EDF日本支部召喚 (クローサー)
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第1章 転移 第1話 転移

閃いてしまって書かずにいられなかった。何処まで書けるかな…頑張ります。


その日、人類は勝利した。

2017年4月1日、地球上に降下した地球外生命体「フォーリナー」は地球の侵略を開始。2013年の観測を切っ掛けに結成された地球連合軍「EDF」を筆頭に人類は抵抗戦争を開始。しかしその戦争は、余りにも絶望的だった。

僅か15日で全地球規模で制空権を喪失。残った陸軍海軍も奮戦するも、暴力的な物量の巨大生物、圧倒的なテクノロジーを駆使するフォーリナーの兵器の前に人類は一人、また一人と倒れていった。

そして遂に、人類の有力な戦力はほぼ全てが壊滅。それは2017年4月1日より、僅か半年の事だった。誰もが人類の敗北だと悟っていた時、誰もが思いもしない出来事が起こった。

 

フォーリナーの母船、マザーシップの撃墜。

 

その奇跡。一人の兵士が放った一撃、それはマザーシップの吸気口に致命的な一撃となり、フォーリナーが誇る母艦(ははぶね)は地に墜ちた。

直後、フォーリナーの残存船団は地球より撤退。空を覆い尽くした絶望の権化は、たった一つの出来事で姿を消した。しかし、そのたった一つの出来事が、人類の勝利へと導いたのだ。

そして、人類の復興が始まった。EDFは生き残っていた戦士達や市民達を救出しつつ、地球上に残されていた巨大生物の掃討を開始。一年後、アリゾナで最後の一匹が銃弾に倒れ、地球上から巨大生物が消え去った。

 

EDFは、人類は勝ったのだ。

 

その後の復興はフォーリナーが遺していったテクノロジーを取り入れ、かつての姿を取り戻しつつ、しかし再び彼等への襲来に備え、力を増強させていった。

 

そんな最中の、2028年6月28日。

 

全ては、そこから始まった。

 

 

 

 

 

 

EDF。

それは人類の護りの象徴であり、人類の希望。

特に日本支部はフォーリナーの母船、マザーシップを撃墜した余りにも大きい功績もあり、その名声は全地球的に見ても、EDF総司令部と劣らずといっても過言ではない。

最後まで絶望と戦い、勝利した彼等にとって、最早ちょっとやそっとした出来事は驚愕に値しない。が、今回の出来事はそんなチャチなものでは済まされなかった。

 

「…すまない、もう一回言ってくれ。何がどう起こったんだ?」

 

EDF日本支部、第一会議室。

其処に集まっているのは、日本支部司令長官を筆頭に参謀長や戦術士官等、日本支部を動かす重要人物が集っていた。全員の表情は驚愕や困惑に染まり、報告を伝えている情報局長自身も内心信じられない事ではあると思っている。

 

「…では、もう一度申し上げます。日本列島は、「転移」したと考えられます」

 

その出来事は、2028年6月28日午前0時0分0秒に起こった。

日本列島全域に発生した、空を覆い尽くした謎の白い光。その光は1cm先も見えぬ程の光量を数秒間維持し、何事も無かったかのように掻き消えた。直後、全衛星及び日本列島外の全通信がロストし、全EDF日本軍は即時出動態勢に移行。白い光の原因、及び全通信の復旧を試みつつ、フォーリナー襲来に備えられ、市民はシェルターへの避難命令が呼びかけられた。

しかし何時間待とうが、フォーリナーの影もなく、巨大生物が再び現れる訳でも無い。12時間後、EDF日本支部は出動態勢から第1種警戒態勢に移行し、市民は依然シェルターの避難を継続した。

そして更に1時間後。EDF情報局より驚愕の報告が挙げられたのだ。

 

それが、「日本列島の転移」。

 

星の座標変化等、十分な根拠を持って発表されても普通、それを聞いたら万人は「あり得ない」と言うだろう。しかし彼等(EDF)は、あの地獄を生き延びた人類は違った。

 

「…フォーリナーの仕業か?」

「それはまだ不明です。しかしその可能性も捨て切れません」

「しかしもし奴等の仕業だとしたら、一体何の為に?」

「10年前の復讐も十分に考えられる」

「だったら転移と同時に攻撃している筈。半日も待つのは考えられないだろ」

「いや、転移そのものがフォーリナーの新兵器というのも考えられる。邪魔な奴を容易に排除出来るなら…」

「そもそも転移前はフォーリナーはまだ観測されていなかった。奴等の仕業なら果てしない距離から我々に攻撃を…」

 

憶測が憶測を呼び、ザワザワと騒めく第一会議室。

が、日本支部司令長官が静かにテーブルを叩き、数秒の間を置いて沈黙が再び訪れる。

 

「此処で憶測を話し合っても何も始まらん。情報局長、他に何か情報はないか?」

「日本列島が転移したという情報以外、何も…これ以上の近辺調査となると、海軍空軍の出動が必要となります。衛星の通信は未だにロストしており、宇宙からの調査は不可能です」

「調査に最適かつすぐに動かせるのは?」

「第1、第3、第7、第9飛行中隊、第7艦隊です」

「第7艦隊?要塞空母デスピナの艦隊か?」

「はい。前日補給を終えて東京湾より出航後、日本領海内を航行中に転移に巻き込まれたようです。彼等ならより長距離の調査も可能でしょう」

「決戦要塞X5も巻き込まれたのは幸運と言うべきか、不運と言うべきか…兎に角状況は分かった」

 

司令が立ち上がると同時に、会議室に座っていた全士官も立ち上がる。

 

「今回の転移事象はとても隠しきれるものではないだろう。市民達には嘘偽り無く公表する。全EDF陸軍部隊は起こり得る混乱に備え、治安維持に努めよ。空軍海軍はフォーリナーの襲来に備え、いつでも出動出来るように。第1、第3、第7、第9飛行中隊、及び第7艦隊に出動を要請。日本列島周辺を調査しろ。どんな細かい事でも良い、何かあったらすぐに報告させるのだ。

皆も分かっているだろうが、此処が正念場だ。我々には物資が限られている。弾薬、燃料、食料。全てが万全とは言い難い。日本列島外の補給が停止した今、我々は戦わずして斃れる恐れすらある。これを乗り越え、生き残らねばならない!諸君らの健闘を期待する!」

『了解!!』

 

こうして、EDF日本支部の生き残る為の戦いが始まった。

 

 

 

 

 

本来ならば、「日本国」と呼ばれる国家が転移させられる筈だった世界。

しかし何処かが狂い、「EDF日本支部」が転移させられる事となった世界。

彼等が何を起こすか。何を狂わせるか。それはこれから分かるお話。




用語解説

EDF
連合地球軍。2015年2月1日に結成された超法規軍。かつては150万人とアメリカと同等の戦力を持っていたが、フォーリナー襲来によって壊滅。2028年現在は30万人と大幅に縮小したが、フォーリナーのテクノロジーを吸収した事により、襲来前にも劣らない戦力となった。
フォーリナー大戦後、世界政府としての機能も併せ持っている。

フォーリナー
地球外生命体。2017年4月1日に地球に降下し、侵略を開始(フォーリナー大戦)。マザーシップの撃墜によって地球外へ撤退した。
EDF日本支部は、今回の転移事象にフォーリナーが関わっている可能性があるとして調査している。

巨大生物
フォーリナーが投下した生物兵器。殆どが地球上の生物に模しており、主に蟻型や蜘蛛型が確認されていた。
フォーリナー撤退後の2018年10月30日、アリゾナにて最後の巨大生物が撃滅され、地球上から掃討された。

フォーリナー大戦
原作(地球防衛軍3)で起こった抵抗戦争。僅か7ヶ月の戦争でありながら、大戦後の人類の人口は3割に減少。世界各国は崩壊し、EDFが崩壊した世界各国に代わって世界各地の統治に努める事となった。

EDF日本支部
日本に駐屯するEDF部隊の司令塔であり、日本統治機構。フォーリナー大戦に於いて、最後まで部隊の指揮を取っていた唯一の本部。マザーシップ撃墜の功績により、転移前はEDF総司令部にも劣らぬ発言力があった。

日本支部司令
全ストーム1が知る本部のあの人。原作(地球防衛軍3)だとプレイヤーに「本部の罠」とまで言わしめる迷指揮を取っていた事もある。大戦後、司令自身もそれは深く反省しており、まともな指揮が取れるように日々精進している。

第7艦隊
要塞空母デスピナを旗艦としたEDF海軍艦隊。要塞空母デスピナを筆頭に、イージス戦艦4隻、フリゲート艦12隻で構成された大規模艦隊。

要塞空母デスピナ
決戦要塞X5として建造された、全長1400mの超巨大空母。
要塞空母と言われるだけの事はあり、マザーシップの攻撃にも耐え得る強靭な装甲、4基8門の51cmレールガン連装砲、360基の巡航ミサイルVLS、4基の超大型巡航ミサイルVLSを搭載。機関は核融合炉であり、デスピナ内部に簡易的な兵器製造機構、食料生産機構を備える等、無補給でも暫くは継続戦闘が可能な設計となっている。
(第七艦隊、決戦要塞X5、デスピナ搭載機能等の設定は本作オリジナル)


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第2話 接触

本当はもっと長くなる予定だったけど、ダラダラ原作に似た内容をやるのもね?


EDF日本支部(日本列島)転移から一日。

日本列島より西南西980km地点の上空に、空気を裂く物体が飛行していた。

 

「…まさか、転移なんてものが現実になるなんてな…」

 

第七艦隊旗艦 要塞空母デスピナより発艦した大型攻撃機ホエールのコックピットで操縦桿を握る機長が、小さく呟いた。

大型機攻撃機ホエールは、大型輸送機を改修して対地攻撃機へと転用した空中要塞である。機体左側面に40mmガトリング砲、105mm砲、120mm砲、150mm砲を各1門ずつ、ハードポイントに巡航ミサイル発射機を搭載し、地上部隊の支援に特化している。速度こそ遅いが、それでも最高速度マッハ1.5、巡航速度マッハ1を発揮する恐ろしい怪物機だ。(しかしEDF製の兵器の中では、これでも大人しい方なのだ)

 

そんな機体が何故そんな地点を飛行しているのかというと、正に今機長が呟いた「転移」が原因だ。

 

第一会議室で行われた会議の後、EDF日本支部は転移を発表。シェルターでその発表を聞いた市民達は混乱や不安に包まれる事となったが、フォーリナーの姿は確認出来ないという事もあり、EDF日本支部が想定していた暴動などは幸運にも起こることは無かった。

しかし、突然の出来事故にEDF日本支部の物資は限られている。食料は化学的に生産される化学食料を中心としていた為に、配給制とすれば日本列島の生産施設で十分に賄う事が出来るが、燃料弾薬となるとそうは行かない。日本列島は無資源地域だった為に、燃料弾薬は日本列島外からの補給に頼り切っていた。

補給が途切れ続ければ、EDF日本支部は1年で燃料が尽き、戦わずして自滅する。この緊急事態に、第1、第3、第7、第9飛行中隊、第7艦隊は日本列島外の調査任務に出動していた。

 

「果たして、どうなるのやら…」

「機長、レーダー反応アリ!」

 

機長の呟きを遮って、計器類を覗いていた副機長が叫んだ。

 

「数1、速度120km/h!IFF反応無しです!同高度で接近中!」

「此方ホエール!デスピナ、応答求む!」

『此方デスピナ、ホエールどうした?』

「レーダーにアンノウン1捕捉!これより接近及び捕捉、アンノウンが飛行してきた地点の地域調査を試みる!」

『了解した、直ちに日本支部に報告する。通信はそのまま開いて置いてくれ、デスピナを経由させて日本支部に中継する』

「了解!」

 

自然と操縦桿を握る手に力が入る。ここから先は未知の領域、何が起こるか分からない。

 

「皆、覚悟はいいか?」

『応!』

「よし…全兵装安全装置解除。まだ引き金に指は掛けるなよ。此方からの攻撃は厳禁だ」

 

ホエールは僅かにエンジン出力を上げ、アンノウンへ接近する。

数分後、コックピットの機長と副機長の視界に、アンノウンを目視する。しかしそれは、ある意味想定内で、しかしある意味想定外の物だった。

 

 

「………竜………?」

 

 

 

 

 

 

晴天の空の中、1匹の竜が1人の人間を乗せて羽ばたいている。

クワ・トイネ公国の竜騎士マールパティマは、「ワイバーン」と呼ばれる飛竜に乗り、公国の北東部の沿岸哨戒の任に就いていた。

クワ・トイネ公国の北東方向には何もない。青い海が広がっているだけだ。しかし現在、クワ・トイネ公国は隣国のロウリア王国と緊張状態が続いており、何もない北東方向からのロウリア王国軍の奇襲も十分に考えられた為、こうした哨戒任務も発生している。

今日も何もないまま哨戒任務が終わる、そう思っていたマールパティマの視界に、異物を目視する。

 

「ん…?」

 

よく目を凝らし、それを見る。双方が真っ直ぐ近づいている為、接近は速い。

 

「なん、だ…?羽ばたいていない?」

 

彼がよく知る飛竜は、羽ばたかなければ空を飛ぶことは出来ない。しかし真正面から向かってくるそれは、一切羽ばたいていない。彼はすぐに通信用魔法具を懐から取り出して司令部に報告する。

 

「我、未確認騎を発見。これより要撃を開始し、確認を行う」

 

高度差は殆どない。マールパティマは一度未確認騎とすれ違い、後方より距離を詰める事を選択する。

そして、未確認騎とすれ違った。

 

(大きい…)

 

マールパティマの認識からすれば、未確認騎はとてつもなく巨大だった。羽ばたいておらず、翼に付いた何かが2つから大きい音が響いている。茶色の胴体に蒼色で書かれた知らない模様が3つ描かれており、翼の先端から光を放ち、点滅していた。

彼はワイバーンを羽ばたかせて反転、未確認騎の追跡を開始する。大きな風圧を受けつつも、一気に距離を詰めれる。その筈だった。しかし追いつくどころか逆にあっという間に距離を離され始める。

慌ててワイバーン最高速度の235km/hで追跡を試みるが、それでさえも未確認騎は速く、段々と視界から小さくなっていく。

 

「なんなんだ、アレは…っ!?」

「司令部!!司令部!!我、未確認騎の確認、追跡を試みるも速度が違いすぎて追い付けない!未確認騎は本土マイハーク方向へ進行!繰り返す、未確認騎はマイハーク方向へ進行した!」

 

 

 

 

 

 

マールパティマからの報告を聞いた司令部は、大慌てとなっていた。

第三文明圏最強の兵器であるワイバーンでさえも追い付けない未確認騎が、よりにもよってクワ・トイネ公国の中枢都市マイハークに接近していると言うのだ。未確認騎は速度からして、既に本土領空へ侵入している可能性が非常に高い。

マイハーク付近に駐屯していた第6飛竜隊に魔法通信が掛かり、緊急指令が流れる。

 

『第6飛竜隊、全騎発進。未確認騎がマイハークに接近中、領空侵入の可能性極めて大。発見次第直ちに撃墜せよ。繰り返す、発見次第直ちに撃墜せよ』

 

緊急指令を受け、第6飛竜隊が次々と滑走路より空に舞い上がった。全力出撃、12騎全騎。

そして直ちにマイハーク北東方面に飛行し、運良く未確認騎との真正面の正対に成功した。最初は点ほどに小さく見えた未確認騎は、あっという間に大きくなっていく。

その姿に、第6飛竜隊隊員は各々の感想を持つ。

 

「速いな…全員、聞け!導力火炎弾の一斉射撃で未確認騎を撃墜する!未確認騎は我が方の速度を凌駕しているとの事だ、攻撃のチャンスはすれ違う一瞬のみ!各人、日頃の訓練の成果を見せろ!」

 

第6飛竜隊隊長の指示を受けてワイバーン12騎は横並びとなり、口を開けて火球を形成していく。これこそがワイバーンが第三文明圏で最強と言われる所以、導力火炎弾。12発の導力火炎弾を受けて無事だった物体は、少なくとも彼等は知らない。

そうして攻撃のタイミングを伺っていたら、未確認騎は突如として高度を上げ始めた。

 

「なぁっ!?」

 

ワイバーンの最高高度4000mを飛行していた第6飛竜隊にとって、未確認騎の更なる高度上昇は想定の外も外。彼等からしたら4000m以上の高空を飛ぶなどあり得ない事なのだ。

それ故に、ワイバーンの最高高度4000mしか飛行出来ない第6飛竜隊は未確認騎が真上を飛んでいくのを見守る他に無く、唯々己の無力を嘆くしかなかった。

 

 

 

 

 

 

クワ・トイネ公国政治部会。

公国を代表する者達が集う会議の中、首相のカナタは内心で頭を抱えていた。

前日、軍事卿から正体不明の飛行体がマイハーク上空に侵入、同都市を偵察するように旋回飛行した後に去っていったという報告が上げられた。その飛行体は飛竜ワイバーンが追いつかぬ程高速、かつ辿り着けない程に高空を飛行していた。

所属は不明、機体に国旗と確認できる物も見つかっていない。

 

「この報告について、皆はどう思い、どう解釈する?どんな意見でも構わない」

 

カナタの言葉に、真っ先に情報分析部長が発言する。

 

「当部分析担当班によると、西方の第二文明圏列強国「ムー」が開発している飛行機械に酷似しているとの事です。しかしムーの飛行機械と、今回の飛行物体の速度が余りにも違いすぎる上に、何よりも距離が広大過ぎます。我が国から2万kmも離れているのです、幾ら何でも、この距離を飛行するのは非現実的であると思われます」

 

結局は振り出しに戻り、場が膠着する。その時、外交部の幹部がドアを破らんばかりの勢いで場に飛び込んでくる。

 

「報告します!!」

 

その幹部から上げられた報告は、大きく纏めると以下の点になる。

 

本日朝、公国の北側海上に長さ300mにも及ぶ超巨大船が出現。海軍が臨検を行ったところ、EDF日本支部という統治機構の外交官と接触、敵対の意思が無いという旨を伝えてきた。他にも複数事項が判明。

1.EDF日本支部は、突如としてこの世界に転移した。

2.元の世界と断絶した為、哨戒騎にて付近の捜索を行っていた。その際にロデニウス大陸を発見。捜索活動中に公国の領空侵犯をしてしまった事は深く謝罪する。

3.クワ・トイネ公国と直ちに会談を行いたい。

 

余りにも突拍子も無い、普通なら考えられない内容に政治部会は荒れた。

しかしEDF日本支部という統治機構は礼節を弁え、尚且つ謝罪や会談の申し入れは一応の筋は通っている。

この事から、まず外交官を官邸に招待する事が決定された。

 

 

その後の会談及びEDF日本支部視察を経て、EDF日本支部とクワ・トイネ公国は正式に国交を締結することに成功した。

主な内容は以下の通りである。

 

1.クワ・トイネ公国はEDF日本支部に必要量の食料を輸出する。

2.クワ・トイネ公国のマイハーク港の拡充、マイハーク港から穀倉地帯へのインフラを整備する。

3.為替レートの早急整備を行う。

4..EDF日本支部は食料一括購入の見返りとして、1年間はクワ・トイネ公国内のインフラ整備を行う。その後は為替レートによる食料額に応じた対応を行う。

5..EDF日本支部、クワ・トイネ公国両国の不可侵条約締結に向けた話し合いを継続する。

 

こうして、EDF日本支部はクワ・トイネ公国と友好な関係を結び、クワ・トイネ公国は強大な軍事力を誇る国家との友好関係の獲得に、EDF日本支部は必要資源の補給に成功した。以後EDF日本支部とクワ・トイネ公国は運命共同体となり、後に起こる動乱に挑むこととなる。




用語解説
クワ・トイネ公国
原作(日本国召喚)でも最初に接触する国家。
大地の神の祝福によって領土全域が放っておいても農作物が生えてくる不思議な大地によって、食料自給率が100%を遥かに超えている。水と食糧はタダ、家畜でさえもうまい餌を食べられるとか。地球農業の苦労とは一体。
EDF日本支部も超貴重な天然食料が市民達にも腹一杯食べさせる事が出来ると聞いて、全員が目の色を変えたらしい。


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第2章 ロデニウス動乱 第3話 動乱と参戦

クワ・トイネ公国との国交を開いてから1ヶ月が経過した。

EDF日本支部は現在、転移前よりも明るい雰囲気に包まれていた。それは上層部のみならず、兵士達や果てには市民達にも及んでいる。

 

それは何故か。一重にそれは「美味い飯がたくさん食べれる」からだ。

 

フォーリナー大戦後、世界は深刻な食料不足に陥った。穀倉地域は全滅し、畜産業は99.9%が全滅。天然食料のみでの食料自給率は5%どころか2%にも満たない事態となった。化学食料が開発されるまでの半年間、人々は僅かな食料を取り合い、時には人類同士での戦闘にさえも発展した。フォーリナー大戦後の人類減少の3%はその内戦による犠牲者なのだ。化学食料の開発後は食料不足の問題は起こる事は無くなったが、別の問題が発生した。

化学食料は添加物を山のように使用している為、天然食料と比べると不味い。その上身体に非常に悪いのだ。

しかしその問題があっても、人々は化学食料を食べる他ない。天然食料が再び充分に行き渡るようになるのは30年後とも言われており、天然食料は安いものでも100万円もの超高価格。市民どころかEDFの士官でも手が届きにくい代物と化してしまっている。故に天然食料を一食でも食べる事が出来れば、それは一種のステータスでもあった。

しかし転移後、クワ・トイネ公国産の天然食料が文字通り山のように輸入されてきた。この夢のような出来事に、EDF日本支部に住まう全員が狂喜した。天然食料が超低価格で購入できるようになった為、市民達は勿論、兵士達も財布の紐を盛大に緩めて買い漁り、およそ10年ぶりにもなる天然食料の美味を噛み締めた。中には思わず涙を流す者さえいた程だ。

以降EDF日本支部は、クワ・トイネ公国とは友好関係を続けていく事が改めて決定され、より強固な関係を作って行く事に努力していく事となる。

 

そしてクワ・トイネ公国は、EDF日本支部との国交を隣国クイラ王国と共に結んでから、急速に発展している。

クワ・トイネ公国からは食料を、クイラ王国からは地下資源を輸入していくEDF日本支部は、その対価に両国へのインフラを輸出。(両国から見れば)様々な超技術を惜しむ事なく投入していくEDF日本支部。インフラの一連が完成すれば、国内外の流通が極めて活発化し、今までとは比較にならぬ程の発展を遂げるだろうという試算結果が出ている。

クワ・トイネ公国は武器の輸出も求めたが、EDF日本支部は武器の輸出は許可しなかった。なんでも「他国が扱うには余りにも危険」という事らしい。ならばと各種技術の提供も求めたが、此方も「機密などに抵触する箇所がある」として、EDF日本支部が取り扱う最新の技術は提供されなかった。しかし提供されてきた前世代的な技術でも十分な物ばかり。様々な新技術のサンプルを前に、経済部の担当者は「国がとてつもなく豊か」になると言った。

 

こうしてより良い関係となっていく三国。しかしその背後に、動乱の影が忍び寄っていた。

 

 

 

 

 

 

クワ・トイネ公国の隣国、ロウリア王国。

元々は中規模国家の一つであったが、侵略戦争を繰り返していった結果。現在ではロデニウス大陸の西半分を領土とし、人口3880万人にも達する大国となった。

ロウリア王国は人間至上主義を国是としており、純粋な人類種のみが住まう事を許可している。逆に人類種ではない者達…エルフ、ドワーフ、獣人族などと言った者達はロウリア王国では「亜人」と侮蔑し、醜い生き物であると迫害。亜人殲滅をも国是としている。

その為に、亜人比率が高いクワ・トイネ公国及びクイラ王国との関係性は悪く、国境は常に緊張状態に置かれていた。

 

そんな王国の王都 ジン・ハークの中心にある城の一室。秋の夜の中、明かりの炎の揺らぎがいくつかの人影を作る。

今から行われるのは、王の御前会議。ロウリア王国の行く末を決める、最高会議を前に、ロウリア王国国王 ハーク・ロウリア34世を筆頭に、あらゆる重役達が一堂に会している。その中に、真っ黒なローブを着込んだ怪しい者も混ざり込んでいるが、それを指摘する者はいない。

 

ロウリア王国宰相 マオスが進行役として、言葉を紡ぐ。

 

「これより会議を始めます。まずは国王より、お言葉があります」

「…皆の者、これまでの長い準備期間。ある者は厳しい訓練に耐え、ある者は財源確保に寝る間も惜しんで奔走し、ある者は己の命を賭けて敵国の情報を掴んで来た。皆、大儀であった。亜人…害獣どもをロデニウス大陸から駆逐する事は、前々代からの大願である。その意思を、大願を叶える為に諸君らは必死に取り組んでくれた。その働きに、まずは礼を言う」

 

ロウリア34世が軽く頭を下げた後、話を続ける。

 

「遂に全ての準備が整った…諸君。会議を始めよう」

 

会議室は静寂に包まれる。前々代、つまりは軽く考えても100年前もの前からの悲願が遂に達成される、ある意味では最終戦争の直前。それは極度の緊張感となり、この場を支配した。

進行役のマオスは、今戦争の運営責任者である将軍パタジンに向けて話し始める。

 

「まず、ロデニウス大陸の統一は目前です。しかしクワ・トイネ公国とクイラ王国の間には強い絆があり、それは同盟を結んでいると言っても差し支えないと思われます。片方に戦争を仕掛けた途端、もう一国も我々に宣戦布告をする可能性が非常に高い。つまり、今回の戦争は2国を同時に敵に回す事となります。将軍は、2国を相手にしても勝てる見込みはありますか?」

 

その問いに対して、将軍パタジンは自信を持った口調で応える。

 

「一国は農民の集まり、もう一国は不毛の地の貧国。数も質も我が方が圧倒しており、結束が高くても我々の軍の前には消し飛ぶのみでしょう。負ける事は、まずありませぬ。詳しくは会議後半にて詳しく説明いたすが、ご安心なされよ、宰相」

「分かりました」

「だが宰相殿、1ヶ月ほど前に接触してきた…EDF日本支部だったか?その国に関する情報はありますかな?」

 

実はEDF日本支部は、1ヶ月ほど前にクワ・トイネ公国とクイラ王国との国交を開始した直後にロウリア王国との接触していたのだ。しかしロウリア王国側はクワ・トイネ公国とクイラ王国との国交があるとして、EDF日本支部は敵対勢力と判断。門前払いしていた。

 

「クワ・トイネ公国から北東1000km北東の沖合に出来た新興国家との事です、距離も1000kmと離れている為、軍事的影響は無いでしょう。それに奴等は我が国の竜騎士団とワイバーンを見て「初めて見た」と驚いていました。竜騎士の存在しない、取るに足らない国でしょう。情報はあまりありませんが」

 

ロウリア王国側は知る由も無いが、余りにも致命的な勘違いがあった。

EDF日本支部情報局員は、確かにワイバーンを見て驚いた。人は未知のものに驚かずには居られないから当然の事であるが、ロウリア王国はそれをみて致命的な勘違いをしてしまった。

 

彼の国(EDF)は大した軍事力を保有していない」。

 

これは余りにも致命的。しかしそれを知らない以上、彼等はEDF日本支部を侮って会議を進める。

 

「そうですか。ならクワ・トイネ公国がEDF日本支部に助けを求めても大した事はありませんな」

「しかし、我が代で遂に…遂にこのロデニウス大陸が統一され、忌まわしい亜人どもを絶滅出来ると思うと、余はとても嬉しいぞ」

 

ハーク・ロウリア34世が嬉しそうに発言すると、横から薄気味悪い声が口を挟んだ。真っ黒なローブを着込んだその人物は、第三文明圏列強国 パーパルディア皇国の使者である。

 

「大王様、統一の暁には、あの約束もお忘れなく…ククッ」

「分かっておるわ!」(第三文明圏外の蛮族と思って馬鹿にしおって…!!ロデニウス大陸を統一したら、国力をつけた後にフィルアデス大陸にも攻め込んでやるわ)

「コホン…将軍、作戦概要説明をお願いします」

 

その後、将軍パタジンによる作戦説明が始まった。要約すると、以下の通りとなる。

 

1.今戦争における総兵力は50万。内40万がクワ・トイネ公国侵攻軍であり、残りの10万は本土防衛用である。

2.初戦はクワ・トイネ国境から近い人口10万人の都市 ギムを強襲制圧。兵站は現地調達。(クワ・トイネは豊富な食料に恵まれており、本国からの補給を必要としない為)

3.ギム制圧後は東方55km先にある城塞都市エジェイを全力攻撃。クワ・トイネ公国内で最も堅牢な都市エジェイさえ陥落出来れば、今回 戦争の勝利は決定的となる。

4.航空戦力はロウリア王国のワイバーンのみで対応可能。

5.並行して海から艦船4400隻の大艦隊でマイハーク北岸に上陸、経済都市マイハークを制圧。マイハークを制圧すれば、食料をクワ・トイネ公国に頼り切っているクイラ王国は脅威ではなくなる。

 

「クワ・トイネ公国の総兵力は僅かに5万人。さらに言えば、即応兵力のみなら1万にも満たぬ数であると考えられます。今回準備した我が方の40万の兵力をぶつければ、仮に質が上回っていようが、小賢しい策を弄しようが、圧倒的物量の前には無意味です。この6年間の準備が、実を結ぶでしょう」

「そうか………今宵は、我が人生最良の日だ!!クワ・トイネ公国並びにクイラ王国に対する戦争を、許可する!!」

 

こうして、ロウリア王国の御前会議は終了し、クワ・トイネ公国とクイラ王国に対する戦争が決定された。

 

 

 

 

 

 

