妖精の尻尾の音竜 (ハーフィ)
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オリキャラ設定(ネタバレ注意)

簡単なオリキャラ紹介とオリキャラの魔法についてです。


アミク・ミュージオン

 

 

16歳。

 

 

身長:ルーシィより若干低い 体重:??? カップのサイズ:G

 

基本スタイルは緑髪の長いツインテール。瞳はマリンブルー。

 

イメージ姿としてはおっぱいがでかい初音ミク。(失礼)

 

好きなもの:卵、ブロッコリー、ギルド、家族、音楽、本

 

嫌いなもの:音楽を侮辱する人、仲間を傷つける人、カリフラワー

 

 

育ててくれた(ドラゴン):オーディオン

 

 

アミクについて

 

昔からナツとチームを組んでおり、コンビとして相性が良く、『双竜』とまで呼ばれるようになった。

基本的に明るく、誰とでも仲がいいが、面倒見の良さがあり人を子ども扱いする時がある。妖精の尻尾(フェアリーテイル)の中でも数少ない良識人であり、マカロフにも頼りにされている。

また、魔法の希少性と有用性から評議会からも目を付けられており、依頼されることもたまにある。(それのおかげで妖精の尻尾(フェアリーテイル)の起こす問題にある程度目を瞑ってもらっている)

孤独を恐れており、心情的に一人になるのが怖いので、自分の居場所を守ろうとする。ノリがいい所もある。心根が優しいため、敵であろうと治癒したり、助けようとしてしまう。

実はよく泣く。可愛いとか綺麗とか言われると照れる。隠れドジっ娘。本好き。

 

 

ナツのことは信頼できる相棒だと思っており、恋愛感情はまだ持っていない・・・はず。

 

最近特に仲の良い女友達はルーシィ。エルザを恐れずに接してくれる人材でもあり、エルザに勝ったことのある逸材でもある。

 

ナツとの勝率は五分五分。

 

 

音楽を侮辱するようなことをすれば人が変わったようになる。

 

 

二つ名:『音竜』『歌姫』この二つが合わさって『音竜(うたひめ)』と呼ばれることも多い。『妖精』『聖女』『聖母』

 

 

魔法:音の滅竜魔法…物に音を流すことで内側から壊すこともできる。『音』や『声』を食べることができる。耳が非常によく、集中すれば何キロ先の音まで聴きとれるという。

 

   音楽魔法(歌魔法):歌うことで治療や様々な効果のある付加術(エンチャント)などを行うことができる。歌わなければ効果はない。

 

 

音声の滅竜魔法

 

音竜波:アミクが放つ衝撃波。

 

音竜弾:音の塊を射出する。衝撃波となって爆発する。

 

音竜壁:音の壁を作って攻撃を防ぐ。防御系の技。

 

音竜騙し:猫騙しの要領で手を打ち鳴らす。音を増幅させて衝撃波を発生させて気絶させる。

 

反響マップ:超音波を発しその反響で周囲の状況を知るエコーロケーションで、周囲の地形を把握する。広範囲でやる場合非常に集中力がいるので無防備になる。

 

音竜の響拳:音を纏った拳で殴る。衝撃波が発生する。

 

音竜の旋律:音を纏った蹴り。同じく衝撃波を発生する。ナツでいう火竜の鉤爪。音竜の鉤爪とも言う。

 

音竜の咆哮:滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)お馴染みのブレス。衝撃波と轟音で攻撃する。

 

音竜の輪舞曲(ロンド):両腕に音を纏って振るう、ナツでいう火竜の翼撃。音竜の翼撃とも言う。

 

音竜の譚詩曲(バラード):全身に音を纏って体当たりする、ナツでいう火竜の劍角。音竜の劍角とも言う。

 

音竜の交声曲(カンタータ):両手に音を纏わせ、それを合わせて解き放つ。ナツでいう火竜の煌炎。

 

音竜の斬響(スタッカート):手刀で音の刃を作りだして攻撃する。

 

音竜の響威(フォルツァンド):音を纏った両手を床などに叩きつけることで、自分を中心とした巨大な衝撃波を発生させる。叩き付けなくても発生できるように練習中。

 

音竜の遁走曲(フーガ):足を付けた所に衝撃波を発生させる。時間差で発動できる地雷系の魔法。別名、音竜の足跡。

 

音竜の響刻(レガート):指先(爪)に音を纏わせて横薙ぎに振るって相手を切り裂く。ナツでいう火竜の砕牙。音竜の砕牙とも言う。

 

音竜の円舞曲(ワルツ):音を纏って大回転し、音の竜巻を生み出す。当たれば、衝撃波を連続で喰らうことになる。竜巻を射出することもできる。

 

音竜の奇想曲(カプリース):音の振動を乗せて殴りつけて、内部から破壊する。ただ、負担も大きく、しばらく思うように動けなくなる。

 

音竜の追複曲(カノン):音を凝縮させた塊を発射し、着弾すると巨大で強烈な衝撃波を発生させる。いわば音のキャノン。貫くこともある。

 

滅竜奥義

 

音災神楽組曲(おんさいかぐらスイート) または 音災神楽組曲(おんさいかぐらくみきょく):パンチや蹴りなど、あらゆる攻撃を舞う様に連続で叩きこむ。フィニッシュは大体正面突き。

 

超音刃奏鳴曲(ちょうおんぱソナタ) または 超音刃奏鳴曲(ちょうおんぱそうめいきょく):音竜の斬響(スタッカート)の超強化版。超音波振動を加え、切れ味を増し、大きくさせたものである。射出も可能。

 

雷轟幻想曲(らいごうファンタジア) または 雷轟幻想曲(らいごうげんそうきょく):空中に球状の声の塊を打ち上げ、それが内部で反響を繰り返して増幅し、膨張した音が落雷の様に相手に降り注ぐ。

 

 

モード天音竜(てんおんりゅう)…ウェンディの『天空』属性を食べたことで得た力。

 

天音竜の舞姫(まいひめ):竜巻のように回転し、その勢いを乗せて蹴りを放つ。

 

天音竜の咆哮:音のブレスを囲むように、竜巻型のブレスが放出される。威力は絶大。

 

滅竜奥義・改

 

天災神楽組曲(てんさいかぐらスイート):音災神楽組曲の強化版。風を纏ってものすごく素早い動きで四方八方から攻撃を連続で加える。風を纏っているぶん、威力も増大。

 

モード音神…何故かアミクの中で眠っている滅神魔法。滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)になれるが、その発動条件も理由も何もかも謎のまま。滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)共通の色、『黒い』音を操る。

 

音神の怒号…音竜の咆哮よりも強力なブレス。

 

音神の響歓(ビバーチェ)…音のレーザーを放つ。

 

 

合体魔法(ユニゾンレイド)

 

火炎音響滅竜拳(かえんおんきょうめつりゅうけん):ナツとの合体魔法(ユニゾンレイド)。それぞれ、拳に炎と音を纏い、同時に殴る。

 

緑天空二重奏(りょくてんくうにじゅうそう):ウェンディとの合体魔法(ユニゾンレイド)。それぞれ、手から音と風を放出する。うまく融合して竜巻のようになり敵に突っ込む。

 

 

 

 

 

音楽魔法

 

付加術(エンチャント)

 

攻撃力強歌(アリア):攻撃力を上げる。

 

防御力強歌(アンサンブル):防御力を上げる。

 

速度上昇歌(スケルツォ):移動速度を上げる。

 

状態異常無効歌(キャロル):状態異常を回復する上に耐性を持たせる。

 

持続回復歌(ヒム):一定時間、少しずつ回復し続ける。

 

 

 

その他

 

平衡感覚養歌(バルカローラ):バランス感覚を養わせる。連続して使用すると、効果が薄れてしまう。いわゆるトロイア。トロイアより効果時間は短い。

 

治癒歌(コラール):傷を癒す。自分にも効果がある。

 

子守歌(ララバイ):眠らせる。対象者が弱っていたり、精神的に受け入れたりするとかかりやすい。

 

声送(レチタティーヴォ):自分の声を遠く離れた場所に飛ばすことができる。戦闘でも使える。

 

鎮魂歌(レクイエム):亡霊などを浄化できる、聖属性も持ち合わせた歌。

 

 

 

 

 

マーチ

 

アミクが幼少期に卵から孵したエクシード。翼を生やして飛ぶことができる。

 

性別はメス。

 

「~なの」「~の」が口癖。

 

マイペースで何を考えているか良く分からないが、アミクのことを大切に思っている。

 

猫の中でも美人であり度々ハッピーにアプローチされているがそれに関してはあまり相手にしていない。が、最近はちょっと気になる様子・・・?

 

ハッピーとの仲もすこぶる良好であり、魚の食べ比べをするんだとか。

 

シャルルとは出会って間もないころは犬猿の仲であったが、最近は軟化している様子。

 

リリーとも仲が良く、たまに戦闘に関するコツを教えてもらうこともあるのだとか。

 

彼女の父親はパルティータ。母親はミーナ、他界。彼女の口調は父親譲りである。

 

隠し芸として爪を伸ばして攻撃することができる。地味に強い。

 

好きなもの:アミク、甘いもの、魚

 

魔法:(エーラ)…エクシード共通の飛行魔法。

 

   イエロークロー…爪を長く伸ばす。

   マーチスラッシュ…伸ばした爪で相手を切り裂く。

   イエローカイロス…両手の爪で交差して斬りつける。

   イエローサイクロン…大回転しながら斬りつける。 

  

変身魔法…金髪で桃色の瞳を持つ人間の美少女に変身する。外見年齢はウェンディと同じぐらいだが、アミクと似たのか胸が大きくて犯罪臭がする。

     頭からはネコミミが生え、お尻辺りからは尻尾が生えている。 

 

 

 




今後増える可能性もあります。

なんかだんだん雑になってきたな。


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始まりの音色 プロローグ

感想とかお願いします!


「オーディオン・・・?ねぇ、おー、でぃお、ん、どこぉ・・?」

 

少女の泣き声が空しく響き渡る。

 

「なんで、なにも、いわないの・・?ほんとは、いるんでしょ・・?ねぇもうわがままいったりしないから・・・」

 

ぐすっ、と鼻をすする音が聞こえる。

 

「いいこにしてるから・・・おねがいっ、ひとりにしなでぇ!おいてかないでよぉ・・・!」

 

ポロポロ流れ落ちる雫を拭う者もおらず、そのまま地面に吸い込まれていく。絶望の表情を浮かべた少女は頭を抱えてうずくまった。

 

親に置いてかれてしまったか弱い少女では、この世界で1人で生きていくには過酷なものになるはずだった。

 

 

 

 

しかし。

 

 

数奇な運命によって導かれ、少女は人生で一番大切だと言える居場所ができた。その名も―――――

 

  

     妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後ろから聞こえて来た音に反射的に首を傾ける。間一髪、飛んで来た皿が通り過ぎ壁にぶつかって割れた。

 

(・・・あっぶなー)

 

冷や汗をかきながら後ろを向くと、ドヤ顔をした男が投げたモーションのままで固まっていた。

 

「あー、わりぃ」

 

「・・・いや、別にいいよ」

 

素直に謝ってきたので苦笑して許した。ひどい時はなかったことのようにされるので謝るだけマシだ。それよりも一体どんな状況になったらキメ顔で皿を投げることになるのか甚だ疑問である。

 

(ま、それこそ妖精の尻尾(フェアリーテイル)っぽくていいんだけどね)

 

そう思い、今は比較的大人しいギルドを見る緑髪を長いツインテールにした青い瞳の美少女――――アミク・ミュージオンは楽しげに頬を緩ませる。

そして何か物足りない感じがして、今は居ない少年の事を思い浮かべた。

 

(そういえばナツはハルジオンに行ってたっけ)

 

確か火竜が出たとかで、それがイグニールだと思い込んだナツがハッピーと共に探しに行ったはずだ。後からそれを聞いたアミクは街中にドラゴンが居るわけないじゃん、とズッコけたものである。

だが、そんな怪しい噂一つでも飛び付きたいナツの気持ちも分かる。もし、自分が母―――オーディオンの目撃情報を聞いて冷静でいられる自信がないからだ。

特に前の自分だったら錯乱して飛び出して行ってたかもしれない。

そのような状態で急に居なくなったオーディオンを思い、つい泣いてしまったアミクを同じ境遇であるナツが気丈に慰めてくれたのも懐かしい思い出である。

 

(って、恥ずかしいの思い出しちゃった!)

 

勝手に思いだし、勝手に恥ずかしがるアミク。そんな彼女の元に羽の生えた1匹の猫が降りてきた。

 

「どうしたの?」

 

可愛らしい声で喋る綺麗な黄色い毛色を持つ、猫の中でも美人(?)な顔立ちのメス。名をマーチと言う。マーチはアミクが妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入る前に拾った卵から生まれた喋って飛ぶ猫である。当時のアミクにとっては唯一無二の心の支えだった。

 

「いや、昔の事を思い出してさ」

 

「ふーん、もしかしてあーし達が初めて会った時の事なの?」

 

違うのだが、馬鹿正直に言わなくてもいいか、と黙っていた。マーチも特に何も言わずにアミクの隣に立つ。

 

「そろそろ、ナツとハッピーも噂がデマだと気づいて帰って来る頃だと思うの」

 

つぶらな瞳で見られてアミクは思わず視線を逸らす。

 

「そうかもね。あんまり期待してないけどお土産あったらいいね」

 

「また魚なの・・・?」

 

マーチはちょっと呆れた感じで言う。

それを見てアミクは最初にマーチとハッピーが会った頃の事を思い出す。ハッピーが衝撃を受けたかのような顔をしてマーチに近づくとやたらと魚を勧めだしたのは面白かった。今でも暇さえあれば魚を差し出すのを目撃している。そして、当のマーチも満更でもなさそうにしていたのが印象的だった。

 

「食べ比べはもういいの・・・」

 

「あはは・・・」

 

そんな会話をしていると、アミクの耳にある音が集まってきた。

 

(この足音は・・・知らない足音もあるけどこれは・・・)

 

聞き知った(・・・・・)足音に自然と微笑みを浮かべる。その笑みを見た近くの席の男性が頬を赤らめ、ついでに視線が彼女の大きく膨らんだ胸に向いたところで隣の女性に殴られた。

 

直後、大きな音を立てて扉が開かれる。そして

 

「「ようこそ妖精の尻尾(フェアリーテイル)へ!!」」

 

「わあっ・・・!」

 

見知った少年と1匹の空飛ぶネコ。そして初めて見る金髪の美少女が居た。

 

 




ありがとうございます!


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ようこそ妖精の尻尾(フェアリーテイル)へ!

二話目です!マンガが手元になくて原作再現しきれてないところがあるかも・・・。


入って来たナツとハッピー、そして金髪美少女。

 

(うわぁ、綺麗だなぁ)

 

アミクは思わず感嘆した。顔面偏差値が高い美少女達が多く集まる妖精の尻尾(フェアリーテイル)だが、彼女も引けを取らないだろう。そしてなにより、ボリュームのあるその胸!

彼女とどっこいどっこいの大きさを持つアミクが自分の事を棚に上げて少女の胸を凝視していると。

 

「ははっ! ナツ! また派手にやらかしたなぁ・・・。ハルジオンの一件新聞に載って―――」

 

「てめぇ! 火竜(サラマンダー)の情報嘘だったじゃねえか!!」

 

「グホッ!」

 

新聞を読んでいた男が怒ったナツによってひざ蹴りされた。ひざ蹴りされた男は吹っ飛んでテーブルを巻き込みながら落下する。

 

「てめぇ、コラ!」

 

「あ、痛!ちょっと!」

 

ついでに巻き込まれた人たちも怒りで火が付いたのか周りの者達と喧嘩をし始める。

 

 

 

(凄い!私、本当に妖精の尻尾(フェアリーテイル)に来たんだ!)

 

金髪の美少女――――ルーシィは人々が騒がしく、しかし楽しげに乱闘するのを見て感動していた。ようやく憧れていたギルドに来たのだ。たとえ喧嘩でもなんだが貴重なものに感じる。

 

「ハッピー、おかえりなの」

 

「あ、マーチ!ただいま~!」

 

フワフワと浮いていたハッピーがこれまたフワフワと浮いている猫にデレデレしながら近づいて行った。

 

「え?メスのハッピー?」

 

「マーチって言うの。よろしくなの」

 

「よ、よろしく」

 

まさかハッピーのような生き物にまた遭遇することになるとは思わなかったルーシィは意外と珍しくないのかしら、と首を傾けた。そこに

 

「おかえり、ハッピー。やっぱりデタラメだったでしょ、噂は」

 

「あい。置いていっちゃってごめんね、アミク」

 

「別に私に謝る必要はないよ」

 

緑髪で長いツインテールをした美少女がハッピーに話しかける。そうしてハッピーと会話していると、アミクがルーシィに気付いた。

 

「ん、と加入希望者、かな?私はアミク。とりあえず、よろしく」

 

(わぁ、綺麗な子だな・・・)

 

アミクがルーシィに対して握手を求めるが、奇しくも彼女はさっきアミクが思ってたのと同じような思考に陥っていた。

 

「あの・・・?」

 

「あっ、ごめんね。私はルーシィ!よろしく!」

 

ルーシィは握手をしながらアミクを見る。

 

大体自分と同じくらいの背丈だろうか。自分が映る瞳の色はマリンブルー。眉毛も綺麗に整っていて服越しからも分かる巨乳。20人中20人が美少女だと言うだろう。

 

「ちょっと変なギルドだけど慣れれば凄く楽しいから、ね?だから、気楽にしててだいじょ・・・」

 

「ナツが帰って来ただと!?」

 

アミクの声を遮るように大声が聞こえて来た。そちらに視線を向けると、半裸、どころかパンツ一丁の男性が居た。

 

「おい、ナツ!この前のケリつけんぞ!」

 

「グレイ、服」

 

「うおっ!いつの間に!」

 

そう言って慌てる、ちょっと脱ぎ癖の強い男ーーーグレイ・フルバスター。

 

「全く・・・これだから品のない此処の男共は嫌だよ」

 

そう言いながらも大樽を持ち上げて酒を飲む黒髮ウェーブの女性ーーーーーカナ。

 

「くだらん」

 

「わっ」

 

「あ、エルフマン」

 

アミクとルーシィの後ろに立つ、巨漢の男ーーーーエルフマンが傲然と言い放つ。

 

「昼間っからピーピーギャーギャーガキじゃあるまいし。漢なら・・・拳で語れぇぇ!!」

 

「結局喧嘩なのね」

 

雄叫びをあげながら騒ぎの中に突っ込むエルフマン。だが。

 

「「邪魔だ!」」

 

「しかも玉砕!?」

 

ナツとグレイによってあっさりぶっ飛ばされてしまった。被害は増える一方だ。

 

「全く騒がしいね」

 

爽やかな声で言いながら現れたのは2人の女性を侍らせている美男ーーーーロキ。実はこの男、彼氏にしたい魔導士ランキング上位者である、が。

 

「混ざってくるね〜!」

 

「「頑張って〜!」」

 

「はい、まともな人1人消えた!」

 

こんな感じで女にだらしない。アミクも何回もデートに誘われたことがある。

 

「なによこれ・・・まともな人がほとんど居ないじゃない・・・」

 

「あはは、それが妖精の尻尾(フェアリーテイル)だからね」

 

「あい!」

 

「その通りなの」

 

アミクの言葉にハッピーとマーチが相槌を打つ。それを聞いてルーシィはハッとなる。

 

「じゃあもしかしてあなたにも致命的な何かが!?」

 

「答えにくい質問はやめて下さい」

 

自分としてはあの連中よりはまともだという自負があるが、あくまで主観的なので断言はしない。

 

「あら?新人さん?」

 

そこに銀髪の美女であるミラジェーンがやって来た。

 

「あ、ミラさん。この人ルーシィさんって言うんだって」

 

「ど、どうも・・・ってミ、ミラジェーン!?ほ、本物だ〜!」

 

ルーシィが歓声をあげる。ミラジェーンはルーシィが愛読している『週刊ソーサラー』のグラビアを飾る魔導士で有名なので、ルーシィもよく知っているのだ。というより、憧れの人である。

 

「ふふ、ナツが帰って来たから早速ギルドが壊れそうね」

 

「すでに壊れてるけどね」

 

アミクがボロボロになったギルドを見てツッコむ。

 

「あ・・・これ止めなくてもいいんですか?」

 

「いつもの事だからほっとけばいいのよ。それにーー」

 

「あ」

 

何か言いかけたミラの頭に飛んで来たビンが命中した。

 

「た、楽しいでしょ・・・?ガクッ」

 

「ミ、ミラジェーンさああああぁぁん!!!怖いいいいいい!!!」

 

血まみれになりながら気絶するミラを見て悲鳴をあげるルーシィ。アミクは顔を両手で押さえてため息をついていた。

 

「おら!」

 

その時、ナツにぶっ飛ばされたグレイがルーシィの近くに倒れて来た。

 

「ぐっ! あ、俺のパンツが!?」

 

「ヘッヘッヘ!」

 

いつの間にかパンツがなくなっていたのでナツを見ると、ナツがグレイのパンツを手で回していたところである。つまり、今のグレイは全裸、まごうことなき変態である。流石にやばいのでグレイはルーシィの方を向くと。

 

「お嬢さん、よければパンツを貸してくれないか?」

 

「貸すか!!」

 

ルーシィに断られたグレイは今度はアミクの方を向く。

 

「じゃあ、代わりにアミク、お前の貸せよ」

 

「アホっ!!」

 

グレイの顔面にアミクの綺麗な蹴りが入った。惚れ惚れする脚線美だ。

 

そのままぶっ飛ばされたグレイはナツを巻き込んで転がって行った。

 

「もう、ナツが帰って来た途端これだよ・・・」

 

呆れたように言うアミクであったが、ルーシィにはその顔が楽しげに笑っているようにも見えた。

とはいえ、喧嘩はまだ終わらず、それどころか激化してゆく。

 

「ったく……落ち着いて酒も飲めやしない。あんたらいい加減にしなさいよ?」

 

するとテーブルに座っていたカナがカードを取り出す。

 

「くそっ! 頭にきた!」

 

グレイは左手の掌に右手の拳を乗せる。

 

「うおぉぉぉぉ!!」

 

エルフマンは魔法で右腕を変化させる。

 

「全く……困った奴らだ」

 

ロキの指にはまっている指輪が強く光り出す。

 

「どっからでもかかってこい!!」

 

ナツは両手に炎を宿す。

 

「ま、魔法は流石にまずいよ・・・!」

 

「え、嘘!?」

 

少し焦り出したアミクを見てルーシィも不安に襲われる。するとーーー

 

「やめんかぁぁぁ!!バカたれ共!!」

 

巨人が現れた。そうとしか言いようのない人物が一喝する。すると、先程の騒ぎが嘘のように皆動きを止めた。

 

「でかーーーーーーっ!!!」

 

「あ、おじいちゃん、居たんだ」

 

「え、アンタのおじいちゃんなの!!?」

 

ルーシィは驚愕する。こんな可憐な少女と進撃しそうな巨人との繋がりが全く見えない。

 

「違う違う。私がそう呼んでるだけであの人はこのギルドのマスターだよ。それにあの人の孫は別に居るし・・・」

 

「ま、マスター!!?」

 

後半の言葉は聞こえなかったが、慌てて言うアミクの言葉にまたしても驚く。ただでさえ濃いメンバーなのにそれをまとめる人がこんなとんでもない人物だったなんて・・・。

 

静まり返る空気の中、その空気の読めないナツ(バカ)が高笑いをあげた。

 

「だっはっはっ! 皆してビビりやがって! この勝負俺の勝ーーぴっ」

 

案の定、あっさり踏み潰されるナツ。それを見てルーシィはめっちゃビビった。その巨人がルーシィの方を向く。思わずヒッとなる。

 

「む!? 新入りかな!?」

 

「は、はいぃ……」

 

完全に怯えた様子で答えるルーシィ。

 

「ふんぬぅぅぅぅ!!」

 

巨人は雄叫びをあげるとその身体がどんどん小さくなりーー。

 

「よろしくネ!」

 

「ちっさ!」

 

子供くらいの大きさになってしまった。この男が妖精の尻尾(フェアリーテイル)のマスター、マカロフ・ドレアーである。

 

「とうっ!」

 

マカロフは2階に向かってジャンプし、空中でくるくる回転する。しかしーー。

 

「あイタっ!?」

 

体制を崩し、2階の手すりに頭をゴチン、とぶつけた。頭を抱えてうずくまるマカロフを見てキルド中が微妙な空気になる。アミクは笑いを堪えている。

 

「ゴホンっ! ま〜たやってくれたの貴様等、見よこの評議員から送られた文書の量を!」 

 

気を取り直してマカロフは手に持っていた文書を読み上げる。

 

「まず・・・グレイ!」

 

「あ?」

 

「密輸組織を叩いたのはいいが・・・その後素っ裸で街を歩き、挙句の果てに洗濯中の下着を盗み逃走」

 

「いや、だって裸で居るのはまずいだろ」

 

「じゃあまず脱ぐなよ」

 

グレイの返答に冷静にツッコむカナ。マカロフはため息をひとつ吐くと再び読み始めた。

 

「エルフマン、貴様は要人護衛の任務中、要人に暴行」

 

「だって『男は学歴よ!』なんて言い出すから、つい・・・」

 

マカロフは頭に手を当て首を横に振る。だんだん読むごとにシワが増えてる気がする。

 

「カナ・アルベローナ。経費と偽り酒場で飲むこと樽15個。さらにその酒の請求先が評議員」

 

「バレたか・・・」

 

「ロキ。評議員レイジ老師の孫娘に手を出す。タレント事務所から損害賠償が来とる」

 

「はは・・・参ったなぁ」

 

「ナツ・ドラグニル。デボン盗賊一家を壊滅するが民家7件も壊滅。チェーリ村の歴史ある時計台倒壊。フリージア教会全焼。ハルジオン港半壊・・・」

 

「なっはっはっは!」

 

「いや、笑い事じゃないから」

 

アミクがジト目でツッコんだ。 

 

マカロフは次の文書を開く。

 

「そしてーーーアミク」

 

ビクッと思わず硬直した。

 

「ーーーは、特に大きな問題は起こしとらん」

 

「ちょっと!ビックリさせないでよ!」

 

つい、思わせぶりな態度に反応してしまった。

 

「むしろ感謝状が来とる。この前行った孤児院の子供達から送られてきた手紙もあるぞい」

 

「い、いやー、照れるなー?」

 

「お前さんは唯一の癒しじゃ・・・。皿を何枚か割ってたとか、ブロッコリーや卵が根こそぎなくなったとかいうのもあったが・・・他と比べるとほんとに些細なことじゃ」

 

「あ・・あはは・・・」

 

アミクの笑みが引き攣った。

 

「まぁ、ともかくじゃ。ほとんどが問題行為ばかりで・・・儂は評議員に怒られてばっかじゃぞ・・・」

 

皆は気まずそうに床を見る。

 

「だがーー」

 

マカロフは突然笑い、文書を燃やす。

 

「ーー評議員などクソくらえじゃ」

 

文書を空中に投げると、それをナツが食べた。

 

「よいか! 理を超える力は全て理の中から生まれる。魔法は奇跡の力なんかじゃねぇ。我々の内にある気の流れと自然界に流れる気の波長が合わさり初めて具現化されるのじゃ。それは精神力、集中力を使う。いや、己の魂を全て注ぎ込む事が魔法なのじゃ。上から覗いている目ん玉気にしてたら魔道など進まん。評議員のバカ共などに恐れるな」

 

そこまで言うとマカロフは人差し指を上に向ける。

 

「己が信じた道を行けぇ! それが妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士じゃぁぁぁ!!」

 

『おおおおお!!』

 

ギルドメンバーはマカロフと同じ様に指を立てて雄叫びをあげる。もちろんアミクやマーチもだ。

 

アミクはチラリとルーシィを見る。ルーシィの顔はこれからのことを思ってか、期待でキラキラと輝いていた。

 



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双竜と猿と牛

ヤベェ、ノッテくると小説書くの楽しい。今回オリ主の初戦闘です。うまくかけてりゃいいが・・・。


ルーシィがいつの間に復活してたミラに妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルドマークを入れに行っている間、アミクはナツに話しかけた。

 

「ナツ。遅くなったけどおかえり」

 

「ああ!ただいま!」

 

ナツがニカッと笑って答えた。

 

「ごめんねマーチ。時間とお金がなくてお土産のお魚買えなかったよー」

 

「それでよく帰って来れた、の。あとお魚以外の発想はない、の?」

 

ハッピーとマーチが会話する傍らでナツもアミクに質問する。

 

「アミクはどうしてたんだ?」

 

「どうも何もマーチと一緒に仕事したりしてたよ」

 

「ふーん、お前の方には何もなかったのか?」

 

「・・・ドラゴンの噂すら聞かなかったよ」

 

ナツが行ったのを除いてね、と付け加えた。

 

「・・・にしてもあんな綺麗な女の子引っ掛けて来ちゃって。とうとう春が来た?来ちゃった?ナツ(夏)なのに春が来ちゃった?」

 

「お前もたまに変なこと言うよな」

 

ナツが憮然として言うがハッピーがツボにハマったのか「ナツなのに春が来た・・・ぷぷっ」と口を押さえていた。

 

「アイツ、うちに入りたそうだったし家族が増えるのはいいことじゃねぇか」

 

「ナツらしいね。まぁ確かに楽しそうな人ではありそうだけど」

 

特にリアクションが。という言葉は胸の内にしまった。

 

「はい!これであなたもギルドの一員よ」

 

「わぁ、やったー!」

 

その時ちょうど終えたのかルーシィが満面の笑みでこっちにやって来て右手の甲を見せた。その無邪気な笑顔を見てアミクもナツも心が温まった。

 

「ナツ、アミク!見て見て!ギルドマーク付けて貰っちゃった!」

 

「おめでとう!歓迎します」

 

「ふーん、良かったなルイージ」

 

「ルーシィよ!?」

 

ルーシィが目をクワッと見開いて叫んだ。

 

「まぁまぁ、ルーシィさん。せっかくだから早速仕事に行ってみる?私達でチーム組んであげるから」

 

「ルーシィでいいわよ。そうね、じゃあお願いしちゃおうかな」

 

そういえば、とルーシィはさっきから聞きたかったことを聞いてみることにした。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)に双竜って呼ばれてる人達が居るでしょ?1人は火竜のナツ。で、もう1人は?」

 

「ああ、それはーーーーー」

 

そこにハッピーとマーチが1つの依頼書を持って来る。そのせいでさっきの答えは聞けずじまいだった。

 

「ねぇねぇ、これなんてどう?」

 

「あーし達にはちょうどいいと思う、の」

 

「盗賊退治で20万J?お得じゃん!」

 

「よし、これにすっか!」

 

そうしていざ、仕事に行かん、としたところで。

 

 

「ーーーーねぇ、父ちゃんまだ帰って来ないの?」

 

泣きそうな声に思わずアミクとナツはその発声元を見た。そこには黒髮の小さな少年ーーーロメオがマカロフに詰めよっている光景が見られた。

 

「くどいぞ、ロメオ。貴様も魔導士の息子なら親父を信じて大人しく家で待っておれ」

 

「でも3日で帰って来るって言ったのに・・・もう1週間も帰ってきてないんだよ!?」

 

「マカオの仕事は確かハコベ山じゃったな」

 

「そんなに遠くないじゃないか! 父ちゃんを探しに行ってくれよ!」

 

「貴様の親父は魔導士じゃろ! 自分のケツのふけねぇ様な魔導士はうちのギルドにはおらん! 帰ってミルクでも飲んでおれ!」

 

「くっ・・・」

 

ロメオは涙目になりながら俯く。

 

「バカーー!!」

 

「ぐおっ!?」

 

かと思ったら思いっきりマカロフの顔面に一発お見舞いして泣きながらギルドから走って出て行った。

 

「厳しいのね・・・」

 

「あんな風に言っててもマスターも心配してるのよ」

 

「・・・」

 

それを見て気の毒そうに言うルーシィに皿を拭きながら応えるミラ。

一方アミクはデジャブを感じていた、というより幼き日の自分を見ているかのようだった。ずっと一緒に居ると信じてた人が突然居なくなった喪失感。1人で居る孤独感。ずっと会えない寂しさ・・・。

 

ドゴォン!!

 

深い感傷に囚われていると突然の轟音。音がした所を見るとナツが依頼板(リクエストボード)を思いっきり殴りつけたところだった。

 

「ナツ・・・」

 

自分だけじゃない。ナツも同じ気持ちなのだ。

 

「お、おい、依頼板壊すなよ」

 

その言葉を無視してナツは無言でギルドを出て行く。

 

「マスター。ナツの奴ちょっとやべぇんじゃねえの?」

 

いつも「自分に合う仕事がない」などとほざいて仕事に行かないナブがマカロフに言った。

 

「アイツ、マカオを助けに行く気だぜ」

 

「これだからガキはよぉ」

 

「んなことしたってマカオの自尊心が傷つくだけなのに」

 

それを皮切りに他の人も次々と喋り出す。これはマカオのことを思っての発言でもある。魔導士には魔導士なりのプライドが存在するためである。

 

だが、マカロフはそれらを切って捨てた。

 

「進むべき道は誰が決めることでもねえ。放っておけ」

 

ちょっと腫れた頰をさすりながらマカロフは酒を飲み始める。

 

「どうしちゃったの、ナツ・・・?」

 

「ナツもロメオ君と同じだから……多分つい自分と被ったのかもね」

 

「え?」

 

ルーシィの疑問にミラが答えた。

 

「ナツのお父さんも出て行ったきり帰ってこないのよ。お父さん・・・とは言っても育て親なんだけどね。しかもドラゴン」

 

「ど、ドラゴン!? ナツってドラゴンに育てられたの!?」

 

ルーシィが驚くとアミクが続ける。

 

「小さい時そのドラゴンに拾われて・・・言葉や文化、魔法を教えてもらったんだって。でもある日、ナツの前からそのドラゴンが突然と姿を消した」

 

「!そっか、それがイグニール・・・」

 

ルーシィは納得した。初めてナツとあった時もイグニールを探していると言っていたのだ。そのイグニールが育ての親というわけだ。

 

(そして、それは私も同じく・・・)

 

顔を伏せるアミクを悲しげに見るミラ。

 

その意味をルーシィは後で知ることとなる。

 

「・・・じゃ、私も行くよ」

 

「え?」

 

「ナツとハッピーだけだと心配、なの」

 

ふっと笑みを浮かべるとアミクはマーチと一緒にナツの後を追いかけていった。残されたルーシィは呆然とそれを見ていた。

 

 

 

 

「・・ぅつ、うっ」

 

外ではロメオが涙を流していた。父親が戻って来るか不安で仕方ないはずだ。ロメオはまだ10歳にもいっていないのだ。この年齢で父親が居なくなったらあまりにも酷だろう。

 

そのロメオの頭をナツがポン、と一撫でするとそのまま去って行った。

 

「ナツ兄・・・」

 

「大丈夫だよ、ロメオ」

 

ナツの背を見ていたロメオにアミクが声を掛ける。アミクは座り込んでロメオと目線の高さを合わせた。

 

「お父さんはきっと無事だよ。今はちょっとトラブルで遅れてるだけなんだから。だから私達が迎えに行ってさっさと連れて来るよ」

 

「アミク姉・・・違う、違うんだよ・・・!」

 

ロメオが首を振りながら叫んだ。

 

「父ちゃんがあの仕事に行ったのは、俺のせいなんだ・・・!アイツらに父ちゃんをバカにされて・・・だから父ちゃんに・・・」

 

話の途中でアミクはロメオの頭に手を置く。

 

「それはロメオのせいじゃないよ。キミのお父さんはただ、魔導士として仕事に行っただけなんだから。それにキミのお父さんはその仕事をこなせない程弱くはないでしょ?」

 

そう言っても浮かない顔をしているロメオにさらに言う。

 

「うーんそうだなぁ、お父さんが信じられないんだったら一旦私達を信じてみてよ。私達はかならずマカオを連れ帰って来る、ってね」

 

そして優しく頭を撫でると立ち上がってハッピーとマーチと共に急いでナツの後を追いかけた。その後ろ姿を見るロメオの顔にはもう不安はなかった。

 

 

 

 

 

 

「それでさー、あたし今度ミラさんの家に遊びに行くことになったんだー!」

 

「下着とか盗んじゃ駄目だよ」

 

「盗むかっ!」

 

「じゃあ、盗むのは上着、なの?」

 

「何も盗まないわよ!?」

 

ハコベ山に向かう馬車の中でルーシィが猫2匹にツッコミまくっていた。ナツとアミクはぐったりしている。

 

「う、うっぷ・・」

 

「な、なんでルーシィが、う、居るの・・・?」

 

2人共激しい乗り物酔いに苦しめられていた。そんな2人を見てルーシィは話し出す。

 

「だってー、せっかくだから何か妖精の尻尾(フェアリーテイル)の役に立てないかなーって。それに仕事の話も流されちゃったし」

 

と、彼女は言っているが後半はともかく、本音としては新人のルーシィは何か手柄を立てて自分の株をあ上げたいのだろう。しかし、ルーシィの思惑がなんであれ軽い気持ちで来るような場所ではない。

 

「っていうか!ナツはともかくアミクも酔いやすい体質なの!?」

 

「その通り、なの。だから今みたいにナツと2人で酔ってる時は大変、なの」

 

「た、対処法はあるんだけど、今回は、忘れちゃって・・・」

 

アミクが口を抑えて言った。

 

「それはそうとしてマカオさんを探すの終わったら住む所探さないとな~」

 

「オイラとナツの家に住んでもいいよ」

 

「本気で言ってるとしたらヒゲ抜くわよ猫ちゃん」

 

ルーシィが目を据わらせて言うので、今度はマーチが提案する。

 

「じゃあ、あーし達の家に来ない?なの」

 

「え、アミクとマーチの家ってこと?でも世話になっちゃうのもアレだし、迷惑じゃない?」

 

「べ、別に私はいいけど・・・むしろ2人だけだったからちょっと寂しかったし、1人くらい・・・うぇぷ。そ、れに私達もう友達でしょ?」

 

息も絶え絶えに話すアミクに嬉しくなるルーシィ。ついさっき会ったばっかりなのに、すでに友達だと認めてくれた事が嬉しかったのだ。ルーシィもこの短時間で彼女と接するうちにアミクに心を開いていた。

 

「うーん、でも悪いよ。私も自立した方が・・・」

 

「き、来てくれたら、家賃半額で済むよ・・・?」

 

「行きます!よろしく!」

 

まさかの即決。やっぱり世の中は友情より金だったようだ・・・。

 

「そういえばアミク?さっきから聞こうと思ってたけどアミクって過呼吸持ち?」

 

「・・?な、なんで・・?」

 

「ギルドで皆が騒いでいる時、頻繁に深呼吸してたから過呼吸でも起こしたのかなって」

 

「そ、それは過呼吸じゃないよ、実はーーーー」

 

 

その時、ガタン、と音を立てて馬車が止まった。

 

「うおお、止まったー!」

 

「あー、生き返る!」

 

馬車が止まったことにより一瞬で復活したナツとアミクは喜んだ。

 

「すみません・・・此処から先は進めないです・・・」

 

申し訳なさそうに言う御者に礼を言うとアミク達は馬車から降りた。なんだか今日は遮られることが多いなーと思いながらルーシィも降りようとする。

 

「え?」

 

ルーシィは開け放たれたドアから見たのは一面雪が積もった銀世界だった。呆然となる。

 

「ルーシィ?来ないの?」

 

アミクが怪訝そうに呼ぶがそれよりも冷たい風が入って来て

 

「へ、ヘックチ!」

 

寒さに耐えることに必死だった。もう帰りたくなってきた。

 

 

 

 

「さ、寒ーーーっ!!な、何よこれ!? 山とはいえ今は夏季でしょ!? なのに何よこの吹雪・・・くしょん!」

 

「さむっ、薄着で来るんじゃなかったな・・・我慢できないほどじゃないけど」

 

「なんだよお前らー、だらしねぇな」

 

「あい」

 

「なの」

 

「なんでアンタは平気なのよ!?」

 

ナツも結構薄着のはずなのにケロッとしている。毛皮があるハッピーとマーチはともかく。

 

「ねぇマーチ、此処にもお魚居るかなー?」

 

「居るとしても氷の下だから獲れないと思う、の」

 

当の2匹は全然関係ないこと喋っていたが。

 

「火の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)だから寒さにも強いんだよ、アレは」

 

「うう〜いいなぁ、あ、そうだ!」

 

ルーシィは何か思いついたのか、腰についているホルダーから銀の鍵を取り出した。

 

(あ、そっか。星霊魔導士だっけ)

 

本人から簡単に聞いていたが、ルーシィは星霊を呼び出す星霊魔導士なのだ。しかし、今此処で使うとは何をするつもりなのだろうか。

 

「開け! 時計座の扉、ホロロギウム!」

 

ルーシィがそう唱えるとアミク達の目の前に古時計のような星霊が出現した。

 

「凄い・・・これが星霊・・・」

 

「うお、時計だ!」

 

「かっこいい〜!」

 

「この時計は何年代のもの、なの?」

 

1匹だけ斜め上の反応をしているが放っておく。それよりルーシィが見当たらない。と、思ったら。

 

「・・・」

 

ホロロギウムの中に毛布に包まったルーシィがいた。

 

「え、と何してるのルーシィ?」

 

「・・・」

 

ルーシィに聞くが何も聞こえない。口を動かしてはいるがどうやら声がこちらに届いていないようだ。

 

「何言ってんだお前?」

 

「『あたし、ここにいる』・・・と申しております」

 

突然ホロロギウムが喋った。どうやら中にいるルーシィの言葉を喋ってくれるようだ。

 

「何しに来たんだよ・・・」

 

さすがのナツも呆れたようだ。だが、ルーシィはそれを無視して話す。

 

「『マカオさんはこんな場所になんの仕事をしに来たのよ?』と申しております」

 

「知らねぇでついて来たのか? マカオは凶悪モンスター『バルカン』の討伐の為に此処に来てんだぞ」

 

ナツが依頼の内容を話すと中に入っているルーシィの顔がさーっと青くなった。

 

「『私帰りたい!』と申しております」

 

「はいどうぞと申しております」

 

「あい」

 

「なの」

 

「いや、ほんとに何しに来たの!?」

 

アミクはホロロギウムの中でブルブル震えているルーシィを見て思わずツッコむ。

 

「にしてもその中あったかいの?どうなってるんだろ・・・」

 

「『アミクも入ってみる?』と申しております」

 

「ほんと?じゃ、遠慮なく」

 

早速入ってみるアミク。

 

「『おおおー!あったかい!それに何か不思議な感じ!』と申しております」

 

「『ホロロギウムの中は絶対安全なんだから!此処に居れば大丈夫よ!』と申しております」

 

「お前ら遊んでんじゃねぇよ・・・」

 

珍しくナツがため息をついていた。

 

その時、

 

「『あ、何か近づいて来るよ!』と申しております」

 

「『え、嘘!』と申しております」

 

「同じ声だからどっちがどっち言ってんのか分かんねぇ・・・」

 

ともかく、と辺りを警戒するナツ。そのナツの頭上に影が差す。

ナツが見上げると大きな猿が襲いかかって来ていたところだった。とっさに避ける。

 

「バルカンだ!」

 

ハッピーが叫ぶ。だが、バルカンはナツ達を無視するとーーー。

 

「人間の女、見っけ!しかも2人!」

 

「「ひっ!」」

 

ホロロギウムの中に居るアミクとルーシィを狙った。アミク達は急に近づいて来た猿顔にビビって互いに抱きついた。だが、それは狭い空間で美少女2人が抱き締め合う図になりバルカンを余計に興奮させる。

鼻息を荒くしたバルカンはホロロギウムをヒョイと担ぎ上げるとどこかに持ち去ってしまった。

 

「アイツ、喋れるんだな」

 

「アイツに聞けばマカオの居場所も分かるかも、なの」

 

「あい!」

 

「『てか助けなさいよおおおおおお!!』『いやーーーー!!バルカンの子供産んじゃうーーー!!』と申しております・・・」

 

「「「あ」」」

 

呑気に話すナツ達の耳には美少女2人の叫びが響いていた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

ハコベ山、バルカンの住処である洞窟の真ん中でバルカンがホロロギウムの周りで踊っている。

 

「『なんでこんな事になってるわけ!? てか、この猿テンション高いし!』 と申されましても・・・」

「『絶対安全なんじゃなかったの?より窮地に陥ってる気がする・・・』と申しております・・・」

 

そう2人で嘆いていると、バルカンが中に入っている2人に顔を寄せてきた。

 

「人間の女〜!」

 

「ひっ!」

 

「うわ」

 

完全にエロ猿だった。

 

「『で、でも本当にこの中だけは大丈夫!篭ってれば安心・・・』すみません、時間です」

 

「「え?」」

 

ホロロギウムが消えてアミクとルーシィは外に出された。恐らく星霊界に帰ったのだろう。だが、タイミングが悪い。

 

「延長よ! 延長ー! ねぇちょっとー!?」

 

「ルーシィ。やるしかないみたいだよ」

 

消えてしまった星霊に縋り付くルーシィにアミクは冷静に告げる。

 

「うほ!うほ! 女!」

 

「そのようね・・・」

 

ルーシィも覚悟を決めたのか今度は金の鍵を取り出した。

 

「こうなったら・・・開け! 金牛宮の扉、タウロス!」

 

そう唱えた直後。

 

「MOooooooooo!」

 

雄叫びと共に現れたのは背中に斧を背負った大きな牛だった。

 

「なるほど、牡牛座、だからか」

 

アミクが納得していると、

 

「タウロスは私の持つ星霊の中で一番の怪力なんだから!」

 

「MO! ルーシィさん、今日もナイスバディですなぁ」

 

「しまった、こいつもエロかった・・・」

 

なんて会話を聞いてこの星霊大丈夫か?と心配になった。ルーシィを見てメロメロになっていたタウロスの目にアミクが映る。見た瞬間目が大きなハートになった。

 

「MOoooo!!!こっちの子もナイスバディィィィ!!!お名前はなんですかぁぁぁぁ!!!!」

 

「ひぃっ!!?」

 

「アミクに何してんのよおおぉぉぉぉ!!!」

 

鼻息を荒くしてにじり寄って来たタウロスをルーシィが思いっきり蹴飛ばす。

 

「ブモウ!!?」

 

「ごめんねアミク怖かったよね、よしよし」

 

「何あれ、中身バルカンじゃないの?」

 

震えるアミクを抱き締めて撫でるルーシィ。そもそもアンタが召喚したんだろうがと言いたい。

 

「俺の女、奪うな!」

 

「俺の女? それは聞き捨てなりませんな!どっちです?それとも両方ですか?」

 

バルカンとタウロスが睨み合う。怪獣決戦のようにも見えるが、アミク達からは淫獣が2匹並んでるようにしか見えなかった。そこに

 

「うおおおおおお!!火竜の鉄拳!!」

 

ナツが拳に炎を纏わせながら迫る!そして思いっきりぶっ飛ばした!ーーーータウロスを。

 

「MOoooo!!?」

 

「そっち!?」

 

タウロスは吹っ飛び、ルーシィが悲鳴をあげた。

 

「怪物が増えてる、の?」

 

「それ、味方!あたしの星霊!」

 

マーチとハッピーも飛びながらやってきた。

 

「MO〜ダメみたいですなぁ・・・」

 

「よっわ!」

 

あっさりダウンしたタウロスを見てアミクがツッコみを入れる。

 

「アミクもルーシィも無事みたいだね」

 

ハッピーが呑気に言うが、今の状況が分かっているのだろうか。

 

「ま、いっか。ナツも私も居るし」

 

アミクがそう言うからには彼女も戦うようだ。しかし、彼女の魔法は何なのだろう?ルーシィは疑問に思った。

 

アミクがバルカンの前に対峙するとナツもその隣に立つ。

 

「よしっ、やるかアミク!」

 

「うん。帰還直後の相手としては申し分ないね」

 

まるで何年も連れ添った相棒のようにやりとりする2人を見て違和感を覚える。ルーシィがその違和感の正体にたどり着けなないままいると、バルカンはさすがに2対1だと分が悪いと思ったのか洞窟内でも一際高い足場に上がる。

 

「うほっ、俺をただのバルカンだと、思うな」

 

そう言うとバルカンは大きく息を吸い込んだ。何だか既視感あるその行動に嫌な予感がした2人は咄嗟に左右に分かれて避ける。直後。

 

うほおおおおおおおおおおお!!!!

 

轟音。そう呼んでもいい大声がバルカンの口から飛び出る。その轟音はさっきまで2人が居た氷の床に当たり、亀裂を走らせた。ルーシィもあまりの騒音に耳を抑える。

 

「何アレ!?バルカンはあんなこともできるの!?」

 

「普通はしないよ!!」

 

「多分、変異種、なの」

 

同じように耳を抑えたハッピーとマーチが言う。

 

あのように結構攻撃力もある咆哮をくらえばただでは済むまい。たとえ無事であっても怯んで隙を晒すことになるだろう。

 

 

ーーーーそれが普通の魔導士だった場合は、だが。

 

 

「でも、相手が悪かった、の」

 

マーチが珍しくニヤリ、と笑う。

 

「そ、そうよね。ナツが居ればきっと勝てるわよねーーーー」

 

「そっちもあるけど、本当の意味(・・・・・)で相手が悪い、の」

 

マーチがそう言った後、ふと前を見るとバルカンがこちらに体を向けて息を吸い込んでいたところだった。

 

「え!?まさか!?」

 

こちらを攻撃するつもりか。と驚愕したところで、ルーシィ達の前にアミクが立つ。

 

「アミク!?ダメっ、避けて!」

 

「地味に高い知能も持ってるのか。これはもしかしたら・・・」

 

ルーシィが悲鳴をあげるも、アミクは自分の推測を呟く。そして、咆哮が放たれた。

 

うほおおおおおおおおおおお!!!

 

空気のうねりがまっすぐアミクに向かって来る。アミクに当たる直前にルーシィは思わず目を瞑った。ああ、花のように細いアミクが理不尽な暴力によって無残に手折れーーーー。

 

 

「ーーー?」

 

しかし、いつまで待ってもアミクの悲鳴も聞こえず、何の衝撃も起きなかった。というより、さっきの咆哮にしては静かすぎる。ルーシィはパチリ、と目を開けた。

 

ルーシィの目に映ったのは目に見えるほどだった轟音、つまり空気のうねりがアミクの口の中に吸い込まれていく光景だった。それはまるで、轟音を喰べている(・・・・・)かのように。

 

「アミクーーー!?」

 

思わず叫んだが、何故か自分の声が聞き取りづらいことに気付く。これは一体・・・。それにあの光景は見覚えがある。ついこの前、ハルジオンでナツがボラの放った炎を喰べていた時と一緒ーーーー。

 

(まさかーーー!?)

 

ルーシィはやっと悟る。そもそも伏線は多くあったのだ。ナツとハッピーのように一緒にいるアミクとマーチ。ギルドでの何かを吸っているような行動。酔いやすい体質。これ程までにナツとの共通点があって気付かなかったとは。

 

「ーーーーんっ、ぷはぁ、ご馳走さまでした」

 

少し色っぽく息を吐き出したアミクは満足そうにバルカンを見る。流石のバルカンも鼻水を垂らして驚いている。

 

「アミクーーーあなたはーーー」

 

「そういうこと。改めて、『双竜』の片割れ、『音竜』のアミク、です」

 

音竜。つまりは『音』の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)。ナツが火を食べたようにアミクも「音」や「声」といったものを食べれる。周りの音がアミクに吸い込まれていくのでその音が他の人の耳に届かず、聴こえにくい、ということも多々ある。

それに音竜だけあって聴覚がずば抜けて優れている。ナツ達が来たことが分かったり、バルカンが近づいていることに気付いたのもこの聴覚のおかげだ。

 

「さて、じゃあこっちの番だね」

 

アミクは手を握りしめるとそれに魔力を纏わせる。

 

「マーチ!あのバルカンまでお願い!」

 

「お任せあれ!なの!」

 

マーチがすぐさまアミクの襟首を掴み、まだ動揺から抜け出せていないバルカンに向かって高速で飛んで行く。

 

「うほっ!?」

 

「さっきはご飯くれてありがとう!」

 

やっと正気に戻ったバルカンだがもう遅い。すでにアミクは腕を振り絞っていた。そしてーーーー。

 

「音竜の響拳(きょうけん)!!」

 

拳を振り抜いた。

 

その拳がバルカンの顔面に当たった瞬間、ガァアアン!!と音が炸裂した。同時に衝撃波が放たれる。

 

「うほおおおおおおっ!!!!!?」

 

衝撃波を伴ったパンチを喰らったバルカンはそのまま吹っ飛ばされた。そして壁に激突するかと思われたがーーーー。

 

「俺にもやらせろ!火竜の鉤爪!」

 

ハッピーに掴まれて飛んでいたナツが上からバルカンを蹴り落とした。床に激突し、亀裂が走る。

 

「一つだけ教えてあげる。本当の咆哮っていうのはーーーー」

 

それを見たアミクが大きく息を吸い込む。先程バルカンがやった時のように。

 

「こうやるんだよ!」

 

そしてその声とともに。

 

「音竜の咆哮!!」

 

先ほどのバルカン以上の轟音と空気のうねりが放出された。ゴオオオオオオと音を立てながら突き進むブレス。それはまるで本物の(ドラゴン)の咆哮のようであった。

ブレスはバルカンを巻き込み、洞窟の壁をも破壊して吹雪になっている外まで届いた。もはや壁は無く、大きな穴があるだけだった。

 

「・・・・もしかして、やりすぎた?」

 

キョトン、と冷や汗を流しながら首を傾けるアミクを見て、やっぱり妖精の尻尾(フェアリーテイル)の立派な一員だな、と思ったという。

 

 

 

 

外まで飛ばしてしまったバルカンを連れて来て、というアミクのお願いにより気絶してるバルカンを苦労して運んで来たハッピーとマーチ。

 

「何でこいつ連れて来たんだよ」

 

「マカオさんの居場所聞くんじゃなかったの?」

 

「あ、忘れてた!」

 

「ううん、それはもういいかもしれない」

 

話をしていたナツとルーシィにアミクが言うと、突如、バルカンが光に包まれた。

 

「な、何ぃ!?」

 

「眩しいぃ!」

 

「やっぱり!」

 

それぞれそう口にすると、現れたのは傷だらけの中年の男性だった。

 

「「マカオ!」」

 

「え、この人がマカオさん!? さっきまでエロザルでしたけど!?」

 

「バルカンに接取(テイクオーバー)されたんだ!」

 

「?」

 

聞きなれない魔法にルーシィは首を傾げる。

 

「身体を乗っ取る魔法だよ。バルカンはそうやって生き繋ぐモンスターだったんだ!」

 

とりあえずマカオを持って来た毛布の上に寝かせた。

 

「長い間、バルカンと戦っていたんだね・・・」

 

「おい、マカオ! 死ぬんじゃねぇぞ! ロメオだって待ってんだ!」

 

「私に任せて!」

 

アミクがそう言って一息吸うとーーーー歌い出した。

 

「え・・・?一体何を・・?」

 

「まぁ、見てろ」

 

ナツがルーシィに短く言う。マカオを見るとーーー。

 

「!?傷が塞がっていく!?」

 

マカオの全身が光に包まれていて見る見るうちに傷が治っていくのだ。

 

「ーーー治癒歌(コラール)

 

アミクがそう言った直後、マカオの傷が全部癒された。

 

「凄い!アミクは治癒魔法まで使えるの!?」

 

「ーーーー治癒魔法は治癒魔法でも音楽魔法に属する治癒魔法。歌わなきゃ効果は発揮しない」

 

これも音色を操る音竜の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)だからこそできる芸当だ。音楽によって味方を鼓舞したり、リラックス効果を与えることできるのと同じようなものだ。

 

「ふぅ、ちょっと魔力を使い過ぎたかな・・・」

 

そう言って疲れたようにフラッとするアミクをナツが支える。

 

「お疲れ、アミク」

 

「ありがとう、ナツ」

 

「さっきのブレスはやりすぎだと思う、の」

 

「あはは、ちょっと見栄張っちゃった」

 

ナツとアミクがそんな風に会話しているのを見ると、2人の間には誰にも割り込めない絆があるようにルーシィは感じた。

 

その時、マカオの瞳がゆっくり開く。

 

「マカオ!」

 

「気がついたか!」

 

「よぅナツ、アミク・・・。クソ、情けねぇ・・・19匹は倒したんだ・・・」

 

「え!?」

 

「20匹目が変異種で勝てなくて接取(テイクオーバー)れちまった・・・情けねぇ。これじゃロメオに合わせる顔がねぇ・・・」

 

「そんなことない!19匹も倒せたら英雄モノだよ!ロメオにも伝えてあげなよ。自分は英雄だって!ほら、帰ろう?」

 

「へっ・・・おう」

 

マカオはアミクの手を掴んで起き上がった。アミクが癒したお陰か動ける程度には回復したようだ。

 

(あの猿、1匹だけじゃなかったの・・・? あの猿よりは弱いだろうけど、それを19匹も倒すなんて・・・)

 

改めて自分の所属しているギルドの強さを実感するルーシィ。

 

(凄いなぁ・・・敵わないや)

 

「ルーシィ、にやついてどうしたの? 怖いよ?」

 

「いやらしい、の」

 

「ヒゲ抜くわよ、猫ちゃん達!?」

 

 

 

夕日が沈みかける、オレンジ色のマグノリア。そこに、ロメオが1人で立っていた。此処からずっと動いていない。ロメオは信じているのだ。自分の父を、連れて帰ると言ったアミク達を。

そしてその想いは報われる。

 

「ロメオー!」

 

自分を呼ぶナツの声。見るとそこにはアミクの隣で、ナツに肩を借りながらもしっかりと自分の足で歩いている、申し訳なさそうな顔のマカオが居た。

 

「父ちゃーーーーん!!!」

 

「おおっ!!?」

 

ロメオがマカオに抱きつき、マカオは後ろに倒れた。

 

「父ちゃん・・・ごめんっ!・・・俺・・・」

 

「心配かけてすまなかったな。ロメオ」

 

「いいんだ。俺は魔導士の息子なんだから。それに待つのなんて当たり前だろ?俺は父ちゃんの息子なんだから」

 

「そうか。今度クソガキ達にからまれたらこう言ってやれ。俺の親父は化け物19匹倒せる英雄だ! ってよ」

 

「うん・・・うん!」

 

ロメオは嬉し涙をこぼす。そしてアミク達の方を向いた。

 

「アミク姉、その・・・励ましてくれて、ありがとう・・・」

 

そして頰を赤く染めながらアミクに礼を言う。それに対してアミクは優しげな笑みを浮かべて頷いただけだった。

そして、そのままナツ達はギルドに向かった。ロメオはその背に向けて声をあげる。

 

「ナツ兄ーー!アミク姉ーー!ハッピーー!マーチ!それにルーシィ姉もーー!本当にありがとう!!」

 

ルーシィはロメオの言葉に小さく手を振り返した。ナツもアミクもハッピーもマーチも互いに顔を見合わせて心地良さげに笑うのだった。

 

 




つ、疲れた・・・。まさかの一万字超え・・・。
ちなみにコラールは賛美歌って意味です。
感想よろしくお願いします!ちなみにロメオの前でしゃがんでいた時、アミクはスカートでした。


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チーム結成

アミクのイメージ姿としては初音ミクのおっぱいでかいバージョンだと思えばいいです。



ルーシィは感激していた。とうとう自分の部屋を手に入れることができたのだから。辺りを見回してみる。自分が持ち込んだものを除いてもセンスがいいと言える小物、綺麗な壁紙、埃一つない窓。全てが最高だ。

この部屋はアミクの家にあるいくつかの内の一つなのだが結構広いし窓から見える、家が並んでいる景色や川もいい。いい事尽くめだった。

 

「この家のお風呂も大きかったし、設備も充実してる!暖炉はレトロな感じだし素敵!!竈まである!」

 

「そこまで絶賛されると逆にどこか不備がありそうで怖いんだけど・・・」

 

興奮するルーシィにアミクが苦笑する。マカオの件のとき、この家に住むことを金に釣られて即決したルーシィだったが、とりあえず様子見でお試し期間として住まわせてもらっている。

 

「えーっと、これってシェアハウスってことになるのかしら?」

 

「そうだね。だからリビングとかも自由に使っていいし、ほんとに自分の家だと思ってもらって構わないけど・・・なんせ私もこういうの初めてだから・・・」

 

「まだ、お試しだから1週間は住んでみてそれからほんとに此処に住むかどうか決めればいい、の」

 

アミクが照れながら言い、マーチも助言する。

 

「もっとも、それまで待つ必要はなさそう、なの」

 

マーチの言う通りすっかりこの家が気に入ったようで目をキラキラさせながらあっち行ったりこっち行ったりして家の中を探検している。この様子だとこのまま此処に住み着きそうである。

 

 

ここでアミクの家について簡単に説明しよう。まず、2階建てだ。1階にキッチンやリビング、お風呂がある。2階にはルーシィやアミクの部屋があり、トイレは1階、2階に1つずつある。ちなみに庭もあり、そこで何か野菜を育てているらしい。そして肝心の家賃。何と――――

 

「じゅ、10万っ!!?」

 

「もし、ルーシィが住むんだったら2人で分けて5万だね」

 

「ちょ、ちょっと!おかしいでしょ!!こんな良い家がたった10万なわけないじゃない!」

 

ルーシィの言う通り、そこそこの大きさに充実した設備を持つ家としては破格の値段だ。

 

「も、もしかして事故物件だったり・・・?」

 

「それはないから安心して。実はこの家の大家さんとは知り合いでね。そのよしみで安くしてもらってるんだ」

 

実は前にその大家さんをある事件から助けたことがあり、その恩ということでこの家を安く使わせてもらっているのだ。

 

「ちなみに、元の値段聞いてみても・・・?」

 

「20万Jだったかな?」

 

「25万、なの」

 

「・・・」

 

開いた口が塞がらないとはこのことだろう。半額以上に安くしてもらって自分はさらにその半額なのだ。もうこの良物件薦められただけで一生分の運を使い果たした気がする。

 

「もうずっとこの家に住む~~~!ほんとにありがとねアミク~!」

 

「ちょっと!恥ずかしいからやめて!」

 

ルーシィがアミクをまるで神かのように崇める。

 

「そうだ、せっかくだしお風呂入って来なよ」

 

「いいの!?あの風呂使ってみたかったの!ありがとう~!」

 

入浴を提案するや否やビューーーンという擬音が聞こえそうなほどの速度でお風呂に直行していった。それを微笑ましそうに見るアミク。

 

「でも、ほんとにどうした、の?こんなことするなんて」

 

マーチが疑問に思ったのか首を傾けて聞いてきた。

 

「人恋しかったのもあるよ。マーチが居てくれたから孤独ではなかったけど、やっぱり家にもっと人が居てくれるのは安らぎがあるから・・・」

 

アミクはそっとマーチを抱きしめる。

 

「マーチがダメってわけじゃないよ。ただ、時々不安になるんだよ。2人だけで過ごしていていつの間にか、一緒にいた人が消えて1人ぼっちになっていないか。置いてかれてないか、怖くなる。1人にはなりたくない。たくさんの人と一緒に居た方が孤独感は薄れる・・・」

 

マーチは優しくアミクの腕をさする。

 

「・・・ごめんね。これはただの私のエゴだよね。でもルーシィが居るからってマーチが居なくなっていいわけじゃないよ」

 

「分かってる、の。つまりアミクは皆と一緒に居たいだけでしょ?あーしだって『アミクと一緒に居たい』って言うエゴで居るから全然問題ない、の」

 

「・・・ありがと、マーチ」

 

アミクは抱き締めてるマーチの頬に自分の頬をすりよせる。柔らかい毛皮の感触が気持ちいい。

 

(・・・不安なのはあーしも、なの)

 

だが、マーチは内心でこう思っていた。

 

(アミクの方こそ、どこにも、行かないよね・・・?)

 

マーチの心には昔から漠然とした不安があった。

 

 

 

 

 

「ほんとにこの家に来て正解だった!!同居人は常識人だし、家は全てが最高だし、そしてなにより一番ステキなのは・・・!」

 

風呂から上がったルーシィは裸にバスタオルを巻き付けた姿のまま、ぶつぶつ言いながら明るい顔をして自室のドアを開けた。そりゃあもう、キラッキラの顔して。

 

「よお!」

 

「あたしの部屋――――!!!」

 

そこには我が物顔でソファに座りフランクに手を挙げてお菓子を頬張るナツと魚を食い散らかしてるハッピー、済まなそうな顔をしているアミク、そしていつも通り何を考えているか分からない顔をしているマーチが居た。

 

「なんであんた達が此処に居るのよォォォォ!!」

 

「「ごふっ!!?」」

 

ルーシィの回し蹴りが綺麗にナツとハッピーに入って壁に叩きつけた。

 

「だ、だってミラから部屋、つーか家が決まったって聞いたから・・・」

 

「あい・・・」

 

「聞いたから何!? 親しき中にも礼儀ありって言葉知ってる!? 女の人の部屋には勝手に入らないものなのよ!」

 

「まだ正式に決まったわけじゃないけどね」

 

「あと、グレイじゃないけど服を着ろ、なの」

 

なんかもともとこの家に住んでた人達そっちのけでルーシィがナツ達に説教していた。そもそも、アミク達も勝手に入っているがそこはいいのだろうか。

 

「それにアミクも!ほいほい男の人を家にあげてあまつさえ、人の部屋に入り込ませるなんて!!もうちょっと警戒心持ちなさい!せめて止めなさい!」

 

「いや、私達がこの部屋覗いた時にはすでに居たんだよ」

 

「普通に不法侵入じゃないのよ!!?立派な犯罪よ!!」

 

「おい、それは傷つくぞ・・・」

 

「傷ついてるのはあたしの方よ・・・」

 

ナツが情けない顔をしていた。変なところで繊細な男である。

 

「まぁまぁ、こういうのは慣れるとむしろ嬉しくなるよ?」

 

「慣れると、って・・・」

 

「今までもう何回もされてるから」

 

「ナツ――――――!!」

 

「あい――――!!」

 

ナツがハッピーみたいな声を出した。

 

「・・・もぐもぐ、うん、ルーシィのツッコミはやっぱり美味しい♪」

 

「ちゃっかり『声』を食べてる、の」

 

さっきからルーシィが叫んでばっかりなので、その『声』を食べてご満悦のアミクであった。

 

「いい部屋だね、ルーシィ」

 

「爪研ぐな! 猫!」

 

「マーチもやってみる~?」

 

「1人でやってろ、なの」

 

「あ、ハッピーそれ以上傷つけたら弁償ね」

 

「あ、あい・・・」

 

アミクが目を光らせて言うとすぐにやめた。 

 

「ん? なんだこれ?」

 

ナツはルーシィの机の上にあった大量の紙の束を拾い上げる。それに気づいたルーシィはすぐさまナツに近づく。

 

「ダメー!!」

 

「のわっ!?」

 

ナツを突き飛ばし、紙の束を奪う。

 

「気になるな、んだよそれ?」

 

「私も気になる」

 

 

アミクが興味深々に見て、たんこぶができたナツが聞くも、ルーシィは紙の束を抱きしめて離さない。

 

「なんでもいいでしょ!アミクにも見せられないわ!というか帰ってー!!」

 

「せっかく遊びに来たんだから帰るのやだ!」

 

「超勝手・・・」

 

「それがナツだから」

 

もはや楽しげに笑うアミクからは経験者による苦労がにじみ出ているようにも見えてルーシィは人知れず恐怖するのであった。

 

 

 

 

 

その後、落ち着きを取り戻し、私服に着替えたルーシィはナツ達に紅茶を出し、テーブルの椅子に腰掛ける。(ちなみにこの紅茶はルーシィが持ってきたやつである)

 

「引っ越したばっかだから家具も揃ってないのよ。遊ぶものなんてないからこれ飲んだら帰ってよね!」

 

「残忍な奴だなぁ・・・」 

 

「あい」

 

「残忍って・・・」

 

「ほら、遊ぶものなら私が持ってるから。あんまりルーシィを困らせたらだめだよ?」

 

アミクがナツ達を窘めるように言う。だが、なぜかナツ達は感動した様子だ。

 

「おおー、さすがアミクは心が広いなぁ」

 

「あい!それがアミクですから!」

 

「それに比べて・・・」

 

と、ルーシィの方を見る。

 

「ルなんとかさんはなぁ」

 

「あい、心が狭いです・・・」

 

「随分な言い草ねぇ!!?」

 

そろそろルーシィの顔が女の子がしていい顔じゃなくなってきた。ルーシィの表情筋を守るためにもなんとかしなければ。 

 

するとアミクは思いついた。

 

「あ、そうだ。ルーシィの持ってる星霊、全部出してみてよ!」

 

「星霊を?」

 

ルーシィが聞き返す。 

 

「せっかくだしね。ルーシィの他の星霊も見てみたいし」

 

「そういえばルーシィは今何人の星霊と契約してる、の?」

 

アミクに続いてマーチも聞いてみる。 

 

「6体! 星霊っていうのは1体、2体って数えてね・・・」

 

マーチの質問に答えながら、ルーシィは6本の鍵を取り出し、それぞれテーブルに銀の鍵3本と金の鍵3本に分けて置いた。

 

「こっちの銀の鍵がお店で売っている奴。時計座のホロロギウム、南十字星のクルックス、琴座のリラ。 そしてこっちの黄金色の鍵が『黄道十二門』の超レアな鍵。 金牛宮のタウロス、宝瓶宮のアクエリアス、巨蟹宮のキャンサー」

 

「か、蟹かー!?」

 

「蟹ー!」

 

「また訳の分からない変なところに食いついたし・・・」

 

(確かに蟹はおいしそう・・・)

 

口には出さなかったがアミクも似たり寄ったりの思考だった。 

 

そのときルーシィは何か思い出したようにぽんっと手を叩く。

 

「そういえばまだハルジオンで買った鍵の契約をしてなかったわ。特別に星霊魔導士と星霊との契約の流れを見せてあげる!」

 

「「おおー!」」

 

「ほんとに!?」

 

「楽しみ!なの」

 

ルーシィの言葉に全員期待に満ち溢れた顔をした。が、急にナツとハッピーは顔を青ざめるとアミクやルーシィ達に聞こえないようにヒソヒソ話し出した。

 

「血判とか押すのかな?」

 

「痛そうだな・・・ケツ」

 

「めっちゃ聞こえてるから。あとなんでお尻・・・?」

 

耳のいいアミクには全く無意味だった。

 

そうしている間に、ルーシィは契約の準備を整えた。

 

「ゴホンッ! まぁ見てて。我、星霊界との道を繋ぐ者! 汝、その呼びかけに応え、(ゲート)をくぐれ! 開け、仔犬座の扉・・・ニコラ!」

 

詠唱した途端、光が漏れた。

 

「「おおー・・・」」

 

「わぁ・・・」

 

「綺麗、なの・・・」

 

全員その幻想的な雰囲気に声を失う。

 

そして、光はだんだん形をとっていき、現れたのは―――

 

真っ白な小さな体に、角のような鼻、二足歩行でプルプル震える生物。

 

「プーン」

 

それを見た人々の反応はそれぞれだった。

 

ナツとハッピーはショックを受けたかのように愕然とし、アミクは瞳を輝かせ、マーチはなぜかドヤ顔していた。

 

沈黙に包まれる中一番最初に声を上げたのがナツ&ハッピーコンビだ。

 

「「ド、ドンマイ・・・」」

 

「失敗じゃないわよ!!」

 

次に動き出したのはアミクだ。

 

「プ、プーン」

 

「なにこれかわいい!!」

 

「そ、そうか・・・?」

 

「でしょ!?やっぱりアミクなら分かってくれると思ったわ!」

 

「この円らな瞳、ぷるぷる震える体、このドリルみたいな鼻!可愛い要素しかない!」

 

「最後のは可愛いのかしら・・・」

 

そうやってニコラを抱き締めたりする女子2人を見ているナツ達は女はよく分からん、って顔をしていた。

 

マーチに至ってはぼうっと見ているだけだ。

 

「ニコラは魔力消費が少ないから愛玩星霊として人気なのよ」

 

「へー、そうなんだ」

 

アミクが納得している後ろではナツ達がヒソヒソと会話をしていた。

 

「ナツ、マーチ。人間のエゴが見えるよ・・・」

 

「やっぱり、ルイージ怖ぇな・・・」

 

「人間に限らず全ての生物はエゴの塊、なの」

 

「だから聞こえてるって・・・それにルーシィだよ・・・」

 

「マーチは何悟ってるのー!?」

 

アミクとルーシィが仲良くツッコミを入れた。

 

「まぁ、いいわ。契約に移るわよ」

 

ルーシィは近くに置いてあったメモ帳とペンを取るとニコラの前にしゃがみこむ。 

 

「月曜は?」

 

「プン、プーン」

 

首を横に振るニコラ。すぐさまメモを取るルーシィ。

 

「じゃあ火曜?」

 

「プン」

 

今度は首を縦に振るニコラ。またメモを取るルーシィ。

 

「うんうん、水曜!・・・」

 

そんな契約をしている様子をアミク達はテーブルの紅茶を飲みながら見ていた。

 

「地味っ!!」

 

耐えきれずにアミクが叫んだ。

 

「なの」

 

マーチも相槌を打つ。

 

そして少し時間が進み―――

 

「はい! 契約完了!」

 

「プン、プーーン!」

 

ルーシィがメモ帳を閉じるとニコラが飛び跳ねる。

 

「案外、契約簡単なんだね」

 

「だな」

 

「そう見えるけど、結構重要な事なのよ? 星霊魔導士は契約……つまり約束ごとを重要視するの。だから私は約束は絶対破らない・・・てね!」

 

「へぇー」

 

割と深い言葉だった。アミクは感心する。

 

「あ、そういえば名前決めなきゃ!」

 

「ニコラじゃないの?」

 

「それは総称でしょ? 」

 

ニコラを見ながら顎に手を当てながら名前を考えるルーシィ。やがて思いついたのか「そうだ!」と声を出す。

 

「おいで、プルー!」

 

「プーン!」

 

「「プルー?」」

 

「プルー!いいじゃん!なんか語感が可愛い!」

 

「分かる!?やっぱりそう思うわよね!」

 

また女子達だけで盛り上がる。またナツ達も首を傾ける。またマーチがドヤ顔していた。

 

「プルーって仔犬座なのにワンワン鳴かないんだね。変なの」

 

「あんただってニャーニャー鳴かないじゃない」

 

ルーシィがそう言うとプルーがルーシィの腕から抜け出しナツ達の前で踊り始めた。

 

「なにかしら?」

 

「何かの儀式?」

 

少女2人が疑問に思っていると急にナツの顔が輝き出した。

 

「プルー!お前いいこと言うな!」

 

「プーン!」

 

そして互いにグッドサインを出す。

 

「「なんか伝わってるし―――!」」

 

見事にハモッた。

 

「マーチはさっきから何やってるの?」

 

「読者に存在感をアピールするためにいろんな表情してる、の」

 

「え?なんの話?それにこれ小説だから実際に字で表現されないと伝わらないよ?」

 

ハッピーとマーチはなんか凄い危ない会話をしていた。

 

「そうだ!こんな所でちんたらしてる場合じゃねェ!他にも用事があってきたんだ!」

 

「じゃあそれを早く言いなさいよ!」

 

ごもっともである。

 

「ほら、前に言ってたチームの話。今日はいい仕事持って来たから俺達でチーム組んで行こうぜ!!」

 

「いいね!ルーシィもいいよね?」

 

「もちろん!」

 

ルーシィは自分の心が高ぶっているのに気付いた。やっと皆で仕事に行けるのだ。この日をどんなに待ったことか。

 

アミクとナツ、そしてルーシィは拳を突き合わせた。

 

「よし、決定だ!」

 

「契約成立ね!」

 

「よろしく!」

 

「あいさー!」

 

「なのー」

 

忘れられないためかとりあえず声を上げるハッピーとマーチ。

 

「早速仕事行くぞォ!」

 

「そういえば仕事持って来たとか言ってたわよね。もう~せっかちさん!」

 

そう言ってルーシィはナツが持ってる紙をひったくるように取った。

 

その時アミクはナツの顔が邪悪に笑っていたのを見逃さなかった。

 

「・・・ナツ。何を企んでるの?」

 

「うぉえ!?べ、べっつにィ~?」

 

ナツが下手くそな口笛を吹いて誤魔化す。その時

 

「うそ! エバルー公爵って人の屋敷から本1冊取りに行くだけで20万J!?」

 

「な? おいしいだろ!?」

 

確かにそれだけ聞くとお得だが・・・。さっきのナツの表情が引っかかる。そして、すぐにその正体が分かった。

 

「ん? 注意、スケベで女好きで変態・・・ただいま金髪のメイド募集中・・・っ!?」

 

恐る恐るナツ達を見ると凄い爽やかな笑顔で話していた。

 

「ルーシィって金髪だもんな・・・」

 

「メイドの格好で忍びこんでもらおうよ~」

 

「あ、あんた達最初から・・・」

 

ルーシィはプルプルと震えると・・・

 

「は、はめられたぁ!!」

 

ウガーッ!となった。

 

「星霊魔導士は契約を大切にするのかぁ。偉いなぁ」 

 

「騙したなぁーー!!」

 

そんな風に揉めているナツとルーシィを見てアミクは素直に感心する。

 

「ナツにしては頭使ったねー」

 

「俺にしてはってなんだー!」

 

「感心してないで助けてよー!」

 

2人から怒鳴られる。

 

「せめてアミクも一緒に潜入してよー!」

 

「えー!?う、うーんしょうがないなぁ。分かったよ・・・」

 

「ほんと恩に着ます!!」

 

ルーシィに涙目で懇願され断りづらくなり、仕方ないか、と承諾すると手を掴まれブンブンと揺すられた。ナツが嬉しそうな声を出す。

 

「条件は満たしてねぇけど、アミクだったらなんとかなるだろ!2人で潜入すればずっと楽だしな!」

 

「ついでにマーチもやってみたらー?」

 

「本気で言ってる、の?」

 

冗談で言うハッピーに無表情で答えるマーチ。実はハッピーがマーチのメイド服を見たいだけだった。

 

「じゃあ、とりあえずハッピーの事、ご主人様って言ってみろよ」

 

「ネコには嫌ー!」

 

「ご主人様」

 

「言うんかい!?」

 

早速ノリノリのアミクに強烈なツッコミを入れるルーシィだった。

 

 

 

 

 

 

一方その頃、魔導士ギルド『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』では――。

 

「あれ〜? 1冊20万Jの仕事……誰かに取られちゃったのかな?」

 

クエストボードの前でチーム『シャドウ・ギア』のレビィ、ジェット、ドロイの3人がボードを眺めていた。

 

「えぇ、その仕事ならナツがルーシィとアミク誘って行くって」

 

「あ〜あ、迷ってたのになぁ・・・」

 

「あの双竜に加えて新人がチームを組んだのか。どうなることやら・・・」

 

レビィは思わずため息をこぼす。ジェットもこれからの事に思いを馳せた。するとカウンターに座っていたマスターマカロフが口を開く。

 

「いや、レビィ・・・行かなくて良かったかもしれんぞい」

 

「マスター?」

 

「その仕事の依頼主からたった今連絡があってな」

 

「キャンセルですか?」

 

ミラがマカロフにそう聞くとマカロフはニヤッと笑みを浮かべる。

 

「いや……報酬を200万Jにつり上げる、だそうじゃ」

 

マカロフの言葉を聞いた者は皆、驚きを隠せなかった。

 

「10倍!?」

 

「本1冊で200万だと!?」

 

「討伐系並みの報酬じゃねぇか・・・」

 

喧騒が増す中、カウンターに座っていたグレイがニヤリと笑う。グラスの中の氷が不自然に揺れた。

 

「へっ・・・面白そうな事になったじゃねぇか」

 

グレイの脳裏にはやたらと暑苦しい少年、喧騒を好む緑髪の少女、そして新人の金髪の少女の姿が浮かんでいた(ついでに猫達も)。グレイにとって彼らが一体どんなことを引き起こすのか楽しみになってきたのだ。

 

「グレイ、下」

 

「ん? あぁ!? いつの間に!?」

 

ミラの指摘にグレイが下を向くとまたもやパンツ一丁になっていた。やっぱりグレイはグレイだった。

 

 




はい、というわけで主人公とルーシィは一緒に住むことになりました。
最初は家賃無しにしようかと思ったけどやっぱり家賃に苦しんでこそルーシィだと思ったんで家賃有りにしました。原作より2万少ないのはせめてもの温情です(笑)

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潜入せよ!エバルー屋敷!

