スーパーロボット大戦MAX (一時更新停止中) (クリスヴェクター)
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-Advanced―
第零話「蒼の拳士、紅の狩人」


前に前後で載せてたのを一つにし改訂したものです。



 

 

 

 

 

──────。

 

 ″表″、″裏″。

 

 ″良″、″悪″。

 

 ″陰″、″陽″。

 

 “平和”、“戦争”

 

 正反対のものが揃うことで、成り立つ関係。

 

 もしかしたら、一方だけでも成り立つ関係。

 

 

 

───しかし、それが行き過ぎてしまったら?

 

 

 

 

 日が暮れ夜が更け始めた頃、事は起きた。

 

 北アメリカはコロラド州。

 

  乾燥した気候と赤茶をした高原と崖しかない大地を、一機のPT(パーソナル・トルーパー)が土煙を撒き散らしながら滑空していた。

 

  機体は闇に紛れる様な暗い青色をし、所々に赤いラインが走ってある。両腕にはそれぞれ大型のパイルバンカー、六連装のガトリング砲。そして両肩はコンテナを取り付けたように長くハッチが付けられた重武装。

 

 ″ゲシュペンストMk-Ⅲ″

  そう呼ばれるPTの目前に一つの建造物が迫って来ていた。近付くにつれ細部が見えてくるのと同時に、その前に立ちはだかる者も明らかになる。

 

「………………」

 

  コクピットで操縦悍を握る男は減速することなく、ペダルを踏み加速する。男に表情はなく、その視線は目の前に立つ者だけに注がれていた。獲物に狙いを着けた鷹の様に赤い(・・)目を鋭く細める。

 呼応してMk-Ⅲもツインアイを光らせ突撃する。

 

「来たか、腐った連邦の亡霊が」

 

  迫るそれを迎え撃つロボットー俗に特機(スーパーロボット)と呼ばれる機体の中で赤髪の男性、アクセル・アルマーは忌々しく唇を噛み締める。

  敵意を放つアクセルが操る蒼と白の特機 、″ソウルゲイン″ がDFS(ダイレクト・フィードバック・システム)DALS(ダイレクト・アクション・リンク・システム)……パイロットの動作を直接機体にトレースし、さらに思考まで機体に反映する、これら二つのシステムによりアクセルの動きに同調し、重心を低くする。

 

『お前たちは……望まれない世界を作る』

 

  サウンドオンリーの通信機から発する男の声に、アクセルは不適な笑みを浮かべながら切り返す。

 

「ふん。だが、俺はこの世界と決別する。この敗北の先にある勝利を得るためにな!」

 

「…………勝利…敗北……そこに意味はない…。破壊されるか、創り出されるか……。創造の破壊…破壊の創造…お前は方舟と共に朽ちろ…」

 

  意図も意味も読めない言葉を繰り返す男にアクセルは噛み合わない会話を断ち切る。

 

「ならば、後顧の憂いは断たせてもらう。貴様の存在こそが一番の脅威なんでなぁ、これがな!」

 

  ソウルゲインが地を蹴り、Mk-Ⅲがさらに加速する。

  二機は瞬く間にぶつかり、彼らを中心に足場になった大地が削られ吹き飛ぶ。互いに両手を掴み合い、力押しに持ち込む。腕部の機構が軋みを上げるがポジションで有利なソウルゲインが上から押さえ付けに掛かる。

 

「舐めるなぁ、パワーならこちらが上だ!」

 

「押せよ...Mk-Ⅲィ!」

 

  Mk-Ⅲのブースターが唸りを上げ噴射炎を吹き、ソウルゲインを逆に押し返す。咄嗟の出来事にアクセルは目を丸くするが、瞬時に思考を切り替えた。

 

「この質量差でだと? ならばぁ!」

 

  火器管制が反応し、手の甲のクリスタル部にエネルギーが集中する。狙いは着ける必要はない。目の前の敵にぶつければ良いのだから。

 

「青龍鱗!」

 

  青いエネルギーはビームとなりMk-Ⅲの右腕に喰らい付く。それによりバンカーの炸薬がビームの余波で暴発し、腕が半ばから消し飛ぶ。

 

「ぐおぉっ!?」

 

「まずは右腕一本頂いたぞ!」

 

  爆発を盾に一定の距離を取るソウルゲイン。モニターに膝を突く相手にアクセルの表情から笑みが零れる。だが、煙が晴れた時その笑みが凍りつく。

 

  大量のオイルを垂れ流す破壊された右腕から、突如として幾本もの″蔓″が飛び出してきたのだ。その蔓は伸び、互いに絡み合い融合し、やがて元の腕を完全に復元する。さらに変化は止まらず、

 

 腕から肩へ、頭部へ、全体へ。そして青から紅へ。

 

  直線的だったフォルムは、所々歪み捻じれ、重なり合い肥大し、禍々しいものへと変わる。

 

「───ッハハ、ッアッハハハハッ、フハハッハッハッハッハ!!!」

 

  男は笑う。 ただ笑う。狂気的に叫びにも似た声で笑い続ける。 その変貌に、その様にアクセルは悪寒を感じ思わず後ずさる。

  全長が100mを超えたところで変貌は止まった。が、そこに立っていたのは、ゲシュペンストMk-Ⅲともましてや特機とも程遠い存在だった。

 その姿を例えるなら、

 

 

 ─────“化物”

 

 

  異形にアクセルは忌々しく吐き捨て、巨大化した“Mk-Ⅲだったもの”を睨む。

 

「それが...そんなものが、貴様が手にした力か! 狼と言うよりは外道に過ぎるぞ...“ベーオウルフ”!!」

 

「...お前たちは、純粋な生物になり得ん。俺がァ...そう! 俺こそがッ!!」

 

  言い終わる間もなく、鬼面の様な胸部カバーが開き黄色いコアが露出する。そのコアが光り一拍置いた瞬間、轟音と共に大出力の光線が発射される。

 

「っ...! 当たってはやれん!」

 

  モニター一面が白一色に染まっていく中、間一髪でアクセルは回避する。しかし、その威力は凄まじく、脇腹の装甲に掠っただけでソウルゲインを弾き飛ばし、背後にあった搬入口が見る間に溶解し、爆散する。

 

「クッ、搬入口が!」

 

  背後で再び振り返った先には、既にベーオウルフはチャージをし始め、再びコアに粒子が集まりだしていた。平外見は静を保っているものの、アクセルには十分過ぎるインパクトを与えいたのだ。

 

「あのまま奴が力を得れば俺たちにとって脅威...いや、それ以上に成りかねん。今ここで奴を倒すしかない...!」

 

 モニターに表示されたタイマーは、刻一刻と残り時間を刻む。その時間は余りにも少なかった。

 

「残り時間は127秒...やれるか、俺に?」

 

  約2分の決着。どちらにしろ退路は既になくなっている。あるのは前進のみ。アクセルは覚悟を固める。

 

「認証コードOK、起爆時間セット。タイムラグは...わずか5秒。......ただの博打だなぁ、コイツは」

 

  見ればちょうどチャージが終わったらしく、コアが赤く輝きだす。

 

「さぁ、決着(ショーダウン)だッ!」

 

「...、静寂を乱す者...修正スル!」

 

  男は歪んだ笑みを浮かべトリガーを弾く。

  その僅かな瞬間、エネルギーが収束し放出するまでの隙間を狙い、アクセルは勝負に出た。

 

「よく狙え、ベーオウルフ!」

 

 

 Time limit:

 ──126,51s。

 

 

  ソウルゲインが跳躍し、その下を大出力の光線が焼き付くす。ベーオウルフは空に舞い上がった獲物を追い放出したままの光線を強引に射線を上げる。目下が再び赤く染まる中、臆することなくアクセルは一直線に加速する。

 

「奈落へ落ちろぉぉぉッ!」

 

  下から迫る光線を紙一重で掻い潜り、ソウルゲインはがら空きになった懐に組み付きブースターの出力を上げる。

 

「グォォ!?」

 

  先程破壊され瓦礫となった搬入口を突き破り、地下格納庫にベーオウルフは叩き落とされる。

 

「ぐっ......? 何も、ナイ、だと...。静寂を乱す方舟は、ドコに!」

 

  よろめきながら立ち上がったベーオウルフは、対象がない事に気付き動揺する。そんな彼にアクセルの声が飛んでくる。

 

「転移したのさ」

 

「転、移だト......?」

 

「そうだ」

 

「!!」

 

  我に返り、声のする方に見上げれば、大きく空いた穴の縁でソウルゲインが見下ろしていた。

  その姿は背後に映る月と重なり、罪人に天罰を下す審判者 、はたまた魂を狩りに来た死神であった。

 そして彼は告げる。

 

「そして俺も行く、新たなフロンティアに。......だが、貴様のような化け物を野放しにするわけにもいかん!」

 

  両拳を合わせた瞬間全てのクリスタルのパーツが輝き、全身から蒼炎の様にエネルギーが溢れ出す。

 

 

 ──090,57s。

 

 

「ここで潰えるんだな、これがなっ!」

 

「っ……!」

 

  跳躍と同時に青龍鱗の連射を浴びせ、着弾で爆風が広がりその中にソウルゲインは突撃する。

 煙が立つ中で幾つもの打撃音が響き、火花が散り、そこからベーオウルフが蹴り飛ばされ空中に高く吹き飛ぶ。男が顔を上げた時には目の前に爆風を突き破ったソウルゲインが大きく映し出されていた。

 

「はあッ! でぇいいッ!」

 

  態勢の崩れたところを、縦横無尽に殴り、蹴り、削り、潰し、弾き飛ばす。怒涛の攻撃が加速し、更に激しさと破壊が増す。

 

「うおおおッ!!」

 

「ッッ!?」

 

  膝蹴りをもろに受け、仰け反ったベーオウルフの顔面にエネルギーを纏ったソウルゲインの拳がめり込む。

 

「...ッッ、全弾モッテイケェッ!!」

 

  しかし、ベーオウルフと言えど攻撃を受けるばかりではない。 吹き飛ばされながらも地面を削り飛ばし踏みとどまり、接近するソウルゲインに向けて両肩から大量のベアリング弾を浴びせる。一発一発が相当な威力を持つ特殊弾がソウルゲインの頭部に、肩に、体中に突き刺さる。

 

「っ…...リミット解除。コード...麒麟(きりん)!!」

 

  それでもアクセルは止まらない。誰にも止められない。

 コックピット内で小爆発が起き飛び散った破片が頭部に当たり出血し右目に入るが、それを何の事なく大きく見開き、逆に睨み付ける。

 

 

 ──045,73s。

 

 

「ソウルゲインよ……。...俺を、俺を勝たせてくれぇぇぇッッ!!!」

 

  弾丸の嵐を抜け、アクセルは渾身の一撃を狙う。ソウルゲインはそれに呼応し、エネルギーを纏い長く鋭利になった肘のブレードを振り上げ

 

「でぇぃぃぃやっ!!」

 

 袈裟懸けに切り裂く。

 

「グアァァッ!!」

 

  ベーオウルフの背後にアクセルは着地するが、疲労がピークに達し膝を突いてしまう。振り返ったその顔には反して笑みが浮かんでいた。

 

 

 ──025,37s。

 

 

「ベーオウルフ...。俺の...勝ちだ!」

 

  瞬間、彼を囲む四つの装置が円形に陣を描き青白く光り出す。研究所地下に設置された転移装置が作動したのだ。

 

 ───ベーオウルフ、今回の賭けは俺が貰っていくぞ

 

「俺はこの世界と決別すると言った。貴様はそこで吼えていろ...リュケイオスが燃え尽きる、業火の中で!!」

 

「ッッ、アクセルゥゥ、アルマァッッ!!!」

 

  状況を理解し、ベーオウルフは悪鬼の如き形相でアクセルに迫る。それを持ち前の不適な笑みでアクセルは返す。

 

「行き掛けの駄賃だ。貰っていくぞ、」

 

  ベーオウルフが握り潰そうと両腕をソウルゲインに伸ばしてくる。

 

「貴様の首をなぁッ!」

 

  両手を腰だめに、手の中で最大にまで溜め込まれたエネルギーが渦巻く。

 

「キョウスケッ、ナンブゥゥウッ!!」

 

  それを眼前にまで迫ってきている宿敵に全力でに放つ。

 

「砕けぇッ!黄龍鱗(こうりゅうりん)!!」

 

  螺旋を纏った白いビームが突き出したベーオウルフの手を破壊し、剥き出しになったコアに直撃する。

 

「グハァッ!?」

 

  撃破には至らなかったが、胸部から煙を上げベーオウルフを転移装置から離すことはできた。

 同時に転移装置の輝きが増し光がソウルゲインを包むと、一瞬でその場から消え去る。ベーオウルフが慌てて立ち上がった時には、目の前には僅かな光の粒子が名残惜しく残っているだけだった。

 

 

 ──000,00s。

 

 

  セットされていた自爆装置が作動し、地下ドックの各所で炎が吹き、振動が激しくなる。

 

「ッッオオオオォォオオッ!!!」

 

  対象を目の前で取り逃し、今まさにその身を業火で焼かれようとしているベーオウルフ、キョウスケ・ナンブはただ叫ぶしか出来なかった。その叫びがえ

 

  そして一度大きく振動した瞬間白く光り大爆発のエネルギーが全てを消し飛ばし、暗かった夜空を赤く染め上げる。

 

 

 

 

 ───一つの決着が終わりを告げた。

 

 静寂に戻った世界は繰り返す。

 

 闘争が始まる前の日常を。変化/進歩のない日常を。

 

 

 しかし……この闘争が未だ始まったばかりだという事に、誰も知ることはなかった。

 

 




感想・批評お待ちしております!


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プロローグ(A編)

スパロボお馴染みのプロローグ。どぞ!