クワ・トイネ公国にある、EDF日本支部連絡館。

クワ・トイネ公国との国交開設後、EDF日本支部連絡館の代表として現地に留まる事になった情報局員の田中の朝は、突如やってきた職員の報告によって一変した。

その職員によると、クワ・トイネ公国外交担当官が火急の要件があると、アポイント無しでEDF日本支部連絡館を訪れたのだ。その報告に、田中は僅かに残っていた眠気が吹き飛んだ。転移を経て、混乱を避けるために一応としての国家の体をとっているEDF日本支部だが、それ故に国と国とのやり取りを担当するものがアポイント無しで訪れる事など、相当な事態が起こらなければまず起こり得ない事だ。嫌な予感を感じたりつつも、田中は準備を早急に済ませて応接室へと入った。室内には、クワ・トイネ公国外務局長のヤゴウが焦燥の表情を浮かべていた。

 

「お待たせしました」

「田中殿、急な訪問となってしまい申し訳ありません。至急お伝えしなければならない事態が発生しました」

「それは一体?」

「我が国の西方にロウリア王国があるのは既にご存知だと思います。多数の方面から得た情報を精査した結果、ロウリア王国が我が国に対し、侵略する事がほぼ確実となりました」

「…!戦争、ですか」

「はい。既に国境20km付近にある町ギムの西側に、ロウリア軍の大群が集結しつつあります。ロウリア王国と戦争になれば、貴国に対して約束していた量の食料品の輸出は不可能となります…条約を反故にするのは大変心苦しいですが…」

「…分かりました。この件は直ちに本部に報告します。現段階では確約する事は出来ませんが、援軍を派遣出来るよう、要請しましょう」

「ありがとうございます!!」

 

しかし、あと一歩遅かった。

EDF日本支部がこの事態を把握する直前、ロウリア王国はクワ・トイネ公国に宣戦布告すると同時に侵攻を開始。国境の町ギムは侵攻間もなく陥落。ロウリア王国の手に落ちたギムではロウリア軍兵士による略奪や殺人が起こり、将軍アデムによって意図的に生かされた100人は、その惨状をクワ・トイネ公国の各都市に伝わり、更にそこからEDF日本支部へと伝わる。

 

そしてその瞬間、ロウリア王国の運命は決した。

 

 

 

 

 

 

「…以上が、つい先程入ってきた最新の情報です」

 

EDF日本支部にて緊急で開かれた、重役会議。この空気は、ひたすらに重かった。

それは悲壮や絶望では無い。

 

 

 

「怒り」。ただそれのみだ。

 

 

 

「…その情報は、確かなのだな?」

「ロウリア軍によって意図的に生かされた100人の生存者の証言です。間違いありません」

「参謀長、直ちに対ロウリア王国の作戦を考案せよ。一分一秒でも早くだ」

 

EDFは、人類の護りの象徴だ。それは別世界に転移しようが、変わりは無い。

 

「司令、確認ですが今作戦に於けるロウリア王国軍に対する殺傷制限は?」

「無制限だ。情け容赦は無用、ギムの殺戮を兆倍にして返してやれ」

「了解しました。タイタンの投入は?」

「無論、許可する。必要ならばストームチームも動かして構わん」

 

人々を傷付ける存在は、一切合切赦しはしない。

 

「情報局長、作戦立案の補助を頼む。最新の情報を随時報告しろ」

「分かりました。数日前に自律衛星ライカとの通信復旧が出来て幸いでしたな。奴等はソラ(宇宙)から丸見えです」

 

彼等は、無辜の人々を守る最後の盾である。

 

「艦長、貴方の力をお借りします」

『勿論だ。そもそも第七艦隊はEDF日本支部の指揮下にある。存分に使ってもらって構わんさ』

 

だからこそ、彼等は如何なる存在でも、人々を傷付けた存在を殲滅する義務がある。

 

 

「全EDF部隊員に通達!!現時刻を持って即時出動態勢に移行!!敵はロウリア王国、彼の国のこれ以上の暴挙を許すな!!!!」

『サー、イエッサー!!!!』

 

それが例え、同じ「人間」であろうともだ。




ロウリア王国「余裕だしギムでお楽しみ(殺戮)してやったぜ」
EDF日本支部「絶対許さん」(全力ムーブ)

はい、と言うわけでロウリア王国がいきなりEDFの逆鱗にストレートパンチ打ち込みました。最初はもうちょっと穏やかな雰囲気で参戦させるつもりが、原作見直しつつEDF日本支部の人達に感情移入してたらこうなってしまった。
…ロウリア王国でこれなら、原作で日本国民処刑したパーパルディア皇国戦は一体どうなるんだ?(汗)


用語解説&状況説明
ロウリア王国
ロデニアス大陸西半分を支配する大国。40万の兵力でクワ・トイネ公国に侵略を開始するが、その途中で行ったギムの殺戮によってEDF日本支部を完璧に怒らせる。つまりロウリア王国終了のお知らせです。

EDF日本支部
現在ギムの殺戮を兆倍に返すべく準備中。第七艦隊は勿論、陸上要塞のタイタンの投入も許可された為、陸海空問わずオーバーキル確定。
オマケに最終兵器ストームチームの出動許可が司令直々に出された。ロウリア軍逃げて。

自律衛星ライカ
EARTH DEFENSE FORCE: IRON RAINより特別出演。あんな健気な子を出さずには居られなかった。
搭載兵器は地球防衛軍4に登場する攻撃衛星ノートゥングとほぼ同じ。
偶に綺麗な景色を映した衛星写真が、勝手にEDF情報局に送られる事があるとか。


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第4話 ロデニウス海戦

前回の後書きより

クローサー「パーパルディア戦どうすっかなー」
読者の方々「そもそもパ皇がEDF市民殺せる訳無いだろ」(感想欄より要約)
クローサー(大爆笑)

いや、ホント笑わせて頂きました。一部のご意見は大変参考になりましたので、パーパルディア戦も色々と考えていきます。


クワ・トイネ公国 政治部会は重苦しい空気に包まれていた。ロウリア王国の宣戦布告と同時に始まったロウリア軍の侵攻。国境20kmの町ギムは半日と持たずに陥落し、ギムの殺戮が起こってしまった。

 

「…現状を報告せよ」

「はっ…」

 

首相カナタの命令に、冷や汗を流す軍務卿が応えた。

 

「現在ギム以西は、完全にロウリア王国の勢力圏に墜ちました。先遣隊だけで3万を超え、更に諜報部の報告も加えると、作戦戦力は…ご、50万に達する模様です。また、パーパルディア皇国がロウリア王国に軍事支援を行なっているという未確認情報もあります。現に、今回ロウリア王国は500騎ものワイバーンを投入してきています。また先程…4000隻以上の大艦隊が、港より出航したとの事です」

 

その報告に全員が絶句する他なかった。

敵は我が方の全戦力の10倍。兵士の数だけでも絶望的であるのに、これに加えて500騎のワイバーンと4000隻以上の大艦隊がいる。余りにも、膨大な敵戦力。この戦力に対して侵攻を防ぐ手段は、皆無だ。

 

絶望によって静寂に包まれた会議室。その時、外務局の幹部が飛び込んできた。

 

「首相、EDF日本支部連絡館より連絡が入りました!!」

「内容は?」

 

既に諦めの境地へと至ってしまっていたカナタが、飛び込んできた幹部の発言を促す。

 

「は、これより全文を読み上げます!『EDF日本支部は、クワ・トイネ公国の都市ギムで発生したロウリア王国軍による非人道的行為を許す事は出来ない。EDF日本支部はクワ・トイネ公国の民間人をロウリア王国軍の虐殺から守るべく、ロウリア王国に宣戦を布告した。現在クワ・トイネ公国への援軍を編成中であり、クワ・トイネ政府の軍通行許可が降り次第、直ちにEDF日本支部軍を派遣する用意を行う』との事です!!」

「おお…!!」

 

絶望的だった状況に、確かな希望が舞い降りた。

政治部会の全員の目に光が灯り、覇気を取り戻す。

 

「よし、すぐにEDF日本支部に軍通行許可を出してくれ!援軍の食料も此方で準備する!ロウリア王国との戦争が終結するまでの間、領土、領空、領海の往来を認める事も伝えるように!軍務卿!全騎士団及び全飛竜部隊に、EDF日本支部に全面協力するように伝えろ!」

「はっ!」

 

 

 

 

 

 

数時間後のマイハーク港。

ロウリア王国が4000隻以上の大艦隊を出航させたという情報が入り、クワ・トイネ公国第2艦隊は艦隊を集結させた。各艦は帆を畳み、来たる決戦に備え、敵船に撃ち込む火矢や点火用の油を次々と船に積み込んでいる。

その艦隊の数は、50隻。

 

第2艦隊提督 パンカーレは、ずらりと己が率いる軍艦が並ぶ海を眺めていた。

 

「壮観な光景だな。…しかし、敵は4000隻を超える大艦隊。対して我等は僅かに50隻…一体、彼等の中で何人が生き残る事が出来るだろうか…」

 

思わず本音が漏れる。敵の物量は圧倒的であり、その現実にどうしようもない気持ちが込み上がる。その時、若き側近幹部であるブルーアイがパンカーレに声を掛けた。

 

「提督、海軍本部より伝令が来ています」

「来たか、読め」

「はっ。『本日夕刻、EDF日本支部の第7主力艦隊5隻が、援軍としてマイハーク沖に到着する。彼らは我が軍より先にロウリア艦隊に攻撃を開始する為、観戦武官1名を旗艦に搭乗させるように指令する』…との事です」

「何…?5隻、たったの5隻だと!?50隻、5000隻の間違いではないのか!?」

「間違いではありません」

「奴等、やる気はあるのか…!?しかも観戦武官だと?5隻しか来ないなら、観戦武官に死ねと言ってるのも同意義ではないか!!明らかな死地と分かっていながら、部下を送るような真似が出来るかぁ!!」

 

EDF日本支部と国交を結んだとはいえ、現時点ではEDF日本支部の本当の力を知らぬ者も決して少なくはない。それに加えて、パンカーレはEDF日本支部の艦を見たことが無いから、この反応はまだ当たり前の反応であった。

 

「…私が行きます」

「しかし…」

「私は、剣術においては海軍首席です。白兵戦になれば私が一番生存率が高い。それに、あの鉄竜(ホエール)を飛ばしてきたEDF日本支部の事です。もしかしたら勝算があるのかもしれません」

「海を渡ってきた、羽ばたかぬ鉄竜の事か…見た事はないが、相当な戦力と見ていいのか?…すまぬが…頼んだ」

「はっ!」

 

こうして、ブルーアイが観戦武官としてEDF第7艦隊に乗り込む事が決定された。

 

 

 

 

 

 

同日の夕刻。

マイハーク港は蜂の巣を突いたような大騒ぎとなっていた。マイハークに住まう全ての者達が、海の方向を眺めている。

口々に声が上がる中、観戦武官となったブルーアイも己の目を疑う光景が浮かんでいた。

 

沖合に、信じられない程に巨大な艦が4隻。その4隻がまるで小型艦に見える程に、超巨大な艦が1隻浮かんでいる。

4隻だけでも、長さは300m以上もあると思えるくらいには大きいが、超巨大艦に至っては1000mを余裕で超えているではないか。

軍艦ピーマがEDF日本支部と接触した際、300mもの大型船を臨検したという話は聞いていたが、彼等は自分達の仕事の成果を大きく見せる為、嘘を付いてたのだろうと考えていた。

 

しかし現実は違った。「300m級の大型船さえも小型に見える程の超大型艦」を、EDF日本支部は保有していたのだ。

 

やがて超巨大艦から、何かが飛んできた。ブルーアイはその物体の中に人が見えた為、それは乗り物の一種であろうと推測した。事前に迎えが来るという連絡は受けていたのだが、ワイバーン以外に空を飛ぶ手段を実際に見たブルーアイは言葉を失う。それが近付くにつれ、キーンという甲高い音とバタバタという音が合わさった合成音が辺りに響き始め、やがて猛烈な風が吹き荒れ、近くにいると吹き飛ばされそうな風圧となる。

広場に駐機したその物体は、風と轟音を弱めていく。その最中に胴体横の扉が開き、中から男が現れて人だかりに向かって、しっかりとした足取りで歩き出した。ブルーアイが人だかりの前に歩み出ると、その男は彼の前に立ち、敬礼する。

 

「こんにちは、私はEDF日本支部のクワ・トイネ公国派遣部隊の塚崎と申します。この度、クワ・トイネ公国の観戦武官殿を1名、迎え上がるよう指示を受けて参りました」

「初めまして、私はクワ・トイネ公国海軍第2艦隊の作戦参謀をしております、ブルーアイと申します。この度のEDF日本支部の救援、感謝します」

「事前連絡をしていたかと存じますが、乗船準備は整っていますか?」

「はい、よろしくお願いします」

 

ブルーアイは荷物を抱え、EDF日本支部が保有するヘリコプター「HU04ブルート」に乗り込んだ。

塚崎がドアを閉めると、再びヘリのエンジンの回転数が上がっていき、やがて奇妙な浮遊感と共にHU04ブルートは飛行を開始する。

数分の飛行を経て、沖合に停泊している母船に近付くと、遠目で見ていた時とはとても比べ物にならない程の大きさに圧倒されていく。

 

(なんなんだ、この大きさは…!?)

 

ブルーアイの理解の範疇を超えるそれに、最早どう言った運用方法で造られたのか。彼には一切の検討が付かなかった。

 

彼がこれから乗る艦。

それはEDF日本支部所属第7艦隊旗艦、「要塞空母デスピナ」。

全長1400mもの超巨大空母であり、決戦要塞X5としてEDFの総力を持って建造された、対フォーリナー決戦兵器である。

特徴としては、やはりその戦闘力だろう。空母としての機能は勿論として、マザーシップの攻撃にも耐え得る強靭な装甲を持つ。更に汎用主砲として4基8門の51cmレールガン連装砲、対空兵装として360基の巡行ミサイルVLS、420基の35mmCIWS、対地支援用として4基の超大型巡行ミサイルVLSを搭載。機関は核融合炉であり、その恩恵を受けて最大速力は何と30ktである。デスピナ内部に簡易的な兵器製造機構、食料生産機構を備える等、無補給でも暫くは継続戦闘が可能となっており、正に「要塞空母」と言わしめるに相応しい性能を持つ。

 

そして要塞空母デスピナの四方に布陣するように停泊している艦。

それは「セントエルモ級イージス戦艦」の4隻である。

EDFが誇るイージス戦艦であり、ベースはイージス艦であるものの、あらゆる状況に対応するように様々な改造が施されている為、原型はあまり残っていない。船体は三胴船型と波浪貫通タンブルホーム船型を掛け合わせたような形状になっている。その全長は全長310.1m、武装は38cmレールガン連装砲7基14門、連装型35mmCIWS24基48門、8連装水平ミサイル発射機9基、ミサイルVLS72基、組み立て式小型テンペストA0ミサイルVLS1基を搭載。装甲はマザーシップの主砲を除く攻撃に有効的に耐える事が可能。

最大速力は40ktと、かなり高速。更にヘリやVTOL機を離発着させる小型飛行甲板まで装備しており、EDF海軍の主力艦として採用されている。

 

 

要塞空母デスピナとセントエルモ級イージス戦艦4隻、計5隻で構成された艦隊。それこそが今回、クワ・トイネ公国を護る為、ロウリア王国軍を撃滅する為に派遣されたEDF日本支部第7主力艦隊である。

 

 

ブルーアイは要塞空母デスピナの甲板に降り立った後、塚崎の案内で艦内を歩き、艦橋に入る。

艦橋に入ると、ブルーアイは要塞空母デスピナの艦長と対面する。今度はブルーアイが先に敬礼を行った。

 

「クワ・トイネ公国海軍観戦武官のブルーアイです。この度の援軍、感謝いたします」

「初めまして。私が艦長の山本です。早速ですが、我々はロウリア艦隊の位置を既に把握しています。現在地より西500kmの位置、およそ5ktの速力で接近中です。我々第7主力艦隊は明日の朝に出航し、ロウリア海軍に警告を発します。従うならばそれで良し、従わなければ第7主力艦隊の火力で以ってロウリア艦隊を殲滅する予定です。明日までは艦内でごゆっくり、おくつろぎください」

「全て、排除……ですか?」

 

ブルーアイは山本艦長の言葉に思わず聞き直した。彼からすればクワ・トイネ公国海軍の50隻、EDF日本支部の5隻、計55隻で4400隻もの大艦隊がを相手にするには、如何に巨大なEDF日本支部の艦であろうとも極めて厳しいと考えていたのだ。

 

「ああ、勿論ロウリア海軍が我々の警告に従って引き返すならば、攻撃は致しません」

「そう言った意味ではなく…確かに我が軍の艦隊50隻は準備を完了しておりますが、たったの55隻で作戦を行うのですか?失礼ながら、敵艦隊の総数はご存知ですか?」

「ええ。ロウリア海軍の艦隊総数は4400隻と把握しています。それとクワ・トイネ公国海軍の随伴は必要ないと伝えております。ブルーアイ殿の安全は我々第7主力艦隊が保証しますので、ご安心して仕事をなさって下さい」

 

 

 

 

 

 

翌日、早朝。

第7主力艦隊は予定通りに出発し、デスピナの最高速力の30ktに合わせ、洋上に巨大な白い航跡を引いていく。

 

「なんという速度だ…!!我が軍の帆船最大速力を遥かに凌駕している!!しかし…他の艦の距離が其々離れ過ぎているな。密集する必要が無いのか?」

 

ブルーアイが呟いた言葉には、少々語弊がある。艦隊の密集をする必要は確かにないのだが、根本的な問題として「密集する事が出来ない」のだ。要塞空母デスピナは先に説明した通り、全長1400mの超巨大空母である。当然、排水量も其れ相応の規模となっており、詳しくは軍事機密で非公開となっているが、それでも最低200万トンは下らないだろう。そんな超巨大艦が30ktで航行するとなれば、当然周辺の海面の影響は測り知れない。三胴式船体のセントエルモ級イージス戦艦さえもデスピナが発生させる波浪には舵を取られてしまうのだ。

 

閑話休題(それはさておき)

 

第7主力艦隊は変わらず30ktで西に航行を続ける。

出発から約7時間後。遂に平たい地平線の向こう側に、ロウリア王国海軍が姿を現わす。

 

後に「ロデニウス大海戦」と呼ばれる事となる、歴史を動かす戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

「いい景色だ、美しい…」

 

目の前の光景を見て、ロウリア王国東方征伐艦隊海将 シャークンは呟いた。

4400隻もの大艦隊が帆を張り、風を目一杯に受けて大海原を進むロウリア海軍。その船内には大量の水夫と揚陸部隊を乗せ、マイハーク港に向かっている。余りにも多い大船団故に、最早海が見えないと言わんばかりに、360度にひたすら船が映る。

ロウリア王国が6年の準備期間を掛け、更にパーパルディア皇国からの軍事援助を受け、漸く完成したこの大艦隊。4400隻もの大艦隊を防ぐ手立ては、ロデニウス大陸に存在しない。いやそれどころか、列強国パーパルディア皇国さえも制圧する事が出来るのではないかと、シャークンは一瞬思った。

 

(いや…パーパルディア皇国には「砲艦」と呼ばれる、船ごと破壊出来る兵器があるらしいな…)

 

今のロウリア王国では、パーパルディア皇国に挑むにはまだ危険が大きすぎる。頭をよぎったその考えを打ち消し、改めてこれから征服する、東の海をみた。

 

(…何かが、此方に飛んでくる?)

 

シャークンの視界に虫のような形をした無機物な物体が、バタバタと音を立ててロウリア艦隊上空に飛来する。見たこともない物体かつ、異様な飛行形態に、ロウリア艦隊に僅かな混乱が生まれる。

弓矢が届かない上空を飛び、人間の発する事はとても出来ない大音量で、飛行物体はロウリア艦隊に呼びかけを始めた。

 

『此方はEDF日本支部第7主力艦隊だ、ロウリア軍に警告する!ここから先はクワ・トイネ公国領海だ!直ちに回頭し、ロウリア領海へ引き返せ!警告に従わない場合、我々は貴艦隊に対して殲滅を開始する!繰り返す──』

 

どうやらあの飛行物体には人が乗っているようだ。そしてEDF日本支部という言葉に、シャークンは聞き覚えがあった。1ヶ月程前に外交官がロウリア王国に接触したらしいが、宰相が門前払いしたと聞いている。しかしあの飛行物体を見る限りでは、政治部が言っていたような蛮族の国とはとても思えなかった。

飛行物体に対して弓を引くものもいたが、当然当たる訳も無く。飛行物体は同じ事を繰り返し、しばらく上空を旋回していたが。

 

『…貴艦隊に回頭の意思無しと判断し、EDF日本支部第7主力艦隊は殲滅を開始する!!』

 

ふと飛行物体が今までの警告とは違う言葉を放ったと思うと、東の空へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

同時刻、EDF日本支部第7主力艦隊。ロウリア艦隊への警告を終了し、艦長の号令を待っていた。

 

「艦長。HU04ブルートの退避が完了しました」

「うむ…では、これより攻撃を開始する!全艦に通達、主砲発射用意!!目標、ロウリア艦隊!!」

「了解!前部51cmレールガン連装砲、発射用意!目標、ロウリア艦隊!照準開始!」

「電圧異常無し!通常徹甲弾、装填完了!」

「最適弾道角計算完了、照準終了!安全装置解除!いつでも撃てます!」

「全艦、主砲発射用意完了!」

 

「撃て!!」

 

その号令を合図に、要塞空母デスピナの前部砲塔である2基4門の51cmレールガン連装砲と、4隻のセントエルモ級イージス戦艦の前部砲塔の12基24門の38cmレールガン連装砲から、バキュゥン!!という甲高い音と共に超音速で砲弾が射ち出された。

 

これから始まるのは、「戦闘」ではない。「蹂躙」だ。

 

 

 

 

 

 

突如、ロウリア艦隊の数百隻が「消滅」した。

 

「…は?」

 

大艦隊を抉るように出来た空白の空間。一瞬前まではそこに数百隻の艦隊がいたのだ。

周囲に響き渡る大轟音、吹き渡る衝撃波、撒き散らされる木片、肉片、血液、海水。

一瞬にして、ロウリア艦隊はパニックに包まれる。

 

「な、何が……一体、何が起こったのだ!!?」

 

シャークンは瞬時に攻撃を受けたと判断は出来たのだが、まさか「数百隻が刹那で消滅する」なんていうのは余りにも想定外。

その時、周囲を見渡したシャークンの視界に、異物が見えた。水平線に僅かに浮かぶ物体。直感的にそれが攻撃の正体だと分かった。

 

「アレか…!通信士、司令部に至急の航空支援を要請しろ!「敵主力艦隊の攻撃により、我が艦隊壊滅の危機あり」とな!!急げ!!」

 

 

 

 

 

 

東方征伐艦隊からの通信要請を受けた王都防衛騎士団総司令部は騒然としていた。

4400隻もの大艦隊故に隠密行動など出来る訳がなく、必ず海戦は起こると判断していた。しかしそれでも高々数十隻程度の艦隊。物量の前に容易に消し飛ぶのは目に見えていた。しかし東方征伐艦隊からの通信は、全く真逆のものだった。

 

『現在、敵主力艦隊と思われる艦を捕捉。現在我が艦隊は超遠距離から攻撃を受けており、壊滅の危機。至急航空支援を要請する』

 

この想定外の事態に、総司令部は直ちに総司令部に待機していた250騎のワイバーンを緊急出撃。東方征伐艦隊を救うべく、飛竜の大編隊は東の海へと飛び立っていった。

 

 

 

 

 

 

東方征伐艦隊救援に向かっているロウリア王国竜騎士団。王国史上最大の250騎による作戦行動の勇姿は、地上から見る者を圧倒する。

それを率いる竜騎士団長 アグラメウスは、内心に不安を抱えていた。

東方征伐艦隊から敵主力艦隊発見の連絡が入り出撃したが、クワ・トイネ公国の海軍主力はせいぜい50隻、多くても100隻程度が関の山。対して東方征伐艦隊は44倍の4400隻。まず海軍だけでも容易く殲滅出来る筈なのに、何が起こって東方征伐艦隊が大打撃を受けるというのだ。

それはアグラメウスだけでなく、竜騎士団の全員がそう思っていた。

 

 

その時、目のいい者は視界の違和感に気付いた。

 

「ん?」

 

突如現れた多数の黒い点。それが何かを考えている間に、黒い点は刹那に距離を詰め、隊列を組んでいたワイバーン隊前方及び中央部が轟音と爆発に飲み込まれる。

一瞬で250騎の内、120騎が肉片と化した。その中には竜騎士団長 アグラメウスも含まれていた。

 

『な…なんだ今のは!?』

『う、うそだ、半数が一瞬で…』

『散開しろ、急げ!!』

 

混乱する魔力通信。すると今度は竜騎士団を貫くように5本の衝撃波が連続で数派に渡って走り、その衝撃波に巻き込まれたワイバーンと人間は即死し、海へと落ちていく。これによって更に竜騎士団の数が減り、僅かに80騎となる。

 

『前方に何かが見えるぞ!なんだアレは!?』

 

僅か80騎となったロウリア王国竜騎士団の前に立ち塞がった5つの飛行物体。

それはまるで矢尻の様な形をしていて、竜騎士団からすれば、それは全く未知の存在。

 

それは、EDF日本支部が保有する戦闘機「ファイター」。

フォーリナー大戦後に生まれた第6世代戦闘機であり、フォーリナーのテクノロジーをふんだんに使用したEDF最強かつ唯一無二の制空機だ。

カナード付きデルタ翼機であり、推進力となる双発エンジンには3枚パドル式左右独立三次元推力偏向ノズルを採用。更に各所に補助用の小型ブースターを取り付けており、低速時には小型ブースターを使用して戦闘機とは思えぬ超機動を行う事が出来る。

搭載兵器は30mmレーザー砲2門、最大24の目標を同時に撃破可能な全方位多目的ミサイル誘導システム「ADMM」、汎用レールガンユニット「EML」の3種。

最高速度はマッハ4に達し、巡航速度もスーパークルーズとなるマッハ2を発揮する。

 

彼等は第7主力艦隊旗艦 要塞空母デスピナの艦載機である。レーダーでロウリア竜騎士団の接近を察知した為、山本艦長はアルファ隊、ファイター5機を発艦させた。

要塞空母デスピナから発艦した彼等はまず、ADMMによるミサイル攻撃を開始。これにより120騎を撃破し、続いてEMLによる狙撃を開始したのだ。レールガンと飛行速度が合わさり、マッハ10もの速さで飛来したその砲弾は、衝撃波のみで生物を即死させる。これによって更に50騎を撃破したのだ。

そして今から、アルファ隊はドッグファイトへと突入する。5対80、数だけ見れば16倍の戦力差だ。

だが、80騎のロウリア竜騎士団は最高速度はせいぜい235km/h。攻撃手段も低速な導力火炎弾のみ。対して戦闘機ファイターは、最高速度マッハ5に加え、攻撃手段は30mmレーザー砲、ADMM、EML。

そしてファイターのパイロットは、対フォーリナーの訓練を何百何千時間も積み上げてきた。そんな彼らからすれば、ワイバーンの大群程度はイージーモードも良いところである。

 

結論から言えば、ロウリア竜騎士団が勝利できる確率は、「絶無」だ。

 

ドッグファイトに突入したファイター5機。その速さに竜騎士団の誰もが追い付ける筈が無く、1秒毎に1騎、また1騎と墜ちていく。

 

『なんだこのはや』

『やめてぇ!!助けてぇ!!』

『みんな逃げろ!!こんなの、こんなの勝てるわげぇ゛』

『畜生、畜生、畜生!!』

 

5分。

それは、戦闘開始よりロウリア竜騎士団250騎が、ファイター5機に殲滅されるまでの時間である。

 

 

 

 

 

 

「艦長、敵航空部隊の殲滅が完了しました。アルファ隊より着艦要請が届いています」

「許可する。アルファ隊によくやったと伝えておいてくれ」

「了解です」

 

第7主力艦隊は、ファイターが交戦を開始する前に既に攻撃を終えていた。何故か?それは「攻撃する目標が存在しない」からだ。

ブルーアイは、目の前に広がる光景に言葉を失っていた。

 

紅く染まり上がった死の海。

 

それは見え得る範囲の海面を赤が埋め尽くし、外に出れば死の匂いが充満しているだろう。4400隻の大艦隊がいた痕跡は、海に浮かぶ木片と肉片、そして海を紅く染め上げる血のみだ。第7艦隊は一応生存者の救助活動を開始しているが、果たしてこの惨劇を生き残った者はいるのだろうか。

海戦は、圧倒的勝利に終わった。しかしその勝利が生み出したその光景は、ブルーアイの心に恐怖を植え付けたのだ。

 

後にEDF日本支部に提出される第7主力艦隊戦闘報告には、こう記されている。

 

 

EDF第7主力艦隊

損害:皆無

 

ロウリア海軍

損害:海軍船4400、ワイバーン250

死者:計測不能

捕虜:0




用語解説&状況説明

東方征伐艦隊
ロウリア王国より出撃した4400隻からなる大艦隊。マイハーク港を制圧する予定が、その前に立ち塞がったEDF日本支部第7主力艦隊に一隻残らず殲滅された。
生存者は0、パーパルディア皇国の観戦武官も乗っていたが諸共木っ端微塵に。

ロウリア王国竜騎士団
東方征伐艦隊の救援要請を受け、総司令部に待機していた250騎全騎で出撃。
結果、要塞空母デスピナから発艦したファイター5機に5分で殲滅された。

EDF日本支部第7主力艦隊
第7艦隊から要塞空母デスピナ、セントエルモ級イージス戦艦4隻を抽出して編成された艦隊。超遠距離からレールガン連装砲による砲撃で東方征伐艦隊を殲滅。ロウリア軍総司令部より飛来した250騎のワイバーンは要塞空母デスピナの艦載機であるファイター5機が発艦。戦闘時間5分で殲滅させた。
これでも主砲とファイターしか使ってない。


