蜂のTS短編 (飛び回る蜂)
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修羅場になる前に先に暴露する話

今書いてる小説が迷走気味なので気晴らしに。 書きたいのに書けない。こんな世の中じゃ。


ちなみに一人称は
赤魔導士♂(僕)
重層騎士♂(俺)
弓手♂(私)
スカウト♀ (元男)(俺)

精神的BL、いいよね・・・

いい・・・(自問自答)



 ここはある4人パーティの冒険者の家。この家に住むのは皆現代日本から死後、転生したものしかいない。しかしその過程はここではあまり重要ではないので割愛する。

 

 

「おはよ~」

 

 

 寝ぼけ眼で目をこすりながら階段を下りてくるのは赤魔導士。見た目こそ幼く見えるが、彼の放つ魔法のダメージ効率はすさまじいの一言に尽きる。その圧倒的な火力でこのパーティのダメージソースを担っている。

 普段は深緑のローブを被っているが今は寝巻のままだ。ほんのり赤みがかった茶髪もはね放題になっている。

 

 

「おはようさん!まだ寝ぼけてんのか?」

 

 

 椅子に座って寛いでいる図体がデカいのが重装騎士。通称ヘビィ。前線の要でありタンク役を一手に担う。その堅牢さはこの町のギルドの中でも追随を許さない。

 しっかり目が覚めているように見えるが、癖の強い黒髪の寝癖が取れていないことから意外とものぐさなのが見て取れる。

 

 

「ああ、おはよう。・・・お前も寝癖が直ってないぞ。」

 

 

 同じく座ったまま鋭い切れ長の目でチラっと見て返事をする細身の男が弓手。彼の放つ弓は正確無比。視界に入っているなら虫の目だって射抜いて見せるまさしく弓の名手と呼ぶに相応しい。

 彼は黒い髪を丁寧に揃え、眼鏡を整える。身だしなみがキチッとしておりその性格が伺える。

 

 

「はよーっす。飯出来てんぞー。」

 

 

 雑に挨拶をしてキッチンから出てくるのはスカウト。この世界には回復魔法なんてものはない。つまりは斥候の腕一つがパーティ全体の生存率を左右する。その点においてスカウトの嗅覚は鋭い。予知に近いレベルの直感で罠や危険を見抜く。スレンダーな体系も適していたと言える。

 彼女はエプロンを身に纏い、肩までかかる綺麗なブラウンの髪を後ろで束ねてまとめていることから料理をしていたことが分かる。そんな彼女は前世では男だった。そう、俗に言うTS転生をしてしまった憐れな被害者でもあった。

 

 

 

 彼等は前世で友人同士であったためこの世界においても四人で組んで冒険している。そんな仲良しな彼らも初めは決して優秀な冒険者ではなかった。それどころか散々なものだった。

 

 元来気弱な赤魔導士。自分の力に過信しがちなヘビィ。プライドが高くスタンドプレーに走りがちな弓手。なぜか自分だけ女になり精神不安定に陥ったスカウト。

 

 まったくもって協調性がなく、バラバラだった彼らがやってこれたのは皆が同郷だったからだ。

 

 この世界に知人は自分たち以外にいない。誰も自分達の過去を信じてくれることはない。誰も自分達が10年以上をどこで生きてきたのかを証明することはできない。

 

 彼らがそれに気づいたとき、真に彼らの友情は固い絆で結ばれた。決して仲間を、友を見捨てないと改めて誓ったのだ。それ以降の彼らが町でも有数の「最優」の評価を得る冒険者となるまでに時間はそうかからなかった。

 

 

 

 時刻は早朝、4人の一日はスカウトの作る朝食から始まる。今日は良質な小麦を使ったパンを使った卵のサンドイッチ、オニオンスープ、牛乳ととてもご機嫌な朝食だ。

 

「この間のクエストは大変だったねー。まさかグリフォンが群れだなんて思わないよふつー・・・」

 

