七草家の忍術使い (ネヘモス)
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魔法嫌いの魔法師(忍び)

俺は何を書いてるんだ(自問自答)


西暦2095年3月下旬。横浜某所にて。

 

「早く行こうよーナルトー」

 

「早くしないと置いていく」

 

「何でこんな事になってるんだってばよ…」

 

二人の少女と一人の少年という三人組が並んで歩いていた。その三人は色々な意味で周囲から目立つ存在だった。少女達の一人、光井ほのかは穏やかな印象を受ける茶髪で、その大きな胸は周囲の男の目を引いていた。もう一人の少女、北山雫は小柄で物静かな黒髪ショートで少年の裾を引っ張っていた。

そして、ほのかからナルトと呼ばれた少年は金髪碧眼のツンツンヘアー、頬に猫のヒゲのような印という奇抜な印象で周囲の人々は何でこんな男がこの2人の付き添いなのだろうと思うだろう。彼の名は、七草(さえぐさ)ナルト。言ってしまえばただの一般人、いや、一般人だった。あの事件が、起こるまでは。

 

ナルトは突然、精神世界の存在に呼び出される。

 

『どうした九喇嘛(くらま)?わざわざ呼び出すなんて』

 

九喇嘛と呼ばれたそれは巨大な九尾の狐の姿を取るナルト本人にもよく分からない存在だ。だが、わざわざ精神世界に呼び出すという事は余程重要な事なのだろう。

 

『ナルト。お前いつまで身分を偽るつもりだ?』

 

『何で、そんな事聞くんだってばよ?』

 

『惚けても無駄だ。兎に角、儂と拳を合わせろ』

 

よく分からないまま、俺は九喇嘛と自分の拳を合わせる。すると、

 

自分たちのいる場所の近くに、僅かながらの悪意(・・)を感じた。そして、そいつが何をしでかそうとしてるのかまでも分かってしまった。

 

『どうするナルト?このまま行くと、コイツに巻き込まれてお前のそばにいる女二人どころか、周りの人間に多大な被害が及ぶ。お前が動くのも勝手だろうが、今回ばかりは隠しきれない』

 

『どういう意味だ?』

 

『こっちが聞きたいくらいだ、ナルト。何故、お前は魔法師を嫌う?お前の連れも未熟なれど魔法師だろう?そして、』

 

ーーーお前自身、魔法師の筈だ。

 

この言葉が、俺の心に重くのしかかる。確かに俺は魔法師なのかもしれない。でも、その所為で俺は天涯孤独の身になった。俺の両親は10年くらい前に俺を七草家に預けて、そして原因不明の死を遂げた。だから決めた、俺は絶対に魔法師にはならないと。今のところ、七草家で俺が魔法を使える事を知ってる人間はいない。

 

『父ちゃんも母ちゃんも、魔法師だから死んだんだ…!それを嫌って何が悪い!』

 

『お前なぁ、ここに来た本来の目的は覚えてるか?』

 

それは、と俺は口を噤む。幼馴染のほのかと雫がそれぞれの志望する高校に進学する祝いと言って雫が言い出した。ほのかと雫は国立魔法大学附属第一高校、俺は一般の高校に入学が決まっていた。魔法師を嫌ってはいるが、この二人は別だった。ほのかも雫も、俺が魔法師を嫌っていると言っても付き合ってくれてるし、

 

5年前のあの日の、俺の姿を見てもなお、いつも通りに接してくれた。

 

『悪いな、儂の質問の仕方が間違ってた。お前は、あの二人を守ると言ってなかったか?』

 

そうだ。俺はあの日の恩返しをしたい。だから、今度は俺が期待に応える番だ。

 

『まっすぐ自分の言葉は曲げねェ、それが俺の忍道だ!』

 

『それだ、儂はその言葉を待っていた。ナルト、実はなお前の父、ミナトから頼まれてた事がある』

 

すると九喇嘛がその大きな掌を俺の頭に翳した。

 

『まずは、お前は勘違いをしている。お前の一族は代々、魔法師の家系ではない。古式魔法・忍術を扱う「忍び」だ。そして、お前は先祖返り、仙人の力をその身に宿した。ミナトはその強大な力を欲しがる輩が現れないように、お前の中に儂を封印して、忍術を使いにくくすることにした』

 

『は?どういうことだってばよ…』

 

『今に分かる。それより、現実世界に戻すから、続きは七草家に戻ってからな』

 

分かった、と軽く会釈すると、俺の意識は現実世界に引き戻される。

 

「……ト?しっ……!ナルト!?」

 

「…何だ、雫?お前が声を荒げるなんて珍しいな」

 

どうやらあの時にぶっ倒れたらしい。九喇嘛、せめて座ってる時とかに呼び出してくれ…。

で、何で俺ら柱に隠れてるんだ?