 

 

 

 

  ――――宇宙暦0XXX年。

 

 

 

 

地球圏は未曾有の危機に瀕していた。

 

  地球からもっとも遠く離れたコロニー“サイド

3”が“ジオン公国”と名乗り、連邦政府と開戦した

「一年戦争」

 

  そして、その数年後に起きた大戦

 

「グリプス戦役」。

 

 

  さらに時を同じくして、

 

Dr.ヘル率いる機械獣軍団、恐竜帝国、妖魔帝国など地球内からの侵略が同時的に勃発した。

 

 

が、当時の連邦の最強部隊「ホワイトベース隊」と、日本のスーパーロボットなどの民間協力者たちの活躍によりこれら敵対勢力を撃退。

 

 

 しかし、その翌年。突如異世界より東京に襲来した「MU」に対し、地球連邦政府はやむなく攻撃を敢行。

 

 その結果、「MU」は東京全体を木星状の閉鎖空間「TOKYO JUPITER」に包んでしまった。

 

 それ以来、「MU」の行動を、「TOKYO JUPITER」の中を知る者はいなかった。

 

 直後に発生した南極への巨大隕石落下事件「セカンドインパクト」。この事件で人口は大きく激減し、

 

 疲弊していた人類は大きな痛手を受けることになった。

 

 

 それから3年後、人類は少しずつ以前の暮らしを取り戻していった。

 

 テラフォーミングによる火星開拓の再開、大戦や災害による爪痕も徐々に癒され、

 

 いまだ問題はあるものの、地球圏の復興、発展は急速に進められ

 

 束の間の平穏を人類はようやく手にしたと思われた。

 

 

 ここで、ある転機となる事件が起こる。

 

 母星を失い、流浪の民となっていたバーム星人が地球への移民を求め、和平交渉に臨んできたのである。

 

 コロニー国家への受け入れ、

 なにより状況的に余裕のあった地球連邦政府は、

 

 バーム星人との和平会談に応じることを快諾する。

 

 

 だが、

 

 

 バーム星人との和平会談は

 

 

 

「和平派代表の暗殺」

 

 

 

 という最悪の結果で決裂...戦争状態に突入してしまう。

 

 

  その戦乱に呼応するように、

 

 火星開拓都市は正体不明の敵による突然の襲撃で壊滅的な打撃を被り、

 

 地球では、なりを潜めていたミケーネ帝国と百鬼帝国の侵攻が再開された。

 

 

 こうして…地球は再び戦火の炎に彩られることとなる。

 

 急速な事態の変化に、

 弛緩しきっていた連邦政府が対応できる筈もなかった。

 

  ただ一つ、

 地球連邦軍第13独立部隊

 …通称『ロンド・ベル隊』を除いて。

 

 

 だが...ロンド・ベル隊は、

 戦乱の裏に隠された真実を

 

「極めて近く、そして限りなく遠い世界」

 

からの訪問者たちにその時、気づく筈もなかった。

 

 

大戦の火種に息を吹きかけたが、

 

 

 

『彼ら』だということにも...

 

 

 

 

 舞台の序幕は、地球-光子力研究所。

 

 

 …物語はここから始まる。

 

 

 

 

 




小事情によりプロローグと第零話の順番を逆にしました。
読んでいた方には突然の変更で、大変申し訳ありません。
内容に変化はありませんので、そのまま読み進めて大丈夫です。

後次回から、前回のように次回以降前書きと後書きを偶に入れていきます!
キャラ崩壊は...大目に見てください(焦)なるべく原作に合わせる様に努力します。
感想や修正点などありましたら、いつでもお待ちしてます!


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シーンⅠ『地上』
第一話 「堕ちてきた男・上」


読者の方々、お待たせして大変申し訳ありません!
活動報告にも載せた通り、試験があり、その分更新が遅くなりました。
しかぁし、もはや作者を止めるものはいないので、これからガンガン書き進めていく...予定です。まぁ、こんな若輩者ですが、頑張っていきます!

ではでは、本編開始ぃぃ!!


 

 

 

 

 

 

―日本・光子力研究所―

 

 

 

 

  研究所内は騒然となっていた。

 

 暗黒大将軍率いる戦闘獣の軍勢がこの研究所に迫ってきているからだ。

 

  汚水処理施設の下にあるハンガーでは、マジンガーZの出撃作業が開始されている。

 普段は、屋外で装着するはずのジェットスクランダーも今回は急を要するため、

 このハンガー内で取り付け作業に入っている。

 

  兜甲児も自機のコクピット内で、システムチェックに専念していた。出撃まで僅かに時間があるものの、相手が相手なだけにその手は世話しなくコンソールの上を動いていた。と脇のモニターに通信が入り、弓教授が映し出される。

 

『すまん甲児くん。かなりの数を相手にするだろう。さやか達もすぐに出る。

 激戦になると思うが、頑張ってくれたまえ』

 

「わかっています。研究所には指一本触れさせませんよ!」

 

『マジンガーの出撃準備完了しました!』

 

 背後の研究員の言葉にハンガー内にアラートが鳴り響く。

 

『後、科学要塞研究所の兜博士から通信があった。グレートの方も準備が終わり次第向かわすと』

 

「へっ、大丈夫ですよ!鉄也さんたちが来るまでもないですよ」

 

『…無理だけはしないでくれ、甲児くん』

 

  通信が切れ、マジンガーが射出口の下に移動される。

 

『除水完了、上部ハッチ開放します』

 

  天井のハッチが開き、太陽の光が差し込み黒い機体を照らす。エレベータ式の台座が起動し、マジンガーの雄姿を晴天の下に押し上げる。

 

「いくぜ、マジンガーZ! マジィィン・ゴーッ!!」

 

  スクランダーの二機の光子力エンジンが唸り、マジンガーが空高く飛翔する。

 

  鉄の城は今日も、紅蓮の翼と共に羽ばたいた。大切な者たちを守るために―――。

 

 

 

 

 

 第一話 アクセル『堕ちてきた男』

 

 

 

 

 

  飛び立って数分後。研究所から通信が入り、甲児は回線を開く。

 

『甲児くん。今入った情報なのだが、君が向かっている方向で爆発が確認された。おそらく何者かが大将軍と戦っているみたいだ』

 

「なんですって!? 一体誰が...」

 

『わからない。鉄也くんはまだ出撃していないから、あるいは...』

 

「未確認機、ということですか?」

 

『恐らくではあるが…くれぐれも気を付けてくれ』

 

「了解ッ!」

 

 目的地に向けてマジンガーは加速する。

 間もなくして目標地点に到着すると、既に辺りには数機の戦闘獣の残骸が散らばっていた。

 

 その内の一機にマジンガーの足が止まる。

 その一機は削られた様に胸部に大穴が開き、頭部は根元から引き千切られて無くなっていた。

 

「まるでドリルプレッシャーでやられたみたいだな...」

 

『甲児くん!』『兜!』

 

 開いた通信越しに聞きなれた声が響き、甲児が振り返ると二体のロボット-ダイアナンAとボスボロットが近付いて来ていた。

 

「さやかさん!それにボス!」

 

 幼馴染2人に甲児は声を上げる。

 

「やっと追いつけたわ」

 

「ったく、俺たちを置いていくったぁ、どういうことだわさ!」

 

「へへへ、わりぃわりぃ二人とも」

 

「...にしても、これは」

 

 落ち着いたところで、さやかが辺りの惨状に言葉を無くす。

 

「すげー、どうやったらこうなるだわさ?」

 

「俺も考えていたところなんだ。まるで…」

 

 甲児に一瞬心当たりを思いたった、瞬間。

 激しい震動ともに爆発音が周辺に響き渡る。

 

「爆発!? この向こうか!」

 

 振り向くと確かに山一つ向こうから黒煙が立ち上っていた。

 再びブースターを噴かし、急いで目的地に向かう。

 

「甲児くん!?」「お、おい、兜!」

 

 さやか達の制止を聞かず、スクランダーで山を越え一気に開けた視界の先に、そのロボットはいた。

 

  全長はマジンガーを遥かに超え、所々のスマートさがより人間に近いフォルムを出していた。

 

 当然甲児はそんなものを見たことも聞いたことも無い。

 その動きは見た目に反して軽快で、並み居る戦闘獣を蹴散らしていた。

 

 撃、蹴、跳、殴、弾、避、捌、逸。

 

 それらの動作は一端の曇りも無く、鮮やかにまるで舞のようだった。

 故に、甲児は確信した。

 

 

 ――――あれは、ただ者では無いと。

 

 僅かな間動きに見とれていると、戦いの流れに変化が生じる。

 

 一瞬の隙を衝かれ、ギランに蒼いロボットは防戦に追い込まれてしまう。

 さらに背後からもう一機のギランが迫り、挟撃を掛ける。

 

 第三者が見れば目を背ける状況を、甲児が、マジンガーが見逃す筈がない。

 

「飛ばせっ鉄拳!ロケットパァァァンチッ!!」

 

 マジンガーから放たれた腕がギランを大きく吹き飛ばし、引き離す。

 

 その隙に蒼いロボットも反撃し、距離を置く。

 甲児も横に並び立ち、目の前にいる敵を睨み付ける。

 

「大勢で一人を攻めるったぁ、てめぇらしい趣味だなぁ!暗黒大将軍!」

 

 空に浮かぶ大要塞デモニカの主、暗黒大将軍は苦虫を潰すように顔を歪ませる。

 

「おのれぇ…やはり貴様かっ!兜甲児、マジンガーZ!」

 

「あったりめぇだっ!手前らが悪事を働く限り、俺とマジンガーが何度でも食い止めてやるぜ!」

 

 暗黒大将軍の地獄の底から響く様な声に、お返しとばかりに甲児は声を張り上げる。

 

「あれが…マジンガー、Z…」

 

 その様子を蒼いロボット―ソウルゲインのコクピットの中で、赤毛のパイロット―アクセル・アルマーは誰にとも無く呟く。

 

 

 己を無くせし者と魔神の一人との邂逅の瞬間だった。

 

 

 




第二話 アクセル「堕ちてきた男・下」に続く!

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第二話 「堕ちてきた男・下」

ども、インフルにかかってグロッキーだったクリス=ヴェクターです。やっと、原作一話終了間際です。・・・・・・こんな感じですが、頑張っていきます!


 

 

 

 

――数分前。

 

 

「うぅ………レモ、ン…。ん……俺は?」

 

 アクセルは眼を覚ます。開いた目蓋が重く感じる。意識が朦朧とし、霧の中にいる気分だった。

 

(俺は、何を――――っ!)

 

 記憶を辿ろうとした瞬間、酷い頭痛がアクセルを襲う。

 

「~~っ!?」

 

 荒い呼吸を繰り返し、頭を抑える。

 僅かに痛みが治まってきた。

 

「はぁ……はぁ……駄目だ、思い出せん。そもそも、俺は………」

 

 そこで、アクセルはハッと気が付く。

 

 

「俺は……………誰だ?」

 

 

「(おいおい、嘘だろ...。)ちっ。記憶喪失って奴か、これが……」

 

 自身に関する記憶がまったく思い出せず、焦りが否でも感じ取れる。

 

「落ち着け、まず………どうやらここはコクピットの中みたいだな。 ……なら俺はこの人型兵器のパイロット、ってところか?」

 

 フルスクリーンに表示されたモニターを操作し、情報を引き出す。

 

 と、一つのウィンドウににロボットの全体像と各部詳細が映し出される。

 

「機体名『ソウルゲイン』それがコイツの名か……。素手による近接戦闘主体の特機。 ……ん?」

 

 アクセルの目があるウィンドウに止まる。

 

「搭乗者『アクセル・アルマー』……ってことは、アクセルというのか、俺は?」

 

 腕を組んで悩むが、いまいち要領を得ない状況が続く。

 

 

 《Beep!Beep!Beep!》

 

「っ!」

 

 突然コクピットにアラートが鳴り響き、アクセルを現実に引き戻す。

 

 表示されたレーダーには、上空から接近するものを告げる。

 

 アクセルが見上げると、雲を掻き分けて-アクセルが知る由もないが-大型移動要塞“デモニカ”が姿を現し、目の前に降下する。

 

「何だ・・・・・・ありゃ?」

 

 アクセルが呆然としていると、外部マイクがデモニカから音声を拾う。

 

『あれだな。情報にあった戦闘ロボットというのは』

 

 モニターがデモニカの上部甲板を、そこに立っている者を映し出す。

 その風貌は鬼か悪魔に黒い西洋甲冑を着せたようなもので、見るものを圧倒させる雰囲気を持っていた。

 

 アクセルは回線を開き、目の前に君臨する者に尋ねる。

 

「誰だい、アンタ?」

 

 その問いに、男は豪快に笑い返答する。

 

『クククッ。我の名を知らぬ奴がまだこの地にいるとは、愉快愉快! ならば聞けぃ! 我が名は暗黒大将軍。いずれ世界を我がものにする者だ!』

 

「・・・・・・暗黒大将軍ねぇ、風体に見合った名だことで。んで?そんな大将軍様がこの俺に何の御用で?」

 

『そのロボットをこちらによこせ。素直に渡せば痛い思いをする事はないぞ』

 

「あっそう。・・・なら断らせて貰うぜ」

 

 アクセルは迷うことなく暗黒大将軍の問いを切り捨てる。暗黒大将軍が「ほぅ」と口角をつり上げる。

 

「なんせ、コイツは俺の記憶の手がかりなんでなぁ」

 

 そう言うとソウルゲインを立ち上がらせる。

 

『そんな状態で我らに挑むか・・・・・・まあいい、多少傷ついても構わん。行けい、戦闘獣ども!』

 

 暗黒大将軍の号令の下、デモニカの下部ハッチから“戦闘獣ドガイダー”“戦闘獣ギラン”数十機降りてくる。

 

「燃料チェック・・・けっこう消費してるな。・・・・・・機体損傷、小破。自動修復開始、DMS、DALRS正常作動。全然動けそうだな、こいつは」

 

 無意識の内に慣れた手付きで機体コンディションを確認し、次々とシステムを立ち上げていく。

 

 ソウルゲインのツインアイが光り、破損箇所が時間を戻す様に元の形に戻って行く。

 

(戦うしかなかろう。・・・・・・只で済む雰囲気でも無さそうだしな。数の不利は否めないが・・・・・・・・・)

 

 前から迫って来ている敵に向けられた目には、恐怖も自棄もなく、闘志が宿っていた。

 

「俺はやれそうな気がするだよなぁ、これが!」

 

『クァッハッハハハハ!! 面白い! 回収ついでに、お前を血祭りにしてくれる』

 

 暗黒大将軍がブレードを振り上げ、戦いの火蓋を切る。

 

 それを合図に戦闘獣が雄叫びを上げながら迫る。

 

「(操作方法は・・・・・・いけるな。 武装は“青龍鱗”“光龍鱗”“白虎咬”“玄武鋼弾”他はロックされてるが・・・・・・十分だな)まっ、やってやりますか」

 

 アクセルの動きに同調し、ソウルゲインもファインティングポーズをとる。

 

 手始めに近くにいた二機をマークする。

 

 その内の一機に狙いを着け、助走からの胴回し回転蹴りを顔面に見舞う。

 

 そのまま蹴り落とさず、顔面を足場にソウルゲインをバク転。踏み台にされたドガイダーはバランスを崩し、仰向けに倒れる。

 

 空中で体操選手よろしく回転し、ソウルゲインはもう一体の背後に着地。

 

 右腕のドリルで刺そうと振り向いた瞬間、届くよりも速く、ソウルゲインの左腕が下から相手の頭部を撃つ。

 

 大きくぐらつく所に更に、右左と容赦なく拳の連弾。さらに飛び回し蹴りを喰らわせ、大きく弾き飛ばす。

 

 ドガイダーが落ちるよりも早く、アクセルが動く。

 

 ブースターとダッシュで生まれる爆発的なスピードを生かし一気に距離を詰める。開いた両手は溜めた気がエネルギーに変換され、青く光る。

 

 「喰らえ!白虎咬っ!」

 

 がら空きになった懐に両手のエネルギーを一つにして叩きつける。

 

 《轟っ!!》とエネルギーは装甲に炸裂し、抉り、内部パーツを蹂躙し吹き飛ばす。ドガイダーは空中で四散、爆発。

 

 「まずは一機!」

 

 アクセルがもう一体の方に振り返るのと同時に、周辺にミサイルが着弾する。

 

 「おわっ、と!」

 

 爆風で煽られる機体をバックステップで後退させる。

 

 見ると、先程横転させたドガイダーが起き上がり、左腕の三連ミサイルランチャーで牽制していた。

 

 「へっ、成るように成らねぇ!」

 

 腕を腰まで引き、力を溜めるアクセル。

 

 ソウルゲインも合わせて腕を引き、手首から下が高速で回転する。

 

 「ロケットソウルパンチッ! ってな!」

 

 腕を大きく振りかぶり、ストレートパンチの要領で打ち出す。

 

 弾丸さながらソウルゲインの腕が飛び、ミサイルを吹き飛ばし、ドガイダーの左腕に叩き込まれ、引きちぎる。

 

 後ろに倒れそうになる体を前に踏ん張り、突撃しようとしたドガイダーの目に握り拳が大きく映る。

 

 ドガイダーのカメラが映したのはここまでだった。

 

 後から撃ち出された左腕は顔面にめり込み、数瞬抵抗を受けるが、あっという間に突き進み貫通する。向こう側がはっきりと見える位空いた穴はスパークを散らし、内部から火が噴き爆発する。

 

 「続いて二機目っ!」

 

 爆発の炎をモニターに照らしながら、アクセルは次の相手に目を移す。

 

 そこに炎を突き破って、ブレードを振り上げ、ギランが突撃して来る。と、咄嗟に反射的に腕をクロスさせ、ブレードを防ぐ

 

(しくじった!)

