」

 

 「イチカね……///」

 

 「まさか…」

 

 確保した時の部屋の状況とアン大佐が顔を赤らめた事から察するに、二人して大佐のアレを一滴も残さない様に絞り尽くしたらしい。

 

 そして、確保した際にはイチカ大佐にシャーロット中佐が腰を振りながら跨がっていた事から、夜の攻めが激しいと噂されるシャーロット中佐が止めを刺したのだと、私は結論付ける。

 

 「ジュンコ少尉、言わないでね?」

 

 「いえ、言わせていだきます。

 

 イチカ大佐が気絶する程、朝までお盛んだったんですね!!

  

  「いゃぁぁぁ!?」

 

 「「「「「ブッホォ!?」」」」」

 

 頭に来た私の叫び、尋問に聞き耳を立てていたクルーは、アンの自白に驚きながら一斉に朝食で出された飲み掛けたコーヒーを吹き出し咽る羽目になる。

 

 無論、イチカとマシュマー以外は男性クルーの居ないリリーマルレーンだからこそ出来る、アン大佐への生々しい尋問に興味津々に聞き耳を立てているのは娯楽が少ない軍艦だからだろう。

 

 ジュンコ少尉がキレた理由が、アンとシャロが物資搬入中の忙しい時にイチカを性的な意味で食べた事が、搬入作業をしていたジュンコ少尉にバレる事になるが、イチカ大佐が搬入物資の確認に来ない事に疑問を持ち、イチカ大佐の私室の士官室へと向かうと士官室のベッド上にて全裸で気絶するイチカ大佐と未だに腰を振りながら食事中のシャーロット中佐と全裸のアン大佐を発見して、二人が性的な意味で食べた事がバレてアンだけが捕まり、尋問されるとは全く思わずにタジタジに成りながら答えるしか無かった。

 

 無論、それを知って抜け駆けをされた事にキレた鈴とヤキモチを焼いたイリアの二人にシャロは連行され、シンガポールの露店へと連れて行かれて、シャロの財布で買い物を奢らされている。

 

 「だって、何時もは何回も気絶をさせられるし、戦いの後の気分が昂ぶり過ぎて、つい、シャロと二人で…」

 

 「で、気絶するまで絞り尽くしたと?」

 

 「あっ、はい…」

 

 「「「「「マジ!?」」」」」

 

 現在、気絶してゲッソリと窶れたイチカ大佐は、束大尉に医務室にて治療されながら寝かされ看病して貰っていたのだが、2日ほどは窶れ具合からベッド上にて寝かす事が確定となり、正妻の鈴音さんの判断により二人がギルティと相成ったのは言うまでも無かった。

 

 

 

 同じ頃、鈴とイリアに連行されてシンガポールの露店を周るシャロの財布の中身は悲鳴を上げていた。無論、左官級だから給金は其れなりに貰っていたが、キレた正妻を宥める為には必要な犠牲だった。

 

 「はうぅぅぅ…」

 

 「アンタ達が、あたしに黙って一夏を食べたのが不味かったわね。それで、反省しなさい」

 

 「とほほ…」

 

 勝ち誇る様に、南方の香辛料と南方食材をたんまりと買い込み満足顔の鈴と絹製の奇麗な民族衣装を手に入れてホクホク顔のイリアの二人。そして、財布の中身が八割程失い軽くなった財布を見てガックリしながら涙目のシャロは、台湾攻略後に楽しみにしていた食べ歩きが出来なくなって、イチカを一晩中貪り食べた事を後悔するのだった。

 

 そんな時、鈴は思い掛けない人物を発見する。

 

 「シャロ、アレ、箒じゃない?」

 

 「えっ?

 

 でも、髪は真っ白だけど組紐のリボンと背格好は一致するわね…」

 

 確かに、鈴の見解は正しかった。

 

 髪は真っ白になってはいたが、イチカから聞いた目印となるリボン代わりに組紐で結ぶポニーテールは箒だった。

 

 だが、鈴達は知らないだろうが箒はルナツーから行方不明になって、イチカ達がポートモレスビーから強行突破をしていた一週間の間にア・バオア・クーからムラサメ研究所に搬送されており、記憶を抹消された上で強化人間にされていたのだ。そして、強化人間にした当初は四番目の強化人間のフォウ・ムラサメよりも精神状態はかなり不安定だったが、姉譲りの肉体面で細胞レベルでのオーバースペックが大量に投薬された薬物の副作用により開花する。

 

 無論、肉体的なオーバースペックによる薬物の薬物の効きの悪さが要因で、更に強力な薬物によって強化されて精神状態は安定化はしたが、美しかった黒髪が投薬の副作用により脱色して真っ白になったのだ。

 

 「ふふふ…あっ、ははは!!」

 

 白いワンピース姿の箒は、笑いながら街を探索する。

 

 それは、彼女に取っては束の間の自由であり、日々の訓練と投薬による重度のストレスから来る反発から自由気ままに露店で遊び周る姿だったのだ。無論、余りにも変わり過ぎた箒に唖然となるシャロと鈴の二人とどうして、二人がそんな驚いた顔をするのかわからないが、彼女がニュータイプに似た感覚を感じたイリアだった。

 

 「鈴さん、彼女はもしかして?」

  

 「一夏の一応、元幼馴染みよ」

 

 「そうですか…ですが、彼女からは嫌な感覚を覚えますね」

  

 「イリア、まさか箒は…」

 

 「確実とは言えませんが、強化人間かと思います」

 

 「「!?」」 

 

 イリアの落とした爆弾に驚愕しながら、二人は箒が強化人間にされた事と言う最悪なケースを予測して絶句する。

 

 一応、鈴はこちらでの足りない知識は束さん経由で学び知識を得ていた。強化人間については、サイクロプス隊が新たにアクシズから救助したエルピー計画の四女と六女が娘として引き取った際に強化人間にされていた一件で知り、母親として必要な知識な為に勉強していたのだ。

 

 無論、娘の名前は三春と六夏と名付けて、今はシーマ艦隊のシーマ閣下の下に預けられて、艦内のむさ苦しいクルーからアイドル化して可愛がられている。

 

 話を戻すが、箒は人混みに紛れて見失ったので、追尾するのは辞めてシャロ達と買い物を楽しんだのだ。

 

 

 

 翌日、束さん謹製の栄養剤を飲み復活したイチカだったが、モビルスーツデッキにて納入されたモビルスーツを確認しながら小隊編成に考え込む。

 

 「やっぱり、正面から連邦軍とやり合うからなぁ…」

 

 ガトー少佐の部隊と合わせた24機による台湾の宇宙港への襲撃。無論、俺達の部隊は海上をホバリングしながら滑走路側から侵入してモビルスーツ隊を排除しながら着陸用滑走路と大気圏離脱用施設の制圧とガトー少佐の部隊はターミナル側から強襲と制圧を既に振り分けは決まっていた。

 

 無論、潜水艦による事前偵察では、連邦軍のモビルスーツ隊は最低でも20機近くが配備されていると報告を受けており、シャトルの大気圏離脱する為の加速用の施設は破壊しない様に制圧する事が大前提な作戦だった。

 

 無論、突入するイチカ達の部隊とガトー少佐の部隊には、シャトルの大気圏離脱用の施設を破壊しない為にビームライフルの使用禁止が厳命されており、使用する装備は接近用のビームサーベルかジャイアントバズーカか補給で納入された大型のドラム式マガジンをバックパックのラックに装着してベルト給弾式で120ミリのヘビィマシンガンなどの実弾系装備だけだった。

 

 俺のブルーローズは、バックパックには雪片弐式がラックに固定され、マガジン式ジャイアントバズーカと2つの予備マガジン、腰のアーマーのラックにはグレネードランチャー付き90ミリマシンガンと予備マガジンを装着してデッキに固定されている。その他は、アン達三人のブラックローズも近接戦闘仕様の鈴の専用機以外はジャイアントバズーカが装備され、予備マガジンは至る所にあるラックに固定されていたのだった。

 

 現在は、ガザDを受領したヴァルキリー小隊の面々とギャン改を受領したマシュマーとキャラにブラックローズを乗る事を決めた鈴の9人は慣熟訓練に精を出しながら、新機種に対応をすべく訓練中だった。

 

 

 そして、別の意味で問題だったガトー少佐とウラキ元中尉だが、キンバライト基地へと輸送が確定した元オリムラ中隊仕様のゲルググ改にてケリを着けて貰う為に模擬戦を実施し、二人の一時間半に渡る激闘の末にケリが着いたらしくて、ウラキ元中尉はニナさんをガトーとの関係を祝福しながら志願兵としてガトー少佐の部隊に入る事を決めたのだが、元連邦兵だったチャック・キース元中尉と元整備兵だったモーラ・キース元中尉と合流した後、俺達の中隊へと配属がシーマ閣下の采配により決まったのだった。

 

 無論、キンバライト行きの予定だったゲルググ改はキャンセルしてウラキ中尉にはゲルググ改を渡し、チャック中尉にはキャノン仕様のゲルググ改を渡す事になるのだった。

 

 だが、合流するのは台湾の宇宙港を制圧後であり、また、宇宙港へと逃げ込むシャトルには一人の名艦長と二人の少年少女が乗っているとはまだ知らなかったし、箒と俺が戦場で再会するとは、目撃して黙っていた鈴とシャロ以外は知らないのだった。

 



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台湾宇宙港襲撃作戦 前編

 

 

 シンガポールにて修理の為に待機が決まったリリーマルレーンだが、艦内にはオリムラ中隊の面々は居ない。

 

 オリムラ中隊は、欧州連合船籍の大型タンカーに偽装した強襲揚陸艦に乗り込みながら発艦ポイントである台湾海峡へと向かっていたのだ。逆にガトー少佐の部隊も数隻の潜水艦へと分乗して移動しており、石垣島方面へと移動した後に発艦予定だった。

 

 

 「大佐、そろそろ台湾海峡です」

 

 ノーマルスーツ姿のイリアがブリッジから戻り、もう直ぐ台湾海峡だと報告する。無論、この味方であるジオン軍の地上残党軍の偽装した強襲揚陸艦は俺達を発艦させた後はシンガポールへと引き返す予定だが、本来搭載された中隊規模のザク・マリーナはパイロットと一緒に降ろされており、シンガポールの防衛とインド洋からマラッカ海峡を抜けて来るだろう連邦軍のマダガスカル島の基地からのモビルスーツ隊に備えて待機していた。

 

 「イリア、サンキューな。

 

 総員、コクピットにて待機し台湾海峡に入り次第、発艦する。

 

 発艦後は、ヴァルキリー小隊は先行して海上を低空から台湾の宇宙港へと侵入して侵攻し、戦闘機用ハンガーとモビルスーツ格納庫への2tクラスター爆弾による爆撃と上空警戒中の大気圏内型のセイバーフィッシュとフライマンタを即時撃墜し排除。

 

 アンとシャロに鈴は、アンを小隊長として鈴をサポートしながら滑走路へと侵入して滑走路の確保と制圧。

 

 マシュマーとキャラにイリアは俺を小隊長とする部隊で斬り込みながら大気圏離脱用の施設の制圧だ。

  

 良いか、全員死ぬなよ。

 

 各員、自機の機体に搭乗し発艦の命令が出るまでは待機せよ!!」

 

 『了解!!』

 

 隊員達がジオン式の敬礼すると走りながら自分の機体へと向かい、コクピットハッチから降ろされたワイヤーの足掛けに足を掛けてコクピットへと登り乗り込んで行く。俺もコクピットへ入りコンソールパネルを操作しながら動力へと火を入れたのだ。

 

 そして、オリムラ中隊の各機体は一斉にモノアイが光り出撃の命令を待ったのだ。

 

 

 『こちら、ブリッジ。

 

 イチカ大佐、台湾海峡に入った』

 

 「了解。モビルスーツ隊、出撃!!」

 

 『了解!!』

 

 大型タンカーに偽装した強襲揚陸艦の木製の偽装が弾けて、海上で航行しながらもカーゴベイハッチが開きカタパルトがハッチまで伸びる。先行出撃となるヴァルキリー小隊はモビルアーマー形態で2tクラスター爆弾を2発搭載している為、射出用カートに載せられてカタパルトへと繋がれて順次射出されて行く。

 

 「ジュンコ、ガザD出るわよ!!」

 

 「ケイト、ガザD行くわよ!!」

 

 

以下省略

 

 『作者、酷っ!?』

 

 ジュンコ少尉機を先頭にヴァルキリー小隊の6機が射出された次は、アンを隊長機とするアンとシャロに鈴のブラックローズ3機を一小隊とするアン小隊が各々の武装を持ち、カタパルトから順次射出される。

 

 「アン、ブラックローズ行くわよ!!」

 

 「シャーロット、ブラックローズ出るわよ!!」

 

 「リンイン、ブラックローズ改行くわよ!!」

 

 そして、俺を隊長機とした小隊も射出され、海上をホバリングしながら海上を突き進み、台湾を目指したのだ。

 

 途中、ジュンコ少尉から連邦軍のフライマンタの航空隊から発見されて襲撃を受けて全機撃墜したと報告をされ安堵するが、台湾の宇宙港は厳戒態勢に移行していると見ても良いだろ。

 

 「各機、一度海中に潜り潜行しながら向かう!!」

 

 『了解』

 

 空から向かうジュンコ少尉のヴァルキリー小隊とは別に、海中から潜行して向かったのだ。

 

 

 

 同じ頃、台湾宇宙港守備隊はイチカの予測通りに厳戒態勢に移行していた。何故なら6機のモビルスーツが急接近中だと、上空警戒中のフライマンタ一番機のツナガ軍曹からの緊急通信だった。

 

 『こちら、ツナガ。

 

 未確認のモビルアーマーらしき機体と交戦中!!』

 

 「数は幾つだ!!」

 

 『レーダーと目視で数は6機です!!

 

 クソ、ヒヤマ!!』

 

 通信から僚機のヒヤマ曹長が撃墜されたらしい。

 

 「直ぐに警報を鳴らせ!!」

 

 指揮官のヤマシタ少佐は叫び、台湾宇宙港に警報が鳴り響くが、ツナガ軍曹からの通信は切れており、レーダーからも味方のフライマンタ隊の7機の光点はLOSTと表記され撃墜されたと思ったのだ。

 

 そして、管制塔から見えたのは低空から侵入してくるのは純白の6機のモビルアーマー。

 

 「もう、来やがった!?」

 

 叫ぶ間もなく、駐機場のハンガーやモビルスーツの格納庫に爆弾が落とされ炎上していく光景と爆弾の種類がクラスター爆弾だったのか、爆弾の爆発や爆風で人が手足をもぎ取られながら即死したり、倒れたモビルスーツの下敷きになる地獄の光景を目に焼き付けた後、低空で飛び回るモビルアーマーが管制塔に放たれたミサイルがコンクリートを砕き内部で爆発すると、俺の意識は此処で終わりを告げたのだった。

 

 

 「サラ、管制塔をやったけど良いの?」

 

 「サクラ、管制塔はレーダーで監視してるから破壊よ」

 

 モビルスーツ格納庫にクラスター爆弾をお見舞いして、僚機のサラは管制塔をミサイルで破壊した後に冷たく言い放つ。無論、ミサイルの直撃した管制塔からは火だるまに成りながら飛び降りる女性管制官や爆風で屋外へと飛ばされ、地面へと真っ逆さまに落ちる管制官など多数の死者が出ていたが今は戦争なのだと意識を切り替えたのだ。

 

 『各機、上空警戒と飛ぶ事が出来た、セイバーフィッシュとフライマンタを撃墜するわよ!』

 

 「「了解」」

 

 小隊長のジュンコからの通信には了解と答えるが、妻子持ちの大佐にジュンコがお熱いのはどうかと思う私。

 

 「サラ、仕方無いわ」

 

 「サクラは?」

 

 「スキ在れば、大佐の子種は欲しいわね」

 

 「アンタもかい!?」

 

 サクラもだった。いや、私達のヴァルキリー小隊の隊員全員と言いたい。確かにイチカ大佐は、女性隊員から見たらかなりの優良物件だった。だが、一年戦争からの僚機でパートナーのアン中佐や結成時からの隊員でアクシズでは教官を努めたシャーロット中佐。そして、厨房では中華鍋を毎日振るいながらも、パイロットに転向した正妻の鈴音大尉はイチカ大佐の幼馴染らしい。

 

 そんな、三人の仲に私達は割り込む勇気などないが、中尉に昇進したイリア中尉は噂の聞く所によると正妻の鈴音大尉に土下座するほど大佐を慕っており、妻の一員として末席に加えて欲しいと嘆願して認めて貰ったらしい。

 

 そして、イリア中尉はメカニックチーフの束大尉から幾つかの球体を触らされて反応した球体を貰い、腕輪にしたそれをブルーローズ二号機に接続しているらしい。

 

 「羨ましいわね…」

 

 「だね…」

 

 私とサラが思うに、ジュンコとケイトは近い内に鈴音大尉に接触して妻の一員に加えてと許しを嘆願するだろうと思うが、それ等を許す私達では無い。嘆願するなら二人を拘束して一緒にいや、私達のヴァルキリー小隊の隊員全員で嘆願してやろうと思い、大佐には大人の女性の魅力をたっぷりと味わって貰いたいと思うと、何故か下腹部とお股がキュンキュンと疼くのだった。

 

 

 

 そして、二人が話ながら考えている内に上空の連邦軍の航空隊は一掃しており、6機の私の小隊は上空警戒と慌てて出撃して来たモビルスーツ隊へと急降下による襲撃を繰り返したのだった。

 

 

 

 ヴァルキリー小隊の強襲が上手く行くと確信しながら、滑走路へと侵入を果たした私達は海岸線を監視するジム改の2機とジムキャノン1機を発見する。

 

 「アン、あたしが斬り込んでも構わないかな?」

 

 「斬り込む!?

 

 発見されたら、集中砲火の良い的よ?」

 

 「アンの意見には賛成よ。ジム改の90ミリマシンガンは脅威度は低いわ。でも、ジムキャノンの240ミリ無反動砲の直撃は当たり所によるけど脅威よ?」

 

 アンとシャロは経験談から、あたしが斬り込むのは反対だった。確かに、あたしは大尉の階級を貰いながらも戦闘には素人同然の新兵と同じだった。でも、いち早く一夏の役に立ちたい気持ちも強かったし、増えた娘達を守れる強い母親にも成りたかった。

 

 だから、戦場慣れを必要だとアンとシャロは反対する。

 

 「仕方無いわね。

 

 シャロ、ヘヴィマシンガンで支援しながら鈴の突撃を援護射撃するわよ」

 

 「えっ?

 

 斬り込んでも良いの?」

 

 「そうね。

 

 アンと私は中距離主体の装備だから、近接戦闘は任せるわよ」

 

 シャロがそう言うと、シャロのブラックローズのバックパックに装着されたラックからヘヴィマシンガンへと装備を切り替えてヘヴィマシンガンを握り、アンもジャイアントバズーカを担ぐと海中から一気に浮上の準備を淡々と進める。

 

 「行くわよ!!」

 

 アンの号令にあたしもブラックローズに装備された、二本のヒートソードを両手で抜き浮上すると、スラスターを全開にしながらジム改へと斬り込む。無論、アンとシャロはあたしから離れない様に左右を固める様にスラスターを吹かしながらマシンガンとジャイアントバズーカを放ち、ジム改とジムキャノンへと牽制射撃をする。

 

 『なっ、こっちからも襲撃だと!?』

 

 「遅いわよ!!」

 

 1機のジム改へと一気に接近して、ヒートソードを振り、両腕と腰辺りを斬り裂きながら、ホバー移動して過ぎ去る。後ろでは斬られたジム改は上半身と下半身が泣き別れて、地面に上半身が落下すると爆発して四散したのだ。無論、残りの2機はアンがジャイアントバズーカを頭部とコクピットの間辺りに直撃して撃破し、シャロはヘヴィマシンガンを浴びせて蜂の巣にして撃破する。

 

 「このまま、モビルスーツ隊を駆逐しながら滑走路を押さえるわよ!!

 

 シャロ、鈴行くわよ!!」

 

 アンが叫びながら、ブラックローズをホバー移動しながら走り回り、新たな獲物のハイザックへとジャイアントバズーカを浴びせる。

 

 「了解!!」

 

 シャロもヘヴィマシンガンを放ち、アンとあたしを援護射撃しながら、格納庫から出て来たガンタンクへとシュルムファストを放ち撃破する。

 

 「あたしだって!!」

 

 そして、あたしもホバー移動しながらスラスターを吹かして格納庫の脇から現れた重装型ガンキャノンへと接近してヒートソードをコクピットへと突き刺して蹴り飛ばすと後ろに居たザクタンクへと倒れて巻き込みながら爆発して撃破していたのだった。

 

 「鈴、2機同時撃破って…」

 

 「まぁ、ザクタンクだからね…」

 

 「確かに、あれコクピット丸出しの作業用だったわね…」

 

 爆発に巻き込まれてやられた、ザクタンクに辛口な感想を述べる二人は懐かしさ半分、呆れ半分の顔をしているが、格納庫からマシンガンを放ち牽制するハイザックとジム改数機に足止めを食らう。

 

 しかし、一番接近していたあたしは、シールドを前面に出しながらハイザックへとシールドをぶつけながら体当たりをかまして押し倒すと、ヒートソードをジム改へと投げて頭部へと突き刺す。これで、あたしが持つヒートソードは無くなるのだが、腰のアーマーのラックに固定されていたマシンガンを抜くと格納庫内へとマシンガンを放ち、モビルスーツ用ハンガーでモビルスーツのジム改に乗込もうとするパイロットを銃殺する。

 

 無論、コクピットは開いたままだったらしくてジム改のコクピットはズタズタになり出撃が不能となる。そして、格納庫内にいるメカニック達はパニックになり逃げようとするが、シャロが止めに投げ込んだ二個のグレネードによりメカニック達はモビルスーツの爆発に巻き込まれてバラバラの遺体へと早変わりしたのだ。

 

 「鈴、これが戦場よ」

 

 「やっぱり、あたしも戦場を舐めていたわ。シャロ、惨いことやらせてゴメン」

 

  「地上での戦闘は慣れてるから大丈夫よ」

 

  「シャロが言った様に戦場は残酷な物だと、覚えて置いてね。敢えて、こうしたのは自分達がこう成るかも知れない意味をいち早く覚えて欲しかったからだから」

 

 「…」

 

 「さぁ、滑走路を制圧するわよ!!」

 

 

 あたしは、アンとシャロにこれが戦場だと教わり、新たな戦場へと向かったのだった。

 

 だけど、これが娘達を守れる意味が在るならと割り切れないでいる、あたしも心では重く伸し掛かって居たのは事実だった。



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台湾宇宙港襲撃作戦 後編

 

 

 アン達が滑走路へと侵入し侵攻を始めた頃、俺達も浮上しながら大気圏離脱用の加速施設を押さえるべく侵攻を開始する。

 

 「ちぃ、本命はこっちかよ!!」

 

 「余程、奪われたくは無い様ね」

 

 「あぁ!!

 

 身体が熱くなるわ!?」

 

 「マシュマー、キャラが煩いんだがどうにか成らないか?」

 

 「私でも、こうなったキャラは無理だ!!」

 

 「頭が痛くなる…」

 

 「だな…」

 

 そう、言いながらも連邦軍のモビルスーツ隊を屠りながらも、既にコクピット内では興奮しながら敵を屠るキャラに呆れる俺とイリアの二人。そして、滑走路から鳴り響く爆発音はアン達が襲撃に成功している証拠でもあった。

 

 しかし、ガトー少佐からは中国と沖縄本島からの連邦軍のモビルスーツ隊と航空隊に阻まれて合流が難しいと連絡があり、オリムラ中隊のみで宇宙港を制圧しないといけない状況だった。

 

 「貰った!!」

 

 『グッワァ!?』

 

 「「行け!!

 

 ファンネル!!」」

 

 マシュマーのギャン改のビームソードがハイザックを斬り裂き、イリアと俺のブルーローズのファンネルが前方に群がりながらマシンガンを放つ、10機のジム改へとビームの雨を降らして撃破する。そして、支援攻撃としながら急降下して、ハイザックへとミサイルを放つヴァルキリー小隊はハイザックにミサイルを食らわせた後は上空へと離脱して行く。

 

 そう、制空権はこちらが握ったのだ。

 

 だが、ホバー移動しながらもギャン改の2機は施設裏へと隠れていた、ジムキャノンやガンキャノンを斬り裂きながらターミナルへと向かう。

 

 しかし、連邦軍もそこまで馬鹿では無いらしく、モビルスーツ隊による何重にも渡る壁を作りながら、施設のあるターミナルへと行かせまいと立ちはだかる。

 

 「邪魔だ!!」

 

 ビームサーベルを抜き、立ちはだかるジム改を斬り裂きホバー移動しながら離脱する。

 

 「施設を傷付け無い様に戦うのは、流石にキツいわね!!」

 

 僚機として後方に居るイリアも、ジャイアントバズーカを放ちシャトルの裏側にいたジムキャノンを撃破する。

 

 そんな時、煙を吐き出しながら着陸態勢を取ろうとする大気圏を突入して降下したシャトルが1機が接近して来る。無論、シャトルを追うのはガトリングガンを放つグフフライトタイプだった。

 

 「チィ、やっぱり連邦軍は!!

 

 行け、ファンネル!!」

 

 『クッ!?

 

 何故、台湾の宇宙港にジオンの残党軍が居る!?』

 

 シャトルの艦長のブライト・ノアは台湾の宇宙港へと降りたが、グリーン・ノアの基地化と移動命令に従わない住民への虐殺から護るべく、テンプテーションに乗せられるだけの住民を乗せてグリーン・ノアから脱出するが、連邦軍とティターンズから反逆罪となり追われて大気圏へと突入したが、突入して降下してからは連邦軍のジャブローへと向かったが、連邦軍仕様のグフフライトタイプに襲われてルオ商会の勢力圏へと逃亡するが、燃料が足りなくなって台湾へと向かっていた所だったのだ。

 

 だが、幸いにも滑走路はアン達が既に押さえており、掃討戦へと移行したと報告を受けているが、あのシャトルに纏わりつくグフフライトタイプだけは排除しなければならない。

 

 そして、ファンネルを使い、4機のグフフライトタイプを排除して滑走路へ向かったのだ。

 

 「連邦軍の排除はどうだ、マシュマー?」

 

 「大佐、もう間もなく排除が完了します」

 

 「イリアを小隊長に残存戦力の排除だな。

 

 イリアに指揮を任せるが構わないか?」

 

 「後はターミナルに立て籠もる数機だけですので、大丈夫です!!」

 

 イリアにターミナルの占拠を任せて滑走路へと急ぐが、テンプテーションがダメージからか限界だったのか墜落しそうになる。

 

 「ちぃ、間に合え!!」

 

 「イチカ、あたしも!!」

 

 通信を聞いたアンもスラスターを全開にテンプテーションへと加速する。そして、テンプテーションの艦長にエンジンを切る様に叫び、テンプテーションの重量があるブースター側を下から支え、アンはブリッジ側を下から支えてゆっくりと滑走路へと降ろすことが出来たのだった。

 

 

 そして、台湾の宇宙港の連邦軍を排除には半日程度で制圧に成功する。無論、最後まで抵抗が激しかったターミナルはマシュマーとキャラが突貫したギャン改のビームソードで立て籠もるハイザックと隊長機だったジムスナイパーカスタムを撃破し、ターミナルを制圧に成功したのだ。無論、俺達の任務は完了はしたが、シンガポールから来た潜水艦からは大量の海兵隊が送り込まれており、残存勢力の掃討と投降した兵士や宇宙港の職員の対応はそちらに任せている。

 

 そして、テンプテーションも例外では無く、降りてきた艦長の姿と俺の姿を見てお互いに驚愕する。

 

 「キッ、貴様は!?」

 

 「ちぃ、木馬の艦長かよ!?」

 

 「はやり、貴様は生きて居たのか。シャア以外にもアムロと同等の戦いが出来た、イチカ・オリムラ大尉」

 

 「貴方の指揮下のアムロには、アンとシャロ以外の部下が全員が殺されたがな!!」

 

 「グッ!?」

 

 「ミチルの仇!!」

 

 「ララァ大尉の!!」

 

 俺は殺された部下を思い出し、木馬の艦長だったブライト・ノアの胸倉を掴む。一緒に居た、アンやシャロも鋭い目付きでブライトを睨みながらレーザーピストルのグリップを握り、ブライトを射殺せんと抜こうとする。

 

 無論、戦争だったから仕方が無いと言えば、割り切れるかも知れない。だが、急な出来事に現オリムラ中隊の面々は俺達三人が普段では絶対に見せない怒り狂った姿に驚いていたのだ。

 

 そして、その光景はテンプテーションから降りて来た二人の少年と少女で騒ぎが拡大する。

 

 「そうやって、アンタ達は捕虜にまで手を出すのかよ!!」

 

 「カミーユ、辞めて!!」

 

 「グッハァ!?」

 

 「アンタねぇ!!」

 

 階段から飛び降りた少年からの飛び蹴りをまともに食らい、ハンガーのコンクリートの床に叩き付けるように倒れる俺と巻き添えに倒れ込むブライトの二人。そして、一人の少女がカミーユと叫びながら止めに入るが、鈴が少女の間に咄嗟に入り込みカミーユの顎を蹴り上げる。

 

 「グッ!?」

 

 「関係も知らないあんたなんかに、4人の問題に口を出してんじゃないわよ!!」

 

 「小学生みたいな年齢の子供までも、戦場にで「今、なんて言った?」グッハァ!?」

 

 小学生と言われ、キレた鈴は更にカミーユを殴り飛ばす。

 

 「あんたねぇ、あたしはこう見えても16歳よ。16歳のあたしに小学生?

 

 ふざけんじゃないわよ!!」

 

 『あっちゃあ…鈴さんを怒らせちゃったよ…』

 

 「ケイト、不味いから止めるわよ!!」

 

 「ジュンコ少尉も行くわよ!!」

 

 「君も辞めたまえ!!」

 

 「女だからって!!」

  

 「グッ!?

 

 あんた、あたしの顔に!?」

 

 オリムラ中隊の面々は、鈴に禁句を言ったカミーユに白い目を向けながらも、キレた鈴を止めるべくジュンコ少尉とイリア中尉が鈴を羽交い締めにして止めるが、蹴られ殴られたカミーユもキレている様で羽交い締めで止めるマシュマーを振り切り、イリアとジュンコに羽交い締めにされている鈴の顔面に正拳突きで殴り、それに更にキレた鈴は羽交い締めにする二人を力一杯に振り解くとカミーユをアッパーで殴り返す。

 

 そして、二人は取っ組み合いの喧嘩となり、カミーユは空手の技を使いながら鈴を殴ろうとするが、鈴も中国式拳法を使い逆襲してカミーユを蹴り飛ばす。

 

 無論、イチカ達もブライトも4人で争っている場合では無く、二人を止めに入るのだった。

 

 だが、無情にも鈴の回し蹴りを受け流したカミーユはカウンターで鈴のお腹を狙ってしまう。

 

 「いい加減に寝てなさいよ!!」

 

 「動きが、鈍い?

 

 なら!!」

 

 「まっ、マズッ!?

 

 お腹だけは!!」

 

 咄嗟に両腕で覆い、お腹を庇う鈴はカウンターを諸に受けてしまう。鈴が咄嗟にお腹を庇う行動の、その意味をいち早く勘付いたのは、看護師の資格を習得中だったファだった。

 

 「カミーユ、止めて!!

 

 その女性は、妊娠中よ!!」

 

 「なっ!?」

 

 「えっ、あたしが妊娠?」

 

 「へっ?

 

 まさか、鈴が妊娠したのか?

 

 てめぇ!!」

 

 「グッハァ!?」

 

 その叫びにイチカは、危うく鈴のお腹を蹴られそうになってお腹を庇った意味をファの叫びで理解するとカミーユへの怒りが爆発し、カミーユを全力で殴り意識を奪ったのだった。

 

 カミーユだけは、手錠を掛けられ身柄を拘束しており、ファと話ながらアンとジュンコ少尉が監視している。

 

 そして、俺とブライト艦長は簡易のテーブルと椅子を出しながらも、イリアとケイトを監視役に話し合いをしたがグリーン・ノアの一件とムラサメ研究所は破棄され、強化人間関連の人員や機材はオーガスタ研究所へと移った事をブライト艦長は細かく判るように説明していた。

 

 「イリア、ムラサメ研究所の襲撃作戦は、現時刻を持って中断だな。オーガスタ研究所を襲撃しても構わないが、北米大陸だから東南アジア地区の連邦軍よりも厄介だし、俺達の中隊だと戦力不足と補給の観点から無理だな」

 

 「連邦軍の本拠地のジャブローと五大湖の連邦軍も近いですから、最悪挟み撃ちされますね」

 

 「ブライトさんはどうすんだ?」

 

 「出来れば、月面基地のエゥーゴへと連れてって欲しい。私も罪のない住民をティターンズに虐殺されて見ているだけは出来ない」

 

 「なら、カミーユとファもだな。  

 

 カミーユには若干だが、ニュータイプの素質があるが、妻の鈴との問題があるから引き離した方が妊婦の観点から無難だ」

 

 「やっぱり、彼女は?」

  

 「鈴を医療班に簡易検査をさせたら、陽性で妊娠中だったよ」

 

 「おめでとうと言いたいがな」

 

 「ありがとうって言いたい所だが、俺達はブライトとアムロを許す気は無いが、鈴に免じてありがとう」

 

 俺とブライトとの和解には時間が必要だと思いながらも、同じ子持ちという観点では苦労話に盛り上がる。そして、海兵隊が台湾宇宙港の再整備をしながらだがシャロが慌てた様に走って来るのだ。 

 

 「シャロ、どうした?」

 

 「イチカ、ムラサメ研究所方面から3機のモビルアーマーが接近中だと、旧日本近海を偵察中の潜水艦から報告があったわよ」

 

 「まさか、完成したのか!?」

 

 叫びながらもムラサメ研究所が完成させたモビルアーマーとどう防戦するか頭を抱えるのだった。そして、俺と箒が再会し、カミーユはある少女に恋をして、俺達が救助する事になるとは知らない。



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散る乙女は一輪の花

 

 修理を簡易ながら終わらせたリリーマルレーンが夕方には合流し、簡易ながらも軽い整備と補給をしている。無論、鈴は妊婦という事でパイロットから外されて本来の厨房で鍋を振るう。ただ、妊娠三ヶ月と言う事もあり、俺としては気が気ではない。

 

 そして、新たに来た海兵隊の尽力もあり台湾宇宙港は使える様になり、軌道上のシーマ艦隊からは娘二人が送られており艦内は娘達が騒いで居たりする。

 

 無論、3機のモビルアーマーは沖縄本島の連邦軍基地からは動いていないと潜水艦からではあるが、監視は継続中だった。

 

 「なんで、これだけなんだよ!!」

 

 「はぁ!?

 

 あんたねぇ、食料の補給がまだ来てないの判んないの?

 

 嫌なら、食うな!!」

 

 「くっ…」

 

 厨房のカウンターでは、鈴とカミーユがやり合う光景は三度目だった。食料の補給がシンガポール経由で来てはいるが、レイテとグアムの連邦の制空権内を飛行しなくてはならず、フィリピンの陸路からの輸送と潜水艦による補給で賄うしか無い状況でもあった。

 

 「カミーユ、カッカするな。

 

 これでも、鈴が何人かを連れて朝市から仕入れた食材だ。

 

 鈴、俺には焼き魚定食を頼むわ」

 

 「一夏には悪いけど、焼き魚はメザシになるけど構わない?」

 

 「十分だな」

 

 だが、食料事情もだが第二次降下部隊はシーマ閣下の指揮の元、レイテとグアムを落としてシンガポールから台湾を結ぶ補給路を作るべく部隊の編成中でもあったし、ホンコンのルオ商会から大量の食料の買い出しをシーマ閣下から許可を貰い補給に向かう予定でもあった。

 

 だが、そんな事すら許さないティターンズの襲撃を知らせる艦内に鳴り響く警報に少しばかりかイライラする俺は鈴特製の握り飯を握って貰い、食いながらモビルスーツデッキへと急ぐ。

 

 「アン、沖縄本島のモビルアーマーか?」

 

 「イチカの思った通りになったわよ。モビルアーマーでなくモビルスーツみたいで数は3機だけど、ガトー少佐の報告だとビーム兵器は無効化されたと来てるわ」

 

 「ちぃ、ビームコートかIフィールド持ちかよ。各機体は実弾装備での出撃準備と技量の低いヴァルキリー小隊は母艦の護衛が妥当だな」

 

 アンと部隊編成について話していると、固定作業中の鈴のブラックローズが動き出した事に気付く。

 

 「おい、鈴のブラックローズに誰が乗ってんだ?」

 

 「あたしに聞かないでよ。

 

 えっ、あのガキが乗っているですって!?」

 

 メカニックから鈴の妊娠中の為、モビルスーツハンガーに固定作業中の鈴の近接戦闘特化型のブラックローズ改にカミーユが勝手に乗り込み出撃したと作業中のメカニックが叫ぶ。

 

 「ちぃ、カミーユかよ!?」

 

 「直ぐに出られるパイロットは?」

 

 「あたしとシャロだけね」

 

 「戻ったら、絶対にカミーユをシメてやる!!」

 

 俺達は自分の機体へと乗り込み、ウェポンハンガーからジャイアントバズーカを取るとカミーユを追って出撃したのだった。

 

 

 

 

 現在、台湾に向け向かう3機のサイコガンダムだが、戦後にアナハイムとアクシズが密かに共同開発したムーバルブフレームシステムの技術が連邦へと流出した事と一年戦争の終戦時に制圧したア・バオア・クーの工廠にて九割が完成していたが頭部だけが無いパーフェクトジオング二号機を密かに回収し、ムラサメ研究所にて分析され開発スピードが予定より二年早くロールアウトした機体がこの試作型のサイコガンダムだった。

 

 そして、この試作型のサイコガンダムはパーフェクトジオング二号機をベースにガンダム化して改良して開発されている為にパーフェクトジオングと同じく38mの大きさにも関わらず、近接戦闘も可能な様にハイパービームサーベルを装備している。

 

 無論、試作型の3機が占領された台湾を灰燼に帰す為だけでは無く、ムラサメ研究所の放棄とオーガスタ研究所への撤退をする為の時間稼ぎを意味していた。

 

 「あぁぁぁ、頭が…痛い…」

 

 酷い頭痛に悩まされながらも試作型サイコガンダム3号機の頭部のコクピットは生体モジュール化しており、液体が満たされたカプセルの中には、捨て駒として破棄が決まって更に強化された箒。

 

 「こんな奴、使えるのかよ?」

 

 そして、試作型サイコガンダム1号機に乗り込み箒の監視役となった強化人間のプロト・ゼロ。

 

 「ふん、知るもんか!!」

 

 試作型サイコガンダム2号機に乗り、同じ箒の監視役であるプロト・ゼロに噛み付きながら文句を言うフォウ・ムラサメ。

 

 この3機は、ロケットブースターの一段目を切り離すと台湾に向けて加速して行くのだった。

 

 

 こちらも、台湾上空付近にてロケットブースターを切り離したモビルスーツを発見する。

 

 「アン、アレか?」

 

 「そう見たいね。

 

 大きさ的には、シャア閣下の独立戦争時のア・バオア・クーで見たパーフェクトジオングと変わらないわね」

 

 だが、発見と同時に3機の巨大な敵モビルスーツから拡散メガ粒子砲を放ち牽制してくる。

 

 「各機、散開!!」

 

 「「了解!!」」

 

 『「!?」』

 

 散開した瞬間だが、ニュータイプなのか強化人間なのかは判らない。だが、『01』と書かれたあの機体のパイロットは危険だと稲妻が走る様に感じたのだ。そして、1号機のパイロットであるプロト・ゼロも蒼と白で染められたブルーローズのパイロットをニュータイプだと確信して、最大の脅威だと二人して同時に認定したのだ。

 

 そして、先行して無断出撃したカミーユのブラックローズだが、『02』と書かれたサイコガンダムと戦闘に突入していた。

 

 「ちょこまかと、ネズミがぁ!!」

 

 「くっ、この機体は親父が開発したマークⅡより扱い辛い!?」

 

 胸部の拡散メガ粒子砲を放つサイコガンダムだが、グリーン・ノアの工廠で一度だけ親父の目を盗み操縦したプロトタイプのガンダムマークⅡよりも扱い辛いと叫びながらも、大型スラスターを上手く使いながら拡散メガ粒子砲を躱してビームライフルを放つがIフィールドにビームを弾かれるだけだった。

 

 アンとシャロは連携を組みながらも、箒のサイコガンダムと対峙しており、イチカの妻達VS箒と言う構図となり、箒は記憶を抹消されながらも、唯一消えなかったイチカへの恋する想いと邪魔する3人から感じる感覚だけは消えずにイライラを募らせる。

 

 「ぐっ、アァァァァ!?

 

 貴様等か!!

 

 貴様等が居なければ一夏は、私の物だったのに!!」

 

 「まさか、箒なの!?」

 

 「マッ、マジで!?」

 

 「うわァァァ!?

 

 消えて無くなれぇぇぇ!!」

 

 「「やっ、ヤバァ!?」」

 

 「泥棒猫がちょこまかと!!」

 

 「うっわぁ、完全な逆恨みだよ!?」

 

 「シャロの意見には賛成ね!!」

 

 箒の操る試作型のサイコガンダムの全身から放たれる拡散メガ粒子砲とビーム砲はアンとシャロのブラックローズへと襲い掛かるが、二人はスラスターを全開にしながら散開してビームを躱して、反撃にジャイアントバズーカを放つがサイコガンダムの強靭な装甲に阻まれていたのだ。

 

 「ちぃ!?」

 

 「ニュータイプか!?」

 

 こちらでも、イチカとプロト・ゼロによるモビルスーツ戦を展開するが、試作型のサイコガンダムからの振り回すハイパービームサーベルと拡散メガ粒子砲を躱しながらカウンターにファンネルを展開してビームを放つがビームは弾かれたりジャイアントバズーカは箒のサイコガンダム同様に効果は無い。

 

 

 そして、完全な膠着状態となりイチカ達は後退を余儀なくされ、後退を繰り返す内にサイコガンダム3機に台湾の市街地に押し込まれる形となり益々戦況が悪化する事態となる。

 

 「落ちろネズミが!!」

 

 「くっ、住人達が!?」

 

 「ギャァァァ!?」

 

 「ママァァァ!!」

 

 フォウの操るサイコガンダムの拡散メガ粒子砲により、市街地のビルや露店が吹き飛び逃げ惑う住人達へとビルの残骸やメガ粒子砲が襲い、市街地は地獄へと変わる。だが、それはイチカ達も同じでイチカは辛うじてビームソード付きビームライフルのビームソードでプロト・ゼロのサイコガンダムに瞬時加速して肉薄してハイパービームサーベルを握る右腕を切り落としたが、再び拡散メガ粒子砲を放たれ離脱を繰り返し、アンとシャロは箒のサイコガンダムの両腕の肘関節にジャイアントバズーカを撃ち込み、両腕の破壊には成功する。

 

 「ニュータイプが落ちろ!!」

 

 「被害が!!

 

 南無三!!」

 

 「なっ!?」

 

 「貰ったぁ!!」

  

 「サイコガンダムが倒れる!?

 

 だが!!」

 

 「腕が!?

 

 だが、これで!!」

 

 拡散メガ粒子砲を放ったスキをビル伝いに回避し、瞬時旋回加速で地面スレスレを飛びながら急接近して、ゼロのサイコガンダムの左脚の膝関節を斬り裂きサイコガンダムを転倒させるが、ゼロのサイコガンダムが意地で放った左手のビーム砲のビームがブルーローズの左腕を直撃してシールドごと左腕を吹き飛ばす。

 

 「グッワァァァァ!?」

 

 左腕を失いながらも、ゼロの倒れたサイコガンダムビームソードを股に突き刺しながら股から頭部へと加速しながら斬り裂き、ゼロはビームソードのビームに焼かれて即死し、斬られたサイコガンダムは数棟のビルを巻き込みながら爆発したのだ。

 

 無論、爆発に巻き込まれた住人はほとんどが即死する被害を出して…

 

 そして、カミーユとフォウにも決着が着きつつあり、鈴のブラックローズ改の扱い方を理解し始めたカミーユは、加速しながらフォウのサイコガンダムの両腕を鈴のブラックローズ改の専用装備の大型のビームソードを抜くとビームソードで左腕と胸部の拡散メガ粒子砲を斬り裂く事に成功するが、カミーユとフォウだが、戦っている内に惹かれ合った様で、カミーユはフォウに説得を繰り返していた。

 

 「フォウ!!」

 

 「カミーユ!!」

 

 「俺はフォウを助ける!!」

 

 「あぁ、腕と胸部が!?」

 

 「逃がすかよ!!」

 

 フォウのサイコガンダムの頭部のバーニアを吹かしてフォウは脱出を試みるが、カミーユのブラックローズ改が咄嗟に出来た瞬時加速で脱出を図るサイコガンダムの頭部を捕まえて頭部を地面に降ろすと、コクピットハッチを開けてフォウの下に行く。

 

 「フォウ!!」

 

 「カミーユ、来ないで!!」

 

 パンッ

 

 「ぐっ!?

 

 でも、フォウ!!」

 

 「あぁぁ…」

 

 「もう、大丈夫だからフォウ…」

 

 カミーユは肩に拳銃で撃たれるが、フォウを優しく抱き締めるとフォウは力無く拳銃を落として戦わなくて良い事に理解するとサイコミュの呪縛から解けて、カミーユの胸の中で震えながら小さく声を上げながら泣くのだった。

 

 「一夏は私の物だ、泥棒猫がァァァ!!」

 

 「やばぁ、躱しきれない!?」

 

 「アン!!」

 

 「グッハァ!?

 

 ………」

 

 そして、アンとシャロだが共同で両腕の破壊には成功するもののサイコガンダムが胸部の拡散メガ粒子砲をアンのブラックローズの両脚に食らい、脚部を失いビルに制御を失う形で突っ込み、ビルに刺さるブラックローズは大破してアンはコクピット内で気絶する形で離脱する。

 

 「箒、よくもアンを!!」

 

 「泥棒猫がもう一匹居たか!!」

 

 「キャァァァ!?」

 

 アンをやられて逆上したシャロは、ブラックローズを瞬時加速してサイコガンダムへとビームサーベルを抜き肉薄しながら地面スレスレを飛ぶが、健在なサイコガンダムの脚でシャロのブラックローズを蹴り飛ばすが、咄嗟に投げたビームサーベルは蹴り飛ばした脚へと刺さりサイコガンダムの右脚は大破する。

 

 そして、蹴り飛ばされたシャロもアンと同じくビルに激突したブラックローズのコクピット内部でシャロは、ビルに激突した衝撃でシートから飛ばされる様に球体モニターへと頭からぶつかり、ノーマルスーツのヘルメットのバイザーが砕けて顔を切り血を流しながら気絶したのだった。

 

 ゼロを撃破したイチカは、アンとシャロに間に合わなかった事を悔やみながらも箒を自分の手で殺す事を決断する。

 

 「箒、ゴメンな…」

 

 「あぁ、この感覚は一夏なのか!?」

 

 ブルーローズのバックパックのラックに掛かる雪片弐式を抜くと、カプセルから抜け出してコクピットハッチから箒が出て来て手を振るが、いつの間にか流れ始めた涙と共にリミッターを切り最大出力でビームを展開した雪片弐式で箒が見えるサイコガンダムの頭部から胸に掛けて雪片弐式を振り下ろしたのだ。

 

 「箒、恨むなら俺を恨んでくれても構わない。

 

 可哀相だけど、直撃させる!!」

 

 「一夏……」

 

 そして、サイコガンダムは頭部から胸を斬られて爆発し、コクピットハッチから出ていた箒は俺が振り下ろした雪片弐式のビームに焼かれながらノーマルスーツは弾けて行き、全裸になった箒はにこやかに笑いながら『一夏、ありがとう…』と呟きながらビームに完全に焼かれて蒸発したのだった。

 

 「箒の馬鹿野郎!!」

 

 俺は、ブルーローズのコクピットを開けて未だに燃え続けるサイコガンダムに叫ぶのだった。そして、戦場になった場所には一輪の花が綺麗に咲き誇っており、まるで箒へと送る別れの花の様に見えたのだった。

 

 

 

 

 

 



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ホンコンシティでの一幕

 

 ティターンズの3機の巨大モビルスーツを撃破した後、海兵隊と共同による住人への救助活動を行う。無論、モビルスーツは瓦礫の撤去作業の為に駆り出されてジュンコ少尉以下のヴァルキリー小隊は市街地の瓦礫の撤去の作業中だったりしている。

 

 だが、リリーマルレーンのモビルスーツデッキでは、市街地で大破したブラックローズのコクピットから救助され担架によって運ばれて来ており、ぐったりとしながら気絶するアンと海兵隊の看護兵の処置により顔に包帯で巻かれて止血され気絶するシャロを尻目にしながら、俺にコクピットから降りた所を顔面を殴られたカミーユが宙を舞う。

 

 バッキィ

 

 「グッハァ!?」

 

 「カミーユ、お前が殴られる意味を理解しているな?」

 

 「くっ!!」

 

 「止めて!!

 

 私の助けて欲しいと想った波動を受けて助けてくれたカミーユは悪くない!!

 

 だから、悪いのは私よ!!」

 

 同じくコクピットから降りた、ティターンズのノーマルスーツを着る一人の少女が割って入り、殴られ壁を背にしながらぐったりするカミーユを背に隠して庇う。無論、カミーユをこれ以上殴るつもりは無い。寧ろ、一般人であるカミーユをモビルスーツ強奪した事実から軍法裁判から最悪、銃殺刑にならずに庇う為に現地徴収した志願兵として報告書を纏めて報告するつもりでもあった。

 

 「君がフォウ少尉かな。大丈夫だ。

 

 一応は、カミーユを現地徴収した志願兵として処理するさ」

 

 「やっぱり、温かいニュータイプの波動は貴方だったのね。でも、カミーユは志願兵として処罰はされるの?」

 

 「カミーユには甘いかも知れないけど、懲罰房に一週間ぐらい入れるのが妥当だろうし、フォウ少尉も軍属だったから判るだろ?」

 

 「はい、カミーユが銃殺されるよりは良いですね。でも、捕虜である私を自由に艦内を歩かせても構わないですか?」

 

 「いや、悪意を全く感じず、カミーユにほの字なら問題は無いと言い切れるさ」

 

 「ほの字!?

 

 そっ、そんなに私は判り易いの!?」

 

 カミーユへの丸分かりな恋愛感情を俺に読まれて顔を真っ赤にするフォウ。何より、鈴達3人と結婚しているのだからこそ、カミーユへの想う心は非常に判り易いのは当然とも言える。

 

 そして、艦内待機のマシュマーにカミーユを懲罰房へと運ぶ様に言い付けて運ばせ、キャラにはフォウを用意した自室へ案内させながら別れると、束さんが寝泊まりする自室へと向かったのだ。

 

 

 

 箒ちゃんとは姉妹関係が終わっていたけど、実際に箒ちゃんが死んだ事を聞いて涙が止まらなかった。

 

 「もっと、箒ちゃんとはお話ししたかったよ。

 

 もっと、束さんは箒ちゃんに姉らしい事が出来たのかな?

 

 死んじゃったら、もうお話しも出来ないじゃないか!!

 

 ふざけて、箒ちゃんを抱きしめる事すら出来ないじゃないか!!

 

 ウワァァァァァァァァァァ!!」

 

 そして、自室に籠もりながら箒ちゃんの死を嘆き泣き叫びながらベッドの脇に座り込み泣き続けたのだ。そして、いっくんが戻って来ただろうと想う頃に束さんの自室の扉が開く。

 

 「束さん…」

 

 自室に来たのは、いっくんだった。

 

 ただ、いっくんは哀しそうな表情をしながらも束さんを見つめる。

 

 「いっくんなの?」

 

 いっくんの名前を呟きながら、振り向くと優しく抱き締められていた。

 

 「束さん、箒を殺してゴメン!!」

 

 いっくん、束さんに謝らないでよ。

 

 だって、あんな箒ちゃん。

 

 見るに耐えられない様な、壊れた玩具になった箒ちゃん。

 

 でも、大事な束さんの宝物だったのに…

 

 いっくんが箒ちゃんを殺した事実は変わらない。

 

 箒ちゃんをあんな風にしてしまったティターンズは許せないけど、箒ちゃんを殺したいっくんだって許せなくなるから、アヤマラナイデヨ…

 

 そして、未だに泣きながら謝るいっくん。

  

 「殺すしか、方法が無かった。

 

 だから、束姉、ごめんなさい!!」

 

 「だがら!!

 

 ひっくぅ……いっくん、束さんに謝らないでよ!!」

 

 いつの間にか、虚ろな目になりながらいっくんの胸倉を掴み殴り飛ばす。そうしなきゃ、いっくんを箒ちゃんの仇だからって殺してしまうから…

 

 バッキィ

 

 「あっぐぅ!?」

 

 「いっくん、少しだけ甘えても良いよね…」

 

 鈴ちゃん達からヤケを起こしたって、言われても否定はしない。

 

 殴られ、気絶したいっくんは束さんには愛し過ぎるから、仇だからって殺せない。

 

 ハラッ…ハラッ…

 

 「愛し過ぎる、いっくんがいけないんだよ?」

 

 生まれたばかりの姿になった束さんは、優しくいっくんをベッドに寝かせるといっくんの士官服を脱がして裸にする。

 

 そして……

 

 

 

 いっくんを殴り飛ばした後の束さんの記憶は全く無いけど、ただ覚えているのは着ていたブラウスのボタンを外して束さん自慢の豊満な胸を曝け出すと気絶したいっくんを抱き締めながらいっくんを脱がしてから束さんは生まれたばかりの姿になって、箒ちゃんを無くしたポッカリと空いた心を埋めるためだけに、いっくんに甘える様に心の傷を舐め合う様に慰めて貰った記憶しかなかった。

 

 

 翌日、ベッドで束さんを抱きながら甘えて眠るいっくんをお姫様抱っこして、いっくんの士官室へと運び寝かせる。無論、眠っているいっくんや鈴ちゃん達にはバレない様に束さん特製の睡眠薬を二人に注射をしてあるから暫くは目覚めないだろうし、士官室で目覚めてもいっくんは、あの出来事が夢だと勘違いするだろう。

 

 「さて、いっくんから元気を分けて貰ったし、束さんもアンちゃん達の機体でも直しますか」

 

 艦内指定のつなぎ服に着替えると、束さんは市街地から回収されて運び込まれたアンちゃんとシャロちゃんの大破したブラックローズを見ながら修理を始めたのだった。

 

 「これ、直せるかな?」

 

 ただ、思った以上に酷く大破した2機のブラックローズの酷さから、心が折れかけた束さんだった。

 

 

 

 翌日、束さんとの出来事が夢だったかの様に、自室のベッドに寝かされていた。無論、隣に眠っているのは可愛い寝顔を晒す鈴であり、鈴のお腹には俺の子供が宿っていると思うと愛しく感じる。

 

 「朝か…」

 

 「ふっにぁぁぁ?

 

 いちか…?」

 

 髪を降ろした姿で寝ぼけて覚めた鈴も可愛らしくて、指でツンツンと頬を軽く突くと猫の様に鈴は甘える。そして、ベッドから出て士官服に着替えると着替え中の鈴を尻目に部屋を出て、ブリッジへと向かう。

 

 「ツキノ少佐、おはよう」

 

 「イチカ大佐、おはようございます。

 

 シーマ閣下より通信で次の指令はホンコンシティへと向い補給を済ませ次第、ホンコンシティのマスドライバーによりソロモンへと帰還せよとの事です」

 

 「東南アジア方面は良いのか?」

 

 「入れ替わりにシーマ閣下の部隊がレイテとグアムに降下作戦を実施して制圧した後にガトー少佐の部隊と入れ替わりに入る予定です」

 

 「ガトー少佐も遅れて宇宙に上がるのか?」

 

 「はい、ガトー少佐の部隊もムラサメ研究所の一件を片付けて台湾に戻り、シーマ閣下の部隊が台湾防衛に入り次第にホンコンから宇宙に上がりますが、ガトー少佐にはアクシズからのモビルアーマーの運用試験に参加する予定です」

 

 「ノイエ・ジールが完成したんだったな」

 

 「で、俺達がソロモンに戻る理由は何だ?」 

 

 「言い難いのですが、老朽化の激しいリリーマルレーンの代わりとなるアナハイム社製の新型の母艦に私達クルーを含めて移動となる様です。

 

 一応、艦名は強襲揚陸戦闘母艦『ムサシ』らしいです」

 

 ツキノ少佐から渡されたムサシのスペックは凄い高性能な強襲揚陸艦と戦艦の良いとこ取りした良い艦だと判る。モビルスーツの搭載数は20機が収容が可能であり、主砲は高出力の大口径三連装のメガ粒子砲が三基九門の高い攻撃力を有しておりながら、ミサイルランチャーなど多彩な武装と両舷にあるカタパルトなど、グワジン級並の攻撃力と艦載能力に大気圏突入能力と離脱能力を合わせた様な化物みたいな性能の艦が新しい母艦になるらしい。

 

 無論、ムサシの設計担当者は束さんにニナさんとアナハイムのドレッサ設計主任による基礎設計と旧日本海軍の戦艦大和の図面と武装配置図を元に建造されたムサシだった。

 

 そして、アナハイムで就航したムサシはハマーン様が処女航海として乗艦し、月面のアナハイムからソロモンへ移送中にティターンズの新型艦のアレクサンドリア級二隻と護衛のサラミス改4隻による、6隻対単艦による遭遇戦による艦隊戦へと突入したが、大口径の三連装のメガ粒子砲と副砲の三連装の小口径のビーム砲を放ち、二隻のアレクサンドリア級と4隻のサラミス改を無傷で轟沈させているらしい。

 

 そして、ハマーン様はムサシの戦闘をブリッジからみて『もう、強襲揚陸戦闘艦の性能じゃないよね、もう戦艦でいいよね!?』と素の少女化して泣きながら叫んだとか叫ばないとかあったらしい。

 

 「よし、ツキノ少佐」

 

 「はい?」

 

 「防空指揮所での咥えタバコとサンダルを履く事を奨めるよ」

 

 このネタが判る人は凄いと思うが…

 

 「はぁぁぁ!?

 

 イチカ大佐!!

 

 誰が、伝説の戦艦ヤマトの艦長のモリシタ艦長をやれと言うんですか!!

 

 私の操艦技術じゃ、モリシタ艦長に失礼ですよ!!」

 

 「だって、ムサシの艦長はツキノ少佐だろ?」

 

 「グッスン…そうですけど、そうですけど、新型艦の艦長なんて胃がマッハに逝きそうですよ!!

 

 それに、アカツキの艦長なんか、自前の胃薬を持参ですよ!!」

 

 「うん、まぁ、束さんに兎さん印の特製の胃薬を作る様に言っとくな…」

 

 確かにキャラの濃いクルーや問題児の3人など俺でも胃が痛くなる。まぁ、ツキノ少佐に任せれば構わないか…

 

 ブリッジで艦長弄りをしている内にホンコンシティのマスドライバー施設のドックに入り、鈴と目覚めたアンがルオ商会へと出向いて食料の買い出しに向かう。そして、コムサイからパーツとして運び込まれた大気圏離脱用ブースターの組み立て作業の監督をツキノ少佐に任せ、空港にて合流したウラキ中尉とチャック中尉にニーナ中尉の3人を迎えにマシュマーが向い、シャロが眠る艦内の病室に向かう。

 

 「シャロ、目覚めたか」

 

 「あっ、イチカ…」

 

 入ると同じく目覚め、額に切り傷を残すシャロだが、束さんが少しだけ作ったナノマシン治療薬を打って貰ったから傷は消えるだろう。

 

 「ソロモンに撤退が決まったよ」

 

 「ムラサメ研究所の襲撃は?」

 

 「既に、ガトー少佐が破棄されたムラサメ研究所を押さえたし、地下からは少年少女達がかなりの数が救助されたよ」

 

 「その子達は?」

 

 「別の便でソロモンに送って保護するらしい」

 

 「そう…

 

 でも、アンも私も今回はイチカに助けられた…」

 

 「二人が無事なら構わんさ。

 

 それに、二人が箒を押えて居たから危険な1号機の機体を撃破出来たからな」

 

 「イチカ、結果論だよ」

 

 そう、否定して落ち込むシャロを優しく抱き締める。

 

 「ソロモンに戻ったら休息だからな、家族で出掛けるか」

 

 「うん!!」

 

 一先ず、シャロは満面な笑みを浮かべて笑い抱き返す。そして、シャロは疲れたのか再び眠りに着いたのだった。

 

 

 同じ頃、ホンコンシティのルオ商会に着いたが、鈴がアンを怪奇な目で見るのは、アンのお嬢様の様な服装が原因だった。

 

 「で、何でアンタはそんな格好な訳?」

 

 「しっ、仕方が無いじゃない‼

 

 没落した貴族だけど、ルオ会長と会う為にフリークス家の名前を使ったんだから!!」

 

 確かに、アンと一夏から聞いた話では元は欧州連合の貴族だったらしい。

 

 「アン・フリークスよ。ルオ会長に取り次ぎを願いますわ」

 

 「はい、確かにフリークス家ですね。

 

 奥へどうぞ」

 

 そして、セシリアみたいなお嬢様口調で話しながら、受付嬢にアンはいつも首に掛けているフリークス家の家紋入りの懐中時計を見せて、フリーパスで奥へと通されるのだった。

  

 そして、会長室へと案内され中に入ると一人の男性が座っていたのだった。

 

 「おやおや、フリークス家のお転婆娘は生きて居たんですね」

 

 「あら、私が生きて居ては何か不都合でも?」

 

 「いやいや、うちの商会に預けっぱなしのフリークス家の数兆ドルを越すお金の処分に困っていただけですよ」

 

 「あら、そうでしたの?」

 

 最早、あたしの出る幕は無い。

 

 アンは、貴族の令嬢としてにこやかに笑いながらも、目は全く笑って居らず淡々と商談を纏めて行く。

 

 「ほう、ジオン系のモビルスーツのパーツと大量の食料の買い出しですか…」

 

 「えぇ、そうですわ。ルオ商会に預けっぱなしの金額なら十分にお釣りが来ますわね?」

 

 「確かに、十分過ぎますね。

 

 資産の処分を序にお考えでしたら、新品同様のモビルスーツを数体付けますよ?」

 

 「あら、どんな機体かしら?」

 

 パッァァと明るい笑みをしながら機体を聞き出している。

 

 「フリークス嬢様、MS-11に聞き覚えは?」

  

 「あら、ア・バオア・クーでも見ましたアクト・ザクかしら」  

 

 「偶然、こちらでも入手しまして格安にお付けしますよ」

 

 「では、よしなに」

 

 こうして、アンとルオ会長との商談が纏まり、二人は握手して契約書にサインをする。無論、ルオ商会を出たアンは帰りのタクシーではぐったりとしながら

 

 「あぁ、マジ疲れたわよ」

 

 といつもの口調に戻り疲れたと叫ぶ。

 

 そして、夕方にはリリーマルレーンのドックにはアクト・ザクを乗せた4台のモビルスーツ用のトレーラと大量の食料が入ったコンテナを積んだトラックが入り、補給作業に追われたのだった。

 

 

 

 

 

 

 



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宇宙へ

 

 

 リリーマルレーンにルオ商会からの補給を済ませたが、未だに離脱用ブースターの組み立て作業は急ピッチで進められていた。無論、リリーマルレーンのモビルスーツデッキでは大破した2機のブラックローズの修理を行なってはいるが、アンのブラックローズの拡散メガ粒子砲により失った両脚は解体したブラックローズの両脚を使う事で修理が出来たのだが、ビルに突っ込んだ際の損傷した拉げた頭部はモノアイの交換作業までは手が回らずそのままだし、シャロのブラックローズはサイコガンダムに蹴られた際に歪んだコクピットハッチと胸部は装甲を外され、蹴られた衝撃で歪んだ内部フレームだけになって、修理中の2機は途中のまま放置中だったのだ。

 

 「で、そんな訳でアンちゃんとシャロちゃんには、即席で改修したアクト・ザクを使ってね」

 

 「「束さん、面倒だからって説明を作者にやらせんな!!」」

 

 スッパパァァァァン

 

 「二人共、スリッパで叩く事無いじゃんって、それ、トイレ用じゃん!?」

 

 二人揃ったトイレ用のスリッパでのツッコミに驚愕しながらも、辛うじて2機だけを改修したアクト・ザクの説明をしている。一応、アクト・ザクは納品されて直ぐにブラックローズの修理を粗諦めた束さん自ら改修作業を行い、大型のビームライフルを使っても大丈夫なレベルにする為にファンネルに使用された小型で高出力のジェネレーターの2基を直列に配置しながら交換し、空いたスペースには推進剤の為のタンクを増設と様々な装備が使用可能にする為にラックの増設をしていたのだった。

 

 そして、装備はベーシックなビームライフルとビームサーベルのみだが、重火器を好む性格の二人にセッティングを合わせてあり、ブラックローズから比べて性能は落ちるが、見た目が第一世代機でもティターンズと連邦軍のモビルスーツと比べてても一級戦線で戦っても問題の無い化物化したアクト・ザクだった。そして、アンの機体のカラーリングはライトブルーと蒼色のカラーリングで染められ、シャロのカラーリングはブラックローズと同じ赤紫と白のカラーリングに染められた独立戦争時の専用機カラーとなっていたのだった。

 

 束さんに言われるままにコクピットへと入り込むと懐かしさが広がる旧ジオン軍のモビルスーツのコクピット方式で、あたし的にはかなり扱い易い機体だった。

 

 「懐かしいわね」

 

 『そうね。

 

 じゃあ、慣熟訓練ついでに軽く模擬戦でもやります?』

 

 「それだけじゃあつまらないわね。

 

 お昼の唐揚げを賭けない?」

 

 『乗った!!』

 

 シャロの模擬戦の申し込みに軽い笑みを浮かべて、お昼のメニューを思い出して、唐揚げを賭けの材料にして模擬戦が始まったのだ。

 

 アクト・ザクはブラックローズと違い空中戦は出来ない。ドダイに乗り、両者は空中戦を行う。

 

 

 「おっ、やり合ってんなぁ…」

 

 「イチカ大佐、アン大佐とシャロ中佐はマジにやり合ってませんか?」

 

 「イリアもそう思うか?」

 

 俺とイリアは空中へと双眼鏡で見ながら、二人の模擬戦を観て、確かにマジになってやり合っているのが判る。

 

 「普通、アクト・ザクで一般兵があんな機動したら死にますよ?」

 

 「まぁ、ブルーローズ系のモビルスーツも似たようなもんだろ?」

 

 「まぁ、確かに…」

 

 だがら、教官職だったシャロの判断による合否がなければ、ブラックローズには乗せない理由だった。無論、カミーユは反省房に移動となり、鈴の監視下でブラックローズの操縦訓練をシミュレートシステムでやらしているが、本来のブラックローズの機動にはカミーユでも吐いていたらしい。

 

 「あっ、ケリが着いた様です!!」

 

 「アンが勝ったか。まあ、アンの技量じゃあ、当たり前だろうな…」

 

 頭と胴をペイント塗れにされて降りてきた、シャロのアクト・ザクとドダイだけペイント塗れだが無傷のアンのアクト・ザク。専用機カラーを認められているアンの実力は伊達では無い事をシャロに教え込んだ形だろうな。無論、今のブラックローズのカラーリングはシャロの専用機カラーが元となっているが、シャロが専用機カラーを認められたのは戦後だった事からもアンの年季が違うのだろう。

 

 「アン大佐、イチカ大佐の僚機だけに凄まじいですね…」

 

 「イリアでもアンに勝てるか?」

 

 「アン大佐がニュータイプだったら確実に負けますが、ファンネルを用いても半分の勝率しか浮かばないですよ…」

 

 そして、昼になると唐揚げ定食であり、唐揚げがどっさりと乗った皿と二三個しか乗っていない皿が二つあり、どちらの皿だかは敢えて語らない。ただ、勝ち誇る勝者と賭けに乗って負けた敗者の二人だけだと言って置こう。

 

 

 そして、ルオ商会のドックに入り3日目。

 

 ザンジバル級専用の離脱用ブースターの組み立て作業は終わり、リリーマルレーンとドッキングしてマスドライバーの専用カタパルトに接続され宇宙へと戻る準備が着実に進んでいたのだ。無論、大破したブラックローズやジュンコ少尉達のヴァルキリー小隊仕様のガザDはモビルアーマーデッキにモビルアーマー形態のまま固定済で固定作業を残すのはブルーローズとギャン改にアクト・ザクの5機だけだった。

 

 「ほら、デッキへの固定作業を急ぐよ!!」

 

 「ブラックローズ、カミーユ機の固定を急ぎなさい!!」

 

 「こっちは、マシュマー中尉のギャン改に取り掛かるよ!!」

 

 モビルスーツデッキでは、メカニックチーフの束さんが監督しながら、メカニックのモーラ中尉などがせっせとブラックローズとギャン改の固定作業に勤しむ。無論、最終的に固定する機体はイチカ大佐のブルーローズとアン大佐とシャーロット中佐のアクト・ザクと決まっていた。無論、イリアとキャラの機体はハンガーに半固定状態であり出撃は出来ない。

 

 そして、離脱用ブースターにも燃料注入作業中であり済み次第、カウントダウンしてマスドライバーから射出されて宇宙へと上がる予定だった。

 

 そんな時に、お約束とも言える襲撃と鳴り響く艦内の警報。

 

 「やっぱり、お約束かよ!!」

 

 「本当ね!!」

 

 「全くよね。私なんか、シャワー中だったから、そのままノーマルスーツに着替えたわよ!!」

 

 「なぁ、シャロ。

 

 それ、俺に聞こえる様に言う事か?」

 

 「まさか、シャロ?」

 

 「断然、ノーブラにノーパンよ?

