桜の咲く頃 (coltysolty)
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はじまりの合図

前作のエスパーがエンディングに入りましたので
新しい作品を投稿してみようかと思いまして・・・

良かったらご閲覧ください。


桃色の花びらが校庭に舞う。

 

李衣紗達は記念写真を撮るために列をつくり並んだ。

 

「それでは撮影しまーす」

 

広角レンズを付けた一眼レフのデジカメのシャッター音が

聞こえると、圭太が叫んだ。

 

「あーーーーー!!!俺、目ぇつぶった!」

 

隣にいた行成が圭太をどつく。

 

「ばっか、おまえなにやってんだよ!」

 

永斗が続ける。

 

「すいませーん。バカがいたんでぇ。もいっかいお願いしまーっす」

 

カメラマンが微笑む。

 

「大丈夫ですよ~。何回か撮りますからあ。それじゃー

いいですかあ~?1,2,3、パチッ!」

 

シャッター音と同時に別の音が校庭に響き渡った。

 

「エーックションッ!」

 

今度は日南田がくしゃみをしてしまった。

 

「おまえーーーー、っざけんなよっ!」

 

行成がブチ切れて、日南田の頭をぶんなぐる。

 

「ってぇ・・・・サーセン。も一回、オナシャス」

 

殴られた頭を掻きながら、日南田がカメラマンに謝る。

 

「はっはっは!5回連続で撮りましょうかねえ~

今年の1年生さん達はは面白いですねえ!あ、そこのお嬢さん

前髪大丈夫ですか?」

 

撮影前からずっと頭髪を気にしていた璃乃に

カメラマンが声をかけた。

 

「これってぇ~修正とかできるんですかあ?」

 

体をくねらせながら、璃乃が問いかけた。

 

「ん~。できるけどね~。個人的な要望は聞けないんですよぉ~

ごめんねー。あと、3回シャッター切りますから、そこから

選んでWEBアルバムにUPしますねぇ~

 

あとね、この後グループ写真とか撮るから、そのときは

リクエストありだからね。」

 

李衣紗、圭太、日南田、永斗、行成、璃乃の6人は

自然に集まると、グループ写真に仲良く収まった。

 

撮影を終え、携帯をいじりながら璃乃が声をかける。

 

「ねえ、このあとさぁ、ファミレス行くでしょ?」

 

間髪置かずに、圭太が答える。

「あ、わりぃ。俺、合気道の練習あるんで」

 

すると、日南田もそれに続いた。

 

「俺、バスケあるから、行かね。行成もだ」

 

「え~?永斗と李衣紗は行くでしょぉ?」

璃乃は半ば強制的に、李衣紗と永斗を誘い

断れない雰囲気を作った。

 

「うん。いいよ。私もおなかすいたし。永ティも行くでしょ?」

李衣紗は快く、璃乃の誘いを受けた。

 

「え?・・・・ああ・・・」

 

断ろうと思っていた永斗だったが、李衣紗に言われてしぶしぶ

了承するのだった。

 

額が汗ばむ程、日差しが強い午後、入学後のオリエンテーションを終え、

6人は、それぞれの帰途についた。授業は翌週からだったが、部活動は

すでに始まっていた。

 

圭太、日南田、行成は自転車に乗ると、駅まで向かった。

 

「圭太、試合いつだ?」

行成が尋ねる。

 

「あ?来週の土曜。」

 

「終わったらカラオケ行かね?」

 

行成が日南田を一瞥してから圭太を誘った。

 

「あ・・・何時に終わるかわかんねぇから・・・」

 

圭太はバツ悪そうにうやむやな返答をした。

 

「終わったら、文字メッセしろよ」

 

日南田がニヤリと笑って、圭太に指示した。

 

「あー、んー、たぶんムリ」

 

歯切れの悪い圭太に不信感を抱きながら

日南田が畳み掛ける。

 

「なんか、あんの?」

 

「え?ねーけどよ・・・とにかくムリ」

 

圭太が面倒くさそうに返事をしたのを受け取って

行成が諭した。

 

「めんどいからいいよ。永斗誘おうぜ」

 

「永斗ぉ~?あいつ塾あんじゃね?てか

予備校?国立理系行くらしいぜ」

 

日南田がそう答えると行成が続けた。

 

「俺だって国立だ、ばぁか。お前だって

進学コースだろうが。今しか遊べねぇから言ってんだよ。

ま、とにかく週末あけとけ、お前は」

 

「りーー」

 

二人のやりとりを眺めながら、圭太はちらっと携帯に目をやった。

 

「あ、じゃ俺、電車の時間あるから、先行くな」

 

「おー、じゃ、明日なー」

 

行成は圭太に手を振ると、手前のコンビニに自転車を止め

日南田と一緒に、自動ドアをくぐった。

 

 




仲良し6人は小学校から一緒ですが
これからどんな展開となるのでしょうか?



GW10連休、皆さまはどのようにお過ごしになりましたか?
私は、美術館や博物館などに行ったり、
近場をうろうろして休日を過ごしました。

どこも空いていて快適でした。


※サブタイ入れるの忘れてた(;'∀')


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損得勘定

無性に走りたくなって公園でダッシュして
家に戻ったら、世界リレーやってました。


「あれさ、おれいっつも思うんだけどさ。

同じ速度で走ってたとして、おまえみてえに背が高けりゃさ

歩幅があるわけじゃん?そしたらぜってー早ぇじゃん。

ずるくね?

 

でもってさ、垂直飛びだってさ、俺70cmなのによ

お前は軽く飛ぶだけで俺より高く飛んじゃうわけじゃん?

超ずるくね?」

 

日南田が口をとがらせて言う。

 

すると行成がそれに答える。

 

「まあ、そうだけどさ。でも、おまえいいつも

100円とか500円とか拾うだろ?

地面に近いから、気づくの早ぇんだよ。

 

得してんだろ?」

 

そう言われると、そうかもしれないと日南田は腕を組みながら

考えた。

 

「んー・・・背が高いから得だとも限らないってことだよな」

 

日南田が問いかけると、行成は日南田の肩に手を置きながら

たしなめた。

 

「スポーツだって種類によるわけだよ。

器械体操なんか、大きい方が不利なんだからさ。

 

大きけりゃなんでもスポーツいいってわけでもないだろ?

バレー、バスケは大きい方がアドバンテージだけど

サッカーなんか小さくても名プレーヤーいるだろ?

 

バレーだって、リベロがあるしさ。

バスケだって外国で活躍した日本人は小せぇぞ」

 

日南田はうなづきながらラテを飲み干した。

 

「そう言われりゃそうだよな。小さいと

大きいやつからは見えなかったりするから

相撲なんかでも、ひょいひょいって、視界から消えちゃう

らしいしな。

 

まあ、事と次第によっちゃあ有利ってこともあるな」

 

行成は笑いながら続けた。

 

「あのな、人生なんでもプラスマイナスがあんだよ。

ものは考えようで、プラス思考に考えると、生きてて楽しいんだってよ?

 

ばーちゃんが言ってたよ。」

 

日南田は、パン!と手をたたいた。

 

「あーーーー、美奈子ばあちゃん?元気かあ?

前におまえのばあちゃんからいただいた桜餅

うまかったなぁ~。よろしく伝えてといてくれ」

 

行成は嬉しそうに答えた。

 

「ああ、また作るって言ってたから

そんときは、持ってくよ。

 

あと、おまえの大好きな凛々子マネージャーの分もな」

 

日南田はむせながら、顔を赤らめた。

 

「あー、いきなりでびっくりした。

凛々子様の名前が出てくるとは・・・・」

 

「あ、おれ、応援してるから。

なんでもさ、イスラム教の教祖の

ムハマンドは15歳年上の未亡人と結婚したらしいぜ。

 

フランスの大統領だって、すんげえ上の奥さんだろ?

年上奥さんもつ人って、ビッグになる人が少なくないとか。

 

スポーツ選手ってだいたい年上だもんな。

 

だ か ら

凛々子ちゃん、応援 」

 

 

日南田は、横目で行成を見ながらつぶやいた。

 

「おまえ・・・そうやって一人でも多くの敵を、

遠ざけようとしてるだろ?李衣紗狙いの?」

 

行成は向きになって反撃してきた。

 

「は?なに言ってんの?

俺が李衣紗狙ってるとか、思ってるわけ?

 

んなことしねーよ」

 

日南田は肘で行成の腹をどつく。

 

「ムキになるあたり、あやしい・・・・」

 

「あのな。璃乃はおまえのこと好きなんだぞ?」

 

「知らねえよ」

 

「知らねえフリすんなよ」

 

「あーっと、練習に遅れっから、もう行くべ」

 

「ごまかしやがって・・・・凛々子ちゃんに

教えてやるからな」

 

「勝手に言ってろ」

 

 

いつものようにじゃれあいながら、行成と日南田は

バスケの練習に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

合気道に行くはずの圭太は、降りるはずの電車の駅を

通過した。電車内で、しきりに携帯をスライドさせている。

 

いったい圭太はどこに向かっているのだろう・・・・

 

 

 

 

 




私は人ごみの中などで、素早く人を交わして歩いていくので
ちょこまかしていて、まるで、〇がともみたいだ!
と、言われました。

たしかによくお金は拾いますね。
スキマ妖怪にもなれるから、かくれんぼも得意です。

でも長身の人にはあこがれるなぁ~
いいなあ

だって、渋滞の先がみえるでしょ?


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だいじょうぶだいじょうぶ

暗示にかかると、そのような心持になれるのが
不思議です。


「圭太、今日はありがとう」

 

「あ?礼とかいらねーし。

じーちゃんに会いたかったのは、オレだしな」

 

李衣紗は目に涙をためて、圭太を見つめた。

 

「圭太って、どんだけやさしいの?」

 

「は?別にやさしくねーから。

じーちゃんは、俺が幼稚園のときに、ぶっころんで

足から血ぃ流した時に、速攻で消毒してくれて

 

泣きわめいてた、俺の背中をさすりながら

 

『だいじょうぶ、だいじょうぶ』

 

って、言ってくれたんだ。

 

そしたら、不思議と足の痛みが消えて、血も止まったんだ。

じーちゃん、魔術師かと思ったよ。

 

オレの尊敬するじーちゃんが、手術して苦しんでんなら

黙ってられるわけねーだろ

 

今度はオレが『じーちゃん、大丈夫だ!』って

励ます番だから」

 

「圭太!!!ありがとう!」

 

照れ隠しに悪ぶる圭太に思わず李衣紗が駆け寄っって

抱き着いた。

 

真っ赤になる圭太。涙を流しながら、ぎゅっと圭太を抱きしめる李衣紗。

 

しばらく時が止まった。

 

 

 

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

 

 

 

「日南田パス!」

 

行成が叫ぶ。

 

「おう!行成決めろ!」

 

俊足を生かした行成がゴール下に回り込み

シュートを決める。

 

「ナイッシューー!!!」

 

監督も手をたたいて喜んだ。

 

 

「一旦休憩!給水タイム」

 

 

日南田が女性マネージャーの凛々子の横に座る。

 

「ねえ、凛々ちゃん。墓参り行くの?

とうちゃん、今日出張から帰ってくるから

乗せてくよ?」

 

「日南田ありがとね。大丈夫だよ。にいちゃん帰ってきてるから

送ってもらえるんだ」

 

 

 

 

凛々子の足にはボルトが入っているため

運転免許を持っていない。車で移動するときは、誰かに乗せてもらっていた。

 

凛々子は数年前に交通事故に遭い瀕死の重傷を負った。

その時運転していたのは、凛々子の婚約者で、運転していた彼は

即死だった。

 

退院してからの凛々子は、体は回復しているものの

精神的ショックが大きすぎて、口をきくことができなかった。

7年経った今やっと、人とコミュニケーションをとれるまでに回復した。

 

日南田が小学生のとき、母親が務める病院で

凛々子と出会った。その時の凛々子は今とは別人で

まるで魂が入っていない、人形のような表情のまま

ベッドに横たわっていた。

 

 

 

 

 

「おねえちゃん。これ、あげる」

 

小学校低学年だった日南田は、目を開けたまま動かない凛々子に

ハムスターのぬいぐるみを差し出した。

 

すると、凛々子が少し反応した。

 

「タカシ・・・・?」

 

凛々子の婚約者の貴司は鼠年だったので、誕生日に

凛々子がハムスターのぬいぐるみをプレゼントしたことがあった。

 

「おねえちゃん。これあげるから、元気になってね」

 

日南田のきらきらした瞳から放たれた光が

凛々子の魂に息を吹き込んだかのように、心動かされ、

事故後初めて言葉を発した。

 

「坊や、ありがとうね。名前は?」

 

「ひなた!」

 

「ひなた、君・・・元気だね。おねえさんも

がんばって、元気になるね」

 

「うん。あとね、これもあげる。ないしょだよ!」

 

といって、日南田はポケットから、溶けかかったチョコレートを

差し出した。

 

凛々子はそれを受け取ると、微笑みながら

 

「ひなた君のおやつ、へらしちゃったね。

でも、とってもうれしい。これ食べて、モリモリ元気になるからね」

 

「うん。これ、すごくおいしいから

今度また持ってきてあげるね!」

 

「ひなた君、入院してるの?」

 

「ううん、かーさんが、ここのかんごしさん」

 

「そうなんだ・・・うえのおなまえは?」

 

「かすかべ。これ」

 

と言いながら、春日部日南田と書かれた名札を見せる。

 

「かすかべ、ひなたくん、ありがとう。また

会えたらうれしいな。おかあさんのところにきたら、

寄ってみてね」

 

「うん!じゃね、ばいばーい」

 

 

凛々子の担当看護師だった日南田の母は

息子とよく遊んでくれた凛々子に大変好意的だった。

 

退院後もやりとりがあったため、日南田の母が、息子の高校への

非常勤講師の職を推薦した。

 

凛々子は数学の非常勤講師をしながら、部活のマネージャーも

引き受けたのだった。

 

 

 

 

「じゃ、凛々たん、またあちたね~愛してるよ~!!!」

 

いつも、ふざけて凛々子をからかいながら

愛情表現する日南田を、凛々子は実の弟のようにかわいがっていた。

 

 

 

 

 

「おい、日南田、終わったらフォーティーワン行くぞ」

 

汗だくになった行成が、日南田に声をかける。

 

「あーーーーー、今日は、パス」

 

日南田の歯切れが悪い。

 

「めっずらしいな!おまえが断るなんて!アイスだぞアイス?

あした、雹でも降るんか?」

 

「んーーー、そうかもな~

おれ、ちょっと行くとこあるから」

 

「ふん・・・・圭太もお前も、挙動不審だな。

まあ、いいや。永斗ん家の近くだから、連絡してみよっと

いくらなんでも、飯食ってその後のカラオケも終わってるだろ。」

 

行成は、時間を確認すると、携帯から永斗に

文字メッセージを送った。

 

 

行成と別れた日南田は

母と一緒に、凛々子の婚約者の墓参りに向かっていた。

 




~キャラ紹介~

李衣紗(りいさ)・・進撃のミカサっぽい顔と髪形。賢くて優しくて、無邪気。
圭太(けいた)・・・小柄でたくましい七大のメリオダスのような少年
日南田(ひなた)・・ハイキューの日向のように根性があって、ヒロアカの緑谷ともかぶる
永斗(ながと)・・・外見はハイキューの月島っぽい。眼鏡をかけている。
行成(ゆきなり)・・ハイキューの影山かな?
璃乃(りの)の・・・転スラのリムルを冷たくしたかんじ
凛々子・・・・・・・東京グールの董香ちゃんを天然系にしたかんじ




急に暑くなりましたね~。運動会日和です。
熱中症に気を付けましょう!!


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紡ぐ

言葉を紡ぎたい


「ねえ、おかあさん。今から墓参り行くの?

こんな遅くに?」

 

「こんな夜遅くにお墓参り行くわけないでしょ。

墓地から遠くないところに温泉があるから

そこに1泊して、それからお墓に向かうんだよ。」

 

「なーんだ!そっかー!!

 

って・・・お泊りセット持ってきてないよ?」

 

「ユニフォーム着たまま寝ちゃう子に

着替えなど必要ないでしょ。

 

タオルとかはあっちにあるし」

 

「えーーーーー!ひどい、かあ様・・・

この汗だくのあたくしを、汗臭いユニフォームを着たままで

凛々ちゃまの彼氏さんに会わせるのかぁああああ」

 

「ま、たしかにね。臭いのは私もかなわない。

後ろにTシャツと短パンあるから、それ着てな」

 

「お?かーちゃんさすが!着替えもってきてんじゃーん」

 

「あたりまえでしょ。お前の母親だよ?」

 

「いや、だからまんまにされちゃうのかと・・・」

 

「そんなことしたら、まわりからひとでなし母って

言われるわい!」

 

「そんなこと言われませんよ~偉大な母様」

 

 

そんなやり取りをしながら、郊外にある

温泉地へと車を走らせる春日部親子だった。

 

 

凛々子が退院してすぐに、墓参りに行きたいと言ったため

日南田の母が、凛々子を連れて墓参りをしたことがあった。

 

そこで、その温泉をみつけ、いつかまた訪れたいと

思っていた日南田の母だった。

 

翌朝、早めに旅館を出て、墓に向かった。

 

「息子よ。みてこらん。きれいだねー。丘の上から海が見えるんだね。

凛々ちゃん彼氏さんは、いつもここから海を眺めて

いるのか・・・」

 

「あれ、散骨したんじゃなかったの?」

 

「聞いた話では、半分は散骨して、残りはここに

納めたらしいよ。墓参りしたい人もいるだろうから」

 

「そうなんだ・・・・あの、彼氏さん!

僕が凛々ちゃんを幸せにしますから、安心して

寝ちゃってくださいよ!」

 

ボカッ!いきなり頭を殴られる日南田。

 

「いてっ!!!!かーちゃん、ひでえ!」

 

「バカなこと言ってんじゃないよ。

凛々ちゃんには、信(まこと)を紹介しようと

思ってんだから。あいつなら、きっと凛々ちゃんを

幸せにしてあげられる。

 

ただ、今はまだ様子をみて、凛々ちゃんが落ち着いたら

合わせようかなーて計画してんだから!」

 

「まことさん・・・・って?

・・・あああ!かーちゃんのいとことか言う人?

オレ、会ったことないよね」

 

「あるよ。おまえが保育所のときに

アイスの塊買ってきてくれたでしょ?

 

お前、喜んで食らいついて、口の周り

チョコだらけで真っ黒になって、ひなっくま~って、笑われたんだよ」

 

「・・・・・それって、記憶にないけど

それのときの様子を表した、画像をPCで見た気がする・・・」

 

「はっはっは!それそれ。そのおじさん。

彼なら、凛々ちゃんとお似合いだからさ」

 

「ふぅーん・・・・まあ、背が高くて

うちの先輩の剛君に似てる、やさしそうな人ね。

 

じゃ、その先輩が凛々ちゃんに振られたら

俺が立候補すっかなー」

 

 

 

ぼすっ!

今度は、背後からひざかっくんされた日南田。

 

 

「バカも休み休みお言い。

とにかく、お盆が終わって、秋ごろ

バーベキューピクニックを計画してるから

そのつもりで。

 

みんな誘って楽しく過ごす。未成年はタダだけど

大人からは会費徴収します」

 

「みんなって・・・行成とか圭太のこと?」

 

「ああ、圭太も李衣紗も、ユッキーも

いつものメンツに声かけといて」

 

「・・・・・おれ、璃乃やなんだけど?」

 

「なに言ってんの?ひとりだけ省くとか

ないからね。全員に声かけるの。ぜ・ん・い・ん!」

 

「凛々ちゃんだけでいいのに・・・・」

 

墓の前で騒がしくしていると、誰かが春日部親子に近づいてきた。

 

「あれ・・・・ひな・・・た君?」

 

その女性の声に聞き覚えがあったので

すかさずふりむくと、そこに立っていたのは

オフホワイトのワンピースを身にまとった

凛々子だった。

 

「あーーーーーー!!!凛々ちゃーん!!!!」

 

走って抱き着こうとした日南田の後ろ首をつかんで

もう一度平手打ちをくらった日南田。

 

「凛々ちゃん、ごめんねー!うちのバカ息子

高校生になっても、バカ丸出しで!」

 

「春日部さん!親子で来てくれたのね!

嬉しい!貴司も喜んでいるよ!」

 

母にどつかれてもめげずに前にでて

しゃべる日南田。

 

「おにいさんにさ、オレが後を継いであげますから

心配しないで!って言ってたところだよ!」

 

「ふふふ・・・!ひなたろう、相変わらずかわいいなあ~。

クラブでも一生懸命ドリブルの練習とかしててさ

そういう健気なところも、めっちゃかわいいね」

 

「かわいいとかやだ!俺は、かっこいいんだ!」

 

「はいはい、かっこいいかっこいい」

 

「凛々ちゃん、ごめんねー。私たちうるさくて。

せっかく墓参りにきたんだから、二人にしてあげないとね。

ほら、日南田いくよ!」

 

「あら、そんなことないのよ!大勢の方がうれしいから。

よかったら、一緒にご飯食べませんか?

 

彼の同級生がイタリアンレストラン経営してるの。

今日、そこに行く予定だったから、一緒に行きましょう?」

 

「ふぉ~!!!!イタリア~ん!!行く行く!」

 

「おまえが勝手に決めない! 凛々ちゃん、いいの?」

 

「いいなんてもんじゃないですよ!私がお願いしているの!

彼の友達もすごく喜ぶから、ぜったい一緒に来てほしいの!」

 

「そうなんだね。わかった。じゃ、ご一緒させてもらう。

でも、車には乗ってよ?ここまではタクシーで来たの?」

 

「うん。友達も送ってくれるって言ってたんだけど

一人で来たかったから、タクシーで来た」

 

「そっか。じゃ、道案内してくれる?」

 

「もちろんよ!」

 

 

3人は、凛々子の同級生が経営する

イタリアンレストランに向かった。

 

そこで意外な人物と遭遇する凛々子と日南田達。

 

 




言葉ってむずかしいですよね。
伝わっていると思っても、伝わっていなかったり
伝わっていないだろうと思っていたら
感じ取ってもらっていたり。

そんなやりとりは次回に・・・・



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紡ぐ~二節~

心も紡いで


「おい、永斗、PC貸してくんね?」

 

「あ?圭太?なに、いきなりコールしてきてんの?」

 

「急いでんだよ」

 

「PC貸すってさ、おまえ簡単に言うけど

俺だって使ってんだよ」

 

「おまえ、前に使ってねーのあるって言ってたじゃん」

 

「使ってねーってか、使えねーから使ってねーんだよ。

文書作成、表計算、プレゼン、どれも期限切れ。

改めてインストールするなら金かかるし。

ゲームするにもスペック足んねーし。

動画だって遅ぇーし。

 

ネット観れるだけ。でも、そんなら携帯あるから

ほんと、使えねぇ」

 

「ネットつながるってことは、ネット観れんだろ?」

 

「あたりめーだろ。ブラウザ立ち上げて

文字と画像見れるぐらいだよ」

 

「それで充分なんだよ!

 

「おまえ、携帯変えたばっかりだろ?

