未来掴むミライダー (ガンダムラザーニャ)
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少女を守るは紫のシノビ

瓦礫によって散乱する町中で俺は歩いていた。

 

町の中では既に生きてる存在はいないと思える程に残酷な光景が広がっており、俺自身も既に身体はボロボロになっていた。

 

それでも、見つけ出さなければならない、俺が守らなくてはならない少女を。

 

「どこにっ、いるんだっ!!」

 

身体の奥から声を引きずり出すように叫ぶが、その声に応える物はおらず、ただ見えるのは瓦礫の山になった町とそれを嘲笑うように浮かぶ何かだった。

 

この町が、このような光景にさせた元凶だと分かっていながら、俺は何もする事ができず、ただ絶望するしかなかった。

 

そして、ふと何か音が聞こえ、振り向くと、そこには手が落ちていた。

 

その手に握られていたのは、死んだ妹の形見だと言って、いつも大事に握っていた物であり、その手の持ち主だと思われる身体の方へと向く。

 

「あっ…あぁっ!!」

 

そこにあったのは町にある瓦礫だった。

 

だが、その瓦礫の下から流れているのは血だった。

 

俺の近くまで流れてきている血の正体を知るのと同時に俺は頭に手を掴みながら、現実を受け入れられなかった。

 

「そんな事っ、ないだろぉっ!!」

 

悲痛な叫びと共に俺は空に向かって叫ぶのと同時に、空は桃色の光によって覆われる。

 

同時に俺の頭の中には知らない光景が広がっていた。

 

紫色の忍者のような人物が、周りで襲い掛かる黒い忍者と戦う光景。

 

クエスチョンマークが特徴的な戦士が、目の前にいる怪物に向けて電撃を放つ光景を。

 

黄色の機械が、子供達に襲い掛かる者達と戦っている光景を。

 

そんな見た事のない光景が俺の頭の中に全て入り込むと同時に目の前は真っ暗になる。

 

しばらくして、俺の意識は再び覚醒するように目を開くと、周りは見た事のない街並みが広がっている。

 

「…ここは、見滝原じゃない?」

 

何が起きているのか分からず、ゆっくりと俺は周りを見渡すが、知らない光景がそこにはあった。

 

ふと、何か違和感を感じ、服を見てみると、見覚えのないヒョウタンが腰にあり、なぜかスパナが腰にささっており、胸にはクエスチョンマークのペンダントがあった。

 

「なんだ、これは?」

 

見覚えのない物に俺は困惑していると、俺の目の前で誰かが通り過ぎるのを感じ、周りを見る。

 

駅から少し離れた場所にいたのはピンク色の肩まで伸びている少女がおり、その少女は俺の知る幼馴染だった。

 

「いろは?」

 

なぜ、目の前で死んだと思った幼馴染がここに?

 

そんな疑問を思い浮かべるよりも、無事だったのを確認する為に走り出すが

 

「いない!!」

 

確かに先程までいたはずの道にはいろはの姿はなく、目の前には行き止まりしかなかった。

 

何が起きているのか、分からず困惑したが、それよりも、俺は走り出していた。

 

ここがどこかなんて関係ない。

 

なんで俺がここにいるかなんて関係ない!!

 

今は守らなきゃいけない幼馴染が生きているのを確認しなくちゃいけない。

 

その思いだけで俺は走っていた。

 

「あの後ろ姿は」

 

今度は見失わない内に目の前で走っているいろはの姿を見つけると共に追い付くように走る。

 

すると、今度は目の前の光景は歪み始め、気が付くと周りは砂漠のような景色に変わっていた。

 

「一体なんなんだ、ここはっ!?」

 

3度目となる不可思議な現象に、俺は既に追い付かなくなっていた。

 

だが、やっと見つける事のできたいろはは目の前に迫っていた化け物によって、殺されそうになっていた。

 

「いろはっ!!」

 

俺はすぐに助けようとしたが、俺の声に気づいたのか、他の怪物達も俺に襲い掛かってきた。

 

怪物の攻撃に耐えきれず、俺は吹き飛ばされてしまい、地面へと叩きつけられてしまう。

 

そんな俺を狙うように、周りにいた怪物は少しずつ近づいていた。

 

「せっかく見つけたのにっ、諦められるかっ!!」

 

そう叫ぶと、まるでそれに応えるように、俺の腰にあったヒョウタンが強烈な光を放っていた。

 

気になり、手を取ると、ヒョウタンの蓋が外れ、そこから紫色の煙が俺の腰へと伸びると、腰には銀色のベルトが、手元には紫色の手裏剣があった。

 

「これって!?」

 

目が覚める前に見た奇妙な光景に出てきた謎の忍者が身に着けていた物だ。

 

何が起きているか、分からないが、今はこれに頼るしかない。

 

 

「変身」

 

頭の中で、なぜか映し出された人の動きを真似るように、俺は手元にある手裏剣を腰に巻き付いているベルトに入れる。

 

『誰じゃ?俺じゃ?忍者! シノビ、見参!』

 

すると、ベルトから音が鳴ると同時に、俺の後ろに巨大な蝦蟇が現れ、蝦蟇から出てきたエネルギーが浴びる事によって、俺の姿は変わる。

 

記憶の中にあった姿と酷似しており、身体を見てみると紫色を基本とした忍装束に首元には足元まで伸びているマフラーが伸びていた。

 

「っ!!」

 

姿が変わった驚きよりも、俺の足は走り出し、いろはに襲い掛かろうとしていた何かを蹴り上げた。

 

「えっ?」

 

突然の衝撃に驚いたいろはは一瞬こちらを見つめるが、それを気にせず、こちらに迫りつつある何かを次々と吹き飛ばしていく。

 

「あなたは一体」

 

「・・・俺はシノビ。

仮面ライダーシノビ」

 

いろはに尋ねられた時、とっさに俺は仮面ライダーシノビと名乗った。

 

これが、何を意味をしているのか分からないが、今はそれよりもいろはを守らないと。

 

「シノビ?」

 

疑問に思うように声を出したが、その間にも迫りつつある何かを蹴り飛ばしていきながら、ふと腰にベルトとは別の物がある事に気づき、手を伸ばして振り上げる。

 

すると、こちらに迫っていた何かは真っ二つで切り裂かれる。

 

「嘘っ、使い魔を一瞬で真っ二つに」

 

「使い魔?」

 

何を意味をしてるのか、分からないが、目の前に迫っている脅威を全て排除する為に手に持っている刀を使って、いろはに迫っている使い魔と戦っていく。

 

「終わりだ」

 

『フィニッシュ忍法!』

 

その声と共に既に残り少なくなっている使い魔に向かって走り出し、回し蹴りを行っていく。

 

すると足から出てくる紫色のエネルギーと共に全ての使い魔達を吹き飛ばしていき、同時に爆散していく。

 

「あっと言う間に使い魔達を。

あのっ、あなたはっ…」

 

「っ!!」

 

こちらに質問をしようとしたが、突然いろはが倒れてしまい、俺は急いでいろはの元へと駆け寄り、受け止める。

 

様子を見ると、いろはは何か疲労困憊のようで顔色も悪かった。

 

「どうなっているんだっ!?」

 

俺は慌てていろはを抱き上げて、どうすれば良いのか困っている時に後ろから何か殺気のような物を感じると共に、いろはを抱きかかえたまま後ろへと下がる。

 

「…っ!!」

 

「その子を降ろしなさい」

 

目の前にいるのは腰まで伸びている青い女がいた。

 

「断る、お前がいろはを狙っている可能性がある。

さっきの使い魔とかと同じように」

 

「…あなた、まさか魔法少女を知らないの?」

 

「なんだ、それは?」

 

本当に疑問に思い、俺は言うと目の前の女性はすぐに腰から何かを取り出して、こちらに投げる。

 

何かの武器かと思い、構えるが、手に取ると武器ではなく、何か小さい欠片のような物だが

 

「その子の胸にそれを押し付けなさい。

そうすれば、回復するわ」

 

「そんな事を信じられるか」

 

「早くしなさい、でないと、死ぬわよ」

 

「・・・」

 

完全に信用した訳ではないが、何もしないよりはマシだと思い、俺はそのままいろはの胸に押し付ける。

 

すると、先程まで苦しそうな表情から代わり、安静した様子だ。

 

「よかったぁ」

 

「これで少しは信用してもらったかしら。

それで聞きたいけど、あなたは一体何者、魔法少女には見えないし、魔女でもなさそうね」

 

「・・・俺は未来掴。

仮面ライダーだと思う」

 

「仮面ライダー?