 

 戻ったら、シャワー室でヤリましょ?」

 

 無論、妻でありながらノーマルスーツの下は裸だったシャロの事にアンと俺は、学園のとある痴女だった生徒会長を思い出しながらも呆れるしか無かったのだった。

 

 『誰が、痴女よ!!』

 

 と思い出していると、誰かがIS学園の生徒会室で叫ぶ声が聞こたらしい。

 

 

 俺達のモビルスーツがマスドライバー周辺に展開が終わり、連邦軍の6機のモビルスーツ隊がドダイ改から飛び降りながら襲撃を仕掛けるが、シャロが見た赤紫色の1機のモビルスーツに怒りを顕にする。

 

 「はぁ!?

 

 何で、私の地上戦線時代のグフカスタムが使われてんのよ!!」

 

 「あんた、落ち着きなさいよ!!」

 

 「だって、東南アジアの戦線で私のグフカスタムが大破したから破棄したのに何でよ!!」

 

 シャロが叫ぶが、赤紫色のグフカスタムは大剣を肩に担ぎながらホバー移動しながらシャロに狙いを定め、シャロに大剣である大型ヒートソードを振りかぶり振り下ろすが、シャロは軽く躱しながらもビームライフルを放つ。

 

 『貰ったわよ!!』

 

 「右から!?」

 

 『はぁ!?

 

 ソレを躱す!?』

 

 「これで、落ちろ!!」

 

 『ツッ!?』

 

 だが、グフカスタムのパイロットも高い技量の持ち主だったのか、滑走路をホバー移動しながら体を捻る事でビームライフルのビームを躱して離脱する。

 

 「シャロ!!」

 

 「アン、私は大丈夫よ!!」

 

 無論、アンやイチカにもモビルスーツ隊が襲い掛かり、少数だが高い技量のベテランパイロットだけにアンはスラスターを全開にダブルビームサーベルを展開しながら突っ込んで来たジム・ストライカーカスタムにビームサーベル同士の鍔迫り合いに追い込まれ、イチカはスラスターを吹かして乱射されるビームライフルとビームキャノンを躱しながらも4機の現地改修型のジム・カスタム3機とジム・キャノンⅡに囲まれながらも、マイクロミサイルとビームショットライフルを放ち距離を取る。

 

 「こいつ等、独立戦争の経験者かよ!?」

 

 「イチカ、あのエンブレムってまさか!?」

 

 「あぁ、ア・バオア・クーで俺とアンで戦った連中だな」

 

 『バニング隊長!!

 

  この2機のパイロット、間違いないぜ!!

 

 ア・バオア・クーの追撃戦で、厄介なゲルググのパイロットだ!!』

 

 そして、ジム・カスタムのパイロットの声で疑問から確証に代わり、ア・バオア・クーで戦った『不死身の第四小隊』の連中だった。

 

 そして、シャロと戦うグフカスタムもシャロは誰がパイロットか確信する。

 

 「まさか、この身体を捻って躱す癖は……」

 

 『お姉様のこの機体で!!』

 

 「イヴなの!?」

 

 『へっ?』

 

 グフカスタムは攻撃を寸で止め、グフカスタムのコクピットハッチが開き、ヘルメットを脱ぐと金髪ツインテールの少女が出て来る。無論、私もコクピットハッチを開けてヘルメットを取りパイロットを見ると、やっぱりイヴだったのだ。

 

 「お姉様!?」

 

 「イヴだったのね…」

 

 イヴは東南アジアの地上戦線では同じグフカスタムを駆り、私のストッパー兼僚機として暴れた小隊の副隊長機だった。無論、私がソロモンに転属後は隊長になったが終戦までのイヴは知らなかった。

 

 まさか、連邦軍のパイロットとして現れたのだから驚くしか無い。

 

 「お姉様が生きてた!?」

 

 「イヴ、私を勝手に殺さないでくれるかな?

 

 しかも、私の黒歴史のグフカスタムに乗って来んな!!」

 

 私が叫ぶと同じくして、アンはジム・ストライカーカスタムに左腕を斬り裂かれながらも撃破してパイロットがコクピットから脱出した所を手で掴み捕縛し、イチカはジム・カスタム1機を両脚を斬り裂き撃破するとアンと二人で援護射撃しながらジム・キャノンⅡの頭部にビームライフルを放ち撃破していたのだ。 

 

 「バニング大尉!!」

 

 「その声はウラキか!?」

 

 そして、遅れて来たウラキ中尉のゲルググ改にバニングのジム・カスタムは驚きながらも攻撃を辞め、ウラキ中尉に説得されて俺達に降伏したのだった。ただ、撃破されたジム・ストライカーカスタムのパイロットだったジャックはウラキ中尉の先輩だったが撃破された際の衝撃で負傷していた。

 

 パイロットだけは捕虜として、リリーマルレーンに回収して、モビルスーツは台湾の部隊へと送られる事となり、シャロの黒歴史のグフカスタムはイヴを回収してからビームサーベルでめった切りにして破壊していたらしく、艦内に戻って来たシャロは息を切らしていたらしい。

 

 「あぁ、イチカにバトルジャンキーだってバレた…」

 

 「まさか、お姉様の薬指の指輪は……」

 

 まさか、シャロが射撃より近接戦闘が得意だった事に俺は驚いたが、イヴがシャロが結婚した事にショックで椅子からひっくり返りながら気絶した事に、同情しながらマシュマーとキャラは『やっぱり、シャーロット教官が結婚出来た事に普通は驚くよな』と呟いたが最後でシャロに鉄拳制裁を食らったのは言うまでもない。

 

 そして、俺達の機体がハンガーに固定が完了すると、リリーマルレーンに取り付けられた離脱用ブースターは火を吹きながらマスドライバー上で加速しながら大気圏を離脱し、宇宙へと戻ったのだった。

 

 

 

 

 



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ソロモンへの帰還

 

 

 

 「ふぅ〜」

 

 カチャリと飲んだコーヒーカップを机に置きながら、大気圏離脱後に尋問した捕虜となった不死身の第四小隊の隊長のバニング大尉の調書とシャロの元部下だったイヴ・フユキ中尉の調書を読みながら纏めていた。

 

 彼等と彼女は予想していた通り、マダガスカル島の連邦軍の部隊だったのだが、扱いが冷遇された部隊だった。

 

 ア・バオア・クー決戦で最終的に俺とアンの駆るゲルググを追い詰めたバニング大尉の部隊なら改良型のジム・クウェルかガルバルディβくらいは回されるだろうが、ティターンズに懐疑的な連邦軍の兵士だった為に一切の新型機は回されず、ウラキ中尉が参戦したガトー少佐が強奪したGP-02の奪還作戦際に使用した旧式のジム・カスタムとジム・キャノンⅡを現地改修を繰り返しながら使用していたらしい。

 

 無論、イヴ中尉も元ジオン兵だったが、シャロの破棄された大破したグフカスタムを回収し、戦時中に使用していた自機のグフカスタムのパーツを利用して改修と修理をして密林の洞窟内に隠していた最中に東南アジアの戦線崩壊により連邦軍に投降する。戦後に収容所から釈放されてからはグフカスタムを回収して傭兵稼業をしながら生計を立てていたが、マダガスカル島でバカンス中に緊急の徴兵で連邦兵としてバニング大尉達とホンコン襲撃に参加したらしい。

 

 もちろん、他の捕虜にも尋問中だが扱いが冷遇され食料すら酷かったらしくて鈴特製のカツ丼を捕虜へと出した時点でバクバクと食べながらベラベラといろんな情報を全て喋り、何処ぞの警察署の様に簡単に調書が纏まる結果となったのだった。

 

 「イチカ、ちょっと良いかな?」

 

 「どうした?」

 

 調書を纏めていると、シャロがイヴを引き連れて一緒に士官室へとやって来たのだ。

 

 「イヴの扱いだけど?」

 

 「アクシズの兵士として復帰する話か?」

 

 「シャーロット隊長、アクシズってアステロイドベルトの基地要塞ですよね?」

 

 「イヴ、私の今はイチカ大佐の隊長補佐ね。アクシズは、宇宙要塞アクシズを本拠地にミネバ様が総統を務め、ハマーン様とシャア閣下が摂政する旧ジオン派が多数を占める組織ね。今は、奪還したソロモンを拠点に活動中だけど」

 

 「あの敗戦は何だったんだろう…」

 

 イヴは敗戦に悔やみながらも中尉待遇で復帰したが、ソロモンに戻るまでは扱える機体が無い事などを説得した後にイヴだけが士官室から出て部屋に戻る。

 

 「イヴと行かなくて良いのか?」

 

 「イチカと二人きりで甘えたいから、別に良いじゃない」

 

 シャロは腕を回しながら、俺の太股に跨り抱き付き俺に甘える。シャロの特有の甘い香りに欲情してシャロの巨大な胸を鷲掴みにして揉みたくなるがアンや鈴に悪いと思い我慢する。

 

 無論、アンはシャロの代わりにカミーユとウラキ中尉のシミュレーターによる訓練を監視しているらしく、鈴は妊婦である為にドクターに検診を受けてから厨房で調理していた。

 

 

 大気圏離脱してからだがシーマ艦隊と合流した後、艦隊所属のムサイ改の二隻の護衛を引き連れてソロモンへと向かう。無論、ソロモンまでは3日ぐらいの航海となるが、その間にティターンズや連邦軍との遭遇戦は一切なく、ソロモンまでの航路の制宙権はアクシズが完全に掌握済である事からも伺えたのだった。

 

 もちろん、カミーユとウラキ中尉は更にバニング大尉が鍛え、不死身の第四小隊のメンバーはアクシズの下部組織化したエゥーゴ入りを決めたらしくて、ソロモンに戻るまではアンとシャロによる三人での地獄のシゴキを受けたのは言うまでもない。

 

 

 

 3日目の朝、リリーマルレーンはソロモンのドックへと入港を果たし、俺達の新しい母艦となるムサシへと横付けに固定される。ムサシとリリーマルレーンのモビルスーツハッチが開き、メカニック達がモビルスーツの移動と反対側では搬入ハッチが開きムサシへの物資の積み込み作業が始まり、リリーマルレーンのクルーも人員ハッチに通路が伸びてムサシの人員ハッチへと繋がり移動が始まる。

 

 「これが、ムサシかよ…」

 

 「デカイ艦よね…」

 

 「なんか、デジャヴ…」

 

 俺とアンにシャロは、ミネバ様への帰還の報告にランチに乗り居住区へと向い、リリーマルレーンからの引っ越し作業とムサシへの補給作業する光景を見ながら移動していた。無論、工廠からモビルスーツハッチへと搬入され8機の量産化に成功したブラックローズと指揮機仕様の2機のブラックローズ改の他にリリーマルレーンからは2機のギャン改が移され、艦内に残るヴァルキリー小隊仕様の白いガザDとアクト・ザクは降ろされていたのだった。

 

 

 居住区のミネバ様の邸宅は、純白の外壁とオレンジ色の西洋瓦の似合う左右対称の大きな4階建ての木造とレンガによる美しい屋敷だった。無論、ミネバ様の宣言の煽りを諸に喰らい数日は徹夜だっただろう、新たに総統にされ窶れ目の下に隈を作ったハーマン様が言うには俺達の屋敷でもあるらしく、総統の座を恋と愛に生きると宣言して総統を放棄したミネバ様の『イチカのお嫁さんになる!!』は本気だったと背筋に冷たい汗が流れる様な感覚だった。

 

 「これって、あたしは認めないとイケない?」

  

 「いや、成人したらって、鈴は認めたわよね?」

 

 「イチカには苦労して貰うしか無いわね…」

 

 「まさか、ハマーン様が総統になるなんて予想すらできなかったぞ?」

 

 「だから、ミネバ様はツヤツヤでハマーン様はかなり疲れた様子で窶れていたのね…」

 

 何だかんだで、玄関前に着くとメイド達が出迎えており、屋敷内へと案内されてミネバの私室へと通される。

 

 「イチカ!!」

 

 ミネバはイチカが戻って来たのを見るなり抱き着き、顔を真っ赤にしながら俺の唇へとキスをする。それには、三人の妻が驚くがキス位ならと見逃す。

 

 だが、内心は『お巡りさんを呼ばれないか?』と一瞬は思うが、結婚年齢になる16歳までの後六年はミネバは正妻の鈴の真の怖さを知っている為に一緒に入浴とかベッドに忍び込むのは我慢するらしい。

 

 

 ミネバと妻達による3日間の休暇を過ごし、ハマーン様から呼び出しが掛かり司令部へと向かう。無論、ミネバも今回から着いて行くらしく、ムサシがオリムラ中隊の母艦として回された真の理由ではと思ってしまう。 

 

 「来たようだな」

 

 「イチカ・オリムラ以下、参りました!!」

 

 「まぁ、固くならんでも構わんよ。

 

 イチカ大佐、オリムラ中隊はアンマンへと向いエゥーゴの艦隊と合流した後、グリーン・ノアにて試作中のガンダムMK-Ⅱ強奪の支援と並行してドックで建造中のティターンズの新造艦の破壊の任務を受けて貰いたいとシャアからの増援要請が来ている。

 

 無論、住民が居なければ、MK-Ⅱの強奪後にムサシによる艦砲射撃によりグリーン・ノアの破壊でも構わん。ティターンズの新造艦は必ず破壊せよ」

 

 「まさか、コロニーの破壊ですか?」

 

 「いや、ティターンズの新造艦の破壊がオリムラ中隊の標的だ。それと、支援部隊にはシャーロット中佐の父君のサイクロプス小隊が突入の支援を請け負う事が決まっている」

 

 「うっげぇ、クソ親父!?」

 

 「今、来たようだな。シュタイナー大佐」

 

 シャロが振り向くと、親父さんが来ていた事に驚く。

 

 「はっ!!

 

 イチカ大佐、馬鹿娘を妻として引き取ってくれた事に感謝する。シャーロット、例の写真はあるのか?」

 

 「はい、コレね」

 

 「そんなに冷たいと、パパ泣いちゃうぞ?」

 

 「泣け!!喚け!!そして、さっさとくたばれクソ親父!!」

 

 「イチカ大佐、シャーロットか冷たい!!」

 

 親馬鹿全開のシュタイナー大佐はシャロから結婚式での写真を受け取り満面な笑みを零しながら懐に写真を仕舞う。

 

 「さて、二人の親子漫才は無視して構わんだろうか?」

 

 「ハマーン様、流す方が賢明かと?」

 

 「イチカ大佐もそう思うか…」

 

 未だに続く、シャロ親子の親子漫才。

 

 ハマーン様と俺はため息を吐きながら、グリーン・ノア襲撃作戦の詳細を話し合ったのだった。



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月の裏側

 

 

 ムサシへの人員の引っ越しと物資の積み込み作業に一週間は取られたが、ソロモンにて束さんがニナさん達に合流して完成させたシャア閣下の専用機のナイチンゲールをモビルスーツデッキへと搬入してハンガーに固定し、ムサシのモビルスーツデッキにはブルーローズ系統のモビルスーツとギャン改にゲルググ改でひしめき合いながら搭載されており、ガザDからブラックローズ改へと機種変更したヴァルキリー小隊の面々はシャロによる機種変更に伴う地獄の訓練を受けていた。

 

 「ひゃぁぁぁぁ!?」

 

 「モビルアーマー形態より早い!?」

 

 「ウップゥ…吐きそう…」

 

 「なぁ、マイクロミサイルポッド内蔵型大型ブースターをマイクロミサイルポッドだけにした支援型にしてやった方が良いんじゃないか?」

 

 「そうなると機動力はかなり落ちるのよね…」

 

 モニターを見ながら、ムサシの周囲で訓練を行うヴァルキリー小隊の機種変更による慣熟訓練では、急激なGによる悲惨な悲鳴と女性としてはイケない様な惨状がモニター越しに見える為に二人は頭を抱える。

 

 無論、低コストによる量産化に成功したブラックローズはアクシズからソロモンに派遣されているベテランパイロット達には高い定評があり、ゲルググ改とリゲルグから順次機種変更をしながら配備数を増やしていたのだ。

 

 ただ、オリムラ中隊仕様は量産型とは違い、IS技術を盛り込まれて製造されており大気圏内ではドダイ改を使用しなくとも空中戦が可能となっている。

 

 ヴァルキリー小隊仕様のブラックローズはカラーリングは純白になっており、高出力のビームサーベルを腰のアーマーに装備し、専用のビームライフルはビームソード付きビームライフルではなくビームソードを外したタイプのビームライフルとしている点が唯一の違いだったりする。

 

 それでも、ヴァルキリー小隊仕様のブラックローズは量産型に近い性能にリミッターを掛けて落としてあるのは技量の低いヴァルキリー小隊を心配する束さんの仕業だったりするのだ。

 

 だが、性能を落としてあっても、ヴァルキリー小隊の面々はアンマンに着くまでには扱える様に厳しく訓練をすると心を鬼にすると決めたシャロだった。

 

 翌日、全ての作業が終わりソロモンの宇宙港からムサシがサイクロプス隊の母艦であるムサイ改の二隻を伴い、アンマンへと針路を変えて出撃する。

 

 両脇にムサイ改が護衛する形で暗礁宙域を巡航速度で航行中ではあるが、リリーマルレーンの旧式のレーダーの時とは全く違い、最新鋭の高性能レーダーを積んでいるムサシは連邦軍の艦隊を捕捉する。  

 

 「イチカ大佐、連邦軍の艦隊を捕捉。

 

 如何しますか?」

 

 「やり過ごすには暗礁宙域がベストだけど、ムサシの主砲の有効射程圏内なんだろ?」

 

 「はい、有効射程圏内である距離は49000ですね。

 

 左舷砲撃戦に移行しますか?」

 

 「当たるか?」

 

 「砲術長のナカシマ大尉の腕前なら確実に…」

 

 「なら、艦種の特定は済んでいるか?」

 

 「はい、サラミス改級が三隻ですね」

 

 艦長のツキノ中佐が淡々と報告しながら、連邦軍のサラミス改をどう撃沈するかを話し合いながら詳細を決めて行く。そして、ツキノ中佐は航宙艦ではタブーとされる腹を見せる行為となる左舷砲撃戦を提案し、Tの字戦法による航路阻害しながらのムサイの主砲の三連装の大口径のメガ粒子砲によるアウトレンジ攻撃を行う旨を伝える。

 

 「砲撃指揮はツキノ中佐に任せる」

 

 「ハッ!

 

 これより、左舷砲撃戦を取る!!

 

 転舵一杯、主砲戦闘用意!!」

 

 「「「了解!!」」」

 

 ツキノ中佐による号令により、艦橋上部の主砲の射撃指揮所と連動しながら前部のニ基の三連装メガ粒子砲と後部の一基の三連装メガ粒子砲の主砲が可動してサラミス改へと狙いを定める。

 

 『照準良し!!』

 

 「撃ち方始め!!」

 

 ナカシマ大尉からサラミス改への照準を定めた報告が入り、ツキノ中佐は主砲の射撃命令を下す。

 

 サラミス改でも、ムサシの存在にはメガ粒子砲による砲撃で気付いた様だったが、時差射撃による九条のメガ粒子砲による砲撃を回避する間もなく、楔形に展開するサラミス改に吸い込まれる様に艦橋へとメガ粒子砲が直撃して艦橋が吹き飛びながら腹を見せた所で時差射撃による止めとなる三条のメガ粒子砲が突き刺さり一隻のサラミス改は轟沈する。

 

 

 

 『何処からの砲撃だ!?』

 

 『艦長、距離49000からの砲撃です!!

 

 艦種不明!!

 

 アクシズの新型艦です!!』

 

 『何だと!?

 

 撃ち返せ!!』

 

 『敵の砲撃は本艦の射程距離外からで反撃不可能です!!』

 

 ブリッジクルーの女性クルーが叫び、サラミスの艦長は錯乱する。既に、僚艦だったサラミス改級のソルトレイクシティはメガ粒子砲の直撃により轟沈し、片方の僚艦のシカゴは連装のメガ粒子砲を放つが有効射程距離外なのもあるが、ムサシからのアンチビーム爆雷を使われ、メガ粒子砲が無効化され有効打すら出せないのだった。 

 

 無論、艦隊戦の最中にモビルスーツ隊を展開するのは危険極まり無く、シカゴからモビルスーツ隊のジムⅡを出そうと慌てふためき艦首のカタパルトから出そうとするが、ムサシの主砲と副砲による全門斉射にジムⅡに副砲のビームが直撃して貫通して対空射撃用の支柱を吹き飛ばしながらシカゴの艦橋に着弾して下層にいたブリッジクルーが船外へと吐き出される惨状となる。

 

 『アズサ艦長、降伏を…』

 

 サラミス改級のパナマのクルーでレーダー要員の女性士官のキサラ少尉はシカゴの惨状を通信で確認した後に艦長に降伏を促す。

 

 『あぁ、降伏しよう。

 

 全責任は私が取ろう…』

 

 サラミス改級のパナマはムサシへと降伏を通信で伝えて降伏する。無論、ムサシとムサイ改に囲まれながら武装解除を行い、大破漂流中のシカゴへと救助隊を出してクルーを救助を行い、クルーをパナマへと移すとムサイ改に牽引される形でアンマンへと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 アナハイムのアクシズのモビルスーツを手掛けるのは、本社のある月面都市のグラナダに次ぐモビルスーツ工場を構える月面の工業都市にしてエゥーゴの本拠地でもあるアンマン。

 

 そして、アンマンのアナハイムの工場ではエゥーゴの最新鋭の重モビルスーツのリックディアスとマラサイが急ピッチで製造が進められ、別の工場ではアクシズ向けのゲルググ改とリゲルグ並びにガザDが製造されていた。

 

 無論、エゥーゴの最新鋭の強襲揚陸艦のアーガマ級の一番艦のアーガマとラーディッシュ級戦艦のラーディッシュも就航して、エゥーゴは月面のティターンズと連邦軍を排除した時以上に戦力が回復しつつあった。

 

 「クワトロ大尉、リックディアスが完成しましたな」

 

 「アポリー、エゥーゴがアクシズの下部組織になった以上は、私はシャア・アズナブルだよ」

 

 「そうでしたな、閣下」

 

 「それに、リックディアスの完成に漕ぎ着けたのは、イチカくんのブルーローズの稼働データのお陰だよ」

 

 「それと、回収したジムⅡのデータを元にネモとジムⅢの開発に入れたのは大きいですね」

 

 「おや、ドレッサ技士はソロモンからお早いお帰りだな」

 

 「あら、愛しいウラキ中尉の為に自宅の部屋を掃除したいと思いましたので、イケませんか?」

 

 「……」

 

 シャア自身もドレッサ技士がこうまでもやり手だとは知らなかった。ガトー少佐のガンダム強奪の成功の裏にはドレッサ技士がニナ技術技士とガトー少佐の復縁を成功させた事からあまり強くは言えず、ソロモンではウラキ中尉を慰めたり手料理を振る舞い落したらしい。

 

 

 ドレッサ技士は足早にモビルスーツ格納庫から工場の事務所へと上がり姿を消し、残された三人は既婚者故に女性の怖さを改めて実感した瞬間だった。

 

 そして、リックディアスのコクピットに入り、慣熟訓練をしながらイチカ達の到着を待ったのだ。

 

 

 

 

 3日後、アンマンのドックにはアクシズからの増援が到着し、アーガマの脇にはムサシが係留されたのだ。

 

 「かなり、デカイ艦だな」

 

 「ヘンケン艦長?」

 

 アーガマのブリッジからムサシを眺め、あまりのデカさに驚愕しながらもムサシもアナハイム社製の艦だったと思い出す。それでも、前部に背負い型に配置され後部にもある巨大な三連装のメガ粒子砲の主砲をアーガマに向けられたら轟沈するだろうなとつい思ってしまうが、戦艦以上の火力が在りながらも艦載数が脅威だと思う。

 

 「あぁ、そんな時間か…」

 

 ヘンケンはモビルスーツデッキへと急ぎ、ムサシから搬入されるモビルスーツを確認に急ぐのだった。

 

 

 

 「ほう、これがナイチンゲールか…」

 

 「えぇ、閣下」

 

 「ハマーンにもか?」

 

 「はい、ソロモンの工廠では急ピッチに組み立て作業中です」

 

 ニナがシャア閣下にムサシから降ろされ、アーガマに搬入されたナイチンゲールの説明をしながら、最終調整を束さんと推し進める。

 

 ムサシからも人員移動かあり、アーガマへと移るのはカミーユ、ファ、ウラキ中尉、キース夫妻となる。

 

 無論、カミーユ達のモビルスーツはカミーユ機のブラックローズ改とウラキ中尉とキース中尉のゲルググ改が移動となるが、ゲルググ改の代わりに二人にはリックディアスが支給される予定だった。

 

 

 そんな忙しい最中、一人のアクシズの高官が束さんに殴られ吹き飛ぶ。

 

 「是非、君を…」

 

 バッキィ

 

 「グッハァ!?」

 

 「近寄るな蛆虫!!」

 

 束さんに殴られた男性にシャアは見覚えがあった。

 

 「グレミー・トトか…」

 

 彼女を靡かせるのは、シャア自身でも不可能に近い。それは、イチカ大佐を大切にしているのは彼女でもあり、シャア自身もイチカ大佐を経由。いや、利用したにすぎない。それでも、殴られただけで済んだのは運が良かったのもあるだろ。

 

 それに、イチカ大佐の身内には養子にしているエルピー計画の5つ子姉妹がいる。

 

 唯でさえ、イチカ大佐の妻達からも嫌われているに彼女を引き抜こうと声を掛ける事自体がシャアからしたら自殺行為に等しいと理解して欲しいと思うのだった。

 

 



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グリーン・ノア襲撃 前編

 

 「貴様!!

 

 よくもグレミー様を!!」

 

 ビュン、ビュン

 

 「うるさいなぁ、筋肉髭達磨は黙っててくんない?」

 

 「なっ!?」

 

 バッキィ、ドガァ

 

 「グッハァ!?

 

 ガッ…」

 

 アクシズの高官のグレミー・トトが束さんにより殴られ吹き飛ばされた事に激怒したのは護衛のラカン・ダカラン大尉だったが、マジギレした束さんの相手になる事なく篠ノ之流鉄扇術で抜き放ったレーザーガンを鉄扇で受け止め弾きながら誰も居ない壁へと撃たれたレーザーを逸して肉薄するとラカンの腹部を蹴り上げ、鉄扇を瞬時にたたむと背中へと打ち付けて床に激突させて意識を奪う。 

 

 「いっくん‼

 

 ちょっと、この蛆虫達の艦船を制圧して来るね!!」

 

 「「「束さん!?」」」

 

 「束大尉!?」

 

 「イチカくん、彼女を止めなくても?」

 

 「閣下、キレた束さんを止めるのは無理ですね…」

 

 「では、私が殴られたのは束大尉の手加減なのか…」

 

 無論、タダで終わる束さんでは無く、俺やシャア閣下達の静止を聞かずにアクシズから補給で来ておりグレミー・トトが乗艦していたアクシズの最新鋭のエンドラに単身で乗り込みクルー全員を一通りボコり意識を奪いながら十数分でエンドラを制圧。カプセルに寝かされていたり、モビルスーツの操縦訓練中だった千秋(プル)の残りの姉妹達全員を保護して来る始末だった。

 

 『侵入者!?』

 

 「邪魔、蛆虫!!」

 

 バッキィ、ドガァ、ボッゴォ

 

 「「「「ギャァァァ!?」」」」

 

 「侵入者を取り押さえろ!!」

 

 「邪魔だから」

 

 バッキィ

 

 「ガッ!?」

 

 「あっ、妹ちゃん達を見っけた!!」

  

 「「「お姉さん誰?」」」

 

 「あっ、強化人間達が!?」

 

 「へぇ、千秋ちゃん達の妹ちゃん達を強化人間にしたんだ…」

 

 「「「「「「「へっ?」」」」」」」

 

 「少し、頭を冷やそうか…」

 

 ズッガァァァァン

 

 「「「「「「「ギャァァァァ!?」」」」」」」

 

 

 「あっ…エンドラを制圧したみたいですね…」

 

 「あっちゃー…束さん、本当にやっちゃったよ…」

 

 「私としては、彼女が味方で良かったと思うがな…」

 

 「束さんはシャア閣下が敵対しなければ味方ですよ」 

 

 「久しぶりに束さんのマジキレを見たわよ…」

 

 エンドラから聞こえて来る束さんの怒りの叫び声とクルー達の断末魔の叫びを聞きながら五人で束さんの事を呆れながらも、シャア閣下はモビルスーツ戦ならどうにか出来ると思うのだが、肉弾戦による制圧戦だと勝てる見込みは無いと思うと背筋に冷や汗が流れ落ち束さんが味方だった事に安堵する。

 

 「やっほー!!

 

 いっくん、妹ちゃん達を全員助けて来たよん♪」

 

 エンドラの乗降口から手を振りながらロープに巻き付けて姉妹が寝かされている4つのカプセルを引き摺り、三人の少女達の手を繋ぎながら降りてきた束さんは上機嫌だった。

 

 そして、姉妹達全員は束さんの軽い診断と六夏と三春の二人から採取した血液の解析結果と同じく姉妹達全員を強化人間にするために薬物が投薬されていた事が判り、束さん流の解毒療法と対処療法により普通の少女に戻す事に成功する。無論、カミーユからもファに恋人としての正妻の座を奪われたがファと和解して二人目の恋人に収まり第二夫人の道を選んだ、フォウへの強化人間の解除をお願いされて妹達同様にフォウも普通の少女に戻ったのだが、ニュータイプとして覚醒していた事にフォウ自身が驚いたのは言うまでも無かった。

 

 そして、父親となるイチカと鈴やアンにシャロなどの妻達は束さんが救助して保護して来た姉妹達の名前を頭を抱えながら考える羽目になり、春夏秋冬を入れた名前に決まったのだった。(後に成人したイチカは24姉妹の父親として両方の世界でスーパーダディと呼ばれたらしい)

 

 無論、束さんの手により残りのエルピー計画の少女達全員の救出の報告をシャア閣下から受けた新総統のハマーンはソロモンに居る時は最高技術責任者となり数々の新技術を開発を続け、強化人間にされ戦死した箒との一件から強化人間を研究する事やそれを研究する研究者達すらも忌み嫌う束さんとの敵対を避ける為にアクシズ内での強化人間の研究並びに製造を固く禁じる事を命令するのだが、グレミー・トトが率いるニュータイプ至上主義者達はハマーンと束さんに対して反発し更に内部で敵対する事になる。

 

 後にアクシズとエゥーゴの連合軍とティターンズと連邦軍の連合軍に宇宙要塞アクシズを不法に占拠し掌握したグレミー・トトとニュータイプ至上主義者達の反乱軍を率いてネオ・ジオンと名乗り、三つ巴によるゼダンの門での決戦になるのは更に先の話である。

 

 

 モビルスーツや軍需物資の補給とパイロットの慣熟訓練などの一連の日程の工程を消化し、アーガマの艦長にはソロモンからムサシに乗り込みアンマンに送り届けたブライト・ノア大佐が抜擢されて艦長になり、ラーディッシュにはアーガマの艦長の予定だったヘンケン中佐が艦長を務める事になる。ラーディッシュには最新鋭の量産型モビルスーツで不死身の第四小隊仕様の灰色のマラサイ4機とリックディアス2機が一般兵用に積み込まれ、アーガマにはシャア閣下の専用機にしてブルーローズ改(束さんの改修のやり過ぎにより半サザビー化している)を原型に再設計して発展し開発されたナイチンゲールにカミーユのNT専用機仕様のブラックローズ改、ウラキ中尉とキース中尉にアポリー中尉とロベルト中尉にはリックディアスが配備され積み込まれていた。

  

 そして、アンマンのドックからは艦隊旗艦としてアーガマを先頭に出撃し、ムサシとラーディッシュがアーガマに追従する形で出撃したのだ。

 

 

 

 

 ムサシの食堂では、アクシズに大尉として復帰を果たしたイヴがシャロとアンを交えてティータイムを楽しんでいた。

 

 「まさか、お姉様がイチカ隊長と結婚しているなんて驚きましたよ…」

 

 「イヴ、喧嘩なら買うわよ?」

 

 「まぁ、あたしもだけどね?」

 

 「喧嘩を売ると言うよりも十代で結婚が羨ましいなぁって、乙女な思考ですよ」

 

 「えっ、イヴにはミツル中尉が居たじゃない?」

 

 「あぁ、彼とは戦後に北欧系移民の女と浮気をしたから別れましたよ。で、別れた序に彼の金的を蹴り潰してやりましたけどね」

 

 二人はイヴの元彼の金的を蹴り潰した話を聞きながらも、どうしてイチカの周りには肉食系女子しか居ないんだろうとつい思ってしまう。そして、もしもイヴも妻の仲間入りを果たしたイリアと鈴に嘆願中のジュンコとケイト達のヴァルキリー小隊の連中も同様にイチカに惚れて妻の仲間入りでもして、イヴが浮気だとイチカを責めたりして蹴り潰したりしたら、太くて気持ち良い物が二度と味わえなくなるとある意味恐怖する。

 

 そして、アンとシャロはアイコンタクトをしながらイヴだけは絶対に認めないと心に誓ったのだった。

 

 

 アンマンから出撃してからは、ティターンズや連邦軍とも遭遇する事無く順調に航海を進め、ティターンズの宇宙軍の基地化したサイド7のコロニーへの監視をしながらもティターンズとの最前線とも言える制圧した旧連邦軍の宇宙要塞のルナツーへとムサシだけが入港してルナツー守備隊への補給物資を降ろしてから再度出港し、サイド7のコロニー群のグリーン・ノア1へと暗礁宙域を利用しなから近付く事に成功する。

 

 暗礁宙域に待機するアーガマとムサシにラーディッシュからは、この作戦の総隊長機とも言えるシャア閣下のナイチンゲールがアポリー中尉とロベルト中尉のリックディアスを引き連れてアーガマから出撃し、ムサシからはイチカのブルーローズと僚機のアンとシャロのブラックローズ改を合わせた6機のモビルスーツ隊が先行しての強行偵察を実施したのだ。

 

 「こちら、イチカ。

 

 グリーン・ノア2には目標を視認出来ず」

 

 「こちら、アン。

 

 同じく、グリーン・ノア2の軍港には停泊中の艦船を複数視認。艦種はアレクサンドリア級が三隻、サラミス改級が四隻、マゼラン改級が二隻となります」

 

 「了解した。

 

 アン大佐はイチカ大佐と合流されたし」

 

 アンのブラックローズの指の付け根から射出したワイヤーから伸ばしたカメラを回収しながらミラー裏からカメラで偵察するイチカのブルーローズへと合流する為に移動する。

 

 「こちら、ロベルト。

 

 グリーン・ノア1にて強奪予定の目標を発見し視認した」

 

 「同じく、シャーロット。

 

 グリーン・ノア1の造船ドックにて破壊目標を視認。一隻の艦艇の完成度は視認する限りでは9割方完了して、艤装段階だと推測する。他にも、三割方建造段階の同級艦も二隻を視認」

 

 ロベルト中尉が撮影に成功した、グリーン・ノア1へとワイヤーを伸ばしたカメラからは飛行訓練中の黒いガンダムMK-Ⅱが2機が訓練を行う映像がリアルタイムでシャア閣下のナイチンゲールへと転送されてシャア閣下にも緊張が走る。そして、同じくしてシャロも父親仕込みの侵入術でエアロックからブラックローズを降りてコロニー内部へと侵入して、コロニーのシャフトの通気口から造船ドックの上部へと向い撮影に成功して破壊目標とする建造中のドゴス・ギア級の建造数の把握に成功したのだった。

 

 「カイからの情報よりも建造数が多いな…」

 

 シャアはジャーナリストで協力者のカイ・シデンからの情報を元にドゴス・ギア級の建造数は一隻だけと思っていたのだがシャロからの偵察の結果、建造数は三隻と数が多い事に一抹の不安が過る。

 

 それでも、ムサシ級と同等以上のメガ粒子砲による火力とグワジン級以上のモビルスーツの艦載数を誇り戦局を左右しかねないドゴス・ギア級の破壊とシンボルと成り兼ねないガンダムMK-Ⅱの奪取は成功させなくてはいけない。 

 

 「引き時だな…」

 

 瞬時に嫌な予感が過り、強行偵察部隊の撤退を支持を出して母艦へと戻る選択をしてシャア達は母艦へと戻ったのだった。

 

 

 同じ頃、グリーン・ノア1のコロニー内部では、ジェリド中尉機のガンダムMK-Ⅱとエマ中尉機のガンダムMK-Ⅱが飛行訓練中だった。

 

 「クソ!!

 

 カクリコンの仇を討ちたいのに何で飛行訓練なんだよ」

 

 「ジェリド中尉、私語を謹みなさい」

 

 「くっ、口煩いエマ中尉かよ」

 

 「それよりも、カクリコン中尉の一件は相手が悪過ぎだと認識しなさい」

 

 「ニュータイプが相手だって理解してるさ。だがな!!」

 

 「熱くなり過ぎると事故りますが?」

 

 「何だと!?」

 

 ジェリドが叫ぶのと同じくして、ガンダムMK-Ⅱはバランスを崩してティターンズの士官が利用する事務所へと墜落する。

 

 ズッガァァァァン

 

 「誰が堕ちてきた!!」

 

 「ジェリド中尉だとよ」

 

 ジェリド中尉のガンダムMK-Ⅱは事務所の壁を寄り掛かるようにして破壊してしまう。多数の怪我人は出るが、死者が出なかったのは幸いだと言える。

 

 「こりゃ、参ったなぁ…始末書もんだぜ…」

 

 「熱くなり過ぎて、無茶な操縦した結果ですよ」

 

 「だが、居住区は全て撤去したから問題は無いだろ」

 

 「…」

 

 エマは思う。

 

 転属前だったから知らなかったが、居住区の撤去と言うよりも住民の強制排除をしたが正しい。そう、文字通りに物理的排除。

 

 反発する住民を虐殺したのだと理解した時、ティターンズの在り方に疑問を懐く結果となった。

 

 それを知ってしまった以上は、ティターンズに居る意味は無いし、反逆罪で逃亡中のブライト・ノア元中佐の判断が正しいと思えて仕方無かったと思うエマだった。

 

 



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グリーン・ノア襲撃 後編

 

 

 

 暗礁宙域では三隻の母艦から光る光点が多数射出される光景は強行偵察の結果、グリーン・ノア1への強襲襲撃作戦に変更したに過ぎない。

 

 『各機突入せよ』

 

 『了解』

 

 指揮官機であるナイチンゲールを操縦するシャア閣下が突入を指示を出して、オリムラ中隊の先頭に飛ぶイチカのブルーローズ改とアンとシャロのブラックローズ改が大出力の大型ビームライフルを放ちグリーン・ノア1の艦船専用ゲートの3つを同時に破壊する。

 

 イチカ達三人の機体から使い終えた大型ビームライフルを投棄すると、イチカのブルーローズ改はビームソード付きビームライフルを装備し、アンのブラックローズ改は宇宙港内部に停泊する艦船を沈めるべく特殊弾頭のジャイアントバズーカを背負い、シャロのブラックローズ改は獲物として選んだギャン改専用の大型ビームソードを握り、肩に担ぎながら宇宙港内部へと侵攻して行く。

 

 グリーン・ノア1の第一ゲートへの突入メンバーは、イチカのブルーローズ改を隊長機にアンとシャロにイヴのブラックローズ改が突入し、第二ゲートにはシャア閣下のナイチンゲールを隊長機にカミーユとフォウのNT専用機仕様のブラックローズ改、アポリー中尉とロベルト中尉のリックディアスが支援しながら突入し、第三ゲートにはバニング大尉のマラサイを隊長機に不死身の第四小隊の面々とウラキ中尉とキース中尉のリックディアスが支援をする様に突入する。

 

 そして、平行してグリーン・ノア2のコロニーへの攻撃要員として、昇進したイリア大尉機のブルーローズ改2号機を隊長機にマシュマー中尉とキャラ中尉のギャン改とヴァルキリー小隊のブラックローズ改にラーディッシュのリックディアス隊の3機が軍港へと襲撃を開始していた。無論、イリア隊への砲撃支援としてムサシも暗礁宙域から出撃し、造船ドックと軍需工廠化したグリーン・ノア2への艦砲射撃を実施する予定だった。

 

 

 「貰ったわよ!!」

 

 宇宙港を進撃しながらアンのブラックローズ改が放つジャイアントバズーカの弾頭は停泊中のサラミス改のブリッジを吹き飛ばし撃沈する。

 

 「せりゃぁぁぁ!!」

 

 シャロのブラックローズ改もアンには負けないとビームソードを最大出力に展開し、停泊中のサラミス改を薪割りの様に真っ二つに斬り裂き撃沈。

 

 「わっ、私だって!!」

 

 イヴのブラックローズはドックから丸見えの待機所と指揮所の監視窓へとヘヴィマシンガンを放ち中に居る人員達を蜂の巣に射殺する。

 

 そして、俺も最奥に停泊するバーミンガム級の戦艦にはビームライフルとファンネルを同時に放ちブリッジを蜂の巣にし、後部のスラスターは連邦軍の艦船の共通項としては機関部に直結だと知って居る為に後部に周り、ビームライフルをラックと入れ替わりに装備したジャイアントバズーカをスラスター内部へと放ち、俺達の小隊がコロニー内部へと入る頃には機関内部で大爆発を起こして第一ゲートはバーミンガム級の轟沈する大爆発に巻き込みながら炎上する。

 

 「こちら、イチカ。

 

 コロニー内部への侵入に成功」

 

 『了解した。

 

 私も間もなく合流する』

 

 『こちら、バニングだ。

 

 面白い物を拿捕したから、暗礁宙域の母艦に置きに戻る為に一時撤退する』

 

 『何を拿捕した?』

 

 『物は渡した後だったが、アナハイムの技師見習いと乗って来たシャトルだ』

 

 『なら、尋問は任せるとしよう』

 

 『了解した。

 

 だが、ウラキとキースを向かわせる』

 

 『感謝する』

 

 そうしている間にも、宇宙港の各艦船ドックからの大爆発を察知したティターンズの基地では警報が鳴り響き、迎撃に上がるジムⅡやハイザックなどのモビルスーツ隊が襲撃をかけて来ていた。

 

 『散開して迎撃に当たれ』

 

 『了解』

 

 ウラキ中尉とキース中尉のリックディアスはコロニー内部の重力に引かれ地面へと自由落下しながらも、正確にクレイバズーカを放ちながらジムⅡへと牽制しながら撃破し、カミーユとフォウのブラックローズ改はリックディアスの二人を支援に向いながらファンネルでジムⅡを撃破し、シャア閣下のナイチンゲールとロベルト中とアポリー中尉のリックディアスは倒壊した事務所にもたれ掛かる標的に向い、俺達はジムⅡとハイザックを蹴散らしながら、シャロの案内で破壊目標へと飛んで向かったのだった。

 

 造船ドックでは600m級の巨大戦艦が建造中だった。しかし、9割方完全していたネームシップ艦だけはドックに無い事にシャロが気付き叫ぶ。

 

 「ムサシよりもデカイ!?」

 

 「でも、艤装中の一隻が居ない!?」

 

 「シャロ、マジか!?」

 

 「間違いなわよ!!」

 

 「だが、他の二隻は破壊する。

 

 全機掛かれ!!」

 

 ドック内を低空飛行しながら、建造中の残る二隻へと攻撃を開始する。アンが巨大なブリッジの周囲を周りながらジャイアントバズーカを乱射して破壊しながらも、通常弾頭だったら貫通すらも困難な装甲だったが、兎印のジャイアントバズーカの特殊弾頭は劣化ウランを芯にしながらもサーモグラフィック爆弾をそのまま弾頭化した凶悪な弾頭であり、撃ち込めば爆発と共に摂氏4000℃以上の高温で焼く弾頭だった。

 

 「なんで、あたしはブリッジ担当なのよ!!

 

 これでも食らいなさい!!」

 

 シャロとイヴの二人のブラックローズは、もう一隻の建造中のモビルスーツハッチをギャン改専用のビームソードで斬り裂いたりジャイアントバズーカで吹き飛ばしながらモビルスーツデッキへと入り、内部の隔壁を斬り裂きながら内部を破壊する作戦を取りながら破壊活動に勤しんでいたのだった。

 

 だが、イチカだけは不運だったらしく、アンがブリッジの破壊活動している頃には、艦後部のメインスラスターノズルへと向かったが、待ち構えていたのは6機のガンダムヘッドのジム・クウェルのカスタムタイプと遭遇戦となる。

 

 「ちぃ、待ち伏せかよ!?」

 

 ドック内の突起物に上手く隠れながらビームライフルで牽制して来るだけに厄介だが、ビームライフルの威力はジムⅡが装備するビームライフルくらいにしか威力しか無く、ブルーローズの対ビームコーティングを施したシールドを前面に押し出しながらガンダムヘッドから放たれたビームをシールドで弾き、ビームソード付きビームライフルをビームソードへと変形させながら斬り込みながらカスタム機を斬り裂き1機づつ確実に撃破して行く。

 

 だが、ガンダムヘッドだと言う事はかなりのベテランパイロットだと推測し、ファンネルの扱いが躊躇われる高さの低い艦底とドックとの間での戦闘に引き込まれた事には相手の隊長に舌を巻く程の指揮が有っての事だと理解する。

 

 「これだから!!」

 

 『台湾の連邦軍から報告に有った、アクシズの新型か!?』

 

 艦底を支える造船ドックの柱を縫うようにホバー移動しながら、ビームソード付きビームライフルをショットライフルに切り替えてガンダムヘッドのジム・クウェルへと放つが、巧みに柱を盾にしながら躱すパイロット達に苛立ちすら覚える。それでも、ツインビームサーベルを展開したフルアーマーのガンダムヘッドのジム・クウェルを蹴り飛ばし、シールドの先でコクピットを突きながらシールド裏のミサイルランチャーを放って1機を撃破する。

 

 『グッァ!?』

 

 『貰った!!』

 

 「後から!?」

 

 残り3機となりながらも、後から斬り掛かるガンダムヘッドのジム・クウェルにビームソード付きビームライフルをビームソードに変形させて投げ槍の様に投げ付けて後から斬り掛かるガンダムヘッドのジム・クウェルの胸部に刺さり、動力部に直撃したのか刺さったガンダムヘッドのジム・クウェルは爆散する。

 

 「イチカ!!」

 

 「アン、ブリッジの破壊は済んだのか!!」

 

 「終わったわよ!!」

 

 『ちぃ、増援かよ!?

 

 撤収するぞ!!』

 

 残り2機になった所で、ブリッジの破壊を終えたアンがホバー移動しながらヘヴィーマシンガンを放ちながら来た所でガンダムヘッドのジム・クウェルの2機は閃光弾を放ち視界を俺達二人の奪った所で撤収する。

 

 「ベテランだったみたいね、イチカ」

 

 「あぁ、あいつ等は独立戦争の経験者だったみたいだな」

 

 「そう、厄介には変わらないわね」

 

 「だな」

 

 接触回線でほのぼのとアンと会話をするが、アンが何かを思い出した様に言う。

 

 「あっ、言い忘れたけど、早く離脱しないとこの艦の爆発に巻き込まれるわよ?」

 

 「まさか、アン?」

 

 「テッヘェ、メインスラスター内部にジャイアントバズーカを打ち込んで来ちゃった♪」

 

 アンの一言に血の気が一気に下がり、接触回線で使ったワイヤーを急ぎ回収して、スラスターを吹かして反転する。

 

 「アンの馬鹿!!

 

 それを早く言え!!」

 

 「あっ、イチカ!?

 

 あたしに馬鹿って何よ!!」

 

 「そのままだろ!!」

 

 夫婦喧嘩もとい、二人は言い合いになりながらも超低空を縫うようにドックの床をスレスレに飛びながら造船ドックから急ぎ離脱する。そして、動力部ではアンが放ったジャイアントバズーカの弾頭が直撃した機関は小爆発を繰り返し、二人が造船ドックから離脱する頃には大爆発を起こして戦艦は大爆発を起こし、建造中の戦艦の大爆発によりコロニーに穴が開き、宇宙へと空気が漏れ出す。

 

 そして、漏れ出した空気は造船ドックエリアにいた人員達を巻き込みながら開いた穴へと吸い込まれる様に宇宙へと投げ出され大量の死者を出したのは言うまでもない。無論、近くのティターンズの事務所にも被害が拡大し、2機の強奪予定のガンダムMK-Ⅱを強奪したシャア閣下達はその穴を利用して離脱する。

 

 『イチカ大佐、目標は強奪した。

 

 離脱する』

 

 「了解」

 

 と離脱しようとするが、事務所から吹き飛ばされたノーマルスーツを着た若い女性が飛ばされて居るのを発見する。

 

 「アン、彼女だけでも回収する」

 

 「へっ?」

 

 アンは間抜けな声を出しながらも、この時に思ってしまう。また、イチカに助けられて墜ちた女が増えるのかと…

 

 そう、思いながらもイチカは瞬時加速で彼女をブルーローズ改の手で優しくキャッチしてからコクピット内に引き込み回収する。

  

 「アン、離脱する!!」

 

 「イチカ、その女は絶対に駄目だからね!!」

 

 「いや、普通に救助しただけなのだが?」

 

 コロニーから離脱し、二人が騒ぐ内に救助した彼女が目覚めてしまう。

 

 「此処は…」

 

 「目覚めたみたいだな」

 

 「私はコロニーに穴が開いて巻き込まれて…って、アクシズの兵士!?」

 

 「そうだな。ノーマルスーツからティターンズのパイロットか?」

 

 「えぇ、私はエマ・シーン中尉でガンダムMK-Ⅱのテストパイロットよ」

 

 「俺は、アクシズのオリムラ中隊の隊長のイチカ・オリムラ大佐だ。コロニーに穴が開いて吸い込まれ掛けていた所を回収した」

 

 「そう、死にかけた所で助けてくれた王子様って所ね。なら、私はそれに報いる為に色々とティターンズの事を話す事は約束するわね」

 

 「その言い方だと…」

 

 「あら、お姉さんは義理堅いのよ?」

 

 「アン、ヘルプ!!」

 

 「フン!!

 

 イチカなんか、知らないわよ」

 

 「そんな、殺生な!?」

 

 「あら、彼女は恋人かしら?」

 

 「いや、妻の一人だ」

 

 「あら、妻の一人って事は複数の妻が居るって意味かしら?」

  

 「ノーコメントで」

 

 「ふ〜ん…(アクシズが誇る大エースで多数の妻が居ても養ってくれる最優良物件ね。なら、私はイチカ大佐の為に…)」

 

 コクピットのシートの裏ではルンルン顔になるエマ中尉は死にそうになった所をイチカに助けられた事により、イチカを星の王子様と思いながら楽しそうにする。確かに生命のピンチに白馬に跨がり王子様に助けられたら堕ちない女性は居ないだろうが、エマ中尉は吊り橋効果によりイチカに完全に恋する乙女の様に堕ちて居るのは明らかであり、アンが危惧した様にエマ中尉はイチカを将来の旦那様と確定しながらも獲物としてロックオンしたのだった。

 

 無論、作戦はネームシップ艦のドゴス・ギアの破壊は失敗には終わるが、二番艦と三番艦の破壊には成功する。そして、シャア閣下も2機のガンダムMK-Ⅱの強奪に成功させてアーガマに戻るのだった。

 

 

 

 



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カミーユの両親の死 前編

 

 

 ガンダムMK-Ⅱの強奪とグリーン・ノアへの襲撃はドゴス・ギアの破壊には失敗したのものの作戦は概ね成功だと言えた。ガンダムMK-Ⅱの1号機はムサシのモビルスーツデッキへと運ばれてメカニックチーフの束さんが連日徹夜での解析に勤しんでいた。

 

 「やっぱり、アナハイムから情報が流れてるかも…」

 

 キーボードをタッピングしながらモニターにはニナさんから送られて来たGP計画のモビルスーツの図面が全て表示されており、見比べる様に図面に起したガンダムMK-Ⅱの全身の内部フレームに当たるムーバブルフレーム技術の原形となったGP計画の機体で表に出る事が無かったRX-78-GP03-Sの試作ガンダム3号機のステイメンとブルーローズの原型機となったRX-78-GP05の試作ガンダム5号機のブルーローズ辺りの内部フレームのムーバブルフレームを参考にして開発していたのを突き止めていたが、何故アナハイムからティターンズにムーバブルフレームの技術が漏れたかは謎だった。

 

 「謎を解く鍵は、あの見習いの技士だね…」

 

 と束さんは呟きながら兎印の自白剤の入った注射器を自身の豊満な胸の谷間へと押し込むと立ち上がり、移動する為にランチを用意させてムサシから移動してラーディッシュで尋問中のバニング大尉の元へと向かったのだった。

 

 

 同じ頃のムサシの尋問室では、正妻で妊娠中の鈴とアンにシャロの三人が腕を組みながら睨みエマ中尉へと尋問中だったが、ティターンズに関しては知っている情報は全て話したのだが、三人の表情は全く優れないのは正妻の鈴に認めて貰いたいと健気に頑張りながら話す姿勢のイチカに恋する乙女化したエマ中尉の頬を赤らめながら話す姿に額に手を宛てながら呆れるしか無かったからだった。

  

 鈴からしたら、妻達の中で最高齢なのはシーマ閣下がソロモンにて土下座しながら謝り本当の年齢を暴露した35歳であり30代に近いのはシーマ閣下を除き、とうとう鈴が折れて妻入りを認めたジュンコ少尉が24歳、ケイト少尉が22歳とヴァルキリー小隊のメンバーがジュンコ少尉が最高年齢以外はケイト少尉と同い年だったぐらいだろうかと思う。無論、婚約ではあるが最低年齢はミネバ様であり、長女の千秋と同い年の8歳は頭が痛い問題だった。

 

 そして、エマ中尉の年齢はケイト少尉と同じ22歳で女真っ盛りの年齢だった。

 

 「全く、あたしは妊婦だからあんまりイライラしたくないのだけど?」

 

 「あれ?

 

 鈴は、今は何ヶ月なの?」

 

 「アン、あんたねぇ女なんだから少しは学びなさいよね。もう少しで、安定期の5ヶ月よ」

 

 「羨ましいなぁ。

 

 私も十代の内には欲しいわね。

 

 で、どっちなの?」

 

 「イチカには言ってないけど、診断結果は女の子らしいわよ」

 

 「あらやだ。このままだと、私達とイチカの子供は全員が娘になりそうね」

 

 「シャロ、それはフラグだからやめなさい」

 

 「そうね…」

 

 「あっ、あの…」

 

 と尋問から鈴達三人のママさん会議にいつの間にか会話の内容が変わり、ママさん会議の会話に付いて行けず空気化したエマ中尉だった。

 

 

 こんな会話をムサシでしていた頃、束さんはラーディッシュへランチを使い移動して乗艦、見習い技師を尋問している尋問室へと足を運ぶ。

 

 「バニング大尉、尋問は進んでいるのかな?」

 

 「これは、ムサシのメカニックチーフの束大尉」

 

 「う〜ん、この様子だと全く尋問は進んでないかな?」

 

 「恥ずかしながら、コイツは捕縛されてからは黙っている事を決め込んでましてな…」

 

 「ふ〜ん…」

 

 「なんだよ。

 

 女が俺を尋問しようってのかよ」

 

 「色々と喋ってくんないと束さん的には困るんだよねぇ。だから、エッい!!」

 

 「グッァ!?」

 

 「束大尉!?」

 

 胸の谷間から出した兎印の自白剤入りの注射器を取り出してツカツカと彼の裏へと歩き、見習い技師の首に刺して注射する。無論、自白剤の効果は亡国機業をモルモットもとい相手に使っており実証済みである。

 

 そして、兎印の自白剤の効果は的面で見習い技師は自身の意思に関係なくべらべらと喋り出して必要な情報を全て知ることになる。

 

 無論、傍で見ていたバニング大尉は台湾で降伏した時の事を思い出し、何とも締まらない話ではあるが腹か減っていたが為に美味そうな匂いと温かいカツ丼の誘惑に釣られて素直に話していたから使われなかったと安堵しながらも、もしも目の前の彼の様に話さないで居たらと思うだけで鳥肌が立ち、束大尉の怖さを実感したのだった。

 

 そして、捕虜の彼の話を纏めるとティターンズのバスク大佐がアクシズとアナハイムが繋がりがあるだろうと睨み、捕縛された見習い技師はアナハイムへと送り込んだティターンズの基となった組織のスパイであり、GP計画の前から図面の写しや破棄された内部フレームを廃棄業者に見せかけた仲間に送ったりしてティターンズへと回していたらしい。無論、アンマンにも複数のスパイが居たらしくてグリーン・ノア襲撃もティターンズのスパイにより事前から察知されていた事を意味しており、破壊目標だったネームシップ艦のドゴス・ギアを逃したのは必然だったと言えたのだった。

 

 そして、尋問した内容の報告書を尋問室で数分で纏めた束さんは会議中の俺とシャア閣下にメールで送るのだった。無論、バニング大尉は束さんのハイスペックぶりに呆れたのは言うまでもない。

 

 アーガマの会議室には、シャア閣下を中心にムサシのオリムラ中隊の隊長のイチカ大佐やアーガマの艦長のブライト艦長やラーディッシュの艦長のヘンケンにエゥーゴの元指導者でアクシズの下部組織になってからはエゥーゴの総司令官になったブレックス中将と捕虜を尋問中のバニング大尉を除く指揮官級の士官が会議室へと集まり会議をしていた。

 

 「グリーン・ノアから離脱した例の戦艦は、木星圏から帰還中のジュピトリスに向かったと…」

 

 シャアは密かに追尾させた偵察衛星からの情報を全員に話ながら説明する。

 

 「シャア閣下、良いかな?」

 

 「イチカくん、どうした?」

 

 「大気圏突入前に遭遇した可変型のモビルスーツは多分、ジュピトリスからのモビルスーツかも知れない」

 

 「なるほど、イチカくんから報告を受けた可変型のモビルスーツの事だね」

 

 「はい、束大尉が映像から解析した結果ですが、地球圏よりも重力が重い木星圏ならば変形時の推力は必要だと言ってましたから」

 

 ティターンズを支援する組織に木星圏のコロニーが絡んでいた可能性に驚愕しながらも、パイロットがニュータイプだった事をイチカは説明し、そのパイロットのみが危険だと説きながら木星圏では無くてそのパイロットだろうと指摘し、指揮官級の士官達はそのパイロットの動向を警戒する事を決める。そして、ブレックス中将は強奪して来たガンダムMK-Ⅱの粗方の解析結果を求める。

 

「イチカ大佐、宜しいかな?」

 

 「はい、ブレックス閣下」

 

 「強奪したガンダムMK-Ⅱの解析結果はどうだね?」

 

 「はい、同じくメカニックチーフの束大尉の解析結果ですが、内部フレームのムーバブルフレームの技術自体はアナハイムからティターンズへと流れた技術で間違いないとの見解と装甲だけは旧式のガンダムタイプで見られたガンダリウム合金αを使用していた事までは解析済だと報告にありました」

 

 「やはり、試作機は試作だったと言う事だな。シャア閣下は、どう思われますかな?」

 

 「先程、束大尉のメールでの報告からではアナハイムにスパイが入り込んでいたとある。ならば、装甲材の開発は無理だったからガンダリウム合金αを使用した可能性があるが、イチカくんが言う木星帰りのパイロットの機体はガンダリウム合金α以上の硬度が有ったのだろ?」

 

 「はい、俺の機体に使われていたガンダリウム合金複合材と同等の硬度と軽さがあると回収した左腕から解っているので、旧ジオン製のグレネードやマシンガンでは歯が立たない可能性があります」

 

 「では、アクシズ製の新型のグレネードではどうだね?」

 

 「確実性は分かりませんが、改良型なら多少はマシな程度だとしか…」

 

 そんな会議の最中にアーガマの警報が鳴り、士官達はざわめくがシャア閣下とブレックス中将が一喝して静まる。

 

 そして、俺とシャア閣下にブレックス中将やブライト艦長とヘンケン艦長はアーガマのブリッジへと向い、ブリッジへと入ると3機のハイザックと強奪時に居なかったガンダムMK-Ⅱの3号機が白旗を掲げてアーガマのカタパルトへと来たのだ。

 

 『シャア・アズナブル中将並びにブレックス中将に渡したい親書を持参したわ!!』

 

 無論、ムサシのカタパルトには警戒要員としてアンとシャロの駆るブラックローズ改がロングレンジスナイパーライフルを装備してカタパルトから狙いを定めており、攻撃すれば狙撃する体制で待機する。

 

 「イチカくん、出迎えに行ってくれるか?」

 

 シャア閣下に言われ、ノーマルスーツに着替えてモビルスーツデッキへと向かうとティターンズのノーマルスーツを着た女性がガンダムMK-Ⅱから降りて来てモビルスーツデッキ内へと入る。エアロックに入りヘルメットを取った俺は彼女からビンタをされるのだった。

 

 「白いゲルググのパイロットのイチカ、久しぶりね」

 

 ビッシン

 

 「いきなり、ビンタは酷くないか?

 

 アレックスのパイロットのクリスティーナさん?」

 

 「そうかしら?

 

 ア・バオア・クーの戦いで、アレックスの頭部だけを破壊して手加減されて生かされた事は忘れないわよ?

 

 それに、勝手に二人して行方不明になったんだから男として責任は取りなさいよ」

 

 「勝手に言ってろ。

 

 新兵みたく、ど素人の動きのガンダムを落としても嬉しくないし、勝手に死なれても嫌なだけだ」

 

 そう言いながらも、俺とクリスは独立戦争の末期のア・バオア・クーの戦いで第一波のモビルスーツ隊に居たRX-78-NT1のガンダムアレックスのパイロットがクリスだった。無論、彼女は動きからしてテストパイロットなのが丸分かりな動きでぎこち無く、さっさと頭部だけを破壊して撃墜した。

 

 だが、話は終わらず撃墜後に流れ弾で死なすと後味が悪くて、暗礁宙域までアレックスを引き込み捕虜として扱いながらも落とされた仲間の予備の弾薬の管理をさせなから、俺とアンの二人のゲルググの補給の手伝いをさせていたが、俺達二人が追撃艦隊へと特攻攻撃に出て行方不明になった事に怒りを感じているだけだったのだ。

 

 無論、彼女は救助されて元隊復帰をして、ジオンの白い流星に落とされても生還したパイロットとして時の人となり、ティターンズへとスカウトされてグリーン・ノアへと配属となりガンダムMK-Ⅱのテストパイロットをしていたらしい。

 

 そして、クリスをブリッジに案内する。

 

 「コレが親書です」

 

 「む…」

 

 クリスから親書を受け取ったシャア閣下は親書を開封して読むが、眉間に皺を寄せながらブレックス閣下へと親書を渡す。

 

 「なっ、破廉恥な!?」

 

 「閣下、俺も読んでも?」

 

 「イチカ大佐も読むと良い」

 

 俺もブレックス閣下から親書を受け取り内容を読むと余りにも酷過ぎる内容に親書をグシャリと握り潰す。三人の眉間に皺が寄る光景にクリスは頭にクエッションマークを浮かべ首を傾げる。

 

 「クリス、内容は見たか?」

 

 「見てないわ」

 

 「なら、読んでみろ」

 

 グシャリと握り潰した親書をクリスに渡し、親書を読ませる。無論、クリスも信じられないと驚愕した表情になる。

 

 「なっ、何なの!?