早くファントム編やりたい・・・。アミクにぴったりの敵がいるんだよなぁ・・・。


ギルドでの騒ぎも知らず、アミク達は馬車で依頼先であるシロツメの町に向かっていた。

 

「『平衡感覚養歌(バルカローラ)』」

 

アミクが歌い始めるとナツの全身が光り始め、それが収まった時には動いている馬車の中なのにケロッとしているナツが居た。

 

「ふぅ、やっぱりアミクの音楽魔法はすげぇなぁ。いつも助かってるぞ!」

 

「どういたしまして。でも、効果が切れる前に着けばいいけど・・・」

 

「そうだな!おい、ブタ、急げ!」

 

ナツは馬車を引く豚に向かって叫ぶ。

 

「ところで2人共?なんであたしとチーム組もうと思ったの?」

 

当初は新人だから、という理由で組もうとしていたようだが今になっても自分に拘っているように見えるのだ。

 

「なんでって・・・ルーシィいい奴だし」

 

「うんうん。私達ルーシィのこと気に入ってるしね」

 

「え・・・?」

 

ルーシィは心が熱くなった。なんだかんだ言いながらも自分のことを認めてくれているのか、と。

 

「まあ、変な奴でもあるけどな!」

 

「そこもいいんだけどね」

 

「あんたら・・・」

 

ルーシィは思わずガクリ、とうな垂れた。一番変なナツには言われたくない。

 

「んんっ! 私の最初の仕事だからしっかり行くわよ!」

 

気を取り直して、ルーシィが自分も含めて鼓舞する。

 

「あれ? 最初は嫌がってたのに元気だね」

 

「相手はスケベ親父。私、こう見えても結構色気には自信があるのよ?」

 

それに、とアミクの肩に手を置く。

 

「アミクも居るし!こんな可愛い女の子2人がおもてなししたらあっという間にメロメロよ!」

 

ルーシィが唇に人差し指を乗せる。アミクは可愛いと呼ばれたのが恥ずかしかったのか顔を赤く染めている。

 

「ネコには判断できません」

 

「なの」

 

「こいつら・・・」

 

澄まし顔をするネコ達に怒りの視線を向けるルーシィ。

 

「とにかく!言っとくけど、あんた達何もしないんだから今回の報酬の取り分、3−3−2−1−1だからね!」

 

「ルーシィ、1でいいの?」

 

「あたしが3よ!」

 

ちなみに左からルーシィ、アミク、マーチ、ナツ、ハッピーの順である。アミクはともかく、なんでマーチはちょっと多いのだろうか。これが男女差別か。

 

「そういえばアミク。あんた滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)なんでしょ?だったらあんたもドラゴンに育ててもらったの?」

 

「そうだよ。オーディオンって言って、声がとても綺麗なドラゴンなんだ。私に音楽魔法を教えてくれたのもオーディオンなんだよ」

 

「へぇー、やっぱり聞いてるとナツのドラゴンもアミクのドラゴンも皆良いドラゴンだったみたいね。世話好きって言うか」

 

「当たり前だ!」

 

「自慢のお母さんだよ」

 

ドラゴンの話となると嬉しそうに話すナツとアミクを見て微笑ましくなるのだった。

 

 

 

 

「うぷ・・・・」

 

「うぅ・・・」

 

結局着く前に『平行感覚養成歌(バルカローラ)』の効果が切れ、ナツとアミクがダウン。

 

「ご機嫌はいかがですか〜?ご主人様〜?」

 

「め、冥土が見える・・・」

 

家での意趣返しなのか嫌みたらしく言うルーシィ。ナツはもうボロボロだった。

 

「ご主人様はオイラだよー!」

 

「うっさいネコ!」

 

「ちょっと・・・騒がないで・・・う」

 

「FAIRY TAIL ファイナルシーズン、放送中、なの」

 

そんな風に騒がしくしていると

 

「やっと着いた・・・」

 

「もう二度と馬車には乗らん・・・」

 

「ナツ、それ酔うたびに言ってるよ」

 

シロツメの街は特に特徴のない普通の街だった。

 

「あ〜、腹減ったな・・・」

 

「だったら自分の炎でも食べてればいいじゃない」

 

「お前、残忍な奴だなぁ。じゃあ、お前は自分の出したプルーや牛食うのかよ」

 

「食わないわよ!!」

 

つまりはそういう事である。自分の魔力で出したものは食えないのだ。それはアミクも同じ。

 

「でも私の場合は自分が出した音も食べれるよ?」

 

「・・・?どういう事?」

 

「つまり、魔力を使わない、物理的に出した音なら自分でも食べれるってこと、なの」

 

マーチの説明に納得する。簡単に言えばアミクが太鼓を叩けば、その音が食えるってわけだ。唯一の例外は自分の声ぐらいのものだ。

 

「でも、大きい音の方が回復が早いんだよね。だからっていちいち騒音を撒き散らす訳にもいかないし・・・」

 

それはそれで悩みどころもあるようだ。

 

 

 

 

 

とにかく、腹ごしらえのためにレストランに入るナツ達。レストランに入る前にルーシィがナツ達に先に行ってるよう、告げるとアミクを連れてどこかに去って行った。

ナツ達は一足先に美味しそうな肉にかぶりつく。

 

「脂っこいのはルーシィに残しとくか」

 

「ルーシィ、脂っこいの好きそうだもんね」

 

「アミクにはブロッコリー残してあげるか」

 

「ブロッコリー大好きだから、喜ぶと思う、の」

 

「あたしがいつ脂好きになったのよ!!」

 

「ブロッコリー!ブロッコリーちょうだい!!」

 

「おう、ルーシィ、ア・・・ミク・・・?」

 

美味しくいただいているとルーシィ達が帰って来るーーーーーメイド服を着て。

 

「は、恥ずかしいよ・・・」

 

「いいじゃん、似合ってるし!」

 

真っ赤になったメイドは萌えです。アミクはメイド服を着ているだけであまり変わらないが、ルーシィはアミクと同じようにツインテールにしていた。アミク達を見たナツ達はショックを受けた顔で固まる。口から食べ物がポロポロと落ちた。汚ねえ。マーチは魚の骨を並べていた。

 

「やっぱりあたし達って何を着ても似合っちゃうのよね〜。お食事はお住みですか、ご主人様〜?」

 

ルーシィが体をくねくねさせながら言うが、アミクは未だ赤いままだ。しかし、勇気を出すと

 

「ご、ご主人しゃま!ドジな私をお仕置きして下さい!」

 

「おい、ルーシィ。アミクに何教え込んでんだ・・・」

 

「あたしじゃないわ!!」

 

「多分、天然、なの・・・」

 

そして、ナツとハッピーがヒソヒソと話し出す。

 

「ど、どうしよう〜! 冗談で言ったのに本気にしてるよメイド作戦!」

 

「今更冗談だって言えないしな・・・こ、これで行くか」

 

「聞こえてるっちゅーねん!!」

 

バシーン、とアミクのチョップがナツの頭に入った。アミク、キャラ崩壊の危機である。

 

 

 

 

 

 

食事を終えた一同は依頼主の館に来て、依頼主と会っていた。パッと見た感じ苦労が多そうな老人だった。

 

「ようこそ、よくお越し下さいました。私が依頼主のカービィ・メロンです」

 

(メロン・・・?)

 

(メロン)

 

「メロン!美味そうな名前だな!」

 

「あい!」

 

「ちょっと!失礼よ!」

 

大体皆同じことを考えていたと思う。

 

「あはは、よく言われるんですよ。それにしてもまさかあの有名な『妖精の尻尾』の魔導士さんに受けてもらえるとは・・・」

 

「そうか?こんなうめぇ仕事がよく残ってたと思うけどな」

 

きっと内容と報酬が釣り合ってないため、他の人達は警戒したからだろう。

そこで、カービィがナツとアミクに気付く。

 

「・・・もしやあなた方は『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』の『双竜』と呼ばれる・・・?」

 

「お、何だ、俺達のこと知ってんのか?」

 

「ええ!そりゃあもう有名ですもの!行く先々で聞きますよ、その名は」

 

「な、なんか人の口から聞くとやっぱり照れるね」

 

アミクが照れくさそうに頰を掻いた。

 

「しかし、あの『双竜』が来てくれるとは・・・ですが、なぜその服装を・・・?」

 

「う、色々あるんです・・・」

 

痛いところを突かれて俯くアミク。ルーシィも引きつった笑みを浮かべている。

 

「ま、まぁ、では仕事の話に移りましょう」

 

「おう!」

 

ナツが元気良く答えた。

 

「私の依頼したいことはただ1つ。エバルー侯爵の持つ本、『日の出(デイ・ブレイク)』の破棄または焼失です」

 

「焼失?だったら家ごと燃やせばすぐ片付くな」

 

「あい」

 

ナツは手に炎を宿しながら言い、ハッピーもそれに便乗する。

 

「そんな事したらダメでしょ!すぐ牢獄行きよ!」

 

「・・・本を破棄する理由が気になるね」

 

「なの」

 

「んな事どうでもいーじゃねぇか、20万だぞ、20万」

 

「いえ・・・200万Jお払いします。報酬は200万Jです」

 

それを聞いた瞬間、皆驚愕した。

 

「に!?」

 

「ひゃ!?」

 

「く!?」

 

「まん!?」

 

「なの!?」

 

「おや? 値上がったのを知らずにおいででしたか」

 

「200万J!?じゃ、じゃあ食費の何日分だ!?うおおお、計算できねぇぇぇ!!!」

 

「あい!!か、簡単だよナツ!オイラとナツとアミクとマーチが50万ずつだよ!」

 

「うおおおハッピー頭いい―――!!」

 

「あたしの分は!?」

 

「ま、待って!家賃5万になったとしたらざっと40ヶ月分ってこと!?3年以上過ごせるじゃん!!」

 

「金の亡者共・・・目先の欲望ばかりに囚われ、その先にある危険に気付かない愚か者共よ・・・なの」

 

「マーチ、テンパって変なこと言ってるよ〜!」

 

ナツ達がギャーギャー騒ぎ立てる。それほどまでに本を見つけて処分するだけで200万という数字は規格外なのだ。

 

「み、皆!とりあえず落ち着こう!」

 

アミクが大きく息を吸い込む。否、これは周りの音を食べているのだ。ナツ達の声がアミクの口に吸い込まれ何も聞こえなくなる。異常に気づいたルーシィ達は一旦大人しくなった。

 

「――――あ、声が出た」

 

「ふぅ・・・でもなんでそんな高額に?」

 

落ち着いたルーシィが疑問に思って聞いた。

 

「・・・どうしても、あの本を破棄したいのです。私は、あの本の存在が許せない・・・」

 

カービィはどこか悔いるように吐き捨てる。直後、ナツの頭が燃えて立ち上がり、ルーシィがびっくりしていた。

 

 

「よーし、燃えて来たァ!!アミク、ルーシィ!!早速仕事に行くぞ!」

 

「あいさー!」

 

「うわわ!」

 

ナツはアミクの手を引っ張ると急いでドアから出て行った。 

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

 

「なのー!」

 

ルーシィとマーチも慌てて後を追う。

 

そうしてアミク達を見送るカービィの目は険しいものだった。

 

 

 

 

 

 

「うぅ、緊張するなぁ・・・」

 

「大丈夫、堂々としていればバレないわよ」

 

エバルー公爵の屋敷前でメイド服のアミクとルーシィが居た。ルーシィはアミクを励ましているが、これではどっちが先輩だか分からない。

ルーシィは息を吸うと大きな声で呼びかけた。

 

「メイド募集のチラシを見て来ましたー!すいませーん、誰か居ませんか〜!」

 

そんな様子を遠くからナツとハッピーとマーチは見守っていた。

 

「ルーシィ、アミク、頑張れよ〜」

 

「頑張れ〜」

 

「なの〜」

 

ルーシィは自分の容姿に自信があったので採用されるだろうと考えていた。そして内心「ちょろいわ・・・」と思い、あくどい顔を浮かべていた。

 

その時、アミクの耳に音が流れ込んで来る。その出所はーーーーーーー地面。

 

「気を付けて!地面から何か来る!」

 

「!?」

 

ルーシィもアミクもハッと身構えた。直後に、地面から何かが飛び出した。

 

それはゴリラだった。いや、ゴリラのようなメイドと言った方がいい。とにかくゴツくてやばい、ピンク色の髪を持つメイドだった。

 

「あなた達、メイド募集の広告を読んで来たの?」

 

「は、はい!」

 

ルーシィが震えながら言うと、

 

「ご主人様!募集広告を見て来たそうですが!?」

 

メイドが大きな声でそう叫んだ。すると今度は地面から変な髭の男が飛び出て来た。彼がエバルー公爵だ。何気にすげぇなこいつ。

 

「ボヨヨーン!我輩を呼んだかね?」

 

((き、来たー!))

 

2人の体が固くなった。

 

「ふむ、どれどれ〜」

 

「ど、どうも~」

 

「よ、よろしくお願いしまーす・・・」

 

まず、エバルーはルーシィの体をジロジロと舐め回すように見る。

 

(と、鳥肌が・・・!頑張れ、私!)

 

ルーシィが脅威の精神力で我慢していると、突然エバルーが後ろを向き、ため息をつく。

 

「いらん、帰れブス(・・)

 

グサァッ

 

「ブ・・・!?」

 

完全に刺さった。ルーシィはあまりのショックに呆然となり、アミクもまさかの事態に開いた口が塞がらない。

 

と、エバルーは今度はアミクをじっと見た。

 

「論外」

 

そして一言。

 

アミクは真っ白になった。

 

 

 

 

 

 

 

そこから先はよく覚えていない。後から出て来た何人かのブサイクなメイド達に囲まれながら、偉い我輩には美しい娘しか似合わないとかほざいてたり、帰れブスとか言われたりした気がする。さらにはナツ達に使えないとか失礼なこと言われて問答無用で叩き潰した気もする。ハッと正気に戻って見ると、ナツとハッピーが怯えながらこちらを見ているところだった。

 

「え、と、私何してたっけ・・・?」

 

「ひぃっ!!?わ、悪かったって!!」

 

「あい!?あのエバルーの美的感覚がおかしかっただけだよ!!」

 

なぜか凄いビビられてた。ナツとハッピーの顔がボロボロになってる気がするが・・・まあ何かあったのだろう。

 

「無表情でナツ達をボコボコにする姿はさすがに怖かった、の・・・」

 

「この中で一番怒らせちゃダメなのはアミクだったみたいね・・・」

 

ルーシィとマーチも軽く引いていた。解せぬ。

 

「と、とにかく!こうなったからには作戦Tに変更だ!」

 

「おおー!」

 

気を取り直したナツが提案すると、ハッピーがすぐさま賛同する。座っていたルーシィも立ち上がり

 

「ええ!あの親父絶対許さん!」

 

と意気込んでいた。

 

「ところで作戦Tってなに?」

 

予想は付くけど、と思いながらもアミクは聞いてみる。

 

「Tは突撃のTだよ~」

 

「それはもう作戦じゃない、の」

 

マーチが冷静に言った。

 

 

 

 

 

一同は屋上から侵入することにした。ルーシィとアミクはさっさと私服に着替え、ハッピーとマーチで頑張って3人を運び、屋上に降りる。

 

「ありがと、ハッピー、マーチ」

 

「あい・・・」

 

「なの」

 

アミクはまず、耳を澄ませた。聞く限りこの近くには誰も居ないらしい。

 

「よし、誰も居ない。ナツお願い」

 

「任せろ!」

 

ナツは窓ガラスに手を置いた。そして火の熱を使い窓ガラスを溶かして行く。

 

「これで気付かれずに中に入れるね」

 

アミクがそう言うもナツの顔はどこか不満げだ。

 

「ったくよ・・・なんでこんなコソコソと。正面突破でぶっ飛ばせばいいだろ?」

 

「だめ、下手な事したら軍が動くわ」

 

「確かに軍はまずいよ・・・」

 

ちゃんとした仕事で来て捕まったのでは本末転倒だ。

 

「なんだよ、許さんとか言ってたじゃん」

 

「ええ・・・許さないわ・・・」

 

そこでルーシィはにやりと笑うと言い放つ。

 

「だから本燃やすついでにあいつの靴とか隠してやるのよ・・・うふふふふふ」

 

「やることみみっちぃね・・・」

 

「子供のいたずらレベル、なの・・・」

 

アミク達がかわいそうな子を見る目でルーシィを見る。

 

「やるとしたら、徹底的にやらなきゃ。あいつの食事に針混ぜたり、風呂の中にヘビ入れたりね・・・」

 

『こっわ!!』

 

ナツ達はドン引きした。

 

「だって、私はともかく、こんな綺麗なルーシィのことをブスって!許せないよ!」

 

「この子・・・天使かっ!」

 

「わっ」

 

ルーシィが感激してアミクに抱きつく。

 

「天使と悪魔は紙一重って言うしね」

 

「聞こえとるわ!」

 

ハッピーが余計な事を言う。皆でくっちゃべってる間に全員屋敷に侵入した。

 

「・・・で、此処は物置かしらね・・・?」

 

ルーシィがそう言いながら歩いて行くと

 

「ワ―――――――!!!」

 

「きゃぁああ!?」

 

ハッピーがガイコツの被り物をして現れた。

 

「うわ、ルーシィの悲鳴にびっくりしたわ」

 

「し、心臓ドキドキする・・・」

 

「ハッピーかっこいいな、それー!」

 

「マーチも見て見てー」

 

「おお・・・よくフィットした、の」

 

こんな風にちょっと遊びながらも、アミクの聴覚を頼りに屋敷の中を探索していく。

 

 

 

 

「つーかよぉ、全部の部屋の中探すのか?」

 

「当然!」

 

「それだとちょっと骨が折れるね・・・」

 

この建物は屋敷だけあって結構大きい。なのでその分部屋もたくさんあるのだ。

 

「誰かとっ捕まえて本の場所聞いた方が早くね?」

 

「あい!」

 

「いつまでそれ被ってる、の・・・?」

 

「見つからないように任務を遂行するのよ!忍者みたいでかっこいいでしょ?」

 

「に、忍者かぁ~」

 

ナツの顔がだらしなくなった。

 

「また、変なとこに食いついたね・・・」

 

アミクが呆れてそして思いついたかのようにルーシィを見る。

 

「じゃあ私達はくノ一!?」

 

「あんたも食いつくの・・・?」

 

なんて話していると――――

 

「・・・!来る!」

 

アミクが短く警告した。その言葉でナツ達はすぐに臨戦態勢になる。そして次の瞬間、床が膨らむと――――

 

『侵入者、発見!』

 

「排除します!」

 

武器を持ったブサイクメイド達とゴリラメイドが出て来た。お前らほんとすげぇな。

 

「で、出た!」

 

ルーシィは思わず体が竦んだ。あのゴリラメイドの迫力がハンパないからだ。

 

「ウワ――――!!」

 

「怖いー!」

 

「おばけー!」

 

「いやーん!」

 

ハッピーがまだ被っていたガイコツでメイド達を脅かす。

 

「やかましぃッ!!」

 

『きゃあああああ!!』

 

ナツが炎のパンチでブサイクメイド達をぶっとばした。

 

「フライングバルゴアタック!」

 

「おわっ!?」

 

『ナツ!』

 

今度はゴリラメイドがボディプレスをして来てナツが下敷きになった。

 

「この・・・!ナツから離れろっ」

 

アミクがゴリラメイドに突っ込んで行く。

 

「うぐぐぐ、おらあ!」

 

心配無用だったようで、ナツがバルゴを持ち上げ上に投げた。

 

「ナイス!」

 

「よし、同時にやるか!」

 

アミクもナツも足にそれぞれの属性を纏う。そして、ゴリラメイドに近づき・・・

 

「くノ一ィ!」

 

「忍者ァ!」

 

「あああっ!!」

 

同時に蹴り飛ばした。ゴリラメイドはぶっ飛び床にめり込んだ。

 

ナツが目を除いて顔を全てマフラーで包んでハッピーと忍者の真似ごとをする。

 

「見つかるわけにはいかんでござるよ、ニンニン!」

 

「ニンニン!」

 

「いや、もう見つかってるから!」

 

「アミクもなんかノリノリだったじゃん・・・」

 

「いや~、つい」

 

てへっ☆とアミクが舌を出した。ちなみにマーチは空中でヘッドスピンをしていた。なにがしたいんだコイツ。

 

 

 

 

 

 

 




鉄の森編でもちょうどいい相手いたわ。

話がなかなか進まん・・・。

感想よろしくぅ!!


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DEAR KABY

だれかフェアリーテイルの漫画全巻貸して~。今回の戦闘はアニメ見ながら書いたからあんまりオリジナリティないかも。


アミク達が大きな扉を開けると、そこはたくさんの本が並ぶ大きな書庫がいくつかある場所だった。

 

「おお!本だらけでござる!」

 

「あい!でござる!」

 

「なの、でござる」

 

「マーチ、つられない」

 

一体何冊の本があるのだろうか。こんなにたくさんの本を持っているなんてエバルーは意外と蔵書家である。

 

「よーし探すぞー!」

 

「あいさー!」

 

「あーし達は高い所探す、の」

 

「辺りの警戒は任せて!」

 

それぞれ、素早く自分のやるべきことを分担し、実行に移す一同。チームワーク抜群である。

 

 

 

「ふぅ、こんな中から一冊見つけるのかぁ・・・」

 

「これ・・・は『デイ・ライト』か。あのおじさんこんなのも持ってたんだ」

 

「アミクー、家にあるのと同じ本があった、のー」

 

アミクは耳をすませながらも本の捜索をする。向こうの本棚ではナツ達が騒いでいた。

 

「うほっ!エロいの見っけ!」

 

「魚図鑑だ!」

 

全然関係ないやつで盛り上がっていた。アミクもいろんな本に目移りしそうになるのを抑えながら本を探す。

実はアミクは結構読書家だ。小説が好きでギルドや図書館から本を大量に借りて、仕事をしない日はそれを読んでいた。なので、本がいっぱいある此処では色々気になって仕方がないのだ。

 

 

「金色の本はっけ―――ん!」

 

「ウパ――――!!」

 

「ウパーって・・・」

 

「っていうかあんたら真面目に探しなさいよ―――!!」

 

そこで、マーチがナツが持っている本に注目した。

 

「・・・、『日の出(デイ・ブレイク)』、なの?」

 

「ふーん、『日の出(デイ・ブレイク)』か・・・って、え?」

 

『見つかった―――――!!?』

 

なんと200万をあっさり見つけてしまった。

 

「よーし、じゃあ早速燃やすか!」

 

「簡単だったね!」

 

ナツが手に炎を灯し、燃やそうとした時。

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

アミクが止めてナツから本を奪った。

 

「おい、どうした?」

 

「この本の作者、ケム・ザレオンじゃん!」

 

「嘘!?ほんとに!?」

 

アミクが叫んだ名前にルーシィも反応する。

 

「けむ・・・?」

 

「魔導士でありながら小説家だった人だよ!」

 

「実はあたし、大ファンなの!作品全部読んだと思ってたけど、これって未発表作ってこと!?」

 

アミクとルーシィが興奮して捲し立てる。マーチはそういえば家にそういう名前の人の本いっぱいあったな、と思い出した。

だが、ナツは1ミリも興味が湧かなかったようだ。

 

「いいから早く燃やそうぜ」

 

それをルーシィが必死に止める。

 

「だ、ダメよ!これは文化遺産よ!燃やすなんてとんでもない!」

 

「そうだよ!しかも誰も知らない本なんて国宝級だからね!!」

 

「言いすぎ、なの」

 

「職務放棄だ」

 

「うぐっ」

 

「大ファンだって言ってんでしょ!!」

 

「今度は逆ギレ」

 

ハッピーにグサグサと追いつめられるアミクとルーシィ。

 

「はぁ、仕事なら仕方ない、か・・・もったいない・・・」

 

アミクが意気消沈しながらナツに本を渡そうとすると―――

 

「だからダメだって――――!!」

 

ルーシィがすぐさま奪い取った。

 

「じゃ、じゃあ燃やしたってことにしといてよ・・・これはあたしが貰うからぁ」

 

「嘘はやだなぁ」

 

「あい」

 

「ルーシィ、もう諦めよう・・・私だって本当は凄く読みたいんだから・・・」

 

「アミクまで・・・!」

 

唯一の味方まで失くしたルーシィは涙目になった。その時

 

「なるほどなるほど~」

 

『お?』

 

床下から声が聞こえて来た。

 

「しまった・・・!」

 

本に夢中になりすぎて警戒を怠ってしまったアミクは唇を噛む。

案の定、床下からエバルーが飛び出してきた。

 

「貴様らの狙いは『日の出(デイ・ブレイク)』だったのかぁ!」

 

そしてボヨヨヨヨ~と笑いながら着地した。

 

「ほらー、もたもたしてっから来ちまったじゃねぇか」

 

「ご、ごめん・・・」

 

「この屋敷の床ってどうなってんの?」

 

「『聴いた』感じ床下はマンホールみたいに空洞になってるらしいからそこを通って、落とし穴みたいに所々ある薄い床から飛び出してるみたい」

 

「そこまで分かったのか!!?」

 

ハッピーのちょっとした疑問にアミクがマジレスしていたが、正確すぎてエバルー超びっくり!

 

「まあ、いい・・・。魔導士共が何を躍起になって探しているかと思えば・・・」

 

そこでルーシィが持っている本を見る。

 

「そんなくだらん本だったとはな!」

 

「え?」

 

アミクは訝しげに本を見た。依頼主が200万払ってでも破棄したい本、かつその持ち主であるエバルーでさえ「くだらない」と言う・・・。一体この本はなんなのだろうか?

 

「じゃあこの本貰っていいのかしら!?」

 

未だ諦めてなかったルーシィに流石のアミクも呆れる。

 

「ダメーッ!吾輩の物は吾輩の物っ!!」

 

「ケチ」

 

「おじさんが持っても意味ないと思うけど・・・」

 

「うるさいブス共」

 

「「ガハァッ!」」

 

2人に大ダメージ!!

 

ナツは掌に炎を灯した。

 

「燃やしちまえばこっちのもんだろうが」

 

「ダメッ!絶対ダメーッ!!」

 

さっきから駄々をこねるルーシィに流石に痺れを切らしたのかナツは真面目な顔をしてルーシィをキッと睨み、言い放つ。

 

「ルーシィ!仕事だぞ!」

 

「そうだよ!我慢しよ?ルーシィ」

 

アミクもそれに便乗した。

 

「じゃあ、せめて読ませて!」

 

『此処でかい!!?』

 

ルーシィが急に座り込んで本を読み始めたのでその場の全員でツッコんだ。

 

「ルーシィ!後で私にも読ませて!」

 

『お前もかい!!』

 

今度はアミクに全員(ルーシィ除く)のツッコミが決まる。珍しい光景だ。いつもはルーシィかアミクがツッコミ役なのに。

 

「気に食わん!エラーい我輩の本に手を出すとは・・・!バニッシュブラザーズ!!」

 

エバルーがそう叫ぶと書庫の隠し扉が開いてそこから2人の男が現れた。

1人はバンダナをした背の高い男。もう1人は顔に『上』『下』『左』『右』の文字が書かれていて、大きなフライパンのような物を持っている男だった。

 

「グッドアフタヌーン」

 

「こんなガキ共が妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士とは、ママも驚くぜ」

 

「・・・!あれは・・・!」

 

マーチが背の高い方の男の腕に付いている紋章を見て言う。

 

「傭兵ギルド、『南の狼』、なの!」

 

「こんな奴ら雇ってたのか」

 

アミクとナツは男達――――バニッシュブラザーズを睨む。

 

「ボヨヨヨヨ・・・『南の狼』は常に空腹なのだ!覚悟しろよ?」

 

エバルーが得意げに笑った。

 

そこで、急に本を読んでいたルーシィが立ち上がり、ナツ達に叫んだ。

 

「ナツ、アミク!少し時間を頂戴。この本にはなにか秘密があるみたいなの・・・!」

 

「おう!」

 

「分かった!」

 

ルーシィはアミク達の返答を背で聞きながら部屋を出て行った。

 

(秘密だと?我輩は気付かなかったが、財宝の地図でも隠されているのか?)

 

エバルーはそう思案すると、床の抜け穴を使い、床下に沈み込んでゆく。その最中、バニッシュブラザーズに命令した。

 

「娘は我輩が捕らえる。小僧と小娘を消しておけ!」

 

「「イェッサー」」

 

エバルーが沈んで行くのを見て、ナツとアミクはそれぞれハッピーとマーチに頼んだ。

 

「ハッピー。ルーシィを頼む」

 

「マーチもお願い!」

 

「オイラ達も加勢するよ!」

 

ハッピーが勇ましく言うがナツはそれを蹴った。

 

「いや、俺とアミクだけで十分だ!」

 

「問題、なしっ!」

 

アミクも拳を握りしめて相手を見据えた。

 

「・・・ほら、ハッピー。あの2人なら余裕、なの」

 

「・・・うん、分かったよ」

 

そう言ってハッピーとマーチは並んでルーシィが向かった方に飛んで行った。

 

「ああっ!?テメェら、ママに言いつけんぞ!」

 

「落ち着け、クールダウンだ」

 

「・・・お母さん、居るんだ」

 

アミクが別なところに反応した。

 

「あ?そりゃあ、俺達には美味しいご飯を作ってくれる優しい優しいママが―――」

 

「おい、ママ語りは後にしろ・・・さて、カモン、火の魔導士と音の魔導士」

 

「ん?」

 

「何で知ってるの?」

 

相手も自分達が来ることなど予想していなかったはずなので事前情報があったとは思えない。それとも、それほどまでにアミク達は有名なのだろうか?

 

「バルゴを倒した時に足にそれぞれ火と、おそらく音を纏ったろ」

 

「バルゴ・・・?ああ、あのゴリラメイドね」

 

「それに、俺はともかくよくアミクの魔法が音だって分かったな」

 

パッと見、アミクの魔法は何の属性なのか分かりづらい。無色ではなく、薄い黄緑色に染まっているが、基本透明だ。また、空気が振動しているような感じで魔法は顕現する。

 

「その段階ではまだ不明だったが、先ほどまでの行動や発言で推測を得た。床下にいた者の動きが聴こえているかの様な反応。さらに『聴いた』ことによって分かったかのような発言もしている。これは『聴く』ことが大事である証拠。そして『聴く』のは『音』・・・と連想し、バルゴを倒した時の轟音を思い出し音に関する魔法なのではと考えるに至った、というわけだ」

 

「洞察力と想像力が優れてるね・・・正直、舐めてた」

 

「つまり、ユー達は能力(アビリティ)系の火の魔導士と音の魔導士と見て間違いない」

 

ちなみに能力(アビリティ)系とはナツやアミクのように魔法を身に付けた力の事。ルーシィのようにアイテムを使う魔法は所有(ホルダー)系と呼ばれる。ハッピーやマーチの翼の魔法も能力(アビリティ)系である。

 

「じゃあ、覚悟はできてるってことだよなぁ!」

 

ナツは獰猛に笑うと全身から炎を噴出させた。

 

「黒焦げになる、覚悟がなぁっ!!」

 

そして腕に炎を纏わせるとアミクの制止も待たずに突っ込んで行く。そのまま拳を叩きつけた。フライパンを持つ男―――便宜上、兄と呼ぶ―――がそのフライパンでナツの拳を受け止めた。すると不思議な事にナツの炎が吸い込まれていった。

 

「残念ながら火の魔導士はミーの最も得意とする」

 

そこで言葉を区切り、ナツを蹴り飛ばす。

 

「相手だ」

 

すると、弟の方は床を蹴って高く跳び、ナツ達を見ていたアミクに向かって蹴りを放つ。

 

「ほあっ!」

 

「うわっと!」

 

アミクはそれを後ろに跳んで避けた。そしてナツと合流したところで―――

 

「はぁっ!」

 

兄にフライパンで二人まとめてぶっ飛ばされた。扉をぶち破り、広間に出た。そこの真ん中に鎮座していた悪趣味な大きい金のエバルー像の舌に二人で降り立つ。

 

「つっても、所詮は魔導士。プロの傭兵にはかなわねぇ」

 

「ハッ」

 

ナツは鼻で笑った。

 

「2人一緒でこの程度か」

 

「思ったより大したことないね」

 

アミクも平然としている。

 

「兄ちゃん!こいつら舐めてるよ!」

 

「ユー達は魔導士の弱点を知っているかね?」

 

兄が2人に問う。

 

「の、乗り物に弱いことかっ!?」

 

「それは個人的なことでしょ!弱点なんて金的狙えば済むと思うけど」

 

『それは男全員、そうだわ!!』

 

兄が疲れたようにため息を吐くとフライパンを構えた。

 

「弱点とは・・・肉体だ!」

 

「なんだ、合ってんじゃん」

 

「そういう意味では、ない!!」

 

兄はアミク達が足場にしていた、エバルーの舌にフライパンを叩きつけた。2人は直前で避けたため無事だったが、エバルー像の舌はポッキリ折れる。

 

「周りの物壊すのは妖精の尻尾(フェアリーテイル)だけじゃないんだね・・・」

 

「魔法とは、精神力を鍛錬せねば身に付かぬもの」

 

床に着地したアミクに今度は弟が襲いかかった。突き出された拳を横に跳んでかわすと、拳は壁を抉る。

 

「結果、魔法を得るには肉体の鍛錬は不足する」

 

(そうかな・・・?)

 

アミクの脳裏には『漢ー!!』と雄叫びを上げる、筋骨隆々の男が思い浮かんでいた。

 

「特に、お前のような女はな」

 

その言葉にも首を傾けざるを得ない。少なくとも1人、男を赤子を捻るように扱う女性を知っているが・・・。

 

「すなわち、日々肉体を鍛えている我らには・・・」

 

「力もスピードも及ばない」

 

バニッシュブラザーズが並んで床に立った。アミクとナツも合流する。

 

「アミク、大丈夫か?」

 

「うん、平気」

 

ナツが小声で聞いてきた。いつもはデリカシーがないくせに今みたいにふとした時に気遣ってくれる。それがアミクは何気に嬉しかった。普段はほんとにデリカシー皆無だが。

 

「ほ~う、怖ぇなぁ、で?いつになったら本気になんだよ?」

 

ナツがバニッシュブラザーズに向き直って挑発する。

 

「それとも私がか弱い『女』だからって本気出せないの?傭兵がそんなことでいいのかな~」

 

アミクもそれに倣って煽った。

 

「むっ・・・」

 

「女のくせに、舐めやがって!兄ちゃん!合体技だ!」

 

「オーケイ!」

 

兄がフライパンに弟を乗せる。

 

「「『天地消滅殺法』!!」」

 

「来いやぁ!!」

 

「あぁ、フライパンに靴を乗せないで・・・」

 

そのままフライパンを打ち上げ、弟は天井高く飛んで行った。

 

「なっ」

 

「天を向いたら―――」

 

「ナツ!」

 

「地に居る!」

 

跳び上がった弟に気をとられたナツに兄が迫る。しかし、それに気付いたアミクが魔法を纏った蹴りでフライパンを受け止める。同時にガァアアアアアン!!と音も響いた。フライパンは金属なので音が良く響く。

 

(速い・・・だと!?)

 

「くっ・・・」

 

「地を向いたら―――」

 

次は弟の番だった。落下の勢いを利用して蹴りを放とうとする。

 

「天に居る!」

 

「アミク、頭を下げろ!」

 

ナツに言われてすぐに下げるアミク。

 

「おおおお!」

 

上から降ってくる弟に向かって炎を吐きだして迎撃する。轟音を轟かせて、周りが炎と煙に包まれた。様子が良く見えない。

 

「く・・・」

 

「あっつ・・・」

 

バニッシュブラザーズは無事だったようだ。だが、兄の方は腕が痺れていて、弟の方は足の方が少し焦げている。

 

「こ、これぞバニッシュブラザーズ合体技、『天地消滅殺法』」

 

「これを喰らって生きてた奴はいな――――」

 

煙が晴れる。そこにはピンピンしているアミクとナツが居た。

 

「生きてた奴は―――なに?」

 

「ぶっちゃけその技って2対1の時の方が効果的でしょ?今みたいな状況だとさっきみたいに別々に対処されちゃうよ?」

 

「「うっそぉおおおん!!!?」」

 

正直、魔導士だから、とか女だから、とか舐めすぎである。

 

「じゃあ、こっちの番だね」

 

「これで吹っ飛べ!」

 

ナツとアミク、二人同時に息を吸う。

 

「火竜の―――」

 

「音竜の―――」

 

「「咆哮(ほうこう)!!」」

 

火と音の咆哮が同時に口から放たれた。途中で火のブレスと音のブレスが混じり合う。

 

「来た!火の魔法!」

 

「終わったぁ!」

 

音のブレスの方はよく見えなかったのか、あるいは恐れるに足らぬと判断されたのか・・・。とにかく火の魔法にばかり目が行っていた。

 

火の玉料理(フレイム・クッキング)!」

 

炎がフライパンに吸い込まれていく。

 

「全ての炎を吸いつくし、変換させ、吹きだ」

 

ピシッ

 

「「は?」」

 

フライパンに罅が入った。

 

「な・・・!こ、これは・・・!」

 

罅はどんどん広がっていき―――

 

バアアアアアアアアアン!!!

 

轟音と共に爆発した。

 

「「ぐわああああ!!?」」

 

もちろん間近にいたバニッシュブラザーズも爆発に巻き込まれる。彼らは吹き飛ばされ、床を転がった。

 

「な、なぜだ・・・、あのフライパンは300℃の熱にも耐えるんだぞ・・・」

 

兄がふらつきながら立ちあがり信じられないとばかりにフライパンの破片を見た。

 

「それはね、私のブレスのせいかなー」

 

アミクが生徒に教える教師のように指を立てながら説明を始めた。

 

「ナツの炎と混ざった私の音の魔力。あなたはそれも一緒に吸い込んじゃったんだよ。金属も音をよく通すじゃん?フライパンの隅々まで『音』で満たされちゃって限界を超えたせいで内部から破壊された。そこに火の魔力も入ってたから耐えきれず破裂すると同時に一気に噴き出して爆発になっちゃった、と推測します」

 

風船と同じ要領だ。風船に空気を入れすぎると破裂する。つまりはそういうことである。

 

 

「「あ、ありえねぇ・・・!」」

 

互いに抱き合って震えるバニッシュブラザーズ。

 

ナツは炎を腕に、アミクは音を足に纏わせた。

 

「そろそろ、決めるか!」

 

「早くルーシィのところに行かなきゃね!」

 

そして二人で走りだした。

 

「吹っ飛べ!火竜の翼撃!!」

 

ナツが炎の両腕を振り下ろす。

 

「うなれ!音竜の旋律(せんりつ)!!」

 

アミクが轟音の回し蹴りを放つ。

 

 

 

ドバアアアアアアアアアアン!!!

 

 

屋敷内の全ての窓が割れ、壁も崩壊し、エバルー像の頭が胴体からサヨナラした。頭は床に落ちてめり込む。

 

 

「ママ・・・」

 

バニッシュブラザーズは黒焦げになっているだけではなく耳から血が流れていた。恐らく鼓膜が破れたのだろう。

 

「やべ・・・」

 

「絶対にやりすぎだよね・・・?」

 

流石のナツも苦笑いだ。それよりも、とアミクはバニッシュブラザーズに近づく。

 

「止め刺すつもりか!?やっぱ怖ぇ~」

 

「違うから!?さすがに鼓膜破れてるのは可哀想かなって」

 

治癒歌(コラール)を使い、耳だけでも癒そうとする。

 

(それに、あんなにお母さんを呼ばれちゃうとね・・・)

 

アミクは「ママ・・・」と呻いている弟を見た。そこで、つい全身を癒してしまったのかバニッシュブラザーズの全身が優しげな光に包まれる。

 

「ママ・・・?」

 

それを何かと勘違いした弟が目を覚まし、続いて兄の方も目を開けた。

 

「ママ・・・じゃないか・・・。あれ、たしか俺らは負けて・・・」

 

「・・・ユーが治してくれたのか・・・敵であったミー達を・・・」

 

2人の目がこちらを射抜く。しかし、アミクはそれ無視して話し出した。

 

「あなた達だって仕事できただけでしょ?闇ギルドでもないし、任務を全うしようとする姿勢は尊敬できる点だよ」

 

話しながらもええい、このまま全快させちゃえ、と後先考えずに癒す。最近は歌いながらも喋ることができるようになってきたのでこんな芸当も可能である。

 

「それに、お母さんのこと、大好きなんでしょ?元気な姿見せてあげなくちゃダメじゃない」

 

バニッシュブラザーズのアミクを見る目が変わってきた。信じられないものを見る目つきから、まるで天使か女神でも見たかのような目に。

横から見ていたナツには変化がすぐに分かった。

 

「ユーは天使、いや女神か!!?」

 

「へ!?」

 

「いや、お前は第二のママだ!」

 

「えええーーー!!?」

 

実際に口にしやがった。

 

「ど、ど、ど、どうしよーナツー!!子供ってどうやって育てたらいいのーーー!?」

 

「そもそも産んでねーだろ」

 

テンパって目がグルグル回っているアミク。

 

「違うな。ここは妖精の尻尾(フェアリーテイル)にちなんで『妖精(ようせい)』と呼ぼう!」

 

妖精(フェアリー)。なかなかいい響きだ」

 

アミクを抜いて勝手に話を進めるバニッシュブラザーズ。

 

「・・・俺、どうすればいいんだ?」

 

珍しく疲れた様子のナツ。

 

この場は混沌と化していくのだった。

 

・・・一つだけ言っておけば今居る場所はさっきゴリラメイドーーーーバルゴが叩きつけられた所だとだけ言っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

ルーシィは窮地に陥っていた。

 

風詠みの眼鏡を使って本を読み終え、謎を解いたところまでは良かった。だが、エバルーが現れ、ルーシィの手を掴み、秘密を教えろと脅迫してきたのだ。それでも話すものか、と黙っているルーシィ。

 

「調子に乗るなよ小娘が!本は吾輩の物じゃあ!吾輩がケム・ザレオンに書かせたのじゃからな!本の秘密だって吾輩のものなのじゃ!」

 

「アンタなんて・・・最低よ!文学の敵だわ・・・」

 

「文学の敵だと!?ぐぬぬ・・・小娘が偉そうに!さっさとその本の中に書かれている秘密を話せ!さもなければ貴様の腕をへし折るぞ!」

 

「うっ・・・!」

 

あわや、ルーシィのその細腕が折れる、というところで。

 

「ルーシィ!」

 

「ボヨ?ぐへ!!」

 

ハッピーがエバルーにタックルをかました。その拍子にルーシィの手は自由になった。

 

「ナイスよ!ハッピー!」

 

そこに、マーチが突撃してきてエバルーの顔面を蹴り上げた。

 

「ルーシィ!大丈夫、なの?」

 

「マーチ!うん、なんとか、ね」

 

吹っ飛ばされたエバルーが憤怒の表情をしながら立ち上がる。ハッピーはさっきので頭を打ったのか下水でブクブクして目を回していた。

 

「形勢逆転ね。この本をあたしにくれるなら許してあげるわよ」

 

「観念なさい!なの」

 

「ぶくぶくぶく」

 

ルーシィ達が勇んで言う。だが、それを見てもエバルーは薄気味悪く笑った。

 

「文学少女の割に言葉の意味を間違えておる。形勢逆転とは勢力の優劣状態が逆転することだ。猫が2匹増えたところで吾輩の魔法『土潜(ダイバー)』は破れんぞ!」

 

「地面にはどうやって潜ってるの?って思ってたけど普通に魔法だった、の」

 

あの床の仕組みは魔力消費を抑えるためのエバルーなりの工夫だったのだろう。発想が少々幼稚だが。

 

 エバルーは『土潜』を使って、地面に潜る。エバルーはルーシィ目がけて地面から攻撃し、攻撃しては地面に潜り、ヒット&アウェイでルーシィとマーチを攻撃する。

 

「この本に書いてあったわ。内容はエバルーが主人公の冒険小説。内容は酷いものだったの」

 

「吾輩が主人公なのは素晴らしいことだ。しかし内容はクソだ。ケム・ザレオンのくせにこんな駄作を書きおって。けしからんわ!!」

 

「あんた、無理やり書かせといて何でそんな偉そうなわけ!?」

 

「偉そう?吾輩は偉いのじゃ!書かぬという方が悪いに決まっておる!」

 

「あんたがケム・ザレオンを独房に入れてた間、彼はどんな想いでいたか分かる!?」

 

 エバルーの余りにも傲慢で自分勝手な考えについにルーシィの怒りは爆発し、叫ぶ。しかし、エバルーの考えはどこまでも自分勝手なものであり、変わるものではない。

 

「そんなもの、吾輩の偉さに気づいたに決まっておる!」

 

「違う!自分のプライドとの戦いだった!書かなければ家族の身が危ない!でもあんたみたいな大馬鹿を主人公にした物語を書くなんて作家としての誇りが許さない!」

 

「貴様、なぜそこまで詳しく知っておる」

 

「この本に全部書いてあるわ」

 

 エバルーは自分の予想以上に事を深く知っているルーシィに対して疑問を投げかける。するとルーシィは『日の出(デイ・ブレイク)』を前に突き出し言い放つ。

 

「彼は最後の力を振り絞ってこの本に魔法をかけた」

 

 ルーシィの言葉を聞いたエバルーは、自分の今までの行動、発言が『日の出』に怨み辛みとして描かれているのではと予想するが。

 

「ケム・ザレオンが残したかったのはあんたへの言葉じゃない。本当の秘密は別にあるんだから!」

 

「なに!?」

 

「そう、なの?」

 

だからルーシィはそれに気付いて解き明かそうとしたのだ。マーチは感心する。

 

(よく、本に残っていた魔力の残滓だけで分かった、の。伊達に黄道十二門の鍵を複数持つだけのことはある、の)

 

「ええい、なんとしてでも聞き出してやる!我輩の魔法が1つだけだと思うなよ!」

 

そう言うとエバルーも金の鍵を構えた。

 

「え!?」

 

「まさか、ルーシィと同じ魔法、なの?」

 

「開け!処女宮の扉・・・バルゴ!」

 

鍵から光が溢れると、エバルーの隣に現れたのはーーーーあのゴリラメイドーーーーバルゴだった。

 

「お呼びでしょうか?ご主人様」

 

「こいつ、星霊だった、の?」

 

「ボヨヨヨ!さぁバルゴ、こいつらを・・・ん?」

 

「「あっ!?」」

 

そこに居る者達はバルゴの方を見て驚愕した。

 

なぜならバルゴの肩にはーーーー。

 

「ナツ!」

 

「アミク!?」

 

2人が掴まっていたからだ。

 

「な、なぜ貴様らが・・・?」

 

「あんた達、どうやって・・・?」

 

「このメイドが動き出したからしがみついてたんだよ」

 

「ってなんでルーシィとマーチ、それにハッピーまで居るんだー!?」

 

「それはこっちのセリフよ!ってまさか!」

 

そこでルーシィは何かに気付いたかのように硬直した。

 

「あんた達まさか星霊界を通って来たの!?」

 

「なんだと!あり得ん!」

 

星霊界。星霊達が普段居る此処とは別の世界のことである。

 

「人間が星霊界に入って来るなんて聞いたことない!星霊魔導士にとっては重大な契約違反なんだからね!」

 

「えっと、なんかごめん・・・」

 

そこでアミク達はエバルーに気付いた。

 

「あー!おじさん、まだやられてなかったの?」

 

「しぶとい奴だなー」

 

「我輩の方が優勢だったわ!!?」

 

自分が弱いと思われてたことに憤慨してバルゴに命じた。

 

「バルゴ!あいつらをやっつけて本を取り戻せ!」

 

そう言ってエバルーはバルゴの肩に乗る。

 

「とりあえず、このメイドをもう一回倒そう!」

 

言うや否やアミクが飛び出した。

 

「速っ!?」

 

あまりの速さにルーシィが驚く。

 

「私は音を司る能力(アビリティ)系魔導士!音速とまでは言わないけど、スピードには自信がある!」

 

いつの間にかバルゴの顔面まで来て殴り上げた。

 

「あうああっ!!?」

 

「バルゴぉ!!?」

 

バルゴが吹っ飛び、エバルーが落下する。

 

「よし、あたしもやるわよ!開け、巨蟹宮の扉! キャンサー!」

 

ルーシィも金の鍵を取り出して叫ぶと光に包まれた。そして、出て来たのはーーーーー

 

「「カニ!?」」

 

そう、二足歩行で人間の姿をしつつも背中から6本の蟹の足を生やした美容師風の姿をしている蟹の星霊、その両手には鋏が握られている。

 

「カニだよね!?語尾絶対カニだよね!?」

 

いつの間にか復活していたハッピーが興奮気味に叫ぶ。そして、キャンサーは口を開いたーーーーー。

 

「ルーシィ、今日はどんな髪型にする?エビ」

 

『エビーーーーー!!?』

 

「空気読んでくれるかしら!?」

 

ちょっと斜め上の発言に皆びっくりした。

 

「蟹なのにエビって・・・」

 

「と、に、か、く!キャンサー!あのヒゲ親父やっつけて!」

 

「OKエビ」

 

エバルーは焦っていた。もしかしたら本に書かれている秘密とやらは自分の悪事を書き連ねたものかもしれない。それがもし、評議員などにバレれば自分はお終いだ。しかし、この状況はどう見ても分が悪すぎる。なので一旦態勢を立て直すことにした。

 

「覚えてろよ貴様ら!」

 

そして魔法を使って地面に潜り逃走しようとしたところで、

 

「逃がさないわよ!」

 

ルーシィの振るった鞭がエバルーの首に巻きついた。

 

「ぐえ!?」

 

「あんたなんか、脇役で十分なのよ!!」

 

そしてそのまま持ち上げて壁に叩きつけた。

 

「キャンサー、今よ!」

 

「任せろ!エビ!」

 

キャンサーが目にも止まらぬ速さで鋏を振るう。するとーーー

 

「わ、我輩の髭がぁっ!!」

 

「お客様、こんな感じでいかがでしょう・・・エビ」

 

髪が綺麗に切り落とされスキンヘッドになり、さらに髭が可愛く結ばれていた。

 

「あーい!」

 

「トドメ、なの!」

 

ショックで呆然としてるエバルーに向かってハッピーとマーチが飛び蹴りを決める。顔面を蹴られ吹っ飛ばされたエバルーは気絶してしまった。

 

「ナイス!」

 

「やった、なの!」

 

ハッピーとマーチがハイタッチをする。

 

「で、その本どうするの?」

 

「これは一旦カービィさんの所に持って行くわ」

 

「ふーん、分かった!行こうナツ!」

 

「ん?ああ」

 

ナツ達はエバルー達を放っておいて急いで外に向かう。

 

 

 

「お、兄ちゃん!妖精が戻って来たぜ!」

 

「よくぞご無事で、我が妖精(マイフェアリー)

 

「え!?」

 

「うわ」

 

ルーシィがびっくりし、アミクの顔が引きつった。

 

入り口の近くでバニッシュブラザーズが待ち構えていた。2人は恭しく頭を下げる。さっき外で待機をお願いしていたので此処に居ることは当たり前だった。

 

「あ、ありがとね・・・?もう少しで軍が来るかもしれないから、此処に残って説明してあげて?あと、エバルーの身柄を拘束するようにも言っといて。色々悪どいことしてきたみたいだし」

 

「「イェッサー」」

 

「え、なにこの人たちどうしたの?」

 

「えぇと、後で説明するから・・・」

 

そう言いながら一同はカービィの所に向かう。アミクがチラリと後ろを見ると、ボロボロだった屋敷がとうとう崩れ落ち、それを見たバニッシュブラザーズが「うぉう!?」と驚いてるところだった。

 

 

 

 

 

 

カービィ邸に着いたルーシィは本をカービィに渡す。それを見たカービィは激昂した。

 

「な、これは・・・!依頼は本の破棄、または焼却だったはずです!」

 

「そうですね。破棄するのは簡単です。カービィさんにもできます」

 

「な、なら私がこの本を処分します!こんな本、見たくもない!」

 

ルーシィが依頼主と相対しているのでアミク達は黙ってそれを見ていた。

ルーシィはどこか寂しげに本を見る。

 

「どうしてカービィさんがその本の存在が許せないのか分かりました。父の誇りを守るため――あなたはケム・ザレオンの息子ですね」

 

「嘘!?」

 

「マジか・・・」

 

アミクが口を押さえ、ナツも呆然とする。

 

本を見つめながら握りしめるカービィ、ルーシィは続ける。

 

「この本を読んだことは?」

 

「いえ、父から聞いただけで、読んだことは・・・しかし読むまでもありません。父も言っていた駄作だ、と」

 

「だ、だからって処分しなくても・・・!」

 

「待って、アミク。誇りを守るためって言ってたのよ?カービィさん、ケム・ザレオンはその本を消滅させることを本当に望んでいるのですか?」

 

「そのはずです!父はこの本を書いたことを恥じていた」

 

 問いに答えたカービィは父ケム・ザレオンとの回想を話し始める。31年前のこと、エバルーからの脅迫によって『日の出』を書かされていたケム・ザレオンが3年振りに家に帰って来た。家に帰るなり挨拶もなしにロープで腕を縛ると、「私はもう終わりだ。二度と本は書かん」と言って利き手の右腕を斧で切り落としたそうだ。

 

「うっ、そんな・・・」

 

アミクが青ざめる。

 

そのまま病院に送られ、入院となったケム・ザレオンを若かりし頃のカービィは責め立てた。その後すぐケム・ザレオンは自害した。カービィはその後長らくケム・ザレオンを憎み続けていた。

 

「しかし、私の中の憎しみはいつしか後悔に変わりました・・・。私があんな事を言わなければ父は自殺しなかったんじゃないかと・・・」

 

言い終えるとカービィは懐からマッチ箱を取り出した。そして、マッチに火をつける。

 

「だから、燃やすの?」

 

「そうです・・・。父への償いとしてこの本を・・・父の名誉の為にこの駄作を消し去りたいと思ったんです」

 

カービィは静かにマッチを近付けた。

 

「これで・・・最後だ」

 

本に火がつくーーその時、日の出から眩しい光が溢れてきた。その光と共に本が開かれ、中から無数の文字が飛び出す。

 

「え!?」

 

「なに!?」

 

「文字が浮かんだ・・・!?」

 

ルーシィを除いた全員がその光景を呆然と見る。ルーシィが再び口を開いた。

 

「ケム・ザレオン・・・いえ、本名はゼクア・メロン。彼はこの本に魔法をかけたんです」

 

「ゼクア・メロン・・・そっか、ペンネームであるケム・ザレオンは本名のアナグラムだったんだ!」

 

すぐにアミクが気付いた。

 

「魔法・・・?」

 

カービィが呆然と呟く。

 

するとタイトルである『日の出(デイ・ブレイク)』の文字が浮かび、並び替えられる。そして本当のタイトルとしてカービィの前に現れた。

 

DEAR(ディア)・・・KABY(カービィ)!?」

 

「彼のかけた魔法は文字が入れ替わる文字魔法の一種。もちろん、タイトルだけでなく中身も、です」

 

ルーシィがそう言うと飛び出していた文字達が次々と並び替えられる。並び替えられた文字で語られる文はカービィに向けられた文だった。

 

「アナグラムだったのは自分の名前だけじゃないってわけ、なの」

 

マーチも納得したように頷いた。

 

「すげぇ!」

 

「あい!」

 

ナツ達も興奮する。

 

「彼が作家を辞めた理由・・・それは最低な本を書いてしまった他に最高の本を書いてしまったことかもしれません」

 

ルーシィは続けた。

 

『日の出』から溢れた文字は次々と本に戻っていく。

 

「それがケム・ザレオンが本当に残したかった本です」

 

「父さん・・・私は貴方を・・・理解できてなかったようだ」

 

カービィはポロポロと涙を流す。それはやっと父親に対して流すことができた涙だった。

 

「当たり前だよ。作家の頭の中が理解できたら、本を読む楽しみがなくなっちゃうでしょ?」

 

アミクが嬉しそうに言う。そして、カービィを見て言った。

 

「いいお父さんですね」

 

「はい、父は・・・最高の父親でした」

 

父を抱きしめるかのようにカービィは『日の出』改めて、『DEAR KABY』を抱き締める。カービィは涙を拭き、アミク達に身体を向ける。

 

「皆さん、ありがとう。やはりこの本は燃やせませんね」

 

「そっか・・・じゃあ、俺達は帰るわ」

 

「そうだね」

 

「あいさー!」

 

「なの」

 

「えっ!?」

 

ナツはそう言うとカービィに背を向け、出口に向かう。アミクとハッピー、マーチもそれに続く。カービィとルーシィは戸惑うことしか出来なかった。

 

「ちょ、ちょっと待って下さい・・・報酬をーー」

 

「だって、依頼は『本の廃棄』ですよね?」

 

アミクがそこまで言うとカービィははっと気づいた。

 

「し、しかし・・・」

 

「いいんだよ!目的を達成してないのに報酬なんて貰ったらじっちゃんに怒られちまう」

 

ナツ達の慈愛にまたも涙が溢れそうになるカービィ。

 

「ありがとう・・・ありがとう、妖精の尻尾」

 

「どういたしまして」

 

アミク達はカービィに手を振りながら屋敷を後にした。ルーシィも慌てて後を追いかける。

 

 

 

 

 

帰り道の途中、ルーシィが少し機嫌が悪かった。

 

「もう、どうすんのよ!200万が全部チャラになっちゃうなんて!」

 

「だって、嘘ついてもらうのは嫌だしなぁ」

 

「あい!」

 

「うぅ・・・はぁ、分かったわよ」

 

ルーシィは降参と言わんばかりに両手を上にあげる。

 

「それに、お金よりもあのおじいさんとお父さんが分かり合えたの見れただけでも良かったじゃん」

 

「まあ・・・そうね」

 

アミクの言葉にやっとルーシィの顔に笑顔が戻る。

 

「今頃、自分の本当の家で読んでるだろうな」

 

「そうだね。本は家でゆっくり読んだ方がいいよ」

 

「え? 本当の家って?」

 

ナツとアミクの会話に疑問が生じたルーシィは2人に聞く。

 

「あいつらの匂いと家の匂いが違ったんだ」

 

「ちょっと遠くの方から同じ匂いがしたから多分そっちにあるね」

 

「な、なにそれー!?」

 

じゃあ大金持ちじゃなかったって事!? ルーシィは心の中で落胆していた。

 

「ナツとアミクは鼻が利くんだよ」

 

「それじゃあアミクは聴覚だけじゃなくて嗅覚まで優れてるってこと?とんでもないわね・・・」

 

ルーシィが戦慄した。

 

「あの小説家、すげぇ魔道士だな」

 

「あい、30年間も魔法が消えてないなんて相当な魔力だよ」

 

「昔は魔導士ギルドに所属していたんだって。そこで体験した冒険を小説にしてるの。はぁ、憧れちゃうな〜」

 

ルーシィはうっとりとした表情で空を見上げる。

 

「ああ、やっぱりね」

 

「え?やっぱりって?」

 

アミクの声にルーシィが首を傾ける。

 

「あのルーシィの部屋にあった紙の束、ルーシィが書いた小説じゃない?」

 

「えぇ!?」

 

図星だったのか顔が真っ赤になる。

 

「同じ本好きとしてのセンサーがピン、と来たんだよ!」

 

「やたら詳しかったしな」

 

「なの」

 

どうやらナツ達も気付いていたようだ。

 

「うぅ〜他の人には言わないでよ!」

 

「なんで?小説書くのは凄いことだと思うけど」

 

アミクの言葉に再び赤くなる。

 

「まだ、下手くそだし・・・読まれたら恥ずかしいでしょ!」

 

「あぁ〜、それはあるね・・・」

 

アミクは身に覚えがあるのか遠い目をする。

 

「アミクも小説書いたことあるの?」

 

「ちょっとね・・・」

 

「よーし!じゃあ早速ルーシィの部屋に行くぞ〜!」

 

「ちょっとおおおお!!?」

 

必死にナツ達を止めるルーシィ。

 

「ちょっと!ナツ、ダメでしょ!」

 

救いの主が現れたか!とルーシィは期待の目でアミクを見た。

 

「一番最初に読むのは私なんだから!」

 

「そうだ、この人私と同類(本好き)だったぁぁぁぁああ!!!」

 

ルーシィは絶叫した。

 

「そ、そうだ!さっき、あのなんとかブラザーズの人達、敵だったでしょ?なんであんなにアミクに心酔してたの?」

 

話を変えるためさっきの疑問を言うルーシィ。すると今度はアミクが真っ赤になった。

 

ハッピー達はいつものことだとばかりに肩を竦める。

 

「またやっちゃった、の?」

 

「またって・・・」

 

「アミクはね、ギルドの皆とは別方向にやらかすことがあるんだ〜」

 

「いい意味で、なの」

 

猫達は説明を続ける。

 

「味方も敵も回復させたり、ボロボロになっちゃった神殿を修復しちゃったり、鶏小屋の卵を全部食べちゃったり」

 

「待って最後のは普通に問題行為よね?」

 

「そんなことばっかりするから、信者みたいな人があちこちでできちゃった、の」

 

特に天然とお人好しを同時に発揮してしまうと恐ろしいことになる。

 

「それで二つ名がつけられることもある、の」

 

「聖女とか人魚とか、今一番有名なのは『妖精の尻尾(フェアリーテイル)の歌姫』だったよね?」

 

「あの歌凄かったからな〜」

 

もうそろそろそこまでにしておいた方がいいだろう。アミクの頭から湯気が出ている。

 

ルーシィはにこやかに笑って言った。

 

「やっぱりアミクは天使ね!」

 

「もうやめてぇぇぇぇ!!!」

 

アミクの絶叫が響いた。ナツ達は笑い声をあげる。

 

こうしてアミク達のチームとしての初仕事は幕を閉じた。

 

 




あれ・・・おかしいな・・・なんでこんなに文字数増えてるんだ・・・?夜中のテンションやべぇ。だが後悔はしていない!
実際に音によっては花瓶が壊れることもあるらしいです。

ルーシィがエバルーを持ち上げれたのは怒りによる馬鹿力であります。


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鉄の森と呪歌 女王の帰還

ここから第1章、鉄の森編が始まります!やっとエルザ出せる・・・。


カービィからの依頼を終え数日後、少しずつギルドに慣れ始めたルーシィはクエストボードに貼ってある依頼書を眺めていた。

 

「えっと、魔法の腕輪探し・・・呪われた杖の魔法解除・・・占星術で恋占い・・・火山の悪魔退治!? 魔道士っていろんな仕事があるんだなぁ・・・」

 

ルーシィは改めて魔道士に感心しているとミラとアミクが近づいて来た。

 

「気になった依頼があったらミラさんに言ってね。今おじいちゃん、定例会だから」

 

「定例会?」

 

「地方のギルドマスター達が集まって定期報告する会よ。評議員とは違うの。うーん・・・リーダス、光筆(ヒカリペン)貸してくれる?」

 

「ウィ」

 

ミラは絵を描いていた大柄の男、リーダスから魔法アイテム光筆(ヒカリペン)受け取る。光筆(ヒカリペン)とは空中に文字や絵を描く事が出来る魔法アイテムだ。ミラは空中に分かりやすい図を描いた。

 

「魔法界で一番偉いのは政府との繋がりもある評議員10人。魔法界における全ての秩序を守るために存在しているの。犯罪を犯した魔道士をこの機関で裁く事ができるのよ。そしてその下に居るのがギルドマスター。評議会での決定事項を通達したり、各地方のギルドとの意思伝達を円滑にしたり、私達をまとめたり・・・まぁ大変な仕事よね?」

 

「知らなかったなぁ・・・ギルド同士の繋がりがあったなんて」

 

「ギルド同士の連携は大切よ? これをお粗末にしてるとーー」

 

「黒いヤツらが来るぞぉぉぉぉ!!」

 

「あいィィィィ!!」

 

「なのぉぉぉぉ!!」

 

「ひぃぃぃぃぃ!? って、あんたらかい!」

 

ナツとハッピーとマーチが突然現れてルーシィはビックリする。

 

「ハハッ、ビビりすぎだろ」

 

「ビビるルーシィ。略してビビルーシィだね!」

 

「略すな!」

 

「さらに略してビル、なの」

 

「一周回ってまともな名前になっちゃった!」

 

2人と2匹による漫才ラッシュにアミクはクスクスと笑う。

 

「今日もツッコミ冴えてるね、ビル」

 

「定着させないで!?・・・それよりも黒いヤツらって?都市伝説?」

 

「あら、黒いヤツらは本当に居るのよ?連盟に属さないギルドーーーーー闇ギルド」

 

ここでミラは真面目な顔をして続ける。

 

「時には暗殺や犯罪などにも手を染める悪質で危険な連中よ」

 

「うう・・・絶対そんな奴らに会いたくないなぁ」

 

「ま、だからこそ狙われないためにおじいちゃんも頑張ってるんだけどね。今みたいに定例会に行ったり、ね」

 

アミクが怖がるルーシィを安心させる。

 

「それこそ、自分から突っ込まない限りは闇ギルドなんてそうそう出会わなーーーーー」

 

「おい、ナツ!オメェはさっきから暑苦しいんだよ!」

 

「んだと!?オメェこそすぐに服脱ぎやがって変態じゃねぇか、このヒエヒエ野郎!!」

 

「なんだとこの頭ボンバー野郎が!!」

 

「脱衣選手権でもやってんのかテメェは!!」

 

ナツとグレイのいつも通りのケンカ。もはや一種の名物だ。

 

「あのバカ共は放って置いて今日は私達だけで仕事行く?」

 

「あい!たまにはチーム全員じゃなくてもいいよね!」

 

「え、チームって・・・」

 

前のカービィの件の時のやつだろうか。

 

「それってまだ続いてたの?」

 

「え、もしかして嫌だった・・・?」

 

アミクが心配そうにルーシィを見た。ルーシィは慌てて頭を振る。

 

「そういうわけじゃないけど・・・あれって私が金髪だから組んだだけじゃなかったの?」

 

「まぁ確かに金髪だったから丁度と良かったっていうのもあったんだろうけど・・・元々、それとは関係なしにチームに誘おうって思ってたし」

 

「ほんと?」

 

「それにあの時、言ってたでしょ。私達ルーシィのこと気に入ってるって」

 

確かに馬車でそう言っていた。

 

「それに私はルーシィのこと、と、友達だとも仲間だとも思ってるから・・・」

 

改めて友達とか言うと結構恥ずかしい。頰が熱い。

 

「ーーーーっもう!もうほんとにアミクは可愛いなぁもう!!」

 

ルーシィはアミクを正面からぎゅーっと抱きしめた。

 

「く、苦しい・・・」

 

「そういえばアミクって何歳?」

 

「じゅ、16・・・」

 

「じゃあ一つ下ね!わぁ髪サラサラーいい匂いもするし若い子は羨ましいわーそれにすごい発育ねぇ」

 

「ルーシィだって変わんないでしょ・・・後ちょっとおっさん臭い・・・」

 

2人は互いに向き合って抱きついているので2人の巨乳がぶつかるわ潰れるわ。それを鼻の下を伸ばしながら見るマカオとリーゼントにしているワカバのおっさんペア。2人の少女が動くたびにその巨乳がムニョムニョと形を変える。それを尊げに見るおっさん共。あの弾力は不思議と神聖さすら感じられる。

 

「・・・若いって・・・」

 

「いいなぁ・・・」

 

「「ああ・・・」」

 

「ちょっとエロオヤジ達?」

 

そこにバイオレット色の髪をポニーテールにした、眼鏡とリボンが特徴のラキが2人を睨む。それに対してマカオ達は気まずげに視線を逸らした。

 

 

 

 

そうやってじゃれ合っていると色男のロキがやって来る。

 

「やあ、アミク。今度デートしないかい?」

 

「来て第一声がそれとは平伏レベルのナンパっぷりだね・・・それにデートなら前行ってあげたでしょ?」

 

「あの畑デートのこと?ブロッコリー見て終わりだったと思うけど・・・」

 

「つまんないでしょそれ!」

 

ルーシィが思わずツッコんだ。ロキも苦笑いする。

 

「うーん、最近新しくできた『卵料理が美味しい!』って言われるレストランに行こうと思ってたけど、行かないならしょうが」

 

「行かないとは言っていない、行こう!」

 

「チョロいわ!」

 

ルーシィはロキから守るようにアミクを庇う。

 

「ちょっとロキ!アミクに手出したら鞭で縛ってボッコボコにしてやるんだから!!」

 

「はは、手厳しいな・・・嫉妬かい?」

 

「何言ってんの?」

 

マジトーンでルーシィが言った。

 

「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。もちろん僕は君の魅力にも気付いているよ。

そう、初めて会った時から君から目が離せなかった。黄金のように輝く髪。宝石のような瞳。

そして、リラのように心を震わす声。君の全てが!僕に刻まれた!」

 

「それ表現変えてるだけで私のときにも同じようなこと言ってたよ」

 

アミクの一言で台無しだった。

 

「・・・だから、ルーシィのことを見れば、胸が高鳴っ」

 

めげずに続けようとしたロキの目にルーシィの星霊の鍵が入った。

 

「き、君!もしかして星霊魔導士!?」

 

「え?」

 

「そう、なの。古時計とか子犬を出してた、の」

 

ルーシィの代わりにマーチが答えると

 

「ななななー!なんという運命のいたずら!」

 

「どうしたのロキ?」

 

アミクの問いかけにも答えず、ロキはショックを受けたように震える。そして――――

 

「ごめん!僕達はここまでにしよう!」

 

そう言うと泣きながら逃げるようにギルドから去っていった。

 

「なんだったの・・・?」

 

「ロキは星霊魔導士が苦手なのよ。昔、女の子絡みでトラブルがあってね」

 

「確かにいつか女性に刺されそう、なの」

 

「怖いこと言わないで・・・」

 

「あ、マーチ、魚食べるー?」

 

相変わらずマイペースなハッピーであった。

 

「じゃ、今日中に帰れる仕事に行こっか」

 

「そうね。それもなるべく高いやつ」

 

と、立ち上がったところで。

 

バン、と音を立てて扉が開かれる。そこには先ほど出て行ったはずのロキがいた。

 

「大変だー!」

 

「どうしたのロキ。闇ギルドでも攻めて来た?」

 

「縁起でもないこと言わないでよ!?」

 

ロキは一息つくと、短く告げる。

 

「『エルザ』が、帰って来た!」

 

その直後のギルドの反応は、まるで残虐非道で知られる有名な暴力団から借金取りが来たかのようだった。

 

「エルザだと!?」

 

「マジかよ!!」

 

「やべぇ!!」

 

「え?え?」

 

1人訳のわからないルーシィが周りを見るとナツとグレイが抱き合って震えている。ほとんどが怯えており、そうでない者はミラとアミク、マーチぐらいのものだ。

 

「エルザ帰って来たんだ。今度はゆっくりできるのかな?」

 

それどころかアミクは少し嬉しそうである。

 

「ね、ねぇエルザさんって誰?皆の反応からしてヤバそうなんだけど・・・」

 

「エルザは妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強の女魔導士と言われているのよ」

 

「最強!?」

 

ということは、アミクよりも強いということだろうか。

 

「皆大げさだなぁ。エルザは甘いものが大好きで女の子っぽくすると恥ずかしがる可愛い女の人だよ」

 

(そのイメージが周りの反応と噛み合ってない!!)

 

ルーシィの頭の中では色々混ざってミニスカを着た巨大な女性がケーキを持ちながら街を焼いている映像が浮かんできた。キャラ詰め込みすぎじゃね?軽くカオスである。

 

「・・・!エルザの足音だ!」

 

誰よりも早くアミクが気付いた。その言葉を聞いた他の人達はピシリ、と固まる。だんだん他の人達にも聞こえるようになってきた。

 

(あ、あたしはどっちを信じれば!?友達!?それとも大多数!?)

