心が壊れた男が始める異世界生活 (夜空 有栖)
しおりを挟む

オリキャラの紹介と他のキャラとの関係

自分で、小説を書いている時に忘れそうになるので、戒めとして。
できるだけ、本編に内容のは触れないようにしましたが、嫌と思われたら、最新話までの既読を推奨します。関係が動き次第、このページは更新していく予定です。


霧先 希亜(キリサキ ノア)

 

この作品の主人公。

容姿は、長い銀髪の髪に赤い目で、中性的な顔立ちと思っているのは本人だけで、完全に女顔である。

年は17で、背もそんなに高くはない。

依頼者側に口封じのために命を狙われたが、その場をぬける実力があったのにもかかわらず、興味がわかないという理由で簡単に自殺した。

本人曰く、感情を捨てたといってはいるが、最近は本人もよくわからない状態になっている。

自殺した後、ロズワール邸付近の森に気付いたらいた。いきなり、ウルガルムに襲われた運の悪い青年。

親がいないため、名前は自分でつけたものだとか。

由来としては、彼が師としていた者が、霧の深い夜に森の先で見つけられたことからとノアの箱舟の話が彼の中ではとても興味深い話であったから。

最近の趣味は、自分が知らないことの知識集めと同僚になるスバルの観察だとか。

 

 

 

 

 

 

 

ノアが使役している魔獣

 

ノアが森で、魔獣を乱獲した時に上手く角を折れたのは2体のみ。

残りの魔獣たちは、力の入れ方を誤って角を折るどころか、殺してしまった。

2匹とも、彼への忠誠心は高い。なお、彼のネーミングセンスは皆無な模様。

 

 

ウル

 

ノアが使役している魔獣のうちの一体。

常に落ち着いている。

 

 

ガル

 

ノアが使役している魔獣のうちの一体。

饒舌で、主人の肩の上が大好き。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロズワール邸の関わり

 

 

ロズワール

 

お互いに利用しあっている関係。

ノアは、ロズワールが何か強い目的があることを見抜いている模様。

 

 

エミリア

 

天然が混じっていると彼は思っている。

もう少し、危機意識を持つべきだと彼は、常々思っているとか。

 

 

パック

 

いつかパックの本当の力をみたいと思っている。

精霊ということも、彼的には興味の対象になるらしい。

魔獣を使役しているが、精霊とも契約したいとエミリアとパックをみていると思うときがあるとか。

 

 

ベアトリス

 

かなりの頻度で、ノアは彼女の部屋にやってくる。

最近は、あまり本を貸してくれないので、困っている。

 

 

レム

 

例の一件以来、少しだけ、顔を合わせるのは気まずいと思っているのは、彼女だけで、意外とノアは何も思っていなかったりする。

 

 

ラム

 

波長が一致するために、視界が千里眼によってラム側にみられることを危惧している。

 

 

スバル

 

ノア側が一方的に認知している。面と向かって、話をしたことはまだない。

死に戻りのことで、彼に興味津々。

 

 

 

 

 

腸狩り・魔獣使い

 

彼女らとは、協力関係にある。

特に、同じく魔獣を使役するメィリィとは仲が良い模様。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

原作前の話、「アサシンと鬼」
事の始まり


文章力があれですが、よろしくお願いします。


  

僕、 霧先  希亜( キリサキ ノア)は今、困ったことになっている。。

なんと、僕は気づいたら、

                 暗い森の中で狼らしきものに囲まれていた

 

 

 

 

「何いってんだこいつ?」と思った方が多いと思う。

とりあえず逃げながら今に陥るにいたったことを説明しようと思う

 

僕は元々17歳の男子だ。容姿はまあ、普通だったら珍しいと思う、銀髪の長い髪に赤い目である。

中性的な顔立ちのせいで、女性とよく間違えられた。地味にショックだ。

僕は元の世界ではいわゆる暗殺者だった。

 

 

 

まあ、暗殺者といわれて 「お前どういう人生をいきてきたんだよ!?」といわれるかもしれない。

とりあえず、暗殺者になった理由は長く語ることになるので、今回は省略しよう。

 

僕はいつも通り、暗殺を終えて泊まっていたホテルに戻った。

それにしても、暗殺だと疑われないように殺せというのだから余計に面倒くさくなった。

この時は、大統領の殺害という依頼だったからさすがの僕も疲れてしまったようだ。

 

 

 

僕は仕事が終わるとその国から退散するが、今回は油断して1日休もうとしてしまった。

これが、まずかったのだろう。

僕はこの時点で依頼主の弱みを握っていることになる。これ自体はいつものことだ。

しかし、今回は大統領の殺害を依頼してきたのは世界でも有数の資産家だ。

ならば、僕はどうなるだろうか。

僕は奴に忠誠を誓った部下ではない。

いつ爆発するかわからない爆弾を放っておかないことと同じことだ。

 

要するに僕は体のいいスケープゴートにされるところだったのだろう。

その資産家は大統領を殺した僕を捕まえた英雄になるつもりだったのだろう。

僕をはめようなんて、いい度胸してるじゃないか。

 

 

ホテルの食事に毒物が入ってる時点で抵抗するとならばかなりの労力をつかいそうだ。

ここで、お腹は減っている僕が食べないと言った時点で従業員は牙をむく。

あの資産家のことだろう、このホテルの人間すべては僕の敵だ。

もし出れたとしても、入り口前にも待機しているだろう。

まあ、逃げようと思えばにげきれるだろうが、その後はどうだろうか。

顔は割れてはいないが、裏の世界で仕事はしにくくはなるだろう。

ちょうど現世に興味が失せていたころだ。

ここで終えるとしよう。

 

 

まあ、ただでやられるつもりもない。

トイレに行くとだけ伝え、場所を離れた。

 

トイレの小型監視カメラを高速で破壊する。奴らが来るのも時間の問題だ。

もう時間がないので、携帯でもしものときの遺言を世界にぶちまけた。

これにはここまでの僕の依頼のことも音声つきですべて残っている。

まあ、これを放ったあとの奴らの顔を見たかったが、残念だ。

 

僕は護身用のナイフを自分につきさし、自爆用の爆弾を起動した。

人殺しの僕がいえることではないが、次生まれ変わったら、もっといろんなことをしてみたいと。

 

 

 

となって今に至るわけだ。

 

 

 

爆弾の威力はかなりのもので、少なくともあのホテルはただではすまないだろう。

当然、僕は生き残れるわけがない。

見たことない狼?に追われていることも含めて、ここは地球ではないのかな?

いわゆる異世界転生ってやつかな?

言ってみるもんだね。

 

そして、僕は森を抜けることを目指して、駆け抜けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

小さな司書

「知らない天井だ」

 

 

 

 

とりあえず言ってみた。一回はいってみたかったんだよね。

 

 

「なかなか品質のいいベッドだ」

 

僕は二十畳近い広さの部屋のベッドにて起床した。

 

どうやら上流階級の貴族あたりの客室だろうか。

何があったんだっけ?

 

 

たしか、僕は森で狼?らしきものに追われていた。

護身用のナイフと銃は手元にあったからそれで戦闘しながら逃げていた。

森の出口まで何十体とも戦闘したからか、疲労で倒れたはず。

ならば、誰かが僕をここに運んでくれたというわけか。

治療してくれた誰かに感謝だね。

 

まあ、この屋敷の主にはいちよう警戒しておこう。

僕の戦闘用具がとられていることからも、刃向かうのは適切とはいえない。

下手に出歩くのもどうかと思ったが、好奇心には刃向かえず、警戒しながら扉を開けた。

 

ふむ、廊下もなかなかに立派だね。

廊下の先が見えないというのは驚いた。

とりあえず、ここの主と話しがしたいと思い、僕は歩き出した。

 

 

5分した後、僕は気づいた。

この、光景はさっきも見た、同じ所を進んでいる気がする。

そうだね、部屋に戻ってようか。

なかなかめんどくさそうなことになりそうだったから僕は大人しく戻ることにした。

 

 

 

僕がいた部屋と思われる部屋を開いた。

そこには、さきほどと同じベッドがおかれて        

 

 

 

 

 

 

                    いなかった。

 

 

 

 

 

 

そこには、先ほどの部屋の倍よりもあり、その天井まで本棚がうめつくされている

                【書庫】

                    だった。

 

 

 

 

ざっと、みたところ僕がよめそうな本はなかった。やはり異世界だろうか。

僕は、とてつもない歓喜と興奮におそわれた。

ここには、僕の知らないことがたくさんあるだろう、そう思いにふけっていたら、とげとげしい言葉によって現実に引き戻された。

 

 

 

「他人の書庫をいつまでみているのかしら?」

 

 

 

と、おそらく11,12歳と思われる豪奢なドレスをきた、クリーム色の長い髪を縦ロールに巻いている可憐な少女からつぶやかれた。

 

「おや、失礼したね。つい、この量の本に興奮してしまったよ。

 僕でもこのくらいの蔵書はもっていないからね。

 君はこの館の主ではないよね?」

 

僕は見た目から判断するのはよくはないと思ってはいるがそういった。

 

 「残念ながらベティーはおまえが求めてる主ではないかしら。

  そして、ここはベティーの書庫兼、寝室兼、私室かしら。」

 

 「ここで寝泊まりできるとは、 僕からしたら最高の環境だね。

  ここなら、蔵書がたくさんあって退屈しなさそうだし楽しそうだね。」

 

 「体の傷をみたかぎり、本を読むタイプとは思えなかったかしら。」

 

 「僕も驚いたよ。傷の治療をおこなってくれたのは君だったのか。

  感謝する。 ありがとう。」

 

 「ふん。感謝するかしら。」

 

 「ここは僕が寝ていた客室だったと思うんだけどどうだろうか?」

 

とりあえず、ここで僕は気になっていたことを聞いておいた。

また未知の能力かと思うと、とても気になる。

 

 「ふん、いきなりベティーの扉渡りを破ってきたのは驚いたかしら。」

 

扉渡りという単語と部屋がかわっていることから僕はこう推測した。

 

 「扉渡りという言葉と部屋がかわっていることから察するに、この空間と屋敷をつなげているのかな?」

 

そういうと、ベティーさんはしばらく固まった。

 

 「まさか、仕掛けまで見破られるのは感心したかしら。」

 

素直に感心してくれたみたいだ。僕はここで本題に入った。

 

 「ところで、お願いがあるんあけど、この部屋の本を読ませてもらえないかな?

  僕は気づいたら森の中にいてね、この世界のことを知りたいんだ。」

 

文字は読めない可能性が高いが、何言語も習得している僕なら解読も時間はかかるができるだろう。

僕はベティーという少女と数秒間に見つめ合った。

 

 

 「はぁ、どうしてベティーがお前に本を貸さなきゃいけないのかしら。

  ベティーに貸す理由はないかしら。」

 

 「そこをどうにか頼む。

  今度僕も君のお願いを聞くからさあ。」

 

再び僕とベティーさんの視線でのにらみ合いがはじまった。

 

 「はぁ、しょうがないかしら。

  とりあえず、貸し一つとして数えておくかしら。」

 

 

 

どうやらOKなようだ。安心した。

 

 「ありがとう。感謝する。最後のお願いなんだけど1ページだけ、朗読してくれないかな?」

 

 「もう断ってもあきらめないってとこかしら。1ページだけそれ以上はやんないかしら。」

 

 「助かる」

 

僕には瞬間記憶の能力がある。それによってベティーさんからきいたことをもとに解読をはじめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベアトリスside

 

ベティーは今本を読んでいる女々しい男を観察しているのかしら。

急に、入ってきて失礼な奴とおもったけど、本が好きなことには好感がもてるかしら。

扉渡りをいきなりやぶってきたことは不快だったかしら。

この男がいっていた気づいたら森の中にいたというのは本当かしら?

 

あのメイドの姉妹から聞いた話だとこいつは魔獣を何十体も倒したらしい。

これは驚いたかしら。治療をするかは、迷ったが、にーちゃにも頼まれたらしょうがないかしら。

回復の速度が異様に速かったことからも、こいつは魔法の適正があるかしら。

扉渡りの能力をあててきたのは、感心したかしら。

 

 

 

でも、こいつは母様がいっていた「その人」では、ないかしら。

彼はおそらく「役目」を知らない。

預言書にも何も記されていなかった。

 

本を見せたのは間違いだったかしら。

 

そうも思い、再び本を読み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

道化との接触

あれから読書を続けて、かなりの時間がかかったが、本の解読に成功した。

割と簡単にできると思って舐めてたけど、大変だった。

喋る言語が同じで助かった。そうじゃなきゃいろいろつんでたね。

 

 

 

 

さて、わかったことだけど、この国はルグニカ王国というらしい。魔法があるのもいいね。

嫉妬の魔女とか魔女教とか厄介なものもいるみたいだね。

問題はこの、嫉妬の魔女が銀髪のハーフエルフだということ。

ここでもう一度いうが、僕の容姿は長い銀髪で、顔が中性的なことである。

ハーフエルフではないから、大丈夫だとは思うが、差別の対象になるかもしれない。

髪は切っておこう。

 

 

 

それよりも気になるのはこの嫉妬の魔女を封印した存在達のことだ。

剣聖と神龍と大賢人だ。

暗殺者たるもの、最低限の正面戦闘の技術は必要だし、今代の剣聖にも一度あってみたいね。

最も、会えるかどうかすら怪しい。

神龍だが、数百年前のルグニカ国王が盟約を交わしたため、親龍王国ともよばれているらしい。

神龍はぶっちゃけそこまで興味がない。

大賢人

これだ。僕が最も気になるのは。いかにも知識がありそうだ。

大賢人なら多くのことを知っているだろう。

 

 

 

うん。色んなことがわかったけど、そろそろ、この館の主と話しがしておきたいかな。

 

 「ベティーさん、ここの主とはどこで会えるかな?」

 

 「もうすぐ、朝食だから、その時かしら。」

 

どうやら、朝だったようだ。全く気付かなかった。僕にも朝食を分けてくれるとありがたいな。

 

 「そういえば、ベティーさんは僕を治療してくれたみたいだけど、僕はどのぐらい寝ていたのかな?」

 

 「だいたい、お前が本を読んでいた時間と同じくらいかしら。実際結構な傷をおっていたから、このくらいで回復したのは驚いたのかしら。

  お前には、魔法の適正があるかしら。」

 

おっと、これは嬉しいことが聞けたね。魔法の適正があるのはありがたいね。

 

 「魔法の適正があるっていうのはとても嬉しいね。

  しかし、いつまでもお前よびはひどいなー。僕にもちゃんと、ノアっていう名前があるんだけどな。」

 

 「ふん、ノアがいつまでも名乗らなかったのが悪いかしら。」

 

そういえば、そうだった。でも、初対面の相手におまえ呼びはひどくないか?

