西住姉妹の弟―西住流の島田― (如月 霊)
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プロローグ

僕の名前は島田響(しまだ ひびき)という‘’普通”の高校三年生だ。ん?なんで普通を強調したかって?それはさ、認めたくないんですよ。今目の前で起きてる状況を。

 

「どうしたんです?」

 

目の前に急に現れた人が不思議がって来ている。この状況ですよ。回りは真っ白でその中に俺と女神?が居るんですよ。

 

「だから言ってるじゃないですか!」

 

「私は女神のレイです。でこの世界は死後の世界であなたは死んでここに来ました!」

 

う~んと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇回想◇◆◇

 

高校卒業を2ヵ月後に控えたあの日、僕は大学受験の合格発表を確認しに大学前まで来ていた。

 

「え~っと」

 

「112,113,……148…えっ」

 

えっ?僕の番号が…あった!

 

「やったぁぁあ~!」

 

その場で僕は万歳三唱していた。

 

 

 

 

 

それからしばらくして僕は交差点の所まで来ていた。しかしそこで僕はこけて足を捻ってしまっていた。そして響は目を丸くした。なぜなら交差点に突っ込んで来るトラックが見えたからだ。それなのに僕は後ろから誰かに抱きつかれた。

 

「だ~れだ!」

 

僕の妹の島田暁(しまだ あかつき)だ。僕ならすぐに分かるさ…って!そんなそんな場合じゃない!このままだと暁まで巻き込まれてしまう!仕方がないか…そう思うと響は暁を横5mほど先の人の集りに投げ飛ばした。投げられた暁はすぐに僕の方を向いて愚痴を言うとして立ち上がる。しかし言われる前にトラックが私に当たる。そう分かっている響は暁に向かって笑顔で礼を言った。

 

「今までありがとう…」

 

そこで私の記憶が途切れた。

 

 

◆◇◆回想終了◆◇◆

 

そうか…僕は、死んだのか…だけど暁を守れたならいいか…

 

「で、どうなるんです私。天国?地獄?」

 

僕はレイにたずねる。

 

僕はこの先の運命を聞いた。するとレイの口からまたまた爆弾発言が出てきた。

 

「いや?違うよ?」

 

えっ…まさか!消滅⁉消滅なんてぇ~(涙

 

「いや!違うよ⁉転生‼転生してもらうから‼」

 

転生と聞いて僕はレイに質問をした。しかし、その質問は途中でかき消された。そして転生以外に道が無くなり、その場で転生を選んだ。

 

「…もし転生しなかった「消滅しかないよ?」転生します!」

 

消滅コワイ。そう思いながら僕はレイから転生先を聞き出した。

 

「で、どこに転生させられるんです?」

 

「君さ、ガールズ&パンツァーってアニメ知ってる?」

 

「知ってますよ。小説は家に全巻有りましたし、なんで町が空母なのとか無いのかなぁ~とか思ってましたからね。けどどうして…」

 

…まさか⁉

 

「そのまさかなんです!」

 

またまたレイが心を直接読んで叫びを上げた。

 

「まさか、そこに生身だけで転生とか無いですよね?」(心読んだのはこの際は黙ってよう)

 

「大丈夫です、転生特典は幾つでも付けていいですから」

 

まさかの破格の事を聞いた僕はなぜそんなにも良いのかを聞き返す。

 

「あの、幾つでも良いんですか?」

 

「はい、此方の不手際ですからね」

 

さ、さいですか…

 

「ならまずは戦車を制作、修理、改造等を出来る能力を下さい。あとは指揮能力や身体能力、反射能力、制作などに必要な頭脳、指揮に必要な頭脳とかもお願いします」

 

僕がそう言うとレイがメモを採り終わり、口を開いてきた。

 

「さ、転生、転生」

 

そう言うとレイはそそくさと僕を転生させた。



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第一話 転生と練習戦

「(転生完了したか…さて、動きましょう…か?)」

 

響は動こうとしても自分の体が動かない事に気づくと直ぐに自分の体を見た。

 

「オギャァー!」(なんじゃこりゃあぁぁあ!)

 

体を見ると自分が赤ん坊になっていたのがわかった。そして、自分の横には寝ているもう一人の赤ん坊がいた。するとしばらくして誰かがやって来た。

 

「あら、真霧は起きちゃったの?」

 

「(お母さん?真霧って僕の名前?)」

 

そう言って真霧は抱き上げられた。 

 

「かわいいわね~」

 

そう母親が言っていると奥の部屋から二人の少女が出てきて僕を見るなり少女は母親に話しかけた。

 

「ねぇお母さん!私も真霧達だっこしたい!」

 

「私も!」

 

「まほも?仕方ないわね」

 

「(えっ?まほ?ならこの人は西住しほ…?エッ⁉てことは僕の転生先って西住家なの⁉)」

 

そう考えているうちに真霧はまほに抱き抱えられもう一人はみほに抱き抱えられ、揺られていた。

 

「かわいいな~」

 

「(あ、もうダメ…おやすみ~)」

 

揺られ出して直ぐに真霧は意識を手放した。

 

□■□■□■□■□■□■

 

転生してから十四年が経ち、今はみほとまほにフラッグ戦に付き合わされていた。おわっ!あぶなっ!!

 

戦車の近くに敵戦車の砲弾が着弾した。

 

「車長!どうすれば!」

 

冷静になれ、冷静に。そう心を落ち着かせて指事をする。

 

「回避行動初め!急ぎ森の中に後退!」

 

「りょ、了解!」

 

操縦者が返事をする真霧の戦車はジグザグに後退し、森の中に逃げ込んだ。森に入ってすぐに洞穴を見つけて戦車をその中に入れると真霧は隊長の車輌に通信を入れた。真霧のいる部隊は劣勢という名のもとに負けかけていて残りは私と隊長車両を含む3車輌のみとなっていた。

 

「隊長、こちら西住です。応答願います」

 

『こちら隊長車。どうしましたか?』

 

「自分の搭乗する戦車の独断専行を許可していただきたく思います」

 

『なっ!何を言っているんですか!『変わりなさい』』

 

おっ!隊長さん直々のお出ましですかい

 

「隊長、西住車の独断専行の許可を下さい」

 

『それを出したところで負ける事に変わりわないわ』

 

なんだ?負ける気でいるのか?バカだな。

 

「なら自分が勝って見せますよ」

 

『…わかりました。独断専行を許可します』

 

 

意外に素直…

 

 

「独断専行の許可、ありがとうございます」

 

礼を言ったところで隊長との通信が切れた。それを確認すると真霧は搭乗員に作戦を伝える。

 

「隊長から独断専行の許可が出た。下準備を開始しましょうかね」

 

「砲塔を後ろに向けてからあの塹壕に向けて前進」

 

「だ、だけどそれだと落ちてしまいますよ!」

 

「それでいい!そのまま!!」

 

「わ、わかりました」

 

反論した操縦員はしぶしぶながら戦車を進めて塹壕に落ちた。戦車がへこみに落ちて戦車が斜めに傾いた。斜めに傾いたのを確認した真霧は砲弾を装填してなにやら空を狙いだした。

 

「仰角上げ!+36°!」

 

真霧は狙撃手から席を代わり、発射菅を握って発射体勢を取る。

 

「撃てー!!」

 

しばらくしてから発射菅を握り砲弾を空に向かって発射した。すると真霧は懐中時計をポケットから出して数字を数え始めた。

 

「着弾まで…3…2…1…着弾!、今!」

 

真霧はそう言うと懐中時計の蓋を勢いよく閉めた。それとほぼ同時に崖の上に煙が立ち上ぼり試合終了の合図が鳴った。

 

━━━━━ピィッ!ピィー!━━━━━━

 

 

 

『え、Aチームフラッグ車走行不能!よってBチームの勝利です』

 

すると搭乗員達の喜びの声が上がっていた。やっぱり勝利は戦略次第です!真霧は搭乗員達の喜びを見ながら心の中でそう思っていた。実は真霧、この時までに様々な所にカメラをつけ、相手の行動を把握していたのだった。



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第二話 悪夢の決勝1

練習試合でみほとまほを下してから3年が経ち、真霧は黒森峰学園戦車部の副隊長を拝命していた。そして、明日をプラウダ高校との決勝戦を控えた前日、真霧は試合会場の近くの居酒屋に来ていた。そして、その居酒屋に入るとある人物を探してその隣に座り、話しかけた。

 

「千代さん」

 

「あら、真霧君ね」

 

そう、真霧が会いに来ていたのは西住流と二分する流派の島田流戦車道家元、島田千代、その人だった。

 

「明日…本当にいいの?」

 

千代は真霧にそう聞いた。

 

「…ええ」

 

「既に偽造の遺書は書きましたから」

 

真霧は千代の質問にそう答えた。明日の大会、真霧はある計画を立てていた。大会中にみほの転校する理由の戦車の代わりに川に落ちて事故死に見せ、西住から逃げ島田流に孤児として養子縁組をする計画を―

 

「はい、これを持っていきなさい」

 

そう言って千代は一つの紫色の御守りを渡してきた。その御守りの表面には『戦車安全祈願』と白い糸で刺繍が施されている。

 

「これは…」

 

「本当に死なないでくださいね」

 

「貴方が死んだら貴方が兄になる愛里寿が悲しむから」

 

実は真霧、愛里寿に思った以上に懐かれており、真霧に養子縁組の話が出たのは愛里寿がお兄ちゃんが欲しいと千代に言ったからだったりする。

 

「…ふふ…ええ、死にませんよ。ありがとうございます…お母様」

 

――――――――――

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

――――

 

 

翌日、試合が始まって一時間程経った頃に雨が降り始めた。そこの中で真霧は乗車するティガーⅡを森の中まで走らせ、そこで命令を出した。

 

「この先の森の中で停車してくれ」

 

「了解」

 

そう操縦員の川敷真理(かわしき まり)が返事をし、ゆっくりと停車した。それから真霧は双眼鏡を手に取り、氾濫しそうな川を見つけるとその近くの敵の様子を見回した。そして、川の岸ギリギリに停車している戦車とそれを狙うプラウダのフラッグ車、そして、それの近くを走るみほのフラッグ車を発見した。

 

「あ、あれは…」

 

「ヤバイぞ!!」

 

それを見るなり真霧は叫んだ。

 

「一体どうしたんですか?」

 

真霧の戦車が発進すると砲手の中井愛美(なかい えみ)が聞いてきた。

 

「あの川岸の戦車、あのままだと岸に流れ弾でも出てみろ、川に落ちるぞ」

 

「な、なら急いで通信を…」

 

通信手の石田美咲(いしだみさき)がそう言い、無線を使おうとする。

 

「だめだ、この雨だと通信できない」

 

「だったら!」

 

そう装填手の川邑由梨花(かわむら ゆりか)が叫んだ。

 

「だから、この戦車をあの戦車にぶち当てて避けさせる」

 

「む、無茶ですよ」

 

美咲がそう嘆いた。

 

「美咲と由梨花、愛美と真理は戦車を降りてくれ」

 

それからそう真霧は言った。その隊員達は悩みの顔を見せた。

 

「副隊長命令だ。総員戦車を下車後エリカの部隊と合流せよ」



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第三話 悪夢の決勝2

「副隊長命令だ。総員戦車を下車後エリカの部隊と合流せよ」

 

戸惑う皆に真霧はそう命令をかけた。するとみんなは渋々ながら了解し、下車した。そこで真霧は真理を呼び止めて手に自分が持っていた帽子を手渡した。

 