ネットもサクサク見れるって言ってたじゃん。

なにすんだよ?」

 

「おれじゃねーよ!」

 

「誰だよ?」

 

「え?・・・・・・と、ともだち・・」

 

「ともだちぃ~?どこの誰?俺しってんの?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「言わなねぇーと貸さねぇぞ。

安いもんじゃないからな。壊されたらたまんねぇーし」

 

「壊したりしねえよ!あいつは!」

 

「だから、その『あいつ』って誰だよ?」

 

「り・・・・・ぃ・・・・・・s」

 

「はい?」

 

「りだよ、りぃーーー!」

 

「李衣紗?」

 

「ああ・・・・」

 

「なーんで、李衣紗がお前にパソコンの相談すんだよ?」

 

「オレはパソコンには詳しくねぇけど、

人脈だけはあんだよ!だから、りーは、俺にきけば

すぐに手配してくれると思ったんだよ」

 

「ふぅん・・・李衣紗なら、貸してやってもいいぜ

でも、なに調べるんだろな?」

 

「そこは聞かないでやってくれよ」

 

「おまえ知ってんのかよ?」

 

「だいたいは見当つく・・・・・」

 

「なんかオゴれよ?」

 

「あ、ああ!もちろんだ!」

 

「なんか訳ありなよーだからな。

理由は聞かないことにするよ。

今から取りにこいよ。WIFIのやり方は

わかるよな?WEPキー入れるだけでつながるから」

 

「おう!ありがとよ!今から取りに行く!」

 

 

圭太は自転車で永斗の家に向かった。

 

 

永斗からPCを受け取ると、圭太はすぐに

李衣紗に電話を入れた。

 

「李衣紗?あ、オレ。PC借りれたぞ。

どこに持っていけばいい?」

 

「あ、じゃあじいちゃんの病院近くのココ。

MAP送るね。」

 

圭太は李衣紗から送られた地図データを頼りに

パソコンを届けに向かった。

 

圭太の恩人であるじいちゃんに恩返しがしたい。

その思いでいっぱいの圭太。

 

李衣紗はじいちゃんにメッセージを送りたくて

心を込めた「言葉」と「画像」を探すために

PCを使いたい、きれいな写真をみつけて

それをプリントアウトして、メッセージを手書きしたい。

 

家にWIFIはあるけど、李衣紗本人は

パソコンを持っていないから、圭太に相談した李衣紗だった。

 

地図が示していた場所に到着すると

圭太は入り口をくぐった。

 

「失礼しまーす。ここで待ち合わせしたんですが・・・

 

・・・・・え!!!!日南田!おまえ、なんでここにいるんだ?」

 

「圭太ぁ?おまえこそ、なんだ?」

 

圭太が李衣紗から指定された場所は

日南田達が訪れていたレストランだった。

 

 




言葉は相手を傷つける凶器にもなるし、
ほっこり薬にもなる不思議な力を持つものですよね。

李衣紗はきっと、素敵な言葉をみつけて
大好きなおじいちゃんにプレゼントしたかったんですね。

果たして今の李衣紗の願いとは・・・・?


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紡ぐ~第三節~

連なった言葉を紡いでいたい

大切なあなたに心ごと届け



☆彡

想いを連ねて

 

灯が消えないように

 

走って走って走って

 

永遠のゴールに向かって☆彡

 

✨✨✨✨✨✨✨

 

 

「永斗って足速すぎだよな。

小学校んときはFWで5人抜きとか

やったらしいぜ。マラドーナかっ

 

でさ、足も速いが頭の回転も速くてさ。

たまについてけねーんだよな。会話に」

 

いつもより饒舌になっている圭太が

日南田に口角泡を飛ばしながら

熱弁をふるう。

 

「おい、お前がここにいることと

永斗の頭の回転と、どんなかんけーがあんだよ?」

 

日南田が冷たく言い放つ。

 

「だからあー。あいつにパソコン借りたんだよ」

 

「お前が永斗の話についていけないように

俺も、たまにお前の話についてけない。」

 

「のなー、あいつパソコン詳しいだろ?

オレ、だめじゃん?だから」

 

「だから、なに?」

 

イラっとしながら日南田が圭太を睨む。

 

「永斗がつかってないパソコンを

借りたんだよ。おれじゃなくて、頼まれて。

その頼んだ人がここに来てくれっていうから・・・」

 

 

カランカラン・・・・ドアベルの音がした。

 

 

「遅れてごめーん!」

 

李衣紗があわてて店に入ってきた。

 

「李衣紗だ?・・・・・え?パソコン頼んだっての

おまえ?」

 

「あーーーー!日南田!!!なんでここにいるの?」

 

李衣紗が目をまんまるくして驚きながら

日南田に問いかける。

 

「それ、こっちのセリフな?おまえ、なんで圭太に

パソコン頼んだりしてんの?」

 

「あ、それね。うん。説明するよ。

でもさ、おなかぺっこぺこなんだ。

なんか頼んで、みんなで一緒に食べよ?

食べながらゆっくり話するね」

 

李衣紗のやらわかな提案に

首を横に振るものなどいない。

 

「オレ、カルボナーラ!」

 

圭太が覚えたばかりのカタカナ語を発する。

 

「オレ、最初にたのんでてって

かーちゃん達にたのまれたから

ペペロンチーノと、ペンネアラビアータ、ボンゴレビアンコ」

 

「すっげー、カタカナばっかだな」

 

圭太が感心する。

 

「あたりめーだろ。ここ、イタリアンだ」

 

「ねえ、日南田。かーちゃん達って

あと、だれかくるの?」

 

李衣紗が首をかしげながら日南田に尋ねる。

 

「え?はっはっは。オレのいー人がくるんだ」

 

「え?日南田の彼女?」

 

「ま、そんなとこだな」

 

カランカラン・・・二人の大人の女性が入ってきた。

 

「あれ?圭ちゃんに李衣ちゃん?久しぶりだね!」

 

「あー!日南田のおばさん、こんにちは!

久しぶりです。前にチョコマフィン作ってくださって

ありがとうございました!おいしかったです。

こんど、レシピいただいていいですか?」

 

「あら、李衣ちゃんの頼みなら、いつでもきくわよ。

あ、紹介が遅れたわ。こちらは、日南田の部活のマネージャーで

上勝凛々子さん。」

 

「あ、見たことある!体育館でみたことある!!」

 

圭太が立ち上がる。

 

「おい、オレのもんだからな。手ぇ出すなよ」

 

日南田が大人ぶって、圭太にいきがってみせる。

 

バシッ!後頭部を殴られる日南田。

 

「何言ってんの。このバカ息子!とにかくさっさと

オーダーせんかい」

 

店のマスターが笑いながらオーダーを取りに来る。

 

「あ、これね。伝票全部私につけて。

この子達には、いつも世話になってるの。

 

それから、デザートにティラミスもつけてくれる?

全員分ね」

 

「え?おばさん、おごってもらっちゃっていいの?

てか、オレ、めっちゃ儲かった気分なんだけど?」

 

圭太が鼻の穴を膨らませながら、喜びを表した。

 

「圭ちゃん、昨年の冬、タイヤ運んでくれたでしょ?

すんごく助かったよ。

 

李衣ちゃんは、犬の散歩してくれたでしょ。

うちのバカ息子がさぼってぶんなげたとき。

ほんと、ごめんねー」

 

「いいんです!私もルルと散歩できてうれしかったから!」

 

「そうそう、ルルも李衣紗と散歩できて

さぞかし嬉しかったろうよ。うんうん」

 

ゴチッ!今度はこめかみをぐーで殴られる日南田。

 

「おまえは、いつもそうやって調子コイてるけど

圭ちゃんとか李衣ちゃんに助けられてるってことを

忘れるんじゃないよ?」

 

日南田の母は半ば呆れながら、日南田を諭す。

 

「うぃーっす・・・てか、オレちゃんも

結構役立ってるんっすけど?ねえ、みなさん?」

 

「そうね、日南田は部活でも意外に皆のことを

気遣ってくれてるんですよ。さりげなくスポドリ作ってくれてたり

いつの間にかタオルもベンチにあったり。

気が利くんですよ?」

 

凛々子が日南田をフォローする。

 

「ほーらねーーー。ぼくちん、役に立ってんのよ?」

 

 

 

 

日差しも柔らかい喉かな午後、

談笑する日南田親子と圭太達。

 

だれもが和やかな日々が続くと思っていた・・・

 

 

 

 




連投してます。

今月15日過ぎたら、めっちゃ忙しくなりそう(なるにきまってる)
なので・・・・


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李衣紗の絵本

ありがとう
心が寒いときは
いつも温めてくれて
ふかふかのお布団みたいな
おじいちゃんの手のひらは
おおきくてなんでも直してくれる
魔法使いみたいな
私の宝物


一泊での墓参りを終え

春日部親子は自宅に戻っていた。

 

「あそこで、圭太や李衣紗に会うとはな・・・」

 

日南田は一人でぶつぶつ呟きながら

コンビニに向かっていた。

 

「おい、チビ!邪魔邪魔!」

 

後ろから小突かれる日南田。

 

「うっせーなーーーーー

ガリデカ!」

 

日南田をみつけるなり

からかってきた永斗に日南田が膝蹴りを食らわす。

 

「おめーに言われたくねーんだよっ!

ちっさくて見えなかったぞ」

 

「てめえなあ、無駄にひょろでかで

足早いからっていい気になってんじゃねえぞ!」

 

「お前も小っこいけど足だけは速ぇから

忍者みたいに、いっつもどこいるか

わかんねよな?」

 

「おまえ・・・」

 

「あ!永ティと日南ティ!」

 

永斗と日南田のじゃれあいを見て

微笑みながら李衣紗が声をかけてきた。

 

「あ、李衣紗・・・そういえば・・・

パソコンつかってんのか?」

 

日南田が問いかけると、永斗が怪訝な顔をしながら

日南田の顔を覗き込む。

 

「おまえ、なんで知ってんだよ・・・・」

 

「このあいだね~あそこでね~

李衣ちゃんと会ったんだもんね~」

 

永斗が片方の眉毛をあげ、めがねの上から

睨みつける。

 

「おいしかったね!あ、そうだ。

おばさんにお礼言っててね。凛々子さんにも!」

 

「いや~。たいしたことしてねーけど

李衣ちゃんが喜んでくれるなら、アタシもうれしいわ~。

俺の凛々子も喜んでたぜ」

 

永斗が日南田のひじをどつきながら

耳元でヒソヒソつぶやく。

 

「なあ、なにおいしいとかって?」

 

「んー。話すと長いんで、省略!」

 

「省略ってなんも言ってねーじゃねーか!!!」

 

永斗がイラっとしながら、日南田に突っ込む。

 

「えっとね、永ティが貸してくれたパソコンを

圭太が持ってきてくれたんだけど

 

そこで、日南ティとおかあさんと、マネージャーの凛々子さんに

バッタリ会ったの。

 

それで、おばさんにご馳走してもらったんだ。

永ティも呼べばよかったね・・・・

 

でも、塾とか忙しいかなーと思って

連絡しなかった。

 

ごめんね!今度は永ティにも連絡する!」

 

「お、おう・・・・それで、パソコンは

ちゃんと使えたか?」

 

「うん!ありがとね!

きれいで、やさしい言葉をさがして

おじいちゃんにプレゼントしたかったの。

 

自分で書いてイラストも描いて

色つけて、絵本みたくして

おじいちゃんにあげたら

すっごく喜んでくれて

 

元気になったって。永ティと圭太のおかげだよ!

永ティにもお礼しなくちゃ。

 

何がいい?」

 

「役に立ったなら、いいけどさ・・・

あれ、使ってないから、なんだったら

しばらくもってていいぜ。パソコンも使って

もらってたほうが助かるんだよな。放置してると

セキュリティのアップデートも時間かかるしさ」

 

李衣紗のまっすぐな感謝の言葉に

照れながら、思いやりを示す永斗。

 

「え!永ティ、いいの?あんな高価なもの

借りてても・・・」

 

「別に高価じゃないし。ソィッチ買うのと

あんまり変わんないんだぜ。マフオクで手に入れたやつだし。

じいちゃんも、おまえから絵本とかもらったら

うれしいだろ。また、作ってやれよ」

 

「永ティ!!!!」

 

李衣紗は永斗の手をにぎりながら

大喜びした。

 

「礼は圭太に言えよ。俺は貸しただけ。

必死になって、おまえの助けになろうとしてんのは

あいつだからさ」

 

永斗は圭太の気持ちを知っていたため

自分はしゃしゃりでるべきじゃないと

心の奥底で思っていた。

 

 

その頃、圭太は李衣紗の祖父に

元気を出してもらおうと、

古い道着を使って、財布を作っていた。

 

 




真夏のよーだと思ったら
肌寒くなったりで・・・・

皆さま、お体には
くれぐれもお気をつけください・・・・


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紫陽花の雫

ちょっと仕事が忙しく
久々の投稿になりました。



じめじめとした日々をを忘れさせてくれるかのように

庭に咲いている紫陽花の葉の上で光る雫が

すがすがしさを感じさせる梅雨時の午後

 

行成の上の弟である羽音琉(ばとる)が

リビングに突っ伏していた。

 

「おい、ばと、邪魔!」

 

行成がぶっきらぼうに羽音琉の足を蹴る。

 

「おまえは、愛しい弟をそっとしておこうとか

そういう思いやりねえの?」

 

つっぷしたまま、羽音琉が毒づく。

 

「お前こそ、長男に向かって『おまえ』とか

いっちゃう無礼を改めようとかないわけ?」

 

「うっせんだよ。それがオレだ」

 

羽音琉の声が、鼻声になっていたのに気づいた行成。

 

「おまえ、風邪ひいたのか?具合わりーのかよ?」

 

気づかれたと察知した羽音琉は、懸命にごまかそうと

強がってみせた。

 

「風邪じゃねえよ。花粉症だ、ばーか」

 

「おまえ、一言余計だよな。しかも

花粉は終わってんだろ。熱あんのか?」

 

行成は羽音琉の体を起こして、状態を確認しようとした。

すると目が真っ赤になり、鼻水だらけになっている

羽音琉の顔をみて、状況を察知した。

 

「なんかあったのか?また、担任になんか言われたのか?」

 

少しの沈黙の後、羽音琉が詰まりながら答えた」

 

「・・・・・ちげぇよ・・・・・」

 

「友達関係か?」

 

図星をつかれた羽音琉の目からまた涙が零れ落ちた。

 

「今、ココア入れてやるから、そいつ飲んで落ち着け」

 

うっすら状況を把握した行成が、弟を気遣って

落ち着かせてから話を聞こうとした。

 

「牛乳は入れてないけど、砂糖入れたから」

 

背中をさすりながら、羽音琉をソファに促し

あえてこちらから質問せずに、羽音琉を見守る行成。

すると羽音琉の方から口を開いた。

 

「裏切られた」

 

行成の表情が一瞬曇る。

 

「誰に?」

 

泣きはらした目をこすりながら

羽音琉はゆっくりと状況を説明しだした。

 

実は自分と仲間だと思っていた同級生が

ギルド内で裏切っていたらしいのだ。

 

ここで言う「ギルド」はゲーム内の

組織のことを言う。オンラインゲームなどで

リアル、非リアル問わずつながることができるので

省く省かれるといった、仲間外れ現象が起きることも

ないわけではない。

 

よくよく話を聞いてみると羽音琉の

勘違いではないかと思った行成だった。

 

「じゃあ、そいつはもう鯖変えたんだな?」

 

「うん・・・・・」

 

鯖とは、サーバーを意味し、学校で例えれば教室みたいなもので

ひとつの場所で複数の人間がオンラインにアクセス

していると、サーバーが落ちてしまいゲームに支障が

あることから、小さいパーテーションでゲームを展開できる

仕組みになっている。

 

つまり、複数のゲームサーバーを立ち上げることで

オンライン上で回線が落ちることがないように

小さいグループで対戦などができるようにしてあるのだ。

 

二次元の世界ではあるが、顔が見えないだけで

そこでも人間関係が成立するため、友情や思いやりも

垣間見れる一方、裏切りや誹謗中傷といったマイナスの

感情が発生することもあるわけだ。

 

「おれ、そいつ知ってるぞ」

 

行成が思いがけない言葉を発した。

 

「え?なんで?」

 

「そいつの垢『平成のキングエレイン』だろ?」

 

垢とはアカウントのことで、SNSやゲームでの

固有のIDを意味する。

 

「え?あ!うん・・・・」

 

「そいつ、おれ、リアルで知ってんの。

で、お前のことも知ってて、お前が担任と

折り合い悪いってのも知ってんだよ。

 

まあ、先輩なんだけどな。俺の部活の。

で、先輩が1年の時の担任が、今のお前の担任。

 

で、お前のことを心配して、わざと離れたんだよ。

まあ、ゲームでつながってんのが

担任にはバレねぇだろうけど、でもなにかの加減で

ばれたら、お前と知り合いだって思われて

 

お前のことをかばったりすると、色眼鏡で見られるから

それで離れたんだよ」

 

「・・・・・・マジか・・・・・」

 

「ああ。体育祭のときに、お前がさぼってねーのに

さぼったって言われてたろ?あのあと、

先輩は担任に言いに行ったんだよ。

 

『さっき、先生が注意していた生徒ですけど、

彼は、さぼろうとした他の生徒を呼びにいって

連れてきてくれたんですよ。すごくまじめで

体育祭の準備も見えないところでしっかりやってくれて

います』

 

って。そしたら、担任は、そうだったのか、って。」

 

行成の言葉を遮るように羽音琉が叫んだ。

 

「あ!!!!!だからか!!!!お前

さぼってなかったんだな。悪かったって言われた。

で、なんのことがわかんなくて、???だったけど」

 

「な?ものごとってのは、確かめてみねえと

わかんないことがあんだよ。まあ、ショックなのは

わかるけど、非リアでのことって、目に見えないところがある分

わかりにくかったりするから、

ちゃんと事実を調べてみるのも、悪くないぜ。

 

でないと、人間不信になるからな」

 

行成は自分の体験と重ねて、弟をたしなめた。

 

「そっか・・・・さすが兄貴だな。

おれ、マジで、登校拒否るとこだった。

誰、信じていいか、わかんなくなったから。」

 

羽音琉は、鼻をチーンと噛みながら

落ち着いた様子で兄をほめたたえた。

 

「いや、俺もあったんだ。前に。

圭太が裏切ったと勘違いして、殴り合ったんだけどさ。

でも、リアルだと、その場でやりとりできるから

事情がわかって。で、なーんだ、そんなことか!ってなって

 

圭太とアイスバー食らいながら、笑ってたんだよ。

お互いに顔がはれたからな。冷えポタがわりに

アイスかっくらった」

 

「だなあ・・・・あるな・・・・非リアだと

勝手に勘違いって・・・・

 

なあ、これからも、わけわかんなくなったら

相談していいか? にーちゃん」

 

普段は兄のことを行成と呼び捨てにする羽音琉だったが

甘えてくるときは、昔からにーちゃんと呼ぶかわいい弟だった。

 

「かあさんたちかえってくるまえに、その泣きはらした顔

なんとかしろよ。心配するからな」

 

行成は濡れタオルを羽音琉に投げ渡すと

明日からの遠征の用意に席を立ち、圭太にラインをした。

 

その頃圭太は李衣紗のおじいちゃんにプレゼントする

財布を仕上げ、疲れ果てて大の字になって

リビングで爆睡していた。

 

 




7月後半はまた忙しくなるので、
その前の連休に1回投稿できるかな~

あとはお盆かな~
お読みくださってありがとうございます!


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夏休み【番外編】

今年はまた、猛暑日が続きますね・・・

電気代など気にせず、エアコンで
熱中症にならないよう気を付けています。


夏休みを迎え、各々が活動中の頃

李衣紗がフラフラとコンビニに入ろうとしていた。

すると、向こうから凛々子が歩いてきた。

 

「凛々子さん!!久しぶり!!!会いたかった!!」

 

李依紗は凛々子に抱き着いた。

 

「りいちゃん、夏休みなにしてたの?」

 

「うん?なんか、暑くてぼーっとしてた

35度超すと、プールも中止だし」

 

「そうだねー。こういう時は、冷房の効いた部屋で

読書でもしてるのが一番だね」

 

「うん!でもさ・・・・」

 

「どうしたの?りいちゃん」

 

「圭太がさ・・・なんか、あまりしゃべってくれないんだ」

 

凛々子はなんとなく察しがついた。

 

「圭ちゃん、なんかやってんじゃないの?」

 

「なんか?」

 

「んー、ネタバレになるから言えないけど。

きっと、とっても大切なことに取り組んでいるんだと

思うよ」

 

「大切なこと・・・・・」

 

「そう。大切な人へ大切なこと」

 

「そうなのかな・・・圭太やさしいから

きっと大切な人のこと思ってるんだね。

 

そんな圭太が好きなんだ。

だからね、圭太大好き!って言ったの。

 

そしたら、返事してくれないんだ。

嫌われたのかな・・・」

 

凛々子はふっと笑った。

 

「りいちゃん、圭ちゃんって、テレ屋でしょう?

好きな子から、好きって言われたら

体の中が燃えたぎって、爆発しそうになってんのよ」

 

「え?好きな子?」

 

「ほらほらー。二人とも鈍いなー。

鈍いというより、ピュアなんだけどね」

 

「・・・・・」

 

「りいちゃん、圭ちゃんのこと好きだよって

前に言ったことがあるの。

 

そしたら、圭ちゃん、ぐるぐるネズミ花火みたいに

まわって、陸にあがった金魚みたいに

口をパクパクさせて、手足がぴくぴくって・・・

 

もう、私、大爆笑しちゃったわ!」

 

「そうなの?・・・圭太、私のこと嫌いじゃないのね?」

 

「嫌いなわけないでしょ。てか、りぃちゃんのこと

嫌いな男子なんていないわよ」

 

「えー?わたしなんかモテないよ。

璃乃のほうが美人だし・・・」

 

「璃乃ちゃんは、確かに美人だけど

ちょっと冷たい感じがするし、わがままでしょ。

いい子なんだけど」

 

「璃乃、いい子だよ。私と仲良しなの。

ちっちゃい頃から」

 

「りいちゃん、気づいてないけど、男子は

みーんなりいちゃんのこと好きだから

璃乃ちゃんは、やきもち焼いてるのよ。」

 

「?」

 

「そういう、天然なところも、男子からみたら

たまらないのよ。私が男でもりいちゃんに

惚れると思うわ」

 

「わたしも凛々子さんが男子だったら

惚れる!」

 

「ふふっ、私たちで盛り上がってもねー

とにかく、圭ちゃんはあなたのこと嫌いじゃないからね。

待っててあげて」

 

「うん!わかった。それ聞いて安心した。

嫌われたら悲しいな・・・って思ってたの。」

 

「きっと近いうちになにかあるから。

悪いことじゃないわよ」

 

「じゃ、待ってる!凛々子さん

こんどまたゆっくりあってお話しようね!

スィーツ食べながらとかがいいな。

 

私作るから、家に遊びに来て!」

 

「まあ、うれしい!そうさせてもらうわ。

りいちゃん、熱中症にはくれぐれも

気を付けてね」

 

「うん!ありがとう!凛々子さんも!」

 

こうして二人は家路についた。




昨夜は軽く熱中症になりかけたようで
食欲がありませんでした。

今日は復活して炊事洗濯掃除が
できるまでに。

夕方プリンでもつくろうかなと
考えています。


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夏休み2【番外編】

お盆ですね~
暑すぎて外で過ごすのはきついかも・・・

エアコンフル稼働
夏風邪にもお気をつけください


夏休みの日記

 

【凛々子編】

 

あのとき、日南田親子と出会わなければ・・・

今の私はないかもしれない

 

体が自由に動かせない状況で

生きても仕方ないと思っていたから

 

でも支えられてそして自分も

役に立っているという喜びを

教えてくれた恩人

 

愛することが

生きる喜びなんだと

思い出させてくれた

 

大切な人達

 

子供たちの笑顔は

私の心を満たしてくれる

 

そしてまた

私に寄り添ってくれる人を

求めてもよいのだと

 

勇気を与えてくれた人

 

彼らを取り囲む人たちは

暖かくそして強い

 

くじけそうになっても

折れそうになっても

前を向いて歩く

 

嵐に見舞われても

必ず晴れる時が来る

 

信じる強さ

飛び込む勇気

かけがえのないものを

見つけて語り合う喜び

 

そんな宝物を

私に託してくれた

 

みんないろんな背景を持ちながら

各々がんばっている

 

そんな私ががんばらないで

どうするの?

命を与えられたのだから

精一杯生きなければ

 

生きられなかった人の分まで

 

残った人生をいかに生きていくか

神に召されるまでの課題

 

かわいい子供たちに囲まれて

そして彼らと過ごす日々

私は本当に幸せ

 

あなたを大切にします

心から

信じてほしい

戸惑いを捨てて

飛び込んできてほしい

 

あなたの心のそばに

いたいのですけど

 

席は空いていませんか?

 

明日は晴れますように。

 

【圭太編】

 

短冊って表だけに書くのか

わかんなかったから

両方に書いておいた。

 

表:じーちゃんが元気になりますように!

裏:あいつらが受験とか受かりますように!

 

李衣紗がオレを好きだって

なんだかよくわかんねーけど

 

もし、そうだったらオレ

バズーカ砲でどっか飛ばされそうだ・・・

 

爆死しそう・・・

マジでヤベーだろ・・・

李衣紗だぜ?

