デュエル・マスターズ Century of Commons (モノクロらいおん)
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DM CoC 無価値の時代[前編]

 その力は、戦争は起こさない。
 その力は、戦争の火種にならない。
 その力は、人を殺せる。
 その力は、命を一つ奪うことができる。
 戦争ならざる、戦闘の力。
 無価値な力の価値など、その程度なものだ。


 ――人はそれを、“裁きの日”と呼んだ――

 

 

 

 世界から大いなる力は失われた。

 

 怒り荒ぶる龍も、正義を執行する天使も、邪悪を崇拝する悪魔も、水底に沈む超科学も、世界を包む大自然も。

 

 天頂に君臨する意志も、人の手で描かれた道化も、虹を架ける異形らも。

 

 なにもかも、ありとあらゆる力が、この世から消え失せた。

 

 それを神罰だと呼ぶ者がいた。神の怒りだと叫ぶ者がいた。

 

 大いなる力を、人の業で穢した罪であると、憤る者がいた。

 

 真実は闇の中。されど人は、暗中をも歩む。

 

 微かに残った怪物を、魔術を、神器を、霊気を、人は標とする。

 

 大いなる力を取り戻すために。争い富を得るために。埋没した謎を解き明かすために。

 

 果ては、平凡な生存のために。

 

 世界にこびりついた、弱き力に縋りつく。

 

 

 

 そうして、今の時代、価値なき者たち(パウパー)は生きる。

 

 

 

 

 

                     『“裁きの日”以後の時代』序文

 

 

 

● ● ● ● ● ●

 

 

 

 少女は、危うげながらも軽やかな足取りで、荒れた道を進む。

 道。そう表現することは間違いではない。

 アスファルトが剥がれ、大きな亀裂が走り、瓦礫や土砂が積み上がって、大地が砕けていようとも、それは辛うじて道と言える代物だった。

 その荒れ果てた道を、少女が跳ねるように駆ける。瓦礫や地面の割れ目に躓きそうになりながらも、まっすぐに迷いなく、荒廃した直線に沿う。

 やがて少女は、足を止める。

 そこは、道路と同じように荒れた家屋だった。手入れもなにもされていないような、コンクリート打ちっぱなしの建物。

 一見すればただの廃屋にしか見えないが、この町において――この時代において、屋根があり、壁があり、雨風を凌げる家屋に住んでいるというだけで、一定以上の生活になる。これを人の住む家と称しても、さして珍しいことではない。

 少女はギィ、と軋む扉を押し開ける。中もひび割れたコンクリートで満たされた空間だった。

 しかしそんな廃墟のような造りながらも、内装は妙に生活感がある。部屋の中央には綿がはみ出したソファ。壁際にはクローゼットが二つ、大きな棚が一つ。足が折れたベッド。

 そして部屋の奥には、傷だらけの机があり、椅子を軋ませながら、両足を放り出して男が座っている。

 男は両手を頭に回して天井を仰いでいる。表情は見えないが、微かに呼吸の音が聞こえる。寝息だ。寝ているのだろう。

 少女はできるだけ音を立てないように――立てつけの悪い扉なので、音を立てないというのは土台無理な話だが――扉と鍵を閉めながら、家屋に入る。

 そして、奥の人男へと歩み寄った。目を閉じている。本当に寝ていたようだ。

 

「ただいま、戻りました」

「おぅ」

 

 間髪入れずに返事が来る。目を瞑っていただけで、起きていたようだ。

 いや、きっと、起こしてしまったのだろう。 

 

「どうだった?」

「はい。えぇっと……」

 

 少女はポケットからボロボロの紙切れを取り出すと、それを読み上げる。

 

「先日から、特に大きな変化はありません。町に異常なし。強いて言うなら、ここ最近、町で失踪者が目立ってきたとか、そのくらいですね……」

「大方、町の気風が合わなくて居づらくなったとか、借金が返せなくて夜逃げしたとか、そんなとこだろ。大したことじゃねぇ」

「あと、情報屋さんの姿も見えないままです」

「ふん、やはり死んだか。まあ、どうでもいいな」

「そんなこと言っちゃダメですよ……わたしたちもお世話になってるんですから」

「いれば便利だが、いないならいないで、別の手がある。自分の足を使ってもいい。誰かに頼ってちゃ、足元すくわれるからな」

「……耳が痛いです」

 

 目を伏せる少女。

 その時、ドンドンと扉が叩かれる音が響く。

 恐らくは、来客だ。あるいは……

 

「……出ろ」

「は、はい、わかりました」

「気を付けろよ」

 

 男に促され、少女が戸口へとパタパタ走って行く。

 ギィ、と身体を玄関口の角に押し込んで、そっと鍵を開け、僅かに扉を開く。

 すると次の瞬間、勢いよく扉が開け放たれた。

 

