オーバーロード 突発的に思い付いた短編ネタ集 (ヘタレ蛇)
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円卓にて二人の至高

 

 

従者達を人払いし至高の41人の円卓にて二人席についていた。

 

 

オーバーロードにて此処、ナザリック地下大墳墓の主にしてギルド《アインズ・ウール・ゴウン》の現ギルドの長モモンガ、そしてその向かい側に座るのは.....

 

 

 

一人目:TS系サキュバス

 

「......。」

 

「...あの、どうかしましたか?」

 

モモンガは向かい側に座る、顔に手を組んで当てて黙りこんで悩んでいるサキュバスを気に掛けている。

このサキュバスは艶のある髪質をして大きな胸を強調するような厚着のドレスに蝙蝠のような翼を生やしている。アルベドと同様にサキュバスなのだが違うとすれば....

 

「モモンガ、俺は...。」

 

そう()は男性なのである。ライトノベルなどでよくあるリアルでは男性、そしてこの世界に転移してしまい女性の体に成ってしまったのだ。

従者の前では凛々しさとカリスマを備えた絶世の美女なのだがプレイヤー同士、従者の目の無い今は、二人共に素を晒していた。

 

「俺、迷ってんだ。今はそんな状況じゃないってのは分かってんだ。でもよ、俺はこのままの状況に飲まれていいものか、とさ。」

 

「◯◯さん...。」

 

モモンガもその言葉に共感していた。DMMORPGユグドラシルの運営サービスの終了でいきなり動き出すNPC達、そして異世界に転移した驚愕、更には自分達のNPC達から高過ぎる尊敬の眼差しにドン引き、自分達が置かれている状況を全て理解している訳ではないが、立場上、下手に動くのは危険な事もある。がもどかしい気持ちもあるのだ。

 

「俺には、どうすれば良いか分からなくなっちまった。だからお前に聞きたいことがある。」

 

サキュバスは立ち上がった。モモンガの赤く光る目を真っ直ぐ見る。モモンガもサキュバスから真剣な相談だろうと傾聴し、来たる言葉を待った。

 

 

 

 

 

「この体の聳え立つ御胸様を揉みしだいていいのだろうか!!」

 

「いやアンタこの世界に転移した(来た)時に十分揉んでただろうが!!」

 

胸を張って言うサキュバス(アホ)にモモンガは指摘した(ツッコミを入れた)

 

 

 

 

「ゴメン、混乱してた。」

 

「かなり狙って言った気がしたんだがまぁ良いでしょう。」

 

モモンガは体から緑色の光を放った(感情強制沈静化が発動した)。その後、気を落ち着かせる為、二人は座り直し今後の話をしていた。

 

「この世界とユグドラシルの法則が差違があるかもしれません、前もって色々と確認しませんと。」

 

「....そうだな、俺はモモンガさん程ではないけどやりこんではいた。けど実際の体になって咄嗟の行動ができるとは限らない。それにこの世界の平均の強さがモモンガと同レベルの場合は俺じゃ太刀打ちできない。色々調べないとな。」

 

サキュバスは自身の両手を観て、そう語った。リアルで人間であった分、異形となっては体の仕組みが違うからだ。ゲーム通りとは行かない。モモンガは先程、感情強制沈静化が種族による特性ならサキュバスの種族による特性もあるかもしれない。ユグドラシルの法則に引っ張られる為らば職業による制限があるかもしれない。とモモンガが思考しているとサキュバスは自身の体中をペタペタと触っていた。そしてふと止まったのをモモンガは気になった。

 

 

「どうかしましたか?」

 

 

「........。」

 

 

 

「やっぱ揉むべきだろうか!?」

 

「揉まんで良いわ!!」

 

 

再びモモンガの感情強制沈静化&二人とも座り直す。

 

「兎に角、俺は装備関係とかを調べます。ユグドラシルと勝手が違うかもしれませんから。」

 

「分かった、とりあえず俺はもう少し気持ちの整理をしているよ。」

 

「.......。」

 

 

「暫く揉んでたら?」

 

「...あぁ、もう少し堪能してる。」

 

 

 

モモンガは心の中で溜め息を吐いた。自分はもうアンデットだし、感情が強制的に沈静化してしまうので思考もCOOLだが彼の気持ちも分からなくないのであった。二人とも男だったし、あっちは別の物に変わったり増えたりしてるけど、こっちは何にも失くなってしまったのだから。そう思うと苛つきを感じたがまたまた感情強制沈静化したのでこれ以上思わない事にしたモモンガであった。