 

 敵は二機だけじゃない。恐らく、ドガイダーの相手をしている内に接近されていたのだろう。

 

(ちっ、こんな初歩的なミスするなんてな、彼奴に笑われちまうな。・・・・・・ん?奴って誰だ?)

 

 思考を打ち消す様にアラートが横入りする。

 首だけを動かすと、アクセルの一瞬の隙を付き二機目のギランが背後から襲い掛かって来る。

 

(コイツは不味いなぁ…)

 

 いくらソウルゲインの装甲が分厚いと言っても、無防備な状態ではどこまで保つか分からない。

それに、今自分は目の前の敵の攻撃を受け止めている状態でもう片方を防ぐには難しい。

 

 アクセルが被弾する覚悟をした瞬間。

 

 〈ロケットパァァァンチッ!〉

 

 突如、ギランが視界から消える。

 

 「なんだっ!? ……! ふッ」

 

 突然の出来事に驚くが、すぐさま持ち直し、ギランに反撃する。

 

 受け止めていた腕を一瞬緩めた為、相手が前につんのめった所に掌打を叩き込む。

 開いた手から青いエネルギーが溢れる。

 

 「ゼロ距離ウロコ砲!」

 

 二機の間でエネルギーが弾ける寸前、ギランを押し飛ばす。撃破までには至らないが、当分の間は動けない程のダメージは受けた筈だ。

 

 「大勢で攻めるったぁ、てめぇらしい趣味だなぁ!暗黒大将軍!」

 

 降下してきたロボットに、アクセルの記憶が刺激される。

 

 大きさはソウルゲインより一回り小さいが、微塵にも思わせない程の力強さを感じさせる。

 

 その姿は黒を基調とし、胸には一対の赤いプレートが着けられ、背中からは紅いウィングが出ていた。

 

 その顔は大魔神をおもわせる風貌だが、恐怖が湧く所か逆に安心感を与えるものだった。

 

 

 そんな彼を、人々は“黒鉄の城”と呼ぶ。

 

 そして、その名は…!

 

 『おのれぇ…やはり貴様らかっ!マジンガーZ!兜甲児!』

 

 「あったり前だ!手前らが悪事を働く限り、俺とマジンガーが何度でも食い止めてやるぜ!」

 

 頭部のパイルダーからマジンガーZのパイロット、兜甲児が暗黒大将軍に向けて声を張り上げる。

 

 

 

 

 

 

 第二話 アクセル「堕ちてきた男・下」

 

 

 

 

 ーーーーー現在。

 

 

 

 

「あれが...マジンガー、Z (なんだ?...見たこと、ないのに?)」

 

 記憶がないはずの自分の中で、どこか懐かしいもの感じてしまっていた事に、アクセルは戸惑ってしまう。

 

 『ええい、うっとおしい奴め! 戦闘ロボットの回収は後回しだ! 覚悟しろ、兜甲児!』

 

 暗黒大将軍の声と共に、突然の介入者に動きを止めていた戦闘獣が向かって来る

 

 「そこの見かけないロボット無事か!?」

 

 送られてきた音声に、アクセルは周波数を合わして、プライベート通信に変える

 

 「ああ、なんとかな」

 

 「俺の名は兜甲児。あんたの名は?」

 

 「名前は......多分、アクセルと言うらしい。まぁ取り敢えず、そう呼んでくれ」 

 

 「た、たぶんって...大丈夫なのか?」

 

 「何をごちゃごちゃと! たかがマジンガーZ一機増えただけだ! 捻り潰してしまえ!」

 

 暗黒大将軍の怒声が空間を揺るがし、戦闘獣が目前まで迫る。

 

 「大丈夫かどうかは別として、奴さんら、お待ちかねみたいだぜ?」

 

 「あ、ああ。それじゃあアクセルさん。俺の後に続いて、左側を攻めてくれ!」

 

 「おう、まかされた!」

 

 交わされた言葉は少ない。しかし甲児には、不思議とアクセルを信じる事ができた。

 

 彼の人柄がそうさせるのか、色々気になる点はあるが今考えることではないと、甲児は頭を振り思考の外に追いやり目の前の事に集中する。

 

 そして、2機のスーパーロボットが大地を蹴り、敵陣に飛び込む。

 対する戦闘獣は倍の10機。

 

 第三者の目からしたら、絶望的としか言えない状況の中、突如、嵐が巻き起こる

 

 マジンガーZがロケットパンチで敵の一機を吹き飛ばし、マジンガーの後ろに迫る敵をソウルゲインが光龍鱗で多数を凪払う。

 ソウルゲインが將弧角で素早く切り裂くと、入れ替わりにマジンガーがその箇所からスクランダーカッターで分断し、撃破する。

 

 互いの隙をカバーしあい、敵を一切寄せ付けない。

 

 まだ、会って僅かしか経っていないにもかかわらず、見事な連携に仕上がっていた。

 次々と倒されていく戦闘獣に暗黒大将軍の表情に動揺が現れる。

 

 「やるじゃん、アクセルさん!」

 

 「そう言う甲児こ、そ……ッ、ぐぅッ」

 

 このまま暗黒大将軍にまで迫ろうとした途端、ソウルゲインの動作が鈍くなり、遂には膝を着いてしまう。

 通信越しにくぐもった声が聞こえ、コックピット内ではアクセルの額から大量に出血がしていた。

 

 「アクセルさん! おわっ」

 

 助けに入ろうと、駆けつけたマジンガーの目の前でミサイルが着弾し、爆発が起きる。

 

 「く、くっそぅ。これじゃ近づけやしねぇ」

 

 両腕をクロスし爆風に耐えたものの、マジンガーをその場に釘付けにされ、甲児は忌々しく呟く。

 

 『今だ! あのロボットを確保しろ!』

 

 その好機を暗黒大将軍が見逃す筈がなかった。

 

 「やべぇ! アクセルさん、立って、たってくれ!」

 

 甲児が通信で呼びかけるも無音が返ってくるだけだった。そんな甲児の所にも数体の戦闘獣が迫り来る。

 

 「...っ、邪魔すんじゃねぇっ! ルストハリケェェーンッ!!」

 

 強酸が混じった轟風が戦闘獣に襲いかかり、ものの数秒でただの鉄屑に変える。

 が、しかし。足止めをされるには十分な時間だった。

 見ればソウルゲインの両脇を二機の戦闘獣が押さえ込んでいた。

 

 「ぐっ...うう」

 

 アクセルも振り解こうと抵抗するが、朦朧とする意識の所為で上手く動かせない。

 

 ーーーー間に合わない。

 

 そう感じた甲児の視界がふと暗くなる

 見上げると、先程まで晴れていた空は曇天に変わり、黒く渦巻いていた。

 

 

 そして

 

 

 〈サンダァーブレェェェクッ!〉

 

 

 渦の中心から轟音と共に二筋の雷光が光り、ソウルゲインを押さえていた戦闘獣に電撃が直撃する。

 よく見ると戦闘獣の背中にそれぞれ一本ずつブレードが突き刺さっていた。電撃はそれを避雷針代わりに内部に侵入。内部回路やシステムを容赦なく破壊し蹂躙する。

 

 結果、戦闘獣は紐の切れた操り人形よろしく、プツリとその場に崩れ落ちる。

 急いでソウルゲインの方へマジンガーを動かして、安否を確認すると、案の定無傷だった。

 

 偶然ではない。

 

 こんな人間離れした神業を平然とやってのける者を甲児は知っている。

 

 渦が広がり、暗闇の中、その中心に“彼”はいた。

 

 雷光がその姿を浮かびあげる。

 その姿はマジンガーZと似ているが、こちらは各所が鋭利に尖り攻撃的な雰囲気が出ている。

 

「鉄也さん!」

 

『ぬぅぅ、グレートマジンガー!剣鉄也か!』

 

 彼らの見上げた先にいる“偉大な勇者”は、雷雲を背に不適に笑う。その姿に再びアクセルの中にノイズが走る。

 

  (まただ、俺は)

 

「好き勝手できるのもそこまでだ、暗黒大将軍!」

 

『ほざけっ、剣鉄也! すぐにその首をとってくれるわっ!』

 

『待つのだ暗黒大将軍』

 

 口を歪ませ、宿敵を前にしていた暗黒大将軍に静止の声が入る。

 

『水を差す気かっ、地獄大元師!』

 

『いくら貴様と言えど、グレートにZ、それに未確認機を相手にするのは分が悪かろう。今は引いておくことだな』

 

『・・・・・・ふん、まあいい。剣鉄也! この勝負、いずれ決着をつけるぞ!』

 

 捨て台詞を残し、暗黒大将軍を乗せたデモニカは急速に戦域を離脱する。

 

「相変わらず逃げ足だけは早いな。・・・・・・それより無事か甲児くん?」

 

「へっ、鉄也さんが来なくても俺一人で何とかなってたぜ」

 

「・・・・・・Zと言えど万能じゃないんだ、無茶をされてはこちらが迷惑だ」

 

「出撃にもたついていたクセに、随分な事を言うじゃねか」

 

「甲児くん!」

「兜ぉ!」

「鉄也! そこまでよ!」

 

 一気に険悪なムードになった2人を、後から合流したさやかとボス、鉄也のパートナーの炎ジュンが止めに入る。

 

「さやかさん、ボス・・・」

 

「ジュン・・・」

 

 

 二人の魔神がお互いパートナーに注意されているのを、アクセルは呆れつつ、しかし、懐かしいものを見ているような気分だった。

 

 記憶がない筈の自分に懐かしさを感じさせる、このメンバーに、アクセルは興味が湧いた。それに彼らについて行けば、記憶が戻る可能性も高かった。

 

 そこまで考えたところで、アクセルの視界が暗転する。

 

(ーーーー血流しすぎたか)

 

「・・・・・・?・・・・・・!?・・・・・・・・・!」

 

「・・・!・・・・・・!・・・・・・」

 

 

 甲児たちの声が遠く聞こえる。

 

 

 

 そのまま、

 アクセルの意識は深い闇へと落ちていった..........。

 

 

 

 




感想・批評お待ちしております。

ではでは、クリス=ヴェクターでした!


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第三話 「インターミッション.Ⅰ」

大変お待たせしました!
今回は短めです。ではどうぞ!


 

 

 

 

 

―日本・科学要塞研究所―

 

 

「全員集まったな、彼・・・アクセル君の精密検査の結果が出た」

 

 研究所の司令塔に集まった、アクセルとボスを除くメンバーに所長の兜剣造が告げる。その事に甲児が身を乗り出して聞き返す。

 

「それで父さん、アクセルは・・・・・・」

 

「そのことだが、本当の記憶喪失で間違いない。検査際、頭部に裂傷が見られた。それが原因だろう」

 

「・・・・・・墜落時のショック、ですか?」

 

 鉄也が疑問にした事を言うと、剣造はそれを首肯する。

 

「うむ。戦闘前にだが、数秒間だけ大気圏から飛来するものをキャッチした、との報告がある」

 

「一応、連邦軍に連絡しておいたが・・・・・・」

 

 僅かに語尾を濁した剣造事、甲児は訝しげに聞く。

 

「何か気になる事でも? 父さん」

 

「軍の機密に触れるような機体だった場合・・・厄介事に巻き込まれる可能性がある、ということだ」

 

「「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」」

 

 剣造が言ったことに甲児達は、その意味に気付き黙ってしまう。

 

 良くて監視、悪くて軍にスーパーロボットを徴収されるかもしれないことに、管制室に沈黙が流れる。

 

 強大な悪から人々を守るために作られたスーパーロボットを戦争の道具にでもされてしまったら、元も子もない。それだけはあってはならない。

 

「でも、アクセルは一緒に戦ってくれたんだ。大丈夫だよ、お父さん」

 

 先の戦闘で共闘した甲児にはアクセルという人柄がわかる気がしていた。

 

 僅かな時間とは言え、自分達と似たモノを・・・大切な者の為に力を尽くす姿を彼から感じたからだ。

 そこに鉄也が口を挟む。

 

「………悪いが甲児くん。例えアイツが根っからの善人だったとしても、俺はそう易々と信じることは出来ない」

 

「な、何でだよ!」

 

 鉄也の発言に甲児は驚きながら聞き返す。

 

「簡単に信じるな、と言ってるんだ。俺達に接触したのも潜入するためだ、という可能性がある。仮に記憶喪失でもな」

 

「そこまで言わなくてもいいだろう!」

 

「……前から思っていたが、甲児くんは考えが甘過ぎる!」

 

 売り言葉に買い言葉。ヒートアップしていく2人の会話もとい、口喧嘩に、さやかとジュンが慌て仲裁に入る。

 

「・・・・・・ふぅ」

 

 その様子に剣造は一人溜息をつくのだった。

 前々から問題になっていた二人の仲に頭を悩ませていたのだ。

 

  (これは早めに、彼らと合流した方が良いのかもしれんな………)

 

「兜所長、アクセルを連れてきたぜ~」

 

 ドアがスライドし、ボスと包帯を巻いたアクセルが管制室に入って来る。自然、皆の注目が集まる。

 

「いや~、怪我治してもらって有難うございます! って、あれ……?」

 

 軽快な挨拶で入ってきたアクセルは、場の空気にたじろぐ。

 

 互いにいがみ合っていた甲児と鉄也はアクセルの登場と共に矛を納めているが、二人の周りがピリピリしているのが嫌でも判る。

 

「ゴホン……! ようこそ、アクセル君。私は兜剣造……ここの所長を務めている。そして、有難う……。君のお陰で町に被害が出ずに済んだよ」

 

 剣造が礼を言い、アクセルに頭を下げる。

 それにアクセルは慌てて手を振る。

 

「いえいえ!こっちとしては戦うのに必死でしたし……」

 