 

あぁ・・・・

 

【李衣紗編】

 

夏休みになったけど、勉強は進まない。

看護師になる夢はあきらめてないけど

みんなのことが心配。

 

ゆっきーはなんだかイライラしてるし

ながティも忙しそう。

 

璃乃とも遊びたいけど

彼女は留学しちゃうし

私は勉強しなくちゃだから、なかなか

一緒に遊べない

 

ひなティはなにも言わないけど

なんかありそう

 

圭太は

圭太は・・・

最近冷たいから

悲しくなってしまう

 

凛々子さんは私を好きだからだっていうけど

それならなぜ避けるのかな・・・

 

またみんなで楽しく遊びたいけど

受験があるから、一緒には難しいのかな・・・

 

みんな進路が決まったら

いつか一緒に遊べたらいいな

BBQしたい

 

それから・・・・・

短冊には・・・・

 

----------------------------

 

短冊に込められた願い。

李衣紗が七夕に願ったこととは?

 

 




秋になったらもっとお話を
進めていきたいなーと思っています。

まだまだ残暑厳しい折
皆様もどうぞご自愛の程!


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夏の終わり【番外編】

地域によっては来週で夏休みが終わり
9月からのところも?

秋の気配が近づいているとはいえ
まだまだ暑い日が続きます。

くれぐれも熱中症や
冷房病には気を付けましょう。


-凛々子14歳-

 

あれ・・・

うとうとしていた

 

授業中なのに

ヤバ・・・

 

どうしても公民の授業って

寝ちゃうんだよね・・・

 

「ミツキイツグ」

 

って聞こえたけど

なんだろう?

 

将来の伴侶?

いつか出会う人なのかな・・・

 

運命の出会いを待って

大人になったら

ぜったいこの人!

ってひらめくような気がする

 

もしその人に会ったら

たくさん楽しいこと

要求しちゃうぞ

 

楽しくないと

死んじゃうんだぞ

 

私を飽きさせない人が

いいな。

 

天然で

一般にはない感性もってる

不思議君がいいなあ

 

その不思議を解明するのに

命を懸けるのが

好きなんだから

 

だって

ありきたりなんて

つまらないじゃない

 

次は何がでるかな?って

わくわくするのが楽しいし

ずっとドキドキしていられる

 

そんなおもしろ君とは

まだ出会ってないけど

 

いつか生きていたら

会えるのかもしれない

 

公民なんてさ

勉強する意味あるの?

なんて思ったりするけど

 

とりあえずいろんなこと

学んでおいて

いらないものは

ふるいにかければ

いいのよね

 

てか

学んで無駄なことなんて

なにひとつないんだよ

 

って

おじいちゃんが言ってた

 

人間は一生学ぶんだって

ものを知っていれば

いろんなことにも対処できるし

 

自分の心の葛藤にも

役に立つんだって

 

先人はこう言いましたーとか

けっこう

なるほど!ってことも

あるから

 

時代を超えて

人生の道しるべって

見つけることが

できるらしいよ

 

映画評論家の

そと川長春さんは

中学校しか出ていないけど

映画でいろんなことを

学んだんだって

 

たしかに

映画みてると

いろんな文化が

わかるものね

 

いとこの

よっちんも

映画みて

西語覚えたって

言ってた

 

私も英語の文法は

大嫌いだけど

話すのは好きだから

映画たくさんみて

覚えようっと

 

私立だから受験ないし

好きな勉強していいってのも

ありがたいことだね

 

各学科の基本は勉強しといて

あとは

好きな勉強を

がんがんすればいい

 

おじいちゃんみたいに

博学にはなれないかもだけど

でも

ずっとずっと勉強していたら

いろんな発見があって

楽しいよね

 

今はインターネットとかで

サクサクって調べられるから

図書館に行かなくても

ある程度調べられるし

 

蔵書みたければ

静かな空間で

図書館タイムを楽しむってのも

いいよね。

 

夏休みも

もう終わるから

博物館とか美術館めぐりして

課題のレポートにしよっと

 

今、何展やってるかな?

学生は無料ってのが

ありがたいよね

 

来子(らこ)誘って

行ってみよっと

 

え?おにいちゃんと

おにいちゃんの友達が

一緒に行こうって言ってるって?

 

・・・・

知らない人やなんだけど・・・

でも、M大だっていうから

なんか講釈とか聞けそうかもね

 

まいっか

じゃ、明日10:00新宮寺駅前ね

了解

 

---

 

人生には

何が起こるかわからない

わからないからこそ

がんばった結果を期待できるし

楽しみも享受できる

 

いつなんどき

生きる方向が変わっても

自分の信念だけは

しっかり持ちながら

柔軟性をつければいい

 

いいコト

よくないコト

人生はイーブンなんだって

 

その曲線が

なだらかか

激しいかは

人によって

違いがあるらしい




首がいたーい
冷房つけすぎも
いけませんね・・・

野菜をたくさんとって
いっぱい寝るようにしましょう

自分への戒めも込めて・・・


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ある初秋の午後

残暑厳しい折、如何お過ごしでしょうか。
私は、ゲームしながら寝落ちしてしまうという
日々を過ごしております・・・


残暑が厳しいある日の放課後

オレンジ色の日差しが体育館の窓から照り返し

眩しそうに夕日をよけるように

体育館裏手の日陰で

圭太と行成が佇んでいる。

 

「ある時は、暗黒街の囚人

またあるときは、スナイパー片手に追っ手へ照準を当てる必殺仕事人

そして、またあるときは、芸者ガール

 

その正体は・・・・・

 

てえっ!!!仮面サイダーファイズンだっ!!!」

 

圭太が変身ポーズを決める。

 

「おまえ、バカか?いい歳こいて

仮面サイダーじゃねえだろ!」

 

行成が呆れたように、言い捨てる。

 

「なんだよ、おれ、演劇部からスカウトされてんだよ。

運動部はヒマだから、文化祭だけにわか部員ってことで。

 

主役やるからやってくれって言われたんで

変身できるやつ!っていったら、こんな役もらった」

 

真剣に蹴りの型を練習する圭太。

 

「お前の変身願望は、保育所のときから

変わってねーな」

 

行成はつらかった保育所時代に思いを馳せ

戦友のような圭太をやさしく見つめる。

 

「ん?よく覚えてんなー。ゆっき~。

だって、おれ、ヒーローになりてーんだもん!

 

で、強くなって、好きな女の子を守りたい!

そう思うのはオレだけじゃないと思うぜ?」

 

「ま、な。そこはわかる。ヒーローには

だれだってなりてえよ。わかんねえのは

『芸者ガール』だよ。おまえ、女になりてーの?」

 

「え?だってさ、女子になってみたら

女子の心がわかるかも?じゃん?

おれ、男の中の男だからさ、女子のこと

ぜーんぜんわかんねーんだよね」

 

無邪気に首をかしげる圭太。

 

「オレ、時々お前のことがものすごく

羨ましくなる・・・。どうしてこう、バカ単純な

モノの発想ができるんだろうね?」

 

「んーーーー。そう言われてもなぁ・・・

生まれつきだからなーーー」

 

「バカにつける薬ねえって、太古の昔から

言うらしいからな」

 

「そそ、オレ、薬とかいらねーし!」

 

「薬の方が、びっくりしそうだよな」

 

じゃれながら談笑する二人の方に、

コロコロ転がってきた

サッカーボールを蹴り上げる行成。

 

すると、校舎の方から息せき切らして

走ってきた永斗の姿に気づくと、圭太と行成は

向き直った。

 

「どした?永斗。なんかヤバイって顔して。」

 

「はぁはぁ・・・・り、りーさが・・・・」

 

「え?李衣紗がなんだって?」

 

「$%&’()$%&’(’()」

 

「わっかんねーよ!てめえ、ちゃんとしゃべりやがれ!」

 

業を煮やした圭太が、永斗の胸ぐらをつかんで揺らす。

 

「りいさ、か、階段から落ちて、気絶して

今、救急車で運ばれた」

 

「!!!!!!!」

 

すぐに飛び出しそうな圭太の腕を、行成が咄嗟につかみ

永斗にも合図しながら叫んだ。

 

「おい!落ち着け!どこの病院かわかんねーのに

つっ走ってどうすんだよ!永斗、情報は?」

 

飛び出しそうな圭太の前に立ちふさがり、圭太の肩を抑えながら

息を整えてしゃべり始める永斗。

 

「すぐに連絡してもらうように、凛々子さんに頼んである。

救急車に一緒にのったの凛々子さんだから」

 

「おまえ、その場にいたの?」

 

行成が、冷静な質問を投げかける。

 

「ああ、教科書忘れて教室に取りに戻ろうとしたときに

上からなんかおっこってきたから、びっくりしてそっちみたら

女の子だったから、近づいていったら李衣紗だった。

そしたら、たまたま職員室に打ち合わせで呼ばれてた

凛々子さんがいて、咄嗟に応急処置してくれた。

で、近くにいたやつが救急車呼んで」

 

永斗の説明を理解した行成が仕切る。

 

「わかった。じゃ、タクシー呼んでおこう。

すぐに移動できるように。荷物まとめて

校門前に集合。いいな?おい!圭太!口開けてんじゃねえよ!

すぐに荷物もってこい!わかったか?」

 

放心状態の圭太に喝を入れながら、3人は各々荷物を取りに

部室や教室に戻り、校門前に集合した。

 

すると間もなく、永斗の携帯に凛々子から連絡が入る。

 

「・・・・・石切総合病院?・・・知らねえけど

タクシーの運転手さんに言えばわかるだろ。

おい、乗るぞ」

 

3人は急いで待たせていたタクシーに乗り込み

病院へと向かった。




大きいモニターでするゲームは迫力があっていいですね。
そんな迫力のなか、なにか気持ちがよくなったのか
爆睡してしまう自分て・・・

さあ、秋の連休に向けて
楽しい計画でも立てましょうか


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容疑者X

台風が来ていますね。
お気をつけてお過ごしください。


点滴のチューブが李衣紗の桜色の腕につながれ

スタンドから垂れ下がっている。

 

ベットに寝かされスヤスヤと眠る李衣紗は

まるで天使のようだ。

 

「りいさ・・・」

 

圭太が思わず李衣紗の顔に手を伸ばそうとした。

行成はそっと圭太の腕をつかみ

首を横に振った。

 

「大丈夫だから。打ち所がよかったから

腕と足の打撲だけで、脳波には異常ないって。

 

今は体を打った衝撃で疲れて眠ってるだけだから

寝かせてやれ。」

 

行成の説明をきいてため息をつく圭太。

 

「ちょっと」

 

と、永斗が圭太と行成を病室の外に出るように

促した。

 

圭太と行成は顔を見合わせながら、永斗に続いた。

 

「なんか、へんなんだよな・・・」

 

永斗が眼鏡を上げながら、廊下の向こうを見つめる。

 

「へんってなんだよ!」

 

地声の大きいのを忘れて、思わず圭太が叫ぶ。

 

「しーっ!おまえ、ここは病院だぞ!」

 

いきなり圭太の頭をぶんなぐる行成。

 

「なんかあったのか?」

 

行成の疑問に答えるように永斗が話はじめる。

 

「李衣紗ってさ、お前らも知ってるように

ああ見えて、運動神経いいだろ?しかも

階段おりるときは、いつも慎重に手すりつかみながら

降りるだろ?

 

けがしちゃいけないから、って。

 

なのに、あんな転がり方って

不自然なんだよ」

 

「おい!誰かに突き落とされたとかってことかよ!」

 

「だから、おまえ声おっきい!

だめだ。ナガ、一旦外に出よ」

 

圭太を引きずりながら、永斗と行成は食堂横の喫煙所のほうに

移動した。

 

「おい!永斗」

 

おなかをすかせた野生のライオンのように

今にも襲い掛かりそうな圭太を制しながら

行成がたしなめる。

 

「おまえは、落ち着いて人の話を聞くってことが

できねーのか!」

 

永斗が話を続ける。

 

「俺が忘れモンとりに行ったときに

誰か階段を駆け上がっていくのが

ちらっと見えたんだよ。でも、オレも急いでたし

かんけーねーから、そんときはスルーしたんだけど・・・

 

その直後なんだよ。李衣紗が落っこったの。

凛々子さんも、李衣紗を介抱しながら、階段の上を

チラチラ見上げてたんだよ・・・

 

もしかしたら誰かいたのを見たのかもしれない」

 

「お前、その階段上がってったやつの顔はみたの?」

 

行成が尋ねる。

 

「顔は見てねえけど・・・・」

 

「けど?」

 

圭太が歯をむき出し永斗に食って掛かる。

 

「スカートと生足が見えたんだよな・・・」

 

「女子だな」

 

行成が目を細めなが、ら確認するようにつぶやいた。

 

「ああ・・・足、細かった・・・」

 

「手掛かりはそれだけか?」

 

「んーーーーー。あ!ほくろがあった。

ふくらはぎのところに、黒い点・・・そうだ!

ほくろがあったのを、覚えてる。

 

俺の妹の芽伊もさ、ふくらはぎにほくろがあるんだよ。

だから、印象に残ってるんだ」

 

「・・・・・・・・」

 

苦虫をかみつぶしたような顔で

圭太は低くうなっていた。

 

圭太には心当たりがあった。

細い足で、ふくらはぎにほくろががある

女子を。

 

 




突き飛ばしたとなると
犯罪ですよ!!

事故であることを祈ります・・・


悪いことをすると必ず報いがありますからね。
人が見てなくても、お天道様がみてますから
人の道に外れたことしちゃいけません。

って、おばあちゃんに教わったことは
守っていこうと思っています。


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失意のどん底

李衣紗のけがは事故か事件か


とりあえず李衣紗の意識が戻った。

一同は安心して、李衣紗の経過を見守った。

 

一方、日南田は失意のどん底にいた。

 

「俺の、軽率な行為で、怒らせちまった・・・

もう、どうしたらよいかわからない。

 

真凛音が人より傷つきやすいのはわかってたけど

こんなに怒るなんて・・・

 

おれ、結構打たれ強いけど、今回はちょっと

立ち直れないかも・・・」

 

話を聞いていた璃乃は、あきれたようにつぶやいた。

 

「あんたが、立ち直れないなんて

よっぽどだね。

 

なに馬鹿な事やったの?」

 

「ん・・・。やつのブログ読んでたんだけど

言ってなかったんだよ。小学生だろ?

別にいちいち言わなくても大丈夫かなって思って」

 

日南田のいつもの明るい表情とは打って変わって

苦悩に満ちた表情に、璃乃も同情を示す。

 

「ブログ見ただけで、怒るの?」

 

「うん・・・真凛音さ

ゲームの達人だろ?大会でも優勝したことあって

 

それで攻略法とかそういうのをアップしてたんだよ。

ゆっきーがブログ設置してやって

それに書き込んでたんだよ」

 

「あんた、行成から聞いてたんじゃないの?」

 

「ああ、ブログ設置してやったってのは

聞いてたけど、俺は匿名垢でフォローしてたんだよ。

だから、真凛音は俺がフォローしてたのは

知らなかったんだよ。」

 

「なるほどね」

 

「それで、コメントとかも入れてたんだけど

すげーなとか、●●はどうやって攻略したんだ?とか

 

それに丁寧に答えてくれたり、仲良くなったんだけど

あることで、俺がフォロワーだってわかってから

 

なんで、黙ってたんだ!おまえ、知ってて

コメとか入れやがって、俺のこと馬鹿にしてただろ!

小学生だと思って、なめてただろ!

 

って、激高しちゃってさ・・・・」

 

「まあ、黙ってたらちょっとあれ?って

思うけど、別に罵倒したりとかしてたわけじゃ

ないんでしょ」

 

「するわけないだろ。ほんと、ゲームすげえから

すげえなって言ってただけで。

 

てか、自分晒してのほうが、賞賛するのハズいから

他人のフリして褒めてたんだよ」

 

「まあ、まりおっちは生真面目な子だからねぇ・・・

バカにされたのかと思ったんだろうね。」

 

「そうなんだよ・・・いくら違うって言っても

もう聞く耳持ってくれなくて

フォローからはずす、俺もブログ止めるって・・・

 

だから、フォロー外すのもいいし、俺のことガチでシカトしても

いいけど、ブログはやめないでくれ。お前のブログ

楽しみにしてる人もいるんだから

 

って懇願した」

 

「んーーー・・・ほとぼりが冷めるまで

放っておいたほうがいいんじゃないの?」

 

「まあ、そうなんだけど

俺は嫌われてもいいんだけど

 

あいつのブログを楽しみにしてるこどもとかも

いるわけで・・・・

 

そういうのを踏みにじるってのは

不本意だからさ・・・・

 

ほんと、俺、自己嫌悪」

 

「まあ、私からも言ってみるけどね。

あの子頑固だからなぁ・・・」

 

「ん・・・そのまじめさがゲームの達人を

作っていると言っても過言ではないからな・・・

ストイックなんだよ。そこが、すごいんだよな」

 

「ま、とりあえず一旦忘れて、バスケの練習に

励みなよ。いつかわかってくれるかもしれないし」

 

「ああ・・・そう願いたいけど

行成に気を遣わせるのもなって思って・・・」

 

「あんたも、ほんと優しいよね。」

 

「そんなことねぇけどさ・・・

 

あれ?着信だ。・・・・え?!!!」

 

「どうしたの?」

 

「李衣紗がケガしたらしい」

 

「え???どこの病院?」

 

「大丈夫だって書いてあるけど、

コールしてみるわ」

 

失意のどん底に落ち込んでいた日南田だったが

友人の危機に速攻対応しようとしていた。

 

 




人間の心は難しいですね。
一生の課題だ・・・


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生きるということ

伝える術(すべ)がない時
どうしたらいいんだろう・・・


「おい、大丈夫なのか?」

 

日南田の声に力が入る。

 

「うん、ひなてぃありがとう。

大丈夫だよ。みんなもありがとね」

 

李衣紗は病室にいる友人たちに

笑顔で応えた。

 

「びっくりしたんだぞ。

何事かと思ったよ」

 

まだ息が荒い日南田に

圭太がたしなめる。

 

「おい、俺も地声大きいけど

おまえ、ここ病室だからな。

もう少し小さい声で話せ」

 

「そういう誰かさんは

興奮して病院名も聞かずに

走りだそうとしてたけどなぁ~」

 

行成が呆れたように軽くグーで

圭太の腕を押す。

 

「いや、そりゃ心配するだろ。

永斗と行成、お前たちが冷静すぎるっての」

 

日南田は鼻息荒く

永斗と行成を交互に見ながら責め立てる。

 

「おまえは、ほんと直観野郎だよな・・・

それがよくもあり、欠点でもあり・・」

 

行成が苦笑いする。

 

「あ、ゆっきー、ちょっと話あんだけど

いいか?みんなはここに居てくれ。

あと、戻ってくる。帰りは一緒に

帰ろうや。飯、食べて帰ろうぜ」

 

日南田は行成を伴って、自販機前の休憩所に向かった。

自販機からコーラを2本買い、一つを行成に渡しながら

話始める日南田。

 

「なあ、真凛音まだ怒ってるか?」

 

コーラのプルトップを引きながら日南田が

ため息をつく。

 

「ん・・・あいつ、頑固だからなぁ・・・

バカにされたって、思ってんだろうな・・・

お前がさぐり入れて、お前がどのぐらいやってるかとか

チェックしにきたと思ってんだよ。」

 

「そこなんだよな・・・おれ、マジでガチで

マリオーがすげぇから、すげぇって褒めたかっただけなんだよ。

でもさ、俺が直接褒めても信ぴょう性ねぇと思って

匿名で褒めてたんだけどさ・・・」

 

「そこじゃねぇかな。

おまえ、そうやって飄々となんでも

軽々やっちゃうだろ?あいつはお前に憧れてんだよ。

 

監督にあんだけボッコボコにされても、どこ吹く風って

余裕ぶっこいてるし。メンタル強えぇな・・・って

 

しかも前にゲーム一緒にやったとき、おまえ初めてやったのに

真凛音追い抜いただろ?それが悔しくて仕方なかったんだよ」

 

「いや、あれたまたまな。ほんと、たまたま

なんも考えてねーからさ。俺。」

 

「真凛音は努力して努力してって、あそこまで行ったから

ひょうひょうとなんでもこなすお前のこと、すげぇなって

そんなお前が匿名でフォローしてたってことが

 

むちゃくちゃ腹立ったんだろうな。それはオレもわかるわ。

お前のその精神力どこからくんだ?って思うときあるよ」

 

「だってさ、くよくよしたって、腹は減るんだぜ?

飯くわねぇことには生きていけねぇだろ。

 

ただ、俺にとって友達も飯と同じぐらい大事なんだよ。

飯は腹を満たしてくれるけど、友達は心を満たしてくれるんだよ。

 

真凛音みてぇに一生懸命がんばってるの見ると

元気になんだよ。オレにはあれ、できねぇし。すげぇなあ

小学生のくせに・・・って。

 

でも、正面切って言ったって、まともに受け止めてもらえねぇだろ

だから名乗らなかっただけで・・・

 

名乗ってもよかったけど、本当の心を伝えたかったんだよ

 

誤解されちまったけどな・・・」

 

「まぁ、弟もまだ発達中だからさ、今にお前の気持ちが

わかる時がくると思うから、それまで待ってくんねぇか?」

 

「え?もちろんだぜ。お前の弟だけど、俺にとっても弟と

同じだからな。また一緒にゲームやりてぇんだよ・・・

まじで攻略法とか聞きてぇし。

 

あいつがケタケタ笑ってるとき、かわいくて仕方ねえんだ。

オレ、めっちゃ癒されてんだって。

そんなん恥ずかしくて言えねえだろ。

 

女子じゃねぇし。いや、俺が女子でも言えねぇな・・・」

 

「俺はそういうお前が嫌いじゃないぞ。俺の弟達を大事に思ってくれて

ほんと感謝してる」

 

「達・・・そういえば、羽音琉も前に怒らせたこと

あったな・・・なんか、今回もそれと似てるかも・・・

 

ほんと、オレって学習しねぇよな」

 

「そういうあっけらかんとした天真爛漫さが

弟達の羨望の的でもあり、時にジェラられて、怒りを買ったり

すんだよな~

 

あ、悪く思うなよ。お前が悪いんじゃなくて、弟たちが

まだまだジュニアだってことだよ。」

 

「そういう一生懸命なとこ、あいつらかわいいよな」

 

「ああ。成人したらみんなで飲みあかそうぜ。

ぜってーーー楽しいよな」

 

「ああ、その頃はオレらにも彼女とかできてんだろーな。

あ、でも、とりあえず女抜きで盛り上がろうな」

 

「だな。男同士ってのは、こう、なんとも言えねえ

結託力があるからな」

 

「そろそろ戻るか。おれ、ほんともう腹ペコ。

かーちゃんに小遣いもらったから、今日はオレ奢るよ。

みんなに」

 

「おおおおお!いいねえ。じゃ、李衣紗の顔おがんで

みんなで飯食いにいこうぜ」

 

 

 

日南田自身も心に深い傷を負っているだけに

他人に人一倍思いやりがあるということを

まだ幼い弟たちは気づいていないのだった。

 




伝えたい思いが
間違って届いたら・・・

荷物ならごめんなさいで替えを調達すれば済むけど
心の代わりはないからね・・・


がんばれ日南田!


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秋の夕暮れ

今、鬼滅の刃みてます。


李衣紗が入院している病院をあとにして

夕食をとりにファミレスに向かう

圭太、日南田、行成、永斗そして璃乃。

 

「とりあえずよかった・・・

ほんと、目の前が一瞬真っ白になって」

 

圭太がいつになく低いトーンで話し出す。

 

「あんたが、そんなに落ち込んでる姿なんて

初めてみたわ」

 

璃乃が圭太をからかう。

 

「そりゃーおまえ、圭太は

李衣紗がいないと生きていけない男だからな」

 

永斗が眼鏡を正しながら凛と分析する。

 

「はあ?生きていけねーとかないから!