 

 「ベティーというのは愛称だよね?そちらの名前は?」

 

 「ベアトリスかしら。」

 

 「ベアトリスさんだね。よろしく。」

 

初対面でやることを今やっているような気がするが、まあ気にしないでおこう。

そろそろ、お暇しておこうか。

 

 「ベアトリスさん。とりあえず、一旦僕が寝ていた客室にもどっておきたいんだけど、

  どうすればいいかな?」

 

 「ノアがここから戻って、また扉を開いたら客室に戻ってるかしら。」

 

 「扉渡りっていうのはとても、便利なものだね。では、じゃあね。」

 

 「さっさといくかしら。」

 

そういって、退室して、再び入室する。

驚いたことに、再び僕の私物もおいてある、客室だった。

やることもないし、詳しく私物の確認だけしておこうかな。

 

 

 

 

 

結果から言うと、やはりなくなっていたのは刃物と銃だけだった。

まあ、当たり前だろうね。とりあえず服は無事だったみたいだ。着慣れている物だしこれに着替えた。

問題はこれからだ。僕はあの森の動物をたくさん殺した。もし奴らが害獣ならいいんだが、そうでなければヤバそうだね。

まあ、わざわざ治療もしてくれたし、その可能性は低そうだ。

万が一のためにも常に逃走できるようにしておこう。もっとも魔法を使われたらヤバいけどね。

 

 

 

そして、一番いいのがここの屋敷の使用人になることだろうか。

もし、奴らが害獣なら褒美として容認してくれるかもしれない。もっとも、警戒はされるけどね。

それと、僕は潜入暗殺もよくやっていたので、たいていのことは何でもできる。

まあ、森にいきなりいたっていっても信じてくれはしないと思っているが、スマホと僕の日記は文字が違うわけだし、役にたつかもしれない。

 

 

           ガチャ

 

 

そう思いにふけっていると誰かが入ってきたようだ。警戒をしながらドアの方を見つめる。

 

 

 

 

入ってきたのは、瓜二つの顔をした双子の少女たちだった。

髪の分け目を変えて、それぞれ片方ずつ目を隠していることと髪の色が桃色と青色で違うことが見分ける特徴だろうか。

そして、思ったのは、この屋敷の人物なんか全員顔が整ってないか?

そして、一番ヤバいのは少女たちが着ているメイド服だ。

あれには、僕はかなりのトラウマがあるがその話はまた、別の機会にしておこう。

 

 

そうして、僕が思いにふけっていると、

 

 「大変ですよ、今お客様の頭の中で卑猥な辱めを受けています。姉さまが」

 「大変だわ、今お客様の頭の中で恥辱の限りを受けているのよ。レムが。」

 

うん。これはあれだね。

 

 「何か、この屋敷の方々口が悪くないか?それと僕はそんな卑猥な想像をしてないからね。

  ただ、ちょっとメイド服にトラウマがあっただけだから。

  それと今僕がどんな状況にあるか教えてもらっていいかな?」

 

この返答次第では逃走をする必要がでてくるかもしれない。

 

 「お客様は当主ロズワール様がお帰りの途中に森の出口で倒れていたそうよ。」

 

と桃色の少女が言った。

 

 「お客様は、森にいた魔獣ウルガルムをナイフで戦闘をしたそうですが、当主ロズワール様は興味をもっておられます。」

 

と青髪の少女が言った。

 

とりあえずは助かった。魔獣ということだからとりあえず、安心だ。

当主が興味を持っているというのだから、すぐに殺されはしないだろう。

 

 「できれば、そのロズワール様とお会いしたいんだけど、どうだろうか。」

 

 「ロズワール様は朝食の時にお話しをするそうよ。お客様も招いて。」

 

 「君たちが来たということは準備ができているのかな?」

 

 「はい。お客様を食堂に案内するようにいわれています。」

 

 

 

そういわれて、連れていかれた食堂はなかなかに立派なものだった。

僕が感心していると見知った顔がやってきた。

 

 「また会ったかしら。貸しのこと忘れてないかしら。」

 

 「もちろんですよ。ベアトリスさん。」

 

と会話をしていると双子の片方が驚いたようにたずねてきた。

 

 「お客様、ベアトリス様の扉渡りをお破りになったのですか?」

 

 「うん。偶然だと思うけどね。」

 

 「あれは普通にむかついたかしら。」

 

 「へぇ、君ベティーの扉渡りを破ったんだ。すごいじゃん。」

 

新しい声が聞こえた。入口の方を見るとそこにいたのは、銀髪の少女と掌サイズの小さな猫?だった。

僕の耳がバグっていなければ、今のは猫?の方がしゃべっていたような気がしたが。

 

 「あ、もしかして君精霊をみるのは初めてかな?僕はパックっていうんだ。

  隣のリアの保護者さ。」

 

とパックさんがつぶやく。驚いた精霊というものまでいるとは、じゃあ隣の少女の契約者だったりするのかな?

とか考えていたところで、銀髪の少女が言った。

 

 「私の名前はエミリア。あなたがロズワールが言っていた森で倒れていた人?」

 

 「どうも、はじめまして。パックさん、エミリアさん。僕の名前はキリサキ ノア といいます。

  たぶん、それは僕のことだと思います。」

 

とりあえず自己紹介を行う。さっきも言ったが、屋敷の人物顔が全員整ってないか?

 

 「うん、ノアねよろしく。君割と早く回復したね。

  あのケガだと丸1日くらい寝てると思ったんだけど。

  君もしかしたら魔法の適正があるかもね。」

 

 「ベティーもそれは同感かしら。」

 

おっと二人の称賛だこれはうれしいことだ。

 

 「それは嬉しいです。ところでエミリアさんとパックさんは契約でもしてるんですか?

  保護者っていってましたし。結構すごい精霊だったりします?」

 

 「おー、あたり。僕はリアと契約をしているよ。」

 

お、当たっていたみたいだ。僕も精霊と契約してみたい。

 

 「ところで、疑問何だけど、ノアはなんで男装をしているの?」

 

エミリアさんが爆弾を落としていった。たぶん、この人は天然だな。

結構間違えられるが、やはりショックではある。

 

 「はぁ、あの、エミリアさん、僕は男性なんですけども。」

 

 「え、ごめんなさい。

  そのきれいな顔立ちだから間違えちゃった。」

 

 「大丈夫です。よく間違えられるので大丈夫です。」

 

と話しをしていると、陽気な声が聞こえた。

 

 「やぁ、無事に当家でくつろいでいるようでなーぁによりだとも。

  私がこの屋敷の当主ロズワール・L・メイザースだぁーよ。」

 

当主様の登場みたいだね。見た目は完全にピエロだけど。

道化ってやつかな?とりあえず、挨拶だろう。

 

 「どうも、ロズワールさん。僕の名はキリサキ ノアです。

  この度は負傷していた僕を助けていただきありがとうございます。」

 

 「まあまぁ、詳しい話は食事をしながら聞こうじゃぁないかー。」

 

僕もちょうど、お腹が減っていた。ありがたくいたただくとしよう。

ロズワールさんが全員に着席を促し、食事が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

道化との交渉

「うん、おいしいですね。」

 

それが僕の率直な感想だった。まあ、僕もこれ以上のものはつくれるだろう。

前には、シェフとして潜入暗殺したこともあったからね。料理は得意だよ。

 

 「でしょでしょう。これでも、レムの料理はちょっとものだぁよ。」

 

自慢するロズワールさんに対して、僕はレムと呼ばれた少女を見た。

双子のうち青髪の方だ。

 

 「この料理は、青髪の方のレムさんがつくったということですか?」

 

 「はい、お客様。当家の食卓はレムが預かっています。

  姉様はあまり得意ではないので。」

 

 「もしかして、レムさんのお姉様の方は他の分野が得意なかんじですか?」

 

 「はい、そうです。姉様は掃除、洗濯を家事の中では得意としています。」

 

これは、あれかな姉妹で得意分野が違うかんじかな。助け合ってるかんじがしていいね。

 

 「双子で得意分野が違うってかんじですか?

  レムさんは掃除と洗濯は苦手なんですか?」

 

 「いえ、レムは家事全般が得意です。

  掃除、洗濯もです。姉様より。」

 

思わず黙ってしまったよ。お姉様は妹の劣化じゃないか。

妹の発言を聞いても、姉様は全くどうじてないな。

 

 「まぁ。ラムとレムは個性が強いから、初対面には受けが悪いからぁーね。」

 

いや、僕視点だと、あなたもだいぶ個性が強いと思いますよ、ロズワールさん。

桃髪の方がラムさんだろう。

まあ、気になったことはあるが。

 

 「こんなに広い屋敷で、使用人は今のところ二人しか見ていません。

  二人だけで、まわしているんですか?」

 

 「あはぁ、今はそうだねぇ。君はルグニカ王国のメイザース辺境伯の邸宅まで、

  来てそんなことを聞くなんて、不思議だぁね。」

 

マジか。この屋敷あのふたりだけで、回ってんのか。

辺境伯とはまたたいそうな身分みたいだ。

 

 「すみません。ルグニカ王国のことはベアトリスさんから本を借りて、知っています。

  しかし、最近のことはわからいので。」

 

ロズワールさんが一瞬だけ、驚いた顔をしたのを僕は見逃さなかった。

 

 「いやぁ、ベアトリスが協力するなんてねぇ。珍しいこともあるもんだね。

  そして、君が知りたい現在の状況はルグニカの王がいないことだね。」

 

王がいない?普通王が死んだら、その親族が後を継ぐはずだが、何らかな理由があってかなわなかったとみるべきか。

 

 「穏やかな状況ではなさそうですね。しかし、そのことと何か関係がおありですか?」

 

そこで、エミリアさんが話にはいってきた。

 

 「あのね、ノアもうすぐ、王選が始まるの。」

 

 「そうだぁーね。エミリア様のいうとおり。王が不在などあってはならない。」

 

違和感を感じた。ロズワールさんはさきほど、ベアトリスさんのことは呼び捨てだったが、エミリアさんのことは様付けだ。

これが意味するということは、エミリアさんはロズワールさんにとって目上の人間であること。ロズワールさんは辺境伯という立場であるのに。

さきほどの王選の話も考慮すると、こう推測できる。

 

 「もしかして、エミリア様は王選に参加するということですか?」

 

 「君はなかなかに聡明だぁね。その通りだと。」

 

おっと。これはまずいかな。僕の立場をもう一度説明すると、ロズワール辺境伯の邸宅の森付近の入り口に倒れていた。

そして、そのロズワールさんはおそらくエミリアさんの後ろ盾。

王選にでる人間を妨害しにきた他の候補者からの刺客とみられかねない。

ここからが本番のようだね。

 

 「そうですね。王選に出るエミリアさんがいるこの状況で僕がきた。

  他の候補者からの刺客とか思わなかったんですか?」

 

 「そうだぁね。君はいまとてもあやしい人間だーね。

  しかし、それだったら他にうまい方法があったとおもうよ。

  森である地点から、魔獣の死体が転がっていた。

  魔獣を使役するのはとても難しい。魔法を使われた痕跡もなかった。

  だからぁね。君が魔法をつかわずに魔獣を倒したと結論づけた。

  もし、その戦闘が意図的だったとしても君はかなりのリスクを負った。

  発見されるかどうかも怪しい場所だったし、治療される保証もない。

  君は聡明だからぁね。そんな穴だらけの計画はしないと今確信がもてたよ。」

 

 「僕が、刺客だったらどうするおつもりだったんですか。」

 

 「まぁ、私も宮廷魔術師だからね。そう簡単におくれはとらないからぁねえ。」

 

なるほど、ここまでは相手の思惑通りか。仮にここで、僕が刺客だったなら殺されていたようだ。

まあ、武器も取られてるし、逆らう気はないが。

 

 「それで、ロズワールさんは僕が刺客ではなかったとして、何のメリットがあって、僕をここに今もとどめているんですか?」

 

 「そぉだねえ。普通の人間なら魔獣をいくら武具があるかといって、魔獣には勝てない。

  しかし、君はそれをやってのけた。それを一匹だけではなく、何十匹もね。君には興味がある。

  私が調べたところでは、君は魔法が使えないようだが、才能はあるねぇ。

  君の荷物も見させてもらったけどね、君が持っていたのは、武具と何かを書き記した紙と今君のポケットにある四角いものだね。

  後者の者はおいといて、君は金品をもっていなかった。違うかぁな?」

 

四角いものはおそらくスマホだろう。いちよう今は電源を切っている。

そして、金がないこともおそらくむこうに知られた。

 

 「ええ、まあそうですね。」

 

 「君は今、生活できる資金がない。そこで君に提案があるんだがどぉだろうね?」

 

提案?何だろうか。もしかして、スマホはこの世界にはないだろうし、買取でも行いたいのか?

いや、それなら、勝手に奪っておけばどうにでもなる。そんなことを考えていると、

 

 「君はここで、働いてみるきはないかなぁ?」

 

どうやら、僕が一番ベストなことをむこうから持ち掛けられたようだ。おそらく、監視の意味もあるだろう。

僕はここで、条件を吹っ掛けに行く。

 

 「とても、ありがたい提案ですが、一つだけ、お願いしたいことがあります。」

 

 「なぁにかな?」

 

ロズワールさんは宮廷魔術師といっていた。

ならば、僕がここで、求めるのは

 

 「僕に、魔法を教えていただけませんか?

