EDF日本支部召喚 (クローサー)
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旧第5章 平和期間(閲覧不必要) 旧第20話 其々の行動

明日になれば投稿開始から1ヶ月かー…え、まだ1ヶ月なの?(震え声)
閑話は気が乗ったら書く感じですので、其処はご了承を。


世界は、大きく変わりつつある。

 

その始まりは、中央暦1639年8月の事だった。

第二文明圏ムー大陸の西…西の果てに突如としてある国家が現れる。

 

その名は、グラ・バルカス帝国

 

通称を第八帝国とする彼等は、周辺国の第二文明圏外国や列強国への接触を開始。しかし第二文明圏の多くの国が攻撃的であり、尚且つグラ・バルカス帝国への認識が文明圏外国ということもあって各国にさんざん軽くあしらわれ、遂には第二文明圏列強国 レイフォルの保護国であるパガンダ王国が、国交開設に出向いていた皇族を含んだ使者団を処刑する事件が起きた。この事件にグラ・バルカス帝国は遂に怒り、パガンダ王国を含んだ第二文明圏への侵略を開始。パガンダ王国を僅か4日間で滅ぼす。保護国を滅ぼされた第二文明圏列強国 レイフォルはこの行動に怒りを表し、グラ・バルカス帝国に対して軍事行動を開始した。列強最弱国とはいえ、それでも100門級戦列艦や竜母を含んだ43隻の艦隊。これだけでも並の文明圏の海軍は敵わなかっただろう。

 

しかし、グラ・バルカス帝国はそれを遥かに超える超兵器を投入したのだ。

レイフォル艦隊殲滅の為に出撃したのは、「グレード・アトラスター」単艦のみ。しかし300mを超えるその巨体に搭載された武装と能力は恐るべき戦闘能力を発揮し、レイフォル艦隊を20分足らずで殲滅。その勢いをそのままに、グレード・アトラスターはレイフォル首都 レイフォリアに向かい、全力攻撃を開始。その結果レイフォリアは灰燼に帰し、レイフォル皇帝は居城にて砲撃に巻き込まれて死亡。残存した軍部はグラ・バルカスに対して無条件降伏。戦争勃発より僅か3日間でレイフォルは滅亡。グラ・バルカス帝国はレイフォルを自国領に編入し、入植を開始。

グレード・アトラスターが単艦でレイフォル艦隊43隻を撃滅し、その足でレイフォル首都レイフォリアを焼き尽くして列強国を降伏させた事はこの世界の歴史に激震を起こし、グレード・アトラスターは世界最大最強の艦として恐れられる事となった。

 

 

それからたった2ヶ月後、今度は東の果てで同等以上の激震を走らせる事件が起こった。

中央歴1639年11月12日12時、世界のニュースにて「イーディーエフ」と名乗る国家が、突如第三文明圏列強国 パーパルディア皇国に宣戦布告と1週間後の本土殲滅戦を宣言したのだ。この発表に対し当初の各国はイーディーエフを、侵略を開始する前のグラ・バルカス帝国と同じように文明圏外国と認識して、丁寧に行った避難勧告の一切を無視。パーパルディア皇国に居る国民達はほぼ全員が留まる事となった。

ところが予想に反し、かつイーディーエフの宣言通り、パーパルディア皇国は僅か数日で文字通り殲滅された。パーパルディア本国は焼け野原となり、約7000万のパーパルディア人が、パーパルディア民族そのものが劫火の中に消えた。巻き添えで、約2万の第三国人の命も塵となった。

 

世界は震えた。

第二文明圏の列強国が併合された矢先に、今度は第三文明圏の列強国が滅ぼされ、第三文明圏全域が完全にイーディーエフの支配下に置かれたのだ。残された第一文明圏、第二文明圏の国々はイーディーエフとグラ・バルカス帝国に対する警戒を強め、調査を開始する。

 

しかしその成果は殆ど上がらない。それは、両国が共通して閉鎖的であるという事に起因する。

グラ・バルカス帝国は、当初の接触に於ける各国の対応が原因で、完全に他国不信となっていた。自国領化もしくは隷下となった国に対して以外、積極的な交流は一切行わず、本国の位置は徹底的に秘匿している。対してイーディーエフは、既に第三文明圏の92ヶ国と国交を結んでおり、その調査はグラ・バルカス帝国と比べれば容易だった。しかし此方もイーディーエフの本国(日本列島)に入れる者は事実上皆無な状態であり、果たしてどのような国であるのかは、人聞きする以外に方法が無かった。そして殆どの国々がイーディーエフをよく知らず、その力の庇護下に入る為に国交を結んでいるだけだった為、結果として大した事は分からずじまいだった。

 

しかし、確実に言えるとしたら。今現在の世界は平和だ。

 

 

 

 

 

 

クワ・トイネ公国。

EDF日本支部がこの世界に転移した直後に、初の接触が行われた国家。天然食料に飢えていたEDF日本支部にとって、天然食料が腐る程にある国家が天然食料を(EDF日本支部から見て)超安値で輸出してくれているのはとてもありがたい事であり、EDF日本支部の対応は地下資源を輸出しているクイラ王国と同等の最恵国待遇であり、EDF日本支部が国交を結んでいる国の中で唯一、インフラ整備と駐在軍の両方が行われている。それ程にEDF日本支部にとってクワ・トイネ公国は大切な国であり、クワ・トイネ公国もEDF日本支部によって国を発展させて貰い、そしてロウリア戦争の際に国を救ってくれた恩があった。

だがその内心は、少しの恐れがあった。

ロウリア戦争の際にクワ・トイネ公国を救う為に参戦したEDF日本支部は、その力で50万のロウリア軍を殲滅するのみならず、ロウリア王国の各都市を壊滅させ、ロウリア王国を滅亡させた。その光景を目の前で見ていたクワ・トイネ公国は感謝よりも恐怖が優った。もしあの力がこの国に向けば、ロウリア王国と同じ運命を辿る事となると。

しかしそんな懸念と恐れとは真逆で、EDF日本支部は純度100%の笑顔でこれまでの対応を変わらず続けてくる(ロウリア戦争の後始末の殆どは此方に丸投げしてきたが)。それを暫く見続けていたクワ・トイネ公国は「此方がとんでもないヘマをしなければ大丈夫だ」という確信を得て、これまでと変わらぬ対応を続ける事とした。

そして現在では、EDF日本支部の援助もあって第三文明圏外国とは思えぬ繁栄を遂げ、国はとても豊かとなった。EDF日本支部の駐在軍があるとはいえ、依存し過ぎると万が一の際に大変な事になりかねない為、軍の増強もゆっくりではあるが行なっている。

今もクワ・トイネ公国はEDF日本支部へ天然食料を送り、国を豊かにする努力を怠っていない。

 

 

 

 

 

 

アルタラス王国。

かつて存在していた第三文明圏列強国 パーパルディア皇国の隣国であり、パーパルディア戦争勃発の安全装置を外した国でもある。

パーパルディア戦争勃発前、アルタラス王国はパーパルディア皇国の半保護国的な立場に置かれていた。その国力差を背景に、パーパルディア皇国は毎年奴隷の献上を要求して来ていたが…今年は何を思ったのか、国の発展の中枢であるシルウトラス鉱山の献上と、王女ルミエスの奴隷化という余りにも理不尽な要求を突きつけてきた。しかもルミエスの奴隷化に関しては、第3外務局所属在アルタラス大使の私的な要求という、国家として余りにも度が過ぎた傲慢な物であった。

当然アルタラス王国の国民達は怒り、例え王国が滅んだとしても列強に痛烈な一撃を与える事を望み、そして国王も愛する娘を守る為にパーパルディア皇国との戦争を決意した。普通なら、戦う前から負けが確定している絶望的な戦争。しかしアルタラス王国は一つ、何よりも強烈な幸運があった。

 

それは開戦より僅か1ヶ月前に、EDF日本支部と国交開設と防衛軍事同盟を締結していた事だ。

 

アルタラス王国は即座に、防衛軍事同盟に基づいた参戦要請を行い、EDF日本支部は即座にそれを承認。その日の内に、アルタラス王国を通じて世界のニュースに向け発表する声明文を届け、アルタラス王国はそれを確かに通達した。しかしアルタラス王国にとっても、まさかパーパルディア皇国相手に単独で、かつ先手を打つ形で宣戦布告と本土殲滅戦まで宣言するのは想定外だった。だが、アルタラス王国は目の前の事に集中するべく、全軍を召集し、守りを固めた。

3日後、アルタラス王国を懲罰する(滅ぼす)為にパーパルディア皇国の主力艦隊がやってきた。その戦力は砲艦211隻、竜母12隻、揚陸艦101隻の計324隻。対するアルタラス王国海軍の総戦力は100隻にも満たない。彼我の差は圧倒的。それでも祖国を守る為、王女を守る為に、彼等は列強との戦いに挑もうとしたその瞬間。

 

空より現れた守護神が、人工の太陽を創り出した。

 

アルタラス王国の危機を知ったEDF日本支部が派遣した、最新鋭の航空戦艦ヴァーベナが戦闘に介入。パーパルディア皇国の主力艦隊を僅か10分で殲滅し、その後はアルタラス王国を見守るように首都ル・ブリアスの上空に留まり、アルタラス王国に住まう全員がアルタラス王国の危機を救ってくれた守護神の姿を目と脳裏に焼き付けた。

その4日後、パーパルディア皇国の本土殲滅戦が開始される日の朝。不動であった守護神(ヴァーベナ)は遂に動き出し、ゆっくりとル・ブリアス上空を周回し始めた。それを見ていたアルタラス人達は、パーパルディア皇国に対し鉄槌が下される日が遂に来たのだと、改めて確信。特別な感情を持って、パーパルディア皇国に向けて空を行く守護神の姿を見送った。

 

更に数日が経過した頃、世界のニュースよりパーパルディア皇国の滅亡とその属国72ヶ国の独立が宣言された。そしてその直後、EDF日本支部より改めてパーパルディア皇国の滅亡と、「パーパルディア皇国元属国にて、奴隷とされていたアルタラス人の保護に成功した」という連絡が届いたのだ。

この大吉報に、アルタラス王国は湧いた。EDF日本支部はアルタラス王国の亡国の危機を救っただけでは無く、憎きパーパルディア皇国を滅ぼし、今まで奴隷として送られていた国民達が戻ってくるというのだ。湧かない筈がない。奴隷とされた全員が今まで過酷な環境に置かれていた為、栄養失調や怪我等などの治療を完了するのに少しの時間を必要としたが、そんな事は些細な事。

数週間後。EDF空軍が所有する旅客機を総動員して元奴隷のアルタラス人が、全員が待ち望んでいた帰還を果たした。しかし元奴隷の全員が帰還出来た訳ではない。鉱山などの過酷な環境に耐え切れずに死んでいった者達や、パーパルディア人の拷問(娯楽)によって死んでいった者達も居た。しかし、その仇もEDF日本支部が取ってくれた。

 

パーパルディア戦争を通じて、アルタラス王国にとってEDF日本支部は余りにも大き過ぎる恩を持つ国であり、アルタラス王国最大の友好国となる。

現在のアルタラス王国では、人々の記憶に深く焼き付いた守護神を讃える、様々な芸術品や絵画などが作られている。中にはフルーツを山盛りに盛って盛って盛り上げた「ヴァーベナ盛り」なるフルーツ盛り合わせを開発する変わった者もいるらしい。

 

 

 

 

 

 

一方、フェン王国。

此方はアルタラス王国の様子とは変わって、やや不穏な空気を保ったままだった。

何故なら、フェン王国は第三文明圏国に於いて唯一、EDF日本支部との国交開設が出来ていないのだ。

その理由は、やはりフェン軍祭に於ける出来事だろう。その少し前から、フェン王国はパーパルディア皇国との紛争になる可能性が出てきていた。そんな時に接触してきたEDF日本支部に対して剣王シハンは、力を見極める為に自国の事情を隠し、海軍の親善訪問と、もうすぐ開催される軍祭に参加して欲しいと要請した。

その結果EDF海軍は、フェン軍祭の途中にやってきたパーパルディア皇国監察軍の攻撃に巻き込まれ、ワイバーン20騎と監察軍を殲滅して、その力を見せ付けた。しかし、フェン王国が自国の事情を話さなかったために、このような危険に晒されたEDF日本支部の心象は極めて悪化。国交開設の交渉は打ち切りとなり、再度交渉を試みようと準備している間にパーパルディア戦争が勃発。EDF日本支部はそれに掛り切りとなって国交開設の交渉に一切見向きもしなかった。

パーパルディア戦争終了後、今度はフェン王国が出向いて国交開設の交渉に挑んだが、やはりフェン軍祭の事が足を引っ張って全く交渉の目処が立たない。むしろEDF日本支部が門前払いにしないだけまだ良心的だと思えるレベルだ。こうしている間も、フェン王国は第三文明圏の中で孤立した国になりつつある。

フェン王国の受難は続いている。そしてその苦労が報われる日が、果たして来るのだろうか?

 

 

 

 

 

 

そして、EDF日本支部。

パーパルディア戦争を通じて消費した弾薬の補充、使用した兵器のメンテナンス、保護した元奴隷の治療と引き渡し、元属国の復興と発展協力、兵器開発部の暴走阻止(へ殴り込み)…戦争が終わっても、やる事は大量にある。戦争が終われば書類戦争。EDF日本支部は、種類を問わなければ毎日何かしらの戦争を行なっているものだ。

しかしこれも、10年前のフォーリナー大戦と比べればどれ程平和な事か。あの地獄の記憶がまだ真新しい(蘇る)彼等にとって、戦後処理の苦労など大したそれでは無い。

EDF日本支部も、パーパルディア戦争を通じて状況は大きく変わりつつあった。パーパルディア戦争前に結んでいた国交は僅かに20だったが、パーパルディア戦争にて解放した72ヶ国を保護する為に全ての国と国交を結び、今現在では92ヶ国もの国と国交を結び、事実上第三文明圏をEDF日本支部の支配下に置く状況となった。

その影響力は、第三文明圏に於いては最早この世界の大国と同等。結果的にここまでの影響力を手に入れた訳であるが、ここでEDF日本支部の戦略部の一部が、ある戦略を提言した。

 

それは、「第三文明圏全体の要塞化」。

 

その提言は、余りにも性急過ぎるもの。日本列島でさえ10年かけても完全な復興、完全な要塞化を施すにはまるで足りていない。もしこの世界でフォーリナーを相手取るのならば、現状のEDF日本支部では戦力、人材、弾薬、技術力。その全てが不足しているのだ。だからこそ他国との関わりを必要最低限にしてEDF日本支部の戦力を増強させているというのに、いきなり92ヶ国に対しての要塞化を行える訳がない。技術啓蒙、武器輸出、インフラ整備等を92ヶ国に行うのは無理だ。

しかし、この提言が完全に却下される事は無かった。やはりフォーリナーに備えるのならば、EDF日本支部単体ではあの戦力に敵わない。フォーリナー大戦は、全世界に極めて大きな爪痕を残して漸く勝利をその手に収める事が出来たのだ。この世界では、殆どの国がEDF日本支部より技術力が遥かに劣っている。故に戦略部の提言は、短期的に見るより超長期的に見るならば、間違っているどころか「一つの正解」でさえあるのだ。

だが課題は多く、その最適解は全く見えない。しかしEDF日本支部は、出来る限りの事を成していくだけだ。備えあれば憂いなし、とは言うが。彼等のそれは幾ら備えても、仮想敵(フォーリナー)の前には未だ足りてないのだ。

 

 

 

 

 

ある日。

転移前に於ける日本列島の経済的排他水域に相当する周辺370kmの一部を哨戒していた、EDF空軍第37飛行小隊が何かをレーダーに捕捉した。

即座に司令部に報告した第37飛行小隊のファイターは、目視の為にレーダーの反応に向けて接近する。

 

そこに居たのは。40ノットで航海している戦艦大和に良く似た印象を持つ、しかし大和よりも巨大な船体を持つ戦艦だった。

 

この世界に転移してからは見たことも無い近代的な戦艦の出現に、第4艦隊の分艦隊が緊急出航が決定。第37飛行小隊が不明艦を監視している間、アイオワ級フリゲート艦4隻が60ノットの全速で不明艦への接触に向かう。

数日後に第4艦隊分艦隊は、不明艦への接触に成功。不明艦には敵意は無く、程なく臨検を受け入れた。その臨検の際、「シエリア」と名乗る外交官の女性が現れ、自らの所属と航海目的を述べた。

 

 

曰く、「私達はグラ・バルカス帝国の使者団であり、我々の目的は貴国との国交を開設。そして友好関係を築き、願わくば貴国との同盟を結ぶ事を望んでいる」との事だ。

 

 

今までの国ならば、EDF日本支部はそれまで通りに丁重に断っていたのだろうが、不明艦…否、グレード・アトラスターの姿を見たEDF日本支部は、まずは国交開設の交渉を開く事を決定。その際に於いて、使者団を通じてグラ・バルカス帝国の本質を見極める事とした。

その決定が成された後、グレード・アトラスターは第4艦隊分艦隊の案内の元、東京湾へとその足を向かわせる。

 

果たして、グラ・バルカスの真意は如何に?




用語解説&状況説明
クワ・トイネ公国
EDF日本支部の力に少し怯えながらも、順調に天然食料輸出中。とはいえ、クワ・トイネ公国の懸念はまず起こり得ないのだが。

アルタラス王国
パーパルディア戦争にて、EDF日本支部に亡国の危機を救ってくれたのみならず、元属国に居たアルタラス人を救出してくれたお陰で、今現在もお祭りムード。
一瞬ターラ14世を雑に病死させようかと考えたが、結局存命。ルミエスに不幸は降りかかる事は無かった。

フェン王国
アルタラス王国とは真逆に扱いが悪くなった。そしてフェン王国の苦労は多分報われない。

EDF日本支部
戦後処理特有の書類戦争をこなしつつパーパルディア皇国元属国に居た奴隷を母国に全員引き渡し、戦略部より提言された第三文明圏要塞化に付いて検討する。その最中、グラ・バルカス帝国の使者団が現れ…?

グラ・バルカス帝国
パーパルディア戦争前、第二文明圏列強国 レイフォルを併合した謎の帝国。グレード・アトラスターと呼ばれる戦艦でEDF日本支部にやって来たが、その真意は…?

グレード・アトラスター
EDF日本支部(第三文明圏)を除く世界各国から、第二文明圏列強国 レイフォルを滅ぼした世界最大最強の戦艦として恐れられている戦艦。
戦艦大和に見た目は似ているが、全長が300m超えである等の差異がある。


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旧第25話 空間の占い(未来の運命)

久し振りにサクサクと書けました。今更ながら、タグに「EDF:IR」を追加。
そして前回の後書きに関する補足説明。
Q.なんでEDF上層部はストームチームを投入したの?
A.兵器開発部が催涙かんしゃく玉を投げまくって他部局を巻き込んだ大惨事になっていたのと、上層部の命令に逆らっては軍として機能しなくなるから。

追記
PAギアの設定を少しだけ変更しました。


EDF日本支部とグラ・バルカス帝国間での軍事同盟締結から、約4ヶ月が経過した。

直後に開始された武器技術交換や情報共有などは現在も精力的に行われており、今日も特別改造仕様ホエール数機が、第一文明圏諸国と第二文明圏諸国の領空を超高空で侵犯しながら行き来する。最初は歩兵用兵器の交換だったが、今現在はビークルや大型兵器など、ホエールのペイロードが許す限りの物資を搭載していく。

そのような事もあり、EDF日本支部とグラ・バルカス帝国の兵器開発は次々とインスピレーションを受け、様々な方向から新兵器の開発が試みられている。その傍らに領土の要塞化を行う事も忘れない。要塞建設、対空砲・対宙兵器・大型弾道ミサイル発射器の設置、兵器生産、etc…やる事は大量だ。

 

そして、懸念も其れ相応のものばかり。それはEDF日本支部やグラ・バルカス帝国だけのものでもない。

 

 

 

 

 

 

第一文明圏列強国 神聖ミリシアル帝国。

世界最強の国と謳われる彼等は今、ある問題に頭を悩ましていた。

 

言わずともわかるだろうが…列強2ヶ国の崩壊と突如出現し、列強国をそれぞれ滅ぼした2つの国家の存在である。

 

この世界の各国は、大きく分けて列強国、文明国、文明圏外国で区別されている。其々の国力と技術差は隔絶しており、文明圏外国は文明国に敵わず、文明国は列強国に敵う事は無い。そこから国際社会の区別をすると第一文明圏(中央世界)、第二文明圏、第三文明圏となっており、数字が少ない順に国力と技術力が高い国が集結していた。

そして各文明圏に多大な影響を持つ11ヶ国(内訳は固定参加国(列強国)5ヶ国、持ち回り参加国6ヶ国)大国の代表が2年に1度、神聖ミリシアル帝国の港町カルトアルパスにて開催される国際会議「先進11ヵ国会議」にて今後2年の世界の流れを決定し、国際秩序を保っていた。

なお、この国際社会の範囲は第一文明圏、第二文明圏、第三文明圏、南方世界の範囲内であり、そこから外の領域は「世界」として認識されず、交流も無い。

 

そのような世界に突如現れたイーディーエフとグラ・バルカス帝国によって、保たれる筈だったパワーバランスと国際秩序は大きく乱れる事となった。

グラ・バルカス帝国は第二文明圏列強国レイフォルを滅ぼし、現在も第二文明圏の文明圏外国や文明国に対して植民地化を要求し、断ればその軍事力によって該当国を侵略、併合している。

イーディーエフはグラ・バルカス帝国と違って友好的な面が強いのだが、それでも第三文明圏列強国 パーパルディア皇国を滅ぼし、事実上第三文明圏を支配下に置いているという事実がある。

 

どのような国であれ、世界最先端であった列強国の2ヶ国が滅ぼされ、現在進行形で国際秩序が大きく乱れている。先端11ヶ国会議の固定参加国2ヶ国が居なくなってしまった事も問題となり、開催国である神聖ミリシアル帝国は空席を埋める国をどうするべきかを討議したが、結論自体は比較的あっさりと出た。

 

イーディーエフとグラ・バルカス帝国に使節団を派遣し、国交開設と先進11ヶ国会議の参加要請を行う事を決定する。

 

特にイーディーエフは先進11ヶ国会議を固定参加国として参加する事を要請するという事となり、事実上の列強国として神聖ミリシアル帝国は認める事となった。

何故イーディーエフのみが固定参加国としての参加要請を行ったのかというと、グラ・バルカス帝国とは異なって友好的な行動で第三文明圏各国と国交を広げており、パーパルディア戦争でも国際社会に配慮して殲滅戦の宣言と退避勧告を行っていた。(その警告を無視した各国の代償は血で払われたが)

この事から国際常識を十分に持ち得て、第三文明圏を支配する大国であると神聖ミリシアル帝国も判断せざるを得なかったという経緯があった。

 

こうして、神聖ミリシアル帝国はイーディーエフとグラ・バルカス帝国に使節団を派遣する準備を進める事となる。

 

 

 

 

 

 

エモール王国。

第一文明圏に存在する列強国の一つであり、人口は100万人程度の規模が小さい国である。日本列島の四国程度の統治面積しか持っておらず、当然国力も其れ相応にしかない。(統治(可住)面積が狭いだけで、実際の領土はもっと広い)

にも関わらず列強国の一つとして数えられているのは、エモール王国に住まう「竜人族」が持つ魔力の高さと、竜種と意思疎通をし、味方にすることが出来る能力ゆえに列強国に数えられているのだ。

それ故に非常にプライドが高く、人間など魔力の低い種族への差別意識が強い。 その上「用があるなら、自分の足で来た者以外は一切相手にしない」という思想も持っており、他国から仲介を得る事が出来ないなど、やや鎖国的な面も持つ。

そんな国の首都、ドラグスマキラの北部。ウィルマンズ城の最北の別棟の一室にある薄暗いドーム状の部屋に、30人もの占い師達が集まっていた。その周囲には竜王ワグドラーンを始め、エモール王国の重役達が集まっている。

 

今日は年に一度行われる、国を行く末を左右する「空間の占い」が行われる日であった。

空間の占いとは、エモール王国に影響があると思われる重要事項の有無を調べ、もしあるならば早期にその障害となるものを排除するという目的で行われる。その的中率は98%以上を誇り、最早占いというよりは未来予知に近い。

 

空間の占い師 アレースルの両手に魔導師達から集まった魔力が集まり、淡い赤色の光を灯す。そしてドーム状の天井にも、星のような物が映し出された。

 

「──空間の神々に許しを請い、これより未来を視る」

 

静かに告げられたアレースルの言葉に、一同は緊張に包まれる。万が一エモール王国に不幸がもたらされる事になるという結果が出るのならば、各人の死力を尽くして解決に当たる必要がある。

 

「これは……………そん、な!!なんという事だ!!」

「何だ!?何が見えたのだアレースル!!」

 

アレースルの狼狽に、ワグドラーンも焦りを隠せない。

 

「…魔帝…!」

「何だとっ!?」

「み、見間違いではないのか!?」

 

その場にいる全員の表情が一気に青くなった。

 

「見間違いではない…!そう遠くない未来、古の魔法帝国が… 神話に刻まれしラティストア大陸が、復活する!!

「何という事だ…!」

「時期はいつだ!?」

「………読めぬ」

「では、復活する場所は何処だ?」

「…空間相位に歪みが生じている、場所も見えぬ。視えたのは、「魔法帝国が復活する」という未来のみである」

 

竜王を含め、全員が戦慄する。

遥か昔の神話の時代、世界を支配していた古の魔法帝国…ラヴァーナル帝国。ヒトの上位種とされる「光翼人」という種族によって建国された、他種とは隔絶した圧倒的な魔力と技術力で全世界を支配した歴史史上最強の帝国。他国と比較して進み過ぎた文明と、光翼人特有の極端に傲慢な国民性によって驕り高ぶり、ついには神々に弓を引いたとされている。怒れる神々は、ラヴァーナル帝国の本土であるラティストア大陸に巨大隕石を落とそうとした。だが彼らは国全体に結界を張り、大陸ごと未来へ転移して隕石から逃れたと言われている。

 

そんな恐怖の帝国が、98%以上の確率で復活しようとしている事実に、彼らの冷や汗は止まらなかった。

 

「して…我が国を含め、全ての種が再び魔法帝国に膝を折る事になるのか?」

「…否、読めぬ。…未来は不確定なり」

「不確定だと!?一体どういう事だ?」

 

今までの空間の占いにて、未来が視えないというのは一度もなかった。それ故に恐怖感よりも困惑が強まる。

 

「言葉の通り、未来は激しい炎光に包まれていて視えぬ」

「では…滅び、もしくは従属から回避出来る手段はあるというのか?」

「………ある!!」

 

アレースルは目を見開いて強く言い切った。

 

「それは、なんだ?」

「……2つの……新たな…国の出現。…この、激しい炎光が………?」

「新たな国?新興国か?」

 

要領を得ないその言葉に、ワグドラーンが問い掛ける。

 

「……否……其々が、其々の別の世界からの転移……転移国家である」

「転移国家…?」

「ムーの再来だというのか?それも二国だと?」

「「占い」で出た以上、最早荒唐無稽のお伽話などと侮るな。これは国儀ぞ。で、何処だ?何という国なのだ?」

 

一縷の望みを逃すまいと、ワグドラーンは真剣な表情で尋ねた。アレースルも精神をより強く集中し、一際に険しい表情となる。その両手の赤い光が益々強く輝き、周囲の魔導師達の表情も苦悶に歪められていく。相当な負荷が掛かっているのは明らかだった。

 

「東と西……第三文明圏と、第二文明圏の………フィルアデス大陸と、ムー大陸の……更にその先にある、島国……人間族が治めし国……」

「人間族、だと!?相手は古の魔法帝国だぞ!!魔力の低い種族に一体何が出来る!!」

 

部屋の中が騒がしくなるが、アレースルは変わらず意識の集中を続ける。

 

「分からぬ、何が出来るのかは分からぬが……この炎光は、炎は…………『厄災』だ。世界を燃やし尽くす厄災を、己の力で退けた、転移前の世界の守護者……」

 

 

「国名は…イーディーエフ…!!そして、グラ・バルカス帝国…!!」

 

 

アレースルはその言葉を絞り出した直後、汗だくのまま床に倒れ伏す。慌ててワグドラーンが駆け寄り、その身を抱きかかえた。

 

「イーディーエフとグラ・バルカス帝国か!よくやったぞ、アレースル!」

「イーディーエフと……グラ・バルカスこそ……魔法帝国に対抗する、唯一の鍵となろう……」

「無理に喋るでない、少し休め。おい、医師団を呼べ!」

 

王の命令を受け、別室で待機していた医師達が魔導師達の搬送を始める為、担架を運び込んで来た。

 

「鍵、か…イーディーエフとグラ・バルカス帝国とやらがどんな国かは分からんが、無下には出来んな」

「イーディーエフとグラ・バルカス帝国について調べろ!人間族の国如きに我等から外交を求めるのは癪だが、どんな国なのかを入念に調べ上げ、速やかに国交を結べ!」

「仰せのままに!」

 

命令を受けた外交担当貴族は、王に敬礼で応えた。

 

「なるべく早くだ!すぐにでも第三文明圏と第二文明圏に行くがよい、これは特命である!」

「それは……まだ早い……!」

 

アレースルが担架の上で、可能な限りの声量で声を上げた。ワグドラーンと、今にも駈け出さんとしていた外交担当貴族もアレースルに視線を向ける。

 

「何?」

「……彼等は……壮絶な戦いを、経験し……まだ、この世界を信用していない……!今、無理に国交を求めても、逆効果で終わってしまう……!彼等は、彼等自身に降りかかった災厄の一部をその身に取り込んでいる……!彼等の機嫌を損ねたその時は……それは、亡国の道にも成り得る危険な鍵……!」

 

アレースルは力強く、寄ってきたワグドラーンの服の袖を握った。

 

「……そして、彼等のどちらかが……!近い未来、過ちを犯すかも知れない……!我等に、それを止める手段は無い……万が一、彼等の力が衝突する様な事となるのならば……!」

 

 

 

「彼等が持つ力が……2つの災厄の力が……この世界を、燃やし尽くしてしまうかも知れない……!!




用語解説&状況説明

神聖ミリシアル帝国
先進11ヶ国会議に向け、EDF日本支部とグラ・バルカス帝国に向けて使節団を派遣する準備を始める。

先進11ヶ国会議
神聖ミリシアル帝国の港町 カルトアルパスにて2年に1度のペースで開催される、各文明圏の有力な文明国11ヶ国が集まる国際会議。
参加枠は固定参加国(列強国)5ヶ国と、持ち回り参加国6ヶ国で構成される。

エモール王国
第一文明圏の列強国。空間の占いにて魔法帝国の復活を感知し、不確定の未来の鍵となるEDF日本支部とグラ・バルカス帝国の調査を開始する。
が、今回の空間の占いには不吉な内容も含まれていて…?

空間の占い
エモール王国で年に1回行われる国儀。98%以上の的中率を誇るが、魔力の高い竜人族の中でも特に強力な者を30名も集めなければならないなど、かなり高度な魔術である。

ラヴァーナル帝国
魔法帝国とも呼ばれている。遥か昔の神話時代にて全世界を支配していた国家であり、現在世界最強と謳われる神聖ミリシアル帝国よりも遥かに高い国力と技術力を持っていると言われており、実際にその痕跡である古代遺跡が複数発見されている。
空間の占いで、近い未来に復活することがほぼ確定視される。

ラティストア大陸
ラヴァーナル帝国の本土がある大陸。神話の時代、ラヴァーナル帝国がラティストア大陸ごと未来に転移した為、現在の世界には存在しない。


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旧第26話 決断

クローサー「よーし、ミリシアル帝国とEDF日本支部との外交の執筆やってみるかー」

クローサー「えーと、ここはこうなるからこうで…此処は原作とは違うからこうで…それでもって…」(カキカキ)

クローサー「……………」(ピタリ)

クローサー「でぇいもうカットだカット!!戦闘なら兎も角、この小説でこんな所(外交場面)を長々やってもしょうがねぇ!!」(書き直し)


中央歴1640年7月某日。その日のEDF日本支部の本部は、ほんの少し忙しくなっていた。

 

その理由は、先日訪れてきた第一文明圏列強国 ミリシアル帝国の使者団が、先進11ヶ国会議の参加要請と国交開設の前準備の為に、EDF日本支部にやって来た事から始まった。

 

前もって第三国にある連絡館を通じて「使者団を貴国の本国に派遣したい」という話がやってきて、EDF日本支部はそれを了承した。そして約1週間後、「天の箱舟」と呼ばれる魔導航空機の一種であるゲルニカ35型で日本列島九州地方の南西700kmまで接近した。その後はEDF空軍のファイター2機の誘導を受けつつ、九州地方のEDF九州基地の滑走路に着陸した。

まずは長いフライトを終えた使節団一行の疲労を癒す為、福岡市のあるホテルで一泊したのち、本部から派遣された情報局員との交流会が行われた。機密(フォーリナー大戦関連)に触れない範囲での説明が行われ、その後は食事会を行いながら使節団と情報局員との軽い会話を挟んだ後、数日を掛けて九州地方の一部を見学し、その技術力の高さにミリシアル帝国の使者団のプライドをズタボロに引き裂いた後、使者団は情報局員との会議にて、本題の内容を打ち明けた。

ちなみにだが、何故EDF日本支部はわざわざミリシアル帝国の使者団のプライドをズタボロにするような事をしたのかというと…まぁ早い話が平和的砲艦外交である。言葉の意味は異なるが、要は技術差を見せつけて「決してこの国は格下などではない」という認識をさせる事を目的としたのだ。この世界は既存の枠組みによって明確に区別…というより差別されており、EDF日本支部は最も弱い第三文明圏、それも文明圏外と言われる地域に位置している。それ故にこの世界では最強の国家だと謳われているミリシアル帝国に舐められるようであると後々面倒な事が起こると判断し、平和的ではあるが手荒い歓迎を行なったのだ。

 

話を戻そう。

ミリシアル帝国の使者団から先進11ヶ国会議に関する説明を受け取った代表情報局員は、即座の回答は差し控えこそしたが、翌々日には先進11ヶ国会議の参加は正式に決定され、代表情報局員を通じて使者団に通達された。

ミリシアル帝国使者団の帰国後、EDF日本支部は先進11ヶ国会議の参加準備を少しずつ始めた。先日11ヶ国会議の固定参加国、つまりはこの世界の列強の一つとして認識される以上、生半可な戦力で出すのもあまり良くない。とはいえアルトカルパスに入港できる艦にも限界がある以上、まさか要塞空母デスピナを派遣する訳にもいかない。そんな訳で、ひとまずセントエルモ級イージス戦艦2隻、アイオワ級フリゲート艦1隻の3隻構成の小艦隊で派遣する事が仮決定される。

その為に現在艦隊の調整や先進11ヶ国会議に参加させる人員の調整を行なっている。他のそれらと比べるとだいぶスローペースだが、それまでの期間がかなり長い為、ゆったりとしたペースで行われているのだ。

 

 

 

 

 

 

EDF日本支部の一室。そこでEDF日本支部司令長官は今日も大量の書類と戦っていた。

EDF日本支部の最高権限を持つ彼だが、同時に日本列島を統治する統治者でもある。その為に軍民問わず彼の採決を必要とする書類が毎日届く故に、その仕事量は単純計算でも普通の政治家の約2倍の量の書類を毎日捌いている。正直言ってここ最近は、軍の書類の一部は副司令に回せるようにした方が良いんじゃないかとも思いつつもあるが、そんな事を思っても目の前の書類は減る訳が無い為、黙々と吟味と書類の判子やサインを続ける。

そんな作業を小一時間程やっていた時、机の端に置いていた時計からアラームが鳴った。

 

「もうそんな時間だったか…」

 

書類作業を一旦中断。机にあるいくつかの書類の束を端に退けて、服装の乱れがないかを確認。そして椅子に再び深く座り直し、準備を整える。

1分後に再びアラームが数回鳴り、天井に設置された空間ディスプレイが起動。司令の前方の空間に映像が投影される。

 

その映像に映し出されたのは、グラ・バルカス帝国の帝王 グラ・ルークス。

 

『…相変わらず机に書類の束が見えるな、オオイシ司令』

「この程度の量ならまだいい方ですよ、グラ・ルークス帝王」

 

開口一番、やや呆れた表情で机の端に退けられた書類の束達について言及された司令は、苦笑いで応える他なかった。

今日は、月に一度行われているEDF日本支部とグラ・バルカス帝国両国の最高権力者の定期連絡の日であった。大まかな内容は国内やその周辺国の動きに関する情報共有、要塞化に関する相談等の実務的な話もあれば、プライベートな話や他愛もない話など、息抜きを兼ねた会話などを行なっていた。

 

我々(EDF)には現在、特に緊急性を帯びた事態は発生しておりません。が、それとは別に第一文明圏列強国である神聖ミリシアル帝国より使者団が来訪し、先進11ヶ国会議という国際会議への参加要請を受けました」

『…其方もか。我が国にもミリシアル帝国の使者団がレイフォル地区に来訪し、我々も参加するよう要請してきた。大方、我々が滅ぼした列強国の穴埋めだろうな。収集された情報によると、その先進11ヶ国会議は本来今年行われる予定だったが、来年に延期されたらしい。まぁ、この世界の列強が1年で二つも倒れればそうもなるか』

「…先進11ヶ国会議の参加要請に対して、我々は受諾する事にしました。此処で参加せず、第一文明圏及び第二文明圏諸国に侮られるような事になれば、今後に影響すると思われます」

『…』

 

グラ・ルークスは僅かに表情を曇らせ、何か悩んでいるように見える。

 

『…これは先進11ヶ国会議の参加要請にも関わる事だが。我が国は方針を転換する事になった』

「…?」

『我が国は先より、第二文明圏の文明国や文明圏外国に対して攻撃を行なっている事は、説明していたな』

「ええ。…皇族の1人が処刑され、怒れる国民達から報復を求む声が挙げられたと」

『ああ。そして帝国議会と私はそれに同意した。如何に我々が穏やかな国民性だったとしても、アグレッサー戦争にて絶望に飲み込まれかけていた国民達を支え続けていた皇族を…私の息子の1人をあのような仕打ちにしたグズどもを、赦せる訳がない』

 

ほんの一瞬だけ怒りの色を見せたが、直ぐにその表情は消え失せる。

 

『…全てを終わらせたその後、帝国議会の議員よりある提言が提出された。その提言によって帝国議会のみならず、少なくない国民達にも混乱をも齎す程の衝撃を走らせたのだが…5日前、漸く全ての決着が着いた』

 

言葉を切ったグラ・ルークスは画面越しの司令の目と合わせ、その言葉を、重く紡いだ。

 

 

 

 

 

「帝国議会の賛成過半数により、グラ・バルカス帝国は第一文明圏及び第二文明圏諸国に対する属国化要求、及び侵攻作戦計画の立案が承認された」

 

 

 

 

 

歯車が、動き出す。




彼等は、世界を護る為に決断した。
彼等は、その決断の前に何を言う?


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旧第27話 正義と正義

最後のグラ・ルークスの発言を訂正しました。
植民地化要求→属国化要求


「………………………………は?」

 

司令は、グラ・ルークスから発せられたその言葉を理解するのに数秒もの時間を要した。

第一文明圏及び第二文明圏諸国に対する属国化要求、侵攻作戦計画の立案。それはつまり、今現在までグラ・バルカス帝国が説明していた防衛圏構築及び報復目的のみに限定された侵略行動の方針から、報復目的ではなく、明確な意志で以って第一文明圏及び第二文明圏を侵略すると言ったのだ。

 

「………にを、言って………」

『最終決定権は私にあるが、既に了承済みだ。其方は我が国と無理に同調する必要は一切無い。我が国の行動を静観──』

 

 

「一体何を言っているのか、分かっているのか!!!?」

 

 

机をあらん限りの力で叩くと同時に立ち上がり、声を上げる。

 

「我々の敵は決して人類ではない!フォーリナー、そしてアグレッサーだ!!我々は奴等の襲来に備える為に軍事同盟を締結し、今日まで協力して来た!!全ては世界を護る為に、世界を護る為にだ!!間違っても侵略の為ではない!!」

『聞け、オオイシ』

「まだ此方の話は終わっていない!貴国が行おうとしている事は」

 

「聞け!!」

 

「ッ───」

 

司令はその勢いを削がれ、椅子に再び座り込む。しかしその表情は、先程とは180度違う。怒りさえも浮かべ、グラ・ルークスを見る。

 

『…我々とて、安易にこの決断をした訳ではない。この侵略も、決して私益の為ではない。我々なりの、この世界を護る為の一つの方法を行う事を、決断しただけだ。時に、オオイシ司令。今現在に於いてフォーリナーとアグレッサーの存在を、何かしらの観測で感知したか?』

「…いいや」

『ならば、奴等が襲来するまでの猶予も分からないままだ。そう、「分からない」。この解釈が極めて重要だ。分からないからこそまだ余裕が有るか、分からないからこそ余裕が無いか。我々の解釈は、前者に傾いた。よく考えてみろ、オオイシ司令。もし奴等の襲来が感知出来るその瞬間、既に我々の頭上にいるのかも知れないんだぞ?そうなっては最早、第一文明圏や第二文明圏を、この世界の他国を気にする余裕など我々には無い。そうなれば、この世界は我々から孤立(・・・・・・)し、刹那の勢いで、悉くが濡れ紙を引き裂くが如く滅んで行って奴等の巣窟となるだろう。なれば必然的に奴等の巣窟となった2つの大陸によって我々は分断される。それで仮に奴等を撃退、もしくは撃滅出来たとしてもだ。完全制圧された第一文明圏、第二文明圏で巣を作った巨大生物は無限に増殖していく。一から十に、十から百に、百から千に、千から万に、万から億に。その増殖に比例して巣は縦に、そして横に拡大していく。そうなれば巨大生物の殲滅は何十年の時を必要となるどころか、巨大生物殲滅が不可能となるかもしれない。それを防ぐ方法は、我々が全ての国家を保護する他にあるまい。其方が第三文明圏をその影響下に置いたようにな』

「そうだ。だからこそ我々は少しずつ、急激な混乱を来さないよう慎重に慎重を重ね、インフラ関連の技術を輸出し──」

『そんなまどろっこしい事などせずとも、我々の歴史(・・・・・)を明かせば直ぐに済む話であろう?』

「それはっ………!」

『そこを突き詰めれば、そうなる。結局の所、どれだけ脅威を説こうが、どれだけ真剣な姿勢を貫こうが、「他人」にとっては遠い話と同意義でしかない。向こう側が真剣に考えねば、真剣に受け取らねば、真剣にならねば我々が幾ら努力しようが無意味な事よ。そしてこの世界は、既存の常識と枠組みに雁字搦めに捕えられて思考を停止している。ただ「その場所に存在している」という事だけで無条件で見下し、その真実を見極めようとしない。世界最強と謳われる神聖ミリシアル帝国でさえ、列強レイフォルを併合した我々を「文明国に毛が生えた程度の国家を併合しても調子に乗ってないようでなりよりだ」などと揶揄してきた。…笑わせてくれる、世界の程度(・・・・・)が知れると言わんばかりだよ。この世界は致命的に国力、技術、文化、モラル…その全てが足りていない。そのような国々に、明確な手綱も無しに公平に技術啓蒙を行えば、一体どうなる?技術差を失った、純粋な国力によるパワーゲームの始まりになるかもしれない。それこそ、各国の暴走によって余りにも不毛な世界大戦を引き起こす事に成るのかも知れないんだぞ?それを防ぐには我々が明確に上に立ち、この世界の指導者となる他に無い。そしてその時間は、猶予は、明確には誰にも分からない』

 

 

「よく考えろ、オオイシ。「世界(未来)」を護る為には、「今の世界(世界秩序)」を壊す以外に道は無い。そしてそれを行えるのは、今しかないかもしれないんだ」

 

 

真剣な視線で、グラ・ルークスは語り切る。彼とて、無意味な戦争を好みはしない。そんな救い難い事に、国民達を、兵士達の命を散らせはしない。純粋に、この世界を想って。彼は、グラ・バルカス帝国は決断したのだ。

それを聞いていた司令は、いつの間にか視線を下げ、両手を強く握っていた。

 

「………それ、でも…………それでも、我々は………ッ!」

 

グラ・ルークスから、顔を下げた司令の表情は見えない。だが、心の内の葛藤が極めて渦巻いて言葉が出てこないのは、直ぐにわかった。

 

『…今、此処で無理に答える必要は無い。我が国も先進11ヶ国会議に参加する方針だ。それまでじっくりと答えを考えて欲しい。定期連絡も、一時的にだが其方から行う場合にのみ応えよう』

『…願わくば、我々と共に歩める事を願う』

 

通信が切られ、自動的に空間ウィンドウの電源も切られて沈黙が再来する。

 

「……………」

 

無言で立ち上がり、数歩、歩く。

 

「…クソ…クソ、クソ、クソ!!

 

 

 

「このクソッタレがぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 

 

握りしめていた右手を振り上げ、机に振り下ろす。限界以上の力で天板に振り下ろされた右手拳は、机の天板を完全に2つに裂き、大音量で机だったものとその上にあった書類の山が周辺に散らかっていく。

机を粉砕した右手は、余りにも力強く握り込まれた所為で爪が手の平に食い込み、血の雫が流れて床に落ちていった。

 

数分後、荒れ狂う己の気持ちを漸く落ち着かせる事が出来た司令は、軍用のスマートフォンを取り出して操作し、耳に当てた。

 

 

 

 

 

 

「………これ程心苦しい会話は、生まれて初めてだ」

 

EDF日本支部との定期連絡を終えたグラ・バルカス帝国帝王であるグラ・ルークスは、疲れた表情で自室の椅子の背板に背中を預けた。

 

「お疲れ様、皇帝陛下」

 

その彼に、全く敬語も使わずに話しかける女性。彼女はグラ・ルークス直属の親衛隊隊長であって、果たして此処に居るのが適切かというと、立場的には場違いだ。しかしグラ・ルークス本人の命によって会話には一切入らず、壁に寄りかかりながら静かに会話を聞いていたのだ。

 

「彼等は、我々の決断をどう思うのだろうな」

「…そういうのは苦手なんだけど」

「君なりの感覚で良い」

「…五分五分。葛藤の中に怒りと迷いが見えた。彼等からしたら忌避すべき事だけど、その正しさは分かってる」

「五分五分、か…………やはり彼等が我々の前に立ち塞がるのも、十分に考えられてしまうな」

 

女性は自身の胸に手を当て、言葉を紡ぎ出す。

 

「その時は、命令を。私は、私達「ブラストチーム」は如何なる敵でも躊躇無く突撃し、粉砕し、蹂躙する。其れが私達の存在意義」

「…」

「…?どうしたの?」

「いや、何でもない。…その時が来なければ良いのだが…」

 

 

 

 

 

 

歯車は動き出した。

融和的行動で世界と少しずつだけでも、一歩一歩の融和を行なって団結を促そうとするEDF日本支部。侵略的行動で現在の世界秩序を完全に破壊し、EDF日本支部と共に中心点とした新たなる世界秩序を構築する事を決断したグラ・バルカス帝国。

正義(融和)正義(侵略)。同じ正義でありながら、同じ終着点でありながら、その過程が全くの真逆となった二つの正義。

彼等は間違いなく正義であり、それは誰にも疑いようもない確信を持っている。しかしそれが、もし、衝突するのならば、彼等は一体どうする?

 

間違えた(間違える)のか、それともどうしようもなく間違えていなかったのか。

 

それは誰にも分からない。だが、これだけは言える。

彼等が激突するのならば、世界は大きく変わるだろう。彼等が激突すると決心したならば、それは誰にも止められなくなるだろう。

 

彼等が、激突するのならば───

 

 

 

「…私だ。今すぐに全局長を第1会議室に緊急招集しろ。ストームリーダーも呼ぶんだ

「…もしその時が来るのならば、存分に力を振るってくれ。クローサー

 

 

 

 

英雄(主人公)の激突も、そう遠くない未来だろう。




戦争が起こる時は、何時だって「正義」と「正義」のぶつかり合いだ。

次回、「先進11ヶ国会議」。彼等の決断は如何に。


用語解説&状況説明
グラ・バルカス帝国
第一文明圏及び第二文明圏への属国化要求、及び侵攻作戦計画の立案を開始。

EDF日本支部
グラ・バルカス帝国の決断に対して傍観か、同調か、敵対か。決断を迫られる。

神聖ミリシアル帝国
グラ・バルカス帝国の力も知らずに挑発し、グラ・ルークスに「世界の程度が知れる」と揶揄されるくらいには馬鹿にされる。

クローサー
EDF:IRの主人公。グラ・バルカス帝国親衛隊「ブラスト」隊長であり、アグレッサー戦争に於いて、2隻のハイブクラフトの片方を撃墜した英雄。


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お知らせ

※本編(第27話)の再更新(投稿)時、このお知らせは削除致します。

7/16追記
今話は最新話ではございません。

7/28追記
現在、第4章を再投稿中です。


本小説を此処まで閲覧して頂き、ありがとうございます。

唐突なお知らせとなってしまい大変申し訳ありませんが、一時的に、本編の更新を停止させて頂きます。

 

理由としては、「ストーリーの見直し」の為です。

先に投稿した最新話である第27話 正義と正義にて、EDF日本支部の行動や言動に対するこれまでの矛盾や違和感等、複数のご指摘を感想欄より受け取りました。改めて自分が今までに投稿してきたこれまでのストーリーを見直した結果、確かに第27話の展開に関しては見過ごす事が出来ない問題点などもあり、27話の書き直し及び今後のストーリーの再検討を決定しました。

そしてその際、今後のリアルの都合にも追われながら執筆しつつも考えるより、いっそのこと一旦筆を置いて(更新停止して)から、EDF日本支部やグラ・バルカス帝国の行動や理念、信念を改めて一から見直し、そして今まで執筆したストーリーも考慮しつつ、改めて第27話を書き直そうと思います。

 

指摘の一つにもなったパーパルディア戦に関しては…現時点では書き直しを行うかどうかは分かりません。投稿後の時系列を弄るのは余り好きではありませんが、より良いストーリーになる為に必要ならば、書き直す事も十分に考えられます。

書き直しの際に修正が入る可能性があるのは、第3章 静かな火種、第4章 オペレーション・パルヴァライゼーション、第5章 平和期間です。

 

6/22追記

やはりパーパルディア戦がその後の展開に足を引っ張る可能性が高いので、再構成を行うのはほぼ確実となりました。

 

 

自分の力不足でこうなってしまい、申し訳ありません。

失踪するつもりは一切無く、どのような形であれキチンとした完結は目指しております。その為にも、一旦立ち止まってしっかりと考え直し、自分にも、この小説を読んで下さっている皆様にも1人でも多く納得頂けるように今後も活動させて頂きます。今後も、是非ともよろしくお願いします。

 

最後にお詫びと最低限文字数の突破を兼ねて、執筆中だったある閑話の一部を、特別にお見せいたします。

此処までの閲覧、ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

-前略-

 

第二文明圏 レイフォル沖。

比較的に穏やかな海を東に、グラ・バルカス第零艦隊旗艦 グレード・アトラスターは40ノットで航海していた。

軽快な速度で海水を押し退けるその巨体には、46cm3連装レーザー砲が3基。計9門の主砲が水平線を向いている。中央やや後方には、その重厚な巨体に相当するサイズの艦橋があり、その周辺には大小52基の3連装高角砲「チェイサーキャノン」がハリネズミのように配置され、全ての銃口が空に向けられている。

主砲、副砲、高角砲の全てが其々の特徴が異なるレーザー砲であるが…主砲と副砲は、厳密に言うとレーザー砲のように見える荷電粒子砲であるのだが。仕組みを少しだけ解説すると、まず砲塔内の粒子生成装置から、超高速で衝突すると爆発を起こす特殊な粒子を生成、凝縮を開始。一定濃度まで凝縮された特殊粒子は、次に粒子生成装置の真上にある超小型粒子加速器に移動し、超高速まで加速しながら粒子加速器を循環する。そして発射の瞬間、出口へのルートを解放。光速の25%まで加速した粒子群は瞬間的に加速器の出口、つまりは砲口へと飛び出し、目標へと重力の影響を受けながら発射される。その光景がまるでレーザーのように見える為に、便宜上として「レーザー砲」と呼ばれているに過ぎないのだ。

 

閑話休題(それはさておき)

 

グレード・アトラスターの艦長であるラクスタルは艦橋に立ち、前方に広がる海を眺めていた。この先に、敵は居る。既にレーダーに敵艦隊を捉えており、約60km先に43隻の艦隊が12ノットで接近している事を把握していた。

 

「レーダーに新たな反応。レイフォル艦隊より多数の飛行物体が接近中、ワイバーンかと思われます。速度は…およそ350km/h。数40」

「第1種戦闘配置に移行、チェイサーキャノン用意。各砲の目標振り分けは任せる」

 

レーダー員からの報告が届き、漸く戦闘準備を始める。各員が其々の役目を果たす為、行動を開始した。

 

「チェイサーキャノン全砲門、起動完了。目標、ワイバーン40騎への目標選定終了。既に射程内ですが…」

「まだ撃たなくていい。せっかくの機会だ、この目で見てみたい」

「了解しました。後4分で目視圏内に入ります」

 

40騎のワイバーン。それは他の文明圏外国なら圧倒的な戦力ではあるのだが…彼等は全くその余裕を揺るがさない。

 

「間もなく見えます」

「どれ…」

 

ラクスタルは愛用している古い双眼鏡を手に取り、東の空に見える点を見やる。

 

「アレがワイバーン、か………敵なのに、ここまで恐ろしくないというのは、初めての感覚だな

 

双眼鏡を下ろし、静かに号令をかける。

 

「チェイサーキャノン、撃て」

 

瞬間。40基120門のチェイサーキャノンが咆哮をあげ、青色のレーザー弾を上45度に撃ち上げる。レーザーにしては恐ろしい程に遅い其れ等は、ほんの数瞬の時を空けて急旋回。120発のレーザー弾が僅か40騎のワイバーンに殺到する。

驚いた竜騎士達が必死の回避行動を行うが、たった350km/hの速度では逃れられない。すぐに全弾が命中し、各ワイバーンと竜騎士の身体を、3発のレーザーが貫いた。



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前日譚 フォーリナー大戦 最後の休息

ふとこんな話を書きたくなってしまった。中々本編が進まぬぇ…
先に言っておきますが、フォーリナー大戦を書くときは多分時系列バラバラ。(投稿時には時系列順に投稿しますけど)

追記
おススメBGM:エースコンバット6 CHANDELIER


2017年。人類は歴史史上最大の、絶滅の危機に立たされていた。

 

宇宙から襲来した異邦人…フォーリナーは、人類に対して巨大生物を中心とした苛烈な殲滅攻撃を開始。対する人類は、制空権を全面喪失してもなお、EDF(地球防衛軍)を中心として各国軍と連携した連合軍で抵抗戦を開始した。北米、南米、欧州、中東、極東、シベリア戦線を中心に幾つかの戦術的勝利や戦略的勝利を収める事に成功する。その中でも主だった物は第三次巣穴掃討作戦*1、第一次欧州防衛戦*2、第二次北米決戦*3、が有名だろう。しかし、その度に人類は決して無視出来ない量の血の代償を支払わざるを得なかった。それに対してフォーリナーは一切の損害をも無視する物量を以て、真正面から次々と連合軍を粉砕。僅か半年間で、欧州戦線(司令部)の崩壊を皮切りに、全戦線の崩壊が開始。その始まりから僅か5日間で、人類は連合軍を始めとした有力な戦力の殆どを失う事となった。

 

つまるところ、人類は1年と保たずにフォーリナーに敗北した。これは紛れも無い事実であり、真実である。

 

しかし、人類が敗北しても決して諦めず、抵抗を続けているのもいた。それがEDF日本支部である。EDF日本支部はフォーリナー大戦最初期から、極東戦線とは独立した日本列島防衛戦線を構築。日本列島という小さな戦線にも関わらず、最前線は北米戦線にも劣らぬ苛烈さであり、それ故に日本支部はしぶとく抵抗した。幾万の巨大生物を粉砕し、幾千のヘクトルを破壊し、十数の女王を倒し、数体の超巨大生物を仕留め、そして四つ足歩行要塞さえも破壊した彼等の質は、間違いなく人類最大戦力と言っても良いだろう。確かに北米戦線や欧州戦線でも、日本支部にも劣らぬ善戦は見せていた。しかし逆に言うと、日本支部は一個の大陸を跨ぐ巨大戦線の戦果(・・・・・・・・・・・・・・・)と同等の奮戦をしていると言う事だ。この事実は余りにも恐ろしい事だ。北米戦線、欧州戦線はこの戦果と同等の戦果を打ち立てる為に、数十万規模の陸軍を動員し、他の前線と比較すると圧倒する程の物量と火力で押し潰した。日本支部は全く逆で、僅か数万(・・・・)でこの戦果を叩き出しているのだ。日本列島という狭い戦線にも関わらず、これ程の密度かつ劇的な戦線は、全く以て存在していなかった。

しかしそれ故に、彼等は持ち堪え、そして孤立してしまった。最早自分達以外に味方は無く、敵は無尽蔵。最早希望もなく、この戦いが最早人類という種を1秒でも長く存続させる為の延命処置(・・・・)に過ぎない事を、誰もが心の底で悟っていた。その絶望に飲まれ、自らの手で命を絶つ者も決して少なくなかった。化け物に喰われるよりマシな死に方であると考えてしまうのも、当然といえば当然だと言えた。しかし同時に、多くの人が生きる事を諦めなかった。

 

生きたい。

 

ただそれだけの、ちっぽけな生存本能。しかしそれは何よりの活力となり、今日のEDF日本支部を支え続ける、唯一の柱となっていた。

 

 

 

 

 

 

その日の夜の日本列島は、場違いの雪が降っていた。

例年ならば11月に雪が降るならば精々北海道、信越地方や北陸地方だったというのに、今年は何故か関西地方でも雪が降っていた。異常気象ではあるのだが、今現在そんな程度の事に構っている暇など微塵もありはしなかった。

 

EDF日本支部は、人類の最後の砦は今、陥落寸前なのだから。

 

約7ヶ月間にも及ぶ総力戦の果てに、EDF日本支部は北海道、関東、中国地方西部、四国、九州を完全放棄。残された関西全域と東海地域、中国地方東部に絶対防衛線を設置して生き残った3600万人を護っているだけの状況だ。

既に一度、フォーリナーは絶対防衛線に対して猛撃を行なっている。総力戦によって奇跡的な撃退に成功こそしたが、EDF日本支部も最早有力な戦力は払底し、もう一度同じ規模の戦力が絶対防衛線に投射されたならば、それはEDF日本支部の終焉と同意義であった。

しかし、どうしてかな。フォーリナーはそんなチャチな事を面倒くさがったかどうかは知らないが、少なくとも日本支部の想定外の行動を起こした。

 

世界各地を蹂躙していたマザーシップが日本近海に出現。日本列島に向けて真っ直ぐ向かってきているというのが明らかになったのだ。

 

まさかの展開に驚いたが、EDF日本支部司令以下は遂に最期の時が来たと確信。最終決戦に向け、攻撃部隊の抽出が開始されていた。結果、編成出来たのはギガンテス10両を含めた陸軍1個大隊と空軍2個飛行隊。たったこれだけの戦力が、今のEDF日本支部が持てる全力の攻撃部隊。

たったこれだけの部隊で、敵の総大将を討ち取れる可能性は限りなくゼロに近い。マザーシップが飛来した第三次北米決戦の際、EDF北米方面軍は決戦要塞X3を対マザーシップに投入したが、結果は1時間と保たなかったらしい。EDFの最高戦力である決戦要塞を1時間で墜とした相手に、たかが陸軍1個師団で立ち向かおうなど、きっと後にも先にもない事だろう。いや、無ければならない。

 

出撃は明日、三重県の絶対防衛線第2ラインで行われる。攻撃部隊は最後の晩餐と宴を、大阪市の各飲食店を貸し切って行なっていた。天然食料も細々となり、最早飲食業は成り立たなくなっていたが、EDF日本支部は大金を積み上げて天然食料を用意し、大盤振る舞いを行う事にした。市民達にも不十分ながらも行き渡り、皆が皆、最後の宴を楽しんでいた。

逆三日月(二十六夜)の光は雪をしんしんと降らす雲に遮られ、フォーリナーの夜襲に備えてカンカンと照らされた大阪市の光が周囲を照らす。その光の下、人々はワイワイと騒がしく最後の宴を楽しんでいる。

 

その光景を、「彼」はとあるビルの屋上から見下ろしていた。

 

「…」

 

彼の足元には開けられた日本酒とお猪口が置かれており、少し飲んだ形跡もある。しかしその表情には、全く酔った様子も無い。彼はただ、無言で人々の談笑を見下ろしていた。

 

「こんな所に居たか、ストーム1…いや、◼︎◼︎」

 

振り返る。

 

「…貴方こそ、何故ここに?大石司令長官」

「何…私も静かに晩酌しようと思って此処に来たんだが、どうやら君が先客だったようだ」

 

そういった大石の右手には皿に山盛りに盛られた唐揚げと割り箸2本、左手にはお猪口が握られていた。…お猪口はしっかり用意している辺り、完全に確信犯である事は言うまでもない。

何を言うまでもなく大石はストーム1の右に位置取り、手すりに背中を預けて座り込んでストーム1との間に皿とお猪口を置く。ストーム1も座り、大石から割り箸を受け取った。

 

「ありがとうございます」

「いや、寧ろこれだけなのが申し訳ないくらいだ。君が下に降りてくれれば、他にも色々と振る舞えるだろうに」

「騒がしいのは少々苦手です」

 

(ストーム1)は日本酒を持ち、大石が持参したお猪口に注ぎ、瓶を邪魔にならない場所に置いた。

 

「…頂きます」

 

2人は割り箸を割り、唐揚げを取って一口。今となっては貴重な天然食料、その中でも更に貴重な肉類も今日に限っては盛大に放出されていた。パリっという音と共に程よく熱い肉汁が口の中に入り、旨味を舌に伝える。

 

「…今じゃ、かつてはたった数百円だったこの唐揚げも貴重な食料か」

「あらゆる産業が崩壊した以上、仕方ありません。経済そのものも最早意味が大して無く、そもそもとして我々は日本列島の外に出る事は出来なくなりましたから」

「………」

 

二人は言葉を交わす事も無く、唐揚げを肴に日本酒を楽しむ。30分もすれば、唐揚げが盛られていた皿は空となり、代わりに用無しとなった2つの割り箸が置かれていた。

 

「…………………………」

「…………………………」

 

ただ静かに、時間だけが過ぎるその空間。その空気を、大石は断ち切った。

 

「…明日は、決戦だな」

「…ええ」

「………勝てると思うか?」

「…こんな形で聞きたくはないですが、勝てると思いますか?北米の決戦要塞X3をも墜とした相手に、たかが陸軍1個大隊と空軍2個飛行隊が敵うならば、この戦争は今頃人類が勝っています」

「…そうだろうな」

 

グイッと、お猪口の酒を一飲み。アルコールが喉を通過する感触を明確に感じつつ、新たな酒を注ぐ。

 

「私も焼きが回ったな。ひたすらに目の前の人達を守ろうとして考えて考えて考え抜いて、その果てがこんなザマだ。何千万の市民を守るために数万の兵士に余計な負担を掛け、戦術的勝利に何の意味も無い指揮さえも取ってしまった。数十の市民の為に、数百の兵士を失う意味が果たしてあったのか、今でも考えてしまう。…結局、守りきれなければ意味が無いというのにな」

「………」

「…すまないな、こんな暗い話などするべきではなかったか」

「いえ、1人で溜め込み過ぎるよりは良いです。それに、ほぼ勝ち目はありませんが、可能性は決してゼロじゃあありません」

「…何?」

 

思わず、大石は彼に顔を向ける。彼の表情は、苦笑いそのものだった。

 

「明日の最終作戦に出撃する陸軍部隊は、全員が志願者です。下で軽めに見てみましたが、多くの者達が「大切なもの」を失い、ある意味で人としてのタガを外しています(・・・・・・・・・・・・・・)。それ故に彼等は士気が低く、同時に高くもある死兵。死に場所を求め、一つでも多く奴等を道連れにしようとする彼等の突撃力は決して舐めたものではありません。マザーシップの弱点さえ分かれば、そこに一撃を穿つ事が出来れば…奇跡が起こるかも知れませんね」

「………」

「どちらにしろ、最悪の中で最善を尽くすしか無いでしょう。そんな都合が良い展開は早々起こる事がありませんし、そもそも全滅も覚悟の上。それに…」

 

「家族を殺したクソ野郎どもを1匹でも多くブチ殺したいという点では、自分も彼奴らと全くの同類です。その序でに、人類の意地汚さを見せつけてやります」

 

そう言って、彼はお猪口を右手に持った。

 

「…そうだな。存分に暴れて来い。最後の大舞台だ、幸い武器弾薬だけは存分にある。奴等に目にものを見せてやれ」

 

大石もそれに同調してお猪口を持ち、二人は同時に逆三日月に向けて掲げた。

 

「人類に」

「EDFに」

 

そしてその酒を一口に、景気良く飲み込んだ。

*1日本支部が発令した巣穴掃討作戦。2度に渡る巣穴掃討作戦の失敗と偵察の情報を経て、巣穴掃討専門部隊 モールチームを含めた3個大隊が、関東地方に存在していた最大直下1000m以上の規模を持つ超巨大巣穴に突入。約2週間にも及ぶ戦闘の末、巨大生物の女王の撃破に成功。しかしその道中で幾多の巨大生物の罠によって多数の部隊が壊滅。地上に生きて帰れたのは僅か1割…そこから即座に戦線復帰可能な兵士となると、それはほんの一握りだった。

*2欧州方面軍全軍と巨大生物100万、ヘクトル3000、飛行ドローン5万によって勃発した、フォーリナー大戦の中でも最大規模の戦い。5日間にも及ぶ総力戦の末に欧州方面軍が辛勝するも、この戦いによって欧州方面軍は半壊。戦力の立て直しは行われていたのだが、その前に飛来した精鋭飛行ドローン レッドカラーの急襲を許し、欧州戦線崩壊の遠因の戦いとなる。

*3日本支部の四つ足歩行要塞(ナンバー1)破壊作戦後に発令された、北米版対四つ足歩行要塞作戦。結果としてはアメリカ合衆国東海岸部を蹂躙していたナンバー2の破壊には成功するものの、カナダを破壊していたナンバー3の撃破には失敗。このナンバー3は、後にマザーシップと共に北米戦線を蹂躙。北アメリカ大陸を完全制圧する事となる。




大石司令長官
EDF日本支部司令であり、フォーリナー大戦に於いて最後まで徹底抗戦を貫いた人物。彼の指揮と士気無くしてフォーリナー大戦の勝利はあり得なかっただろうが、彼の信念を貫く際に犠牲となってしまった兵士も居る。
戦後、それを繰り返さぬように努力する事となる。

ストーム1
[[非公開]級軍事機密に付き、[非公開]以外の者は閲覧不可能]。フォーリナー大戦時に於いて一個軍団にも匹敵する程の戦果を打ち立て、マザーシップを撃墜して人類の勝利を導いた英雄。戦後は壊滅したストームチームを再編成、ストームリーダーとして現在もEDF最精鋭部隊隊長として活躍している。

ストームチーム
EDF歩兵隊の遊撃部隊。フォーリナー大戦に於いてはレンジャーチームでは危険度が高い任務にも積極的に投入された為、フォーリナー大戦末期にはストーム1を除き壊滅。戦後は再編成によって、ストーム1(現ストームリーダー)が率いるストーム1、精鋭ウイングダイバーチーム スプリガンのストーム2、精鋭フェンサー部隊 グリムリーパーのストーム3によって構成され、日本支部のみならず人類が誇る最精鋭部隊となる。


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無自覚な布石

ふと「HALO世界の日本」や「鋼鉄の咆哮シリーズのウィルキア&大日本帝国」を日本国召喚にブチ込んだらどうなるんだろうなー、と思いつつ再び前日譚を執筆してしまった。
…ちなみに、鋼鉄の咆哮の方は短編(バルチスタ沖大海戦)で書くかもしれない。

グラ・バルカス帝国連合艦隊vs播磨&アルケオプテリクスとか、凄く面白そうじゃない?もしくは通常艦隊1000隻(内大和型戦艦200隻)でブン殴るとか。


2017年11月16日午前1時6分。

 

EDF日本支部 最終作戦「アイアンレイン」発動まで、凡そ9時間後に迫った。

先程までの騒々しい雰囲気は消失し、皆が寝静まり、静寂に包まれている大阪市の一角に存在しているEDF日本支部大阪基地の一室に、大石はいた。

 

「…」

 

特に司令としての仕事もなく、本来なら明日に備えて寝るべきなのだろうが…今日は妙に寝付きが悪く、椅子に座ってある機器の調整を行なっていた。

フォーリナー大戦後期から開発されていたものの、戦況の悪化によって生産が不必要(・・・)と認定された新型の通信機器。大石は倉庫の中で眠っていた完成品を引っ張り出し、再び使えるように設計図を睨みつつパーツを組み立てていた。

 

(…これで、良いはずだな?)