 

 こんな内容、軍隊でやる事じゃないわ!?」

 

 「クリス、これがティターンズのやり方だ」

 

 「そっ、そんな!?」

 

 クリスに30バンチ事件で犠牲になった民間人の末路を写したコロニー内の映像やティターンズによる女性の元ジオン兵をレイプしてから宇宙空間へと投げ捨てる映像を見せ、クリスもティターンズに居る事に間違いだと気付く。

 

 「イチカ、私はアクシズ側に着くわ」

  

 「そうか…なら、見張りのハイザックをどうにか出来るか?」

 

 「無理ね。

 

 でも、イチカなら手立てはあるんじゃない?」

 

 「判るか?」

 

 「どうせ、僚機の蒼いゲルググのアンでも近くに待機させてるでしょ?」

 

 「なら、話は簡単だな。

 

 アン、シャロ、ハイザックを殺れ」

 

 『『了解、イチカ』』

 

 二人への命令を下すと同時にアーガマのカタパルトに待機する3機のハイザックはムサシのカタパルトで狙撃する為に待機していた二人のブラックローズから放たれたビームによりコクピットを狙撃されて撃墜されたのだった。

 

 しかし、ハイザックを撃墜して直ぐにアーガマのカタパルトからブリッジの会話を偶然にも聞いていたカミーユが自機のブラックローズ改に乗り、カプセルに人質にされているカミーユの両親や近所のファの両親などの数十名を救助すべく飛び出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 



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カミーユの両親の死 後編

 

 きっかけは偶々、この住んでいるコロニーの基地化という偶然だった。

 

 「さっさと歩け!!」

 

 アサルトライフルを装備する兵士が移動の期日前だというのに強制排除する為に俺が住む街にトラックに乗りやって来た。

 

 「キャア!?」

 

 「ファ!!」

 

 兵士に押され転倒しそうになる幼馴染のファの手を握り、俺達二人は空港に向い走り出す。その後の事は全く覚えては居なかったが、気付けばブライトさんが艦長をするテンプテーションに乗り込んでいた記憶だけで、乗客は一緒に乗り込んだ近所のお姉さんや空港に居合わせた数名だけだった。

 

 そして、地球へと降下したら台湾の空港では戦闘中で、蒼と白く染められたモビルスーツと蒼とライトブルーの同型機の2機に助けられて救助された。

 

 だが、助けられたのに蒼と白く染められたモビルスーツのパイロットとブライトさんとで揉めている姿に俺はそのパイロットを蹴り飛ばしたが、茶髪でストレートヘアのファぐらいの年齢の少女に殴られ、パイロット達に羽交い締めにされた。だが、あんな細身の少女に殴られた事にキレた俺は振り解き、少女に殴り返すが逆に伸され、止めに助けてくれたパイロットの奥さんだったらしく妊娠中だった事をファに教えられて躊躇したスキに殴られ気絶した記憶。

 

 そして、暫くはその部隊の現地志願兵扱いでいたが、ある作戦は俺が住んでいたコロニーへの襲撃だった。

 

 無論、作戦は成功してガンダムMK-Ⅱの強奪する事に成功する。

 

 だが、訓練と整備の日報を書き終えてブリッジに提出に向かった所で指揮官級の会議だったと気付くが遅く、警報と同じくしてブリッジに向かって来たブライトさんにイチカ隊長やヘンケンさん達がブリッジへと入る姿。

 

 暫くしてイチカ隊長がブリッジから出て、茶髪の一人の女性パイロットを案内して来たが、二人は一年戦争時の知り合いだったと会話を聞いて知ってしまうが、ブリッジから聞こえた来たのは母さん達が人質にされており、人質の返還条件が強奪したガンダムMK-Ⅱの全機返還だった。

 

 「どうして、母さんが人質なんだよ!」

 

 日報をその場に投げ捨ててモビルスーツデッキへと向かう。無論、ノーマルスーツには着替えてブラックローズ改のコクピットに滑り込んだ所でモビルスーツハッチの外でガンダムMK-Ⅱの3号機を監視するハイザック3機が狙撃されて力無く漂った後に爆発する。

 

 「狙撃したの、アン副隊長とシャーロット教官だな…」

 

 一年戦争の生き残りの大エースのイチカ隊長の奥さんの二人だが、彼女達もまたイチカ隊長の部隊にいたエースらしく、アン副隊長はイチカ隊長の僚機をやりこなすだけの高い技量と重火器が大好きと変わった女性だったが、厨房のイチカ隊長の正妻とも言える鈴さんとは髪の色が違うだけでそっくりだったりする。

 

 「まぁ、チャンスだよな…」 

 

 モビルスーツハンガーのロックを外して、ウェポンハンガーからビームソード付きビームライフルを装備して反対側から出撃したのだった。

 

 

 カミーユが出た事は直ぐに解った。

 

 「フォウさん、カミーユが!!」

 

 日報を出しに行った筈のカミーユが戻らないとファが慌てながら私に言う。私だって、こんな事がなければ私とファの二人でカミーユを囲いイチャコラしたいのが正直な所なのだが、未だにカミーユは頑として拒み続ける為に『奥さんが増え続ける、イチカ隊長を見習え!』と二人で叫びながら食堂へと連行し、食堂で鈴さん特製の酢豚定食であーんをしながらにっこりと笑いながら連携攻撃をしたぐらいだった。

 

 まぁ、いち早くカミーユといちゃつきたい私もノーマルスーツに着替えて、カミーユの機体と同型機のブラックローズのコクピットへと滑り込む。

 

 そして、このブラックローズはイチカ隊長機のブルーローズ改の量産型らしいが、受領した当初は『ハァァ!?コレが量産型!?』と度肝を抜かれた程に衝撃的だったし、ティターンズでもここまでの高性能で扱い易い量産機は無くて、ティターンズで同じ感覚で操れる機体を探すとすればパイロットに合わせたカスタム機ぐらいしかないだろう。

 

 私とカミーユの機体はNT用に改修され、量産型でありながらもブルーローズ改と同じファンネルが装備されている時点で、私が乗っていたサイコガンダムよりも高性能機をポンと配備させるアクシズが相手ではティターンズと連邦の未来は暗い事だろうと思ってしまった。

 

 私もモビルスーツハンガーのロックを外しながら、ウェポンハンガーへと手を伸ばして握るのは、ビームソードを外したタイプのビームライフルを握り、左腕に装備するのは専用のミサイルランチャー付きでブルーローズ改と同じシールドを装着してカミーユを追ったのだったが、イチカ隊長のブルーローズ改と一緒にいたクリス大尉のガンダムMK-Ⅱだと思ったら、クリス大尉は一度ムサシへとイチカ隊長と戻ったらしくてヴァルキリー小隊仕様の純白のカラーリングのブラックローズ改を乗り来たのだった。

 

 『フォウ、今回の勝手な出撃は見逃すが、クリスを援護してやれ』

 

 『イチカ、私が一緒だと不満なわけ?』

 

 『そんな訳あるか!!

 

 ヴァルキリー小隊仕様だと、俺達の機体のスピードに付いて行くのが無理だから言ってるんだ!!』

 

 『あぁ、私が乗る機体はイチカの機体のスペックダウン仕様なのね』

 

 『いや、機動性だけだ』

 

 『じゃあ、そんな訳でフォウ、よろしくね』

 

 私はクリス大尉を僚機にし、イチカ隊長はアン副隊長とシャーロット中佐を僚機に一気に加速して向かったのだった。

 

 『ねぇ、イチカの機体と私が持って来たガンダムMK-Ⅱで真面目に殺りあったら、私が死ねる自信があるのは気のせいよね?』

 

 「多分、第2世代機のガンダムMK-Ⅱと第4世代機のイチカ隊長のブルーローズ改では勝負すら成立しないと思いますが?」

 

 「えっ…第4世代…」

 

 「因みにクリスさんのヴァルキリー小隊仕様のブラックローズ改は第3.5世代型ですよ?」

 

 「マジ…」

 

 私の一言にコクピット内で固まるクリス大尉だった。

 

 

 イチカ隊長がムサシから出撃した頃、俺は母さんが人質にされているカプセルを見つける。

 

 「母さん!!」

 

 叫びながらも母さんが入るカプセルの他には、ファの両親が入れられたカプセルや親父が入れられたカプセル。そして、近所では親しく接してくれた若いお兄さん夫妻の二人が入れられたカプセルなど、十数人が人質にされていたのだ。

 

 無論、カプセルにはハイザックが6機と隊長機だと思われる一年戦争時に少数だけ生産されたRX-78-FAフルアーマーガンダムが見張り、ハイザックが何時でも撃てる様にマシンガンを構えていたのだった。

 

 「カミーユ!!」

 

 「助けて!!」

 

 中では、叫びながらカプセルをドンドンと叩く母さんの姿や助けを求める人質の人達。

  

 まずは、人質から距離を取らせなくてはと、ファンネルを展開しようとするが聞き覚えある声に脅迫される。

 

 『ファンネルを使うなよ?

 

 使ったら、バルカンでカプセルに撃つ!!』

 

 「軍人が、生身の人をカプセルに詰めて人質を使うなんて!!」

 

 『人質?

 

 どうせ、ホログラムだろ?』

 

 「その声は、空港で俺の名前で反応して男女と言ったジェリドかよ!?」

 

 「ちぃ、カミーユかよ!!」

 

 ジェリドが叫んだ瞬間、乗っていたフルアーマーガンダムのトリガーを押してしまい、ヘッドバルカンをカミーユの母親が入れられたカプセルへと放ってしまう。

 

 「あぁ、カミーユ…」

 

 「かァァァさぁァァん!!」

 

 カミーユは母親を庇おうとカプセルへと手を伸ばすが間に合わず、母親は砕けるカプセルと共にバルカンの弾丸を浴びて大量の鮮血がブラックローズの手に付着しながら人だっただろうバラバラな遺体と成り果てたのだった。

 

 『本当に生身かよ!?』

 

 『貴様が、母さんを!!

 

 行け、ファンネル!!』

 

 カミーユの怒りに任せたブラックローズの操縦と一気に展開したファンネルの攻撃は、全てのハイザックへと襲い掛かり、ハイザックはカプセルから距離を取ろうと離脱する。

 

 しかし、数機のハイザックは離脱しながらカプセルへとマシンガンを放ち、ファの両親やお兄さん夫妻のカプセルを撃ち抜き、赤い鮮血だけが宇宙に舞う。

 

 「貴様らがァァァ!!」

 

 『チィ!?

 

 カミーユもニュータイプかよ!!』

 

 「ジェリド、貴様だけは!!」

 

 ビームソード付きビームライフルをビームソードへと変形させ、ジェリドのフルアーマーガンダムへと斬り掛かる。無論、ジェリドも腰のラックに取り付けられたビームサーベルを抜き受け止めるが、旧式であるフルアーマーガンダムのパワーではブラックローズのパワーを抑えられずにビームサーベルごと左の肩から腕に掛けて斬り裂かれて腕を失い、ハイザックはファンネルのビームに撃ち抜かれて炎の球体へと早変わりしたのだ。

 

 『チィ、味方は全滅かよ…引くしか無いか…』

 

 「ジェリド、逃がすかよ!!」

 

 「カミーユ、そこまでだ!!」

 

 イチカのブルーローズ改とアンとシャロのブラックローズ改がジェリドのフルアーマーガンダムを追撃をしようとするカミーユのブラックローズに追い付き制止させる。

 

 「だけど、母さんがアイツに殺されたんだ!!」

 

 「なら、憎しみたければ俺を恨み、殴りたければ俺を殴れ。そして、殴る前に生存者達の救助が最優先だろカミーユ?」

 

 「くっ…イチカ隊長、恨みますよ…」

 

 イチカに説得され、残りの無事だった人質の入ったカプセルだが、爆発物がある可能性から回収して即時爆発物の解体ができる束大尉の居るムサシへと帰還する。

 

 ただ、生存者はカミーユの父親だけだったが、帰還して直ぐにモビルスーツデッキのハンガーで整備を行おうとするイチカ隊長のブルーローズ改を嫌な感じで見ていたのが気掛かりで仕方無かった。

 

 

 そして、カミーユの父親の尋問を終えて、容疑は晴れて艦内散策をしていたらしい。

 

 無論、両親を失ったファと母親を無くしたカミーユも自室に籠もったままだとフォウから報告を受けるが、落ち着くまではそっとして置くことにするけど、鈴がファの部屋に行っているし、ウラキ中尉とキース中尉にカミーユを任せてあるから大丈夫だと思うのだった。

 

 

 しかし、イチカの思惑ははっきり言って裏切られ母親の死から立ち直り、ムサシでのモビルスーツデッキにて気晴らしにと軽い操縦訓練に向かったカミーユとフォウ。そして、教官にイチカが向かった時に起きた。

 

 「この機体を持ち帰れば、私は」

 

 カミーユの父親が呟きながら、イチカの専用機のブルーローズ改へと乗り込みパネル操縦しながら動力へを入れるのだが、偶然にもイチカのISでの専用機のブルーローズのコアである白星と繋げてのサイコミューシステムとの連動を兼ねた調整を束さんがしていた。

 

 無論、カミーユの父親がブルーローズ改に乗り込んだのは束さんは乗り込むのを知っており放置している。

 

 何故なら、ブルーローズ改のコクピットには…

 

 「何だ、パネルに繋がった、この球体は?」

 

 「ねぇ、私に触れて良いのはイチカだけよ」

 

 「なっ!?」

 

 とカミーユの父親が球体(白星)を触った瞬間、眩い光と共にコアが変化して漆黒のドレスに身を包んだ黒髪のストレートヘアの豊満な胸がある長身の女性へと変わり、女王の威厳と威光をカミーユの父親が怯える程に放ちながらも勝手にコアに触れられ、イチカのシートへと座り込んだ事に静かに怒る白星は、カミーユの父親の首を右手で握り吊るしながらも左手を軽く揮うだけでコクピットハッチが開き、カミーユの父親の首を握り吊るしながらハッチへと歩き履いているピンヒールがカツカツと鳴りながらハッチの上へと行くのだった。

 

 

 「あらら、白星ちゃんが進化しちゃったよ…」

 

 「えっ、白星なのか!?」

 

 謎の女性が束さんの下に来た時、いっくんがあの女性が白星だと知り、驚愕の表情を浮かべる。

 

 まさか、白騎士で使ったコアを一度は初期化しだけど、新たに生まれた人格の白星ちゃんと前の人格の白騎士とで戦い白騎士を眠らせて、このコアの主導権を握り、全てのISコアを統べる女王へと進化していたのは驚きだった。無論、束さんの専用機の白椿のコアの人格と鈴ちゃんの専用機の紅式のコアの朱雀が酷く怯えながら証言したのだから間違い無かった。

 

 だけど、カミーユの父親は馬鹿だね。

 

 何故なら、女王の逆鱗に触れたのだから…

 

 束さんはブルーローズのコクピットを見上げると、白星がカミーユの父親の首を握り締めているのが判る。

 

 「束さん、白星を止めなくても良いのか?」

 

 「いっくん、幾ら束さんでも女王の逆鱗に触れた怒りを止めるのは無理だよ」

 

 「束大尉!!」

 

 「カミーユくんも父親だけど諦めてね。女王の逆鱗に触れた以上は死以外は、彼女が許さないだろうから」

 

 「そんな!?」

 

 「私の逆鱗に触れた者には死を…」

 

 「金ならいくらでも出す‼

 

 命だけは…」

 

 「消えて…」

 

 スッパァァン

 

 カミーユが叫ぶと同じく、首を握ったままの白星は拳を握り命乞いをするカミーユの父親の顔面を殴り、スイカが破裂する様にカミーユの父親の頭が殴られた衝撃で首から上が破裂して即死し、父親の遺体と首から吹き出す血液がブルーローズ改の前に漂うのだった。

 

 「死んだら、意味が無いだろうが!!

 

 親父のバカヤロー!!」

 

 カミーユはブルーローズ改を盗もうとし、あの女性に殺された父親の事を叫ぶのだった。

 

 

 だが、空気を読まない所は制作者の束さんに似いているらしくコクピットハッチから飛び降りてイチカへと抱き付き、自身の豊満な胸にイチカの顔を埋める。

 

 「イチカに触れられるわ!!」

 

 「ワップッ⁉」

 

 女王の威厳と威光は何処に置いて来たのか分からなくなる程にイチカを抱き締め甘える白星だったが、豊満な胸に埋められたイチカは次第に顔が青くなり酸欠で気絶したのだった。

 

 

 

 

 



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木星帰りの男

 

 フランクリン大尉のブルーローズ改の強奪未遂の果てに死亡してから次の日、アーガマとラーディッシュはアクシズ主体で行う地球降下作戦に参加すべくアンマンへと帰投する進路を取り、アーガマへと出向していたカミーユとフォウにファはムサシへと帰還してウラキ中尉とキース中尉は引き続きアーガマのモビルスーツ隊へと配属となる。

 

 「イ〜チ〜カ〜」

 

 ブルーローズのISコアである白星が擬人化してからは、今までの連続した戦闘により白星とは会話も含めて全く構って無かった反動からか、俺に抱き着いたままずっと甘えながらハートマークを浮かべた瞳のまま離れ無かった。時折、白星のブルーローズ譲りの馬力に抱き締められ、その豊満な胸の谷間に顔が埋められた事で何度か酸欠により気絶と背中に走る痛みによる覚醒を繰り返す俺とそんな状態の白星を睨む鈴やアンにシャロなどの妻達との漂う空気には、俺の飲みかけのホットコーヒーが瞬時に氷へと変わる程の冷たい空気が食堂には漂っていた。その光景を見守る様に、カミーユやフォウとファの三人がどうしたら良いのかとアタフタする姿に束さんですら匙を投げる状況の食堂の光景だった。

 

 そんな空気の中でも、ムサシは次の任務地はグレミー・トトがエルピー計画の子供達を全て失った反動とソロモンの工廠とアナハイム製のモビルスーツが一切回されない不満から、本拠地のアクシズの工廠での大量生産が出来るモビルスーツの開発を無許可で推し進めた理由などから反乱の兆しありと監視を続けていた新総統のハマーンが判断して、アクシズの本拠地である宇宙要塞のアクシズへの強行偵察を行うべく、長期航海に備えて大量の補給を行う為に補給艦とのランデブーポイントへと向かっていたのだ。

 

 アクシズへの偵察任務をオリムラ中隊へと任せたソロモンのハマーン様も、シャア閣下を支援する為に地上戦の経験が豊富であるシーマ艦隊を主力としてアクシズの主力によるバリュートシステムを装備したモビルスーツ隊によるジャブロー降下作戦に向けて準備中であり、ムサシ級の二番艦であるヤマシロと三番艦のフソウが就役して、ハマーン様が座乗するアクシズ艦隊の新旗艦であるフソウではベテランパイロットを中心にしたモビルスーツ隊の編成中だった。

 

 

 グリーン・ノアから移動してから5日目の昼時にはソロモンから来た4隻のエゥーゴ所属の補給艦のコロンブス改とエゥーゴ所属の護衛の3隻のサラミス改が補給物資を積み込み、ランデブーポイントの暗礁宙域にて合流を果たす。

 

 無論、1隻のコロンブス改にはエマ中尉とクリス大尉の機体として用意されたオリムラ中隊仕様の量産型のブラックローズ改の2機だけが積み込まれており、メカニックチーフの束さんはコロンブス改へと移りながら搬入作業の準備を始めたのだった。

 

 そして、ムサシの両舷にはコロンブス改が横付けされて、搬入ゲートを繋ぐと大量の食料や弾薬などの補給物資が補給されたり、別のコロンブス改からはムサシへと給油用のホースが繋がれ推進剤の補給に追われる事になる。

 

 そんな最中に、例のモビルスーツの襲撃が起こったのだ。

 

 『ほう、こんな暗礁宙域で補給中だったか…

 

 ならば、あの補給艦を沈めるか…』

 

 最初の被害は、束さんが搬入作業で向かったコロンブス改で、二条のメガ粒子砲を放つモビルアーマー形態の例のモビルスーツ。

 

 「げっ、不味いじゃん!?」

 

 『余程、そのモビルスーツが大事だという事なら…』

 

 「狙われた!?」

 

 束さんは搬入口からメガ粒子砲が来るのが判り急ぎ、白椿を展開しながらブラックローズ改2機をガンダリウム合金製のメタルワイヤーで拘束して繋ぎ、牽引しながら離脱するが反転したモビルアーマーに白椿が狙われてメガ粒子砲を放たれ、白椿はメタルワイヤーを切り離して離脱する。

 

 『小さい蚊蜻蛉が逃げ切ったか…』

 

 メタルワイヤーを切り離した直後には、2機のブラックローズに吸い込まれる様にメガ粒子砲が直撃して無人のブラックローズは爆散する。

 

 束さんは爆散したブラックローズを見ながら悔しそうに白椿でニ重瞬時加速で加速しながらムサシのモビルスーツハッチへと命からがら避難し、モビルスーツハッチを閉めさせると白椿を解除してからエアロックに向い、再びモビルスーツハッチを開けるように支持を出す。

 

 「メカニックはモビルスーツが出せるようにして!!」

 

 「「「「了解!!」」」」

 

 支持を出した間にノーマルスーツに着替えて直ぐにノーマルスーツ姿のアンとシャロがヘルメットを抱えてモビルスーツデッキに到着し、自機のモビルスーツへと乗り込む。

 

 「アン、ブラックローズ改出るわよ!!」

 

 「シャーロット、ブラックローズ改出るわ!!」

 

 「イチカ隊長は?」

 

 「メガ粒子砲で搬入通路がやられた影響で遅れるそうです!!」

 

 「「!?」」

 

 そう、アンは叫びながらもカタパルトへと固定せずにスラスターを軽く吹かしながらモビルスーツハッチから出るが、反転して来た例のモビルスーツに出た所を狙われてメガ粒子砲を放たれ、スラスターを吹かして機体を捻る様に躱すが、躱した先には補給作業で繋がるコロンブス改がおり、メガ粒子砲がブリッジへと刺さりコロンブス改は弾薬が誘爆して大爆発を起こして食料などのコンテナを巻き込み轟沈する。

 

 「あっ、あたし達の食料が!?」

 

 「食べ物の恨み!!」

 

 『花より団子とはな…』

 

 補給艦をやられた怒りにアンは、ヘヴィマシンガンを銃身が真っ赤になるまで乱射をするが、モビルアーマーの高い推力により加速され、モビルアーマーには一切当たらずに離脱される。

 

 「イチカが苦戦するのも頷けるわね…」

 

 「アン、パターンBで行きましょ!!」

 

 「シャロ、了解!!」

 

 イチカに次ぐ高い技量のアンとシャロがペアを組み、アンが囮となりながらシャロがモビルアーマーへと牽制を仕掛ける。

 

 『チィ、一年戦争の生き残りは伊達では無いか…

 

 だが、落ちろ蚊蜻蛉!!』

 

 二人でも読み難い機動を描き、マシンガンやビームを躱す例のモビルスーツはモビルアーマー形態からモビルスーツ形態へと変形して、ヘヴィマシンガンを乱射するアンのブラックローズへとビームサーベルを展開して斬り掛かり、アンのブラックローズ改を胴から真っ二つに斬り裂く。

 

 「アン、嘘でしょ!?」

 

 「ゴッフゥ……イチカ、シャロ、ゴメ…」

 

 ズッガァァァァン

 

 アンは砕けたモニターの破片がお腹へと刺さり口から吐血し、ショートするコクピットの中でアンは腹部からの激痛により気絶しながらも、ISコアの蒼が懸命にアンの生命維持をしながら、コクピットブロックの脱出ポッドをブラックローズから射出してアンは脱出し、シャロがコクピットの球体を掴み回収する。だが、脱出した直後にアンのブラックローズは四散したのだった。

 

 そして、シャロと入れ替わる様にイチカも出撃する。

 

 「シャロ、アンは無事か!!」

 

 「うん、束さんがナノマシンを注射したから大丈夫よ!!」

 

 だが、イチカには無事だと言いながらも実際は、アンはコクピットのモニターの破片が腹部に刺さり内臓を酷く損傷して重傷で白星が人体再生をしてくれ無かったら、アンが死んで居たかも知れない。

 

 イチカも白星を通じてアンが重傷なのは知っていたし、心配させまいとするシャロの気遣いだと判るが、妻を傷付けた代償はあのパイロットに支払って貰うとイチカはキレていたのだった。

 

 「よくもアンを!!」

 

 『ほう、大分成長した様だな』

 

 キレたイチカは、サイコミューの制御リミッターを切るとサイコフレームと共振させながらブルーローズ改を操り、ファンネルを展開しながら例のモビルスーツの回避コースを全て潰しながら瞬時加速で一気に懐に入り、シールドの先端で例のモビルスーツのモノアイへと突き刺してモノアイを破壊する。

 

 『なっ、モニターが!?』

 

 「ウラァァァァ!!」

 

 『不味い!?』

 

 シールドを突き刺したまま、例のモビルスーツへと腹部周りを蹴り飛ばして変形機構が歪み変形が不可能となるが、そのパイロットもビームサーベルでシールドがある左腕を斬り裂き、イチカのブルーローズの左腕を破壊する。しかし、完全にキレているイチカはお構い無しにスラスターを全開に吹かし、例のモビルスーツのメガ粒子砲があるバックパックへとサーマソルトキックを食らわせて破壊して掴むとコクピットがあるだろう辺りを膝蹴りしながら装甲を歪ませる。

 

 「大事な妻を傷付けやがって!!」

 

 『舐めるな!

 

 成り損ないのニュータイプが!!』

 

 「大人しく、俺に殴られやがれ!!」

 

 その、例のモビルスーツもビームサーベルで斬り掛かるが、ビームサーベルを握る腕を蹴られビームサーベルを手放すが、グレネードランチャーでブルーローズの脚部へと放ち、グレネードが直撃した左脚が膝下から吹き飛ぶ。

 

 「これで、トドメだァァァァ!!」

 

 『パプテマス様!!』

 

 『サラか!?』

 

 双方の機体が満身創痍になりながらも接近戦が続き、予備のビームサーベルを抜いたイチカが例のモビルスーツに斬り掛かろうとした瞬間、対艦ミサイルを大量に装備する重装備のモビルスーツが割り込み、例のモビルスーツを突き飛ばして身代わりとなって、イチカはそのモビルスーツをビームサーベルで斬り裂く。

 

 『パプテマス様…』

 

 ズッガァァァァン

 

 サラと名乗る女性パイロットは、呟きながらコクピット内に入った炎と共に焼かれて即死し、切り裂かれたモビルスーツは対艦ミサイルの誘爆と共に大爆発を起こして四散したのだった。

 

 『貴様、許さんぞ!!』

 

 「くっ、なんてプレッシャーなんだよ!?」

 

 シロッコもサラを殺された事に完全にキレ、蹴られた影響で歪みながらも腕を変形させてクローを展開する。

 

 『やはり、あの時に貴様を落して置くべきだった。

 

 落ちろ!!』

 

 「やらせるかよ!!」

 

 クローを躱しながら、ビームサーベルでカウンターを狙うが、破壊された左脚の影響で制御が甘くなってしまい、ビームサーベルを抜いた右腕を振り下ろされた瞬間だった。

 

 「大事な夫はやらせないわよ!!」

 

 「ジュンコ!?」

 

 純白のブラックローズが間に割って入りブルーローズを突き放し、ブルーローズの代わりにジュンコのブラックローズがシロッコのモビルスーツのビームサーベルでコクピット付近を切り裂かれる。

 

 「ゴッフゥ…イチカ…愛してるわ…」 

 

 ヘルメットのバイザーが吐血した血液で真っ赤に染まりながら、俺に愛していると言うとジュンコは力無くグッタリと前屈みになり、コクピットに火が回るとジュンコは炎に焼かれながら純白のブラックローズ改は炎に包まれ爆発すると四散したのだった。

 

 そして、この爆発を利用して離脱したシロッコの乗るモビルスーツのメッサーラの姿は無く、純白のブラックローズの残骸が虚しく漂うだけだったのだ。

 

 「くそぉぉぉぉ!!」

 

 大破したブルーローズのコクピットではイチカが涙を流しながら叫びながらパネルを叩くと、回収に来たシャロがコクピットへと入り俺を優しく抱き締めたのだった。

 

 「イチカ、私は大丈夫だからね…」

 

 「シャロ…うわァァァァァァ!!」

 

 抱き返したイチカは力強く、私を抱き締めて声を上げてジュンコの死を悲しみ泣き叫んだのだった。

 

 

 そして、補給艦隊の壊滅とサラの乗っていたパラス・アテナから放った対艦ミサイルにより主砲のメガ粒子砲が破壊されたムサシの中破に加え、オリムラ中隊の主要戦力のアンの重傷とジュンコの戦死によるショックからイチカの戦意喪失で戦えない以上は、宇宙要塞アクシズへの強行偵察は無理と私が判断を下してソロモンへの撤退を決めると、一路ソロモンへと戻るのだった。

 

 

 



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天災の本気

 

 

 「はっはははは…」

 

 あの糞ニュータイプのせいでいっくんの魔改造したブルーローズ改とアンちゃんのブラックローズ改やジュンちゃんと一緒に量産型のブラックローズ改までも一気に失くしちゃったし、今のムサシの指揮が出来るのはシャロちゃんだけだ。また、あの糞ニュータイプが襲撃でもしたらムサシが沈むのは確実だよ。

 

 となれば、最高傑作だと言えたシャア閣下のナイチンゲールでも不十分だと言う事に成るんだね。

 

 あぁ、本当に笑いが止まらない。

 

 この、大天災を本気にさせたのだから…

 

 束さんは、自室の引き出しからとある図面が描かれたディスクを取り出してから、今日のいっくんの戦闘データを無機質な表情になりながら打ち込んで行く。

 

 「思い切って、原点回帰しながら16m辺りまで小さくするかな…」

 

 そのラボのスーパーコンピュータにディスクを差し込みながら十数台のモニターを一瞥し、新型のいっくんの達のモビルスーツを設計して行く。

 

 このモビルスーツの完成目標は、ジェネレーターの出力とスラスター関連の出力はそのままに小さく小型にする事。そして、装備は原点回帰して標準装備だけにしながらも、大出力のジェネレーターからの余剰エネルギーで使える装備の開発と高機動下での強力な近接兵装と近中距離で扱える射撃と近接戦闘の両方がこなせる武装の必要性から序に開発する。

 

 そんな事を考えながら、未だに目覚めないアンちゃんの治療に修理と設計を繰り返して、あの日から既に6日も眠っていない。無論、現在はあの宙域から命からがらソロモンに帰投しているけど、この束さん専用の研究室兼工廠ではムサシのモビルスーツが全て降ろされて、ムサシは修理ドックにて改装と修理を同時進行しながら進められている。

 

 そして、このモビルスーツに必要な装甲材は撃墜したパラス・アテネから回収したガンダリウム合金では硬度はあるけど重く、ならガンダリウム合金複合材以外には考えられない。

 

 何故なら、現時点での数世代も先の装甲材だと自負出来るからだ。

 

 無論、IS技術で培ったスラスター技術や装甲技術も全て盛り込み、遠慮は一切無しで開発してやる。

 

 ふと思い出して移動ラボの『吾輩は猫である』を起動させてモニターを開くと、向こうの世界でハッキングして手に入れた各国のISの専用機の一覧に目が行き笑ってしまう。

 

 「何だ、一番欲しいものがあるじゃん!!」

 

 目に映ったのは、ロシアが開発した三世代型のミステリアスレディとホワイトラビット社の試作機で、ビーム兵装を装備をした束さんの開発したゲルググの改良機だった。無論、その装備は開発したジェネレーターの出力不足でビームシールドだけは使えなかったが、こちらには解決出来るだけの小型で超高出力のジェネレーターがある。

 

 「この試作機で装備していたビームシールドの装備は標準装備に、この大出力の大型ビームライフルの構造は改良するけど、そのまま小さくしてジェネレーターに直結してと…」

 

 キーボードを打ちながら、計算と設計を同時進行で進めながらも、戦艦の大口径のメガ粒子砲並の超火力を実現する為にはジェネレーターに直結する以外に解決方法は無い。それと同時に最大出力となると高温になるジェネレーターの強制冷却機能の強化の必要性からGP計画のガンダム試作2号機である専用のシールドで使われた核弾頭の爆発から護る為の技術を採用しながらも、その巨大な冷却装置の機能はそのままにして限界まで小さく小型にして、ジェネレーターの強制冷却にはシミュレーション上は問題無しの結果となり安堵する。

 

 高い機動性なら、この装備も使える装備だと確信しながら高出力のジェネレーターから得られるエネルギーを電力に変換し、レールガンの技術を応用しながら回収したガンダリウム合金複合材以上の硬度だけがあるパラス・アテネとメッサーラの装甲材であるガンダリウム合金を複製可能かと分析し、複製が可能だと判るとそれをガンダリウム合金の装甲もいとも簡単に貫く鋭いランスの素材としながら、ショットランサーへと昇華させる。

 

 そのショットランサーには、ミステリアスレディと同じくガトリングガンといきたいが、遠慮がいらないから超硬度のあるISの装甲用の特殊合金を芯にした徹甲弾にしたヘヴィマシンガンを連装装備にしながらレイアウトを決めて行く。

 

 アンちゃん達のモビルスーツもブラックローズを元の高さの22mから16m(正確には15.6m)まで小型化した基礎設計は終わり、いっくんやカミーユにフォウのNT専用機にはアナハイムをハッキングして得た試験段階のバイオセンサー技術を束さんが独自に完成させたバイオセンサーとこのサイコフレームを合わせた機体に仕上げるのだ。

 

 ただ、問題はファンネル専用に使用するジェネレーターだが、これ以上はこの高出力のジェネレーターを極小サイズまで小型化出来ない問題でもあり、超高出力のジェネレーターでは、このファンネルに組み込むには大き過ぎたのだ。

 

 だが、こちらには向こうで回収したリゲルグのビームサーベルのジェネレーターを元にIS用に開発した超小型化したジェネレーターがあり、それをファンネルに内蔵する事で問題は解決済みだった。

 

 なら、後はブルーローズとブラックローズを小型化した図面を元にしながら、超高出力のジェネレーターに変更しながら開発をして行くだけだった。

 

 更にモックアップが完成しながらも不眠の開発から3日後、いっくんのブルーローズ改の後継機とも言えるTMX-005ブルーローズMK-Ⅱの基礎設計と基本仕様が纏まり、ブルーローズ改との違いは殆ど無いのだが、敢えて装備が強化されており超高出力のジェネレーター直結にしてバックパックに装備され、戦艦の大型メガ粒子砲と同等以上の威力がある伸縮式のハイパーメガビームランチャーが追加となり、ファンネルの数が6基へと減ったが改良型のファンネルがナイチンゲールのファンネルと同じ性能でありながら機体に合わせたファンネルの大きさだが、ビームの出力はブルーローズMK-Ⅱのファンネルが上である。無論、ビームライフルも改良され、ビームソード付きビームライフルからハイパービームサーベルとして使えるビームライフルへと代わり、予備のビームサーベルは腰のアーマー内に内蔵されて扱い易くなった。

 

 そして、ブルーローズの量産型と位置付けられていたブラックローズも新設計のTMX-006ブラックローズⅡとして正式に登録され、武装はブルーローズMK-Ⅱとは基本装備は変わらないが、通常装備にはヘヴィマシンガンを内蔵したショットランサーを装備している位が僅かな違いである。

 

 その2機の最終の設計を終えた束さんは、直ぐにブラックローズの製造をソロモン工廠での管理者権限でブラックローズⅡへと変更をさせて、製造ラインに乗せながらブラックローズⅡの量産体制へと移行させ、別のラインではNT専用とするブルーローズMK-Ⅱの製造を開始させたのだった。

 

 そして、初期生産型をオリムラ中隊仕様に改装しながらも、この世界では作れないと言っていたISコアの製造を密かに始め、オリムラ中隊のみんなだけには行き渡るようにと部隊の人数分のコアを作り上げたのだった。

 

 「これで、ジュンちゃんの二の舞いは起らないよね……」

 

 ドッサァ

 

 「たっ、束大尉!?

 

 たっ、担架だ!!

 

 チーフが倒れた!!」

 

 「大丈夫だ。

 

 疲れて眠っただけだ」

 

 「ムッニャァァ…いっくん…だいしゅき…」

 

 束さんは呟きながら、完成した初期生産型の8機のブルーローズMK-Ⅱと20機のブラックローズⅡをモビルスーツデッキから眺め、キャットウォークで束さんは力尽き倒れると死んだように寝言を言いながらも深い眠りに着いたのだった。

 

 

 ソロモンの修理ドックでは大型の対艦ミサイルを食らい中破したムサシがドック入りしており、ムサシへの修理作業と改修工事が同時進行で行われ、副砲の三連装のビーム砲は両舷にある4基は主砲塔後部に搭載された副砲以外は全て降ろされ、代わりに三連装の対空レーザー砲座が取り付けられて副砲と交換しながらも、三連装の対空レーザー砲を大量に積まれた対空兵装強化型へと改装をしている状況だった。そして、破壊された主砲で大口径の三連装のメガ粒子砲は三基とも全て降ろされ、連装砲型の大口径のハイメガ粒子砲へと変更となる。

 

 

 そんなムサシの修理状況と改装状況を纏めた書類を抱えて艦長のツキノ中佐はソロモン内のオリムラ邸へと私服姿の和服の着物に着替えて向かう。

 

 「私、この服装だと浮いちゃうかな?」

 

 カグラザカ家に代々伝わる一輪の菖蒲が描かれた白い西陣織の着物と加賀の漆で染められた下駄を履いた姿のツキノ中佐は別の見方をすれば、お見合いに行くお嬢様にしか見えないのは気のせいだと思いながらも、このご時世に着物は無いだろうとオリムラ邸の近所の士官級の奥様方はツキノ中佐を見て密かに思う。

 

 元はミネバ様の邸宅だったが、洋式の左右対称の屋敷を前にツキノ中佐の着物はやはり浮いて見えてしまう事に気付かない。だが、ツキノ中佐の目に飛び込んだのは、木製のアンティーク調の玄関のドアが壊れながらイチカ大佐がシーマ閣下に蹴られて吹き飛ぶ姿だった。

 

 「なに、何時までイチカは落ち込んでいるんだい!!」

 

 「グッハァ!?」

 

 「いっ、イチカ大佐!?」

 

 「ツキノは手を出すんじゃないよ!!

 

 今、この馬鹿を修正の真最中さね。

 

 こんな姿をジュンコ少尉が見たらがっかりだろうさね!!」

 

 「!!!?」

 

 イチカ大佐の胸倉を掴み往復ビンタを入れるシーマ閣下と玄関の奥から走りながら来るブラウスにホットパンツの私服姿のシャーロット中佐に妊婦に大人気のゆったりとしたワンピースだが、色が赤いワンピース姿の正妻の鈴さんは鋭い目付きでイチカ大佐を睨む。

 

 「シーマ閣下の言う通りよ。

 

 何時までも腑抜けてんじゃないわよ一夏!!」

 

 「鈴、妊婦なんだから興奮しないでよ!?」

 

 「うっさい、シャロ!!

 

 腑抜けた一夏をあたしもぶっ飛ばさなきゃ、気が済まないわよ!!」

 

 玄関先での出来にイチカの妻達が集まりイチカを囲む。妻達の人数だけでも近所の奥様方は自分の不甲斐無い夫と比べて羨ましそうに見るが、イチカの妻達は現役軍人だけに下手な事は言えないのが正直な感想だと言える。

 

 そんな中、クリス大尉に肩を借りて歩いて来るのは、パジャマ姿の重傷から目覚めたばかりのアン大佐だった。

 

 「イチカ、先に謝って置くね」

 

 「アン、目覚めたのか!?」

 

 イチカが一瞬、嬉しそうな表情となるがアンの硬い表情に顔を真っ青に変える。

 

 「クリス、多分この後にあたしは激痛で気絶すると思うから後よろしくね」

 

 「ちょっと、アン!?」

 

 「あたしの惚れたイチカは、こんな腑抜けじゃ無いわよ!!」

 

 バッキィィィ

 

 「グッアァ!?」

 

 アン大佐がクリス大尉に言うと、イチカ大佐の顔面を思いっきり蹴り飛ばし、アン大佐も腹部の激痛から気絶する。クリス大尉は慌てながらもアンを支えるが、腹部の傷口が開きパジャマが赤く染まる。

 

 「馬鹿アン!!

 

 傷口が開いちゃったじゃない!?

 

 白星ちゃん、ヘルプ!!」

 

 「アンが馬鹿なのは元からだよ?」

 

 「いや、白星ちゃんちょっと、アンに辛口だからね?」

 

 「う〜ん、似た者夫婦?」

  

 白星ちゃんがボケをかましながらも、アン大佐の腹部に手を宛てながら人体再生を行い、再生が終わるとアン大佐をお姫様抱っこして寝室へと運ぶ。

 

 そんな姿を見たイチカ大佐は呟きながら立ち上がり、何時のイチカ大佐に戻っていたのだった。

 

 「みんな、ゴメン。

 

 俺が間違ってた」

 

 「一夏、割り切れとは言わない。

 

 でも、これが戦争中だと忘れないで。

 

 じゃないと、一夏が死ぬのは、あたし達が辛くなるから」

 

 鈴さんに言われて、イチカ大佐は鈴の肩を抱き寄せながら自宅へと入るが、私が空気になり書類をイチカ大佐に渡すのを忘れ去られたのは言うまでも無かった。



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グレミー・トト再び 

 

 

 いっくんが立ち直って、ソロモンの束さんのラボに新型機の受領へと来た姿は、アンちゃんに蹴り飛ばされたらしく目の周りには青タンがある姿だった。

 

 「束さん、来ましたよ?」

 

 「アレ?

 

 目の周りをどうしたのかな?」

 

 「まぁ、夫婦喧嘩みたいな物ですよ…」

 

 「束さん、ご心配を掛けてすいません!」

 

 「アンちゃんは、体力が回復するまではモビルスーツへの搭乗は禁止ね」

 

 「そっ、そんな!?」

 

 「当たり前じゃん。今度のモビルスーツは生半可なモビルスーツじゃないし、復帰仕立てホヤホヤのアンちゃんには危険過ぎるからだ〜め」

 

 無論、白星ちゃんが人体再生をしてくれたお陰でアンちゃんは早く復帰を果たしたが、束さんが新型のモビルスーツへと乗せる殆甘くない事をきつく言い、トレーニングルームで落ちた体力を回復させてからにしろと追い返す。

 

 「じゃあ、いっくん達のモビルスーツからだね」

 

 アンちゃんと鈴ちゃんを除いたメンバーをモビルスーツデッキへと案内しながら、新型機がハンガーに固定されている格納庫へと連れて行く。

 

 「うっわぁ、小さいモビルスーツ!?」

 

 「サクラ、でも見た目はブラックローズのまんまだよ?」

 

 「ケイト、見た目は小さなブラックローズだけど、バックパックも形状が変わっているし、小型になっている点ではブラックローズ以上に機動性がかなり上がってる様に見えるわ」

 

 「マジすっか、クリスさん」

 

 「私もクリスと同じ意見だと言えるわ」

 

 「はいはい、ケイトとサクラは静かにしてね。サクラが言ったように見た目は小さなブラックローズだけどね、ブラックローズの後継機のブラックローズⅡだよ」

 

 束さんがブラックローズⅡの説明が始まり、アンへと言った様に生半可なモビルスーツでは無い事がはっきりと判る。何より、ブルーローズ系モビルスーツの後継機だけに機動性はブラックローズの倍はあり、武装でも高い攻撃力がある事に一同は驚きを隠せない表情をする。

 

 「今度は、いっくん達のNT専用機だよ。この機体はブルーローズMK-Ⅱでファンネルの威力の向上と超高出力のジェネレーターよるハイパーメガビームランチャーを装備した機体だよ。無論、ハイパーメガビームランチャーはブラックローズⅡにも装備されているから、慣熟訓練の時に使用して確認してね」

 

 オリムラ中隊で所属のニュータイプである俺やイリアにカミーユとフォウの4人は茫然となるしか無く、慣熟訓練でも高い機動性に振り回されるのかと溜息しか出なかった。だが、慣熟訓練を行う為にノーマルスーツへと着替えに向かおうとすると馬鹿達がやって来たのだ。

 

 「おぉ、何と素晴らしいモビルスーツだ!!

 

 ラカン、全て我らがモビルスーツ隊に接収するぞ!!」

 

 「ハッ、グレミー様!!

 

 この、モビルスーツを…グッハァ!?」

 

 グレミー・トトがラカンへとモビルスーツを接収する様に命令して、ラカンがブラックローズのカラーリングをするシャロのブラックローズⅡのコクピットハッチへと手を伸ばした瞬間、シャロが床を蹴り自機のブラックローズⅡへと行き、ラカンの顔面を蹴り飛ばす。

 

 「何で、私達が受領したモビルスーツを取られないとイケないかな?」

 

 「貴様!!」

 

 「うるさい盗人!!」

 

 バッキィィィ

 

 「やらせるかよ!!」

 

 「グッァ!?」

 

 無論、他の俺達の部隊の隊員達も同じく、グレミー・トトの配下達とモビルスーツを奪われまいと蹴り飛ばし、カミーユはオーギュストの腹部と顔面へと正拳突きを入れた後に、あまりの痛さに蹲るオーギュストに回し蹴りを後頭部に入れ、オーギュストはブルーローズMK-Ⅱの胸部装甲とカミーユの脚に挟まれる様に蹴られて悶絶しながらモビルスーツデッキを漂う。

 

 「「私達のモビルスーツを奪わせるな!!」」

 

 「「「「「イエス・マム!!」」」」」

 

 そして、エマとクリスがヴァルキリー小隊の面々の陣頭指揮を取りながらメカニック達のスパナやバールを奪い、グレミー配下の一般兵へと襲い掛かり、バールやスパナで配下達をタコ殴りにして片付けて行くが、大事な事なので書き記すが彼女達全員がイチカの妻達であり、鈴とアンがIS学園で千冬姉監修で組んだホワイトラビットの私兵部隊で使われた織斑流フィジカルトレーニングの三分のニを3日でクリアした女傑達で、IS世界でなら専用機を与えられるまでに鍛えられていた。

 

 その中でも、エマとクリスの二人は軽々とフィジカルトレーニングの全てのメニューをクリアしており、シャロを混ぜた三人掛かりで束さんと正面から組み手が出来るまでに成長していたりする。

 

 「くっ、このモビルスーツさえ奪えれば!!」

 

 「全く、諦めの悪いクソガキだね!!」

 

 「なっ、瞬時に解体だと!?」

 

 「とっと降りろクソガキ」

 

 グレミーがハマーン様専用機にした純白のカラーリングがされたブルーローズMK-Ⅱのコクピットへと滑り込むが、床を蹴り飛んで来た束さんがコクピットハッチを瞬時に解体してグレミーの首根っこを掴み引き摺り出すと、片腕で引き摺り出された事に驚愕の表情をしながら束さんを見るが、そんな驚愕の表情をしている間に束さんの必殺の往復ビンタを食らい顔が誰なのか判らなくなる位に腫れ上がり、鉄パイプで一般兵と格闘するアンへと蹴り飛ばす。

 

 「ほい、アンちゃんにパス!!」

 

 「グッァァァァ!?」

 

 「ちょっと、束さん危ないわよ!!」

 

 ベッキィ

 

 「グッハァ!?」

 

 アンが叫びながら反応して、飛んで来たグレミーへと鉄パイプをフルスイングしてグレミーの腹部を叩き、シャロへと叩き飛ばす。

 

 「ちょっと、アン!?」

 

 ベッキィ

 

 「グッェ!?」

 

 「もう、束さんに返すからね!!」

 

 「アンタが娘達に仕出かしたお釣りよ!!」

 

 サッカーのパス回しの様に飛ばされたグレミーはシャロへと飛んで行き、シャロの背中へとダイブする瞬間にシャロの背中への裏拳が顔面へと入り、グレミーは鼻骨が砕けて鼻から大量の出血を出しながらシャロの拳をズルズルと滑り落ちながらも、シャロが束さんへと蹴り戻したのだった。だが、グレミーは束さんに戻る事は一切無く、千秋達と手を繋ぎながらメカニック達への弁当を工廠へと届けに来た鈴が床と壁を蹴りながらグレミーへと飛び蹴りを構えたまま飛んで行く。

 

 「必殺、スゥゥゥパァァァァイィィィナァァァズゥゥゥマァァァキィィックゥゥゥ!!」

 

 「鈴、それは作品的に駄目だ!!」

 

 俺が数人のグレミー配下の一般兵を殴り飛ばしながら鈴へとツッコミを入れるが、グレミーの腹部に鈴の脚が刺さりながら、モビルスーツデッキに気絶して漂うラカンとオーギュストを巻き込みデッキの床へと三人纏めて叩き付け、グレミーは目を見開いたまま白目になりながら気絶し、ラカンとオーギュストは二人してグレミーの下敷きとなって泡を吐きながら再度気絶をしたのだった。

 

 「ふぅ、妊婦にはいい運動になったわね」

 

 「「「「「何処がいい運動だ!!」」」」」」

 

 と一斉に妻達がグレミー達三人を片足で踏み付ける鈴へとつかさずにツッコミを入れ、鈴は弁当をモビルスーツデッキにあるメカニック用の保温箱へと入れ終わるとクリスとエマに両脇を固められてソロモンの自宅へと連行され、モビルスーツデッキに漂うグレミー達を含む配下達は、アンとシャロが懐かしい海兵隊仕様のアサルトライフルを担ぎながらエンドラへと向かい、エンドラのクルー達と銃撃戦を繰り広げた後にエンドラを再び制圧して戻り、サクラ達にロープで巻き付けられたグレミー達をエンドラへと放り投げ、自動操縦にしたエンドラはソロモンから単艦でアクシズへと戻るのだった。

 

 

 そして、そんな騒ぎの後にはオリムラ中隊全員による慣熟訓練が執り行われ、廃艦予定のムサイへハイパーメガビームランチャーを放ち威力を確認した後、一撃で轟沈するムサイを見たイチカは射撃後に数秒だけブルーローズMK-Ⅱが動けなくなる欠陥を束さんへと報告して、報告を受けた束さんはハイパーメガビームランチャーの威力調整とエネルギー効率の再調整に数日は徹夜になる事に落胆したのだった。

 



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グラナダへの救援 前編

 

 俺達が新型機の慣熟訓練に勤しむ頃、シャア閣下指揮下のジャブロー攻略部隊はジャブローの密林へと降下して連邦軍の守備隊であるモビルスーツ隊と激戦を繰り広げ、降下から半日で飛行場と宇宙船ドックを制圧して配下に収める。

 

 「ティターンズのモビルスーツ隊が居ないな…」

 

 「ティターンズのモビルスーツが居ない事に不満かシャア?」

 

 制圧した飛行場に設けられたテントの中では、第二次降下作戦で合流したハマーンがシャアにホットコーヒーを手渡しながらシャアへと質問する。 

 

「いや、連邦軍の本隊だけって言うのが引っ掛かってな…」

 

 「まさか、連邦軍の本隊が囮だと言うまいなシャア」 

 

 シャアとハマーンの予感は当たり、ジャブローには連邦軍のモビルスーツ隊のみしか居らず、ティターンズの狙いは別であり、この時のティターンズの主力は全て宇宙に上がり、月周回軌道に近いサイド7のアクシズに襲撃され破壊されたグリーンノア2のコロニー付近にて集結中だった。

 

 それでも、先に前の大戦でジャブローの入り口を知っていたシャアは別働隊としてサイクロプス隊のアンディ達をジャブローに潜入させており、潜入調査により地下施設からはジャブローの連邦軍基地にティターンズにより自爆用に設置された核弾頭のMK-85を見付けて解体させて処理していた。

 

 無論、アクシズとエゥーゴの連合によるモビルスーツが投入された数は独立戦争時より少ない86機が投入され、抵抗を続ける連邦軍のモビルスーツの総数である230機と数的には不利だったが、第一世代のモビルスーツが大半の連邦軍と第二次降下作戦で投入された最新鋭の量産型のブラックローズやマラサイなどを扱うベテランパイロットの活躍により、既に本部付近を守備する60機程度までに数を減らしていたのだった。

 

 それでも、地上からの入り口を死守する連邦軍の抵抗は激しく、台湾を守備するシーマ艦隊の第一次降下作戦の部隊を呼び出そうかと悩むシャアではあるが、軌道上にて待機するアーガマからの通信により霧散する。

 

 『シャア閣下、ブライトだ。

 

 月面の守備艦隊からの緊急信により、グラナダへとティターンズの主力艦隊が向かっていると知らせが入った』

 

 「動ける艦隊はあるのかブライト?」

 

 「イチカ大佐の精神状況がそのままなら、イチカ大佐の部隊の投入は避けたいが、オリムラ中隊の他の隊員と母艦のムサシはソロモンに待機中だな」

 

 先日の戦闘では、オリムラ中隊への壊滅判定と新造艦であるムサシの中破の知らせにシャアでも流石に慌てた。

 

 それでも、オリムラ中隊はシロッコと名乗る木星帰りのモビルスーツと数機のモビルスーツから襲撃されて、イチカ大佐の機体は大破しながらもシロッコを退けたらしいが、妻の仲間入りを果したジュンコ少尉がイチカ大佐を庇い戦死し、妻のアン大佐も撃墜され瀕死の重傷だと報告から聞いていた。

 

 無論、オリムラ中隊のモビルスーツ隊は、この戦闘により半数以上が酷く損傷しながらもパイロット達だけが無事だった事が幸いしたのだが、実戦に耐えられ可動出来るモビルスーツの大半を失った理由により部隊の壊滅判定とシャーロット中佐が自ら判断を下して、宇宙要塞のアクシズへの強行偵察任務を中断し、ソロモンへと撤退したらしい。

 

 「シャア、イチカ大佐の心配か?」

 

 『ハマーンも地球に降りていたのか!?』

 

 「ほう、シャアからも聞いていたが、木馬の艦長だったブライト艦長がアーガマの艦長だとは皮肉な物だな」

 

 「それよりも、ムサシは別としてだが、イチカくんの部隊は動けるのか?」

 

 『ちょっと待って下さい。

 

 トレース。

 

 判った伝える。

 

 イチカ大佐から動けるとムサシから通信があった』

 

 オリムラ中隊が動ける事に安堵するシャアとハマーン。グラナダを失えば、エゥーゴとアクシズはモビルスーツを入手するにはソロモンの工廠と小さいながら製造ラインがあるルナツーに頼るしかない。だが、資源はグラナダ経由でしか入らない。

 

 それでも、シャアはグラナダの未来はイチカ大佐のオリムラ中隊に託すしか無かったのだった。

 

 

 

 ソロモンでは、オリムラ中隊の母艦であるムサシが急ピッチで出撃準備を進めていたのだ。モビルスーツデッキでは、オリムラ中隊の最新鋭のブルーローズMK-ⅡやブラックローズⅡがモビルスーツハッチが開き行き来する作業用ポッドでの搬入作業に追われ、食料や弾薬などは物資専用の搬入経路から次々とコンテナが運び込まれ艦内は戦場化していた。

 

 「搬入班、もたもたしてんじゃないわよ!!」

 

 ブリッジでは、ツキノ中佐がこめかみに青筋を浮かべながら激を飛ばして搬入班のクルーへと急がせる様にと命令する。そして、大量に消費をするだろう、ヘヴィマシンガンの弾丸も大量に生産され、出来た物からコンテナに詰められてはムサシへと搬入される。

 

 「くっ、修理と改装で物資を全て降ろしたのが裏目に出たわね…」

 

 「ツキノ、艦長の君が慌てるなよ」

 

 「イッ、イチカ大佐!?」

 

 「グラナダとアンマンにはアクシズとエゥーゴの守備艦隊が居るし、アンマンにはノイエ・ジールを受領して訓練中のガトー中佐もいる。それに、カミーユが束さんから教わりながら設計した例のモビルスーツも完成したらしいから大丈夫だろう」

 

 「Z計画のモビルスーツが完成したんですか!?」

 

 「まぁ、アナハイムには束さんの大親友のニナさんが出向して居るし、ブルーローズMK-Ⅱに搭載されたバイオセンサーやバイオコンピュータをアナハイムで開発が決まった段階で送りつけたからなぁ…」

 

 アンマンのアナハイムの工場では、エゥーゴの地上軍とも言えるカラバ向けの可変型モビルスーツが、Z計画に基づいて開発されたデルタガンダムとゼータプラスを主力機とした部隊がアンマンに居るらしく、ゲルググ改とリゲルグから機種変更したキマイラ隊もアナハイムからその計画されたモビルスーツを受領して訓練中だったとニナさんから聞いていた。

 

 多分、その部隊がそうだろうなと俺は思う。

 

 それでも、ムサシの出撃には後数時間は掛かると見ている。だが、今回の出撃はムサシが旗艦を努めながらもソロモンにて待機するシーマ艦隊の旗艦のアカツキとムサシ級の二番艦のヤマシロの3隻にて艦隊を組み出撃する予定だったが、軌道上からはアーガマとシーマ艦隊の艦艇を入れた4隻がソロモンに急行中であると知り、改装されたムサシだけが急行する形でグラナダへと先行して向かう。

 

 そんな最中に束さんはソロモンのラボでは、今回の新型機を製造させる為だけに量子変換でパーツを製造する、IS技術の塊とも言える専用のパーツの製造機を十数台を作り上げて製造ラインに配備していた。

 

 無論、このラインで製造に携われるのは束さんと面接を受けた技術者のみで、受かったのが殆どが女性技術者だっが数名の男性技術者以外で、この工廠を顔パスにて入れたのはアーガマのメカニックチーフのアストナージさんただ一人だけだった。

 

 五時間後には、搬入班の奮闘と頑張りのお陰で終わりムサシはグラナダへと進路を取り出撃するが、ソロモンから離れて直ぐからモビルスーツ反応があり、アンがクリスとエマを連れ確認の為に出撃する。

 

 「アン、ブラックローズⅡ出るわよ!!」

 

 「エマ、ブラックローズⅡ行きます!!」

 

 「クリス、ブラックローズⅡ行くわよ!!」

 

 ムサシのカタパルトから射出された3機のブラックローズⅡはレーダー反応がある宙域へと向かうが、見えた先の岩礁から逃げているだろう、一筋のスラスターの光が見え、アンほスラスターを全開してその光を追うが、従来機とは違いリニアシートに押付けられる様なGがアンを襲う。

 

 しかし、IS技術を用いた対G防御技術に関してはノーマルスーツの改良へと繋がり、従来のブラックローズのフル加速で起きるGを十分の一以下まで軽減する新型のノーマルスーツまでも束さんの手により作られ、ブラックローズⅡのロールアウト以降のアクシズのノーマルスーツはこのG軽減型のノーマルスーツへと変わる事になる。

 

 そんな、凄まじいGの中で加速を続けるアンのブラックローズⅡは偵察していたハイザックのバリエーション機のアイザックへと追い付く。

 

 「見付けたわよ!!」

 

 『何だ、いつの間に!?』

 

 アイザックのパイロットが驚愕の表情に染まりながらも、120ミリマシンガン改をブラックローズⅡへと放つが、ブラックローズⅡはビームシールドを展開しながら更に加速し、ショットランサーを構えたアンのブラックローズⅡが凄まじい加速をしながらマシンガンの弾丸をビームシールドで受け止め、アイザックから一度消えた様に見せる為にフェイクで瞬時に後ろに周り、アイザックのカメラの死角である股下から一気に近付き構えたショットランサーを射出してコクピットを貫きアイザックを撃破する。

 

 無論、アイザックのパイロットはショットランサーのランスに貫かれて即死するが、この日はパイロットの妻の誕生日でもあり結婚記念日だった。

 

 アン達のモビルスーツが帰還した後、ムサシは最大船速まで加速してグラナダへと向かう。

 

 そして、ソロモンから出撃してからムサシの最大速度により2日でグラナダが遠望出来る距離まで到着し、ムサシのレーダーからはグラナダを挟んだ向こう側から迫るティターンズの艦隊を補足する。

 

 「イチカ大佐、ティターンズの艦隊をレーダーにより補足!!」

 

 「モビルスーツが出るには遠い。

 

 なら、艦隊戦を用意しろ!!」

 

 「対艦戦闘用意!!

 

 ムサシはこれより、ティターンズの艦隊へ長距離射撃による艦砲射撃を実施する!!

 

 主砲、撃ち方用意!!」

 

 艦長のツキノ中佐の号令により艦内は第一級戦闘配備に変わり、艦内の隔壁は閉じられて居住区の娘達は鈴が居る食堂へとノーマルスーツに着替えて避難する。無論、MS隊員達もモビルスーツデッキの待機室へとノーマルスーツに着替えて集まり、艦内は臨戦体制へとなったのだった。

 

 「艦長、戦闘準備良し!!」

 

 「撃ち方始め!!」

 

 ムサシの主砲の連装型のハイメガ粒子砲が眩い光を出しながらティターンズの艦隊へと放たれ、アウトレンジからの長距離射撃を実施する。

 

 「観測班から、前衛のサラミス改へ直撃を確認!!」

 

 「ティターンズの艦隊の有効射程に入るまで、撃ちまくりなさい!!」

 

 ティターンズの前衛艦隊のサラミス改は、ムサシのハイメガ粒子砲が船体を貫く様な直撃により大爆発をして轟沈する。

 

 無論、ティターンズの艦隊もムサシへと反撃に転じるのだが、ムサシからの自軍艦隊の射程距離外からの長距離射撃ではただ殴られるだけの状態になり、再び放たれたハイメガ粒子砲は前衛艦隊の旗艦のバーミンガム級戦艦のブリッジへと撃ち込まれ轟沈してティターンズの前衛艦隊は更なるパニックを起こす事になるのだった。

 

 ただ、数隻のサラミス改を盾にしながら突き進む、アレキサンドリアに座乗するのはティターンズのバスク大佐の腹心のジャマイカン少佐だったが、二隻のサラミス改の犠牲を払いながらアレキサンドリアの有効射程距離内へと入る事に成功する。

 

 「アレキサンドリア、急速接近!!」

 

 「副砲の有効射程距離内に入りました!!」

 

 「アンチビーム爆雷を投下し、副砲も応戦開始!!」

 

 サラミス改とアレキサンドリアからのメガ粒子砲がムサシへと襲い掛かるが、メガ粒子砲はアンチビーム爆雷により無効化され、ムサシの副砲も射撃を始めた為にアレキサンドリアを護るサラミス改は瞬く間に撃沈されてしまう。

 

 「主砲、撃てぇぇ!!」

 

 そして、ムサシの副砲の第七射目にはアレキサンドリアを捉え、前部のカタパルト付近に副砲のビーム砲が着弾する。

 

 「ジャマイカン少佐、カタパルトに被弾!?」

 

 「うっ、撃て!!」

 

 アレキサンドリアがメガ粒子砲を放っても、ムサシのアンチビーム爆雷により無効化されている事実を認めたくないジャマイカンだったが、ムサシの主砲がアレキサンドリアに向きハイメガ粒子砲を放たれた後、アレキサンドリアにムサシから放たれた六条のハイメガ粒子砲が全問命中をして、アレキサンドリアは轟沈しながらサラミス改を巻き込み大爆発したのだった。

 

 そして、前衛艦隊が壊滅するが、ドゴス・ギアを旗艦とするティターンズ本隊との激しい砲撃戦となるのだが撃ち合うのは同じ射程を持つムサシとドゴス・ギアだけであり、アンチビーム爆雷を使いながらドゴス・ギアの砲撃を無効化し、ムサシも主砲を撃ち返す。 

 

 「ツキノ、慌てたら負けだ。落ち着いて行けよ」

 

 「はい、イチカ大佐」

 

 ツキノ中佐は、ドゴス・ギアへの砲撃を辞めて周囲の艦艇へと狙う様に命令を下し、ドゴス・ギアからの砲撃はアンチビーム爆雷で無効化が出来ている距離だと安心しながらも距離には注意する様にと観測班へと命令しながらバーミンガム級戦艦へと砲撃を始めたのだった。

 

 しかし、ドゴス・ギアも砲撃を辞めた事に疑問に思ったが、答えは直ぐに判る。

 

 「イチカ大佐、アンマンからの防衛艦隊です!!」

 

 「判った。通信班、防衛艦隊には距離7万以降には入るなと送れ!!

 ドゴス・ギアからの砲撃で沈むぞ!!」

 

 「りょ、了解!!」

 

 アンマンからの防衛艦隊の司令官はムサシからの通信により、距離八万で停止してムサシの砲撃が邪魔にならない距離の維持を努めながらもベースジャバーに載せた量産型のマラサイの出撃準備を始める。

 

 「ツキノ、ムサシの指揮を任せる」

 

 「イチカ大佐、ご武運を」

 

 ツキノ中佐が敬礼しながら見送り、俺はモビルスーツデッキへと向かう。既に隊員達はコクピットに入り出撃命令が俺から出るのを待っている状態だった。

 

 「オリムラ中隊、全機出撃!!」

 

 『了解!!』

 

 モビルスーツハッチが開き、俺のブルーローズMK-Ⅱがカタパルトに接続され、反対側のカタパルトにはアンのブラックローズⅡが接続されていた。

 

 「イチカ、ブルーローズMK-Ⅱ出る!!」

 

 「アン、ブラックローズⅡ出るわよ!!」

 

 隊長機のブルーローズMK-Ⅱが射出されたのを皮切りに次々とモビルスーツ隊が射出され出撃する。

 

 無論、ドゴス・ギアでも俺達の出撃を察知してモビルスーツ隊を出撃させる。そして、シロッコに拾われたジェリドも新型機のガブスレイに乗り、ドゴス・ギアからのモビルスーツ隊と共に出撃したのだった。

 



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グラナダへの救援 後編

 

 

 ムサシとの艦隊戦にてティターンズの前衛艦隊の壊滅を好機と見て、グラナダのアナハイムのドックから出撃したアクシズのキマイラ艦隊からはジョニー・ライデン大佐を隊長機とする真紅に染められたデルタガンダムとゼータガンダムを簡易量産型にしたゼータプラスのモビルスーツ隊は4機編隊のダイヤモンドフォースを組み、他の部隊の機体にはソロモンで量産されたブラックローズに乗る12機が編隊を組み、ティターンズのモビルスーツ隊へと殺到する。 

 

 無論、アンマンからのエゥーゴとアクシズの混成艦隊から出撃したモビルスーツ隊にはガトー中佐機のノイエ・ジールも含まれ、アクシズカラーであるザクカラーに染められたマラサイの部隊に先行し、ムサシから出撃したイチカ大佐を隊長機とするブルーローズMK-Ⅱとアン大佐やシャーロット中佐達のオリムラ中隊の隊員が乗るブラックローズⅡが後に続き、ティターンズのモビルスーツ隊のパイロットには悪夢にしか見えない状況だった。

 

 「シロッコが出るかも知れないから、各機油断するな!!」

 

 『了解!!』

 

 イチカからの通信にオリムラ中隊の面々は気を引き締め、各小隊に別れながらティターンズのモビルスーツ隊へと襲い掛かる。

 

 「落ちなさい!!」

 

 『グッェ!?』

 

 「「エマ小隊長!!」」  

 

 高い機動性を生かしながら、エマ中尉機のブラックローズⅡはショットランサーのランスでティターンズカラーのハイザックの頭部からコクピットに掛けて突き刺して撃破し、後に続くサクラとサラのブラックローズⅡはヘヴィマシンガンを放ちエマ中尉を狙うガルバルディβを蜂の巣へと変える。

 

 「エマには負けないわよ!!」

 

 『はっ、早過ぎる!?

