今まで二次創作を投稿していましたが、今回はオリジナル小説を投稿してみました。
「どこだよここ・・・・・・」
俺は気がつくと、知らない森の中にいた。
さっきまで、俺は町中で買い物をしていたはずなんだけど・・・・・・取りあえず、何があったか整理しよう。
俺の名は御劔龍馬みつるぎりょうま特撮番組が大好きな高校二年生、十七歳。家族は定食屋を営んでる両親に祖父ちゃんと祖母ちゃんと兄ちゃんの六人家族の次男である。
今日は俺が好きな特撮番組、星龍戦士ドラゴンカイザー【星龍戦士ドラゴンカイザーとは数千年前、世界征服を企んで封印された悪の超古代文明、マドールが封印を解かれて世界侵略を始めた。復活を予見した古代文明研究家であり、科学者の御手洗博士がマドールを封印した超古代文明の技術を参考にして開発した戦う戦士の事である】のメモリアルアイテムを買いに行って・・・・・・その後、どうしたんだっけ?
買いに行った後の記憶が無くて、それで気がついたらここにいた。一体、何がどうなってるんだ? うん・・・・・・?
イライラして右手で頭をかきむしっているとぐさっと何か刺さる感触が・・・・・・って、痛っ!
右手に何かついてる? それが刺さった!?
右手を見て確認すると、右手には赤い龍の腕みたいな籠手が装着してあった。その籠手の甲の部分には四角いディスプレイがはめてあった。籠手の尻の部分には何かを入れる穴が二つある
俺はこの籠手を知っている。これは・・・・・・ドラゴンカイザーに変身するための道具、龍拳ドラゴンナックラーだ。
エレメントクリスタルと呼ばれるクリスタルをドラゴンナックラーに装填して変身するのだが・・・・・・
「大人用のドラゴンナックラーってまだ販売はされてないよな」
そう、ドラゴンナックラーには某仮面の戦士達のような大人が付けることが出来る変身道具のオモチャはまだ、販売されていない。今回のイベントで、大人が付けられる変身道具のオモチャが販売されると告知があったけどそれではなさそうなんだよな。
まさか、コレが本物とかないよな・・・・・・あり得ないな
「とりあえず、今の持ち物を確認しようか」
自分の考えを否定する為にも違うことを考える。リュックを開けて中身を確認する。
財布(所持金16666円)にスマホ(圏外で繋がらない)と母さんに頼まれてメモリアルアイテムを買いに行く前に買った料理のレシピ本数冊に何故かトランプ。
トランプは持ってた記憶がないな。他にもドラゴンカイザーのイベント限定アイテムがあったはずだけど、何故かそれがない。
あとは腰にはドラゴンカイザーに変身するために使うクリスタルや、技を使うために使うクリスタルが入ってるクリスタルホルダーがある。これも俺は付けていた記憶がない。
「うーん、何がどうなってるんだ? ここがどこだかも分からないし、最悪だ・・・・・・うん?」
悩んでいると、近くの茂みががさがさと揺れて、緑色の肌の毛が生えていない五、六歳の男の子ぐらいの大きさの小鬼、ゴブリンがナイフを持って飛び出してきた。
「はっ?」
俺は状況が分からなくて呆けてしまった。何で、ゴブリンがいる? ゴブリンって映画やゲームのRPGに出てくるモンスターだよな? それが何で俺の目の前にゴブリンが? どこかの番組のどっきりか? それにしては何かリアルだけど・・・・・・っ!
嫌な予感がして、横に転がるとゴブリンは手に持っているナイフを俺に向けて振り下ろしてきた。俺の後ろにあった木の幹に切り傷がついている。
「うおいっ!?」
えっ? 何コレ? 本物? ありえない。だけど、俺の目の前にはあり得ない存在が確かに存在する。ということはやらないとやられる?
「ガアアアアッ!」
「ウワアアアアアッ!」
牙をむいて襲いかかってくるゴブリンにとっさに右手を突き出すと、ゴブリンに当たってゴブリンは吹っ飛んだ。
「・・・・・・えっ?」
俺は何が起きたか理解できてなかった。倒したのか?
恐る恐る近づくとゴブリンの首はあらぬ方向を向いていてゴブリンは動かない。どうやら倒したみたいだ。
・・・・・・このドラゴンナックラーって本物?
「本物か確かめるか」
俺は腰のクリスタルホルダーからDと書いてある白いクリスタルを一つ取り出して、ドラゴンナックラーのクリスタル装填口に装填して、ディスプレイに現れたインストールのボタンを押す。
「データクリスタル、インストール!」
『データクリスタルサーチ! オーケー? サーチ! インストール! GO!』
ボタンを押すと共にドラゴンナックラーから音声が流れる。この音声特撮番組の設定では御手洗博士の趣味でかなりうるさい。まあ、最近のヒーローの変身道具は黙ったら死ぬって言われるほどうるさいのが多いけどね。
音声が流れてディスプレイにはキーボードが現れる。音声で分かったけど、これはサーチのデータクリスタルか。
Dと書かれた白いクリスタルはデータクリスタルと言ってドラゴンナックラーに装填してクリスタルの中にあるデータをインストールするとその能力が使えるようになる。かなり便利な能力を持つクリスタルや意味のない能力を持ってるクリスタルがあって、データをインストールするまで何の能力を持っているクリスタルなのか分からないのだ。開発した御手洗博士曰く、その方が面白いからだそうだ。
今回インストールしたデータクリスタルはサーチのデータクリスタル。その名の通り、探す時に使うクリスタル。キーワードを入力したら人や物、場所を探すことできる。あとはネットとかの検索も出来る。
「とりあえず、近くにある人がいる場所を調べよう。ここはどこなのか情報が欲しいし・・・・・・言葉が通じるかは分からないけど」
今の俺に必要なのはこの世界の情報だ。どんな世界なのか、人がいるのか、どんな国があるのか、通貨は? どんなモンスターが居るのかなど、色んな情報が欲しい。
検索するとディスプレイには地図が表示される。その地図に表示されている国の名前はクロスフォード。やっぱり、知らない国だな。
地図の中で俺がいる現在地と近くにある村が表示される。
「よかった・・・・・・近くに村がある」
俺は思わずほっとした。
言葉が通じなかったら・・・・・・全力で逃げよう。
「近くにあるのは・・・・・・ドーチ村か。そこを目指すか・・・・・・あでも、ここ異世界だしもしかしてモンスターの村かも・・・・・・うん?」
今俺がいるところから近いのはドーチ村と言う名前の村でここから歩いて一時間ぐらいの所にあるみたいだな。村の上にはヒューマンって書いてある。
山の方にある村の名前を見ると村の名前の上にはオーガと書いてある村がある。
「ということはドーチ村は人が住む村か! よかった~」
取りあえず、ドーチ村を目標にして行こうか。
期待と不安と共にリュックを背負って俺はドーチ村に向かって歩き出した。
如何だったでしょうか?
次回は龍馬が変身して戦います。
次回『龍士着装! ドラグガイガー!』
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第1話「龍士着装! ドラグガイガー!」
森の中を歩いて五十分ぐらい。まだ村が見えないな。
歩いてる途中にホルダーに入ってあるクリスタルを確認した。
データクリスタルはさっき使ったサーチのデータクリスタルを併せて五個。サーチ以外のデータクリスタルも移動途中にインストールしておいた。インストールしたデータクリスタルの能力はドラゴンナックラーに登録されて何時でも使うことが出来る。
一つはサイレント。音を消すことができる能力だ。これはドラゴンナックラーの能力を使う時になる音声を消すことが出来てかなり便利だ。
二つ目はトランスレーション。言語を翻訳する能力のクリスタルだ。これがあれば会話が出来るはずだ。
三つ目はブースト。身体能力を強化する能力のクリスタル、戦いの時に便利かな。
四つ目はバースト、籠手の手のひらからエネルギー弾を放つ事が出来るようになる。
五つ目はホール。穴を創り出す能力。ドラグガイガーでは戦闘員を穴に落として倒したり、高いところから落ちた一般人を助けるために空中に穴を創り、受け止めて助けたりした。
他には武器を召喚するウェポンクリスタルのソードクリスタル、必殺技を放つために使うフィニッシュクリスタル。そして……
「ドラグガイガーになる為に必要なエレメントクリスタルか……」
赤い石を眺めながら呟いた。
この石が変身するのに必要な赤いクリスタル、フレイムクリスタルになるのだが、最初に変身するときには誰かを守りたい誰かの力になりたいとかの強い覚悟や強い思いが必要で戦う覚悟がない者には変身することが出来ないのだ。
まあ、クリスタルだけでは変身することは出来ないんだけどな。
クリスタルだけで使えるのはドラゴンナックラーにデータをインストールして使うデータクリスタルだけで、データクリスタルはデータをインストールした後は消滅してしまう使い捨てのクリスタルなのだ。
他のクリスタルはメモリスティックと呼ばれる部品に接続して使わないといけない。
メモリスティックはクリスタルの力を100%引き出すために使うアイテムである。
マドールとは星龍士ドラグガイガーの番組に出てくる悪の組織で、遙か昔、迫害されていたある国の王様と軍人達が魔法で怪人に姿を変えて報復した。彼らの怒りは収まらず、周辺の国を侵略し始めた。ある国の戦士は彼らと戦うためにエレメントの力とドラゴンの力が宿ったクリスタルを使って戦った。だがその戦士はクリスタルの力を完全に引き出すことができず、封印することしかできなかった。
博士はマドールを完全に倒すためにクリスタルの力を引き出すためのアイテムメモリスティックを作り、古代の戦士が変身するために使った道具を参考にしてドラゴンナックラーを開発した。
両方のアイテムが完成して変身者を探していたところにマドールに襲撃され、主人公である焔 竜が博士を助けてためらいなくドラゴンナックラーを装備してドラグガイガーになって戦った。
コレが物語の始まりだった。そして、ドラグガイガーとマドールとの戦いの幕開けだった。彼は一年間、マドールと戦い、勝ったのだ。
「俺に使えるのか・・・・・・」
俺にコレを覚醒させることが出来るほどの覚悟があるのか・・・・・・戦う事が出来るのか分からない。
『・・・・・・助けて誰か助けて!』
「っ!? 今のは何だ?」
突然、誰もいないのに誰か助けを求める声が聞こえた。
気のせいなのか・・・・・・そう思って俺はそのまま進もうとした。
『・・・・・・助けて! 誰か助けて!』
「っ!」
気のだと思っていたけど、気のせいではなかった。どこだ・・・・・・どこから聞こえたんだ。
辺りを見渡すも人の影はない。ということは、もしかしてこの先の村から?
ディスプレイの地図を見てみると、ドーチ村があるところに炎のマークが・・・・・・えっ? もしかして、この村、襲われてる? なら・・・・・・助けないと、いや、ろくに戦ったことがない俺が戦えるのか? 行っても邪魔になるんじゃないのかそう思って躊躇してしまう。
いや、だけど今、ここにヒーローが居たなら・・・・・・ドラグガイガーならどうするか。そんなの・・・・・・決まってるか。
「あー! ウダウダしてても仕方ない! 当たって砕けろだ!」
俺は走り出して森を駆け抜けた。森を抜けると、村が見えて煙りが見えた。
やっぱり、あの村か!