その無言の様子を見ていたサキュバスは。

 

「モモンガ、もしかして、揉みたいの?」

 

「ぶふぉおおおおおおっっっっ?!!」

 

とブッ飛んだ事を言った為、驚愕の感情が飛び出たが直ぐに沈静。

 

「な、何を言っているんだ貴方は。」

 

「いや、アルベドのを少しだけ揉んでたから揉み足りないのかな?って。」

 

「ぐっ...見てたんですか。」

 

「バッチし。」

 

先に玉座の間から飛び出して行ったと思ってやってしまった感が否めない骸骨魔導師。

 

「それに、アルベドの設定の最後の文を書き換えてたの、観~て~た~よ~。」

 

「すいませんちょっとした気の迷いだったんです。」

 

運営サービス終了直前に滑り込みログインしたのでタイミング的に覗いていたのだろうと予測し、土下座するモモンガだったが、テーブルに両頬杖して楽しんでいるサキュバスに弱味を握られた事より、只只仲間への申し訳なさによる感情だけだった。

 

「いいよいいよ、俺も長い間置きっぱなしにしちゃってた訳だし、これは自分への御褒美だと思って。」

 

「はぁ、そう言ってくれるなら良いのですが。」

 

罪悪感、何とも飲み込めづらい言葉だろうか。

大切な仲間が創ったものを自分の好きにやってしまっただから。それを仲間の一人が許しても納得できない所があった。

 

 

 

「なら、御褒美として俺の胸でも揉んでみるかい?」

 

「あっ、それは結構です。」

 

 

 

「それじゃ何かあったらメッセージで知らせてください。」

 

「オッケー!暫くしたらアルベドに揉まれた感想を聴いてくる。」

 

「.....。(関わるだけ面倒だからスルーしよう。)」

 

土下座から立ち上がったモモンガは平常心で向き合おうと早速確認に行こうとした。

 

「あっ、アルベドに後でいいから用事が済んだら俺の部屋に」

 

 

「やっぱり揉むのか!?」

 

「....あ"あ"ぁぁぁぁぁぁ!!もういい、その脂肪抉り取ってやる!!」

 

ごく普通のやり取りをしようとしていたのに煽ってきた上に被せてきたのだ。流石に溢れる怒りで緑色の光を点滅させ(強制感情沈静化を繰り返し)、執拗に胸の話をするサキュバスの胸部を掴もうとしていた。

 

「やぁん!ホモォに襲われるぅぅぅぅぅ!」

 

「何気持ち悪い事を言ってんだオカマヤロウ!!」

 

 

その騒ぎを聞きつけ、守護者が入室して、骸骨に胸を揉まれているサキュバスの図を見て、全員がお楽しみ中と思い、約二名の女性、主に守護者統括が嫉妬に怒り狂った為、誤解を解こうと、やむを得ずその場を収める為と至高の二人は動くのだった。

 

 

「アルベド怖かったなぁ。」

 

「誰のせいだと思ってるのですか。まぁ俺も否定はできない。」



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円卓にて二人の至高 Ⅱ

期間開けすぎると自分で何を書いていたか忘れる事案が発生した。なるべく面白おかしいキャラを考えようと思います。


従者達を人払いし至高の41人の円卓にて二人席についていた。

 

 

オーバーロードにて此処、ナザリック地下大墳墓の主にしてギルド《アインズ・ウール・ゴウン》の現ギルドの長モモンガ、そしてその向かい側に座るのは.....

 

 

 

二人目:眼鏡美女系ゾンビ

 

「ねぇモモンガさん。」

 

「ん、どうかしましたか?」

 

モモンガに声を掛けたこの女性、スラッとした華奢な体にデミウルゴスと同じようにスーツを着こなし、動く度にさらりと揺れる髪質のロングヘアー、一目で美女と思える顔付きに眼鏡。これでは人間種と思えるだろうがそうは思わせないのが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だろう。

 

彼女はモモンガと同じアンデッド種だが、彼女はミイラ、そしてリビングデッドになっていた。

これでも彼女はギルド内で負けず劣らずのパワー系なのだが此処ではその話題は活躍しないので割愛しよう。

 

「この世界に来て私一つ疑問に思ったことがあるんですよ。」

 

顎に手を当てて考える彼女はとても聡明で謙虚な見た目の女性だろう。但し、彼女とは長年ゲームプレイしてたから分かる彼女の難点をモモンガは理解していた。

 