でも・・・死にそうだった・・・」

 

圭太がファミレスのテーブルに突っ伏す。

 

「おまえ、相変わらずだな。

そういうの「生きていけない」って言うんだろ」

 

日南田もすかさず突っ込む。

 

「あ、そういえば、日南田。あんただって

この間まで死にそうだったじゃん。

解決したの?」

 

璃乃が日南田を横目で見る。

日南田はうつむきながら誰にとはなく語り始めた。

 

「いやぁなぁ・・・そいつのこと知っていると思っても

繊細な部分てか、ピンポイントで気にしちゃうところとか

わかってねーってか、わかってたつもりだったのに

やらかしちゃったりとか

 

おれはあまり人付き合いで細かいことは

考えねーよーにしてんだけど

 

今回ばかりは、大事な奴だから

そいつが傷ついたってのがわかったら

さすがに凹んだわ」

 

行成がほほ笑む。

 

「日南田、心配すんなよ。

未だに、真凛音は何も言ってねーけど

お前につくってもらったデュエナのデッキ

本棚からだして、眺めてたぜ。

 

最強のつくってやるからな!って

お前自分のカードも譲ってくれただろ。

 

真凛音、あんときめちゃくちゃ喜んでたんだぜ。

しかも強くなったの、おまえのおかげだって。

自分のターンの時でも容赦しなかったし

ガチで相手してくれたから

真凛音も手加減されてねえって、意気揚々としてたんだ」

 

璃乃が口を尖らせながら

行成を軽く睨みつける。

 

「ねぇ、行成、あんた漢字でしゃべるから

ところどころ、何言ってっか、わかんないよ!」

 

日南田が嘲笑しながら、オムライスをほおばる。

 

「おまえさぁ、いくら留学チームだからって

そのぐらいの日本語わかんねぇで、日本人の

恥だぜ。

 

おれら進学組なんだから

ヘラヘラしてても、勉強はやってんだかんな。

 

なめんなよ」

 

永斗が笑いながら日南田をたしなめる。

 

「璃ぃちゃんは、わざあと、おバカなフリ

してるんだよねぇ~。

 

その方が女子力高いとか、思ってんだよねぇ?

おバカだから」

 

「結局バカなんじゃねえか」

 

日南田が口の周りにケチャップをつけながら

笑う。

 

「人喰った妖怪みたいな顔したあんたに言われたくない!」

 

璃乃が本格的に怒りだした。

 

「とにかく李衣紗が無事でよかったよな。

にしても、あんとき・・・上に誰かいたような

気がしたんだけど・・・妖怪でも見たのかな?」

 

永斗が首をかしげる。

 

「李衣紗ったら、たまにボーっとしてるから

よそ見でもして、足を踏み外したんでしょ」

 

璃乃が早口でまくしたてる。

 

「おまえ・・・あんとき、どこいたんだよ」

璃乃の動揺を見逃さなかった圭太が

即座に突っ込む。

 

「はぁ?なに、あたしを疑ってんの?

バカじゃないの?

 

なんか気分わる。あたし帰る。

ちなみに、あたしはハゲ克のところで

赤点の答案返してもらってたわよっ!

なんだったら、ハゲ克にきいてみれば?」

 

おもむろに席を立ち、千円札を圭太の顔に張り付けて

ファミレスを後にした。

 

「おい・・・おまえなぁ、いきなり疑うような

言い方、よくないだろ」

 

行成がたしなめる。

 

「でも・・・圭太が疑うのも無理ない。

俺も、どうしても解せない。

しかも、足のほくろ、あれ・・・璃乃っぽいんだよな・・・」

 

永斗が目を細めながら、タピオカドリンクをすする。

 

「いずれにしろ、証拠ねぇんだから

疑うのはまずい。あとで、ハゲ克にきいてみるよ」

 

行成はクラス委員をしているので

職員室を訪れる不自然ではない理由がある。

 

4人の男子は

夕焼けを背に微妙な空気が流れるファミレスで

残りの食事を無言で片付けていた。




自分で名前をつけておいて、
あれ?って、忘れたりする天然なおバカですが
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


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反省はしている。けど後悔はしていない。

李衣紗と日南田。
共に悩みを共有する。


急に気温が下がり、街の緑も色づいて

紅葉に彩られる季節に早変わりしたある日の午後

日南田は、母から用事を頼まれていた。

 

「なんだこれ?IH用なべ・・・。IHってあれだよな。

電気の調理器具だと思うけど、それ用のなべってあんのか?

 

・・・・あ!これか。なんでもいいのかな。

てか、結局オレが料理すんだから、オレ目線でいいんだよな?」

 

携帯を取り出し、母に電話する日南田。

 

「あ、オレ。ねえ、なべってさ、なんでもいいの?」

 

(------!!!$%&’$%&’%&’(!!!!)

 

受話器の向こうでなにやら怒鳴っている声が聞こえる。

 

「はいはい、わかりました。サーセン。オレが

聞いてませんでした」

 

母がテンション上がってるときは、ひたすら

同意しておくのが最善の方法だということを

愛息子は重々承知していた。

 

「大きいくて、深いやつだと鍋もできるし

煮物もできるから、それとりあえずひとつと

卵焼き用、四角いやつね。・・・あ、これか。

 

意外に高いのね。おつりはあげるって言われたから

安いの買っちゃおう~って思ってたけど

これじゃあ、ジャージも買えねえな・・・

 

ま、いいや。スィーツでも買って帰ろっと」

 

買い物帰りの道すがら、おいしそうなスィーツショップを見つける。

 

「チョコ系は・・・・と。

あ!ドーナツある。李衣紗が好きなやつだ。

買って、ちょっくら病院にでも寄ってみるか」

 

日南田は自分の分とは別に、お見舞い用にドーナツを

袋に入れてもらった。

 

店から遠くない病院に立ち寄ると、

日南田は李衣紗の病室に向かった。

 

「面会時間とか大丈夫だよな?ま、だめだったら

受付にでも預けてこよっと」

 

病室前で、入院者の名前を確認すると

李衣紗の名前がなかったため、近くにいた看護師に

尋ねると、午前中に退院したことがわかった。

 

「なーんだ。退院しちゃったんだ。

連絡くれればいいのに。あ、でも、いろいろ忙しいし

疲れただろうから、連絡とかできねーか

 

じゃ、李衣紗の家にでも届けるか」

 

病院前からバスで5つ程のところにある李衣紗の家に

日南田は向かった。

 

バスを降りて、日南田は李衣紗に文字メッセージを送った。

 

「あ、日南田だけど、ちょっと届け物あるから

家、ピンポンしていいか?」

 

するとすぐに李衣紗からのコール音が鳴る。

 

「ひなティ!!!え?来てくれたの???

ありがとう!!!ピンポンしないで、入って!

今、玄関開いてるから!!

 

かあさん、お隣さんにお見舞い返しおいてるだけだから」

 

少々戸惑いながら、日南田は李衣紗の家の玄関をくぐった。

2階から李衣紗の声がした。

 

「2Fに上がってきていいよ!」

 

日南田はゆっくりと2Fに上がり、李衣紗の部屋前に来た。

ドアは少し開いていたが、いちおう女子の部屋であるから

日南田はノックをした。

 

「ヒナティ!入って!!!!」

 

日南田の姿をみるなり、喜びながらベットから立ち上がろうとした

李衣紗。

 

まだ足は痛々しい白い布切れで覆われていたが

顔色は血色もよく、元気な様子だ。

 

李衣紗が日南田のほうに歩み寄ろうとしたその瞬間

李衣紗がバランスを崩す。

 

日南田はとっさに李衣紗を抱きかかえる。

 

「おい、気をつけろよ!」

 

と、言いながら、李衣紗をベッドに戻す日南田。

 

冷静になってから、赤面する日南田。

李衣紗は相変わらず日南田をみてほほ笑んでいる。

 

「来てくれたんだね。ありがとう!

まだみんな学校あるかと思って、連絡しなかったんだ。

明日の夕方にでも、みんなに一斉メールしようと

思ってた。

 

でも、一番最初に日南田が来てくれて

うれしいよ。」

 

「・・・・圭太を出し抜いちゃって、なんだか

悪いな」

 

すると、一瞬顔を曇らせ、俯く李衣紗。

 

「ん?どした?」

 

日南田が李衣紗の顔を覗き込む。

 

「・・・圭太、なんかへん。ずっと怖い顔で

しゃべってくれないんだ・・・。

 

私がバカで、うっかり階段から落っこっちゃって

みんなに迷惑かけたから、怒ってるのかも・・・

 

圭太、人に迷惑かけるの大っ嫌いだから」

 

日南田は李衣紗の隣に座り、笑顔でたしなめる。

 

「おい。おまえ圭太のことわかってねえな。

あいつはそんな奴じゃねえよ。迷惑とか違うし。

 

お前のことが心配で心配で仕方ないんだよ。

でも、助かって元気になってるのをみて嬉しくて

それもまた、なんも言えねえで。

 

そういう奴なんだよ。」

 

「そう・・・あ、そういえば璃乃から

聞いてたけど、ヒナティも大変だったんだよね?

 

もう、解決した?」

 

首を少し傾けながら、うるんだ瞳で

日南田を見上げる李衣紗。

 

「あ、あれか・・・未だに真凛音とは

やりとりないけどな。オレも忙しかったし

下手に接触しても、また怒らせちゃうかもしんねえし。

 

いつかわかってくれると思うよ。

おれ、SEになりたいんだよ。だから

いろいろあれこれ分析解析しちゃうけど

真凛音も中学入って、プログラミングとか習ったら

わかってくれるんじゃねえかって

 

まあ、わかってもらえなかったら

それはそれで仕方ねえしな。

 

真凛音のことは嫌いになってねえから

オレはいつでもウエルカム。」

 

天井を見つめながら独り言のように語る日南田。

 

「ヒナティ、大丈夫。きっといつか

わかってくれる日が来るから。真凛音はまだ

知らないことがたくさんあるから、わからないことにぶつかると

怖いってか、不安になるんだと思う。

 

前にもへんな大人の人にいろいろ言われて

それで、敏感になってるところもあるから

ヒナティのことも疑ったりしてるのかもしれない。

 

大人になってたくさん物事を知って、勉強していったら

いろんなケースがあって、って、多面的にものをとらえられるように

なると思う。」

 

「おまえ、すげえな。看護師じゃなくて、弁護士に

なれんじゃね?」

 

「ううん。いっぱい勉強していろんな人のことみて

看護師になったら、どんな患者さんでも、笑顔にしてあげられるように

お話上手にきいて、励ませるように、本読んだり、人の意見きいたり

してるんだ」

 

「いい看護師になれるよ。おまえ」

 

「そう・・・ありがとう!」

 

そう言ってほほ笑んだ李衣紗を思わず抱き寄せる日南田。

すぐにはっ!と、我に返り、ベッドから立ち上がり

慌ててごまかす日南田。

 

「あ、やべ!おれ、母ちゃんに買い物頼まれてたんだ・・・

早く帰んねえと、この鍋で頭カチ割られるわ・・・

 

じゃな。またメッセージ送るわ。みんなにも

オレから言っておくから。おまえは、無理すんな。

ゆっくり休めよ」

 

「うん。ありがとう!本当にうれしかった。

来てくれて、話聞いてくれて、心が軽くなったよ!」

 

「いや、オレのほうこそお前に励まされたな・・・

完璧治ったら、またみんなで遊ぼうな」

 

「うん!帰り気を付けてね!」

 

李衣紗の家を後にして、帰り道を急ぐ日南田。

今も手に、李衣紗のぬくもりが残っている。

しかしながら、親友の圭太を裏切るわけにはいかない。

李衣紗への気持ちには、封印しようと密かに決めた

日南田だった。

 

 

 




李衣紗の願ったことが叶ってしまうという
不思議な現象が、近い未来、連続して起こるようだ。

李衣紗を突き飛ばしたのは、果たして璃乃なのか。
真相は後程明らかに。

☆☆☆☆☆☆☆☆

今年限定の休日。天皇陛下即位礼正殿の儀が執り行われた日ですね。

令和がよい時代になっていきますように。


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星に願いを

李衣紗の願いは良いことも悪いことも
現実になってしまうという不思議。

未だ、意識の表層には表れていない願望が
やがて明らかになる。


空には鰯雲が広がり、澄んだ空気の下で

生徒たちは文化祭の準備であわただしく動いている。

 

「ね、李衣紗。文化祭は一緒にまわろ?

てか、男子たちは運動部枠で、行動別だから

おわったらみんなで、ごはん行こ?」

 

璃乃は肩まであった髪を顎のラインまで

切りそろえ、もともとシャープな顔立ちが

一層引き立つような、より活動的なイメージに

雰囲気が変わっていた。

 

「うん。いいよ。走ったりとかじゃなきゃ

遊んでも大丈夫って、ドクターに言われたから

カラオケとかごはんなら大丈夫」

 

久々に友達と遊ぶことができる李衣紗は

心が弾んでいた。

 

女子二人が会話しながら歩いていると

後ろから、聞きなれた男子の声がした。

 

「おい!俺様、話したいことがあるから

ちょっとこっちにこい」

 

二人が振り向くと、バックパックを

片方だけ肩にルーズにひっかけ、

日に焼けた顔を女子達に向けた圭太が立っていた。

 

「圭太!会いたかった!」

 

単刀直入に素直な李衣紗の反応に

照れながら、圭太は路面をみながら応じた。

 

「李衣紗によ、話あんだよ。

悪いけど、璃乃外してくれねえか?」

 

一瞬顔を曇らせた璃乃だったが、なぜか素直に

圭太の要求に応じた。

 

「いいよ。今日は私留守番で

早く帰らなくちゃだから、もう行くよ。じゃね」

 

そう言い残すと、振り向きもせず璃乃は

足早に、圭太と李衣紗のそばを離れた。

 

「璃乃・・・留守番とか言ってなかった・・・

たぶん、気を利かせてくれたんだと思う。

なんだか悪いな・・・でも、圭太と話せてうれしい!」

 

李衣紗は笑顔で圭太の手を取る。

真っ赤になりながら、圭太はファミレスに行こうと

李衣紗を誘った。

 

学校から遠くないファミレスで

久しぶりに、二人だけの時間を楽しむ圭太と李衣紗。

 

「圭太と二人だけって、なんだかすんごーく

久しぶりな気がする!」

 

喜びたい気持ちを抑えながら

圭太が声を抑え気味に話し出す。

 

「すっげぇ心配した・・・。まじ心配した

今まで生きてきて、一番心配した。生きた心地しなかった。

 

でも、元気でよかった。」

 

「うん!ありがとう!そんなに心配してくれてたなんて

知らなかったよ!!!すっごくうれしい!」

 

紅潮させた顔を圭太の真正面に向ける李衣紗。

その笑顔がまぶしくて、圭太は気絶しそうになりながら

会話を続けた。

 

「でさ・・・気になることがあって、お前に聞きたかったんだ」

 

「なに?」

 

「階段から落ちた時、おまえの近くに

誰かいなかったか?」

 

「・・・よく・・・覚えてない・・・

気が付いたら病院だったから」

 

「てか、おまえはなんであそこにいたんだ?」

 

「・・・えっと、のら克先生に頼まれてた日誌

届けに行こうとして・・・」

 

「!!!!!おまえ、ハゲ克のところに行こうと

してたのか?」

 

「・・・うん。」

 

「そんとき、ハゲ克は階段にいたのか?」

 

「ん・・・・・・そういえば、職員室に行く前に

のら克先生がいたから、私ちょっと急いだのかも・・・」

 

「他に誰かいたか?」

 

「・・・・だれもいなかったけど・・・」

 

「けど?」

 

「・・・・のら克先生は、だれか女子と話していたような・・・

声が聞こえたかもしれない・・・階段からはのら克先生しか

見えなかったけど・・・」

 

「それで?」

 

「・・・・・ごめん・・・・頭痛くなってきた・・・

あの時のこと思い出そうとすると、頭痛くなっちゃうの」

 

「はっ・・・ごめん!!!李衣紗、悪い。

やなこと思い出させちゃったな・・・・

 

もう、いいよ。とりあえず忘れようか。ゆっくり休んで

完璧に治せ。まだ、治ってないのに、こんなこと聞いて

悪かった・・・オレ、せっかちだから・・・・・」

 

「ううん!!!いいの!私は、圭太と話せただけで

うれしいの!圭太のお嫁さんになりたい!」

 

いきなりの直球に、全身フリーズする圭太。

 

「圭太とずっと一緒にいたい!圭太の笑い声きいてると

すっごく上がるんだ!」

 

もう、なにがなんだかわからなくなってしまい

意識が混濁しそうな圭太。

 

「$%&’()%&’($%&’()・・・・

 

お、おまえ・・・てか

オレみてーな奴が、おまえと釣り合うのかよ・・・

声でけーし、単純だし、短気だし、空気よめねーし

勉強嫌いだし・・・」

 

「勉強なんか好きなひといないよ!

でも、好きなことだったら、一生懸命やるでしょ?

圭太はずっと合気道してるし、すっごいかっこいい!

 

やめないで続けるってすごいことだよ。

誰にでもできることじゃないよ。

 

それに、釣り合うってなに?

誰が上でだれが下とかってないよ。

 

私は圭太の心が大好きで、圭太の全部が好き。

圭太がそばにいるだけで、安心するし、うれしいんだよ。

 

その他になにがあるの?」

 

いきなり告白され、卒倒しそうになりながら

圭太もなんとか応じようとする。

 

「・・・・そんなに言われるなんて

思ってなかったからさ・・・

 

オレ、いやマジで、ガチで、お前のこと・・・・

あ、てか、今回の件、ちゃんとしねえと

永斗や行成にぶち殺される」

 

「え?今回の件ちゃんとするって?」

 

「(やばっ・・・)あ、えっとー」

 

「ダメ!圭太、嘘つけないんだから!ちゃんと教えて!」

 

「あー・・・・やべー・・・・

てか、まだ何の証拠もないから、李衣紗には言うなって

言われてんだ」

 

「・・・・・ショウ・・・・コ?」

 

その時、走馬灯のように李衣紗の脳裏に

ある場面が浮かんだ。

 

「ユルセ・・・・ナイ・・・・・」

 

李衣紗がいきなり立ち上がり、無表情でつぶやいた。

 

「え?????李衣紗?」

 

バタン!と、李衣紗が倒れた。

 

「おい、りいさ!!!!しっかりしろ!!!!」

 

ファミレスのソファに李衣紗を寝かせ、あわてて永斗と行成に

連絡をする圭太。

 

数分して、李衣紗が意識を取り戻した。

 

「あれ?私どうしたんだろ・・・」

 

ちょうど、永斗と行成もファミレスに到着した。

圭太はこれまでの経緯を、少し離れたところで二人にざっくり話した。

 

「オレ、ハゲ克に聞いてみたんだよ。

そしたら、李衣紗になんか頼んでて、それを届けようと

上がってきたんじゃないかって、それは言ってた。

だから、そこは本当だな。

 

ただ、その時ハゲ克としゃべってた女子ってのが

誰なのか・・・やっぱり璃乃なのか・・・」

 

行成が腕を組む。

 

「いや、まだそれだけじゃ、璃乃が押したという

証拠にはならない。璃乃に詰め寄るには証拠が少なすぎる。

それに、ハゲ克も怪しい。」

 

永斗が分析する。

 

「とりあえず、オレは李衣紗を送っていくから、

おまえらここで待っててくれ。すぐに戻ってくる」

 

圭太は、永斗と行成にそう告げると、李衣紗を

抱えながら、タクシーで李衣紗の自宅まで送り届けた。

 

 

 




李衣紗のけがは、単なる本人の過失なのか。
それとも、誰かに突き飛ばされたのだろうか。

事件の真相を、親友の男子たちが暴き出す。


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感謝して

凛々子は李衣紗のことを考えていた。


事故直前に送られた李衣紗からの

メッセージを読み返す凛々子。

 

事故のあったあの日、李衣紗は

凛々子と会うことになっていた。

 

「李衣紗は何を伝えようとしたのだろう・・・

今はあの日のことを尋ねると、李衣紗の様子が

おかしくなるから、そっとしておいてほしいと

男子たちから言われたけれど・・・」

 

無事に退院したとは言え、あの時

もう少し凛々子が早く李衣紗を見つけていれば

あんなことにはならなかっただろうに。

 

と、凛々子は自分を責めている。

つらさから、ひざの痛み止めを服用しながら

アルコールも飲んでしまい

凛々子は深い眠りに落ちた。

 

 

凛々子は森の中にいた。セーラー服のまま

歩き続け、靴は泥だらけになっていた。

 

数分前に事務長から言われた言葉を

反芻していた。

 

「凛々子さん。このままでは卒業させられないの」

 

ミッションスクールだったため、事務長は

シスター。つまり修道女である。

 

グレーのベールを見つめながら凛々子が尋ねる。

 

「シスター横室。なぜですか?」

 

「・・・実は、高校に上がってから

一度も月謝が払われていなかったのよ。

中学までは支払われていたんだけど

 

このままでは卒業させられないのよ」

 

目の前が真っ暗になった。

それでも、懸命に思考しようとし、凛々子はなにか言葉を発しようとした。

 

「あの・・・母が滞納していたということですよね。

奨学金をいただいていたので、そのお金で月謝に充てると

言っていたのですが、入金されていなかったということですよね?」

 

「・・・そういうことになるわね」

 

「あの・・・一生かかって支払いますので

どうか、卒業だけはさせてください」

 

「・・・校長先生ともお話していてね。

あなたは、まじめな子だから、どうにかしてあげたいと

言っていたのよ。

 

あなたのことは信じるわ。だから、毎月、支払えるだけ

返還してくれるかしら?ただし、銀行振り込みとか

そういう形じゃなくて、あなたが直接学校に来て、

私にお金を渡してちょうだい。

 

あなたの様子もみておきたいし」

 

「わかりました・・・できるだけ早く返せるよう

がんばります」

 

「無理はしなくていいのよ。ただ、約束してちょうだい。

必ずあなたが学校に来るのよ。」

 

「はい・・・わかりました。ありがとうございます」

 

深々と頭を下げ、凛々子は事務室を後にした。

 

凛々子の祖父は鉄道会社の重役だったため

凛々子の母は何不自由なく育っていたらしい。

ただ、一人っ子だったため、かなり厳しく育てられ

金銭に苦労はなかったが、自由は奪われていたようだ。

 

さらに、自分でお金を管理したことがなかったため

普通のサラリーマンと結婚してからも、湯水のごとくお金を使い

着物や高級食器などを買い、生活費が足りないことすら気づかずに

娘を中・高一貫の私立校にいれたのにもかかわらず

 

月謝を払っていなかったのであった。

再三の督促状も無視していたため、最終手段として

学校側がとった措置は、学生本人へ、未納金を請求するという

手段を取らざるをえなかったのだった。

 

大学進学を希望していた凛々子だったが

このことにより、大学受験は断念、就職し、がむしゃらに

働きながら、200万円近くの借金を返還した。

 

その後も、世間知らずの凛々子母は、クレジットカードを凛々子名義で無断で作成し

不要な買い物をしたあげく、督促状が凛々子の元に届いたりと

苦労を強いられる毎日だった。

 

さらに、脱サラをし、旅行会社を設立した凛々子父は

おひとよしで、知り合いを社員にし、その社員に

会社の金を持ち逃げされ、自分で立ち上げたその会社が

倒産してしまうという災難に見舞われた。

 

父の死後、その借金督促状も凛々子の元に届いた。

生きているのが嫌になるほど、どん底だった。

 

そんなとき、凛々子に救いの手を差し伸べたのは

亡くなった婚約者だった。

 

その彼がこっちをみて何か言いたそうにしている。

どうしたんだろう。

 

あれ?声が聞こえる。

 

「今がつらくても、必ず光が差す。君がそれを

一番わかっているはずだ。

 

それを大切な人に伝えなさい。君は僕がいなくなって

魂が抜けたような日々を送ったが、いろんな人に助けられて

立ち直って、今の自分がいる。

 

ヘルプって言えることも大事なんだ。

君は、それが自然にできたから、すっかり立ち直って

本来の自分より、さらにバージョンアップした状態にいるだろ?

 

それを君の大切な人に伝えてあげなさい。

きっとその人も、わかる日が来るだろう。

 

苦しみは決して永遠じゃない。

時には長く感じる時もあるだろうけど

乗り越えた時に、本当の幸せを手にするんだよ。

 

それを一番わかっているのが

君のはずだ。

 

君なら伝えられる。君しか伝えられない。

勇気をもって、今の状況を打開するんだ。

そして、HELPって言えることが大事。

 

人間はお互い様。助け、助けられる。

助けて、っていうのは決して恥ずかしいことでも

罪でもなんでもない。助けられて、そして助けていくんだよ。

 

さあ、立ち上がって大事な人にそれを伝えに行きなさい。」

 

 

 

はっと目が覚めると、凛々子は自分のベッドに横たわっていた。

ずいぶん長い夢を見た気がする。

シーツが濡れていた。無意識に涙を流していたようだ。

 

小さいころからつらいことばかりで、どうして自分だけ

こんな不幸なんだろうと、何度思って、もがいてあがいて

周りをねたみ、苦しんだことか。

 

それでもあきらめずに、前を向いて歩いて、歩き続け

自分の目標を達成しようと、進み続けた結果

今の幸せがある。

 

今でも小さいいざこざや、ハプニングはあるものの

幸せな毎日と思える日々を送ることに感謝しながら生きている。

 

そうだ。大切な人にこれを伝えなければ。

 

凛々子は、重い体を起こして、すぐに行動に移そうと

ダイニングに向かった。

 

 




大切な人に心からの思いが届けばいいのに。


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日帰り下宿

凛々子は動き出した。


凛々子は李衣紗の家を訪れていた。

 

「凛々子さん、わざわざ来てくれてありがとう」

 

「ううん。私こそ。りぃちゃんとケーキ食べたかったから。

ほら、ここのおいしいって言ってたでしょ。

お芋のケーキと、ブドウのタルト選んでみた。

 

好きなほうどうぞ」

 

「うわぁ・・・おいしそう!

