化物がヒーローになる物語 (ピコッピコ)
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オープニング 

オリ主がかっちゃんとデクさんの幼馴染

オリ主がかっちゃんに尊敬されてて好かれてる(not恋愛)

オリ主がデクさんに懐いてる

勘違いもの

特定のヴィラン以外ヤンデレ(ラブラバ、ジェントル等)

元ヴィラン等も含める。

書きたいことだけ書いてる

 

 

 

数多の解釈違いと即死級の地雷を含んでいます。

 

踏んだ際生きていらっしゃいましたら、すぐ様ブラウザバックをお願い致します。死んでしまいましたら大変申し訳ありません。

 

 

 

 


 

 

 

私、狗飼(イヌカイ)野乃子(ノノコ)!ピッチピチの14歳!

 

よく不審者に絡まれたり誘拐されかかる普通の女子中学生!

人とお話したりするのが苦手で、個性がちょっと怖いのが特徴かな!

 

親友兼幼馴染の緑谷と、いっちばん仲良いんだ!他に比較する人が居ないからね!

でも、もう1人の幼馴染の爆豪とは余り仲良くないんだ……

 

因みにトラウマは2人を守ろうとして個性を使って不審者に対抗したら、ヒーローにヴィランと間違えられて気絶したことだよ!

 

悩みは方向音痴すぎて父親にGPS入れられた事と、定期的に私物が無くなる事とグリーンピースが苦手なこと!

グリーンピースが苦手なのが特に悩みなの……

 

あ!もうこんな時間だ!

 

「いってらっしゃい。野乃子。」

「はい、いってきます。」

 

さぁ、今日も一日頑張るぞー!

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

以下、文字数稼ぎの為のヤンデレ!!文だから許して!!非公開だけは………許して……………

 

トガちゃん!!!!の話!!!!!!!急いで作ったから書き直される可能性高いです!!!!!

 

地雷注意!!キャラ崩壊注意!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少女漫画とか、恋愛小説とか。

そんな物には共感できなかった。

もちろん、恋する気持ちはわかる。キラキラしてて、甘くてふわふわ。だけど、みんながカッコイイやら素敵だって言ってるそれらは、どうにもこうにも、そう思えなかった。

 

物心ついた時から血塗れた人が好きだった。

生傷だらけでボロボロの人が好きだった。

血が流れてる方が、かっこよくて可愛いかった。

 

でも、そんな私にも普通の人みたいな、お父さんにもお母さんにも怒られたり泣かれたりしないような人を好きになった。

 

()()は傷一つない肌だった。

血の匂いよりもシャンプーの匂いがした。

血が流れてないのに、すっごく可愛くてかっこよかった。

 

一目惚れ、だった。

 

私が小学生くらいだった頃。誰にも会いたくなくて、フラフラさまよってた時のこと。

そこで出会った、そこで恋に落ちた。

 

カタンカタン、と音を出して糸を編んでる機織り機。

機織り機が折れて、鳥のさえずりのような音を出して、黒いインクを流しながら人の姿へと変わっていく姿。

 

木の板から小さな手が何本も生えて、糸が千切れて再生して黒い髪になっていく姿が、どうしても目が離せなかった。

 

可愛くて、かっこよくて、綺麗で、美しくて。

 

それが寄せ集まって、人の形になった時。私と目が合った時。

 

私は顔を真っ赤にして逃げちゃった。だって恥ずかしかったから。乙女ですから。

 

あぁ、これは、これはきっと運命。

 

私は傷だらけでも血の匂いもしない人を好きになりました。

普通の人のように、好きになりました。

 

彼女を傷つけたいとは思わない。ボロボロにして、血まみれにしたいなんて思わない。一緒に居られて、一緒のご飯を食べたり、好きな物を共有出来たら良い。

 

彼女以外にも好きになる人は居ました。でも、彼女みたいな感じじゃない。全然違う。……彼女は特別なんです。

 

お母さん!貴方の言う通りの恋を私は出来ました!

 

お父さん!貴方が叱る通りの人を思う心を見つけました!

 

お母さん、お父さん。私は……トガは幸せになります!

 

…………だから私、病院なんて入ってる暇ないんです。

 

血の匂いはやっぱり好きだ。ツン、と鼻に来る感じが堪らない。

血だらけの人はとっても魅力的。カァイイくて、とっても素敵なんです。

 

私、幸せになるから……ゆっくり休んでね。

 

 




狗飼 野乃子

個性 化物

欲しい力に応じて姿が変わる。

炎使いたーい!→火だるま
遠く見たーい!→目玉の潰れた兎
姿変えたーい!→蔦と花
うみゃみゃー!→すっごーい!



トガちゃん

恋しちゃった。トガちゃんは可愛いなぁ………



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1 そして、狗飼野乃子はコンクリートを見下ろした。


オリ主おバカのつもりで書いてるんで大丈夫です(???)
好きなんだそういうやつが………


 

 

「緑谷」

「あ、ノノちゃん。ごめんね、すぐまとめるから。」

 

慌てて今朝のニュースを見ていたのだろうスマホをしまい始めた幼馴染の緑谷に、そんなに急がなくて良いと言おうとして、止めた。

私がそういったら寧ろ急ぎ始める。緑谷はそういう奴だった。

 

「わかった。」

 

返事を返した。

 

人生とはままならないものである。

 

それを知ったのはいつだったか。

 

幼馴染同士の仲が異様に険悪になった時だったか。

いや、それよりも前。

 

お父さんが海外赴任で滅多に家に帰って来れ無くなった時だったか。

…いや、それよりも後。

 

私が個性を使って、幼馴染を助けた時だ。

 

あの二人の表情も体の震えも叫び声も、私は一生忘れることはないだろう。

快活でガキ大将だけど面倒見の良いかっちゃんが、温厚で優しい努力家の緑谷が、小さな小さな、プチッと潰せてしまいそうな体を縮こまらせて震えた。涙を壊れそうなほど流して、甲高い悲鳴を上げた。

 

ヴィランに立ち向かったかっちゃんを、私も守って背に庇った緑谷を、私は恐怖のどん底に陥れたのだ。

 

緑谷のまん丸な瞳に映っていた。

真っ赤な顔の半分を閉める、ドロリと溶けていきそうな双眸。忘れるはずは無い、あの剣山の毛皮。

 

正直、二人の叫びに駆けつけたヒーローにぶっ飛ばされて良かったと思っている。

 

今でも私はあの時を思い出すと申し訳なさで死んでしまいそうだから。

 

ふとあの時を思い出す時にヒーローに退治された事実が含まれると、何故だか許されたような気がする。

 

「話まだ済んでねぇーぞ、デクにイヌ。」

 

爆豪勝己。私の幼馴染の一人。

 

爆豪(コイツ)を一言で表すなら、頭脳に運動神経に容姿に恵まれた代わりに性格には恵まれなかった奴。

これに限る。

 

緑谷と爆豪と私は、幼稚園の頃からの幼馴染である。

 

その頃から緑谷はオールマイトオタクにだったし、爆豪はカリスマでガキ大将とかやってたし、私はコミュ障だった。

 

「カツキなにそれ?」

「「将来の為の…」マジか緑谷!くぅ〜!」

「い、良いだろ!返してよ!」

 

かっちゃんが取った緑谷のノート。

 

あれは何代目だったか、14くらいか?

幼い頃からヒーローを目指す緑谷が何かある度に着けているノートだ。

 

つまるところ大切な物。

 

今日のかっちゃんは何時になく仏頂面だった。

 

恐らくというか、確実に「今日の進路の話のせいだろう」。あれは最悪だった。

 

担任が、私と緑谷が雄英を受けることを言ってしまった。

 

無個性の緑谷と、「恐ろしいから」と個性を使えない私が、超有名ヒーロー高を受けることを。

 

それだけの事実がかっちゃんの怒髪天を貫いた。

 

クラスのみんなにも笑われた。

 

無個性の緑谷と、協調性の無く緑谷しか友達の居ない私が雄英という言わずもがな名門校を受けることが余程面白かったらしい。泣きそう。

 

……嫌だったのはそれだけじゃない。

 

笑われてる時さえ何も出来なかった癖に、仲良かった頃を惜しむ自分に嫌気が刺した。

それに、あんなことを言うかっちゃんに腹が立ったし、言い訳するだけの緑谷に苛立った。

 

そして、言い訳だと苛立った私にまた嫌気が刺した。

 

「あーー!?」

 

ボム

 

音がすると同時に微かな熱気が肌を焼く。

かっちゃんの手に持つ、緑谷のノートがプスプスと煙を上げて真っ黒に焦げていた。

 

そして、その次の行動に目を疑う。

 

なんとノートを窓の外へ放り投げたのだ。

 

ノート捨てやがったぞかっちゃん!

 

「ひどい…!」

 

かっちゃんはフンと鼻を鳴らした。

 

そして語り出す。

 

要約するなら「一線級のプロヒーローと同じくらいの逸話欲しいから唯一の雄英進学者になる為にお前らは受けるな」とのことだった。

みみっちい。みみっちさで逸話を残せる。

 

「ずぅと尻尾降ってるイヌもさ、お前の個性じゃ無理があるって。」

 

デクは木偶の坊から、イヌは…今言った通り、緑谷に付きまとってシッポ振ってるから。

 

あだ名をつけられて「やったー!」と喜んでた気持ちを返して欲しい。

 

「協調性も個性もクソっつーダメダメな奴!没個性どころかゴミ個性!つか、なんでヒーローになれるとか思えたんだ?普通に考えりゃ分かんだろ。ぜってーに無理だって!」

「……」

「分かってるだろーけど、テメエはそもそも普通に生きることすらママならねぇんだから。ヒーローなんて以ての外!」

 

私は別にヒーローに成りたくて雄英に入る訳じゃない。

両親の願いだったから入るだけ。なんだったらヒーロー科じゃなくて普通科でも全然良い。

 

「か、かっちゃん!」

 

緑谷が声を荒らげた。

 

怯えが深く感じ取れる弱々しさだった。頼もしさはほぼほぼ無いと言っても過言では無いだろう。

 

でも嬉しかった。

 

「……あ"?」

「ッ!」

 

み、緑谷!大丈夫か緑谷!

 

ありがとう緑谷!私の為に立ち向かってくれて!私なにも出来なかったのに緑谷!君本当に凄い奴だな!!

 

全身に立った鳥肌を慰めるように腕を摩った。

 

「つーわけで一応さ、雄英受けんな。」

「………」

 

緑谷は口をワナワナ震えさせて、俯いた。

 

私は別にヒーローに成りたくて雄英に入る訳じゃない

 

両親の願いだったから入るだけ。

ヒーロー科じゃなくて普通科でも全然良い。

 

だから私は何言われても何とも思わない。

……でも緑谷は別だ。

 

彼は、ずっと昔からヒーローになりたがってる。

 

むかついた。

かっちゃんの後ろでニヤニヤ笑っている奴らにむかついた。

私たちに平気でそんなこと言うかっちゃんにむかついた。

 

かっちゃんと目が合った。

 

「………何よ」

「別に。」

 

舌打ちする音が響いた。

誰がしたのかなんて考えるまでもない。

 

浮いた歯が歯にあたって鳴る音が耳に微かに届いた。

 

顔を逸らして窓を覗いた。

晴天だった。

ずっと眺めていたら、いつかとけてしまいそうな青空だった。

 

かっちゃんは、心底不快であると顔を歪ませたのだろう。

見ずともわかる。

なんとなく、わかる。いつもそうだから。

 

扉が開く錆びついた音がした。

意外にも粗雑な開き方ではなかったことに、少し目を細めた。

 

彼は育ちが良いのだ。

 

幼稚園ぐらいのころ、緑谷に箸の使い方を教えていた事を思い出す。

突然だけど、何故か思い出した。

 

「あ、そんなにヒーローなりてんなら良い方法あるぜ。」

 

心臓が痛い。

鉄臭くて首を傾げた。

誰か転んだわけでもない、私が舌を切ったわけでもないのに、なぜか鉄臭かった。

 

「来世はマトモ個性が手に入ると信じて・・・屋上からワンチャンダイブ!」

 

窓から見えた空は夕焼けだった。

空がキレイだと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一人でトボトボ帰り道を歩く。

 

緑谷には先に帰ってもらって、一人で歩いた。

 

かっちゃんに爆破され、窓から放り投げられた緑谷のノートは、池に落ちてしまっていて、インクが滲んで読めなくなっていた。

鯉がつついていたのが忘れられそうにない。

 

ヌメついた池の水の感触ははっきり言って最悪。

早く水の入れ替えとかしてあげれないだろうか。あれでは池に住んでいる鯉たちも可哀想だ。

 

そこまで考えて頭に溜まる苛立ちに気づいて、息を吐く。

 

もう何度も繰り返したことだ。

 

こうなってはどうしようもない。

かっちゃんに文句を言うなんて怖くて出来ない。殴るなんてもってのほか。

 

こういうときは、空を見る。

空はたいがい奇麗だから、苛立ちなんて直ぐに消し飛ぶ。

 

空を見上げた。

 

夕焼けだった。

空が奇麗だった

殴ってやろうかと思った。

 

 

 

 

 

 

 




夕焼けだった。
空が綺麗だった。
殴りたかった。

7・9・7なので短歌ですね。(暴論)


あとタイトルが思いつかない。この作品におしゃんでステキなタイトルは存在しません。悲しい。



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2 ヘドロヴィラン事件、人呼んで化け物ヴィラン事件


すごい誤字してるところあってめちゃくちゃ面白かったんですけど直しました


 

「すげぇ!アイツひょっとして大型(ヴィラン)じゃね!?」

「頑張れヒーロ〜〜!」

 

商店街を荒らすヴィラン。

ソイツがヘドロの様な造形反し、爆破()を起こしながら店や電柱やらを破壊し尽していた。

 

対応しているヒーローはMt.レディ、シンリンカムイ、バックドラフト、デステゴロ

 