 

ルーシィも緊張してガチガチになる。

 

 

 

 

そして―――――『彼女』は入って来た。巨大な何かを背負って。

 

緋色の髪を持つ、輪郭の綺麗な女性だ。凛とした佇まいで着ている鎧も相まって騎士みたいでかっこいい。アミクはいつもそう思う。その女性は形の良い唇を開いた。

 

「ミラ、マスターはおられるか?」

 

「おかえり、エルザ。マスターは今定例会よ」

 

「そうか・・・」

 

「ねぇ、エルザ。そのデカイのはなん、なの?」

 

「マーチか。これは討伐した魔物の角をお礼と村の者が装飾を施してくれた物でな、綺麗だったので土産にしようと思ってな・・・迷惑だったか?」

 

「うーん、デカすぎるからちょっと邪魔になると思う、の」

 

「そうか・・・」

 

物怖じせず話すマーチに少ししょんぼりするエルザ。それを見てルーシィはたしかに強くはあるみたいだけどあまり怖くないのでは?と思い始めた。

 

「討伐した魔物の角って・・・」

 

「でけえ・・・」

 

「すげぇ・・・」

 

「ふぅ・・・それよりお前達、また問題ばかり起こしているようだな。仕事先で何度も話を聞いたぞ・・・マスターが許しても私は許さんぞ!」

 

エルザの頭に角が生えたような気がした。

 

「カナ、なんという格好で飲んでる。ちゃんと服を着ろ」

 

「うっ」

 

「ビジター、踊りなら外でやれ。ワカバ、吸殻が落ちてる。ナブ、そろそろクエストボードの前をウロウロせず仕事に行け」

 

指摘される人たちは皆げっ、と反応していた。

 

「マカオ」

 

「は、はい!」

 

「・・・はぁ」

 

「なんか言えよ!?」

 

どうやら、ハコベ山のことを聞いていたのだろう。あれはロメオのためにもしたと言える出来事なのでエルザも強く言うつもりはないようだ。

 

「はぁ、全く・・・今日のところはこれくらいにしておこう。世話が焼けるな・・・」

 

「な、何この人、風紀委員か何か・・・?」

 

「帰って来て早々小言なんて、エルザらしいね」

 

アミクはその光景を面白そうに見ている。

 

「そういえば、ナツとグレイは居るか?」

 

「こちらに、なの」

 

エルザの問いにマーチはビシッと指差して答えた。

 

そこには白目を剥いて肩を組んでいるナツとグレイが居た。

 

「や、やぁ・・・エ、エルザ!今日も俺達、な、仲良くしてるぜ・・・!!」

 

「あいー!」

 

「ナツがハッピーみたいになってる―――!?」

 

あの状態の2人も久しぶりでアミクは思わず笑ってしまった。そして、ルーシィに説明する。

 

「2人共、幼い頃にエルザにボコボコにされたらしくてね・・・エルザのことが怖いんだって」

 

「あい・・・その通りなのです」

 

エルザはナツとグレイに歩み寄る。

 

「そうか・・・親友なら時には喧嘩もするだろう。しかし私はそうやって仲良くしているところを見るのが好きだぞ」

 

「い、いや・・・俺達別に親友って訳じゃ・・・」

 

「あい」

 

「こんなナツ見た事ない・・・・」

 

エルザ達が話し終わる頃を見計らってアミクはエルザに近づく。

 

「エルザ、おかえり!」

 

「うむ、アミクも元気そうだな。・・・そうだ、お前に個人的に土産があってだな・・・」

 

エルザは荷物を漁ると小さな箱を取り出した。

 

「卵をふんだんに使ったケーキだ。依頼先で御馳走されたが、お前が卵好きだと思い出してな。少し残しておいたんだ。良かったら貰ってくれ」

 

「ありがとうエルザ大好きィ!」

 

アミクは目に止まらぬ速さでケーキをかっさらうとあっという間に食べつくした。

 

「はは、良い食いっぷりだ」

 

「もぐもぐ、今回の仕事は簡単だった?」

 

「まぁ、図体が大きいだけで私の相手ではなかったな」

 

仲よさげに話すアミクとエルザ。それをルーシィはぽかん、と見つめた。

 

「アミクって誰とでも仲良くできるイメージがあったけど、ああいう人とも仲が良いんだ・・・」

 

「あい!エルザもアミクを気に入ってるんだよ!」

 

「アミクはあまり問題を起こさないから、なの」

 

そんな風に話していると。

 

「ところで・・・アミクとナツ、グレイに頼みたいことがある」

 

「え、帰って来て早々?」

 

「私も本来ならゆっくりしたいところだが・・・そうもいかない状況になってしまった。普通はマスターの許可を仰ぐところだが、今、マスターは居ない。よって、早期解決が望ましいと私が判断した」

 

周りのメンバー達がざわめく。

 

「ど、どいうことだ!?」

 

「エルザが誰かを誘うなんて滅多にないことだぞ・・・!」

 

「そこで、3人の力を貸してほしい。付いてきてくれるな?」

 

「うーん(ルーシィと仕事行きたかったけど滅多にないエルザの頼み事だし、ね)いいよ、私でよければ」

 

「助かる。出発は明日だ。準備しておけ。詳しいことは明日話す」

 

「あ、いや・・・」

 

「俺、行くなんて一言も・・・」

 

ナツとグレイの抗議は聞かずにエルザはギルドから出て行った。

 

「こいつと・・・」

 

「チームだと・・・」

 

2人は互いに睨み合った。

 

「はいはい、ケンカしない。せっかくのエルザのお誘いなんだから。エルザの前でもケンカしてるとどうなることか・・・」

 

アミクが脅すように言うと二人は顔を青ざめた。

 

「あと、グレイ、服」

 

「ワオ!いつの間にぃ!」

 

グレイの慌てる声を聞きながらアミクはついさっき自分が言ったフラグを回収することになる予感がした。

 

 

 

 

「エルザにアミク、ナツとグレイ・・・今まで想像したこともなかったけど、もしかしたら妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強のチームかも・・・」

 

「え!?」

 

 

ポツリ、と呟くミラジェーンの言葉に驚くルーシィであった・・・。

 

 

 

 




エルザが主人公にあまい気がする・・・。


今思えばアミクの技って『トリコ』のゼブラの技を参考にすればよくね?
そうするとクロスオーバータグ付けるべき?


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鉄の森(アイゼンヴァルト)妖精女王(ティターニア)音竜(うたひめ)

炎竜王の崩拳!とかやってみたい年頃です。もうフェアリーテイル終わったのにね。まぁ終わったからこそ二次創作しやすいって言う点もあるけど。

ともかく今回は多分エロゴールさん出ます。


「じゃ、行こうか、ルーシィ」

 

「うん!」

 

「待って、なの」

 

アミクとルーシィ、マーチは必要な荷物を持ち、家から出た。今から集合場所である駅に向かうのだ。

 

「それにしてもルーシィも一緒に行くことになるとはね・・・」

 

「ミラさんに頼まれたのよ。『あの二人の世話するのアミク一人じゃ大変だろうから手伝ってあげて』って」

 

「確かにナツとグレイの喧嘩を止めるのは骨が折れる、の・・・」

 

同居人だからというのも理由の一つだろう。

 

「なんにせよルーシィがいてくれたら心強いよ」

 

「え?でもあたし戦闘になったらあまり役に立たないと思うわよ?」

 

「居てくれるだけでも結構違うんだよね。それに戦闘じゃなくてもルーシィの魔法に頼るときもあると思うし」

 

「そうかな・・・?」

 

なんて会話をしながら駅に着く。するとそこには――――

 

「たくよぉ・・・なんでエルザみてぇなヤツが俺たちの力を借りてぇんだよ?」

 

「知るかよ・・・つか、助けなら俺だけで充分なんだよ」

 

「じゃあお前だけで行けよ!!俺は行きたくねぇ!!!」

 

「なら来んなよ!!後でエルザに殺されちまえ!!」

 

「お前達!ケンカはするなと言っただろう!」

 

案の定、ナツとグレイがケンカしていたのでアミクはエルザの声を真似て止めることにした。

 

「「げぇっ!?エルザァ!!?」

 

「わ、そっくり!」

 

二人は抱き合ってビビり、ルーシィは感心する。

 

「アミクは音を操れるから、記憶した声を真似ることができる、の」

 

「隠し芸みたいね・・・」

 

「ってアミクかよ!驚かすなよ!」

 

「二人共、ケンカはめっ、でしょ?」

 

今度はミラの声を真似て言ってみた。

 

「・・・なんか調子狂うなぁ」

 

「全く・・・」

 

二人共毒気を抜かれたのかとりあえず喧嘩はしなくなった。

 

「あたしの部屋――――!!」

 

「もういいわ!」

 

調子に乗ってルーシィの声を真似たら怒られた。

 

「でも、グレイも言ってたけどエルザぐらいの人が私達の力を借りなければいけないほどの事態なんて・・・」

 

アミクは一体どんな話がもたらされるのだろう、と少し不安になった。

 

「そういえばなんでルーシィがいるのー?」

 

ハッピーが聞いてきたのでルーシィがさっきと同じことを説明した。

 

「・・・ってか仲介役ならあんたとマーチもいるじゃない!」

 

「オイラ達は猫なので」

 

「忘れられてるだけでしょ」

 

アミクがかわいそうなやつを見る目でハッピーを見ていると

 

「すまない、遅くなったな」

 

そう言ってエルザが現れた。

 

「あ、エルザ!」

 

「エルザ・・・さん!?」

 

エルザの方を向いた時アミクとマーチを除きみんな驚いた。

 

『荷物多っ!!?』

 

エルザの後ろには荷台に積まれている大量の荷物があった。

 

「エルザー、毎回言ってるけどそんなにいらないと思うよ?」

 

「む、そうか?何があっても大丈夫なように万全の準備をしてきたのだが・・・」

 

「絶対関係ないのある、の」

 

「それに石橋を叩いて渡る、とは言うけど叩きすぎて石橋の方が壊れると思う・・・」

 

アミク達が呆れている傍らではグレイとナツが肩を組んで震えていた。

 

「お、俺達・・・今日も仲いいぜ・・・」

 

「あいー・・・」

 

「出た、ハッピー2号・・・」

 

そこでエルザがルーシィの方を向いた・

 

「ん?君は確かギルドにいた・・・」

 

「あ、はい!新人のルーシィといいます!今日はミラさんから頼まれて同行することになりました・・・よろしくお願いします!」

 

「ルーシィは星霊魔導士なんだよ。私達が気付かなかったことに気付いたり、マイナーな知識を持っていたりすごいんだよ?」

 

アミクがルーシィを持ち上げるとエルザが感心したように言った。

 

「ギルドで聞いていた通りだな。皆が騒いでいたぞ。期待の新人だって」

 

「も、もう!お世辞ですよ~」

 

「雪山にある屋敷に住み着いていた傭兵ゴリラを倒したそうだな。頼もしい限りだ」

 

「色々混ざってる!?」

 

「それにあたしじゃないし・・・」

 

バルカンも傭兵もメイドゴリラも倒したのは全部アミク達だ。

 

「あぁ紹介が遅れたな。私はエルザ。よろしく頼む」

 

エルザとルーシィが握手をしていると、ナツがエルザの前に立つ。

 

「おい、エルザ!付いて行ってやる代わりに条件を呑め!」

 

「条件?なんだ、言ってみろ」

 

ナツは短く息を吸うと、言い放った。

 

「帰ったら俺と勝負しろ!」

 

「な!?」

 

「え!?」

 

「そうきたか・・・」

 

ルーシィとグレイは驚き、アミクは苦笑した。ハッピーとマーチは空中鬼ごッごをしていた。何やってんだ。

 

「お、おい!何言ってんだ!」

 

グレイは慌ててナツを止めようとする。

 

「前やり合った時は負けたが・・・あの時とは違う!今度こそ勝ってやる!」

 

ナツは獰猛に笑ってエルザを見た。

 

「ふむ・・・私はいささか自信がないが・・・まぁいいだろう、受けて立つ」

 

「よっしゃああああ!!」

 

「相変わらずのバトルジャンキーだなぁ」

 

アミクが呆れて肩をすくめる。するとエルザが聞いてきた。

 

「ちょうどいい。グレイとアミクもどうだ?」

 

「じょ、冗談!やってらんねーよ!」

 

「私もパス」

 

二人は即答する。

 

「そうか・・・個人的にはアミクとはやり合いたかったのだが、仕方ない」

 

「前やった時はアミクが勝ったからね・・・なの」

 

「はぁぁああああ!!?」

 

ルーシィがめっちゃびっくりして声を上げる。

 

「エルザさんに勝ったぁぁああ!!?」

 

「いや、でも辛勝だったし。私は色々小細工混みでやってたし」

 

「それでも勝ちは勝ちだ。あの決め手は見事だったぞ」

 

ルーシィが驚いたままいるとハッピーがやって来て説明する。

 

「アミクはエルザに勝つことができる稀有な存在なんだよ。ナツは愚直に突っ込んでは帰り討ちにあう場合がほとんどだけどアミクは色々工夫を凝らしながら攻撃を当てていくんだ。それでエルザに喰らいついてるんだよ」

 

「でも私が勝ったことなんて数えるくらいしかないよ?大体はエルザが勝つし、なんとか勝ってもまぐれもあるし、次やるときには通用しなくなってるし、ほんとエルザ強い・・・」

 

アミクがため息を吐くがエルザに勝ったことがある時点ですごいと思うルーシィであった。

 

「じゃあ、ナツよりもアミクが強いの?」

 

「それは何とも言えない、の」

 

「実際は同じくらいなんだよね~。何回か勝負したことあるけど勝率は五分五分だし」

 

マーチも加わって話しているとエルザが口を開いた。

 

「とはいえ、負け越しては私も寝覚めが悪い。いつか勝負してもらうぞ」

 

「はぁ、わかったよぉ、いつかね。また強くなってるんだろうなぁ・・・」

 

アミクはげんなりしてため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

そして、列車内。

 

「はぁ~こうしてると気持ちいいもんだなぁ列車はぁ~」

 

平衡感覚養歌(バルカローラ)』を掛けてもらったナツが言う。

 

「ああ~ずっとこうだったらいいのにな~」

 

「連続して掛けると効きづらくなるからその願いは叶いそうにないよ・・・」

 

「でも歌で酔わなくするだなんてその魔法便利ね~」

 

乗り物内でも余裕ができたアミク達は楽しそうに話している。

 

「ったく、ケンカ売った直後なのに弛みすぎだろナツ」

 

「あ”~」

 

ナツに至っては温泉に浸かったおっさんのような声を出していた。グレイの言葉にも反応しないほどリラックスしているらしい。

 

「い”~な”~」

 

「うむ、それなら私の隣に来い。乗り心地がいいぞ」

 

「それってあたしにどけってことかしら・・・」

 

エルザの言葉にナツは素直にエルザの隣に座る。ルーシィは元々ナツが座ってた場所、つまりアミクの隣に座る。

 

「う”~」

 

「うるさいからちょっと静かにしてろ」

 

「う”っ」

 

そう言うとエルザはナツのお腹に拳をめり込ませて気絶させた。

 

「よし、これで静かになったな」

 

(やっぱりこの人も変だー!)

 

ルーシィは内心絶叫した。

 

 

 

「そ、そういえばエルザさんはどういう魔法を使うんですか?ギルドメンバーの魔法はナツとアミク以外知らなくて・・・」

 

ルーシィが聞いた。

 

「エルザの魔法は綺麗、なの。血がいっぱい出る、の・・・・相手の」

 

「それって綺麗なのかしら!?」

 

「エルザでいい・・・。私よりもグレイの魔法の方が綺麗だと思うぞ」

 

エルザがグレイを見る。

 

「あー確かに。綺麗だしかっこいいよね」

 

「そ、そうか?」

 

「どんな魔法なの?」

 

照れるグレイにルーシィが聞くと、手のひらの上に握りこぶしを置いた。すると、氷で造られたギルドマークが現れる。

 

「氷の魔法さ」

 

「おおー!」

 

そこでルーシィははっと気付くとナツとグレイを交互に見た。

 

「火と氷・・・そっかだからあんた達仲が悪いんだ!」

 

「それ、私も最初思った」

 

「ほっとけ!」

 

グレイがそっぽを向いた。

 

「方向性は違うが、私はアミクの魔法も綺麗だと思うぞ」

 

「ええ!?」

 

「確かに!歌ってるとき、声綺麗だもんね!」

 

「その歌で人を癒すとかどこの童話だよ、って思うけどな」

 

皆に立て続けに言われて赤くなる。

 

「わ、私はともかくハッピーやマーチだって翼が綺麗じゃん!?」

 

「いつの間に綺麗って言い合う合戦になった、の?・・・」

 

 

 

 

 

「で、そろそろ話してくれる?私達が必要になるほどの事態ってなんなの?」

 

まずはアミクが切り出す。

 

「うむ、そうだな・・・実は・・・」

 

エルザの話をまとめるとこうだった。

 

 

 

 

仕事帰りに偶然立ち寄ったオニバスにある魔導士が集まる酒場で4人組の男達が集まり、封印されていると言われる『ララバイ』という魔法について話していた。

その『ララバイ』には封印が施されているらしく四人組の一人である、『カゲちゃん』と呼ばれる人物が封印を解き、『エリゴール』という人物に届けると言っていたらしい。

 

「ララバイ・・・子守唄(ララバイ)か・・・私、同じ名前の魔法使えるんだけどそれなの?」

 

「相手を眠らせるんだったな・・・それと似たものかどうかは分からないが、封印されていたということは強力な魔法なのは間違いないだろう」

 

だが、とエルザは続けた。

 

「その話を聞いても最初はあまり気に留めなかった。だが、奴らが言っていた『エリゴール』という名が引っかかった」

 

「エロゴール?」

 

「マーチ、人を勝手に変態にしない」

 

アミクがマーチに注意する。

 

「そして、思い出したのだ!奴は、『死神』エリゴール」

 

「し・・・!」

 

「『死神』・・・?」

 

物騒な二つ名に息を呑む一同。

 

「闇ギルド『鉄の森(アイゼンヴァルト)』のエース、それがエリゴール。元々、『鉄の森(アイゼンヴァルト)』は暗殺系の依頼をこなして六年前に魔導士ギルド連盟から追放されたギルドだ」

 

「本来、暗殺などの依頼は評議員の意向で禁止されているんだよ」

 

アミクが注釈を加える。エルザも頷いて続ける。

 

「その通りだ。だが、奴らは金を選んだ。エリゴールの『死神』とはその際、暗殺系の依頼ばかりを遂行していた為につけられた通り名だ」

 

『エリゴールは危険』とアミクの脳裏に刻まれた。

 

「そして連盟を追放され、ギルドマスターが捕まったにも関わらず連中は活動を続けている」

 

「だから、闇ギルドなんだね」

 

アミクは自分の予感が当たってしまったことにため息をつく。まさか、本当に闇ギルドと関わることになるとは。

一方、エルザの説明を聞いていたルーシィは冷や汗を流す。

 

「なんか帰りたくなってきた・・・」

 

「ルーシィ、汁が出てるよ~」

 

「汗よ!」

 

エルザは拳を握った。

 

「不覚だった!・・・あの時、エリゴールの名に気付いていれば、全員血祭りにあげることができたものを!」

 

「怖っ!?」

 

「ぐふっ!?」

 

「あのーエルザー?ナツに被害が・・・」

 

エルザが悔しそうに拳を叩きつけたがそれはナツの頭だった。

 

「そこでだ、『鉄の森(アイゼンヴァルト)』のギルドに乗り込もうと思うのだが、私一人でギルド一つ相手取るのは少々心もとない。よってお前達に助力を頼んだわけだが・・・」

 

「まあ、なにか企んでるのは間違いないだろうしな。きっとそのララバイってやつもそのときに使うんだろうよ」

 

「ああ、だからこの事態を重く見て早急に解決する必要があると判断したわけだ。特にマスターがいない今は、な」

 

「面白そうじゃねぇか・・・!」

 

グレイは乗り気のようだ。

 

「ま、そういうことならやらないわけにはいかないよね」

 

アミクも目に闘志を燃やす。

 

「うう・・・来るんじゃなかった・・・」

 

ルーシィだけは尻ごみしているようだ。

 

「ルーシィ、肉汁が出てる、の」

 

「言い方、やらしいわね!?あと汗よこれは!」

 

「マーチ、お魚食べるー?」

 

「ありがとう、なの」

 

二匹も通常運転だ。

 

「・・・」

 

ナツからは返事がない。ただの屍のようだ。

 

(ララバイ・・・ねぇ。うーん、なんか引っかかるなぁ)

 

アミクは首を捻る。自分が同じ名前で使ってるということ以外で聞き覚えがある気がする。

 

(なんだっけ・・・おじいちゃんに聞けば分かるかな・・・)

 

今はいない小さな老人のことを思い浮かべる。

 

(今頃真面目な話してるんだろうなぁ)

 

 

 

 

一方ギルドマスター達の定例会場では。

 

「いや~最近入った新人の子がアミクと同じくらいボインちゃんでのぉ」

 

「あら~ん、欲しいわねその子」

 

「なぁ、マカロフ。おまえんとこ綺麗どころ多いんだからさ。一人くらいくれよ~。ほら、『歌姫』とか」

 

「ならんならん!貴様らに何ぞにうちの子はくれてやらんわーい!」

 

 

下世話な話をしていた。

 

 

 

 

 

 

「そういえばルーシィに話したいことがあった気がするんだけど」

 

「話したいこと?」

 

ハッピーが言うのでルーシィもハッピーを見る。

 

「うーんなんだったかなぁ、ルーシィといえば変。ルーシィは変・・・」

 

「変で悪かったわね・・・」

 

ルーシィがもはやツッコむ気力もない、とばかりに言った。

 

「あれ、なの。ほらバルゴの・・・」

 

「ああー!そうだ思い出したー!」

 

マーチが言うとハッピーも思いだしたようだ。荷物から金色の鍵を取り出す。

 

「これって?」

 

「ほら、前にエバルーの所にいたでしょ?バルゴって星霊が。それが家に来てルーシィに鍵を渡してほしいって」

 

「ちなみにあーしはその現場に居合わせた、の」

 

「え――!?あのゴリラメイドが!?」

 

ルーシィは恐る恐る鍵を受け取った。

 

「そっか、エバルーって悪事がバレて逮捕されたんだっけ」

 

バニッシュブラザーズから送られてきた手紙にはそう書いてあった。あいつらフェアリーテイル宛てに手紙送ってきやがったんだよ。

 

「よかったじゃん!黄道十二門が一つ増えたね!」

 

アミクが心底嬉しそうに言う。いや、嬉しいことは嬉しいが元があのゴリラなので微妙な心境だ。まぁ牛もいるし大丈夫だろう。

 

「あとで契約しとこ」

 

ルーシィはホルダーに鍵をしまった。ここでバルゴを出して契約するには巨体すぎると思ったためだ。

 

 

 

 

 

 

目的地に着いた一同。

 

「で、『鉄の森(アイゼンヴァルト)』のアジトはここにあるのか?」

 

「それは分からん。今からここで調べるつもりだが」

 

「そう簡単に見つかるとは思えないけど・・・」

 

そう言うルーシィは何かが足りない気がしていた。

 

「・・・そういえばナツは?」

 

『あ』

 

すっかり忘れていたらしい。

 

「ってかアミクもいねえじゃねえか!」

 

「アミクならナツ連れてくるって列車に戻っていったよー」

 

「それを早く言いなさいよ!」

 

列車の方を振り返るとエルザ達が座っていた座席の方で、アミクがナツを起こしていたところだった。

 

「ほら、ナツ着いたよ」

 

「うう・・・なんだ?腹と頭が痛ぇぞ・・・?」

 

その直後。

 

「あ!列車出発しちゃった!」

 

列車が動き出したのだ。

 

「おい!もう窓から飛び降りろ・・・」

 

エルザが列車の中にいる二人に向かって命令しようとするが・・・。

 

二人揃ってうずくまった。

 

 

「・・・もしかして『平衡感覚養歌(バルカローラ)』切れちゃった?」

 

何と言うタイミングの悪さ。ルーシィの言葉に青ざめる皆。そうしている間にも列車は進んで行く。

 

「くそっ!!なんという事だ!!

 

話に夢中になるあまり、ナツを列車に、置いてきてしまった!!

 

それに私がやるべきだったことをアミクにやらせてしまった!私の失態だ!誰か殴ってくれ!」

 

「落ち着いて、なの」

 

マーチはエルザを宥めた。

 

「今はあいつらを追いかける方が先だ!」

 

「あーもう!なんでこんなことに――!!」

 

とりあえず一行は列車を追いかけるのだった。

 

 

 

 

 

「うう・・たすけ・・・うっぷ」

 

「き、きもちわるい・・・うぇ」

 

列車の中では二人がぐったりしていた。とりあえず、椅子に座ってるがなんにも改善されない。

そして、そこに近づく一人の影。

 

「お兄さん、お姉さん。ここ、空いてる?」

 

黒髪のどこか軽薄そうな男だった。男は返事を聞かずに苦しんでいるアミクの背中を摩る。

 

「大丈夫お姉さん?キツそうだね」

 

「う・・・お兄さんここに座んない方がいいよ・・・私達、こんなんだから、ううぅぅ」

 

アミクがそう忠告しても離れずに、むしろ馴れ馴れしくアミクの肩を触ってくる。

 

「まぁまぁ、そう言わずに・・・ん?」

 

その男がアミクの手首にある『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』のギルドマークを見た。

 

「へぇ、お姉さん達、正規ギルドの『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』なんだ・・・」

 

男の目が暗く笑う。

 

「『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』って言えばさぁ、ミラジェーンっているよね?とっても綺麗だよねぇ・・・実際に一目見てみたいなぁ・・・あと名前は知らないけど新しく入った娘も可愛いんだって?気になるねェ・・・」

 

ナツもアミクも答えない。余裕がないというのもあるが、アミクはなんだかこの男に嫌なものを感じ始めていた。

 

「ほかにもほら、『歌姫』だっけ?結構知ってる人は知ってるんだけど、姿はまだ見たことないんだよねぇ・・・。ぜひ会ってみたいよ・・・」

 

ピクリ、とナツとアミクが反応した。

 

「それでさぁ、話は変わるんだけどうちのギルドって女っ気が全然なくてねぇ・・・一人くらい欲しいんだよね・・・」

 

そう言って厭らしくアミクを見る。

 

「お姉さんなかなか可愛いじゃん。お兄さん、この子うちにくれない?まぁ、返事なんていらないけど、ねっ!」

 

急に人が変わった様に男はナツの顔面を蹴飛ばした。

 

「ナ、ナツ!」

 

アミクは慌てて立ち上がるが気持ち悪くなりすぐに膝を突いた。

 

「おっと、お姉さんは一緒に来てもらおうか。こんなハエとは釣り合わないよ」

 

男がアミクの腕を掴んだ瞬間。

 

「てめ・・!アミクに、さわんじゃ、ねぇえ!!」

 

ナツが男を睨みつけ、手に火を灯す。だが、力が入らずそのまま倒れた。

 

「ハハハ!!だっせぇ!!ハエらしく惨めじゃないか!」

 

ガシッとナツの頭を踏みつける。

 

「ハエのくせに調子乗ってんじゃねぇよ!!女一人守れないくせして!!」

 

「ハエ、じゃない・・・!」

 

「あ?」

 

アミクは男をキッと睨みつけた。

 

「ナツはハエじゃない!『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』だ!」

 

「・・・」

 

男は無表情になると

 

「うるせえよハエが!!」

 

アミクを思い切り蹴飛ばした。そのまま壁に叩きつけられる。

 

「あ、ぐっ!」

 

「アミ、ク・・・!」

 

「俺ら闇ギルドは正規ギルドのことそう呼んでんだ!!一丁前に格好付けてるんじゃねえよハエ共!!」

 

直後、列車が止まった。

 

「ん、なんだ・・・?」

 

 

 

 

少し前。

 

「だから!降り損ねた仲間が二人いるんだ!」

 

「ですがそのためだけに列車を止めるわけには・・・」

 

エルザが駅員と押し問答をしている。

 

「どうしよう・・・!こうしてる間にもどんどん離れて行っちゃう・・・!」

 

「・・・」

 

ルーシィが焦ってる中、マーチは駅員の後ろにあるボタンに注目していた。

 

(あれは、もしかして・・・)

 

そして、ふわりと飛ぶと駅員に気付かれないように近づく。

 

「マーチ?」

 

ハッピーが疑問の声を上げるがそれを無視してボタンを押した。

 

直後に列車が止まった。

 

「おお!でかしたマーチ!!」

 

「今のうちに追いつく!」

 

「ああ、もう!まともな人はいないのー!?」

 

「俺はまともだぞ!!」

 

「露出魔に言われても説得力無いわ!!」

 

一行はそれを見るや否や走りだす。後ろで駅員が慌てていたがそんなことはどうでもいい。

 

 

 

 

「「止まった―――!!」」

 

瞬間、アミクとナツは復活した。

 

「さっきはよくもハエハエ言いやがったな!!」

 

「私、今、怒ってます!」

 

「くっ・・・」

 

それぞれ火と音を纏う二人。先手はアミクが切った。

 

「えぇい!」

 

「がっ!」

 

パンチで軽く吹っ飛ばす。その先にはナツが足を構えている。

 

「おらぁ!」

 

さっきのお返しとばかりに男の顔面を蹴りぬいた。

 

「うぐ・・・!」

 

床をころがる男。その男から何かが転がり落ちた。

 

「な、なに?」

 

アミクの近くに転がって来たので拾って見てみる。

 

それは三つ目の髑髏の笛だった。見ただけで禍々しさが伝わる気がする。

 

「・・・これって・・・」

 

既視感がある。それが何か思い出す直前。

 

「・・・あ!」

 

「見たな・・・!」

 

男が影を使って奪い返していた。

 

「くそ!『鉄の森(アイゼンヴァルト)』に手を出したんだ!タダで済むと思うな!」

 

「『鉄の森(アイゼンヴァルト)』!?」

 

災い転じて福と成す。まさかそっちからノコノコとやってくるとは。ということはさっき持ってた笛が恐らく・・・。

 

「ナツ!その人捕まえるよ!」

 

「ん?よくわかんねぇけど分かった!」

 

と身構えたところで。

 

『たいへんお待たせいたしました

 

先ほどの警報は誤作動によるものと判明いたしました

 

まもなく、運転を再開いたします』

 

運転再開のお知らせだ。

 

「嘘!?こんなときに・・・!」

 

「やべぇ!一旦逃げるぞアミク!」

 

ナツはアミクを抱えると窓に向かって駆けだす。

 

「ちょ、ちょっと待ってナツ!外にエルザ達が・・・」

 

「あ、おい!待ちやがれ!」

 

アミクと男が叫ぶがナツは無視して窓から飛び出した。

 

 

ちょうどそこに。

 

 

「うおおわあああ、あぶねえええええ!!!」

 

魔導四輪に乗ってちょうど追いついたエルザ達がいた。だが、屋根の上にいたグレイとナツの頭がゴチンとぶつかった。

 

ナツの手から離れたアミクはエルザがお姫様抱っこで受け止める。

 

「あ、ありがとエルザ」

 

「うむ。見た目に反して軽いな」

 

「アミク、無事でよかった、の!」

 

マーチがアミクの胸に飛び込んでくる。

 

屋根の上では、

 

「いってええええな、この野郎!!」

 

「今のショックで記憶喪失になっちまった!お前誰だ変態!」

 

「なぁにぃ!?」

 

いつも通りケンカしていた。

 

「おい、エルザ、ハッピー、マーチにルーシィ!置いて行くなんてひでぇじゃねえか!アミクしか迎えに来なかったぞ!」

 

「ごっめーん」

 

「悪かった」

 

「都合のいい記憶喪失だなおい!」

 

呑気に会話しているがそれどころではない。

 

「ともかく、二人共無事でよかった」

 

「硬ぇ――――!?」

 

「痛――――い!?」

 

エルザは胸元に抱きしめようとしたのだろうが、生憎鎧を着ているためアミクとナツの頭が鎧にぶつかる。だからそれどころではない。

 

「エルザ!早くあの列車追いかけて!『鉄の森(アイゼンヴァルト)』がいた!」

 

「なに!?」

 

「あいぜん・・・なんだって?」

 

「馬鹿ものぉっ!!」

 

ドゴン、とエルザがナツを殴りとばす。

 

「貴様!!『鉄の森(アイゼンヴァルト)』は私達の追っている闇ギルドだと話しただろう!?」

 

「はぁ!?俺んなこと聞いてねぇよ!?」

 

「何っ!?なぜ聞いていない!!さっき列車の中で話しただろう!!!」

 

「エルザが気絶させたんだよ・・・」

 

アミクが呆れた声で言うが、今はそれよりも早く追いかける方が重要だ。

 

「そうだ、あとララバイの正体が分かったよ!」

 

「本当か!?」

 

「あ、あたしも思い出した!」

 

ルーシィも叫ぶ。

 

「ララバイは呪いの歌!死の魔法!」

 

「つまり呪歌ってことなんだけど・・・禁止魔法に呪殺ってあったでしょ?」

 

ルーシィとアミクが交互に説明する。

 

呪歌(ララバイ)はその呪殺をさらに恐ろしくした物なんだ。見た目は笛でその音色を聴いた者すべてを呪殺する魔笛・・・それが集団呪殺魔法、ララバイ」

 

「マジかよ!?」

 

「さっき出くわした『鉄の森(アイゼンヴァルト)』のメンバーが持ってたんだ。ちなみに、その持ってた奴がエルザの話に出てきた『カゲちゃん』だと思う。多分もう封印を解いてあるかも・・・」

 

「・・・なんということだ」

 

「呪歌なんて・・・邪道だよ!!音楽や歌は人々の癒しや救いになるべきなんだ・・・無暗に人を傷つけるものじゃない!それを、こんな汚いやり方で、それも虐殺に利用しようとするなんて・・・!!」

 

アミクが珍しく義憤の表情を浮かべて感情的に言う。音楽に携わる者として呪歌による殺害などといった邪法なものは許しがたいのだろう。

そんなアミクの気持ちが分かるのか皆何も言わない。

そこでエルザが復帰する。

エルザはすぐさま魔導四輪車に飛び乗った。

 

「お前達、早く乗れ!急いで追いかけるぞ!!」

 

 

 

 

 

魔導四輪車が猛スピードで走る。

 

「エ、エルザ―――!おえ、飛ばしすぎじゃなーい!?うぷ、魔力が持たないよ―――!?」

 

「心配するな!魔力が空にになっても棒きれを持ってでも戦う!」

 

さっきから魔導四輪車につながっているSEプラグが膨張している。ほんとに大丈夫だろうか。

 

「お、おろしてくれぇ・・・」

 

アミクとナツは思いっきり酔っていた。

 

「ほ、ほんとに無理しないでね―――!!うぅえ」

 

「あんたもね!?」

 

ルーシィがアミクの背中を優しく摩った。さっきの『カゲちゃん』らしき人物とは大違いだ。

 

 

 

 

 

 

 

数分後。なんとか目的のオシバナ駅に到着。

 

駅では入場を規制する線が張られており、聞いてみると駅を闇ギルドに占拠されたとの事だった。

 

 

 

外で入場規制をしていた駅員の1人をつかまえるエルザ。

 

「君!!中の様子は!?」

 

 

「な、なんだね!?君は!」

 

突然の事で駅員は戸惑う。すると

 

ゴスッ

 

「ぐほっ!」

 

駅員の一人を頭突きで気絶させてすぐに別の駅員を捕まえる。

 

 

「中の様子は?」

 

 

「え? ぐはっ!?」

 

なぜか次々と聞いてすぐに頭突きで沈める。

 

「即答できる人しかいらないってことかしら・・・」

 

「エルザが、どんな、人か、わかったでしょ・・・?」

 

「大丈夫?息絶え絶えだけど・・・」

 

まだ酔いから覚めていないナツとアミクはナツがグレイに、アミクがルーシィに背負われていた。グレイはめっちゃ嫌そうだったが。

 

「そろそろ大丈夫・・・」

 

「おい、このまま突撃するぞ!」

 

結局全員倒してしまったエルザは皆に声を掛けると規制線を乗り越え、駅構内に向かう。

 

「俺達もいくぞ!」

 

「うん!ってかほんとに軽いわね・・・」

 

ルーシィ達も後を追った。

 

 

 

 

『なっ・・・!?』

 

アミクとナツも復活し、皆で走っていると驚くべき光景が広がっていた。

 

「軍が、全滅してる・・・!」

 

先に入っていた軍の小隊が傷だらけで倒れていたのだ。

 

「大変!治さないと!」

 

「待て!」

 

慌てて治癒しようとしたアミクをエルザが止める。

 

「見た感じ命に別状はない。今回復させて魔力を無駄に使うよりはこれからの戦いで使った方がいい」

 

「・・・でも」

 

「頼む。言うことを聞いてくれ」

 

エルザが真摯に頼むとアミクは渋々頷いた。

 

「わかったよ・・・じゃあ早く済ませて皆治しちゃおう」

 

「・・・この先にいるってことよね・・・」

 

ルーシィは駅のホームの方を見た。

 

「・・・行こう」

 

エルザは短く言うと、皆を率いて進んだ。そして―――

 

 

 

 

ホームには何十人ものの『鉄の森(アイゼンヴァルト)』のメンバーがいた。その中には先ほどの男、『カゲちゃん』らしき人もいる。

 

そして、なにより目を引いたのはそんなメンバーの上に浮かんでいる、長い銀髪の男。

 

 

それを見たアミクは一歩前に出て叫んだ。

 

 

「あなたが――――エロゴール!!」

 

 

 

「クククッ、やはり来たな・・・待ってたぜぇ・・・『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』のハエ共!!・・・ってちょっと待て、なんかすごく不名誉な名前で呼ばれた気がするが!?」

 

「貴様がエリゴールか!呪歌(ララバイ)を使ってなにを企んでいる!!」

 

「仕切り直すのかよ・・・まぁいい。質問に答えるが、この駅には何があると思う?」

 

エルザの問いに男――――エリゴールはニタニタと笑いながら浮かび上がる。

 

「さっきから浮いてるけどあれって魔法?」

 

「多分、風の魔法、なの」

 

エリゴールは駅に設置されたスピーカーを叩いた。

 

それを見てエルザが気付く。

 

 

「貴様まさかっ!?ララバイを放送するつもりか!?」

 

「なんですって・・・!」

 

アミクが驚愕の表情をする。

 

 

 

「フハハハハハッ!!これは粛清なのさ!権利を奪われた者の存在を知らずに…権利を掲げ、生活を保全している愚か者共への…な

 

この不公平な世界を知らずに生きるのは罪だ………よって死神が罰を与えに来た

 

"死"というなの罰をな!!」

 

「なによそれ・・・!元はと言えば自分たちが決まりを破ったからでしょーが・・・!!」

 

ルーシィが怒りの声をあげる。

 

「そんなことしたって権利が戻ってくるわけじゃない、の」

 

「ここまで来たら権利なんていらねぇ・・・欲しいのは権力だ!権力さえあれば全ての過去を流し、未来さえ支配することができる!!」

 

「アンタ、バッカじゃないの!?」

 

ルーシィが声を荒らげるもカゲちゃんーーーーーカゲヤマが高笑いをあげた。

 

「残念だったな、ハエ共!闇の時代を見ることなく死んじまうとは!!」

 

そう言うとカゲヤマはルーシィに向かって影の魔法を繰り出した。

 

「きゃっ!」

 

「ルーシィ!」

 

影の魔の手がルーシィに迫るーーーーーー直前。

 

バァアン!

 

アミクが腕を振るって衝撃波で影を弾き飛ばしていた。

 

「そんな・・・」

 

アミクの表情は見えない。

 

「そんなことのために・・・」

 

だが、隠しきれない怒気は感じる。

 

「そんなことのために!音楽を穢そうとしているのか!!」

 

その怒気はエルザでさえ怯むほどの迫力を持っていた。『鉄の森(アイゼンヴァルト)』のメンバー達もエリゴールも思わずたじろぐ。

 

「お前達は!音楽を侮辱した!!」

 

魔力が全身から迸る。

 

「楽器もロクに触ったことの無い素人共が!!」

 

そして、エリゴールの持つ笛ーーーーー呪歌(ララバイ)を睨む。

 

「演奏すること自体、烏滸がましい!!」

 

アミクのツインテールがユラユラ揺れている。

 

「音楽をそんな気持ちで嗜もうとするなああああああああ!!!」

 

そして、そのまま飛び出そうとーーーーー

 

「おい」

 

「あうっ」

 

したところでナツにチョップされた。

 

「暑くなるのは悪いとは言わねぇけど、自分を見失うなよ」

 

「あれ、私、なんかトリップしてた?」

 

アミクはさっきまでの出来事を覚えてないかのように言う。

 

(今のは、一体?)

 

エルザは背中に冷や汗が流れる。なぜか得体の知れない気配がした。この少女のどこにあれ程の覇気があるのか分からない。少し恐怖を感じたーーーー 一瞬だけ。ポカンとした顔を見ていると色々考えているのがばからしくなってくる。アミクはアミク。そう結論づけて、目の前のことに集中することにした。

 

「こ、小娘が!誰に口利いてやがる!」

 

エリゴールが先ほど怯えた自分を恥じるように大声を出した。

 

「へへっ、今度は地上戦だな!」

 

「乗り物じゃなきゃ、どうとでもなる!」

 

ナツとアミクが構えた。

 

「フフン!こっちは最強チームよ!覚悟しなさい!」

 

ルーシィが得意げに言った。

 

「・・・チッ、お前ら、あとは任せたぞ・・・俺は笛を吹きに行く」

 

エリゴールは窓ガラスを割って隣のブロックに移動した。

 

「あ!待ててめぇ!!逃げんのかこらぁ!!」

 

「クソッ!!向こうのブロックか!!」

 

「くっ・・・ナツ!!グレイ!!アミク!!3人で奴を追うんだ!!」

 

エルザの指示にナツとグレイはお互いに顔を見合わせ「む・・・」と睨み合う。

 

「お前達3人が力を合わせればエリゴールにだって負けるはずが無い・・・」

 

「悪いけど私はここに残るよ」

 

「なっ・・・!」

 

アミクが言うとエルザは驚いたように目を見開く。

 

「何を言ってるんだ!早くエリゴールを止めないと・・・それに、アミクがああいうのが許せないのだろう?」

 

「確かに許せないけど・・・でも、私がいなくたってあの二人がいれば大丈夫だと思うし、いまのエルザを放っておくわけにはいかないよ」

 

「どういうことだ・・・?」

 

「キツいんでしょ。魔力」

 

「・・・」

 

さっきの魔導四輪車で魔力を大量に消費してしまったのだ。

 

「私も加勢するよ。エリゴールの方も心配だけどエルザはそれ以上に心配だからね」

 

「・・・全く、お人好しめ」

 

エルザは薄く笑った。アミクは今だに睨み合ってるナツ達をみる。

 

「というわけでほら、早く行って!ケンカなんて後にしなさい!」

 

「「むむむ……」」

 

未だに返答のない2人に痺れを切らしたアミクはエルザの声を真似た。

 

「聞いているのか!?」

 

と、怒鳴ると2人は反射的に瞬時に姿勢を正し、敬礼をする。

 

「「あいー!!!」」

 

「エリゴールは呪歌(ララバイ)をこの駅で放送するつもりだ・・・それだけは何としても阻止しなければならない・・・・・ここは私達が引き受ける、行け!!!」

 

続けて言ったエルザの気迫に負けた2人は即座に返事をし、エリゴールの後を追った。

 

「「あいさーーー!!!」」

 

「最強チーム解散ーーー!?」

 

ルーシィがガーンとなる。

 

「くそ!あの桜髪のハエは俺がやる!」

 

そう言ってカゲヤマは影の中に入った。

 

というわけで鉄の森からはカゲヤマともう1人、レイユールという男が追いかけ飛び出していった。

 

だが、それでもたくさん人が残っている『鉄の森(アイゼンヴァルト)』の面々。

 

「こいつらを片付けたら私達もすぐに後を追うぞ!」

 

「了解!」

 

「え!?戦うの!?」

 

「頑張れー」

 

「頑張れーなのー」

 

構えるアミク達を見て男達が下品に笑う。

 

「女3人で何ができるやら・・・」

 

「オイラ達、完全に眼中にないね」

 

「なの」

 

「オイオイ、三人共別嬪じゃねぇか」

 

「殺すには惜しい。捕まえて売っ払っちまおうぜ!」

 

「いや、その前に妖精脱衣ショーだろ!」

 

その言葉にエルザ達は顔を歪ませる。

 

「下劣な・・・」

 

「私そんなに高くないと思うけど・・・」

 

「目つけるとこそこじゃないわよ」

 

ルーシィがアミクに対して冷静にツッコんだ。

 

「それ以上『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』を侮辱してみろ!貴様らの明日は約束できんぞ・・・」

 

そう言い、『鉄の森(アイゼンヴァルト)』を睨みつけるエルザは片手に魔法剣を出現させ、握る。

 

 

「剣が出てきた!?魔法剣か!」

 

1人の魔導士が驚きの声を上げるが他の魔導士が活を入れる。

 

「怯むな!!珍しくもねぇ!」

 

「そうだ!こっちにだって魔法剣士はいるんだぜぇ!!」

 

「へへっ!その鎧、ひんむいてやらぁ!!」

 

そう叫び、一斉にエルザへと突っ込む『鉄の森(アイゼンヴァルト)』の魔導士達。

だがエルザは臆することなく、逆に魔導士達の懐へと走り込もうとする。

 

「い、いくらエルザでもあの人数じゃ・・・」

 

「まぁ見てなって」

 

アミクがルーシィに言った。

 

「エルザは『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』最強の女なんだよ?これくらいなんでもないよ」

 

とはいえ、とアミクはエルザを見た。

 

「念の為にやっとこう」

 

そう言うと、アミクは急に歌い出した。

 

 

「ーーーー♪」

 

すると光がエルザに纏わりつく。そして

 

「『防御力強歌(アンサンブル)』」

 

エルザの防御力を上げた。

 

「助かる!」

 

「い、今何やったの?」

 

「音楽魔法で歌って付加(エンチャント)しただけ、なの」

 

「そんなことまでできるの!?」

 

万能すぎやしないだろうか。

 

「なんでもできるじゃん!!」

 

「何でもはできないよ。できることだけ」

 

そう話している間にもエルザは相手の懐に入り込んでいた。

 

そしてーーーー

 

「はぁっ!!」

 

緋色の髪を靡かせ、敵を次々と薙ぎ払うエルザの姿。

 

エルザは敵を薙ぎ払う度に武器を変え、剣から槍、槍から斧…斧から双剣と言った様子で、その速さは異常だった。

 

「こ、この女……なんて速さで『換装』するんだァ!?」

「・・・換装?」

 

「魔法剣は別空間にストックされている武器を呼び出すって原理なんだ。その武器を持ち替えることを『換装』って言うんだよ」

 

「ルーシィの星霊と似たものだよ」

 

ルーシィの疑問にハッピーとアミクが答える。

 

「でも、本当にすごいのはここから、なの。通常は武器を換装しながら戦うんだけどエルザは自分の能力を高める魔法の鎧も換装しながら戦うことができる、の」

 

「それが、エルザの魔法、『騎士(ザ・ナイト)』」

 

「すごい・・・」

 

 

余談だが、最初この魔法を聞いた時アミクは「乾燥」の魔法だと勘違いして洗濯物を乾かしに頼みに行ったことは苦い思い出である。互いに引き攣った笑みを浮かべていたのは印象的だった。

 

 

 

「そうだ!思い出した!」

 

そこで、一人の男が唐突に叫んだ。

 

「あの換装の速さ、鎧ごと換装する魔法、そして、あの緋色の髪・・・」

 

そこまで言うと、男は泣きそうな顔になりながら絶叫するように言った。

 

「『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』最強の女魔導士!『妖精女王(ティターニア)』だぁ!!」

 

エルザは周りに剣がたくさん出てくる、『天輪の鎧』へと換装させる。そして

 

「舞え、剣たちよ・・・」

 

と言うと、剣が舞うように回りはじめる。

 

「天輪!『循環の剣(サークル・ソード)』!!」

 

『ぎゃあああああああ!!』

 

メンバーの半数程度がぶった斬りにされた。血が舞い散る。

 

「ふぅ・・・後は、頼む・・・」

 

「頼まれました!」

 

エルザは疲れたように座り込んだ。

 

今度はアミクが前に出る。

 

「・・・ってことはコイツはまさか!!」

 

さっきの男が続ける。

 

「さっきの歌による付加術(エンチャント)!」

 

アミクは大きく息を吸った。

 

「『双竜』の片割れ!『歌姫』、いや『音竜』のアミクだあぁぁぁぁ!!!」

 

「『音竜の咆哮』!」

 

『ぐああああああ!!!』

 

ブレスがさらに半数を削り

 

「からの、『音竜の輪舞曲(ロンド)』!」

 

両腕に音を纏い、振り下ろす。すると衝撃波が撒き散らされた。

 

『ぺぎゃああああああ!!!』

 

そして殆どぶっ飛ばした。

 

「ひ、ヒイイイイイィィィ!!!」

 

ただ一人残ったさっきからエルザ達について説明していた男が逃げ出す。

 

「あ、逃げた」

 

「もしや、エリゴールの下へ逃げるかもしれん・・・ルーシィ、追うんだ!」

 

「え!?なんであたしが・・・」

 

「頼む!」

 

「分かりました〜!」

 

エルザが脅すように睨むとルーシィが急いで駆け出して行った。

 

「ハッピーとマーチもついて行って!」

 

「あいさー!」

 

「なのー!」

 

2匹もルーシィを追いかける。

 

「・・・お前は行かないのか?」

 

「ちょっと野暮用がね・・・」

 

エルザが怪訝そうに聞くと、アミクは男達の方に向かった。

 

「・・・まさか」

 

「エルザはいい顔しないかもしれないけど」

 

アミクは歌い出す。

 

「やっぱりほっとけないよ」

 

ーーーーー♪

 

「『治癒歌(コラール)』」

 

明らかに酷そうな怪我をしている者を優先的に治す。もちろん、ダメージは残す。癒すのは傷だけだ。

 

「音楽を侮辱したのは許せないけど、この人達だって元はちゃんとしたギルドだったんだよ。最初っから闇ギルドだったわけじゃない。だからやり直せるかな、って」

 

「・・・甘すぎると言わざるを得ないが」

 

エルザはふっ、と笑って続けた。

 

「そこがアミクらしいし、お前の美徳だ。私もその精神を買っている」

 

「ふふ、ありがとう」

 

アミクは嬉しそうに笑った。

 

 

 




バルカローラは舟歌。アンサンブルは重奏。ロンドは技名そのままです。


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『死神』エリゴール

学校嫌だああああああ。今回の戦闘ですけど結構グダグダだと思います。


アミク達は先ほど倒れていた軍の方まで戻ってきた。

 

「この先何があるかわからないからあまり魔力は使えないけど・・・『持続治癒歌(ヒム)』」

 

アミクが歌で治癒を施す。

 

「これは即効性は無いけど徐々に回復していくよ。魔力消費も少ないからちょうどいいけど・・・」

 

「十分だ。後は外の人達に避難警告をしよう」

 

アミク達は急いで外に出た。

 

そこには何が起きてるのか気になるのか、野次馬がたくさんいる。

 

「あ、おい!誰か出てきたぞ!」

 

「中で何が起きてるんだ!?」

 

次々と喚き出す人々。そして、エルザ達に気付いた駅員が近づく。

 

「き、君達!一体どんな状況なんだ!?」

 

「おい!ここにいる全員を避難させろ!!」

 

エルザはそんな駅員の言葉を無視して怒鳴る。

 

「はぁ!?いきなり何を・・・」

 

「ちょっと待ってエルザ。私に任せて」

 

アミクはエルザを押し退けると民衆の前に立つ。無視された駅員は涙目だ。

 

すうっと息を吸うとーーーー

 

ーーーー声送(レチタティーヴォ)ーーーーーー

 

『皆さーん!』

 

急に全員の耳元にアミクの声が響いてビクッとなった。あまり大きな声でもないのに鮮明に聞こえる。

 

声送(レチタティーヴォ)』は念話みたいなもので、自分の声を飛ばすことができるのだ。それで相手に直接声を送ることができる。

 

『今、この駅は闇ギルドに占拠されています。それに彼らは沢山の人を殺すことができる魔法を持っています。危ないので直ちに避難してください!繰り返します・・・』

 

三度くらい繰り返してからアミクは魔法を使うのを辞めた。すでにほとんどの人が逃げていて、横にいた駅員もいつの間にかいなくなっていた。

 

「ふぅ」

 

「さすがだな。やはりアミクを連れてきて正解だった。人の心に訴えることができるアミクがいるのは心強いな」

 

「大げさだよ・・・」

 

(でも、本当にここで呪歌(ララバイ)を吹くのかな?仲間もいるのに・・・でも仲間なんて捨て駒に思ってそうだしなぁ・・・)

 

そんな思考をしながら駅の中に戻る・・・・直後。

 

「・・・!今何か聞こえ」

 

ゴォォオオオオオ!!!と音を立てながら駅全体が巨大な竜巻に包まれていた。

 

「・・・遅かった・・・!」

 

これは駅に近づかせないため・・・ではなくおそらく駅から外に出させない為なのだろう。

 

「エルザ!エリゴールの目的はここじゃない!」

 

「何・・・!?」

 

『その小娘の言う通りだ』

 

その時、エリゴール・・・いや、少し透けてるから思念体なのだろう。

 

『俺の本当の狙いはこんなちっぽけなとこじゃねぇ。クローバーの街・・・って言ったら分かるか?』

 

「・・・!マスター達の定例会場!」

 

『そう言うことだ。止められるのなら止めてみな。・・・まぁ無理だろうがな!!この魔風壁を解かなきゃ外には出られないぞ!フハハハハ!!』

 

エリゴールの思念体は高笑いすると消えていった。

 

「くそっ!」

 

エルザは魔風壁に向かって突進する。腕を突っ込んで打ち破ろうとするが、エルザの腕を削り、吹き飛ばしただけで終わった。

 

「ぐっ!!」

 

「エルザ!!」

 

アミクがすぐさま治癒する。

 

「いや・・・いい・・・。こんなことで魔力を使うな・・・」

 

「こんなことってなに!それに魔力の心配はないよ?さっきからこの竜巻の『音』凄いから!いい魔力供給源になってるよ」

 

アミクがパクパクと空中にあるものを掴んで口に持ってくる動作をする。側から見たら薬キメた危ない人にしか見えない。

 

「これ恒常的に食べられそう・・・」

 

「おーい!エルザー、アミクー!!」

 

アミクが陶然としているとグレイが叫びながら走ってくる。

 

「グレイ、無事だったのか」

 

「ああ、でもこれは一体・・・」

 

グレイが魔風壁を見て言った。

 

「えーと、エリゴールの本当の狙いがクローバーの街にいるマスター達かもしれないんだよ」

 

「なんだと!!?」

 

「だから、これを早く解かなくちゃいけないけど・・・クンクン」

 

アミクは耳を澄ましながら匂いを嗅ぐ。

 

「・・・多分あのカゲちゃんは解除魔導士(ディスペラー)だよ。

 

あの人だったらこの魔風壁も解けると思う・・・」

 

「お前の魔法じゃ無理か?」

 

「ゴメン。私の『音』がこの風の轟音と風そのもので散らされちゃう」

 

風が強い時には音が聞こえづらいのと同じである。

 

試しに『音竜の咆哮』を放っても霧散して通用しなかった。

 

「それに私は解除系の『歌』は知らなくて・・・まだまだだね・・・」

 

「気落ちするな。とりあえず、カゲというやつを捕まえればいいのだな」

 

「まずはナツ達と合流しよう。さっき臭い嗅いだし、ナツの声も『聴』こえたから場所はわかってる」

 

アミクの案内に従い、ナツの所に向かうエルザとグレイ。

 

 

そして、着いた時にはナツがカゲヤマを倒していたところだった。

 

「ナツー!」

 

「ん・・・?お、アミク!エルザも!あと・・・誰だっけお前?」

 

「まだ記憶喪失続いてんのかテメェ!」

 

いきなりケンカを始める二人。

 

「ナイスだよナツ!」

 

なんのことかと首をかしげるナツを通り過ぎ、カゲヤマにに近づいた。

 

「おーいカゲちゃーん!聞こえてるー?」

 

アミクがペチペチと頰を叩く。

 

「ん・・・?うわ、なんだお前!」

 

アミクの顔が至近距離にあったことにびっくりしたのかカゲヤマが細い目を見開く。

 

「カゲちゃん!あの魔風壁解いて欲しいんだけど」

 

「ああ、あれか・・・誰がお前の言うことなんか聞くかよバーカ」

 

「お願い!後でアイス奢るから!」

 

『なんでそれで懐柔できると思った!?』

 

アミク以外の全員がツッコむ。

 

「ふざけんなよ!子供じゃねーんだ!とっとと失せろハエども!」

 

「・・・子供と変わらないでしょ?あなた達がやってることは間違ったことを指摘されて逆ギレする子供そのものだよ」

 

「・・・黙れよ・・なんなんだよ、説教のつもりかよ・・・」

 

「そうかもしれない。でも教えてあげなくちゃずっと変わらない。君達は正当なことをしているって思ってるかもしれないけど、あなた達のすることでどれだけの人が悲しんで苦しんだかわかってる・・・?」

 

「し、知ったことかよ!俺らは・・・」

 

アミクはバチーん!といい音を立ててカゲヤマのほっぺをビンタした。っていうかちょっと衝撃波出てカゲヤマが吹っ飛んだ。

 

「ホゲェ!?」

 

「されて嫌なことはしちゃダメだって教わんなかった?あなた達が認められないのは、そういうことばっかりしてるからだよ・・・」

 

アミクは悲しげにカゲヤマを見る。

 

「ずっと嫌われているのは辛いよ・・・。ずっと日陰を歩くのは怖いよ・・・。それはあなたもよく分かるんじゃない・・・?」

 

「・・・」

 

カゲヤマは何も言わなかった。泣きそうな顔をしているところから見るに思い当たる節があるのだろう。

 

「何が間違いで、何が正しいのか、まだ私にもわからないのが多いけど・・・生きてればいろんな体験をする。そこから学んでいけば良いんだよ。ずっと日陰(そこ)にいれば知りたいものも知れないし、

学べるものも学べない、欲しいものも手に入らない・・・だから、これからやり直してあなたが本当にやりたかったこと(・・・・・・・・・・・)をやってみようよ」

 

あまりにもお節介で独善的な言葉。人によっては傲慢だとも感じるだろう。だが、それでも心にストンと落ちるのは彼女が本当にこちらのことを想って言っているからだろう。

 

 

 

「だから、あのオルゴールが罪を重ねる前に魔風壁を解除してくれないかな?」

 

「せめてちゃんと呼んであげろよ!」

 

台無しだった。

 

 

「はぁ・・・なんなんだよホントに・・・」

 

カゲヤマの心は揺れていた。自分がずっと信じてきた正しさが、心の叫びを無視しようとして作った壁が崩れそうになっている。

だが、それは不思議と怖くなーーーー

 

「ーーーー!」

 

突如、アミクがカゲヤマを突き飛ばした。

 

「ーーーんな!?」

 

そして頭を壁にぶつける。そのまま意識が暗くなる。最後に見たのはアミクのわき腹から溢れ出る血と手を突き出した仲間ーーーーカラッカだった。

 

(あいつ、俺を殺そうとーーー!?じゃ、俺は助けられてーーーー)

 

その思考を最後にカゲヤマは意識を失った。

 

 

 

 

「う、あぁ・・・!」

 

アミクは激痛で呻き声をあげた。抉られた脇腹からは血がドクドクと流れている。

 

「アミク!」

 

「貴様!」

 

「テメェ、よくもアミクを!!」

 

みんな怒りの声をあげながらアミクを負傷させたカラッカへと詰め寄る。震えていたカラッカは慌てて壁に潜り込んだ。そういう魔法らしい。

 

どガァンとカラッカがいた壁を殴りつけるが、すでにもぬけの殻だ。

 

「クソ!逃げられた!」

 

「任せて」

 

アミクが脇腹を抑えながら壁に耳を当てる。そしてーーーー

 

「・・・そこ!」

 

一瞬で遠くの壁まで移動するとそこを衝撃波で抉る。そこからカラッカが白目を向きながら倒れてきた。

 

「いたっ・・・」

 

「おい!無茶するな!」

 

アミクが倒れそうになったところをエルザが慌てて支える。

 

「アイツ、自分の仲間をやろうとしてた・・・」

 

ナツが怒りの表情を浮かべながら言う。

 

「これが、こいつらのやり方かよ・・・!」

 

ナツは血が出ているアミクの脇腹を見て震えた。

 

 

「みんな〜!」

 

「あいー!」

 

「なのー!」

 

そこに、ルーシィ達が現れる。

 

「よかったここにいたのね・・・ってアミクどうしたのよその怪我!!」

 

「アミク!?」

 

ルーシィとマーチがアミクに駆け寄る。

 

「ちょ、ちょっとしくじっちゃって・・・」

 

「ひどい・・・誰がこんな・・・」

 

「許せない、の・・・!」

 

ルーシィが悲痛な顔をし、マーチが怒る。

 

「だ、大丈夫だって、今、回復するか、ら」

 

アミクは痛みに耐えながらも『治癒歌(コラール)』を唱える。

 

「これで、傷は塞がる・・・。それより、カゲちゃんは?魔風壁解かないと・・・」

 

「はっ、そうだ!おい、カゲ起きろ!」

 

エルザがカゲヤマの胸元を掴むとグワングワン揺らした。

 

「クソ、起きない!」

 

「そんなに揺らすなよ・・・うぷ」

 

「想像しただけで酔うの!?」

 

ルーシィはアミクを心配そうに見ながらも律儀にツッコミを入れた。

 

「あ、そうだルーシィ!前みたいに星霊界?を通って外に出るとかできねぇのか?」

 

エバルーの屋敷でバルゴに捕まったままだったアミクとナツがバルゴと一緒に召喚された、と言うやつである。

 

「あのね、星霊界は普通人間が入ると息が出来なくて死んじゃうの。それに門は星霊魔導士がいる場所でしか開けられないの。だから出るとしても外に星霊魔導士が一人いなきゃだめなの! だからその提案は無理なの。わかった?」

 

「なんだよ、使えねぇ」

 

「使えないって・・・あと、これは前にも言ったけど人間が星霊界に入ること自体が重大な契約違反だって!あの時はエバルーの鍵だからよかったものを」

 

「うん・・・バルゴ?・・・そうだ、それだよルーシィ!」

 

アミクが急に喜色の声をあげた。

 

「え?なに?」

 

「バルゴだよ!さっき鍵貰ったでしょ?バルゴなら穴掘ってここから脱出できる!」

 

「あ、そっか!」

 

「なるほど、なの」

 

早速ルーシィはバルゴを呼び出す。

 

「我……星霊界との道を繋ぐ者。汝……その呼びかけに応え門をくぐれ! 開け! 処女宮の扉、『バルゴ』!」

 

そして、出てきたのはピンク色の髪をした美少女だった。

 

『は?』

 

バルゴを見たことのある面子はポカンとした。明らかに姿が違う。

 

「お呼びでしょうか、ご主人様」

 

「あ、あれぇ!?」

 

「えーと、ダイエットに成功した?」

 

「すげぇ痩せたなぁ」

 

などと話すアミク達。

 

「あの時はご迷惑おかけしました。・・・皆様の疑問に答えますと、私はご主人様の忠実なる星霊。ご主人様の望む姿にて仕事をさせてもらいます」

 

「な、なるほど・・・・」

 

なんだそれは。とりあえず、無理矢理納得してバルゴに話しかける。

 

「ごめんバルゴ! 契約は後! あんたの力で穴を掘ってこの風の向こう側に行ける!?」

 

「はい、可能です」

 

「じゃあ今すぐお願い!・・・あとご主人様は恥ずかしいから別なのにして」

 

「かしこまりました・・・では、姫」

 

「姫・・・悪くないわね・・・」

 

「悪くないんだ・・・?」

 

アミクは呆れた。ともかくバルゴが地面に穴を開けて外と繋いでくれたので、アミク達は脱出することに成功した。

 

「外にでれたー!」

 

「アミク、もう怪我は大丈夫か?」

 

「うん!『音』も食べまくったし」

 

それにしてもすごい風だ。ツインテールがはためく。

 

「ってアミク!スカート抑えなさいよ!グレイが見てるわよ!」

 

「え?きゃあ!?」

 

「みみみみ、見てねーし!」

 

顔を赤くして言われても説得力がない。

 

「って言うか、なんでそいつ連れてきたのよ!」

 

「え?なんかほっといてもまた殺されるかもしれないし・・・」

 

アミクのそばではカゲヤマが寝かされていた。そのカゲヤマが目を覚ます。

 

「う・・・ここは・・?」

 

「目ぇ覚ましたか?」

 

「ここは・・・魔風壁の外か・・・だけど、今から出発してもエリゴールさんには追いつけないさ・・・僕たちの勝ちだ・・・そうだ、アイツは・・・?」

 

「アミクなら無事だ・・・ってあれ?どこ行きやがった?」

 

「ナツもいない!」

 

いつの間にかアミクとナツ、それに伴ってマーチとハッピーもいない。

 

「多分先に行ったのだろう・・・アミクはさっきまで怪我をしていたのに無茶を・・・!」

 

「とにかく追いかけるぞ!」

 

カゲヤマも連れて魔導四輪車に乗り込む一行。

 

(どうせ・・・追いつけないさ・・・)

 

カゲヤマはどこか寂しげな笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方。クローバーの街に向かっていたエリゴール。

 

「もう少しでクローバーに着くな・・・待ってろよジジィども・・・!」

 

エリゴールは飛びながら呪歌(ララバイ)を取り出した。

 

「これがあれば・・・」

 

にやりと怪しい笑みを浮かべていると。

 

 

 

「MAXスピ―――――――――――ド――――――――!!!!」

 

ハッピーとナツが物凄い勢いでやって来た。

 

「な・・・!」

 

「おおぉらああああ!!」

 

ナツがそのままの勢いでエリゴールを殴りとばす。

 

「ぐ、はぁ!!?」

 

「お、オイラ、もう限界・・・」

 

「サンキューなハッピー。もう休んでろ」

 

「あい・・・」

 

ハッピーはフラフラになりながら降りた。

 

ナツは橋の上からエリゴールを睨む。

 

「ちっ、クソガキが・・・どうやってここに来た!カゲ達はどうしたァ!!」

 

「んな事気にする必要なんかねぇよ・・・おまえは俺に倒されるんだからよ!」

 

「・・・調子に乗るなよ・・・ハエが・・・」

 

 

そして一触即発の状況になったそのとき、

 

 

 

 

 

 

「ア――――ミ――――ク――――キ―――――ック!!!」

 

「ぐおおおおおおっ!!!?」

 

ハッピーと同じようにMAXスピードで飛んできたマーチとアミクが跳び蹴りを喰らわせた。

 

「アミク!?オメェ何で来たんだよ!!」

 

「なんでって、ゴールさん止めるため以外何かある?」「おい小娘、なぜ略す。前半憶えてないのだろう、そうなんだろ!?」

 

「俺一人で十分だ!お前さっきまであんなに血流してただろ!」

 

「ア、アミク・・・もう無理、なの・・・」

 

マーチもフラフラと降りてきてアミクを下した。そしてそのままハッピーの隣に倒れ込む。

 

「心配しないで!こう見えても結構タフなんだから!もう魔力も回復したし!」

 

それに、と続ける。

 

「私達二人で『双竜』でしょ?」

 

「・・・ああ、そうだな!」

 

ナツはやっと二カッと笑うとアミクの隣に立った。

 

「俺とアミクで『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』の『双竜』だ!」

 

「うん!」

 

「む、無理はしないでアミク・・・なの」

 

「ナツゥ~、アミクぅ~、早くそいつ倒しちゃって~」

 

 

「ハエ共がぁ・・・!!」

 

エリゴールは怒りで震えていた。ことごとく自分のことを邪魔するこいつらが憎くてたまらなかった。

 

「後悔させてやるぅっ!」

 

「それはこっちのセリフ!」

 

まずはアミクが跳び上がり、エリゴールに接近。拳に音を纏わせて振りかぶる。

 

「『音竜の響拳』!!」

 

そして、殴りつけようとしたが・・・エリゴールが放った突風によって態勢を崩され、音も霧散してしまう。

 

「うわっ・・・」

 

「もらった!」

 

鎌でアミクを斬りつけようとするが、それをナツが邪魔する。

 

「『火竜の咆哮』!」

 

エリゴールは深追いせずに炎を風で弾きとばした。

 

「ありがとうナツ。でも二人揃って相性が悪いのが相手だなんて・・・」

 

「でも、こっちは二人だ!俺たちなら倒せる!」

 

「そうだね。それは疑ってないよ。骨が折れるなぁとは思うけど。・・・でもこういう時なんて言うんだっけ・・・えーと」

 

「燃えてきたぞ!」

 

「そう、それ」

 

呑気に会話する余裕まである二人。それを見てエリゴールの頬が引きつる。

 

「舐めてんのか・・・!もういい、『暴風波(ストームブリンガー)』!!」

 

エリゴールが指で印のようなものを切り、手から風を発生させる。

 

それはナツの方に向かっていった。

 

「おわあぁ!?」

 

ナツが危なっかしく避ける。だが避けきれず吹き飛ばされた。橋から落ちそうになっていたので手を伸ばしてナツの腕を掴んで引き寄せた。

 

「悪ぃ、助かった!」

 

「これで、おあいこ!」

 

エリゴールは忌々しそうに二人を見た。

 

「ちっ・・・ハエでも二匹もいりゃ鬱陶しい限りだ・・・そろそろ本気でケリをつけてやる!」

 

エリゴールは全身に風を纏い始めた。

 

「『暴風衣(ストームメイル)』!」

 

纏った風は鎧となりエリゴールを守る。

 

「あれちょっと厄介だね・・・」

 

「関係ねェ!突っ込むぞ!」

 

「待ってナツ!その前に・・・」

 

アミクはナツを止めると綺麗な声で歌いだした。

 

「・・・!貴様、『歌姫』か・・・!」

 

「『攻撃力強歌(アリア)』!『防御力強歌(アンサンブル)』!『速度上昇歌(スケルツォ)』!」

 

自分とナツに付加術(エンチャント)を掛ける。

 

「体が軽ぃ!ありがとよ!」

 

付加術士(エンチャンター)か!珍しい者もいたものだ・・・」

 

「いくぞおぉぉぉお!!」

 

ナツがすごい勢いでエリゴールに向かって飛びこんでいく。

 

「『火竜の鉄拳』!!」

 

「無駄だ・・・なにぃ!?」

 

防御力が上がっているので『暴風衣(ストームメイル)』による風のダメージに耐え、上がった攻撃力で『暴風衣(ストームメイル)』を突き抜け、エリゴール本人に攻撃を届かせる。

 

「うぐぅっ!!」

 

「おっしゃあああああ!!燃えてきたあああああ!!『火竜の劍角』!!」

 

全身に炎を纏ったナツがエリゴールに体当たりを仕掛けた。流石にまずいと思ったのか飛んで避ける。

 

「『音竜の譚詩曲(バラード)』!!」

 

「なぁっ!?」

 

だが、その避けた先にアミクが全身に音を纏った状態で突っ込んでくる。これは避けられずまともに喰らうエリゴール。体当たりが当たった瞬間、衝撃波で吹き飛ばされた。二人で良い連携をしている。

しかし、アミクの柔肌にも『暴風衣(ストームメイル)』による傷が多少できていた。

ナツも同様だ。

 

「やっぱり魔法がある程度散らされちゃうなぁ・・・そのせいで思ったよりダメージを与えられてない」

 

相性が悪いのは変わらないのだ。

 

「でも、勝てるぞ!」

 

アミクとナツは力強くエリゴールを見る。その眼力に口から血を流してうろたえるエリゴール。

 

 

 

「おのれ、おのれぇ!!こんなところでやられるものか!!」

 

エリゴールは高く飛びあがると魔力を集めた。

 

「これで貴様らをバラバラにしてやる!!『翠緑迅(エメラ・バラム)』!!」

 

はっきり感じるほどの高い魔力がこもった風の刃が向かってくる。

 

「ナツ――――!!」

 

「アミク――――!!」

 

ハッピーとマーチが叫ぶ。

 

しかし、それを前にしてもアミクにもナツにも恐怖はなかった。隣に心強い相棒がいるだけでどんな困難にも打ち勝てる気がしていた。

 

二人は互いを信じて息を大きく吸い込む。

 

 

「『火竜の――――」

 

 

「『音竜の――――」

 

 

「「咆哮』!!」」

 

 

威力の上がったブレスが混じり合い、『翠緑迅(エメラ・バラム)』とぶつかり合った。互いにせめぎ合ってどちらが押し勝つか分からない。そして次の瞬間。

 

 

ボォウ!!

 

 

ブレスが風の刃を打ち消し、そのままエリゴールの方に向かってゆく。

 

 

「馬鹿なアアアアアアア!!!」

 

エリゴールに直撃した。『暴風衣(ストームメイル)』が剥がれ落ち、ブレス共々霧散した。エリゴールは大分ダメージを負った様で飛ぶ元気もなくなったのか地面で片膝をついている。

 

「こんな、こんな馬鹿なことがあるか・・・この俺が、『死神』エリゴールがこんなガキ共に・・・」

 

「年貢の納め時ってやつだよ、エリゴール(・・・・・)

 

アミクが自分の手首にあるギルドマークを見せつけるように言った。

 

「『妖精の尻尾(私達)』に目を付けられた時点で『鉄の森(アイゼンヴァルト)』は終わってたんだ」

 

「ふざけたことを抜かすなあああああああ!!!」

 

まだ魔力は残ってたのか、エリゴールは手のひらに小さな竜巻を発生させた。

 

「ナツ、決めよう」

 

「おう!久しぶりにやってみっか!」

 

そう言ってナツは右手に、アミクは左手にそれぞれ炎と音を纏った。そして、二人同時に駆けだす。

 

「うおおおおお!!!」

 

「ああああああ!!!」

 

エリゴールが竜巻を投げつけてくるが、ただの苦し紛れだ。あっさり霧散させられる。

 

「や、やめろおおおおお!!!?」

 

エリゴールが叫ぶのもお構いなしに二人は同時に拳を突き出した。

 

火と音が融合する。

 

 

合体魔法(ユニゾンレイド)

 

別々の魔法を一つにして威力を高める魔法。本当に息が合った者同士でなければ発動は難しく、生涯を費やしても習得には至らないこともあるという。

 

しかし、ナツとアミクは息の合ったコンビであり、心が通じ合ってるとも言える。『双竜』の名は伊達じゃないのだ。

 

 

 

「「『火炎音響滅竜拳(かえんおんきょうめつりゅうけん)』!!!」」

 

二人の拳がエリゴールの顔面にめり込み、そのまま振りぬいてぶっとばした。エリゴールは白目を剥いて気絶する。鼻が曲がり、歯も何本か折れていた。

 

 

「私達二人で!」

 

「最強コンビだ!」

 

 

二人でハイタッチする。これは前々から使っている勝利した後の決め台詞である。

 

 

「ナツ―――!!」

 

「アミク――――!!」

 

 

ハッピーとマーチがそれぞれに飛び込んできた。

 

「すごいよー!かっこよかったよ!やっぱり二人が戦うとどんな相手も敵じゃないね!」

 

「『双竜』の力は無限大、なの!」

 

マーチも珍しく興奮して言った。

 

「でもあのぐらいだったらナツ一人でも勝てたと思うよ?」

 

「もちろんだ!」

 

なっはっはっは!!とナツは高笑いした。

 

「ていうか格好つけすぎてオーバーキルだった気もしなくもない・・・」

 

「倒せたからなんでもいい、の」

 

和気あいあいと話していると

 

 

「ナツー!アミクー!ハッピー!マーチー!」

 

ルーシィが呼ぶ声が聞こえたのでそちらを向くとエルザ達が魔導四輪車に乗って来ているところだった。

 

 

 

 




アミク参戦で原作よりも簡単に倒せたエリゴール。やっぱり連携って大事だなァ・・・。
ところで、アミクの説教シーン。アミクが何言いたいのかわかった?僕はよく分からん。
次回で鉄の森と呪歌編は終わりです。

感想待ってます!