「おっひさー! 旦那ぁ!」

 

 騒々しいとさえ感じる、明朗軽快な女の声。

 声の主は、隅っこで呆然としている少女を見つけると、にんまり笑った。

 

「おぉっと、キャロルたんもいたかい。元気してたー?」

「え、えぇ、まぁ……と、というか……無事だったんですか、クリスさん……?」

「ん?」

 

 クリスと呼ばれた女は、少女――キャロルの言葉に首を傾げる。

 しばし考え込む素振りを見せてから、なにかを察したように手を打つ。

 

「キャロルたん、ひょっとして心配してくれてたの? もー、可愛いなー」

「えっと、はい……ここ最近、姿が見えないようでしたので……」

「まあ確かにちょっと死にそうな目には遭ったけどね。今日はそのことで旦那に話をね……というわけで、クラフトの旦那」

「…………」

 

 クラフトと呼ばれた男は、顔をしかめるだけで、言葉を返さない。

 クリスがずかずかと家に上がり込んで、座したクラフトの前までやってくる。

 

「ちょーっとお仕事、頼まれてくんないかな? 旦那」

「……お前から仕事の依頼とは、珍しいこともあるもんだな」

「そうですかい?」

「知識を売りにする情報屋が、自分の仕事を他人に見せるわきゃねーからな。お前はアホだが情報屋としては有能だ。そんなお前が他人に仕事の依頼だ? こんな奇妙なことがあってたまるかよ」

「まあまあ、それくらい私も大変なんでさぁ。こう見えても命からがら逃げ帰って来たわけだし、話くらいは聞いてくれませんかね」

「……言いたきゃ好きにしろ」

「そんじゃ遠慮なく!」

 

 したり顔で、クリスは口を開いた。

 

「実はですねぇ、町外れにある森……その森をずーっと奥へ奥へと進んでいくと、洋館があるんですよねぇ」

「ほぅ、そうか」

「このご時世では珍しいくらい立派な洋館なんですけどね。夜逃げした富豪の家だとか、変な教団のアジトだとか、森を張ってる賊の拠点だとか、まあ色んな噂があるんですけど、それがなーんかキナ臭いっていうか……なんにせよ、住人の姿が見えなくて、空き家ってか、廃墟みたいになってるようで。あ、でも建物はわりと綺麗なんですわ」

「そいつは珍しいな」

「情報屋として情報収集ついでに、金目のものがあったらかっぱらおうと思って、私ゃさっきまでその洋館の調査に行ってたんですけど、いやもう不気味で不気味で。館に入るのを躊躇ってたら、山賊……森だから盗賊? まあとにかく、賊に襲われてひぃひぃ言いながらこうして帰ってきた次第でしてね」

「そうかそうか。それで?」

「皆まで言わせる気ですかい、旦那」

「契約とはそういうものだ。せめて口に出せ。お前から口を取ったら、情報屋としてでさえ無価値になる。言葉を紡がないお前なんぞいらん」

「手厳しいなぁ。まあ要するに、洋館の探索を手伝ってくれないですかね? ってことなんですけど、どうですかい旦那? 館も複数で探した方が効率いいですし、また賊に襲われちゃたまんないですし。金品は山分けってことにして」

「…………」

 

 クラフトは思案する。

 机に上に投げ出された足も、頭の後ろで組んだ手も、まるで微動だにせず、ジッとクリスを見据えたまま、頭だけを動かしている。

 やがてクラフトは足を下ろした。

 

「その館とやらまで、どのくらいかかる?」

「半日以上はかかりますぜ。だから野営は必須、行きは運良く盗賊に見つからなかったものの、帰りはほんと悲惨なもんでして」

「半日、か。ふむ……」

 

 クラフトは窓から覗くように空を仰ぎ見る。

 太陽は高く昇ろうとしている。朝と呼べる時間は過ぎ、じきに昼時といったところだろう。

 

「今から出る。お前は案内人だ」

「そうこなくっちゃ! 流石は旦那!」

 

 やった、と拳を握るクリス。

 それに対して、キャロルは目をぱちくりさせていた。

 

「い、今から、ですか?」

「あぁ。付いてくるなら好きにしろ」

「えっと……あ、危ないくないですか?」

「だから来いっつってんだろ、こいつは」

「キャロルたんにゃ悪いけど、そだねぇ。つまり旦那は用心棒ですわ」

「そんな……じゃあ、せめて準備とか……」

「準備するほどの物なんざねーよ。この家にも、町にもな」

 

 言いながらクラフトは立ち上がり、軽く身支度をする。と言っても、上着を羽織り、少ない荷物を背負っただけだが。

 

「で、来るのか? 留守番か? いつもの仕事とは勝手が違うが」

「……い、行きます」

 