聞いた事ないわね」

 

「俺も初めて知った。

この力もさっきまで必死で、何が分からない内に何時の間にか」

 

「嘘はついてなさそうね。

分かったわ、その子を安全な所に連れて行った後に話すわよ」

 

「・・・分かった」

 

俺はそのまま仮面ライダーとしての姿を解き、目の前の女性に従うように歩き出す。



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蘇る記憶と深まる謎

俺はいろはを安全な場所に寝かせてから、この目の前にいる女性、七海やちよから、この街や魔法少女と魔女と使い魔のことについて聞いた。

 

この街の名前は神浜市といって、最近魔女が多く集まり、外から魔法少女が来るようになった街。

 

魔法少女はキュゥべえという変な動物に願いを叶えてもらうことと引き換えに、ソウルジェムという宝石で変身して、魔女とその部下である使い魔と戦う存在。

 

いろはもその内の一人なのだという。

 

ちなみに、俺が言われるがままにいろはに押し付けたあの欠片は、魔女を倒した時に出てくるグリーフシードなのだという。

 

また、ソウルジェムは魔力を使うと中で穢れが溜まるらしく、溜まり切ると、魔法少女は死んでしまうのだという。

 

何で死ぬのかまでは、答えるつもりはないって、はぐらかされたけど。

 

グリーフシードは、その穢れを取り除く効果を持っているため、魔法少女の間では必須のアイテムらしい。

 

「ここまで話はしたけど、結局、あなたは何者なの?

男だから、魔法少女というわけでもないし、それにさっきのあの姿も」

 

「さっきも言ったけど、俺自身もよくわかってないけど。

今の俺は、少なくとも仮面ライダー、だと思う」

 

「…はぁ、わかったわ。

もうこの際あの子との関係も聞かないで上げるから、私たち魔法少女と関わらない方がいいわよ。

私たちだって、魔女や使い魔を相手に戦うのもそうだし、魔法少女として生きていくのも大変なんだから」

 

「あ、ちょっと!」

 

背中を向けた彼女に手を伸ばそうとするが、もうその姿はどこにもなかった。

 

「…そうだ、いろはは!」

 

俺は先ほどいろはを寝かせた場所に向かうと、そこには誰もいなかった。

 

「いない…。

もう、どこかに行ったのか?」

 

俺はあたりを見回すけど、いろははいなかった。

 

俺はそれから、街中を探すことにした。

 

 

 

 

 

「あれって…!」

 

俺はあれから色々と考えながら街を歩いていると、またしてもさっきみたいな変なところに出てきた。

 

そこではいろはがさっきのようなやつと戦っていて、その後ろでやちよと、もう一人初めて見る少女がいて、加勢せずに、見ていた。

 

おいおい、何で加勢しないんだよ!

 

しかもいろはのやつ、苦戦してるじゃねぇか!

 

それと相手はさっきのやつよりもでかいし、砂みてぇな体してやがる!

 

しかもあいつ、膝をついてるいろはに目掛けて、攻撃しようしようとしてる。

 

「…やばい、いろはぁ!!」

 

俺はとっさにひょうたんからベルトと手裏剣を取り出して、走り出した。

 

「変身!」

 

『誰じゃ!?俺じゃ!?忍者!シノビ 見参!!』

 

「…あなたは!」

 

「えっ、ちょ、何!?」

 

俺はシノビに変身し、いろはに目掛けて走ってるところを、二人に驚かれたが、気にしていられない。

 

どういう事情があるか知らないけど、いろはがやられそうになってるのに、黙ってみていられるかよ!

 

「ハッ!」

 

いろはに繰り出されようとしていたあの怪物、魔女だったか。

 

あいつの攻撃が当たる前に、蹴りを入れて弾いた。

 

「大丈夫か!?」

 

「えっ、あなたは、さっきの!」

 

俺は膝をついてるいろはの体を持ちあがらせる。

 

その時だった。

 

「「っ!?」」

 

いろはもだろうか、俺の中で、何かが流れ込んでいた。

 

これは、いろはの、なのか?

 

妹のういちゃんやその友達の灯花やねむちゃんの映像が流れてくる。

 

俺も、会ったことはあるけど、俺が知ってる限りじゃこの子たちも病気で…。

 

うん、あれってたしかキュゥべえ?

 

『僕と契約して、魔法少女になってよ!』

 

『ならお願い!

妹の、ういの病気を治して!

そしたら私、何でもするから!』

 

そこから先は、光に包まれるようにして、現実に戻された。

 

「え?

今のって…」

 

いろはも何かを思い出したのか、少し信じられないような顔をしていた。

 

…っと、今はそれどころじゃなかったか!

 

「危ない!」

 

「きゃっ!」

 

あいつ、俺たちが動かないところを隙を突いてきやがった!

 

危なかったぜ、あと少し遅れていたら直撃だった!

 

「いろはちゃん!」

 

「環さん!」

 

俺が避けてあいつから距離を取った後で、さっきの二人が来た。

 

「いろはちゃん、大丈夫?」

 

「は、はい、何とか…」

 

「…ねぇあなた、どういうつもり?」

 

「え?」

 

「私、あなたにこう言ったわよね?

魔法少女に関わるなって」

 

「だったら、何で二人して、この子の手助けしてくれなかったんだよ!?」

 

「うっ!

そ、それは…」

 

「私たちはただ、環さんがこの街で魔法少女としてやっていけるか、それを確かめたかったのよ。

本当に危なくなったら、止めに入るつもりだったけど」

 

「ちょ、私たちって、何私まで巻き込んでるんだよやちよさん!?」

 

俺の言葉に何も言えない子に、ため息交じりで説明するやちよ。

 

確かにやちよの言ってることに一理はあるかもしれない。

 

俺は魔法少女ってのはあまりよくわかっていないところはあるけれど、人間ってのは必ずしも誰かが助けてくれるなんてことは限らない。

 

…実際、俺がいた見滝原じゃあ、誰かが助けてくれるどころか、全滅してたし。

 

でも、今この場で、いろはがこうして生きてて、しかも魔法少女ってことは、ここは俺が知ってる世界とは違うかもしれない。

 

少なくとも、俺が知ってるいろはは魔法少女になってるわけじゃないし、妹のういちゃんも病気で亡くなってる。

 

だけど、もし今のが本当なら、いろはは何のためにここに?

 

「ご、ごめんなさい、やちよさん」

 

「…別にあなたのことは怒ってはないわ環さん。

悪いのは、こっちの男よ」

 

「…」

 

「あなた、自分が何をやってるのかわかってるの?

手を出さなかったのは私たちにも非があるけど、私たちにも今言ったような事情があるの」

 

「…俺は、そんな事情があるのは知らなかったけど。

俺は、この子が苦しんでるところは、見たくはなかったんだ。

…今の話を聞いて、悪かったって思ってるけど」

 

俺は素直に謝った。

 

いろはがこの街で戦えるのかってのを確認するための試験みたいなものを、俺が邪魔をしたからな。

 

それに、この人って話を聞いてる限りじゃそんなに悪い人でもなさそうだし。

 

「…はぁ、わかったわ。

じゃあこうしましょう。

私とももこは手を出さないから、あなたたち二人であの魔女を倒しなさい」

 

「え?」

 

「ちょ、やちよさん!?」

 

「元々環さんの実力を見ておきたかったけど、あなたがさっき使い魔を倒したところを見て興味が湧いたわ。

だから、せいぜい互いに邪魔にならないように、あの魔女を倒しなさい。

そしたら特別に、環さんもあなたも、この街で魔女や使い魔を倒すところに何も言わないわ」

 

「や、やちよさん、い、良いんですか?」

 

「だからこその特別よ。

ほら、そうこうしてるうちに、魔女が近づいてきたわよ」

 

「っ!?」

 

やちよに言われた通り、魔女が竜巻を起こしながら少しずつ近づいてきてるのが見えた。

 

「ももこ、引くわよ」

 

「えぇ!?」

 

ももこと呼ばれた少女は、やちよに連れられてその場から離れた。

 

「…じゃ、じゃあ行きますよ、シノビさん!」

 

「あぁ…」

 

いろははさっきのことで少し動揺してるが、俺と一緒に身構えて、奴から飛んで来た小さな竜巻を避けて間合いを取る。

 

「届けっ!」

 

「たぁっ!」

 

『忍法キリステ!』

 

いろはが左腕の弓矢で、俺は忍者刀で攻撃を仕掛ける。

 

だが、全身が砂みたいな感じで、全く効いてる感じがしない。

 

俺自身も、まだこれを使いこなせてないところがあるから、っていうのも、あるかもしれないけど。

 

そんなことを考えてると、あいつの竜巻で俺といろはが吹き飛ばされてしまう。

 

「うわっ!?」

 

「きゃっ!!」

 

俺たちは吹き飛ばされてしまい、地面に叩きつけられた。

 

急いで起き上がると、魔女がいろはに向けて攻撃しようとしているのが見えた。

 

いろはも抵抗しようと矢を射っているが、効いてる様子がない。

 

「やめろ、そいつに手を出すなっ!!」

 

俺は痛む体で手を伸ばす。

 

やめろ、やめてくれ、いろはに手を出さないでくれ!

 

俺はもう、あの時のような思いはしたくないんだ!