「.....何ですかそれは。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ズバリ、この世界で恋愛は男同士が主体なのかです!」

 

「(あー、腐ってんなぁ....。)」

 

彼女は腐女子(BL好き)だった。

 

 

 

「モモンガさん、異世界ですよ!もしかしたら中世をメインにした時代背景じゃないですか!つまりメンズ同士の恋愛(アヴァロン)があるかもしれないじゃないですか!戦国時代然り、幕末然り、ファンタジー然りです。」

 

こうも熱弁する彼女にモモンガはドン引きだった。男性であり、同性愛をしない人に説かれても困り者なのだが、ユグドラシルでもギルドメンバーに同じ事を説いた為、何人かから苦情というか愚痴というか、それを聞いた彼女の反応はまるで死人のような雰囲気を醸し出したので注意できず見守るしかなかった。

モモンガ自身はぶっちゃけ、趣味の合う人、ぶんぶく茶釜さんやペロロンチーノさんとかが居れば良かったのになぁと思っていた。

 

「....まぁ異形種となった時点で人間対しては虫けら以下の認識になってしまいましたから、俺はあまり思わないですね。」

 

モモンガの苦肉の策は、話を反らすことだった。

 

「.....そんな事言わないで下さいよぉモモンガさん~。認知したくなくても、内心はそこらの人間の普通の夫婦なんて只の背景の中の雑草のような捉え方しかできないんですから!!」

 

この点は同じアンデッド種になった事で人間の見方が変化したとモモンガは知った。そして自分は人間を改めて辞めた事を理解した。

 

「だからこそ、その雄しべ同士の愛合体こそ最高なのですよ!寧ろめっちゃ興奮する!!」

 

それは理解したくなかった!てか、あれぇぇぇぇぇぇぇ、話の内容が向上した!?

 

と、体を緑に光らせ(強制感情沈静化が発動し)ながらドン引きした。

 

 

「エイドジップアサシン達には周囲の調査をーー」ウンヌンカンヌン

 

「それでしたら生態系の調査も行った方がーー」ウンヌンカンヌン

 

「ナザリックを隠蔽したから暫くは大丈夫だろうーー」ウンヌンカンヌン

 

「でも中世な世界ですけどいきなりこんもりと山二つ出たら調査が入りーー」ウンヌンカンヌン

 

 

今後の対策に二人は熱が入り互いに意見を言い合った。この世界で起こりうるだろう予測や難点を指摘し合い、より強固な守りの物へとなりつつあった。

 

「だとするとあれがこれでーー。」

 

「そうですね....。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兎に角、此処は別世界なのですから慎重に行動を....。」

 

「.......。」

 

「...あの~、聞いてますか?」

 

「......。」

 

正に自分の世界に入り込むように顎に手を当て考え込むゾンビ女を観てモモンガは「またなに考えてるのか...」と少しだけ恐怖が脳内に過る。そして少し経ち思考まで腐った女性は口を開く。

 

 

「オールド系堅実竜人執事がインテリガングロ系参謀男性悪魔にくっ殺されながら愛合体&ランラン産み産み物ってどう思いますか?モモンガさん。」

 

 

「....すみません、マジで何を言っているかが分かりません。」

 

 

絶対に解ってたまるか!ともう彼女は道端に棄ててある泥塗れのR指定の本のように思えてしまう。アンデッドだから萎えるも糞も無いけどね!っとキャラ崩壊並みに興奮して緑に発光(強制感情沈etc)しながらモモンガは思った。

 

 

「兎に角!俺もう行きますからね!!」

 

「あぁ、待って下さいモモンガさん!」

 

「何ですか!」

 

モモンガが心の底で腹が煮え繰り返りながら颯爽に退室しようとしたがゾンビ女に呼び止められ、「今度は何を聴いてくるんだ?!」と感情が露にながらも振り返りモモンガはゾンビ女の方を向いた。

 

「私、モモンガが居て良かったと思いました。いや、元々なかなかログインできなかった私が言うのも難ですが。もし私一人がこの世界に来ちゃったら、もうどうしていい分からずNPCの皆に的確な指示を出せなかったと思います。」

 

「....それは俺も同じです。此処は別世界ですから、どんな事が起ころうと不思議ではないのですから。俺にできる事は最低限の自身の身を、そしてこのナザリック持ちうる手札を全て使い守る事です。それより何より大切な仲間の一人である貴女がいる事が俺の心の支えなのですから。」