 少し躊躇ったが、キャロルも動向を宣言した。

 彼女も手早く身支度を整え――元々、所有する物が少ないので、時間がかかろうはずもないが――クラフト、クリスの後に続いて家を出る。

 

「それと……家を空ける時は、これも外さないとですね」

 

 気休めではあるが、頭の足りない盗人に、ここに誰もいないと思わせる程度の効果はある。

 そう言われたことを思い出しながら、キャロルはその木の板を外した。

 それには、『探偵事務所』と掠れた文字が書かれていた。

 

 

 

● ● ● ● ● ●

 

 

 

 パチパチと、暗夜の森の中で、炎が弾ける。

 洋館までは、残り道半ばといったところで、一行は森の中にて野営をしていた。

 

「そんで旦那ぁ、探偵事務所の方は儲かってます?」

「アホか、儲かるわけないだろ」

 

 焚き火を囲みながら、クリスが茶化すようにクラフトに世間話を振るが、クラフトは素っ気なく切り捨てる。

 

「そもそも、探偵の意味もわからん奴ばっかだ。やってることは便利屋と変わらん」

「へぇ、そうなの?」

「まあ……そうですね」

「でも、仕事があるんなら、儲かってんじゃない?」

「意味わからんことやってる奴のとこにまともな仕事なんざ来るかよ。そんくらい言わなくてもわかれ」

 

 あしらう、と言うには棘のある言葉。

 まるで敵意でも持っているかのような口振りだった。

 

「……クラフトさん、なんだか今日は随分と、クリスさんに手厳しいですね……」

「あん? こいつに友好的にする必要があるか?」

「いやいや旦那、私らは情報屋と探偵。手を組んで仕事だってするじゃないですか」

「手を組むからって同士とは限らねーがな。別にお前はとは友達でも仲間でもねぇ」

「おっとこりゃ一本取られた! 確かに、お互いに情報を探る仕事である以上、競合もしますわな」

 

 けらけらと愉快に笑うクリス。クラフトの毒ある言動などまるで意に介する様子がなかった。

 そんな二人を見てなにを思ったのか、キャロルが口を開く。

 

「前から気になっていたのですが、お二人って、どこでお知り合いになったんですか?」

「おやおやぁ? キャロルたん、気になっちゃう? 私たちの馴れ初めがそんなに知りたいのかなぁ?」

「い、いえ、その……」

「大したことじゃねぇ。お前を拾う前、ちっとばかしまともな仕事にありつけた時に頼った情報屋がこいつだった。ただそれだけだ」

「ちぇ、あっさりバラすなぁ、旦那。でもま、そんな感じさね。それ以来、ずるずると関係が続いてる感じだね。旦那と私の商売は相性いいからさ。競合もするけど」

「……付き合いが長いんですね、お二人とも」

「こいつはアホだが、情報屋としてだけは有能だからな」

「あっはっは! いやぁ、照れるなぁ、旦那ぁ」

 

 クリスは陽気に笑う。顔が赤いが、酒を呷っているわけでもなし。焚き火に照らされてのことだろう。

 夜警も兼ねて、三人が談笑していると、ふとクラフトが立ち上がった。

 

「どうしたんですか?」

「旦那ぁ? 小便ですかい?」

「アホか。喜べ依頼人、仕事の時間だ」

 

 クラフトは彼女らから視線を外し、森の奥の方を見遣る。

 そこには真っ暗な闇だけが広がっている。が、その闇が、ほんの少し揺らめいた。

 

「夜盗は夜目が利くと聞くが、こんな暗闇でも見えるものなんだな」

「チッ、バレてたか」

 

 闇夜から、形ある人影が、肉ある人間が、姿を現した。

 夜の闇に紛れる暗色の外套。顔つきと声、体格からして、男だ。

 

「おい、こいつか? お前の言っていた賊とやらは?」

「へ? あー、たぶん。逃げるので必死だからあんま覚えてないけど、たぶんそう」

「オレはお前らなんざ知らねぇよ。死にたくなけりゃ持ってるモン全部置いていきな!」

 

 夜盗が吠える。夜盗は腰から、銀色に光る小振りな刃物が握られていた。

 

「……ふむ」

 

 クラフトは特に構えるでもなく、夜盗の出で立ちをジッと見ていた。

 外套はボロボロで使い込まれており、ほとんど布切れと変わらないほど擦り切れている。

 月光を反射するナイフも、一度も研いだことがないかのように刃毀れし、表面も汚れている。あれでは皮膚は裂けても肉は断てまい。

 虚仮威しか、と鼻で笑う。

 

「屋敷があると聞くから、盗賊団かなにかが根城にでもしているのかと思っていたが、取るに足らない雑魚か」

「あぁん!? こいつが見えねーのか! ごちゃごちゃ言ってねぇで、死にたくなけりゃ言う通りにしやがれ!」

 