「真理。これを持っておいてくれ」

 

「副隊長…」

 

「頼んだぞ」

 

そう言ってから真霧は戦車のハッチを閉じ、操縦席に座った。

 

「すぅー…よし!行くか!!」

 

そう意気込み、戦車を発進させた。

 

□■□■□■□■□■□■

 

真霧がその川についたのは川岸の戦車に向け砲弾が放たれたすぐあとだった。その砲弾は戦車の下、つまりは氾濫しかけ、土壌が緩んでいる川岸に着弾し、戦車が落ちそうになった。

 

「やあっ!!」

 

真霧はその戦車の後部に体当たりし、戦車の軌道をずらして落ちるのを防いだ。そして、ギリギリで敵のフラッグ車に砲弾を放ち撃破すると自分の戦車が川に落ちた。それから真霧はまほに無線を開いた。

 

「まほ姉さん…」

 

『真霧、大丈夫か!』

 

まほはそう叫んだ。どうやらまほの隊長車にも連絡がいっているらしい。

 

「だめそうだ…戦車のあちこちで火花が出てる。いつ砲弾に移ってもおかしくない」

 

『なっ!?脱出しろ!!真霧!!』

 

「一応脱出を試みるが…じゃあな。まほ姉さん」

 

『おい!真霧!真霧!!』

 

叫ぶまほを無視し、無線を切った。それから真霧は操縦席上のハッチを開き、戦車から脱出した。そして岸の木の下まで来ると自分の戦車に置いてきた無線器が水によって軽く爆発した。すると戦車内にあった砲弾に引火して戦車は爆発、木っ端微塵に吹き飛び煙の柱を作り上げた。

 

 

 

まほside

 

『お姉ちゃん!!真霧の戦車が川に落ちて流されちゃってる!!』

 

大会本部から大会優勝の連絡が入ってすぐにみほが無線を繋げてそう言ってきた。

 

「何!?何があった!!」

 

『川岸にいた戦車が下の土壌にプラウダの砲弾が着弾して落ちそうになった所を真霧が戦車で押し出して自分が落ちたの!』

 

「みほ!大会本部に連絡しろ!!」

 

『わ、わかった!!』

 

みほはそう言って無線を切った。そしてそのタイミングで真霧から無線がかかってきた。

 

『まほ姉さん…』

 

「真霧、大丈夫か!」

 

まほは真霧に安否を確認するためにそう叫んだ。

 

『だめそうだ…戦車のあちこちで火花が出てる。いつ砲弾に移ってもおかしくない』

 

「なっ!?脱出しろ!!真霧!!」

 

『一応脱出を試みるが…じゃあな。まほ姉さん』

 

「おい!真霧!真霧!!」

 

そこで真霧からの無線が切れた。そしてその数分後、急に大きな爆発音が大会場に響いた。

 

「な、何が…」

 

「た、隊長!!真霧副隊長の戦車が爆発!!」

 

その瞬間まほは意識を失いかけた。しかし、まほは戦車を真霧の捜索に回させた。

 

「真霧の捜索に移る!前進しろ!」

 

(生きていろよ…真霧)

 

それから丸一日探したが真霧は発見できなかった。そして黒森峰は十連覇を達成したが皆浮かない顔をしていた。そして学園艦に戻り、部室で真霧の遺書が見つかりそれを読んでいると部室に真霧の戦車に乗っていた隊員達とエリカが現れた。

 

「西住隊長、これを」

 

そう言ってエリカが真霧から渡されていた帽子をまほに差し出した。

 

「これは…」

 

「真霧副隊長から預かった物です」

 

「私達はこれで」

 

エリカ達は真霧の帽子を手渡すと部室を足早に退出した。

 

「真霧…うぅ…」

 

まほは真霧の帽子を握りしめ、泣いているしか無かった。

 

まほsideout



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第四話 島田流本家

大会の翌日、真霧の姿は島田流戦車道本家にあった。

 

「…どこもかしこも新聞は俺が死んだと書いてますね。…生きてるのに」

 

千代を前に真霧は新聞を千代に返しながらそう言った。

 

「仕方ないよ、お兄ちゃん。お兄ちゃんは一応、行方不明扱いなんだよ?」

 

そこで真霧の横に座っていた愛里寿が口を開いた。

 

「…確かに愛里寿の言う通りね。ところで真霧?」

 

「どうしたの?」

 

「貴方、転入先の高校はどうするの?」

 

千代は話題を切り替え、そう聞いてきた。

 

「学園艦、鈴創学園にします」

 

真霧は愛里寿の頭を撫でながらそう言った。

 

「鈴創学園…確か三重県の学園艦だったかしら?」

 

「ええ、そこのギルバート・デュランダル議長…じゃなかった。ギルバート・デュランダル理事長と知り合いで話しは通してあります」

 

真霧はそう返した。

 

「…そういえば…お兄ちゃんって顔見られたらいけないんじゃないの?」

 

愛里寿は唐突にその点を突いてきた。

 

「ああ、そこは…これだ」

 

「…仮面?」

 

真霧は仮面を取り出し、顔に被せてみせた。そう、ラウ・ル・クルーゼのかめんである。

 

「そ、なんとかなるさ」

 

「なんとかなる…のかな?」

 

愛里寿は結構不安そうであった。

 

□■□■□■□■□■□■□

 

一週間後、鈴創学園。理事長室

 

真霧はこの日、鈴創学園の理事長室に来ていた。

 

「島田真霧…ラウ・ル・クルーゼ、転入着任した」

 

デュランダルを前にそう言って敬礼をした。

 

「ああ、真霧君。よろしく頼むよ」

 

「なぁ、ギルバート。何で俺の制服は”これ“なんだ?」

 

真霧は自身の着ている制服の裾を持ちながらそう言った。

 

「何故…といっても真霧君が”その“制服を着るに値する成果を編入試験で出していたからだろう?まぁ、私が君を押していたのもあるがね」

 

「ふつう編入生にいきなり渡すかね…」

 

真霧はそう呟いた。真霧が着ている制服は白地を基調として黒と金が袖先、肩につけられている。

 

「別に僕は赤服程度でいいんだけど?」

 

それから真霧はデュランダルにそう言った。

 

「決まったから諦めてくれ」

 

一蹴りしやがった…

 

この学園では通常の緑を基調とした緑服、一部の成績優秀者の赤を基調とした赤服、そして生徒会、各委員会の長そして各部の部長は黒を基調とした制服を分けている。ちなみに真霧の制服は白服と呼ばれ、これを着ている人物は理事長に認められた者だけとなっている。そのため真霧が来る前の三年間、までは存在していなかった。

 

「ま、これからよろしくな。ギルバート」

 

「ああ、こちらこそだ。真霧…いや、ラウ」



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第五話 鈴創学園、戦車道始動

鈴創学園に転入してから早くも一週間が過ぎたある日。真霧はデュランダルに理事長室に呼び出されていた。

 

「ギル、何か用があるのか?」

 

真霧は理事長室に入るなりデュランダルに呼び出した理由を聞いた。

 

「この鈴創学園でも戦車道を始めることに決まったんだよ」

 

「はぁ?一体なんで戦車道を?」

 

真霧はいきなり何言っとんだ?こいつ。と思いながら聞き返す。

 

「この学園の志願者数は年々減っていてね。それを阻止するためにだよ」

 

「まぁ、それはわかったが何故僕を呼んだんだ?」

 

「…まさか」

 

「ラウ…いや真霧君には鈴創学園の戦車道隊長をしてほしたいんだよ」

 

デュランダルは真霧が勘づいた所でそう言った。

 

「…何故俺なんだ」

 

「君は元々黒森峰で戦車道の副隊長をしていただろう?それに西住流と島田流を使える。これ程適任者はいないさ…やってくれないかな?」

 

「…わかった、やってやるよ。隊長」

 

真霧はデュランダルに押し負ける形で戦車道隊長を引き受けることにした。

 

「ああ、そうだ。ラウ、一ヶ月後に戦車道をする生徒達に隊長就任の演説をしてもらうつもりだから内容を考えておいてくれ」

 

「はァ!?わ、わかった。考えとくよ…」トホホ

 

それから真霧は仕事が増えたと肩を落としながら理事長室をあとにした。

 

 

 

 

 

□■□■□■□■□■□

 

 

 

 

 

一ヶ月後、演説を直前にし、真霧の所に戦車道をする人物の名簿が届いた。

 

「ひぃ、ふぅ、みぃ…26人って自分を入れて戦車五両程度だぞ?勝てるか?」

 

名簿を見て真霧はそう嘆いた。そして戦車の車種、両数が書かれた資料を反対の手にとった。

 

「四式中戦車に二号戦車二輌にSU-85とM4中戦車か…」

 

「ま、なんとかなるだろ…たぶん」

 

そう呟いて資料を机に捨て、演説会場になっている体育館に向かった。

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

 

――――――――

 

 

 

 

―――

 

 

 

「諸君、私が今回戦車道の隊長を勤めることになったラウ・ル・クルーゼだ」

 

真霧が壇上に上がると所々で話し声が聞こえた。無論、内容は三年ぶりに出た白服ことである。しかし、それを無視して真霧は話を続けた。

 

「諸君に問う!我が学園は年々志願者が減り続けている。このままでは我が学園艦が廃艦になるかもしれない……これでいいのか?否!断じて否である!」

 

「今回、この場を借りて宣言させていただく。この私、ラウ・ル・クルーゼは鈴創の名を頑固足るものにするために精進することを宣言しよう!!」

 

「「「「「ウオォォォォ!!!!!」」」」」

 

そう言うと戦車道隊員達は一斉に叫びだした。その全てが絶賛の声であったのは言うまでもない



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第六話 急に練習試合の予定話すか?普通?