  宮廷魔術師のあなたなら、たくさんの知識をお持ちのはずだ。」

 

三人から魔法の才能があるといわれたら、それを放っておく気はないね。

しかも、一人は精霊、一人は宮廷魔導士、もう一人もかなりの魔法の使い手みたいだし。

 

 「そうだねぇ、何が王選であるかわからないし、鍛えておこうかなぁ。

  ただし、時間があるときだけだけどねぇ。」

 

 「ありがとうございます。これからよろしくお願いします。」

 

よし、これで魔法に関しては、いつかできるようになるだろう。

 

 「君を歓迎しようじゃあないかぁ、ノア君。」

 

 

 

こうして、僕はロズワール邸で働くことになった。




ノアが来たのはスバルの来る数ヶ月ぐらい前です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

よみがえるトラウマと魔法トーク

 「改めまして、当家の使用人頭を務めさせていただいております、レムです。」

 

 「改めて、ロズワール様のお屋敷で平使用人として、仕事をしている、ラムよ。」

 

まあ、ラムさんの口調がかなり砕けているが、聞かなかったことにしておこう。

現在僕は、これからの同僚(?)と話しをしていた。

 

 「ところで、ロズワールさん。僕はこの二人の雑用ってかんじですか?」

 

 「とりあえずは、そうだねぇ。何か不満かな?」

 

 「いえ、不満はありません。

  これでも、僕は料理が得意なんで、期待しててください。」

 

 「あはぁ、そうだね。楽しみにしておくよ。」

 

そうして、僕はエミリアさん、パックさん、ベアトリスさんに挨拶をしたあと、教育係に任命されたラムさんに連れていかれた。

教育係なんて、僕には不要だけど、屋敷を案内してもらわないとね。

だいだいのことは一回見れば、その技術は盗めるからね。

 

 「そういえば、ラムさん。僕は服を変えておきたいんだけど、何か執事服はあるかな。

  さすがに、これが慣れているとはいえ、ちゃんとした服装の方がよいでしょう?」

 

 「そうね。服装は大事だわ。」

 

と、服装を変えることに賛成はしてくれたみたいだ。

僕は残念ながら、身長が高くないから、それが心配だが。

 

 「その前に私室を選んでおきなさい。」

 

そういわれて、僕を部屋を選ぶことにした。

階段に近い方がいいと思い、適当にドアを開けると、

 

 

     パックさんと戯れるベアトリスさんを発見した。

 

 

 

 

急いで、何もみたかったことにして、閉じて、その隣の部屋を使わせてもらうことにした。

その次にいった衣裳部屋で地獄を見るとは、知らずに。

 

 

 

衣裳部屋に来たが、僕の心配事が見事、的中してしまったようだ。

ラムさんが渡してくるサイズはどれも、僕には大きいものだった。

 

 「ラムさん、ここにある執事服は僕には大きすぎます。僕の着れるものはここにはありません。」

 

 「どうやら、その通りみたいね、ノア」

 

と、ラムさんは考え込む仕草をしたあと、気味の悪い笑顔を僕に浮かべた。

なんか、非常に嫌な予感がした。残念なことに僕の勘はよく当たる。

そのラムさんは、僕にこういった。

 

 「ノアってラムより少し身長が高いぐらいよね?」

 

 「ええ、そうですね。」

 

 「ノアは女顔よね?」

 

 「まあ、認めたくはないですけど、よく間違えられるのでその認識であってると思いますよ。」

 

 「なら、これを着ても問題はないわ。」

 

そういって、僕に渡してきたのは、僕の最大のトラウマである、

 

 

 

 

 

                             メイド服

 

 

だった。ラムさんがこれを着ろといってきたのは僕の幻覚だろうと、放心していると、

 

 「拒否権はないわ。新しい服ができるまでの辛抱よ。もちろん、今着ている服も駄目よ。

  ノアから言ってきたのは忘れていないわよ。」

 

言質もとられた。終わった。そう、悲観していると、試着室にぶち込まれた。

 

 「着ないという選択肢はないわよ。不意にお客様がくるかもしれないわ。」

 

こんな、王選前の緊張状態にくるわけないだろと思った。もう何も考えないことにしよう。

そうして、僕はトラウマと向き合うはめになった。

 

着替え終わったあと、ラムさんからは、こういわれた。

 

 「なかなか似合ってるじゃない。そうよね、レム?」

 

 「はい、姉様。ノア君は顔立ちが綺麗なので、とてもお似合いです。」

 

どこからでてきたのか、レムさんからも称賛をおくられたが、一ミリもうれしくない。

 

 「ノア君、採寸をしなければいけませんから、ついてきてください。」

 

 「いいえ、レムさん。道具さえ、貸していただければ、僕一人でなんとかなります。

  こう見えても、僕は家事は得意なので。」

 

 「驚きました。期待しています。」

 

こうして、僕の使用人生活は、最悪から始まった。

 

 

後の話ではあるが、このときほど彼の目が死んでいたことはなかったそうだ。

 

 

 

 

その後は、ラムさんの後を追い、ひたすら雑用をしていた。

このくらいなら、僕からしたら問題はない。

二人とも、僕の料理の手際の良さには驚いていた。

なお、昼食時にロズワールさんに服のことで傷をおわされた。他の方々も称賛していたが、全くうれしくない。

 

そんなことを考えながら僕は浴槽につかっていた。

そこに、道化は現れた。風呂場だからメイクを落としているのだろう。

 

 「やぁ、ノア君ご一緒してもいいかなぁ?」

 

 「はい、ロズワールさんの所有物なので、僕に拒否権はないかと。」

 

 「うーん。もうちょっと面白い回答を期待していたんだけどねぇ。

  あ、まだ服のことをねにもっているのかぁな?」

 

ぐさっ、僕の心に致命的なダメージが入りましたよ。

 

 「傷をえぐらないでください、ロズワールさん。

  ところで、僕の料理はどうでしたか?

  朝のメニューを参考につくらせて、もらいましたが。」

 

 「そうだねぇ。君はかなりの料理上手だね。

  レムと同じもしくはそれ以上ってとこかなぁ。」

 

まあ、これは当然の評価ですね。本業ではないですが、あらゆる職業はできるようにしてるので。

 

 「レムとラムとも仲良くできているようでなぁによりだ。

  レムは君の料理に感心していたようだぁーよ。」

 

 「それは、なによりです。

  ところで、ロズワールさん。僕の魔法の属性を調べていただけませんか?」

 

ベアトリスさんからの本によると、火、水、風、土の属性があるらしい。

他にも、陰と陽っていうやつもあるらしいが、滅多にいないらしい。

 

 「そうだねぇ。調べてみようか」

 

と言って、ロズワールさんは手を僕の額にあてた。

なるほど、宮廷魔導士にもなれば、少し触れるだけで、属性がわかるのか。

 

 「うーん。さすがだね。

  君は火、水、風、土そして、陰までの属性をもっているね。

  その中でも、風、水、陰の順番で適応が高く、この3つはもしかしたら、私にも引けを劣らないぐらい

  強いかもしれないねぇ。」

 

嬉しい評価だ。五属性のマナに適応があるうえで、風、水、陰に関しては宮廷魔導士にも引けをとらないとは。

 

 「嬉しい評価です。魔法の鍛錬を楽しみにしておきます。」

 

 「君は、鍛えがいがありそうでおもしろそうだねぇ。

  君にひとつ、お願いがあるんだけどいいかなぁ?」

 

お願い?何か頼み事があるなら、命令すればいいはずだが。

 

 「此度の王選、何があるかわからない。君は銀髪で、背もエミリア様とさほど変わらない。

  顔立ちは整っているし、赤眼も魔法をつかって変えればいい。

  つまり、影武者になってほしいのさぁ?」

 

なるほど。そういうことか。

 

 「なるほど、命の危険があるかもしれないからですか?

  だから、命令じゃなくてお願いなんですね?」

 

 「そのとぉりだーね。まあ、影武者といっても些細なことだけどね。

  対価も用意するよ?」

 

 「わかりました。提案はのみます。

  対価は保留でお願いします。」

 

魔法を鍛えれば、そのあたりは何とかなるはず。変装に関しても問題がない。

何よりも、面白そうだ。

 

 「大げさにいっただけで、そこまで命の危険については心配しなくていいよ。

  私がノア君をきっちり鍛えるからぁね。」

 

割と有意義であった風呂だった。

 

 

 

 

 

 




ノアのトラウマは、あくまでも女装というわけではなく、メイド服のみです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

暗殺者と青鬼

僕は、今部屋にいる。

風呂でのロズワールさんとの話が終わったあと、レムさんから裁縫道具を借りてきたところだ。

とりあえず、急いでこれを僕のサイズに合わせないと、明日もあれを着る羽目になる。

 

 

あれから、結構な時間がたった。明確な目的意識があると集中できるね。

とりあえず、サイズを確かめるためにもきてみるとしよう。

 

 

着替え終わって、感触なども確かめているとレムさんが部屋に入ってきた。

 

 「こんばんは、ノア君。おや?、執事服しっかりと着こなしてますね。

  心配になって来てみましたが、不要のようですね。

  でも、レムは、メイド服の方が似合ってたと思いますよ?」

 

おっと?先制攻撃ですか?

結構僕の心にグサリとささりましたよ。

 

 「こんばんは、レムさん。うん、それは褒めているのかな?

  あまり、からかわないでくださいよ。」

 

 「ごめんなさい、ノア君。つい、からかってしまいました。

  ノア君はとても、家事がお上手でしたが、どうやってそんなにお上手に?」

 

レムさんは、クスクス笑いながらこちらに聞いてきた。

確かに、僕の家事能力は、使用人をやっていたことを含めても異常みたいだ。

僕は、一度みたらその技術を盗める。それも、グレードアップして。

 

 「そうだね。うーん。僕は前にも他の屋敷で使用人として、働いていたことがあったからね。

  幼い時から、やっていたからね。。」

 

 「そうなんですか?ノア君はどこの出身なんですか?」

 

ヤバい。困った質問きたぞ、おい。

ベアトリスさんから貸してもらった本から得た情報には、ルグニカ王国の地名は載っていたが、そこまで詳しく覚えてない。

とりあえず、そうだな。確か、大瀑布という場所は東の果てというところらしいから、そこでもいっておこう。

スマホも見せれば、最悪なんとかなるだろう。相手の警戒心があがってしまうかもしれないが。

 

 「東の果て。大瀑布の向こうかもしれないね。」

 

 「大瀑布ですか?確かにノア君の服装は、とても珍しいものようですし、

  ロズワール様もノア君の武器も珍しいものとおっしゃっていました。

  でも、大瀑布の向こうから来たなんて聞いたことありませんよ?」

 

 「まあ、実は僕もよくわからなくてね。気づいたらあの森の中だったんだ。

  そうだね、これを見てくれれば、わかるかもしれない。」

 

そういって、とりあえず僕はスマホの電源をつけてカメラのアプリを起動する。

 

 「それは?ノア君の荷物ですか。

  何につかう物なんですか?」

 

とりあえず、興味をもってもらえた。

 

 「レムさん、ちょっとこちらを向いてもらっていいかな?」

 

レムさんにこちらを向いてもらってレムさんを撮影する。

そして、レムさんにスマホの画面を見せる。

 

 「これは?  レムが映っています。

  どういう原理ですか?レムはこんなものはみたことがありませんよ?」

 

興味をもってもらえたみたいだ。警戒心もみるところ下がっている。

 

 

 「これは、僕の故郷のものなんだ。

  原理とかは説明すると朝になっちゃうからまた今度にしよう。」

 

 「はい、ノア君の故郷の話もしてくださいね。

  あと、森に気づいたらいたということも。」

 

 「はは、そうだね。では、おやすみ。レムさん。」

 

 「はい、おやすみなさい。ノア君。」

 

といってレムさんは彼女の部屋に戻っていった。

一時はどうなるかと思ったが、彼女の警戒心は結構とけてきたし、とりあえずは安心だろうか。

 

 

そうして、僕の異世界生活一日目は終わった。

僕は、日記をつける習慣があるので、今日のこともこの世界に持ち込めた黒い日記に僕の世界の言語で記入した。こうすれば、誰かに読まれる心配もないからね。

しばらくは、魔法の技術の習得を目標にしておこう。

 

 

この時の僕は、この黒い日記に僕の世界の言語で書いたことがその後の生活を変えるとは、思ってもいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レムside

 

 

 

今日、ロズワール様は屋敷に一人の中性的な顔立ちの子を連れてきました。

その人は、すごい傷がたくさんあってロズワール様によると魔獣との戦闘によるものだったそうです。

ロズワール様は、おそらくないとおっしゃっていましたが、他の刺客の可能性もありますし、レムは警戒しておくことにしました。

 

 

朝になり、レムは姉様とお客様の様子を確認しにいくことにしました。

ベアトリス様によれば、かなりのケガと聞いていましたから、回復していたのは驚きました。

 

 

お客様を食堂に案内したときにも以外なことがわかりました。

お客様ことノア君はどうやら、男性のようです。綺麗な顔立ちをしていたので女性かと思っていました。

そして、ノア君はベアトリス様の扉渡りを破ったようです。

レムがベアトリス様を探そうと思ったら、屋敷中の扉をあけなければなりません。

 

 「改めまして、当家の使用人頭を務めさせていただいております、レムです。」

 

ノア君も今日から同僚になりました。姉様の負担をできるだけ、軽くしてくれるといいのですが。

 

ノア君は執事服のサイズが合わなかったみたいです。

それにしても、ノア君のメイド服は似合っていました。彼はあれには苦い思いがあるみたいですが。

 

睡眠の前に、レムはノア君のところにいくことにしました。

ノア君の家事能力は、目を見張るものがありました。

しかも、彼は姉様に負担をかけないように、ほとんどノア君がおこなってくれいたみたいです。

料理の腕も、レムよりお上手でした。今度教えてもらいましょう。

 

 

 

ノア君の部屋から、出たあと彼がいっていたことを考えていました。

ノア君は、どうしてあそこにいたのかわからないといましたが、本当なのでしょうか?