 ナイフをクラフトに向ける。後ろでキャロルが身を竦ませているが、クラフトは一切動じない。

 なまくらとはいえ刃物は刃物、武器だ。

 人数はこちらの方が多いが、他二人は情報屋の女と助手の少女。お世辞にも戦力になるとは言い難い。

 ならばどうするか。

 答えは、既に決まっていた。

 

「く、クラフトさん……!」

「狼狽えんな。探偵は戦うもんじゃねぇ。が、この世界にゃ、俺たちみてーな非力な奴の代わりに、戦争ならざる戦闘を代行する力があるだろうが」

 

 クラフトはスッと手を伸ばして、腰のあたりに手を添える。

 指先が硬い箱に触れる。指を這わせ、その箱の開閉部を開く。

 

「おぅ、チンピラ。そんな物が欲しいってんなら、力ずくでどうにかしてみろよ。中央の都心ならいざ知らず、荒れ放題の時代でこんなクソ田舎だ。話し合いで解決できると思ってじゃねーぞ」

「チッ……死んでも、知らねぇからな!」

 

 夜盗がナイフを構えて突貫する――が、クラフトの体に触れるより前に、夜盗は弾かれた。

 クラフトの手に握られているのは、数十枚の紙の束。ただしその紙は、少しばかり厚く、質感は硬い。

 そして彼の目の前には、半透明な壁、あるいは盾のようなものが五つ、浮かんでいた。

 

「当然、俺も全力で抵抗する。だが俺は探偵だからな、頭以外を動かすつもりはない」

 

 スッと紙の束から手を離す。

 すると束は地面に落ちることなく、ふわりと宙に浮き、その上から五枚、クラフトの手元へと向かっていく。

 

 

 

「さぁ、頭使って殺し合いだ――!」

 

 

 

● ● ● ● ● ●

 

 

 

 “裁きの日”以降、旧き世界の大いなる力は失われた。

 勝利(ビクトリー)の力、伝説(レジェンド)の力、禁断の力、支配者(マスター)の力――あらゆる力は失われた。

 しかし世界に根付いた力は、完全に失われることはない。

 ほとんどの高位の力は世界から失われた。しかし世界には、価値のない弱き力(コモン)だけが残っている。

 裁きから逃れた、世界にこびりついた力の残滓。

 命は奪えても、生命を根絶することはできない力。

 人は殺せても、人類を鏖殺することはできない力。

 兵器として、戦争の道具として、争いの火種としての力はない。

 けれどもそれは、人を殺し、命を奪う程度には、力あるものであった。

 心の臓を刃物で突き刺す、頭を棒で打ち砕く、首の根を握り締める。そんな、ありふれた凶器、凶行と変わらない。

 戦争ならざる戦闘のための力。

 どこかの世界では、遊戯のために、あるいは儀式のために使われた力。

 この世界では、“裁きの日”を生き残った、価値なきものたち(パウパー)による力。しかしそれは、ただの暴力でしかなく、その名も忘れられつつある。

 

 

 

 もはや、デュエル・マスターズという名は、風化していた。

 

 

 

● ● ● ● ● ●

 

 

 

 名前も知らないカードたち。その中に眠る怪物(クリーチャー)、呪文――あらゆる力を操り、競い合う。

 かつては文明の発展、遊戯、儀式、あるいは戦争に使われたそれも、今では人間を殴り殺す程度の力しか残っていない。

 大いなる力は消え、世界にこびりついた弱き力(コモンカード)

 無価値なものたち(パウパー)は微かな力を振り絞って、その存在を、小さな争いの中で示すだけだ。

 

「オレガ・オーラ発動、《*/零幻ルタチノ/*》」

 

 ――先に仕掛けたのは、クラフトだった。

 虚空に浮かぶ、砂嵐の如き影。

 影は紫電を弾かせ、虚ろに揺蕩っている。

 そこに、クラフトは一枚のカード――手にしているカードとは別の、白いカード――を、影へと放った。

 

「《無罪(モラル) TV-30》をGR召喚。《ルタチノ》の情報(データ)導入(インストール)

 

 白いカードを取り込むと、影は激しく電光を煌めかせながら、その姿を実体あるものとして顕現させる。

 それは寸胴な、蛇のような怪物だった。

 

「一枚ドローし、手札を一枚捨てる。ターンエンド」

「《霞み妖精ジャスミン》召喚! 破壊してマナを追加だ!」

 

 夜盗もまた、同じようにカードを操り、対抗する。

 彼らはこの争いの名も知らないが、それでも、どうすればこの場で戦えるのか、どうすればこの争いで勝ち抜けるのか。そのルールは、理解している。

 価値を失った小さな力(コモン)に縋り、彼らは目の前の男を打ちのめすべく、次のカードを手に取る。

 