Mt.レディの個性は「巨大化」だから市街地+市民が大勢いるこの場では不利。

シンリンカムイの個性は拘束に優れているが「植物」の為炎には不利。

デステゴロはパワー系だから、瓦礫を退けられるという点において大変有利。

 

唯一の対抗は炎に向いているのは個性が水系のバックドラフトだが……戦闘向きのヒーローではない。

 

相性が悪い。

 

寧ろよく被害をこの程度に出来た物だと関心せざる負えないような状況だった。

 

凍らせるとか、吹き飛ばすとか、逆に高温で燃やしてしまうとか、思いつく対象法はこれだろう。

 

……私なら出来る。風を起こすのも氷河を降ろすのも。

 

でも…無免許である私が個性なんて使っては「違反行為」だ

 

そんなことしたら、学校に入れなくなるだろう。

 

私は【個性】が個性だ。きっと何かしら理由つけて拒否されるのは目に見えていた。

 

「つーかあの(ヴィラン)……オールマイトが追っかけてた奴じゃね?」

「オールマイトォ!?来てんの?!」

「じゃあ何してんだオールマイトは!!?」

 

雄英に入るのは私の目標だった。

 

こんな個性だからこそ、個性に理解ある高校へ行きたかったし、私の両親の希望でもあったから。

 

………そう、両親が願うから。

 

「人質の子には悪いが耐えてもらおう!」

 

その言葉に心が揺れる。

人質が居る?彼処に、あんな危険な場所に。

 

脳裏に、ふと、とある情景が浮かんだ。

 

テレビにヒーローが映っている。

 

それを見て私は言った。「私も成りたい」と

 

あぁ、そういえば、私には目標があった

 

自ら雄英へ行きたいと思っていた

 

 

「馬鹿やろー!!止まれ止まれ!!」

 

私の隣を、緑色のもじゃもじゃが駆け抜けた。

 

「──緑谷!」

 

緑谷が飛び出した。

止める声も気にせず、駆け寄っていく。

何の術も持た無いのに、個性すらないのに。

 

唖然とそれを見つめる。

 

いや助けろよ、私。

 

なんで?まさか見殺しにする気か?緑谷を。

 

走れ、走れよ。走ってくれよ

 

緑谷がカバンを投げつけた。

 

そして殴る。掻き出す。

何かをヘドロから探すように、引きずるように。

 

まさか、人質は…ヘドロに囚われているのか。

 

「君が」

 

ドクン、と心臓が鳴った。

 

遠くに居て、騒音もあるのに、緑谷の声は良く聞こえた。

 

そうだ、そうだった!私は……私は

 

「助けを求める顔してた」

 

ヒーローに成りたかった!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐラアアaaAAAAA"AAA"AEJQ*>c"&&&(今助けるぞおおおおお)

 

突如、ヘドロが吹き飛ぶ。

 

何が起きたのか理解出来ていなかった緑谷と、引き剥がされた爆豪(人質)は、その姿を見て顔を強ばらせ、そして安堵した。

 

人と獣の中間。

化け物と生物の併合したような咆哮が響く。

ゴツゴツした岩の集合体は、巨大なキツネのような姿に。

 

岩の隙間には鮮やかで色とりどりの宝石が如く美しい眼球が数十個見えかくれして。尾から、前足に掛けて真っ赤な液が見え、ボコボコ泡を立てている。

 

灼熱のマグマの閉じ込められた体に反し、先の尖った顔からは真っ白な冷気が漏れだして、周囲を凍らせていく。

 

矛盾した(バグった)ような姿。

 

自分たちの居る大地への不審と、自分たちが偽物であるのような錯覚に陥り、無数の美しい眼球からの眼光に射抜かれる。

 

「キャアアアアアアアア!!」

「なんなんだよアレェェェ!!!」

 

悲鳴に嗚咽に鳴き声に…逃げ惑い、崩れ落ち気絶する人々で状況は阿鼻叫喚と化す。

 

白い息は無防備に姿を晒すヘドロ敵を容赦なく、ジワジワと凍らせていく。

 

白く、美しい彫刻が如く姿へと変わっていくヘドロ敵の姿は、見惚れるほど美しく、そして、怖気で心臓の芯まで浸るほど悍ましい。

 

為す術など無い。何も出来ない。

生き物であるかも不確かなナニカに、貪られる訳でもなく、ただ殺されることを待つ。

 

そんな状態に心折れたヘドロヴィランは、なりふり構わずに助けを求める。

這いずり逃げ出そうと蠢く。

 

「だ、誰かああ"あああああ!!!助け"て"くれ!!」

I"T""x"Y"Y"Y"Y"(に"が"さ”ん"ん"ん")

 

前足が触れると、一瞬にしてその箇所は砕け散りヘドロを包んだ氷はそこら中に蔓延した。

それを楽しむように、化け物が唸り声を上げる。

 

楽しんでいるのだ。ヴィランが戦き恐怖する姿を。

 

──本当は少し触れただけで砕けたことに動揺しているだけなのだが

 

「や"め"ろ"お"お"お"助け"て"くれよ"!!誰か"!ヒ"ーロ"ー、ヒー"ロー"でもい"い"がら"ぁ"ぁ"!!」

 

(ヴィラン)VS(バーサス)(バケモノ)

 

ヒーローと野次馬はそう判断せざるを得ない。

 

次は少年達。そして、自分たち。

 

抵抗など忘れたヘドロヴィランから興味を失ったように、化物はその場から逃げ出そうと動き出す。

 

──個性使ったことがバレない為に

 

その足音は絶望の足音と重なり、哀れな野次馬たちは呆然とその場に立ち尽くし、絶望を通り越し恐怖を忘れた脳で死を覚悟した。

 

そんな中──救いの光が降りる。

 

DETROIT・SMASH(デトロイト・スマッシュ)!!」

「|H"#"#"#"#"#"#"#"#"《ぐあ"あ"あ"あ"あ"》!!??」

 

突如、強風が吹き荒れた。

 

目を開けることがやっとな程強烈な風にだじろぎ、何とか状況を確認出来た。

 

その頃にはその場には化物の姿は無く、代わりにオールマイトと

 

「……雨?」

 

命中率の高い天気予報ですら予想していなかった雨が、地面に斑を作っていた。

 

晴天だった筈の空には、いつの間にやらネズミ色の雲が覆う。

 

天候が、変わった。

 

否、変えたのだ。

 

今のオールマイトのパンチによる強風の風圧による上昇気流が、天気を変えたのだ。

 

「オイオイオイオイ……オイオイオイ!右手一本で天気が変わっちまった!!」

 

これが平和の象徴、オールマイト。

 

常識など風力と共に吹き飛ばされたような、常識外れな強さに人々は魅了され、そして化物の姿など無かったかのように盛り上がる。

 

民間人チョロい…等言ってはいけない。

 

恐怖が呆気なく潰された時、人はその恐怖の何十倍もの安堵で、その出来事などスッカリと忘れてしまうのは多々あること。

 

その良くあることのお陰で、一人の少女が地べたを這いつくばって、その場から逃走する事が出来たのだから。

 

 

 

「急げ…急げ…」

 

 

 

ฅฅฅฅฅÜÜ☞☞☞

 

 

「あぁ……そんな所に居たんですね……」

 

可愛らしい声に孕んだ狂気を滲ませ、2つお団子頭の少女はうっそりと微笑む。

 

スマホに映る化け物に指を滑らせ、恍惚とその身を捩った。

 

 

ฅฅฅฅฅÜÜ☞☞☞☞

 

 

「なんだよ……飛び出すじゃねぇか。」

 

紫色の肌がツギハギされた男が、暗い部屋で呟く。

隠しきれない喜色には、今にも暴れだしそうな嫉妬が混ざり、歯ぎしりの音と共に継ぎ目からは少しの血が流れた。

 

ヘドロヴィランの写った写真が、静かに燃えた。

 

 

ฅฅฅฅÜÜ☞☞☞

 

 

 

「あぁもう……なんだよ、そんな近く居たわけ?」

 

聞くのも痛々しい首を掻きむしる音がBARに響く。苛立たしさを溢れさせながら触れたコップは、瞬く間に崩れコップの役割を失う。

 

「おかわり。」

「どうぞ。」

「アイスブレイカー…ははっ、お前も同じ癖に。」

「お気に召して頂けたようなら何よりです。」

 

床に零れたブルームーンは踏みにじられた。

 

「もう逃がさないから……」

 

 

 

ฅฅฅฅÜÜ☞☞☞

 

 

 

「ああああ個性急に使ったから!!体の節々が!体の節々が痛い!!!ついでにさっき打った小指が痛い!!あああああああーー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

アイスブレイカー 高ぶる気持ちを沈めて

 

ブルームーン 出来ない相談・お断り

 

 

 

勘違い要素は次回…

 

 

 




アイスブレイカー 高ぶる気持ちを沈めて

ブルームーン 出来ない相談・お断り

作者はカクテル飲めません。カルピスは好きです。


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3 ヘドロ事件の後日談 緑谷視点

オールマイトに出会って、後継者になった幾分か後の日。

僕は何時も通り、ノノちゃんと昼食を食べていた。

 

ふと、ノノちゃんがヴィランに立ち向かった姿を思い出す。

 

この世の物とは思えないあの姿を。

 

あぁ、やっぱり怖い。

 

ノノちゃんにそう思ったのは、何も今回が初めてじゃない。

彼女が少し普通じゃないのは何時もの事だったから。

 

ノノちゃんは少し……ほんの少しだけ、異常だった。

 

黄色の帽子とチューリップの名札を付けてることから知っている僕でさえ、彼女の笑顔を見たことがない。

 

というか、表情が変わるのを見たことがほぼ無い。太文字

 

スカートを捲られた時も、筆箱を壊された時も、ボールを上級生に盗られた時も、かっちゃんに何か言われても、クラスの女子がヒソヒソ話していても、自分のノートに落書きされて捨てる羽目になった時も、かっちゃんに恋する同級生にジュースを掛けられた時も

 

彼女は怒ることも、悲しむことも、喜ぶことも何も無く。ただ無表情で、無感情だった。

 

まるで感情というものが無いかのように。

 

何をしても反応が無い彼女に、もしかして僕に興味が無いんじゃないか?なんて不安を抱いていたのは遠い昔。

その頃には、かっちゃんは答えを出していた。

 

……僕ももう、不安を抱いていない。

 

かっちゃんは頭が良いから、たぶん僕よりも悩んで苦労したんじゃないかな。

 

かっちゃんも、僕と同じように彼女をカッコイイって尊敬してたから。

……だから、あんな方法を取ってしまったんだと思う。

あぁすれば、見てくれるから。

 

……彼が僕を目の敵にするのは、僕がノノちゃんと話すことが多いのもあるんだろう。

なんでかは、分かんないけど。

 

「ねぇノノちゃん。」

「なんだ緑谷。」

 

整った顔立ちで、制服の似合う少女。

 

化物(あんな姿)に成るなんて想像出来ないノノちゃんは、いつも通りの無表情で僕を見る。

 

こんな彼女でも頻繁に表情の変わる話題と、瞬間があった。

 

「なんで、ヘドロヴィランを倒したの?…普通に捕まえるだけでも良かったんじゃないかな。」

 

ヴィランについての話題だ。

 

「…下手に暴れられても困るだろう。」

 

あぁ、今、嘘を付いた。

ノノちゃんは嘘を着く時、必ず耳を触るんだ。

 

これを見つけた時は嬉しかったっけ、ノノちゃんでも完璧じゃない所があるんだって、感情的な所があるんだ!って、親近感を覚えて。

 

暴れられるのが困るから、なんて理由じゃない。

 

単純に…ただ単純に【そうしたかった】から。

 

ノノちゃんはヴィランが嫌いだから、ヴィランを憎んでるから、そうするんだ。

 

そうじゃなきゃ、あんなに楽しそうになんてならない。

 

昔、「ヴィランみたいな個性で羨ましい」と言った人が居た。

 

その人に、彼女は「はい。ありがとうございます。」と言いながら、「耳を触った」

 

彼女は嫌なんだ。ヴィランみたいな個性なのが。

 

そもそも、ヴィランが大嫌いなのだから。

 

なんでそんなにヴィランが憎いのかは分からない。

 

ただ分かるのは、あんなに無感情的なノノちゃんが、初めて感情的になるってことだけだ。

みんなに無関心なのに。

 

彼女にとって、個性はコンプレックスなんだろう。

 

どうしようも無い劣等感。

僕と同じようで違う劣等感。

 

嫌いなもの(ヴィラン)のようだと言われ続けたのが、どれほどの苦痛だったのかは僕は分からない。

 

君は異常だけど、ただの人間なんだよ

 

「ノノちゃんは、ヒーローに成りたい?」

「何を今更。」

 

僕はその答えを知ってる。

 

「私はヒーローになって、ヴィランを根絶する。それが昔からの私の夢だろう。」

 

ノノちゃん、君の痛みを少しでも感じられたら

 

……君もそんなに苦しそうな顔せずに済んだのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緑谷に怒られた。

 

流石に何も考えず特攻してヘドロを、こう、パァンッてしたのは流石に温厚な緑谷でも眉を顰めることだったらしい。

 

咄嗟に見え張っちゃったけど、内心私もドン引きしてた。

 

確か、事情説明の為に警察とかに呼び出された時もそんな感じの反応だったな。

 

何でも爆豪と緑谷があの化物は幼馴染だ、と説明してくれたらしい。

本当、私は良い幼馴染を持ったものだと涙したのは懐かしいものだ。

 

まぁ、誤魔化した(違うって言った)んだけど。【クソデカ大文字】

 

間違えてごめんね、と警察が飴をくれた。

たぶん、誰も私がアレだったのは知らないだろうな。

 

話を戻そう。

 

ヴィランを壊すつもりは毛頭なかった。

 

捕まえたヘドロヴィランがまさか動けるとは思わなかったから慌てて止めようとして、あのザマだ。

 

「あっ今日、僕用事あるから一緒に帰れないんだ。ごめんね。」

「…そうか。」

 

んー…なんだろ、ヒーローイベントでもあるのかな。あ、いやだったら私も誘うよな。緑谷が用事……?