「はは、謙遜することはないよ。ああ、紹介しよう。

 会っていると思うが、私の息子 兜甲児だ。」

 

 苦笑しながら甲児たちをアクセルに紹介する。

 甲児がアクセルに寄り、片手を差し出し、アクセルも握手で返す。

 

「先はありがとな、アクセルさん!甲児って呼んでくれ」

 

「じゃあ改めて、記憶喪失のアクセル・アルマーだ。よろしくな甲児」

 

「ははは、こっちこそ! で、こっちがパートナーのさやかさんとボス」

 

「よろしく、アクセルさん」

 

「よろしくだぜ、アクセル!」

 

 甲児たちの自己紹介が終わったのを見計らい、ジュンが話に加わる。

 

「炎ジュンよ。で、こちらが鉄也」

 

「………………剣鉄也だ」

 

 ジュンが後ろでもたれている鉄也にも促す。

 当の本人は無言のままだったが、漸く言ったと思えば一言だけですぐに黙ってしまう。

 

「鉄也っ! ごめんなさい、最近彼様子が変のよ」

 

「……俺はいつも通りだ」

 

 静かに言う鉄也にジュンがピシャリと言い放つ。

 

「ウソ。何かあると直ぐ甲児君に突っ掛かって…鉄也らしくないわ」

 

「そうだぜ。俺が科学要塞研究所に通うようになった頃からだっけ?」

 

 ジュンの言葉に甲児も同意するが、鉄也はただ表情一つ変えず沈黙を貫くだけだった。

 

「にしても、所長さん…結構苦労されたようで」

 

「ん?この身体かね?ははは、今は気に入っているよ」

 

「……」

 

 袖から覗く両手の義手にアクセルが気付き、その事に剣造は笑いながら返す。

 

 その際鉄也が僅かに反応したのを、アクセルは見逃さなかった。が、何処か申し訳ない表情の鉄也にアクセルは出かかった言葉を飲み込んだ。

 

「そうだ、彼の乗ってきた機体について判明したことを簡単に説明しておこう」

 

「是非お願いします。あれが唯一の鍵みたいなんで…」

 

「とはいっても、ブラックボックスがあまりに多いのでな」

 

 手元のキーを操作し、画面にソウルゲインの立体図を映し出す。そこから詳細が幾つも枝分かれに表示される。

 

「コンピューター登録によると…型式番号EG-X・ソウルゲイン。登録制で彼れにしか操縦出来ないようになっているようだ」

 

「イージーエックス…登録制…?」

 

  (EG-X…EG-X…)

 

「アクセルくん?どうかしたの?」

 

 眉間に皺を寄せ、深く考えるアクセルにジュンが声を掛ける。それにアクセルは慌てて取り繕う。

 

「え?ああ、何でもないスよ、ジュンさん。さ、所長さん。どうぞ続きを」

 

「うむ、最近軍の方でも研究が進んでいるようだが…指紋や声紋などの個人情報で機体をロックし、特定のパ イロットしか動かすことができないのだよ」

 

「それが…ソウルゲイン?」

 

「登録制…う~む、わかんないな」

 

 一連の説明を聞いたメンバーは首を捻るが、一人鉄也だけがアクセルに対して目を細めて見ていた。

 

「一つだけ言えるのは、お前がどこかの組織の人間だということだ」

 

「なんでわかんだよ、鉄也さん」

 

「登録しなければ動かせないロボットを拾ったり盗んだりする事は出来んだろう…ということは、こいつをパイロットに登録したこと組織があるということだ。………少し頭を捻れば分かることだ、甲児くん」

 

 最後の言葉に、室内の面子は「またか……」と肩を落とす。案の定、甲児が鉄也に噛み付く。

 

「なんだよ、その言い方は!」

 

「やめなさい、2人とも!鉄也!」

 

「ありゃりゃ」

 

 再び乱れ出す空気に、剣造は咳払いをして二人を押し止め、話を進める。

 

「ゴホン!ここから私見だが、ソウルゲインは一撃離脱を目的とした強襲用の機体のようだ。装甲とパワーに重点が置かれている」

 

「要するに、力で押しまくる機体ってことだな」

 

 ボスの言葉に頷き、先の戦闘デモを画面に流す。映像に補足して剣造は説明を続ける。

 

「マジンガーのように腕を切り離して攻撃出来るようだ が、あくまで牽制程度の役割しか持っていないようだ。思想はマジンガーシリーズに近いと言えるだろう」

 

「ねえ、アクセルさん。ここまで聞いて、何か思い出したことは?」

 

「う~ん、感心して聞いていたが…心当たりはないんだな、これが」

 

 さやかの問いにやはり要領が掴めていなかった。

 

「ただ、原動力…エネルギーまわりが不明だ。基本は電力で動いているようだが…どうもパイロットの生体エネルギーも使っているらしいが…今の段階では何とも言えん」

 

「パイロットもロボットも謎だらけかよ、どういうこった」

 

 ジト目で見てくるボスに、やれやれとした表情のアクセルが答える。そこでふと思いだし剣造に向き直る。

 

「そう言われてもねえ。…あ、ところで所長さん。さっきの化け物みたいなやつら、説明してくれませんか?それに…敵はあいつらだけじゃない気がするんですけど…」

 

「わかった。一度まとめておこう。甲児、鉄也もよく聞いておいてくれ」

 

 

 

 

 

 ー??????ー

 

 

 

 地底深くにある基地の通路を暗黒大将軍は一人歩いていた。

 

 その表情は先の戦闘の失敗に苛ついている様に見えるが、僅かに口角が上がり、どこか愉悦感を醸し出していた。

 

「暗黒大将軍、例の機体の回収…失敗したそうだな」

 

 背後から掛けられた声に振り替えると、別の通路からーかつてDr.ヘルと呼ばれた男、地獄大元師が姿を現す。

 

「ふん…マジンガーどもの邪魔が入らなければ、成功していた」

 

「相変わらず負け惜しみだけは一人前だな。…だが、何かを得たようだな?」

 

 地獄大元師の言葉に暗黒大将軍は先程まで微かに浮かべていた笑みをますます深くする。

 

「クククッッ、久々に剣鉄也以外で血が騒いだわい。何より彼奴の力は、闘争のために磨かれたものと見た 。我好みのものだ」

 

「ほぅ……貴様が興味を持つ程とは、此方としても興味深いな。 ……だがいい加減、あrの文句も聞き飽きているところなのでな 」

 

 地獄大元師がここにはいない者を思い出し、深い溜め息をつく。そのセリフに暗黒大将軍も忌々しく吐き捨てる。

 

「あのヒステリー女か……くだらん。幾らでも喚かせておけばよい!」

 

 当分の頭痛の種を頭の隅に追いやり、二人はその場を後にした。

 

 

 

 

 

 ー日本・科学要塞研究所ー

 

 

 

「グラドス帝国と異星人? それに地底帝国だって?」

 

 聞き慣れない単語にアクセルは聞き返す。

 

「そうだ。地底帝国というのが…先程君たちが戦っていた相手だ」

 

「グラドス軍については、連邦軍も混乱している。情報提供者も消息が掴めていないらしいからな」

 

「確か火星や月の襲撃も奴らの仕業だって、専らな情報らしい」

 

「異星人とグラドス軍もそうだけどよ、俺は地底帝国…ミケーネの連中の方が厄介だ」

 

「それとよくないニュースだが…百鬼帝国との繋がりもあるらしいと、早乙女博士から聞いている」

 

「早乙女…ゲッターチームか」

 

 鉄也が旧メンバーの名を口にする。

 

「下駄? なんだそりゃ」

 

「“ゲッター”だよ、アクセルさん。俺たちの心強い味方だ」

 

 アクセルのボケに甲児は即座にツッコミを入れる。

 

「……一つずつ潰していきたいところだが」

 

「全く、敵が多すぎて頭がこんがらがりそうだわさ」

 

 その場全員の心情を代弁するボスの言葉に、未だ明らかになっていない敵、眼前に迫る脅威にメンバーそれぞれが重い表情をつくる。

 

 

「どっかから落ちてきて記憶を失った挙げ句にそこが激戦区か。…嫌になるな」

 

 

 先が思いやられると言わんばかりにアクセルは頭を掻き、波乱の幕開けを覚悟した。

 

 

 

 

 

 

 

 ………to be continue→

 




何故一万字どころか五千字にも届かないのか……

感想・批評お待ちしております。


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ー主人公設定ー

設定回でござる、の巻


《人物設定》

 

【氏名】アクセル・アルマー

 

【年齢】23歳

 

【種族】地球人

 

【所属】科学要塞研究所(現在)

 

【レベル】Lv.9(現在)

 

【精神コマンド】

・加速

・不屈

・??(後Lv.1upで解禁)

・??

・??

・??

・・・コマンドは原作Aのまま。初期段階なので御覧のラインナップ。

 

【特殊技能】

底力L1

援護攻撃L1

??????

カウンターL1

??????

・・・今作のアクセルの技能…なのだが、記憶喪失+初期段階の為現在の状態になります。原作Aでも良かったのですが、ヴァイサーガ向けなのでOG外伝を参考にしました。

 

【気力】105(標準値)

 

【エースボーナス】?????

 

【登場作品】スーパーロボット大戦A・バンプレオリ

 

 

《機体設定》

 

【名称】ソウルゲイン

 

【型式番号】EG-X

 

【分類】

・格闘用人型機動兵器

・スーパー系格闘機

 

【装甲】EG装甲

 

【機体サイズ】L

 

【パイロット】アクセル・アルマー

 

【特殊能力】

・体力回復(中)

・EN回復(小)

 

【固有技能】

・テスラ・ドライブ

・ダイレクト・アクション・リンク・システム

・ダイレクト・フィードバック・システム

 

【改造ボーナス】?????

 

【移動タイプ】空・陸

 

【武装】(威力順)

低・聳弧角

↑・青龍鱗

|・玄武剛弾

|・白虎咬

|・黄龍鱗

↓・舞朱雀(気力上昇時のみ使用可)

高・麒麟(現在使用不可)

 

・・・今作では原作Aに原作武装の聳弧角、オリジナル武装の黄龍鱗を解説したいと思います。

 

まず奬弧角は肘のブレードを変形して、それによる攻撃…トンファー攻撃、格闘戦をイメージして頂ければよろしいかと。

 

次に黄龍鱗は青龍鱗の強化版。

本来零話の最後で玄武剛弾をトドメにしようと思っていたのですが、それだと今後のストーリー上片腕だけになるのと代わりの青龍鱗では火力不足なのでオリジナル武装として出すことになりました。主に黄龍鱗は遠距離用、青龍鱗は中~近距離用になります。

 

比較すると、

【威力】青龍鱗<黄龍鱗

【範囲】青龍鱗<黄龍鱗

【連射性】青龍鱗>黄龍鱗

【クリティカル率】青龍鱗>黄龍鱗

【EN消費量】青龍鱗<黄龍鱗

【移動後】

・青龍鱗:使用可能

・黄龍鱗:使用不可能

【モーション】

・青龍鱗:片腕による砲撃、アイアンマンみたいな感じ。バリエーションが豊富で状況によって使い分ける

・黄龍鱗:か○は○波。 集束型の一択のみ

 

 

【登場作品】スーパーロボット大戦A・バンプレオリ

 

 

取り敢えずアクセルとソウルゲインの設定はこんな感じになります。ただ、ぶっちゃけたらボーナス系あんまり本編には関係ないんですよねー。

ラミアの設定も本編更新次第上げていきたいと思います。

 

 

《参戦作品・他設定》

 

・A編参戦作品(現在)

・マジンガーZ

・グレートマジンガー

・ゲッターロボ

・ゲッターロボG

・真ゲッターロボ(原作漫画版)

・勇者ライディーン

・銀河旋風ブライガー

・無敵超人ザンボット3

・無敵綱人ダイターン3

・超電磁ロボコンバトラーV

・超電磁マシーンボルテスV

・闘将ダイモス

・機動戦士ガンダム

・機動戦士Zガンダム

・機動戦士ZZガンダム

・機動戦士ガンダム 逆襲のシャア

・機動戦士ガンダム 第08MS小隊

・機動戦士ガンダム 0083 スターダスト・メモリー

・機動武闘伝Gガンダム

・新機動戦記ガンダムW Endless Walets

・蒼き流星SPTレイズナー

・機動戦艦ナデシコ

・バンプレストオリジナル

 

・本作の時系列

・スーパーロボット大戦A→スーパーロボット大戦MX

 

 

 

参考:

スパロボwiki-アクセル・アルマー

スパロボwiki-ソウルゲイン

Wikipedia-スーパーロボット大戦A




感想・批評お待ちしております!

ではでは、クリス=ヴェクターでした。


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第四話 「闘将と超闘士・上」

文字数伸びねェ………。

サブタイだけで分かる人いるかも。
では本編開始ッッ!



 

 

 

 

 

ー科学要塞研究所・格納庫―

 

 

 

「どういうつもりだよっ、鉄也さん!」

 

 甲児の怒声が広大な格納庫に響き渡る。

 

 アクセルが振り返った先には、コクピットから降りた甲児が鉄也にくってかかていた。

 

 原因は今から数時間前。

 

 アクセルが研究所に来てから数日。もともと悪かった二人の仲はますます悪化していた。

 というより、鉄也の一方的な態度に対して甲児が反発している状況が続いている。

 

 そして先の戦闘。

 

 暗黒大将軍率いる戦闘獣軍団と百鬼帝国の軍団、そして新たに現れたキャンベル星人なる異星人が、この研究所に襲撃してきたのだ。

 その際鉄也は独断専行し、それにより危うく研究所を危険に晒すところだった。

 

 既のところ、救援に駆けつけたゲッターチームの参戦により危機を逃れることに成功。その最中、この時の鉄也の姿にアクセルは、どこか焦りを感じているように見えた気がしていた。

 

 

 そして現在に至る。

 

 

「本当にどうしたんだ? あの二人」

 

「さあな、俺が来た時からあんな感じだったが・・・。確か・・・竜馬だったけ?」

 

 ソウルゲインの隣に固定された赤いスーパーロボットゲッターロボから降りた青年、流竜馬がアクセルの下に近づく。

 

「俺は流竜馬。よろしくなアクセルさん」

 

「こっちこそ。それとアクセルで構わないぜ、竜馬」

 

 二人が握手を交わしていると

 

「お前さんがそのロボットのパイロットかい」

 

「さっきの戦闘見てたが、すごかったぜ!」

 

 ゲッターロボから新たに降りてきた二人の男性が話に加わって来る。

 

「竜馬、彼らも?」

 

「ああ、ゲッターチームのメンバーだ」

 

「神隼人だ。よろしく頼むぜアクセルさんよ」

 

「オイラは巴武蔵。よろしくだぜ!」

 

 それぞれ紹介が終わったところに甲児が駆け寄って来る。

 

「リョウくん!」

 

「甲児くん。久し振りだね」

 

「あの時から結構すぎたからな~」

 

 その後チームの紅一点ミチルも加わり、旧友との再会を喜びつつ互いの情報を伝えながら、アクセル達は司令室に向かった。

 