「《幽具ギャン》発動。《ムガ 丙-三式》をGR召喚し、こいつに導入(インストール)だ。《ギャン》の能力で山札から三枚を墓地へ」

「《解体人形ジェニー》召喚! 手札を見せな!」

 

 クラフトの場に新たな影、蝋燭の火が灯る。

 そして夜盗は不気味な人形を――凶悪な刃を持つ少女の化け人形を呼ぶ。

 人形はおぞましい金切り声を上げながら刃を振り回し、クラフトの手元を切り裂く。

 

「《エナジー・ライト》を捨てろ!」

「ふん……まあ、いいだろう」

 

 手にしたカードが一枚、落ちていく。仕方ない代償だ。

 手の内に秘めた貴重な力の一端だが、あれを捨てなければ、手首ごと切り落とされていたかもしれないのだから。

 手数は減ったが、ならばと次の一手を考えるまで。

 

「《*/肆幻フィッパード/*》を発動だ。《ルタチノ》を《フィッパード》に更新(アップデート)

 

 ジジジ、と《ルタチノ》は紫電を散らしながら、その姿を変えていく。

 寸胴はなめらかな流線型となり、五つに分かたれた尾は長く伸びる。胴体から人のような腕が生え、体色は白く透き通っている。

 虚ろな蛇の影は、電光の中で空虚な怪魚へと変貌した。しかし透明な体の内側には、寸胴の蛇の姿が残っていた。

 

「《フィッパード》で攻撃、パワーは7000。パワード・ブレイカーで二枚ブレイクだ」

 

 怪魚が両腕を振りかぶり、その腕でもって夜盗を守る盾をふたつ、叩き割った。

 砕かれた盾は粉々になる。その破片が凶器となり、夜盗自身へと向かっていった。

 

「ぐっ……!」

「追撃するぞ。《ギャン》でシールドを……」

「させねぇ! S・トリガー《狼牙獣銃拳》! パワーを-6000!」

 

 嘲笑する燭台が飛びかかったところで、夜盗の手から光が迸る。

 刹那のうちに光は黒い影――人狼へと姿を変える。人狼の拳から放たれた拳圧は波動となり、燭台を打ち砕いた。

 

「ちっ……ターンエンドだ」

「俺のターンだ! 《超次元リバイヴ・ホール》! 《ジャスミン》を回収し、コスト7以下の闇のサイキック・クリーチャーをバトルゾーンに呼び出す!」

 

 バチバチ! と激しく稲光が弾けた。

 それは空間に穴を穿つ魔法。時空をねじ曲げ、この世界と別の次元とを繋ぎ、その門を創造する。

 空間に開かれた穴から、なにかが這い出でる。巨大で、おぞましく、醜悪な、この世のものとは思えない化物が。

 

「出てきやがれ! 《激天下!シャチホコ・カイザー》!」

 

 スゥッと、巨体に対して異常なほど軽く、その怪物は降り立った。

 それは龍と呼ばれた怪物だ。しかしそれはあまりにも邪悪――いやさ、歪であった。

 蝙蝠の如き翼は膜を張っているが、それは洞窟の岩肌のように不揃いで、暗く黒ずんでいる。

 体の各所には刺々しく、生々しく、そして不自然に突き出た突起。それがなんのために存在するのか。威嚇のためか、武器にするためか、まったくわからないが、不気味さを感じさせるパーツだった。

 そしてなにより、眼のない顔。そして頭部以外に存在する、二つ目、三つ目の大口。その中では、釘のように伸びた歯がギラギラと怪しく光っている。

 それをただの龍と呼ぶには、些か抵抗がある。これはただの龍を超えた、あるいはただの龍から外れた、なにかだ。

 

「そいつは……」

 

 別次元の先に存在する異界の龍。クラフトはその存在を知っていた。

 力を失い、弱き力だけが残ったこの世界ではあるが、その中でも“弱いなりに強い力”というものは存在する。

 強者が失墜した中における、弱者の中の強者。そして人はいつの世でも――力が失われた今の世では特に――強き力を渇望する。

 そしてこの異界の龍こそ、この無価値で弱い世界における、強い力であり、強い存在だ。

 それをクラフトは知っていた。

 

「雑魚だと思ったが、そんなモン持ってるとはな」

 

 あの異界の龍の力は知っている。

 故にその先にある展開もある程度、予想できる。

 それを思い、彼は憂鬱そうに嘆息した。

 

「呪文を唱えたことでG・ゼロ発動! 《魔光騎聖ブラッディ・シャドウ》を召喚!」

 

 それは音もなく現れた。

 騎士だ。それも、馬に乗った騎兵。しかしその騎兵は、ゆらゆらと存在そのものが揺らめいている。およそ生きた命とは思えなかった――正しく、幽霊騎士だ。

 