 

余ったパーツが転がってたりしないかを確認し、蓋を閉める。コンセントを電源プラグに接続し、電源をオンに。通信機器のメーターが動き、正常に動作している事を確認。カチカチとダイヤルやレバーを操作し、超広域汎用周波送信にセット。ハンディマイクを手に取り、通話ボタンを押そうとして…少し弄ぶ。

 

「………果たして、何の意味があるのか」

 

一つため息をつき、通話ボタンを押した。

 

 

 

 

 

 

後何日生きられるのだろうか。ここ最近、彼らはずっとそう思ってばかりだった。

各戦線が崩壊してから、EDFや各国軍はフォーリナーの大群によって引き裂かれ、今では其々が小さなコロニーを作り、フォーリナーに見つからないようにコソコソと食料を集める毎日。今でも通信によるコロニーの交流や人間の保護などは行なっているのだが、平均して数日経つたびに、何処かしらのコロニーとの通信が途絶えている。希望も未来も見いだすことが出来ないこの状況。

 

──ザザッ。

 

ある時突然、各所に点在するコロニーにある通信機器に、其々に僅かなタイムラグこそあれどほぼ同時にノイズが入った。

通信機器の近くに居た者達は思わず通信機器を見やり、すぐに周波数を調整する。少し周波数を操作すれば、それはすぐに鮮明となる。

 

──トン、トン、トン。トン、トン、トン。

 

聞こえてきたのは、何かを軽く叩く音。軍人も首を傾げている辺り、この音に特に意味は無いらしい。1、2分程度それが繰り返されていたが、不意に人の声が入る。言語は僅かに癖がある英語。

 

『…此方は、EDF日本支部大阪基地。この通信を受信しているかもしれない、何処かで生き残っている人達に向け、これを送信する』

 

初手で、彼等は驚愕の色を隠せなかった。まさかまだ、こんな終末的状況で現存する軍事基地からの通信が飛んでくるとは思いもしなかった。思わず応答しようとしたが、次に入ってきた言葉によってその手が止まる。

 

『この通信の応答は、受け取る事が出来ない。…受け取ったとしても、我々にはもう時間が無い。我々の抵抗に業を煮やしたのか、マザーシップが此方に接近している。明日にはこの基地も無くなっているだろう。だからこれは、我々…いや、私個人が遺す最後の通信となるだろう』

 

『この戦争…仮に「フォーリナー大戦」とでも名付けようか。フォーリナー大戦が勃発して以来、我々は日本国自衛隊と共に日本列島に巣食う巨大生物や、海から這い出てくるヘクトル兵団、空を覆う飛行船団と熾烈な戦いを行なってきた。幾多もの作戦の中で、数多くの、取り戻しようも無い戦士達の命を失ってきた。皆が皆、護りたいものを護るが為に、散って行った。しかしそれでも、奴等を止めるには至らなかった…我々が気付いた時には、あらゆる戦線が崩壊し、我々は日本列島に閉じ込められた。救援も無ければ、資源も無く、そして戦力も無い。7日前の猛攻を耐えられたのは奇跡とも言っていい。しかしその奇跡と引き換えに、我々はなけなしの戦力や資源も消耗し、終末のカウントダウンを速めることになった』

 

『…先にも言ったが、現在我々の元にマザーシップが接近している。これに対し、我々EDF日本支部は残された戦力を結集し、攻撃部隊を編成。マザーシップに対する最後の攻撃作戦「アイアンレイン」を、約9時間後に発動する。最早大局的に敗北した我々人類にとって、唯一の希望となるのは、マザーシップの撃墜しか残されていない。だが、EDFに残された力はあまりにも少なく、そしてマザーシップの力はあまりにも強大だ。しかもマザーシップを撃墜できたとしても、フォーリナーがこの星を諦める保証さえもない。だが…それでも、それでも我々はやらなければならない!!』

 

『何故なら、我々はEDFだからだ!!!!』

 

『我々は決して敵に背中を見せない、我々は決して諦めない!!どれだけ敵が強大でも、どれだけ我々が無力でも、我々は最後まで戦い続ける!!たとえ敗北したとしても、我々は決して諦めなかったことを、大地に倒れるその瞬間までEDFは勇敢に戦い続けた事を、人類は最後まで戦った事を!!その事実をこの星の歴史に、奴等に刻み込む!!』

 

『…もし、マザーシップの撃退に成功したならば再度この通信を発信する。その通信が果たして勝利宣言か、それとも怒りに狂ったフォーリナーの侵攻によって崩壊する基地からの最期の通信になるのかは分からない。が…少なくとも、その時は奴等の自慢の母船を地に墜とせた事に多少の溜飲が下がるかもしれないな』

 

『最後に、私の名前を教えておこう。…EDF日本支部司令長官、大石宏光。通信終了』

 

 

 

 

 

 

カチ、と通話ボタンから指が離れて通信が途切れる。また一つ溜息を吐き、電源をオフに。

 

「…」

 

全くもって自己中心的なエゴ。自ら他の地で生き残っているかもしれない人達に一瞬だけの希望を見せるなど、あまりにも酷い話だ。しかしそれを、せめて部下達には可能な限りに露呈せぬよう、真夜中にひっそりと行った。

 

「…」

 

通信機器を置く都合で横にずらしていた写真立てを手に取り、僅かに付いていた汚れを払い取る。

 

「…もうすぐ、そっちに行く事になりそうだ。その時はまた一緒に、美味しい紅茶を楽しもうか」

 

写真立てを置き、ベットで横になって目を瞑る。ものの数分で睡魔が大石の意識を侵食し、眠りについた。

 

 

 

 

 

 

この時、大石が発信した通信は日本列島を越えて宇宙まで届き、偶然生き残っていた通信衛星を経由して全世界に拡散し、届いていた。

 

『此方ベルリン、皆が賛同した。我々も作戦に参加する』

『了解した。歓迎するぞベルリン』

『モスクワだ、武器弾薬を融通してくれるコロニーは居ないか?参加したいんだが武器が足りない』

『此方ポドリクス、軍人さんがモスクワ基地の地下兵器保管庫の場所を知ってるらしい。今からそっちに向かうから合流しよう』

『此方はニューヨークより発信している。我々も参加する。他のアメリカコロニーも作戦に向けて準備している』

『誰でもいい、巨大生物の巣穴を吹っ飛ばす勇気のある奴は居ないか?爆弾を放り投げて奴等を怒らせてやろうぜ』

『そいつぁ良いな、ブチ切れた奴等の顔はどんな顔なのやら』

『…所で、一つ提案があるんだが。我々の名前を決めないか?仮にも連合になるんだ。名前くらいは決めても良いだろう?』

『なら、ちょうど良い奴を思い付いた。これはどうだ?』

 

 

 

カインドレッド・レベリオン。俺達もEDF(反逆者)仲間(血縁)になるんだ。ピッタリな名前だろう?』



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彼の記憶

彼にとっては、「平穏」こそが家族と並ぶ一番の宝物だった。


「彼」は、元々はどこにでもあるような、普通の人間だった。

特にこう、秀でた特技や異端な趣味があった訳でもない。ただ人一倍努力する事が好きで、EDFに入ったのも他の仕事よりかは給料が良かっただけだ。正直な話、彼にとってはフォーリナーも人類もどうでも良く、ただ自分と家族を養える事が出来ればそれでよかった。ただ整然と、訓練や書類作業をこなす毎日。平和な日本支部という事もあり、それだけで並よりも良い給料が貰えたものだ。

 

それが崩れたのは2017年4月1日。東京に、地球にフォーリナーが襲来したその日だった。

世界中に出現する巨大生物との交戦をキッカケに、彼も部隊長として、そして1人の兵士として最前線に赴き、フォーリナーと戦い続け、多くのモノを失い続けていった。

 

初めは「赤の他人」だった。

フォーリナーの輸送船団によって地球に降下された巨大生物によって、市民達が次々と彼等の目の前で喰われていった。EDFや各国の軍人達も当然その光景を見やり、恐怖、怒り、悲壮、呆然…様々な感情を抱いただろう。だが彼は、不思議な事にそういった感情を一切抱く事は無かった(・・・・・・・・・・)。彼は淡々と、敵を撃ち続けた。

鋼の精神と言えばそれまでだろうが、もしかしたらこの時点で、彼の心は大切なモノを壊してしまっていたのかも知れない。

 

次は「仲間達」だった。

フォーリナーと人類の本格的な戦争が始まり、その戦いは熾烈を極めた。その最中で、彼の目の前で何人もの兵士達が死んでいった。彼はその遺体の上に立ち、銃を撃ち、フォーリナーを倒し続けていた。仲間の死を悲しむより、敵を一つでも倒すことを優先し続けた。

 

次は「故郷」だった。

マザーシップの砲撃により、彼が生まれ育った街は跡形も無く消え去り、地図から消滅した。

 

次は「戦友達」だった。

ある日、彼の部隊を含んだ攻撃部隊はフォーリナーの罠を受けて包囲下に置かれ、輸送船8隻から降下し続ける巨大生物の群れの猛攻を受けた。彼等は必死に包囲の突破を行なったが、最終的に基地に帰還出来たのは彼を含めた2人で、生き残れたのは彼だけだった。*1

これをキッカケに、彼は心の内に宿っていた違和感を自覚した。奴等を目に入れるたびに、何か胸がムカムカするような、厭な感覚だった。

 

そして最後に失ったのは、「家族」だった。

その始まりは何のこともない、避難民キャンプの一つに巨大生物が襲撃し、偶々そこに彼の家族が居てしまったという不運だけだった。彼が任務から帰還した時に家族の訃報を聞き、元避難キャンプから届けられたその袋には、母の左足しか入っていなかった(・・・・・・・・・・・・・・)残りの父や姉は行方不明になっていたが、その末路は自然と察していた。*2

 

そして彼は、心の内に宿っていた違和感の正体を理解した。胸を焼き焦がす程の憎悪、全身を貫いて震える程の怒り。

それを理解した彼は、1人の死兵と化した。誰よりも前に前線に赴き、誰よりも速く戦場を駆け抜け、己の危険も厭わずに戦い、時には死んだ仲間の武器を拾ってフォーリナーの残骸の山を築き上げた。

 

そうしていつしか、彼は「英雄」と呼ばれるようになった。

 

 

 

 

 

 

意識が、浮上する。

 

「…」

 

一瞬の事だが、まるで長い長い夢を見ていたかのような感覚。これが早めの走馬灯なのだろうか、と呑気に考えていた。

 

『…此方はEDF日本支部。これより、最終作戦「アイアンレイン」を発動する』

 

ヘルメットの通信機から、大石司令の声が入る。短い演説をしているようだが、彼の耳には一切入らなかった。彼の全てが、空に浮かぶマザーシップと6隻の護衛船団、そしておよそ80の小型ヘクトルを睨んでいた。

正直な話、今の彼にとっては人類がどうとか地球がどうとか、関係無かった(・・・・・・)。自分から全てを奪っていったフォーリナーを、一つでも多く道連れにする事だけを考え、そしてマザーシップを叩き墜とす事だけを考える。全身が憎悪と怒りに包まれ、感覚が研ぎ澄まされる。

来る、来る、来る。

 

『…全部隊、攻撃開始!!!!』

 

刹那。両足の運動エネルギーを起点に、彼の身体は前方に吹き飛んだ(・・・・・)

*1本来ならば部隊の再編成が行われるのだが…この時点で彼の戦闘能力について行ける者は、戦死した彼の部下を除けば実質的に皆無であり、何より全世界的にも苛烈な戦闘が行われ続けていた為、一部の部隊は再編成される暇もなく出撃し続けていた。彼もその1人ではあるが、1人1部隊というケースは彼を除いて他に無い。

*2フォーリナー大戦に於いては、実は「死者」の数よりも「行方不明者」の数の方が圧倒的に多い。(割合は3:7)何故ならば、巨大生物による攻撃によって人間の身体を貪られる場合や、ヘクトルや四つ足歩行要塞、マザーシップの砲撃によってそもそも人の死体を発見出来ない(・・・・・・・・・・・・・・・)というケースが多発していたからだ。その為、フォーリナー大戦の行方不明者は「=死者数」としても計上できる為、実質的な死亡者は死者数+行方不明者が正確である。が、これはあくまでも非公式な死者数の計上方法である事を明言する。




「彼」
フォーリナー最大の誤算。人類史上最大の化け物(・・・)でありながら、人類を救った英雄。
彼の戦果は他の追随を一切許さない。以下がフォーリナー大戦に於いて彼が撃破した戦果である。

蟻型巨大生物:1万以上
蜘蛛巨大生物:1万以上
赤蟻型巨大生物:1万以上
女王蟻:7
巨大蜘蛛(奈落の王):4
ヘクトル:150以上
飛行ドローン:1000以上
精鋭ドローン(レッドカラー):14
輸送船:41
超巨大生物 ヴァラク:4
四つ足歩行要塞:1
マザーシップ:1

当然、この戦績を個人で成し得たのは「彼」以外に存在しない。この戦績はEDF陸軍1個軍団以上に匹敵する。


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死地へ

最近の出来事
感想(一部要約)「日本国召喚要素無くね?」

クローサー「…ついに言われたかー。パワーバランス上仕方ないとはいえ、確かにこのままじゃマズイかもなー…アンケート取って読者さん達がどう思ってるか聞いてみよう。2、4、5が多いだろうなー」(アンケート設置)

結果を見る

クローサー「それで良いのか皆」(やや困惑)

一応今もアンケート続けてるので、気付いてなかった人も是非投票お願いします。


三重県 志摩市 都市部中央。

その上空には、6隻のキャリアーと、世界各地を…否、地球を今もなお蹂躙するフォーリナーの母船 マザーシップが浮かんでいる。輸送船 キャリアーのハッチから小型ヘクトルによる空挺が行われ、都市部はおよそ80の小型ヘクトルによって完全な占領下に置かれている。

その郊外に、EDF日本支部の最後の攻撃部隊は居た。規模は僅かに一個大隊、法外な戦闘力を持つマザーシップを墜とすには、明らかな戦力不足。しかし、その事実を前にしても、彼らの目は死んではいなかった。

 

『…此方はEDF日本支部。これより、最終作戦「アイアンレイン」を発動する』

 

EDF日本支部大阪基地より発信された大石の通信が、全員の通信機を通じて届く。

 

『フォーリナーの攻撃で世界は壊滅状態。EDFも、最早我々だけだ。敵の力は凄まじく、世界が滅びるのも時間の問題。しかし、我々は、我々だけは諦めるわけにはいかない。我々は攻撃されるのを待ちはしない。残った戦力でマザーシップを強襲し、マザーシップを撃墜する。それだけが、人類が助かる道である!三重県志摩市に襲来したフォーリナーの戦力は、マザーシップ及び護衛飛行船団6隻、空挺済みの小型ヘクトル80。対する我々の戦力は一個歩兵大隊及びギガンテス10両、EJ24戦闘機及びF-15J戦闘機によって構成された二個飛行隊のみの敗残兵だ。しかし君達全員が今戦争を今日まで戦い、生き残ってきた一騎当千の古強者だ。だからこそ私は、君達が100万の軍集団に匹敵する事を信じている』

『今、此処で断言しよう。君達は間違い無く、「英雄」だ。我々の、希望だ』

 

『…全部隊、攻撃開始!!!!』

 

それが、合図だった。

鬨の声を上げ、EDF日本支部攻撃陸軍部隊は志摩市に向けて突入していく。それは空気を震わし、志摩市に響き渡る号令へと変える。

ギガンテス10両、ハンターチームが時速75km/hの速度で突出し、突撃していく。

 

「全車、狙えぇ!!」

 

ハンターリーダーが号令し、各車の砲塔に搭載されている140mm砲が小型ヘクトルに向けて照準を開始。優秀なデータリンク能力と姿勢制御能力によって、目標が重複する事なく照準を完了する。

 

「撃ち方始め!!」

 

同時に、10両の戦車の主砲が咆哮。勢い良く打ち出された新型砲弾は、小型ヘクトルの装甲をたやすく突き破り、内部でめちゃくちゃに暴れまくって機能を破壊。僅かな差がありながら、しかしほぼ同時に10機の小型ヘクトルが崩れ落ちて地面に倒れ、爆発。

 

「各個に撃て、輸送船直下まで潜り込むんだ!!」

 

続けて放たれる砲撃によって次々と小型ヘクトルを破壊していくが、同時に小型ヘクトルに装備されてあるマシンガンやレーザー砲、プラズマ迫撃砲による攻撃が開始される。マシンガンとレーザー砲はハンターチームに集中するが、プラズマ迫撃砲はその後方、歩兵部隊へ向かって落ちていく。

 

「散開!!」

 

歩兵部隊は小隊規模で分散を開始。其々が空を睨み、プラズマ砲弾が着弾するおおよその地点に当たりをつけて回避する。しかしずっと完璧な回避をしきれるわけもなく、避けきれなかった者や爆風をまともに受けた者達は大きく吹き飛ばされ、その者達は起き上がって再び走り出すか、それとも2度と動かなくなるかの二択となる。

 

「ッ…!ハンターチーム、処理速度を上げるぞ!もっと注意を此方に向ける!」

『これでもこのじゃじゃ馬を何とか乗りこなしているんですがねぇ!?まぁいいや、派手に突っ込んで大暴れしましょうや!!』

 

ハンターリーダーの指示に、副隊長が景気良く応える。

その中で副隊長が「じゃじゃ馬」と揶揄したのは、彼等が操っているギガンテスそのものである。ハンターチームのギガンテスは、生産性の一切を無視して極限まで性能を突き詰めた最終決戦モデル。最大速度75km/hにも及ぶ機動力に加え、フォーリナー大戦中期に開発された特殊装甲を採用。これによって酸、プラズマ、レーザーに対して有効的な防御能力を手に入れた。内部の電子能力も、陸上自衛隊の10式戦車のC4Iシステム(データリンク能力)や指揮・射撃統制装置を搭載し、効率よく敵に打撃を与える一個の狩人の群れへとギガンテスを進化させる。

 

小型ヘクトルの粒子砲とレーザー砲の弾幕が、ハンターチームに襲いかかる。しかしギガンテスの特殊装甲の前に決定的火力となるには力不足であり、次々と140mmによる反撃で小型ヘクトルが倒れていく。しかし、上空の輸送船6隻からハンターチームの処理速度には劣るが、それでも恐るべきペースで小型ヘクトルが次々と降下していく。

 

『くそ、次から次へと輸送船から降りてくる!!これじゃキリがない!!』

『隊長、輸送船を落としましょう!!』

「ダメだ、角度が悪い!もっと近付かないと有効打にならないぞ!!」

 

輸送船…というより、フォーリナーの大型兵器の殆どは強力な装甲で守られており、弱点以外の攻撃は一切を受け付けない。輸送船の場合、下部のハッチの中にある放出口が唯一の弱点であり、その角度故に陸戦部隊以外では輸送船の撃墜は不可能である。

この短い討議を交わしているだけで、数十発ものレーザーや粒子弾がギガンテスに被弾。まだ問題ないが、こうして被弾し続けていればやがて装甲は疲労し、貫通を許すかもしれない。

が、彼等は構わず突き進む。構わず撃ち続ける。ノーガードの殴り合い、しかし相手は無限大に倒れ、無限大に増える。このままでは限界はすぐに見えていただろうが、この戦場にいるのは彼等だけではない。

 

「撃てぇ!!!!」

 

歩兵部隊から、数百発のロケット砲弾やスナイパーライフルの銃弾の弾幕が展開。彼等が持つ武器も有効射程圏に入り込み、火力戦が始まった。

 

 

 

 

 

 

場面は変わって、EDF日本支部大阪基地 オペレーティングルームへ。

 

「歩兵部隊、交戦を開始しました!」

「輸送船団、現在もなお小型ヘクトルを投下中!!やはり輸送船を撃墜しなければ…!」

「ハンターチームは引き続き機動戦闘を継続!火力と機動力でヘクトルを翻弄し、歩兵部隊の援護を!隙あれば輸送船への攻撃も構わん!!ああクソッ、ハンター2突出し過ぎだ!少し下がれ!!」

 

部隊を管制するオペレーターや状況を逐一観察するレーダー員、そしてEDF日本支部の最高指揮官かつ最終作戦 アイアンレインの総指揮官の大石の怒号によって騒乱となっている。大石もその騒乱に負けぬ程の声を張って各部隊への指示を送りつつ、時には自ら無線機を取って直接指示を送る。

戦況は、互角に近い。火力と射程はEDFが上回っているから小型ヘクトルは次々と倒せているのだが、輸送船6隻から次々と小型ヘクトルが降下してきており、数が思うように減らない。このまま近付けば歩兵部隊の大損害も免れないが、かといって遠距離から削っても輸送船からその分を補充されるだけで、結局は弾と時間と命の無駄な消費に終わる。ならば損害覚悟で防衛線を強行突破し、輸送船団を壊滅させるしかない。

 

「…やっぱり。司令、輸送船団より降下される小型ヘクトルのペースが落ちてきています」

「何?」

「最初は分間72機でしたが、現在は60%程度です。この調子で小型ヘクトルを漸減し続ければ…」

「いずれは輸送船直下まで潜り込めるか…よし」

「大変です、司令!!」

 

新たな戦術指示を出そうと無線機を手に取った矢先、それを止めるかのように一人のオペレーターが声をあげた。

 

「どうした?」

「世界各地で一斉に戦闘が始まりました!世界中至るところでEDFの旗が掲げられているとのことです!!」

「何だと!?すでに各地のEDFは壊滅したはずだろう!!」

旗を掲げているのは、市民達(・・・)です!!生き残った市民達がEDFの旗を掲げ、世界中で戦闘を開始したようです!!彼等は「カインドレッド・レベリオン」と名乗り、各地から続々と、我々に向けて(・・・・・・)通信が入っています!!すべて内容は同じ…!!」

 

 

『幸運を祈る』……以上です!!」

 

 

「…ッ!!!!」

 

その瞬間、大石の頭の中で全てが繋がった。突然の市民達の行動、そしてEDF日本支部に向けたただ一言の通信。その理由と意図を、彼は理解した。

理解したからこそ(・・・・・・・・)、彼は己を激しく嫌悪し、机に拳を叩きつけた。

 

「…ハンターチーム、聞け!!現在飛行船団から降下される小型ヘクトルの数が減りつつある!しかしこれ以上の時間を掛ければ、マザーシップからの砲撃が始まる恐れがある!!故に君達は戦線を全速力で強行突破し、輸送船団を撃破!返す刀で小型ヘクトルを包囲し、殲滅しろ!」

『ハンターチーム、了解!全車行くぞ、後ろは構うな!!』

 

 

 

 

 

 

ギガンテスのエンジンが咆哮し、コンクリート製の壁を突き破る。

視界が開けた刹那、50m先に小型ヘクトル2機と交戦する歩兵部隊を発見。照準し、速射。一機撃破するが、もう一機が脅威(ギガンテス)に気付き、歩兵部隊を無視して砲口を向ける。が、その瞬間歩兵部隊からの全力射撃。ゴリアスとスティングレイによる一斉射は、ダメージを負っていたヘクトルに更なる大ダメージを与え、その巨体をバラバラにした。

ギガンテスは勢いそのままに別方面の援護に向かい、歩兵部隊は続けざまに上空の輸送船へ攻撃。他方面からもいくつかのロケットが飛来し、弱点に合計数十発を受けた輸送船は全機能を停止。地上を向けて垂直落下を開始した。

他の箇所でも小型ヘクトルの戦線を突破し、次々と輸送船へ攻撃、撃墜に成功しつつある。この勢いを保てれば、マザーシップの護衛戦力は殲滅出来る事は明白。

 

だが、そんな簡単に事は運びやしない。

 

突如、マザーシップの下部の装甲が解放。そこからおよそ全長300mの細長い物体が出現し、展開される。

 

『マザーシップから巨大砲台が展開ッ!!』

『…ッ!!全部隊に緊急連絡!!巨大砲台に急速なエネルギー充填を確認!!』

『全員散開しろっ!!急げぇ!!!!』

 

攻撃が一時中断し、全陸軍部隊は回避行動を取る。その最中、展開されたマザーシップの巨大砲台から甲高い音が響き、一部の部品は白く輝き始める。

 

そして。

 

 

──キィィィッ!!!!

 

 

真下から、一直線。巨大砲台から白いレーザーが照射され、そのまま町を切り取るかのように角度を付けて振るわれた。

 

『あ…』

『逃げ』

 

刹那、直線4km、半径200mの範囲が、核に匹敵する業火によって全てを消し飛ばした。

 

地獄は、まだ始まったばかりだ。



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もう1つの前日譚 もう1人の英雄(化物)

皆さん台風19号の備えは十分でしょうか。お気を付けて。

今回は、もう一つの前日譚です。


宇宙の何処かにある、それなりの大きさを持った星系に存在する惑星「ユグド」。

太陽系第3惑星 地球とよく似た大きさを持つその惑星には、これまた地球と同じく人類という種族が繁栄し、地上に文明を築いていた。幾千年にも及ぶ国家群の戦争、滅亡、建国、分裂、統合。幾億もの人々の血を流し、惑星ユグドの世界は漸く2つの大国を分けるのみとなり、少なくとも表面上は確かな平和となった。

 

1つは、ケイン神王国。その名の通り、「ケイン神教」と呼ばれる宗教によって構成された秩序と法によって生まれた宗教国家。

1つは、グラ・バルカス帝国。帝王の名の下に団結し、確固たる秩序を以って戦乱期を生き抜き、凡そ400年の時を経て世界の半分を支配するに至った軍事国家。

 

双方が世界の半分ずつを支配した両国は、それ以降パタリと戦争行為を停止した。数十年にも及ぶ世界大戦に皆が疲弊し、平和を渇望していたのだ。それ以降の両国は若干ながら微妙な関係を保ちつつも、しかしながら確実に発展していった。大国であるが故に軍備もそれなりに割いていたが、戦争をする気などは双方共に全く無かった。が、何からの拍子で戦争行為を行わざるを得ない事態になった時の備えは必要としたのだ。とはいえそんな事にならないよう、外交や貿易などは活発に行なっていた。

世界各地で巻き起こった戦争が漸く終結して武装平和となり、20年が経過した。

 

その平和は、(宇宙)より訪れた異邦人によって砕かれた。

後に「アグレッサー」と呼ばれるようになる彼等は、世界各地に降下。巨大生物や機甲兵器を降下し、侵略を開始した。この未曾有かつ前代未聞の事態に、数日の混乱の後にグラ・バルカス帝国とケイン神王国は直ちに同盟を締結。世界が一丸となって共通の敵を倒すべく、反撃を開始した。

しかし戦況は逆転するどころか、全世界規模の消耗戦と化した戦線は、巨大生物の物量と戦闘能力、そして機構戦力の破壊力の前に次々と崩壊。

 

失陥、失陥、失陥に次ぐ撤退、陥落、滅亡。

 

陸海空、全ての生存圏に確固たる安全など存在せず、アグレッサーはその版図を急速に、あまりにも急速に拡大していった。勿論、人類はそれに対して手をこまねいていた訳では一切無い。アグレッサーの機甲戦力の残骸や巨大生物の死骸などを確保して奴等のテクノロジー等を吸収し、数世代をブレイクスルーした様々な兵器を次々と開発していた。しかし、それでもアグレッサーと人類の戦力差は余りにも絶望的な差が存在していた。

例え多大な犠牲を払ってでも戦術的(部分的)な勝利を掴み取っても、戦略的(全体の)勝利を掴めなければ意味はない。そもそも新兵器の威力がどれだけあろうとも、僅か数百の兵士達に対する幾千幾万のアグレッサーの物量を前に、跳ね返せる力は存在しなかったのだ。

 

アグレッサーとの戦争勃発から僅か1年で、グラ・バルカス帝国とケイン神王国は完全に孤立し、3年でグラ・バルカス帝国植民地の過半数が完全陥落。ケイン神王国は滅亡、惑星ユグドの6割がアグレッサーの制圧下に置かれた。

この時点に於ける人類の残存戦力は、グラ・バルカス陸軍3割、空軍4割、海軍2割、亡命クイラ神王国陸軍4個師団、海軍1個艦隊という惨状。対するアグレッサーの戦力は、測定不可能

敵は余りにも強大、勝ち目などは見えず、ひたすらに繰り返される敗北。それでも絶望に飲まれず、人々が暴走を起こさなかったのは、一重にグラ・バルカス帝国の皇族…グラ家の献身にあった。彼等の支え無くして、アグレッサーに抗い切ることは不可能だったと断言出来るだろう。

 

その彼等が住まう帝都ラグナがあるグラ・バルカス帝国本土は、奇跡的にアグレッサーの侵攻を受けてはいなかった。しかし周辺の植民地は次々と陥落し、遂には全植民地が全滅。僅かな期間を置き、遂にアグレッサーは本土攻撃を開始した。

アグレッサーの母船 ハイブクラフトが率いる飛行船団がグラ・バルカス本土南部の街 シルマグナに向かって飛来しているのを哨戒していた空軍が確認、全軍に通達された。

 

グラ・バルカス軍はシルマグナに向け、飛行船団到来前に到達可能である周辺の全軍を集結。更に最新鋭の武装で固められた精鋭歩兵部隊 フレア大隊を配置。出来うる限りの全火力全戦力を以って飛行船団を殲滅、母船ハイブクラフトさえも撃ち落とし、この戦争に終止符を打つ覚悟を決めた。

 

 

 

 

 

 

「クエイク42小隊全滅!!」

「レイドシップ、更に一隻撃破!!第9戦車部隊前進再開!!」

「エリア5-4にて巨大生物出現!!」

「空軍に空爆支援を要請しろ!!陸軍の足を止めさせるな!!」

 

帝都ラグナに存在する、グラ・バルカス軍総司令部。オペレーティングルームには数十人のオペレーターと十数人の士官と今作戦に出撃する各軍の司令長官、そして時の帝王であるグラ・ルークスが居た。

国の興亡を賭けたこの戦いに、グラ・ルークスは静かに見守っている。それを忘れ、各人は己の使命を全うしていた。

 

「クソ、なんてこった!!海軍がアグレッサーの奇襲を受けて大打撃を受けました!!以後の支援不可能!!」

「何だとっ!?このタイミングでか…っ!!」

「フレア大隊、エリア5-3突破!!後続部隊もフレア大隊が開けた穴を拡大しています!!」

「よし良いぞ!!このまま行ってくれフレア大隊!!」

「第19爆撃隊、敵制空エリア強行突破!巡航ミサイルを発射しました!!」

 

現在の戦況は、グラ・バルカス軍が優勢。機甲戦力や空海軍の惜しみない支援を受けていた陸軍が巨大生物の大群を、数的不利をものともしない程の大火力で押し潰し、低空で滞空しているハイブクラフトに肉薄しようとしていた。

ハイブクラフトは鉱山を浮かせたような見た目をしているが、その鉱山部分には膨大なエネルギーが蓄えられており、防御力も極めて高い。海軍の主砲攻撃による撃墜が不可能となった今、残された手段は、陸軍によるハイブクラフト下部の浮遊ユニットの破壊しか残されていなかった。

 

「ハイブクラフト下部ユニットより主砲出現!!」

「何だと…?」

「主砲に高エネルギー反応確認!尚も増大中!!更にハイブクラフトが陸軍部隊へと接近しています!!」

「まさかっ…!?全陸軍部隊を至急退避させろ!!消し飛ぶぞ!!」

「駄目です、間に合わない!!」

「巡航ミサイル、着弾まもなく!!5、4、3、2、1、今ッ!!」

 

瞬間、第19爆撃隊が死力を尽くして発射された3発の巡航ミサイルが、ハイブクラフトの主砲に着弾。大爆発が主砲の根元を覆うが、一瞬、遅かった。

主砲中央以外の先端部から6つの赤細いレーザーが照射。それは直ぐに一つに収束し、地面に着弾。刹那、主砲中央先端部から膨大なプラズマエネルギーが照射。それはレーザーに乗って光速に近い速度で地面に激突し、全方位に解放した。

 

 

刹那。

爆発と同時に、地面をなぞるように、超音速で約3000℃の爆風と衝撃波が拡散した。

 

 

「…………ああ…………」

 

1秒経過するだけで、数十数百のPAギアの反応が消失していく。その数十倍の数のアグレッサーが巻き込まれているとはいえ、この被害は尋常な物ではない。

 

「被害確認!!」

「…クエイク部隊、およそ3割が消滅(・・)………フレア、大隊………PAギアの反応、確認、出来ません…」

「………は?」

「…虎の子の精鋭歩兵部隊が、たった一撃で、消滅した。そういう事だな?」

「………その通り、です」

「そうか………」

 

 

「…現時刻を以って作戦は中止。残存部隊は直ちに撤退し、防衛ラインを後退させろ」

 

 

グラ・ルークスの決断に、三将の一人であるジークスが声を上げる。

 

「お待ち下さい、皇帝陛下!陸海軍は確かに大打撃を受けましたが、空軍はまだ大打撃を受けておりません!まだ諦めるのは──」

「陸海軍と比べれば(・・・・)、だろう?空軍の損害も最早無視出来る段階ではない、兵を無駄死にさせる事は許さん」

「ッ…………わかり、ました」

 

短い討論が終わり、撤退が始まる。ハイヴクラフトの主砲によってアグレッサーごと吹き飛ばした事もあって、初動は予想以上に早く進みそうだ。

が、アグレッサーのレイドシップが戦力投射を開始。今はまだハイヴクラフトを守る様に固まっているが、直ぐに撤退する部隊を押し潰しにかかるだろう。

状況を見極め、殿部隊(捨て石)を配置しようとした瞬間、一つの声が遮る。

 

「フレア大隊のPAギア反応を確認!!生存者が居ます!!」

 

 

 

 

 

 

『聞こえますか!?此方は総司令部です!!』

「……き………こぇ、る…………」

 

「彼女」は、酷く焼けた喉を微かに震わせた。

その姿は酷いものだ。全身に深達性Ⅱ度熱傷及びおよそ80箇所の骨折を負い、右腕は飛んできた瓦礫によって根元から切断された。呼吸をするだけで全身に痛みが…いや、全身を深く焼かれた彼女に最早痛覚さえも存在しない。そんな状態で彼女は生きていた。

しかし、どういう事か。少しずつではあるが、パリパリと全身に渡って焼かれた皮膚が不自然に剥がれ、その下から火傷の跡さえ無い綺麗な肌(・・・・・・・・・・・・)が見え始めた。

 

『現在作戦は中止、全部隊が撤退を開始しています。動けますか?』

「……いま……なの、ましんの……さぃせい、しょち…………もうすこ、し…で………うご、ける……」

 

喉に古い皮膚(焼けた残骸)が絡み始め、堪らず咳き込んだ。ケホケホと苦しむ度に、口から黒い欠片が唾と共に大量に排出される。

 

『了解しました。直ぐに救援部隊を編成して──』

ケホ、ケホッ…その必要は、無い

『…え?』

「フレア大隊第1中隊は再生処置が終了次第、アグレッサーに突撃を開始する」

 

通信の向こう側の空気が凍ったのを感じつつ、骨折が完治(再生)した左腕を使ってゆっくりと上半身を起こす。その動きに合わせ、ポロポロと上半身からも黒い欠片がポロポロと零れ落ちる。

欠損した右腕を見れば、ミチミチと嫌な音を当てて少しずつ、PAギアと服を含めて再生されている。後1、2分程度で元に戻るだろう。

 

『自分が何を言っているのか、分かっているのか?』

「分かってる。だけど誰かが殿を努めなきゃ、追撃するアグレッサーにやられる。時間を稼ぐだけなら、近くて最も気軽に捨てやすい(・・・・・)私が一番の適役」

『…お前は、それで良いのか?』

「…私は何十人の友達を見殺しにして、此処にいる。皆の為にも、無駄死にするつもりもない。死ぬのなら、散々に暴れまわってから死ぬ」

 

両脚の骨折の完治(再生)が完了。火傷自体はまだ処置途中(再生途中)の為、全身に痛みが走っているが構わず立ち上がる。右腕はもう間も無く処置(再生)が終了する。

立ち上がった彼女は、取り敢えず全身に張り付く鬱陶しい黒い欠片を振り払う。粗方終わった所で、周囲を初めて見渡した。

 

 

静寂。

 

 

数分前まであった文明は、全てが廃墟となり、華やかさなどは最早存在しない。そして彼女以外に人の影はなく、レーダーを見ても生存者の反応は無い。人が居た証拠となるのは、バラバラに破壊されたPAギアや僅かに残った人の欠片、破壊された武器。それだけだった(・・・・・・・)

 

『…良いだろう、許可する。行ってこい』

「ありがとう。…所で、貴方は誰?最初のと声が違うけど」

『…そうか、確かに双方共に名乗ってはいなかったな』

 

『私の名はルークス。グラ・ルークスだ』

 

「…皇帝、陛下?」

 

流石の彼女も、驚愕の色を隠せなかった。たかが一兵士が、皇帝と会話をしているという事態になっているとは思いもしていなかったのだ。

 

『位の差など、どうでも良い。君の名は何だ?』

「…クローサー」

『では、クローサー。グラ・バルカス帝国皇帝として命ずる。残存部隊の撤退が完了するまで、アグレッサーへの陽動を実施せよ』

 

 

『そして、必ず生きて帰還しろ。それ以外は一切許可しない』

 

 

「…!」

『私は、喜んで誰かを捨て駒にするつもりは無い』

「………了解。これより行動を開始する、通信終了」

 

通信を切り、緊急で再生処置外に設定された、防御として最早機能しないヘルメットを取る。素顔が現れ、完治(再生)し終えた両手で纏めていた髪を解く。軍規違反の行動だが、最早それを咎める者も居ない。

その最中、使える武器を探す。彼女が持っていた武器はソード(MC-アークソードType.SXS)ロケットランチャー(FX-キュロスII・コンクェスト)だが、ソードはハイヴクラフトの主砲攻撃で喪失した。

流石にロケットランチャー 一本では、アグレッサーの大群に対抗する事は難しい。せめてもう一つ、何かしらの武器が欲しい。

 

「…」

 

ふと、視点が一つに固定される。約25m先に落ちている、紅い剣。誰かの遺品かと思いつつ、まだ使える事を願いながら柄を掴んで拾い上げる。

見たところ、損傷も無い。引き金を引けば、刀身から蒼い電流を纏う。問題無しと判断し、PAギアに武装登録。すると空間ウィンドウに武器名が表示された。

 

AM-シン・アークセイバー。

それが、彼女が手に入れた新たな刃。

 

数回素振りを行なって感覚を確認しつつ、同時にPAギアの機能を点検し、ナノマシン再生機能やワイヤー射出機能に問題が無い事を確認。

レーダーと目視によると、アグレッサーの戦力はハイヴクラフト1、レイドシップ6、ストームアンドおよそ千、スコージャー及びシディロス数十。

対する人類戦力は、彼女一人。

 

グラ・ルークスが命じたのはあくまでも「アグレッサーの陽動」。アグレッサーの特徴の一つとして、アグレッサーに最も近い人間に対して攻撃する(・・・・・・・・・・・・・)事が挙げられる。つまりは極端な話、近くで逃げ回るだけでアグレッサーを陽動するには十分だ。

しかし彼女は、彼女の目は。未だに諦めるという事を知らなかった。

 

遠くから、黒い波が、来る。

彼女はその光景を見てもなお、怯まない。ゆっくりと歩き出し、少しずつ、少しずつそのペースを上げていく。アークセイバーの引き金を引き、電流を纏う。

 

さぁ、行こう(始めよう)最後の戦いへ (彼女の伝説を)

 

 

「オォアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

 

たった1人の、宇宙戦争を。



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第0章 設定集&本編前時系列(9/26更新)

-お知らせ-
少しだけ勇気を出して匿名を解除し、活動報告にてリクエストを受け付ける事にしました。
あらゆるリクエストを受け付けます、リンクは此方に。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=218251&uid=56685


今話は本編の更新ではありません。
現在、第5章までの設定を纏めています。
当然山のようにネタバレがありますので、初見の方々はこれより下は決して閲覧しないようにお願いします。























それでは、設定集をご覧下さい。


国家

 

EDF

厳密に言うと国家ではないが、此処に記述する。連合地球軍。2015年2月1日に結成された超法規軍であり、かつては150万人とアメリカと同等の戦力を持っていたが、フォーリナー襲来によって壊滅。2028年現在は30万人と大幅に縮小したが、フォーリナーのテクノロジーを吸収した事により、襲来前にも劣らない戦力となった。

フォーリナー大戦によって世界各国が崩壊した為、世界政府としての機能も併せ持っている。

 

EDF日本支部

本作品に登場する国家の主人公枠。

日本に駐屯するEDF部隊の司令塔であり、日本統治機構。フォーリナー大戦に於いて、最後まで部隊の指揮を取っていた唯一の本部。マザーシップ撃墜の功績により、転移前はEDF総司令部にも劣らぬ発言力があった。

しかし2028年6月28日、突如としてEDF日本支部…つまりは日本列島が異世界に転移。約2日間の混乱の後、空軍及び海軍による周辺探索を開始。その際にロデニウス大陸のクワ・トイネ公国を発見し、隣国クイラ公国と共に国交を締結。フォーリナー大戦以前のインフラを輸出し、対価に貴重な天然食料と地下資源を手に入れることに成功する。

その直後、ロウリア王国がクワ・トイネ公国に宣戦布告してギムの虐殺を引き起こす。それを聞いたEDF日本支部は直ちにクワ・トイネ公国防衛とロウリア王国撃滅の為に宣戦布告及び、第7艦隊と第3師団をロデニウス大陸に派遣。超過火力でロウリア軍とロウリア領土を蹂躙し、戦争を早期集結させる。その後、オペレーション・パルヴァライゼーションに基づいてパーパルディア皇国に宣戦布告。電撃戦によってパーパルディア皇国を骨抜きにし、元パーパルディア皇国植民地にフィルアデス連邦を建国。事実上、第三文明圏の盟主となる。

人口は3600万人。フォーリナー大戦によって決意(覚悟)をキメきってる為、国家単位のジェノサイドにも殆ど抵抗が無い。寧ろ敵ならそれを推奨してしまうレベルでキメている(狂ってる)。そのような背景もあり、ストーリーの再構成の遠因になってしまったが…

 

グラ・バルカス帝国

もう一つの主人公枠。

転移する7年前、惑星ユグドに降下して来た惑星外侵略存在「アグレッサー」と5年間の星間戦争を経験。最終的にグラ・バルカス本国以外の世界に大打撃を負い、残存していた生存者や軍を別け隔てなく、可能な限り本国に集結させて反撃の時を待った。しかしその矢先に転移現象が発生。周辺の調査を行った後、周辺国家との国交開設の締結を試みた。しかし接触した第二文明圏の多くの国が攻撃的で、グラ・バルカス帝国への認識が文明圏外国であった為に各国にさんざん軽くあしらわれ、それでも諦めずに国交開設に出向いていた皇族を含んだ使者団が、パガンダ王国によって処刑される事件が発生。この行いによってグラ・バルカス帝国の全臣民と皇帝の怒りを買い、今まで接触をしてきた全ての第二文明圏文明圏外国に宣戦を布告。その最中、パガンダ王国を保護していた第二文明圏列強国レイフォルが宣戦布告したものの、グレード・アトラスターによってレイフォル首都は灰燼と化し、植民地化する。

その後、オペレーション・パルヴァライゼーションによって世界にその存在を知らしめたEDF日本支部と接触。自国の歴史を公開し、国交開設及び軍事同盟締結に成功した。

 

クワ・トイネ公国

EDF日本支部がこの世界に転移した直後に、初の接触が行われた国家。天然食料に飢えていたEDF日本支部にとって、天然食料が腐る程にある国家が天然食料を(EDF日本支部から見て)超安値で輸出してくれているのはとてもありがたい事であり、EDF日本支部の対応は地下資源を輸出しているクイラ王国と同等の最恵国待遇としている。

ロウリア戦争に於いて亡国の危機となったが、参戦したEDF日本支部によって免れる。その代わりとして、ロウリア戦争の戦後処理の殆どを丸投げされたが。

 

ロウリア王国

クワ・トイネ公国の隣国。人間至上主義と亜人殲滅を国是としていた為、パーパルディア皇国の軍事支援を受けて宣戦布告。国境の街 ギムにてクワ・トイネ公国の国民を虐殺した結果、EDF日本支部の逆鱗に触れて亡国となった。

本編では特に触れて無かったが、ストームチームとオメガチームによって捕らえられた国王 ハーク・ロウリア34世は戦争終結後、クワ・トイネ公国に引き渡されて処刑された。

 

パーパルディア皇国

第三文明列強国。極めて強硬な政策で72ヶ国を併合し、属領の疲弊を無視した急激な領土拡大政策や強権支配を行なっている。

第4章であまりにも一方的にフルボッコし過ぎた為、戦争経過の再構成が決定。どちらにしろボコボコにされる運命は変わらないが。

再構成後はEDF日本支部との戦争で敗北し、ヤマト条約と呼ばれる終戦条約を締結。全属領全奴隷を失い、魔導技術と工業力を喪失するなど、多大なダメージを受ける事となる。更に半年後、元属領のフィルアデス連邦より、報復戦争を布告され、滅亡した。

 

フィルアデス連邦

再構成後、ヤマト条約によって独立した72ヶ国をEDF日本支部が主導の下、72ヶ国を連邦化してマルタ州(元マルタ王国)に首都を置いた新興国。

EDF日本支部の対フォーリナー戦略により強力な技術支援と復興支援、ヤマト条約によるパーパルディア皇国の多大な賠償金を受けて半年で急速に発展。

国力と軍事力を付け、怨敵パーパルディア皇国に対して報復戦争(殲滅戦)を宣言した。

フィルアデス連邦に関する設定リクエスト(州名及びその州に関するプチ設定など)も受付中。

 

アルタラス王国

第三文明圏外国。再構成による影響はほぼ無く、EDF日本支部の援軍によって亡国になる事も無かった。

 

パガンダ王国

グラ・バルカス帝国との接触時、国交締結に際して色々と吹っかけて外交団を怒らせた挙句、傲慢にも不当に拘束して処刑した。その結果グラ・バルカス帝国の逆鱗に触れ、文字通りのジェノサイドをされる事となった。

 

レイフォル

第二文明圏列強国。保護国のパガンダ王国を滅ぼされた事に怒り、宣戦布告するものの逆に滅ぼされる。

 

ムー

第二文明圏列強国。古代地球のムー大陸が転移してきた国家なのだが…EDF日本支部の指針も関係し、かなり空気な不憫枠。

 

神聖ミリシアル帝国

第一文明圏列強国であり、世界最強(笑)な国家。

技術自体は転移国家のEDF日本支部やグラ・バルカス帝国を除けば確かに世界一だが、ラヴァーナル帝国の置き土産を解析、複製したに過ぎない。しかもその複製の仕方もかなり悪く、ジェットエンジンのバイパス比がめちゃくちゃで510km/hが精々だったり、大艦巨砲主義の面もあって海軍や空軍の実力は思う以上に高くない。陸軍はそれなりだが、逆に言うとそれなり程度の実力しかない。しかも決戦兵器もラヴァーナル帝国の古代兵器を半端な性能でどうにか動かしてるだけ。軍事兵器関連での独自技術は恐らくほとんどない。

古代技術の根本をよく理解せずに複製したりしているため、そのような事になっている。…こんなんでラヴァーナル帝国と本気で殺り合う気なのか?

 

ラヴァーナル帝国

かつて全世界を支配していたと言われる魔法帝国。神話でしかその存在が語り継がれていない。

 

 

登場兵器

AF20

EDF日本支部レンジャーの標準装備の一つ。フォーリナー大戦後期に開発されたアサルトライフルだが、安定した性能と信頼性の高さが評価され、10年経過した現在も標準装備の一つとして採用されている。

 

AF100

ストームチームレンジャーの標準装備。フォーリナー大戦最後期に開発されたアサルトライフルであり、その威力はAF20の2倍を誇る。しかし製造技術はフォーリナー大戦時に失われており、再製造は現在不可能。

 

ストリンガーJ9

AF100と同じく、製造技術が失われた兵器。反物質弾を発射し、射程内に存在するあらゆる物質を消滅させながら咲き進む。

 

E551ギガンテス

140mm砲を装備したEDFの主力戦車であり、フォーリナー大戦の教訓を活かして製造された第5世代戦車。

140mm砲の火力、戦車ならではの強靭な装甲、強力なエンジンによって生み出される軽快な機動性。全てに於いてバランスが取れた性能であり、EDF機甲部隊の中核を担う、信頼性が極めて高い兵器である。

 

E651タイタン

全長25mの重戦車。36cm主砲を装備し、主砲砲塔の上に更に140mm砲塔を2つ搭載し、副砲としている。

EDF兵士の間ではタイタンの事を「陸上戦艦」と呼ぶ者もいる。

 

BM03ベガルタ

ギガンテスやタイタンのような戦車と異なり、ベガルタは二足歩行兵器となっている。当初ベガルタは閉所に於ける機甲戦力として製造されたが、今現在では汎用型、重装型、接近戦闘特化型、対空型の計4つのシリーズに分かれ、其々の運用目的に合わせた武装やスペックとなっている。

 

BMX10プロテウス

全長25mの巨大人型ロボット、通称ギガンティック・バトルマシンとも呼ばれている。

この巨体の装甲は最早小型要塞にも匹敵する強靭さであり、武装は203mm砲を速射するバスターカノン2門、30連装マルチミサイルランチャー。単純だがそれ故に分かりやすい超火力を持つこのプロテウスは、各EDF機甲部隊の最高火力を担っている。

 

ファイター

フォーリナー大戦後に生まれた第6世代戦闘機であり、フォーリナーのテクノロジーをふんだんに使用したEDF最強かつ唯一無二の制空機。

カナード付きデルタ翼機であり、推進力となる双発エンジンには3枚パドル式左右独立三次元推力偏向ノズルを採用。更に各所に補助用の小型ブースターを取り付けており、低速時には小型ブースターを使用して戦闘機とは思えぬ超機動を行う事が出来る。

搭載兵器は30mmレーザー砲2門、最大24の目標を同時に撃破可能な全方位多目的ミサイル誘導システム「ADMM」、汎用レールガンユニット「EML」の3種。

最高速度はマッハ4に達し、巡航速度もスーパークルーズとなるマッハ2を発揮する。

 

爆撃機ミッドナイト

フォーリナーの機甲戦力に対して投入される大型爆撃機。

最高速度マッハ3、巡航速度マッハ1.4、爆弾積載量420t、爆弾倉1つ。

 

爆撃機カロン

フォーリナーの主戦力、巨大生物に対して投入される中型爆撃機。

最高速度マッハ3.4、巡航速度マッハ1.8、爆弾積載量300t、爆弾倉3つ。

 

要塞空母デスピナ

全長1400mもの超巨大空母であり、決戦要塞X5としてEDFの総力を持って建造された、対フォーリナー決戦兵器。

空母としての機能は勿論として、マザーシップの攻撃にも耐え得る強靭な装甲を持つ。

武装面は汎用主砲として4基8門の51cmレールガン連装砲、対空兵装として360基の巡行ミサイルVLS、420基の35mmCIWS、対地支援用として4基の超大型巡行ミサイルVLSを搭載。

機関は核融合炉であり、その恩恵を受けて最大速力は30kt。

デスピナ内部に簡易的な兵器製造機構、食料生産機構を備える等、無補給でも暫くは継続戦闘が可能となっており、正に「要塞空母」と言わしめるに相応しい性能を持つ。

 

セントエルモ級イージス戦艦

EDFが誇るイージス戦艦であり、ベースはイージス艦であるものの、あらゆる状況に対応するように様々な改造が施されている為、原型はあまり残っていない。船体は三胴船型と波浪貫通タンブルホーム船型を掛け合わせたような形状になっている。

全長は310.1m。

武装は38cmレールガン連装砲7基14門、連装型35mmCIWS24基48門、8連装水平ミサイル発射機9基、ミサイルVLS72基、組み立て式小型テンペストA0ミサイルVLS1基を搭載。装甲はマザーシップの主砲を除く攻撃に有効的に耐える事が可能。

最大速力は40kt。ヘリやVTOL機を離発着させる小型飛行甲板まで装備しており、EDF海軍の主力艦として採用されている。

 

アイオワ級フリゲート艦

EDF海軍艦隊の直衛艦として近接防空力に特化するよう設計された。その際にアイオワ級戦艦を参考に設計された為、まるでアイオワ級がスケールダウンしたような印象を持つ。中でも多数配備されている20mm機関砲は自動迎撃システムが不具合を起こした際に備え、手動照準と手動発射が行えるように設計されている。

全長241m。

武装は28cmレールガン3連装砲3基9門、12.7cm連装砲8基16門、20mm自動迎撃システム付き連装機関砲80基160門。

 

120cm対地対空両用磁気火薬複合加速方式半自動固定砲 ストーンヘンジ(登場作品:エースコンバット)

EDFが開発した決戦要塞X6。

対宙迎撃砲リニアキャノンはマザーシップを破壊するには十分な威力を持っていたが、赤道上にしか設置できないという欠点があり、万が一迎撃に失敗した際には、リニアキャノンは地球上の支援砲撃には一切使用出来ないという欠点があった。その為、能力を落としてでも対空用に転用可能かつ、赤道上以外の箇所も配備できるような対宙砲が求められた。

火薬による発砲と電磁加速を併用したハイブリッド式地対空宙レールガンであり、大気圏内の射程は1200kmにも及ぶ。使用砲弾は榴弾、対フォーリナー装甲用特殊貫通弾 グラインドバスター。その威力は対マザーシップ以外では余りにも強力な為、対地対空支援として使用するには、着弾地点が廃墟となる事は必然である。その為通常の作戦で使用される事はまず無いと言ってよく、使用される作戦は大規模作戦…つまりは数万以上の巨大生物や四つ足歩行要塞などと言った場合にのみ使用される。

欠点として、ストーンヘンジの超射程を達成する為には専用の核融合炉と1基につき数百の超大型コンデンサーを必要とする為、ストーンヘンジの建造は実質的な要塞化を強制される。その為、ストーンヘンジは例外的に決戦要塞X6としてのナンバリングを持つ。

ストーンヘンジは試作型を含めて9基製造されており、其々がタイプXとしてナンバリングされる。日本支部も建造を検討したが、立地的問題により頓挫する。そこで日本支部は立地的問題を解決する為、決戦要塞X7…全長1800mの船体に、砲口径を100cmにスケールダウンしたストーンヘンジを2基も搭載するなどと言う、狂気の沙汰としか思えない()兵器を独自に発案、建造する事になる。

 

要塞戦艦ヤマト

EDF日本支部が発案、3年もの歳月を掛けて建造した決戦要塞X7。

第二次世界大戦時に建造された世界最大の戦艦大和の設計をベースに、超拡大発展させた対フォーリナー決戦兵器。

全長は1800mにも及ぶ超巨大戦艦であり、単艦でマザーシップを撃破可能とする能力を保有する。対マザーシップ戦闘に特化する為、搭載兵器はテンペストミサイルを除き、全てが艦砲となっている。

主砲は決戦要塞X6から転用された100cm磁気火薬複合加速方式艦砲2基、副砲として38cmレールガン連装砲を24基48門、両用砲として12cmレールガン3連装砲を300基900門装備。そして煙突型装甲に守られたテンペスト発射機を1基搭載。

主砲発射の反動は、例え1基のみの発射でも1800mの巨体でも吸収しきれず、何の対策もなく行えば転覆等の船体バランスの崩壊は必至。その対策として「対反動装置」として超高出力の人工重力発生装置を2基搭載。発射時にはヤマトに対して発射の反動を打ち消す程の超重力を一瞬のみ発生させ、同時にヤマト内部にその超重力に押し潰されないよう、船外重力とは異なる重力を展開して上書きする事により、強引ではあるが、事実上の低反動で主砲の発射を可能とした。尚、対反動装置の使用方法を応用すれば、空中を「落下」することによって超高速で航行する事も不可能ではない。

機関として核融合炉2基を使用しているが、主砲と人工重力発生装置の必要電力量は極めて多く、核融合炉から生み出される電力を以ってしても全武装の同時使用は不可能。主砲と副砲、副砲と両用砲の同時使用が限界である。

対空戦闘時には、副砲と両用砲全門の交互撃ち方によって速射性能を限界まで高め、合計秒間948発の弾幕によって飛行ドローンの物量に対抗する。全弾がマッハ7で飛来する対空弾幕の前に、幾千幾万の飛行ドローンは悉く撃墜されていくであろう事は、言うまでもない。さらにその火力は対地…幾万の巨大生物に対しても圧倒的な殲滅力となるだろう。

防御面は四つ足歩行要塞に搭載されていたフォースシールドを流用して搭載。ヤマト全域を覆うフォースシールドは、マザーシップの巨大主砲の火力さえも完全防御可能であるが、使用のためにはコンデンサー内の電力を大量に放出する必要がある為、此処ぞという場面でしか使用する事が出来ない。

余談だが…ヤマト建造を決定した事を総司令部や各支部に発表した際、総員から「変態の所業とか言うレベルじゃないの分かってる?」とやんわりとした形で正気を疑われた。

 

かんしゃく玉兵器

言わずと知れたEDFのネタ兵器。当初は登場させる予定は一切無かったのだが、感想欄に於いて登場を期待する声が複数挙がった為、一から設定作ってシリアスに登場するよう調整された。

現時点で登場したかんしゃく玉兵器は「1t級クラスター式かんしゃく玉爆弾」、「対地対空両用近接信管型キャニスター式かんしゃく玉砲弾」、「対空用近接信管型全方位拡散式かんしゃく玉砲弾」の3つ。

尚、キャニスター式かんしゃく玉砲弾は試作品止まりの為、再登場する予定は現在無い。

 

 

時系列(フォーリナー大戦:日本列島/抜粋)

2013年7月17日

宇宙からの電波を受信、地球外生命体の存在を確認。

 

2015年2月1日

有事に備え、連合地球軍「EDF」結成。

 

2017年4月1日

地球外生命体「フォーリナー」襲来、地球侵略開始。

 

4月1日〜10日

世界各国が混乱状態。巨大生物と輸送船団との関係性が掴めず、攻撃しなかった事が災いし、輸送船団が巨大生物を投下されるのを確認されるまで、フォーリナーは悠々と巨大生物を投下していった。

 

4月16日

大空戦。世界各国の空軍が集結し、マザーシップの撃墜を試みた。結果、マザーシップ到達前に飛行ドローンの迎撃を受け、壊滅。以降全世界の制空権はフォーリナーの物となり、EDF及び各国軍は陸海軍のみの抵抗戦を強いられる。

 

4月24日

円盤撃墜作戦。強靭な装甲に守られた輸送船の弱点を発見し、世界初の撃墜に成功する。

 

5月2日

フォーリナーの戦闘兵器 ヘクトル兵団に対して津川浦海岸と千条ヶ原海岸に防衛線を展開。津川浦防衛線は作戦成功するも、千条ヶ原防衛線は崩壊。翌日には市街戦に突入、決して少なくない損害を払ってヘクトル兵団の殲滅を完了する。

 

5月13日

巨大生物の巣を確認。直ちに歩兵部隊が突入するが、想定を遥かに超える物量を前に撤退を余儀なくされる。

 

5月17日

蜘蛛型巨大生物の出現を確認。

 

6月2日

マザーシップが日本近海に飛来。四つ足歩行要塞を投下。四つ足歩行要塞のプラズマ砲撃により、一つの市街地が壊滅的被害を被る。

 

6月3日

四つ足歩行要塞進行阻止作戦。関東壊滅を阻止するために発令されたが、余りにも性急過ぎたためにEDF日本支部及び陸上自衛隊の両軍の戦力が随時投入された為、多大な被害を被った上に作戦も失敗する。これにより、関東全域は四つ足歩行要塞のプラズマ砲撃に晒される事となる。

 

6月4日

関東郊外に複数の巨大生物の巣穴が確認。破壊に成功。

 

6月9日

地底再突入。しかし作戦途中、全長40m以上の超巨大生物 ヴァラクが出現し、作戦は中止される。

 

6月11日

対超巨大生物作戦発動。討伐に成功する。

 

7月3日

遠距離支援型ヘクトルの兵団を確認。プラズマ砲撃を受けながらも撃破に成功。

 

7月14日

赤蟻型巨大生物出現。

 

7月20日

地底進攻作戦(第三次巣穴掃討作戦)開始。2週間にも及ぶ戦闘及び侵攻の末、巨大生物の女王の撃破に成功。しかし突入部隊の7割が壊滅する大損害を負った。

 

8月10日

輸送船より小型ヘクトルが投下。防衛線を突破した空挺急襲により、降下地点は大きな被害を受ける。

 

8月22日

ヘクトルの大兵団との市街戦。投入された機甲部隊及び歩兵部隊の6割の損害と引き換えに殲滅に成功。

 

9月7日

蜘蛛型巨大生物の大軍団と狙撃大隊が交戦。壊滅的被害を被りつつも殲滅に成功。

 

9月18日

四つ足歩行要塞が停止。EDF陸軍が急襲を試みるものの、撃破に失敗。

 

9月20日

四つ足歩行要塞破壊作戦。EDF日本支部陸軍と陸上自衛隊の総力を投入し、撃破に成功。しかしこの作戦により、EDF日本支部陸軍は戦力の大半を喪失。陸上自衛隊は壊滅状態に陥り、単独の組織的行動が事実上不可能となる。以降の陸上自衛隊は、EDF日本支部陸軍の指揮下に入る。

 

9月24日

マザーシップ撃墜作戦。結果はマザーシップの砲撃により攻撃部隊が壊滅し、失敗。

 

10月1日

関東に2体のヴァラクが出現。ALレーザー銃を装備した特殊歩兵部隊の活躍により、撃破に成功。

 

同日

人類の人口はフォーリナー大戦前の半数以下となる。

 

10月10日

巨大生物の巣穴に強行突入。多大な被害を受けながらも掃討に成功。

 

10月12日

巣穴掃討を逃れた女王型巨大生物数体及び子体の大群を掃討。

 

10月15日

日本全土の巨大生物が関東地方に行進。十数万の巨大生物との交戦に入る。辛勝するも、残存機甲戦力は壊滅。海軍もこれを支援しようとしたヘクトル兵団と交戦し、相討ちとなる。

 

同日

数十万との巨大生物の戦闘により、関東平野は壊滅。自律軍事衛星ライカとの通信が途絶。

 

10月16日

精鋭飛行ドローン、別名「レッドカラー」が欧州司令部に飛来。欧州司令部は壊滅する。

 

10月18日

レッドカラーが関東に出現。決死隊によって全機撃墜に成功。

 

同日

北米戦線完全崩壊。マザーシップの砲撃により、EDF総司令部壊滅。総司令部権限が南米支部に移行。

 

10月25日

超巨大生物 ヴァラク・サイボーグが出現。出撃部隊の半壊と引き換えに討伐に成功。

 

同日

欧州司令部、北米司令部に続き、南米司令部も壊滅。中東、極東、シベリアからの連絡も途絶え、組織的な抵抗を行えているのは日本支部のみとなる。

 

11月2日

廃墟となった東京にフォーリナーの大軍団が集結。少数の決死隊により撃破に成功。

 

11月9日

再びフォーリナーの大軍団が日本列島に襲来。包囲下に置かれたEDF日本支部は総力を以って抵抗し、奇跡的に撃退に成功。

 

11月14日

マザーシップが日本近海に飛来。EDF日本支部は最終決戦に向け、最後の攻撃部隊を編成。

 

11月16日 10:00

最終作戦「アイアンレイン」発動。マザーシップ及び護衛飛行船団への攻撃を開始。

 

10:17

世界中のレジスタンスが、EDF日本支部の援護の為決起。マザーシップを孤立させる為、市民達の決死の攻撃が全世界で行われる。

 

10:37

護衛飛行船団壊滅。攻撃部隊がマザーシップへの肉薄に成功する。

 

10:38

マザーシップの巨大主砲が出現。砲撃により2割の攻撃部隊が壊滅。

 

10:51

マザーシップの巨大主砲の破壊に成功。

 

10:52

約200の浮遊砲台がマザーシップより展開。苛烈な砲撃を開始。

 

10:57

マザーシップの下部に弱点を発見。しかし攻撃部隊は壊滅状態に陥り、単独の肉薄は不可能な状態だった。

 

11:01

攻撃部隊を再度マザーシップ直下に肉薄させる為、EDF日本支部及び航空自衛隊の残存航空戦力が決死の突撃を開始。

 

11:06

残存航空戦力全滅。攻撃部隊、再度の肉薄に成功。弱点に総攻撃を開始。

 

11:19

マザーシップ、活動停止。

 

11:20

マザーシップが再稼働、戦闘形態に移行。10本の巨大砲台が出現。本当の総火力が攻撃部隊に向けられた。

 

11:27

攻撃部隊との通信途絶。

 

11:30

戦線離脱した攻撃部隊の生存者により、ストーム1がマザーシップと交戦状態を継続している事が判明する。

 

11:32

一部の兵士達がストーム1を援護する為、独自に戦線復帰。

 

11:38

レンジャーチーム2名、ストーム1との合流に成功。

 

11:42

自律軍事衛星 ライカの通信が復旧。独自行動を開始。

 

11:45

ライカ、マザーシップに対して主砲メガリスを発射。砲身が融解するも、6割の上部浮遊砲台を破壊。同時にNX大型巡航ミサイル50発を発射。

 

11:48

マザーシップの迎撃を掻い潜ったNX大型巡航ミサイル24発が巨大砲台4基に着弾、破壊に成功。マザーシップの火力は大きく削がれた上、火力網に穴が生まれたことにより、戦線に復帰する兵士達のストーム1への合流を可能にした。

 

12:03

マザーシップ、大破。

 

2017年11月16日 12:19

マザーシップ、撃墜。

 

同日

マザーシップ撃墜後、残存飛行船団は地球より撤退。

 

2018年10月30日

アリゾナにて最後の巨大生物が撃滅。巨大生物の駆逐が宣言される。

 

2018年10月31日〜2028年6月27日

世界復興の活動が本格的となる。

 

2028年6月28日

EDF日本支部及び日本列島、異世界に転移。



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第1章 転移 第1話 転移

閃いてしまって書かずにいられなかった。何処まで書けるかな…頑張ります。


その日、人類は勝利した。

2017年4月1日、地球上に降下した地球外生命体「フォーリナー」は地球の侵略を開始。2013年の観測を切っ掛けに結成された地球連合軍「EDF」を筆頭に人類は抵抗戦争を開始。しかしその戦争は、余りにも絶望的だった。

僅か15日で全地球規模で制空権を喪失。残った陸軍海軍も奮戦するも、暴力的な物量の巨大生物、圧倒的なテクノロジーを駆使するフォーリナーの兵器の前に人類は一人、また一人と倒れていった。

そして遂に、人類の有力な戦力はほぼ全てが壊滅。それは2017年4月1日より、僅か半年の事だった。誰もが人類の敗北だと悟っていた時、誰もが思いもしない出来事が起こった。

 

フォーリナーの母船、マザーシップの撃墜。

 

その奇跡。一人の兵士が放った一撃、それはマザーシップの吸気口に致命的な一撃となり、フォーリナーが誇る母艦(ははぶね)は地に墜ちた。

直後、フォーリナーの残存船団は地球より撤退。空を覆い尽くした絶望の権化は、たった一つの出来事で姿を消した。しかし、そのたった一つの出来事が、人類の勝利へと導いたのだ。

そして、人類の復興が始まった。EDFは生き残っていた戦士達や市民達を救出しつつ、地球上に残されていた巨大生物の掃討を開始。一年後、アリゾナで最後の一匹が銃弾に倒れ、地球上から巨大生物が消え去った。

 

EDFは、人類は勝ったのだ。

 

その後の復興はフォーリナーが遺していったテクノロジーを取り入れ、かつての姿を取り戻しつつ、しかし再び彼等への襲来に備え、力を増強させていった。

 

そんな最中の、2028年6月28日。

 

全ては、そこから始まった。

 

 

 

 

 

 

EDF。

それは人類の護りの象徴であり、人類の希望。

特に日本支部はフォーリナーの母船、マザーシップを撃墜した余りにも大きい功績もあり、その名声は全地球的に見ても、EDF総司令部と劣らずといっても過言ではない。

最後まで絶望と戦い、勝利した彼等にとって、最早ちょっとやそっとした出来事は驚愕に値しない。が、今回の出来事はそんなチャチなものでは済まされなかった。

 

「…すまない、もう一回言ってくれ。何がどう起こったんだ?」

 

EDF日本支部、第一会議室。

其処に集まっているのは、日本支部司令長官を筆頭に参謀長や戦術士官等、日本支部を動かす重要人物が集っていた。全員の表情は驚愕や困惑に染まり、報告を伝えている情報局長自身も内心信じられない事ではあると思っている。

 

「…では、もう一度申し上げます。日本列島は、「転移」したと考えられます」

 

その出来事は、2028年6月28日午前0時0分0秒に起こった。

日本列島全域に発生した、空を覆い尽くした謎の白い光。その光は1cm先も見えぬ程の光量を数秒間維持し、何事も無かったかのように掻き消えた。直後、全衛星及び日本列島外の全通信がロストし、全EDF日本軍は即時出動態勢に移行。白い光の原因、及び全通信の復旧を試みつつ、フォーリナー襲来に備えられ、市民はシェルターへの避難命令が呼びかけられた。

しかし何時間待とうが、フォーリナーの影もなく、巨大生物が再び現れる訳でも無い。12時間後、EDF日本支部は出動態勢から第1種警戒態勢に移行し、市民は依然シェルターの避難を継続した。

そして更に1時間後。EDF情報局より驚愕の報告が挙げられたのだ。

 

それが、「日本列島の転移」。

 

星の座標変化等、十分な根拠を持って発表されても普通、それを聞いたら万人は「あり得ない」と言うだろう。しかし彼等(EDF)は、あの地獄を生き延びた人類は違った。

 

「…フォーリナーの仕業か?」

「それはまだ不明です。しかしその可能性も捨て切れません」

「しかしもし奴等の仕業だとしたら、一体何の為に?」

「10年前の復讐も十分に考えられる」

「だったら転移と同時に攻撃している筈。半日も待つのは考えられないだろ」

「いや、転移そのものがフォーリナーの新兵器というのも考えられる。邪魔な奴を容易に排除出来るなら…」

「そもそも転移前はフォーリナーはまだ観測されていなかった。奴等の仕業なら果てしない距離から我々に攻撃を…」

 

憶測が憶測を呼び、ザワザワと騒めく第一会議室。

が、日本支部司令長官が静かにテーブルを叩き、数秒の間を置いて沈黙が再び訪れる。

 

「此処で憶測を話し合っても何も始まらん。情報局長、他に何か情報はないか?」

「日本列島が転移したという情報以外、何も…これ以上の近辺調査となると、海軍空軍の出動が必要となります。衛星の通信は未だにロストしており、宇宙からの調査は不可能です」

「調査に最適かつすぐに動かせるのは?」

「第1、第3、第7、第9飛行中隊、第7艦隊です」

「第7艦隊?要塞空母デスピナの艦隊か?」

「はい。前日補給を終えて東京湾より出航後、日本領海内を航行中に転移に巻き込まれたようです。彼等ならより長距離の調査も可能でしょう」

「決戦要塞X5も巻き込まれたのは幸運と言うべきか、不運と言うべきか…兎に角状況は分かった」

 

司令が立ち上がると同時に、会議室に座っていた全士官も立ち上がる。

 

「今回の転移事象はとても隠しきれるものではないだろう。市民達には嘘偽り無く公表する。全EDF陸軍部隊は起こり得る混乱に備え、治安維持に努めよ。空軍海軍はフォーリナーの襲来に備え、いつでも出動出来るように。第1、第3、第7、第9飛行中隊、及び第7艦隊に出動を要請。日本列島周辺を調査しろ。どんな細かい事でも良い、何かあったらすぐに報告させるのだ。

皆も分かっているだろうが、此処が正念場だ。我々には物資が限られている。弾薬、燃料、食料。全てが万全とは言い難い。日本列島外の補給が停止した今、我々は戦わずして斃れる恐れすらある。これを乗り越え、生き残らねばならない!諸君らの健闘を期待する!」

『了解!!』

 

こうして、EDF日本支部の生き残る為の戦いが始まった。

 

 

 

 

 

本来ならば、「日本国」と呼ばれる国家が転移させられる筈だった世界。

しかし何処かが狂い、「EDF日本支部」が転移させられる事となった世界。

彼等が何を起こすか。何を狂わせるか。それはこれから分かるお話。




用語解説

EDF
連合地球軍。2015年2月1日に結成された超法規軍。かつては150万人とアメリカと同等の戦力を持っていたが、フォーリナー襲来によって壊滅。2028年現在は30万人と大幅に縮小したが、フォーリナーのテクノロジーを吸収した事により、襲来前にも劣らない戦力となった。
フォーリナー大戦後、世界政府としての機能も併せ持っている。

フォーリナー
地球外生命体。2017年4月1日に地球に降下し、侵略を開始(フォーリナー大戦)。マザーシップの撃墜によって地球外へ撤退した。
EDF日本支部は、今回の転移事象にフォーリナーが関わっている可能性があるとして調査している。

巨大生物
フォーリナーが投下した生物兵器。殆どが地球上の生物に模しており、主に蟻型や蜘蛛型が確認されていた。
フォーリナー撤退後の2018年10月30日、アリゾナにて最後の巨大生物が撃滅され、地球上から掃討された。

フォーリナー大戦
原作(地球防衛軍3)で起こった抵抗戦争。僅か7ヶ月の戦争でありながら、大戦後の人類の人口は3割に減少。世界各国は崩壊し、EDFが崩壊した世界各国に代わって世界各地の統治に努める事となった。

EDF日本支部
日本に駐屯するEDF部隊の司令塔であり、日本統治機構。フォーリナー大戦に於いて、最後まで部隊の指揮を取っていた唯一の本部。マザーシップ撃墜の功績により、転移前はEDF総司令部にも劣らぬ発言力があった。

日本支部司令
全ストーム1が知る本部のあの人。原作(地球防衛軍3)だとプレイヤーに「本部の罠」とまで言わしめる迷指揮を取っていた事もある。大戦後、司令自身もそれは深く反省しており、まともな指揮が取れるように日々精進している。

第7艦隊
要塞空母デスピナを旗艦としたEDF海軍艦隊。要塞空母デスピナを筆頭に、イージス戦艦4隻、フリゲート艦12隻で構成された大規模艦隊。

要塞空母デスピナ
決戦要塞X5として建造された、全長1400mの超巨大空母。
要塞空母と言われるだけの事はあり、マザーシップの攻撃にも耐え得る強靭な装甲、4基8門の51cmレールガン連装砲、360基の巡航ミサイルVLS、4基の超大型巡航ミサイルVLSを搭載。機関は核融合炉であり、デスピナ内部に簡易的な兵器製造機構、食料生産機構を備える等、無補給でも暫くは継続戦闘が可能な設計となっている。
(第七艦隊、決戦要塞X5、デスピナ搭載機能等の設定は本作オリジナル)


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第2話 接触

本当はもっと長くなる予定だったけど、ダラダラ原作に似た内容をやるのもね?