ノア君の荷物もレムには全くみたことがないものでした。ノア君は、一日みていたところでは、刺客ではなさそうですが。

これからの、ノア君の話は楽しみにしています。

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ノアお姉ちゃんと姉様

突然の話ではあるが、僕は眠りが浅い。

動物の中にもそうやって警戒しているものもいるため、それと同じかんじだ。

だから、目の下に常にクマができてしまっている。

 

さすがに、一日で色んなことがあったからか、珍しく僕はぐっすりと寝たみたいだ。

そのせいで、レムさんの手を煩わせることになってしまった。反省はしておこう。

 

朝食の後片付けも終わり、本日の業務にうつろうとしたときに、レムさんに声をかけられた。

 

 「ノア君、今日は案内の意味も含めてレムとアーラム村に買い出しに行きます。」

 

ロズワールさんは、辺境伯という立場だから土地を保有しているはず。

おそらく、そのうちの一つだろう。

 

 「まだ、金銭価値がわからないので、そこらへんはお願いする形になりますが、荷物持ちくらいなら。」

 

 「はい。それではいきましょう。」

 

 

 

 

 

 

どうやら、村では僕のことを認知しているようだ。

ロズワールさんがこのあたりは、上手く説明したのだろう。

 

 

 

そして、脳内でそんなことを語っている僕は、子供たちのおもちゃにされていた。

しかも、お姉ちゃん呼びで。執事服を着ているにも関わらず。

もはや、いちいち否定するのも面倒くさいと思い、放置することにした。

 

 「お姉ちゃん、なんで執事さんの服をきているの?」

 

 「ねえ、お姉ちゃん、何かして遊んでよー」

 

など、いろんな声が飛んできたため、適当に相槌だけうって僕はしばらく放心していた。

僕は、子供の相手は基本的に苦手だ。

たいていの人物は、よく観察すれば、その人間性なども見えてくる。

しかし、純真無垢な子供相手ではそうはいかないということだ。

 

 

 

 「すごい疲れた顔をしていますが、大丈夫ですか、ノア君?」

 

あれからレムさんが帰ってくるまで僕は子供たちのおもちゃにされ続けていた。

 

 「まあ、大丈夫です。ただ、少し子供は僕には苦手でして。」

 

 「その割には、子供たちにとてもなつかれていたみたいですね。ノアお姉様。」

 

 「レムさん、見ていたなら助けてくださいよ。」

 

 「すみません、見てて面白かったのでつい。」

 

レムさんは、クスクス笑いながらそういった。案外sだったりするのだろうか。

 

 「そういえば、ノア君。ロズワール様より伝言を預かっております。

  帰ったら魔法の訓練だそうです。」

 

体力がすべて回復したね。今ので。新しいことを知ることは、僕にとっての何よりの癒しである。

 

 「お、それは嬉しいことを聞きました。とりあえず、体力は回復しましたよ。」

 

 「ノア君は、魔法の才能があるそうですね。5属性のマナに適応がある人間なんて、そうそういませんよ?」

 

 「僕もそんなにあるとは思っていなかったけどね。」

 

そんな会話をしながら、僕らは屋敷に戻った。

 

 

 

 

 

 

ロズワールさんからの魔法講義が始まった。

とりあえず、僕が一番得意らしい風魔法から習得するらしい。

 

 「とりあぇず、私が一回風魔法を放って、やり方も教えるから見ていてくれたまあぇ。」

 

ロズワールさんが、あらかじめ用意した的に魔法を打ち込む。

かなりの威力だ。これ、本当に初歩的な魔法なのか?

とりあえず、ロズワールさんのやり方を見て僕も魔法を打ち込む。

 

ドーン、と派手な音がして、さきほどのロズワールさんよりも圧倒的な威力がでる。

 

 「おー、やるねぇ。ノア君、君たぶん風魔法に関してはおそらく私よりも上だねぇ。

  私はこれでも、国で一番の魔術だからねぇ。

  君は、誇っていいと思うよ。」

 

おっと、かなりの高評価みたいだ。高い戦闘能力はもっていても損はしないからね。

 

 「お褒めのお言葉ありがとうございます。

  それとさっきの魔法は本当に初歩的なものですか?

  あれの威力だったら、人が死んでもおかしくないですよ?」

 

 「おー、そこまで気づくとはさすが。

  あれは、中級魔法ってところだね。

  君の実力を見るつもりだったが、風魔法に関してはいずれ立場が逆転しそうだぁね。

  まあ、君の魔力も無限に近いし、それによって威力があがったからねぇ。

  風魔法は、その威力の上昇が高い傾向にあるみたいだねぇ。」

 

といわれて、いくつか口頭で説明されて今日の訓練は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

ロズワールさんとの訓練が終わった僕は、休憩時間を与えられていたため、庭で休憩していた。

魔法を僕はある程度使えるようになった。後で、自分でも練習がしたいから、いい場所がないか聞いてみることにしよう。

 

 

さて、これからのことも考えておこう。

しばらくは、ロズワールさんの屋敷で働くことに反論はない。そのあとをどうするかだ。

王選ともなれば、相当な期間があるだろう。その間で、必要な技術はすべて覚える。

やはり、気になるとしたら、剣聖や大賢者だが、どうだろうか。

 

 

と、思案していると何かが頭の中に飛び込んできた。

物理的な何かではない。

おかしい、視界が二つある。

一つは、僕が見ている光景。もうひとつは、僕の姿が見える。

僕がとっさに、後ろを向くとラムさんが驚いた顔をして、こちらを見ていた。

 

 「何やってんですか?急に視界をつなげたのは、ラムさんですよね?」

 

 「ハッ、ラムはただ森の監視をしようとして、森の生物と視界を共有しようとしたら、

  ノアと波長があって、その魔力が強すぎて、視界がこちらにうつっただけよ。」

 

へー。視界の共有とは、また便利なものだね。

波長ってそう簡単にあうものなのかな?

 

 「いや、僕はただ、怠惰をむさぼっていただけですよ。

  そう簡単に、波長って合うものなんですか?」

 

 「そうそう合わないから、驚いているのよ。

  ノアは、強力な風魔法の使い手だとロズワール様がおっしゃってたから、それが原因でしょうね。

  ラムも風魔法の使い手だから。」

 

なるほどね。波長が合うのも条件があるのか。

 

 「そういえば、ラムさんはどうして、ここに?

  視界の共有ができるなら、屋敷から森の監視をすればいいし、僕と視界がつながったことも別にあとで言えばいいはずです。

  何か伝えにきたのでしょう?」

 

ラムさんは、考え込むような仕草をしたあと、僕の隣に座って、語り始めた。

 

 

 

話を要約すると、ラムさんとレムさんは鬼族だ。

本来は、忌子として殺されるそうだったが、ラムさんが優秀であったため、回避した。

そして、詳しくは教えてくれなかったが、ある事故でラムさんの角が折れてしまったらしい。

それで、レムさんは、そのことは彼女の負い目になっている。

 

 「だから、あの子は、過去にとらわれているわ。

  そして、レムは自分自身をラムの劣化品だと、考えている。

  そのレムが珍しく、人に心を開きかけている。

  だから、よくしてあげてほしいってことよ。」

 

僕には、幼い時からいくつかの感情が欠落している。

人前でのコミュニケーションも、他者を模倣しているにすぎない。

だから、今の話を聞かされても、僕には何も思えなかったし、何を言えばいいかもわからなかった。

ただ、僕はこう返した。

 

 「ええ、努力します。」

 

ここで、双子と仲良くなるのは、僕にとっては信頼というメリットを勝ち取れる。

屋敷の人物からも評価は上がるはず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでも、背後を狙うなら容赦はしない。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

襲撃前夜

あらゆる偉業の出発点は、目的を的確にすることから。

 

 

この言葉は、W・クレメント・ストーンがいったものである。

僕もそれにならって、目標を明確に決める。

 

今もっとも、僕が知りたいのは、大賢人についてである。

よって僕の現在の目標は大賢人にあって、彼または彼女が持っている知識を手に入れること。

もしかしたら、僕がここにとばされた理由もわかるかもしれない。

 

とりあえず、情報収集から始めようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は、現在調理場で、軽いお菓子をつくっていた。

今の時間は、元の世界でいうところのだいたい3時、つまり「茶会」などをするにはもってこいの時間だ。

なぜ、僕が今、情報収集をするといったすぐから、お菓子作りをしているのか。

それには、二つ理由がある。

一つは、レムさんが僕の料理の腕に感心して、教えてほしいと頼まれたこと、もうひとつはベアトリスさんに、貸しを返すことでもある。

前者の方は、屋敷の人物と友好的にするといったことができるし、ラムさんに頼まれたことだしね。

後者は、賭けの要素が近い。

 

 

数日間、ロズワール邸で働いていてわかったことがある。

僕は、ベアトリスさんの胃袋をつかむことに成功したみたいだ。

レムさんからの話によると、もともとベアトリスさんは自主的に部屋から出てくることは、珍しいらしい。

僕が働いてからか、朝昼晩、毎日食堂に顔を表すようになった。

本人曰く

 

    「このくらいできて当然かしら」

             

らしい。

前に本を借りたときのお礼として、とりあえずこれを出してみるというだけだ。

反応次第によっては、新たな本を借りられるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「それで、何のようかしら?」

 

入った瞬間から、見た目とは裏腹に棘がある言葉だな。

僕がこうも簡単に扉渡りを破れるのは、陰魔法の適正もあったからとか。

 

 「いや、何もこの前のお礼にお菓子を作ってきてみたんだ。

  お口にあうかどうかはわからないけどね。」

 

はい、僕は今ベアトリスさんの目が一瞬輝いたのを逃しませんでしたよ。

 

 「テーブルはあるかな?さすがに本が汚れるのは嫌でしょうし。」

 

 「こっちにあるかしら。ついてくるのよ。」

 

こうして、見るとやはり広い。かなりの数がある。

そんなことを考えていると、テーブルに通される。

 

 「まあ、感想も聞いておきたいんで、どうぞ。」

 

 「とりあえず、一旦いただいておくかしら。」

 

ベアトリスさんは、お貸しを手に取って、一口食べると、すかさず残りの物にも手を伸ばしている。

もう、これは確定でいいんじゃあないかな。

 

 「満足してくれたみたいで何よりです。」

 

 「満足はしてないけど、とりあえず貸しはこれで帳消しでいいかしら。

  あの本も大したものではなかったのよ。」

 

何が満足してないですか。

さっきからめちゃくちゃ食べてるじゃあないですか。

よし、交渉開始といこうじゃないか。

 

 「そうですね、ところでまたお願いがあるんですが?」

 

 「何かしら、また本を貸せってところかしら。」

 

こちらの願いもスケスケだったか。

しかたがない、ここで大賢人たぐいの本を要求しようと思っていたけど、レベルをさげよう。

 

 「たいしたことじゃないですよ。僕が数日前に喧嘩した魔獣のことが知りたいだけですよ。

  そのかわりと、いってはなんですが、こうしてまた作りますよ。」

 

ベアトリスさんは、少し考える素振りをしたあと返答した。

 

 「まあ、それぐらいなら構わないかしら。」

 

と言って許可を出してくれた。

魔獣の研究から、始めて次第に重要な情報をねだる予定である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、とりあえずは読み終わった。

魔獣、それは魔女が生み出したとされる、人に仇なす邪悪な獣というのが一般的解釈だ。

一番驚いたのは、その角を折れば、従えることができるらしい。

もっとも、三大魔獣に関しては難しいかもしれない。

今度、あの森で魔獣をつかまえてみようかな。

ナイフだけで、あそこまで応戦できたし、魔術も身に着けた。

 

 「こんばんは、ノア君。」

 

そういうことを考えているとレムさんが入ってきた。

 

 「こんばんは、レムさん。ベアトリスさんに本を借りることに成功したんだよ。」

 

ここ数日間、レムさんとは夜に話をしている。

内容は、僕の故郷の話と家事についてである。

まあ、ラムさんの頼みの一環でもあるし、友好的に接するのは悪くはない。

 

 「そういえば、ノア君は、すまーとふぉんでしたか、あれを見る限る使っている文字が違うように思えるのですが、読めるんですか?」

 

 「まあ、ある程度はね。」

 

ウソである。解読したなんていって、下手に警戒されるのはアレだからね。

ちなみに、スマホは英語、日記は日本語を使用している。

そうじゃないと、元の世界に戻った時忘れたなんてことがあったら大変だからね。

そのあと、数十分ほど話をした後レムさんは、帰っていった。

 

 

明日は、魔獣研究でもしようかな。

使える時間は夜しかないし、レムさんが来るまでに片付けるとしようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レムside

 

 

今日の仕事も終わり、またノア君の部屋に向かいます。

ここ数日間で、彼の能力の高さには、驚かされました。

昨日は、ベアトリス様に本を貸してもらったそうです。

ベアトリス様がそこまでしているのはとても珍しいことです。

 

最近では、彼が刺客だとはとても思えません。

今日も彼の部屋の扉を開きます。

 

 

しかし、彼はいませんでした。

そこにあったのは、ノア君のすまーとふぉんの字とは違い全くしらない字で書かれている、黒い書物。

 

 

 

それが意味するのは、福音書つまり魔女教の証である。

 

 




魔女教徒の素質があるものに、送られる福音書。
それらは、本人にしか読めないらしい。

だから、レムがノアの日記を福音書だと思ったことは、おかしくない。
と思いたいです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

襲撃、和解そして密会

有言実行は結構大切なことだと僕は思っている。

 

 

僕は、業務を終えた後、急いで準備をして森に入った。

魔獣君には、前の喧嘩のお返しもしないといけないからね。

目標は、僕の魔法の力の確認とその角をおって従えさせることだ。

宮廷魔導士に、わざわざ教えてもらったんだから、かなり自信はある。

回復魔法も理論だけは、教えてもらった。

 

 

ロズワールさんは、回復魔法だけは使えないらしい。

完全に攻撃タイプってやつなのかな?