村に向かって走り続けて、五分ぐらいでついたけど・・・・・・そこで見た景色は地獄だった。
頭を食いちぎられた男性の死体、上半身と下半身が分かれている女性の死体、鋭い何かで切り裂かれた男性の死体・・・・・・辺り一面、血の海だった。
「うぷっ! おえええええっ!」
俺は目の前の惨劇に思わず胃の中にあった物を戻してしまって。
「はあっ・・・・・・はあっ・・・・・・」
全てはき出した俺は歩き出した。・・・・・・もしかしたらまだ生存者が居るかもしれない。そう思ったからだ。
『お願い! 誰か助けて!』
「っ! あの声が聞こえた! こっちか!」
俺は声が聞こえた方に走った。
走っていくと広場が見えてきた。
いったん、近くの建物の裏に隠れて広場の様子を見る。広場には五十人ぐらいの村人が集められていて、村人達を剣や槍に棍棒などを持っている赤い鱗の身体の目の色が紫な二足歩行のトカゲ・・・・・・リザードマン達が囲んでいた。数は・・・・・・三十体か。
「何だこの村にはコレしか人間が居ないのか」
「狩りがいがありませんね頭」
リザードマン達の中でも一際でかく、顔に刺青を入れているリザードマンはつまらなそうにしている。あいつがリザードマンのリーダーか。
「お願いです! これ以上村人を殺さないでください!」
すると、初老の男性がリザードマンのリーダーにすがってきた。
「邪魔だくそ爺!」
リザードマンはうっとうしそうに男性を蹴飛ばした。
「がふっ!」
蹴飛ばされた男性は口から血を吐き出す。
やばい・・・・・・このままだとあの人が死んでしまう。
「そうか、お前、死にたいんだな。なら、お前から殺してやる!」
リザードマンは持っている剣を振りかざす。
「おじいちゃん!」
「やめろおおっ!」
『ブースト! GO!』
12か13歳ぐらいの女の子が飛び出そうとする前に俺が建物の裏から走り出して、助走を付けてさらに、ブーストの能力で身体を強化してリザードマンのリーダーを思いっきり蹴り飛ばす。
「ぐあっ!」
「頭っ!」
急に俺が現れて驚いたのか防御できず、リザードマンのリーダーは蹴り飛ばされた。そのリザードマンを心配して、村人達を囲んでいたリザードマン達が駆け寄ってきた。
「大丈夫ですか! しっかりしてください!」
俺は男性に駆け寄る。とりあえず、話しかけて意識があるか確かめる。言葉は・・・・・・この人達が何言ってるか分かる。トランスレーションのおかげだな。
ええと、どうすればいいんだ!? 応急処置とかやり方分からないし、治癒のクリスタルがあるかも分からないし、治癒魔法とか・・・・・・いや、魔法とかあるのか? リザードマンとかいるんだし、あるよな。
でも、魔法使えるか分からないし、無理だ!
「おじいちゃん!」
「村長!」
リザードマン達に囲まれていた人達が男性に駆け寄る。この人、この村の村長さんか・・・・・・
「すいません、誰かこの人の治療をお願いします!」
「は、はい!」
俺が呼びかけると、村長さんのことをお祖父ちゃんと呼んでいた女の子が村長さんに手をかざす。
すると、彼女の手が淡く光り、村長さんの体を包み込む。
これってもしかして、治癒魔法か? なら、任せて良いかな。
俺は起き上がったリザードマンのリーダーを睨む。
「痛いな・・・・・・お前、何者だ」
「名乗るほどでもない俺はただの通りすがりだ。そんなことより、あんたに聞きたいことがある」
リザードマンのリーダーは蹴られた部分を撫でながら聞いてくるが、俺はろくに応えずに逆に質問する。
「何だよ」
「何で、この村の人達を殺した! この人達はお前達に何かしたのか?」
「理由なんてねえよ。ただ、殺すのが楽しくて殺したそれだけだ」
「なっ!」
リザードマン達の動機を聞いて俺は言葉が出なかった。
殺すのが楽しくて殺した? 仲間が殺された復讐だとか。生きるために仕方なくとかそう言うのじゃなくて娯楽のために人を殺しているのか。
「ふざけんな!」
俺はフレイムクリスタルになる赤い石を右手で強く握りしめる。
ゴブリンを倒したのも、リザードマンを蹴り飛ばせたのも勢いで出来てしまったけど、この数のリザードマンを倒せるほど、俺は強くない。
見ぬふりして逃げればこいつらとは戦わないですんだかもしれないけど、俺にはこの村の人達を見捨てることが出来なかった。だから頼む、フレイムクリスタル。俺にみんなを守る力を貸してくれ!
「ん? どうし・・・・・・」
「うおりゃあああああっ!」
「ぶへっ!?」
動かない俺を不思議そうにしていたリザードマンのリーダーを握りしめた拳で、鼻先を思いっきり殴る。殴られたリザードマンは吹っ飛んで倒れる。
「頭!?」
リーダーが今度は殴られて吹っ飛んだことに部下のリザードマンは驚く
すると、握り拳から赤い光がこぼれてきた。拳を開くと、石がはがれてフレイムクリスタルが姿を現した。
「俺に力を貸してくれるのか・・・・・・ありがとう」
俺は腰のクリスタルホルダーからメモリースティックを取り出して、フレイムクリスタルを装填してドラゴンナックラーにセットする。
『フレイムクリスタル!』
ドラゴンナックラーからロック調の待機音声が流れ、ディスプレイにはEnterの文字が現れる。
「龍士着装!」
『フレイムクリスタル! GO! GO! GO! 燃える炎! 燃える闘志! 始まりの戦士! ドラグガイガー!』
俺は叫びながらディスプレイを触れてドラゴンナックラーを突き出す。すると、ドラゴンナックラーから変身音声が流れて赤い大きなクリスタルが俺の身体を包んだ。
そのクリスタルの中でデータ化されていた両肩に青い水晶を埋め込んである赤い龍の鎧、サラマンダーアーマーを纏い、左手にディスプレイのないドラゴンナックラーと似た赤い手甲、サラマンダーナックルを付ける。両脚にも赤い脚甲、サラマンダーブーツを履く。赤い龍のような頭部サラマンダーマスクをかぶって包んでいるクリスタルを壊して星龍士ドラグガイガーへと変身した。
「これが・・・・・・ドラグガイガーの力か」
俺は両手を握っては開いてを繰り返して力の感触を確かめる。
「さあて、俺の限界超えさせてもらおうか!」
俺は特撮のドラグガイガーの決めぜりふを叫び、拳を構える。
これからが戦いの始まりだ!
如何だったでしょうか?
今回は変身しただけで戦うのは次回です。
ドラグガイガーの力を得た龍馬。その力をどう使う?
次回「初戦闘」
よろしくお願いします。
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第2話「初戦闘」
「な、何だその姿はっ!」
リザードマンのリーダーは俺の姿、ドラグガイガーの姿に驚いていた。
「この姿か? この姿は星龍戦士、ドラグガイガー! 悪を燃やし、弱き者を救う戦士だ!」
拳を構えながら言い放つ。理不尽なことで傷つけられたこの村の人達を助けたい! だから、俺は戦う!
「くっ! こんなのはこけおどしだ! 野郎ども! やっちまえ!」
「「「「おおっ!」」」」
リザードマン達は俺を取り囲む。数が多いけど、大丈夫か?
「ええい、どっからでもかかってこい!」
襲いかかってくるリザードマン達のうち、一体の攻撃を受け流して避ける。もう一体のリザードマンは避けることが出来ずに殴ろうと、拳を突き出した・・・・・・が。
俺のこぶしは空を切ってよろけてしまった。
「・・・・・・あれ?」
当てようとしたのに当たらない。これってもしかして俺がドラグガイガーの力に追いつけてない?
「おいおいなんだ! 見かけ倒しか!」
無様な姿をさらした俺を見てハンマーを構えて迫ってくるリザードマン。コレはちょっとやばいかな。
「がっ!」
俺は腕をクロスしてハンマーの衝撃に耐えようとしたが、踏ん張れず、吹っ飛んでいき、民家と激突してしまう。
「いっ・・・・・・たくない?」
崩れた民家から立ち上がって、腕をさするが全然痛みがない。これってドラグガイガーの鎧のおかげ?
「さすがドラグガイガーの鎧! さあ、こっから反撃開始・・・・・・ってやばっ! 家壊しちゃってる!」
リザードマン達の群れに向かっていこうとした時、今更ながら家を壊してしまったことを思い出す。あーどうしよう!
「・・・・・・あいつ、ぴんぴんしてるぞ」
「あの鎧・・・・・・堅いな」
俺の様子を遠巻きながら見てるリザードマン達。取りあえず、戦わないと・・・・・・!
拳を構えて俺はリザードマンの群れに向かっていく。
「おりゃあっ!」
リザードマンを殴り飛ばそうと拳を振るうが拳は空を切ってしまう。
「おいおい、どうしたんだぁ? 空回りばっかじゃねえか」
「いい的じゃねえか!」
リザードマン達は俺を殴り続ける。ドラグガイガーの鎧が頑丈だからダメージは殆ど無いけど、このまま反撃できないのも・・・・・・どうしたらいい!
「あー! 何時までもこんなところで止まってられるかー!」
もうやけくそになって思いっきり叫ぶ。すると、突然俺の身体が燃えだした。
「熱ぅー! ・・・・・・くない。むしろなんか心地良い・・・・・・力が溢れてくるぞ。はああっ!」
身体に纏ってた炎を振り払って、手を握って開いて力の感覚を確かめる。うん、何とかいけそうだ!
俺の身体がやっと力に慣れたのか?
「何か燃えてるけど、気にするな! やっちまえ!」
「おおっ!」
俺の身体が燃えだしたことにリザードマン達はひるんだが、襲いかかってきた。
「うおおおっ!」
「くっ! どりゃあっ!」
一体のリザードマンが飛びかかってきたので、胸を思いっきり殴り飛ばす。
「があっ!」
胸を殴られたリザードマンはパキポキと骨が折れる音が聞こえて動かなくなる。
・・・・・・これが生き物を殺す感覚か。ゴブリンの時は無我夢中だったから考える余裕はなかったけど、俺は今、自分の意志で生き物を殺している。罪悪感がない・・・・・・とは言えないな。だけど、こいつらも人を殺している。躊躇しちゃダメだ。
「てめえ!」
「どうした? お前達の力はこんなものか?」
「なめるな! 人間風情が!」
仲間が殺されたことにリザードマンのリーダーは俺の挑発に切れる。そして、武器を振り上げて襲いかかってきた。
攻撃を避けるのは難しいからもう、全部受け止めよう! ドラグガイガーの鎧は堅いから大丈夫のはず。
俺はリザードマンのリーダーの攻撃を避けずに受け止めて、他のリザードマン達と戦う。
『フレイム! GO!』
パネルに現れたフレイムの文字に触れると、両腕に炎を纏う。
フレイムクリスタルには、変身後にも能力を発動できて、拳や脚に炎を纏わせて強化したり、炎をはなったりすることができる。
「おりゃあっ!」
「ぐあああっ!」
目の前にいたリザードマンを殴り飛ばすと、リザードマンは爆発して、ばらばらになる。
リザードマンがばらばらになったとき、赤い野球ボールぐらいの大きさの石が落ちた。何だあの赤い石?
まあ、今は気にしても仕方ない。
「うおりゃっ! おりゃあっ!
俺は近くにいたリザードマンを掴み、殴る。背中から襲いかかろうとしたリザードマンも蹴り飛ばす。
「がああっ!」
「ぐっ!」
殴られたリザードマンと蹴り飛ばされたリザードマンもフレイムで強化された効果で爆発して、ばらばらの肉片と変わった。
「さて、次は・・・・・・」
あるクリスタルを使おうと取り出そうとすると、一体のリザードマンが剣を振り下ろしてきた。
それを避けて、リザードマンの手首を掴んで逃がさないようにしてから頭突きを喰らわして、殴る。
「次はコレだ!」
俺はウェポンクリスタルブレードを取り出して、メモリスティックに付けてドラゴンナックラーに装填して右手をかざす。
『ウェポンクリスタル! ブレード! GO! GO!』
ドラゴンナックラーから音声が流れると、右手に剣の形をした炎が現れる。
それを掴むと、炎は剣へと変わる。
その剣は赤い刀身に鍔から柄にかけて赤い龍の頭がついている。この剣の名前は炎龍剣 マーズブレード。ドラゴンカイザーの基本武器である、その刀身には宿すのはサラマンダーの炎。その炎で敵を焼き切る。
「ちっ! 武器を隠し持ってたのか!」
リザードマン達は俺が剣を持っていたことに苦い顔をする。
「・・・・・・行くぞ」
俺はマーズブレードを構えて駆け出す。
「でやっ! だあっ! うおりゃああっ!」
すれ違いざまに十体のリザードマンを切り伏せて、刀身を撫でる。かなり切れ味が鋭い
「やばい・・・・・・かなり切れるな。人間相手には使えないな」
「この野郎!」
マーズブレードが切った後から炎が上がっているのを見てると、そんなことお構いなしに襲いかかってくるリザードマン。その攻撃を受け止めて、リザードマンの空いてる腹を蹴り飛ばしてマーズブレードを振り下ろして両断する。
「ぐっ・・・・・・」
「くそっ!」
俺はそのままもう一体、リザードマンに向かっていく。リザードマンは剣で受け止めようとした。
だが、受け止めようとした剣がマーズブレードの切れ味には耐えられず、剣ごと切られて血を吹き出して倒れる。
「くっ、こいつ強いぞ!」
「頭! こうなったら俺達で時間を稼ぐからみんなでブレスを!」
三体のリザードマンが俺に向かってくる。時間稼ぎか・・・・・・
攻撃を受けながら。ブレスって・・・・・・ドラゴンとかがやってるあれか?