EDF日本支部(日本列島)転移から一日。

日本列島より西南西980km地点の上空に、空気を裂く物体が飛行していた。

 

「…まさか、転移なんてものが現実になるなんてな…」

 

第七艦隊旗艦 要塞空母デスピナより発艦した大型攻撃機ホエールのコックピットで操縦桿を握る機長が、小さく呟いた。

大型攻撃機ホエールは、大型輸送機を改修して対地攻撃機へと転用した空中要塞である。機体左側面に40mmガトリング砲、105mm砲、120mm砲、150mm砲を各1門ずつ、ハードポイントに巡航ミサイル発射機を搭載し、地上部隊の支援に特化している。速度こそ遅いが、それでも最高速度マッハ1.5、巡航速度マッハ1を発揮する恐ろしい怪物機だ。(しかしEDF製の兵器の中では、これでも大人しい方なのだ)

 

そんな機体が何故そんな地点を飛行しているのかというと、正に今機長が呟いた「転移」が原因だ。

 

第一会議室で行われた会議の後、EDF日本支部は転移を発表。シェルターでその発表を聞いた市民達は混乱や不安に包まれる事となったが、フォーリナーの姿は確認出来ないという事もあり、EDF日本支部が想定していた暴動などは幸運にも起こることは無かった。

しかし、突然の出来事故にEDF日本支部の物資は限られている。食料は化学的に生産される化学食料を中心としていた為に、配給制とすれば日本列島の生産施設で十分に賄う事が出来るが、燃料弾薬となるとそうは行かない。日本列島は無資源地域だった為に、燃料弾薬は日本列島外からの補給に頼り切っていた。

補給が途切れ続ければ、EDF日本支部は1年で燃料が尽き、戦わずして自滅する。この緊急事態に、第1、第3、第7、第9飛行中隊、第7艦隊は日本列島外の調査任務に出動していた。

 

「果たして、どうなるのやら…」

「機長、レーダー反応アリ!」

 

機長の呟きを遮って、計器類を覗いていた副機長が叫んだ。

 

「数1、速度120km/h!IFF反応無しです!同高度で接近中!」

「此方ホエール!デスピナ、応答求む!」

『此方デスピナ、ホエールどうした?』

「レーダーにアンノウン1捕捉!これより接近及び捕捉、アンノウンが飛行してきた地点の地域調査を試みる!」

『了解した、直ちに日本支部に報告する。通信はそのまま開いて置いてくれ、デスピナを経由させて日本支部に中継する』

「了解!」

 

自然と操縦桿を握る手に力が入る。ここから先は未知の領域、何が起こるか分からない。

 

「皆、覚悟はいいか?」

『応!』

「よし…全兵装安全装置解除。まだ引き金に指は掛けるなよ。此方からの攻撃は厳禁だ」

 

ホエールは僅かにエンジン出力を上げ、アンノウンへ接近する。

数分後、コックピットの機長と副機長の視界に、アンノウンを目視する。しかしそれは、ある意味想定内で、しかしある意味想定外の物だった。

 

 

「………竜………?」

 

 

 

 

 

 

晴天の空の中、1匹の竜が1人の人間を乗せて羽ばたいている。

クワ・トイネ公国の竜騎士マールパティマは、「ワイバーン」と呼ばれる飛竜に乗り、公国の北東部の沿岸哨戒の任に就いていた。

クワ・トイネ公国の北東方向には何もない。青い海が広がっているだけだ。しかし現在、クワ・トイネ公国は隣国のロウリア王国と緊張状態が続いており、何もない北東方向からのロウリア王国軍の奇襲も十分に考えられた為、こうした哨戒任務も発生している。

今日も何もないまま哨戒任務が終わる、そう思っていたマールパティマの視界に、異物を目視する。

 

「ん…?」

 

よく目を凝らし、それを見る。双方が真っ直ぐ近づいている為、接近は速い。

 

「なん、だ…?羽ばたいていない?」

 

彼がよく知る飛竜は、羽ばたかなければ空を飛ぶことは出来ない。しかし真正面から向かってくるそれは、一切羽ばたいていない。彼はすぐに通信用魔法具を懐から取り出して司令部に報告する。

 

「我、未確認騎を発見。これより要撃を開始し、確認を行う」

 

高度差は殆どない。マールパティマは一度未確認騎とすれ違い、後方より距離を詰める事を選択する。

そして、未確認騎とすれ違った。

 

(大きい…)

 

マールパティマの認識からすれば、未確認騎はとてつもなく巨大だった。羽ばたいておらず、翼に付いた何かが2つから大きい音が響いている。茶色の胴体に蒼色で書かれた知らない模様が3つ描かれており、翼の先端から光を放ち、点滅していた。

彼はワイバーンを羽ばたかせて反転、未確認騎の追跡を開始する。大きな風圧を受けつつも、一気に距離を詰めれる。その筈だった。しかし追いつくどころか逆にあっという間に距離を離され始める。

慌ててワイバーン最高速度の235km/hで追跡を試みるが、それでさえも未確認騎は速く、段々と視界から小さくなっていく。

 

「なんなんだ、アレは…っ!?」

「司令部!!司令部!!我、未確認騎の確認、追跡を試みるも速度が違いすぎて追い付けない!未確認騎は本土マイハーク方向へ進行!繰り返す、未確認騎はマイハーク方向へ進行した!」

 

 

 

 

 

 

マールパティマからの報告を聞いた司令部は、大慌てとなっていた。

第三文明圏最強の兵器であるワイバーンでさえも追い付けない未確認騎が、よりにもよってクワ・トイネ公国の中枢都市マイハークに接近していると言うのだ。未確認騎は速度からして、既に本土領空へ侵入している可能性が非常に高い。

マイハーク付近に駐屯していた第6飛竜隊に魔法通信が掛かり、緊急指令が流れる。

 

『第6飛竜隊、全騎発進。未確認騎がマイハークに接近中、領空侵入の可能性極めて大。発見次第直ちに撃墜せよ。繰り返す、発見次第直ちに撃墜せよ』

 

緊急指令を受け、第6飛竜隊が次々と滑走路より空に舞い上がった。全力出撃、12騎全騎。

そして直ちにマイハーク北東方面に飛行し、運良く未確認騎との真正面の正対に成功した。最初は点ほどに小さく見えた未確認騎は、あっという間に大きくなっていく。

その姿に、第6飛竜隊隊員は各々の感想を持つ。

 

「速いな…全員、聞け!導力火炎弾の一斉射撃で未確認騎を撃墜する!未確認騎は我が方の速度を凌駕しているとの事だ、攻撃のチャンスはすれ違う一瞬のみ!各人、日頃の訓練の成果を見せろ!」

 

第6飛竜隊隊長の指示を受けてワイバーン12騎は横並びとなり、口を開けて火球を形成していく。これこそがワイバーンが第三文明圏で最強と言われる所以、導力火炎弾。12発の導力火炎弾を受けて無事だった物体は、少なくとも彼等は知らない。

そうして攻撃のタイミングを伺っていたら、未確認騎は突如として高度を上げ始めた。

 

「なぁっ!?」

 

ワイバーンの最高高度4000mを飛行していた第6飛竜隊にとって、未確認騎の更なる高度上昇は想定の外も外。彼等からしたら4000m以上の高空を飛ぶなどあり得ない事なのだ。

それ故に、ワイバーンの最高高度4000mしか飛行出来ない第6飛竜隊は未確認騎が真上を飛んでいくのを見守る他に無く、唯々己の無力を嘆くしかなかった。

 

 

 

 

 

 

クワ・トイネ公国政治部会。

公国を代表する者達が集う会議の中、首相のカナタは内心で頭を抱えていた。

前日、軍事卿から正体不明の飛行体がマイハーク上空に侵入、同都市を偵察するように旋回飛行した後に去っていったという報告が上げられた。その飛行体は飛竜ワイバーンが追いつかぬ程高速、かつ辿り着けない程に高空を飛行していた。

所属は不明、機体に国旗と確認できる物も見つかっていない。

 

「この報告について、皆はどう思い、どう解釈する?どんな意見でも構わない」

 

カナタの言葉に、真っ先に情報分析部長が発言する。

 

「当部分析担当班によると、西方の第二文明圏列強国「ムー」が開発している飛行機械に酷似しているとの事です。しかしムーの飛行機械と、今回の飛行物体の速度が余りにも違いすぎる上に、何よりも距離が広大過ぎます。我が国から2万kmも離れているのです、幾ら何でも、この距離を飛行するのは非現実的であると思われます」

 

結局は振り出しに戻り、場が膠着する。その時、外交部の幹部がドアを破らんばかりの勢いで場に飛び込んでくる。

 

「報告します!!」

 

その幹部から上げられた報告は、大きく纏めると以下の点になる。

 

本日朝、公国の北側海上に長さ300mにも及ぶ超巨大船が出現。海軍が臨検を行ったところ、EDF日本支部という統治機構の外交官と接触、敵対の意思が無いという旨を伝えてきた。他にも複数事項が判明。

1.EDF日本支部は、突如としてこの世界に転移した。

2.元の世界と断絶した為、哨戒騎にて付近の捜索を行っていた。その際にロデニウス大陸を発見。捜索活動中に公国の領空侵犯をしてしまった事は深く謝罪する。

3.クワ・トイネ公国と直ちに会談を行いたい。

 

余りにも突拍子も無い、普通なら考えられない内容に政治部会は荒れた。

しかしEDF日本支部という統治機構は礼節を弁え、尚且つ謝罪や会談の申し入れは一応の筋は通っている。

この事から、まず外交官を官邸に招待する事が決定された。

 

 

その後の会談及びEDF日本支部視察を経て、EDF日本支部とクワ・トイネ公国は正式に国交を締結することに成功した。

主な内容は以下の通りである。

 

1.クワ・トイネ公国はEDF日本支部に必要量の食料を輸出する。

2.クワ・トイネ公国のマイハーク港の拡充、マイハーク港から穀倉地帯へのインフラを整備する。

3.為替レートの早急整備を行う。

4..EDF日本支部は食料一括購入の見返りとして、1年間はクワ・トイネ公国内のインフラ整備を行う。その後は為替レートによる食料額に応じた対応を行う。

5..EDF日本支部、クワ・トイネ公国両国の不可侵条約締結に向けた話し合いを継続する。

 

こうして、EDF日本支部はクワ・トイネ公国と友好な関係を結び、クワ・トイネ公国は強大な軍事力を誇る国家との友好関係の獲得に、EDF日本支部は必要資源の補給に成功した。以後EDF日本支部とクワ・トイネ公国は運命共同体となり、後に起こる動乱に挑むこととなる。




用語解説
クワ・トイネ公国
原作(日本国召喚)でも最初に接触する国家。
大地の神の祝福によって領土全域が放っておいても農作物が生えてくる不思議な大地によって、食料自給率が100%を遥かに超えている。水と食糧はタダ、家畜でさえもうまい餌を食べられるとか。地球農業の苦労とは一体。
EDF日本支部も超貴重な天然食料が市民達にも腹一杯食べさせる事が出来ると聞いて、全員が目の色を変えたらしい。


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第2章 ロデニウス動乱 第3話 動乱と参戦

クワ・トイネ公国との国交を開いてから1ヶ月が経過した。

EDF日本支部は現在、転移前よりも明るい雰囲気に包まれていた。それは上層部のみならず、兵士達や果てには市民達にも及んでいる。

 

それは何故か。一重にそれは「美味い飯がたくさん食べれる」からだ。

 

フォーリナー大戦後、世界は深刻な食料不足に陥った。穀倉地域は全滅し、畜産業は99.9%が全滅。天然食料のみでの食料自給率は5%どころか2%にも満たない事態となった。化学食料が開発されるまでの半年間、人々は僅かな食料を取り合い、時には人類同士での戦闘にさえも発展した。フォーリナー大戦後の人類減少の3%はその内戦による犠牲者なのだ。化学食料の開発後は食料不足の問題は起こる事は無くなったが、別の問題が発生した。

化学食料は添加物を山のように使用している為、天然食料と比べると不味い。その上身体に非常に悪いのだ。

しかしその問題があっても、人々は化学食料を食べる他ない。天然食料が再び充分に行き渡るようになるのは30年後とも言われており、天然食料は安いものでも100万円もの超高価格。市民どころかEDFの士官でも手が届きにくい代物と化してしまっている。故に天然食料を一食でも食べる事が出来れば、それは一種のステータスでもあった。

しかし転移後、クワ・トイネ公国産の天然食料が文字通り山のように輸入されてきた。この夢のような出来事に、EDF日本支部に住まう全員が狂喜した。天然食料が超低価格で購入できるようになった為、市民達は勿論、兵士達も財布の紐を盛大に緩めて買い漁り、およそ10年ぶりにもなる天然食料の美味を噛み締めた。中には思わず涙を流す者さえいた程だ。

以降EDF日本支部は、クワ・トイネ公国とは友好関係を続けていく事が改めて決定され、より強固な関係を作って行く事に努力していく事となる。

 

そしてクワ・トイネ公国は、EDF日本支部との国交を隣国クイラ王国と共に結んでから、急速に発展している。

クワ・トイネ公国からは食料を、クイラ王国からは地下資源を輸入していくEDF日本支部は、その対価に両国へのインフラを輸出。(両国から見れば)様々な超技術を惜しむ事なく投入していくEDF日本支部。インフラの一連が完成すれば、国内外の流通が極めて活発化し、今までとは比較にならぬ程の発展を遂げるだろうという試算結果が出ている。

クワ・トイネ公国は武器の輸出も求めたが、EDF日本支部は武器の輸出は許可しなかった。なんでも「他国が扱うには余りにも危険」という事らしい。ならばと各種技術の提供も求めたが、此方も「機密などに抵触する箇所がある」として、EDF日本支部が取り扱う最新の技術は提供されなかった。しかし提供されてきた前世代的な技術でも十分な物ばかり。様々な新技術のサンプルを前に、経済部の担当者は「国がとてつもなく豊か」になると言った。

 

こうしてより良い関係となっていく三国。しかしその背後に、動乱の影が忍び寄っていた。

 

 

 

 

 

 

クワ・トイネ公国の隣国、ロウリア王国。

元々は中規模国家の一つであったが、侵略戦争を繰り返していった結果。現在ではロデニウス大陸の西半分を領土とし、人口3880万人にも達する大国となった。

ロウリア王国は人間至上主義を国是としており、純粋な人類種のみが住まう事を許可している。逆に人類種ではない者達…エルフ、ドワーフ、獣人族などと言った者達はロウリア王国では「亜人」と侮蔑し、醜い生き物であると迫害。亜人殲滅をも国是としている。

その為に、亜人比率が高いクワ・トイネ公国及びクイラ王国との関係性は悪く、国境は常に緊張状態に置かれていた。

 

そんな王国の王都 ジン・ハークの中心にある城の一室。秋の夜の中、明かりの炎の揺らぎがいくつかの人影を作る。

今から行われるのは、王の御前会議。ロウリア王国の行く末を決める、最高会議を前に、ロウリア王国国王 ハーク・ロウリア34世を筆頭に、あらゆる重役達が一堂に会している。その中に、真っ黒なローブを着込んだ怪しい者も混ざり込んでいるが、それを指摘する者はいない。

 

ロウリア王国宰相 マオスが進行役として、言葉を紡ぐ。

 

「これより会議を始めます。まずは国王より、お言葉があります」

「…皆の者、これまでの長い準備期間。ある者は厳しい訓練に耐え、ある者は財源確保に寝る間も惜しんで奔走し、ある者は己の命を賭けて敵国の情報を掴んで来た。皆、大儀であった。亜人…害獣どもをロデニウス大陸から駆逐する事は、前々代からの大願である。その意思を、大願を叶える為に諸君らは必死に取り組んでくれた。その働きに、まずは礼を言う」

 

ロウリア34世が軽く頭を下げた後、話を続ける。

 

「遂に全ての準備が整った…諸君。会議を始めよう」

 

会議室は静寂に包まれる。前々代、つまりは軽く考えても100年前もの前からの悲願が遂に達成される、ある意味では最終戦争の直前。それは極度の緊張感となり、この場を支配した。

進行役のマオスは、今戦争の運営責任者である将軍パタジンに向けて話し始める。

 

「まず、ロデニウス大陸の統一は目前です。しかしクワ・トイネ公国とクイラ王国の間には強い絆があり、それは同盟を結んでいると言っても差し支えないと思われます。片方に戦争を仕掛けた途端、もう一国も我々に宣戦布告をする可能性が非常に高い。つまり、今回の戦争は2国を同時に敵に回す事となります。将軍は、2国を相手にしても勝てる見込みはありますか?」

 

その問いに対して、将軍パタジンは自信を持った口調で応える。

 

「一国は農民の集まり、もう一国は不毛の地の貧国。数も質も我が方が圧倒しており、結束が高くても我々の軍の前には消し飛ぶのみでしょう。負ける事は、まずありませぬ。詳しくは会議後半にて詳しく説明いたすが、ご安心なされよ、宰相」

「分かりました」

「だが宰相殿、1ヶ月ほど前に接触してきた…EDF日本支部だったか?その国に関する情報はありますかな?」

 

実はEDF日本支部は、1ヶ月ほど前にクワ・トイネ公国とクイラ王国との国交を開始した直後にロウリア王国とも接触していたのだ。しかしロウリア王国側はクワ・トイネ公国とクイラ王国との国交があるとして、EDF日本支部は敵対勢力と判断。門前払いしていた。

 

「クワ・トイネ公国から北東1000km北東の沖合に出来た新興国家との事です、距離も1000kmと離れている為、軍事的影響は無いでしょう。それに奴等は我が国の竜騎士団とワイバーンを見て「初めて見た」と驚いていました。竜騎士の存在しない、取るに足らない国でしょう。情報はあまりありませんが」

 

ロウリア王国側は知る由も無いが、余りにも致命的な勘違いがあった。

EDF日本支部情報局員は、確かにワイバーンを見て驚いた。人は未知のものに驚かずには居られないから当然の事であるが、ロウリア王国はそれをみて致命的な勘違いをしてしまった。

 

彼の国(EDF)は大した軍事力を保有していない」。

 

これは余りにも致命的。しかしそれを知らない以上、彼等はEDF日本支部を侮って会議を進める。

 

「そうですか。ならクワ・トイネ公国がEDF日本支部に助けを求めても大した事はありませんな」

「しかし、我が代で遂に…遂にこのロデニウス大陸が統一され、忌まわしい亜人どもを絶滅出来ると思うと、余はとても嬉しいぞ」

 

ハーク・ロウリア34世が嬉しそうに発言すると、横から薄気味悪い声が口を挟んだ。真っ黒なローブを着込んだその人物は、第三文明圏列強国 パーパルディア皇国の使者である。

 

「大王様、統一の暁には、あの約束もお忘れなく…ククッ」

「分かっておるわ!」(第三文明圏外の蛮族と思って馬鹿にしおって…!!ロデニウス大陸を統一したら、国力をつけた後にフィルアデス大陸にも攻め込んでやるわ)

「コホン…将軍、作戦概要説明をお願いします」

 

その後、将軍パタジンによる作戦説明が始まった。要約すると、以下の通りとなる。

 

1.今戦争における総兵力は50万。内40万がクワ・トイネ公国侵攻軍であり、残りの10万は本土防衛用である。

2.初戦はクワ・トイネ国境から近い人口10万人の都市 ギムを強襲制圧。兵站は現地調達。(クワ・トイネは豊富な食料に恵まれており、本国からの補給を必要としない為)

3.ギム制圧後は東方55km先にある城塞都市エジェイを全力攻撃。クワ・トイネ公国内で最も堅牢な都市エジェイさえ陥落出来れば、今回 戦争の勝利は決定的となる。

4.航空戦力はロウリア王国のワイバーンのみで対応可能。

5.並行して海から艦船4400隻の大艦隊でマイハーク北岸に上陸、経済都市マイハークを制圧。マイハークを制圧すれば、食料をクワ・トイネ公国に頼り切っているクイラ王国は脅威ではなくなる。

 

「クワ・トイネ公国の総兵力は僅かに5万人。さらに言えば、即応兵力のみなら1万にも満たぬ数であると考えられます。今回準備した我が方の40万の兵力をぶつければ、仮に質が上回っていようが、小賢しい策を弄しようが、圧倒的物量の前には無意味です。この6年間の準備が、実を結ぶでしょう」

「そうか………今宵は、我が人生最良の日だ!!クワ・トイネ公国並びにクイラ王国に対する戦争を、許可する!!」

 

こうして、ロウリア王国の御前会議は終了し、クワ・トイネ公国とクイラ王国に対する戦争が決定された。

 

 

 

 

 

 

クワ・トイネ公国にある、EDF日本支部連絡館。

クワ・トイネ公国との国交開設後、EDF日本支部連絡館の代表として現地に留まる事になった情報局員の田中の朝は、突如やってきた職員の報告によって一変した。

その職員によると、クワ・トイネ公国外交担当官が火急の要件があると、アポイント無しでEDF日本支部連絡館を訪れたのだ。その報告に、田中は僅かに残っていた眠気が吹き飛んだ。転移を経て、混乱を避けるために一応としての国家の体をとっているEDF日本支部だが、それ故に国と国とのやり取りを担当するものがアポイント無しで訪れる事など、相当な事態が起こらなければまず起こり得ない事だ。嫌な予感を感じたりつつも、田中は準備を早急に済ませて応接室へと入った。室内には、クワ・トイネ公国外務局長のヤゴウが焦燥の表情を浮かべていた。

 

「お待たせしました」

「田中殿、急な訪問となってしまい申し訳ありません。至急お伝えしなければならない事態が発生しました」

「それは一体?」

「我が国の西方にロウリア王国があるのは既にご存知だと思います。多数の方面から得た情報を精査した結果、ロウリア王国が我が国に対し、侵略する事がほぼ確実となりました」

「…!戦争、ですか」

「はい。既に国境20km付近にある町ギムの西側に、ロウリア軍の大群が集結しつつあります。ロウリア王国と戦争になれば、貴国に対して約束していた量の食料品の輸出は不可能となります…条約を反故にするのは大変心苦しいですが…」

「…分かりました。この件は直ちに本部に報告します。現段階では確約する事は出来ませんが、援軍を派遣出来るよう、要請しましょう」

「ありがとうございます!!」

 

しかし、あと一歩遅かった。

EDF日本支部がこの事態を把握する直前、ロウリア王国はクワ・トイネ公国に宣戦布告すると同時に侵攻を開始。国境の町ギムは侵攻間もなく陥落。ロウリア王国の手に落ちたギムではロウリア軍兵士による略奪や殺人が起こり、将軍アデムによって意図的に生かされた100人は、その惨状をクワ・トイネ公国の各都市に伝わり、更にそこからEDF日本支部へと伝わる。

 

そしてその瞬間、ロウリア王国の運命は決した。

 

 

 

 

 

 

「…以上が、つい先程入ってきた最新の情報です」

 

EDF日本支部にて緊急で開かれた、重役会議。この空気は、ひたすらに重かった。

それは悲壮や絶望では無い。

 

 

 

「怒り」。ただそれのみだ。

 

 

 

「…その情報は、確かなのだな?」

「ロウリア軍によって意図的に生かされた100人の生存者の証言です。間違いありません」

「参謀長、直ちに対ロウリア王国の作戦を考案せよ。一分一秒でも早くだ」

 

EDFは、人類の護りの象徴だ。それは別世界に転移しようが、変わりは無い。

 

「司令、確認ですが今作戦に於けるロウリア王国軍に対する殺傷制限は?」

「無制限だ。情け容赦は無用、ギムの殺戮を兆倍にして返してやれ」

「了解しました。タイタンの投入は?」

「無論、許可する。必要ならばストームチームも動かして構わん」

 

人々を傷付ける存在は、一切合切赦しはしない。

 

「情報局長、作戦立案の補助を頼む。最新の情報を随時報告しろ」

「分かりました。数日前に自律衛星ライカとの通信復旧が出来て幸いでしたな。奴等はソラ(宇宙)から丸見えです」

 

彼等は、無辜の人々を守る最後の盾である。

 

「艦長、貴方の力をお借りします」

『勿論だ。そもそも第七艦隊はEDF日本支部の指揮下にある。存分に使ってもらって構わんさ』

 

だからこそ、彼等は如何なる存在でも、人々を傷付けた存在を殲滅する義務がある。

 

 

「全EDF部隊員に通達!!現時刻を持って即時出動態勢に移行!!敵はロウリア王国、彼の国のこれ以上の暴挙を許すな!!!!」

『サー、イエッサー!!!!』

 

それが例え、同じ「人間」であろうともだ。




ロウリア王国「余裕だしギムでお楽しみ(殺戮)してやったぜ」
EDF日本支部「絶対許さん」(全力ムーブ)

はい、と言うわけでロウリア王国がいきなりEDFの逆鱗にストレートパンチ打ち込みました。最初はもうちょっと穏やかな雰囲気で参戦させるつもりが、原作見直しつつEDF日本支部の人達に感情移入してたらこうなってしまった。
…ロウリア王国でこれなら、原作で日本国民処刑したパーパルディア皇国戦は一体どうなるんだ?(汗)


用語解説&状況説明
ロウリア王国
ロデニアス大陸西半分を支配する大国。40万の兵力でクワ・トイネ公国に侵略を開始するが、その途中で行ったギムの殺戮によってEDF日本支部を完璧に怒らせる。つまりロウリア王国終了のお知らせです。

EDF日本支部
現在ギムの殺戮を兆倍に返すべく準備中。第七艦隊は勿論、陸上要塞のタイタンの投入も許可された為、陸海空問わずオーバーキル確定。
オマケに最終兵器ストームチームの出動許可が司令直々に出された。ロウリア軍逃げて。

自律衛星ライカ
EARTH DEFENSE FORCE: IRON RAINより特別出演。あんな健気な子を出さずには居られなかった。
搭載兵器は地球防衛軍4に登場する攻撃衛星ノートゥングとほぼ同じ。
偶に綺麗な景色を映した衛星写真が、勝手にEDF情報局に送られる事があるとか。


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第4話 ロデニウス海戦

前回の後書きより

クローサー「パーパルディア戦どうすっかなー」
読者の方々「そもそもパ皇がEDF市民殺せる訳無いだろ」(感想欄より要約)
クローサー(大爆笑)

いや、ホント笑わせて頂きました。一部のご意見は大変参考になりましたので、パーパルディア戦も色々と考えていきます。


クワ・トイネ公国 政治部会は重苦しい空気に包まれていた。ロウリア王国の宣戦布告と同時に始まったロウリア軍の侵攻。国境20kmの町ギムは半日と持たずに陥落し、ギムの殺戮が起こってしまった。

 

「…現状を報告せよ」

「はっ…」

 

首相カナタの命令に、冷や汗を流す軍務卿が応えた。

 

「現在ギム以西は、完全にロウリア王国の勢力圏に墜ちました。先遣隊だけで3万を超え、更に諜報部の報告も加えると、作戦戦力は…ご、50万に達する模様です。また、パーパルディア皇国がロウリア王国に軍事支援を行なっているという未確認情報もあります。現に、今回ロウリア王国は500騎ものワイバーンを投入してきています。また先程…4000隻以上の大艦隊が、港より出航したとの事です」

 

その報告に全員が絶句する他なかった。

敵は我が方の全戦力の10倍。兵士の数だけでも絶望的であるのに、これに加えて500騎のワイバーンと4000隻以上の大艦隊がいる。余りにも、膨大な敵戦力。この戦力に対して侵攻を防ぐ手段は、皆無だ。

 

絶望によって静寂に包まれた会議室。その時、外務局の幹部が飛び込んできた。

 

「首相、EDF日本支部連絡館より連絡が入りました!!」

「内容は?」

 

既に諦めの境地へと至ってしまっていたカナタが、飛び込んできた幹部の発言を促す。

 

「は、これより全文を読み上げます!『EDF日本支部は、クワ・トイネ公国の都市ギムで発生したロウリア王国軍による非人道的行為を許す事は出来ない。EDF日本支部はクワ・トイネ公国の民間人をロウリア王国軍の虐殺から守るべく、ロウリア王国に宣戦を布告した。現在クワ・トイネ公国への援軍を編成中であり、クワ・トイネ政府の軍通行許可が降り次第、直ちにEDF日本支部軍を派遣する用意を行う』との事です!!」

「おお…!!」

 

絶望的だった状況に、確かな希望が舞い降りた。

政治部会の全員の目に光が灯り、覇気を取り戻す。

 

「よし、すぐにEDF日本支部に軍通行許可を出してくれ!援軍の食料も此方で準備する!ロウリア王国との戦争が終結するまでの間、領土、領空、領海の往来を認める事も伝えるように!軍務卿!全騎士団及び全飛竜部隊に、EDF日本支部に全面協力するように伝えろ!」

「はっ!」

 

 

 

 

 

 

数時間後のマイハーク港。

ロウリア王国が4000隻以上の大艦隊を出航させたという情報が入り、クワ・トイネ公国第2艦隊は艦隊を集結させた。各艦は帆を畳み、来たる決戦に備え、敵船に撃ち込む火矢や点火用の油を次々と船に積み込んでいる。

その艦隊の数は、50隻。

 

第2艦隊提督 パンカーレは、ずらりと己が率いる軍艦が並ぶ海を眺めていた。

 

「壮観な光景だな。…しかし、敵は4000隻を超える大艦隊。対して我等は僅かに50隻…一体、彼等の中で何人が生き残る事が出来るだろうか…」

 

思わず本音が漏れる。敵の物量は圧倒的であり、その現実にどうしようもない気持ちが込み上がる。その時、若き側近幹部であるブルーアイがパンカーレに声を掛けた。

 

「提督、海軍本部より伝令が来ています」

「来たか、読め」

「はっ。『本日夕刻、EDF日本支部の第7主力艦隊5隻が、援軍としてマイハーク沖に到着する。彼らは我が軍より先にロウリア艦隊に攻撃を開始する為、観戦武官1名を旗艦に搭乗させるように指令する』…との事です」

「何…?5隻、たったの5隻だと!?50隻、5000隻の間違いではないのか!?」

「間違いではありません」

「奴等、やる気はあるのか…!?しかも観戦武官だと?5隻しか来ないなら、観戦武官に死ねと言ってるのも同意義ではないか!!明らかな死地と分かっていながら、部下を送るような真似が出来るかぁ!!」

 

EDF日本支部と国交を結んだとはいえ、現時点ではEDF日本支部の本当の力を知らぬ者も決して少なくはない。それに加えて、パンカーレはEDF日本支部の艦を見たことが無いから、この反応はまだ当たり前の反応であった。

 

「…私が行きます」

「しかし…」

「私は、剣術においては海軍首席です。白兵戦になれば私が一番生存率が高い。それに、あの鉄竜(ホエール)を飛ばしてきたEDF日本支部の事です。もしかしたら勝算があるのかもしれません」

「海を渡ってきた、羽ばたかぬ鉄竜の事か…見た事はないが、相当な戦力と見ていいのか?…すまぬが…頼んだ」

「はっ!」

 

こうして、ブルーアイが観戦武官としてEDF第7艦隊に乗り込む事が決定された。

 

 

 

 

 

 

同日の夕刻。

マイハーク港は蜂の巣を突いたような大騒ぎとなっていた。マイハークに住まう全ての者達が、海の方向を眺めている。

口々に声が上がる中、観戦武官となったブルーアイも己の目を疑う光景が浮かんでいた。

 

沖合に、信じられない程に巨大な艦が4隻。その4隻がまるで小型艦に見える程に、超巨大な艦が1隻浮かんでいる。

4隻だけでも、長さは300m以上もあると思えるくらいには大きいが、超巨大艦に至っては1000mを余裕で超えているではないか。

軍艦ピーマがEDF日本支部と接触した際、300mもの大型船を臨検したという話は聞いていたが、彼等は自分達の仕事の成果を大きく見せる為、嘘を付いてたのだろうと考えていた。

 

しかし現実は違った。「300m級の大型船さえも小型に見える程の超大型艦」を、EDF日本支部は保有していたのだ。

 

やがて超巨大艦から、何かが飛んできた。ブルーアイはその物体の中に人が見えた為、それは乗り物の一種であろうと推測した。事前に迎えが来るという連絡は受けていたのだが、ワイバーン以外に空を飛ぶ手段を実際に見たブルーアイは言葉を失う。それが近付くにつれ、キーンという甲高い音とバタバタという音が合わさった合成音が辺りに響き始め、やがて猛烈な風が吹き荒れ、近くにいると吹き飛ばされそうな風圧となる。

広場に駐機したその物体は、風と轟音を弱めていく。その最中に胴体横の扉が開き、中から男が現れて人だかりに向かって、しっかりとした足取りで歩き出した。ブルーアイが人だかりの前に歩み出ると、その男は彼の前に立ち、敬礼する。

 

「こんにちは、私はEDF日本支部のクワ・トイネ公国派遣部隊の塚崎と申します。この度、クワ・トイネ公国の観戦武官殿を1名、迎え上がるよう指示を受けて参りました」

「初めまして、私はクワ・トイネ公国海軍第2艦隊の作戦参謀をしております、ブルーアイと申します。この度のEDF日本支部の救援、感謝します」

「事前連絡をしていたかと存じますが、乗船準備は整っていますか?」

「はい、よろしくお願いします」

 

ブルーアイは荷物を抱え、EDF日本支部が保有するヘリコプター「HU04ブルート」に乗り込んだ。

塚崎がドアを閉めると、再びヘリのエンジンの回転数が上がっていき、やがて奇妙な浮遊感と共にHU04ブルートは飛行を開始する。

数分の飛行を経て、沖合に停泊している母船に近付くと、遠目で見ていた時とはとても比べ物にならない程の大きさに圧倒されていく。

 

(なんなんだ、この大きさは…!?)

 

ブルーアイの理解の範疇を超えるそれに、最早どう言った運用方法で造られたのか。彼には一切の検討が付かなかった。

 

彼がこれから乗る艦。

それはEDF日本支部所属第7艦隊旗艦、「要塞空母デスピナ」。

全長1400mもの超巨大空母であり、決戦要塞X5としてEDFの総力を持って建造された、対フォーリナー決戦兵器である。

特徴としては、やはりその戦闘力だろう。空母としての機能は勿論として、マザーシップの攻撃にも耐え得る強靭な装甲を持つ。更に汎用主砲として4基8門の51cmレールガン連装砲、対空兵装として360基の巡行ミサイルVLS、420基の35mmCIWS、対地支援用として4基の超大型巡行ミサイルVLSを搭載。機関は核融合炉であり、その恩恵を受けて最大速力は何と30ktである。デスピナ内部に簡易的な兵器製造機構、食料生産機構を備える等、無補給でも暫くは継続戦闘が可能となっており、正に「要塞空母」と言わしめるに相応しい性能を持つ。

 

そして要塞空母デスピナの四方に布陣するように停泊している艦。

それは「セントエルモ級イージス戦艦」の4隻である。

EDFが誇るイージス戦艦であり、ベースはイージス艦であるものの、あらゆる状況に対応するように様々な改造が施されている為、原型はあまり残っていない。船体は三胴船型と波浪貫通タンブルホーム船型を掛け合わせたような形状になっている。その全長は全長310.1m、武装は38cmレールガン連装砲7基14門、連装型35mmCIWS24基48門、8連装水平ミサイル発射機9基、ミサイルVLS72基、組み立て式小型テンペストA0ミサイルVLS1基を搭載。装甲はマザーシップの主砲を除く攻撃に有効的に耐える事が可能。

最大速力は40ktと、かなり高速。更にヘリやVTOL機を離発着させる小型飛行甲板まで装備しており、EDF海軍の主力艦として採用されている。

 

 

要塞空母デスピナとセントエルモ級イージス戦艦4隻、計5隻で構成された艦隊。それこそが今回、クワ・トイネ公国を護る為、ロウリア王国軍を撃滅する為に派遣されたEDF日本支部第7主力艦隊である。

 

 

ブルーアイは要塞空母デスピナの甲板に降り立った後、塚崎の案内で艦内を歩き、艦橋に入る。

艦橋に入ると、ブルーアイは要塞空母デスピナの艦長と対面する。今度はブルーアイが先に敬礼を行った。

 

「クワ・トイネ公国海軍観戦武官のブルーアイです。この度の援軍、感謝いたします」

「初めまして。私が艦長の山本です。早速ですが、我々はロウリア艦隊の位置を既に把握しています。現在地より西500kmの位置、およそ5ktの速力で接近中です。我々第7主力艦隊は明日の朝に出航し、ロウリア海軍に警告を発します。従うならばそれで良し、従わなければ第7主力艦隊の火力で以ってロウリア艦隊を殲滅する予定です。明日までは艦内でごゆっくり、おくつろぎください」

「全て、排除……ですか?」

 

ブルーアイは山本艦長の言葉に思わず聞き直した。彼からすればクワ・トイネ公国海軍の50隻、EDF日本支部の5隻、計55隻で4400隻もの大艦隊がを相手にするには、如何に巨大なEDF日本支部の艦であろうとも極めて厳しいと考えていたのだ。

 

「ああ、勿論ロウリア海軍が我々の警告に従って引き返すならば、攻撃は致しません」

「そう言った意味ではなく…確かに我が軍の艦隊50隻は準備を完了しておりますが、たったの55隻で作戦を行うのですか?失礼ながら、敵艦隊の総数はご存知ですか?」

「ええ。ロウリア海軍の艦隊総数は4400隻と把握しています。それとクワ・トイネ公国海軍の随伴は必要ないと伝えております。ブルーアイ殿の安全は我々第7主力艦隊が保証しますので、ご安心して仕事をなさって下さい」

 

 

 

 

 

 

翌日、早朝。

第7主力艦隊は予定通りに出発し、デスピナの最高速力の30ktに合わせ、洋上に巨大な白い航跡を引いていく。

 

「なんという速度だ…!!我が軍の帆船最大速力を遥かに凌駕している!!しかし…他の艦の距離が其々離れ過ぎているな。密集する必要が無いのか?」

 

ブルーアイが呟いた言葉には、少々語弊がある。艦隊の密集をする必要は確かにないのだが、根本的な問題として「密集する事が出来ない」のだ。要塞空母デスピナは先に説明した通り、全長1400mの超巨大空母である。当然、排水量も其れ相応の規模となっており、詳しくは軍事機密で非公開となっているが、それでも最低200万トンは下らないだろう。そんな超巨大艦が30ktで航行するとなれば、当然周辺の海面の影響は測り知れない。三胴式船体のセントエルモ級イージス戦艦さえもデスピナが発生させる波浪には舵を取られてしまうのだ。

 

閑話休題(それはさておき)

 

第7主力艦隊は変わらず30ktで西に航行を続ける。

出発から約7時間後。遂に平たい地平線の向こう側に、ロウリア王国海軍が姿を現わす。

 

後に「ロデニウス大海戦」と呼ばれる事となる、歴史を動かす戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

「いい景色だ、美しい…」

 

目の前の光景を見て、ロウリア王国東方征伐艦隊海将 シャークンは呟いた。

4400隻もの大艦隊が帆を張り、風を目一杯に受けて大海原を進むロウリア海軍。その船内には大量の水夫と揚陸部隊を乗せ、マイハーク港に向かっている。余りにも多い大船団故に、最早海が見えないと言わんばかりに、360度にひたすら船が映る。

ロウリア王国が6年の準備期間を掛け、更にパーパルディア皇国からの軍事援助を受け、漸く完成したこの大艦隊。4400隻もの大艦隊を防ぐ手立ては、ロデニウス大陸に存在しない。いやそれどころか、列強国パーパルディア皇国さえも制圧する事が出来るのではないかと、シャークンは一瞬思った。

 

(いや…パーパルディア皇国には「砲艦」と呼ばれる、船ごと破壊出来る兵器があるらしいな…)

 

今のロウリア王国では、パーパルディア皇国に挑むにはまだ危険が大きすぎる。頭をよぎったその考えを打ち消し、改めてこれから征服する、東の海をみた。

 

(…何かが、此方に飛んでくる?)

 

シャークンの視界に虫のような形をした無機物な物体が、バタバタと音を立ててロウリア艦隊上空に飛来する。見たこともない物体かつ、異様な飛行形態に、ロウリア艦隊に僅かな混乱が生まれる。

弓矢が届かない上空を飛び、人間の発する事はとても出来ない大音量で、飛行物体はロウリア艦隊に呼びかけを始めた。

 

『此方はEDF日本支部第7主力艦隊だ、ロウリア軍に警告する!ここから先はクワ・トイネ公国領海だ!直ちに回頭し、ロウリア領海へ引き返せ!警告に従わない場合、我々は貴艦隊に対して殲滅を開始する!繰り返す──』

 

どうやらあの飛行物体には人が乗っているようだ。そしてEDF日本支部という言葉に、シャークンは聞き覚えがあった。1ヶ月程前に外交官がロウリア王国に接触したらしいが、宰相が門前払いしたと聞いている。しかしあの飛行物体を見る限りでは、政治部が言っていたような蛮族の国とはとても思えなかった。

飛行物体に対して弓を引くものもいたが、当然当たる訳も無く。飛行物体は同じ事を繰り返し、しばらく上空を旋回していたが。

 

『…貴艦隊に回頭の意思無しと判断し、EDF日本支部第7主力艦隊は殲滅を開始する!!』

 

ふと飛行物体が今までの警告とは違う言葉を放ったと思うと、東の空へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

同時刻、EDF日本支部第7主力艦隊。ロウリア艦隊への警告を終了し、艦長の号令を待っていた。

 

「艦長。HU04ブルートの退避が完了しました」

「うむ…では、これより攻撃を開始する!全艦に通達、主砲発射用意!!目標、ロウリア艦隊!!」

「了解!前部51cmレールガン連装砲、発射用意!目標、ロウリア艦隊!照準開始!」

「電圧異常無し!通常徹甲弾、装填完了!」

「最適弾道角計算完了、照準終了!安全装置解除!いつでも撃てます!」

「全艦、主砲発射用意完了!」

 

「撃て!!」

 

その号令を合図に、要塞空母デスピナの前部砲塔である2基4門の51cmレールガン連装砲と、4隻のセントエルモ級イージス戦艦の前部砲塔の12基24門の38cmレールガン連装砲から、バキュゥン!!という甲高い音と共に超音速で砲弾が射ち出された。

 

これから始まるのは、「戦闘」ではない。「蹂躙」だ。

 

 

 

 

 

 

突如、ロウリア艦隊の数百隻が「消滅」した。

 

「…は?」

 

大艦隊を抉るように出来た空白の空間。一瞬前まではそこに数百隻の艦隊がいたのだ。

周囲に響き渡る大轟音、吹き渡る衝撃波、撒き散らされる木片、肉片、血液、海水。

一瞬にして、ロウリア艦隊はパニックに包まれる。

 

「な、何が……一体、何が起こったのだ!!?」

 

シャークンは瞬時に攻撃を受けたと判断は出来たのだが、まさか「数百隻が刹那で消滅する」なんていうのは余りにも想定外。

その時、周囲を見渡したシャークンの視界に、異物が見えた。水平線に僅かに浮かぶ物体。直感的にそれが攻撃の正体だと分かった。

 

「アレか…!通信士、司令部に至急の航空支援を要請しろ!「敵主力艦隊の攻撃により、我が艦隊壊滅の危機あり」とな!!急げ!!」

 

 

 

 

 

 

東方征伐艦隊からの通信要請を受けた王都防衛騎士団総司令部は騒然としていた。

4400隻もの大艦隊故に隠密行動など出来る訳がなく、必ず海戦は起こると判断していた。しかしそれでも高々数十隻程度の艦隊。物量の前に容易に消し飛ぶのは目に見えていた。しかし東方征伐艦隊からの通信は、全く真逆のものだった。

 

『現在、敵主力艦隊と思われる艦を捕捉。現在我が艦隊は超遠距離から攻撃を受けており、壊滅の危機。至急航空支援を要請する』

 

この想定外の事態に、総司令部は直ちに総司令部に待機していた250騎のワイバーンを緊急出撃。東方征伐艦隊を救うべく、飛竜の大編隊は東の海へと飛び立っていった。

 

 

 

 

 

 

東方征伐艦隊救援に向かっているロウリア王国竜騎士団。王国史上最大の250騎による作戦行動の勇姿は、地上から見る者を圧倒する。

それを率いる竜騎士団長 アグラメウスは、内心に不安を抱えていた。

東方征伐艦隊から敵主力艦隊発見の連絡が入り出撃したが、クワ・トイネ公国の海軍主力はせいぜい50隻、多くても100隻程度が関の山。対して東方征伐艦隊は44倍の4400隻。まず海軍だけでも容易く殲滅出来る筈なのに、何が起こって東方征伐艦隊が大打撃を受けるというのだ。

それはアグラメウスだけでなく、竜騎士団の全員がそう思っていた。

 

 

その時、目のいい者は視界の違和感に気付いた。

 

「ん?」

 

突如現れた多数の黒い点。それが何かを考えている間に、黒い点は刹那に距離を詰め、隊列を組んでいたワイバーン隊前方及び中央部が轟音と爆発に飲み込まれる。

一瞬で250騎の内、120騎が肉片と化した。その中には竜騎士団長 アグラメウスも含まれていた。

 

『な…なんだ今のは!?』

『う、うそだ、半数が一瞬で…』

『散開しろ、急げ!!』

 

混乱する魔力通信。すると今度は竜騎士団を貫くように5本の衝撃波が連続で数派に渡って走り、その衝撃波に巻き込まれたワイバーンと人間は即死し、海へと落ちていく。これによって更に竜騎士団の数が減り、僅かに80騎となる。

 

『前方に何かが見えるぞ!なんだアレは!?』

 

僅か80騎となったロウリア王国竜騎士団の前に立ち塞がった5つの飛行物体。

それはまるで矢尻の様な形をしていて、竜騎士団からすれば、それは全く未知の存在。

 

それは、EDF日本支部が保有する戦闘機「ファイター」。

フォーリナー大戦後に生まれた第6世代戦闘機であり、フォーリナーのテクノロジーをふんだんに使用したEDF最強かつ唯一無二の制空機だ。

カナード付きデルタ翼機であり、推進力となる双発エンジンには3枚パドル式左右独立三次元推力偏向ノズルを採用。更に各所に補助用の小型ブースターを取り付けており、低速時には小型ブースターを使用して戦闘機とは思えぬ超機動を行う事が出来る。

搭載兵器は30mmレーザー砲2門、最大24の目標を同時に撃破可能な全方位多目的ミサイル誘導システム「ADMM」、汎用レールガンユニット「EML」の3種。

最高速度はマッハ4に達し、巡航速度もスーパークルーズとなるマッハ2を発揮する。

 

彼等は第7主力艦隊旗艦 要塞空母デスピナの艦載機である。レーダーでロウリア竜騎士団の接近を察知した為、山本艦長はアルファ隊、ファイター5機を発艦させた。

要塞空母デスピナから発艦した彼等はまず、ADMMによるミサイル攻撃を開始。これにより120騎を撃破し、続いてEMLによる狙撃を開始したのだ。レールガンと飛行速度が合わさり、マッハ10もの速さで飛来したその砲弾は、衝撃波のみで生物を即死させる。これによって更に50騎を撃破したのだ。

そして今から、アルファ隊はドッグファイトへと突入する。5対80、数だけ見れば16倍の戦力差だ。

だが、80騎のロウリア竜騎士団は最高速度はせいぜい235km/h。攻撃手段も低速な導力火炎弾のみ。対して戦闘機ファイターは、最高速度マッハ5に加え、攻撃手段は30mmレーザー砲、ADMM、EML。

そしてファイターのパイロットは、対フォーリナーの訓練を何百何千時間も積み上げてきた。そんな彼らからすれば、ワイバーンの大群程度はイージーモードも良いところである。

 

結論から言えば、ロウリア竜騎士団が勝利できる確率は、「絶無」だ。

 

ドッグファイトに突入したファイター5機。その速さに竜騎士団の誰もが追い付ける筈が無く、1秒毎に1騎、また1騎と墜ちていく。

 

『なんだこのはや』

『やめてぇ!!助けてぇ!!』

『みんな逃げろ!!こんなの、こんなの勝てるわげぇ゛』

『畜生、畜生、畜生!!』

 

5分。

それは、戦闘開始よりロウリア竜騎士団250騎が、ファイター5機に殲滅されるまでの時間である。

 

 

 

 

 

 

「艦長、敵航空部隊の殲滅が完了しました。アルファ隊より着艦要請が届いています」

「許可する。アルファ隊によくやったと伝えておいてくれ」

「了解です」

 

第7主力艦隊は、ファイターが交戦を開始する前に既に攻撃を終えていた。何故か?それは「攻撃する目標が存在しない」からだ。

ブルーアイは、目の前に広がる光景に言葉を失っていた。

 

紅く染まり上がった死の海。

 

それは見え得る範囲の海面を赤が埋め尽くし、外に出れば死の匂いが充満しているだろう。4400隻の大艦隊がいた痕跡は、海に浮かぶ木片と肉片、そして海を紅く染め上げる血のみだ。第7艦隊は一応生存者の救助活動を開始しているが、果たしてこの惨劇を生き残った者はいるのだろうか。

海戦は、圧倒的勝利に終わった。しかしその勝利が生み出したその光景は、ブルーアイの心に恐怖を植え付けたのだ。

 

後にEDF日本支部に提出される第7主力艦隊戦闘報告には、こう記されている。

 

 

EDF第7主力艦隊

損害:皆無

 

ロウリア海軍

損害:海軍船4400、ワイバーン250

死者:計測不能

捕虜:0




用語解説&状況説明

東方征伐艦隊
ロウリア王国より出撃した4400隻からなる大艦隊。マイハーク港を制圧する予定が、その前に立ち塞がったEDF日本支部第7主力艦隊に一隻残らず殲滅された。
生存者は0、パーパルディア皇国の観戦武官も乗っていたが諸共木っ端微塵に。

ロウリア王国竜騎士団
東方征伐艦隊の救援要請を受け、総司令部に待機していた250騎全騎で出撃。
結果、要塞空母デスピナから発艦したファイター5機に5分で殲滅された。

EDF日本支部第7主力艦隊
第7艦隊から要塞空母デスピナ、セントエルモ級イージス戦艦4隻を抽出して編成された艦隊。超遠距離からレールガン連装砲による砲撃で東方征伐艦隊を殲滅。ロウリア軍総司令部より飛来した250騎のワイバーンは要塞空母デスピナの艦載機であるファイター5機が発艦。戦闘時間5分で殲滅させた。
これでも主砲とファイターしか使ってない。


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第5話 報告と準備

クローサー「よし。第5話の執筆終わったし、ついでに小説情報をチラ見するか」

お気に入り件数88、評価10:3、評価9:5、評価8:2、評価7:1、評価6:1、評価0:1、平均評価8.00(評価バー真っ赤)

クローサー「ファッ!?」


クワ・トイネ公国 政治部会。

4日前、 EDF日本支部がロウリア王国海軍を「殲滅」した戦いの模様が、参考人招致した観戦武官のブルーアイによって報告されていた。

この国の政治部会としては異例となる参考人招致であり、クワ・トイネ公国の命運を左右する戦いの報告を、国の代表達は真剣に聞く。その手元には、報告書が配られている。

 

「以上が、ロデニウス大海戦の戦果報告となります」

「…では、何かね?EDF日本支部はたったの5隻で、ロウリア艦隊4400隻に挑み、全てを海の藻屑とした。更にワイバーン250騎の空襲も、飛行機械5騎で殲滅した。その上5隻と飛行機械には全く被害が無かったというのかね?」

「その通りです」

「幾ら何でも無茶苦茶だ」

 

その言葉に、ブルーアイは困った表情を浮かべる。確かにとても信じられない事ではあるが、嘘や誇張は一切含まれていない。これ以上に何も書きようが無いし、どうしようもなかったのだ。

 

「EDF日本支部側の人的被害はゼロと書いてある、死者は無しだと言うのか?我が国の艦隊は出るまでもなかったと?こんな場で君がわざわざ嘘を付くとは思えないのだが、この報告はあまりにも現実離れしていて、信じられないのだよ」

 

外務卿のリンスイの言葉は、誰もが抱いていた感想を正に代弁する言葉。

本来ならば彼等はロウリア軍の侵攻を防いで貰った事を喜ぶべきなのだ。しかし一会戦の戦果としてはあまりにも度を外した戦果の為、政治部会にはEDF日本支部に対する、ある種の恐怖が宿っていた。

 

「EDF日本支部に派遣した使節団から、日本人は魔法を使うことが出来ないと聞いた。しかしこの報告書では「大規模爆裂魔法の様なもので、ロウリア王国海軍船が木っ端微塵に粉砕された」と記載がある。一体どちらが本当なんだ?」

「EDF日本支部が行った攻撃は、あくまでも「大規模爆裂魔法の様なもの」です。魔法とは断定出来ず、しかしそれ程の威力を発揮するには、我々の身近な所だと爆裂魔法しか思い浮かばなかった為、そのような表現で記載しました」

「では、EDF日本支部は魔法無しで大規模な爆発を連発し、ロウリア海軍を殲滅したのかね?そんな事不可能に決まってる」

 

野次が飛ぶが、ブルーアイはこれ以上説明を続けても無駄だと悟る。

様子を見ていた首相のカナタが、慎重に口を開いた。

 

「いずれにせよ、これで海からの侵入が防げた。ロウリアに最早海軍艦は1隻も残っておらず、再度の海からの侵攻は不可能となった訳だ。軍務卿、陸の方はどうなっている?」

「現在ロウリア地上部隊は、ギム周辺に陣地を構築しております。海からの侵攻作戦が失敗した為、ひとまずギムの守りを固めた後に再度侵攻してくるものと思われます。電撃戦は無くなったと見てよろしいかと。EDF日本支部の動向についてですが、城塞都市エジェイの東側5km先にあるダイダル平原にて、3km四方の土地の貸し出し許可を求めてきています」

 

軍務卿が大陸共通言語で書かれた申請書をカナタに渡す。その申請書には既に外務卿、軍務卿のサインが書かれており、残る一つのサインは首相のサインである。

 

「エジェイの後方…陣地を構築するのか?」

「そのようです」

「ダイダル平原は何も無い平野だったな…よし。外務卿、この申請書を返す際に陣地構築の許可書も発行せよ。無制限で好きに使って構わないとな」

 

後日。土地の貸し出し許可と陣地構築許可を得たEDF日本支部は、ダイダル平原に仮設飛行場兼ロデニウス大陸方面前線基地の建設に着手する。

 

 

 

 

 

 

代わってロウリア王国 王都ハーク城。

その一室でハーク・ロウリア34世は、将軍パタジンの戦闘結果報告を聞いて激怒していた。先日起こったロデニウス大海戦にてEDF日本支部と名乗る新興国が宣戦布告し、ワイバーン250騎と軍艦4400隻が殲滅されるという未曾有の大損害を負ったのだ。しかも此方側の戦果は全く確認出来ていない。完全敗北である。

 

「此度の海戦、なぜ負けた?」

「海戦の生存者が誰一人としていない為、分かりません…」

「…いずれにせよ、この被害は事実だ。今後このような事があってはならぬぞ」

「ははっ!海戦では想定外の結果で終わりましたが、この戦争の主戦力は陸上部隊である事は変わりありません。そして陸戦では数が物を言います。現にギムは既に陥落済みでございます。以降の作戦はより万全を期す故、陸上部隊だけでも公国を陥落させる事は容易でございましょう。陛下におかれましては、戦勝報告を大いにご期待くだされ」

「パタジンよ、此度の戦はそなたにかかっている。期待を裏切る事のないように頼むぞ」

「ははっ、ありがたき幸せ!!」

 

 

 

 

 

 

そして、第三文明圏 パーパルディア皇国。

薄暗い部屋の中にいる、2人の男は皇国の行く末に関わる話をしていた。

 

「…EDF日本支部?聞いた事が無い国だな」

「ロデニウス大陸の北東方向にあるという島国です。それと国というより、統治機構らしいです」

「いや、それは報告書を見れば分かるが…今までこのような国はあったか?大体、ロデニウスから1000km程の場所であれば、我々が今までの歴史の中で一度も気付かないとは考えられない」

「あの付近は海流や風が乱れており、航路の難所となっております。無用な被害を防ぐ為に近付かないようにしていたので、調査もしておりませんでした」

「しかし…文明圏から離れた蛮地で、海戦方法が極めて野蛮なロウリア王国とはいえ、せいぜい百何隻で4400隻が撃沈されるなど、些か現実離れしていないか?」

「憶測ですが、EDF日本支部も大砲を作れる技術水準に達していると思われます。そうでなければ4400隻もの数を殲滅するのは考えられません」

「蛮族の分際で大砲か…今までロデニウスや周辺大陸に侵攻しなかったのは、十分な技術水準に達するまで閉じ篭っていたのかもしれんな。漸く大砲が作れるようになって、この機会に顔を出してきたと考えるのが適当か。ところで、まさかロウリアが負けるなんて事は起こるまいな?もしそうなれば国家戦略に支障をきたすぞ」

「陸戦は海と違い、数が物を言います。ロウリアは数だけは兎に角多いので、大砲を持ち始めただけの国に大敗する事はありますまい」

「この報告の真偽を確かめるまで、陛下への報告は保留する。いいな」

「はっ」

 

 

 

 

 

 

クワ・トイネ公国国境付近。

その上空を、EDFの保有する対地攻撃ヘリ「EF31ネレイド」が飛行していた。

何故EDFの攻撃ヘリがそんな場所を飛んでいるのかというと、国境付近の警備とクワ・トイネ公国の避難民の発見の為だ。

クワ・トイネ公国より借り入れたダイダル平原の土地に仮設飛行場付きの前線基地を構築したEDF日本支部は、次々と前線基地に陸戦部隊や航空部隊の輸送を開始した。全ての準備が整うまでは作戦行動は行われないが、ロウリア王国占領地から逃れる為にクワ・トイネ勢力圏内に辿り着こうとしている避難民が現在もいる事を把握し、避難民の安全を確保する為にEDFのヘリ部隊が先立って、国境地域に配備されていた。

 

(…ん?)

 

ネレイドのパイロットが、視界の先に人の集団を見かける。

速い、どうやら走っているようだ。すぐに集団の後方に視線を移す。ロウリアの騎馬隊が集団を追いかけていた。

 

「司令部、此方ウルフ3!クワ・トイネの避難民を発見、ロウリア騎馬隊に追跡されている!これよりロウリア騎馬隊に対して攻撃を開始する!」

『此方司令部、了解した!間違っても避難民に当てるなよ!』

(言われなくても!)

 

全兵装の安全装置を解除、全速で向かう。少し高度を上げて避難民への誤射の確率を更に下げ、照準を定める。そしてネレイドのハードポイントに搭載されたロケットポッドの発射装置に指を掛ける。

 

「滅びやがれ!!」

 

4つのロケットポッドから8発ずつ、計32発のロケットが発射。全弾が避難民を避け、ロウリア騎馬隊へと一直線に向かう。避難民へと突撃していたロウリア騎馬隊は攻撃をかわす事が出来ず、ロケット弾の爆発に巻き込まれ、数秒で殲滅された。

 

「ふぅ…」

 

ロウリア騎馬隊の殲滅を確認し、パイロットは大きく息を吐く。あと1、2分発見が遅れていれば、彼が救った避難民は殺されていただろう。そもそももし自分が発見出来なかったと思うと、背筋が震えた。

 

「此方ウルフ3、ロウリア騎馬隊の殲滅が完了した。避難民の数は…およそ200。主に老人、女性や子供だ。HU04ブルートの輸送の手配を頼む」

『ウルフ3、そちらの現在地を報告せよ』

「了解、現在地は───」

 

今のEDF日本支部は、こうしてロウリア軍から逃げてくる避難民を保護する事しか出来ないが、それも前線基地に輸送されてくるEDF陸軍空軍の準備が整うまでの僅かな間だけ。

一度準備が整えば、彼等は怒りを乗せて敵を撃滅するだろう。そしてその力の前に、ロウリア軍が敵う事は有り得ない。




今回は少し短め。
次回は、遂にEDF陸軍が動き出します。


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第6話 攻撃開始

城塞都市 エジェイ。

過日、ロウリア王国との緊張状態が高まりつつあった頃にクワ・トイネ公国は全面衝突に備え、国境から首都に通ずる侵攻ルートを食い止めるべく、要所として城塞都市エジェイを設置した。クワ・トイネ公国の絶対防衛圏に位置するだけの事はあり、高く強固な城壁、また万が一城壁が突破されたとしても、敵の侵攻を防ぐ機構が街中の至る所に隠されている。そして城内に湧き出す泉などの豊富な備蓄量は、兵糧攻めさえも不可能とする。

この城壁都市に、クワ・トイネ公国西部方面師団約3万人が駐屯していた。ワイバーン50騎、騎兵3000人、弓兵7000人、歩兵2万人からなる、クワ・トイネ公国の主力軍である。

そしてその主力軍を束ねる将軍ノウは、今回のロウリアの侵攻を城塞都市エジェイで撥ね返す事が出来ると自信を持っていた。高さ25mの防壁はあらゆる敵地上部隊の侵入を許さず、空からの攻撃に対しても対空用に訓練された精鋭のワイバーンがいる。この防御の前に、如何なる大軍であってもこの城壁都市を陥落させる事は出来ないという、確かな根拠を持つ自信だった。

 

「ノウ将軍、EDF日本支部の方々が来られました」

「来たか…通せ!」

 

政府からEDF日本支部に協力するように通達された為に協力しているが、彼は正直、自国に土足で乗り込んできたEDF日本支部軍が気に入らなかった。EDF日本支部は自国の領空を侵犯し、軍の防衛網を突破可能な力を見せた後に接触してきた。まるで圧力外交だと心証を害していたのだ。更にロデニウス大海戦では、ロウリア王国海軍の4400隻にも及ぶ大艦隊を僅かに5隻で殲滅させたという戦闘結果報告を聞き、脚色するにも程があるだろうと鼻で笑った。陸軍に於いても鵜呑みにする者はごく僅かであり、幾らか情報操作が入っているだろうと冷ややかな反応だ。

そんな中。ロウリア王国兵約2万が、この城壁都市に向かって進行中であると情報が入ってきた。陸戦は何よりも数が物を言う。今回EDF日本支部が送り込んできたのは、EDF日本支部第3師団とかいう3000人弱の兵力で、彼等はエジェイの東側約5kmの所に基地を作って駐屯していた。たったの3000人程度では、虚を突いた戦果こそは挙げられるかもしれないが、戦局に影響を及ぼす程ではないと徹底的に否定的だった。その為、自分達でロウリアを退けるので彼等の出番は無いだろうと予測していた。

 

コンコン、と応接室のドアがノックされる。

 

「どうぞ」

「失礼します」

 

一礼して応接室に入る、3人。

 

「EDF日本支部第3師団長の太田内です」

 

ノウが着る、宝石入りの気品ある服とは違い、三人とも来ている服は緑を基調とした服を着ている。こやつがEDF日本支部の派遣軍の将軍だというのかと、ノウは信じられない思いだった。

兎にも角にも、まずは社交辞令から入る。

 

「これはこれは、よくおいでくださいました。私はクワ・トイネ公国西部方面師団将軍、ノウといいます。この度の援軍に感謝致します」

「EDF日本支部の師団長殿、ロウリア軍はギムを落とし、まもなく此処エジェイへと向かってくるでしょう。しかし、またお分かりかと思いますが、エジェイは鉄壁の城壁都市。これを抜く事は如何なる大軍をもってしても無理でしょう」

 

努めて高圧的に、ノウは話を続ける。

 

「甚だ心外ながら我が国はロウリアに侵略され、彼の国に一矢を報いるべく国の存亡をかけて立ち向かっております。我らの誇りにかけて、ロウリア軍は我らが退けます。EDF日本支部の方々はどうぞご安心して、貴方方が作った基地から出る事無く、後方支援をして頂きたい」

 

「お断りします」

 

ノアの発言と殆ど重なるように、太田内の声が響いた。

その顔からは表情が消え、鋭い視線がノウを貫く。その威圧感に、思わず一歩後退りする。

 

「…大したご自信ですね。この街は鉄壁。この街を落とす事は出来ない。誇りにかけて退ける。貴方がその言葉を口にするだけなら簡単だ。だが実際にそれを行うのは貴方ではない、貴方が率いる兵士達だ。そんな自信や誇りは、戦いに於いて何の意味も持たない。そんな物は、ちょっとした出来事で簡単に崩れ落ち、死を招く。そしてその代償を支払うのは、貴方ではない」

 

淡々と紡がれる言葉。太田内から発せられる威圧感に、クワ・トイネの人間は言葉を発する事は出来ない。

 

「我々はクワ・トイネの人々をロウリア王国から護るべく、今此処にいる。その対象は市民だけでなく、兵士達もだ。貴方の自信や誇りで、無駄な死を生み出させたりはしない。我々EDF日本支部第3師団が最前線に立ち、エジェイに接近するロウリア軍を殲滅します。貴方方はエジェイの城壁内から、決して出る事の無いようにして下さい」

 

こうして、クワ・トイネ公国西部方面師団とEDF日本支部第3師団の代表達による会談は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

ロデニウス大陸方面前線基地。

クワ・トイネ公国西部方面軍との会談を終えた太田内と幹部は、先程の会談について話をしていた。

 

「…宜しかったのですか?あのような強硬的な姿勢で」

「あそこで我々が甘い対応などした時には、クワ・トイネの人々が犠牲になる。我々は第2のギムの惨劇を止めるべく此処にいる。我々が居る場所で、クワ・トイネの人々が1人でも殺されてしまったその瞬間、我々の負けなのだ」

「そうですね。では…」

「ああ、第4機甲部隊を展開させろ。準備は?」

「ギガンテス30両、タイタン5両、重装型ベガルタ10機、プロテウス2機、ネレイド10機の展開準備は完了してきます。待ち伏せ地点の丘の高さはプロテウスの全長より低いですが、脚を屈めて潜んでおけば問題ありません」

 

此処で幹部から発せられた様々な兵器名。まずはそれらを此処で解説しよう。

 

 

まず、「E551ギガンテス」。

140mm砲を装備したEDFの主力戦車であり、フォーリナー大戦の教訓を活かして製造された第5世代戦車だ。140mm砲の火力、戦車ならではの強靭な装甲、強力なエンジンによって生み出される軽快な機動性。全てに於いてバランスが取れた性能であり、EDF機甲部隊の中核を担う、信頼性が極めて高い兵器である。

 

 

次に、「E651タイタン」。

EDFの重戦車であるが…まず言えるのは、何と言ってもその巨体だろう。何と全長は25mもある。何故それだけ大きい車体となっているのか?その理由は、この戦車が搭載する主砲にある。

 

何をトチ狂ったのか、「戦艦砲」を主砲としたのだ。

 

その口径、36cm。セントエルモ級イージス戦艦の主砲と僅か2cmの違いしかない。しかもこれはレールガンではない、炸薬式の主砲だ。そんな代物を僅か25mの陸上兵器に搭載したのだ。これを考えた開発者は一体何を考えていたのだろうか。

当然機動力や砲塔の旋回性能は低い。その為、主砲砲塔の上に更に小型砲塔を2つ設置し、副砲とした。…その副砲口径も、ギガンテスと同等の14cmもあるのだが。

この大火力重装甲の権化に、EDF兵士の間ではタイタンの事を「陸上戦艦」と呼ぶ者もいる。

 

そして、「BM03ベガルタ」。

ギガンテスやタイタンのような戦車と異なり、ベガルタは二足歩行兵器である。当初ベガルタは閉所に於ける機甲戦力として製造されたが、今現在では汎用型、重装型、接近戦闘特化型、対空型の計4つのシリーズに分かれ、其々の運用目的に合わせた武装やスペックとなっている。

その中でも今回出撃する事になった重装型は、武装にリボルバーロケットカノン2門と拡散榴弾砲2門を搭載。それが10機ともなれば、全弾発射時の火力は砲兵隊による支援火力にさえ匹敵する。

 

最後に、「BMX10プロテウス」。

全長25mの巨大人型ロボット、通称ギガンティック・バトルマシンとも呼ばれている。

この巨体の装甲は最早小型要塞にも匹敵する強靭さであり、武装は203mm砲を速射するバスターカノン2門、30連装マルチミサイルランチャー。単純だがそれ故に分かりやすい超火力を持つこのプロテウスは、各EDF機甲部隊の最高火力を担っている。

 

 

…さて、これでお分かりになっただろう。

 

「よし…では第4機甲部隊に出撃を命令する!奴等がエジェイに辿り着く前に、粉砕せよ!!」

「イエッサー!」

 

この機甲部隊に加えて対地攻撃ヘリ10機による航空支援が入り、その全火力が僅か2万の歩兵達に向けられるというのだ。

早いが、最早結論を言ってしまおう。

 

オーバーキルにも程がある。

 

 

 

 

 

 

城塞都市エジェイ 西側5km地点。

其処に、EDF第3師団第4機甲部隊は展開していた。その数、ギガンテス30両、タイタン5両、重装型ベガルタ10機、プロテウス2機、ネレイド10機。その全てが目の前にある丘によって隠れており、向こう側にいるロウリア軍にその姿が見える事は無い。

そしてまもなく悲劇が訪れる事が確定してしまっている憐れなロウリア軍2万は、宇宙を漂う自立衛星ライカからのリアルタイムな衛星偵察を受けており、その位置はEDF日本支部側から丸見えだ。

 

ネレイドを除く第4機甲部隊の全機のエンジンが静かに回り、その時を待つ。まるでその姿は、狩場で待ち伏せる猛獣の群れそのものだ。

 

『此方司令部。敵部隊がキルゾーンに進入、作戦を開始せよ』

「第4機甲部隊、了解!全機、前へ!!」

『イエッサー!!』

 

遂にその瞬間が来た。飛び出すようにギガンテス30両、タイタン5両がスタートダッシュを決めて丘を登り、重装型ベガルタは比較的遅い足取りで、しかし拡散榴弾砲は空に砲口を向ける。ネレイドはエンジンの回転数を急速に伸ばし、ローターが回転を始める。プロテウスはゆっくりと折り曲げていた脚を伸ばし、丘からその巨体を現わせる。

プロテウスに乗るものは、カメラから映し出される画面に、エジェイに向けて進行するロウリア軍2万が見える。これをエジェイに辿り着かせる前に、第4機甲部隊の総火力で以って此処で撃滅する。容赦は無用だ。

そして丘を登り切り、丘を降り始めるギガンテス30両、丘上にその巨体を布陣させたタイタン5両と重装型ベガルタ10機。そして上空に飛び立ったネレイド10機。そのいずれも砲口をロウリア軍に向ける。

 

 

「攻撃開始!!!!」

 

 

その瞬間、破滅の嵐がロウリア軍に降り注いだ。




次回、エジェイ攻防戦。…其処、攻防出来るのかなんて言っちゃいけない。

用語解説&状況説明
EDF日本支部第3師団
クワ・トイネ公国の防衛及びロウリア軍撃滅の為に派遣された。兵士の数こそ3000人だが、その戦力はロデニアス大陸の全戦力を上回る戦力だろう。

第4機甲部隊
第3師団の指揮下にある機甲部隊。ロウリア軍のエジェイ到達を阻止する為に出撃、ロウリア軍を待ち伏せた。明らかにオーバーキルな火力を投射するけど誰も気にしてない。

ロウリア軍(ロウリア王国東部諸侯団)
今回の生贄。果たして何人が五体満足で生き残れるかな?


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第7話 エジェイ攻防戦

日間ランキング20位、ルーキー日間3位にランクインしてる…
え、どういう事?え?(滝汗)


ロウリア軍東方征伐軍 東部諸侯団は、地獄の中に居た。

 

「ぎゃああああああ!!」

「うわあああああああああああっ!!?」

「逃げろ、逃げろぅあ゛ッ」

「俺の…俺の脚は何処に…」

 

城塞都市エジェイに向けて侵攻していた2万のロウリア王国東部諸侯団は、最早軍としての体を成していない。全員、生存本能に従って逃げ惑っている。

そのロウリア軍に向けて、EDF第4機甲部隊は攻撃を続ける。その苛烈な砲撃によって既にロウリア軍の8割は吹き飛ばされ、残りの2割に対して砲撃をしている。

30両のギガンテスの140mm砲、重装型ベガルタ10機のリボルバーロケットカノンと拡散榴弾砲、ネレイド10機のロケット砲、プロテウス2機のバスターカノンとミサイルランチャーによって、ロウリア軍を覆い尽くさんとばかりに連続した爆発が起こる。其処にタイタン5両の36cm砲が咆哮。巨大な砲炎を生み出した、戦艦砲という陸上兵器には有り余った火力は、着弾地点に一際大きいクレーターを作り出す。

爆発が起こる度に地面は耕され、付近にいたロウリア兵はまるで玩具のように宙を舞う。ある者は肉片となって周囲の地面や兵士を汚す。ある者は四肢を吹き飛ばされ、茫然自失となって更なる砲撃に吹き飛ばされる。ある者は幸運にも爆発の衝撃波を受けるだけで地面を転がるだけで済んだが、不幸にも次に飛来したタイタン主砲の直撃を受けて居なくなった。

 

その惨劇の中を奇跡的に生きていた、東部諸侯団を指揮していたジューンフィルア伯爵は呆然として見ていた。

今まで共に戦ってきた戦友、歴戦の猛者、優秀な将軍、家族ぐるみで親交のあった上級騎士。共に強くなるべく汗を流した仲間達。それら全てが、突如眼前に現れた未知の軍勢によって、無慈悲に、容赦無く消し飛ばしていく。

死にゆく部下達に唯々謝罪を繰り返していくジューンフィルアに、遂に砲撃が届く。タイタンの36cm砲の直撃を受け、その身体は一瞬にして消滅した。

 

 

 

 

 

 

「攻撃停止!」

 

第4機甲部隊長が号令し、全機からの攻撃が同時に停止する。

彼等の目の前に映るのは、彼等が作り上げた破壊痕が広がる大地。その大地に四肢を捥がれた死体や肉片が大量に転がり、その中から這い出る僅かな生存者達。

 

『隊長、どうします?』

「…これ以上は砲弾の無駄だ、それに今の攻撃を生き残った幸運な奴等──」

『緊急、緊急!!此方EDF日本支部宇宙局!!第4機甲部隊、大至急作戦地域から退避して下さい!!』

 

更なる指示を下そうとした所に、通信が横入りした。その慌てぶりから、何か重大な問題が起こった事は明白だ。

 

「此方第4機甲部隊、何があった!?」

『いいから急いで退避して下さい!!自律衛星ライカがっ!?』

 

空から一本の光線が舞い降りた。

 

 

 

 

 

 

自律衛星ライカ。

それはEDFがフォーリナー大戦前の2016年に打ち上げた、高性能AIを搭載した世界初の自律衛星兵器である。彼女はフォーリナー大戦の経験を経て「自我」に目覚めたAIに進化した為、EDFは彼女を完全な制御下に置いている訳ではない。しかしEDF日本支部転移を経ても尚、EDFを宇宙(ソラ)から見守り続けていた。

そんな彼女の趣味は、地球(転移惑星)と天体の観測だ。彼女はEDFからの指令がない間、様々な天体や地球(転移惑星)の気象や其処に住まう人々を見てきた。転移してもその趣味は変わらない。

そしてある日。彼女はEDF日本支部からの緊急の指令を受けて、クワ・トイネ公国の観測をしていた。その時に彼女は、ギムの殺戮を目撃したのだ。

 

──許せない。彼女の自我はそう思った。

 

その日から、彼女はEDFのネットワークに注視しつつ、指令通りにロウリア軍の動向を監視し続けていた。ひっそりと、自らに搭載した兵器の稼働準備を行いつつ。

そして遂に、その日が来た。クワ・トイネ公国のエジェイと呼ばれる都市から5km地点にて、EDF第4機甲師団がロウリア軍と交戦を開始するという情報が、ネットワークに入力されたのだ。そしてライカにも、ロデニウス大陸方面前線基地へ作戦地域のリアルタイム中継の指令が入った。彼女は忠実にその指令を守りながら、ある兵器のエネルギー充填を開始する。

 

彼女の眼前で、第4機甲部隊がロウリア軍に攻撃を開始する。まだ撃たない。エネルギー充填が充分でないし、何よりこの戦いの主役は第4機甲部隊だ。自分はその後詰で良い。

 

第4機甲部隊の攻撃によって、次々と吹き飛ばされるロウリア軍。まだ引き絞る。ライカの異変を察知したのか、EDF日本支部宇宙局とロデニウス大陸方面前線基地がライカの調査を始めた。しかしもう遅い。

 

第4機甲部隊が攻撃を終えた。今だ。そう判断したライカは隠匿していた己の行動を公開すると同時に、兵器のエネルギー充填率を急速に高める。ライカの独自行動にEDF日本支部は大慌てだが、心配は要らない。彼女が味方を巻き込むような事は決して行わないのだから。

 

次の瞬間、自律衛星ライカの主砲「メガリス」が発射。全リミッターを解除し、全エネルギーの80%を使ってまで出力を強制的に引き上げたそれは、光速で一直線にロウリア軍がいた地点中央に着弾し、直径約500mもの大爆発を引き起こした。

 

 

 

 

 

 

目の前で引き起こされた、万物を焼き尽くす大爆発に第4機甲部隊は足を取られた。

 

「うぉおとおおおおあっ!!?」

 

衝撃波と爆風によってギガンテスが僅かに傾き、重装型ベガルタは転倒を防ぐ為に咄嗟に片足を下げ、ネレイドは一瞬制御不能に陥る。しかしそれは僅か数秒の出来事。全機はすぐに立て直し、爆発が起こったそこを見る。土煙が晴れると、そこには第4機甲部隊の砲撃を上塗りするように巨大なクレーターが形成されており、そこに2万のロウリア軍がいたという痕跡は、全てが消失していた。

 

『無事ですか!?応答願います第4機甲部隊!!』

「此方第4機甲部隊。なんとかー…全機無事だ。それより説明を頼む。何があったんだ?」

『つい先程、自律衛星ライカより全リミッターを解除して主砲メガリスを発射するとの情報が、突如更新されてきました。急いで発射中止命令を発信しようとしたのですが、既にライカは最終発射工程を終えており…そして何より、ライカからの妨害で発射の強制中止も阻止されてしまったのです』

「で、この惨状か…なぁ、一つ確認なんだが。ライカはギムの殺戮を観測していたのか?」

『はい、司令部より指令を受けていました。…恐らく、其方が考えている通りだと思います』

「だよなぁ…」

 

EDF日本支部の全員がフォーリナー大戦のとある出来事をきっかけに、ライカは極めて「人間的」で「子供っぽい」事を知っている。それ故に、少し考えるだけで大凡のライカの行動の理由は分かるのだ。

彼女は、ある意味ではとても分かりやすい。

 

最後に想定外の事態は起こったが、エジェイ攻防戦は予定通り、EDFの完勝で幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

同日夜、クワ・トイネ公国政治部会。

軍務卿からの要請により、首相カナタの権限によって緊急政治部会が開かれる事となった。その理由は勿論、対ロウリア王国の防衛戦争が議題である。現在の戦況報告も行われる予定で、城塞都市エジェイでの戦いは政治部会内でも関心が極めて高く、もしも陥落していた場合、ロウリア王国は首都までの侵攻ルートを確保した状態となる。それ即ち、クワ・トイネ公国は絶望的な戦いを強いられる事となるのだ。

 

既に政治部会の会議場は満員。其処に各軍部の幹部が入室した。陸軍幹部が壇上に上がり、流れる汗を拭きながら戦況報告を開始する。

 

「お待たせしました。それでは…今回の城塞都市エジェイ西方5km地点の平原で行われた戦闘について、報告いたします。既にご存知の通り…数日前、エジェイ西側5km地点にロウリア軍の兵約2万が現れました。この数は城塞都市エジェイに駐屯する我が軍より少なく、先遣隊であると推測されます」

 

ここまでは、政治部会に出席する者は知る者は多い。問題はこの先だ。

 

「EDF日本支部は、丘下に第4機甲部隊と呼ばれる陸上機械の集団を配置してロウリア軍を待ち伏せ、奇襲攻撃によってこれを殲滅しました。その攻撃内容なのですが…少し信じられないような内容となっています。しかしこれは軍関係者のみならず、現地の民達も目撃しているらしく、駐屯兵に何度も確認を重ねたのですが…」

 

一拍置き、口を開く。

 

「猛烈な爆裂魔法の投射と思われるEDF日本支部の攻撃により、5分と経たない内にロウリア軍は壊滅的被害を被りましたが、その攻撃直後に一際大きい、直径300m以上もの大爆発によってロウリア軍2万は「消滅」しました。現地からの報告書には『広範囲が瞬く間に爆発して、ロウリア軍は成すすべなく殲滅された』、そして魔導師の報告書によれば『爆発は高威力爆裂魔法と思われるが、今回の攻撃に参加したEDF日本支部第4機甲部隊の兵士の数は僅か63人であると通達されており、仮に全員が大魔導師であったとしても、作り出すのは不可能な程の高威力、広範囲の爆発だった』と記録されています。…尚、本戦闘に於いて我が軍及び民間人の死傷者は無し。ロウリア王国軍の被害は約2万人及び馬2000頭と推定されます」

 

会議場が静まり返る。

 

「…ちょっと、質問があるのだが」

「何でしょうか?」

「EDF日本支部はどのような攻撃を行ったのだ?」

「『第4機甲部隊による殲滅攻撃を行った』という報告書を提出しています」

 

会議場の誰もがそういう事を聞いているんじゃない、という心の声が一致した。中には顔を真っ赤にして怒りを露わにさえしていた。国の存亡がかかった戦いの報告会に、作り話を聞かされたと考えたのだ。

 

「巫山戯るな、一体何を言っている!!EDF日本支部はたった63人の兵士で、2万人もの軍団を5分で殲滅させたというのか!?そんな魔法は古代魔法帝国のお伽話でしか聞いたことが無い!!」

 

その怒号が終わるのを待って、首相カナタが手を挙げて騒めく会場を静まらせる。

 

「手元の資料を、見てほしい」

 

EDF日本支部から安く輸入した、上質な紙束が各議員に配布される。

その表紙には、「ロウリア王国首都制圧作戦計画書」と記されていた。

 

「EDF日本支部は、我が国から出立させる軍勢でロウリア首都を制圧し、ロウリア軍指揮系統の頂点に立つロウリア王を捕らえる事で、戦争の早期終結を行いたいと提案してきた。それと並行してエジェイとギムの間に展開されているロウリア王国クワ・トイネ征伐隊と、ギムの西側国境より我が国内を東に進撃する敵に対し、地上部隊を投入して殲滅したいとの事だ。敵主力がギムを拠点としている為、殲滅がもし成功すれば我が軍も軍を送り、ギムを確実に奪還したいと思う」

 

突然の議題の飛躍に、威勢の良かった議員達も顔を見合わせた。EDF日本支部を否定していたものの、クワ・トイネ公国軍だけでは戦争を行う事さえままならなかったのだ。其処に戦争の早期終結まで見込めるとなったら…自分の立場をどうすべきか、冷静になる議員達。

 

その後政治部会は、全会一致でEDF日本支部軍の、国内及びロウリア領の陸海空全域に於ける戦闘の許可を決議した。

 

 

 

 

 

 

「司令。クワ・トイネ公国は例の作戦による領内及びロウリア領内の軍事行動を許可しました」

「うむ…それでは、始めるとしよう。第3師団に連絡を」

「了解しました」

「戦術士官。オメガチーム、ストームチームに出撃命令。作戦目標はロウリア王の捕縛だ」

「分かりました」




用語解説&状況説明

自律衛星ライカ
リアルタイムの衛星偵察だけを行う筈が、AIが勝手に主砲を発射。第4機甲部隊の攻撃によって既に死に体だったロウリア王国東部諸侯団を、文字通り消滅させてクレーターを作った。
主砲メガリスの威力は本来もっと弱いが、ライカが全リミッターが解除かつ全エネルギー80%を主砲メガリスに使用した為、この様な威力に。

オメガチーム
EDF日本支部の精鋭部隊。フォーリナー大戦ではリロード出来るレーザーライフルを装備し、大量のフォーリナーを地に叩き落として巨大生物を血祭りに上げた。
そのレーザーライフルを寄越せオメガチーム。ストームチームのレーザーライフルはリロード出来ないんだぞ。

ストームチーム
EDFの最終兵器。彼等が出撃すれば如何なる敵も滅ぶ。数千の巨大生物でも、50m級の超巨大生物でも、フォーリナーの輸送船団でも、果てにはマザーシップでもストームチームには勝てなかった。
正確には、ストームチームを率いるたった1人の兵士に、フォーリナーは負けたのだ。


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第8話 進軍開始

今までと比べるとかなり短いですが、キリを良くしました。


エジェイ攻防戦の翌日。

 

「そろそろ、か…」

 

ロウリア王国東方征伐軍飛竜小隊隊員 竜騎士ムーラ達、12騎の竜騎士達は先日騎馬達が消えたという地点で散開していた。ムーラは散開後、先遣隊として出陣した東部諸侯団が消息を絶った地点の観測担当に割り当てられていた。今日は雲が多く、晴れた空ではあるが少し肌寒い。

消息を絶った先遣隊。彼らは城塞都市エジェイを威力偵察し、そして準備が整った東方征伐軍本隊の到着を待ち、合流する手筈だった。

 

先遣隊が消息を絶った地点に到着する直前。ムーラが乗るワイバーンが突如、警戒の鳴き声を発する。

ワイバーンの視線の先を追い、東の空を注視するムーラ。その耳に、重い何かが響く音を拾う。続けて注視していると、僅かな違和感を発見した。遠い空の先、芥子粒のような大きさの黒い点を認めた。点のように見えたそれは、急速に大きさを増していく。

 

すると何か、その点から更に小さい物が発射された。小さな火炎と煙を吹き上げたそれは、ムーアへ向けて音速を超える速度で向かってくる。

 

「導力火炎弾!?」

 

相手はまだ遠いが、弾速は速い。尚且つ自分のワイバーンよりも遥かに射程距離が長いらしい。あれ程の距離から射撃出来るとは、パーパルディア皇国が保有するワイバーンロードを凌駕しているかもしれない。

 

(しかし…焦ったな)

 

ムーラは慌てる事なく、横に飛んで回避する。いくら遠くから速い攻撃を行ったとしても、気付いてしまえば避ける事が出来る。こういった遠距離攻撃は、不意打ちでこそ効果があるというのに、敵はよっぽど目が悪いのだろうか。

そう考えたところで、ムーラは信じられない光景を目撃する。

 

「…なっ、こっちにくる!?」

 

導力火炎弾だと思っていたそれは空中で軌道を変え、自分達へと向かってきた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ワイバーンに全力飛翔の指示を出し、背後に付かれた場合の回避機動(ジグザグ飛行)を試みる。が、追ってくるそれはワイバーンの動きに応じてその都度向きを変えてくる。追ってくる攻撃なんて、ムーラは聞いた事が無かった。

 

「導力火炎弾がっ、ついてくる!!」

 

咄嗟に魔力通信機の送話器に向かって、悲鳴のように叫んだ。

 

「ち、畜生…」

 

背後に迫る死の予感。脳の中を様々な思考が回る。

 

「死んでったまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

ワイバーンに全力の急上昇と急降下を指示。今までにない重力加速度と合成風がムーラの身体を襲うが、それはやはり軌道修正し、向かってくる。その最中、プツリとムーラの腰に付けていた大切なお守りが急降下中に外れた。

それが背後に迫り、ムーラとワイバーンは共に死を覚悟した、その瞬間。

 

それはワイバーンの身体に突き刺さり、爆発。ムーラとワイバーンを粉々に砕き、大地に僅かな血の雨を降らした。

 

 

さて、此処で答え合わせをしよう。

まずムーラが最初に目撃した黒い点の正体。それはEDF日本支部第6飛行中隊所属のファイターである。そこから派生すれば、ムーラを追ってきた「それ」の正体は、自ずとわかるだろう。そう、ファイターの搭載兵器 ADMMである。

対フォーリナー制空戦闘に於いて最も重要な戦力となるADMMにはEDFの最新技術が目一杯搭載されている。ミサイルの超小型化は勿論の事、生物に対するロックオン及び追尾機能、射程距離を多少犠牲にした誘導距離の向上、最大24の目標に対するマルチロック機能、対ジャミング機構。僅か50cmの超小型ミサイルに搭載するには余りにも豊富な機能だが、EDFはこれの実現に成功したのだ。

そしてそんな兵器を撃たれてしまった以上、ムーラの生存確率は悲しいかな。「ゼロ」と言う他に無かった。

 

 

ムーラが粉々に砕け散った直後、更に上空を飛行するEDF航空部隊。その陣容は以下の通りである。

 

戦闘機ファイター 30機

爆撃機カロン 100機

爆撃機ミッドナイト 50機

 

計180機からなる、大編隊だ。

 

そしてその後を追うように、EDF第3師団が疾走する。その陣容は。

 

歩兵 640名

武装装甲車両グレイプ 80両(歩兵640名搭乗)

E551ギガンテス 60両

E651タイタン 10両

キャリバン装甲救護車両 2両

EF24バゼラート 30機

EF31ネレイド 20機

HU04ブルート 2機(ストームチーム、オメガチーム搭乗)

 

EDF第3師団の中でも特に機動力のある戦力のみを抽出した為、これでも第3師団の6割程度の総火力しか発揮出来ない。しかしこれでロウリア王国の全軍を殲滅する事はとても、とても容易な事だ。

 

そして此処からでは見えないが、ロデニウス大海戦にてロウリア海軍4400隻を殲滅した第7主力艦隊もロウリア王国制圧の為、海より侵攻を開始していた。

 

さて。此処でロウリア王国首都制圧作戦に出撃するEDF日本支部の戦力を、改めて整理しよう。

 

 

EDF航空部隊

戦闘機ファイター 30機

爆撃機カロン 100機

爆撃機ミッドナイト 50機

 

EDF第3師団

歩兵 640名

武装装甲車両グレイプ 80両(歩兵640名搭乗)

E551ギガンテス 60両

E651タイタン 10両

キャリバン装甲救護車両 2両

EF24バゼラート 30機

EF31ネレイド 20機

HU04ブルート 2機(ストームチーム、オメガチーム搭乗)

 

EDF第7主力艦隊

要塞空母デスピナ

セントエルモ級イージス戦艦 4隻

 

ストームチーム

レンジャー4名

 

オメガチーム

レンジャー4名

 

 

以上の戦力が、電撃的にロウリア王国に侵攻。立ち塞がるロウリア軍を航空部隊が粉砕し、第3師団は王都ジン・ハークを占領。同時にストームチームとオメガチームはハーク城へ突入しロウリア王を捕縛。無条件降伏へと追い込ませる。万が一残存軍が抵抗を続行するならば、EDF第3師団が直ちにロウリア各地の抵抗戦力を殲滅する計画だ。

これこそがEDF日本支部が計画した「ロウリア王国首都制圧作戦」改め、「ロウリア王国制圧作戦」。

 

ロウリア王国の、終焉の日がやって来た。




用語解説&状況説明
爆撃機カロン&ミッドナイト
EDFの爆撃機。エアレイダー型ストーム1ならお世話になる人も多いではないだろうか?
フォーリナーテクノロジーの圧縮空間技術によって1機100t以上もの爆弾積載量を誇り、カロンとミッドナイトの爆撃編隊が全力爆撃した日には、其処には何も残らないだろう。
今作戦に於いてはギム周辺に駐屯している東部征伐軍の殲滅を担当する。

EDF第3師団
王都ジン・ハーク制圧の為に出撃。伝説のストームチームが同行するという事もあり、士気は天元突破中。

EDF第7主力艦隊
王都ジン・ハークの港の破壊、王都の制空権確保の為に出撃。

ストームチーム&オメガチーム
ハーク城に空挺する為、其々HU04ブルートに乗り込んで移動中。全員ではなく4人ずつなだけまだ良心的。

レンジャー
4つ存在する、EDFの兵科の一つ。レンジャーは皆がイメージする兵士そのままである。


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第9話 王国の最期

GW最期の更新。(の筈)
明日以降、更新頻度は落ちます。


まず最初の犠牲になったのは、ギム周辺に拠点を置いていた東部征伐軍本隊だった。

その総数、約38万の兵士達と100騎のワイバーン。ロウリア王国軍のおよそ8割が一箇所に集結し、クワ・トイネ公国を侵略する時を待っていた。当然その膨大な兵士がギムに入りきる訳が無く、東部征伐軍はその郊外に陣を築いていた。

其処に、EDF航空部隊は攻撃を仕掛けたのだ。

まずファイター30機が、東部征伐軍の空を警備していたワイバーン100騎を同時に撃墜。取るに足らない航空戦力を撃滅した直後、速度を落とした爆撃機カロン100機と爆撃機ミッドナイト50機が広範囲に編隊を形成、突入して爆撃機を開始した。

 

 

この時ミッドナイトとカロンは少々特殊な爆弾を投下していた。

その解説を行う為にも、まずは双方の爆撃機としての役割を少し話そう。

前提として、ミッドナイトとカロンの両爆撃機は、フォーリナー大戦後に開発された爆撃機である。つまりはフォーリナーテクノロジーを利用した爆撃機だ。

 

爆撃機ミッドナイトは、フォーリナーの機甲戦力に対して投入される大型爆撃機である。その為にミッドナイトの搭載積載量は、最低でも1tのプラズマ炸薬式徹甲爆弾を100発以上搭載出来る事を目標として設計、開発される事となった。EDF空軍の総力を以って、その開発は取り掛かられた。

そして最終決定されたミッドナイトのスペックは最高速度マッハ3、巡航速度マッハ1.4、爆弾積載量420t、爆弾倉1つである。この数値は、フォーリナーテクノロジーの空間圧縮技術を用いてもミッドナイトのサイズで収める事は、極めて困難を極めた。しかしEDF空軍はこれを成し遂げたのだ。

続いて爆撃機カロン。此方はフォーリナーの主戦力、巨大生物に対して投入される中型爆撃機である。その為にミッドナイトが搭載するような大火力爆弾よりも、より広範囲に火力を投射。尚且つ確実に爆撃コースの巨大生物を殲滅する為に、クラスター爆弾を多数の爆弾倉を用いて爆撃する事を求められた。

ミッドナイトのノウハウを応用して設計された結果、スペックはマッハ3.4、巡航速度マッハ1.8、爆弾積載量300t、爆弾倉3つである。

 

以上がミッドナイトとカロンの性能解説である。

続いて本命の、爆撃に用いられた爆弾の解説に入ろう。

 

まずミッドナイトとカロンが今爆撃に使用した爆弾。それは「1t級クラスター式かんしゃく玉爆弾」と呼ばれている。

 

…そう、かんしゃく玉。一体何を言ってるんだと思うかもしれないが、EDFはかんしゃく玉を対フォーリナー兵器として開発した事があるのだ。それもシリーズ化して4種類も。

ふざけているのかと聞かれるならば、その通りだろう。そうでなければまず説明が付かない。でなければ、誰が大真面目に遊びの道具を対フォーリナー兵器にしようと思うのだ。

開発の発端はフォーリナー大戦後に起こった。良くも悪くも暇になってしまったEDF兵器開発部の誰かが、かんしゃく玉に対フォーリナー用の炸薬を詰めて遊んだ事から始まる。そこから暇人の連中(研究者達)が集い、所謂「かんしゃく玉兵器化事件」と呼ばれる喜劇が始まった。

暇人共は、EDF上層部に対して「新型超小型グレネードの研究」と題して予算を分捕ると、その予算の全てを投入しかんしゃく玉を如何に強力に出来るかを争い、全力で取り組んだ。幾多の失敗を重ねても暇人達はその根性を以って諦める事は無く(そこで諦めろよ)、遂に4種類の超強力なかんしゃく玉を完成させてしまったのだ。

しかしそこで遂にEDF上層部は、兵器開発部が何をしでかしているのかに気付いて強制捜査に赴いた。そこで4種類の超強力かんしゃく玉と研究内容を押収。そのふざけっぷりに激怒モードに入る直前だった上層部だったが、此処で誰もが予想だにしなかった事実が浮かび上がった。

…なんとその4種類の超強力かんしゃく玉、纏めて使用すれば対巨大生物用としては充分な威力を発揮できる程に強力だったのだ。

EDF上層部に兵器開発部が提出した予算計上内容は「新型超小型グレネードの研究」であった以上、巨大生物に対して十分な威力を持ったそれらは、確かにその研究内容と違ってはいなかった。つまりは予算計上内容通りの研究開発に成功してしまっていたのだ。

怒る理由を失ってしまったEDF上層部は一応彼等をお咎め無しとし、「今回は偶然上手くいったから見逃すけど、次にこんなふざけた事しでかしたら今度こそ容赦無くシメるからそこの所覚悟しとけよゴラァ」という有難いお言葉を送った。

…こうして、EDFの歴史上に伝説の喜劇として名を馳せている「かんしゃく玉兵器化事件」は一応の幕を閉じたのだ。

 

しかしそんな珍兵器を一体誰が使いたがるのだろうか。当然しばらくの間、倉庫の隅っこで眠り続けていたのだが、それに目を付けた者がいた。それがEDF空軍である。

その頃のEDF空軍では、1つの問題が発生していた。それは「市街地戦に於いての過剰な爆撃威力」である。

勿論最優先はフォーリナー殲滅なのだが、それでも可能なら、爆撃によって街全域を破壊する、なんて事になるのは避けたい。それが巨大生物の大群程度なら尚更だ。しかし巨大生物を確実に仕留めるには、どうしても街を破壊してしまう程の威力を持った爆弾を用いなければならなかった。そこに軍用かんしゃく玉というふざけた兵器の話を聞き、そして思った。

「それをクラスター爆弾として用いれば、街を破壊せずとも巨大生物を殺す事が出来るんじゃないか?」と。そして試しにシミュレートに掛けてみた結果、極めて有効な攻撃手段として使えると分かったのだ。

こうしてEDF空軍により、「1t級クラスター式かんしゃく玉爆弾」という兵器が爆誕したのだ。

 

 

…話が逸れ過ぎた、元の話に戻そう。

1t級クラスター式かんしゃく玉爆弾の子弾(かんしゃく玉)は1発につき5000発内蔵している。それをロウリア王国東方征伐軍本隊に対して100機のカロンは各機300発、ミッドナイトは各機420発を投下した。

つまり、(100×300+50×420)×5000=255000000発。

2億5500万発の軍用かんしゃく玉がロウリア兵約38万人に降り注いだ。たかがかんしゃく玉と思うだろう。しかしEDFが「正式に兵器として採用している」のだ。

一発だけでも、人間の四肢は軽く吹き飛ぶ程度の威力はある。それが空から2億5500万発も降り注げば、どうなる?