 

 

 

 ー科学要塞研究所・管制室ー

 

 

 

 剣造の前にゲッターチームの面々が勢揃いする。

 

「それでは兜博士、ロンド・ベルとの合流までお世話になります」

 

「いやいや、こちらこそ。ゲッターチームのチームワークの良さは、マジンガーチームにも良い影響を与えるでしょう」

 

「………」

 

「………」

 

 剣造の言葉に甲児と鉄也はムスッとする。その二人に竜馬は首を傾げながら剣造に聞き返す。

 

「博士、本当にどうしたのですか?あの二人…?」

 

「ちょっとしたトラブルでねなに、すぐに仲直りするだろう」

 

「父さん、ほっとけよ。あんなやつ」

 

「甲児、そんなことを言うものじゃない」

 

 その時、今まで沈黙を貫いていた鉄也が踵を返し、

 司令室から出ていってしまう。

 

「………」

 

「鉄也っ! ごめんなさい、鉄也!」

 

 ジュンが謝りながら、慌てて鉄也の後を追う。

 後に残された甲児達はそれを見送るだけだった。

 

 

 

 

 

 ー科学要塞研究所・展望室ー

 

 

 

 

 司令室から離れた場所にある展望室で、鉄也は佇んでいた。そこにジュンが追い付く。

 

「鉄也……どうしたの?」

 

 傍により顔の覗きこむと、そこにはいつもの彼らしくない、覇気のない表情があった。

 

 そして鉄也はポツリと漏す。

 

「なぁ、ジュン。俺は……臆病な男だ」

 

「え……?」

 

「あの大戦から大分経っているというのに、まだあの時の事が拭えてないんだ……」

 

「………鉄也」

 

 話す鉄也の脳裏に、以前の大戦がフラッシュバックする。

 

 当時の自分は、敵を倒す為だけに鍛え続けてきた。自分の力だけしか信じていなかった。

 

 その過信、慢心が招いた結果、メンバーを、ひいては育ての親である所長を危険に晒してしまった。

 

「甲児くんがどんな人生を送ってきたのかは知っている。肉親の十蔵博士を亡くしたことも」

 

「……………」

 

「だが、甲児くんはそれを乗り越えて、ここまでやってきた。それを俺は理解していた。いや、したつもりでいたんだ」

 

「なのに俺は………あの時から一歩も踏み出していなかった。踏み出そうという意志を持とうすらしてなかった」

 

 そこで話が止まり、鉄也とジュンの間に沈黙が流れる。鉄也の手元を見ると、僅かに震え、それを無理矢理押さえるように拳を強ばらせていた。

 

 再び鉄也が口を開く。

 

「悪いが………今は甲児くんに顔向け出来ない」

 

「………。………わかったわ」

 

 鉄也の答えにジュンは何も答える訳もなく、ただ受け止め、彼の手に自分の手を重ねる。

 

「 でも鉄也、これだけは約束して…」

 

「……なんだ?」

 

「遅くなってもいい、少しずつでもいいから………立ち上がって。貴方が持つ勇気で」

 

「………」

 

「貴方は………偉大な勇者なのでしょ?」

 

 その言葉に鉄也はハッと顔を上げ、ジュンを見る。その目に映る彼女はただ優しく微笑んでいた。

 

 

 

「………………」

 

 その二人の会話を、ドアの陰からアクセルは黙って聞いていた。

 

 何も彼に盗み聞きの趣味が有るわけではない。

 以前から気になっていた鉄也の様子に、先の戦闘だ。

 

 さらに後を追った先であの話。

 

 鉄也の性格を全て把握しているわけではないが、一ヶ月も過ごせば幾らか分かるモノがある。

 

 そして聞いてみれば、最近の行動と鉄也の心情に辻褄が合う。一言で表すなら、危なかっしいで尽きる。

 

 だがそれも杞憂だと、アクセルは認識した。

 

 

 彼には支えとなる彼女がいる。

 

 それに『自分の知っている彼』なら必ず立ち直る、そう信じているからと。

 そこでアクセルは眉根を寄せる。

 

 まるで彼らを知っている様な、確信に似たものに、違和感があった。記憶を失っているはずなのに。………………………………。

 

「まっいいか」と、その場を後にする。

 あ、最後に一言。

 

 アクセル・アルマーはクールに去るぜ。

 

 

 

 

 ところ変わって甲児はというと

 

「ちきしょう、鉄也さんの奴…本当に苛つくぜ!」

 

 大変ご立腹の様子であった。

 そこにアクセルがなに食わぬ顔で戻ってくる。

 

「甲児、そんなにピリピリするなって」

 

 ボスが宥めるが、今の甲児には聞く耳を持たないようだ。

 

「先に突っかかってきたのは鉄也さんなんだぜ!?」

 

 その様子にアクセルはただただ溜め息を付くだけだった。

 

「はぁ~。先が思いやられるんだな、これが」

 

 突然、室内に緊急コールが鳴り響く。所員の一人がコンソールをから振り返り報告し、その内容に場に緊張が走る。

 

「兜博士、ダイモビックからSOS信号。バーム星人の攻撃を受けているとのことです!」

 

「なんだと!?」

 

 

 

 

 

 

 

 第三話『闘将と超闘士・上』

 

 

 

 

 

 

 

 報告を受けた後のそれぞれの反応は早かった。

 所員は各々情報収集や出撃準備に入り、格納庫では各機の最終チェックが入る。

 

 そして、パイロット一同は剣造の前で指示を待っていた。

 

 

「ようし、すぐにダイモビックに行こうぜ!」

 

「待つんだ、甲児くん。所長、襲ってきた敵はバーム星人だけですか?」

 

 甲児が今にも駆け出しそうなのを鉄也が静止し、剣造に確認する。

 

「うむ、今の所はそうらしい」

 

「鉄也さん、早く救援に行かないとやられちまうぜ!?」

 

「もしものことを事を考えて、何機か待機させた方が良い」

 

「心配し過ぎだぜ、全員で行った方が助けられる」

 

「これが陽動だったらどうするだ? 俺たちがいない隙に、研究所を攻撃するさか作戦だったら…!」

 

「深読みかも知れんが…可能性は否定できんな」

 

 鉄也が言う事は確かにあり得る話でもある。

 だが、とアクセルは思う。今の鉄也は焦りすぎていると。先の事で落ち着いた様に見えて、まだぐらつき感があった。

 

「鉄也くん。君の気持ちも分かるが、今はすぐにダイモビックに向かうんだ!」

 

「しかし所長!」

 

「まあ、落ち着け鉄也。それならさっさと終わらせて、直ぐに研究所に戻ってくればいいだろ?」

 

「……大丈夫だ、鉄也くん。この科学要塞研究所は、戦闘も考えて建造した研究所だ。少しくらいの攻撃なら十分に対抗出来る」

 

 アクセルと剣造の言葉に、渋々とだが鉄也は従う。

 

「…わかりました」

 

 纏まった所で皆が行動に移る。

 ボスが飛べない自分はどうすればいいかとなると、手分けして運ぶことになった。移動上、飛行能力を持つ機体が多かったのが救いである。

 

 余談だが、アクセルはどうかと言われれば、何気に地上戦用に見えるソウルゲインが空戦能力も持っていたことに甲児たちが驚いた。

 

「飛べない機体はゲッターとソウルゲインが運ぶ形でいいな?」

 

「確かダイアナンAとボロットだけね」

 

「さてと…行くとしますか!」

 

「じゃあお父さん、行って来ます!」

 

「……」

 

 甲児は手を振り、鉄也は黙って頷き、先に出た皆に追い縋る。

 

「ああ、甲児、鉄也くん…みんな、頑張るんだぞ」

 

 管制室に残った剣造は彼らの無事を祈りつつ、所員に指示を飛ばし準備を進める。彼とて、むざむざ敵に腹を見せる程楽観的に見てはないのだからな。

 

 

(…バーム星人か。俺の記憶の手掛かりになればいいが)

 

 システムを立ち上げていたアクセルは、新たに現れる異星人に興味が湧いていた。その名を聞いた時から頭の中に引っ掛かるものがあったのだ。

 

 それよりもと、気に掛かることを胸に秘め作業に再び意識を戻す。

 

 

 

 それぞれが思いを持ち、自分たちの愛機に乗り込む。

 

 彼らは大空を駆け抜ける、助けを求める友の為に。

 

 

 

 

 ー????ー

 

 

 

 

 空が黒く染まり海が荒れうる中、その島はあった。

 

 否、島というにはその上に建つ代物は余りにも機械的で、それは全体にまで及び、さながら超大型移動要塞であった。

 

 このばsyこそ百鬼帝国の本拠地、要塞島。

 

 その中心部にある、一際高くそびえる塔の一室。

 大型モニターを中心に大小のモニターがところ狭しと壁一面に敷き詰められた大部屋の一角。

 

 部屋を一望できる高台に、

 

 地底帝国の暗黒大将軍、地獄大元師。

 

 百鬼帝国のブライ皇帝、ヒドラー将軍。

 

 キャンベル星人のワルキメデス総統とその弟ダンゲル将軍。

 

 と人外のトップクラスが集結していた。

 

「ふむ、マジンガーどもが動き始めたか」

 

「通信を傍受しましたところ、ダイモビックに向かったようです」

 

「ダイモビック? 攻撃しているのは…バーム星人とかいう異星人か」

 

 送られてきた情報に誰もが笑みを浮かべる。この機会を見逃す程彼らは甘くない。

 

「今がチャンスですな」

 

「研究所はもぬけの殻…というわけか」

 

「好機とみるか…ワルキメデス総統、先日自分がやってみせると言っていたが…今回はどうだ?」

 

「良いでしょう。奴らがいない今、研究所を落としてごらんにいれよう」

 

 そう言い、部屋を退室するワルキメデスを尻目にブライがヒドラーに何か耳打ちする。それを了解し、

 

「白骨鬼!」

 

「ここに」

 

 ヒドラーの声に、影から一人の女性の鬼が現れる。

 

「科学要塞研究所…ここでやることはわかっておるだろうな」

 

「はっ、仰せのままに…」

 

 深々と頭を下げ、白骨鬼は表れた時とは逆に影に溶ける様に戻っていった。

 

 

 

 

 

 ーーー裏に潜む魔の手は静かに、そして着実に研究所に忍びよっていた。

 

 

 

 

 




時間経過を考えたら、少しは性格に変化があるはずなので過去を悔やみつつ、視野を広げていく鉄ちゃんにしてみました。

感想・批評お待ちしております。


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第五話 「闘将と超闘士・下」

お待たせしました。今回からオリジナル展開です。


 

 

 

 

 

 

 

 ―――アクセル達が研究所を出る数刻前。

 

 

 

 

 

 

 ー千葉・ダイモビックー

 

 

 惑星間航行のために建造された巨大宇宙母艦「スペース・ダイモビック」が地上と接続し「ガード・ダイモビック」基地として運用されているここで、いくつも炎が上がっていた。

 

 いずれも基地の手前で起こっているのは、ダイモビックを背後に陣取っている一機のスーパーロボットのお陰であったからだ。

 

 

 名は『ダイモス』。

 

 

 “闘将”の二つ名を冠する巨人は、その両腕をクロスし防御に徹していた。

 一見耐えきっている様に見える状況、パイロットの竜崎一矢には余り楽観的に受け取れるものでなかった。

 

「ぬっ、くっ!」

 

 トレーサーを通じて送られてくるダメージに顔を歪ませながら、一矢は背後に目をやる。

 彼が気にしているのは後ろのダイモビック……ではなく足下にいる一人の女性であった。

 彼女を見つけたのは本当に偶然だった。故に取るべき行動は言うまでもない。

 

『ふむ……ダイモスとやら、なかなか保っているではないか。だが、今は亡き父上……リオン大元師の恨み。この程度では済まさんぞ! バルバスッ!』

 

『ハッッ! やれっ、地球の虫けらどもを皆殺しにするのだ!』

 

 しかし、敵ーバーム星の戦闘ロボ・・・ズバンサーは一体の攻撃力は大したことはないが、奴等は数に任せて攻めてきている。

 後方で指揮を取るバーム星人の司令官ーーリヒテルが乗る母艦ーーガルンロールを撃退すれば、活路は開けそうだが今のところ決定打となりにない。

 

『ザッ……一矢っ、ザザッ もう少し、踏ん張れよ!』

 

 いきなり、SoundOnlyと表示されたモニターから雑音混じりに男性の声が入ってくる。その声には聞き覚えがあった。

 

「イルムか! 今何処に!?」

 

 

 

 ー海上ー

 

 

 海上を全速力で飛行中の大型輸送機“レイディバード”の上部甲板に一人の青年ーイルムガルト・カザハラはいた……というより引っ掛かっていた。

 

「今、輸送機のっ、上に、張り付いてるっ!」

 

『なんでそんな所にいるんだ?!』

 

 風圧が容赦なく襲い掛かる中、歯を食い縛り、耳許の通信機に怒鳴り付ける。

 

「文句、なら、俺の、親父に言えぇぇぇっ!! 時間が無いからって、無茶苦茶言いやがって!」

 

『そう言いながら、躊躇なくそっちに飛び移るアンタも大概だがな』

 

 レイディバードに平行飛行する戦闘機 “ガルバーFXII” から、パイロットの夕月京四郎の呆れた声が届く。二人とも一矢とは旧知の仲であり、イルムと一矢は一時、宇宙飛行士訓練センターの同期生だったこともある。

 

「しょうがないだろ、時間が押してたんだよ!……っと。ふぅ、やっと辿り着けたな」

 

『やっと来たかイルム。早速だが、あれに乗ってくれ。ちゃーんと整備はできとるからな』

 

 ハッチを開け機内通路に転がりこんだイルムに、操縦席から彼の父ージョナサン・カザハラの指示が放送で飛ぶ。そんな父親にイルムは悪態を着きつつも、聞こえない声で感謝の言葉を述べた。

 気を取り直し、イルムは足早にカーゴルームに向かう。

 

「待たせたな、相棒」

 

 ハッチを開けデッキを見下ろした先に、かれの愛機が静かに、そして発進の瞬間を今か今かと待っていた。時間が惜しいので、頭部のコックピットに滑り込み、手早くシステムを立ち上げていく。

 

「コンディションオールグリーン、FCS起動っと。親父、こっちはいつでも行けるぞ!」

 

 そこにガルバーから通信が入り、ウィンドウが表れ京四郎の顔が映る。隣にはメンバーの一人、和泉ナナもいる。

 

『イルム、俺たちは先に行くぞ。一矢が苦戦しているみたいだ』

 

「ああ、俺も後から向かう」

 

 通信が切れ、輸送機外のカメラからガルバーの機影が消える。カーゴルームの後部ハッチが開き、その下を青く煌めく海が後方に流れ去っていく。

 機体を固定していたアームが動き、カーゴから外に押し出す。

 

『鳥になってこい、幸運を祈るぞ!』

 

「了~解っ。ウィングガスト、出るぞ!」

 

 ガコンと音を立てアームが離され、ウィングガストが空中にその巨体を晒す。僅かな滞空の後、ブースターが点火し高度を上げる。

 