 

ゾンビ女のその想い先程の怒りが無かったかのように同じく自身の想いを語ったモモンガは嬉しく思った。ユグドラシルサービス終了に来てくれたギルドメンバーは数人、だが皆現実(リアル)の多忙に目を向け大切な仲間達の居場所に残ってくれる人がいなかった。でも、一人だけでも居てくれてモモンガは心の暖かみを感じていた。

 

「....ホントに怖かったです。」

 

「◯◯さん....。」

 

「だって....私一人だったらマーレ君を受けにコキュートスや恐怖公にカップリングの命令してしちゃうかも知れなかったので!」

 

「....。」

 

暖かった心が急に冷えた気がした。逆にゾンビ女の包帯の隙間から見える青白い頬が紅潮してきたのだ。

 

「あぁ...ニューロストにデミウルゴスやセバスを拘束して苛めるのも興奮する!ぁあああ、脳ミソとろけそう!」

 

そのまま溶けてしまえ。とモモンガは顔を背けて思った。

 

「でも、やっぱり、モモンガさんがデミウルゴスとセバスのサンドイッチを見てみたい。」

 

「.....はぁ。」

 

「あぁでも、モモンガさんとパンドラズ・アクターの親子丼もふぎゅっ!?」

 

モモンガはゾンビ女の頭を掴み持ち上げた。それは腐った頭をスイカのように例えるが如く、外装が罅が入る音が鳴り出す。

 

「ちょっ、モモンガさん!不味いです!頭がミシミシって!?出ちゃいけない物が出ちゃいます!!」

 

「少しは頭を冷やせ。」

 

「ガチ怒!?マジすいませんでした!嘘っ、マジックキャスターなのに筋力極振りの力で外れない!?これ作者全力で殺しに来てる!!ぎゃああああああああっ!!」

 

 

この日、ナザリックに脳天を貫かれた腐った悲鳴が響き渡った。

 

 



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亡霊が護りし花園の館(前編)

設定は上手いかなと自讚
この先が気が向いたら続き書こうかな。


VRMMORPG....ユグドラシル。

大規模多人数同時参加型オンラインRPGゲーム。

プレーヤーは人間種、異形種を選択し、ユグドラシルの世界を冒険する。

 

アバターやNPCを好みのキャラに作成して、仲間達とギルドを作り自分達の拠点を作り戦う。但し課金という泥沼があるがね。

 

 

という内容かな。

 

ユグドラシルの中にはPVPが日常的にあり、中でも異形種プレーヤーは人間種プレーヤーからは嫌われていた。異形種狩りなんて物もあるらしいしな。

 

本来のこの物語はサラリーマンであり、ユグドラシルのプレーヤーであり、異形種のギルドを統べるオーバーロード、仲間達の居場所を運営サービス終了まで見届けた者であり、異世界に自身のギルドの名を、いるかもしれない大切な仲間達に存在を知らしめる大業を成す者だ。

 

 

だがこの物語の主人公はユグドラシルプレーヤーであり、リアルでは高校生位の歳の少年で、働いては死人として見られるような日々だった。唯一の娯楽として始めたユグドラシルでも陰湿な戦法でどのプレイヤーから嫌われ者、だがそんな彼にも仲間ができた。死人のような彼の拠り所を心から護りたかった。だが時が立てば変わるものだった。

 

 

....設定はこんな物かな?では始めるとしよう。

 

 

______________________

 

 

ユグドラシルの運営サービスが終了するまでの数刻、深い森のダンジョンに隠れるように建てたられた広い庭園の館が存在していた。

館の周りに花や樹の果実が緑の空間を彩り、大きな樹の横に伸びた枝より垂らされたブランコが自然と揺れる。

庭園に植えられた植木は生きているような動物の形をしている。その近くには大理石でできた屋根付きのお洒落なカフェスペースがあった。

正に貴族のお嬢様がお茶をしていそうな空間であった。

 

だが静かであった。まるで誰も居ないかのようだった。

それでも一人はいた。中世のヨーロッパにあるような長テーブル、其処は此処の住人が皆で話しあったり、待機場所として輝いていた。だけどどの席も元々座っていた者達は居ない。ただ1つの席だけが座っていた。

綺麗な場所に似合わない程暗く、何より存在しているのかさえ思える程の歪な雰囲気を纏っていた。

貴族のように真っ黒のスーツを着込み、長髪の髪をオールバックにかき上げる彼は死人のように色白だった。

そして瞳はとても悲しみに満ちていた。

 