 

答えは簡単。38万人程度の人間など粉々になる。

ミッドナイトとカロンによる絨毯爆撃を終えた頃には、ロウリア軍東方征伐軍が居た場所は、約38万人分の肉片が散乱していた。

 

ロウリア軍38万を殲滅し、第3師団の援護を終えたミッドナイトとカロンは補給の為、一時帰還した。ファイター30機は継続して第3師団の援護を行う。

 

ロウリア王国の主力軍は消滅し、王都への道が開かれた。後は突き進み、王都を制圧するのみ。

 

 

 

 

 

 

ロウリア王国、王都ジン・ハーク。

其処は今、地獄と化していた。

 

「第1城内街完全制圧されました!!」

「第8騎士団、応答無し!」

「重装歩兵、全滅!!止められません!!」

 

EDF第3師団は一直線に王都ジン・ハークへと侵攻、攻撃を開始した。

まず戦闘機ファイター30機が、空を飛んでいたワイバーン150騎を30秒足らずで殲滅。その数分後、第3師団が一番外側の第1城壁に向けて砲撃。60両のギガンテスと10両のタイタンによる砲撃により、東部約300mの第1城壁とその付近が「跡形も無く消滅」。間髪入れず第3師団は第1城壁内に進入、歩兵640人(レンジャー370人、ウイングダイバー180人、フェンサー90人)とギガンテス60両、バゼラート30機、ネレイド20機で瞬く間に第1城壁内街全域を制圧すると、その勢いそのままに第2城壁内街の制圧を開始した。

 

この事態に、ロウリア王国防衛総司令部は慌てるなどと言ってる暇もない程に騒然としていた。

事前にロウリア王に報告していた計画では、万が一東部征伐軍が敗れた後、敵は必ず王都の南東にある工業都市ビーズルを陥落させてから王都に侵攻してくると考え、王国防衛隊の主力は其処に配置されていた。確かにその計画は軍事的にも地理的にも理にかなっており、そもそも総司令部には「東方征伐軍が殲滅された」という情報さえ入っていなかった。

 

ところが現実はどうだ?東方征伐軍が定期連絡を絶ったと思ったら、王都に全く未知の軍勢が、それこそ王都を消し飛ばさんと言わんばかりの大火力で侵攻してきたではないか。この未曾有の事態に、総司令部は直ちにロウリア王国各地に非常事態を発信し、全軍の集結を呼びかけた。しかしEDF日本支部が、そんな事を許すと思ったら大間違いだ。

ロウリア領海に侵入した第7主力艦隊とデスピナに艦載されていたファイターと攻撃機ホエール、そして補給を終えたミッドナイトとカロンによって各地に駐屯するロウリア軍を攻撃したのだ。テンペストミサイルさえも使用されたその攻撃により、各地に駐屯していた王国防衛隊は、とても王都救援どころでは無かった。

 

故に今、王都防衛の有力なロウリア軍は王都防衛隊2万人のみ。ワイバーンは既に全滅し、王都の制空権さえも失った今。

 

 

『第3師団が敵軍を十分に引き付けた。ストームチーム、オメガチーム。突入せよ』

 

 

彼等を止める手段は、無い。

 

 

 

 

 

 

2機のHU04ブルートが王都ジン・ハークの中心にあるハーク城に向けて進行していた。両機の扉は開いており、地上でロウリア軍を粉砕しながら第2城壁内街を制圧中の第3師団が見える。

 

「おいおい、彼奴ら此処を廃墟にする気かよ?街中にタイタン突っ込んでるじゃねぇか」

「うわー…今ギガンテスの主砲でロウリア軍吹き飛んでましたよ?あの威力、対フォーリナー用徹甲榴弾じゃないかな…」

「これでも無用な被害を出さない為に、俺達の突入に合わせて大分手加減してるんだろ?フォーリナーが相手じゃなかったらこうもなるんだな…」

 

「総員、聞け」

 

各人が思い思いの言葉を話していたが、部隊長がそれを止めた。すると一瞬で部隊員は沈黙し、部隊長に注目する。すると各人のヘルメットバイザーに、様々な作戦資料が映し出される。

 

「最終確認だ。我々の作戦目標はロウリア王 ハーク・ロウリア34世の捕縛。司令より今作戦に於ける「完全無制限殺傷許可」が我々のみに限定して出されている。その為今作戦達成まで、我々は非戦闘員の殺傷も自由に判断出来る。勿論無抵抗かつ非脅威的な非戦闘員には攻撃するな。但し、非戦闘員でも武器を持って我々に向かってくるならば殺せ。一瞬の躊躇や甘えが我々を殺す。いいな?」

「「「イエッサー!」」」

「良し。オメガチーム、其方は?」

『此方オメガリーダー。いつでも』

「パイロット」

『降下地点まで30秒、準備してくれ!』

 

30秒後、ブルート2機は王宮広場上空10mに位置する。

 

「ストームチーム、ミッションを開始する」

『オメガチーム、作戦開始!』

 

躊躇無くブルートから8人のレンジャーが飛び出して、王宮広場へと落下。同時に王宮広場にいた第7、第8近衛隊に向けてストームチームはアサルトライフル「AF100」を、オメガチームは「フュージョンブラスターZD改」の銃口を向け、発射した。

 

フォーリナー大戦末期に作られ、フォーリナーの攻撃によって今現在では失われた技術を用いられて開発された両武器。その威力は巨大生物数体を貫通して即死させる事は勿論、フォーリナーの大軍団さえも撃滅する程の火力を持つそれを、只の鉄の鎧を着るだけの人間に撃つとどうなるか?それは勿論、たった1発で木っ端微塵だ。

10mからの落下時間の約2秒。王宮広場に破滅の弾幕が展開された。

 

そしてストームチームとオメガチームが王宮広場に降り立った時。其処には彼等以外には誰も居なくなっていた。

 

「行くぞ」

 

ストームリーダーが、一声を発すると同時。8人の歴戦の戦士達はハーク城内へ突入した。

 

 

 

 

 

 

ハーク城を突き進むストームチームとオメガチーム。途中立ち塞がるロウリア近衛兵やバリケードがあったが、AF100とフュージョンブラスターZD改の火力の前に悉く消滅していく。

当然だ。彼等は正真正銘、フォーリナー大戦を最初期から戦い抜いてきた戦士達。その練度、その覚悟、その戦闘能力は全EDF兵士の中でも頂点に達する者達に、たかが「1つの大陸の半分を征服する程度の国の兵士達」が敵う訳が無い。彼等が戦ってきた(フォーリナー)とは土台が根本的に違う。

 

僅か15分で、目標地点である王城の4階 王の間前に到着した。突入前に全員が武器の残弾を確認し、再装填。素早い動作でそれを終了させると、扉を開けて室内に突入。

彼等の視界にまず入ったのは、悲愴の表情を浮かべて震えるメイドが2名。その背後、薄暗い王の間の奥に銀の鎧に身を包む、銀髪をなびかせた男が1人立っていた。

 

「やあ皆さん、よくぞ」

「撃て」

 

その瞬間、ストームチームとオメガチームは攻撃を開始。AF100の弾幕とフュージョンブラスターZD改のレーザーが王の間を飛び、震えるメイドを避けてその男と「周囲に潜んでいた兵士達」を粉々にした。そう、ストームチームとオメガチームは待ち伏せを看破していたのだ。

 

何故か。それはEDF兵士に標準支給される「超小型生体電波両用識別式レーダー」の恩恵である。

この超小型レーダーは装着者の半径180m内に存在する生命体と機械を正確に認識する能力を持ち、同レーダーを所持する者は「味方」として識別する機能も搭載している。このレーダーの前には、伏兵や罠などは無意味と化す。

つまり、ロウリア近衛兵が仕掛けた最後の罠は丸見えだったのだ。

 

最後のロウリア近衛隊が殲滅され、最早障害になり得るような障害は存在しない。注意を向ける為に囮とされ、気絶したメイド2名は壁に寄りかからせ、王の控室を開けた。

 

 

 

 

 

ハーク・ロウリア34世は、王の控室の端でガタガタ震えて何処かの神に命乞いをしていた。

服従と言っていいほどの屈辱的条件を飲んで、漸く取り付けた列強の支援。

その支援によって列強式兵隊教育を6年間の歳月をかけて施し、漸く完成したロデニウス大陸統一の為の大軍団。

資材も国力の限界ギリギリまで投じ、数十年先の借金までして作り上げた軍隊で、更には念には念を入れ、石橋を叩いて渡るかのように軍事力にも差をつけた。

 

そうして圧倒的勝利でロデニウス大陸を統一する筈だった。その筈なのに、「EDF日本支部」と「未知の軍団」によるデタラメな力を持つ国と軍団の参戦によって、軍事力を大きく失って王都さえも猛攻撃を受けている。

 

EDF日本支部の海軍によって軍艦4400隻は沈められ、見たこともない未知の軍団によって王都が蹂躙されている。

こんな事になるなら、せめてEDF日本支部とは国交を結ぶべきだった。そうすれば4400隻を沈めたその力を未知の軍団に向けてくれていたかも知れない。

悔やんでも悔やみきれない。敵はもう、すぐ目の前に来ている。

 

扉の前に積んでいた即席のバリケードが一瞬で破られ、緑色と紫の奇妙な軍勢が部屋に雪崩れ込んできた。

手には魔法の杖の様な物を持ち、帯剣はしていない。どうやら全員魔術師の様だ。ロウリア34世の脳裏に、古の魔法帝国軍のお伽話が浮かぶ。

 

「ま…まさ、か……貴様ら、魔帝軍か!?」

 

恐怖に震えながら叫んだその言葉に、2人の兵士が前に出る。ストームリーダーとオメガリーダーだ。

 

「我々はEDFだ。ハーク・ロウリア34世、お前を捕らえる。抵抗はするなよ、痛い目に遭いたくなければな」

「お前達がしでかした行為、全て精算させてもらうぞ。拒否権は無い」

 

 

 

 

 

 

ストームチームとオメガチームによって、ハーク・ロウリア34世は捕縛された。王都ジン・ハークも第3師団によって完全占領され、各地のロウリア軍は航空部隊と第七主力艦隊によって99.9%の兵士が死亡していた。残るは無力な市民達のみであり、最早ロウリア王国に戦う力は微塵も残されていない。

 

この瞬間、ロウリア王国は無条件降伏。そして滅亡が決定的になった瞬間でもあった。




用語解説&状況説明
ロウリア王国東部征伐軍本隊
ギム郊外に拠点を置いていたのだが、そこに空から降ってきた2億5500万発のかんしゃく玉を受けて殲滅。将軍パンドールや副将アデムもかんしゃく玉を全身に浴びて肉片の仲間入りに。

かんしゃく玉
言わずと知れたEDFのネタ兵器。本当は登場させる予定は無かったのだが、感想欄にてよくかんしゃく玉が名指しされていたので、一から設定作って登場出来るようにした。今後も1t級クラスター式かんしゃく玉爆弾が敵に向かって空から降り注ぐ…かもしれない。(今話の執筆の中では一番苦労したぞ…)

かんしゃく玉兵器化事件
兵器開発部の暇人共が主役となった、EDFに語り継がれている伝説の喜劇。

王都ジン・ハーク
ロウリア王国の首都だったが、第3師団の殴り込みで大惨事に。被害の詳細は次回説明予定。

ロウリア王都防衛隊
第3師団の殴り込みでほぼ殲滅された。

ロウリア王国近衛隊
ハーク城を防衛する精鋭部隊だったが、ストームチームとオメガチームの空挺で呆気なく殲滅。勝てる訳が無い。

AF100
ストームチームの標準装備。フォーリナー大戦末期に開発されるも、フォーリナーの攻撃によって製造技術が失われた超兵器。現在ではストームチームの配備分を除けば数丁しか残っておらず、未だに再生産は出来ていない。その為全てのAF100をストームチームのみが使用出来るようになっている。
その威力は1発で現代戦車以上の装甲を持つ巨大生物を即死に至らしめるのみならず、数体を貫通する程である。

フュージョンブラスターZD改
オメガチーム専用装備。フォーリナー大戦末期、レーザーライフル「フュージョンブラスターZD」をオメガチーム専用にカスタマイズし、戦場でもカードリッジリロードを可能にした。製造は不可能ではないが、一丁に付き50億ドルもの資金を必要とする為、オメガチーム以外の配備は行われていない。

超小型生体電波両用識別式レーダー
原作(地球防衛軍)の右上のアレ。EDF兵士にはヘルメットバイザーの右上に常時表示されている。

ハーク・ロウリア34世
ロウリア王国の王。部屋の隅でガタガタ震えて命乞いをしてたらストームチームとオメガチームに捕縛された。

爆撃機ミッドナイト&カロン(EDF日本支部航空部隊)
ロウリア王国東部征伐軍本隊を殲滅後、補給を済ませて再出撃して各地のロウリア軍をボコボコに爆撃した。

戦闘ファイター(EDF日本支部航空部隊)
爆撃機ミッドナイト&カロンを護衛後、第3師団の殴り込みに合わせて王都ジン・ハークに居たワイバーン100騎を30秒で殲滅。

EDF日本支部第3師団
王都ジン・ハークに殴り込んで王都防衛隊をボコボコにしつつ王都を完全占領する。

第7主力艦隊
ロウリア領海に侵攻、EDF日本支部航空部隊と共同しつつ艦隊の全兵装を使用。更にファイター30機、攻撃機ホエール5機を発艦させて、王都に向かっていたロウリア軍を殲滅させた。

ロウリア王国
ロデニウス大陸統一に向けてクワ・トイネ公国に侵攻したが、EDF日本支部の逆鱗に触れて50万の軍隊の内99.9%が死亡し、王都が占領されて無条件降伏。滅亡が確定した。

EDF日本支部
作戦成功との報告が入り、予定通り戦後処理の準備を始める。

クワ・トイネ公国
政治部会でロウリア王国首都制圧作戦に於けるEDF日本支部軍の領内行動を許可したと思ったら、翌日にはロウリア王国軍が99.9%消滅してるし、トドメに無条件降伏してて色んな意味で魂が抜け落ちた。


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第10話 訪れた平和(改)

クローサー「えーっと、投下するかんしゃく玉の数計算を…255万発ね」
誤字報告1「255万発じゃなくて2500万発だよ」
クローサー「ん?あれ、ホントだ。一桁見間違えたか。…2550万発のかんしゃく玉の爆撃とか、上から見たらどうなるんだ?」
誤字報告2「色々間違ってたよ。…あと2500万発じゃなくて2億5000万発にしようよ」(クローサー視点の推測)
クローサー「え゛、マジかこの人。…いや、フォーリナーテクノロジーの圧縮空間技術もあるんだし…ふーむ…」

クローサー「…面白いし採用で良いや!」(本小説限定で学んだ教訓:面白さは何よりも優先される)

2019:07:07
ストーリー再構成につき、一部を修正しました。


パーパルディア皇国 国家戦略局。

その一室の暗い部屋の中に、2人の男が居た。

 

「…以上、ロウリア王はEDF日本支部と思われる軍に捕らえられた模様です。ロウリア王国は王が不在となった上、王都を含めて全ての都市が壊滅的被害を受けた為、事実上ロウリア王国は消滅したと言っていいでしょう」

 

片方の男が、冷や汗をかきながらもう片方の男…上司に報告を行う。

 

「簡単にいってくれるな…ロウリア王国に一体どれ程の支援を行ってきたと思っている?勿論隠蔽工作は行うが、万が一この事が皇帝のお耳に触れてみろ!国家戦略局そのものが危機に立たされる!そうなれば、お前も私も唯では済まんぞ…!」

「も…申し訳ございませぬ!」

「今回のロウリア支援はお前も知っての通り、我らの独断で行われていた。上手くいけばロデニウス大陸の資源と権益を一気に我が国が掌握し、その手柄を持って皇帝陛下にご報告する予定だった…そうなれば他官庁を黙らせる事も出来て、我らの評価も相当なものとなっていた筈…今となっては、自分の命の危険さえ考えなくてはならなくなったな」

 

部下の男は深く、深く頭を下げる。

 

「…返す言葉も、ございませぬ」

「しかし…ロウリア程の規模を持つ国が、我々の支援があったにも関わらず文明圏外国に敗れたなど、とても信じられんな。敵は一体どのような兵器を使ったのだ?」

「それが、諜報員にはEDF日本支部を調査するよう指示したのですが…その日に王都への攻撃に巻き込まれて死亡したらしく、EDF日本支部軍の詳細は一切不明です」

「諜報員が死んでしまっても、戦闘を見ていた一般人が居るだろう。そこから情報の一部くらいは聞き出せる筈だ」

「それが…ロウリア人は皆、一切の情報を話さないのです。どれだけ金を積もうが、何をしようが全く口を開きませんでした。まるで何かを恐れているかのようで…」

「クソッ、唯でさえ時間が無いというのに…!もういい、EDF日本支部の情報とロウリア王国の支援に関する履歴を全て焼却しろ!!我らの関わりの証拠を何一つとして残すな!国家戦略局と自分、そして家族の為にもな!」

 

ロウリア王国を支援していたパーパルディア皇国国家戦略局は、ロウリア王国が引き起こした侵略戦争の一部始終を徹底的に隠蔽する事を決定した。

この決定が後に、大惨事を引き起こす事も知らず。

 

 

 

 

 

 

ロウリア王国の無条件降伏より数日が経った、クワ・トイネ公国 政治部会にて。

 

「…というわけで、ハーク・ロウリア34世はEDF日本支部に捕らえられました。ロウリア王国の各都市は壊滅的な被害を受け、現在「都市としての最低限の機能」を残しているのは、王都ジン・ハークのみです。ロウリア軍もほぼ殲滅され、現時点に於いて…ロウリア王国領土全域が事実上、EDF日本支部の支配下に収まった事となります」

 

その会場は、沈黙が流れ続けていた。出席者達の中にはEDF日本支部の国力を疑う者も居れば、その国力を信じる者も居た。

しかしこの結果は、何だ?あの作戦に於ける軍行動許可を決議した翌日。EDF日本支部はロウリア各都市と全軍に攻撃を開始し、たったの1日で各都市を壊滅させ、ロウリア軍の99.9%を殲滅し、ロウリア王国全域を事実上支配下に置くなど、余りにも非常識。余りにも規格外。ここまで来ると、恐怖を抱いてしまうのも無理はない。

 

「…いずれに、せよ、だ。これは喜ぶ、べき事である…EDF日本支部とは是非………是非、友好関係を続けていきたいものだな」

 

首相カナタの震えた声が、やけに静かな会議場の空気を震わした。

 

 

 

 

 

 

EDF日本支部。

東京本部は現在、書類作業に追われる多数の士官が廊下を歩いていた。ロウリア王国との戦争を終え、戦後処理に勤しんでいた。弾薬の補給、元ロウリア王国領地の統治権譲渡準備、初の実戦投入となった1t級クラスター型かんしゃく玉爆弾のレポート提出、etc。大多数のEDF日本支部士官の仕事は、山のように届く様々な書類を捌き切る事だった。

 

そんな感じに、EDF日本支部の人間達が書類戦争を行なっている時に、EDF日本支部の重役達は再び一堂に会して戦後会議を行っていた。

 

「無事、勝利しましたね」

「科学技術差だけを考えれば、勝利はまず間違いなかったからな。唯一の不安材料は「魔法」だけだった。最もその魔法も、現在分かっている範囲での話ではあるが、フォーリナーのテクノロジーと比べれば可愛い物だよ」

 

幹部の言葉に、参謀長は肩を竦めつつ答えた。

今戦争にて、何故EDF日本支部があれだけの戦力を投入したのか。それは「魔法」という正体不明の要素があったからだ。

クワ・トイネ公国とクイラ王国間で国交を結んだ際に、EDF日本支部も「魔法」という存在そのものは認識していたのだが、それが攻撃に使われた際、一体どれ程の威力を持つのかまでは全く把握する事が出来ていなかったのだ。分からないからこそ、EDF日本支部の全員が魔法を恐れていたのだ。もしかしたら何も武器を持たずに、いきなり大火力な攻撃を行えるかもしれない。もしかしたら此方の想像を絶する規模の攻撃を行って来るかもしれない。もしかしたら、フォーリナーのような攻撃を行う事も出来るのかも知れない。

分からない。分からないからこそ恐ろしく、それ故にあれ程の大部隊であっても、誰もがそれを過剰戦力だとは思わなかった。それはEDF日本支部に住まう市民達も同じである。そもそもEDF市民もフォーリナー大戦を経験し、戦争についての見方が大きく歪められてしまったのだ。

 

 

戦争とはそれ即ち、我々の全てを賭けて行われるべき生存闘争であり、一度戦争となってしまえば、最早人権などありはしないのだ、と。

 

 

だからこそロウリア王国の各都市が壊滅し、全軍の99.9%が殲滅され、市民の約40%が死に至った攻撃が行われたと知っても、EDF市民達は「それが当然の事だ」と受け入れてしまったのだ。

 

正に、狂気。

正に、無慈悲。

正に、神をも恐れぬ所業。

しかしEDF日本支部は、文字通り世界が滅ぼされかけた星間戦争を生き残った者達なのだ。そんじょそこらの、たかが地域国家同士で争っているような小さいスケールのソレではない。文字通りの生存戦争だ。

敵は異星からの侵略者。テクノロジー、物量、戦術。その全てが絶望的に劣っていた戦争。僅か7ヶ月の戦争でありながら、人類の7割が犠牲になった戦争。皆が皆、何かしらの希望(狂気)に縋らねばならない程に追い詰められたあの地獄。

確かにEDFは勝利した。しかしその勝利の代償として残り続けた心の傷は、今もなおEDFを蝕んでいるのだ。

 

 

「それで、元ロウリア王国の復興はどうします?」

「必要最低限で構わないでしょう。二度と牙を生やさないよう、徹底的に我々の技術は遮断します。後で統治権を譲渡させるクワ・トイネ公国から多少の技術の漏洩は考えられますが、それも前世代技術のみ。我々の指導が入って初めて扱う事の出来る技術な以上、ロウリア王国があれ以上の技術進化をする事は無くなります」

 

だからこそ、敗北者へ容赦もしない。敗者は勝者によって蹂躙されるのが運命だと悟ってしまった彼等に、敗者へ救いの手をどうして差し伸べられるのだろうか。

 

「…今回の戦争、首謀した国が居ると聞いたぞ」

「はい、司令。これはクワ・トイネ公国からの情報ですが、ロウリア王国にはパーパルディア皇国が後ろ盾となり、軍事支援を行っていた可能性が非常に高いという事です。資料によると『ロウリア王国一国のみでは50万の兵士、4400隻の軍艦、500騎のワイバーンを整えるのは不可能であり、その規模の軍事支援を行う事の出来る近辺国は、第三文明圏列強国パーパルディア皇国以外にはあり得ない』との事です」

 

情報局長から報告されたその資料に、士官の全員が眉をひそめる。確かにパーパルディア皇国の情報は聞いた事があり、かの国に対するEDF日本支部の心象は、ロウリア王国に対するそれよりも悪かった。

 

パーパルディア皇国は、日本列島の西側に広がるフィルアデス大陸を支配する国だ。極めて強硬な政策で72ヶ国を併合し、属領の疲弊を無視した急激な領土拡大政策や強権支配により、属領からは怨嗟の声が静かに浸透している。そしてその傲慢な態度により、列強国以外の国に己の要求が却下されれば問答無用で侵略・征服を行う、周辺国家にとっては極めて危険な国。

 

このような国とEDF日本支部は最初から国交など結ぶ気もなく、現段階では情報局員の派遣は一切行われていない。

 

「パーパルディア皇国…か」

「既に自律衛星ライカから独自判断で衛星偵察が終了しており、司令の命令さえあれば…彼の国を滅ぼす事も可能です」

「却下だ。忘れるな、我々はEDFだ。我々は人々を護る盾であり、決して我々から手を出してはならん。我々は侵略者ではないのだからな」

 

参謀長の提案に、司令は鋭い声で否定の声をあげた。あくまでもEDFは防衛軍であり、フォーリナー相手の場合を除き、決してこちらからは手を出さない。これは「EDF」の絶対のルールだと、司令は認識していた。

 

「失礼しました」

「…だが」

 

しかし、それはあくまでもルールだ。

 

「向こう側から手を出してくるならば、話は別だ。ロウリア王国ではある程度は加減したが、パーパルディア皇国には一切手加減するな」

「では、司令」

「うむ、作戦計画は考えておいてくれ。最低作戦目標はパーパルディア皇国全属領の解放だ」

「分かりました、一月以内には提出します」

 

こうして、EDF日本支部はロウリア王国との戦争の戦後処理に入ると同時に、その傍らでパーパルディア皇国への準備を始める。

漸く訪れた平和。しかし完全なる平和となるには、まだまだ課題が多そうだ。

 

「所で、呉の建造ドックで建造されている「あの艦」の進捗はどうだ?」

「順調です。転移によって一時中断されていましたが、クイラ王国からの大量の資源が輸入出来た事により、予定スケジュールよりも早く進水する可能性すらあります」

「それは嬉しい知らせだ」




これにて第2章「ロデニウス動乱」は終了となります。ここからは少々長い話となりますが、お付き合い下さい。

まず、本小説の閲覧ありがとうございます。
最初はただ、「日本国召喚にEDFをブチ込んだらどうなるんだろう?」という好奇心100%の考えから生まれました。
そんな感じで唯々好奇心を満たしたい自分の為だけに書いていたのですが…まさかそんな本小説が、日刊ランキング最高8位、ルーキー日刊ランキング最高2位、お気に入り件数800件突破を達成する事になるなんて、唯々皆様に感謝する他ありません。
本当に、ありがとうございます!!

さて、これからの予定を少しお話ししましょう。
更新頻度を落としつつですが、一応パーパルディア戦まで書いて行く予定です。ムーやミリシアルなどの絡みをどうしようかが悩みどころですね。その後のグ帝戦などは、原作の展開がまだ戦争終結まで行ってないので、正直分かりません。魔帝などは特にです。
ただいくつかは面白い事を思い付いているので、もしかしたらオリジナル展開で押し進める可能性もありますね。EDF日本支部vs魔帝vsフォーリナーの三つ巴みたいな。(あくまでも可能性)

そんな訳で、パーパルディア戦の展開が大雑把に決まるまで本編の更新は一旦停止するかもです。本編以外にも閑話として、自律衛星ライカやかんしゃく玉兵器化事件、フォーリナー大戦などを軸に置いた話も書くかも知れません。

何にせよ、次回をお楽しみに!


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閑話 事件再来

今回は閑話です。初のギャグ風味に挑戦。


ロウリア王国との戦争が終結し、再び平時となったEDF日本支部。

その一室。所狭しに様々な機器と書類の山が大量にある中、唯一広々とスペースが確保されているテーブルの周囲に、数十人の男達が一堂に会していた。

 

「全員、集まったな」

 

彼等は、EDF兵器開発部の者達。EDF創設時からあらゆるEDFの兵器の設計図を引き、そしてフォーリナー大戦時からはフォーリナーテクノロジーを吸収して利用し、様々な超兵器を作り上げてきた天才達だ。彼等無くして、EDFがフォーリナーに勝利する事は絶対に不可能だったと断言出来る。

そしてその男達は、基本的にこうして集まる事は無い。何故なら彼等は其々設計図を引く種類が違う。ある者はレンジャー、ある者はウイングダイバー、ある者はフェンサー、ある者はビークル(大型兵器)、ある者は艦船、ある者は…いや、これ以上は長くなり過ぎる故に割愛する。

兎に角。各人の殆どが異なる分野の兵器設計者である以上、こうして集まる理由はそれ相応の事だ。

 

「では、会議を始めよう…」

 

例えば、兵器開発部全体で各人が引いた設計図に関する意見交換。兵器開発部に与えられた予算の各人への配分決定。

 

そして…

 

 

「第1回、新型かんしゃく玉兵器開発会議を!!」

『応!!』

 

上層部の忠告に懲りず、新型のかんしゃく玉兵器をまーた開発している時くらいだ。

 

「諸君!遂に新しい増額予算が降りた!これも全て1t級クラスター式かんしゃく玉爆弾が実戦に於いても有効だと認めてくれたからこそだ!!ならば我等が開発するべき新兵器とは何ぞやぁ!!」

『かんしゃく玉だ!!』

 

その答えは絶対に違う。

 

「そうだ、新たなるかんしゃく玉兵器を開発するのだ!!上層部は我々が作り上げたかんしゃく玉を「暇潰しの遊び道具」と揶揄した!それは違う!!我々は全身全霊を以って、最高傑作のかんしゃく玉を完成させたのだ!!」

 

それこそ只の遊び道具じゃねぇか、とツッコミを入れられる者はここに存在しない。

 

「我々はかんしゃく玉に秘められた可能性を諦めたりはしない!!現にEDF空軍は、今戦争でかんしゃく玉という力を存分に発揮させた1t級クラスター式かんしゃく玉爆弾を使用したのだ!本来はレンジャーの為だけの物であったにも関わらず、だ!!」

 

その本来の意図でさえ、どのレンジャーもかんしゃく玉なんて珍兵器は手に取った事は無い。

 

「ならば!!それ以外の兵器でもかんしゃく玉の威力は確実に発揮出来る!!ロケットランチャー、グレネードランチャー、ミサイルランチャー、ギガンテス、イプシロン装甲レールガン、タイタン、グレイプ、ネグリング自走ロケット砲、ネレイド、ベガルタ、プロテウス!!ありとあらゆる兵器にかんしゃく玉の可能性を求め、実現しようではないか!!!!」

『おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』

 

…馬鹿と天才は紙一重というが、この男達に限っては「馬鹿と天才が同居している」と言った方が良いだろう。

 

「でわぁ!!各人が持ち込んだ意見を発表せよ!!」

 

誰か、この馬鹿共を止めてくれ。

 

 

 

 

 

 

EDF予算委員局。

地球と人類を守る為に存在するEDFだが、彼等の側には常に天敵が潜んでいる。

 

金である。

 

理想は幾らでも強い武器や兵器を量産出来るのが一番なのだが、それをしようにも希少素材の入手やら生産ラインの確保維持などにも兎に角金がいる上、フォーリナー大戦時に製造技術が失われ、現在に於いても再生産が不可能となっている武器もある。その1つがストームチームのレンジャーが標準装備としているAF100だ。

故に限られた予算の中で如何にEDFの発展を行い、より良い装備改良やメンテナンス等を行う為に各部局が頭を下げるのが、EDF予算委員局である。

今日も予算委員局員は、各部局から届いてくる様々な予算申請書類が届き、1枚1枚の内容を熟読して許可か却下の判子を押していく。それは局長も例外ではなかった。

 

「局長、兵器開発部より特別追加予算の使用許可申請書類です」

「分かった、そこに置いといてくれ」

 

手元に置いていた数枚の書類を処理し、兵器開発部から届いた書類を手に取る。

 

「さて、貴重な追加予算を一体何、に………………」

 

その書類の内容を見た途端、局長の動きがカチンと膠着した。瞬きどころか呼吸さえも数秒忘れたその驚愕。それは徐々に憤怒へと変換されて行き。

 

 

「ふざけんなあの馬鹿野郎共がぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

書類を握った右手に力が入って書類がグシャグシャになるが、そんな些細な事が気にならない程に大きな怒号が室内に響いた。

その書類には、要約すればこう書かれていた。

 

『新しいかんしゃく玉兵器作るから予算くれ』

 

予算委員局に喧嘩売ってるのか此奴らは。

 

 

 

 

 

 

その後はまぁ当然と言える事だが、兵器開発部は怒りの予算委員局長の突撃を受けた。

此処からは余りにも大惨事な為、詳しい描写を省かせてもらう。

 

 

「貴様らぁ!!この書類は一体どういう事だぁ!!」

『予算委員局長!?なんで此処に!!』

「貴様らが出した特別追加予算使用許可申請書の内容に決まってるだろうが!!新型かんしゃく玉兵器なんぞ作らせる訳がねぇだろ、もっと有効性が高い兵器を開発しろ!!」

「その言葉は聞き捨てなりませんよ予算委員局長!!我々が作り上げた1t級クラスター式かんしゃく玉爆弾は、先のロウリア戦争にてその威力を発揮したではありませんか!!」

「新しいかんしゃく玉兵器がそれと同様の有効性を発揮出来るとは限らないだろうが!!試しに1回だけでもシミュレートに掛けた事があるのか!?」

 

『………………………』

 

「やってねぇなら余計この予算下ろす訳にいかねぇだろうがこの馬鹿野郎共!!予算が無尽蔵にあると思ったら大間違いだ!!予算が欲しいのは貴様らだけではない、他部局も1円でも多くの予算を欲しがってるんだぞ!?」

「うるせぇ催涙かんしゃく玉投げつけるぞ!!」

「逆ギレする上になんで既に新しいかんしゃく玉あるんだよテメェ!!!!」

「自腹で作ったんだから何の問題も無い!!良いですか局長この研究開発はかんしゃく玉の可能性を広げるだけでなく」(ポロッ)

『あ゛っ!?』

 

ボンッ!!(催涙かんしゃく玉暴発)

 

『ギィヤァ目がァァァァァァァァァァァァ!!!?』

 

 

…これ以上は当人達の名誉の為、割愛させて頂く。既に手遅れのような気もするが。

この後、予算委員局長は兵器開発部の説得に折れ(というよりは予算委員局長の方から行なっていた説得を諦めた)、特別追加予算の使用許可を出した。

特別追加予算の使用許可を予算委員局長よりもぎ取った兵器開発部はその後、総員の力を結集させて新たなるかんしゃく玉兵器開発に着手した。

無駄に洗練された無駄の無い無駄な兵器を作らぬように、開発は大胆かつ慎重に行われた。今回の研究開発はかんしゃく玉兵器化事件とは違い、完全に「対フォーリナー兵器」として開発される。故に開発経緯には盛大な遊びが入っていたとしても、その破壊力には一切の妥協をしない。故に本格的な兵器開発の意見交換には一切遊びは無く、その表情はEDFの最高頭脳を誇る研究者達のプライドと誇りを持ったソレであった。

朝も昼も夜も、徹夜も厭わずに続けられた新型かんしゃく玉兵器の研究開発。それが実を結ぶのは約2週間後の事だった。

 

 

 

 

 

 

「…で、その新兵器の試射をこれなら行う訳だが…どう思う?」

「…期待もありますが、不安もあります」

 

日本海に浮く要塞空母デスピナの艦橋にて、その会話は行われていた。艦長山本と副艦長が共に見ているのは、主砲の51cmレールガン連装砲。

先日、兵器開発部より届いた新型兵器「対地対空両用近接信管型キャニスター式かんしゃく玉砲弾」、通称かんしゃく玉砲弾の試射が日本海にて行なわれようとしていた。対地目標としてクワ・トイネより購入した木造船20隻、対空目標としてドローン100機を10km先の海域と上空に配置していた。着弾観測には安全な場所で待機しているセントエルモ級イージス戦艦と、わざわざこの為に呼び寄せた自律衛星ライカによって行われる。

 

「艦長、レールガン連装砲の発射準備が完了しました。いつでもどうぞ」

「うむ…では、発射!!」

 

艦長の号令により、4基8門の51cmレールガン連装砲からかんしゃく玉砲弾が発射。その威力を充分に発揮する為に弾速を抑えて曲射されたそれは、目標船団へと向かっていき──

 

 

 

後に、試射を終えた第7艦隊よりEDF日本支部に届いた報告書には、こう記載された。

 

『対地対空両用近接信管型キャニスター式かんしゃく玉砲弾は一応の成功と見做して良い。しかし対地用としてみるならば大落角の曲射を必要とし、角度計算が通常射撃よりも長時間になり、尚且つその見返りに合う威力とは言い難い。逆に対空用としてみるならば、超音速で撃ち出された砲弾の衝撃波よりも広範囲を掃討可能であり、結果対空ミサイルの節約に繋がる。51cmレールガン連装砲の他に、セントエルモ級イージス戦艦及びアイオワ級フリゲート艦の主砲弾の量産を行えば、より濃密な対空弾幕を展開可能と考える。この為、対地対空両用よりも対空専用砲弾に特化した改良を希望する』

 

この報告書を元に兵器開発部は更なる改良を施し、「対空用近接信管型全方位拡散式かんしゃく玉砲弾」と改名された新型かんしゃく玉兵器が完成。後に勃発するパーパルディア戦争にも使用される事となる。




パーパルディア戦の事を考えつつ感想欄見直してたら、かんしゃく玉の事で頭が一杯になってしまった…

用語解説&状況説明
兵器開発部
今回の全ての元凶。天才ではあるのだが盛大な馬鹿達が集う。

予算委員局
EDFの財布を握るオカン的な立ち位置。その為普段から各部局より届く大量の書類と戦争している。局長がブチギレたのも、普段から続く書類戦争によるストレスに1割くらいの原因がある。

催涙かんしゃく玉
兵器開発部の1人が自腹で開発した非殺傷のかんしゃく玉。マトモに受けると悲惨な事になる。

対空用近接信管型全方位拡散式かんしゃく玉砲弾
今回の話を執筆する際に爆誕した、新たなるかんしゃく玉兵器。
詳細な解説は現時点で行なわない。いずれ本砲弾の餌食になる者達が現れるだろう。


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第3章 静かな火種 第11話 国交交渉

さぁ、ゆっくりと始まっていきますよ第3章。

追記(書き忘れてただけ)
お気に入り登録者数1000人(1100人)突破しました!皆様ありがとうございます!


第三文明圏と呼ばれる地域の中に、フェン王国という国がある。

日本列島とフィルアデス大陸の間にある縦150km、幅60kmの勾玉状の島。そこに人々は集い、小さな国が出来た。

フェン王国には魔法は存在せず、代わりにフェン王国の国民全員は剣を学ぶ事を義務とする。剣を極めし者は例え出生がどれだけ見下される者であろうが尊敬され、逆に剣に弱き者は、どれ程の美貌であろうとも軽蔑される。剣に生き、剣に死ぬ。その体現の文化がフェン王国の何よりの特徴と言えよう。

 

その首都 アマノキと呼ばれる街の中心部に、「天ノ樹城」と呼ばれる城がある。

木造で出来た…見る人が見れば和風とも言えるその城の広場に、フェン王国剣王 シハンはフェン王国軍の中枢幹部を集め、真剣な面持ちて話し始めた。

 

「パーパルディア皇国と…紛争になるかもしれん」

 

端的に発せられた剣王の言葉はその場にいた者達の予想を上回るもので、緊張が走るには十分な言葉であった。

 

まずフェン王国には、魔法が存在しない。

魔法が存在しない事によって生じる1番の問題。それは魔法を扱う魔導師が放つ事が出来る高火力な攻撃魔法を使う事が出来ない…と言うことではない。それはこの世界に於ける通信手段「魔力通信」が使えない事だ。

人によってはたかが通信方法、だと思うだろう。しかし軍事的に見れば、「遠方からでも一瞬で会話が可能となる」事は極めて重要だ。

(報告)(連絡)(相談)」という言葉があるように、軍事行動中…つまりは戦いの中で何処の部隊が勝利したか、何処の部隊が敗北したか。何処の戦線が敵戦線を突破出来たか、何処の戦線が突破されてしまったのか。これらの情報は1分1秒でも早く伝達する必要がある。この情報伝達速度が遅れる事があるようならば…仮に兵力が同等だったとしても、実質的な戦力は大きく増減する事となるのだ。

 

そして、剣王の口から放たれた仮想敵国…「パーパルディア皇国」。

彼の国はフェン王国が属する「第三文明圏」と呼ばれる地域の列強国であり、その国力は第三文明圏の中では絶大である。

フェン王国との国力は当然、絶望的な程開いている。比較すると、人口は70万対7000万。戦船(海軍)はバリスタを配備したフェン王国製の手漕ぎ船21隻に対し、パーパルディア皇国は第三文明圏最新の魔導戦列艦を422隻配備。航空戦力では魔法の無いフェン王国はワイバーンを1騎も配備出来ていない上、相手はワイバーン500騎と改良種 ワイバーンロードを350騎、計850騎も配備しているのだ。

 

ここまで説明すれば分かるだろう。

フェン王国は、間違ってもパーパルディア皇国と敵対してはならないのだ。それ程にフェン王国(第三文明圏外国)パーパルディア皇国(第三文明圏列強国)との力の差は絶対的。

 

場が静まる中、シハンは話を続ける。

 

「現在、ガハラ神国に援軍を頼めないか要請している。各方面でも対策を検討中だ」

 

ガハラ神国はフェン王国の隣国であり、神通力とよばれる魔法とは異なる力で「風龍」と呼ばれる、ワイバーンロードを遥かに超える空戦能力を持つ竜を12騎保有しており、その戦力は各列強国も一目置くほどだ。

 

「とにかく、各人…戦の準備をしておいてくれ」

 

 

 

 

 

 

話を終えた後。シハンは王宮中奥にある執務室で執務していると、側近である剣豪 モトムがシハンに話し掛けた。

 

「剣王。イーディーエフという国が、国交を開く為に交渉したいと来訪されております件…如何致しましょうか?」

「イーディーエフ?…ああ、ガハラ神国の大使から情報のあった…確かガハラの東側に出現した新興国家だったな。あの辺りは小さな群島に加えて海流の乱れもあった筈だが…各島の集落が集まって国が出来たのか?」

「いえ、それが…イーディーエフが言うには、人口は3600万人居るとの事です」

「3600万人…?ハハハハハ!ホラもそこまで堂々と出来るとはな!各島が小さい群島でそれは無理がある!」

 

政治的なブラフは別に珍しいものではない。それ故にそれを聞いたシハンはブラフと判断し、しかし決して嘲るような事はせず、快活に笑った。

 

「それが…ロデニウス大陸のクワ・トイネ皇国とクイラ王国は既にイーディーエフと国交を結んでいるらしく、その際に両国が派遣した視察団がイーディーエフを調査した結果…4つの大きな島から成る国土に、列強をも超える超文明を築いているらしいのです。ガハラ神国経由の情報も、同様の調査結果でした」

「ほう…列強を超えるは言い過ぎにしても…ガハラ神国がそこまで褒めるとなれば、それなりの国なのだろうな」

 

この会話をキッカケに、シハンとその側近達はEDF日本支部の人間と直接会う事を決定する事となる。

 

 

 

 

 

 

数日後。

EDF日本支部情報局員の一団は、地理的に隣国となったフェン王国と国交を結ぶ為に、フェン王国首都のアマノキに訪れていた。その先頭を歩く島田は、いつも以上に落ち着きのある態度を心掛けている。

 

「…懐かしいな、この雰囲気…」

「ええ…フォーリナー大戦前を思い出しますね…」

 

王城に向かう際、思わずそんな言葉が出た。

フェン王国の自然と雰囲気は、10年前にあった日本の自然や城を思い出させるものがある。そしてそれらは…10年前に地球に侵略してきたフォーリナーに悉く破壊され、戦前にあった自然遺産や自然は大半が消滅してしまった。EDF日本支部は現在も木の植え込みなどでかつての姿を出来得る限りを取り戻そうとしているが…それに振り分けられている予算は非常に少ない。

何故かというと、やはり大半の予算は対フォーリナーの軍事費に、そして残りの殆ども市民を養う為にその予算は使われ続けている。自然復興の予算は、それらの余剰金を細々とかき集めた程度しかない(しかも予算内容によっては…特に軍事費関連は余剰金を渡せない場合もあるのだ)。それでは遅々として進む訳がない。しかも殆どの人が自然復興に対して消極的というのも合わさる。

10年程度で人々はあの悪夢を忘れられる筈もなく、それ故にフォーリナーが再び襲来したら、復興した自然は瞬く間に消失してしまうだろうというのが今現在の主流な考え方であり、人によっては「自然復興だなんてものに無駄金を投げるより、その僅かな予算も軍事費に回すべきだ」という主張もしている。

 

 

閑話休題(それはさておき)

 

 

情報局員の一団は、王城の一室へと案内された。

 

「剣王が入られます」

 

側近が声を上げ、襖を開く。情報局員達は立ち上がり、礼をする。

──飾らない王。それが、情報局員達が剣王 シハンに対する第一印象だった。着崩しの和服で、それはまるで、古き日本人と一瞬思わせる程の雰囲気を持っている。

 

「そなた達が、イーディーエフの使者か」

「はい。…貴国と国交を締結したく、参りました。ご挨拶として、我が国の品をご覧下さい」

 

剣王と側近の前に、日本で作られた物が並ぶ。日本刀、着物、真珠のネックレス、扇、運動靴…

シハンは日本刀を手に取り、鞘から刀身を抜く。側近達も剣王の邪魔にならないように配慮しつつ、思い思いに検分を始める。

 

「……これは良い、とてもいい剣だ。貴国にも優秀な刀鍛冶がおられるようですな」

(10年前には、な…)

 

剣王シハンの言葉に、島田は内心でその言葉を紡いだ。

フォーリナー大戦で失われた物は人命や資産、自然だけではない。数多くの技術も人命や資産と共に失われ、中には同じ品質で再生産するには長い時が必要となる技術もあった。その失われた技術の一つに、日本刀の製造技術も含まれていた。現在では一応の製造には成功したものの、10年前の品質には程遠い。武器関連の製造技術はEDFが主導して取り戻そうとしているが、それでもロストテクノロジーの再生産は困難だ。今現在に於いて貴重な一振りの日本刀を今回の会談で持ち込んだのは、国交締結の為の手札の一つとして持ち運びの許可と、一応譲渡の許可も合わせて出されたのだ。

 

気を良くしたシハンは大陸共通語で書かれた文章に目を通し、EDF日本支部からの通商条約締結に於ける提示条件と書類に間違いがないか、口頭でも確認していった。

確認を終え、シハンは更に語気を緩める。

 

「失礼ながら、我々はあなた方の国をよく知らない」

(…ん?これは…)

「イーディーエフからの提案、これはあなた方の言うことが本当なのであれば、凄まじい国力を持つ国と対等な関係が築ける上、まるで夢のような技術も手に入る。我が国としては申し分ない。…しかし、だ」

 

一度言葉を切り、そして話を再開する。

 

「国ごとの転移や海に浮かぶ鉄船などといった事情や技術は、とても信じられないものだ」

「それならば、我が国に使者を派遣して頂ければ──」

「いや、我が目で確かめてみたい」

「…と、申しますと?」

「貴国の軍には、水軍(海軍)があると聞いた。その水軍の内、一つだけでも親善訪問として我が国に派遣して頂きたい。今年は我が国の水軍から廃船が4隻出る。それを敵に見立てて攻撃して欲しい。要は、力をこの目で見たいのだ」

 

シハンから提示された提案に、思わず情報局員達は面食らった。

今現在、まだEDF日本支部とフェン王国には国交がない。それなのに軍を派遣するというのは、それは威嚇行動と同意義の行動だ。普通ならそれは他国は嫌がる筈だというのに、フェン王国は「力を見せろ」と言い、しかも首都アマノキの沖でそれを見せて欲しいというのだ。

 

まさかの展開に驚きつつも、島田達はその後、本部にそのままの報告を送った。

 

 

 

 

 

 

「…なるほど。要は力試し、という事か」

「そうでしょうね。フェン王国は調査の結果、武の国であるという事が分かっています。あちらが望む力でないようならば、国交締結は難しくなるでしょう」

「しかし…それはそれで困ったな。海軍となると「加減が難しい」ぞ。我々の海軍艦は全て対フォーリナー艦だ。一隻だけでも其れ相応の性能だ…」

「この際は仕方ありません。アイオワ級フリゲート艦を派遣しましょう。1番小さい戦闘艦となるとそれしかありませんから」

「うむ。くれぐれも狙いが狂わないように言っておいてくれ」

「勿論です」

 

 

 

 

 

 

「あの計画はどうなっている!」

「はい…皇国監察軍東洋艦隊32隻が、まもなくフェン王国に懲罰の為出撃します」




用語解説&状況説明
フェン王国
日本列島とフィルアデス大陸の間にある島国。EDF日本支部との国交締結交渉の際、EDF海軍の親善訪問を提案した。

ガハラ神国
フェン王国の隣にある島国。フェン王国より先にEDF日本支部と国交締結を結んでいる。

EDF日本支部
ロウリア戦争後、周辺国と慎重にかつ少しずつ国交締結を結んでいる。クワ・トイネ公国との国交締結の際には「EDF日本支部」と名乗っていたが、現在は「EDF」と名乗っている。

アイオワ級フリゲート艦
詳しくは次回解説予定。艦隊の直衛艦として建造されている。

パーパルディア皇国。
第三文明圏列強国。ロウリア戦争を煽った黒幕(国家戦略局の独断だが)。


ふと思い付いた1発ネタ(?)
パーパルディア皇国「フェン王国に懲罰してやる」
フェン王国「やってみろよ」(EDF魂憑依)
書かないけど、これならフェン王国もパーパルディア皇国に勝てるんじゃないかな?(笑)


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第12話 軍祭と衝突

おかしいなー、更新スピードが大して落ちてない気がするぞ?


フェン王国とEDF日本支部の接触から、約1週間が経過した。

今日は5年に一度、フェン王国が主催として開催する「軍祭」の日だ。

この軍祭には、文明圏外に属する各国の武官も多数参加。武技を競い、自国の自慢の装備を見せる。そして各国の軍事力の高さを見せる事によって牽制するという意味合いがある。本音を言うならば文明圏の国も呼びたいのだが、「蛮国の祭りには興味がない」という考えや「力の差を見せつけるまでもない」という考えもあり、それは叶っていない。

 

軍祭の舞台となるフェン王国首都 アマノキの上空を風竜と共に飛行している、ガハラ神国神軍風竜隊隊長 スサノウは下の海を見る。

其処には、常軌を逸した大きさの灰色の船が2隻浮かんでいる。その2隻の所属は、イーディーエフという名の新興国家らしい。

 

『…眩しいな』

 

相棒の風竜がスサノウに「話しかける」。

風竜は知能が高く、人の言葉を理解出来る。普通ならば決して人に仕えるような存在ではない。しかしガハラ神国に伝わる神通力により、彼らは風竜と契約を交わす事によって使役する事を許されているのだ。

 

「確かに、今日は快晴だな」

『いいや、違う。太陽の眩しさではない。下の灰色の船から、線状の光が様々な方向に高速で照射している』

「船から光…?何も見えないが」

『この光は人間には見えまい。我々が遠くに離れた同胞との会話に使用する光、人間には不可視の光だ。何が飛んでいるかの確認も出来る。あの船から出ている光はそれに似ている』

「風竜だから分かったのか…?どのくらい遠くまで?」

『それには個体差がある。ワシは120kmくらい先までは分かるが…あの船の光は、ワシの使う光よりも遥かに強く、収束している』

「…まさかあの船は、遠くの船と魔力通信以外の通信方法を持ってたり、見えない場所を飛んでいる竜を見る事が出来るのか?」

『少なくとも、あの2隻はそうだろうな』

「イーディーエフ、か…思っていたよりも凄い国じゃないか」

 

 

 

 

 

 

「…このデータを見ても、信じられんな…」

「しかし、これは事実です」

 

その頃のEDF海軍…アイオワ級フリゲート艦とセントエルモ級イージス戦艦は、上空を飛んでいるガハラ神国の風竜からレーダー波に酷似した電波を照射している事に気付いていた。このレーダー波は航空機の物としてみれば、前世代技術にも劣らない程度には強い。

文明圏から外れた国で、レーダーに相当する能力を持つ生物が確認された。つまりこれは、文明圏の国家ではこの生物等を大量に運用出来る可能性がある。このデータはその可能性を生み出す重要な証拠となった。後日このデータは本部に提出され、重要書類として指定される事となる。

 

「…兎も角、今はこんな事を話している場合ではないな。時間は?」

「間も無くです」

「前部主砲、装填開始。まだチャージは不要だ」

 

艦長の号令により、アイオワ級フリゲート艦は主砲の発射準備を始める。

ここで、アイオワ級フリゲート艦の解説を始めるとしよう。

 

アイオワ級フリゲート艦は、ぱっと見の外見を見るとかつてアメリカ合衆国という国家が生み出した「アイオワ級戦艦」と勘違いする人が出るだろう。それは完全に間違っているという訳ではない。設計段階でアイオワ級戦艦を参考に設計された為、まるでアイオワ級がスケールダウンしたような印象を持つのだ。

全長は241m。武装は28cmレールガン3連装砲3基9門、12.7cm連装砲8基16門、20mm自動迎撃システム付き連装機関砲80基160門。

…これだけの武装しか積んでいない。これはアイオワ級フリゲート艦に求められた能力にある。EDF海軍は、フォーリナー大戦の経験から「無数の飛行ドローンを如何に効率的に迎撃出来るか」を優先課題とした。フォーリナーの戦力は質のみならず量も圧倒する。EDF海軍の主敵はフォーリナーの飛行戦力であり、無数の敵に積載数がどうしても限られるミサイルを乱発していては、あっという間に弾切れになる。ならば弾薬の要らないレーザー兵器を搭載すると、今度はレーザー兵器特有の困難なメンテナンスが足を引っ張る。歩兵用装備や飛行兵器ならこの事は特に問題視されないが、艦艇となると話は別だ。海軍の艦艇は一定期間以上の無補給戦闘を前提に設計する事を求められていた為、メンテナンスが困難な兵器を、特に量産艦に搭載するのは避けるべき事だった。EDF海軍は考えに考えた結果、其々が中途半端な設計となるより、「それぞれの目的に重視もしくは特化した艦を設計、量産すれば良い」というある意味では割り切った考え方をする事にした。結果、セントエルモ級イージス戦艦は対マザーシップ及び機甲戦力を主目標とした戦艦に。アイオワ級フリゲート艦は対飛行戦力に特化した、艦隊の直衛艦として其々が量産される事となったのだ。

 

今回の軍祭に於いてアイオワ級フリゲート艦が派遣されたのは、「EDF海軍の中では1番小さい戦闘艦」だからだ。剣王シハンから力を見せろとは言われたが、何も「全力の力を見せろ」とは言われてない。もしそんな事になるなら、EDF日本支部の切り札の一つである要塞空母デスピナをわざわざ派遣する事になる。そんな事をする訳にもいかないので、アイオワ級フリゲート艦と念の為にセントエルモ級イージス戦艦を各1隻ずつ、フェン王国の軍祭に派遣したのだ。

 

 

 

 

 

 

剣王シハンは、王城から軍祭の会場を見下ろしていた。

 

「あれが、イーディーエフの戦船か…まるで城だな」

 

シハンの呟いた言葉に、武将マブレグが頷く。

 

「いやはや…ガハラ神国から事前情報は聞いてはいましたが、あれ程の大きさの金属で出来た船が海に浮かんでいるとは…私も数回、パーパルディア皇国に行ったことはありますが、こんな大きさの船自体見たことがありません。ましてや金属製など…」

 

彼らの視線の先には、EDF海軍のアイオワ級フリゲート艦とセントエルモ級イージス戦艦が浮かんでいる。

 

「剣王。そろそろ我が国の廃船に対して、イーディーエフの船から攻撃を始めてもらいます」

 

剣王シハンが直々にEDF情報局に頼んだ「EDFの力を見せて欲しい」という依頼。その答えが今、示される。

EDF艦隊のさらに沖合、約4km先に標的艦として設定したフェン王国の廃船が4隻浮かんでいる。シハンは望遠鏡を覗き込み、EDF艦隊の先頭艦に焦点を合わせた。今回は先頭のアイオワ級フリゲート艦とかいう船が、1隻だけで攻撃を行うらしい。

 

「あの距離から攻撃するというが…本当か?我が国最強の軍船である旗艦「剣神」ですら、あの距離では攻撃する事は出来まい」

「はて…あの距離からならば、廃船に接近する事から始めるつもりかもしれませぬな」

 

そんな事を話している間にも、アイオワ級フリゲート艦の前部主砲の28cmレールガン3連装砲2基6門が旋回を始める。レーダーによって正確に捉えられた目標に、最大秒間旋回速度20度という高速度で旋回。更に計算された角度に砲身を向け、縦に割れている砲身に電圧の充填を開始し、バチバチと電流が流れ始める。

そして、発射。甲高い音が大きく響いたと思った瞬間、照準されていた2隻の廃船を貫通し、船の中心部に砲弾が着弾。その運動エネルギーと衝撃波によって爆散し、残った2隻に照準を終えた前部主砲が再び咆哮。残った2隻を爆散させた。

 

「…これは…なんとも凄まじい…」

 

剣王シハンのみならずフェン王国の中枢の者達は、自分達の知る攻撃概念からかけ離れた威力の前に、唖然とした。

1隻から2回(4発)の攻撃で、4隻を正確無比に命中させ、あっさり撃沈させる。おまけに連射性能も高く、底が見えない。列強国パーパルディア皇国でも、あんな芸当は出来ないと誰もが理解した。

 

「すぐにでも、イーディーエフと国交を開設する準備に取り掛かろう。不可侵条約は勿論、出来れば安全保障条約も取り付けたいな…!」

 

 

 

 

 

 

剣王シハンがそんな事を呟いている頃、EDF海軍は西から接近する飛行物体を感知していた。速度は350km/h、ロウリア王国のワイバーンよりも速い何かが20、フェン王国首都 アマノキに接近している。

その報告を聞いた艦隊司令官はまゆをひそめる。

 

「…ここから西は、確かパーパルディア皇国があったな?」

「はい」

「そしてこの軍祭では、文明圏の国は参加している事はまずない………キナ臭いな。全艦戦闘配置、接近している物体の動きを監視しろ」

「フェン王国への連絡はどうします?」

「奴等が何かしでかすなら、もう今からでは間に合わんさ」

 

 

 

 

 

 

パーパルディア皇国監察軍東洋艦隊所属のワイバーンロード部隊20騎は、フェン王国に懲罰的攻撃を加える為に首都アマノキに来ていた。

軍祭には文明圏外の各国武官がいる。彼らの眼前で皇国に逆らった愚かな国の末路がどうなるかを知らしめる為、敢えて今日行われるこの祭りに合わせて攻撃する事が決まっていた。

これで文明圏外国家は、皇国の力と恐ろしさを再認識するだろう。そして服従しない国に関わるだけでも皇国の攻撃対象となるという事を自覚させ、孤立状態を作り出すのだ。

…ただ、そんなパーパルディアのワイバーンロード部隊であってもどうしようもない存在もいる。

ガハラ神国の風竜3騎が、未だに首都上空を飛行していたのだ。

ワイバーンロードでは風竜には敵わない。この事実に部隊長の竜騎士は苦々しく思いつつ、後続の隊員達に魔力通信で指示を送る。

 

「ガハラの民には構うな!フェン王城と、そうだな…あの目立つ灰色の船に攻撃せよ!」

 

飛来したワイバーンロード20騎が、二手に分かれた。

 

 

 

 

 

 

「ワイバーン、二手に分かれました!一方は我が艦に、もう一方は…フェン王城に攻撃を確認!!」

「接近するワイバーンを敵と認識する!自動迎撃システム起動!目標、上空のワイバーン部隊!!」

 

ワイバーンロード10騎の狙いとなったアイオワ級フリゲート艦が自動迎撃システムを起動する直前、急降下で導力火炎弾の射程内に入ったワイバーンロードが火炎弾を発射。アイオワ級フリゲート艦へ10発の導力火炎弾が飛来する。

その時、アイオワ級フリゲート艦の自動迎撃システムが起動。射界内に入っていた20mm連装機関砲40基80門と12.7cm連装砲4基8門が火を噴き、対空弾幕を展開。合計して秒間320発の20mm弾と毎秒6発の12.7cm対空砲弾を連続で放つその猛烈さに、導力火炎弾は空中で爆発。発射元のワイバーンロード10騎はズタズタの挽肉となり、海の栄養源に成り果てた。

そしてその後方ではセントエルモ級イージス戦艦の主砲が残りのワイバーンロード10騎に前部主砲の38cmレールガン連装砲3基6門を照準、速射。マッハ7で飛来する砲弾の衝撃波でワイバーンと竜騎士は即死し、身体がバラバラになる。

僅か20秒で、パーパルディア皇国のワイバーンロード20騎を殲滅した。

 

『………………』

 

その光景を見ていた剣王シハンと側近達、軍祭に参加していた各国の参加者達、その他全ての目撃者達は開いた口が塞がらなかった。

彼らにとって、1騎撃墜するだけでも大変な戦闘を繰り広げる必要があるワイバーンロードが、自分達の目の前で20騎も消し飛んだ。ワイバーンロードは、間違いなくパーパルディア皇国の所属だったのだろう。

文明圏外にとって、1騎だけでもワイバーンロードを仕留める事が出来れば、それだけで国として世界に誇る事が出来る。「我が国はワイバーンロードを叩き落とすことが出来る程に精強であるのだ」と。

それをEDF海軍はあっさりと、まるで動けなくなったハエを踏み潰すかのように、列強の精鋭であるワイバーンロード20騎を殲滅したのだ。

 

──歴史が動く予感がする。

 

それを見ていた全員が、そう直感するのは無理もなかった。

 

 

 

 

 

 

「…しかし、やってくれたなフェン王国。パーパルディアと衝突する事を我々に黙っていたか」

「どうします?」

「勿論、すぐに再度会談だ。向こう側もそれを望むだろうからな。すぐに本部にこう連絡しろ、『フェン王国派遣艦隊がパーパルディア皇国のワイバーン部隊より攻撃を受け、これを殲滅。パーパルディア皇国と事実上戦争状態に入った』とな」

「了解。…しかしこのタイミングは想定外でしたね」

「だな。まだ「あの艦」は慣熟航行中…それにまだ理由が少し薄い。ならば…」




用語解説&状況説明
EDF日本支部
フェン王国に派遣した艦隊の連絡を受け、対パーパルディア戦の準備を本格的に始める。

パーパルディア皇国
フェン王国に懲罰的攻撃を行った時に愚かにもEDFに手を出し、順調に死刑台への階段を上っている。
EDF日本支部とも国交も開いてないし(そもそもEDF日本支部が開く気もない)、既に難易度が爆上がり中。

アイオワ級フリゲート艦
EDF海軍の直衛艦。近接防空力に特化しており、20mm機関砲は自動迎撃システムが不具合を起こした際に備え、手動照準と手動発射が行えるように設計されている。

「あの艦」
4年掛けて呉の建造ドックで建造された、史上最大の船体を持つ最新鋭艦。
現在慣熟航行中。


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第13話 謀略

うーん…なんか結構雑な感じになったなぁ。ここの展開もうちょっとよく考えるべきだったか…


パーパルディア皇国のワイバーン襲来後。

EDF日本支部の情報局員の一団は、再びアマノキの王城に戻っていた。案内された応接の間は、奥ゆかしさや趣のある部屋であり、質素ながらも心地よい部屋の印象を与える。

出された茶も一切手をつけずに待っていると、フェン王国武将マグレブが現れた。

 

「イーディーエフの皆様。今回はフェン王国に不意打ちしてきた不届き者共を、誠に見事な武技で退治していただけた事に、まずは誠意を申し上げます」

「いえ、我々は攻撃を受けたので反撃したまでの事。正当防衛以外の何物でもありません」

 

島田のハッキリとした答えにマグレブは焦ったのか、話を進めようとする。

 

「早速、国交開設の事前協議を…実務者協議の準備を進めたいと思うのですが…」

「巫山戯た事を抜かすな」

 

最早、苛立ちを隠そうともせずにその一言が放たれた。

 

「貴国とパーパルディア皇国は、既に戦争状態にあると見える。それにも関わらず、貴国はあのような危険を伴うかも知れない場所に我々の海軍の親善訪問を要求した。今回は運が良かったが、これで我が海軍に何かしらの被害が出ていた場合、貴国は一体どうするつもりだったんだ?それに加えて、どうやら貴国はどうしても我が国との国交を…いや、我が軍の力を欲しているようだな」

「それこそ巫山戯るな。貴国の都合のみで3600万人の命を危険に晒す権利が、貴国にあるのか?無いだろう?我々は貴国の都合良く動く人形などではない!!」

 

その声は怒号となり、応接の間の空気を揺らす。

 

「…これで話は終わりです。国交開設も改めて考え直しますが、恐らく難しくなるでしょうね」

 

そう言って、情報局員の一団は応接の間から退出の準備を始める。その様子にマグレブは焦燥を隠し切れない。

 

「ま、待って下さい!」

「ああ、一つ言い忘れてましたね」

 

退出する直前、島田は振り返りマグレブに視線を向けた。

 

「我々に攻撃(宣戦布告)を行った蛮国の海軍は、我々が叩き潰します」

 

 

 

 

 

 

同時刻。

フェン王国の懲罰的攻撃を行う為に本国より出撃したパーパルディア皇国 監察軍東洋艦隊は、フェン王国から西に約120km地点の海域を航行していた。

 

数十分前、フェン王国首都アマノキに向けて出撃したワイバーンロード20騎との通信が途絶した。第三文明圏に、ワイバーンロードを超える航空戦力は存在していない。そして文明圏内国家が保有するワイバーンは、殆どがパーパルディア皇国からの輸出品だ。文明圏外国家が改良型飛竜を20騎も撃墜する事など、考えられなかった。

このような不可解な事態に、艦隊を率いている提督 ポクトアールは嘆きたくなったと同時に、嫌な予感を覚えた。しかしこれは第3外務局長 カイオスの命であり、国家の威信をかけた命令でもあった。現地に向かわない選択肢は無く、フェン王国に懲罰的攻撃を行う為、そしてワイバーンロードを落とし、皇国に楯突く者を滅する為、最大速力でフェン王国へと向かっていた。

 

現在、空は快晴。ポクトアールは甲板にて比較的乾いた潮風を浴びていたら、水平線に何かを捉えた。

 

「!?」

 

望遠鏡を構えると同時に、頭上の見張り員が声を上げる。

 

「艦影と思われるものを発見!こちらに接近しています!!」

「大きいな…フェン王国のものとは思えない…まずい、総員戦闘配備!!」

 

それは城のように大きい、灰色の…恐らく船と思われる物体だが、彼等の常識から考えると規格外の大きさだ。

 

「速い…まさか、我が方の船速を凌駕しているのか!?」

 

正体不明の超巨大艦は、旋回する事なく真っ直ぐパーパルディア皇国の艦隊へと接近する。

 

「提督、どうしますか?」

「敵艦はこのままなら真っ直ぐ突っ込んでくる。何をするつもりか知らないが、すれ違いざまに魔導砲の一斉掃射で沈めて──」

 

瞬間、超巨大艦の砲台が咆哮を上げた。

 

 

 

 

 

 

「敵艦3隻、撃沈」

「そのまま別艦を照準。後部砲塔も、射界に入り次第攻撃を開始せよ」

 

単艦でフェン王国首都 アマノキより出撃したセントエルモ級イージス戦艦は、ワイバーンロードが飛来してきた西の方角に進み、パーパルディア皇国監察軍東洋艦隊を発見。これに対し、攻撃を開始した。

38cmレールガン連装砲が発砲する毎に、瞬間的に粉砕されて行く戦列艦。それは爆発のエネルギーではなく、マッハ7で飛来する38cm砲弾が生み出す運動エネルギーと衝撃波によって行われていく。

 

「…まるで、我々がフォーリナーですね」

 

その光景を目に焼き付けている艦橋の船員の一人が、ふと呟いた。

 

そうだろうな(・・・・・)。10年前のあの時の立場と、今現在の立場はまるで真逆だ。10年前は、フォーリナーが我々(EDF)を圧倒していた。だが今は、我々が他国を圧倒している立場だ。現に先日、我々は国家の1つを滅ぼしたのだからな」

 

その言葉が聞こえていたのか、艦長が応えた。

 

「我々は確かに、人類を守る為に存在している。だが──」

 

 

 

 

 

 

「──以上が、先程発生したフェン沖海戦における戦闘経過です」

「そうか」

 

EDF日本支部の司令室にて、先日発生したパーパルディア皇国海軍との戦闘報告が届けられていた。

その結果は言うまでもなく、EDFの完勝。セントエルモ級イージス戦艦の砲撃により、22隻の魔導戦列艦は全てが粉砕された。生存者は0、またしても誰一人として生き残れた者は居なかった。