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第5話 報告と準備

クローサー「よし。第5話の執筆終わったし、ついでに小説情報をチラ見するか」

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クローサー「ファッ!?」


クワ・トイネ公国 政治部会。

4日前、 EDF日本支部がロウリア王国海軍を「殲滅」した戦いの模様が、参考人招致した観戦武官のブルーアイによって報告されていた。

この国の政治部会としては異例となる参考人招致であり、クワ・トイネ公国の命運を左右する戦いの報告を、国の代表達は真剣に聞く。その手元には、報告書が配られている。

 

「以上が、ロデニウス大海戦の戦果報告となります」

「…では、何かね?EDF日本支部はたったの5隻で、ロウリア艦隊4400隻に挑み、全てを海の藻屑とした。更にワイバーン250騎の空襲も、飛行機械5騎で殲滅した。その上5隻と飛行機械には全く被害が無かったというのかね?」

「その通りです」

「幾ら何でも無茶苦茶だ」

 

その言葉に、ブルーアイは困った表情を浮かべる。確かにとても信じられない事ではあるが、嘘や誇張は一切含まれていない。これ以上に何も書きようが無いし、どうしようもなかったのだ。

 

「EDF日本支部側の人的被害はゼロと書いてある、死者は無しだと言うのか?我が国の艦隊は出るまでもなかったと?こんな場で君がわざわざ嘘を付くとは思えないのだが、この報告はあまりにも現実離れしていて、信じられないのだよ」

 

外務卿のリンスイの言葉は、誰もが抱いていた感想を正に代弁する言葉。

本来ならば彼等はロウリア軍の侵攻を防いで貰った事を喜ぶべきなのだ。しかし一会戦の戦果としてはあまりにも度を外した戦果の為、政治部会にはEDF日本支部に対する、ある種の恐怖が宿っていた。

 

「EDF日本支部に派遣した使節団から、日本人は魔法を使うことが出来ないと聞いた。しかしこの報告書では「大規模爆裂魔法の様なもので、ロウリア王国海軍船が木っ端微塵に粉砕された」と記載がある。一体どちらが本当なんだ?」

「EDF日本支部が行った攻撃は、あくまでも「大規模爆裂魔法の様なもの」です。魔法とは断定出来ず、しかしそれ程の威力を発揮するには、我々の身近な所だと爆裂魔法しか思い浮かばなかった為、そのような表現で記載しました」

「では、EDF日本支部は魔法無しで大規模な爆発を連発し、ロウリア海軍を殲滅したのかね?そんな事不可能に決まってる」

 

野次が飛ぶが、ブルーアイはこれ以上説明を続けても無駄だと悟る。

様子を見ていた首相のカナタが、慎重に口を開いた。

 

「いずれにせよ、これで海からの侵入が防げた。ロウリアに最早海軍艦は1隻も残っておらず、再度の海からの侵攻は不可能となった訳だ。軍務卿、陸の方はどうなっている?」

「現在ロウリア地上部隊は、ギム周辺に陣地を構築しております。海からの侵攻作戦が失敗した為、ひとまずギムの守りを固めた後に再度侵攻してくるものと思われます。電撃戦は無くなったと見てよろしいかと。EDF日本支部の動向についてですが、城塞都市エジェイの東側5km先にあるダイダル平原にて、3km四方の土地の貸し出し許可を求めてきています」

 

軍務卿が大陸共通言語で書かれた申請書をカナタに渡す。その申請書には既に外務卿、軍務卿のサインが書かれており、残る一つのサインは首相のサインである。

 

「エジェイの後方…陣地を構築するのか?」

「そのようです」

「ダイダル平原は何も無い平野だったな…よし。外務卿、この申請書を返す際に陣地構築の許可書も発行せよ。無制限で好きに使って構わないとな」

 

後日。土地の貸し出し許可と陣地構築許可を得たEDF日本支部は、ダイダル平原に仮設飛行場兼ロデニウス大陸方面前線基地の建設に着手する。

 

 

 

 

 

 

代わってロウリア王国 王都ハーク城。

その一室でハーク・ロウリア34世は、将軍パタジンの戦闘結果報告を聞いて激怒していた。先日起こったロデニウス大海戦にてEDF日本支部と名乗る新興国が宣戦布告し、ワイバーン250騎と軍艦4400隻が殲滅されるという未曾有の大損害を負ったのだ。しかも此方側の戦果は全く確認出来ていない。完全敗北である。

 

「此度の海戦、なぜ負けた?」

「海戦の生存者が誰一人としていない為、分かりません…」

「…いずれにせよ、この被害は事実だ。今後このような事があってはならぬぞ」

「ははっ!海戦では想定外の結果で終わりましたが、この戦争の主戦力は陸上部隊である事は変わりありません。そして陸戦では数が物を言います。現にギムは既に陥落済みでございます。以降の作戦はより万全を期す故、陸上部隊だけでも公国を陥落させる事は容易でございましょう。陛下におかれましては、戦勝報告を大いにご期待くだされ」

「パタジンよ、此度の戦はそなたにかかっている。期待を裏切る事のないように頼むぞ」

「ははっ、ありがたき幸せ!!」

 

 

 

 

 

 

そして、第三文明圏 パーパルディア皇国。

薄暗い部屋の中にいる、2人の男は皇国の行く末に関わる話をしていた。

 

「…EDF日本支部?聞いた事が無い国だな」

「ロデニウス大陸の北東方向にあるという島国です。それと国というより、統治機構らしいです」

「いや、それは報告書を見れば分かるが…今までこのような国はあったか?大体、ロデニウスから1000km程の場所であれば、我々が今までの歴史の中で一度も気付かないとは考えられない」

「あの付近は海流や風が乱れており、航路の難所となっております。無用な被害を防ぐ為に近付かないようにしていたので、調査もしておりませんでした」

「しかし…文明圏から離れた蛮地で、海戦方法が極めて野蛮なロウリア王国とはいえ、せいぜい百何隻で4400隻が撃沈されるなど、些か現実離れしていないか?」

「憶測ですが、EDF日本支部も大砲を作れる技術水準に達していると思われます。そうでなければ4400隻もの数を殲滅するのは考えられません」

「蛮族の分際で大砲か…今までロデニウスや周辺大陸に侵攻しなかったのは、十分な技術水準に達するまで閉じ篭っていたのかもしれんな。漸く大砲が作れるようになって、この機会に顔を出してきたと考えるのが適当か。ところで、まさかロウリアが負けるなんて事は起こるまいな?もしそうなれば国家戦略に支障をきたすぞ」

「陸戦は海と違い、数が物を言います。ロウリアは数だけは兎に角多いので、大砲を持ち始めただけの国に大敗する事はありますまい」

「この報告の真偽を確かめるまで、陛下への報告は保留する。いいな」

「はっ」

 

 

 

 

 

 

クワ・トイネ公国国境付近。

その上空を、EDFの保有する対地攻撃ヘリ「EF31ネレイド」が飛行していた。

何故EDFの攻撃ヘリがそんな場所を飛んでいるのかというと、国境付近の警備とクワ・トイネ公国の避難民の発見の為だ。

クワ・トイネ公国より借り入れたダイダル平原の土地に仮設飛行場付きの前線基地を構築したEDF日本支部は、次々と前線基地に陸戦部隊や航空部隊の輸送を開始した。全ての準備が整うまでは作戦行動は行われないが、ロウリア王国占領地から逃れる為にクワ・トイネ勢力圏内に辿り着こうとしている避難民が現在もいる事を把握し、避難民の安全を確保する為にEDFのヘリ部隊が先立って、国境地域に配備されていた。

 

(…ん?)

 

ネレイドのパイロットが、視界の先に人の集団を見かける。

速い、どうやら走っているようだ。すぐに集団の後方に視線を移す。ロウリアの騎馬隊が集団を追いかけていた。、

 

「司令部、此方ウルフ3!クワ・トイネの避難民を発見、ロウリア騎馬隊に追跡されている!これよりロウリア騎馬隊に対して攻撃を開始する!」

『此方司令部、了解した!間違っても避難民に当てるなよ!』

(言われなくても!)

 

全兵装の安全装置を解除、全速で向かう。少し高度を上げて避難民への誤射の確率を更に下げ、照準を定める。そしてネレイドのハードポイントに搭載されたロケットポッドの発射装置に指を掛ける。

 

「滅びやがれ!!」

 

4つのロケットポッドから8発ずつ、計32発のロケットが発射。全弾が避難民を避け、ロウリア騎馬隊へと一直線に向かう。避難民へと突撃していたロウリア騎馬隊は攻撃をかわす事が出来ず、ロケット弾の爆発に巻き込まれ、数秒で殲滅された。

 

「ふぅ…」

 

ロウリア騎馬隊の殲滅を確認し、パイロットは大きく息を吐く。あと1、2分発見が遅れていれば、彼が救った避難民は殺されていただろう。そもそももし自分が発見出来なかったと思うと、背筋が震えた。

 

「此方ウルフ3、ロウリア騎馬隊の殲滅が完了した。避難民の数は…およそ200。主に老人、女性や子供だ。HU04ブルートの輸送の手配を頼む」

『ウルフ3、そちらの現在地を報告せよ』

「了解、現在地は───」

 

今のEDF日本支部は、こうしてロウリア軍から逃げてくる避難民を保護する事しか出来ないが、それも前線基地に輸送されてくるEDF陸軍空軍の準備が整うまでの僅かな間だけ。

一度準備が整えば、彼等は怒りを乗せて敵を撃滅するだろう。そしてその力の前に、ロウリア軍が敵う事は有り得ない。




今回は少し短め。
次回は、遂にEDF陸軍が動き出します。


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第6話 攻撃開始

城塞都市 エジェイ。

過日、ロウリア王国との緊張状態が高まりつつあった頃にクワ・トイネ公国は全面衝突に備え、国境から首都に通ずる侵攻ルートを食い止めるべく、要所として城塞都市エジェイを設置した。クワ・トイネ公国の絶対防衛圏に位置するだけの事はあり、高く強固な城壁、また万が一城壁が突破されたとしても、敵の侵攻を防ぐ機構が街中の至る所に隠されている。そして城内に湧き出す泉などの豊富な備蓄量は、兵糧攻めさえも不可能とする。

この城壁都市に、クワ・トイネ公国西部方面師団約3万人が駐屯していた。ワイバーン50騎、騎兵3000人、弓兵7000人、歩兵2万人からなる、クワ・トイネ公国の主力軍である。

そしてその主力軍を束ねる将軍ノウは、今回のロウリアの侵攻を城塞都市エジェイで撥ね返す事が出来ると自信を持っていた。高さ25mの防壁はあらゆる敵地上部隊の侵入を許さず、空からの攻撃に対しても対空用に訓練された精鋭のワイバーンがいる。この防御の前に、如何なる大軍であってもこの城壁都市を陥落させる事は出来ないという、確かな根拠を持つ自信だった。

 

「ノウ将軍、EDF日本支部の方々が来られました」

「来たか…通せ!」

 

政府からEDF日本支部に協力するように通達された為に協力しているが、彼は正直、自国に土足で乗り込んできたEDF日本支部軍が気に入らなかった。EDF日本支部は自国の領空を侵犯し、軍の防衛網を突破可能な力を見せた後に接触してきた。まるで圧力外交だと心証を害していたのだ。更にロデニウス大海戦では、ロウリア王国海軍の4400隻にも及ぶ大艦隊を僅かに5隻で殲滅させたという戦闘結果報告を聞き、脚色するにも程があるだろうと鼻で笑った。陸軍に於いても鵜呑みにする者はごく僅かであり、幾らか情報操作が入っているだろうと冷ややかな反応だ。

そんな中。ロウリア王国兵約2万が、この城壁都市に向かって進行中であると情報が入ってきた。陸戦は何よりも数が物を言う。今回EDF日本支部が送り込んできたのは、EDF日本支部第3師団とかいう3000人弱の兵力で、彼等はエジェイの東側約5kmの所に基地を作って駐屯していた。たったの3000人程度では、虚を突いた戦果こそは挙げられるかもしれないが、戦局に影響を及ぼす程ではないと徹底的に否定的だった。その為、自分達でロウリアを退けるので彼等の出番は無いだろうと予測していた。

 

コンコン、と応接室のドアがノックされる。

 

「どうぞ」

「失礼します」

 

一礼して応接室に入る、3人。

 

「EDF日本支部第3師団長の太田内です」

 

ノウが着る、宝石入りの気品ある服とは違い、三人とも来ている服は緑を基調とした服を着ている。こやつがEDF日本支部の派遣軍の将軍だというのかと、ノウは信じられない思いだった。

兎にも角にも、まずは社交辞令から入る。

 

「これはこれは、よくおいでくださいました。私はクワ・トイネ公国西部方面師団将軍、ノウといいます。この度の援軍に感謝致します」

「EDF日本支部の師団長殿、ロウリア軍はギムを落とし、まもなく此処エジェイへと向かってくるでしょう。しかし、またお分かりかと思いますが、エジェイは鉄壁の城壁都市。これを抜く事は如何なる大軍をもってしても無理でしょう」

 

努めて高圧的に、ノウは話を続ける。

 

「甚だ心外ながら我が国はロウリアに侵略され、彼の国に一矢を報いるべく国の存亡をかけて立ち向かっております。我らの誇りにかけて、ロウリア軍は我らが退けます。EDF日本支部の方々はどうぞご安心して、貴方方が作った基地から出る事無く、後方支援をして頂きたい」

 

「お断りします」

 

ノアの発言と殆ど重なるように、太田内の声が響いた。

その顔からは表情が消え、鋭い視線がノウを貫く。その威圧感に、思わず一歩後退りする。

 

「…大したご自信ですね。この街は鉄壁。この街を落とす事は出来ない。誇りにかけて退ける。貴方がその言葉を口にするだけなら簡単だ。だが実際にそれを行うのは貴方ではない、貴方が率いる兵士達だ。そんな自信や誇りは、戦いに於いて何の意味も持たない。そんな物は、ちょっとした出来事で簡単に崩れ落ち、死を招く。そしてその代償を支払うのは、貴方ではない」

 

淡々と紡がれる言葉。太田内から発せられる威圧感に、クワ・トイネの人間は言葉を発する事は出来ない。

 

「我々はクワ・トイネの人々をロウリア王国から護るべく、今此処にいる。その対象は市民だけでなく、兵士達もだ。貴方の自信や誇りで、無駄な死を生み出させたりはしない。我々EDF日本支部第3師団が最前線に立ち、エジェイに接近するロウリア軍を殲滅します。貴方方はエジェイの城壁内から、決して出る事の無いようにして下さい」

 

こうして、クワ・トイネ公国西部方面師団とEDF日本支部第3師団の代表達による会談は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

ロデニウス大陸方面前線基地。

クワ・トイネ公国西部方面軍との会談を終えた太田内と幹部は、先程の会談について話をしていた。

 

「…宜しかったのですか?あのような強硬的な姿勢で」

「あそこで我々が甘い対応などした時には、クワ・トイネの人々が犠牲になる。我々は第2のギムの惨劇を止めるべく此処にいる。我々が居る場所で、クワ・トイネの人々が1人でも殺されてしまったその瞬間、我々の負けなのだ」

「そうですね。では…」

「ああ、第4機甲部隊を展開させろ。準備は?」

「ギガンテス30両、タイタン5両、重装型ベガルタ10機、プロテウス2機、ネレイド10機の展開準備は完了してきます。待ち伏せ地点の丘の高さはプロテウスの全長より低いですが、脚を屈めて潜んでおけば問題ありません」

 

此処で幹部から発せられた様々な兵器名。まずはそれらを此処で解説しよう。

 

 

まず、「E551ギガンテス」。

140mm砲を装備したEDFの主力戦車であり、フォーリナー大戦の教訓を活かして製造された第5世代戦車だ。140mm砲の火力、戦車ならではの強靭な装甲、強力なエンジンによって生み出される軽快な機動性。全てに於いてバランスが取れた性能であり、EDF機甲部隊の中核を担う、信頼性が極めて高い兵器である。

 

 

次に、「E651タイタン」。

EDFの重戦車であるが…まず言えるのは、何と言ってもその巨体だろう。何と全長は25mもある。何故それだけ大きい車体となっているのか?その理由は、この戦車が搭載する主砲にある。

 

何をトチ狂ったのか、「戦艦砲」を主砲としたのだ。

 

その口径、36cm。セントエルモ級イージス戦艦の主砲と僅か2cmの違いしかない。しかもこれはレールガンではない、炸薬式の主砲だ。そんな代物を僅か25mの陸上兵器に搭載したのだ。これを考えた開発者は一体何を考えていたのだろうか。

当然機動力や砲塔の旋回性能は低い。その為、主砲砲塔の上に更に小型砲塔を2つ設置し、副砲とした。…その副砲口径も、ギガンテスと同等の14cmもあるのだが。

この大火力重装甲の権化に、EDF兵士の間ではタイタンの事を「陸上戦艦」と呼ぶ者もいる。

 

そして、「BM03ベガルタ」。

ギガンテスやタイタンのような戦車と異なり、ベガルタは二足歩行兵器である。当初ベガルタは閉所に於ける機甲戦力として製造されたが、今現在では汎用型、重装型、接近戦闘特化型、対空型の計4つのシリーズに分かれ、其々の運用目的に合わせた武装やスペックとなっている。

その中でも今回出撃する事になった重装型は、武装にリボルバーロケットカノン2門と拡散榴弾砲2門を搭載。それが10機ともなれば、全弾発射時の火力は砲兵隊による支援火力にさえ匹敵する。

 

最後に、「BMX10プロテウス」。

全長25mの巨大人型ロボット、通称ギガンティック・バトルマシンとも呼ばれている。

この巨体の装甲は最早小型要塞にも匹敵する強靭さであり、武装は203mm砲を速射するバスターカノン2門、30連装マルチミサイルランチャー。単純だがそれ故に分かりやすい超火力を持つこのプロテウスは、各EDF機甲部隊の最高火力を担っている。

 

 

…さて、これでお分かりになっただろう。

 

「よし…では第4機甲部隊に出撃を命令する!奴等がエジェイに辿り着く前に、粉砕せよ!!」

「イエッサー!」

 

この機甲部隊に加えて対地攻撃ヘリ10機による航空支援が入り、その全火力が僅か2万の歩兵達に向けられるというのだ。

早いが、最早結論を言ってしまおう。

 

オーバーキルにも程がある。

 

 

 

 

 

 

城塞都市エジェイ 西側5km地点。

其処に、EDF第3師団第4機甲部隊は展開していた。その数、ギガンテス30両、タイタン5両、重装型ベガルタ10機、プロテウス2機、ネレイド10機。その全てが目の前にある丘によって隠れており、向こう側にいるロウリア軍にその姿が見える事は無い。

そしてまもなく悲劇が訪れる事が確定してしまっている憐れなロウリア軍2万は、宇宙を漂う自立衛星ライカからのリアルタイムな衛星偵察を受けており、その位置はEDF日本支部側から丸見えだ。

 

ネレイドを除く第4機甲部隊の全機のエンジンが静かに回り、その時を待つ。まるでその姿は、狩場で待ち伏せる猛獣の群れそのものだ。

 

『此方司令部。敵部隊がキルゾーンに進入、作戦を開始せよ』

「第4機甲部隊、了解!全機、前へ!!」

『イエッサー!!』

 

遂にその瞬間が来た。飛び出すようにギガンテス30両、タイタン5両がスタートダッシュを決めて丘を登り、重装型ベガルタは比較的遅い足取りで、しかし拡散榴弾砲は空に砲口を向ける。ネレイドはエンジンの回転数を急速に伸ばし、ローターが回転を始める。プロテウスはゆっくりと折り曲げていた脚を伸ばし、丘からその巨体を現わせる。

プロテウスに乗るものは、カメラから映し出される画面に、エジェイに向けて進行するロウリア軍2万が見える。これをエジェイに辿り着かせる前に、第4機甲部隊の総火力で以って此処で撃滅する。容赦は無用だ。

そして丘を登り切り、丘を降り始めるギガンテス30両、丘上にその巨体を布陣させたタイタン5両と重装型ベガルタ10機。そして上空に飛び立ったネレイド10機。そのいずれも砲口をロウリア軍に向ける。

 

 

「攻撃開始!!!!」

 

 

その瞬間、破滅の嵐がロウリア軍に降り注いだ。




次回、エジェイ攻防戦。…其処、攻防出来るのかなんて言っちゃいけない。

用語解説&状況説明
EDF日本支部第3師団
クワ・トイネ公国の防衛及びロウリア軍撃滅の為に派遣された。兵士の数こそ3000人だが、その戦力はロデニアス大陸の全戦力を上回る戦力だろう。

第4機甲部隊
第3師団の指揮下にある機甲部隊。ロウリア軍のエジェイ到達を阻止する為に出撃、ロウリア軍を待ち伏せた。明らかにオーバーキルな火力を投射するけど誰も気にしてない。

ロウリア軍(ロウリア王国東部諸侯団)
今回の生贄。果たして何人が五体満足で生き残れるかな?


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第7話 エジェイ攻防戦

日間ランキング20位、ルーキー日間3位にランクインしてる…
え、どういう事?え?(滝汗)


ロウリア軍東方征伐軍 東部諸侯団は、地獄の中に居た。

 

「ぎゃああああああ!!」

「うわあああああああああああっ!!?」

「逃げろ、逃げろぅあ゛ッ」

「俺の…俺の脚は何処に…」

 

城塞都市エジェイに向けて侵攻していた2万のロウリア王国東部諸侯団は、最早軍としての体を成していない。全員、生存本能に従って逃げ惑っている。

そのロウリア軍に向けて、EDF第4機甲部隊は攻撃を続ける。その苛烈な砲撃によって既にロウリア軍の8割は吹き飛ばされ、残りの2割に対して砲撃をしている。

30両のギガンテスの140mm砲、重装型ベガルタ10機のリボルバーロケットカノンと拡散榴弾砲、ネレイド10機のロケット砲、プロテウス2機のバスターカノンとミサイルランチャーによって、ロウリア軍を覆い尽くさんとばかりに連続した爆発が起こる。其処にタイタン5両の36cm砲が咆哮。巨大な砲炎を生み出した、戦艦砲という陸上兵器には有り余った火力は、着弾地点に一際大きいクレーターを作り出す。

爆発が起こる度に地面は耕され、付近にいたロウリア兵はまるで玩具のように宙を舞う。ある者は肉片となって周囲の地面や兵士を汚す。ある者は四肢を吹き飛ばされ、茫然自失となって更なる砲撃に吹き飛ばされる。ある者は幸運にも爆発の衝撃波を受けるだけで地面を転がるだけで済んだが、不幸にも次に飛来したタイタン主砲の直撃を受けて居なくなった。

 

その惨劇の中を奇跡的に生きていた、東部諸侯団を指揮していたジューンフィルア伯爵は呆然として見ていた。

今まで共に戦ってきた戦友、歴戦の猛者、優秀な将軍、家族ぐるみで親交のあった上級騎士。共に強くなるべく汗を流した仲間達。それら全てが、突如眼前に現れた未知の軍勢によって、無慈悲に、容赦無く消し飛ばしていく。

死にゆく部下達に唯々謝罪を繰り返していくジューンフィルアに、遂に砲撃が届く。タイタンの36cm砲の直撃を受け、その身体は一瞬にして消滅した。

 

 

 

 

 

 

「攻撃停止!」

 

第4機甲部隊長が号令し、全機からの攻撃が同時に停止する。

彼等の目の前に映るのは、彼等が作り上げた破壊痕が広がる大地。その大地に四肢を捥がれた死体や肉片が大量に転がり、その中から這い出る僅かな生存者達。

 

『隊長、どうします?』

「…これ以上は砲弾の無駄だ、それに今の攻撃を生き残った幸運な奴等──」

『緊急、緊急!!此方EDF日本支部宇宙局!!第4機甲部隊、大至急作戦地域から退避して下さい!!』

 

更なる指示を下そうとした所に、通信が横入りした。その慌てぶりから、何か重大な問題が起こった事は明白だ。

 

「此方第4機甲部隊、何があった!?」

『いいから急いで退避して下さい!!自律衛星ライカがっ!?』

 

空から一本の光線が舞い降りた。

 

 

 

 

 

 

自律衛星ライカ。

それはEDFがフォーリナー大戦前の2016年に打ち上げた、高性能AIを搭載した世界初の自律衛星兵器である。彼女はフォーリナー大戦の経験を経て「自我」に目覚めたAIに進化した為、EDFは彼女を完全な制御下に置いている訳ではない。しかしEDF日本支部転移を経ても尚、EDFを宇宙(ソラ)から見守り続けていた。

そんな彼女の趣味は、地球(転移惑星)と天体の観測だ。彼女はEDFからの指令がない間、様々な天体や地球(転移惑星)の気象や其処に住まう人々を見てきた。転移してもその趣味は変わらない。

そしてある日。彼女はEDF日本支部からの緊急の指令を受けて、クワ・トイネ公国の観測をしていた。その時に彼女は、ギムの殺戮を目撃したのだ。

 

──許せない。彼女の自我はそう思った。

 

その日から、彼女はEDFのネットワークに注視しつつ、指令通りにロウリア軍の動向を監視し続けていた。ひっそりと、自らに搭載した兵器の稼働準備を行いつつ。

そして遂に、その日が来た。クワ・トイネ公国のエジェイと呼ばれる都市から5km地点にて、EDF第4機甲師団がロウリア軍と交戦を開始するという情報が、ネットワークに入力されたのだ。そしてライカにも、ロデニウス大陸方面前線基地へ作戦地域のリアルタイム中継の指令が入った。彼女は忠実にその指令を守りながら、ある兵器のエネルギー充填を開始する。

 

彼女の眼前で、第4機甲部隊がロウリア軍に攻撃を開始する。まだ撃たない。エネルギー充填が充分でないし、何よりこの戦いの主役は第4機甲部隊だ。自分はその後詰で良い。

 

第4機甲部隊の攻撃によって、次々と吹き飛ばされるロウリア軍。まだ引き絞る。ライカの異変を察知したのか、EDF日本支部宇宙局とロデニウス大陸方面前線基地がライカの調査を始めた。しかしもう遅い。

 

第4機甲部隊が攻撃を終えた。今だ。そう判断したライカは隠匿していた己の行動を公開すると同時に、兵器のエネルギー充填率を急速に高める。ライカの独自行動にEDF日本支部は大慌てだが、心配は要らない。彼女が味方を巻き込むような事は決して行わないのだから。

 

次の瞬間、自律衛星ライカの主砲「メガリス」が発射。全リミッターを解除し、全エネルギーの80%を使ってまで出力を強制的に引き上げたそれは、光速で一直線にロウリア軍がいた地点中央に着弾し、直径約500mもの大爆発を引き起こした。

 

 

 

 

 

 

目の前で引き起こされた、万物を焼き尽くす大爆発に第4機甲部隊は足を取られた。

 

「うぉおとおおおおあっ!!?」

 

衝撃波と爆風によってギガンテスが僅かに傾き、重装型ベガルタは転倒を防ぐ為に咄嗟に片足を下げ、ネレイドは一瞬制御不能に陥る。しかしそれは僅か数秒の出来事。全機はすぐに立て直し、爆発が起こったそこを見る。土煙が晴れると、そこには第4機甲部隊の砲撃を上塗りするように巨大なクレーターが形成されており、そこに2万のロウリア軍がいたという痕跡は、全てが消失していた。

 

『無事ですか!?応答願います第4機甲部隊!!』

「此方第4機甲部隊。なんとかー…全機無事だ。それより説明を頼む。何があったんだ?」

『つい先程、自律衛星ライカより全リミッターを解除して主砲メガリスを発射するとの情報が、突如更新されてきました。急いで発射中止命令を発信しようとしたのですが、既にライカは最終発射工程を終えており…そして何より、ライカからの妨害で発射の強制中止も阻止されてしまったのです』

「で、この惨状か…なぁ、一つ確認なんだが。ライカはギムの殺戮を観測していたのか?」

『はい、司令部より指令を受けていました。…恐らく、其方が考えている通りだと思います』

「だよなぁ…」

 

EDF日本支部の全員がフォーリナー大戦のとある出来事をきっかけに、ライカは極めて「人間的」で「子供っぽい」事を知っている。それ故に、少し考えるだけで大凡のライカの行動の理由は分かるのだ。

彼女は、ある意味ではとても分かりやすい。

 

最後に想定外の事態は起こったが、エジェイ攻防戦は予定通り、EDFの完勝で幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

同日夜、クワ・トイネ公国政治部会。

軍務卿からの要請により、首相カナタの権限によって緊急政治部会が開かれる事となった。その理由は勿論、対ロウリア王国の防衛戦争が議題である。現在の戦況報告も行われる予定で、城塞都市エジェイでの戦いは政治部会内でも関心が極めて高く、もしも陥落していた場合、ロウリア王国は首都までの侵攻ルートを確保した状態となる。それ即ち、クワ・トイネ公国は絶望的な戦いを強いられる事となるのだ。

 

既に政治部会の会議場は満員。其処に各軍部の幹部が入室した。陸軍幹部が壇上に上がり、流れる汗を拭きながら戦況報告を開始する。

 

「お待たせしました。それでは…今回の城塞都市エジェイ西方5km地点の平原で行われた戦闘について、報告いたします。既にご存知の通り…数日前、エジェイ西側5km地点にロウリア軍の兵約2万が現れました。この数は城塞都市エジェイに駐屯する我が軍より少なく、先遣隊であると推測されます」

 

ここまでは、政治部会に出席する者は知る者は多い。問題はこの先だ。

 

「EDF日本支部は、丘下に第4機甲部隊と呼ばれる陸上機械の集団を配置してロウリア軍を待ち伏せ、奇襲攻撃によってこれを殲滅しました。その攻撃内容なのですが…少し信じられないような内容となっています。しかしこれは軍関係者のみならず、現地の民達も目撃しているらしく、駐屯兵に何度も確認を重ねたのですが…」