「もうすぐか、この場所が無くなるのは、辛いな。」

 

ギルド《箱入り娘の花園(シェルタード・ディア・ガーデン)

彼は()()()()()()()()()()長テーブルに席をついていた。

 

 

 

彼の人生はまるで死人のようだった。リアルで彼は17歳の少年だった。政府が潰れていなければ真っ当な学業を過ごせていただろう。だが日常とは残酷な事だ。

少年はサラリーマンで多量の仕事を回ってきては上司からのパワハラ、周りからは自分に振られないように見てみぬ振りをした。「あいつ、いつか死ぬんじゃないか。」と軽はずみに誰かが嘆いた。そしていつの間にか、彼という存在は死人の烙印を与えられた。

彼、時貞子音(トキサダシオン)は何処か諦めていた。自身の生きる価値はないのだろう、と。だけど死にたいとは思わなかった。明日の生活、仕事を考えれば死ぬ余裕など考える暇が無かった。

両親はいつの間にか居なく、頼る身寄りもなし、少なくとも仕事をして稼ぐしかなかった。

彼は周りの関心など失くなってしまっていた。

 

だがそんな彼に一人話し掛けた人物がいた。

 

「あの、仕事を少し手伝いますか?此方手が空いたので。」

 

それは同じ仕事場のサラリーマンで、確か...鈴木悟(すずきさとる)と言う名前だった。

 

ある意味、子音の人生で地獄の中の蜘蛛の糸だったかもしれないが地獄の中は地獄(仕事に没頭し)、特に気にしなかった。

 

仕事を進めていく内に段々と量が少なくなっていき、子音の心も余裕が見え始めた。

 

「時貞さんは休みは何をしてるんですか?」

 

互いに仕事の手を止めずに鈴木はそれを訊いてくる。何故それを訊くのか子音は不思議だった。「何故?」という単語が頭を過った。兎に角、返答しようと記憶を思い出すが日常的に何もしてなく、最低限の家事以外はボ~ッとしたり寝たりしているだけだった。

 

「...あまり何もしてません。」

 

「そ、そうなんですか。」

 

「あははは」と苦笑する鈴木に対して「何故?」の単語が再び子音の頭を過る。それでも二人の仕事の手を止めないのは所は仕事人間であった。

 

「......。」

 

「......。」

 

二人の会話に間が空く。子音に至っては、相手から何もないなら特に気にしない、と思っていた。

すると鈴木は仕事の手を止めて自身の頬を掻き始めた。

これには子音も気になり鈴木の方を向く、鈴木が難しそうな表情をしていた。

 

「....何処か難しい所がありましたか?」

 

「....いや、もしも良かったらだけど、ね。」

 

言い出し辛そうな、その言葉に「何か用事を持ってくるのだろうか。今後の予定を確認しないと。」と子音は思っていた。がそれとは違う事だった。

 

「興味や時間があるなら、今度ユグドラシルをやりませんか?」

 

それはゲームの御誘いだった。

 

 

 

 

数日後、子音はVRMMORPGユグドラシルを買っていた、丁度、仕事のため家にパソコンがあるためやってみるとことにしたのだ。

ゲーム情報を読んでいく内に大量の課金システムを理解し、「あの人、馬鹿なんですか?」と自然と頭に浮かんだのだった。だが子音もまともに遊んだのは幼い時しかなかったので本人も「たまには良いかな」と、やり始めたのだった。

 

本の表紙では内容が分からない、ならば読むしかない。興味本位という好奇心が文字を読み説き、本の魅力に取り憑かれてしまうのだ。

 

結果、彼はユグドラシルに魅了されゲーマーの一人になってしまった。

彼は休みがあればひたすらユグドラシルをやり混んだ。

それは真面目に、執着し、新しい面白味を見つけ、ユグドラシルの素晴らしさを身に刻み付けていった。

 

更に数日後、子音は鈴木を見かけ声を掛けた。

 

「...鈴木さん、今時間良いですか。」

 

「あ、はいもう少し後なら大丈夫です。」

 

 

 

「それでお話とは何ですか?」

 

「...あの。」

 

思えば子音は自分からこんなお願いをするのは初めてだった為、上手く気持ちの整理が着かず、流石に待たせたら不味いと思ったため話を切り出した。

 

「もし良かったら、ユグドラシルのフレンド登録、しませんか?」

 



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