「鬱陶しいな。俺のターン、5マナをタップする」

 

 クラフトは落ちたカードを手元に引き寄せる。

 使い切った力。本来なら墓場で眠り続けるだけだが。

 “それ”は、己の力で、永久の眠りから覚める。

 

「墓地から《幽影スピナ・ペドロ》を発動。《浸透(スルー) DS-10》をGR召喚し、《スピナ・ペドロ》を導入(インストール)

 

 ジジジ、と電光が走り、幽鬼が蘇る。

 それはただの影、仮初めの肉体でしかないが。

 

「さて、ブロッカーか。《シャチホコ》もいる。なら、殴る意味はないな。ターンエンドだ」

「俺のターン! 《ライフプラン・チャージャー》を発動! 《黙示護聖ファル・ピエロ》を手札に加え、そのまま召喚し破壊! 《リバイヴ・ホール》を回収する! ターンエンド!」

「俺のターンだ。ドロー……手札を削がれたのが地味に面倒くさいな。《ア・ストラ・センサー》発動、山札から三枚捲る」

 

 捲られた三枚を見て、クラフトは眉間に皺を寄せる。

 二度目の嘆息をしつつ、その中の一枚を仕方なさそうに摘まんだ。

 

「……まあ、いいだろう。《ギャン》を手札に加え、そのまま発動だ。《スピナ・ペドロ》に追加する。能力で山札から三枚を墓地へ。そして、これで《スピナ・ペドロ》のパワーは《浸透》で1000、《スピナ・ペドロ》で+4000、《ギャン》で+2000、合計7000だ。パワード・ブレイカーで二枚ブレイク」

「《ブラッディ・シャドウ》でブロック……」

「おっと、《浸透 DS-10》はブロックされない。そのまま二枚叩き割るぞ」

「くそ……っ」

「続けて《フィッパード》で攻撃だ」

「そいつは通さねぇ! 今度こそブロックだ!」

 

 幽鬼の一撃が、夜盗の盾をふたつ、打ち砕く。

 次に怪魚の両腕が振り下ろされるが、それは幽霊騎士がその身を捧げて防ぐ。夜盗の盾は、騎士によって守られた。

 

「《シャチホコ・カイザー》の能力発動! ターン開始時に《ファル・ピエロ》を復活し、すぐさま破壊! 《リバイヴ・ホール》を回収だ! そのまま呪文《リバイヴ・ホール》! 《ブラッディ・シャドウ》を回収し、《激相撲!ツッパリキシ》をバトルゾーンに! さらにG・ゼロで《ブラッディ・シャドウ》を召喚!」

 

 異形の龍が咆哮し、小さな命が蘇る。

 蘇った命は再び己の魂を砕き、失われた魔術を取り戻す。取り戻された魔術から、新たな怪物が現れる。

 幽霊騎士が主を守り、その幽霊騎士は龍の力、あるいは魔術によって舞い戻る

 終わらず、尽きず、永遠に巡り続ける、小さき力の循環。

 それは無価値(コモン)と言えど、もはや弱き力ではない。

 かつての旧世界であっても、支配者たちに牙を突き立てられるほどの、大きな力と成っていた。

 

「《シャチホコ・カイザー》で《スピナ・ペドロ》を攻撃! 《ツッパリキシ》の能力で、文明の数だけそのクリーチャーのパワーが上昇する! 《シャチホコ》は光、闇、火の三文明、パワー+3000でパワー8500だ!」

「ちっ……《浸透》がやられたか」

 

 邪龍が姿なき影の幽鬼を食い千切る。

 実態のない、正しく幽玄なる存在ではあるが、その影を繋ぎ止める要石を砕かれては、揺らめく姿すら保てない。

 中に潜む(チップ)が噛み砕かれた刹那、幽鬼は雲散霧消した。

 

「だが《スピナ・ペドロ》は死なねーよ。5マナで墓地から《スピナ・ペドロ》を使用する。《ムガ 丙-三式》をGR召喚し、《スピナ・ペドロ》を導入(インストール)だ」

「ターン開始時に《ファル・ピエロ》をバトルゾーンに出して破壊、《リバイヴ・ホール》を回収する。《ジャスミン》を召喚して破壊! さらに《無限の精霊リーサ》を召喚し、ターンエンド!」

「俺のターン、ドロー」

 

 クラフトがカードを引く。

 彼は引いたカードを見ると、舌打ちする。

 

「ちっ……できることはないな。マナチャージし、《幽影スピナ・ペドロ》を発動。《ワイラビⅣ》をGR召喚して、こいつに導入(インストール)する。ターンエンドだ」

「はっ! なんだよ、口だけかよ。ならこのまま、ぶっ殺させてもらうぜぇ!」

 