まあ、やられたらやっかいだろうから止めるか。まずは、この三体のリザードマンを倒すか。
マーズブレードを地面に突き刺して、腰のクリスタルホルダーからファイナルクリスタルを取り出して、メモリスティックに付けてドラゴンナックラーに装填する。
『フィニッシュクリスタル! GO! GO!』
「ガイガースマッシュ!」
音声と共にエネルギーが脚に溜まっていく。精神を集中して、脚に力を入れて空へとジャンプする。
そして、空中で一回転して三体のリザードマンに向けて蹴りを放つ。
「でやああああああっ!」
蹴りを放つ時に俺の身体は龍の形の炎に包まれて、三体のリザードマンに蹴りが当たり吹っ飛び大爆発を起こした。
「ふうっ・・・・・・」
着地して一息つく。さてと・・・・・・あとはリザードマンのリーダーとかか。あと、何か焦げ臭いような。
リザードマンのリーダーを倒すため、振り返ると炎が目前まで迫り、俺の身体を包んで燃える。熱っ。
「ははっやったぞ。あんな鎧を着ていても、俺達の炎には耐えられるはずが・・・・・・」
「あー確かにこれ、龍装してなかったら焼け死んでたな」
十体のリザードマンの放ったブレスは俺に当たったが、俺には傷一つ付けられていなかった。
「な、何でテメエ生きてるんだよ!」
「あー、言ってなかったっけ。ドラグライザーはな敵の炎を吸収して、自分の力に変えることが出来るんだ」
ドラグガイガーは両肩にあるサラマンダークリスタルで炎を吸収して自分の力に変換することが出来る。ドラグガイガーには他の属性の力を使う姿があり、違う属性になると名前も変わり、その属性の力を吸収して自分の力になる。
ちなみに、両肩のクリスタルの名前がサラマンダークリスタルなのは、最初、番組名が炎龍帝サラマンダーカイザーで、それが没になった名残だそうだ。
「ふっ・・・・・・ふざけるな!」
「ふざけてないさ、さて、終わりにしようか」
俺はもう一度、ドラゴンナックラーにフィニッシュクリスタルメモリを装填して、エンターを押す。
『フィニッシュクリスタル! GO! GO!』
「ガイガーバスター!」
エンターのボタンを押すと、籠手にエネルギーが溜まっていく。しっかりと地面を踏み込んで、拳を引いて思いっきり突き出す。
すると、龍の形をした炎がリザードマン達に向かっていく。
「頭っ! 危ねえ!」
リザードマンのリーダーは仲間のリザードマンに突き飛ばされて攻撃を受けずにすんだが、他のリザードマン達は炎に焼かれて石を残して燃えかすとなる。
残りはリーダーだけになったか。
「くっ・・・・・・みんな」
悔しそうに砂を握りしめるリザードマンのリーダー。俺の事を睨み、武器を握り直して立ち上がる。
もう終わりにして帰っては・・・・・・くれないか。
「ぜってえ、お前を許せねえ! 差し違えても殺す! うおおおっ!」
リザードマンのリーダーが叫ぶと身体が紫色の不気味なオーラを纏い始めた。すると身体の筋肉が盛り上がり、爪が鋭くなる。
「な、何が起きているんだ?」
「はははっ! すげえ! 力が溢れてくるぜ!」
俺は突然の変化に驚き、リザードマンのリーダーは新たな力に歓喜している。
「行くぜ!」
リザードマンのリーダーは俺に近づき、殴るために拳を突き出す。俺は腕をクロスして防ごうとしたが、間に合わずに吹っ飛んでしまう。
痛っ! ドラグガイガーの鎧を纏ってるのに殴られたところが痛い。やっぱりパワーアップしたのか・・・・・
「まだまだ!」
間髪入れず、拳を何度も打ち込んでくるリザードマンのリーダー。吹き飛ばされないように踏み込んで耐えるが鎧のあちこちから火花が散っていく。
「ぐああっ!」
「ちっ! しぶといな! ならコレでも喰らえ!」
リザードマンのリーダーは手から黒いエネルギーを放った。そのエネルギーを浴びた俺は火花を散らしながら吹き飛び、また民家に突っ込んだ。
「がはっ!」
ボロボロになった民家の中で立ち上がろうとしたが、痛みで立ち上がれなかった。
頼む、立ち上がってくれ! まだ守らなくちゃいけない人達が居るんだ! だから立ち上がらないと!
だけど、思いとは裏腹に身体は全く動かない。
「おいおい、もう終わりか? なら、コレで終わりにするぜ」
リザードマンのリーダーは一歩一歩、手にエネルギーを集めながら近づいてきた。
これはちょっとやばい・・・・・・
「死ね!」
手から黒いエネルギーが放たれると思ったその時。
「聖なる光よ、邪悪なる者を射貫け! シャイニングアロー!」
すると、どこからか飛んできた光の矢がリザードマンに飛んできて刺さる。
あの光の矢は魔法? いったい誰が・・・・・・っ!
矢が飛んできた方を見ると村長を治療していた女の子がいた。何で! 逃げたはずじゃないのか?
「何だ? 今の魔法はテメエが撃ったのか? 全然痛くないぜ。良いか魔法ってのはな・・・・・・こう放つんだよ!」
リザードマンのリーダーはエネルギーを溜めた手を女の子に向ける。あんな攻撃を生身の女の子が受けたら一溜まりもない!
動け! 動けよ! 目の前で傷つこうとしてる人がいるんだ! 守れないで何がヒーローだ!
今、限界を超えろ!
「うおおおっ!」
『フレイム!』
『ブースト!』
『フレイム! ブースト! バースト!!』
気合いを入れて叫ぶとドラゴンナックラーから音声が勝手に流れた。すると、体中に力があふれ出した。
これならいける!
「うおりゃあああっ!」
俺は走って女の子の前に入って、黒いエネルギーを受け止めて弾き返した。
「なっ! 貴様、何故立てるんだ!」
リザードマンのリーダーは俺が起き上がって攻撃を弾き返したことに驚いていた。
「何故かって? 目の前に傷つこうとしてる人がいるんだ。守れないで後悔するのが嫌だから、立ち上がるんだ」
体中の痛みに耐えながら俺はリザードマンのリーダーと向かい合う。
痛みだけじゃない。体中の血が燃えたぎった熱湯のように熱く感じる。どうやらさっきのドラゴンナックラーから流れてきた音声はかなりパワーアップすることができるけど、かなり負担が多いみたいだ。
早く決着を付けないと身体が持たない!
「後悔するのが嫌か・・・・・・見知らない奴ら相手にそこまで命賭けるなんてお前、バカだろ」
「そうかもな」
「はっ・・・・・・そういやあ、名乗ってなかったな。俺の名はログ。てめえの名前は何だ? ドラグガイガーは本当の名前じゃないんだろ?」
「龍馬・・・・・・御劔龍馬だ。いきなりどうした」
急に名前を聞いてきてどうしたのかと思った。
「なに、殺す奴の名前ぐらい知っておこうと思ってな」
「そっか。なら俺も名乗っておいて良かったな。今から俺がお前を倒すからな」
「はっ! 言ってろ!」
リザードマンのリーダー・・・・・・ログは殴りかかってきた。俺は逃げずに受け止めて殴り合う。
「うおおおっ!」
「うおらっ!」
お互い、避けずに殴り合う。ログの鱗は剥がれ落ちて、ドラグガイガーの鎧からも火花が散る。
「いい加減くたばれくそが!」
「ぐあっ!」
ログに顔面を殴られてくらっとなるが、踏ん張って殴り返す。
殴られたとき、口の中を切ったのか鉄の味が広がる。
「ぐううううっ!」
突然、体中がしびれ始めた。ぐっ・・・・・・そろそろ限界か。頼む! もう少し保ってくれ!
「うおおおっ!」
俺は地面に刺さっていたマーズブレードを掴んで抜いて、龍の頭を開いて口の部分にあるクリスタルをはめる部分にフィニッシュクリスタルをセットして頭を閉じる。
『ガブリっ!』
フィニッシュクリスタルの効果でマーズブレードは炎を纏った。俺は静かにマーズブレードを構える。
「ウオオオッ!」
ログも落ちていた剣を拾って突っ込んできた。俺はマーズブレードで受け止めて弾く。
『フィニッシュクリスタル! ガブッと! クリスタルブレイク!』
「ガイガープロミネンス!」
マーズブレードから音声が流れて、エネルギーが極限まで高まり、炎の勢いは強くなりパワーも上がった。そして、燃えるマーズブレードを振り下ろして、リザードマンのリーダーを真っ二つに両断する。
「がっ! お、親父・・・・・・」
ログは何か言おうとしたが、言い終わる前に倒れて爆発する。
ログが爆発したことを確認すると、変身が解除されて倒れ込んで俺は意識を手放した。
第2話、如何だったでしょうか?
初めての戦いだったこともあり、力の使い方が分からなくて苦戦した龍馬。戦闘の疲れで気絶した龍馬が目を覚ました場所は…
次回「ドーチ村」
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第3話「ドーチ村」
気がつくと知らない部屋のベッドで寝ていた。
「・・・・・・ここはどこだ? 俺は確かリザードマン達と戦って・・・・・・」
身体を起こしながら何があったか思い出した。ボロボロになりながらログと戦って戦い終わった後、気絶して、その後誰かが運んできてくれたのだろうか。
さて、これからどうしようか。ベッドから降りて、部屋の中を見渡す。
「あっ、勇者様お目覚めになりましたか? おはようございます」
すると、部屋のドアが開いて村長さんのお孫さんがトレーを持って部屋の中に入ってきた。
勇者って俺の事か?
「ええと、おはようございます。勇者って俺の事ですか?」
「はい! 伝説に出てくる勇者のようでしたので・・・・・・ご迷惑でしたか?」
理由を聞くと困った風に応える女の子。いや、迷惑じゃないけどね。俺には不釣り合いというか。
「いえ、そんな迷惑ではないです・・・・・・」
ちょっと恥ずかしい感じがする・・・・・・
頬を掻いていると、グーッと腹が鳴った。そういえば、家を出てから何も食べてなかったな・・・・・・
「勇者様、簡単な物ですが、食事を作りました。どうか、食べてください」
村長さんのお孫さんは微笑みながら手に持っていたトレーをテーブルの上に置く。
「ありがとうございます。いただきます・・・・・・その前にあなたの名前を聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」
ご飯を食べる前に名前を聞いておくことにした。名前を知ってたほうが話しやすいからね。
「申し遅れました。私の名前はレナ・ドーチ。よろしくお願いします。勇者様」
「よろしくおねがいします。俺の名前は御劔龍馬といいます。御劔が姓で龍馬が名前です」
お互い自己紹介をする。レナさんっていうのか・・・・・・良い名前だな。
「御劔龍馬様ですか・・・・・・姓が先と言うことは龍馬様は最薙の国のご出身ですか?」
俺の名前を聞いて気になったのか、出身地を聞いてくる。最薙の国って国があるのか。
恐らく、日本に当たる国なんだろうか。
「いえ、たぶん違う国ですね」
「そうですか・・・・・・あ、すいません。ご飯が冷めてしまいますね。どうか、お食べください」
「こっちらこそすいません、話しかけたのは俺なのに気を遣わせてしまって。いただきます」
俺は椅子に座り、ご飯をいただく。
レナさんが用意してくれたご飯のメニューは柔らかそうなパンに、野菜をじっくり煮込んだスープにこんがり焼いた魚の塩焼き。どれも美味しそうだ。
まずは柔らかそうなパンから・・・・・・おおっふかふかでうまい! じゃあ、今度はスープを飲もう。
スープをスプーンで掬って一口飲む。うん、あっさりしていて飲みやすい。
次は魚の塩焼きをいただこう。うん、塩加減が良い感じでしかも、食べる人のことを考えて骨を取り除いていてくれて食べやすい。
異世界のご飯はまずいってよく言うけど、そんなこと無かったな。
俺は無我夢中でご飯を食べる。そして十分後、全て完食した。
「ごちそうさまでした! とても美味しかったです。ありがとうございます」
俺は手を合わせてレナさんにお礼を言う。
「ありがとうございます。では、食器をお下げしますね。あと、村長と騎士団長様をお呼びしてもよろしいでしょうか? 龍馬様と話しがしたいと起きるのを待っていたので」
騎士団長? 今、騎士団が来ているんだこの村に。いや、普通来るか。リザードマンに襲われたんだし。調査に来るだろう。
「そうなんですか。分かりました。お願いします。俺も色々と話したいことがあったので」
村長さんと騎士団長さん二人もまたせてたのか悪いことしたかな・・・・・・何か申し訳ない。
「では少し、お待ちください」
レナさんは食器を下げて部屋を出て行く。
しかし、騎士団長か・・・・・・どんな人だろうかやはり歴戦の戦士みたいな感じなのかな。怖い人じゃないと良いな・・・・・・
考え事をしているとドアをノックする音が聞こえた。あっ、きたのかな?