いちよう、僕が一番得意な風魔法の操作だけでは、不安だったので、ナイフと銃ももってきてはいる。

前は、ナイフだけで戦闘してボロボロになったが、今回はそうはいかないぞ。

 

  

   魔獣君達よ、覚悟はしておいてくれよ。

 

 

テキトウにかっこつけたあと、森の深くに足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果からいうと、捕獲できたのは2体の魔獣だ。

2匹とも、僕がいままで見てきたものよりもサイズが大きい。

角をおったことにより、2匹とも僕に忠誠心ができたみたいだ。

さっき、殺しあってた仲間とは思えない。

 

 

なぜ、2匹しかとらえられなかったか理由がある。

それは、魔法のコントロールが思ったよりもきかなかった。

これは、まだ未熟である所以であると思われる。

そのせいで、角をおるどころか、肉体をバラバラにしてしまった。

結局は、数をしぼり、近接戦闘で気絶させ、角を無理やり風の刃で切り裂いた。

気絶させたのも10匹くらいいたのだが、情けのないことに2匹しか成功しなかった。

 

 

とりあえず、捕獲をしたが、2匹しかいないんじゃ生体の実験や研究はできない。

貴重な被検体だからね。死んではまずい。

回復魔法を魔獣達にかけておいた。

とりあえずは、潜伏しておいてもらえたい。角を一旦回復させた。全く便利なものだ。

意思疎通はできるのかな?試しておこう

 

 「君たちには、しばらく潜伏しておいてほしいんだけど、どうかな?

  ただ、いつも通りに過ごすだけでいい。」

 

数秒待って、魔獣達はうなずいた。

意思疎通までできるのか。

 

 「あ、じゃあ僕が森に入ってきたのを察知したら僕のところまで来てもらってもいいかな?」

 

しばらくした後、またうなずいてくれた。

今度こいつらの装備もつくっておこうかな。

このまま、増やしていけば、戦力にもなってくれるはずだ。

 

 「じゃあ、今日のところはこのへんで帰るとするよ。

  僕が言ったこと守っておいてくれよ。」

 

 

 「・・・・・・・何をしているんですか?」

 

そこには、青鬼がいた。

 

 

 

 

 

すぐに後ろを振り向いた。

レムさんは、いつもとは違う様子で、モーニングスターをもって殺気をだしていた。

困ったなぁ。僕なんかしたかな?思い当たるふしがない・・・・・・。

 

って、おい魔獣って、魔女じゃないと角を折らずともしたがえられないじゃなかったか。

完全に魔獣は僕の気持ちもしらずに、僕の前に出て主を守ろうとしている。

まあ、まだ話合いの余地はあるかもしれない。

ここで、殺されるつもりは毛頭ないが、かといってレムさんを殺すのは、後の人間関係的によくない。

 

 「いえ、ただ昨日の知識をもとに魔獣と戯れていただけですよ。」

 

 「・・・・・角もおらずですか?」

 

回復したのが、間違いだったみたいだ。

ここで回復したっていっても絶対信じないだろう。

 

 「信じたくはありませんでしたが、これで確信ももてました。

  魔女に魅入られたもの」

 

魔女に魅入られたもの? 魔女教ってことかな?

そんな宗教にはいった覚えはない。

 

 「僕は、そんな狂人の集まりに入った覚えはありませんし、魔獣をあやつっただけで魔女教とは早計ではないですか?」

 

バーン、とモーニングスターを振り回してきた。

よけなかったら、ヤバかったよ。

 

 「・・・・。とぼけないでください。ノア君は福音書を持っていました。

  それが証拠です。」

 

福音書?そんなものはない。

確か、魔女教に入る見込みのある者に送られてくるものだったか。

 

 「姉様をあんな目に遭わせた元凶が、その関係者が、レムと姉様の大事な場所に・・・・!」

 

憎悪。僕をにらむレムさんは感情は恐らくそれだ。

 

 「ここで終わってください!」

 

再びレムさんは、モーニングスターを振り回して攻撃をしてきた。

魔女教ねぇ。どうやら、僕はその関係者だと疑われているようだ。

 

当然、姉思いのレムさんは魔女教の関係者を見つけたら、深い憎悪を感じるだろう。

和解は今のままでは、できそうにはない。今のままでは、ね。

 

 

レムさんを相手にするために、魔獣に待機を命じて、戦闘を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レムside

 

 

 

 「あれ、ここは?」

 

レムはどうやら寝ていたみたいです。直前の記憶が思い出せません。

 

 「起きたみたいで、何よりだわ、レム。」

 

 「姉様?」

 

そこには、姉様がいました。

 

 「レムには何があったの?夜にノアが傷だらけの姿で、レムを担いで森から戻ってきたわ。」

 

思い出した。あの魔女教徒のことを。

武器を探すために起き上がろうとする。

 

 「待ちなさい!レム。」

 

姉様が止めてくる。

 

 「姉様、放してください。あの、魔女教徒はころさなければいけないんです!」

 

 「一旦、落ち着きなさい、レム。治療したとは、いってもすぐにうごいてはだめよ。

  だいたい、屋敷に帰ってきて、治療したのは、ベアトリス様とノアよ。」

 

え?おかしい、レムは戦闘のとき、魔女教徒に傷を負わされたことはありませんでした。

レムは、確か、彼の手刀で気絶させられたはず。

 

 「入ってきて、かまわないわ、ノア。」

 

そういって、入ってきたのは傷だらけの魔女教徒、ノア君でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノアside

 

 

僕が入ってきた瞬間に強い憎悪をレムさんは、こちらに向けてきた。

そして、一つの疑問の意志を感じとれた。

それも、そうだ。僕はレムさん、相手に傷をつけてないし、つけられてもいない。

 

 

 

レムさんを気絶させたあと、僕は彼女を担いで、帰ろうとしたときに、運悪く魔獣の群れと遭遇してしまった。

詠唱自体は問題ないが、一人かばいながらの戦闘の上で、四方を囲まれた。

切り抜けれること自体は、たやすかったが、レムさんにも多少傷をつけられてしまった。

僕の傷は、今はあえて放置してある。

 

ドン、音をだして僕は私物がまとまったカバンを机の上におく。

 

 「・・・。何ですかそれは?」

 

 「これは、僕が倒れていた時にもっていたすべての私物です。

  ロズワールさんの確認済みの。」

 

僕はそういったあと、レムさんと少し距離をとったあと風の刃で私物をすべて切り裂いた。

 

 「え?」

 

困惑しているというかんじだ。

 

 「魔女教徒に送られてくる、福音書。これは、僕の日記と外見もそっくりだ。

  中身もあの文字を知らないレムさんからしたら、福音書だと思われても仕方のないことでした。

  だから、それはすべて今ここで僕のすべての私物を破棄しました。

  謝罪します。」

 

僕は、そういって頭を下げる。

 

 「ノアの言っていることは、おそらく本当よ、レム。

  千里眼でノアがレムを傷つけないように、気絶させたあと、魔獣の群れにおそわれてから、レムをかばいながら戻ってきたのを確認したわ。」

 

ラムさんが真実を告げる。身内のいっていることだから、信じてくれるだろう。

 

 「ラムは、まだ屋敷の仕事があるわ。あとは二人で話しなさい。」

 

そういって、ラムさんは出て行った。

 

 

 

 

 

 「・・・・・。」

 

 「・・・・・。」

 

長い沈黙が続いた。沈黙を破ったのはレムさんだった。

 

 「今回、悪いのはレムでした。それなのにどうして、ノア君は何も言わないんですか?」

 

 「・・・。まだ、僕は魔女教徒の可能性があるのでは?」

 

 「いえ、本当の魔女教徒だったら、そんなことは言いません。

  それに、姉様の話だと、魔獣に襲われていたレムを身を挺して守ってくれて、治療まで。

  今、確信が持てました。ノア君は、魔女教ではありません。」

 

そういった、レムさんからは後悔の意志と、涙が表れていた。

 

 「レムは、姉様の劣化品です。それもずっとずっと劣った。

  どうして、姉様の方の角が折れてしまったんですか?

  どうして、姉様とレムは双子だったんですか?」

 

再び沈黙が起きた。レムさんが涙をぬぐって言った。

 

 「ご、ごめんなさい。ついおかしなことを「レムさん」、はい。」

 

 「レムさん、過去に起こったことを気にしても変わりません。」

 

 「それでも、レムは、ノア君を傷つけようとしました。

  姉様ならこんな軽率な行動はとりませんでした。」

 

 「角をなくした理由は、だいたい察しています。

  それでも、起こったことは変わりません。」

 

 「しかし、・・・。」

 

 「だから、レムさんがラムさんの角がわりをやるのはどうでしょう?

  劣化品とレムさんは自分のことをいいますが、あなたがいなくなればラムさんは悲しみますよ。」

 

 「それでも、レムは無関係のノア君を殺そうとしました。

  それが、罰もなく許されるなんて・・・。」

 

少し、考えて僕は提案した。

 

 「じゃあ、レムさんに罰を与えます。

  今回のことは忘れてください。」

 

 「え?」

 

 「過去を反省するのは、いいことですが、持ち続けるのはいいとは言えません。

  僕の世界では、こんな言葉があります。来年の事を言えば鬼が笑うと。

  何の話でも気軽に話しかけてください。

  だから、一緒にまたお菓子作りでもして、笑いましょう、レムさん。」

 

 「こんなとても、弱いレムでもですか?きっと寄りかかってしまいます。」

 

 「僕にも、弱いところがあります。だから、互いに協力するのが当然ですよ。

  だから、泣かないで、笑ってください。そして、前みたいに話しをしましょう。」

 

 「はい!」

 

レムさんはとびっきりの笑顔で答えてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 「あなたも、くえない人ですね、ロズワールさん?」

 

僕は業務終了後、ロズワールさんと話をしていた。

 

 「何がかなぁー?」

 

 「僕の日記ですよ。あなたははじめから、こうなることがわかっていたのではないですか?

  あなたは、確か僕の荷物をすべてチェックしたはずです。」

 

そういったあと、ロズワールさんは笑いながら答えた。

 

 「ははぁ。そこまで、いくとはさすがだねぇ、ノア君。

  絆は深まったしよかったぁじゃないか。」

 

 「まあ、そうですね。」

 

 「まあ、君にご褒美という形で、王都にいかせてあげよう。

  そこなら、君が欲しがる資料もあるかもよ?

  ただ、一つやってもらうこともあるけど。」

 

王都か、気になるな。やってもらうこと?例の話か?

 

 「ええ、ぜひ。」

 

僕は詳細を聞いたあと、部屋に戻り、眠りにおちた。




ノアが持っている能力は、メィリィの劣化みたいなものです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

観察者の一日
アサシンの人間観察①


僕とレムさんの魔女教騒動が終わって、1か月の月日がたった。

それにより、彼女や屋敷の人から信頼を勝ち取ることに成功したみたいだ。

そして、今はロズワールさんと王都にきている。

 

 「どうかなぁ、君の眼にかなう本はみつかったのかなぁ?」

 

 「ええ、僕が欲しい資料はとりあえずのものはありました。」

 

とりあえずは、だ。毎回、ベアトリスさんを頼りにするのもあまり良くない。

そこで今回は、王都に連れていくと前に約束してくれたため、その権利をありがたく使わせてもらっている。

王都では、闇の深い本はないが、一般的な知識の資料はある。

まあ、空を飛んできたのは、おどろいた。初見で、飛び方をマスターした僕を褒めてほしいくらいだ。

 

 「それじゃあ、明日の詳しい話をしようじゃぁないか。」

 

明日の話、つまり僕が王都に来たメインの理由。情報収集は、あくまでもついでだ。

 

 「本当に、エミリアさんとパックさんの二人をただみているだけでいいんですね?」

 

 「あぁ、見ているだけでかまわないよ。」

 

ロズワールさんからの頼み、それは明日、王都に来るエミリアさんをただ見張るだけとういもの。

護衛では、なく見張り。あくまでも、ただみているだけ。それも気づかれないように。

次期、王になるかもしれない方をただ見張れとは、ロズワールさんは何を考えているんだ。

彼の眼には、強い目的が宿っているような気がした。

まあ、後から何かを言われても困らないように書面だけは書かせてもらった。

 

 「それと、君にはこれをあげよう。これは私が作った、認識阻害のローブだぁね。」

 

 「ありがたく、使わせていただきます。」

 

これは、いいものをもらった。

 

 「それでは、頼んだぁよ。」

 

 「了解しました。」

 

 「あ、最後にもうひとつ。」

 

 「?。何かまだありましたか?」

 

 「その服似合っているよ。まるで、ボーイッシュな女の子みたいだぁね。」

 

 「……………。」

 

無言で魔法を放ちかけた。まあ、もしうってても、簡単に止められることにはなると思うけどね。

 

 

 

 

 

僕はさんざん挑発してきたロズワールさんを見送ったあとに、宿屋の自室で監視の計画を立て始めた。

このローブは、ロズワールさんの特製品で、魔力が強いものほど効力を発揮するらしい。

ロズワールさん並みの魔力がないと、ローブを被った僕のことは認識できないらしい。

とりあえず、王都の街並みをみてきたが、屋根から監視するという形でいこうと思う。

エミリアさんが、なぜ王都にきたのか詳しいことは聞いてはいないが、王城などの用事は明日はないらしいので、王都周辺にいるだろう。

ただ、見ているだけ、か。本当に気になる。

考えに耽っていると、ある声によって現実に戻される。

 

 

 (主よ、それで我は何をすればよいので?)