 

 グッワァァァァ!?』

 

 「クリス小隊長に続きなさい!!」

 

 「「ケイト、了解!!」」

 

 ブラックローズⅡを駆るクリス大尉がビームシールドを展開しながらヘヴィマシンガン放ちジムⅡの部隊へと突っ込み、ケイト少尉にカエデ少尉とカナデ少尉機の双子姉妹が駆るブラックローズⅡでジムⅡの懐へと入り込みショットランサーのランスをコクピットへと突き刺して撃破する。

 

 「ハッハハ!!

 

 貰ったぞ!!」

 

 「マシュマー出過ぎだ!!」

 

 「あっははは!!

 

 もっと、私を熱くさせて!!」

 

 「あっ、もう!

 

 キャラまで!!」

 

 イリア大尉機のブルーローズMK-Ⅱからイリアは、マシュマーとキャラの二人が暴走しながらハイザックや新型の量産機のバーザムを斬り裂きながら突き進むブラックローズⅡをファンネルとビームライフルで支援しながら叫び、いつも以上に苦労するイリア大尉は艦に戻ったら夫であるイチカに慰めて貰いながらベッドで激しく抱いて貰おうと割り切り二人を追う。

 

 そんな、漫才的やり取りをする三人に追いて行かれ気味のブルーローズMK-Ⅱに乗るカミーユとフォウは、イリア小隊長の苦労を思いながらも暴走する二人にファンネルによる援護を行い後を追う。

 

 「一気に落ちろ!!」

 

 「馬鹿アン!!

 

 もい少し、周りを考えなさいよ!!」

 

 「お姉様の言う通り!!」

 

 「仕方ないじゃない。

 

 全く、イチカは!!」

 

 「俺かよ!?」

 

 集団戦を仕掛けて来た、バーザムのモビルスーツ隊へとハイパーメガビームランチャーを放つアンのブラックローズⅡと一時的なエネルギー切れのアンの機体のスキをカバーするシャロとイヴのブラックローズⅡは寄って集ってくるハイザックやバーザムへとヘヴィマシンガンによる弾幕を張り、モビルスーツを蹴散らす。

 

 アンの八つ当たりの煽りを食らったイチカもハイパーメガビームランチャーで艦隊の本隊には行かせまいと弾幕を張る前衛艦隊の生き残りのアレキサンドリア級へと放ち撃沈しながらアンへと叫び、ティターンズ艦隊本隊へと突っ込だ事へ否定するが、フレンドリーファイヤから下手な弾幕を張れずに安全にモビルスーツの撃破や艦艇を撃沈出来るのだから文句は言われたくないイチカだった。

 

 

 「えぇぇい、沈め!!」

 

 それは、ノイエ・ジールを駆るガトー中佐も同じで、有線クローアームを射出してバーミンガム級のブリッジへと突き刺してビーム砲を内部で放ちブリッジを破壊し、拡散メガ粒子砲を放ちながら鬼神の様に暴れているガトー中佐もイチカと同じ考えだったとアンも思ったのだ。

 

 だが、ティターンズ艦隊の本隊からの濃密な弾幕に次々と落とされるアクシズカラーのマラサイとエゥーゴカラーのマラサイ。そして、ベテランパイロット向けの量産型のブラックローズは手足を弾幕でもぎ取られてバランスを失くし、弾幕を張る対空兵装強化型のサラミス改の対空レーザー砲へと激突しながら四散して、対空レーザー砲数基を巻き込み爆発する。

 

 オリムラ中隊からも被害が出て、イチカの妻の一員の双子姉妹の機体に対空レーザー砲が襲い、カエデのブラックローズⅡは右脚の膝から下を失い、カナデのブラックローズⅡは武装と一緒に右腕を失った事からムサシへと帰投して離脱し、クリスとケイトのブラックローズⅡはエマの小隊と合流しながら2機共同で対空兵装強化型のサラミス改を撃沈する。

 

 無論、被害はそれだけで無く、マシュマーとキャラのブラックローズⅡはイリアから出すぎた為にバーザム数機に囲まれ、マシュマーは大破したブラックローズⅡで3機を道連れに撃破してから戦域から脱出を図りムサシへと帰投し、キャラも同様だった。

 

 ただ、帰投した二人は隊長機の命令無視の馬鹿な事をした事に怒っていたメカニックチーフの束さんの拳骨による鉄拳制裁を受けたのは言うまでもなく、残るイリアとカミーユにフォウは唯一無事なエマの小隊へと向かい合流する。

 

 

 そして、凄まじい弾幕を張るドゴス・ギアへともう少しでたどり着く予定だったイチカはジェリドの乗るガブスレイと戦闘となる。

 

 「やっと見つけたぞ!!

 

 カクリコンの仇だ!!」

 

 「ちぃ、あの時のハイザックのパイロットか!?」

 

 「ついてるぜ!!

 

 落ちろ!!」

 

 「ビームなんか効かない!!」

 

 「マウアー、蒼い方は任せる!!」

 

 ガブスレイがロングビームライフルを放つが、ビームシールドを展開したブルーローズMK-Ⅱがビームを受け止めてビームを撃ち返す。アンの乗るブラックローズⅡは、もう1機のガブスレイと戦闘に成りながらもモビルアーマー形態のガブスレイに追い付きながらヘヴィマシンガンを放ち応戦する。

 

 「くっ、ジェリドに任されたけど、コイツ早い!?」

 

 「あたしを落とすなら、腕が足りないわよ。

 

 オ・バ・サ・ン」

 

 「なっ、オバサンですって!?」

 

 「そんな、軽い挑発に乗る時点で、たかが知れてるわよ!!」

 

 「手足が!?」

 

 「うっさいから、寝てなよ!!」

 

 高い機動性を活かしながら、マウアーへと煽りを入れ挑発するアン。マウアーはオバサンと言われ激昂するのは当然であり、彼女はまだ誕生日を迎えたばかりのアンと同い年の17歳と若くまだオバサンではない。しかし、独立戦争を生き抜いたアンの腕の前では赤子も同然で、変形してモビルスーツ形態になりビームサーベルを抜いた時点でマウアーは焦り過ぎただと言え、カブスレイの手足をアンのブラックローズⅡに斬り裂かれて失い、序にアンがコクピットへと殴った衝撃によりマウアーは気絶し、アンにワイヤー固定されると一時燃料補給で戻るついでにお持ち帰りされたマウアーだった。

 

 「マウアーが!?

 

  貴様!!」

 

 「ちぃ」

 

 「クソォォォ!!」

 

 マウアーをやられた事にジェリドはビームサーベルを展開してイチカのブルーローズMK-Ⅱへと斬り掛かる。しかし、イチカに軽くビームサーベルを受け止められ、両手両足に頭部を斬り裂かれ放置されたジェリドはコクピットから叫ぶのだった。

 

 それでも、ティターンズ艦隊本隊への決死とも言えるアクシズとエゥーゴのモビルスーツ隊による猛攻は続いたが、遅れてやって来たシーマ艦隊旗艦のアカツキやアーガマにヤマシロと言ったソロモンからの艦隊が到着し、ムサシと並びながらティターンズ艦隊へと艦砲射撃が始まり、イチカ達は艦砲射撃から巻き込まれない為に一時撤退する。

 

 イチカ達が引いたのを撤退の好機と判断したシロッコが座乗するドゴス・ギアは反転して撤退を始めたのだった。

 

 無論、ジェリドは通り掛かった味方のハイザックに回収されてドゴス・ギアへと帰還し、ティターンズ艦隊は最終防衛ラインの旧ア・バオア・クー、現在はゼタンの門へと撤退したのだった。

 

 

 ムサシへと帰還したイチカは、シャワーを浴びる為にシャワー室へと入るのだが、使用中の掛け札が掛かって居なかった事からシャワー室に入る。

 

 「報告書はシャワー浴びてからだな」

 

 ガチャリ

 

 「「へっ?」」

 

 何故か、イチカが見た事のない緑色の髪をした女性がシャワーを浴びており、二人の目線が合いながら固まる。無論、シャワー浴びていたのは捕虜のマウアーであり、尋問を受ける前に汗臭いから浴びろとアンにシャワー室へと押し込まれたのだが、アンが掛け札を変えるのを忘れてしまいイチカが使用中だと知らずにシャワー室に入ってしまった事故だった。

 

 そして、マウアー自身も裸をイチカに見られた事による動転した事で石鹸を床へと落とすが全く気付かない。

 

 「失礼っつ、うぁぁぁ!?」

 

 「きゃぁ、って……いっ、痛っァァァァい!?」

 

 イチカがシャワー室から慌てて出ようとしたが、マウアーが落とした石鹸を踏み足を滑らせマウアーに抱き着く形となり、イチカは咄嗟にマウアーを庇うように自身の背中を床に向けたのが間違いであり、お互いにに倒れた方が間違いが起きずに済んだのだが、イチカが背中を向けた事でマウアーが馬乗りになる形となる。

 

 そして、マウアーが痛がるのはイチカのアレが事故でマウアーの蜜壺へと入ってしまい、マウアーの初めてを奪う形となった言わば、マウアーの身の不幸体質と二人へと襲い掛かった多重に起きたイチカのラッキースケベだと言える。

 

 そんな、二人の事態は深刻であり、音を聞きつけ駆けつけたアンとシャロがシャワー室へと突入する。

 

 「イチカ、だい……」

 

 「シャロ、何固まって……」

 

 二人からしたら、この様な光景が逆ならご褒美かも知れないが、転がる石鹸と使用中の掛け札が無いシャワー室と二人は考える事無く、夫の凶悪なレベルと言えるラッキースケベが起きたのだと理解するが、抜きたくても抜けない恥ずかしさとまさか初めてが妻子を持つ妻帯者だったと気付き顔を真っ青にするが、ガタガタ震えるイチカのせいで込み上げてくる快楽と快感の波が自身に襲い掛かり、考えが上手く纏まらないマウアーと浮気だと見られギルティを言い渡されるだろうとガタガタと震えるイチカ。

 

 何故、不幸体質のマウアーと魔王級のラッキースケベを引き起こすイチカの二人が合わさるとどうなるのか結果が目の前にあり、天文学的確率を引き当てた夫に何故と頭を抱え出したアンだったのだった。

 



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グレミー・トトの反乱 前編

 

 

 アンマンのアナハイムのドックに入港したムサシだが、取調室の椅子に座るのは捕虜となりイチカの過去最大級のレベルとも言えたラッキースケベの被害者となったマウアーは目尻に涙を浮かべながらイチカへと叫ぶ。

 

 「ラッキースケベだと言え、私にあんな事されたらお嫁に行けないじゃない!!」

 

 「ごっ、ごめんなさい…」

 

 「流石に今回ばかりは、イチカをフォロー出来ないわね」

 

 イチカに呆れながらも、最終的に腰を自ら振り始めたマウアーにも強く言えないが結果的に中へと出した責任はイチカが取らないといけない事は判ってはいるが、マウアー自身も快楽をイチカに求めてしまった事に理解していた為に責任を取れと直接は言わずに遠回しで言っている時点で同じだと取り調べに同席するあたしは思う。

  

 しかし、この事件は妻達全員に知れ渡り、鈴の部屋にて事件の間接的な原因を作ったあたしが妻会議から外された話し合いとなり、マウアーをどうするのかが議題の妻会議の真最中だと言って置く。

 

 「ティターンズについては全て話すわよ。でも…」

 

 マウアーの言葉は続かず、静かに泣き出す。

 

 あたしがあの後に束さんに頼み、検査器によるマウアーの生理周期を調べた結果が、あの日が最も妊娠しやすい危険日だった事が判り、それが原因で妻会議が紛糾しているとシャロがキレながらメールで知らせる。

 

 明らかに、キレやすいあたしがいても妻会議で更に紛糾するだろうし、あたしがマウアーに避妊薬のピルを飲む事を勧めたが、毒殺されると思われて拒絶しピルを飲んでいない。なら、イチカの子供を身籠るのは確実だと思うが、正妻の鈴はマウアーと今日の夜にでも話し合いの場を設けて話し合う予定だった。

 

 「はぁ、どうしたら…」

 

 「そう言えば、アンだったかしら?」

 

 不意に泣き止んだマウアーがあたしに話し掛ける。

 

 「オリムラ中隊の副隊長のアン・オリムラ大佐よ」

 

 「やっぱり、私をオバサン呼ばわりした声の主はアン大佐だったのね?」

 

 マウアーはアンに言いながらも、着替えとして支給したアクシズの士官用の制服のポケットから一枚のカードを出す。

 

 「これは?」

 

 「私がオバサンでは無い証拠ね」

 

 マウアーのカードはティターンズの身分証明をするカードであり、マウアーの年齢は17歳と表記され、一昨日に誕生日を迎えたあたしと同い年だった。

 

 「なる程、オバサンに見えたのはマウアーは苦労しているからか…」

 

 「それ、どういう意味よ!?」

 

 カードを見て、顔写真と本人を見ながら実直な感想をマウアーに言うと食って掛かる様に叫ぶ。

 

 「だって、マウアーは知らないと思うけど、ティターンズって女性に一番嫌われているの知らない?」

 

 「確かに聞いた事はあるけど、本当なの?」

 

 確かに、女性に嫌われている話は本当の話である。

 

 元ティターンズの女性パイロットであり、イチカの妻となったエマさんとクリスが言っていたのだから間違い無い。

 

 何せ、シャア閣下の協力者のカイさんが手に入れた元ジオン兵で女性パイロットだった彼女の最後の生きていた姿となる映像は、ティターンズの撲滅運動へと繋がった衝撃的な映像の一つだったし、アクシズに未だに増え続ける志願兵の大半は元ジオン兵だった女性パイロットが非常に多かったのも頷ける内容だった。

 

 無論、エゥーゴにも志願兵が多く居るらしく、例の映像を見た一般女性からもエゥーゴに志願したと話には聞いていた。

 

 そんな内容をマウアーに聞かせると、腫れ物が取れたかの様な表情をするマウアーは美しい少女の顔を一瞬だけ覗かせて、二人の会話を見ていたイチカを惚れさせたかのように見えた。

 

 「アン、私はティターンズを捨てるわ」

 

 「そう、なら行き先は鈴の部屋ね」

 

 「鈴の部屋?」

 

 「イチカの正妻の部屋と言えば判るかしら?」

 

 正妻の部屋と聞き、顔を真っ青に変えたマウアー。

 

 無論、叱られる訳では無い。

 

 「ねぇ、気持ちの整理が…」

 

 「今更、却下ね」

 

 「アン、まさか…」

 

 「イチカ、男なら責任くらい取りなさい」

 

 むしろ、マウアーを妻の仲間入りさせた方が良いと思う、あたしの我が儘だった。なら、妻会議で話が拗れる前にマウアーから挨拶させて好印象を妻達に与えた方が賢明だし、イチカがマウアーに責任を取ったと外面も良い。そして、未だにマウアーの件で妻として受け入れを渋るイチカをバッサリと言い捨てながら、鈴との面会を嫌がるマウアーを妻会議の真最中の鈴の部屋へと連行したのだった。

 

 

 

 取調室でイチカとアンがマウアーと話している頃、鈴の部屋にはアンを除いた妻達が全員が集結しており、最高齢のシーマを始め最低年齢のミネバも集まる大事になっていた。

 

 無論、妻達の言い分を聞きながら沈黙を護る鈴と現場を観てしまったシャロは、クリスから何故止めなかったと責めを受けてクリスと言い合いとなる。

 

 「クリス、少し黙んなさい」

 

 「「「「「「!?」」」」」」

 

 鈴が正妻の凄みを出して、クリスを一睨みで黙らせる。そして、無言のまま立ち上り部屋の扉を開けるとアンとマウアーが部屋の入り口へ立っており妻達は一斉にマウアーを睨むが、鈴が一瞬だけ振り返り妻達へと凄みを出して睨み強制的に妻達が黙り込む。

 

 「アン、ありがとうね。

 

 そして、マウアー来たわね」

 

 鈴はにっこりと笑い、マウアーを部屋へと招き入れるがマウアーは鈴の笑みに隠れた凄みに恐縮してしまう。しかし、鈴はマウアーの手を引きながら鈴が座るベッドの脇へと座らせる。

 

 「紹介が遅れたわね。

 

 あたしは鈴音と書いてリンイン。

 

 一夏の正妻であり、妻達を束ねて居るわね」

 

 「あっ、あの!!」

 

 「言わなくても、判ってるわよ。

 

 あたしが、あんたを認めるわよ。

  

 それに、馬鹿一夏がやらかしたんだから、責任も一緒に背負うのもあたしの役目よ。なら、あんたもつべこず言わずに一夏の妻の一員に加わりなさい」

 

 「「「「「「!?」」」」」」

 

 鈴の一言に周りは一斉に驚愕した表情をしながらマウアーを見るが、何も言わせずに妻の仲間入りを認められた度量の広さにマウアーは泣いてしまう。

 

 「これじゃ、私が悪者になるじゃない」

 

 クリスが溜息を吐きながら一言だけ呟き、鈴の部屋を退室する。無論、他の妻達もクリスに習い部屋を退室するが、クリスが退室したのは最初から決められた事であり、既に妻会議では満場一致で認められていたオチだった。

 

 マウアーからこの先をどうするのかと聞き、マウアーはモビルスーツのパイロットを望むが、鈴はもしかしたら出来たかも知れないマウアーをパイロットにする気は一切無く、イチカへとメールを送りマウアーは鈴の手伝いとして厨房で働く事が決まる。

 

 「マウアーは厨房で、あたしの手伝いね」

 

 「パイロットは…」

 

 「あんたねぇ、出来たかが実際に判るのは2か月程先だけど、パイロットにはしないわよ。

 

 あたしだって、身重になって厨房での調理は辛いのよ。

 

 だから、あんたはあたしの手伝い。

 

 決定事項だから、これを着てね?」

 

 「…」

 

 マウアーに渡したのは、綺麗な翠色の一着のチャイナドレスだった。鈴は台湾での買い出しの時に様々なサイズの複数のチャイナドレスを買い込み、拡張領域へとしまい込んでいたのが幸いだと思いながらもマウアーに似合うチャイナドレスを選んでいたのだった。

 

 そして、爆誕したドジっ子給仕のマウアーになるのはまだ先の話だったりする。

 

 妻達の一件が片付いた矢先、アステロイドベルトを監視する人工衛星には地球圏へと戻って来た宇宙要塞のアクシズが捉えられ、アクシズの左官以上の士官達はソロモンへと集められ緊急の会議となる。

 

 無論、ジャブローからカルフォルニアベースを再度奪還して、カルフォルニアから宇宙へと上がりソロモンへと戻って来たシャアとハマーンの二人は、アクシズの状況を知り顔色が優れない様子だった。

 

 「まさかな、私が地上に降りた隙を狙うとはな」

 

 「ハマーン、これでグレミー・トトが反乱を起こしたのは確実だと判った訳だが、アクシズに残る戦力が不明だな」

 

 「確かにア・バオア・クー奪還を前に不確定要素ではなるな」

 

 そんな二人は俺を観て腹を括る。

 

 これは、俺達の部隊での強行偵察をするのが確定だと理解した瞬間だが、シロッコの襲撃がなければアクシズへの強行偵察任務はオリムラ中隊が担う予定だっただけに挽回するチャンスだろう。

 

 「俺達、オリムラ中隊が強行偵察を行います」

 

 この一言でアクシズへの強行偵察が決まる。

 

 無論、他のアクシズの艦隊はア・バオア・クー奪還に向けた作戦となるのだが、地上軍のキンバライト基地のモビルスーツ隊にもキリマンジャロ基地攻略へ向けて増強が決まり、地上と宇宙での同時奪還作戦となる。

 

 

 アンマンにシャトルで戻った俺は、ツキノ中佐へとアクシズへの出撃準備を進める様に命令を下し、ニナさん経由でアナハイムから弾薬の補充を要請する。

 

 「いっくん、言われた通りに増槽タンクが使える様にしたよ」

 

 「ありがとう束さん」

 

 書類整理をしながら、強行偵察に向けた準備を着々と進め、グラナダ防衛戦で損傷したモビルスーツは全て修理が終えたとアナハイムへ出向中のニナさんから通信を受け、修理の終えた機体がムサシへと搬入が始まったと知らせが入る。

 

 そして、物資の搬入作業を含め2日後にムサシはアクシズへ向けて出撃したのだった。

 

 

 

 少し前だが、アクシズではカルフォルニアベース奪還の裏でグレミー一派のモビルスーツ隊がオーガスタ研究所の襲撃に成功し、サイコガンダムの後継機のサイコガンダムMK-Ⅱの一号機と二号機を合わせた2機と一緒に専属パイロットの確保までも成功させる。

 

 一人は、ロザミア・バダムと言う少女と、もう一人は幼いながらも黒髪にポニーテールの少女だが、彼女は台湾の宇宙港襲撃の際に戦死していたが、合流したムラサメ研究所の研究員が彼女の血液と肉体の一部を採取して作り上げたクローン人間だった。

 

 そして、運命の悪戯なのか少女の名前はホウキと名付けられ、強化人間のロザミア以上に安定した造られ生まれながらにしてニュータイプだった。

 

 そんな、彼女達も輸送する為にバラしたサイコガンダムMK-Ⅱと共にアクシズへと送られて解析されており、フォン・ブラウンのアナハイムの工場から拉致して来た数十名の技術者を使い、急ピッチで開発され組み立て作業中のサイコミュ搭載型の巨大モビルスーツがアクシズの工廠にて鎮座していたのだった。

 

 無論、拉致られた技術者の中には、束さんに鍛えられてZ計画に参加していた技術者もいた為に可変型モビルスーツのバウやサイコガンダムMK-Ⅱを元に一般兵用に開発されたドーベンウルフやリックドムⅡを発展させ開発したドライセンなどがアクシズに保管されていた資源を使い量産していたのだった。

 

 

 そんな充実した戦力を保有するグレミー一派になっているとは知らずにムサシはサイド5のコロニー群の宙域を宙域を抜けてアステロイドベルトがギリキリ視認出来る距離まで近付き、暗礁宙域の岩礁群にムサシを隠す様に停泊させてから、監視衛星から送られて来た画像を元にブリーフィングルームにて中隊のメンバー達が集まる。

 

 「思っていたより、早く地球圏に来たわね」

 

 「シャロも、そう思うか?」

 

 画像を見ながら、アクシズの現在地を割り出す事に成功するが、早ければ1週間もしないでゼタンの門まで来るのは明らかであり、アクシズ防衛戦以上に防衛設備が充実しているとシャロは言う。そして、何よりもアクシズ名義で買い付けただろう物資を運ぶ輸送艦が撮影され、頭を抱え出すイチカはシャアが思っている以上に戦力があると理解した理由だった。

 

 そんな時にイチカのスマホが鳴り、電話を掛けて来たのはアクシズの居住区へと旅行者として潜入していたカイさんからだった。

 

 『イチカ大佐で間違いないか?』

 

 「どうして、俺の番号を?」

 

 『あぁ、アナハイムのニナさんから聞いておいたんだ。まぁ、それよりもアクシズ内部はヤバイぜ。俺も含めてだが、住民達の全員がサイド3へ強制疎開させられちまった」

 

 カイさんの一言にイチカは全てを理解する。

 

 「アクシズはグレミー一派に掌握されたんですね?」

 

 『間違い無いな』

 

 カイに肯定され、アクシズはグレミー一派に制圧されたと理解する。そして、強行偵察から威力偵察に任務変更になった意味にイチカは息を飲み、カイさんからの電話が切れると威力偵察に向けて準備を始めたのだった。

 



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グレミー・トトの反乱 中編

 

 

 

 暗礁宙域から出撃する3機のモビルスーツは、イチカのブルーローズMK-Ⅱとアンと案内役のシャロが乗るブラックローズⅡはダミーバルーンを宇宙に浮かぶ岩礁に見立てて展開してアクシズへと調査に向かう。

 

 『イチカ、アレがアクシズよ』

 

 「アクシズか…」

 

 『あたしもアクシズに行くのは初めてね。シャロ、任せたわよ』

 

 『エスコートは任せなさい』

 

 熱核ブースターに火が灯りながら、ゼタンの門へと移動するアクシズへとシャロの案内で密かに近付き、アクシズの左官級でも教官にしか知らないハッチから俺達はモビルスーツごと侵入を果たす。

 

 『ここは、私みたいな教官にしか知らない内部に侵入出来るハッチよ。でも、内部って言ってもアクシズ内部のモビルスーツデッキの側の廃棄施設だけどね』

 

 ゆっくりとスラスターを吹かしながら通路を進み、内部へと向かう。そして、開けた場所に出ると大量に破棄されたモビルスーツの残骸や試験中に壊れて破棄された黄色い機体にミサイルポッドを積んだモビルスーツ。

 

 「やっぱり、ズサの開発も進んでいるみたいね」

 

 シャロが、ブラックローズⅡを屈ませ、コクピットハッチを開き降りると破棄された試作機を触りながらコクピットハッチを開けるボタンを見付けて開けるとコクピットに入りながらUSBメモリーを刺してデータを引き抜き、ブラックローズⅡへと戻る。

 

 「データがあったのか?」

 

 『かなり、酷い管理ね。破棄する機体にデータを残して置くなんて、普通なら懲罰ものね』

 

 破棄施設で粗方のモビルスーツのデータを抜き取りながら周囲を散策しながら偵察する。そして、破棄施設にモビルスーツを隠し私服に着替えて街中を偵察する。

 

 「やっぱり、変わらないわね」

 

 「人気が無いな。やっぱり?」

 

 「強制退去が原因ね。あぁ、イチカ達にあの美味しかったパスタの店のパスタをご馳走したかったのに」

 

 「それは残念だった」

 

 「シャロが美味しかったって言うなら食べて見たかったかも」

 

 「アンもそう思うでしょ」

 

 シャロは悔しがりながらもアクシズの居住区を三人で見回りながら言う。そして、再び破棄施設に戻る途中でモビルスーツ製造する工廠へと潜入に成功しながら製造中のモビルスーツを写真に収めてから工廠から離脱する。

 

 「アン、直ぐに束さんに秘匿回線で通信を入れて、量産型ブラックローズの製造の強化を頼む事とこの写真を送ってくれ」

 

 「工廠で見たモビルスーツがヤバかった?」

 

 「あぁ、かなりヤバイな。

 

 マラサイだと歯が立たないかも知れない性能のモビルスーツだったし、あの工廠で量産中だと言う事は配備されている証拠だ。それに…」

 

 「イチカ、この子どうしよう…」

 

 「「はぁぁ!?」」

 

 シャロの頼りない言葉に振り向くと、いつの間にか着いて来ただろう黒髪でポニーテールに纏めた一人の5歳か6歳くらいの幼い少女がシャロの私服のスカートの裾を掴み立っていた。

 

 「ママァ、誰なの?」

 

 「「ママ!?」」

 

 「アクシズで浮気して、作った隠し子じゃ無いからね!?」

 

 「じゃあ、この人が私のパパなの?」

 

 「「パパ!?」」

 

 幼い少女は俺に指を指しながらパパだと言う。何故か、誰かに似ていると思いながら気付いたのだが、剣道の道場に通っていた時の幼い頃の気弱な箒と似ていた事に気付く。そして、シャロは隠し子ではない事を全力で否定しながらも幼い少女の手を握るのは、その子に対して母性が目覚めていたのもあるが、ウチの娘達が危なっかしい事を仕出かす為に反射的に手を繋いだのだと理解したのだった。

 

 「(まさか…ニュータイプか!?)

 

 あぁ、パパだ。

 

 一緒に家に帰ろう」

 

 「うん!!

 

 夕飯は甘い卵焼きが良い!!」

 

 だが、住民が居ないのに少女だけだという事の意味にイチカは気付き少女を保護する事を決める。

 

 「アンにシャロ、情報は充分だから一時撤退する」

 

 「はぁ、束さんがぶちギレても知らないわよ」

 

 「いや、この子の保護を優先するよ」

 

 「イチカ、帰る時にモビルスーツデッキを破壊しながら帰る?」

 

 「いや、第二次偵察時に威力偵察を加えながら、工廠へ襲撃するさ」

 

 「まさか…」

 

 アンはイチカが何をやろうとするのかを瞬時に理解して顔を真っ青にする。無論、イチカの表情は何時も通りだが、密かに燃え上がる怒りを感じ取り、第二次偵察時にアクシズ内でリミッターを切った最大出力のハイパーメガビームランチャーを撃つ積りだと思うのだった。

 

 そして、少女に合うノーマルスーツが無くてブカブカの成人用のノーマルスーツを着せたイチカは、リニアシートのシート裏に補助シートを出して少女を乗せてベルトで固定をする。

 

 「アン、シャロ準備はどうだ?」

 

 『何時も行けるわ』

 

 『私もよ』

 

 「じゃあ、家に帰ろう」

 

 「うん、パパ!!」

 

 少女を乗せたまま、来た通路を飛びながら移動してアクシズから脱出すると、イチカは機体を反転させてバックパックのハイパーメガビームランチャーを展開する。

 

 『イチカ、何をする気!?』

 

 まさかの予想を裏切るイチカにアンは慌てた様に叫ぶが、キレたイチカを止める手段は無い事は理解していた。

 

 「いや、宇宙に出たら怯えだしたから元凶を破壊する」

 

 『はぁ、仕方無いわね。

 

 シャロ、イチカの機体の曳行準備よ』

 

 そして、白星に記憶させたモビルスーツデッキの位置と嫌な感じを感じた位置が判り、両方を巻き込む様に位置調整を完了するとハイパーメガビームランチャーのリミッターを切り最大出力のハイパーメガビームランチャーを撃ったのだ。

 

 「娘を怖がらせる物なんか、無くなれぇぇぇ!!」

 

 アクシズの外壁部の岩石を砕きながら内部へと貫き工廠へとハイパーメガビームが襲い、製造していた巨大モビルスーツは一瞬でビームに飲まれて破壊され、研究者や技術者に加えてグレミーの配下の兵士達が漏れ出した空気と一緒にアクシズに空いた穴から吸い込まれて外へと投げ出される。そして、元凶を破壊して怯えなくなり少女は眠くなったらしくてシートでは寝息を立ててスヤスヤと眠るのだった。

 

 無論、最大出力で放ったハイパーメガビームランチャーは先端部が溶けて壊れてしまい、取り付け部からパージして破棄する。

 

 そして、少女の負担にならない程度に加速し、ムサシへと帰還を果たしたのだった。

 

 

 

 イチカ達がアクシズから離脱した後、アクシズに空いた穴を塞ぐ為に急いで出撃したモビルスーツ隊はトリモチ弾を放ち穴を塞ぎ、製造中だったクイン・マンサと一緒にデータの移植作業で横付けされたサイコガンダムMK-Ⅱ二号機が破壊されて失くした事に酷い癇癪を起こすグレミー。

 

 「おのれ!!」

 

 「グレミー様、落ちついて下さい!」

 

 側近のオーギュストはグレミーを宥めながらも、技術者や研究者達を多数失った事が大事だと口が裂けても言えないでいた。無論、被害は工廠全体に広がり、モビルスーツの製造は完成した分を除いても全く足りない戦力をどうにかしないとと思案するが、既にアクシズでは工廠を破壊された煽りでモビルスーツ製造が不可能な状態となっていた。

 

 「これではハマーンを殺せぬではないか!!」

 

 未だに収まらないグレミーの癇癪に呆れるオーギュストだった。

 

 

 ムサシへと帰還したイチカは、束さんの下に少女を連れて行く。無論、束さんがイチカを殴るのは確定だと思いながらもアンとシャロは二人の後ろに着いて行く。

 

 「束さん、ちょっと良いか?」

 

 「どうしたの?

 

 いっくん、そんな物を束さんの前に連れて来んな!!」

 

 バッキィ

 

 「グッァ!?」

 

 「パパ!?」

 

 「「イチカ!?」」

 

 二人の予想通りにイチカは束さんに殴られ、整備用のパーツが入るコンテナへと吹き飛び背中を強打する。無論、イチカは束さんから殴られるのは最初から判ってはいた。だが、束さんに連れて行ったのはイチカなりのけじめだった。

 

 「どうして、箒ちゃんが居るんだよ!!

 

 束さんの可愛かった箒ちゃんは死んだというのにさ!!」

 

 子供の様に泣き喚きながら、イチカを睨む束さん。

 

 「だから、束さんに連れて来たんだ。既に、この子は俺とシャロにパパ・ママと呼んで懐いているし、俺はこの子を養女として引き取るから、けじめに来たんだ」

 

 「ねぇ、君の名前は?」

 

 「パパを殴るオバちゃんはキライ!!

 

 でも、私はホウキだよ!!」

  

 「オバちゃん!?

 

 でも、いっかぁ。

 

 じゃあ、ホウキちゃんって呼んでも良いかな?」

 

 「うん!!」

 

 「ひっぐぅ…ひっぐぅ…ホウキちゃんが帰って来たよ!!うわぁァァァァァン!!」

 

 「束お姉ちゃん、何処か痛いの?」

 

 束さんはホウキを優しく抱きしめるとワンワンと泣き出す。そして、幼い頃の箒が束さんへの呼び方をした『束お姉ちゃん』は束さんの箒を亡くしてから止まっていた時を動かし始めたかの様に見え、未だにホウキを抱き締めて泣く束さんはいつまで泣き続けたのだった。

 

 補給と整備を終えた3機は次の出撃に備えていた。無論、ホウキの一件は鈴に報告してからは母親としてシャロの養女となり娘達と食堂で仲良く遊び、姉妹関係は良好に見えた。

 

 第二次偵察部隊は威力偵察も行うために、メンバーは初期メンバーの俺とシャロにアンは確定とし、クリスとエマにカミーユにフォウに加えて、はぐれた時のメンバーにイリアを加えた八人で行う事となった。

 

 そして、奇襲を掛けるかのように再度、出撃したイチカ達はアクシズへと向かうのだった。



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グレミー・トトの反乱 後編

 

 

 第二次偵察部隊による威力偵察は正面から突入とし、アクシズと並走するエンドラ級からの対空砲火に曝されたり、多数のモビルスーツやアクシズの防衛設備が稼働して対空レーザーやミサイルなどが俺達を襲う。

 

 『かなりキツイ対空砲火だな』

 

 『まさか、相手も正面からだなんて思わないでしょうね』

 

 『まぁ、私にしたらぬるま湯に浸かるのと一緒ね』

 

 先頭を猛スピードで弾幕を躱しながら進む、イチカとアンにシャロの三人と対空砲火に臆して躊躇するカミーユとフォウにエマとクリスの四人。

 

 「こんなの躱せるかよ!?」

 

 「エマ、イチカ隊長達と同じ様に躱せるかしら?」

 

 「無理ね。私達は、ゆっくりと確実にアクシズへと行きましょうか?」

 

 「イリアさん、支援お願い」

 

 「全く、隊長達は…フォウ、支援は任せて」

 

 そして、後方から四人をサポートするイリアは信じられない操縦テクニックで躱し続けてアクシズ内部へと突入した隊長達に呆れながらも近付く、アクシズから来たドライセンへとビームライフルを放ち撃破する。

 

 先行したイチカ達は、エンドラ級の対空砲火を縫い潜りながらアクシズの艦船ドックへと入りながら、ドックを抜けてアクシズの内部へと突入して、内部のモビルスーツドックから慌てて出て来た、数機の量産型のバウがビームライフルを放ち近づくが、アンが1機のバウの懐へと入りショットランサーでコクピットを突き撃破し、シャロはヘヴィマシンガンで撃ち抜きバウを蜂の巣へと変える。

 

 「見つかった!?

 

 イチカ、ここはあたしとシャロでやるから先行しなさい!!」

 

 「アン、任せた!」

 

 「任されたわ!!

 

 えぇい、落ちなさいよ!」

 

 『グッハァ!?』

 

 イチカも工廠の完全破壊を目的に進撃し、数機のドライセンがホバー移動しながらビームトマホークで斬り掛かるが、ビームライフルをハイパービームサーベルへと変形させてドライセンの腰部をすれ違いざまに斬り裂き撃破すると、一度上昇しながらビームライフルへと戻してビームを乱射してドライセンを撃破していく。

 

 

 イチカ達から遅れて、アクシズ内部へと突入したカミーユ達は、巨大なモビルスーツとモビルスーツデッキで遭遇する。無論、巨大なモビルスーツはロザミアが乗るサイコガンダムMK-Ⅱだった。

 

 「なんだ、この感覚…ロザミアなのか?」

 

 「お兄ちゃんなの!?」

 

 彼女はカミーユをお兄ちゃんと呼ぶのは、カミーユから感じた波動が似ており、オーガスタ研究所にいた精神的支柱だった強化人間だったらしく、グレミー・トトがオーガスタ研究所を制圧した際に彼の乗るアッシマーは撃破されて戦死していた。

 

 「なら、彼女もイチカ隊長の様に救える筈だ!」

 

 「カミーユ、危険よ!!」

 

 カミーユはサイコガンダムの頭部へと行き、頭部を掴み停止すると、フォウの静止を聞かずにコクピットを開きサイコガンダムMK-Ⅱのコクピットハッチへと向かいハッチを開ける。

 

 「ロザミー、お兄ちゃんと一緒に帰ろう」

 

 「うん、お兄ちゃん!!」

 

 ロザミアはカミーユに抱き着き、一緒にコクピットから出るとブルーローズMK-Ⅱのコクピットへと一緒に戻り、離れながらサイコガンダムMK-Ⅱのコクピットへとビームライフルを放ち頭部を破壊する。

 

 頭部を失ったサイコガンダムMK-Ⅱは後へと倒れ、モビルスーツデッキから離脱しながら隊長の元へと急いだのだった。

 

 

 

 工廠群へと飛来したイチカは、ビームライフルを放ちながら施設を破壊していく。無論、工廠を防衛するのはガザCの3個小隊12機のモビルスーツ隊である。

 

 「やっぱり、モビルスーツが足りないからガザシリーズを引っ張り出したか…」

 

 アクシズでは、機体の強度不足から主力機は早々とマラサイや量産型のブラックローズへと移行しており、偵察任務で使えるガ・ゾウムを除いたガザシリーズは退役していた。

 

 イチカも気付いて居なかったが、アクシズの熱核ブースターは第二段階の加速に入り、ゼタンの門への到達予想は最低でも3日か最高で5日の距離まで近付いており、ハマーンとシャア率いるアクシズの主力はソロモンとエゥーゴの本拠地であるアンマンから艦隊が出撃してゼタンの門である旧ア・バオア・クー奪還作戦が執り行われていた。

 

 「工廠の破壊は充分だな」

 

 ガザCを数機を撃墜しながら反転しながら離脱を図り、アン達へと合流する。

 

 「片付いたわね…」

 

 「そうね。後は…」

 

 バウの中隊規模のモビルスーツ隊が二人に撃破されて市街地ではバウの残骸とコクピットをショットランサーで貫かれて仰向けに倒れたバウを尻目にしながら二人は呟く。

 

 「二人共、終わったみたいだな」

 

 「イチカは?」

 

 「軽く工廠を破壊して来たさ」

 

 「じゃあ、任務は完了かしらね」

 

 「だな」

 

 三人で纏まり、話しているところにイリア達も合流する。そして、モビルスーツデッキの側の廃棄施設へと向かい、通路を飛びながらアクシズから飛び出して撤退したのだった。

 

 

 無論、工廠を完全に破壊されたり、モビルスーツデッキのモビルスーツを破壊された事を知ったグレミー・トトは激昂し、ラカン大尉が隊長を努め、新鋭のモビルスーツのドーベンウルフで纏められたスペースウルフ隊に襲撃したモビルスーツへ追撃命令を下すが、イチカ達は既に暗礁宙域に待機するムサシへと撤退しており、ラカンはエンドラ級巡洋艦のサンドラとミンドラにカサンドラの三隻でイチカ達のムサシを追撃する。

 

 

 「ふぅ、戻ったな…」

 

 「イチカ、一緒にシャワー浴びましょ?」

 

 「アン、私も混ざるわ」

 

 「まさか、二人で抜け駆け!?

 

 カミーユ、報告書の提出を任せるわ‼」

 

 「イリアさん!?」

 

 「じゃあ、報告書を出したらファを呼びましょうか?」

 

 「フォウの瞳がハートに!?」

 

 ムサシにイチカ達が戻るとアンとシャロはイチカの脇を抱えてシャワー室へと連行する。無論、アンとシャロの別の意味での食事だとイリアも判り、報告書をフォウとカミーユに押し付けて後を追う。

 

 「くっ、逃げるかしかない!!」

 

 「あっ、お兄ちゃん離さないよ!!」

 

 残されたカミーユも発情したアンとシャロの煽り受けて内股をモジモジとするフォウの一言に固まり、踵を返して瞳にハートマークを浮かべたフォウから逃げようとするのだが、ロザミアが脇を抱えており逃げられない。

 

 そして、この艦のクルーが女性ばかりである事もそうだが、カミーユは俺の周りには肉食系女子しか居ないのかと内心叫びながら、フォウとロザミアに捕まり脇を固められファの部屋へとカミーユは連行されて行ったのだった。

 

 

 無論、イチカとカミーユがそれぞれの妻や恋人達に美味しく食べられていた頃、隊長のイチカがそんな目に逢っているとは知らないツキノ中佐が指揮をするムサシのブリッジでは、最新鋭のレーダーによりアクシズからの追撃艦隊が追っているのは判ってはいたが、ムサシはハマーンの主力艦隊へ合流する為に最大船速で向かっている為、アクシズからの追撃艦隊は追い付けないと見ていた。

 

 「例の艦隊の監視を怠るなよ」

 

 クルーのレーダー観測員が追撃艦隊を監視を強めながらも周囲への警戒は忘れない。だが、スピード的には明日の昼前にはハマーン様の主力艦隊に合流するだろなと思いながらも、三段階目の加速を始めたアクシズもゼタンの門に到達予想が早まる事にツキノは脳内に警鐘が鳴り響いていた。

 

 

 

 一方、ハマーンの主力艦隊はゼタンの門へと到達しながらもティターンズと激しい艦隊戦を展開していた。

 

 「シャアの艦隊はまだか!!」

 

 「エゥーゴの主力艦隊、定位置に到達!!

 

 艦隊戦に移行した模様!!」

 

 艦隊旗艦のムサシ級二番艦のヤマシロは大口径の三連メガ粒子砲を放ちながら、ブリッジに居るハマーンが叫ぶ。無論、主力艦隊にはシーマ艦隊のシーマが座乗するアカツキも砲撃戦に参加しながら、アンマンから来たシャア率いるエゥーゴの主力艦隊とデラーズ艦隊とキマイラ艦隊が戦場に到着して砲撃を始めた事に細く微笑む。

 

 

 だが、双方の艦隊戦は長引き既に2日が経過しており、旧式のムサイはモビルスーツ隊を吐き出して直ぐに轟沈するに至る。それでも双方は激しい艦隊戦を強いられたところに、イチカのオリムラ中隊の母艦であるムサシと追撃するラカンの艦隊も戦闘宙域に乱入する形となる。

 

 「くっ、グレミーめ、アクシズをぶつける積りか!?」

 

 グレミー一派が制圧した宇宙要塞アクシズまでもが宙域に入り、数隻のティターンズのサラミス改を巻き込み衝突を繰り返しながらサラミス改を沈め、艦船ドックから吐き出されたグレミーの艦隊がハマーンの艦隊とティターンズの艦隊へと砲撃を始めた事により、戦場は更に混迷を深めるのだった。

 

 「我らはネオ・ジオン!!

 

 ハマーンを討ち滅ぼせ!!」

 

 グレミーの立体映像にネオ・ジオン兵の士気は上がり、ハマーンは完全にグレミーが反乱を起こした事にニヤリと笑いながらも、ネオ・ジオン艦隊と単艦で真っ向から砲撃戦をするムサシを見たのだった。

 



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散る命と生まれる命

 

 

 「ムサシ、回頭急ぎなさい!!

 

 砲撃目標、ネオ・ジオン艦隊!!」

 

 艦長のツキノが叫びながらムサシが回頭し、追い付かれたアクシズの艦船ドックから吐き出されたネオ・ジオン艦隊へと単艦にて艦隊戦を始める。

 

 無論、ムサシが緊急回頭した訳ではあるが、不意を突かれたラカンの艦隊は緊急回避を行いムサシからの砲撃を躱すが、後方のアクシズのドックから出たばかりの出撃したムサイ改とエンドラ級の二隻の機関部へと直撃して二隻は轟沈する。

 

 そんな時、第一種戦闘配備に変わったのを知り、急ぎ戦闘食を大量に作り始めた矢先、厨房に居た妊娠7ヶ月を迎えばかりの鈴がお腹を抱えながら異変を起こす。

 

 「うっぐぅ!?」

 

 「鈴さん!?」

 

 「破水してるわね…マウアー、早くストレッチャー!!」

 

 「いっ、痛い…産まれる…」

 

 「嘘!?

 

 まさかの早産!?」

 

 お腹を抱えて蹲る鈴の姿に慌てるマウアー。

 

 そして、鈴の股からは破水した大量の羊水が出ている事を見ており、近くにいたケイトは鈴が破水して急に産気づいた事に気付き、マウアーにストレッチャーを持って来る様に指示を出して持って来させると、テーブルに敷かれたテーブルクロスを剥ぎ取り鈴の下に牽かせて、ケイトとマウアーが息を合わせながらクロスの両端を掴みストレッチャーへと移乗させて医務室へ搬送する。

 

 ケイトは、看護師助手の資格があるファを呼びに行きながらも、自身にも看護師の資格がある為に鈴の出産の手伝いの為に出撃が出来ない状態になる。

 

 ムサシのモビルスーツデッキでは、モビルスーツの出撃の準備に束さんは各機体のチェックを念入りにしながら、キャラとマシュマーがいち早くデッキに到着し、自機のモビルスーツへと乗り込む。

 

 「えぇぇい、ハマーン様の逆賊共が!!」

 

 「マシュマー、落ち着きな!!」

 

 イチカはこうなる事を予測しアクシズでは出撃させず、今ようやくグレミーの反乱を知りキレたマシュマーは、自機のブラックローズⅡに乗り込み、キャラもマシュマーの暴走を抑えるために一緒に出撃する。

 

 「あっ、二人共出撃はまだだよ!?」

 

 「マシュマー・セロ参る!!」

 

 「束さん、ゴメン!!

 

 マシュマーはあたいが抑えるから!!」

 

 束さんが気付いたが、静止を聞かずに飛び出した二人に叫ぶが出撃されてしまう。そして、マシュマーとキャラが勝手に出撃した事により、二人の出撃に慌てたネオ・ジオンサイドもモビルスーツ隊の展開が始まり状況は悪化するばかりだった。

 

 「スペースウルフ隊出撃するぞ!!」

 

 「了解!!」

 

 そんな悪化した戦況の最中にもラカン率いるスペースウルフ隊がムサシを撃沈すべく出撃し、三隻の母艦から18機のドーベンウルフがカタパルトから吐き出されて出撃した二人に殺到する。

 

 「行くぞ!!」

 

 「落ちな!!」

 

 ラカン達のドーベンウルフが出て来た事に気付いたキャラとマシュマーのブラックローズⅡは、出撃して来たドーベンウルフへとハイメガビームランチャーを放ち、数機を纏めて母艦ごと撃墜するが、隊長を務めるラカンや残りのドーベンウルフのパイロット達に躱される。

 

 「おのれ、俺達の母艦が!?」

 

 「いざ、尋常に!!」

 

 二人の乗るブラックローズⅡの一時のエネルギー切れから回復し、ショットランサーを構えたマシュマーのブラックローズⅡはキャラのブラックローズⅡのビームライフルによる支援射撃を受けながらドーベンウルフの懐へと入りながら、頭部からランスを突き刺して撃墜し、キャラもビームライフルを放ちドーベンウルフのメガランチャーを破壊しながらビームサーベルを抜き胸部へと突き刺し撃破しながら別機体から放たれたミサイルを躱す。

 

 「マシュマー、後でイチカ隊長の鉄拳制裁だからね!!」

 

 「うっぐぅ…」

 

 マシュマーはキャラからイチカ隊長の鉄拳制裁だと聞き顔を青くするが、ラカンのドーベンウルフが拡散メガ粒子砲を放ち襲う。

 

 「落ちろ!!」

 

 「「なっ!?」」

 

 咄嗟に展開したビームシールドで拡散メガ粒子砲から守りビームライフルを反撃で放つが、ラカンには躱され別のドーベンウルフに命中する。しかし、ラカンはビームサーベルを握る腕を飛ばしながらマシュマーのブラックローズⅡへと斬り掛かり、マシュマーはビームサーベルで受け止める。

 

 「貰ったぞ、小僧!!」

 

 「なんの!!」

 

 「だから、シャーロット中佐がその癖を注意するのだと言うのだ青二才が!!」

 

 「グッハァ!?

 

 イチカ隊長すいません…

 

 ハマーン様!!

 

 バンザァァァァイィィィィ!!」

 

 ドーベンウルフの隠し腕でビームサーベルを抜くとマシュマーのブラックローズⅡのコクピットへとビームサーベルを突き刺し、マシュマーは叫びながらビームサーベルに焼かれ死亡し、乗っていたブラックローズⅡは爆発しながらキャラのブラックローズⅡの装甲を叩きながら膝関節を破壊して四散する。

 

 「マシュマーのバカヤロー!!

 

 あっ、あたいは、マシュマーが好きだと言ってないのにぃぃぃ!!」

 

 最後までマシュマーに素直に好きだと言えなかったキャラは泣きながらマシュマーに馬鹿野郎と叫び、膝関節を破壊され損傷したブラックローズⅡはショットランサーを構えてラカンのドーベンウルフへとスラスターを全開にしながら突っ込むが、複数からのドーベンウルフの集中砲火を受けそうになるが、マシュマーを殺された怒りから左手に握るビームライフルを乱射してラカン機以外のドーベンウルフを全て撃墜する。

 

 「あぁ、マシュマー。

 

 あたいが今、仇を取るからね…」

 

 「グッアッ!?

 

 グレミー様…」

 

 「誰だい!!

 

 あたいの仇を奪ったのは!!」

 

 「キャラ、落ち着きなさい‼」

 

 「シャーロット教官…」

 

 キャラがラカンに突撃をしようとした瞬間、ラカンのドーベンウルフはコクピットを狙撃され四散する。しかし、ラカンへとビームを放ったのは、ロングレンジスナイパーライフルを構えて放ったシャロのブラックローズⅡだった。

 

 「こめんね、キャラ。

 

 教官同士の問題だけは譲れないから…」

 

 シャロが言う様に、ラカンもシャロ同様に教官仲間だったのは、キャラも二人の生徒だった為に知っていた。だから、グレミー側に付いたラカンだけは自分で殺すとシャロは決めていたのだ。

 

 例え、仇を取られたキャラが逆上して私に襲い掛かろうとも…

 

 だけどキャラは涙を流しながら、教官であるシャロが仇を取ってくれた事に感謝しながらもシャロ達に合流して、急に展開を始めたネオ・ジオンのモビルスーツ隊の掃討に向かったのだった。

 

 

 同じ頃、ムサシの医務室では陣痛の感覚が短くなった鈴の出産が始まり、看護師助手のファと看護師の資格が有ったケイト、医師免許がある束さんの三人で立ち会いながら鈴の出産を迎えようとしていた。

 

 「うっ、うぅぅぅぅ!?」

 

 「鈴ちゃん、ふっ、ふっふぅだよ!!」

 

 「一夏に元気な娘を生んでやるんだから!!

 

 ふぅ…うっ…うぅぅぅぅ」

 

 「束さん、お湯とタオルの準備できました!!」

 

 「ファちゃん、ありがとうねぇ」

 

 カートに置かれた清潔なタオルと沸かされたお湯を調整しながらファにお礼を言う。

 

 そんな最中にも三つ巴によるモビルスーツ戦は激化の一途を辿り、ムサシの医務室にも負傷したクルーやパイロットのカナデとカエデの双子姉妹が重傷を負い担架で搬送されて来た。

 

 「「うっうぅぅぅ…」」

 

 「束さん!!

 

 カナデとカエデが!!」

 

 「全く、鈴ちゃんも出産中なのに!!」

 

 二人同時にバウのシールドに備えられたメガ粒子砲を撃たれて撃墜され脱出はしたが、自機のモビルスーツの破片を受けた二人は背中とお腹にそれぞれ破片が刺さり瀕死の重傷だった。

 

 無論、他の艦の医療設備なら死亡は確実だろうが、ムサシには最高の医療設備と天災の束さんが居る。

 

 「仕方ないな。

 

 これを使おうかな」

 

 ドッゴォン

 

 「「「へっ?」」」

 

 束さんの専用機の白椿の拡張領域から取り出した液体に満たされた2機のカプセルは、IS世界では普及しつつあるナノマシンで行う人体再生による治療機器だった。担架で運んで来たマウアーとサクラは呆気に晒されながらも正気を取り戻す。

 

 「さっさと治療するよ!!」

 

 「「はっ、はい!!」」

 

 束さんは二人のノーマルスーツを脱がして全裸にしてから麻酔をすると破片を慎重に引き抜き、カプセルへと投入してから二人に人工呼吸器を付けてカプセルを閉じて液体をカプセル内へと満たす。

 

 「「すぅ…すぅ…」」

 

 二人の呼吸は落ち着き始め、ナノマシンによる治療により徐々に傷口が塞がり始めた二人は寝息を立てながら無防備な寝顔を晒すのだった。

 

 二人の治療が終わる頃には、鈴から赤ちゃんの頭が出始める。鈴が力みながら力を入れて行くと、徐々に赤ちゃんが出始めて頭が完全に出て間もなくして鈴の娘が産まれたのだった。

  

 「オギャァ、オギャァ!!」

 

 「おぉ、元気な女の子だよ!!」

 

 「ふぅ…良かった…」

 

 束さんにより、早産だけど産まれた赤ちゃんを受け止めれて安心した鈴は始めての出産に疲れて居たが、束さんからタオルに包まれた娘を受け取ると優しく抱き上げながら、きゃっきゃっと騒ぐ娘に無事に産まれたこと感謝する。そして、ケイトに娘を預けると鈴は気絶する様に深い眠りに着き、規則正しい寝息を立てたのだった。

 

 

 無論、撃墜されたのはマシュマーやカナデとカエデの双子姉妹だけでは無かった。

 

 「落ちなさい!!」

 

 『グッアッ!?』

 

 『貰った!!』

 

 「きゃあ!?」

 

 クリスとイヴと組みながらティターンズからのモビルスーツ隊と交戦していたエマもバーザムからのビームライフルの直撃を受けて左腕が吹き飛び、援護しようとしたイヴが乱入して来たネオ・ジオンのオーギュストが乗るドライセンからのビームカノンを受けて撃墜され、イヴは脱出装置を使い脱出する。無論、クリスが脱出ポッドを回収してエマがドライセンを撃破すると、お互いを支援しながら戦線を離脱してムサシへと向かう。

 

 イチカ達も同様で、アクシズへと向かったイチカ達はグレミー・トトが乗る修理されただろうサイコガンダムMK-Ⅱと複数のバウと交戦状態になる。

 

 「グレミー・トト!!」

 

 「やはり来たか、特異点が!!」

 

 サイコガンダムMK-Ⅱと交戦するイチカのブルーローズMK-Ⅱ。そして、取り巻きたる複数のバウと交戦するアンとシャロにキャラのブラックローズⅡ。

 

 「イチカ、見付けたぞ!!」

 

 「ジェリドか!!」

 

 「まさか、カミーユかよ!!」

 

 可変モビルスーツのバウンドドックを乗るジェリドは、カミーユ機のブルーローズMK-Ⅱをイチカ機と勘違いをして襲い、フォウのブルーローズMK-Ⅱがカミーユを支援する。

 

 「貴様が、ギレン閣下の兄弟仲を直さなければ!!」

 

 「逆恨みかよ!!」

 

 「ハマーンを殺してリーダーに成れたものを!!」

 

 サイコガンダムMK-Ⅱは全身からの拡散メガ粒子砲やビーム砲を放ちイチカを狙う。無論、イチカへの直撃コースのビーム砲はビームシールドで防がれ、逆にイチカが放つビームライフルと展開したファンネルのビームはIフィールドで防がれてお互いに膠着状態となる。

 

 「チィ!?」

 

 「ビームなど無駄だ!!」

 

 「イチカへは行かせないわよ!!」

 

 『グッァァァァ!?』

 

 「グッ、ミサイル!?」

 

 イチカの背後をシャロとアンが守りながら、アンがヘヴィマシンガンを放ちバウを撃破し、シャロは乱入して来たティターンズのハイザックを遠距離から狙撃し撃破するが、キャラも二人を支援していたが右脚部を失っていた事により、バウが落とされ間際に放ったミサイルを受けてしまう。

 

 「キャラ、急いで脱出しなさい!!」

 

 「教官、脱出ポッドが故障して…」

 

 それが、キャラの最後の言葉となり、キャラのブラックローズⅡはミサイルの直撃で歪んだ内部フレームにより脱出不能となる。そして、キャラのブラックローズⅡは再度のミサイルの直撃でキャラ脱出する事なくブラックローズⅡは四散するのだった。

 

 「キャラァァァ!!

 

 あんた達、私の教え子をよくも!!」

 

 シャロの叫びも虚しく、シャロは泣きながらもヘヴィマシンガンを乱射してバウを撃墜して行く。そして、アンも乱入するティターンズのモビルスーツのバーザムと交戦を始める。

 

 

 「カミーユ!!」

 

 「ジェリド、母さんの仇だ!!」

 

 「三対一じゃあ、分が悪いぜ!!」

 

 「カミーユ、熱くなり過ぎるな!!」

 

 「なら、行けファンネル!!」

 

 イリアに忠告され、冷静さを取り戻したカミーユはファンネルを展開し、それに倣う様にフォウとイリアもジェリドのバウンドドックへとファンネルを使う。

 

 「チ、チクショォォ!!」

 

 そして、ジェリドのバウンドドックへと殺到したファンネルはビームの雨を降らしてジェリドの機体へと襲い掛かり、ビームの雨を受けたジェリドのバウンドドックは四散する。ジェリドはコクピット内で叫びながら機体の爆発と一緒に焼かれながら蒸発したのだった。

 

 ゼタンの門側でも、ハマーンが乗る純白のブルーローズMK-Ⅱとシャアが乗るナイチンゲールが組む二人とジ・オに乗り、エゥーゴとアクシズのモビルスーツを撃墜して行くシロッコとの戦いとなる。

 

 だが、シロッコは宇宙要塞のアクシズ側へと誘導しながら戦い、ゼタンの門へとぶつかるのは時間の問題だと思うが、アクシズ側でもネオ・ジオンと戦うオリムラ中隊を見付けて、自軍のバーザムと戦うアンの乗るブラックローズⅡへと狙いを着けてビームライフルを放つ。

 

 「あの時の死に損ないが落ちろ!!」

 

 「当たらないわよ!!」

 

 咄嗟に気付いたアンが、シロッコのジ・オから放たれたビームを躱し、サイコガンダムMK-Ⅱと戦うイチカのブルーローズMK-Ⅱ側へと退避し、シロッコはアンのブラックローズⅡを見失うのだったが、追い付いたシャアとハマーンからのファンネルから回避行動を取らなければならず、シロッコは苦虫を噛んだ表情で悔しがるのだった。



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宇宙の彼方へ

 

 

 混迷する三つ巴の戦いは、佳境を迎えようとしていた。無論、アクシズとエゥーゴの連合軍とティターンズにネオ・ジオンのモビルスーツ隊は何処に行っても乱戦となり沢山の生命が花火の様に散らしていた。

 

 「貴様の様な危険なニュータイプは生かしておけんな!!」

 

 「アクシズの女狐が何を言うか!!」

 

 ハマーンのブルーローズMK-Ⅱは俊敏性と高い機動力を活かしながらシロッコのジ・オを翻弄しながらファンネルとビームライフルからビームを放つ。

 

 「ニュータイプのなり損ないのシャアも似たような存在ではないか!!」

 

 「私は確かにニュータイプのなり損ないだろう。だが、人の革新を気長に見守ろうと一切しない貴様の存在自体が危険なのだよ!!」

 

 シャアは叫びながらナイチンゲールのビームトマホークを抜き、ハマーンの援護射撃を受けて斬り掛かりるが、ビームサーベルで受け止められて攻撃は通らない。

 

 そんな、3機のニュータイプ同士の戦いはアクシズの要塞施設を破壊しながらの戦いとなる。

 

 そして、イチカもアンとシャロのブラックローズⅡの援護を受けながらグレミーのサイコガンダムMK-Ⅱと戦う。

 

 「貴様が居なければ!!」

 

 「自分の不幸を人のせいにしてんじゃねえよ!!」

 

 ビームライフルをハイパービームサーベルへと変形させ、サイコガンダムMK-Ⅱの肩から腕に掛けて斬り裂き右腕を破壊する。

 

 「ぐっ!?

 

 貴様はどうだと言うのだ!!」

 

 「俺だって、最初は不幸な連続だったさ!!

 

 だがな、グレミーの様に悲観すらしなかったし、みんなとの出会いが在ったからこうして居られんだよ!!」

 

 「うるさい、うるさい、うるさァァァい!!」

 

 拡散メガ粒子砲を躱しながら背後へと周り、バックパックへと斬り掛かりIフィールド発生装置を破壊する。

 

 「だから、てめぇはガキなんだよ!!」

 

 「Iフィールドが!?」

 

 「様子がおかしいな?」

 

 「うわァァァァ!?」

 

 「ちぃ、暴走かよ!?

 

 アン、シャロは巻き込まれるから退避しろ!!」

 

 「「了解!!」」

 

 グレミーが錯乱した影響でサイコミュシステムが暴走したサイコガンダムMK-Ⅱは敵味方関係なく拡散メガ粒子砲を放ち破壊を撒き散らす。

 

 「アハハハ!!

 

 消えろ、消えろ、消えて無くなれぇぇぇ!!」

 

 錯乱し、破壊を撒き散らすサイコガンダムMK-Ⅱはシャア達が戦う方へと移動しながら拡散メガ粒子砲を放ち、アクシズで就航したばかりでムサシと砲撃戦を展開していたサダラーンのブリッジを撃ち抜く。

 

 無論、ブリッジを破壊されたことにより指揮系統が破壊されたサダラーンはムサシからの一斉射撃をくらい轟沈する。

 

 「ちぃ、味方までも攻撃をすんのかよ!!」

 

 イチカは被害が大きくなる前にグレミーのサイコガンダムMK-Ⅱを落とす決意をしてブルーローズMK-Ⅱでは初めて行う二重瞬時加速に不安に思いながらも、ハイパービームサーベルのリミッターを斬る直前に切る様に白星に頼み、二重瞬時加速を行ったのだ。

 

 「俺はグレミーともしかした友になれたかも知れない。だが、嫉妬してミネバやハマーン様を殺すなら!!」

 

 「消えた!?」

 

 イチカは叫びながら二重瞬時加速を行い、サイコガンダムMK-Ⅱの頭上へと行くとハイパービームサーベルを振り下ろしてサイコガンダムMK-Ⅱを頭から胴へと斬り裂くとサイコガンダムMK-Ⅱは縦に真っ二つになり、グレミーはコクピット内で叫ぶ事なく即死してサイコガンダムMK-Ⅱと共に大爆発を起こしてサイコガンダムMK-Ⅱは四散したのだった。

 

 「グレミー…俺はグレミーの様にはならないからな…」

 

 イチカは呟きながら、アン達に合流する為に移動する。しかし、アンとシャロのブラックローズⅡを見付け合流しようとする。

 

 「「イチカ!!」」

 

 「二人共無事だったか…えっ、アン?」

 

 「アン?」

 

 「あっ……イチカ…」

 

 アンのブラックローズⅡが急に脱出ポッドを吐き出した後にビームが直撃して四散する。それは、ビームライフルのビームが直撃する寸前にコア人格の蒼が脱出装置を発動させてアンを脱出させていたが、アンはISコアの生命維持装置が働いて気絶する様に眠らせていたのだった。

 

 「シャロ、アンを連れてムサシへ戻れ…」

 

 「イチカ?」

 

 「俺は、シロッコを殺さなくてはいけなくなった」

 

 「ちょっと、イチカ一人じゃあ無理よ!!」

 

 「シャロ、隊長命令だ。アン大佐を連れ、ムサシへと帰投しろ」

 

 「隊長命令だなんて酷い!!」

 

 「アンを頼む」

 

 「必ず、戻ってね…」

 

 シャロは泣きながら、命令を否定しようとするがアンを頼むと言い、シャロから離れながらアンのブラックローズⅡのショットランサーを握りシロッコのジ・オへと向かったのだった。

 

 「アン、このショットランサーを借りるからな…」

 

 

 シャロがムサシへ向かっていた頃、サダラーンを撃沈したムサシの第二砲塔がドゴス・ギアからの砲撃により主砲塔の側面装甲を撃ち抜かれ吹き飛ぶ。

 

 「くっ、被害状況知らせ!!」

 

 「主砲の第二砲塔が全損し、主砲塔内に居た者は全員戦死!!」

 

 「第二カタパルトに直撃被弾し、負傷者多数!!」

 

 「ムサシ、回頭急き、アンチビーム爆雷投下を!!」

 

 ツキノ中佐は、何としてもムサシを沈めまいとクルーへと檄を飛ばし、ドゴス・ギアへの反撃を試みる。

 

 「主砲準備良し!!」 

 

 「ドゴス・ギアに撃ち返しなさい!!」

 

 ムサシの第一砲塔のハイパーメガ粒子砲がドゴス・ギアへと放つ。無論、バスクが艦長を務めるドゴス・ギアではアンチビーム爆雷を投下して防御に徹するが、ツキノの意地の一撃とも言えたハイパーメガ粒子砲はドゴス・ギアの格納庫を撃ち抜き、モビルスーツデッキではモビルスーツの誘爆により大火災を発生させる。

 

 「ヌッオッ!?

 

 被害知らせ!!」

 

 「前部右舷格納庫に直撃被弾し、大火災発生!!」

 

 「おのれ!!」

 

 バスクが叫ぶの束の間、シーマが直接指揮するアカツキからの主砲の砲撃がブリッジ下へと被弾する。ツキノは好機と判断して一斉回頭した後に第一砲塔と第三砲塔からのハイパーメガ粒子砲による一斉射撃を指示する。

 

 「今が好機。

 

 一斉回頭!!」

 

 「了解!!」

 

 「全主砲、一斉射撃しなさい!!