 流れ去る景色を振り切るように加速し、イルムは友の下に急ぐ。

 

 

 

 ーダイモビックー

 

 

『何をしているのだ! ダイモスがさっきからやられっぱなしではないか!』

 

 モニター越しでも分かるぐらいの喧しい声に、一矢は戦闘とは別におもわず眉をひそめる。

 

 声の主は地球連邦軍の三輪防人長官。

 

 連邦のタカ派代表格でもある彼は、初期のバーム星人との和解にも猛反発を示し、彼らが攻めてきた今ではさらにその姿勢を強めている

 また、彼は連邦軍内で、ここダイモビックを初めとした各研究所が保有するスーパーロボットの接収を強硬的に進めている主格でもある。故に

 

 ーーー簡潔に言えば、一矢はこの男が苦手なのである。

 

 とは言うものの三輪長官が言うのも一理あり、ダイモスにも限界がある。が、今ヘタに動けば下にいる彼女に被害が及ぶ可能性があったのだ。

 

『一矢、何やってる!』

 

『お兄ちゃん、このままじゃやられちゃうよ!』

 

 後方からガルバーの機影が見え、京四郎から通信が入る。その声には焦りが見受けられる。同乗しているナナも同じだ。

 

「京四郎! 足下に女の人が倒れているんだ! 彼女を安全な場所に!」

 

 足下にいる女性は気絶しているのか、動く気配を見せなかった。それが、一矢を急き立てる。手早く指示を出すと、通信に三輪長官が噛みついてくる。

 

『人だとぉ!? そんなのは放っておけ! バーム星人を叩きつぶすのが先だ!』

 

「そんなことはできません! 民間人なんですよ!?」

 

『民間人だと!? 戦時中に銃を取らぬ人間など必要ないっ! そんな奴がくたばろうと知ったことか! 戦えっ! 戦うのだっ!』

 

 余りに横暴な言葉に、戦闘中にも関わらず一矢は絶句する。

 彼は何と言った?戦わない者は死ねと? ふざけるなっ! 途端、己の中で怒りが沸き上がる。

 

「三輪長官ッ、あんたって人は!」

 

『一矢、その娘をガルバーに乗せる! それまでもたせろ!』

 

 一矢が怒鳴り返そうとするのを、京四郎が通信を入れることで押さえる。出かかった言葉を飲み込み、友に感謝する。

 

「すまん! 京四郎!」

 

『へっ、確かに戦いの最中にのんきに人助けってのはどうかと思うが、今の三輪の野郎にはイラッときたぜ』

 

 

 低空から飛行してきたガルバーが女性の前にホバリングしながら停止する。そこからナナが飛び降り、女性の下まで駆け寄る。

 

「ちょっと大丈夫? 私の声が聞こえる?」

「………うぅ」

 

 ナナの声に反応したのか、女性が眉間を寄せる。

 

「動かすけど、いいわね?」

「………………」

 

 返事はなかったが、僅かに首を縦に動かしたので肩に腕を回し、急いでガルバーに乗り込む。自分より背丈が大きいので運ぶのに苦労したが、四の五も言っていられない。

 なぜか。自分が敬愛する兄的存在にこれ以上負担をかけたくなかったからだ。

 

 

 ナナが乗り込み、直ぐ様ダイモビックに向けて離脱するガルバーをモニターで確認し、一矢は一先ず安堵すると眼前の敵に目を向ける。

 

「京四郎、頼んだぞ。・・・来いっ! バーム星の侵略ロボットめ!」

 

 その言葉に反応したかのか、ズバンサーがこちらに迫って来る。

 

「ようしっ! いくぞぉぉっ!」

 

 足裏のブースターを吹かし、上空に舞い上がる。腕を力強く交差させ腰の位置まで引き戻す。

 そこから素早く、そして鋭い正拳突きをくりだし名乗りを上げる。

 

 

「ダァァァァイッモォォォスッッ!!」

 

 

 日の光を浴び、闘将が咆哮する。

 

 さあ、お前の空手を見せてやれ!

 

 

 

 

 

 

 第八話 アクセル「闘将と超闘士・下」

 

 

 

 

 

 

「フッ、ハッッ!!」

 

 裏拳、からの肘鉄。

 

「セイッ、リャッッ!!」

 

 膝蹴り、からの後ろ回し蹴り。

 

 一矢が努力を積み重ね、会得してきた空手の数々の技がダイモスを通じて、ズバンサーを相手に十全に発揮していた。その威力は高く、ズバンサーを一撃をもって粉砕するぐらいだ。

 

 劣勢に立たされ、手をこまねいたズバンサーが複数で押し寄せ、ダイモスの周りを包囲する。

 その内の二機が左右から頭部を鎖で固定したアンカーがダイモスの両腕に絡まる。

 動きを封じ込めた隙を突き、残りのズバンサーが一斉にミサイル攻撃を仕掛けてくる。

 

「うぉぉっ! こ、のっ……!!」

 

 ミサイルは周囲に、ダイモスに飛来し爆発の連鎖が起きる。機体が大きく揺さぶられるのを食い縛り、足に力を入れ踏ん張る。

 逆に爆風が吹き荒れる中、絡まっている鎖を握り、一矢はおもいっきり引っ張る。つられて二機のズバンサーが宙に舞う。

 

「うおおおぉぉぉっ!!」

 

 一矢はそれを鎖分銅の様に操り、大きく振り回しながら敵に撃ち当てる。殴打されている敵も堪らないが、振り回されている敵もたまったものではない。何度もぶつけられる度にパーツが剥がれ落ち、終いに鎖が千切れ、遠くに吹き飛び爆発四散。

 

 鎖を投げ捨て三機固まっている所に一気に駆け、接触する寸前、身体全体を大きく捻り

 

 

「真・空! 回し蹴りぃぃぃッ!!」

 

 

 豪快に振り抜かれた蹴りがズバンサーを纏めて凪ぎ払う。そのあまりの早さに空気と摩擦し、焦げた匂いがするくらいだ。

 

 その時だ。いきなり足下の地面が盛り上がり、新たな戦闘ロボーーダリ(人型)が飛び出し、その長い髪を伸ばし倒れたダイモスの動きを封じる。

 咄嗟のことに反応が遅れてしまったが、構わず無理矢理髪を引き千切ろうと掴んだ瞬間、一矢の視界が激しく明滅する。

 

「ぐああぁっっ!?」

 

 髪を通じて大量の電撃がその身を襲ったのだ。ダイレクトに送られてくるダメージに思考が正常に機能しない。

 

『一矢っ、そのまま伏せてろ!』

 

「ーー?!」

 

『何だっ!?』

 

 リヒテルの驚愕の声。突然入ったイルムからの通信に答える間もなく、轟音と共にダリが視界から消え失せる。

 

 青い円錐状のエネルギーフィールドを展開したウィングガストがダイモスからダリを引き離し、急加速で上昇する。

 

 

「喰らえっ、スパイラル・アタァァァック!!」

 

 

 突き刺さった状態から独楽のような激しいバレルロールを繰り出す。それにダリが反撃しようとするが、如何せん体勢が悪かった。

 削岩機さながら抉る攻撃に、遂に装甲の限界が越え、空中で真っ二つになり辺りに四散する。

 

「変ッ 形ィ!」

 

 大空から地表へと大きく旋回し、急降下しながらその姿を変える。

 両翼が下に折り畳まれ両足となり、エンジンと直結していたパーツが腕を形成し、機首が持ち上がり頭部と成す。地上にぶつかる直前バーニアーを全開にし、片膝を突いてズカンと着地する。

 

「超闘士グルンガスト、只今見参ッ! ってな」

 

『……済まんな、イルム』

 

「ま、貸し借り無しってことで」

 

 笑いながらグルンガストの手を差し出し、ダイモスがそれを握り立ち上がる。

 

「動けそうか?」

「ああ、すまない。フゥーーーーッ、……大丈夫だ」

 

 呼吸と心拍を合わせるように息を吐き、体の循環を整える。流石は空手家なのか、僅か数秒でモチベーションを正常に戻す。

 

「相変わらずタフだな、お前って (俺も鍛えてる方だけど)」

「まあな。それより……」

 

 見れば大量のズバンサーに加えダリ数体が集結し、こちらに迫っていた。

 

「敵サン、お待ちかねみたいだな」

 

 闘将と超闘士。その表情は引き締まり、眼前の敵を睨み付ける。二機のスーパーロボットが並び立ち、戦力差をものともしない覇気をその身に込め、それを迎え撃つ。

 

 そこに朗報が舞い込む。

 

『お兄ちゃん、イルムさん! マジンガーとゲッターが来たよ!』

 

「「!」」

 

 ナナの通信と共にセンサーが味方増援を確認する。マジンガーZ、グレートマジンガー、ゲッターロボ、ソウルゲインの混線部隊が西側に布陣し、バーム軍を二手から攻める形にする。

 

『むう!? 虫けらどもめが、援軍を呼んだか!』

 

「間にあったか!」

 

「みんな、来て…『遅いっ、このノロマども! マジンガーもゲッターも何をしていた!? 』

 

 一矢の言葉を遮べるように三輪長官の罵声が通信から響く。その応答に甲児は一気に不愉快になり、苛立たしげに愚痴る。他のメンバーも似たり寄ったりと反応それぞれだ。

 

「なんだよ、これでも飛ばしてきたんだぜ」

 

『ええい、何でもいいわ! とにかくお前たちも戦いに加われっ! バーム星人どもを皆殺しにするのだ! 通信終わり!!』

 

「これまた物騒なことで」

「セリフだけなら悪役だな」

「まあ……あんま気にすんな。こちらとしちゃ、いつものことだから」

 

 三輪長官の言葉にアクセルと隼人が呆れた口調で呟き、イルムが苦笑いする。その言葉に一矢も同感だと溜め息を吐いた時、見慣れない機体が居たことに気付く。

 

「マジンガーチームにゲッターロボ・・・む、そのロボットは?」

 

「俺はアクセル。宜しく頼むぜ、Mr.カラテマン」

「紹介は後だ。各機散開!」

 

 鉄也が叫んだと同時にバーム軍の攻撃がアクセル達に襲い掛かる。空に飛び、大地を駆けるなどの回避行動をとり、彼等がいた空間を大量のレーザーやミサイルが走る。

 

「説明はバーム星人たちを追い返してからの方がいい! いくぞ!」

 

「わかった。よろしく頼む!」

 

 回避から反撃へと転じ、それぞれが攻撃を開始する。

 Zとグレートが敵を翻弄し、ゲッターとソウルゲインで敵に打撃を加える。

 ダイモスとグルンガストも加わり、それぞれの火器を駆使し、敵が量で押し進めるのを質でカバーしながら戦況を覆していく。

 

 と、グレートに緊急コールが入る。突然の外部からに鉄也は訝しげにだが、目の前に注意しつつ片手間に通信をオンにするが、その相手に驚きを露にする。

 

「こんな時に……って、所長!?」

 

 剣造の背後では慌ただしく所員のやり取りが行われていた。表情の険しい剣造が状況を端的に述べる。

 

『ミケーネの攻撃を受けている。そちらが片づき次第、研究所に戻ってくれ!』

 

「何ですって!? すぐそちらに向かいます!」

 

『今はまだ大丈夫だ、こちらの防衛装置で対処できている。先にダイモビックを救援してくれ!』

 

「し、しかし!」

 

 任務を優先すべきか、所長を助けに行くべきか。

 この二つが鉄也の中で渦巻き、動きを鈍らす。

 故に一瞬無防備になったグレートに何発かのミサイルが襲う。気付いた時には遅く、防御も間に合わなかった。

 

 直撃を覚悟したその時、グレートの前に黒い影が入り視界を差跨ぐ。甲児のZが咄嗟に割って入り、鉄也を守ったのだ。その後ろ姿に呆然としていると甲児が怒鳴りつける。

 

「なにやってんだよ、鉄也さん! 早く研究所に向かってくれ、お父さんが危ないんだろ!!」

 

「!」

 

 その言葉に、鉄也だけでなく全員が驚いた。いつもの甲児なら「戦闘に集中しろ!」の一言位あるはず。

 いや、この中で誰よりも助けに行きたいのは甲児本人のはずだ。それを圧して、彼は鉄也に助けに行くように促す。

 

「しかし、甲児くん……」

 

「しかしもカカシもあるか! ここは俺たちでなんとかする」

 

「………………」

 

「その代わり必ず、お父さん達を守れよ!」

 

「………済まない、甲児くん。後を頼む!」

 

 甲児の思いに覚悟を固め、鉄也は操縦桿を強く握る。ブースターを最大にまで吹かし、機体を翻したグレートが急速に離脱する。ビューナスAもそれに付き従う。

 

『むうっ! 敵前逃亡っ!? 戻れ! 戻って戦え!』

 

 三輪長官が喧しく喚くが、既に二機の姿は空の彼方に消え見えなくなっていた。

 

「良かったのかい甲児くん?」

 

「良くも悪くもないよ。ただ今の鉄也さん、とてもじゃないけど見てられなかったんだ」

 

『お喋りは後だぜ。甲児、竜馬』

 

 応戦しながら問答する二人にイルムが加わる。

 グルンガストが胸部の装甲が開き、機体中央から蒼く輝くビームを放ち敵を凪ぎ払いながらZとゲッターの死角に回り込む。

 

「「イルムさん!」」

 

「おう。さっさとコイツら倒すぞ!」

 

 奮起するスーパーロボットの働きにバーム軍は押されていく。徐々に戦いの終わりが見え始めて来ていた。

 

「俺が突破口を開く。行け、一矢!」

 

 ソウルゲインが黄龍鱗を放つことで数機のズバンサーを一掃し、その間隙をダイモスが駆け抜ける。

 ガルンロールの手前に、通させまいダリが待ち構えている。しかし、その程度で止まる一矢とダイモスではない。

 

「ダブル・ブリザァァァァドッ!」

 

 ダイモスの胸部が開き、中の二つのフィンが高速で回転。強烈な竜巻がバルバスを含めた三機のダリを襲い、空中に舞い上げられる。

 

『うぉおおおぉぉ?!』

 

 放り投げられ、自由落下により落ち始めるのを一矢は捉える。三機の機影が一直線上に重なった瞬間、右腕を腰まで引き左手を前に突き出し

 

「必殺ッ烈風ッッ! 正拳突きいぃぃぃっ!!」

 

 突き上げるように繰り出された正拳突きが、前方の二機の腹をぶち抜き、内部メカをも蹂躙する。

 一瞬早く回避を取ろうとしたバルバス機も、これに巻き込まれ、撃破には至らなかったものの機体にかなりのダメージを負う。

 

 だが、その間にガルンロールが距離を取り、ダイモスの射程外に出る。

 

『ぐぅぅう、おのれっダイモス!』

 

『退け、バルバス。その状態では無理だ』

 

『しかし、リヒテル様! 自分は……』

 

 

『……我の命令が聞けぬか、バルバス?』

 

 通信越しでもゾッとさせるトーンを落とした声に、バルバスは冷や汗を流しながら慌て従う。

 

『も、申し訳御座いません』

 