フェン王国の軍祭に於けるワイバーンロードの攻撃、そして今回の軍事衝突により、EDF日本支部は事実上、パーパルディア皇国と戦争状態に突入した。

 

「今回の衝突に於いて、我々は国家としてパーパルディア皇国に対する宣戦布告理由は獲得しました。しかしこれだけでは、パーパルディア皇国側から捏造であると否定される可能性も否定出来ません。今回の軍事衝突で敢えて生存者を残すという意見もありましたが…まだ魔法の未知が多く、想定外の損害が発生し得るとして殲滅してしまったので、パーパルディア皇国からしたら我々の理由の証拠足り得る物が何一つとして無いのです。その上まだ我々はこの世界の国際社会に於いて、発言力はほぼ皆無に等しい状況であります」

「では、どうする?」

 

司令の返しに、情報局長はニヤリと笑みを浮かべた。

 

「やる事は単純です、ただひたすらに「待つ」のです。既にパーパルディア皇国の隣国であるガハラ神国、アルタラス王国、シオス王国、アワン王国と国交を開設、秘密裏に防衛軍事同盟を締結しています。フェン王国との国交開設は再交渉する為時間が少し掛かりますが、それさえ終えれば「網」は完成します。パーパルディア皇国が網に掛かれば、我々は国際社会に対して正当な宣戦布告理由を獲得し、後は世界に対パーパルディアの宣戦布告宣言を行うのみです」

「なるほど、な…そういえば、参謀長から対パーパルディア皇国作戦の改良案が完成されたと聞いたぞ」

「既に此処に」

 

持ってきていたアタッシュケースから書類の束を取り出し、司令の机に置く。

 

「これが「オペレーション・パルヴァライゼーション」の最終修正案です。では、私はこれで失礼します」

「うむ、ご苦労」

 

情報局長が部屋から退室して暫くした後に、司令は情報局長が届けた書類を手に取り、詳細を読み始める。

 

「………」

 

しばらくの間、沈黙と紙をめくる音のみがその一室を支配する。それは何人でもその空気を壊せる程に儚いが、しかしその空気に気付ける者は誰も居ない。

コンコンと、閉ざされたドアをノックする音が響く。

 

「入れ」

 

書類からドアに目線を向け、入室を促す。入ってきたのは女性の戦術士官だ。彼女と司令はフォーリナー大戦にて共に部隊の指揮を執っており、双方が信頼出来る戦友でもある。

 

「…司令、ご相談したい事があります」

「…なんだ?」

「司令は、今現在の我々をどう認識していますか?」

「………それはつまり、我々がフォーリナーのような存在となってはいないか、という事だろう?」

「…!」

 

心の内を読まれたのか、僅かに表情を変える戦術士官。それと対称的に、司令は淡々と言葉を紡いでいく。

 

「他国から見れば、そうだろうさ。絶大な技術力の高さと圧倒的な戦力。数こそ違うが、先のロウリア戦争で行った事は、視点が違えばフォーリナーの行いと大して変わらんさ。だが…」

 

そこで一度言葉を切る。

 

「我々が救える者もいれば、我々の労力を持っても救えない者達も居る。我々の力不足で死んでいった者には、幾らの自責の念を以ってもやりきれないが…そもそもとして「人々を傷付けるような愚か者」に差し伸べる手は無い。その者達を救う為に労力を使わず、救える者達を出来る限り救うのが、EDFの役目だ。あの人類内戦で、それを行ったようにな。忘れたとは言わせんぞ、戦術士官」

「…そう、ですね」

「既に我々の手は我々の血で赤く染まっているのさ。ならば我々は進まねばならん。我々の指示で、人類内戦で1億4700万人を見捨てて殺し、ロウリア戦争で1570万人を殺し、そして次はパーパルディア皇国。我々は既に大量殺人者さ。だが此処で立ち止まれば、我々がこれまで成してきた事の全てが無に帰す。それだけは絶対にしてはならない」

 

司令は立ち上がり、窓際に寄って外の光景を見下ろした。

 

「生き残った3600万の人々を護る為、この平和と平穏を護り続ける為、そしてパーパルディア皇国に虐げられている人々を救う為に。これはやらなければならない。例えパーパルディア皇国が滅んだとしても、だ」

 

「そうでなければ、我々は我々の正気(アイデンティティ)を保てない程に、弱くなっているのだ」




用語解説&状況説明
フェン王国
EDF日本支部と国交開設と軍事同盟を結ぼうとしたが、失敗して振り出しに戻る。

EDF日本支部
網を張って対パーパルディア皇国の準備を進めつつ、司令と戦術士官はこの先のEDFの未来を憂う。

パーパルディア皇国
処刑台へのカウントダウン継続中。

監察軍東洋艦隊
今まで通りに殲滅される。

人類内戦
フォーリナー大戦後、深刻な食料不足や資源不足などが原因で発生した世界規模な内戦。この内戦によって1億4700万人が死亡する。(フォーリナー大戦の死者の3%が人類内戦によって死亡)

オペレーション・パルヴァライゼーション
対パーパルディア皇国の作戦。ここで解説してもネタバレになるだけなので割愛する。


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第14話来たる戦乱の日(改)

活動報告でもお知らせしましたが、パーパルディア編の再執筆を開始します。


フェン王国の軍祭後。

EDF海軍の力を見た文明圏外国の各国は、EDF日本支部と国交を結ぶべく艦に乗って日本列島を目指した。つまりは時代がかった船が多数、日本列島の周辺に不定期的に多数現れる事となり、EDF海軍は空軍及び自律衛星ライカと連携しつつ、約2ヶ月の間休みなく働く羽目になった。

今までのEDF日本支部は、対パーパルディア皇国の為に慎重な調査を行った上、国交を結ぶに問題ない国家との国交開設を申し込んでいたが、今回の出来事は各国の大使達が自国の詳細な資料を携えており、調査の手間自体は省ける上に各国大使はいずれも友好的で礼儀正しく、国交開設を開く事も十分に可能だった。

 

しかし各国の情熱さに対して、EDF日本支部の態度そのものは冷ややかだった。

 

そもそもEDF日本支部の方針として、「現段階では必要以上の国と国交を結ばない」という方針が確立していた。必要資源はクワ・トイネ公国とクイラ王国から輸入しており、他国とこれ以上の国交開設は必要無いのだ。ガハラ神国、アルタラス王国、シオス王国、アワン王国に関しては、パーパルディア皇国に対する宣戦布告理由獲得の為に国交開設と防衛軍事同盟を締結しているだけであり、それ以上の理由は無かった。はっきり言って現在のEDF日本支部は、日本列島の復興及び要塞化を最優先の課題としており、何の関係も無い他国に構ってる暇は無い。

しかし、そんなEDF日本支部の閉鎖的な行動を、各国間で情報共有でもしていたのだろうか。一度の断りを入れても各国大使は全く諦める事は無く、何度も何度も根強い交渉を続けたのだ。EDF日本支部はそれでも何回かはやんわりと断り続けていたが、最終的に情報局長からの「ここまでしつこいなら、国交開設や通商条約を結ぶだけ結んでお帰り願った方が手っ取り早い」という意見により、EDF日本支部は一時的に方針を転換せざるを得ないと判断。非常に不本意ながらも、軍祭に参加していた文明圏外国の14ヶ国と国交を開設。

こうしてEDF日本支部は計20ヶ国と国交を開設し、国交開設と通商条約締結に留めた14ヶ国とも通商を始める事となる。

 

 

 

 

 

 

パーパルディア皇国、第3外務局。

外務局の1つであり、パーパルディア皇国と国交を結んでいる文明圏外国の国交を担当している。パーパルディア皇国は文明圏外国に対する脅迫外交による搾取を行っているため、皇国監察軍の指揮権を保有するという特徴も持っている。

その局長室にて、第3部局長 カイオスは激怒していた。

 

その理由は、約1ヶ月前。フェン王国が皇国から提案した領土分割案を拒否した会談から始まった。

領土分割案の内容を要約して解説すると、パーパルディア皇国皇帝 ルディアスが掲げる国土拡大計画の一環として、フェン王国の南部縦20km、横20kmの領土をパーパルディア皇国に割譲するよう、第3外務局はフェン王国に要求した。その要求場所は森林地帯であり、フェン王国も使用していない地帯だった。皇国外務局は「国土を得る事が出来た」という実績を手に入れ、フェン王国は未開発の領土を差し出してパーパルディア皇国に忠誠を誓う事により、準文明圏国家となり得る技術供与を得るばかりか、パーパルディア同盟国という箔が付く事によって周辺国からの侵略を受ける可能性が激減する。

正にWIN-WINの提案。これを受けない筈と思っていた第3外務局の計算は、フェン王国の拒否回答によって大外れした。それならばと第2案の同場所を498年間租借する提案も出すも、丁重に断られた。

これにより、第3外務局内で「フェン王国は皇国を舐めている」という意見が主流となる。72ヶ国の属国を持つ第三文明列強国であるパーパルディア皇国にとって、文明圏外の蛮国から軽視されるというのはとても許容出来るものでは無いとして、局長のカイオスは指揮下の皇国監察軍東洋艦隊22隻とワイバーンロード2個小隊をフェン王国に派遣する事を決定した。

ワイバーンロード部隊によるフェン王国首都アマノキの攻撃、そして監察軍東洋艦隊による無慈悲な砲撃による追撃によってアマノキを完全に焼き払い、パーパルディア皇国に逆らえばどうなる事になるのかを、軍祭に参加している文明圏外国に見せ付ける。その筈だった。

 

しかしその結果は、ワイバーンロード部隊によるアマノキ攻撃を開始した直後、「監察軍東洋艦隊の一切の消息が途絶える」という結果に終わった。

 

この結果に第3外務局は騒然となった。幾ら正規軍でもない皇国監察軍とはいえ、それでも文明圏外国の一国を滅ぼすには十分な戦力を持っている。それにも関わらず、「連絡する暇も無く」全滅するなど到底考えられない事だったのだ。

しかし事実は事実、この事態は確実に皇帝の耳に入る。そうなれば次は監察軍ではなく、最新鋭艦で固められた正規の本国艦隊が動くだろう。監察軍とはいえ、第三文明圏列強国である皇国の戦力を殲滅させる程の敵なれば、どこかの列強国が支援しているか、下手すれば列強国そのものである可能性さえもある。

第3外務局は未だ見えぬ「敵」を探るため、情報収集を開始する。

 

 

そんな第3外務局の応接室にて、数人の男達が会談を開いていた。

 

「なんだと!?来年から奴隷の献上を行わないだと!?」

 

外務局員が、会談相手であるトーパ王国大使を怒鳴り付けた。

トーパ王国はパーパルディア皇国の北側に存在する、第三文明圏外国の一つだ。しかしその立地は強力な魔物が闊歩している「グラメウス大陸」と第三文明圏を繋ぐ場所に位置しており、人類の定住地として重要な拠点としても機能している。が、外務局員はそれを承知の上で、大使に強硬姿勢を見せる。

トーパ王国大使は冷や汗を流しつつも、断固とした口調で答える。

 

「我が国の民を奴隷として貴国に差し出すのは、もうやめとうございます」

「ふん、ならば各種技術提供もトーパのみ停止させるぞ!」

 

皇国は、各種技術提供もこうした外交手段の一つとして利用している。

最新技術は徹底的に秘匿しつつ、旧式となった技術を属国の周辺諸国や文明圏外国へと提供している。これだけなら皇国は属国からの献上品で潤い、属国も生活水準は向上していくようにも見える。しかし現実的に見れば属国は常に皇国の後追いの形となり、その差は一切縮まらない。結局のところ、属国は苦しい思いを永遠に続けているのだ。その上で一国だけ技術供与が停止する事になれば、他国と技術力と発展速度に差が出る。つまりは国力が衰退していく事となるのだ。

属国が皇国の言う事を聞かなければ、部品の輸出さえも不可能になる。これで完全に国が立ちいかなくなる。筈だったのだが、今までのトーパ王国からは考えられない程に強気な姿勢を続けた。

 

「技術、ですか。たかが技術程度、人民の幸福には代えられません。我々は奴隷を差し出さず、皇国は我が国への技術供与を停止する。それで結構でしょう」

「ほう…ならば今後は自分達であらゆるものを調達するんだな。後で泣き付こうが我々は知らん」

 

突き放すような外務局員の言い方に対し、トーパ王国大使はフッと笑った。

 

「我々は、イーディーエフと国交を結んでいるのですよ」

 

そう言って、応接室から立ち去っていった。

 

…余談だが、後にこの会談を知ったEDF日本支部から情報局員がやって来て、トーパ王国はキッチリと警告(オシオキ)をされる事になる。

 

 

 

 

 

 

場所と時は変わる。

フィルアデス大陸の南側にある、海を隔てた大きな島の王国。その名を「アルタラス王国」と呼ぶ。

世界有数の魔石鉱山を有する豊かな国であり、人口1500万人に加え、その国力は文明圏外国としては規格外の規模を誇る。資源輸出国であるアルタラス王国はとても豊かであり、中でも人口50万人を抱える王都 ル・ブリアスも人々の活気に溢れている。

しかしそれとは裏腹に、国王 ターラ14世は王城にて、苦渋に満ちた表情で手元の書類を見ていた。

 

「…正気か、これは…?」

 

その書類は毎年パーパルディア皇国から送られてくる要請文だったが、その実態は「命令文」と変わりない。

しかも今回の要請文内容は、己の目を疑いたくなるような内容だった。

 

1.アルタラス王国は魔石採石場 シルウトラス鉱山をパーパルディア皇国に差し出せ。

2.アルタラス王国王女 ルミエスを、奴隷としてパーパルディア皇国に差し出せ。

以上2点を、2週間以内に実行する事を要請する。

出来れば、武力を使用したくないものだ。

 

「ありえないな…」

 

パーパルディア皇国の現皇帝ルディアスは、国土の拡大と国力増強を掲げており、各国に領土の割譲を迫っていると聞いていた。しかし通常の割譲地は無難な場所で、尚且つ双方に利がある条件を付けるなど穏便な場合が多かった。

しかし今回、アルタラス王国に要求してきたものは全くの真逆だ。シルウトラス鉱山はアルタラス王国の経済を支える中核であり、これを失えば国力は大きく劣る事になる上、王女の奴隷化に関しては最早、アルタラス王国を怒らせる為に記述したとしか思えない。

つまりは、パーパルディア皇国は最初から戦争に持ち込もうとしているようにしか見えないのだ。

 

ターラ14世は直ちにル・ブリアスにあるパーパルディア皇国第3外務局所轄のアルタラス出張所に出向き、その真相を確かめる事にした。

 

 

 

 

 

 

パーパルディア皇国第3外務局 アルタラス出張所。

そこにターラ14世は外務官を共に連れ、職員に案内されて館内を歩いていた。

大使室前に着き、扉が開かれる。

 

「待っていたぞ、ターラ14世!」

 

そこにはパーパルディア皇国第3外務局所属 アルタラス担当大使カストが大仰に椅子に座り、足を組んだまま一国の王を呼びつけた。対するターラ14世は立ったまま。ソファーの一つもない辺り、どうやら事前に撤去したらしい。

アルタラスの外交官は無礼には無礼で返す、挨拶抜きで話を始めた。

 

「あの文書の真意を、伺いに参りました」

「内容の通りだが?」

「シトウトラス鉱山は我が国最大の鉱山です」

「それがどうした?鉱山は他にもあるだろうに。それともなんだ、え?ルディアス様の意思に逆らうと言うのか?」

 

一切の品のない表情を見せるエストに、ついにターラ14世も顔を顰めた。

 

「とんでもございません、逆らうなど…しかし、なんとかなりませんか?」

「ならん!」

 

カストが声を荒げ、ターラ14世は外務官を下がらせて自ら前に出る。

 

「では、我が娘ルミエスの事ですが…何故このような事を?」

「ああ、アレのことか。ルミエスは中々の上玉だろう?俺が味見をする為だ」

「…は?」

 

信じられない回答に、アルタラス王国の人間は揃って言葉を失った。

 

「俺が味見をしてやろうと言うのだ。まぁ飽きたら、適当な淫所に売り払うがな」

 

最早、我慢の限界を遥かに超えた。

 

「…それも、ルディアス様の御意思なのですか?」

「ああ!?なんだその反抗的な態度は!?皇国の大使である俺の意思は即ちルディアス様の御意思だぞ!!蛮国風情が、誰に向かって口を聞いているのだ!!」

 

ターラ14世は、無言で背中を向けた。

 

「おい!まだ話は終わってないぞ!!」

 

その声を無視し、退出。

 

 

 

 

 

 

「あの馬鹿大使を皇国に送り返せ!!要請文にはわしの直筆など要らん、外務省から「国交を断ずる」とはっきり書いて馬鹿大使に持たせろ!!我が国の皇国の資産も全て凍結だ!」

「はっ!!」

「軍を招集、王都の守りを固めろ!予備役も全員招集だ!!」

 

「イーディーエフ連絡館に直ちに伝えろ!!「我がアルタラス王国はパーパルディアの不当な要求を蹴り、戦争状態に突入した」と!!同時に防衛軍事同盟に基づく参戦要請を伝えるんだ!!そして世界のニュースに後から届くイーディーエフの声明文発表の準備を行え!」

 

 

 

 

 

 

その翌日は丁度、国際情勢を1週間に一度の周期で魔力通信にて放送する「世界のニュース」が行われる日だった。

 

『こんにちは、世界のニュースの時間です。今週はつい先ほど、第三文明圏より届けられた声明文の発表から行われます』

 

世界がそれを知るには、とても都合が良かった。

 

『今から、その内容を読み上げます──「世界の各国の皆々様方、初見となります。我々は第三文明圏内に国家を置く「イーディーエフ」と言います。我が国は平和と平穏を愛し、今までは世界に積極的な関わりを持とうとはしませんでした。しかしつい先日、我が友好国であるアルタラス王国が、第三文明圏列強国パーパルディア皇国より、あまりにも不当な要求を突き付けられた。その内容は国の発展の中核を明け渡すのみならず、アルタラス王女 ルミエスを彼の国は奴隷にせんとしたのだ。この暴挙を行う蛮国の行いを、我々は絶対に許さない。平和には平和を、暴力には暴力を以って応えよう』」

「『全てはアルタラス王国を守る為。そしてパーパルディア皇国に理不尽なる支配を受けている72ヶ国の独立を取り戻す為』」

 

 

「『中央歴1639年11月12日12時を以って、イーディーエフはパーパルディア皇国に対して宣戦を布告する」』

 

 

その日、世界は知る事となる。

 

 

 

 

 

 

日本列島は、戦意に湧いている。

 

ある者は叫ぶ、「彼の国を許すな」と。

 

ある者は吼える、「侵略者を決して赦すな」と。

 

ある者は宣言する、「あの蛮国に、自らの行いを償わせる時が来た」と。

 

ある戦士は己の武器の弾倉を装填し、安全装置を解除する。

 

ある戦士は己の相棒(機甲兵器)にその身を預け、エンジンを吹かす。

 

ある戦士は西を睨み、すぐに来たる戦いに備えて精神を統一する。

 

彼らの意気は軒昂し、その闘争心は燃え上がって一つとなり、それは全てを破壊し尽くす業火となる。

 

 

「オペレーション・パルヴァライゼーション、発動準備を開始せよ」

 

 

侵略者に、絶対の鉄槌を。




用語解説&状況説明
EDF日本支部
パーパルディア皇国が網に掛かったので世界のニュースにて宣戦布告した。

パーパルディア皇国
処刑台に上がりきった。後はその手が振り下ろされるのみ。

アルタラス王国
パーパルディア皇国からの要求を蹴り、EDF日本支部に防衛軍事同盟に基づく参戦を要請する。
原作だとパーパルディア皇国に占領され、その後日本に解放されるのだが…

トーパ王国
第三文明圏外国の一つ。パーパルディア皇国からの要求をアルタラス王国と同じく蹴った。その後EDF日本支部からやんわりと「警告」された。

世界のニュース
第一文明圏列強国「ミリシアル帝国」から全世界に、1週間に一度の周期で行われるニュース。


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第4章 オペレーション・パルヴァライゼーション 第15話 反応と出撃(改)

さぁ、パーパルディア戦は如何なる変化を見せるのか。


EDF日本支部が世界のニュースにて、全世界に向けて発表したその声明文。それは世界各国の殆どに多大な驚愕と不憫で受け入れられた。

EDF日本支部の詳細を知らぬ国々にとって、それは「国際常識も知らない、余りにも幼稚な文明圏外国が文明列強国に宣戦布告を宣言してしまった」と。そう捉えたのだ。故に世界各国は、この戦いはパーパルディア皇国の勝利に終わると考えた。

まぁ、彼等が持つ常識と認識ではこの判断自体に無理はなかった。宣戦布告を宣言されたパーパルディア皇国は、第三文明圏列強国であり、その国力は世界的に見ても4番目に高い。対してEDF日本支部は、自らを「第三文明圏国であり、自ら世界に関わりを持とうとしてこなかった」と断言した。つまりは国力もそれ相応しか持っておらず、更には宣戦布告の宣言によって国際常識さえも知らぬ国という認識を持ったのだ。そんな国が列強国と戦っては、すぐに降伏するに決まっている。そう思ったのだ。

 

その予想が全くの間違いだったことは、後に気付く事となる。

 

 

 

 

 

 

第一文明圏列強国 神聖ミリシアル帝国。

第一文明圏、通称中央世界と呼ばれる地域に存在する誰もが認める世界最強の国家であり、帝国南端に存在する港町 カルトアルパスは世界最大の交易拠点として存在していた。

そこにある、とある酒場では酔っ払い達が話をしていた。

 

「見たか?こないだの世界のニュース」

「ああ、まさかパーパルディア皇国が文明圏外国から宣戦布告を受けるなんてな。同じ文明圏外国ならともかく、よりにもよって列強国だぞ?その国のトップは馬鹿なのか?」

「噂じゃ今まで閉鎖的だったせいで、国際常識を全く知らなかったらしい。だからパーパルディア皇国との国力差も知らずに、あんな事をしでかしたんだろうな」

「また1つの国が滅び、パーパルディア皇国の版図が広がるだろうな…しかし今回は例外だが、最近のパーパルディア皇国は無茶苦茶してるな。戦争、戦争、また戦争だぜ。第三文明圏の統一でもするつもりか?」

「その意図もなくは無いだろうな。パーパルディア皇国は中位列強国。ムーや神聖ミリシアル帝国に比べると劣る、それに対してコンプレックスになってるのかもな」

 

その酔っ払い達も、今現在はパーパルディア皇国の圧勝、完勝という意見で占めており、誰もEDF日本支部の勝利など信じていなかった。

 

 

 

 

 

 

第二文明圏列強国 ムー。

世界的に見ても希少な「科学技術」を起点とした文明や技術を中心としており、その国力は神聖ミリシアル帝国に次ぐ。その国力に比例して、戦力もそれ相応に保有しており、科学技術で作られた戦闘機のみならず、30.5cm連装砲を搭載した戦艦までも保有しているのだ。

そんなムーの政治部会は、パーパルディア皇国とEDF日本支部の戦争に関する会議を開催していた。

 

「では…観戦武官はこれまで通り、パーパルディア皇国へ派遣致します。よろしいですか?」

 

その提案に、誰一人として反対の声をあげる者は居なかった。というよりも、彼等にはそれ以外の選択肢は無かったのだ。

何故なら、ムーは未だにEDF日本支部との国交開設どころか、一切の接触を行なっていないのだ。故にムーもEDF日本支部の認識は他の国家や人々と同じく、第三文明圏外国と認識していた。故に今回の戦争も、パーパルディア皇国が勝利すると考えていたのだ。

 

 

 

 

 

 

そして第三文明圏列強国 パーパルディア皇国、皇都エストシラント。

そこには第三文明圏の富が集まり、その国力の象徴とも言える皇宮に住まう、皇帝ルディアス。彼の私室には、彼と1人の女性がいた。

2人が行なっていた雑談が途切れ、その沈黙を破るようにルディアスが女性に質問した。

 

「レミール。この世界のあり方について、そしてパーパルディア皇国についてどう思う?」

「はい、陛下。多くの国々がひしめく中、皇国は第三文明圏の頂点に立っています。多数の国を束ねる為に「恐怖」を与えていますが、この方法は非常に有効であると思います」

「そう。恐怖による支配こそ、国力増大の為には必要だ。神聖ミリシアル帝国やムーは、近接国に対して融和政策を行なっている。そんな軟弱な国より、我が国が下に見られている事は我慢ならない。我が国は第三文明圏を統一し、大国…いや、超大国として君臨する。そしていずれは第一文明圏、第二文明圏をも我が国の配下に置き、パーパルディア皇国による世界統一を果たす。そうなれば、世界から永遠に戦争が無くなり、真の平和が訪れるのだ。それこそが、世界の国々の人の為…そうは思わぬか?」

 

ルディアスは独裁的ではあるが、しかし非常に合理的だ。パーパルディア皇国という大国を支える精神性、政治手腕は第三文明圏の中でも群を抜くが…民族の多様性、言論の自由を許容するなどの考えには至ってはいなかった。

勿論彼の側にある、皇族のレミールも同じ考え…というよりはルディアスに心酔しきっている為、「なんて器の大きな人なのだろうか」と考えるだけである。

現に、ルディアスの言葉を聞いたレミールは感動のあまりに感涙している。

 

「陛下が…それ程までに世界の民の事をお考えだとは…レミール、感激でございます」

 

そして、ルディアスは不敵な笑みを浮かべながら話を続ける。

 

「世界統一の為には多くの血が流れるだろうが、それは大事を成し遂げる為の小事…やむを得ない犠牲だ。そして、皇国の障害となる者達は排除していかねばならない」

「はい!」

 

ルディアスとレミールは知らない。その行いが、72ヶ国の属国の人々は今もなお臣民統治機構によって、決して少なくない血を今も流している事を。

パーパルディア皇国は知らない。その行いが、別世界で全世界が連合し、星間戦争を戦い抜いた者達を怒らせていた事を。

 

彼等は、パーパルディア皇国は、そして全世界は知る事となる。

 

真なる人類の守護者達と「彼等」の、その怒りを。

 

 

 

 

 

 

最後に、EDF日本支部。

本部の会議室にて、つい先日正式に勃発したパーパルディア戦争に関する作戦「オペレーション・パルヴァライゼーション」の最終確認を行なっていた。

テーブル中央にある空間ディスプレイに、第三文明圏の地図が映し出されており、様々なマークや矢印が表示されている。

 

「…以上が、オペレーション・パルヴァライゼーションの内容です。全部隊の出撃準備は順調であり、第7艦隊はつい先程出撃しました。作戦内容は殆ど変更がありませんが…先程、一つ問題が発生しました」

「どうした?」

「自律衛星ライカの最終偵察にて、アルタラス王国に向けて侵攻する艦隊を確認しました」

 

パーパルディア皇国とアルタラス王国の間の部分に、パーパルディア皇国所属を表す赤い艦隊のマークが新たに出現し、矢印にてアルタラス王国への進行方向を指す。そしてその矢印の先に、アルタラス王国所属を示す黄色の艦隊マークが出現した。

 

「隻数は324、編成は戦列艦211、揚陸艦101、そして…ワイバーンを海上運用する為の空母に類する艦…「竜母」が12です。規模から見るに、恐らくはパーパルディア皇国の主力艦隊の一つだと思われます」

「アルタラス王国の戦力のみで撃退可能か?」

「無理ですね。質自体は悪くありませんが、数と技術力にどうしようもない差があります」

「アルタラス王国の救援が必要、か…だが…」

 

そういって、司令は日本列島付近を見る。其処には複数の艦隊や部隊のマークが示されていた。

 

「第7艦隊と第1、第2師団はオペレーション・パルヴァライゼーションの為に出撃または出撃準備中。第4、第5艦隊は日本列島の防衛に配置中で、距離的にも間に合いません。ファイターならアルタラス王国へ迅速な派遣も可能ですが、パイロットの負荷を考えるとあまり推奨は出来ません」

「だろうな…オペレーション・パルヴァライゼーションの内容を修正し、一部戦力をアルタラス王国防衛、もしくは奪還に向けるべきか?」

「それは駄目です、オペレーション・パルヴァライゼーションは電撃戦を前提としていますが、パーパルディア皇国の戦力に万が一機動兵器や大量破壊兵器に相当する魔法があった場合…」

 

「提案があります」

 

参謀士官の1人が、手を挙げた。

 

「部隊の展開状況を再確認した所、日本海にて第7艦隊に合流予定の最新鋭艦、決戦要塞X7「ヤマト」のみは既に出撃準備を完了し、現在瀬戸内海を航海中です。慣熟航海で発覚したあの艦の特異な機動力ならば、今から出撃させればアルタラス艦隊がパーパルディア艦隊と交戦を開始する直前に接敵し、殲滅させる事が可能でしょう。そしてオペレーション・パルヴァライゼーション発動前に、武装と機能の最終確認の代わりにもなります」

「…よし、ヤマトにオペレーション・パルヴァライゼーション発動までのアルタラス王国防衛を命令する。直ちに伝えてくれ」

 

 

 

 

 

 

日本列島、瀬戸内海。

静かな海上に、巨大な…余りにも巨大な戦艦が航海していた。

 

その戦艦の名は「ヤマト」。

 

EDF日本支部が独自に設計、呉の建造ドックにて建造した最新鋭艦である。その全長は怒涛の1800m。要塞空母デスピナよりも400mも大きいその巨体を持つ。

だがヤマトの何よりの特徴は、前後に持つ余りにも巨大な主砲だ。砲身長が500mにも及ぶその巨大主砲の名は、100cm磁気火薬複合加速方式艦砲。EDFが開発した決戦要塞X6「ストーンヘンジ」を小型化し、艦砲として強引に搭載した。対宙兵器のそれを僅か(・・)1800mの船体に載せるなどとは狂気の沙汰であり、シミュレーションでは一斉射どころか1門の発射の反動で転覆は必然という試算が出た。

そもそも何故対宙兵器なんて代物を艦砲にして搭載しようと考えたのか。それはEDF日本支部…日本列島の地理的問題があった為だ。

決戦要塞X6 ストーンヘンジ、正式名称 120cm対地対空宙両用磁気火薬複合加速方式半自動固定砲。この兵器が開発される事となった経緯も、地理的問題だった。それまで対宙兵器として最も期待を寄せられていた対宙迎撃砲 リニアキャノン。口径200cmの巨大な砲身から放たれる対フォーリナー装甲用特殊貫通弾 グラインドバスターによる対宙砲撃は、マザーシップでさえも地球降下前に破壊可能という超火力を持つと言われ、絶大な期待が寄せられていた。しかしいざ設計してみるとなると、様々な問題が噴出した。まず200cmもの巨弾を確実に、その超火力を保ったまま宇宙空間のマザーシップに撃ち込むには赤道上で大仰角で射撃する必要があり、リニアキャノンの配置場所は必然的に赤道上に限定された。更にリニアキャノンそのものが対宙特化にせざるを得ず、万が一宇宙空間での迎撃に失敗して地球上に降下してしまったら、その後の戦いにおいてリニアキャノンは全くの戦力外となってしまう。その為EDFはリニアキャノンの建造を始めると同時に、対宙能力をある程度妥協して対空対地支援に転用可能な対宙砲の開発を開始した。その結果生まれたのがストーンヘンジである。砲口径を120cmに大幅ダウンさせる事により、宇宙空間に砲弾を飛翔させる最低限度の砲弾速度や射角を大幅に落とすと同時に、発射方式を火薬方式と電磁方式の両方を採用する事により、発射に必要な施設関連を核融合炉1基と数百の大型コンデンサー程度に収める事に成功した。その結果、ストーンヘンジは赤道上以外の地域にも比較的容易に建造する事が可能となり、前線の重要施設となる以上必然的な要塞化を行う事になる為、例外的に「決戦兵器X6」としてのナンバリングが施される事となった。

各支部がストーンヘンジを建造していく中、当然日本支部もストーンヘンジの建造を検討したのだが…此処で日本列島の地理的な問題が発生した。日本列島は殆どが山間部であり、平野となる部分はかなり少ない。平野に建造すれば山々がストーンヘンジの射角の邪魔となり、山間部に建造するとなると、フォーリナー降下後にストーンヘンジが孤立し、集中的な攻撃を受けて破壊される可能性が否定出来なかった。結果、EDF日本支部に対するストーンヘンジの建造計画は頓挫してしまう事になったのだが…此処で日本支部は、発想を転換する事にした(狂気染みた発想を閃いた)

「地理的問題が無い海上にストーンヘンジを浮かべれば良いんだ」と。

そんな訳で日本支部は海軍と兵器局、兵器開発部に「ストーンヘンジを搭載した超大型艦船」の開発及び建造を指示し、指示を受けた全員が、天災の巣窟でもある兵器開発部でさえ頭を抱え込む事態となった。ストーンヘンジの口径は120cm、1400mの船体を持つ要塞空母デスピナの主砲でさえ51cmに抑えているというのに(そもそも空母である為、より小型な51cmが限界だったというのもあるが)、約2倍に相当する120cmの巨砲、それも対他対空宙両用迎撃砲を艦船に載せられるわけが無いだろう、と。…建造費や資源の問題が真っ先に挙げられない辺りに、日本支部の発言力(権力)の高さが伺えるが。

兎にも角にも、ひとまずはやれるだけやってみてダメだったら素直に言えばいい、というスタイルでストーンヘンジ搭載艦の設計を開始した。その結果、初回に出来上がったのは全長4000m、全幅1200mもの艦の様なナニカだった。当然建造不可能であると判断されて破棄されたのだが…これ以上の小型化はストーンヘンジの反動を抑えきれない為、必然的に要塞島の様なサイズに成らざるを得ない。幾らフォーリナーテクノロジーが優れていても、無理なものは無理

 

「こうすればワンチャン出来るんじゃね?」

 

…だったのだと思われたのだが、此処で兵器開発部(天災の巣窟)より送られていたある者が、一つの提案を行った。

それは、人工重力による主砲発射反動の強制相殺。

超高出力の人工重力発生装置を2基搭載。主砲発射の瞬間、ヤマトの船体に対して反動とは正反対の方向に向けて極大な人工重力を瞬間的に発生させ、反動そのものを無かった事にしようというゴリ押しにも程がある方法だ。飛行ドローンの飛行方法を応用したとはいえ、主砲発射に合わせて瞬間的な超重力を発生させて反動を打ち消そうと考えるなど、まず思い付かないだろう。シミュレーションでは充分に受け止めきれる可能性が高いのもタチが悪い。

こうして本格的な設計図を引くことが決定。可能な限りに小型化し、尚且つ出来る限りストーンヘンジの砲口径を落とさず、しかし主砲斉射に耐え得る船体強度の獲得を目指された。

結果。全長1800mの船体に主砲として口径100cmのストーンヘンジを2基、副砲として38cmレールガン連装砲を24基48門、両用砲として12cmレールガン3連装砲を300基900門、支援兵器としてテンペストミサイルVLSを1基装備した超大型戦艦…否、決戦要塞X7 要塞戦艦ヤマトの建造が決定されたのだ。

呉海軍基地に新たな超巨大ドックを建設し、ヤマト建造開始から3年。EDF日本支部に突如襲った転移現象によって一時は計画が中断される危機があったが、クイラ王国より超安価で購入可能となった大量の地下資源により、寧ろ建造計画は前倒しに進んでいき。3ヶ月前、遂にヤマトは進水したのだ。

 

 

出撃準備を終えて第7艦隊へ合流する為に瀬戸内海を航海中、ヤマトは本部よりアルタラス王国防衛の命令が通達された。

 

「アルタラス王国への防衛派遣、か…予定は速まったが、いよいよこの艦の実戦の時が来たな。ヤマトの力を存分に見せる時だ。準備は?」

「既に準備は完了しております、艦長」

「よろしい…では、発進準備を開始せよ!」

 

船長の号令と同時に、ヤマトの発進準備が開始される。

 

「了解!人工重力発生装置起動開始!」

「全武装安全確認!機関出力停止、システムオールグリーン!全艦問題無し!」

「人工重力発生装置、起動!人工重力発生開始!重力方向上方90度、出力0.05G!」

 

作動したヤマトの人工重力発生装置2基が、ヤマトの船体と内部空間に対して人工重力を展開。全長1800mの船体が、ゆっくりと垂直に上昇を開始し、海面より離れた。

 

「離水完了!続いて出力方向及び出力調整準備開始!」

「重力方向前方0度、出力20G!」

「ヤマト、「落下」開始します!!」

 

ヤマトの船体に対して発生していた人工重力が一気に上方向90度から前方へ、20Gもの超重力へと変更される。ヤマト内部の重力はもう1基の人工重力発生装置が上書きし、船員達や備品などには一切の影響を与えない。

そうしている間にも、ヤマトは海面ギリギリの高度で急速に水平落下(・・・・)を開始。段々とその速度を上げ、とても艦が…いや、1800mの物体が出せる速度では無い、400ノット航行(落下)を始めた。

 

「進路をアルタラス王国へ取れ!侵攻するパーパルディア皇国海軍を、撃滅する!!」




ヤマトに関しては正直ブッ飛び過ぎたとも思ったけど…寧ろこの位の兵器作れなきゃ、真正面からフォーリナーは倒せないと思う。

用語解説&状況説明
神聖ミリシアル帝国
第一文明圏列強国。現在は世界最強の国家として認識されている。

ムー
第二文明圏列強国。科学技術を基礎として発展している。パーパルディア皇国に多数の市民が住んでいるが、パーパルディア皇国が勝利するだろうと考えており、特に触れていない。

パーパルディア皇国
EDF日本支部の攻撃に備えつつ、アルタラス王国に主力艦隊の1つを派遣。

アルタラス王国
パーパルディア皇国の攻撃に備え、海軍を出撃させた。

EDF日本支部
オペレーション・パルヴァライゼーションの発動準備の為、攻撃部隊を出撃。アルタラス王国の防衛の為、最新鋭艦ヤマトを派遣する。

要塞戦艦ヤマト
EDF日本支部が発案、3年もの歳月を掛けて建造した決戦要塞X7。
第二次世界大戦時に建造された世界最大の戦艦大和の設計をベースに、超拡大発展させた対フォーリナー決戦兵器。
全長は1800mにも及ぶ超巨大戦艦であり、単艦でマザーシップを撃破可能とする能力を保有する。対マザーシップ戦闘に特化する為、搭載兵器はテンペストミサイルを除き、全てが艦砲となっている。
主砲は決戦要塞X6から転用された100cm磁気火薬複合加速方式艦砲2基、副砲として38cmレールガン連装砲を24基48門、両用砲として12cmレールガン3連装砲を300基900門装備。そして煙突型装甲に守られたテンペスト発射機を1基搭載。
主砲発射の反動は、例え1基のみの発射でも1800mの巨体でも吸収しきれず、何の対策もなく行えば転覆等の船体バランスの崩壊は必至。その対策として「対反動装置」として超高出力の人工重力発生装置を2基搭載。発射時にはヤマトに対して発射の反動を打ち消す程の超重力を一瞬のみ発生させ、同時にヤマト内部にその超重力に押し潰されないよう、船外重力とは異なる重力を展開して上書きする事により、強引ではあるが、事実上の低反動で主砲の発射を可能とした。尚、対反動装置の使用方法を応用すれば、空中を「落下」することによって超高速で航行する事も不可能ではない。
機関として核融合炉2基を使用しているが、主砲と人工重力発生装置の必要電力量は極めて多く、核融合炉から生み出される電力を以ってしても全武装の同時使用は不可能。主砲と副砲、副砲と両用砲の同時使用が限界である。
対空戦闘時には、副砲と両用砲全門の交互撃ち方によって速射性能を限界まで高め、合計秒間948発の弾幕によって飛行ドローンの物量に対抗する。全弾がマッハ7で飛来する対空弾幕の前に、幾千幾万の飛行ドローンは悉く撃墜されていくであろう事は、言うまでもない。さらにその火力は対地…幾万の巨大生物に対しても圧倒的な殲滅力となるだろう。
防御面は四つ足歩行要塞に搭載されていたフォースシールドを流用して搭載。ヤマト全域を覆うフォースシールドは、マザーシップの巨大主砲の火力さえも完全防御可能であるが、使用のためにはコンデンサー内の電力を大量に放出する必要がある為、此処ぞという場面でしか使用する事が出来ない。
余談だが…ヤマト建造を決定した事を総司令部や各支部に発表した際、総員から「変態の所業とか言うレベルじゃないの分かってる?」とやんわりとした形で正気を疑われた。

120cm対地対空両用磁気火薬複合加速方式半自動固定砲 ストーンヘンジ(登場作品:エースコンバット)
EDFが開発した決戦要塞X6。
対宙迎撃砲リニアキャノンはマザーシップを破壊するには十分な威力を持っていたが、赤道上にしか設置できないという欠点があり、万が一迎撃に失敗した際には、リニアキャノンは地球上の支援砲撃には一切使用出来ないという欠点があった。その為、能力を落としてでも対空用に転用可能かつ、赤道上以外の箇所も配備できるような対宙砲が求められた。
火薬による発砲と電磁加速を併用したハイブリッド式地対空宙レールガンであり、大気圏内の射程は1200kmにも及ぶ。使用砲弾は榴弾、対フォーリナー装甲用特殊貫通弾 グラインドバスター。その威力は対マザーシップ以外では余りにも強力な為、対地対空支援として使用するには、着弾地点が廃墟となる事は必然である。その為通常の作戦で使用される事はまず無いと言ってよく、使用される作戦は大規模作戦…つまりは数万以上の巨大生物や四つ足歩行要塞などと言った場合にのみ使用される。
欠点として、ストーンヘンジの超射程を達成する為には専用の核融合炉と1基につき数百の超大型コンデンサーを必要とする為、ストーンヘンジの建造は実質的な要塞化を強制される。その為、ストーンヘンジは例外的に決戦要塞X6としてのナンバリングを持つ。
ストーンヘンジは試作型を含めて9基製造されており、其々がタイプXとしてナンバリングされる。日本支部も建造を検討したが、立地的問題により頓挫する。そこで日本支部は立地的問題を解決する為、決戦要塞X7…全長1800mの船体に、砲口径を100cmにスケールダウンしたストーンヘンジを2基も搭載するなどと言う、狂気の沙汰としか思えない()兵器を独自に発案、建造する事になる。

グラインドバスター
原作(地球防衛軍)でも実際に登場する兵器。残念ながらプレイヤーが使用する事は出来ないが、輸送船を一撃で、四つ足歩行要塞さえも僅か数発で破壊するなど、フォーリナーの機甲戦力に対する確実な火力を誇る。


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第16話 前哨戦(改)

アルタラス王国 首都ル・ブリアス。

そこに住まう全員が、空を見上げていた。

 

「なんて、光景だ…」

 

ターラ14世も、王女ルミエスと共に王城の一室から見上げている。ターラ14世はなんとか言葉を紡いだが、ルミエスに至っては開いた口が塞がっていない。

その姿を横目で見る、EDF日本支部より派遣された、アルタラス王国連絡館代表の情報局員。彼は、思わず苦笑しそうになりながら、再び空を…否、空に浮かぶヤマトを見上げた。

アルタラス王国防衛に派遣されたヤマトは400ノットの高速で航行した結果、予定より大幅に速くアルタラス王国に到着してしまい、折角だと言うことでアルタラス王国に対し、少しだけ軍事的なデモンストレーションを行う事を決定した。ただ単に空中に浮いているだけだが、1800mの戦艦が空を飛んでいる光景は、人々の目を奪うには余りにも十分なインパクトを持っていた。

 

「如何でしょうか?我がEDFの要塞戦艦ヤマトは」

「…言葉を失うとは、正にこの事を指すのですな。まさかあのような物が、空を飛んでいるとは…」

「EDFの最新技術を結集させ、3ヶ月前に建造されたばかりの最新鋭兵器です。本来の予定ならば、対パーパルディア皇国に向けて投入される予定でしたが…貴国の危機を知り、急遽作戦開始まで貴国の防衛に投入される事となりました。100cmの巨大主砲や無数の38cm、12cm砲の砲火力は、貴国に侵攻するパーパルディア艦隊を貴国に被害を出す前に容易に粉砕するでしょう」

「…何故、我が国に此処まで?」

 

ターラ14世は思わず、純粋な疑問を情報局員にぶつけた。

 

「世界のニュースの内容から察するに、貴国はパーパルディア皇国に宣戦布告する理由を求めていたように思える。だからこそ、その目標を達成すれば…我が国の事を切り捨てる事は出来た筈。なのに…」

「それは、とても単純な事ですよ」

 

ターラ14世の言葉を、情報局員は無理矢理遮った。

 

「確かに其方の言う通りの事を、我々は行う事が出来ました。しかし、侵略者に蹂躙されようとしている「友好国」を見捨てる程、我々は冷酷ではありません」

 

 

「断言いたしましょう。我がEDFの名と誇りに賭けて、アルタラス王国をパーパルディア皇国より守り抜くと。彼の国の人間には誰一人として、この地に一歩たりとも踏ませない事を」

 

 

 

 

 

アルタラス王国より、北東130kmの海域。

そこは抜けるような晴れた空が広がり、風もほとんど吹かない穏やかな海。そこをパーパルディア皇国第4艦隊は、アルタラス王国に向けて進んでいた。

100門級戦列艦を含んだ砲艦211隻、竜母12隻、地竜、馬、陸軍を運んでいる揚陸艦101隻、計324隻。更に航空戦力として竜母一隻につき、ワイバーンロードを20騎ずつ配備している。その戦力は第三文明圏内に於いて、間違いなく他の追随を許さぬ圧倒的戦力だ。

第4艦隊が何故、此処にいるのか。それはEDF日本支部の宣戦布告理由を捏造した叛逆国 アルタラス王国を滅する為、そして愚かにも皇国に宣戦布告を宣言した蛮国への見せしめの為だ。

その中でも、第4艦隊の旗艦を務める「シラント」の船尾楼の上に居る将軍 シウスは「冷血」かつ「無慈悲」な戦術家という評価に違わぬ凄然たる表情で、揺らめく海を眺めている。

そこに、航海士より報告が上がる。

 

「まもなく、アルタラス王国軍のワイバーン飛行圏内に入ります」

「まだ来ぬか…対空魔振感知器に反応が出たら、すぐに竜母から飛竜隊100騎を発進。艦隊上空で警戒態勢に入れ。作戦行動中は防衛を主とし、艦隊に敵を近付けさせるな。各小隊は飛竜隊大隊長の指示に従え。決して深追いはするな」

 

ワイバーンなどの竜種は、「魔素」と呼ばれるエネルギーを使って飛行している。その為にワイバーンを視覚外から発見する為に開発された対空レーダー「対空魔振感知器」に反応があり次第、ワイバーンロード隊を艦隊上空で警戒任務にあてるように指示する。

アルタラス王国海軍はまだ見えない。シウスはここら辺りでアルタラス王国海軍の船が見えて来るだろうと予想していたのだが、その影すら見えていない事に僅かながらの不信感を持っていた。しかしここでそれを考えても何も始まらない。アルタラス王国海軍に竜母が無いことは分かっている、恐らく、いや十中八九本国から直接洋上の此処へとワイバーンを飛ばしてくるだろう。もしかしたらワイバーンによる攻撃に気を取られた隙に此方にこっそりと近付こうとしているのかもしれない。が、そんな小手先の策などこの艦隊の力の前では容易に引き裂ける。

最小の被害で最大の戦果を。シウスは決して敵を侮る事は無く、水平線の先を睨み

 

 

轟ッッッ!!!!!

 

 

前方からマッハ21で飛来した巨大な衝撃波に、パーパルディア艦隊は打ち付けられた。瞬間的にあらゆる物体が打ち付けられ、衝撃波が持つその膨大なエネルギーに刹那と耐え切れる物は一つも存在しなかった。木材は粉々となり、人の肉は弾け、その中の骨は肉が弾けると同時にバキバキと嫌な音を立てて悲鳴を上げる。そして今艦隊が存在していた(・・・・)場所に2つの巨大な、全周約2〜3kmにも及ぶ海面のクレーターが形成された。そのクレーターからアルタラス王国の方向に、数キロに渡って海面が割れ、数百メートルの海面の谷が出来る。

そして艦隊の残骸であった其れ等は巻き上げられるように、その力や存在が無意味であったと言わんばかりに混ざり合い、打ち上げられ、吹き飛んだ。海面のクレーターが残骸の一部を巻き込みながら、開いた空間を再び海水が埋め尽くす。

僅か5秒の出来事。324隻のパーパルディア第4艦隊は、消滅した。

 

 

 

 

 

 

「グラインドバスター、着弾。敵艦隊消滅しました」

「…出力100%で撃つと、これ程の衝撃と反動が生まれるのか…」

 

パーパルディア第4艦隊が存在していた地点からおよそ100km南の海域。

其処にはアルタラス王国より出撃し、海面にその巨体を浮かばせている要塞戦艦ヤマトが2基のストーンヘンジを起動し、砲塔を約90度旋回して僅かな仰角を付け、砲口を水平線に睨ませていた。その砲身からは未だに煙が吐き出されており、膨大な熱量が発生した事を伺わせる。

ヤマトはつい先程、100km先に存在していたパーパルディア第4艦隊に対し、ストーンヘンジ2基による砲撃を行った。約10秒の砲弾装填、約20秒の旋回及び照準、約1分の砲身内充電、第1第2第3の安全装置解除、艦長が持つ特殊キーによる最終安全装置解除というプロセスを経て限界ギリギリまで引き絞られたそれは、砲手が発射ボタンを押しただけであっさりと解き放たれた。装填されていた特殊貫通弾 グラインドバスターは、装薬の初期加速と電磁加速による終末加速を経て、僅か500mの砲身内でマッハ21の超音速を獲得。砲身より飛び出した2発の100cmグラインドバスターは、およそ14秒間に及ぶ飛翔の後、パーパルディア第4艦隊中心部に着弾。全運動エネルギーを全方位に解放し、パーパルディア皇国第4艦隊を消滅させた。

その威力と引き換えに、ストーンヘンジ2基では今も膨大な熱量を冷却しており、発射の瞬間に至ってはヤマトの船体が大きな悲鳴を上げた。マザーシップを撃退し得る威力を持つのは確信出来るし、あの(・・)兵器開発部が直々に設計図を引いたという事もあって信頼はしているのだが、実際に乗る者からしたら反動に耐え切れずにヤマトが真っ二つに割れて沈んでしまうのではないかと冷や汗が流れてしまう。

 

「…やはり試射はして正解だったな。ストーンヘンジの対地実射砲撃は転移前でも行われた事は無い。ライカがしっかりと砲撃の様子を記録してくれてるだろうしな」

「我々も、問題点を洗い出せた上に敵艦隊を殲滅出来て一石三鳥、ですか」

「ああ。…ストーンヘンジの冷却率は?」

「現在20%、砲身に亀裂等の問題無し」

「作戦の開始時間はどうだ?」

「変更はありません。およそ24時間後に発動されます」

「分かった。機関全速、進路2-7-0。我々も向かうとしよう」

 

 

 

 

 

 

こうして、EDF日本支部とパーパルディア皇国の前哨戦は幕を閉じた。

この戦いによってパーパルディア皇国は主力艦隊の一つを失う。対してEDF日本支部は友好国であるアルタラス王国の防衛に成功する。

パーパルディア皇国は第4艦隊の通信途絶に暫く気付く事なく、それを把握したのは翌日の事だった。

しかし途絶の原因を魔力通信機の故障であると判断し、調査は極めておざなりなものであった。それでは気付ける物も気付かない。

その間にも、EDF第7艦隊、第1第2師団、要塞戦艦ヤマトはパーパルディア皇国へと近付いていった。

 

そして時計が中央歴1639年11月14日を指すと同時に、EDF日本支部より全出撃部隊に対してオペレーション・パルヴァライゼーションの開始を通達。

史上最大のパワーゲームによる電撃戦が、幕を上げる。




用語解説&状況説明
パーパルディア皇国第4艦隊
アルタラス王国へ侵攻していたが、要塞戦艦ヤマトのストーンヘンジによる砲撃(試射)によって殲滅。これにムーの観戦武官も載っていたが…(マイラスではない)

EDF日本支部
オペレーション・パルヴァライゼーションを発動。

パーパルディア皇国
第4艦隊の通信途絶に気づくが、通信機の故障と片付けてしまった。

アルタラス王国
パーパルディア皇国第4艦隊の攻撃を受けかけたが、EDF日本支部が派遣した要塞戦艦ヤマトよって危機を回避。
原作(日本国召喚)の亡国ルートを回避する事になった。やったねルミエス。


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第17話 戦争外交 1(改)

工業都市 デュロ。

パーパルディア皇国東端部の沿岸にあるそれは、皇国の生産部門を担っている一大工業都市であり、皇軍の後方を担う。その象徴として、都市東部の沿岸部に工場が密集。海岸線に沿った北側と南側には居住区、西側は皇国三大基地の一つである、ワイバーンロードも多数配備されたデュロ防衛隊陸軍基地が置かれている。

そして地理的にも皇国の工業力の要であると共に、北方や南方からの侵略に備えている拠点でもあり、陸軍基地の他にも皇国主力艦隊の第5艦隊、第6艦隊が現在駐留している。そしてデュロ周辺の沖合には、ワイバーンロードの竜騎士隊が分散して哨戒任務を行なっており、その警戒網に不備などは存在しない、完璧な物だった。

 

…そう、完璧な物だった(・・・)。事実、その警戒網の完成度は第三文明圏随一であり、第三文明圏国の軍ならば警戒網に一切掛からずに本土攻撃する事はまず不可能と言ってもいい。世界的に見ると技術レベルこそ低いが、それであるからこその「物量」によって形成された警戒網の厚さは、皇国の国力を指し示す物でもあった。

最も、それは土台(・・)が同じ相手であればという前提だったが。

 

 

 

 

デュロより東方50km。

透き通るような青い空を、ワイバーンロード10騎が力強く飛行していた。彼等の所属はパーパルディア皇国デュロ防衛隊陸軍基地所属 第11竜騎士団第1飛行隊第2中隊。彼等は今日も軍人としての日課となっているデュロ東方方面の哨戒飛行をこなしていた。

数日前から、パーパルディア皇国はアルタラス王国及びイーディーエフと戦争状態に突入した。その為皇軍は念の為に哨戒機や哨戒艦を3割増やし、より万全な体制を敷いた。勿論誰もが皇国、皇軍が一度たりとも負ける事は無いとは思っている。しかし蛮族達が破れかぶれとなってパーパルディア本土に攻撃を試みようとする可能性はゼロでは無い。そんな事が起きないよう、哨戒戦力を増加させたのだ。

 

『マグネ隊長。今回出てきたイーディーエフとかいう奴は何なんだと思います?』

 

血気盛んな若手の竜騎士であるサルクルが、魔力通信にて第2飛行中隊長 マグネに話しかける。

 

『さぁな。どちらにしろ文明圏外国の一つ、皇軍が負ける事はあり得ないさ。かといって油断して落とされるような失態は犯すんじゃないぞ?』

『分かってます!例えムーやミリシアルが敵になろうが、私が落としてみせますよ!』

 

 

 

 

 

海面を切り裂き、巨大な艦達が航海していく。

横須賀海軍基地より出撃したEDF第7艦隊は現在、要塞空母デスピナを筆頭にセントエルモ級イージス戦艦4隻、アイオワ級フリゲート艦6隻から成る輪形陣を構成し、パーパルディア皇国東部都市 デュロに向けて侵攻していた。

デスピナの甲板には、発進に向けて待機するファイター10機の姿がある。その直下では、第1師団を載せるHU04ブルート数十機が最終点検を終えようとしていた。

 

「………時間だ。アルファ隊、ブラボー隊発艦せよ。発艦が終了次第主砲発射準備とブルート全機の発進準備を並行。哨戒するワイバーン及び敵艦を破壊し、彼等の道を開ける」

「了解!アルファ隊、ブラボー隊発艦開始せよ!」

『アルファ隊了解。全機行くぞ!』

『ブラボー隊了解、出る!』

 

発艦許可が下りた10機のファイターは、同時に機体下部に配置された補助ブースターを起動。出力全開で放たれた推力は、絶妙なバランスで機体を宙に浮かす。続いてメインエンジンの出力を上げ、アフターバーナーへと移行。最大速度マッハ4を叩き出す心臓が轟音を立てて大推力を発揮し、ものの十数秒で音速域に到達。そのままの勢いで急上昇を開始し、艦隊の直衛となる。

直後、第7艦隊全艦の前部主砲が起動。レーダーに捕捉した敵艦やワイバーンに向けて照準し、一部の艦砲は最近開発された新型砲弾を装填。砲身に電力が走り、バチバチと音を立てる。

 

「全艦砲撃準備完了!」

「攻撃開始」

 

 

 

 

 

 

『はは、そうなった時にはお前の活躍を楽しみに』

 

マグネがサルクルに向けて魔力通信を行なっていた最中、第2中隊に第7艦隊から放たれた新型砲弾「対空用近接信管型全方位拡散式かんしゃく玉砲弾」…通称かんしゃく玉砲弾(EDF海軍では対空砲弾と呼んでいる)が命中。それは第2中隊の中心地点で爆発し、たった1発でワイバーンロードの編隊を殲滅した。

 

これが出来たのも、かんしゃく玉砲弾の仕組みと、その威力による。

主砲より撃ち出されたかんしゃく玉砲弾は、近接信管によって設定内の距離に物体を確認したら、砲弾が炸裂。同時に砲弾内に存在していた圧縮空間が破壊され、瞬時に5万発のかんしゃく玉が全方位に瞬時に拡散し、起爆。起爆地点を中心とした半径250mを瞬時に爆発で制圧する。爆発範囲内に巻き込まれた物は、最大5万発のかんしゃく玉爆発の爆風や圧力を全方位から受け、跡形も無くその存在を消し去られる。

つまり、このかんしゃく玉砲弾の爆発範囲内にスッポリと入ってしまっていた密集陣形状態の第2中隊は、かんしゃく玉砲弾によって瞬間的にこの世から消滅させられたのだ。

 

これは、何も第2中隊だけの話ではない。デュロ東方を哨戒し、尚且つ第7艦隊の進路上に存在または到達するあらゆるワイバーンロード、敵艦がかんしゃく玉砲弾と通常徹甲弾の砲撃によって悉く撃墜、撃沈。遥か水平線の彼方からマッハ7で飛来する砲撃を感知する事さえ出来ず、デュロへの道が開かれた。

しかしパーパルディアにとって幸運だったのは、偶然ではあるが、海軍基地に向けて定期連絡を行なっていた数隻の船が第7艦隊の砲撃を受け、通信を途絶した事だ。この事態に最初は海軍総司令官 バルスも含めてのんびりとした対応を取っていたが、連絡が途絶えた船が数十隻もいると確認され、更には陸軍基地よりワイバーンロードの反応が次々と消滅していると報告があり、直ぐに緊急事態が起こっていると把握した。この事態に海軍基地より第5艦隊の緊急出撃が決定され、陸軍基地も全ワイバーンロード及び全陸軍のデュロ防衛配備を決定した。

その判断と伝達の速さ、正に神懸かり的といって良いだろう。パーパルディア皇国が保有する技術力と照らし合わせれば、それは最速とも言っても良い。

 

ただそれでも、そもそも無駄だった(・・・・・・・・・)という事実は変わらないが。

 

 

 

 

 

 

デュロ防衛隊陸軍基地。

パーパルディア三大基地と数えられるその基地は、数万の兵士と最大400のワイバーンを収容し、幾多の魔導砲や対空魔導砲などといった大型兵器を保管する大規模なキャパシティを持つ。更にはワイバーンの為の滑走路も完備し、それは正に一つの要塞と言っても良いだろう。

いつもなら何事も無く一日を過ごす筈だったデュロ陸軍基地…いや、全防衛戦力は慌ただしく動いていた。デュロ周辺に存在する全ての軍用魔力受信機からは警報が鳴り響き、兵士達は戦闘準備を行なっている。竜騎士達はワイバーンロード達を滑走路に誘導し、防空隊は倉庫から魔導砲や対空魔導砲を引っ張り出し各地に配備準備をし、備え付けの対空魔導砲には人員が張り付く。そして陸軍は装備を整えてデュロ陸軍基地及びデュロ周辺の防衛に出撃準備。

 

「第3飛行隊、離陸開始します!」

 

防空部通信指令課の通信士の1人がそう叫ぶと同時、滑走路に揃ったワイバーン10騎が離陸を開始。その後に続き、10騎編隊のワイバーンロードが次々と離陸を開始していく。第3飛行隊100騎が離陸を完了すれば、デュロ上空には現在向かっている第2飛行隊と合わせて200騎ものワイバーンロードが防空に付く事になる。そして海軍基地では現在第5艦隊186隻が港より出撃中であり、デュロ防衛に関する全戦力が整えられようとしていた。

無論そんな様子の陸軍基地や上空を飛行する多数のワイバーンを見てデュロの市民は不審がっているが、皇軍はそんな事を気にする事もなく着々と防衛準備を進めていく。

 

「ストリーム、これ程の戦力が必要なのか?戦力過剰にも程があると思うぞ」

「念には念を、だ。蛮族の決死行は文字通り命を燃やす勢いでやってくる。少しでもデュロを傷つけられれば皇軍の恥となる、それだけは絶対に避けるべきだろう?」

「確かに、それもそうだな」

 

デュロ基地竜騎士長 ガウスの問いに対し、デュロ基地司令を務めるストリームは簡潔にそう答えた。パーパルディア皇国は、第三文明圏列強国になって以降、一度たりとも本土攻撃を受けた事は無く、それはパーパルディア人の誇りの一つでもあった。それを蛮族が汚す様なことになれば、皇帝のみならず皇族にも目が付けられる事は容易に想像出来た為に、ストリームはデュロに配備されたあらゆる戦力を防衛の準備に取り掛からせたのだ。

 

ストリームの視界の先に、滑走路を走るワイバーン10騎が見える。ワイバーンは空を飛ぶためには助走で勢いを付けて風魔法を使用し、その勢いで空を飛ぶというプロセスを踏む必要がある。その為に各陸軍基地には滑走路が整備されているのだ。

助走の勢いと各ワイバーンが展開する風魔法の風力が合わさり、離陸が始まる。

 

そのまま角度を上げて上空に飛び立とうとした瞬間、超音速で飛来した超小型ミサイル10発が第3飛行隊第34中隊(ワイバーンロード10騎)全騎に命中し、爆散した。

 

「───は?」

 

刹那、30mという狂気的な超低空かつマッハ4もの超音速飛行でファイター5機がデュロ陸軍基地上空をフライパス。マッハ4の速度と30mの超低空が生み出す爆音とソニックブームの威力によってデュロ陸軍基地に存在する全ての窓ガラスが割れ、滑走路付近にいた兵士達の鼓膜を破って身体を吹き飛ばす。

そして運悪く窓ガラスの至近距離にいたストリームの上半身に、散弾と化した窓ガラスの破片が次々と突き刺さり、即死に至らしめた。そこに衝撃波が加わり、大きく吹き飛ばされて後頭部を起点に全身を壁に打ち付けて崩れ落ちた。それを目撃してしまったガウスは、直感的にストリームの死を悟った。

 

「ッ…!!レーダーァ!!貴様の目は節穴かぁ!?一体何故敵の接近を見逃したぁ!!

「今もレーダーに敵の反応がありません!!ワイバーンや風龍などの類では無く、飛行機械だと思われます!!」

「巫山戯るな!!今のが飛行機械の攻撃だと!?あんなの、あんなのミリシアル帝国が保有する「天の方舟」でも不可能だ!!」

 

レーダー員とガウスが言い争っている間にも、空は惨劇が展開され始めた。

 

『回避、回避!!』

『ば、か野郎!?なんだあの速さ反則だろうが!?』

『敵は蛮族じゃねえのかよぶぇ!!』

『や、やられた!!ジャンが、ジャンがバラバラになった!!』

『なんなんだよあれ!!なんで回避しても追いかけてくるんだよ!?』

 

襲来したファイター5機は速度を落とし、低速度の格闘戦を開始。補助ブースターを使用した、フォーリナー大戦前の戦闘機では絶対に不可能な超機動から怒涛の勢いで放たれる超小型ミサイル(ADMM)によって1秒経過するごとに、約200居たワイバーンロードが次々と撃墜され、ものの3分足らずで潰走を開始した。彼等はワイバーンロードという空の王者を操ってきた為に、今眼前に存在する敵は、自分達では一矢報いる事さえも不可能であると、悟ってしまった。

しかしファイター5機…アルファ隊は逃す気はさらさらない。彼等に課せられたのは「デュロ周辺の制空権、制海権の確実な獲得」。つまり今見えているワイバーンロードの殲滅は決定的であり、慈悲などは無い。

 

『此方アルファ3、地上に対空砲らしき兵器を多数確認しました』

『了解だアルファ3。アルファ4、5。対空砲を掃討しろ。ブルートを傷付けさせるな』

『ラジャー、合わせろアルファ5!』

『はいよ』

 

ファイター2機が目標を対空魔導砲に変更。ADMMをにロックオンして放ちつつ、EML(レールガン)による砲撃によって人員と兵器を丸ごと破壊する。慌てて弾幕を張る者達や一目散に逃げる者達もいるが、やはり関係無く撃滅していく。デュロ陸軍基地に存在する建物などにも手当たり次第ミサイルやレールガンによる攻撃を加え、デュロ陸軍基地を破壊していく。滑走路は勿論、竜寮舎や建物など、とことん破壊する。

 

こうしてデュロ陸軍基地が猛攻を受けていたが、それは海軍も似たような物だった。

港から出航しようとしていた第5艦隊、出撃待機をしていた第6艦隊。計372隻が火の海になるか、それとも跡形も無く吹き飛ばされていた。

 

『此方ブラボー隊。デュロの港に居た敵艦隊を全て撃沈した』

『了解したブラボー隊。そのままアルファ隊と共に制空権を確保してくれ。第1師団の到着だ』

『ブラボー隊了解』

 

ブラボー隊がデスピナの指示を受け、港部からデュロ陸軍基地に向けて飛び去った直後、東の方向から数十機ものHU04ブルートが編隊を組んで襲来した。ファイターのソニックブームなどとは違う、バタバタと何重にも重なるプロペラの騒音がデュロに住まう市民達や兵士達に恐怖感を与え、一部の者達にパニックを引き起こす。

デュロの町を目前にしてブルートの編隊が解かれ、各機が其々の展開地点へと拡散する。兵士達はブルートに向けて銃や弓矢を放つが、マスケット銃でヘリコプターを落とせるならばその銃士の練度は神の領域に達していると言ってもいいだろう。弓矢に至っては論外である。

余りにもか細い対空砲火を抜け、各機は上空10mでホバリングを開始。そしてドアが開かれ、中からレンジャーやウィングダイバーが飛び出した。ウィングダイバーは背部に装着された飛行ユニットで飛行できるが、そういった特殊装備を持たないレンジャーは物理法則に従って落下していく。例え10mでも普通の人間ならばどれだけ良くても骨折、最悪の場合は死んでしまう危険さえもある高さだが、レンジャー達は次々と着地し、平然とした様子で走り出した。

 

何故10mの高さから無傷で着地出来たのか。それはEDFが採用している第3世代アーマースーツの恩恵による。アーマースーツ内部に埋め込まれている人工筋肉繊維による筋力補強機能と、巨大生物の硬皮を参考にして生産された特殊素材による耐衝撃性が合わさり、正しい姿勢で着地出来れば100mからのパラシュート無しのダイブにも無傷で着地出来るという驚異の性能を叩き出している。他にも詳しい性能や特殊兵科の特殊装備などが存在するが、今回はウィングダイバーのみの説明とさせて頂く。ウイングダイバーは、背部に飛行ユニットと小型の大出力ジェネレーターを装備し、空中機動と高出力の光学兵器を取り扱う事が可能であり、巨大生物の攻撃方法が少なくなる空中から光学兵器やプラズマ兵器による範囲攻撃を行う、対巨大生物戦闘を得意としている。今回はレーザー兵器を中心としてレンジャーを航空支援するために出撃した。

 

ブルートからの展開を完了した第1師団歩兵隊は、デュロの制圧を開始。市街地は展開が速いウィングダイバーに大部分を任せ、レンジャー達は海軍基地や陸軍基地へと突入していく。

今回はレンジャー1の隊長「結城」を中心とした視点で海軍基地制圧を見ていこう。

 

「突入するぞ!」

 

そう言った直後、結城は一切の躊躇なくドアに向けてAF20を連射し、ドア越しにいた敵を射殺。ボロボロになったドアを蹴り破って(粉砕して)隊員共々海軍基地内に入り込んだ。そして左右に居た職員に対し即座に発砲。対巨大生物兵器という余りにも威力の高い弾幕によってバラバラにされるが、一切気にする事も無く周辺を制圧する。他からも発砲音が響いているため、既に多方面からレンジャーチームが突入を開始しているのだろう。

 

「此方レンジャー1、我々は上に行く階段を探し、2階を制圧する」

『レンジャー1、任せた。レンジャー2が1階を、レンジャー3が3階を制圧する』

「了解」

 

小走りで、しかしレーダーに気を配りながら階段を探す。同階の部屋の中に立て籠もっている反応がいくつも見られるが、そこはレンジャー2、3の仕事。

無視して階段を探索し、漸く見つける。レーダーによると階段付近で待ち構えている反応が4つ。待ち伏せだろう。

 

「…手榴弾使ってこの建物保つかな?」

「威力が威力ですので…厳しいのでは?」

「そうだよな…仕方ない、狙え」

 

結城を始め、6人の内4人が天井…の上にいる敵兵に向けてAF20の銃口を向ける。AF20の威力ならば、この程度の壁の貫通も容易い。

誰が言うまでもなく、同時に連射。各銃口から5、6発の弾丸が吐き出され、天井を貫通して4人の兵士に命中。即死したのをレーダーの反応で確認すると、すぐさま階段を駆け上がり、上階の制圧を開始。廊下に作られた即席のバリケードは弾幕でバリケードに隠れてた兵士ごと粉砕し、部屋に籠っている者に対しては、大抵はドア越しの射撃で対応していく。少ない人数で手早く制圧するためには、兵士か職員(非戦闘員)かの見分けを行う事自体が時間をロスする上、確認の為にドアを開ければ、その瞬間に未知の魔法が飛んでくるかも知れない。

だからこそとことん先手を打ち、何もさせることも無く殺していく他に最善の方法は無い。

 

「…!隊長、レーダーに多数の反応」

 

先行していた隊員の1人が声を上げる。レーダーを見てみれば、この先の部屋の中に、十数人の人間の反応が映し出されていた。素早くマガジンを交換し、ドア横に布陣。部屋の奥に固まっている辺り、やはり此方を待ち構えているだろうが、それにしては今までと違って人数が多い為、もしかしたら此処が通信室か司令室であるかもしれないと推測。

 

(…此処で使うか)

 

結城は圧縮空間からスタングレネードを取り出し、安全ピンを引き抜く。そして隊員とアイコンタクトし、隊員が僅かにドアを開けると同時に隙間からスタングレネードを投擲。すかさずドアを閉めた直後、室内に強烈な光と爆音が響き、思わずスタングレネードを見てしまった者達は激しい光に目を奪われ、更には爆音によって激しい耳鳴りに襲われる。

その先にレンジャー1は室内に突入。素早く全員が持っていた武器を奪い、全員を無力化する。

 

「ぐ、くそっ…何者だ貴様ら!?」

「EDFだ。お前がこの基地の司令官か?」

「…ああ」

 

武器を奪われ、見たこともない銃を向けられているこの状況では抵抗出来ないと悟ったのか、素直に皇国海軍東部方面司令 ルトスは自身が司令官であると認める。

 

「なら話が速い。通信で残存するデュロ防衛部隊に降伏の指示を送れ。陸軍基地が壊滅した今、貴方が此処の最高権限者だろうからな。拒否するなら其れ相応の覚悟を持て」

 

 

 

 

 

 

その後、皇国海軍東部方面司令 ルトスの名でデュロ防衛部隊に送られた降伏指示に各部隊は大人しく従い、武装放棄して降伏した。つい先程まで暴れ回っていたファイターの姿や、現在進行形で暴れ回っていた歩兵部隊の尋常ならざる強さに士気は最底辺で、降伏指示の後に戦おうとする者は皆無だった。

デュロは陥落し、パーパルディア皇国は工業中心地を失い、新たな兵器の調達が不可能となる。それどころか万が一奪還出来たとしても、工場群がC70爆弾による破壊工作によって粉々に粉砕され、科学的工業力を完全に喪失されたのだ。

事実上のデュロ陥落の通信は、デュロ郊外まで届き、そこから複数の通信を経て皇都エストシラントまで届く事になったのだが、その時点で最早デュロ奪還に向けた派兵は不可能となっていた。

 

何故ならば皇都エストシラントを目指し、決戦要塞X7 要塞戦艦ヤマトが20ノットで哨戒部隊を蹴散らしながら侵攻中だったのだから。




用語解説&状況説明
EDF日本支部
電撃的にデュロを占領。後方を完全破壊すると共に、皇都エストシラントに向けて要塞戦艦ヤマトが侵攻中。

パーパルディア皇国
デュロ占領の通信を受けてドタバタしていたが、超巨大戦艦が皇都エストシラントに向けて侵攻中であると哨戒部隊の通報を受けて更にドタバタする事に。

C70爆弾
EDF最大の通常爆弾。爆破半径40mというとんでもない威力を誇り、複数個を同時起爆させればヘクトルさえも一撃で破壊出来る。


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第18話 戦争外交 2(改)

感想返信が滞ってしまった、纏めて返さねば。


皇都エストシラント。

皇宮であるパラディス城や軍令部、その他国家機関の本部などが存在するパーパルディア皇国の首都であり、第三文明圏の中で最も繁栄を遂げた都市でもある。しかしその繁栄は72ヶ国から吸い上げた富によって構成されており、その華やかさの裏にはドス黒い悪意が宿っているのは言うまでもない。

そんな歪んだ華やかさを持った都市の港から、パーパルディア皇国海軍第1、第2、第3艦隊の連合艦隊が慌ただしく出港していく。その総数、600隻の出港は見事な物であり、それを見たエストシラントの民達は自国の国力を誇らしく思うと共に、何故あんな数の艦隊が一気に出港していくのだろうと疑問に思う。それに気付くこともなく、連合艦隊は最大速力の13ノットで航海を開始し、エストシラントより南へと突き進んでいく。

すると、僅か30分程度で南の水平線に違和感が現れた。

 

「…あれか」

 

第3艦隊提督 アルカオンは静かに呟いた。

50分前、エストシラント南海域を哨戒していた複数のワイバーンと艦から悲鳴のような通報が入り込んだ。

 

曰く、「超巨大船がエストシラントに向けて約20ノットで航行中。魔導砲らしき兵器が無数に搭載されており、此方の臨検は完全無視。攻撃も全く効いていない。至急援軍を求む」

 

デュロ陥落(降伏)の連絡が飛び込んだ直後にこの通報内容。僅かな時間で余裕を完全粉砕されたパーパルディア皇国軍は、エストシラントに駐屯していた第1、第2、第3艦隊の総出撃及びエストシラント陸軍基地の全ワイバーンの出撃準備を指示した。

移動速度及び戦術の関係上、まずは海軍基地と竜母より出撃したワイバーンロード200騎、ワイバーンオーバーロード50騎による航空攻撃が行われようとした。しかしその直前、ワイバーン250騎の反応が突如消失を開始。通信は悲鳴と断末魔によって混線するが、それは僅か1分でワイバーン部隊全滅によって終息する。レーダーでも完全に消失した為、ワイバーン部隊は殲滅されたと認めざるを得ない。

 

つまりパーパルディア皇国海軍連合艦隊はこれより、「ワイバーン250騎を1分で殲滅した正体不明の超巨大戦艦」と交戦しなければならない。

連合艦隊の指揮官達は、はっきり言って勝ち目が見えなかった。第三文明圏最強の国力と戦力を誇るパーパルディア皇国皇軍、その中核を為す、一度飛び立てば7つの軍を滅せるとも言われ恐れられたワイバーン部隊。それも皇都エストシラントを護る最精鋭250騎が1分で叩き落されるなど、彼らの常識からすればまずあり得ないのだ。しかし水平線に見える超巨大戦艦はそれを成し得た。そこから導き出される戦力値は膨大以上であり、下手をすれば600隻もの大艦隊でも大した時間稼ぎが出来ない恐れすらある。しかし5分前より、エストシラントより皇族の緊急避難準備が進められており、それが完了するまではなんとしても時間を稼ぐ必要がある。故にパーパルディア連合艦隊は、必要になれば己を捨て駒にしてでも時間を稼がねばならない。

 

そんな悲愴な覚悟を持ち、超巨大戦艦との距離を詰め続ける連合艦隊。そうすると、超巨大戦艦のスケールも徐々に分かってきた。

 

「…あんなものが、海に浮かんでいるというのか…!?最早島そのものではないか!!」

 

横幅だけでも3、400m。艦橋に至っては600mもありそうだ。全長に至っては最早どれほどの物か、想像したくもない。その恐怖はあっという間に艦隊全体に伝わり、浮き足立つ。

 

『全艦、狼狽えるな!!』

 

そこに、連合艦隊旗艦の通信から激励が飛ぶ。

 

『確かに敵艦は極めて巨大だ!!だがあれ程の大きさでは我々が採用している対魔弾鉄鋼式装甲を採用するどころか、浮いているので精一杯な筈!!つまりはあの巨体を利用して攻撃に特化しており、防御などある筈が無い!!』

『故に!!如何なる犠牲を出してでも敵艦に接近し、魔導砲による砲撃を加えられれば勝機はある!!あれ程巨大な艦ならば、魔導砲の全弾命中は容易い。敵艦に大穴が開くことは目に見えた事だ!!』

『今がパーパルディア海軍の死力を尽くす時だ!!今、我々こそが最終防衛線だ!!総員、死力を尽くせ!!』

 

『全艦、突撃せよ!!!!』

 

連合艦隊は最大速力の16ノットで接近する。対して超巨大戦艦は連合艦隊に何をするというわけでもなく、只々連合艦隊の先…エストシラントに向けて接近している。武装が放たれる気配は全く無い。

 

「射程は我々を凌駕している訳ではないか…しかし打撃戦になるのは必至、ダメージレースか…!」

 

近付けば近付く程、敵艦の巨大さがより鮮明になる。まるで自分達が小さくなってしまったと錯覚を起こしそうで、遠近感覚が揺らぐ。そうしていくうちにも連合艦隊は二分して半包囲の陣形を組み、いつでも砲撃出来るように整えられる。

 

「まだ射程に入らないのか!?」

「後30秒程です!!」

「よし、合図を待て!!それまで決して攻撃するなよ!!」

 

敵艦から距離2kmの地点に次々と連合艦隊は突入。装填された魔導砲は敵戦艦に照準が合わさり、合図を待つ。

 

「まだですか…!?」

「まだだ、まだ待て!!」

「敵戦艦甲板に動きあり!!魔導砲と思しき砲台が動き始めました!!」

「司令っ!!」

『撃てェェェェェェェェェェェェ!!』

 

射程及び射界に入っていた279隻より、魔導砲が一斉射。千数百発にも及ぶ球状の魔導砲弾が敵巨大戦艦に飛来し、船体の側面に殆どが命中し、爆煙に船体が隠れた。

 

「次弾装填急げ!!奴に反撃する隙を与えるな、痛撃を与え続けるんだ!!」

 

慌ただしく次弾装填に動くが、その間に煙が晴れて敵艦の様子が見え始める。流石にあの巨体で一撃で撃沈する事は叶わないだろうが、それでも被弾部分に其れ相応の損害を出ている事を期待して。

 

 

「………は?」

 

 

そして、絶望した。

敵艦は何事もなかったかのように、全くの無傷でそこにいた。第3文明圏最強の連合艦隊、その半分の砲火力を以ってしても、敵艦には全く打撃を与える事が出来ていなかったのだ。

一時的ながら完全に動きを停止した連合艦隊。そして敵艦の武装が起動を終える。

 

地獄が、顕現する。

 

 

 

 

 

 

今現在砲撃を受けた、パーパルディア皇国海軍連合艦隊と対峙している巨大戦艦…否、要塞戦艦ヤマト。

彼女は戦争の早期終結及び砲艦外交に向けて皇都エストシラントに向け侵攻していた所に、エストシラントより出撃した連合艦隊と接触。わざと砲撃を受けて魔法に対する実地装甲テストを行ったのだ。千数百発もの魔導砲弾を船体側面部に受けたが、1200mmの対レーザープラズマ複合特殊装甲の前には全くの無力である事が証明された。

その礼として、38cmレールガン連装砲24基48門、12cmレールガン3連装砲300基900門の起動が完了。全門が左右のパーパルディア連合艦隊全艦に向けられ、砲撃を開始した。

38cmレールガンのみならず、12cmレールガン3連装砲の一斉射でもパーパルディア戦列艦を撃沈するには全くもって容易な事だった。一斉射で艦隊の半数が轟沈。1秒後に再び放たれた12cmレールガン3連装砲の一斉射によって残っていた残り半分のパーパルディア皇国連合艦隊は完全に殲滅された。悲鳴や断末魔の叫びを上げる暇もなく、凡そ600隻に乗っていた十万を超える命は、たったの2秒で吹き飛ばされた。

これが、要塞戦艦ヤマトの力の片鱗。

 

そう、彼女は未だそれ(・・)を認知させていない。それを知れば、彼の国は必ず墜ちる。

 

その確信を持って、ヤマトは皇都エストシラントへ真っ直ぐ、ひたすらに真っ直ぐ突き進む。

 

 

 

 

 

 

皇都エストシラントは、パニックに包まれていた。

南の水平線付近。そこで先程出撃した連合艦隊が、敵艦にあっという間に殲滅された様子を直接目撃した市民達によってパニックが伝播。家に逃げ込む者や何処か安全な場所を求める者、荷物を慌てて纏めてエストシラントから逃げようとする者などで通りは溢れ返り、防衛配置につこうとする陸軍やエストシラントから避難しようとする皇族達の動きを阻害する。

既にエストシラントにあった海軍とワイバーンは文字通り全滅している。残された対抗手段は陸軍の牽引式魔導砲のみ。しかし何も出来ないよりもマシだと、海岸線にひたすら運び込む。中には牽引式の対空魔導砲さえも引っ張り出してくる者もいる。

そうしている間にも、敵艦は…要塞戦艦ヤマトは皇都エストシラントより10km地点まで接近した。

 

「エストシラント10km地点」

「面舵90、主砲照準開始。目標地点、皇都エストシラント左右40km地点」

 

艦長の号令により、要塞戦艦ヤマトは面舵を開始。1800mという巨体からすれば反則的な速度で90度右に舵を切り、同時にヤマト前後に1基ずつ存在する、100cmもの口径と500mもの砲身長を持った主砲が旋回を開始した。秒間5度という速さで旋回し、砲身の重さによる重心バランスの変化により、船体がほんの僅かに左に傾く。

 

「照準終了しました」

「主砲、発射用意。弾種は引き続きグラインドバスター」

「了解、グラインドバスター装填!」

「全コンデンサー接続、砲身充電開始!」

「照準最終補正終了、グラインドバスター装填完了!」

「第1、第2安全装置解除!艦長、最終安全装置の解除を!」

「ああ」

 

艦長は胸ポケットから複製不可能であるID内蔵型特殊キーを取り出し、艦長席のコンソールにある鍵穴に差し込んで左に回した。

 

「最終安全装置解除を確認!主砲発射用意完了!」

「カウント5秒」

「了解!主砲発射5秒前!4、3、2、1、発射!!