 

 撃てぇぇぇ!!」

 

 「ぬぉぉぉぉ!?」

 

 前部の生き残った主砲と後部の主砲が一斉に放たれ、ドゴス・ギアは六条のハイパーメガ粒子砲が突き刺さりながら内部で大爆発を引き起こして、ブリッジに居たバスクは床下から来た爆発の炎に焼かれながら死亡してドゴス・ギアは轟沈する。しかし、沈む直前に放たれたメガ粒子砲はアカツキのブリッジ付近と機関部に直撃して、被弾した煽りでブリッジ内にも艦内の破片が降り注ぎ、数名のクルーは装甲板の下敷きになり即死し、シーマも爆発の煽りでお腹に細い鉄パイプが突き刺さり瀕死の重傷を負う。

 

 「シーマ様だけでも脱出させろ!!」

 

 「ラッセル、あんた死ぬ気かい!?」

 

 「お嬢の為に生きてくだせい。ユキナ、シーマ様をムサシへ連れて行け!!」

 

 「ラッセル、あたしは「シーマ様、失礼!!」ユキナアンタ…」

 

 そして、ユキナがシーマの意識を首への当身で刈り取り、ランチへと乗りシーマや多数のクルーが退艦した後、アカツキは大爆発を引き起こし、ラッセルはムサシに向かい敬礼をしながらアカツキの大爆発とともに焼かれて戦死し、逃げ遅れた多数のクルーと一緒に四散したのだった。

 

 無論、ムサシへと移乗したシーマは医務室へと搬送され、双子姉妹同様にカプセルへと入れられ治療を受ける事になるのだが、ブリッジで再会したユキナとツキノが姉妹だった様で未だにイチカへと思いを告げないでいる駄姉に対してキレた妹のユキナとの殴り合いによる肉体的会話での姉妹喧嘩になるのは別の話だったりする。

 

 シャロと別れたイチカは、ブルーローズMK-Ⅱを加速させながらシャアとハマーンの二人と戦うシロッコへと向かっていた。無論、アンへと狙撃し殺され掛けた事だけではなく、以前に殺されたジュンコへの仇を討つつもりでもあった。

 

 「シロッコ!!」

 

 ニュータイプ3人の戦いにイチカも参戦し、シロッコのジ・オへとヘヴィマシンガンを放ち牽制する。

 

 「ちぃ、なり損ないのニュータイプが増えたか!!」

 

 「ニュータイプなんて、どうでも良い!!

 

 俺はただの織斑一夏で、女性達の不幸を呼ぶお前だけは!!」

 

 「イチカくん、無茶をするな!!」

 

 「私とシャアで、奴を片付ける!!」

 

 「行けぇぇファンネル!!」

 

 二人の静止を聞かずにファンネルを展開しながらシロッコのジ・オへとファンネルが襲い掛かるが、反転し回避行動を取るシロッコのジ・オの機動力と重装甲に阻まれ、ファンネルでは効果がない。それは、シャアとハマーンも理解しており、近接戦闘を強いられていた事からも理解できる。

 

 「なまじ、ニュータイプだけに厄介だが、このジ・オに無駄だよ。さあ、消えろ、ニュータイプのなり損ない!!」

 

 「ビームなんか!!」

 

 シロッコのジ・オが放つビームライフルをビームシールドで防ぎ、逆にハイパーメガビームランチャーを展開して、ジ・オへと放つ。そして、回避行動しながらもシロッコのジ・オの右腕とビームライフルを一緒に吹き飛ばし、シロッコは攻撃を当てられジ・オを損傷させた事にイチカに対してキレて叫ぶ。

 

 「いい気に成るなよ、なり損ないが!!」

 

 「私が居るのを忘れては困るな、シロッコ!!」

 

 「そろそろ、落ちて貰うぞシロッコ!!」

 

 「クッ、ハマーンとシャアが居たのを忘れていたか、だが!!」

 

 「「ぬっわぁ!?」」

 

 「貰ったぁぁぁ!!」

 

 二人から放たれたビームライフルを躱しながら、シャアのナイチンゲールを掴み、ハマーンのブルーローズMK-Ⅱへと投げ飛ばし、イチカが左手に抜いて斬り掛かるビームサーベルをスカート下の隠し腕が抜いたビームサーベルで受け止める。

 

 「甘いと言っているだろうが!!」

 

 「くっ!」

 

 ビームサーベルを受け止められた時、三人の女性の声が聞こえたのだ。

 

 『一夏、最後まで素直に成れなかったのは済まなかったが、私の思いと力を使え』

 

 「箒なのか!?」

 

 『イチカの頼れるお姉さんである、私も忘れたら嫌だよ?』

 

 「ミチル!?」

 

 『イチカ、私の死に何時まで気に止むな。私はイチカに抱かれた事と私を妻に迎えてくれた事に幸せだったぞ。だから、私達の力を使ってくれ…』

 

 「ジュンコ、ありがとう…それに箒もミチルも…」

 

 三人の思いを受け止めると、ブルーローズMK-Ⅱは赤紫色のオーラに包まれながらサイコフレームと共振して、シロッコのジ・オにもブルーローズMK-Ⅱから放たれたオーラに包まれる。無論、このオーラはシャアとハマーンにも包まれていた。

 

 「シャア、なんと暖かく優しい波動なのだ…」

 

 「これが、私の求めた暖かさなのだというのだな…」

 

 「そうか、なら私達はこの暖かさを何時までも守らないといけないが、悪くはないものだな」

 

 シャアとハマーンは、この暖かさの真の意味を理解して二人の行く末を見守る事にするのだった。

 

 「なっ、何だ!?

 

 ジ・オが動けないだと!?」

 

 「シロッコ、これで終わりだ!!」

 

 ブルーローズMK-Ⅱで瞬時加速でシロッコのジ・オへと懐に入り込み、ショットランサーをコクピットへと放つ。

 

 「グッハァ!?

 

 だが、私一人では死なんぞ!!

 

 イチカと言ったか、貴様の魂も一緒に連れて行くぞ!!」

 

 「なっ、何だ!?

 

 何なんだ、宇宙(そら)が広がっていく…」

 

 『一夏をやらせないぞ!!』

 

 「ぐっ…死人の魂が邪魔をするな!!」

 

 咄嗟に箒の魂が一夏を庇うが、シロッコの思念に邪魔されて箒の魂は消されたのだ。

 

 『ねぇ、イチカ、返事をしてよ!!』

 

 「…あっ…あっ…」

 

 『イチカ、嘘…嫌ァァァァァ!!』

 

  コクピットの中でグッタリとしたまま動かないイチカを白星は人化して揺するが、イチカの瞳孔が開いたまま動かない事に気付き、白星は悲鳴を上げたのだった。

 

 その後だが、イチカは補助席に移した白星が操縦するブルーローズMK-Ⅱは中破したムサシへと帰投を果たしたが、イチカを出迎えに来たアンとシャロはイチカの精神崩壊を白星から聞き泣き崩れる。

 

 無論、妻達全員へと広まるが、出産を終えた鈴が泣き崩れる妻達全員に平手打ちを食らわせて一喝する。

 

 「一夏が死んだ訳じゃないでしょうが!!」

 

 「そうだよ。束さん達といっくんはIS世界に戻り次第、クーちゃんによるワールドパージで助けるから!!」

 

 鈴さんと束さんの一言に妻達はくよくよして居られないと立ち上がり一段と結束を強める結果となる。

 

 そして、三つ巴による戦いはアクシズとエゥーゴの連合軍の勝利となるが、ティターンズの指導者のジャミトフはシャトルにて逃亡して行方不明となり、アクシズはグレミー・トトによる反乱による煽りで多数のベテランパイロットや艦船を失う事となる。

 

 

 そして、イチカ達が乗る中破したムサシは、暗礁宙域を航行しながら本拠地のソロモンへと向かう途中、いきなり消えて行方不明となったと後方15000を離れて護衛していたキマイラ艦隊のモビルスーツ隊隊長のジョニー・ライデン大佐はヤマシロに座乗するハマーンへと報告し、探索部隊を編成して探したが発見には至っていないのだった。



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懐かしきIS学園

 

 

 一夏様達が行方不明となって八ヶ月が過ぎ、姉の千冬様と妹のマドカ様は精神的ショックにより学園の自室に籠もったまま出て来なかったり覇気が無かった。そして、私もホワイトラビット社の社長代理となりながらも束様の帰りを今か今かと待ちわびる日々を送る。

 

 そして、今日も占領したアメリカに対する会議と私兵部隊の戦死者達の遺族に対する保障の話し合いにも参加しなくては行けないために疲れが溜まる一方だった。

 

 「束様…」

 

 学園を護る為だと言いながらも、ホワイトラビットの私兵部隊の精鋭と私は学園の寮の一部を借りており、製造ラインを止めないようにしながら会社を運営し、学園の生徒達の臨時教員として教鞭を取るのはスコールさんが行っている。

 

 「社長代理、疲れている様ね」

 

 「スコールさん、束様と比べたら…」

 

 言い切る前にスコールさんにお姫様抱っこされた私は、ソファーへと寝かされる。

 

 「頑張るのは美徳だけど、社長代理が倒れたら元も子もないわよ」

 

 私はスコールさんに寝かされると後頭部に柔らかい感触はスコールさんの太腿を枕にして寝かされた意味をしていた。

 

 「時間があるから、少しは寝てなさい」

 

 「はい…」

 

 少しだけ、スコールさんに甘えながら眠る事を選んだのだった。

 

 

 「お兄ちゃん…」

 

 部屋の片隅、毛布一枚だけ羽織りながらお兄ちゃんが居なくなってからの事を思い出していた。

 

 「絶対に糞モップは殺す…」

 

 そう、呟きながらもマドカが殺したいと思っている彼女は、既に向こうの宇宙世紀の世界で起きた台湾宇宙港の防衛戦の際に戦死している事はマドカは知らない。だが、一夏とシャロの養女となり娘となった箒のクローン人間の幼いホウキを見たらマドカは躊躇なくナイフ片手に襲い掛かるだろうと、マドカにしたらお兄ちゃんの一夏が行方不明となった原因と見ていた箒は憎む存在だった。

 

 そして、マドカはルームメイトの山谷さんが仕入れてくれるお弁当を食べて、浴室に向かうと髪はボサボサでやや顔も窶れていた事に気付くが、シャワーを浴びるだけでベッドに潜り込み眠るだけだった。

 

 そんな時、学園全体が地震の様に揺れ出したのだ。

 

 人工島のIS学園が揺れる事はまず無いと判断したマドカはお兄ちゃんから託されたオリムラ中隊の面々をアメリカ戦以来のオリムラ中隊への緊急招集を掛ける。そして、学園の揺れが酷くなる一方、空も黒い雲に覆われて行く事に一抹の不安がマドカには過るが、そんな事よりもお兄ちゃんが帰る場所だけは護りたい気持ちが強く出て、部屋から飛び出したのだった。

 

 「お兄ちゃんの帰る場所は私が護るんだ!!」

 

 久しぶりに手に握った専用機の黒式の待機状態の小手を嵌め、揺れから津波の予測をしながら屋上へと上がると黒い穴から500m位はあるだろ戦艦が煙を吐きながら落ちて来る光景と落ちて来る戦艦は、前部のニ基ある内の第二砲塔が何らかの攻撃で吹き飛び無くなっており、針鼠の様な対空砲座の対空砲はあちこちの砲が拉げたり、脱落して無い場所が在るくらいに戦闘直後だとマドカは観て思う。

 

 「一体、何なんだ?」

 

 呟きながら観ていると、スラスターを吹かしながらあの巨艦とも言える艦を海へと静かに着水させた腕前から艦長は只者ではないと思う。

 

 「マドカ隊長代理、来たぞ」

 

 「マドカさん、お久しぶりですわ」

 

 屋上に集まったのは2年生に進級したラウラとセシリアのみだったが、他のメンバーのシャルロットと簪は生徒会役員となり生徒会による生徒への避難誘導で来れないと連絡があり、アメリカ戦後は部隊の縮小により、イギリス本国へ一時帰国で帰った卒業生のサラ先輩は居ないし、クロエ社長代理のボディーガードで居ない乱音も今は学園には居ないのだ。

 

 そんな最中、学園に待機中のブラックラビット隊が謎の戦艦へと向かい、普通は通信による停船命令を出すのだが、戦艦への攻撃を始めてしまう。

 

 「クラリッサ隊長は、若手を抑えられ無かったか!?」

 

 「大丈夫なのか?」

 

 「だが、あんな戦艦ならクラリッサなら沈めるだろうな…」

 

 ラウラの予想と読みは外れ、水上を高速航行しながら円を描き回避行動しながらも、クラリッサ達のブラックラビット隊の攻撃を躱して行き、戦艦は損傷が嘘だと思いたい様な凄まじい対空射撃による弾幕を形成する。

 

 「ラウラ、気付いたか?」

 

 「クラリッサ達が完全に遊ばれているな……」

 

 「あんな巨艦でしたら、回避行動による操舵は難しい筈ですわよ!?」

 

 「だが、良く見てみろ。

 

 弾幕で使われている弾丸は全てペイント弾だ!!」

 

 「えっ、本当ですの!?」

 

 セシリアもハイパーセンサーを遠望モードにして、クラリッサ達を見れば、確かに対空砲の弾はペイント弾でクラリッサ達は怒りながら何かを叫んでいる様だが、凄まじい弾幕によりブラックラビット隊の面々はペイント弾のピンク一色に染まる。マドカ達三人は何故と思いながら考えに更けるのだった。

 

 

 時間は少し遡り、オリムラ中隊の本拠地のソロモンへと帰投中のアン達が乗るムサシの進路上に突如開いた黒い穴に回避する間も無く入り込み、ムサシが出た先は地球の何処かの空中であり、ミノフスキークラフトにてムサシを浮かせて無い事から艦首から落下している事に気付いた艦長のツキノはスラスターにより姿勢制御をしながら静かに着水する。

 

 「艦内の被害状況知らせ!!」

 

 「艦内上部に異常無し!!

 

 しかし、右舷の被弾箇所の水線下に多少の浸水あり!!」

 

 「右舷の第八通路の隔壁を閉鎖しなさい」

 

 ツキノは淡々と命令を下しながら、医務室に眠る負傷者達やベッドに寝かされ精神崩壊したイチカ隊長と隊長の家族だけは護りたいとより一層に集中する。

 

 ブリッジに上がって来た、鈴とアンにシャロの三人に鈴が抱えるのは産まれたばかりの鈴の娘の彩芽だった。

 

 「やっぱり、IS学園が見えるわね」

 

 「IS学園ですか?」

 

 「まぁ、簡単に言えばイチカの産まれた世界ね」

 

 「では…」

 

 「イチカの世界に来ちゃったみたいね」

 

 「あたしは戻れたが正解ね」

 

 「鈴音さん、では学園に?」

 

 「西側に停泊出来る港があるから停泊すれば大丈夫でしょ?」

 

 「鈴、学園に連絡が先でしょ!!」

 

 「久しぶりだから、忘れてたわ…」

 

 天然にボケる鈴音をジト目で睨むシャロは学園に連絡が先だと言いながらも、三人のこの世界のスマホは使う事が無いだろうとソロモンの自宅の机に仕舞ったままであり、コアネットワークを使ったオープンチャンネルによる通信もアンとシャロはモビルスーツに乗っていた期間が長く忘れており、鈴も厨房での仕事が多忙で同じ事を言えていたりする。

 

 無論、医務室で負傷兵やクルーの治療に当たる束さんをブリッジに呼ぶしか無いのだが、束さんを呼ぶと言う事に肝心な事を忘れていた三人だったのだ。

 

 そんな最中、レーダー要員のクルーが学園から飛翔する機体をレーダーで捉える。

 

 「艦長、レーダーに感あり!!

 

 数は15機でデータに該当は無しです!!」

 

  「くっ、対空戦闘用意!!」

 

 「ツキノさん、ちょっと待って!!」

 

 アンが見張り員の双眼鏡を奪い、双眼鏡から見ると黒とシルバーに染めらた流星改にアンは見覚えが在った。それは、ホワイトラビット社の私兵部隊のブラックラビット隊の機体カラーだと気付き、ツキノへと下命する。

 

 「ツキノ中佐、本艦はペイント弾よる対空戦闘訓練を実施するわよ。主砲は威力が有り過ぎて不味いけど、確か三連装の対空レーザー砲は実弾とレーザー砲を使い分けが出来たわね?」

 

 「はい、実弾とレーザーとの使い分けは使用可能ですね。なら、対空レーザー砲は実弾式へと変更し、ペイント弾へ弾種変更ですね」

 

 「帰って来たと思ったら、生温い編隊飛行に周囲警戒も疎かだわね。

 

 シャロ、あたしと一緒にモビルスーツデッキに行くわよ。

 

 ブラックラビット隊に再教育して来ましょう!!」

 

 「了解、隊長代理」

 

 二人がモビルスーツデッキへと向かい、鈴はブリッジへと残る。

 

 無論、ムサシに残るモビルスーツはイチカ機の隊長機仕様のブルーローズMK-Ⅱを除けば、カミーユとフォウにイリアのブルーローズMK-Ⅱが3機だけだが、実際に戦闘に使えるのは損傷が少ないイリア機だけで、ブラックローズⅡに至っては殆どが撃墜されて喪失し、小破したシャロ機と出撃しなかったケイト機に姉妹の搬送で離脱した無傷のサクラ機に武装を戦闘で失ったクリス機とエマ機を加えた5機だけだった。

 

 そして、隊長代理のアンはモビルスーツを使う気は全く無く、自機の専用機でIS版のブラックローズだけで充分だとアンとシャロは思って居たのだった。

 

 ツキノ中佐は艦内のCICへと入り、生き残った各対空砲座をレーダーと連動させながらレーダーへと目を光らせる。

 

 「艦長、対空戦闘準備良し!!」

 

 「ご苦労。これより、対空戦闘訓練を実施する。艦内は第二種戦闘配置に着け!!」

 

 ムサシの戦闘配置へと移行する警報がなるが、訓練だと言いながらモビルスーツのパイロット組に間違えてもモビルスーツで出撃しない様に命令を下す。

 

 「水上第二船速!!」

 

 「了解、第二船速!!」

 

 艦底のサブスラスターを起動させ、ムサシは水上速力の27ノット位に航行する。無論、到着したブラックラビットは通信からの停船命令を出す事なく、ムサシへの対艦攻撃を始めてしまう。

 

 「弾幕射撃を開始!!

 

 撃ち方始め!!」

 

 ツキノ中佐の号令に対空戦闘を始めたムサシは、三つ巴のモビルスーツ戦でムサシに近付くバウやハイザックを強力なムサシの弾幕射撃で数基の対空レーザー砲が破壊されたに過ぎ無かったが、ムサシの被害の殆どはネオ・ジオン艦隊とティターンズの艦隊との殴り合いと言う艦隊戦を望んだ結果の被害だった。

 

 「お〜も〜か〜じ〜!!」

 

 隊長機と思われる機体から、対艦用兵装の対艦バズーカを放った事にいち早く気付いたツキノは面舵を切る様に叫び、反応した操舵手は舵を切りムサシはゆっくりと右側に進路を変えて隊長機が放ったバズーカを躱す。

 

 『鈍足な戦艦が躱すだと!?』

 

 バズーカを放ったクラリッサは驚愕しながら艦長の指揮に舌を巻き、部下達が一斉にバズーカをムサシへと放つが、再び面舵を切られてムサシはバズーカの弾頭を躱され、クラリッサの部下達へとお釣りだと言わないばかりにムサシからの強烈な対空射撃を食らい、この世界のオリムラ中隊の隊員で元隊復帰したブラックラビット隊にサラとケイトにマリアの三人は弾幕からの対空射撃を浴びてブルーマンならぬ、ピンクマンへと弾頭がピンク色のペイント弾だった為に全身に染まる。

 

 「「「うっ、ぎゃあ!?」」」

 

 「ビスマルクⅡでの対艦攻撃訓練よりも弾幕がキツイぞ!?」

 

 そう、叫ぶクラリッサも弾幕に捕まり、三人組と同じ運命のピンクマンへと変わり果てたのだった。

 

 

 そんな事を知らないツキノは、水上での回避運動が楽しくなり、彼女はブリッジ最上部の対空指揮所に上がりポートモレスビーでイチカが言っていた伝説の艦長の姿とも言える、肩に上着を羽織りながらサンダルを履き、タバコが吸えない代わりにシュガーポットを口に加えて対空指揮所で海風に当たりながら指揮を継続する。

 

 「艦長、その格好はどうしたんですか?」

 

 「あら、伝説のヤマトの艦長のモリシタ艦長よ?」

 

 クルーは呆れて何も言えないが、双眼鏡を片手にクラリッサのブラックラビット隊の動きを監視する。

 

 「艦長、敵機直上!!」

 

 「面舵一杯!!」

 

 ツキノは面舵のみを言い、ムサシは右に周りながら回頭して再び攻撃を躱す。

 

 「艦長、面舵ばかりですが、大丈夫なんですか?」

 

 「ほら、見なさい。

 

 馬鹿共は、次は取り舵を取ると山を張って、見当違いの場所に攻撃をしているわよ!!」

 

 ツキノが指を指す方向は、確かに取り舵を取るだろうと山を張ったブラックラビットの一斉射撃によるバズーカの攻撃で水柱が生じ、再び面舵を取ったムサシからしたら見当違いも甚だしいのかも知れない。

 

 見当違いにバズーカを放ったブラックラビット隊の面々は顔を真っ赤にしながら山を外した事に恥ずかしながらも、ムサシへの攻撃を辞めなかった。

 

 そして、ムサシの強烈な弾幕を前に隊員達全員がピンクマンになる時間は、そう掛からなかった。

 

 

 「くっ、これでは良い笑い者ではないか!!」

 

 「クラリッサ隊長!!

 

 戦艦より、出撃する機体が見えます!!」

 

 「あっ、あの機体は!?」

 

 「クラリッサ隊長?」

 

 ムサシのカタパルトに接続された機体は、この世界のアンとシャロの専用機のブラックローズだった。

 

 「まっ、不味い!?」

 

 「クラリッサとあんた達、よくも停船命令も出さずに攻撃して来たわね!!」

 

 「うっ、ギャァァァ!?

 

 あっ、アン副隊長!?」

 

 「全員、海に落として上げるわよ!!」

 

 クラリッサが二人の専用機だと気付いたが、射出されたアンとシャロの専用機のブラックローズ2機は、ビームソード付きビームライフルをビームソードへと変形させながら、ブラックラビット隊ならぬピンクマン部隊の流星改へと突撃しながらスラスターユニットだけを斬り刻みながら行き、ブラックラビット隊の面々はシールドエネルギーと失いながら海へと落下する。

 

 「シャロ、合わせなさい!!」

 

 「了解、アン!!」

 

 「しまった、逃げられない!?」

 

 「「必殺、クロスボンバー!!」」

 

 「ギャァァァ!?」

 

 そして、最後まで絶叫しながら逃げ回るクラリッサは、逃げ道を塞いだ二人からのクロスボンバーを食らい、海へと落下したのだ。

 

 無論、ムサシの乗員達はアン達だと知ったズタボロのクラリッサが学園の港へと案内しながら先導して学園の港へと無事に入港したのだった。

 



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学園に帰還しても大騒ぎでした

 

 

 生徒会長の楯無は海上で起きた戦闘に頭を抱え、新しく会計担当となったシャルロットに泣き付く。

 

 「シャルロットちゃぁぁん、ブラックラビット隊のみんなが落とされたよ!?」

 

 「へっ?」

 

 シャルロットは生徒会長の一言に固まりながらも、ラウラからの正確な情報が来ていた為に抜けた声だけで済んではいた。

 

 だが、戦艦から出撃した2機のISが行方不明となったアンとシャロの機体だと知り、生徒会長の真っ青になったり慌てたりと目まぐるしく変わりまくる表情が堪らなく面白く放置していたのだった。

 

 無論、オリムラ中隊副隊長のアンから思い出したかの様に隊長代理としての通信は来ており、港の埠頭には大量の人数が用意された医療班とクルーを乗せる為の100台近いバスの手配はホワイトラビット社を通じて要請してあり、シャルロットからしたらなんの問題すら無かったと言えたのだ。

 

 「簪さん、会長を放置して行きますか?」

 

 「駄姉だから放置…」

 

 「簪ちゃぁぁん!?」

 

 「うざい、駄姉」

  

 「グッハァ!?」

 

 そして、そんな生徒会長をソファーへと投げ飛ばしながらも副会長となった簪を連れて埠頭へと向かったのだった。簪からもうざいと言われて胸を押さえながら倒れてしまい、イチカ達が行方不明以降から更に扱いが酷くなった会長だとは敢えて語るまい。

 

 

 

 学園の港に入港したムサシは巨大な錨を降ろされて係留されると甲板作業員の女性クルーが縄を放ち、学園の埠頭作業員達が係留作業に勤しむ。

 

 「馬鹿でかい戦艦だな…」

 

 「でも、第二次世界大戦時の戦艦大和に似ているよな…」

 

 「大和型戦艦の二倍はあるから、紀伊型じゃねぇかな?」

 

 「それよりも、女性乗組員ばかりだな…」

 

 「しかも、美人ばかりだよな…」

 

 作業員達が言うのは正しく、ムサシのクルーは女性クルーだけでありシーマ艦隊の所属の兵士はむさ苦しい男性だけだと思われがちだと思われるが、実際は独立戦争時の地上戦線のラバウル方面の海兵隊はシーマ艦隊所属の女性兵士ばかりだったが、大戦末期に宇宙へと上がりムサイ改の艦長を経て、イチカ達がIS世界に帰還後はリリーマルレーンの艦長に抜擢された当時ツキノ・カグラザカ少佐と部下の女性クルー全員は歴戦の猛者ばかりだった。

 

 無論、クルー達全員は美人揃いだが、見た目と裏腹にラッセルをはじめとしたアカツキの男性クルーを縮こませるだけの海兵隊の兵士としては超一流の腕前があり、ソロモンの訓練場で模擬戦を申し込んだ軍隊式格闘術の使い手のアンですら、女性クルー相手に十人抜きが厳しかったと語る。

 

 そんな女性クルー達はツキノ中佐を姉の様に慕い、ツキノ中佐を除いてはイチカかアン達のオリムラ家のメンバー以外は従う気は無いらしい。

 

 無論、イチカ隊長はムサシの女性クルー達全員の憧れの的であり肉食女子特有の獰猛な笑みを出しながら隊長を狙うが、絶対的存在であり艦長以上に忠誠を誓う正妻の鈴に認めて貰えれば妻の仲間入り出来るかもしれないと切磋琢磨して女を磨く姿はある意味で恐ろしい集団とも言える。

 

 そんな女性クルー達は、ムサシの乗組員として乗艦してはいるが、ソロモンでムサシに乗り込んだ2400名の内、第二砲塔と対空レーザーの砲撃要員の合わせた350名が戦死しており、350名の内の120名の遺体は艦内の安置所に冷凍保存され、残りの内200名は吹き飛んだ主砲と共に消し飛んで蒸発して遺体すら無いし、メガ粒子砲が直撃して開いた外壁から宇宙へと投げ出された30名も遺体は無い。

 

 代わりに戦死した彼女達の私物が遺体袋に代わりに詰められて保存されていたのだった。

 

 ムサシの係留作業が終わり、埠頭からラッタルがムサシに繋がると、いつの間にかアクシズの女性用の式典用の軍服に着替えた彼女達は甲板上に並び、軍楽隊による演奏が流れ出すと敬礼しながら見送られるのは、アクシズの軍旗に身を包まれた350名の戦死者の遺体が運び出されながらラッタルから降ろされる光景だった。

 

 「筒構え!!」

 

 ガッシャ

 

 「放て!!」

 

 パッパパン

 

 女性用の式典用艦長服に身を包んだツキノ中佐の指揮の下、軍楽隊の演奏とは別に戦死した戦友達を見送る為にアサルトライフルが天に向かって放たれ、埠頭の作業員達も降ろされる戦死者の遺体に黙祷を捧げたのだった。

 

 無論、戦死者達の遺体は焼却されて、ホワイトラビット社が用意した土地に350名の墓地が立てられ埋葬された。

 

 クルー達が戦死者達を見送った後、担架によって運び出されるのは敵味方関係なく救助された負傷兵のパイロット達やムサシやアカツキの負傷したクルーなどが慎重に埠頭に待機する医療班へと運び出され、搬出作業だけで半日を要してはいたが、医療班は余りの負傷した人数の多さに悲鳴を上げながらも負傷の度合いを区別する色別にしたリボンで負傷者が結ばれ、赤いリボンで結ばれた重傷者からホワイトラビット社の医療施設へと緊急搬送されて行き、最後にラッタルから降りて来たのは大量の勲章を身に着け式典用の軍服を纏う大佐の階級章を身に着けたアンや中佐の階級章を身に着けたシャロの他は千秋達と手を繋ぎながら降りて来たイチカの妻達だった。

 

 「アン、お帰り!!」

 

 「ただいま、みんな」

 

 出迎えたシャルロットがアンを抱き締めて再会を喜ぶが、簪は一夏が居ない事に気付く。

 

 「ねぇ、一夏君が居ないんだけど?」

 

 「イチカなら、ほら降りて来たのがそうだよ…」

 

 アンが指を指しながら、簪が向いた先はムサシのクルーでも力自慢の女性クルーが車椅子の前と後ろを持ちながらゆっくりと降ろし、車椅子に乗せられ空を見上げている一夏の変わり果てた姿だった。

 

 そして、埠頭に降ろされた一夏の車椅子は背中に産まれたばかりの彩芽をおんぶ紐で背負い降りて来た鈴が押し、エマとクリスが一夏の両脇を固めて護衛しながらアン達の前にくる。

 

 「えっ、嘘…」

 

 「簪、久しぶりね」

 

 「何で、鈴ちゃんは一夏くんがあの状態なのに冷静に居られるの!!」

 

 「確かに、一夏は戦争で戦い抜いて精神崩壊になって、今は一夏のこの姿だからって泣くのは嫌なのよ。産まれたばかりの彩芽や泣くのを我慢する娘の千秋達のためにもね…」

 

 「えっ…娘?」

 

 簪は鈴が娘と言う言葉に首を傾げるが、鈴の背中にすやすやと眠る赤ちゃんを背負っている事に気付く。確かに、目付きは一夏君そっくりの鋭い目付きだが、鈴ちゃんにそっくりな茶髪のサラサラな髪と丸みがある顔付きは鈴ちゃんそのものだった。

 

 まさか、若干17歳で母親になった鈴ちゃんが物凄く母親の貫禄が出てて私には眩しく見えたが、他の妻達だろう女性達が手を繋ぐ顔がそっくりな12人の少女達の他には、織斑先生よりも年上の女性が手を繋ぐのは黒髪で目付きが鋭い少女は一夏君を小さな少女にした様にも見えたし、シャロさんが手を繋ぐ箒さんにそっくりな少女も娘らしい事に気付く。

 

 「まさか…」

 

 「あたし達の自慢の娘達よ」

 

 「あっうぅぅ…」

 

 まさかの、一夏君の娘達が15姉妹だった事実は知りたくも無かった。私はあまりにも認めたくない事実に付いて行けずに意識を手放したのだった。

 

 そんな簪が、一夏の精神崩壊していた事実より、娘の数の事実で気絶するとは全く思わなかったが、マドカがあたし達が帰って来た喜びに走って来たが、イチカの姿を見たマドカに対して懸念していた事が起こるとは思わなかった。

 

 「ママァ、疲れたから抱っこ」

 

 「仕方ないわね」

 

 手を繋ぎながらでも、ビル5階相当の高さのラッタルを降りて歩き疲れたホウキがシャロに抱っこを要求して抱き上げたところで、マドカが娘のホウキを見て叫ぶ。

 

 「何故、糞モップがぁぁ!!」

 

 「ちょっと!?

 

 死んだ箒とは、この娘は違うわよ!?」

 

 「ママァ、この人、どす黒い感覚で怖い!?」

 

 「うるさい!!

 

 モップは、お兄ちゃんの未来を奪ったんだからこの場で殺す!!」

 

 ナイフを抜き、幼いホウキへと斬り掛かるマドカと娘を護ろうとホウキを抱っこしたままでマドカが握るナイフの柄を蹴り上げるシャロ。ホウキはニュータイプの感受性が高かったのかマドカから見えたどす黒い感情を見て酷く怯える。

 

 「言って無かったのは謝るけど、既に箒は死んだって言ってるでしょうが!!」

 

 「グッハァ!?」

 

 咄嗟の出来事に反応したアンが、マドカに回し蹴りを腹部に入れて軍楽隊の演奏する方へと吹き飛ばし、フルートを演奏していた軍楽隊のムサシクルーが腕を肩に回して関節技を決めながら拘束しながら、アンは埠頭の地面に抑え込まれているマドカに箒が死んだ事を話す。

 

 そして、ホウキは箒のクローン人間だが、今はシャロに保護されてイチカとシャロの間の養女としている事まで説明してマドカを納得させる。

 

 「モップが死んだだと…」 

 

 「そうよ。ホウキは私の娘にしてイチカの娘なのよ」

 

 「何故、奴と似ている!!」

 

 「マドカ、弁えなさい。一応、娘の前で話せる内容じゃないわよ」

 

 アンの冷めた口調から言われた一言に納得は出来たかと言えば微妙だが、マドカは他のホウキの姉妹達から冷たい目付きで睨まれながらも、もしも、再びホウキへと斬り掛かろうとするならば姉妹隊が黙っては居ないぞと暗に発するニュータイプともいえるプレッシャーにマドカはナイフを仕舞い黙るしか無かった。

 

 もう一人、娘に手を出されてキレていた千秋と同い年位の少女がフッ素コート仕様のフライパンを片手にマドカへと歩み寄る。

 

 「よくも、お友達で娘のホウキちゃんを泣かしたな!!」

 

 バッゴン

 

 「グッェ!?」

 

 マドカがムサシのクルーから開放されて立ち上がったところで繰り出されたフライパンをゴルフクラブの様にフルスイングする光景にマドカはとっさの出来事に躱せる訳も無く顔面に食らい、フライパンの底はマドカの顔型を作り上げていたのだった。

 

 「「「「あっ、ミネバ…」」」」

 

 妻達一同はミネバ必殺のフライパンのフルスイングに唖然となるが、顔型を作る程の威力を食らったマドカへと歩みよって確認したら気絶しているのが判り医療班を呼び治療を受けさせたのだった。

 

 ムサシの入港は、避難指示が解除された生徒達の目にも留まる結果となり、あまりの巨大な戦艦を初めて見る結果となり、戦死者達を葬送する為の軍楽隊の演奏も祭りか何かと勘違いして埠頭へと来てしまい、新聞部の薫子がムサシに無断で忍び込み写真を撮ろうとしたが、モビルスーツデッキに入り込んだところで、モビルスーツを動けなくする為の動力部の凍結作業中の束さんの手に捕まり御用となったぐらいしか問題は起こらなかった。

 

 そんな最中、自室に閉じ籠っていた千冬だが、鈴が先頭を歩いて学園を案内しながら彼女の部屋へと向かう妻達と娘の合わせた約20名は憔悴した千冬の姿を見て、鈴がキレるのは別の話だったりするのだった。



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復学に向けて

 

 

「一夏…」

 

 腐海の様な自室の片隅、ガリガリに痩せ細り髪は艶も無くボサボサに蹲るのは一夏の実姉の織斑千冬本人だった。無論、充電器に繋いだままのスマホには着信履歴が数百件あり、一番新しい着信は山田先生からの教師へ緊急招集を知らせる着信だった。

 

 千冬がこう成るのは二回目であり、一度目は一夏が独立戦争を舞台にした宇宙世紀の世界へと飛ばされた以来だろうか。

 

 そんな千冬が蹲り覇気も無いまま部屋へと引き篭もってから約八ヶ月目の今日の学園全体を揺らす地震には気付いており、港から響くアサルトライフルの発砲音を聞きながらもブラックラビット隊のクラリッサが何とかするだろうと思い放置していた。

 

 夕方になり、私の部屋へと近付く足音が約20人ほど近付くのに気付く。

 

 『この部屋に義姉の千冬義姉さんが居る筈よ』

 

 聞き覚えがある声の主には聞き覚えがあるのだが、まさかだと思いながら出るに出られないほどに衰弱していた事実に気付く。

 

 ガチャリ

 

 「全く、八ヶ月も掃除もしないで放置して酷い有り様ね!?

 

 アン、大量のゴミ袋を用意!!

 

 シャロは大量のバケツに水を汲みに行きなさい!!

 

 サクラとケイトにカエデとカナデにサラはシャロの支援!!

 

 クリスとエマにシーマにミネバは娘達を食堂へと避難させて娘達の引率して、全く、子供達に見せられる環境じゃないわよ!!

 

 ツキノ、妻会議で仲間に入れるようにしてあげるから、あたしと一緒に腐海に突入するわよ!!

 

 じゃあ、みんな散開!!」

 

 「「「「「「「了解!!」」」」」」」

 

 「へっ?

 

 私が鈴さんと突入!?」

 

 鈴の号令の下、妻達は一斉に散らばりながら指示された内容を実行する為に動き出す。鈴は寮の間取りを思い出しながらも突入して窓にいち早く移動して窓を開けて換気し、ベッド脇に蹲る彼女を発見するが、千冬義姉さんの酷い衰弱状況から近くを通り掛かった新一年生だろう色のリボンをする生徒を捕まえてストレチャーを持って来させるのだった。

 

 そして、千冬義姉さんは医務室へと緊急搬送されて病気かと思えば重度の栄養失調だと判り、妻達一同はイチカの妻だと挨拶が出来るし、娘達も紹介できると見当違いさも甚だしい思惑の最中で安堵はするのだが、この部屋の片付けには妻達全員で取り掛かりながらも終わった時間が深夜の0時になる頃まで片付けが掛かり、綺麗な部屋へと生まれ変わったのだった。

 

 無論、妻達と娘達はアン達の寮の広い部屋で眠ろうと考えたのだが、まさかの1025室のあたし達の寮は無くなり元の三部屋への寮部屋へと戻っていたとは気付かずに向かったら、アン達の寮部屋は新一年生の部屋になっていたらしくてムサシへと戻る事になったのだった。

 

 

 翌日、あたし達は生徒会室へと呼ばれ、4人の復学の手続きに加えてイチカの処遇について話し合ったのだが、イチカは束さんの居る本社に24時間体制の完全看護で寝かされており、例の計画の準備ができ次第にクロエ副社長によるワールドパージによるイチカへの救出作戦の始まりだと生徒会会長の楯無会長へ説明する。そして、元に戻された寮部屋に付いても問い質していた。

 

 「精神崩壊か…」

 

 紅茶を飲みながらの楯無会長も向こうでの事は、以前にも説明してある為に納得はするがイチカのニュータイプ同士による戦いの結末が精神崩壊した理由には、流石のIS世界の住人とも言えた楯無会長には『ニュータイプなんて非科学過ぎるわよ』と言われ納得はできない内容らしい。

 

 「一応、あたし達は救出作戦までは復学するしかないのよね…」

 

 「うん、まぁ三人の成績なら一週間の予定で補習授業をみっちり受けては貰うけど、実技試験で合格なら進級した上での復学は可能ね」

 

 「で、あたし達を相手をする試験官は誰なのよ?」

 

 楯無会長はニヤリとしながら、扇子に浮かぶ人物は『元アメリカ国家代表!』と達筆に書かれていたのだった。無論、専用機の使用は認められており、鈴にしたら因縁の相手だったと言えるだろ。

 

 会長との話し合った後は、娘達の世話をメイドになったツキノ艦長の妹のユキノさんに面倒を見てもらいながら本社へと向かう。しかし、鈴はイーリスさんとやり合い負けた事を引き摺っていた。

 

 「鈴、元アメリカの代表って…」

 

 「確実に、私兵部隊の第三中隊隊長のイーリスさんね…あたしは、一度負けてるわね…」

 

 「鈴、あたしと違って死にかけた訳じゃないし、あたし達の専用機はバージョンアップするって束さんから連絡が来てるから、それから考えるわよ?」

 

 「あたしだって、イーリスさんと殺り合って死にかけたのは事実よ。それに…」

 

 鈴が言い切る前に現れた人物を見て鈴は固まる。

 

 「よう、お前等、いつ帰って来たんだよ?まぁ、あたしが実技試験の試験官だから、あたしを楽しませろよな!!」

 

 噂をすれば何とやらで、三年生の実技の授業を終わらせて、生徒会室に呼ばれて来たイーリスさんだった。無論、本人には悪気は全く無いのだが、自他共に認める姉御肌のバトルジャンキーなのが玉にキズなのだが、鈴にしたら因縁の相手である事には変わらない。

 

 「本人来ちゃったわよ…」

 

 「何も言えないわ…」

 

 「あたしもよ…」

 

 ガッハハと豪快に笑いながら生徒会室に入って行くイーリスさんを尻目に何とも言えない空気と学園の人達とのエンカウント率の高さに呆れるしか無く、重い空気が三人から漂うのだった。

 

 そんな最中、ムサシに搭載されていた電気自動車をアンが運転しながら本社へと向かい、本社の第七格納庫へと向かう。八ヶ月しか経っていないのが嘘の様に思える程に社内の敷地には真新しい建物が建ち並び、今ではIS業界では世界一位のシェアを誇るホワイトラビット社の本社だと言われてしまえば納得出来る光景に目を奪われる。

 

 「やあやあ、みんな来たね!!」

 

 束さんがつなぎ服姿で第七格納庫の前にて歓迎する姿は既にムサシのモビルスーツデッキではお馴染みの姿だった。無論、社長である束さんには本来なら相応しく無い格好であるが、バージョンアップの為に預けた専用機の些細な改修作業をしていたと思われたのだった。

 

 「鈴さん、待ってました」

 

 「あれ、なんでイリアが居るのよ?」

 

 「私もIS学園に編入が決まりまして、専用機の操縦訓練ですよ」

 

 と言いながら、イリアの機体はイチカのモビルスーツと同じ、ブルーローズMK-ⅡをIS化した機体の名前も同じ専用機を纏い訓練をしていたらしいが、束さんがモビルスーツの技術を最大限取り入れた専用機らしい。

 

 「ところでイリア、マウアーとフォウは見なかった?」

 

 ムサシを降りて以降、マウアーの姿を見ていなかった為にイリアに聞くと、イリアから信じられない事実を知る。

 

 「マウアーならムサシを下艦して直ぐから悪阻が酷くて、本社に出来た織斑邸の自宅で横になってますよ。フォウはカミーユとファを連れてレゾナンスに買い物中ですが?」

 

 「「悪阻?」」

 

 「まさか、マウアーが妊娠したのね…」

 

 あの事件で、マウアーが妊娠した事実を知り驚くアンとシャロだが、あたしは妊娠するのは経験上から確実だと思っていたからそんなには驚かないが、イチカの実子とも言える子供はシーマの娘の夏希とあたしの娘の彩芽に続き三人目となる。本来なら、マウアーも17歳だからイリア同様に学園に入れる積りだった。

 

 「実質、学園にいくのはあたし達とイリアにフォウを加えた5人だけね…」

 

 イリアも一緒に格納庫の奥へと束さんに案内され、IS用のハンガーに固定された機体はブラックローズⅡのIS版とも言える機体が用意されていたのだった。だが、用意されているブラックローズⅡの機体の数は2機とフォウ専用のブルーローズMK-Ⅱのみで、機体番号からアンとシャロの機体だと判るが、あたしの機体が無い事に気付いた。

 

 「あたしの機体は束さん?」

 

 「鈴ちゃんの機体は別の場所に在るんだよね。イリアちゃん、二人のフィッティング作業を任せても構わないかな?」

 

 「束さん、任されました」

 

 イリアが二人のフィッティング作業を始めると、あたしは更に奥に案内される。途中、天井が直された跡は一夏が以前に壊したらしい。そして、第七格納庫の最奥には肩のアーマーの装甲にはアクシズのマークが入り、大きな両肩のアーマーには内蔵型のスラスターが付けられた赤く染めれた機体。

 

 無論、ハンガーの脇のホワイトボードに貼られた元の図面にはニナさんのサインが入ったモビルスーツの図面が貼られていて、ニナさんが設計した機体だと判る。

 

 「束さん、この機体まさか…」

 

 「うん、元になった機体はガンダムタイプの機体だよ。何せ、ニナちゃんの最高傑作の機体に束さんのブルーローズシリーズの技術をてんこ盛りにしながら開発したし、ハードポイントで2つの換装バーツもあるから」

 

 「あっははは…」

 

 まさかのZ計画の機体だとは思わず、あたしは乾いた笑いしか出なかったが、ISコアの朱雀をサポートする為の人工知能の『ALICE』が搭載され、実機のモビルスーツは25m程らしいが、束さんの技術で更に17mまで小型化して高性能化した図面と必要なシステムを全て纏め上げた上で、更に超小型で高出力のジェネレーターを直列配置で4基搭載した化物化したモビルスーツをアンマンのアナハイムであたし専用にと仕上げていたらく、この小型化して完全させたスペリオールガンダムを束さんは、更に昇華させた形でIS化したらしい。

 

 無論、妊娠してなければ受領していた機体だったらしい。

 

 そんな、スペリオールはブラックローズⅡと同じビームシールドは標準装備だったり、ハイメガビームランチャーを連射可能な様に出力を落として開発された熱核ロケット装備のバックパックに4基のメガビームカノンが装備された機体だった。その他には、ブラックローズⅡ専用のロングレンジスナイパーライフルを高出力のビームライフルへと発展させた、メガビームスマートガンやビームサーベル兼ビームカノンとして使用可能な両腰のアーマーに装備されたビームカノン。ノイエ・ジールの有線クローアームの技術を元に準サイコミュシステムを搭載した有線式のインコムが装備された重装備で高機動のISとして完成させていたのだった。

 

 「どうかな」

 

 やり過ぎ感丸出しのスペリオールを見ながら、あたしは受領するしかない事実と小型化高性能化した第六世代のISと言う事実に板挟みになり、意識を捨てて倒れたかったが束さんが許す訳も無いのは昔からの付き合いで体験済みだった事から受領して直ぐに、帰還初日に阿呆な事を仕出かしたブラックラビット隊の面々を訓練相手にスペリオールの換装ユニットのブースターユニットで超高機動戦闘による大立ち回りをしながら、懲罰訓練中のブラックラビット隊を追い回したのだった。

 

 「クラリッサ、待ちなさい!!」

 

 「ヒェェェ!?」

 

 インコムを使い、逃げ道を潰しながらメガビームスマートガンを放ち追い回す鈴のスペリオールのブースターユニットの姿を見ていたあたしは、クラリッサに手を合わせながらご愁傷様と思うが、演習場の彼方此方に落とされたブラックラビット隊の隊員達は一対多数で鈴のスペリオールと戦ったのに、まさかの全滅をしての敗北に落ち込むのだった。

 

 「スペリオール自体が強すぎるし、流星改の性能じゃあ無理だね…」

 

 「アン、ブラックローズⅡだったら?」

 

 「シャロ、あたしなら近接戦闘で五分の勝率で遠距離戦闘に持ち込まれたら、かなり落ちて三分ね…」

 

 そして、鈴のスペリオールは4基のメガビームカノンを一斉に放ちクラリッサの流星改に直撃させて、クラリッサを落とすのだった。

 

 



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鈴の因縁の対決

 

 

 復学する為の試験当日、あたしとアンにシャロは八ヶ月ぶりの学園への復学となる試験の為に学園に来ていた。無論、イリアとフォウは編入試験の為に別のアリーナの控室で筆記試験を受けた後に実技試験を受ける予定だった。

 

 「頭が重い…」

 

 「あたしは余裕だけどね」

 

 「アン、私と鈴に気を使いなさいよね。あんたは、一年生の時はイチカと同じ主席だったから良いものの、中間位の成績だった私達には少し荷が重いわよ…」

 

 シャロに言われながらも、筆記試験がこんなにも簡単だった事には変わり無く、イチカと二人で帰って来てから束さんからみっちりとIS関連の知識を教え込まれた結果に過ぎないし、鈴は元から努力家だったのもあり気を使えとは言われても努力で全てカバーしていから何も言う事は無いのだ。

 

 ただ単に、シャロが見た目とは違い脳筋思考なのが問題だと言ってしまえば楽だが、言ってしまえば血の雨が降る肉弾戦による喧嘩は必須になるだろう。

 

 それはさて置き、あたし達が向かった第二アリーナではイリアが山田先生を相手に実技試験を始めており、イリアの高いニュータイプ能力を遺憾なく発揮できるブルーローズMK-Ⅱでは無く、旧式とも言える第二世代の打鉄を纏いながらアサルトライフルと腰に装着している柄の短いバトルアックスのみで行い、第三世代の流星改を纏う山田先生とやり合う姿は他の生徒にしたら舐めプレイだと非難が殺到するだろうが、山田先生の放つレーザーライフルを全て紙一重に躱す光景はイリアのニュータイプ能力とモビルスーツの操縦で培った技術だろう。

 

 「本当、あの戦いで成長したのは、教官冥利で嬉しいけど、打鉄が保つのか不安ね…」

 

 「確かに、あたしも打鉄での操縦訓練で何度も関節とか壊したしなぁ…」

 

 「それ、不安しか無いわよ!?」

 

 三人がイリアを見ながら打鉄が保つのか不安になるが、イリアはバトルアックスを抜きながら瞬時加速をして加速すると、山田先生の流星改のレーザーライフルへ上からバトルアックスを振り降ろして叩き斬りながら流星改の腹部を蹴り飛ばすと間髪入れずにアサルトライフルを流星改へと乱射しながら追い、再加速して追い付くとバトルアックスを上下に振りながら流星改を叩く様に切り裂き、アサルトライフルをラピッドスイッチでグレネードに換装すると流星改へと投げ付け、グレネードが流星改に当たる直前を狙いながらバトルアックスをグレネードへと投げつける。

 

 無論、バトルアックスはグレネードを斬り裂き流星改を巻き込みながらグレネードは爆発するが、グレネードを斬り裂いたバトルアックスは爆炎に紛れながら流星改へと当たり、流星改はシールドエネルギーを失いイリアの勝利となる。

 

 「イリア、えげつないわね…」

 

 「私がグフカスタムで陸戦型ジムとやり合った時みたいにやるわね…」

 

 「でも、あの動きは06タイプの動きよね?」

 

 「イリアが士官候補生だった時の訓練機は、旧式のMS-06FZのザク改だったかしらね」

 

 「道理でザクの動きな訳ね…」

 

 アンとシャロはイリアの動きを納得しながらも、三世代型量産機の流星改を旧式の二世代型の打鉄で勝つ姿は見学していた一般生徒には衝撃が強過ぎたらしく呆然する。無論、アクシズ防衛戦で初陣してから三つ巴の乱戦までを生き抜いたイリアにしたら片手間でしかないのは三人の同じ意見だった。

 

 そして、次はフォウが呼ばれてアリーナのグラウンドに出て来た姿は学園に初お披露目となるブルーローズMK-Ⅱを纏うフォウの姿だった。

 

 ブルーローズ自体は、2学年以上の生徒間ではイチカの専用機として有名ではあるのだが、本来のブルーローズとは違う、ブルーローズの後継機のブルーローズMK-Ⅱの姿にどよめきながらも、別の席で見ていた生徒会長はイチカとの模擬戦を思い出して顔を真っ青にしていた。

 

 無論、生徒会長がブルーローズに惨敗した思い出が原因で顔を真っ青にするのも納得が出来る状況をフォウは作り出していた。

 

 「ねぇ、あたしは目が悪くなったのかな?」

 

 「鈴、どうしてよ?」

 

 「何か、私から見たらブルーローズMK-Ⅱが何機にも見えるんだけど?」

 

 「「えっ?」」

 

 アンと鈴の2人が一斉にアリーナのグラウンドに目を向ければ、ブルーローズMK-Ⅱが何機に見える様に思える状況だった。そして、部分展開したハイパーセンサーのレーダーでも同じ状況になり、あたしから見えた最低の数でも、ブルーローズMK-Ⅱが5機位に映る状況に試験官はショットガンを放つが弾はブルーローズMK-Ⅱを陽炎の様に突き抜ける。

 

 「ざっ、残像!?」

 

 「私は早くカミーユとイチャイチャしたいの!!

 

 邪魔するな!!」

 

 色ボケに目覚めたフォウのイチャ付きたい本音の叫びに、あたし達は一斉にズッコケながらも質量のある残像を残すほどの高機動戦闘にフォウが本気だと判る。

 

 無論、一気に懐に入り込みながらバックパックから展開した伸縮式のハイメガビームランチャーを展開して至近距離から放ち、試験官の纏う流星改は損傷レベルがF以上の大ダメージを受けながらグラウンドに流星改のパーツをばら撒き、アリーナの壁へと吹き飛んだのだった。

 

 実技試験後のフォウはピットへと急いで戻り、ピットにて会社関係者として入り見学していたカミーユへと抱き付きながら唇へのキスを強請り、勝ったご褒美にキスをカミーユからして貰って居たのだった。そして、彼氏いない歴イコール実年齢の試験官だったボロボロの教師は二人のラブラブ空間をグラウンドから目の当たりにして、試験と言う試合にも女としてもフォウに完全に敗北して四つん這いになりがら血の涙を流したらしい。

 

 

 そして、アンとシャロがブラックローズⅡを纏い、アンは試験官のナタル先生とシャロは試験官の巻紙先生とそれぞれと模擬戦を行い、フォウに刺激されたのか二人揃って本気で行いナタル先生は至近距離から懐に入られショットランサーを食らって敗北し、シャロはブラックローズⅡの高い機動性能をフルに使いながらヘヴィマシンガンを放ち牽制しつつ、巻紙先生が挑発でキレたのを機に乱れた機動をする巻紙先生にハイメガビームランチャーを直撃させて勝利する。

 

 そして、あたしの模擬戦の番となる。

 

 あたしが選択した、スペリオールの換装パーツはEXパッケージだった。ブースターパッケージでは、狭いアリーナでは持て余す機動力が問題だと気付き、高火力のEXパッケージを選んだのだ。そして、イーリスさんは接近特化のカスタム仕様のブラックローズ。アン達のブラックローズⅡと比べ火力は低いがブルーローズシリーズ特有の高い高機動能力は侮れないし、何より接近特化と言えば、以前にあたしが使っていたブラックローズの接近特化型に近いだろうと思っていた。

 

 「鬼に金棒って、正にイーリスさんにお似合いよね…」

 

 「じゃあ、あの続きを楽しもうじゃねぇか?」

 

 真正面に飛ぶ、イーリスさんが纏うブラックローズに一瞬、あたしは身震いを覚える。武者震いの類いでは無く、一種の恐怖だと理解する。

 

 「最悪、アレを使うしか無いわね…」

 

 『絶対に駄目だよ?』

 

 朱雀があたしが何を切り札に使うのかが判り、駄目だと念を押して駄目出しする。だが、それだけあたしではイーリスさんに勝てる見込みが薄いのだと理解はしてはくれてはいる。

 

 「なら、火器管制は任せたわよ朱雀」

 

 『任された』

 

 専用機がスペリオールになってからは、複雑な火器管制は朱雀に任せている。あたし一人が扱い切れる訳が無いのは理解しているからだ。

 

 スタートのブザーと共にイーリスが大型ビームソードを抜き接近戦を仕掛けてくる。

 

 「よそ見とは余裕じゃねぇか!!」

 

 「くっ!?」

 

 咄嗟にスラスターを全開にしながらもメガビームスマートガンを放ち牽制。そして、距離を取りながらリフレクターインコムとインコムを放ち展開する。

 

 「そんなもん当たるかよ!!」

 

 「甘いわよ!!」

 

 「おっと、危ねえ!?」

  

 「躱した!?」

 

 インコムのビームガンを躱すが、リフレクターインコムにはビームを反射させる能力がる。ビームカノンやメガビームスマートガンを放ち、イーリスのブラックローズをビームの檻へと閉じ込めるが、イーリスが甘くないのは判り切っている。

 

 「前よりは強くなった見てぇだが!!」

 

 「不味い!?」

 

 リボルバーイグニッションブーストで一気に加速され、イーリスさんの握るビームソードにメガビームスマートガンを切り裂かれ、メガビームスマートガンを投棄して直ぐに爆発する。無論、武器はそれだけじゃない。

 

 「当たれ!!」

 

 バックパックの四連メガビームカノンを放ち、リフレクターインコムで反射させてイーリスさんのブラックローズの右の脚部に当てる。脚部は破壊には成功するが、イーリスさんの獰猛な笑みが更に深みが増した事に気付き、スラスターを全開にしながら距離を取りながらメガビームカノンとビームカノンを放ち追撃する。

 

 「あぁ、めっちゃ楽しいじゃねぇか!!」

 

 「嘘……ビームソードを引き換えに無傷ですって!?」

 

 予備のビームサーベルを抜き、迫るイーリスさんのブラックローズに恐怖を抱きながらも膝のアーマー裏のハイパービームサーベルを抜き、ビームサーベルを受け止める。

 

 「チィ、なんて出力のビームサーベルだよ!?」

 

 「野生動物の直感!?」

 

 「褒め言葉だぜ!!」

 

 「グッハァ!?」

 

 しかし、ハイパービームサーベルで受け止めた筈なのにビームサーベルを更に抜きながらX状にしてイーリスは鍔迫り合いを攻め、スキを狙いあたしのお腹へと蹴りを入れる。これが、妊娠中だったらと思うと彩芽がどうなっていたか恐怖するが、あたしは今は産後だった。

 

 だが、お腹を蹴られた事にスペリオールの何かがあたしの思いに賛同し、システムに何かが起こった。

 

 『私もこの子気に入っちゃった。だから、力を貸してあげるね…』

 

 少女の声共に網膜に映るモニター一面に映し出される『ALICE』の文字と同時にあたしの頭の中が急にクリアに成りながらもイーリスさんの動きが全て見える状況。

 

 そして、朱雀以上に火器管制を素早く行いながら、状況に必要な装備の選択と射撃位置の選択までが全てALICEが行う。そんな最中でもスペリオールは赤いオーラに包まれ、まるで一夏のニュータイプの優しい波動には似つかないが、激情な感情の彼女いやALICEのニュータイプの波動に飲まれて行く。

 

 『やっぱり、この子にも素質が在るんだね!!

 

 あぁ、嬉しいな!!

 

 私のニュータイプの力を継げる者に出会えるだなんて、素敵過ぎるわ!!』

 

 ALICEが歓喜しながら喜び、あたしの何かが目覚めたのだった。

 

 

 その後、あたしの記憶は一切が覚えて無く、結果的にはイーリスさんが敗北したとしか判っていなかった。

 

 

 

 アリーナの客席から鈴の模擬戦を見ていたが、赤いオーラに包まれた後の動きはイチカやフォウにカミーユと言ったニュータイプによる攻撃そのものだった。特にイリアは覚醒した頃の自分に似ていると言いながらも、激情な感情に飲まれそうになると言いながら恐怖し、フォウは鈴を見ながら『強制的にニュータイプに覚醒させられたのね…』と悲しそうにしていた。

 

 「アンさん、俺は鈴さんのニュータイプの波動嫌いですよ」

 

 「カミーユ、あたしには判んないけど?」

 

 「いづれ、判りますよ」

 

 フォウが自身のお尻をカミーユの手を掴みながら触らせ、それが見えているあたしから言えば、カミーユには何の説得力は無いが、鈴がスペリオールの何かによって覚醒したとしか言え無かった。

 

 だが、三人とも復学の為の試験は合格を果たしたのは言うまでも無かったのだ。

 

 

 

 

 



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宇宙世紀組の災難

 

 

 復学の手続きと試験が終わり、結果は直ぐにでも出た。無論、三人は復学が決定したのだが、嘗ての寮部屋は元に戻した上で新一年生の寮の部屋へとなっており、一夏と過ごした部屋は無い。しかし、社長に復帰した束さんが学園へと多額の寄付と借り受けていた寮をあたし達の家族寮として借りて三十数名が一緒に住んでも問題ない家族寮へと改装中だった。

 

 「ここは、対面キッチンでお願いするわよ」

 

 「へい」

 

 束さんから推薦された大工が鈴と図面を睨みっこしながら話し合い間取りを決めて行き、三階の十八部屋の寮は壁を全て壊して、寝泊まり出来るレベルまでは改装が終わるが、ダイニングキッチンにお風呂場だけは改装が終わらない。

 

 暫くは、学園の食堂と大浴場にはお世話になるだろうが、一夏の身の回りの世話は今の寮へと移った為に看護師から妻達に代わり順番で身の回りのお世話をしていたが、、今日は軍での指揮官経験を買われて私兵部隊の総司令官となったシーマと妊娠中で産婦人科での検診で娘だと確定したマウアーがベッドに眠る一夏の世話をしていた。

 

 無論、婚約者のミネバと娘達は、毎朝学園へと迎えに来るスクールバスに乗り、小学校へと入学して通っていはいるが、アンが昨日の出来事からミネバから取り上げた鞄を持ちながら見送りから戻って来る。

 

 「ミネバも落ち着けば良いんだけどね…」

 

 「昨日の事が有ったから暫くは無理だと思うけど…」

 

 「全く、鞄の中に一体フライパンが幾つ入っていたと思う?」

 

 イリアがミネバの性格から無理だと答えながらも、鞄の中身を出したアンがげっそりしながらシャロに聞くが、シャロは一つだけだと思いながらアンに聞き返す。

 

 「一体、幾つなのよ?」

 

 「一番柔らかい軟鉄製のフッ素コートのフライパンが3つと束さんが向こうで作ったガンダリウム合金γ製のフライパンが一つとハマーン様が誕生日祝いで送った人工ダイヤモンド製のフライパンよ…」

 

 「えっ…そんなに…」

 

 アンは絶句する二人を他所にしながらも、アンを加えたシャロにイリア達三人はミネバのフライパンをどう処理したら良いのか見当すら立たない。だが、マドカはフライパンを見るたびに怯えて震えたりしていたらしく、ダイヤモンド製のフライパンで殴られなくて良かったと思う三人でもあった。

 

    ミネバ&織斑家の姉妹達の場合…

 

 

 昨日のクラスで起きた事件から、少し前に時間を遡る…

 

 「は〜い、今日からみんなのお友達になるミネバ・ザビちゃんね」

 

 「ミネバだよ。よろしくね!!」

 

 『は〜い!!』

 

 ミネバは学校に初めて通いながら、新しく出来るお友達にわくわくして自己紹介を済ませるが、一人だけ嫌な感覚を感じた一人の女子生徒をニュータイプとしての勘なのか、元総統だった経験からか警戒をする。

 

 無論、このクラスには千秋と夏希に千春などのソロモンから仲の良かったイチカの娘達も一緒に在席するクラスだけに余り不安は無いと想いたかった。

 

 しかし、休み時間で事が起こる。

 

 「へぇ、千秋ちゃん達のパパって、あの世界初のISの操縦者なんだ!?」

 

 「うん、凄く優しいパパだったよ」

 

 「だった?」

 

 千秋と夏希がクラスメイトの女子生徒と話ており、千秋が過去系で話している事から疑問にすら思う生徒。しかし、このクラスは一般人からはお嬢様と言われる政界人や業界人などのご令嬢が集まる特別学級であり、父親であるイチカが帰還して来て直ぐにホワイトラビット社の病棟に入院中だと言う話は、ご令嬢達の間では取り分け有名な話だったりしていた。

 

 無論、鈴は元一般人だった事から普通の学校へと行かせたかったのもあるが、ユキノを始めとしたシーマの部下数名を護衛兼メイドとして住み込みで雇っている今の織斑家は果たして一般人の枠に収まるかと言えば微妙な位置であり、イチカの妻達の中には私兵部隊の総司令官だったり、部隊長やムサシの艦長にホワイトラビット社の幹部だったりと一般人と質問したら違うだろうとツッコミが帰って来るだろ。

 

 そして、娘達への教育ママ化したシーマの意見により、特別学級へ入れる事に反対する鈴とアンを除いた妻達の満場一致での妻会議で、この特別学級へミネバと娘達が入るに至る。

 

 そんな会話の最中、ミネバが警戒していた女子生徒が口を開く。

 

 「あら、そう言えば、貴女達の父親が入院中ですのね。精神が壊れるまで何をしてたか知りませんが、どうせ碌でも無い事が原因なのでしょ?