『戦車道隊長、ラウ・ル・クルーゼ大尉及び副隊長、伊川偲少尉は至急理事長室に出頭してください。繰り返します。戦車道…』

 

真霧が戦車道部隊で練習をしようと向かっていると急にデュランダルから呼び出しがかかった。真霧と副隊長をしている伊川偲中佐だ。

 

ん?何で階級があるかって?…うちの学園ってなんか軍隊を元にしてるからそれで決まるんだってさ。…まぁ、階級呼びは一応あるってだけで皆あんまり使わないんだがな。

 

「隊長、議長が自分達を呼ぶなんて何かあるんですかね?」

 

理事長室に向かっていると偲が後ろから話しかけてきた。

 

「さぁ、だがデュランダル議長の事だ。何かは、あるだろうな」

 

「面倒なことじゃなければいいがな」

 

「ですね…」

 

そこには同情する。この戦車道もアイツが起こした事だからな…

 

そうこうしているうちに理事長室についた。そして真霧が扉をノックする。

 

『誰かな?』

 

「戦車道部隊隊長、ラウ・ル・クルーゼ大尉です」

 

「同じく戦車道副隊長、伊川偲少尉です」

 

それから中からの返事を聞くと真霧達は理事長室に入っていった。

 

「「失礼します」」

 

「やぁ、待っていたよ」

 

デュランダルが椅子に座りながらそう言ってきた。それを横に真霧は理事長室のソファーに腰かけた。

 

「で、デュランダル議長。何用ですかな」

 

そう言うとデュランダルは偲と真霧に一枚の資料を渡してきた。しかもその内容はある戦車道のある女学院の資料だった。真霧は軽く嫌な予感を感じつつ質問した。

 

「…デュランダル議長?まさかとは思うけどこれは?」

 

「その資料の女学院と鈴創学園戦車道部隊は5対5の殲滅戦形式で練習試合をしてもらうよ、ラウ」

 

それを聞いていた偲が横から叫び、反論した。

 

「デュランダル議長!!無茶ですよ!だいたい先月できた戦車道部隊が全国大会常連で強豪の聖グロリアーナ女学院に敵うとお思いか!!」

 

「大丈夫だよ。我が学園の隊長殿は聖グロとの試合経験があるからね」

 

「隊長は聖グロと戦った事があるのなら相手の悪さは分かりますよね!」

 

偲はそう言って説得しようとした。が、真霧には一歩及ばない。

 

「大丈夫、どうせデュランダル議長の事だから全国大会常連の力を見てこいよって事だよ。だろ?」

 

「ああ、さすがはラウだな。まぁ、負けたら負けたで技術が学べてもしも勝ったら自信と技術が得られるからね。一週間後だ。頑張ってくれよ」

 

それを聞いて偲は前も後ろも塞がれているとわかり、肩を落とした。それから真霧は理事長室を後にし、戦車道部隊隊員に話にいくのだった。



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第七話 練習試合-壱

練習試合当日、真霧と偲は聖グロの隊長と副隊長に挨拶をしに聖グロの待機場所に来ていた。

 

「どうも、ダージリンさん」

 

聖グロの隊長、ダージリンを見つけるとそう話しかけた。

 

「あなた方は…」

 

「私は鈴創学園戦車隊隊長をしています。ラウ・ル・クルーゼ大尉です。こっちが副隊長の伊川偲少尉です」

 

「あら、鈴創の隊長さん達ですか。どのようなご用で?」

 

ダージリンはなぜやって来たのかを聞いてきた。

 

「いえ、ただ戦車隊を最近創立した我が校と練習試合をしてくださるダージリンさんに挨拶をと思いましてね」

 

「そうでしたか。今日はお互い頑張りましょうクルーゼ大尉」

 

「はい。では、私共はこれで、失礼します」

 

そうして真霧と偲は一礼して自分の待機場所に戻っていった。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

試合が始まってすぐに真霧は戦車の無線機を使い周囲の戦車に通信を繋ぎ、その無線機を手にとる。

 

「諸君!我々鈴創学園戦車隊はまだまだ未熟だ!相手の聖グロリアーナよりも知られてもいない!!」

 

「今回の試合は何だ!!我らの負け試合かァ!?」

 

真霧は各戦車の隊員達に向けて叫ぶ。

 

「「「「「「我々の初勝利の為の舞台です!!」」」」」」

 

するとすぐに無線機から返事が聞こえてきた。

 

「なら勝ってやるぞ!!敵はサーチアンドデストロイだ!!」

 

そうして真霧は無線機機を台の上に置いた。すると無線機からまたもや隊員達の意気揚々とした返事が返ってきた。

 

「「「「「「ウラー!!」」」」」

 

(うちってソ連寄りだけどさ…)

 

真霧は無線機から聞こえてきたロシア語の返事に少し戸惑った。しかし、乗車の戦車が森の中につくとそれを振り払い、作戦の指揮を始めた。

 

「これより作戦を開始する。早野隊は宮田隊を引き連れてp4地点からp6地点に、中村隊はp1からp9地点に高速移動し、敵を錯乱させてくれ」

 

『了解!』

 

『了解しました!』

 

中村と早野が反応した。それから真霧は偲に無線を繋いだ。

 

「伊川少尉、我々も動くぞ。r5地点まで前進する」

 

『はい、隊長』

 

それを聞いてから真霧は偲の戦車を引き連れ目標地点に向かい始め、森から出て市街地に入ってすぐに戦車に衝撃が走った。戦車の至近に敵弾が着弾したのだ。

 

「被害はッ!」

 

「至近に着弾しただけで走行、戦闘に問題ありません!!」

 

『隊長!こちら中村隊!敵マチルダを一両撃破しましたが敵弾が輪帯に命中し走行不能!砲塔はなんとk…なっ!敵かッ!う…』

 

『こちら早野隊!中村がやられました!早野隊はマチルダを二両撃破しました。しかし、離脱の際に追従していた宮田隊の戦車がもう一両の戦車に撃破されt…あれは敵車!撃ちk…』

 

そうして中村と早野からの通信が途絶え、そして味方戦車撃破の知らせが届いた。

 



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第八話 練習試合-弐

試合場の立地が思い付かない…┐(-。-;)┌


「やりますね…クルーゼ大尉」

 

ダージリンは揺れ動く戦車の中でそう呟いて今戦っている真霧の戦車を軽く睨んだ。

 

「新興チームがここまでとは…」

 

砲手のアッサムが返答する。こちらは既に三両が撃破されている。今、鈴創学園と聖グロリアーナ女学院は2対2

となっている。

 

「まだ負けられないわね」

 

━━━━━━━━━━━

 

 

 

━━━━━━━

 

 

 

 

━━━━

 

「クソッ!敵残存車を潰す!各車、散開して敵を撃滅しろ!!」

 

そう真霧が無線機に叫び込んだ。それにしたがって伊川の戦車と真霧の戦車が離れるとその間に砲弾が落ちてきた。

 

「危なかった…」

 

真霧はそれを見て冷や汗を流した。

 

「右方800m先、敵車両二!!撃てッ!!」

 

砲を回す命令を出し、砲弾を放つ。それは見事に敵戦車に吸い込まれた。そしてもう一両の戦車が味方の敵討ちと言わんばかりに砲弾を真霧の戦車に向け、放った。

 

「避けられんかッ!!」

 

「なっ!?」

 

真霧が自分の撃破を予感したところにひとつの大きな影が現れ、真霧の戦車が受けるはずだった砲弾を防いだ。それは偲の戦車だった。

 

「急いで後退!!ジグザグにだ!」

 

後退の指示を出してから真霧は偲に無線を繋いだ。

 

「偲ッ!!大丈夫かッ!!」

 

『自分達は大丈夫です。戦闘を続けてください』

 

「…わかった、前進始め!装填はァ!!」

 

偲の安否を確認してからそう叫んだ。

 

「装填済みでいつでも撃てます!」

 

「よし!回避行動を取りつつ回り込め!!」

 

それから真霧の戦車が敵の戦車に向かって進んで行くと敵戦車から発砲があった。しかし、真霧の戦車は回避行動を取っているため当たりはしない。

 

 

 

 

「なっ、何故当たらないの!?」

 

砲手のアッサムは戸惑いを露にさせた。それもそうだ、たかが新興チームに聖グロリアーナ女学院戦車隊がここまで追い込まれたのが驚きだった。

 

「戦車を滑り込ませて防ぐって一体なんなんですのッ!?」

 

「これは負けられないわね、旋回始めて!倒しますよ!!」

 

そう言ってダージリンは真霧の戦車に向けて前進し始めた。

 

 

 

 

「撃てッ!」

 

敵のマチルダが射線上に来た所で主砲を撃つ。しかし、相手は強豪校の隊長。すかさずに戦車を動かし、砲弾を避けた。

 

「今のを避けるか…その民家を貫いて撃てるか?」

 

真霧は自分の戦車の砲手に聞いた。

 

「あの民家…ですか?…行けます!」

 

隊員は乗り気を出してくれた。それから数秒後、真霧の勘が動いて命令を出した。

 

「撃てッ!」

 

「はいっ!!」

 

そしてその砲弾は見事ダージリンの戦車に命中し、白旗を上げさせた。

 

■□■□■□■□

 

「ラウさん?」

 

試合が終わり、片付けをしているとダージリンが話しかけてきた。

 

「これは、ダージリンさん」

 

「今日は私達の負けね。だけど次は負けないわよ?」

 

「ええ、今度も私達が勝たしてもらいますよ」

 

真霧がそう言うとダージリンは自分の戦車に向かって歩いていく。が、途中で足を止めて振り返った。

 

「…たのしかったわよ」

 

そう言うとダージリンは再び自分の戦車に向けて歩いていった。




鈴創学園戦車隊車両

一式中戦車 真霧隊
SU-85 伊川隊
二号戦車 中村隊
二号戦車 早野隊
M4中戦車 宮田隊


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第九話 こんなに来るのか?…普通?

「こ、これ…マジで?」

 

真霧は執務室で鈴創学園戦車隊との練習試合申し込みの書類の多さに唖然としていた。

 

「BC自由学園にプラウダ、継続もって…」

 

「こんなに来るものなんですかね?」

 

横から偲がそう聞いてきた。

 

「普通は新興チームにこんなには来ない…が、おそらくこの前の聖グロとの練習試合に勝ってしまったからだろ」

 

「ですよね…所でクルーゼ隊長、次の試合はどうなるんですか?」

 

偲は大量の試合申し込みの書類を持ちつつ聞いた。

 

「あー…次の試合はわからない!」

 

「へ?」

 

真霧がいきなり「わからない」と言うと偲は呆気にとられた声を出した。

 

「戦車道連盟が男子戦車道を増やしたいとか言ってな、この試合は申し込みをした学園の中からくじ引きで相手を決めて大会扱いの試合で中継されるらしい」

 

「そ、そんなんでいいんですかね…?」

 

「別にいいんじゃないか?」

 

偲が書類に目を落とし、そう疑問を投げてきた。

 

「強豪を潰せば鈴創の名前が広がるからな」

 

そう言うと偲は納得がいったのか笑みを浮かべた。

 

「なにィィ!!」

 

「ど、どうしました?」ビクッ

 

その瞬間、真霧に試合相手決定の連絡が入り、叫んだ。

 

「試合相手が決定したぞ!」

 

「相手は…何処なんですか?」

 

「強豪の…サンダース大学付属高校だ」

 

学園名を言うと偲は首をかしげた。そしてその説明をしようとするといきなり天井から声が聞こえた。

 

「サンダースは「戦車保有数全国一位の学園です」…疾風か?」

 

「はいっ、クルーゼ隊長。宮田隊小隊長宮田疾風軍曹です!」

 

宮田疾風軍曹、鈴創学園戦車隊 宮田隊小隊長。実家が忍者屋敷だったりして忍び込みが得意であだ名が鈴創のパパラッチ。なにもしてないんだけど?by宮田

 

「…、いつから居たんだ?」

 

偲はこめかみを押させつつにいつからいたか聞いた。

 

「『こ、これ…マジで?』って所からですよ?」

 

「初めからかよ…」

 

それには真霧も頭が痛くなった。…こいつに偵察させたらせたら一流じゃないか?