 

と、鞄に潜っていた魔獣が姿を現した。そう、こいつは僕が前の魔女教だと疑われている時に確保した魔獣の一体だ。

この、魔獣の正式名称はウルガルムというらしい。何度かコミュニケーションをとるうちに、声が聞こえるようになったのだ。

 

 (王都とはいえ、何が起こるかわからなそうだからね。あのロズワールさんからの口ぶりからしてもね。とりあえずは、明日は僕のローブに入って、警戒をしておいてくれ。頼んだよ、ウル。)

 

 (主の仰せのままに。)

 

いちよう、こいつらに名前は付けた。今日、連れてきてるのがウルで、森で諜報活動を行ってもらっているのが、ガルだ。

え、ウルガルムからムをとっただけだって?それは仕方がない、僕のネーミングセンスは正直いって皆無だからね。

さすがに、そのまま連れてきてはでかいから、縮小して連れてきた。だいたい、パックさんと同じくらいの大きさと思ってもらってokだ。

 

 (主よ、早めに休むのをお勧めする。なれないことをして、疲れたのだろう?)

 

 (ああ、大人しくそうするよ。じゃあ、警戒よろしくね。)

 

といって、僕はベッドに入って寝始めた。ウルはどうやら寝てる間の護衛を始めてくれたみたいだ。

あの姿でも、元と同じことができるんだから、たいしたものだ。

ウルとガルは、僕に驚くほど忠誠を誓っている。今日ウルの方をつれてきたのは、ガルの方は少し饒舌で調子にのるところがあるからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、さっそくまずいことになったが僕は介入しないことにする。

なんで、ラムさんとすぐに離れて単独行動しているんですか?エミリアさん。

まあ、パックという強力な精霊がいるから何も問題はないと思ってはいるが、次期王様候補が王都で単独行動はさすがに控えてほしい。

 

 

そして、その後に事件は起きる。

 

 (主、後方から何かが迫ってきています。)

 

その通りだった。魔獣というものは、すごいね。

僕がいる隣の屋根の方から、セミロングの金髪で、意志がある赤い瞳の小柄な少女が現れる。

僕の方は見えてはいないみたいだ。それでも、おかしい。

なぜ、一般人がこんな屋根の上にいる?と、思考をしていたも、少女は当然こちらの意志なども関係なく行動を起こす。

跳躍。人ごみの中を高速で、すりぬけてエミリアさんのローブにその手が侵入する。

そして、奪った徽章を手に、細い路地へとかけていこうとする。

 

 「待ちなさい!」

 

と、エミリアさんは叫び、少女を止めるために氷柱を放つがかわされる。

そして、少女を追うべくエミリアさんも追いかける。

やれやれ、困ったものだ。追いながら、考えるとしよう。

 

 

まず、この時点で、王候補の人物はまだ上の方以外わからないはずである。

よって、あの少女は、ただ依頼されただけとみるべきだ。

それでも、僕は何もしない。徽章を取り返すなどもしない。

このことを、恐らくロズワールさんは知っていた。

今度問い詰めるとしよう。

 

 

 

 

 

少女を追っている、エミリアさんを追跡してきたのは、路地裏だ。

そこには、悪党3人と一人の少年。

悪党の方は、ひとまず置いておくとしよう。気になるのは少年の方だ。

短い黒髪に、平均的な身長、鋭い目つきが印象的であったが何よりも僕が驚いたには、彼が着ているグレーのジャージ。

そんなものは、この世界にはない。僕がいた世界のものだ。

 

 

 

彼を観察しているうちに、エミリアさんは悪党を追い払ったみたいだ。

その少年に、問いかけるが知らずといった顔だ。

そして、彼が起き上がろうとしたときに彼は、ダメージをおっていたようで倒れてしまった。

エミリアさんは、治療を始めたが、これには驚いた。自分の徽章が遠のいていくのを知りながら、彼女は他人でしかない彼を助けた。

 

 

どうやら、君がおきるまで彼女も動かないみたいだから、じっくりと待つとするよ。

 

 

  君がどんな人間なのか、楽しみにしているよ、同郷人君。

 

 

 

 

 

 

 

 (主よ、彼は主の同郷というのは、本当なのか?)

 

 (おそらく、そうだろうね。彼から突出した何かを僕は感じないが、ウルはどう思う?)

 

 (我も特には感じません。)

 

 

 

彼がめざめるまでは、僕もひまだった。

結局、あの同郷人は、エミリアさんが助けたお礼として、彼女の捜索を手伝うことにしたみたいだ。

全く、精霊がいるとはいえ、広大な王都で探すことになる意味がわかっているのかな?

 

 

 

小一時間ほど時間が経過した。

世間知らずのお嬢様と僕と同じ世界から来たと思われる同郷人では、土地勘がなくなにもできないのは当然のことだ。

しかし、こちら側はわかったことがある。彼の名前は、ナツキ・スバルというらしい。

自己紹介というやつで、エミリアさんが名乗ったのは、かの嫉妬の魔女の名、サテラだった。

 

 

それを聞いた、彼は黙る以外の反応を示さない。

彼からすれば、いきなりファーストネームだけ言われて、呼びにくいだけだろう。

しかし、ここで確定した。彼、ここからはナツキ君と呼ばせてもらうが、ナツキ君はこの世界にきてからまだ時間がそれほどたっていない。

 

 

全く、サテラを名乗るなんて、少し趣味が悪いと思いますよ、エミリアさん。

 

 

 

そのあとはなんと、二人で迷子の子の親探しすらも行っていた。

僕なら、こんな急いでいる状況でこんなことはできない。

しかし、結果からいうと彼女の行動は事態を進めることになった。

迷子の子の親からお礼として、盗品をさばくなら、貧民街だと教えられてた。まあ、少し考えればわかりそうだけどね。

 

 

 

 

時間が経過する。夜に近づくために、パックさんは動きを停止してしまう。

これから、盗品蔵の中に入るってのに戦力は大丈夫ですか?もしあの少女がいたら、ここで戦闘になるかもしれませんよ。

 

 

 (主よ、本当にいいのか?ここは盗品蔵だ。何かいるかもしれない。主に人間という敵だ。)

 

 (心配はない。最悪、僕たちはみえないからね。)

 

 

 

先にナツキ君が入るみたいだ。僕もとりあえず、ついて行って中に入ろうとする。当然、ナツキ君とエミリアさんには見えない。

入った瞬間にかぎなれたにおいがする。これは、血の匂いだ。死体がある。

 

 (! 人間がいる。気をつけてくれ主よ。)

 

 

ナツキ君も異変に気付いたみたいだね。

彼から、動揺がうかがえる。そりゃあ、一般人がいきなり死体なんかみて、冷静でいられるわけがないはずだ。

 

 「ああ、見つけてしまったのね。それじゃあ仕方ない。ええ、仕方ないのよ。」

 

低く冷淡で、どこと楽し気な女の声だ。

経験からわかる、こいつは僕と同業者のにおいがする。

 

 

 

ナツキ君の体は、女によって飛ばされる。

一般人と思われる彼が、そんな攻撃に耐えられるわけがなく、倒れてしまう。

 

ナツキ君を心配して、来たエミリアさんも短い悲鳴が上がって、ナツキ君の隣に倒れてしまう。

二人ともかなりの出血で助かることはない。残念ながら、僕も介入できないし。

 

 

まあ、それでもこの世界の暗殺者には興味がある。

少し、腕試しだけしたくなってので、彼らが手をつないで意識をなくした瞬間をみたあとにフードをはずす。

 

 (主よ、戦闘するのか?)

 

 (ああ。暗殺者の実力とやらに興味がわいた。)

 

 

 

 「あら、もうひとりいたのね。残念だけどあなたも倒れてもらうわ。」

 

僕の存在が認識される。僕は始めから、全力の風魔法を放ち、女を吹き飛ばす。

違和感を感じた。

 

 

 

体が動かない。周りも時が止まっているかのように、何も起きない。

その瞬間に、闇があらわれた。それをひとことで表現すると闇に僕は思えた。

 

 

僕の意識が持っていかれそうになる。こんなところで、倒れるわけにはいかないと持ちこたえようとする。

しかし、世界が闇に包まれ、僕の意識は失われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意識が戻る。再び目を開いた僕にとびこんできたのは、飽きるほど探索をした王都だった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

アサシンの人間観察②

どうなっている。

 

それが僕の感想だ。僕には、見慣れた王都が映っている。一から物事を整理しよう。

僕は、確かエミリアさんとナツキ君が盗品蔵に入ったあと、僕もそれに続いた。

しかし、そこには血の匂いつまり死体があり、暗殺者がいた。

暗殺者にナツキ君とエミリアさんは倒されて、僕は戦闘をしようとした。

そこで、僕も含めた世界は言葉では表現できない闇のようなものに取り込まれた。

 

 

しかし、今はどうだ?盗品蔵から急に王都の街の屋根の上にいる。

ワープしたには時間帯があきらかにおかしい。移動したわけではないと推測できる。

ならば予測できるのは何だろうか。

 

 (主よ、エミリア殿が移動している。追いかけなくていいのか?)

 

 (ああ、悪い。少し考え事をしていたよ。ありがとう。)

 

ウルの記憶はなさそうだ。賢い彼のことなら、さっきのことを覚えているならば何か言及してくるだろう。

追いかけながら再び僕は考え出した。

 

 

過去に戻ったと考えるのが一番よさそうだ。少し行動を見る限り、エミリアさんの行動は前回と同じだ。

こういう場合過去に戻った原因は何だろうか。もし原因が人であるならば、その人物は過去と違う行動を起こす可能性がある。

可能性があるならば誰だろうか。この広い世界の全員を探さなければわからない。

ナツキ君は、見たところ何の力もなく暗殺者の前に倒れていったし、エミリアさんもおそらく違う。

パックさんは、途中で停止したため、何か能力を使った様子もなかった。

とりあえず、エミリアさんを観察してるのが一番よさそうだ。

 

 

もし、時間を戻すや過去に戻れる能力があるなら何としてでも手に入れたいところだ。

僕の知的好奇心を満たしてくれるだろうし、いろんなことでも役に立つ。

まあ、まだわからないから慎重に物事は進めていこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

行きつく未来は違った。あの金髪の少女が、エミリアさんから窃盗を行う。これは同じ。

エミリアさんとパックさんを追いかけて来た、路地裏。

そこには、三人の悪党と目つきがするどいナツキ君がい………………なかった。

そこにいたのは、倒れた三人の悪党だ。

違う。僕が観ていた世界とは。

ここでの違うことは、エミリアさんに救われるはずだったナツキ君がおらず、悪党が倒れていること。

分岐がおきた。ナツキ君はどうやって、この場から去ったのか、これが問題だ。

一つは、ナツキ君が僕と同じように過去の記憶がある、もしくは時を戻した本人で、こいつらを倒したということ。

もう一つは、第三者の介入だ。

どちらでも、僕に介入の余地がないが。もう少し、観察の必要がありそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

それでも、同じことは起こる。

エミリアさんは前回と同じように、迷子の子供の親探しは行っていた。

これは、ナツキ君がいなくても起こる確定イベントってやつだったりするのかな?

エミリアさんは、迷子の親から盗品蔵の情報を手に入れた。

これから、再び盗品蔵に行くみたいだ。

さて、誰が時を戻したのか、全くわからない。このままだと、また戻ってしまうかもしれない。

気になるのは、ナツキ君の動向だ。だからといって、ナツキ君を探すために、ここを離れるという選択肢はできない。

わざわざ、何もするなと、僕に頼んできたロズワールさんのことだ、僕が介入したら、その行動くらいは見抜かれそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

貧民街に行く途中にそれは、再び起こった。

体が動かない。すべての時が止まっている。再び僕の意識ももっていかれる。

まずい、これではループのようだ。

 

 

世界が闇に包まれ、僕の意識は完全に吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

またか。

 

これが素直に口から出た感想だ。

また、見慣れた王都の風景から始まった。これが僕が介入できたら、どんなに面白いだろうか。

過去に戻るということは、いくつもの選択肢を試せるということでもある。

それができたら、と。僕は、そう思ってしまう。

 

 

さて、今回の過去に戻ったのは、なぜだろうか。

一番初めのタイミングは、ナツキ君とエミリアさんが倒れ、僕が戦闘を開始したところだった。

二度目は、エミリアさんを追って、エミリアさんが貧民街に入った時だ。

しかし、これは僕からでの主観でしかない。それでも、僕は基本的に前回と同じ行動を起こした。

ずれは、ナツキ君か。

 

 

ナツキ君の行動が、一度目と二度目の僕が戻されるタイミングを変えたということになるかもしれない。

これも、あくまでも推測でしかない。二度目は、ナツキ君を全く見かけていないし、そもそも過去にもどっているということも違うかもしれない。

もしかしたら、僕が洗脳されたりしてるかもしれないしね。

 

 

 

まあ、最後のことはないとは思うから、エミリアさんを再び観察することにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ちょ、待って……待ってくれ……頼む、待って……」

 

そんな声が王都の街の屋根から観察している僕の耳に入ってきた。

その声を発したのは、僕が探していた、ナツキ君、だ。

ナツキ君は、僕が観察しているエミリアさんの方を見て、叫んだ。

 

 

 「待ってくれ。 サテラ!」

 

 

確信した。この三度目の世界では、エミリアさんとナツキ君はまだ会っていない。

つまり、ナツキ君は、彼女と会った世界の記憶がある。

彼もループしている。これで、彼自身が時間を戻しているという説の可能性が上がった。

しかし、サテラの名を呼ぶか。まあ、無理もないだろうが。

 

 

 「無視、しないでくれ。いなくなったのも言うことを聞かなかったのも俺が悪かった。

  でも、俺も必死だったんだ。あれから盗品蔵にも行ったんだ。けど、会えなくて……」

 

肩に触れられたエミリアさんは、ナツキ君をみて、驚きの表情になる。

 

 

 「自分のことばっかでごめん。……でも、無事でよかった」

 

 

しかし、サテラとよんでしまったことにより、

 

 

 「あなた……どういうつもり?」

 

 

と、拒絶。当たり前の反応であるが。ナツキ君は、おそらくわかっていないだろう。

 

 

 「誰だかしらないけれど、人を嫉妬の魔女の名前で呼んで、どういうつもりなの!?」

 

 

エミリアさんの怒りの感情は、初めてみた。

お互いに、なぜ嫉妬の名で呼ばれたのか、なぜ拒絶されたのか、わからないだろう。

 

そうこうしているうちに、すべてで会った少女が再び現れた。

その金髪の少女は、ここでも、エミリアさんから徽章を奪い取った。

 

ナツキ君がこれにより、エミリアさんからグルだと疑われてしまう。

 

 

 

 

そして、エミリアさんは、少女を追いかけるべく、走りだす。

また、ここで一旦お別れみたいだね。ナツキ君。

 

 

少女の身体能力だったら、壁など簡単に登れるし、エミリアさんもその点において魔法で苦労はしない。

しかし、ナツキ君は今見ている感じだと、それができそうにもない。

 

 

僕もエミリアさんを追うべくして、ナツキ君を置いて、移動し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、移動中にもわかっていることを整理しよう。

今回エミリアさんとナツキ君があったのは、一度目と違って、エミリアさんが徽章を奪われる前だ。

それは、ナツキ君が今回は早く行動を起こしたということである。

本来では、路地裏で会うところが、街中で会っている。

そして、一度目と二度目では、過去に戻る時間にずれがあったということ。

何か、過去に戻る要因がある。

 

 

 

そんなことを考えていると、再び時が止まる。

今回は早かったな。

ナツキ君が起こしているかの確証はつかめなかったが、次回に託すとしよう。

 

僕は、再び意識を失った。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

アサシンの人間観察③

また始まった。これで、4回目だ。

僕は、エミリアさんの監視をしなければならないため、僕は基本的には介入できない。

もし、介入できるとしたら、エミリアさんが死んで、僕が監視ができなくなった時のみ。

その条件で、僕が動けたのは、初めの一回のみだ。しかし、それは時が戻ることによって妨害されてしまった。

 

 

やはり、鍵を握るのはナツキ君か。

 

 

彼の行動方針は、何だろうか。

二回目は、彼のことを一回もみていない。

三回目は、エミリアさんと接触した。

彼の言葉から考えるに、彼はエミリアさんを探していたみたいだ。

彼は、まだ一回目のことを感謝していて、徽章を探し出したいのだろうか?