『よい。……ダイモス、そして地球人どもよ。此度は貴様らの勝ちとして、今は此処を退こう。

 

  しかし、…………次は甘く行かんぞ 』

 

 怒気を含んだその言葉に誰もが覚悟する。

 

 負け惜しみでなんかではない。彼ら…いや彼リヒテルにはその言葉に見合う自信が有るのだと、皆が感じた。

 

 

 残存の戦闘ロボを回収し、旗艦ガルンロールが機首を返し急速に空域を離脱していく。

 それを誰も追わず、只見送るだけだった。

 

「終わった、か」

 

 一矢の言葉に、一先ずの戦いの終結にメンバーの間で安堵の空気が流れる。

 

 

 

 

 

 



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第六話「インターミッション.Ⅱ」

 

 

 

 

 海底深くにある巨大海底都市兼前線基地 “海底城”。

 その中心に聳える基地の中枢 “海底魔城”。

 

 

 ー海底魔城・司令室ー

 

 謁見の間の様に広い部屋には侵攻軍のトップが集まっていた。

 

「申し訳ありません。どこにもエリカ様の姿を見つけることはできませんでした」

 

 バルバスの報告を、最上段の玉座に座るリヒテルは目を伏せ黙して聞いていた。

 

 エリカの失踪。

 戦闘の際、負傷した兵を看護していた自分の妹が忽然と姿を消したのだ。その後必死の捜査むなしく彼女の消息は絶えたままでいた。

 

「バルバス将軍、探し方が悪いのではないか」

「ライザ将軍、それではわしの目はふし穴であると言うのか!」

 

 配下の二人が言い争う様がリヒテルの苛立ちを掻き立て、玉座から立つ。

 

「ええい、やめぃっ! 見つからないものはしかたがない」

「地球人に捕らわれたということも考えられます。ならば、まだご存命の可能性が……」

「黙れッ、バルバス!! ……お前ならどうする? 地球人ごときに囚われの身となって、おめおめと生きながらえると思うか」

「…っ、……バームの誇りを胸に死にまする」

 

 リヒテルの問いにバルバスは重々しく答える。

私情など関係ない。

 バームの掟に従う者が辿るべき道を知っているバルバスやライザに、それに忠誠を誓ったリヒテルは厳格な姿勢で言い放つ。

 

「余の妹も、誇り高いバームの女だ。宇宙最高の種族が、下等な地球人に捕らわれるなど、死に勝る恥辱……!」

「それでは……」

 

 後に来る言葉を覚悟をもってバルバスは問う。

 

「かような羽目におちいらば、エリカは自らの手で死を選ぶに違いない! ……もうよい、余の妹のことは忘れよ」

「はっ……はい」

「…承知致しました」

 

 

 配下の者が去り、一人だけになった司令室に佇むリヒテル。その表情は先程とうって変わり、妹を思う兄の姿があった。

 

「……エリカ……」

 

 ポツリと呟いた言葉は誰にも聞かれる事もなく、ただ静かに虚空へと消え去っていった。。

 

 

 

 

 

 ーダイモビック・カフェテリアー

 

 

 先の戦闘から数時間後。

 

 出撃していたパイロット全員が集まり、戦闘で行使したに体をくつろがせていた。その内の一人アクセルがふと思い出した様に呟く。

 

「今回の敵は嫌に気合いが入っていたな」

 

 その言葉に、壁にもたれていた京四郎が理由を話す。僅かに暗くなった表情に皆の注目がいく。

 

「無理もないさ、バーム星とは戦争になった原因が原因だからな」

「原因? 何があったんだ」

 

 話の先が分からず聞き返したアクセルに、ナナが呆れ顔をそちらに向ける。その反応に首を傾げながら、アクセルは周りを見渡す。

 

「呆れた。あなた、バーム星との交渉決裂を知らないの?」

「バーム星との交渉、決裂? …、…っ!」

 

 じくりと頭が痛みを上げる。

 バーム星、交渉決裂。この二つのキーワードに彼の中で違和感を再び思い起こさせる。眉間を押しながら頭痛を抑えると、違和感は無かった様に消え失せる。後に残ったモヤモヤとしたものに心中溜め息を吐いていると甲児が身を乗り出してこちらを伺っていた。

 

「大丈夫かアクセルさん? 何か思い出したのか?」

「…分からないんだな、これが」

「おいおい、分からんってどういうことだよ」

 

 眉根を捻らせながら京四郎が問うと、それに苦笑しながらアクセルが答える。

 

「どうにも記憶を無くしてしまったんでな」

「ええっ!?」

 

 事実にダイモビック組は驚くが、アクセルはあまり気にするなと手を振り話を変える。彼のポジティブ振りにイルムが素直にその性格を評する。

 

「オタク前向きだな」

「……性分なんでな。で、だ。色々情報を集めたいんだ、詳しく話してくれないか?」

 

 アクセルの提案の下、お互いの情報が飛び交う。そして話は今回の戦闘の一件、その大本となった事件にまで遡ることとなった。

 

 それからナナや京四郎の口から話される会談失敗までのあらまし。なにより、事件の裏で一矢の父、竜崎勇が会談で亡くなっていたことには誰もが驚き、彼に同情した。

 

「一矢さんにしてみれば、父の遺志を継いでバーム星との和平を支持すべきか、戦うべきか選ばなければならないということか・・・」

「そういうことだ。で、当の本人はどこ行ったんだ?」

 

 辺りを見回して一矢の姿はないことに気付いた京四郎にイルムが所在を告げる。

 

「アイツだったら、助けた子に付きっきりで医務室にいるぜ」

「殊勝な心掛けだな」

 

 隼人が感心しているとイルムの表情が変わり、口元に笑みがこぼれる。

 

「いんや。もう1つ付け加えるなら……ありゃ一目惚れしてるぜ、一矢の奴」

 

 イルムの一言に全員が揃ってポカーンとなる。事態を把握したアクセルがニヤニヤし出し、京四郎はやれやれと肩をすくめ、ナナは頬を膨らませ不機嫌になる。それにイルムが茶化し出す。

 

「ん~、妬いてるのかナナちゃん? アイツは意外と面食いだからな。ま、頑張れよ」

「う~、ワン!」

 

 ケラケラ笑いながら退出するイルムをジト目で睨みながらナナがいつもの口癖を漏らす。

 

 

 ―ダイモビック・医務室―

 

 

「記憶喪失・・・!?」

 

 臨時で看護に入っていたミチルから言い渡された言葉に一矢は驚きを隠せなかった。

 彼が此処に来たのは先の戦闘で何故あの場にいたのかという疑問と、彼女自身に興味が沸いたからだ。その矢先、診断の結果が来たのだ。

 

「お医者様の話では、時間をかけてゆっくり治すしかないって。おそらく、戦いに巻きこまれた恐怖が原因らしいって」

 

 その説明に一矢はただ黙って聞き、視線をベッドで横になっている女性に移す。

 

 正直に言えば一矢は彼女に見とれていた。彼女の容姿も美しいが、何よりその雰囲気とも呼べるものに惹かれる、そんな気がしていた。だからか、今自分の鼓動が早くなっているのが嫌でも分かる。

 一矢が見とれていると、その視線に気付き女性が顔を上げる。

 

「・・ごめんなさい・・・私・・・」

 

 ポツリと漏らした彼女の謝罪に、一矢は優しく微笑む。

 

「大丈夫、そのうちだんだん思い出すさ。 そう言えば……君は、なんて名前?」

 

 その問いに女性は目を丸くし、僅かに間を置いてたどたどしく答える。

 

「え? ……エ、エリ…カ」

「エリカ、か……美しい名前だ。ああ、俺…竜崎一矢っていうんだ」

「一矢……、竜崎一矢…」

 

(……お邪魔みたいね)

 

 いつの間にか見つめあっている二人に気付かれない様にミチルはさっさと医務室を後にする。

 

 

 

 ────しかし、この出会いが後の彼らに悲劇を起こす事になるなど、この時誰も知る由はなかった。

 

 

 

 ーダイモビック・データルームー

 

 

 アクセル達と一旦別れた後イルムは、研究ブロックの一つ…ジョナサンのもとに押し掛けていた。

 その顔はいつもの飄々とした面持ちはなく、真剣さを纏っていた。

 

「せっかくの親子水入らず……と言いたい所だが、そう言うわけにも行かなそうだな、イルム」

「どうしても気になる事があったんでな、親父」

 

 言いつつキーボードを操作し、モニターに先の戦闘を映し出す。

 

「うむ! グルンガストは正常に動いてるな。調整に時間を掛けた甲斐があったわい」

「それには感謝するが、問題はそこじゃない……。これだ」

 

 イルムが拡大した映像にはアクセルが操るソウルゲインが映し出されていた。

 それにジョナサンは興味深く機体を観察する。

 

「ほぉー、グルンガストと同じ大きさでありながら、ここまで柔軟に動けるとはなぁ……」

「整備中にちょろっと見させて貰ったが、操作方法は俺や甲児達とは全く違う。近いものなら一矢のダイモスやコロニー群が作った……」

「……モビルトレースシステムか」

「ああ。だが、特機級に開発されたという情報は無い。親父の方はどうだ? 」

「されていたら嫌でもこちらの耳に入っておるが、生憎そういう情報は今のところ無い、としか言えんな」

「やっぱりな。…まぁそれは置いといて、問題は次だ」

 

 次に映した一面は飛行中のソウルゲインだった。更にソウルゲインにのみ音声を集中させる。それにジョナサンが眉を寄せてイルムに顔を向ける。

 

「この駆動音…まさか」

「親父の予想通りだと思うが……、恐らくコイツには“テスラ・ドライブ”が搭載されている」

「馬鹿な、アレはまだ試作段階で実用化に至ってない代物だぞ」

「だから親父に聞きたかったんだ。最近研究所内で問題とか起きたりしてねえか?」

「まずあり得ん。うちのプロテクトの固さはお前も知っているだろ? 参加メンバーにも不審な奴は一人もいないと断言出来る」

「なら益々怪しくなって来たな、こりゃあ……」

「この件に関しては一度連絡を入れておく。フィリオ君やロバートくんのことだ。抜かりはないはずたが……」

 

 謎が謎を呼び、二人は頭を悩ませる。

 そしてもう一度画面に映るソウルゲインを目を向ける。

 

「ソウルゲイン……。そしてそのパイロット、アクセル・アルマー……か」

 

 

 

 

 

 ー百鬼帝国・要塞島ー

 

 

 科学要塞研究所襲撃に失敗し帰還した者達の空気は酷く険悪だった。主にキャンベル星人の二人によってだが。

 

「……まさかグレートマジンガーとビューナスAが、向こうの戦いを放棄して戻ってくるとは!」

「けっ、兄貴の考えが甘かったんじゃねえか」

 

 ワルキメデスが作戦の失敗に歯噛みする傍ら、ダンゲルがぼそりと呟く。

 

「なんだと! お前の戦い方が情けないのが悪いのだっ」

「自分の失敗をわしのせいにする気か!」

 

 売り言葉に買い言葉。仕舞いには互いに責任を擦り付け合う、滑稽極まりないやり取りを他の陣営組は呆れた思いで静観していた。

 

「うるさい連中ですな」

「捨ておけ。これでしばらくは大きな顔はできまい。……科学要塞研究所を襲った本命は、別のところにあるのだからな」

「そうでございますな」

 

 ヒドラーの言葉に合わせて、面々の前に影からすーっと、白骨鬼が現れ頭を垂れる。その手には一つのアタッシュケースを携えていた。

 

「ブライ様、ヒドラー様…例のものをお持ちいたしました」

「おお! 科学要塞研究所への侵入に成功したのだな!?」

「よくやったぞ、白骨鬼」

「それでヒドラー元帥……お約束の方は…」

「守ってやる。白骨鬼、娘と会うことを許可してやろう」

 

 その言葉に今まで厳格な面持ちをしていた白骨鬼の表情が緩み、歓喜で一杯になる。

 

「ははっ、有り難き幸せ!」

 

 

 場所を移した地下帝国の二人は先程、百鬼帝国を通じて送られたケースを持ち宛てれた研究所に来ていた

 

 開けられたケースの中には数枚の薄型タブレットが嵌め込まれていた。それを専用の機器に接続し、読み取ったデータをモニターに映し出す。

 

 その内容に暗黒大将軍は深い笑みを浮かべ、地獄大元師は興味深けにしかしどこか忌々しく見ていた。

 

「ほほう、それか・・・例の設計図というのは」

「兜剣造め、量産化を考えていたとは・・・」

「逆に我らがこれを使って、人間どもを皆殺しにしてくれるわ」

「フフ・・・科学者だった頃の血がうずくわ。完全に解析してくれるぞ、兜よ・・・クククク」

 

 地獄大元師……かつて甲児と激闘を繰り広げていた機械獣群の大元、Dr.ヘルは映し出された内容に口角を吊り上げ邪悪な笑みを湛えた。

 

 モニターにはパーツ事に細部を記載した設計図が複数映し出され、それぞれページの最初にローマ字で完成名が綴られていた。

 

 

 

 

 

 ───Great MAZINGER ver.production model と。

 

 

 

 

 




これにて一旦アクセル編は終了します。
作中の海底魔城は完全に作者の想像で書いたものなので詳しい方がいらっしゃいましたら参考程度にお願いします!

次回からラミア編です!
ではでは、クリス=ヴェクターでした。

感想・批評お待ちしております!