え、緑谷もしかして私のこと嫌いになったの……?だから嘘言ったとかなの…?

 

 

 

 

 




次回 ヤンデレ登場


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4 アイスクリームを買いに行く途中の話

ヤンデレに!!!なれ!!!!



 

 

 

 

近道する為の路地裏でこんな目に遭うとは、誰が予想しただろうか。

 

「あぁぁ……やっと会えた。」

 

背後から抱きついた男は、それはそれは上機嫌そうに囁いた。逃がさないとばかりに手は首をつかむ。

…5本の指全部で触れた時、私は死ぬだろう。

 

脳裏に有る日の記憶がフラッシュバックする。親戚の家に泊まりに行った日のことを。

親戚みんなで探検に出かけ、見事に私だけ迷った日のことを。

 

公園で一休みした時に出会った青年のことを。

 

「離れろ。」

「無理、無理。だって離れたら逃げるだろ?」

「私に何の用だ。」

「お前に会いたかったんだよ。あの時からずっと探してたんだぜ?」

 

甘く熱っぽい声は官能的で、頬に触れる手は割れ物に対するように優しい。だが丁寧に指一本だけを浮かせ添えられた手は、決して逃がさないという確固たる意志を感じさせる物だった。

 

「そんな警戒すんなよ。今日はちょっと話にきただけだからさ。……お前、雄英に入るんだって?」

「よく知ってるな。」

「流石に、このくらいじゃ驚かないか。」

 

なんで知ってんだよ!!プライバシー保護法は消滅したのか!?やめろよ怖いだろ!!!

 

「やめとけよ、ヒーローになるなんて。お前がヒーローを目指すって何の風の吹き回し?向いてねぇよ。」

「だろうな。」

「お前ヒーローなんて、大っ嫌いじゃん。…ヴィランと同じくらい。なに?ヴィランぶっ飛ばしたいからヒーロー目指すわけ?」

「あぁ、そうだが。」

「おいおい、冗談よしてくれよ。」

 

私、ヒーロー大好きだぞ……?伊達に緑谷の分析付き合ってねぇからな…?

 

死柄木は私の発言を、まるで軽いジョークでも言ったような反応で笑った。

 

「ヴィランをぶっ飛ばすだけなら、俺と同じ(ヴィラン)でも出来る。」

 

爪が喉に食い込む。息を殺そうとする様に首を絞めあげる死柄木は、私の息苦しさなど知らないと言葉を続ける。

 

「なんで?……なんでそっちにしたんだよ。」

 

子供が泣きそうな時、確かこういう様な反応だった。

怒るような、縋るような、そんな気持ちに押し潰されそうな子供の反応。

 

その反応に私は──

 

「ヒーローも悪くないと思った。ただ、それだけだ。」

 

多分何答えても不味いだろうから当たり障りの無い事を言った。

助けてヒーローォ!!!と叫ばないだけ褒めて欲しい。ぶっちゃけ吐きそう。

 

当たり障りの全く無い、平々凡々、どうとでも捉えられる言葉。

 

「誰?」

「……」

「誰が、お前をそんな風にしたの。」

 

地を這うようなドスの効いた声で死柄木は呟いた。

締め付ける手は更に強くなり、喉の痛みに顔を顰める。おどろおどろしさを感じ肌を刺す雰囲気。心臓の落ち潰れそうな感覚に息が詰まる。

 

自分です。とは流石に言えなかった。

 

「気づいてたらこうなってただけだ。」

「………」

 

やっと捻り出した私の言葉に、急に死柄木は黙り力を少し抜く。

 

「………ま、別に良いけどさ。また何時もの気まぐれだろ?」

「好きに考えろ。」

 

先程の人を殺しそうな雰囲気から一転。()()()()()()()()()()()楽しげに死柄木はそう言った。

 

死柄木は手の力を弱める。

なんだか良い方向に行ったようだった。

きっと私のはぐらかしが上手かったのだろう。

 

ホッとしたその時。

 

「お久しぶりですね、狗飼野乃子。」

 

夜に紛れて良く見えないが、何だかボンヤリした所から低い男性的な声の男が現れる。

 

黒い霧のような姿に身を包んでいるのか、霧そのものなのか判別つきにくい男は、確かに金色の目らしき物を歪める。真っ黒なのと合わさって夜闇に浮かぶ三日月のようであった。

 

覚えている。

 

私はこの人と、バーで楽しく談笑した。

紳士的で話も面白い、しかも体格もしっかりしてる物だから当時の私はドストライクすぎて「こんな人と結婚したいなぁ」なんて考えた。……まぁ、監禁未遂の時の性で、今の好みは真逆の物に仕上がった訳だが。

 

「なんだよ黒霧。邪魔すんな。」

「失礼ながら死柄木弔。もう時間です。」

「あーなんだよ。もうそんなに居たか。」

 

黒霧と少し話すと、死柄木は私から手を離す。

開放感と、圧迫が急に消えた違和感で首を触る。少しヌメっとした感触がした。

 

「ふふ、大きくなりましたね。狗飼野乃子。」

「そうか。」

「えぇ、とても……綺麗になりました。」

 

朗々とした月明かりのような瞳は、夜中の月よりも不気味だ。人間らしい目でもないのに何故だがドロッとした感情が見えてしまう……ような気がする。

 

「目も、髪も、手足も…とても………いえ、何でもありません。」

ひえっ

 

今なんて?なんて問える筈なく。私は黙って二人の動向を見守る。

 

この隙に個性で倒せよ、と思うだろうが、大変申し訳ないことに変化は時間がかかる。

 

この前の事件でノータイムをやった事にプラスでオールマイトのパンチも影響し、で体の節々が激痛を訴え、肌がめちゃくちゃ敏感になって布が擦れるだけで痛かった。

ただただ激痛。その名残で今は無茶出来ない。

 

故に今成ったら一瞬で変身が解けて無様に男達の眼前で平伏すこととなる。

 

「…おい、黒霧。」

「すみません死柄木弔。少し興奮しすぎてしまいまして。」

「ふん、まぁいいや。」

 

黒い霧が人一人分程の大きさになる。

その中に片足を突っ込んだ死柄木は私を振り向き手を振った。

 

()()()野乃子。」

「失礼致します。」

 

ついに全身を霧に埋めた死柄木の姿と、黒霧の姿は消え、路地裏に相応しい静寂が舞い戻る。

 

いつの間にか忘れていた心臓が忙しなく動きを再開し、背中と脇には冷や汗が滴る。

 

奴らの目的は、恐らく怖がる私を見て愉悦に浸ることだろう。個性が目的ならばすぐ様連れされば良いものを、逃げたことも相成りああいう楽しむ方向にシフトしたのだろう。

 

「……よくあること、よくあることだ。」

 

警察に言うと後々面倒だ。

……むかし、そっち側との繋がりを疑われた事もある。

その時は…………………思い出したら悲しくなってきた。

 

あと下手に警察に相談してコイツらに知られたら…今度こそ死ぬ。殺される。

 

私はフラフラと路地裏から出ていくと、真っ先に家へと帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 




会を重ねればヤンデレ感は増すので……許して…


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5 入試試験説明会

 

 

少し遅れた親友(緑谷)と共に雄英の門を見上げる。最新の設備で整った草木が目につく。

こんな近代的で、高層ビルのような校舎は見たことがない。

 

「が、ががが頑張ろうね、ノノちゃん!」

「そうだな。」

 

隣の親友の緊張がマッハでヤバイ件について。ガタガタ震えに震えまくって……武者震いかな?

実は私も心臓が発電所になりそうな程に激しく動いるんだけどな。口の中に血の味が一杯なのだ。

 

「邪魔だデク!イヌ!」

 

聞き覚えのある怒声に思わず振り向く。

そこにいたのは私の幼馴染みの爆豪勝己。ポケットに手を突っ込んで歩く姿も何故だか様になっていた。流石だぜ、爆豪。

 

「おおおおはよう、かっちゃん!きょ、今日も良い天気だねっ!」

「おはよう爆豪。」

 

爆豪は挨拶する私達を素通りした。

爆豪はあの日【ヘドロヴィラン事件】から、爆豪は不気味なほど静かになった。私達にチョッカイだしてくることも無くなった。

頭でもぶつけてしまったのかと、ぶっちゃけ心配になる。

 

「なぁアレ、化物ヴィランの時の…」

「マジ?本物?」

 

テレビで見たのか、ネットに個人情報でも乗ってたのか。

爆豪はそんなことを言っている同じ受験生であろう2人を気にも止めず歩いていった。

 

「行くぞ緑谷。」

「え、あ、うん。」

 

私達は踏み出す。

夢への第1歩、目標への遠いスタートラインへ向けて。その記念すべき第いっ──

 

「あっ」

 

み、緑谷ーーーーー!!!

 

緑谷は思い切り足を滑らせ転んだ。

真っ直ぐに顔面から突っ込む形の転び方に私は次緑谷に襲いかかるであろう痛みと、私が目にするであろう光景を幻視する。

 

もうダメだ。そう思ったその時。

 

「大丈夫?」

「わっ、え!?」

 

襲いかかるであろう衝撃は無く、代わりに感じるのは浮遊感。そんな出来事に緑谷は狼狽える。私も少し動揺する。

 

大丈夫?と声掛けたのは近くに立つ少女。茶髪のボブに可愛らしいマフラーを見つけている。その少女自身も非常に可愛らしい。

 

「私の個性、ごめんね勝手に。でも転んじゃったら縁起悪いもんね。」

「へ……あ……」

「緊張するよねぇ。」

「ほ…へ……」

 

ダメだ緑谷使い物にならねぇ!!

 

「………ありがとう。」

「どういたしまして。お互いがんばろうね!」

 

ダメだ私も同類だった!!

 

いきなり無関係の私が感謝を述べても少女は嫌な顔1つせず、寧ろ微笑んで打ち消しを口にした。優しい人のようだ。

 

だが悲しいかな、ここに居るのはコミュ力の死んだ2人のみ。振られた手に振り返すことも出来ずただ立ち尽くすしか出来なかった。

 

「じょ、女子と喋っちゃった…」

 

え、私は?

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日も俺のライヴにようこそー!エビバディセイヘイ!!」

「うわーヴォイスヒーロー プレゼント・マイクだ。すごい…!ラジオ毎回見てるよ。感激だなぁ…雄英の講師は皆プロのヒーローなんだ。」

「うるせえ。」

 

ブツブツ独り言(いつもの癖)が出た緑谷に不機嫌そうに爆豪は呟いた。

 

右には緑谷。左には爆豪。地獄かここは?

 

緑谷が近くに居るからか、それとも私が近くに居るからか。恐らく両方だろう。機嫌の悪くなった様子の爆豪に、手の震えの原因は緊張から恐怖心へシフトした。爆豪はいつ爆発しても可笑しくはない。爆豪だけに。

 

「入試要項通り、リスナーにはこの後【模擬市街地演習】を行って貰うぜ!持ち込みは自由!プレゼン後は各自指定の演習会場へ向かってくれよな!」

「あっ本当だ。ノノちゃんもかっちゃんも受験番号連番なのに違うね。」

「爆豪はAか。」

「勝手に見てんじゃねぇ。」

 

緑谷はD、爆豪はA、私はCの試験会場だった。

 

同校(ダチ)同士で協力させねぇってことか。……デクを潰せねぇじゃねぇか。」

「……」

「……」

 

い、一緒じゃなくて良かった…!!

 

プレゼントマイクの説明によると、試験内容はどれだけ仮想ヴィランというロボットを破壊したことで得られるポイントを、より多く手に入れればクリア。という物だった。行動停止にさせればポイント獲得する。

 

仮想ヴィランの種類によってポイントが違うらしく、画面には三種類のヴィランの説明が……ん?プリントと違くない?

 

「質問よろしいでしょうか!」

 

そびえ立つように手を上げた少年は、まるで見本のように席を立ち質問を投げ掛ける。見るからに真面目そうだ。

 

「プリントには四種の仮想ヴィランが記載されております。もしこれが誤載であれば、日本最高峰の雄英高等高校として恥ずべき痴態!我々受験生は規範となるヒーローのご指導を求めてこの場に座しているのです!」

 

早口ながらもシッカリ聞こえるように喋る彼は、やっぱり真面目なのだろう。

 

彼の言うように、私達が持っているプリントに記載された仮想ヴィランは四種。プレゼントマイク先生が説明したのは三種。

疑問に思ったところが私と同じだ、ちょっと仲良くなれる(似てる)かもしれない。

 

「ついでにそこの君!」

 

私が勝手に親近感の感じた青年は、グルリとコッチを向いてコッチ…正確には緑谷を指さす。

 

「先程からボソボソと…気が散る!物見遊山のつもりなら即刻、雄英(ここ)から去りたまえ!」

「すみません…」

 

似てなかった。

 

「オーケーオーケー。受験番号7111番君。ナイスなお便りサンキューな。」

 

若干ながれた気まずい空気感を取っ払う様にプレゼントマイクは説明を始めた。

 

曰く、その四種目のヴィランは()()()()。0ポイントの仮想ヴィランらしい。各会場に一体。大暴れしているギミックとのこと。

倒しても倒さなくとも、結局は加算などされないらしいので基本的には無視で良いらしい。

 

説明を終えたプレゼントマイクは、最後に我が校訓をプレゼントしよう!と言う。

 

「かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

ゴクリと唾を飲む。

今から…私の、

 

Plus ultra(更に向こうへ)!!」

 

私の夢への第1歩が始まる。

 

「…それでは皆、良い受難を……」

 

 

 

 

 

 

 



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6 実技試験

かっちゃんは公式イケメン



ひっっっろい。試験会場は擬似市街地、ここで暮らしても問題は無いであろう様相であった。

周りの同じ受験生の人達は自信ありげに試験開始の合図を待つ。

 

「はいスタート!」

 

………ん?