 

「どうもこうも無いよ。私達、今絶賛

 

 

 

テロリストに追われてるもん!!」

 

「な…!?」

 

何でそうなった!?と声が出そうになったのをどうにかこらえる。ほのかと雫の話を要約すると、突然倒れた俺をどこかに運ぼうとベイヒルズタワーに入った。すると、突然スプリンクラーが起動して異常に気がついた。そこには発火能力者(パイロキネシスト)の脱獄囚の男と銃火器で武装したならず者がいて、ほのかは咄嗟に閃光魔法で目眩しを行い、その隙に雫と俺を連れてベイヒルズタワーの奥に逃げた。と言う状況らしい。

なるほど、だいたい分かった。雫は今日はCADを持ってきていない、ほのかは閃光魔法しか使える魔法が今のところ無い。なら、

 

身体そのものがCADの俺が戦うしかない。

 

「ほのか、今こっちに何人来てるか分かるか?」

 

「銃火器持ってた人が全員…。六人だった気がする、まさか!?」

 

「良いの?折角普通の高校に進学できたのに」

 

「馬鹿野郎、どうせどこかで俺が魔法師なのはバレる運命だ。後で義姉ちゃんが怖いけど…」

 

そんなことはどうでもいい。今は、幼馴染の二人の女の子を助ける!

 

右手と左手で印を組む。それは、俺が最も得意とする忍術の印。俺の戦術の要になる術。

 

ーーー影分身の術!

 

己の中の霊子を活性化させ、一般人にも(・・・・・)視認できるようにさせる。そして、自分と瓜二つの二人の分身体を作り出す。そして俺と分身体が両手に想子を乱回転させるように放出、球状に圧縮して留める。そして、目にも止まらぬ早業で柱の影から飛び出し、銃火器集団の目の前に現れる。

 

「な、なんだコイツ!?」

 

「う、撃て!」

 

「「「おせーんだよ!螺旋丸!!」」」

 

急所を外し、気絶するくらいの威力に抑えた得意忍術・螺旋丸をテロリスト軍団に食らわせ、気絶に追い込んだ。影分身を解除すると同時に警察が来て身柄を拘束、事なきを得た。だが、俺はこの日、七草家に帰ったあとの仕打ちが怖くてそれどころではなかったというのは別の話である。

 




次回、魔法科高校の転校生(間違いではない)


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魔法科高校の転校生

ナルトが魔法師を憎む理由を書きます。


「ナルトー?どういうことか説明してもらおうかしらー?」

 

「そうだぞーナル(にい)!あんな凄い魔法使えるなんて聞いてない!」

 

「私たちに隠し事…酷いです…義兄さん」

 

現在俺は義姉の七草真由美、義妹の香澄、泉美の目の前で正座させられている。とりあえず、隠せないようだから話しておく。

まずは、俺の両親のこと。父が波風ミナト、母が波風クシナ。両名ともに魔法師で髪色と瞳の色は父親、顔の輪郭や口癖は母親譲りである。その両親が10年くらい前に亡くなり、自分は七草家に引き取られた。

 

七草家に引き取られて1年くらい経った時、自分の中に何かがいるのを感知した。それは、九本の尻尾にオレンジ色の巨体、赤い瞳の狐の姿を取っていた。最初こそ怯えていたが、その狐が自分に真実を教えてくれた。

まず、「波風」という苗字が元々は「七風(ななかぜ)」と呼ばれていた数字落ち(エキストラナンバーズ)と言われた存在であったこと、それ故に自分が魔法師の力を有していること、そして数字付き(ナンバーズ)の中で最も親交が深かった七草家に自分が引き取られたこと。更に、狐ー九喇嘛により両親が亡くなった原因が数字付きの一角にして最強の一家「四葉家」だと教わったことで、俺が魔法を嫌うようになったこと。

ここまで話して、真由美姉が疑問の声を上げる。

 

「じゃあ、あれは何?霊子が一般人にも見えるくらい濃密になってあなたの分身みたいになっていたのは」

 

「俺らが使う魔法は、古式魔法・忍術。九喇嘛によるとーーー」

 

忍術は霊子、想子を一般人にすら知覚させるくらい強大な想子量がなければならない。そして、忍術の最大の特徴は「近代魔法と違い基本的に発動にCADを必要としない」ところにある。

 

「それを証明するけど、みんな少し離れてくれねぇ?」

 

「何で離れなきゃいけないの?」

 

こればかりは体験した方が早いだろう。俺は腹部に想子を集中させてそこにある普段見えない刻印に想子を注入する。そして、

 

ズン!!!!

 

「っ!?」

 

「何これ!?」

 

「押しつぶされる…!?」

 

「これで分かったか?俺ら、忍術使いはCADを必要とはしない。身体に刻印を刻んで自らをCADとしているからな。今のは『九喇嘛』の力の余波だ。俺の友達はこれを『想子圧殺(サイオンプレッシャー)』と独自に命名した。欠点は魔法師しか拘束できないことだってばよ」

 

そして俺の腹部に渦巻きの刻印が現れる。これが、自分自身をCADとしている証拠だ。もう一度想子を流し込み、刻印を不可視の状態にする。その過程で後で九喇嘛に文句を言われたのは内緒だ。

 

「そして、これが横浜で使った術、魔法の正体」

 