アリア・・・詠唱、詠嘆曲。オペラ歌手による独唱の曲。
スケルツォ・・・諧謔曲。3拍子の、速く軽快なメヌエット。
バラード・・・譚詩曲。自由な形式の物語詩的歌曲。
レチタティーヴォ・・・叙唱、朗唱。劇の状況や物語の展開を説明するときに用いられる、話し言葉のような歌。


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ゼレフ書の悪魔

これで鉄の森とララバイは終わりです。幕間とか入れるかは分からないけど近いうちに次話も投稿したいと思います。ガーナ島どうしよ・・・。


「嘘だろ・・・エリゴールさんが負けた・・・・?」

 

カゲヤマは白目を剥くエリゴールを呆然と見ている。

 

「2人共、無事でなによりだ・・・!」

 

「硬―――――!」

 

「痛―――――!」

 

またエルザに抱き締められてゴチンとなる。

 

「はぁ、付加術(エンチャント)3つ分はさすがにきつかったか・・・」

 

アミクがエルザに寄りかかったまま疲れたようにため息をついた。ナツも疲れたのか座り込んでいる。

 

「けっ、こんなの相手に苦戦しやがって、『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』の格が下がるぜ」

 

「苦戦?どこが!?圧勝だよ!?なぁ、ハッピー、マーチ」

 

「あい!割と圧勝でした!」

 

「ナツとアミクの2人だから当然、なの」

 

「さっき結構心配してなかった?」

 

「それは言わない約束、なの・・・」

 

マーチがそっぽを向く。

 

 

「ってかあんた!なんて格好してるのよ!」

 

ルーシィがアミクを自分の体で隠すように立つ。

 

「・・・キャアアアアア!!服がボロボロ!!?」

 

かなり破けていてほとんどブラジャーを着けているだけのような格好だった。こんなにボロボロになったのは

多分『暴風衣(ストームメイル)』に突っ込んだ時だろう。体は耐えられても服が耐えられなかったのだ。

 

「「じー」」

 

「見るな!」

 

グレイとナツがアミクをガン見してきたのでルーシィが2人揃って蹴飛ばした。

 

「いてぇ!!・・・て言うかお前も裸にマフラーって変態みたいだぞ」

 

「お前に言われちゃおしまいだ・・・」

 

ナツも同様のようだった。

 

「ほら、着ろよ」

 

「あ、ありがと」

 

グレイがナチュラルに上着を脱いでアミクに渡してくれた。グレイが上半身裸になったが、いつものことなので全く違和感がなかった。皆も気にしていない。

 

 

 

「おーい、呪歌(ララバイ)持ってきたよー」

 

ハッピーがそこら辺に落ちてるのを拾ったらしい。

 

「なんだよ、よく壊れなかったな。つーか壊してもいいんじゃね?」

 

「ダメだよ!いつも何か壊して困るのはおじいちゃんなんだからね!」

 

「その通りだ。とりあえず、近くに定例会場があるからそこまで持っていってその笛と今回の事件の処分についてマスターの指示を仰ごう」

 

「了解、なの」

 

これでいっけんらくちゃくーーーーーかと思われたが。

 

 

 

 

「ハハハハハッ!!油断したなぁハエどもぉっ!!呪歌(ララバイ)は俺が頂いたぁ!!」

 

「あっ!」

 

カゲヤマが影を伸ばしてハッピーから笛を奪い取り、魔導四輪車に乗って走り去って行く。心がチクリ、となるのを無視して。

 

「ちょっと!アイスじゃ足りなかったの!?」

 

「そういう問題じゃないわ!?」

 

「まずい!急いで追うぞ!」

 

ハッピー達はまだ魔力が回復していないので走って行くしかなかった。

 

 

 

 

 

「お、追いついた・・・・」

 

アミク達はなんとか定例会場の前に居るカゲヤマとマカロフの所まで来た。

 

見るとカゲヤマが笛を吹こうとしている。

 

「いかん!」

 

急いでそれを止めようとするも・・・。

 

「しーっ!今いいところなんだから、黙って見てなさい」

 

オカマ口調の太った体型の男が口に指を当てて言った。

 

「あなたは、『青い天馬(ブルーペガサス)』のマスター!」

 

「ボブさん!?」

 

「えぇ!?この人が!?」

 

エルザとアミクの言葉にルーシィは驚く。

 

「あらー!久しぶりねぇ、エルザちゃん。それにアミクちゃんも」

 

「ど、どうも・・・」

 

「2人共、また綺麗になっちゃって〜」

 

ボブは頰に手を当てながら言った。なんというか個性の強い人だ。

 

「いや、それよりも早く止めなければ!」

 

「まぁ、黙って見てろって」

 

慌ててエルザが止めようとするも、今度は別の男に止められる。サングラスをかけた男だった。

 

「『四つ首の猟犬(クワトロケルベロス)』のマスター!?」

 

「エリゴールさん!」

 

「ゴールドマインだ!『ゴール』しか共通点ねぇじゃねえか!!」

 

自分で黙ってろって言ったくせに、アミクに叫ぶゴールドマイン。幸い、マカロフとカゲヤマは気付いていないらしい。

 

よく見ると他のマスター達も居る。皆、この事態を見守るつもりなのだろう。アミク達も大人しく見ていることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カゲヤマは笛を吹けずにいた。笛を吹こうとするとさっきのアミクの言葉が頭に浮かんでくるのだ。

 

(くそ!消えろ消えろ!吹けば、吹けばいいんだ!それで、全て変わるんだ!)

 

ーーーほんとに?

 

なぜかアミクがそう言った気がした。

 

(お前の言ったことは全て理想論だ!世の中にはどうしようもない奴も居るんだよ・・・!今のままじゃ俺は弱いままでしかいられないんだよ・・・)

 

いくら言い訳しても笛を持つ手が震えて吹けない。

 

(だから、俺は強者になるんだ!強者に変わるんだ!)

 

「ーーーー何も変わらんよ」

 

「ーーーーぇ?」

 

マカロフがカゲヤマの目をまっすぐ見て話し出した。

 

「弱い人間はいつまでたっても弱いまま。しかし弱さの全てが悪ではない。元々人間なんて弱い生き物じゃ。1人じゃ不安だからギルドがある、仲間が居る。強く生きる為に寄り添いあって歩いていく。不器用な者は人より多くの壁にぶち当たるし、遠回りするやもしれん。しかし、明日を信じて踏み出せばおのずと力が湧いて来る、強く生きようと笑っていける。・・・そんな笛に頼らずともな」

 

そして、笑った。

 

(ーーーーーあ)

 

もう限界だった。アミクの言葉によってヒビが入っていた心の壁が、マカロフの言葉によって完全に崩壊した。

 

(ーーーーそうだーー俺はただ、皆とーーー『鉄の森(アイゼンヴァルト)』で楽しく笑っていたかっただけだったんだ・・・!)

 

最初はギルドの居心地のいい雰囲気を味わっていたかったのだ。それがいつの間にか色あせ、暗くなり、淀んだ空気になった。皆、綺麗に笑わなくなった。本心で笑えなくなった。

ずっと正規ギルドが羨ましかった。あんなに輝く場所に居るのが自分だったら良かったのに、と思ってた。

 

「・・・参り・・・ました・・・!」

 

カゲヤマの目から涙がポタポタと落ちる。

 

(明日を信じて・・・やり直してみるか・・・)

 

久しぶりに本心で笑った気がした。

 

 

 

「「「マスター!!」」」

 

「じっちゃん!」

 

「おじいちゃん!」

 

「ぬおっ!お主ら、なぜ此処に!?」

 

それをみるや否やアミク達が飛び出す。マカロフがびっくりしていた。

 

「さすがです!今の言葉、胸が熱くなりました!」

 

「硬ーーーーー!?」

 

エルザがマカロフの頭を鎧に打ち付ける。やめてやれ。

 

「じっちゃんすげぇな!」

 

「そう思うのなら頭を叩くのはやめぇい!!」

 

「さすがだよ、敵わないなぁ・・・」

 

ナツがマカロフの頭をペチペチしている中、アミクもどこか悔しそうに言った。そしてブツブツと「やっぱりアイスじゃダメだったのかなぁ」と呟いている。いい加減そこから離れろ。

 

「何を言う。お前があそこまで言ってくれたから躊躇してくれたのだ。心に響かせる言葉ほど効果的なものはないからな」

 

エルザが涙目でこちらを見ているカゲヤマを見ながら言った。

 

そんなカゲヤマにアミクが近づく。

 

「な、なんだよ・・・?」

 

アミクはカゲヤマの前に立つと・・・。

 

「偉い偉い。よく踏み止まりました」

 

そう言ってカゲヤマの頭を撫でた。

 

「お、おい!いつまで子供扱いすんだよ!」

 

カゲヤマが顔を赤くして言うが、手を振り払わないところを見るに、嫌ではないらしい。いいのか、それで。お前より年下だぞ。

 

「出たな人たらし」

 

「何やってんだか」

 

「そういえば異名で『聖母』というものもあったな・・・」

 

エルザ達が呆れる。

 

「なんか、カゲちゃんって前に友達になった子供に似てるんだよね。素直じゃないところとか、ブー垂れて意地悪するところとか」

 

アミクにとっては闇ギルドも子供に見えるらしかった。ある意味大物だ。

 

「やってる規模ちげーだろそれ」

 

グレイがやれやれと言いたげに首を振る。妙に様になってて腹立つ。

 

 

「とにかく、今度こそ一件落着、なの」

 

「あい!」

 

マーチとハッピーが頷きあう。だが・・・・

 

 

 

 

ララバイにある髑髏の三つ目が怪しく光る。

 

『カカカ・・・どいつもこいつも根性のねぇ魔導士どもだ』

 

「笛が・・・喋った!?」

 

『もう我慢できん、ワシが自ら食らってやろう・・・貴様らの魂をなぁ!!』

 

 

急に辺りが黒い霧に覆われ、それが晴れるとーーーー

 

 

ララバイが巨大な怪物になっていた。

 

 

「デカーーーーーーッ!!!?」

 

「か、怪物だー!」

 

「こ、これは・・・!?」

 

「あらら、大変」

 

「・・・『ゼレフ書の悪魔』だ!本性を現しやがったな・・・」

 

ボブが顔を険しくし、ゴールドマインも苦々しげに言う。

 

「一体どうなってるの・・・?」

 

ルーシィが戸惑いの声をあげる。

 

「ララバイとはつまり、あの怪物そのものの事を言うのさ・・・ララバイ・・・『生きた魔法』、それが『ゼレフ書の悪魔』さ」

 

ゴールドマインが答える。

 

「ゼレフだと!?確か大昔の・・・」

 

「黒魔導士ゼレフ、魔法界歴史上最も凶悪だった魔導士、って言われてる・・・だったよね?」

 

「ええ。でもその何百前の負の遺産がこんな時代に現れるなんて・・・」

 

グレイとアミクの言葉にボブが冷や汗を流しながら言った。

 

 

『さぁて、どの魂から頂こうか・・・』

 

ララバイが顔を近付けた。そのララバイの前にアミクが立つ。

 

『なんだ小娘?貴様が最初に食われたいのか?』

 

ララバイが見下したように笑うが、アミクはララバイを睨みつけたまま言い放つ。

 

「・・・お前みたいな奴は音楽の、いや芸術の敵だ。だからここで滅ぼす」

 

急に人が変わったようになるアミク。すぐに、いつものアミクに戻ったが、ララバイは目を少しだけ見開いていた。

 

『ほう・・・!面白い!滅ぼすとな!やれるものならやってみるがいい!見せしめだ、まずはお前から食べてやる!』

 

ララバイは面白そうに言うと息を吸い込み始めた。周りの命あるもの、花や木などの植物が枯れてゆく。

 

「まずいぞ!『呪歌(ララバイ)』を発動させるつもりだ!」

 

「ワシらも巻き込まれるぞ!?」

 

「おい、あの子死ぬぞ!?」

 

他のギルドマスター達が慌てた。だが、マカロフは余裕そうににやり、と笑う。

 

そして

 

 

おぞましい音色が流れ始めた。ララバイから流れるその旋律は木や花を枯れ散らてゆく。そしてそれがアミクに届きーーーーー

 

 

パクッ

 

 

『は?』

 

シュルルルルルルル!

 

 

少女が何か咥える動作をしたかと思うと一気に吸い込み始めた。ララバイは気付く。流れていた死の音色が一点に収束されていることに。

 

「ーーーーーぱふ、うぅええ、パンチ強烈すぎぃ、ムカムカする味だなぁ・・・」

 

アミクが口を手で扇ぎながら言った。

 

『な、なななななな!!なにぃーーーーーーーー!!!?』

 

ララバイはめっちゃびっくりした。そりゃあもう人生で一番びっくりした。

 

『ま、まさか!!食べたのか!!『呪歌(ララバイ)』を!!?』

 

 

 

 

 

「な、なんだ?なにも聞こえないぞ?」

 

「どうなってるんだ?」

 

一方、アミクが音色を全て食べたためにマスター達には音が届かず、皆無事だった。

 

「あの子がやったのか!?」

 

「一体なにをしたんだ!」

 

「なっはっはっは!!すげぇだろアミクは!」

 

なぜかナツが得意げに笑う。

 

「アミクにしたら聞いたら死ぬって言われる『呪歌(ララバイ)』も食べ物なんだね」

 

「音の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)、様々、なの」

 

ハッピーとマーチも続いて言った。

 

「よし、私達も行くぞ!」

 

「「おう!」」

 

エルザとグレイ、そしてナツが動き出す。

 

「換装!」

 

まずはエルザが黒い翼の生えた鎧を纏い、ララバイに近づく。

 

「はぁっ!」

 

『ぬおっ!?』

 

エルザに足を斬られ、ララバイは体制を崩す。

 

「おお、あれは『黒羽の鎧』!」

 

「対象の攻撃力を増大させるあの!」

 

「それになんだあの換装のスピードは!?」

 

「あれが『妖精女王(ティターニア)』、エルザ・スカーレットの『騎士(ザ・ナイト)』か!」

 

「まだまだ! 火竜の・・・」

 

倒れたララバイの顔に飛びかかりながら右手に炎を纏うナツ。

 

「鉄拳!」

 

『うおっ!?』

 

ナツに殴られララバイが後退する。

 

「拳であの巨体を!?」

 

「本当に魔導士か!?」

 

『調子に・・・乗るな!!』

 

ララバイの口に光が集まり、ビームがナツに向かって放たれる。

 

『消えろ!』

 

「おっと!」

 

咄嗟に避けたが、ビームはマスター達の方に向かった。

 

「こっちに来る!?」

 

そんな中、ギルドマスターやルーシィ達の前にグレイが立つ。光線が爆ぜ、砂埃が舞う。砂埃が晴れるとそこには無傷のギルドマスター達とルーシィ達、そして氷の盾を造形し防いだグレイの姿があった。

 

「アイスメイク・・・『(シールド)』!」

 

「おお! 氷の造形魔道士か!?」

 

「造形魔法?」

 

「魔力に形を与える魔法、なの。・・・そして、形を奪う魔法でもある、の」

 

マーチがルーシィに説明した。

 

 

「味は凄かったけど・・・食べたら力が湧いてきた!」

 

アミクがララバイの腹に接近した。そして思いっきり蹴飛ばす。

 

「『音竜の旋律』!!」

 

『グハァッ!!』

 

威力の上がった蹴りを受けたララバイが大きく吹っ飛んだ。

 

「蹴り飛ばしたじゃと!?」

 

「あの身体のどこにそんな力が!!?」

 

「待て、もしかしてあの少年と少女・・・『双竜』か!?」

 

「あの2人組の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)!?」

 

さっきから驚きの連続であるマスター達。

 

 

『貴様らぁ・・・次から次へと・・・おのれええええええええ!!!』

 

ララバイが怒り狂った。まさか、人間達にこんないいようにやられるとは思ってなかったのだろう。

 

「はぁっ!!

 

『グアアアア!!!』

 

エルザがララバイの手を切り落とす。

 

「今だ、お前達!」

 

「火竜の・・・」

 

「アイスメイク・・・」

 

「音竜の・・・」

 

エルザの声を合図に三人がララバイに飛びかかった。

 

「煌炎!!」

 

槍騎士(ランス)!!」

 

交声曲(カンタータ)!!」

 

ナツは両手の炎を合わせて攻撃し、グレイは氷の槍を当てて抉り、アミクもナツ同様、両手の音を合わせてララバイに叩きつける。

 

『ば、か、なああああああああ!!!』

 

すると巨大な衝撃波が発生し、ララバイを跡形もなく消しとばした。

 

 

 

それを見届けるとマカロフが高笑いをあげる。

 

「かーかっかっかっ!!どーじゃ!!凄いじゃろー!!」

 

「凄い・・・これが、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の最強チーム・・・!」

 

ルーシィも声を出す。

 

「まさかゼレフ書の悪魔をこうもあっさりとは!」

 

「凄いぞ、妖精の尻尾(フェアリーテイル)!」

 

他のマスター達も褒め称えた。

 

「・・・俺達はとんでもないものにケンカ売ってたんだな・・・」

 

カゲヤマも呆然とアミク達を見た。

 

「見たかこれが俺達『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』だぁ!だーはっはっは!!」

 

ナツも高笑いを上げた。

 

「いやあ、妖精の尻尾(フェアリーテイル)には借りができちまったなぁ・・・」

 

「なんのなんのー! ふっひゃひゃひゃひゃ・・・ひ・・・は!?」

 

「まだ味が残ってる気がする・・・あれ?」

 

 

マカロフが急に固まったのでアミク達もそちらを見ると・・・

 

『あ』

 

そこにはアミク達の攻撃によって瓦礫と化した定例会場があった。

 

「ぬわあああっ! 定例会の会場が粉々に!?」

 

マカロフはショックのあまり呆然とした。

 

他のマスター達はゆっくりとこちらを向いた。目が笑っていない。

 

『捕まえろー!』

 

「わああああん!!ごめんなさあああああい!!!」

 

「よーし、任しとけ!」

 

「おめぇも捕まる側だ!!」

 

「マスター、申し訳ありません・・・・」

 

「いいんじゃ、もう呼ばれないだろうし・・・」

 

「もー!なんでこうなるのーーーー!!?」

 

「あいー!」「なのー!」

 

皆で逃げる中、アミクは泣きながら先頭を走っていった。

 

 

「ハハッ・・・やっぱり楽しそうだなぁ、妖精の尻尾(フェアリーテイル)・・・」

 

カゲヤマはそんなアミク達を見て笑った。その顔はとても晴れやかなものだった。

 

 




はい、鉄の森とララバイ終わりー。今回のは特にやりたかったシーンです。
次回からはガーナ島編が始まるけど主人公どう動かそう・・・?とりあえずトビーとぶつけてみる?

カンタータ・・・交声曲。伴奏つきの声楽曲。


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ガルナ島の変奏曲 ナツvsエルザ

はい、大学の授業めんどくさい。
今回はジークさん出ます。かっこいいよねジーク!



「おい!お前も滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)なんだってな!」

 

桜髪で白いマフラーをした少年が私に聞いてきた。滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)というものは珍しいらしくてマスターが紹介した時にはかなり驚かれた。

 

「そうだけど・・・」

 

「実はね、ナツも滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)なんだ!」

 

ナツという少年の隣に居た銀髪の少女が言う。ということは、同族?同族って言いかたもアレだけど・・・。

 

「あ、私はリサーナ!よろしくね!」

 

「あ、うん・・・」

 

明るい感じの美少女だ。この人とならすぐに仲良くなれそうな気がする。

 

「オイラ、ハッピー!ナツの相棒なのです!」

 

「・・・猫が喋ったーーー!?」

 

「おめぇのもそうじゃねぇか!?」

 

ナツがマーチを見ながらツッコんだ。あ、そうだった。

 

「マ、マーチって言うんだ!お、オイラはネコマンダーなんだよ!」

 

「なにそれ凄そう!なの」

 

「へへーん、そうでしょ?」

 

ハッピーとかいうマーチと同族?がマーチにアプローチを仕掛けている。マーチって猫の中でも可愛いらしいからね。

おだてられたハッピーが気を良くしてふんぞり返ってる。

 

「で、だ!オレと勝負しろ!」

 

「え?」

 

「あー出た。ナツの闘いたがり」

 

なんでも自分と同じ魔法を使う人を見るの初めてらしい。

 

だから、自分がどれくらい強いのか計ってみたいだとか。

 

正直な話私も興味がある。私の力がどの程度通用するのか。

 

1回やってみても損はないだろう。

 

 

 

 

 

「・・・あー、懐かしい夢見たなー」

 

あれはアミクが来たばかりの時のことだったはず。あの時は確か引き分けだったはずだ。

それからなんだかんだ気が合って一緒に仕事行くことが多くなっていつの間にか『双竜』なんて呼ばれるようになって・・・。

 

 

「・・・リサーナ」

 

今更なにを考えても無駄なことは分かっているが考えずにはいられない。

 

もし自分があの時一緒に行っていたらリサーナは助かっていたのだろうか。ナツだけでも行かせるべきだったか。そもそも仕事に行かせなければよかったか。

 

「ほんと今更だけどね・・・」

 

アミクは頭を振って思考を切り替えた。

 

「そういえば今日はナツとエルザの決闘だっけ・・・」

 

だったらルーシィも起こして一緒に行こう、と思ったところでルーシィの部屋の方向から『音』が聞こえてきた。

 

「・・・誰かいるねありゃ」

 

アミクは隣でスヤスヤ寝ているマーチを見た。寝言で「うー・・・ん、ハッピー、もう食べられない、の」と呟いている。

 

「よく寝るなぁ・・・起こさないように行くか」

 

アミクは忍び足で部屋から出て行った。

 

 

 

 

こっそりルーシィの部屋を開けると、グレイが居た。

 

「うおっ」

 

グレイはちょっとビクッとなり、平静を取り繕って「よぉっ」と手を上げる。ベッドではルーシィがスヤスヤと寝ていた。

 

「・・・夜這い?」

 

「違ぇよ!!」

 

グレイがズッコけた。

 

「う、うぅん」

 

グレイの声が大きかったのかルーシィが呻き声を上げる。

 

「女の子が寝ているのを血走った目で見ているのはほんとにやばいよ?しかも服まで脱いで」

 

「見てねぇよ!ってうおっ!いつの間に!?」

 

これだけ見ると寝ている美少女を襲う一歩手前の状況だ。

 

「とうとうグレイの変態度合いも行くところまで行っちゃったか・・・」

 

「しょ、証拠はあるのか!」

 

やっちゃった人のセリフである。

 

「此処に生き証人が居るさ!」

 

「くっ、だったらお前を消せば、この事実を知るものは俺だけだ!恨むんだったらこの部屋に入ってしまったテメェを恨むんだな!」

 

「キャー助けてー、露出魔に口封じで殺されるー」

 

「特大サービスだ!お前を殺したら氷の中に閉じ込めて死体を永久保存してやる!まさに氷の棺桶(フリージング・コフィン)だな!」

 

 

「・・・ってあたしの部屋―――――――!!!」

 

 

 

 

「起きたら安っぽいサスペンスの夫婦漫才を見せられた件。どう思う?」

 

「ごめんなさい」

 

「まぁ、いいじゃねぇか。あと夫婦ってなんだよ!」

 

アミクは素直に謝ったが、グレイはあっけからんとしている。

 

「っていうかアミクはともかく、グレイは何しに来たのよ」

 

「ほら、今日はアレだろ」

 

「アレ?」

 

「ナツとエルザの決闘だよ」

 

どうやらグレイも同じ理由で呼びに来たらしい。

 

「じゃあ、なんで起こさないでルーシィを飢えた目で見てたの?」

 

「だから見てねェって!おいルーシィも引くな。俺はそんな野獣みてぇなやつじゃねえ。

え?今パンツだけ履いてる変態に言われても説得力無いって?

わお!?またかよ!」

 

いそいそと服を着ているグレイを尻目にルーシィが言う。

 

「あれって本気だったの?大丈夫なのかしら・・・?」

 

「まぁ、ほんとに危なくなったらおじいちゃんが止めるから」

 

「それにもう何度もしてるから見極めを知ってる、の」

 

「あ、マーチおはよう」

 

いつの間に起きてたのかマーチがふわふわとやって来た。

 

「よっぽどのことがない限り大丈夫だって。それより早く行こ?そろそろ始まっちゃう」

 

「うし、ナツが負けたら思いっきり笑ってやるか!」

 

「なんでもいいけどパンツは置いて行かないでね」

 

「あれぇ――――!?」

 

 

 

 

 

 

 

ギルドの前にはたくさんの人が集まっている。

 

「ちょっと!本気なの!?2人共!」

 

やはりまだ心配なのかルーシィが声を上げる。

 

その横に立つ大男。エルフマン。

 

「本気も本気!!本気でなければ漢ではない!!!」

 

「エルザは女だけどね」

 

即座にツッコむアミクに苦笑いするミラ。

 

「だって最強チームの2人が激突したら・・・」

 

「最強チーム?なんだそりゃ」

 

グレイの疑問にルーシィが捲し立てた。

 

「アンタとナツ、エルザにアミク!妖精の尻尾(フェアリーテイル)のトップ4でしょ!?」

 

「はぁ?くだらねぇ、誰がそんなバカみたいな事言ったんだよ」

 

やれやれとグレイは首を振るが、それを聞いたミラは手で顔を覆って泣き出した。

 

「うぇーん」

 

「あ!ミラちゃんだったんだ!?ご、ごめん!」

 

「あ、泣かした」

 

「あーあ、泣かしちゃた。ルーシィ襲おうとした上にミラさんまで泣かしちゃってさー、最低だね」

 

「お、おい!!それはちが・・・」

 

アミクの余計な言葉で、グレイを見る周りの人々の視線が冷たくなった。グレイの氷の魔法よりも冷たいかもしれない。

 

「サイテー」

 

「それだけはしないと思ってたのに・・・」

 

「やっぱりグレイも男だったんだな」

 

「漢じゃねぇ!!」

 

「ま、待て、違う、誤解だぁぁぁぁ!!!」

 

そこにロキが現れてポンとグレイの肩に手を置いた。

 

 

 

 

 

「女の子をもっと喜ばせてあげるテクニック知ってるんだけど教えてあげようか?」

 

「やかましいわ!!」

 

グレイ!涙目!

 

 

 

 

 

「・・・誰もグレイを信じてくれないだなんて!可哀想なグレイ・・・」

 

「いや、アンタのせいだから!!?」

 

 

気の毒そうに目をうるうるとさせるアミクに思いっきりツッコんだ。

 

「あれー?グレイ、どうしたのー?」

 

そこにハッピーがやって来て、蹲っているグレイを見て聞いてきた。

 

「彼は今、世の中の理不尽さを噛みしめているところだからそっとしておいてあげて?」

 

「そっかー、分かったよー」

 

「この子もたまに容赦ないわね・・・」

 

 

 

もちろん皆本気で信じてるわけではないです、多分。

 

 

 

 

話が脱線したがアミク達が最強チームだ、という話だった。

 

「確かにナツやグレイの漢気は認めるが・・・『最強』と言われると黙っておけねぇな・・・

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)にはまだまだ強者が大勢居るんだ・・・俺とかな!」

 

エルフマンがドヤ顔で言うが皆ガン無視した。

 

「最強の女って言ったらやっぱりエルザだよね」

 

アミクが言う。

 

「最強の男と言ったら・・・ミストガンとかラクサスとか・・・あとはあのおっさんだな」

 

立ち直ったグレイが続ける。

 

「まぁ、俺もその中に入るつもりだけどな!」

 

「たしかにグレイとナツならいつか追いつきそうだけどね」

 

この2人はさっきあげた人達を除くとギルド内でもトップクラスなのだ。

 

「それを言ったら、お前だってエルザを除いたら最強だろ?」

 

「ええー」

 

「私はただ、アミク達の相性がいいと思っただけよ?だからチームとしてなら最強だと思って」

 

泣きやんだミラが笑みを見せる。

 

「・・・ナツとグレイの相性がいい?」

 

普段の様子を見ると相性最悪のように見えるが。まぁ、ケンカするほど仲がいいということなんだろう、とアミクは納得した。

 

 

そのように話していると

 

 

「おい、そろそろ始まるみたいだぞ!」

 

グレイの言葉で皆がエルザとナツの方を向いた。

 

 

エルザとナツは互いに向き合っている。

 

 

「なんだか今回の決闘は面白いことになりそうだね」

 

「そうか?俺はエルザの圧勝で終わると思うがな」

 

期待した目で言うアミクにそう答えるグレイ。

 

 

 

 

「こうしてお前と魔法をぶつけ合うのは何年ぶりだろうか・・・」

 

目の前で構えて立つナツを見て嬉しそうに口角をクイッと上げ笑っているエルザ。

 

 

「あの時はガキだった・・・けど今は違うぞ!!エルザ!今日こそお前に勝つ!!!」

 

目をギンギンに輝かせ、闘志を燃やすナツ。

 

 

 

「いいだろう、私も本気でやらせてもらうぞ。

アミクともやっていなかったから久しぶりに自分の力を試したいと思っていたところだしな・・・」

 

 

そう言い、エルザは『炎帝の鎧』に換装する。

 

 

「全てをぶつけて来い!!ナツ!!」

 

 

「炎帝の鎧!?耐火能力の鎧だよ!」

 

「あれじゃナツの炎が半減されちゃうよ!」

 

「エルザが本気(ガチ)だぞ!」

 

 

「そりゃ本気すぎるぜエルザ!!」

 

 

「『炎帝の鎧』か・・・。じゃあ遠慮なく本気出せるってわけだよな。燃えてきたぞぉ!!」

 

何気にアミクはナツのあのセリフが好きだったりする。

 

 

ちなみにハッピーが賭けの対象をナツからエルザに変えていたことでルーシィから「薄情者!」と言われていた。

 

「では、始めぇ!!」

 

マカロフの号令が鳴る。

 

最初に動き出したのはやはりというかナツだった。

 

 

炎を纏った拳をエルザに繰り出すがそれを紙一重でかわすエルザ。エルザもお返しとばかりに刃をナツに向けて突き出すが、ナツもハラリと避けた。

 

そんな感じで一進一退の状況ができていた。

 

 

「凄い!今までで一番闘いになってる!ねぇグレイ凄いよね!?」

 

「あぁ、分かったから揺らすな!」

 

アミクが興奮してグレイをゆっさゆっさと揺らす。

 

 

「ヘヘ、やっぱつえぇなぁ・・・もっと燃えてきたァ!」

 

 

「流石だな・・・来い」

 

 

決闘がヒートアップし、観客の興奮のボルテージが上がってきた。

 

 

 

その時

 

 

 

 

パアァン!

 

 

「そこまで」

 

そんな音と声がしてアミクの耳はピク、と反応する。皆もしぃん、となりエルザとナツも決闘を中断していた。

 

音を鳴らした方を見ると

 

 

(あれは・・・評議員の・・・)

 

 

カエル。そうとしか言いようのない者が居た。

 

「全員動くな。私は評議員の使者である」

 

そのカエルの姿をした評議員の使者が中心に移動しながら言う。

 

「ひょ、評議員!?」

 

「使者だって!?」

 

「なんでこんな所に!?」

 

「・・・あ、あれケロワンちゃんじゃん」

 

「知ってんのかよ!?」

 

「前にちょっと、ね・・・」

 

ちなみにケロワンちゃんとはアミクが勝ってにそう呼んでるだけで本名ではない。

 

その評議員の使者がこっちを向く。とりあえず会釈をしたが、片眉をピクリ、と上げられただけで特に反応を返したりはしなかった。

特にこっちと関わるつもりはないらしい。

 

 

「先日の鉄の森のテロ事件において、器物損害罪他11件の罪において・・・エルザ・スカーレットを逮捕する」

 

「え?」

 

『な、なんだとぉおおおおおっ!?』

 

 

 

 

評議員に逮捕され連れて行かれたエルザ。ギルド内は先ほどの熱気が嘘のように静まり返っていた―――――

 

 

1人を除いて。

 

 

 

「出せぇー!此処から出しやがれ――――!!」

 

 

 

ナツが小さなトカゲの姿にされコップの中に閉じ込められていた。隙あらばエルザを連れ戻そうとするのでこのような処置をしたのだ。

 

 

「出したら暴れるでしょ?」

 

「暴れねえよ!つか元に戻せよ!」

 

「だー!うっせぇなくそ炎!!少しは黙ってられねぇのか!?」

 

グレイが怒鳴るもナツは暴れるばかりだった。

 

 

「・・・今回ばかりは相手が評議員じゃ手の打ちようがねぇ」

 

 

「そんなの関係ねぇ!間違ってるのはあいつらだろ!?エルザはなんも悪い事してねぇじゃねぇか!」

 

「白いモンでも評議員が黒と言えば黒になるんだ。ウチらの言い分なんて聞くもんか」

 

 

「しっかしなぁ・・・今まで散々やってきた事が何故今回に限って?」

 

 

「あぁ・・・理解に苦しむね」

 

「絶対、何か裏があるんだわ・・・。証言をしに行きましょ!」

 

 

 

「まぁ待て」

 

扉に向かおうとしたルーシィをマカロフは止めた。

 

「これは不当逮捕よ!判決が出てからじゃ間に合わないっ!」

 

「今からではどれだけ急いでも判決には間に合わん」

 

「でもっ・・・」

 

「だせぇー!早くだせぇー!」

 

ナツが未だに叫んでいる。

 

 

「――――ほんとに出してもいいのか?」

 

マカロフが聞いた。するとピタリ、と叫んでいたナツが止まる。

 

「どうした?急に元気がなくなったな?」

 

マカロフが意地悪そうにそう言うが、ナツは気まずげに頭を掻くだけだった。

 

「ほれ」

 

マカロフがナツに掛けていた魔法を解く。すると――――

 

「マカオ!?」

 

ナツだと思われていたトカゲはマカオだったのだ。

 

『えええええええええ!!!?』

 

「す、すまねぇ・・・ナツには借りがあってよ・・・」

 

マカオは頭をかきながらギルドメンバーに言う。

 

 

「・・・じゃあ、本物のナツは・・・?」

 

 

「お、おい・・・」

 

 

グレイが何かに気付いたかのように言った。

 

 

「アミクもさっきから見当たらないんだが・・・」

 

『まさかっ!!』

 

ギルドメンバーのまさかの人物に驚きを隠せないでいた。

 

それをマカロフが黙らせる。

 

 

「全員、黙っておれ。静かに結果を待てば良い」

 

 

 

 

 

 

 

 

評議会の裁判所にて。エルザは評議員が集まる中、真ん中に立たされていた。

 

 

「被告人、エルザ・スカーレットよ。そなたは・・・」

 

評議員の議長がそこまで言った時、突然ドアが破壊される。

 

 

「うおおおおおお!!!」

 

 

そして裁判所内に2人の人物が入って来る。議員たちは唖然としていた。

 

「本物のエルザはここだああああああ!!!」

 

その人物とはナツと、鎧を着て、緋色のウィッグを付けたアミクだった。

 

「な、なんでこんなことに・・・」

 

アミクはこうなった理由を思い出していた。

 

 

 

 

「なんでエルザが・・・」

 

アミクは1人で外に出ていた。今ギルドに入っても気まずいだけな気がしたからだ。

 

「大体定例会場壊したのは私とナツとグレイなんだけど・・・」

 

「おい!アミク!」

 

そこにマカオから逃がしてもらったナツがやって来る。そしてガバッとアミクの肩を掴んだ。顔が近い。

 

「ナツ!?なんでこんな所に・・・」

 

「んなことはどうだっていい!それよりおめぇは評議会へ行く道知ってるんだよな!?さっき来た奴知ってるってことはさ!」

 

「え、そ、そうだけど。なんでそんなこと・・・ってまさか!」

 

「案内してくれよ!おまえだってこんなの納得できねぇだろ!俺達でエルザを助けるんだ!」

 

「それは・・・でも、どうやって助けるの?」

 

アミクが聞くとナツは二ィと口を歪めた。その邪悪な笑顔に物凄く嫌な予感がする。

 

「ちゃんと考えてあるから聞けよ、まずは・・・」

 

 

 

 

(流されて来た私も私だけどさぁ・・・)

 

防具商店でエルザがいつも着てる鎧に似た鎧を購入し、ナツがどっからか持ってきたウィッグを付け、アミクの案内で此処に来て今に至る、と。

 

 

(おい、とりあえずエルザの声出せよ)

 

(もう、どうなっても知らないから!)

 

エルザがぽかんとした表情でこちらを凝視してくるが無視無視。

 

 

「ん”ん”、私が!エルザ・スカーレットだ!そこにいるのは偽物だ!まんまと騙されたな!フハハハハハハ!!」

 

エルザの声でエルザが滅多に言わないであろうセリフを口にする。

 

だが、腐っても評議会。そう簡単に騙せるはずは――――

 

 

「なんだと!替え玉か!」

 

「だが、本物がこうもノコノコと現れるとは、馬鹿め!」

 

馬鹿はおまえだと言いたい。

 

「なーはっはっは!!本物のエルザを捕まえたければ、俺達を倒して・・・」

 

「や、やめないか・・・!」

 

「おい、エルザ・・・の偽物!安心しろ俺達が全員ぶっ倒して―――」

 

「やめんか!」

 

「ぐえ!!」

 

エルザはナツの頭を思いっきり殴り、気絶させた。

 

「殴るぞ!?」

 

「もう殴ってるよ!?」

 

アミクが思わず素の声でツッコんだ。

 

「・・・アミク、お前もなにやってるんだ・・・」

 

「う”っ」

 

エルザがすぐさまアミクの頭からウィッグを取り外す。するといつもの綺麗な緑色が現れる。

 

 

「!・・・アミク・ミュージオン!?」

 

評議員の1人が驚いたように叫んだ。

 

「ど、どーも・・・すみません、色々と・・・」

 

まず、一言謝ってから、ですが、と続ける。

 

「これだけは言わせて下さい。エルザは無実です。私達はこれが不当な逮捕であると主張します」

 

「・・・3人を牢屋へ」

 

議長がアミクの言葉には答えずそう言うと、アミクは悔しげに唇を噛んだ。

 

 

それを面白そうに青髪の青年が見ていた。

 

 

 

 

 

 

牢屋の中にはアミクとエルザ、ナツの3人が居た。

 

「全く、お前達にはあきれて言葉もない。今回のこれは形式のみの筈だったんだ」

 

「・・・形式?」

 

アミクが首を傾けるとエルザは2人に事情を説明する。

 

「形だけの逮捕だ。本来ギルドを管理するのは評議会の役目だ。だが今回は私達が解決してしまった。

 

しかし、それでは面子が立たないから私を逮捕して保とう・・・ということだったのだ」

 

 

つまり、と続ける。

 

 

「今回のことは罪にはならない。だが、魔法界全体の秩序を守るため評議会としても取り締まる姿勢を見せなければならない。分かったか?」

 

「なるほど・・・」

 

「あ、あぁ・・・」

 

ここでエルザははぁ、とため息をついた。

 

「本来なら今日中に帰れたんだ、お前達が暴れなければな」

 

「うぐっ、ごめんなさい・・・」

 

「あい・・・」

 

頭の上がらない2人。

 

「しかし・・・ナツはともかくアミクがこうも立て続けに問題を起こすのは珍しいな」

 

「えっと、ごめんなさい?」

 

「いや、責めてるわけじゃない」

 

ナツが「俺はともかくってなんだー!」と怒っているが無視。

 

「悪い意味で『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』に染まっているようでな」

 

「・・・え、それダメなやつじゃない?」

 

あんな問題児と同じ扱いされても心外だし、問題児が増えるのは頭が痛いはずだが。

 

「ふふっ、私はそのダメなところも含めて『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』が好きだぞ?」

 

「・・・それは私も一緒だよ」

 

「俺は元から大好きだぁぁぁああ!!!」

 

エルザとアミクが微笑みを浮かべ、ナツが燃えあがる。暑苦しい。

 

「そういえば聞いた限りだとルーシィと同居し始めた頃だったか?問題を起こし始めたのは」

 

「ヒック」

 

しゃっくり出た。

 

「ベ、別にルーシィのせいじゃないよ!」

 

「そうは言っていない。ただ、お前に心境の変化があったのかもしれん、と思ったまでだ」

 

心境の変化・・・・いや、恐らくもっと単純なことだったんだろう。

 

「・・・たぶん、浮かれてるんだと思う。友達と一緒に住むことになって」

 

「なるほど。浮かれる、か・・・。お前にとっては一緒に住んでくれる人が増えた、というのは嬉しいのだな」

 

「うん・・・それで色々やらかしていたら世話ないけどね」

 

アミクは頭を掻く。

 

 

「いや、私はそれでもいいと思うぞ」

 

「え?」

 

「浮かれる、ということは心に余裕が出てきた、ということなのだろう?詰め込みすぎて壊れてしまうより、ゆとりを持ってた方がずっといいさ。

それに、先ほども言ったが私はダメなところも好きなんだぞ?今更問題が1個2個増えたところで痒くもない」

 

「うん・・・ありがとう」

 

その言葉に胸が満たされる思いだった。感激して感謝の言葉を口にするとエルザが慌ててかぶりを振った。

 

 

「お礼を言うのはこっちだ。さっきはなんだかんだ言ったが、本当は来てくれて嬉しかったぞ。ありがとう、アミク、ナツ」

 

エルザは少し頬を染めて言った。

 

「・・・うん!」

 

「・・・」

 

「ナツ?」

 

そういえばさっきから静かだなぁ、と見てみると。

 

「ぐがあああああ・・・・」

 

「寝てるし・・・良い話してたのに」

 

「ふふふ、ナツらしいな」

 

エルザはナツを見て優しげに目を細めるとこちらを見た。

 

「アミク、友達や仲間は大切にな」

 

「当たり前、だよ」

 

そのとき、アミクはエルザの瞳に寂しさと後悔が宿ったのを見逃さなかった。

 

(どうしたの・・・?)

 

そう問いかけたかったがすぐに元に戻ったため、タイミングを逃してしまった。

 

いや、あまり踏み込むべきではない。

 

アミクはそう判断して牢屋にある窓から外を見た。

 

 

いつも通りの月が浮かんでいるだけだった。

 

 

 

 

 

 

青髪の青年――――ジークレインはそんなエルザとアミクを見て形の良い唇を歪めた。

 

「面白いことになりそうだ・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 




だれかアミクとマーチのイメージ図描いてくれないかなァ。

それはともかく次回は出ますよ、究極のツンデレを体現するラクサスと途中から全く出番の無くなったミストガン。

何気にこの二人書くのが楽しみ。



・・・今回グレイの扱いひどすぎたな。


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S級

やっと出せるぜあの二人を!ツンデレ二人組を!


結局アミク達は1日牢屋に入れられた。

 

 

翌日。なんとか釈放された3人だったが、アミクだけ残るように言われる。

 

 

「大丈夫なのかよ?」

 

「大丈夫だから先行ってて」

 

 

「・・・うむ、では行くぞ」

 

2人が心配そうにこちらを見てきたが、アミクはヒラヒラと手を振ると2人を見送る。

 

 

そして、自分に話があると言った評議員の方に向かっていた。

 

向かう途中たくさんのカエルと会う。全員同じような姿でいるが、声がそれぞれ違う。

 

アミクはその声を記憶して個体を判別していたのだ。

 

さらに途中で。

 

「ヤジマさん!」

 

「ム、アミクちゃん。今回も派手にやらかスたのう」

 

「あ、ハハ・・・」

 

評議員の1人、ヤジマに会った。ヤジマは妖精の尻尾(フェアリーテイル)を目の敵にする評議員が多い中で数少ないーーーーー唯一と言ってもいいーーーー妖精の尻尾(フェアリーテイル)の味方だ。

 

「マー坊は元気かね?」

 

「はい、今でも始末書を見て頭を抱えていますよ」

 

「相変わらずだのう・・・」

 

ヤジマは遠い目をした。

 

「お前さんはまた依頼か?すまんのう、毎回。妖精の尻尾(フェアリーテイル)の文句を言いながらも結局頼るのは妖精の尻尾(フェアリーテイル)じゃ」

 

「それである程度目をつぶってもらっているならばどうってことないですよ、こんなの」

 

ーーーーアミクは珍しい滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)なだけではなく、希少な治癒や付加術(エンチャント)を使える。

そこに目を付けた評議員は特例としてアミク個人に依頼を出すことがあるのだ。

重要人物の治療などが主な仕事であり、依頼される頻度も年に4、5回と少ないのでアミクとしては特に問題もない。

 

「いいように使っているようで悪いのう・・・」

 

「上の人間といのは人を使う立場なのですから仕方ないですよ」

 

まだ16年しか生きていないがそのくらい世の中が世知辛いというのも理解していた。

魔法というものがあるとはいえ。

 

 

「そうか・・・ワスからは1つだけ」

 

そう言うとヤジマは小声で言う。アミクの耳は地獄耳なので、耳を寄せなくとも聞こえるのだ。

 

「ジークレイン、と言う男には気をつけろ。どうもキナ臭い」

 

「・・・ご忠告、ありがとうございます」

 

アミクの表情が強張った。今、まさにそのジークレインの所に向かっているのだから。

 

 

 

 

ヤジマと別れた後、アミクはある部屋までやって来る。

 

「・・・」

 

こっそり耳をすませた。中に人の気配は感じるが話し声は聞こえない。

 

1つ深呼吸するとドアをノックする。

 

「入っていい」

 

かなり若い声だ。アミクは警戒しながらもドアを開けた。

 

「アミク・ミュージオンです。お話があると伺いましたが・・・」

 

アミクは目の前の男を見る。青い髪に端正な顔、右目付近に謎の紋章がある。はっきり言って美青年だ。

 

「そう警戒するなよ」

 

その男、ジークレインは肩を竦めた。

 

「こうして会うのは初めてだな、『歌姫』。俺はジークレイン。評議員であり、聖十大魔道の1人だ」

 

ジークレインは目を細めた。

 

 

 

 

アミクも名前は聞いたことがあるし、遠目に見たこともある。若手でありながら評議員と聖十大魔道に入り込んだ才能ある美青年。

 

そしてこうして接してみて感じたが、あまり関わりたくないタイプの人物だ。

 

「・・・はい、よろしくお願いします」

 

「そんな堅苦しくなくていい。妖精の尻尾(フェアリーテイル)はもっとフランクだろう?」

 

くくっ、と可笑しそうに笑う。エルザと同じくらいの年齢に見えるがそれに違わず言動もどこか若々しい。

 

「・・・じゃあ、ジークお兄ちゃん」

 

「いきなり飛び込んできたな」

 

流石のジークレインも予想外だったのか笑みが少し崩れた。

それに少し満足する。ちょっとでも鼻を明かすことができたのなら望むところだ。

 

「・・・くくっ!やはり面白いな、おまえ」

 

ぐいっと顔を近づけてくる。

 

「俺のことは『ジーク兄さん』でいい。早速だが、話に入ろう」

 

「・・・仕事の話?」

 

「その通りだ」

 

ジークレインがやっと顔を離す。曲がりなりにもイケメンなのでちょっと心臓に悪い。

 

「さて、お前にやってもらいたい仕事は・・・」

 

ジークレインは手を差し出した。

 

 

 

 

「俺の指を治せ」

 

 

 

「・・・は?」

 

 

 

「昨日突き指したところが痛くてな。せっかく治癒を使えるものがいるんだ。

使わない手はない」

 

呆気にとられたアミクの顔を楽しそうに見るジークレイン。

さっきの意趣返しとばかりにニヤニヤと笑う。

 

「そ、そんなことで・・・」

 

「そんなこと?俺は評議員だぞ。どんな小さな怪我でも仕事に支障があるかもしれない。万全を期すのは当たり前だろう?」

 

「屁理屈だ・・・」

 

「それに」

 

ジークレインは大量の札束を見せた。

 

「報酬もちゃんと払う」

 

「いやいやいやいや、多いから!指治すだけで多いから!なに!?自腹だよね!?評議会の予算とか使ってないよね!?」

 

アミクが手をブンブンと振りながら叫ぶ。

だが、それをみてジークレインは更に愉快そうに笑った。

 

「アハハハハッ!!慌てすぎだ!冗談に決まってるだろ!アハハハハ!!」

 

「もー!この人ヤダー!!」

 

アミクは頭を抱えた。もう帰りたい。

 

「・・・あー!さっさと治すよ!ーーーー♪」

 

アミクはジークレインの指を掴むとおもむろに歌い出した。

 

「『治癒歌(コラール)』」

 

彼の指が光に包まれると、そこには傷一つない指があった。

ジークレインの目が興味深そうに開かれる。

 

(歌によって治癒する魔法・・・いや、治癒だけじゃない。できることは幅広い)

 

瞬時にアミクの魔法の本質を見抜く。さすが若くして聖十大魔道に入った男だ。

 

「もういいですよね!?帰りますさようなら!」

 

アミクはツカツカとドアに向かって歩き出した。それをジークが呼び止める。

 

「おい、報酬は払うぞ?ほらよ」

 

「うわっと!いや、これでも十分多いけど・・・ありがとう」

 

アミクが慌ててキャッチしたのはさっきの札束のうちの1つだ。

今度こそアミクはジークレインに背を向け、出て行こうとする。

 

「ーーーーまた会おう。アミク・ミュージオン」

 

「死んでもっ、ごめんです!」

 

アミクはドアをバン、と開けた。そして驚く。

そこには水晶玉を持った美女が居たのだ。

 

「わわっ、すみません!」

 

「大丈夫よ。どうぞ」

 

「あ、どうも・・・」

 

その美女が体を退かしてくれたので、そこから廊下に出る。

もう一度会釈をして、そこから離れた。

 

 

 

ジークレイン。なかなか強烈な男だった。ヤジマがキナ臭いと言っていたのもそうだが、元々、いい性格をしている。

 

はっきり言ってもう関わりたくなかったが、なんとなくまた会うことになる予感がしてげんなりするアミクだった。

 

 

 

 

 

 

「・・・ジーク様。彼女はどうでした?」

 

「面白い奴だよ。能力も彼女自身も優秀だし、何より嬲りがいがある」

 

「んもう、ジーク様の悪い癖ですわ」

 

「俺は楽しければいいんだよ。とにかく、アイツは使える(・・・)

 

「では、彼女も?」

 

「ああ・・・楽しみだ」

 

残念ながら、ジークレインと先ほどの美女の怪しげな会話は、部屋が防音なのと結構離れていたためアミクには『聴』こえていなかった。

 

 

 

 

 

 

「お!遅いぞアミク!どんだけ待ったと思ってんだ!」

 

「ナツ!?今までずっと待ってたの!?先に行っててって言ったのに・・・」

 

「やっぱよー、仲間を置いていくのは気分が悪ぃんだ。せっかくだから一緒に帰ろうぜ!」

 

「・・・はぁ、そうだね。皆も心配してるだろうし行こうか」

 

アミクが外に出るとナツが胡座をかいて待っていた。エルザは居ない。

 

「エルザは?」

 

「先行ったぞ。早めに行って皆を安心させたいって」

 

「そっか」

 

そのまま一緒に歩き出す。

 

「何してたんだ?」

 

「ちょっと評議員の怪我治してたの」

 

「ふーん」

 

ナツはそれだけ言うと「ま、危ないことじゃなきゃいいんだけどよ」と言った。

ナツなりに心配してくれてたのだろう。

 

「ありがと、ナツ」

 

「な、何がだよ」

 

アミクがお礼を言うとナツは照れ臭そうにそっぽを向いた。

 

 

 

 

 

 

「「アーミークー!!」」

 

「わぶっ!!」

 

アミク達がギルドに戻るとルーシィとマーチが飛び込んできた。ぎゅっと抱きしめられる。

周りでもおかえり、とか無事で良かった、とかとにかくアミクの帰りを喜ぶ声ばかりだった。

 

「1人で評議会に残ったっていうから心配してたのよ!何もなかった?」

 

「と、特には。ジークレインって人の怪我を治しただけでーーーー」

 

「ジークレインだと!?」

 

その名にエルザが大きく反応した。そしてアミクの肩を掴む。

 

「大丈夫か!?何もされなかったか!?」

 

「お、落ち着いてよエルザ!」

 

ガクガクと揺らすエルザを宥める。

そして自分が特に何もされてないこと、ちょっと話をしただけだと話す。

まあ、弄られたことは話さなくてもいいだろう。

 

「でもなんでエルザがそんなに反応するの?

エルザこそ何かされた?」

 

「・・・いや、そう言うわけではないが・・・」

 

顔を顰めるエルザにとって彼はソリが合わないらしい。

 

「なんにせよあいつには次から注意しろ」

 

「こっちもできれば関わりたくないよ・・・」

 

はぁ、とため息をつくと。

ルーシィが疑問に思ったのか質問してくる。

 

「そういえばアミクってこれまでも評議員にお願いされてきたの?」

 

「言ってなかったけ?私はたまに評議員に依頼を出されてそれをこなしてたんだよ」

 

「なにぃ!?」

 

「そうだったのかー!?」

 

「なんでアンタ達が知らないのよ!?」

 

ナツとグレイがびっくりしていた。

 

「特に公言してるわけでもないし、そう頻繁じゃないからね。それに割とすぐ戻ってくるし」

 

だから気づかなくても無理はない。

 

 

「・・・それはともかく!エルザ!昨日の決闘、途中でやめちゃっただろ!

 続きするぞ!」

 

 

「よせ・・・疲れてるんだ・・・」

 

 

「知ったことか!行くぞおおおおお!!」

 

ナツがお構いなしにカンターに座るエルザに突撃する。

 

 

「・・・はぁ、仕方あるまい」

 

エルザは立ち上がると拳を構えて、ナツに向かって振り抜いた。

 

「グフゥッ!!」

 

寸分違わずにナツの顔面に入る。殴られたナツは仰向けにバターンと倒れた。

 

「さて、始めるか」

 

「しゅーりょー!」

 

なぜかハッピーが告げた。

 

「ぎゃはははは!!!ダセェぞナツ!」

 

グレイは昨日の宣言通り大笑いする。だが、ナツは気絶して聞いていない。

 

 

「はいはい、どいてどいてー。『治癒歌(コラール)』」

 

すぐにアミクが駆け寄って治癒する。

 

 

「一発KOかよ!」

 

「綺麗な終わり方だったな」

 

「それでこそ漢だ!」

 

「エルザは女の子よ?」

 

ギルドメンバーも笑いが絶えない。

アミクはそんな温かい声を食べながら、このギルドを絶対に守ると心の中で決意した。

 

 

「うぬ・・・」

 

「あら?マスターどうかしたんですか?」

 

眠そうなマカロフに気付いてミラが声を描ける。

 

「いや、眠い・・・奴じゃ」

 

マカロフがそう言った瞬間。アミクは強烈な眠気に襲われた。

 

抗いがたい強烈な眠気だ。状態異常無効をする暇もない。

ナツを椅子に座らせようとしていたのでナツに寄りかかるようにして倒れる。

 

そのまま眠りについた。

 

 

他のギルドメンバーも眠って動かなくなる。

そこに1人の人物が歩いてきた。

 

顔を布で覆い、マントを羽織り背にいくつもの杖を背負っている。さらに、帽子を深く被っていた。

 

 

「ミストガン・・・」

 

唯一起きてたマカロフがその男の名を呼ぶ。

 

男ーーーーミストガンはクエストボードから一枚の依頼書をとると、マカロフに差し出した。

 

「この仕事を受ける」

 

「・・・気をつけるんじゃぞ」

 

マカロフが目をショボショボさせながら言った。

 

「行ってくる」

 

「これ、眠りの魔法を解かんか!」

 

出て行こうとするミストガンにマカロフが声をあげた。

 

ミストガンは魔法を解くーーーー前にナツに寄りかかって眠るアミクの元にまで行くと、彼女の頭を撫でた。

 

「・・・・」

 

なにも言わずアミクをじっと見つめるミストガン。

やがて、満足したのか扉に向かって歩いていった。

 

 

 

伍・・・・・四・・・・・参・・・・・弐・・・・・壱・・・・・零

 

 

 

ミストガンがギルドを出た瞬間、ナツとアミク以外のメンバーが目を覚ます。

 

 

「今の魔法・・・ミストガンか!?」

 

「相変わらずすげぇ眠りの魔法だな・・・」

 

起きたギルドメンバーが騒ぎ出す。

 

「ガァあああ・・・」

 

「すぅ・・・すぅ・・・」

 

「ってこいつらはまだ寝てんのかよ・・・」

 

グレイ達がナツとナツに寄りかかって眠るアミクを見る。

 

「なんか微笑ましいわね」

 

ミラがそう言うとハッピーがニヤリと笑った。

 

「どぅえきてるぅぅぅぅうう〜!」

 

「なんで巻き舌風に言うのよ・・・」

 

「どぅえきてr、っ、どぅえきてrrう、どぅえきて」

 

「無理に巻き舌しなくていいから!!」

 

マーチが巻き舌ができないのか、涙目になりながらもなんとか言おうとしていた。

 

 

 

「それより、ミストガンって?」

 

 

ルーシィが聞くとマーチ達が説明してくれる。

 

「ミストガンは最強候補の1人、なの」

 

「でも、なんでかは知らないけど、誰にも姿を見せないんだ」

 

「仕事を受ける時もこうして皆眠らせて受けるのよ」

 

「何それ、凄い怪しい!」

 

ミラの言葉を聞いた後、ルーシィが言った。

 

「だから、顔もマスター以外誰も知らない、の」

 

 

 

「ーーーーいんや、俺は知ってるぜ」

 

突然、ギルドの2階から声がした。

そちらを向くと、ヘッドホンをした金髪の男がいた。

全てを見下すような笑みを浮かべている。

 

 

「ラクサス!」

 

「居たのか・・・め、珍しい」

 

「あれって・・・」

 

「ラクサス、あいつも最強候補の1人だ」

 

ラクサスを初めてみるルーシィにグレイが耳打ちする。

 

「ミストガンはシャイなんだよ。あんまり詮索してやんな」

 

まぁ、実はラクサスもミストガンがなぜアミクを気に掛けるのかは気になるが・・・。

 

その時、ナツが起きた。

 

「ごが・・・?あ、ラクサス!俺と勝負しろー!」

 

ラクサスに気付いたナツが吠えた。ラクサスもちらり、とナツをみる。

 

「ナツか。無理無理。エルザ如きに勝てないようじゃ俺には何年かかっても勝てねぇよ」

 

「なんだと・・・!」

 

それを聞いたエルザが怒気を放つ。

 

「お、落ち着けよエルザ」

 

ギルドメンバーが宥める中、ラクサスは未だ寝ているアミクを見た。

 

「まぁ、エルザに勝ったことがあるアミクならいつか俺に勝てるかもしれねぇがな!ギャハハ、いつか、な!」

 

まぁとにかく、と続ける。

 

「今は俺が最強ってことさ」

 

「この野郎ー!降りてこーい!そして俺と闘えーー!!」

 

「やりたかったら、オメェが此処まで来いよ」

 

「上等だぁぁぁ!!」

 

ナツが寄りかかっていたアミクを優しく机に寝かせると、2階に上がるための階段に向かって走り出した。

 

ナツが階段に着く直前ーーーー

 

ドゴォン!

 

「ぶギュ」

 

巨大な拳がナツを押し潰す。

 

「2階に行ってはならぬ。まだ、な」

 

マカロフが止めたのだ。

 

「ははっ、止められてやんの!」

 

「んー」

 

ラクサスが挑発するように笑うと、やっとアミクが起き出した。

さっきの音で目を覚ましたようだ。

 

「これって・・・ミストガン・・・?んあー!ラクサスだー!珍しいー!」

 

寝ぼけてるのか舌足らずな声で言うアミク。それを見たラクサスが苦虫を噛み潰したような顔になった。

 

「なんとなく聞こえてたけどまた意地悪なこと言ってたでしょー。

ダメじゃない、仲良くしなきゃ!」

 

誰が話しているのかは分からなかったが、大体の内容は『聴』こえていたらしい。

あの最強候補、ラクサスに対して子供に対してするようにめっ、とやる。

周りの人達がこいつマジか、みたいな目で見てくる中、ラクサスが口を開く。

 

「・・・おめぇは毎回俺のことを子供扱いするな。何歳年上だと思ってやがる」

 

「えーと、そういうつもりじゃなかったんだけど・・・。ごめんね。嫌だった?」

 

「ああ、嫌だね。分かったらさっさと消えろ。目障りだ」

 

「そ、そんなこと言わないでよ・・・。後で飴あげるから許して?」

 

「そういうところが!子供扱いしてるんだよ!」

 

ラクサスはガシガシと頭を掻いた。

 

「ちっ、調子狂うな・・・これだけは言っておくぜ。

妖精の尻尾(フェアリーテイル)』最強候補だがなんだが知らねぇが、最強の座は誰にも渡さねぇ!

エルザにもミストガンにも、あのオヤジにもなぁ!俺が最強だ!」

 

ラクサスは高笑いしながら二階の奥に消えていった。

 

 

アミクはそんなラクサスを悲しそうに見ていた。

 

 

 

ルーシィはアミクのところに来て疑問に思ったことを聞いた。

 

「ねぇアミク、さっきマスターが2階に上がっちゃダメだって言ってたけど・・・あれって一体」

 

「あー、それはね、ミラさんお願い!」

 

「はいはい」

 

説明をミラに丸投げした。

 

 

 

「2階には1階に貼られてある依頼とは比べものにならないくらい難しい依頼書があるのよ。

それをS級クエストって私達は呼んでいるのだけど・・・その依頼に行けるのはギルドの中でもマスターに認められた実力のある人しか行けないのよ。

マスターに認められた人達はS級魔導士と呼ばれているのよ?

その中にはエルザやミストガン、ラクサスも含まれているの」

 

「へー!エルザも・・・納得」

 

「S級クエストは危険なものなのよ?判断を間違えれば命を落とす依頼ばかりよ」

 

「ひぃっ!」

 

ニコニコとミラは笑顔だが、アミクにはその笑顔が貼り付けたものにしか見えなかった。

 

 

「S級なんて目指すものじゃないわよ?ほんとに命がいくつあっても足りない仕事ばかりだから」

 

「はは・・・そうですね」

 

「・・・・」

 

まるで、身をもって知っているかのような口ぶりのミラ。アミクはそんな彼女を見ても何も言えなかった。

 

 

アミクは今日だけであったことを思い出し、思わずため息をつく。

ジークレインにラクサス。問題は山積みだった。

 

「平穏は続きそうにないな・・・」

 

「?」

 

ハッピーと共に魚を食べていたマーチはその言葉を聞いて首を傾げるのだった。

 

 

 

 




ジークをドSにしすぎた!でも書きたかったのはかけたぜ!


これ終わんのかなぁ・・・


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ガルナ島へ

眠い


 

シャワーを浴びてすっきりしたルーシィは部屋に戻った。

毎回思うのだがあのシャンプーどこで売ってるのだろう。後でアミクに聞いてみることにする。

 

そう思いながら、ドアを開けると――――

 

 

「よう!遅かったじゃねぇか!」

 

「あい!」

 

「きゃあああああ!!?不法侵入!!?」

 

「ぐえ!?」

 

ルーシィはいつの間にか部屋に居たナツを蹴飛ばし、壁に叩きつけた。

 

その拍子に1枚の紙がひらりと落ちてきた。ルーシィがそれを拾う。

 

「え?なにこれ?依頼書?」

 

「おう!ルーシィ!S級クエスト行くぞ!」

 

「はいはい仕事の話ねー・・・ってえええええ!!!」

 

ルーシィは驚愕してまじまじと依頼書を見た。

 

「S級ってこれが!?行かないわよ、そんな危険な仕事!」

 

「なんだよ、つまんねぇな。怖じ気付いたのか?」

 

「当たり前でしょ!ていうかS級魔導士以外は行っちゃだめなんでしょ?命令違反じゃない!あたしは嫌よ、怒られるの!」

 

「ナツー。ルーシィもこう言ってるし諦めたらー?」

 

「しょうがねぇな」

 

ナツがよっこらせ、と立ち上がった。

 

「ちょっと!アミク誘ったんじゃないでしょうね!?」

 

「誘ってねーし、誘わねーよ」

 

「・・・え?」

 

てっきり誘って強引にでも連れていくかと思ったのだが。

 

「アイツ真面目だから反対すると思うぜ?巻き込むのもアレだしな」

 

「あたしは巻き込んでも良かったわけ・・・?」

 

「ほんとは連れて行きてぇよ。でも今はあいつ疲れてるだろうし。寝てんだろ?今」

 

 

 

ルーシィは素直に驚いた。まさかこの熱血馬鹿がそんな気遣いができるとは。

 

 

 

「確かに、昨日あんまり寝れなかったって言ってたわよね」

 

 

 

「あい、牢屋に居たからね!」

 

 

「でもなによーナツってばー、そんなにアミクのこと大切に思ってるんだー、このこのー」

 

「あたりめぇだろ。仲間だぞ?」

 

ルーシィがからかう様に言うがナツは憮然と言い返す。

 

「はいはい、そういうことにしといてあげる。とにかく、あたしは行かないからね!」

 

「分かったよ。俺達だけで行くか。じゃぁな」

 

「おやすみー」

 

「ちょっと!危ないわよ!」

 

 

ルーシィが慌てて止めるがナツ達は手を振って部屋から出て行った。

 

「・・・はぁ、これギルドに連絡したほうがいいのかしら・・・」

 

ふ、とルーシィは依頼書に目を落とす。そこで、報酬の欄に注目した。

 

「えっと、報酬はお金と・・・そういえば家賃集めなきゃ」

 

視線は左に流れて

 

 

「・・・黄金の鍵!?」

 

そこで止まった。黄金の鍵。星霊の黄道十二門のことだろう。

 

「・・・ふふ!」

 

ルーシィは怪しく笑うと

 

 

「待って!やっぱりあたしも行く!」

 

 

そう言ってナツ達を追いかけた。

 

 

 

 

 

依頼場所はガルナ島。ガルナ島はハルジオン港が近いらしいのでひとまずそこに行くことにする。なのでハルジオン行きの列車に乗るために駅で待ってるところだ。

 

「にしても本当に良かったのか?お前さっきまでビビってたろ」

 

「魔導士は冒険してナンボよ!それにケム・ザレオンだって魔導士として色々冒険したみたいだし。それに報酬は鍵だし!」

 

「最後のが一番の理由な気がするー」

 

「現金だねー」

 

「なるほど、なの」

 

「ま、なんだっていいや。とにかく、俺はさっさとこの依頼を成功させてラクサスや皆をぎゃふん、と言わせてやるんだ!」

 

「ふんふん、ぎゃふん、とね」

 

「そうだ、ついでにアミクへのお土産も持ってくるか!あの島の卵とか」

 

「それはいい考えだね!!」

 

「そうね、きっとアミクもよろこ・・・」

 

 

ピシリ

 

 

ナツとルーシィとハッピーがこちらを向いて固まった。

それはまるで幽霊でも見たかのように。

 

「で?ナツとハッピー、ルーシィは何をしているのかな」

 

そこにはニッコリ笑顔のアミクと無表情のマーチが居た。

 

 

「「「で、出たあああああああああ!!!」」」

 

 

 

 

 

「うん、私の地獄耳舐めないでほしいな。大きな音がして起きたらなんか興味深そうな話してるのが聞こえてね。マーチと一緒に追いかけて来たんですよ」

 

「「「あい・・・」」」

 

今、2人と1匹は正座させられていた。目の前には腕を組んだアミクが立っている。マーチはアミクの頭に乗っていた。

まさか自分達より年下の少女に説教されることになるとは。

 

ちなみに大きな音というのはルーシィがナツを蹴飛ばした時のことだろう。

 

「大体話は『聴いて』いたから分かるけど、ナツ達だけでS級クエストに行くとか何考えてんの?

ルーシィだって聞いてたでしょ?S級は命がいくらあっても足りないって。

ナツだってあのこと(・・・・)忘れたわけじゃないでしょ・・・?」

 

そこでアミクの顔が悲しげになった。ナツも強張る。ハッピーも気まずげだ。

 

「・・・?」

 

よく分かってないのはルーシィだけだった。

 

 

「・・・忘れるわけがねぇ。でも俺は死なねぇよ。俺は強いしこの依頼を達成させる自信も実力もあるぞ!」

 

「口だけだったらなんだって言えるよね?それにS級クエストはそんなに甘くない。エルザでさえ大怪我する時だってあるんだよ?

エルザに勝てない君なんかすぐにコテンパンなんだから。過信が身を滅ぼすんだ」

 

 

さっきラクサスが言ってたのと似たようなことを言ったがラクサスにあったのは嘲り、アミクにあるのは厳しさと優しさだった。

 

 

「・・・頼む!俺を信じてくれ!」

 

「えっ?」

 

ナツは正座したまま頭を下げた。アミクは戸惑ったようにそれを見る。

 

 

ナツは顔を上げるとアミクの目を真っ直ぐに見た。

 

 

 

「俺は必ず、依頼を成し遂げてやる!俺の力でもできるってことを証明するんだ!だから行かせてくれよ、アミク!」

 

「私からもお願い!どうしても欲しいのがあるの!」

 

「オイラはナツ達について行くよー!」

 

ルーシィも頼みこみ、ハッピーは平常運転。

 

しばらく、沈黙が続いた。アミクとナツの視線がぶつかり合う。

 

そこに列車が入って来る。

 

 

「・・・はぁ、しょうがないなぁ」

 

先に視線を逸らしたのはアミクだった。

アミクは息を吐くとその列車に向かって歩き始めた。マーチも後を追いかける。

 

 

「・・・え?」

 

「お?」

 

「あい?」

 

「どうしたの?早く行くよ」

 

「置いて行く、なの」

 

 

「え、いや、アミクも行くの?」

 

ルーシィが聞く。

 

「ナツ達を止められなかったのは私の責任だからね。毒を喰らわば皿まで、って言うしね。付き合うよ」

 

「そう、なの」

 

「それに友達の頼みごとはね、なるべく叶えてあげたいんだよ」

 

その言葉にナツ達は顔を見合わせると、嬉しそうに破顔した。

 

 

 

 

 

数分後。

 

 

「うぷ・・・」

 

「わ・・・忘れてた・・・」

 

列車で思いっきり酔う2人。

 

 

「・・・締まらないわね・・・」

 

「あい!でもそれがナツ達なのです!」

 

「なの」

 

 

 

一方。

 

 

「ナツとルーシィ、ハッピー。それにまさかアミクとマーチまで・・・」

 

ギルドではナツ達がS級の依頼書を持っていったことが発覚していた。

 

「なんだかんだナツには甘いところあるからな、アミクは・・・」

 

「とほほ・・・わしの唯一の心の平穏が・・・グレとる・・・」

 

「あ、そういう認識なんだ」

 

 

そんな風に騒ぐギルド内を見下ろすラクサス。

 

(・・・そうか。アイツも行ったのか・・・)

 

ラクサスは面白くなさそうにグラスを回した。

 

(・・・ったく。何で俺がアイツを気にしなくちゃならねェ・・・)

 

彼はバチバチッと雷を放出させるとグラスを溶かす。

 

そして、皮肉気に笑った。ラクサスとしてはアミクがS級に行ってどうなろうと関係がないはずだった。

 

(俺の『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』に弱ぇ奴はいらねぇ。

だからS級クエストをクリアできたら・・・)

 

 

 

 

 

港街ハルジオン。

 

 

「うわぁ〜、懐かしい!此処って私とナツ達と初めて出会った街よね!」

 

「へ~、此処が・・・」

 

「そんなに懐かしいか?」

 

「ルーシィが老けちゃった・・・」

 

「ババァ、なの」

 

「失礼ね!?特にマーチ!」

 

 

アミクもルーシィから聞いただけだったが、なんでも此処で魅了(チャーム)されそうになったり、奴隷にされそうになったりしたらしい。

 

それをナツが助けたのだとか。

 

 

「運命的な出会いってヤツだね」

 

「運命的ね・・・確かに」

 

「運命を信じるなんて、ロマンチスト、なの」

 

「オイラとマーチの出会いは運命的だったよ~」

 

ハッピーが露骨なアピールをするが相手にしていない。

 

 

 

「それより、此処からどう行くの?船で行く?」

 

「船かぁ・・・うぷ」

 

「さっき『平衡感覚養歌(バルカローラ)』使ってなかったから酔いの心配はしなくていいよ」

 

「とりあえず、『ガルナ島』に行く船を探しましょ」

 

 

しかし―――――

 

 

しばらく探してみてもガルナ島にいく船は見つからなかった。

というのも、誰もガルナ島に近づかないのだ。ガルナ島は『呪われた島』と呼ばれ、時には名前すら聞きたくないという者までいる始末だ。

 

「仕方ねぇ、泳いでいくか!」

 

「自殺行為でしょ!」

 

「ハッピーとマーチでもあそこまで魔力が持つか分からないし・・・」

 

 

八方ふさがりだ。

 

 

途方に暮れてる3人と2匹。そこに――――

 

 

「みーっつけた」

 

 

小声が響く。

 

最初反応したのはやはりアミクだった。バッと声がした方を向く。

そんなアミクの様子に気付いたナツとルーシィもそちらを見た。

 

 

「グレイ!」

 

グレイが不敵な笑顔で居た。

 

 

「ど、どうして此処に・・・」

 

「じーさんに連れ戻して来いって頼まれてな」

 

 

グレイは一歩前に出るとアミクを睨んだ。

 

 

 

「大体こういうのはアミクが止めるべきだろ。何でお前も一緒になってS級クエスト受けようとしてるんだよ」

 

 

「ごめんなさい・・・。でも、私はナツを信じるって決めたから。

ナツがやるっていうなら私も付き合うまでだよ。それでこそ『双竜』だし」

 

アミクがグレイの目を真っ直ぐに見て言うとグレイがため息をついた。

 

 

「はぁ、相変わらずナツに甘ぇな・・・。今ならまだ破門も免れるかもしれないぞ」

 

 

『破門!?』

 

アミク達は驚いた。まさかなにかしら罰はあるだろうと覚悟していたがそこまで重いものだったとは。

 

 

「それに今は仕事で居ないが、もし、エルザに知られたら・・・」

 

そう、そこも懸念事項なのだ。

エルザは『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』の法を犯した者には容赦をしない。

自分で望んでしたとは言え、あまりエルザを怒らせたくない。

どうやってエルザを説得しようか、というのもアミクの悩みの種だった。

 

 

「そ、そんなもの関係ねぇ!俺達は戻らねぇ!」

 

「ナツ!・・・アミクも同じか?もう引き返せないかもしれないぞ?」

 

そしてなにより『破門』の可能性。

 

それが一番恐ろしい。

 

「や、やだよ・・・破門は・・・」

 

ブルブルと目に涙を貯めて震える。あっという間に涙腺は崩壊し、涙がポロポロと零れた。

 

「ちょっと!アミクを泣かせないでよ!」

 

「うぇえ、そんなつもりじゃ・・・」

 

 

ルーシィがそんなアミクを抱き寄せてグレイを威嚇する。なぜか立場が逆転した。

 

「大丈夫だ」

 

 

その時、ナツがアミクの頭を撫でる。

 

「お前の居場所は無くならねェよ」

 

 

なんの根拠もない言葉。だが、その力強い『声』はアミクの心を落ち着かせるには十分だった。

 

 

「・・・ごめんね、取り乱しちゃって」

 

「大丈夫?なの」

 

マーチがアミクの足を擦る。

 

「うん、落ち着いた。もう大丈夫」

 

 

 

 

「と、とにかくだ。どうしても嫌だって言うなら仕方ねェ。マスターの命令だ!引きずってでも連れ戻してやる!

怪我しても泣くなよ!!」

 

「上等だ!!」

 

「ちょ、ちょっと!」

 

そうしてナツとグレイが向きあい、あわや一触即発といったとき、

 

 

「な、なああんたら、魔導士なのか?もしかして、島の呪いを解くために?」

 

 

するとハルジオンに船を止めていた1人の船乗りが一行に近づいて来た。

 

「うん、そうだよ。その呪いを解くのが仕事なんだ」

 

アミクが答えた。

 

「行かせねぇよ!」

 

 

グレイが慌ててアミクの腕を掴もうとして――――――

 

 

手が滑ったのかアミクの胸を鷲掴みにした。

 

 

「あ」

 

 

「・・・きゃ」

 

 

「なにすんのよこの変態ぃ―――――――――!!!!」

 

 

アミクが真っ赤になって叫ぶ前にルーシィがグレイの頭を蹴り抜く。

 

「ごはぁ!!?」

 

グレイはそのままズザザザーと滑っていった。

 

 

「おおー」

 

「凄い、の」

 

猫2匹が呑気に手を叩く。

 

 

「と、とにかく乗りなさい」

 

 

一部始終を見ていた男が冷や汗を流しながら言った。

 

 

「え?いいの?」

 

ルーシィが聞くと男は頷いた。

 

 

「おっしゃー!船ゲット!」

 

「やったー!」

 

「なのー!」

 

早速ナツ達は船に乗り込む。

 

 

「ま、待て・・・行かせると、思う、か・・・?」

 

なんとか立ち上がったグレイだが、すでにフラフラだ。その時、

 

 

「お前達!そこでなにをしている!」

 

 

エルザの声がグレイの後ろから響いた。

 

 

「げぇ!?エルザぁ!?」

 

グレイはバッと後ろを振り向いた。

 

 

 

だが、そこには誰も居ない。

 

 

「あ・・・?」

 

グレイがポカンとしていると

 

 

 

「『子守歌(ララバイ)』」

 

眠気を誘う歌が聞こえてくる。

 

 

「・・・しまっ・・・た」

 

グレイはぶっ倒れてそのまま寝てしまった。

 

 

 

「びっくりしたー!ほんとにエルザ来たのかと思ったぜ!」

 

「あたしも!でもどうやったのアミク?」

 

 

寝てしまったグレイを船まで運び、連れて行くことにしたアミク達。グレイがギルドまで戻ってエルザが来てしまうのを恐れたためだ。

 

そして、出発してしばらくしてから質問を受けたのだ。

 

 

 

「あれは『声送(レチタティーヴォ)』を使ってエルザの声に変えた私の声をグレイの後ろに送っただけだよ」

 

 

「凄い応用利くわね、それ。あの後使ったのは前に言ってた眠らせる方のララバイよね?」

 

「そう、なの」

 

「だれにでも効くってわけじゃなくて子供や、弱ってる人に効きやすいんだ。

ちょうどルーシィが蹴飛ばしてくれたからダメージ負ってたから、隙を作って眠らせたんだ」

 

「なにが幸いするか分からないものね・・・あ、てか胸大丈夫?」

 

「ううぅ、あんながっつり掴まれるなんて・・・」

 

アミクが赤面した。

 

 

数時間が経過すると日はすっかり落ち、更に周りには濃い霧が視界を防ぐように立ち込める。しかし一行を乗せた船は迷わずまっすぐと目的地に向かうのだった。

 

 

「それで、ナツはこう言ったの。『てめぇにやるニンジンはねぇ!』って」

 

 

「あははは!なにそれー!」

 

 

「そんなこともあったっけか」

 

 

「マーチ。ナツってどっちを正妻にすると思う?」

 

 

「あーしとしてはアミクになって欲しい、の」

 

 

 

すっかり寛いでいる一行。ナツとアミクは『平衡感覚養歌(バルカローラ)』を掛けているので酔ってはいない。

 

 

「はぁ・・・呑気なもんだぜ・・・。つーかおっさん。なんで船を出したんだ?こっちはいい迷惑だぜ」

 

 

復活したグレイが男に文句を言う。グレイは念のために暴れないように縛られている。

 

船乗りの男はこちらに向き直って語った。

 

 

「俺の名はボボ・・・かつてあの島の住人だった」

 

 

「住人、だった?」

 

気になる言い回しにルーシィがキョトンとする。

 

 

「・・・逃げ出したんだ、あの呪われた島を」

 

「呪い・・・皆怖がってたけど、その呪いって?」

 

アミクが質問をぶつける

 

 

「災いは君達にも降りかかる。島に行くと言うのはそう言う事だ。君達にその呪いが解けるかね?」

 

 

船乗りの男は着ているローブを取る。その男の片腕はとても禍々しく人間とは思えない形と色をしていた。

全員驚いて言葉も出ない。

 

 

 

「この悪魔の呪いを」

 

「おっさん、あんた・・・」

 

 

「の、呪いってまさかその……?」

 

 

「見えてきた、あれがガルナ島だ」

 

 

 

男の言葉に船の前方に目を向けるアミク達。徐々に霧がはれると遠くに1つの島が見えてきた。

 

 

 

「ねぇ、おじさん、ってあれ?」

 

 

 

ルーシィは男に話かけようと振り向くが、そこには誰もいなかった。きょろきょろと辺りを見渡す一同。

 

 

しかし、アミクには『聴こえ』ていた。振り向く直前の『バサッ』という音。

 

今もバサッバサッと音が聞こえる。上を向くと何かのシルエットが飛んでいくところだった。

 

(あれは・・・いったい・・・・)

 

 

 

「どうなってやがる」

 

 

 

皆で探しても見つからない男を心配するアミクを除いた者達。するとアミクの耳に何か音が聴こえてきた。

 

 

 

「なにこの音・・・」

 

 

 

「音・・・?」

 

 

 

ルーシィも耳をすますと微かに聞こえてくる。しかも徐々にその音は大きくなっていく。聞こえる方に視線を向けると巨大な津波がこちらに向かって来ていた。

 

 

 

『ぎゃあぁぁぁぁ!!??』

 

 

 

全てを呑み込まんとする大波に呆然とするアミク達。

 

 

 

「でかー!?」

 

 

 

「ハッピー、マーチ、この船持ち上げて!」

 

 

 

「無茶言わないでよ!」

 

「さすがに、重い、の」 

 

 

「おぷっ・・・」

 

 

「うわ、最悪!『平衡感覚養歌(バルカローラ)』切れた!!」

 

 

 

「グレイ! 凍らせて!」

 

 

 

「縛られてるから無理に決まってんだろ!」

 

 

 

「だれなの!?縛ったの!」

 

 

「テメェだろアミク!」

 

 

「う、うぷ・・・」

 

 

 

「も、もうダメー!!」

 

 

 

そのままアミク達は波に攫われてしまった・・・。

 




感想待ってるぜ!