 

 だがら、男なんて皆死ねば良いのに」

 

 それを聞いた娘達三人は怒りに震えながら耐え、その女子生徒を無視を決め込み他の生徒達との会話を楽しむ。

 

 しかし、次の一言にミネバがキレたのだ。

 

 「パパが話していた、IS学園に入港した戦艦の被害状況から、戦場でのショックから精神疾患にでもなったのかしらね。そのまま、貴女方の父親なんて戦場で死ねば良いのに」

 

 「「「「「!?」」」」」

 

 近くにいた千秋達、姉妹の顔付きが瞬時に怒りに変わり、ミネバに至っては母親から聞いた話では、父親のドズルと叔母であるキシリアや叔父のギレンとの仲違いをイチカが作ったディナーを食べて貰いながら、兄妹達が争うべきじゃないと話してくれたから、二人へと懐けて寂しい思いもしなかったし、防衛戦になるまでイチカがおやつに美味しいケーキを焼いてくれたから優しい自分があるのだとミネバは思うし、イチカに出会ってなければ初恋なんてしなかった。後6年は我慢はしないといけないけど、大好きなイチカに対して死ねば良いのにと言われて、我慢が出来るミネバじゃなかった。

 

 「私の大切なイチカを!」

 

 「ヘッグゥ!?」

 

 ミネバは父親の得意だった格闘技を見様見真似で教室の床を踏み込みながら拳を握ると女子生徒の懐へと入り込み、右のアッパーカットを女子生徒の顎下に全力で入れる。女子生徒の顎下へと入ったアッパーは女子生徒の歯を砕きがら浮き上がる。

 

 「侮辱しないで!!」

 

 「かっ、顔は止めっ…ヘッブゥ!?」

 

 浮き上がりながらも顔は止めてと言う女子生徒に、ミネバは左のストレートを顔面に入れて教室の電子黒板へと殴り飛ばす。無論、周りの生徒達が見ていた為に悲鳴が上がるが、父親を侮辱され目尻に涙を溜めたイチカの娘である千秋と千春に夏希からの怒りのニュータイプの波動を同じニュータイプである姉妹達が受けてしまい、床へと倒れノックダウンする女子生徒の周りに学校へと通う姉妹達が全員が集まり出して、女子生徒の首根っこを千秋と千春が二人掛かりで掴み引き摺りながら何処かへと連行して行き、『助けてくれたの?』と言いミネバに怯えながら歯を無くした女子生徒だが、姉妹達はニッコリと物凄くいい笑顔で笑いながら『パパを侮辱するな!!』と叫びながら姉妹全員でぶっ飛ばしたのだった。

 

 

 「と言う話なのよ…」

 

 と学校に呼び出されたアンは、フライパンを調理棚へと仕舞いながら二人に話しながら、暴言を吐いた女子生徒には一切叱らずに娘達とミネバの暴力に対してだけに文句を言っていた女尊男卑の酷かった女性教師は夫のイチカへの暴言を吐いた為に、アンが終いにはブチ切れてぶっ飛ばしたらしい。

 

 無論、ミネバ達に殴られた女子生徒は顎骨の骨折と歯を全て失い重症で、アンがぶっ飛ばした女性教師は肋骨数本の骨折と黒檀製のテーブルに投げられた為に腰骨を折る重症だった。

 

 それを聞いたイリアは呆れ顔を浮かべ、女尊男卑がこうも酷かったのかと思いながらも、宇宙世紀組の妻達やカミーユ達には身の安全の為に警告して置こうと内心思うのだった。

 

 しかし、イリアの不安は的中する事になるのは、別の話となるが宇宙世紀組の妻達がカミーユ達を連れてレゾナンスの子供服売り場へ買い物へと再び行った時になる。

 

 

 カミーユ達の場合。

 

 ミネバの隠していた全てのフライパンの片付けが終わり、イリアはエマとクリス達の着替えや娘姉妹やミネバ達の洋服を買いに行く為に宇宙世紀組の妻になった全員を呼びレゾナンスへと向かう。無論、カミーユとファとフォウにロザミアも連れて向かうのだった。

 

 レゾナンスでの案内役はシャロで、来れなかったマウアーや鈴とアンの分の下着や普段着を買いながらも、他の妻達はそれぞれの下着や普段着を選び購入して行く。

 

 無論、カミーユはファとフォウに両脇に腕を組まれて逃げるのは不可能だと理解して諦めながらも、妹として引き取ったが恋心に目覚めつつあるロザミアからは積極的にカミーユに腕を組む二人を羨ましいそうに見ていた。

 

 「ファにフォウ、そんなに腕を組まれたら歩き難い」

 

 「腕を放したらカミーユは逃げるでしょ?」

 

 「私もファに同意見だ」

 

 「お兄ちゃんは逃げないよね?」

 

 そんな四人はファミレスに入り、ファはカルボナーラをフォウはサンドイッチをロザミアとカミーユは同じオムライスを注文しながら談笑にはいる。

 

 「そう言えばカミーユは、束さんから機械工学を学び始めたって聞いたけど?」

 

 「ファ、悪いかよ?」

 

 「違うの。カミーユがやりたい事が見付かったのが嬉しいなって」

 

 「俺だって、やりたい事ぐらいあるさ。イチカ隊長がしていたISの専用機の基礎設計をやって見ないかって束さんから誘われたのが始まりだしさ」

 

 「でも、医者に成りたかったでしょカミーユは?」

 

 「医者にも成りたいけど、イチカ隊長に恩が返せるなら設計技士になって隊長の専用機を設計したいなって思っただけだ」

 

 「「カミーユらしいわね」」

 

 そんな会話の最中、一人の女性がカミーユが座るテーブルに伝票を置いて行く。無論、カミーユには見覚えの無い伝票であり、カミーユは女性を引き止める。

 

 「忘れ物ですよ」

 

 「忘れたんじゃないわ。ここの支払い、男の貴方が支払いなさい!!」

 

 「「「「はっ?」」」」

 

 意味も分からず、全員ハモりながらはてなマークを浮かべる。

 

 「良いから、支払いなさい!!」

 

 「ねえ、私達の食事の邪魔するな!」

 

 「ふん、売女が…えっ、貴方達まさか…」

 

 意味が判らないまま、癇癪を起こす女性にフォウが立ち上がり、ホワイトラビット社の身分証を見せる。女性は顔を急に真っ青にして逃げようとするのだが、カミーユが足を引掛けて転倒させ、ロザミアが馬乗りになり関節技を決めてからスカート内の内股に隠す投げナイフを首筋に当てて拘束したのだった。

 

 女性は無銭飲食で逮捕されたが、カミーユはイチカ隊長がどれだけ辛い思いをしながら暮して居たのかを理解するきっかけとなったのは言うまでもなく、こんな世界よりも宇宙世紀で暮らす方が隊長の幸せだと感じるのだった。



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動き出す刻

  

 

 束様が帰還されて、アン様達の専用機を仕上げてからは研究室に籠もり切りで研究を続けている。理由は判らなくは無いが一夏様を助ける為だとは理解している。だけど、胸苦しそうにしながら独り苦しみ、悲壮感漂う束様は見ては居られないクロエですが、社長を任されてしまい会議会議と束様を見守る時間が無くなるのが現状だった。

 

 「束様…」

 

 束様は、帰還して直ぐにクロエにコアの製造方法を遂に教えて来ました。無論、嬉しさと寂しさがありますが、『コレを完成させなくちゃね』と言ってからはまともに寝ていないし、束様は気付いて居ないかも知れないけど、お腹に新しい命が宿っているのだから無茶をしないで欲しい。

 

 溜息ばかり吐いていると、学園から呼び戻して秘書にしたスコールさんが悲しそうにクロエを見る。

 

 「やっぱり、前社長が心配かしら?」

 

 「はい…束様は無茶ばかりで…」

 

 「でも、一夏くんへのタイムリミットが無いのは事実でしょ?」

 

 「確かに、無いのは事実です。クロエが以前に一度だけ一夏様の精神世界にダイブした時は何ともありませんでしたが、今の一夏様の精神世界は何時完全に崩壊してもおかしくは無いし、白星さんが精神世界を支えているのが大きいですね…」

 

 「タイムリミットは保っていつなの?」

 

 「はっきり言えませんが、一ヶ月位としか…」

 

 「余り時間が無いわね…」

 

 スコールは、『一夏救出作戦概要』と纏められた突入メンバーを見ながら溜息を吐くが、歴戦の戦士とも言えるアンとシャロの二人に鈴にカミーユにイリアの合わせた5人だけの少数精鋭での作戦に無謀だと思うのだった。

 

 

 

 同じ頃、作戦概要が鈴の下に届けられており、緊急妻会議では内容を読んだクリスが怒りを爆発してアンの胸倉を掴んでいた。

 

 「アン、ふざけんじゃないわよ!!」

 

 「クリス、あんたじゃ力不足なのよ!!」

 

 「何だと!!」

 

 「クリス、落ち着きなさいよ」

 

 「エマさん、アンに言ってやってよ!!」

 

 「少数精鋭で挑むんだから仕方無いじゃない!!」

 

 「鈴さん、詳しく説明を」

 

 「あたしだって力不足だけど、単に初期生産のコアを持つのがあたしとアンにシャロだけな理由よ。カミーユはニュータイプとして感受性があり、イリアはニュータイプとして高い危険予知があるからよ。クリスとエマさんも少数精鋭で無ければメンバーだったけど、娘達を抑えられるメンバーとなると必然的にクリスとエマになるのよ」

 

 「「確かに…」」

 

 確かに、彼女達に千秋達の相手は無理だと理解しながらも、クリスとエマはケイト達を見ながら溜息を吐く。

 

 無論、ケイト達が至ってトロい訳では無いのだが、娘達全員がニュータイプだから厄介なのだと鈴は暗に言う。特に夏希と千秋の二人のニュータイプ能力はイチカを既に超えており、最近だが家族で見学に行った第七格納庫で調整中の専用機のイリア機とフォウ機のブルーローズMK-Ⅱを乗り回したりして遊び、遊び相手にされたブラックラビット隊の面々はラウラを加えた全員が本気になっても敵わず、ファンネルを使われ落とされたらしい。

 

 妻会議も長引き、既にお昼が過ぎようとしていた事に気付いた鈴は棚から出したのはミネバから取り上げたガンダリウム合金製のフライパンを出して火を掛けながら温めている事にイリアが気付く。無論、人工ダイヤモンド製のフライパンはインテリアとしてキッチンに飾られ、他の取り上げたフライパンは鈴専用の調理用具化していたのだ。

 

 「さて、お昼にするわよ」

 

 「そのフライパンは…」

 

 「あっ、コレ?

 

 熱伝導率が、あたしの中華鍋より良いから使ってるわよ」

 

 「それ、ミネバから取り上げたガンダリウム合金製のフライパンよ」

 

 「そうなの?

 

 なら、ホワイトラビット社の商品にしたら売れそうね」

 

 「確かに、ガンダリウム合金はこの世界だと、束さんしか精製できなかったわね」

 

 「なんか、ホワイトラビット社があっちのアナハイムの様になりそうね…」

 

 シャロが懸念する様に、後にガンダリウム合金製のフライパンはホワイトラビット社が出す調理器具としてはガンダリウム合金製の包丁に次いでの人気商品になる。

 

 そんな事を三人で言いながらも、鈴は人数分の冷や飯を用意しながら刻んだ叉焼やネギを用意して行き、卵を溶きながらフライパンに油を敷くと卵を入れて固まらない内に少し温めた冷や飯や刻んだ具材を入れて炒めて行く。そして、同時進行で水を入れた鍋を火にかけて沸かして鶏ガラスープの素を入れて鶏ガラスープを作り、具材に火が入る頃には塩胡椒で味を整えながら粉末の鶏ガラスープの素を炒めている炒飯に振り掛けて一気に炒めて炒飯が完成し、鶏ガラスープには刻みネギと溶き卵をおとして卵スープにして妻達に出していたのだった。

 

 「鈴の手際の良さには脱帽ね…」

 

 「あたしは料理が作れないけどね…」

 

 鈴が、いつの間にか作り上げた炒飯定食に舌鼓する妻達は騒いでいたいざこざも収まり、シャロとアンは鈴に脱帽しながらも炒飯を食べながら話す。

 

 正妻の鈴でしか出来ない芸当だと。

 

 昼食が済んだ頃に、鈴のスマートフォンがなる。

 

 「束さんからね…」

 

 「じゃあ、まさか?」

 

 「完成したのかも?」

 

 妻達がざわめき、希望観測的な話をするが束さんからの電話を出て話さければ意味は無い。

 

 「どうしたんです?」

 

 『うん、装置が完成したから突入メンバーは全員集合だよ』

 

 やっぱり、完成の電話だった。

 

 『で、突入メンバーは念の為にノーマルスーツ持参してね』

 

 「判りました。直ぐに伺います」

 

 電話を切り、妻達を見た鈴はアンに電気自動車を用意する様に言い、スマートフォンを片手にしながらフォウへと連絡を入れ、学園の入り口でカミーユを拾うから来る様にと言って切ると自室に向かい、ノーマルスーツを拡張領域へと仕舞いながら、メイドのユキノを呼んで一夏を車椅子に乗せて貰い、アンとシャロにイリアと一緒に駐車場へと向かったのだった。

 

 「カミーユ、待たせたわね」

 

 「別に構いませんよ。ただ、何故フォウの番号を知っているんです?」

 

 「悪い?

 

 フォウはあたしと同じクラスだからよ」

 

 「フォウ、そうなのか?」

 

 「えぇ、鈴とは同じ2組よ。私は鈴の推薦でクラス代表だけどね」 

 

 「まぁ、フォウがやる方が健全的だし、彩芽のミルクがあるからね」

 

 入り口で会話しながらカミーユを乗せ、アンは車を発進させて本社のある山梨の本社へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 同じ頃、イチカの精神世界ではブルーローズMK-Ⅱに乗るイチカはとあるニュータイプと戦っていた。

 

 「ちぃ、ファンネル!!」

 

 「チィぃぃ!?」

 

 飛行形態のモビルスーツは、5thルナの外壁部分を低空で飛びながらブルーローズMK-Ⅱから放たれたファンネルのビームを寸の所で全て躱して行く。無論、そのパイロットが逃げる先にはギュネイ中尉機のヤクトドーガが待ち伏せをしており、イチカは彼を逃がす積りは無い。

 

 「ギュネイ、決めろ!!」

 

 「イチカ准将、うるさい!!」

 

 「ちぃ、挟み撃ちか!?」

 

 「「落ちろ!!」」

 

 ギュネイは半分キレながらもヤクトドーガからファンネルを展開し、挟み撃ちで決める積りが飛行形態のモビルスーツは飛行パーツと分離しながらギュネイのヤクトドーガへと飛行パーツをぶつけて、ビームサーベルを抜きながらイチカへと切り掛かる。

 

 「これなら!!」

 

 「なっ!?」

 

 「悪いけど、貰った!!」

 

 「ゼータモドキで!!」

 

 イチカはビームライフルを変形させてハイパービームサーベルでゼータモドキのビームサーベルを受け止めながら、バックパックのハイパーメガビームランチャーを展開してゼータモドキへと放つ。

 

 「脚をられたくらいで!!」

 

 「チィ!?」

 

 ゼータモドキの左脚を吹き飛ばすが、グレネードランチャーを放ちイチカと距離を取る。

 

 『イチカくん、撤退だ』

 

 「了解、シャア閣下」

 

 ブルーローズMK-Ⅱを反転させながらも、コクピットで気絶するギュネイを回収してアクシズ艦隊の旗艦の改ムサシ級強襲揚陸戦艦シラネへと帰還する。

 

 そして、5thルナの熱核ブースターが点火して地球連邦の本拠地のチベットへと落下して行ったのだった。

 

 

 何故、アクシズと連邦が戦争になった理由は、ティターンズとの戦い後、アクシズはサイド3を本拠地に移して月の月面都市郡と共に連邦に独立を宣言する。しかし、戦力を大半を失った連邦は承諾するしか無くて独立を認める。しかし、一部の連邦の上層部が認めずにサイド2の12バンチコロニーへと核攻撃に踏み切り、12バンチコロニーはバレンタインデーの日に多数の死者を出しながらコロニーは消滅し、『血のバレンタイン事件』に対してアクシズは再び連邦との戦争となったのだった。

 

 そんな精神世界のイチカは准将に昇格しており、シャア元帥の指揮する部隊に居ながらも、核攻撃をした連邦を許す気は全く無く、ゼータモドキに乗るアムロと因縁の決着を着けようとしていた。

 

 

 

 そんな精神世界でイチカが戦っているとは知らない鈴達は、本社へと着いたのが夕食頃となり束さんの自宅にて夕食となるのだが、鈴は束さんが妊娠していた事実を知る事になるのは知らなかった。

 

 「やぁ、みんな来たね」

 

 「束さん、お腹出てますが?」

 

 「余り食べて無いのにおかしいなぁ?」

 

 「束さん、偶に気分が悪いとかありません?」

 

 「有ったかも…」

 

 その一言に鈴は、束さんがもしかしたら妊娠した事実を知り、車椅子で眠る一夏を睨みながらも拡張領域から出した検査薬を束さんに渡して検査する様にと言う。

 

 「はっ、マジぃぃぃぃぃ!?」

 

 トイレから束さん悲鳴が上がり向かうと、陽性反応を示した検査薬を凝視しながら固まる束さん。

 

 「イチカを助けたら、先ずはとっちめないとね…」

 

 「「「うん、イチカはギルティだね」」」

 

 妻達4人は結束を高めながら、イチカを助けた後にイチカをぶっ飛ばす事が真っ先に決まった瞬間だった。

 

 



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精神世界へ

 

 

 本社の第八格納庫に着いたあたし達はクロエの案内の下、ワールドパージする為の装置へと着くのだが、束さんはイチカの子を身籠っていた事実は隠しようが無く、あの時の箒が戦死した台湾での精神的ショックからイチカに慰めて貰った時だと束さんは自白する。

 

 無論、自白して直ぐに調べたのだが既に安定期を過ぎており、妊娠7ヶ月になるまで本人がただの体調不良だと思いながら気が付かなかったと語る。

 

 イチカの救出後に開かれるだろ妻会議は紛糾するのは確実だと思い、鈴はゲンナリしながらノーマルスーツに着替える。

 

 「モビルスーツの脱出用ポットね…」

 

 「だね…」

 

 いち早く着替えたアンとシャロはケーブルに繋がれたモビルスーツ用の脱出用ポットを見ながら思うのだが、内部はブラックローズⅡのコクピットと差程変わらず、唯一の違いと言えばフィット感あるシートへと変わっていたぐらいだった。シートに座りながらもパネルを操作するとブラックローズⅡのコクピットで間違いなかった。

 

 「シャロはどう?」

 

 「コクピットがブラックローズⅡね」

 

 とシャロは答える。

 

 「俺のは、アンマンでテスト操縦したゼータガンダムなんですが?」

 

 「カミーユがゼータ?

 

 あたしのは、スペリオルガンダムのブースターユニットよ!?」

 

 「グッスン…私の機体なんかブルーローズMK-Ⅱじゃ無くて、クインマンサだったわよ…」

 

 「「「「うっわぁ…」」」」

 

 どうやら、5人にはそれぞれの機体がインストールされており、コクピットも違うらしく、唯一同じなのはアンとシャロのブラックローズⅡのみで、鈴とカミーユはゼータ系列のゼータガンダムとスペリオルガンダム・ブースターユニットだったが、イリアだけはアクシズ潜入の際にデータだけを取ってきたクインマンサだった。

 

 無論、イリアは嫌そうな表情をしながらブルーローズ系列の機動力が高いモビルスーツでは無くて鈍重なクインマンサだと半泣きしていた。

 

 「ハマーンちゃんからのデータ取りの依頼だったから、イリアちゃん頼んだよん」

 

 「ハマーン様から!?」

 

 まさか、IS世界でクインマンサの評価実験ついでだったと聞いたイリアは、いじけたくなったのは言うまでもない。

 

 そして、クロエが脱出ポットに入り、繋げられたケーブルが光出す。

 

 「皆様、準備は良いでしょうか?」

 

 全員から何時でもと返事を返すと、クロエは自分の本来の専用機の黒鍵を展開してワールドパージが始まったのだ。

 

 

 

 宇宙空間に漂う6機のモビルスーツは、アンとシャロのブラックローズⅡにカミーユのゼータガンダム、鈴のスペリオルガンダムブースターユニットにイリアのクインマンサ。そして、クロエの乗る機体はFAZZが浮かぶ。

 

 「これが、イチカの精神世界…」

 

 「あたしの居た世界かと思ったわよ…」

 

 そう、言われてしまえば納得出来るが、アンとシャロが呟く様に宇宙世紀の世界と変わらない宇宙空間が広がり、出た場所が岩礁宙域だったのが幸いしてはいるが、宙域から出て直ぐの場所には地球連邦軍の最新鋭の巡洋艦のクラップ級が数隻おり、Lのマークに二つの鐘のマークのあるアーガマに似た艦にアンは嫌な予感を覚える。

 

 「シャロ、戻るわよ」

 

 「手を出さない方が懸命ね」

 

 岩礁宙域の岩礁の影から艦隊を覗いていたアンとシャロは自機のコクピットに素早く戻り、鈴達が待機する場所へと移動するがスラスターを一切使わずに岩礁を蹴った反動のみで移動したのだった。

 

 もう一方の岩礁宙域では、青いギラ・ドーガ改のパイロットのレズン少尉率いるギラ・ドーガ隊はロンド・ベル隊別働艦隊を奇襲する以前に鈴達を見付けており、イリアのクイン・マンサを見て驚愕していた。

 

 「なっ、何故反乱軍の旧ネオ・ジオンの機体と旧エゥーゴの機体が!?」

 

 「隊長、どうしますか?」

 

 「ちぃ、やるしか無いじゃないかい!!」

 

 レズンは己の不運を呪いながらも数が少ない鈴達への奇襲を考え、シュツルムファーストを納めるシールドを構え鈴のスペリオルガンダムブースターユニットへと狙いを定める。

 

 「つっ!?みんな散開!!」

 

 「襲撃かよ!?」

 

 「まさか、この感覚!?」

 

 「モビルスーツに慣れて無いのですが…」

 

 やはり、鈴はニュータイプへと覚醒していた為に脳裏に走る様な雷と悪意に満ちた感覚を同時に感じ取り、フットペダルを踏み込みながらスラスターを吹かすといきなり飛んで来たシュツルムファーストを回避する。

 

 「ちぃ、奴はニュータイプかい!?」

 

 「友軍機を攻撃なんて、どういう積りよ!!」

 

 鈴は、友軍機から攻撃されるとは一切思って無かったが、シュツルムファーストの威力は三つ巴の戦いでの経験で知っでいた故にスペリオルガンダムでも当たれば只では済まない事は熟知していたし、肩のアーマーにはアクシズのマークがあるから問題ないと思っていた自分に怒りすら覚える。そして、メガビームスマートガンをギラ・ドーガ改へと放ち反撃する。

 

 「友軍から攻撃かよ!?」

 

 既に旧式化しつつあるゼータガンダムに乗るカミーユもビームライフルを放ちながらギラ・ドーガへと反撃するが、ダミーバルーンを展開したギラ・ドーガには当たらない。しかし、素人同然の動きしか出来ないクロエのFAZZを護らなくてはいけない為に離れられない苛つきもあり、ストレスが貯まる一方だった。

 

 「ビームなんか!!」

 

 イリアもクインマンサのIフィールドを張りながら、メガ粒子砲を放ち反撃する。無論、両肩のバインダー内のファンネルを展開しながら味方機に援護をするが、クインマンサのデカさ故に一番被弾率が高いとも言える。

 

 「まごまごしてると、ロンド・ベルの連中に気付かれるよ!!」

 

 レズンは部下達に叫びながら、鈴のスペリオルガンダムへとビームサーベルを抜き斬り掛かるが、ギラ・ドーガ改とスペリオルガンダムとの間には、鈴達へと先行偵察から戻って来たシャロが放ったハイメガビームランチャーのビームが通り過ぎレズンは動きを止める。

 

 「誰だい!!」

 

 「あら、レズン。

 

 教官だった、私を忘れたかしら?」

 

 「まさか、この声は…」

 

 レズンはシャロの声を聞き、歯をガタガタ鳴らしながら怯え出して顔を真っ青にする。レズン本人にしたら士官学校時代の恐怖の対象であり、故人のラカン大尉と並び畏れられた教官の一人のシャーロット中佐だとは思いにも依らず、レズンはコクピット内で膝を抱えながら完全に怯えていたのだった。

 

 無論、味方同士の戦いはレズンより上位の上官に当たるアン大佐の『撤退するわよ!!』の一言で収まり、アンとシャロの2機のブラックローズⅡに腕を掴まれながら挟まれて拘束されたレズンのギラ・ドーガ改はモビルスーツ隊隊長のレズンの案内の下、母艦の数隻のムサカへと案内して貰うが、他のギラ・ドーガのパイロット達もアン大佐の眼の笑っていない笑顔を見て凍り付いて怯えたのは言うまでもない。

 

 「さて、鈴達を攻撃をした理由を聴こうかしらね?」

 

 「さあ、答えなさいレズン少尉!!」

 

 ムサカのモビルスーツデッキに着き、ギラ・ドーガ改のコクピットから引き摺り出された上にキャットウォークに正座をさせられたレズンは小さく成りながらアンとシャロから尋問されていた。無論、答えなければアンが持ち出して来たビームマシンガンのエネルギーパックを膝の上に置くぞと暗に発しており、レズンは素直に話すしか道は無かった。

 

 「あれが、イチカ准将の奥さん達かよ…怖えぇぇ…」

 

 「アン大佐とシャーロット中佐は独立戦争からの生き残りだろ?マジ、半端ねぇ…」

 

 「しかも、あの三つ巴の戦いもだろ?」

 

 「レズン少尉、ご愁傷さまだよな…」

 

 「「アンタ達も一緒にお説教よ!!」」

 

 「「「「「「そっ、そんなぁ!?」」」」」」

 

 アンとシャロのレズン達へのお説教は続き、本拠地のソロモンへと戻る頃には足が痺れて動けないレズン達が出来上がるのだった。

 

 

 ソロモンに入港したムサカは宇宙港に係留され、ランチから移動して旗艦のシラネへと案内されるが、鈴とアンにシャロはシラネ内に入るなりイチカの探索を始めるが、直ぐにイチカをモビルスーツデッキにて見付ける。

 

 「イチカ、見付けたわよ!!」

 

 ゴム弾仕様のアサルトライフルをイチカへと構えながらアンは叫び、イチカは驚愕しながら驚く。

 

 「うっげぇ、アン!?」

 

 しかし、反対側から出て来たヤンデレ化したイリアが、ガンダリウム合金製の鎖とそれに繋がる首輪をイチカの首に嵌めようと持ち伏せしながら現れる。

 

 「ふふふ…イチカ見付けた…」

 

 「いっ、イリア!?」

 

 「逃さないよ!!」

 

 無論、アンとイリアだけでは無く、シャロも鎖付きの手錠を振り回しながら現れてイチカはさらにピンチとなる。

 

 「しゃ、シャロ!?」

 

 そして、イチカはモビルスーツデッキを逃げ回るが、最後に現れたのは真剣でありガンダリウム合金製の青龍刀を握る鈴だった。鈴はイチカを見付けるなりニッコリと笑うが、眼が一切笑っていなく縦長の紙と墨が着けられた筆を投げ渡しながら叫ぶ。

 

 「一夏、辞世の句の準備は済んだ?」

 

 「鈴までって、辞世の句って切腹かよ!?」

 

 「そうね、あたしの知らない内に浮気したんだから切腹いえ、斬首が妥当よ!!

 

 この、馬鹿一夏の浮気者!!」

 

 と叫び、ブルーローズMK-Ⅱが握ったままのビームライフルを一振りしたガンダリウム合金製の青龍刀で八つ当たりの様に斬り捨てる。

 

 「こっ、殺される!?」

 

 4人に見付かったイチカは、ブルーローズMK-Ⅱのコクピットハッチを蹴り反転すると、涙目の鈴からの切腹しろとの叫びの声に顔を真っ青にしながらモビルスーツデッキから逃げ出す。無論、鈴達はイチカを追いかけ始めて、シラネが就航してから初めてとなる追いかけっこによるデス・マーチの始まりだった。

 

 「まっ、まさか…束さんとの一件がバレた!?」

 

 「「「「待ちなさァァァァい!!」」」」

 

 「やっ、ヤベェ逃げるしか無い!?」

 

 逃げ回るイチカとイチカを追う妻達の攻防は、シラネのメカニック達からしたらソロモン以来の何時もの光景かも知れない。しかし、鈴が青龍刀で斬り捨てたビームライフルを見ながらメカニックは思う。

 

 「なぁ、コレって斬れる物なのか?」

 

 「いや、知らん。だが、次の出撃に備えて修理が先決だろ?」

 

 「いや、そうだけどさ、普通は斬れねぇだろ!?」

 

 「サカイ少尉、鈴音夫人には絶対に逆らうなよな?」

 

 「なっ、何でだよ?」

 

 「キレたら、ハマーン様でも止めるのが難しいからだ!!」

 

 「おっ、なるほど…」

 

 そんな会話をするメカニックの会話を他所にしながらもデス・マーチは続く。

 

 「イチカくん…」

 

 「シャア閣下、逃げますよ!!」

 

 「何故だ?」

 

 「「「「待ちなさァァァァい!!」」」」

 

 「私はナナイに急用が!!」

 

 「シャア閣下!?

  

 ハマーン様に浮気を言ってやるからな!!」

 

 首を傾げながら疑問に思うシャアだったが、通路の角から現れた四人に真っ青になり、シャアはナナイの自室へと逃げ込みながら鍵を閉める。無論、イチカはナナイ艦長の部屋へと逃げ込もうとするがシャアから閉め出される。

 

 無論、ハマーン様へと浮気を報告してやろうと決意したイチカだった。

 

 そして、逃げ回る事30分後には4人に捕まり、廊下にはイチカへの制裁に満足した4人とボロ雑巾の様にボロボロになったイチカが宙に浮いていたらしく、ブリッジから自室に戻る途中のナナイが見付けたらしい。

 

 



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ハマーンとの再会

 

 

 一通りイチカをぶっ飛ばしてスッキリしたあたし達は、イチカとシャアがアンとシャロに廊下を引き摺られて連行される光景を見て顔を未だに引き攣らせたナナイ艦長に案内され、ソロモンの居住区のハマーンの住まう屋敷へと向かう。無論、何故シャア元帥がと疑問に思う一般兵だが、あたしがいい笑顔で居る様子とズタボロのイチカを見比べて一般兵は織斑夫妻の最大級の一方的な夫婦喧嘩の結果だと納得する。

 

 「ハマーン様、来たわよ!!」

 

 「何故、シャアが引き摺られている!?」

 

 「ナナイさんから、事情を聞きなさい!!」

 

 シャアをハマーン様の方へと投げ渡し、ナナイはびっくんと怯えながらシャアと浮気していた事をハマーン様へと白状する。

 

 無論、ハマーンはこめかみに青筋を浮かべながらも、イリアが拡張領域から出した巨大な算盤をハマーンに渡すと間髪入れずにシャアを算盤の上に正座で座らせて、ニッコリ笑いながらシャアの膝上に椅子の様に座る。

 

 「ウッグゥ!?」

 

 「シャア、妻が二人もいながら浮気か?」

 

 「イチカくん、私を売ったな!?」

 

 「売ってないですよ…鈴がナナイを尋問したかと…」

 

 「はい、申し訳ありません…」

 

 「まぁ、イチカの浮気ついでだけどね…」

 

 「ほぅ、イチカ准将も浮気か?」

 

 「えぇ、ソロモンの技術最高顧問とですがね…」

 

 「あぁ、束大尉だな…」

 

 「まさか…束さんは…」

 

 イチカの質問に鈴はニッコリ笑いながら答える。

 

 「妊娠7ヶ月ね」

 

 「なっ!?」

 

 まさかの事実に驚愕するイチカと最高顧問の妊娠に喜んで良いのか微妙な反応のハマーン。しかし、ナナイはハマーンの眉間に皺が寄る様な表情に怯えてこっそりと謁見の間から踵を返して抜け出そうと画策するが、シャロに女性用の軍服の腰にしていたベルトを掴まれ逃げられず、裏の第一夫人とも言えるナタリーが来たらとシャア共々怯える始末だった。

 

 無論、ハマーンは玉座にある通信機でナタリーを既に呼び出して後宮から召喚しており、二人の未来は決まったと過言では無かった。

 

 何故なら…

 

 ドッドドドド…バッァァァァァン

 

 「シャア、あなたねぇ!!」

 

 「なっ、ナタリー!?」

 

 「ハマーン、逝くわよ!!

 

 シャアに私達の魅力を徹底的に覚えさせながら、搾るだけ搾るわよ!!」

 

 「「「「「……」」」」」

 

 謁見の間の重厚な扉が急に砕け散り、現れたのは扉をヤクザキックしながら破壊し、凄まじい形相しながらキレたナタリー本人だった。そして、算盤の上に座らされていたシャアを蹴り飛ばしながら転がして行き、ハマーンの手を握りナナイのベルトを掴み、二人一緒に連行すると踵を返して後宮の自室へ嵐の様に消える。

 

 カミーユはファとフォウの姿がナタリーと被り青褪めながらブルっと震え、イチカはこの後にどうなったかが予想出来た為に真っ青にするのだった。

 

 「シャアの浮気者ォォォ!!」

 

 バッチィィィィン

 

 「ギャァァァァァァ!?」

 

 「さあ、ハマーン!!

 

 シャアが気絶している今の内に搾るだけ搾るわよ!!」

 

 「あっ、はい…」

 

 その後、後宮のナタリーの私室から聞こえたのはシャアの悲鳴だった。

 

 「さて、あたし達もナタリー様の様にイチカを搾るだけ搾りましょうか?」

 

 「そうね…」

 

 「イチカ、今夜は寝かさないわよ」

 

 「カピカピになるまでね♪」

 

 「かっ、カミーユ助けてくれ!!」

 

 「隊長、自業自得ですよ」

 

 「そっ、そんなァァァァァ!?」

 

 勿論、イチカもアンとシャロに首根っこを掴まれ再び引き摺られて自宅へと連行される最中にカミーユに助けを求めるが、カミーユに一瞬だけ振り向いた4人が一斉にニッコリと笑う姿に顔を真っ青にして自業自得だとバッサリと切り捨てたのだった。無論、カミーユに薄情者と叫ぶイチカだったが、カミーユは引き摺られて行くイチカに敬礼しながら見送ったのだった。

 

 「カミーユの薄情者ぉぉぉ!!」

 

 「隊長、ご武運を!!」

 

 4人に搾るだけ絞られた翌日には、ベッド上にミイラの様に肌はカサカサになり顔は窶れてげっそりな姿となったイチカと鈴を始めとした妻達はツルテカの肌をしながら満足したのだった。

 

 無論、シャアもイチカ同様にナタリーとハマーンにも徹底的に搾り尽くされ、傍らで見ていたナナイも二人に謝罪しながらも二人から妻の一員となれと言われてハマーン達のベッドへと混ざったらしく、翌日の会議に参加した時にはげっそりと窶れたシャアとイチカが現れたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 そんな最中、ロンド・ベル隊では中破したリ・ガズィを直していたアストナージはせめて、ソロモンで製造されたブルーローズシリーズがあれば戦力的にマシになるだろと思いながらも、アナハイムとの裏取り引きで製造中の機体が早く届く事を願っていた。しかし、連邦上層部は量産型のジェガンを元に改良された生産数の少ないスタークジェガンを使用させる気は一切ないらしい。

 

 「アクシズが国として独立したんなら、手を出さきゃ良いのに…」

 

 「憲兵に聞かれたら捕まるぞ、アストナージ」

 

 「アムロ大尉!?」

 

 「修理状況はどうだ?」

 

 「吹き飛ばされた脚は修理のしようが無いですよ。まともな補給が在るなら別ですがね…」

 

 「やはり、ソロモンに向かうのは無理か…」

 

 「魔の巣窟に向かうなんて無茶ですよ!?」

 

 アストナージは慌てるのは無理も無い。

 

 ソロモンにはハマーンやエース級のパイロットもおり、防衛用のモビルスーツも未だに旧式にすらならない量産型のブラックローズⅡやアナハイム社製のギラ・ドーガ改が配備され、シャアの手加減によりブラックローズⅡより低性能のアナハイムの量産機ギラ・ドーガですらジェガンやジムⅢが苦戦を強いられた事実から慌てるのも無理は無い。

 

 それに、イチカ准将が初戦の前線で暴れたせいもあり、ロンド・ベル隊のジェガンとジムⅢは既に過半数のモビルスーツを失った状態だった。

 

 それでも、連邦上層部はソロモンを攻略しろと言う。

 

 無茶にも程があるとアストナージとアムロは思う。

 

 「いっその事、アクシズに投降するかアストナージ?」

 

 「そうしたら、アムロ大尉の二人の奥さんが連邦に殺されますぜ?」

 

 「アナハイムに居るチェーンはともかく、ベルトーチカなら自力でロンドンから脱出するだろうさ」

 

 二人はそんな会話をしながらも、一向に直らないリ・ガズィを見ながら溜息を吐くのだった。

 

 

 

 アクシズに舞台は戻り、シャアは次の目標であるロンド・ベル艦隊の別働艦隊であるネェル・アーガマの奇襲作戦を立案する。無論、鈴達が偶然にも見た艦隊だとシャアは付け加える。

 

 「イチカ、戦力は判るの?」

 

 「あぁ、レズン少尉、説明を頼む」

 

 「監視した限りでは、別働艦隊の主力モビルスーツはジェガン改が4機と残りはジェガンですが、未確認の情報ですとZⅡが2機とゼータプラスが数機存在している可能性があります」

 

 「寄りによって、ゼータ系列の機体か…」

 

 カミーユは呟きながらも、まさか自分が設計した機体が使われた事にショックを受けながらも、カミーユの手で撃墜すると固く誓うのだった。

 

 無論、ゼータ系列のモビルスーツを使うのは、鈴のスペリオルガンダムと自身のゼータガンダムだった。

 

 そして、ハマーンからの命令によりアン達もムサカが一隻与えられ、イチカを隊長にアンとシャロに鈴とカミーユにイリアの6人を一つの部隊とし、クィン・マンサはムサカの格納庫には収容出来ない大きさの理由からクロエのFAZZへと変更し、クロエはムサカにてイチカ達のサポートへと回ったのだ。

 

 

 イチカ達を載せたムサカ級ミョウコウは、同級のナチとハグロにアシガラを引き連れソロモンから出撃したのだった。

 

 「イチカ閣下、この先の進路でシャトルが襲撃されているようです」

 

 「機種と数は判るか?」

 

 「機種は旧ティターンズのハイザックが4機とジム・コマンドが2機ですな」

 

 「残党か海賊だな…」

 

 イチカの読みは正しく、ティターンズ兵が宇宙海賊となった者達だった。ハイザックは辛うじて現役に使うのは厳しいが、ジム・コマンドは流石に骨董品だろうとイチカは思う。しかし、ジム・コマンドが装備するバズーカの威力はシャトルを撃墜し兼ねないとイチカは考える。

 

 「シャロ、狙撃出来るか?」

 

 「イチカ愚問ね」

 

 「鈴、狙撃後にスペリオルガンダムのブースターユニットなら先行して叩けるか?」

 

 「当然、行けるわよ。スペリオルガンダムの機動力ならね」

 

 「アンは鈴のスペリオルガンダムに掴まり移動、カミーユはウェイブライダーモードで向かってくれ。現地到着次第、モビルスーツの排除とシャトルの護衛に当たってくれ」

 

 「「「「「了解!!」」」」」

 

 作戦が決まり、ロングレンジスナイパーライフルを装備したシャロのブラックローズⅡが射出され展開すると、アンとカミーユに鈴のブラックローズⅡとスペリオルガンダムブースターユニットとウェイブライダーモードのゼータガンダムが続いて射出される。そして、最後にイリアのFAZZがシャロの直庵として射出され出撃したのだった。無論、俺もブルーローズMK-Ⅱを駆り出撃するが、カミーユ機のゼータガンダムのウェイブライダーの背中へと乗り移動したのだった。

 

 先行したシャロとイリアは狙撃ポイントに到着し、ロングレンジスナイパーライフルを構えながらハイパーバズーカを装備するジム・コマンドへと狙い定める。

 

 「先ずは、シャトルの真上の機体から…」

 

 「周囲敵影なしよ」

 

 「了解…今だ!」

 

 シャロはシャトルの真上のジム・コマンドへと狙撃をし、ジム・コマンドはコクピットへと狙撃され四散する。無論、もう1機のジム・コマンドにも狙撃しながら撃破する。

 

 「あたしの出番ね!!」

 

 「行くわよ!!」

 

 「カミーユ、右のハイザックは任せた!!」

 

 「了解!!」

 

 鈴のスペリオルガンダムブースターユニットから離れたアンのブラックローズⅡの2機はハイザックへと向かい、鈴はメガビームスマートガンを放ちハイザックをビームで貫き撃破し、アンはスラスターを全開にハイザックの懐へと入りながらショットランサーを放ちコクピットへと突き刺し撃破する。無論、イチカのブルーローズMK-Ⅱとカミーユのゼータガンダムはそれぞれのハイザックを撃破し、シャトルを保護に成功したのだった。

 

 「あれが、イチカ大佐の…」

 

 シャトルの乗客の水色でツインテールの髪型一人の少女は、蒼と白で染められたブルーローズMK-Ⅱと三つ巴の戦いの時に撮られたロールアウトして間もない頃のブルーローズMK-Ⅱのスナップ写真を握り締めながら頬を赤く染め、見詰めていたのだった。

 

 無論、イチカは昇格して現在は准将だが、少女は三つ巴の戦いの時の大佐の階級しか知らない。

 

 「運命の出会いになると良いなぁ…」

 

 だが、彼女は知らない。

 

 イチカの妻子の存在は意外と有名な話なのだが、インドで籠もって修行してたが為に憧れのイチカ准将には妻子の存在がある事に。

 

 そして、正妻の鈴は知らない。

 

 一目惚れした少女の暴走に頭を抱える事になり、妻達であるアンやシャロにイリアと一緒に胃が痛くなるとは誰が予想しただろうかと。

 

 正妻の鈴とその少女の生涯に懸けて凄まじい攻防が始まるとは誰も予想はして居なかった。

 



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少女の名前は

 

 

 シャトルを救出後、アンとシャロが周囲警戒をしつつイリアがシャトルの被害状況を確認するが、メインスラスターが海賊により破壊されていて自力飛行が不可能とイリアは判断する。

 

 しかし、俺達は合流段階とも言えたネェル・アーガマ撃沈並びに合流艦隊への襲撃となる為、なるべくなら一般人をムサカへとは収容は避けたい方向だった。

 

 「イチカ、乗客と乗組員の合計人数は32人だけど、作戦の情報漏洩の観点から収容は避けたいわね」

 

 「う〜ん、メインスラスターがやられてるから自力飛行は不可能なんだろ。なら、人道的に収容するしか無いし、最悪なら作戦終了までは会議室に監禁するしか無いな」

 

 「それしか無いわね…」

 

 やはり、隊長と副隊長とも言える二人の会話にイリアも納得しつつも、海賊に追われた上に通常航路から離れた宙域では他からの救援は不可能だし、もしこの戦闘がアクシズと連邦の戦闘のど真ん中だったらと思うと背筋にヒヤリと冷たい汗が流れる。

 

 結局、シャトルの乗員全員が旗艦でムサカ級のミョウコウへと収容となる。ミョウコウを横付けし、伸縮式通路が乗組員の昇降口からシャトルのハッチへと伸びてドッキングするとノーマルスーツを着た作業員達が内部が安全かどうかと確認した後に乗員の移動が始まる。

 

 「ほら、名簿への記入を済ましたら会議室へ向かいなさい!!」

 

 昇降口から少し入った所で、アンが乗員名簿に記入する様に案内しながらも各通路に繋がる通路には拳銃装備のクルーが二人一組となり、会議室までの通路まで監視しながら立っていた。

 

 無論、ミョウコウは軍艦なので機密だってあるし、モビルスーツデッキや機関室にブリッジなどには間違っても入れてはいけない。

 

 だが、指示に従いながら会議室へと向かう乗員達に安堵しながらアンが居る場所で記入されただろう名簿を取りに向かった所で一人の少女に出会う。

 

 「あっ、イチカ大佐だ!!」

 

 「アッ、待ちなさい!!」

 

 「えっ!?」

 

 アンの静止を振り切り、少女は通路の奥から来た俺へと無重力状態の廊下を蹴り、浮遊する様に進みながら抱き付いたのだった。そして、耳打ちする様に少女は言う。

 

 「やっと、会えたね。ここがイチカ大佐の精神世界なのは、ニュータイプの波動から知ってるから向こうで会ったら逃さないからね♪」

 

 チュッ

 

 「マジか……」

 

 「私はクェス・パラヤだから!!」

 

 少女は俺の頬にキスをして、そのまま離れて自分の名前を叫びながら会議室へと向かう。ただ、現場を目撃していたアンはこめかみに青筋をくっきりと浮かべ、腰に両手に宛てながら立っていたのだった。

 

 「さて、イチカ?」

 

 「ごめんなさい!!」

 

 無論、アンにジャンピング土下座をして謝ったのは言うまでもなく、アンにも少女がニュータイプだと教えたのだが『夜は覚悟しなさい』と言い放ち、イチカは医務室に向かいながら、この世界と俺の世界では発売され男性の夜の味方だと謳われており、イチカも愛用している束さん謹製『夜はビンビン君』と言う強力な精力剤を貰いに行ったのは言うまでもない。

 

 

 

 クェスと俺の出会いとの後、クェスを呼び出した鈴と自室にて話していた。

 

 「へぇ、キミがイチカ大佐の奥さんなんだ…」

 

 「一夏の妻で悪い? あたしの方が年上なんだから言葉遣いには気を付けなさい。で、アンタは一夏に何の用かしら?」

 

 へぇ、これがイチカ大佐の奥さんなんだと思いながらも彼女から感じるのは、激情すら感じるニュータイプの波動と彼女を怒らせてはイケないと凄まじいプレッシャーを感じていたけど、逆に味方になら心強い味方になるだろ。無論、イチカから言われているだろうが、私は偶然にも自分の意識を飛ばしてしまい、この世界であるイチカの精神世界と未来の自分の精神へと飛ばしてしまった。

 

 それに、幾らか時間軸がズレたと言えどもアクシズとネオ・ジオンとティターンズによる三つ巴の戦い直後のイチカなら、あの連邦軍のコロニーへの核攻撃での悲劇となった『血のバレンタイン』を回避してくれるだろうし、私の16歳での誕生日に両親が死ななくて済む未来が欲しかったのだ。

 

 まだ、現実世界では15歳での小娘でしか無いが、未来の私の記憶にあった『血のバレンタイン』での最中にコロニー群からの食料輸入についてアクシズのマレーネ・カーン外務次官と外務次官だった父親との外務次官同士での話し合いの最中に両親の死は衝撃的だった事実に気が狂いそうにもなった。

 

 その為なら私は、イチカを愛しても構わないと思ってしまったとは目の前の鈴さんには言えないのだ。

 

 そんな打算的な想いなど、鈴さんが許す筈は無いのだから…

 

 なら、実績を作って認めて貰うしか無い。

 

 中身が15の小娘でも、やるしか無いのだ。

 

 そんな風に考えていたら黙って居たらしく、鈴さんのこめかみには青筋が何本も浮き上がりかなりご立腹だと判る。無論、イチカ大佐に何かご用意と聞かれたら、現実世界へと戻る為に手伝うと言う。

 

 「アンタ、まさか…」

 

 「まだ、黙っていて下さい」

 

 「はぁ、信じられないけど仕方ないわね。

 

 あたしも大尉待遇だから、古めかしい手だけど志願兵としてあたしの側付きの側近として書類を一夏に出して置くわよ」

 

 私は最大の協力者の鈴さんと手を組んだ瞬間だった。

 

 

 書類は通り、私は少尉待遇で鈴音大尉の側付きの側近として迎えられ、シャーロット中佐機の予備機であるブラックローズⅡを急遽組み立てられて受領するが、パイロットになる為の訓練をシャーロット中佐から受ける事になる。彼女が教官だったのもあり厳しくもあったのだが、鈴さんの協力により第一段階とも言えた基本的操縦は覚えられたりしていた。

 

 「クェスは艦内待機よ」

 

 「えっ?」

 

 ネェル・アーガマの発見の後に鈴さんから言われたのは艦内待機だった。イチカ大佐の部隊は少数精鋭で襲撃をするらしく、シャーロット中佐の教練での合格がギリギリな結果ではモビルスーツ戦闘での最中で対艦攻撃には出せないとの判断だった。

 

 そして、艦内待機となってモビルスーツデッキを散策中に銀髪で黄金色の瞳をする同世代の少女と出会う。

 

 「貴女は…」

 

 「はじめましてクェス様。私はクロエでございます」

 

 ただ、彼女から感じたのは表情は乏しいけど、何か機械的な波動を感じるのは何故と想いながらも、組み立てられた私のブラックローズⅡを丁寧に整備する姿は美しい少女そのものだった。

 

 無論、クロエさんも私の正体を知っているらしく、束大尉と言う大天災といわれる人物にはISコアを通じて連絡して確認したらしく例の黒い穴の発生条件まで解析が終えているらしい。

 

 「はい、イチカ様の救出が完了次第、ムサシに搭載した縮退式次元湾曲装置による宇宙世紀への帰還を予定しているとの事です」

 

 つまり、私の両親の死が回避される意味となるのだった。

 

 

 

 同じ頃、ネェル・アーガマのレーダーにはアクシズからのモビルスーツ隊を捉え、レーダー担当の女性士官が叫びながら報告していた。無論、ネェル・アーガマの他にはクラップ級8隻とサラミス改級6隻が集結していたが、ロンド・ベル隊本隊への補給用モビルスーツのジェガンとパイロットをセットに積んだコロンブス改も3隻が待機していた。

 

 「モビルスーツの熱源感知!!

 

 機種は…ブルーローズシリーズの機体だと思われます!!」

 

 「くっ、艦隊が集まっている最中に!!」

 

 ネェル・アーガマの艦長である男性は、各サイドから集めたソロモン攻略艦隊の集結の最中でのアクシズからのモビルスーツ隊の発見に驚きが隠せない。だが、クラップ級数隻からはアクシズのモビルスーツ隊発見の報告に慌てたらしく、ジェガンとジムⅢが次々とクラップとサラミス改から吐き出される。

 

 「艦長!!

 

 機種はブルーローズMK-ⅡとブラックローズⅡが2機で、ブラックローズⅡの仕様はオリムラ中隊仕様です!!」

 

 最悪とも言える報告に艦長は帽子を深く被り、何かを悟った様に艦長席を深く座る。そして、クラップとサラミス改から出撃した迎撃のモビルスーツ隊は、イチカのブルーローズMK-Ⅱにビームサーベルで斬り裂かれたり、アンとシャロのブラックローズⅡの機動力に翻弄されながらショットランサーのランスに串刺しにされ数を減らして行き、カミーユ機のゼータガンダムから放たれたハイパーメガランチャーとイリアのFAZZから放たれたハイメガビームキャノンにExユニット装備のEx-Sガンダムから放たれたメガビームスマートガンにより、クラップ2隻とサラミス改がブリッジを直撃して四散する。

 

 そして、ネェル・アーガマからもZⅡやゼータプラスが率いるジェガン隊も出撃するが被害が増えるだけだった。

 

 

 

 「デカいだけなの!!」

 

 「消えた⁉

 

 何処だ!!」

 

 「さっさと落ちろ!!」

 

 母艦を護衛するジェガンの視界の死角から懐へと入り、アンのブラックローズⅡはショットランサーを構えコクピットを突き刺しながら、ハイパーメガビームランチャーを展開して、弾幕を張るクラップのブリッジへと狙いを定めて放ち、ブリッジを吹き飛ばしながらクラップを撃沈する。

 

 「全く、温い弾幕ね!!」

 

 「敵機、ブリッジ上におりt…ギャァァァァ!?」

 

 無論、艦隊へと突入したシャロのブラックローズⅡもヘヴィマシンガンを放ちジムⅢを蜂の巣にしながら弾幕を張るサラミス改へと襲撃し、弾幕を躱して行きながらブリッジの前上に降り立つとヘヴィマシンガンをブリッジへ放ち、中のクルー達をズタズタにしながらブリッジを破壊するが、穴だらけとなったブリッジからは大量の血液や人だった物が宇宙空間へと吸い出され、破壊したシャロ本人ですらブリッジ内部の惨状に顔を顰めるがトドメに腰のラックから装備したビームライフルをブリッジに放ち完全に破壊したのだった。

 

 ロンド・ベル隊別働艦隊への襲撃は続き、ネェル・アーガマはモビルスーツ隊を全て失くし大破しながらも戦線から離脱には成功するが、集結中だった艦隊は作戦参加が不可能な程に撃沈または撃破されてしまい、イチカ達が撤退した後には全滅して破壊されたモビルスーツ隊の残骸が漂いながら、航行不能となったクラップ級2隻は艦を放棄して脱出する以外は道が無かったのだった。

 

 集結艦隊の壊滅の報告を聞いたロンド・ベル本隊は、完成したと報告にあった新型のニュータイプ専用のモビルスーツを受領をさせにアムロをアンマンのアナハイムへと派遣したのだった。



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Hi-νガンダムの完成

 

 

 ロンド・ベル隊本隊のラー・カイラムからアンマンのアナハイムへと出向したアムロは小型のシャトルに乗り向かっていた。

 

 三つ巴の戦いでは、アクシズとエゥーゴへのモビルスーツの生産と供給をソロモンの工廠に次いで多くを手掛けて来た実績があるのがアンマンのアナハイムの製造工場だった。

  

 今現在でも、アクシズ所属のモビルスーツ全体の4割と主力艦船はアナハイムが製造しているが、残りの6割は奪還したア・バオア・クー工廠とソロモン工廠が担い、特にソロモン工廠で製造されるブルーローズ系列のモビルスーツでブラックローズⅡとブルーローズMK-Ⅱは、アナハイムが超小型で高出力のジェネレーターが未だに開発と製造が出来ない理由からソロモンのみの製造である。

 

 たが、アナハイムも一枚岩ではなく、三つ巴の戦いの最中に旧連邦派閥のオサリバン常務の独断により連邦に裏取り引きを持ちかけて行い、グラナダとフォン・ブラウンへ連邦が攻撃をしない代わりにゼータ系列とメタス系列のモビルスーツの設計図やデータを連邦へと横流しされた事から、ハマーンは束大尉がもたらした最新技術のサイコフレーム技術がアナハイムへと流れない様に警戒していたが、ティターンズとの戦いでの序盤にアンマンに入港した際、リリーマルレーンの搭載機だったブルーローズ改の稼働データとサイコフレーム技術が流出したらしいと戦後処理中のハマーンの屋敷に訪れた産休中だった技術最高副顧問のニナ・ガトー大尉は、コウ・ウラキ中尉の奥さんでありフォン・ブラウンのアナハイムでは設計技士の彼女を通じて入手したアナハイムの内部調査の結果をハマーンへと報告していた。

 

 無論、アクシズでは既に旧式のゼータ系列とメタス系列の漏洩ぐらいならと上層部は問題視はしていないが、束大尉がもたらしたサイコフレーム技術と超小型で高出力のジェネレーターの製造技術だけは別の問題だとなり、ハマーンの命令により派遣されたアクシズの特殊部隊のサイクロプス隊は身辺調査を行い漏洩した事実を掴んだ上で、フォン・ブラウンのレストランから帰宅中のオサリバン常務を拉致した後に度数の高い酒を大量に飲ませて泥酔状態にした後、オサリバン常務を自家用車に乗せた上で車を発進させて飲酒運転での事故を装い暗殺したのだった。

 

 漏洩した事実に、まさかだと思いながらも念には念を入れたハマーンは、アンマンのアナハイムへの監査を自ら赴き行ったが、サイコフレーム技術を用いての開発中のモビルスーツの発見には至らず、サイコフレーム技術で開発中のモビルスーツはグラナダのアナハイムの工場に移された上に幾重にも隠蔽される様に開発が続けられた後にνガンダムが三つ巴の大戦末期の終戦を直前に完成しロールアウトする。

 

 自ら設計し完成の知らせを受け、ヒッコリーから宇宙に上がりグラナダへと向かったアムロ大尉が自らテストパイロットを行い開発と改良が続き、大量のデータを持参しながらアンマンに再び戻ったアムロは、νガンダムを改良発展させて開発されたHi-νガンダムが完成したのだった。

 

 「これが、Hi-νガンダムか?」

 

 「はい、アムロ大尉」

 

 Hi-νガンダムの完成に嬉しそうにしながら答える女性は、アムロ大尉の妻の一人でもありグラナダのアナハイムの技士だったが、アムロとの出来婚を機に連邦の技士となったチェーン・レイ中尉だった。だが、アムロはイチカのブルーローズMK-Ⅱとリ・ガズィで戦い惨敗しており、ブルーローズMK-Ⅱの出鱈目な高性能ぶりを目の当たりしており表情を曇らせる。

 

 この機体でブルーローズMK-Ⅱに本当に勝てるのだろうかと…

 

 「アムロ大尉なら大丈夫ですよ」

 

 「チェーン…」

 

 チェーンの一言に救われた気がする。だからこそ、あの機体には負けてはいけない気がしたのだった。

 

 「直ぐに行けるか?」

 

 「はい、調整済ですので何時でも大丈夫ですよ」

 

 アムロは全装備をさせたHi-νガンダムのコクピットへと乗り込み、ラー・カイラムとの合流地点である宙域へとベースジャバーに乗りアンマンのアナハイムから出撃したのだった。無論、専任技士であり妻のチェーンは、待機させてあるクラップ級にHi-νガンダム専用のフルアーマーパーツであるH・W・S(ヘヴィーウェポンシステム)やリ・カズィの修理用パーツに加え、宇宙要塞アクシズから戦後にアクシズが回収してアナハイムに解析を依頼されて格納庫に保存されていたガンダムMK-Ⅴをケーラ専用に搭載してアムロを追ったのだった。

 

 

 

 

 一方、ネェル・アーガマは大破させたが逃した代わりにソロモン攻略艦隊を壊滅させた後、イチカ達の乗せたムサカ級のミョウコウ率いるアクシズ艦隊はレズン少尉からの緊急通信によりラー・カイラムの発見の知らせを受け急行する。

 

 「まさか、本隊まで見付けるとはな…」

 

 「全く、幸運なのか不幸なの分らないレズンよね…」

 

 レズンからの報告にシャロはレズンの不幸体質を呪いながらもラー・カイラムの艦長の正体を知り、台湾の宇宙港で殴っとけば良かったと後悔している最中にカミーユが現れる。

 

 「イチカ隊長、ラー・カイラムの艦長はブライトさんなんですか?」

 

 「カミーユは助けられた義理があるからやり辛いか?」

 

 「いえ、大丈夫ですよ。

 

 ただ、俺はコロニーに核攻撃した連邦に与するのが怒りすら感じますよ」

 

 「カミーユ、イチカの精神世界だからって遠慮は要らないわよ」

 

 「アンさん、それくらい理解してますよ」

 

 カミーユは、何故アクシズに残らずに連邦に戻ったブライトに怒りを感じながらも大丈夫だと答えてはいるが、イチカとアンからしたら悩んでいるにしか見えない。

 

 「一応、シャロがレズンに先走るなと釘は刺したけど大丈夫かな?」

 

 「まぁ、レズンの性格からやるだろうな…」

 

 「一夏、あたしとカミーユで先行してレズンの部隊に向かう?」

 

 「スペリオルとゼータか…なら、鈴はブースターユニットで向かうのか?」

 

 「ブースターユニットが妥当だけど、今回だけはEXユニット用の胸部の追加装甲のIフィールド発生装置だけは着けるわ」

 

 「カミーユも行けるか?」

 

 「イチカ隊長、行きますよ」

 

 「じゃあ、鈴とカミーユはレズン隊へ救援に向かってくれ」 

 

 イチカの命令により、鈴のスペリオルガンダムブースターユニットとゼータガンダムがミョウコウから射出されて一路レズン隊へと向かったのだ。

 

 

 ラー・カイラムを発見したレズンは、教官だったシャロから釘を刺されて手出し出来ない事にイライラしていたが、ギラ・ドーガ改とギラ・ドーガだけではラー・カイラムを撃沈するだけの火力が無いのは理解していた。

 

 無論、ロンド・ベル隊本隊だけにラー・カイラム以外にクラップ級も数隻居るのも見えており、初戦でイチカ准将がかなりの数のジェガンとジムⅢを撃墜したとは言え、油断出来ないジェガンの数があるだろうと推測していた。

 

 「ちぃ、手出しが出来ないなんてね…」

 

 「待機ですか隊長?」

 

 「あぁ、増援で2機が急行しているらしい」

 

 「まさか、機動力のあるゼータガンダムとスペリオルガンダムですか?」

 

 「あの距離から来るんじゃ、その2機だろうね」

 

 3機で一個小隊の4個小隊12機のギラ・ドーガ隊が岩礁から覗きながら待機するが、対艦攻撃を実施するならブラックローズⅡくらいの機動力と火力がある機体が欲しいが、ギラ・ドーガ隊のパイロット達では量産型のブラックローズⅡを扱うには専用試験を突破する必要があり、レズンを除いた隊員達は専用試験に落ちていたのもあり、実戦経験の乏しい若手に対艦攻撃を求めるのも酷だと言えた。

 

 勿論、独立戦争と三つ巴の戦いを生き残りソロモン防衛部隊やアクシズ艦隊の本隊に所属した連中ならとレズンは思う。

 

 

 そんな最中、ロンド・ベル隊本隊からモビルスーツ隊が緊急出撃している事に気付いたが、二条のビームが出撃準備でカタパルトに接続された2機のジェガンへと直撃して四散する。

 

 「来たみたいだね」

 

 レズンがレーダーを確認すると、2つの光点からカミーユと鈴の機体が来た事に気付き、二条のビームを放ったのは鈴のスペリオルガンダムブースターユニットのビームカノンだった。

 

 『レズン隊は、あたしに着いて来なさい!!』

 

 『鈴音大尉、了解!!』

 

 スペリオルガンダムブースターユニットが加速しながらロンド・ベル本隊の輪陣形を組み対空射撃を行いながらも迎撃のモビルスーツ隊が出撃する。その最中にカミーユのゼータガンダムがウェーブライダー形態でクラップ級ラー・チャターのカタパルトに繋がれたジェガンへと肉迫しながらビームガンを放ち、ラー・チャターのブリッジの真上へと離脱するが、放ったビームガンはジェガンのビームコート仕様のシールドで防がれたのだ。

 

 「ビームの威力が足りないなら、これなら!!」

 

 しかし、ゼータガンダムは離脱しながら可変してモビルスーツ形態になると反転してハイパーメガランチャーを構え、ラー・チャターのカタパルトで対空射撃を行うジェガンへと放ち、ビームはジェガンを呑み込みながらカタパルトを貫きながら艦底を抜けて行きラー・チャターは大破するが対空射撃を継続する。

 

 「くっ、一度離脱するしか無い」

 

 カミーユも凄まじい弾幕から逃れる為にゼータは可変して一度離脱する。だが、鈴のEX用の胸部パーツを着けたスペリオルガンダムブースターユニットはIフィールドを展開してジェガンや対空レーザーのビームを弾きながら輪陣形内へと入り、ALICEと朱雀に火器管制を任せながらビームカノンやメガビームスマートガンを乱射して暴れ回りジェガンを火球へと変える。

 

 「全く、そこの対空射撃がうざいわよ!!」

 

 鈴が叫びながら放ったメガビームスマートガンはクラップ級の大破しながらも対空射撃を行うラー・チャターのブリッジを破壊して撃沈する。

 

 「ちぃ、アムロ大尉が居ない時に!!」

 

 「ビームなんて、無駄!!」

 

 「Iフィールドだと!?」

 

 ビームライフルを放ちながら鈴のスペリオルガンダムブースターユニットへと肉迫するジェガンはロンド・ベル隊のジェガン隊隊長のケーラ・スーだった。

 

 「このジェガン、やるわね!?」

 

 「なら、ミサイルランチャーなら!!」

 

 「じっ、実弾兵器!?」

 

  ケーラが乗るジェガンのシールドに装備された四連のミサイルランチャーを放つが、鈴はビームサーベルを抜きミサイルを斬り払う。しかし、ミサイルは囮でビームサーベルを抜いたジェガンがスペリオルガンダムブースターユニットへと肉迫するが、鈴はフットペダルを踏み込み脚部の熱核ロケットで加速し離脱する。

 

 「ジェガンだとキツイ!?」

 

 「コイツ、ベテランなの!?」

 

 離脱しながらもジェガンで食い付かれた事に鈴はジェガンのパイロットがベテランだと気付き、四連メガビームカノンを放ち躱した隙を狙い再度、ジェガンから距離を取る。

 

 「機動性はガンダムが有利か!?」

 

 「スペリオルガンダムじゃ無かったら殺られてたわよ!?」

 

 鈴はギリギリのラインで援護射撃してくるロンド・ベル隊の艦隊からの対空レーザーを弾くか躱すかしながら一度輪陣形から離脱した瞬間、遠方から放たれたビームがスペリオルガンダムブースターユニットへと直撃するが展開していたIフィールドのお陰でビームを弾く。

 

 「えっ、何処から!?」

 

 『ちぃ、ビームを弾いたのか!?』

 

 「まさか、この威力って!?」

 

 だが、脳内に稲妻が走る感覚から第二波のビームに気付いた鈴はスラスターを全力で吹かして躱すと自分が居た場合にはブラックローズⅡのハイパーメガビームランチャーと同等の威力のビームが横切る。しかし、射線上に居た数機の味方のギラ・ドーガは呑み込まれた後にバラバラになりながら四散したのだ。

 

 そして、ハイパーメガビームランチャーを装備し構えたHi-νガンダムが現れ、鈴は初めて感じるアムロのニュータイプの波動を感じ取り勝てないと瞬時に悟るのだった。

 

 『彼女もニュータイプなのか!?』

 

 「カミーユ、レズン、ここは引くわよ!!」

 

 鈴は叫び時限タイマー式のグレードを投げながら離脱を測り、生き残ったレズン隊のギラ・ドーガを引き連れて撤退し、レズンはカミーユのウェーブライダー形態のゼータガンダムの背中へと乗り離脱する。アムロはスペリオルガンダムが厄介だと思い、ハイパーメガビームランチャーを構えたが鈴からの置き土産のフラッシュグレードが炸裂して視界を奪われたが、視界が回復した時にはアクシズのモビルスーツ隊は撤退していたのだった。

 

 

 

 



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ソロモンでの決戦 前編

 

 

 俺達の母艦であるミョウコウに撤退した鈴達の機体が傷だらけだった事に不安になった一夏だったが、コクピットから降りて来た鈴の無事な姿に安堵しながら抱き締め、あたしやシャロ達の人目に関わらずに鈴とキスする姿に羨ましいとは思いながらも鈴が無事だった事には変わらない。

 

 「鈴、そんなにイチカとイチャ付くなら一緒に寝る順番を飛ばすわよ?」

 

 「アンだってズルいわよ!!

 

 あたしが入浴している間に一夏を搾るだけ搾り取ってフニャフニャにして、あたしが満足出来なくて悶々としたの判ってるわけ!!」

 

 「アンも鈴も喧嘩はね?」

 

 「シャロはアンと同罪なんだから黙ってなさい!!」

 

 妻三人よるヘッドで誰が一緒に寝るのかと揉める姿にイチカは死んだ魚の眼をしながら観ており、カミーユは三人の生々しい痴話喧嘩を見ながら、未だに夜の猛獣化していないファとフォウに内心は安堵してはいるが、当の本人である二人から秘密裏に束大尉謹製の精力剤を寝る前に必ず飲む水に混入させられているとは気付かず、既に二人が猛獣化しているとは知らない子羊なカミーユだった。

 

 そして、イチカは痴話喧嘩が続く三人を放置と決めて自室へと戻るのだが、とんでもない伏兵がいるとは知らないイチカと妻達だった。

 

 無論、妻の一人のイリアはモビルスーツデッキからFAZZのエネルギー効率の調整をクロエとしながら見てチャンスだと思い、夜にイチカの部屋へと向かったが部屋の鍵が施錠されていて部屋に入れず、イチカの部屋に入ることが叶わずに居た妻達4人は悶々とした夜を各自の部屋で過ごしたのは言うまでもない。

 

 そして、翌日。

 

 「フッワァァァァ…久しぶりに熟睡できたな…って!?」

 

 「すぅ…すぅ…すぅ…」

 

 「へっ?」

 

 久しぶりにベッドで熟睡出来たと喜ぶイチカだったが、自身の隣には全裸で俺の腕を抱き枕に気持ち良さそうに眠る水色の髪をした少女がおり、股の辺りのシーツに赤い染みがある事からイチカは頭が混乱しながら考え込むが一切の心当たりがない。それもそうで、眠る前に飲んだ水には睡眠薬が入っておりクェス本人がイチカが睡眠薬を飲んで熟睡したチャンスを活かして夜這いを仕掛けたのだから当然である。

 

 イチカも、この状況を鈴達に発見され叱られるのを怖れて素早く着替えた後に自室から逃げ出すが、食堂へと向かう途中で開けっ放しのイチカの部屋の扉に疑問を持ったイリアが開けっ放しのイチカの自室に入り全裸でイチカのベッドに眠るクェスを発見して怒りの絶叫する。

 

 「私も一緒に寝られなくて夜は悶々としたのに、この糞ガキィィィィ!!」

 

 「!?」

 

 「クェス、待ちなさい!!」

 

 「あっ、ヤバい!?」

 

 「修正してやるから逃げるなァァァァ!!」

  

 「般若が出たんだけど!?」

 

 「誰が般若だァァァ!!」

 

 イリアの怒りの絶叫に飛び起きる様に眼を覚ましたクェスは、ベッドを前に般若の如く怒り狂うイリアの表情に真っ青にしながら、自身が脱ぎ捨てた衣服すら持たずにイチカの部屋から全裸のまま逃げ出すが、イリアの専用機のブルーローズMK-Ⅱの拡張領域に仕舞ってある対人捕獲用のネットランチャーを展開して逃げ出した方へとぶっ放すがクェスもニュータイプである事に加えてインドでは山中を修行して走り回った経験から、アンが起きて部屋から出るタイミングを狙い廊下を蹴り天井へと跳ぶと、アンがイリアの怒りの絶叫から覚めて扉から出た所で顔面を踏み台にしながら廊下へと蹴り出し、アンがクェスの代わりにネットに絡み捕獲される。

 

 「ムニャァァァ…イリア、朝からうるsグッェ!?」

 

 「あっ、アンさんを踏み台に!?」

 

 「あばよ!!とっつァァァァん!!」

 

 「誰がとっつぁんだ!!