 

「で、なんか用でもあったのか?」

 

「そうだ、デュランダル議長から隊長宛の手紙を預かってたんですよ。」

 

そう言って疾風は腰につけてある袋から一通の手紙を手渡してきた。

 

『ラウ、サンダース大学付属高校の偵察、頼んだよ。

 

ギルバート・デュランダル』

 

「あんにゃろ…まぁいいや、疾風。サンダースの偵察に行くぞ!偲、私の留守中のことたのんだぞ」

 

「はい!」

 

「隊長、早く行きますよ」

 

「ああ、今行く」

 

そう言って真霧と疾風はサンダース大学付属高校の偵察に向かった。

 

 



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第十話 よし、偵察に行ってくる←女装で

「隊長?まさかと思いますけどその仮面で潜入なんてしませんよね?」

 

大発動挺に乗ってサンダースの学園艦に迫っている途中で疾風がそう訪ねてきた。

 

「もちろんだ。仮面は外して片眼にこれをつけてカラコンをつける」

 

そう言って真霧は懐から一つの眼帯を出した。

 

「眼帯ですか?」

 

「ああ、それにサンダースの制服で女装をしていく」

 

サンダースの制服を箱から出して疾風に見せる。

 

「は、はぁ」

 

それからの上でサンダースの制服に着替え、仮面をとりカラコンをつけて眼帯をつける。すると真霧の顔を見た疾風が驚いている。

 

「た、隊長。黒森峰の西住によく似てますね?何か西住と関係あるんですか?」

 

疾風はそう聞いてきた。

 

「疾風、私は島田なんだがな。まぁ、あるにはあるが…言わんよ」

 

「えぇー!いってくださいよー」

 

「ダメだ。それにもう着くぞ」

 

それから学園艦につくと真霧は正面から、疾風は裏から忍び込んだ。

 

 

 

━━━━━━━━━━━━

 

 

━━━━━━━━

 

 

━━━━

 

 

「久しぶりに来たが、鈴創よりデカイな」

 

真霧はサンダースの校内に潜入してから校舎を見てそう言った。それから真霧はあまり人の通る事の少ない道を選び、サンダースの戦車庫にたどり着いた。するとそこではサンダースが鈴創との試合のミーティングをしていた。

 

「これより一回戦出場車両を発表する」

 

「早速ですか」

 

「ファイアフライ1両、シャーマンA176㎜砲搭載1両、75㎜砲搭載8両よ」

 

アリサがそう発表する。それからサンダース大学付属高校戦車隊隊長のケイが試合のフラッグ車を決めると言った。

 

「次はフラッグ車を決めるよ!OK?」

 

「「「「「「イエーーーーイ!!」」」」」」

 

そうするとサンダースの生徒達が叫んだ。それに真霧も怪しまれないように叫んだ。

 

あの写真は…A176㎜か。ってことはフラッグ車はA176㎜かな?

 

「何か質問はある?」

 

ケイが編成を終わってから質問があるかを隊員達に聞いた。それを利用して質問する。

 

「小隊編成はどうするんですか?」

 

「いい質問ね!三両で一小隊の一個中隊にするわ!」

 

続けて質問する。

 

「フラッグ車の護衛は?」

 

「ナッシング!」

 

ずいぶん強気だな…

 

「敵にはSU-85がいますが…」

 

「大丈夫!あんな敵、一両でも全滅させられるわ!」

 

「なるほど!」

 

ケイは自信満々に答えた。それを聞いてから真霧は足早に車庫から退散し、疾風に連絡を入れた。

 

「疾風、こっちは完了した。そっちはどうだ」

 

『こちらも完了しました』

 

「よし、なら早く退散するぞ」

 

『了解』

 

そう言って通信が切れる。それから真霧と疾風は早々にサンダースの学園艦を後にした。

 



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第十一話 対サンダース戦、開始!

サンダース大学付属高校との試合当日

 

「サンダースの隊長さん、今日は楽しみましょうか」

 

「ええ、楽しんで勝ってあげるわ!」

 

真霧は相手選手との試合前の挨拶でケイにそう言う。すると丁度審判が出てきて試合の開始を取り仕切る。

 

「これより!鈴創学園とサンダース大学付属高校との試合を開始します!!」

 

「両選手、礼!」

 

「「「「「「よろしくお願いします」」」」」」

 

そう言ってどちらも礼をした。それからサンダースと鈴創の選手が自分の戦車に戻っていった。

 

□■□■□■□■□■□■□

 

真霧は自分の戦車に乗り込むとすぐに無線機を手に取った。

 

「諸君、これは我々の正規の初陣だ!!行くぞッ!!」

 

『『『『『ウラー!!』』』』』

 

真霧がそう激昂する。すると隊員達も叫び、返事をしてきた。

 

「今回、敵とは5対と此方が少なく不利だがSU-85の前に引っ張り出して撃破しろ!!」

 

「これより、”穴熊作戦“を開始する!」

 

「フラッグの宮田隊には私の隊と伊川隊が護衛する。中村隊と早野隊は偵察に向かえ」

 

そう言って指示を出す。そしてそれぞれの戦車は散開し、行動を開始した。

 

 

□■□■□■□■□■□

 

~森~

 

停車させ、息を殺して偵察行動をしていると急に砲弾が近くに着弾した。早野隊小隊長、早野涼(はやな りょう)曹長はそれを受けた瞬間、すぐさま戦車を動かして隊長車に無線を入れた。

 

「後進一杯!!左右に振りながらだ!」

 

「クルーゼ隊長!我、奇襲されたり、撤退します!」

 

『何!?敵車は何両だ!』

 

真霧がそう叫んできた。

 

「はい、6両です!」

 

『…何とか突破して逃げてくれ!!』

 

「はっ!!」

 

そう言って通信を切った。

 

「皆、聞いたな?クルーゼ隊長は俺ら偵察隊にこの包囲網を突破してほしいらしい。なら、クルーゼ隊長の命令には従うぞ!!」

 

「「「「ダー!!」」」」

 

自分の分隊にそう激昂して指揮を取り出す。

 

「行くぞ!!前進!」

 

その指示によって後進していた二号戦車は急に突撃前進して行く。

 

「突っ込んできてる!自分から殺られに来るなんてね!Fire!!」

 

敵車の車長がそう言って砲弾を撃つ。

 

「ここォ!!緊急停車!!」

 

しかし、涼は見事に避ける。

 

「嘘!?」

 

そしてその砲弾は反対にいたもう一両に命中する。そしてその戦車も味方からの砲撃で撃破された。そしてそれによって敵の包囲網に穴が開いた。

 

「よし!敵の包囲網が崩れた!!これで抜けろ!!」

 

それを涼は見逃さずにそうして退却していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

□■□■□■□■□■□■□

 

アリサside

 

 

 

「嘘…」

 

アリサは報告を聞くなり唖然とした。それによっても隙が生まれていたのだ。

 

 

 

アリサsideout

 

 



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第十二話対サンダース戦 終結ス

「この試合……何かあったか?」

 

真霧は走る戦車の車長席に座り、そう呟いた。

 

「クルーゼ隊長、伊川隊から暗号文です」

 

「内容は?」

 

「はい、これです」

 

そこで通信手が伊川隊から暗号電文の紙をを渡してきた。

 

「ええ~、『北北東空中ノアドバルーンハ、敵ノ策略カ問ウ』か?」

 

そう言って真霧は戦車から顔を出し、そのアドバルーンを見た。

 

「あれか……アリサかな?」

 

「フッ…偲に返電『見事ナリ、此ヨリ此方カラ真意ヲ突キ錯乱サス』、平文でだ」

 

真霧がそう言うと通信手が確認する。

 

「平文で良いんです?」

 

「ああ、敵は翻弄せねばな!」

 

そう答えると直ぐに偲に電文を打つ。するとすぐさま『了解ス』と返答された。それから直ぐに真霧は無線機に手をかけた。

 

 

 

□■□■□■□■□■□■□■□

 

「あれ?通信が止んだの?」

 

アリサは無線傍受していた鈴創学園の通信が止んだのを不思議がり、周波数を再度合わす。

 

『やぁ、この無線を傍受しているアリサ君?』

 

「!?」(バレている…!)

 

アリサは驚きを隠せない。

 

『残念だがね、これは我が方の作戦の一部なりて愚の骨頂なり…だな』

 

そう言って真霧は無線を切った。切られた数秒は理解できなかったアリサも次第に分かりだし、顔が青くなってから苛立ちが出たのかそこが戦車の中というのを忘れて味方の無線機に向けて叫んだ。

 

「あんにゃろォ…!」

 

「サンダース戦車隊各員!よく聞きなさい!新興チームを叩き潰してやりなさい!!」

 

『『『『『イエッサー!!』』』』』

 

サンダースの隊員達は元気よく返事をした。

 

━━━━━━━━━

 

その頃、鈴創学園側では

 

 

「う~ん?あれはフラッグ車か?北西の森の中から…北東か?」

 

偵察の為、木の上でフラッグ車を探していた疾風が見つけ、すぐさま真霧に暗号電文を打つ。

 

「『北西ノ森カラ東進、虎ハキタル』か…」

 

「よし、伊川隊を向かわせる!電文をそのまま打て!」

 

真霧は直ぐに届いた電文をそのまま伊川隊に流させた。

 

 

 

 

 

伊川隊side

 

「分隊長、クルーゼ隊長車から暗号電文です」

 

偵察に出ているとクルーゼ隊長車から暗号電文が届いた。

 

「内容は?」

 

「はい、『北西ノ森カラ東進、虎ハキタル』です」

 

それを聞いた偲は考えを巡らす。

 

「虎…フラッグ車が此方にきている、か…」

 

「敵が来るぞ?」

 

偲は息を殺して敵フラッグ車が来るのを待った。そして、その数分後。時は…来た!!

 

「撃てェエ~!!」

 

偲がそう叫ぶ。そしてSU-85から二つの砲弾が敵フラッグ車に続けて直撃する。

 

シュポ!!

 

すると敵フラッグ車は停車し、白旗を掲げた。

 

 

『サンダース大学付属高校フラッグ車、走行不能。よって、鈴創学園の勝利!』

 

こうして、鈴創学園の公式な初陣は勝利で幕をおろした。



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第十三話 次の相手は…?

~サンダース戦の二日後~

 

サンダースを下した二日後、真霧は鈴創学園戦車隊員達を呼び出していた。

 

「皆、次の試合相手が決まった」

 

そう言うと隊員達は相手について注目する。

 

「次はプラウダが相手だ」

 

「ソ連に影響を受けた学園ですか」

 

偲がそう話を出した。

 

「ああ、プラウダは去年の準優勝校だ。一筋ではいかん。それに会場は雪だ。これは相手のホームグラウンドだからな」

 

「試合は4日後だ。各員乗車は不凍液を確認しておけよ。では、解散」

 

真霧は軽く注意を促し、その場を解散させて後にした。

 

 

□■□■□■□■□■□■□■□

 

そして、試合当日

 

「ハァー…寒いな」

 

真霧は揺れ動く車内で白く煙が上がる吐息を見てそう呟いた。

 

『しかたないですよ、雪だらけですし』

 

無線機から隼人が返事をしてきた。

 

「なぁ、たしかプラウダは試合で一体感を高めるために歌うらしいな」

 

『そうなんです?』

 

中村隊分隊長、中村悠一軍曹が聞き返してきた。

 

「ああ、俺達も何か歌うか?」

 

真霧は各員に向けてそう問いかける。

 

『いいですね』

 

『でも何にするんです?』

 

皆賛成はしたものの、曲は決まってはいなかった。

 

「なら…Los!Los!Los!か?」

 

真霧は手元の機器で曲を選び、伝える。

 

『いいんじゃないですか?』

 

『でもクルーゼ隊長がお願いしますよ』

 

「お、俺か?」

 

他の隊員が真霧が歌ってくれと言ってきて少し戸惑う。

 

『お願いしますよ~』

 

しかし、それに他の隊員達も乗ってきて真霧は歌うしかなかった。

 

「あー、わかった!私が歌うぞ!」

 

『待ってました!』

 

「お前らも入れよ?」

 

『『『『ダー!!』』』』

 

こいつら…

 

「スゥー…Feuer! Sperrfeuer! Los!