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呪われた島

零帝って厨二っぽいよなww
今回は短いです。


「・・・い!おい!しっかりしろ!」

 

「う、ううぅん・・・」

 

アミクはナツが呼ぶ声で目を覚ました。

 

「よかった、気がついたのね!」

 

ルーシィの声も聞こえる。

 

「あ、れ・・・?ここは?」

 

「ガルナ島だよ!」

 

「あーし達、海に落ちた後波でここまで運ばれて来たみたい、なの」

 

ハッピーとマーチが説明してくれた。

 

「グレイは?」

 

「先に様子見てくるってよ」

 

アミクはナツの返答を聞きながら身を起こす。

 

(それにしてもあのおじさんは・・・)

 

一体何者だろうか。

 

「おーい、お前らー!」

 

グレイが手を上げながら近づいてくる。

 

「あっちの方に門があったぜ。アミクも起きたのか。

だったら行けるな?」

 

「あれ?なんか乗り気だね」

 

さっきまでは連れ戻そうとしていたはずだが。

 

「お前らだけ先に二階に行くのも癪だし、破門になったらそれはそれでつまらねぇからな・・・だから付き合ってやるよ、その依頼」

 

グレイが不敵に笑った。

 

「グレイもくるの!?だったら心強いな」

 

「これでエルザも来れば最強チーム再来なんだけどね・・・」

 

ルーシィが本当にエルザが来ていないか周りをキョロキョロと確認した。

 

 

 

 

 

グレイに先導されて来てみると本当に門がある。アミクは中にいる人に呼びかけるようにして叫んだ。

 

「すみませーん!仕事できた者ですけどー!門を開けてくださーい!」

 

アミクの声が響くと、門の上から二人の男が現れた。

 

「仕事に?依頼された者か?」

 

「はい!『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』です!」

 

「依頼を受理されたとの報告は来ていないが・・・?」

 

「何かの手違いで遅れてんだろ」

 

門番の疑問にすぐにフォローするグレイ。

 

 

「・・・全員、紋章を見せろ!」

 

そう言われたのでアミク達は自分のギルドマークを見せた。

 

 

 

「おお、どうやら本物のようだ」

 

「うーむ」

 

しかし、1人の男が納得してなさそうに唸る。

 

「その女共の服を脱がせ」

 

「関係ないでしょ!」

 

「ぬ、脱げばいいんだね」

 

「脱ぐな!アンタ達も見てないで止めなさい!」

 

「すまない、調子に乗った」

 

アミクが恥ずかしそうにしながらも服を脱ごうとしていたので慌てて止める。

もう1人の男の方は呆れているようだ。

 

 

 

「よし、入りなさい!」

 

二人の男が頭を引っ込めると門である柵が上に上がり、中に入れるようになった。門をくぐるとそこには分厚いローブを着た人々がアミク達の前に現れる。

 

「よくぞ来てくださった、魔導士の方々・・・ワシはこの村の村長です・・・ほがっ」

 

「あ、はいどうも。早速ですが仕事の話をしようと思うのですが・・・?」

 

「ふむ、そうじゃな。それならば隠してもしょうがない、皆ローブを取るんじゃ」

 

「え・・・?」

 

なんでそんなことを言うのか分からず、首を傾げると全員ローブを脱いだ。

 

「わわっ!全員グレイみたいな感じ?」

 

「いや、そうじゃねぇ、見ろ!」

 

村人達の姿に息を呑む。その姿はあの船乗りの男と同じ、身体の一部が異形の物と化していた。

 

「驚かせてしまったかな? この島にいる者は皆このような呪いにかかってしまったのです」

 

「なぁ言葉を返すようだが何を根拠にそれを呪いって言ってんだ? 流行り病だと考えねぇのか?」

 

「医者にも見てもらいましたがこのような病気はないと言われました・・・こんな姿になってしまったのは月の魔力(・・・・)が関係しているのです」

 

「月の魔力?」 

 

 

アミクが疑問の声をあげると村長が説明を続けた。

 

 

「元々この島は月の光を蓄積し、島全体が月のように輝く美しい島でした。しかし、何年か前に突然月の光が紫色に変わってしまったのです・・・ほがっ」

 

「紫?」

 

「いつも通りの月だったと思うけど・・・」

 

この前牢屋で見たときもなんら変わったところはなかった。紫でもなかった。

 

 

「月の光が紫に変わると私達の身体はこのようになってしまったのです」

 

「あ、皆見て!」

 

空を見ると雲で隠れていた月が現れる。その色は自分達が知っている白の月ではなく、不気味な光を放つ紫色だった。

 

「本当に紫!」

 

「うわ・・・」

 

「これは月の魔力の呪いなのです・・・うっ!」

 

すると村長をはじめとする村の人々が突然呻き声を上げた。呻き声と共に村人達の身体が徐々に変わっていく。

 

 

「・・・!これは・・・」

 

アミク達の前には先ほどまで人間だった者達がいた。

 

肌が青くなったり、ツノが生えたり。全身が異形と化してした。村長も例外ではない。

 

その姿はまるでーーーーー悪魔。

 

「お見苦しい姿を見せて申し訳ない・・・これを呪いと言わずしてなんと言うのでしょう・・・?」

 

確かにこれは呪いとしか言えないだろう。

 

「おお!これすげぇな!本物か!?ツノとか本物かよ・・・いデェ!!」

 

「はいはいーちょっと黙ってようねー」

 

アミクがバコーンと騒ぐナツの頭を叩く。

 

 

「・・・朝になれば元の姿に戻りますが、中には元に戻らず心まで失ってしまう者も出て来たのです。

そこで私たちは、心を無くし魔物と化してしまった者は殺すことに決めました」

 

「・・・そんな・・・」

 

「放っておけば、皆がその魔物に襲われる。心を失った者は恐ろしく凶暴、幽閉しても牢を破壊してしまうのです」

 

「なるほど、だからこの村の柵をあんなに頑丈に作ってるのか」

 

グレイは村を囲むようにして作られた頑丈そうな柵を思い出す。

 

「私も息子を殺してしまった・・・心まで悪魔となってしまった息子を」

 

そう言って涙を流す村長は写真を取り出した。

 

そこにはアミク達をこの島に連れて来た船乗りの男が映っていた。

 

「嘘!?」

 

「このおっさん、さっきの・・・」

 

「おい、黙っとけ!」

 

グレイが静かに言う。

 

「あのおっさんが消えた理由がようやくわかったぜ。そりゃ、浮かばれねぇよな・・・」

 

ルーシィは恐怖で震え上がった。つまりあの男は幽霊だということか。

 

この島の呪いが心残りで成仏せずに残っていたというわけか。

 

「・・・」

 

しかし、アミクだけは疑うような視線を写真の中の男と空に浮かぶ紫色の月に向けるのだった。

 

「よーし、おっさん!俺達が必ず解決してやるからな!」

 

ナツが威勢良く言った。

 

「おお、本当ですか!かたじけない・・・ほがっ」

 

村長は涙を流して喜ぶ。

 

 

「ええ!あたし達がなんとかして見せます!」

 

「あい!」

 

「任せて、なの」

 

ルーシィ、ハッピーにマーチも続けて言う。

 

「ありがとうございます・・・私達の呪いを解く方法は一つ」

 

村長は指を天にある月に向け、一呼吸する。

 

「あの月を、壊してください」

 

 

 

 

 

 

「それにしても変な月、なの」

 

「なんで、紫なんだろうね〜」

 

マーチとハッピーが月を見上げながら語る。

 

アミク達は村長から自由に使っていい、と言われた小屋の中で寛いでいた。

 

「ちょっと、窓閉めなさいよ!呪われたらどうするのよ!」

 

「そう簡単に呪われないよ〜」

 

荷物の整理をしていたルーシィがハッピーとマーチに注意するがハッピーは呑気に言う。

 

「・・・もし魚が食べれなくなる呪いにかかったら知らないわよ〜」

 

「閉めます」

 

ハッピーがすぐに窓を閉めた。

 

「・・・あーしが呪われたらきっとグラマスでナイスバディな美女になる、の・・・」

 

「普通逆でしょ・・・」

 

人間が呪われてネコになるならともかく、猫が人間になるとは。

どこのシュレッ○だ。

 

 

「にしても参ったな・・・」

 

グレイは途方にくれた。やることのスケールが大きすぎたのだ。

 

「月を壊せって思い切ったこと言うねあの人」

 

アミクも呆れたように言った。

 

「でもやらなきゃ『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』の名折れだ」

 

ナツはそう言うができないものはできないのだ。

 

「第一どうやって月に行くかとか考えてあるのか?」

 

「ハッピーとマーチに連れていってもらう!」

 

「流石に無理だよ〜」

 

「途中で魔力がなくなって落下して地面のシミになるのがせいぜい、なの」

 

「恐ろしいこと言うわねこのネコちゃん・・・」

 

マーチが言う言葉に冷や汗をかくルーシィ。

 

そこで、アミクが言う。

 

「恐らくだけど月が紫に見えるのはこの島だけだと思う」

 

「そ、そうね・・・本当に月が紫だったら他の場所からもそう見えるはずよね」

 

「だったら、この島に何か秘密があるはず。きっと月を壊さなくても呪いを解く方法もあるはずだよ」

 

「だといいがな・・・」

 

しかし、月を壊すのは現実的ではないのでアミクの考えの方が説得力がある。

 

「よーし!だったら明日は探検だな!」

 

ナツが楽しそうに言った。

 

「そうだね。じゃあもう寝ようか。明日は早めに起きて探索を開始しない、と・・・」

 

そこまで言うとアミクはパタリ、と倒れて寝息を立て始めた。

 

「早ぇーなおい」

 

「きっとこの前の疲れが取れてないのよ・・・・」

 

「昨日も起こされたし、なの」

 

ルーシィはアミクの隣に寝転がるとアミクを抱き寄せる。マーチはアミクとルーシィの間に入った。

 

「おまえ、アミクの事好きすぎだろ・・・」

 

「とにかくいろいろ考えるのは明日よ」

 

「わかった!寝るぞハッピー!」

 

「あいさー!」

 

「ファァア、俺も眠ぃ・・・」

 

小屋の電気を消し、すぐに寝入るナツとハッピーとグレイ。

 

「ふぁあ〜おやすみ〜・・・ってこいつらの間で寝るの!?」

 

ルーシィがガバッと起きて叫んだ。ルーシィとアミクはナツとグレイに挟まれる形でいるのだ。

 

「アミクに何かあったら、あたしが守らないと・・・」

 

と言ったそばから

 

「フッへ〜これ柔らけぇなー・・・・」

 

ナツがアミクの胸に顔を埋めていた。

 

「・・・」

 

「おい、それは俺のパンツだ・・・」

 

グレイも急に手を伸ばしてルーシィの胸を掴む。

 

「・・・あ、ん、た、らぁ!!!!」

 

 

 

 

 

次の朝。

 

「さあ、出発よ!」

 

「おー!」

 

スッキリした様子のルーシィとアミクが元気よく言う。よく寝れたようだ。

 

それと対照的に気分が沈んでいるのはナツとグレイの男衆だ。顔面がたんこぶと痣だらけになっている。

 

 

「い、いてて、何があったんだ?」

 

「俺達、寝ながらケンカしてたのか?」

 

「ふ、ふん!知らないわよ!」

 

二人は痛みでよく寝れなかったようだ。

 

ルーシィは昨日のことを思い出して顔を赤くしてそっぽを向く。

 

「・・・?」

 

アミクはよく分からなかったのか首をかしげるだけだ。

 

 

 

「どうしたんだろうね〜?」

 

「さぁ?」

 

ハッピーとマーチはいつも通り、と。

 

 

 




ガジル出したいな〜。ギヒッてやりたい。


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封印されし悪魔と月の雫

ユウカの波動ってルカリオのやつとは関係ないのかな?


「おいこのクソ炎。さっきから暑くて仕方なかったんだがてめぇが原因じゃねぇのか?

年中馬鹿みたいに燃えてっからよ」

 

「なぁ、前に風邪が流行ったのってお前のせいだろ?氷バンバン出してるからな。病原菌みたいだな!」

 

「なんでこんなときでもケンカしてんの・・・」

 

「あい、それがナツとグレイだからです!」

 

「むしろ仲良くしてる二人は人間じゃない、の」

 

「人間性まで否定することなくない!?」

 

「ちょっとアンタ達、何が出てくるか分からないから大声出さないでくれる?・・・と申しております」

 

門番に月を壊すための調査と偽り、森の中に入ったのだ。

 

「ていうかホロロギウムだっけ?そんな使い方でいいの?」

 

「だ、だって相手は呪いよ?実体がないものって怖いじゃない・・・と申しております」

 

「呪いなんか燃やせばいいだろ!」

 

「凍らせちまってもいいな」

 

「バカの集まり・・・と申しております」

 

「私は違うからね!?」

 

「ねぇ、オイラ達中入ってみてもいい?」

 

「なの」

 

 

アミクはハッピーとマーチがホロロギウムの中に入っているのを見ながらとりあえず推測を立ててみることにする。

 

(島の中でだけ見える紫の月。あの人達が言ってる呪い。この二つが関係があるのは間違いないと思うんだけど・・・)

 

 

「・・・?」

 

そこでアミクはガサガサ、と音が『聴こえ』た。

 

 

「ねぇなんかいるみた・・・・」

 

と振り返ったところで

 

「ん、どうかし・・・」

 

グレイ達も振り返ってそれを見た。

 

「チュー」

 

服を着た、巨大なネズミを。

 

「デカ―――ッ!」

 

「服着てる――――!?」

 

「な、なんでこんなのがいるんだ!?」

 

「アンタ達、早くやっつけなさい!・・・と申しております」

 

「こんなの、猫だって負けちゃうよ~・・・と申しております」

 

「誰かの飼いネズミ、なの?・・・と申しております」

 

 

そのネズミは問答無用で襲いかかってきた。

 

ネズミは大きく息を吸い込む。

 

「なんか吐く気!?」

 

「そんなもんおれの『(シールド)』で・・・」

 

と、グレイが両手を構えたところでネズミが何か吐きだした。

モクモクとした煙みたいだったが・・・。

 

「くっさい!!?」

 

「くせぇぇぇえ!!」

 

「なんちゅう臭さだ!」

 

「ちょ、ちょっとアンタ達!?どうしグホア!?・・・ガクッ」

 

めっちゃ臭い息だった。ホロロギウムでさえあまりの臭さに気絶してしまうほどだ。

ルーシィ達も外に出されて「くっさぁ!?」と喚いている。

 

ナツとアミクはダウンしていた。

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「おいナツ、アミク!情けねぇぞ・・・ってそうかお前ら鼻いいもんな!?」

 

 

臭すぎて戦いにならないので一旦逃げることに。

 

「ううう・・・まだ残ってる気がする・・・」

 

「・・・だったら!」

 

グレイが再び両手を構えた。

 

 

「アイスメイク・・・『(フロア)』!」

 

地面、一面が凍らされた。ネズミはそこを踏むとツルり、と滑り転倒する。

 

「みんな!今のうちに―――」

 

逃げるわよ、と続けようとしたルーシィだったが。

 

 

「今のうちボコれー!」

 

「えーい!」

 

「おらおらおら!!」

 

ネズミはアミク達にボコボコにされた。

 

 

「・・・あれ?何かあるわよ?」

 

ルーシィが指差した方を見ると、確かに古い遺跡があった。

近づいてみると、壁画があったので見てみる。

 

「月の紋章・・・?」

 

「そういえばここって月の島って呼ばれてたって言ってたね」

 

「月の島に月の呪い、月の紋章・・・怪しいわね」

 

「あからさまなほどに怪しいよね・・・まさか罠?」

 

 

怪しすぎて逆にそれが怪しくなってくる、なんてややこしいことになりそうだが調べてみないことには何もならない。

 

「とりあえず中には入れるみたい・・・うわ、ボロボロ」

 

アミクは一歩遺跡の中に入ってみたが色々崩れそうになっているので辟易する。

 

「ほんとだな全くよぉ、オラ!」

 

何を思ったか急に足を踏み鳴らすナツ。

 

「ほら、見ろ!床までボロボロ・・・あ」

 

床に亀裂が走り、砕けた。

 

「「きゃああああああ!!?」」

 

「おいハッピー、マーチ!!助けろー!」

 

「四人は無理ー!」

 

「なのー!」

 

 

 

ナツ達はそのまま下に落っこちて行った。

 

 

 

 

「・・・いてて、皆大丈夫か!」

 

「うーん、無事だよ。なんか重いけど」

 

「ってナツ!アミクに乗ってるわよ!」

 

「お、悪ぃ」

 

「今思ったけどオイラ達だけでも飛んでればよかったね」

 

「穴があったら落ちるべし、なの」

 

 

 

瓦礫をどかしながら立ちあがるアミク達。

 

「ったく、なんでおまえは考えなしに行動するんだ」

 

グレイが不満を言いながら周りを見回す。岩と岩との間に水晶のような綺麗な石があったりして神秘的な光が満ちている。

 

「へー結構綺麗なところだねー」

 

「秘密の洞窟か!」

 

「あい!何か財宝があるかもしれないね!」

 

「財宝!?」

 

「ルーシィ、目がお金になってる、の」

 

「・・・」

 

「グレイ?」

 

急にグレイが黙った。切羽詰まった顔になり汗がいくつも出てくる。そして震える声で言った。

 

「な、んで、なんでこんなところにアイツが!」

 

グレイの尋常ではない様子に思わず口を噤むアミク達。おそるおそるグレイが見ている方向を見た。

 

そこには―――

 

「で、でけぇ怪物が凍ってる!!」

 

「何よこれ!?」

 

「一体誰が・・・?」

 

アミク達は驚愕した。まるで悪魔その物のような風貌。それが氷漬けにされている。

 

「ありえねぇ!ここに、いるはずがないんだ!!

 

「グレイ・・・何か知ってるの?」

 

アミクが静かに聞くとグレイはゆっくり話しだした。

 

「こいつは、デリオラ・・・。『厄災の悪魔』デリオラだ!」

 

「デリオラ・・・?」

 

ナツは怪物―――デリオラを見上げた。そしてそのまま近づいていく。

 

「こんなデッケェ奴が――――」

 

突然、グレイがナツを殴り飛ばした。

 

「ぐヘア!!何すんだグレイ!」

 

「火の魔導士が近づくんじゃねぇ!これは氷だ、溶けたらどうする!?」

 

明らかに過剰反応だがグレイの顔があまりにも必死なので何も言えないアミクとルーシィ達。

 

「俺が近づいただけで溶けるほどこの氷はヤワなのかよ」

 

ナツが聞くとグレイは幾分か冷静になった様でかぶりを振る。

 

「いや・・・」

 

「君がそんなに動揺するってことは、深い因縁があるってことだよね?」

 

アミクの問いにグレイはゆっくり頷く。

 

「・・・あぁ、デリオラは――――」

 

「――――!待って誰か来た!」

 

アミクが耳をピクリ、と動かして告げる。

 

「やばっ、隠れないと!」

 

ナツ達はひとまずそこにあった岩の陰に身を潜めることにした。

 

しばらくすると二人の人物が現れる。一人は眉毛が特徴的な男。もう一人は犬みたいな顔をした男だった。

 

「人の声がしたのはこの辺りか」

 

 

「おおーん」

 

二人は歩いてくるとキョロキョロと辺りを見回す。

 

 

「・・・誰もいねぇみたいだな」

 

 

「誰もいねーのかよ!」

 

 

「キレんなよ。それよりトビー、その耳は『月の雫(ムーンドリップ)』の影響か?」

 

「飾りだよ!」

 

「だからキレんなって」

 

(あれ、飾りだったんだ・・・)

 

それより気になる用語が聴こえた。

 

月の雫(ムーンドリップ)』。

 

また月だ。とことん月と関係するものばかりらしい。

 

「・・・ユウカさん。トビーさん。悲しいことですわ」

 

そこに今度はケバイ少女が現れた。赤紫色の髪をツインテールにしている。

 

 

「・・・シェリーか」

 

「おおーん」

 

「アンジェリカが何者かによっていたぶられてしまいました・・・」

 

「ネズミだよっ!」

 

「ネズミではありません。アンジェリカです。アンジェリカは闇の中をかける狩人、そして愛!」

 

「強烈にイタイ奴が出てきたわね・・・」

 

「あのネズミ、アンジェリカって名前だったんだ・・・」

 

何気に失礼なことを言うルーシィ。

 

「あいつら、この島の奴じゃねえぇ、臭いが違う」

 

「・・・確かに」

 

アミクも鼻をクンクンさせて嗅いでみるとこの島とは別な臭いがした。

 

 

「おい、アンジェリカはともかく侵入者がいるみたいだぞ」

 

アミク達がギクッとなる。

 

 

「まぁ!ではアンジェリカもその侵入者とやらにやられたのですね!可愛そうなアンジェリカ・・・」

 

「侵入者かよ!」

 

「キレんなよ、ったく。邪魔されても厄介だ。見つけたら無力化しとけよ」

 

「おおーん」

 

「・・・わかりました」

 

シェリーだけは納得してなさそうだったが頷いた。

 

「さて、そろそろ零帝様のところに戻るか」

 

「はい。呼ばれたらすぐに駆け付ける、これが愛!」

 

「愛なのかよ!」

 

「毎回思うがお前のキレるポイントってなんだ?」

 

 

 

 

「・・・あの犬の人と眉毛の人のコント面白い」

 

「なんでアンタはたまにずれたこと言うのよ・・・」

 

ルーシィがアミクに呆れた。

 

 

「とにかく、夜になったらまたやるぞ。そろそろ溶ける(・・・)頃だと思うんだが・・・」

 

「おおーん」

 

「トビーさん。話し方がパターン化してますわよ」

 

「そういうメタ気味なことはナシの方向で」

 

 

 

 

三人はアミク達を見つけることもなく出て行った。

 

「・・・なんだよ、あいつらのこととっ捕まえて色々聞きだせばよかったじゃねぇか」

 

「今はまだ様子見よ。何が起きているのかは確認しなきゃ」

 

追いかけようとするナツを引き止めるルーシィが言った。

 

グレイは氷漬けにされたデリオラを見上げ口を開く。

 

 

「あいつらデリオラを何の為に・・・つーか、どうやって封印場所を見つけたんだ」

 

 

「封印・・・?」

 

 

「こいつは・・・俺に魔法を教えてくれた師匠、ウルが命をかけて封じた悪魔だ」

 

 

 

その言葉にグレイ以外の者達は驚愕する。

 

 

「氷の造形魔法の禁術・・・絶対氷結(アイスドシェル)。それはいかなる炎系の魔法でも溶けることのない氷だ。けどなんでこいつがここに・・・」

 

「確か、溶かすって言ってたわよね。もしかしてあいつら知らないのかも。それで何とかして氷を溶かそうと・・・」

 

 

「何の為だよっ!」

 

 

「わ、わからないわよ・・・」

 

 

「ちょっと、グレイ!ルーシィに八つ当たりするのはダメでしょ!」

 

グレイの剣幕に驚いて涙目のルーシィを庇うように立つアミク。

 

 

「・・・っ悪い・・・」

 

「う、ううん」

 

 

「・・・ちっ・・・くそ、調子がでねぇ。誰が何の為にデリオラを・・・」

 

 

「だからよぉ、さっきの奴らぶっ飛ばして聞きだせばいいじゃねぇか」

 

「・・・いや、あの人達と対面するにはまだ情報が足りないよ。

さっきあの人たち夜になったらまたやる、みたいなこと言ってたでしょ?

それに『月の雫(ムーンドリップ)』っていう言葉。

やっぱりあの月が関係してるはずだよ」

 

 

「アタシもそう思う。だから夜まで待とう、と思うの」

 

 

それを聞くとナツはげんなりした顔を浮かべた。

 

「ええぇぇ~、ヒマ死する!」

 

「ナツ、人間はヒマなぐらいじゃ死なない生き物、なの」

 

「たまにマーチが人類を超越してる気がする・・・」

 

 

 

 

数分後。

 

「ぐごおおおおお・・・」

 

「こいつ本能のまま生きてるのね・・・」

 

「ことが始まるのは夜だから今のうちに眠っておくのも正解だよ」

 

 

大の字で寝るナツを見ながらアミクとルーシィは会話する。グレイは端で考え事をしていた。

 

 

「でもさすがに暇だね」

 

「そうね・・・そうだ!こういう時に!」

 

ルーシィは銀の鍵を取り出すと星霊を召喚する。すると・・・

 

ハープを持った少女が現れた。

 

「きゃ~!ルーシィ、久しぶり~!全然呼んでくれないんだから~!」

 

「だってアンタ呼べる日が月に三回しかないんだもん」

 

「あれ、そうだっけ?」

 

少女―――琴座の星霊、リラはテンション高く騒ぎだす。

 

「なんかまたキャラ濃いの出たね・・・」

 

アミクが軽く引いてるとルーシィがリラに言う。

 

「ねぇ、なんか歌ってよ!」

 

「歌うの!?」

 

歌う、という言葉に反応するアミク。

 

「えぇ、リラは歌う星霊なのよ。声も綺麗だし一回聴いてみたら?」

 

「ふっふっふ。音楽のエキスパートである私にそのようなことを言うとは。

どれ聴いてあげよう」

 

「なんか偉そう・・・」

 

アミクがふんぞり返ってリラに指を突きつける。

 

「オイラ、魚の歌がいい!」

 

「ええ!なんでも歌うわよ!」

 

「リラは歌が上手いのよ。アミクといい勝負するんじゃない?」

 

「へぇー!」

 

「ミラも上手いよ、魚の歌歌ってくれるし」

 

「おまえの基準全部魚か?なの」

 

マーチが思わずツッコんだ。

 

「〜♪」

 

なかなかいい歌だった。心に染み渡るような麗しい声だ。

 

「そして美味い!」

 

「・・・って食べてる!?」

 

アミクがリラの歌声をパクパクと食べている。

 

「うん、この美味しさは歌が上手だって証拠だね!」

 

「美味しさ基準なんだ・・・」

 

リラの歌の内容はざっくり言うと「昔は弱かったけど今はこんなに強くなったんだぞ」的な歌詞だった。

 

「・・・グレイ、泣いてるの?」

 

ふ、とグレイを見ると肩を震わせていた。今の歌の何かが琴線に触れたのか。

 

「な、泣いてねぇ!」

 

「リラは人の心情を読む歌を歌うって言うけど・・・もうちょっと楽しい歌にしてくれる?」

 

「もう!最初っからそう言ってよ!」

 

「つか、うるさくしてたらバレるだろ」

 

「あ、ちょっと待って。せっかくだから反響マップ作るよ」

 

アミクが急に立ち上がり言った。

 

「反響マップ?」

 

「超音波を発生させてその反響で周囲の状況を知るエコーなんとかで地形を調べるんだよ!」

 

「エコーロケーション、なの」

 

ルーシィの疑問にハッピーとマーチが答えた。

 

「ーーーーーー!」

 

アミクが何か叫ぶような動作をする。超音波を出しているのだ。

 

超音波の反響により洞窟、そして遺跡の中の構造がなんとなく分かった。

これをするには高い集中力が必要なので他のことに気を向ける暇がなく、余裕がある時ぐらいにしかやれないのだ。

 

「・・・よし、分かった!あの出口以外にも所々穴がある。多分あれは遺跡に繋がってるんだね」

 

「へー、そんなことまで分かるのね。万能すぎやしないかしら?」

 

「でも、これすごい疲れるし魔力消費もそこそこあるんだよね。なのでちょっと休みまーす」

 

そう言うとアミクはナツを枕にして寝転んだ。

 

「・・・あの子も大概自由ね」

 

「いつもは色々頑張ってるんだけどな。俺たちのケンカ止めたりとか」

 

「・・・自覚してるならもうちょっと控えなさいよ」

 

 

 

 

「ん・・・?」

 

アミクは誰かが話しかけてきたように感じて目を開ける。

 

「誰・・・?」

 

呼びかけて見るが誰も答えない。ルーシィ達も寝てしまったのか。いや

 

「どうした?俺たち以外は誰もいないぞ?」

 

グレイは起きていた。

 

「・・・誰か喋ったような・・・」

 

アミクが首をかしげると。

 

『ーーーー』

 

「・・・!また!」

 

誰かが話している。一体誰が、どこで。

 

いや、場所は分かっている。あの氷(・・・)からだ。あそこから『声』が聞こえてくる。

 

(まさかデリオラ・・・?)

 

いや、違う。氷のようにひんやりしていて、なのに温かさを感じる声だ。

 

「・・・まさか・・・」

 

アミクはゆっくりと氷に近付く。

 

「お、おい!危ねぇぞ!」

 

グレイが注意するが、無視して氷に触れ、耳を当てる。冷たい。

けれど、鼓動が聞こえる。

 

人間のような鼓動が。

 

 

「あなたは・・・?」

 

内容は不鮮明だが確かに誰か語っている。

 

「アミク・・・」

 

グレイは呆然と立っていた。

 

「・・・この氷は、生きてるの?」

 

アミクはポツリと呟いた。

 

 

 

「・・・分かるのか。その通りだ」

 

まさかグレイから返答があるとは思わず、振り返る。

 

「え・・・?」

 

「その氷はウル、だ」

 

「ーーーーー!」

 

アミクは驚愕した。グレイが自分の命を賭けて封印したと言っていたがまさかーーーー。

 

「『絶対氷結(アイスドシェル)』は自分の肉体を氷に変えて、対象と共に永久に封じ込める「意思の魔法」。

つまり、その氷はウルの肉体が変化したものなんだ」

 

「ーーーーじゃあそれを溶かすってことは・・・」

 

「ーーー」

 

何も言わなかったがそう言うことなのだろう。

 

「だから、俺は絶対奴らを止める。ウルの名を汚した奴らを許しはしねぇし、ウルも溶かさせねぇ!」

 

グレイは決意するように言った。

 

「・・・うん。だったらますます止めなきゃね。私も手伝うよ、それ」

 

「・・・サンキュ。でもまさか氷になったウルの声まで『聴こえ』るなんてな」

 

「多分・・・強い思念が残ってるんだと思う」

 

「・・・思念」

 

「何言ってるかよく分からなかったけど・・・でも温かい心の持ち主なんだってことは分かるよ」

 

アミクが微笑みながら言うと、グレイは頭を掻きながら言った。

 

「へっ、ま、自慢の師匠だ」

 

「・・・ってことはその脱ぎ癖も師匠譲り?」

 

「い、いや確かに雪山で服脱がせて修行させたのはウルだが・・・癖付いちまって」

 

「真性の露出狂じゃん!」

 

「違ぇよ!いつの間に脱いでるだけだ!」

 

「客観的に見て変わらんわ!!」

 

そうやって騒ぐアミク達の声で目を覚ましたのかナツ達が起き上がる。

 

「かーっ!よく寝たー!お、もう夜じゃねぇか!」

 

「うーんおはよう・・・て時間でもないわね」

 

時間的にはちょうどよかったようだ。

 

「アミク、さっきの話は内緒で頼む」

 

「もちろん」

 

グレイとアミクは頷き合った。

 

 

 

しばらくすると、氷漬けのデリオラの頭上にある天井が崩れた。

 

「嘘!?何!?」

 

「あ!光が入ってきた!」

 

ハッピーの言う通り天井に開いた穴から紫色の光が降りてきて氷に当たった。

あの光はおそらく月の明かりだ。

 

「・・・まさか、あれで溶かすの!?」

 

「くっ、上か!急ぐぞ!」

 

グレイが先頭を切って駆け出す。後にルーシィ達も続くが、アミクだけはふと立ち止まって氷ーーーーウルを振り返った。

 

 

ーーーー弟子を、頼むーーーーー

 

 

今度ははっきりと『聴こえ』た。

 

 

「・・・任されました」

 

アミクはそう応えるとグレイ達の後を追った。

 

 

 

 

「アミクがここの地図持ってるようなものだからアミクに案内させた方がいいって早めに気づいてよかったぜ・・・」

 

「ほんとだよ・・・あ、なんかめっちゃ人いっぱいいる」

 

アミクを先頭にして遺跡の頂上に出たアミク達。そこには怪しげなローブを着た人々が謎の呪文を唱えながら儀式をしていた。

 

その中心に月の光が集まっている。

 

「あれが原因か・・・!」

 

「うわ、全く意味が理解できない、どこの言語?」

 

「あれはべリア語の呪文よ」

 

「うわ、リラまだ居たの!?」

 

なぜかリラが居たが知っているならばと教えてもらうことにした。

 

「あれが『月の雫(ムーンドリップ)』よ。アレで氷を溶かすつもりなのね」

 

「そんなバカな!あの氷は溶けない氷なんだぞ!」

 

「月の魔力を一つに収束することで、いかなる魔法をも解除する力を発揮するの」

 

グレイの叫びに答えるリラ。

 

「そうなんだ・・・」

 

「でも、強大な月の魔力は人体をも汚染する。おそらく、この島の呪いも『月の雫(ムーンドリップ)』が原因ね」

 

「やっぱり・・・」

 

「あいつら・・・!」

 

ナツが立ち上がろうとするのを慌ててルーシィが引き止めた。

 

「待ってナツ!誰か来る!」

 

とにかく隠れていると昼間に見た三人に加え、仮面を被った男性と謎の老人が出て来る。ついでにアンジェリカ(ネズミ)も。

 

 

「くそ・・・昼起きたせいで眠い」

 

「おおーん」

 

「侵入者も見つからなかったな」

 

「本当にいたのかよ侵入者!」

 

「キレんなって」

 

二人が夫婦漫才をしている間も仮面の男は黙ったままだ。

 

「悲しい事ですわ零帝様。昼に侵入者がいたようですが取り逃がしてしまいました・・・こんな私では愛を語れませんね」

 

シェリーが言うと、零帝と呼ばれた男はやっと口を開く。

 

「氷が溶けきるのはいつだ?」

 

「今日か明日になると思われます・・・」

 

「どっちだよ!」

 

「キレすぎると禿げるぞ」

 

「禿げんのかよ!」

 

 

 

「今の声・・・!」

 

グレイが零帝の声を聞き、愕然とする。

 

 

「ミョホホホホ、とうとうこの時がきましたな」

 

老人が不気味な笑いを響かせながら言った。

 

「ザルティ・・・ここまで来たからには絶対に成功させるぞ」

 

「もちろんですとも。私は協力を惜しみませぬ」

 

(・・・この匂い、どこかで・・・)

 

さっきからあの老人から嗅ぎ覚えのある匂いが漂っていた。

しかし、あんな老人見たこともないし声に『聴き』憶えもない。

 

誰かの血縁か、と考えて見ても『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』に似た匂いの者はいない。

 

(どこかですれ違ってたのかな?)

 

そう考えてそれ以降はあまり深く考えないことにした。

 

 

しかし、もしアミクが老人ーーーザルティからする『女の香水』の匂いについてもっとよく考えていれば正体に気づいたかもしれない。

 

確かに、アミクはザルティと会っていたのだ。

 

 

「だからこそ邪魔が入っては駄目だ。この島にいる人と言えばあの村の住人しかいない。

 

お前達、あの村を消してこい」

 

 

 

「・・・そんな・・・!」

 

「はい」

 

「おおーん」

 

「了解」

 

零帝が無慈悲に命令するのを聴きアミクが息を呑む、三人は返事をして村の方に向かおうとした。

 

「血は好まんのだがな」

 

そして、彼がそう言った直後。

 

 

「もうコソコソするのはやめだ!」

 

ナツが飛び出て吠えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 




トビーとユウカのやり取りが面白くてノリノリで書いてしまった・・・。
実際テンポ良いんだよねあの会話。

あと、ザルティの笑い声ってあれでよかったっけ?


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村を守れ!

シェリーってアミクと同い年だったんだな・・・。


「もうコソコソ隠れるのはやめだ!」

 

ナツが隠れていたところから飛び出して吠えた。

 

「俺たちがぁ、侵入者だぁ!!」

 

ナツが叫ぶとその場の全員がナツを見た。

 

「はぁ、やるしかないね」

 

「そうこなくちゃな」

 

「も、もう知らないわよ!」

 

アミク達も出て来る。

 

「・・・お前らが侵入者か」

 

零帝がこちらを見据えて言った。

 

「ふん、なるほど。魔導士か。どうやら村人が依頼したようだな」

 

「おい、これはどういうことだリオン!」

 

グレイが仮面の男に向かって叫ぶ。どうやら知り合いらしい。

 

「・・・グレイ。まさかおまえがこんな所にいるとはな。知ってて来たのか?あるいは偶然か」

 

そういって零帝――――リオンは仮面を外した。

 

そこには鋭い目つきをした銀髪の美青年がいた。

 

「てめぇ、自分が何してんのか分かってんのかよ!デリオラだぞ!ウルが命がけで封じた・・・」

 

「違うな、グレイ。

 

 ウルはお前が殺した」

 

リオンは冷たく、グレイに言い放つ。

 

「――――っ!」

 

グレイは口を噤んだ。何かに耐えるような顔をしながら。

 

アミクは不思議に思った。なぜ、本当はウルは生きてる、と言わないのか。

あの様子から見るにリオンとグレイはただならぬ関係であるようだ。当時の部外者である自分たちに内緒にするなら分かるが、

リオンにまでそうする必要はあるのか。

 

それにグレイが殺したというのも疑問に残る。

 

 

とはいえ、アミクは当時に何があったか分からない。そんな自分が何か言うのはお門違いだと分かってはいるが。

 

「ちょっと零ちゃん!グレイが好き好んで人殺しなんてするわけないでしょ!」

 

「零ちゃん・・・って俺のことか・・・!?」

 

リオンが愕然としたように呟く。

 

「確かにグレイはすぐ脱ぐし、デリカシーないし、すぐ脱ぐし、ナツと喧嘩ばっかりするし、

 すぐ脱ぐし、問題ばっか起こすし、すぐ脱ぐ人だけどさ!そんな言い方は無いと思うな!」

 

 

「そーだそーだ!」「あいさー!」「なのー!」「ボロクソ言われすぎじゃね、俺?」

 

「アンタがグレイの何を知ってるのよー!」

 

「脱いでばっかじゃねーかよ!」

 

 

アミクの言葉にナツ達も賛同する。トビーがなぜか怒っていた。

 

「お前たちこそグレイの何を知っている。俺達はウルの弟子だった。

 そっちはただの仕事仲間だろう」

 

「家族だ!仲間だ!」

 

ナツが間髪をいれずに叫んだ。

 

 

「・・・話にならんな。おいお前達。早く村を消してこい」

 

 

「あ、あれぇー!?」

 

ナツが叫んだ。どうやら自分達だけを狙ってくると思っていたらしい。

 

「邪魔する奴らもそれを頼んだ奴らも、全て敵だ」

 

リオンが口を歪ませて言った。

 

「おおーん!」

 

トビーだけ返事をすると三人と一匹は村の方向に駆けだす。

 

「まずい!追いかけよう!」

 

「待ちやがれぇ―――!」

 

アミク達が追いかけようとすると

 

 

「さむっ!」

 

ナツの周囲を極寒の風が漂い始めた。

 

「ナツ!」

 

「ハッピー!ルーシィを運ぶ、の!」

 

「あいさー!」

 

ハッピーがルーシィを、マーチがアミクを掴んで飛びあがる。

 

「・・・逃がすか」

 

「うぅ!寒い!」

 

今度はアミクの周囲に風が纏わりついた直後。

 

「させるか!アイスメイク『騎士槍(ランス)』!」

 

リオンに向けて造形魔法を放ったのでそっちの方に意識を向けざるを得なかった。

 

「冷た――――!これどうすんだよ!」

 

一方、ナツは胴体を氷で包み込まれて面白い恰好になっていた。

 

「・・・女どもと猫二匹を逃がしたか。まぁいい、あいつらに任せよう」

 

「おい、てめぇ!デリオラを復活させてどうするつもりだ!」

 

グレイがリオンに向かって叫ぶ。

 

「俺はウルを超える。それだけだ」

 

「・・・お前はもうウルの弟子じゃねぇ」

 

「お前もな。ウルはもう死んだんだからな」

 

リオンは冷たく笑った。

 

 

 

 

 

「ちょっと!ナツを見捨てるつもり!?」

 

「ナツはそう簡単にはやられないよ。私達はナツを信じて村を守るしかない」

 

「・・・そうね」

 

そう言って俯くルーシィを運ぶハッピーの顔は悔しげだった。

 

 

 

なんとか村に到着し村人たちに事情を話すアミク達。

 

「だから、皆避難を――――」

 

「魔導士の方々!これは一体どういうことですかな!?ほが」

 

「お、おじいさん!?」

 

そこに村長――――モカが現れる。やはり、モミアゲがすごい。

 

「月を壊してくれるのではなかったのですか!?早く、早く壊してくだされー!ほが」

 

「落ち着け村長!」

 

暴れるモカは他の村人たちに取り押さえられる。

 

「あの月のせいでボボは・・・!」

 

「悪いな。自分の息子のことがあるんでね」

 

一人の村人が申し訳なさそうに言った。

 

「い、いえ・・・それよりももうすぐあいつらが攻めてきます!急いで避難を!」

 

アミクが呼びかけると村人たちは慌ただしく逃げる準備を始めた。

 

「さて、私達は迎撃の準備をしなくちゃ。多分非難は間に合わないと思うし逃げるまでの時間稼ぎをしなくちゃ」

 

「ふっふっふー」

 

そこでルーシィが何か思いついた顔をした。

 

「あたしにいい考えがあるわよ!」

 

「自信満々な時に限って失敗するからなぁ・・・」

 

「失礼ね!」

 

とにかくルーシィの案を採用してみることに。

 

 

「オイラ、ルーシィのことバカだバカだって思ってたけどここまでバカだとは思わなかったよ」

 

「・・・・案外古典的な方法も役に立つもの、なの」

 

「うるさいわね!・・・とにかくよくやったわバルゴ!」

 

「お仕置きですか?」

 

「褒めてんのよ!」

 

ルーシィはバルゴにツッコんだ。

 

 

「まさか落とし穴だとはね・・・」

 

アミクはバルゴが作った落とし穴を見る。ルーシィが「入口一つしかないからそこに落とし穴作っておけば落ちる!」とか穴だらけの推論でやったものだ。

 

「これ引っかかる人相当バカでしょ・・・」

 

なんせ大きく開けた穴の上に草敷いただけなのだ。

 

「私も引っかからないと思います」

 

「いや、ノリノリで作っておいて何言ってんのこの人」

 

バルゴがふざけたことを抜かしたのででこピンしてやる。すると「あぁん、い、いいですね・・・!」とか言われた。

こんなのばっか。

 

「まぁいざとなれば私が――――」

 

 

そのとき、門が音を立てて開いた。

 

「来た!・・・」

 

 

そして現れたのは。

 

「ん?おおー!お前ら、無事だったか!」

 

 

氷の塊に包まれて傷だらけのグレイを背負っているナツだった。

 

「ナツ!?」

 

「グレイ!どうしたのその怪我!?」

 

「あー、それが・・・」

 

とナツが一歩踏み出すと

 

 

「ぐぺぇ」

 

落ちた。

 

 

『バカだ―――――!!』

 

「だ、台無し・・・」

 

ルーシィが顔を覆って言った。

 

「だぁー!誰だこんな所に落とし穴作った奴は!・・・お、氷割れた―!」

 

ナツが喜びながら飛びあがって来た。

 

「あ!グレイ治療させて!」

 

「おお、頼む!・・・でも他の奴らはどこ行ったんだ?」

 

リオンに付いていたシェリー達のことだろう。

 

「まだ来てないけど・・・『治癒歌(コラール)』」

 

グレイに手を向けるとグレイの体が光に包まれた。少しずつ傷が癒えていく。

 

「おお・・・!治療魔法を使えるとは・・・!」

 

村人もどよめいている。正確には音楽魔法(歌魔法でもいいが)を使った治療だ。

 

「これで、ひとまず安心・・・。でも、ナツよりも先に行ったはずなのにまだ来てないって・・・」

 

「嫌な予感がするわね・・・」

 

ルーシィも不安げだ。

 

 

 

そのとき

 

「お、おい!アレを見ろ!」

 

一人の村人が空を指差して叫ぶ。アミク達も釣られて見ると。

 

「ね、ネズミが空飛んでる―――――!?」

 

「って飛ぶ猫もいるからびっくりするほどでもないか」

 

なぜかすぐに冷静になったアミク。

 

尻尾をプロペラのように回しながら飛ぶネズミ。超シュールだ。

 

「なんか大きいバケツ持ってる、の」

 

「なんだろうね?」

 

そのネズミ―――――アンジェリカの上にはシェリー、トビー、ユウカの三人が乗っていた。

 

「あの者たちは・・・月の雫(ムーンドリップ)によって汚染された人達でしょうか」

 

「悪魔みてぇな奴らだな」

 

「悪魔なのかよ!」

 

「キレんなよ・・・いや、キレてもいいか」

 

「ええ・・・悪魔だなんて・・・醜く、汚らわしい」

 

 

 

そして、バケツからゼリーのような物が一滴、しかし大きいそれがルーシィ目がけて降ってくる。

 

「ゼリー・・・?」

 

ぼーっとそれを見るルーシィ。それを―――

 

「あぶねぇルーシィ!」

 

ナツが咄嗟に抱いて避けた。地面に咲いていた花に落ちたゼリーがじゅわああああ、と音を立てる。

見ると花が溶けている。

 

 

「ひぃっ!」

 

「あれからかなり危ない臭いがしたぞ」

 

「まさか・・・アレ全部?」

 

アミクはアンジェリカの持つ巨大なバケツを見て戦慄する。

 

「あの女の人の本名シェリーじゃなくてゼリーじゃない?」

 

 

 

「毒毒ゼリー・・・骨も残らずに溶かすゼリーです・・・はて?なぜかこのゼリーをあの緑の女性に掛けたくなってきましたがなぜでしょう?」

 

「これを喰らえばひとたまりもねぇだろうよ」

 

「おおーん」

 

そして、ついに投下される。

 

ドバァ、と村全体を包むようにゼリーが広げられた。

 

 

「う、うわああああ!!!」

 

「ボボの墓だけは守るぞー!ほが!」

 

「村長そんなこと言ってる場合か!」

 

村人たちはパニックになって悲鳴を上げた。

 

 

「ルーシィ!皆を中心に集めろ!」

 

「え?う、うんわかった!」

 

「アミク、行くぞ!」

 

「え―――あ、そういうことね!了解!」

 

ナツがルーシィとアミクに指示を出す。そして、ハッピーとマーチにも頼んだ。

 

「おまえら、俺達をあそこまで運べ!」

 

「あいさー!」

 

「なのー!」

 

アミク達は巨大なゼリーに向かって突進していった。

 

「ど、どうするつもり・・・?」

 

皆を集め終わったルーシィが心配そうに上を見上げる。

 

 

「いくぜアミク!」

 

「オッケー!」

 

 

アミクが右手に音を纏い、ナツが左手に炎を宿す。

 

二人の拳が合わさった。

 

 

―――合体魔法(ユニゾンレイド)―――――

 

 

「「『火炎音響滅竜拳』!!」」

 

 

二人の拳がゼリーの真ん中を穿つ。すると――――

 

 

「爆散した!?」

 

「ここで合体魔法(ユニゾンレイド)を!?」

 

 

ユウカとシェリーが驚いたように叫んだ。

 

 

真ん中から爆散したゼリーは村人たちがいる所の周りに落ちていく。

ちなみに墓の前から動かなかった村長はバルゴが助けた。

 

 

 

「そ、そんな・・・」

 

「俺達の村が・・・」

 

人的被害は無かったが、村の被害は尋常なものではなかった。周りを見渡す限り溶けて陥没した地面が広がっているだけだ。

 

 

「こんなひどいことを・・・」

 

アミクはそれを険しい目で見た。

 

そこにアンジェリカから降りてきた三人が歩いてくる。

 

「零帝様の敵は駆逐しなければなりません。慈悲として一瞬の苦しみだけを与えるのも、愛!

 ですが貴方たちはそれを拒否した。

 どうやら大量の血を流したいそうね」

 

シェリーが言うとユウカも溶け残ったボボの墓を蹴飛ばして言う。

 

「村人、約50。魔導士3。15分だな」

 

「おおーん」

 

「オイラ達もいるぞ!5人だ!」

 

「あーしは入れなくてもいいんだけど・・・なの」

 

「あなた達には・・・負けない!」

 

アミク達は臨戦態勢になった。3人も構える。

 

「貴様!ボボの墓を・・・!」

 

モカが怒ろうとするが村人にはがいじめにされ、連れて行かれる。

 

「村長!ここは危険だ!」

 

「グレイさんは任せてくれ!」

 

「がんばれー!」

 

村人たちは戦闘に巻き込まれないように避難する。

 

 

「逃がしませんよ・・・皆殺し、そう決まっています」

 

 

シェリーはアンジェリカに乗ると村人たちを追いかけた。

 

 

「うわっ」

 

 

そこでアミク達とすれ違う。

 

「しまった!アンジェを止めなきゃ!」

 

「アンジェ!?」

 

「なんか愛称で呼んでる!?」

 

ナツ達がびっくりしていた。

 

 

 

「あれ?ルーシィは?」

 

急にルーシィがいなくなったのでまさか、と思いつつアンジェリカを見ると。

 

 

「何かしがみついちゃった――――!!」

 

「なにやってんの――――!?」

 

ルーシィがアンジェリカの足に掴まっていた。

 

「ちょっと!村の人達に手出しはさせないからね!」

 

(切り替え早っ)

 

すぐに他人を慮れるのは善性だからだろう。

 

「ほーっほっほっほ!あなた一人にアンジェリカは止められませんわ!」

 

「ほーらこちょこちょこちょ」

 

「ちゅちゅちゅ!!?」

 

「あ、アンジェリカ!?きゃああああ!!!」

 

 

ルーシィがアンジェリカの足をくすぐって尻尾の回転を止め、そのまま一緒に墜落した。

 

 

「う、うわ~あれ大丈夫かなぁ・・・」

 

「潰れてたら大変だな・・・ハッピー、マーチ!ルーシィの方に行ってくれ!」

 

「あいさー!」

 

「了解、なのー」

 

2匹はルーシィが落ちたところに飛んでいった。

 

 

「ありゃシェリーの奴キレるぞ」

 

「キレてねぇよ!」

 

 

「何でキレんだよ。俺らはこいつらを相手するぞ」

 

ユウカとトビー。ナツとアミク。

 

互いに向き合う。

 

 

 

「極眉ちゃんと犬ギレちゃんか。私、犬ギレちゃんの方取るよ」

 

「おーしわかった。俺はこっちだな」

 

「お前、いちいち変な名前つけなきゃ気がすまねぇのか?」

 

「お前良いネーミングセンスしてんじゃねぇかよ!」

 

「え?褒めてるの?怒ってんの?」

 

 

「言っとくけど、俺はユウカよりも強ぇぞ」

 

「ふーん、関係ないけどユウカって女の子っぽい名前だよね」

 

「それ、俺も思ったけどユウカに言ったら超怒られた。そんなことでキレなくてもいいのにな」

 

「それ、絶対あなたには一番言われたくないと思う」

 

「お前ら聞こえてるぞ!」

 

ユウカが怒鳴ってきたのでアミク達はそろそろ戦闘に集中することにした。

 

「『麻痺爪メガクラゲ』!」

 

トビーがそう言うと両手から鋭い爪が出てきた。

 

「・・・それに斬られたら麻痺するとか?」

 

「おおーん!?なんで分かったんだ!?」

 

「うん、馬鹿だねこの人」

 

アミクはそっとトビーに右手を向ける。

 

「でも、見かけで油断するのはもっと馬鹿だからね」

 

「おおーん!お前、できるやつじゃねぇかよ!」

 

トビーが興奮したように言った直後、飛びかかってくる。

 

「はい、ひょい、へい!」

 

(思ったよりも速い・・・それに動きが柔軟)

 

爪を嵐のように振るうトビー。それをかわしながらどうやって倒せばいいか考える。

 

「・・・まずは普通に『音竜の響拳』!!」

 

「くぅん!?」

 

 

アミクのパンチに当たり吹っ飛ばされるトビーだが、すぐに起き上がる。

見た感じそこまでダメージは無いみたいだ。

 

「そして案外頑丈・・・と」

 

「おおーん、結構痛かったんだよ!」

 

そう言ってお腹をさする。まだ余裕そうだ。

 

「俺の速さについてこれるかよ!」

 

キレながら爪を振るうスピードも身のこなしも速くなったトビー。

 

それを飛んで、あるいは体を曲げて避けるアミク。

 

しかしーーーー

 

「・・・・うっ!」

 

トビーの爪がアミクの腕を少し切り裂いた。

 

「痛っ・・・」

 

「おおーん。当たっちゃったな!もうお前はビリビリ痺れて死を待つだけだよっ!」

 

アミクの腕から血が滲む。アミクは痛そうに腕を抑えた。

 

「避けきれなかったか・・・」

 

アミクはそのままトビーに向かって突撃していった。

 

「・・・あれ?」

 

トビーは鼻水を垂らして首を傾げた。あの毒は即効性ですぐに動けなくなるはずなのだが。

 

「なんで効いてねぇんだよっ!?」

 

「言っとくけど・・・」

 

トビーが呆然としている間にもアミクはトビーの懐に潜り込む。

 

「私に状態異常は効かない!」

 

そして、手刀を繰り出した。

 

「『音竜の斬響(スタッカート)』!!」

 

「おおーーーーん!!?」

 

音で作った刃で咄嗟にガードしたトビーの爪を折り、胸を切り裂く。

 

遅れて音がキィィィィン!!と聴こえた。

 

 

「ふぅ、『状態異常無効歌(キャロル)』掛けておいてよかった・・・」

 

それがなかったらちょっと危なかったかもしれない。

 

 

「おー終わったか」

 

「あ、ナツ。楽勝だったみたいだね」

 

「当たり前だ!魔法を中和するだがなんだか知らねぇけど俺には関係ねぇ!」

 

「へー」

 

「おい、それより血が出てるぞ」

 

「あ、『治癒歌(コラール)』」

 

さっき斬られたところを治す。

 

「・・・で、これからどうする?」

 

「あ、俺良いこと思いついたからちょっと行ってくるわ」

 

そう言ってナツはアミクの返事も待たずに村から去った。

 

「あ!もう勝手なんだから・・・」

 

仕方なくアミクはルーシィ達を探すことにした。

 

 

と、森から出てしばらくしたところで。

 

 

「え・・・!?」

 

縄に縛られたルーシィとハッピーとマーチ。そして

 

 

 

憤怒で冷たい表情を浮かべるエルザに出会った。

 

 

 

 

 

 

 

 




最近寝不足でして。

感想よろしく!


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仲違い

なんとなく今回の結末は決まってるんだよね。でもやっとファントム編が見えてきた・・・。


ルーシィを探していたハッピーとマーチはやっとの事でルーシィを見つけた。

 

「ルーシィ、見つけた、のー!」

 

「無事で良かった〜」

 

と近づいた。だが。

 

 

「・・・ハッピーとマーチか」

 

 

そこには後ろに阿修羅の幻影が見えそうなエルザが居た。

 

「エ、エルザぁぁぁぁ!!?」

 

「参りました、なの」

 

「早いよぉ!」

 

すぐに両手を挙げて降参ポーズをとるマーチ。

 

ハッピーはすぐに逃げようとするーーーーが。

 

「お前達には聞きたいことがある」

 

ハッピーの尻尾を掴んでぶら下げるエルザがそう言った。

 

 

 

 

 

 

「・・・エルザ」

 

アミクが少し震える声で呼ぶとエルザは貫きそうな視線を向けてきた。

 

「アミク、お前はやって良いことと悪いことの判別ができると思っていたのだがな」

 

いつもアミクに向ける優しい雰囲気は、そこには無い。

 

「今回の行動は目に余るぞ」

 

「・・・言い訳はしないよ。勝手に行ったのはどう考えてもこっちが悪いし」

 

「ア、アミクは何も悪くない!あたし達のことを止めようとーーーー」

 

「お前には話していない」

 

ルーシィが弁護しようとしたがエルザに冷たく切り捨てられる。

 

そして、アミクに剣を向けた。

 

「ギルドの掟に従わず、勝手にS級クエストを受けた。

 これがマスターへの裏切りにも等しいことは分かってるな?」

 

「・・・責任は全部私が受け持つよ」

 

「いや、全員に等しく責任がある。それにこれはお前1人が犠牲になればいい問題ではない。

 ギルド内の秩序の問題だ」

 

「・・・」

 

「確かに『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』は自由なギルドだ。だがーーーー

 

 

 自由と好き勝手を履き違えるなよ」

 

 

何も言い返せない。エルザの言っていることはどれも正しい。

 

 

あまりエルザに厳しいことを言われたことのないアミク。

 

怒られる覚悟はあったが胸を抉るような言葉とエルザの雰囲気につい涙を浮かべてしまった。

 

「・・・ナツとグレイはどこだ。見つけたらすぐに帰るぞ」

 

だが、次の言葉を聞いて涙が止まった。

 

「・・・エルザ、この島の事情を知らないの?」

 

「いや、全部ルーシィ達から聞いた」

 

「だったらまず此処をどうにかしないとーーーー」

 

「ーーーー興味ないな」

 

それは普段のエルザとは思えない言葉だった。

 

「なんで・・・!?この島の住人達も苦しんでるんだよ!?それにデリオラだって・・・!」

 

「知らん。私の任務はギルドの掟を破った者を連れてくること。私が受けた依頼ではない」

 

「ーーーー!」

 

「これは正式に受理した者が解決するのが筋だろう。私達には関係ない」

 

「関係ない・・・?」

 

悲しみは吹っ飛び今度は怒りが湧き上がってきた。

 

 

「何それ・・・関係ないってなに・・・?じゃあ見捨てるってことなの・・・?」

 

「そうとは言っていない。私達が手を出すべきではないと言っているのだ」

 

「それこそ!関係ないよ!」

 

アミクの怒りの声にルーシィ達はビクッとなり、エルザも目を見開く。

 

「人が困ってたら助ける!当たり前でしょ!?」

 

「お前達がしている事は魔導士として道理に合わない」

 

「魔導士だけど!何よりも、人間だよ!」

 

「オイラ達は人間じゃないけど」

 

「余計なこと言わない、の」

 

アミクはキッとエルザを見据えた。

 

「・・・そんな冷たい人だとは思わなかった」

 

「・・・」

 

今度はエルザが黙る番だった。

 

「分からず屋のエルザなんか大っ嫌い!!」

 

 

アミクはそう叫ぶとエルザの横を通り、何処かに走って行った。

 

涙をポロポロと流しながら。

 

 

 

 

「エ、エルザ・・・?落ち着いて・・・」

 

残されたルーシィ達はエルザの尋常ではない雰囲気に呑まれていた。

 

「うわ・・・絶対怒ってるよあれ」

 

「い、今は様子を見る、の」

 

「こ、怖いよエルザ様・・・」

 

ルーシィ達がそう言っている前で、エルザは

 

 

「・・・嫌われてしまった・・・」

 

 

どこか落ち込んだ声でそう呟いた。

 

話し込んでいたルーシィ達はそれに気付かなかった。

 

 

 

「で、お前だけ動けるのか」

 

「おおーん、思ったより傷が浅くて」

 

トビーはなんとかリオンの所に戻っていた。

 

「ホッホッホ、しかしまさか全滅とは!」

 

「えーと、女子に負けたのは内緒の方向で」

 

「なんでもいい。氷はもうすぐ溶ける。それまで持たせるだけだ」

 

リオンは薄笑いを浮かべた。

 

 

 

 

 

翌日。

 

目を覚ましたグレイはエルザに聞いた。

 

「・・・ナツとアミクは?」

 

「ナツは私が聞きたい。アミクはーーーー知らん」

 

なぜか少しシュンとなって言った。

 

 

 

 

 

「んあ・・・?やば、寝過ごした!?」

 

アミクは慌てて飛び起きた。

 

「えーと昨日は泣き疲れて寝ちゃったんだっけ?」

 

木の上に登って泣いていたらいつの間にか寝てしまったようだ。

 

「・・・ふー、とりあえずエルザのことは今は忘れよう」

 

アミクは寝ていた木から飛び降り、地面に着地する。

 

「まずはあの遺跡に行こう。ナツもきっとあそこに居るはず」

 

アミクは遺跡を目指して走り出す。

 

 

 

 

 

グレイが自分を連れて帰ろうとするエルザに啖呵を切ったり、自分に向けられる剣を、血を流すのも厭わず掴んだりした後。

 

「・・・これでは話にならん。仕事を終わらせるぞ」

 

エルザがルーシィ達を縛っていた縄を斬った。

 

「エルザ!」

 

「全く、グレイといいアミクといい頑固な者ばかりだ」

 

エルザはそう言いながらも仕方なさそうに笑った。

 

「アミクー、待ってろ、なのー!」

 

マーチがフワフワと飛びながらグレイの後を追った。

 

 

 

 

 

ドオオオオン!

 

「うわ!なに!?」

 

アミクは急な轟音に驚いて遺跡を見た。もちろん轟音を食べるのも忘れない。

 

「・・・遺跡が、傾いてる!?」

 

なんと遺跡全体が30度くらい傾いてた。

 

「・・・そっか!これなら月の光が入ってこないね!」

 

これをやったのはおそらくナツだろう。戦闘面では頭の回転が速いナツ。

こんな無茶苦茶な発想をするとは・・・。

 

 

「さっすが、ナツだね!」

 

アミクは嬉しそうにそう言うと中に入った。

 

 

 

 

 

中ではリオンとナツが戦っていた。

 

 

「ナツ!おはよう!」

 

「おう、おはよう・・・って言ってる場合か!」

 

ナツはリオンの放った氷の鳥を避けながら叫ぶ。

 

「え!?氷の造形魔法!?・・・そっかリオンもウルの弟子だって言ってたね」

 

「そうだ、俺は『動』のアイスメイクを使う」

 

そう言うと片手を持ち上げて叫んだ。

 

「アイスメイク!『白竜(スノードラゴン)』!」

 

氷で作ったドラゴンがアミク達の方に向かう。

 

だが。

 

 

「『火竜の鉄拳』!」

 

「『音竜の響拳』!」

 

2人の攻撃により粉々に壊されてしまった。

 

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)(ドラゴン)を仕向けるなんて無謀なことするね!」

 

「おい!アミク!コイツは俺が倒す!横取りするんじゃねぇ!」

 

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」

 

「俺の前で揉め事とは余裕だな」

 

リオンがまた片手を持ち上げた。

 

「アイスメイク・・・『大猿(エイプ)』!」

 

 

巨大な猿の形をした氷がアミク達を押しつぶそうとしてきた。

 

「音竜の『輪舞曲(ロンド)』!」

 

アミクが腕を振るって氷を割り壊す。

 

「零ちゃん!もうやめてよ!月の雫(ムーンドリップ)はもう当たらない!それにこんなことしたらーーーー」

 

ウルが溶ける、と言いたがったがグレイが本当はウルが生きていることを言わない、

ということは意味があるのだろうと思い黙っていた。

 

「お前さっき普通に呼んでただろ」

 

「黙れ、俺はウルを超えるんだ!こんなところでお前らに手間取ってる暇はないんだよ!」

 

「アミク、コイツは氷を溶かして師匠が倒せなかったデリオラ倒すんだってよ」

 

なるほど、そうやって自分がウルより強いのだと証明するのだろう。

 

「そんなことのために・・・・!」

 

ーーーウルを溶かすのか。知らないとはいえ自分の師匠を。

 

本当はリオンは薄々勘付いているのだが、それを知れば流石のアミクもキレるだろう。

 

 

「リオン!貴方は強さに取り憑かれてるだけ!もっと周りを見れば強さ以外にもーーーー」

 

「ーーーー凍れ」

 

「冷た!」

 

リオンが直接アミクの腕を凍らせた。腕が動かない。

 

「こんなもの!」

 

だが、衝撃波を発生させて壊す。

 

「・・・あっさり壊すか」

 

「氷は元々水!水分子を振動させて内側から壊せる!」

 

ただ、それをするには直接氷に触れだ方が成功しやすい。

 

「ちょっと凍傷できたかも・・・ナツの炎で瞬殺できると思ってたのに」

 

「俺の氷を舐めるな。ウルをも超える冷気だぞ」

 

「・・・そんなに師匠を超えることに執着してるけど、なんでそこまで・・・」

 

「俺にとってはウルが全てだった」

 

急にリオンが語り出した。

 

「俺は弟子時代、ずっとウルを超えることを目標にしてきた。

 だが、グレイはそんな俺の目標を奪ったのだ」

 

聞くところによると、グレイは幼少期にデリオラに襲われ、故郷を滅ぼされ、家族も皆殺しにされたらしい。

そこをウルに助けられ、弟子入りした。

 

そうしてリオンと共に修行していたある日、デリオラの情報を聞いた。

グレイはいても立ってもいられず敵討ちをしにデリオラの元へ向かう。

 

だが、結局返り討ちに遭い、ウルとリオンも駆けつけてくれたが歯が立たなかった。

 

そこで、リオンは諸事情によって意識がなかったが、後でグレイに問い詰めたところ、

ウルが『絶対氷結(アイスドシェル)』を使って死んだ、と言った。

 

 

「グレイがデリオラに挑まなければウルは死ぬことはなかった」

 

 

 

「・・・ああ、そうだよ。それは俺が背負うべき十字架だ」

 

後ろから声がして振り向く。そこにはグレイが居た。

 

「グレイ!怪我はもう大丈夫なの!?」

 

「ああ、お前が治療してくれたんだろ?助かった」

 

グレイはリオンの前まで来ると両腕を交差させる。

 

「な!お前・・・その構えは・・・!」

 

「ああ・・・『絶対氷結(アイスドシェル)』だ」

 

「え・・!?」

 

なぜここで。

 

 

「これが俺のケジメだ!ここでお前を止める!」

 

「・・・そんなものは脅しだ」

 

「脅しかどうかはその目で見てみろ」

 

瞬間、グレイの魔力が高まる。

 

「・・・!本気か、貴様!」

 

「俺は過去の罪を清算しなきゃならねぇ。

 

だから――――」

 

「てい」

 

「うごお!?」

 

それをアミクがチョップして止める。

魔力は霧散した。

 

「な、なにすんだてめぇ!」

 

「バーカバーカ変態露出魔」

 

「だからなんだって――――うげ!?」

 

「お前が馬鹿なことしようとしてるからだろ」

 

今度はナツがグレイを殴った。

 

「目の前で死のうとしてる仲間を止めないと思う?」

 

「・・・これは俺の問題だ。お前らに止められる筋合いはねぇ」

 

「ふざけないで!」

 

バチィィィン!!

 

とアミクが小さな衝撃波を発生させながらビンタした。

 

「いいいいいい!!?さっきから俺の顔を変形させる気か!!」

 

そこでアミクの顔を見たグレイは言葉を止める。

 

「こんの馬鹿ァ!!」

 

ポロポロと雫をこぼしながらアミクはグレイを罵倒する。

 

「グレイが死んだら、悲しむ人、いっぱい居るんだから!」

 

ごしごしと目を拭うと俯く。

 

「私だってそうだよ・・・」

 

グレイは何も言えずにいた。

 

「あのなー、お前のことは気に食わねぇし腹立つけどよ、でもお前が居なかったら張り合いねぇじゃねぇか」

 

ナツも言う。

 

「『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』にはお前が居なきゃだめなんだよ。分かってねぇな」

 

ナツが小馬鹿にしたように笑った。それにグレイはカチンときてナツに突っかかる。

 

「んだと、分かってるわそんなもん!俺みたいな強者は皆から頼りにされんだよ!」

 

「なにぃ!?俺の方が強ぇ!常識だろ!」

 

「・・・ふふ、いつもの2人だ」

 

いきなり喧嘩を始めた2人にアミクはクスリ、と笑うと――――

 

「あ、れ?」

 

「うお、なんだ!?」

 

急に地鳴りがしたと思うとグイ、と床が傾いた。

 

否―――

 

元に戻った(・・・・・)

 

「はぁー!?なんでだよ!?」

 

「ほっほっほ、遺跡は戻しましたぞ」

 

「よくやった、ザルティ」

 

目の前でケンカされて唖然としていたリオンはやっと満足げな顔を浮かべる。

 

「あ、貴方がこれを!?」

 

「いかにも」

 

「てめぇ、余計なことしてくれやがったな!」

 

ナツがザルティに怒鳴り声を上げた。

 

「これじゃ、また月の雫(ムーンドリップ)が・・・!?」

 

「ほっほっほ」

 

ザルティは笑いながら通路の奥に消えた。

 

「だぁー!あいつぶっ飛ばす!」

 

「・・・グレイ!リオンはお願い!

 きっちりけじめを付けてきて!!」

 

アミクが真面目な顔をして言うとグレイは不敵に笑った。

 

「ああ・・・!」

 

「百万回ぶん殴る!!」

 

「途方もない時間がかかりそう・・・」

 

アミクとナツはザルティを追いかけた。

 

 

「ほっほっほ!」

 

「待ちやがれー!」

 

「や、やっぱりどこかで・・・」

 

アミクはザルティを追いかけながらも彼から漂う甘ったるい臭いに憶えがある気がした。

 

「くそー!逃げてばっかじゃねぇか・・・」

 

「・・・!ナツ!上!」

 

アミクが警告するとナツは咄嗟に上を向く。見ると天井の一部が崩れてナツに落ちてきている。

 

「なんのぉ!」

 

ナツがすかさず蹴りあげた。だが―――

 

 

「も、戻った!?」

 

何と崩れた天井が時間を捲き戻すかのように直っていったのだ。

 

「す、凄い魔法!」

 

「ほっほっほ!私の魔法は『時のアーク』。失われた魔法(ロストマジック)です」

 

「え?」

 

「貴方がたと同じ、ね」

 

(この人は・・・私を知っている!)

 

アミクは確信を持ってザルティに問いかけた。

 

「貴方・・・私と会ったことあるでしょ」

 

「ほっほっほ。はてさてどうですかな」

 

すっとぼけたように言うザルティ。アミクはじっと彼を見るが、それでも笑顔を絶やさない。

 

 

「なんだ?見たことあるのか?」

 

「見たことは無いけど、嗅いだ事はある」

 

「なんだそれ、変態みてぇだな」

 

「だまらっしゃい!って居なくなってるー!?」

 

ツッコンでる間にザルティがどこかに消えてしまった。

 

「どこ行きやがった!」

 

アミクはスンスン、と鼻を鳴らして臭いを辿ってみた。

 

「たぶんデリオラの所だよ!」

 

臭いがそこから続いている。アミク達は急いでそこに向かうことにした。




ゴメン今回あまり出来がよくないや。
やっぱり原作がないとだめっすね・・・。あと発想力。

楽園の塔だってやらなくちゃいけないし・・・せめて大魔闘演武まではいきたい。


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『厄災の悪魔』デリオラ

思い切ってやってみよう原作改変。

できるかな?

それより最近、真島先生の『エデンスゼロ』読んでるんですけど。
あれだね、ヒロインはデカパイじゃないとダメみたいだね。


暗い洞窟の入り口。

 

ここから先に行けば氷漬けのデリオラがいる。

 

アミクはこれまであった出来事を思い出しながら足を進める。

 

「アミク、あいつ女の香水の匂いだったよな」

 

ナツが突然聞いてきた。

 

「うん、確かにそんな匂い・・・なんだろ実はオカマなのかな?」

 

「多分アイツ女装癖あるんだ!」

 

「なるほど!」

 

急にアミクが馬鹿になった。

 

「女、女物・・・うーん引っかかるなぁ」

 

「考えるのは後だ!」

 

そう言ってナツは洞窟の中に飛び込んでいく。そこには予想通りザルティがいた。

 

「とりあえず、燃えとけぇ!」

 

ナツがいきなり飛びかかる。しかし、ひょい、とかわされた。

 

「ほっほっほ、愉快な言葉ですな。しかし、よくここが分かりましたな」

 

「俺達は鼻がいいんだ!」

 

ザルティは高く突きだした岩の上に座った。何を考えているか分からない笑顔でこちらを見ている。

 

そして、手に持っているのは水晶玉。

 

(・・・ん?)

 

猛烈な既視感。臭いと水晶玉・・・・。

 

もう少しで繋がりそう・・・。

 

「ちなみに、お前の臭いは女の香水の匂いだ!」

 

「そうですか・・・とにかく邪魔はさせませんよ」

 

ザルティがそう言うと水晶玉がふわりと浮かんだ。

 

「・・・ねぇ、貴方の目的はなんなの?」

 

そこで、アミクが問いかけた。

 

「ほっほっほ、何を言うかと思えば・・・デリオラを復活させるのですよ」

 

「違う違う、デリオラを復活させてどうするの?」

 

ザルティは肩を竦めた。

 

「ほっほっほ、どうするんですかな。最近入ったばかりなもんで」

 

「他の人達じゃないよ。貴方の(・・・)目的はなんなの?」

 

 

 

「・・・ほっほっほ。なかなかの鋭さですな」

 

少し返答までに間が開いた。

 

「やっぱり、お前は他の奴らとちょっと違うんだよな」

 

ナツも訝しそうに言う。

 

「どちらも戦闘での頭の回転が速いようですな」

 

また怪しく笑う。

 

「っていうかもうデリオラを復活させるのは無理だ!やめとけ!」

 

「ほう、なぜ無理、と?」

 

ザルティがナツに聞くとナツが獰猛に笑った。

 

「グレイがアイツをぶっ飛ばす!