「龍馬様、村長と騎士団長様をお連れしました」
「ありがとうございます」
そういうと、レナさんが部屋に入ってその後、村長さんがはいってきた。その後に騎士団長さんと思わしき人が入って来た。
その人はすらりと背が高く、さらさらな金色の髪に青い瞳に綺麗な顔。きっちりとした鎧を身に纏った綺麗な女性だった。
俺は思わず彼女に見ほれていた。
「うん? どうしたんだい? 私の顔に何かついているのか?」
「あ、いえ・・・・・・とてもお綺麗だなと思ったので」
「ふふっ、ありがとう。だが意外だっただろう。女性が団長で。父や兄にも女なのだからお淑やかにしなさいとかよく言われる」
「いえ、そんなことないと思います。女性が騎士団長になるのは大変で、かなり努力をしたんだろうなと思います」
俺がいた世界では女性が管理職になったりするのは珍しくないけど、この世界ではそうではないのかな?
「そうか。ありがとう。あまり、褒められたことはなくて少し恥ずかしいかな」
騎士団長さんはふふと微笑んだ。
その笑顔に俺はどきっとした。やっぱりすごく綺麗だ。
「む~」
騎士団長さんの笑顔にときめいているとレナさんが何故かむくれている。何でだろう・・・・・・もしかして俺の事が好きで嫉妬してるのかな? いや、そんな惚れることはしてないよな・・・・・・
「ああ、そうだすまない。名乗るのが遅れてしまった。私の名はエリス・クロスフォード。クロスフォード騎士団の騎士団長をしている。よろしく頼む」
「よろしくお願いします。俺の名前は御劔龍馬です。姓が先で名前が後です」
取りあえずお互い自己紹介する。
エリスさんって言うんだ。良い名前だな~
「姓が先・・・・・・ということは君は最薙の国の出身か?」
「あ、いえ、違います。違う国の出身です」
エリスさんも俺の名前を聞いて最薙の国の出身と勘違いする。最薙の国ってどんな国なんだろう。
「そうだったのかすまない」
「いえいえ、気にしないでください」
「すまない。それとお礼を言わせてくれ。領民を救ってくれてありがとう。騎士団長として、領主の娘として。君が居なければこの村は全滅していただろう」
そう言ってエリスさんは俺に向かって頭を下げた。
「ちょっ、エリスさん頭を上げてください! 俺はただ偶然通りかかっただけで・・・・・・それに領主の娘?」
「ああ、知らなかったのか。私の家、クロスフォード家は貴族の家でこの辺の村や町を領地として治めているのだ。そして、騎士として領民達を守ってきたのだ。最近、モンスターが凶暴化していてね。それでパトロールをしていたんだが、リザードマンが村を襲撃していることを知ったの。村にいる戦える者が何とか追い返したみたいなんだけど、ドーチ村には戦える若者が町で農産物を売りに行っていて危ない状態だと知って慌ててこの村にやってきたというわけ」
「そうだったんですか・・・・・・それで村に来てみたら俺が倒れていたと?」
「そうだね。村が危ないと急いで来てみたらリザードマンはすでに倒されていて、ボロボロの君が倒れていて何があったんだと思ったよ。村長さん達に事情を聞いて驚いたよ。君が突然、村に現れて鎧を纏ってリザードマン達を一人で倒したと聞かされたからね。君のおかげでこの村は救われたんだ」
エリスさんの話を聞いて何で村に戦える人がいなかったのか分かった。町に行ってるところを襲撃されたのか・・・・・・それでも何人か残しておいた方が良かったんじゃないかな。
「いえそんな、大した事はしてないですよ・・・・・・俺は救えなかったんですから。俺ががもう少し早くこの村に来ていたらもっと助けられたはずなのに・・・・・・俺、躊躇してしまったんです。今まで戦ったことが無くて、戦ったことがない素人の俺がいっても邪魔になるだけじゃないのか? どんな奴が襲ってるのか分からなかったし、行っても負けたらどうしようって怖くなって躊躇ってしまったんです。それで救えなかった人達が居たんです。俺はお礼を言われるような男じゃないです」
俺は拳を強く握りしめた。救えなかったことが悔しかった。ヒーローの力があったのに俺は救えなかったんだ・・・・・・
「そうか君は村人を全員救えなかったことを後悔しているのか・・・・・・あまり、思い上がらない方が良い」
「えっ?」
「君のことは殆ど知らないし、どれぐらい強いのかも分からない。だが、君も私も人間だ。人間は神と違って完璧ではない。救えない命だってある。我々がすることは救えなかったことを引きずるのではなく、これ以上犠牲者を出さないことじゃないのか?」
「それは・・・・・・」
エリスさんに指摘されて俺は言い返せなくなってうつむいてしまった。確かにエリスさんの言うとおりだ。ずっと後悔していても前には進めない。
すると、レナさんが俺の手を握ってきた。
「っ! レ、レナさん?」
レナさんの突然の行動に戸惑ってしまう。顔を上げるとレナさんは涙を浮かべていた。
「そんな、自分を責めないでください・・・・・・龍馬さんがいたから私達は助かったんです。それに龍馬さんがお父さん達の敵を取ってくれたんです。ありがとうございます」
「レナさん・・・・・・俺は・・・・・・くっ、ああああっ!」
涙を浮かべながらレナさんは俺の事を励ましてくれた。俺は崩れ落ちて泣いた。
家族を失って辛いはずなのに俺を慰めてくれたなんて・・・・・・もう、誰かが泣くところは見たくない。だから強くなりたい。守りたい人を守れるために強くなるんだ!
「す、すいません、お見苦しいところをお見せして・・・・・・」
数分後、泣き止んだ俺は恥ずかしさで顔を赤くしながらエリスさん達に謝る。
「いや、気にしないで欲しい。誰だって泣きたいときはあるさ」
エリスさんは苦笑いしている。気にしないでって言われても恥ずかしいんだよな・・・・・・
取りあえず俺達はテーブルで向かい合い椅子に座った。
「さて、君に渡す物がある」
エリスさんは何かが入った袋を渡してきた。何だろうコレ?
「その袋には金貨が二十枚入っている。この村を救ってくれたお礼だ。受け取ってくれないか?」
「金貨二十枚!?」
俺は渡された金額がよく分からなくてリアクションできなかったけど、レナさんの反応からしてかなりの金額なのだろう。
「すいません、こんなにいただけません」
俺は渡された金貨の袋をエリスさんに返す。元々、お礼が欲しくて村の人達を助けたわけではないから貰わなくても良いし。
「どうしてかな?」
「元々、俺はお礼が欲しくてこの村の人達を助けたわけではないので・・・・・・だからいらないです」
「ふむ、なら何のためにこの村の人達を助けたんだ?」
お礼がいらないことを不思議がって理由を聞かれる。理由は・・・・・・ないな。
「可笑しいと思われるかもしれませんが、声が聞こえたんです。助けを求める声が。不思議に思って迷いましたけど、助けたいと思った。だから助けました。理由なんてそれで十分です」
突然聞こえた助けを求めた声。あの声が俺をこの村に導いたんだ。
「声が聞こえた・・・・・・か。面白いな君は、気に入った!」
うんうんと頷いてエリスさんは微笑む。気に入ってもらえたんだ。
「なおさらこのお金を受け取ってもらいたいのだが・・・・・・」
「ええと、あっ、なら、そのお金はこの村の復興のために使ってください。さっきの戦いで建物をいくつ壊してしまいましたし!」
それでもお金を渡そうとするエリスさんにどうした物かと考えると、俺は戦って建物を壊したことを思い出した。俺が壊した物を直すのにお金が必要になるだろうし、それに使って貰おう。我ながら良いアイディア。
「そのことなんだが・・・・・・君の壊した建物はすでに直っている」
「えっ?」
俺はエリスさんの言ってることが理解できなかった。すでに直っている? いくら何でも早くないか?
「嘘だろ・・・・・・」
エリスさんの言っていたことが信じられなかったから外に出て確認してみたら、俺が吹き飛ばされて崩れた家が直っていた。一体どうなっているんだ?
「村人達の話しでは君が倒れたあと壊れた建物が時間が巻き戻るように建物が直ったらしいんだ。何でそうなったのか誰も分からないみたいだ」
「そうだったんですか・・・・・・何でですかね」
「分からんが・・・・・・神様か何かの奇跡だと思いたいね。それで君はこれからどうするんだい? どこで何をするんだ?」
時間が巻き戻るように建物が直るって魔法かと思ったけど、違うのか。
これからどうするか・・・・・・何も考えてなかった。
「そうですね・・・・・・どうしましょう」
「そうか。冒険者になるのはどうだろうか。私達の本拠地がある町なら冒険者ギルドもある」
どうしようか考えていると、エリスさんが提案してくれる。冒険者か・・・・・・良いかもしれないな。この世界に来た理由や目的を探してみる時間も作れるだろうし。
「そうですね・・・・・・なら冒険者になります」
「そうか、それならなおさらこのお金が必要だろう。宿に泊まるためだったり、アイテムを買うにもお金は必要だからね」
「はい、すいません。ありがたく頂戴します」
もうこれ以上断ってもエリスさんは折れないだろうと諦めてお金を受けると事にした・・・・・・何か情けないな。
「うむ、受け取ってくれたか。それでこれから十名ほど残して我々は本拠地に戻る予定なのだが、一緒に町に行かないか?」
「そうですね・・・・・・お願いします」
「そうか。では、1時間後に出発しよう」
「分かりました。あの・・・・・・亡くなった方のお墓はありますか?」
1時間後に出発と聞いて時間があるなら、亡くなった人達のお墓に行って手を合わせたい。
「ああ、我々が作った」
「龍馬様、私が案内します」
「じゃあ、案内をお願いしますね。レナさん」
案内をレナさんが引き受けてくれたので後をついて行きお墓に向かう。
お墓は村の端にあり、この村の墓は土葬式らしく、穴を掘ってご遺体を埋めて木の棒で十字を作り墓標代わりに立ててある。墓標は後日作るらしい。
俺はお墓の前にしゃがんで手を合わせた。
・・・・・・俺が弱かったせいで、俺が迷ったせいで救えなかった命がある。
それで俺は激しく後悔した。だから、俺はもう、迷わない。迷って救えなくて後悔したくないから。そしてそのためにも強くなろう。
俺はお墓に眠る村人達にそう誓った。
第三話、如何だったでしょうか?
迷ったせいで救えなかった人がいたことを悔やんでいた龍馬、レナとエリスの言葉で前に進めると良いと思います。
次回は、町に向かう馬車の中で龍馬はエリスと色々話します
感想、評価よろしくお願いします
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第4話「話し合い」
第四話、お楽しみください
お墓に手を合わせてから1時間後、エリスさんたちの準備が終わって俺はエリスさんが率いるクロスフォード騎士団の方々と近くにある大きな町にいく事になった。
「龍馬様、あの・・・・・・また、この村に来てくれますか?」
村を出て行く前に頬を少し赤く染めたレナさんに手を握られて俺はドキドキしてしまった。
「え、ええ落ち着いたらまたこの村に来ます」
「ほ、本当ですか!?」
恥ずかしさで噛んでしまったが、またこの村に来ることは伝えられた。
レナさんは顔を太陽のように輝かして嬉しそうにする。そんなに嬉しいんだ・・・・・・
「はい。しばらくは仕事をしたりと忙しくなると思いますが必ず来ます」
「そうですか・・・・・・よかった」
安心したのかほっと胸をなで下ろすレナさん。あっ・・・・・・可愛いな。
レナさんにほんわかと癒されていると何か視線を感じる。
視線の方を見るとニヤニヤしていたエリスさんがいた。
・・・・・・何でニヤニヤしているんだ?