三人共正常になったのを確認すると、俺は掌に想子を集中、乱回転させてそれを圧縮した。それは見る人にもよるだろうが、俺は青に見えている。俺の得意忍術・螺旋丸だ。

 

「何これ…」

 

「初めて見た、こんなに殺意が高い魔法」

 

「でも、発動は結構難しそうだね…」

 

実際問題、これを発動できる魔法師は限られてくるだろう。俺も今でこそ片手で発動出来るが、ここまでくるのには相当の時間を要した。そして、真由美姉が核心をつく質問をしてきた。

 

「こんな魔法、練習してるの見たことないわよ?どうやって練習したの?」

 

「細かい練習法は言えないけど、答えは『想子を知覚できないくらい小さくした状態で練習したから』だってばよ」

 

「でも、忍術って割には忍んでないような気がするけど?そこんとこどうなのナル兄?」

 

「俺らの一族が忍術と呼称してる魔法は『耐え忍んだ者』のみが使うことが出来るから忍術って呼んでるだけなんだってばよ」

 

三姉妹に一通りの説明を終えたところで、義父の七草弘一さんから呼び出しがあった。その内容は…。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

西暦2095年4月初旬。国立魔法大学附属第一高校1-Eクラス。入学式初日に、波乱の幕は切って落とされる。

 

「えっと、今日急遽入学が決まった七草ナルトだ。よろしくお願いするってばよ」

 

一般人だった、ナルトの人生が幕を閉じ、魔法師としての人生が幕を開けた。




ちなみに、螺旋丸の殺傷ランクはA以上です(身体の内側から破壊、最悪死に至らしめるから)

次回、イレギュラーとの接触


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イレギュラー(司波達也)との接触

遡ること5年前、世間で言う「沖縄戦役」が発生した。その時、日本に二人の戦略級魔法師が出現した。世間に名前を公表はされなかったが、その戦い方と規格外の魔法によって一人は摩醯首羅(マヘーシュヴァラ)、もう一人はその怒り狂う六本の腕から放たれる強大な力から阿修羅(アスラ)と呼ばれ、大亜連合に恐れられる存在になっていた。

 

そして現在、第一高校ではとある噂に持ち切りになっていた。

 

生徒会長・七草真由美の義弟が二科(ウィード)として入学した。だが、これにはある勘違いがあった。一つは、彼は入学試験を受けて合格した正規入学者ではないという事。もう一つは仮に受けたとしても、筆記で落とされる可能性があった事。そして、何より彼は魔法から隔絶した一般社会で生きてきた事があり、仕方なく二科生に入学したのだ。

ナルトは(自分なりに)それを伝えると、二人の生徒が彼に近づいた。

 

「なるほど。という事はお前は魔法力はある方なのか?」

 

「ああ。俺は筆記の類はどうも苦手でよ、魔法の力は姉弟の中では頭抜きんでて高いけど、勉強はちんぷんかんぷんだってばよ」

 

最初に話しかけてきたのは義姉から話を聞いていた筆記試験1位のバケモノの司波達也。黒髪で切れ長の目、自分でも女モテする顔だと思うくらい整った顔つきだなという印象だった。だが、

 

『(ナルト、コイツには気をつけろ。何かあるぞ、魔法の実技がダメだったってんのは嘘かもしれねぇ)』

 

九喇嘛は物凄い警戒していた。確かに他の奴と違う印象を受ける。なんと言うか、感情を表に出てないような…。

 

「でも、実際問題どこまで出来る?」

 

もう一人の男子生徒が声をかけてきた。

 

「えっと、西城レオンハルトだっけ?」

 

「レオでいいぞ。ところで、どうなんだ?」

 

「それは…」

 

ピンポンパンポーン

 

『1-E、七草ナルト君。生徒会室に来て下さい』

 

はあ、どうやらあの事(・・・)と関係ありそうだな。

 

「悪ぃ、続きは後でな」

 

「ああ、構わない」

 

俺は達也、レオに軽く会釈すると教室から出ていった。

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ナルトは生徒会室の前に来ていた。それにしても正気か、弘一さんは。教職員枠の風紀委員を俺に変えるなんて、反感買うのがオチだぞ。

 

『(説明の為とはいえ、想子圧殺を使ったお前が悪い)』

 

グウの音も出ないとはこの事だろう。

 

「ナルトー、そんな所で立ち尽くしてないで中に入ったら?」

 

どうやら見られてる…。相変わらず、いい趣味してるぜ。

 

「1-Eの七草ナルトです、失礼します」

 

生徒会室に入るとそこには女性しかいなかった。そのうちの一人、確か真由美姉の同級生の風紀委員長の渡辺摩利と言ってたか、その人が俺に話しかけてきた。

 

「ほう、お前が真由美が言ってた可愛い義弟君か。確かに、いじりがいがありそうだ」

 

そんな事言ってたのか…。件の義姉を少し睨みつける。物凄い冷や汗をかいていた。

 

「まあ、本題に入るか。この映像の魔法師は、ナルト君、キミで間違いないんだな?」

 

パソコンの画面に影分身と一緒に六個の螺旋丸をぶつけてテロリストを一掃する自分の姿があった。

 