 

せっかく会えたのにっ、また守れないのか!?

 

俺は、あれを繰り返すのか…!

 

瞬間、俺の胸元が光だした。

 

「えっ、これは!」

 

俺の胸元を見ると、変身前に身に付けていたネックレスが光っていた。

 

俺はそれに触れると、腰にあったベルトの形が変わり、中央のくぼみに左右には赤と青のクエスチョンマークがあり、手にはクエスチョンマークのパーツが握られていた。

 

「これを使えってのか?

…やるしかない、変身!」

 

『ファッション!パッション!クエスチョン!クイズ!!』

 

俺はそのパーツをベルトに差し込むと、俺の左右には◯と×が出現し、俺の体を覆うようにクエスチョンマークが集まって、さっきの◯×が胸元に来た。

 

すると、頭にクエスチョンマークのアンテナが付いた戦士に変わった。

 

「シノビさんの姿が変わった!?」

 

「違う」

 

「えっ?」

 

俺は自分の手を見ようとした途端、頭に色んなことが情報が流れてきていた。

 

これって、情報というよりクイズ問題の◯×問題か?

 

…何を意味しているのか一瞬だけわかなかったが、とっさに行動を起こした。

 

「救えよ世界、答えよ正解。

問題だ!」

 

「え?」

 

いきなり問題を出す俺に困惑するいろはだが、あいつは俺に目標を変えて小さな竜巻を起こして飛ばす。

 

「お前の攻撃は右から来て、それが俺に直撃する。

◯か×か?」

 

「な、何を言ってるの!?

避けてっ!」

 

「正解は、×だ!」

 

瞬間、奴の体が電撃を浴びてダメージを喰らった。

 

そして、俺はあの竜巻を避ける。

 

「えっ!?

あの魔女、電気を浴びて…!」

 

あまりの出来事に困惑しているいろはだが、俺は続けざまに問題を出しては電撃を浴びせる。

 

流石に電撃を浴びすぎたのか、やつは動けなくなった。

 

「さてと、これなら問題を出すまでもないな!」

 

俺はすぐに近づいて殴っていく。

 

しかし、この姿での力が弱いのか、あまり手応えがなかった。

 

だが、そうこうしてる間にやつが風で作った刃を飛ばしてきた。

 

「がっ!」

 

「シノビさん!」

 

俺はかすり傷で済んだが、この姿だと接近は弱いし、かといってシノビの状態だとスピードが上がるけど決定打に欠ける。

 

いろはの弓矢でもあまり効いてる感じがしなかった。

 

これ、どうすりゃ良いんだよ?

 

そんなとき、腰元が光って、手に取るとそれは変身する前にあったスパナだった。

 

同時にベルトも変わって、シノビに似た物となり、スパナとは別にドライバーが握られていた。

 

「次はこれを使えってのか、変身!」

 

『デカイ!ハカイ!ゴーカイ!仮面ライダーキカイ!!』

 

スパナとドライバーを交差、ベルトに装着すると全身が機械の装甲に覆われ、ドライバーやスパナで固定され、顔にはスパナが交差して装着された。

 

「また姿が変わった!?」

 

「シノビにクイズ、その次はキカイか。

何だかよくわからねぇけど、これなら!」

 

『アルティメタルフィニッシュ!』

 

俺はエネルギーの籠った拳でやつを殴ると、爆発し、全身が凍りついた。

 

「これで完全に動けない!

…いろは、一緒にとどめを!」

 

「っ!?

うっ、うん!」

 

思わずいろはに声を出したが、何か違和感を持っているようだけど、今はそれどころじゃない。

 

それに、ここは俺の知ってる世界じゃないとすれば、俺のことを知らないかもしれないんだ。

 

でも、さっき俺に触った時の反応からすると…。

 

…今はこいつのとどめだ!

 

『キカイデハカイダー!!』

 

「ストラーダ・フトゥーロ!!」

 

俺といろはの攻撃が、凍りついたやつを貫き、爆散させた。

 

すると、撃破したやつから、あの欠片、グリーフシードがいろはの手に収まった。

 

「いろはちゃん、それにそこのお兄さん!」

 

「…うまくいったみたいね」

 

「やちよさん、ももこさん!

はい、何とかいけましたよ!」

 

「はぁ、どうにかなったな…」

 

あの魔女を倒せたからなのか、俺たちはぐったりする。

 

その時に、変身が解除されて元に戻ってしまった。

 

「え!?」

 

「あっ、しまった!」

 

「環さん、彼と知り合い?」

 

いろはが俺の姿を見て動揺する。

 

「ね、ねぇ、あなたがどうして、ここにいるの?

あなた、掴なんだよね?」

 

「…」

 

「思えば、さっきおかしいなって思ったんだよ。

あなたに触れた瞬間、私は自分の願いを思い出したの。

だから、教えて、掴は何を隠しているのっ!!」

 

「…」

 

俺はそう言われて何も言えない。

 

いろはは別に勘が良いというわけではないが、ここまでくると、頑固なまでに追及することがあるからな。

 

「いろは、俺は…」

俺はいろはに話そうとした時、ひどい頭痛に襲われる。

 

「ぐっ!」

 

「掴っ!?」

 

何が起きているのか分からない内に、俺の頭に浮かんだイメージは真っ黒な宇宙の中心部に何やら宇宙とか惑星を思わせる装飾にマントを翻す戦士だった。

 

「いずれ真実を知るだろう」

 

「今のは…!?」

 

真実って、なんだよ。

 

その言葉が出る前に俺はそのまま倒れこんでしまう。

 



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手伝いと誓い

読者の皆様、一か月の投稿の遅れ、申し訳ありませんでした。

次回はなるべく早めに投稿できるよう頑張ります。

それではどうぞ。

最後にアンケートも用意してます。


「うっ、うぅ…。

ここは…?」

 

俺が目を覚ますと、さっきの場所とは別の場所だった。

 

そこには初めて見る女性に、やちよと一緒にいた少女、そしていろはがいた。

 

「気が付いたようね。

あなた、いろはちゃんと一緒に魔女を倒して倒れたそうよ?」

 

「…あんたは?」

 

「私?

私は八雲みたま、ここで魔法少女の調整を行ってるのよ。

…さすがにあなたは調整できなかったけど」

 

「でも君さっきすごかったよ!

いろはちゃんと一緒に闘うなんて…!」

 

「お前は確か、いろはにももこって言われてた…」

 

「あぁそう言えばまだ自己紹介してなかったね。

私は十咎ももこ、よろしくな掴くん!」

 

「あぁ、どうも…。

俺は未来掴、よろしく」

 

それからやちよのことを聞いたのだが、あの人は俺をここまで運んだ後で帰ったらしい。

 

それでここは調整屋という、魔法少女行きつけのところで、いろはもここで調整を受けたらしい。

 

それで、俺といろはのことで何か色々と訳アリだと思った二人はその場を後にして、俺といろはの二人だけになった。

 

「…」

 

「…」

 

…どうしようか。

 

ここでは久しぶりとでも言っておくか、それとも…。

 

正直、俺はいろはに何て説明すればいいのか、わからなかった。

 

「…もう一回聞くけど、あなた掴だよね?」

 

「…あぁ。

俺も聞くけど、お前は、本当に、いろは、環いろはなんだよな?

俺、さっきのお前の姿とか見て、色々と混乱してるけど」

 

「うん、そうだよ。

ねぇ、さっきのこと、覚えてる?」

 

「…お前の記憶と願い事ってやつか?」

 

「うん、さっきあなたに触れた時、思い出したんだもん。

ねぇ、何か知ってるの?

何か隠し事してるの?」

 

「…俺は、何も知らない。

けど、俺も色々と混乱してるのは本当だ。

気が付いたらこの街に来てて、あのアイテムを持ってた。

そして何より俺も驚いてるのが、お前に触ったとき時だ」

 

「…どういうこと?」

 

「それは…」

 

俺はありのまま自分の身に起こったこと、知ってることを話した。

 

「…」

 

多少驚いてるのが、話を聞いてくれてるようだ。

 

「…言いたいことはわかるよ。

その、平行世界っていうのは理解できてないけど。

でも、私を守りたくて戦ってくれたんだよね?」

 

「あぁ、がむしゃらだったけどな。

…そう言えば、お前は何でこの街に来たんだ?