「青春してるねー」
「いや、青春って・・・・・・」
別に青春してるわけではないのだが・・・・・・というか、異世界にも青春って言葉があるのね。
「まあ、とにかくそろそろ行こうか龍馬君」
エリスさんはせかし始めている。エリスさんのそばには大きめの馬車が駐まっていた。
「そうですね。レナさん、宿が決まったら取りあえず手紙を出します」
「は、はい! お待ちしています。龍馬様!」
俺はまた村に来ることにくわえて手紙も書く事を約束した。
「ええ、それではまた・・・・・・さようなら」
「はい・・・・・・さようなら」
レナさんに別れを告げて俺はエリスさんの後について馬車に乗り込み、馬車は村を離れていく。
「龍馬様! さようならー!」
村を離れていく馬車に向かって手を振っているレナさん。俺も窓から身を出してレナさんの姿が見えなくなるまで手を振る。
「さてと、では話をしようか」
ドーチ村を後にして五分ぐらい経った頃だろうか。エリスさんが口を開いた。
話しね・・・・・・こちらは何を聞いて何を聞かれるのか。
「ええ、あのエリスさんは俺に聞きたいことがあるんですか?」
「そうだな。村人達は突然現れた大きな赤いクリスタルに君が包まれたと思ったら鎧を纏って戦い始めたと聞いたのだが、それは本当なのか? その時、君は籠手を装備していたらしいが、今は見えないのだが」
何も付けていない俺の腕をじろじろと見ているエリスさん。あーそういえば、気絶したときに消えたんだっけ。
「はい。普段は異空間にあるんですけど・・・・・・起動アウェイクン」
俺はドラゴンナックラーを呼び出すためのキーワードをいうと、俺の右手にドラゴンナックラーが装備された。
原作のやつだと御手洗博士の研究所に保管されていて使用するときに転送される設定なのだが、この世界に御手洗博士の研究所はないし、どうなるかと思ったけど、ちゃんと転送されたようだ。
「何もないところから一瞬で、それが鎧を纏うための籠手か?」
「はい、この龍拳ドラゴンナックラーにエレメントクリスタルと呼ばれるクリスタルと、メモリスティックを合わせたものを装填すると星龍戦士ドラゴンカイザーに変身します」
エリスさんにドラグガイガーに変身するために使うエレメントクリスタルとメモリスティックを見せる。
「これがそうなのか・・・・・・」
「ええ、ですがここで変身は出来ませんね。せまいですし」
興味深そうに変身アイテムを見ているエリスさんに一応、釘を刺しておく。ここで変身したら変身時のエネルギーで馬車の中がごちゃごちゃになってしまうかもしれないから。
「そうか。それは残念だな」
「またの機会があればその時にでも」
変身できないことを伝えるとエリスさんは残念そうにしている。申し訳ないがまた今度の機会にして欲しい。
「その代わりと行っては何ですが、エリスさん、今から行く町の名前は何ですか?」
「ん? ランタビという町だが・・・・・・それがどうしたんだ?」
「ちょっと、この籠手の力を見せようと思いまして・・・・・・ドラゴンナックラー、サーチ!」
俺はドラゴンナックラーのパネルをタッチしてサーチの能力を使う。取りあえず、現在地からランタビという町までの地図を出そうか。
検索ワードを入力してエンターを押すと、現在地からランタビまでの道が書かれた地図がディスプレイに表示された。
ずっと道なりでだいたい30㎞ぐらいか・・・・・・二、三時間ぐらいでつくかな? 馬車についてよく知らないけど。
「むっ? 地図が表示された? これは面白い魔導道具だな」
「えええと、たぶん、似たような物だと思います」
地図が表示されたドラゴンナックラーを眼をキラキラと輝かせながら見ている。
魔道具がどういったものかよく分からないが、否定するのも面倒なので魔道具ってことにする。
「そうか・・・・・・偶然、通りすがったと聞いていたがこの力で村に向かったのか?」
「ええ、この力で地図を検索して村に向かったらあの事件に遭遇しました」
「そうなのか。君はどの国から来たんだい? 最薙の国の出身ではないって言っていたが、ならどこの国の出身なんだい?」
「ええと、日本って国なんですけど、聞いたことないですか?」
エリスさんは俺の出身地が気になっていたのか、聞いてきたので、知らないと思うけど、俺のいた国の名前を言ってみた。
「ニホンか・・・・・・すまない、聞いたことがない国だな」
「そうですか・・・・・・実は、俺は何であの場所にいたのか分からないんです。気づいたら森の中にいて、どうしたらいいか途方に暮れていて、ドラゴンナックラーの力で村を探して情報を得ようとしたらドーチ村が襲撃されていた所を遭遇しました」
「成る程、転移魔法か何かで転移してきて衝撃で記憶が消えてしまったのか?」
俺の話を聞いてエリスさんは原因について、考える。転移魔法・・・・・・そんな魔法があるのか。
「もしかしたら・・・・・・そうかもしれませんね」
「そうか。まあ、とにかく君は知らないことが多いのか。では、取りあえず、我が国の事を教えよう」
「お願いします」
地図を出してエリスさんは説明を始める。
この国はどんな国なんだろう。
エリスさんの話ではこの国の名前はビドルラード王国。人口二千万の国で、四方を国に囲まれている国らしい。
東をリスグザード帝国、西をマグローズ皇国、北をゲンリュウ国、南をフルシューの大森林。この四つに囲まれている。
マグローズ皇国とは同盟を結んでいてかなり仲が良くて、リスグザード帝国とは百年前から戦争していてここ二十年ぐらいは休戦状態のようだ。
ゲンリュウ国は獣人と言われている人型に動物の特徴を持った種族の人間が住んでいる国で、国の形が中国に似ている。ゲンリュウ国に面する海を渡ると最薙の国に着くようだ。最薙の国の形も日本に似ていた。
フルシューの大森林はアマゾンのような感じの場所のようだ。広い大森林の中に二つの国がある。
エルフ達の国ラムログ、女性中心の狩猟民族アマゾネスの国、アルネス。女性中心というのは昔から男性が少なく、女性が多いかららしい。
昔はラムログとアルネスはフルシューの大森林の支配権を巡って戦争をしていたらしいが今は言い同盟関係を築けているらしい。
「と、まあこんな感じなんだが・・・・・・どうだ? 分からないことはあるか?」
「ええと・・・・・・すいません、字が読めないです」
地図を見せながらエリスさんが説明してくれたが、地図に書いてある文字が全く読むことが出来なかった。ドラゴンナックラーの翻訳機能でも翻訳できなかったか・・・・・・会話するのと読むのは違うんだな。
「そうなのか? でも、我々と君は会話できて居るではないか? なのに読めないのか?」
「ええと会話できているのはドラゴンナックラーの力で、会話できてたみたい何ですが・・・・・・どうやら読み書きは出来ないらしいんです」
「そうなのか・・・・・・それは困るんじゃないか? 冒険者になったら依頼書とかも読まなければいかないだろ?
「そうですよね・・・・・・どうしましょうか」
エリスさんの言うとおり、字を読めないと依頼の内容が分からないし、読めた方が便利だよな。
「なら、私が教えよう。つくまでの間で良いのならな」
「え? 良いんですか?」
「ああ。それくらいお安いご用さ」
「では、お願いします」
俺はエリスさんに頭を下げてお願いする。
エリスさんは言った言葉を紙に書いて、俺はそれを紙にまず日本語で書いてビドルラード語で何度も書く。
これを繰り返していくことだいたい二時間ぐらいたったかな。
「ふむ、君の書いている言語だが、最薙の国の言葉に似ているな」
「そ、そうなんですか」
「うむ。王都で一度、最薙の国の使者の方にあって文字を教わり、書物をいただいたりしたんだ」
「そうだったんですか。ちょっと気になりますね」
国の形も日本に似てるし文字も似ているってことから、とても興味がある。
その書物も何が書かれているんだろう。歴史書? それとも小説かな?
「なら今度、その書物を貸そう。さて・・・・・・そろそろ着く頃だな」
後ろに振り返って窓を見るエリスさんにつられて、俺も窓の方を見ると煉瓦で出来たゲームに出てくるような建物が並ぶ町並みが広がっていた。
あれがランタビか・・・・・・どんな町なんだろ。楽しみだな。
「あっ、そうだ。龍馬君、これを渡し忘れていた。君が倒したリザードマンの素材だ」
「あっ、すいません。ありがとうございます」
そういってエリスさんは袋を渡してきた。それを受け取って、中身を見てみると牙や鱗、それにあの赤い石も入っていた。
ずっと気になっていたんだけど、この赤い石って何なんだろ。
「あの、すみません。この赤い石って何ですか?」
「うん? 魔法石を知らないのか? これは魔法石と言ってな。魔法というのは適正のある属性しか使うことが出来ないのだが、この魔法石を使えば適正が無くても魔力を注入すればその魔法石と同じ属性の魔法が使える」
エリスさんは赤い石を一つ取り出して握ると、何か念じる。すると、赤い石を握っていた手が燃えだした。・・・・・・って!?
「も、燃えている!? 大丈夫ですか!?」
「ああ。発動者にはダメージは受けない。使えると言っても火を付けられたり、水を流したりとあまり威力が高い魔法は使えないんだ。逆に適合する属性の魔法石を使う場合、威力が上がるんだ。あとは武器に付けて武器に属性を付与したり、そんな使い方をすることができる」
「成る程。かなり便利ですね」
「そうだな。ギルドで売ることで金になる。冒険に出てモンスターと戦ったら回収した方が良い」
「分かりました。ありがとうございます」
アドバイスをしてくれるエリスさんにお礼を言う。やっぱり、俺の知らないことがたくさんあるな。
「ああ。他に分からないことがあれば冒険者ギルドのアドバイザーにでも聞いてみるといい。ギルドには私の幼なじみが冒険者としているから、もしかしたら君の力になってくれるはずだ。頑張ってくれ。私は君のことを応援しているよ」
「はいっ! 精一杯がんばります!」
お互い握手してこれからの活躍を応援する。すると、馬車が止まった。どうやら着いたようだ。
「ふむ。着いたようだ。我々はこのまま本部に戻る。すまないがここからは歩いていってくれ。大通りを真っ直ぐ歩いていけば冒険者ギルドにつく」
「分かりました。ここまで送くっていただきありがとうございました」
冒険者ギルドへの道のりを聞いた俺はエリスさんに頭を下げて、馬車を降りて走っていく馬車を見送って冒険者ギルドに向かって歩いていく。
第四話、如何だったでしょうか?
更新が遅れてしまい、申し訳ありませんでした。次回はもう少し早く更新できるように頑張ります。
次回 冒険者ギルドを訪れた龍馬。彼は冒険について学ぶ。
次回『冒険者ギルド』
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第5話「冒険者ギルド」
次回はもっと早く更新できるように頑張ります。
ランタビの町に着いた俺は大通りを真っ直ぐ歩いて、冒険者ギルドを目指している。
冒険者ギルドを目指して歩いていると、獣人やエルフ、アマゾネスといった色々な人達とすれ違っていく。確か多民族国家なんだっけ?
冒険者ギルドは三階建ての建物で、目立ったので迷わず着くことが出来た。
「これが冒険者ギルドか・・・・・・よし」
俺は覚悟を決めてギルドの扉を開けて、ギルドの中に入っていく。
ギルドに入ると中に人がたくさんいた。酒場のバーカウンターでお酒を飲んでいる人達、テーブルの上で食事をしている人達、難しい顔で何かを話し合っている人達は仕事についての相談かな?
そして掲示板の前でクエストを選んでいる人達がいる。ここが冒険者ギルドか・・・・・・受付はあの掲示板の隣のカウンターかな?
「取りあえず、行ってみるか」
俺は意を決してカウンターに近づく。カウンターには数人の女性が座っており、俺は緑色の髪の女性に話しかけた。
「あの、すいません。冒険者登録したいんですが」
「冒険者登録ですね。登録料として銀貨三枚いただきます」
「あ・・・・・・ええとこれでいいですか?」
俺は金貨の入った袋から金貨を一枚取り出して受付の女性に渡す。
「ええ、銀貨七枚のおつりです」
「ありがとうございます」
「ではこちらのカードにお名前を書いてください」
「分かりました」
受付の女性はおつりと一枚のカードを渡してきた。銀貨十枚で金貨一枚分か。
これに名前を書けば良いんだな。
俺は渡されたカードに名前を書いて受付の女性に渡す。エリスさんに教わってこの国の文字で書いたけどあってるかな?