「なんなら、証明しましょうか?」

 

「いや、その必要は…」

 

「会長、俺はその生徒を風紀委員にするのは反対です」

 

ふととんでもない話が飛んできた。真由美姉、生徒会に話すなら、差別意識が無い人間がいない時にしてくれってばよ…。

 

突然だが、この国立魔法大学附属第一高校には明確な力関係が存在する。魔法力、学力ともに優秀な一科生、その補欠と呼ばれる二科生が存在し、前者を花冠(ブルーム)、後者を雑草(ウィード)と陰で呼んでいる。そして、一科は二科より優れてると、差別意識が生まれていた。だが、この2095年度の新入生にはどうやらその常識が通用しないらしい。

良い例が筆記テスト1位なのに実技の成績が芳しくなくて二科生の司波達也。彼に関しては九喇嘛が実力を隠してると見抜いたので俺は少なくとも彼が二科生であること自体おかしいのではとすら思っている。

 

そして、その差別意識は上級生にも当然染み付いているものでここの生徒会副会長の、はんぞー君?という先輩が異議を唱える。

 

「何だ?服部刑部少丞範蔵副会長?」

 

「フルネームで呼ばないでください…。それよりも会長。教職員推薦枠を彼に、雑草の会長の義弟に変えたのは何故です?」

 

「二科生が風紀委員をやってはいけない、そんな規則はないのよ?はんぞー君」

 

ヤバい。声音は普通だけど、目が笑ってない。昨日俺が怒られた時と同じ感じがする。

 

「そんなに実力が知りたいなら服部、ナルト君と模擬戦するか?」

 

どうしてこうなった…、と心の中で呟いたナルトを九喇嘛は楽しそうに眺めていた。

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そして、第三演習場。渡辺風紀委員長から模擬戦の軽い説明があった。簡単に言うと、フライング禁止、相手に致命傷及び障碍が残る魔法の使用は不可、物理的な攻撃は不可というシンプルなルール。だが、服部先輩には同情した。何故なら、

 

「始め!」

 

その掛け声と同時に俺は親指を噛み切り、その血を媒介にあるものを呼び寄せる。

 

ーーー逆口寄せの術!

 

呼び出したのは自分と瓜二つの霊子情報体・影分身。そして、それを解除する。霊子を取り込んで、俺は反則チートの魔法を発動する。この間僅か5秒以内。そして、

 

ーーー多重影分身の術!!

 

三人に分身すると一人が服部先輩に突っ込んでいく。

 

「なっ!?」

 

服部先輩は動揺して魔法を発動し、その分身体を吹き飛ばす。当然、本体ではない為俺にダメージは無い。その後、影分身の煙の影から現れた本体を見つけた服部先輩は雷撃を放つ魔法を発動した。だが、

 

「悪いな、俺の流派では雷は風に弱いんだってばよ!」

 

ーーー風遁・螺旋丸!!

 

いつもと少し違う水色の螺旋丸を投げる。少し風切り音を放つ螺旋丸が雷を打ち消し、服部先輩に向かう。ところが、それはその直前で消えており、俺は服部先輩の至近距離から近づき、拳を腹部に当てるように見せかけ、その拳から霊子を衝撃波に変えた魔法を発動する。その結果、服部先輩が吹き飛ばされ、俺は渡辺先輩に

 

「渡辺先輩、俺の反則負けだってばよ」

 

あえて反則負け(・・・・)を認めることにした。




九喇嘛は純粋な魔法力には敏感に反応します。だから、達也が異常なことに真っ先に気が付きました。それと、今回の反則負けの原因はNARUTO本編のペイン戦と言えば伝わるでしょうか?

次回、二科生の風紀委員


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二科生の風紀委員

令和初投稿


「ほう、反則負けとはどういうことだ?予め仕込んでいた術式でもあるのか?」

 

「いいや、癖で影分身を逆口寄せしちまったんだってばよ…。仙術で使ってるやつをな…」

 

『仙術?』

 

ここで真由美姉と市原鈴音先輩が俺の見た目の変化に気づいた。両の眼に隈、その瞳の色も金色に染まり、瞳の中に横一文字の紋様が浮かんでいることに。すると次の瞬間、それが消えて元の青い瞳に戻ると俺は服部先輩に謝ることにした。

 

「すみませんでした。癖とはいえ、予め備えていた霊子の情報体を呼び出して試合に臨んだことを心よりお詫び申し上げます」

 

「いや、お前が謝る必要は無いよナルト君。俺も気がつくのが遅かったな、お前の身体そのものがCADになってることに」

 

なら納得が行くと服部先輩は語った。基本的に魔法科高校でCADの所持を許可されるのは生徒会役員と風紀委員だけである。身体そのものがCADの彼は二科生、だからまず生徒会には入れない。現在の生徒会は一科生のみしか入れない決まりになっているからだ。だが、風紀委員にはその縛りがない。現に自分を負かす程の二科生がここに居るのだから、と服部先輩は言っていた。すると、俺は身に覚えのある悪寒を感じた。

 