さっき願いを思い出したって言ってる辺り、ここに来れば何か思い出せるって感じらしいけど」

 

「そうだよ。

家でも、私の部屋の一部がまるでごっそりと何もなかったし、そこに誰かいた気がしたから。

でも、ういのことを思い出して、それも変わったの」

 

「…というと?」

 

「私、またここに来ようと思うの。

今度はういを探すために」

 

「…そうか」

 

まぁ、俺の知ってるいろはも、死んでもういちゃんのことを引きづってたからな。

 

ういちゃんが死んで、それからどこか遠い目をしてて、家事でも失敗することも多かった。

 

料理でも、必ず一人分余るし。

 

多分この世界でも、いろはは探すって言ったら、絶対に探すだろうな。

 

俺もこの世界にういちゃんがいるって言うなら、俺も会いたい。

 

いろはの願いでういちゃんの病気が治ってるなら、きっとどこかにいるはずなんだ。

 

ういちゃんだけじゃない、灯花ちゃんもねむちゃんも。

 

それに、ういちゃんたちがいた病院も、この神浜の病院だったはずだ。

 

「…じゃあ、俺もそれを手伝おうかな」

 

「え?」

 

「お前のことだから、ういちゃんを探すのに無茶しそうだからな。

俺も手伝うんだよ。

まぁ、俺だけでも難しそうだから、今の人たちにも助けを借りたりしてな」

 

「えっ、でも、良いの?

掴まで一緒に…」

 

「良いんだよ。

前の世界だろうと、この世界だろうと、お前は俺の幼馴染だ。

そう簡単に放っておけるかよ」

 

「…!」

 

俺がそう言うと、いろはの目に涙が浮かんでいた。

 

こいつ、色々と気を遣いすぎてため込むくせに、俺が庇ったりフォローしたりすると、誰もいない、俺の前でよく泣くよな。

 

…ほんと、そういうところも、変わんねぇよ。

 

「おいおい、泣くところかよ」

 

「ごめんね…。

…やっぱり、掴は掴だよね。

小さいころから、そうやって私のこと、助けてくれるんだよね…っ」

 

「まぁ、俺もこのアイテムのこと、わかってないところがあるから、この先どうなるかわからないけどな。

それに、俺はできる範囲で、お前のことを守ってやるさ。

だけど、逆の立場になったら、お前も俺のことを守ってくれよ」

 

「…うんっ!」

 

「それじゃあ、決まりだな。

ほら、涙拭いとけよ」

 

「あら、話はもう決まったのかしら?」

 

そう言って入ってきたのはみたまとももこだった。

 

「…あぁ、俺たちはまたここに来るよ。

いろはの妹を探すためにな」

 

「そう、でも気を付けてね。

神浜の魔女も使い魔も、とても強いから」

 

「その時は、あたしがフォローに入るから、その時はよろしくな!」

 

「ありがとうございます!」

 

こうして俺たちは、再び神浜に来ることを約束して、家に帰ることにした。

 

ちなみに俺は自分の手荷物を確認したときに、俺がいた世界と同じ身分証明があったから、このまま家に帰っても問題はなかった。

 

「…」

 

「…」

 

帰りの電車の中、俺の隣でいろはが寝ていた。

 

ここに来るのも初めてで色々とあったから、疲れていただろうな。

 

「…いろは」

 

俺はそっと、いろはの頭に手を置いた。

 

「今度は、ちゃんとお前のこと、守って見せるからな。

絶対に…!」

 

もう、あんな惨劇が来ようとも、絶対に守ると、心の中で誓うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

俺はいろはを家に送って家に帰った後で、手に持っていた三つのアイテムを見ていた。

 

「確か、このひょうたんがシノビ、ネックレスがクイズ、スパナがキカイ、だよな。

…何でこんなものが俺のところに…」

 

この三つのアイテム、俺がこの世界に来た時にあった。

 

何でこんなのが俺の手元にあるんだ…?

 

でも、これであの魔女とか使い魔と闘えたのだから、とりあえずはこれでどうにかするか。

 

そう思い、俺はこのアイテムを手に取って、変身の練習することにした。

 

この世界での俺の家は一人暮らしで、両親は海外に出勤しているそうだから、基本的には誰もここには俺以外いない。

 

この辺りも、俺のいた世界と同じだな。

 

そういう風に考えてから俺は再びアイテムを構える。

 

…まぁ変身するだけだから、別に部屋が荒れるとかはないだろうな。

 

「…よし、行くぞ。

変身っ!!」

 

そうして俺は、変身の練習するのだった。

 

そして俺は、その練習時に、ある異変に気付くのだった。

 

 

 

 




主人公に起こった異変は次回書かせていただきます。


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水を払うは電撃の盾

あれからしばらく経って、俺は自分の変身する力について違和感を覚えた。

 

一応、シノビとクイズ、キカイに変身できるのだが、1日にこの中の内、一つしか変身できないのだ。

 

しかも俺の意思では決められないが、俺が変身しようと思えばランダムでアイテムが光るため、日によってアタリハズレがある、という感じだ。

 

何でこんなことになっているのかは俺には知らないが、恐らくは俺が神浜で気を失ったことが原因かもしれない。

 

一応いろはにも説明している。

 

そして俺といろはは再び神浜に足を運んだ。

 

ういちゃんを見つけるために。

 

それで、ういちゃんと親しかった灯花ちゃんとねむちゃんが入院していた神浜の病院に尋ねた。

 

しかし、二人の病室を訪ねてもいなくて、医者や看護婦に尋ねてもプライバシーの保護のためか教えてもらえなかった。

 

それから二手に分かれて探したが、いろはの行方が分からなくなり、近くの公園のベンチに腰かけていた。

 

「はぁ、冗談だろ?」

 

あいつ、こういうところも変わんねぇもんなぁ…。

 

機械音痴な上に方向音痴で、スマホのマップなんてまともに見れた試しもない。

 

くそっ、やっぱり二手に分かれて病院内を探し回るんじゃなかった!

 

「…はぁ」

 

俺はしばらく自分のアホさ加減に頭を掻きむしったところで頭を冷やした。

 

「…そう言えばあの二人、いっつも喧嘩してたよなぁ」

 

俺は灯花ちゃんとねむちゃんのことを思い出す。

 

天文学に詳しい灯花ちゃんと、天才的な小説家のねむちゃん。

 

あの二人は仲は良い物のことあるごとに喧嘩していた。

 

それでよくういちゃんが仲裁に入ってたっけ。

 

「あの二人、よく喧嘩しては絶交って言ってたもんなぁ…」

 

「ねぇあなた、絶交って言ったかしら?」

 

「あ?」

 

振り返るとそこにはやちよがいた。

 

「そう警戒しないで。

あなたたちは魔女を倒したのだから、追い出すつもりはないわ。

でも、この街に来たからには、絶交なんて言葉、口にしないほうが良いわよ?」

 

「…それは何でだ?」

 

俺がそう聞くと、やちよは懐からファイルを出した。

 

「このファイルは、神浜におけるうわさが載ってるの。

それでこの中には、それに関するうわさが書いてあるの」

 

そう言って俺にそのウワサの内容を聞かせた。

 

簡単に言うと、一度絶交してしまえば、そこからずっと仲直りとかもしてはいけないということだ。

 

仲直りしようとすると、怪物が現れて、そいつを連れ去ってしまうという恐ろしいウワサだった。

 

「…でも、ウワサなんだろ?

何でそんなこと俺に…」

 

「実際にそのウワサが出てきて、もう何人もの行方不明者が出ているのよ。

だから、あなたにも警告してるのよ。

さっき環さんのも会ってあなたと同じこと言ってたしね」

 

ウワサが現実に?

 

しかもそれで何人もの行方不明者が出てるなんて、冗談だろ?

 

でも、こいつの言ってること、何かうそってわけじゃなかったしなぁ。

 

「…そういうこと、か。

そう言えばさっき、いろはに会ったって言ってたけど、やちよはどこで会ったんだ?」

 

「この公園よ。

別れてから時間はそんなに経ってないと思うから、早いところ行ってみたらどうかしら?

そう言えば、あなたたち、何で別行動してるの?

あの子探してたわよ?」

 

「マジか!?

というか逸れたんだよ!

じゃあな!」

 

俺はそう言って、すぐにいろはを探した。

 

 

 

 

 

 

俺はしばらく公園内を走って、ある光景が目に入った。

 

「いろはが二人!?

ど、どういうことだ!?」

 

しかもよく見たらももこと初めて見る女の子がいるし、この状況どうすんだ!?

 

それに、今日俺はどれに変身すれば…!

 

ネックレスが光ってる!

 

「今日はこれか、変身!」

 

『ファッション!パッション!クエスチョン!クイズ!』

 

俺はネックレスでクイズに変身して、二人を見る。

 

「えっ、その姿は…!」

 

「クイズ!?」

 

二人のいろはが動揺している。

 

さてどうしたものか、二人ともいろはだからな。

 

…それなら、いろはにしかわからない問題で炙り出すしかない!

 

「…救えよ世界、答えよ正解。

問題!

いろはの得意料理は薄味である。

〇か×か?」

 

「ちょ、何を言って!?」

 

「え、えーと、薄味だから、〇かな?