 

ガチンと発射ボタンが押され、ギリギリまで引き絞られたそれは放たれる。

まずは炸薬が点火。100cmグラインドバスターの初期加速を担う凡そ1トンの火薬による爆発によって、まずはマッハ1の初期加速を獲得。直後に砲身部の電磁誘導による終末加速を開始。そこから僅か500mでマッハ21もの超加速を経て、砲身より脱出。爆炎より遥かに速く飛び出すと同時に、マッハ21のソニックブームによる轟音と衝撃波が周辺に走り、ヤマトも発射反動に襲われる。しかしその瞬間、人工重力発生装置が起動。ヤマト船体に反動とは正反対に向けて超重力が発生し、膨大な発射反動を強引に抑え込む。その二つの多大な負荷で、ヤマトの船体が一瞬悲鳴を上げた。

砲身より飛び出した2発のグラインドバスターは、40kmの距離を僅か5.5秒で飛翔。0.001秒単位のズレでエストシラントから左右40km地点に着弾し、膨大な運動エネルギーを解放。

 

 

その激突によって解放された運動エネルギーは、人類が生み出した最強火力の大量破壊兵器、核爆弾の威力に匹敵する。

 

 

刹那、着弾地点周辺3kmの地盤が崩壊。巨大な運動エネルギーによって大きく粉砕され、真上に押し上げられ、解放。あらゆる物質がクレーターより放出され、数十キロにも及ぶ範囲に衝撃波と共に土の粒、石飛礫、岩、粘土、水、木の破片…あらゆる破片が撒き散らされ始める。

当然、2つの着弾地点の中心地に存在するエストシラントにも飛来し、多大な落石被害が発生する。まずは衝撃波によって基礎が脆い建物は崩壊し、全ての窓ガラスが割れた。その後に降ってくる岩が家々に直撃して生まれたその破片が人々を襲い、直接落下した地面の破片(・・・・・)に周辺ごと押し潰され、パラディス城にもいくつかの地面の破片や岩が直撃し、貴重な人材や歴史的価値を喪失する。

 

僅か数分の出来事。それだけでエストシラントに住まう命の1割が消えた。

パニックが全く収まらず、魔導砲の射程にも入らない。反撃の手段は無く、このまま一方的な蹂躙をされるのかと思われた矢先。要塞戦艦ヤマトより発艦したファイターが2機でエストシラント上空に飛来。補助ブースターを利用してホバリングすると、急造で追加された大型スピーカーを起動した。

 

『我々はEDFだ。パーパルディア皇国及び皇軍に通達する。今から30分、猶予を与える。30分以内にパラディス城にて白旗を上げ、無条件降伏せよ。これはエストシラントのみならず皇国全軍及び皇国全領域、つまりはパーパルディア皇国の無条件降伏と同意義である事を明言する。30分以内に降伏の意志を示さなかった場合、我が方に対する攻撃ないしその準備を行った場合、皇族ないし政府関係者が逃亡した場合、直ちに我々は皇都エストシラント及びパーパルディア本国全域に対し攻撃を開始する』

『どうするべきかよく考えろ。死にたくないのならばな』

 

一通りの通達を終え、ファイターは引き続きホバリングを続行する。今から30分後まで留まり、何かしらのアクションが確認されるまで待機する為だ。

 

 

5分。

まだアクションは無い。

 

 

15分。

未だに何も行動は示さない。

 

 

20分。

降伏の白旗、逃亡、攻撃。混乱などはあれど特に動く要因になるアクションは未だ起こらない。

 

 

25分。

(…頼むから何かしらアクション起こしてくれ。魔法撃たれるんじゃないかってこっちはヒヤヒヤしてんだよ)

『相棒、パラディス城に白旗が上がったぞ』

「!」

 

機体を旋回し、パラディス城に注目。パラディス城の城壁の上に複数、大きな白旗が振られていた。

 

『終わり、だな』

「ああ。…此方ガルム1、パラディス城に白旗を複数確認。オペレーション・パルヴァライゼーション完了だ」

『了解。ガルムチームはそのままエストシラント上空で待機し、ブルートと外交隊の護衛を行って下さい』




「ふざ…けるな、巫山戯るな!!なんなんだこの条約は!!我が皇国を、そこらの文明国以下に墜とすと言うのか!?」
「ならば続けるか?我々は何方でも構わない。我々は今まで72ヶ国に対してお前達が行った事をやっているだけだからな」

受諾(屈辱)か、それとも拒否(滅亡)か。第3の選択肢は存在しない」

次回、戦争外交 3。(この予告の台詞は異なる可能性があります)


用語解説&状況説明
パーパルディア皇国
エストシラントに駐屯していた陸軍のワイバーンと海軍の第1、第2、第3艦隊が吹き飛ばされてエストシラントより左右40km地点が砲撃で吹き飛ばされ、その直後に行われた無条件降伏勧告を承諾した。

EDF日本支部
パーパルディア皇国を電撃的に無条件降伏させ、条約文書を持った外交隊がヤマトよりブルートで飛び立つ。


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第19話 戦争外交 3(改)

条約に関しては、後々修正が入るかもです。
そして短い。話の区切りの都合で仕方無し…


その空気は、ひたすらに重かった。

 

「EDF情報局員の朝田だ。今戦争に於ける終戦条約締結の為、此処に派遣された」

「…パーパルディア第1外務局長のエルトです」

 

パーパルディア皇国 パラディス城の一室。そこに急遽セッティングされた終戦会議の場は、ひたすらに空気が重い。

パーパルディア側は第1外務局長 エルト、第1外務局次長 ハンス、皇族及び外務局監査室所属のレミールを中心として5名。対するEDFは、EDF情報局員 朝田泰司を中心とした3名である。

 

「では、早速終戦条約に関して伝える。まず先に言うが、我々EDFは貴国に対して領土割譲、賠償金要求は一切行わない」

『…!?』

 

朝田の発言に、パーパルディア側の外交官達は呆気に取られた。今までの戦争に於いて、滅亡以外での終戦の際は領土割譲や賠償金支払いは当たり前の事であり、それ抜きで終戦するなどあり得ない事であったのだ。

 

「但し、あくまでもそれは我々のみだ。条約に関する詳細はこの書類に纏めてある」

 

そう言ってパサリと十数枚の書類の束を机に置き、パーパルディア側に渡す。朝田の真正面にいたエルトが受け取り、書類の閲覧を開始する。残る4名も、エルトの邪魔にならないように配慮しながら閲覧する。

 

「……これは……」

 

そして間も無く、エルトは絶句する事になる。

そこに書かれていた条約の内容を要約すると、以下の通りとなる。

 

1.

アルタラス王国に対する侮辱、要求に対する謝罪、賠償金支払い、要求撤回を直ちに行う。

2.

パーパルディア皇国属国72ヶ国の即時独立及びパーパルディア人の即時帰国。72ヶ国の再独立後は、如何なるパーパルディア人も元属領国に入国する事は認められない。

3.

パーパルディア皇国は元属領72ヶ国に対し、各国が要求する賠償金を全額支払う事。

4.

パーパルディア皇国が所有する全奴隷の即時解放及び即時返還。

5.

パーパルディア皇国が保有する全ての魔導技術や魔導書をEDFに譲渡する。

6.

パーパルディア皇国は魔力通信を除いた魔導技術、魔導書を保有する事は今後一切認められない。

7.

領土防衛に必要な最低限度を超える軍の保有を禁止する。

8.

地竜、ワイバーン、ゴブリン等の生物兵器の保有は一切認めない。

9.

今後、如何なる理由があろうとも他国への侵略行為は一切許さない。

10.

外交及び軍事的に於いて、如何なる正当な理由、方法であったとしても他国の領土を獲得する事は一切認められない。租借も認めない。

11.

パーパルディア皇国が保有する全ての関税自主権の放棄。

12.

パーパルディア皇国は元属領及び元属領人への領事裁判権を認める事。

13.

以上の条約を、EDFの監視の下336時間以内に遂行する事をパーパルディア皇国は確約する。

 

これを要約すれば、「パーパルディア皇国はEDFの属国となれ」と言っているに等しい、重い条約。

全属領及び全奴隷の解放によって旧パールネウス共和国まで領土が縮小するだけではなく、ほぼ全ての魔導技術の譲渡及び破棄、必要最低限度までの軍の縮小、ワイバーン等の生物兵器の殺処分、外交制限、自主関税権の放棄、領事裁判権を自国に付与する事を強制される。

しかもこれ程の条約を履行したとしても、パーパルディア皇国はEDFと国交を結べる事を確約されていない。つまり条約履行後、パーパルディア皇国が他国から侵略されても宣戦布告されても、EDFはパーパルディア皇国を守る気は一切無いとしか思えない。

 

(………………)

 

エルトが叩き出した推測が合っているのならば、絶対にこの条約は履行する事は出来ない。しかし───

 

その時。

 

「巫山戯るなぁ!!!!」

 

エルトが必死に思考を回していた横で、皇族のレミールが激怒して机を叩き、朝田達を睨み付ける。その姿を見てエルト達の表情が青褪めるが、皇族を止める事は一平民であるエルト達には出来なかった。

 

「なんなんだこの条約は!!我が皇国を、そこらの文明国以下に墜とすと言うのか!?お前達は、我が皇国が第3文明圏の安寧を担っている事を分かってこんな条約を」

「ならば続けるか?この戦争を」

 

レミールの怒号を、朝田の声が遮った。それは決して大きな声では無いが、レミールの動きを止めた。

 

「我々にとっては、どちらでもかまわない。我々はお前達が今まで72ヶ国に対してやった事を、そっくりそのままお前達自身に返しただけだ。自分達は好き勝手やって、いざ自分達がされる番になれば嫌だ?そんな道理が通じる訳が無いだろうが。嫌ならば戦え。戦って戦って戦い抜いて、我々を倒して見せろ。その気概を見せろ。誰が死のうが、誰が斃れようが、その死体の上に立ち、我々を殺してみろ。我々もそうする。その瞬間、お前達を滅ぼす戦士となり、お前達に敬意を払って滅ぼそう。だからお前達も、我々を滅ぼして見せろ」

 

「選べ。受諾(国家存続)か、拒否(殲滅戦)か。第3の選択肢は存在しない」

 

「…っ!!!!」

 

朝田の言葉にレミールは下唇を強く噛み、両手を強く握る事しかできなかった。

彼女も分かっているのだ。これ以上継戦しようにも、戦力差があまりにも開き過ぎているという現実に。あんな力(要塞戦艦ヤマト)をエストシラントの眼前で見せられて、戦い続けようなどと抜かす程に彼女も馬鹿ではない。勝ち目の無い戦いに、皇国の民の命を散らせる程、彼女は無謀でもない。しかし彼女達にとって、これは余りにも、余りにも大き過ぎる代償を支払う事になる。領土範囲は旧パールネウス共和国時代まで逆戻りするだけではなく、数百年掛けて完成されていった魔導技術を全てEDFに譲渡し、ワイバーン等の生物兵器も放棄するだけではなく、国土を守る為の必要最低限度の軍の保有しか認められなくなる。旧パールネウス共和国時代より酷い、事実上の属国化。しかしこれを拒否すれば、パーパルディア皇国の滅亡は避けられない。

 

その事実を、パーパルディアは、レミールは正しく認識していた。

 

「クソッ…」

 

「クソォォォォォォォォォォォォォッ…!!」

 

だからこそ、言葉にもならない怒りを、ぶつける事が出来ない。只々、爪が皮膚に食い込むほどに強く握りしめる事しか、出来なかった。

 

 

 

 

 

 

中央歴1639年11月14日。

EDF・パーパルディア戦争終戦条約「ヤマト条約」締結。

条約終結後、EDFの監視の下パーパルディア皇国は直ちに全ての属領を独立させ、全ての奴隷返還作業を開始した。同時にアルタラス王国に使者を派遣し、アルタラス王国に対して行った要求の撤回、侮辱の謝罪、カストの引き渡しが迅速に行われる。他にも軍の縮小、生物兵器の殺処分、魔導技術の譲渡等、時間がかかる案件が山の様に噴出する事となるが、皇族や皇帝ルディアスに対する戦争責任が問われなかった上、様々な制限こそあれど独立は守れた。最悪の中で最善な手を打たれただけ、まだ良かったのだと彼等は思っていた。

 

EDF日本支部は、パーパルディア皇国より独立した72ヶ国に対してすぐに第1、第2師団を派遣して独立保証を行い、EDF主導の元で72ヶ国を一つの連邦とし、「フィルアデス連邦」を建国。フィルアデス連邦はその後、パーパルディア皇国が支払う賠償金とEDF日本支部より提供される技術を元に、ハイペースな復興と発展を遂げる事となる。

 

その際、EDFからフィルアデス連邦に提供された技術は民間技術だけに留まらなかった事を、パーパルディア皇国は知らない。




という訳で、パーパルディア戦争はこれにて終結。書き直し前とは違って、パーパルディア皇国は亡国を免れる結果に。生き残れただけ良かったと思おう。(尚被害は甚大)
…まぁ、そう思っているのは彼等だけなんですけどね。

用語解説&状況説明
ヤマト条約
パーパルディア戦争の終戦条約。数々の重い条約があったが、皇帝の戦争責任や政府のすげ替えが行われない等、不自然な点もある。
(一部は勝手ながらも感想欄に書かれていた内容を参考にさせて頂きました。事後承諾の形となりましたが、参考になる感想を書いて下さりありがとうございました)

パーパルディア皇国
ヤマト条約によって全属領全奴隷を失い、魔導技術も失っただけではなく必要最低限度まで軍は縮小し、ワイバーン等の生物兵器の保有禁止、アルタラス王国や元属領(フィルアデス連邦)に対する賠償金の支払い、工業都市デュロの崩壊等、問題を多数抱える事になる。
当然列強国の立場からも転落し、ムーの国民等もパーパルディア皇国を見捨てて出ていった。

第三国
エストシラントに居た大使などが要塞戦艦ヤマトを目撃し、大慌てで本国に連絡。魔導写真を撮れた国はそれを証拠として提出した。

EDF日本支部
パーパルディア皇国にヤマト条約を締結させ、解放された元属領に第1、第2師団を派遣し、独立保証を行う。そしてフィルアデス連邦を建国させ、復興及び発展支援を開始。

フィルアデス連邦
元パーパルディア皇国の属領72ヶ国が、ヤマト条約によって独立した直後、EDF日本支部が主導となって建国した。
EDF日本支部の属国的な立場となっているが、パーパルディア皇国の扱いと比べると天と地の差である方は言うまでもない。現在EDF日本支部より技術提供等が行われている。
「必ずあの国を滅ぼしてやる」


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第20話 彼等の行動

ヤマト条約締結より、半年後。


世界は、大きく変わりつつある。

 

その始まりは、中央暦1639年8月の事だった。

第二文明圏ムー大陸の西…西の果てに突如としてある国家が現れる。

 

その名は、グラ・バルカス帝国

 

通称を第八帝国とする彼等は、周辺国の第二文明圏外国や列強国への接触を開始。しかし第二文明圏の多くの国が攻撃的であり、尚且つグラ・バルカス帝国への認識が文明圏外国ということもあって各国にさんざん軽くあしらわれ、遂には第二文明圏列強国 レイフォルの保護国であるパガンダ王国が、国交開設に出向いていた皇族を含んだ使者団を処刑する事件が起きた。この事件にグラ・バルカス帝国は遂に怒り、パガンダ王国を含んだ第二文明圏への侵略を開始。パガンダ王国を僅か4日間で滅ぼす。保護国を滅ぼされた第二文明圏列強国 レイフォルはこの行動に怒りを表し、グラ・バルカス帝国に対して軍事行動を開始した。列強最弱国とはいえ、それでも100門級戦列艦や竜母を含んだ43隻の艦隊。これだけでも並の文明圏の海軍は敵わなかっただろう。

 

しかし、グラ・バルカス帝国はそれを遥かに超える超兵器を投入したのだ。

レイフォル艦隊殲滅の為に出撃したのは、「グレード・アトラスター」単艦のみ。しかし300mを超えるその巨体に搭載された武装と能力は恐るべき戦闘能力を発揮し、レイフォル艦隊を20分足らずで殲滅。その勢いそのままに、グレード・アトラスターはレイフォル首都 レイフォリアに向かい、全力攻撃を開始。その結果レイフォリアは灰燼に帰し、レイフォル皇帝は居城にて砲撃に巻き込まれて死亡。残存した軍部はグラ・バルカスに対して無条件降伏。戦争勃発より僅か3日間でレイフォルは滅亡。グラ・バルカス帝国はレイフォルを自国領に編入し、入植を開始。

グレード・アトラスターが単艦でレイフォル艦隊43隻を撃滅し、その足でレイフォル首都レイフォリアを焼き尽くして列強国を滅ぼした事は、この世界の歴史に激震を起こし、グレード・アトラスターは世界最大最強の艦として恐れられる事となった。

 

 

それからたった2ヶ月後、今度は東の果てで同等以上の激震を走らせる事件が起こった。

中央歴1639年11月12日12時、世界のニュースにて「イーディーエフ」と名乗る国家が、突如第三文明圏列強国 パーパルディア皇国に宣戦を布告したのだ。この発表に対し当初の各国はイーディーエフを、侵略を開始する前のグラ・バルカス帝国と同じように文明圏外国と認識して、勃発した戦争はパーパルディア皇国が勝利するだろうという予想が世界共通だった。

ところが予想に反してパーパルディア皇国は僅か数日で工業都市デュロが陥落。直後に皇都エストシラントにグレート・アトラスターを遥かに超える巨体を持った超巨大戦艦が出現し、エストシラントに駐屯していた海上及び航空戦力を殲滅。そして超巨大戦艦からラヴァーナル帝国のコア魔法にも匹敵する威力の砲撃が警告として放たれ、パーパルディア皇国に無条件降伏を突きつけた。その力に屈したパーパルディア皇国は、「ヤマト条約」と呼ばれる終戦条約を締結させられ、全属領を失うだけでなく、軍の縮小や魔導技術の喪失等多大な代償を支払い、列強の座から転落する事となった。

そして独立した72ヶ国の元属領国家群は、イーディーエフの主導の元「フィルアデス連邦」を建国。技術提供等を受けて急速に発展しているという。

 

世界は震えた。

第二文明圏の列強国が併合された矢先に、今度は第三文明圏の列強国が降伏に追い込まれ、第三文明圏が事実上イーディーエフの支配下に置かれたのだ。残された第一文明圏、第二文明圏の国々はイーディーエフとグラ・バルカス帝国に対する警戒を強め、調査を開始する。

 

しかしその成果は殆ど上がらない。それは、両国が共通して閉鎖的であるという事に起因する。

グラ・バルカス帝国は、当初の接触に於ける各国の対応が原因で、完全に他国不信となっていた。自国領化もしくは隷下となった国に対して以外、積極的な交流は一切行わず、本国の位置は徹底的に秘匿している。対してイーディーエフは、既に第三文明圏の21ヶ国と国交を結んでおり、その調査はグラ・バルカス帝国と比べれば容易だった。しかし此方もイーディーエフの本国(日本列島)に入れる者は事実上皆無な状態であり、果たしてどのような国であるのかは、人聞きする以外に方法が無かった。そしてフィルアデス連邦を含めて殆どの国々がイーディーエフをよく知らず、その力の庇護下に入る為に国交を結んでいるだけだった為、結果として大した事は分からずじまいだった。

辛うじて分かったことは、フィルアデス連邦の復興速度と街並みの景色から推測される、隔絶された技術力を保有しているという事実と、皇都エストシラントにやってきた超巨大戦艦の存在のみだ。

 

確実に言えるとしたら、パーパルディア戦争より約半年が経過した現在の世界は、平和だ。

 

 

 

 

 

 

クワ・トイネ公国。

EDF日本支部がこの世界に転移した直後に、初の接触が行われた国家。天然食料に飢えていたEDF日本支部にとって、天然食料が腐る程にある国家が天然食料を(EDF日本支部から見て)超安値で輸出してくれているのはとてもありがたい事であり、EDF日本支部の対応は地下資源を輸出しているクイラ王国と同等の最恵国待遇であり、EDF日本支部が国交を結んでいる国の中で唯一、インフラ整備と駐在軍の両方が行われている。それ程にEDF日本支部にとってクワ・トイネ公国は大切な国であり、クワ・トイネ公国もEDF日本支部によって国を発展させて貰い、そしてロウリア戦争の際に国を救ってくれた恩があった。

だがその内心は、少しの恐れがあった。

ロウリア戦争の際にクワ・トイネ公国を救う為に参戦したEDF日本支部は、その力で50万のロウリア軍を殲滅するのみならず、ロウリア王国の各都市を壊滅させ、ロウリア王国を滅亡させた。その光景を目の前で見ていたクワ・トイネ公国は感謝よりも恐怖が優った。もしあの力がこの国に向けば、ロウリア王国と同じ運命を辿る事となると。

しかしそんな懸念と恐れとは真逆で、EDF日本支部は純度100%の笑顔でこれまでの対応を変わらず続けてくる(ロウリア戦争の後始末の殆どは此方に丸投げしてきたが)。それを暫く見続けていたクワ・トイネ公国は「此方がとんでもないヘマをしなければ大丈夫だ」という確信を得て、これまでと変わらぬ対応を続ける事とした。

そして現在では、EDF日本支部の援助もあって第三文明圏外国とは思えぬ繁栄を遂げ、国はとても豊かとなった。EDF日本支部の駐在軍があるとはいえ、依存し過ぎると万が一の際に大変な事になりかねない為、軍の増強もゆっくりではあるが行なっている。そしてフィルアデス連邦建国後、遂にEDF製兵器の輸出が開始。旧式の兵器かつ少数なれど、その威力は極めて強力であり、急速にクワ・トイネ公国は軍事力を増強しつつあった。

今もクワ・トイネ公国はEDF日本支部へ天然食料を送り、国を豊かにする努力を怠っていない。

 

 

 

 

 

 

アルタラス王国。

かつての第三文明圏列強国、パーパルディア皇国の隣国であり、パーパルディア戦争勃発の安全装置を外した国でもある。

パーパルディア戦争勃発前、アルタラス王国はパーパルディア皇国の半保護国的な立場に置かれていた。その国力差を背景に、パーパルディア皇国は毎年奴隷の献上を要求して来ていたが…今年は何を思ったのか、国の発展の中枢であるシルウトラス鉱山の献上と、王女ルミエスの奴隷化という余りにも理不尽な要求を突きつけてきた。しかもルミエスの奴隷化に関しては、第3外務局所属在アルタラス大使の私的な要求という、国家として余りにも度が過ぎた傲慢な物であった。

当然アルタラス王国の国民達は怒り、例え王国が滅んだとしても列強に痛烈な一撃を与える事を望み、そして国王も愛する娘を守る為にパーパルディア皇国との戦争を決意した。普通なら、戦う前から負けが確定している絶望的な戦争。しかしアルタラス王国は一つ、何よりも強烈な幸運があった。

 

それは開戦より僅か1ヶ月前に、EDF日本支部と国交開設と防衛軍事同盟を締結していた事だ。

 

アルタラス王国は即座に、防衛軍事同盟に基づいた参戦要請を行い、EDF日本支部は即座にそれを承認。その日の内に、アルタラス王国を通じて世界のニュースに向け発表する声明文を届け、アルタラス王国はそれを確かに通達した。しかしアルタラス王国にとっても、まさかEDFが、パーパルディア皇国相手に単独で、かつ先手を打つ形で宣戦布告までするのは想定外だった。とはいえアルタラス王国には、目の前の事に集中するべく、全軍を召集し守りを固める以外に選択肢が無かった。

しかしその直後、アルタラス王国の危機を知ったEDF日本支部が派遣した、最新鋭艦の要塞戦艦ヤマトが到着。アルタラス王国を見守るように首都ル・ブリアスの上空に留まり、アルタラス王国に住まう全員が、その力強い姿を目と脳裏に焼き付けた。

その2日後。パーパルディア皇国の艦隊を撃滅する為、不動であった守護神(ヤマト)は遂に動き出し、ゆっくりとル・ブリアス上空を周回し始めた。それを見ていたアルタラス人達は、パーパルディア皇国に対し鉄槌が下される日が遂に来たのだと、改めて確信。特別な感情を持って、着水してパーパルディア皇国に向けて航海していく守護神の姿を見送った。

 

更に数日が経過した頃、世界のニュースよりパーパルディア皇国の無条件降伏とその属国72ヶ国の独立が宣言された。そしてその直後、EDF日本支部より改めてパーパルディア皇国の降伏と、「パーパルディア皇国との終戦条約によって、アルタラス人の即時返還が約束された」という連絡が届いたのだ。

この大吉報に、アルタラス王国は湧いた。EDF日本支部はアルタラス王国の亡国の危機を救っただけでは無く、憎きパーパルディア皇国を完全に屈伏させた上、今まで奴隷として送られていた国民達が戻ってくるというのだ。湧かない筈がない。奴隷とされた全員が今まで過酷な環境に置かれていた為、一部の者は栄養失調や怪我等などの治療を完了するのに少しの時間を必要としたが、そんな事は些細な事。

数週間後。EDF空軍が所有する旅客機を総動員して元奴隷のアルタラス人が、全員が待ち望んでいた帰還を果たした。しかし元奴隷の全員が帰還出来た訳ではない。鉱山などの過酷な環境に耐え切れずに死んでいった者達や、パーパルディア人の拷問(娯楽)によって死んでいった者達も居た。しかし、その仇もEDF日本支部が取ってくれた。

そして奴隷返還と同時にパーパルディア皇国より送られた使者による謝罪と賠償金、元アルタラス王国大使のカストが引き渡された。その後、カストは当然のように死罪を宣告され、王城前広場にて首を刎ねられる事となる。

 

パーパルディア戦争を通じて、アルタラス王国にとってEDF日本支部は余りにも大き過ぎる恩を持つ国であり、アルタラス王国最大の友好国となる。

現在のアルタラス王国では、人々の記憶に深く焼き付いた守護神を讃える、様々な芸術品や絵画などが作られている。中にはフルーツを山盛りに盛って盛って盛り上げた「ヤマト盛り」なるフルーツ盛り合わせを開発する変わった者もいるらしい。

 

 

 

 

 

 

一方、フェン王国。

此方はアルタラス王国の様子とは変わって、やや不穏な空気を保ったままだった。

何故なら、フェン王国は第三文明圏国に於いて唯一、EDF日本支部との国交開設が出来ていないのだ。

その理由は、やはりフェン軍祭に於ける出来事だろう。その少し前から、フェン王国はパーパルディア皇国との紛争になる可能性が出てきていた。そんな時に接触してきたEDF日本支部に対して剣王シハンは、力を見極める為に自国の事情を隠し、海軍の親善訪問と、もうすぐ開催される軍祭に参加して欲しいと要請した。

その結果EDF海軍は、フェン軍祭の途中にやってきたパーパルディア皇国監察軍の攻撃に巻き込まれ、ワイバーン20騎と監察軍を殲滅して、その力を見せ付けた。しかし、フェン王国が自国の事情を話さなかったために、このような危険に晒されたEDF日本支部の心象は極めて悪化。国交開設の交渉は打ち切りとなり、再度交渉を試みようと準備している間にパーパルディア戦争が勃発。EDF日本支部はそれに掛り切りとなって国交開設の交渉に一切見向きもしなかった。

パーパルディア戦争終了後、今度はフェン王国が出向いて国交開設の交渉に挑んだが、やはりフェン軍祭の事が足を引っ張って全く交渉の目処が立たない。むしろEDF日本支部が門前払いにしないだけまだ良心的だと思えるレベルだ。こうしている間も、フェン王国は第三文明圏の中で孤立した国になりつつある。

フェン王国の受難は続いている。そしてその苦労が報われる日が、果たして来るのだろうか?

 

 

 

 

 

 

そして、EDF日本支部。

パーパルディア戦争を通じて消費した弾薬の補充、使用した兵器のメンテナンス、保護した元奴隷の治療と引き渡し、フィルアデス連邦の復興と発展協力、兵器開発部の暴走阻止(へ殴り込み)…戦争が終わっても、やる事は大量にある。戦争が終われば書類戦争。EDF日本支部は、種類を問わなければ毎日何かしらの戦争を行なっているものだ。

しかしこれも、10年前のフォーリナー大戦と比べればどれ程平和な事か。あの地獄の記憶がまだ真新しい(蘇る)彼等にとって、戦後処理の苦労など大したそれでは無い。

EDF日本支部も、パーパルディア戦争を通じて状況は大きく変わりつつあった。パーパルディア戦争前に結んでいた国交は僅かに20だったが、パーパルディア戦争にて解放した72ヶ国を一つの国家としたフィルアデス連邦と国交を結び、今現在では21ヶ国もの国と国交を結び、事実上第三文明圏をEDF日本支部の支配下に置く状況となった。

その影響力は、第三文明圏に於いては最早この世界の大国と同等。結果的にここまでの影響力を手に入れた訳であるが、ここでEDF日本支部の戦略部の一部が、ある戦略を提言した。

 

それは、「第三文明圏全体の要塞化」。

 

その提言は、余りにも性急過ぎるもの。日本列島でさえ10年かけても完全な復興、完全な要塞化を施すにはまるで足りていない。もしこの世界でフォーリナーを相手取るのならば、現状のEDF日本支部では戦力、人材、弾薬、技術力。その全てが不足しているのだ。だからこそ他国との関わりを必要最低限にしてEDF日本支部の戦力を増強させているというのに、いきなり21ヶ国に対しての要塞化を行える訳がない。技術啓蒙、武器輸出、インフラ整備等を21ヶ国に行うのは無理だ。

しかし、この提言が完全に却下される事は無く、フィルアデス連邦のみに限定して実行される事となった。やはりフォーリナーに備えるのならば、EDF日本支部単体ではあの戦力に敵わない。フォーリナー大戦は、全世界に極めて大きな爪痕を残して漸く勝利をその手に収める事が出来たのだ。この世界では、殆どの国がEDF日本支部より技術力が遥かに劣っている。故に戦略部の提言は、短期的に見るより超長期的に見るならば、間違っているどころか「一つの正解」でさえあるのだ。

そして今回建国されたフィルアデス連邦はほぼ一からのスタートであり、下地が全く無い。つまりEDFの技術啓蒙を行うには極めて都合が良かったのだ。フィルアデス連邦の人口は約2億6000万人。これだけの人間がEDF技術の啓蒙を完了すれば、EDF日本支部は貴重な友好国を手に入れて貴重な人材を多数輩出する事が可能となるだけでなく、一個の大陸で兵器や弾薬の製造、兵士の育成が可能となるのだ。余りにも魅力的なメリットの前に、EDF日本支部は第1、第2師団と交代する形で第4師団及び工作部隊をフィルアデス連邦に派遣。独立保証を掛けると共に全力の支援を開始したのだ。

まだ課題は多く、その最適解は全く見えない。しかしEDF日本支部は、出来る限りの事を成していくだけだ。備えあれば憂いなし、とは言うが、彼等のそれは幾ら備えても、仮想敵(フォーリナー)の前には未だ足りてないのだ。

 

 

 

 

 

最後に、フィルアデス連邦。

パーパルディア皇国より独立した72ヶ国が、EDF日本支部主導の元に一つの国家となり、首都をマルタ州(元マルタ王国)に置いた新興国である。長くて数十年もの間パーパルディア皇国の苛烈な搾取を受け、そこに有ったのはボロボロになった人々や掘り尽くされた鉱山、痩せた土地に荒れた畑、ボロ小屋同然の町並みのみだった。しかしEDF日本支部より送られてくる強力な技術提供や復興支援、パーパルディア皇国からの莫大な賠償金により、僅か半年でフィルアデス連邦は列強国にも劣らぬ繁栄ぶりを見せつつある。現代的な建物、科学技術を元にしたインフラ整備、安定した食料提供等、EDF日本支部の惜しみない努力により、僅か半年でこの世界の準列強国並みの国力を獲得しつつあった。

そうなれば、人間は余裕が生まれ始める。そうなれば、同然考える暇も無かった事や考えた事もなかった事を考えるようになる。

 

そしてフィルアデス連邦内に共通していたその感情は一つの、途轍もなく強力な憎悪だった。

 

フィルアデス連邦が、その行動を起こすのは必然でもあった。

力を溜め、兵士を鍛え、戦略を作る。軍属経験がある者など殆どおらず、素人ばかりの試行錯誤。それでも彼等は殆どEDF日本支部に頼る事なく、自分達だけで行なっていく。場合によっては頼り切りも良いのかもしれない。しかしこればかりは、出来る限り自分達だけでやり切る事を決意していた。EDF日本支部もその意思を汲み取り、それに対しては特に口出しする事も無く、淡々とフィルアデス連邦に物資を届け続けていた。

ギリギリまで国力を増強し、兵士を鍛え、戦略を形成し、確認、確認、確認。何十何百にも及ぶ再確認の後、遂にフィルアデス連邦は動いた。

 

 

 

 

 

 

パーパルディア皇国の国境より10km北地点。

其処に存在する平野は今、いつもとは全く違う光景と雰囲気を見せていた。

整列するフィルアデス連邦の兵士達約5万。その全員が旧式のEDF製アーマースーツに身を包み、その両手にはアサルトライフル AF14やロケットランチャー スティングレイM1等が握られている。

 

彼等の前に、1人の男が立つ。

その男の名は、クーズ州出身 フィルアデス連邦第一方面軍司令官 ハキ。彼はパーパルディア皇国が支配していた半年前まで魔石鉱山の鉱夫であったのだが、フィルアデス連邦建国後は軍属に所属。かつてのクーズ王国にて名の知れた騎士爵の家の血が流れていたのと、感情的になりやすいハキの有効なストッパーになる副官のイキアの存在もあり、才能を開花。今では、約5万の兵士を率いる司令の座にまで上がっている。

 

確かに戦う事を願ったとはいえ、流石に此処までの立場までは望んでいなかった。そう思いながらも、ハキは自分の役目を果たす為、右手に握られたマイクのスイッチを入れ、スピーカーに音を入れた。

そして、言葉を紡ぐ。

 

「諸君…遂に、この時が来た」

 

最初は静かに、しかしその感情を抑え切るのは全く出来なかった。

 

「我がフィルアデス連邦は、イーディーエフの援助とパーパルディア皇国の賠償金により、僅か半年で列強国にも劣らぬ繁栄を見せつつある。しかし、我々は未だに自立して何かを行えた訳でもない。今現在も、こうして此処に立っているのもイーディーエフの援助が無ければ不可能だった。しかし、今から我々は、誰に言われるまでもなく、我々だけで行動を起こす時がやって来たのだ」

 

「我々はかつて、72ヶ国に分かれていた。其々が己の国を想い、様々な争いを続けてきた」

 

「我々はかつて、家畜以下の存在だった。パーパルディア皇国に飲み込まれ、数十年もの間傲岸不遜なる支配と搾取を受け続けていた」

 

「しかし今は違う。我々は「人間」だ!!それ以外の何者でもなく、それ以外の畜生でも無い!!」

 

「我々は今、団結している!!72ヶ国であった時代にあった諍いなどはもはや存在せず、ただ一つの目的に我々は猛進する事が出来る!!」

 

「かつて我々を支配していた暴君は牙を抜かれ、只々緩やかな滅亡の時を歩むだけの存在となった!!しかし、ただ緩やかに滅んでゆくというだけで、奴等が我々に行なってきた事を赦せるのか!?」

 

「否、否、否ァ!!断じて赦せるか、赦せるものかぁっ!!」

 

「諸君らに問う!!奴等に相応しい末路は何だ、奴等に相応しい滅びは何だ!!」

 

刹那、5万の兵士が口を開け、スピーカーの音量を遥かに超えた総音量で応えた。

 

『殲滅だ!!徹底的な殲滅だ!!!!』

 

「そうだ、その為に今我々は此処にいる!!我々は遂に、報復の機会が与えられた!!今この瞬間だけは、人を捨てろ!!奴等の全てを喰らい尽くす獣となり、奴等の全てを蹂躙し、破壊し、殲滅しろ!!

 

兵士達も最早その感情を抑えきれず、5万の叫声が響き渡る。

その様子に満足し、ハキは後ろを…パーパルディア皇国の方向に振り返る。そして何も持っていない左手にAF14を持ち、最後に叫んだ。

 

「全軍!!進撃開始!!!!」

 

それが、最後の引き金となった。

 

 

 

 

 

 

中央歴1640年7月9日。

フィルアデス連邦はパーパルディア皇国に対し、宣戦布告および殲滅戦を宣言。

同時に、フィルアデス連邦軍25万が5方面よりパーパルディア皇国へ侵攻を開始した。




「Machine Gun ft. GUMI English」という曲があるのですが、この戦争にはピッタリかもしれませんな。

用語解説&状況説明
フィルアデス連邦
「必ずあの国を滅ぼしてやる」
EDF日本支部の支援を受け、パーパルディア皇国に対して宣戦布告及び殲滅戦を宣言。同時にフィルアデス連邦軍25万が侵攻を開始。
ちなみに25万という数は、現在アメリカ軍が配備している兵士数を超えている。(Wikipedia調べ)

EDF日本支部
フィルアデス連邦に技術、復興、軍事支援を行なっている。フィルアデス連邦の行動も知っているが、特に口を出す事は無かった。

パーパルディア皇国
ヤマト条約によってボロボロな状態になっているところにフィルアデス連邦の宣戦布告(殲滅戦)を受けた為、慌てて軍の防衛配置を開始。

クワ・トイネ公国
EDF日本支部の力に少し怯えながらも、順調に天然食料輸出中。とはいえ、クワ・トイネ公国の懸念はまず起こり得ないのだが。

アルタラス王国
パーパルディア戦争にて、EDF日本支部に亡国の危機を救ってくれたのみならず、元属国に居たアルタラス人を救出してくれたお陰で、今現在もお祭りムード。国王はフィルアデス連邦の宣戦布告を把握し、どうするか検討中。
一瞬ターラ14世を雑に病死させようかと考えたが、結局存命。ルミエスに不幸は降りかかる事は無かった。

フェン王国
アルタラス王国とは真逆に扱いが悪くなった。そしてフェン王国の苦労は多分報われない。


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第21話 烈火

流石に感想返信が追い付かなくなってきた。一応全て見ていますが、返信するかどうかは選んで行った方が良いかもしれない。


フィルアデス連邦の宣戦布告に対し、パーパルディア皇国の動きは鈍かった。

というのも、パーパルディア皇国は最早戦争前からボロボロであり、国が二分しかけている状態に陥っていたのだ。一体何故かと言うと、EDF日本支部の力を直接見た訳ではない内陸部は、要塞都市アルーニ及び聖都パールネウスを中心に現政権に対して反意を持っていたのだ。というのも、内陸部は沿岸部の皇都エストシラントや工業都市デュロとは異なり、EDF日本支部との戦力差を直接その目で見た訳では無い。しかも彼等からすれば、パーパルディア皇国とは第3文明圏最強の国家である。ゆえに「イーディーエフ」などというどこぞの文明圏外国(・・・・・)に僅か数日で無条件降伏などを行い、ヤマト条約によって旧パールネウス共和国以下にまで権威を転落させた現政権に対して怒り、ヤマト条約を破棄して再戦する事を唱えたのだ。当然その反応に対してルディアス以下上層部は内陸部の暴走を恐れて説得を開始する。しかし近年の常勝ぶりと拡張政策による他国差別など、パーパルディア人特有の極端なプライドの高さが足を引っ張り、寧ろ問題がややこしくなってしまったのだ。

 

しかし1〜2ヶ月もすれば、そんな事より遥かに大きな問題が浮き彫りとなり、再戦論やら何やらは纏めて吹き飛ぶ事となる。

 

その問題とは、「深刻な食料不足」と「第一、第二次産業の消失」、「第三次産業の大打撃」、「致命的な外貨不足」。

まず食料不足については、パーパルディア皇国は長年の拡張政策の結果、食料生産や原材料調達の要である第一及び第二次産業を属国に依存し、重工業や軽工業…つまりは軍事力や国力の要となる第三次産業を本国内に集中した、極めて歪な産業構造をを形成していた。そこにヤマト条約というバランスを木っ端微塵に吹き飛ばす代物が現れた結果、現在のパーパルディア皇国は全ての穀倉地帯を失い、食料備蓄はどう頑張っても1年未満しか保たないという事が判明したのだ。第一、第二次産業についても、属領の独立と共にそっくりそのまま無くなったという訳だ。

そして第三次産業の大打撃というのは…パーパルディア戦争時にEDF日本支部が、極短時間の間占領下に置いた工業都市デュロに於いて、工場群に対して破壊工作を行い、工業都市としての機能を完全に粉砕した。これによってパーパルディア皇国は第三次産業のおよそ80%を喪失し、槍や剣の量産さえも困難となってしまったのだ。

こうなると直ちに他国の力を借りなければならないのだが…ここでも致命的な問題がある。まず文明圏外国は論外であり、最寄りの文明国もフィルアデス連邦を挟んだ場所。最も近くにいるフィルアデス連邦は元属領であり、感情的に考えても国交などまず結んでくれる訳もない。EDFに関しては、いきなり戦争を仕掛けてヤマト条約を結ばせると、何もなかったかのように国交を結ぶ暇もなく去って行ってしまった。こうなると最後の希望となるのは列強国のムーとミリシアル帝国なのだが…パーパルディア皇国の没落っぷりを見て見捨てる事を決断し、パーパルディア皇国に住んでいた国民を半ば強制的に帰国させて以来、それっきりパーパルディア皇国に何のアクションも取ることは無くなった。

 

まぁ結局の所、現在のパーパルディア皇国は穀倉地帯や漁業がほぼ全滅し、軽重工業も8割が失われ、外交面では味方が皆無で外貨はほぼ無く、軍は最低限度まで縮小されて再侵略はヤマト条約によって不可能。

このままでは国が二分するとかそういう前に、パーパルディア皇国が滅亡してしまう事が不可避なのである。

 

その為、国内の再戦論とかは一切を棚上げすると同時に、全力を挙げて食料の確保に邁進する事となる。

しかし、小麦や野菜は今から植えても時間がかかり過ぎる上、痩せた土地では貧相な物しか育たない。漁業も魔法技術を用いた造船技術や魔法技術を使用した船を失った為、人力を用いた船か風の力を利用した帆船で漁業を行わなければならなくなった為、効率が悪くなって採取できる魚類も激減。更に保存方法も失われてしまい、新鮮な魚は沿岸部の地域しか提供できなくなってしまった。結論から言うと、食料自給率は全く追いついておらず、近いうちに7000万人の民が飢えてしまうのは目に見えていた。

最早手段を選ぶ暇など無いと悟り、プライドや誇りもかなぐり捨て、フィルアデス連邦から食料支援を受けようと会談を提案したのだが。

 

「我がフィルアデス連邦は、パーパルディア皇国に対して宣戦布告及び殲滅戦を宣言する」

 

その会談で、パーパルディア皇国はフィルアデス連邦より宣戦布告(殲滅戦)を受けたのだ。

殆どの者は愕然とした。いくらフィルアデス連邦がパーパルディア皇国に悪感情を持っていたとしても、戦争を行えるまでの国力を身に付けるのは十数年後だと推測されていたからだ。まさか半年で宣戦布告を受けるなど想定外であり、国内の状況も最悪。しかし殲滅戦を宣言された以上、何としてでもフィルアデス連邦の侵攻を阻止しなければならない。皇国軍の全力配備が行われる事となる。

 

 

 

 

 

 

実を言うと、パーパルディア皇国の推測は完全に間違っていると言うわけでもなかった。

EDF日本支部支援によって半年だけでも大規模に発展する事は出来たものの、フィルアデス連邦はまだ機動兵器を大量に保有していると言うわけでも無い。25万の戦力の殆どが歩兵隊であり、機甲戦力は武装装甲車両 グレイプが精々な所。それでもフィルアデス連邦が戦争を起こしたのは、EDF日本支部より供給された旧式の火器類だった。

 

AF14、バッファローG1、スティングレイM1、ゴリアスD1、グレネードランチャーUM1、火炎放射器、第1世代アーマースーツ。

 

それら全てはEDFの第1世代歩兵兵器であり、今となっては市民さえにも配給されない最旧式兵器でもある。しかし、その分純粋な人類技術の割合が極めて多い為、生産コストがひたすらに安い。つまりは生産ラインを再稼働させて大量生産し、友好国に供給するにはうってつけだった。

故に25万もの兵士に行き渡る程の数を僅か半年で供給しきるには十分であり、EDF日本支部にとっては余剰分も含めた在庫処分にするにもうってつけだった。

そんな感覚で供給された兵器群だったが、異世界側のフィルアデス連邦からしたらその威力は最早革命的と言っても良い。AF14でさえ、その威力は歩兵が持っていい威力ではなく、スティングレイM1やゴリアスD1に至っては最早携帯出来る魔導砲とも言っていい。そして第1世代アーマースーツは、それらの兵器に対して数発耐える事が出来る防御力を保有している。

結論から言えば、フィルアデス連邦からすれば兵士1人1人が地竜に匹敵する戦力を保有する事となる。つまり25万の兵士は、25万の地竜となり得るのだ。この事実に気付いたフィルアデス連邦は、一つの結論(戦略)を出した。

 

大量の歩兵隊を組織し、大軍で以ってパーパルディア皇国を押し潰す。

 

単純だが、それ故に機甲戦力(複雑でメンテナンスが必要)は必要無く、歩兵隊を支える兵站さえあれば、パーパルディア皇国を滅ぼす事が可能と判断したのだ。故に半年間で兎に角兵士を増やし、25万もの軍団を組織したのだ。正直練度だけ見ると、素人ばかりで張り子の虎同然なのだが、そこはEDF製の兵器によって補うゴリ押しっぷり。しかしフィルアデス連邦には、パーパルディア皇国を今ここで叩かねばならないと言う強い想い、というより強迫概念に近い物があった。

長年パーパルディア皇国に支配されて来たが故に、パーパルディア人に対する強い不信感を持ったフィルアデス連邦は、「いつか必ず、ヤマト条約を破って再び侵略してくる」と思い込んでいた。何の確証も無い考えだったが、しかしそう強く思い込んでしまう程、彼等にとってパーパルディア皇国の恐怖支配はトラウマとして刻み込まれている。

それ故に、無理をしてでもわずか半年で軍備を整え、パーパルディア皇国が立ち直る前に滅ぼす。彼等はそう決断したのだ。

 

 

 

 

 

そうして勃発した、フィルアデス連邦・パーパルディア皇国間の殲滅戦争。

フィルアデス連邦軍は北東、北、北西から3方面軍(15万)、西から2方面軍(10万)の大軍で以って侵攻を開始。国境沿いに設置された城塞都市…つまりはパーパルディア皇国の絶対防衛線に接触した。

パーパルディア皇国軍は、城塞都市(絶対防衛線)から1人たりとも出る事なく立て籠もり、防衛戦の構えを見せた。半年前と比べたら全く兵士が足りず、強力な兵器も無ければ、士気も低い。こんな状態では防衛するので精一杯であり、とても攻勢に出られる状況ではなかった。それでも軍部を含めパーパルディア皇国の上層部は、この攻勢に耐える事さえ出来れば、流石に向こうも一旦諦めるだろうと見切りを付けていた。

実際、それは正解である。25万という大軍は、フィルアデス連邦が投射できるギリギリの数であり、これ以上は自国防衛に致命的な影響が出るラインなのだ(つまり現在のフィルアデス連邦は自国防衛に多大な影響が出ている)。故にパーパルディア皇国は、この大攻勢を耐え切る事が出来れば、白紙和平をもぎ取れる可能性はある。

 

…25万の地竜並みの戦力による、大攻勢を耐える事が出来るのならば、だが。

 

 

 

 

 

城塞都市アルーニ。

エストシラント北方500kmに位置する都市。

パーパルディア皇国がパールネウス共和国と呼ばれていた国境付近に位置…つまりは現在のパーパルディア皇国の国境付近に存在している為、絶対防衛線として扱われており、国内三大陸軍基地の1つが配置され、2万の兵士によって防衛されている。

 

そこに向け、フィルアデス連邦第1方面軍はアーマースーツの筋力増強機能を存分に利用した長々距離走で侵攻を行なっていた。その姿を城塞から目撃したパーパルディア皇国軍は、すぐさま全城門を封鎖し、城塞上に多数の兵士を配置した。兵士達は弓矢やマスケット銃を装備し、射程内に入り次第撃ち下ろしてフィルアデス連邦軍に損害を加える手筈だった。が、マスケット銃も弓矢も、射程距離はどれだけ長く見積もっても100m程度であり、撃ち下ろしの恩恵を得ても150mまで届くとは言い難い。

対してフィルアデス連邦軍が最も多く装備している武器であるAF14の最低射程距離は150mであり、既にこの時点でマスケット銃や弓矢の射程距離を凌駕している。しかもこの射程距離は、あくまでも対フォーリナー戦闘に於ける射程距離だ。つまりは最低でも装甲車並みの硬度の甲殻を持つ巨大生物に有効な打撃を与える事の出来る距離であり、対人の射程距離はもっと長い。対人はまず考慮していなかった為、対人射程距離の測定は行われた事はないが…少なくとも4、500mは下らないのは確実と言っても良いだろう。これだけでもパーパルディア皇国軍をボコボコに出来る性能を持っているというのに、ロケットランチャーのスティングレイM1とゴリアスD1に関しては、3000mもの射程距離を有している。しかもその命中精度も、台風並みの強風が吹かない限りはスナイパー並みの精度を誇るという、EDF製兵器の中でも最も量産された超兵器と言っても良い程の化け物じみた性能を保有している。

 

つまり、どういう事になるのかと言うと。

 

 

「第1師団、ロケットランチャー構えぇい!!」

 

第1方面軍司令官 ハキの指示により最先頭の先遣隊数百人が走りながら、スティングレイM1及びゴリアスD1の砲口をアルーニの城塞に照準する。

 

「撃て!!」

 

瞬間、数百発のロケット弾が放たれ、超高速でアルーニの城塞に衝突。信管が正常に作動し、5〜12m程度の数百発の爆発が、アルーニの城塞を襲った。その爆発は城塞を損壊させるのに十分だが、破壊となるとまだ足りない。

ならば更なる火力をぶつけると言わんばかりに、単発装填のゴリアスD1を除いた、スティングレイM1からの第2射。 先程と比べると6割程に減ったロケット弾の弾幕が再び城塞に直撃。すると一部分が崩壊し、僅かな隙間が見え始めた。

 

「もう一度一斉射だ!!あの一点に集中砲火を行い、アルーニ市内への道を開ける!!」

 

ロケットランチャーは、単発装填のゴリアス系統も含めて基本的にマガジン式を採用しており、上部に装填されてあるマガジンを交換するだけで完了するという、装填の簡易さもある。故に練度の低いフィルアデス連邦軍でも、凡そ5秒程度で装填を完了させ、再び構える。

 

「突き崩せ!!」

 

三度、アルーニの城塞にロケット弾の弾幕が着弾。崩壊しかけていたその一部分に数百発のロケット弾が命中し、遂にそのプレッシャーに耐え切れず崩壊を開始。城塞上にいた一部の兵士を巻き込みつつ、大量の瓦礫を生産しつつアルーニの城塞に大穴を開ける。それはフィルアデス連邦軍がアルーニ市内に侵入するには十分なスペースが生まれ、アルーニ城塞の防御力が完全に失われた。

 

「第1〜第3師団はあの瓦礫の山を越えてアルーニ城塞内に突入!!第4、第5師団はアルーニを包囲!!パーパルディア人を確実に、そして1人残らず殺せ!!」

『オォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』

 

5万の鬨の声が、空気を揺らす。全速力で駆け抜け続けながら、AF14も加えて城塞上にいるパーパルディア皇国軍に向けて制圧射撃を開始。激しい弾幕に晒されながらも、パーパルディア皇国軍もフィルアデス連邦軍に対してマスケット銃や弓矢による攻撃を始めた。

膨大な火力差の前には攻撃どころでないのだが、それでも命を顧みず反撃を行う勇敢な者達の奮戦により、僅かにフィルアデス連邦軍の兵士に命中する。

しかし、巨大生物の咀嚼に2、3回程度なら耐え得る防御力を持つ第1世代アーマースーツの前では、マスケット銃の弾丸や弓矢程度の攻撃力は無意味同然。それなりの衝撃に僅かに身体を逸らしつつも、直ぐにそのお返しをお見舞いする。

 

そして遂に、フィルアデス連邦軍はアルーニ城塞を超え、市内へと突入する。

それと同時に、ハキは今までで一番の声量で声を挙げる。

 

「目標ォ!!前方(・・)!!」

「殲滅開始!!!!」

 

刹那、フィルアデス連邦第1方面軍総火力の6割が、アルーニ市内に投射される。AF14やバッファローG1の弾幕、スティングレイM1やゴリアスD1による砲撃、グレネードランチャーUM1の迫撃が無差別に撃ち込まれて行く。無論味方に誤射しないよう全員が配慮しているが、逆に言うとそれ以外は一切の配慮をしていない。アーマースーツに標準装備された超小型レーダーに映る味方以外の反応はとことん攻撃を加える。その反応が皇国軍でなく、唯の一般人であっても、関係ない。目に映るパーパルディア人に対して容赦無く攻撃を行うのは決定事項であり、兵士達も一瞬の躊躇もなく弾をバラ撒く。

弾幕を全身に浴びて絶命する者もいれば、爆発に巻き込まれて絶命する者もいる。崩壊した建物に巻き込まれたり瓦礫が直撃して絶命する者もいる。それは戦闘員、非戦闘員の区別無く。

 

「撃って撃って撃ちまくれ!! 奴等を殺せ!! 奴等が我々にやってきた事を百倍にして返してやれ!!」

『此方第43中隊、中心街に多数の反応アリ!!これより掃討する、付近の部隊も手伝ってくれ!!』

『第43中隊、上手いこと西方面に誘導出来るか!?出来るなら待ち伏せて包囲する!!』

『了解、やってみる!!』

『南門付近で多数の敵部隊と交戦中!!奴等南門から逃げる気だ!!』

『無理はするなよ!万が一包囲網がこじ開けられても直ぐ外の連中が塞いでくれる!!』

 

次々と入る通信に、やや混線を起こしつつも確実にアルーニを滅ぼしていくフィルアデス連邦軍。

 

その最中、ある兵士が複数の反応が一箇所で固まっているのをレーダーで把握する。場所はどうやら一軒家、家族でコッソリと隠れているつもりなんだろう。直ぐに彼はその一軒家に向かい、木製のドアをブチ破る。どうやら即席のバリケードを積んでたらしいが、アーマースーツの筋力増強機能を存分に利用した前蹴りの威力に一撃で粉砕された。

 

「ヒィッ…!!」

 

果たして、そこに居たのは若い夫婦と子供が2人。極めて普通の家族が其処に居た。バリケードごとドアをブチ破った彼に怯えているのは言うまでもない。

視線が、合った。

 

「や、やめて下さい…助けて…!!」

「わ…私は、私はどうなっても良い!だからせめて、せめて妻と子供達には手を出さないでくれ!!」

「………」

 

夫婦の必死な命乞いに対し彼は一切表情を変える事も無く、手に持っていた火炎放射器のシリンダーを家族に向け、引き金を引いた。当然、火炎放射器は本来の機能を正常に作動させ、火炎放射を開始。巨大生物をも焼き殺す程の威力を持った火炎を全身に浴びた家族は断末魔の叫びをあげて身体を振り回すが、彼は更に火炎放射を続ける。

そして火炎放射器のタンクが空になった時、其処にあったのはさきほどまで人間だった灰の山と、壮絶な火力を浴びて燃え続ける一軒家。

 

「…そうやって命乞いした相手を、お前らは何万人殺してきた? 今さら虫が良すぎるんだよ、クソが」

「安心しろ、直ぐにお前らの親戚も地獄に送ってやる。お前らパーパルディア人は、全員地獄行きだ。お前らが祀り上げてる皇族共も全員、俺達が味わってきた地獄をその何倍も何十倍も味合わせてやる。絶対に、誰一人も逃さねぇ」

 

独り言とも言える彼の言葉は、フィルアデス連邦の総意そのものであったと言って良いだろう。

 

 

 

 

 

 

中央歴1640年7月9日17時頃、城塞都市アルーニ、陥落。

更に僅かな時間差を置いて、各地の城塞都市も次々と陥落。パーパルディア皇国の絶対防衛線は宣戦布告より僅かに数時間で崩壊し、残存戦力はエストシラントに向けて集結しつつあった。その間にも、25万のフィルアデス連邦軍は薄く広く散開。その際に逃げ切れなかった市民達や軍の部隊と接触したが、やはり区別なく殲滅。どんなに小さな町でも、どんなに小さな村でも丁寧に、より丁寧に、更に丁寧に滅ぼし、包囲網を縮小させていく。

 

その包囲網の終着点は、皇都エストシラント。




用語解説&状況説明
フィルアデス連邦
各地の城塞都市を陥とし、皇都エストシラントに向けて包囲網を縮小中。文字通りの殲滅戦を行なっており、戦闘員、非戦闘員の区別なく殲滅している。

パーパルディア皇国
絶対防衛線があっという間に崩壊し、残存戦力を皇都エストシラントに集結中。皇族の退避準備も行なっていたが、付近に友好国が存在しないので全く進んでない。

AF14、スティングレイM1、etc…
フィルアデス連邦に供給された武器達。其々がシリーズ初期の武器であり、EDF日本支部が現在採用している武器群と比べると圧倒的に性能は劣る。とはいえ第二次フォーリナー大戦に備えて幾度の改修が行われており、非常用装備としての立ち位置を確立している。

武装装甲車両 グレイプ
フィルアデス連邦に供給された唯一の機甲戦力。現在のフィルアデス連邦ではこれを運用するのが限界。それでもその機動力は大変重宝しており、現在はパーパルディア皇国に侵攻している5つの方面軍に対し、ピストン輸送で兵站を届ける高速輸送車として活躍中。


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閑話 蠢く者達

閑話だけどシリアス。


フィルアデス連邦の宣戦布告と殲滅戦を知るのは、何も当事者達だけという訳が無い。

フィルアデス連邦の復興及び軍事支援を行なっているEDF日本支部は当然知っている事だし、見捨てたとはいえスパイ等の諜報手段をパーパルディア皇国(元友好国)に残していった国もあった。

 

その筆頭と言えるのは、神聖ミリシアル帝国、ムー、リーム王国の3国だろう。

 

神聖ミリシアル帝国とムーは、其々が第1文明圏(中央世界)と第2文明圏の列強国であり、国力も1、2を争う超大国である。それ故に列強国同士としてパーパルディア皇国と国交を結び、大使館や国民の駐在も行われていたのだが、先日のEDFとの戦争による急激な没落とEDFの武力の前に、震撼した。両国は共にこの世界の魔導技術と科学技術の頂点に君臨していた為、写真技術やそれに相当する魔写技術を保有しており、僅か数日間でパーパルディア皇国に現れ、刻み込まれた戦闘の傷跡の撮影に成功し、それは直ちに本国に届けられた。

工業地帯が丸ごと廃墟になったデュロ、グレード・アトラスターがまるで小舟になるようなサイズの超巨大戦艦、その戦艦の主砲が咆哮する瞬間、そして砲撃によって一帯が吹き飛ばされてクレーターとなった写真。其れ等のインパクトは尋常ではなく、特に超巨大戦艦の主砲の威力は、神話の時代、全世界を支配していたと言われるラヴァーナル帝国が保有していたと言われる「コア魔法」と言われる古代魔法に匹敵するとの分析結果が出た。しかも現地の調査員によれば、着弾地点には一切の魔力反応は検出される事が無かった。つまり、少なくとも超巨大戦艦の主砲には魔導技術は一切使用されず、純粋な科学技術であれ程の威力を発生させたという事実が突き付けられた。

この事実の前に、ムーは騒然とした。ムーが現在保有している最新鋭戦艦 ラ・カサミ級でさえも主砲口径は30.5cmだというのに、超巨大戦艦の推測主砲口径は80cm以上。グラ・バルカス帝国のグレード・アトラスターでさえも38cm以上だと推測されているのに、この超巨大戦艦はその2倍。射程距離も考えると、最早勝負以前の問題だった。

神聖ミリシアル帝国も似たようなもので、特にこの国は「魔導技術は科学技術よりも圧倒的に優れている」と信じられていた為に、その衝撃はムーを超えていた。しかも主砲の威力がラヴァーナル帝国のコア魔法並みと分かった瞬間、上層部は「ラヴァーナル帝国が再臨したのではないのか」と半ばパニック状態へと陥った。そのパニックも、追加報告によって収まることとなったが、直ぐに頭を抱えることとなる。

まず、件の超巨大戦艦を保有する国家と敵対するのならば、必ず超巨大戦艦が現れるだろう。殆どの能力が未知数だが、それでも主砲の威力は知れ渡っている。其々が保有する大艦隊を密集してぶつけようとすれば纏めて吹き飛ぶ事は目に見えている上、そもそも撃沈出来る程の戦力を抽出した所で、一体何隻が生き残れるのか…

 

結局のところ、EDFとは無闇に敵対するべきではないという結論となるが、EDFの本国の入国は固く閉ざされている。それ故にまずは事実上の属領となっているフィルアデス連邦と国交を結び、其処に建てられているEDF日本支部の連絡館の門を叩き、国交締結の交渉を持ち掛ける事となった。

 

 

そしてリーム王国は…神聖ミリシアル帝国やムーとは違って列強国ではないがそれに近い、いわゆる準列強国の軍事力と軍事技術を保有していた。これはパーパルディア皇国が隣国であり、かの国の拡張政策に飲み込まれないように軍需産業に力を入れていたのが大きい。しかしそれ故にパーパルディア皇国の影響を多大に受けており、パーパルディア皇国と同じく領土拡張政策を国是としていた。

その為、パーパルディア皇国が大敗北し、全属領が独立して国力が大幅なダメージを受けた事は、リーム王国が動き出すには十分な理由となった。しかしリーム王国は直ぐに動かず、冷静に分析した。まずパーパルディア皇国の元属領はフィルアデス連邦として建国され、パーパルディア皇国を電撃的に敗北させたEDFの強力な支援と独立保証が掛けられており、フィルアデス連邦に宣戦布告は自殺行為。かといって弱り切ったパーパルディア皇国に攻め込もうにも、間にはフィルアデス連邦があって地続きの侵攻は不可能。海からの侵攻を行おうにも、海軍の力は弱く、大軍を輸送する力も無かった。

その為、海軍を増強しつつチャンスを伺っていたのだが…突如としてフィルアデス連邦がパーパルディア皇国に宣戦布告を行った事が現地のスパイより判明し、フィルアデス連邦に味方する形で火事場泥棒をしようと陸軍の動員を行ったのだが…此処でフィルアデス連邦は、彼等にとっては驚きの行動を取った。

リーム王国とフィルアデス連邦の国境地帯にフィルアデス連邦軍の大軍が配置され、あらゆる銃口がリーム王国軍に向けられていたのだ。

リーム王国軍は驚き、王都に連絡。まさかの事態に慌てた上層部はフィルアデス連邦に外交官を派遣したが…最早門前払い。「直ちに軍を引かせろ。さもなければ我が国に向けた、宣戦布告無き侵略行為と判断する」と通達されただけだった。

 

そう、リーム王国はフィルアデス連邦に何の連絡もする事なく軍の動員をしていたのだ。

 

フィルアデス連邦軍が国境地帯で待ち伏せられたのも、万が一に備えてフィルアデス連邦の隣国の監視を行っていたライカが通報し、EDF日本支部より情報が通達されたからだ。

フィルアデス連邦はリーム王国の動きを「自国への侵略行為」だと思い込み、しかし反撃しようにも殆どの戦力をパーパルディア皇国に投射した後であった為、警告して撤退してくれる事を期待し、すぐの攻撃は却下されたという経緯を持つ。

そんな事情も知らないリーム王国は、現在の状況で強行突破すればEDFが出てきてしまうと判断し、侵攻計画を中止。リーム王国軍が撤退する事によってこの一件は解決する事となる。

 

しかし。この戦争を見守っているのは、なにもこの3ヶ国だけという訳でもない。

 

 

 

 

 

 

パーパルディア皇国 城塞都市アルーニ郊外。

フィルアデス連邦軍によって火の海になりつつあるその街を、丘の上からビデオカメラで撮影している男がいた。そのビデオカメラからコードが伸び、男が持つ通信機に接続されている。

 

「おーおー…ひでぇもんだ。ちゃんと見えてっか?」

『はっきりと見えています。…全データ、受信完了しました』

「で、どうなんだ?そっちの分析結果は」

『…技術力、国力共に此方を上回っていると推測されています。特にあの巨大戦艦は驚異という他にありません。一切の放射能も検出されなかった以上、核技術も不使用で核弾頭に匹敵する運動エネルギーを投射しているとしか考えられませんでしたし』

「…運動エネルギーだけであんな威力が出るのか?」

『我が国でも、理論上で非核大量破壊兵器の研究はされていますが…これ程の物は想定外です』

「…」

『しかも半年で30万以上の兵士に対して兵器が十分に行き渡る程の工業力。たとえ旧式兵器であったとしても、途轍もなく脅威です。質と数を両立されられれば、我々は押し潰されるのが目に見えています。幾らあの人でも、一度に相手取れる数には限度もありますし…』

「そうならない為に、俺たちがこうしてるんだろ。それとも、何だ?お前はそうなるのが望みか?」

『まさか。選択肢が無いならまだしも、あるのなら最前を尽くすだけです。3年前のあの戦争をもう一度やるか、この世界(・・・・)で起きている戦争をやるかと言われれば、私は後者を選びますよ』

「全くもって同感だ。人類全員で地獄に引きずり降ろされるよりゃマシだ」

 

ビデオカメラの画面から目を離し、肉眼で火の海となったアルーニを見る。

 

「だから、まぁ、そうだな。彼奴ら(パーパルディア人)には全く同情心が湧かねぇな」

 

 

 

 

 

 

日本列島 関東地方某所。

 

「…周辺に動体反応無し。行ける」

「よし、直ぐに乗り込め。遅れるなよ」

「そっちこそ」




用語解説&状況説明
神聖ミリシアル帝国&ムー
フィルアデス連邦の宣戦布告前、EDFとの国交を結ぶ為にフィルアデス連邦と国交を結び、フィルアデス連邦内にあるEDF日本支部の連絡館にて国交締結交渉を行う。

リーム王国
パーパルディア皇国に対して火事場泥棒をしようとした所、事前連絡を怠った上にEDFからの事前連絡が行われたせいでフィルアデス連邦が過剰反応。このままじゃEDFが介入してくると判断し、止むを得ず中止する事に。


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閑話 蠢く者達 2

予想以上に長くなってしまった上に予告詐欺になってしまった…


フィルアデス連邦とパーパルディア皇国が戦争を行なっている最中。

EDF日本支部は何をしているのかというと、フィルアデス連邦に対する後方支援(物資提供、復興支援)と、日本列島の要塞化及び新型兵器の開発。つまりは殆ど普段通りの事を勤しんでいた。というよりも、それがEDFとしてやるべき事でもある。

現在こそ「国家」の形を取っているが、本来は「地球防衛軍(Earth Defense Forces)」であり、そもそも国家との外交などは素人同然。それも当然の事であり、そもそも転移前の地球には、フォーリナー大戦によって国家という物は存在しなくなっていたのだ。故にEDFは外交などというものを必要とせず、ただ地球防衛に勤しむ事が出来た。

しかし異世界転移などという想定外の事態により、EDF日本支部は即席で国家としての体を取らざるを得なくなり、現在に至る。順調そうに見えて、その実は極めて危険と言わざるを得ない。繰り返すようだが、フォーリナー大戦によって国家という概念は失われた事により外交というスキルは不要となり、政治家という職業そのものが無くなった。その為EDFは外交面において「言葉の遊び」というのを察する事が非常に厳しい。それ故に下手に外交を広げず、ゆっくりと日本列島及び勢力内国家の増強を行なっている。

勢力圏外の国家に対しては、入念な準備が整うまでは一切触れず、向こう側から接してきた際には極めて単純な方針を取っていた。

 

我々(EDF)の方から裏切る行為は絶対にするな。しかし相手が裏切ったなら容赦するな」

 

その方針は全くブレる事なく機能しており、侵略国家故に絶対的な敵対国家となったパーパルディア皇国は、EDF日本支部の強力な軍事支援を受けた元属領のフィルアデス連邦によって殲滅戦を受け、そのパーパルディア皇国との戦争にEDFを巻き込もうとしたフェン王国は、EDF側の信用を失い、今現在も国交締結は行われていない。今現在も隣国となったフィルアデス連邦の連絡館に現れては国交交渉を持ち掛けている。が、実際の所その交渉は無視してるようなものだ。EDFの信用を失っている以上、深刻な事態が起きない限りは国交を結ばず、余計な情報流出及び兵器流出のリスクを減らす。

7000万を切り捨てて2億6000万人の団結を得るか、70万を生かして3600万人の命(日本列島)が危険に晒される可能性を僅かにでも上げるのか。EDF日本支部は冷徹にその天秤を見極め、選んだ。例えその判断が如何に冷酷だと言われようが、彼等は「必要悪」と切り捨てる。そもそもとして、現在のEDF日本支部の力で全人類を守るのは全くもって不可能(・・・・・・・・)だと言わざるを得ない。転移前の地球でさえ、フォーリナー大戦後の人類内戦に於いても、全人類を護る為に1億4700万人もの人命を切り捨てた。そして世界復興に於いても、EDFは極一部の復興不可能地域*1を切り捨てた。

 

とどのつまりは…EDFとはいえど護れる命には限界があるという事だ。

 

そして彼等は、善悪の区別無く救いを齎す天人という訳でもない。彼等もまた、れっきとした「人間」だ。

 

故に彼等も、彼等なりの天秤を持ち、彼等なりの善悪の基準を以って救うべき者を、切り捨てるべき者を選ぶ。

 

そうして切り捨てても、フォーリナーの前には絶対的に戦力が不足する。幾ら力を蓄えようが、幾ら兵士を揃えようが、フォーリナーはそれを上回る物量と質の波で以って押し潰しに来る。勿論、それに対して何も対策を取らない訳もなく、今現在もEDF日本支部は新型兵器の開発には一切の余念を残さない。

 

そして今。天災達(兵器開発部)の手によって生まれた兵器が、空を飛んでいた。

 

 

 

 

 

 

日本列島 関東地方上空1000m。

積雲の下を、2機の戦闘機と多数の無人機が飛行していた。戦闘機の外見は、コックピット部分まで装甲化されている事以外、現在EDFが主力戦闘機として採用しているファイターと殆ど変わらないだが、その中身は全くの別物だ。

 

 

その機体のプロトコードネーム(試作名)は、「ノスフェラート」。

 

ルーマニア語では「吸血鬼」という意味を持つ言葉。その言葉の通り、ある種ではそのような姿で一()当千の活躍を行えるという事を期待して付けられたと言ってもいい。

ノスフェラートは言わばファイターに究極の改修とチューニングを施した機体であり、その操縦難度とコストパフォーマンスから、エースパイロット専用機となる事を前提として開発された。

まず性能面で見ると、機体全体の大幅な改修と最新テクノロジーの導入によって機動力は大幅に増加し、ファイターとのドックファイトでは圧倒的な機動力を見せつけ、ファイター20機を圧倒する程の実力を見せつけた。最新の対飛行ドローンシミュレーションでも望外の活躍を見せつけ、後述の性能も相まって単機で5000機の飛行ドローンを殲滅した。

武装は殆ど変わらないが、30mmレーザー砲2門は信頼性の都合から20mmガトリング砲に換装された。

此処までは普通の戦闘機の改修と変わらないが、此処からがこの機体が「ノスフェラート」と呼ばれる所以となった、最大の特徴であり、強さでもある。

それは、無人機管制機能。

ノスフェラートには統合コンピューターシステムが搭載され、小型無人戦闘機「マーレボルジェ」の管制が可能となった。マーレボルジェは元々、即戦力の航空戦力として開発された為に、その性能はEDFの戦闘機と同等…いや、小型機かつ必要最低限の武装(20mmガトリング砲1門、ミサイルポッド2基)しか積まれていない為、機動力はノスフェラートをも上回る。しかし無人機である以上、人間のような複雑な機動や攻撃を行うには些か限界がある。大型機や基地からの遠隔管制を行うのも考えられたのだが、それではフォーリナーが繰り出すジャミングに対抗出来るかが不透明だった。そう、マーレボルジェはせっかく作ったのは良いが、いざシミュレーションなどを行ってみたら運用するには大きな問題が出てきてしまったのだ。