 

「どうしたどうしたぁ!賽はもう投げられてんぞ!」

 

その言葉を一足早く理解した受験生は門を我先に潜り抜けた。

気づけなかった私は一足遅れて門を潜り抜け、ポイントを稼ぐため走る──訳ではなく、ビルとビルの狭間に隠れた。そして念じる。

 

恐ろしくなく、それでいて強い姿に。

 

枝が折れるような音がする。

腕が変形し、骨が折れ歪んだように木が肉を盛り上げ皮膚の色は変わる。草花の麗しさを感じる香しい香りが自身の鼻腔を通り抜けた。黒髪は溶け、人の形は消えていく。残るのは若草と芳ばしい色と、春色の可愛らしい花のみ。

 

異様に低くなった視線、ズルリ這いずるように、方や宙を漂うように路地裏の灯りに触れ、軽やかに蔦が灯りと踊る。葉が反射し出来た光は、まるでダンスショーのようで、スポットライトのように路地裏を照らすソレは、小人に対した物のようだった。

 

そして光に徐々に色が蘇り、蔦と花に吸い込まれていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「21ポイント……」

 

男性的な声で呟かれた言葉は何とも哀愁漂う声色であった。

 

ヤっベぇ足りない。

出遅れが効いたのだろう、ポイントは余り稼げなかった。焦りと無理かもしれないという緊張に心臓が凍りつく。

 

ツンツンしたクリーム色の髪色に赤いツリ目、正しく美形と言えるものだろう。折寺中学校と書かれたジャージを身にまとった整った顔立ちの青年…に見える少女は目を閉じる。

 

目を閉じ精神を自身から別れている蔦に集中させる。

試験会場を這っている蔦から感じる情報では、もう残り少なで私がこれ以上稼げるポイントは2、3ポイント程度だということだった。

 

これは不味い。折角頑張って怖くない成れたのにポイント不足でダメでしたって悲しすぎる。……いや、今どんな姿してるのか分からないけども。多分怖くない筈だ。

 

「36ポイント!」

「まだ24なのに……」

「これで40ポイントか。」

 

周りの受験生の言葉に私の焦りは更に増幅される。私よりも多いポイントで落ち込む人、自信ありげにポイントを稼ぐ人、冷静に総数を算出する人。

このままだと落ちる。ヒーロー科に入れない。そんな考えがリアリティを膨らませ、頭の隙間に入り込み、思考は占拠される。

ドクドク心臓が鳴り、口の中に広がる血の風味にすら気づけない。

 

どうしよう、どうしよう。これじゃあ緑谷に顔向け出来ない。爆豪にほら見ろと言われて笑われてしまう。……追いつけない。

 

……誰にも言ったことは無いけれど、私は彼らに憧れてる。

 

2人は凄いんだ。緑谷の分析力と胆力と情熱には何時も心を動かされるし、爆豪が私が出来ない事を簡単に成し遂げて自信満々に道を歩いて、そのカリスマ的雰囲気に魅了される。

 

それに比べ私はどうだ、2人に勝る……所か追いつけるのは 個性(恐ろしさ) だけじゃないか。私の 個性(コンプレックス) だけじゃないか。

 

私は2人が大好きだから…憧れてるから、置いていかれたくない。

 

この劣等感はヒーローに成りたいって気持ちが同じなのも斡旋していた。

 

負けたくない。2人に。憧れ(彼ら)に。

 

走る、走って走って残り少ないロボを潰そうと全速力で走る。沢山練習して要望通りの姿に変身出来るように成ったのに、あの二人に追いつきたくて頑張ったのに……負けたくない。

 

私はまだ幼なじみ(ライバル)でいたい。

 

BOOOOOOOOON

 

目の前のビルが崩れた。電柱は折れ、舗装された道は割れ、ポストはひしゃげる。

ビルの側面に置かれた手は機械的てゴツゴツしていて塗装は剥げていないが真新しさは全く無かった。

 

1ポイントでもない、2ポイントでもない、3ポイントでもない。

 

「デッケエエエエエ!!」

「さ、さっさと逃げようよ!!」

「あれ0ポイントかよ!?無理だろあんなの!!」

 

0ポイント。

 

みんな、その絶対的脅威の出現に本性を曝け出し脱兎の如く逃走する。

 

瓦礫がそこらに撒き散らされ、何処がどこだったのかも分からなくなるような惨状。まだ現れてたった1分すらも経っていないのに街は崩壊状態に陥った。

 

これがヴィランだ。これが脅威だ。

 

これがヒーローが立ち向かうであろう者だ。

 

そう言うかのように所狭しと暴れ回る0ポイントヴィランに言葉を失う。

 

思わず逃げ出そうとして…立ち止まる。

 

あぁ、情けない!なんて情けない!この程度で逃げ出そうだなんて!!

 

目の前の脅威に立ち向かう勇気を与えたのは、彼らなら真っ先に立ち向かうであろう、という確信からだ。

 

だから私は目の前の脅威から逃げ出さない。

 

これは賭けだ。馬鹿馬鹿しい希望だ。

 

──0ポイントのお邪魔虫

 

こんな強大なものを倒せたなら、あわよくば、あわよくば……入れるかもしれない。

 

私は歩き出す。ゆっくりと。そして念じる。

 

破片を出さないように、危険は最小限に、最低限に。そう……全部、 ()()()()()()()()()()()()

 

ゆっくりと進む体と反比例し、体は急速に姿を変える。折寺中学校と書かれたジャージは歪み、クリーム色の髪は黒く長く変貌し、普通の少女が現れた。その刹那。

 

ブチブチと少女の体が変形する。背骨は盛り上がり少女の全長よりも大きくなり、体型は丸く肥大化する。健康的な小麦色の肌は黒く深海の色へと変色し、盛り上がった背骨のような物はヒレへ、肥大化した体の両片から、同じような魚らしいヒレが現れた。

 

大きな魚……というには余りにも規格外で気持ち悪くて、魅力的で、おぞましいソレ。

 

ソレは飛び上がる。ソレは自身よりも数十倍は大きなロボを軽々飛び越えると、大きな口を、ロボよりも大きな、何よりも大きな口を開け、真上から

 

カブリ

 

飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雄英職員会議室では痛い沈黙が支配していた。

 

今日は記念すべき日だろう、なぜなら長いこと触られる事も無かった0ポイントロボがブッ壊されたのだから。1つはモジャモジャ頭の少年に、もう1つは青年に変身していた少女に。

 

最初に壊したのは少年だった。その時職員会議室を支配していたのは熱狂の空気であったのに今はこんなにも静かなのは、次に破壊……いや、 ()()()()()()と言うべきだろう。飲み込んだ少女の影響だ。

 

 

狗飼 野乃子

 

個性 化け物

 

 

この前の爆豪勝己を人質として捕えていたヴィランを、化物が襲った事件。通称【化物ヴィラン事件】。

 

ヘドロヴィランを襲いオールマイトにブッ飛ばされた化け物が狗飼野乃子だ。

 

彼女はその事件の影響もあり、元より目に掛けられては居た。

 

映像が再生される。

0ポイントに近づくにつれ、他の受験生(爆豪勝己)の姿をしていた少女は急速に姿を変えた。肥大化した深海魚の様相をした気持ち悪くも何処か魅力的な姿へと成り…場面は変わる。

 

ロボよりも高く飛び上がったソレが口を大きく開くと、骨にも似た牙がロボを包みこんだ。

鉄のひしゃげる音、コアの割れる音、精密な機器がグチャグチャにすり潰される音は妙に生々しく、スピーカーから流れる音に我慢の限界だと誰かが電源を落とした。

 

教師の1人が後に確認したロボは足元しか残っておらず、その足元は酷く損傷しており少し触れれば壊れていまう程だった。

 

確認した教師がこれが人間だったら…と想像してしまいゾッとした事は言っておこう。

 

「最初の姿は他の受験生である爆豪勝己を模範した物だと思われます。彼は幼馴染のようです。」

「21ポイントで救助ポイントは無しか…」

「筆記は充分どころか高得点です。」

 

教師たちが話し合うのは、この少女を我が校に迎え入れるかどうか。

 

元よりこの少女のことは()()であった。

何せ、あんな個性だ。個性で差別をしてはならないのは重々承知であれど、限度があるという物。

 

教師たちは危険性の高い、こんな個性を持ったこの少女がヴィランなどに成ったら……という不安感に襲われる。

 

「0ポイントが現れる直前に方向を転換し、接近していた。恐らく気づいていたのだろう。」

 

0ポイントヴィランを倒す意味など無い。それは既に説明されていた。のにも関わらず、わざわざ遠くから走ってまで食べに来のだ。

……その様子に破壊に悦楽を感じているように見えたのは、見間違いだろうか。

 

いや見間違いだろう。

何故ならヒーローに憧れていると言っていたのにも関わらず、そのヒーローを目の前にしても表情をピクリとも動かさなかったのだから。そんな分かる訳ない。

 

「迎え入れよう、彼女を。」

「校長…」

 

ネズミか犬か熊か猫か、動物が喋る。

その校長と呼ばれた男は見た目にそぐわぬ、校長らしい厳格さで言う。

 

「彼女はココ以外のヒーロー科には志望していないらしい。どうにも、雄英以外は受け付けないようでね。直前で全部キャンセルしたようだよ。」

「それは……」

 

それはつまり、ここに合格しなければ少女の個性を指導する人間は居ないということになる。

……いや、それだけではない。普通、他の滑り止めなりなんなりで他の学校のヒーロー科も受けるのだ。だが、彼女はそうしなかった。それは何故か?

 

もし落ちたのなら諦める、なんて生ぬるい訳ではないだろう。……ヒーローに成れなかった人間がヴィランになることは珍しいことではない。

 

「それでは……決まりだね。」

 

 

 

 

狗飼野乃子 雄英合格

 

 

 




化け物になっているのか……


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7 卒業パーティは蚊帳の外



あったんじゃねぇかな…卒業パーティー…って思ったので書きました。(趣味に従順)

書いてたら楽しくなっちゃって幼馴染がクソ重デカ感情持っちゃった(困惑)かっちゃんを出そうとしただけなのに……

色んな人をドン引きさせて振るっていくスタイルで頑張ります。投稿遅れてごめんなさい。

幼馴染回です。

後書き見れば本文見なくても良くなります。五千文字あるので…



 

 

入試試験を終えて、少し経った後。

僕らは中学の卒業パーティーに来ていた。

 

親同士の交流がある同級生たちが集まって行われる卒業パーティーは騒がしくて、普通のレストランなのに何だか豪華に思える。

かっちゃんは相変わらず色んな人に囲まれていて、少し大変そうだった。

 

そんな喧騒に着いていけない人が僕だ。

そこに居ても弄られるだけの僕は、早々にお母さんを置いてパーティーを抜け出して、レストランの外でノノちゃんと喋っていた。

正直、ノノちゃんが行くって言わなければ僕は絶対に来なかっただろう。

 

「……ほう、個性の発現か。」

 

僕から個性(ワン・フォー・オール)についての話を聞いた(もちろんオールマイト関係については内緒)ノノちゃはなんでも無いようにそう言った。

 

「う、うん!個性の発現が遅れることってなんか良くあるらしいよ!それにほら!個性が出るのが遅かったヒーローって結構いるでしょ?例えば───」

「やっと君が個性を持てたとは。随分と長かった。」

「──え?」

「もう少し早いと思っていが…まぁ、この程度は誤差か。」

 

ノノちゃんは同級生のお父さんが餞別だと全員分配った缶ジュースを飲むと、飲みきったらしく近くのゴミ箱に空き缶を投げる。

綺麗な曲線を描いた缶は寸分の狂いなく、丸いゴミ箱の入口に吸い込まれていった。

 

よく入ったね、とか、投げちゃダメだよ、とか。

そんな言葉は口に出そうとしても、喉よりももっと奥でつっかえて言えなかった。

 

……やっと君が個性を"持てた"?

 

……"現れた"、じゃなくて?

 

その言い方だと、まるで僕が誰かから貰ったみたいな……オールマイトに譲渡されたことを知ってるみたいな。

いやいや、まさか…個性を持っているとか、普通に言うもんね。

 

……もう少し早いと思っていた?

 

その言い方だと、まるで

 

──僕が個性を持てると、知っていたようじゃないか。

 

「……ね、ぇ。ノノちゃん。」

 

缶を持つ手が震える。

 

僕の個性が"発現"するなんて、普通は信じられない。僕のことを良く知ってるノノちゃんなら、その"有り得なさ"が分かる筈だ。

 

なら、何故ノノちゃんは、そんな分かりきってたように言うんだ?

信じていたって訳でも無いのに。

 

「どこまで知ってるの?」

 

僕とオールマイトのこと。

 

 

 

 

 

「どこまで知ってるの?」

 

あ、バレた?試験のこと雄英の先生に聞いたの。

 

緑谷は目を大きく見開き、手に持った缶はプルプルと震えていた。缶からはミシッという不穏な音が聞こえてくる。

 

実は試験の次の日、0ポイント仮想敵というあんな高そうな物を壊してしまったことを何だか流石に申し訳なく思い、私は雄英高校に謝りに行っていた。幸いにも教師の皆さんは軽く許してくれたし、すごくフレンドリーに接してくれた為、ついつい口を滑らせて「緑谷はどうでしたか?」なんて聞いてしまった。そしたらアレよソレよと言う間に校長室へ、緑谷の頑張った事と凄さを存分に教えてくれたのだ。緑谷を褒められたことと、緑谷の個性がやっと発現できたのが嬉しすぎてテンアゲぶち上げになった私は校長先生と楽しく談笑をし、気づいた時には

──あ、長い?ごめん。

 

まぁ、つまり校長先生直々に緑谷の試験内容を教えてくれたんだ。

 

………いやまぁ、普通に考えて嫌だよな。そんなの。

 

恐らく私がそんな方法で色々探った事が腹に耐えかねないのだろう。缶を潰しかけてるのが良い証拠だ。

………下手に誤魔化そうとしないで素直に謝ろう。

 

「全て。」

「……すべ、て?」

「すまない。不快に思わせたなら謝ろう。」

「…………」

 

緑谷は俯いて押し黙る。

罪悪感で溺れそうだ。私のやったことは、緑谷の思春期の柔いとこブチブチ千切ったような物。切腹します…

 

何度見ても緑谷は俯いたままだし、缶は傾いて中身が溢れて地面にオレンジ色の模様を作っている。

マジで落ち込んでいるし、傷ついている。どうしよう、何すれば良い?対人関係皆無の私には分からねぇよ……助けてかっちゃん……なんか元気づけられる言葉とかをかける…?傷つかせた奴が…?