「お願いします」
「確かに受け取りました。リョウマ・ミツルギ・・・・・・あっ、最薙の国の出身ですか?」
カードに書かれた名前を見て受付の女性は俺が最薙の国の出身と勘違いする。
「あっ、いえ違います。似た国の出身です」
「そうですか・・・・・・すいません、最薙の国の出身の方と似たような響きの名前だったので」
「いえ、気にしないでください」
勘違いだと知って謝ってくるが、そんなに気にしてないからいいかな。
「失礼しました。では、このカードに血を一滴、垂らしてください」
「ええと・・・・・・わ、分かりました」
針を渡されて、困惑しながらも針で指を指して血を一滴、カードに向けて垂らした。
すると、カードは光り出した。・・・・・・えっ、何コレ。
光が収まると、受付の女性はカードをじっくりと見て俺にカードを渡してきた。
「これで登録が完了しました。ミツルギさま、これであなたは冒険者ですが・・・・・・申し訳ありませんが、しばらくの間研修を受けて貰います」
「研修? 何でですか?」
「それは初心者は魔物の弱点や切り取る部位など採取できるアイテムなどを指導するためです。何も知らずに冒険に出て命を落とす初心者が多かったためにこのような措置を執りました」
「そうなんですか。では、よろしくお願いします」
受付の女性に言われて納得した。確かに右も左も分からない冒険者が冒険して死亡しても責任とれないしね。
俺も採れるアイテムとか分からないからな。そう言うのを教えてもらえるならありがたい。
「分かりました。ミツルギ様はこの国の文字は読めますか? 冒険者になる人の中には文字が読めない人達が居るので」
「あーすいません、少ししか読めません」
「そうですか。では文字の勉強もコースに入れますね」
馬車の中でエリスさんにこの国の文字を教わっていたが、全てを教わったわけではないので文字を学べるのはありがたい。
「ぜひお願いしま・・・・・・ひゃっ!?」
受付の女性に頼もうとしたら誰かに思いっきり尻を掴まれた。
だ、誰なんだ!? さっきまで気配を感じなかったのに・・・・・・しかも何で俺は尻を掴まれてるんだ!?
誰が俺の尻を掴んでいるのか、確認しようと後ろを振り返るとそこには・・・・・・
「あら~❤️あなた中々良い体してるじゃな~い❤️」
スキンヘッドの大男がいた。何故かオネエさん口調で。
「へっ?」
俺は思わず変な声を出してしまった。予想外なことが起きて思考が停止してしまったらしい。
「まだまだ鍛えたりないわね~でも、これから鍛えたら面白いことになりそうねぇ~❤️」
俺の尻をなでながら俺のことを見定めているオネエさん・・・・・・誰なんだいったい。
「あ、あの・・・・・・すいません、あなたは・・・・・・?」
「もう、ギルドマスター! ミツルギ様がお困りですからもうやめてください!」
ちょっと困っていると受付の女性が怒ってオネエさんに詰め寄る。
成る程、ギルドマスターね・・・・・・ギルドマスター!?
俺はオネエさんの正体を知って驚く。ギルドマスターってギルドで一番偉い人のこと・・・・・・この人が!?
「ぷはははっ! あの坊主、ギルドマスターの洗礼を受けてたやんの!」
「だけど、ギルドマスターに気に入られているってことはあいつは将来有望なんじゃねえのか?」
「面白そうなことになりそうだな」
酒場で酒を飲んでいる冒険者らしき人たちは、セクハラされているのを見て笑っている。
「も~堅いわね~エルネスちゃん。アロンダイトよりガッチガッチに堅すぎよ~。そんな堅すぎるから彼氏できないのよ~」
「か、彼氏がいないのは関係ないじゃないですか-! 私だって彼氏ほしいのに!」
受付の女性、ギルドマスターにはエルネスちゃんと呼ばれていた人は机をガンガンと悔しそうに殴っている。
彼氏いないんだ・・・・・・俺も彼女いない歴=年齢だけどな。
「ええと・・・・・・」
「あっ、名乗り忘れていたわねぇ~。あたしの名前はイキョウ・ドルリアン。何か困ったことがあったらあたしに言いなさ~い。手取り足取りナニ取り教えてあげるわよ~」
「イキョウ・ドルリアンさんですね。よろしくお願いします。俺の名前は御劔龍馬です。御劔が姓で名前が龍馬です。最薙の国の出身ではありません」
ギルドマスターのイキョウさんが名乗ってくれたので俺も自分の名前を名乗る。否定をするのが面倒くさいため、最薙の国の出身ではないことを告げておく。
「リョウマちゃんね~よろしく~。じゃあ、あたしがギルドの中を案内するわよ~」
そういって、イキョウさんは腰をくねらせながらギルドの中を案内してくれた。
「受付の隣にあるこのでっかいボードにクエストの依頼書が張ってあるのよ。ここにあるのは下級から中級ぐらいの仕事ね。リョウマちゃんが冒険者になったら受けるクエストはここにあるクエストね。二階にもクエストを受けられる場所はあるけど、そこは上級者向けだからリョウマちゃんにはまだ関係ないところね」
「成る程。だから三階建てなんですね。三階は職員さんたちの部屋ですか? ギルドマスター室とか」
「ええ、もちろんあるわよお~今度、部屋で朝まで語りましょうか。夜の冒険について・・・・・・」
冒険者ギルドの構造について教えてもらう。二階にもクエスト受付の場所があったんだ。
「ギルドマスター! もういい加減にしてください! セクハラしてはだめって毎日言っていますよね!」
いつの間にか復活していたエルネスさんがハリセンでイキョウさんの頭をひっぱたいていた。
この世界にもハリセンあるんだ・・・・・・
「んもう~痛いわねエルネスちゃん!」
「この程度、ギルドマスターじゃダメージにならないでしょ!」
「それもそうね~」
確かにひっぱたかれた頭を撫でるけど、そんなに痛くなさそうだ。
次は酒場に案内してくれた。そこには色々な人たちが楽しそうにしていた。
「ここは酒場。みんなでお酒を飲んだり、ごはんをたべたり情報交換できるすてきなよぉ~。ところでリョウマちゃんは何歳な~の~」
「ええと、十六歳ですけどもうすぐで十七歳になります」
「十六歳ね。ならお酒が飲めるわね~」
年齢について聞かれたため、答える。どうやらこの世界では十六歳ぐらいからお酒が飲めるらしい。
日本では二十歳からじゃないとお酒は飲んではだめだけど、この世界は十六歳ぐらいからはお酒は飲んで良いみたいだな。
うーん、俺はやっぱりまだお酒飲んじゃだめだよな。俺の世界では未成年だし。
「あーすいません。俺の国では二十歳になるまで酒が飲めない仕来りがありまして・・・・・・」
「あら? そうなの~? それなら仕方ないわね。じゃあ、最後はあそこを案内しようかしらぁ」
イキョウさんが最後に案内してくれたのは酒場の近くにあるカウンター。あそこは何だろ?
「ここはクエストで手に入れた素材を売ったり買ったりすることができる所よ~。リョウマちゃんも冒険者になったらどんどん素材を集めて、じゃんじゃん売ってね~。期待してるわよぉ~」
「は、はい。期待に応えられるように頑張ります。
説明しながらイキョウさんは何故かウィンクしてくる。
ここで素材を売るのか。なら、リザードマンの素材を売っておこう。
「あの、すいません。来る中に倒した魔物の素材を買い取っていただきたいのですが、いいですか?」
「良いわよ~どんな素材かしら」
「これなんですけど・・・・・・どうですか?」
俺はカウンターにリザードマンの素材をおいていく。リザードマンの鱗、リザードマンの牙、魔法石を素材の鑑定をする鑑定士に渡す。
魔法石の一つ、リザードマンのリーダーのログの魔法石は、必殺技の威力が高すぎたのか、真っ二つに切れてしまっている。
「うーん、中々良い素材だ。これはおそらく凶暴化したリザードマンの素材だな。凶暴化したモンスターから取れる素材は良い素材が多いんだ。君は凶暴化したリザードマンと戦ったのか?」
「はい。初めて戦ったのでかなり苦戦してしまいましたが何とか倒せました」
戦い方を知らなかったからかなり苦戦してしまった・・・・・・俺は強くならないとな。
もう、後悔しないためにも、
「初めて戦った・・・・・・それは本当か? お前さん、見た感じ、籠手以外武器を持ってないがお前さんが倒したのか?」
「え、ええ・・・・・・ちょっと籠手が魔道具なのでそこに武器を収納しているので。最後、気絶してしまいましたが、俺が全部倒しました」
「そうか・・・・・・とりあえず鑑定額だが、鱗は普段なら一枚、銀貨三枚だがこれは質が良い。だから、銀貨五枚でどうだ? 牙も普段は銀貨二枚だが、質がいいから銀貨四枚。これでどうだ?」
ええと、鱗は数が二十だから銀貨百枚・・・・・・牙は数が五十個だから銀貨二百枚か・・・・・・
十分すぎるかな。
「ええ、お願いします」
「よし、魔法石だが普段は銀貨五枚だが、これも質が良いから銀貨七枚でどうだ? 最後に割れたこの魔法石だが・・・・・・」
大体決まって、あとは真っ二つになった魔法石をつまんでいる鑑定士さん。
うーん、真っ二つだから安くなるのかな?
「こいつは状態がよかったら金貨三枚で買い取るんだが、真っ二つに切れてるから金貨一枚と銀貨五枚でどうだ?」
金貨一枚と銀貨五枚か・・・・・・悪くないと思う。
「この額でお願いします」
「じゃあ、銀貨五百八枚と金貨一枚だ。受け取れ」
「ありがとうございます」
俺は銀貨と金貨の入った袋を受け取った。うーむかなりの量だな。ドラゴンナックラーの中に保管しとこうかな。
「リョウマちゃ~ん、そんなにお金を持ってるとガラの悪い人たちに狙われちゃうわよ? このギルドには銀行があるからそこに預けましょうか」
「あっ、銀行があるんですか。なら、そこに預けます」
銀行があることを知らなかったから、ドラゴンナックラーで保管しようかなと思ったけどぎんこうがあるあるならそっちの方が良いな。
イキョウさんに銀行の場所を教わって、銀行にお金を預けた。
さてと、今度は泊まる場所を探さないと・・・・・・どの宿屋が良いかな。
「ところで、リョウマちゃんは宿は決まってるの? 決まってないんだったらおすすめの宿があるんだけど、どうかしら?」
「おすすめの宿ですか・・・・・・ぜひっ、お願いします!」
イキョウさんのお薦めの宿ならきっと良い宿だろう。何か、そんな気がする。
「じゃあ、教えるわよ。宿の名前は鋼月亭。安くてご飯が美味しいところよ~。ギルドを出て少しまっすぐ歩いて服屋さんの角を曲がったところにあるから。仕事が終わったら朝まで・・・・・・」
「だからセクハラはやめなさいって言ってますよね! このお馬鹿マスター!」
宿屋の名前を聞いた後、イキョウさんはエルネスさんにまたひっぱたかれてる。懲りないな・・・・・・
「ええと、ありがとうございました。また明日、よろしくお願いします」
「はい、リョウマ様、また明日!」
俺は頭を下げてギルドを後にして、ギルドマスターの勧めてくれた宿屋に向かう。
今回の話はいかがだったでしょうか?
キャラが濃い人が出ましたが・・・・・・
次回予告です。
ギルドマスターに勧められた宿屋に向かう途中に龍馬はある店が気になったそこは・・・・・・宝石屋?
次回、「宝石屋と鋼月亭」
今日はジオウの最終回ですね・・・・・・平成ライダーの最後、どうなるでしょうか?
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第6話「宝石屋と鋼兎亭」
「ここが鋼月亭か・・・・・・・」
冒険者ギルドを出て、俺はギルドマスターに勧められた宿屋に向かった。鋼月亭は二階建ての宿屋で中々良さそうな感じがする。
「とりあえずチェックインでも・・・・・・」
宿屋に入ってチェックインしようと思ったそのとき、後ろから何か視線を感じて振り返る。すると、そこに一軒のお店があった。そのお店の名前は読めなかった。うーんまだ読めない字が多いな。
看板には宝石っぽい絵が描いてあるけど宝石屋さんかな?
「何か気になるな・・・・・・行ってみようかな」
何でだか分からなかったけどこの店のことが気になったので、行ってみることにした。この店にはいったい何があるんだろう。
ドアを開けてはいると、お店の中には色々な宝石が置いてあり、お店の店長らしきおじいさんがカウンターで新聞を読んでいた。
俺はふと、近くにある大きなダイヤの値段を見てみる。
ええと、この大きなダイヤは金貨十枚か・・・・・・かなり高いのかな。
「いらっしゃいませ~」
俺に気づき、店長らしきおじいさんに話しかけられるが、おじいさんはすぐに新聞に視線を戻す。
さてと、他にどんな宝石があるかな。
俺はあまり宝石は詳しくないから、綺麗としか言えないけど・・・・・・
赤い宝石、青い宝石に緑の宝石、どれも綺麗だな。
順番に見ていき、店の奥まで来た。そこは暗くてあまり人がこなさそうなところで、売れていないのか箱に乱雑に入っている宝石があった。
「・・・・・・何かこれ見たことがあるけど・・・・・・ってこれって!」
一つ取ってみてみると、それはドラゴンナックラーで使うデータクリスタルだった。何で、ここにデータクリスタルがあるんだ?