Achtung! Deckung! Hinlegen! Halt!」

 

 

 

「戦場へ!前線へ!そして死の淵まで!

命捨てたその覚悟を示せ!」

 

 

 

 

「聴こえるだろう あの砲声が

抵抗する蛆の聲だ

踏み潰せ!踏み潰せ!」

 

『踏み潰せッ!』

 

『踏み潰せッ!!』

 

そうしてから歌がおわると真霧は手元の無線機に向けて叫んだ。

 

「諸君!我々の任務は何だ!!」

 

『『『敵フラッグ車を叩き潰す事です!』』』

 

「そうだ!フラッグ車の撃滅だ!!」

 

「ここは何ぞ!?」

 

『『『我々の勝利の踏み台であります!』』』

 

「よろしい!!ならば闘争だ!総員!最善を尽くせ!!」

 

そう真霧は言い終わると直ぐに戦車に振動が来た。

 

「な、何だ!!被害は!?」

 

無線機に向けて被害を確認する。

 

『被害なし!』

 

『問題ないです!』

 

『命中弾なしです!』

 

『戦闘行動に支障ありません!』

 

それを聞いた所で報告が入った。

 

「敵車の砲撃です!…あ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぜ、前方に敵車!数三!!」

 

 

 

 

 

 

 



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第十四話 対プラウダ戦開始

「ぜ、前方に敵車!数三!!」

 

「各車!砲撃用意!!撃ちィー方、始め!」

 

真霧はその報告がなされて直ぐに通信機に叫んだ。するとこっちの行動に気がついたのか敵戦車は急いで後退しようとする。

 

「だが遅い!」

 

味方の各戦車の主砲が火を吹いた。計6発の砲弾が敵戦車に向けて降り注いだ。

 

「二輌撃破!!」

 

『クルーゼ隊長!敵一輌が森に逃しました!』

 

「よしわかった!砲撃しつつ全車、追撃する!!」

 

真霧がそう言うと各戦車は真霧に付いて追撃する。そしてしばらくするとフラッグ車発見の報が入った。

 

『前方に敵車6輌!!中にはフラッグ車を確認!!』

 

「これは…罠だな」

 

真霧は即座にそう判断付けた。

 

「罠…ですか?」

 

通信手が聞き返した。

 

「そうだ」

 

そう言い通信機で各車に連絡を入れる。

 

「これは敵の罠の可能性が高い」

 

「伊川隊は宮田隊を連れて敵の後ろに回り込んでフラッグ車を潰せ。早野隊、中村隊は私と敵の陽動だ」

 

『『『『了解!』』』』

 

その返事が聞こえると伊川隊と宮田隊は本隊から離脱していった。それから真霧は早野隊と中村隊に連絡を入れる。

 

「涼!悠一!」

 

『はい!』

 

『どうしました?』

 

「突撃してあの建物に隠れて囮をするぞ?」

 

真霧はキャノピーから上半身を出して建物を指差した。

 

『了解しました』

 

『隊長が言うのなら行きましょう!』

 

「よ~し!カクカク!第一小隊、吶喊!!」

 

そう言って真霧達は隊列を組んで敵に突撃していく。

 

『一輌撃破!』

 

『こちらも一輌撃h…うわぁ!!』

 

「大丈夫か!中村隊!」

 

真霧は戦車で敵弾をさけつついきなり撃破された中村に向けて通信機に叫んだ。

 

『だ、大丈夫です。後は任せます』

 

「わかった!」

 

「た、隊長!!敵車が!」

 

中村に返事をすると操縦士が弱々しい声で話しかけてきた。

 

「どうした!」

 

「囲まれてます!!敵6輌!!」

 

「チッ…ポイントDa-1の建物に逃げ込め!絶対に当たるなよ!!」

 

そう真霧は指示をした。実を言うと今回のフラッグ車は真霧のチトなのだ。……それなのに前線に出てるのは士気向上か無謀か、どっちだろうか。

 

「早野!付いてこい!!」

 

キャノピーから出て後ろの早野隊に指示を跳ばす。そうして二輌はDa-1にある廃工場に逃げ込んでいった。

 

―――――――――――――

 

「隊長、どうします?」

 

後ろから戦車を降りた涼が話しかけてきた。

 

「ここにたてこみつつ第二小隊の到着を待つ」

 

「敵さんは待ってくれますかね?」

 

涼はそう言って首にかけた双眼鏡で窓から偵察する。

 

「…隊長、敵フラッグ車発見しました」

 

涼は窓から敵を見るなりそう言ってきた。真霧は自身も戦車を降り、窓から見てみる。

 

「そうか…確かにフラッグ車だな。涼、距離は分かるか?」

 

「ここからだと…北北東50にフラッグ車あり、ですね」

 

双眼鏡を覗きこみつつそう答えてきた。

 

「ああ、だが護衛は3輌もいるぞ?…よし、涼、敵の護衛を撃つぞ」

 

「はいィイ!?」

 

涼はそれを聞いた途端、すっとんきょうな声を出した。

 

「で、ですがここから出たら狙い撃ちされますよ!!」

 

「何を言ってる?出るわけ無いだろう」

 

「へ?」

 

「壁を破っての狙撃だよ。そ・げ・き」

 

「んな無茶な」

 

まぁ、そうなるよな。

 

「大丈夫だ。んじゃ、砲撃用意だ」

 

「( ´Д`)~…わかりましたよ」

 

ため息を吐きつつ涼は自分の戦車に戻っていった。真霧も自分の戦車に戻り、伊川達第二小隊に連絡をとった。

 

「偲、聞こえるな。敵フラッグ車はDa-1の北北東50mにいる。護衛は3輌だ」

 

 



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第十五話 プラウダ戦その弐

「偲、聞こえるな。敵フラッグ車はDa-1の北北東50mにいる。護衛は3輌だ」

 

『隊長!!無事なんですか?』

 

連絡するなり心配された。偲はやはりいいやつだ。戸惑いつつも本題に移ろうとする。

 

「あ、ああ。だが中村隊は撃破されて早野隊とフラッグ車だけだ。でだ、本題に入るぞ?」

 

『はい』

 

「まずこっちから壁を撃ち抜いて護衛の二輌を潰すから敵フラッグを撃て」

 

『む、無茶ですよ!!』

 

偲は真霧の作戦を聞くなり叫んだ。

 

「無茶もへちまもあるか!!何のために二号戦車をH型に改装したと思ってる!こっちはできる」

 

「やれ、いいな?」

 

実は真霧はプラウダ戦のために二号戦車の主砲をH型の物に改装していたのだ。

 

『わ、わかりました』

 

「そんで…今はどこにいる?」

 

それから重要な偲達の現在位置を聞く。これが何処かによっては作戦を帰る必要がある。

 

『Db-5地点に向かってます』

 

Db-5…ってそこは…

 

「ってことは崖の上に向かってるのか!!」

 

『は、はい。そうですが』

 

「よし、よくやってる。偲達はそのままDb-5に向かってくれ。着いたら連絡してくれ」

 

『了解しました』

 

そう言って通信を切った。それから真霧はキャノピーから上半身を乗り出し、戦車を動かす。

 

「砲塔左回頭80°ゆっくりとだ」

 

そうすると砲塔がゆっくりと回る。

 

「左回頭70…75…80!左回頭80°!」

 

回頭が完了すると真霧は仰角を合わせる。

 

「仰角上げ10!いや、2°-…よし!」

 

仰角が合わせ終わると丁度伊川達から通信が入り、真霧は作戦開始の指示を出した。

 

『こちら伊川達、目標地点に付きました』

 

「よし。では、作戦開始だ」

 

そう言ってから真霧は手をあげて下ろした。砲撃の合図だ。すると主砲が火を吹き壁に砲弾が炸裂した。

 

「誤差修正!」

 

「誤差修正…よし!誤差修正完了!」

 

「次弾よーい!!撃て!」

 

すかさず次弾を装填し、発射する。すると今度は壁では炸裂せずに外で―敵に当たって炸裂した。見事に壁の穴を通って命中したのだ。そして偲にも合図を出した。

 

「今だ!!」

 

そうすると外で新たな爆音と共に終了のブザーがなった。

 

『プラウダ高校フラッグ車走行不能。よって、鈴創学園の勝利!』

 

偲は見事に命中させたようだ。

 

 

 

―――――――

 

試合が終わってから片付けが終わった所に丁度プラウダのカチューシャがノンナに肩車されながらやって来た。

 

「おや、どうもカチューシャさん、ノンナさん」

 

「楽しかったわよ!!クルーシャ!」

 

カチューシャはそう言って指をさしてきた。

 

「く、クルーシャ?」

 

「カチューシャはあなたの事が気に入ったようですね」

 

すかさずノンナが解説してきた。

 

「うわっ!ビックリした……(いっつもノンナは急に出てくるから驚くよ)…」

 

「あら?私はあなたと面識があったかしら?」

 

ヤバ、聞かれてたか…

 

「い、いえ。ハツタイメンデスヨ」

 

「何やってるの?」

 

カチューシャが話しかけてきた。それによって何とか視線がずれた。

 

「戻るわよ!ノンナ!」

 

「はい、カチューシャ」

 

そう言ってカチューシャとノンナは自分の学園の所に向かっていく。

 

(クルーゼ隊長…いや、真霧さん、生きていてよかったですよ)

 

が、ノンナが帰り際に真霧の耳元で爆弾を残していった。

 

「ば、バレたか…」

 

真霧はその場でそう呟くしかなかった。



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第十六話 アンツィオと海軍道?

「失礼するよ、ラウ」

 

試合の二日後、執務室にいると(出番のない)デュランダルが(ひさびさに)表れた。

 

「何か失礼なこと考えてなかったかい?」

 

「いーや。で、どうした?」(あっぶな!)