「ナールートー?さっきの『仙術』の説明がまだだけど、いつになったら説明してくれるかなー?」

 

ヤバい、義姉を怒らせないうちに簡単な説明をしなければ。

そもそも仙術とは、自分達の一族が稀にその適性をもって生まれ、専用の修行を積んで初めてなせる力を指す。そして、仙術の基本の教えは「動くな」。座禅を組んで動かないことで自然の中の想子・霊子を取り込み、自身の戦闘能力・危機感知能力を飛躍的に上昇させる。更に己が自然の想子・霊子を操り、見えない攻撃を与えることも可能。これは蛙組手(かわずくみて)と呼ばれる技術で、さっき服部先輩を気絶に追いやった術がこれである。

 

「でも、あなたそれだとどうやって仙術を使っていたの?」

 

「簡単。実は家を出た時に予め影分身を二体用意してそいつらにやらせていたんだってばよ」

 

生徒会一同及び渡辺先輩が困惑している。

 

「えっと…要はな、影分身を解除する時にその時に使った霊子は俺の中に還元されるんだ。その時ついでに集めていた想子・霊子を俺の中に間接的に取り込めるんだってこと。分かったかな…?」

 

「つまり、最大容積の半分しか入ってない二つのコップの片方に別の物質を混ぜて、それをもう一つのコップに注ぐとそのコップもその時に混ぜた物質を間接的に取り込む、このイメージで合ってますか?」

 

「市原先輩の理解力の高さには驚くしかないってばよ…」

 

「さて、それではナルト君。君にはこれを渡しておくよ」

 

渡辺先輩がそこに割って入り、赤い文字で風紀委員と書かれた黒い腕章とレコーダーを渡された。

 

「ようこそ、風紀委員へ」

 

「よろしくお願いするってばよ、渡辺先輩」

 

さりげなく握手を交わしたナルトと摩利を見て真由美がヤキモチを妬いたのは別の話である。

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そして、昼休みに教室に戻ったナルトは達也とレオから質問攻めにあった。忍術に関しては隠す必要が無いと判断し、自身の得意魔法を話しておいた。放課後、達也はどこか納得した様子で妹を迎えに行くと言ってその場を後にした。ついでにレオも着いて行った。

 

どことなく嫌な予感がしたので風紀委員の腕章を付けてレコーダーをブレザーの胸ポケットに入れて達也とレオの後を追った。

 

嫌な予感というものはこうも簡単に的中するのかと頭を抱えながら思った。完全に一科生と二科生による修羅場。原因は達也の妹の司波深雪の取り合い?によるもの。確かにあのペーパーテストのバケモノの妹が只者のわけが無いとは思っていたが、このままでは乱闘騒ぎになりかねない。とりあえずレコーダーのスイッチをオンにすると一科生側の男子が二科生の赤髪の女子にCADを弾き飛ばされ、一科生が一斉に魔法を放とうとしている。そして、その中に見知った顔がいるのに気がついて即座にあの魔法を使うことにした。

 

ーーー想子圧殺!

 

すると一科生側の大半の生徒が押し潰されるように地面に叩き伏せられた。見知った顔の発動しようとした魔法は単純に想子のバリアを展開するもの、まるで俺自身が来るのを見越していたような魔法だった。二科生側はほぼ無傷、想子の感受性が低いのが幸いしたと言える。さてと、

 

「委員長、生徒会長。乱闘騒ぎがありました」

 

「分かっているわ」

 

うん?インカム越しに報告したけど、なんだろうこの違和感。もしかして…

 

「そこの生徒!動かないで!」

 

「風紀委員長の渡辺摩利だ。少しでも動いたら魔法が飛んでくると思え」

 

委員長、魔法の起動式を展開済みなんて準備良過ぎないですか?てか、会長(真由美姉)も向かってるなら言ってくれよ…。

 

「全く、私の可愛い義弟がいなかったら罰則物だったわよ?」

 

「なっ!?」

 

先程赤髪の女子にCADを弾き飛ばされた男子が俺を見やり、そして、

 

『二科生の、風紀委員!?』

 

真由美姉、俺の平穏を返してくれ…。




【悲報】ナルト、平穏な日々が無くなってしまう。

次回、学年首席と幼馴染


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学年首席(司波深雪)幼馴染(ほのかと雫)

構想は浮かぶけど、文にできないもどかしさ。


「はぁ、疲れたってばよ…」

 

あの後、達也が事態を上手いこと収拾してそこに真由美姉が漬け込むという形で収まった。(ほのかが使った魔法は自己防衛の為のもので他の人間に危害を加える術式ではなかった為お咎めなし)だが、もう一つ懸念材料が有るのを忘れてしまっていた。

 

「ナルト?何で連絡くれなかったの?今日から第一高校に通うようになったって真由美先輩から聞いてたのに!」

 

「同感。こんな美少女の幼馴染がいるのに話しかけないとか言語道断」

 

「察してくれってばよ…。お前らの胸にあるものが俺には付いてない。俺と付き合うと面倒だってばよ?」

 

「「二科生だから何?」」

 

すると達也の妹の深雪がくすくすと笑って

 