「あいつら普段は孤高貫く癖になんで群れてたんだろうな。3匹に群がられたときは俺死ぬかと思ったぜ?」

 

「まったくだ。もう二度とごめんだ。・・・そういえばギルドへの報告は済ませたのか?私はしてないんだが。」

 

「俺がやっといた。あの辺調査中に珍しい薬草の群生地があったから報告ついでにな。」

 

「ありがとー!」

 

「助かる。・・・本来はリーダーやってるヘビィ、お前が行くべきなんだぞ。」

 

「わ、わーってるよ。すっかり頭から抜けてたんだ・・・」

 

「気持ちはわかるけどね。僕もクエストから帰ってきて早々寝ちゃってたし。」

 

「まったく、次からはちゃんとやってくれよ?」

 

「「はーい」」

 

 他愛のない話と愚痴で朝の穏やかな時間が過ぎていく。彼らの和気藹々とした雰囲気からは確かな信頼を感じる。この家の中は自分達が自分達でいられる数少ない場所だった。

 

「あ、そういえばこの後時間あるか?予定ある奴いる?」

 

「んー、僕は特には。今日は休もうと思ってたし。」

 

「俺もねぇな。しいて言うなら消耗品の補充とクエスト見に掲示板行くくらいか。」

 

「私は矢の補充だがそこまで急ぎではない。何か用があるなら付き合おう。」

 

「そうか、んじゃ食いながらでいいから聞いてくれ。」

 

 彼ら一蓮托生、運命共同体。パーティは友達であり、戦友であり───

 

 

 

 

 

 

 

「お前ら全員と一回以上ヤっちゃたからこの場で報告しとくわ。」

 

「「「ブブーッ!!」」」

 

「うわ、、きったねぇ!!」

 

 

 

───「兄弟」であった

 

 

 

 

 

 

 

「なんだよお前ら。そんなに驚くことか?」

 

「お、おおおおお驚くに決まってるじゃん!!なんで言っちゃうの!!」

 

「言わずに後でバレた方が問題だろ。」

 

「だからってぇ・・・。うぅ~~~~・・・」

 

 赤魔導士の顔は真っ赤になったり真っ青になったりと慌ただしい。が、それ以上にもう二人の方が慌ただしい。

 

「それ朝言うことか!?寝起きで飯食いながら話す内容かこれ!俺がおかしいのか!?」

 

 ヘビィは頭を抱えながら汗だくになりつつ言葉を垂れ流している。うるせぇこうでもしないとお前ら出かけちゃうだろうが。

 

「すまない出来心だったんだ許してくれとは言わない憎んでくれ私が悪いんだ心の弱い私が全て悪いそうだいっそこの首差し出せば───」

 

 テーブルに突っ伏しながらブツブツと呪詛を垂れ流すのは弓手。まぁ、こいつの場合は、うん、そうなるのも仕方がなかったかもしれん。

 

 

 だがそんなことは関係ない。賽は投げられたんだ。このまま全速力で突っ切ってやる。

 

 

「うるせぇぞ男ならシャキッとしやがれ!おい弓手!鬱ってねぇで顔上げろ鬱陶しい!まったく、勇気を出してカミングアウトしたっていうのにお前らときたら・・・」

 

「ご、ごめんねスカウト。でも、どうして急にカミングアウトしたのか聞いてもいいかな?僕正直全員がそうだったなんて思ってなかったから・・・」

 

「理由?んなもん決まってんだろ。お前らが変にこじれねぇ為にだよ。一回ヤったくらいで責任だのなんだの言われたくねぇ。だから全員に共有する。恥も外聞も捨ててここでお前らとの情事の内容を全て暴露する気でいる。なに、男は下ネタで育まれる友情もある。受け入れろ。」

 

「思ったよりヤバめなこと考えていらっしゃる───!!」

 

「待て、待ってくれ、待ってくださいお願いしますスカウト様。俺は───」

 

 

 

 

 