 

一拍置き、口を開く。

 

「猛烈な爆裂魔法の投射と思われるEDF日本支部の攻撃により、5分と経たない内にロウリア軍は壊滅的被害を被りましたが、その攻撃直後に一際大きい、直径300m以上もの大爆発によってロウリア軍2万は「消滅」しました。現地からの報告書には『広範囲が瞬く間に爆発して、ロウリア軍は成すすべなく殲滅された』、そして魔導師の報告書によれば『爆発は高威力爆裂魔法と思われるが、今回の攻撃に参加したEDF日本支部第4機甲部隊の兵士の数は僅か63人であると通達されており、仮に全員が大魔導師であったとしても、作り出すのは不可能な程の高威力、広範囲の爆発だった』と記録されています。…尚、本戦闘に於いて我が軍及び民間人の死傷者は無し。ロウリア王国軍の被害は約2万人及び馬2000頭と推定されます」

 

会議場が静まり返る。

 

「…ちょっと、質問があるのだが」

「何でしょうか?」

「EDF日本支部はどのような攻撃を行ったのだ?」

「『第4機甲部隊による殲滅攻撃を行った』という報告書を提出しています」

 

会議場の誰もがそういう事を聞いているんじゃない、という心の声が一致した。中には顔を真っ赤にして怒りを露わにさえしていた。国の存亡がかかった戦いの報告会に、作り話を聞かされたと考えたのだ。

 

「巫山戯るな、一体何を言っている!!EDF日本支部はたった63人の兵士で、2万人もの軍団を5分で殲滅させたというのか!?そんな魔法は古代魔法帝国のお伽話でしか聞いたことが無い!!」

 

その怒号が終わるのを待って、首相カナタが手を挙げて騒めく会場を静まらせる。

 

「手元の資料を、見てほしい」

 

EDF日本支部から安く輸入した、上質な紙束が各議員に配布される。

その表紙には、「ロウリア王国首都制圧作戦計画書」と記されていた。

 

「EDF日本支部は、我が国から出立させる軍勢でロウリア首都を制圧し、ロウリア軍指揮系統の頂点に立つロウリア王を捕らえる事で、戦争の早期終結を行いたいと提案してきた。それと並行してエジェイとギムの間に展開されているロウリア王国クワ・トイネ征伐隊と、ギムの西側国境より我が国内を東に進撃する敵に対し、地上部隊を投入して殲滅したいとの事だ。敵主力がギムを拠点としている為、殲滅がもし成功すれば我が軍も軍を送り、ギムを確実に奪還したいと思う」

 

突然の議題の飛躍に、威勢の良かった議員達も顔を見合わせた。EDF日本支部を否定していたものの、クワ・トイネ公国軍だけでは戦争を行う事さえままならなかったのだ。其処に戦争の早期終結まで見込めるとなったら…自分の立場をどうすべきか、冷静になる議員達。

 

その後政治部会は、全会一致でEDF日本支部軍の、国内及びロウリア領の陸海空全域に於ける戦闘の許可を決議した。

 

 

 

 

 

 

「司令。クワ・トイネ公国は例の作戦による領内及びロウリア領内の軍事行動を許可しました」

「うむ…それでは、始めるとしよう。第3師団に連絡を」

「了解しました」

「戦術士官。オメガチーム、ストームチームに出撃命令。作戦目標はロウリア王の捕縛だ」

「分かりました」




用語解説&状況説明

自律衛星ライカ
リアルタイムの衛星偵察だけを行う筈が、AIが勝手に主砲を発射。第4機甲部隊の攻撃によって既に死に体だったロウリア王国東部諸侯団を、文字通り消滅させてクレーターを作った。
主砲メガリスの威力は本来もっと弱いが、ライカが全リミッターが解除かつ全エネルギー80%を主砲メガリスに使用した為、この様な威力に。

オメガチーム
EDF日本支部の精鋭部隊。フォーリナー大戦ではリロード出来るレーザーライフルを装備し、大量のフォーリナーを地に叩き落として巨大生物を血祭りに上げた。
そのレーザーライフルを寄越せオメガチーム。ストームチームのレーザーライフルはリロード出来ないんだぞ。

ストームチーム
EDFの最終兵器。彼等が出撃すれば如何なる敵も滅ぶ。数千の巨大生物でも、50m級の超巨大生物でも、フォーリナーの輸送船団でも、果てにはマザーシップでもストームチームには勝てなかった。
正確には、ストームチームを率いるたった1人の兵士に、フォーリナーは負けたのだ。


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第8話 進軍開始

今までと比べるとかなり短いですが、キリを良くしました。


エジェイ攻防戦の翌日。

 

「そろそろ、か…」

 

ロウリア王国東方征伐軍飛竜小隊隊員 竜騎士ムーラ達、12騎の竜騎士達は先日騎馬達が消えたという地点で散開していた。ムーラは散開後、先遣隊として出陣した東部諸侯団が消息を絶った地点の観測担当に割り当てられていた。今日は雲が多く、晴れた空ではあるが少し肌寒い。

消息を絶った先遣隊。彼らの役目は城塞都市エジェイを威力偵察し、そして準備が整った東方征伐軍本隊の到着を待ち、合流する手筈だった。

 

先遣隊が消息を絶った地点に到着する直前。ムーラが乗るワイバーンが突如、警戒の鳴き声を発する。

ワイバーンの視線の先を追い、東の空を注視するムーラ。その耳に、重い何かが響く音を拾う。続けて注視していると、僅かな違和感を発見した。遠い空の先、芥子粒のような大きさの黒い点を認めた。点のように見えたそれは、急速に大きさを増していく。

 

すると何か、その点から更に小さい物が発射された。小さな火炎と煙を吹き上げたそれは、ムーアへ向けて音速を超える速度で向かってくる。

 

「導力火炎弾!?」

 

相手はまだ遠いが、弾速は速い。尚且つ自分のワイバーンよりも遥かに射程距離が長いらしい。あれ程の距離から射撃出来るとは、パーパルディア皇国が保有するワイバーンロードを凌駕しているかもしれない。

 

(しかし…焦ったな)

 

ムーラは慌てる事なく、横に飛んで回避する。いくら遠くから速い攻撃を行ったとしても、気付いてしまえば避ける事が出来る。こういった遠距離攻撃は、不意打ちでこそ効果があるというのに、敵はよっぽど目が悪いのだろうか。

そう考えたところで、ムーラは信じられない光景を目撃する。

 

「…なっ、こっちにくる!?」

 

導力火炎弾だと思っていたそれは空中で軌道を変え、自分達へと向かってきた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ワイバーンに全力飛翔の指示を出し、背後に付かれた場合の回避機動(ジグザグ飛行)を試みる。が、追ってくるそれはワイバーンの動きに応じてその都度向きを変えてくる。追ってくる攻撃なんて、ムーラは聞いた事が無かった。

 

「導力火炎弾がっ、ついてくる!!」

 

咄嗟に魔力通信機の送話器に向かって、悲鳴のように叫んだ。

 

「ち、畜生…」

 

背後に迫る死の予感。脳の中を様々な思考が回る。

 

「死んでったまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

ワイバーンに全力の急上昇と急降下を指示。今までにない重力加速度と合成風がムーラの身体を襲うが、それはやはり軌道修正し、向かってくる。その最中、プツリとムーラの腰に付けていた大切なお守りが急降下中に外れた。

それが背後に迫り、ムーラとワイバーンは共に死を覚悟した、その瞬間。

 

それはワイバーンの身体に突き刺さった瞬間、爆発。ムーラとワイバーンを粉々に砕き、大地に僅かな血の雨を降らした。

 

 

さて、此処で答え合わせをしよう。

まずムーラが最初に目撃した黒い点の正体。それはEDF日本支部第6飛行中隊所属のファイターである。そこから派生すれば、ムーラを追ってきた「それ」の正体は、自ずとわかるだろう。そう、ファイターの搭載兵器 ADMMである。

対フォーリナー制空戦闘に於いて最も重要な戦力となるADMMにはEDFの最新技術が目一杯搭載されている。ミサイルの超小型化は勿論の事、生物に対するロックオン及び追尾機能、射程距離を多少犠牲にした誘導距離の向上、最大24の目標に対するマルチロック機能、対ジャミング機構。僅か50cmの超小型ミサイルに搭載するには余りにも豊富な機能だが、EDFはこれの実現に成功したのだ。

そしてそんな兵器を撃たれてしまった以上、ムーラの生存確率は悲しいかな。「ゼロ」と言う他に無かった。

 

 

ムーラが粉々に砕け散った直後、更に上空を飛行するEDF航空部隊。その陣容は以下の通りである。

 

戦闘機ファイター 30機

爆撃機カロン 100機

爆撃機ミッドナイト 50機

 

計180機からなる、大編隊だ。

 

そしてその後を追うように、EDF第3師団が疾走する。その陣容は。

 

歩兵 640名

武装装甲車両グレイプ 80両(歩兵640名搭乗)

E551ギガンテス 60両

E651タイタン 10両

キャリバン装甲救護車両 2両

EF24バゼラート 30機

EF31ネレイド 20機

HU04ブルート 2機(ストームチーム、オメガチーム搭乗)

 

EDF第3師団の中でも特に機動力のある戦力のみを抽出した為、これでも第3師団の6割程度の総火力しか発揮出来ない。しかしこれでロウリア王国の全軍を殲滅する事はとても、とても容易な事だ。

 

そして此処からでは見えないが、ロデニウス大海戦にてロウリア海軍4400隻を殲滅した第7主力艦隊もロウリア王国制圧の為、海より侵攻を開始していた。

 

さて。此処でロウリア王国首都制圧作戦に出撃するEDF日本支部の戦力を、改めて整理しよう。

 

 

EDF航空部隊

戦闘機ファイター 30機

爆撃機カロン 100機

爆撃機ミッドナイト 50機

 

EDF第3師団

歩兵 640名

武装装甲車両グレイプ 80両(歩兵640名搭乗)

E551ギガンテス 60両

E651タイタン 10両

キャリバン装甲救護車両 2両

EF24バゼラート 30機

EF31ネレイド 20機

HU04ブルート 2機(ストームチーム、オメガチーム搭乗)

 

EDF第7主力艦隊

要塞空母デスピナ

セントエルモ級イージス戦艦 4隻

 

ストームチーム

レンジャー4名

 

オメガチーム

レンジャー4名

 

 

以上の戦力が、電撃的にロウリア王国に侵攻。立ち塞がるロウリア軍を航空部隊が粉砕し、第3師団は王都ジン・ハークを占領。同時にストームチームとオメガチームはハーク城へ突入しロウリア王を捕縛。無条件降伏へと追い込ませる。万が一残存軍が抵抗を続行するならば、EDF第3師団が直ちにロウリア各地の抵抗戦力を殲滅する計画だ。

これこそがEDF日本支部が計画した「ロウリア王国首都制圧作戦」改め、「ロウリア王国制圧作戦」。

 

ロウリア王国の、終焉の日がやって来た。




用語解説&状況説明
爆撃機カロン&ミッドナイト
EDFの爆撃機。エアレイダー型ストーム1ならお世話になる人も多いではないだろうか?
フォーリナーテクノロジーの圧縮空間技術によって1機100t以上もの爆弾積載量を誇り、カロンとミッドナイトの爆撃編隊が全力爆撃した日には、其処には何も残らないだろう。
今作戦に於いてはギム周辺に駐屯している東部征伐軍の殲滅を担当する。

EDF第3師団
王都ジン・ハーク制圧の為に出撃。伝説のストームチームが同行するという事もあり、士気は天元突破中。

EDF第7主力艦隊
王都ジン・ハークの港の破壊、王都の制空権確保の為に出撃。

ストームチーム&オメガチーム
ハーク城に空挺する為、其々HU04ブルートに乗り込んで移動中。全員ではなく4人ずつなだけまだ良心的。

レンジャー
4つ存在する、EDFの兵科の一つ。レンジャーは皆がイメージする兵士そのままである。


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第9話 王国の最期

GW最期の更新。(の筈)
明日以降、更新頻度は落ちます。


まず最初の犠牲になったのは、ギム周辺に拠点を置いていた東部征伐軍本隊だった。

その総数、約38万の兵士達と100騎のワイバーン。ロウリア王国軍のおよそ8割が一箇所に集結し、クワ・トイネ公国を侵略する時を待っていた。当然その膨大な兵士がギムに入りきる訳が無く、東部征伐軍はその郊外に陣を築いていた。

其処に、EDF航空部隊は攻撃を仕掛けたのだ。

まずファイター30機が、東部征伐軍の空を警備していたワイバーン100騎を同時に撃墜。取るに足らない航空戦力を撃滅した直後、速度を落とした爆撃機カロン100機と爆撃機ミッドナイト50機が広範囲に編隊を形成、突入して爆撃機を開始した。

 

 

この時ミッドナイトとカロンは少々特殊な爆弾を投下していた。

その解説を行う為にも、まずは双方の爆撃機としての役割を少し話そう。

前提として、ミッドナイトとカロンの両爆撃機は、フォーリナー大戦後に開発された爆撃機である。つまりはフォーリナーテクノロジーを利用した爆撃機だ。

 

爆撃機ミッドナイトは、フォーリナーの機甲戦力に対して投入される大型爆撃機である。その為にミッドナイトの搭載積載量は、最低でも1tのプラズマ炸薬式徹甲爆弾を100発以上搭載出来る事を目標として設計、開発される事となった。EDF空軍の総力を以って、その開発は取り掛かられた。

そして最終決定されたミッドナイトのスペックは最高速度マッハ3、巡航速度マッハ1.4、爆弾積載量420t、爆弾倉1つである。この数値は、フォーリナーテクノロジーの空間圧縮技術を用いてもミッドナイトのサイズで収める事は、極めて困難を極めた。しかしEDF空軍はこれを成し遂げたのだ。

続いて爆撃機カロン。此方はフォーリナーの主戦力、巨大生物に対して投入される中型爆撃機である。その為にミッドナイトが搭載するような大火力爆弾よりも、より広範囲に火力を投射。尚且つ確実に爆撃コースの巨大生物を殲滅する為に、クラスター爆弾を多数の爆弾倉を用いて爆撃する事を求められた。

ミッドナイトのノウハウを応用して設計された結果、スペックはマッハ3.4、巡航速度マッハ1.8、爆弾積載量300t、爆弾倉3つである。

 

以上がミッドナイトとカロンの性能解説である。

続いて本命の、爆撃に用いられた爆弾の解説に入ろう。

 

まずミッドナイトとカロンが今爆撃に使用した爆弾。それは「1t級クラスター式かんしゃく玉爆弾」と呼ばれている。

 

…そう、かんしゃく玉。一体何を言ってるんだと思うかもしれないが、EDFはかんしゃく玉を対フォーリナー兵器として開発した事があるのだ。それもシリーズ化して4種類も。

ふざけているのかと聞かれるならば、その通りだろう。そうでなければまず説明が付かない。でなければ、誰が大真面目に遊びの道具を対フォーリナー兵器にしようと思うのだ。

開発の発端はフォーリナー大戦後に起こった。良くも悪くも暇になってしまったEDF兵器開発部の誰かが、かんしゃく玉に対フォーリナー用の炸薬を詰めて遊んだ事から始まる。そこから暇人の連中(研究者達)が集い、所謂「かんしゃく玉兵器化事件」と呼ばれる喜劇が始まった。

暇人共は、EDF上層部に対して「新型超小型グレネードの研究」と題して予算を分捕ると、その予算を全てかんしゃく玉を如何に強力に出来るかを争い、全力で取り組んだ。幾多の失敗を重ねても暇人達はその根性を以って諦める事は無く(そこで諦めろよ)、遂に4種類の超強力なかんしゃく玉を完成させてしまったのだ。

しかしそこで遂にEDF上層部は、兵器開発部が何をしでかしているのかに気付いて強制捜査に赴いた。そこで4種類の超強力かんしゃく玉と研究内容を押収。そのふざけっぷりに激怒モードに入る直前だった上層部だったが、此処で誰もが予想だにしなかった事実が浮かび上がった。

…なんとその4種類の超強力かんしゃく玉、纏めて使用すれば対巨大生物用としては充分な威力を発揮できる程に強力だったのだ。

EDF上層部に兵器開発部が提出した予算計上内容は「新型超小型グレネードの研究」であった以上、巨大生物に対して十分な威力を持ったそれらは、確かにその研究内容と違ってはいなかった。つまりは予算計上内容通りの研究開発に成功してしまっていたのだ。

怒る理由を失ってしまったEDF上層部は一応彼等をお咎め無しとし、「今回は偶然上手くいったから見逃すけど、次にこんなふざけた事しでかしたら今度こそ容赦無くシメるからそこの所覚悟しとけよゴラァ」という有難いお言葉を送った。

…こうして、EDFの歴史上に伝説の喜劇として名を馳せている「かんしゃく玉兵器化事件」は一応の幕を閉じたのだ。

 

しかしそんな珍兵器を一体誰が使いたがるのだろうか。当然しばらくの間、倉庫の隅っこで眠り続けていたのだが、それに目を付けた者がいた。それがEDF空軍である。

その頃のEDF空軍では、1つの問題が発生していた。それは「市街地戦に於いての過剰な爆撃威力」である。

勿論最優先はフォーリナー殲滅なのだが、それでも可能なら、爆撃によって街全域を破壊する、なんて事になるのは避けたい。それが巨大生物の大群程度なら尚更だ。しかし巨大生物を確実に仕留めるには、どうしても街を破壊してしまう程の威力を持った爆弾を用いなければならなかった。そこに軍用かんしゃく玉というふざけた兵器の話を聞き、そして思った。

「それをクラスター爆弾として用いれば、街を破壊せずとも巨大生物を殺す事が出来るんじゃないか?」と。そして試しにシミュレートに掛けてみた結果、極めて有効な攻撃手段として使えると分かったのだ。

こうしてEDF空軍により、「1t級クラスター式かんしゃく玉爆弾」という兵器が爆誕したのだ。

 

 

…話が逸れ過ぎた、元の話に戻そう。

1t級クラスター式かんしゃく玉爆弾の子弾(かんしゃく玉)は1発につき5000発内蔵している。それをロウリア王国東方征伐軍本隊に対して100機のカロンは各機300発、ミッドナイトは各機420発を投下した。

つまり、(100×300+50×420)×5000=255000000発。

2億5500万発の軍用かんしゃく玉がロウリア兵約38万人に降り注いだ。たかがかんしゃく玉と思うだろう。しかしEDFが「正式に兵器として採用している」のだ。

一発だけでも、人間の四肢は軽く吹き飛ぶ程度の威力はある。それが空から2億5500万発も降り注げば、どうなる?

 

答えは簡単。38万人程度の人間など粉々になる。

ミッドナイトとカロンによる絨毯爆撃を終えた頃には、ロウリア軍東方征伐軍が居た場所は、約38万人分の肉片が散乱していた。

 

ロウリア軍38万を殲滅し、第3師団の援護を終えたミッドナイトとカロンは補給の為、一時帰還した。ファイター30機は継続して第3師団の援護を行う。

 

ロウリア王国の主力軍は消滅し、王都への道が開かれた。後は突き進み、王都を制圧するのみ。

 

 

 

 

 

 

ロウリア王国、王都ジン・ハーク。

其処は今、地獄と化していた。

 

「第1城内街完全制圧されました!!」

「第8騎士団、応答無し!」

「重装歩兵、全滅!!止められません!!」

 

EDF第3師団は一直線に王都ジン・ハークへと侵攻、攻撃を開始した。

まず戦闘機ファイター30機が、空を飛んでいたワイバーン150騎を30秒足らずで殲滅。その数分後、第3師団が一番外側の第1城壁に向けて砲撃。60両のギガンテスと10両のタイタンによる砲撃により、東部約300mの第1城壁とその付近が「跡形も無く消滅」。間髪入れず第3師団は第1城壁内に進入、歩兵640人(レンジャー370人、ウイングダイバー180人、フェンサー90人)とギガンテス60両、バゼラート30機、ネレイド20機で瞬く間に第1城壁内街全域を制圧すると、その勢いそのままに第2城壁内街の制圧を開始した。

 

この事態に、ロウリア王国防衛総司令部は慌てるなどと言ってる暇もない程に騒然としていた。

事前にロウリア王に報告していた計画では、万が一東部征伐軍が敗れた後、敵は必ず王都の南東にある工業都市ビーズルを陥落させてから王都に侵攻してくると考え、王国防衛隊の主力は其処に配置されていた。確かにその計画は軍事的にも地理的にも理にかなっており、そもそも総司令部には「東方征伐軍が殲滅された」という情報さえ入っていなかった。

 

ところが現実はどうだ?東方征伐軍が定期連絡を絶ったと思ったら、王都に全く未知の軍勢が、それこそ王都を消し飛ばさんと言わんばかりの大火力で侵攻してきたではないか。この未曾有の事態に、総司令部は直ちにロウリア王国各地に非常事態を発信し、全軍の集結を呼びかけた。しかしEDF日本支部が、そんな事を許すと思ったら大間違いだ。

ロウリア領海に侵入した第7主力艦隊とデスピナに艦載されていたファイターと攻撃機ホエール、そして補給を終えたミッドナイトとカロンによって各地に駐屯するロウリア軍を攻撃したのだ。テンペストミサイルさえも使用されたその攻撃により、各地に駐屯していた王国防衛隊は、とても王都救援どころでは無かった。

 

故に今、王都防衛の有力なロウリア軍は王都防衛隊2万人のみ。ワイバーンは既に全滅し、王都の制空権さえも失った今。

 

 

『第3師団が敵軍を十分に引き付けた。ストームチーム、オメガチーム。突入せよ』

 

 

彼等を止める手段は、無い。

 

 

 

 

 

 

2機のHU04ブルートが王都ジン・ハークの中心にあるハーク城に向けて進行していた。両機の扉は開いており、地上でロウリア軍を粉砕しながら第2城壁内街を制圧中の第3師団が見える。

 

「おいおい、彼奴ら此処を廃墟にする気かよ?街中にタイタン突っ込んでるじゃねぇか」

「うわー…今ギガンテスの主砲でロウリア軍吹き飛んでましたよ?あの威力、対フォーリナー用徹甲榴弾じゃないかな…」

「これでも無用な被害を出さない為に、俺達の突入に合わせて大分手加減してるんだろ?フォーリナーが相手じゃなかったらこうもなるんだな…」

 

「総員、聞け」

 

各人が思い思いの言葉を話していたが、部隊長がそれを止めた。すると一瞬で部隊員は沈黙し、部隊長に注目する。すると各人のヘルメットバイザーに、様々な作戦資料が映し出される。

 

「最終確認だ。我々の作戦目標はロウリア王 ハーク・ロウリア34世の捕縛。司令より今作戦に於ける「完全無制限殺傷許可」が我々のみに限定して出されている。その為今作戦達成まで、我々は非戦闘員の殺傷も自由に判断出来る。勿論無抵抗かつ非脅威的な非戦闘員には攻撃するな。但し、非戦闘員でも武器を持って我々に向かってくるならば殺せ。一瞬の躊躇や甘えが我々を殺す。いいな?」

「「「イエッサー!」」」

「良し。オメガチーム、其方は?」

『此方オメガリーダー。いつでも』

「パイロット」

『降下地点まで30秒、準備してくれ!』

 

30秒後、ブルート2機は王宮広場上空10mに位置する。

 

「ストームチーム、ミッションを開始する」

『オメガチーム、作戦開始!』

 

躊躇無くブルートから8人のレンジャーが飛び出して、王宮広場へと落下。同時に王宮広場にいた第7、第8近衛隊に向けてストームチームはアサルトライフル「AF100」を、オメガチームは「フュージョンブラスターZD改」の銃口を向け、発射した。

 

フォーリナー大戦末期に作られ、フォーリナーの攻撃によって今現在では失われた技術を用いられて開発された両武器。その威力は巨大生物数体を貫通して即死させる事は勿論、フォーリナーの大軍団さえも撃滅する程の火力を持つそれを、只の鉄の鎧を着るだけの人間に撃つとどうなるか?それは勿論、たった1発で木っ端微塵だ。

10mからの落下時間の約2秒。王宮広場に破滅の弾幕が展開された。

 

そしてストームチームとオメガチームが王宮広場に降り立った時。其処には彼等以外には誰も居なくなっていた。

 

「行くぞ」

 

ストームリーダーが、一声を発すると同時。8人の歴戦の戦士達はハーク城内へ突入した。

 

 

 

 

 

 

ハーク城を突き進むストームチームとオメガチーム。途中立ち塞がるロウリア近衛兵やバリケードがあったが、AF100とフュージョンブラスターZD改の火力の前に悉く消滅していく。

当然だ。彼等は正真正銘、フォーリナー大戦を最初期から戦い抜いてきた戦士達。その練度、その覚悟、その戦闘能力は全EDF兵士の中でも頂点に達する者達に、たかが「1つの大陸の半分を征服する程度の国の兵士達」が敵う訳が無い。彼等が戦ってきた(フォーリナー)とは土台が根本的に違う。

 

僅か15分で、目標地点である王城の4階 王の間前に到着した。突入前に全員が武器の残弾を確認し、再装填。素早い動作でそれを終了させると、扉を開けて室内に突入。

彼等の視界にまず入ったのは、悲愴の表情を浮かべて震えるメイドが2名。その背後、薄暗い王の間の奥に銀の鎧に身を包む、銀髪をなびかせた男が1人立っていた。

 

「やあ皆さん、よくぞ」

「撃て」

 

その瞬間、ストームチームとオメガチームは攻撃を開始。AF100の弾幕とフュージョンブラスターZD改のレーザーが王の間を飛び、震えるメイドを避けてその男と「周囲に潜んでいた兵士達」を粉々にした。そう、ストームチームとオメガチームは待ち伏せを看破していたのだ。

 

何故か。それはEDF兵士に標準支給される「超小型生体電波両用識別式レーダー」の恩恵である。

この超小型レーダーは装着者の半径180m内に存在する生命体と機械を正確に認識する能力を持ち、同レーダーを所持する者は「味方」として識別する機能も搭載している。このレーダーの前には、伏兵や罠などは無意味と化す。

つまり、ロウリア近衛兵が仕掛けた最後の罠は丸見えだったのだ。

 

最後のロウリア近衛隊が殲滅され、最早障害になり得るような障害は存在しない。注意を向ける為に囮とされ、気絶したメイド2名は壁に寄りかからせ、王の控室を開けた。

 

 

 

 

 

ハーク・ロウリア34世は、王の控室の端でガタガタ震えて何処かの神に命乞いをしていた。

服従と言っていいほどの屈辱的条件を飲んで、漸く取り付けた列強の支援。

その支援によって列強式兵隊教育を6年間の歳月をかけて施し、漸く完成したロデニウス大陸統一の為の大軍団。

資材も国力の限界ギリギリまで投じ、数十年先の借金までして作り上げた軍隊で、更には念には念を入れ、石橋を叩いて渡るかのように軍事力にも差をつけた。

 

そうして圧倒的勝利でロデニウス大陸を統一する筈だった。その筈なのに、「EDF日本支部」と「未知の軍団」によるデタラメな力を持つ国と軍団の参戦によって、軍事力を大きく失って王都さえも猛攻撃を受けている。

 

EDF日本支部の海軍によって軍艦4400隻は沈められ、見たこともない未知の軍団によって王都が蹂躙されている。

こんな事になるなら、せめてEDF日本支部とは国交を結ぶべきだった。そうすれば4400隻を沈めたその力を未知の軍団に向けてくれていたかも知れない。

悔やんでも悔やみきれない。敵はもう、すぐ目の前に来ている。

 

扉の前に積んでいた即席のバリケードが一瞬で破られ、緑色と紫の奇妙な軍勢が部屋に雪崩れ込んできた。

手には魔法の杖の様な物を持ち、帯剣はしていない。どうやら全員魔術師の様だ。ロウリア34世の脳裏に、古の魔法帝国軍のお伽話が浮かぶ。

 

「ま…まさ、か……貴様ら、魔帝軍か!?」

 

恐怖に震えながら叫んだその言葉に、2人の兵士が前に出る。ストームリーダーとオメガリーダーだ。

 

「我々はEDFだ。ハーク・ロウリア34世、お前を捕らえる。抵抗はするなよ、痛い目に遭いたくなければな」

「お前達がしでかした行為、全て精算させてもらうぞ。拒否権は無い」

 

 

 

 

 

 

ストームチームとオメガチームによって、ハーク・ロウリア34世は捕縛された。王都ジン・ハークも第3師団によって完全占領され、各地のロウリア軍は航空部隊と第七主力艦隊によって99.9%の兵士が死亡していた。残るは無力な市民達のみであり、最早ロウリア王国に戦う力は微塵も残されていない。

 

この瞬間、ロウリア王国は無条件降伏。そして滅亡が決定的になった瞬間でもあった。




用語解説&状況説明
ロウリア王国東部征伐軍本隊
ギム郊外に拠点を置いていたのだが、そこに空から降ってきた2億5500万発のかんしゃく玉を受けて殲滅。将軍パンドールや副将アデムもかんしゃく玉を全身に浴びて肉片の仲間入りに。

かんしゃく玉
言わずと知れたEDFのネタ兵器。本当は登場させる予定は無かったのだが、感想欄にてよくかんしゃく玉が名指しされていたので、一から設定作って登場出来るようにした。今後も1t級クラスター式かんしゃく玉爆弾が敵に向かって空から降り注ぐ…かもしれない。(今話の執筆の中では一番苦労したぞ…)