「私達に一科と二科の差別は無いと思いますよ?初めまして、七草ナルトさん。司波達也の妹の司波深雪です」

 

「知ってる。真由美姉がものすごく興味津々にしてたから」

 

反面、少し恨んでいるとは言えなかった。実はその時に俺が忍術を使える魔法師だということが七草家にバレたのだから。まあ、改めて問い詰めるつもりもなかったが。それにしても、学年首席の達也の妹、噂に聞いてたけどホントに美人だよな。そう、

 

(なんか、人間にしては出来すぎてるくらいだ…)

 

まあ、そんな人間いるわけないかとタカをくくっていたら、

 

「ナルト…今深雪さんのこと変な目で見てた?」

 

怖い…。いつにも増してほのかが怖い。

 

「さて騒ぎも収まったし、皆でケーキ食べに行こうよ!」

 

その場にいた俺、達也、レオ、深雪、ほのか、雫、CADを弾き飛ばした赤髪の女子の千葉エリカ、騒ぎの火種になったらしい柴田美月は学校からほど近い喫茶店に行くことになった。

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喫茶店に行く道中で色々な質問が飛び交った。まず、エリカと美月は俺と同じクラスだったらしい。風紀委員の手続きやらで忙しかったから知らなくても仕方ない。そしてエリカの警棒だが、達也がそれをCADと見破り、尚のこと何でコイツが二科生なのか分からなくなってきた。

喫茶店に入り各々飲み物やらを注文すると、今度は俺が質問攻めに。

 

「ところでナルト。さっき一科生を拘束した魔法、あれは何だ?見たところ術式解体(グラムデモリッション)の派生型に見えたのだが」

 

「違う。あれは想子圧殺って言って、俺の中の想子を超高濃度にして押し潰す魔法だ。でも、お前みたいに起動式を読み取るやつ、この魔法を知ってるやつには効かないのが難点だがな」

 

そう、俺が達也のことを二科生か疑うようになった最大の要因。達也は魔法の起動式そのものを読み取れると言う規格外の分析能力を持っていた事だ。

 

「つまり、初見殺しの対抗魔法で対策はされやすいが、広範囲に渡る拘束が出来るってことか?」

 

まあ、実際は対策されても両親から術式解体、九喇嘛から術式解散(グラムディスパージョン)究極の対抗魔法(・・・・・・・)を教わっていることは黙っておこう。ちなみに、帰りはほのかと雫が両腕から離れなくて理性を保つのに必死だった。

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次の日、俺と七草三姉妹は同時に家を出る。それにしても、学校に行く途中に周囲の視線が生暖かいのが気がかりだった。そして、泉美と香澄と別れて、真由美姉が達也を見つけるやいなや走っていく。俺は達也に

 

(まあ、頑張れ…)

 

と哀れみの視線を向けて自身の教室へと向かった。教室に行く途中

 

『あいつか?雑草の風紀委員って』

 

『森崎が言ってた。アイツが花冠を侮辱したって』

 

はあ、マジ憂鬱。癒しが欲しいってばよ、と思っていると、

 

「ナルトー、今日は私達とお昼食べよー」

 

「ちなみに拒否権は無い」

 

ほのかと雫に約束を付けられ、釘を刺された。俺も幼馴染からは逃れられなかった。

 

(仙術の霊子を練る作業忘れてたな…。たまには生身でやるのも悪くないかな?)

 

俺は荷物を教室に置いていくと、風紀委員の腕章とレコーダーだけ携帯して適当な空き教室に行くことにした。

ある程度の仙術霊子を練りこんだ所で何やら奇妙な気配を感じたが、気のせいかと思ってスルーした。

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放課後、第三演習場。

 

「どうしてこうなったんだ…」

 

「すまないナルト。面倒事に巻き込んで」

 

今、俺と達也は模擬戦の準備をしていた。何が起きたのか順を追って説明すると

 

昼休みに風紀委員の生徒会推薦枠に達也を入れる事を真由美姉が提案する。

服部先輩がそれに関して猛反発(またも渡辺先輩からフルネームで呼ばれ怒っていた。渡辺先輩も人が悪いってばよ)。

深雪が実技のテストが本来の実力を示していないと反論。これに関しては俺も同意見だった。

服部先輩、ならばそれを見せてみろと模擬戦を俺に押し付ける←今ココ

 

(さて、今回は流石に仙術は禁止と言われたし、忍者らしく行きますか!)