「騒がしいぞ服装厨。ことあるごとにメイドだのバニーだの持ち出しやがって。お前のせいで数少ないスカウト用装備汚しちまったから新調する羽目になったんだぞ。理解してんのか。」

 

 

 

 

 

「神は死んだ(フッ」 ドサァ

 

「ヘビィ───!!」

 

「起こせ弓手。次は赤魔、お前だ。」

 

「ま、待ってよ。スカウト?僕らは仲間だよね?だから───」

 

 

 

 

 

「ヤってる最中にお姉ちゃん呼びをするのが仲間ならそうなんだろうな。知ってんだぞ、二人で出かけてるときに人前でそう呼んで夜ひそかに燃えてるの。シチュへのこだわりが強いのは認めるがちょっと引くわ。」

 

 

 

 

 

「ごめん弓手。ヘビィと一緒に先に逝くよ。」

 

「赤魔───!!」

 

「おま、お前もう俺と赤魔という犠牲者を出してなお止まらないというのか!鎮まり給えー!!」

 

「誰が祟り神だ誰が。まったくどいつもこいつも追いつめられて精神的に不安になってたのは分かるがよぉ、いくら女顔になったとはいえ、こんな元男の貧相な体抱くくらいなら店行けよ店。男ならおっぱい好きだろお前ら。」

 

「スカウト、君自身はそういうことに抵抗はなかったのか・・・?」

 

「んーまぁあんまり。元々恋愛ごとに興味もなかったし、体一つでお前ら助けられるなら安いもんかなって。」

 

「もっと自分の体大切にして??」

 

「・・・こうなったらヤケだ。まだ弓手のプレイ内容言ってなかったな?」

 

「おい待てやめてくれ。後生だ、頼む。」

 

「んー弓手はなぁ・・・割とガチっぽいからなぁ・・・」

 

「僕らだけ暴露されてそのままなんてあんまりでしょ!!」

 

「そーだ!そーだ!横暴だ!」

 

「まーいっか、これで公平だし。」

 

「やめてくr───」

 

 

 

 

「プレイ自体は普通だったけど、終わった後前世の名前で呼んでくれっていいながら泣いてたもんなぁ。んでそれを俺が抱きしめながら頭撫でてた。時折「母さん」って言ってたのはこう、何とも言えなかった。」

 

「正直、悪い気分ではなかった。母性ってああいうもんなんだな。」

 

 

 

 

 

「───アッ!」

 

「弓手が死んだ!」

 

「この・・・人格者!」

 

「ありがとう。さて、まだまだ続くよ暴露大会。2週目行くぞ。」

 

「「・・・え?」」

 

「ちなみに弓手が行為に及んだのは本当に心折れそうになった先の一回だけだ。お前達は・・・分かるな?」

 

「「ヒエッ」」

 

 

 

 

「赤魔、背中の裾を引っ張るのをその日の合図みたいにするのはやめてくれ。直接言ってくれた方がまだマシだ。」

 

「ヘビィ、正直お前は少し乱暴だし上手いとはいえん。もう少し気遣って欲しい。」

 

「赤魔、抱きしめてくるのはかわいらしいと思うが、その、胸を吸うのはだな・・・」

 

「ヘビィ、外でしようとするのはやめてくれ。マジでやめてくれ。俺としてはスリルよりホラーの方が強い。」

 

「「もうやめて。しぬ。」」

 

「完全に突っ伏してしまったな。・・・私もシてしまっておいてなんだが随分負担をかけたな。すまない。」

 

「割とその辺は気にしてない。別に痛いわけじゃないし。問題はそこじゃないんだ。」

 

「というと?」

 

「危険日ずらすのには本当に苦労した。こいつら間隔が結構早いんだわ。」

 

「あぁそういう・・・」

 

「ごめんなさい・・・」

 

「悪かった・・・」

 

「まぁ、なんだ。こういうのを暴露して許される関係ってのは本当に恵まれてると思う。俺はいい友達に恵まれたよ。」

 