あ、コーヒー淹れてくる!」

 

「おっと!りぃちゃんは何もしなくていいの。

ほら、コーヒーもゼブンの買ってきたから。」

 

「もー、凛々子さん、一緒に暮らしたい!」

 

「いいよ。おいでよ。」

 

「え?」

 

「知ってるよ。圭太から聞いてた。

ごめんね。勝手にきいちゃって」

 

「え・・圭太が・・・」

 

赤面し、うつむく李衣紗。

 

「そうだよー。ほんとに圭太は

りぃちゃんのこと心配しててね。

 

りぃちゃんがお父さんのことで悩んでるの

すっごく心配してて。

 

なんとかなんねーかなー・・・

オレ、何にもできねぇ・・・くそっ!

 

って、自分の膝を殴るのよ。

だから、やめなさい!って

大事な自分の膝をそんなことしても

りぃちゃんは喜ばないよって。

 

私がよい案あるから、それりぃちゃんに

言ってみるから、圭太は待っててって

 

そう、なだめてきたところだよ」

 

「圭太・・・・」

 

「お父さんのことで悩んでるんでしょ?」

 

「うん・・・。心配してるのはわかるんだけど

がんじがらめなの。

 

スマフォにもGPSしろっていうし

門限は8時で、毎日の行動を報告しなくちゃ

叱られるし」

 

「事件があってからより厳しくなっちゃったの?」

 

「うん・・・前からだったけど。

自由がなくて、窮屈だったの。

 

でも、じいちゃんはいつもわかってくれて

話をきいてくれて。じいちゃんも、お父さんに言って

くれたんだけど、お父さんは聞く耳持たず・・・

 

じいちゃんだけが救いだったんだけど

入院しちゃって、そのときはどうしたらよいかわからなくなって・・・

 

そんな時、圭太がじいちゃんを励ましてくれて。

うれしかった・・・」

 

「りぃちゃんさ、うちに下宿しない?

日帰り下宿」

 

「え?げ、下宿?」

 

「そう。学校から帰ったら、うちにきて

うちでご飯食べて、お風呂も入って。

 

寝る直前に家まで送ってあげる。

私はタクシーのパスがあるからいつでも利用できるの。

りぃちゃん家に送って、そのままUターンして

私は家に戻る。

 

うちにはWIFIもあるし、使ってないパソコンもあるから

勉強もしっかりできるよ。それに、画像用ソフトも入ってるから

りぃちゃんが、おじいちゃんに作ってあげた画像の詩集も編集できるよ。

 

おうちの人には、私の家で勉強見るってことにして

その代わり、私の身の回りを手伝ってもらうからって。

 

そう言えば、納得してくれるんじゃないかな?」

 

「いいの?」

 

「いいのっていうか、私がそうして欲しい。

私ね、りぃちゃんが笑ってる顔が大好きなの。

りぃちゃんが喜んでると私もうれしい。

 

圭太も大好きだし、日南田も。ほかの子たちも。

みんなが幸せだと私もうれしいの。

 

だって、日南田はじめ、みんなに救われたのは

私の方だし。

 

だから、りぃちゃんが苦しんでる姿は見ていられない。

お父さんはとてもまじめな方だから、りぃちゃんが

心配で仕方ないのね。

 

気持ちはわかるわ。ただ、そこまでがんじがらめにしたら

せっかくの大切な娘が壊れてしまうわ。

 

まあ、はっきりとそういったお話はしないけど

学校の講師の家で、勉強みてもらうっていうなら

お父様も承諾してくれるんじゃないかしら」

 

「それ、グッドアイディア!私、数学苦手だから

塾に入れようかって言われてたし。凛々子さんに

数学みてもらうって言ったら、絶対喜ぶ」

 

「でしょ?善は急げ!ほら、お手紙書いてきたから

これをお父さんに渡して、説明してみて。

 

それで、いつでもお伺いするわ。お電話でも良いし。

りぃちゃんが卒業するまでいてくれてもいいし

なんだったら、ずっといてくれていいのよ

 

部屋も一つ空いているから、そこを使ってもらっていいし。

私が遠征のときは、一人でのんび~り過ごすことだってできる

 

自分の時間と空間を満喫できるんだから

りぃちゃんも羽を伸ばせるわよ

 

殻に閉じこもってないで、一歩を踏み出すの。

そうすれば、世界が広がるよ。私でできることなら

なんでも手伝うわ。」

 

「凛々子さんありがとう!

いろいろ教えてほしいこともあるし、

早速、今日、お父さんにこのお手紙渡すね!」

 

「そうして。私もりぃちゃんに教えてほしいこと

いっぱいあるの。

お返事待ってるわ」

 

こうして、凛々子は李衣紗に日帰り下宿の件を

提案し、もう一つ片づけなければいけないミッションを

遂行しようとしていた。

 

 




大切なヒトが喜んでくれることは
自身の喜びですね。

つらい思いをたくさんした人ほど
人になにかしてあげたい、そして好きな人が
喜んでくれるのがうれしいものなのです。



凛々子も李衣紗もがんばれ!


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苦悩の人々

助けたい

その一心が生きる力になっている。


凛々子は大切な人たちに思いを馳せていた。

妹のようなかわいい李衣紗は

あんなに明るいのに、実父ではない義父に苦しめられている。

苦しめられているからこそ

友達との時間を大事にし、皆を明るくしようと

懸命に生きている。

 

李衣紗が小さい頃、実父は精神を病み

入院し、回復は難しいと診断された。

母は父の回復を信じ、小さい李衣紗を女で一つで

育てていたが、李衣紗両親は実父との離婚を強いて

今の義父との再婚を進めた。

 

幼稚園を経営している義父は

土地も所有し、生活には困らない。

小さな李衣紗を抱えて生きていくには

生活の安定が必要だ。

 

母子が共倒れしてしまっては

意味がないと、実父との別れを決意せざるを得なかった。

 

義父は李衣紗をかわいがってくれたが

自身が幼稚園を経営している手前

世間体を気にし

李衣紗が品行方正であることを強いて

あれこれがんじがらめにしていた。

 

義父の恩は忘れてはいないが

縛られている状態が苦痛で仕方なかった。

そんなとき、圭太はじめ友人は

李衣紗を楽しませてくれた。

姉のような凛々子も自分を思ってくれる。

 

それに応えようと李衣紗は必至だった。

 

凛々子自身も絶望の淵から助けられ

今の自分がある。

 

幸せをくれる人たちに恩返しがしたい。

また、ほかの人々にも。

昔見た洋画 Pai it forwardが印象的だった。

自分がやさしくされたり恩を受けたら

それを別の人に与える。

 

それを与えられた人はまた別の人に。

幸せの種が広がる。

 

自分もそんな種をまく人になりたい。

そう決意して、日南田母が勧めてくれた道を

歩むことに決めた。

 

小さい頃の記憶が脳裏をよぎる。

大好きな父に連れられ手をつないでいる。

 

「パパどこいくの?」

 

「楽しいところだよ」

 

連れていかれたのは、住宅街の一角にある

古い団地だった。

 

「ここがたのしいの?」

 

「いいからおいで」

 

幼い凛々子は父に言われるままに

ついていった。

 

団地の一室にはなにもない

質素な家具があるだけの空間だった。

 

「ここで遊んでて」

 

小さい凛々子はなにもないこの

空間で何をしろというのだ?と

幼な心に疑問を抱いた。

 

振り返ると父の姿はなく

別室でなにやら女性らしき声がする

 

「パパ!」

 

「あっちいってなさい」

 

部屋から父の声が聞こえた。

 

一人にされ不安になった凛々子は

声のするほうに入っていった。

 

すると、そこでは

男女が生まれたままの姿で重なっていた。

見慣れた男は、凛々子の叫びにも

答えることがなく、行為を続けていた。

 

凛々子は泣きながら

何もない空間に戻っていった

ふっ・・・と意識がなくなり

その場に横たわり、深い眠りに落ちていった。

 

「凛々子起きなさい」

 

父に連れられ家に戻った凛々子。

男女がいったい何をしていたかは

2歳の凛々子には理解できなかったが

ただことでないことは察知していた。

 

母にそのことを伝えなければと

必死に訴えた。

 

次の週末にまた、父が凛々子を連れ出そうとしたが

断固拒否し、凛々子は家にとどまった。

 

数分して、凛々子は母のエプロンの裾をつかみ

懸命に訴えた。

 

「ママ、パパ、さとうのねえのところにいる」

 

「え?」

 

「ママー!こっち」

 

凛々子は母親を全力でひっぱり

外に連れ出した。

 

母親も凛々子のただならぬ様子に

何かを感じ取り、凛々子の歩く方向に続いていった。

 

目の前にあるアパートは

確か・・・あの娘がいる・・・

 

両親を亡くし困っていた女子大生を

凛々子父は援助し助けていた。

凛々子母も気の毒に思い、差し入れなどを

していた。

 

そのアパートに一体なにがあるというのだろう?

 

恐る恐る凛々子についていくと

やはり、あの女子大生の部屋だった。

 

インターホンを押すが誰も出てこない。

しかし人の気配はする。

ふと、玄関ドアの前をみると

凛々子父のネクタイピンが落ちていた。

 

大きくなる疑念を取り去るのと

なぜこんな小さい子がここを案内したのか

ぐるぐる回る頭で懸命に考えようとする凛々子母。

 

すると、となりのドアが開き

主婦らしき女性が声をかけてくれた。

 

「あの、お隣にご用事で?」

 

「はい。主人がここにいるようなんです」

 

「ああ、30代前半で細くて色の白い方ですよね?

その方なら、よくここにいらっしゃってました。

お隣さんのお兄さんかな?と思っていたんですが」

 

「ええ、兄のようなものですが・・・

中にいるようなんですが出てこないんです」

 

「さっき、お隣さんと二人で中に入っていきましたよ。

下のポストに取りに行った帰り、ご挨拶したんです。

 

出てこられるまで、どうぞうちにお入りください。

お嬢ちゃんもお腹すいたでしょ?クッキーあるからおいで」

 

親切な女性に促され、数時間、世間話をしながら

時間をつぶしたが、凛々子父は出てくることはなく

母子はこの部屋を後にした。

 

数週間後、女子大生が凛々子の家を訪れ

 

「凛々子さんをください」

 

と、突然の訴えに、3歳になろうとしていた凛々子も

漠然と状況を察知した。

 

「やだ!」と叫び、母の後ろに隠れた。

 

女性は凛々子父と別れたくないために、凛々子を引き取りたいと

そう願い出てきたのだった。

父は、この女性と別れようと話を切り出したが

女性が応じず、娘と離れたくないと強く主張したところ

それでは、娘をひきとるなら、一緒になってくれるかと

そう詰め寄ってきたのだった。

 

結局、父も凛々子とは別れたくなく

母も、凛々子父に戻ってきてほしかったため

元のさやに戻る方向で話が進んでいたとき

 

この女性は自殺を図った。

 

真っ白な部屋で、喉に管を刺されたままの女性が

横たわっている。白い服をきた人たちが、その女性に

処置を施している。

 

心肺蘇生機が打ち付ける恐ろしい音に

おびえながら、幼女は部屋の隅で震えていた。

 

ここは病院か・・・おぞましい光景を目の前にしながら

訪れた祖母に抱き着く凛々子。

 

「ばあば!」凛々子母の親である

おばあちゃんは、やさしく凛々子を抱きしめた。

 

「もうだいじょうぶだよ・・・怖かったね・・・」

 

 

大昔の話だ。記憶に閉じ込めて、しらないトラウマと

戦っていた凛々子を救ったのが、亡くなった婚約者であり

幸せな日々を過ごしていたときに、突然のフラッシュバックが起こり

この状況を思い出した。

 

故婚約者は、自らのトラウマを思い出せるようになったということは

傷を治すことができるようになったってことだよと

暖かく見守り

 

凛々子の心のリハビリに貢献してくれた。

 

 

いろいろと助けてくれた学生時代の担任も

実は義母に育てられ、弟とは腹違いだったということが

あとになってわかった。

 

苦労した人程、明るく前向きに生きようと

しているその姿に打たれた凛々子は

 

強く明るく生きようと決意し、立ち上がる力を得られたのも

こうした背景があった。

 

長いトンネルを抜ければ、必ず光が差す。

明けない夜はない。

冬が長くても必ず春が来る。

 

凛々子は悩み苦しんでいる人がいれば

行って助け、自分のできることをしていきたい。

大切な人たちに楽しいをあげたい。

 

自分も楽しいことをどんどんみつけていきたい。

それが生きることだと

 

高くなっていく秋空を見上げていた。

 




笑顔がまぶしい人程
実はものすごい苦労をしていたり

被災地の人々の笑顔に助けられたと
ボランティアに訪れた人々が口にしているように

困難な時こそ明るく生きようとする
人間の強さを

ひしひしと感じたりします。


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凛々子の想い

大切な人のために献身する意味は・・・


凛々子が自分を犠牲にしてまで

なぜこうも献身するのか。

 

凛々子には想いがあった。

自分を救ってくれた、亡き婚約者はもちろん

これまで支えてくれた人たち

立ち直るきっかけをくれた人たち

 

いろいろな出会いの中で

考えされられることがあった。

 

これらの人たちと出会うまでは

世の中に背を向けて生きていた。

また、なぜ自分だけがこんな困難な状況に

おかれなければいけないのか。

 

世を恨み、人々には反発心の塊だった。

 

ところがあるスポーツイベントで

凛々子がボランティア参加をしたときに

出会った女性は、凛々子の母ぐらいの

年齢だったろうか。

 

南米の人々と西語で会話をしていたので

はじめは日系人か帰国子女なのかと思っていた。

 

じっと見つめていると

「あら、こちらにどうぞ!席が空いているわよ」

 

と、日本語で声をかけられた。

「あ、ありがとうございます。

私はボランティアスタッフなので、このあたりを

巡回しています」

 

それから、会話がはずみ、女性は

日系人でも外国在住でもなく、30代後半から

独学で西語を勉強したのだそうだ。

 

外国には住んだことも訪れたこともほとんどなかったが

地域のボランティアで災害時やイベントで

外国人とやりとりをする中で、会話しながら

言語を覚えていったそうだ。

 

40代半ばから中国語も覚え

外国人が訪れるイベントなどでは重宝されるため

契約での仕事も請け負っているらしい。

 

世界各国の人たちと話していると

いろんな考えがあり、おもしろいから

言語を学んでいるのだと。

 

その言葉に触発され

凛々子も殻に閉じこもっていた自分を顧み

鎧を脱ぎ捨て、自身を鍛えるために

一歩を踏み出そうと決意した。

 

自分の得意なものはなにか・・・

 

そうだ。

パソコンはずっと趣味でやっていた。

自分で部品を買い集め、組み立てたこともある。

自己流ではあるが、プログラミング経験もあり

ネットワークも設定できる

 

これを売りにしたらどうか?

 

SNSのプロフィールでそれらを表示したところ

遠方の知り合いから、アプリの使い方を教える講師を

してみないか?と声をかけられた。

 

そこから、凛々子の奮闘がはじまった。

まずはアプリを自分のPCにインストールし

徹底的に使い方をマスターし

 

どのような方向から攻めていくか。

どう興味をもたせるか。

話の流れはどう持っていくか。

 

自分でプロセスを考え、構成を組み立てて

講義のシュミレーションを何度も行った。

 

努力の結果が反映され

あちこちから、講師を依頼され

企業の契約講師として、登録するチャンスも与えられた。

 

婚約者の死後はいったんやる気を失い

絶望の淵に追いやられたが

 

日南田の母の助けもあり

ふたたび、教壇に立つことを引き受けた。

 

今は、子供たちと接することで

傷ついた心が、みるみる癒され、さらに強くなっていくのが

自分でもわかった。

 

育っている心は本当に強い。

繊細だが、育とうとする力がみなぎっている。

 

そのエネルギーに助けられ

自分の心にも強さをもらった凛々子だった。

 

ありがとう

 

その一心で子供たちのためになりたい

 

今まで助けてくれた人々

チャンスをくれた人々

目を覚まさせてくれた人々へ

恩返しがしたい

 

自分が生き生きと楽しく生きることが

彼らへの御礼になるのだと

 

そう信じて立ち上がることにした。

 

 

 

 

 

李衣紗たちの身にふりかかる災難は、

自分の手で阻止してあげたい。

かれらが不幸になるのは

決して許さない

 

 

そう強く決意した凛々子は

一部の隙も見逃さないという勢いで

事件の解明に調査を開始するのであった。

 

 

 




愛ですね。

我をおいておいても
相手を思うのが

愛なんですよね。


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語らい桜色

凛々子と李衣紗が病院内レストランで
語り合っている。


今日は凛々子のリハビリ調整の日だ。

李衣紗も定期検査で脳波を取りに

同じ病院を訪れていた。

 

「凛々子さん、聞いてもいい?」

「ん?なに?いいよ」

 

「あのさ、人を好きになると

わからなくなってくることってある?」

 

「んー。それは、相手の想いかな?」

 

「うん。本当に私のことを好きなのかな?

って、思っちゃうことがある。

もしかして、自分の勘違いだったのかな?とか」

 

「ふふふ・・・そうねえ。日本人は

言葉に出して『愛してる』とか、あまり

言わないものねえ。

 

きっと心のどこかで感じ取ってはいても

不安になってしまうことがある。

 

自分の一方的な思い込みなんじゃないのかなとかね。

そうじゃない?」

 

「うん。そうなの。圭太はすごくいい人で

やさしくて・・・

 

私だけに特別じゃないのかなって思っちゃう」

 

「はたからみていたら、何言ってんの!って

感じなんだけどなー。

 

でもね、りぃちゃんの気持ちもわかるよ。

相手が好きすぎて見えなくなるのね。

人間の心って難しいよね」

 

「そうなの。私の想いが迷惑なんじゃないのかな。

とか

 

圭太が試合とかで忙しいのはわかるけど

連絡こないと、忘れちゃったのかなとか」

 

「りぃちゃんは、相手を束縛しないし

待ってあげられる子だけど、やっぱり女子と男子の

時間差って、なかなか難しいのよね。

 

恋時間の流れ方が違うというか

想いが深くなればなるほど、男子は慎重になるというか・・・」

 

「慎重?どうして?」

 

「んー。相手を大切に思うがあまり、なにかしようとすると

躊躇しちゃうみたいだよ。

 

私の先輩夫婦がそうだった。

まだ告白する前だけど、奥さんがアクティブな人で、

どんどんアプローチするんだけど

 

相手は戸惑って固まっちゃうのね。

すると奥さんは意気消沈。撃沈。

嫌われたと思って、あきらめようとする。

 

それをみていた、二人の共通の友達が

業を煮やして男子の方に詰め寄ったのね。

 

そしたら、男子はいろいろ考えていて。

あーでもないこーでもないって。

 

そしたら、友達がそれじゃ相手に伝わらないだろ

とりあえず相手と会話しろよ

 

ってね。言ってあげたの。それから、会うようになって

最初は、男子がうまく話せなかったみたいだけど

その様子をみて、女子の方がくみ取ってあげるようになって

無理して話さなくていいよ。

 

一緒にいてくれるだけで、隣であなたの表情をみているだけで

想いを感じられるからって

 

そしてゴールインしたのね。

そばにいれば、鼓動が感じられるでしょ。

 

りぃちゃんもきっとそうで、隣にいれば

圭太の想いも感じ取れるんだろうけど

今、そばにいないから、不安になるんだね」

 

「凛々子さん・・・その通りかもしれない。

圭太がなにもいってくれなくても、そばにいたら

私はそれで安心するの。

 

でも、顔もみれないし、声もきけないと

悲しくてさびしくてむなしくて

 

でも、連絡したら迷惑だろうしって思うと

なんにもできないの」

 

「りぃちゃん。りぃちゃんのそんなところも

圭太は大好きなんだよ。大事にしたいって思ってるよ。

心配しないで、圭太のことを待ってあげて。

私が一番わかるから。二人のこと」

 

「凛々子さん、ありがとう。話きいてくれて。

わかってくれる人がいるだけで

心強いね。

 

わたし、これからも圭太を信じて

がんばっていくね。本当にありがとう」

 

「ま、あいつも不器用なやつだけどさ

いいやつだから。みんなで応援しようね」

 

「うん。みんなの進路が決まって、別々になっても

またみんなで会いたい!」

 

「そうだね。私がしきってあげるよ。

時々、同級会しようね」

 

「ありがとう!急に元気でてきちゃった!