故に、天災達は考えて考えて考え抜いて、「戦闘機にマーレボルジェを管制させ、「一機飛行団」を作り上げる」という発想を閃いた。戦闘機を母機として、マーレボルジェが子機となって母機の盾と矛となる。これならばフォーリナーのジャミングにも影響無く、最大限の戦闘能力を発揮すると考えられたのだ。勿論戦闘機である以上、管制は最低限で、しかし最大限の戦闘能力を発揮する事を求められる。故に天災達は早期開発を諦め、マーレボルジェのAIの進化に力を注いだ。

苦節4年の時を経て進化を遂げたマーレボルジェ。そしてそれに合わせて統合コンピューターシステムやノスフェラートのコックピットインターフェース技術も進化し、円滑な管制と機体操作を同時並行でスムーズに行う為に、コネクション・フォー・フライト・インターフェース・システム…通称「コフィンシステム」が導入された。これはパイロットの手に装着された電極等を通じ、間接的に機体の制御系とパイロットの神経網を接続。機体外部のカメラ等から情報を摂取し、スティックやペダル等による旧来の操縦方法に頼らない、搭乗者の思考による航空機の直感的な機体制御を可能とした。更に統合コンピューターシステムに連携することにより、マーレボルジェの迅速かつ精密な管制を可能とする。このシステムの導入により、コックピットはキャノピーではなく装甲によって覆う事が可能となり、パイロットの生存性向上に繋がった。

以上の無人機管制機能とコフィンシステムの搭載により、完成当初のノスフェラートとは比較にもならない戦闘能力を獲得。その代償としてコストパフォーマンスも段違いに増加する事となり、名実共に「エースパイロット専用機」として誕生する事になったのだ。

 

 

ノスフェラート2機を中心に、48機のマーレボルジェが編隊を組んで飛行する。

単機で最大24機の管制を可能とする為、このような光景が生まれているのだが…計50機の戦闘機が一個の飛行群として飛行している光景など、EDFとはいえども中々見れる事ではない。

 

『あの天災達、よくもこんな兵器を作れるもんだな。戦闘機でこんな芸当が出来るなんて誰が想像できるってんだ』

『それは同感だが私語は慎め、ガルーダ2。まだ試験運用の途中だ』

『此方ガルーダ1、予定地域に到着。これより戦闘試験の準備を行う。ガルーダ2、合わせろ』

『はいよ』

『ガルーダ隊。一応言っておくが、火器の使用は厳禁だ。万が一が無いよう、シミュレーションモードの確認を行え』

『…ガルーダ1、システムオールグリーン』

『ガルーダ2、システムオールグリーン』

『よし、ガルーダ1。配置に』

 

ガルーダ1の機体と管制下にあるマーレボルジェ24機が加速。仮想戦争訓練に於いて、約20km地点から模擬空戦を行う流れだ。そのまま超音速飛行に入り、距離を取り始める。その矢先だった。

 

『…ん、何だ今のは?』

 

ガルーダ隊を誘導していた空中管制機(AWACS)、コードネーム ゴーストアイが妙な声を挙げた。

 

『どうした、ゴーストアイ?』

『ほんの一瞬、レーダーが何かを捉えた。念の為観測データを精査する。ガルーダ隊は待機してくれ』

『了解』

 

ガルーダ1はスロットルを緩め、乱れた編隊を再構成。そのまま現空域に留まる事、数分。

 

『此方ゴーストアイ。観測データの精査の結果、やはり100分の1秒間だけレーダーが何かを捉えている。反応はガルーダ隊から見て東側約230kmを推定800km/hで飛行中。ガルーダ隊は直ちに不明物体の捕捉に向かえ』

『ガルーダ1よりゴーストアイ。不明物体がこの世界の原住生物…つまりは知能が高い生物だった場合、対応はどうする?』

『…相手が凶暴な生物でもない限り、下手な刺激を行なって怒らせる必要は無い。遠くから見守る以外に最善はないだろうな』

『了解。これより不明物体の捕捉に向かう。シミュレーションモード解除、全部装チェック…完了。行くぞ、ガルーダ2』

『フォーメーションは?』

『デルタ16、ロッテ1』

 

その瞬間、マーレボルジェが編隊を再構成。ガルーダ隊のロッテ編隊を中心として、3機編隊のデルタフォーメーション(三角形編隊)を16個構成する。この間、僅かに30秒。

 

『再編成完了』

『アフターバーナー、彼我の距離を一気に詰める』

 

コフィンシステムを通じて思考出力された操作情報はがフライ・バイ・オプト(操縦補助システム)を介してノスフェラートに入力。刹那としない間にスロットルは全開となって大出力が解放され、約60秒の時間をかけて最高速度のマッハ4に到達する。無論、マーレボルジェも母機に合わせてマッハ4で追従する。

 

周辺に50のソニックブームという爆音と衝撃波を走らせながら、彼等は一直線に西へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

マッハ4の速力で目標海域に到達するのは、僅か5分。

 

『ゴーストアイ、反応はあるか?』

『…いや、今の所再捕捉は出来ていない。それと悪い知らせだ。どうやらこの空域周辺は磁気嵐*2が発生しているらしい。最悪目視の方が役にたつかもな』

『マジかよ…』

 

コフィンシステムによって全方位に視界を得ることが出来ているとはいえ、所詮は目視。万全状態のレーダーよりも頼りないのは言うまでもない。しかしレーダーが役に立たなくなってしまうのならば、目視に頼る他に無くなってしまう。

 

『…いや、方法はある。マーレボルジェを周辺に展開し、レーダーを同期させるんだ。そうすれば磁気嵐の影響下でも、ある程度はマトモにレーダーが使えるかも知れない』

『確かに、それならやってみるのも良いかもな』

 

マーレボルジェが周辺へと散開を開始。瞬く間に周辺300kmに即席のレーダー網が形成され、同期。その強度は空中管制機にも劣らぬ程のそれだ。

 

『ゴーストアイ、レーダー同期を』

『少し待て………準備完了、これよりレーダー同期を開始する』

 

更に本職(空中管制機)の同期も合わさってレーダー強度はさらに増し、遂にそれを捉える。

 

『見えた。ガルーダ隊を起点として方位010、距離60kmを800km/hで飛行中。高度3000m地点だ。直ちに急行してくれ』

『了解、これより急行する。警告はどうする?』

『原住生物である可能性もある。目視で確認後に行う』

 

スロットルを上げ、スーパークルーズ(超音速巡航)に移行。散開していたマーレボルジェと合流しつつ高度3100mに移動し、十数分の飛行の後、遂にそれを目視する。

 

『………此方ガルーダ2、目標を目視。積雲に上手く隠れながら顔を出してやがる』

『こっちも見えた…航空機だな。カナード翼機の大型双発機が2機だ』

『そのまま監視を継続してくれ。これより全周波数で警告を促す、ロックオンはまだするな』

 

『此方はEDF空軍空中管制機ゴーストアイ。日本列島上空を飛行中の所属不明機に警告する。お前達は現在EDFの領空を侵犯している。直ちにこの通信に応答するか、速度を600km/hまで減速し、此方の誘導に従え。繰り返す──』

 

 

 

 

 

 

『…いつの間にバレていたのか。仕方ないとはいえ、レーダーが使えないのも考えものだな』

『そんな事を言っている場合じゃないだろ。…どうする?』

『此処で戦うっていう選択肢もあるが…無意味に敵対感情を植え付ける訳にも行かない。切れるカードは全くないが交渉して、その後に振り切るしかないだろ』

『全く、今日は厄日だな…』

『我々の活動の成果で世界の命運が変わるんだ、そんな文句は心の底に閉まっておけ』

*1フォーリナー大戦により、それまで人類が建造していた石油プラントや原子力発電所など、事故が起きれば周辺地域に甚大な被害を及ぼす施設が多数破壊された。その結果、海は石油や産業廃棄物で汚染され、陸は放射能汚染や大気汚染が深刻な問題となった。大戦後、フォーリナーテクノロジーの恩恵もあって、殆どの地域は除染に成功しつつあった。しかしその頃になると、各汚染発生源地域は余りにも汚染が深刻化しており、完全な除染は不可能となった。その結果、EDFは世界各地の汚染発生地点周辺を「復興不可能地域」に指定し、無用な人間の立ち入りを禁止した。日本列島における復興不可能地域は、主に原子力発電所が存在していた地域であり、その箇所は11箇所にも及ぶ。

*2この世界では不定期的に原因不明の磁気嵐が発生し、規模によっては通信やレーダーに障害を引き起こす場合がある。魔導技術ならば影響は出ないのだが、科学技術を使用するEDFにとっては無視できない問題であり、対ジャミング対策の更新も急がれている。




用語解説
ノスフェラート(元ネタ:エースコンバット CFA-44)
試作開発されたエースパイロット専用次世代機。最新鋭テクノロジーによる改修によって機動力が大幅に向上したことに加え、コフィンシステムと統合コンピューターシステム導入により、無人戦闘機 マーレボルジェを最大24機を管制することが可能となった。これにより、「一機飛行団」を形成する事が可能となり、大幅な空軍戦力の増加が期待されている。

マーレボルジェ(元ネタ:エースコンバット マーレボルジェ)
4年前に開発された無人戦闘機。武装は20mmガトリング砲1門、ミサイルポッド2基と貧弱だが、機動力はEDF空軍随一。更に高性能AIの搭載により、管制支援を受けるだけで強力な戦闘能力を発揮する事が出来る。しかしシミュレーションにて運用上の問題が発生し、4年間の改修と進化を経て、ノスフェラートの子機として実地試験運用に至る。


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第22話 次なる備えへ

ハーメルンの日本国召喚二次創作としては、初のお気に入り登録者数2000件突破をしました。
今回は、21話の二番煎じだったりするのでカット祭り。すまぬ…


はっきり言って、この戦争は勝ち負けが確定したワンサイドゲームそのものと言っていいだろう。

EDFの強力な復興支援とバックアップの元、強力な歩兵装備に身を包んだフィルアデス連邦軍と、殆どの魔導技術を失った中世レベルのパーパルディア皇国軍。

彼我の戦力差をとてもわかりやすく言うのならば、「RPGのラスボスが軍を率いてレベル1の勇者を蹂躙しに来た」と言ったところか。

当然勝負にならない、なる訳がない。パーパルディア皇国の絶対防衛線は1日足らずで崩壊。EDFの最旧式兵器であったとしても、パーパルディア軍を蹴散らすには十二分、負ける要素は皆無。絶対防衛線を打ち破ったフィルアデス連邦軍は、その勢いそのままに包囲網を縮める

 

…という事はなく、彼等は冷静に一度立ち止まった。

その理由は、大きく分けて2つ。一つは「消耗した弾薬補給」、一つは「死体処理」。フィルアデス連邦軍が絶対防衛線を崩壊させるのと同時に、各地に数千万単位のパーパルディア人の死体の山が生まれた。それを適切に処理しなければ、死体は腐って疫病などを周辺に撒き散らす事になる。正直な話、パーパルディア人の死体処理などしたくもなかったというのが彼らの本音ではあるが、それを怠れば、帰り道は疫病で汚染された土地を通らなければならなくなる為、不本意ながらも確実に行わなければならなかった。彼らにとって幸運だったのは、手持ちの火器の中に死体処理を容易にする物(火炎放射器)があった事だろう。死体に向けて火炎放射を行えば、その火力によって死体を灰にする事が出来た。

フィルアデス連邦軍が死体の処理におよそ2日を掛けている間、パーパルディア皇国は何をしていたかというと、「何も出来なかった」。

正確に言えば、戦火を少しでも逃れようとする人々の波をどうにかしようとしていた。魔力通信や幸運にも戦火から逃げ延びた僅かながらの人々、そして皇国軍の動きがフィルアデス連邦軍侵攻の事実を近隣の都市や村へと伝え、人々を恐慌に陥れた。それによって皇都エストシラントへ逃げ延びようとする人の波が形成され、千数百万単位の難民が皇都エストシラントに押し寄せる事となる。当然そんな大波を受け入れられるキャパシティなど存在する訳が無く、エストシラント郊外に(難民の数に対して)小規模な粗末なキャンプを建てるのが限界だった。エストシラント内部では、皇族をどうにか生き延びさせる為に様々な案が出されたのだが、その全てが現実的なものでは無かった。亡命はパーパルディア皇国に友好的な国が無くなっている為不可能で、フィルアデス連邦軍を撃退する事は戦力差から考えると全く手段が思いつかない。何処か安全な場所に逃げ延びるなど、少なくともパーパルディア皇国…いや、フィルアデス大陸にそんな場所は存在せず、そして別大陸であったとしても、没落国の皇族を匿うほど懐の深い国も存在していない。

 

詰み、以外の何物でも無い。

 

中央歴1640年7月11日。フィルアデス連邦軍は死体処理を終え、再び侵攻を開始。包囲網を縮めつつ、そしてどんな小さな村や町も容赦無く炎の海で包み込み、全てを灰燼へと変えて行く。そこには一片の慈悲も無い。そしてその包囲網の終着点であるエストシラントでは、無制限徴兵が開始。志願した者達に対して武装や超即席訓練が施された他、非戦闘員である市民に対しても粗末な武装が配られ、皇族を除いてエストシラント近辺の誰もが何かしらの武器は一つは所持している状態となった。…しかし、それでフィルアデス連邦軍を撃退できる訳もない。

 

中央歴1640年7月27日。25万のフィルアデス連邦軍は皇都エストシラントを包囲、少しの打ち合わせの後に総攻撃を開始。パーパルディア皇国軍はそれに対して、ヤマト条約締結時に地下に隠して殺処分を免れていたワイバーンオーバーロード20騎を投入。条約違反がバレるだろうが、国家存亡の危機を前にそんなことも言っていられる訳がない。25万の大軍を殲滅する事は不可能だろうが、士気を崩壊させて撤退させる事は出来る。寧ろ、ここまで追い詰められたパーパルディア皇国が助かる道はそれしか無かった。

 

しかし残念ながら。フィルアデス連邦軍の持つ武装は、そういった相手(・・・・・・・)に対して非常におあつらえ向き(・・・・・・・)な物ばかりだ。

 

430km/hでフィルアデス連邦軍に突撃していくワイバーンオーバーロード20騎に対し、フィルアデス連邦軍は対空砲火を展開。一つ一つは所詮人の手ではあるが、25万人から撃ち放たれる「対フォーリナー兵器」の超濃密な弾幕は、ワイバーンオーバーロードの強靭な鱗を竜騎士ごと瞬間的に貫通して穴だらけにし、血を吹き出させながら地に叩き落とすには充分であった。

僅か10秒足らずでワイバーンオーバーロードは全騎撃墜され、残るは数千万人のパーパルディア人とエストシラント。他の都市から逃げ延びてきた人達を溢れさせながらも収容していた難民キャンプを吹き飛ばすと、エストシラント内部に突入。殲滅を開始するが、今回の戦いは少々訳が違った。

 

一つは、死力を尽くしてフィルアデス連邦軍へと突撃してくるパーパルディア皇国の市民達。

一つは、25万対1000万人超という物量差。

この二つの要因により、エストシラント市街地に突入したフィルアデス連邦軍は、自軍を遥かに超える人の波に翻弄される。例え質が超越していたとしても、これほどの物量差を火力で覆すのは容易ではない。更に場所は狭い市街地、人数も火力も限られる中、凄まじい人津波の前に、フィルアデス連邦軍は一時後退せざるを得なかった。幾ら火力優勢があっても、数に対する火力と弾薬が不足してはどうにもならない。さてどうするか、各方面軍の指揮官は雁首を揃えて知恵を絞り始めた。策を練らずとも勝利は出来るだろうが、その際の被害は決して無視できるものではなくなる可能性がある。スティングレイやゴリアスで全部吹き飛ばしても良いのだが、皇族は出来るだけ多く生け捕りにしたい(生き地獄を味わわせたい)

しかし切れる手札は限りなく少ない。さてどうするかと悩んでいたら、ピストン補給にやってきた数台の武装装甲車両 グレイプが視界に入り、1人がふと思いついた。

 

「グレイプを突っ込ませて縦横無尽に暴れまくれば、纏まりが無くなって各個撃破できるんじゃないか?」

 

グレイプは所詮武装装甲車両であり、ギガンテスのような役回りは出来ない。が、逆に言えば装甲車両であるが故に非常に高い走行性能と、(EDF基準では)それなりの装甲、そして武装として速射砲1門を搭載している。つまり、戦おうと思えば十分に戦える。そして今回の相手は、防御力など皆無の人間達。グレイプだけでも強力な機甲戦力になると判断したのだ。

 

ピストン輸送にやってきたグレイプの内、10台を第二次エストシラント攻勢に転用する事を決定。翌日、再びフィルアデス連邦軍はエストシラントに突入した。

最前線に立ったパーパルディア人はさぞかし驚いた事だろう。昨日までと違い、真っ先に突っ込んで来たのは「およそ100km/hの速度で突っ込んでくる、15tもの質量を持った鉄の化物(グレイプ)」だったのだから。咄嗟にパーパルディア軍はグレイプに攻撃するものの、対フォーリナーを前提にした装甲の前には無力。それどころか車体上部に搭載されてある60mm速射砲の連続砲撃と15tのラムアタックによって、パーパルディア軍は次々と文字通り轢き潰される。血を浴びながら突っ込んでくる10台のグレイプによって、ひたすらに数だけは多いパーパルディア軍の大半…つまりは市民達の士気は完全崩壊。バラバラになった所をフィルアデス連邦軍が各個撃破していくという見事な連携の下、防衛線を次々と突破。

築き上げられる死体の山々を乗り越え、遂にフィルアデス連邦軍はパラディス城内部へ突入。そこでも近衛兵との交戦に入るが、やはりフィルアデス連邦軍に敵わない。何人かは火炎魔法などが命中するものの、アーマースーツの防御力によってⅠ度火傷(肌の表面程度)で済んだ。

 

そして、フィルアデス連邦軍は皇帝ルディアスを含んだ皇族34名を生け捕ることに成功。同時にエストシラントの完全制圧と、パーパルディア国民の殲滅も完了。

中央歴1640年7月28日、パーパルディア皇国は完全に滅亡した。

 

 

 

 

 

 

数日後、EDF日本支部第一会議室。

其処にはいつも通りのメンバーが揃い、緊急の会議を行なっていた。

 

「…以上がフィルアデス連邦、パーパルディア皇国間で勃発した戦争経緯となります」

「ふむ…予想より時間は掛かりましたが、死者を1人も出さなかった点を考えると十分に許容範囲ですね。ともかく…」

「オペレーション・パルヴァライゼーションはほぼほぼ理想の形で成就した、という事になるな。最新兵器の製造は引き続き日本列島のみで製造するが、旧式兵器ならば問題なくフィルアデス連邦で生産して戦力を整えられる。2億6000万人の人口と生産力、そして戦力を大した苦も無く手に入れた事は、今の我々にとっては非常に利益ある事だ」

「その通りです、司令長官。転移事変後、我々は幸運にも隣国となったクワ・トイネ公国とクイラ王国により、食料及び資源状況は寧ろ転移前より大幅に改善されました(・・・・・・・・・・・・・・・)。その一方で、戦力は転移前の1割もありません。…地球規模で戦力を整えていた中、日本列島だけが転移してしまったので当然なんですが。とはいえ、それを理由に戦力増強を怠るなど論外です」

「現在兵器開発部では、フィルアデス連邦に向けた新兵器の開発を進めています。陸軍装備はまだしも、海軍艦は旧世代のイージス艦では歯が立ちません。なのでアイオワ級フリゲート艦のコンセプトを更にスケールダウンした、仮称 デストロイヤー級フリゲート艦の研究を進めています。順調に進めば1ヶ月後には建造、試験後に実艦と設計図をフィルアデス連邦軍に譲渡する予定です」

「分かった、頼んだぞ。…さて、それでは問題に移ろうか」

 

パサリと、資料を捲る。

 

「先日発覚した不明機の日本列島侵入事件、件の不明機は逃したらしいな」

「…はい。最新鋭機ノスフェラートを試験飛行中だったガルーダ隊によって不明機2機を発見、警告を無視した為に撃墜を図りましたが…不明機はEMP(電磁パルス)によってマーレボルジェを無力化した後、クローク…いわゆる透明化によって視覚的に不明機をロスト。レーダーも機体そのもののステルス性能によって捕捉することは叶わず、振り切られてしまいました。本件の問題は、我々が日本列島に張り巡らされているレーダー網をいとも容易く突破し、日本列島東海地域にまで侵入されてしまっていた点、推定される技術力は我々と同等以上と思われる点、そして何よりも、この技術力が果たして「科学技術」であるのか、それとも「魔導技術」であるのか、それが分からないという点です」

『…』

「自立衛星ライカの衛星偵察による現時点での調査段階では、では、不明機を開発できる程の技術力を持つ国家の存在は第三文明圏、及び第一文明圏の中では確認されていません(・・・・・・・・・)にも関わらず、この不明機が出現したという事は、我々が確認出来ていない文明、もしくは国家が超遠距離からこの不明機を発進させたか、もしくは文明圏内の国家が、何かしらの理由で技術力を隠蔽しているという可能性も否定する事は出来ません。どちらにしろ、レーダー網の改良などは急務と考えます。他にも不明機の侵入経路を調査してますが…期待は出来ません」

「そう、か…他に報告はあるか?」

「では、私から」

 

海軍元帥が声を上げ、また一つ資料を捲る。

 

「先程情報局長が言及しておりましたが、現在のEDFの戦力は転移前の1割もありません。数そのものはフィルアデス連邦軍を育成する事になってある程度のカバーは可能でしょうが、質そのものは日本列島以外ではどうしようもないでしょう。そこで、EDF海軍は質を限りなく高める為、以下の艦隊計画を立案させて頂きます」

 

大石が資料を捲ると、其処には大きな文字でこう書かれていた。

 

 

「決戦要塞艦隊計画 (X艦隊計画)」

 

 

「この計画は、決戦要塞X5及びX7を呉の超巨大ドックで1隻ずつ建造。第7艦隊を4隻の決戦要塞X5と決戦要塞X7、セントエルモ級イージス戦艦12隻、アイオワ級フリゲート艦24隻、計40隻からなる超大規模艦隊へと拡張し、場合によっては4つの分艦隊へと分離させる事により、臨機応変にかつ確固たる日本列島及び第三文明圏の領海確保を目的とした計画です」

「…この計画の理想形での完了は、何年後になる?」

「決戦要塞2隻を建造するだけでもおよそ6年、第3文明圏全域に十分な兵站とドックを整えるまでは…どれだけ順調でも10年はかかると思われます。何せ中世から現代に一気に飛躍させる事を前提にするのです。理想を追求して悪影響を一切無視しても、これだけの年月はかかるでしょう」

「………………………」

 

トン、と机を軽く叩き、決断。

 

「ひとまず、X7の新規建造を進めてくれ。対宙砲がヤマト1隻というのは些か不安だ、せめてもう1隻は欲しいと思っていたから丁度いい。X計画については段階的に、様子を見ながら進めていこう」

「了解しました」




用語解説&状況説明
パーパルディア皇国
フィルアデス連邦によって完全に滅亡。皇族はフィルアデス連邦軍に生け捕りにされたが、その後の行方はEDF日本支部は把握していない。(把握する必要も無い)

EDF日本支部
オペレーション・パルヴァライゼーションを完遂し、現在はフィルアデス連邦に向けた新艦艇の開発やレーダー網の改良、海軍増強などに力を入れている。

決戦要塞艦隊計画 (X艦隊計画)
EDF日本支部海軍が発案。現在EDF日本支部は要塞空母デスピナ(X5)と要塞戦艦ヤマト(X7)を各1隻ずつ保有しているが、これを更に1隻ずつ新たに建造、第7艦隊に編入させて通常艦隊も増強させる事により、決戦要塞艦4隻、通常艦隊36隻もの超大規模艦隊を設立。日本列島を含み、第三文明圏の領海を確実に確保する事を目標とした計画。
現在は決戦要塞X7-2(仮称)の建造準備が進められている。それ以外の計画内容は検討中。

不明機
閑話 蠢く者達 2で登場したカナード翼大型双発機。EMPやクローク能力など、EDFでも未だに研究、理論段階の技術が使われている。



第4章 オペレーション・パルヴァライゼーション、完!
最後はなんかゴリ押しな感じになっちゃいましたが、何回か書き直してる内に「重要な所だけ書けば良いや」みたいな考えになってしまったのでね…更新出来ないよりはマシです、うん。
第5章はー…どうしようかなぁ。試しにアンケート取ってみよう。


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第5章 運命の歯車 第23話 出逢い

アンケートにより、第5章は本編を一直線に突き進むこととなりました。その為、今後の数話は旧5章を手入れして再投稿、もしくは並び替えをしていく事になります。(旧22〜24話は並び替え)
それと、第22話の一部の台詞を修正しました。

※並べ替えにより、実質上第25話までストーリーが更新されました。


ある日。

転移前に於ける日本列島の経済的排他水域に相当する周辺370kmの一部を哨戒していた、EDF空軍第37飛行小隊が何かをレーダーに捕捉した。

即座に司令部に報告した第37飛行小隊のファイターは、目視の為にレーダーの反応に向けて接近する。

 

そこに居たのは。40ノットで航海している戦艦大和に良く似た印象を持つ、しかし大和よりも巨大な船体を持つ戦艦だった。

 

この世界に転移してからは見たことも無い近代的な戦艦の出現に、第4艦隊の分艦隊が緊急出航が決定。第37飛行小隊が不明艦を監視している間、アイオワ級フリゲート艦4隻が60ノットの全速で不明艦への接触に向かう。

数日後に第4艦隊分艦隊は、不明艦への接触に成功。不明艦には敵意は無く、程なく臨検を受け入れた。その臨検の際、「シエリア」と名乗る外交官の女性が現れ、自らの所属と航海目的を述べた。

 

 

曰く、「私達はグラ・バルカス帝国の使者団であり、我々の目的は貴国との国交を開設。そして友好関係を築き、願わくば貴国との同盟を結ぶ事を望んでいる」との事だ。

 

 

今までの国ならば、EDF日本支部はそれまで通りに丁重に断っていたのだろうが、不明艦…否、グレード・アトラスターの姿を見たEDF日本支部は、まずは国交開設の交渉を開く事を決定。その際に於いて、使者団を通じてグラ・バルカス帝国の本質を見極める事とした。

その決定が成された後、グレード・アトラスターは第4艦隊分艦隊の案内の元、東京湾へとその足を向かわせる。

 

 

 

 

 

 

その日の東京湾の様子は、いつもと違う雰囲気だった。

東京湾に入っていくアイオワ級フリゲート艦4隻。これはまだ良い。平時ならばそれなりの頻度で横須賀海軍基地に停泊、もしくは出港する海軍艦が行き来しているからだ。

 

問題は、アイオワ級フリゲート艦4隻の中心、四方を囲まれる形で戦艦大和によく似た軍艦が居るという事だ。

その全長は333m。巨大な船体の中心からやや後方に、城と思わせるような艦橋が聳え立っており、艦橋を守る様に多数の3連装高角砲が集中配備されている。そして戦艦の象徴の一つである主砲は、46cm3連装砲。それが前部に2基、後部に1基搭載されている。その姿は威風堂々としており、この世界の国々はその姿を恐れている。

 

彼の戦艦の名は、グレード・アトラスター。

西の果てに存在する国家 グラ・バルカス帝国が誇る超兵器であり、最新技術を結集して造られたグラ・バルカス最強の戦艦である。その戦闘能力は、グラ・バルカス海軍数個艦隊にさえ匹敵する。突如として現れたこの戦艦が、第二文明圏列強国 レイフォルを、単艦で僅か3日間で滅ぼした事は、世界各国の記憶に新しい。

その艦橋に、艦長のラクスタルと外交官のシエリアが居た。

 

「…どう思います、ラクスタル艦長」

 

シエリアの問いに、ラクスタルはアイオワ級フリゲート艦に視線を向ける。

 

「…仲間になるならば頼もしく、敵になるならば「脅威」ですね。四方を囲んでいる戦艦の主砲は、口径こそ30cm程度ですが、3連装のレールガン。破壊力重視である我が艦の46cm3連装レーザー砲とは違って、レールガンは貫通力に特化しています。艦隊の砲撃戦になるならば、我が海軍が採用している対レーザー装甲では、我が艦以外の艦は貫通される可能性が高いです。恐らく、苦戦は免れませんね」

「…」

 

ラクスタルの言葉に、シエリアは何かを考える様な仕草を見せて深い思考の海に入る。

 

「技術力は我々と同等以上…そして敵には一切の容赦をしない決断力…しかし味方であるならば、その待遇は厚い。単純だが、それ故に明確。そして、あの報告書…やはり、EDFとは何としても国交を開かなければならないな…」

 

 

 

 

 

 

約1時間後、アイオワ級フリゲート艦4隻(第4艦隊分艦隊)によって横須賀海軍基地まで案内されたグレード・アトラスターは横須賀軍港に停泊していた。

シエリアを含んだ使節団は国交開設の交渉の為にグレード・アトラスターを降りてEDF日本支部の本部へと向かっている。グレードアトラスターの乗組員であるラクスタル達は、言うならば留守番だ。今回のグレード・アトラスターの役目は使者団を無事に送り届け、そして国交開設交渉を終えた使者団を乗せて無事に帰る事。グレード・アトラスターを出す事でEDF日本支部の反応を探る事も目的の一つとしてあったのだが、それは最初から破綻していたと言う事を、横須賀軍港に入った時に悟った。

 

「…まさか、グレード・アトラスターをはるかに超える巨体を持った空母が居るとはな…」

 

甲板に出たラクスタルの視線の先には、同じく横須賀軍港に停泊しているEDF海軍最大の戦闘艦である要塞空母デスピナが居た。更に全長1400mもの空母だけではなく、横須賀軍港にはグレード・アトラスターと同等規模の船体を持つ戦艦が十何隻も居る。これでは、たかが全長333mのグレード・アトラスターの威圧感など機能する訳が無い。

 

(戦艦も脅威だが…あの空母の武装は戦艦以上、というよりも最早異常だ。此処から見えるだけでも、グレード・アトラスター並みの砲口径の連装型レールガンが4基に…対空砲が数百基。近接防空力を考えると、ミサイルはまず通じないな。それに此処から見えないだけで、まだ何かしらの武装を持っててもおかしくない…これで空母の「武装だけ」の能力など、信じられんな。艦載機もあの巨体なら何十機も搭載出来る、もしかしなくとも一個飛行団があの空母から発進しても、なんら不思議ではない。空母というより、最早移動要塞だな)

(しかし、まるで冗談みたいな国力だ。先に露見した超巨大戦艦のみならず、それと同等の規模を持った巨大空母に加え、この艦(グレード・アトラスター)に匹敵する艦をこれほどに量産するとは…)

 

(…このような兵器を造らなければならない敵、か)

 

 

 

 

 

 

「…いよいよですね」

「そうだな…」

 

グレード・アトラスターから降り、日本列島の地に立った数少ない外国人となったグラ・バルカス使節団の一行は、数時間を掛けた車の旅を終え、大阪にあるEDF日本支部の本部へと辿り着いた。そして案内された本部の内部にある応接室で、シエスタ達は応接官がやって来るのを待っていた。

横須賀から大阪までの車の移動の際、使者団は出来うる限りの情報をその目で掻き集めていた。

 

妙に真新しく感じるビル群。

街全体に漂う、僅かな緊張感が漂う空気。

所々に存在する、不自然なクレーター。

 

そこらの国家と比べると、余りにも異質な雰囲気を持つ国。

しかしその技術力は、横須賀軍港で目撃した超巨大空母(要塞空母デスピナ)と戦艦群、そして独自の情報網から判明した超巨大戦艦(要塞戦艦ヤマト)から推測するに、グラ・バルカス帝国と同等以上。そしてその国力も推して知るべし。万が一国交開設に失敗して敵対関係になれば、非常に危険な事態になるのは目に見えている。

 

(絶対に成功させなければならない…)

 

その時。応接室の扉が開き、EDF日本支部司令と情報局長と部下1名が入室する。グラ・バルカスの使節団の3人は一度席から立ち上がり、一礼をした。

 

「グラ・バルカス帝国外務省のシエリアです。突然の訪問にも関わらず、このような場を設けて下さりありがとうございます」

「…ええ、よろしくお願いします」

 

挨拶もそこそこに全員が席に着席し、遂に国交開設の交渉が始まる。

 

「まずは、我々の訪問目的をお話ししましょう。単刀直入に言えば、我々グラ・バルカス帝国は貴国との国交を開設し、貴国との友好関係を築きたいのです」

「…その為に2万km以上の距離を単独で航海し、第一文明圏と第二文明圏を跨り、我々と接触したと?はっきり言って、我々は貴女方の訪問の理由が他にあるのでは無いのかと疑っている。そして最近、我々の本土に国籍不明機が侵入する事件が起きた。それは貴方達の軍が引き起こした事ではないのか?」

 

司令の鋭い視線が、シエリアを貫く。しかしその貫禄に怯むことなく、シエリアは話を進める。

 

「いえ、我々は貴国に対して領空侵犯を行ったという事実は一切ありません。我が国には2万kmもの距離を往復可能な機体は存在せず、そして貴国近辺に海軍艦を派遣した事もありません。何よりも無断で貴方方の領空に侵入するような理由もありません。国交を結びたい相手にわざわざ火種を投げ込むような行為は、無能以外の何物でもないのではありませんか?」

「…わかりました。其方の言葉を信じましょう」

「御理解頂けて何よりです。では、貴国の訪問理由の詳しい理由ですが…」

 

シエリアは一度言葉を切り、少しの沈黙の後に意を決してその先の言葉を紡ぎ始めた。

 

「…我々は貴国との国交開設の為に、貴国の事を出来得る限り知る為に、5ヶ月を掛けて貴国の情報を収集してきました。そのお陰で、貴国の事をよく知る事が出来ました。21ヶ国の復興及び発展支援、パーパルディア戦争、第三文明圏各国との国交開設、ロウリア戦争、クワ・トイネ公国とクイラ王国との接触」

「そして──」

 

 

 

 

「フォーリナー大戦」

 

 

 

 

 

シエリアの口から発せられたその言葉に、EDF日本支部の全員の思考回路が凍り付いた。

何故ならそれは、EDF日本支部以外には絶対に知る由のない言葉なのだから。




何故、彼女(シエリア)はその言葉を知っている?
何故、グラ・バルカス帝国はここ(第三文明圏)までやってきた?
何故、彼等はEDFに友好を求めてきた?
何故、何故、何故?

その答え合わせは、すぐ目の前に。


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第24話 仲間

皆様の感想の反応を見て思わずニヤニヤしてました。色々な推測が出て来てて面白かったです。
さて、それでは皆様の推測は果たして正解していたのでしょうか?


フォーリナー大戦。

それは、EDF日本支部の人間の記憶に深く、深く刻み込まれた悪夢。11年前、宇宙より襲来した彼等はその圧倒的な科学力と物量によって地球侵略を行い。僅か7ヶ月半の短さにも関わらず、人類の7割の命を散らし、世界に深い傷跡を残す事になった星間戦争。

EDF日本支部は転移後に接触した国々に対して、自らの歴史…否、フォーリナー大戦の事は語っていない。態々そんな事を話す必要も無ければ、あの長過ぎる悪夢を思い返したく無いのだ。故にEDF日本支部以外の人間には、EDFが「EDFたる根源」を知る者は誰一人として居なかった。

 

だからこそ、目の前の女性(シエリア)からその単語が発せられる事など、絶対にあり得なかった。なのに、彼女は、グラ・バラカス帝国はその単語を知っている。

 

繰り返すがその単語(フォーリナー大戦)は、最も関係が進んでいるクワ・トイネ公国やクイラ王国にさえも一度も発した事の無い単語だ。故に、この世界の人間は誰一人として知れる筈がない。知れる訳が無い。

 

だというのに、何故彼女(シエリア)の口からその単語が出てきた?

 

いち早く思考停止から復活した司令が、先程よりも遥かに鋭い視線を向けた。

 

「…何処で、その単語を知った?」

 

その言葉にシエリアは苦笑いを含んだような、複雑な笑みを浮かべる。

 

「我々グラ・バルカス帝国は、第二文明圏侵略前の外交でよく学びました。相手を良く知らぬまま話をしようとしたら、進められる話も進まない。だからこそ情報をとことん集め、そして帝国と友好関係を築くに相応しいかを見極めてから話し合う。だからこそ、我々は貴国との接触が決定した際には5ヶ月もの期間を費やし、あらゆる方法を用いて貴国の情報の収集を図りました。しかし貴国に関する詳細な情報は、全くと言って良い程入ってこなかった。この国の市民達は他国に観光などもする事なく、何かを恐れているようにこの国から出てくる事は無い。だからこそ、我々は少し手法を変えました」

 

「現実世界で駄目ならば、電子の海(ネットワーク)を覗いてみよう。とね」

 

「…そうか…っ!!」

 

シエリアの言葉に、情報局長は思わず目を見開いた。

EDF日本支部は、日本列島各地にネットワークを形成している。それはEDFのみならず、約3600万人の市民達も恒常的に利用する、現代のシステムを動かすには必要不可欠なツール。

EDFが使用するネットワークは当然、超高度なネットワークセキュリティとファイアウォールを築いているのだが、一般人となるとそうはいかない。3600万人にもそんなセキュリティを施すには、余りにも投資する資金と規模が割りに合わないからだ。

そして転移後は、ネットワークの概念まで辿り着いた技術力を持つどころか、中世や第一次世界大戦レベルの技術力しか持ち合わせない国家しか今まで居なかった為に、自然とネットワークに関する警戒が薄れてしまっていた。

 

そんな状態では、ネットワークからの偵察行為を察知出来るわけがない。

 

それに加えてグラ・バルカス諜報員達の狙いは、軍事情報ではなくて「EDF日本支部に関する基礎情報」。それを達成させる為には、難解な言語解読(日本語の解読)以外に特に苦労をしなかった。何故ならそれは、軍事情報を専門とし、高度なセキュリティを敷かれた軍事ネットワークではなく、乱雑する民間のネットワークだけで十分な量のデータを抽出させる事が出来るからだ。さらに言えば、軍用ならまだしも、そういった類の対策を取っていない一般のネットワークの全てを常時監視するなど不可能である以上、気付ける要素は失われてしまっていた。

 

数瞬後には司令もその言葉の意味を理解し、内心で舌打ちをする。無意識下に形成されてしまっていた盲点(弱点)を見事に突かれてしまっていたのだ。

そして、場の空気(主導権)は完全に向こう(シエリア)に渡った。

 

「大地を覆い尽くす蟻や蜘蛛の巨大生物の大群、幾千の戦闘機を撃墜して空を覆い尽くした飛行ドローン、町々を蹂躙する二足歩行兵器や四つ足要塞、50m級の超大型生物、巨大生物を投下する飛行船団…そして、マザーシップ。確かに、まるで無稽荒唐な存在を相手に星間戦争をしてきたなどとは他国には言えませんね。こんな話、他国の人間は信じられる筈がない」

「…そういう貴女方は、こんな話(フォーリナー大戦)を信じるとでも?」

「ええ、信じます。何故なら───」

 

シエリアは懐を探り、其処に入れてあった手の平に収まるサイズの機械を取り出し、テーブルに置いた。

 

 

 

我々(グラ・バルカス)もフォーリナーのような敵と戦い、星間戦争を生き延びたのですから」

 

 

 

 

スイッチを押し、空間に映像が投影された。どうやらシエリアが取り出した機械はポータブル空間投影ディスプレイ機だったらしい。

 

「な…」

 

音の無いその映像には街に溢れかえった蟻型巨大生物と、強化外骨格らしきものを着込んだ兵士達が巨大生物に向けて銃撃を行なっていた。

映像である以上、それは合成やCGだと疑える。映像など幾らでも好きに加工する事が出来る。が、「それ(映像加工)は決して行われていない」と信じる事が出来る。映像から伝わる迫力、兵士達の気迫は、決して映像加工などで出せる物ではない。奴等に対する恐怖を、怒りを、彼等は良く知っているのだから。

 

兵士達が持つアサルトライフルによる弾幕によって倒れていく巨大生物を踏み越え、カメラ(兵士達)へと接近してくる巨大生物の群れ。その姿は、まるでフォーリナーを思わせる姿でやってくる。兵士達も全力の火力投射を継続しつつ後退しているが、処理速度と逃げ足が間に合わない。

遂にカメラの眼前にまで巨大生物が迫り──其処で映像が止まる。出力元の空間投影ディスプレイ機を見ると、シエリアがスイッチを押して映像を止めたらしい。少しの操作の後、別の複数な画像が映し出された。一つは、まるで巨大な鉱山が空を飛んでいるように思わせるが、下部の機械仕掛けの円盤がその印象を一変させる。もう一つは15m程度の二足歩行兵器が、胸部から放たれたレーザーで街を破壊している画像。

 

「…この世界に転移する前、つまりは惑星ユグドにいた頃。7年前に突如現れた空からの侵略者を我々は「アグレッサー」と呼称し、5年にも渡る戦争を行なってきました。我々は2隻のアグレッサーの母船であるハイブクラフトを全て撃墜し、アグレッサーとの戦いに辛勝しましたが…その代償は世界秩序の崩壊、世界を二分していたケイン神王国の滅亡、グラ・バルカス帝国の全植民地全滅であり、辛勝と呼ぶにも…余りにも大き過ぎる犠牲を支払いました。唯一の生存国家となった我々は可能な限りの生存者及び残存軍を唯一ほぼ無傷に済んだ本国に集結させ、来たるべき反撃の時に備えていた。その時に我々はなんの前触れもなく、惑星ユグドからこの世界に転移したのです。その後の事は…先に説明した通りです」

 

シエリアの話が終わり、沈黙が流れる。

余りの想定外な話。まさか己達以外にもこの世界に転移してきた者達が居て、尚且つフォーリナーと同類の惑星外の侵略的存在との生存戦争を経験しているなど、一体どれ程の天文学的確率を引き当てなければならない事か?

 

「…貴女方の来航目的は、我々との国交開設及び軍事同盟の締結、でしたか」

「はい。それに加え、我々はアグレッサーに関する情報の開示を用意しています。アグレッサーとフォーリナーに武装や特徴等の差異がある以上、綿密な情報連携は必要不可欠と考えています。そして、機密に触れない限りの兵器技術提供も検討しています。我々には時間が無い。奴等がこの世界に居ないと誰も証明出来ない以上、我々は準備をしなければならない。一分一秒が万金に値する現状、こうして会談を行なっている事自体が、その分の備えを不足させてしまうのです

「…我々はフォーリナーを、貴女方はアグレッサーを知っている。そしてこのソラ(宇宙)にはどちらかが居てもおかしくはなく、下手をしたらその両方がある可能性もある

「…その通りです。しかも、今の今まで我々は孤独でした」

 

 

「しかし今は違います。私達の目の前には、「仲間」が居るのです」

 

 

シエリアの目線が、真っ直ぐに司令の視線と交差する。

 

「…我々もフォーリナーの情報開示、及び武器技術提供の準備を行いましょう」

「…!それは…!」

「時間が無い、直ぐに国交開設と軍事同盟の詳細を詰めましょう。我々も、この国の要塞化を推し進めなければなりませんからね」

 

司令とシエリアはほぼ同時に立ち上がり、微笑んだ司令がシエリアに向けて手を差し出した。

 

「この出会いに、幾千の感謝を」

「我らの怨敵に、絶対の鉄槌を」

 

シエリアも、その手をしっかりと握り返す。

そしてそれは、EDFとグラ・バルカス帝国の友好関係の誕生を意味する重大な第一歩となった。

 

 

この会談から2日後、EDF日本支部とグラ・バルカス帝国は正式に国交を開設し、同時に軍事同盟を締結した。




用語解説&状況説明
グラ・バルカス帝国
転移前である7年前、惑星ユグドに降下して来た惑星外侵略存在「アグレッサー」と5年間の星間戦争を経験。最終的にグラ・バルカス本国以外の世界に大打撃を負い、残存していた生存者や軍を別け隔てなく、可能な限り本国に集結させて反撃の時を待った。しかしその矢先に転移を果たし、現在に至る。
EDF日本支部との国交開設、及び軍事同盟締結に成功した。

EDF日本支部
自分達と似たような境遇を経験した国が現れた事に驚愕しつつも、国交開設と軍事同盟を締結。

アグレッサー
惑星ユグドに降下して来た惑星外侵略的存在。会談の際には、蟻型巨大生物と15mの二足歩行兵器、母船 ハイブクラフトの存在が明かされた。
マザーシップは1隻のみだったフォーリナーとは違い、惑星ユグドの侵略に2隻の母船 ハイブクラフトが降下。2隻ともグラ・バルカス帝国によって撃墜される。


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第25話 技術の優劣:EDF日本支部編

見ろ、平均評価が減っている。このままじゃ評価バーが赤色から橙色になるぞ。

それがどうした?これが彼等の物語だ。


EDF日本支部とグラ・バルカス帝国間での国交開設及び軍事同盟の締結が完了すると、早速両国はお互いの「敵」に関する情報提供と、武器技術提供の準備を開始する。

此処で問題となったのは、両国間の膨大な距離だ。直線上でもおよそ2万キロもの膨大な距離を船舶で行き来しようとするならば、往復で約4ヶ月もの月日を費やしてしまう。それでは余りにも非効率すぎた為、両国は保有する大型航空機の性能を見比べる事とした。その結果、大型攻撃機ホエール数機を貨物型に特別改造し、その半分をグラ・バルカス帝国に譲渡する事が決定された。その結果、約4ヶ月もの往復期間が僅か26時間で往復可能となり、迅速な技術交換及び資材交換などが可能となった。…余談だが、この往復時間は第一文明圏(神聖ミリシアル帝国)第二文明圏(ムー)の領空を無断で横断した時間である。当然だがこれがバレれば国際問題不可避な物であり、さてどうするかと両国の上層部は話し合った。が、その際に話を聞いたグラ・バルカス帝国皇帝直属の親衛隊隊長の言葉により、その問題提議が吹っ飛んだ。

 

曰く、「バレなければ何の問題も無い」と。

 

…まぁ、そういう事である。

この世界の国際社会に真正面から喧嘩を売るような発言だが、星間戦争準備>国際問題の図式で固定されている両国はそんな事を気にする事無く、第一文明圏内及び第二文明圏内は高度12000m以上の超高空で通過する事が決定された。

こうして、まずは特別改造仕様のホエールを製造したEDF日本支部がグラ・バルカスに提供する武器や弾薬、技術機器と書類の山、そして技術者数名をグラ・バルカス帝国に譲渡する特別改造仕様ホエール4機に乗せ、EDF日本支部が保有するホエール4機を含めた8機が離陸。約13時間のフライトでグラ・バルカス帝国本国の空港に着陸し、荷下ろしと帰還するホエール4機への貨物積載が同時に始まった。グラ・バルカスがEDF日本支部に送る貨物も殆ど似たような物であり、これも離陸後13時間でEDF日本支部の羽田空港に着陸。グラ・バルカス帝国の武器弾薬や技術、情報がEDF日本支部に提供された。

 

 

 

 

 

 

まずはEDF日本支部から見ていこう。

グラ・バルカス帝国製の武器を受け取った兵器開発部は、別世界の技術を存分に吸収するべく総員でリバースエンジニアリングを開始した。

まず一番に調べたのは、グラ・バルカス帝国の全兵士が必ず装備している戦闘用強化外骨格 PAギア。技術者と書類によると、PAギアはアグレッサーの体内にある、膨大なエネルギーを生み出す未知の鉱物「エナジージェム」を加工して生産される「エナジーコア」を動力源とした強化外骨格であり、そのパワーはたった1人で片手300kgまでの重量物を持ち上げるが可能。これによって並の人間にはとても扱えない重量と反動を持つ対アグレッサー兵器を軽々と扱う事が可能となったのだ。PAギアには3つの小型圧縮空間と2つの中型圧縮空間を備えており、兵士達は2つの武器と多量の弾薬、そして大量のグレネードなどを持ち運ぶ事が可能であり、防御面はPAギアから生成されるナノマシンにより、一定のダメージまではPAギアとその装着者までも瞬間的な修復(再生)が可能。そして超小型レーダーを搭載するなど、その性能から別名「人間戦車」と言わしめている。PAギア無くして、アグレッサー戦争の勝利は不可能だったとグラ・バルカス帝国の技術者は語った。

PAギアにも4つの種類が存在しており、原初にして標準である「トルーパー」、空中機動を可能とした「ジェットリフター」、重装甲で最前線に立つ「ヘビーストライカー」、ワイヤーを射出して某漫画の調査兵団の様な高機動戦闘を前提とした「プロールライダー」。

試しにEDFの開発部員がトルーパーを着てみると、歩きならまだしも、走りとなるとPAギアが叩き出す力の強さに地面にいくつかの穴を作り出してしまった。グラ・バルカスの技術者も「この問題ばっかりは根本的な解決策は無く、兵士達が訓練でPAギアに慣れていく他無い」と言った。

戦力評価に関しては、グラ・バルカス帝国が用意した模擬訓練とアグレッサーとの戦闘の映像から大まかな評価を裁定した所、PAギアを装着した兵士はEDF兵士2人以上の戦力に値する可能性があるという結果が出た。

余談だが…エナジージェムやエナジーコアに関する技術や情報などは、グラ・バルカスの軍事以外にも民間に密接した技術であるとして、一切の技術及び情報提供が不可能であるとされた。

 

 

次に手に取ったのは、標準装備の一つであるアサルトライフル AE-2040GD-III。

AE-2040GD-IIIはガブス・ダイナミクス社が開発したジェネリック・アントイーターシリーズの最新作であり、「銃を「密閉空間で燃焼反応を起こし、その体積膨張力で金属球を押し出す」と定義するならば、それこそが我が国最強の歩兵銃である」と技術者は豪語した。

発射機構には「1S-2B(1Shot-by-2Bullets)方式」と呼ばれる特殊機構を採用しており、2発の弾丸を同時に着火し、2発分の運動エネルギーで1発の弾丸を加速させるという、言わゆる「多薬室砲」に近い機構を歩兵銃にまで落とし込んだのだ。その代償として装填数は僅かに40発であり、グラ・バルカス製アサルトライフルの中では最も少ない装填数となってしまったが、その威力は20mm機関砲に値する威力を誇った。

試射の際、用意された的を10発で破壊した際にはグラ・バルカス技術者達はその威力に鼻を高くしていたが…EDF兵器開発部員達は非っ常に微妙な表情とならざるを得なかった。

 

それは一重に、「性能不足」なのだ。

 

用意された的の強度はフォーリナーの蟻型巨大生物の耐久力を再現したものであり、EDF一般兵士の標準装備の一つであるAF20ならば8発で破壊可能であり、ストームチームのみに支給されているAF100に関しては僅か4発で粉砕出来る。しかも装弾数もAF20は140発、AF100は180発を1マガジンに装填出来る為、結果としてAE-2040GD-IIIはEDFアサルトライフルに大きく劣る性能であると言わざるを得ないのだ。

 

他の実弾兵器も似たような物だった。

スナイパーライフルは射程は少し勝るものの、それを相殺して差し引かれる程の威力不足。ショットガンは射程がおよそ半分程度、ロケットランチャーに関しては絶対的な弾速不足に加え、射程がEDF製ロケットランチャーの4分の1である500mしかないという惨事だ。参考になる所はあるにはあるのだが…これほどの差ともなると、EDF日本支部からグラ・バルカス帝国に実弾兵器の技術啓蒙を行うのが殆どとなるだろう。

EDF日本支部が採用しているアサルトライフルなどの実弾兵器のスペックを知ったグラ・バルカスの技術者達は揃って「実弾兵器でそんな威力が出せるのか…」と顔を引きつらせた。

 

 

だが光学兵器の説明や実射の様子を見て、今度はEDF兵器開発部員達の顔が引きつる番となった。

グラ・バルカスより特別に提供された光学兵器の数々…レーザーライフル、レーザーカノン、レーザーミサイルランチャー、レーザースナイパーライフルは、EDFが持つフォーリナーテクノロジーでは、今までは絶対に開発する事が出来ない代物だったのだ。

 

光学兵器全体のスペック自体はEDF製兵器と比べるとやや見劣りする部分もあるのだが、問題はそこではない。PAギアさえあれば、誰でも光学兵器を取り扱えるという恐ろしい点だ。EDFの歩兵用光学兵器は、殆どが専用のジェネレーターを使わねば有効な威力やリチャージ速度の確保が不可能であり、必然的に大出力ジェネレーターを搭載する事を前提としたウィングダイバーしか光学兵器を取り扱う事が不可能であった。例外的にオメガチームが装備するフュージョンブラスターZD改が存在するが、これを一丁製造するだけでも50億ドルもの費用を必要とする上、メンテナンスの費用も恐ろしい額が要求される。その上再装填用のカートリッジにエネルギーを充電するのに大規模な発電施設を専門に必要とし、その発電量もカートリッジ1つに街半分の1日消費電力量に匹敵する発電が必要などという、歩兵用装備としては余りにも法外過ぎる要求を必要としている。こんな代物をEDFは量産出来るわけが無く、予備を含めて僅かに12丁の生産に留められている。

しかしグラ・バルカス製の光学兵器は、武器に小型のエナジーコアを埋め込んで使用するだけで、充分な威力と実用性に耐え得るリチャージ速度を両立しているのだ。EDF製光学兵器も超小型ジェネレーターを搭載した武器もあるのだが、リチャージ速度が30〜60秒と恐ろしく長い上、リチャージ中は一切の攻撃が出来ない等、余りの欠点の多さに正式採用出来たのは極々僅かだった。

この事実は全く無視出来る物ではなく、兵器開発部は光学兵器に関する技術を最優先で吸収する事を決定した。

 

レーザーライフル、レーザースナイパーライフルに関しては既にウィングダイバーが使用する武器の前例がある為、グラ・バルカス製光学兵器の技術を吸収さえ出来れば開発はそれほど難航しないと思われているが、レーザーカノンとレーザーミサイルランチャーに関してはそうは行かなかった。

 

レーザーミサイルランチャーは、誘導機構が一体全体どうなってるのかがよく分からない。ウィングダイバーが使用できる光学誘導兵器は、サイオニック適性という特殊な才能が無い限り、それらを使用する事は禁じられている。何故なら適性無き者が無理に使用すれば、脳が負担に耐え切れずに破壊されてしまうからだ。

しかしレーザーミサイルランチャーはその適性関係無しに扱う事が出来、その誘導性能も決して低くはない。寧ろ扱いやすいレベルだ。この誘導機構の謎さえ解ければ、ウィングダイバーの誘導光学兵器の性能は大幅に上がる事が予想された。

 

レーザーカノンに関しては…最早これらは狂気の産物という他にない。

動力源はエナジーコアではなく超小型核融合炉を搭載し、常識を逸する超弩級のレーザーを発射する。即応性に欠ける為に最大出力に達するには10秒の連続照射が必要となるが、最大出力時に放たれる極太のレーザーは射線上のあらゆる対象を貫き、呑み込んだ全てに壊滅的なダメージを与える。その反動はすさまじく、発射に際しては使用者の安全を確保するためPAギアの下半身をスティブル・モード(固定状態)にする必要があるが、このような超火力をたかが歩兵が放つ事が出来るというのは、とても信じられない事だ。

特に大火力(狂気的)な代物になると、超高濃度に圧縮されたエネルギーの塊を発射し、着弾地点に小規模な核融合反応を発生させ、直径100mのあらゆる万物を焼き尽くす。

 

アグレッサー戦争の際、レーザーカノンを装備した歩兵大隊が街一個の殲滅と引き換えに、5万にも届く巨大生物の大群を殲滅した映像を見たEDF兵器開発部員の1人が思わず「こんな代物を作り出すなんて…」と呟くのも無理は無かった。

 

他にも細かい所や説明は山ほどにあるのだが、余りにも長過ぎる事になる為に割愛させて頂く。

結論として、EDF日本支部はグラ・バルカスより光学兵器やPAギアに関する技術を優先的に研究する事が決定された。




ハーメルン以外にも面白い日本国召喚の二次創作あるのかなー、と日本国召喚のwikiを初めて覗いて見たら、一覧の中にこの作品があって思わず少し驚き。

用語説明&状況説明
特別改造仕様ホエール
大型攻撃機ホエールを輸送機に改造した。非武装になった為ペイロードが大幅に増加し、最高速度と巡航速度も向上した。

EDF日本支部
グラ・バルカス製の光学兵器の技術にドン引き。

グラ・バルカス帝国
EDF日本支部より提供された物資を受け取った。

第一文明圏、第二文明圏
今後、特別改造仕様ホエールに領空侵犯を頻繁にされる事が決定された不憫な国々。
だけどバレなきゃ問題ないんですよ。


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第26話 技術の優劣:グラ・バルカス帝国編

今回は短いです。IRと違ってEDF製の兵器は公式設定があんまり無いせいで、一から考えるのが大変とかいうレベルじゃない…

※並べ替えによって更新された最新話がずれています。23話への移動をお願いします。


グラ・バルカス帝都 ユグド郊外にある、軍事基地の滑走路に降り立った8機の特別改造仕様ホエール。

バンカーの中へと誘導された8機のホエールがカーゴドア(ドロップゲート)を解放すると、すぐさまEDF日本支部より提供された貨物の荷下ろしと、EDF日本支部に提供する貨物の積載が開始される。

荷下ろしされた貨物の中にある武器弾薬は、即座に基地内部にある試射場へと運ばれていった。

 

 

 

 

 

 

試射場には、既にグラ・バルカス帝国軍が使用する兵器を製造する軍事企業の技術者が一堂に会していた。

ガブス・ダイナミクス、カーン-ワン、S&Sマテリアルズ、D.R.O.S.アームズ、L.M.I 、カルスライン、帝国軍技術局。特にガブス・ダイナミクスは、アグレッサー戦争勃発直後には数々の第一世代武器(既存技術兵器)を開発し、アグレッサー戦争の劣勢を抑え込んだ実績を持つ。

そんな彼らの前に、次々とEDFの歩兵用兵器が並べられていく。その量はグラ・バルカス帝国が提供した武器よりも大幅に多く、軽く見積もっても3〜5倍はある。ドカドカと並べられていく兵器の数々に、既に妙な予感はしていた。

そして数人がかりで運ばれてきた3連装ガトリング砲明らかにゴツゴツとした見た目のスナイパーライフルなどが並べられ始めて、 殺意マシマシの見た目しかないそれらに一同は「あ、これヤバイ奴だ」と何となく察した。

そのせいなのか分からないが、実弾系統の兵器の調査は一番最後に後回された。

 

 

まず調べられたのは、全EDF兵士が着込む第3世代アーマースーツだ。

兵科によって見た目や機能は違うが、共通しているの(レンジャーの機能)は以下の通りである。

 

1.巨大生物の硬皮を参考にして生産された特殊素材による、アーマーの防弾・耐火・耐寒・耐衝撃・対酸・対プラズマ性。

2.アーマースーツ内部に埋め込まれている、人工筋肉繊維による筋力補強機能。

3.表面のナノマシンによる対酸性能の増強。

4.超小型生体電波両用識別式レーダーの搭載。

5.4つの圧縮空間搭載による、火力及び継戦能力の大幅な増加。

 

特に筋力増強機能と耐衝撃性の組み合わせは素晴らしく、正しい姿勢で着地出来れば100mからのパラシュート無しのダイブにも無傷で着地出来る。

特殊兵科であるウイングダイバーとフェンサーでは、此処から追加機能が付与される。

まずウイングダイバーは、背部に飛行ユニットと小型の大出力ジェネレーターを装備し、空中機動と高出力の光学兵器を取り扱う事が可能であり、巨大生物の攻撃方法が少なくなる空中から光学兵器やプラズマ兵器による範囲攻撃を行う、対巨大生物戦闘を得意としている。

フェンサーはその真逆に位置し、ヘクトルなどといったフォーリナーの機甲戦力に対抗するための兵科で、全身に装甲車に匹敵する重量の装甲服を着込み、より強化されたアーマー性能、筋力補強機能、圧縮空間機能によって大火力高防御を両立し、激減した機動力は装甲服に搭載したブースターで補われている。限界まで強化された筋力増強機能は、片手でガトリング砲を持って連射する事が出来、果てには1t以上はある超大型ブレードを振り回すことさえも出来るのだ。

 

 

正直アーマースーツだけでもグラ・バルカス帝国が採用しているPAギアよりブッ飛んだ部分もあるが、気を取り直して今度は光学兵器の調査に入る。

…が、此処はバッサリと割愛させてもらう。先に説明した(第25話)のとほぼ同じ説明をするのは余りにも蛇足であるため、ご了承願う。

 

 

-中略-

 

 

そんなこんなでEDF日本支部の光学兵器の詳細を把握したグラ・バルカスの技術者達は…遂に実弾兵器の調査を始めた。

 

まず最初に手に取ったのは、レンジャーの標準装備の一つであるAF20。

フォーリナー大戦中期に開発されたAF20はフォーリナーテクノロジーを存分に使用され、既存素材を使用するフレームの中では間違いなく最高性能を誇る。単発の火力評価でさえも前代標準装備であったAF19の2倍に相当し、装弾数140発を僅か11.6秒で撃ち切る大火力を展開出来る。実射の様子を見たガブス・ダイナミクス社の技術者が思わず唖然とし、「AE-2040GD-IIIと比べたら、射程以外の全てが負けている」と漏らす程、EDF製のアサルトライフルは優れたスペックを有していた。

 

次にショットガンを手に取ったが、はっきり言ってグラ・バルカス製に対して威力、射程が大幅に優れており、中には一射で100発もの散弾を発射するという代物さえもある。10連銃身を持つその姿に、ショットガンの製造を得意とするカーン-ワン社の技術者は「変態の所業と言わないで何というんだ」と零した。

 

スナイパーライフルに関しては「完敗」以外の何者でもなかった。

標準的な性能モデルでさえも全ての性能で劣っている。その上特化モデルにもなると、グラ・バルカス製のスナイパーライフルが最早オモチャ同然に成り下がるのだ。

その代表格はストリンガーJ9とライサンダーZであり、単発火力最大かつ単発装填であるSH-アリアよりも単発火力が上回ってしまっている。

ライサンダーZに関してはまだ理解出来る技術などが使用されていたのだが、ストリンガーJ9に関しては最早理解不能な機構が使用されていた。というか、開発したEDFもどうやってストリンガーJ9を製造出来たのか分かってないのだ。理由は、フォーリナー大戦末期にて製造地がフォーリナーの攻撃を受け、製造技術が失われてしまっているのだ。故にEDFも現存するストリンガーJ9を解析して再生産を試みているが、その成果は中々出てこない。

機構としては、ストリンガーJ9の機関部には超小型の正体不明なジェネレーターが存在しており、引き金を引くと同時にジェネレーターが反物質を生成。超電磁状態になった銃身を通り、銃身の内壁に触れずに反物質弾は撃ち出され、形成限界(射程)である1600m内に存在するあらゆる物体を消滅させながら突き進む。

これに関してはグラ・バルカス帝国が保有する技術でも製造は困難であるという結論がすぐに出された事は、言うまでもない。

 

 

…レンジャー用の兵器でさえもこれだけブッ飛んでいるというのに、フェンサー用の実弾兵器は更にブッ飛んでる。

ざっと見るだけでもパイルバンカー、ハンマー、大型ブレード、3連装ガトリング砲、20mm砲、30mm砲、迫撃砲。その全てから「敵を一片残さず殺す」と言わんばかりの殺意が見えた技術者一同は、「いっぺんに調査したら報告書の量が大変な事になる」と判断し、この日の調査は終了。後日、フェンサー兵器の調査が行われる事となった。

技術者達はEDF製の実弾兵器の技術力と威力の高さにやや頭を抱えながら、報告書を作成する事となる。

 

尚、後日行われるフェンサー兵器の調査では、技術者一同が真っ白に燃え尽きたと言わんばかりの茫然自失状態となる。




EDF兵器開発部「何でかんしゃく玉を向こう側(グラ・バルカス)に送らないの!?」
EDF上層部「あんな代物を送る訳がねぇだろうが!?」

用語解説&状況説明
グラ・バルカス帝国
EDFの実弾兵器の技術力と火力の高さに愕然とする。

EDF日本支部
武器技術交換前、かんしゃく玉を送るか送らないかで兵器開発部と上層部の喧嘩が勃発。ストームチーム投入によって上層部の勝利となる。
ストームリーダー「こんな下らない事に俺達を呼ぶな」

ストリンガーJ9
AF100同様、製造技術がロストテクノロジーとなった武器。
反物質弾を生成し、フォーリナーの装甲さえも貫通し得る威力を持った、極めて数少ない兵器。
グラ・バルカス帝国に渡った一丁はあくまでも見せるだけであり、すぐにEDF日本支部に返却された。

SH-アリア
IRの公式設定でも謎が多い武器。1丁しか存在しない為、現所有者が死亡した場合のみ、次の所有者候補へと受け継がれる形を取っている。
…未来からやってきたなどという噂もあるとか。


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第27話 空間の占い(未来の運命)

EDF日本支部とグラ・バルカス帝国間での軍事同盟締結から、数ヶ月が経過した。

直後に開始された武器技術交換や情報共有などは現在も精力的に行われており、今日も特別改造仕様ホエール数機が、第一文明圏諸国と第二文明圏諸国の領空を超高空で侵犯しながら行き来する。最初は歩兵用兵器の交換だったが、今現在はビークルや大型兵器など、ホエールのペイロードが許す限りの物資を搭載していく。

そのような事もあり、EDF日本支部とグラ・バルカス帝国の兵器開発は次々とインスピレーションを受け、様々な方向から新兵器の開発が試みられている。その傍らに領土の要塞化を行う事も忘れない。要塞建設、対空砲・対宙兵器・大型弾道ミサイル発射器の設置、兵器生産、etc…やる事は大量だ。

 

そして、懸念も其れ相応のものばかり。それはEDF日本支部やグラ・バルカス帝国だけのものでもない。

 

 

 

 

 

 

第一文明圏列強国 神聖ミリシアル帝国。

世界最強の国と謳われる彼等は今、ある問題に頭を悩ませていた。

 

言わずともわかるだろうが…列強2ヶ国の崩壊と突如出現し、列強国をそれぞれ滅ぼした2つの国家の存在である。

 

この世界の各国は、大きく分けて列強国、文明国、文明圏外国で区別されている。其々の国力と技術差は隔絶しており、文明圏外国は文明国に敵わず、文明国は列強国に敵う事は無い。そこから国際社会の区別をすると第一文明圏(中央世界)、第二文明圏、第三文明圏となっており、数字が少ない順に国力と技術力が高い国が集結していた。

そして各文明圏に多大な影響を持つ11ヶ国(内訳は固定参加国(列強国)5ヶ国、持ち回り参加国6ヶ国)大国の代表が2年に1度、神聖ミリシアル帝国の港町カルトアルパスにて開催される国際会議「先進11ヵ国会議」にて今後2年の世界の流れを決定し、国際秩序を保っていた。

なお、この国際社会の範囲は第一文明圏、第二文明圏、第三文明圏、南方世界の範囲内であり、そこから外の領域は「世界」として認識されず、交流も無い。

 

そのような世界に突如現れたイーディーエフとグラ・バルカス帝国によって、保たれる筈だったパワーバランスと国際秩序は大きく乱れる事となった。

グラ・バルカス帝国は第二文明圏列強国レイフォルを滅ぼし、現在も第二文明圏の文明圏外国や文明国に対して植民地化を要求し、断ればその軍事力によって該当国を侵略、併合している。

イーディーエフはグラ・バルカス帝国と違って友好的な面が強いのだが、それでも属領のフィルアデス連邦によって第三文明圏列強国 パーパルディア皇国を滅ぼし、事実上第三文明圏を支配下に置いているという事実がある。

 

どのような国であれ、世界最先端であった列強国の2ヶ国が滅ぼされ、現在進行形で国際秩序が大きく乱れている。先端11ヶ国会議の固定参加国2ヶ国が居なくなってしまった事も問題となり、開催国である神聖ミリシアル帝国は空席を埋める国をどうするべきかを討議したが、結論自体は比較的あっさりと出た。

 

イーディーエフとグラ・バルカス帝国に使節団を派遣し、国交開設と先進11ヶ国会議の参加要請を行う事を決定する。

 

特にイーディーエフは先進11ヶ国会議の固定参加国として参加を要請する事となり、事実上の列強国として認める事となった。

何故イーディーエフのみに固定参加国として参加要請を行ったのかというと、グラ・バルカス帝国とは異なって友好的な行動で第三文明圏各国と国交を広げており、パーパルディア戦争の際も、結果論ではあるが各国邦人には一切の被害が無かった事が挙げられる。

この事から国際常識を十分に持ち得ていると、第三文明圏を支配するにふさわしい大国であると、判断せざるを得なかったという経緯があった。

 

こうして、神聖ミリシアル帝国はイーディーエフとグラ・バルカス帝国に使節団を派遣する準備を進める事となる。

 

 

 

 

 

 

エモール王国。

第一文明圏に存在する列強国の一つであり、人口は100万人程度の規模が小さい国である。日本列島の四国程度の統治面積しか持っておらず、当然国力も其れ相応にしかない。(統治(可住)面積が狭いだけで、実際の領土はもっと広い)

にも関わらず列強国の一つとして数えられているのは、エモール王国に住まう「竜人族」が持つ魔力の高さと、竜種と意思疎通をし、味方にすることが出来る能力ゆえに列強国に数えられているのだ。

それ故に非常にプライドが高く、人間など魔力の低い種族への差別意識が強い。 その上「用があるなら、自分の足で来た者以外は一切相手にしない」という思想も持っており、他国から仲介を得る事が出来ないなど、やや鎖国的な面も持つ。

そんな国の首都、ドラグスマキラの北部。ウィルマンズ城の最北の別棟の一室にある薄暗いドーム状の部屋に、30人もの占い師達が集まっていた。その周囲には竜王ワグドラーンを始め、エモール王国の重役達が集まっている。

 

今日は年に一度行われる、国を行く末を左右する「空間の占い」が行われる日であった。

空間の占いとは、エモール王国に影響があると思われる重要事項の有無を調べ、もしあるならば早期にその障害となるものを排除するという目的で行われる。その的中率は98%以上を誇り、最早占いというよりは未来予知に近い。

 

空間の占い師 アレースルの両手に魔導師達から集まった魔力が集まり、淡い赤色の光を灯す。そしてドーム状の天井にも、星のような物が映し出された。

 

「──空間の神々に許しを請い、これより未来を視る」

 

静かに告げられたアレースルの言葉に、一同は緊張に包まれる。万が一エモール王国に不幸がもたらされる事になるという結果が出るのならば、各人の死力を尽くして解決に当たる必要がある。

 

「これは……………そん、な!!なんという事だ!!」

「何だ!?何が見えたのだアレースル!!」

 

アレースルの狼狽に、ワグドラーンも焦りを隠せない。

 

「…魔帝…!」

「何だとっ!?」

「み、見間違いではないのか!?」

 

その場にいる全員の表情が一気に青くなった。

 

「見間違いではない…!そう遠くない未来、古の魔法帝国が… 神話に刻まれしラティストア大陸が、復活する!!

「何という事だ…!」

「時期はいつだ!?」

「………読めぬ」

「では、復活する場所は何処だ?」

「…空間相位に歪みが生じている、場所も見えぬ。視えたのは、「ラティストア大陸が復活する」という未来のみである」

 

竜王を含め、全員が戦慄する。

遥か昔の神話の時代、世界を支配していた古の魔法帝国…ラヴァーナル帝国。ヒトの上位種とされる「光翼人」という種族によって建国された、他種とは隔絶した圧倒的な魔力と技術力で全世界を支配した歴史史上最強の帝国。他国と比較して進み過ぎた文明と、光翼人特有の極端に傲慢な国民性によって驕り高ぶり、ついには神々に弓を引いたとされている。怒れる神々は、ラヴァーナル帝国の本土であるラティストア大陸に巨大隕石を落とそうとした。だが彼らは国全体に結界を張り、大陸ごと未来へ転移して隕石から逃れたと言われている。

 

そんな恐怖の帝国が、98%以上の確率で復活しようとしている事実に、彼らの冷や汗は止まらなかった。

 

「して…我が国を含め、全ての種が再び魔法帝国に膝を折る事になるのか?」

「……………否、読めぬ。未来は不確定なり」

「不確定だと!?一体どういう事だ?」

 

今までの空間の占いにて、未来が視えないというのは一度もなかった。それ故に恐怖感よりも困惑が強まる。

 

「………言葉の通り、未来は…激しい炎光に包まれていて視えぬ」

「では…滅び、もしくは従属から回避出来る手段はあるというのか?」

「………ある!!」

 

アレースルは目を見開いて強く言い切った。

 

「それは、なんだ?」

「……2つの……新たな…国の出現。…この、激しい炎光が………?」

「新たな国?新興国か?」

 

要領を得ないその言葉に、ワグドラーンが問い掛ける。

 

「……否……其々が、其々の別の世界からの転移……転移国家である」

「転移国家…?」

「ムーの再来だというのか?それも二国だと?」

「「占い」で出た以上、最早荒唐無稽のお伽話などと侮るな。これは国儀ぞ。で、何処だ?何という国なのだ?」

 

一縷の望みを逃すまいと、ワグドラーンは真剣な表情で尋ねた。アレースルも精神をより強く集中し、一際に険しい表情となる。その両手の赤い光が益々強く輝き、周囲の魔導師達の表情も苦悶に歪められていく。相当な負荷が掛かっているのは明らかだった。

 

「東と西……第三文明圏と、第二文明圏の………フィルアデス大陸と、ムー大陸の……更にその先にある、島国……人間族が治めし国……」

「人間族、だと!?相手は古の魔法帝国だぞ!!魔力の低い種族に一体何が出来る!!」

 

部屋の中が騒がしくなるが、アレースルは変わらず意識の集中を続ける。

 

「分からぬ、何が出来るのかは分からぬが……この炎光は、炎は…………『厄災』だ。世界を燃やし尽くす厄災を、己の力で退けた、転移前の世界の守護者……」

 

 

「国名は…イーディーエフ…!!そして、グラ・バルカス帝国…!!」

 

 

アレースルはその言葉を絞り出した直後、汗だくのまま床に倒れ伏す。慌ててワグドラーンが駆け寄り、その身を抱きかかえた。

 

「イーディーエフとグラ・バルカス帝国か!よくやったぞ、アレースル!」

「イーディーエフと……グラ・バルカスこそ……魔法帝国に対抗する、唯一の鍵となろう……」

「無理に喋るでない、少し休め。おい、医師団を呼べ!」

 

王の命令を受け、別室で待機していた医師達が魔導師達の搬送を始める為、担架を運び込んで来た。

 

「鍵、か…イーディーエフとグラ・バルカス帝国とやらがどんな国かは分からんが、無下には出来んな」

「イーディーエフとグラ・バルカス帝国について調べろ!人間族の国如きに我等から外交を求めるのは癪だが、どんな国なのかを入念に調べ上げ、速やかに国交を結べ!」

「仰せのままに!」

 

命令を受けた外交担当貴族は、王に敬礼で応えた。

 

「なるべく早くだ!すぐにでも第三文明圏と第二文明圏に行くがよい、これは特命である!」

「それは……まだ早い……!」

 

アレースルが担架の上で、可能な限りの声量で声を上げた。ワグドラーンと、今にも駈け出さんとしていた外交担当貴族もアレースルに視線を向ける。

 

「何?」

「……彼等は……壮絶な戦いを、経験し……まだ、この世界を信用していない……!今、無理に国交を求めても、逆効果で終わってしまう……!彼等は、彼等自身に降りかかった災厄の一部をその身に取り込んでいる……!彼等の機嫌を損ねたその時は……それは、亡国の道にも成り得る危険な鍵……!」

 

アレースルは力強く、寄ってきたワグドラーンの服の袖を握った。

 

「時を、間違えてはならない…その時になれば、彼等はこの世界を守る為に彼等から動き出す!その時に、我等との国交締結を持ちかけるべきだ…!」

「…分かった、ならばそうしよう」

 

 

 

 

 

 

その後、アレースル等魔導師たちは到着した医師団に介抱され、担架に乗せられて病室に運ばれて行った。

ワグドラーン以下は、いつか来たるラヴァーナル帝国(ラティストア大陸)復活に備え、其々が準備の準備を行う為に各々の配置に付いて行った。これから彼等は、エモール王国という範疇を超えて「世界」を守るべく動き出さねばならない。

 

未来の占いという大役を果たしたアレースル達は、其々に充てがわれた病室のベットに横になり、急激に消耗した精神や肉体を休めていた。

 

「……………」

 

しかしアレースルだけは意識を眠りにつける事なく、ずっと、己が見た未来を考えていた。

あの時、アレースルは「未来は激しい炎光に包まれて見えない」と言ったが…それには少し語弊がある。本当は、僅かな数瞬だけ、炎光の中で確かに未来を見た。しかしそれは僅か数瞬だったが故に…果たしてそれが空間の占いによる光景なのか、それとも見える事を願った己が見た幻覚なのか、判断が付かなかった。

同時に、それは決して現実となって欲しくない光景(・・・・・・・・・・・・・・・・)だったからだ。

 

それはそうだろう。常人ならば、一体誰が──

 

 

「世界の滅亡」なんて未来を、望むのだろうか?