 ジリジリと、戦況は夜盗へと傾いている。

 自身を守る盾の数こそクラフトが優位だが、彼には圧倒的に手数が足りない。

 影の幽鬼は死なず、幾度と蘇るが、いくら蘇ろうともその攻撃は幽霊騎士が防ぎ、邪悪な龍らが影の体を噛み砕く。

 永久に巡り続け、拡大する怪物たちの群れ。その牙城を根幹から崩さない限り、クラフトに勝ち目はなかった。

 

「《シャチホコ・カイザー》の能力で《ジャスミン》を復活し、破壊する! そして5マナで《超次元リバイヴ・ホール》! 《ジャスミン》を回収し、《アルプスの使徒メリーアン》と《サコン・ピッピー》をバトルゾーンに! さらにG・ゼロで二体目の《ブラッディ・シャドウ》を召喚!」

 

 二体目の幽霊騎士が現れ、夜盗の守りをより固める。

 さらに、

 

「ソウルシフト! コストを5軽減し、6マナをタップ!」

 

 怪物は、騎士と手を組む。

 騎士は、怪物を飼い慣らす。

 その奇妙な騎士団の長が、歩を進める。

 幽霊騎士などという、死した化物とは違う。

 それは、神聖で、潔白なる――聖なる騎士だ。

 

 

 

「《白騎士の聖霊王ウルファス》!」

 

 

 

 神々しい。

 その姿を見た者は、そう思うだろう。

 旧世界に存在した聖なる天使と同等の力を持つのではないかと思えるほどに、異形の怪物と共に歩む騎士団長の威光は、煌めいていた。

 巨大な王は、片手を振り上げる。

 

「《ウルファス》でWブレイク!」

「ぐ……っ!」

 

 王が手を振り下ろすと、光槍が二発、天空より放たれた。

 光の槍はクラフトの盾をふたつ、打ち砕く。

 

「続けて《シャチホコ》でブレイクだ!」

「っ!」

 

 異形の龍が咆え、さらにもう一枚、クラフトの盾を食い千切る。

 その背後から、さらに一体、もう一体と、怪物が押し寄せる。

 

「《ツッパリキシ》《ジェニー》でもブレイク!」

「…………」

「へっ、トリガーの一枚もないのかよ。《ウルファス》をアンタップし、ターンエンドだ。次でぶっ殺してやる」

 

 粉々になった盾はすべて、クラフトの手中に収まる。

 それらのうちの一枚さえも、輝くことなく。

 

「……俺のターン」

 

 クラフトはカードを引く。

 目の前には、怪物の群れ。

 無限に新たな命を吹き込む、異界の邪龍。邪龍が率いる、怪物の群れ。

 命を賭してでも主を守る騎士の王。神聖なる団長が率いる、騎士団。

 それらを前に、クラフトは――

 

「3マナで呪文、《泡星都市バブラブル》」

 

 ――活路を、見出した。

 

「クリーチャー二体を対象に、攻撃とブロックを封じる。《ウルファス》と《メリーアン》を選択。次のターンまで、攻撃も、それとブロックできない」

「あ?」

「もう一枚、1マナで呪文《ジェミニ・バインド》。クリーチャー一体を指定し、攻撃とブロックを封じる」

「な、あ……?」

「《ブラッディ・シャドウ》を選択。そいつも、攻撃もブロックもできねぇ」

 

 夜盗を守る騎士たち。四体の衛士のうち、三体の動きが止まった。

 泡の中に閉じ込められ、光の帯に縛り付けられ、主を守る、という使命をまっとうできない。

 ほとんどの守り手を失った夜盗に、冷や汗が浮かぶ。

 まさか、と嫌な想像が、胸中を支配する。

 

「さて、こんなもんか。《スピナ・ペドロ》で攻撃だ」

 

 刹那、幽鬼が動き出した。

 夜盗に向けて腕を振り上げ、彼を守る盾を打ち砕かんとする。

 

「ぶ、《ブラッディ・シャドウ》でブロック!」

「もう一体の《スピナ・ペドロ》でシールドブレイク」

 

 二体目の幽鬼が、夜盗を守る盾をすべて、粉砕した。

 同時に怪魚が奔る。中空をなめらかに、滑るように、怪腕を振り上げる。

 夜盗の心の臓を抉り取らんとばかりに、その上を、振り下ろした。

 

「ま、まだだ! S・トリガー《狼牙獣銃拳》! 《フィッパード》のパワーを下げる!」

 

 ほんの、僅かな刹那のうち。

 夜盗の手中に収まるはずの盾の破片が寄り集まり、黒い瘴気となって、解き放たれた。

 暗黒のエネルギーの塊。それは怪魚の内側まで深く、深く浸透し、怪魚の影を維持している内部(チップ)をも汚染する。

 