元々、ういのために作ってたことあったから」

 

「正解は、〇だ」

 

「ぎゃあああああああああ!?」

 

俺の出した問題に答えられなかったもう一人のいろはに電撃を浴びて、そのダメージのせいか別の女の子の姿になった。

 

いや、戻ったとでもいうべきか。

 

「ちっ、よくもやってくれたわね…!」

 

女の子は怒って槍を構えて攻撃を仕掛ける。

 

俺は刃先が当たらないように柄を掴んで耐える。

 

「お前、よくもいろはに化けやがったな!」

 

「あいつが邪魔するからよ!

ろくに事情も知らない癖して!」

 

「事情!?

なんだよそりゃ!」

 

「あんたには関係ないでしょ!」

 

「くっ!」

 

女の子は俺を押しのけて、槍の刃先の周りに水を纏って、それを斬撃として飛ばしてきた。

 

「うおっ!?」

 

俺は回避すると、俺が先ほどいた場所の地面が抉れていた。

 

「ふんっ、ろくに人の事情を知らないからこうなるのよ」

 

「ちっ!」

 

ちくしょう、どうすればいい?

 

相手は水を使ってくるし、俺は問題を出す形でしか電気が出せない。

 

いや、まだ俺自体が使いこなせてないから、これしかないだろうけど。

 

「とどめ!」

 

俺が動けないと思ったのか、女の子は槍に先ほどよりも多い水を纏わせて、俺を薙ぎ払おうと突っ走ってきた。

 

「掴、避けてっ!!」

 

「…!」

 

避けれない、もう距離が短いから。

 

俺は、負けるのか?

 

前に、いろはを守るって、誓ったのに?

 

…ふざけるなよ。

 

そんな簡単に負けて、誓いを破るってのか?

 

ふざけるな、状況じゃねぇ!!

 

こんなところで負けて、いろはを守れるかよ!!

 

「うおりゃああああああああ!!!!!!」

 

俺は叫び声をあげて、咄嗟に手を突き出した。

 

その時だった。

 

「がっ!?

あ、あぁああ…!」

 

手から電気でできた盾が出現して、それに水を纏った槍を伝って、女の子に流れ込み、気を失ったのだ。

 

俺は女の子が倒れたこともそうだが、俺は自分の手を見た。

 

盾はすぐに消えたが、それでも手に盾を持った感触が残ってる。

 

「今のは…?

まさか、クイズの?」

 

「掴!」

 

「掴くん、何なの今の!?」

 

「…わからない。

けど、状況教えてくれるか?

流石に戦ったとはいえ、よくわかってないから」

 

「う、うん」

 

俺たちは女の子を連れて、安全な場所で話を聞くことにした。



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絶交ルールのウワサ

活動報告に強化アイテム案を募集しています。

よろしければ、そちらもお願いします。


俺たちは女の子と戦って、近くの公園のベンチで寝かせていた。

 

ちなみにももこと一緒にいた赤い髪の子は秋野かえで、いろはに化けてたのが水波レナという。

 

「…で、これってどういう状況なんだ?」

 

「そのことなんだけどさ…」

 

「…」

 

当事者であるかえでがもじもじとしててだんまりしているのだ。

 

「それがね、かえでちゃんとレナちゃんが喧嘩して、それでレナちゃんが逃げ出そうとして、慌てて止めに入ったの」

 

「いろはちゃん!

あまりそういうこと言わないでよ!

これは、私とレナちゃんの問題だもん!」

 

「そうは言ってもな、かえで。

お前ら毎回喧嘩してるんだから、こっちの身にもなってくれよ…」

 

「そ、それはわかってるんだけど…」

 

喧嘩、ね。

 

…おい、まさかだと思うけどよ。

 

「なぁ、かえでって言ったか?

お前とレナ、もしかして喧嘩の時に絶交って言葉を、使った?」

 

「えっ、うん、言ったよ」

 

「…そうか」

 

俺は思わず頭を抱えそうになった。

 

さっきやちよから聞いたウワサのことで敏感になってるだけで、本当にただの噂話だと思いたかった。

 

でも何だろう、この嫌な予感は?

 

「…掴も気になるの?

さっきやちよさんに言われたこと」

 

「あぁ」

 

「うん?

二人ともやちよさんに何か言われたのか?」

 

「ももこさん、それが…」

 

いろはがおずおずと話した。

 

俺は名前までやちよから聞いていなかったが、そのウワサの名前は、『絶交ルールのウワサ』というものだった。

 

「そんなの、ただの噂話だよ。

あの人、変な噂を調べては騒いでるだけだって!」

「…そうなのか?」

 

俺はあいつが嘘をついてるって感じではなかったから、そんな風には思わないけどなぁ。

 

「まぁ、そういうことだったらいいんだけどな。

…じゃあ、俺はレナの様子でも見てくるわ。

そもそも、事情知らなかったからって気絶させたの俺だしな」

 

「う、うん…」

 

まぁ、俺も事情も知らなかったのはそうだけど、俺自身さっきのクイズの技とでもいうのか、あの電撃の盾のことさっぱりわかってねぇからな。

 

とりあえず、俺は近くの自販機でジュースを買ってから向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、うぅ、ここは…?」

 

「よぉ、気が付いたか?」

 

「その声、アンタひょっとさっきの!?」

 

レナが頭を押さえながら体を起こし、俺の声を聴いた途端に身構える。

 

そりゃあ、さっき電気浴びせて気失わせたやつが目の前にいるとなると、そうなるよな。

 

「俺は未来掴だ。

さっきは悪かったな。

ほれ、さっき自販機で買ってきたジュースだ、やるよ」

 

「あ、ありがとう…」

 

先ほどのこともあって弱っているからか、警戒しながらも受け取って飲む。

 

「それで、アンタ何者よ?」

 

「ん?」

 

「だって、魔法少女と張り合うなんて、中々のもんよ!

それにさっきのあの姿と言い、電気と言い」

 

「…そうだな。

少なくとも、俺にはわからないんだよ」

 

「は?

何よそれ!」

 

「信じてもらえないかもしれないけど、俺はここ数日前に、気が付いたらここにいたんだ。

その時に、このネックレスとかひょうたんとかスパナとかあったんだよ」

 

そう言って俺は手元の三つのアイテムを見せる。

 

「ふぅん」

 

「それで、お前確かレナって言われてたよな?

俺が言うのもなんだけど、何があったんだ?

何か喧嘩して絶交とか言ったらしいけど」

 

「そ、そうよ…」

 

こいつ、さっきまでの威勢どこ行った?

 

明らか素直じゃねえか。

 

いや、そこは別に良いんだよ。

 

問題はかえでと何が起こったのかってことなんだからさ。

 

「だってかえでが悪いのよ!?

あの子がどんくさかったから、レナがこんな思いしてるんだから!」

 

「だからそれで、具体的に何があったのかって聞きたいんだよ。

ももこだって心配してるんだから、ちゃんと、な?」

 

「ふん!

悪いけど、そこまでは教える気はないんだけど!

そもそも、さっき素直に話したのは、アンタからまたビリビリ喰らわされるのがいやだったから答えただけなの!」

 

「どんだけ電気トラウマになってんだよお前」

 

「レナちゃん!」

 

「なっ、かえで!」

 

「…?」

 

俺たちの前に、先ほどいろはたちと話をしていたかえでがやって来た。

 

しかもかえでの後ろで二人が見守ってる。

 

「…何よ、もう絶交したんだから、関わらないでよ。

あんたもさっき、そう言ったんだから」

 

「それでも、さっきのはレナちゃんが悪いんだよ!

でもね…」

 

「何よ?」

 

「絶交したからって、もう一度レナちゃんとももこちゃんと一緒に戦いたいの!

これからも会えないなんて、私嫌だもん…」

 

「アンタがそうでも、レナはもう嫌なの、うんざりなの!

かえではいつまで経ってもどんくさいし、謝るつもりもないんだから」

 

「だったら、もう良いよ」

 

「そう、わかってくれたならさっさと…」

 

「そんなに言うなら、私がレナちゃんに謝るもん!」

 

「…!」

 

おいおいマジか!

 

いくら仲直りしたいからって、自分から謝るのか!?

 

「はぁ!?

ちょっ、アンタ何言ってんのよ!

アンタが悪いわけじゃないのに!」

 

「私が謝るんだから、私の勝手だよ!」

 

「謝るなんてバカなマネはやめなさい!

レナは謝罪も何もいらないんだから!」

 

何だこの異様な拒絶は?

 

…そう言えばさっきやちよが言ってたあの噂か?

 

「レナ、お前ひょっとして、絶交のウワサをガチで信じてたから、そんなに怯えてんのか?」

 

「っ!?

そ、そうよ、悪い!?

この歳でガキみたいなウワサ信じて!?」

 

「心配するなって、19歳の女子大学生だって信じてたから」

 

でも何だろう、この嫌な予感は。

 

俺の思い違いだったら良いけど。

 

「とにかく、私から謝るから!

ごめんね、レナちゃん!」

 

「ば、バカぁーーーーーーーっ!!