 

 

 

(…………)

 

そして、もう一つ。

未来を救う鍵は、2ヶ国だけではない(・・・・・・・・・)

しかしそれも、その国が判明する前に体力が尽きて完璧に観測することは叶わなかった。しかしその姿は、朧げながらも見る事が出来た。

 

一見すると人と何ら変わらない姿。しかしその背からは、美しく輝く一対の光翼があったようにも見えた。

 

(…馬鹿馬鹿しい。そんな事、あり得るはずがない)

 

脳裏に浮かんだ推論を、切って捨てる。彼はどうしても、その推論を信じきる事が出来なかった。もしその推論通りなら、彼…いや、竜人族のみならず、この世界の人類にとって、それは忌むべき存在。

 

ラヴァーナル帝国を建国した人類の上位種、「光翼人」。彼らが、未来を救う鍵の一つとなるのだから(・・・・・・・・・・・・・・・・)




用語解説&状況説明
神聖ミリシアル帝国
先進11ヶ国会議に向け、EDF日本支部とグラ・バルカス帝国に向けて使節団を派遣する準備を始める。

先進11ヶ国会議
神聖ミリシアル帝国の港町 カルトアルパスにて2年に1度のペースで開催される、各文明圏の有力な文明国11ヶ国が集まる国際会議。
参加枠は固定参加国列強国5ヶ国と、持ち回り参加国6ヶ国で構成される。

エモール王国
第一文明圏の列強国。空間の占いにて魔法帝国の復活を感知し、不確定の未来の鍵となるEDF日本支部とグラ・バルカス帝国の調査を開始する。
が、今回の空間の占いには不吉な内容も…

空間の占い
エモール王国で年に1回行われる国儀。98%以上の的中率を誇るが、魔力の高い竜人族の中でも特に強力な者を30名も集めなければならないなど、かなり高度な魔術である。

ラヴァーナル帝国
魔法帝国とも呼ばれている。遥か昔の神話時代にて全世界を支配していた国家であり、現在世界最強と謳われる神聖ミリシアル帝国よりも遥かに高い国力と技術力を持っていると言われている。実際にその痕跡と思われる古代遺跡が複数発見されている。

ラティストア大陸
ラヴァーナル帝国の本土がある大陸。神話の時代、ラヴァーナル帝国がラティストア大陸ごと未来に転移した為、現在の世界には存在しない。
空間の占いで、近い未来に復活することがほぼ確定視される。

光翼人
ラヴァーナル帝国を建国した種族。他種とは隔絶した魔力と、高度な知恵を持つ人類の上位種と言われている。現在の世界では光翼人は確認されていない。
神話によると倫理観が完全に常軌を逸しており、光翼人以外の他種族を人として見ていない。知覚系の魔法と保有魔力量が突出し、その能力を生かして高度な文明を築き上げたという説が主流。





















何処かに存在する、◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎。
そこに、「ソレ(・・)」は存在していた。

『…』

ソレはゆっくりと穏やかに、天に手を伸ばす。そしてその手から膨大な力が発せられ、空間が歪み(・・・・・)ヒビが入り始める(・・・・・・・・)
しかしその現象は別の力によって中和され、何も無かったかのように元に戻る。その結果にソレは怒るわけでも無く、悲しむ訳でもなく。代わりに二度、手を天に伸ばすが、今度は空間の歪みは起きない。しかし満足したのか、手を下ろした。


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第28話 平和な会話

ふとスマホに眠りっぱなしのドルフロのマークを見て、一つ思った。

「ドルフロの世界にEDF武器をブチ込んだらどうなるんだろう?」と。

…とは言ってもドルフロの知識がほぼ無いし(序盤で肌に合わずそれ以降眠りっぱなし)、なによりストーリーが閃かない。
活動報告にリクエスト受付所置いとくので、酔狂な人がいれば是非御一考を。ストーリーが思い付けば短編でも書く…かもしれない。


中央歴1640年11月某日。その日のEDF日本支部の本部は、ほんの少し忙しくなっていた。

 

その理由は、先日訪れてきた第一文明圏列強国 ミリシアル帝国の使者団が、先進11ヶ国会議の参加要請と国交開設の前準備の為に、EDF日本支部にやって来た事から始まった。

 

前もってフィルアデス連邦にある連絡館を通じて「使者団を貴国の本国に派遣したい」という話がやってきて、EDF日本支部はそれを了承した。そして約1週間後、「天の箱舟」と呼ばれる魔導航空機の一種であるゲルニカ35型で日本列島九州地方の南西700kmまで接近した。その後はEDF空軍のファイター2機の誘導を受けつつ、九州地方のEDF九州基地の滑走路に着陸した。

まずは長いフライトを終えた使節団一行の疲労を癒す為、福岡市のあるホテルで一泊したのち、本部から派遣された情報局員との交流会が行われた。機密(フォーリナー大戦関連)に触れない範囲での説明が行われ、その後は食事会を行いながら使節団と情報局員との軽い会話を挟んだ後、数日を掛けて九州地方の一部を見学し、その技術力の高さにミリシアル帝国の使者団のプライドをズタボロに引き裂いた後、使者団は情報局員との会議にて、本題の内容を打ち明けた。

ちなみにだが、何故EDF日本支部はわざわざミリシアル帝国の使者団のプライドをズタボロにするような事をしたのかというと…まぁ早い話が平和的砲艦外交である。言葉の意味は異なるが、要は技術差を見せつけて「決してこの国は格下などではない」という認識をさせる事を目的としたのだ。この世界は既存の枠組みによって明確に区別…というより差別されており、EDF日本支部は最も弱い第三文明圏、それも文明圏外と言われる地域に位置している。それ故にこの世界では最強の国家だと謳われているミリシアル帝国に舐められるようであると後々面倒な事が起こると判断し、平和的ではあるが手荒い歓迎を行なったのだ。…実際の所、要塞戦艦ヤマトという分かりやすい物は既に見せつけていたのだが。

 

話を戻そう。

ミリシアル帝国の使者団から先進11ヶ国会議に関する説明を受け取った代表情報局員は、即座の回答は差し控えこそしたが、翌々日には先進11ヶ国会議の参加は正式に決定され、代表情報局員を通じて使者団に通達された。

ミリシアル帝国使者団の帰国後、EDF日本支部は先進11ヶ国会議の参加準備を少しずつ始めた。先日11ヶ国会議の固定参加国、つまりはこの世界の列強の一つとして認識される以上、生半可な戦力で出すのもあまり良くない。それにパーパルディア戦争で既に各国に要塞戦艦ヤマトの姿は露見している。これを使わない手はない。

その為に現在艦隊の調整や先進11ヶ国会議に参加させる人員の調整を行なっている。他のそれらと比べるとだいぶスローペースだが、それまでの期間がかなり長い為、ゆったりとしたペースで行われているのだ。

 

 

 

 

 

 

EDF日本支部の一室。そこでEDF日本支部司令長官である大石は今日も大量の書類と戦っていた。

EDF日本支部の最高権限を持つ彼だが、同時に日本列島を統治する統治者でもある。その為に軍民問わず彼の採決を必要とする書類が毎日届く故に、その仕事量は単純計算でも普通の政治家の約2倍の量の書類を毎日捌いている。正直言ってここ最近は、軍の書類の一部は副司令に回せるようにした方が良いんじゃないかとも思いつつもあるが、そんな事を思っても目の前の書類は減る訳が無い為、黙々と吟味と書類の判子やサインを続ける。

そんな作業を小一時間程やっていた時、机の端に置いていた時計からアラームが鳴った。

 

「もうそんな時間だったか…」

 

書類作業を一旦中断。机にあるいくつかの書類の束を端に退けて、服装の乱れがないかを確認。そして椅子に再び深く座り直し、準備を整える。

1分後に再びアラームが数回鳴り、天井に設置された空間ディスプレイが起動。司令の前方の空間に映像が投影される。

 

その映像に映し出されたのは、グラ・バルカス帝国の帝王 グラ・ルークス。

 

『…相変わらず机に書類の束が見えるな、オオイシ司令』

「この程度の量ならまだいい方ですよ、グラ・ルークス帝王」

 

開口一番、やや呆れた表情で机の端に退けられた書類の束達について言及された司令は、苦笑いで応える他なかった。

今日は、月に一度行われているEDF日本支部とグラ・バルカス帝国両国の最高権力者の定期連絡の日であった。大まかな内容は国内やその周辺国の動きに関する情報共有、要塞化に関する相談等の実務的な話もあれば、プライベートな話や他愛もない話など、息抜きを兼ねた会話などを行なっていた。

 

我々(EDF)には現在、特に緊急性を帯びた事態は発生しておりません。が、それとは別に第一文明圏列強国である神聖ミリシアル帝国より使者団が来訪し、先進11ヶ国会議という国際会議への参加要請を受けました」

『…其方もか。我が国にもミリシアル帝国の使者団がレイフォル地区に来訪し、我々も参加するよう要請してきた。大方、我々が滅ぼした列強国の穴埋めだろうな。収集された情報によると、その先進11ヶ国会議は本来今年行われる予定だったが、来年に延期されたらしい。まぁ、この世界の列強が1年で二つも倒れればそうもなるか』

「…先進11ヶ国会議の参加要請に対して、我々は受諾する事にしました。此処で参加せず、第一文明圏及び第二文明圏諸国に侮られるような事になれば、今後に影響すると思われます」

『だな。はっきり言って我々にそこらの他国に構っている暇など無いが、必要ない喧嘩を売られても面倒極まりない。気乗りはしないが、何方が上なのかをハッキリとさせておくべきだろうな』

「それならば、共同声明でも発表してみます?我々が既にそう言った関係だと言い切るのも抑止力の一つとなりましょう」

『…いや、それはやめておこう。あまり圧力をかけ過ぎても話が拗れる時もある。砲艦外交だけで充分だろう、が…我々も其方に負けぬようにしなければな』

「お手柔らかにお願いしますよ」

『1800mの巨大戦艦を持つ者が言う台詞では無いだろうに』

 

グラ・ルークスが少し笑い、大石もそれに釣られて頬が緩んだ。

 

「…他に共有するべき議題もないようですし、これで失礼致します」

『そうだな。…悪い事は言わんから、書類の処理方法は見直すべきだぞ』



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第29話 始まり

あれ、ドルフロってこんなに面白いゲームだったっけ…?


先進11ヶ国会議。

 

神聖ミリシアル帝国の港町カルトアルパスにおいて、2年に1度開催される各文明圏の有力な文明国による国際会議であり、世界に多大な影響力を持つ大国が参加。参加国のみが今後の世界の流れを提案して議論し、決定することができる。

それは参加するだけでもこの世界では名誉なことであり、世界中から「大国」として認識される。

 

しかし今回の先進11ヶ国会議は、今までと少々勝手が違う。

前回まで先進11ヶ国会議の固定参加国として参加していた第二文明圏列強国レイフォル、第三文明圏列強国パーパルディア皇国が相次いで滅亡。レイフォルの領土と周辺国家は相次いでグラ・バルカス帝国の植民地となり、パーパルディア皇国はイーディーエフの属国として建国されたフィルアデス連邦の領土と化した。僅か1年で前回制定した世界運用の方針は完全崩壊し、主催国の神聖ミリシアル帝国は急遽、イーディーエフを固定参加国として、グラ・バルカス帝国は暫定的な参加国としてそれぞれ招待。両国はこれに応え、先進11ヶ国会議に出席する事も決定している。

 

彼らを除く世界各国は、今回の先進11ヶ国会議は荒れるだろうと予感していた。

 

 

 

 

 

 

中央歴1942年4月22日。

神聖ミリシアル帝国 カルトアルパス港。

第一、第二文明圏内に於いては有数かつ広大な規模の港湾機能を持つ。その規模は、「神聖ミリシアル帝国の第二の心臓」と例えられる程である。故に其処は中央世界の貿易拠点となり、世界中の商人たちの生の声が聞けるため、その手の者達からは様々な情報が飛び交いスパイが集まる町としても知られる。

それはさておき、主催国の領土かつ大規模な港湾機能を持つこの都市は、先進11ヶ国会議に最適な開催地として選ばれており、今年も港湾は大賑わいとなっている。港湾管理者の元には、先進11ヶ国会議参加国の軍艦の情報が、次々と集約されてくる。

港に着いた艦は、魔導通信具を持つ港湾作業員が連携して誘導、着岸させていく流れだ。

 

『第一文明圏トルキア王国軍、到着しました!戦列艦7、使節船1、計8隻』

『了解、第一文明圏エリアに誘導せよ』

『続いて第一文明圏アガルタ法国、到着。魔法船団6、民間船2』

『了解、先に到着したトルキア王国軍船団の隣に誘導せよ』

「…この辺りのは代わり映えせんな」

 

魔導通信具からの報告を聴きながら、港湾管理者のブロントは、カルトアルパス港管理局の窓から港湾の様子を眺めていた。

軍艦が好きな彼にとって、この行事は仕事であると同時に祭りのようなものである。

 

「此処に第零式魔導艦隊がいれば、各国の艦隊も貧相に見えるだろうな」

 

第零式魔導艦隊とは、神聖ミリシアル帝国海軍が誇る精鋭艦隊。最新鋭艦が配備される花形の艦隊であり、神聖ミリシアル帝国の強さの象徴でもある。普段はカルトアルパスを拠点としているのだが、今日からは先進11ヶ国会議の場となる為に、この時期になると西にあるマグドラ群島にて訓練航海を行うのが恒例となっている。自国の誇りの象徴を他国に見せ付けられないのを残念に思いつつも、次の艦隊を待つ。

ブロントは今回、どんな艦を送ってくるのか楽しみにしている国が2つある。

 

一つは、西の列強国レイフォルを落とした新興軍事国家グラ・バルカス帝国。

一つは、第三文明圏列強国パーパルディア皇国を解体、滅亡に追いやった謎多き国、イーディーエフ。

 

両国とも一体どのような艦隊で来るのか、この時点で彼の胸の高まりは止まらずにいた。

アガルタ法国の船団が全艦着岸したその時。岬の塔の監視員が突然通信越しにわめき始めた。

 

『な、何だあれは!?』

『あれは…艦、なのか?だとしてもあれは…!!』

「…?」

 

ブロントは、部下の通信員に対し、確認をとるように手振りで指示する。

 

『此方アルトカルパス港管理局、報告は適切に行え。何が見えた?』

『それが…艦が、巨大な艦が空を飛んでいます(・・・・・・・・・・・・・)!!

『…は?なんだって?』

『自分達だって信じられないです!だけど、だけどそうとしか言いようが無いんです!水平線からはとてつもなく大きな艦が見えます!なんて大きさなんだ…!?』

 

監視員からはおよそ要領を得ない報告しか返って来なかった。…が、しばらく待つと、その理由が見えて来る。それを見た、誰もが絶句した。

 

 

艦が、空を飛んでいた(・・・・・・・)

最初は遠目だったからスケールはよく判らなかった。しかし近付けば近付く程それは露わになる。300mを余裕で超えたその巨体は、船体下部から青い光の筋を複数出しながら、悠々と空を移動。その艦に集約された技術力を、周囲に存分に見せ付けている。そしてゆっくりと降下を始め、各国船団及びカルトアルパスの市民達の視線を浴びながら、着水する。

 

『…グ、グラ・バルカス帝国、到着。飛行、戦艦、一隻のみ…』

『………………了、解。第二文明圏エリアに…入る、のか?あんな巨体が』

『兎に角、誘導しよう。各人は出来なかった時に備えて代用案を考えておけ』

 

全ての視線を奪ったその戦艦の名は、「ヴァーベナ」

アグレッサー大戦後、グラ・バルカス帝国が「全世界反攻作戦」に向けて建造した決戦兵器の一つであり、全長502m、全幅280mの三胴飛行戦艦(・・・・)である。主な武装は51cm3連装レーザー砲2基6門、カノン砲16門、連装メーザー砲8基、9連装多目的ミサイル発射機。そして左右の胴体には空母機能が備わっており、小規模ながら航空戦力を展開する事も出来る。当時、ヴァーベナに想定された主な任務は全世界反攻作戦に於いて、各大陸に上陸した各陸軍部隊に対して強力な砲火力を提供し、簡易的な航空戦力の補給ポイントとなる事だった。しかし転移後、ヴァーベナが出撃するような任務が無くなった為、暫くの間は訓練航海以外に使われる事が無かった。だが、今回の先進11ヶ国会議に派遣するのに最適な艦であるとして、ようやくこの世界で日の目を見る事となった。

 

着水したヴァーベナは、誘導に従って悠々とカルトアルパス港に入港し、着岸作業へ。先の飛行能力に加え、51cm砲という第一、第二文明圏に於いての最大主砲が2基、陽の光に当たって誇らしい存在感を放つ。

ヴァーベナの存在感は余りにも強烈。既に着岸したトルキア王国の戦列艦隊やアガルタ法国の魔法船団がオモチャ同然に映る。

 

「…長、ブロント局長!」

「あ、ああ。何だ?」

「イーディーエフの艦が見えます!戦艦一隻のみ、ですが信じられない大きさです!」

 

双眼鏡で、沖合を確認する。

 

「……………………は?」

 

そこには、目測でもおよそ幅400mもの超巨大艦が航行していた。あまりのスケールの大きさに、逆に目測が困難な程だ。

やがて近づいて来たそれは、もはや一個の島と言っても良いだろう。大雑把に見ても全長1500m以上、幅500m以上。前後に80cm以上の単装砲を2門備え、機銃代わりと言わんばかりに10cm三連装砲や36cm連装砲がハリネズミのように設置されている。普通に航行しているだけなのに、その巨体故の規格外な排水量の影響で、その艦…要塞戦艦ヤマトから後方の海が多少荒れている。カルトアルパス港に近づくと、港湾設備への影響を考慮してか速度を落とし、僅か数ノットの速度で近づいて行く。

 

『………管理局、この艦はどうしたら良い?』

『…あー………そう、だな………少し待ってくれ。向こう側も港に入らないのは自覚しているだろう。向こうから動き出すかも知れない』

 

そうした通信をしていると、要塞戦艦ヤマトはカルトアルパス港の手前で停止。船体後部のハッチが動き出し、中からブルート2機が離艦。そのままカルトアルパス港の開いた場所に着陸し、外交団が降り立った。

 

「…とんでもないことになったな」

 

 

 

 

 

 

カルトアルパス港町北部 帝国文化館。

その建物はカルトアルパス港町の行政庁舎として建てられた、ミリシアル帝国の国力を示すかのように豪華絢爛に作られた建物である。EDF日本支部の外交団として送られてきた情報局員の近藤と井上は、帝国文化館の別棟にある国際会議場に足を踏み入れる。自分たちの着席場所を確認した後は、開始までの空いた時間をロビーで潰す事にした。

先進11ヶ国会議は数日に及ぶ。前半は外交担当の実務者級の会議が行われて話を詰めた後、後半で外務大臣級の代表会議によって意思決定が行われ、終了する。

 

「…あと少しで始まりますね。一体どうなるのか」

「さてな。我々と同盟国(グラ・バルカス帝国)以外はこの世界の運用に関する会議を進めるだろうが、我々にそんな余計な事をしている時間も余裕も無い。我々は我々の意思をハッキリと示す。その上で我々に敵対を望むのなら、応えるだけだ」

「そうですね…しかし、こんな無駄に豪華な建物、我々の世界じゃ絶対に見れませんね」

「そうだな。もし民間であってもこんな建物を建てようとすれば、即座に我々(EDF)が阻止するだろうな。たかが虚飾の為に資源を浪費するなど、許すわけが無いだろうし」

 

そんな話を暫くしていたら、まもなく時間だという館内放送が入る。各国の外交団は国際会議場に集まり、着席した。

議長席が並ぶ舞台を中心に、同心円上に席が設えた場内。全員の着席が完了した事を確認し、アナウンスが流れた。

 

『これより、先進11ヶ国会議を開始します』

 

世界の流れを決める会議が、始まった。

 

 

 

 

 

 

大気圏外。

EDF日本支部の軍事衛星ライカは、神聖ミリシアル帝国の観察任務の為に、ミリシアル帝国の直上にて周辺観察を行っていた。先進11ヶ国会議中、何か不測の事態が起きた際に即座に情報が手に入るよう、この日に合わせてライカは移動をしていたのだ。

…とはいえ、暫く観察していても特に不審な点は見当たらない。AIであるが故に少々暇になってきた彼女は、久し振りに宇宙観察にも少しメモリーを割く。ここ暫くの間は、この世界に現住するワイバーンなどといった特殊生物の衛星観察に勤しんでいた為、趣味の宇宙観察が出来ないでいたのだ。任務外の行動ではあるが、宇宙局も彼女の性格は分かってる為、この程度の事は特に問題視していない。

主任務を忠実にこなしつつ、片手間に宇宙観察を開始したライカ。宇宙の海も、いつも通り星々が綺麗に輝いているだけで

 

 

──?

 

 

違和感。彼女のAIは、一つの恒星の輝き方に不審を持つ。宇宙観察のデータを洗ってみたが、暫く時間が経っているとはいえ、それにしても前回の観察の時と比べておかしい事を断言できる。

メモリー配分を変え、少し集中的に観察を開始する。カメラのズーム機能をより高倍率化していき、違和感の正体を探る。が、メモリー配分の影響で画像が少し荒くなってきた。しかしまだ致命的な問題ではない。更に高倍率化。

そして、発見。恒星の輝きに隠れ、何か円形の物体が2つ、存在している。しかし不鮮明な画像によって詳細が判別不可。更にメモリー配分を変え、より集中的に観察を開始。

画像解析。2つの物体の他に、小型の物体が多数。200以上。

少しずつ、少しずつ荒れていた画像が鮮明に映り始める。

 

そして。

 

 

 

──!!

 

 

 

その物体の正体を正確に把握した彼女は、コンマ1秒と経たずにEDF日本支部に対して「コードF」を発令。同時にコードF発令に伴う緊急状況下特例権限解除により、軍事衛星ライカとして全武装の使用制限が解除された。

 

「コードF」。その言葉が意味する事は、ただ一つ。

 

 

 

 

 

フォーリナー、再襲来。




WARNING WARNING WARNING

-緊急状況報告レポート 自動更新-
状況:
即時出動態勢
陸軍:
全部隊スクランブル展開中
空軍:
全部隊スクランブル展開準備完了、即時出動可能
海軍:
第3艦隊、第4艦隊、第5艦隊は緊急出航準備中
第7艦隊は対宙迎撃戦用意
第7艦隊旗艦 要塞戦艦ヤマトは現在緊急出航準備中
基地:
東京基地、大阪基地、札幌基地、九州基地は現在、対宙ミサイル テンペストSA1タイプO発射準備中
避難状況:
進行度は現在2%、陸軍部隊による迅速な避難シェルターへの誘導が求められる
通知状況:
グラ・バルカス帝国へ緊急通信準備中
フィルアデス連邦へ緊急通達準備中

敵戦力:
現在判明している時点ではマザーシップ2、輸送船400
予測到達時間:
詳細は現在解析中、現時点では24時間以内に大気圏に突入する可能性が高い、迅速なる解析を求む

最優先目標:
大気圏突入前にフォーリナー船団を殲滅せよ
最低限目標:
大気圏突入前にマザーシップ2機を撃墜、輸送船団を可能な限り撃墜せよ

第3艦隊、第4艦隊、第5艦隊、第7艦隊、東京基地、大阪基地、札幌基地、九州基地へ通達:
対宙迎撃戦用意、テンペストSA1タイプO、テンペストミサイルA0、100cm磁気火薬複合加速方式艦砲、発射準備


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第6章 第二次フォーリナー大戦 第30話 対宙迎撃戦用意

第6章メインテーマ曲
EDF:IRより「Drinks On Me〜 絶対防衛線」


サイレンが絶えず鳴り響く。

廊下を何人もの局員が走り回り、サイレンに負けぬ音量で怒号が響く。

 

「急げ急げ急げ!情報を少しでも早く、少しでも多く掻き集めろ!」

「くそ、冷却システムに異常!?なんだってこのタイミングで!!工作隊聞こえるか!?D-15の冷却システムを点検してくれ!」

「避難はどうなってる!」

「現在92%!間も無く完了します!」

「札幌より対宙迎撃戦用意完了との報告です!」

「分かった、別途指示あるまで現状待機しろと伝えておけ!」

 

「大石司令長官、入ります!」

 

刹那。ドアを破りかねない勢いでドアが開き、第1オペレーティングルームに大石が入室する。

 

「状況報告!」

「フォーリナー船団、現在も接近中!マザーシップ2、輸送船400!大気圏突入までの推定時間、24〜18時間!」

「クソッ短過ぎる…!対宙迎撃戦用意と避難はどうなっている!?」

「避難進行度95%!札幌、東京、九州基地、第7艦隊は対宙迎撃戦用意完了!第3、第4、第5艦隊は日本列島周辺に展開中!要塞戦艦ヤマトは現在カルトアルパスより緊急出航準備中!間も無く緊急出航するとの事です!」

「急がせろ!!この世界の列強など気にするな!国際問題なんて物を気にしてる時間は無い!!」

「了解!」

「…堀田戦術士官、単刀直入に聞く。大気圏突入前に船団を殲滅する事はできるか?」

 

大石に問いかけられた堀田戦術士官は、少し考えた後に口を開く。

 

「…どれだけ最善を尽くしても極めて困難です。殲滅は不可能(・・・・・・)だという前提で動く他に無いかと」

「………クソッ、やはりか」

「我々は転移によって戦力の殆どと寸断されました。24基のリニアキャノン、9基のストーンヘンジ、2491基のテンペストSA1専用VLS、数千万の陸海空軍を失ったのです。あらゆる戦力が不足している中、この規模の船団を早期発見出来なかったのは痛恨の極み以外の何物でもありません。更なる問題は、対宙砲や対宙ミサイルが果たしてマザーシップに有効打になるのかも不透明…最悪の場合、一切の無傷で大気圏突入される可能性もあります。次に現有の対宙戦力に対する船団の規模です。マザーシップ2、輸送船400ともなると、最大射程圏内からの迎撃でも突破される可能性があります。マザーシップ2機ともなると、テンペストミサイルの迎撃確率も単純計算でも二倍となります…」

「…大気圏突入後、何処に降りるか分かるか?」

「現在の軌道を保ったままであれば、第一文明圏上空に降下します」

「射程内に船団が到達する時間は?」

「23〜17時間後です。惑星自転による迎撃射角外にならなかった事は幸運でした」

「………」

 

トン、と机を指で叩き、通信機を手に取る。

 

「全員に通達する」

 

一声。ただそれだけで全員の作業が止まり、大石の言葉を待つ。

 

「既に全員が把握しているだろうが、つい先程、自立衛星ライカが接近するフォーリナー船団を捕捉。緊急権限によるコードFを発令した。更なる解析の結果、フォーリナー船団はマザーシップ2、輸送船400だという事が判明している。大気圏突入推測時間は24〜18時間後、予測地点は第一文明圏と呼ばれる大陸上空。そして迎撃範囲内にて迎撃出来る時間は、僅か1時間だ。残念ながら、我々が現有している対宙戦力では大気圏突入までに船団を殲滅する事は極めて困難であるという結論に至った」

 

「つまり、我々は再び、この世界で奴等と戦う時が来たという事だ」

 

「フォーリナーは12年前より強大な戦力で我々の前に現れた。しかし我々も12年の時を経て成長している!我々の力を、奴等に存分に見せ付けてやれ!我々はお前達の「餌」では無いと、我々はお前達の「敵」だという事を教えてやれ!」

「我々が、我々こそが人類を守護する者(EDF)だと、世界に教えてやれ!各員の奮闘を期待する!」

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、カルトアルパス国際会議場。

 

「…分かった。直ぐに行く」

 

近藤は耳に付けていた小型ワイヤレスイヤホンから届いた通信を切り、机に出していた資料を片付け始める。

 

「…何がありました?」

「コードFが発令された」

「…っ!!!?」

「ヤマトも緊急出航準備に掛かっている。時間がない、直ぐに行くぞ」

 

チラリとグラ・バルカスの席を見ると、向こう側も事態を把握したのだろうか。少し慌ただしい様子が見える。

最後の資料をカバンにしまい、席を立つ。

 

「議長。突然で申し訳無いが、我々は途中退席させて頂く」

 

近藤の突然の発言に、会議場は騒めく。特にミリシアル帝国の代表と議長は、主催国としての面子を潰すような行為に最早不快感を隠そうとしていない。

それに加え、先程エモール王国の空間の占いにより「ラティストア大陸が復活する」という事が判明し、世界各国が対ラヴァーナル帝国戦争に向けて纏まろうとしていた矢先に、これだ。ミリシアル帝国のみならず、グラ・バルカス帝国を除いた他の国家も怪訝な表情をしている。

 

「…理由を聞かせて貰いたい」

「時間がありませんので、一度だけの説明となります。事実しか発表しませんが、これを信じるかは各人にお任せします」

 

「つい先程、大気圏外…上空から接近する惑星外侵略的存在、通称フォーリナーの船団を発見しました。我々は現時刻を持って、防衛戦争に向けた総力戦体制へと移行します。現在判明している時点で、既に我々の迎撃能力では船団の殲滅は困難であると判明し、そして、24〜18時間後には此処、第一文明圏上空に降下する可能性が高いです。故に、神聖ミリシアル帝国以下、第一文明圏各国に強く警告します。遅くとも24時間以内に、全軍の緊急配備及び全国民の緊急避難の準備を行ってください。フォーリナーの戦力は、我々が把握している限りでは、先程までに議題として上がっていたラヴァーナル帝国以上の脅威です。当然、唐突にこのような事を言われても信じきれないのは当然の事かと思います。しかし、どうか我々の警告を真摯に受け止めてくれる事を願っています」

「…それでは、失礼致します」

 

議長や各国代表の声を一切無視し、退室。早足でブルートの着陸地点へ向かい始める。

 

「動きますかね?」

無いな。そもこの世界に於ける我々の立場では発言権などまともに無いし、あったとしてもただの戯言として受け流されるのが関の山だ。12年前までの地球でさえも、せいぜい我々(EDF)を立ち上げるだけで限界だったのだからな」

「…しかし、我々の迎撃能力はかなり際どい。万が一輸送船1隻でも大気圏を突入し、第一文明圏に降り立てば…」

間違いなく、この大陸は地獄になる。しかもフォーリナー大戦の時と違って、この大陸の半分を支配するこの世界で最強のミリシアル帝国でさえも、基準はせいぜい第二次世界大戦程度(・・・・・・・・・)。そんな技術力と国力で奴等に敵うと思うか?」

「………」

「だからこそ、一分一秒が惜しい。我々に出来ることは一瞬でも早く配置に付き、一瞬でも長く準備を整え、一発でも多く対宙戦力を発射する事が今の我々の役目だ」

 

この世界を、少しでも地獄から煉獄に近付ける(・・・・・・・・・・・)そうすれば助かる命も一つくらいは増えるだろう(・・・)さ」




-緊急状況報告レポート 自動更新-
状況:
即時出動態勢
陸軍:
全部隊スクランブル完了
空軍:
全部隊スクランブル展開準備完了、即時出動可能
海軍:
第3艦隊、第4艦隊、第5艦隊は緊急出航完了、日本列島周辺海域に展開中
第7艦隊は対宙迎撃戦用意
第7艦隊旗艦 要塞戦艦ヤマトは現在緊急出航準備中
基地:
東京基地、札幌基地、九州基地は現在、対宙ミサイル テンペストSA1タイプO発射準備完了。大阪基地は冷却システムに問題発生、現在対応中
避難状況:
98%、まもなく完了
通知状況:
グラ・バルカス帝国へ緊急通信完了
フィルアデス連邦へ緊急通達完了

敵戦力:
現在判明している時点ではマザーシップ2、輸送船400
予測到達時間:
解析により、24〜18時間以内に第一文明圏上空にて大気圏に突入する事が判明

最優先目標:
大気圏突入前にフォーリナー船団を殲滅せよ
最低限目標:
大気圏突入前にマザーシップ2機を撃墜、輸送船団を可能な限り撃墜せよ

第3艦隊、第4艦隊、第5艦隊、第7艦隊、東京基地、大阪基地、札幌基地、九州基地へ通達:
対宙迎撃戦用意、テンペストSA1タイプO、テンペストミサイルA0、100cm磁気火薬複合加速方式艦砲、発射準備


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第31話 不意打ち

…ところで、第一文明圏の大陸名って原作で言及されてましたっけ?他にも色々な都市名考えないとなぁ…面倒だけど。

※前話のタイトル名を変更しました。


「ブルートの格納、完了しました!」

「後部ハッチ閉鎖、後進速力10kt!2分後面舵180の後、全速前進!」

 

カルトアルパス港の手前に停泊していた要塞戦艦ヤマト。その船体内部のCICは現在慌ただしく機械の操作音が鳴り響いていた。

岩下艦長の指示の元、ブルート2機を格納したヤマトはカルトアルパス管理局の通信を一切無視し(正確に言うと届いていない)、後進を開始。2分後、面舵によって船体をUターンさせた後、最大船速20ktで前進を開始。カストアルパスへの影響を一切考慮しない全力航海だが、ヤマトがいきなり空を飛んでパニックになるか、それともヤマトが20ktで海上を突っ切って周辺に少しの浸水被害を与えるか、何方が比較的マシか(・・・・・・)を冷静に天秤に掛けた結果だ。

 

「此方要塞戦艦ヤマト、たった今カストアルパス港を緊急出航した。迎撃ポイントの指示を求む」

『了解しました。解析の結果、最適迎撃ポイントはカストアルパスとマグドラ諸島の中間地点、西250kmの海域地点です。ライカの衛星偵察によると、マグドラ諸島にてミリシアル帝国の艦隊が確認されていますが、無視して構いません。万が一攻撃を受けた際には正当防衛許可(・・・・・・)を司令より受け取っています』

「…こんな時にそうはなりたくないものだな。ヤマト了解、これより急行する。通信終了」

 

日本支部と短い量子通信を終え、岩下は静かにIDキーを取り出し、コンソールの鍵口に差し込んで回す。すると不正規的手順が行われたと警告が表示するが、コンソールを操作して警告を強制シャットダウンさせる。

 

「…よろしいので?」

「主砲発射手順で短縮出来る手順は全て短縮しろ。奴等は我々の再装填を悠々と待ってはくれないぞ」

「了解。第1、第2安全装置強制解除。警告強制シャットダウン」

「カストアルパス湾口を出た後、進路を西に取れ。並行して全武装全システムの最終点検急げ。いざと言う時にトラブルなんて事態は笑えん」

「了解」

 

コンソールを操作し、周辺カメラに切り替える。ヤマトの後方から、離水を開始したヴァーベナが見える。

 

「艦長、グラ・バルカス帝国の飛行戦艦より通信です」

「繋げ」

 

岩下が通信機を手に取るのを確認し、通信手は回線を接続。一瞬のノイズが入り、声が聞こえ始めた。

 

『此方はグラ・バルカス帝国特別艦隊所属、飛行戦艦ヴァーベナです。聞こえますか?』

「此方EDF日本支部第7艦隊旗艦 要塞戦艦ヤマト。…其方も事態の把握を?」

『はい。つい先程、貴国からフォーリナー船団を発見したとの緊急連絡が本国に届き、我が国も全軍の緊急配備を進めています。…我が艦には対宙迎撃能力が無い為、援護する事は出来ません。…ご武運を祈ります』

「…ありがとうございます。全力を以って迎撃し、奴等に一泡吹かせてやりますよ。通信終了」

 

通信を切り、再び周辺カメラの映像を映している画面を見る。ヴァーベナはそのまま旋回しつつ上昇及び加速を開始し、一足先に西…グラ・バルカス本国へと向かっていったのだろう。

画面を切り替え、戦略画面に切り替える。そこには、簡易ながらも正確にフォーリナー船団と惑星の縮図が表示されており、画面左上には迎撃射程圏内突入までの残り時間が表示されている。

 

「…無血上陸出来ると思ったら大間違いだぞ、フォーリナー」

 

 

 

 

 

 

同時刻、マグドラ諸島。

 

『…という事です。第零式魔導艦隊はイーディーエフの超巨大戦艦を捕捉、遠距離より監視をお願いします』

「…了解。これより第零式魔導艦隊は訓練航海を中止し、超巨大戦艦の捜索を開始する」

 

魔導通信を切り、第零式魔導艦隊司令官のバッティスタは軽く頭を抑える。総司令部からの通信の内容は、大雑把に言うと

 

「イーディーエフとグラ・バルカス帝国が先進11ヶ国会議を突如途中退席し、2ヶ国の超巨大戦艦と飛行戦艦が無許可でカストアルパス港を出港した。世界を牽引する我が国としては、最早2ヶ国の蛮行をこれ以上見逃す事は出来ない。第零式魔導艦隊は訓練航海を中止し、西に向けて航海するイーディーエフの超巨大戦艦を捕捉、これを可能な限り監視せよ」

 

…といった具合である。要は「自分勝手に動く2ヶ国を第零式魔導艦隊で牽制しろ(無茶振り)」といった所である。総司令部もかなりの無茶振りを振ってるのも自覚していたのか、追跡するのは要塞戦艦ヤマトのみであり、機動力が高いヴァーベナはこの際無視して良いとの指示も出た。そして捕捉時も、決して無茶だけはしないようにと念押しもされた。

何故こんな無茶振りな指示が出されたかと言うと、簡単に言えば政治家達の指示である。魔導至上主義…いや、この場合は「自国至上主義」と例えればいいか。兎も角、「我が国(ミリシアル帝国)こそ最強の国家である」と盲信的に主張し続ける一部の者達が、先進11ヶ国会議の際に取ったEDF日本支部とグラ・バルカス帝国の途中退席に対して「蛮族の愚かな行為によって我が国を辱めた」激怒。人脈を利用し、独断で総司令部から第零式魔導艦隊を動かす事を命令したのだ。

当然、そんな思考の彼等はEDF日本支部情報局員の近藤が先進11ヶ国会議にて発した警告を「蛮族の妄言」と切って捨てた。

 

(全く…自分達は血を見ない事を良い事に、自分勝手な事を…)

 

総司令部の命令の裏をうっすらと察していたからこそ、力の裏で繁殖している政治の腐敗っぷりにバッティスタは頭を抑えていた。しかし、直ぐに気持ちを切り替えて、自らの指揮する艦隊に下命を行い始める。

そしてバッティスタの命令に従い、魔導戦艦3隻、重巡洋装甲艦2隻、魔導船3隻、小型艦8隻、計16隻から成るミリシアル帝国最強の艦隊は見事な艦隊運動で進路を東に転針。その誇りを胸に、海上を突き進み始めた。

 

 

 

 

 

 

グラ・バルカス帝国 帝都ラグナ。

アグレッサー大戦によるインフラ崩壊、そしてアグレッサー大戦によって新たに生まれた新インフラ整備により、産業による排気ガスが殆ど削減された結果、大気は清浄となって綺麗な空が見えるようになった。

 

その中心地域に存在する帝王府の地下に存在する、グラ・バルカス軍総司令部。そこに、グラ・ルークス以下重要人物の各員は集結していた。

 

「各地の臣民の地下シェルターへの避難、完了しました」

「そうか…遅くとも24時間後には、フォーリナーが大気圏に突入すると。間違いないな?」

「間違いありません」

「…」

 

およそ2時間前、グラ・バルカス帝国はEDF日本支部からの緊急連絡(フォーリナー襲来)を受信。そして彼等も同じく全国に緊急事態宣言を発令。臣民の避難と全軍の緊急配備が行われた。良くも悪くも5年にも及ぶ戦争の慣れ(・・)によって、その速度はEDF日本支部にも全く劣らぬ速度で完了する事となった。

 

しかし、彼等にそれ以上の事は出来なかった。何故かと言うと、彼等が戦ってきたアグレッサーの船団はワープ機能を備えていた為、EDFとは異なって対宙兵器を開発する必要性が低かった。仮に対宙兵器を作ったとしても、アグレッサーは対宙兵器の有効射程を無視して至近距離までワープされてしまうからだ。

だが今回の場合、敵が来ると分かってても迎撃に参加出来ないという、むず痒い状況となってしまっていた。

 

「…」

 

ルークスは長考の為に閉じていた目を開き、1人の女性を見やる。

 

彼女は、その部屋にいる人物の中では特に目立つ格好をしていた。

彼女が着込む服装は本来偵察部隊の為の軽量服で、服そのものに防御力は大して備わっていない。そしてその上から装着されている戦闘用強化外骨格 PAギアのタイプはアグレッサーとの至近距離戦闘を主眼に置き、防御力を犠牲にして機動力を高めた「プロールライダー」。彼女のPAギアはそこから更に改造し、防御装甲を殆ど取っ払ってしまっている。つまり彼女の装備に、防御力は殆どないと言って良いだろう。「防御力」として存在するのは、PAギアから生み出されるナノマシンによる瞬間的な修復再生のみだ。ここで言っておくが、PAギアによる肉体再生中は完了するまで凄まじい激痛(・・・・・・)が装着者の身体を蝕む。下手をすれば半身を吹き飛ばされても死ぬことが出来ず(・・・・・・・・)身体が激痛と共に再生されていく生き地獄(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)を味わう事になる。しかし彼女は、そのリスクを充分に許容できる(・・・・・・・・)と割り切っている。実際、その機能が無ければ彼女が今生きていないのは事実ではある。しかし、それは逆説的に「通常では死ぬ事が出来る負傷」を何度も負ってきたという事にもなる。その苦しみを耐え、その地獄を耐え、彼女は戦ってきた。そうして育まれた精神力は、最早人としての箍を外してしまっていた(・・・・・・・・・・・・・・・・)。しかしそれ故に、彼女はあの戦場を駆け抜け、あの戦争の希望の象徴となった。

 

 

生まれるべくして生まれた英雄(化物)。その権化たる彼女の名は。

 

 

「…クローサー」

 

 

ルークスが発した、ゆっくりと、しかしハッキリと紡がれた名前。それに反応し、ワイヤレスイヤホンを嵌めていた右耳に当てていた右手を下ろし、時の皇帝に身体ごと視線を向けた。

 

「ブラストチーム、全部隊展開準備完了」

「では、命令する。ブラストチームはこれより遊撃に備え、特別遊撃艦隊旗艦に搭乗せよ」

「…帝都の護りは?」

「問題ない。お前達をこの帝都に縛り付けるより、遊撃部隊として機能させる方が効果的だ。お前達を超える程に有力な陸戦部隊は我が国には存在しない」

「了解。これより任務に就く」

 

彼女…クローサーはグラ・ルークスに敬礼し、数秒後に体勢を解くと早足でその部屋を退室した。廊下を歩く最中、彼女は再び部隊へ通信を取る。

 

「ブラストチームに通達。我々は特別遊撃艦隊旗艦に搭乗し、遊撃に備える。各自輸送機に搭乗せよ」

『此方ブラスト2、了解した』

『此方ブラスト3、りょーかい』

 

 

 

 

 

 

こうして、EDF日本支部とグラ・バルカス帝国は対フォーリナーに備えて急速に態勢を整えていた。

EDF日本支部は日本列島を中心にフィルアデス連邦(大陸)、ロデニウス大陸の守りを固め始め、グラ・バルカス帝国は帝国本土を中心に、第二文明圏植民地の守りを固め始めた。

究極的に言えば、対宙迎撃でフォーリナー船団を殲滅出来ればそれ以上に幸せな結末は無い。だが「侵略的存在」を良く知る彼等は、そんな甘い結末で奴等は終わりやしないと直感していた。だからこそ、思い付く限りの手段を用意し、思い付く限りの備えをし、考えつく限りのシミュレートを計算し、考えつく限りの対策を練る。

 

そういう時に限って、最も来て欲しくない現実が来てしまう時だって、存在してしまう。

 

その兆候を最初に発見したのは、両国のオペレーターの1人だった。

戦略レーダーに、突如現れた不審なエネルギー反応。当然2人はすぐさまそのエネルギー反応の解析を開始する。それは、ものの3秒と経たずに解析を完了し、結果を表示した。ここまで解析が早かったのも、単に両国が共有したデータベースの中に、その反応と全く同じデータが存在していたからだ(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

警告音と共に表示されたその結果を見て刹那、オペレーターの彼女達は全く同時に、ほぼ同じの言葉をあらん限りの声量で叫んだ。

 

 

 

日本列島(帝国本土)上空、ワープアウト反応多数ッ!!!!』

 

 

 

その時。

 

彼等の空の上。何も無かった青空を切り裂き。複数の無骨な菱形の飛行物体が、紫色の光を纏って突如として現れた。

それは、何も彼等の所の話だけではない。ロデニウス大陸、フィルアデス大陸、ムー大陸、中央世界、南方世界。彼等が認識する「世界」のほぼ全域に、ほぼ同時に、彼等はやってきた。

EDF日本支部の対宙監視を完全無視し、全くその存在を悟す事なく、直前のエネルギー反応まで全く姿を現さなかった、反則的手段

そんな芸当を行える存在を、グラ・バルカス帝国はよく、知っていた。知っていたからこそ、「よりによってこのタイミングで」と思わず毒づいた。

 

中央歴1942年4月22日 午後2時37分。

 

 

アグレッサー、全世界急襲。




現在の状況
フォーリナー「やっほー」
アグレッサー「ヒャア 我慢出来ねぇ ワープだ!」
EDF日本支部「ちょっ!?」
グラ・バルカス「ふざけんな!?」
現地国家達「えっ…えっ?」(大惨事不可避)


用語紹介
クローサー
EDF:IRの主人公。本作ではグラ・バルカスの親衛隊「ブラストチーム」の隊長を務めている。アグレッサー大戦勃発時は兵士ですら無かったが、あるキッカケによって年齢を詐称して(・・・・・・・)グラ・バルカス軍に入隊。当初は単なる一兵士に過ぎなかったが、戦いを経ていく事に彼女は成長(狂化)。本土防衛戦…シルマグナ防衛戦時には決戦戦力「フレア大隊」の1人として出撃。戦闘中、ハイヴクラフトの主砲によってフレア大隊は彼女を除いて壊滅する。フレア大隊唯一の生き残りとなった彼女は、敗走する味方部隊の時間を稼ぐ為、再びハイヴクラフトへ特攻。その結果、彼女はハイヴクラフトの撃墜に成功する。
アグレッサー大戦後、彼女はグラ・バルカス帝国の救世主として讃えられる事となり、グラ・ルークスから直々に勲章を授与した他、皇帝親衛隊隊長として任命されるなど、グラ・バルカス軍人として最高の栄誉を承った。…彼女自身は、そんな栄誉など一切気にしなかったが。
ちなみにEDF:IRを持ってる方ならば、以下の設定をすれば本作のクローサーの姿に限りなく近く設定出来る。(正直キャラメイクには殆ど拘りが無いけど)
性別:女性
体格:タイプ2
声:ボイス1
髪:10(本当はロングヘアー。IRにはロングヘアーが無かった)
ヘアカラー:18
顔:8
体カラー:2
目:2
服装
頭部、アクセサリー:なし
上下:軽装戦闘服カモミール8
PAギア
プロトタイプ・プロールライダー

ブラストチーム
アグレッサー大戦後、グラ・ルークスがクローサーの為に作った特別親衛隊。名誉ばかりが先行していると言うわけではなく、寧ろ切り込み部隊としては最強クラス。主に3個分隊で活動するが、作戦規模によっては、他の部隊をブラストチームの臨時指揮下に編入する事が出来る独自権限を持つ。


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第32話 対宙迎撃戦闘

地上はアグレッサーのレイドシップの大群が現れた。
フォーリナーに対する対宙迎撃作戦は、殲滅出来る可能性は決して高くない。
そして我々に逃げ場などは存在しない。

状況は最高(・・・・・)全部隊、死力を尽くせ。


─対宙迎撃戦勃発直前、大石司令長官による全周波通信記録─



なんの前触れも無く、全世界に現れたアグレッサーの輸送船…「レイドシップ」の飛行船団。

飛行船団は、無機質に、容赦無く地上戦力の投下を開始。巨大生物はひたすらに人を喰らい、機甲戦力は町々を破壊していく。その速度はレイドシップの持続投下によって、破滅的速度で惑星を侵食していく。

僅か十数分で、「世界」の人口の数%が失われ、殆どの国はその状況にマトモな対処法を取ることが出来ずにいた。

そして宇宙(ソラ)からは、フォーリナーの大船団。

この破滅的状況の中、まともに戦う事が出来た国は。

 

 

僅かに、5ヶ国だけだった(・・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一番の最善手を打つ事が出来たのは、EDF日本支部及びグラ・バルカス帝国。

当然といえば当然。彼らは良くも悪くも惑星外侵略的存在の類のエキスパート。そして、アグレッサーの全世界急襲から僅か数時間前に、フォーリナー船団を発見した事もあり、結果的に彼等は万全の臨戦態勢でアグレッサーと開戦する事が出来た。はっきり言ってこれはEDF日本支部にとって「不幸中の幸い」だ。もしも接敵の順番が逆であれば、EDF日本支部は無防備状態でアグレッサーと接敵する事になり、決して無視出来ない被害が出てしまっていたのは想像に難くない。

そして2つの星間戦争(蠱毒)によって生み出された幾多の兵器は、アグレッサーの出鼻を挫くにはちょうど良かった。特にグラ・バルカス帝国が帝国本土に築き上げたレーダー連動式自律対空レーザー砲群は、絶大なる威力を発揮した。固定式砲台であるが故に、小型核融合炉をエネルギー源とした膨大な火力は、都市部でワープ戦力投射を行おうとしたレイドシップを即時撃破し、グラ・バルカス帝国に出現した約60%のレイドシップをカウンター撃破する事に成功した。残る約40%は山間部など、防衛戦略上戦力をあまり配置出来ていないエリアに出現し、戦力投射を開始している。しかしそれらも、陸海空が連携した迅速な戦力投射によって順調に殲滅を行いつつある。

EDF日本支部はどうかというと、グラ・バルカス帝国程の勢いこそは無いものの、全体的には優位な戦局となっている。対アグレッサーの防衛網の構築は、時間が足りなかったために最初期迎撃の戦果はあまり無かったが、それでもEDF製兵器の威力は、実弾に限ればグラ・バルカス帝国製兵器を大きく上回る。更に対フォーリナーに備えて陸軍部隊を各地に分散配置していたお陰で、結果的に日本列島各地に出現したレイドシップを早期迎撃する事に成功。運悪く早期迎撃に失敗し、投下された巨大生物やアグレッサー兵器に関しては、空軍による徹底的な制圧爆撃により、周辺全てを巻き込んで殲滅を進めている。中にはフォーリナーの飛行ドローンに相当する自律兵器「アタックポッド」を吐き出しているレイドシップもあったが、それらも空軍のファイター、もしくは陸軍部隊の対空攻撃によって数を減らしている。

極端な話、敵が眼前に現れても先制を取って致命的一撃で殲滅出来れば、アグレッサーもフォーリナーも怖くは無い。ただ、それを行える状況や条件が果てしなく厳しいが。だからこそ、最善を打てるときはとことん打つ。街や兵器はいくら壊れても直せばいい。だけど命にそんな事は出来やしない。故に、徹底的に、巣を形成される前に、滅ぼす。それが、奴等に対する一番の戦略だ。

 

 

…だが、それを行える国は、この世界にはほとんど存在していなかった。

 

 

その例外は、主に2つの国家と2つの大陸。

フィルアデス連邦、神聖ミリシアル帝国、そしてロデニウス大陸とムー大陸。

 

まずフィルアデス連邦は、EDF日本支部が強力な支援を行っている国であり、その影響力は絶大だ。故にその宗主国の指示により、予め軍の展開と市民の避難準備は事前に行われていた為、人的被害は想定される最小限である人口の2%(520万人)の被害で済んだ。そしてフィルアデス連邦に配備されている武器は、最旧式とはいえど対フォーリナー兵器(・・・・・・・・・)であるという事実は変わらない。そしてアグレッサーの巨大生物は、相対的に見ればフォーリナーよりは弱い。故にフィルアデス連邦軍でも、下手に接近する事を避ければ十分に太刀打ち出来る。そして、フィルアデス連邦に建造された前線基地に留まっていた陸軍第4師団と空軍第7飛行団の奮戦も相まって、戦況はやや優勢となっていた。

ロデニウス大陸とムー大陸に関しては、防衛戦略上配置されていた両国の部隊によって戦況を劣勢程度に抑える事に成功していた。…列強国のムーは緊急事態であるが故にグラ・バルカス帝国軍の無許可越境をされる事になったが、最早そんな事を咎めている暇は無かった。

 

その両国の勢力範囲外である第一文明圏は、地獄となっていた。

ワープで第一文明圏上空に現れたレイドシップの船団は、何の迎撃も受ける事なく、ワープ戦力投射を開始。レイドシップによって第一文明圏に降り立ったアグレッサーの巨大生物「ストームアント」や「ボムビートル」、機甲戦力の「スコージャー」は第一文明圏の蹂躙を開始。一切の区別なく人類を殺戮するその存在に、僅か1時間で第一文明圏の人口は1割が失われた。しかし、この破滅的状況に神聖ミリシアル帝国はラヴァーナル帝国の置き土産と言われている古代兵器「空中戦艦パル・キマイラ」及び「海上要塞パルカオン」の全力投射を決定。現在の第一文明圏はパル・キマイラ5機とパルカオンの砲撃及び対空魔光弾によって各地のアグレッサーに打撃を与え、何とか破滅的状況(・・・・・)に押し留めている。が、これは古代兵器によるドーピングに過ぎず、それ以外はアグレッサーに太刀打ち出来ていない。外部からの強力な救援が無ければ、第一文明圏の滅亡は確実な状況となっていた。

 

しかし、それを行える国は現在一つ足りとも存在しない。

EDF日本支部もグラ・バルカス帝国も、宇宙より来たる天敵の迎撃に備えていたのだから。

 

 

 

 

 

 

「フォーリナー船団、10分後に迎撃射程圏内に突入します!!」

「全基地に通達、テンペスト発射用意!!目標、キャリアー(輸送船)!!並びに要塞戦艦ヤマトにストーンヘンジ発射用意を通達!!目標はマザーシップ・アルファ!!」

「通達完了!!…全基地の発射プログラミング終了を確認、余剰重複目標無し!!要塞戦艦ヤマト、照準開始しました!!」

「自立衛星ライカ、砲列発射用意完了!以後、独自タイミングで発射を開始します!」

 

迫るその時。対宙戦力はテンペストVLS324基、第3、第4、第5、第7艦隊、要塞空母デスピナ、要塞戦艦ヤマト、軍事衛星ライカ。

対するフォーリナーの戦力は、マザーシップ2隻、キャリアー400。

手数と射程はEDFが圧倒しているが、質はフォーリナーが上回る。

対宙迎撃時間は、僅かに1時間。僅か1時間で、フォーリナー船団を殲滅出来なければ、戦況は更に劣勢と成りかねない。相対的に見てもフォーリナーの戦力はアグレッサーよりも強大。輸送船1隻だけでも、脅威度は極めて高い。

 

だからこそ、此処で、なんとしても、すり潰す。

 

「要塞戦艦ヤマト、砲撃準備完了!!」

「テンペストVLS、解放完了!!」

「フォーリナー船団、更に減速!!2160km/hで接近中!!」

「対宙迎撃射程圏内突入まで、後10秒!!9、8、7、6、5、4、3、2、…」

 

「フォーリナー船団、突入!!」

「迎撃開始!!!!」

 

刹那、戦略レーダーでリンクしていた各対宙迎撃部隊は、同時に対宙迎撃を開始。大阪、東京、札幌、九州基地にある324基のテンペストVLSから、巨大な噴煙を上げてテンペストSA1タイプOが発射。凄まじい推進力で垂直上昇し、僅か数分で大気圏を突破。更に速力を増し、マッハ12でフォーリナー船団へと猛進していく。が、そのミサイル群よりも速く、飛翔していく砲弾が2つ。要塞戦艦ヤマトより放たれた、100cmグラインドバスターだ。

 

マッハ21という速度で、2発のグラインドバスターは1隻のマザーシップ…マザーシップ・アルファに直接衝突。1発の威力が核爆弾に匹敵する運動エネルギーの威力は…マザーシップの装甲を貫き、損傷を与えることに成功する。

 

「グラインドバスター着弾、マザーシップに損傷を確認!!」

「よし…!!」

「続いてテンペストミサイル、拡散開始します!!」

 

オペレーターの言葉に合わせたかのようなタイミングで、テンペストミサイル群の各ミサイルが分解を開始。内部から3発のテンペストA0が発射され、総数は3倍の972発に増加。更にプログラミングによって各方向に回避機動を取りつつ拡散して、多方面からフォーリナー船団へと迫る。

しかし、それを阻むべくマザーシップ2隻の小型砲台が起動。装甲表面の一部が分離し、400の小型砲台となる。そして、射角内のおよそ200の砲台から、赤色のレーザーが発射。一部のレーザーは回避機動によって外れるものの、それでも軽く150のミサイルは迎撃された。

 

十数秒毎に発射されるレーザーにより、次々と数を減らしていくテンペストミサイル群。

 

831、769、521、486、445、375、309、271…

 

このまま、全弾撃墜か。そう思われたが、しかし。人類の技術は、フォーリナー船団に打撃を与えるには事足りたらしい。

 

迎撃を掻い潜った16発が、キャリアー16隻に着弾。その威力は大なり。テンペストA0はキャリアーの装甲を貫通し、内部で爆発。フォーリナーテクノロジーと圧縮空間技術によって実現を可能とした通常爆薬による核弾頭化ミサイル(・・・・・・・・・・・・・・・)*1は、見事にキャリアー内部の全機能を粉砕。しかしその爆発は固く閉ざされた装甲を破壊する事なく、テンペストA0によって空けられた貫通口から盛大に爆風が吹き上がる。

機能を停止したキャリアー16隻は、漂流を開始。他の健在なキャリアーと衝突されながら、宇宙のゴミの一つとなる。

 

「キャリアー16隻、撃墜!!」

「グラインドバスター、テンペスト第2波発射確認!!グラインドバスター第2波、着弾まもなく!!」

 

グラインドバスター第2波、マザーシップ・アルファに着弾。更なる損傷を確認。されど小型砲台の不具合動作は確認出来ず。

テンペストミサイル群第2波、キャリアー25隻に着弾。撃墜に成功。残り359隻。

 

「グラインドバスター第3波、着弾……ッ!?マザーシップ、防御スクリーンを展開しました!!効果確認出来ず!!

「クソッ!!!!グラインドバスターでも防御スクリーンは突破出来ないと言うのか…!?いや、砲撃は続行し続けろ!!マザーシップを少しだけでも疲弊させるんだ!!砲撃目標変更、マザーシップ・アルファ及びマザーシップ・ベータ!!」

「了解!!」

 

テンペストミサイル群第3波、キャリアー9隻に着弾。撃墜に成功。残り350隻。

グラインドバスター第4波、マザーシップ・アルファ及びマザーシップ・ベータに着弾。防御スクリーンに阻まれ、効果無し。

 

グラインドバスター第5波、着弾。同じく効果無し。

 

テンペストミサイル群第4波、キャリアー21隻に着弾。撃墜に成功。残り329隻。

グラインドバスター第6波、着弾。効果無し。

 

グラインドバスター第7波、着弾。効果無し。

テンペストミサイル群第5波、着弾。キャリアー24隻に着弾。撃墜に成功。残り305隻。

 

グラインドバスター第8波、着弾。効果無し。

グラインドバスター第9波、着弾。マザーシップ・アルファに命中?損傷の広がりが見られる。

 

テンペストミサイル群第7波、着弾。キャリアー18隻に着弾。撃墜に成功。残り282隻。

グラインドバスター第10波、着弾。効果無し。

 

グラインドバスター第11波──

 

 

 

 

 

 

此処からは、ダイジェストで迎撃の経過を描写していく。

まず、グラインドバスターは防御スクリーンによってマザーシップへの打撃は不可能となった。しかし現状マザーシップを撃墜できる唯一の武器だと思われていたため、砲撃は続行しているが、防御スクリーンが解かれる様子は無い。

テンペストミサイル群は、マザーシップの迎撃を受けつつも、キャリアーを撃墜しつつあった。しかし、フォーリナーも超音速小型物体の迎撃に慣れてきたのか、撃墜数が減少傾向にある。このままでは、キャリアーの殲滅さえ叶わずに対宙迎撃網を突破されるという状況下になりつつあった。

更に最悪な事に、マザーシップは飛行ドローンの発進を始めた。その数は既に3万を超え、テンペストミサイル群に対してレーザーによる迎撃や、集団特攻によるキャリアーの盾役としても機能している。

はっきり言って、状況は「最悪の中の最善」となりつつあった。

 

「フォーリナー船団、対宙迎撃最終ライン突入!!」

「全艦隊に通達、対宙迎撃を開始せよ!!」

「通達完了!!…第7艦隊テンペストミサイル発射!!続いて第4、第5…第3艦隊もテンペストミサイルの発射を確認!!」

 

遂に、大気圏まで眼前に迫る。それと同時に36隻のセントエルモ級イージス戦艦及び要塞空母デスピナの対宙兵器の射程圏内に突入し、合計40発のテンペストA0が、放たれた。

更に数を増し、総数1106発のテンペストミサイル群となったが…それでも、マザーシップの迎撃能力は優秀の一言に尽きた。

 

「フォーリナー船団、更に接近!!」

(くそ、迎撃しきれない…!!)

 

マザーシップの片方は損傷しているが、しかし迎撃の効率は最高潮。大気圏も迫っていることもあってか、レーザーの発射間隔も先ほどよりもかなり速い。テンペストミサイル群も通用しなくなって来ていた。

 

そして、遂に。

 

「マザーシップ2、キャリアー216、飛行ドローン4万、大気圏突入開始!!」

「ライカより、テンペストミサイル砲列発射を確認!!」

 

フォーリナー船団が大気との摩擦…断熱圧縮により、船体表面が赤熱化を開始し始める。その時、自身の存在を秘匿し続けていたライカが、圧縮空間より展開し、円状砲列形成していたテンペストVLS300基を一斉射。

横からの攻撃に全く意識していなかったのか、マザーシップと飛行ドローンの反応は、明確に、遅れた。

 

「キャリアー154隻、撃墜ッ!!残存数、48隻!!」

「フォーリナー船団の最終進路が確定!!第一文明圏上空!!…ッ、マザーシップ・アルファ、キャリアー10隻、飛行ドローン2万が分離!!要塞戦艦ヤマトに向かっています!!」

「第7艦隊を要塞戦艦ヤマトの援護に向けろ!!ヤマトは近接対空戦に移行!!」

 

 

マザーシップ2、キャリアー48、飛行ドローン4万。

対宙迎撃網、突破。

*1テンペストA0は圧縮空間を搭載しており、その内部には約50tのプラズマ炸薬が搭載されている。これが一度に起爆される事により、放射能が一切発生しない「擬似核兵器」となる。




次回予定、「要塞戦艦ヤマトvsマザーシップ・アルファ」。

二つの「最強」が、激突する。




-緊急状況報告レポート 自動更新-
状況:
即時出動態勢
陸軍:
アグレッサーと交戦中
空軍:
アグレッサーと交戦中
海軍:
第3艦隊、第4艦隊、第5艦隊は対宙迎撃を中断。日本列島、ロデニウス大陸、フィルアデス大陸への支援任務に就く
第7艦隊は旗艦の援護に向け接近中
第7艦隊旗艦 要塞戦艦ヤマトは近接対空戦用用意

敵戦力:
フォーリナー:マザーシップ2隻、キャリアー48隻、飛行ドローン4万
アグレッサー:レイドシップ多数、詳細不明

戦局:
劣勢、一部は破滅的状況


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第33話 第7艦隊vsマザーシップ・アルファ

今回は解説してないんですけど後書き長いです。ちょっと書かずにいられなくて…


神聖ミリシアル帝国領土南部より、西250kmの海域。

その海上に浮かぶ要塞戦艦ヤマトは、主発を左舷上空に向け、砲口を睨ませていた。周辺には、ヤマトの援護の為に合流した第7艦隊が布陣を組んでいる。

 

「艦長、フォーリナーの戦力詳細の解析が終了しました」

「どうだ?」

「現時点ではマザーシップ1、飛行ドローン26000、レッドカラー(精鋭ドローン)4000です。現在もマザーシップより新たに発進されています」

「…大気圏突入時にキャリアー10機を撃墜して正解だったな」

 

フォーリナー船団が対宙迎撃最終ラインを突破し、2つに分離して大気圏突入した後、要塞戦艦ヤマトと第7艦隊はテンペストミサイルをマザーシップ・アルファに追従するキャリアー10機に向けて発射。大気圏突入によってマザーシップの迎撃能力が大幅に低下していた為、全機撃墜に成功する。

しかし、ここで問題が発生した。マザーシップ・アルファの予測降下地点に、ミリシアル帝国の第零魔導艦隊が存在していたのだ。彼等はアグレッサーの急襲が本国より伝わり、急遽本国救援の為、要塞戦艦ヤマトの監視を取りやめて本国へと進路を取って航海している最中だった。速力差を考えて、フォーリナーの降下前に予測降下地点の回避は不可能であると判断し、すぐに第零魔導艦隊へ警告の通信を送信したのだが…此処で、技術の違いによる問題(・・・・・・・・・・)が完璧に露呈した。

この世界の通信技術は、殆どがこの世界特有の「魔力」を利用して専用の通信機器を稼働させる魔力通信である。対してEDFが使用する通信技術は、フォーリナーテクノロジーを取り入れて完成された「量子ネットワーク」による科学通信。この違いの最大の問題点は、双方の通信方法に互換性が一切存在していない(・・・・・・・・・・・・・)事だ。そもそもとして双方の稼働方法は一切異なる上に、EDFは魔力に関する技術は、日本人には魔力が一切宿っていない事も相まって全く確立する目処も立っていなかった。

つまり結論を言えば、ミリシアル第零魔導艦隊は、直接的支援を何もしなければ殲滅される事が目に見えていた。

 

それに対して一番近い要塞戦艦ヤマトは、助けるわけでもなく、守るわけでもなく、ただ「傍観」した。

 

理由は主に2つ。

一つは戦力不足。要塞戦艦ヤマトは、確かにマザーシップと真正面から戦い得る性能を保有しているとは言え、単艦で戦うのは「最終手段」の他になく、今回は第7艦隊10隻がヤマトの援護に全速力で向かってきている。ならばこの合流を待ち、今持てる全戦力でマザーシップと相対するのが最善策だ。

もう一つは、EDFは人類(・・)を守護する軍隊であり、決して人間(・・)を守護する軍隊という訳ではない。たかが第零魔導艦隊(数千人の命)を救う為に、世界に二つとない最強の戦艦(要塞戦艦ヤマト)を危険を冒して投入するなど、まるで割りに合わないじゃないか。

この世界の人口は、 一体何億人(・・・・・)が生きている?それに対し、第零魔導艦隊は 僅かに数千人(・・・・・・)。最早天秤で測る事さえ痴がましい。たかが数千人の命を救う為に、この世界の存亡を賭ける程にEDFはお人好しではない。

もう心情で、命の天秤を歪めるのは散々にやってきた。その為に支払った代償はどうしようもない程に重かった。もう、懲り懲りだ。例えそれがどれ程に冷酷な決断であったとしても、人類を護る為ならば、それを選ぶ事に、最早躊躇は無かった。

 

「…防衛戦略上仕方ないとはいえ、デスピナが第5艦隊旗艦に異動している事が此処で響くとはな」

「とはいえ、この規模を単艦で戦うよりはよっぽどマシな状況ではあります。何せ、戦力評価ではレッドカラーは最低でもヘクトル1機分に相当する(・・・・・・・・・・・・・・・・)と言われていますからね」

「アイオワ級フリゲート艦でもヘクトルを一撃破壊出来る能力はあるが…レッドカラーの場合は最大マッハ2の機動力とマザーシップの小型砲台に匹敵する超高出力レーザーがある。ヤマトとセントエルモイージス戦艦6隻、アイオワ級フリゲート艦4隻でぶつかるには戦力差がまだ多い」

「しかし、これ以上の増援を待つ時間もありません。物理的な距離もありますが、それ以上に ミリシエント大陸(第一文明圏大陸)に降下したフォーリナーとアグレッサーの侵攻があります。現在はライカの漸減攻撃と双方の戦闘によって、未だに巣の建設は確認されていません。が、このままでは巣が形成されなくともミリシエント大陸から人類は存在しなくなります。そうなっては、ミリシエント大陸は一時放棄もやむを得なくなるでしょう」

「…結論があるのに、こうして話しているのも時間の無駄か」

 

無線のマイクを手に取り、スイッチを入れる。

 

「第7艦隊全艦に告げる。これより我々は、マザーシップ・アルファに向けて攻撃を開始する。解析の結果、マザーシップの防御スクリーンの展開速度は、およそ3秒程であると結果が出た。つまり我々は、マザーシップ・アルファを7km以内の近距離戦闘によって撃墜する事になる。当然の事だが、我々は飛行ドローン群やマザーシップからの猛攻撃を受ける。一体何隻が生き残れるのか全く分からない。しかし、この戦いで戦局は大きく変わる。これは間違いない事だ」

 

「全艦、突撃を開始せよ」

 

勝負は、目視圏内となる距離約40kmからだ。

 

 

 

 

先手は、テンペストミサイルと各艦の主砲対空砲撃(ヤマトは前部38cmレールガン連装砲6基12門)から始まった。

距離にして40km先に存在していた飛行ドローン群に対し、擬似核兵器と対空砲弾(かんしゃく玉砲弾)による苛烈な攻撃を開始。最初の着弾によっておよそ4000の飛行ドローン、40のレッドカラーの撃破に成功。しかしこの攻撃をきっかけに、残りの約14000の飛行ドローン群は第7艦隊へと突撃を開始した。マザーシップは巨大主砲を除いた全ての大型砲台、小型砲台を各所に展開しているが、それでも動きは飛行ドローンを分間240機のペースで排出している以外には見られない。

第7艦隊はそのまま、テンペストミサイルと対空砲撃を継続。更にセントエルモイージス戦艦による総数572基から放たれる通常型対空ミサイルによる迎撃も開始され、マザーシップの補充速度を上回る速度で飛行ドローンを撃墜していくが、それでも距離は近付いていく。特にレッドカラーの性能は段違いであり、ヘクトル並みの耐久力とマッハ2の機動力によって、約1400機のレッドカラーは、素早く第7艦隊直上へと辿り着いた。

 

『撃ち込めェ!!』

 

刹那、第7艦隊が振るえる全近接火力が解放された。

38cmレールガン連装砲52基104門、28cmレールガン3連装砲18基57門、12.7cm連装砲48基96門、10cmレールガン3連装砲300基900門、連装型連装型35mmCIWS96基192門、20mm連装機関砲480基960門。

これら全ての砲台から、恐るべき物量の弾幕が空中に放たれ、空が砲弾で埋め尽くされた。レッドカラー1400機が弾幕に飲み込まれ、一部はその圧力の前に爆散。大半以上はその衝撃によって飛行バランスを大きく崩しつつも攻撃を強行。弾幕の中、赤色のレーザーが幾重にも放たれ、その殆どは見当違いな方向に飛んでいくが、それでもいくつかはEDF艦の装甲や武装に命中。船体や主砲などは表面を僅かに赤熱化させるだけで終わるが、機関砲などの軽装甲な武装は当たりどころが悪ければ使用不可や爆発が発生した。しかし、僅かな火力が削れたとしても、その総数は膨大そのもの。ヤマトの主砲を除く全ての砲台と砲身が忙しなく上下左右に稼働し、労わりつつもその範囲内で最大限の発射速度で飛行ドローン群を迎撃。

 

全ての艦が「幾千の飛行ドローンと単艦で対抗出来得る戦艦」というコンセプトを十二分に発揮し、11vs16000という膨大な数的不利を、質で押し潰しに掛かる(・・・・・・・・・・)

 

その火力の前に、通常の飛行ドローンはまともに近づく事さえ叶わない。レッドカラーさえもまともな飛行バランスを保つのは困難で、遂にはその弾幕のプレッシャーに爆散する機体が続出し始める。

 

「飛行ドローン群の迎撃率、予想以上です!」

「これが、我が海軍の真髄か…!」

 

艦長の脳裏に、12年前の海戦の記憶が蘇る。あの時の人類の主力艦は、イージス艦。最新鋭の武装と技術の結晶の一つは、フォーリナーの前では的も当然だった。幾千幾万の飛行ドローンの前では、幾ら射程が長くても主武装が弾数の限られるミサイル、極端な装甲の薄さ、致命的な近接迎撃能力の不足によって、次から次へと沈んでいった。その中から彼が生き残れたのは、単なる奇跡に過ぎない。しかしその奇跡が今、彼を世界最強の艦隊を率いる人材として育て上げた。

 

「マザーシップまでの距離は!」

「およそ35km!艦隊の武装破損率は1%!」

「マザーシップにエネルギー反応確認!小型砲台と大型砲台にエネルギーが収束しつつあります!」

「チッ…全艦、マザーシップからの攻撃に注意!必要ならば各艦の判断で回避行動を取れ!」

 

それまで飛行ドローンの放出に専念していたマザーシップ・アルファの下部に存在する「呼吸口」が開き、膨大な空気を使用した呼吸(・・)を開始。同時にマザーシップ内部からエネルギーが生成され、約160の小型砲台と8つの大型砲台にエネルギーを供給。

 

「来ます!」

 

刹那、マザーシップからレーザーやプラズマ弾による膨大な弾幕が放たれ、第7艦隊を包み込んだ。

 

「主砲目標、大型プラズマ弾!無理はするな、直撃弾のみの迎撃に専念しろ!」

 

各艦のレールガン砲台が僅かな隙をつき、比較的低速で接近してくる大型プラズマ弾に向けて砲弾が放たれる。

一部は防御スクリーンによって阻まれたが、その範囲外にある大型プラズマ弾の一部は砲弾の直撃によって爆発。それに反応して更に幾らかの大型プラズマ弾も誘爆した。

 

「く、迎撃間に合いません!」

 

殆どは外れるも、2発の大型プラズマ弾が陣形外側のアイオワ級フリゲート艦に直撃。その爆発の威力に第1主砲の砲身が耐え切れず、破損。更に運悪く、被害を被った第1主砲は正に発射の瞬間であり、電力が砲身を辿り、砲身も放たれ始めていた。

結果、その発射は暴発。電気爆発を起こし、巨大な火災が発生すると共に船体を大きく揺らした。

 

「F-10706、第1主砲爆発しました!」

「直ちにカバーしろ!被害状況及びダメージコントロールの詳細を確認!」

「………確認、取れました!第1主砲使用不能、ダメージコントロールは許容範囲内との事です!」

「ならまだ行けるな…!陣形は維持、このまま全速で接近する!」

 

F-10706(アイオワ級フリゲート艦)の船内から、甲板に数十人の船員…応急修理班が飛び出して火災の消火と応急修理に掛かる。飛行ドローンも当然の如く彼等を狙うが、護衛の戦闘部隊と他の艦艇から放たれる対空砲火で追い払う。マザーシップからの弾幕は、ガードポスト(シールド発生装置)を設置し、発生した青色の指向性エネルギーシールドで凌ぐ。

 

「急げ急げ急げ!1秒でも早く終わらせるぞ!」

「砲身はもう駄目だ、放っておいて砲台の穴を塞ぐ!」

「消火まだか!?こっちはウズウズしてて堪らないぞ!」

『もう10秒だ、待ってろ!……………よし行け!!』

 

その合図で、船外の応急修理班が第1主砲にしがみ付いた。

 

「よし、これなら行ける…!装甲板此処に貼っ付けろ!」

 

隊長の指示により、船内の倉庫から引っ張り出してきた1mの四方の薄い装甲板を使い、主砲に出来た破口を塞ぎに掛かる。しっかり密着されているのを確認すると、隊員の何人かがナノマシン発射機を手に取り、密着部分にナノマシンを散布。散布されたナノマシンはプログラミングに従い、瞬間で透明硬化。完全固定を確認すると、薄い装甲板にもナノマシン散布を行い、応急修理を完璧なものとする。

 

「完了!」

「良いぞ、訓練以上の速さじゃないか!……他も良いな!総員、直ちに船内に退避ー!!弾幕で穴だらけになるぞ!!」

 

バタバタと、揺れる船体やマザーシップの弾幕の被弾で足を取られかけつつも応急修理班と戦闘部隊は船内への退避に成功する。

船体にダメージを負ったとしても、命を顧みない覚悟で挑む応急修理班の奮戦によって応急修理は出来る。しかし所詮それは応急修理(その場騙し)に過ぎず、被害が拡大すれば、沈没は免れない。

 

正念場は、此処からだ。




今日、即位礼正殿の儀が行われましたね。生放送で見ましたが、気が付いたら姿勢をピシッと正してました。
その後、ツイッターで今日の間に発生した出来事を纏めたツイート発見したんですが…はっきり言って良いですか?

ファンタジーよりも「ファンタジー」な出来事が起こるってどういう事なんです?

1.台風が温帯低気圧変化&進路が逸れた
2.雨風が天叢雲の剣を使用するタイミングや即位礼正殿の儀が始まるタイミングで降ったり止んだりした
3.皇居周辺で太い虹が掛かる
4.富士山が雲から顔出しして初冠雪
5. 即位礼正殿の儀の前後にカラスの鳴き声(八咫烏=3本足のカラス
6. 静岡浅間神社で桜が咲く

これが、たった1日(・・・・・)の間に起こった出来事ですよ?しかも数日前に空母赤城と加賀も発見されてますし、こんなのが「連続」で「偶然」起こったんですか…?

神話レベルの出来事が実際に起こっちゃいましたよ(・・・・・・・・・・・・・)、今日。皆んなが、その目撃者ですよ。
…ファンタジーがリアリティに「殺される」って、この事を言うんだろうなぁ…


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