かんしゃく玉兵器化事件
兵器開発部の暇人共が主役となった、EDFに語り継がれている伝説の喜劇。

王都ジン・ハーク
ロウリア王国の首都だったが、第3師団の殴り込みで大惨事に。被害の詳細は次回説明予定。

ロウリア王都防衛隊
第3師団の殴り込みでほぼ殲滅された。

ロウリア王国近衛隊
ハーク城を防衛する精鋭部隊だったが、ストームチームとオメガチームの空挺で呆気なく殲滅。勝てる訳が無い。

AF100
ストームチームの標準装備。フォーリナー大戦末期に開発されるも、フォーリナーの攻撃によって製造技術が失われた超兵器。現在ではストームチームの配備分を除けば数丁しか残っておらず、未だに再生産は出来ていない。その為全てのAF100をストームチームのみが使用出来るようになっている。
その威力は1発で現代戦車以上の装甲を持つ巨大生物を即死に至らしめるのみならず、数体を貫通する程である。

フュージョンブラスターZD改
オメガチーム専用装備。フォーリナー大戦末期、レーザーライフル「フュージョンブラスターZD」をオメガチーム専用にカスタマイズし、戦場でもカードリッジリロードを可能にした。製造は不可能ではないが、一丁に付き5億ドルもの資金を必要とする為、オメガチーム以外の配備は行われていない。

超小型生体電波両用識別式レーダー
原作(地球防衛軍)の右上のアレ。EDF兵士にはヘルメットバイザーの右上に常時表示されている。

ハーク・ロウリア34世
ロウリア王国の王。部屋の隅でガタガタ震えて命乞いをしてたらストームチームとオメガチームに捕縛された。

爆撃機ミッドナイト&カロン(EDF日本支部航空部隊)
ロウリア王国東部征伐軍本隊を殲滅後、補給を済ませて再出撃して各地のロウリア軍をボコボコに爆撃した。

戦闘ファイター(EDF日本支部航空部隊)
爆撃機ミッドナイト&カロンを護衛後、第3師団の殴り込みに合わせて王都ジン・ハークに居たワイバーン100騎を30秒で殲滅。

EDF日本支部第3師団
王都ジン・ハークに殴り込んで王都防衛隊をボコボコにしつつ王都を完全占領する。

第7主力艦隊
ロウリア領海に侵攻、EDF日本支部航空部隊と共同しつつ艦隊の全兵装を使用。更にファイター30機、攻撃機ホエール5機を発艦させて、王都に向かっていたロウリア軍を殲滅させた。

ロウリア王国
ロデニウス大陸統一に向けてクワ・トイネ公国に侵攻したが、EDF日本支部の逆鱗に触れて50万の軍隊の内99.9%が死亡し、王都が占領されて無条件降伏。滅亡が確定した。

EDF日本支部
作戦成功との報告が入り、予定通り戦後処理の準備を始める。

クワ・トイネ公国
政治部会でロウリア王国首都制圧作戦に於けるEDF日本支部軍の領内行動を許可したと思ったら、翌日にはロウリア王国軍が99.9%消滅してるし、トドメに無条件降伏してて色んな意味で魂が抜け落ちた。


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第10話 訪れた平和

クローサー「えーっと、投下するかんしゃく玉の数計算を…255万発ね」
誤字報告1「255万発じゃなくて2500万発だよ」
クローサー「ん?あれ、ホントだ。一桁見間違えたか。…2550万発のかんしゃく玉の爆撃とか、上から見たらどうなるんだ?」
誤字報告2「色々間違ってたよ。…あと2500万発じゃなくて2億5000万発にしようよ」(クローサー視点の推測)
クローサー「え゛、マジかこの人。…いや、フォーリナーテクノロジーの圧縮空間技術もあるんだし…ふーむ…」

クローサー「…面白いし採用で良いや!」(本小説限定で学んだ教訓:面白さは何よりも優先される)


パーパルディア皇国 国家戦略局。

その一室の暗い部屋の中に、2人の男が居た。

 

「…以上、ロウリア王はEDF日本支部と思われる軍に捕らえられた模様です。ロウリア王国は王が不在となった上、王都を含めて全ての都市が壊滅的被害を受けた為、事実上ロウリア王国は消滅したと言っていいでしょう」

 

片方の男が、冷や汗をかきながらもう片方の男…上司に報告を行う。

 

「簡単にいってくれるな…ロウリア王国に一体どれ程の支援を行ってきたと思っている?勿論隠蔽工作は行うが、万が一この事が皇帝のお耳に触れてみろ!国家戦略局そのものが危機に立たされる!そうなれば、お前も私も唯では済まんぞ…!」

「も…申し訳ございませぬ!」

「今回のロウリア支援はお前も知っての通り、我らの独断で行われていた。上手くいけばロデニウス大陸の資源と権益を一気に我が国が掌握し、その手柄を持って皇帝陛下にご報告する予定だった…そうなれば他官庁を黙らせる事も出来て、我らの評価も相当なものとなっていた筈…今となっては、自分の命の危険さえ考えなくてはならなくなったな」

 

部下の男は深く、深く頭を下げる。

 

「…返す言葉も、ございませぬ」

「しかし…ロウリア程の規模を持つ国が、我々の支援があったにも関わらず文明圏外国に敗れたなど、とても信じられんな。敵は一体どのような兵器を使ったのだ?」

「それが、諜報員にはEDF日本支部を調査するよう指示したのですが…その日に王都への攻撃に巻き込まれて死亡したらしく、EDF日本支部軍の詳細は一切不明です」

「諜報員が死んでしまっても、戦闘を見ていた一般人が居るだろう。そこから情報の一部くらいは聞き出せる筈だ」

「それが…ロウリア人は皆、一切の情報を話さないのです。どれだけ金を積もうが、何をしようが全く口を開きませんでした。まるで何かを恐れているかのようで…」

「クソッ、唯でさえ時間が無いというのに…!もういい、EDF日本支部の情報とロウリア王国の支援に関する履歴を全て焼却しろ!!我らの関わりの証拠を何一つとして残すな!国家戦略局と自分、そして家族の為にもな!」

 

ロウリア王国を支援していたパーパルディア皇国国家戦略局は、ロウリア王国が引き起こした侵略戦争の一部始終を徹底的に隠蔽する事を決定した。

この決定が後に、大惨事を引き起こす事も知らず。

 

 

 

 

 

 

ロウリア王国の無条件降伏より数日が経った、クワ・トイネ公国 政治部会にて。

 

「…というわけで、ハーク・ロウリア34世はEDF日本支部に捕らえられました。ロウリア王国の各都市は壊滅的な被害を受け、現在「都市としての最低限の機能」を残しているのは、王都ジン・ハークのみです。ロウリア軍もほぼ殲滅され、現時点に於いて…ロウリア王国領土全域が事実上、EDF日本支部の支配下に収まった事となります」

 

その会場は、沈黙が流れ続けていた。出席者達の中にはEDF日本支部の国力を疑う者も居れば、その国力を信じる者も居た。

しかしこの結果は、何だ?あの作戦に於ける軍行動許可を決議した翌日。EDF日本支部はロウリア各都市と全軍に攻撃を開始し、たったの1日で各都市を壊滅させ、ロウリア軍の99.9%を殲滅し、ロウリア王国全域を事実上支配下に置くなど、余りにも非常識。余りにも規格外。ここまで来ると、恐怖を抱いてしまうのも無理はない。

 

「…いずれに、せよ、だ。これは喜ぶ、べき事である…EDF日本支部とは是非………是非、友好関係を続けていきたいものだな」

 

首相カナタの震えた声が、やけに静かな会議場の空気を震わした。

 

 

 

 

 

 

EDF日本支部。

東京本部は現在、書類作業に追われる多数の士官が廊下を歩いていた。ロウリア王国との戦争を終え、戦後処理に勤しんでいた。弾薬の補給、元ロウリア王国領地の統治権譲渡準備、初の実戦投入となった1t級クラスター型かんしゃく玉爆弾のレポート提出、etc。大多数のEDF日本支部士官の仕事は、山のように届く様々な書類を捌き切る事だった。

 

そんな感じに、EDF日本支部の人間達が書類戦争を行なっている時に、EDF日本支部の重役達は再び一堂に会して戦後会議を行っていた。

 

「無事、勝利しましたね」

「科学技術差だけを考えれば、勝利はまず間違いなかったからな。唯一の不安材料は「魔法」だけだった。最もその魔法も、現在分かっている範囲での話ではあるが、フォーリナーのテクノロジーと比べれば可愛い物だよ」

 

幹部の言葉に、参謀長は肩を竦めつつ答えた。

今戦争にて、何故EDF日本支部があれだけの戦力を投入したのか。それは「魔法」という正体不明の要素があったからだ。

クワ・トイネ公国とクイラ王国間で国交を結んだ際に、EDF日本支部も「魔法」という存在そのものは認識していたのだが、それが攻撃に使われた際、一体どれ程の威力を持つのかまでは全く把握する事が出来ていなかったのだ。分からないからこそ、EDF日本支部の全員が魔法を恐れていたのだ。もしかしたら何も武器を持たずに、いきなり大火力な攻撃を行えるかもしれない。もしかしたら此方の想像を絶する規模の攻撃を行って来るかもしれない。もしかしたら、フォーリナーのような攻撃を行う事も出来るのかも知れない。

分からない。分からないからこそ恐ろしく、それ故にあれ程の大部隊であっても、誰もがそれを過剰戦力だとは思わなかった。それはEDF日本支部に住まう市民達も同じである。そもそもEDF市民もフォーリナー大戦を経験し、戦争についての見方が大きく歪められてしまったのだ。

 

 

戦争とはそれ即ち、我々の全てを賭けて行われるべき生存闘争であり、一度戦争となってしまえば、最早人権などありはしないのだ、と。

 

 

だからこそロウリア王国の各都市が壊滅し、全軍の99.9%が殲滅され、市民の約40%が死に至った攻撃が行われたと知っても、EDF市民達は「それが当然の事だ」と受け入れてしまったのだ。

 

正に、狂気。

正に、無慈悲。

正に、神をも恐れぬ所業。

しかしEDF日本支部は、文字通り世界が滅ぼされかけた星間戦争を生き残った者達なのだ。そんじょそこらの、たかが地域国家同士で争っているような小さいスケールのソレではない。文字通りの生存戦争だ。

敵は異星からの侵略者。テクノロジー、物量、戦術。その全てが絶望的に劣っていた戦争。僅か7ヶ月の戦争でありながら、人類の7割が犠牲になった戦争。皆が皆、何かしらの希望(狂気)に縋らねばならない程に追い詰められたあの地獄。

確かにEDFは勝利した。しかしその勝利の代償として残り続けた心の傷は、今もなおEDFを蝕んでいるのだ。

 

 

「それで、元ロウリア王国の復興はどうします?」

「必要最低限で構わないでしょう。二度と牙を生やさないよう、徹底的に我々の技術は遮断します。後で統治権を譲渡させるクワ・トイネ公国から多少の技術の漏洩は考えられますが、それも前世代技術のみ。我々の指導が入って初めて扱う事の出来る技術な以上、ロウリア王国があれ以上の技術進化をする事は無くなります」

 

だからこそ、敗北者へ容赦もしない。敗者は勝者によって蹂躙されるのが運命だと悟ってしまった彼等に、敗者へ救いの手をどうして差し伸べられるのだろうか。

 

「…今回の戦争、首謀した国が居ると聞いたぞ」

「はい、司令。これはクワ・トイネ公国からの情報ですが、ロウリア王国にはパーパルディア皇国が後ろ盾となり、軍事支援を行っていた可能性が非常に高いという事です。資料によると『ロウリア王国一国のみでは50万の兵士、4400隻の軍艦、500騎のワイバーンを整えるのは不可能であり、その規模の軍事支援を行う事の出来る近辺国は、第三文明圏列強国パーパルディア皇国以外にはあり得ない』との事です」

 

情報局長から報告されたその資料に、士官の全員が眉をひそめる。確かにパーパルディア皇国の情報は聞いた事があり、かの国に対するEDF日本支部の心象は、ロウリア王国に対するそれよりも悪かった。

 

パーパルディア皇国は、日本列島の西側に広がるフィルアデス大陸を支配する国だ。極めて強硬な政策で72ヶ国を併合し、属領の疲弊を無視した急激な領土拡大政策や強権支配により、属領からは怨嗟の声が静かに浸透している。そしてその傲慢な態度により、列強国以外の国に己の要求が却下されれば問答無用で侵略・征服を行う、周辺国家にとっては極めて危険な国。

 

このような国とEDF日本支部は最初から国交など結ぶ気もなく、情報局員の派遣は一切行われていない。

 

「パーパルディア皇国…か」

「既に自律衛星ライカから独自判断で衛星偵察が終了しており、司令の命令さえあれば…彼の国を滅ぼす事も可能です」

「却下だ。忘れるな、我々はEDFだ。我々は人々を護る盾であり、決して我々から手を出してはならん。我々は侵略者ではないのだからな」

 

参謀長の提案に、司令は鋭い声で否定の声をあげた。あくまでもEDFは防衛軍であり、フォーリナー相手の場合を除き、決してこちらからは手を出さない。これは「EDF」の絶対のルールだと、司令は認識していた。

 

「失礼しました」

「…だが」

 

しかし、それはあくまでもルールだ。

 

「向こう側から手を出してくるならば、話は別だ。ロウリア王国ではある程度は加減したが、パーパルディア皇国には一切手加減するな」

「では、司令」

「うむ、作戦計画は考えておいてくれ。最低作戦目標はパーパルディア皇国の完全破壊、及びパーパルディア皇国全属領の解放だ」

「分かりました、一月以内には提出します」

 

こうして、EDF日本支部はロウリア王国との戦争の戦後処理に入ると同時に、その傍らでパーパルディア皇国への準備を始める。

漸く訪れた平和。しかし完全なる平和となるには、まだまだ課題が多そうだ。

 

「所で、呉の建造ドックで建造されている「あの艦」の進捗はどうだ?」

「順調です。転移によって一時中断されていましたが、クイラ王国からの大量の資源が輸入出来た事により、予定スケジュールよりも早く進水する可能性すらあります」

「それは嬉しい知らせだ」




これにて第2章「ロデニウス動乱」は終了となります。ここからは少々長い話となりますが、お付き合い下さい。

まず、本小説の閲覧ありがとうございます。
最初はただ、「日本国召喚にEDFをブチ込んだらどうなるんだろう?」という好奇心100%の考えから生まれました。
そんな感じで唯々好奇心を満たしたい自分の為だけに書いていたのですが…まさかそんな本小説が、日刊ランキング最高8位、ルーキー日刊ランキング最高2位、お気に入り件数800件突破を達成する事になるなんて、唯々皆様に感謝する他ありません。
本当に、ありがとうございます!!

さて、これからの予定を少しお話ししましょう。
更新頻度を落としつつですが、一応パーパルディア戦まで書いて行く予定です。ムーやミリシアルなどの絡みをどうしようかが悩みどころですね。その後のグ帝戦などは、原作の展開がまだ戦争終結まで行ってないので、正直分かりません。魔帝などは特にです。
ただいくつかは面白い事を思い付いているので、もしかしたらオリジナル展開で押し進める可能性もありますね。EDF日本支部vs魔帝vsフォーリナーの三つ巴みたいな。(あくまでも可能性)

そんな訳で、パーパルディア戦の展開が大雑把に決まるまで本編の更新は一旦停止するかもです。本編以外にも閑話として、自律衛星ライカやかんしゃく玉兵器化事件、フォーリナー大戦などを軸に置いた話も書くかも知れません。

何にせよ、次回をお楽しみに!


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閑話 事件再来

今回は閑話です。初のギャグ風味に挑戦。


ロウリア王国との戦争が終結し、再び平時となったEDF日本支部。

その一室。所狭しに様々な機器と書類の山が大量にある中、唯一広々とスペースが確保されているテーブルの周囲に、数十人の男達が一堂に会していた。

 

「全員、集まったな」

 

彼等は、EDF兵器開発部の者達。EDF創設時からあらゆるEDFの兵器の設計図を引き、そしてフォーリナー大戦時からはフォーリナーテクノロジーを吸収して利用し、様々な超兵器を作り上げてきた天才達だ。彼等無くして、EDFがフォーリナーに勝利する事は絶対に不可能だったと断言出来る。

そしてその男達は、基本的にこうして集まる事は無い。何故なら彼等は其々設計図を引く種類が違う。ある者はレンジャー、ある者はウイングダイバー、ある者はフェンサー、ある者はビークル(大型兵器)、ある者は艦船、ある者は…いや、これ以上は長くなり過ぎる故に割愛する。

兎に角。各人の殆どが異なる分野の兵器設計者である以上、こうして集まる理由はそれ相応の事だ。

 

「では、会議を始めよう…」

 

例えば、兵器開発部全体で各人が引いた設計図に関する意見交換。兵器開発部に与えられた予算の各人への配分決定。

 

そして…

 

 

「第1回、新型かんしゃく玉兵器開発会議を!!」

『応!!』

 

上層部の忠告に懲りず、新型のかんしゃく玉兵器をまーた開発している時くらいだ。

 

「諸君!遂に新しい増額予算が降りた!これも全て1t級クラスター式かんしゃく玉爆弾が実戦に於いても有効だと認めてくれたからこそだ!!ならば我等が開発するべき新兵器とは何ぞやぁ!!」

『かんしゃく玉だ!!』

 

その答えは絶対に違う。

 

「そうだ、新たなるかんしゃく玉兵器を開発するのだ!!上層部は我々が作り上げたかんしゃく玉を「暇潰しの遊び道具」と揶揄した!それは違う!!我々は全身全霊を以って、最高傑作のかんしゃく玉を完成させたのだ!!」

 

それこそ只の遊び道具じゃねぇか、とツッコミを入れられる者はここに存在しない。

 

「我々はかんしゃく玉に秘められた可能性を諦めたりはしない!!現にEDF空軍は、今戦争でかんしゃく玉という力を存分に発揮させた1t級クラスター式かんしゃく玉爆弾を使用したのだ!本来はレンジャーの為だけの物であったにも関わらず、だ!!」

 

その本来の意図でさえ、どのレンジャーもかんしゃく玉なんて珍兵器は手に取った事は無い。

 

「ならば!!それ以外の兵器でもかんしゃく玉の威力は確実に発揮出来る!!ロケットランチャー、グレネードランチャー、ミサイルランチャー、ギガンテス、イプシロン装甲レールガン、タイタン、グレイプ、ネグリング自走ロケット砲、ネレイド、ベガルタ、プロテウス!!ありとあらゆる兵器にかんしゃく玉の可能性を求め、実現しようではないか!!!!」

『おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』

 

…馬鹿と天才は紙一重というが、この男達に限っては「馬鹿と天才が同居している」と言った方が良いだろう。

 

「でわぁ!!各人が持ち込んだ意見を発表せよ!!」

 

誰か、この馬鹿共を止めてくれ。

 

 

 

 

 

 

EDF予算委員局。

地球と人類を守る為に存在するEDFだが、彼等の側には常に天敵が潜んでいる。

 

金である。

 

理想は幾らでも強い武器や兵器を量産出来るのが一番なのだが、それをしようにも希少素材の入手やら生産ラインの確保維持などにも兎に角金がいる上、フォーリナー大戦時に製造技術が失われ、現在に於いても再生産が不可能となっている武器もある。その1つがストームチームのレンジャーが標準装備としているAF100だ。

故に限られた予算の中で如何にEDFの発展を行い、より良い装備改良やメンテナンス等を行う為に各部局が頭を下げるのが、EDF予算委員局である。

今日も予算委員局員は、各部局から届いてくる様々な予算申請書類が届き、1枚1枚の内容を熟読して許可か却下の判子を押していく。それは局長も例外ではなかった。

 

「局長、兵器開発部より特別追加予算の使用許可申請書類です」

「分かった、そこに置いといてくれ」

 

手元に置いていた数枚の書類を処理し、兵器開発部から届いた書類を手に取る。

 

「さて、貴重な追加予算を一体何、に………………」

 

その書類の内容を見た途端、局長の動きがカチンと膠着した。瞬きどころか呼吸さえも数秒忘れたその驚愕。それは徐々に憤怒へと変換されて行き。

 

 

「ふざけんなあの馬鹿野郎共がぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

書類を握った右手に力が入って書類がグシャグシャになるが、そんな些細な事が気にならない程に大きな怒号が室内に響いた。

その書類には、要約すればこう書かれていた。

 

『新しいかんしゃく玉兵器作るから予算くれ』

 

予算委員局に喧嘩売ってるのか此奴らは。

 

 

 

 

 

 

その後はまぁ当然と言える事だが、兵器開発部は怒りの予算委員局長の突撃を受けた。

此処からは余りにも大惨事な為、詳しい描写を省かせてもらう。

 

 

「貴様らぁ!!この書類は一体どういう事だぁ!!」

『予算委員局長!?なんで此処に!!』

「貴様らが出した特別追加予算使用許可申請書の内容に決まってるだろうが!!新型かんしゃく玉兵器なんぞ作らせる訳がねぇだろ、もっと有効性が高い兵器を開発しろ!!」

「その言葉は聞き捨てなりませんよ予算委員局長!!我々が作り上げた1t級クラスター式かんしゃく玉爆弾は、先のロウリア戦争にてその威力を発揮したではありませんか!!」

「新しいかんしゃく玉兵器がそれと同様の有効性を発揮出来るとは限らないだろうが!!試しに1回だけでもシミュレートに掛けた事があるのか!?」

 

『………………………』

 

「やってねぇなら余計この予算下ろす訳にいかねぇだろうがこの馬鹿野郎共!!予算が無尽蔵にあると思ったら大間違いだ!!予算が欲しいのは貴様らだけではない、他部局も1円でも多くの予算を欲しがってるんだぞ!?」

「うるせぇ催涙かんしゃく玉投げつけるぞ!!」

「逆ギレする上になんで既に新しいかんしゃく玉あるんだよテメェ!!!!」

「自腹で作ったんだから何の問題も無い!!良いですか局長この研究開発はかんしゃく玉の可能性を広げるだけでなく」(ポロッ)

『あ゛っ!?』

 

ボンッ!!(催涙かんしゃく玉暴発)

 

『ギィヤァ目がァァァァァァァァァァァァ!!!?』

 

 

…これ以上は当人達の名誉の為、割愛させて頂く。既に手遅れのような気もするが。

この後、予算委員局長は兵器開発部の説得に折れ(というよりは予算委員局長の方から行なっていた説得を諦めた)、特別追加予算の使用許可を出した。

特別追加予算の使用許可を予算委員局長よりもぎ取った兵器開発部はその後、総員の力を結集させて新たなるかんしゃく玉兵器開発に着手した。

無駄に洗練された無駄の無い無駄な兵器を作らぬように、開発は大胆かつ慎重に行われた。今回の研究開発はかんしゃく玉兵器化事件とは違い、完全に「対フォーリナー兵器」として開発される。故に開発経緯には盛大な遊びが入っていたとしても、その破壊力には一切の妥協をしない。故に本格的な兵器開発の意見交換には一切遊びは無く、その表情はEDFの最高頭脳を誇る研究者達のプライドと誇りを持ったソレであった。

朝も昼も夜も、徹夜も厭わずに続けられた新型かんしゃく玉兵器の研究開発。それが実を結ぶのは約2週間後の事だった。

 

 

 

 

 

 

「…で、その新兵器の試射をこれなら行う訳だが…どう思う?」

「…期待もありますが、不安もあります」

 

日本海に浮く要塞空母デスピナの艦橋にて、その会話は行われていた。艦長山本と副艦長が共に見ているのは、主砲の51cmレールガン連装砲。

先日、兵器開発部より届いた新型兵器「対地対空両用近接信管型キャニスター式かんしゃく玉砲弾」、通称かんしゃく玉砲弾の試射が日本海にて行なわれようとしていた。対地目標としてクワ・トイネより購入した木造船20隻、対空目標としてドローン100機を10km先の海域と上空に配置していた。着弾観測には安全な場所で待機しているセントエルモ級イージス戦艦と、わざわざこの為に呼び寄せた自律衛星ライカによって行われる。

 

「艦長、レールガン連装砲の発射準備が完了しました。いつでもどうぞ」

「うむ…では、発射!!」

 

艦長の号令により、4基8門の51cmレールガン連装砲からかんしゃく玉砲弾が発射。その威力を充分に発揮する為に弾速を抑えて曲射されたそれは、目標船団へと向かっていき──

 

 

 

後に、試射を終えた第7艦隊よりEDF日本支部に届いた報告書には、こう記載された。

 

『対地対空両用近接信管型キャニスター式かんしゃく玉砲弾は一応の成功と見做して良い。しかし対地用としてみるならば大落角の曲射を必要とし、角度計算が通常射撃よりも長時間になり、尚且つその見返りに合う威力とは言い難い。逆に対空用としてみるならば、超音速で撃ち出された砲弾の衝撃波よりも広範囲を掃討可能であり、結果対空ミサイルの節約に繋がる。51cmレールガン連装砲の他に、セントエルモ級イージス戦艦及びアイオワ級フリゲート艦の主砲弾の量産を行えば、より濃密な対空弾幕を展開可能と考える。この為、対地対空両用よりも対空専用砲弾に特化した改良を希望する』

 

この報告書を元に兵器開発部は更なる改良を施し、「対空用近接信管型全方位拡散式かんしゃく玉砲弾」と改名された新型かんしゃく玉兵器が完成。後に勃発するパーパルディア戦争にも使用される事となる。




パーパルディア戦の事を考えつつ感想欄見直してたら、かんしゃく玉の事で頭が一杯になってしまった…

用語解説&状況説明
兵器開発部
今回の全ての元凶。天才ではあるのだが盛大な馬鹿達が集う。

予算委員局
EDFの財布を握るオカン的な立ち位置。その為普段から各部局より届く大量の書類と戦争している。局長がブチギレたのも、普段から続く書類戦争によるストレスに1割くらいの原因がある。

催涙かんしゃく玉
兵器開発部の1人が自腹で開発した非殺傷のかんしゃく玉。マトモに受けると悲惨な事になる。

対空用近接信管型全方位拡散式かんしゃく玉砲弾
今回の話を執筆する際に爆誕した、新たなるかんしゃく玉兵器。
詳細な解説は現時点で行なわない。いずれ本砲弾の餌食になる者達が現れるだろう。


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第3章 静かな火種 第11話 国交交渉

さぁ、ゆっくりと始まっていきますよ第3章。

追記(書き忘れてただけ)
お気に入り登録者数1000人(1100人)突破しました!皆様ありがとうございます!