 そして俺達がお前を百万回ぶっ飛ばす!」

 

「え、私五十万回も殴んなくちゃいけないの?」

 

アミクが嫌そうな顔をしているとザルティがアミクに向けて水晶玉を飛ばしてきた。

それがアミクの腹に突きささる。

 

「が、はっ!」

 

「アミク!てめぇ!」

 

ナツがザルティに向けて飛びかかった。が、ナツの後頭部に水晶玉が当たる。

 

「ぐっ!」

 

「ほっほっほ、できるものならやってみてもらいたいものですな」

 

そう言ってまたアミクに向けて飛ばしてきた。今度は飛んでくるタイミングに合わせる。

 

「ええい!」

 

水晶玉を蹴って、衝撃波で壊した。水晶玉は粉々に割れる。

 

 

「よし、これでもうあの玉は使えないよ!」

 

「お忘れですかな?ほれ」

 

すると玉が巻き戻るように元に戻っていった。

 

 

「そうだった!」

 

「鬱陶しいな、あの玉!」

 

ザルティに近づこうにもあの水晶玉のせいで接近を許されず、遠くから攻撃しようにも水晶玉に阻まれる。

 

アミク達は攻めあぐねていた。

 

そのとき。

 

 

天井から細い一筋の光が降ってきた。

 

 

「うそ!?月の雫(ムーンドリップ)!?」

 

「誰か儀式やってんのか!」

 

アミク達が慌てるがザルティは余裕そうな笑顔を浮かべていた。

 

その光はデリオラの氷に当たった・・・瞬間。

 

氷が溶け始めた。

 

「え・・・!?」

 

「ほっほっほっ・・・たった1人では月の雫の効果は弱いのですが・・・既に十分な月の光が集まっております・・・

 あとはきっかけさえ与えてしまえば・・・」

 

言っている間にもどんどん溶けている。アミクは目の前が暗くなるような感覚に襲われた。

 

 

ウルが、グレイの師匠が、溶けていく・・・。

 

 

「止めないと!!」

 

アミクはすぐに頂上に向かおうとするが―――

 

天井が崩れ、大きな岩が入口を塞ぐ。

 

「逃がしませんぞ・・・私を追ってきたのはミスでしたね・・・火竜君に音竜ちゃん」

 

「・・・くっ!」

 

このままではウルが。

 

「・・・あの人魔法は多分人には使えねぇんだろ?」

 

「私もそう思う・・・正確には生物には、かな」

 

もし生物の時をも操れるのならば自分達に使えばいいことだし、あのデリオラの氷もどうにかできたはずだ。

 

ウルが氷になって生きているとするならば一応生物であると言える。

 

「ほっほっほ!やはり!頭の回転が速い!」

 

アミク達の会話が聞こえていたのか、ザルティが笑いながら言った。

 

 

 

「アミク!合わせろ!」

 

ナツがアミクに向かって叫ぶ。

 

「・・・うん!」

 

ナツは壁を蹴るとザルティに突っ込んでいった。アミクは岩陰に隠れる。

 

「ほっほっほ、私は未来をも操る事ができるのですぞ」

 

すると水晶玉が目にも止まらぬ速さでナツの顔面にめり込んだ。

 

 

「・・・今だアミク――――!!」

 

 

「ほ?」

 

ザルティが間抜けな声を出した。

 

「音竜の――――」

 

後ろから声が聴こえて慌てて振り向きながら、水晶玉をぶつけようとする。警戒はしていたはずなのにいつの間に・・・。

だが、水晶玉はナツに抑えられていた。

 

「んぐぐぐ!逃がさねぇぞ!」

 

「――――!」

 

仕方なく天井を崩し、岩を当てて止めようと振り向いたザルティは目を疑った。

 

確かに声がしたはずなのに誰もいなかったからだ。

 

「そっちはフェイク!・・・そう言えば未来を操る事ができるんだって?」

 

いつの間にかアミクはザルティの真下に潜り込んでいた。

 

「奇遇だね。私もなんだよ・・・あなたは0.45秒後に、衝撃波に襲われる!」

 

そのまま思いっきり顔面を殴った。

 

 

「ゲボォ!!」

 

ザルティは吹っ飛んで壁に叩きつけられた。

 

 

さっきのザルティの後ろからした声はアミクが『声送(レチタティーヴォ)』で送った声だったのだ。

 

それに気をとられている間に懐に潜り込む、という簡単な戦法だった。

 

ナツの突撃と合わせて二重の囮だ。

 

 

「よし!早く儀式を止めないと・・・」

 

と、岩を壊して頂上に行こうとしたところで。

 

 

パリンとデリオラの頭を覆っていた氷が割れた。

 

そして

 

グオオオオオオオオオオオ!!!

 

『厄災の悪魔』が雄叫びを上げた。

 

「う、うるせぇ!!」

 

「そんな場合じゃないけどいただきます!シュルルルル!!」

 

めちゃくちゃでかい声だったんでおいしく頂きました。

 

ただ、実は声を食ってしまったことで外に漏れずにエルザ達には聞こえていなかったりする。

 

「パクっ・・・デリオラが、復活しちゃう!」

 

「もういっそここでアイツ倒した方が良くね?」

 

「うーんそれもそうな気がしてきた」

 

アミクまで脳筋になってきた。

 

 

(でも、儀式を止めないとウルが・・・)

 

もう頂上まで行って儀式を止める時間がない。

 

アミクは急いで溶けてだらだらと水が流れている氷まで近づく。

 

「止まって!お願い止まって!」

 

アミクは必死に氷から溢れる水を手で押さて止めようとする。

もちろん暖簾に腕押しだ。

 

「アミク!危ねぇぞ!」

 

ナツがそんなアミクを引き剥がす。

 

「ウルの!ウルの声が、消えていく!」

 

――――もう、いい――――

 

ウルはアミクに対して慈愛の籠った声を響かせた。

 

「なんで、諦めちゃうの!?グレイもリオンも!貴方のことを―――」

 

「おまえ、誰と話してんだ!?」

 

ナツにはウルの声が聞こえない。ナツにはアミクが虚空に向かって喋っているようにしか見えなかった。

 

――――私はもう死んだも同然。二人には私に縛られずに生きて欲しい――――

 

「私は!貴方に生きて欲しい!生きてグレイとリオンに会ってよ!ねぇ・・・」

 

アミクが懇願している間にも氷はどんどん溶けていた。

アミクがさっき必死に掴んだ水は、手のひらに残っている大きな水滴を残して全部無くなっていた。

 

「おい、アミク何してんだよ!コイツぶっ飛ばすぞ!」

 

ナツがいつデリオラが復活してもいいように臨戦態勢になった。

 

そこに――――。

 

 

「待て!!お前らでどうにか叶う相手じゃねぇ!!!」

 

傷だらけのグレイが現れる。

 

少し遅れてグレイよりも傷だらけなリオンも這いながら現れた。無様だ。

 

「アミク!離れろ!」

 

グレイがそう言うと両腕を交差させた。あの構えは――――

 

それを見たリオンが必死の形相で叫んだ。

 

「な!『絶対氷結(アイスドシェル)』!?よ、よせグレイ!!!あの氷を溶かすのにどれだけの時間がかかったと思ってるんだ!?」

 

「やめてグレイ!」

 

アミクも訴える。

 

「これしかねぇんだ!!

 今やつを止められるのは・・・これしかねぇ!!」

 

グレイの魔力が高まる。余波でグレイの周りの床や岩が凍りついていった。

 

「グレイ・・・!」

 

アミクはその魔力の奔流の中へ足を踏み入れた。

 

ツインテールの片方が固まり、左腕が凍りついた。

手のひらの水滴まで凍りついている。

 

あまりの寒さに顔が青白くなり、吐いた息が白くなって消えた。

 

 

「お、おい!やめろ!俺に近づくとお前も凍っちま・・・」

 

「ウルは・・・ウルは!こんなことさせるために、貴方を生かしたんじゃない!」

 

アミクが泣き叫ぶように言う。グレイは何も言えず彼女の凍りついた涙を見た。

 

「しぁ、幸せ、にな、ってほしいか、からひっしに、生か、そ、そうとし、たって、いってる、よ・・・?」

 

「・・・!」

 

ガチガチに震えながらも言葉を紡ぐアミク。

グレイは、彼女が氷になっていたウルの声が聴けるのを思い出した。

 

ボゥ!

 

 

アミクを暖めるように炎が出現する。アミクの背後にはナツが真面目な顔をして立っていた。

 

「死んで欲しくねぇから止めたのに、俺達の声は届かなかったのか・・・?」

 

「私の、魔法を、使わなくたって、届く、と思ってたのに・・・」

 

ナツがアミクが、自分を責めるように話す。

 

そして――――

 

 

――――生きろ、グレイ――――

 

師匠(ウル)の声が聴こえた気がした。

 

「私達も、いるって・・・・」

 

 

とうとう耐えられなくなったのかアミクはふらり、とその場に倒れそうになった。

それをナツが支える。だが、彼女は自分の肩を抱くようにして震えている。

 

「アミク!!」

 

グレイは『絶対氷結(アイスドシェル)』を中止せざるを得なかった。

咄嗟にアミクの頬に触れた。

 

冷たい。

 

こんなになるまで、彼女は自分を止めようと、ウルの言葉を伝えようとしてくれたのだ。

 

「さ、寒い・・・」

 

「ちょっと待ってろアミク。俺はアイツを、倒して来る!」

 

ナツがアミクをグレイに預け、デリオラに向き直った。

 

 

その時

 

 

氷が全て溶け、デリオラが解き放たれた。

 

 

「グオオオオオオ!!」

 

「俺は、最後まで諦めねぇ!」

 

ナツがそんなデリオラに飛びかかる。

グレイはそれを見て絶叫した。

 

「よせ!やめろおおおおおおおおお!!!」

 

「『音、竜の、咆哮』・・・!」

 

アミクも最後の力を振り絞ってブレスを放つ。いつもと違い、弱々しいブレスだ。

 

それが、デリオラの額に命中した。

 

 

直後。

 

ピシ、ピシピシピシ!!

 

 

デリオラの額に罅が入り、

 

ガラガラガラ!!

 

 

そこを中心に崩壊した。

 

「んお!?なんだ!?」

 

 

「デリ、オラは、既に死んでいたんだ、よ・・・。

 ウルの中で、十年間もいて、命を蝕まれていったんだ・・・」

 

アミクが息も絶え絶えに説明する。

 

「だから、ウルが、倒したようなものだよ・・・」

 

「すっげぇ!すげぇなお前の師匠!」

 

ナツが興奮したように叫んだ。

 

「・・・俺に、ウルは、超えられない・・・!」

 

リオンは膝をついて泣いていた。自分が執着していたものがあっさり打ち砕かれたのだ。

それも、自分が超えようとしていた師匠の手によって。

 

そのリオンの姿は懺悔するようにも、憑きものが落ちたようにも見えた。

 

グレイはアミクを優しく横たえるとデリオラが凍っていた場所―――そこにある海と繋がっている池に手を入れる。

 

つまり、溶けて水となったウルがいる所。

 

グレイは静かに涙を流した。

 

「ありがとう・・・ございます・・・師匠・・・!」

 

グレイの因縁はこうして終わった。

 

 

 

ちなみに寒さに震えていたアミクはナツが炎で暖めていた。

 

「ほーら暖かいだろ!」

 

「んあー、あったかーいあったかくてきもちー・・・

 ってあっつ!熱い!!あちちちち、近すぎ!火、近すぎ!!」

 

凍傷の代わりに火傷が付きそうだった。

 

 

 

 

 

「熱かった・・・でもありがとナツ」

 

「へへ、元気になったんならよかったぜ!」

 

 

そのとき、グレイが気まずそうな顔をしながらアミク達の元にやってくる。

 

 

「あー、アミク。もう大丈夫か?」

 

「うん!あ、そうだ!治療しないと!」

 

「お、おい、さっきまであんなに冷えてたんだ。あまり無茶は・・・」

 

「グレイに言われたくないよ!はい大人しく治療されて!」

 

「・・・ああ」

 

グレイは嬉しそうに微笑んで返事をした。

 

いざ、治療を、と構えたところで。

 

アミクは自分の手に何かがくっ付いているのに気が付いた。

 

(これは・・・?)

 

それは丸い氷だった。さっきアミクの手のひらに残っていた水滴が『絶対氷結(アイスドシェル)』の魔力で凍りついたのである。

 

しかし―――

 

(なんで、まだ溶けてないんだろう?)

 

アミクはそれを見ながら溶けた水の混じる池を見た。

 

(ウル―――)

 

アミクは悲しげにそれを見て手もとの氷に目を戻した。

 

「アミク?どうかしたか?」

 

「あ、ううん、なんでもない!」

 

アミクはその氷をポケットに入れると治療を始めた。

 

 

 

 

 




皆さんも、急に友達が両腕を交差させたら全力で止めましょう。
悲劇を防げるかもしれません。
(羞恥という名の)

ガルナ島編は次回で終わりです。


そしたらいよいよ出ますよ、ガジガジが!


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島の呪いとウルの雫、そして仲直り

今回でガルナ島編はおわりー。

疲れた・・・。


「ほら!零ちゃんも治療するから!」

 

「・・・もうその呼び方はやめてくれ・・・」

 

アミクはグレイの治療した後、リオンの方もついでに治療した。

 

「・・・いいのか?俺は敵だったんだぞ」

 

「もう終わったでしょ、敵だった時間は」

 

元々、敵だろうと治療するお人よしだ。

色々終わった今、そんなことは関係ないのだ。

 

「みんなー!無事だったのねー!」

 

「アミクー!心配した、のー!」

 

「なんか久しぶりにマーチ見た気がする」

 

実はデリオラが崩れた時に洞窟も崩れてしまった。だから外からアミク達は丸見えなのである。

 

 

「ルーシィこそ!よかったよほんとに」

 

「アミクー!アンタが一番心配だったんだからね!」

 

「ええー」

 

とりあえず、アミク達は再会を喜び合った。

 

「いやー終わった終わったー!!」

 

ナツが両手を上げて喜ぶ。

 

「これで俺達もS級クエスト達成だー!!」

 

「だー!!」

 

ナツの叫ぶ姿を真似て、ハッピーも飛び上がり、一緒に喜ぶ。

 

「もしかしてあたし達2階に行けちゃうのかな!?」

 

ルーシィも嬉しそうに言い

 

「はは・・・」

 

グレイもすっきりしたような顔をしている。

 

「うーんと、誰か忘れてるような・・・」

 

アミクは二人ほど記憶から抜けている気がして思案する。

 

「・・・」

 

そこに、緋色の髪を持つ女性、エルザが現れた!

 

 

「ああああ――――!!」

 

そうだった、とばかりにエルザを指差し大声を上げるアミク。

 

他の人達もエルザを見て、青ざめる。

 

「げぇー!?エルザいたのかー!?」

 

「あ、そういや言うの忘れてた」

 

「そ、そうだぁ、お仕置きが待ってたんだぁ・・・」

 

「ひぃ・・・」

 

ルーシィ達はブルブルと震えた。

 

エルザとアミクの目が合う。

互いに気まずいのか目を逸らしあった。

 

「そ、その前にやるべきことがあるだろう」

 

「え・・?」

 

皆キョトンとなる。他に何かあっただろうか。

 

「今回の依頼は・・・『悪魔にされた村人を救うこと』だろう?」

 

「でもデリオラも倒したし呪いも解けるんじゃない?」

 

ルーシィが言うとアミクが思い出したように言った。

 

「・・・いや、リラは『月の雫(ムーンドリップ)』の魔力で汚染されたからとか言ってなかったっけ」

 

「あ、そうだった」

 

「どっちにしろもう『月の雫(ムーンドリップ)』は集まることもねぇし、ほっとけば元に戻るんじゃないか?」

 

グレイの疑問にエルザが答えた。

 

「例えそうだとしても元に戻るまでどれくらいの時間がかかるか分からん。

 今すぐ解決したほうが村人達も安心するだろう」

 

「ん、そうだけど・・・そんな方法あるかな?」

 

アミクは問う様にリオンを見た。ここで『月の雫(ムーンドリップ)』を集めていた彼ならば何か知っているのではないかと思ったからだ。

だが返ってきた言葉は簡潔なものだった。

 

「俺は知らんぞ」

 

「ほんとかよ?」

 

グレイが疑う様にリオンを見る。

 

「三年前、この島に俺達が来た時、俺達は村が存在するのは知っていたが・・・村の人たちには干渉しなかった。

 逆にあっちから会いに来ることもなかったしな」

 

「・・・え?三年間一度も?」

 

なんだかおかしな話になってきた。普通、なにかしら気付いて調査ぐらいしに来ると思うが。

 

「・・・っていうか三年間月の光浴び続けてたんでしょ?なんでリオン達はなんともないの?」

 

『あ!』

 

「なんだ?なにがだ?」

 

ナツだけ分かっていなかった。

 

「・・・気をつけろ、奴らは何かを隠している」

 

リオンが忠告してくれた。

 

「・・・零ちゃん。いや、リオン。強さを求めるのは悪いとは言わないけど、周りのものもちゃんと見てみなよ」

 

アミクはリオンから去る前に一つアドバイスしていった。

 

 

リオンはすでにウルを超えることには執着していない。

だが、今まで身につけてきた力も無駄にしたくない。

そこで、この力を有効的に使いつつ、楽しく過ごせそうな所を考える。

 

あと、気になったことを一つ。

 

「さっき、普通に名前で呼んでただろ・・・やっと本名言った、みたいな雰囲気出しやがって・・・

 名前で呼ぶかあだ名で呼ぶか統一しろよ・・・」

 

意外とみみっちい事を気にする奴だった。

 

 

 

 

 

「・・・」

 

「・・・」

 

 

「なぁ、アミクとエルザどうしたんだ?なんかギクシャクしてね?」

 

「あの二人ちょっとケンカしたのよ・・・」

 

「ケンカ!?エルザとか!?昔のミラじゃあるめぇし・・・」

 

「アンタらのケンカとは違うわよ・・・」

 

隣り合って歩いているのになんだかぎこちなく歩いて、会話をするときも必要最低限。

それすら、固い。

 

そして、事情を知らぬナツがルーシィから話を聞いていた。

 

 

 

二人共仲直りしたいのだが、互いにビビってなかなか切り出せていないだけなのだ。

 

 

そんな二人を呆れたようにマーチが見ていた。

 

そうして村に着いた一行。

 

そこで、目にしたのは。

 

 

「あ、れ・・・!?村が直ってる!?」

 

ルーシィが驚いて叫んだ。

毒毒ゼリーのせいでほぼ壊滅状態になっていた村だが、それが時間を捲き戻した(・・・・・・・・)かのように直っていた。

 

アミク達にはこれをやった人物に心当たりがあった。ザルティとか名乗る老人だ。

「・・・そういえばそっちも忘れてたな・・・」

 

一回ぶっとばしてからどこに行ったか分からなかったが・・・

この様子を見る限り無事だろう。

 

「どういう心境の変化だろう・・・?」

 

もしかしてサービスのつもりだろうか。

よく分からない人だ。

 

それにその老人だけはデリオラを復活させる意図が違ったように感じる。一人だけ異質だったのだ。

 

 

 

ちなみにリオンにシェリー達が協力していたのは彼女らがデリオラによる戦災遺族であり、

デリオラに恨みを持っていたからだ。

そこで、リオンが打倒デリオラを掲げていたので、それに協力していたというわけだ。

 

 

 

「ほが、魔導士さんがた、ご無事ですかな。なにやら轟音が聞こえましたが・・・」

 

「あ、はい大丈夫です」

 

「それならよかった。それより!いつになったら月を破壊してくれるのですかな!?」

 

この村長、月を嫌いすぎである。そうなった経緯を考えると仕方ないのかもしれないが。

 

アミクが苦笑しているとエルザがモカに話しかけた。

 

「はい、大変お待たせした。これから、月を破壊します」

 

 

・・・・・・

 

 

 

『はぁっ!!!?』

 

アミク達はびっくり仰天して飛びあがった。

 

「おお!本当ですか!?」

 

「やっと、やっと呪いから解放される・・・」

 

「ああ、ボボよ・・・ついにお前の仇が取れるぞ・・・」

 

村人たちは大喜びした。互いに抱き合う程だ。

 

 

「ええ・・・流石のエルザでも無理でしょ」

 

「アタシもそう思う」

 

「なんであんなこと言ったんだエルザ・・・?」

 

呆然としながら言葉を紡ぐアミク達。

 

だが、ナツは面白くなさそうな顔をしている。

 

「なんだよ、俺が壊したかったのに」

 

「いや、ナツにも手伝ってもらうぞ」

 

「本当かー!?」

 

「あと、あ、アミクにも、な」

 

エルザがこっちを見て(微妙に目を逸らしているが)言った。

 

「あ、うんわかった」

 

月を破壊するのに自分も必要なのだろうか?

あるいは『月を壊す』というのは比喩表現なのか?

 

 

 

 

エルザ達は高い櫓の様なところに登っていた。

 

「方法としてはこうだ。

 私は投擲力を上げる『巨人の鎧』と闇を退ける力を持つ『破邪の槍』に換装する。

 次にアミクが私とナツの攻撃力を強化。

 最後にナツが、私が槍を投げるのと同時に後ろから殴れ。

 これだけの火力が合わされば月までも届くだろう」

 

「おお――!!おもしろそうだなー!!」

 

「えぇ、ほんとにやるの・・・それでも届かないでしょ絶対」

 

ぶつぶつ言ってる間にもエルザは換装し、すでに槍を構えている。

 

「ええいままよ!『攻撃力強歌(アリア)』!」

 

アミクが二人に付加(エンチャント)した直後。

 

「今だ!ナツ!」

 

エルザが振りかぶり、ナツが思いっきり槍の石突を殴った。

 

「火竜の鉄拳!!」

 

同時にエルザが槍を投げた。

 

投げられた槍はぐんぐん空に飛んでいき――――

 

 

ピシッ

 

 

月に刺さった。

 

 

『うそおおおおおおおおお!!?』

 

アミク達は口をあんぐりと開けてどんどんひび割れていく月を見る。

 

 

(わ、割れる音が随分近い様な!?)

 

アミクはそこに違和感を持ったが村人たちは喜色満面だ。

 

罅は広がりそして――――

 

パリイイインン!!!

 

 

割れた。ガラスが割れるような音だった。

 

とりあえず食った。

 

 

 

 

しかし。

割れたにもかかわらず、月は健在だ。いや―――

 

 

「色が元に戻ってる!?」

 

そう、もう紫色ではなくなったのだ。

 

「空が、割れた?」

 

そうとも言える割れ方だった。なんかここを覆っていた膜を割るような・・・。いや、実際膜みたいのを割っていた。

 

「・・・あれが、呪いの正体だ」

 

櫓から降りたアミク達はエルザの説明に耳を傾ける。

 

 

あの膜は『月の雫(ムーンドリップ)』の影響でできた膜らしい。

あの膜は島だけを覆っていたため、島の中でしか紫色に見えない。

だから、別の場所から見ても普通の月だったわけである。

 

 

「・・・で、呪いは解けた筈だよね?

 じゃあ、なんで村長さん達は元の姿に戻ってないんですか?」

 

「それに、リオン達はここに三年前から居たって言うぜ。

 あんな目立つ遺跡、これまでなんで調査しに行ったりしなかったんだよ?」

 

アミクとグレイが村人たちに問うた。

 

 

「そ、それが・・・あの遺跡には行ってはいけないしきたりがあって・・・」

 

「そんなこと言っている場合ではなかっただろう」

 

エルザがすかさず反論する。

 

「・・・実は我々も何度も調査に出向こうとしました。

しかし、なぜか門を出てあの遺跡に向かおうとすると村に戻ってしまうのです」

 

ある村人の口から語られる真実。

 

「・・・なぜ、呪いは解けたのに姿が戻っていないのか。

 なぜ村人たちは遺跡に行けないのか。

 その答えが、目の前にある」

 

そこで、エルザは言葉を区切った。

 

「貴方達の姿そのものだ」

 

『え?』

 

「えーと、つまりどういうこと、なの?」

 

マーチが代表して聞いた。

 

「・・・ここの住人達は元々悪魔だったんだ」

 

『なにぃぃぃ!!?』

 

アミク達は今日何回目か分からない驚きの声を上げた。

 

「そーなのか!?」

 

「い、言われてみれば・・・」

 

「そ、そうだ、俺達は悪魔だったんだ!」

 

「なぜ忘れて・・・」

 

村人たちが急に自覚し始めた。

 

「・・・もしかして、これが呪い?」

 

「気付いたか。そうだ、あの『月の雫(ムーンドリップ)』は人間ではなく悪魔だけを汚染したのだ」

 

察したアミクに頷くエルザ。

 

「それも、記憶を汚染したのだろう。

 それで『自分は人間だ』『呪いによって悪魔になる』という認識に変わってしまったのだ」

 

「・・・やっと、全ての謎が解けたよ・・・」

 

 

アミクが何度も頷いて納得した。

 

 

そこに

 

 

「やっと皆正気に戻ってくれたな」

 

一人の男がやってきた。村人たちとナツ達は唖然とする。

 

何となく予想していたアミクは「やっぱりね」と頷いていた。

 

村長であるモカは彼を見て膝を突いた。

 

「おお・・おお・・・ボボ!!」

 

そう彼は死んだと思われていた船乗りの男だったのだ。

 

「な、なんで生きて・・・」

 

「ゆ、幽霊~~~!!」

 

ルーシィとハッピーがめっちゃビビってた。

 

「悪魔が胸を刺されたくらいで死ぬわけないだろ」

 

ボボはそう言って笑った。

 

 

「お、お前!あんときどうやって消えたんだよ!?」

 

ナツがボボを指差しながら聞く。

 

 

「あ、飛んだんでしょ?」

 

『え?』

 

アミクがあっさり言うとナツ達が彼女を見た。

 

 

「あのとき、変な音したから上見たら飛んでたんだよね。何かが」

 

「・・・嬢ちゃんにはバレてそうな気がしたんだ。思いっきり目合ってたしな」

 

(合ってたんだ・・・)

 

それはアミクも知らなかった。

 

「お、おい!じゃあおめぇ、呪いの正体とか最初から知ってたのか!?」

 

「ちゃうねん!後でモカさんから話聞いた時は、

 ボボさんは呪いで悪魔化したけど翼が生えて飛べるほど順応したのかな、って思ったんだよ。

 なんかあの時点ではボボさんが生きてることを伝えるのもやめた方がよさそうだったし。

 ・・・まさか元々悪魔だったなんて思わなかっきゃっ!」

 

歩きながら説明するアミクだが、彼女が急に落ちた。

 

そう、ルーシィが作った落とし穴まで復活してしまったのだ。

 

「きゃっ、って・・・」

 

「かわいい声でたな」

 

「・・・なの」

 

「あ、あたしのせいじゃないわ!」

 

ナツ達は苦笑いだ。

 

「と、とにかく!呪いの正体には気付いてなかったよ!」

 

アミクは穴から這い上がり、頰を赤らめて告げた。

 

結局アミクはボボが幽霊ではないことは知っていたわけである。

ぶっちゃけビビリ損だ。

 

「じゃあ、なんであたし達には言わなかったのよ。話す機会はあったでしょ?」

 

「・・・単純に忘れてた」

 

『おい』

 

全員がアミクにジト目を向けた。

 

 

バサッ

 

 

また、あの音がした。

 

見ると翼の生えたボボが空を飛んでいた。

 

 

 

「とにかく、俺はなぜか記憶が戻っちまってな。自分のことを人間だと思い込んでるアンタ達が怖くて

 島を出たんだ!」

 

「うう・・・うううう、ボボォォォ!!!わしを許しておくれえええ!!!」

 

モカが泣きながら翼を広げ、ボボの元に飛んでいき抱きついた。

 

他の悪魔たちも翼を生やして次々と飛んでいく。

 

 

嬉しそうな顔をしながら飛んでいるその姿は―――

 

「悪魔というよりは天使みたいだな」

 

グレイがそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

その後、村全体で宴会を開きアミク達は功労者ということで一緒に参加させられた。

それはもう猛烈に感謝され、食べて、飲んで、騒いだ。

 

途中でユウカ達が謝罪のために村まで出向いてくれたが―――

 

 

「ほらほら、極ま―――――ユウカとケバ――――シェリーも一緒に楽しもうよ!」

 

「おまえまだそのあだ名引きずってたのか・・・」

 

「ちょっと!なんて呼ぼうとしましたの!?

 返答によってはアンジェリカの餌にしますわよ!?」

 

「俺は呼んですらくれねーのかよっ!」

 

トビーが珍しく正当にキレていた。

 

 

「リオンは?」

 

「リオン様は―――少し一人になりたいそうです」

 

 

色々と心の整理も付けなければならないのだろう。アミクも無理に誘おうとはしなかった。

 

 

 

 

皆騒ぎ疲れて寝静まった頃。

 

アミクは一人海岸付近に来ていた。

 

「・・・ウル――――」

 

アミクは海を見て名前を呼ぶ。

 

グレイの師匠だという彼女とは直接会ってはいないが、心を通わせ、会話した関係である。

 

思いやりが深く、弟子たちを大切に思っていた心の綺麗な人だった。

 

「せめて、グレイ達と話しさせてあげたかったな・・・」

 

あの声を聴けたのは自分だけだ。それを他人にも共有できなかったのか・・・・。

 

アミクはポケットから綺麗に丸くなった氷を取り出し、それを見て嘆いた。

 

「はぁ、グレイに変な脱ぎ癖付けさせたこと、文句言いたかったのに・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――――そんなのあたしに言われても困るね』

 

 

「うっひゃああおおおう!!!」

 

 

びっくりした。めっちゃびっくりした。

 

 

心臓止まるかと思った。

 

 

思わず氷を放り投げる。

 

 

『ちょっと!そのまま海に落とすなよ!』

 

やはりだ。氷から声が聴こえる。落とした氷を拾う。

 

 

「・・・・もしかして、ウルさん・・・?」

 

『ウルでいいよ。全くそこまで驚く必要あるか?

 私と会話するのは初めてじゃないだろう』

 

「いやいや、もう貴方は溶けて氷には残ってないと思ってたんですよ!」

 

『・・・まぁ間違っちゃいない』

 

「え・・・?」

 

 

 

ところでこの図、傍から見たら氷と話している危ない女である。

 

 

『あんたの言う通り、私のほとんど、つまり本体は海に流された。

 今の私は残留思念みたいなものさ』

 

「・・・んーと、ちょっとだけ残ったウルってこと?」

 

『そういう認識でいいよ。

 あの時、アンタの手のひらに水となった私が残ってただろ。

 そのまま、グレイが使おうとしていた『絶対氷結(アイスドシェル)』の魔力に突っ込んだ。

 私は元々『絶対氷結(アイスドシェル)』の氷だったんだ。その魔力に当たったことにより、

 水の中に残っていた魔力が反応して再び凍りついた、という訳さ』

 

「なるほど、だから溶けないんだ・・・」

 

『これも、色々な奇跡が重なって起きたことなんだ。

 私も予想外だよ』

 

「・・・」

 

 

アミクはそっと氷を見た。何の変哲もない氷のように見えるがこれはウルなのだ。

 

「・・・話せるのは私だけ?」

 

『こんな風にいつも会話できるのはアンタぐらいだろうね。

 後は頑張れば他の人達とも少しは話せると思う』

 

「・・・だったらずっと私が持ってる方がいい?

 できればグレイにあげたかったんだけど」

 

『なんだ。これ、お前の師匠、って渡すのか?

 私は嫌だね。気まずくてしょうがない』

 

「ウルはどうしたいの?」

 

『・・・できれば一緒にいてあげたいさ。だが、あの子達は私がいなくとも

 生きていけるし十分強い。それに、ずっとくっ付いていたら私が子離れ出来てないみたいだろ?』

 

「そうかな、親は子が何歳になっても心配するもんだと思うけど」

 

『良い親ってのは子の自立も見守るものなんだよ』

 

 

ウルはそう言うと優しげに微笑んだ、ように見えた。

 

 

「・・・だったら、さ。ずっと見守ってればいいじゃん」

 

『・・・?』

 

「この氷をウルとは言わずにグレイに渡すから、グレイの傍でずっと見守り続けてよ。

 自分の弟子の成長を特等席で見れるんだよ?

 そうやっていつかはグレイと話してよ。

 つーか私がそうさせる。グレイに譲るのは決定事項ね」

 

 

『・・・はぁ・・・』

 

 

「あ、ごめん。もしかしてリオンの方が良かった?」

 

 

『私はどっちも好きだけどね。そこに優劣はないよ。

 ただまぁアンタもいるし、『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』には興味があるしね』

 

「分かった。・・・あと、言いたかったけど」

 

アミクは嬉しそうに微笑んで伝える。

 

 

「―――生きててよかった、ウル」

 

 

『――――ふー、これが人たらしってヤツ?

 グレイが惚れそうで怖いな。いや、もう手遅れか・・・?』

 

あ、そうそう、とウルは続けた。

 

 

『こっちこそ私を生かしてくれて感謝するよ。

 いや、ほぼ死んでるようなもんだが・・・。

 でも、アンタがいなかったら私はこうしていられなかったはずだ』

 

「―――私はアミク!アンタじゃないよ」

 

 

『は、そうだったね。とにかくありがとうアミク。

 これから私はこの目で弟子を見守っていられる―――――海からも、ね』

 

 

そう、この氷だけではなく、海と一つになったウルもグレイとリオンを見守っていくのだろう。

 

 

 

『・・・で、どうやって渡すんだ?』

 

「それにはいい考えがあってね・・・」

 

 

 

 

 

 

「ううぅん・・・」

 

 

グレイは目を覚ました。どうやら外で寝ていたらしい。

 

あの宴会で騒ぎまくってそのまま寝落ちしてしまったのだろう。

 

「・・・うおっ」

 

目をこすって顔を上げるとじーっと顔を見ていたアミクと目が合った。

 

「アミクかよ。どうしたんだ?」

 

「・・・いや、傷残っちゃったなぁって」

 

アミクがグレイの瞼の上にある傷を触りながら言った。

 

「・・・こうなったら治癒魔法でも消えないんじゃないかな」

 

「いいんだよ。男にとって外の傷は勲章なんだろ?ちょうどいいじゃねぇか」

 

「ふふ、グレイ、クサいよ」

 

「う、うるせぇな!良いだろ別に!」

 

グレイはちょっと恥ずかしかったのか顔を赤くする。

 

しかし、目を真っ直ぐに見てくるアミクに思わずドキッとした。

 

「・・・うん。これは因縁に決着がついた証。そういうことだよね?」

 

「・・・ああ」

 

グレイはこの傷に意味をくれたことを嬉しく思った。

 

 

「ね、グレイが首にかけてるそのアクセサリー。ちょっと見せてくれる?」

 

「ん、いいぞ」

 

 

グレイはネックレスをアミクに手渡した。

 

そのネックレスは十字型の剣で交差している所にちょっとした窪みがある。

 

アミクはこっそり手に持っていた(ウル)をその窪みに押し当てた。

大きさぴったり。

 

 

そのまましばらく押し当てると―――

 

「・・・よし!」

 

「な、なにしたんだ?」

 

窪みの所には氷がしっかりとくっ付いていた。

 

完全接着の魔法アイテムを持っていたのでそれを使って氷とネックレスをくっ付けたのだ。

実はこの魔法アイテムはほぼ同化するほど接着力がすごいので使うには細心の注意が必要である。

 

 

「なんだこれ?これは・・・氷?」

 

「お守りみたいなものだよ。ウルの氷がちょっとだけ残ってたんだ・・・嫌だった?」

 

アミクが不安そうに聞くとグレイは嬉しそうに笑って答えた。

 

「嫌なわけないだろ。すげー嬉しいわ」

 

「お、おう。珍しいね、グレイがそこまで喜ぶなんて」

 

「・・・まぁ、ウルの形見みたいなもんだからな」

 

それに、とアミクを見た。

 

「俺のためにプレゼントしてくれたんだからな。喜ぶしかないだろ」

 

「・・・まぁ、なんにせよ気にいってもらえてよかった」

 

「ああ」

 

グレイは頷いてネックレスを首にかけたーーーーーいつの間にか上半身裸になっていた。

 

 

『・・・な、なぁこれ、弟子の裸体に身を預けてるみたいで無性に恥ずかしいんだが・・・』

 

ウルがそんな初々しい事を言ってきたのでアミクは親指を立てて応えた。

 

 

「お?似合ってるか?」

 

「うん、バッチリ!」

 

『おい、待てこれは、なんか違う!』

 

ウルの講義を聴かずにアミクはその場を離れた。

 

『ったく、この馬鹿弟子が・・・』

 

どこか楽しそうなウルの声を聴きながら。

 

 

(二人が、また会えてよかった・・・)

 

 

 

 

 

「そんな・・・報酬は受け取れぬ、と・・・?」

 

「この依頼は不当に受けて来たものです。なので報酬を貰うわけにはいきません」

 

「そ、それでも私たちは感謝しているのです!」

 

「・・・では報酬は鍵だけを貰います。お金はいりません」

 

「「えーーーー!!」」

 

「あたし、欲しい!」

 

というわけで結局報酬は鍵だけになった。

 

 

「ありがとう!本当にありがとう!」

 

悪魔達に感謝されながらもアミク達は船に乗る。

 

この船はエルザがここに来るときに海賊をボコって乗せてもらったものらしいのだ。

エルザの方が海賊っぽい。

 

「はぁ・・・」

 

エルザがため息をついているのを見てアミクはそっと近付いた。

 

「エルザ」

 

「!・・・なんだ?」

 

エルザがちょっと動揺して聞いてくる。

 

こっちもウルと話して勇気をもらった。

 

「その・・・昨日はごめん。ひどいこと言っちゃった。

 悪いのは私の方だったのに・・・」

 

「い、いや気にするな。私の方こそ言い過ぎた。すまない」

 

「っていうより元から手伝うつもりだったでしょ?」

 

アミク達のやり取りを固唾を呑んで見守っていたルーシィ達が驚く。

 

 

「えええーーー!?そうだったの!?」

 

「なんだよ、じゃああんなに怒る必要なかったじゃねぇか!」

 

「怒ってたのは本当だぞ?ただ、私はお前達の心意気も聞きたかった」

 

「心意気?」

 

「ああ、たとえ不当で受けた依頼だとしてもやり遂げようとしたこと。

 困っている者を助けるのを優先したこと。

 お前達からはその意気が感じられた。

 私があんなに怒りを顕にしたのも本音を見るためだったのだ」

 

アミクは途中からそうなのではないか、という気がしていた。

あのセリフはあまりエルザにそぐわなかったからだ。

 

「中途半端に手を出しておいて途中で投げ出すようなら、

 それこそ許しはしなかっただろう」

 

『ヒィ!?』

 

ナツ達がビビった。

 

「ま、まぁだから私があそこまで言ったのは本意ではないのだ・・・」

 

ションボリと項垂れるエルザ。そこまで大嫌い発言は効いたらしい。

 

「ほ、本当にごめんなさい・・・」

 

アミクはペコリ、と頭を下げた。

 

「・・・ほら!二人とも握手!」

 

ルーシィがアミクとエルザの手を取って近づかせた。

 

「・・・うん」

 

「すまなかったな」

 

 

二人は仲直りの握手をした。

 

っていうかエルザ痛い。強く握り過ぎ。

 

 

「うんうん、よかった、の」

 

「あい」

 

『若い子達のケンカは青いね』

 

ウルの声はアミクにだけ聞こえた。

 

 

 

一行を乗せた船はハルジオンを目指して進んで行く。

 

 

 

 

 

 

こうしてアミク達は無事にS級クエストを達成できたのだった。

報酬は鍵だけだったが、アミクにとってはウルの氷もそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

「行ったな」

 

「不思議な方々でしたね」

 

「べ、別に泣いてなんかねーよっ!」

 

島の崖の上では三人と1匹の影。

 

アミク達の乗った船が離れて行くのを見ながらリオンは仲間に聞く。

 

「なぁ・・・ギルドって楽しいか?」

 

 

 

 

「あと、あのアミクって娘かわいい。彼氏とかいるのか?」

 

『え”』

 

リオン。改心したからってキャラまで変わりすぎである。

 

 

 

 

 

「・・・それで、デリオラは回収できなかったか」

 

「ごめんなさいね、ジークレイン様。まさか、あの女の力がこれほどまでとは」

 

「そういうことを言うもんじゃないぞ。ウルの()――ウルティアよ。

オレはオマエの母を尊敬している。生きていれば間違いなく聖十魔道の一人となっていただろう」

 

「かいかぶりすぎよ。母は魔の道にとりつかれすぎて、父に捨てられた惨めな女」

 

「失うものが大きければ大きいほど、得られる力は強くなるものだ。お前の母のようにな」

 

「私は(ウル)の中でも小さな存在よ」

 

「どうかな。幼い弟子を育てたのも、お前への未練にもーーー」

 

それ以上はダメ。というばかりに、ウルティアがジークレインの口元を指で抑える。

 

 

ザルティの正体はアミクが前に会った美女、ウルティアだったのだ。

彼女は変装して、デリオラの氷を溶かし、デリオラの力を手に入れようと画策していた。

しかし、デリオラが崩壊したため、その目論見は崩れた。

 

 

「でもまさかあの『歌姫』が来るとは思わなかったわ。

 危うくバレるところだった」

 

「声を変えておいてよかったな。あの娘は声の記憶力がいい。

 今回はそれが仇になった形になったが・・・」

 

「それよりもあの子、(ウル)と会話していたわ。

 『声』を聴いたんでしょうけど」

 

「ほう、無機物となった人の声まで聴けるとは。

 『音竜』の名も伊達ではないな・・・ん?」

 

ジークレインがウルティアの顔を見るとーーーー

 

プクーとアミクに殴られたところが餅みたいに膨れ上がった。

 

 

「きゃあああ! 何よコレぇ!」

 

「あっははははっ! 今頃はれてきやがったのか!」

 

ウルティアは涙目で頰を抑える。ジークレインはそれを見て大笑いをしていた。

 

 

「それで、どうだった?」

「あの子たち、強くなるわよ。半分も力を出してなかったとはいえ、一瞬だったもの。

 特にあの連携は目を見張るものがあるわ」

 

「『双竜』。その真骨頂、というわけか。二人の息の合った連携で相手を追い詰める」

 

「よっぽど互いを信頼してなきゃできない芸当ね」

 

ジークレインは薄く笑った。

 

「どちらもあの本物の(ドラゴン)の子だ・・・・

 

 俺の理想(ユメ)のために、燃え続け、奏でろ」

 

 

物語は加速していく。

 

アミクを待ち受けるのはなんなのか。

 

彼女の終曲(フィナーレ)はどんなものになるのか。

 

 

・・・今はまだ前奏。

 

演奏は続いているのだ。

 

 

 




はい終わりー。
やっと終わった・・・。
はい次回からいよいよファントム!とりあえずジョゼは股間潰す。


で、この作品ではウルは氷として(一応)生かすことにしました。

今はまだグレイは知らないけど多分いつかは知る、はず。


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幽鬼の支配者の交響曲 前兆の幽鬼(ファントム)

今回から始まる!

ファントム!
これからちょくちょくウルがしゃべります。
でも気にしないでww


「帰ってきたー!」

 

「結局得したのはルーシィだけだったね」

 

「ま、しょうがないよ」

 

アミク達はマグノリアに帰ってきた。

 

「ねえその鍵売ろうよ」

 

「何てこと言うのかしらこのドラネコ!?」

 

「それ溶かして金の延べ棒にする、の」

 

「だめよ!?」

 

 

そこで、アミクは気になってルーシィに聞いた。

 

「ところで、その鍵って何の鍵なの?」

 

「あ、これはね人馬宮のサジタリウスの鍵なのよ!」

 

「人馬!?」

 

「人馬、ねぇ・・・」

 

アミクは頭だけナツでそれ以外全部馬である生物を思い浮かべた。

 

「キモいわ!!」

 

「なんで俺なんだよ!!」

 

ルーシィとナツから文句を言われた。

 

 

『――――へぇ、その子星霊魔導士なのか』

 

グレイの胸に掛けられているネックレスから声が聴こえた。

氷のウルだ。

アミクにしか聞こえていないが。

 

「そういえばグレイ。そのネックレスはどう?」

 

「ああ、氷くっつけただけなのにすっげぇ安心感があるぜ。

 ウルがいるみてぇだ」

 

『・・・』

 

思いの他鋭い言葉にウルは黙った。

 

 

「それより、お前たちの処分はギルドに戻ったら決定する」

 

エルザのその言葉に皆固まった。

 

「あ、あ”~~」

 

「忘れかけてた・・・」

 

「・・・ま、まさかアレ!?アレになっちゃうの!?」

 

アミクが恐怖で震えながら叫んだ。

 

「え!?アレってなに!?」

 

 

「アレは嫌だぁぁぁぁあああ!!!」

 

「アレは怖いよー!!」

 

「あ、アレはネコに使っていいものではない、の!!」

 

「だからアレって何なのよ―――!!」

 

グレイ達も叫ぶのでルーシィも釣られて怖くなってきた。

 

 

アミクはガタガタと震える。アレはだめだ。

 

アレをやられてしまえばきっと・・・。

 

「へ!だーいじょうぶだって!!きっとじっちゃんなら、よくやったって褒めてくれるさ!!」

 

ナツがポジティブに言った。

 

が。

 

「いや、アレは確実だろう。ふふ、久々に腕が鳴るな」

 

エルザが無慈悲に告げた。

 

ナツの顔が引きつる。

 

「嫌だぁあああああああっ!!!!

 アレだけはぁっ!!!アレだけはっ!!!

 嫌だああああああああ!!!」

 

 

「だから!アレって何なのよおおおおおお!!?」

 

ルーシィは絶叫した。

 

 

「まあ、私としては今回の件は概ね海容してもいいと思うが・・・

 決めるのはマスターだ。覚悟しておくんだな」

 

「はぁああああ~~~」

 

アミクは大きなため息をついた。

今回勝手にS級クエストに行ったことは反省しているが、

後悔はしていない。

 

だが、アレをやらされるとは・・・。

 

ナツはエルザにズルズル引きずられ、アミク達もどんよりと帰っていった。

 

 

 

「・・・ねぇ、さっきから見られてない?」

 

アミクが先ほどからこちらを気まずげに見る人々に気付いて言った。

 

そして、アミクの地獄耳がとある人々の会話を捕らえる。

 

 

「『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』のギルドが・・・」

 

「あんなことに・・・」

 

 

「うーんまた誰かやらかしたのかしら・・・ってちょっとアミク!?」

 

アミクはルーシィの制止も聞かずにギルドに突っ走る。

 

慌ててナツ達も追いかけてくる音が聞こえる。

 

 

 

そうして一足先にギルドに到着したアミク。そこには――――

 

「なに、これ・・・」

 

巨大な鉄柱がいくつも刺さったギルドがあった。

 

 

「なっ!」

 

「そんな・・・」

 

「一体誰が・・・なの」

 

「俺達のギルドが・・・!」

 

追いついたナツ達も絶句する。ナツに至っては少し涙目だ。

 

 

 

「なにがあったというのだ・・・」

 

エルザが怒りに拳を握っていると―――。

 

「ファントムよ・・・」

 

後ろから声が聞こえたので振り向くと、そこには悲しげな顔をしたミラがいた。

 

「ミラさん・・・」

 

「ファントム、だと・・・!」

 

「悔しいけど、やられちゃったの・・・」

 

そう言って顔を伏せる。

 

 

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)』ギルド、地下。

 

 

 

「上は使えそうにないからここを使ってるの」

 

ミラの言う通り、ここでは皆酒を飲んだり、ファントム――――『幽鬼の支配者(ファントムロード)』の悪口を言ったりしていた。

ファントムに攻め入る話までしている人もいる。

 

 

「エルザが帰ってきた!」

 

「アミクにナツ達とも一緒だぞ」

 

 

アミク達は軽く手を上げてマカロフの方に向かう。

 

マカロフは酒を飲んでいた。見た感じいつもと変わらない様子だ。

 

 

「よっ、おかえり!」

 

マカロフは呑気そうな顔でアミク達を出迎える。

そんなマカロフにナツは突っかかった。

 

「じっちゃん!!酒なんか飲んでる場合じゃねぇだろ!?」

 

だが、マカロフはナツの言葉を無視し、プンプン怒りだす。

 

「おー、そうじゃった、お前たち!勝手にS級クエストなんかに行きおってからにー!」

 

さほど本気で怒っているわけでもなく、軽い感じだ。

 

「今はそれどころじゃねぇ!!」

 

「罰じゃ!今からお前達に罰を与える!!覚悟せいっ!」

 

そう言うや否やマカロフはナツとグレイ、ハッピーとマーチには「てい」とチョップをしていく。

 

「てい」

 

「きゃっ」

 

「てい」

 

「おじいちゃん、セクハラだよ・・・」

 

ルーシィとアミクに至ってはお尻を叩いてきた。

 

そのマカロフの傍でミラが「マスター、ダメでしょ!」と怒っていた。

 

「マスター! どんな事態かわかっているのですか!」

 

「ギルドが壊されたんだぞ!!」

 

エルザやナツの言葉もけんもほろろだ。

 

「まぁまぁ落ち着きなさいな・・・騒ぐほどのことでもなかろうに・・・

 ファントムだぁ?誰もいないギルドを狙って何が嬉しいのやら・・・」

 

アミクはそれを聞いてほっ、と息をついた。

少なくとも怪我人はいないってことだ。

 

 

「不意打ちしかできんような奴らに目くじら立てる必要はねぇ・・・放っておけぇ!」

 

そう口にしてからまた酒を飲み始めた。

 

と思ったら「ぬ・・・?」とグレイのネックレスを見る。

 

「・・・グレイ、そのネックレスにある氷はなんじゃ?」

 

「これは・・・簡単に言うとガルナ島でアミクが付けてくれたんだ。

 あの『絶対氷結(アイスドシェル)』の残りカスみたいなものらしいぜ」

 

「ふぅむ・・・」

 

マカロフは意味ありげにこっちを向く。

アミクは冷や汗を流して目を逸らした。もしかして、ウルのことバレてる?

いや、マカロフにならバレてもいい気がしたが・・・。

それにしても氷の中に微かにある魔力に気付くとは、さすがマカロフだ。

 

 

「まぁよい、あ、ちょっとトイレ」

 

「じっちゃん!話は終わってねぇぞ!!」

 

「ナツ、マスターも本当は悔しいのよ。

 でも、ギルド間の武力抗争は禁止されているから

 下手に動けないのよ・・・」

 

ナツもエルザもミラの説明に黙るしかなかった。

 

 

『・・・帰って来て早々一波乱ありそうだな』

 

ウルの声が俯いているアミクの耳に響いた・・・。

 

 

 

 

 

「はぁ~『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』と『幽鬼の支配者(ファントムロード)』って仲が悪いのね・・・」

 

「結構前からゴタゴタしてるんだけどね・・・」

 

アミクとルーシィとマーチは帰路についていた。暇つぶしにプルーを召喚し、川沿いに歩いていると

「嬢ちゃん達落ちるぞー」と船乗りのおじさんに言われた。

 

「罰免れたのは助かったけど」

 

「それな、なの」

 

ルーシィの言葉にアミクとマーチはコクコクと頷く。そんなにやばいのだろうか、『アレ』は。

 

「あたし、ほんとは『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』か『幽鬼の支配者(ファントムロード)』かどっちに入るか迷ってたんだー」

 

「言っちゃなんだけどファントムはあんまりいい噂聞かないけど、なの」

 

「まあ、ね。でもホント『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』に入ってよかったよ!

 アミクともナツ達ともこうして会えたし」

 

屈託のないルーシィの顔を見ているとこっちまで嬉しくなる。

 

「あ、そうだやっと小説の次話完成したんだけど読む?」

 

「え、本当?読む読む!」

 

実は小説書いているのをバレた日からアミクはルーシィから読ませてもらっているのだ。

読者第1号である。ルーシィもアミクが楽しく読んでくれるので、嬉しくてモチベーションになるらしい。

 

 

「『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』はホントにーーーー」

 

家の玄関を開け、そのままルーシィの部屋に直行する。

そして、ドアを開けた。

 

「よぉっ!」

 

「邪魔してる」

 

「サイコーーーーー!!?」

 

「エルザまで・・・」

 

ルーシィがギョッとし、アミクも呆れる。

 

「ってか多いわよ!なんでみんなこっちにいるのよ!」

 

「実はな、ファントムがこの街にまで襲撃に来た、ということは

 私達の家まで知られている可能性があるわけだ」

 

「ねぇとは思うが、少人数でいるところを狙われるかもしれねぇ」

 

「うっ・・・」

 

ルーシィはそれを聞いて自分を抱きしめる。確かに、知らぬ間に襲われる可能性があるのは恐怖だ。

 

「アミクがいるとは言え、女二人に猫1匹だ。

 心配だからできるだけ固まっていようと思ってな。

 だが、グレイとナツだけでは年頃の女であるルーシィと

 アミクと一緒にするのはどうかと思って私も来たわけだ」

 

「ナツとグレイが泊まるのは確実なのね・・・」

 

「大丈夫大丈夫、しょっちゅうだったからそんなの!」

 

にこやかに言うアミクの顔が見られない。

 

だが、みんながいるなら心強い。

 

 

「しかし、いい部屋だな」

 

エルザは部屋の中を見回した。

ルーシィが色々模様替えしたり小物を置いたりしたことで、やや質素だが雰囲気のいい部屋になっている。

 

「ここは確か元々は客室だったな?よくナツが泊まっていた部屋だ」

 

「いや、ここで寝ろって言ってんのにいつの間に私の部屋に入り込んでんだよね

 このバカは・・・」

 

「女の子が寝ている部屋に入るなんて最低じゃない!」

 

ルーシィの言葉にアミクはそっとグレイの方を見た。

 

「なんだよ!?ほんとに俺はたまたま部屋に入った時にルーシィが寝ていただけだ!」

 

『この弟子、女子にすぐ手を出す野獣になったのか・・・』

 

一応、グレイの擁護のためにウルに対して首をブンブン横に振った。

 

だが、グレイはそれを別の意味に捉えたらしい。

 

「お、俺は何もしてねぇ!」

 

何も言っていないのに見苦しい自己弁護を始めた。

 

「ともかく、ここで住むには何の不満もないだろう?」

 

「もちろん!アミクのお陰でいい所に住まわせてもらいました!」

 

「うんうん、私もルーシィが一緒に住んでくれて嬉しいよ」

 

 

 

 

「ね、見てエルザエッチぃ下着あったよ!」

 

「こ、こんな大胆なものを履くのか・・・」

 

『ほう・・・なかなかやるじゃないか』

 

「うひょー!この菓子うめぇ!」

 

「・・・な、なにぃ!?まさかそういう伏線だったとは・・・」

 

「グレイ、そっちよりこっち先に読んだほうがいいよ。

 ネタがわかんなくなるから」

 

「・・・あんたら・・・人の家でめっちゃ寛いでるわね・・・あと、グレイ読むな!」

 

「おい待てよ!続き気になるだろーがよ!イリスはどうなるんだ!」

 

ルーシィがグレイの手から小説を取り上げた。

 

騒がしい。この面子が集まるとやはり静かではいられない。

 

だがアミクはその騒がしさが心地よかった。

 

 

「くっそー!じっちゃんもミラもみんな!ビビってんだよ!!」

 

「それは違ぇだろ・・・」

 

「今回の件で一番悔しいのはマスターだ・・・。そのマスターが我慢しているんだ。

 私たちがとやかく言うことではないだろう」

 

ナツの言葉を皮切りに今回の件について話し合った。

 

「それにしてもファントムってひどい事するのね・・・今までもこんなことあったの?」

 

「ううん、普段は小競り合いぐらいで済んでるんだけど・・・」

 

「急に大きいこと仕出かしてきた、の」

 

ルーシィはまだ入って間もないので『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』と『幽鬼の支配者(ファントムロード)

との因縁についてよく知らないのだ。

 

「んがー!やっぱ納得いかねぇ!!じっちゃんもビビってないでやり返せばいいだろ!?

先に手出されたのはこっちなんだぞ!?」

 

「だから、そう言う問題じゃないって!それにおじいちゃんも怖がってるわけじゃないよ。

 あの聖十大魔道の一人なんだよ?」

 

「聖十大魔道って?」

 

ルーシィの質問にエルザが答える。

 

「聖十大魔道と言うのは魔法評議会議長が定めた、大陸で最も優れた魔導士10人につけられる称号のことだ」

 

「そういえばファントムのマスターもそうだったよね?」

 

アミクも思い出したように口にした。

 

(それに・・・ジーク兄さんもそうだって言ってた・・・)

 

アミクの脳裏には人を小バカにした顔をする青髪の青年が浮かんでいた。

 

「ファントムには他にも『エレメント(フォー)』と呼ばれる、『妖精の尻尾(こっち)』ではS級魔導士に当たる者たちがいると言う」

 

エルザはそのまま『幽鬼の支配者(ファントムロード)』について説明した。

 

「その他に、特に厄介とされているのがーーーーー

 

鉄竜(くろがね)』のガジル。鉄の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)だ」

 

「ええ!?ナツやアミク以外にもいたんだ・・・」

 

ナツはガジルのことを聞いてムスッとしていたが、アミクは不安そうに外を見ていた。

 

「じゃ、もしかしてそいつ、鉄を食べるの?」

 

「めっちゃガジガジ言ってそう、なの。あ、でもガジルの名前ってそこから来ているって話もある、の」

 

「そんな単純でいいのかしら・・・」

 

 

そんなルーシィ達の会話を聞きながらも、アミクの耳には不穏の足音が聴こえてくる気がした・・・。

 

 

「そうだ。せっかくだ。昔みたいに一緒に風呂に入ろうか。

 背中を流してやる」

 

「あ、私も」

 

「あんたらどんな関係よ!?」

 

「じょ、冗談だからね!?」

 

そこには顔を赤くしたアミクとナツとグレイ、そしてルーシィが居たという・・・・。

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

アミクは目の前の光景が信じられなかった。

 

 

マグノリア広場にある巨大な木。

 

そこの幹の高い部分に誰かが磔になっている。

 

 

その者たちは・・・・

 

 

「レビィ!!ジェット!!ドロイ!!」

 

シャドウギアの三人組だ。

 

 

傷だらけで服もボロボロ。それに、レビィの腹部にあるマークはーーーー

 

 

「ファントム・・・・!」

 

アミクはギリッと歯を食いしばった。

 

こんなに痛めつけ、辱めるような仕打ちを・・・。

 

流石のアミクも胸の中が憤怒でひっくり返りそうだ。

 

「・・・みんな、レビィ達を下ろしてあげて」

 

「・・・任せろ」

 

ナツとグレイとエルザはすぐにレビィ達に飛びかかり、磔に使っていた

鉄杭を全て外した。

 

そして、レビィ達を静かに地面に横たえる。

 

そこにアミクは近付いた。

 

「『治癒歌(コラール)』」

 

レビィ達の傷を治療する。

 

彼らの痛々しい姿を近くで目にしてアミクの目には涙が浮かんだ。

 

「レビィちゃん・・・!」

 

ルーシィも悲痛な表情をしている。彼女はレビィとは仲が良かったため、尚更ショックなのだろう。

 

 

 

 

そこに、マカロフがゆっくりと歩いてきた。

 

影が差して表情は窺えない。しかし、歩くたびに高まってくる魔力を感じれば

彼がどんな気持ちでいるのか、察するのは簡単だ。

 

こっちに近付いてきてレビィ達の前で止まる。

 

 

まだ、目を覚まさない。

 

 

 

 

「ボロ酒場までなら許せたんじゃがな・・・ 

ガキの血を見て黙ってる親はいねぇんだよ・・・」

 

 

怒気の籠った声を発し、持っていた杖をバキッと折る。

 

 

前を見据えたその顔に浮かぶのは逆鱗に触れられた(ドラゴン)の表情そのものだった。

 

 

「戦争じゃ・・・・!!」

 

 

アミクは今回、自分の中で燃えたぎる熱に身を任せることにした。

 

 

つまり、アミクも容赦はしない、ということだ。

 

 




ガジガジって食べるからガジルっていうのは本当らしいです。


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音竜(うたひめ)鉄竜(くろがね)

アミクもカチコミいきまーす。




幽鬼の支配者(ファントムロード)』はフィオーレ王国内のオークの街にある。

 

 

そのギルドの中では下品な声が響いていた。

 

 

「だっはーーー!!サイッコーだぜ!!」

 

「妖精の尻尾(ケツ)の奴らはボロボロだってよぉ!」

 

「その上ガジルのやつァ、3人もやってきただってよぉ」

 

「ヒュゥー!!流石だぜ!」

 

酒を飲み、大騒ぎの男達。その顔には他人をおもちゃとしか見ていない、見下した表情があった。

 

 

「そういやぁ・・・マスターの言ってた『奴』って誰だ?」

 

「さぁ?知らねーな」

 

「手を出すなとか言ってたよな」

 

「ふん、どうでもいいさ!惨めな妖精に乾杯だぜ!」

 

「おぉーよ!!」

 

 

彼らは自分が強者であることを疑わない。

 

自分たちは妖精を餌にする肉食獣である、と心の底から思っていた。

 

 

「あ!いけね、もうこんな時間だ」

と、1人の魔導士が立ち上がり、荷物を手に扉へと歩き出す。

 

「お?なんだよ、女か?」

それを見た1人の魔導士がからかう。

 

「まぁな。まぁまぁいい女だぜ?依頼人だけどな・・・脅したら報酬を2倍にしてくれるってよぉ」

ニヒヒと嫌な笑みを見せた。

 

「がっはは!俺なら3倍は行けるぜぇ」

 

「けっ!言ってろタコ」

 

こいつらは魔導士としても人間としても最低な奴らだ。

 

依頼とは雇用者との信用関係が成り立ってこそ受理できる。

この男達はその偽物の信頼を無理やり、とって付けて仕事をしているのだ。

 

 

「あーあー、でもよー襲った時にあの『歌姫』がいたら攫ってきたかったなー」

 

「スッゲー美人でスッゲーキレーな声してるんだってよ!

 もし、ここにいたら裸で歌わせてみてーもんだ!」

 

「ギャハハハハ!!違ぇねぇ!!」

 

 

品のない笑い声が響く中ーーーーー

 

 

ドッゴォオオオオオオオオオンッ!!!!!

 

バァアアアアアアアアアアン!!!!!

 

ギルドの扉がぶっ飛んでさっき出て行こうとした男を向こうの壁際までぶっ飛ばした。

 

 

全員唖然として入り口を見る。

 

 

 

そこには拳を振り抜いた格好のナツと蹴った後の格好をしているアミク・・・そして

 

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)じゃああああああああああああああああ!!!!!」

 

 

ギルドのほとんどのメンバーだった。

 

 

全員に共通している点。

一人残らず憤怒の表情をしているのだ。

 

家族を傷つけられ、怒りに狂う妖精達。

 

ファントムは、この魔法界には怒らせてはならないギルドがあることをはっきりと実感することになる。

 

 

 

「誰でもいい!!かかってこいやああああああ!!!」

 

ナツが叫びながら暴れる後ろでアミクは耳を澄ませる。

 

 

ーーーーここには沢山の声が飛び交ってどれが誰の声だかわかりづらいが、ほとんどのメンツがここにいるようだ。

 

 

そして、アミクの背後を狙おうとコソコソしている影・・・。

 

 

「『音竜の旋律!!』」

 

「ぎゃああああああ!!」

 

すぐ蹴り飛ばした。

 

 

 

ナツに寄り添うように暴れる少女。

ファントムの一人がその姿を見て叫んだ。

 

 

「あ、あいつら!!『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』の『双竜』だああああああ!!!」

 

「オラオラオラオラ!!」

 

 

ナツとアミクがリンチを繰り広げている間にもグレイや、エルフマンたちも次々と攻撃していく。

 

ファントムも知っている相手が出てくると、いちいち戦慄して怖気づいてくれるのでやりやすい。

 

ハッピーも木の枝で叩いて攻撃している。

 

・・・あれでも真面目なのだハッピーは。

 

マーチも爪を鋭く伸ばして素早い動きで敵を切り刻んでいく。

 

「てかマーチすごいね!いつの間にそんな芸当できるようになったの!?」

 

「訓練した、の」

 

 

 

 

「『音竜の響威(フォルツァンド)』!!」

 

アミクは床に魔力を込めた手を叩きつけた。すると――――

 

パアアアン!!!

 

『があああああ!!?』

 

自分を中心に巨大な衝撃波を発生させた。それは床を抉り、敵を吹き飛ばしていく。

 

そうしたら、辺りの敵は一掃していた。

 

それを確認するとアミクは周りを見回した。

 

こっちの士気はすこぶる高い。一人で何人も叩き潰しているのもいるので、三下達は問題ないだろう。

 

現に、先程、マカロフを狙おうとしていた魔導士たちが巨大化したマカロフの手で「かぁぁ――――――――っ!!!」と押しつぶされていた。

 

「ひぃっ、ば、化け物・・・・!!」

 

「貴様らはそのバケモンのガキに手ェだしたんだ・・・人間の法律で自分を守れるなど・・・努々思うなよ・・・あァ?」

 

「ヒィいいいいいい!!!」

 

マカロフのあまりの形相に男たちはチビる。

 

 

 

「ジョゼぇーーー!!出てこんかぁっ!!」

 

「どこだ!ガジルとエレメント4はどこにいるっ!!!」

 

 

マカロフとエルザが叫びながら敵を何人も吹き飛ばした。

 

 

 

アミクはもう一度耳を澄まし、匂いも嗅ぐ。

 

そこで、聴こえてくる声があった。

 

 

 

「けっ・・・あれがマスターマカロフに『妖精女王(ティターニア)』のエルザか・・・凄まじいな、どの兵隊よりも頭1つ2つ抜けてんなぁ」

 

 

ギヒッ、と変な笑い方をする。

 

 

「ギルダーツにラクサス、ミストガンは参戦せず、か・・・舐めやがって」

 

もしかして、とアミクは声をした方に顔を向けた。

 

 

「ギヒッ・・・しかし、これほどまでマスタージョゼの計画通りに事が進むとはなぁ。

 せいぜい暴れ回れや、クズどもが」

 

(計画、通り?)

 

嫌な予感がする。もし、アイツの言う通り、ここに攻め入ることまで想定されていたとしたら。

むしろそうなるように仕向けたのだとしたら。

 

 

頭に響く警鐘は止まないがまずはアイツを―――――

 

 

「やっつける!」

 

感じる魔力からして只者ではない。自分の予想が正しければ彼は―――――

 

 

「『音竜の!響拳』!!」

 

「!」

 

急にこっちに向かってきたアミクを見て少し驚いた顔をした後、面白そうな表情に変わる。

 

衝撃波が彼に当たった。

 

「・・・っかったぁ・・・」

 

だが、全く効いているように見えない。余裕の表情を浮かべ続けている。

 

むしろ殴った自分の拳が痛かった。

 

「ギヒッ!気づかれちまうとはな!・・・そうか、テメェが

 『双竜』の片割れ、『音竜』の方か!いや、『歌姫』と呼んだ方がいいか!?」

 

「そういう貴方こそ、『鉄竜(くろがね)』のガジル、でしょ!?」

 

「ギヒヒッ、ホントは厄介なモンがいなくなってから暴れようと思ったが・・・

 いいよなぁ、殺り合おうや・・・『音竜(うたひめ)』ぇ!!」

 

彼―――――ガジル・レッドフォックスは獰猛に笑った。

 

 

ここに、滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)同士の戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

一方、置いてけぼりにされてしまったルーシィ。

 

そんなルーシィはベットで寝ているレビィ達を見ていた。

 

(レビィちゃん・・・)

 

傷はアミクが治してくれたおかげで殆ど残っていなかったが、意識はまだ戻らない。

 

ルーシィはレビィに声をかけられたときを思い出した。

 

 

自分が小説を書いていることを知ってそれを読みたい、と言ってくれたこと。

自分の書いた小説を見せる、というのは自分のケツの穴見せるようなものなのに、

勇気を出せるルーシィはすごいのだと言ってくれたこと。

 

 

 

『私が読者1号になるよ!』

 

『あ、ごめん、読者1号もういるんだけど・・・』

 

『え・・・ま、まぁ2号でもいいよ。ルーちゃんの小説、楽しみにしてるから!』

 

『あ、レビィ。丁度いいや。件の小説、読み終わったから貸すね』

 

『アミク?・・・読者1号ってアミクだったんだ。納得』

 

『あ、貸してもいいよね?ルーシィ』

 

『もちろん!か、感想お願いね・・・』

 

『ちなみに、それ主人公が崖から・・・』

 

『『ネタバレ禁止!!』』

 

そうやって二人で慌ててアミクの口を塞いだものだ。

 

 

 

 

「許せないよ・・・こんなの・・・」

 

ルーシィは唇を噛んだ。膝の上に置いている拳をぎゅっと握りしめる。

 

 

 

とにかく、何かお見舞い品を買ってこようとルーシィは外に出かけた。

 

 

 

自分の身に起きることも知らずに。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜♪

 

「『攻撃力強歌(アリア)』『防御力強歌(アンサンブル)』!!』

 

「ギヒッ!それが付加術(エンチャント)か!そうこなくっちゃなぁ!!」

 

 

アミクは歌って自分の攻撃力と防御力を上げる。

 

相手が鉄の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)ならば自分の体そのものが盾となり、矛にもなる戦士であるはずだ。

それはさっき自分の拳で実証済み。

ならば、身体能力面ではナツに劣っている自分が素の力でガジルにかなうとは思えない。

 

だからこその付加術(エンチャント)だ。

 

 

「『音竜の旋律』!!」

 

「『鉄竜棍(てつりゅうこん)』!!」

 

アミクの蹴りが、ガジルの変形して伸びた腕に当たる。

 

ガァアアン!!と音が響いた。

 

「うお、結構響くな」

 

「『音竜の輪舞曲(ロンド)』!!」

 

すかさずアミクは両腕を振るってガジルの顔面に当てた。

 

「ふん!」

 

だがガジルはそれに耐えて見せる。

 

「ギヒッ、案外痛いぜ・・・」

 

(思ったよりダメージを与えられてない・・・!)

 

硬さが尋常じゃない。本気ではないとはいえ、かすり傷程度とは。

 

「そんなか弱そうな見た目でエグい威力出せるモンだな?仮にも滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)か」

 

ガジルはまたギヒヒッ、と特徴的な笑いをした。

 

「・・・『音竜の咆哮!!』」

 

「『鉄竜の咆哮!!』」

 

不意打ち気味にブレスを放てば、すかさず反応してあっちもブレスを放ってきた。

 

音と鉄が衝突する。

 

ギャリギャリ、とせめぎ合う。

 

しばらくの拮抗。打ち勝ったのは―――――

 

 

ガジルだった。

 

 

ゴオオオオオオオ!!!

 

鉄の刃の旋風が音を散らし、こっちに向かってくる。

 

「きゃ、あああ、あああああ!!」

 

 

ブレスはアミクを呑み込み床に激突した。

 

敵、味方関係なく魔導士たちを巻き込んだ。

 

「う、ううぐ、あぅ・・・」

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)』の面子はそこで見た光景に目を疑った。

 

アミクが血だらけになって立とうとしていたのだ。あのナツと並び立つ程とされるアミクが、だ。

 

「ア、アミクっ!」

 

マーチが声を上げた。

 

幸い傷は深くないが、鉄片が所々刺さっている。

 

(防御上げてなかったら危なかった・・・!)

 

すぐに『持続回復歌(ヒム)』使い、戦闘中でも回復できるようにする。

 

「みんな!私はまだ、大丈夫だから!」

 

そう大声で叫んでからアミクは上から降ってくるガジルを睨む。

 

「ギヒッ!アレを喰らってまだピンピンしてやがる!イカれてるぜ!」

 

「『音竜の』・・・・」

 

アミクは両手に音を纏わせる。それから、それを合わせた。

 

「『交声曲(カンタータ)』!!」

 

全力でガジルにぶつけて、解き放つ。

 

「グッホアアアア!!!?」

 

お腹に直撃したそれは流石に効いたようでガジルは少し吐血した。

 

「ぐ・・・ギヒッ、ギヒヒッ!!いいぜいいぜぇ、今のは効いたぜぇ!!

 やるじゃねぇか音竜(うたひめ)ぇぇぇ!!」

 

アミクはすぐにガジルから離れる。

 

「俺にダメージを負わすたぁ、その衝撃波の威力は高ぇな・・・

 『鉄竜棍』!!」

 

「う、わ!?」

 

『ぎゃあああああ!!』

 

ガジルの腕が伸びる。彼は自分の仲間もろともアミクを攻撃しようとした。

 

「自分の仲間まで・・・!」

 

アミクはガジルを睨むが、ガジルはそれを涼しそうに受け流した。

 

仕方なくアミクはさっき浮かんだ疑問を口にする。

 

「・・・計画通りってどういうこと?」

 

「お?聞こえてたのか。耳がいいんだな」

 

「答えて。一体何を狙ってるの?」

 

ガジルはギヒッと口を歪めると腕を剣に変えた。

 

「・・・!」

 

「教えるわけねぇだろ!!」

 

ガジルはその剣をアミクに向かって振るう。

 

「『鉄竜剣』!」

 

横薙ぎに振るわれるそれをアミクは上に跳んで避けた。

 

ガジルはアミクが避けたのを見ると彼もアミクに向かって跳んだ。

 

「空中じゃ避けれないだろ!」

 

今度は腕を槍に変えて迫ってくる。アミクは冷静に両手を構えた。

 

「『鉄竜槍』!!」

 

ガジルはアミクの胸を狙って槍を突き出した。その瞬間。

 

 

バァン!

 

アミクが横に衝撃波を放ち、その推進力に乗り、槍を避けたのだ。

ガジルの槍がアミクの脇腹を掠める。

 

「避けれないのは・・・お前だ!!」

 

アミクはガジルの胸に手を当てた。

 

「何を・・・」

 

「鉄ってことは金属!金属は音を伝えやすい!ってことは・・・」

 

そのまま爆音をガジルの中に流した。

 

「バババババババババ!!!」

 

強烈な振動で、ガジルが震える。

 

この振動でガジルの中から壊すつもりだった。衝撃波を放てればいいが、金属の内側で発生させるのは難しい。

 

「ああああああああああああ!!!!」

 

アミクは雄叫びを上げながら魔力を解放した。見ると、ガジルの吐血がひどくなっている。

 

「がふ、イカれてるぜ。てめぇ、こんなの思いつくなんてよぉ」

 

だが、とガジルは拳を構え。

 

「あ――――」

 

「俺の鉄はこれぐらいで壊れるほどヤワじゃねぇんだよ!!」

 

アミクの頭を殴り抜いた。

 

血が飛び散り、少女の顔がのけ反る。

 

「アミク――――――!!!」

 

それを見たナツが叫び、マーチが悲鳴を上げ、アミクの名を呼んだ。

 

 

 

 

 

 

アミクは戦闘不能になったかと思われた――――が。

 

 

「なにっ!」

 

アミクはちょっとぐらついたかと思うとすぐに態勢を整えたのだ。

 

頭から血が出ているがそれでもまだ元気に見える。

 

(こいつ・・・俺が殴り付けた瞬間に衝撃波でガードしやがった)

 

ただ、完全に防げたわけではなかったらしい。だから、頭から血が出ているのだ。

 

「・・・っはぁ!はぁ、このままじゃジリ貧だ・・・」

 

治癒に使う魔力も惜しい。周りの音を食べながら戦っているが、魔力を次から次へと使うため、

消耗も激しい。

 

下手をすれば魔力欠乏症になってしまう可能性もある。

 

「すゥ―――」

 

それでも回復手段があるだけマシである。周りの悲鳴や戦闘音を吸い込んでいった。

 

(・・・音が聞こえねぇ?アイツが食ってんのか)

 

音の滅竜魔導士であるので予想はついていたが、これではいつでも魔力を回復できるようなものだ。

 

「・・・ギヒッ、おもしれぇじゃねぇか」

 

ガジルは上等だとでも言うかのように腕を剣に変えた。

 

 

「『鉄竜剣』!!」

 

「『音竜の斬響(スタッカート)』!!」

 

相手が斬撃ならこっちも、とアミクは音の刃を放った。

 

キイィン!と鉄の刃と音の刃がぶつかり合って弾ける。

 

アミクはそれを見届けると人ごみの中に入っていた。

 

「あぁ!?テメェふざけんじゃねぇ!!逃げる気か!」

 

ここで、ガジルは怒った。

 

やっと興に乗ってきたところだったのにお預けにされた。

 

ガジルは不完全燃焼のまま他の者に殴りかかろうとした時だった。

 

 

「これで倒れて!!」

 

上から声が響く。ガジルは一瞬で口端を釣り上げ、足を槍に変えて上に蹴りあげた。

 

 

 

 

―――――が。

 

 

空振った。最初っからアミクなんていなかったかのように。

 

 

「!?どこへ行った!」

 

ガジルが顔を前に戻すと――――

 

目の前にアミクがいた。

 

(フェイクか―――!!)

 

「『音竜の―――』」

 

ガジルに頭を向け、全身に魔力をこれでもか、と込める。

 

「『譚詩曲(バラート)』!!」

 

頭からガジルにぶつかる。ガジルの顔面に直撃し、轟音と共に強力な衝撃波が舞った。

 

彼はそのまま吹っ飛び、机や椅子、果ては他のファントムのメンバーも巻き込んで転がっていった。

 

 

「なぁっ!?ガジルが!?」

 

「あんな女子にやられた!?」

 

それを見ていたファントムのメンバーがショックを隠しきれずに口々に言う。

ガジルは倒れたままピクリともしない。

 

「い、いや待て!」

 

 

一人の男が言うと、ガジルが鼻を抑え、ふらふらながらも立ちあがっているところだった。

 

「・・・タフすぎでしょ」

 

あわよくばあれで決めるつもりだったが、やはりそうは問屋が卸してくれないらしい。

 

「もう、そろそろヤバいかも・・・」

 

いくら、音を食べて体力や魔力を回復できるとはいえ、精神的な疲労はどうにもならない。

 

それでも、魔力回復のためにもぐもぐ、と音を食べるアミクだった。

 

 

 

「・・・ギヒッ、やってくれたなぁ」

 

ガジルは鼻血を流しながらもしっかり足を地につけていた。だが、ダメージは大きかったようで少しふらついていた。

 

 

「惜しかったなァ、俺がもうちょっと柔らかかったなら倒れていたかもなぁ」

 

ガジルは首をゴキゴキ、とやる。

 

「だが、これが俺とお前の実力差だ。オメェじゃ俺に勝てねェんだよ」

 

「・・・」

 

確かにこのままだとガジルの火力に押されて負けてしまう。

 

だが、それでもアミクには負ける気はしなかった。

 

「そんなの最後までやってみなきゃ分からないよ?」

 

「ギヒッ、気にくわねぇな。そんなに言うんだったらグチャグチャになるまで叩き潰してやるよ」

 

ガジルの顔が狂気で歪んだ。アミクは唾をごくり、と飲み込むとガジルに対して構える。

 

 

 

 

その時。

 

 

 

ズッドオオオオン!!