怪物に拐われたらどうするのよ!?」

 

「めちゃくちゃ信じてるじゃねぇか」

 

涙目になりながらそんなこと言うなんて、お可愛い奴め。

 

まぁ、俺も半分信じてたりして。

 

「でもほら、私が謝っても何にも起きないよ?

だから、これからも一緒に…」

 

その瞬間だった、まるで俺の予感が当たるかのように、周りの景色がおかしくなった。

 

というか、前にいろはたちと一緒に戦った時の結界と似たやつだけど、何か別の物で覆われてる感じだった。

 

その異変に気付いたいろはとももこも出てくる。

 

「こ、これって!?」

 

「何なの!?

魔女の結界!?」

 

「いや、何か違う。

似てるけど、どこかが違う」

 

「じゃあ、あれは使い魔じゃないの?」

 

かえでが指を指した方向に俺たちは向くと、そこには鍵穴の付いた四角い奴らがいた。

 

瞬間、やつらがよってたかってかえでを捕まえる。

 

「きゃっ、やめて、引っ張らないで!」

 

「「かえで!」」

 

「かえでちゃん!」

 

「かえで…!

くっ、やるしかねぇ、変身!」

 

『ファッション!パッション!クエスチョン!クイズ!!』

 

俺たちなそれぞれで変身して、やつらからかえでを引き離そうとする。

 

だが、攻撃しようにも一匹がかえでを盾にしてるため、うまく攻撃できず、周りを囲われてしまう。

 

「ぐっ、あいつ、かえでを盾にして…!」

 

「うっ、うまく離れられないよぉ!」

 

そうしてる間に奴らの一匹が俺に攻撃を仕掛けてくる。

 

「こうなったら…ぐぁ!?」

 

俺はさっきのことを思い出して手を突き出すが、電気の盾が出ず、やつの体当たりを喰らってしまう。

 

「掴!」

 

「どうなってるんだ?

さっきは出てきたのに…!」

 

俺は思わず自分の手を見るが、出る気配もなかった。

 

だが、そうしてる間に奴らは俺たちからかえでを引き離し、その間に大量に押し寄せてくる。

 

「やだぁ、離して!」

 

「かえでを、返せぇ!!」

 

「かえでちゃん!」

 

「かえで、待ってろ!

今助けに行くから!」

 

「ちっ、こいつら邪魔だ!」

 

俺たちはかえでを解放しようとするも、奴らが押し寄せてくるため中々近づけない。

 

「こうなったら!

問題!

俺たち四人の目的はかえでを助けることである。

〇か×か?」

 

「は!?

そんなの決まってるでしょ!?」

 

「うん、答えは決まってるよ!」

 

「言わなくてもわかることだろ!」

 

俺がここにいるやつらに向けて問題を出して、いろはたちは答えるまでもないと言いつつも、同時に答えた。

 

『答えは、〇!』

 

「そうだ、正解は、〇だ」

 

その言葉と同時に、迫り込んできたやつらは電撃を浴びて、消滅した。

 

だが、すでにかえではいなくなってしまった。

 

「消えた!

そんな…」

 

「絶交して後悔して仲直りしようとしたら怖いバケモノに連れていかれてしまう…。

あっ、そうだ!」

 

「おい、レナ!」

 

「レナちゃんどこに行くの!?」

 

「…!」

 

レナは何か思いついたようにどこかへと走っていき、ももこはレナを追いかける。

 

「あぁ、どうしよう…!」

 

「どうするもこうするも、何か手掛かりがあればかえでを探せるけどな。

いろは、レナはももこに任せて、かえでは俺たちで探そう。

何か手はあるか?」

 

「え!?

う、うん。

かえでちゃんの魔力を頼れば何とか…」

 

いろははソウルジェムに意識を向けることで魔力を探す。

 

「見つかったか?」

 

「うん、まだそう遠くは行ってないみたい。

掴、追いかけよう!」

 

「あぁ!」

 

俺たちは一度変身を解除して、かえでを探すことにした。

 

だが俺は、かえでを探すこともそうだが、先ほどのクイズのことで気になることがあった。

 

さっきいろはたちに問題を出して答え合わせして奴らに電撃を浴びせた時、バイザーの裏の隅に、『3』という数字が出てきた。

 

これはさっきの電気の盾と何か関係があるのか?

 

それにこの3って数字、確かいろはたちは3人で、正解だったからそれでこの数字が出てきたのか?

 

そう考えながら俺はいろはと一緒にかえでを探すことにした。

 



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数字の使い道とパズル

俺といろははかえでを拐ったやつらを探していた。

 

しかし、いろはが魔力を探知できなくなって、見失ってしまった。

 

「ごめん、見失っちゃった…」

 

「…気にするなよ。

この辺りで見失ったなら、まだ近くにいるはずなんだから」

 

俺たちがいるのは、建設廃棄された工事現場だった。

 

この辺りでかえでを見失った。

 

「掴くん、いろはちゃん!

レナここに来てない!?」

 

「ももこさん!

ここには来てないですけど…」

 

「そっか…、ここにも来てないのか。

あいつ、どこに行っちゃったんだ…」

 

俺たちの元に駆けつけたももこは、レナがここに来てないことを知ると頭を抱える。

 

この様子だと見失ったのだろう。

 

「かえでも連れ去られるし、レナもどこか行っちゃうし、リーダー失格だ!」

 

「ももこさん…」

 

「…」

 

俺はそれを黙って聞いていた。

 

聞いてると、ももこは二人と一緒にチームを組んで魔女を倒してたって話だからな。

 

さっきのかえでとの接し方とか見てると、二人のことがどうしても放っておけないみたいだし。

 

というか、お節介焼きというか、面倒見が良いというか、リーダー以前に人として二人のことを大事に見てるって感じなんだよな…。

 

「…なぁももこ」

 

「…?」

 

「俺、お前らがどんな経緯で仲良くなったとか知らないけど、少なくともそうやって心配してる時点で、二人はお前の元から離れたってわけじゃないと思うんだ」

 

「掴くん、それってどういう…」

 

「かえでについてはあれは仕方なかったというか、お前でも助けれてなかったし、俺たちでも無理だった。

けど、完全に助からないってわけじゃない。

だから、まぁ…その、なんだ。

あまり一人で抱えるなよ、そんなんだと、いつか自分で自分を壊しかねないから」

 

「掴くん…」

 

 

それに、何もできなかった俺にも非があるしな。

 

…?

 

ももこの後ろから誰かが…。

 

…あぁ、そういうことか。

 

「それに、後ろを見ろよ。

追ってたやつが、向こうから来たみたいだぞ?」

 

「え?」

 

俺が後ろに指を指して、ももこたちが振り返るとレナが走ってきた。

 

「はぁはぁ…!

やっぱりここにいた!」

 

「レナちゃん!?

どこに行ってたの?」

 

「レナ、追っかけても見失うし、今更何しに来たんだよ!」

 

「かえでを助けられないかって、確認しに行ってたのよ!

その目処が立ったからここに来たのよ!」

 

「レナちゃん、もしかしてやちよさん?」

 

「ば、バカ!

ももこの前だから濁したのに…!」

 

「…いや信じるよ」

 

ももこは眉をひそめながらもため息をつく。

 

「ほ、本当でしょうね!?」

 

「レナが何の理由もなしに飛び出したわけでもなくて安心したから。

それで、どうするんだ?」

 

「そんなの、決まってるじゃない…。

レナも、覚悟を決めたし」

 

「お前、まさかだと思うけど…」

 

「多分、かえでちゃんと同じ状況を作るんじゃ…」

 

レナは工事現場に向き、息を吸って、大声をあげる。

 

「かえでーーーーー!!!

今までのこと、全部ぜーんぶ謝るから出てきて!!

無理矢理コンビニ使い走りさせてごめん!

レナの大好きがフルーツタルトがなくて、代わりにレナの好きな物を買ってきてくれたのに怒って投げつけてごめん!

服を汚してごめん!

お金返さなくてごめん!

そのお金も、本当はペットの餌代なのにごめん!

そのペットのこと、キモイって言って思ってごめん!

レナ爬虫類が苦手だから、かえでのペットのことキモイって思っててごめん!」

 

「…お前、ひどいやつだな」

 

「ももこさん、流石にこれって…」

 

「私もかえでと同じ立場でそれされたら流石に凹むよ…」

 

謝るのは良いんだけどさ、どんだけかえでにそんなことやってるんだよ。

 

恨みでもあるのか?

 

「アンタは、レナの下僕なんだから、早く帰ってきなさいよぉ…!