いっぱい勉強して、りっぱな看護師さんになる!」

 

「りぃちゃんなら、よい看護師さんになれるよ!」

 

 

 

二人は、レストランに置かれた桜色の

グラスをみつめながら、ゆったりとした時間を過ごした。

 

ほんの一時、嵐の前の静けさ。

凛々子は李衣紗を波乱から守ってあげられるのだろうか。




遅れましたが、明けましておめでとうございます。

今日は初売りに行きました。
お菓子を買おうと思ったんですが、すっかり忘れてしまい・・・

なにやってんだ新年・・・・

今年もよろしくお願いしますm(__)m


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洞窟物語【番外編】

イレギュラーな仕事が入り1か月ぐらいは更新できないかなー
という状況のなか、またまた番外編で大変申し訳ございません。

本編は後程、話の展開がある予定(未定)です。


休日の午後、凛々子はお気に入りのカフェで

新しく入った仕事の原稿をながめていた。

 

ふと、窓際を眺めると壁際に置かれたブックシェルフに

印象的な表紙の絵本があった。

 

「洞窟物語」

 

凛々子は手に取って、表紙をあけた。

 

 

--

少年サミーは長い間、洞窟にいた。洞窟の中は暗くて

湿っぽくて、ひんやりと冷たい。外敵から身を守ることはできるが

体はいつも冷たく、硬くなっていた。

 

あるとき、雷が轟き大雨が降った。サミーは不安になり洞窟の

外を眺めようとしたが、雨足が強すぎて洞窟の外に出ようものなら

そのまま吹き飛ばされてしまいそうな強風が吹き荒れていた。

 

サミーは洞窟の奥深くに入り込み、雷雨から身を守った。

3日間振り続けた雨は止み、外は静かになった。

外の様子を伺おうと、穴から外を覗こうとした瞬間

眩い光が差し込んだ。

 

ずっと暗い中にいたサミーは、光を直視できず

思わず目を閉じ両腕で顔を覆った。

 

「サミー、怖がらないで。ゆっくり目をあけてごらん」

 

外の方から穏やかな声が聞こえた。

 

「誰だ!お前はだれなんだ!」

 

サミーは叫んだ。

 

「サミー、怖がらなくていいんだよ。ゆっくり目をあけながら

外にでてごらん。外にはやわらかい草原やきれいな山があって

大空を羽ばたく鳥やかわいい蝶々が飛んでいるよ。

 

楽しいことがたくさん待っているんだよ。」

 

声の主はささやいた。

 

 

「うそだ!てか、だれだおまえ!僕をだまそうとしているんだろ!」

 

サミーは目をつぶったまま叫んだ。

 

「私は南の方から遣わされたティダ。

オキナワの太陽っていう意味があるのよ。

人間は太陽をあびないと、心と体がカビだらけになって、

やがて朽ち果ててしまうのよ。

 

朽ち落ちた魂は、よみがえることができずに

この世をさまよわなければいけないの。

 

太陽を浴びて、きれいな空気を吸って、体を鍛えたら

心も体もカビが生えずに、きれいで頑丈になるの。

 

泥を浴びても勝手に流れていくのよ。今のままでは

泥をそのまま吸ってしまう。

 

サミー。あなたは選ばれた人なの。

せっかくの繊細な感覚と優れた頭脳を持ちながら

怖がりのせいで、ずっとこの洞窟から出られない。

 

怖がるのは頭がいいからなのね。きっとこうなってしまうだろう

こうなったらどうしようって考えてしまうのね。

 

でも、もったいないの。あなたほどの人は

外にでて、鳥や動物たちを導いてあげられるのよ。

小さい動物を助けて、猛獣たちから守り

大きい動物たちとも仲良くなれる才能を持っているのよ。

 

私は神様から遣わされて、あなたを外に出すように

言われてきたの。

 

はじめはきっと怖いでしょう。目も暗がりの中にいたから

慣れていないわね。光を直視したら、めまいがして

倒れてしまうでしょう。

 

だからね、ほら、この帽子をかぶって。

大きなツバが強い光から守ってくれるし

知恵を授けてくれるわ。

 

困ったときは、私があなたに防御のベストの替えを

持ってくるわ。

 

そして、語りましょう。こんなことがあった。

こんなことをしてみた。次はどうだろう。

これはいいかな、どうかな。

 

私が持っている森の図鑑をみながら、この山をきれいにしていく

方法を一緒に考えていきましょう。

 

そうすれば、あなたも動物たちも自然も幸せになるわ。

あなたは、この洞窟の中にいつづけていい人じゃない。

使命があるの。

 

さあ、この手をつかんで」

 

サミーはおそるおそる目をあけて、差し出された手をつかんだ。

まるで子供のように小さな手だったが、人間のぬくもりが

感じられた。

 

サミーはまだ見ぬ世界に不安を感じていたが、一歩踏み出した

その世界はまるで天国のようだった。

 

今までみたことのない色合いで彩られ

あたたかできれいな空気が広がっていた。

 

サミーはティダといっしょに野原をかけまわって

鳥や蝶々と戯れた。

 

やがてサミーはその山の主となって

未来永劫その山をティダと一緒に守り続けたそうだ。

 

--

 

 

「お待たせしました。ドリップコーヒーと

アップルデニッシュですね。ご注文のおしなはおそろいですか?」

 

店員がテーブルにコーヒーとケーキの皿を置きながら

凛々子に話しかけた。

 

「ええ、ありがとう。ところで、この絵本

前からあったのかしら?」

 

凛々子は手にしていた絵本を、店員に差し出した。

 

「あ、この本ですか?先日、ある少年が

寄付してくれたんです。これから入院するから

読めなくなるので、ここにおいて誰かに読んでほしいって」

 

「そうなのね・・・きっと心のやさしい子なのね」

 

 

凛々子は窓の外を眺めながら、絵本の持ち主の姿を

思い浮かべていた。

 

 

 




暖冬ですが、インフルは猛威をふるっているようです。
皆様、くれぐれもお気をつけください。


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いつもと違う春

もう大変ですね・・・
学生達や親たちも落ち着かないでしょうね・・・

学校関係者
医療関係者の皆様

また今回の騒動で影響を受けている皆様

本当にお疲れ様です・・・


「なあ、いきなり学校休みとかって言われて

やることねーんだけど」

 

日南田は寝ころんで

ポテトを頬張りながらつぶやいた。

 

「しょうがねえだろ。どこもかしこも

閉鎖ってんだから、遊びにもいけねーし

 

おれだってもう受験勉強してろしてろ

って飽き飽きしたから、お前の所に

こうやって転がり込んできたんだから

 

友達ん家で勉強してるって言えば親も

安心だろ」

 

永斗は姿勢を正して、化学記号をノートに写しながら

日南田の方は見ずにつぶやいた。

 

「なあ、圭太なにしてんだろうな・・・

ぜんぜん会ってねえや。」

 

日南田がそうつぶやくと

眼鏡をかけなおしながら永斗が答えた。

 

「ああ、圭太なあ、いよいよ黒帯もらったらしくて

大会出場目白押し。後輩の指導まで

まかされてるらしいぜ」

 

「あいつなぁ・・・前途楽勝だよな。

体育大っていう目標がちゃんとしてるから

達成へと着々と道を進めてて。

 

男ながら惚れるぜ」

 

日南田は指に着いた塩をなめて、テーブルにこすりつけた。

 

「おいっ!きったねーな!自分の家だかからって

そういうことしてんじゃねえよ。ほら、ティッシュ!」

 

テーブル上にあったティッシュを永斗は日南田に向けて

放り投げた。

 

「ゆっきーも試合だしさぁ。お前しか

相手にしてくれねえんだもんな。」

 

日南田が口を尖らせてつぶやく。

 

「まあ、お前は数学系で俺も理系だから

同じ大学行けたらラッキーってことだし。

 

親たちも、あの子たちは同じところ目指してるしねー

なんて安心してるからな。この状況

ベストだろ。大人的には」

 

 

そんな会話をしていると突然ブルブルと日南田の携帯が

反応した。

 

「あ。李依紗だ。ん?お!

差し入れ持ってきてくれるってよ」

 

「おーーーーー理系志望勢ぞろいだな。」

 

日南田と永斗はそろそろ一息つきたいと

思っていた時に、タイミングよく李依紗から

連絡が入った。

 

数分して李依紗が日南田の家に到着した。

 

「ナガティーーーーー!ヒナティー!」

 

久々の再会を喜び、無邪気に二人に抱き着く李依紗。

 

「会いたかったーーーーー!もう

ずっと家にこもってて、おかしくなりそうだった!

二人が一緒に勉強してるって情報入ったから

お菓子届ける!っていったら、親も

喜んで、そうしなさい!って

 

はい。ドーナツつくったから、食べて!

コーヒーも持ってきたよ」

 

李依紗の笑顔に溶けそうになる男子二人。

 

「もー、われらの天使ちゃん。

ほんと、ありがとなーーーー」

 

永斗が李依紗の頭をなでる。

 

「おいっ!なれなれしく触るでない!

われらの女神だぞ。てか、圭太に怒られるし」

 

日南田が気を使ってそんなことを言うと

 

「え?圭太なんて知らないよ。

ぜんぜん連絡してないし。

 

私のことなんか忘れちゃったんだよ!」

 

日南田と永斗は顔を見合わせる。

 

「あいつなぁ。まっすぐだからさ

一つのことしかできねぇんだよ。

今は、大会出場と後輩の指導で

余裕がねぇんだ。時間ができたら

きっと連絡してくるよ」

 

日南田はなぜか圭太をかばった。

 

李依紗は潤んだ瞳で日南田を見つめた。

その瞳があまりに美しすぎて

思わず日南田は李依紗を抱きしめてしまいそうになる。

 

察知した永斗が

 

「お、おれはお邪魔かなーーーー」

 

と茶化す。

 

「え?ナガティいてよ。

私日南田も大好きだけど、ナガティも楽しいから

スキ!」

 

まぶしい笑顔が、日南田と永斗を照らすかのように

一瞬男子二人が息をのむ。

 

「はいはい、日南田が大好きで、オレはただの

スキ、なんだよな。やっぱ、おれ、邪魔」

 

永斗がちょっとふてくされたフリをしながら

おちゃらけた。

 

「おい、永斗、おれが李依紗に襲いかからないように

お前はここにいなくちゃ、だ」

 

日南田がそう言うと

 

「えーーー!日南田おもしろーい!

とにかく、三人で楽しく勉強しよ!その前に

休憩して、お茶のんで、ゆっくりするの。」

 

李依紗の提案に反対するものはなく

3人でしばし談笑していた。

 

 

その頃、凛々子は学生達のことを心配し

情報収集に時間を費やしていた。

 

「あ。ケアマネからだ。はいはい

あまり無理しませんよ。とりあえず返信しておこ」

 

月に一度、検査のために病院に通わなければいけない

凛々子の世話をするケアマネとの連絡用に

文字メッセージのやりとりをしていた。

 

「もー。はいはい。心配してくれるのは

ありがたいけど、これこれするな、とか

おまえはこーだからとか、説教っぽいもの言いだな。」

 

ケアマネの中山は、元アスリートだったこともあり

なにかと厳しく凛々子のリハビリに助言を呈していた。

 

(まず。凛々子さんは、世話好きなのはいいけど

子供たちのことより、まず自分のことを考えること。

 

結局君が体調悪くなったら、子供たちに迷惑が

かかるんだからね。調子がよいからといって

へらへらしすぎ。

 

しかも、子供っていっても幼稚園とか小学生じゃ

ないんだから。もう、りっぱに自立できる年頃

なんだからね。見守る体でいいんだよ。

 

こまったら助けてあげればいいぐらいで、

あまり首突っ込まないの。

 

今度のリハビリプログラム、送っておくから

ちゃんと読んで、頭に入れておくこと。

 

終わったら、レポート出してもらうからね)

 

「これって、ケアマネっていうより

プロスポーツのコーチかなんかじゃん!

 

まあ、憎めないというか、一生懸命さには

心打たれるけどね・・・・」

 

凛々子は中山へ特別な感情を持っているということを

まだ自覚できないでいた。

 

 

 

 

 




まいりましたねー

こんな状況になりまして
いつもと違う環境が突如と訪れ

戸惑っている皆様も多いかと思われます。


しかしながら災害もそうですけど
いつなんどきどんなことが起こるかわからないので

常に「覚悟」という心構えは
必要なのかもしれません。


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時はうつろい

やっと学校も始まった。


唐突に訪れた戦々恐々とした日々から

早3か月が過ぎた。

 

やっと学校も始まったが

以前の通りとはいかない

 

人間と人間の距離の確保や

消毒、会話を極力避けるなど

 

あれやこれやと注意事項が多い。

李衣紗達はティーンとは言え

大人に近い理解力や忍耐力があるため

なんとか乗り越えられるだろうが

 

小学生などは

禁止事項が多すぎて

ストレスがたまっているようだ。

 

「李衣ちゃん、学校どうだった?」

 

 

手作りマスクを李衣紗に手渡しながら

凛々子が尋ねた。

 

「なんかさ、みんな久しぶりで

会えて嬉しかったけど、あんまり会話するなとか

言われて、時間も短くて、すぐ帰るかんじだった」

 

李衣紗は寂しそうに、凛々子から離れて着席し

出されたドーナツとコーヒーを口に含んだ。

 

「本当は密集しちゃだめなんだけどさ

換気OK。消毒OK。距離OK。ってことで

圭太を呼んだよ」

 

李衣紗は動揺してコーヒーをこぼした。

 

「きゃっ!ごめんなさい!」

 

「大丈夫。てか、りいちゃん火傷してない?」

 

「うん。大丈夫。テーブルクロス汚しちゃった・・・」

 

「あ、気にしないで。そのためのテーブルクロスなんだから!

珈琲入れなおすね」

 

李衣紗は泣きそうになりながら、凛々子といっしょに

こぼしたコーヒーを拭っていた。

 

すると玄関の呼び鈴が鳴った。

 

「ごめん、りぃちゃん出てくれる?」

 

「あ、うん!」

 

はやる心を抑えながら、李衣紗は玄関に向かった。

ドアを開けると、むさくるしい男子二人が玄関前に現れた。

 

「おーーーーーーーー!李衣紗なんでここにいる?」

 

第一声を発したのは、日南田だった。

 

「あれ、日南田!」

 

「あれって、なんだよ。ご挨拶だな。

圭太だけの方がよかったって、顔してんな」

 

「え?そ、そんなことないよ・・・

みんなに会えて嬉しいんだよ」

 

「ま、玄関先もなんなんで、中にはいりまーす」

 

へらへらしながらも、日南田も久しぶりに

李衣紗に会えてご機嫌だった。

 

「ねーさーん!!!

特性デカプリン買ってきたよーーー」

 

いつもは爆音でしゃべる圭太が

今日はやけに静かだった。

代わりに、日南田がテンションをあげてきた。

 

「うるさいなー。そんな大きな声出さなくても

聞こえるよ!日南田はさすがだね。

 

私がドーナツ用意してるのわかってて

ゆるゆる系のスィーツ買ってきてたんだね。」

 

「ええ、僕、ねーさんのマネージャーすから

きっと、ねーさんなら、ドーナツ用意してくれてると

思って、プリンにいたしやした!」

 

「ありがとね。圭太!どした!

おとなしいね」

 

凛々子はちょっとからかい半分で

圭太の頭を小突いた。

 

「や、別に・・・」

 

「久しぶりの登校で疲れたかー?」

 

凛々子が笑顔を李衣紗に向けながら

さりげなく圭太と李衣紗が隣になるように

日南田側に陣取った。

 

すると、日南田がバックパックから

本を取り出し読み始めた。

 

「あれー?日南田、いつから読書家になったんだ?」

 

凛々子が笑いをこらえながら日南田に話しかける。

いかにも李衣紗の気を引こうとしているのがわかったからだ。

 

「いや、俺、前から読んでるし。」

 

「へえ~。何読んでるの?」

 

凛々子がのぞき込むと『虹を超える猫』と書かれてあった。

 

「にじをこえるねこ、ねぇ~。日南田猫好きだもんね?」

 

凛々子が関心しながら話しかけると

 

「そ。猫がわかれば、女子がわかるって言うしね。昔から」

 

凛々子はこらえられずに声をあげて笑った。

 

「日南田、おもしろすぎ!」

 

そんなやりとりをしていたら、李衣紗が壁にもたれながら

目を閉じていた。

 

「あらら・・・李衣紗、疲れたのねー。ねむちゃったわ。

圭太、あっちに毛布あるからもってきてくれる?」

 

圭太はちょっと戸惑ったが、凛々子の足を気遣って

黙って取りに行った。

 

「ん」

 

と、毛布を差し出す圭太。

 

 

「ん、じゃないよ。かけてあげてよ。李衣紗に」

 

圭太は真っ赤になりながら、李衣紗にそっと

毛布をかけてあげた。

 

そして、そっと隣に寄り添いながら

持ってきたプリンの蓋を開けて、静かにスプーンですくった。

 

「圭太も大人になったねぇ~

ちゃんと、李衣紗を気遣って、静かにできるよになって」

 

「いつまでも子供じゃねーし。」

 

と、言いながら、成長を見守ってくれた

凛々子の思いが嬉しかった圭太だった。

 

圭太に会えて嬉しかった李衣紗は

夢の中で、圭太と手をつないで海辺を歩いていた。

 

 




李衣紗は圭太が大好きで
圭太も李衣紗が好きなのに
なぜか日南田を思いやって、譲ろうとしている。

日南田も李衣紗が好きなくせに
本当は奪ってしまいたいぐらい愛おしいのに
大好きな圭太を飛び越えて、李衣紗を奪いにいくのは
躊躇してしまう。

圭太がいない間、寂しさを埋めてくれた日南田。
二人の間で揺れる李衣紗。

恋の行方はー


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侵入者

こんなご時世ですが
皆さまどうぞご自愛ください。


「え?なんだって?」

 

日南田は立ち上がって叫んだ。

 

「びっくりするから、そんな大きな声ださないでよ」

 

李衣紗が困ったように日南田をたしなめた。

 

「大きな声もでるだろ。もっとちゃんと詳しく話せ」

 

興奮気味に日南田は李衣紗に詰め寄った。

 

「だからね・・・オンゲで知り合ってやりとりしてた

人からストーカーされてるみたい。

 

最初はだれかと勘違いしてるのかなって

思ったみたいなんだけど、どうも話がおかしくて。

 

そしたら別の子にも同じようなことしてたらしくて」

 

「おい、それやべーだろ。警察に言えよ警察に!」

 

日南田は内心心臓がバクバクで他人事ながら、李衣紗にまで

被害が及んだらどうしたらよいかと勝手に先のことを想定して

焦っていた。

 

「ん・・・いちおう、スクショとかは取ってるみたいなんだけど

直接の被害がないと警察は動かないんだって。

 

だから、とりあえずブロックしたりとか

スルーとかで対処するしかないみたいで」

 

「おまえはやられてねーだろーな。てか、おまえのID晒したの?」

 

「うん・・・私も、ちゃーたのフレンド登録はしてるけど

絡んでないから、わからないと思う。」

 

「おいt!!!!じゃ、間接的にはつながってんだろ!!」

 

「あ、まあそうだけど・・・でも、私はもうやめてもいいし

そんなにやってないけど、ちゃーたが心配で・・・」

 

「おまえ、自分のいとこがしんぱいで、そこにいるって

どんだけお人よしだよ!!てか、ちゃーたも全削しろ、まじで」

 

一旦熱くなると、ときどきわけのわからないことを

言い出す日南田の性格をわかって李衣紗も、躊躇しながら

フォローしはじめる。

 

「日南田ん、ありがとねー。心配してくれて。

そもそもそのゲーム、私がちゃーたを誘ったの。

よくわからないし、教えてもらいながら、レベルあげてったから

ちゃーたの方が被害者なの」

 

 

「とりあえず、おれもそこ入るから、お前たちのID教えろ」

 

「あんまり刺激しない方がよくない?」

 

「おまえ、のんきなこといってんじゃねえよ。

てか、俺もバカじゃねえ、なんもしねーからとりあえず

覗きにいくんだよ。そんで、証拠を全部とっててやるから」

 

「ありがと、日南田ん。ねえ、圭太には言わないでね。

心配するから」

 

「わかってるってーーーー!!!!

あいつは、俺より熱いしバカだから、ちゃーたの頭

ぶんなぐりに行っちゃうから、言わねーよ。

かえって、物事めんどくなるからな」

 

ふっ、と、圭太と日南田の猪突猛進している姿を思い浮かべて

李衣紗は笑った。

 

「りぃちゃん、余裕だね!!!もう、ほんと

やヴぁいから!そういうの!」

 

「だね・・・。でもさ、そうやって心配してくれる

友達がいるって、私幸せ。ありがと。」

 

「いやぁ・・・・病原菌が世の中を蝕んでると思ったら

腐ってるやつらがそうやって、純粋培養を

攻撃してくるって許せねぇな」

 

「ほんとにね。みんなで楽しく過ごしたいのにね。

かわいそうな人たち」

 

「おい、同情してるヒマはねぇ。家戻って、ID送れな?

なんかあったらすぐ電話すること。文字メッセージとかだと

たるいから、電話な、電話。何時でもいいから。オレは」

 

「うん。ありがとー、ほんとにありがと」

 

 

 

ちょっとしたトラブルに見舞われた李衣紗と

いとこのちゃーた。日南田は良案を持って、二人を

助け出せるのだろうか。

 

 




今年はとんでもない年ですね・・・
コロナに大雨に・・・

人間パワーを信じて
助け合って進んでいきたいです。


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秋休み

今年はいろいろ予定が変わった
それでもみんな生きている・・・

変化を楽しみながら


「おい、日南田。おまえ、じーちゃんとこ行ったの?」

 

行成が日南田をこづきながら尋ねる。

 

「あ゛?いくわけねーだろ。

正しく言うと『行けるわけねーだろ』

面会禁止だ」

 

「そっか・・・おまえんとこもか」

遠くをみながら行成が呟く。

 

「ん?ゆっきー、おまえ、ばーちゃんとこ

面会行くって言ってなかった?」

 

日南田が何かに気づき、行成の顔を覗き込んだ。

 

「ん?ん・・・面会っつっても

テレビ電話な。病院まで行って、そこで

テレビ電話面会すんだよ。病室には入れねえ」

 

行成は静かに答えた。

 

「そっか・・・寂しいな」

 

日南田は行成の背中に静かに手を置いた。

 

「黄疸になってるらしくて。顔みる勇気ない・・・

てか、見るのはあれでも、見た後に笑顔で

ばーちゃんを励ましてやれる自信がねえ」

 

行成の目が潤んでいた。

 

「おい!大将がなにひ弱なこと言ってんだよ!

いつも、おれのこと罵倒してるあの勢い

どしたんだよ!!

 

ばーちゃんだって、お前の顔みたら

それでうれしーんだから、行ってやれ。

泣きそーになったら、圭太のまっぱだか姿思い出せ!

笑うから。」

 

日南田の乱暴な励ましに、行成はふっと笑った。

 

「おまえ、優しいな。

だから、李衣紗も心が揺れるんだろうな」

 

急な行成の振りに、少々動揺する日南田。

 

「は?何言ってんの?おまえ

今、李衣紗の話ちゃうだろ!!!

 

てか、りーは、圭太のことが・・・」

 

「おまえこそなにひ弱なこと言ってんだよ!

李衣紗のことが好きで好きでしょうがないくせに!

 

どんなに落ち込んでても李衣紗の顔みた瞬間に

別人になるの、どこのどいつだ、あ?」

 

急に元気になった行成をみて

ほっとする日南田。

 

「よかったーーーー。ゆっきー元気になってくれて。

その勢いで、ばーちゃん励ましてこいな。

おれは、いいの!!!」

 

「よくねえよ。圭太だってお前に気ぃつかってんだぞ。

俺はいいとか、言って。

おまえらみてると、ほんっとイライラする」

 

行成の思いやりに心を打たれる日南田。

 

「あのなーなるようにしかならねーから

李衣紗が圭太を好きで、圭太も李衣紗に応えるなら

俺はひくしかねーだろ

 

いや、おれだって李衣紗がすきだ!!!

俺を見ろ!!!って言いたいよ?

 

でもさ、無理してまで俺と付き合ってほしく

ないんだよ。俺のことを真正面からみて

向き合ってくれて、圭太の顔がちらつかなくなってくれたら

俺だって喜んで・・・」

 

「おまえら、友情と愛情とどっち大事なの?

奪っちゃえば女子だって、心動くんだから」

 

「ゆっきー、知ったような口きくねえ

つきあったこともねえのに」

 

「は?つきあったことないって思ってんの

おまえだけだよ。俺なはー」

 

「あんの?」

 

日南田の鋭い突っ込みにたじたじになりながら

踏ん張る行成

 

「とにかくな、李衣紗にちゃんと自分の気持ち言えよ」

 

「とにかくな、おまえ、ばーちゃんに会いに行けよ」

 

「お互いにまあ、ヘタってことで、

コンビニで肉まんでも買ってこない?」

 

「お、いいね。腹すきすぎて、腹いてぇ」

 

 

二人はソーシャルディスタンスなど

関係ないとばかりに、くっついて

コンビニにスナックを買いに行った。




こんな中ですが
みなさんがんばりましょう・・・

学生さんも
お仕事してる皆さんも
子育てしている皆さんも


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卒業~ある男子のつぶやき~

桜の季節
各々の道は何処へ・・・


おい

 

もう卒業かよ

 

こんな状況で少人数で入れ替え制って

しかも入学はオンラインって

 

なんだかな・・・

でも、長い人生こういうこともあるのかもしれねえな

 

震災の時に大学に入った人たちも

入学式なかったって言ってたぜ

 

オンラインでもまだあるだけいいのかもしれねえな

 

おれたち

思いの丈を打ち明けられないまま

卒業しちまったな

 

もう会えない

いや会える

 

今どきのやりとりじゃあ

SNSがあるから

たとえ距離があったとしても

すぐに

安否もわかる

 

親たちの時代じゃ

そんなことできなかったらしいぜ

 

文通って

手紙でやりとりしてたらしいよ

 

赤いポストに入れて数日待って

時に数か月待って返事がくるってやつ

 

今じゃ考えられねえよな

おれなんか、手紙の出し方さえわかんねえ

 

じーちゃんに送れって言われて

めっちゃネットで調べたけど

 

封筒に糊ってかテープ貼るっての

しらなくて

 

病院の看護師さんに

いきなりどやされたっけ・・・

 

到着したからよいものの・・・

きっとそのうち

 

火星いってきやーす!!

週末旅行!