 

 

何かが落ちてきた。

 

 

アミク達は思わずそちらに注目する。

 

 

そこには――――

 

 

 

「おじい、ちゃん・・・・?」

 

 

青ざめた顔のマカロフが倒れていた。魔力が全く感じられない。

 

さっきから居ないと思っていたが、まさかジョゼを倒しに行ってたのだろうか。

 

それで負けて?

 

 

「おじいちゃん!!」

 

「お、おい!まだ決着はついて―――」

 

「マスター!!」

 

アミクはガジルを無視してマカロフに駆け寄り、抱き上げる。

 

エルザも走ってきた。

 

 

「わ、わしの・・・魔力が・・・」

 

「おじいちゃんしっかりして!」

 

アミクは涙目でマカロフに治癒を掛ける。

 

目に見える傷は治せる。だが、このように魔力が枯渇していてはアミクにはどうしようもない。

 

 

マカロフがやられたことにより『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』の士気はだだ下がりだ。

 

「ちぇっ、お楽しみはもう終わりか」

 

ガジルはつまらなさそうに言うとそこら辺に落ちていた鉄を拾ってガジガジ、と食べた。

 

 

 

本当はギリギリだった。体当たりされた後、一瞬だけ意識が飛んでいた。なんとか立つことはできたが、ダメージのせいで本来の力を出し切れなかっただろう。

 

それでも、自分は勝っていたと信じるが危ない状況だったことには変わりはない。

 

 

(あの、女・・・イカれてるぜ)

 

ガジルは心の中で悪態をついた。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)』とは逆に『幽鬼の支配者(ファントムロード)』は士気が上がって勢いに乗り、『妖精の尻尾(フェアリーテイル)

を全滅させようとしてくる。

 

 

 

(このままでは・・・・)

 

エルザはこの状況が不利だと悟る。こうなればとる手段は一つだけだ。

 

「撤退だー!!全員、ギルドへ戻れー!!!」

 

「何言ってんだ!俺はまだ戦える!」

 

「ここで逃げてちゃ漢じゃねぇ!!」

 

エルザの号令に反論するグレイとエルフマン。

 

だが、マカロフの傍にいたアミクが泣きそうな声で懇願する。

 

「おねがい!エルザの言うこと聞いて!じゃないとおじいちゃんが・・・」

 

アミクの悲壮な表情をみてグレイとエルフマンは反論の言葉を飲みこんだ。

 

そして全員渋々撤退を始める。

 

アミクはマカロフをエルザに預けナツの元に駆け寄った。

 

 

「ナツ!怪我は無い!?」

 

「俺は全然大丈夫だ。むしろお前の方が大丈夫か?怪我してんぞ」

 

「これは後で治すよ・・・ナツも行こう?」

 

「・・・」

 

ナツは黙ったままアミクを見つめる。

 

「・・・ナツ?」

 

「おめぇ、ガジルと戦ったんだよな」

 

ナツが真面目な顔をして聞いてきた。アミクは頷く。

 

「うん・・・そういえばナツは乱入してこなかったね。

 いつもだったら「俺に戦わせろー!」って来ると思ったんだけど・・・」

 

 

「先にアミクに取られちまったし、どんどん他の奴らが襲ってくるもんだからガジルはアミクに任せてやったんだ!

 でも見てて冷や冷やしたぞ」

 

「あい!」

 

「ほんと心配した、の」

 

「あ、ハッピーにマーチも無事だったんだ」

 

皆で出口に向かいながら話すアミク達。

 

アミクは不安を紛らわすためにもナツと会話をしていた。

 

「・・・それで、どうだったんだ?」

 

「強いよ。確実に。負けてた可能性が高い」

 

「・・・そっか」

 

「もちろん負ける気は無かったけどね。ただ、てっちゃんのタフさは甘く見ない方がいいよ」

 

「てっちゃん?」

 

「あの人、鉄だから」

 

 

そんなアミク達を見ながらガジルは口角を釣り上げた。

 

 

「ギヒッ!もう終わりか!つまんねぇなぁ・・・」

 

ある程度回復したのか今は元気そのものだ。

 

その背後が揺らめき―――巨漢が現れた。

 

 

「―――アリアか」

 

「全てはマスタージョゼの計画通り・・・素晴らしい!!」

 

その男――――アリアは急に泣き始めた。

 

「いちいち泣くんじゃねぇよ、うぜぇな・・・で?ルーシィとやらは捕まえたのか?」

 

 

ピクッとアミクの耳が反応した。

 

それに目敏く気付いたナツが「どうかしたか?」と聞いてくる。

 

「計画通り・・・今は本部に幽閉している・・・」

 

「ルーシィが!?」

 

「おい、ルーシィがどうかしたのか!?」

 

アミクが振り返ってアリアとガジルに問い詰めるもガジルはニヤッと笑っただけだった。

その後、アリア共々消えていった。

 

 

――――消える直前、ナツとガジルの視線が一瞬だけ交わる。

 

 

 

「――――ナツ?」

 

ナツはガジル達が消えていった場所を見つめると自分に飛びかかってきた一人の男を捕まえて

皆が出ていった出口とは反対側の方の出口に向かう。

 

アミク達も当然ついて行った。

 

 

「な、なにすんだよ!?」

 

「おまえ、ルーシィどこにいるか知らねぇか?」

 

「ルーシィ?誰だそれ」

 

そう言った瞬間、男の手が燃えた。

 

 

「あぢいいいいいい!!!?」

 

「はい、『治癒歌(コラール)』」

 

すかさずアミクが治癒する。

 

「もう一度聞くぞ。ルーシィはどこにいるんだ?」

 

「だ、だから知らねぇって・・・」

 

今度は足が燃えた。

 

「ぎゃあああああああ!!!」

 

「はい」

 

また、治癒。

 

 

「ほら、お兄さん早く言っちゃった方がいいよ?

 ナツが貴方の頭を燃やそうと顔を燃やそうと眼球を燃やそうと

 舌を燃やそうと食道を燃やそうと胃を燃やそうと内臓を燃やそうと

 命を燃やそうと全部全部私が治してあげるから。

 そうなるとお兄さんは死ぬこともできずにずっとずーっと

 燃え続けることになるね?」

 

 

にこやかに笑っているアミクの顔。

 

いつもは安心感と尊さを与えてくれる笑顔だが、

今のこの笑顔は会話の通じないムシケラに対して無理矢理浮かべたようなものだった。

 

ナツも怒らせると手がつけられないが、アミクはギルドの中でもマジギレさせてはいけない者のトップに入る。

 

ファントムはそんなナツとアミク()の逆鱗に触れてしまったのだ。

 

 

 

「ヒィッ!?ほ、本当に知らねぇんだよぉ!で、でも、俺達の『本部』はこの先の丘にある!!そこかも・・・」

 

 

男が言った後、アミクは耳を澄ませた。向こうに本部らしき建物があるのでそこを中心に聴きとる。

 

 

『バケツ――――!!?』

 

『ほほほ、古典的故に対処法も多いのですよ』

 

「ビンゴ!」

 

アミクは指を鳴らした。でもどういう状況なんだろうか。

 

 

「あそこからルーシィの声と変質者の声が聞こえた!」

 

「でかした!いくぞおおおおおお!!」

 

ナツは雄叫びを上げながら走っていき、アミク達も後に続く。

アミクはその間もルーシィ達の会話を盗み聴きすることにした。

 

 

『はぁ、バケツかぁ・・・』

 

『って、するんかーい!!』

 

―――え?ほんとに何の話?――――

 

『わ、私は紳士ですから!』

 

 

――――あ、もしかしてトイレ?――――

 

『ネパアアアアアアアア!!?』

 

『古典的な方法も案外使えるわね~、今度小説に使おうかしら』

 

――――え?何したの?あんなに悲鳴上げて一体何したんどすか!?――――

あと、何気にこれネタバレでは・・・。

 

 

と、近づいてきた建物を見ると・・・高い。

 

 

「あ、ルーシィ!」

 

見上げるとかなり高い所からルーシィが飛び下りようとしていたところだった。

 

「ナツ!私がナツを飛ばす(・・・)から!ルーシィを・・・」

 

「分かった!任せろ!!」

 

力強く答えると、ナツは高くジャンプした。

 

 

アミクはそこを狙って衝撃波を放つ。

 

 

「うお!?」

 

その衝撃波に押され猛スピードで飛んでいくナツ。

 

 

そして、

 

 

「ナツ――――――アミク―――――――!!!」

 

落ちてきたルーシィが叫ぶ。

 

 

「「ルーシィ――――――――――!!!」」

 

ナツがルーシィをキャッチし、その勢いのまま壁に突っ込んでいく。

アミクがハッピーに運ばれて二人と壁の間に入る事でルーシィ達が壁にぶつかるのを阻止した。

 

「ルーシィが空から降ってきた!」

 

「親方ァ、空から女の子が!!なの」

 

 

「・・・ありがとう、二人共・・・!」

 

「ルーシィ、無事でよかった・・・うぇ~ん」

 

「めちゃくちゃだなおい。あと、前後から乳が・・・」

 

今、アミクとルーシィはナツを挟むように抱きついているので

巨乳にサンドイッチされている形になってしまったのだ。

 

そこ代われ。

 

「・・ってアミク!何よその怪我!?」

 

「ぐすっ、ん?あ、大丈夫だよこれは」

 

「ダメよ!!女の子の体に傷は残しちゃいけないのよ!」

 

「あ、後で治療するつもりだったんだよ・・・」

 

「今すぐやりなさい!!」

 

なんかルーシィがオカンっぽくなってきた。

 

「・・・よし、ルーシィも取り返したし、早くギルドに戻ろう」

 

アミクが自分の治療をして言うとナツが反論する。

 

「なんでだよ!ここが本部なんだろ?だったらこのまま・・・」

 

「ナツ・・・おじいちゃんも重傷なんだよ?」

 

「え・・・マスターが・・・?」

 

そこで、ルーシィがショックを受けたように固まった。

 

「あ、ルーシィ。ごめんね・・・今おじいちゃんが・・・」

 

「俺がじっちゃんの仇をとるんだよ!!」

 

「だーかーら!今はそれどころじゃないって・・・」

 

アミクとナツが口論していると、急にルーシィが

 

「ごめん・・ごめんね・・・」と謝りだした。

 

それを聞いたアミク達は慌てる。

 

「ちょ、ちょっと!ルーシィは別に悪くないよ・・・」

 

―――『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』の皆があたしのせいで苦しんでいる。――――――

 

そう思うだけで胸が張り裂けそうな程痛かった。でも――――

 

「それでもあたし、ギルドにいたいよ・・・」

 

ルーシィは泣き続ける。アミク達が傷つけられた悲しさ。助けに来てくれた嬉しさ。

 

自分のせいでこうなったという悔しさ。

 

いろんな感情が混ざって涙があふれる。

 

「・・・ルーシィ・・・」

 

アミクはただルーシィを抱きしめ、背中をさするだけだった。

 

 

 

 

 

 

 




ガジル出た―!なんかやたら戦闘狂になっちゃったけどいいよね?

感想お願いしまーす。


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ルーシィ・ハートフィリア

アミクの技名は音楽用語や楽曲の名前を使ってます。




アミク達は無事、『幽鬼の支配者(ファントムロード)』からルーシィを連れて

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)』に帰って来ていた。

 

それから数時間・・・。

 

 

 

 

「はい、これで大丈夫」

 

「ああ、すまないな・・・」

 

怪我人に治癒を掛け終わったアミクはルーシィの所に向かう。

 

そこではルーシィが未だに暗い顔をしていた。

 

 

 

大体の事情はルーシィから聞いていた。

 

ルーシィのフルネームはルーシィ・ハートフィリア。

 

超大金持ちの資産家であるハートフィリア財閥の令嬢だと言う。ルーシィは家出をしていて、

 

今回ファントムが襲ってきたのはルーシィの父親がファントムにルーシィを連れてくるように依頼したかららしい。

 

それで彼女は責任を感じてしまっているのだ。

 

 

 

「・・・どーした?まだ不安か?」

 

グレイがルーシィに話しかける。

その言葉に首を横に振るルーシィ。

 

「ううん・・・そうじゃないんだ・・なんか、ごめん・・・」

 

そう謝り、1度は顔を上げたルーシィだが再び俯いてしまう。

 

「しっかしまさか・・・ルーシィがお嬢様だったとはなぁ」

 

「オイラもびっくりしたよ。どうして隠してたの?」

 

「お嬢様なんて滅多にないステータス、なの」

 

『それもハートフィリア財閥とはね・・・。

 西の国にそういう名の鉄道会社があるって聞いたことはあったんだ。

 結構大物じゃないか』

 

 

 

ナツとハッピー、マーチの言葉にルーシィは苦しげな表情で笑う(当然ウルの声はアミク以外には聞こえていないのでスルー)。

 

「隠してたわけじゃないんだ・・・けど、家出中だし、言う気になれなくて・・・ごめん、

 迷惑かけて・・・ほんと、ごめんね・・・」

 

 

 

 

さっきから謝りっぱなしだ。アミクはそんなルーシィに一歩近づく。

 

「ルーシィ・・・」

 

 

「アミク・・・ごめんね・・・あたしが家に帰れば済む話なんだよね・・・

 そうすれば皆にも迷惑かけな――――」

 

「ちぇりおー!!」

 

 

バチーン!

 

「きゃうん!?」

 

アミクはルーシィの両頬を挟むように叩いた。

 

 

 

「なぁ、ちぇりおってなんだ?」

 

「東和にある掛け声だとか・・・いや、ってか多分、

 『ちぇすと』だと思うぜ・・・」

 

 

外野がうるさい。

 

 

「このアホンダラ、ばがのこと言ってんじゃねぇで・・・」

 

「え!?え!?何!?頭打った!?」

 

「おっと、ん”ん”!いやねールーシィ馬鹿だなーって」

 

「え・・・」

 

まさか馬鹿と言われるとは思わず、ルーシィは唖然となる。

 

と、今度はアミクが覆いかぶさってきた。

 

抱きしめられたのだ。

 

「誰もルーシィが悪いだなんて思ってないよ。

 そもそもこんなの迷惑のうちにも入らないって!

 むしろ他の連中が仕出かしてきた問題の方がよっぽど厄介だからね!」

 

「なの」

 

アミクが言うと周りの者たちも賛同するように苦笑しながら頷く。

 

「アミクぅ・・・」

 

「ルーシィはこの汚ぇ酒場で笑ってる方が似合ってるぜ?」

 

「あい!」

 

今度はナツが笑みを見せる。

 

「ナツ・・・」

 

「もし、そんなこと言う奴がいたらぶっ飛ばしてやる、の・・・

 

 アミクが」

 

 

「えぇー!?そこで他人任せ!?」

 

 

マーチとハッピーの漫才に思わず笑みが零れた。

 

急に頭を撫でてくる感触が伝わった。

 

 

ナツだ。

 

「ここにいてぇんだろ?ルーシィ。

 戻りたくない場所に戻って何があんだよ?

 お前は『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』のルーシィだろ?」

 

「そうそう!ルーシィが居たい所に居ればいいんだよ。

 少なくともここは君を受け入れてくれる。

 

 

 君の帰る場所は『妖精の尻尾(ここ)』だよ」

 

 

ナツとアミク、二人の言葉によりルーシィはまた泣いてしまった。

 

だが、その涙はルーシィの冷えていた心を溶かしていくようにも見えた。

 

 

 

 

 

 

ミラは今、この場にいないラクサスに助太刀してもらえるよう頼むため、通信用魔水晶(ラクリマ)の前にいる。

 

通信用魔水晶(ラクリマ)とは遠く離れた相手と会話をするための魔水晶であり、基本的に大きな水晶が使われている。

余談だが、最近小型化が進んでいるらしい。

 

直ぐ近くではカナがカードを使った占いでミストガンの居場所を探しているが、雲行きは怪しいようだ。

 

 

ラクサスとミストガンは『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』におけるS級魔導士である。

 

そんな2人が帰ってきてくれれば、マカロフがやられてしまって危機的状況にある『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』の戦力が増強するのだが。

 

「~~~ダメ!ミストガンの居場所は分からない!」

 

「そう・・・残念ね・・・」

 

ミストガンはいつも放浪しておりどこにいるか分からない。

たまにギルドに来ても皆眠らせてしまうため他人との関わりを避けていることが分かる。

 

なので、だれも行方を知らず、占いで居場所を探ろうにも効果は無く

ミストガンに関してはお手上げだった。

 

「ルーシィが目的だとすると奴等はまた攻めて来るよ。怪我人も多いし・・・マズイわね」

 

「マスターは重傷、ミストガンは行方が分からない・・・頼れるのはあなただけなのよ・・・ラクサス」

 

ミラは魔水晶(ラクリマ)に映し出されている金髪の青年――――ラクサスに話しかけた。

 

 

『あ?』

 

 

「お願い・・・戻ってきて、妖精の尻尾のピンチなの」

 

 

 

ミラは悲壮な表情をしながらラクサスに頼む。

 

しかし、ラクサスはそんなミラに対して嘲笑うかのような顔をした。

 

 

『あのクソじじぃもざまぁねぇなァ!ははは!

 

 オレには関係ねぇ話だ、勝手にやっててちょうだいよ』

 

 

 

「・・・!ラクサス!!あんた!!」

 

あまりの言いようにカナが立ち上がりながら怒るが、ラクサスは意に返しておらず、ニヤニヤ笑っている。

 

 

『だってそうだろう?じじぃの始めた戦争をなんで俺達がケツ拭かなきゃなんねぇんだ』 

 

 

「ルーシィが・・・仲間が狙われてるの・・・」

 

 

『あ?誰だそいつァ・・・あぁ、あの乳のデケぇ女か・・・

 

俺の女になるなら助けてやってもいいと伝えておけ!

 

それとじじぃにはさっさと引退してオレにマスターの座をよこせとなぁ!』

 

 

「あんたって人は・・・!」

 

 

「あれ?ラクサス?」

 

タイミングがいいのか悪いのか、アミクがやってくる。

 

 

「アミク・・・」

 

 

『けっ、何だよアミク。お前もオレに戦えって言うんじゃねぇだろうな!』

 

 

「んー、できれば一緒に戦ってほしいけど・・・ダメかな?」

 

 

『さっきの話聞いてなかったか?・・・それとも

 

 お前があのルーシィとやらの代わりに俺の女になるってか?

 

 オレはそれでもいいぜ』

 

 

「・・・」

 

 

『つーかよ、『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』の一員だからって無理矢理

 戦わせようとするのはどうかと思うぜ。

 家族家族言いながらその家族を死地に送らせるたぁ、家族ってのは厄介な鎖だな』

 

嘲るように言うラクサス。

 

それを聞いたアミクは少し悲しそうな顔をしながらラクサスを見るとツインテールを一撫でした。

 

「・・・別に戦いを強制しているわけじゃない。

 命を落とすかもしれないんだから、怖くても当たり前だよ。

 

 ・・・でもね、皆逃げないんだ。

 守りたいから。

 怖くても勇気を出して、

 弱くても自分なりの戦いで――――

 家族を、ギルドを守ろうとしているんだよ」

 

 

『・・・結局鎖じゃねぁか』

 

「ううん、鎖なんかじゃない。絆の証だよ」

 

だから――――とアミクはラクサスの目を見た。

 

「守れる力があるラクサスには一緒に戦ってほしいんだ。

 

 ――――家族として」

 

アミクの言葉にラクサスは黙った。

 

ミラとカナは説得に成功したか、と期待したが――――。

 

 

『――――だったら、もうちょっと誠意見せろよ。

 人にものを頼む時はそれなりの誠意ってもんがあるだろ?

 ほら、アミク。脱いでみろよ。そうすれば考えてやらないこともな―――――』

 

パリィン!

 

 

ミラはとうとう怒りの感情のまま魔水晶(ラクリマ)を壊してしまった。

 

「信じらんない・・・こんな人が、本当に妖精の尻尾の一員なの・・・?」

 

「ミラ・・・ってアミク!?アンタなに本当に脱ごうとしてるのよ!?」

 

「え?誠意見せろって・・・」

 

「ここで天然発揮しなくてもいいから!」

 

カナは上着を脱ごうとするアミクを必死に止める。

 

そもそももう魔水晶(ラクリマ)には何も映っていないので脱いだところで

無意味である。

 

 

「――――こうなったら私も戦う!」

 

「え!?」

 

「な!?何言ってんのよ!!」

 

アミクとカナは驚いてミラを見る。

 

「元々、私がギルドにいながらルーシィを攫われちゃったのが悪いの・・・」

 

「それは・・・違うよ」

 

「そうよ、それに今のアンタじゃ足手まといになる。

 たとえ、元・S級魔導士でもね」

 

 

アミクとカナに止められ、ミラは悔しげに俯いた。

 

ミラの内心はアミクにも察せる。昔だったら・・・とでも思ってるに違いない。

 

だから、アミクは優しくミラに話しかけた。

 

 

「ミラさん・・・大丈夫。ミラさんがいるだけでも皆の力になってるよ。

 私達はあの酒場でミラさんが笑顔で待ってる、って思うと力が湧いてくるんだ。

 だから、いつものように待ってて欲しいな」

 

ミラはそれを聞いて涙を溜めながらも頷いた。そして、アミクの頭を撫でる。

 

「ええ・・・待ってるから・・・無事に帰って来てね?」

 

「・・・うん!」

 

そんな二人を微笑ましそうに見ていたカナ。

 

その時――――

 

 

「―――――!」

 

アミクがビクッと反応した。

 

「どうしたの!?」

 

「――――く、来る!何か大きいのが来る!!」

 

「―――!!」

 

アミクの警告にミラとカナは驚くとすぐに皆に知らせに行った。

 

アミクは一足先に外に出る。すると――――

 

 

 

「うわ・・・嘘でしょ」

 

 

まだ近くまでは来ていないが、海の向こうから巨大なものが歩行してくるのが見えた。

 

 

 

「なんだありゃあああああ!!?」

 

「デカ―――――っ!!」

 

ナツとハッピーも出てきて叫ぶ。

 

それから全員が外に出てくるまでそう時間はかからなかった。

 

 

その時には巨大な物の全貌が見えていた。

まるでお城のような建造物で、それがロボットになったかのようだった。

 

そして、見覚えのあるマークが――――。

 

「ファントム!!?」

 

「じゃあ、あれはギルドか!?」

 

「ギルドが歩いてきた、の!?」

 

「まさか、こんな方法で来る、なんて・・・」

 

アミクは呆然と近づいてくるファントムのギルドを見る。

 

そして、ファントムのギルドはこっちのギルドの前で止まった。

 

そして―――――

 

 

建物についていた砲身に魔力が集まっていくのを感じる。

 

 

「あ、あれは・・・魔導収束砲(ジュピター)か!?」

 

「そんな・・・!そんなの喰らったら・・・」

 

ギルドが壊れてしまう。

 

アミクは目の前が真っ暗になりそうだった。

 

 

その時。

 

 

「全員伏せろおおおおおおおおおお!!!」

 

 

エルザが叫び、皆の前に立ち塞がる。ギルドを、皆を守るかのように。

 

 

「エルザ!」

 

「ギルドはやらせん!!」

 

「まさか・・・エルザ!?あれを受け止める気か!?」

 

『さすがにあれを喰らったら無事では済まない・・・!』

 

アミクはウルの言葉を聴きエルザを止めようとする。

 

「エルザ!やめてよ!そんなことしたら貴方が―――」

 

「私がやらねば!誰がやると言うんだ!!」

 

エルザは超防御力を誇る『金剛の鎧』に換装した。

 

「アミク、下がれ。巻き込まれるぞ」

 

「・・・分かったよ、エルザ。

 

 でも、せめてもの手助けはさせてもらうから・・・!」

 

アミクは歌い出す。魔導収束砲(ジュピター)が発射されようとしているとき、その場には可憐な歌声が響いた。

 

「――――『防御力強歌(アンサンブル)』!!」

 

そして、付加術(エンチャント)をエルザに掛けた。

防御力を上げるものだ。

 

 

「――――助かる」

 

エルザはふ、と笑みを浮かべた瞬間。

 

 

──ドゴォォォォォォォォォォォォォン!!!!

 

 

魔導収束砲(ジュピター)が発射された。

 

エルザはそれを全身で受け止める。

 

「エルザああああああああ!!!」

 

ナツが吠えた。

 

 

「う、ぐ・・・」

 

鎧が少しずつ剥がれ落ち、全身から激痛もするが、耐えれないほどではない。

 

 

アミクの付加術(エンチャント)のおかげだろう。

 

 

「ぐ、うううううう!!!」

 

それでも威力がとんでもない。エルザは少しずつ押されていった。

 

 

だが、ここで負けるわけにはいかない。

 

自分の後ろには守るべきギルドと家族がいるのだから・・・!

 

 

その想いが通じたのか魔導収束砲(ジュピター)に終わりが見えてきた。

 

(あ、ともう少し・・・!)

 

魔導収束砲(ジュピター)はだんだん細くなり、そしてとうとう撃ち終わった、と思った途端。

 

 

「ぐ、わあああああ!!!」

 

最後の最後で、耐えきれずにエルザは吹っ飛ばされた。

 

「「エルザああああああああああ!!!」」

 

アミクとナツは同時に飛びだした。

 

落ちてくるエルザをナツが受け止め、アミクが治療する。

 

「エルザ、エルザ!止めたんだよ、エルザが止めたんだ!ありがとう・・・!」

 

「ぐ、うう、そう、か・・・それは・・・よかっ、た」

 

鎧は砕け散ってこそいないがボロボロ、エルザ自身も意識が朦朧としている。

 

治療し終わってもすぐに戦いに出るのは危険だろう。

 

「エルザ!」

 

「エルザ、死なないで、なの!」

 

『まったく!『妖精の尻尾(ここ)』には無茶する奴しかいないのか!?』

 

グレイやマーチ達も駆け寄ってきた。

 

ルーシィは今にも泣きそうだ。

 

 

『・・・マカロフ・・・そしてエルザも戦闘不能』

 

突然、ファントムにあるスピーカーから聴き覚えのある声がした。

 

 

「この声って、変質者の・・・」

 

「ま、マスタージョゼだ!」

 

誰かが叫んでくれたのでアミクはやっと誰だか分かった。

 

『もう貴様らに、凱歌は上がらん・・・

 

ルーシィ・ハートフィリアを渡せ・・・今すぐだ』

 

「誰が渡すか!!」

 

「仲間を差し出すギルドがどこにある!?」

 

 

その言葉にルーシィは涙が止まらなくなりそうだった。

自分のためにそこまで・・・・。

 

「仲間を売るくらいなら、死んだ方がマシだぁっ!!」

 

「オレたちの答えは変わらねぇ!!お前らをぶっ潰してやる!!!」

 

エルザも息も絶え絶えに叫び、ナツも吠える。

 

 

これも自分が帰れば済むことなのだ。

 

これ以上皆が傷つくくらいなら・・・。

 

そう思い悩むルーシィの手をアミクがそっと掴んだ。

 

「アミク・・・」

 

ルーシィの不安そうな声にアミクは頷く。

 

そして、息を吸い込むと――――

 

 

「変質者セクハラ野郎に渡す家族は、うちにはいない!!!」

 

 

誰よりも大声で叫んだ。

 

 

「だからさっさと潰れろ!!!この万年引き籠りミミズ野郎!!!」

 

 

『・・・言いたいことは、それだけか・・・!』

 

明らかに怒りで震えている声だった。

 

ちょっと煽りすぎたかもしれない。

 

 

『ならば、特大の魔導収束砲(ジュピター)を喰らわせてやる!!

 発動までの15分・・・恐怖の中であがけ!』

 

ジョゼの怒り狂う声が響くと、幽鬼のギルドから大量の兵が出てきた。

 

 

 

『地獄を見ろ・・・妖精の尻尾・・・。

 

貴様らに残された選択肢は2つだ・・・

 

 

 

 

我が兵に殺されるか、魔導収束砲(ジュピター)で死ぬかだ!』

 

 

 

それっきり放送が流れることはなかった。

 

「・・・!ここで魔導収束砲(ジュピター)って・・・

 仲間ごとやるってこと!?」

 

「・・・あれは幽兵(シェイド)だ。

 ジョゼの魔法で造り出した兵さ」

 

 

つまり、遠慮なく魔導収束砲(ジュピター)を撃つってことだ。

 

 

「15分・・・。十分!ナツ!一緒に魔導収束砲(ジュピター)を壊そう!」

 

「おう!いくぞ、ハッピー、マーチ!!」

 

「あいさー!」「なの!」

 

 

アミクとナツは魔導収束砲(ジュピター)を壊す役目を名乗り、マーチとハッピーと共に

砲身に向かっていった。

 

 

その後を、グレイとエルフマンが追っていく。

 

「頼んだ・・・ぞ・・・二人、とも・・・」

 

砲身に向かう二人を見て、エルザは呟くと眠るように気絶した。

 

 

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)』と『幽鬼の支配者(ファントムロード)』の全面戦争

が始まる・・・。

 

 




うん、アミクがクサイことしか言わないのマジ草ww。

ちなみにちょっとした原作改変としてはエルザの鎧が粉々になってないのと傷があんまりないことぐらい?ぶっちゃけあってもなくてもいいやつやな。

換装待ってます。

間違えた、感想待ってます。


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VS 兎兎丸

最近太った。


ナツとアミクは魔導収束砲(ジュピター)の砲身に乗って、どうにかしてこれを壊せないか考えていた。

 

「かってぇ!ビクともしねぇ!」

 

「うーん、やっぱり内側から壊すしかなさそうだね・・・」

 

ナツもアミクも殴ったり音を流したりしてみたが滅茶苦茶固くて壊せそうにない。

 

「ここから入れば一気にショートカット、なの」

 

「これ入ってる間に撃たれたら消し飛ぶよね・・・」

 

アミク達は砲身から中に侵入することにした。

 

「それにしてもこんなの作ったなんてすごいお金持ってるんだなぁ・・・」

 

アミクはカンカン、と音を響かせながら砲身の中を歩いた。

 

「いくらかかるんだ?」

 

「さぁ・・・億はするんじゃない?」

 

「「億ぅ!!?」」

 

なんて会話をしているうちにギルド内に辿り着いたようだ。

 

そこは広い部屋になっていた。そして真ん中にあるのが――――

 

 

「あ!見て!」

 

アミクは巨大な魔水晶(ラクリマ)を指差す。

 

 

 

魔導収束砲(ジュピター)はこの魔水晶(ラクリマ)に魔力を詰め込んで発射させていたのだ。

この部屋はおそらく制御室だろう。

 

 

「ってことはこれを壊せば、魔導収束砲(ジュピター)は撃てない!」

 

「よぉーし!だったらさっさと壊すぞぉぉぉぉぉ!!!」

 

「待って!誰かいる!」

 

 

 

アミクの言葉が聞こえなかったのかナツは拳に炎を纏い、魔水晶(ラクリマ)にとびかかった。

 

―――――が。

 

 

「うぇぶ!!?」

 

急にナツがナツ自身を殴ったのだ。

 

「ナツ!?」

 

「遊んでる場合じゃない、の」

 

「ち、違ぇよ!体が勝手に・・・!」

 

 

そこでアミクは巨大魔水晶(ラクリマ)の前にいる人物を睨む。この人の魔法だろうか。

 

「ってさ、侍!?」

 

「これは壊させないよ」

 

アミクが驚いたような声を上げると

 

侍のような格好をした男―――――兎兎丸が不敵に笑った。

 

 

「そりゃ、そうか。制御室って大事な部屋に誰も置かないわけないよね」

 

 

アミクはナツの隣で構えた。

 

「いてぇなこの野郎!『火竜の―――』」

 

ナツが拳に火を灯した直後―――――。

 

「うおっ!?」

 

「きゃあっ!」

 

ナツの拳がアミクを襲ったのだ。

 

「わ、悪ぃ、アミク!」

 

「あっつ・・・やっぱり貴方の魔法だね」

 

アミクの腕が少し焼けたがこれくらいなら何ともない。

念のため『持続回復歌(ヒム)』を使って、目の前の男に問いかける。

 

「その通り。私は火のエレメントを操りし兎兎丸。すべての炎は私によって制御される。

 敵であろうと自然であろうと全ての炎は私の物だ」

 

「俺の炎は、俺のものだ!」

 

ナツは愚直に炎を纏った拳を叩きつけようとするが、兎兎丸はそれを操ってナツ自身を攻撃させた。

 

「ナツ!君とは相性が悪いよ!私がやる!今は(・・)下がってて!」

 

「そうだよ!そんなヤツなんか無視して早く魔水晶(ラクリマ)を壊そうよ!」

 

「・・・待って、あいつは炎を操る、の。今、ナツが炎で魔水晶(ラクリマ)

 壊そうとしても操られて逆にアミクの邪魔になると思う、の。

 だから、先にアミクに倒してもらった方が賢命、なの」

 

「あ、そっか」

 

ハッピーにマーチが説明する中、ナツは渋々攻撃をやめた。

 

「・・・仕方ねぇ、今は急いでっからアミクに任すわ。

 頼んだぞ!」

 

「まっかせて!」

 

アミクは後ろに下がったナツの代わりに前に出た。

 

 

「・・・ふむ、今度は女子か。悪いが女子だからと言って手加減はしないよ」

 

「じょーとーだよっ!」

 

 

 

「まずは小手調べ!『青い炎(ブルーファイア)』!」

 

兎兎丸は青色の炎を出すとそれをアミクに向かって放った。

 

それを危なげなく避けるが近くで感じたのは熱さじゃない。

 

「え、この火冷たい・・・?」

 

「私の出す炎は多様性に富んでいるのだよ」

 

ちなみにさっきの炎はナツがちゃっかり食っていた。

 

「でも、火の魔導士ならずっと近くで見てきたんだから!」

 

アミクは息を吸い込むと―――

 

「『音竜の咆哮』!!」

 

「!?」

 

ブレスを放つ。兎兎丸は何とかそれを避けた。

 

「なるほど・・・お前が『音竜(うたひめ)』か。

 だとしたらあそこにいる片割れが『火竜(サラマンダー)』というわけか」

 

「・・・そういうこと。だから、火の魔導士には慣れてるんだ」

 

 

「ふむ、私を『火竜(サラマンダー)』と同じだと思ったら火傷するぞ」

 

 

「そんなこと思ってないよ。ナツの方がずーっと強いからね!」

 

「ほざけ、『紫の炎(パープルファイア)』!」

 

今度は紫色の粘つく様な炎を放ってきた。

 

「マカオの魔法!?」

 

マカオもこれと同じ魔法を使う。

 

その炎はまたナツに食われた。

 

 

「これはどうだ?『橙の炎(オレンジファイア)』!」

 

「・・・くっさ!!」

 

オレンジ色の炎。めっちゃ臭い。直接当たってないのに臭いが届く。

 

「うへぇ!これ糞の臭いだ!!うえ!」

 

食べたナツもなんかダメージを受けてた。

 

「下品な炎だなぁ・・・」

 

 

「ハハハ!私の色とりどりの炎はどうだ!」

 

「確かに面白いけどさ・・・」

 

アミクは残された時間を考える。およそあと10分。

 

 

そろそろ真面目にやらなければ。

 

「遊んでる暇は、ないっ!」

 

アミクは拳に音を纏わせると兎兎丸に向かって突っ込んでいく。

 

「さぁ、来い!『緑の炎(グリーンファイア)』!」

 

本当にレパートリーに富んだ炎だ。

 

今度はどんな効果があるか分からないが避ければどうってことない。

 

アミクは頭を傾けて炎を避けると兎兎丸に拳を叩きこもうとした。

 

瞬間。兎兎丸がニヤッと笑う。

 

嫌な予感がしたアミクの耳にボヨン、と音が響く。

 

 

直感に従って横に避けると、アミクの頭があったところを先ほどの緑の炎が通過したところだった。

 

「うお!今、あの炎、壁に当たって跳ね返ったぞ!!」

 

「・・・なるほど、跳ねる炎、ね・・・」

 

「勘の鋭い娘だ」

 

悔しげに言う兎兎丸。さっきからロクに攻撃をアミクに当てられていない。

 

「もう一度・・・!」

 

「『藍の炎(アンバーファイア)』!!」

 

間髪を入れずに藍色の炎を放ってきた。その炎は水のように広がって襲ってくる。

 

「『音竜の響拳』!!」

 

アミクは衝撃波で炎を吹き飛ばし、兎兎丸に接近する。

弾き飛ばされた炎は床に水溜りのようになって燃え続けていた。

 

「『音竜の旋律』!」

 

「グハァ!!」

 

アミクの蹴りが兎兎丸の腹に入り込んだ。兎兎丸はくの字になり吹き飛ぶ。

 

「ぐぅ、小癪な!『黄の炎(イエローファイア)』!!」

 

兎兎丸が空中を飛びながら手を構えた瞬間。黄色い炎がカチカチになりながら飛び出してきてアミクに向かう。

 

「・・・っ!」

 

アミクはそれを最小限の動きでかわした。肩を炎が掠めて熱い。

 

後ろで「だぁー!?この炎硬ぇ!?」という声を聴きながらアミクは腕を構えた。

 

「だ、だったらオーソドックスな炎で燃やし尽くしてやる!

 炎の基礎!『赤い炎(ファイア)』ァ!!」

 

真っ赤に燃える炎。単純だが、今までより規模が大きく、威力も高い火が覆いかぶさるように襲ってくる。

 

(・・・ナツの炎と比べたら、遥かに涼しいっ・・・!)

 

アミクは蹴りだけでその炎を消しとばす。

 

「なん、だ、と!?」

 

「『音竜の輪舞曲(ロンド)』!!」

 

「うぎゃあああああああ!!!」

 

驚いている兎兎丸に向かって音を纏った両腕を振り下ろし、兎兎丸を真っ直ぐぶっ飛ばす。

 

彼はそのまま壁に叩きつけられた。

 

「がっ!」

 

「勝負あったね。やっぱり、貴方の炎はナツの炎より熱さ(・・)が足りないよ。

 早速、魔水晶(ラクリマ)を――――」

 

「――――舐めるなァ!!我が最強魔法で塵にしてくれる!!『七色の炎(レインボーファイア)』ァ!!」

 

アミクが魔水晶(ラクリマ)に向き直った瞬間、兎兎丸が七色全部混ぜた炎を放ってきた。

 

だが。

 

パク。

 

ナツがその炎にかぶりつく。

 

そして吸い込んで全部食べてしまった。

 

「ありがと、ナツ」

 

「・・・ふぅ、ごちそうさま、ってかくっせぇし冷てぇ。

 アミク、待たせたな」

 

「見せ場、ちゃんと残したんだから。じゃ、止めお願い。できるよね?」

 

「当たり前だ!」

 

どんな心境の変化があったのか分からないが、アミクはナツに後を託すと魔水晶(ラクリマ)の方に向かっていく。

 

「ハハハハハ!!お前の炎は私のものだと言っただろう!

 私には通用しないよ!!」

 

「おまえこそ、俺の炎は俺のだって言っただろーがあぁぁ!!」

 

 

ナツは巨大な炎を腕に纏った。

 

兎兎丸が制御しようとするが―――――

 

 

 

「・・・なっ!!?制御できないだと!!?まさかこの土壇場で制御返しを!!?」

 

「おめぇの炎は全部見たんだ!!今度は俺の(・・)炎を見せてやる!!」

 

燃え盛る炎が兎兎丸に襲いかかっていく。兎兎丸が必死に制御しようともナツの炎は止まらない。

 

「何よこれぇ!!」

 

「『火竜の鉄拳』!!」

 

ナツは思いっきり兎兎丸を上空に殴りとばした。

 

 

 

「でも、なんでナツに任せたの?」

 

ハッピーがアミクの隣を飛びながら訊いてくる。

 

「言ったでしょ。ナツの方がずーっと強いって。

 そのうちコツでも憶えてあの人の制御克服すると思ってたから

 しばらく私が相手してあげたの」

 

「ああ、何かやたら隣で燃えてると思った、の」

 

「それで、アイツの炎を食べて魔力回復してたんだね」

 

「あの行為でどうやって克服できたのかわからないけど・・・

 私はナツを信じてるから」

 

「・・・どぅえきてるぅううううう〜」

 

「・・・?」

 

「巻き舌・・・羨ましい、の」

 

「でも、アミクだけでも余裕だったでしょ?」

 

「まぁ、ね」

 

アミクたちは魔水晶(ラクリマ)の前まで辿り着いた。

 

「あとはこれを壊すだけっ、と」

 

アミクは手に音を纏うと思いっきり魔水晶(ラクリマ)に叩きつけた。

 

パリィン!!

 

魔水晶(ラクリマ)は砕け散った。

 

「・・・残り5分だったか。上出来!」

 

「おーい、こっちも終わったぞ!」

 

「これで任務は成功、なの」

 

お互い喜び合っていると

 

ガコン!

 

「うわ!」

 

「な、なんだ!?」

 

急にギルドが動き出した。

 

「どーなってんだ!?」

 

「わかないけど、これこの後の展開が予想できーーーーーうぅえぇ」

 

ギルドが乗り物のように激しく動き出す。

 

『乗り物』と認識してしまったアミクとナツは途端に気持ち悪くなり、

蹲って動けなくなってしまう。

 

「おえぷ・・・なんなんだこの乗り物は・・・」

 

「ほん、と・・・!技術力の高いことで・・・!」

 

二人ともしばらく苦しそうに耐えていたが、すぐに動きが止まった。

 

「ふっかーつ!」

 

「この体質、どうにかなんないのかなぁ・・・」

 

「おい、ナツ、アミク!」

 

「グレイ!エルフマンまで!?二人も来たんだ」

 

二人が来てくれたのは心強いが・・・エルフマンは少し不安要素がある。

 

「んだよ、もう終わっちまったのか」

 

「それでこそ漢だ!」

 

「私は女ですけど・・・」

 

エルフマンは床で白目を剥いている兎兎丸を見て、誇らしそうに頷いている。

 

「それより、ハッピーとマーチ。外に行って何が起こってるか見て来てくれる?」

 

「あいさー!」

 

「わかった、なの」

 

ハッピーとマーチは外に飛んで行きしばらくすると飛んで戻って来た。

 

「大変だー! ギルドが巨人になって、魔法を唱えてて! 完成したら大聖堂まで消えちゃうって!」

 

この建物はファントムの最終兵器『超魔道巨人ファントムMkII』という。

 

「落ち着いて、なの。このギルド自体が魔導士らしい、の。それで『煉獄砕波(アビスブレイク)』を唱えてる、の」

 

それを聞いたアミク達は驚愕した。

煉獄砕波(アビスブレイク)』といえば禁忌魔法の一つで壮大な威力を放つ闇の魔法だ。

 

こんな大きい建物が使ったら街一つは簡単に消し飛びかねない。

 

「急いでこの建物止めなきゃ!」

 

「動力源を探すぞ!」

 

「次から次へと問題を起こすなよなぁ!」

 

ナツ達が手分けして探そうとすると、アミクが慌てて助言する。

 

「エレメント4に会ったらなるべく倒しておいて!動力源と繋がってるかもしれない!

 あと、私たちが倒したのは多分『奴は四天王の中でも最弱ぅ!!』的な奴だと思うから、

 甘く見ちゃダメだよ!」

 

「一体、どこからそんなセリフ覚えたんだよ・・・」

 

それから四人で手分けして探すことにする。別れる直前。

 

『・・・こっちは任せな。健闘を祈る』

 

『分かった、ウル』

 

アミクは『声送(レチタティーヴォ)』でグレイのネックレスにいるウルにだけ声を送ると、

マーチと共に去っていった。




眠いです。

兎兎丸の緑、黄、藍の炎はオリジナルで考えたものです。

原作で出なかったからね!赤は多分普通の炎でしょ?


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ウルの憂鬱と大空のアリア

今回ジュビア出まーす。


氷になったウルは悶々としていた。自分の弟子が戦っている姿をすぐ近くで見られるのはいいが・・・

こいつらのやってることは戦いなのか?

 

 

まず、グレイはエレメント4の一人である『大海』のジュビアと出会った。

 

グレイは戦いを挑もうとするが、なぜかジュビアは真面目に戦おうとしない。

 

いや、分かってる。あの顔は惚れた顔だ!グレイに一目惚れしてしまったのだ。

 

(グレイも隅に置けないね)

 

少し寂しく思いながらも、心の中でニヤニヤするウル。

 

 

ーーーーーだが。

 

水に閉じ込めたり、ルーシィに嫉妬して襲いかかって来たり、色々ヤバい女だった。

 

グレイもグレイでとんでもない男だった。

 

戦闘中に胸を揉んだりするなど、いつの間にそんなすけこまし野郎になったのか。

 

「で、まだやんのかい?」

 

「キャピーン❤️」

 

そして、なんとかジュビアに勝ったグレイは何故だかネックレスから冷えるような視線が突き刺さっているような気がして落ち着かないのだった。

 

「な、なんだ・・・?この寒気は・・・!?」

 

 

 

 

 

一方、エルフマンは。

 

 

『大地』のソルなる者と戦い、トラウマを抉られていた。

 

「ノンノンノン。いけませんねぇ。貴方が全身接取(テイクオーバー)をしようとして

 失敗し暴走して、どうしたのか、何をしてしまったのか。貴方は妹様を・・・」

 

このようにエルフマンの心を突くように喋りかけてくるムッシュ・ソル。

 

エルフマンが全身接取(テイクオーバー)をしようとしても、トラウマのせいで失敗してしまう。

 

さらに、ジョゼを騙そうとし、それがバレ、捕えられたミラ。今にも潰されそうだ。

 

そして、思い出す過去の出来事。

 

2年前。

 

ミラとリサーナ、そして自分はS級クエストに行こうとしていた。

 

そこで、ナツとアミクも誘おうとした、のだが・・・。

 

『アミクとナツも来るか?』

 

『おー!行きてぇ・・・んだけど・・・』

 

『私たち二人で仕事受ける約束してたんだ。

 まぁ、今やる必要もないし、ミラさん達と仕事行こうか?』

 

『いや、これは俺たち家族だけで十分だ!

 それに漢の約束は守るべし!』

 

『私は女ですが・・・?』

 

「や、やめろ!二人を連れて行け!」

 

これはもう過去の出来事だ。分かっているのに叫ぶことをやめられない。

 

 

「エルフマン・・・貴方まで失ったら・・・!」

 

ソルに一方的にやられるの中、ミラの泣きそうな声が聞こえた。

 

「何で・・・もう姉ちゃんの涙は見ねえって誓ったんだ。なのに何で泣いてんだよ!!」

 

エルフマンは覚醒し、全身接取(テイクオーバー)に成功し、ソルをタコ殴りにした。

 

そして、理性も残っている。もう暴走はしない。

 

「守れなかったんだ。そのせいでリサーナは死んじまった」

 

「私は生きているわ。あの時決めたじゃない。あの子の分まで生きようって。一生懸命頑張ろうって」

 

 

そう言われ、抱きしめられる。エルフマンはリサーナに続いてミラまでも失いそうになったがそうならずに済んだことと、ミラの言葉が嬉しくて、

泣いてしまった。

 

 

 

 

 

そして合流したエルフマンとグレイ。

 

「なんだこの女。幸せそうな顔で倒れてやがる」

 

「・・・これでエレメント4はあと一人。『大空』のアリアだけよ」

 

エレメント4は超魔道巨人ファントムMkIIの動力源であり、3人も倒した今、

動きが格段に遅くなっていた。

 

煉獄砕波(アビスブレイク)』を唱えるスピードも遅くなっており、あと一人を倒せば止めることができるだろう。

 

 

 

 

 

 

「うーん、ほかのエレメント4はどこにいるんだろう?」

 

「もう倒されてるのかも、なの」

 

アミクは長い廊下を走っていた。

 

あちこち走り回って雑兵を倒したりしていたがガジルどころかエレメント4にすら出会わない。

 

仕方なく、ナツの匂いがしないところを中心に動力源を探し回っている。

 

そのまま、少し広い部屋に出た。

 

「ここを突っ切れば・・・・ん?」

 

 

その時、目の前に風が吹く。

 

 

「悲しい・・・」

 

その風から声が聞こえた。

 

 

「音の翼は朽ちて堕ちてゆく・・・

嗚呼・・・そこに残るは竜の屍・・・」

 

「貴方は・・・ガジルと一緒にいた・・・」

 

「アミク!ソイツ、エレメント4の1人、なの!」

 

その男は覆いをした目から涙を流し、名乗った。

 

「我が名はアリア・・・

エレメント4の頂点なり。

(ドラゴン)狩りに推参いたした」

 

 

(ドラゴン)狩り?滅竜魔導士はこっちなのに

可笑しなこと言うね」

 

「アミク!気をつけて!なの!ソイツ、強い、の!」

 

「分かってる!」

 

 

アミクは先手必勝とばかりに飛びかかる――――が、

 

 

 

「うっ!?」

 

急に何かに突き飛ばされた。アミクはそのままもんどり打つ。

 

「アミク!?」

 

「い、今何も見えなかった・・・」

 

音さえ聞こえなかった。

 

無音なのか、聞こえないほど小さいのか。

 

「私の魔法は空域。この空域の中で、貴様は耐えられるかな」

 

「くあっ、あ、ぐっ!」

 

次々とアリアは空域を繰り出し、アミクにぶつけていく。

 

一方的にやられて、吐血し、血が噴き出す。

 

「アミクが手も足も出ないなんて・・・なの」

 

目にも見えず、音も聴きとれないのでは唯の無力な少女だ。

 

傷だらけになっていくアミクを見てマーチは歯を食いしばった。

 

「『空域・絶』!」

 

「がっ!」

 

アミクの顔に腹に足に手に、攻撃が当たっていく。

 

「上には上がいるってことですよ。『音竜(うたひめ)』」

 

「・・・くぅ・・・」

 

アミクはフラフラになりながらもまだ、自分の足で立っていた。

 

「まだ立つか、『音竜(うたひめ)』」

 

「こんなところで・・・負けてらんないよっ」

 

アミクは無理矢理不敵な笑みを浮かべる。

 

「私は『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』の魔導士。

 貴方がどんなに強くても必ず倒す。

 

 ――――燃えてきたよ」

 

ナツの口癖を使う。こっちまでなんだかやる気に満ち溢れるからだ。

 

「威勢はいいな。さて、それがいつまで持つか」

 

「『音竜の咆哮』!!」

 

ブレスを放つ。それはやっとアリアに当たったかと思われたが――――。

 

「消えた・・・?」

 

気配が消えた。慌てて耳を澄ます。

 

――――すぐ後ろで音が聴こえた。

 

 

「―――――!」

 

咄嗟に前に避けようとするが――――。

 

「う、あ!?」

 

「残念だが、逃げられんぞ。マカロフと同じ苦しみを与えてやろう。

 『空域・滅』!」

 

アリアが両手から発する空域に閉じ込められてしまった。

 

そして、一気に魔力を抜き取られる。

 

「ああああああ”あ”あ”あ”あ”!!」

 

「アミク――――!!」

 

苦しい。痛い。『枯渇(ドレイン)』も合わせて使ってるのかすごく痛い。

 

寒気がする。死んじゃう。こんなはずじゃ。

 

「悲しい・・・!妖精たちに響かせていたその声色は

 二度と紡がれることはないだろう・・・。

 

 翼はもがれ、『音竜(うたひめ)』は地に堕ちる・・・」

 

 

こんな、ことって・・・ナツ、ルーシィ、皆・・・。

 

死の気配が鎌首をもたげた。

 

 

 

 

瞬間。

 

 

 

 

 

バチバチバチバチ!!!

 

 

上から黄色い雷が降ってきた。

 

 

「ぬおっ!?」

 

 

それはアリアに直撃する。

 

 

感電して、その拍子に『空域・滅』を解除してしまう。

 

 

 

「・・・はぁ!はぁ、危なかった・・・」

 

 

今の雷って・・・・。

 

 

「まさか―――――」

 

アミクは脳裏に金髪でヘッドホンをした青年が浮かんだ。

どういう心境の変化だろうか。

 

まぁ、いい。今は目の前の敵に集中だ。

 

 

「・・・今の攻撃はどこから・・・?」

 

「よそ見してる、場合!?」

 

「!」

 

アミクはスピードを活かし、アリアの懐に潜り込んだ。

 

「『音竜の響拳』!!」

 

「ぐふっ!」

 

やっと攻撃が入った。アリアは腹を殴られ、空気を吐く。

 

「・・・やってくれたな」

 

アリアはそう呟くとまた、気配を消した。

 

 

(・・・集中しなきゃ。全くの無音ってわけじゃないはず。

 そこを聴きとるんだ)

 

アミクは全神経を聴覚に集める気持ちでいた。

 

こうなったら視力は邪魔だ。目を閉じる。

 

 

闇の中で時々外の戦闘音が聞こえてくる以外は静かだ。

 

ここでいつ襲ってくるのかどこから襲ってくるのか。

 

それを見極め――――否、聴極めなければならない。

 

 

 

 

フォン

 

 

 

「これだ!!」

 

アミクは反射的に後ろに向かって衝撃波を放ちながら、床を踏み、前に跳ぶ。

 

「ぐぅ、まさか避けられるとは・・・」

 

アリアに衝撃波が当たったのか、痛そうに顎を撫でながら言う。

 

 

「・・・まだだ」

 

「・・・?」

 

このタイミングでアミクは魔法を発動する。

 

 

「『音竜の遁走曲(フーガ)』!!」

 

「ぐわぁあ!!?」

 

アミクがさっき踏んだ床が衝撃波を起こす。

 

アリアの巨体が浮いて床に着地する。

 

 

――――別名、『音竜の足跡(あしあと)』。

 

アミクが踏んだところに、音の衝撃波を発生させる。

 

地雷みたいなものだ。

 

 

「どーよっ!」

 

アミクは得意げにアリアを見た。

 

さっきに比べれば、攻撃をどんどん当てに行っている。

 

流れに乗ってきたのではなかろうか。このまま押していけば――――。

 

 

「―――ふふふ、まさかここまでやるとは」

 

 

アリアは不気味な笑いを見せた。なんだろう。嫌な予感がする。

 

・・・なんだか魔力が高まっているような?

 

「ここまでしてくれたお礼だ。本気を出そう」

 

―――あれでまだ本気じゃなかった!?

 

アミクは愕然とした。あれ以上の魔力を持って向かってくると言うのか。

 

アリアは目を覆っていた布を外した。今まで見えていなかった目が見える。

 

その目が光った。

 

瞬間。

 

 

「うああああああ!?」

 

体の中のものが吸い込まれるような感覚がする。

 

魔力ではない。もっと致命的なもののような。

 

マーチも苦しそうにしている。

 

「『死の空域・零』発動。この魔法は全ての命を喰らい尽くす」

 

「・・・なんで!そんな、簡単に!人の命を奪えるの!?」

 

アミクが叫ぶように聞いてもアリアは歪んだ笑みを浮かべて言い放つだけだった。

 

 

 

「さあ、楽しもう」

 

 

「―――私は!命を軽く見るような連中に負けたくない!」

 

アミクは言い終わると―――――歌を歌い始めた。

 

「貴方と同じ名前の魔法を使って、倒す!!」

 

「おもしろいな。私と同じ名前?どんなものか気になりますね」

 

不敵に笑うアリアそっちのけにアミクは自分に付加術(エンチャント)を掛けた。

 

 

 

 

「『攻撃力強歌(アリア)』!!」

 

「・・・なるほど、付加術(エンチャント)か。

 これまた珍しいものを使う」

 

 

魔力を吸われるならば、防御力は上げたところで意味がない。

それに正直、付加術(エンチャント)に多くの魔力を割きたくなかった。

 

 

「・・・ほんとはスピードも上げたいけど、これで決めるしかない・・・!」

 

 

 

アミクが向かって来ようとしたのを感じたのかアリアも空域を発動させようとした。

 

「来い、『音竜(うたひめ)』」

 

 

言われた途端、アミクは飛びだす。

 

 

「この空域の中では生物は滅する!」

 

 

大量の空域が発生したのだろう。微妙に空気が揺らいでる。

 

だが、視覚には頼らない。

 

(空域も、無音じゃない!はず)

 

もう一度、集中する。限界まで。空域の正確な場所まで分かるように、超音波も発して。

 

聴覚で全ての情報を集める。反射して戻ってくるまでの時間。それから距離を測り、

音の響き具合から大きさも推測する。

 

コォォォ

 

気付けば目の前に空域が聴こえる(・・・・)

 

「シッ!」

 

まずは横に避けた。

 

体を捻って空域をから逃れる。

 

と思ったら目の前にまた空域。

 

今度は下を潜るように避けた。

 

次は上、その次は右、その次は左、その次は・・・・

 

次々と、空域のある領域が分かるかのように全部避けていった。

 

「・・・なっ!?・・・」

 

アリアは驚いたように目を見開いた。だが、すぐにニヤッとする。

 

 

(幾ら何でも密集してるものは避けれまい!)

 

アミクが飛び込んで行ったのは空域が密集していて避けれる空間がないところだった。

 

あわや、万事休すかーーーーーと思った直後。

 

 

「『音竜の斬響(スタッカート)』!!」

 

手刀で作った音の刃で空域を切り裂いた。

 

 

「バカな!?空域を切り裂いて!?」

 

 

 

 

動揺しているアリアに詰め寄るアミク。

 

 

 

そしてーーーーーーー

 

 

 

 

 

「『滅竜奥義(めつりゅうおうぎ)』!!」

 

 

 

バッ、と拳を構えた。

 

 

 

「!」

 

アリアの腹に拳を入れる。右腕にもう一つ。胸に掌底。脇腹に蹴り。勢いを殺さず顔に裏拳。

そして、回し蹴り。左拳。頭突き。アッパー。後ろ蹴り。ラリアット。タイキック。

 

「『音災神楽組曲(おんさいかぐらスイート)』!!!」

 

舞うように拳や足、果ては頭までも使って攻撃をしていった。

 

「うああああああああああ!!!」

 

アミクは雄叫びを上げることで更に自分の中の熱を上げる。

 

素早く、激しい、そして付加術(エンチャント)のお陰で攻撃力の上がったラッシュ。

 

当たるたびに発生する衝撃波。

 

アリアは反応できない。なすがまま、一方的に攻撃に晒された。

 

そしてーーーーーーー。

 

 

トドメの正面突き。

 

一際大きな衝撃波がアリアの胸で起こる。

 

 

「ガハァッ!!」

 

アリアは口から血を吐き出しながら吹っ飛ぶ。

 

 

そして、白目を剥いて地面に倒れこんだ。

 

 

 

「・・・・や・・・った・・・」

 

 

アミクもそれを見届け、倒れこむ。

 

もう限界だった。

 

 

「アミクーーーー!!」

 

マーチが泣きながら飛びついてくる。

 

「よかった、よかった、の!すごい、の!あのアリアを倒した、の!」

 

「うん、うん・・・でも、私だけの力じゃない」

 

「・・・さっきの雷?」

 

「・・・うん」

 

アミクはどこかでこの様子を見ているであろう青年に小さく呟いた。

 

 

「ありがとう・・・・ラクサス」

 

 

 

 

 

超魔道巨人ファントムMkIIより離れた場所で。

 

 

 

壁に空いた穴からその様子を見ていた金髪の青年、ラクサスが不機嫌そうな顔でいた。

 

「・・・チッ、何やってんだか・・・」

 

ラクサスは自嘲するように吐き捨てた。

 

「・・・勘違いするなよ。オレはファントムの奴らが気に入らねぇから

 やっただけだ。

 決してお前の・・・お前らのためじゃねぇ」

 

周りには誰もいないのに誰に対して言っているのか。

 

自分に言い聞かせるためか、あるいは中にいる少女に向けてのものなのか。

 

 

ラクサスは少女が嬉しそうにしている顔を見て、その場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、思ったんだけどよ。マスタージョゼを倒しちまえば、こっちの勝ちじゃねぇか?」

 

「ナツじゃ無理だよ!うちのマスターと互角の魔力を持っているのに、敵いっこないよ!」

 

「でもよ、そのじっちゃんだって戦えねぇし、ラクサスやミストガン、エルザもいねぇんだぞ。

 じゃあ誰が勝てるんだよ」

 

「考えないようにしてたのにーーーー!」

 

ナツとハッピーはあちこちうろちょろしていたが特にエレメント4に会ったりもしたかったので、

とりあえず、アミクの匂いがするところに行った。

 

彼女と合流して行動した方が都合がいいからだ。

 

 

 

 

嘆くハッピーにナツは手をポン、と置く。

 

「俺がいるじゃねぇか!

 俺だけじゃねぇ!アミクもいる!

 俺だけでも勝てるし、二人だったら絶対倒せる!」

 

 

なんの根拠もない、自信に満ち溢れた言葉。

 

エルザやマカロフたちの方が強いのに、ナツの言葉には本当にやり遂げてしまいそうな

安心感があった。

 

 

「アミクの匂いが強くなってきたな」

 

「マーチもいるよね?怪我してなければいいけど・・・」

 

 

そしてたどり着いたその部屋には

 

 

倒れ伏したアミクがいた。

 

 

「ーーーーー!アミクっ!」

 

ナツは素早く駆け寄って抱き抱える。

 

「おい!しっかりしろよ!こんなとこで寝てたらーーーー」

 

 

 

 

 

「くーすかーすーすー」

 

「「ホントに寝てた!?」」

 

アミクが気持ちよさそうに寝息を立てている。

 

「あ、ナツ、ハッピー」

 

「マーチ!無事だったんだね!」

 

周りの警戒をしていたマーチがフワフワと飛んで帰ってきた。

 

「そちらこそ、なの。

 今、アミクはちょっとだけ仮眠中、なの。

 エレメント4の一人を倒してたから疲れて・・・」

 

「お!倒したのか!さすがアミクだな!」

 

「んん、ンンンンんん・・・」

 

ナツが嬉しそうに頷いていると、アミクが目を覚ました。

 

 

「・・・ふあ?ナツ?おはよう・・・」

 

「ようアミク!お疲れだったみたいだな!」

 

「うん・・・あの人すっごく強くて。ほら、あそこに伸びてるーーーーー」

 

目を擦りながら説明しようとするとーーーー

 

 

「・・・悲しい」

 

「なんだ!?」

 

「そんな!?」

 

ナツの背後でアリアがボロボロながらも立っていた。

 

いや、すでに限界だろう。フラフラだ。

 

しかしそれでもアリアは両手を構えた。

 

「私は竜に喰われた・・・だが、タダでは喰われまい。

 『火竜(サラマンダー)』と『音竜(うたひめ)』・・・

 二匹の竜の首を頂いて散ろう」

 

「ナ、ツ・・・!」

 

「クッソォ!!」

 

ナツとアミク。そしてついでにハッピーとマーチも『空域・滅』に囚われる。

 

これはアリアの最後に残された力だ。これで全員殺す。

 

アリアがいざ、魔法を行使しようとした時。

 

 

 

 

 

 

「『天輪――循環の剣(サークルソード)』!!」

 

 

緋色の髪を持つ女性。

 

 

その人物がアリアを滅多斬りにした。

 

 

「がふぉあぁぁ!!!」

 

血飛沫が上がり、アリアはばたりと倒れた。

 

「マスターが貴様ごときにやられるはずがない。

 今すぐ己の武勇伝から抹消しておくがいい」

 

 

これで超魔道巨人ファントムMkIIの動力源は全てなくなったため、動きを止め、

煉獄砕波(アビスブレイク)』も発動されないはずだ。

 

 

剣を持った女性がアミクたちに近づいてくる。

 

アミクは泣きそうになった。

 

その人物はアミクたちが良く知る人物だったからだ。

 

「「エルザ!!」」

 

 

「ナツ、アミク。無事だったか」

 

凛とした佇まいはエルザそのものだ。

 

「良かった、回復したんだね!」

 

「ああ、アミクの魔法のお陰だ」

 

アミクは疲れた体に鞭打ってエルザに抱きついた。エルザはそんなアミクを優しく受け止める。

 

「それより、アミクも怪我をしているではないか。早く治療しておけ」

 

「あーうん・・・魔力回復したいから音出して?」

 

「お安い御用だ」

 

エルザは持っていた剣の持ち手で

ガァン、ガァンと床を叩いてくれた。

 

「モグモグ、『治癒歌(コラール)』・・・

 助かったよエルザ」

 

「大した労力じゃない。

 それにしてもアリアを倒すとは流石だな」

 

「トドメ刺したのエルザじゃん・・・」

 

「どっちにしろアイツはもう限界だった。

 トドメを刺そうとなかろうと倒れるのは間違いなかっただろう。

 

 ・・・アリアはエレメント4最強と呼ばれていたのだがな」

 

「まぁ、手助けとかもあったからね」

 

「手助け?ナツか?」

 

「いや、実はーーーー」

 

アミクがそれについて話そうとするとーーーーー

 

 

 

さっきからずっと使われていなかったスピーカーから声が聞こえ始めた。

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の皆さぁん。我々はルーシィ・ハートフィリアを確保しました』

 

「嘘!?なんで・・・!?」

 

ルーシィはギルドにいたはずだ。いや、思えば彼女を狙ってると分かってるのに前線に置く必要はない。

 

隠れ家にでも移動させたのだろう。その時襲われて攫われたのか。

 

 

その時、ガン、という音がした。

直後。スピーカーから甲高い悲鳴が響き渡った。

 

 

『きゃああああああああああ!!!』

 

「ルーシィっ!!」

 

「あの野郎・・・!」

 

「下劣な・・・!」

 

アミクもナツもエルザも怒りで拳が震える。

 

 

『当初の目的は果たしました・・・・。 

 後は貴様らの皆殺しだ、糞ガキども・・・・!』

 

 

怒り、いや最早怨念の込められた声。そのあまりの迫力にアミクは寒気がした。

 

 

「・・・ナツ、ルーシィを助けに行って、ガジルも倒して」

 

「アミク・・・」

 

アミクはナツの腕を掴み訴えた。

 

「私も助けに行きたいけど・・・いまのこの状態じゃ足手纏いになりそう・・・

 それに他の皆も治療しなくちゃ」

 

ナツは悔しげに言葉を紡ぐアミクをジッと見る。

 

「ナツならガジルにだって勝てるよ。

 コンビとしてずっとナツを見てきた私が保証するよ」

 

アミクに続いてエルザも話した。

 

「私はここでアミクを守っている。ジョゼが来るかもしれないからな。

 ・・・ナツ、お前の中には眠っている力がある。

 それを解放しろ。ーーーー私を超えていけ!!」

 

 

エルザは静かに告げた。

 

 

「任せたよ、ナツ!」

 

「・・・ああ、分かった!」

 

ナツとハッピーは走って向こう側に消えて行った。

 

(ナツはーーーー大丈夫。

 信じてるからね!)

 

そんなナツの背中を見てアミクは強く拳を握った。

 

 

 

 

 




滅竜奥義出せて嬉しいです。

次はドラゴンフォースだな・・・。

イメージは大体できてるんだよ・・・。


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マスタージョゼ

楽園の塔編は誰と戦わせよう?


しばらく休んでいると、アミクの耳に複数の足音が聴こえてきた。

 

この足音からして、グレイ、エルフマン、ミラだろう。

 

 

「アミク!それに・・・エルザ!?目が覚めたのか!」

 

「こ、この人、エレメント4の『大空』のアリア!?エルザが倒したの?」

 

「いや、アミクがやってくれた」

 

「うおおお!漢じゃねぇか!!」

 

「女ですけど・・・」

 

というより、なぜミラがここにいるのだろうか。

 

「はい、皆寄って寄って〜治療しま〜す」

 

「お、おい大丈夫なのかよ。アリアって奴はヤベェ奴だったんだろ?

 怪我とかしまくったんじゃ・・・」

 

そうやって心配してくれるグレイ。

 

「大体直したから大丈夫。だけど体力的に無理そう。

 めっちゃ疲れた」

 

「それでも凄いわね。あのアリアを倒しちゃうなんて。

 時期S級魔導士も夢じゃないわよ?」

 

「いや、今回は色々重なって・・・」

 

『それよりアミク聞いてよ。グレイが敵の女の子にセクハラしたんだ』

 

ウルもアミクに話しかけ、騒がしくなる一同。

 

 

「全く、お前達。緊張感がないぞ。ナツは戦いに向かっているのだ。

 私たちはルーシィを救出しだい、脱出を・・・」

 

 

ゾクッ

 

 

その時、とてつもない強大な魔力を感じた。

 

邪悪で凶悪な、魔力の奔流。

 

(こ、れは・・・)

 

アミクは冷や汗を流しながらも足音が聴こえて来る方を見る。

 

 

パチパチパチパチ

 

 

拍手。

 

相手がしていたのは手を打ち鳴らしているだけだった。

 

だが、その威圧感は強まっている。

 

 

「・・・まさか、本当に来るとは・・・」

 

エルザが呆然と呟く。

 

彼が「皆殺し」と言い放った時点で、こちらを直接潰しにかかって来ることも予想していたのだろう。

 

だからエルザは比較的冷静に彼を見ることができた。

 

 

「・・・おいおい、嘘だろ・・・?」

 

『とんでもない魔力だね・・・』

 

グレイは呆然と呟き、ウルも険しい声を出す。

 

「・・・・マスタージョゼ」

 

アミクはその名を呼ぶ。

 

「ア、アミク・・・」

 

マーチが震えながらアミクに抱きついてきた。アミクはそっと守る様に抱きしめ返す。

 

 

絶望的な程の差を見せながらやって来る男。

 

「いやいや、見事でしたよ。妖精の尻尾(フェアリーテイル)の皆さぁん?」

 

気味の悪い笑顔で言うジョゼ。

 

「クククッ、まさかここまで楽しませてくれるとは正直、思いませんでしたよ・・・」

 

とうとうジョゼが目の前までやって来る。

 

アミク達はその凶暴な魔力を一身に浴びた。まるで怨霊の様なエネルギーだ。

 

震えが止まらない。

 

「・・・貴方が、ルーシィを!」

 

それでもアミクはジョゼを怒気の籠った瞳で睨みつけた。

 

「おやおやぁ、心外ですねぇ、私はただ依頼でルーシィ・ハートフィリアを連れ戻しに来ただけなんですけどねぇ・・・」

 

ニタァ、と口を歪めるジョゼには嫌悪感しか湧かない。

 

「こんなことをしておいて、ぬけぬけと・・・!」

 

エルザが怒りで唇を噛む。

 

「テメェを倒せば、終わりだろうが!!」

 

グレイとエルフマンが戦闘態勢をとる。

 

「さて・・・楽しませてくれたお礼をしませんとなぁ・・・たっぷりと、ね」

 

ゾワァ

 

 

エルザは咄嗟にアミクを抱きしめ、一緒に地に伏せた。そして、叫ぶ。

 

「避けろおおおおおおおお!!!」

 

ジョゼから邪悪な魔法が放たれる。

 

壮絶で凶悪な奔流。エルフマンとグレイはエルザの警告も空しく直撃し、吹っ飛んだ。

 

「がはぁ!!」

 

「ぬぐぅううううう!!!」

 

『グレイ!?』

 

「グレイ!エルフマン!!」

 

ウルの焦る声と同時にミラも二人に向かって駆け出す。

 

だがーーーーー

 

 

「悪いですが大人しく寝てて下さい」

 

ジョゼがミラにも魔法を放った。

 

それに吹き飛ばされゴロゴロ転がっていくミラ。

 

「ミラさん!!」

 

「くっ!よくも」

 

エルザは換装してジョゼに斬りかかった。

 

しかし、ジョゼはそれを避け、エルザの足を掴み、投げ飛ばす。

 

だが、すぐに体勢を整え、『黒羽の鎧』に換装するとジョゼを横から狙った。

 

「フン!」

 

「ぐっ!」

 

ジョゼは魔力を放出し、それを防いだ。

 

「驚きました。なぜそこまで動ける?魔導収束砲(ジュピター)を喰らったはず・・・」

 

「アミクのお陰だ。それに、仲間が私の心を強くするんだ。愛するもの達のためならばこの体など・・・いらぬわ」

 

エルザが気丈に言い放った。

 

「ククク、なるほど・・・『音竜(うたひめ)』ですか・・・彼女の話はかねがね耳にします。

 評議会からも重宝される、稀有な逸材だとね」

 

「アンタなんかに知られたくなかったよ!!」

 

アミクがジョゼを威嚇した。

 

エルザは素早くジョゼに向かうと剣を振るうが、やはり、避けられ、防がれ、

反撃される。

 

アミクとマーチはその攻防を見ていることしかできなかった。

 

激しい音のおかげで魔力や体力は回復してきているが、正直、ジョゼに勝てる気がしない。

 

エルザに付加術(エンチャント)をかけたところで、勝てるかどうか・・・。

 

「ぐわあああああ!!!」

 

エルザの悲鳴に意識を取り戻す。見るとエルザが壁に激突し、崩れ落ちるところだった。

 

エルザは血だらけな上に腕が変な方向に曲がっている。

 

骨折は確定だ。

 

「エルザぁ!!」

 

「エルザ・・・!」

 

アミクとマーチが叫ぶも、エルザは呻くだけで起き上がらない。

 

 

「すみませんねぇ、貴方が元気なものですからあまり手加減ができませんでしたよぉ」

 

ねっとりと陰険そうな口調でジョゼは笑う。

 

先ほどまで苛烈な戦いを繰り広げていたのにジョゼにはあまり疲労の色は感じられない。

 

回復したはずのエルザでさえこうなのだ。自分なんか一溜まりもないだろう。

 

 

ジョゼはとどめをさすつもりなのかエルザに向かって歩き出す。

 

 

状況は非常にまずい。

 

こっちも、あっちも。

 

アミクの耳にはガジルとナツの戦いの音も聴こえていた。

 

ナツの劣勢。ガジルの飛び抜けた攻撃力と防御力に苦戦しているようだ。

 

(動くなら、今しかない・・・!)

 

人を嬲る快感でか、ジョゼは今隙だらけだ。

 

さらにこっちを足手纏いと見たのか気にしてすらいない。

 

チャンスだ。

 

 

 

 

(『攻撃力強歌(アリア)』!そして『音竜の、咆哮』!!)

 

こっそり付加術(エンチャント)を掛けて、瞬間的にブレスを放つ。

 

「んな!?」

 

それはジョゼに当たった。それに留まらず、アミクは頭を動かしてブレスを斜め上――――ナツ達がいるであろう

方向に向ける。

 

ちょうどブレスの射線上にはモーターのような音がした。おそらく電化製品だろう。

 

その電化製品をどうにかすればナツの助けになるかもしれない。そういう考えでブレスを放った。

 

大分賭けだが、大丈夫だろうか。

 

 

 

 

 

 

一方。

 

ナツとガジルの戦いはガジルの一方的なモノになりかけていた。

 

ガジルは床にある鉄板を食べることで体力と魔力を回復したが、火種のないナツは消耗したまま戦うしかない。

 

 

「炎さえ食べれば、ナツは負けたりしないんだ!」

 

ハッピーが叫び、ルーシィも何か助けになるようなものはないか探していると。

 

 

 

ゴオオオオオオオオオ!!!