第三文明圏と呼ばれる地域の中に、フェン王国という国がある。

日本列島とフィルアデス大陸の間にある縦150km、幅60kmの勾玉状の島。そこに人々は集い、小さな国が出来た。

フェン王国には魔法は存在せず、代わりにフェン王国の国民全員は剣を学ぶ事を義務とする。剣を極めし者は例え出生がどれだけ見下される者であろうが尊敬され、逆に剣に弱き者は、どれ程の美貌であろうとも軽蔑される。剣に生き、剣に死ぬ。その体現の文化がフェン王国の何よりの特徴と言えよう。

 

その首都 アマノキと呼ばれる街の中心部に、「天ノ樹城」と呼ばれる城がある。

木造で出来た…見る人が見れば和風とも言えるその城の広場に、フェン王国剣王 シハンはフェン王国軍の中枢幹部を集め、真剣な面持ちて話し始めた。

 

「パーパルディア皇国と…紛争になるかもしれん」

 

端的に発せられた剣王の言葉はその場にいた者達の予想を上回るもので、緊張が走るには十分な言葉であった。

 

まずフェン王国には、魔法が存在しない。

魔法が存在しない事によって生じる1番の問題。それは魔法を扱う魔導師が放つ事が出来る高火力な攻撃魔法を使う事は出来ない…と言うことではない。それはこの世界に於ける通信手段「魔力通信」が使えない事だ。

人によってはたかが通信方法、だと思うだろう。しかし軍事的に見れば、「遠方からでも一瞬で会話が可能となる」事は極めて重要だ。

(報告)(連絡)(相談)」という言葉があるように、軍事行動中…つまりは戦いの中で何処の部隊が勝利したか、何処の部隊が敗北したか。何処の戦線が敵戦線を突破出来たか、何処の戦線が突破されてしまったのか。これらの情報は1分1秒でも早く伝達する必要がある。この情報伝達速度が遅れる事があるようならば…仮に兵力が同等だったとしても、実質的な戦力は大きく増減する事となるのだ。

 

そして、剣王の口から放たれた仮想敵国…「パーパルディア皇国」。

彼の国はフェン王国が属する「第三文明圏」と呼ばれる地域の列強国であり、その国力は第三文明圏の中では絶大である。

フェン王国との国力は当然、絶望的な程開いている。比較すると、人口は70万対7000万。戦船(海軍)はバリスタを配備したフェン王国製の手漕ぎ船21隻に対し、パーパルディア皇国は第三文明圏最新の魔導戦列艦を422隻配備。航空戦力では魔法の無いフェン王国はワイバーンを1騎も配備出来ていない上、相手はワイバーン500騎と改良種 ワイバーンロードを350騎、計850騎も配備しているのだ。

 

ここまで説明すれば分かるだろう。

フェン王国は、間違ってもパーパルディア皇国と敵対してはならないのだ。それ程にフェン王国(第三文明圏外国)パーパルディア皇国(第三文明圏列強国)との力の差は絶対的。

 

場が静まる中、シハンは話を続ける。

 

「現在、ガハラ神国に援軍を頼めないか要請している。各方面でも対策を検討中だ」

 

ガハラ神国はフェン王国の隣国であり、神通力とよばれる魔法とは異なる力で「風龍」と呼ばれる、ワイバーンロードを遥かに超える空戦能力を持つ竜を12騎保有しており、その戦力は各列強国も一目置くほどだ。

 

「とにかく、各人…戦の準備をしておいてくれ」

 

 

 

 

 

 

話を終えた後。シハンは王宮中奥にある執務室で執務していると、側近である剣豪 モトムがシハンに話し掛けた。

 

「剣王。イーディーエフという国が、国交を開く為に交渉したいと来訪されております件…如何致しましょうか?」

「イーディーエフ?…ああ、ガハラ神国の大使から情報のあった…確かガハラの東側に出現した新興国家だったな。あの辺りは小さな群島に加えて海流の乱れもあった筈だが…各島の集落が集まって国が出来たのか?」

「いえ、それが…イーディーエフが言うには、人口は3600万人居るとの事です」

「3600万人…?ハハハハハ!ホラもそこまで堂々と出来るとはな!各島が小さい群島でそれは無理がある!」

 

政治的なブラフは別に珍しいものではない。それ故にそれを聞いたシハンはブラフと判断し、しかし決して嘲るような事はせず、快活に笑った。

 

「それが…ロデニウス大陸のクワ・トイネ皇国とクイラ王国は既にイーディーエフと国交を結んでいるらしく、その際に両国が派遣した視察団がイーディーエフを調査した結果…4つの大きな島から成る国土に、列強をも超える超文明を築いているらしいのです。ガハラ神国経由の情報も、同様の調査結果でした」

「ほう…列強を超えるは言い過ぎにしても…ガハラ神国がそこまで褒めるとなれば、それなりの国なのだろうな」

 

この会話をキッカケに、シハンとその側近達はEDF日本支部の人間と直接会う事を決定する事となる。

 

 

 

 

 

 

数日後。

EDF日本支部情報局員の一団は、地理的に隣国となったフェン王国と国交を結ぶ為に、フェン王国首都のアマノキに訪れていた。その先頭を歩く島田は、いつも以上に落ち着きのある態度を心掛けている。

 

「…懐かしいな、この雰囲気…」

「ええ…フォーリナー大戦前を思い出しますね…」

 

王城に向かう際、思わずそんな言葉が出た。

フェン王国の自然と雰囲気は、10年前にあった日本の自然や城を思い出させるものがある。そしてそれらは…10年前に地球に侵略してきたフォーリナーに悉く破壊され、戦前にあった自然遺産や自然は大半が消滅してしまった。EDF日本支部は現在も木の植え込みなどでかつての姿を出来得る限りを取り戻そうとしているが…それに振り分けられている予算は非常に少ない。

何故かというと、やはり大半の予算は対フォーリナーの軍事費に、そして残りの殆ども市民を養う為にその予算は使われ続けている。自然復興の予算は、それらの余剰金を細々とかき集めた程度しかない(しかも予算内容によっては…特に軍事費関連は余剰金を渡せない場合もあるのだ)。それでは遅々として進む訳がない。しかも殆どの人が自然復興に対して消極的というのも合わさる。

10年程度で人々はあの悪夢を忘れられる筈もなく、それ故にフォーリナーが再び襲来したら、復興した自然は瞬く間に消失してしまうだろうというのが今現在の主流な考え方であり、人によっては「自然復興だなんてものに無駄金を投げるより、その僅かな予算も軍事費に回すべきだ」という主張もしている。

 

 

閑話休題(それはさておき)

 

 

情報局員の一団は、王城の一室へと案内された。

 

「剣王が入られます」

 

側近が声を上げ、襖を開く。情報局員達は立ち上がり、礼をする。

──飾らない王。それが、情報局員達が剣王 シハンに対する第一印象だった。着崩しの和服で、それはまるで、古き日本人と一瞬思わせる程の雰囲気を持っている。

 

「そなた達が、イーディーエフの使者か」

「はい。…貴国と国交を締結したく、参りました。ご挨拶として、我が国の品をご覧下さい」

 

剣王と側近の前に、日本で作られた物が並ぶ。日本刀、着物、真珠のネックレス、扇、運動靴…

シハンは日本刀を手に取り、鞘から刀身を抜く。側近達も剣王の邪魔にならないように配慮しつつ、思い思いに検分を始める。

 

「……これは良い、とてもいい剣だ。貴国にも優秀な刀鍛冶がおられるようですな」

(10年前には、な…)

 

剣王シハンの言葉に、島田は内心でその言葉を紡いだ。

フォーリナー大戦で失われた物は人命や資産、自然だけではない。数多くの技術も人命や資産と共に失われ、中には同じ品質で再生産するには長い時が必要となる技術もあった。その失われた技術の一つに、日本刀の製造技術も含まれていた。現在では一応の製造には成功したものの、10年前の品質には程遠い。武器関連の製造技術はEDFが主導して取り戻そうとしているが、それでもロストテクノロジーの再生産は困難だ。今現在に於いて貴重な一振りの日本刀を今回の会談で持ち込んだのは、国交締結の為の手札の一つとして持ち運びの許可と、一応譲渡の許可も合わせて出されたのだ。

 

気を良くしたシハンは大陸共通語で書かれた文章に目を通し、EDF日本支部からの通商条約締結に於ける提示条件と書類に間違いがないか、口頭でも確認していった。

確認を終え、シハンは更に語気を緩める。

 

「失礼ながら、我々はあなた方の国をよく知らない」

(…ん?これは…)

「イーディーエフからの提案、これはあなた方の言うことが本当なのであれば、凄まじい国力を持つ国と対等な関係が築ける上、まるで夢のような技術も手に入る。我が国としては申し分ない。…しかし、だ」

 

一度言葉を切り、そして話を再開する。

 

「国ごとの転移や海に浮かぶ鉄船などといった事情や技術は、とても信じられないものだ」

「それならば、我が国に使者を派遣して頂ければ──」

「いや、我が目で確かめてみたい」

「…と、申しますと?」

「貴国の軍には、水軍(海軍)があると聞いた。その水軍の内、一つだけでも親善訪問として我が国に派遣して頂きたい。今年は我が国の水軍から廃船が4隻出る。それを敵に見立てて攻撃して欲しい。要は、力をこの目で見たいのだ」

 

シハンから提示された提案に、思わず情報局員達は面食らった。

今現在、まだEDF日本支部とフェン王国には国交がない。それなのに軍を派遣するというのは、それは威嚇行動と同意義の行動だ。普通ならそれは他国は嫌がる筈だというのに、フェン王国は「力を見せろ」と言い、しかも首都アマノキの沖でそれを見せて欲しいというのだ。

 

まさかの展開に驚きつつも、島田達はその後、本部にそのままの報告を送った。

 

 

 

 

 

 

「…なるほど。要は力試し、という事か」

「そうでしょうね。フェン王国は調査の結果、武の国であるという事が分かっています。あちらが望む力でないようならば、国交締結は難しくなるでしょう」

「しかし…それはそれで困ったな。海軍となると「加減が難しい」ぞ。我々の海軍艦は全て対フォーリナー艦だ。一隻だけでも其れ相応の性能だ…」

「この際は仕方ありません。アイオワ級フリゲート艦を派遣しましょう。1番小さい戦闘艦となるとそれしかありませんから」

「うむ。くれぐれも狙いが狂わないように言っておいてくれ」

「勿論です」

 

 

 

 

 

 

「あの計画はどうなっている!」

「はい…皇国監察軍東洋艦隊32隻が、まもなくフェン王国に懲罰の為出撃します」




用語解説&状況説明
フェン王国
日本列島とフィルアデス大陸の間にある島国。EDF日本支部との国交締結交渉の際、EDF海軍の親善訪問を提案した。

ガハラ神国
フェン王国の隣にある島国。フェン王国より先にEDF日本支部と国交締結を結んでいる。

EDF日本支部
ロウリア戦争後、周辺国と慎重にかつ少しずつ国交締結を結んでいる。クワ・トイネ公国との国交締結の際には「EDF日本支部」と名乗っていたが、現在は「EDF」と名乗っている。

アイオワ級フリゲート艦
詳しくは次回解説予定。艦隊の直衛艦として建造されている。

パーパルディア皇国。
第三文明圏列強国。ロウリア戦争を煽った黒幕(国家戦略局の独断だが)。


ふと思い付いた1発ネタ(?)
パーパルディア皇国「フェン王国に懲罰してやる」
フェン王国「やってみろよ」(EDF魂憑依)
書かないけど、これならフェン王国もパーパルディア皇国に勝てるんじゃないかな?(笑)


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第12話 軍祭と衝突

おかしいなー、更新スピードが大して落ちてない気がするぞ?


フェン王国とEDF日本支部の接触から、約1週間が経過した。

今日は5年に一度、フェン王国が主催として開催する「軍祭」の日だ。

この軍祭には、文明圏外に属する各国の武官も多数参加。武技を競い、自国の自慢の装備を見せる。そして各国の軍事力の高さを見せる事によって牽制するという意味合いがある。本音を言うならば文明圏の国も呼びたいのだが、「蛮国の祭りには興味がない」という考えや「力の差を見せつけるまでもない」という考えもあり、それは叶っていない。

 

軍祭の舞台となるフェン王国首都 アマノキの上空を風竜と共に飛行している、ガハラ神国神軍風竜隊隊長 スサノウは下の海を見る。

其処には、常軌を逸した大きさの灰色の船が2隻浮かんでいる。その2隻の所属は、イーディーエフという名の新興国家らしい。

 

『…眩しいな』

 

相棒の風竜がスサノウに「話しかける」。

風竜は知能が高く、人の言葉を理解出来る。普通ならば決して人に仕えるような存在ではない。しかしガハラ神国に伝わる神通力により、彼らは風竜と契約を交わす事によって使役する事を許されているのだ。

 

「確かに、今日は快晴だな」

『いいや、違う。太陽の眩しさではない。下の灰色の船から、線状の光が様々な方向に高速で照射している』

「船から光…?何も見えないが」

『この光は人間には見えまい。我々が遠くに離れた同胞との会話に使用する光、人間には不可視の光だ。何が飛んでいるかの確認も出来る。あの船から出ている光はそれに似ている』

「風竜だから分かったのか…?どのくらい遠くまで?」

『それには個体差がある。ワシは120kmくらい先までは分かるが…あの船の光は、ワシの使う光よりも遥かに強く、収束している』

「…まさかあの船は、遠くの船と魔力通信以外の通信方法を持ってたり、見えない場所を飛んでいる竜を見る事が出来るのか?」

『少なくとも、あの2隻はそうだろうな』

「イーディーエフ、か…思っていたよりも凄い国じゃないか」

 

 

 

 

 

 

「…このデータを見ても、信じられんな…」

「しかし、これは事実です」

 

その頃のEDF海軍…アイオワ級フリゲート艦とセントエルモ級イージス戦艦は、上空を飛んでいるガハラ神国の風竜からレーダー波に酷似した電波を照射している事に気付いていた。このレーダー波は航空機の物としてみれば、前世代技術にも劣らない程度には強い。

文明圏から外れた国で、レーダーに相当する能力を持つ生物が確認された。つまりこれは、文明圏の国家ではこの生物等を大量に運用出来る可能性がある。このデータはその可能性を生み出す重要な証拠となった。後日このデータは本部に提出され、重要書類として指定される事となる。

 

「…兎も角、今はこんな事を話している場合ではないな。時間は?」

「間も無くです」

「前部主砲、装填開始。まだチャージは不要だ」

 

艦長の号令により、アイオワ級フリゲート艦は主砲の発射準備を始める。

ここで、アイオワ級フリゲート艦の解説を始めるとしよう。

 

アイオワ級フリゲート艦は、ぱっと見の外見を見るとかつてアメリカ合衆国という国家が生み出した「アイオワ級戦艦」と勘違いする人が出るだろう。それは完全に間違っているという訳ではない。設計段階でアイオワ級戦艦を参考に設計された為、まるでアイオワ級がスケールダウンしたような印象を持つのだ。

全長は241m。武装は28cmレールガン3連装砲3基9門、12.7cm連装砲8基16門、20mm自動迎撃システム付き連装機関砲80基160門。

…これだけの武装しか積んでいない。これはアイオワ級フリゲート艦に求められた能力にある。EDF海軍は、フォーリナー大戦の経験から「無数の飛行ドローンを如何に効率的に迎撃出来るか」を優先課題とした。フォーリナーの戦力は質のみならず量も圧倒する。EDF海軍の主敵はフォーリナーの飛行戦力であり、無数の敵に積載数がどうしても限られるミサイルを乱発していては、あっという間に弾切れになる。ならば弾薬の要らないレーザー兵器を搭載すると、今度はレーザー兵器特有の困難なメンテナンスが足を引っ張る。歩兵用装備や飛行兵器ならこの事は特に問題視されないが、艦艇となると話は別だ。海軍の艦艇は一定期間以上の無補給戦闘を前提に設計する事を求められていた為、メンテナンスが困難な兵器を、特に量産艦に搭載するのは避けるべき事だった。EDF海軍は考えに考えた結果、其々が中途半端な設計となるより、「それぞれの目的に重視もしくは特化した艦を設計、量産すれば良い」というある意味では割り切った考え方をする事にした。結果、セントエルモ級イージス戦艦は対マザーシップ及び機甲戦力を主目標とした戦艦に。アイオワ級フリゲート艦は対飛行戦力に特化した、艦隊の直衛艦として其々が量産される事となったのだ。

 

今回の軍祭に於いてアイオワ級フリゲート艦が派遣されたのは、「EDF海軍の中では1番小さい戦闘艦」だからだ。剣王シハンから力を見せろとは言われたが、何も「全力の力を見せろ」とは言われてない。もしそんな事になるなら、EDF日本支部の切り札の一つである要塞空母デスピナをわざわざ派遣する事になる。そんな事をする訳にもいかないので、アイオワ級フリゲート艦と念の為にセントエルモ級イージス戦艦を各1隻ずつ、フェン王国の軍祭に派遣したのだ。

 

 

 

 

 

 

剣王シハンは、王城から軍祭の会場を見下ろしていた。

 

「あれが、イーディーエフの戦船か…まるで城だな」

 

シハンの呟いた言葉に、武将マブレグが頷く。

 

「いやはや…ガハラ神国から事前情報は聞いてはいましたが、あれ程の大きさの金属で出来た船が海に浮かんでいるとは…私も数回、パーパルディア皇国に行ったことはありますが、こんな大きさの船自体見たことがありません。ましてや金属製など…」

 

彼らの視線の先には、EDF海軍のアイオワ級フリゲート艦とセントエルモ級イージス戦艦が浮かんでいる。

 

「剣王。そろそろ我が国の廃船に対して、イーディーエフの船から攻撃を始めてもらいます」

 

剣王シハンが直々にEDF情報局に頼んだ「EDFの力を見せて欲しい」という依頼。その答えが今、示される。

EDF艦隊のさらに沖合、約4km先に標的艦として設定したフェン王国の廃船が4隻浮かんでいる。シハンは望遠鏡を覗き込み、EDF艦隊の先頭艦に焦点を合わせた。今回は先頭のアイオワ級フリゲート艦とかいう船が、1隻だけで攻撃を行うらしい。

 

「あの距離から攻撃するというが…本当か?我が国最強の軍船である旗艦「剣神」ですら、あの距離では攻撃する事は出来まい」

「はて…あの距離からならば、廃船に接近する事から始めるつもりかもしれませぬな」

 

そんな事を話している間にも、アイオワ級フリゲート艦の前部主砲の28cmレールガン3連装砲2基6門が旋回を始める。レーダーによって正確に捉えられた目標に、最大秒間旋回速度20度という高速度で旋回。更に計算された角度に砲身を向け、縦に割れている砲身に電圧の充填を開始し、バチバチと電流が流れ始める。

そして、発射。甲高い音が大きく響いたと思った瞬間、照準されていた2隻の廃船を貫通し、船の中心部に砲弾が着弾。その運動エネルギーと衝撃波によって爆散し、残った2隻に照準を終えた前部主砲が再び咆哮。残った2隻を爆散させた。

 

「…これは…なんとも凄まじい…」

 

剣王シハンのみならずフェン王国の中枢の者達は、自分達の知る攻撃概念からかけ離れた威力の前に、唖然とした。

1隻から2回(4発)の攻撃で、4隻を正確無比に命中させ、あっさり撃沈させる。おまけに連射性能も高く、底が見えない。列強国パーパルディア皇国でも、あんな芸当は出来ないと誰もが理解した。

 

「すぐにでも、イーディーエフと国交を開設する準備に取り掛かろう。不可侵条約は勿論、出来れば安全保障条約も取り付けたいな…!」

 

 

 

 

 

 

剣王シハンがそんな事を呟いている頃、EDF海軍は西から接近する飛行物体を感知していた。速度は350km/h、ロウリア王国のワイバーンよりも速い何かが20、フェン王国首都 アマノキに接近している。

その報告を聞いた艦隊司令官はまゆをひそめる。

 

「…ここから西は、確かパーパルディア皇国があったな?」

「はい」

「そしてこの軍祭では、文明圏の国は参加している事はまずない………キナ臭いな。全艦戦闘配置、接近している物体の動きを監視しろ」

「フェン王国への連絡はどうします?」

「奴等が何かしでかすなら、もう今からでは間に合わんさ」

 

 

 

 

 

 

パーパルディア皇国監察軍東洋艦隊所属のワイバーンロード部隊20騎は、フェン王国に懲罰的攻撃を加える為に首都アマノキに来ていた。

軍祭には文明圏外の各国武官がいる。彼らの眼前で皇国に逆らった愚かな国の末路がどうなるかを知らしめる為、敢えて今日行われるこの祭りに合わせて攻撃する事が決まっていた。

これで文明圏外国家は、皇国の力と恐ろしさを再認識するだろう。そして服従しない国に関わるだけでも皇国の攻撃対象となるという事を自覚させ、孤立状態を作り出すのだ。

…ただ、そんなパーパルディアのワイバーンロード部隊であってもどうしようもない存在もいる。

ガハラ神国の風竜3騎が、未だに首都上空を飛行していたのだ。

ワイバーンロードでは風竜には敵わない。この事実に部隊長の竜騎士は苦々しく思いつつ、後続の隊員達に魔力通信で指示を送る。

 

「ガハラの民には構うな!フェン王城と、そうだな…あの目立つ灰色の船に攻撃せよ!」

 

飛来したワイバーンロード20騎が、二手に分かれた。

 

 

 

 

 

 

「ワイバーン、二手に分かれました!一方は我が艦に、もう一方は…フェン王城に攻撃を確認!!」

「接近するワイバーンを敵と認識する!自動迎撃システム起動!目標、上空のワイバーン部隊!!」

 

ワイバーンロード10騎の狙いとなったアイオワ級フリゲート艦が自動迎撃システムを起動する直前、急降下で導力火炎弾の射程内に入ったワイバーンロードが火炎弾を発射。アイオワ級フリゲート艦へ10発の導力火炎弾が飛来する。

その時、アイオワ級フリゲート艦の自動迎撃システムが起動。射界内に入っていた20mm連装機関砲40基80門と12.7cm連装砲4基8門が火を噴き、対空弾幕を展開。合計して秒間320発の20mm弾と毎秒6発の12.7cm対空砲弾を連続で放つその猛烈さに、導力火炎弾は空中で爆発。発射元のワイバーンロード10騎はズタズタの挽肉となり、海の栄養源に成り果てた。

そしてその後方ではセントエルモ級イージス戦艦の主砲が残りのワイバーンロード10騎に前部主砲の38cmレールガン連装砲3基6門を照準、速射。マッハ7で飛来する砲弾の衝撃波でワイバーンと竜騎士は即死し、身体がバラバラになる。

僅か20秒で、パーパルディア皇国のワイバーンロード20騎を殲滅した。

 

『………………』

 

その光景を見ていた剣王シハンと側近達、軍祭に参加していた各国の参加者達、その他全ての目撃者達は開いた口が塞がらなかった。

彼らにとって、1騎撃墜するだけでも大変な戦闘を繰り広げる必要があるワイバーンロードが、自分達の目の前で20騎も消し飛んだ。ワイバーンロードは、間違いなくパーパルディア皇国の所属だったのだろう。

文明圏外にとって、1騎だけでもワイバーンロードを仕留める事が出来れば、それだけで国として世界に誇る事が出来る。「我が国はワイバーンロードを叩き落とすことが出来る程に精強であるのだ」と。

それをEDF海軍はあっさりと、まるで動けなくなったハエを踏み潰すかのように、列強の精鋭であるワイバーンロード20騎を殲滅したのだ。

 

──歴史が動く予感がする。

 

それを見ていた全員が、そう直感するのは無理もなかった。

 

 

 

 

 

 

「…しかし、やってくれたなフェン王国。パーパルディアと衝突する事を我々に黙っていたか」

「どうします?」

「勿論、すぐに再度会談だ。向こう側もそれを望むだろうからな。すぐに本部にこう連絡しろ、『フェン王国派遣艦隊がパーパルディア皇国のワイバーン部隊より攻撃を受け、これを殲滅。パーパルディア皇国と事実上戦争状態に入った』とな」

「了解。…しかしこのタイミングは想定外でしたね」

「だな。まだ「あの艦」は慣熟航行中…それにまだ理由が少し薄い。ならば…」




用語解説&状況説明
EDF日本支部
フェン王国に派遣した艦隊の連絡を受け、対パーパルディア戦の準備を本格的に始める。

パーパルディア皇国
フェン王国に懲罰的攻撃を行った時に愚かにもEDFに手を出し、順調に死刑台への階段を上っている。
EDF日本支部とも国交も開いてないし(そもそもEDF日本支部が開く気もない)、既に難易度が爆上がり中。

アイオワ級フリゲート艦
EDF海軍の直衛艦。近接防空力に特化しており、20mm機関砲は自動迎撃システムが不具合を起こした際に備え、手動照準と手動発射が行えるように設計されている。

「あの艦」
呉の建造ドックで建造された、EDF海軍としては初のフォーリナーテクノロジーを大々的に組み込んだ最新鋭艦。(今まで建造されていた艦は、要塞空母デスピナを含めて部分的にしかフォーリナーテクノロジーを取り入れていなかった)
現在慣熟航行中。


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第13話 謀略

うーん…なんか結構雑な感じになったなぁ。ここの展開もうちょっとよく考えるべきだったか…


パーパルディア皇国のワイバーン襲来後。

EDF日本支部の情報局員の一団は、再びアマノキの王城に戻っていた。案内された応接の間は、奥ゆかしさや趣のある部屋であり、質素ながらも心地よい部屋の印象を与える。

出された茶も一切手をつけずに待っていると、フェン王国武将マグレブが現れた。

 

「イーディーエフの皆様。今回はフェン王国に不意打ちしてきた不届き者共を、誠に見事な武技で退治していただけた事に、まずは誠意を申し上げます」

「いえ、我々は攻撃を受けたので反撃したまでの事。正当防衛以外の何物でもありません」

 

島田のハッキリとした答えにマグレブは焦ったのか、話を進めようとする。

 

「早速、国交開設の事前協議を…実務者協議の準備を進めたいと思うのですが…」

「巫山戯た事を抜かすな」

 

最早、苛立ちを隠そうともせずにその一言が放たれた。

 

「貴国とパーパルディア皇国は、既に戦争状態にあると見える。それにも関わらず、貴国はあのような危険を伴うかも知れない場所に我々の海軍の親善訪問を要求した。今回は運が良かったが、これで我が海軍に何かしらの被害が出ていた場合、貴国は一体どうするつもりだったんだ?それに加えて、どうやら貴国はどうしても我が国との国交を…いや、我が軍の力を欲しているようだな」

「それこそ巫山戯るな。貴国の都合のみで3600万人の命を危険に晒す権利が、貴国にあるのか?無いだろう?我々は貴国の都合良く動く人形などではない!!」

 

その声は怒号となり、応接の間の空気を揺らす。

 

「…これで話は終わりです。国交開設も改めて考え直しますが、恐らく難しくなるでしょうね」

 

そう言って、情報局員の一団は応接の間から退出の準備を始める。その様子にマグレブは焦燥を隠し切れない。

 

「ま、待って下さい!」

「ああ、一つ言い忘れてましたね」

 

退出する直前、島田は振り返りマグレブに視線を向けた。

 

「我々に攻撃(宣戦布告)を行った蛮国の海軍は、我々が叩き潰します」

 

 

 

 

 

 

同時刻。

フェン王国の懲罰的攻撃を行う為に本国より出撃したパーパルディア皇国 監察軍東洋艦隊は、フェン王国から西に約120km地点の海域を航行していた。

 

数十分前、フェン王国首都アマノキに向けて出撃したワイバーンロード20騎との通信が途絶した。第三文明圏に、ワイバーンロードを超える航空戦力は存在していない。そして文明圏内国家が保有するワイバーンは、殆どがパーパルディア皇国からの輸出品だ。文明圏外国家が改良型飛竜を20騎も撃墜する事など、考えられなかった。

このような不可解な事態に、艦隊を率いている提督 ポクトアールは嘆きたくなったと同時に、嫌な予感を覚えた。しかしこれは第3外務局長 カイオスの命であり、国家の威信をかけた命令でもあった。現地に向かわない選択肢は無く、フェン王国に懲罰的攻撃を行う為、そしてワイバーンロードを落とし、皇国に楯突く者を滅する為、最大速力でフェン王国へと向かっていた。

 

現在、空は快晴。ポクトアールは甲板にて比較的乾いた潮風を浴びていたら、水平線に何かを捉えた。

 

「!?」

 

望遠鏡を構えると同時に、頭上の見張り員が声を上げる。

 

「艦影と思われるものを発見!こちらに接近しています!!」

「大きいな…フェン王国のものとは思えない…まずい、総員戦闘配備!!」

 

それは城のように大きい、灰色の…恐らく船と思われる物体だが、彼等の常識から考えると規格外の大きさだ。

 

「速い…まさか、我が方の船速を凌駕しているのか!?」

 

正体不明の超巨大艦は、旋回する事なく真っ直ぐパーパルディア皇国の艦隊へと接近する。

 

「提督、どうしますか?」

「敵艦はこのままなら真っ直ぐ突っ込んでくる。何をするつもりか知らないが、すれ違いざまに魔導砲の一斉掃射で沈めて──」

 

瞬間、超巨大艦の砲台が咆哮を上げた。

 

 

 

 

 

 

「敵艦3隻、撃沈」

「そのまま別艦を照準。後部砲塔も、射界に入り次第攻撃を開始せよ」

 

単艦でフェン王国首都 アマノキより出撃したセントエルモ級イージス戦艦は、ワイバーンロードが飛来してきた西の方角に進み、パーパルディア皇国監察軍東洋艦隊を発見。これに対し、攻撃を開始した。

38cmレールガン連装砲が発砲する毎に、瞬間的に粉砕されて行く戦列艦。それは爆発のエネルギーではなく、マッハ7で飛来する38cm砲弾が生み出す運動エネルギーと衝撃波によって行われていく。

 

「…まるで、我々がフォーリナーですね」

 

その光景を目に焼き付けている艦橋の船員の一人が、ふと呟いた。

 

そうだろうな(・・・・・)。10年前のあの時の立場と、今現在の立場はまるで真逆だ。10年前は、フォーリナーが我々(EDF)を圧倒していた。だが今は、我々が他国を圧倒している立場だ。現に先日、我々は国家の1つを滅ぼしたのだからな」

 

その言葉が聞こえていたのか、艦長が応えた。

 

「我々は確かに、人類を守る為に存在している。だが──」

 

 

 

 

 

 

「──以上が、先程発生したフェン沖海戦における戦闘経過です」

「そうか」

 

EDF日本支部の司令室にて、先日発生したパーパルディア皇国海軍との戦闘報告が届けられていた。

その結果は言うまでもなく、EDFの完勝。セントエルモ級イージス戦艦の砲撃により、22隻の魔導戦列艦は全てが粉砕された。生存者は0、またしても誰一人として生き残れた者は居なかった。

フェン王国の軍祭に於けるワイバーンロードの攻撃、そして今回の軍事衝突により、EDF日本支部は事実上、パーパルディア皇国と戦争状態に突入した。

 

「今回の衝突に於いて、我々は国家としてパーパルディア皇国に対する宣戦布告理由は獲得しました。しかしこれだけでは、パーパルディア皇国側から捏造であると否定される可能性も否定出来ません。今回の軍事衝突で敢えて生存者を残すという意見もありましたが…まだ魔法の未知が多く、想定外の損害が発生し得るとして殲滅してしまったので、パーパルディア皇国からしたら我々の理由の証拠足り得る物が何一つとして無いのです。その上まだ我々はこの世界の国際社会に於いて、発言力はほぼ皆無に等しい状況であります」

「では、どうする?」

 

司令の返しに、情報局長はニヤリと笑みを浮かべた。

 

「やる事は単純です、ただひたすらに「待つ」のです。既にパーパルディア皇国の隣国であるガハラ神国、アルタラス王国、シオス王国、アワン王国と国交を開設、秘密裏に防衛軍事同盟を締結しています。フェン王国との国交開設は再交渉する為時間が少し掛かりますが、それさえ終えれば「網」は完成します。パーパルディア皇国が網に掛かれば、我々は国際社会に対して正当な宣戦布告理由を獲得し、後は世界に対パーパルディアの宣戦布告宣言を行うのみです」

「なるほど、な…そういえば、参謀長から対パーパルディア皇国作戦の改良案が完成されたと聞いたぞ」

「既に此処に」

 

持ってきていたアタッシュケースから書類の束を取り出し、司令の机に置く。

 

「これが「オペレーション・パルヴァライゼーション」の最終修正案です。では、私はこれで失礼します」

「うむ、ご苦労」

 

情報局長が部屋から退室して暫くした後に、司令は情報局長が届けた書類を手に取り、詳細を読み始める。

 

「………」

 

しばらくの間、沈黙と紙をめくる音のみがその一室を支配する。それは何人でもその空気を壊せる程に儚いが、しかしその空気に気付ける者は誰も居ない。

コンコンと、閉ざされたドアをノックする音が響く。

 

「入れ」

 

書類からドアに目線を向け、入室を促す。入ってきたのは女性の戦術士官だ。彼女と司令はフォーリナー大戦にて共に部隊の指揮を執っており、双方が信頼出来る戦友でもある。

 