 

 

わからない。人間の感情は、僕は理解できないことが多い。

 

 

彼の選択肢もそこまで広くはない。

 

一つは、徽章探しを諦めて、王都で生活すること。

しかし、王都だけあって、さすがに身元不明の人を雇うことはされない。他の所に行けば、まだ可能性はある。

ただ、ナツキ君は見たところ、携帯などのこの世界では貴重品となるものを持っている。

それをうまいこと、売りさばけば、暫くの金は入ってくるし、商売もできるかもしれない。

もう一つは、エミリアさんの徽章を探し出す。それによって、エミリアさんに恩を売ることができる。

あとは、簡単で後ろ盾のロズワールさんに口止め料を要求すれば、かなりの額をもらえるだろう。

食客扱いにしてもらうのが彼の将来的にみると、一番いい選択かもしれない。

 

 

 

彼にとってのまともな選択肢は、今考えたくらいで、これくらいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、徽章も盗まれ、エミリアさんが迷子を助け、盗品蔵に向かう状態となった。

本題はここからだ。後がどうなるかわからないから、できるだけ僕は手を出したくない。

だから、ナツキ君には頑張ってもらいたい。

 

 

可能性のあるすべての未来をみたいが、僕が介入できないのは、面白くないからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「よかった、いてくれて。 今度は逃がさないから」

 

盗品蔵に入る前に、二回目のように時の妨害や貧民の妨害はなかった。

中には、金髪の徽章を盗んだ少女、身長が2メートル以上ある老人、そして、ナツキ君だ。

これは、まだ僕が観ていない未来だ。今回は、あの暗殺者はいないみたいだ。

てことは、一度目の死体は、あの老人のものか。

 

 

僕が思考している間にも、話は進む。

エミリアさんは、宙に氷柱を6本展開して、徽章の返却を要求する。

現状、この老人は盗品蔵の主だと思われるが、この老人と少女には逃げ場がない。

 

 

 「兄ちゃん。さてはまんまとアタシをはめたな?」

 

気になる発言が聞こえた。

 

 「持ち主に返す、とかおかしなことを言いやがるから怪しいとは思っていたんだ。路地の連中に横やり入れさせなかったのも作戦だろ?

  グルだったんじゃねーか。」

 

なるほど。ナツキ君は徽章を手に入れるために、交渉という正攻法を選んだのか。

おそらく、彼の携帯を使おうとしたのだろう。

 

 

 「……? どういうこと? あなたたち、仲間なんじゃないの?」

 

エミリアさんも困惑している。それもそうかな。

一人は徽章を盗み、一人はその仲間の盗品蔵の主、一人は徽章を返そうとしている。

うん、初見だと、全く意味わかんないね。

 

 

会話が進んでいるうちに気付いた。何かが潜んでいる。

 

 (ウル、周囲になにかいるな?)

 

 (はい、主よ。エミリア様を狙っているみたいです。)

 

やはり、いたか。おそらく、一回目の暗殺者の女だろう。

もし、エミリアさんがその攻撃で倒れたら、僕は介入できるし、防げたとしたら、面白い展開になるだろうね。

この時を戻す能力の保持者は、ナツキ君だが、自由に使うことはできないみたいだから注意しないとね。

 

 

 「 パック!防げ‼」 

 

 

パックさんが、エミリアさんの後頭部で、魔法陣を展開して、女の攻撃を防ぐ。

今は、パックさんが防げたが、早めに勝負は決めないと、おそらくまずいだろう。

 

叫び、前に出て、金髪の少女が怒声を張り上げる。

どうやら、女の方が少女で依頼をしたみたいだ。

僕の勝手な予想ではあるが、女の方も誰かに雇われたという感じがする。

 

 

僕が思考している間にも、ナツキ君が無様な発言をして、その隙に、パックさんが攻撃をしたみたいだ。

開戦したみたいだね。

 

 

 

 

 

 

 

 

全方位からの氷柱による攻撃は、女を貫けなかったみたいだ。

女は、黒い外套を脱ぎ捨てて、ククリナイフを振りかぶっている。

 

奴の話によるとあの外套は、魔法を一度だけ防ぐ術式が組まれていたらしい。

 

精霊使いってのは、なかなかに強いみたいだ。攻撃と防御で、役割分担を行っている。

女の攻撃を割りと軽々と受け止めている。

 

 

その隣で、老人が棍棒を持って助太刀しようとしてる。素人だったら、さすがにやめておいたほうがいいと思うんだけどな。

さっきも、フラグ建設してたからね。

 

 

 

しかし、拮抗した状況もこれで終わりみたいだ。

時間切れで、パックさんがダウンしてしまった。おそらく、エミリアさんだけだったら、あれには勝てないだろう。

 

 

結果的にいえば、老人が参戦したあとすぐに、重傷を負わせ、ナツキ君は、少女を逃がした。

助けを呼ぶにしても、時間はかかるし、全滅の可能性が高いと思うが。

 

 

 

 

 

女の猛攻で、エミリアさんの声にならない悲鳴が走り、斬撃が容赦なくスバルの足の到達した。

 

そこに、英雄はあらわれた。

 

 

  「    そこまでだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その赤髪の青年は、ラインハルト。

僕があってみたかった人物の一人、剣聖だ。彼がいうには、女は腸狩りというらしい。

腰の剣は、その時が来るまではつかえないようだ。

彼が使っている剣の質は悪いものではあるが、彼の手にあっては宝剣のような輝きを放っている。

 

 

 

圧巻。それを表現するとしたら、この言葉があてはまるだろう。

ラインハルトは腸狩りの斬撃を軽々とさばききっていた。

観ている限りでは、腸狩りは僕でも勝てるが、剣聖ともなると怪しい。

今の状況でも、彼は本気をおそらく出していない。

 

 

エミリアさんが治療をしているせいで、決定打にかけるってところだろう。

そして、それも終わり見せてくれるようだ、剣聖の剣撃をね。

 

 

 

二人とも名乗りをあげ、一騎打ちに臨もうとする。

 

 

 

剣聖がたったひと振りで、極光が盗品蔵を引き裂き、空間ごと切り裂いた。

腸狩り一瞬で吹き飛ばしたか。さすがは、剣聖だ。

その実力は、尊敬に値する。僕が介入できないのが本当に残念だ。

 

 

 

 

ただ、腸狩りもまだ生きているようだけどね。廃材の中から、殺気を感じるよ。

狙いは、エミリアさんといったところか。剣聖は、今きづいたけど間に合うか怪しい。

 

 

 「 スバル!」

 

剣聖はナツキ君にも窮地を知らせる。

 

 「   ッ‼」

 

 

 

廃材を跳ね上げ、腸狩りがククリナイフの斬撃をとばそうとする。

剣聖は間に合わないし。ここまでかな。僕はそう思っていた。

 

 

 

 

しかし、結果は違う。

ナツキ君が、エミリアさんを吹き飛ばすように庇い、腸狩りの一撃は彼の棍棒に命中する。

 

 

驚いた。時間を戻すことができるとはいえ、無鉄砲すぎないかな?

他人を自分の身がどうなるかわからないのに助けたのか。君は、観ていて興味が尽きないよ。

 

 

 

腸狩りも捨て台詞を残したあと、去っていた。これ以上の戦いを望まない剣聖も追わないみたいだ。

エミリアさんの命の恩人であるナツキ君が、エミリアさんに要求したのは、名前を教えてほしいというものだった。

 

 

ナツキ君は、エミリアさんに強い執着心でもあるのかな?

どうだろうか?実際の所はわからない。まあ、明るい感じではあるし、いいんじゃないかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後ナツキ君は腸狩りの最後の一撃は重かったらしく倒れ、彼の処遇は、ロズワール邸に運ばれることとなった。

エミリアさんも屋敷に戻っていった。ロズワールさんから受けたことも時間切れなので、僕はもう自由だ。

ただ、早めに帰ってこいと言われているので、あまり時間がない。

 

 

しかし、やっておきたいことはある。

 

 

 

僕は、所持していた小型のナイフを、移動している黒い影に向かって投げた。

そのナイフは、目標に命中し、さらに後ろから蹴りを加えて、月明かりの中に姿をさらけ出させた。

 

 

 

 

 

 

腸狩りの姿をとらえた僕は、フードを外し、ナイフを突き出してこう言った。

 

 

 

 

 

 「ここで死ぬか、生きるのか 選べ 腸狩り 」

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

激動と暗躍の一週間
魔獣使い・腸狩りへの干渉


いつからだっただろうか?

 

 

僕がプラスの感情をいらないものと判断し、捨て去ったのは。

 

いつからだっただろうか?

 

 

感情を消し去った僕が興味を持った、知識に対しての執着を求めたのは。

 

いつからだっただろうか?

 

 

僕が殺しを始めて、快感を覚えるようになったのは。

 

 

 

 

ああ、そうだ。すべては、あの霧が出ていた夜に始まったに違いない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「       ‼」

 

 

バンッと大きな音をたてて、僕は起床した。懐かしい夢をみていた。

過去のことは、仕方がないとすべてを、僕は割り切ったはずだったのに。まだ、僕は後悔しているのだろうか。

今でも、君のことを考えてしまうことがあるよ。

感情はいらないものと、消し去ったはずなのに。わからない。

ぐちゃぐちゃになってしまった、僕の心では。

 

 

 

最近も、演技をはさんでいるとはいえ、感情を表しすぎた。自粛しよう。

僕は、暗殺者。それも、半分は快楽殺人とかしている。

僕には、何も残っていない。

 

 

いったい、僕は何がしたいんだろうか? 君はどう思うだろうかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王都でのエミリアさんの監視という任務を終えた僕には、今日の休みが与えられた。

ナツキ君という興味の対象が身近にいるが、ここ一日だけは休ませてもらうことにしようか。

彼の処遇を、ロズワールさんから聞いておきたいところだ。

 

 

 

 

僕の起きた時間はとても遅かったから、もう朝食という時間でもないだろう。

とりあえず、森にいく必要がある。昨日は帰ったら、カモフラージュのためにも、ウルを森においてさっさといってしまったからね。

それと、ガルの報告も聞いておきたいからね。

僕は私服に着替え、誰とも会いたくなかったため、フードをかぶっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガバッと森の深いところに入ったところで、何かに抱きつかれた。正体は、わかっているが。

 

 

 (主---!昨日はよく眠れたか?)

 

 (主よ、お疲れのようですね。)

 

抱きついて肩にのってきたのが、ガルで、こちらの調子を丁寧に聞いてきたのが、ウルだ。

 

 

 (ウル、ガル、おはよう。僕は大丈夫だ。それよりも、何か森で変わったことはないか?)

 

このためだけに、一匹だけ置いといたのだ。仮にも次期王様候補がいるんだ。何かがきてもおかしくない。

 

 

 (ああ! それなら主、人間の女 それも子供が俺たち以外の魔獣を洗脳してたぞー)

 

 (はい、かなり忠実に従っているようです。例の少女を確認しました。)

 

なるほど、仕事が早いみたいだね。さすが、魔獣使い。

腸狩りから、魔獣使いまでも釣れるとはね。

 

 

 (とりあえず、そこまで案内してくれ。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話は、昨日の夜に遡る。

 

 

 

 

腸狩りの姿をとらえ、吹き飛ばして、僕は言った。

ここで死ぬのか、生きるのか、選べと。これはもはや、交渉ではなく、脅しだ。

言葉にしてはいないが、女にも伝わった気がした。

 

 

 「あなたの目的がわからないわ。」

 

それはそうだね。でもすべてを語る必要はない。

 

 

 「さあ、それはあなたが気にしなくてもいい。ただ、僕はあなたに利用価値があると踏んだだけですよ。

  早く選んでください。 それか、僕を殺して逃げるというのもありますよ。」

 

 「馬鹿いわないでちょうだい。あなたは、暗闇の中で私を見つけ、ナイフを投げたあとに、後ろから蹴りまでいれたのよ。

  それをされた後にやっと気づいたぐらい。それに、この傷。勝てる見込みはゼロね。」

 

実力差もきちんと理解してくれているみたいじゃないか。僕も、それなりのリスクをおかしているからね。

まあ、ここで衛兵ごときがきても解決にはならない。後はめんどくさくなるけどね。

ラインハルトが来たら、やばいがそれはない。

 

 

 「わかったわ。貧民街の南東まで、連れて行ってくれないかしら?