「は、はは……! 冷や冷やしたぜ。だが、クリーチャーを破壊しちまえば攻撃も止まる。これで俺の勝ち――」

 

 

 

 グチャッ

 

 

 

 不快な音が、小さく響いた。

 ポタ、ポタ、と赤い雫が滴る。

 男の――胸から。

 

「は……?」

 

 夜盗の胸には、細く、長い怪腕が伸びていた。

 透き通るほど白く、美しい手は、拳の形で握られている。夜盗の、胸の内側で。

 

「6000マイナスで破壊? 寝ぼけたこと言ってんじゃねーよ。《フィッパード》のパワーは《無罪》で3000、《フィッパード》で+4000、合計7000だ。《狼牙獣銃拳》程度じゃ死なねーよ」

「う、そ……だろ……?」

「嘘じゃねぇ。俺は必要で使えるモンしか使わねーからな。こいつのパワーは、色々と“使える”」

 

 より弱い怪物を殴り殺すことにも。

 怪物を殺すための魔術から退くことにも。

 弱者(コモン)による、無価値(パウパー)の世界だからこそ。

 純然たる力というものは、大きな意味を持つ。

 その意味が、夜盗の体を穿ったのだった。

 

「そういうわけだ、雑魚。死んどけ」

 

 クラフトは最期に一言、告げる。

 すると怪魚は、腕を引き抜いた。

 

 

 

「《*/肆幻フィッパード/*》でとどめだ」

 

 

 

 ――夜盗は後ろに倒れた。

 彼が目覚めることは、永遠にないだろう――

 

 

 

● ● ● ● ● ●

 

 

 

「く、クラフト、さん……」

「殺す必要はあったんですか、か?」

 

 胸から赤色を吐き出して倒れる夜盗。

 そんな彼を作り出した男に、キャロルは声を掛けようとして、先んじて言葉を制される。

 

「こいつは俺たちを殺すことを厭わなかった。だから俺もそうした」

「で、でも……追い払うだけ、とかでも……」

「後で報復に来られても面倒だからな。そもそも、こいつを殺す理由はあっても、生かす価値はない」

「そ、んな……」

「いい加減、慣れろ。旧世界とやらはどうだったか知らんが、今の世界ってのは、こういうもんだ。生きるつもりで生きているなら、“そうする”だけだ。そのために手段を選んじゃいられねーよ」

「……はい」

 

 キャロルは俯いて、短く返事をする。

 

「旦那も手厳しいなぁ。しゃーないけどね。ってか、今晩、死体のそばで寝なきゃならんのでは?」

「文句を垂れるな。火の番は俺がする。最低限の死体の処理もやってやる。明日は洋館とやらも調べにゃならん。お前らは寝てろ」

「あの……クラフトさん。遺体なら、わたしが……」

「寝てろ」

「は、はい……」

 

 有無を言わさないクラフトの剣幕に、素直に毛布をかぶるキャロル。

 彼女も、わかってはいた。世界が、こうであることくらいは。

 弱く、小さく、価値なきものたちがいくら騒ごうとも、世界は変わらない。変えられない。力が失われた今の時代では、変わりようがない。

 文明も、文化も、潰えたまま。

 それが、今の世界。大いなる力が支配した、旧き世界の残り滓。

 

 力が失われた、無価値な世界、なのだ。




 布教のため、あとちょっとした練習のために書きたくなって書いた新作です。まあ長く続けるつもりはないんですけど。
 今回は特殊フォーマット「コモン限定戦」をテーマにした作品です。「DMPauper」や「コモン縛り」とも呼ばれていますね。その名の通り、コモンカードだけでデッキを組んで対戦するルールです。これが意外と面白いんですよね。
 超天篇で登場したGRによって、コモン限定のカードプールにも大きな変革が起きたので、コモン限定戦の布教も兼ねて本作の執筆した次第です。
 本作は、世界から大いなる力が失われ、無価値な力だけが残った世界……要するに、アンコモン以上のカードがなくなって、コモンカードしか存在しない世界です。スーパーデフレーション。やばいですね。
 そんなわけで、本作ではコモンカードしか出てきません。知ってました? 《シャチホコ》ってコモンなんですよ? コモン限定戦だと反則級にクソ強いカードです。こいつのせいで、こいつを呼べるカードはすべて一枚制限にする、ってルールもあるくらいです。
 また、コモン限定戦は除去カードが少なく弱いので、数少ない《シャチホコ》を倒せるカードである《狼牙獣銃拳》がよく採用されるんですが、こいつの除去から逃れられるパワー6000超えのラインというのも重要になってきます。本編だと、バニラGRと《フィッパード》でちょうど7000、《狼牙獣銃拳》を耐えられたりとかね。
 ちょっと長く語りすぎてしまいましたが、今回はこの辺で。次回、いよいよ洋館探索します。お楽しみに。


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