「…司令、ご相談したい事があります」

「…なんだ?」

「司令は、今現在の我々をどう認識していますか?」

「………それはつまり、我々がフォーリナーのような存在となってはいないか、という事だろう?」

「…!」

 

心の内を読まれたのか、僅かに表情を変える戦術士官。それと対称的に、司令は淡々と言葉を紡いでいく。

 

「他国から見れば、そうだろうさ。絶大な技術力の高さと圧倒的な戦力。数こそ違うが、先のロウリア戦争で行った事は、視点が違えばフォーリナーの行いと大して変わらんさ。だが…」

 

そこで一度言葉を切る。

 

「我々が救える者もいれば、我々の労力を持っても救えない者達も居る。我々の力不足で死んでいった者には、幾らの自責の念を以ってもやりきれないが…そもそもとして「人々を傷付けるような愚か者」に差し伸べる手は無い。その者達を救う為に労力を使わず、救える者達を出来る限り救うのが、EDFの役目だ。あの人類内戦で、それを行ったようにな。忘れたとは言わせんぞ、戦術士官」

「…そう、ですね」

「既に我々の手は我々の血で赤く染まっているのさ。ならば我々は進まねばならん。我々の指示で、人類内戦で1億4700万人を見捨てて殺し、ロウリア戦争で1570万人を殺し、そして次はパーパルディア皇国。我々は既に大量殺人者さ。だが此処で立ち止まれば、我々がこれまで成してきた事の全てが無に帰す。それだけは絶対にしてはならない」

 

司令は立ち上がり、窓際に寄って外の光景を見下ろした。

 

「3600万の人々を護る為、この平和と平穏を護り続ける為、そしてパーパルディア皇国に虐げられている人々を救う為に。これはやらなければならない。例えパーパルディア皇国が滅んだとしても、だ」

 

「そうでなければ、我々は我々の正気(アイデンティティ)を保てない程に、弱くなっているのだ」




用語解説&状況説明
フェン王国
EDF日本支部と国交開設と軍事同盟を結ぼうとしたが、失敗して振り出しに戻る。

EDF日本支部
網を張って対パーパルディア皇国の準備を進めつつ、司令と戦術士官はこの先のEDFの未来を憂う。

パーパルディア皇国
処刑台へのカウントダウン継続中。

監察軍東洋艦隊
今まで通りに殲滅される。

人類内戦
フォーリナー大戦後、深刻な食料不足や資源不足などが原因で発生した世界規模な内戦。この内戦によって1億4700万人が死亡する。(フォーリナー大戦の死者の3%が人類内戦によって死亡)

オペレーション・パルヴァライゼーション
対パーパルディア皇国の作戦。ここで解説してもネタバレになるだけなので割愛する。


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第14話 来たる戦乱の日

さぁぁ、遂にここまで来ましたよ。


フェン王国の軍祭後。

EDF海軍の力を見た文明圏外国の各国は、EDF日本支部と国交を結ぶべく艦に乗って日本列島を目指した。つまりは時代がかった船が多数、日本列島の周辺に不定期的に多数現れる事となり、EDF海軍は空軍及び自律衛星ライカと連携しつつ、約2ヶ月の間休みなく働く羽目になった。

今までのEDF日本支部は、対パーパルディア皇国の為に慎重な調査を行った上、国交を結ぶに問題ない国家との国交開設を申し込んでいたが、今回の出来事は各国の大使達が自国の詳細な資料を携えており、調査の手間自体は省ける上に各国大使はいずれも友好的で礼儀正しく、国交開設を開く事も十分に可能だった。

 

しかし各国の情熱さに対して、EDF日本支部の態度そのものは冷ややかだった。

 

そもそもEDF日本支部の方針として、「必要以上の国と国交を結ばない」という方針が確立していた。必要資源はクワ・トイネ公国とクイラ王国から輸入しており、他国とこれ以上の国交開設は必要無いのだ。ガハラ神国、アルタラス王国、シオス王国、アワン王国に関しては、パーパルディア皇国に対する宣戦布告理由獲得の為に国交開設と防衛軍事同盟を締結しているだけであり、それ以上の理由は無かった。

しかし、そんなEDF日本支部の閉鎖的な行動を、各国間で情報共有でもしていたのだろうか。一度の断りを入れても各国大使は全く諦める事は無く、何度も何度も根強い交渉を続けたのだ。EDF日本支部はそれでも何回かはやんわりと断り続けていたが、最終的に情報局長からの「ここまでしつこいなら、国交開設や通商条約を結ぶだけ結んでお帰り願った方が手っ取り早い」という意見により、EDF日本支部は一時的に方針を転換せざるを得ないと判断。非常に不本意ながらも、軍祭に参加していた文明圏外国の14ヶ国と国交を開設。

こうしてEDF日本支部は計20ヶ国と国交を開設し、国交開設と通商条約締結に留めた14ヶ国とも通商を始める事となる。

 

 

 

 

 

 

パーパルディア皇国、第3外務局。

外務局の1つであり、パーパルディア皇国と国交を結んでいる文明圏外国の国交を担当している。パーパルディア皇国は文明圏外国に対する脅迫外交による搾取を行っているため、皇国監察軍の指揮権を保有するという特徴も持っている。

その局長室にて、第3部局長 カイオスは激怒していた。

 

その理由は、約1ヶ月前。フェン王国が皇国から提案した領土分割案を拒否した会談から始まった。

領土分割案の内容を要約して解説すると、パーパルディア皇国皇帝 ルディアスが掲げる国土拡大計画の一環として、フェン王国の南部縦20km、横20kmの領土をパーパルディア皇国に割譲するよう、第3外務局はフェン王国に要求した。その要求場所は森林地帯であり、フェン王国も使用していない地帯だった。皇国外務局は「国土を得る事が出来た」という実績を手に入れ、フェン王国は未開発の領土を差し出してパーパルディア皇国に忠誠を誓う事により、準文明圏国家となり得る技術供与を得るばかりか、パーパルディア同盟国という箔が付く事によって周辺国からの侵略を受ける可能性が激減する。

正にWIN-WINの提案。これを受けない筈と思っていた第3外務局の計算は、フェン王国の拒否回答によって大外れした。それならばと第2案の同場所を498年間租借する提案も出すも、丁重に断られた。

これにより、第3外務局内で「フェン王国は皇国を舐めている」という意見が主流となる。72ヶ国の属国を持つ第三文明列強国であるパーパルディア皇国にとって、文明圏外の蛮国から軽視されるというのはとても許容出来るものでは無いとして、局長のカイオスは指揮下の皇国監察軍東洋艦隊22隻とワイバーンロード2個小隊をフェン王国に派遣する事を決定した。

ワイバーンロード部隊によるフェン王国首都アマノキの攻撃、そして監察軍東洋艦隊による無慈悲な砲撃による追撃によってアマノキを完全に焼き払い、パーパルディア皇国に逆らえばどうなる事になるのかを、軍祭に参加している文明圏外国に見せ付ける。その筈だった。

 

しかしその結果は、ワイバーンロード部隊によるアマノキ攻撃を開始した直後、「監察軍東洋艦隊の一切の消息が途絶える」という結果に終わった。

 

この結果に第3外務局は騒然となった。幾ら正規軍でもない皇国監察軍とはいえ、それでも文明圏外国の一国を滅ぼすには十分な戦力を持っている。それにも関わらず、「連絡する暇も無く」全滅するなど到底考えられない事だったのだ。

しかし事実は事実、この事態は確実に皇帝の耳に入る。そうなれば次は監察軍ではなく、最新鋭艦で固められた正規の本国艦隊が動くだろう。監察軍とはいえ、第三文明圏列強国である皇国の戦力を殲滅させる程の敵なれば、どこかの列強国が支援しているか、下手すれば列強国そのものである可能性さえもある。

第3外務局は未だ見えぬ「敵」を探るため、情報収集を開始する。

 

 

そんな第3外務局の応接室にて、数人の男達が会談を開いていた。

 

「なんだと!?来年から奴隷の献上を行わないだと!?」

 

外務局員が、会談相手であるトーパ王国大使を怒鳴り付けた。

トーパ王国はパーパルディア皇国の北側に存在する、第三文明圏外国の一つだ。しかしその立地は強力な魔物が闊歩している「グラメウス大陸」と第三文明圏を繋ぐ場所に位置しており、人類の定住地として重要な拠点としても機能している。が、外務局員はそれを承知の上で、大使に強硬姿勢を見せる。

トーパ王国大使は冷や汗を流しつつも、断固とした口調で答える。

 

「我が国の民を奴隷として貴国に差し出すのは、もうやめとうございます」

「ふん、ならば各種技術提供もトーパのみ停止させるぞ!」

 

皇国は、各種技術提供もこうした外交手段の一つとして利用している。

最新技術は徹底的に秘匿しつつ、旧式となった技術を属国の周辺諸国や文明圏外国へと提供している。これだけなら皇国は属国からの献上品で潤い、属国も生活水準は向上していくようにも見える。しかし現実的に見れば属国は常に皇国の後追いの形となり、その差は一切縮まらない。結局のところ、属国は苦しい思いを永遠に続けているのだ。その上で一国だけ技術供与が停止する事になれば、他国と技術力と発展速度に差が出る。つまりは国力が衰退していく事となるのだ。

属国が皇国の言う事を聞かなければ、部品の輸出さえも不可能になる。これで完全に国が立ちいかなくなる。筈だったのだが、今までのトーパ王国からは考えられない程に強気な姿勢を続けた。

 

「技術、ですか。たかが技術程度、人民の幸福には代えられません。我々は奴隷を差し出さず、皇国は我が国への技術供与を停止する。それで結構でしょう」

「ほう…ならば今後は自分達であらゆるものを調達するんだな。後で泣き付こうが我々は知らん」

 

突き放すような外務局員の言い方に対し、トーパ王国大使はフッと笑った。

 

「我々は、イーディーエフと国交を結んでいるのですよ」

 

そう言って、応接室から立ち去っていった。

 

 

 

 

 

 

場所と時は変わる。

フィルアデス大陸の南側にある、海を隔てた大きな島の王国。その名を「アルタラス王国」と呼ぶ。

世界有数の魔石鉱山を有する豊かな国であり、人口1500万人に加え、その国力は文明圏外国としては規格外の規模を誇る。資源輸出国であるアルタラス王国はとても豊かであり、中でも人口50万人を抱える王都 ル・ブリアスも人々の活気に溢れている。

しかしそれとは裏腹に、国王 ターラ14世は王城にて、苦渋に満ちた表情で手元の書類を見ていた。

 

「正気か、これは…?」

 

その書類は毎年パーパルディア皇国から送られてくる要請文だったが、その実態は「命令文」と変わりない。

しかも今回の要請文内容は、己の目を疑いたくなるような内容だった。

 

1.アルタラス王国は魔石採石場 シルウトラス鉱山をパーパルディア皇国に差し出せ。

2.アルタラス王国王女 ルミエスを、奴隷としてパーパルディア皇国に差し出せ。

以上2点を、2週間以内に実行する事を要請する。

出来れば、武力を使用したくないものだ。

 

「ありえないな…」

 

パーパルディア皇国の現皇帝ルディアスは、国土の拡大と国力増強を掲げており、各国に領土の割譲を迫っていると聞いていた。しかし通常の割譲地は無難な場所で、尚且つ双方に利がある条件を付けるなど穏便な場合が多かった。

しかし今回、アルタラス王国に要求してきたものは全くの真逆だ。シルウトラス鉱山はアルタラス王国の経済を支える中核であり、これを失えば国力は大きく劣る事になる上、王女の奴隷化に関しては最早、アルタラス王国を怒らせる為に記述したとしか思えない。

つまりは、パーパルディア皇国は最初から戦争に持ち込もうとしているようにしか見えないのだ。

 

ターラ14世は直ちにル・ブリアスにあるパーパルディア皇国第3外務局所轄のアルタラス出張所に出向き、その真相を確かめる事にした。

 

 

 

 

 

 

パーパルディア皇国第3外務局 アルタラス出張所。

そこにターラ14世は外務官を共に連れ、職員に案内されて館内を歩いていた。

大使室前に着き、扉が開かれる。

 

「待っていたぞ、ターラ14世!」

 

そこにはパーパルディア皇国第3外務局所属 アルタラス担当大使カストが大仰に椅子に座り、足を組んだまま一国の王を呼びつけた。対するターラ14世は立ったまま。ソファーの一つもない辺り、どうやら事前に撤去したらしい。

アルタラスの外交官は無礼には無礼で返す、挨拶抜きで話を始めた。

 

「あの文書の真意を、伺いに参りました」

「内容の通りだが?」

「シトウトラス鉱山は我が国最大の鉱山です」

「それがどうした?鉱山は他にもあるだろうに。それともなんだ、え?ルディアス様の意思に逆らうと言うのか?」

 

一切の品のない表情を見せるエストに、ついにターラ14世も顔を顰めた。

 

「とんでもございません、逆らうなど…しかし、なんとかなりませんか?」

「ならん!」

 

カストが声を荒げ、ターラ14世は外務官を下がらせて自ら前に出る。

 

「では、我が娘ルミエスの事ですが…何故このような事を?」

「ああ、アレのことか。ルミエスは中々の上玉だろう?俺が味見をする為だ」

「…は?」

 

信じられない回答に、アルタラス王国の人間は揃って言葉を失った。

 

「俺が味見をしてやろうと言うのだ。まぁ飽きたら、適当な淫所に売り払うがな」

 

最早、我慢の限界を遥かに超えた。

 

「…それも、ルディアス様の御意思なのですか?」

「ああ!?なんだその反抗的な態度は!?皇国の大使である俺の意思は即ちルディアス様の御意思だぞ!!蛮国風情が、誰に向かって口を聞いているのだ!!」

 

ターラ14世は、無言で背中を向けた。

 

「おい!まだ話は終わってないぞ!!」

 

その声を無視し、退出。

 

 

 

 

 

 

「あの馬鹿大使を皇国に送り返せ!!要請文にはわしの直筆など要らん、外務省から「国交を断ずる」とはっきり書いて馬鹿大使に持たせろ!!我が国の皇国の資産も全て凍結だ!」

「はっ!!」

「軍を招集、王都の守りを固めろ!予備役も全員招集だ!!」

 

「イーディーエフ連絡館に直ちに伝えろ!!「我がアルタラス王国はパーパルディアの不当な要求を蹴り、戦争状態に突入した」と!!同時に防衛軍事同盟に基づく参戦要請を伝えるんだ!!そして世界のニュースに後から届くイーディーエフの声明文発表の準備を行え!」

 

 

 

 

 

 

その翌日は丁度、国際情勢を1週間に一度の周期で魔力通信にて放送する「世界のニュース」が行われる日だった。

 

『こんにちは、世界のニュースの時間です。今週はつい先ほど、第三文明圏より届けられた声明文の発表から行われます』

 

世界がそれを知るには、とても都合が良かった。

 

『今から、その内容を読み上げます──「世界の各国の皆々様方、初見となります。我々は第三文明圏内に国家を置く「イーディーエフ」と言います。我が国は平和と平穏を愛し、今までは世界に積極的な関わりを持とうとはしませんでした。しかしつい先日、我が友好国であるアルタラス王国が、第三文明圏列強国パーパルディア皇国より、あまりにも不当な要求を突き付けられた。その内容は国の発展の中核を明け渡すのみならず、アルタラス王女 ルミエスを彼の国は奴隷にせんとしたのだ。この暴挙を行う蛮国の行いを、我々は絶対に許さない。平和には平和を、暴力には暴力を以って応えよう』」

「『中央歴1639年11月12日12時を以って、イーディーエフはパーパルディア皇国に対して宣戦を布告すると同時に──」』

 

 

「『1週間後、パーパルディア本国領土全域に対して殲滅戦を行う事を、ここに宣言する」』

 

 

その日、世界は知る事となる。

 

 

 

 

 

 

日本列島は、戦意に湧いている。

 

ある者は叫ぶ、「彼の国を許すな」と。

 

ある者は吼える、「侵略者は滅ぶべきだ」と。

 

ある者は宣言する、「あの蛮国には滅亡以外に許される道は無い」と。

 

ある戦士は己の武器の弾倉を装填し、安全装置を解除する。

 

ある戦士は己の相棒(機甲兵器)にその身を預け、エンジンを吹かす。

 

ある戦士は西を睨み、すぐに来たる戦いに備えて精神を統一する。

 

彼らの意気は軒昂し、その闘争心は燃え上がって一つとなり、それは全てを破壊し尽くす業火となる。

 

 

「オペレーション・パルヴァライゼーション、発動準備を開始せよ」

 

 

侵略者に、死の鉄槌を。




EDF日本支部「友好国を侵略しようとしてる国がいるから宣戦布告するよ!あ、1週間後に殲滅戦行うからね!

…2次創作初じゃないかな?パーパルディア皇国が宣戦布告と殲滅戦を宣言されるなんて。


用語解説&状況説明
EDF日本支部
パーパルディア皇国が網に掛かったので世界のニュースにて宣戦布告。同時に1週間後に殲滅戦を行うと世界に宣言した。

パーパルディア皇国
処刑台に上がりきった。後はその手が振り下ろされるのみ。

アルタラス王国
パーパルディア皇国からの要求を蹴り、EDF日本支部に防衛軍事同盟に基づく参戦を要請する。
原作だとパーパルディア皇国に占領され、その後日本に解放されるのだが…

トーパ王国
第三文明圏外国の一つ。パーパルディア皇国からの要求をアルタラス王国と同じく蹴った。

世界のニュース
第一文明圏列強国「ミリシアル帝国」から全世界に、1週間に一度の周期で行われるニュース。


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第4章 オペレーション・パルヴァライゼーション 第15話 反応と出撃

お気に入り件数1500件突破(日本国召喚内第1位到達)、総合評価3000突破…?
待って、これ総合評価でも1位になれるなんていうのが、夢物語から可能性となってきてるんだけど…


EDF日本支部が世界のニュースにて、全世界に向けて発表したその声明文。それは世界各国の殆どに多大な驚愕と不憫で受け入れられた。

EDF日本支部の詳細を知らぬ国々にとって、それは「国際常識も知らない、余りにも幼稚な文明圏外国が文明列強国に宣戦布告したのみならず、愚かにも殲滅戦までも宣言してしまった」と。そう捉えたのだ。故に世界各国は、この戦いはパーパルディア皇国の勝利に終わると考えた。だからこそEDF日本支部が宣戦布告の後に第三国に発した、パーパルディア皇国からの避難勧告には殆どの人々が従う事はなかった。

第一文明圏列強国 神聖ミリシアル帝国の人間は35人、第二文明圏列強国 ムーは42人、その他文明圏外諸国は379人のみしかパーパルディア皇国の退避を選ぶ者は居なかった。これはパーパルディア皇国に滞在する外国人の凡そ5%程度にしか満たない。それ程に、今回の戦争はパーパルディア皇国の勝利を見込んでいたのだ。

まぁ、彼等が持つ常識と認識ではこの判断自体に無理はなかった。宣戦布告と殲滅戦を宣言されたパーパルディア皇国は、第三文明圏列強国であり、その国力は世界的に見ても4番目に高い。対してEDF日本支部は、自らを「第三文明圏国であり、自ら世界に関わりを持とうとしてこなかった」と断言した。つまりは国力もそれ相応しか持っておらず、更には殲滅戦の宣言によって国際常識さえも知らぬ国という認識を持ったのだ。そんな国が列強国と戦っては、すぐに殲滅し返されて滅ぶに決まっている。そう思ったのだ。

 

それが全くの間違いだったとは、1週間後に気付く。そしてそれに気づいたのは、あまりにも遅過ぎたという事も。

 

 

 

 

 

 

第一文明圏列強国 神聖ミリシアル帝国。

第一文明圏、通称中央世界と呼ばれる地域に存在する誰もが認める世界最強の国家であり、帝国南端に存在する港町 カルトアルパスは世界最大の交易拠点として存在していた。

そこにある、とある酒場では酔っ払い達が話をしていた。

 

「見たか?こないだの世界のニュース」

「ああ、まさかパーパルディア皇国が文明圏外国から宣戦布告を受けるなんてな。しかも殲滅戦も宣言したんだぞ?その国のトップは馬鹿なのか?」

「噂じゃ今まで閉鎖的だったせいで、国際常識を全く知らなかったらしい。だからパーパルディア皇国との国力差も知らずに、あんな事をしでかしたんだろうな」

「また1つの国が滅び、パーパルディア皇国の版図が広がるだろうな…しかし今回は例外だが、最近のパーパルディア皇国は無茶苦茶してるな。戦争、戦争、また戦争だぜ。第三文明圏の統一でもするつもりか?」

「その意図もなくは無いだろうな。パーパルディア皇国は中位列強国。ムーや神聖ミリシアル帝国に比べると劣る、それに対してコンプレックスになってるのかもな」

 

その酔っ払い達も、今現在はパーパルディア皇国の圧勝、完勝という意見で占めており、誰もEDF日本支部の勝利など信じていなかった。

 

 

 

 

 

 

第二文明圏列強国 ムー。

世界的に見ても希少な「科学技術」を起点とした文明や技術を中心としており、その国力は神聖ミリシアル帝国に次ぐ。その国力に比例して、戦力もそれ相応に保有しており、科学技術で作られた戦闘機のみならず、30.5cm連装砲を搭載した戦艦までも保有しているのだ。

そんなムーの政治部会は、パーパルディア皇国とEDF日本支部の戦争に関する会議を開催していた。

 

「では…観戦武官はこれまで通り、パーパルディア皇国へ派遣致します。よろしいですか?」

 

その提案に、誰一人として反対の声をあげる者は居なかった。というよりも、彼等にはそれ以外の選択肢は無かったのだ。

何故なら、ムーは未だにEDF日本支部との国交開設どころか、一切の接触を行なっていないのだ。故にムーもEDF日本支部の認識は他の国家や人々と同じく、第三文明圏外国と認識していた。故に今回の戦争も、パーパルディア皇国が勝利すると考えていたのだ。そして、パーパルディア皇国に住まう自国民に対して避難勧告を出す事もなかった。

 

その代償は1週間後、血を持って支払う事になるのは言うまでもあるまい。

 

 

 

 

 

 

そして第三文明圏列強国 パーパルディア皇国、皇都エストシラント。

そこには第三文明圏の富が集まり、その国力の象徴とも言える皇宮に住まう、皇帝ルディアス。彼の私室には、彼と1人の女性がいた。

2人が行なっていた雑談が途切れ、その沈黙を破るようにルディアスが女性に質問した。

 

「レミール。この世界のあり方について、そしてパーパルディア皇国についてどう思う?」

「はい、陛下。多くの国々がひしめく中、皇国は第三文明圏の頂点に立っています。多数の国を束ねる為に「恐怖」を与えていますが、この方法は非常に有効であると思います」

「そう。恐怖による支配こそ、国力増大の為には必要だ。神聖ミリシアル帝国やムーは、近接国に対して融和政策を行なっている。そんな軟弱な国より、我が国が下に見られている事は我慢ならない。我が国は第三文明圏を統一し、大国…いや、超大国として君臨する。そしていずれは第一文明圏、第二文明圏をも我が国の配下に置き、パーパルディア皇国による世界統一を果たす。そうなれば、世界から永遠に戦争が無くなり、真の平和が訪れるのだ。それこそが、世界の国々の人の為…そうは思わぬか?」

 

ルディアスは独裁的ではあるが、しかし非常に合理的だ。パーパルディア皇国という大国を支える精神性、政治手腕は第三文明圏の中でも群を抜くが…民族の多様性、言論の自由を許容するなどの考えには至ってはいなかった。

勿論彼の側にある、皇族のレミールも同じ考え…というよりはルディアスに心酔しきっている為、「なんて器の大きな人なのだろうか」と考えるだけである。

現に、ルディアスの言葉を聞いたレミールは感動のあまりに感涙している。

 

「陛下が…それ程までに世界の民の事をお考えだとは…レミール、感激でございます」

 

そして、ルディアスは不敵な笑みを浮かべながら話を続ける。

 

「世界統一の為には多くの血が流れるだろうが、それは大事を成し遂げる為の小事…やむを得ない犠牲だ。そして、皇国の障害となる者達は排除していかねばならない」

「はい!」

 

ルディアスとレミールは知らない。その行いが、72ヶ国の属国の人々は今もなお臣民統治機構によって、決して少なくない血を今も流している事を。

パーパルディア皇国は知らない。その行いが、別世界で全世界が連合し、星間戦争を戦い抜いた者達を怒らせていた事を。

 

1週間後。彼等は、パーパルディア皇国は、そして全世界は知る事となる。

 

真なる人類の守護者達の、その怒りを。

 

 

 

 

 

 

最後に、EDF日本支部。

本部の会議室にて、つい先日正式に勃発したパーパルディア戦争に関する作戦「オペレーション・パルヴァライゼーション」の最終確認を行なっていた。

テーブル中央にある空間ディスプレイに、第三文明圏の地図が映し出されており、様々なマークや矢印が表示されている。

 

「…以上が、オペレーション・パルヴァライゼーションの内容です。全部隊の出撃準備は後3日後に完了します。作戦内容は殆ど変更がありませんが…先程、一つ問題が発生しました」

「どうした?」

「自律衛星ライカの最終偵察にて、アルタラス王国に向けて侵攻する艦隊を確認しました」

 

パーパルディア皇国とアルタラス王国の間の部分に、パーパルディア皇国所属を表す赤い艦隊のマークが新たに出現し、矢印にてアルタラス王国への進行方向を指す。そしてその矢印の先に、アルタラス王国所属を示す黄色の艦隊マークが出現した。

 

「隻数は324、編成は戦列艦211、揚陸艦101、そして…ワイバーンを海上運用する為の空母に類する艦…「竜母」が12です。規模から見るに、恐らくはパーパルディア皇国の主力艦隊の一つだと思われます」

「アルタラス王国の戦力のみで撃退可能か?」

「無理ですね。質自体は悪くありませんが、数と技術力にどうしようもない差があります」

「アルタラス王国の救援が必要、か…だが…」

 

そういって、司令は日本列島付近を見る。其処には複数の艦隊や部隊のマークが示されていた。

 

「全艦隊がオペレーション・パルヴァライゼーションの為の出撃準備中です。ファイターならアルタラス王国へ迅速な派遣も可能ですが、パイロットの負荷を考えるとあまり推奨は出来ません」

「だろうな…オペレーション・パルヴァライゼーションの内容を修正し、一部戦力をアルタラス王国防衛に向けるべきか?」

「それは駄目です、オペレーション・パルヴァライゼーションは電撃戦を前提としている以上、タイムロスは可能な限り避けなければ…」

 

「提案があります」

 

参謀士官の1人が、手を挙げた。

 

「部隊の展開状況を再確認した所、第7艦隊へ合流予定の最新鋭艦「ヴァーベナ」のみは既に出撃準備を完了し、現在瀬戸内海を航行中です。あの艦の機動力ならば、今から出撃させればアルタラス艦隊がパーパルディア艦隊と交戦を開始する直前に接敵し、殲滅させる事が可能でしょう。そしてオペレーション・パルヴァライゼーション発動前に、武装と機能の最終確認の代わりにもなります」

「…よし、ヴァーベナにオペレーション・パルヴァライゼーション発動までのアルタラス王国防衛を命令する。直ちに伝えてくれ」

 

 

 

 

 

 

日本列島。

瀬戸内海の海上に、巨大な戦艦が航海していた。

 

その戦艦の名は「ヴァーベナ」。

 

EDF海軍の総力を結集させて設計、呉の建造ドックにて建造された最新鋭艦である。その全長は504mで三胴式船体を採用しており、これだけならばセントエルモ級イージス戦艦の設計を流用したように思えるだろう。

だがヴァーベナの何よりの特徴は、「フォーリナーテクノロジーを大々的に採用している」という点である。

今までのEDF海軍艦は、その戦術からメンテナンスが困難になりがちなフォーリナーテクノロジーを部分的にしか取り入れて来なかった。しかしヴァーベナはフォーリナーテクノロジーをメインに採用し、様々な新兵器と新機構を搭載。EDF海軍の試作艦(プロトタイプシップ)として生まれた。

武装は51cm複合3連装砲2基6門、9連装水平ミサイル発射機1基、連装レーザー砲18基26門、軽カノン砲20門。この武装の少なさは、ヴァーベナの主敵がフォーリナーの機甲戦力や飛行戦力でなく、「対巨大生物」であるという事に関係する。しかし、ここで疑問に思う者も居るだろう。何故EDF海軍艦が、陸の敵を主敵に設定するのだと。これはヴァーベナに搭載された新機構によって可能になった事であり、オペレーション・パルヴァライゼーションにヴァーベナが参加する事となったのも、そのコンセプトが果たして有効であるのかの確認も兼ねている。

 

出撃準備を終えて第7艦隊へ合流する為に瀬戸内海を航行中、本部よりアルタラス王国防衛の命令が通達された。

 

「アルタラス王国への防衛派遣、か…いよいよこの艦の実戦の時が来たな。ヴァーベナの力を存分に見せる時だ。準備は?」

「既にメインジェネレーターの充填率は100%。準備は完了しております、艦長」

「よろしい…では、発進準備を開始せよ!」

 

「了解!フライホイール始動!メインジェネレーター点火!」

「フライホイール接続…点火完了!飛行形態、移行完了!行けます!!」

 

「ヴァーベナ、発進!!」

 

艦長の号令と同時。ヴァーベナの後部にある8基のプラズマジェットエンジンが、甲高い轟音と共にアフターバーナーを展開。急速に速度を上げながら海面を滑り始める。

 

「速力50ノット、60、70…80!」

「下部ジェット始動!出力60%、上昇角4度!!」

「ヴァーベナ、離水開始します!!」

 

ヴァーベナの船体がわずかに傾き、浮遊感を得ると同時に「飛行」を開始。完全に船体が離水すると、水の抵抗から解放された船体はぐんぐんと速度を上げてゆく。

 