「終わったの・・・?」

 

「ああ、終わったんだ・・・!」

 

「表情も相まって戦争明けみたいだな。正直笑える。」

 

「いくら弓手でもその発言は許しかねるよ・・・!」

 

「先に言っておくがお前ら以外に抱かれたことはないぞ。ビッチと言われてもしょうがねぇさ。でもお前ら以外にこの体は絶対に触れさせねぇ。」

 

 

 

 

「まぁ、なんだ。お前達なら、いいかって。」

 

 

 

「「「ハァー・・・」」」

 

 

 

「なにため息ついてんだ。嫌ならこんなTS男抱いてねぇでさっさと女作ってこい。見てくれは悪くねぇんだからより取り見取りだろ最優冒険者共。な?さぁ、話は終わりだ。もう早朝とは言えない時間だし出かけるぞ。」

 

「この流れで?スカウトのその辺の度胸はどうなってるの?鋼の冒険者心なの?」

 

「男らしすぎんだろ・・・」

 

「その方が後腐れないだろ。さっさと飯食っていくぞ。」

 

「まぁこれからのことはこれから考えるか。」

 

「あんなことカミングアウトしておいてこの空気だもん。今までとあんまり変わらなそうだよね。」

 

 

 

 

 

(とは言ったけどねぇ・・・)

 

 

【目ェ覚ませボケ。テメェが戦わなきゃみんな死ぬんだよ!!】

 

【お前がいるからみんな助かったんだ。誇れよ赤魔。】

 

 

 

 

(あの時一番不安定だったはずのスカウトがよぉ・・・)

 

 

【お前が前にいるからみんな安心できるんだ。最高だ。カッコいいぜお前。】

 

 

 

 

(・・・いつも心折れそうなときに傍にいてくれんたんだ。)

 

 

【大丈夫だ。お前は落ち着いて狙え。俺が守る。敵だけを見てろ。】

 

 

 

 

 

【・・・分かる。分かるよ。つれぇよな。】

 

【親も、知り合いも、友達も、恋人も】

 

【みーんないねぇんだもん。苦しいよな・・・】

 

【大丈夫だよ。俺はここにいる。だから、お願いだから・・・】

 

【逝かないでくれ・・・】

 

 

 

 

 

 

((好きになるに決まってる・・・))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな中、弓手は独り言ちる。

 

(スカウトより男心を知っていて寛容で、家事も出来て、斥候の任務も出来て・・・)

 

(はたしてこの世にそんな人間は存在するか・・・?既に私達ズブズブだぞ。)

 

(いや、やめよう。私の勝手な考えで皆を混乱させたくない。)

 

(・・・いつか、本当に、好きになってしまいそうだ・・・)

 

 

 




TSした友達好きになっちゃう男友達シチュいいよね・・・

いい・・・(再自問自答。)



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TS忍者(♀)と少年ヒーローの話



 TSを書きたいと思ったときッ!すでに書き終わってるんだッ!


 だから書きました。



シノビ (17♂→♀ 前世での享年28歳 165cm 一人称わたくし)

ヒーロー(14♂  163cm 一人称僕)


従者と主の身分差、いいよね・・・

いい・・・(自問自答)




 

 

 

酒場はがやがやと賑わいを見せている。衛兵、傭兵、商人、町人、町の荒くれども。それら全てを綯い交ぜに、下世話な噂と酒を肴に盛り上がる。

 

 

 

「なぁ、あの噂は聞いたか?」

 

 

「聞いたぞ、ヒーローのことだろう。」

 

 

 

 この街では小さなことから大きなことまですぐに噂話になる。近所の旦那の浮気話から果ては遠い都の英雄まで。娯楽が少なく、だからこそ酒とつまみに噂話があれば十分な男達。そんな奴らの馬鹿話。

 

 

 

「その通り!最年少冒険者にして深淵ダンジョン踏破者っ!」

 