 

「君と爆豪は良きライバルとなれるだろう。」

「…………………え?」

 

鳩が豆鉄砲所か、豆マシンガン食らったような顔。緑谷は傾いていた缶を地面に落とした事にも気が付かず私を唖然と見つめる。

 

ほらもーーー!緑谷ポカンってしてるからー!!

 

緑谷、かっちゃんに憧れてるからって理由で励ましの言葉に選ばれてしまった訳だが本当に意味がわからん。

だが、ここまで来て止められはしない。

自分でも少し何いってんのか分かんないまま、言葉を続ける。

 

私は扉の開く音にも気づかずに。

 

「そう成れるのは何時なのかは不明だが、私はその日をいつまでも待とう。そして何時の日か君が対等であれた時、私と──」

 

「おいイヌ!!!」

 

一緒にヒーロー事務所やろうぜ!!!緑谷が居たら百人力だよ!!私も頑張って同じくらいになるから!!

 

そう続けようとした瞬間、鼓膜を蹴破るような怒声が響く。

蹴ってきた方を見ると、そこには息を上げ、顔を

真っ赤にさせたかっちゃんが居た。

 

「テメェなんで俺じゃねぇんだ!」

「……何故だ?」

「何故だ?じゃねぇだろ!なんで俺じゃなくて、こんなデクの棒なんかなんだよ!頭沸いてんのかテメェ!!」

「お、おおお落ち着いてよ、かっかっちゃん!」

「うるせぇデク!テメェは黙ってろ!!」

 

掴み掛かられた胸元が勢いよく揺れ、かっちゃんの大声が至近距離で殴る。

明らかに冷静さに欠けた爆豪のらしくない姿に私は唖然としてしまう。

 

まるで、子供のように怒り散らすなんて………かっちゃんがこんなに怒りに我を忘れる姿なんて見たことが無い。

怒鳴ることは多々あれど、内容は何故キレているか明瞭でわかり易いのに。

 

……激怒している、"キレてる"んじゃなくて、怒ってる。

 

「なんで俺を選ばねぇ!テメェはいつもいつもデクばっかじゃねぇか!!なんでこんなクソナードなんかを!!!!!」

 

選ぶ…何に……?むしろ選ばれる側では…?

 

そう思うが兎に角、私が選んだってことだろ?多分緑谷のことを。うーん。

……あ、さっき事務所一緒にやること誘おうとしたわ。

 

え、事務所誘われなくって怒ってるの?かっちゃんが???どうしたの???

大方プライドが傷ついたとかあるんだろうけど………私が選ばなかったことが?

 

「何故、(弱い)私が(すごい)君を選ぶ。」

「は」

「わかり易い程に釣り合わない。…聡明な君なら分かるだろう。執着する必要など無い。」

 

かっちゃん凄いんだし、私なんかに色々言う必要ないと思うよ。気にしなくていいんじゃないかな。

私なんかの言葉気にしなくて良いんじゃないかな。

というか、緑谷の方がよっぽど凄いから緑谷に言いなよ。

緑谷すごいんだぞ、すごく頭良いし性格良いし努力家で凄いんだぞ。私の親友凄いんだぞ。

…………普通に考えて緑谷と私明らかに釣り合ってないんだけど…一緒にやりたいんだよ!!!

 

私が喋ってる時間で少し落ち着いたのか、かっちゃんは静かになった。

少しビックリしたような顔で、それでいて、見たことがないくらいに落ち着いた顔をしていた。

 

もし私が漫画の住人なら、私の頭にはハテナマークが乱立してることだろう。

 

どう  み だ

「………」

「どういう意味だ」

「……君と私とでは、明らかに実力で差が歴然としすぎている。(私が足引っ張っちゃうから)君とは無理だ。」

「デクの方が良いのか。」

「そうだ。」

「なんで、デクなんか選ぶ」

「………そうだな……簡単に言うなら、」

 

緑谷凄いから

 

そう言った時の爆豪の顔は、分からない。

俯いていたし、私は爆豪を見れなかったし……爆豪の表情を何と言えば良いのか、私には分からなかったから。どうした………?

 

「なんでだよ」

「だから私では君につり」

「テメェいっつもいっつも気持ちわりぃんだよ!!デクなんざにひっつきいて特別扱いして!!いつも無表情で!!!「かっちゃん!」何考えてんのかもわかんねぇテメェはテメェのことなんも言わねぇ!気持ちわりぃ気持ちわりぃんだよ!!人の気も知らねぇで過ごして何も言わねぇで気持ちわりぃんだよ!!俺らが何考えてんのかも分かんねぇんだろ!?だって気になんてしてねぇもんなぁ!?テメェは普通の人間のフリして「かっちゃん!!」だけで中身はまんまなんだよ!わかるか俺がずっとどんな思いだったか?!分かんねぇよなぁ!分かんねぇよなぁ!!!!!分かるわけねぇよなぁ!!「かっちゃん!!!!」テメェが他人のことなんざ考えたことなんてねぇよな!!俺が!!俺が馬鹿だった!!!!」

 

「かっちゃん!!!!」

 

かっちゃんはゼェゼェと肩で息をして、そしてフラフラと手を離して近くの小さなブロック塀に腰掛けた。

暗いからか、それとも私の頭が認識することを拒んでいるのか、かっちゃんの表情は伺いしれない。

背中はリズム良く上下していた。

 

何を言っているのか分からなかったが、とにかく怒ってる事はわかった。

血の匂いがするほど強く激しく脈動する心臓を落ち着かせる為、妙に酒の匂いがする空気を吸って………………………

 

…………………………酒の匂い?

 

「かっちゃん本当にどうしちゃったんだ…いつもはこんなに曝け出したりなんて……」

「緑谷。」

「限界が来た………?いやでもそれはおかしいし…」

「緑谷。」

「というかノノちゃんが僕を特別扱い?ノノちゃんがそんなに僕を気にかけてるって…」

「緑谷。」

「あっはい!なにノノちゃん!」

「爆豪に近づいみろ。」

「え、なんで……って酒臭っ!!!

「間違えて呑んだのだろう。私に介抱は出来ない、任せ─」

「しかもかっちゃん熱あるよ!」

 

え?踏んだり蹴ったりすぎないかっちゃん。

緑谷がアチチと手を振る動作を見せ所を見るに、大分熱があるのだろう。

それでいて酒を間違えて呑んでしまったとは……かっちゃん、踏んだり蹴ったりすぎる。

 

「僕はかっちゃんのお母さんとお父さんに言っておくから。ノノちゃんはかっちゃんを連れて行ってて!」

「えっ」

 

緑谷は店に戻っていく。

ため息を零しかっちゃんに近づくと、赤い瞳は閉じられ何時も忙しない表情はなりを潜めていた。

つまり寝てる。

 

「………一苦労だな。」

 

そういえば、かっちゃん家に行くなんて何年ぶりだろう。

 

そう考えてながらかっちゃんを抱える。おんぶしたかったけど難しいのでお姫様だっこだ。

予想よりかは軽いかっちゃんを背負い、帰路につきながら、また考える。

 

さっきの【かっちゃん大暴走】は酒を呑んでいたのに加え熱があったからだろう。

出なきゃ、あんなにはならない。

 

……いやまぁ、色々と何いってんのか分からなかったけど。

まぁ大方、自分の幼馴染なのに全然すごく無い私に対する鬱憤やら何やらを言っていたのだろう。

 

彼は完璧主義だ。

そんな彼が、自分の幼馴染がダメダメなんて腹に据えかねるのは当然に思える。

 

「おやすみ、かっちゃん。」

 

私もっと頑張るね。

かっちゃんや緑谷と同じ位賢くて、勇気があって、強い人になれるように。

 

そうだな……まず、個性をもっと改善してみよっかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんなんだよ……」

 

個性だって、成績だって、なんだって。全て俺の方が上だ。クソナードの無個性なデクなんかより、俺の方がよっぽど凄い。

 

昔はアイツと対等で居られると思ってた。

アイツのライバルは俺だけだと思ってた。

デクはそんな俺らを見てキラキラした目で見てるだけだと、そう思ってた。

 

アイツがライバルを探してるのは知っていた。

デクはアイツが個性の所為で狂ったなんて思っているようだが、違う。アイツは元から狂っていた。

アイツはずっと昔から、自分を殺れる程の奴を探していた。

 

「なんでだよ……」

 

ある日、アイツの目から一人の人物が映らなくなった。

 

平和の象徴オールマイトが、映らなくなった。アイツの人生に不必要になった。

あれほどの力を持っていて、あれほど活躍しているヒーローだって、アイツのお眼鏡には叶わなかった。

 

それが、余りにも恐ろしかった。

いつか俺も映らなくなるんじゃないか、と。

 

「なんでクソナードなんか……!」

 

結局、アイツの目に残ったのはデクだけだった。

俺は視界の片隅に指一本程度しか残っていない。

 

こんな思いをするなら、いっそ俺の方から映さなくしてやろうと思った。

 

だけど何をしても、何があっても、アイツはカッコよかった。

 

アイツは天才だったし、センスの塊だった。

信じられない程に強かったし、勝てなかった。

嘘だと疑う位に何でも出来て、上手かった。

そしてそれを自慢げにする訳でもなく、謙遜する訳でもなく、本当に、無感情で無関心だった。

 

それこそ、人間の限度を超えるくらいに。

 

………アイツは化物なんかじゃない、アイツは怪物だ。

 

そんなアイツの視界に残り続けるデクも、恐ろしかった。

アイツが、デクが自分を殺せると思ってると思っていることが怖かった。無個性のクソナードが、ライバルであると。

 

だから虐めた。

アイツにデクはクソナードの無個性だと知らしめるように。

でも、デクはアイツの視界のド真ん中に居続けた。

 

──君が対等になれた時、私と

 

………戦ってくれ、とかか?

 

ふざけんな

 

ふざけんなふざけんなふざけんな!!!!!

 

「クソッがぁ……!!」

 

デクなんざがイヌと対等になんてられる訳ねぇだろ!あの無個性のクソナード君だぞ!!なんで!!なんで俺じゃない!!

 

ダァン、と鈍く重い音が響く。

勢いよく殴られた壁は揺れ、天井の照明が揺れた。

ジンシン痛む拳からは血が流れ、シーツに控えめな水玉を作る。

 

「……どうすりゃぁ、テメェは俺を見んだよ。狗飼。」

 

 

 

 

 




本編を見てない人にも分かり易いプロフ



デク

一番勘違いしている苦労人な人
ノノちゃん僕の個性について知ってるの…?って問いただそうとしたら幼馴染が怒ってて(゜д゜)
ノノちゃんが僕なんかを特別扱い……?(ヾノ・∀・`)ナイナイ
個性の所為で狂ってしまった人だと思っているから個性への執着は薄め

【野乃子のこと】
凄いと憧れている。
たぶん一生追いつけないなぁ…と若干諦め。
野乃子を女の子だと思ってない。



かっちゃん

原作よりも拗れてる人
今までの気持ちが酒により全部溢れた。
次の日から本気でデクとイヌを避けるようになる。
初めての憧れの人からの全否定で精神がヤバいくなっている。ヤンデレにならないように気をつけないと……(自制の精神)
イヌはやべぇし、そんなイヌに目をつけられてるデクもやべぇので実質四面楚歌。
かっちゃん呼びが聞こえてれば全ては良い方向へ行っていた。

【野乃子のこと】
個性どうこうの前から狂っていたと思ってる人。憧れてるのに、自分より凄くないデクしか見てないのでちょっと精神汚染。野乃子を女の子だと思ってない。


イヌ

これ以上強くなっちゃダメな人。
終始唖然としていた。
幼馴染兼親友が心配で学校に聞いちゃった。
かっちゃんが怒ったのも「きっと私がダメダメだからだろうなぁ…」とか思ってる。
お気楽娘

【デクとかっちゃんのこと】
お前ら私の事女の子だと思ってねぇだろ…?





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8 個性把握テストはグダった

作者「おめえのキャラどんなんや!!!!」
        (もしかして:キャラ崩壊)


ちなみに作者は……オリ主のキャラも……掴めません…………!!!!!

誤字を修正しました。




雄英入学よりも生活の方が大変だとは恐れ入った。

 

それが、私が入学1日目にして思ったことだった。

 

仲良くない幼馴染で有名なかっちゃんと緑谷が私と同じクラスだったんだ………察するだろ?でも問題はこれからだ…

 

まず、寝袋に入って這いずりながら登場した私のクラス担任…………1-A担任の相澤消太先生は、入学やガイダンスをブッ飛ばして校庭で始めたのは【個性把握テスト〜最下位除籍を添えて〜】

地獄だった。

 

私は参加出来なかった。

どうにも私は色々体制整うまで個性は使えないらしい。

………ちなみに、個性把握終わった後に「お前はヒーローにはなれない」って思い切り言われたのトラウマ。先生こっっわ。

 

 

 

………誰に説明してんだろな、私。

 

 

 

戦闘訓練。

入試試験会場のビルの一角で行われているヒーロー二人VSヴィラン二人で核の攻防戦を、私たちは地下のモニター室で観戦して()()

 

記念すべき最初のヒーロー基礎学。

その記念すべき最初のチームは、緑谷&麗日VS爆豪&飯田。

 

今さっき最初の戦闘訓練が終了し、今は当事者を交えての講評が始まっている。

戻ってきたのは、飯田、かっちゃん、麗日の3人。

…終わってから保健室に運ばれたのは緑谷1人。

 

酷かった。

二人にとっては重要で、有意義な出来事だったのだろう。

でも待たされた私としては……倒れた緑谷の姿で、心臓が止まってしまいそうだった。

ついに爆豪が緑谷に取り返しのつかないことをしてしまったのか、って。

 

爆豪もさっきからずっと黙っている。

あの爆豪がだ。

 

.....本当に私は止めなくて良かったのだろうか。

 

二人のためといって、私は.....