「進路をアルタラス王国へ取れ!侵攻するパーパルディア皇国海軍を、撃滅する!!」




用語解説&状況説明
神聖ミリシアル帝国
第一文明圏列強国。現在は世界最強の国家として認識されている。パーパルディア皇国に住んでいる市民の避難勧告は行わなかった。

ムー
第二文明圏列強国。科学技術を基礎として発展している。パーパルディア皇国に多数の市民が住んでいるが、ミリシアル帝国と同じく避難勧告をする事もなく、それどころかパーパルディア皇国に観戦武官を派遣する事を決定してしまう。

パーパルディア皇国
EDF日本支部の攻撃に備えつつ、アルタラス王国に主力艦隊の1つを派遣。

アルタラス王国
パーパルディア皇国の攻撃に備え、海軍を出撃させた。

EDF日本支部
オペレーション・パルヴァライゼーションの発動準備の為、攻撃部隊を編成中。アルタラス王国の防衛の為、最新鋭艦ヴァーベナを派遣する。

ヴァーベナ
EARTH DEFENSE FORCE: IRON RAINより特別出演。両側前部にある滑走路部分が無かったり、武装が増設されてたりと差異がある。
第7艦隊に合流予定だったが、アルタラス王国防衛の為に航行を開始。


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第16話 前哨戦

1話投稿する度に凄い数の感想が来るようになってきて、返信が中々大変になってきた。けど凄い嬉しいし楽しい。


アルタラス王国より、北東130kmの海域。

そこは抜けるような晴れた空が広がり、風もほとんど吹かない穏やかな海。そこをパーパルディア皇国第4艦隊は、アルタラス王国に向けて進んでいた。

100門級戦列艦を含んだ砲艦211隻、竜母12隻、地竜、馬、陸軍を運んでいる揚陸艦101隻、計324隻。更に航空戦力として竜母一隻につき、ワイバーンロードを20騎ずつ配備している。その戦力は第三文明圏内に於いて、間違いなく他の追随を許さぬ圧倒的戦力だ。

第4艦隊が何故、此処にいるのか。それはEDF日本支部の宣戦布告理由を捏造した叛逆国 アルタラス王国を滅する為、そして愚かにも皇国に宣戦布告のみならず、殲滅戦までも宣言した蛮国への見せしめの為だ。

その中でも、第4艦隊の旗艦を務める「シラント」の船尾楼の上に居る将軍 シウスは「冷血」かつ「無慈悲」な戦術家という評価に違わぬ凄然たる表情で、揺らめく海を眺めている。

そこに、航海士より報告が上がる。

 

「まもなく、アルタラス王国軍のワイバーン飛行圏内に入ります」

「まだ来ぬか…対空魔振感知器に反応が出たら、すぐに竜母から飛竜隊100騎を発進。艦隊上空で警戒態勢に入れ。作戦行動中は防衛を主とし、艦隊に敵を近付けさせるな。各小隊は飛竜隊大隊長の指示に従え。深追いはするな」

 

ワイバーンなどの竜種は、「魔素」と呼ばれるエネルギーを使って飛行している。その為にワイバーンを視覚外から発見する為に開発された対空レーダー「対空魔振感知器」に反応があり次第、ワイバーンロード隊を艦隊上空で警戒任務にあてるように指示する。

アルタラス王国海軍は既に水平線の先、約17km先に目視出来る距離まで迫っている。しかしまだ17km先もあるために、戦闘が始まるまでに時間がかかる。アルタラス王国海軍に竜母が無いことは分かっている、恐らく、いや十中八九本国から直接洋上の此処へとワイバーンを飛ばしてくるだろう。

最小の被害で最大の戦果を。シウスは決して敵を侮る事は無く、彼方の艦隊を睨んだ。

 

 

 

 

 

 

アルタラス王国北方沿岸警備竜騎士団。

その部隊を率いる警備隊長ザラムは、パーパルディア皇国艦隊と対決するアルタラス王国海軍の指示を受け、配下のワイバーン120騎を率いて、現在アルタラス王国北東方向に展開しているパーパルディア皇国主力艦隊に一撃を入れる為、アルタラス王国海軍の後方にて編隊飛行をしていた。

 

敵は、これまで王国に対して何度も屈辱的要求を繰り返してきた悪辣非道の賊徒。これまでは幾度となく従う他なかったが、しかし今度はシルウトラス鉱山と王女の奴隷化を要求してきた。その要請文が一般公開され、国民がそれを知ると全員が激怒した。この要求を飲めば、シルウトラス鉱山を失った国は飢え細り、国民の心の拠り所となっている王女が奴隷とされる事となる。この2つを奪おうとするパーパルディア皇国の、王国を蹂躙せんとする意思はもはや隠す気もない事は明らかだった。

『たとえ国が滅ぶ事になっても、横暴な列強に一撃を!!』

それがアルタラス王国の総意であり、王の決断を支持したのだ。

これに呼応し、イーディーエフという国家もパーパルディア皇国に参戦布告した。しかしアルタラス王国とは距離がありすぎる為、軍をアルタラス王国にも派遣するという返事は貰えたが、それまではアルタラス王国だけで此処を守りきらねばならない。

 

ザラム率いるワイバーン120騎は海岸管制塔、及び王国海軍司令本部の指示を受け、一気に高度と速度を上げてアルタラス王国海軍を越し、空へと上がる。

 

「見えた…」

 

やがて、パーパルディア皇国艦隊が目に入る。流石は列強国の主力艦隊のだけの事はあり、彼等からしたら見たこともない大艦隊だ。敵でなければ、壮観に見えただろう。

 

「指示通りに散開、観測騎の報告を聞き漏らすな!各個撃破を徹底し、各小隊は士長の指示に従え!!」

 

ザラムの魔信により、アルタラス王国竜騎士団は散開。一直線にパーパルディア皇国艦隊へと向かっていく。

しかし此処で、違和感に気付く。航空戦力のワイバーン隊が一切見当たらない事に。嫌な予感が走り、ザラムは咄嗟に上を見た。

 

「──ッ!!上だ!!」

 

パーパルディア皇国の対空魔振感知器に探知されないよう、今まで低空飛行していたのが仇になった。パーパルディア皇国のワイバーンロード隊が、積乱雲に隠れて上空から迫っている事に気付けなかった。

 

「上空、斜め後方!太陽を背にまっすぐ突っ込んでくる、回避行動急げ!!」

 

雲の切れ間から飛び出してきたワイバーンロードが、太陽を背に列を成して突っ込んでくる。アルタラス側は太陽の光に視界を遮られ、殆ど見えない。魔信を傍受した者達の編隊が乱れるが、速度が違い過ぎて間に合わない。

ワイバーンロード隊はアルタラス王国竜騎士団に狙いを付け、猛スピードで降下し──

 

 

アルタラス竜騎士団の上に突如発生した、人工の太陽に1騎残らず飲み込まれた。

 

 

「──は?」

 

ゴウ、と決して小さくない衝撃波が走る。

 

「うぉおおおおおお!?」

 

ワイバーンの飛行バランスが崩れて大きく態勢を崩す者が多いが、なんとか海面に叩きつけられる前に、アルタラス竜騎士団の全騎は持ち直しに成功する。再び上を見れば、そこに居たパーパルディア皇国のワイバーンロードは何処にも、1騎たりとも存在していなかった。

 

「一体、何が…?」

 

周囲を見回した時、視界に映った違和感に気付いた。

 

───東から、何かが来る。

 

それは決してワイバーンではない。しかし確かに空を飛んでいる。グングンと近付いているそれが、大きさも尋常でないという事実を、視界に入る光景が語り始める。

 

「なん、だ…!?」

 

しかし、彼等は直ぐに知る。それは、アルタラス王国を守る為にやってきた平和の守護者であり、侵略者に死の鉄槌を下す者でもあると。

 

その名は、ヴァーベナ。

 

 

 

 

 

 

「対空砲弾、着弾!!敵ワイバーン全滅確認!!」

「良い威力だ…!全武装を対地攻撃モードに変更!!全速前進せよ!!」

 

瀬戸内海から全速の200ノットで航行、戦闘開始直前に介入に成功したヴァーベナは、まずアルタラス王国竜騎士団を救う為、前部主砲である51cm複合3連装砲の中央レーンガン砲より、「対空用近接信管型全方位拡散式かんしゃく玉砲弾」…通称かんしゃく玉砲弾(EDF海軍では対空砲弾と呼んでいる)を発射。それはアルタラス王国竜騎士団の上で爆発し、たった1発でパーパルディア皇国のワイバーンロード隊を殲滅した。

 

これが出来たのも、かんしゃく玉砲弾の仕組みと、その威力による。

主砲より撃ち出されたかんしゃく玉砲弾は、近接信管によって設定内の距離に物体を確認したら、砲弾が炸裂。同時に砲弾内に存在していた圧縮空間が破壊され、瞬時に5万発のかんしゃく玉が全方位に瞬時に拡散し、起爆。起爆地点を中心とした半径250mを瞬時に爆発で制圧する。爆発範囲内に巻き込まれた物は、最大5万発のかんしゃく玉爆発の爆風や圧力を全方位から受け、跡形も無くその存在を消し去られる。

つまりこのかんしゃく玉砲弾の爆発範囲内にスッポリと入ってしまっていたワイバーンロード隊は、かんしゃく玉砲弾によって瞬間的にこの世から消滅させられていたのだ。

 

そんな事実を気にすることもなく、ヴァーベナはパーパルディア第4艦隊へ200ノットで突撃していく。その最中、全武装を対空攻撃モードから対地攻撃モードに切り替える事も忘れない。

パーパルディア第4艦隊は、今頃パニックに包まれているだろう。全長504mもの艦が、空を飛んで自分達に向かってきているのだ。パニックにならない筈がない。そこで真っ先に逃げていれば、助かる可能性は0.01%でもあったのかもしれない。が、最早後の祭り。

 

「右ロール45度!!速度を60ノットに減速してパーパルディア艦隊の上空を旋回、占有しろ!!」

「了解!!」

「主砲レールガン榴弾装填、レーザー砲充填開始!!右舷全武装照準、目標!!パーパルディア艦隊!!」

 

ヴァーベナの船体が右45度横に旋回。当然そうなれば船内の傾きも非常に大きなものとなるが、フォーリナーテクノロジーを吸収して生まれた人工重力発生装置により、傾いている感覚は一切無い。

60ノットでパーパルディア艦隊の上空を旋回し始めたヴァーベナは、51cm複合3連装砲2基6門と、右舷にある連装レーザー砲9基18門と軽カノン砲10門、9連装水平ミサイル発射機をパーパルディア艦隊へと向けた。

 

「照準完了!」

「攻撃開始!!」

 

刹那、右舷全火力がパーパルディア艦隊に放たれた。

51cm複合3連装砲から放たれる榴弾とプラズマレーザー、連装レーザー砲から放たれるプラズマ弾、軽カノン砲から放たれる榴弾、9連装ミサイル発射機から放たれるミサイル。その砲火力は一切の躊躇無く、324隻のパーパルディア第4艦隊を蹂躙する。

主砲の榴弾やプラズマレーザーによる爆発で一瞬で数隻が吹き飛び、プラズマ弾や榴弾、ミサイルの直撃を受けた戦列艦が弾薬庫の粉状魔石に誘爆して木っ端微塵に爆発。そしてその衝撃波や火のついた木片などが周辺に飛び散り、更なる二次災害を生み出し、そこに更なる攻撃が直撃して粉砕されていく。

 

「クソ、クソッ!!通信士、急いで本国に報告を───」

 

比較的冷静だった艦長もいたが、それもヴァーベナの攻撃によって艦ごと粉砕。逃げようとする艦も主砲のプラズマレーザーの直撃によって吹き飛び、パニックに包まれた艦隊は連装レーザー砲と軽カノン砲によって殲滅されていく。

 

「……………」

 

そして、ヴァーベナの猛攻を見るアルタラス王国海軍、及び竜騎士団はその光景を目に焼き付け、言葉を失っていた。

今から己達の全てを、アルタラス王国の未来を賭けて挑もうとした列強の艦隊が、突如現れた空飛ぶ超巨大艦に、なすすべもなく蹂躙されていく。その光景に恐怖さえも覚え、アルタラス王国海軍長 ボルドはヴァーベナに注目した。

 

「あれは…」

 

ボルドは、ヴァーベナの船体横に描かれた、見覚えのあるマークを見つけた。国防を直接的に担う者であるからこそ、記憶にこびりついていたそれは、彼がヴァーベナの所属を認識するに充分であった。

 

「…イーディーエフ…」

 

その言葉を無意識に発したその時、その海域に静寂が訪れた。

 

 

 

 

 

 

アルタラス王国 首都ル・ブリアス。

そこに住まう全員が、空を見上げていた。

 

「なんて、大きさだ…」

 

ターラ14世も、王女ルミエスと共に王城の一室から見上げている。ターラ14世はなんとか言葉を紡いだが、ルミエスに至っては開いた口が塞がっていない。

その姿を横目で見る、EDF日本支部より派遣された、アルタラス王国連絡館代表の情報局員。彼は、思わず苦笑しそうになりながら、再び空を…否、空に浮かぶヴァーベナを見上げた。

 

「如何でしょうか?我がEDFの航空戦艦ヴァーベナは」

「…言葉を失うとは、正にこの事を指すのですな。まさかあのような物が、空を飛んでいるとは…」

「EDFの最新技術を結集させて、3ヶ月前に建造されたばかりの最新鋭兵器です。本来の予定ならば、対パーパルディア皇国に向けて投入される予定でしたが…貴国の危機を知り、急遽、作戦開始まで貴国の防衛に投入される事となりました。貴国に侵攻していたパーパルディア艦隊を、貴国の軍隊に被害を出す前に単艦で粉砕したその戦力は、正に一騎当千でしょう」

「…何故、我が国に此処まで?」

 

ターラ14世は思わず、純粋な疑問を情報局員にぶつけた。

 

「世界のニュースの内容から察するに、貴国はパーパルディア皇国に宣戦布告する理由を求めていたように思える。だからこそ、その目標を達成すれば…我が国の事を切り捨てる事は出来た筈。なのに…」

「それは、とても単純な事ですよ」

 

ターラ14世の言葉を、情報局員は無理矢理遮った。

 

「確かに其方の言う通りの事を、我々は行う事が出来ました。しかし、侵略者に蹂躙されようとしている「友好国」を見捨てる程、我々は冷酷ではありません」

 

 

「断言いたしましょう。我がEDFの名と誇りに賭けて、アルタラス王国をパーパルディア皇国より守り抜くと。彼の国の人間には誰一人として、この地を一歩たりとも踏ませない事を」

 

 

 

 

 

 

こうして、EDF日本支部とパーパルディア皇国の前哨戦は幕を閉じる。

この戦いによってパーパルディア皇国は主力艦隊の一つを失う。対してEDF日本支部は友好国であるアルタラス王国の防衛に成功し、航空戦艦ヴァーベナをオペレーション・パルヴァライゼーション発動までの間、アルタラス王国防衛に就かせる。

 

パーパルディア皇国は突如の第4艦隊の通信途絶を受け、以降の攻勢は中止。EDF日本支部の殲滅戦に備え、海岸線を固め始める。

対してEDF日本支部は、着々と部隊準備と配置を完了させて行く。

戦争状態でありながら、不思議な沈黙の日々が過ぎていき──

 

遂に、時計は中央歴1639年11月19日を指す。

 

 

 

オペレーション・パルヴァライゼーション発動まで、後12時間の事だった。




用語解説&状況説明
パーパルディア皇国第4艦隊
アルタラス王国へ侵攻していたが、全速力でやってきたヴァーベナによって殲滅。これにムーの観戦武官も載っていたが…(マイラスではない)

アルタラス王国北方沿岸警備竜騎士団
ヴァーベナの対空攻撃に危うく巻き込まれかけるも、全員生存。

アルタラス海軍
此方も交戦前にヴァーベナが到着した為、全員生存。

対空用近接信管型全方位拡散式かんしゃく玉砲弾
閑話 事件再来にて爆誕したかんしゃく玉兵器。
子弾として砲弾の圧縮空間内に5万発のかんしゃく玉が仕込まれており、母弾が炸裂すると圧縮空間の破損によって全方位に瞬時に拡散、起爆。半径250mの爆発範囲内や周辺を瞬間的に制圧する。
イメージとしては、エスコンの散弾ミサイルやストーンヘンジの砲撃の小型版。つまりヤバイ。

51cm複合3連装砲
ヴァーベナの主砲。左右はプラズマレーザー砲、中央がレールガン砲の混合で構成されている。これはレーザー兵器特有のメンテナンスの難しさを考慮し、信頼性の高い実弾兵器も混ぜて設計された為である。

連装レーザー砲
ヴァーベナの両用砲。対空モードのレーザーと対地モードのプラズマ弾を撃ち分けられる。

軽カノン砲
ヴァーベナの両用砲。此方は対地か対空かで、砲弾の信管を近接信管か接触式信管に切り替える。

EDF日本支部
変わらずオペレーション・パルヴァライゼーションの準備中。

パーパルディア皇国
第4艦隊の通信途絶を受け、万が一に備えて海岸線を固め始めた。

アルタラス王国
パーパルディア皇国第4艦隊の攻撃を受けかけたが、直前に到着したヴァーベナによって危機を回避。
以後オペレーション・パルヴァライゼーション発動まではヴァーベナが防衛に付き、パーパルディア皇国の侵略は事実上不可能となる。
これにより、原作(日本国召喚)の亡国ルートを回避する事になった。やったねルミエス。


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第17話 烈火 1

モチベーションがあっても、疲れの蓄積はどうにもならねぇ。_(:3」z)_
今回からは本格的に更新ペース下げてくよ。嘘じゃないよ。
まぁそんな事は置いといて。

パーパルディア皇国戦RTA、はっじまーるよー!


EDF日本支部 第1オペレーションルーム。

そこはEDF日本支部の最重要施設の一つであり、日本支部が行う大規模作戦の際には必ず使用される。それ故にその部屋の防御は徹底されている。対酸対プラズマ複合合金を採用し、フォーリナーテクノロジーの人工重力発生装置によって作り出された擬似的な無重力空間によって、より高度に精錬された特殊装甲を支部内に何層も覆っている中、第1オペレーションルームは1000mmもの特殊装甲に守られている。この全ての特殊装甲をたった一撃で破るには、それこそ街を瞬時に廃墟へと変える威力を持つ、マザーシップの巨大砲台の主砲でも無い限りは絶対に無理だろう。

そんな装甲で守られた内部は、そんな堅牢さに反して広々とした空間であり、その空間の中に複数の大型空間ディスプレイや多数の小型空間ディスプレイが存在。そして十何人のオペレーターが小型空間ディスプレイに向き合っている。そのオペレーター達の後方やや上方の司令席に、司令は座っていた。

 

(…もうすぐ、か)

 

大型空間ディスプレイの1つに表示された時間は、2029年4月28日11時55分を指している。中央歴に直せば、1639年11月19日11時55分。

そう、対パーパルディア皇国作戦「オペレーション・パルヴァライゼーション」の発動5分前だ。

 

(この作戦が始まれば、一体何万人の血が流れるのだろうな…)

 

今まで国交を開設していた国々からの情報や、自律衛星ライカからの衛星偵察により、パーパルディア皇国の本国人口はおよそ7000万人という事が分かっている。そして、宣戦布告及び殲滅戦宣言の1週間において、パーパルディア皇国に住まう第三国の市民達の殆どが避難していないという事も、把握している。

このままオペレーション・パルヴァライゼーションが発動されるならば、EDFは容赦無く、パーパルディア皇国本土全域に対して猛攻撃を開始し、軍民のみならず、国の帰属に関係無く多大な血が流れる事になるだろう。

 

しかし、それがどうした?

 

1週間前。EDF日本支部は世界のニュースを通じ、全世界にパーパルディア皇国への宣戦布告を宣言した。そしてパーパルディア皇国への殲滅戦も宣言し、第三国に対してやるべき事を、筋を通した。後は第三国の行動に期待するだけだった。しかし現実は、ほぼ全ての第三国が避難勧告を無視。自主避難を行なった者達以外の人々は、そのままパーパルディア皇国に残っており、間も無く開かれる地獄の扉に彼等も巻き込まれる事になった。しかしそれは第三国達の怠慢以外の何物でもなく、EDF日本支部は避難勧告と同時に「攻撃に巻き込まれても、此方は一切の責任を取らない」と明言してある。此方はやるべき事をやっているのに向こうは何もせず、それで被害が出てから文句を言う国があるのならば、それはなんて傲慢で愚かなのだろうか。

 

故に、彼等は一切その攻撃に躊躇しない。日本列島の3600万人の人々を守る為に、そしてパーパルディア皇国に支配され続けている72ヶ国を解放する為に。

その為ならば、彼等は7000万人(パーパルディア皇国)人々の血を流す(赤の他人を殺す)事さえ許容する。

 

──そして、時計は遂に12時を指す。

 

司令は目を瞑って息を吐く。そして大きく空気を吸い込んで目を開き、全部隊への通信を開いた。

 

「本部より、全部隊に通達する」

 

「これより、オペレーション・パルヴァライゼーションを発動する!!全部隊、攻撃開始!!」

『了解!!』

 

遂に地獄の扉が、開かれる。

 

 

 

 

 

オペレーション・パルヴァライゼーション発動を受け取り、まず真っ先に攻撃を開始したのは、自律衛星ライカだった。

パーパルディア皇国全域の衛星偵察を終えた後。彼女はずっと、ずっとパーパルディア皇国上空…地方都市 アルーニと聖都パールネウスの中間地点に居続けた。それは勿論、攻撃の為だ。

今回の作戦にて、彼女には本部より予め攻撃目標が指定されていた。それがパーパルディア本国北部への攻撃だった。

 

ライカに量子通信が届く。出力先、EDF日本支部第1オペレーションルーム。

 

『本部より、全部隊に通達する』

『これより、オペレーション・パルヴァライゼーションを発動する!!全部隊、攻撃開始!!』

 

──来た。

 

その瞬間、彼女は自身に搭載されている圧縮空間内に保管されていた全てのウェポンベイを解放。ライカの周囲3kmに、多数のウェポンベイが乱雑に出現する。

彼女が集結命令を出すと、出現した各ウェポンベイに搭載されていた超小型ブースターが起動し、時にはウェポンベイ同士が接続しながらライカへとゆっくり近づいて行く。やがてライカの近くに辿り着いた一つのウェポンベイがライカに接続されると、次から次へとウェポンベイが接続され始める。まるで無秩序に接続されていくように見えるそれは、しかし無機質に整列された砲列へと姿を変えてゆく。

 

そして完成されたのは。ライカを中心に円状に形成された、全長1200mにも及ぶ宇宙の一大砲列。

 

全ウェポンベイの砲口が解放。各砲口から超大型巡行ミサイル テンペストS1Aを覗かせる。その本数、500。

テンペストS1Aは、フォーリナー大戦でライカが使用していたNX大型巡航ミサイルを、10年かけて改修に改修を重ねて完成した超火力兵器だ。その威力は対フォーリナー戦闘に於いて、爆発範囲内に存在する巨大生物のみならず、ヘクトルなどの地上機甲戦力までもを1発で屠ることが可能。その火力故に、本部からの許可が無ければライカ独自の使用さえも禁じられている。

しかし今回、本部から「武装無制限」を許可された。だからこそ彼女は、約10年ぶりにその力を目覚めさせた。フォーリナー大戦、そして人類内戦の全てを観測し続けてきた彼女だからこそ、人間同士で争う事の悲しさを知っている。しかしそれはこの世界の人々は知らず、そして今正に攻撃の目標になっているパーパルディア皇国は、72ヶ国の人々を虐げて悲しみを広げている。

 

 

この悲しみを止めれるのならば。かつてEDF日本支部がそれを行なったように、「観測者」たる彼女(ライカ)は「厄災」にもなろう。

 

 

──フルバースト(斉射開始)

 

 

彼女の号令によって、全ウェポンベイからテンペストS1A 500発が一斉発射。ウェポンベイから離脱したそれぞれのテンペストミサイルのジェットエンジンが点火。最初はゆっくりと、しかし僅かな重力を拾ってその勢いを急速に強めていき、最終的にそれは大気の摩擦によって空気を裂く紅い流星群となり、それは複数の集団に分離した。

更に間髪入れずに第2波を斉射。更に500発のテンペストS1Aが発射され、合計1000発のテンペストミサイルが放たれた。

 

1つの流星群は北部都市アルーニ。もう1つの流星群は聖都パールネウスへと。その他もパーパルディア皇国本国北部各都市(北方地域全域)に向け、空を切り裂く(地上へ落ちる)

 

 

 

 

 

 

 

パーパルディア皇国 北部都市アルーニ。

それは皇都エストシラントの北方500kmに位置する都市であり、かつてパーパルディア皇国が「パールネウス共和国」と呼ばれ、唯の文明圏の一国として認識されていた頃の国境付近にあった街であり、現在もパーパルディア皇国本土の絶対防衛線として扱われている。故に防御も其れ相応に堅牢であり、皇国の三大陸軍基地の1つが設置され、防衛されていた。

そんな街の様子は、普段と何も変わりが無い。

いつも通り太陽が昇って平和な朝が始まり、皆が朝食を食べ、皆が各々の仕事を始める、それはごく普通の1日の風景。そうしてたらいつのまにか昼の12時となり、そのままもう少し仕事を続ける者もいれば、一足先に昼食を取る者もいれば、学校の授業から解放され、昼休みを謳歌する子供もいる。

 

そんな平穏な風景に組み込まれている、見張り台に立つ1人の兵士。平和な空気と雰囲気、そして穏やかな光と風が眠気を誘い、しかし目を軽く擦って抗う。

周辺には特に異常もなく、水平線の先まで平和そのもの。それ故に兵士に緊張感のかけらもなく、一応周りを見渡しながらも眠気と戦っている。しかし眠気の強さに耐え切れず、思わず大きな欠伸をした。

 

「ふぁあああ………あ?」

 

その際に上を向いたからこそ、その兵士はその異常に気付いた。

空に、いくつもの赤い点が見える。青い空だからこそ、その反対的な色は一度見つけたらよく見える。

 

「なん、だ?」

 

その赤い点々はみるみるうちに大きくなり、それと比例して重い音が周囲に響き始める。赤い点だと思っていたそれらは、まるで巨大な導力火炎弾の弾幕のように。

見張り台の兵士はその光景に、嫌な予感がゾクリと背中を走った。

 

「マズイ…!!皆、逃げ──」

 

その直感に従って街の方向に振り返って叫んだが、そんな程度でその破滅からは逃れられない。

 

刹那、アルーニはテンペストSA1ミサイル150発が数秒間掛けて連続的に着弾。アルーニの街を飲み込むのみならず、アルーニの周囲10kmまでもを瞬時に破壊し尽くし、あらゆるもの全てを殲滅した。

 

 

 

 

 

これは、何もアルーニだけで起こっただけでは無い。

アルーニより更に南の聖都パールネウスもテンペストSA1ミサイル200発が着弾し、殲滅。他の北方都市も、残る650発のテンペストSA1ミサイルが殺到し、全てが殲滅した。北方地域を破滅し尽くすその猛爆は、本国北方地域のみならずフィルアデス大陸そのものを揺らした。

これにより、パーパルディア皇国は僅か20分の間で本国人口の60%に相当する約4200万人の命が失われると同時に、本国北方地域の全都市、全基地、全生産設備、全資源、そして北方地域に配備されていた全軍を喪失した。

 

だが、忘れてはならない。これはまだオペレーション・パルヴァライゼーションの序章も序章。ライカがただ邪魔なものを大雑把に掃除しただけに過ぎない。

 

東からは空母要塞デスピナ率いる第7艦隊、第4艦隊。空軍の制空編隊と爆撃編隊、ヘリボーン師団に乗って輸送されている陸軍第1、第2師団。アルタラス王国がある南からは、最新鋭の航空戦艦ヴァーベナ。それら全てが、パーパルディア皇国へと侵攻を開始している。

そう、パーパルディア皇国への本攻撃はこれから。

 

残された南部地域に第7第8艦隊、空軍制空爆撃編隊、航空戦艦ヴァーベナの攻撃が。72ヶ国の属領には、陸軍第1第2師団の浸透及び制圧攻撃が始まるのだ。

 

パーパルディア皇国にとって、あまりにも絶望的な抵抗戦争が始まる。




用語解説&状況説明
自律衛星ライカ
オペレーション・パルヴァライゼーション発動と同時に、パーパルディア皇国北方地域全域にテンペストS1Aミサイル1000発を投射、殲滅した。
──貴方達の事、大っ嫌い。

テンペストS1A
フォーリナー大戦時には既に開発されていたNX大型巡航ミサイルを、フォーリナー大戦後に幾度の改修を重ねて誕生した。
余談ではあるが…改修元となったNX大型巡航ミサイルは、フォーリナー大戦最終決戦時に地上軍を支援する為に、ネットワークを自ら遮断して隠れていたライカが、残っていた50発をマザーシップに発射。発射されたミサイルは一部が迎撃を受けて撃墜されるものの、最終形態時に出現した巨大砲台4基を破壊。ライカの能力も合わさった結果ではあるが、マザーシップ撃墜に大きく貢献した兵器でもある。

北方都市 アルーニ
皇都エストシラントから北500kmにある街。テンペストミサイル150発の直撃を受けて無くなった。

聖都パールネウス
アルーニの南にある街。アルーニと同じく、テンペストミサイル200発の直撃を受けて無くなる。

EDF日本支部
オペレーション・パルヴァライゼーションを発動。陸海空軍がパーパルディア皇国に侵攻を開始。

パーパルディア皇国
初手のライカからの攻撃で、僅か20分の間に本国北方地域全域が焼け野原同然に殲滅されるが、残された南部地域と72ヶ国の属領にEDFの攻撃が迫っている。


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