 

「深淵!?深淵といやぁ王国の一流パーティが手を拱いている、ってぇ話じゃぁないか!そいつがやったのか!?」

 

 

 

 テーブルを囲むのは三人。禿頭の建築屋、鎧を外して軽装な衛兵、商人の中年男の三人組。彼らはこの街で活動している町人達。冒険者ではないが経済を支える大切な役割を持った男達だ。

 

 

 

「おうよっ!あのヒーロー様が背負う剣でダンジョンの主をズバッ!とやったに違いねぇ!いやーっとうとう俺達の街から最優冒険者様の誕生かぁッ!こいつぁめでてぇぜ!!」

 

 

 

 この街は規模で言えば決して大きくない。街というには聊か大げさ、しかして町と呼ぶには小さすぎ。そんな街では新たに生まれた英雄の話で持ち切りだ。

 

 

 

「俺ァ攻略後のアイツを見たぜ!まー見た目ほんとガキみたいでな、俺のガキとおんなじくらいだ。ちっちぇーのに、きっとあの背とおんなじくらいの剣振り回しやがるんだ。ありゃただもんじゃないね。」

 

 

「私の店に買い物に来てましたよ。消費してしまった布を補充したいと。衛生にかなり気を遣うあたり少し潔癖のきらいがあるかもしれませんね。買ってくれるんなら何でも構いませんがっ!」

 

 

 

 そう豪語するのは商人の男。彼はこの街の経済を一手に担う中々のやり手。惜しむらくは金にがめつく、酒が入ると少々口が軽いこと。もっとも本当に重要なことは絶対に言わないのは商人そのものの性か。

 

 

 

「しっかしこの辺も最近物騒になったな。こないだ最優パーティのやつらがグリフォン三匹相手にしたのは知ってるよな?」

 

 

「おお知ってるぞ。そんときは俺も加勢したしな。いやしかしありゃ凄かったぜ!敵も恐ろしかったが、前衛二人の大立ち回り!後衛二人の精密な狙い!最短最優のパーティに違い無しってな!」

 

 

「スカウトさんや弓手さんはよく消耗品を買いに来ますからね。うちの商会も鼻が高いですよ。宣伝効果にもなりますしねっ!ホッホッホ!」

 

 

 

 それを聞いた野郎共はガハハッ!と大声を上げ、質問した男は憂慮した顔を浮かべる。

 

 

 

「最近、どうにも魔物の動きが活発だ。近々またダンジョンが生まれるかもな。」

 

 

「へへっ、そうは言うけどよ。新進気鋭のヒーローズ!それにこの街には最優パーティだっている!そうそう大事にはなるめぇよ。」

 

 

「まーなぁ。ところでその、ヒーローだったか?あいつは二人組じゃなかったか?誰か一緒にいたような・・・」

 

 

「おっ、耳が早いね。そうさ、あいつが連れてんのは女さ!!」

 

 

「カーッ!!かのヒーロー様も女にゃ勝てないってか!」

 

 

 

 彼らの話題は同行者に移る。女の話となると人柄が出るのはご愛敬。女日照りの衛兵隊にとってはなおのこと、建築屋と商人にはすでに妻も子もいる。それがまだ若い衛兵の心に冷たい風を吹かせていた。

 

 

 

「いやいや待てよ!その女もダンジョンに行って、しかも一緒に踏破したってんだろ!つまりヒーローに匹敵するってことか!?」

 

 

「どうだかな、見た感じかなり軽装だったように見えた。スカウトか、シーフか・・・」

 

 

「最近盗賊ギルドにシノビとかいう連中が幅利かせてると聞きます。案外そこだったりしますかな?」

 

 

「シノビ。ああ、ニンジュツとかいうあのけったいなもん使うやつらか。」

 

 

「まるで影みたいなやつらだ。まったく、狙われたくないものだな。」

 

 

「ここだけの話ですが、彼らは暗殺と要人警護の請負が多い。だからヒーローというのも案外・・・」

 