 

 って、あっ…やば…」

 

 「いてて…イリア、あたしを捕獲とは良い度胸じゃない?」

 

 とある怪盗三世の様に叫びながら逃げ出したクェスを尻目にしながらも、ネットに絡まって情けない姿を晒したアンはジト目でイリアを睨みながら額に青筋を浮かべていた。無論、ネットから救出した後にアンがイリアへと拳骨を落としたのは言うまでもないが、クェスに踏み台にされた事に怒り心頭となりイリアと一緒に追う事になる。

 

 一方、イリアから逃げ出す事に成功したクェスは自分の部屋に一時的に逃げ込み着替えてからは、鈴の部屋へと向かうがアンとイリアに待ち伏せされているなど予想すらして無かった。

 

 「っつ!?」

 

 「「捕まえたわよ!!って、アレ?」」

 

 鈴の部屋に入ろうとした瞬間、アンとイリアの二人の波動を感じたクェスは扉を開けながらも後ろへと飛んだ瞬間、中からアンとイリアがクェスを捕まえる為に飛び出したが空振りに終わる。

 

 「クェス、待ちなさい」

 

 「つっ!?」

 

 しかし、『待ちなさい』と言われ鈴の怒りの波動を諸に受けてしまいクェスは動けなくなり鈴に捕まる。暫く鈴からのお説教を受けた上で精神世界だと理由で鈴から釈放されたが、現実世界でこんなことをしたら許さないと一言付け加えられてクェスは首を縦に振り鈴から赦されたのだった。

 

 

 妻達とクェスの朝の騒ぎから一変してソロモンに帰還を果たしたイチカ達だったが、鈴とイリアにカミーユはソロモンの工廠に呼ばれており、鈴はブラックローズⅡを受領しカミーユとイリアもブルーローズMK-Ⅱを受領する予定だったが、鈴だけが機種変更訓練の時間が無い事を理由にブラックローズⅡの受領を拒絶したのだった。

 

 アクシズのソロモンの防衛網も厳重に敷かれた状態となるのだが、月面ルートは補給物資の輸送により開かれたままであり、アナハイムからの幾隻の補給艦が艦隊を組みながらソロモンへと搬入される光景は異様な空気すら感じるのだった。

 

  

 

 同じ頃の連邦軍は、戦後に返還されたジャブロー基地から二十隻の艦艇が打ち上げられているが、ソロモンへと増援として向かうがロンド・ベル隊の攻撃に間に合うのか微妙なラインでありブライトは期待していなかった。

 

 「ブライト、残った艦隊でやるのか?」

 

 「…やるしか無いだろうな」

 

 ブライトはソロモンへの攻撃に疑問を抱きながらも、篠ノ之束博士がイチカの愛娘達を護る為だけに残した三つ巴の戦いの時のソロモン防衛用の衛星や監視衛星がある事を思い出すとジェガンで躱して行きながら掻い潜れるのか不安になるのだった。

 

 

 ブルーローズMK-Ⅱを受領したカミーユとイリアは、イチカを相手に模擬訓練を実施していた。無論、ニュータイプ専用機に改修されたブラックローズⅡを受領したギュネイとクェスも強制参加となり、一対四での模擬戦だがギュネイとクェスはペイント塗れと成りながらもイチカを追う。

 

 「大佐、強過ぎる…」

 

 「これでは!?」

 

 「ギュネイ、クェス前に出過ぎだ!!」

 

 カミーユが怒鳴り二人を注意するのだが、イリアがイチカを足止めしようとファンネルを展開しながら隙を作ろうと奮闘するのだが、ビームシールドに防がれ隙すら作れないのだ。

 

 「ほれ、隙だらけだ!!」

 

 「うぇぇ、あたしの攻撃が当たらない!?」

 

 「私を舐めてもらっては困るぞ!!」

 

 別の場所でも、純白のブルーローズMK-Ⅱに乗るハマーンを相手にアンとシャロに鈴が追い回すが、ハマーン相手に悪夢だと鈴は思うが、Ex-Sガンダムの機動力でもブルーローズMK-Ⅱに追い付けない事実に機体の限界すら感じたのだった。だが、機種変更訓練の時間と防御面での不安からブルーローズMK-Ⅱの受領を断った手前、ハマーンに一撃を入れようと意気込む鈴だった。

 

 

 こうしたアクシズ側の訓練の最中でも、地球連邦軍の主力艦隊がソロモンへと向かう姿が暗礁宙域に配置された偵察部隊に発見されたが、先行するロンド・ベル隊の本隊も発見されてソロモンの司令部へと報告されていた。

 

 「ロンド・ベル隊発見!!」

 

 「各防御衛星を機動させなさい!!」

 

 司令部に詰めるナタリーの叫びに防御衛星が機動し、居住区にはシェルターへの避難警報が鳴り響く。無論、迎撃の為のモビルスーツ隊の出撃も含まれ、ソロモンの周囲にはアクシズの艦隊やモビルスーツ隊が待ち構えたのだった。



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ソロモンでの決戦 中編

 

 

 ソロモンの防御衛星の起動により、ロンド・ベル隊のモビルスーツ隊は歓迎の洗礼を受ける事になる。

 

 「うっわぁ!?」

 

 数機のジェガンが防御衛星から大量に放たれた兎印の人参型のドリルミサイルを食らい、ジェガンはドリルミサイルより機体が穴だらけとなりながら四散する被害を出しながらもジェガン隊はソロモンへと向かう。

 

 無論、後方のロンド・ベル隊の艦隊もミサイルやメガ粒子砲を衛星へと放つのだが、作った本人である束博士の性格の質の悪さが遺憾なく発揮された衛星には対ビーム兵器の防御用に積まれたアンチビーム爆雷が自動的にばら撒かれて艦隊からのメガ粒子砲は無効化され、クラップ級の一隻が防衛衛星から反撃された際にドリルミサイルを大量に大浴びるように食らい、クラップ級は大破や轟沈する以前にクルーが全員がミンチとなり死亡して漂流し、反撃にでたラー・カイラムから放たれたミサイルの直撃には耐え切れずに数基の防御衛星は四散する。

 

 しかし、防御衛星を抜けたとしても、抜けた先にはソロモンの周りにアクシズのモビルスーツ隊や艦隊が配備されて待ち構えた状態であり、ロンド・ベル隊のモビルスーツのパイロット達は悪夢がこれからだとは知らない。

 

 そんな最中、いち早く2つのモビルスーツ隊が防御衛星からの洗礼を無傷で通り抜けて行きながら防御衛星を破壊したモビルスーツはケーラの乗るガンダムMK-Ⅴと補充要員としてロンド・ベル隊に合流した元ティターンズのパイロットだったライラ大尉の乗るリ・ガズィカスタムとジェガン改を率いた部隊だった。

 

 「ほら、チマチマしてたら置いて行くよ!!」

 

 「ライラ大尉、先走らないで下さい!!」

 

 勿論、アムロの乗るHi-νガンダムが率いるジェガン隊も防御衛星を破壊しながら抜けており、アクシズの前衛部隊であるギラ・ドーガ隊と交戦中だった。

 

 「ちぃ、ソロモンに向かうには敵の数が多過ぎる!!」

 

 ビームライフルを放ちながらギラ・ドーガを撃破するが、アムロが率いたジェガン隊はギラ・ドーガの数の暴力に曝され囲まれながら各個撃破されて数を減らして行くが、アムロ隊は逆襲してギラ・ドーガ隊を撃破して母艦であるムサカ級のタカオとアタゴを撃沈しながら侵攻する。

 

 

 アン大佐を小隊長機としながら、カミーユと鈴にクェスの小隊とイチカ大佐を隊長機としたシャロとイリアにギュネイの小隊は第一防衛ラインを敷くギラ・ドーガ隊の後方に母艦で旗艦のミョウコウと随伴するアシガラとハグロにナチのムサカ級とソロモン防衛大隊第三中隊のブラックローズⅡ隊と共に第二防衛ラインを敷きながら抜けて来た連邦軍のモビルスーツ隊の迎撃に当っていた。

 

 「遅いわよ!!」

 

 「グッワァ!?」

 

 アンが抜けて来たジェガンへと肉薄しながら接近するとビームサーベルを抜きながら切り裂いて撃破し、カミーユとクェスは前衛でビーム兵装を乱射してリフレクターインコムで反射させながら暴れ周る鈴のEx-Sガンダムをファンネルで支援しながら撃破して行く。

 

 「アン、二時方向から敵機が来たわよ!!」

 

 「あれは…戦後にアクシズのモビルスーツデッキで回収した筈のガンダムMK-Ⅴですって!?

 

 はっ、はさか…

 

 また、アナハイムは横流しをやりがったなぁぁぁ!!」

 

 鈴の叫びにアンが反応すると、アンはアナハイムがガンダムMK-Ⅴを連邦に横流しした事にキレながら叫び、敵機はケーラの乗るガンダムMK-Ⅴとライラ大尉の乗るリ・ガズィカスタムが率いるジェガン改のモビルスーツ隊だった。

 

 「アン隊長、あのゼータタイプは設計した責任を取りたいから、俺にやらせて貰っても良いですか?」

 

 「アン、あたしもあのガンダムMK-Ⅴのパイロットにコケにされた因縁が有るからやるわ」

 

 「はぁ…カミーユも鈴も…仕方無いわね。

 

 ジェガン隊はあたしとクェスが引き受けたわ。

 

 ブラックローズⅡ隊はあたしに続きなさい!!」

 

 カミーユはリ・ガズィカスタムを見ながら、Z計画の初期設計をした責任からやると言い引かず、鈴は前回の戦いでコケにされた雪辱を果たすからと二人揃って頑固になり、その2機は譲らないと言い切る為にアンはクェスを引き連れ、鈴とカミーユに任せながらジェガン隊へと向かったのだった。

  

 「セッヤァァァァァ!!」

 

 「ちぃ!?」

 

 「躱すのなんて、判ってたわよ!!」

 

 「しつこい!?」

 

 ガンダムMK-Ⅴへとスラスターを全開にしながら肉迫した鈴はビームサーベルを抜きなが斬り掛かるが寸の所で躱される。しかし、ケーラもビームライフルを放ちながら距離を取るが、そのまま突っ込んで来るEX-SガンダムのIフィールドにビームは阻まれてしまい鈴の接近を許す。

 

 「前回の借りを返しに来たわよ!!」

 

 「その声、まさか!?

 

 あたしの恋人のアストナージを殺した、あの時のパイロット!!」

 

 鈴は、これには記憶に覚えが在った。

 

 レズン隊の救援の際にロンド・ベル隊の艦隊が対空射撃をする輪陣形内に突入しながらSガンダムブースターユニットのビーム兵装の乱射攻撃した時にラー・カイラムのカタパルトとモビルスーツデッキとの間に新たなモビルスーツが見えた為にビームカノンをジェガン改に直撃させていた。

 

 鈴はまさかだとは思っていた。

 

 事実、準備できたジェガン改の出撃準備でカタパルト付近のモビルスーツデッキに居たアストナージは鈴が放ったビームカノンがジェガン改に直撃した際に四散した大量のモビルスーツの破片を浴び、ノーマルスーツのヘルメットのバイザーが砕けてしまい真空状態の宇宙空間に曝されたアストナージの顔は頭蓋骨内部の内圧に耐え切れずに風船が破裂する様に破裂して即死していた。

 

 無論、アストナージの死亡を知らないケーラはアクシズへの迎撃後にアストナージからの手料理であるチキンソテーとサラダを楽しみにしていた矢先だと言え、ラー・カイラムに戻ると恋人が入る死体袋と共にアストナージの死亡を聞き血の涙を流しながら恋人を殺したパイロットを絶対に殺すと心に強く誓い、チェーンがアナハイムから持参したガンダムMK-Ⅴを受領したのだ。

 

 だが、鈴も同様にコロニーへと核攻撃した地球連邦を許す気は全く無いし、束さんから学んだ南極条約すら守らない連邦に与する彼女が許せなかった。

 

 確かにアストナージとは、三つ巴の戦いの時にソロモンでブラックローズⅡの調整で束さんを交えながら何度か話をした記憶は在った。だけど、出産間近だったのもあり、ケーラと言う女性とアストナージが付き合っていた話は記憶には無かった。 

 

 「アストナージの仇だァァァァ!!」

 

 「だからって、核攻撃した連邦に与する事なんかないでしょうが!!」

 

 「アストナージを殺す事は無かったでしょ!!」

 

 ケーラのガンダムMK-Ⅴと鈴のEx-Sガンダムがお互いの怒りをぶつけるかの様に機体を加速し、交差する様にビームサーベルがぶつかり合い何度も斬り合う。

 

 「「あたし(私)等の戦いの邪魔するなァァァ!!」」 

 

 無論、二人の戦闘に乱入するギラ・ドーガにはケーラのガンダムMK-Ⅴがマイクロミサイルを放ち数機のギラ・ドーガを血祭りに上げて撃墜し、ジェガンに対しては鈴が四連メガビームカノンを放ち、リフレクターインコムで反射させて直撃させてズタズタにさせながら撃墜する。

 

 キレた二人の戦いを乱入するイコール二人から殺される図式が両軍のパイロット達の認識となり、パイロット達は二人の戦いを関与しない事にある意味の認識の一致したと言えたのだ。

 

 

 

 一方、カミーユもリ・ガズィカスタムと戦闘に入り、ビームカノンを乱射しながら数機の量産型ブラックローズⅡを撃墜しなら突入して来るリ・ガズィカスタムにビームシールドでビームを弾きながら肉迫する。

 

 「ちぃ、相手はブルーローズタイプかい!?」

 

 「前に出て来なければ殺られずに済んだのに!!」

 

 「厄介な、ブルーローズMK-Ⅱの方かい!!」

 

 「見える、そこぉぉ!!」

 

 「くっ、小さいだけに!?」

 

 無論、ライラも変形させてモビルスーツ形態になりビームライフルを放つが、両機の大きさは身長差のある機体なだけにカミーユの小型なブルーローズMK-Ⅱはリ・ガズィカスタムの死角に入り易く、ライラは変形するといった判断を誤ったとしか言えない。

 

 「落ちろぉぉぉ!!」

 

 「ちぃ、これがニュータイプの力かい!?」

 

 ビームライフルの放ったビームを寸で躱すブルーローズMK-Ⅱのパイロットはニュータイプだとライラは悟るが既に遅く、パイロットの死角から入ったブルーローズMK-Ⅱに乗るカミーユに懐に入られてしまい、至近距離から展開されたハイパーメガビームランチャーを放たれてしまい、直撃したリ・ガズィカスタムはコクピットに大穴が開きながらもライラは叫びながらビームに飲まれて蒸発して死亡し、直撃したリ・ガズィカスタムは四散する姿をカミーユは呟きながら見届けたのだった。

 

 「アン小隊長に合流するか…」

 

 

 一方のイチカ達もアムロ隊と接触し戦闘となる。

 

 「コイツは俺が足止めするから、シャロとイリアにギュネイはジェガン隊を迎撃しろ!!」

 

 「「「了解!!」」」

 

 『やはり、君もニュータイプだったか!!』

 

 「まさか、アムロとまた戦うとは思って無かったさ!!」

 

 アムロのHi-νガンダムとイチカのブルーローズMK-Ⅱとの戦闘となり、アムロはイチカが一年戦争を経てニュータイプに覚醒していた事実に驚きながらも、5thルナ攻防時のパイロットはイチカだったとアムロは認識する。しかし、Hi-νガンダムの高い機動力にも関わらず、ブルーローズMK-Ⅱの機動力に追い付くのは困難だと悟り、フィン・ファンネルを展開する。

 

 「「ちぃ、行け!!

 

 (フィン)ファンネル!!」」

 

 しかし、イチカもアムロがファンネルを使うのは、ハマーンとシャアから言われた通り使うのは読んでいたからファンネルを使い、フィン・ファンネルを迎撃する。

 

 「くっ、数の差か!?」

 

 「このまま、押し切らして貰う!!」

 

 「アムロに殺されたミチルや仲間達の仇すら取れずに舐めるなァァァ!!」

 

 「ちぃ、まだ早くなるのか!?」

 

 イチカの叫びにブルーローズMK-Ⅱの頭部に搭載されていたバイオセンサーが反応しながらもサイコフレームと共振しながらブルーローズMK-Ⅱの限界を超えた加速をさする。アムロは堪らずにフィン・ファンネルを自機の周囲に囲いIフィールドを展開してイチカの猛攻を防ぐのだった。

 

 「くっ、やられる!?

 

 なら!!」 

 

 そして、イチカからの猛攻から退避すべくアムロが取った行動は、ソロモン側へと退避する選択だった。

 

 無論、アムロが退避した方には純白のブルーローズMK-Ⅱを乗るハマーンと赤く染められたブルーローズMK-Ⅱのシャアが待機していた。

 

 イチカもアムロを追いながら追撃するが、大破しながらもモビルスーツ隊を出撃させたネェル・アーガマから出撃させた2機のゼータプラスが特殊弾頭のミサイルを積み飛行する姿を発見する。

 

 「悪意の波動をあの機体から感じる!?

 

 まさか、あの機体には!!」

 

 悪意の波動を感じたイチカは、アムロの追撃を中断してゼータプラスの迎撃に当たる。無論、ミサイルの弾頭が核ならばと思うと接近戦を避けてファンネルによる遠距離から落とすしか無いと判断してファンネルを展開してゼータプラスへと行かせる。

 

 「殺らせるかよ!!

 

 行け、ファンネル!!」

 

 そして、ファンネルは1機のゼータプラスへと殺到して、ゼータプラスを撃墜する。だが、ビームはミサイルを貫き眩しい光と共に爆発したのだ。

 

 ピッカァ…ドォォォォン

 

 「くっ、やっぱりかよ!?」

 

 ゼータプラスを撃墜すると、もう1機のゼータプラスと数機のジェガンを巻き込みながらミサイルは核爆発を起こす。イチカは悪態を突きながらも母艦を探し当てたのだ。

 

 「取り逃したネェル・アーガマかよ!!

 

 沈めぇぇ!!」

 

 無論、イチカはネェル・アーガマに容赦無くハイパーメガビームランチャーを放ち撃沈したのだった。

 

 「アムロ、決着を着ける!!」

 

 イチカはシャアとハマーンが相手をするアムロが居るだろソロモンへと向かったのだった。



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ソロモンでの決戦 後編

 

 

 「くっ、待ち伏せか!?」

 

 「アムロ、落とさせて貰う!!」

 

 「シャアだと!?」

 

 「私が居るのを忘れては困るぞ!!」

 

 「くっ、ハマーンまで居るのか!?」

 

 ソロモン要塞側へと退避したアムロは、シャアとハマーンの待ち伏せを食らいながらも回避と防御に徹して防ぐが、束博士が自ら製造した初期生産タイプのブルーローズMK-ⅡはHi-νガンダムと性能面では優位に立ちながらアムロを追い詰める。

 

 無論、シャアが受領したのは戦後であり、ハマーンは三つ巴の戦いで使用する前にコクピットブロックをグレミー・トトを引きずり出す為に束博士本人が解体した後に修理と組み立てに時間が掛かり戦後に受領したと言える。

 

 「シャア、何故隕石を落とした!!」

 

 「アムロ、温厚に連邦との話し合いに応じていたアクシズが報復に走った意味も判らず、連邦に与するなど失望したぞ!!」

 

 「貴様、姉様を核攻撃で殺された、私の怒りがわかるだろ!!」

 

 「核攻撃!?

 

 まさか、シャア!?」

 

 「そうだ!!

 

 妻のハマーンの姉は、連邦との食料供給問題の話し合いの最中に核攻撃で死んだのだ!!

 

 唯一の肉親だった姉を殺された妻の怒りが判るだろ!」 

 

 アムロは最大の食料の生産コロニーだったサイド2への核攻撃を知らない訳では無かった。ロンド・ベル隊だって結成された当初は元エゥーゴの連邦軍人だったブライトにより結成され、治安維持と連邦を監視する部隊だった。しかし、実際は隊員の家族を人質に連邦に与するように脅されて連邦に従うしか無かった。

 

 そして、連邦に正義など無いと言う事にもアムロは気付いていたが、ロンドンに幽閉された妻のベルトチーカと常に監視されながら過ごすチェーンを考えると保身に走ったのは自分だと気づく。だが、3機のモビルスーツは縺れ合う様にソロモン要塞の外装付近で戦い、三人はイチカが此処に加わるとすら予想はしていない。

 

 そんな最中、眩しい光と共にソロモンに接近していたゼータプラスが四散しながら核爆発を起こす。

 

 「くっ、おのれ!!

 

 ソロモンにまで核を使うか!!」

 

 「イチカくんが防いでくれたのか!?」

 

 「憎しみの光が拡がって行くだと!?」

 

 「アムロ、これを拡げてはいけない光なのは判るだろ!!」

 

 「くっ!?」

 

 シャアは此処ぞとばかりにアムロの説得する。しかし、連邦がこう成った以上は引くに引けないアムロ。

 

 「アムロ、見付けたぞ!!」

 

 「くっ、追い付かれたか!?」

 

 「「イチカ(くん)か!?」」

 

 核ミサイル装備のゼータプラスを撃墜したイチカが乗るブルーローズMK-ⅡがビームライフルをHi-νガンダムへと撃ちながら接近する。無論、アムロのHi-νガンダムはフィン・ファンネルを機体の周囲に展開してIフィールドを形成してビームを弾く。

 

 

 「哀しみを拡げる元凶のアムロだけは!!」

 

 「なっ!?

 

 なんだ、凄まじいプレッシャーは!?」

 

 「イチカくん、憎しみの波動に飲まれるぞ!!」

 

 「私の身体が震えているだと!?」

 

 アムロを殺すと覚悟を決めたイチカから放たれたプレッシャーはアムロの動きを鈍くさせながらもシャアはイチカに叫ぶ様に警告し、ハマーンはイチカから滲み出る怒りの波動を受けてしまい恐怖からか身体を震わせて怯えたのだ。

 

 「アムロ!!」

 

 「チィ!?」

 

 イチカとアムロとの戦いの第二ラウンドが始まったのだ。

 

 

 

 そして、鈴とケーラも敵味方の機体を撃墜しながら死闘を繰り広げていた。無論、戦うフィールドは撃沈されたネェル・アーガマの残骸の中、ビームサーベルで斬り合いビームライフルなら撃ち合いの激しい戦闘だった。

 

 「アストナージの仇!!」

 

 「当たらないわよ!!」

 

 ガンダムMK-Ⅴから放たれたマイクロミサイルをスラスターを全開にしながら回避して行き、此処ぞとばかりに鈴はメガビームスマートガンを放ち反撃する。

 

 「グッ!?」

 

 「貰ったわよ!!」

 

 「仇を取るまでは!!」

 

 「きゃあ、マジなの!?」

 

 ガンダムMK-Ⅴの左腕をメガビームスマートガンで破壊した隙を狙いビームサーベルで斬り裂こうと斬り掛かるが、ケーラの咄嗟に放った拡散メガ粒子砲を至近距離で浴びてしまい、回避したが至らずにメガビームスマートガンと一緒に右腕を失いと左脚は股から下をを失う。

 

 無論、逆襲したケーラは鈴のEX-Sガンダムの肩のアーマーを掴み、腹部のメガ粒子砲を至近距離から放とうとする。

 

 「これで終わりだ!!」

 

 「あたしは一夏と一緒に帰るまでは死ねないわよ!!」

 

 鈴がコクピット内で叫んだ時だった。

 

 『鈴はやらせない!!』

 

 「アストナージ、今逝くよ…」

 

 ALICEの叫ぶ声に無機質な音声と共にモニター一面にはALICEの文字がずらりと並び、ツインアイの色も変色して緑色だった色は赤く染まる。そして、EX-Sガンダムは自動操縦となり、膝裏のビームサーベルを抜くと逆手に握りながらケーラのガンダムMK-Ⅴの頭部からビームサーベルを突き刺し、EX-Sガンダムの下半身が離れて鈴が乗るSガンダムのコクピットとも言えたコアファイターを射出する。

 

 「へっ?

 

 アリス!!」

 

 鈴が叫ぶが、ALICEは反応しない。

 

 ALICEは、鈴の無防備なコアファイターを守る為にガンダムMK-Ⅴに抱えられ絡み合ったままのEX-Sガンダムを自動操縦しながら離れて行き、ガンダムMK-Ⅴと共にEX-Sガンダムは四散したのだった。

 

 無論、ケーラは頭部をビームサーベルで突き刺された際に、恋人の名前を呟き死亡していたのだ。

 

 『鈴、楽しかったよ…』

 

 「アンタねぇ!!

 

 あたしは絶対に許さないし、もう一人出来たらアンタの名前を付けてやるんだから!!」

 

 脳内に響いたALICEの最後の声に、鈴は顔がぐちゃぐちゃになりながら泣き叫んだのだった。

 

 暴走系モビルスーツに愛された鈴の戦いは終わるのだった。無論、ISのスペリオルもコア人格の朱雀のみが反応するのだが、ALICEを失った事によりスペリオルも展開が不能となった事を知るのはかなり後の話である。

 

 一方、アンとクェスも連邦のジェガン隊と交戦しながらもロンド・ベル本隊の艦隊へと近付いていた。

 

 「デカイだけのジムなんか!!」

 

 『はっ、早い!?

 

 ギャァァ!?』

 

 「本当、ショットランサーは便利ね」

 

 「落ちろ!!」

 

 アンがショットランサーでジェガンを何機も串刺しにしながら撃墜数を増やす一方、クェスもヘヴィマシンガンを放ちジェガンを蜂の巣へと変えて行く。それでも、残った量産型ブラックローズⅡを引き連れて旗艦を撃沈すべく突入する。

 

 「くっ、連邦の最新鋭だけに弾幕がキツいわ」

 

 「アン、副隊長!?

 

 グッワァ!?」

 

 「ビームシールドを展開しなさいって、言ったばかりでしょ!!」

 

 「落ちなさい!!」

 

 「なっ、真正面にモビルスーツだと!?

 

 そっ、総員退艦せy…」

 

 ラー・カイラムからの凄まじい弾幕に狩られた量産型ブラックローズⅡは四散する。無論、クェスはハイパーメガビームランチャーをクラップ級のブリッジの真正面から放ち撃沈する。

 

 「仕方無いわね!!」

 

 アンもラー・カイラムへと突入しながら、ショットランサーをウェポンラックに固定して代わりに装備したビームライフルを放ち対空レーザー砲を破壊する。

 

 「くっ、右舷弾幕薄いぞ何やっての!!」

 

 アンのブラックローズⅡに取り付かれたラー・カイラムの艦長のブライトは対空要員に叱咤しながら叫び、弾幕は更に一層激しくなる。

 

 「激しい弾幕だなんて嬉しい歓迎ね!!

 

 でも、あたしには当たらないわよ!!」

 

 「アン副隊長、支援するわ!!」

 

 クェスが再チャージしたハイパーメガビームランチャーを放ち、前部主砲を破壊しながらアンのブラックローズⅡを援護射撃で数基の対空レーザー砲を破壊する。

 

 「このまま、ブリッジを狙うわよ!!」

 

 アンは対空レーザー砲をビームライフルを乱射して破壊しながら上昇すると、ハイパーメガビームランチャーを構えたままブリッジの真上へと降り立つ。

 

 無論、投降を呼び掛ける為だった。

 

 「ブライト艦長、聞こえてるかしら?」

 

 「この声は、オリムラ中隊の副隊長のアン大佐か!?」

 

 「あら、覚えていて嬉しいけど、三つ巴の戦いでは味方だったよしみで投降して欲しいけど?」

 

 「投降しなければ、どうだと言うのだ?」

 

 「ブリッジにハイパーメガビームランチャーをぶっ放すに決まってるじゃん♪」

 

 ブライトは、ブラックローズⅡの固定武装である伸縮式ハイパーメガビームランチャーの威力は、前回の戦闘でも目の当たりにしており、クラップ級が一撃で轟沈する威力はクェスが先程も実証していた。

 

 そして、ブライトは決断したのだ。

 

 「くっ、降伏する…」

 

 ブライトは降伏を受け入れ、アクシズに投降する。無論、ラー・カイラムは武装解除に応じたが、数隻のクラップは抵抗したが撃沈されてしまい、艦隊の残存した1隻のクラップ級も量産型ブラックローズⅡにブリッジを囲まれ降伏したのだが、最前線で戦うイチカやアムロ達にはブライトが降伏した事実が届かずに戦闘が継続していたのだ。

 

 「させるか!!」

 

 「チィ!?」

 

 4機のモビルスーツの戦いは佳境を迎え、シャアとイチカが交互にアムロを攻め、ハマーンは後方からビームライフルでアムロを狙う。しかし、Iフィールドを展開されていては攻撃が通らず三人には焦りが出始める。

 

 それでも、イチカは切り札とも言えるハイパーメガビームランチャーをHi-νガンダムへと放つ。

 

 「アムロ、貰った!!」

 

 「これなら!!」

 

 「やったのか!?」

 

 「イチカくん油断するな!!」

 

 「まさか!?」

 

 アムロの咄嗟の判断により、ハイパーバズーカを囮にIフィールド内に残して離脱し、バズーカの爆発の誤認によりアムロを撃墜したと思ったのだがアムロをバズーカの爆発により見失う。

 

 「バズーカが囮!?」

 

 「貰った!!」

 

 「まだだ!!」

 

 「ちぃ、ビームシールドか!?

 

 なら、これなら!!」

 

 「ビームシールドが!?」

 

 バズーカを囮に離脱したアムロは、ブルーローズMK-Ⅱの頭上からビームライフルを放つがビームシールドにより阻まれる。アムロは咄嗟に防がれた事に舌打ちしながらも、ヘッドバルカンを放ち肘に着いているビームシールドの発生させる円形の発生装置を破壊してビームシールドを無効化する。

 

 「これで撃墜する!!」

 

 「しまった!?」

 

 アムロのHi-νガンダムがビームサーベルを抜きながらイチカのブルーローズMK-Ⅱを斬り裂こうとした瞬間に奇跡が起きる。 

 

 『イチカをやらせない!!』

 

 「えっ、ミチル…」

 

 「サイコフレームの共鳴だと!?」

 

 ミチルとジュンコの魂の残滓とも言えた思念と共にサイコフレームが共鳴してブルーローズMK-Ⅱを優しく包み込み現れたオーラ状の二人の女性いやミチルとジュンコが、アムロのHi-νガンダムが振り下ろしたビームサーベルを手で払い弾く。

 

 『イチカ、チャンスよ』

 

 「あぁ、ミチルにジュンコ…」

 

 だが、イチカのブルーローズMK-Ⅱには、アムロとの激戦の煽りで損傷して既に武装がビームサーベルしか無かった。だが、イチカはフットペダルを踏み込み加速させるとHi-νガンダムの頭部へと殴り付けて頭部のアンテナがへしゃげて曲がり、更に腹部へと蹴り飛ばしながらコクピットハッチを歪ませ、シャアもハマーンもチャンスだと攻撃に加わる。

 

 「アムロだって、分かるだろ!!」

 

 「あぁ、シャアとイチカが言いたい事は分かるさ!!」

 

 「だったら、あのティターンズの非道だって、貴様が引き篭もらなければ、地上はある程度の問題は解決出来た筈だ!!」

 

 「ハマーン、それはエゴだよ!!

  

 ニュータイプはそんなに便利な人種じゃない!!

 

 ただの人だよ!!」

 

 「アムロはそうやって、逃げるのかよ!!」

 

 シャアとハマーンの攻撃を躱したアムロだったが、予備のビームサーベルを抜いたイチカが突っ込んで来たがてビームサーベルで切り裂くよりも、Hi-νガンダムの頭部を蹴り飛ばしてメインカメラのツインアイが砕ける。

 

 「くっ、メインカメラをやられたからって!!」

 

 「くっ、モノアイが!?」

 

 「確かに、戦うのが嫌で引き篭もったさ!!

 

 シャアにもイチカにも判るだろ!!

 

 ニュータイプはオールドタイプにしたら排除される対象だって!!」

 

 「グッ!?」

 

 「イチカくん、機体の損傷が酷い、下がりたまえ!!」

 

 無論、アムロも負けじとバルカンを放ち、ブルーローズMK-Ⅱのモノアイを破壊するがサブカメラに変わったが、アムロは連続して攻撃してビームサーベルで左腕を斬り裂く。

 

 「シャア閣下、断りますよ。

 

 アムロ、だからって俺は人類に失望なんかしていないし、妻や子供達の未来が守れるなら!!」

 

 シャアから撤退しろと言われたが拒絶し、アムロのHi-νガンダムへとビームサーベルを構え突貫する。

 

 「グッ!?

  

 脱出するしか無い!?」

 

 そして、Hi-νガンダムをビームサーベルで斬り裂くが、アムロは咄嗟の判断で脱出装置を使い、球体の脱出ポットを射出して脱出したのだ。

 

 「逃がすかよ!!

 

 アムロには、妻のアンとシャロに独立戦争で殺したミチルの事を謝って貰うからな!!」

 

 「しまった、捕まった!?」

 

 しかし、脱出した瞬間にビームサーベルを投げ捨てたイチカに捕まり、アムロはソロモンへと連行されたのだった。

 

 



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その後とイチカの目覚め

 

 

 ソロモンの決戦から数日が経ち、薄暗い部屋の中黒いゴシックドレス姿をした旧オリムラ中隊の女性隊員にそっくりな女性が、一人の老いた男性に近付き話し掛ける。

 

 「あら、サイド2への攻撃は成功したのにソロモンへの核攻撃は残念だったわね」

 

 「何だと!?」

 

 「人質まで使って向かわせたロンド・ベル隊は壊滅したし、アムロは捕虜として捕まったわよ」

 

 「貴様は拾った恩すら捨てて、私を消す気か!!」

 

 「あら、私はアナタなんかに拾われたつもりは無いし、抱かれたい男が居るから身体を時間を掛けて癒やしただけよ。ジャミトフ閣下?」

 

 「きさ…」

 

 パンパン…

 

 豊満な胸の谷間から出した拳銃で乾いた音を出しながらジャミトフの額へと放ち射殺する。

 

 「早く、イチカを抱き締めたいなぁ…」

 

 豊満な胸を腕で抱き押しつぶしながらイチカを思いを馳せるのだったが、彼女の頭の中はお花畑の最中であり、束さん並みのダイナマイトボディに成長した身体をイチカにどう味合わせながら搾り取ろうかと思考する辺りはイチカの嫁達と同じく肉食系女子である。

 

 勿論、イチカ達は彼女が生きていたなんて予想すらしていなし、精神世界にシャア達の未来となるこの世界を構築した本人である彼女は気付いていない。ただ、彼女のニュータイプの力も後僅かであり、イチカを元の世界へ戻した後に彼女も向こうで目覚める為に力を行使すれば、カプセルで再び眠るしか道は無かった。

 

 彼女はジオン公国の記録では正式には戦死していたが、ノーマルスーツ姿で瀕死の重症で漂って所を占領したア・バオア・クー近辺を哨戒していたマゼランに座乗していたバスクに拾われ、治療ついでに身体検査の結果はニュータイプの素質が高かった為に回復次第、オーガスタ研究所に送られニュータイプの波動を調べる為の生体ポッドの中に入れられて人体実験の為だけに眠らされたまま使われる。

 

 しかし、オーガスタ研究所の地下深くに仕舞われていた生体ポッドはグレミー・トトのオーガスタ研究所の襲撃にも発見されずに済み、彼女が完全に目覚めたのはロンド・ベル隊がソロモンへの侵攻してアムロが敗北した後だった。

 

 彼女は眠りならも、ニュータイプの波動を使い生体ポッドによるニュータイプの波動を増幅させて、イチカを二度も助けていた。

 

 「フフフ…さて、頼れるお姉さんの最後の仕事は、イチカを元の世界に戻しながら、あちらの私もオーガスタ研究所の地下に眠っているから目覚めさせてソロモンに向かわせないとね。全く、アンとシャロは抜け駆けしてイチカと結婚してるし、妻や子供も沢山居るみたいだから、イチカの妻達には少しお仕置きを考えないとね♪」

 

 ジャミトフを射殺した彼女はニッコリと笑い、ジャミトフへのトドメに谷間から出した手榴弾のピンを抜き胸に抱かせる様にセットすると、ニューヨークシティの高級住宅から抜け出して、再び眠る為に旧オーガスタ研究所へと姿を消したのだった。

 

 

 彼女が目覚めたとは知らないイチカ達だったが、アムロはアンとシャロに謝罪はしたのだが、二人はアムロの胸倉を掴んだ上で往復ビンタした後に許したが、アムロの妻であるチェーンは二人を睨むが、アナハイムの元職員だった事を知るイリアに捕まり尋問の末、ガンダムMK-Ⅴの横流しの件を認めた上で処罰としてアクシズの技術最高副顧問のニナ・ガトー大尉のアシスタントとして働かせる事になる。

 

 無論、ソロモンの技術部のブラック振りは健在だったらしく、束博士が残した大量の技術の解析する作業の多忙さにチェーンは、調査で多忙を極めるアムロとベルトチーカを混ぜながらのイチャ付きながらの子作りの暇すら無い事にニナ大尉に泣き付いたらしい。無論、ロンドンにアムロが来た際に抜け駆けして当たりを引いたらしくアムロとの子を宿しているとは、チェーンに言えないでいるベルトチーカだった。

 

 そのアムロだが、シャアの直属の配下となったらしくムサカを母艦に与えられて、束博士が提唱した小型高性能機の所有の疑惑のある新サイドのフロンティア1のとある企業への調査に向かわされたとハマーンは語る。

 

 シャアとハマーンだが、ナタリーが長女を出産したらしく、チャンスだと何時も以上にイチャラブするのだが、もう一人欲しいと寝室に突入して来たナタリーからハマーンはお預けとなる所が、二人で寝ようと言ったのが運の尽きでシャアは二人からこってり搾り尽くされたらしい。

 

 俺だが、アン達に精神世界を案内されて元に戻る事が出来たのだが、暫く休んだ後に体力が戻ると、暫くお預け状態だった妻達は静かに眠る俺の部屋へと目掛けて全員が突入を果たして淫獣化して一斉に食われ、ミイラの様に干乾びた為に緊急搬送され入院したのは別の話だったりする。

 

 そして…

 

 「一夏!!」

 

 「お兄ちゃん!!」

 

 「グッェ!?」

 

 妻達から数日程、こってり絞られて再入院した後に退院してからはIS学園に復学したのだが、マドカと千冬姉にこの様に大泣きされながら抱き締められて窒息しそうになっている。

 

 無論、束さんは千冬姉に土下座して謝りながら俺の娘を妊娠したと報告したのだが、いつの間にか増えた妻の挨拶やら娘達の紹介に理解が追い付かずにビールの缶を持ったまま気絶したのだと妻のクリスが言う。

 

 そして、俺が目覚めてから2ヶ月後、ホワイトラビット社の秘密ドックにはアクシズの強襲揚陸戦艦ムサシが入っており、宇宙世紀の世界へと行くために縮退機関を積む改修が施されて大量の物資と弾薬が積み込まれている作業の真最中だった。

 

 「全く、いっくんは…」

 

 娘で産まれたばかりの春香を抱きながら、未だに修理中のいっくんのブルーローズMK-Ⅱを見ながら積み込み作業の監督をしていた。無論、クーちゃんは一緒に行くと聞かずに社長をスコールに任せて秘密ドックで手伝いをしている。

 

 「束さん、暇だから来たわよ」

 

 「あら、アンちゃん。

 

 今は、学園のタッグトーナメントの最中なのにどうしたのかな?」

 

 「あぁ、アレね。

 

 あたし達が出ると出来レースになるから出場はしないでくれって、学園長に言われて暇なのよ」

 

 暇そうにしながら、アンとシャロの二人が秘密ドックへと来ていた事に驚きながらも、事情を聞けばホワイトラビット社の面々は出場が学園長から認められずにお休みとなったらしい。シャロは、束さんの愛娘をあやしながら抱えており、束さんに例外なく大きい胸が好きなのかシャロの胸を鷲掴みしながら遊ぶ。

 

 「物資の積み込み作業って事は、束さん?」

 

 「うん、いっくんに言われた通りに向こうに行くよ。ハマーンちゃんのお姉さんもだし、いっくんの美味しい料理の決め手となる産地は守りたいからね」

 

 「まぁ、あたしもイチカの料理は好きだからね」

 

 「へぇ、あたしの料理より一夏の料理が楽しみだと?」

 

 「「うん、そうそう…って……鈴(ちゃん)!?」」

 

 不意に後ろから声を掛けられた質問に素直に答えるアンと束さんは機械油の切れたブリキの様に振り向くと、こめかみに青筋を浮かべ腰に両手を当てながら立つ鈴がいたのだ。

 

 「アンタ達、死にたい訳?」

 

 「「すっませんした!!」」

 

 一斉に土下座して謝る光景は何時もの光景になりつつあるのだが、秘密ドックから出撃する3日前となる朝にまた事件が起こる。

 

 「ふぁぁぁぁ、よく寝たな…って、デジャヴだな…」

 

 「すぅ…すぅ…すぅ…すぅ…」

 

 「マジか…」

 

 昨日の夜は妻達のローテーションにより、俺が一人で眠る日でありぐっすりと眠れる夜だったりする。しかし、昨日の眠る前に飲む水を飲んでからは一切の記憶すら無く、気怠さから目が覚めると床には脱ぎ散らかった服とシーツには赤い染みと俺の腕を抱き枕にして眠る全裸姿のクェスの姿だった。

 

 「っん……あっ、おはようイチカ…」

 

 俺が部屋から逃げ出す以前にクェスが覚めてしまう。

 

 「何故、クェスがいるんだ!?」

 

 「う〜ん、インドの山で修行中に黒い穴に落ちたと思ったら、イチカの眠る部屋だった?」

 

 どうやら、修行中に宇宙世紀の世界から来たらしい。

 

 「何故、全裸なんだよ!!」

 

 「えぇぇ、イチカがソレを聞くの?

 

 ……イチカのえっち」

 

 「グッハァ!?」

 

 クェスの上目遣いからの『イチカのえっち』にかなりの破壊力があるのに気付くが、どうやら俺が寝ている内に食べたらしい。確か、鈴からやるなよと言われた筈だったが…

 

 「だって、言われたのは精神世界の私であって、私は言われてないもん!!」

 

 「マジか…」

 

 クェスが俺の思考を読んでいたらしく説明してくれたが、これを鈴達にどう説明すれば良いのやら解らん。

 

 だが、そうは問屋が許さないのはお約束だろう。

 

 「はっ、クェスの波動を感じるですって!?

 

 まっ、まさか!?」

 

 ドッ、ドドドドド

 

 バッァァァァァン

 

 クェスのニュータイプの波動を感じて鈴の走る足音が響きながら部屋前に来ると俺の部屋の扉が吹き飛び、鈴が部屋へと入り叫ぶ。

 

 「くっ、クェス!?」

 

 「テッヘェ、来ちゃった♪♪」

 

 「あんたねぇ、来ちゃったじゃなァァァァい!!」

 

 「ついでに、イチカに初めて上げちゃった♪♪」

 

 まさかの事実に鈴も驚愕しながらも額には何本もの青筋が浮かび上がり、怒りを顕にする。

 

 「何ですって!?

 

 アンタ、まさか精神世界で言われたのを破る気!!」

 

 「えぇぇ、言われたのは向こうの私じゃん」

 

 「くっ、確かにそうね!!

 

 でも、確かに向こうの世界でしたら許さないとも言ったわよ!!」

 

 「でも、癖になちゃったから食べちゃった♪」

 

 「ぬっぐぐぐ」

 

 クェスが楽しそうに鈴をからかい、鈴は逆にクェスに遊ばるれる状況にゲンナリしながら部屋から逃げようとするのだが、更に部屋へと向かう足音に気付いた俺は寮の廊下の窓ガラスを突き破り、三階から飛び降りると一目散に逃げるのだった。  

 

 「あっ、イチカが逃げた!?」

 

 「イリア、イチカを追うわよ!!」

 

 「げっ、アンまで追い掛けて来るのかよ!?」

 

 「イチカ、待ちなさァァァァい!!」

 

 「私もチャンスね!!」

 

 「あっ、クェスが逃げた!?」

 

 そして、俺を学園内を追い回すアンとイリアにクェスを捕獲しようとするクリスとエマ達率いる妻達のデス・マーチが始まったのは言うまでも無かった。 

 

 

 

 



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旅への門出

 

 ムサシ出撃の当日、IS学園の港ではムサシが横付けされておりタラップからムサシのクルーが乗り込みながら出撃の準備を進めていた。無論、今回の出撃にはいつ帰るのか不明な為に絶対に着いて行くと聞かず自主退職して来たた千冬姉や更にブラコンを拗らせた上に自主退学の道を選んだ妹のマドカとシャルロットとは別に食堂へと隠れながら密航してイチカを未だに狙うラウラとセシリアが乗り込み、シャルロットはムサシへと密航しようとしたらスコールさんに捕まり、連行された上で副社長となる。

 

 そして、ホワイトラビット社からはクロエが秘密ドックから乗り込んでおり、改修は済んではいたのだが主砲と対空レーザー砲の修理は材料の精製が実質不可能な為に済んではおらず、応急処置的に装甲板で塞いだに過ぎなかった。

 

 「相変わらず、バカでかい艦よね」

 

 「そうだな…」

 

 タラップを上がりながらアンは、ムサシの大きさにゲンナリしながら登る。イチカも目覚めてから初めて知るムサシの被害状況に宇宙での活動は大丈夫かと心配にはなるが、改修ついでに破孔は塞ぎ済で気密性には問題は無い。

 

 だが、クルーとイチカ達が全員がムサシへと乗り込んだが、水色の癖毛のある最高学年の女性が密航して隠れて居るとは誰も知らない。

 

 

 「ムサシ、抜錨!!」

 

 艦長のツキノ中佐が指揮を取りながら、ムサシの艦首部分の錨を繋ぐ鎖が巻き上げられタグボート並みの大きさの錨が上がっていく。収納され、錨が固定さるれるとバウスラスターが海中で点火しながらゆっくりと埠頭から離れて行く。

 

 「微速前進、赤黒上下無し」

 

 ムサシは沖合に向けて出港したのだった。

 

 「イチカ大佐、予定通りにシズオカ沖に移動次第ミノフスキークラフトを作動させて高度14000まで上昇した後に大気圏離脱ブースターを点火し、大気圏を離脱します」

 

 「ツキノに任せるよ」

 

 「ハッ、各員は大気圏離脱のシーケンスに入れ!!」

 

 ツキノが叫び、クルーの一部はノーマルスーツへと交代で着換え始める。無論、オリムラ一家もノーマルスーツに着換え、離脱の為に自室脇の待機所の座席に座りベルトを締め始めた時だった。

 

 「イチカ大佐!!

 

 艦内に侵入者を捕縛!!」

 

 艦内のクルーで警備科のミナミ伍長が三人の女性を拘束しながら連れて来たのだ。

 

 「むっ、離せ!!」

 

 「痛いですわよ!?」

 

 「あらぁ…私でも見つかるなんて…」

 

 「へっ?

 

 ラウラにセシリアなら判るが、何故に楯無さんが!?」

 

 「異世界が楽しそうだからに決まってるじゃん」

 

 楯無さんの一言に一斉に全員がずっこけるが、下手をすれば死ぬかもしれない事実を知るアンはベルトを外してツカツカと楯無さんへと無言で近づく。

 

 「ちょっと、アンちゃん顔が…ヘッゴッ!?」

 

 「このバカを囚人房に入れて置きなさい!!」

 

 無論、無言でも近付いたアンを首を傾げていた楯無さんだったが、目の前に来た時点でかなり怖い形相をしながら拳を握ると鳩尾を殴り上げる。

 

 楯無さんは囚人房へと連行されて収監され、先に素直に謝った二人にはシャロが軽くお説教した後に座席に座らせてベルトを締めさせたのだった。

 

 ムサシは順調に高度を上げた後、大気圏離脱用ブースターが点火して大気圏から離脱し、機関部で作業する束さんは縮退機関を稼動させながら向こうの世界へと行く準備を完了させていた。

 

 「ブースター点火!!」

 

 「さて、あの世界に戻るんだな…」

 

 俺は大気圏を離脱するムサシの舷窓から宇宙を呟きながら見たのだった。

 

 

 同じ頃、IS学園では姉に纏めた書類を運んでいた簪は生徒会室へと足を運ぶ。

 

 「お姉ちゃん、書類…って、駄姉がぁぁぁぁ!!」

 

 テーブルの上に置かれた一枚の置き手紙には、『楽しそうだがら付いて行くね  By 更識楯無』とあり、それを読んだ簪はブチ切れながら手紙を破り捨てて叫んだのだ。

 

 無論、一夏君達がいつ帰るのか未定な為に実家の更識家へと急ぎ帰り幹部を全員を召集し、簪は18代更識楯無を継ぐ破目となり、まず最初の仕事は駄姉である刀奈を更識家から当主権限で除名処分としたのだった。

 

 

 

 

 サイド1のシャングリラでは、宇宙活動ではお馴染みの作業用ポッドがアポジモーターを使いコロニーの外側にてジャンクパーツやモビルスーツの残骸を回収していた。

 

 「イーノの情報通りだな」

 

 ジュドーは巧みに作業ポッドを使いながらモビルスーツの残骸を見定めながら高く売れそうなパーツを探す。無論、今の年齢なら学校に行かなくてはイケないのだが、両親の仕送りだけでは食べて行くのは大変であり、幼い頃から使い慣れた作業ポッドを使いジャンクパーツを回収する仕事を妹のリィナに秘密でしていた。

 

 そんな時だった。

 

 丸い球体が点滅しているを気付き、ジュドーはフットペダルを巧みに操作しながら近づく。

 

 「おっ、新品同様のリニアシートでお宝じゃん」

 

 無論、高値で取り引きされるジャンクパーツであるが、AE社製のリニアシートであるなら妹を山ノ手の学校へと行かせるのは可能かも知れない。しかし、ジュドーが見付けたのはアナハイム社製では無く宇宙要塞アクシズで作られたタイプにガックリと項垂れるが、リニアシートがまだ生きている事に気付くのだった。

 

 「ちぃ、生きてる奴かよ…まぁ、回収するしかないな」

 

 リニアシートをワイヤーで固定してコロニーへと戻るのだが、作業ポッドを何時もの場所に隠し終えた所で回収したリニアシートをトラックに乗せて直ぐに悪友の仲間の二人にに捕まる。

 

 「げっ、モンドとビーチャかよ!?」

 

 「黙って、仕事したんだから没収だからなジュドー!!」

 

 「マジかよ!?」

 

 「じゃあ、運んじゃうねぇ」

 

 「エルまで!?」

 

 トラックにはエルが乗っており、ジュドーは骨折り損の草臥れ儲けとなったのは言うまでも無かった。無論、スクラップ屋へとエル達が運び売ったのだが、二束三文の価値しか無いアクシズ要塞製のリニアシートでは仲良し五人組が一週間分食べて行ければマシな程度の金額にしか成らなかった。

 

 なんとか謝り通して分け前を得たジュドーは自宅へと帰るのだが、お玉を肩に掛けながら鬼の様に待ち構えていた少女が居た。

 

 「お兄ちゃん!!

 

 また、学校をサボって!!」

 

 「うっげぇ、リィナ!?」

 

 炊事洗濯などの家事を受け持つジュドーからしたら出来の良い妹のリィナだった。無論、性格はかなり真面目だが怒らせるとジュドーでも頭が上がらない。

 

 この後、ジュドーがリィナに何をされたかは知らないが、酷い目に遭ったとしか言いようが無い。

 

 

 

 宇宙へと出たイチカ達を乗せたムサシは縮退機関による宇宙世紀へと戻る事には成功する。しかし、転移直後に最大級のピンチを迎えていた。

 

 「次元跳躍に成功!!」

 

 「通信班、アクシズへの通信は?」

 

 「本拠地のソロモンへと通信、繋がりました!!」

 

 「モニターに出せ!!」

 

 ツキノの指示にモニターが映り、モニターに映し出された人物はハマーンだった。

 

 『イチカ達は戻ったか…』

 

 「ハマーン様、イチカ大佐以下全員帰還しました」

 

 『まぁ、良い。

 

 ムサシはどの辺りを航行中なのだ?』

 

 ハマーンからどの宙域なのか聞かれた瞬間だった。

 

 「「「「!?」」」」

 

 メキメキ…ズッガァァァァン

 

 縮退機関が積まれた後部の機関室上の甲板が捲り上がり、中から出て来たのは縮退機関だった。縮退機関は重力に押し潰される様にメキメキと言いながら潰れて行き消滅したのだった。

 

 「被害状況知らせ!!」

 

 『何が起こった!?』

 

 「ハマーンちゃん、ゴメン。

 

 帰る為の束さん特製の縮退機関が消滅しちゃった…」

 

 「機関部の縮退機関が船外へと出て消滅!!

 

 破孔部から数名が投げ出された模様!!」

 

 「救助隊を急がせなさい!!」

 

 ブリッジで混乱極まる状況にハマーンは、イチカ達が帰還したのは良いのだと思うのだが、出迎えの艦隊を向かわせようかと悩む内に通信が切れた事に不安を感じざるをえなかなった。

 

 無論、投げ出された数名は無事に救助したのだが、機関部の損傷からソロモンへの帰還は不可能だと判断したツキノは最も近いコロニーへと入り機関を修理すると指示を出したのだが、そのコロニーがシャングリラだとは思わず、ため息を吐くのだった。

 

 「よりによって…」

 

 「まさか、シャングリラじゃ無いわよね?」

 

 「アン大佐、まさかですよ…」

 

 「治安最悪なコロニーじゃん…」

 

 アンもゲンナリしながらもブリッジから見えたコロニーに不安を抱くのだった。



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モビルスーツ泥棒とマジギレの白星

 

 私は白星。

 

 イチカをイチコロにすべく、漸く肉体を手に入れたと思ったのだが、イチカの自室に籠もる匂いとベッドの惨状には目を瞑りたくなる。

 

 「あっはぁ!!」

 

 「シャロ、これ以上は…」

 

 「イチカ、萎れても出るから大丈夫よ!!」

 

 「マジ、死ぬから!?」

 

 イチカの妻の中では最強とも言える色欲魔のシャーロットさんはイチカに跨り腰を振る。無論、アンさんと鈴さんはベッド上で全裸であられも無い姿で気絶しており、エマさんとクリスは満足して寝息を立てていた。

 

 「さぁ、さっさと逝きn…グッべぇ!?」

 

 「白星!?」

  

 なんか、ムカついたからシャロに当身を首に当てて気絶させる。無論、イチカは驚愕の表情をしながら私を見るのだが関係無い。ワンピースを脱ぎ捨てながらイチカに妖艶な笑みを浮かべながらベッドへと侵入を果たしたのだが、タイミング悪くツキノから通信が入る。

 

 「ちぃ…(くっ、イチカをまた食べ損ねたわ…)」

 

 『イチカ大佐、シャングリラに近付きつつありますのでブリッジへお越し下さい』

 

 「ふぅ…今、行く(ある意味、助かった…)」

 

 二人の内心は違えど、白星が更に機嫌が悪くなったのは言うまでも無かった。

 

 

 同じ頃、シャングリラの学校から抜け出したジュドー達はとある噂を耳にする。

 

 「ジュドー、聞いたか?」

 

 「ビーチャ、何の話だよ?」

 

 「えっ、ジュドーでも知らないの!?」

 

 「エルまでなんだよ?」

 

 「僕の父親の話を聞いたんだけど、シャングリラにアクシズの最強部隊の戦艦が入港するらしいんだよ」

 

 「公社に出入りするイーノの父親からの話かよ。ビーチャ、まさか?」

 

 「最新鋭のモビルスーツを扱う部隊らしいから、母艦に忍び込んでやろって話だよ」

 

 「ビーチャ、止めときなさいよ。あの部隊のクルー全員って海兵隊出身じゃなかった?」

 

 「エル、詳しく」

 

 「あたしも気になったから調べたけど、アクシズのオリムラ中隊の母艦で間違いはないし、機体は最新鋭のモビルスーツも間違えない。でも、クルーは海兵隊のシーマ艦隊の女性隊員で特殊任務すら出来る連中みたいね」

 

 「エル、その話はマジか?」

 

 「あたし達みたいな素人が侵入出来る程、警備が笊じゃ無いわね。でも、近所の食料関係のおじさんの話だと食料の大量買い付けが在ったみたいだし、トラックに侵入すれば可能じゃない?」

 

 エルとイーノの情報から、シャングリラに来るのはアクシズが誇る精鋭中の精鋭のオリムラ中隊だと知る。

 

 無論、情報が足りない。

 

 「なぁ、ビーチャが俺を呼び出したのはまさか?」

 

 「勿論、作業用ポッドで偵察だな」

 

 ビーチャの一言に殴りたくなる。

 

 「何でだよ!?」

 

 「おっ、モンドの奴、上手くやったな」

 

 「モンドが居ないが、どうしたんだよ?」

 

 「モンドなら港での公社との騒ぎを聞いて、先に港に向かわせたんだよ。ほら、ムサシと公社で入港に纏わる事で揉めてるってモンドから情報が来たぞ」

 

 確かに、モンドからの最新の情報だと宇宙港の入港に纏わる事で揉めてるいるのは確かだった。無論、普通なら宇宙港への入港なら俺達からしたら高額かも知れないが多少は金を支払う。しかし、腐り切ったシャングリラのコロニー公社の連中なら高額の支払いを要求するのは明確だった。そして、作業用ポッドでムサシを偵察した後にエルが発案して押さえた食料物資の運搬用のトラックの荷台の中に紛れ込み宇宙港へと向かったのだ。

 

 

 シャングリラの宇宙港を前にシーマが青筋を何本も浮かべ、コロニー公社の豚の様に肥った役人と通信モニターを挟み揉めていた。

 

 「アクシズの財力なら、ジェラルミンケース換算にして金塊で8ケースは可能でしょ?」

 

 「舐めんじゃないさね!!

 

 これは、アクシズとコロニー公社との不可侵条約に対する違反さね!!」

 

 「いやいや、私共は下っ端役人故にねぇ」

 

 シーマが公社の連中と話し合いとなった理由は、シーマが一番階級が上だったのもあるが、コロニー公社と不可侵条約を結んで来た本人が出たほうが早いとのシーマの話だったが、月面を本拠地とするコロニー公社なら素直に話は進むだろうが、相手は腐り切ったコロニー公社の下っ端の役人だったのが、シーマが計算が狂った原因だと言えた。

 

 しかし、不可侵条約下のコロニーへの入港は金塊を入れたジェラルミンケースで一つと決められており、明らかに請求が高過ぎで、シーマはニヤリと笑いながら最強のカードを切ったのだ。

 

 「おやおや、このシーマ様に喧嘩を売る気なのかい?」

 

 「入港出来なくて困るのは、そちらでは?」

 

 「なら、コロニー公社から受けた、コロニー公社の役人からの不正請求に対する逮捕権を行使されても文句は言えないさね?」

 

 「おっ、脅しだ!?」

 

 「おやおや、多額の請求をしたのはそちらさね。

 

 ムサシの警備科に通達!!

 

 装備はA装備でこの馬鹿共を逮捕しな!!」

 

 シーマの叫びにツキノは、警備科へと通達され2分後のモビルスーツデッキにはノーマルスーツを着込んだ警備科の60名が海兵隊のA装備をして待機していた。

 

 「アンタ達、公社の役人への殺しはご法度さね!!

 

 突入次第、指揮所とコントロールルームの即時制圧!!」

 

 「了解!!」

 

 10人乗りのランチに6機に分譲して乗り込んだ海兵隊隊員の女性クルー達はシャングリラの港のコントロールルームへと突入して行き無殺傷にて制圧して行く。無論、女性クルー達が独立戦争時のラバウル戦線では『シーマ艦隊のアマゾネス』と言われた由縁通りに指揮所とコントロールルームを素早い動きで一時間もしない内に完全掌握して制圧したのだった。

 

 無論、艦長ながら突入メンバーの先陣を切りながら突き進んだツキノ中佐だったが、アサルトライフルを乱射して反撃する公社の役人達を低姿勢で突入しながらグーパン一撃で沈める光景はコロニー内部側から覗いていたモンドが縮こまる程に怖かったらしい。

 

 コントロールルームを制圧後に入港したムサシは係留されて機関部の修理が真っ先に始まり、物資の搬入やジャンク屋から材料を買い付ける為に束さんとシャロとアンがトラックに乗り向かい、機体があるパイロット達は待機所にて待機となる。

 

 そんな公社側の混乱を利用して侵入に成功させた悪ガキ達は補給物資を積んたトラックに紛れながらムサシのクルーにバレる事なくドック内へと侵入していた。

 

 「まさか、公社の連中が捕まるなんてな」

 

 「私服を肥やしていたんだから自業自得じゃない」

 

 エルは辛口に公社の連中を切り捨てながら、補給物資を積んだトラックから下車してムサシの昇降ハッチへと近づく事に成功する。無論、ムサシの機関部の修理で警備が疎かになっていたのが幸いでジュドー達はムサシ艦内へと侵入したのだった。

 

 

 しかし、ジュドー達の侵入は思わない方向でバレて捕まる事になる。

 

 エル&ビーチャの場合

 

 スクラップ屋からモビルスーツのジャンクを買い付けに向かったシャロとアンに束さんの三人はムサシの外装の装甲板と同じガンダリウム合金複合材を使用するソロモン製のモビルスーツの残骸を大量確保に成功してホクホク顔な束さんと共にムサシへと戻る。

 

 「これだけ在れば、外装だけでなく皆の機体も直せるかな」

 

 「束さん、買い過ぎですよ」

 

 「私も同じ意見ですよ」

 

 「えぇ…アンちゃんはモビルスーツが無いと不便じゃ無いのかな?」

 

 「うっぐぅ!?

 

 あたしの機体は撃墜されて、失くしてたわ…」

 

 「シャロちゃんも外装系の装甲だって被弾箇所が多いから装甲の交換だったよね?」

 

 「くっ、アンを連れて逃げるのに被弾してたわ…」

 

 「でも、何でイチカの世界で修理しなかったのよ?」

 

 「アンちゃん、いっくんの世界でガンダリウム合金が精製出来ると思うかな?

 

 束さん的には可能だったよ。

 

 でも、真空で尚かつ月の重力下で無ければ精製が難しいガンダリウム合金と材料のチタンを大量購入なんてしたら軍事転用の容疑でIS委員会に監査されて終わってたよ?」

 

 束さんの論破により二人は沈み、廊下を曲がるとシャロと束さんは見慣れない二人がぶつかる。

 

 「「「「キャア!?」」」」

 

 ボッフ

 

 「なっ、なんだ?

 

 めっちゃ、柔らかい?」

 

 「私の胸を揉むなぁ!?」

 

 「へっ、この柔らかさが女の胸!?」

 

 「こっ、このぉぉぉ変態!!私の胸を揉んで良いのはイチカだけよ!!」

 

 ドッゴォォォン

 

 「ゲッフゥ!?」

 

 ビーチャが衝突した際にシャロを押し倒してしまい、シャロのスイカ級の胸を両手で掴みながら揉んだのが運の尽きであり、怒り爆発のシャロに太股で首を挟まれたビーチャはシャロがスカートだったのが悪いのだが、シャロの黒いレースのパンツが丸見えな状態で挟まれながら甘い香りに包まれた一瞬だけ、年頃なのかエロガキ状態のビーチャは幸せそうな顔になるが、まさかの首投げを食らうとは予想出来ずに床とファーストキスをする事になるは思いもよらなかった。

 

 同じく、エルも束さんのスイカ級の胸に顔面から突っ込んでいたが、束さんに抱かれていたのだ。

 

 「あら、可愛いくて元気だねぇ」

 

 「わっぷぅ、はっ、離せ!!

 

 このおっぱいお化けがぁぁぁぁ!!」

 

 アンは死んだ魚の眼になりながらも束さんの沈む胸に社会的格差を感じて睨むが、この時だけは無い物同士のエルを同情したのは言うまでも無かった。

 

 「ねぇ、アンちゃん。

 

 この元気娘を束さんと娘の専属のメイドにしても良いかな?」

 

 「構いませんが、クロエが嫉妬するわよ?」

 

 エルが叫びながら暴れるが、肉体レベルで人外の束さんから逃げられる訳では無く、次第にエルは束さんの巨大な胸に埋められて行き、二人の会話が終わる頃には窒息していつの間にか気絶していたのだった。

 

 無論、束さんに気に入られたエルは娘の専属のメイドにさせられたのは別の話だったりする。

 

 

 イーノとモンドの場合。

 

 侵入して直ぐに良い匂いに釣られた二人が向かった先は厨房だった。無論、厨房では鈴の他にはマウアーが監視をしながら首輪を嵌められた刀奈が強制労働中であった。

 

 「ほら、さっさと仕事しないと昼飯を抜くわよ!!」

 

 「ひぇぇぇ!?」

 

 鈴が刀奈に叫びながらも、昼に向けて大量の仕込みと調理に大忙しだが、佐官級の食堂は鈴が牛耳る為に下士官は食べに来れないがオリムラ家の家族は別だった。

 

 勿論、食堂には娘達全員が集まり勉強したりしており、母親である鈴に監視され素直に勉強するのだった。

 

 しかし、勉強する娘に甘いのが鈴であり合間を縫って作り上げたマンゴープリンやドーナツは娘達のおやつの代表格だった。

 

 「ほら、千秋達のおやつよ!!」

 

 「はァァァい!!」

 

 「美味そうなドーナツ…」

 

 「モンド、子供のだから駄目だよ?」

 

 千秋を呼び、今日のおやつであるドーナツを載せたお盆を受け取る。千秋は慎重に運びながら姉妹のいるテーブルへと運んだのだが、物影から覗きながら匂いに我慢できなかったモンドが千秋が持つお盆からドーナツを奪い食べようとしたのが運の尽きだった。

 

 「もう、我慢出来ない!!」

 

 「あっ、私達のおやつが!?