 

 

急に床から轟音のする衝撃波が流れるように出てきた。そして、ある壁を壊していく。

 

 

「何だァ!?」

 

「・・・!」

 

急な出来事にガジルは驚く。

 

だが、見覚えのあるナツとルーシィ、ハッピーは破顔する。

 

 

「アミクだ・・・!アミクが加勢に来てくれたんだ!」

 

「でも、どこにもいないよ・・・?」

 

アミクは今ナツのところに加勢に行ける状況ではない。

 

なのでブレスだけでも放ったわけだが・・・結果的にこれが功を成した。

 

壊された壁の向こうにあったのは・・・。

 

 

「!あれなら・・・いけるでありまして・・・もしもし!」

 

そこで、ルーシィが召喚した星霊、サジタリウスが持っていた弓を構えた。

 

そして、矢を放つ。

 

サジタリウスは弓矢の名手。狙ったところに百発百中である。

 

矢は電化製品を貫き、発火させる。

 

「矢の撃ち方によっては発火させることも可能!であるからしてもしもし!」

 

次々と電化製品を撃ち抜いていった。

 

火が出てきたのを見てナツは喜んだ。

 

「おっしゃー!火だー!」

 

早速パクパクと食べるナツ。

 

 

「ふぅー、サンキューな。アミク、ルーシィ!」

 

ナツがそう言うとルーシィはグッ、とグッドサインをした。

 

 

「ギヒッ!何を勝った気でいやがる!これでやっと対等だ!」

 

体の所々に包帯を巻いた男――――ガジル。

この包帯はさっきのアミクとの戦いでできた傷だ。既に全快しているが念のために付けている。

 

「・・・さっきから気になってたんだけどよぉ。おめぇ、アミクにやられた怪我、まだ治ってねぇのか?」

 

 

そのとき、ナツが静かにガジルに聞いた。

 

「ちっ、とっくに治ったわ!あんな奴、俺の敵じゃねぇ!」

 

ガジルは忌々しそうな顔をして吐き捨てた。

 

ガジルとしてはアミクを圧倒できると考えていた。

 

火竜(サラマンダー)はともかく、女であるアミクなら大したことないだろう、と。

 

脅威なのは『双竜』としての連携であって、彼女単体なら弱い、と舐めていたのだ。

 

「一つだけ言っとくぞ。アミクを甘く見んな。お前じゃアミクを超えられねぇよ」

 

ナツと一緒にコンビを組んでるので、アミクの強さはナツもよく知っている。

自分が背を預けるに値するほどの強さだ。生半可な力ではナツとコンビなど組めるはずない。

 

逆もまた然り。

 

アミクが支えるに値する、と判断したからこそ、自分はアミクにコンビだと認められているのだ。

 

「アミクを超えられないようじゃ、俺には敵わねぇよ」

 

だからこそ。

 

アミクに信頼されている自分は負けない。

 

そんな自信が湧いてくる。

 

 

「―――さっきから聞いてりゃ、俺がテメェに敵わないだと・・・?」

 

何を言ってるんだこいつは。

 

さっきまで自分にボロボロにやられていたではないか。

 

それが、コイツにもあの女にも、俺は勝てないだと・・・。

 

「寝言は寝て言え!!」

 

 

ガジルは激情のままナツに向かって飛びかかった。

 

 

ぐっ。

 

 

ナツは拳を握りしめると。

 

 

 

「オッラアアアアアアアアア!!!」

 

 

炎を纏った拳でガジルの頭を殴り付けた。

 

 

真っ赤に燃え盛る炎はアミクやルーシィの想い、そしてギルド皆の想いが込められているようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――小娘がぁ・・・!!」

 

 

場面は戻り、アミクは繰り出した拳をジョゼに掴まれていた。

 

 

咆哮を放った後、急接近して殴ろうと思ったのだがジョゼに反応され、今に至る、というわけだ。

 

 

「くっ――――」

 

 

「よくも私の顔に傷を付けてくれたなァ・・・!」

 

怨嗟の声に思わず顔を見ると確かに頬にうっすらと傷がある。

 

(さっきので、掠り傷、か・・・)

 

諦観の意味も込めて薄く笑った。

 

 

「何笑ってんだクソアマァ!!調子乗ってんじゃねぇ!!」

 

 

さっきまでの丁寧な言葉遣いをかなぐり捨て、乱暴な口調でがなりたてた。

顔が悪鬼のように歪み、醜く変貌している。

どうやら笑みを違った意味で捉えたらしい。

 

「『デッドウェイブ!!』」

 

 

怨霊のようなエネルギーがアミクに殺到してきた。

 

「か、は、ああああああ!!!」

 

それらはアミクを突き飛ばし、腹にめり込ませ、押し潰すかのように圧力をかけてくる。

 

かと思えば魔法を巧みに操って突き刺すようにアミクの体に撃ちこんできた。

 

 

血が口から勝手に溢れた。

 

 

「アミク!!やめて、なの!!」

 

 

「来ちゃだめ、マーチ!!」

 

 

マーチが翼を生やしてアミクを助けようと向かってきた―――――が。

 

 

「目障りだ」

 

 

ジョゼは短い言葉を吐くと怨霊のエネルギーでマーチを叩き落とす。

 

 

「あぁ、マーチ・・・」

 

 

アミクがマーチに手を伸ばすも、怨霊のエネルギーが体に巻きついて宙づりにされた。

 

ギシギシ、と締めあげてきて苦しい。

 

「か、ふ、あ・・・!」

 

 

「捕まえましたよぉ・・・それにしてもよく暴れる竜だ」

 

幾分冷静になってきたのか、表情が嫌らしいものに変わり、口調も丁寧になった。

 

そして先程からナツ達がいる方向で轟音が聞こえるので、ナツとガジルが戦っていることに気付いたのだろう。

 

 

「・・・ナツの戦闘力は、計れて、なかった?ナツは私以上に、強いよ?」

 

 

アミクは息も絶え絶えにジョゼを睨んだ。

 

そんなアミクを見てジョゼは口角を釣り上げる。

 

 

 

「謙遜はよしたまえ、音竜(うたひめ)よ・・・この私に傷を負わせた魔導士は貴様が初めてだ。

 アリアとの戦闘のダメージがなければ、もう少しいい勝負となっていたでしょう・・・」

 

「それはっ、光栄、だねっ」

 

 

妖精女王(ティターニア)も大したものだ。

 私と戦いあそこまで持ち堪えるとは・・・ね」

 

「だから」とジョゼは一瞬無表情になると。

 

 

「そんな強大な魔導士がねぇ・・・」

 

 

ミシミシィ!とアミクを締めあげた。

 

 

「マカロフのギルドにいることが気に食わんのですよっ!!!」

 

 

「あ、があああああああああああああ!!!」

 

 

「アミクっ!!」

 

 

エルザが足を引きずりながらもなんとか立とうとする。

 

 

ジョゼはそんなエルザを見ると、魔力の塊をエルザにぶつけた。

 

たまらず、エルザは吹き飛ばされる。

 

 

「くあっ!」

 

 

「さて・・・なぜ、私がマカロフに止めを刺さなかったか、お分かりですか?」

 

「え・・・?」

 

 

アミクは全身の骨が軋みを上げるのを感じながら疑問の声を上げた。

 

 

「絶望、絶望を与えるためですよ・・・!」

 

 

「ぜつ、ぼう・・・?」

 

 

 

「そうです・・・目が覚めた時・・・

 

 

愛するギルドと仲間が全滅していたらどうでしょうか?クククッ悲しむでしょうねぇ。あの男には絶望と悲しみを与えてから殺すのです!ただでは殺さんよぉ・・・!!苦しんで苦しんで、苦しませてから殺すのだぁ!!!」

 

 

 

「・・・っこの、蛆虫!」

 

 

ここまで邪悪だとは。拗れすぎて自分がやっていることの善悪もついていないように見える。

アミクはただただ、吐き気がした。

 

 

 

幽鬼の支配者(ファントムロード)はずっと1番だった。この国で1番の魔力、1番の人材、1番の金があった・・・だが、ここ数年で妖精の尻尾(フェアリーテイル)は急激に力をつけてきた。

 

 エルザにラクサス、ミストガン、そしてギルダーツ。

 

 その名は我が街にまで届き、火竜(サラマンダー)音竜(うたひめ)・・・つまり『双竜(貴様ら)』の噂は国中に広がった。いつしか『幽鬼の支配者(ファントムロード)』と『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』はこの国を代表する2つのギルドとなった・・・

 

 

 

 気に入らんのだよ・・・元々クソみてぇに弱っちぃギルドだったくせにィ!!」

 

 

 

「そ、そんな・・・そんなくだらない嫉妬で戦争を引き起こしたの!?」

 

「嫉妬ォ?違うなァ、我々はものの優劣をハッキリさせたいのだよ・・・」

 

歪んだ笑みを浮かべるジョゼ。この男は妬みで人を平気で殺すのだ。

 

 

「あ!あぐあっ!」

 

さらにきつく締めつけてくる。血が逆流し、口から零れた。

 

 

「ア、アミクを離せぇ・・・!」

 

エルザが必死にこっちに向かおうとするのを見て、ジョゼは嘲笑った。

 

「エルザ・・・貴様はそこで仲間が無惨に殺されるところを見ているがいい。

 そして、自分の無力さを思い知れ・・・!」

 

 

 

そして、再びアミクに顔を向けた。

 

 

「前々から気にくわんギルドだったが、この戦争の引き金は些細な事だった。

 

 ハートフィリア財閥のお嬢様を連れ戻してくれという依頼さ」

 

 

ルー・・シィ・・・?

 

 

「この国有数の資産家の娘が妖精の尻尾(フェアリーテイル)にいるだと!?貴様らはどこまで大きくなれば気が済むんだァ!!」

 

 

「うぐああ”あ”っ・・・!!がふ!ごぽっ・・・!」

 

とうとう肋骨が折れ、肺に突き刺さった。急いで治療せねば危険だ。

 

 

「ハートフィリアの金を貴様らが自由に使えたとしたら間違いなく我々よりも巨大な力を手に入れる!!

 

それだけは許してはおけんのだぁ!!!」

 

 

「・・・・かっ」

 

 

「それ以上はやめろ!アミクが死んでしまう!」

 

口から次から次へと血が流れ落ちるアミク。

それを見て涙を流しながら叫ぶエルザ。

 

「お嬢様もお嬢様だ!妖精の尻尾(フェアリーテイル)なんかに媚売りやがって!貴族界に住んでいたくせに尻尾振る相手を間違えている!!とんだ節穴だな!!」

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)だけではなくルーシィ個人まで侮辱してきた。

 

アミクは静かにジョゼの目を見つめた。どこか悲しげな瞳で。

 

 

「うちのギ、ギルドだってどっちが強い、よわ、いとか揉めてるけど・・・楽しさがある。

 騒がしいけどあた、たかさがある。でも、今のあなたにはただ、つめ、冷たい執着心と嫉妬心があるだけ。一番であることに拘りすぎて大切なことに気付いていない、かわい、可愛そうな人だよ・・・」

 

喋るたびに床に血が垂れ、シミが沢山できた。

 

「そ、それにじょ、情報収集もろくにできてないのは、自称一番のギルドとしてどうかと思うよ」

 

「・・・なんだと?」

 

 

「ルーシィは、家出してきたんだよ・・・。家の金なんて、自由に使える、わけがないのに・・・」

 

 

ジョゼは目を見開いた。

 

 

「一緒に家賃十万の家に住んで、一緒に行動して、一緒に戦って、一緒に笑って、一緒に泣いて・・・同じギルドの仲間だし、大切な同居人だよっ!

 それなのに、戦争の引き金とか、ハートフィリア家の令嬢とか・・・音楽が演奏する人を選べないみたいに、子供だって親を選べない!

 貴方に、涙を流すルーシィの何がわかるの!?」

 

 

血を吐きながらもルーシィへの想いを並べる。

 

エルザも同意するように座り込んだまま頷いている。彼女は足も折れてしまったらしい。後で治療しないと。

 

アミクはルーシィが初めてギルドに来たときのことを思い出していた。

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)への期待感でいっぱいになった瞳。

ギルドマークを付けてもらって嬉しそうな顔。

メンバーたちの問題児っぷりに驚いて開いたまま塞がらない口。

 

 

入ってからは周りに振り回されながらも、楽しげに笑って過ごすルーシィをよく見かけた。

 

仕事先でもギルドでも家でも。

 

 

そんなルーシィを一つも知らないくせに・・・。

 

「勝手にルーシィを語るなぁ!!」

 

ルーシィの涙や笑顔を知っているから、ルーシィのために、アミクは嘆願するように叫んだ。

 

 

「・・・今まで知らなかったのなら、これから知っていくさ・・・」

 

ジョゼは唇を歪めた。

 

「だがこれだけは分かっている。アイツがこれから過ごすのは・・・地獄だってことがなぁ!!!」

 

ガッ、とアミクの首を絞めるように掴む。

 

「あっ・・・!」

 

「私があの小娘をただで父親に引き渡すと思うか? 金が無くなるまで飼い続けてやる・・・ハートフィリア家の財産全ては私の手に渡るのだぁっ!!」

 

「ルー、シィに、その汚い手で、触るなぁ!!」

 

アミクは汚らわしく笑うジョゼを同じ人間だとは思えなかった。

 

この、汚らわしい人間が。

 

「・・・・!?」

 

一瞬。一瞬だけアミクの威圧がジョゼのそれを超えた。

 

ヒヤリ、と首筋に煉獄砕波(アビスブレイク)を当てられたような感覚。冷や汗がでる。

 

しかし、その感覚はすぐに消えた。

 

(何なんだ、この小娘は・・・)

 

自分がこの小娘に恐怖した?聖十大魔道である自分が?

 

恐怖を覚えた自分を恥じるようにアミクの首から手を離すと、もう一段階きつく締め上げた。

 

「・・・あ”っ・・・・かっ・・・!!」

 

大量の血液がアミクの口内から放出され、ゴポゴポ、と血泡まで出てくる始末。

 

 

 

もう・・・意識が・・・。

 

体が冷たくなっていくのを感じる。視界がだんだん暗くなり、狭まっていく。いつもなら鮮明に聞こえるはずの音や声もよく聴き取れない。

 

 

私は、死んじゃうのかな・・・。

 

 

「やめてくれ!!殺すなら私にしろ!!」

 

「貴様はそこで見ていろと言ったはずだ!」

 

エルザもなんとしてでもアミクを助けようと言葉を募るが、無意味。

 

「だ・・・め・・!あ、み・・・く・・・」

 

マーチもうっすらと目を開けた。

 

 

「て、めぇ・・・!アミクに、何しやがる・・・!!」

 

さっきまで気絶していたグレイもフラフラになりながらもジョゼに立ち向かおうとするが、ダメージが思ったより大きかったのかガクッと膝を突いてしまった。

 

『アミク!!』

 

ウルも必死にこちらに呼びかけてくれている。

 

「・・・そういえば貴様、さっきは大声で何か叫んでたようですが、なんでしたっけ?万年引きこもり?独身?その口でよく言えたものですねぇ!!」

 

瞳の光が失いかけ、瞼を閉じそうになる、アミクの目。

 

滅竜魔導士とはいえ、まだ16歳の少女であるアミクの肉体が耐えれるはずもなかった。

 

 

「・・・そうですねぇ、まずはその無駄に大きくて綺麗な声から潰してやらああああああああああ!!!!」

 

そう怒鳴ると、ジョゼは怨霊のエネルギーをアミクの細い首に穿とうと放つ。

 

「やめろおおおおおおおおおおお!!!!」

 

「アミクーーーーーー!!!」

 

「ちく、しょうっ・・・!!!」

 

『・・・くっ!』

 

エルザとマーチの悲鳴すら不明瞭になってきたところで、走馬灯が流れた気がした。

 

 

ナツ・・・ルーシィ・・・ハッピー・・・・おじいちゃん・・・オーディオン・・・みんな・・・せめて最期に一目見たかった・・・。

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

身体が自由になる感覚。浮遊間。優しく抱きとめられた感じ。ぽかぽかあったかい。

 

 

「親より先に逝く子がいるか。アミクよ」

 

「お、じいちゃ、ん・・・?」

 

「そうじゃ、お前のおじいちゃんじゃ」

 

安心できる、どこか懐かしい、この魔力。おじいちゃんだ。

 

「出来の悪い親のせいで幾つもの血が流れ、痛み、涙を流した。もう十分じゃ。この戦争を終わらさねばならん」

 

「マスター!」

 

エルザも感激で涙を浮かべている。マーチもそうだ。グレイも喜色満面である。

 

 

マカロフは抱えていたアミクをエルザに渡す。

 

「よくやった。よく持ちこたえてくれた。アミク、エルザ。そして全てのガキ共に感謝する。妖精の尻尾(フェアリーテイル)であることを誇れ!」

 

アミクはそれを聞いて力なく笑みを浮かべた。うっすらと目を開けてはいるが、いつ気絶してもおかしくない。

 

それに、アミクの今の状態は非常に危険である。

 

「アミク達を連れて下がれ、エルザ」

 

「・・・分かりました。グレイ、手伝ってくれないか」

 

「ああ、分かった。俺はエルフマンとマーチを連れて行く」

 

「ま、待て・・・俺も起きた・・・」

 

エルフマンが復活したので彼がミラを肩に担ぎ、グレイがアミクをお姫様抱っこで抱え、エルザがマーチを抱えた。

 

「アミク・・・死ぬなよ・・・!」

 

「し、な、な、い・・・よ」

 

顔色が白いのに何を言っているのだろうかこの娘は。

 

ウルはそう思った。

 

 

 

 

「天変地異を望むというのか」

 

「それが家族のためならば」

 

 

マスター同士の魔力がぶつかり合い、空が軋んだ。

 

 

 

決着の時は近い。

 

  




頑張ってエグくした。あと眠い。


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妖精の法律(フェアリーロウ)

もう少しで、ファントム編終わりです。


前回、アミクをボコりすぎた気がする。

まぁ今後もこういうのいっぱいあると思うから慣らしですね慣らし。


だんだんと意識がはっきりしてきた。ボヤけていた視界が鮮明になってくる。

 

目の前には心配そうな顔をしたエルザやグレイ、ミラ達がいた。胸にはマーチが縋り付いている。

 

「大丈夫か?音、もっと食べるか?」

 

 

「いーよ、もう十分」

 

 

瀕死の状態だったアミク。

 

ギルドの皆が頑張って騒ぎ立てることで、騒音を生み出し、それを食わせて魔力と体力を回復させた。

 

その魔力で自己治癒である程度回復。全快ではないが、これくらいでいいだろう。

 

なんとか死ぬことは免れたみたいだ。ありがたい。

 

 

「アミク・・・また無茶した、の・・・」

 

「うん・・・心配かけてごめんね」

 

「ううん、生きてただけで、よかった、の・・・」

 

 

マーチが泣きじゃくりながら言葉を紡いだ。

 

アミクもそんな様子を見て罪悪感が沸き起こる。ぎゅっとマーチを抱きしめた。

 

 

「・・・おじいちゃんは?」

 

「今、ジョゼと戦っている。マスターなら勝てる。案ずるな」

 

 

「・・・うん」

 

せめて付加術(エンチャント)を掛けてあげたかったが・・・エルザが言うなら大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)、審判のしきたりにより貴様に三つ数えるまでの猶予を与える。跪けい」

 

マカロフの両手に光が集まった。膨大な魔力がそこに収束していく。

 

 

マカロフとジョゼ、ほぼ互角の魔力を持つ聖十大魔道同士。

 

互いに肩から血を流していた。それだけでも二人の力が拮抗していることが分かる。

 

そんな二人の決着があっさり付こうとしていた。

 

 

「はぁ?」

 

「一つ」

 

ジョゼは目の前の老人が理解できなかった。

 

「何を言い出すかと思えば・・・跪け、だぁ・・・!?」

 

「二つ」

 

魔力が高まってくる。ジョゼはそれを感じながらも、自分も対抗するべく魔力を高めた。

 

「王国一のギルドが貴様に跪けだと!? 冗談じゃない、私は貴様と互角に戦える。いや、非情になれる分、私の方が強い!」

 

「三つ」

 

ジョゼは絶対なる自信を持っていた。ここでマカロフを倒し、自分は成り上がって、ゆくゆくは全ての頂点に君臨できる、と。

 

「跪くのは貴様らの方だ! 消えろ! 塵となって消滅しろぉ!」

 

「そこまで」

 

マカロフは胸の中でため息を吐いた。三つの猶予を与えたが、結局ジョゼは改めなかった。傲慢に、マカロフを、妖精の尻尾(フェアリーテイル)を見下していた。

 

ならば、もう容赦はすまい。

 

 

「消え去れぇ!フェアリィィィテェェェェェェェェルゥゥゥゥゥ!!!!」

 

エサを欲しがる鯉のように口を大きく開けて叫び散らすジョゼ。

 

 

全てを終わらすために、マカロフは『妖精三大魔法』の一つを解き放った。

 

 

 

 

 

 

「『妖精の法律(フェアリーロウ)』、発動」

 

 

 

眩いほどの光が、全てを包んだ。

 

 

アミクが感じるのは温かく、心の内から湧き上がってくる安心感だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光が収まった後、真っ白になって固まっているジョゼがいた。髪は老人のように白くなり、顔も皺くちゃだ。

 

 

マカロフはそんなジョゼに背を向けると、外に向かって歩き出す。

 

「二度と妖精の尻尾(フェアリーテイル)に近づくな。

 ここまで派手にやらかしちゃ評議員も黙っちゃおらんだろう。

 これからはひとまずてめぇの身を心配することだ」

 

そんなマカロフの背後で、空気が揺らいだ。

 

と、思うとアリアがにやつきながら両手をマカロフに伸ばそうとしている。

 

(悲しい・・・!あの時と同じ隙だらけ・・・!)

 

アリアの両手がマカロフに届く、寸前。

 

 

「ふん!」

 

「ガフフォ!!」

 

マカロフが腕を伸ばし、アリアを殴り飛ばした。

 

「もう終わったんじゃ。ギルド同士のケジメは付けた。

 これ以上を望むなら、それは掃滅、跡形もなく消すぞ。

 

 今すぐジョゼを連れて帰れ」

 

マカロフは静かに言うと今度こそ振り返らずに去っていった。

 

 

 

少し前、ハッピーに連れられ、ルーシィが気まずそうにギルドから降りてくる。

 

そこに飛びつく影が一つ。

 

 

「ルゥゥゥゥシィィィィィィ!!!」

 

 

「キャァ!?アミク!?どうしたのよその怪我!!」

 

「よかったよかったよぉぉうわああああああああん!!!」

 

アミクはめっちゃ号泣してルーシィに抱きついていた。

 

アミクはアミクでめっちゃ心配していたらしい。

 

「あの変質者に変なことされてない!?ってかルーシィも怪我してんじゃん!?よぉし私が直々に出向いて股間ぶっ潰してやらぁ、あ、その前に『治癒歌(コラール)』。さてじゃあ行ってきま」

 

「落ち着きなさいよ!!?」

 

「ぺふっ」

 

ルーシィにチョップされて正気に戻るアミク。

 

「ほら、あたしは無事だから、ね?」

 

「うん・・・うん・・・!」

 

「こっちだってアミク達が無事でよかった・・・けどギルドが・・・」

 

 

そうなのだ。結局幽兵(シェイド)たちから守りきれず、破壊されてしまったギルド。そこはアミクも未だにショックだ。だが。

 

 

「・・・大事なのは見かけじゃない。そこに仲間とギルドを愛する心があれば、そこがギルドだから・・・」

 

「・・・うん」

 

アミクは静かに黙祷を捧げた。しかし、妖精の尻尾(フェアリーテイル)はなくなった訳ではないのだ。

 

 

「・・・ちょっと私行く所あるから」

 

「アミク・・・?」

 

アミクはマーチにお願いする。

 

「ナツ達の所に連れて行ってもらえる?」

 

 

 

 

 

「レビィ!ジェット!ドロイ!じっちゃん!!ルーシィ!アミク!ギルドの皆!!この拳にはみんなの想いが詰まってんだぁぁぁぁぁ!!!

 

 『紅蓮火竜拳』!!」

 

 

見事、ガジルを倒したナツ。 

 

 

それから、見知った魔力の光に包まれたりしたが、あっちも決着がついたとみて良いだろう。

 

 

 

「おーいナツー!」

 

そこによく知る人物の声が響いた。

 

アミクがマーチに運ばれて飛んできたのだ。

 

「ヨォ、アミク。終わったみたいだな」

 

「ナツもお疲れ。ガジル強かったでしょ?」

 

アミクはナツの隣に跪くと手をかざして治療をした。

 

「いーや圧勝だったね!」

 

「何言ってんだテメェ。ギリギリだったじゃねぇか」

 

そこで響いた声でやっとガジルがいることに気付いたアミクは大げさに驚いた。

 

「うわお!居たんだてっちゃん!!」

 

「てっちゃん、だと・・・!?」

 

ガジルがショックを受けた顔をした。

 

「やっはろー。とりあえず、

 てっちゃんも治しちゃいまーす。お疲れー」

 

ガジルを優しげな光が包んだ。

 

 

「んだテメェ、聖女気取りかよ、クソが」

 

「もう、そんな意地悪言わないの。ほら、じっとしてて」

 

「・・・ちっ・・・」

 

なんだかんだ言いながらも素直に言うことを聞いてくれた。

 

「なぁ、おまえ、なんて(ドラゴン)に育てられたんだ?」

 

ナツがガジルに近づきながら聞いた。

 

「俺さ、自分以外の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)に会うの二度目だからよ」

 

「私もガジルの(ドラゴン)について知りたいな」

 

アミクも身を乗り出す。

 

「ほらほら、もう吐いちゃいなよ〜ゲロった方が楽になるよ〜悪いようにはしないからぁ〜」

 

「なんだこの女」

 

ガジルは一つため息をつくと語り出した。

 

「俺はメタリカーナって(ドラゴン)に育てられたんだ・・・いつの間に消えちまったけどな。ったく、アイツどこ行きやがったんだ・・・」

 

その言葉を聞いてナツとアミクは顔を見合わせた。

 

「な、なぁ!そいつの居なくなった年ってX777年の7月7日か!?」

 

「あ?んだよメタリカーナのこと知ってんのか?」

 

ガジルが図星なのか驚いたように聞いてきた。

 

「そうじゃないけど、私たちの(ドラゴン)も同じ年、同じ日に消えたんだよ」

 

「!?・・・おまえらどっちも、か?」

 

「うん・・・君を合わせたら、三体とも、だね」

 

ガジルはそれを聞いて考え込んだ。

 

 

「俺たちの(ドラゴン)がX777年7月7日に消えた・・・」

 

「なんで7ばっかりなんだよ!?」

 

「知るか!」

 

ナツがどうでも良いところで突っかかっていった。

 

アミクは7という数字を聞いて閃く。

 

「あー!わかった!!」

 

「「なにぃ!?」」

 

驚く二人にアミクはいい笑顔で告げた。

 

「7が揃ってラッキーセブン!すごくめでたいから記念にどっか行ったんじゃない?」

 

「「なんだその理由!?」」

 

アミクが滅茶苦茶なこと言っていた。

 

「7が並ぶもんだからテンション上がっちゃったんだねきっと」

 

「メタリカーナがいなくなったのがそんなしょーもない理由だったら

 流石の俺も泣くぞ」

 

冗談はともかく、とアミクはガジルに手を伸ばした。

 

ガジルは訳が分からず首をかしげる。

 

「握手だよ握手!仲直り!」

 

「仲直り・・・って」

 

「聞いたところによるとルーシィ怪我させたり、レビィたちをあんな風にしたりしたらしいけど!

 とりあえず、もうケジメはついたから!」

 

アミクがさらに手を伸ばすとガジルは面食らった顔をした。

 

 

「・・・頭の中がおめでたい甘ちゃんだな」

 

「どーせ卵ケーキ大好きの甘ちゃんですよーだ」

 

ガジルはムスッとした顔ながら渋々アミクと握手した。

 

「ほら、あとはナツとガジルも!」

 

今度はナツとガジルにも促す。ナツはニカッと笑いながらガジルに言った。

 

「まぁ、謝ってくれるんなら、許してやらねぇこともねぇぞ!」

 

「チッ、誰が謝るかバーカ、こっちはギルドを壊されたんだ」

 

「なにおう!?あー!お前らだってギルド壊したじゃねーか!!やっぱ許すのやーめた!!」

 

ガジルとナツが急に喧嘩を始めた。ナツとグレイを見ている気分だ。

 

・・・ナツは誰かと喧嘩しないと気が済まないのだろうか。

 

「もう!喧嘩はおしまい!二人とも血の気が多いんだから・・・せっかくの同胞だし、仲良くしなきゃ!」

 

「んだよ、なんでこんな奴と仲良くしなきゃいけねぇんだよ!」

 

「あぁ?こっちから願い下げだコラ。あとテメェはオカンか」

 

「こーら!良い加減にしないと海に突き落とすよ?」

 

「「・・・」」

 

流石にこの高さから落とされるのは嫌だったのか二人ともブスッとして黙る。

 

「・・・ふふっ」

 

アミクはなぜか懐かしい感じがした。昔も、こうやって喧嘩を止めてたような。

 

「・・・はぁ、ったく散々だぜ。『双竜』には喧嘩売られるし、ギルドは壊されるし」

 

ガジルは不平を言いながら立ち上がる。

 

そもそも、売ってきたのはそっちで、ギルド壊したのはそっちも同じだと言いたい。

 

「あばよ、『双竜』。もう会うこともねぇかもしれねぇがな」

 

ガジルは立ち上がって数歩進むと止まった。

 

 

・・・・・・

 

 

「・・・行かないの?」

 

 

「出て行くのはテメェらだろ!!ここは俺たちのギルドだぞ!!」

 

 

それもそうかとアミクは苦笑いした。

 

 

 

 

 

 

 

ボロボロに崩れ落ちてしまった妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルドの前に、マカロフはいた。

 

「こりゃあまた・・・派手にやられたのぉ・・・」

 

マカロフが呟く。その姿は少し寂しげではあったが、悲壮感が漂うものではなかった。

 

そこに暗い顔で近づく少女、ルーシィ。

 

「あ、あの・・・マスター・・・」

 

顔を俯かせて謝罪の言葉を言おうとするルーシィだったが・・・。

 

 

「おおぉ、ルーシィ、お前さんもずいぶん大変な目に遭ったのぉ・・・」

 

その顔はとても優しげだ。ルーシィのことを責めている表情では決してなかった。

 

「え・・・」

 

ルーシィは震えた。自分の責任で今回の戦争が起こったようなものなのに、なぜそんな顔でいれるのか、と。

 

「で、でも、あたしのせいで・・・」

 

「そんな顔しないの!ルーちゃん!」

 

その時、ルーシィの後ろから声が聞こえてきた。

 

聞き覚えのある、少女の声。

 

「レビィちゃん・・・」

 

レビィだけではない。ジェットやドロイ、さらにはリーダスまで。

アミクのお陰でほぼ完治したが、それでも、まだ安静のため包帯を巻いていた。

 

「みんなで力を合わせた大勝利なんだよ!」

 

 

「ギルドは壊れちまったけどな・・・」

 

 

「ンなもん、また建て直せばいいんだよ!」

 

 ジェットとドロイも励ましてくれた。

 

「ウィ・・・俺、役に立てなくて、ごめん・・・」

 

「う、ううん!そんなの・・・!」

 

リーダスが謝ろうとしたが、慌てて遮る。

 

リーダスは自分のことを守ろうとしたのだ。

 

「心配かけてごめんね、ルーちゃん・・・」

 

みんな、みんな優しすぎる。

 

ルーシィの目には涙が溜まっていた。

 

マカロフそんなルーシィを諭す。

 

「ルーシィ。楽しい事も、悲しい事も、全てーーーとまではいかないがある程度までは共有できる・・・それが、ギルドじゃ。

 

一人の幸せは皆の幸せ、一人の怒りは皆の怒り・・・そして、一人の涙はーーーー皆の、涙。ルーシィ、自責の念にかられる必要は無い。君には、皆の心が届いている筈じゃ・・・」

 

ルーシィは涙をポロポロと流し始めた。

 

認められた気がした。ここにいていい、と。

 

こんな自分でも、妖精の尻尾(フェアリーテイル)にいていいのだと。

 

戻ってきたアミクがルーシィに近づいて手を握った。

 

 

 

「顔をあげてルーシィ・・・君はもう妖精の尻尾(フェアリーテイル)の一員なんだから!」

 

アミクのその言葉にルーシィの涙腺はとうとう決壊した。

 

アミクを抱きしめながら、うわーん、と泣く。

 

さっきとは逆の構図だ。

 

アミクもルーシィの背中をトントンと叩いた。

 

 

 

 

これで一件落着ーーーーーーかと思われたが。

 

 

 

(それにしても・・・ちょっと派手にやり過ぎたかのう・・・ここまでことを大きくすれば、評議員だって黙っちゃおれん。またこっぴどく叱られるんじゃろうなぁ)

 

 

そこまで考えてマカロフは、先行きが物凄く不安になり、

うわーんと泣いてしまったのだった。

 

その姿は先程ルーシィに言い聞かせていた人物とは到底思えなかった。

 

 




原作の漫画が欲しい!



次がファントム編の終わりです。


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あたしの居場所

今回でファントム編は終了です。




今回の騒動はあのまま終わったりはしなかった。

 

当然のように評議員がやってきてその場の全員を拘束。

 

「やっべぇ!逃げろ!」

 

「あいさー!」

 

「ナツ、諦めなよ。評議員からは逃げられないよ・・・」

 

逃げようとしたナツ達もあっさり評議員に捕まった。

 

 

それから事情聴取されるアミク達。

 

アミクの場合は評議員の顔見知りというのもあってそんなに長くはかからなかった。

 

今回の件は街の人達も目撃していたので幽鬼の支配者(ファントムロード)が悪い、という判決になるのは確実だろう。

とりあえず、一安心である。

 

 

 

で、少し早めに終わったアミクはどうしていたか、というと。

 

 

「肋骨折れて肺に突き刺さっていたのに魔法で治療して放置!?

 アンタなに考えてんだい!!大きな怪我をしたら治療しても一旦私の方に来いって言い聞かせた筈だろう!?

 治癒魔法が万能だと思ってるのかい!?

 もし、骨が突き刺さったまま回復してたらどうする!?」

 

「ひぇっ!!ごめんなさい・・・」

 

「自分から危険に飛びこむなんざ、馬鹿なことしてるんじゃないよ!!早死にしたければ別だけどね!!全く、人間は過信するから嫌いなんだよ」

 

「に、人間にはいい人だっているし、そう言うおばあちゃんだって人間・・・」

 

「口答えするんじゃないよ!!」

 

「そ、そう怒んないでよおばあちゃん・・・」

 

 

人間なのに人間嫌いである妖精の尻尾(フェアリーテイル)の顧問薬剤師、ポーリュシカ。

 

なにかと人間を毛嫌いし、やたら人間を罵倒する。

 

しかし、マカロフの古い友人で治癒魔導士としては優秀である。

 

が、とにかく人を罵倒する。大事なことなので二回言った。

 

 

まぁ、なんだかんだ言って治療してくれるが。

 

「結局人間なんて争うことしか能がないんだ。自分勝手な欲望ゆえにね」

 

はっきり言ってアミクはポーリュシカのことは嫌いではない。ただ、いっつも怒って罵倒するのに圧倒されているだけだ。

 

少しの間、ポーリュシカに師事して治療について学んだ過去もある。つまり師匠ということだが、本人は師匠、と呼ぶと「気安く呼ぶんじゃないよ」とキレる。

 

解せぬ。

 

「・・・今回の戦いで、互いに傷ついてなにか得るものなんてあったのかい?」

 

「得るものならあったよ」

 

ポーリュシカの問いにアミクは断言する。

 

少なくとも、ルーシィの心は救えたと思う。

 

「・・・争いが正しいとは言えないかもしれないけど・・・

 誰かを守るためならば、何度でも戦うよ。私は――――妖精の尻尾(フェアリーテイル)は」

 

 

毅然とそう言ったアミクに対してポーリュシカは何も言わない。

 

アミクの答えに不満なのだろうか。

 

 

「―――いつまでいるんだい!!とっとと帰りな!!」

 

「え!?なんかリアクションしろって雰囲気じゃなかったの!?」

 

「うるさい!人間臭いんだよ!!」

 

「人間ですからね!!」

 

 

ポーリュシカが箒を振り回して追い出そうとしてきた。

 

あんな元気な婆さん、老人じゃなくて猛獣じゃないだろうか。

 

「ひぃ!!またね、おばあちゃん!!」

 

 

「いつ!私が!あんたのおばあちゃんになったんだい!!」

 

アミクは這いながらポーリュシカの攻撃を掻い潜り、ドアを開けて外に逃げた。

 

 

 

 

「全く・・・いつになっても変わんないね、あの子は・・・」

 

後で残されたポーリュシカがボソッと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

騒動が収束して一週間後。やっと普通の生活が再起動した。

 

しかし、まだギルドが壊れたままだ。よって、ギルドの皆で再建することにする。

 

 

「うおおおおおらああああああ!!!」

 

ナツが何本もの木材を持って運ぼうとしている。だが、無理してるのかプルプル震えていた。

 

「ナツ、そんなに持たなくていいのに・・・」

 

 

「なにバカやってんだか・・・」

 

アミクとグレイが呆れていると

 

「へ、へ!グレイ!おめぇは軟弱モノだからこんなに運べねぇだろ!!」

 

「なにぃ!?余裕で行けるわ!!」

 

グレイがまんまと挑発に乗りナツと同じぐらいの数の木材を運び始めた。

 

「んぐぐぐぐ」

 

「いぎぎぎぎ」

 

 

「はぁ、なにやってんの二人共・・・」

 

「まぁ、これでこそ二人の通常運転って感じがする、の」

 

「だねー」

 

ハッピーとマーチがうんうん、と頷いた。

 

 

「怪我したら危ないから、はい『攻撃力強歌(アリア)』」

 

二人の筋力を上げて楽にさせてあげる。

 

「うひょー!軽ぃ―――!」

 

「サンキュー!」

 

 

ナツとグレイは意気揚々と運んでいった。

 

 

「よし、私も三本くらい・・・」

 

「あれ?アミクって安静にしてろって言われてなかったっけ?」

 

「それ昨日までだよ。よーしやるぞー!」

 

ハッピーに答えて木材を三本ぐらい持ちあげた――――とき。

 

 

「さっきよりも多く持ってやる!」

 

「だったら俺はそれよりも多く!」

 

戻ってきたバカ二人の頭を木材でぶん殴った。

 

 

「「ぐえ!?」」

 

「ちょっと!何のために強化したと思ってんの!?怪我しないようにっていう私の配慮が伝わらなかったのかな!?」

 

「「ごめんなさい・・・」」

 

『さすがだね、仲介者』

 

「なりたくてなったわけじゃないけどね・・・」

 

「誰に言ってんだ?」

 

ナツにそう言われて「今度からはウルと話すときは『声送(レチタティーヴォ)』使おうかな」と考えていると。

 

「そこぉ!貴様ら!何を遊んでいる!」

 

「「げぇ!!エルザ!」」

 

「大丈夫だよ、二人共しっかりやってるから」

 

「そうか、ならばいいが・・・」

 

アミクが咄嗟に弁護してあげると、二人が神を見るような目でこっちを見てきた。どんだけエルザ怖いんだ。

 

「―――にしてもやる気満々だね、その格好」

 

エルザの服は完全に工事の人が着る土木作業の服装だった。

 

「この服を着てると精が出るのだ」

 

ドヤ顔で胸を張るエルザ。楽しんでるならいいが・・・。

 

「―――やる気出してるのはマスターもね」

 

いつの間にか近くにいたミラが上を見上げると

 

巨人になったマカロフが土木作業の服を着て、木材を高い所に打ちつけていた。

 

「おじいちゃんがいると捗っていいねー」

 

「「ノリノリじゃねぇか!!」」

 

ジェットとドロイが仲良くツッコむ。

 

「監督!この角材はどちらに?」

 

「「監督!?」」

 

「監督って・・・」

 

エルザはアレだ。劇やると役にはまり込むタイプだ。

 

「っていうか、なんかでかくね?」

 

「それに、この完成予想図でやれって・・・」

 

アミクがまるで子供の落書きのような完成予想図を見て頬を引き攣らせる。

 

「うふふ、せっかくだから、改築しちゃうのよ!」

 

「改築ね・・・私の魔法で修築出来ればよかったんだけど・・・」

 

アミクの音楽魔法で建物などを修復できるものがある。だが、あそこまでボロボロに壊れてしまえば、さすがに無理だ。

 

「鉄柱打ちつけれられた時点で使っとけば・・・」

 

後で直しておくつもりだったのだが、その前にシャドウギア襲撃があったのだ。

 

「いいのよ。それに、新しくなったギルドも楽しそうでしょ?」

 

屈託のない笑顔で言うミラにアミクも思わず笑みになる。

 

「・・・さぁ、サボってないでお前たちも現場に戻れ!」

 

「「あいさー!!」」

 

「よし、私も」

 

そう言って木材を持とうとすると、エルザに心配そうに言われた。

 

「もう大丈夫なのか?安静にしてなくても平気か?」

 

「もうみんな心配症だなー。最初っから大丈夫だって言ってるのに」

 

アミクは手を振ると木材を持ってナツ達の方へ駆けだしていった。

 

 

 

向かっている途中青髪の少女とすれ違った。妖精の尻尾(フェアリーテイル)で見かけたことのない顔だが、加入希望者だろうか。

 

 

しばらく行くとグレイとナツが寄っているのを見つける。

 

 

「おーい、ナツーグレイー!どうしたの・・・」

 

 

不自然に言葉を途切れさせたアミクの視線は、グレイの足の上にある弁当に釘づけになった。

 

(ハ、ハートだと!?)

 

お弁当にはハート型にデコられているご飯と、おいしそうなおかずがあった。

 

 

「お、おいアミク。なんかこんな愛情弁当っぽいやつが出てきたんだがお前じゃないよな?」

 

「うーんそういえばさっき女の子見かけたけどその子じゃない?」

 

「うへぇ、得体が知れねぇな・・・」

 

「俺が食っていいか!?いただきまーす!」

 

グレイの返事も聞かずにバクバク食べ始めるナツ。

 

ちなみに弁当を渡した女の子がそれを見てショックを受けてたとかなんとか。

 

 

 

「つーかアミク、おめぇもうちょっと休んでた方がいいんじゃねぇのか」

 

「あのジョゼにボッコボコにされたんだろ?」

 

「言い方ムカつくけど・・・もう平気だって言ってんのに」

 

皆やたらと休め休め言ってくる。心配してくれてるのは分かるが・・・。

 

「はぁ、仕方ない。ルーシィの様子でも見てくるよ」

 

そう言って角材をナツ達に渡し、家に帰ろうとすると。

 

「あぁ・・・アミク、ちょうどよかった」

 

やつれた顔のロキがアミクの前に現れた。

 

 

「ロ、ロキ!?そんなにやつれちゃって・・・」

 

「ははは・・・ルーシィにこれを渡しておいてくれるかい?」

 

そう言って手渡してきたのはルーシィの星霊の鍵だった。

 

「え!?ずっと姿が見えないと思ってたらこれを探してたの!?」

 

ロキは弱々しく笑みを作り、「まぁね・・・」と答えた。

 

 

「・・・うん、わかった。ルーシィに伝えとくよ」

 

「それには及ばないよ・・・」

 

ロキは手を力なく振ると歩いて去っていった。

 

 

「あいつ、大丈夫か?」

 

「休ませた方がいいかもね・・・」

 

アミクは心配そうにフラフラと歩くロキを見た。

 

その後、家の方向に歩き出す。

 

 

「あ!待てよ、俺も行く!!」

 

「ちょ!ずりーぞおめぇら!!」

 

「あいー!」「なのー!」

 

「お前たち!どこに行こうとしている!」

 

「やべぇ、エルザだ!!逃げろー!!」

 

「ちょっと!先行かないでよ!」

 

ナツを皮切りにグレイもエルザも猫二匹もついてくることに。

 

 

 

 

 

「ってかお前もついてきてんじゃねーかヨ」

 

「私もルーシィのことは気になるからな」

 

エルザとグレイの会話を聞きながらアミクは家のドアの鍵を開ける。

 

「普通は、こうやって入るんだよ。人の家には勝手に入るもんじゃないよ・・・」

 

「今更だろ」

 

そう、話しながら家の中に入るアミク達。

 

「おーいルーシィ!帰ったよー!」

 

アミクは真っ先にルーシィの部屋に向かい、ドアを開けた。

 

 

 

「誰も、いない・・・?」

 

 

しかし、中は蛻の殻だった。

 

 

「ま、まさか風呂場にいるってパターンか!?お約束の展開で申し訳ないがっ」

 

「って風呂に直行すんなしこの露出魔スケベ!!」

 

『・・・まぁ、そんな年頃だよな・・・』

 

ウルが最近いろいろありすぎて諦めている!!

 

グレイに引っ張られながら風呂場に向かうと――――ナツがひょっこり出てきた。

 

「いねぇ」

 

「確認早ぇよ!!」

 

「この変態共!!」

 

アミクがナツとグレイに拳骨を喰らわす。

 

「いてぇ!」

 

「うげぇ!」

 

プンプン怒りながらルーシィの部屋に戻ると。

 

 

「ルーシィー、どこー?」

 

「いや、さすがにここには・・・」

 

ハッピーとマーチが天井近くの壁に付いてる箱を開けたところだった。

 

その直後。

 

「うわわわわ!なの!」

 

大量の手紙が流れ落ちてきた。

 

「これ全部手紙?」

 

「いっぱいあるな~」

 

「・・・そういえば毎日カリカリ何か書いてるなーとは思ってたけど・・・。小説以外にも書いてたんだ・・・」

 

耳がいいので書いてる音まで聞こえちゃうのだ。

 

とにかく、マーチは手紙を一枚拾って読んでみた。人の勝手に読むのは良くないけど・・・。

 

「『ママ!今日ね、憧れの妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入ったの!そこでね、すごく綺麗な子と会ったんだ!』・・・これ、アミクのことじゃない、の?」

 

「・・・え、えへへ」

 

アミクは頬を赤らめて照れた。

 

「『それにね、そこの人達も個性的でマスターもいい人そう!しかも強い!』・・・表現だいぶ抑えた、の」

 

「個性的、ね・・・」

 

それからもナツのことやエルザのこと、グレイのこと、日常のこと、仕事のこと、鉄の森(アイゼンヴァルト)のこと、いろいろ日記のように書かれていた。

母に報告するような書き方ではあるが、独り言のようにも見える、不思議な手紙だった。

 

 

「・・・全部母ちゃん宛てか」

 

「おいおい、送らずに貯めてたのかよ・・・」

 

「家出中、だからだと思う、の」

 

ナツとグレイとマーチが話していると。

 

 

 

 

 

 

 

 

「びぇえええええええええん!!!」

 

 

「おぉう!!!?」

 

「なんなんだてめぇ!!?」

 

アミクが急に猛獣みたいに泣き始めた。鼻水も涙も垂れまくってて見るに堪えない。

 

ナツとグレイもびっくりして引いていた。

 

「るーしぃがあああああ、る”-じぃーがああああああ”あ”あ”!!!」

 

「落ち着け。ルーシィがどうした」

 

エルザがアミクの肩に手を置くと、アミクは小さな紙切れを見せてきた。

 

ルーシィが残した書き置きのようだ。

 

 

「い”え”に”がえる”っでえええええええええ!!!」

 

『実家に帰ります』

 

紙にはそう書かれていた。

 

 

『はあぁぁぁぁぁぁ!!!?』

 

「何考えてんだアイツはぁぁぁぁぁ!!?」

 

「やっぱり・・・責任感じちゃってるのかな・・・」

 

「うえぇぇぇぇぇん!!!家賃五万じゃまだ高かったのかも!!うああああああああん!!!」

 

「つーかおめぇはまず泣き止め!!」

 

「ともかく、直接ルーシィに話を聞きにいくぞ」

 

「なの」

 

『全く・・・とんだじゃじゃ馬お嬢様だね』

 

 

 

 

 

 

実家に帰ったルーシィ。

 

 

そのルーシィは今、自分の父親、ジュード・ハートフィリアと対峙していた。

 

豪奢なドレスを着て。

 

 

「何も告げず家を出て申し訳ありませんでした。それについては深く反省しております」

 

まず、ルーシィはジュードに謝罪を述べた。

仮にも、自分の父親だ。それぐらいの筋は通すべきだろう。

 

 

「賢明な判断だ」

 

ルーシィに背を向けたまま話すジュードの声は冷えきっていた。久しぶりに聞いても何も変わらない、アミクとは違う、身をすくませるような声色。

 

それからルーシィはジュードの話を聞いた。

 

ジュードはルーシィの縁談が決まったから、と『幽鬼の支配者(ファントムロード)』に依頼してルーシィを連れ戻そうとしていた。

そして、もしルーシィが戻ってこなかったら金と権力の全てを使い、妖精の尻尾(フェアリーテイル)を潰していた、と語る。

 

ルーシィは傷だらけのナツやアミク、レビィ達を思い出し、思わず俯く。

 

「これでお前も分かっただろう。身勝手な行動一つが、周りにどれだけの迷惑を被らせるか」

 

ジュードは愛情も何も感じられない声色で淡々と言葉を紡ぐ。

 

「お前と彼らでは住む世界が違うのだ。それを知ることが出来たのは幸運だったなルーシィ」

 

確かに、自分はハートフィリア家の娘。それは覆せない。だけど、本当に違う世界でしか住めないのだろうか。

 

「それで、今回の結婚相手というのが以前からお前に興味を抱いていたサワルー公爵。覚えているだろう?」

 

「言っていましたね」

 

脂汗がひどくて手付きが厭らしく、下品な声で「ルーシィ様~♡」と鳴く小太りの男性。

客観的に見たら、サワルー公爵はそういう人物だった。

 

「ジュレネール家との婚姻によりハートフィリア鉄道は南方進出の地盤を築ける。これは我々ハートフィリア家にとって莫大な利益をもたらす結婚となるのだ。

 そしてお前には男子を産んでもらわねばならん。ハートフィリアの後継を、な」

 

 

ルーシィはジュードが自分のことを娘ではなく、利益のための駒としてしか見ていないことに胸が痛んだ。

 

幼いころ、ジュードに作ってあげたおにぎりをゴミのように捨てられたことを思い出す。

以前はそうではなかった。母親が死んでからジュードは人が変わったように仕事に打ち込み、ルーシィのことを顧みなくなってしまったのだ。

 

 

そんな父親がルーシィは嫌いだった。その父親に言われるがままになる自分が嫌だった。

 

だから―――――

 

 

「話は以上だ。部屋に戻りなさい」

 

 

もう逃げない。

 

 

「お父様、勘違いしないでください」

 

 

 

ここで決着をつける。

 

 

「私がここに戻ってきたのは、自分の決意をしっかりと、私の口から貴方にお伝えするためです」

 

 

 

ジュードはルーシィの言葉に驚いて目を見開いていた。

 

 

「確かに何も告げずに家を出たのは間違ってました。それは逃げ出したのと変わらないから」

 

 

ジュードは娘の目を見た。

決意で固まった、美しく輝いている瞳だった。

 

「だから今回はきちんと自分の気持ちを貴方に伝えて、ここを出ていきます!」

 

昔の自分との決別のためにも。自分の想いを父親にぶつける。

 

「人に決められる幸運なんて無い。自分で掴んでこその幸運よ! あたしの道はあたしが決める!

 結婚なんて勝手に決めないで! そして妖精の尻尾(フェアリーテイル)には二度と手を出さないで!」

 

そこまで言うとルーシィはドレスに手をかけ

 

 

ビリビリビリィ!!

 

 

と破いた。

 

 

「今度!妖精の尻尾(フェアリーテイル)に手を出したら、あたしが・・・ギルド全員(あたしの家族)が貴方を敵とみなすから!!!!」

 

 

破茶滅茶で問題児だが、自分のために燃えてくれたナツ。

 

自分のために泣いてくれた同居人で敵のことさえ想える、優しくて皆に愛されるアミク。

 

露出魔だが、自分の信念に従って戦ってくれたグレイ。

 

気高く誇り高く、騎士のような精神を持つ美しい女性、エルザ。

 

魚が大好きで自分なりに助けてくれたハッピー。

 

マイペースで何を考えているか分からないけど、皆を和ませてくれるマーチ。

 

ミラ。レビィ。ロキ。カナ。エルフマン。マカオ・・・ギルドの皆。

 

そして、マスターマカロフ。

 

 

 

これらの人々が、ルーシィのために傷つきながらも戦ってくれたのだ。

 

 

その、自分も含めた人たちが、ジュードと対立すると、ある意味宣戦布告をしたのである。

 

「自分が、自分が何を言っているのかわかっているのかルーシィ!! 実の父親に向かってお前は」

 

もはや先ほどの冷徹さは薄れ、急な娘の反抗に狼狽え、呆然とする男がいた。

 

「実の娘である私に、貴方は何もしてくれませんでしたね・・・」

 

「ふざけるな! 欲しい物なら何でも買い揃えたはずだ。服も玩具も金も!! お前が」

 

そういうことではないのだ。

 

「私が欲しかったのはそんなものじゃない!私はただ・・・」

 

ありきたりだが、とても単純で温かいもの。

 

「『愛してる』。その言葉が貰えれば十分だったのに・・・」

 

ルーシィの顔が悲しげに歪んだ。

 

 

ジュードは意味が分かってるのか分かってないのか、こちらを見たまま呆けている。

 

「それはあたしにとって、お金よりも高価な服よりも、ずっとずっと価値があるものだったのよ・・・」

 

 

ルーシィは右手の甲をジュードに見せた。

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)はあたしをお嬢様とかじゃなくてただのルーシィだと認めてくれた、温かい所!もう一つの家族!あたしの居場所なのよ!」

 

ジュードの視線は甲にあるギルドマークに釘付けだ。

 

「ママと一緒に暮らしたこの場所を離れるのは寂しいし、皆と別れるのも辛いけど・・・」

 

使用人たちはルーシィを愛してくれた。ジュードとうまくいかないルーシィを励ましてくれた。

 

「ママが生きていたらきっと、私が思うようにしなさいって言ってくれると思うから」

 

 

ジュードはさらに戸惑う。娘が、誰かと重なる。

 

そうだ、その力強い瞳。

 

見覚えがあると思ったら――――

 

自分が愛してやまなかった、ただ一人の妻―――――

 

 

(レイラ―――――)

 

 

「ルーシィ・・・」

 

ジュードはルーシィに手を伸ばす。

 

「さようなら、パパ」

 

 

 

ルーシィは振り返って扉に向けて歩き出した。

 

 

もう過去には囚われない。ここから出て新しい一歩を踏み出すのだ。

 

 

 

ハートフィリア家の令嬢、ルーシィ・ハートフィリアは父親と自分の過去に答えを出し、決着をつけた。

 

これからはただのルーシィとして―――――妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士、ルーシィとしての日々が待っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ママ・・・」

 

ルーシィの前にあるのは墓石。自分の母親、レイラ・ハートフィリアの墓だ。

 

「――――あたしは、あたしの道を進むよ」

 

改めて誓うように拳を握りしめる。

 

 

心なしかレイラも「がんばりなさい」と励ましてくれたような気がした。

 

 

 

 

その時。

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――~~~ああああああああああああああん、ル―――――――シィ―――――――――!!!」

 

 

 

誰かの絶叫が聞こえる。

 

 

ルーシィはそちらを向いた。すると―――――

 

 

 

「ル”ゥゥゥゥゥゥゥジィィィィィィ!!!!」

 

「ぎゃああああああああああ!!!!?」

 

 

ものすっごいスピードで泣きながら向かってくるアミクと

 

 

「アイツ、はっや!めっちゃ速っ!!」

 

「臭い嗅いだ瞬間ロケットダッシュしたぞ!!」

 

「これが、友情ゆえに、か!!」

 

「友情でアレなら、恋だとどうなるのか、見物、なの」

 

『拗らせてるな、いろいろと』

 

「待ってよ~!」

 

 

それを必死に追いかけているナツ達だった。

 

 

「うわあああああああああああああああああん!!!」

 

アミクは、なんか、もうヤバい。速すぎて涙と鼻水が後ろに流れている程だ。

 

っていうか形相がすごい。

 

軽くホラーである。

 

 

 

「ルゥゥゥゥゥゥゥシィィィィィィ!!!!」

 

「わっ」

 

そのアミクがルーシィに抱きついてきた。スピードを直前で抑えて。器用である。

 

「い”な”ぐな”ら”な”い”でぇぇぇぇぇ」

 

 

「ちょっとぉぉお!!まずは顔を拭きなさい鼻水つけるなぁ!!女の子がしちゃダメな顔になってるから!!」

 

ルーシィは持っていたハンカチでアミクの顔を拭いた。

 

「ルーシィー!」

 

そこにハッピーも泣きながら飛びこんでくる。他の皆も追いついた。

 

「ていうか皆も・・・なんで?」

 

「だって・・・おまえ・・・」

 

 

それから、ナツ達による必死な説明により、皆がここにいる理由を知った。アミクはずっとルーシィの胸でぐずってた。

 

どうやら自分がギルドをやめて家に戻ったと思っていたらしい。

 

 

ルーシィは苦笑しながらケジメをつけに来ただけだと誤解を解く。

 

 

その時のアミクの輝かんばかりの表情ときたら。

 

 

それから皆で笑い合った。

 

 

 

 

 

 

屋敷の窓からジュードは楽しそうに笑うルーシィを見る。

 

家にいた頃は見たことのない心からの笑顔だ。

 

 

(あの笑顔を引きだしたのが、あの者たちか・・・)

 

 

ジュードはぼんやりと今までの人生を振り返る。

 

自分のしてきたことは正しかったのか。レイラに顔向けできるような人生だったか。

 

もう一度、ルーシィを見た。今までで一番輝いている。

 

 

自分は娘の何を見てきたのだろうか。

 

ほんのちょっと、後悔が湧きおこり、ジュードは胸に手を置いた。

 

娘を幸せにするのは自分ではない。

 

あの妖精の尻尾(フェアリーテイル)なのだ。

 

 

 

 

 

「・・・ルーシィのお母さん?」

 

 

アミクがレイラの墓を見て聞く。

 

「うん・・・見ての通りずっと前に死んじゃったけど・・・」

 

「え?でもルーシィのお母さんって・・・」

 

「余計なことは言わない、の」

 

マーチがハッピーの口を塞いだ。

 

 

アミクは墓をよく観察する。

 

X748年からX777年。享年僅か29歳。

 

 

(・・・X777年?)

 

どこかで。

 

どこかで同じワードを聞いたような。

 

 

『俺たちの(ドラゴン)がX777年7月7日に消えた・・・』

 

 

そうだ、この前ガジルが言っていた。

 

 

自分とナツ、そしてガジルの(ドラゴン)がX777年にいなくなった。

 

ルーシィの母親、レイラが亡くなったのもX777年。

 

 

 

偶然、だろうか。

 

 

(偶然だよね・・・)

 

 

他にもX777年に亡くなった人も多いだろう。

 

だから、この人と(ドラゴン)を繋げるのは荒唐無稽すぎる。

 

 

アミクはそれ以上考えるのをやめた。

 

 

ただ、引っかかりとしてその疑問は残った。

 

 

 

 

 

 

 

「も~ルーシィったら紛らわしいんだから。泣き損したよ」

 

「ごめんごめんっ」

 

「ほんとおまえルーシィの家からここまでずっと泣いてたもんな。脱水症状で死ぬんじゃねぇかって冷や冷やしたぜ」

 

「あはは・・・ってか服」

 

 

帰る途中。歩きながら他愛もない会話をする。

 

 

 

「にしても広い町だね」

 

「のどかでいい、の」

 

飛びながらハッピーとマーチが言うと、ルーシィはそれにかぶりを振る。

 

 

「ううん、ここは庭よ。あの山の向こうまでがあたしの家!」

 

ルーシィは遠くにありすぎて小さく見える山を指差した。

 

 

瞬間。アミク達の時間が止まった。

 

 

みんな目が点になり、ぼーぜんとなる。

 

「あれ?どーしたのみんな?」

 

ルーシィが無邪気に聞いてくる。

 

これは・・・これは・・・。

 

 

 

 

「お嬢様キタ―――!」

 

「さりげ自慢キタ―――!」

 

「たまご¥・・・ぶろっこりー☆・・・ブルジョワキタ―――!」

 

なぜか敬礼をしながら言うナツ、グレイ、アミク。

 

「エルザ隊長!ナツとアミクとグレイがやられました!一言お願いします!」

 

ハッピーも敬礼でエルザに問いかける。

 

「空は・・・青いな・・・」

 

「エルザ隊長が故障したぞー!!!」

 

「やはり、世の中全ては金なのだ・・・・なの」

 

「マーチ軍曹が悪堕ちしかけてます!」

 

『・・・あいすど、しぇる?』

 

ウルも壊れた。

 

 

ルーシィはそんなアミク達を見て楽しそうに微笑んだ。

 

 

 

 

ママ・・・あたし、あたしの居場所を見つけたよ。

 

 

 

 

 




次回からは閑話が始まります。といっても、劇とかロキのやつとか、あとオリジナルストーリーをちょこっと。

それが終われば楽園の塔です。


個人的にジェラールのゲス顔が草です。


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元幽鬼と劇と星霊の間奏曲 元幽鬼(ファントム)とお祝いと最強チーム結成

今回はオリジナルストーリーが入ってますが・・・うまく書けたかな?


ルーシィが実家から戻ってきて数日後。

 

アミク達の家で盛大なパーティが行われようとしていた。

 

 

「えー、遅くなりましたが。ルーシィの正式入居書類も出したことですし、ルーシィの引越し祝いをしようと思いまーす!」

 

『おおおおーーーーー!!!』

 

アミクの音頭に集まっていたナツ達が拍手をした。

 

「というわけでおめでとうルーシィ!」

 

「ど、どーも・・・たかが引越し祝いでここまでする?」

 

「いいのいいの。ちょうど皆騒ぎたかったところだろうし!」

 

「なんか複雑・・・」

 

当の本人のルーシィは苦笑いをしている。

 

 

色々あったおかげでルーシィの正式入居ができなかったが、今回やっとすることができたので、ナツ達を呼び、パーティをすることにしたのだ。

 

「これでルーシィも家賃払うための借金地獄が始まるんだね」

 

「なんて不吉なことを言うのかしら!?」

 

ハッピーの言葉にルーシィがギョッとしていた。

 

「うむ。やはり美味いな。アミクは将来いいお嫁さんになれるぞ」

 

「お嫁さんって・・・それはエルザもじゃない?」

 

『私も食べてみたいけどね・・・口ないから』

 

アミクとエルザが卵料理を突っつきながら会話している。ウルは寂しそうに呟いていた。

 

ちなみに、料理はアミクやエルザが担当した。

 

 

「おいクソ炎、どっちが先にこのピラフを食べ切れるか勝負だ」

 

「望むところだ!」

 

「他の人の分の残しとけ、なの」

 

マーチがナツとグレイを窘めている。いっぱい作ってはあるが、食べ尽くされてしまえば他の人が食べる分が少なくなるのだ。

 

「ウメェなこれ!」

 

「何杯でもイケるな!」

 

スキンヘッドの男と、褐色肌の少女が絶賛する。

 

『・・・・・』

 

皆、黙った。

 

何か違和感がある。いつも通りのメンバーに何か異物が混じっているような・・・。

 

 

「「誰だよ!?」」

 

ナツとグレイがスキンヘッドの男と褐色肌の少女に気付いて声をあげる。

 

「お!?」

 

「ん!?」

 

二人はビクッとなってそろりと目を逸らした。

 

そこにエルザが剣を突きつける。

 

「貴様ら、人の家に勝手に上がり込むとは。不届き者め」

 

「それ盛大なブーメランになってることに気づかない?」

 

アミクがジト目で言った。

 

「ヒ、ヒィ!!?妖精女王(ティターニア)!?」

 

「なんでこんなところに!?」

 

二人はエルザを見ると抱き合って震えた。

 

アミクは慌ててエルザと二人の間に入る。

 

「待って待って!この二人を招いたのは私だから!」

 

そう言うとエルザはゆっくりと剣を下ろした。

 

アミクと二人組はホッとする。

 

「そうか・・・だがこの二人は何者なのだ?」

 

だがエルザの質問に再びビクッとなった。

 

ナツやグレイ達もジッと二人を見る。

 

アミクは乾いた笑みを浮かべながら紹介した。

 

 

「えーとこっちのハゲの人はボーズ。こっちの女の子はスー。

 どっちも・・・元・幽鬼の支配者(ファントムロード)のメンバーだよ」

 

『な・・・!?』

 

一同は驚いて唖然として二人を見た。まさか、あれだけの事をしたファンロムの一員がいるとは思わなかったのだろう。

 

エルザはアミクを睨んだ。

 

「アミク、どういう事だ。あんな事をしたファントムを家に招くなど・・・」

 

「まぁ、事情があってね・・・」

 

アミクはつい先程あった出来事を話し始めた。

 

 

 

 

 

 

「やっば、遅くなったな・・・」

 

今日もギルドの再建の手伝いをしていたのだが、ついつい張り切りすぎて遅くまで居残ってしまった。

 

今日はルーシィの引越し祝いパーティがあるのに。

 

ルーシィやナツ達は先に帰ったのでまだ着いてないのはアミクだけだろう。

 

「はぁ・・・近道しよ」

 

アミクは偶に使う路地裏に足を向けた。

 

 

路地裏に入ってしばらくした頃。二人分の足音が聞こえてきた。

 

どうやら待ち伏せしていたようだ。

 

(なになに?チンピラかな?)

 

アミクは立ち止まって二人が現れるのを待つ。

 

無視しようかとも思ったが、二人は前方から歩いてくるので結局鉢合わせることになってしまう。

 

 

現れたのはスキンヘッドのサングラスを掛けた男と褐色肌に額の宝石が特徴の少女。

 

二人はにやついた面に若干の怯えが混じった表情をしながら近づいてくる。

 

「ヘッヘッヘ、嬢ちゃんや。こんな遅くまで何やってたんだい?」

 

「良かったらあたい達と遊ばないかー?」

 

少女の方は訛りが混じったような口調だった。

 

「うーん、ごめんね、私ちょっと急いでるから・・・」

 

「まぁまぁ、そう言わずにーーーーーーミラーマジック『千面鏡』!!」

 

急に少女の方が魔法を使った。アミクの周り全てが鏡に囲まれ、囚われる。

 

「うわ、これ気持ち悪・・・」

 

どこを見ても自分が写っていると言うのは良くない気分だ。

 

「あははは!!自分の間抜けな姿しか見えないのはどんな気分だ!?」

 

外から少女の笑い声が聞こえた。敵意のある口調だが、一体どう言う目的だろうか。

 

「まぁいいや、『音竜の響拳』」

 

アミクは軽く鏡を殴り、衝撃波を発生させて壊した。

 

パリィィィィィィン!!

 

「なぁ・・・!?」

 

少女が驚いて目を見開く。男の方は少女の前に出て舌打ちした。

 

「チッ、やれる方の奴だったか!喰らえ、音撃弾術『ハウリング』!!」

 

男が魔法を使うと、不協和音がこちらに向かって襲ってきた。なるほど、なかなかの攻撃力だ。

 

「からの、『ディスターブド』!!」

 

今度は足元から不協和音が飛び出してきてアミクを襲った。

 

音系の魔法の使い手か。

 

アミクは涼しい顔をしながらそう推察すると

 

 

カプ

 

 

不協和音を口に咥えた。

 

 

シュルルルルルルル

 

 

そして、ラーメンを啜るように吸い込む。

 

味はブラックコーヒーと言ったところか。

 

 

「は・・・・はぁ!?」

 

「あ、あいつまさか!!音を食って・・・!!」

 

二人は驚愕して立ち竦んでしまった。

 

「・・・う〜ん、微妙かな。もうちょっと甘めだったら良かったけど」

 

全部食べ終わったアミクがそう批評すると二人はアミクの正体に気付いたようだ。

 

 

「あの女!『音竜(うたひめ)』だ!!」

 

「嘘だろ!?よりによって!」

 

今更正体に気付いても遅い。

 

「出力を抑えて・・・『音竜の咆哮』!」

 

「くっ『姿鏡』!」

 

少女の方が目の前に鏡を出す。

 

ブレスはその鏡に吸い込まれていったがーーーーー

 

 

パリィィィン!!

 

 

「きゃあああ!!」

 

「おわあああああ!!」

 

吸収しきれなかったのか、鏡が割れてしまった。そしてブレスはそのまま二人に直撃した。

 

 

 

 

 

「で?なんでこんなことしたの?」

 

アミクは仁王立ちで二人の前に立った。

 

二人はボロボロの姿で正座している。

 

 

「え、えっとぉそれがですね・・・」

 

 

 

二人の説明によると、

 

 

 

なんと二人は前の事件で解散した幽鬼の支配者(ファントムロード)の一員だった。

 

自分の仕事場が無くなってしまった二人はとにかく食い繋ごうと新しい仕事先を探す。

 

だがここにきて今まで好き勝手してきたツケが回ってきた。

 

元々評判の良くなかった幽鬼の支配者(ファントムロード)。それが今回の件で大悪党になってしまった。

 

そんなギルドに所属していた経歴を持つ二人は信頼ゼロだった。どこに行っても幽鬼の支配者(ファントムロード)に所属していたと知れば門前払い。

評判とやらかした出来事のせいで周りの向ける視線は冷たく、仕事にありつけない。

 

二人はそんなジレンマに陥ってしまった。

 

二人はそんな生活を送っている内にこうなった原因は何か?と考える。

 

 

 

全部

 

 

 

全部

 

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)のせいだ!!

 

 

 

 

 

 

「―――――で、復讐しようと考えたわけ?アホか」

 

「うぅ・・・俺らだって短絡的だったと思うぜ・・・」

 

「でも・・・誰かのせいにしなきゃやってられなかったんだよ!」

 

「一日一食を心がけても足りない食費・・・」

 

「雨で濡れて眠れやしない野宿・・・」

 

二人はざめざめと泣き出した。

 

 

確かに自業自得とはいえ、ボーズとスーの境遇にはさすがに同情する。その中で、心に溜まったモノを掃きだしたかったのだろう。

だからって逆恨みして良いという訳ではないが。

 

まあ、まともな判断ができなかったということで良いだろう。

 

(・・・どうしようか)

 

アミク自身、こういうのはほっとけない性格なのだ。

 

「・・・はぁ・・・しょうがないなぁ・・・」

 

自分でも難儀な性格だとは思う。

 

 

しかし、ここままでは自分が落ち着かないのも事実。

 

 

「一つだけ聞くけど・・・あの事は反省してる・・・?」

 

せめて彼らの本音を知りたかった。

 

 

「はいぃ・・・今回のことも前回のことも反省してますぅ・・・」

 

「ちゃんと真面目に働こうとしてるんですぅ・・・でも世間の目がぁ・・・」

 

涙を流しながら喋る彼らのことが可愛そうになってきたアミク。

 

おそらく嘘ではあるまい。

アミクはそう判断してとりあえず二人の腹ごしらえをすることにした。

 

 

つまり

 

 

パーティに参加させたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ってことなんだけど・・・ごめんね、さすがに、無神経だったかな・・・?」

 

アミクが不安そうな顔で皆を見回す。

 

見ると皆苦笑している。

 

「アミクらしいよなー」

 

「ったくしょうがねぇな」

 

「それがアミクの魅力、なの」

 

「あい!」

 

「もう、終わったことだし、ね」

 

全員アミクに好意的だった。

 

「・・・ありがと。でも問題は泊めるとこなんだけど・・・」

 

「え!?もしかして家に泊めるの!?」

 

ルーシィがギョッとして言った。いくらなんでも一緒の家にいるのは不安なのだろう。

 

「さすがに泊めるのはダメかな・・・でもこの人たち追い出すと野宿だし・・・」

 

「あ、あたしは別に大丈夫よ!」

 

ルーシィが慌てて言う。

 

「でも、せめて一緒に寝て・・・」

 

「オッケー!」

 

即答した。友達と添い寝するのが嬉しいらしい。

 

するとエルザが苦笑した。

 

「割り切ったわけではないが、アミクがそうすると決めたのなら私はその意思を尊重しよう。ただ・・・」

 

 

エルザは言葉を切るとボーズとスーをギロリ、と鋭い目で見る。

 

 

「もし、アミクとルーシィに危害を加えたら・・・・容赦はせぬぞ」

 

 

「「は、はいぃ・・・」」

 

二人は鋭い眼光に震えるしかなかった。

 

 

 

 

それからボーズとスーも交えてパーティを楽しむ。

 

 

最初は二人共ぎこちなかったが、屈託のないナツや、分け隔てなく接するアミクなどという面子によってすっかり溶け込んでいった。

 

ナツが面白おかしく話す仕事の話に笑うボーズ。女性陣で自分だけ胸が小さい、と凹むスー。

 

ハッピーを抱きしめ撫でまわすスー。グレイと魔法談義に花を咲かせるボーズ。

 

一緒に笑い、一緒に騒ぐ。禍根を忘れ、一緒に楽しむその様子は、マグノリアで一番輝いていたと言えるだろう。

 

もしも、これが幽鬼の支配者(ファントムロード)妖精の尻尾(フェアリーテイル)の関係だったら、また違った未来になっていたかもしれない。

 

 

 

 

楽しい時間はあっという間に過ぎ―――――

 

 

 

「―――って結局皆泊まるじゃん!!」

 

「やはり心配だからな」

 

「まぁいいじゃねぇか!たくさんいた方がいいだろ?」

 

「あい!」

 

全員泊ることになってしまった。お前ら自由だなおい。

 

まぁ、確かに見知った人がたくさんいた方がいい。これは渡りに船というやつだろう。

 

というより、みんなエルザみたいに警戒心の緩いアミクを心配してくれたのかもしれない。

 

騒いでいると急にボーズとスーが二人揃って土下座した。

 

「姉貴!」

 

「姉さん!」

 

「ふぇ!?」

 

それに急に姉貴呼ばわり。アミクの頭は困惑で満ちた。

 

 

「こんな、こんな俺たちみたいな奴らにここまで親切にして下さってありがとうございます!!」

 

「あんなことをしたのに・・・なんて慈悲深いんだ!!」

 

「・・・!?!?」

 

わたわたと慌てるアミクと感激して涙を流す元・幽鬼の支配者(ファントムロード)のメンバー。

 

それを見てエルザ達が共通して思ったこと。

 

 

また信者増やしたな、と。

 

 

 

 

 

女子と男子で別れて寝ることにした。

 

当然女子であるスーはアミク達と一緒である。

 

 

「こ、こういうのは初めてなんだ」

 

「そうなの?じゃあ、私達が初めてのアレだね!」

 

「アレってなによ・・・」

 

「ふむ、しかしお前は良く訛るが、地元の癖なのか?」

 

「あぁ、故郷でずっと暮らしていたけど、

 オークの街に住んでいた友達に誘われて魔導士ギルドに入ったんだ。

 それがファントムだけど・・・」

 

「いつか、その地元にも行ってみたい、の」

 

「特に面白味もねぇぞ?」

 

「そういう所になんかすごい秘密があったりするんだから!」

 

 

 

女子たちは集まってガールズトーク。

 

 

 

男子達は・・・

 

 

「おい、てめぇ今なんつった?」

 

「何度でも言ってやるよ、おめぇの体臭クセェって言ったんだ。ちゃんと風呂入ってんのかよ。それで服脱ぐとか臭すぎて近所迷惑だわ!」

 

「んなにぃ!?てめぇこそその目に悪そうな色の髪のせいで視力が下がるんだよ。燃やしてハゲになったほうがいいんじゃねぇか?」

 

「あぁ?」

 

「おぉ?」

 

 

「・・・だ、だれか助けてくだせぇ!!」

 

「慣れるしかないよ」

 

ナツとグレイのケンカに巻き込まれてるボーズであった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。

 

 

皆で朝食を食べた後、アミクはボーズとスーにある名刺を渡した。

 

 

「こ、これは・・・?」

 

「これは前仕事で行った孤児院の場所。ここだったら君たちのことを受け入れてくれるはずだよ。過去のこととかもあまり気にしないし、君たちの今の人柄を見ると思うから」

 

ボーズとスーは呆然とした。

ご飯や寝床を恵んでくれただけでなく仕事場まで紹介してくれるとは。

 

なんて懐の深い人なんだろうか。

 

 

ガバッと二人は再び土下座した。

 

 

「うぇ!?また!?」

 

「姉貴!!一生ついて行きます!!」

 

「ついていきます!!」

 

「来なくていいから!?何でそんな簡単に人生棒に振るわけ!?自分の道を進みなさい!」

 

アミクが脇に手を当てて言うと二人が恍惚とした表情になった。ナニコレやべぇ。

 

「な、なんて心に染みわたる声色に言葉・・・」

 

「あたい達は、ほんとに幸運だよ・・・」

 

アミクに眩しいものでも見るかのような反応だ。後光でも差しているのか。

 

「とにかく!子供の世話とかできる?ま、それじゃなくても掃除とか食器洗いとかもあるから安心して。それに君たち魔導士だから用心棒みたいな役割もできるし」

 

魔法は使い様によっては日常生活でも十分役に立つ。

 

ボーズの不協和音攻撃だったらカラスや野生の動物を追い払うこともできるし、スーの鏡はいつでも姿見に使える。

 

「それで信頼を積み上げてまた魔道士ギルドに入るとかもできるよ」

 

 

本当に至り付くせりだ。そろそろ二人のアミクを見る目がヤバい。私は神か。

 

 

「・・・あれで天然?無自覚?すごくない?」

 

「俺達はもう見慣れたもんだけどな」

 

「ふふ、久しぶりに見たぞ、アミクの女神モード」

 

「信者製造機とも言う、の」

 

「マーチ、言い方がとんでもないよー」

 

 

外野がうるさい。

 

 

「ま、だから頑張りなよ。世の中すべてが君たちのこと見放してるわけじゃないんだから。ちゃんと見てくれてる人達もいるから。過去と向き合って生きていればその内みんな認めてくれるから!諦めないでね!」

 

「・・・ばい”・・・」

 

二人の目から涙が滝のように溢れる。

 

アミクはそんな二人を見て「あわわわ」とティッシュを差し出していた。

 

 

 

 

 

「・・・なぁ、アイツを育ててくれ