しかも数は一つ、二つじゃない。この箱の中に二十個ぐらい入っている。
「あの、すいません、これって・・・・・・」
「ん? ああ、これかこれはワシが生まれる前から置いてある宝石でな。誰も買わないし、ワシらも何故か捨てられなくて困ってるんじゃよ」
おじいさんにこのメモリークリスタルについて聞くと、おそらく数十年ぐらい誰にも目を付けられてなくて誰の手にも渡っていない・・・・・・何か、都合がよすぎるような気がする。
「そうなんですか・・・・・・あの、この箱に入っているこの宝石全部ください!」
とりあえず、データクリスタルはあるだけ買っておこうと思い、箱をおじいさんに渡す。
「えっ? これをかい? 良いのかい? 誰も買わなかった宝石だよ!?」
この宝石を買うと言われて目を白黒させるおじさん、何十年も売れなかったんだし、当たり前かな。
「はい。俺にはこれが必要なんです! お願いします!」
俺はおじさんに頭を下げる。このデータクリスタルがあれば俺の戦い方も増えるはずだ。
だから俺はこれを買いたい。強くなるために。
「うーむ。わかった。そうだな…全部で、銀貨1枚でどうだ?」
「はい! お願いします」
俺は銀貨一枚払って、データクリスタルを受け取る。
「しかし、君、これを何に使うんだい? アクセサリーでも作ってプレゼントするのかい?」
使い方が気になったのか聞いてくる店主のおじいさん。使い方ね・・・・・・
「ヒーローの力にしようと思います」
「えっ?」
俺の答えに目を丸くしている。まあ、そうだよな。
とりあえず、データクリスタルを買った俺は、鋼月亭に入ってチェックインしようとした。
「失礼しまーす」
鋼月亭に入ってみると、中は綺麗で宿屋の真ん中に階段があってそのそばにカウンターがある。カウンターには俺と同い年ぐらいの女の子が座っていた。
「いらっしゃいませーお泊まりですか?」
俺が入ってきたのに気がついた女の子が話しかけてきた。
「はい、お願いします」
「素泊まりで銅貨三枚、朝晩二食付きで銅貨五枚。どちらにしますか?」
「じゃあ、朝晩二食付きでお願いします。ええと、金貨一枚で泊まれる分って何日ですか?」
俺は一枚金貨を取り出して渡す。
「金貨一枚ですね・・・・・・二十日分になります」
「じゃあ、銅貨五枚足して二十一日分お願いします」
さらに銅貨五枚を渡してキリの良い二十一日分にしてもらう。
「はいっ、ちょうど受け取りました。ありがとうございます。では、こちらにお名前を書いてください」
女の子は宿帳を渡してきたので受け取って名前を書いて、女の子に返した。
書かれた名前をまじまじと女の子は見ていた。
「ええと、リョウマ・ミツルギ。最薙の国の出身ですか?」
「いえ、違う国の出身です」
「そうなんですかー。あっ、ミツルギさんって冒険者様ですか?」
「あっ、はい。ギルドマスターのイキョウさんから紹介を受けて、この宿にきました」
冒険者であることを認めて、イキョウさんから紹介であることを言う。
「あー、イキョウさんの紹介ですね。ちょっと待ってください。今鍵を出しますね」
イキョウさんの紹介と聞いて納得して、俺が泊まる部屋の鍵を探している。
「いらっしゃいませー!」
「ぐふうっ!」
突然、腰に強い衝撃が当たった。えっ!? 何!?
腰の方を見てみると、そこには四、五歳ぐらいの女の子が抱きついていた。
ええと、誰だろう。カウンターの子に似ているけど、姉妹かな?
「ええと、お嬢ちゃんは誰?」
「エミリお姉ちゃんの妹のリシアです! よろしくお願いします!」
「リシアちゃんって言うのか・・・・・・よろしくね」
「えへへへっ・・・・・・」
名前を聞いたら女の子は名前を答えてくれた。リシアちゃんか良い名だな・・・・・・カウンターの子はエミリちゃんというのか。
俺はとりあえずリシアちゃんの頭を撫でる。すると、リシアちゃんは目を細めて喜んでいる。
はっ! 殺気!?
リシアちゃんを撫でていると殺気を感じて振り返ると、そこには筋肉ムキムキのおっさんがたっていた。
「俺のエンジェルからその手を離せこのくそ・・・・・・」
「・・・・・・何しようとしているのかなお父さん?」
今にも俺のことを殴りかかろうとするおっさんをいつの間にかおっさんの後ろに回っていたエミリちゃんが、おっさんにアイアンクローをしていた。
「いいかげん、親ばか卒業できないかな? いっつもそうやってお客さんに迷惑かけてお母さんに怒られてるよね?」
「す、すまないだが・・・・・・」
「だがじゃないでしょ! もう、お母さんいたらもっと大変なことになってたよ!」
すごい剣幕でエミリちゃんはおっさん・・・・・・お父さんを怒っていた。いつもこんなことがあるのか。
だけど・・・・・・こうなったのも俺のせいかもしれないし。
「あーすいません。俺のせいで・・・・・・俺、兄さんはいるんですけど、妹や弟はいないので、妹がいたらこんな感じかなーと思って思わず撫でてしまって・・・・・・見知らぬ男が娘さんの頭を撫でてたら不安になると思うのであの反応は仕方ないと思います」
「そんな申し訳なそうにしなくて良いよミツルギさん。お父さんの自業自得だから」
俺は頭を下げて謝る。エミリちゃんは気にしないでと言ってるけど、足下にはエミリちゃんたちのお父さんが気絶していた。
「じゃあ、ミツルギさん、部屋に案内しますね。ついてきてください」
「分かりました。お願いします」
エミリちゃんの後をついて行って二階に向かう。二階の部屋は六つで階段を真ん中にして左側に三部屋、右側に三部屋ある。
「ミツルギさんの部屋は右側の奥側です。これがこの部屋の鍵で、出かけるときにカウンターで私かお父さんに渡してください。それと、隣の部屋に泊まっているお客さんがいるのであまり騒がないでくださいね」
「分かりました。ありがとうございます」
「あと、ご飯ができたら呼びますね」
俺は頭を下げて鍵を受け取って、鍵を開けて部屋に入る。
部屋の中はそれなりに広いがあるのは洋服を入れるクローゼットとトイレに洗面台。ベッドぐらいだな。
「さてと、とりあえず。買ったデータクリスタルを試してみるか」
俺はベッドに腰掛けて。買ったデータクリスタルを取り出して並べる。
どれにしようかな・・・・・・おっとその前に。
「サイレントモードにして・・・・・・始めよう」
ドラゴンナックラーをサイレントモードにして、データクリスタルを装填して、ディスプレイにインストールの文字が出てきて、俺はそれをタッチする。
「データクリスタル、インストール」
『データクリスタルスリープ! オーケー? スリープ! インストール!』
タッチするとデータクリスタルのデータがインストールされる。これはスリープのデータクリスタルか。相手を眠らせたりできるから便利だ。
なお、普段は音声が流れるけど今回はサイレントモードなので音声は流れない
よし、どんどん行こう。
俺は次のデータクリスタルを取り出して装填して、インストールの文字をタッチする。
「データクリスタル、インストール」
『データクリスタルトレーニング! オーケー? トレーニング! インストール!』
ドラゴンナックラーの画面に文字が流れる。・・・・・・・トレーニングって聞いたことないデータクリスタルだけど、何だろ? 名前の通り、トレーニングするのか?
とりあえず。タッチしてどんなことが起きるのか試してみようと思ったけど、今回はローディングが長い・・・・・・データが大きいのかな?
数分待つと、トレーニングの項目が出てきたのでタッチしてみた。
さてさて、何が起きるかな・・・・・・えっ?
「えっ? ちょっ、どうなってんの!?」
項目をタッチした瞬間目の前が光で真っ白になった。何がいったい、どうなっているんだ?まだ、あまりデータクリスタルを使っていないけど、こんなのは初めてだ。
しばらくすると、光が消えて周りが見えたそこは俺がいた鋼月亭の部屋・・・・・・
「なんじゃこりゃあああああああっ!」
ではなく、どこかの荒野らしき場所だった。
・・・・・・いや、どこだよここ。
今回はいかがだったでしょうか? 今回は一応、パワーアップ回でした
次回は特撮でお約束の特訓回となります。次回もよろしくお願いします。
トレーニングのデータクリスタルで突然、知らない場所に飛ばされた龍馬。そこで彼は出会う。
次回「出会いと覚悟」
次回もお楽しみください
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第7話「出会いと覚悟」
年内最後ぎりぎりの投稿になってしまいました
次回はもっと早く書けるように頑張ります。
では、年内最後の投稿、よろしくお願いします。
「どうなってるんだ・・・・・・」
俺は鋼月亭の部屋でデータクリスタルのデータをインストールしていたはずだ。だが、トレーニングのデータクリスタルを使った後、どこだかわからない荒野にいつの間にかいた。
もしかしてこれがトレーニングの能力なのか? トレーニングをする場所を作る能力とか。
「やっときたか小僧」
突然、声が聞こえて後ろを振り返るとそこにはスポーツ刈りの二十代後半ぐらいの男性がいた。
あれ? 今まで誰もいなかったはずなのに・・・・・・いったい何者だこの人。
「あの、いったいあなたは何者ですか?」
「俺はそうだな。ある人からお前を鍛えるように依頼された者だ。訳あって名前は名乗れないから師匠とでも呼んでくれ」
「師匠ですか・・・・・・とりあえず、よろしくお願いします」
俺はとりあえず師匠と名乗った男性に頭を下げる。
ある人から俺を鍛えるように頼まれたか・・・・・・その人物が俺をこの世界に呼んだのか?
「おう」
「あのーすいません、師匠」
「ん? 何だ?」
「師匠は何で俺がこの世界にいるのか分かりますか? 俺、実は何でこの世界にいるか記憶がなくて・・・・・・たぶん、師匠に俺を鍛えるように頼んだ人が俺のことをこの世界に呼んだんだと思うので」
師匠に俺がこの世界に呼ばれた理由を聞いてみた。師匠なら何か知っているかもしれないし。
「あー・・・・・・お前、記憶ないのか。あの馬鹿・・・・・・余計なことしたせいでやっぱりややこしいことになってるじゃねえか」
師匠はどうやら原因に心当たりがあるようで、頭を抱えている。
いったい何が原因なんだろ。
「悪いなお前の記憶がない理由は分かっている。だけど、俺らがお前の記憶を思い出させるのはだめなんだ。無理矢理思い出させようとすると脳が破壊されちまうんだ」
「えっ? 何ですかそれ。まるで昔の漫画とかの設定みたいなんですけど」
「だから自力で思い出してもらうしかないんだ」
「そうなんですか・・・・・・ええとなら、俺が死んで転生したのか転移したのかぐらいは教えてくれませんか?」
無理矢理思い出させようとすると脳が破壊されてしまう迷惑な設定。だけど、俺は死んでるのか生きてるのかそれだけは知りたかった。
「あーま、それだけならいいか。安心しろお前は死んで転生したんじゃない。異世界転移してきたんだ。ある人に頼まれてな」
「そうだったんですかよかった」
俺が転生でなくて転移してこの世界に来たことを聞いて安心した。
死んでないのなら元の世界に戻って元の生活に戻れるかもしれないからだ。
「まあ、安心したところで悪いが・・・・・・拳を構えろ」
「へっ?」
安心していると突然、俺の目の前に剣の切っ先が向けられる。
師匠が俺に剣を向けたのだ。えっ? 何、猛特訓を始めるのか?