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シーンⅡ『宇宙』
第七話「アンダーカバー・上」


今年最後の投稿になりますね。
ではでは本編開始ッッ


 

 

 

 

 

 

 ──時はアクセルが研究所に回収された頃にまで遡る。

 

 

 

 

 

  宇宙。

  静寂と暗闇に包まれた空間。そこに突如として幾筋ものの光の線が走る。その線を掻い潜る様に青い線が走り、線の発信源に襲い掛かる。

 

 ──数秒後、四つの爆発が虚空を染め上げる。

 

  残骸が辺りに散らばる中、一機のロボットが静止していた。

  青と白を基調とし、両肩にそれぞれ計6つのユニットを搭載した人型機動兵器─“アシュセイヴァー” 。その手に携えたビームソードを腰のラックに戻し、辺りを見渡す様に首を動かす。

 

「戦闘終了……」

 

  そのコクピットで緑髪の女性、ラミア・ラヴレスは髪をかきあげ終わりを告げる。張り詰めた空気が緩む中、彼女の顔にほんの僅かに不機嫌さが垣間見える。

 

「計算外だったな……。まさか接触する前に別の軍に見つかるとは……」

 

  片手で機体のチェックをしつつ、現在地を確認する。が、その結果に思わず溜め息をつく。

 

「大分流されてしまったか……」

 

  自分の失策を反省し、しかし即座に思考を切り替え、データを解析、修正…更新し直す。

 

「急いで…

 

『Beep!Beep! Beep!Beep!』

 

  ─ッ」

 

  操縦桿を握り直した途端、けたたましく警報が鳴り響きラミアは思考を周囲に張り巡らす。アシュセイヴァーの高性能レーダーが遠方から複数の反応が接近していることを知らせた。

 

「数は二…いや後続含むて七、……戦闘は避けざるを得ないな。──ステルスモード起動」

 

  アシュセイヴァーの機体を丸々包むように球型のフィールドが展開され周囲の景色と同化し出す。近場に丁度良い隕石群を見つけ、ラミアは一旦そこで息を潜めることにした。

 

 

 

 

 

 第七話「アンダーカバー・上」

 

 

 

 

 

  二機──宇宙用SFS(Sub Flight System) フライングアーマーに乗った白いMS、“ガンダムMk-Ⅱ”とその横を平行に飛行する蒼いSPT(Super Powered Tracer)、“レイズナー”はそれぞれが持つ機動力を全開にして先を急いでいた。

  Mk-Ⅱのパイロット、カミーユ・ビダンは後方を警戒しつつ、レイズナーに通信を入れる。

 

「エイジ、一旦あの隕石群まで後退するぞ」

 

「分かりました、カミーユさん」

 

  レイズナーのパイロット、エイジ・アスカも同意しブースターを吹かして隕石群に突入する。

 

  隕石が大量に散らばるなか中、エイジが先行しブースターと機体の各所に設けられたバーニアーを巧みに操作してこれを回避し、カミーユもフライングアーマーをサーフボードの用に操り回避していく。

  カミーユもエイジも互いに実践経験が豊富なためにここまでの操縦が出来るのだ。そして、彼らは一つの隕石に陣取る。

 

 ──それは奇しくもラミアが身を隠している隕石であった……。

 

 

 ◆

 

 

「………………」

 

  二機がここに張り付いたのは予想外だったが、ラミアはこれを好機と見て情報を密かに取る。

  アシュセイヴァーは戦闘だけでなく情報戦にも特化しているため、この様な場面では大きなアドバンテージになる。

 

(一つは連邦のMS…ガンダムMk-Ⅱか、しかしもう一機は何だ?)

 

  ラミアは送られてくる情報に思案しているとレーダーに新たに接近する機体を感知し、そちらに意識を戻す。

 

 

 ◆

 

 

  カミーユ達から一定距離離れた場に黒と紫のSPT“グライムカイゼル”と、護衛の一般兵用SPT“ブレイバー”が停止する。エイジの下にグライムカイゼルから通信が入って来る。

 

『そこまで、エイジ』

 

「っ、ゲイル先輩!」

 

  聞き慣れた声にエイジの表情が曇り、発した声が僅かに震える。その通信相手、アーマス・ゲイルは厳格な表情のまま言葉を続ける。

 

『エイジ、艦隊への密航ならともかく、SPTを強奪し反逆した罪は重い。だが、今ならまだ私の権限でとりなすことができる。エイジ、反逆者の義弟を持つ兄のことを考えたことがあるのか。……まだ間に合う。投降しろ』

 

「許してください先輩、僕は……」

 

『エイジ… お前の祖国はグラドスだ。お前はグラドス人として育ったはずだ。俺もお前をグラドス人としか見ていない… それを何を血迷って地球人の味方をする?』

 

  ゲイルの中で過去の、平穏な時の自分たちの姿が過ぎさっていく。士官学校時代、兄弟のように共に育った自分とエイジ。そして、エイジの姉ジュリアとの出会い。あの時、誰もが幸せでグラドスの日常を過ごしてきていた。

 

  だからこそ、ゲイルは解せなかった。

 

『そこまでお前を育てたのはグラドスだぞ! グラドスの陽の光、大地、空気がお前を育て上げたのだ…!』

 

  ゲイルの言葉一つ一つがエイジの心を抉る。

  確かに自分はグラドスで育った。だが、幼少の頃より父に聞かされていた未だ見ぬ青の星を、心で思い描いた第二の故郷を戦場としたくなかった。故にエイジは確固たる意思を持って言葉を返す。

 

「それでもっ……、僕の血の半分は地球人の血です! 父さんは地球人です!!」

 

『っ!』

 

『…中尉の厚意を無駄にするかっ、この裏切り者め!』

 

  業を煮やした副官のカルラが撃ったレーザーに二機は咄嗟に左右に散開し、流れ弾は隕石に直撃して辺りに微小の破片を撒き散らす。

 

 ──それが不味かった。

 

「っ!」

 

 ラミアは咄嗟にアシュセイヴァーを後退させたが爆発とそれで生じた大量の破片がフィールドに干渉し、ノイズを混じらせながらアシュセイヴァーの姿が浮かび上がる。

 

『何っ!?』

 

「いつの間に!?」

 

  エイジやゲイルから見れば何もない空間に突如として現れたのだ。たまらず双方は距離を空ける。

 

  それはラミアにとっても予想外の事態であった。しかし姿が露呈してしまった以上今の作戦を立て直すのは不可能。即座に次のプランに移ろうとしたアシュセイヴァーに通信が入る。目の前の機体…ガンダムMk-Ⅱからだ。

 

「そこの機体聞こえるか!?」

 

「!」

 

 通信回線に飛び込んできた声にラミアは思案する。既に計画は大幅に崩れている。ならば敢えてあちらの流れに合わせるのも策だと結論を下し、ラミアは周波数を合わせる。

 

「……聞こえている」

 

「女性? いや、それよりも君は連邦軍の所属か?」

 

「軍ではないが、そちらの敵ではない」

 

「ならば少しの間でいい、アーガマが来るまでの間援護してほしい」

 

「( アーガマ? ということはロンド・ベル隊の関係者か。……ならば好都合だ )良いだろう、これより援護に入る」

 

「すまない…。 (たった一機でこんな宙域にいるのは不自然だ。それに所属不明…。何者なんだ…彼女は?) 」

 

 アシュセイヴァーがエイジの側についたのをゲイルはやはりかといった様子で僚機に注意を促す。

 

『こちらが優位であるが、油断はならん。念のため、後続に連絡を回せ』

 

『中尉! 我々だけで十分です!』

 

『そのような慢心が、失態を招く事になる。……それに……』

 

『それに?』

 

『この宙域に散らばる物がなんだかわからんのか?』

 

 ゲイルの言葉に周囲を見回したカルラ含む配下の部下が口々に驚きを露にする。周りには破片となっているが、そこかしこに乗機のブレイバーと同じパーツが漂っていたのだ。

 

『え……? こ、これは友軍機の残骸?!』

 

『もしや連絡の途絶えた第4偵察部隊か?』

 

『第4偵察部隊は識別コード不明の機体を追っていた。……ということは、おそらくあの新型にやられたということだろう』

 

『まさか!? いくら偵察用装備とはいえ、たった1機に!?』

 

『そうでなければ説明がつかん。……話は後だ。各機、仕掛けるぞ』

 

『り、了解』

 

 敵が突撃を掛けてくる。目視で確認する限り並みのMSより確実に早い。エイジはゲイル機が自分に狙いを付けているのが分かっているので彼を引き付ける役を買って出る。その為に敵を分断する必要がある為、ラミアが一策を講じる。

 

「行けっ、ファイアダガー!」

 

  アシュセイヴァーの胸部装甲が開き、内蔵された誘導ミサイルがばら蒔かれ、小型ミサイルが隕石群に直撃し大量の火球が生まれる。

  ゲイルは瞬時に回避し、これに四機も続いて行く。がその内の一機が間に合わず巻き込まれ爆発する。

 

  その隙に距離を離す三機。掻い潜った機体は構わずラミア達に一気に肉薄する。MS以上の機動性を持つ、SPTならではの戦法で徐々に追い詰めていく。

 

 しかし、簡単に倒せれるほどラミアたちは甘くはない。

 

  対SPT戦を熟知しているエイジはレイズナーの性能をフルに使いゲイル機と相対する。僚機がゲイル機の援護に入ろうとするのをラミアとカミーユがこれを阻止し、敵の注意を引き付ける。

 

  内一機がカミーユの誘導に引っ掛かる。

  背後から追尾してくる敵機の攻撃を左右に機体を振りながら避け、更に距離を縮めようと接近した瞬間カミーユはフライングアーマーを蹴る。虚を突かれた敵にMk-Ⅱは右半身を軸に振り返り、左回し蹴りを叩き込む。直撃を食らい胸部装甲が吹き飛び回転するブレイバーに即座に手持ちのビームライフルを撃ち込む。

 

「まず一機!」

 

  カミーユに撃破された味方機に気を取られている隙を尽き、もう一機の上方から強襲をかけるラミア。

  ブレイバーのパイロットが慌てて回避行動に入ろうとした時にはアシュセイヴァーのガンレイピアが火を噴く。マシンガンのように大量のビームがブレイバーに襲い掛かり数秒で蜂の巣にさせられ爆散する。

 

「続いて二機目」

 

『くっ、小癪なッ!』

 

  敵の苛立ちが通信越しでも手に取るように分かり、それが機体の動作にまで現れる。ラミアはカミーユにエイジの下に行くよう指示を出しカルラ機と相対する。

 

「ならば、倒してみるんだな」

 

『 ッッ、嘗めるなっ!!』

 

 レーザードライフルを連射しながら突撃してくる敵機にビームソードを抜き放ち、ラミアは迎え撃つ。

 

 

  エイジとゲイル機の戦闘は互いに互角の勝負を繰り広げていた。高速で迫って来る隕石群の中、互いのライフルのレーザーが交差し、ブースターの青い航跡が絡み合い宇宙を彩る。

 

『腕を上げたな、エイジ!』

 

「ゲイル先輩こそ…!」

 

  エイジは隕石を楯に一気に距離を詰め勝負に出る。

  レイズナーの左拳のハンドガードが展開し、スパークが瞬く。ゲイル機も同じくハンドガードを展開した右拳をぶつける。互いの拳の間でスパークが干渉し、放電が周囲に撒き散らされる。腕の駆動は唸りを上げ、押し切ろうと激しく振動しエイジとゲイルは互いに食い縛り操縦桿を押し込む。

  僅かな拮抗の瞬間を狙いエイジはカイゼルの脚部を狙い撃とうとするが、これをゲイルはライフルを手放し空いた左手でレイズナーの左腕を掴み、その場で一本背負いを掛ける。

 

「くうぅっ!!」

 

 吹き飛ばされたエイジは各部のバーニアで振動する機体を水平に戻す。

 即座にゲイル機の機影を追おうと前に目を向けた瞬間、眼前にカイゼルが現れ僅かに反応が遅れる。

 その隙にがら空きになった懐を容赦なくカイゼルの横蹴りが叩き込まれる。

 

「うあぁっ!!」

 

『だが……まだ甘い! 《Beep!Beep!》むっ…?』

 

 咄嗟に機体を振る事で遠方からの狙撃を回避し、レイズナーから離脱する。距離を置いたのと同じくレイズナーの前にMk-Ⅱが陣取る。

 

「大丈夫か、エイジ?」

 

「っ……大丈夫です」

 

 カミーユが安否を気遣っているとラミアのアシュセイヴァーが合流する。同様にゲイル機の横に片腕を無くしたカルラ機が並ぶ。

 数ではこちらが優位、技量としては互角。このまま持久戦に入れば勝機が見える。

 

 

 だが現実は非情か。

 アシュセイヴァーのレーダーが新たな反応を捉えた事を知らせる。

 

 識別信号は…グラドス軍。

 

「! …増援、六時の方向っ」

 

  ラミアの通信にカミーユとエイジが振り返ると後方を包囲するようにブレイバーの大群が迫ってきていた。幾筋ものレーザーが此方に襲い掛かって来る。

 

「時間を掛けすぎたか!」

 

「くっ……」

 

  数の暴力に押され、圧倒的不利に追い込まれる。ラミアには幾分か余裕はあるが、カミーユたちはそうではない。火星から此処まで来るのに節約していた弾薬とエネルギーが底をつきかけていたのだ。

 

「……ここまでか?」

 

(……これでは計画に支障が出てしまいかねない…やるか?)

 

  劣勢な状況の中、ラミアの思考は二つの選択肢で渦巻いていた。状況打破の為に奥の手を使うべきか、それとも彼らを盾にして離脱するか。しかしどちらも相応のリスクが伴う。

  早々に見切りを着けようとしたその時、敵方に変化が起きる。

 

『…! 各機散開ッ』

 

  突然包囲していたグラドス軍が距離を離した事に一瞬虚を着かれたのも束の間──三閃。大出力のビームが空を焼き払う。

  呆気にとられる中カミーユが逸速く反応する。

 

「来てくれたかっ!」

 

 

 ◆

 

 

  アーガマ級強襲巡洋艦1番艦─“アーガマ”。

 

  グリプス戦役を生き抜いた白亜の戦艦がラミアたちがいる宙域に急行していた。

 

「……何とか間に合ったようだな。撃ち方止めっ! サエグサ、進路そのまま。トーレス、発進準備用意! 」

 

「了解。全MS、PT発進用意! 繰り返す、全MS、PT発進用意! 」

 

  アーガマの艦長ブライト・ノアの号令の下、ブリッジクルーが動きだし、格納庫では作業する整備員で活気に包まれていた。その中の一機。グレーとパープルでカラーリングされたMSの中で男性は待っていた。

 

『カイ・キタムラ、ゲシュペンスト出るぞ』

『トーラス、ルクレツィア・ノイン発進します』

 

  年長風の男性と若い女性の声が通信越しに耳に入り、僚機のゲシュペンストMk-Ⅱとトーラスがアーガマから飛び立ち戦闘宙域に先行する。

 

  男性は全天周囲モニターから確認し静かに操縦桿を握る。システムは良好を示すグリーンランプが灯り、脚部を固定した台座が格納庫からスライドしカタパルトへと接続されモニターが漆黒の宇宙に染まる。

 

「……宇宙(そら)…か」

 

 デッキの脇にあるランプが赤から緑に変わり、デッキクルーからGOサインが出る。

 

「アムロ、G-3ガンダム 出るぞ!」

 

  G-3ガンダム…通称ファーストガンダムのカメラアイが力強く輝き、姿勢を屈める。

 途端前面からGが掛かりカタパルトがレールの上を勢い良く走りだし、彼らを虚空へと解き放つ。

 

 

 敵軍から“白い悪魔”、味方からは“白き流星”と呼ばれた生ける伝説─アムロ・レイとガンダムが戦場に舞い降りたのだ。

 

 

 

 

 

 




今回からレイズナー組参戦です!
他にも色々と変更してますので、その説明をここでします。

・アムロの乗機をG-3ガンダムに変更
→今作ではアムロの乗機であるガンダム…RX78-2をカスタマイズしたのが上記のRX78-3としています。(小説版ではGMの改修機となっている)またコクピットはコアブロックを破棄し、アレックスなどに搭載された全天周囲モニターに置き換えました。後スペックは…α仕様ってことで。

・カミーユの初期から参戦
→カミーユの参戦は原作をプレイ中に思い付いたことで本来はもう少し後に参戦ですが、別に初っぱなから出しても行けるんじゃないか? ということで今回の形になりました。何故エイジといるかは次回お待ちを。フライングアーマーは個人的に。

ラミアの設定回もまた作ろうと思ってます。
ではでは、皆様少し早いですが良いお年を!

以上クリス=ヴェクターでした!
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