 

なんて時代もすぐそこなんだろうな

ばあちゃんたちなんか、携帯みたとき

腰、抜かしたらしいよ

 

てか、耳に当てて聞くラジオだと

思ったらしいから

 

こっちが話したことに反応して

返事されて

 

んぎゃーとか言ってたっけな・・・

 

ききたいときにいつだって

声は聞ける

 

きけるのに

かけらんねえ

 

それが今どきのかんじだよ

 

きっとむかしはそう簡単にいかなかったから

がつがついけたんだろうな

 

スマフォ開いてタップしたら

メッセージだって送れるのに

 

その指さえうごかねえ

 

そんなツールがなかったからこそ

公衆電話に走って行って

電話しようとがんばったんだろうな

 

便利ってなんだろな

不便な方ががんばったりするのかもしんねえな

 

どうやったら思いを

伝えられんのかな

 

伝わってんじゃねえかなって

勝手に思い込んでても

相手がどう思ってんだろなって

お互いの気持ちを知っていると

思っていても

 

やっぱり自分の気持ちは

言っておきたいのに

 

スマフォをタップする勇気がねえ

姿を見に行くことさえ

できない今は

 

見えない大きな壁が

透明なシールドのように

電波を遮断している

 

あっちから来てくれねえかな

っていう

他力本願な受け身な気持ちのままで

いいわけねえだろ

 

わかってるけど

忙しさにかまけて

結局なにもできねえ

 

だれか取り持ってくんねえかなとか

あいつらのアグレッシブさが

羨ましいときがある

 

最高に前向きで押しが強いように見えて

最高にヘタレなオレ

 

あいつの笑顔が目の裏にへばりついて

消えることがねえ

 

流れ星さん

どうか俺の願いを叶えてください




半年ぶりの更新です
こんなさなか
新年度を迎えました

皆、思うところはあるでしょう

それでも
生きていますので
前向きに行きたいと思います!


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チョコレートの夢

二か月ぶりです
世間もそろそろ・・・


もう1年3か月が経過した

46億年の地球の歴史から見たら

1億年の人類の歴史から見たら

大したことないのかもしれないけど

 

神様は時々人間にいろいろな試練を

与えてくださる

 

こんな生活になって

いろんなことが変わり

変わらないこともあり

 

崩れる人もいて

確固たる人もいる

 

愛は永遠

そのことだけは

揺るがない真実で

僕たちの

心の友も

そうしてずっとずっと

支え続けて

支えあって

 

あのとき一緒に笑いあった

痛みも一緒に

 

今この時に

どうやって伝えたらよいかばかり

考えてる

 

信じてほしい

決して揶揄などではないことを

 

わかってほしい

ずっと思い続けていることを

 

感じてほしい

マグマの地殻に達するほど

深く愛していることを

 

君の笑顔が

瞼の裏に脳裏に焼き付いて

離れていないことを

 

一緒に車洗う?ってきいた

あの声も

 

プレゼントしたマドレーヌを思いっきり頬張る

こっけいなほっぺも

 

試験合格おめでとうって

誰でも受かるよって

謙遜したその瞳も

 

右から並んでいるのを

順番に取るんだよって

そっぽをむいて行った言葉も

 

なにひとつ

残らず心の宝箱にしまっておいて

 

こっそり開けては

覗いている日々が

現実だということを

 

君が教えてくれた

足の甲に乗せて

汚さない

優しさを

 

アップルシナモンの

パンを買いたがっていたことも

 

数分の時間さえ

ずれることを許さない

真摯な

まっすぐさを

 

大好きな先輩がつくった

図面を

大事にもっていたことを

 

こっそり

バイトさせてくれた

大切な思いやりを

 

リーダーが心配してくれていたことを

教えてくれた

想いやりを

 

隙間から

棒をつっこんで

救出成功して

拍手して喜んだ日を

 

人前では超絶冷却で

ツーショットになったら

絶賛暖房中で

 

夏に暖房はいらなのに

キーボックスに

いたずら書きして

 

星のおやつをおいてくれた

わかりにくい

やさしさを

 

いっぱいくれていた

君の感謝印のお花畑は

今も

 

心一面に残してあるんだから

 

言わせて

話させて

伝えさせて

 

マスクの季節が

誰の目も気にしないで

いられるということを

 

遠くの緑に

走っていったら

あぶらあげだって

たくさん渡せる

 

ひいたおみくじは

 

成就って

 

お父さんが届けてくれた

忘れた財布にも

入っているから

 

いつものお菓子屋さんで

ほしかった

クリームは

君のためにとっておくから

 

私の髪で

地面を掃く前に

竹をくわえた少女の心で

 

待たないで

いますぐに

その声をきかせて

 

どうか後生だから

願わくば

私の望みを

叶えてください

 

大好きな犬の

おしりに

テントウムシを載せて

朝顔もとっておくから

 

神様お願いします

正しい心のまま

今もいますから

どうか伝えてください

 

I LOVE YOU SO MUCH

 

 

 

 

 

 

 

 




免疫力アップして
健康維持につとめたいと思います


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癒され

心が荒くれた人たちの心模様が
残念すぎる昨今

いつになったら落ち着くのだろうか・・・




夕暮れの公園で、園児たちが遊ぶ姿を

ほほえましくみつめる璃乃

 

それを見た後輩の田村美奈子が「璃乃先輩。そんなにガン見してたら、怪しいですよ」

と声をかける。

 

「え?子供が好きだから子供を見ているだけで怪しいの???」

 

田村は腕を組みながら言う

 

「今どきのご時世は、運動会でも受け付けしてネームプレート頭からかけて

出席するんですよ。だって、変態が一眼レフカメラもって盗撮したり

するじゃないですか。高学年の女子を狙って」

 

「ねえ?一眼も持ってないし、そこにいるのは園児でしょ。それ

みてて何が悪いのよ?」

 

「だって、知り合いがいるわけじゃないでしょ?赤の他人が

見てるっていうだけで怪しいんですよ」

 

「知り合いいるよ。あのブルーのTシャツ来てる子、お隣さんだもん」

 

「そうなんですね。でも、怪しいです。親とか親戚じゃないんだから」

 

「親とか親戚ってどうしてわかんのよ?」

 

「園児の先生たちが、璃乃先輩を知らないからですよ」

 

「知ってるよ?お隣さんと一緒にお迎えとか行ったりしてるから。

ほら、あそこの背の高い先生は、未希先生っていうんだよ」

 

「え!?そうなんですね・・・じゃ、まあ・・・

先生たちも知ってるなら・・・・」

 

「まったく!なんでもかんでも怪しい呼ばわりしないでよ!

確かに李衣紗たちの体育祭を外からみてたときは、怪しいかも?

だけどさ・・・男子高校生とかいるから」

 

「ほら!やっぱり先輩怪しいじゃないですか!」

 

「どうしても私をそうやって怪しい人にしたてたいのね?」

 

やりとりを聞きつけて近寄ってきた圭太が声をかける。

 

「りーちゃんが怪しいって?なら、俺なんか

李衣紗がクラス対抗の練習してるときに、外のフェンスに

へばりついてたぜ?めちゃくちゃ怪しいじゃん」

 

「君キャラは全校生徒が知っているから、怪しい以前に

可笑しいんだよ」

 

圭太の大きい背中をボン!とたたきながら田村は大笑いした。

 

「確かに・・・怪しいというのは、身元が分からず

行動の目的もわからない場合に言うからね。

 

圭太の場合は、鼻の下をびろーんと伸ばして、よだれたらしながら

みてるから、目的も人物もバレバレだもんね。

怪しいというより、可笑しいから、みんな

温かい目で見守ってくれるもんね?」

 

璃乃も激しく田村に同意しながら笑っていた。

 

「なんだかしんねーけど、今ってなにかやると

すぐにあやしーとか、言われっから、俺よくわかんねーけど

俺は怪しくないぜ?」

 

鼻の穴を膨らませながら、圭太がドヤ顔をする。

 

「「知ってる!!!」」

田村と璃乃が同時に反応した。

 

「そういえばさ、隣のおっちゃんとカラオケいったときに

『まちぶせ』っていう昭和の歌を歌ってて

それきいて、タイトルからまじやべーじゃん!って思ったよ。

 

なんか陰にかくれてじーっと見てるとか

彼女いるやつ狙って奪ってやるって言ってるとか

 

おいおいおいおい!!!って突っ込みどころ満載でさ」

 

「だねーーーー。昭和のままの感覚でいると

まずいことが多いね。コメンテーターとかも

それで地雷振んじゃってるしね」

 

ワイドショーのネタを思い出して、璃乃は空を見上げながら付け加えた。

 

「純愛っていうカテゴリーが、今じゃストーキングチックに

なっちゃうってのも、なんだかなーだよね。

 

だから、恋愛しない若者とか増えちゃったりとか

妙齢になっても結婚したくないって人もいたりとか

 

どんどん人口も減るわけだよね・・・・」

 

梨乃が続けようとすると田村が遮った。

 

「私は結婚しますよ!」

 

「誰に宣言してんの?」

 

圭太が左眉を上げながら尋ねる。

 

「え?誰に・・・てことないけど・・・・

圭太のいとこ・・・元気?」

 

「え?パリピのこと?

しらねーよ」

 

璃乃が驚いて尋ねる。

 

「あれ、田村ちゃん、なんで茂呂道君のこと知ってるの?」

 

「え?あ・・えと、それは・・・まあ、そのう・・・」

 

目が泳ぐ田村。

 

「おれ、仲なんかとりもたねーかんな。

自分で行けよ」

 

一本気な圭太は気を利かせようという気もない様子だ。

 

「取り持つとかしらないけど、アイスぐらいは

奢ってあげるよ?」

 

みえみえの下心を表す田村を見ながら璃乃も笑う。

 

「モノではつられねーからな!!!!

パリピにもの好きいるなあってそれだけは

言っておくからよ!」

 

ぶっきらぼうだが、優しさ満載の圭太に

璃乃は心癒されていた。

 

 




世の中大変ですが

少しでもストレスフリーに
免疫力だけは下がらないようにしたいですね

夏休みも明日で終わり。
やっと日常が戻ってきます。


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今日の日はさよおなら

今朝はものすごい大雨だったのですが
あっという間に晴れて
おさんぽ日和となりました

さて、今日のお話は・・・

圭太と璃乃と凛々子はコンビニで買った
栗大福を頬張りながら

公園のベンチで談笑していた。


せんせいさよおなら

みなさんさよおなら

 

わざとおしりをつきだすように

不自然に挨拶する男子

 

公園から見える小学校の

おわりの会の様子をみながら

圭太は自分の小さかった頃と教室の小学生を重ねていた。

 

「あの頃はよく、くれさんさんちゃんのまね

してたよなあ、オレ」

 

空を見上げながら圭太がつぶやく。

 

「あれ、マネなんだ?圭太オリジナルだとおもったよ」

 

凛々子はクスクス笑った。

 

「あんなあ!おれより、璃乃のほうがやばかったんだかんな。

今でこそ、こいつ、なんか俺より身長たかいけど」

 

圭太はなぜか動揺しているようだ。

 

「璃乃りんはさあ、ほんとキャラ変したよね~

李衣りぃは変わらないけど」

 

凛々子の言葉に璃乃が反応する。

 

「凛々ちゃん、私の黒歴史を掘り起こさないでくれる?

過去の私は闇に葬り去ったんだから」

 

璃乃はほっぺたをふくらませて、凛々子にすり寄りながら

話をつづけた。

 

「みんなも知ってると思うけど、わたしさあ

小さい時カザフスタンにいたじゃん?

だからさ、日本語が微妙によくわかんなくて

ニュアンスとかイミフだったりして

 

それでからかわれたり、やな子なんか

わざと難しい日本語で言ってきたり」

 

祖父がロシア人である璃乃は

就学前までカザフスタンで生活していたため

日本語の習得が一般の子供より遅く

不自由な思いをしていた。

 

「だから、李衣紗に嫉妬したりしてたんだろ?」

 

歯に衣着せぬ圭太の発言に璃乃が意外な反応をみせた。

 

「そうだね。顔も言葉もきれいでやさしい李衣紗に

私、ものすごくジェラってたんだわ。

 

そのときは自分の感情がわからなくて

李衣紗と仲良しなのに、ときどき

モヤモヤするのはなんでだろうって

 

すごくやだった」

 

璃乃の正直な思いを受け止めようとする圭太。

 

「おまえさあ、自分のことわかってねえなって

オレずっと思ってたぜ。

 

足はまっすぐで人形みてーになげーし、

李衣紗とはタイプちげぇけど、美人だし

なにそんなに李衣紗にイラってんだ?って」

 

圭太の言葉に心動かされる璃乃。

 

「そんな風にちゃんと私のこと

気にしてくれる男子がいたなんてさ

 

思いもしなかった。みんな李衣紗のことが

すきだから、あたしなんてって思ってた」

 

「わたしも圭太と同じこと思ってたよ。

でも、あのときの璃乃りんになに言っても

きっと届かないだろうなって思ってた。

 

ただ、璃乃りんは賢い子だから、いつか

気づく日がくるだろうなって信じていたよ」

 

凛々子は璃乃の手の甲に自分の手のひらを載せて

温めるように握った。

 

「おい!ソーシャルディスタンス!

さわっちゃだめだろ!」

 

圭太の叫びに笑いながら璃乃が言う。

 

「あたし看護師ですけどなにか?」

 

凛々子と璃乃に軽く嫉妬しているのが

バレないようにごまかそうとする圭太。

 

「看護師だろうが医者だろうが

なんちゃらの不養生とかって

忘れたりするだろ?オレが思い出させて

やってんだよ。

 

仕事中じゃねえし」

 

「はいはい。圭太も璃乃りんも

成長しましたね。私は嬉しくて

涙があふれておりますよ」

 

もうすっかり大人になった圭太と璃乃を交互に見ながら

凛々子は満面の笑みで栗大福をコーヒーでのどに流し込んだ。




悪いことのあとには
良いことがある

ピンチがチャンス

きっとこの長い苦難を乗り越えると
良いことがくる!

ということを信じていきます

ウィルスに
あーんぱーんち!!!


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プチ同窓会

緊急事態の中
検査を受けたメンバーは
秩序を保った状態で
自宅会食を開催していた


「おい、今は緊急事態中なんだから

大声だしてんじゃねえぞ!」

 

行成(ゆきなり)が皆をたしなめる。

 

久しぶりにメンツがそろったので

興奮気味につい声が大きくなってしまう輩。

 

「にしてもさ、俺らって医学系だよな」

 

圭太が昔と変わらない笑顔のまま

鼻の穴をふくらませながら言う。

 

永斗(ながと)は親父が放射線技師で

本人が臨床検査技師って、その道じゃね?」

 

「ながはなぁ~。やんちゃなようで

根がまじめだから、きっちり勉強しなさったな」

 

行成も仲間たちを誇りに思っているようだ。

 

「でもさ、璃乃が日本に残って看護師になるとはな。

高校卒業したら、留学するとおもってたよ。」

 

細い腕を伸ばしながら、永斗が答えた。

 

「だって行こうと思ったら、パンデミックになっちゃったじゃん?

こういうときは日本にいるに限るんだよ。

しかも、看護師資格とってから、外国行って

国際免許とったっていいんだから」

 

璃乃(りの)は自分もここに招かれたことを心から嬉しく思っていた。

 

「こうやって、おれらが会って懇談できるのも

医療系が多いから、陰性証明付きで堂々とファミリー会食

できるんだもんな。感謝だよな」

 

圭太は今日これなかった日南田の母も看護師であることを

思い出していた。

 

「行成、日南田(ひなた)は家の手伝いしてんだろ?

かあちゃんが入院病棟にまわされちゃって

ほとんど家にいない状態だから、主婦みたいな

かんじだって李衣紗にきいたぞ」

 

「そうなんよ。李衣もさ、中央病院で

見習いしてるけど、日南田ママにはほとんど会えないって言ってた。

私は研修で李衣と会ったけど、勤務先は離れてるから

李衣にも日南田ママにも会えてない」

 

今はわだかまりもとけ、心から李衣紗を慕い

思いやっている璃乃。

 

「あ!このあいだゲーセンで羽音琉(ばとる)真凛音(まりお)に会ったよ!

なーにやってんだか・・・こんな時に」

 

「え???親と兄の目を盗んでそんなことしやがってたのか!

あいつら・・・今日帰ったら、お仕置きだ!!」

 

行成は弟たちの行動は把握していたが、友達の手前

怒ったふりをしていた。

 

「まあ、羽目をはずしたくなるんでしょ。私だって

仕事中はさ、じみぃーな医療用マスクしなくちゃだから

こうやってオフのときは、かわいいのしたくなんのよ。

仕事柄、ネイルもできないしさ!」

 

「おしゃれしたいんだったら、なんで看護師になったんだよ!」

 

圭太が突っ込む。

 

「おしゃれはいつでもできるけど、看護師バリバリやれんのは

やっぱいまでしょ。40過ぎたら、出世して日勤になるからね。

学校の保健室勤務でもいいかな。会社とかの常駐員でもいいな。

そしたら、ネイルぐらいはできるもんね!」

 

「璃乃、おまえ、進化したな。

ちゃんと、いろいろ考えてんな」

 

永斗も璃乃の変貌ぶりに関心していた。

 

「そりゃあいつまでも、鼻垂らしてたあんたたちみたいに

幼くないんだよ!女子の方が大人になるの早いの!」

 

「ま、たしかにな。男子はいつまでもガキだよな・・・

強がったり、かっこつけたり。

とくに圭太は永遠の小学生だからな」

 

「うっせ!行成だっておとなっぽなふりしてるけど

この間だって、庭でラジコンやってただろ!!!!!」

 

「あんな圭太。ラジコンは大人程楽しむんだぜ?

テクいるんだからな」

 

「はいはい、行成大臣はいつもそうやって、かっこつけて

くださって、そいういうところも、無邪気でございますねっ」

 

圭太と行成の相変わらず無邪気なやりとりを

居合わせたメンバーも懐かしそうに眺めていた。

 

その頃、日南田と李衣紗(りいさ)はちょっとしたトラブルに巻き込まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




せめて小説内だけでも
楽しい仲間とわいわいしていたいですね

もうちょっとの我慢。
おともだちと一緒に
おいしいお食事できる日を
夢見て。


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雨降って

トラブルに巻き込まれた
日南田と李衣紗は・・・


「大丈夫ですか?お名前言えますか?」

 

目の前に倒れていた女性に声をかける李衣紗。

 

「おい、意識はあるのか?」

心配そうに女性の顔を覗き込みながら

日南田が李衣紗に話しかける。

 

「反応がない。日南田、すぐに救急車呼んで。

その間、私は救命処置するから」

 

「お、おう。あ、119ですか?

今・・・・・・」

 

数分後に救急車が到着する。

状況報告を素早く済ませ、李衣紗は

一緒に車に乗り込んだ。

 

日南田には現場に残ってもらい、倒れている女性の

関係者が現れたときに連絡するように頼んだ。

 

病院に到着し、救急班に状況を説明し、

連絡先を確認した。

 

女性の所持品から、どうやら隣町の小学校の教師であるということが

わかった。

 

その頃、日南田は現場で李衣紗からの連絡を待っていた。

すると、30代ぐらいの男性が現れ、誰かを探しているようだった。

 

「あの・・・もしかして、このぐらいの髪の

小柄な女性をお探しですか?」

 

日南田は男性に話しかけた。

 

「え?そ、そうですけど・・・何か?」

 

怪訝な顔で男性が答えた。

 

「あの、さっきここで女性が倒れたんですけど

僕の友達が看護師で、救急車呼んで一緒に乗っていったんです。

病院は、坂の上にある江南病院です。」

 

「え?????本当ですか?」

 

「あ、今、電話入ったんでちょっと待ってくださいね。

うん・・・名前は、角沢真奈美さん?」

 

「あ、角沢です、はい、僕の妻です」

男性が日南田に近づきながら声を上げた。

 

「今、女性の旦那さんと変わるから待って」

 

日南田は自分の携帯を男性に渡した。

 

男性は近くに車を止めていたので、日南田と一緒に

江南病院に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

血圧が下がり貧血を起こしていた女性は

数時間して意識が戻った。

 

「赤ちゃんにもお母さんにも命に別状はありません。

今日、1日入院して安静にしていれば、明日には家に

戻れます」

 

医師の言葉にホッとした表情で、男性は待合椅子に座りこんだ。

 

「よかった・・・何かあったらどうしようかと思って

生きた心地がしなかったよ・・・

 

それにしても、どうもありがとう。見ず知らずの人を助けてくれて。

この恩は一生忘れません。

御礼をさせていただきたいので、連絡先を教えてください。」

 

「いや、そんなこと大丈夫ですよ。

当たり前のことしただけですから。

 

それより、奥さんお大事にしてください。

旦那さんもびっくりしたでしょうから、きっと

疲れてますよ。二人とも休んで大事にしなくちゃ」

 

「若いのにしっかりしているね。奥さんの教え子たちも

君のように育ってくれたらいいなぁ。

問題のある子がいてね、いつも奥さん、その子のこと

気にかけてたから、最近食欲もなくって。

コロナが収まったら、子供たちとピクニック行くって

張り切ってたんだけど・・・」

 

「大丈夫っすよ!俺もそのぐらいんとき

相当ヤバかったんで!でも、支えてくれた人がいて

その人のおかげで、道を踏み外さずに済んだから。

きっとその子も、奥さんの思いが伝わってますよ!」

 

「ありがとう!本当にありがとう!

奥さんにもそのこと伝えるよ。

いつか君たちと飲みたいなあ。だから

やっぱり連絡先教えてくれないかい?」

 

「あ、そういうことなら、ぜんぜんおっけーっすよ!

ぜひぜひ落ち着いたら、会いましょう!」

 

「ああ!うちに遊びにきてくれよ。

奥さんが育児している間、私が料理するから!

これでも野外活動では、料理担当なんだよ」

 

「旦那さんも先生なんですか?」

 

「ううん。これでも裁判官だったりするよ」

 

「およっ!国家公務員~!!!すげぇな。

おれ、警察官志望なんです」

 

「そうか!君のような子が警官になってくれたら

世の中から犯罪が減るよ!応援するよ」

 

「あざっす!!!!がんばります!」

 

 

 

 

 

自分にとって大切な人達。

李衣紗や凛々子、そして母を守りたいと

密かに思いを馳せていた日南田だった。

 

 

<深層心理で願っていることが叶ってしまう李衣紗の思いは・・・>

 

 

 




パンデミックもそろそろ
さよならしたい時期ですね。

どんな状況にあっても
しっかりと自分自身を見つめて
進んでいきたいですね

心の支えになってくれる
友や家族はなにものにも代えがたい
大切な宝物であります


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2021Thanks!

今年もいろいろあった1年でしたね。


おーい、やっと小さくだけど集まれるのいいな。

てか、おれら、超まじめじゃね?

みんなPCR検査受けて陰性証明だして、しかもちゃんと信頼性のあるやつでさ!

まあな、医療関係者いてくれてよかったなってか

いなくてもなんとかしなくちゃだめだろ、おれら

こども達とや多くの人と関わる仕事してたりするんだしな

 

しかも帰りのタクシーも

予約済みってな~

こんな若者おれらだけじゃね?

 

まあ、邪に従順なだけじゃないの?

君たちは?

 

よこしまでもたてしまでも

ちゃんとしてんだよ!!!おれら!!!!

てかさ、若けーから、はっちゃけすぎとか

そんなん言われるのいややもん

 

なんで、関西弁よ?

 

・・・お笑いみすぎかも

家飲み多かったからな~

映画とか有料月極動画とかみて過ごすこと

多かったからな・・・

 

あんた、ちゃんと「つきぎめ」って読めるようになったんだ!

 

な、なんだよ・・・・

 

だってさ、小学校の時

げっきょくちゅうしゃじょう!

って読んでたじゃん!

 

 

は?小学生に誤字脱字の罪はねーよ!!

 

 

大人でもないんじゃない?

ただ、あら・・・って、残念感多いだけで。

 

・・・・・・・

いいだろ・・・常に人間としてバージョンアップしてんだから

 

なんかさ、かわいいよね。

今思うと。だから、これから10年後とか

今の自分たちみて、かわいいな~って

思うんだろうね。

 

男の場合はさ、バカやってなんぼだから

かわいいというか、はずいというか・・・

黒歴史満載・・・・

 

おまえはもうほんと、一見まじめってか

やらねーだろ的な面持ちで

はあ????ってこと

やらかしてくれたからなぁ~

 

忘れてくれ。

危険なことして、りり姉に

むちゃくちゃ怒られたことも

あったしな・・・・

 

そう。まさに愛の無知だぜあれは。

おれだって、やば・・って思ってたところに

間髪おかずにりりちゃん

ぶちかましてくれたからね

 

いや、まあ、はい

あれはオレ的にもかなりやばかったと

思います・・・・一歩間違えたら

命に関わる危険ことを

やらかしちまったんで

 

そう。普段やりそうなオレでさえ

あれはねえなって

思った!てか、オレ意外に

へたれだから、あんなんできないよ

 

まあな・・・男の勇気ってか

そんなことをしてみたくなったんだよな

でもほんと、もちろん

一歩間違えば・・だから

叱られて当然だよな

 

まあ、そうやって大きくなるわけだけど

女子的にみたら

心配というか、ハラハラさせられることも

少なくないよ

 

 

そうですそうです。

ですから、女子のあたたかい

見守隊には感謝しています

だもんで、大人になって筋骨隆々となった

おれらは、君たちか弱い女子を守らなくちゃ!