 

「では、狗飼少女。君は今回の戦闘訓練に対しどう思う?」

 

そんなこと考えてる場合じゃねぇ!!!!!

 

講評、そう私は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()しなくてはならない。

なぜなら、私は今回の戦闘訓練に参加できないから。どうにも私のような個性は前例が無いらしく対応が遅れてしまうとのこと。

はたして私に参加出来る日はくるのか。

 

さて、話を戻そう。

 

私は講評をする訳だけど………………ちょっとおかしいと思う。

 

八百万百という、優等生かつ秀才な女子の後に私がとやかく言うの、おかしいと思う。

やめて、ハードル高くするのやめて、個性使ってない私は雑魚なの。

 

「………そうですね。」

「うん。」

 

今回の戦闘訓練で言うべきところ...

 

「…………ふむ……」

「……………………」

「…………特に言うことなど、無いかと。」

「……うん?」

 

思いつきませんでした。

 

さっき八百万全部言ってた。

あれの後にとやかく言えるような神経、私は持ってない。

 

あと戦闘訓練の記憶が無い。

 

「ほ、ほら、何か無いかな?ここが良かったーとか、ここはこうした方が良いとか。」

「良かったところ………飯田ですかね。」

「おお!それは何でだい?」

「…状況に適応出来ていた。」

 

いやそれ八百万言ってたわ。

 

「………ま、全く同じこと言ってる…」

「……ま、まぁグッショブだ!次はもっとしっかり言えるようにな!」

「はい。」

 

次はもっとしっかり観察しよう。

だからそんな目で見るのは止めるんだ皆。マジかコイツみたいな目は止めるんだ。爆豪・・お前どうした。そんな顔初めて見たぞ。

 

そんな目から逃れるように私は目を閉じた。

次から頑張ります。

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

「それを、何処で。」

 

力強く言ったその言葉は、余りにも人間らしかった。

 

いつもの彼女からは信じられないくらい年頃の少女的で、感情の乗った声。

他人への関心などなく、幼馴染ですら傍観的で、人間らしい感情が希薄な彼女がそんな姿を見せるなど露とも思わず。

 

それに僕が目を丸めると、彼女は何処か剣呑さを灯した目で、手を震わせて僕を見ていた。

 

 

 

──オールマイト、実は

 

──狗飼野乃子…あぁ、あの子は

 

 

 

謝らなくてはいけないと思った。

 

僕に告白してくれた緑谷少年の言葉を聞いて、塚内君から話された彼女の話を聞いて何もせずにいられる訳がなかった。

 

「緑谷少年が教えてくれたんだ。ヘドロヴィランの時に緑谷少年を助けたのは君だと。」

「……緑谷。」

「おっと、緑谷少年を責めてはいけないよ。彼は完全な善意で言ってくれたんだ。」

「……そうだったんですね。」

 

無関心そうな声。色の変わらない瞳。

 

そればかりだった彼女が、忌々しそうに、それでいて寂しげに瞳を揺らすの姿は酷く幼く見えた。

まるで、中々迎えにこない親を思う子供のようだった。

 

「君は爆豪少年と緑谷少年を助けようとしたんだろ?緑谷少年が言ってた。「急に個性を使うと彼女は反動が大きい」ってね。本当かい?」

「はい。」

 

酷く辛そうな顔で緑谷少年は言っていた。

 

昔、ヴィランに誘拐されかけて彼女が個性を使った時、彼女の皮膚はボロボロになっていた、と。

 

今はそんな事はないらしいけどその日は眠れなかったと。何度も彼女に電話した、と。

 

「そうだったんだね。それなのに君は助けたんだね、二人を助ける為。」

「………………」

 

緑谷少年に彼女について教えてもらった時、何故か脳裏に塚内君が過ぎった。

何度目かの二人きりの飲み会で、悔しげにジョッキを煽る彼の姿。その時に、彼女の名前が出たような気がした。

 

そして聞いたのだ、「狗飼野乃子という少女について知らないか」と。

それを聞いた時、彼はそう聞かれたことに驚くそぶりも見せず、戸惑わずに話はじめた。きっと僕が聞くだろうと思っていたのだろう。

 

 

 

──昔、彼女は個性故にヴィランに狙われてね。僕ら警察に助けを求めに来たんだ。

 

──彼女は完全な被害者だった。個性が原因でヴィランに狙われただけの。

 

──だけど、上司は個性だけで彼女を判断してね。

 

──彼女をヴィランの仲間であると、自作自演だと判断して彼女を扱ったんだ。

 

──それ以来彼女は一切警察に助けを求めなくなった。

 

──僕はその話を()()()()()()()()()()()()()知ってね。

 

──あの時、もっと早く気づけたら良かった。そうすれば僕は「君は悪くない」と言えたのに。

 

 

 

 

そう語った。

 

緑谷少年も言っていた。

 

 

 

──昔、ヒーローにヴィランと間違われてノノちゃんがヒーローに襲われちゃって

 

──あぁ誤解は解けたんです。ちゃんとそのヒーローも謝ってくれました。

 

──でもそのヒーローは言ったんです。「本当に化物のようで、恐ろしかった。」……って。

 

──無意識だったんだと思うんです。そのヒーローも悪気なんて全く無くて。本当に本心だったんだと思うんです。

 

──僕、未だ考えちゃうことがあって……ノノちゃん、あの時どう思ったんだろうって

 

 

 

 

「すまなかった。」

「………やめて」

 

後ずさる。

大きく見開かれた目は、剣呑さが消え、ただの恐怖の色で染まっていた。

 

「君は二人を助けようとしただけだったのに。」

「やめてください。」

 

瞳が揺らぐ。

後ずさりながら、聞きたくないと耳を塞ぎ俯く姿は、何かに怯えるか弱い少女だった。

 

「私が早とちりしてヴィランだと判断してしまった。」

「やめて!!!違う、違う!!!」

 

喉を切り裂くような悲鳴が響いた。

白い床が濡れる。光を反射してキラキラ光る。

しゃがみこんで、俯いて、ただ彼女は「やめて」「違う」と繰り返し話続けて、何かに怯えていた。

 

彼女と同じ目線になった。

 

小さい。なんて小さい。

 

僕がいつも感じていた一歩線を引いてしまうような力強さと、未知に溢れた雰囲気から引き出される畏怖は一切感じられない。

 

風が吹けば壊れてしまいそうなほど、弱々しく。

 

その姿はまさしく僕らヒーローが守るべき子供の姿をそのものだった。

 

「大丈夫。」

「……ッ」

 

床に膝をつき、その体を抱き締めれば振動が伝わってきた。

 

「大丈夫、大丈夫。君は悪くないんだ。」

 

ポンポンと背中を叩けば振動は緩やかに、収まっていく。

 

「確かに個性を使ったのはいけないことだ。でも、狗飼少女。君は幼馴染を助けようとしたんだろう。それは、とても立派なことだ。」

「…………」

「だから、大丈夫。君は悪くない。そんなに謝られることに怯える必要はないんだ。」

 

個性の性で、彼女はどれほど辛い思いをしてきたのだろう。

何度裏切られたのだろう。

何度、何度、心を殺してきたのだろう。

 

彼女は心を押し殺している。

そうすぐに分かってしまうほど、彼女の心は死んでいた。人間らしさを殺していた。

 

もう自分を殺さなくて良いと。

もう自分は悪くないと。

普通の人間であると、分かる日がくれば。

 

「……きっと君は"ヒーロー"になれるだろう。」

 

その言葉は耳に届くことなく溶けていった。

 

 

 

 


 

 

 

 

私、今日殺されるわ。

 

オールマイトに呼び出された時、脳裏に過ぎったのはこの言葉であった。

 

だって教師と生徒二人きりとか怪しい以外の何物でもない。

雄英にどれくらい過激派オールマイトファンが居ると思ってるんだ。緑谷なんて序の口だぞ。

 

それに加え、あのヘドロヴィラン事件………死んだと思った。緑谷がオールマイトに話したらしい。緑谷ァ…………!!!

 

そしたら謝られた。

幼馴染を助けようとしたのに殴ってしまったことを、オールマイトは後悔していたらしい。

 

ここで過激派ファン*1殺害の線が濃厚になってしまった。

 

私はあの事件はオールマイトは悪くないと思っている。やってることヴィランだった。*2

あれで殴らなかったら職務怠慢で大炎上だったろう。

 

脳裏に「オールマイトになに謝らせてんだ!!!!」と叫ぶ過激派ファンの姿がチラついた。ハッキリ言って恐怖以外の何物でもない。

 

泣いた。もうそれはもう泣いた。

 

たぶんそれの所為で抱きしめたオールマイトによって、私は死を覚悟している。

 

……いや白状しよう。

 

最高だった。

 

だって憧れの人。かのオールマイトだぞ。控えめに言って最高、普通に言って最高。

私はもう逃げない、戦ってやろう。ただし個性を使ってなァ!!!

 

そう考えながら歩いていた夕暮れ、オレンジ色の帰り道。

プルルルル、と着信音が私のリュックから鳴った。

 

スマホを取り出し、青いボタンをスワイプした。

 

「もしもし。」

「もしもし。お久しぶりだね。元気だったかい?」

「はい。お陰様で。」

「ふふ、それは良かった。」

 

柔らかい、落ち着いた男性の声。

聞いていると妙に落ち着いて心地よい気分になる、不思議な声だ。よく聞きなれた声。

 

この人とは物心着く前からの仲だ。

私が小さい頃からよく会っていて、もはや祖父とかに近い。たぶんそんなに歳いってないだろうけど。

 

「どうされましたか。」

「あぁ、忘れてた。君と話せたのが嬉しくてね。」

「…それは良かったです。」

 

なんでこの人、そんなこと恥ずかしげもなく言えるんだろう。

思わず周りに人が居ないか。私の熱い顔を見た人がいないか見回してしまった。

 

「会いたいんだ。」

 

恋人か!!!??変な声でそうになったわ!!

 

いやまぁ、私も会いたいっちゃ会いたいけど……別に好きとかそんなんじゃないから!!!

本当にまぁ、会いたいっていうなら良いよって感じだから!!別に私が懐いてるとかそんなんじゃないから!!

 

「わかりました。何時にしましょう。」

「………今日はダメかな?」

「大丈夫です。今日も母は居ませんから。」

 

思わず即答してしまった。

あの人こういう所……本当に。

 

「ふふ、じゃあ待ってるよ。」

「はい。準備したらすぐ向かいます、()()。」

 

そう言うと彼はまた嬉しそうに笑って、じゃあね、と言って切った。私は電話切るの苦手だからありがたい。

 

さてと、約束したなら速く家に帰って準備して、着替えないと。

 

なんの服を着ようか。

そう考えながら、私は帰り道を歩いていった。

 

 

 

*1
関連ワード:ステイン

*2
第2話参照




次回はヤンデレです!ヒントはAFO!



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9 その後もずっと指にクルクル巻いていた。

とりあえず本当に申し訳ありませんでした。

舞台の建物はなんか良い感じの個性でよく分からない所にあるみたいな風に考えておいてください。

AFOのヤンデレ?で〜〜〜〜す!!!





個性は100年ほど前に突如として現れた物だと言われている。

 

現在記されている中で最も有力な()()()()()()()は中国・軽慶市にて産まれた発光する赤子。

それを皮切りに世界各地で超常的な能力を持った人は次々と現れ、世界は混沌に包まれた。

 

有個性者が無個性者を上回り、個性が無いことを無個性と呼ぶまでになるまで100年以上。

この100年が無ければ人は大きく成長し、銀河の遥か彼方を目撃していたであろうと言われるこの時代を

 

超常黎明期(ちょうじょうれいめいき)

 

と言う。

 

薄暗く、グレーのコンクリートに囲まれた四角い部屋。

質の良いレザー貼りの長椅子が二つと、無機質な音を規則正しく鳴らす無機質なハートモニター、そしてチカチカ眩しい色の管が宙に浮かんでいた。

 

男と少女が居る。

 

少女は深海を思わせる瞳と、艶やかな髪の似合う、整った顔立ちが特徴的だった。

肌は健康的な、真夏の小麦色でありながら、陶器の人形のような寒さを感じる印象であった。

普通の少女と同じであるのに、何故か本能的な恐ろしさを感じさせる表情で男を見ていた。

とどのつまり人間らしさがない。

女とも子供とも着かない、少女と形容するにも些か違う、危うい年頃の娘であった。

 

対する男は、顔が無かった。

爛れて見えなくなっていた。そして目と鼻の代わりにぶにぶにした肌色がある。

男の姿は思わず口を覆って眉をひそめ、涙してしまいそうになるような姿だった。

身体中に管が何本と繋がれていた。部屋の煩い管たちは男の為のものであった。

 

しかし男は軽快に喋る。

所々ジョークを交え、それでいて内容は知性と品性を失わない物だ。

目を瞑り声だけを聞くのなら、話の面白い飲み仲間か、それか喋りの上手い親戚のようだった。

 

どちらにせよ話し上手の聞き上手で、嫌味のない馴れ馴れしさと親しみを感じさせる物であった。

この男と少女の仲が決して浅くないことを表すようであった。

 

「確か、雄英の体育祭は豪華なんだってね。僕も見に行きたいが生憎と見に行けそうにも無い。」

「それは残念です。」

「おや、残念に思ってくれるのかい?それは嬉しい。」

「もちろんです。先生には是非とも見ていただきたかった。」

 