 

 皆共、私達のおやつを奪った不届き者に掛かれ!!」

 

 「「「「「「「「おぉ!!」」」」」」」

 

 「「ギャァァァァァァ!?」」

 

 「あら、侵入を撃退したのね。千秋達のお手柄ね」

 

 長女の千秋を筆頭に姉妹は、モンドと逃げるイーノへと突撃しながら、鈴直伝の中国拳法を使いモンドとイーノを姉妹達が囲いぶっ飛ばして行く。ただ、別の角度で見たら集団リンチにしか見えなくも無いが、娘達の楽しみだったおやつを奪ったのだからやられても文句は言えないし、食べ物の怨みは恐ろしいと言える典型的な事であるのでモンド達は救いようの無い馬鹿だと言えた。

 

 「あら、侵入者をちゃんとロープで縛り上げるなんて母親としては感動ものね」

 

 「鈴、違うと思うが…」

 

 勿論、娘達にズタボロにされた二人はロープでグルグル巻きにされており、鈴は娘の成長の嬉しさからドーナツの他に杏仁豆腐を付けたのだった。

 

 無論、一部始終を見ていたマウアーと刀奈だったが娘達に中国拳法を教えていた事実に驚き引きながらも、マウアーも娘が産まれたらボクシングを教えようと心に決めたのだった。

 

 そして、ジュドーだけはモビルスーツデッキに侵入する事に成功するが、目を付けたモビルスーツはイチカの専用機のブルーローズMK-Ⅱだった。

 

 「へぇ、これが…」

 

 ジュドーはこれを売り飛ばしたら幾らになるのか末恐ろしくなるが、間違えなくアクシズでは最高単価のモビルスーツである事には変わらない。無論、イチカのブルーローズMK-Ⅱは初期生産型であり量産型ブラックローズⅡが3機作れる値段だとアクシズのとある会計科の職員が語っていたらしい。

 

 「よし、早速頂くぜ!!」

 

 「クンクンスゥハァ…」

 

 ジュドーは見付からない様にブルーローズMK-Ⅱのコクピットへと向かい、ハッチを開けると一人の少女を見付けてしまう。

 

 「「へっ!?」」

 

 無論、少女は下着を降ろしてイチカのシャツを嗅ぎながら下半身のある所を弄って居たらしく、ジュドーに見られてぷるぷる震えながら顔を真っ赤にする。

 

 「どうぞ、ごゆっくり…」

 

 「/////////⬛⬛⬛⬛▲▲▲●●●!?」

 

 少女はコクピット内で言葉に成らない叫びを上げ、ジュドーは見なかった事にする為に開けたコクピットハッチを締めて降りようとした所にブルーローズMK-Ⅱのコクピットハッチが吹き飛ぶ。

 

 バッァァァァァン

 

 「やっべぇ!?」

 

 「はぁはぁ…ぶっ殺す!!」

 

 「見たのは謝るから!?」

 

 「うるさい!!

 

 アンタの頭をスイカの様にぶん殴って破裂させてやる!!」

 

 「いや、食らったら死ぬから!?」

 

 グーパン一撃でコクピットハッチを吹き飛ばした白星は、見ただろうジュドーを追いかけながら叫ぶ。無論、ジュドーも死にたくは無い為に必死に逃げるが、顔を真っ赤にしながら白星はぶん殴る為に必死に追う。

 

 「食らいなさい!!」

 

 「ちょっと、危ねえ!?」

 

 「きぃぃぃ、躱すなぁぁ!!」

 

 白星が瞬時加速でジュドーに追い付き、拳を全力で振るがマトリックスの様な背中を反らしながら躱してジュドーは更に逃げる。

 

 そして、白星に火に油を注ぐ様な出来事が起きる。

 

 「ぶっ殺す!!」

 

 「あっ、危ねえ!?」

 

 ズッルゥ

 

 「「キャア!?」」 

 

 白星か再び全力で殴り掛かるが躱された時にジュドーを巻き込み転倒したのだが、その際にジュドーの両手は白星の胸を掴んでしまったのだ。

 

 「私の胸を揉んだなァァァ!?」

 

 「あっ…やっべぇ…」

 

 咄嗟に逃げるジュドーに埒が明かないとミネバを呼んだのが白星の運の尽きだった。通路の角で隠れてダイヤモンド製のフライパンを握るミネバはジュドーが通るのを待ち伏せする。

 

 「よし、今だ!!」

 

 「あっ、危ねえ!?」

 

 「へっギャン!?」

 

 ジュドーが来たのを機にフライパンをフルスイングしたのだが、ジュドーはフライパンを背中を反らして躱し、殴られた所を殴ってやろうとジュドーに近付いた白星を間違えて殴ってしまったのだ。

 

 勿論、ダイヤモンド製のフライパンは白星の頑丈さに砕けたが、殴られた白星は白目に俯きながら気絶をするのだったが、ジュドーはイチカに見付かり逮捕されたのだった。



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悪ガキ達の処遇

 

 

 私達が戻って来たのは良いのだが、宇宙世紀は0086年に入る頃だった。ジオンの士官学校へと入ったのが13歳ながら0078年の初頭であり、アンとイチカよりも1期前だったが、今では19歳になるだろう。

 

 「シャロ、なに調書見ながら黄昏てんのよ?」

 

 「アン、私も年を取ったなぁって思っただけよ」

 

 「それ、絶対にシーマさんの前では禁句だからね…」

 

 「アンだって、18歳でしょ?」

 

 「まぁね…それにしても、捕まえた五人は若いわね…」

 

 纏めた調書を片手に持ちながら読むが、イチカの世界なら中学1年生位の年齢に当たる12歳だった。

 

 無論、軍事機密の塊とも言えるムサシへの無断侵入は重犯罪であり、両親を呼び出すにしても出稼ぎ労働者である為に両親達の足取りは掴めていないのが実情だった。

 

 イーノと言う少年の父親は公社の人間だったが、先の制圧時に数件の横領と多額の請求を出した一人として海兵隊により逮捕され、ソロモンへと戻りながら月面都市のグラナダへと犯人達を移送する予定だった。

 

 「で、この悪ガキ達はどうするのよ?」

 

 「カミーユの時みたいに志願兵扱い?

 

 シャロ、冗談がキツイわ」

 

 「私だって、ビーチャって糞ガキに押し倒された際に胸を揉まれたのよ。もし、パパが知ったら殺されるのは確実よね…」

 

 「まぁ、それは災難ね…」

 

 「まさか、アンも?」

 

 「あたしの時の相手は、イチカだったからね…」

 

 「で、シャロの親父さんはどうしてんよ?」

 

 「パパ、軍を定年で退役したらしくて、サイド3の士官学校の校長をやらないかって誘われたらしくて、私の子供が産まれたらって校長しながら小遣い稼ぎね」

 

 「じゃあ、サイクロプス隊は解散なの?」

 

 「隊長が代わっただけね」

 

 「まぁ、脱線したけど、この四人だけはイチカに丸投げね…」

 

 「そうね…」

 

 調書を纏めた二人は、イチカに丸投げする事を決めたのだったが、ジュドーの妹であるリィナの扱いについても協議されたが、ミネバに気に入られたのか千秋達と一緒に遊び相手となり勉強も千秋達から教わるらしい。

 

 同じ頃、無断侵入により拘束された四人は仲良く独房へと入れられていた。無論、四人が住む自宅と比べたら天地の差があるフカフカのベッドや水洗式トイレの完備とシャワーまで在るのだから待遇は良いのかも知れない。

 

 「いてて…マジになって殴りやがって…」

 

 「それは、女性の秘事を覗いたのが悪いわね」

 

 「そうだそ!」

 

 「って、ビーチャは顔が腫れてるじゃん」

 

 「うるせぇ!!

 

 好き好んで、あの巨乳士官の胸を揉むかよ!!」

 

 「やっぱり、あの胸は自前だったんだ…」

 

 ビーチャの愚痴に眼が死んだ魚の様になるエルは、シャロの巨乳のデカさにウンザリしながら馬鹿二人が言い争う姿に安堵するが、自分達は機関部の修理が終わり次第にソロモンへと向かう事を尋問の際に聞き知っていた。だが、処罰云々よりはジュドーの妹が隊長の娘の様な少女の側付きとして聞いた時はジュドーがキレそうになったが、リィナがジュドーへ泣きながら平手打ちをしたらしい事をジュドーから聞いた。

 

 「まぁ、あたしも隊長の奥さんのメカニックチーフの束さんの側付きらしいけどね…」

 

 「て言うか、女性士官が多くないか?」

 

 「男性なのは二人以外居ないらしいよ」

 

 「イーノ、マジか!?」

 

 「うん、シーマさんから尋問の際に聞いたら、むさ苦しい野郎ばかりだと気が滅入るから女性士官だけを集めたらしいね」

 

 「でもさ、女性士官って言うけどさ、陸戦の兵士よりも強く無かった?」

 

 「だって、ここの女性士官は海兵隊出身のソルジャー持ちだよって言っていたよ」

 

 「「「ソルジャー持ちだと!?」」」

 

 軍関係に疎いジュドー達でもソルジャーの意味は判る。そんな自分達がソルジャー持ちの乗り込む船に忍び込んで五体満足で無事だった方が不思議でしょうがなく思うのだが、カミーユの父親の一件からは無殺傷で制圧する訓練を、イチカの世界でシーマが監督しながら再度積まされたのだから彼女達は悲惨だった。

 

 勿論、オータムから海兵隊教練を学んだアンと鈴に加えてシャロとイチカの妻達も強制参加で訓練に参加したのだからジュドー達が簡単に捕まったのは当然だろう。

 

 そんなジュドー達が話している最中、一人の茶髪の女性士官がやって来る。彼女はムサシのチーフメカニックであり、ソロモンでは技術最高顧問の束さんだった。

 

 「悪巧みは辞めたほうが良いよん♪」

 

 「げっ、あん時のおっぱいお化け!?」

 

 「エルちゃんの処遇は束さん預かりと成ったから身請けに来たよん。じゃあ、カモン!!」

 

 「えっ、あたし!?」

 

 「エルちゃんにはクーちゃんと一緒に娘の春香の面倒を見て貰うからね♪」

 

 「いやいや、あたしは子供の面倒を見たことが…」

 

 「大丈夫、クーちゃんが仕込んでくれるからね」

 

 束さんは、エルを独房から出すと自室に居るクロエへにお願いするとブラックローズⅡを修理すべくモビルスーツデッキへと戻るのだった。

 

 無論、ジュドーはカミーユに預けられ、モンドとイーノは束さんの助手としてメカニックとして働き、ビーチャはマドカと一緒にモビルスーツの操縦訓練へと向かわされたがマドカとやり合うのは別の話だったりする。

 

 

 

 旧オーガスタ研究所跡地には、ハヤト率いるカラバのメンバーが調査をしており地下室の最下層から一人の女性を保護するのだが、ガルダ級の病室で確認に来た際に彼女を見たハヤトは怯え出したのだ。

 

 「なっ、何故、君が!?」

 

 「あら、独立戦争の時のア・バオア・クー決戦で私が落としたガンキャノンのパイロットじゃない」

 

 「アムロ、来てくれ!!」

 

 「ハヤト、どう…」

 

 ハヤトに呼ばれたアムロは医務室に入り込むが、彼女を見るなり死んだ亡霊を見るかの様に叫ぶ。

 

 「あら、アムロはカラバに居たのね?

 

 私もそれなら安心ね」

 

 「君は、死んだんじゃ無いのか!?」

 

 「確かにコクピットを撃ち抜いた本人のアムロが言うんだから間違いは無いわ。でも、ゲルググの頭の方からビームを放ってくれたお陰でギリギリの所でコクピットブロックを切り離す事には間に合ったわ」

 

 「何故、君は今頃になって目覚めた!!」

 

 「私がイチカを助ける為に精神体になりながらも、ティターンズの暴走にも手を貸さなかった引き篭もりのアムロには言われたく無いわね。

 

 あら、それとも、愛しい二人からの求婚でも渋って居るのかしら?

 

 まぁ、シャア閣下は覚悟してハマーン様とナタリー様と結婚したけどね」

 

 「くっ」

 

 「まぁ、ハヤトは独立戦争だったからって割り切りなさいな」

 

 彼女からの正論と言う弾倉が入ったマシンガントークに蜂の巣にされた二人だった。

 

 無論、台湾に向かう途中にはベルトーチカの乗る複葉機が着艦してアムロに会いに来るのだ。

 

 「あら、台湾に向かうと聞いたけど…」

 

 「フフフ…(玩具発見!!)」

 

 「あら、見ない顔ね」

 

 「あら、はじめましてベルトーチカさん。私は、オーガスタ研究所でローレライ計画の人体実験にされてましたミチル・サオトメです」

 

 「へぇ、最近目覚めたニュータイプは彼女だったのね。アムロは?」

 

 ミチルはニヤリと笑いながらアムロが入浴中だとベルトーチカに教えながらも、アムロが宇宙に上がればもう一人の女性が出来る話をする。無論、アムロを食べてしまえば解決する旨を耳打ちし、ベルトーチカは顔を真っ赤にさせながらもミチルとガッチリ握手を交わす。

 

 「そう…アムロを食べてしまえば良いね…フフフ…フフフ…フフフ…既成事実を作れね…」

 

 「食べるなら、入浴している今がチャンスね」

 

 ベルトーチカは軽い足取りでアムロが入浴しているだろう浴室へと向かう。勿論、浴室に突入したらしくてガルダ級の艦内にはアムロの絶叫が木霊する。

 

 『ベルトーチカ待て、早まるな!?

 

 ヌッワァァァァァァァ!?』

 

 「あらら…本当に狼に成っちゃったわね…」

 

 文字通りにアムロを食べたらしくて、ミチルは可笑しくなり笑う。ただ、女性が持つ獣のスイッチを押して刺激しただけで肉食系女子が簡単に出来るのだから面白く思う。

 

 そして、台湾の宇宙港へと付き、イチカへの手土産には兎印の精力剤を2カートン程を買い付けてソロモンへと向かったのだった。

 

 「イチカに会えるかなぁ…」

 

 ミチルが呟くが、ミチルがハマーンを脅してシャングリラに向かうのは、まだ先になるのはミチルは知らない。

 

 



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ソロモンへ

 

 

 シャングリラに立ち寄ってから一週間、ムサシの機関部の修理は粗方が済んだのだが武装の大半は機関部の修理に伴うジェネレーターの出力低下による出力不足により、主砲のハイパーメガ粒子砲の使用が出来ないと報告を受けた束さんは主砲と副砲のみを実弾式へと変更させる。

 

 「主砲を実弾にすると55口径の20インチ砲になるのかぁ…」

 

 「大尉、副砲なんか60口径の10インチ砲ですよ…」

 

 何処かの大艦巨砲主義者が聞いたら喜びそうな会話だが、旧帝国海軍の大和型ですら45口径の46サンチ砲なのに対してムサシの主砲はそれを上回る55口径の20インチ砲だった事実に束さんでも驚きだったらしい。だが、イチカの世界では海上対空戦闘訓練のみだが、ドイツ本国で就航したビスマルクⅡ級戦艦のティルピッツⅡの存在をラウラから聞き、戦艦同士による砲撃戦で殴り合いたいたかったと口走るツキノには副艦長にして副官であるナカノ少佐が物理的に殴り飛ばして黙らせたらしい。

 

 「まぁ、対空レーザー砲だけならソロモンに向かうまでなら大丈夫かな…」

 

 「ですね…」

 

 主砲弾の補給などの少々の問題が残るが、ムサシの修理を終えたのだった。

 

 同じくモビルスーツデッキでは、サクラとアンが話し合いをしていた。

 

 「アンさん、私のブラックローズⅡを使って下さい!!」

 

 「はぁ!?

 

 サクラ、アンタの機体はどうすんのよ!?」

 

 「マウアーさんと同じく、私達は艦内勤務になりましたので…」

 

 「艦内勤務?

 

 アンタ、パイロットじゃなかった?」

 

 「鈴さんには言ったのですが、ケイトとカエデとカナデ姉妹に私は…月のものが来ないと思って調べたら…出来ちゃったので…」

 

 サクラからの暴露に驚愕するアン。

 

 無論、ヴァルキリー小隊の面々が妊娠した事になるのだがイチカが復帰以後、順番でイチカを貪り食う彼女達に引いたが、自分もイチカを夜な夜な貪り食べた一員なので藪から蛇には成りたくないし、毎晩食われたイチカが窶れ肌はカサカサになったのを見たら可哀想になったけど、心配を掛けた妊娠中以外の妻全員の相手をしたのだから仕方が無い。

 

 だが、彼女達は炊事洗濯と言った家事スキルが出来るのはサクラとケイトのみで双子姉妹はあたし程では無いが苦手気味だったりする。

 

 「はぁ…

 

 仕方ないわね…」

 

 結局、サクラのブラックローズⅡをアンが使う事になるのだがヴァルキリー小隊用に掛けたリミッターを外したり火器管制システムをアン専用に変更したりとする作業をする羽目になる束さんが徹夜になるのが確定したのだと内心では束さんに謝るアンだった。

 

 しかし、シャングリラを出港して直ぐの暗礁宙域では、連邦軍所属のサラミス改級3隻が航行している事に気付き、ムサシのメインマストにアクシズの軍旗を掲げる様に指示を出す。

 

 「攻撃して来ますかね?」

 

 「まぁ、馬鹿でなければ、アクシズだと気付いて攻撃はねぇだろうな…」

 

 たが、イチカとカミーユの願いも虚しく、アクシズの軍旗を見た連邦軍のサラミス改からジムⅢの発艦に気付いたイチカはモビルスーツデッキへと駆け込んだのだった。

 

 「イチカ、モビルスーツの数は?」

 

 「サラミス改級ならモビルスーツが6機搭載の筈だから3隻で18機だろ?」

 

 「そうなんだけど、あたしのブラックローズⅡのレーダーだと数は10機しか写ってないのよ」

 

 アンのブラックローズⅡのレーダーにはジムⅢが10機が確かに映っているが、実際の肉眼では18機がいる事におかしく思った瞬間だった。目視しながら狙撃したシャロのブラックローズⅡから放たれたビームは黒く染めらたジムⅢを四散させる。

 

 「やっぱり…イチカ、黒いジムⅢはステルス塗装が施されて居るわよ!!」

 

 「なんだって!?」

 

 ミノフスキー粒子の散布下であっても近距離ならレーダーには普通は映る。しかし、撃破直後に映ったレーダーから判断してステルス塗装仕様は明らかに特殊部隊で使う様な機体だ。

 

 無論、ステルス塗装仕様が制宙権を握るアクシズと月面都市群からしたら、いつ襲撃されるか判らない恐怖でしか無い。

 

 「アン、シャロ!!」

 

 「どうしたのよ?」

 

 ヘヴィマシンガンを放つアンは疑問に思いながらも牽制射撃をしながら通信を繋げ、シャロは疑問の答えに気付いた様だった。

 

 「イチカ、まさか…」

 

 「あぁ、支援型モビルスーツのジムⅢなら大型ミサイルが積めるな。なら、精神世界でのサイド2への核攻撃した機体は黒いジムⅢか、核搭載能力があるクラップ級かカイラム級のどちらかになる。

 

 ちくしょう!!

 

 何故、気付かなかったんだよ糞が!!」

 

 俺は、叫びながらジムⅢへと接近戦を仕掛け、ビームサーベルを抜きジムⅢを斬り裂く。

 

 アンとシャロも追従する様にジムⅢを撃墜して行くが、別働小隊のイリアとカミーユにフォウの機体もジムⅢを撃墜する。しかし、ムサシの第二砲塔跡に蓋をする装甲板上に陣取りながら71口径180ミリ対艦ライフルで狙撃を繰り返すケイトのブラックローズⅡを操縦する鈴は対艦ライフルを投棄しながらビームサーベルを抜き、自ら接近戦を挑んで来たジムⅢを四肢を斬り裂き撃破して機体の回収に向かい、コクピットを抉じ開けて答えを導き出したのだ。

 

 「一夏!!

 

 こいつ等、連邦兵じゃ無いわよ!!」

 

 「クッ…連邦軍の偽装がバレた!?」

 

 「「「「「なっ、なんだってぇぇぇぇ!?」」」」」

 

 「イーグルに星のマークはティターンズじゃない!?」

 

 「くっ、捕まる位なら!!」

 

 「大人しく、捕まんなさい!!」

 

 バッキィ…ドッガァ…チーン

 

 無論、ジムⅢのコクピットを抉じ開け、コクピット内へと中に入った鈴はパイロットの拘束を試みたが抵抗される。しかし、格闘による肉弾戦なら生徒会長の楯無さんに勝てる様になった鈴を相手には意味は無く、腹部を数発蹴り上げた上に股を開いた状態のパイロットへの金的への蹴り潰しによりパイロットは泡を吹きながら悶絶しながら気絶して拘束したのだが、股間を蹴り上げて潰す光景を見ていた俺とカミーユは何故か股間を押さえながら身悶えたのは男の性だと言って置きたい。

 

 「イチカ隊長…」

 

 「カミーユ、言ったら負けだ…」

 

 モビルスーツ隊を失ったサラミス改は反転して逃亡するが、ムサシの主砲の有効射程距離内であり20インチの連装の主砲が火を吹き主砲弾を放ちサラミス改のメインスラスターを破壊して航行不能にした上で、ランチに搭乗した海兵隊のソルジャー持ちのアマゾネス隊の突入により3隻とも拿捕に成功するのだった。

 

 勿論、海兵隊の突入による報告書には抵抗を試みたサラミス改のブリッジクルーの末路だが、フラッシュグレネードをブリッジに放り込まれた上で男性クルーは股間を蹴られて悶絶しながら気絶をし、女性クルーは相手がシーマ艦隊のアマゾネスだと気付いた段階で抵抗しようと画策する阿呆な艦長に呆れながら、命が大事だと言い切り真っ先に白旗を掲げて降伏したらしい。

 

 「シーマ閣下、このやり方ってさ海賊じゃねぇ?」

 

 「しっ、仕方ないさね…」

 

 スラスターを破壊した上でのサラミス改への制圧を指揮をしたシーマにイチカは海賊のやり方だと言いながらもサラミス改から物資を補給した… ようだ。 おそらく発見されても海賊に襲われたと判断されるだろう。

 

 しかし、強奪した大量の物資をムサシへと移す作業を見守るシーマは強くは否定出来ず、イチカからのツッコミにタジタジになるのだった。

 

 だが、俺も追従しながら行った調査によりサラミス改の重厚に閉ざされた弾薬格納庫は束さん必殺のクラッキングにより開けられたが、内部を確認した後に直ぐに格納庫を閉じてムサシへと下艦する様に下命する。

 

 「ムサシへ戻り次第、サラミス改を撃沈処分しろ!!」

 

 「どうしたのよ?」

 

 「MK-85の弾頭が積まれていた」

 

 「MK-85ですって!?」

 

 アンですら、俺が見た格納庫に積まれた物の重大さに気付く。しかし、連邦軍が核兵器を保管する4大拠点は前大戦でアクシズが全て制圧した筈だった。

 

 ルナツー…いや、有り得ない。

 

 トリトン基地…モビルスーツ隊を失った後の第四次降下作戦で制圧済みだ。

 

 ジャブロー…核兵器は制圧後にルナツーへと移送したから、先ずは有り得ない。

 

 シベリア基地…ジャブローと同じく有り得ない。 

 

 「クソ、何処だよ…」

 

 悪態を付きながら悩むと、シーマが更なる可能性を示唆する。

 

 「イチカ、木星の衛星開発のテラフォーミング用の核弾頭の可能性はあるんじゃないのかい?」

 

 「いや、木星だと尚更有り得ない!?」

 

 「イチカ、三つ巴の戦いではティターンズに属したジュピトリスは未撃沈なんだろう?」

  

 「あぁ、ア・バオア・クー海戦にはジュピトリスが参加すらしていなかったから撃沈出来なかった」

 

 「やはりさね。

  

 これは、あたしの独立戦争からの経験から言わせて貰うさね。

 

 テラフォーミング用なら地球圏を何百と壊滅出来る大量の核が木星へと運び込まれた古い記録があるさね」

 

 「まさか…核の出所は木星圏か!?」

 

 「あり得る話だろうさね。

 

 取り逃がしたジャミトフの狸爺すら三つ巴では、イチカが倒したシロッコとのパイプが在るんなら、木星圏からジュピトリス経由で核の入手は可能さね。

 

 まぁ、この先の話し合いは政治も絡み合うさね。

 

 なら、ハマーン様とシャアを混ぜる必要があるさね、ソロモンでじっくりと話し合おうじゃないさね」

 

 シーマの睨み通り、再度調査した核は前世紀に製造された古い核弾頭だった事が判り、4大基地に管理された核弾頭の登録ナンバーと照らし合わせたが4大基地の核では無い事まで判る。

 

 しかし、ジャミトフの行方は未だに不明であり、ジュピトリスの行方は木星圏へと向かっている事以外は判ってはいなかったのだ。

 

 「イチカ、ソロモンに戻りモビルスーツの補充とムサシの完全な修理が必要さね」

 

 「あぁ、分かったよ。

 

 ツキノ、ソロモンへ帰投する!!」

 

 本来ならソロモンへの帰還をせずにジュピトリス追撃をしたかったが、モビルスーツも無いしムサシの再修理の必要性からソロモンへと帰るしか無い。

 

 だが、この出来事が数年後に起こるアクシズと木星圏のコロニーとの全面戦争になる前哨戦だとはイチカ達は気付かないで居たのだった。



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英雄達の帰還

 

 

 

 この日、ソロモンは歓喜に染まる。

 

 彼方此方が焦げボロボロのアクシズの軍旗をメインマストに掲げた淡いダークグレーに染められた巨大戦艦が母港であるソロモンへと帰還したのだ。

 

 無論、三つ巴の激戦を生き残った戦艦だけに傷だらけの姿を曝した戦艦だったが、乗組員がノーマルスーツ姿で戦艦の最上甲板に一列に並び敬礼しながら入港した姿はソロモンに住む住民やソロモンの位置がコロニーから月面都市への中継地点なだけに騒ぎとなるのは確実だった。

 

 「おい、アレは……ムッ、ムサシだぁぁぁ!?」

 

 「えっ!?」

 

 「まさか…幽霊船じゃ無いよな?」

 

 「あたし達を勝手に殺すな!!」

 

 ズッキュン

 

 「はっ、はっぅ!?」

 

 「股間に狙撃!?

 

 メーデー、メーデー!!

 

 誰か、衛生兵!!」

 

 「馬鹿だなぁ…アレだけの狙撃が出来るは、元シーマ艦隊のアマゾネス隊だけだよなぁ…」

 

 一人の兵士が幽霊船だと呟くが、ムサシの右舷対空監視所から敬礼する女性士官に偶然にも聴こえたのか、空砲用のマガジン入りのライフルのマガジンをゴム弾入りのマガジンへと替えてからスナイパーライフルを股間へと放ち、呟いた男性兵士が両手で股間を押さえながら悶絶して倒れる。

 

 そして、ムサシは宇宙港の誘導艦の指示を受けながらムサシ級専用のドックへとゆっくりと入り、数回スラスターを吹かしながら微調整した後にドックに固定される。

 

 「ムサシ、投錨開始せよ!!

 

 甲板作業員はドックへの固定作業に入れ!!」

 

 歴戦の艦長化したツキノがブリッジでは檄を飛ばしながら入港作業の指揮を取り、通信員はアクシズの管制コントロールルームへと連絡を密に取りながら艦長へと報告したのだった。

 

 「ハッ、ハマーン様!!」

 

 「ニー、執務中に騒がしいぞ!!」

 

 「執務中に失礼しました。

 

 しかし、そっ、ソロモンにムサシが帰還しました!!」

 

 「なっ、何だと!?

 

 ニー、シャアをドックへと呼べ!!」

 

 同じ頃、ソロモンの自宅にてムサシのソロモンへの帰還の報告を側近のニー・ギーレンから受けたハマーンは執務中だったのも関わらずに決済報告の書類を執務机に放り投げて執務室を飛び出してドックへと向かう。

 

 無論、ハマーンの邸宅は大騒ぎとなるのだが、慌てて出て行こうとするハマーンをナタリーは窘める。

 

 「ハマーン様、その様な格好で何方に?」

  

 「ナタリー、ムサシが帰還したのだ!

 

 そこを退いて貰おう!!」

 

 自宅の執務室だからとジャージ姿のハマーンはナタリーからしたら、そのジャージ姿は流石に情けない。だが、ハマーンはイチカの世界から持ち込まれたジャージでいる快適さに自宅のみだが、ジャージ姿で過ごすのが多いと側近のギーレン兄弟が頭を悩ます一因だった。

 

 「せめて、ジャージ姿はやめなさい!!」

 

 「ジャージだと?

 

 はっ!?

 

 しっ、しまった!?」

 

 気付くの遅くて玄関は開放されており、ハマーンの今の姿は投稿期限がギリギリで漫画を書き上げる漫画家の様な頭にはバンダナをリボンの様に使い髪を上げており、PC用眼鏡の姿にナタリーは呆れながら注意されたハマーンは慌てふためきながら軍服へと着換えたのは言うまでも無い。

 

 そして、着換え終えたハマーンと呆れ顔のナタリーは要人などが送り迎えで使用される黒塗りの高級車に乗りドックへと向かったのだ。

 

 「ニー、オリムラ中隊用のモビルスーツの補給要請の数が少ないな。何か報告はあるか?」

 

 車内にてムサシから送られたモビルスーツの補給要請の数の少なさから疑問に思うハマーン。

 

 「はい、オリムラ中隊のア・バオア・クー奪還作戦での詳しい被害報告はこちらに」

 

 ハマーンはニーから受け取ったムサシの被害報告に眉を顰める。パイロットでの戦死者は二名のマシュマーとキャラのみだが、ムサシの乗組員の行方不明者と戦死者が非常に多くて約400名の乗組員の戦死と行方不明の乗組員の名簿に目を通して行くが、乗組員の補充は旧シーマ艦隊旗艦だったアカツキからの脱出した乗組員を充てた事も記載されていた。

 

 「激戦区だったSフィールドで、ムサシでも中破なのだな。それにしても、マシュマーとキャラは逝ったのか…」

 

 オリムラ中隊の中でもイリア小隊の中核を担うパイロットだっただけに惜しい人材を無くしたのだと改めてハマーンは被害報告書を読みながら思う。三つ巴による傷痕はジワジワと毒の様に周りながらも独立戦争の生き残ったベテランパイロットや指揮官の損失から来るアクシズでの人材不足に頭を抱える。

 

 「ハマーン様、イチカ大佐が帰還されたのであれば…」

 

 「フロンティアサイドの調査か?」

 

 「ニナ大尉からの情報では、アナハイムではブラックローズⅡの技術を元にした小型化したモビルスーツの開発と高出力のジェネレーターを用いた機体の開発が始まった情報とフロンティアサイドの企業が小型化したモビルスーツの開発に成功したと報告にあります」

 

 「だが、量産型のブラックローズⅡよりは性能は低いのだろ?」

 

 「はい、作業用らしくて実用性はかなり低いかと…」

 

 しかし、実情は違いブラックローズⅡに近い性能のモビルスーツを開発している情報はハマーン達は掴んではいなかった。だが、帰還したイチカ達の目的はサイド2への核攻撃の阻止だ。

 

 モビルスーツの開発速度が急上昇したのは束さんが要因だとは口が裂けても言えないが、アクシズのモビルスーツもロールアウトしたばかりのザクの後継機とも言えるザクⅢを原形に小型化した一般兵向きのモビルスーツの開発が始まり既に試作段階だとニナは報告していた。

 

 「それにしても……」

 

 ハマーンが何かを言い掛けると、一人の黒髪の女性が車の前に飛び出して来てハマーンの乗せた車が止まる。

 

 「危ないじゃないか!!」

 

 「ふふふ…」

 

 運転手は窓から顔を出して叫ぶが、女性は軽く笑う程度だった。しかし、ニュータイプ能力の高いハマーンは宇宙空間に飛び出して来た女性と二人でいる錯覚に陥るが、正気に戻ると女性の姿は車の前から消えているが、彼女もニュータイプだと気付き周りを見渡すが姿も無かったのた。

 

 「一体、彼女は何者なのだ…」

 

 だが、その女性は再び合う予感しかしないのは気のせいだとハマーンは思いたいのだが、彼女はイチカと合流した後に再び邂逅する運命である事になるとは知らないのだった。

 

 

 

 ドックに入港したムサシは、三つ巴の戦いからの被弾による損傷に加えて縮退機関の消失からの損傷が加わり被害は甚大だったが、シャングリラでの緊急修理により自力航行は可能だった。しかし、武装の全体の4割しか使えない状況と機関損傷から出力低下を招いた超高出力のジェネレーターはソロモンのドックか建造したアンマンのアナハイムのドックでしか修理が出来なかった。

 

 「ほら、さっさと修理を始めるよ!!」

 

 「「「了解!!」」」

 

 入港した早々から束さんはつなぎ服を下に着ながらノーマルスーツに巨大なスパナを担いだ姿でムサシの機関部を解体しながらも、自身が技術最高顧問の地位を利用してムサシのジェネレーターの再製造をソロモンの工廠をフル稼働させながら修理を始めたり、主砲の第二砲塔や対空対艦両用型でビーム砲と実弾が使用出来る60口径20.6サンチ三連装副砲や破損や欠落した副砲と同じくレーザーと実弾の両用型の三連装の対空レーザー砲などの製造を始めたりしていた。

 

 「束大尉!!」

 

 「おっ、ニナちゃんじゃん♪」

 

 そんな、ムサシの修理の最中にノーマルスーツを着た女性が束さんに抱き着くのは副顧問のニナさんだった。しかし、ニナさんが抱き着いたのは束さんに渡す機密書類を渡す為のカモフラージュでしかないが、束さんは苦労を掛けたニナさんを優しく抱き止めながらも機密書類を瞬時に全て読み切り返すのは人外チートの束さんだけだろうかと思う。

 

 「へぇ、やっぱりなんだ…」

 

 「はい、元アナハイムの社員だっただけに…」

 

 読み切った書類はアナハイムがしていただろう横流しの調査報告だった。無論、三つ巴の戦いの後に押収したネオ・ジオンの機体は全てソロモンへと運ぶ様に指示を出し、精神世界で横流しをしていたオサリバン常務もこの世界でも絡むと睨んだ束さんはシャングリラから秘密回線により調査命令をニナさんに出しており、調査結果は束さんが睨んだ通りの結果にニナさんは申し訳無さそうに謝る。

 

 「でも、流れたのがゼータガンダム系列じゃ無くて、メタス系列の機体で良かったよ。でも、エゥーゴ向けのフォーミュラ計画の機体の一部が流れたのは予想外だったなぁ…」

 

 「私も束博士の言われた通りに警戒はしましたが、フォーミュラ計画の一部が流れたのは…」

 

 「まぁ、あの機体はアナハイムが開発中のジェガン系列の機体を小型化した機体だからね」

 

 「でも、高出力のジェネレーターの開発出来なければ…」

 

 「うん、ゴミ以下の機体しか開発出来ないと言い切れるかな…」

 

 しかし、技術顧問二人には知られてはいないが、アナハイムはメタス系列の最高峰の機体であるZⅡの開発に成功を既に収めており、小型化は出来なかったが高出力のジェネレーターの技術は既に修得していた事を二人は知らない。

 

 無論、ニナさんが責任者となり設計したフォーミュラ計画のF-90から得た技術はアナハイムへと流れており、ジェガンを小型化したヘビーガンとGキャノンの開発は返還されたジャブローを中心とした連邦軍の基地で密かに行われ、連邦軍の宇宙艦隊にはジェガンタイプの機体の配備が始まりつつある情報はアクシズの特殊部隊から入る事になる。

 

 

 一方、ムサシから下艦したイチカ達は艦隊艦政本部へと足を運び、解体されたシーマ艦隊についての説明とオリムラ中隊の扱いについての話し合いとなるのだが、独立部隊化していたオリムラ中隊は部隊の解散はせずに新型の巡洋艦であるムサカ級のミョウコウとナチとアシガラにハグロを加えた5隻の艦隊を一つの部隊とする話しが出ていた。

 

 「だがら、オリムラ中隊に艦隊の配備は不要です!!」

 

 アンが机を叩きながら艦隊の配備を拒むが、艦政本部の司令となったとある人物は頑なに配備を推し進めようとする。理由は確かに新人パイロットの育成も兼ねてはいるのは納得は出来るが、最前線で常に戦う事の多いオリムラ中隊からしたら足手まといも甚だしい。しかし、人材不足に悩むアクシズからしたらイチカ達の帰還は育成に拍車が掛かるだろうと睨む艦政本部の人間からしたら嬉しい誤算だった。

 

 「何を騒いでいる!!」

 

 「「ハマーン様!?」」

 

 アンが艦政本部の役人と騒いでいる最中、ハマーンがイチカ達が向かった艦政本部にて合流する。ハマーンもイチカ達のオリムラ中隊は単艦での任務が主流であり艦隊を組ませるのは足枷にしか成らない事など百も承知だった。

 

 「貴様、オリムラ中隊に艦隊は不要だと言った筈だが?」

 

 「しかし、イチカ大佐やアン大佐にシャーロット中佐の歴戦のパイロットを一纏めにするのは…」

 

 「ほぅ、貴様は帰還した英雄をバラバラに配備するか、艦隊を組ませて新人教育をやらせると?」

 

 「いえ、確かに練度の高いパイロットを一纏めにするのはとアン大佐に言っただけで…」

 

 「確かに貴様の言い分は判るが、オリムラ中隊はこの面子だからこその戦果であろう。なら、オリムラ中隊は単艦での任務は、私が認めるとするが構わんよな?」

 

 ハマーンの一喝により、艦隊が組まれる事は無かったが、代わりに新人パイロットを数名を配属させる事で艦政本部の役人は引き下がったのだったが、パイロットはエゥーゴからの志願兵だとハマーンは隊長のイチカには教えたのだ。

 

 「ルー・ルカ士官候補生とレズン少尉か…」

 

 「男性パイロットは居ないのかな?」

 

 「男性パイロットならこちらに成りますね…」

 

 艦政本部で渡された名簿には数名の士官候補生や少尉階級のパイロットがピックアップされるが、めぼしいパイロットはこの二名位しか居なかった。まぁ、理由は判ると思うが娘達を邪険にしない者に限ると条件付けにした為だが、男性パイロットでも問題が無ければ選んだだろうパイロットはリョウ少尉位だったが性格に難がある事から除外している。

 

 しかし、新人パイロットの他にベテランパイロットを希望した所、カラバ経由で一名の女性パイロットが回されるらしい。

 

 だが、俺は名簿を見た瞬間、顔が強張り固まる。

 

 「うっ、嘘だろ…」

 

 彼女はア・バオア・クー決戦で死んだ筈だったのに何故?

 

 そんな風に思考をしていたら、ムサシのモビルスーツデッキで騒ぎが起こる。

 

 「キィぃぃぃ!!

 

 アン、貴女ねぇ!!

 

 私が死んだと思って、イチカに抜け駆けかまして結婚ですって!!

 

 ふざけんな、クソアマ!!」

 

 「ギャァァァ!?

 

 いっ、痛いってばミチル!?

 

 髪を引っ張るなぁ!?」

 

 「ちょっと、ミチル!?」

 

 「あら、おっぱいだけは乳牛並みに成長したシャーロットさん、何か御用かな?」

 

 「「ギャア!?」」

 

 と言いながらも、アンの髪を掴みながら引っ張りシャロの顔面に回し蹴りを入れるミチル。無論、顔面に蹴りが入ったシャロはモビルスーツデッキを漂う様に気絶する。

 

 あぁ、旧オリムラ中隊ではお馴染みの肉体的会話による俺を巡る醜い争いと言えるが、他に俺の嫁であるクリスとエマはミチルに真っ先に伸されたのかモビルスーツデッキを漂いながら気絶しており、ヴァルキリー小隊の面々は妊婦である為、衣服がズタボロになった鈴に庇われながらデッキ奥へと退避して居たのだった。

 

 「何故、こう成った…」

 

 無論、カラバ経由での補充パイロットがミチルなら、地球に降りたら絶対にアムロを殴り飛ばしてやりたいと思うのはこの光景のせいだと思いたかった。

 

 「貴様、新人の癖にいい加減に!!」

 

 「イリア、あたしの髪が掴まれてんだから待ちなさい!?」

 

 「見え見えよ!!」

 

 「ギャァァァァ!?

 

 イリアの馬鹿!!」

 

 「かっはぁ…」

 

 そんな、嫁達に容赦なく殴り飛ばすミチルと相対するのはイリアだったが、イリアの放ったパンチは寸で躱され、カウンターのアッパーを逆に喰らい膝から堕ちる様に崩れ落ちて気絶したのだった。勿論、アンは髪を掴まれたままだったので躱した際に更に引っ張られてイリアに叫びながら悲鳴を上げる。

 

 「全く、弱く成ったのは、幸せ太りでもしたんじゃないのかねぇ、アン?」

 

 「うっぐぅ…髪は…引っ張るなって言っているでしょうが!!」

 

 未だにアンの髪を掴みながら引き摺り、ミチルはアンの脇腹を掴みながら掴んだ脇腹の肉を上下に振りながらアンを甚振る。

 

 「ついでに胸も成長したかしら?」

 

 「うっがァァァ!!

 

 胸がメロンのミチルに言われたく無いわよ!!」

 

 既に戦意を失ったアンだったが、ヴァルキリー小隊の面々を束さんに預けて戻って来たのは、仲間であり妻仲間の頂点に立つ鈴はミチルを睨みズカズカと歩み寄る。

 

 「あんたねぇ、娘達の世話も在るのに全員を伸してさ、ざけんじゃないわよ!!」

 

 「鈴、まだあたしはやられてないわよ!?

 

 でも、ミチルに勝てないから止めなさい!!」

 

 「うっさい馬鹿!!

 

 最初に伸されたアンには言われたく無いわよ!!」

 

 諫める様にアンが叫ぶが、ブチ切れた鈴は拡張領域から青龍刀を取り出して鞘をから抜いて鞘を放り投げて剣先をミチルに向ける。無論、ミチルも艦内に掛けられた足場の足場材である鉄パイプを掴みながらもぎり取り、鈴に鉄パイプで槍の型を構える。

 

 「へぇ、イチカの正妻さんでも……」

 

 「えっ!?

 

 アンタ、その構えは…宝蔵院流槍術ですって!?」

 

 戦国武将の福島正則などが使ったとされる槍術であり、現在では殆どの型が失伝している。しかし、ミチルの本名はミチル・サオトメであるが、母方の名字はホウゾウインであり宗家の孫娘だったりする。

 

 「寝てなさい!!」

 

 「あたしだって、少林寺拳法の門下生で師範代まで登り詰めたのよ!!

 

 舐めるなァァァ!!」

 

 二人が激しくぶつかり合うが、一合二合とぶつかり合う内にモビルスーツデッキの壁やモビルスーツの装甲は鉄パイプに突かれては穴が開き、青龍刀に斬られてはモビルスーツの脚部やウェポンラックのビームライフルが斬れてズレ落ちたりしていた。

 

 無論、アンはミチルから放り投げられたが、鈴とミチルの激闘に巻き込まれて衣服が全て細切れにされて下着姿だったと言って置くが、二人のマジなぶつかり合いをどうにかしないと死人すら出る予感に止めに入ったのは千冬姉だった。

 

 「貴様ら、いい加減にしろ!!」

 

 「うっげぇ、千冬さん!?

 

 いっ、いだだだだだ!?

 

 アイアンクローは…」

 

 「えっ!?

 

 うそ…」

 

 「二人共、頭を冷やせ!!

 

 ふん!!」

 

 「「ギャァァァァ!?」」

 

 二人の間に割り込み、鈴とミチルの顔面を片手で掴み止ながらも、二人の顔面にアイアンクローを決めると全力の力を入れて鳴らしてはいけない音が二人の頭から響き、ダランと力無く二人は垂れ下がり気絶したのだった。

 

 「一夏、私も操縦訓練を終わらせて来たぞ!!」

 

 二人を放り投げ、俺へと戻って来た千冬は見えない犬の尻尾をブンブンと振りながら褒めて褒めてとする表情に溜息しか出なかったのだった。

 

  



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乱闘の後に

 

 

 モビルスーツデッキでの嫁達とミチルの乱闘騒ぎの後、乱闘に参加した嫁達とミチルはMPに連行されハマーン様よりキツイ説教と始末書の提出を命令され、鈴とミチルはムサシ艦載のモビルスーツの破壊とムサシのモビルスーツデッキの内壁へ破壊活動により一週間の反省房での謹慎処分となる。

 

 しかし、当初はムサシの反省房の予定だったがドック入りしたムサシの修理もある為にソロモンの居住区にある自宅謹慎処分に変更となる。それよりも、ハマーン様より俺は三つ巴の最終決戦から現在に至るまでの大量の報告を求められてアクシズの軍司令部にて報告書の作成に一週間も缶詰め状態となり、自宅に帰るのは不可能だった。

 

 「佐官級だと書類も半端ないな…」

 

 「イチカ、あたしなんかよりマシさね…」

 

 「ですよね…」

 

 俺達二人の執務机に聳え立つのは、白い巨塔を連想する様な書類の山。そして、シーマ自身もア・バオア・クー奪還作戦での大量の報告書と被害状況報告書の書類の作成に悪戦苦闘しながらもPC用眼鏡の姿に成りながらも執務室に持参したノートパソコンにタイピングしながら書類を作成する。

 

 無論、二人が使うノートパソコンはIS世界ではお馴染みの富○通の最新モデルのノートパソコンであり、プリンターも然りだった。だが、二人の机の上の他にも哀愁漂う執務机にはとあるメジャーの元野球選手がCMに登場する栄養ドリンク剤の空き瓶が何本も転がり、食べ掛けのチョコ味のカロリー○イトが有ったりと徹夜したサラリーマンの様な状況だと言えた。

 

 「3ヶ月も行方不明になっただけでこの量かよ…」

 

 「全く、嫌になるさね…」

 

 虚ろな目に成りながら執務室に籠もる二人の報告書への格闘はまだまだ続くのだった。勿論、妻達の謹慎明けになる頃に報告書の山は片付き終わるのだが、大量の報告書の作成に一週間も自宅に帰れ無かった事にいじけた娘達が不機嫌な顔で二人を自宅に迎えたのは別の話しだったする。

 

 そんな最中でも、束さんとニナさんの二人がソロモンの工廠にある専用の研究室ではブルーローズMK-Ⅱシリーズの後継機になるモビルスーツの研究と開発に入り始めたのだが、ファンネルによるパイロットの精神的消耗により戦力の低下を招く事態をブルーローズMK-Ⅱからの戦闘データから頭を抱えていた。

 

 「やっぱり…」

 

 「束さん、いっその事ですがファンネルを外しては?」

 

 「いっくんのデータだと結論的にはそう成るよね…」

 

 「高機動重装甲型の重モビルスーツの分類から外してもね…」

 

 「ファンネルのコンテナを外した分、固定武装は伸縮式のハイパーメガビームランチャーは変わらないんだよね…」

 

 「なら、ミノフスキードライブをモビルスーツへの搭載はどうでしょうか?」

 

 「ニナちゃん、マジで言ってる?」

 

 「いえ、IS技術の中に光の翼みたいなのが…」

 

 「あぁ、ナノマシン技術だね。もしかして、ミノフスキー粒子にナノマシン技術の応用技術で…」

 

 「案外、行けそうですね…」

 

 アクシズの二大マッドサイエンティストの二人の不気味な会話だけで三徹をしたらしく、ニナは夫のガトーに産まれて間もない長女の子守を任せた事に夫から叱られたのは言うまでも無かった。

 

 しかし、二人の会話から生まれたモビルスーツの開発計画は技術的な問題さえ解決すれば可能である為にニナと束さんの部下達が二人から振り回される事が決定した瞬間だった。

 

 『ちくしょう!!

 

 更に技術躍進を50年も進める気かよ!?』

 

 だが、後継機の開発を聞いたニナの部下達は量産型ブラックローズⅡの組み立て作業をしながら叫んで居たらしく、二人の部下だった事を恨みながらも連邦には技術的な意味では追従を一切許さない事に誇りに思う部下達でもあった。

 

 

 

 束さんとニナさんの新たなモビルスーツ計画を余所にしながらムサシの修理作業は順調に進み、サイド2への偵察艦隊が帰還する。報告するのはアクシズの諜報機関のレコア大尉による報告だった。

 

 「ハマーン様、偵察より戻りました!」

 

 「レコア、ご苦労だったな。結果はどうだ?」

 

 「イチカ大佐の情報通り、木星方面へと航行中のジュピトリスをサイド2近辺にて発見しましたが、見慣れないタイプのモビルスーツが多数搬入されているのを確認しました」

 

 ハマーンはレコアから渡された写真を見ながらゴーグルをした様な頭部や胴体は動力パイプだらけの怪奇なモビルスーツに目が行く。無論、16m級のブルーローズシリーズと比べても小さく、全長は14m位しかないのだが、バックパックの大型スラスターから木星圏での重力下での活動を視野にした作りであるのが判る。

 

 「随分小さい作りなのだな」

 

 「ですが、限られた資材から小型化したモビルスーツだとやはり?」

 

 「間違い無く、ロールアウトしたばかりのザクⅢではカメラとセンサーの死角から一撃で殺られる可能性があるな」

 

 「それと、威力偵察した隊員からの報告ではビームシールドの搭載も確認済みですね」

 

 更にレコアはハマーンに別角度から撮った写真を出して強行偵察仕様の量産型ブラックローズⅡと射撃戦を展開しながらビームシールドを展開するジュピトリスの搭載機のモビルスーツを見せる。

 

 「ほう…強行偵察型のビームライフルを防ぐか…」

 

 無論、強行偵察型のブラックローズⅡが弱い訳では無いが、頭部はジェガンタイプと同じゴーグルアイ型ではあるのだが、大量のセンサーやレーダーを搭載した強行偵察型の機体ではあるが、偵察型故に実体型のシールドを持つタイプでハイパーメガビームランチャーを搭載しない変わりに加速用の大型バインダーを取り付けており、主武装はビームライフルとビームサーベルのみであり敵陣を高速移動しながら離脱するザク強行偵察型の流れを組むモビルスーツだった。

 

 しかし、レコアからの報告によりモビルスーツの出所はフロンティアサイドの企業であり、更成る警戒が必要だとハマーンに説いていた。

 

 「やはり、ブラックローズⅡシリーズもいつかは旧日本軍の零戦の様にカモにされる前に後継機の開発が必要みたいの様だな…」

 

 ハマーンの呟きを余所にフロンティアサイドの企業はアナハイムから流出したフォーミュラ計画の一部を既に物にしているのだが、ジュピトリスへと補充されたモビルスーツは試作段階のビームライフルとビームサーベルの標準装備し、ビームシールド付きの小型化した作業用モビルスーツである。しかし、シロッコの遺産とも言えたモビルスーツの開発技術は健在であり、後にイチカ達がモビルスーツ戦で苦労するのはまだ先となる。

 

 

 ハマーンが邸宅でレコアからの報告を受けている最中、イチカとシーマは目の前にいる目尻に涙を溜めたナツキと千秋に千春に千夏の娘の四人に囲まれていた。

 

 「パパの嘘付き!!」

 

 「グッハァ!?」

 

 千秋の一言が胸にグサリと刺さりながら吐血しながら倒れるイチカに泣きながらポカポカと母親の胸を叩くナツキにシーマは動揺を隠せない。

 

 「一週間も居ないし、授業参観に来なかったママの馬鹿!!」

 

 「ちょ、ナツキ!?」

 

 どうやら、ナツキはソロモンの居住区の学校での行事に当たる授業参観に来なかった事に腹を立てて居たらしくい。しかし、シーマの代わりに無傷なカエデとカナデに行かせたのだが、ナツキにしたら実の母親であるシーマに来てほしかったのだ。無論、千秋達も同じ事が言えたのだが、千秋達の悪ガキ振りを抑えるエマとクリスは謹慎処分中でだった事が事態を悪くしたとも言えた。それでも、謹慎処分中の妻達の事を理解していた千秋達だったが、母親達の不在と俺の仕事での不在は寂しかったのたろう。

 

 「ねぇ、一夏くん!

 

 お姉さんを助けてくれるかな!?」

 

 千秋達の妹達に寂しさの反動から玩具にされ、髪がボサボサ姿の楯無さんが助けを求めていたのだが、敢えて放置したのは言うまでも無かった。

 

 『ねぇ、作者!!

 

 私に恨みがあるのかな!?』

 

 いえ、恨みは在りませんが娘達の玩具になってね♪

 

 『ウッキィィ!!

 

 糞作者!!』

 

 結局、楯無こと刀奈はイチカの娘達の玩具にされて服までズタボロになり、学園時代の様に裸エプロン姿にされた挙句、簀巻きにされてイチカの寝室に放り込まれたが、父親のイチカが簀巻き姿で床で暴れる刀奈をベランダへと吊るしたのはお約束の光景だった。

 

 「もう、お嫁に行けないわ…」

 

 刀奈がこの様に呟いていたかは作者は知らないが、自宅に居候するセシリアとラウラも娘達にズタボロになるまで遊び相手をしたのだが、セシリアが娘達にとお昼ご飯を作ったのだが事件が起きる。

 

 「さぁ、皆様召し上がりませ♪」

 

 「……ゴックリ…(これ、食べ物なの!?)」

 

 『千秋、私と千夏で拘束するから…』

 

 禍々しいセシリアの料理に千秋はスプーンで掬い上げたが、クラムチャウダーは紫状のスライム見たいな禍々しくあり、スプーンの中ではスライムが垂れ目に見えながらも開いた口から『ヴォォォ…』と叫ぶ声に千秋は息を飲む。しかし、千秋は身の危険を感じたのか、姉妹達とニュータイプの波動による念和により、セシリアを千春と千夏が拘束しながら千秋は意を決してスプーンをセシリアの口へと押し込んだのだ。

 

 『うん、任せた!!』

 

 ガッタァ

 

 「ちょ、何を為さいますの!?」

 

 「先ずは、セシリアさんから!!」

 

 「はっ、離し…モッゴォ!?

 

 モッゴォ、モッゴォゴッゴッゴッゴッ!?」

 

 「「「「「「「「ヒッィ!?」」」」」」」

 

 スプーンをセシリアの口へと押し込むことに成功した千秋だったが、セシリアは真っ青になりながら藻掻き苦しみ床をのた打ち回りながら暴れ、そのセシリアが藻掻き苦しむ姿に怯えながら小さな悲鳴を上げた千秋達だったが、藻掻いていたセシリアは次第に大人しくなり、泡を吹きながら気絶したのだった。そして、セシリアは床でのた打ち回ったせいでテーブルに有った布製のナプキンが顔へとヒラリと落ちて気絶したセシリアの顔を覆うと、ナツキが何処から出したお輪を鳴らしていたらしい。

 

 チーン

 

 「な〜む〜」

 

 「ナツキお姉ちゃん、セシリアさん死んでないからね!?」

 

 「しょ〜なの?」

 

  無論、セシリアのポイズンクッキングは謹慎明けの鈴から言われたのは言うまでも無かった。

 



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サイド2へ

 

 

 ムサシの修理も終わり、謹慎が明けた鈴達にも三つ巴の戦いから喪失したブラックローズⅡシリーズの機体がムサシへと補充されたのだが、搬入を直前にして束さんが搬入に待ったを掛けたのだ。

 

 無論、搬入に立ち会うイチカ達はモビルスーツデッキに集まっており、専属のメカニックに説明を受ける手立てとなっていた。しかし、土壇場で搬入されたモビルスーツを見上げた一同は唖然とするしか無い。

 

 「束さん、これって…」

 

 「ブルーローズMK-Ⅱじゃ無いわね…」

 

 「うん、そうだけど?」

 

 束さんが土壇場で搬入したモビルスーツは、ソロモンの工廠から運び出された機体は全てが同型機に統一されており、機体へと専用のカラーリングを認められていたイチカとアンにシャロ以外は、旧ブラックローズⅡのカラーリングと同じだったが、新型機の違いはファンネルの廃止に伴いファンネルボックスは外されており代わりに可変式高出力のスラスターとバックパックから脇下までレールが敷かれた2基の伸縮式のハイパーメガランチャーを装備したバックパック。肘には余剰エネルギーを利用した高出力化したビームシールド発生装置に加え、腕部にはスポット式のビームガンを装備し、胸部のコクピットハッチを挟む様に両脇には90ミリのメガマシンキャノンを装備したブラックローズⅡとは全くの別物化したブラックローズⅡだった。(頭部がモノアイ化したアクシズ仕様のF91へと変貌している)

 

 「束さん、ファンネルが無いけど?」

 

 「イリアちゃん、アレは要らないから外したよん。それにね、ジュピトリスの持ち主の木星公社に束さんの可愛い作品を貶されたからブラックローズⅡの改装案の一つを製造ラインを無理矢理に束さんの強権を発動させて造らしたんだよね…」

 

 「機体名は?」

 

 「う〜ん…束さんでも製造に手一杯だったから考えて無かった…」

 

 「「「えっ…」」」

 

 束さんのカミングアウトに黙る一同。

 

 しかし、ブラックローズ系統で有る事は変わらず、ブラックローズⅢとして命名されオリムラ中隊が原因で最近は胃痛で悩むハマーン様によって既に登録されていたと知るのはソロモンから出撃した後だった。

 

 無論、ムサシのソロモンからの出撃直前に女性パイロット3名とブラックローズ系統の機体が三機だけ緊急搬入されたのだが、その内の一機はミチルの専用の機体だった。

 

 「キャノンタイプですわね…」

 

 「セシリア、私の機体にイチャモン付けてシメられたいの?」

 

 「いえ…」

 

 モビルスーツデッキで満足そうにブラックローズⅡのバリエーション機の重装支援型ブラックローズⅡを満足そうに見上げるミチルにギロリと冷たく一睨みされ、同じく補充要員としてパイロット訓練を終えたばかりの半泣き状態のセシリア。無論、パイロット訓練を受けて合格した後オリムラ中隊へと配備されたセシリアとラウラにもブラックローズⅡタイプの機体が送られたが、ミチルの機体とは別物だった。

 

 ハイパーメガランチャーを外した三機の内、ミチルの機体は重装甲化に加えてバックパックから延びる連装のビームキャノンとジムⅢ以上のマイクロミサイルポッドや各種ミサイルを装備し、長射程のビームスマートガンを装備した機体だった。

 

 同様にセシリアのブラックローズⅡも同じくカスタマイズされた機体でありスナイパータイプの機体とラウラは重装甲に特化した重砲撃戦仕様のキャノンタイプだった。彼女達二人がブラックローズシリーズを受理した背景にはオリムラ中隊のパイロット不足の解消が目的であり、元軍属だった事もありモビルスーツ操縦訓練でも優秀だった事だった。

 

 しかし、サイド1から来たが無理矢理に士官学校へと入学させられたジュドー達は学校を抜け出して遊んだりデブリ回収で働いていた事が学力低下へと祟り、未だにソロモンでの士官学校を卒業出来ずにサイド2への作戦には参加すらしていない。

 

 それでも、オリムラ中隊の面子はイチカを隊長にアンとシャロを筆頭に鈴とイリアにクリスとエマ、カミーユにフォウの三個小隊を始めとし、ミチルを小隊長にセシリアとラウラの支援小隊を含めた四個小隊の15機の機体がムサシへと格納されたが、三つ巴の戦いの様な最大艦載数である21機が搭載された頃と比べたらモビルスーツデッキは寂しく思うだろう。

 

 「ねぇ、何であたしのだけはガンダムヘッドなのよ…」

 

 だがしかし、搬入されたモビルスーツを見上げながらモビルスーツデッキでハンガーに固定された自分の機体を前にボヤくのは鈴だった。

 

 「と言われても、メカニックのアタシに文句をいわれてもなぁ…」

 

 「分かってるわよ!?

 

 でもさ、叫びたいわよ!!」

 

 ジオン系統の技師の趣味なのか束さんの趣味なのかはハッキリと判らないが、鈴専用のブラックローズⅢの頭部だけが吊り目型の凶悪顔したガンダムタイプの頭部を使用した事にげんなりしながら見上げていたのだった。

 

 そして、補充と整備が終えたムサシはサイド2へと向かうのだが、フロンティアサイドのとある企業を刺激する事になる事を予測出来なかったのだった。



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女宇宙海賊シャーシャ

久しぶりの投稿です。


 何故、どうして、こう成った?

 

 父親の部隊は、元はキシリア・ザビ直轄部隊だった。

 

 私の父親の部隊は一年戦争が終結後はアクシズに向かう事を拒み賛同した近衛部隊の一部の兵士と共にアクトザク十数機とムサイ改数隻にザンジバル級1隻を奪い逃亡して海賊に成り下がった。

 

 だが、海賊になってからはソロモンからサイド・フロンアティアへと繋がる航路で海賊行為を行なっていた。

 

 そんなある日、父親はサイド3からサイド・フロンティアへと向かうシャトルを暗礁宙域にて航行中のところを襲撃して襲う。

 

 その襲撃したシャトルの乗員には、当時14歳でサイド3経由でソロモンのタバネ博士のモビルスーツの設計を学ぶ為に単身で留学中であり、とある貴族の嫡男という婚約者と会う羽目になり、父親からの命令により一時帰省で帰る途中だった母親であるナディア・ロナと出合いシャトルの乗員乗客の全員を人質としたのだった。

 

 だが、母親はサイド・フロンティアの一貴族として責務から海賊だった父親に人質の開放を交渉したが決裂した。

 

 そして、母親一人だけが人質となる提案を可弱く幼い母親を人質にはしないと頑なに受け入れない父親にキレた母親は、あろう事か父親に殴り掛り三連左フックによるボディブローからの鳩尾への右アッパーカットをして父親を軽くぶっ飛ばして序に頭領を護ろうとした部下達までも殴り倒したが為に母親を好きになり気に入ってしまった。

 

 無論、故郷に婚約者が居るからと拒む母親は父親をこれでもかと何度も殴り、何度もぶっ飛ばした。

 

 結局、母親は父親からの猛アピールに屈したが、父親から海賊の頭領の地位を奪った後に結婚して私が産まれ、今では妹であるベラも生まれて一家で宇宙海賊と成ったのだった。

 

 だが、そんな幸せは直ぐに終わった。

 

 私が15歳へと成長し、14歳である妹のベラと共にソロモンからサイド・フロンティアへと繋がる航路の暗礁宙域にて1隻の戦艦が単艦にて航行している情報を元に頭領である母親の反対を押し切り偵察に出た。

 

 護衛する艦が無ければどうにも成らない戦艦だろうと甘い考えのまま・・・・・・・・・

 

 私達姉妹が乗るモビルスーツは母親が実家であるロナ家が所有する会社が開発した試作型のベルガ・ギロスだった。最初は、母親の実家は父親との結婚に猛反対したが、お祖父様へ右ストレートをプレゼントして強制的に認めさせた上で、私達の宇宙海賊へのモビルスーツの支援や補給が受けられる様になった。

 

 そして、私達姉妹が乗るモビルスーツも試験を目的に横流しされたモビルスーツだった。

 

 そのモビルスーツも混戦極めた三つ巴の最中にアナハイム・エレクトロニクス(またもややらかした)から流された情報を得ていち早く開発されたデナン・ゾンを指揮官用に開発し、タバネ博士が推奨した小型で高性能を目指した機体でもあり、当時のアクシズの主力モビルスーツであるマラサイや量産型ブラックローズに勝てる機体だとこの時はそう思ったのだった。

 

 だけど、現実は甘かった。

 

 戦艦ならマゼラン改級だと思い込みながら、マゼラン改級の哨戒網に捕まらない距離から偵察していたが、惜しくも相手の戦艦は見知らぬ新型戦艦である事には気付いたが既に戦艦の強力なレーダーの哨戒網に捕まり、戦艦から出撃した3機の新型モビルスーツから追い回される事態と成ったのだ。

 

 たが、その戦艦にはツッコミたい。

 

 戦艦と大きさが変わらない資源衛星を艦首に着けたまんま航行すんなと。

 

 衝突事故を起した艦と見間違えするんじゃ無いかと。

 

 『おっ、お姉ちゃん!!』

 

 ツッコミたい気分の最中、新型のモビルスーツに追い回され、放たれたビームライフルのビームをギリギリ何とかビームシールドで防いだ妹の悲鳴により現実逃避は終わる。

 

 通信越しからの妹の絶望を含んだ悲鳴を聴きながらも、しつこく追い回すモビルスーツに私はスラスターを全力にしながら高機動で逃げ回りながらヘヴィマシンガンを放ちながら牽制しながら逃げ惑う。

 

 だが、ヘヴィマシンガンの弾丸はカスリもしないし、当たりもしない。まるで、一年戦争を生き抜いた猛者の様なアクシズのモビルスーツのパイロット。

 

 圧倒的強者。

  

 そんな言葉が、相手のモビルスーツのパイロットには似合うだろうか?

 

 「なっ、舐めるな!!」

 

 『当たらないわよ。

 まだ、ティターンズのドゴス・ギアの対空射撃が可愛いく見えるわよ!!』

 

 変則的な軌道を描くアクシズの蒼い機体に舌打ちをしたくなるが、私の射撃術では当たらないのは当然かも知れない。

 

 

 

 無論、結果的には3機の新型モビルスーツに弄ばれた挙げ句に、元教官だっただろうか?

 

 実戦なのだが、教育的指導だったのだろう。

 

 私と妹が泣きたくなる様な指導まで入り、私達姉妹は違う意味で泣かされた。

 

 そして、3機のパイロットは満足したのか私達姉妹共々、モビルスーツの指の付け根から射出されたワイヤーで機体ごと簀巻きにされ拿捕されたのだった。

 

 勿論、拿捕されたのは私達姉妹だけでは無く母親達が乗る母艦と艦隊も戦艦から出撃しただろう別働隊により、母艦を護衛するモビルスーツ隊はなす術も無くワイヤーで簀巻きにされ無力化された上に艦内に突入した数人により無血による鎮圧され拿捕されたのだった。

 

 捕まった私達親子は、例の戦艦の艦内へと連れて行かれ、私達姉妹は拿捕した連中は誰かと思ったら、三つ巴の英雄だったオリムラ中隊だった。

 

 「たっ、タバネ博士!?

 すっ、すいませんでした!!」

 

 

 母親はタバネ博士の姿を見掛けるなり土下座していた。

 

 無論、私を追い回していたパイロットは一年戦争のエースパイロットの一人のアンさんだった。妹はシャルロットさんで現役の教官だった。

 

 撃墜されなくて良かったと思うのだが、こんな連中を襲おうとした事が馬鹿だと思ったのだった。

 

 「所属と名前は?」

 

 「私は海賊のシャーシャで」

 

 「同じく、妹のベラです」

 

 いま、アン大佐からこの様に取り調べ中だった。他の仲間はムサシの独房入りを果たしており、父親と母親はイチカ准将によりタバネ博士監視のもと取り調べを受けているらしい。どうやら、タバネ博士は教え子の母親の尻ぬぐいをしているらしいとアンさんから聴いた。

 

 私、シャーシャは妹と仲間達共にシャルロット中佐から中隊のパイロットとして鍛え直すらしい。

 

 本当、生意気言ってすいません。

 

 

 

 



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