 

真霧はすぐに話題をずらしにかかった。

 

「ああ、鈴創の次の対戦相手が決まったよ」

 

そうするとデュランダルは対戦相手の書いてある紙を渡してくる。

 

「どれどれ……次はアンツィオか」

 

「そうだ、ラウはアンツィオと試合をしたことはあるのかい?」

 

「一回、な」

 

「強いのかい?」

 

デュランダルは真霧がアンツィオとの試合経歴があると知ると、その強さを知りたくなった。

 

「いや、弱い。戦車はCV33とM14/41、M13/40しかなかったからな。だが、機動性と数が厄介だな。それに新しい戦車が増えたとかも聞いたからな」

 

「そうか…」

 

「そう言えばラウ、BC学園と黒森峰の試合は黒森峰が勝ったみたいだぞ」

 

そう言ってその試合結果の写真を見せてきた。

 

「これでアンツィオに勝ったら黒森峰とか…」

 

「ああ。それとラウ、君宛にこれが届いているよ」

 

デュランダルが急に何かを思い出したのか懐から一通の封筒を手渡してきた。宛には島田真霧殿とあり、差出人には『文科省外務部日本海軍道連盟』と記されていた。

 

「海軍道?」

 

「海軍道っていったら最近できた国同士の武道だよな?」

 

「そうだね、ラウ。それよりも開けてみたらどうだい?」

 

そう言われて真霧はその封筒を開け、中を確認することにした。

 

「え~なになに……島田真霧殿、Word or WarshipsCommanderのトップランカーたる貴殿に新たに新設する海軍道大日本帝国海軍聯合艦隊司令の任に将官待遇とし、任命する。文化省長官 端山海人……って、はァ!?」

 

「お、俺は戦車道の人間なんだけど!?」

 

真霧はいきなりのことに紙を掴みつつ叫んだ。

 

「ま、まぁ、まぁ。落ち着いて」

 

「だが!」

 

「ラウ、これは上からの…国からの達しだよ。それに手紙の下をよく見て」

 

デュランダルは荒ぶる真霧を押さえつつ手紙の下をよく見るように言った。

 

「手紙の下?…こりゃ、回答期限は6月7日とする…て、ことは回答は決勝が終わるまでいいのか。それに戦車道の隊長継続も可とする、か」

 

「だそうだね。やってみたらいいんじゃないかな?」

 

デュランダルが進めてくる。

 

「…どういう意味だ」

 

「だって君は海も好きだろ?なら、やってみるべきだよ」

 

「だが、ゲームと現実は違うz「やってみたらいいと思うよ?お兄ちゃん」…愛里寿か?」

 



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第十七話 アンツィオ潜入 壱

「だが、ゲームと現実は違うz「やってみたらいいと思うよ?お兄ちゃん」…愛里寿か?」

 

 

デュランダルと話していると愛里寿から通信が入った。

 

「海軍道、やってみてほしいな」

 

「なぜだ?」

 

「だってお兄ちゃんの部屋に軍艦模型が飾ってあるから」

 

グゥの音もでない。実際真霧の島田邸での部屋には1/700の駆逐艦、巡洋艦、戦艦、航空母艦の数隻からなる艦隊が飾ってあった。それに机の中には各海戦の資料が入っていたりする。

 

「やってみないのかい?」

 

デュランダルが悩み込んでいる真霧に追い討ちをかける。

 

「…わかったよ。やるよ、海軍道」

 

「お兄ちゃんならやると思ってたよ」

 

愛里寿エェ…

 

「といっても試合が終わってからだがな」

 

「それはもちろんさ。では、私文化省に連絡してくるよ」

 

「そっれじゃあ私も講義があるから切るね」

 

真霧から同意を抜き取った愛里寿とデュランダルはさっさと執務室を出ていった。

 

「…疾風はいるか?」

 

デュランダルが退室してしばらくしてから疾風を呼んだ。

 

「なんすか?クルーゼ隊長」

 

「うわっ!は、疾風か」

 

呼ぶと数秒で疾風が現れた。目の前に。

 

「はい。で、何か御用で?」

 

こいつ…すっとぼけた顔して~…!

 

「次の対戦相手のアンツィオに偵察に行くぞ。大発動艇を出しといてくれ」

 

「次はアンツィオですか~、わっかりました!!っと言っても準備済みですがね」

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

 

「……は?」

 

 

こいつ、あっけらかんと何言ってるんだ?

 

「ですから、大発動艇準備出来てますよ~」

 

「…知ってたのか?」

 

真霧は疑いつつ聞いた。

 

「いや、だってデュランダル議長が『ラウが偵察に行くと思うから大発動艇の準備をしておいてくれるかな?』って言ってましたし」

 

ギルの野郎ォ…

 

「まぁいい、今回もこの間の服装で行くぞ」

 

「はい!いっきましょう!」

 

そう言って疾風と真霧は鈴創学園 学園艦のドックに向かった。

 

―――――――――――――

~アンツィオ高校~

 

「いや~久しぶりに来たな。アンツィオ高校!」←アンツィオ制服 :女装

 

「久々って…来たことあるんですか?」

 

校門前でそう言うと横から疾風が聞いてきた。

 

「んにゃ?よく来るぞ?ほれ」つ□

 

真霧はそれに対して一枚の紙を渡した。

 

「へ?これは?」

 

「あー、私のアンツィオ高校での入校証だ」

 

「なんでそんなもの持ってるんですか!!」

 

疾風は真霧の入校証を見るなり叫んだ。

 

「…うるさいぞ。まぁ、なんだ。アンツィオ高校の学園長が私の友人だっただけだ」

 

そう言い切った。そして軽く放心している疾風の額に書き置きを残して真霧は偵察に向かった。

 

 



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第十八話 アンツィオ潜入 弐 YD教員が…

「~♪」

 

「ちょっといいか?」

 

真霧は近くを通ったパペロニに声をかけた。

 

「は、はい?…って西住まほか!!」

 

「違うわ!」

 

いきなりまほと間違えられた…(´・ω・`)

 

「ちがうの?」

 

「ああ、第一アンツィオと黒森峰は試合が無いだろう…」

 

「あー…たしかに。ごめんね、間違えちゃった」

 

試合相手くらい覚えておけよ…

 

「まぁ、いいや。というか貴方は戦車道の人なの?」

 

真霧は好機と考え質問した。

 

「その通り!」

 

「ってことは次の試合にも出るのか?」

 

「おう!もちろんさ!去年の全国大会準優勝校を倒した相手って事で戦車道の隊員皆が張り切ってるよ!」

 

「へぇ~なら、負けないために何かしてるの?」

 

「ああ、P…何とかがそうなんだ~」

 

その返事を聞いてから今度はパペロニが質問してきた。

 

「そういえば貴方は何してるの?」

 

「え?いやさ、理事長を探しててさ」

 

「そっかー、理事長なら理事長室だとおもうぜ!」

 

そうだよな~あの人だし…

 

「ありがと、んじゃあもういくね」

 

「おう、じゃあな」

 

そう言って真霧はパペロニと別れ、アンツィオの学園長室に向かった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

~理事長室前~

 

理事長室の前に着くとドアをノックする。

 

トントン

 

『どうぞ~』

 

「やっはろ~久しぶりだな、純一郎。偵察に来たぞ~」

 

「お、クルーゼか!よく来たな…ってかはっきり言うな!!」

 

理事長室に入るなりに真霧は少し顔をしかめた。書類が山積みでパソコンに食い入っているバカ(鑑純一郎)がいたからだ。

 

「お前はなんでこんなに散らかすんだろうな…( -。-) =3」

 

「…なんで俺注意されてんだ?」

 

そう言って身近にあったソファーに腰をかける。

 

「万年貧乏のお前のとこがよくP40なんて買えたな」

 

「そりゃお前、何年も前から貯めてた…って、なんで知ってんだよ!!」

 

純一郎が叫んできた。

 

「いやお前、前から来てるし」つ入校証

 

「…あ、納得」ポン

 

お前が入校証渡したんだろ……やっぱバカなんだろか…

 

「ったく…まぁいいや、純一郎。純音は元気か?」

 

「あ?純音か?元気にしてるぞ~ただお前に会わせろってうっさいがな」

 

純一郎は少しやつれつつ言った。純音とは純一郎の妹で真霧にとても懐いているのだ。

 

「大変だな…」

 

「本当だ…」

 

二人揃ってため息をつく。

 

「んじゃ、俺は帰るわ」

 

「ん?もう帰るのか?偵察は?」

 

いきなり立ち上がった真霧に純一郎が話しかけた。

 

「ああ、終わってるからな。んじゃ、またな~」

 

「あ、ああ。またな」

 

真霧はそう言って理事長室を後にして疾風に連絡を入れ、鈴創学園に帰っていった。



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設定

※一輌辺り分隊表記、

◇鈴創学園戦車隊◇

 

西住真霧→島田真霧

偽名:ラウ・ル・クルーゼ

 

役職

鈴創学園戦車道隊長 少佐

鈴創学園戦車隊 クルーゼ隊隊長

海軍道聯合艦隊司令長官 大将

元黒森峰学園戦車道副隊長

鈴創学園白服

 

搭乗:四式中戦車

 

解説

本作の主人公。旧名島田響は妹を庇い事故死。そして女神のレイにガルパンの世界に西住まほの弟、みほの弟として転生させられた。そして真霧は原作で敗北の原因となった戦車を押し退け敵フラッグを撃ち抜いた後に川に転落し、自分の戦車を爆破させることで死亡に見せかけて島田家に養子入りした。鈴創学園に転入し、友人の頼みから戦車道の隊長を引き受ける。※クルーゼ隊は各小隊長連盟である

 

 

 

伊川偲

 

役職

鈴創学園戦車道先任副隊長 大尉

鈴創学園戦車隊 伊川隊分隊長

鈴創学園戦車隊小隊長(クルーゼ直下の小隊)

早野隊

中村隊

海軍道聯合艦隊副司令長官 中将

鈴創学園黒服

 

搭乗:SU-85

 

解説

鈴創学園戦車道副隊長。真霧の補佐官として動いている。真霧からの信頼が厚い。

 

 

 

早野涼

 

役職

 

鈴創学園戦車隊 早野隊分隊長 准尉

 

鈴創学園赤服

 

搭乗:二号戦車→二号戦車H型

 

解説

真霧に対する信頼が高い。んで強い、めっさ強い。戦闘好き

 

 

 

宮田疾風

 

役職

鈴創学園戦車隊 宮田隊分隊長 曹長

鈴創学園赤服

 

搭乗:M4中戦車

 

解説

鈴創学園戦車隊 宮田隊隊長。実家が忍者屋敷だったりして忍び込みが得意であだ名が鈴創のパパラッチ

 

 

 

中村悠一

 

役職

鈴創学園戦車隊 中村隊分隊長 曹長

鈴創学園赤服

 

搭乗:二号戦車→二号戦車H型

 

解説

鈴創学園戦車隊 中村隊小隊長。鈴創学園戦車隊でまともな部類に入る。

 

 

◇知波単学園戦車隊からの統合部隊◇

 

西 絹代

 

役職

鈴創戦車隊副隊長

戦車隊小隊長

西隊分隊長

 

解説

真霧とは幼馴染である。…元知波単学園戦車隊隊長

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギルバート・デュランダル

 

役職

鈴創学園理事長

鈴創学園議会議長

 

解説

真霧の友人で鈴創学園理事長。真霧に白服を渡した張本人。実業家であり鈴創学園議会議長を勤めている。

 

 

 

 

真霧の兄妹

 

 

西住まほ

 

役職

黒森峰学園戦車道隊長

 

解説

真霧の姉。真霧の死(真霧の偽装)を悲しみ、そしてみほの転校で数日ダウンしたが何とか持ち直し隊長を続ける。

 

 

西住みほ

 

役職

大洗女学園戦車道隊長

元黒森峰学園戦車道副隊長

 

解説

真霧の姉。弟の真霧が死んだ(真霧の偽装)で戦車道から離れる為に大洗に転校する。そこで説明会で見た鈴創学園のクルーゼに真霧が重なり、それを確かめるために大洗生徒会が進めていた戦車道復活に乗って隊長を受ける。

 

 

 

 

 

~各学園学園艦~

 

鈴創学園:航空母艦信濃

黒森峰学園:グラーフ・ツェッペリン級航空母艦

大洗女学園 :航空母艦瑞鶴

プラウダ高校:キエフ級重航空巡洋艦

サンダース大学付属高校:ニミッツ級航空母艦

聖グロリアーナ女学院:アーク・ロイヤル級航空母艦

アンツィオ高校:アクィラ級航空母艦

知波単学園:航空母艦赤城→廃艦、鈴創と統合

コアラの森学園:インヴィンシブル級空母

マジノ女学院:潜水艦スルクフ

継続高校:砕氷船白山丸

BC学園:正規空母ベアルン



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第十九話 アンツィオ戦

~アンツィオ戦当日~

 

アンツィオ戦当日、鈴創学園戦車隊の隊員達は規律よく整列していた。そして真霧は台に登る。すると偲が隊全体に号令をかける。

 

「クルーゼ隊長に敬礼!」

 

「「「「「…」」」」」ピシゝ!!