何かが大きく変わる時、世界は均等を失う物である。

均等を失った世界は荒廃とし、混沌に沈む。

それは超常黎明期も例外ではなかった。

 

新たに現れた異形の力や信じ難い出来事に世界は翻弄された。

 

─この100年が無ければ人は大きく成長し、銀河の遥か彼方を目撃していたであろうと言われるこの時代───

 

そう、100年。

100年もの間、人々は、世界は超常能力によって混沌を余儀なくされた。

 

その時代、混沌の世界にて頂点であった者。

秩序を作り出していた者。新たな力を持て余す荒くれ者どもを統率していた者──悪の頂点であり、歴代のONE FOR ALLを受け継ぐ者の敵対者こそ、そう。

 

「なにせ、君の個性は素晴らしい。」

 

この男である。

 

世界の敵と言っても過言ではないこの男。

昔、オールマイトによって大怪我(この姿)を受けたこの男の通称をALL FOR ONE。

 

そして、そとALL FOR ONEと対話する少女の名を狗飼野乃子。

雄英高等学校のヒーロー科に在籍しながらもヴィランと関わりのあるこの少女を、ALL FOR ONEは非常に気に入っていた。

 

「先生にそう言われますと自信が持てます。」

 

表情ひとつ、目の色ひとつ変えぬ、正しく人形かのような少女の個性を化け物

 

様々なおおよそ人知を超えている異形の姿に変貌し自在に力を操る。

この個性は、人々の個性を奪い与えたALL FOR ONEにとっても、非常に極上であった。

 

オールマイトに復讐を誓ったALL FOR ONEにとってこの強力な個性は、是非とも自身の個性*1で奪いたい。そう思うほどの代物であった。

 

しかし、ALL FOR ONEは直ぐにそれを諦める事になる。

 

聡明などという言葉では説明つかぬ程の知力を持ったこの男が諦めた理由など、まぁ……

──持ち主の姿を見れば検討が着くだろう。

 

手に入れればたちまち精神が不安定に、崩壊する。それでいて脳の無い生き物に持たせれば制御が到底出来ない。つまるところ、この少女にか扱えない。

それがALL FOR ONEの、少女の──野乃子の個性への考えであった。

 

「そういえば、あの二人は元気にしているかな?」

「父と母のことでしょうか?」

「ああ。」

 

そう言われて野乃子は少し考え込む素振りを見せる。

違和感が無いが、見る人から見れば演技だと察知させる稚拙な物であった。

まるで、人間らしさを見せつけるような。

 

野乃子は考える。

あの二人……自身の両親について。

 

「(あのツンデレ(お母さん)超親バカ(お父さん)の両親なら…いつも通りかな。)」

 

野乃子の脳裏に浮かぶのは何でもかんでも買い与えて、立てば可愛い、座れば可愛い、歩く姿は超可愛い、の親バカな父。

そして娘に対してもツンケンドンだが節々に親バカが滲み出ている母の姿。*2

この前なんかは二人がテレビ通話で3時間ほどイチャイチャしてる姿を目撃していた。(父がデレデレしているだけにも見えたが)

 

それを思い出した野乃子はハッピー極まれり。野乃子は親が仲良しだと幸せになる子供だった。

が、如何せん表情が動かない。目も変わらない。先程との代わりなど、わざとらしい人間のフリのみ。

 

──ここまで見た人なら察しただろう。

 

そう、野乃子は人間じゃない人間でもなければ、個性で精神を壊された哀れな子供でも、傷を負い心を閉ざしきった少女でも無い。

 

割と能天気で楽天家のアホなコミュ力クソザコナメクジで、ただ個性が強くて考えが表に出にくくて、幼馴染大好きなだけの女の子である。あとグリーンピースが苦手。

 

だが、そんなことALL FOR ONEは知らない。

 

「父と母でしたらいつも通りです。」

「そうか、そうか。それは良かった。あの二人には()()()になったからね。」

 

ALL FOR ONEにとって、野乃子の両親は目の上のたんこぶである。

 

人知れずあらゆるヴィランの悪事を邪魔し、人知れずヒーローを助ける。たとえ自身が悪と見なされようと。

ハッキリ言ってとてつもなく邪魔だ。

 

因みに野乃子の両親は自身が悪事の邪魔をしたことなど知らない。

2人とも、ただの一般市民なのである。比喩でもなんでも無くガチで。

 

出来るならさっさと殺したいのがALL FOR ONEの心情であった。(以後AFOと表す。)

 

「(先生がお世話になるって、私のお父さんとお母さん凄いんだなー)」

 

もちろん、そんなことチンチクリンのコミュ力クソザコナメクジである野乃子は知らない。

お前そんなんだから勘違いされんだよ。

 

全ては野乃子の表情の動かなさや口下手さ、ありとあらゆる要素が奇跡的に何故か噛み合わさり、今の今までやってこれていた。

少しでもズレが生じていたのなら、野乃子は間違いなく死ぬほうがマシな事になっていただろう。野乃子は神様に感謝すべきである。

 

ついで、死柄木弔(めちゃトラウマ)に野乃子のことを話したことも知らない。

それが原因で接触してきて、あんなことになった*3のも知らない。知ったら大泣きする。

因みにAFOはそこまで多くの情報を死柄木に流した訳では無い。

強いて言うならこんな娘がいた、と言う程度で終了していた。

 

つまり接触してきたのも、あの時*4も、全て死柄木の判断である。

 

「二人に出会ったのは、もう随分と前だ。君がまだ産まれても無い頃だよ。」

「それでしたら母と父は随分と若いでしょう。」

「うん、若かった。でも面白い人達だったよ。歳の割に随分と賢かった。」

「そうだったのですね。」

「君を紹介された時は驚いたなぁ…」

 

皮肉るように、どこか楽しげにAFOが言うと、野乃子が定型文を継ぎ合わせたような言葉を返す。

コミュ障は定型文しか返せないのだ。

 

関係を知らなければ、何処か違和感と妙な寒気を感じさせる声色であった。

関係を知っていたら、冷や汗をかく内容であった。

野乃子の中身を知ってたら、笑いを堪えきれないような会話であった。

 

「おいで。」

 

野乃子は椅子から降り、ALL FOR ONEに近づいた。

レザーの椅子は軋む音すらしなかった。

 

AFOは腕を動かし、野乃子の髪に触れる。

光の当たり具合によって色を変え、深海から宇宙の未知なる色に変わる姿は芸術品のようだった。

 

AFOは目が見えない。

昔に奪った個性で視界の代わりはあるが、色鮮やかな色彩や鬱屈とした影は視認することは出来ない。

匂いも分からない。

締め切った部屋に漂う偶像的で、優雅で臓物の奥深くをゾッと冷えさせる香りは知ることは、恐らく一生無いだろう。

 

「君は可愛い。」

 

何も知らず、ただ堕ちた子供。大人の言うことばかり聞く傀儡。人間でないからこその、未完成。

 

それが、AFOの()()()()()印象だった。

 

「子供らしくて」

 

人でないのに()()の価値観に押し込められ、それから逃げることを知れなかった哀れな子供。

人間ではないのに、少し考えと情の在り方が人に似てしまった生き物。

人間だと思い込んで、人ならざる者であろうとした子供。

人間ではないのに、自分は人だと勘違いして、人では無いのに人を辞めてしまおうなどと考えた愚かな子供。

圧倒的に足りないものが有るのに、それに気づけない憐れな娘。

 

「とても()()だ。」

 

その言葉を聞いた野乃子は、あぁそういえば、と思い出す。

思い出すのは今日の事。オールマイトという憧れの人から言葉と行動。直後では頭が追いつかず、あまり内容を整理しきれていなかったが

 

「(そういえば、オールマイトもそんな感じの話してたな。)」

 

AFOにとって、野乃子とはオモチャのような物である。

長い生で見つけた良くある暇つぶしの道具。飽きたら捨てて、また次が来るのを待つ。所詮オールマイトへの嫌がらせのツナギ。それだけ。

 

「同じようなことを言われました。」

 

それだけだった。

 

「………それは、誰に?」

 

それだけだった、はずだ。

 

「オールマイトに。」

 

撫でるだけだった手が髪を鷲づかんで、引っ張った。

警戒をしていなかった野乃子の頭は面白いくらい勢いよく振り下ろされる。

酷い音がした。コンクリートの床が野乃子の視界いっぱいに広がって、髪が何本かブチブチ痛々しい音で鳴く。

 

突然のことだった。AFOに敵意も悪意も感じられなかった。本当に突然だった。

そうだというのに、野乃子は表情一つ変えない。叫び一つ上げない。

 

「……どうされましたか?」

 

頭を上げる事なく言った。

 

眉一つ動かさず、無抵抗の様はハッキリ言って異常である。

(本人は突然の事で呆然とスペースキャットしてるだけだが。)

 

それが、AFOにとっては好ましかった。*5

 

だから変わらせたくないのだ。

 

人間であろうとして、そして諦めたから面白いのだ。

そんな健気な姿が可愛くて可愛くてしょうがないのに、人らしく扱ってくれる自分を縋るのが堪らなく愚かなのに。

だからお気に入りなのに、そんなことをされては、AFOにとって面白くない。

 

もし、自分を人間だと()()()して、人間として過ごすようになったら。

 

そんなことになったら、AFOは野乃子を殺すだろう。

惨たらしく、泣き喚めいて許しを乞うなんてことしたら、もっと苦しめて苦しめてやって、ピクリとも動かなくなったら許してあげるだろう。

そうなったら、可愛らしいフリルの付いた服でも使って飾り付けするのだ。

いっとう可愛らしい服で、いっとう豪華な装飾品で、いっとう貴重な培養液にでも浸けて。いや、腐りにくくする個性でも手に入れる方が先か。

 

AFOは死柄木も気に入っているから、死柄木にも楽しませて上げるだろう。

死柄木は野乃子のことが大切だから、ずっと傍において離さないだろう。隣の椅子に座らせておいて、偶に髪に触れる。眠る時はベットの傍において、偶に手を握る。ずっと離さないだろう。文字通り、死柄木が死ぬまで。

 

世話は黒霧が率先してやるだろう。

髪を梳いて、アルコールで清潔にして、服を整えて。そして、死体であることを少し残念がる。

死体は腐りやすく脆い。だから下手に触れることも出来ない。

それに黒霧は野乃子の声と仕き草と目を気に入っていたのだ。それが動かなくなるのは、少し寂しいだろう。

 

「あぁ…すまない。」

 

AFOは掴んでいた髪から手を離す。

その手には幾本もの髪が絡みついていた。その髪が、一本スルスル勝手に落ちていった。

 

野乃子が顔を上げた。

手を着いて、上目遣いに見やる姿はひどく惨めでALL FOR ONEを満たした。

 

乱れた髪を手櫛で梳く。

指の隙間を通る髪が、指を切ってしまいそうな程滑らかだった。

 

「つい。驚いてしまったんだ。」

「いえ、大丈夫です。」

 

なにが大丈夫だ。

だが大丈夫で無くとも、鳴き声が如く大丈夫というのが日本人。野乃子も所詮は日本人なのである。

 

傍から見たらとんだDV現場である。傍から見なくてもDV現場だった。というか、DV現場である。

 

しかし残念なことに、傍からこの状況を俯瞰できる第三者はこの場に存在しないし、そもそも居たとしてもAFOに洗脳でもされて黙らせられる。なんなら協力する。

 

というか、当の本人たる野乃子もAFOに対する信頼と親愛が高すぎてこれがDVの類だと気づいていない。

そういう所だぞ。そういう所だぞクソザコナメクジ。

 

「僕は心配なんだ。」

 

先程までの惨事など忘れたかのようにAFOは話す。穏やかな顔と声で、まるで子供に言い聞かせをするように。

 

「君は()()()()()()からね、もしかしたら悪い大人に騙されてしまうかもしれないだろう?」

 

言ってる本人が悪い大人の筆頭である。

とんだマッチポンプだった。

 

野乃子は()()()()と聞いて、瞬時に思い浮かべたのは今日の出来事により活性化されたオールマイト過激派ファンだった。怯えすぎである。

かっちゃんの姿は出ていない。出ていないったら出ていない。指1本くらいしか出ていない。

 

悪者(ヴィラン)は良い人や優しい人を演じるものだ。簡単に言葉を聞いてはいけないよ。」

「ご心配痛み入ります。」

 

実はALL FOR ONEの考えていることは、あながち間違いでない。

 

野乃子は確かにALL FOR ONEに縋っている

勘違いだらけの中で、これだけは確かであった。

 

普通の人間であれば気づけないことだろう。

流石は悪の頂点と言うべきか。

 

「ふふ。野乃子は良い子だね。」

 

ALL FOR ONEのこの感情が愛と言うのかは分からない。

弟に抱いた感情とは全く違う、しかし、他の誰に抱いた感情とも合わない。

 

ただ、離れて欲しく無いとは思っている。

 

まるで子供のようであった。

 

「あぁ、そうだ。」

 

ALL FOR ONEはゆったりと、思い出したようにそう呟く。

そして向こうを指さした。

 

「君へのプレゼントだよ。」

「ありがとうございます。」

 

そう言うと、野乃子は立ち上がりカバンの置いてある棚の上にある箱を手に取った。

なんだかとても重かった。

 

「家に帰ってから開けてご覧。もう時間だからね。」

「了解しました。」

 

野乃子はその箱を大事そうにカバンにしまい、カバンを取った。肩にかける。

 

歩くと、足跡が嫌に響いているように感じ、野乃子は嫌な気持ちになった。

 

「(足跡消す技術とか必要か…?)」

 

そんなことよりも悩むことがある。

 

野乃子は扉を開く。

 

「それでは、失礼します。」

「うん………野乃子。」

「なんでしょうか。」

 

優しげな声で呼び止められた。

振り返れば、()()()()()()()()()()()()()()()先生が肘を着いていた。

 

「いつでも来て良いんだよ。」

「わかりました。」

 

野乃子は笑みを浮かべなかったが、髪を指に巻いた。

野乃子は嬉しいとクルクル巻くのだ。

 

 

*1
人の個性を奪い与えることの可能な個性

*2
行ってらっしゃいは絶対に言う

*3
この話書くので待ってて〜〜〜〜!!!