ちゃんと面と向かって謝るから…!」

 

「レナちゃん…」

 

「レナ、お前…」

 

言い方はかなりひどいけど、かえでのことを思って謝ってるのはわかる。

 

普通に下僕とか言ってるけど、レナもレナで単純に不器用なだけで、本当は友達思いなんだな…。

 

実際、涙目になりながら謝ってるし。

 

そんなことを考えてた途端、先ほどの結界が出現した。

 

「…来た!」

 

「本当に謝ったら出てきちゃった…」

 

「でも、この結界が出てきたってことは…」

 

「間違いない、奴らが来るぞ!」

 

案の定、かえでを攫ったやつらが出てきて迫ってくる。

 

しかも今度はレナを捕まえようとしている。

 

「…かえでを、返しなさいよコノヤロー!!」

 

「レナっ、一人で突っ込むなよ!」

 

「掴、私たちも行こう!」

 

「あぁ、変身!」

 

『ファッション!パッション!クエスチョン!クイズ!!』

 

レナに続くように俺たちも変身して奴らをぶちのめしていく。

 

レナとももこが槍や剣でやつらを突き刺し凪ぎ払い、いろはが矢で射抜いていき、俺は問題を出しては電撃を浴びせる。

 

だが、俺はこのクイズのことで、気になっているのがあった。

 

バイザーから見える数字、変身した後でも続いていた。

 

相手が正解してないからさっきの3の数字のままだが、これが何を意味しているのかが分からなかった。

 

「あ、レナちゃん」

 

『っ!?』

 

そんなことを考えてる時に、攫われたはずのかえでが現れた。

 

「かえで、アンタ無事だったの?」

 

「良かった無事で!

さ、早くここから出よう!」

 

「レナちゃんにももこちゃん…」

 

何だろうこの雰囲気、さっきと明らかに違う。

 

「…あのねももこちゃん、私はこれからレナちゃんと一緒に絶交階段さんの掃除をするから、帰るなら一人で帰ってくれるかな?」

 

「はっ!?」

 

「かえで?

ちょ、何言ってんのよ!?

アンタはレナたちと一緒に帰るのよ!」

 

「ごめんねレナちゃん、私は帰れないの。

これからずうっと、絶交階段さんのお掃除をするから」

 

かえでの後ろから何かが出現する。

 

階段と鐘でできたような怪物だった。

 

「おいおい、これがここの魔女だってのか!?」

 

「いや、魔女にしては何かが違います!

多分、かえでちゃんもあれにやられて…!」

 

「レナ、今すぐかえでから離れろ!」

 

「えっ、ぐぁ!?」

 

戸惑った途端にかえでがレナの腹を殴って、あの階段のところへと引き摺る。

 

「えへへレナちゃん、これからは一緒に絶交階段さんの掃除しようね~」

 

「かえ、で…!」

 

「レナ!!」

 

このままだとまずい!

 

かえではレナを怪物の前に連れてくると怪物が鐘を鳴らし、レナはそれに苦しみ出した。

 

「ぐっ、れ、レナはっ、あなたの、下僕…」

 

「レナちゃんが!」

 

「レナっ!

くっ、こいつら、邪魔だ!」

 

まずい、あの鐘の音でレナが洗脳されそうになってる!

 

かえでは何か操られてるし、レナもやられたらこっちが不利になる!

 

「掴、避けて!!」

 

「えっ!?」

 

いろはに言われて振り返ると、奴らが俺に向けて攻撃しようとした。

 

攻撃するにして躱すにしても間に合わない、ましてや問題を出すことも。

 

だがその刹那、奴らは複数の槍に突き刺さり消滅した。

 

その槍の形に見覚えがあった。

 

「やっぱりこうなっていたのね…」

 

「…!

お前は!」

 

「やちよさん!」

 

「やちよさん…!」

 

「ウワサを破ると現実になってかえでを拐われたって聞いたからきたけど、やっぱりだったのね…」

 

駆けつけたやちよはあの怪物を見てそう言った。

 

一応は心当たりがあるようだった。

 

「けど、ウワサが現実にって、あんなのたまたま魔女の性質と被ってただけじゃないか!」

 

「いいえ、あれは魔女じゃないわ!

紛れもなく、現実なのよ…!」

 

「えっ!?

じゃ、じゃあやちよさん!

ウワサに詳しいなら、あれの倒し方とか知ってるのか!」

 

「…いいえ、私だって初めて見る現象だからそこまでは知らないわ。

私が知ってるのは、あくまでウワサの存在だけ。

それとも、あなたはかつてのように金魚の糞みたいに着いてくるのかしら、甘えん坊のももこ?」

 

「なっ!?」

 

「おいおい、今は喧嘩することじゃないだろ!?

やちよも、前に何があったか知らないけど煽るな!」

 

「そうですよやちよさん、ももこさん!

倒し方がわからないなら、せめて一緒に戦ってください!」

 

「…それもそうね。

確かに、私でも知り合いの魔法少女がやられて平気でいられるはずがないもの!」

 

「わかってるよ!

私も、やちよさんと喧嘩するためにここにいるんじゃないんだから!」

 

俺といろはの説得でどうにか抑え込む二人。

 

この二人、過去に何かあったのか?

 

何というか、やちよが無理に煽ってる感じがするというか、似合ってないキャラを演じてる感があるというか…。

 

…とにかくだ!

 

今は洗脳されてる二人を何とかしないと…!

 

…そうか、これなら!

 

「させるか!!」

 

「「ぎゃつ!?」」

 

俺はバイザーの数字を意識して腕を振るうと、電撃でできた鞭が出現し、二人を縛り付ける。

 

そして二人は電撃で縛り付けられてるため、痺れながら気を失った。

 

バイザーの数字をよく見ると2に減っていた。

 

そうか、これは問題の正解数で、その分いろんな形で電気を出せるって感じか!

 

さっきの盾も今の鞭も、これから来てるんだ!

 

「レナ、かえで!」

 

「気を失わせた!

これで思う存分倒せるはずだ!」

 

今は洗脳されてた二人を気絶させたわけだし、これなら!

 

「でも問題は、どうやって致命傷を与えるか、よ」

 

「それなら、私たち4人で連携して戦いませんか?」

 

「なるほどね、ウワサの性質を逆に利用するのね。

信頼、繋がり、友情、絆、そんな感じかしらね」

 

あぁ、そういうこともありか。

 

要はここにいるやつらであいつをぶちのめす。

 

けど、その理屈は…。

 

「つながりはあっても、アタシとやちよさんの絆は…」

 

「あら、私はももこに対して普通のつもりよ?」

 

「だったらさっきみたいに煽るなよ…」

 

「…やちよさんで普通なら、アタシも普通だよ」

 

「私と掴は幼いころからの幼馴染だから、絆は強いはずなんだけど…。

それなら、共通点はどうですか?」

 

「共通点?」

 

…なるほどな、つまりいろはが言いたいのは、こういうことだな。

 

「…唐突だがここで問題!

俺たちの目的はこのウワサを倒して、レナとかえでを助けること!

〇か×か?」

 

「へ?」

 

「なっ!?」

 

「本当に唐突ね…。

けど、そんなの見ればわかるわ!」

 

『答えは〇!』

 

「…正解だ。

これで互いの共通点は一致した。

いろは、これならあいつを倒せるんじゃないのか?」

 

「うん、ありがとう掴!」

 

「どういたしまして、と。

さて…」

 

俺たちは怪物に体を向け、俺はバイザーの数字が5になっていることを確認した。

 

これで目的は一致したけど、問題はまだある。

 

この数の使い魔たちだ。

 

いくら俺たち4人でもこれだけの数を捌くのは難しい。

 

恐らくやちよもそうだろうな。

 

どんだけ倒しても次から次へと湧いてきやがる…!

 

くそっ、どうすればいい!

 

…?

 

これは!

 

ベルトが光りだして、何かが俺の手元に収まった。

 

よく見ると、俺が今使ってるクイズのアイテムに似たやつだった。

 

違いがあるとすれば、模様がパズルのピースのように散りばめられてるってことだった。

 

「掴、それって!」

 

「なんだかよくわからねぇけど、俺があいつらを何とかするから、お前たちであいつを戦ってくれ!」

 

「わかった、掴も気を付けてね!」

 

「…無茶はしてはダメよ?」

 

「やばくなったら、二人を連れてこの場から離れてくれ!」

 

「わかった!」

 

俺は三人が行ったことを確認してから奴らに目を向け、手に持っていたアイテムを今はめ込んでるやつと入れ替える形でベルトに挿し込んだ。

 

『ファッション!パッション!クエスチョン!クイズ!チクタクパズル!!』

 

すると俺の姿も若干変わり体の至る所にパズルのピースがあって、胸もパズルのピースになっていた。

 

それに姿が変わったせいか、バイザーの数字もなくなっていた。

 

「チクタクパズル?

とにかくやってみるしかない!」

 

奴らに向けて手を翳すと、奴らの周りに結界が現れて動きを阻まれすし詰め状態になる。

 

しかも結界の一部に、指や手で動かすタイプの画面がついたモニターがあって、ピースがバラバラになったパズルが映し出され、短いけど制限時間が付いていた。

 

つまりは、制限時間内にパズルを完成させないと出られない感じだろうか。

 

だが奴らはパズルに目もくれず俺に向かおうとするが結界にせいで出ることはできず、何匹かすでに潰れてる状態だ。

 

そして制限時間が切れた途端、結界が内側から爆発し、奴らが消えた。

 

「うぉ!?