「お前が鍛えるに値する人間か試してやる。だから、ドラグガイガーになって俺と戦え」
「えっ? な、何でですか?」
「俺は確かにお前を鍛えるように依頼された。だけどな、お前を鍛えるかどうかは俺が決める。この戦いで鍛えるに値する人間か見極める」
「見極めるってだけどいくら何でも生身の相手には・・・・・・」
ドラグガイガーの力を使うわけにはいかないと言おうとしたとき、師匠の体からとんでもない殺気を感じた。
「ドラグガイガーの力は使わないってか。甘い甘すぎるぜ。今後お前は生身の人間を相手にするかもしれないんだ。そんな甘い考えをしていると・・・・・・死ぬぞ」
「っ!」
俺は思わず後ろに下がって、腰のホルダーからフレイムクリスタルを取り出して身構える。この人は俺のことを殺す気だ。
「そうだ! それでいい」
メモリースティックにフレイムクリスタルを装填して、ドラゴンナックラーにセットする。
『フレイムクリスタル!』
ドラゴンナックラーからロック調の大気音声が流れ、ディスプレイに現れたEnterの文字をタッチした。
「龍士着装!」
『フレイムクリスタル! GO! GO! GO! 燃える炎! 燃える闘志! 始まりの戦士! ドラグガイガー!』
ディスプレイをタッチして俺の体は赤いクリスタルに体に包まれた。
クリスタルの中でデータ化されている両肩に青い水晶を埋め込んである赤い龍の鎧、サラマンダーアーマーを纏い、左手にディスプレイのないドラゴンナックラーと似た赤い手甲、サラマンダーナックルを付ける。両脚にも赤い脚甲、サラマンダーブーツを履く。赤い龍のような頭部サラマンダーマスクをかぶって包んでいるクリスタルを壊して星龍士ドラグガイガーへと変身した。
「俺の限界、超えさせてもらう! 俺は強くなりたい! 躊躇って誰かを救えないのはいやだ。だから俺は守れるように強くなる」
「そうか。なら、俺を認めさせてみろ! お前の力を! お前の信念を!」
「うおおおおっ!」
俺は拳を握りながら師匠に向かっていく。そして師匠に向けて拳を放つ。
「ふんっ!」
だが、俺の攻撃を師匠は簡単に避けて逆に腹に拳を入れる。
「がはっ!」
殴られた腹を押さえて俺は数歩下がってしまう。
「やはり、弱いな。これでは勝負にならんぞ。そうだな・・・・・・」
師匠は剣を鞘にしまって懐からバンダナを取り出して左腕に巻き付けた。いったい、何をしているんだ?
「このバンダナを俺から奪うか、この剣を破壊しろ。そうすればお前のことを認めよう」
「くっ・・・・・・くそっ!」
悔しかった。俺は全力を出すに値しない人間だと思われたのか・・・・・・なら、全力を出させよう。
俺は師匠に向かって拳を何度も振るう。だが、その拳はすべて避けられてしまう。
「お前の攻撃は単調すぎる。相手をもっと見て攻撃しろ」
「っ!」
師匠は避けながらも余裕があるのか俺にアドバイスを送ってくる。悔しい・・・・・・だけど、今は悔しがってる場合じゃない。
俺は師匠の動きをよく見て拳を振るう。すると。段々と拳がかすっていく。
「ほうっ、これぐらいの動きならついてこられるようになったか。だが・・・・・・」
師匠は避けずに俺の拳を受け流した。受け流された俺は派手に転んでしまった。
「がはっ!」
「避けずに受け流すことも覚えるように」
「っ! はいっ!」
俺は師匠に教わったことを物にしようと気合いを入れる。
「次はこちらの番だ」
師匠は拳を握って、つきだしてきた。俺はそれを受け流そうとした。
「ぐはっ!」
受け流そうとしたが、師匠の力が強すぎて俺は受け流すことができなくて衝撃で吹っ飛んでしまった。
「あらら、これぐらいの攻撃も受け流せないかー」
「ぐっ・・・・・・もう一度お願いします!」
師匠は攻撃を受け流すことができなかった俺を見てがっかりしていた。
俺は痛みに耐えて立ち上がる。
「受け流せないなら、俺の攻撃を完全に避けられるようになれ」
「っ! はいっ!」
俺は師匠に言われたとおり、師匠の攻撃を避けるために俺は師匠の動きをよく見て見極めようとした。
師匠の拳が俺に迫ってきたため、避けようとしたが、避けることができずに拳が当たってしまい、体が痛むが痛みに耐えて立ち上がる。
一度でだめならよけられるまで何度でもやってみよう。
俺はもう一度、拳を避けようと体を動かしたが、避けることができずに当たってしまった。めげずにもう一度避けようとした、今度は完全に当たらず、少しかすった程度ですんだ。
これなら・・・・・・次の拳も目で追って俺は体をひねって拳を避けることができた。
「これぐらいなら避けられるようになったか。だが、いつまで続くかな」
攻撃が避けられるようになったことを師匠は感心したが、攻撃の手は緩めずに拳を繰り出してくる。
俺は師匠の動きをよく見て、拳が当たる前に避ける。
それを繰り返すことでなんとかダメージを受けずにすんでいる。
だけど、このままでは避けるだけでダメージを与えることができない。
攻撃しないと勝てない。
「はあっ!」
俺は師匠の動きをよく見極めて師匠の腹を殴る。
師匠は避けずに俺の拳を受けた。数歩、後ろに下がったが師匠は痛くなさそうだった。
「うむ、いい拳だったが、まだ俺には届かん」
殴られた所を軽く払って師匠は余裕があるように笑みを浮かべていた。
くっ……一撃ではだめか。なら、何度でも当てるしかない。
俺は師匠に向かって何度もこぶしを突き出すが、避けられたり受け流されてしまう。
「ていやっ!」
それでも俺は殴ることをやめない。さっきは当たったんだ。だからまた当てることができるはずだ。
師匠の攻撃を避けながら、師匠の動きをよく見て見極めて攻撃を当てていく。
「ふむ、当たってきたな。体も温まってきただろう。そろそろこいつを使うか。お前も剣を抜け」
師匠は鞘から剣を抜いて構えた。なら俺も剣を出さないといけないな。
俺はウェポンクリスタルを取り出してドラゴンナックラーに装填して、ディスプレイをタッチした。
『ウェポンクリスタル! ブレード! GO! GO!』
ドラゴンナックラーから音声が流れて、炎が出てて来て掴むと、ドラグガイガーの武器、炎龍剣 マーズブレードに姿を変える。
俺はマーズブレードを師匠に向けて構える。
「いきます、師匠!」
「こい、龍馬!」
「うおおおおっ!」
師匠に近づいて俺はマーズブレードを振り下ろすが、師匠の剣に弾かれてしまう。
「くっ!」
「この程度で怯むな!」
怯む俺にスキを与えないように剣を振り下ろしていく。俺は剣を何とか受け止めている。
受け止めるだけではさっきまでと変わらない。俺は剣をふるって攻撃するが師匠も受け止めたり弾いたりしてダメージにはならない。
このままだとらちが明かない……こうなったら必殺技で一気にダメージを与えるか? でも、下手したら師匠が死んでしまうんじゃ……
「一か八か! やってみよう!」
武器に充てて壊せば、俺の勝ちになるはずだ!
フィニッシュクリスタルを取り出して、マーズブレードについている龍の頭を開いてそこにフィニッシュクリスタルを装填して頭を閉じる。
『ガブリっ!』
マーズブレードはフィニッシュクリスタルの効果で炎を纏う。
『フィニッシュクリスタル! ガブッと! クリスタルブレイク!』
「ガイガープロミネンス!」
マーズブレードにエネルギーが溜まり、俺は師匠の持つ剣に向けてマーズブレードを振り下ろした。だが、師匠は必殺技が当たる前に剣を下した。まるで攻撃を受けるつもりのようだ。
「っ!」
俺は思わず攻撃を止めた。このままでは師匠が死んでしまうのではないかと思ってしまったからだ。
「どうした? なぜ止める? 当てればお前は勝てるかもしれんぞ」
「そ、それは……」
師匠は攻撃を止めた俺をにらむ。にらまれた俺は何も言えなかった。そのうち、マーズブレードの炎が消えて必殺技状態から解除されてしまった。
「この攻撃を食らったら俺が死ぬと思ったのか……この甘ちゃんが!」
「ぐあっ!」
おろしていた剣を振り上げてマーズブレードを弾いて、俺に剣を振り下ろして、ドラグガイガーの鎧から火花が散る。
「武人切り!」
さらに師匠はエネルギーを剣に纏わせて衝撃波を放ってきた。俺はとっさにマーズブレードで受け止めるが受け止めきれずには吹き飛んでしまった。
「ぐあああっ!」
吹き飛んだ俺は衝撃波の威力が強すぎたためか、一撃でドラグガイガーの変身が解除されてしまった。
「がはっ!」
さらに俺は地面に叩きつけられて全身に痛みが走る。
体中の痛みで俺は立ち上がることができなかった。
「龍馬、お前は何で俺に必殺技を放つのをやめた! お前はあの技を俺が受けたら死ぬと思ったんだろ? 見くびるな! 貴様のような奴が放つ必殺技で死ぬほど俺はやわではない! 生身の人間相手に全力で戦うことができないという半端な覚悟なら戦うのはやめろ! これから貴様はいろいろな相手と戦うことになるんだぞ! 貴様より強い相手、貴様より弱い相手、貴様のやさしさに漬け込むような敵も出てくる。それで貴様が死んだり、貴様の仲間が死んだりしたらどうする! また後悔するのか! 貴様は後悔したくないから強くなりたいといったんじゃないのか! あの言葉は嘘だったのか!」
痛みで立ち上がることができなかった俺を師匠が叱責してくる。そうだ……俺はもう後悔したくない。そのために力を欲したんだ……
「この程度でもう立ち上がれないというのなら、もうお前の世界に帰れ。その程度では世界は救えない」
立ち上がれない俺を見てあきれたのか師匠は俺に背を向けて帰ろうとした。
ダメだ……このまま師匠が帰ったら俺はまた後悔する。もう後悔したくないっていったのに……だから立ち上がらないと限界を超えろ!
「待って……ください」
俺は体中の痛みを耐えて無理やり立ち上がって師匠に向き合う。
「俺は確かに半端な覚悟しか持ってませんでした。生身の人にドラグガイガーの力を使っていいのか……そんな思いが躊躇してしまった。だから俺は攻撃を当てることができなかった。躊躇したくない。後悔したくないって言っていたのに……だから俺はもう躊躇わない。俺が躊躇うことで誰かが傷つくなら俺はもう躊躇しない。生身の人間であろうがなかろうが、この力を使うことを躊躇わない! たとえ俺の手が血で汚れようとは躊躇わない! 龍装!」
叫びながら俺はフレイムクリスタルをもう一度、ドラゴンナックラーにセットしてもう一度、走りながらドラグガイガーに変身した。
『フレイム! GO!』
タッチパネルをタッチして両手に炎を纏わせながら師匠を殴る。避けられるもそれでも殴り続ける。
「ぜやあっ!」
「ぐはっ!」
一発当たって、よろめく師匠に蹴りを入れるが、受け止められて足を掴まれてしまう。
「っ! 負けるかああああっ!」
俺は掴まれていない足で体をひねりながら蹴り、そのまま倒れる。
「ぐっ!」
「っ!」
倒れた俺はすぐに立ち上がり、後ろに下がる。
立ち上がったはいいけど、体がもう限界が近いな。次で決めないと……
「うおおおおおっ!」
俺はフィニッシュクリスタルをメモリスティックにセットして、ドラゴンナックラーに装填してディスプレイをタッチする。
『フィニッシュ! GO! GO!]
「ガイガースマッシュ!」
足にエネルギーが溜まり、俺は空中へとジャンプして足にエネルギーを纏わせながら空中で一回転して蹴りを放つ。
「ぜやああああああっ!」
「ぐっ!」
俺はすべての力をこの一撃に込めた。師匠はこの攻撃を剣で受け止めて防ごうとした。
師匠の剣にぶつかった蹴りは火花を散らしていく。師匠を少しずつ押していく。
「はあああああっ!」
「ぐううっ!」
このまま押し通せば行けると思った俺はさらにパワーを上げる。
「ぐっ! 舐めるなあああああっ!」
「ぐあああっ!」
だけど、師匠はパワーを上げて剣を振り上げて俺を吹き飛ばした。
吹き飛ばされた俺は壁に激突して地面に叩きつけられて、再び変身が解除されてしまった。
「がはっ……まだだ。まだ俺は戦える……」
俺はエレメントクリスタルに手を伸ばして、もう一度変身しようとしたが力が及ばずそこで気絶してしまった。
龍馬が気絶したのを見届けると、師匠は龍馬に近づいて行った。
「最後のもう一押しが足りなかったな……だが龍馬、なぜ最後にブーストの能力を使わなかった? 使えばパワーが上がり、俺を倒すことはできたはずだが、そこでも加減したのか?」
答えられないとわかっているのに使用は話しかけて、あきれたのか立ち上がった。
「あんなことを言っておいて結局は甘い。だけど、この勝負は……お前の勝ちだ」
師匠が背中を向けると、師匠が持っていた剣が粉々に砕け散ってしまった。
年内最後の投稿、いかがだったでしょうか?
次回は気絶から目覚めた龍馬、師匠から告げられた結果は?
次回、結果と勉強
次回、そして来年もよろしくお願いします。
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