って、ごーだたけお君のようになりたいなと

思うわけで

 

でもなぜか砂川君の方がもてちゃうっていう

凛子ちゃんは

人を見る目があるよね

かわいいよね

 

あ~酒が足りねぇ~!!!

だれか、買いに行ってくれないかなぁ~

 

はいはい、私はぜんぜん飲んでないから

ちゃり乗れるので、行ってくるよ

そのかわり、チョコ代おごってちょうだい

女子分のスィーツ買うから

 

おぅ

男子全員で女子分負担させていただきます

ついでに、おつまみもいくつか

買ってきていただけないでしょうか?

 

(ばしっ!)

 

調子に乗りすぎや!!

 

wwwwwww

 

 

 




だれがだれのセリフかは
ご想像にお任せします!


2021年、ありがとうございました!

202年も、よろしくお願いします!


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2022お初

3度目の春を迎えようとしています。



りーの要望

 

けーは素直すぎるから、ちょっとは人を疑ってみることをしても

悪くないとおもうんだよね。なんでもかんでも疑ってかかる必要もないけど

悪い人に騙されちゃうんじゃないかって心配で仕方ない。

 

ひなはその反対で、人を警戒しすぎ。そんなに疑って斜めにみすぎると

人から誤解されるよ。ほんとはいいやつなのに、なんかあいつ感じ悪い

って言われちゃうから。媚びへつらうひつようはないけど、もうちょっと

愛想よくしてもいいと思うよ。でないと損しちゃう。

 

ゆっきーは本当は小心者なんだけど、自分を大きくみせようとして

盛っちゃうところがある。それがバレちゃってるから

残念すぎる。本当は正直だから、バレちゃってるわけで。

人を欺こうとしてのウソじゃないから、バレてるんだよ。

だから、罪が重いかというと、そうではないと思うけど

やっぱりひなと同じように損しちゃうよ。あいつ

盛りすぎだって言われる。実力あんのに。

 

ながはすんごくやさしいのに、ツンデレだから冷たいやつって

思われちゃう。まあ、テレてるんだから、仕方ないけど

頭良すぎて弾丸トークでまくしたてると、相手がびっくりしちゃう。

キツイやつ、って思われてやっぱり損しちゃうから

もっと余裕もったかんじでいたらよりカッコイイと思うんだよね。

脚も早いし運動神経よくて頭いいんだから。

 

それからりのん。

いいとこいっぱいあるのに正直すぎ!そのままの気分で

いるからわがままって思われちゃう。

美人なんだしスタイルもいいんだし、笑ってたら

めっちゃかわいいんだから、あんまりイヤイヤ言わなければ

いいんだよなあ。

まあ無駄に寄ってこられるのもなんかイヤってのは

わかるけどね・・・それでも男子って見抜けないんだから

素のままのりのんだったらもっと推しが増えるよ!

(いらないもん!って言いそうだなぁ)

 

そしてりりちゃん。

最近はちゃんと自分のこと大事にしてる感じに

なったけど、前は自分のことより私たちのことばかり

心配しすぎてたでしょ。

もう大人だから、大丈夫だよ。

これからは自分のこともっと大切にして

人生楽しんでね。

みんなもまだまだ粗削りだけど、けっこういい感じに

なってきてるから。男子はこどもっぽいけど、それでも

それなりにがんばってるみたい。

 

私も応援してるから、りりちゃんも

応援してね。4月にはまたいろいろ変化があると思うけど

落ち着いたら一緒に飲もうね。

 

ドライブ行きたいから場所考えておいて!

私が運転するからね。もうだいぶ慣れたよ。

カーナビなくても大丈夫。地図もまわさないで

見れるようになったから!

 

おじぎおじぎ、ぱんぱん、おじぎ

二礼二拍手一礼

 




もう1月も後半に突入しました。
気候やらパンデミックやら
いろいろ大変な時期ではありますが・・・

免疫力は下げないように
過ごしていきたいと思っています。


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桜のエチュード

コロナ禍3年目ですね。
マスクはいつとれるのでしょうか。


-オレ的にはもうマスクとってもいいんじゃねえかなって

思ってたりするんだけど

 

でも、オレが良くてもマスクをしてないオレをみて

やな感じする人がいるんだったら

やっぱマスクとれねえなって思ったりするんだよな。

 

おれは移らねえしかからねえからいいんだけど。

 

-けーらしいな~。ぜったいかからないという

根拠のない自信。まあ、そういう気持ちが大事だなあって

思うけどね。

 

よく食べよく寝てよく笑う

 

それが一番いいらしいから。

 

-りーさん、お仕事柄の人らしー発言だよな。

おれもよく食べよく寝るけど、かかりましたけど?

 

-ひなはもともと喘息とかもってたじゃん。

呼吸器系が弱いんだから、仕方ないよ。

でも、軽くて済んだんだから、私はほっとしたよ・・・

 

-おれ、見舞い行く!っていったら

かーちゃんに頭なぐられたよ・・・

バカかおまえ?って。

 

-けー!心配なのはわかるけど、見舞いはないでしょ。

基本、人と会えないんだから・・・

 

-だから、オレはかかんねーの!

 

-君がかからなくても、というか保菌してしまって

それを持ち帰っておうちの人やほかの誰かに

移してしまったらいけないでしょ。

 

-・・・・・・。なるほど

 

-単純すぎて草!

そういうけーみてると、世の中

ばかばかしくなってくる。

 

くそどーでもいいことで悩んでたりとか

なんか、あほくせ、って思って。

 

おまえはすごい。

ある意味、世界を救うな。

 

-ほんとだね。けーはすごいとおもうわ。

でも、ひなだって、人を救ってるよ。

なにげない一言が、びしっとしてて

的を得ているから。

 

だから、りのんもずいぶん変わったとおもうよ。

ひなのおかげで、成長したって言ってたよ。

 

りりちゃんも救われたって。

 

-おれ、なんかした?

 

-ほら。絵具セットあったでしょ。

あれを褒めたんだって。

りりちゃんが小学校のときから使ってたやつで

大事にしてたから

 

それをなにげに褒めたんだよ。ひな。

それがぐっときて、ちょっと落ち込んでることが

あったけど

 

すーーーーーっと

消えたって言ってたよ。

 

ひなって癒し系だって。

 

-え・・・あ・・・・そ。

おれは思ったことしかいわねーから

 

いい絵具セットだなって思ったんだよ。

 

-おめーは別に慰めよーとおもってなかったかも

しんねーけど

すんげー慰めたんだぞ!

ってか、ほんとはどっかでわかってたんじゃねーの???

 

-そ。けーの言う通り。

ひなって、どっかでわかってて

それでさりげなく人を励ましたり

しちゃうんだよね。

 

ちょっとしゃくだけど

そいうとこ、いけてる。

 

-おまえに褒められてもうれしくねーよっ!

 

-なにテレてんだよおおおお

 

-けーもひなも、励まし上手だよ。

ほんとやさしいから、顔見ただけで

元気になるときある。

 

-そういうりーだってさ

人々癒してんじゃん。

 

患者さんにもモテモテだって

聞いてるぞ?

 

-ははっ。ありがと。

仕事柄、励ましてなんぼですから。

 

ねえ、夏休み海いかない?

ちゃんと対策してさ

ドライブしながらビーチ歩きたいな。

 

-いいんじゃね?

ゆきとながも誘って

みんなで行こうや

 

-りのんには動画配信して

遠隔参加だね。

 

=だな

 

あ、新エヴァみたんだけどさ

エモい・・・

 

>>>関係ないじゃん!




おうち時間も
そろそろ限界ですね。

人込みを避けて
自然に触れ合う機会は持っても
よいかもしれません

今はふたつの検定に向かって
進めている途中です。

合間にまた、桜っこ達の様子を
お知らせできればと
思っています。


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入道雲

コロナも3年目なんですね・・・



なあ、ゆっきー

 

おれさ、最近思ったんだけど

因果応報ってあるなって

 

 ばとる、なんだよ急に

 

だってさー

ぜってーやったら自分に返ってくると思ったんだよね

 

 え、なんで?

 

すぐに来るときもあるけど

すんげえあとからきて

あ・・・あんなことしたからだって

 

 だいじょうぶか?暑すぎて、脳溶けたか?

 

ちがうんだって!

小学校の時さ、サッカーキャンプでコーチが

怖い話してくれただろ?

 

 あ、ああ・・・

 

悪いことしてもなんもおこんねーしっ!

っていうのは危ないぞってやつ

 

 あー、なんかあったかも

 

まりおが大事にしてたミサンガを

おれ、いたずらしたんだよ

そしたら、まりおが泣きながら

これすんごい大事なのにって

 

ブラジルからホームステイできてた

オルテガって子がくれた

大事なミサンガなのに!!!

 

って、ギャン泣きされて

 

 わるいなー、お前

 

でもさ、なんか布ってか、そんなの

なんだよ、って言って

買ってやればいーんだろって

ショッピングモールで買った

テキトーなのやって

ほれ、ってやったんだ

 

 反省って言葉がおまえにはないのか

 

そんときはな・・

そしたら、マリオはなにもいわずに

だまってそれをしまったんだ

 

それ以来口、きいてくんなくなって

 

 そりゃそーだろ!!

 

そしたら、その日、家に帰ったら

俺が大事にしてたエヴァのフィギアを

かーちゃんが掃除してて

おっことして、綾波さんの、首がぽきっ、って

折れちゃったんだよ

 

そしたらかーちゃん

あ、ごめんごめん、また新しいの買ってあげるから

 

って、簡単なかんじで

 

だから、オレ、激爆して

「あんなーーーー、限定品なんだぞ!!!!

もう、売ってねーの!!!どうしてくれんだよ!!!」

 

って、暴れたんだけど

 

そんとき、まりおの泣いた顔が浮かんだんだ・・

そんで思った。あんとき、マリオはすごく悲しかっただろうなって

大事にしてたもの、ぐしゃぐしゃにされた挙句

テキトーな扱いされてって

 

でもって、たまたまその日の漢字10分テストで

四字熟語の問題「因果応報」って出たんだよ

 

そういうことか・・・・・

 

って、初めて俺の辞書に「反省」って言葉が

加わりました、おめでとう

 

って

 

 ほう!おまえも反省するんだ!

 

いや・・・今までしたことなかったんだけど

因果応報ってのはあるんだなって

激しく実感したからな

 

それ以外でも

考えたら因果応報だなってこと

今までもあったなって

 

なんも考えてねーから気づいてなかったけど

やったことは返ってくるなって

 

自分もだけど

人のことをみてても思ったよ

 

 

 へー、おまえでも深く考えることあんだな

 

ってか、それからさ、そういう類の本、図書館で

読み漁ってさ

 

 じゃさ、りりちゃんみたいなのはどうなんだよ?あんないい人なのに

 

それはさ、そこ、すげぇ深いんだけど

おそらく、前世で神様と約束したんだろうなって

魂をすんごいよくしたいから、修行させてくださいって

 

神様は、つらいぞー、いいのか?って

はい、いいです。修行をして、魂を磨いて徳の高い人になりますって

 

そう、約束してきたから、あんな優しいけど

大変なこといっぱいあって

でも、にこにこ笑ってって

 

人のためにいつもなんかがんばってくれてとか

 

ああ、天使だよな

魂すげぇな

 

って、思ったんだ

 

 お前の得意な読書感想文にしたらいーんじゃね?

 

いや、もったいないから、自分の日記に

したためておくよ

 

で、今までしたことを反省して

できるかぎり、思い出せる限り思い出して

いいこと貯金すっかなって

 

そしたら、きっとかわいい彼女とかできて

楽しい人生送れるかなって

 

 結局は邪なわけだ?

 

ちげーから!!!!

魂の訓練すんの!!!りりちゃんみたいに!!!

 

 はいはい。じゃあ、ひなたとでも論じ合えよ。あいつもそんな話好きだから

 

なんだよ。俺はとっくにわかってる的な態度しやがって!

 

 俺は博学だからなんでも知ってんだよ

 

ふん・・・でも、バカにしないで最後まできいてくれたよな

ありがとな

 

 え・・・・真夏に雪降ったらどうしましょ?

 

いいだろ、涼しくて!!!

 




パンデミックとか災害とか
神様からのなにがしかの課題なのかなって

そう思う人も
いるのかもしれない昨今ですね・・・


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後悔

後悔しないということは
船に乗らないこと

それは航海でしょ
いや人生の選択肢を間違うと
悔いるってこと

なるほど


私はいままで後悔ってしたことがない

だって時間はもどらないから

 

ああしてたら

こうしてたら

そうしてたら

 

って思ったところで

ドラえもんが

タイムマシン持ってきてくれるわけじゃないから

 

失敗しちゃったな・・・

ってことはあるよ

 

だから、次はそうしないようにしよ

って思ってるよ

 

いつも

いつでも

 

仕事でも

プライベートでも

 

人間ですもの

失敗はするし、忘れることもある

 

でも

そこから次につなげたり

どうしたら間違いを減らすことができるか

 

それを考えていくのが

人間なのだ

 

それでも失敗は続く

失敗を恐れては

生きてはいけない

 

だから

寝る

 

ひたすら眠る

そうすると

ほとんどの記憶は遠くへいってしまうから

 

心のひだに入り込んでくることはない

自分をまもる術

 

なのかな

 

だからいつも思ってる

自分にできること

 

あの子たちが

後悔しない生き方を学ぶこと

 

私はなにもできないけれど

きっと私の思いは伝わる

そう信じてる

 

やさしくて思いやりがあって

強くひたむきに生きようとしている

あの子たちのためにできること

 

それは

心から信じてあげること

 

彼らが失敗しても

くじけても

おれそうになっても

 

信じて待ってあげること

 

だれかが信じてくれるってことは

魂ごと受け止めてくれるってことは

本当に心強い

 

それを知っているから

あのこたちのウレタンクッションになれたら

 

いつでも

ぴょーんと

飛び降りておいで

 

世界最強のウレタンだから

君たちが怪我しないように

降り方間違えても

最小限の怪我で済むように

自分の力で治癒できるように

 

経験値を高めて

問題解決能力がつくように

 

ずっとずっと見守ってあげたい

あの子たちは

希望の星だから

 

輝き続けて

まわりを照らしてくれる

そんな存在になってくている

すでに

 

だからわたしはもぐらになって

地面の下で彼らが快適に

安心してすごせるように

 

地ならししておくんだ

 

私に生きる希望を与えてくれた

大切な人たちだから

 

今は離れ離れでも

いつかまた笑い合って

好物頬張って

一緒に楽しい時間を過ごせたらって

 

それが一番の願い

 

今は会えなくても

いつか楽しいことを共有できる日が

くるって

 

目を閉じればいつでも

あの子たちの笑顔が見えるから

 

耳をすませば

あの子たちの笑う声が聞こえるから

 

あの道を行けば

あの子たちの足跡が見えるから

 

心からエールを送り続ける

夢をあきらめないで

 

必ずできるから

あなたなら

 

必ず夢をその手に

花開かせることができるから

 

虹色の

思いの向こうに

昨日の涙も笑顔に変えて

 

あの日一緒にみた夕日を背中に

また走り続ける

 

 

いつもいつまでも

ずっと忘れない

りりこ




ねばーぎぶあっぷ!


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季節は巡って

また別れの季節になりました


今年はやっとこどもたちの顔をみながら

送り出してあげられる

 

苦しかった3年間も

今となってはいろんな思い出となった。

 

李衣紗は保健実習でお手伝いに行った

小学校を訪れていた。

 

先生これ!

 

子供たちは思い思いのメッセージを込めた

折り紙製作を李衣紗に手渡した。

 

一人、また一人笑顔で挨拶をかわすと

胸にさしていた花を李衣紗に渡してくれた。

 

災害に遭って転校してきた子、感染が長引き

入院してしまった子、両親が仕事を失って転校して行った子

この3年でいろんなことの縮図が

1枚のアルバムに収められていた。

 

願ったことがやっとかなった。

こどもたちの笑顔を直にみながら

送り出すことができますように

 

ひとりひとりの人生を

しっかり歩んでいけるよう

周りの大人がサポートして

巣立っていけますように

 

日々の願いは現実となった。

 

数日前に李衣紗は不思議な夢をみた。

大きな木々が茂っている森への坂道を

息を切らしながら登っている夢だ

 

大木に茂っている葉っぱは

ゆっくり揺れているが

笑顔のように見えた。

 

木漏れ日がまぶしく

瞬きしながら上り坂を力強く

歩いている

 

そこで目が覚めた。

 

不思議な夢だったが

妙にリアルだった。

 

気になったので夢占いを調べてみると

 

「明るい未来に向けて、願いが叶います」

 

と書かれていた。

 

今頃、圭太達もきっと新しい生活に向けて

歩んでいるだろう。

 

そんなことをふと思った時に

マナーモードのスマフォが反応した。

 

あけおめことよろ!

 

は?なに、今頃・・・

 

感極まった涙が一気にひっこみ

笑いの涙に置き換わった。

 

念願のバイトが決まったと

連絡してきたのは圭太だった。

 

こどものときから表現することが

好きだった圭太は劇団の仕事を

手伝いたいと言っていたことを思い出した。

 

(なにこれ・・・私にお祝いしてほしいってこと?)

 

返事に戸惑い、すぐには返せないと

卒業式と送る会を終えてから帰りの電車の中で

ゆっくり返信することにした。

 

おめでとう

ひさしぶりだね

みんなはどうしてる?

せっかくだからみんなで

会わない?

 

既読にはなったが

返信はすぐには来なかった。

 

もしかしたら圭太は

李衣紗と二人だけで会いたかったのかもしれない。

もちろん李衣紗も望まなかったわけではないが

久しぶりに二人だけで会うことに

気まずさを感じていた。

 

すると日南田からの着信があり

すぐに切れた。

電車を降り、ホームのエスカレーターを登り切ったところで

折電を入れた。

 

あ、今電話もらったんだけど?

 

おーーーーー!りー!

ひさしぶりー!

 

と、お気楽だが力強い声が聞こえた。

 

久しぶりにみんなで会おうか?

 

李衣紗の返信を受けて、圭太が日南田に

連絡を入れたようだ。

 

なつかしさとこそばゆさが入り混じり

李衣紗は深呼吸をしてから

スマフォの画面をスライドした。

 




二人の間で揺れる
李衣紗は
果たしてどんな反応を示すのでしょう?



時間が流れても
人は変わっても
思いは変わらなかったり
気持ちは変わっても
心は通じていたり

人間って不思議な生き物ですね


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あの時から今

あんな大きな災害があったのに
人々の記憶も薄れつつある今・・・


永斗は研究室から窓の外を眺めていた。

木々の緑が心を落ち着かせる。

静寂をぶちやぶるように

スマフォの着信音がなる。

 

ポップアップに表示された送信者名は

 

「武道家」

 

圭太からのメッセージだ。

机に置いたままのスマフォ画面をスライドして

肘をつきながらメッセージを確認する永斗。

 

(なあ、おまえ放射線とか専門だろ?

大丈夫なのかよ?)

 

「相変わらず、目的語がない文章投げてくるやつだ・・・」

 

(なにが、どう?)

 

ランチも食べ終わりゆったりとコーヒーを飲む時間に

親友からの意味不明なメッセージに

なぜだか安心感に包まれている永斗だったた。

もう一度窓の外に視線を移動して着信を待つ。

 

(ほら、あれ、爆発したあと、やばかったんだろ?

そのあとどーなったんだよ!!

なんか、海とかやばくねえか?

りーさ、魚すきだろ?)

 

「はいはい、いつもおまえは李衣紗中心だな。

そんなに好きなら結婚しちゃえ」

 

大きな独り言に隣室の後輩研究生が驚きながら

「なにかありましたか?」

とノックもせずに入室してきた。

 

「あ、SNSに反応してた。なんでもない。ごめん」

 

すると後輩は微笑みながら

「あ、それなんですね。了解です。うちも今教授外出中なんで

のんびりレポート書いてたとこでした。先輩も研究結果まとめ

大変なのかなっておもって」

 

肩にかかるストレートの髪の毛を揺らしながら

愛梨(あいり)は永斗の反応を待った。

 

「オレのことを心配してくれてありがと後輩。

そういえばおまえも知ってるかも?

猪突猛進でウソがつけない武道一直線男・・・」

 

永斗の問いかけに即座に反応する愛梨。

 

「圭太さんですよね!有名ですよ。知らない人はいない・・

男子からも女子からも人気でした!小学生の時から。

でも、私は永斗先輩派だったんで!」

 

思わぬ告白に面食らう永斗。

 

「派、っておれとあいつと二分してたの?人気?

それあんまうれしくないんだけど」

 

テレ隠しに愛梨をいじろうとする永斗。

 

「え・・・あ、うんと・・・・

推しの話です!」

 

何気に告ってしまっている愛梨にどう反応してよいか

困る永斗。

 

「ま、今度ゆっくり昔の話でもしようや。

今はその人気男子に返信しなくちゃだから

ごめんな!」

 

「あ、すいません・・・・部屋に戻ります」

 

愛梨はつっぱしってしまったことを反省しながら

部屋を後にした。

 

(おい、中学から人気者の圭太くん。話が唐突すぎて

どこからどう説明したらよいかわからないから、今日一緒に

飯しない?)

 

すると、待て、を食らっていた犬のように

圭太は速攻でリプってきた。

 

(いいねいいねいいね!!!外食もここ3年ほとんど

してなかったから、ながちゃん、最初の会合だよ!!!

さんきゅーーーーーー!!!!!!)

 

時間と場所を指定し、永斗はレポートをまとめあげた。

作業が終わり、パソコンを閉じて、プリントアウトした書類をそろえファイリングして

部屋を後にした。

久しぶりに級友に会えるうれしさで、歩みが弾んでいた。

 

待ち合わせ場所にいくと、すでに圭太が到着し

中堅ハチ公のように永斗の到着を待ちわびていたような表情で

 

「お待たせされました。なに頼む?」

 

店内の時計をみると待ち合わせ時間よりも2分早い。

 

「お前が勝手にはやくきてたんだろ?

好きなのたのんじゃえよ。オレはいつものでいいよ」

 

永斗が「よ」と言う前にすでにタッチパネルを操作し始めていた

圭太は、永斗の好きなオムライスを画面に表示させ3と入力した。

 

「はあ?おまえ、2つもたべんの?」

永斗があきれる。

 

「だって今日も練習試合あったんだもん。いいでしょ?」

 

「お手、待て、みたいな顔してんじゃねーよ。

好きにしろ」

 

「わーい。じゃあ、あとはコーラとコーヒーとパフェ3つね」

 

相変わらずの食欲に呆れながらも、昔と変わっていない圭太にホッとする永斗。

 

食事が運ばれてくるとすかさずスプーンを取り口にほおばる圭太。

 

「おまえさ、大人になっても変わってないってのは、進歩がないのか

純粋なままなのか・・・・」

 

「両方両方!」

 

「素直というかなんというか・・・で?お前の知りたいことは?」

 

口にものをいっぱい頬張りながらもしゃべることができるという

特技を持った圭太は懸念事項を説明し始めた。

 

パンデミックも落ち着いたころだから、そろそろみんなも外食やら

飲みやらはじまるだろうと。

李衣紗は仕事柄、同僚との会合も多いだろうし、研修で

出張もあるときいている。

 

今はほとんどの人が忘れているように思える世の中の反応だが

放射能汚染は大丈夫なのか?

永斗が以前それを懸念して放射線技師の道を目指そうとしていたことを

思い出した。

それで意見がききたい。調査結果など知っていたら教えてほしいと。

 

「おまえってさ、不思議だよな。勉強きらいなくせに

へんなとこ記憶力学者なみに細かいところ覚えてるよな・・・

まあ、好きって感情はすべての奇跡を産むっていうけど

まさにそれだよなあ」

 

永斗はうらやましそうに、パフェを頬張っている圭太をながめた。

 

「いや、らってそえって、とっれもらいじなころじゃん?」

 

「アイス溶けてからしゃべろ!!」

 

久々の漫才劇を内心楽しみながら永斗は説明を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




もう今の小学生はあの大きな災害を知らないんですね・・・
風化は警戒心を弱くしてしまう懸念が。

圭太の気づきはとても大切なことなのかもしれません。
後世の人たちに伝えていかなければいけません。


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