*4
第4話参照

*5
スペキャしていることではない




長ぇ〜〜〜〜〜〜

もうなんか色々申し訳ない。
でも性癖なんです。性癖ならしょうがない(自問自答)

あと一人称と二人称ではそうでも無いのに、三人称になると性別を全面推しするのも好き。〜でもするだろう、とか適当感ある言葉を地の文に入れるのも好き。

この作品は性癖盛り合わせパックなので詰め詰めしました!

あと主人公なんか闇深くありません?????


この作品が良いなって思ったら気軽に感想でナス送ってください。


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10 期待と違うUSJ


†注意点†
足がグロいことになってます。
変身するときのセリフ加工するようにしました。
コスチュームの詳細出てない。



 

小さな魚が二匹、空中の水の中漂っている。

小魚が中で気ままに泳ぐ、光を反射してキラキラ輝く水は宙をしなやかに泳ぐ少し大きな魚だ。

ウナギのような流動的な体が広場の中心で泳いでいる。

 

水が跳ねる音、水が泳ぐ音、キュイという可愛らしい鳴き声。

全てが穏やかな物だった。

 

「キューイ(出てけ!!!!!!)」

 

ヴィランに襲撃されている現状と、私の内心を除けば。

 

 

 

 

 

 

 

USJで訓練とか聞いて浮かれていたのかも知れない。

だって訓練とか頑張ろうって気持ちになるし、友達できるかもだし緑谷と仲直りできるかもだし

 

つまりめちゃくちゃ浮足立って(ワクワクして)いた。

 

ヴィランが攻めてきて、クラスメイトの安否()()()気を取られてしまうくらいに。

 

「狗飼さん!」

「ノノちゃん!」

 

その声が聞こえた時には、体が真っ黒なモヤのようもので前が見えなくなっていた。

 

足を掴まれ引っ張られ盛大に転び、コンクリートスレスレの所でモヤに包まれ視界が変わる。

 

少しだけ安堵したのも束の間、岩だらけの地面に顔を突っ込む。咄嗟に手のヒラで頭を持ち上げるとそのまま引きずられて手が削れた。

 

そして止まる。

 

血だらけで痛む手のひらに体重をかけ、頭を起こして後ろを見る。

 

「いい気味だなぁ…野乃子」

「…死柄木。」

 

死柄木がヤケに上機嫌な様子でしゃがんで、人差し指だけ浮かせて足首を掴んでいた。

手の模型みたいなのを顔と身体中に貼り付けている。

 

隙をついて逃げないと。

このまま変身なんてしたらこの人巻き込んで大変なことに。

 

今の私は、たぶん昔緑谷が着てきた、宇宙でアンニュイな顔をしていた猫のTシャツみたいな感じになってることだろう。

あれほんとなんだったんだろうな…

 

「あの時は黒霧が邪魔しやがったからロクに話せなかっただろ?」

「…そう」

 

下手に刺激しないよう、慎重に言葉を選んでいると、足を掴む指をトントンと叩かれて急速に頭が冷えていく。

 

そうだった、今この人、私の足首掴んでるんだよ。私の足、崩されるかもしれねぇんだ。

現実逃避していて忘れていた。

 

「何が知りたい。」

「話が早くて助かるよ。」

「…」

「お前、マジで雄英入ったのな。」

「あぁ。」

「………マジで入りやがって。ふざけんじゃねぇよ…俺がどんだけ待ったと思ってんだ。先生がその方が良いとか言うから待ってやってたのに。アイツデタラメ言いやがって…よりによってヒーローなんかになりやがって…!!」

 

ドスの効いた声で呟くと死柄木は足首を強く掴んだ。

メキメキという骨の軋む音は聞こえてきて個性を使われそうでヒヤヒヤする。

あっまって骨折れる

 

「言ったよなァ…お前はヒーローじゃねぇって。ヴィランにこーんな簡単に足元を掬われる。ほら。」

 

見せつけるように足を持ち上げた。

スカートの中見えるから止めて欲しいなぁ…隙がねぇから逃げられないなぁ…おそらきれい…

 

「冗談だよ。お前ワザと掴まれてんだろ?俺と話す為に。」

「…?」

「あんなガキばっかじゃぁ悠長に話してられねぇもんなァ?」

「………」

「お前さぁ…ヒーローになるとか、マジふざけてるよ。」

 

最後の一本が触れた。

 

「………!?」

 

突如、足首が激烈な痛みが走る。

 

痛てぇ!いやでも緑谷も個性使った後ヤバかったから大丈夫大丈夫。緑谷の方が痛そうだった。*1

 

と一種の現実逃避しか出来ない頭の片隅で、あっ個性使われたんだ。

という冷静な思考が鎮座していた。

痛い。

 

死柄木はニヤついた顔で、パッと()()()()と空中にあった私の脚は勢いよく地面に衝突した。

 

「あぁ、そうそう。お前にステキなプレゼントがあるんだった。」

 

念じる

 

先生たちに知らせる為に外に出るために隠密に行動出来るような、誰に攻撃されても耐えられるような姿に

 

黒霧の霧が辺りに広がる。

 

逃げるつもりだ。

 

すぐさま立ち上がって死柄木を捕まえようとする。が、足に力が入らなくて立てない。

なんなら入れると超激痛。

 

「貴女はそこで、()()()無様に殺される御学友と教師の皆様を感じていてください。」

「最後にヴィランに成るか、そのまんま(ヒーロー)で居るか選ばせてやるよ。」

 

冗談でも言ってるかのような軽さだったからだろうか、頭が追いつかない。

 

なんでも良いから引き止めないと!黒い霧から大勢の人が出てきた。

多種多様な格好をした人達の目はギラついていて、端的に言って、敵意に満ち溢れていた。

 

あっ……

 

・・・・・さっきのキャンセル!!

 

 

 

 

 

 

 

*1
痛みは比べるものではありません







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11 「仲良くしてやってね」

キャラ崩壊すまねぇ〜〜〜〜〜……
すまねぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

狗飼両親(概念)が出張ってます。タイトルは母の方



 

狗飼の母と相澤消太は知り合い同士であった。

相澤がヒーローを目指して雄英に入る少し前からの交流だった。

 

彼女の方が少しばかり年上で、知り合いであったが知り合というには情が強く、信頼と思いやりがあって、「知り合い」以外の名称が無い関係だった。

 

二人は、まだ若いながらに大人びた熟慮を忘れず、幼い間抜けさと、笑顔の柔らかな知り合いだったのだ。

 

かつて三人で遭遇した際に「年上だから」と、勝手にアイスを奢られてさっさとどこかへ消えた夏を、今でも思い出す程度の友好だった。

 

三人が二人になって、二人がヒーローになって、あの時の葬式で涙を零して以来しばらくの交流の無かった彼女と「仕事の関係で」再会した時

 

確かに相澤消太は安堵した。

 

薬剤師になり、ヒーロー関係の仕事をする、危険性の少ない個性を持ち、心優しい性格の彼女が関わるには荷が重いであろう。

 

しかし、安心した。

 

恐らく山田ひざしも同じだと感じながら。

 

お見合い相手と婚約したのは知っていた。

顔を引きつらせながら大丈夫と言ったことを覚えていた。

触れないでくれ、と言わんばかりの笑顔を見た。

しあわせを祈られて、嬉しそうに笑っていた。

 

 

 

結婚して、仕事も何もかも()()()のを、人づてに伝えられた。

 

その後の彼女を知る人は、少なくとも答えてくれる人は、誰も居なかった。

 

 

 

相澤消太は彼女が姓を変えたのを知らなかったから、狗飼野乃子が母親の面影の無いくらい父親似だったから、娘であると言われるまで気づけなかったのだ。

 

その娘はひんやりとしていて、あまりにも人間味の薄い子供で──

 

───あまりにも()()()が無かった。

まるで自分が無いように。

 

それは個性把握テストで顕著に現れた。

 

ヒーローを目指すのであれば、多少なりとも異論や「自分はもっとやれる」という主張を行う。

そこまでのやる気が無いと、とてもじゃないが雄英(ここ)までは来れない。

 

しかし、狗飼野乃子にはそれが一切なかった。

 

言われた事を完璧にこなす。

確かにそれは重要な事だ。

しかし、ヒーローにはそれだけでは足りない。

 

咄嗟の起点だけでない、ある種の情熱にも似た()が無くては生きていけない。

大変大まかに言えば、やる気である。

 

その娘には無かった。

 

しかし、しかしながら、相澤は確かに感じたのだ。

 

娘の幼馴染…緑谷出久に向ける眼差しが、期待に満ち溢れるような、執念深い熱にうかされていることを。

()()()()()()()()()()を、娘は確信していた。全幅の信頼を持って期待していた。

 

娘の()の唯一があまりにも強く、曲げられない、あの夜の闇に浮かぶ星のキラメキのような物だったものだった。

 

そういえば、と相澤は思考する。

娘は試験終了後にわざわざ校長にまで聞きに行っていた。それはつまり、この期待の為だったのでは無いだろうか。

 

だとすれば、それは──

 

 

 

 

 

─随分と、重い

 

 

 

 

 

見ていたのは「どんな個性だろ」って思ってただけである

 

職員室へ出向いたのは0ポイントヴィランを倒してしまって良かったのか?という不安が起因であって、緑谷出久については本当にノリで聞いてしまっただけだった。

ちなみに、狗飼は起因の疑問を解決してないし、何のため出向いたのかは忘れている。

 

そして自主性が無いのは事実。

 

コミュ障は受け身になりやすいのだ。

 

 

 

 

 

 

相澤にとっても、ヴィランが攻めてくることは予想外の事だった。

いや、予想はしていた。だからプロヒーロー三人態勢で挑んだ。

 

しかし、ここは雄英高校。

セキュリティは下手な銀行よりも硬く、また独自のスタイルでの警備だった。

なにより、教師は軒並みプロヒーロー。

 

余程のバカじゃなければ計画すらしないだろう。

そのバカが今、眼前に居る。

 

しかも、ある程度の実力を持って。

 

相澤は生徒は後輩の13号に任せ、自身は生徒の安全を確保の為の足止めに戦闘した。

 

何十もの軍勢をたった1人で次々と再起不能にまで陥らせる手腕たるや。

マフラーによく似た特殊な布製の捕縛網を扱ったトリッキーな動きと「個性を使えなくする個性」という稀有な「個性」による妨害は余りにも上手い。

 

だが、手が届かない物だってある。

 

最初に狙われたのは狗飼野乃子だった。

 

強力な個性を持つ彼女が狙われやすいというのは()()当然の物であった。

しかし速かった。余りにも速かったのだ。

 

悲痛な叫びが響いた頃にはもう狗飼は霧に包まれていた。

 

狗飼が()()()()と思った爆豪勝己は「どういうつもりだ」と冷静さを欠き、()()()激昂し、一人でその霧へ。

それに続くように切島が突撃した。

これによって13号は個性を使えなくなる。

 

生徒たちが、「狗飼が捕まった」のではなく「ワープさせられた」と理解した頃には、約半数の生徒はUSJの敷地内にマバラに飛ばされていた。

 

「脳無」

 

男がそう言った瞬間、相澤が地面にめり込んだ。

 

そして、相澤は現在最大級のピンチを迎えている。

 

手だらけの不気味な男──死柄木弔が指示する「脳無」と呼ばれる人造人間が相澤の腹を殴り、骨を折り、頭を地面に叩きつけた。

チンピラだらけの集団の中で異彩を放つ、圧倒的な力。

 

サポート向きの個性を持つ相澤──この物理特化の「能無」はあまりにも分が悪く、成す術は無かった。

 

「なぁヒーロー、」

 

相澤の頭部を脳無に押さえつけさせながら、死柄木言った。

 

「なんでアイツを入れた?」

 

純粋であり、そして明らかな怒りを持っていた。

 

相澤にはアイツが誰なのか分からなかったが、分かった

 

脳裏に浮かぶのは、強力すぎる個性を持ち、過去何度か誘拐されかけ、真っ先に狙われたあの娘

 

彼女の娘。

 

自分の生徒。

 

「アイツの何処がヒーローらしいかったんだ?そこんとこどうなんだよヒーロー。」

「誰が……ッ…ヴィランに言うかよ…」

「…脳無!」

 

脳無が相澤の頭を叩きつけた

 

脳内をミックスさせられるような、理性も何も無い強い衝撃だった。

額は割れ、血液が、口に、目に、入る。

 

それでも相澤は折れない。

それがプロヒーローになった相澤の意地だった

 

「まぁいいや、足潰したしもう殺せたでしょ」

 

息は止められなかった。

重症の体では、衝撃に対する行動ひとつすら制限される。

 

相澤は一瞬、世界中の音が消えたように感じた。

心音さえも消え去り、真っ直ぐとした耳鳴りが眼前を通るような空間。

 

しかし、相澤はプロのヒーローだった。

 

例え、自身の生徒が、彼女の娘が明確に殺されていると言われたとしても

 

折れて骨の位置のずれた足に力を込め、血を流しながら立ち上がる。

 

ヴィランを睨みつけた。

 

「………ハァー…」

 

うざったさをあけすけにして首を軽く掻きむしるヴィランを、相澤は睨みつけた。

 

「キュ………………ィ」

 

甲高い甘い鳴き声が聞こえる。

まるで、なにかに反響するかのように響き続けた。

 

その時、死柄木には、近くのコンクリートが水面のように揺れ動くのが見えた。

 

「かばえ脳無!」

 

脳無がその声に反応した瞬間

 

コンクリートがザバリと波を起こし、脳無がそれの全てを被った。

 

「キューイ!(先生!)」

 

波は、大きな魚だった。

 

 

 

 

 

 




年内にはあげなければと思いました



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