 

「では、1-E司波達也と1-E七草ナルトの模擬戦を始める」

 

俺は当然丸腰(実質身体がCADだから本当に丸腰かと言われるとグレーゾーンだが)、達也は拳銃タイプ特化型CAD、シルバーホーン。お互いに戦闘態勢に入ったのを確認する。そして、

 

「始め!」

 

決戦の火蓋が切って落とされた。




ナルトが使える対抗魔法
・想子圧殺
・術式解体
・術式解散
・???(九校戦で出す予定、オリジナル魔法)

次回、落ちこぼれ同士の戦い


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落ちこぼれ同士(ナルトと達也)の戦い

短め投稿。昨日はWIXOSSのイベント行ってて執筆の暇が無かったんや…(言い訳)


『達也。今回は本気でやれ』

 

達也は自分の内なる存在の声を聞いた。沖縄戦役の時以来だから5年ぶりくらいに。

 

(どういうことだ?九尾(・・))

 

達也の中にいるそれー九尾は黒い体躯の妖狐で、

 

自分の魔法演算領域を補助している存在である。

 

厳密には深雪と共に達也本来の力を封じる役割を担っているが、沖縄戦役で深雪が瀕死の重傷を負った時に自分の本来の魔法を返してくれた。

その九尾が、ナルトに遭遇してから様子がおかしかった。そして今日の模擬戦、暗に手を抜くなと警告してきたのだ。

確かに第一高校の実技の試験を仮にナルトが受けていたとしたらその魔力量は深雪に匹敵する、いやそれ以上だろう。だが、彼が二科生なのは飽くまで魔法師としての教育を受けていなかった為であり、二科生だからと言って決して弱い訳では無い(自分のことは棚に上げてるが)。

さて今回の模擬戦、本当に手を抜かないでいいなら、

 

(この状態で持てる技術は出し切ってやろう)

 

少し達也の口角がつり上がる。深雪はそれを見て、

 

(やっと、九重先生以外に本気を出せるのですね…)

 

と内心ほくそ笑んでいた。

 

「では、始め!」

 

摩利の合図を皮切りに身体能力のみでナルトの背後を取る。

 

(すまん、ナルト)

 

達也はシルバーホーンのトリガーを引き、想子波の合成によってナルトを倒す

 

筈だった。

 

「おい、達也…。今何かしたか?」

 

そう、倒れ伏しているはずのナルトが何事も無かったかのように平然としているのを見るまでは。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

渡辺先輩の合図と同時に視界から達也が消えた。一瞬焦ったが、達也の想子の位置を追ってその場所を特定する。

それにしても、魔法の技術無しでここまでの体術を使うとは俺も見習わないと。

俺はこの間に練れた微量の仙術霊子を使って達也の魔法の系統を予測する。これは、想子の波を俺にぶつける気か?なら、

 

ーーー幻術破り!

 

本来は対古式魔法用の術であり、自分が幻惑にかかったときに使う術を発動した。自分の頭の中に霊子を掻き回すように暴走させる術で、普通の魔法師が使うと逆に酔う。だが、これにより霊子が幻惑を跳ね除けるので俺ら、波風一族は幻惑魔法にかかりにくいことで有名である。今回の場合は達也が想子の波を使って自分を気絶させようとしていると直感的に思ったのでこの術を使った。そして想子の波が弾かれるのを感じると、達也の方を向いて

 

「おい、達也…。今何かしたか?」

 

最大限の皮肉を言ってやった。さらに、達也が呆気に取られた一瞬で印を組む。

 

「そうか、ならば!」

 

「させねーよ!」

 

ーーー多重影分身の術!!

 

瞬間、ナルトが文字通り爆発的に増えた。軽く20人を超えるであろう想子の分身体(しかもその攻撃を受けると生身で受けるのと同じ感覚でダメージが入る)は本体と想子の糸で繋がれているので分身体で肉体攻撃をしてもルール上は反則にならない。そして、達也がもう一つのシルバーホーンを引き抜いて魔法を放とうとしたその時、

 

「両者そこまで!」

 

「「えっ?」」

 

俺と達也の勝負は、渡辺先輩の裁量で引き分けの形で終わった。何故なのか問い詰めてみると、服部先輩が達也に頭を下げた。

 

「分不相応の発言を撤回しよう、司波。渡辺先輩、俺も彼の風紀委員入りを推薦します」

 

こうして第一高校で前代未聞の二科生の風紀委員が二名誕生した。そして、この模擬戦の事を聞いた部活連会頭、十文字克人は後の九校戦、新人戦モノリスコードの選手の内二名を俺と達也に指名したのは別の話である。

 

翌日、噂が回るのは早いようで俺と達也(二科生)が風紀委員に任命された事が1年の二科生の話題で持ち切りだった。そして風紀委員最初の仕事、部活動勧誘期間の見回りが幕を開ける。




原作から変わってる事
・沖縄戦役が5年前(原作では3年前)
・達也の強い情動は原作では深雪関係の事以外消されてるが、今作では普段抑えてる状態
・魔法演算領域に九尾と呼んでいる黒い妖狐が住み着いており、達也の本来の力の制限、魔法演算の補助を行っている

【悲報】森崎、とうとう風紀委員どころかモノリスコードの選手からも外される

次回、忍びとガーディアン


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忍びとガーディアン

早く九校戦を書きたいと思ってる今日この頃。


「諸君。今年もあのバカ騒ぎがやってきた。去年の卒業生の枠の人員を補充できたので紹介する」

 

風紀委員会室の中、2人の生徒が立ち上がる。その生徒達には共通して2年生、3年生にあるはずのものが存在しなかった。

 