 

「・・・重要人物、ご貴族様ってことか。まったく、彼らが戦うような相手では我らには荷が勝ちすぎる。」

 

 

「よーく言うぜ衛兵さんよぉ!あの最優の重装戦士相手に試合で勝ち越してんだろぉ?謙遜は良くねぇぜ!」

 

 

「それはあいつの経験が少ないからだ。その内俺では力不足になる。遠くない内に、な。」

 

 

「しかし最近になって優秀な冒険者が増えましたな。急に、という印象を受けます。衛兵殿の不安が当たらぬといいのですが・・・」

 

 

「おいおい酒を飲むときに不安を煽るようなこと言うんじゃねぇよ。ヒーロー様のことも話したりねぇんだ、パーッとやろうぜ!」

 

 

「そうだな、今不安がっても仕方ない。そうさな、ヒーローが女連れなら意外と、恋人という線もあるんじゃないか?」

 

 

「おお!なるほどなるほど。本人はやんごとなき身分、それを守護するシノビ。そして二人は共に旅をして仲を深める・・・!」

 

 

「なんだいそりゃあ、盛り上がりそうなテーマじゃねぇか!おうい詩人さんよぉ!」

 

 

「はいはい、この詩人めになんの御用でしょうか?」

 

 

 

 声をかけたのは酒場の詩人。時折情報を仕入れてはそれを詩にしおひねりを貰う、謂わば芸人である。彼らは耳がいいのか、多くの報せを聞きつけては詩にする。

 

 

 

「実はな───ってぇことなんだ。」

 

 

「ほほう!成程成程、それは燃えますね。ようし、即興で拙くはありますが一つ歌わせていただきましょう!」

 

 

「おお!やってくれるか!ようし皆、詩人さんが歌ってくれるぜ!タイトルはそうだな、何にしようかね。」

 

 

「そうだな。影の恋文、なんてのはどうだろうか。シノビの女が主であるヒーローに手紙を書くんだ。しかしそれは秘めるべき思いで・・・」

 

 

「いいですねえいいですねえ!古今東西、身分違いの恋ってものは人気ですからな!」

 

 

「では早速───」

 

 

 

 

 その話題になった時、一人の酒飲みが席を立つ。誰に知られるでもなく気配を絶ち、会計に向かう。

 

 

 

「・・・お会計、お願いします。」

 

 

「あん?いいのかい、聞いていかなくて。」

 

 

「いいです。早く。」

 

 

「ハイハイ、確かにちょうど。・・・もういねぇや。さて、俺も聞くとするかね。」

 

 

 

 

 

 とりとめのない日常、かけがえのない親友。彼らに貴重な語らいの時を与え、夜は更けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼らが友と語らい下世話な話に花咲かせる中、街を駆け宿を目指す影が一つ。

 

 

 

 

 

 

「・・・しっかりしろ私。そもそも私は男だった。主殿にもそれは伝えているし、私が選ばれるなんてことはあり得ない。」

 

 

 

 独り言を吐き出しながら帰路に就く彼、いや今は彼女は先の話題に挙がったヒーローの仲間。シノビの一員、クノイチである。

 

 

 彼女こそシノビ。陰に潜み、手段を選ばずあらゆる技術をもって目的を達する。その為ならば自死も厭わず、殺人も躊躇わない。仕えるものの命とあらば、文字通り命懸けでそれを成すだろう。

 

 

 彼の人生は決して明るいものではなかった。現世で命を失い、読み書き計算が出来る子供として生まれたまでは良かった。だが早熟の娘を気味悪がられ親に売られてしまい、悪質な人身売買によって価値ある奴隷として売られていたところを今の主に助けられた。

 

 

 主殿はさる国の王子であり、王位継承権こそ無い為兄達に代わりこの国の実情を見て回っているらしい。その結果私が助けられたので感謝しかない。思わずその旅路に同行し、御身をお守りしたいと願い出た。