 

「ん、楽にしてくれ」ピシゝ

 

真霧は敬礼を返し、隊員達を見回してから口を開いた。

 

「…諸君、今回の敵は知っての通りアンツィオ高校だ」

 

「全国大会出場校だが、我々は昨年の優勝校を下している!私は、諸君らならばこの戦も勝てると信じている!!」

 

「総員!乗車!いくぞ、諸君」

 

「「「「「ハッ!!」」」」」ピシゝ!!

 

隊員達はその掛け声と共に自分達の戦車に乗り込んで行った。

 

「おい!」

 

戦車に乗り込んですぐにジープに乗ったアンチョビが話しかけてきた。

 

「ん?」

 

「貴方が鈴創の隊長か?」

 

「そうだ。私が鈴創学園戦車隊 隊長のラウ・ル・クルーゼ大尉だ」

 

「なら、君はアンツィオの隊長さんかな?」

 

真霧はアンチョビに対してそう言った。

 

「そうよ、私はドゥーチェ。ドゥーチェアンチョビよ!今日は頼むわ!」

 

「もちろんさ、楽しんで戦うさ」

 

「ええ、それじゃあね」

 

アンチョビはそう言うとジープで帰っていった。

 

「隊長」

 

「どうした?岩城兵長」

 

それから砲手の岩城裕乃(いわしろ ゆうの)兵長が話しかけてきた。

 

「アンツィオの隊長は何しに来たんですかね?」

 

「さぁ、だが、偵察かはたまた挨拶か…だな」

 

「はぁ…」

 

岩城准尉はあまり分かっていない用に声を出した。

 

「さ、もうちょいで試合開始だ。倒してしまえばいい」

 

「はっ」

 

そう言うと丁度試合開始の狼煙が上がった。

 

―――――――――――――――――

 

『た、隊長!B4地点に敵車5輌!敵フラッグも確認!!』

 

試合開始数分後に早野隊からそう報告が上がった。

 

「よくやった!各車はB4に『C2にも敵車4輌!敵フラッグ車らしき車輌あり!!』…何?」

 

『D5も同じ!』

 

各車から同様の通信が入ってきた。

 

「…各車敵車両を無視しろ」

 

「隊長⁉」

 

裕乃が振り返ってきた。

 

「おそらくそれは敵のカモフラージュだ」

 

「ec1地点に全車集合、一点一点潰す」

 

『『『『ya‼』』』』

 

返事を聞いてから真霧がチヘのキューポラから顔を出す。

 

「ん?あれは…」

 

すると何かを見かけた真霧は双眼鏡を覗いた。

 

「!!」

 

何かを発見した真霧は無線機に手を伸ばす。

 

「敵フラッグ車発見!!目標だ!!」

 

『何!?』

 

『何処ですか!?』

 

「a2地点から東に向けて移動中!!フラッグ一、cv2!!」

 

そう叫んでから真霧は自分の戦車の指揮を執り出した。

 

「裕乃!左回頭30°!!砲撃用意!!」

 

「はいっ!さっ!」

 

すると戦車は方向を変え、装填手が素早く砲弾の装填を終わらせる。

 

「引き付けろよ!……撃て!!」

 

「外れた!左修正3!次っ!!」

 

初弾は右に少しズレ、地面に着弾した。射線の修正を行い、第二射を行う。

 

『一輌撃破!』

 

「次ッ!!」

 

「はいっ!」

 

裕乃は構えていた砲撃を直ぐに装填し、発射する。

 

「当たる!!…何!?」

 

発射した砲撃は真っ直ぐに敵フラッグに当たるかと思われた。しかし、その砲弾は左の丘から飛び出してきたcv33によって防がれた。次々とcv33が丘から飛び出してくる。cv33の武装は8mm程度の機関銃だ。弾は全て装甲板で防げる。しかし何せ数が多い。

 

『隊長!!任せてください!こいつらは伊川隊と早野隊が持ちます!』

 

偲がそう言ってきた。

 

「そうか。なら、任せる」

 

「豆戦車どもは偲達がやってくれる。そのまま敵フラッグを狙え!」

 

「はい!!」

 

そう指示を出すと敵フラッグが自分達の方へ転進しながら砲撃してきた。

 

「立派よ!立派!!裕乃!一発で仕留めてやれ」

 

「了解!…撃てッ!!」

 

裕乃の放った砲弾は敵の砲身に突き刺さり、敵車の砲身爆破した。すると敵フラッグはゆっくりと止まり白旗を上げた。ここにアンツィオ高校と鈴創学園の戦いの幕が下ろされた。



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地波単学園併合

アンツィオ高校との試合が終わって早5日、真霧はというと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギルメェ…」

 

なぜか鈴創学園の学園艦にデュランダルによって呼び出されていた。

 

「しかたないですよ、議長からの呼び出しなんですし」

 

…偲も呼ばれてるのな

 

「まぁ、議長からの呼び出しなら仕方ないか…だが、一体全体なんでこんな微妙な日に呼び出したんだ?」

 

真霧は学園の廊下を歩きつつ横を歩く偲に話しかけた。

 

「さぁ…ですけどデュランダル議長はたまに突拍子も無いこと言いますからね」

 

「そうなんだよな…」

 

「「はぁ…」」

 

デュランダルの無茶振りを思い出し、二人して深く溜め息をついた。

 

 

 

────────────

 

そして、そうしている間に真霧達は理事長室の前に着いてしまっていた。そして真霧が扉をノックする。

 

『誰かな?』

 

「戦車道部隊隊長、ラウ・ル・クルーゼ少佐です」

 

「同じく戦車道副隊長、伊川偲中尉です」

 

それから中からの返事を聞くと真霧達は理事長室に入っていった。

 

「「失礼します」」

 

「やぁ、待っていたよ」

 

デュランダルが椅子に座りながらそう言ってきた。そして、理事長室に見慣れない制服を着た生徒が一人いた。いや、話した事もあるけど西住に居たときにだが…

それを横目に真霧は理事長室のソファーに腰かけた。

 

「で、議長。何用ですかな」

 

そう言うとデュランダルは偲と真霧に一枚の資料を渡してきた。しかもその内容はある戦車道のある高校の資料だった。真霧は軽く嫌な予感を感じつつ質問した。

 

「…議長?これは?」

 

「その資料の学園艦が人数不足の関係で廃校になるらしいんだ。そこは戦車道もしていたから我が校が受け持つんだよ、ラウ」

 

それからデュランダルがさっきから座っていた生徒を紹介してきた。

 

「それでだ、ラウ。彼女が今度受け持ちする高校の戦車道の隊長さんだ」

 

「知波単学園より来ました。西絹代であります」

 

「あ、ああ。私は鈴創学園戦車隊隊長のラウ・ル・クルーゼ少佐だ。こっちは副隊長の伊川偲中尉だ」

 

「伊川中尉です」

 

真霧は戸惑いつつ挨拶をかえした。

 

「彼女の学園の戦車も鈴創戦車隊所属となる。そして、彼女は君の副官に付けるぞ」

 

「議長!!隊長の副官にするとは一体!?」

 

偲が横から叫んできた。

 

「女性部門での隊長をしてもらうだけだ。普段は大隊長付なだけだよ」

 

「伊川中尉は先任副官となる為、大尉に昇進する」

 

デュランダルが説明してきた。

 

「クソッ!……了解しました」

 

それを聞いて偲は前も後ろも塞がれているとわかり、肩を落とした。それから真霧は理事長室を後にし、戦車道部隊隊員に話にいくのだった。



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真霧の真実

~試合当日~

 

黒森峰との決勝当日、真霧はいつも通りに鈴創戦車隊隊員達を集めていた。唯一違うと言えばこの場には鈴創戦車隊初期メンバーの他に合併された旧知波単学園戦車隊隊員の姿があることだ。

 

「クルーゼ隊長に対し!敬礼っ!!」

 

偲がそう言って敬礼をすると他の隊員達も続けて敬礼をしてきた。

 

「ん、楽にしてくれ」

 

真霧は答礼し、そう返した。すると他の隊員達が敬礼の手を下げた。一度隊員達を見回して確認すると真霧は話し出した。

 

「諸君!今日の相手はあの王者黒森峰だ!今までの相手より何倍もの強さを誇って立ちはだかって来るだろう。我々が勝てる確率は、…少ないと言えよう」

 

真霧はそう言うと区切りをつけ、再び喋り出す。

 

「だが!!我々は敗者にはならん!!我らは勝者となる為にここにいる!」

 

「戦車大会優勝常連の王者黒森峰をその王座から引きずり下ろし!我々の狼煙を炊き上げろ!!」

 

「「「「「はっ!!」」」」」

 

そう言い切ると隊員達は一斉に敬礼をしてきた。

 

「うむ。総員、試合開始まで各隊にて作戦、地形の確認をしておけ。解散」

 

答礼してから連絡事項を伝えると足早に隊長テントに向かって行った。

 

 

―――――――――――――――――

鈴創戦車隊テントの大隊長室に入るなり真霧は仮面を外し、ため息を吐くと胸のポケットに入っていた一つの手帳を開いた。

 

「はぁ…やっと次だな。負けはしない、黒森峰の選手の特徴は掴んでいるんだ」

 

「やっぱり真霧だったのね」

 

「!?」

 

そう呟いていると後ろから声をかけられ、振り向いてしまった。

 

「─絹代か」

 

そこには旧知波単学園戦車隊隊長、現鈴創学園戦車隊副隊長の西絹代がたっていた

 

「ええ、真霧は何であんな真似をしたの?」

 

絹代は真霧がした自分の生死隠蔽の事を聞いてきた。

 

「…」

 

「真霧!!」

 

さらに問いただしてくる。

 

「…あの西住の考えが嫌だったからだ」

 

「え?」

 

「西住にいた頃にある演習中に仲間の戦車が川に落ちてな。それを助けに行ったら家元は何て言ったと思う?」

 

「『そんな事ごときで試合を放棄したのか?』だぞ?人命を捨てるそんな流派の家なんかくそくらえだ!!」

 

真霧の気迫に押され、絹代は言葉が詰まって出てこない。

 

「だから俺は!この戦車道で腐りきった西住を叩き潰す!!」

 

勢いに任せ、言い切った。

 

「…なら、私も協力するよ。真霧」

 

絹代は黙っていた口を開いた。

 

「何?」

 

「私も真霧に協力するって言ってるのよ!」

 

「いいのか?」

 

「ええ!」

 

絹代はハッキリと答えた。

 

「なら、ついてきてくれよ。絹代」

 

「もちろん」

 

そうしてから真霧は机の時計に目をやった。試合開始まで残り十分を切っていた。

 

「まぁ─アリガト。さて、絹代。試合の時間だ」

 

「わかった。行きましょうか」

 

そう言って真霧は手帳を胸のポケットに入れ、仮面をつけると絹代を引き連れ決戦の戦場に向かって行った。



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第二十二話 黒森峰戦、開戦

「ふぅー…」

 

真霧はチトの車内に入ると小さく、一つ息をつく。そして直ぐにスピーカーから声がした。

 

『黒森峰学園対鈴創学園による決勝戦を開始します!』

 