  そうすれば、妹と合流して、逃走経路が準備できるから。

  あなたからもらった傷もそうとう痛いわ。」

 

 「ええ、わかりました。まあ、傷が深くなるのは、当然のことです。

  これでも、それなりの実力のつもりなんで。

  おっと、失念していました。これから、役に立ってもらうんですから、雇い主の名前くらは覚えておいてください。

  僕の名は、ノアです。エルザさん、これからお願いしますよ。」

 

 

月明かりで見えた、彼の顔はゆがんでいたとエルザは後にかたる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「へーー! お兄さんもこの子と会話できるんだあ。」

 

合流した妹、メィリィ・ポートルートは嬉しそうに僕に話しかけてきた。

僕が初めは、お姉さんと呼ばれたというのはなかったことにする。

 

 

 「も、ということは、あなたも会話できるんですか?」

 

 「そう!じゃあ、はい、これ。連絡手段ね。」

 

ミーティアというものを僕は、彼女からもらった。これで、連絡できるらしい。

この子は、角を折らずとも、会話もできるそうだ。

 

 

 「また必ず会いましょう?」

 

廃屋にまっていた、その少女は慣れた手つきで、傷を手当てし、早々に引き上げていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「また会ったね、お兄さん。」

 

と、今に至ると。まさか、一日で再会することになるとは。

 

 「ああ、昨日ぶりだね。こんなとこで魔獣を使ってまで何かをするのかは、聞かないようにしておくよ。」

 

 「えーー。お兄さんなら、興味を持つと思ったのになあ。そこの子も、お兄さんの仲間?」

 

 「うん、そうだよ。」

 

 (主ー、この女と知り合いだったのかー。なあんだぁ。)

 

 「まあ、今回のことは何も干渉しないでおくよ。何かあったら連絡するから。」

 

 「本当は、もう少し話し相手になってほしかったけどなあ。仕方がないし、またね!」

 

 「じゃあ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさか、本当にいるとはね。魔獣を使って何かをするのは、構わないが、僕とのつながりだけはばれないようにしないとね。

とりあえず、森の用事は、終わったし、残りは何をしようか?

ロズワールさんにナツキ君の処遇でも確かめにいくとしようかな。

 

 

 

 

 

 「なるほど、ナツキ君は、この屋敷の執事そして僕の同僚になったということですね。」

 

 「まあそうなるねぇ。とりあえず、お疲れとだけ言っておくとするよぉ。」

 

 

とりあえず僕は、いくつか疑問を聞いておくことにすることにした。

 

 「ロズワールさんは、エミリアさんの徽章を盗まれることを知っていた、または依頼を腸狩りに頼んだりしました?」

 

 「さあ、どうだろねぇ?私がそれを知っていたという証拠も依頼をした証拠もないかなぁ?」

 

ロズワールさんは、僕の方に目線を向けて答える。

残念ながら、証拠はないし、憶測の域をでることはないからね。

 

 「まあ、君もスバル君と仲良くしてあげなぁよ。」

 

 「はい。まあ、挨拶だけ軽くしてきますよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロズワールさんの執務室を出た僕は、再び寝室に戻ることにした。

ナツキ君に挨拶だけは、しておきたいが、僕は今ものすごく眠い。

朝から、あんな夢を見てしまったため、どうも調子がまわらない。

 

 

使用人の仕事が終わるまで、僕は寝ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

会合と試練

バンッ

 

 「いったぁ~。」

 

大きな音をしながら僕は、起きた……というよりはベッドから落ちたという表現の方が正しそうだ。

 

 「ふあぁ~」

 

大きなあくびをしてしまったよ。あれ、僕は何でこんな時間に寝てたんだっけ?………ああ、そうだ。どうも朝から調子が悪くて睡眠していたんだった。変な夢を見ると困ってしまうね。さてと、時間としては、使用人の業務が終わった時間くらいだろうか。さて、ナツキ君にも会いたいし、移動しようか。

 

ぐ~

 

 

 

その前におなかをどうにかしないといけないようだ。そういえば、朝から何も食べてなかったね。

 

 

 「大きな音がしたと思ってきたけれど、大丈夫そうね。」

 

 

ラムさんが、ノックなしに僕の部屋に入ってきた。心配してくれるのは別にいいが、ノックはしたほうがいいのではないかな?

 

 

 「ええ、まあ特に問題はないです。ただ僕が、ベッドから転げ落ちただけなので。ただ、部屋に入ってくるときはノックからいするのが淑女ってやつのつとめでは?」

 

 

 「ハッ、それならわざわざノアを心配して様子を見に来た寛大なラム様に感謝しなさい。それとノアは、今日何も食べていないでしょうし持ってきたわ。」

 

 

これで、僕が自分で作る暇が省けたな。たぶん、レムさんのことだから僕の分も残しておいたということだろうな。

 

 

 「ちょうどおなかもすいていましたし、素直にお礼をいっておくとしますよ。あと、ロズワールさんから聞きましたけど、新しい同僚の方がいるみたいですね。その方に、挨拶をしておきたいので部屋だけ教えてもらってもよいですか?」

 

 

そう、あくまでも僕はここで初めての会合だ。ラムさんやレムさんは、僕が王都に行ったことは知っていても、何をしていたのかまでは知らないからね。

 

 

 「そう、それは構わないわ。ただ、ノアは昨日の予定で疲れていると聞いているわ。無理はしないことね。」

 

 

 「ええ、それは大丈夫ですよ。自分の体のことは自分が一番わかっているつもりではありますので、心配は無用です。」

 

 

 「フンっ、ただラムとレムの仕事が増えるのが嫌なだけだわ。あと、同僚ことバルスの部屋はここの3個となりだから。」

 

 

 「ありがとうございます。まあ、明日からは通常業務に参加できるので。」

 

 

そういうと、ラムさんは満足した様子で帰っていった。一番近い位置にいた、ナツキ君に僕のことを確認させにいかなかったのは、僕とナツキ君への配慮だろうか。しかし、それほどまでに大きな音を出してしまったのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、満腹になったことですし、ナツキ君に会いに行くとしますか。彼の性格としては、まだわからないことも多いし、例のこともある。今、僕が最も関心を持っている人物といっても間違いはない。彼に僕に対しての悪感情を持ってらっても困るからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋を軽くノックする。そうしたら、「はーい。」とナツキ君が返事をしてくれた。了承ももらったし入るとしますか。

 

 

 「あれ、あんたがラムとレムがいってた同僚か?」

 

 

その言葉とともに目に入ってきたのは、ジャージ姿で目つきの悪い黒髪の少年、ナツキ君の姿だ。さて、あの二人からも軽く話は聞いているみたいだし、さっそく自己紹介といこうか。

 

 

 「はい、その通りです。僕の名は、ノアです。あの二人とともにこの屋敷で働いています。あなたのことは、ロズワールさんから話を伺っておりますよ。これからよろしくお願いしますよ、ナツキ・スバル君。」

 

 「ああ、こちらこそよろしく頼むぜ、ノアちゃん。」

 

バッチリときめたつもりなのか、本人はウインクをしながらこちらを見てくる。あの二人、僕のこといってないな。毎回間違われるのも少し煩わしく感じる。少しだけ、毒舌でいじめてあげようかな?

 

 

 「あー、カッコつけたとこ悪いんだけど、いちよう僕は男だから。あと、女の子だと思うにしても、最初からウインクなんてやめておいたほうがいいと思うよ?いい反応をしてくれる女の子はそこまで多いとは僕は思わないしね。」

 

 「悪い、そいつは失礼だった。でも、ちょっと初対面の割には、らむちー並みに毒舌がすごいとおもうなぁ、俺は!」

 

 「そうだねえ、ラムさん風にいうとするならば、ここはハッっとでも言っておこうかな。それにしても、ナツキ君の寝巻きここではみないもののようだけれど、どこの出身なんだい?」

 

どうやら、互いに悪くはない関係が築けそうだ。念のために、僕の出身は彼には明かさないでおく。そのアピールも含めて、遠回しにおまえはどこまで知っているのかということを尋ねてみた。ナツキ君は、僕と同じ世界から来たと思われるなので、彼の返答しだいで、彼が今もっている情報量がおおよそわかるということだ。

 

 「あー、それについては信じてもらえるかわからないが、大瀑布の向こう側からだ。」

 

なるほど、この世界の住人がいったことがないその果ての向こう側か。これをいうのは、たいてい頭がおかしいことやそれを儲け話にしようとする者たちだ。察するに、ナツキ君はこの世界に対しての、情報量がすくないように思える。他の国をしっているなら、それを答えた方が大瀑布と答えるより信憑性があるのは当然のことだ。

 

 

 「うん、わかったよ。僕は今ナツキ君を頭がおかしい人認定にしたことをね。」

 

 「まさかの、辛辣すぎるコメントが返ってきた―!」

 

僕が笑いながら冗談をいうと、ナツキ君はそれを返してくれた。案外見た目に反して彼は、ノリがいいのかもしれないね。お人よしって部分はあるかもだけど。

 

 「面白そうな人で良かったよ。じゃあ、初日の疲れもあるだろうし、今日はここらへんで失礼するとしますよ。明日からの働きに期待していますよ、同僚ナツキ君?」

 

 「ああ、よろしく頼むぜ、先輩。」

 

そういって会話が終了して、僕は自室へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえずは、上々の出来か。彼に変な警戒心を与えることなく会話をすることはできたはずだ。僕の取り繕った表情や仕草は、いくら偽のものとはいえ、そう簡単には見破られないだろう。今まで、一回もばれたことはなかった。さて、まだ君に関してのわからないことが多いが、これからじっくりと観察させていただきますよ。どうか、僕を楽しませてくださいね、ナツキ君。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、わかったこともある。僕の同僚になったナツキ君は、家事能力が絶望的ではあるようだ。まあ、のちの見込みは存外あるかもしれないけどね。さっそく彼は、彼の愛刀『流れ星』で自分の手を切ってしまったのか、悲鳴をあげている。

 

 「反省のないことね、バルス。上達って言葉を知らないの?」

 

 「まあ、僕は昨日いなかったんで知りませんけど、器具を触ったことはなかったんですか?」

 

 「先輩方よ、らむちーには昨日もいったけど、箸以外の調理器具をさわったのは昨日がはじめてなんですよ。」

 

なんだ、触ったこともなかったのか。なら、仕方がないかもしれないけどね。当然ナツキ君は、ラムさんと一緒に皮むき担当ってところだ。当然僕とレムさんが、主な調理をしている。ナツキ君が手掛けた無残な野菜の残骸をみて、僕は彼からナイフをとっていった。

 

 「そもそも、ナツキ君はまず持ち方がなっていません。僕が見本をみせますのでよくみていてください。」

 

僕はそういって、素早く野菜の皮だけをナイフではぎとる。そのスピードに3人がひいていたような気もするがきっときのせいだろう。まあ、当然のことだね。ナイフ自体は、僕と長い付き合いだ。ナイフの料理の方の使い方でも、負ける気はしない。

 

 「まあ、これくらいのスピードは無理だと思いますが、せめて時間がかかってもきれいにむけるようにお願いしますよ。」

 

まあ、その後も彼は何回か指を切りかけていたが、少しは上達するんじゃあないかな。彼自身の向上心はありそうだしね。ただ、ひとつ気になったとすればレムさんがナツキ君に対して、何か疑うような目線をしていたということだろうか。まあ、彼女もナツキ君がどこかの刺客という可能性を危惧しているだけだと思うけどね。今のところは、何も起きなさそうだし、しばらくは待機ってとこだね。あるとしても、魔獣使いが何かを企んでいるということだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ、驚いたことがあるとすれば村に奴がいたことだろうか。まあでも、驚いたというほどでもないか。魔獣使いメィリィは、さももとからそこにいたかのように、子供たちの輪の中にとけこんでいた。

僕と目があうと、気づかれない程度でウインクをしてきた。まあ、向こうの計画は何をやっているのかは知らないが、順調ではあるようだ。ナツキ君は、ここの村にくるのは初めてらしいということで僕が行くついでについてこさせた。ナツキ君には、子供たちと遊ばせておいて、僕は買い物をすませることにする。そうしないと、またおもちゃになりそうだからね。

 

 「おぉ、お疲れ~、ノア姉ちゃん。」

 

僕を煽ってきたナツキ君だった。一瞬その顔が妙に吹き飛ばしたくはなったが、気のせいであろう。おや、彼の手に傷があるようですね。どうしたのかと思い、彼に訳を促すと、彼は答えた。

 

 「いやぁ~、そこの犬にかみつかれちゃってさ。」

 

そこの犬?と思い、子供の方を見てみると、そこにはメィリィが魔獣を抱えていた。同じ魔獣を使役しているものじゃないと、これはわからない感覚であろう。さて、これは誰かに解除してもらわなと解けないだろうね。これくらいなら、ベアトリスさんなら簡単だとは思うけどね。

 

 「ああ、僕は回復魔法は苦手なので他の人になおしてもらってください。怪我をしたところ悪いですが、そろそろ帰りますよ。まだ、業務は残っていますしね。」

 

といって、僕はナツキ君を引っ張って行って帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、このままだと彼はナツキ君は呪いで死んでしまうだろうか。それを知っているのは、僕とメィリィのみで助けるという選択肢ができるというのは僕だけだ。しかし、それでは面白くはないし、彼の謎にも迫れない。彼は、一度死んだあとも時を戻していた。死してもなお、時を戻す手段があるというのならば見せてくれ。それができないのあれば、残念ながらその程度だったということだ。もし、やり直せるとするならば、君がどういった選択肢をとるのか、それが世界にどういった変化を及ぼすのか、興味は尽きない。

 

 

さあ、存分に死の運命からあがいてくれよ、ナツキ君

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。