 

 

 せめて付き従うなら華奢なこの身でも役に立とうとスカウトになろうとした。しかしマンガ好きな彼がシノビという名を聞いた時、心の中の少年が疼いてしまい今に至る。幸い適正もあったし良いことづくめだ。

 

 

 

「そもそも主殿は未だ14。倫理と法のもとで生きてきた私が少年に対して劣情を催すなんてことは決してあり得ない。あんなにも愛らしく、可愛らしく、そして美しいあの方に・・・」

 

 

 

 酔ってめちゃくちゃなことを言っているが本人は全く気付いていない。余談だがこの世界のシノビは「忍」というわけでなく、装備や概念的な「職業」であって組織ではない。よってこういう私欲にまみれたシノビもかなりいる。

 

 

 ブツブツと独り言を呟きながら夜の闇を歩むこと十数分。目的の宿、目的の部屋にたどり着く。念のためノックして入室を問う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「主殿、戻りました。」

 

 

 

 中から返事は聞こえてこない。どうやら眠っているようだ。なるべく音をたてないようにゆっくりとドアが開かれる。

 

 

 

(・・・相変わらずお美しい。私とは大違いだ。)

 

 

 

 ベッドに横たわる彼女の主は見目麗しい。金の御髪、今は隠れているが翡翠の瞳、立ち居振る舞いは正しく王子のそれ。女の身となったクノイチよりも綺麗なのは少々複雑な思いを彼女に浮かばせるようだ。

 

 

 主殿はさる国の王子であるからして、老若男女を問わず魅了する見目麗しさは正しく三千世界を照らす希望の灯台の如く。そう、だからこそ、だからこそ。

 

 

 

「私が魅了されたとてなんら不思議ではない。そう、そうに違いない。この顔が悪いのだ。私は悪くない。」

 

 

 

 衣装は既に軽装に着替えてある。後は睡眠を取るだけだ。口のあて布も外しベッドに向かう。

 

 

 

「・・・失礼いたします。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ()()()()()()()()()、向かい合うように懐に潜りこむ。そもそもこの部屋はベッドが一つしかないのだから当然の帰結。だから何も悪くない。そう自分に言い聞かせて同衾を行う。

 

 

 

「ふあぁ、あたたかい・・・」

 

 

 

 その温かさに安心したのか、彼女の口は独り言ちる。

 

 

 

「あるじ殿は私のことをいつも愛しい猫の子の様に扱う。私の気も知らず、斯様な愛らしい寝顔を私に見せる・・・ズルいです・・・」

 

 

 さっさと寝るべきなのに口は止まらない。つらつらと主への文句、聞きようによってはただの惚気を垂れ流している。

 

 

 

「・・・それに主殿は豊満な方が好みだし、私はぺったんこだし。髪だって私は短いし、主殿は長い方が好きだし。この間だって長髪巨乳の娘をジロジロ見てたの知ってるし・・・。この間娼館の方を見ていたのも知っている、どうせならこの身体を使えばいいものを・・・」

 

 

 

 ブツブツと独り言ちる。どうせ主殿は眠っているのだ、多少の文句は耳に残るまい。そう思う彼女の独り言は夜の闇に消えていく。

 

 

 酒も入ってるからか、すぐに眠気が襲う。明日はこの街に滞在する最優パーティとの顔合わせだ。少し、楽しみにしている。

 

 

 

「おやすみなさいませ、あるじどの・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 就寝のあいさつは誰に聞かれるでもなく、夜闇に溶けて消えていく───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(寝れるか──────ッ!)

 

 

 

 ───わけでもなく、起きている主に全て伝わっている。シノビともあろうものが何たる迂闊!ポンコツ!そもそも従者もつけずに一人で眠りこける等王族ならば絶対にしない。彼女が来るまで起きていただけである。

 

 

 

(いやいやいやいや、めっちゃ見てるけど!?めっちゃ好きな女の子として見てるけど!?)