開幕の合図だ。

それが鳴り終わると真霧は首元の無線機に手を当て、開幕まで黙っていた口を開いた。

 

「…諸君、相手は黒森峰の西住まほだ。気を抜くな!これより、作戦コードe-45を開始せよ!」

 

そう言い、直ぐに喋るのを止める。すると無線から各戦車、各隊員からの熱意の声が聴こえてきた。

 

『『『『ダー!!』』』』

 

「どちらが勝つか…勝負だ。…まほ姉さん…」

 

チトのエンジンが唸りを上げてチヘが走り出す。真霧の呟きはチトのエンジン音に書き消された。そして、真霧はチトのキュポラの窓から後ろを見る。そこにはチトを先頭に宮田のM4中戦車が連なって輪帯をきゅらきゅらと言わせ、走っている。しばらくして集合住宅街の通りをポイントに向けて通っているとドン!ドン!と急に砲声がなった。一発が前方至近に着弾し、土煙を上げる。そしてチトが体勢を崩し、スピンした。その直ぐ後に後ろから爆発音がし、無線から悲痛な声が聴こえてきた。

 

『宮田隊、敵弾着弾!!行動不能!!』

 

そう、後ろについていた宮田隊からの無線だった。窓から宮田隊を見る。するとそこには着弾して片側の輪帯が切れ、エンジンを貫いたのかエンジンから火が上がって白旗を掲げているシャーマンがあった。そして直ぐに砲弾が飛んできた敵を見る。そこには3輌のティーガーⅠが迫ってきていた。

 

「グッ…!クソッ!」

 

「ジグザグに回避しつつ全速力であいつらに突っ込め!主砲発射用意!」

 

真霧はそう、命令をする。この無茶にきちんと従う辺りクルーゼ隊の士気と練度は高い。

 

「撃てェ!!」

 

すれ違い中に一発、敵の横腹に撃ち込む。すると命中した車輌はゆっくり止まりシュポ!と白旗を掲げる。初弾が当たったのを確認する間もなく砲塔を回し、後ろの当たっていないと思われるティーガーⅠに照準を合わせる。

 

「次弾装填!…撃てェ!」

 

「はいっ!」

 

合図と共に砲手がトリガーを引く。

 

「アパートを利用して相手を巻け!敵の増援の警戒も怠るなよ!」

 

無線に手をかけ、被害を伝達する。

 

「こちらクルーゼだ。敵の奇襲を受け宮田隊のM4が撃破されたが私の車輌に被害はなし。また、離脱時に敵、ティガーI戦車二輌を撃破した」

 

「敵の進行が予想より速い。注意せよ」

 

それから住宅街と言うことを利用し、残りのティーガーⅠを敵の増援を警戒しつつ巻く。




作戦コードe-◇☆は事前の作戦で作戦コードkは緊急時です


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第二十三話 決勝、その弐

『─ちら─こちら中村隊!すみません!やられました!!』

 

撤退していると無線機から撃破の報が悲痛な声と共に次々に上がってくる。中でも古参の類である中村の部隊がやられたのに仮面の下の顔が強ばるのがわかった。

 

まほ姉さんか…何処までも俺の邪魔をするのかッ!!西住!!

 

「被害報告は纏めろ!各隊の被害知らせッ!!」

 

『伊川隊、ポイントPd-5地点にて敵ティーガーと戦車に入りました!』

 

『早野隊は敵より攻撃を受けましたが返り討ちにしてやりましたよ!』

 

『こちら第二中隊は久保田隊、細見隊、名倉隊、福田隊が撃破されてしまいました!残存は私の隊と浜田隊、玉田隊、池田隊のみです!』

 

それを聞き、無線機に叫ぶ。

 

「ポイントPd-5なら…現時点を持って作戦コードe-45を破棄、早野隊はポイントPd-5に急行して伊川隊と合流!それからポイントPa-3に退却しろ!第二中隊各隊は私の戦車に合流後、ポイントPa-3ポイントにて伊川小隊と中村隊、第二中隊で作戦コードk-58を実行するぞ!各車!敵戦車に注意しろ!」

 

『『『『『『『はッ!!』』』』』』』

 

 

「川北兵長、聞いての通りだ。ポイントPa-3へ急行してくれ」

 

操縦士の川北幸人(かわきた ゆきと)兵長にPa-3への急行を命じた。

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

─ポイントPa-3─

 

 

「さて、黒森峰の奴らはどう出てきてくれるかな?」

 

ポイントPa-3に残存車輌が終結して暫くして、真霧は時計に一瞬目を落とし、そう呟く。そして、敵の主力が通過したのを確認すると無線に手を伸ばす。

 

「…これより、作戦コードk-58、[Electric shock]作戦を開始する。第二中隊は敵主力に突撃しろ。伊川隊は第二中隊を援護!第二中隊が出て敵が混乱したら私の戦車で敵フラッグに一騎討ちを仕掛けるから早野隊と伊川隊、第二中隊で足止めを頼む。…行けッ!!」

 

『『『『『『『はいっ!』』』』』』』

 

『第二中隊、吶喊!!』

 

各車長の声が聞こえてきたすぐ後、第二中隊を率いる絹代の『吶喊』の号令がかかり、第二中隊が敵主力に突撃する。

 

「こちらも行くぞ!!敵フラッグを分断させる!!」

 

そう叫ぶと真霧は裕乃に席を退いてもらい、砲弾を装填すると照準器を覗き込み敵に狙いをつけると引き金を引いた。敵は突然現れた第二中隊のチハに気を取られていたのかティーガーのエンジンに命中し、炎上。白旗が上がった。

 

「殺りいっ!」

 

「ん?」

 

するとそのすぐ横のティーガーⅠも砲塔を此方に向けようとしていた所で急に火柱が上がったと思うと白旗が上がる。

 

『こちら早野隊!ティーガーⅠ一輌撃破!!』

 

どうやら早野隊のようだ。よくやってくれる。

 

「ここより、ポイントPd-2に移動して決着をつける!他の隊は足止めを頼んだ!」

 

真霧はそう言い、戦車の進路をポイントPd-2に向け、走り出した。直ぐ様後ろを窓から覗くとまほのフラッグが他のティーガーⅠを引き連れてこちらに向かってきていた。が、まほの後ろのティガーⅠが急に撃破された。

 

『隊長!後は任せました!!敵は食い止めます!』

 

偲のようだ。粋な事をするな。

 

「ポイントPd-2まで突っ走れ!!」

 

後ろは振り返らん。これまでは決戦の序盤…仲間を背にして真霧は──真の決戦の地に向かう。



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第二十四話 死に急ぎの我が弟よ

「よし、ここで決着を着ける!エンジンが潰れても良い!!全開にして敵フラッグの後ろに回り込め!!」

 

ポイントPd-2──試合場の最北端にある朽ち果てたアパートが乱立する地点に着くと真霧はそう指示をし、アパート後の公園やら小さな倉庫やらの影を使い、まほの乗るティーガーⅠに肉薄し、敵に一発の砲弾を叩き込む。─が、ティーガーⅠの100mmものある前面装甲に弾かれて明後日の方向に飛んでいく。

 

「クソッ!…次弾装填いs」

 

「隊長!!」

 

次弾装填を指示しようとするがティーガーⅠの主砲がお返しだと言わんばかりに砲弾を放ってきた。急旋回で何とか砲弾の直撃は免れたが真横にあったアパートの壁に命中し、瓦礫が宙を舞った。そして、その瓦礫の破片が真霧に当たり、真霧の仮面を吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…真…霧…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生きていたのか!!真霧!!」

 

敵フラッグから不意にその声が聞こえた。内心しまった。そう思いながらも敵に向け叫んだ。

 

「─ん─知らん、名だ!私は…私は島田だッ!!」

 

その叫びを向け、真霧はキューポラから車内に戻り、砲手から席を変わる。

 

「これで…」

 

「これで終わりだァ!!西住ィ!!」

 

エンジンが燃え尽きそうな勢いのまま車体を傾かせ、キャタピラーや転輪が吹き飛ぶがお構い無しにティーガーⅠの後部に見事なドリフトをかませつつ滑り込ませる。

 

「撃てッ!!」「撃てッ!!」

 

瞬間、ティーガーⅠからシュポという音と共に白旗が出された。そして、そのすぐ後、チトも後部にあるエンジンが爆発、こちらも白旗を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────ピーー!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『黒森峰学園フラッグ車、走行不能。よって、鈴創学園の勝利!』

 

その高らかな笛の音によって今日、鈴創学園戦車隊は王者黒森峰を練習大会とはいえ下したのだった。

 

 

 

──────────────

 

 

 

 

───────

 

 

「真霧君、よく勝ってくれたね」

 

大会が終わり、撤収にかかっているとデュランダルが現れてそう言ってくれた。

 

「ああ、勿論だ。西住を叩き潰すのは島田の俺の仕事だからな」

 

「真霧!!」

 

「黒森峰の…」

 

そこに姉であるまほが現れ、真霧は仮面を無くして素顔でまほに向き直した。

 

「…何の用?まほ姉さん」

 

「ま、真霧!戻ってきてくれ!!お前は、私の…「弟だね」」

 

まほの言葉を手で制し、口を開く。

 

「…だけど、俺は勝利という名の悪魔に魂を売った西住の名に戻る気はないよ」

 

「ま…き、り…」

 

真霧の言葉にまほが膝を落とした。

 

「俺はさ、島田に変わって本当の自分が見つけられた気がするんだ。だから、戻らない」

 

そう言い切り、膝を落としているまほへ手を伸ばした。

 

「だけど、俺がまほ姉さん達の弟なのは変わりないからね」

 

そう言ってまほの腕を引き、立たせると後ろから急に名前を呼ばれた。

 

「真霧」

 

ハッとして振り返ると絹代が西住流家元、西住しほが立っていた。

 

「何の用です。お母様」

 

「あら、まだ私を母と呼んでくれるのね」

 

「…あなたはくさっても私の母に違い無いでしょう」

 

視線をそらし、そう吐き捨てる。

 

「…どうせ、今の今まで千代お母様からでも聞いてたんでしょう?同期のあなた達の事ですから」

 

「まぁ、そうね。真霧、あなたはあなたの生きたい道を行きなさい。そのためにチヨキチに養子の許可を出したんですから」

 

「お母様がやりそうな事は理解してますよ。…でも、五年前のあの演習、忘れはしませんよ」

 

そう言ってしほを睨む。

 

「…真霧はわからなかったのかも知れませんがあの時、あの部屋の横には西住流の上、重鎮達が多数来ていたのよ。だからああ言うしか無かったの。…ごめんなさいね、真霧」

 

そう言ってしほが頭を下げてきた。いきなりの事に混乱してしまった。

 

「え、演技?あれが…演技だって?嘘だッ!!嘘だ嘘だ嘘だ嘘だッ!!なら、何で…あの後お母様から何も…言われ、無かった!!なら、わかるの!?門下生からのあの視線が!!あの冷たい、あの視線がさぁ!!」

 

それを聞いた後、自然に自分の頭を掴み、叫んでいた。

 

「すまなかった…真霧」

 

横から急にまほに抱き締められた。

 

「姉さん!!姉さんもわかっていた筈でしょう!あの皆からの視線が!!僕は…僕はあの視線が…怖かっ、たんだ…」

 

「真霧!!」

 

「ま、ほ…姉、さん…」

 

真霧は正気に戻るとまほに抱き締められ、声を殺しながらも涙を流すのだった。

 



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