「何とか去年の卒業生の抜けた人員を補充することが出来た。先に言っておくが、こいつらは二科生だ。だが両者とも使える人材だ、それは私が保証する」

 

「確かに、片方は服部を倒した会長の義弟君ですしね」

 

「もう片方もあの学年首席の兄貴と来た。あまり言いたくないがこの二人、本当に二科生(紋なし)ですかい?」

 

「各々疑問はあると思うが、まずは自己紹介だ」

 

そして、俺と達也が立ち上がる。

 

「1-E、七草ナルト。よろしくお願いするってば…します」

 

「1-E、司波達也です」

 

「さて、それでは見回りに入る。達也君とナルトはここに残れ」

 

「渡辺先輩?なんで俺だけ呼び捨てなんだってば…なんですか?」

 

「まあ、真由美の呼び方を真似てるだけだが…嫌か?」

 

あなた彼氏がいるんでしょ?そのうち誤解されるってばよ?という言葉は呑み込んだ。

 

「さて本題に入るが達也君には腕章とレコーダーを渡しておく。それとCADだが、ナルトは身体の方、というかお前の固有魔法は極力使わないでくれ」

 

一瞬だが、達也が摩利の質問に疑問を抱く。

 

「どういう事です?ナルトの固有魔法(多重影分身)では殺傷能力は体術を使わない限りは皆無だと思うのですが?」

 

「お前の戦いで見せた術の事じゃない。ナルト、アレを見せてやれ」

 

「まあ、達也ならこれがどんなにヤバい魔法か分かるはずだってばよ」

 

ナルトは想子を最大限に活性化させ、掌に青い球体・螺旋丸を作り出す。

 

(超高濃度の想子を乱回転させて、それを球体に圧縮、ナルトの想子は球体のまま乱回転を続けてるところを見ると殺傷ランクはAかそれ以上だな)

 

「分かった、ナルト。術を解いていいぞ」

 

ナルトは螺旋丸を消すとまたも摩利が疑問の声を上げた。

 

「服部の時とは違う…?」

 

摩利先輩が鋭すぎるってばよ…。もう面倒だから先に言っておこう。

 

「服部先輩の時のアレは風遁・螺旋丸と言って本来の螺旋丸の姿です。とは言っても、服部先輩の時の螺旋丸自体、未完成の術なんすけど…」

 

俺は何の変哲もない紙を取り出す。

 

「じゃあ、見てて下さい。これが渡辺先輩の疑問の正体です」

 

俺はその紙に自分の想子を流し込む。同時に金属をすり合わせたような不快な音が響き、それを真っ二つに切り裂いた。流石の達也もこれに関しては目を見開いていた。

 

「詳しくは言えませんが、ざっくり言えばコレを螺旋丸の想子に代用したのが答えです。これでいいですか?」

 

「あ、ああ。ではナルトは先に見回りに…」

 

「その前にちょっとやることがあるってばよ」

 

風紀委員会室前の床に1枚の札を貼り付ける。

 

「では、見回りに行ってきます」

 

「待てナルト。俺も一緒に行動しよう」

 

一瞬何で?と思ったらそう言えば俺らは一年の、しかも二科生の風紀委員だ。十中八九非難の的になるのが目に見えている。要は、悪目立ちする者同士で違反者を摘発しようと言うことだ。達也は委員会の埃をかぶったCADを2つほど借りると(ちなみにエキスパート仕様の高級品らしい)俺の隣に立つ。

 

「よし、では見回りに行ってまいります」

 

こんな時まで敬語は慣れないので俺は軽く会釈した後風紀委員会室を後にした。

 

ふと摩利が二人の背中を見送った時、ほんの一瞬だが彼らの想子同士が繋がったように見えた。まるで、お互いの欠けている部分を補いあっているかの様に。

 

そう言えば悪友(真由美)が言っていた。ナルトの本名は「波風ナルト」。古式魔法の名門・波風一族の唯一の生き残りだと。そして、ナルトは忍び(・・)であって魔法師(・・・)ではないと。先程の技術、自分では螺旋丸ですら不可能なのに、それを更に上回る術を使える彼に恐れを抱いた。恐らく、実践で彼に勝てるとしたら十文字、そして司波兄妹の三人くらいではないだろうか?先日の模擬戦の様子から、少なくとも達也とナルトは戦い慣れている感じがした。司波妹も兄の様子を案じない辺り、(達也)の実力が分かっているとしか思えない。

 

(この二人は何者なんだ?)

 

摩利は何も知らずに二人の背中を見届けた。

 

七草ナルト(波風一族の忍び)司波達也(四葉最強のガーディアン)の二人の背中を。

 




補足
・ナルトは模擬戦の後に達也に多重影分身の詳細を教えている。後、NARUTO原作で言うところのチャクラの性質変化は存在する。
・ナルト以外で螺旋丸を使える人物はいない予定。厳密にはプロセスを見ていた達也が使えるかもしれないが何らかのアシストが必要。
・原作ナルトの切り札であるあの術は入学編の終盤に出す予定。
・オリジナル対抗魔法も名前を伏せて入学編終盤に出す予定。

次回、黄色い閃光と黒の夜叉


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