 

 

 

 そもそも彼が彼女を従者にしてるのは、彼女を助けた後に強く嘆願されたのを王族ともあろうものが断り切れずのことだ。決して義理人情だけではない。

 

 しかもそれが最近になってシノビ、それもクノイチになってから軽装が目立つ魅力的な女性になったのだから思春期の彼にはたまったものではない。

 

 

 

(絶対僕を異性だと思ってないよ!じゃなきゃこんな無防備にベッドに来るわけないじゃん!誘ってる?もしくは僕を破滅させたがってる?どっちにしろ眠れるわけないだろこんなのー!)

 

 

 

 彼は確かに、彼女の前世が成人男性であったことは聞いてる。しかし、彼からしたら前世なんてものは証明できないもの。今の彼女から見て判断するしかない。

 

 だが彼はその慧眼から間違いなく前世は男だと確信していた。立ち居振る舞い?言葉遣い?否、否である。

 

 

 

(油断しすぎなんだよー!け、軽装って言うのは分かるけどハダジュバン?一枚はいくらなんでもおかしいだろっ!体が当たってるっ、当ててんのよ!?)

 

 

 

 彼は非常に混乱している。明日には他パーティとの面談を控えているにも関わらず、彼にはそれに寝坊するという確信があった。

 

 

 

(長髪巨乳?ごめん少し見てましたっ!でも君の愛らしさの方が万倍上だ!それは覆らない!でも娼館を見てたってなんだ?僕には覚えが・・・いや待てあの建物か?いや分かるかッ!昼間は分からないようにカモフラージュされてるじゃないか!そもそも線が細いのを好きになったのは君のせいだ───ッ!!)

 

 

 

 彼も彼で中々に末期だ。それを言葉にしようものならもう少しこの状況も変わっていたかもしれない。性的な意味で。

 

 

 

(つ、使う?使うってそういうことだよね?いやそれは彼女が望むなら・・・って待て待て待て王族の血をばらまいていいわけないでしょ!するなら、そう!ちゃんと迎え入れられるようにするか王族やめるかだし、でも彼女と冒険者として生きるっていうのも中々悪くないな・・・)

 

 

 

 齢14の少年に秘めたる想いに気づけというのが無茶かもしれない。しかし両想いであることが分かったのだけが彼にとっての僥倖であろうか。既に彼は王族としての義務より個人の感情の方が勝ちつつある。兄達が聞けば苦笑い応えるだろうが。

 

 

 

(どうすればいいんだ。明日には早朝からギルドを交えて彼らと情報交換、それが済んだら父上の元に一度戻って報告。それが済んだら・・・ああやらなければならないことが多いのにこのままじゃ眠れない。うぅ、恨むよクノイチ・・・。いっそ父様に紹介して逃げ道をふさいでやろうか・・・)

 

 

 

 思春期真っただ中の彼の心境など気にしないまま、そんなことは関係なく時間は進み、夜は明ける。誰にも止めることなどできず、全ての人間に夜明けは必ず訪れる。慈悲深く、そして容赦なく───・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日はお招きいただきありがとうございます。ヒーロー等と呼ばれていますが、お好きにお呼び下さい。重装騎士殿。」

 

 

 

「ああ、よろしく・・・大丈夫か?隈がひどいぜ?」

 

 

 

「ああ、いや、気にしないでください。そう、猫のせいで眠れないのです、ええ。」

 

 

 

「猫ぉ?(・・・こいつもまだまだ子供ってわけか。俺達が一層頑張ってやらねぇとな。)」

 

 

 

「(結局一睡もできなかった・・・)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「む・・・ではあなた方も前世を・・・」

 

 

「ああ、あんたもか。苦労して・・・るのはあいつの方か、ご愁傷さん。」

 

 

「?」

 

 

 

 





 精神的BLの精神的年齢差によるおねショタっていいよね・・・

 いい・・・(再自問自答)




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