これがチクタクパズルの力だってのか?」

 

なんとなくわかってきたやり方で俺は増えてきたやつらを結界に閉じ込めて、しまいにはあの怪物にも結界を張った。

 

「このバリアは…!?」

 

「そいつらは今結界で閉じ込めてある!

すぐに爆発するけどな!」

 

「へっ、きゃっ!?」

 

いろはたちは少し狼狽えながら結界の爆発に耐え、やつらは再び消し飛び、怪物もどこかボロボロでフラフラの状態だった。

 

「よし、これでとどめだ!」

 

『ファイナルクイズフラッシュ!!』

 

俺は先ほどの姿に戻ったあとで、アイテムを引っこ抜くとクエスチョンマークがビックリマークに変わり、もう一度ベルトに差し込み、足にバイザーに溜まってた数字分の電撃を足に集中する。

 

「行けぇぇぇぇぇぇ!!

クエスチョンキック!!」

 

「ストラーダ・フトゥーロ!!」

 

「アブソリュート・レイン!!」

 

「エッジオブユニヴァース!!」

 

俺がジャンプした途端にいくつもの○×のパネルが現れてそこを潜り抜けるように、俺は電撃を帯びた足をキックし、三人は続くように必殺技をかまして、怪物に目掛けて直撃する。

 

電撃やら炎やら複数の槍や光の雨が合わさる形で直撃したため、怪物は為すすべもないまま爆散し、結界がなくなったのであった。



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古本屋の少女と忍法

絶交階段のウワサを倒し、かえでとレナを助けてから数日が経った。

 

あれからというものの、レナが変身魔法でういちゃんが入院していた病院に忍び込んで情報探ってもらって、それで灯花ちゃんとねむちゃんが以入院していたことがわかり、二人はどこかにいるのではという情報が浮上した。

 

しかし、肝心のういちゃんの情報が見つからず、それっきりだった。

 

俺たちも何度も神浜に来ては魔女退治をしながらういちゃんや二人の情報を探ろうとしたが、全く見つからなかった。

 

それで、このままでは埒が明かないので、二手に分かれて、手掛かりになりそうな噂を探すことにした。

 

正直、いろはを一人にするのは心配で仕方ないけど、何かあったらももことかみたまたちがいるから、あまり気にしなくてもいいのだろう。

 

それで今、俺はウワサのこと、それから神浜の情報を集めるために、古本屋に来ていた。

 

古本屋だったら、この街の歴史とか都市伝説にまつわることとかウワサがあるかもしれないし、今はとにかくこの街の知識が欲しいからな。

 

「…さて、どこにあるんだ?」

 

一応本棚を見てこの街の地図とかを見ているが、ウワサについての情報は書かれていない。

 

けど、この街には色んな学校があって、様々な区画に分かれているのはわかった。

 

「…水名区に新西区。

あぁ、この新西区ってのは今俺がいる街のことだな」

 

「あの…」

 

「…?」

 

俺に声をかけてきたのは、緑の髪をした女の子だった。

 

ここの従業員だろうか?

 

「何か悩んでるみたいですが、何かお探しの本はありますか?」

 

「…あぁ。

この地図もそうだけど、できたらこの神浜の歴史とか都市伝説のことが載ってる本をな」

 

「そうでしたか。

ひょっとして、神浜に来たのは初めてですか?」

 

「いや、この街には数回は来たことはある。

でも、今はこの街のウワサを探すために、この街の知識が欲しくてな」

 

「ウワサ、ですか?」

 

「あぁ、人探しの手がかりになるかなって」

 

「そう、ですか…。

見つかれば良いですね、その人」

 

「本当にそれだよ」

 

「わかりました。

では少し在庫の方を…!?

ごめんなさい、ちょっと待ってもらって良いですか!?」

 

「お、おい!」

 

女の子は店の奥に入ろうとした途端に目を見開き、逆方向の店の外に出ていった。

 

何か様子がおかしいぞ?

 

別に用事を思い出したとかそんなレベルじゃない。

 

まるで何かを察知したような感じだった。

 

とにかく俺は女の子を追いかけることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女の子を追いかけていると、突然景色がガラリと変わった。

 

「これって、まさか魔女の結界!?

ということはまさかあの子は!」

 

俺は奥を見ると、先ほどの女の子が変身してあの使い魔と魔女と戦ってるのが見えた。

 

しかもよく見ると苦戦してる感じだった。

 

「あの子、魔法少女だったのか。

…けど今の状況だとヤバい!

変身!!」

 

『誰じゃ?俺じゃ?忍者!シノビ、見参!!』

 

俺はシノビに変身して、女の子に近づいた使い魔の一体を蹴飛ばした。

 

「…っ、あ、あなたは!?」

 

「おい、大丈夫か!」

 

「は、はい!

あれ、その声って、まさか!」

 

「それは後だ!

とにかくこの状況何とかするぞ!」

 

「はい!」

 

そう言って俺たち二人であいつらをぶちのめすことにした。

 

あの子の武器は杖と槍を兼ねているのか、突いたり、先端からビームを出していた。

 

俺は背中から刀を取り出して使い魔を切り裂いていく。

 

だが、数が多すぎる。

 

この子も単独での戦いはあまり得意そうではないし、俺もシノビを使いこなせてない。

 

「ちっ、数が多すぎる上に退路を絶たれたか!」

 

「ど、どうしますか?」

 

ちくしょうっ、俺がこんなところで終わってたまるかよ!

 

それに、これはクイズみたいに問題を出して攻撃するわけじゃないから勝手が違う。

 

考えろ、考えるんだ…!

 

そうだ、シノビが忍者なら、これがいけるはず!

 

「おい、少し俺から離れてくれ」

 

「えっ、どうして…」

 

「良いから。

…よし」

 

俺は刀をしまって、両手を組む。

 

忍者が忍術の印を結ぶように。

 

漫画で見た思いつきだから、できるかどうかわからないけど、やってみるしかない!

 

「忍法 分身の術!!」

 

『ブンシン忍法!』

 

すると、周りに複数の俺が出現し、武器を構える。

 

「本当に分身ができた…!

よし、これなら!」

 

「か、数が増えた!?」

 

『忍法キリステ!』

 

「うおぉぉぉぉ!!」

 

女の子が驚いてる間に俺は分身と一緒にやつらを瞬く間に切り裂いて倒していく。

 

分身して人数が増えてるから、あんだけいた使い魔を倒せた。

 

倒した後で、分身たちは消える。

 

「す、すごい…!」

 

「ふぅ…、何とか倒せた…!?

おい、あれってまさか…」

 

一息つこうとした途端、奥から羊のような怪物が出てきた。

 

「あれは魔女です!

気を付けてください!」

 

「マジかよ!

こっちはまだこれ使いこなせてないのに、忙しいな!!」

 

俺は思わず悪態突くが、それでも女の子と一緒に戦う。

 

あいつ、目が複数あるけど、どんな攻撃を仕掛けてくる気だ!?

 

…おい、あれ一瞬だけ目を瞬きしたぞ?

 

「危ない!」

 

「うぉ!?」

 

俺は何をされたのかわからず、強い衝撃を受けて軽く吹き飛ぶ。

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「何とかな、けど今のは…?」

 

「私も一瞬のことだったのでわかりませんでしたが、瞬きした瞬間に忍者さんの周りに衝撃が集まって…」

 

「だとしたらあいつの目を何とかしないと…?

今、忍者さんって?」

 

「あ、すみません!

まだ名前を聞いてなかったので、とりあえず見た目の特徴から…」

 

「…いや、別に謝らなくていい。

言わなかった俺も悪いし。

それよりも、あいつを倒すぞ!」

 

「はい!」

 

俺が前に出て、あいつの攻撃が当たらないように避けていく。

 

あの羊野郎の攻撃、要は目が力の源らしいな。

 

だからあいつの目を潰すのが手っ取り早いけど、どうすればいい?

 

あの子が後ろでビームを撃って援護してくれてるが、それでも今は何かあいつから飛んでくる衝撃の球みたいなのを弾くのに精いっぱいだった。

 

「くっ、一体どうすれば…!」

 

俺は一旦物陰に隠れて考えた。

 

その時に自分の太ももに触れると、クナイが出てきた。

 

「え!?

これって…!」

 

俺は思わず自分の太ももをよく見ると、クナイの紋章が描かれてるのに気付いた。

 

そう言えばこれはただのペイントだと思ってけど、まさかこんな能力があるなんて。

 

「…よし、これでも喰らえ!」

 

俺はそのクナイを数本出して、あいつに投げつけて突き刺した。

 

あいつは目をいくつかやられて身もだえしてるようだった。

 

だがすぐに残ってる目で俺を睨みつける。

 

「わ、わたしだってできます!」

 

女の子は少し怯えながらも武器を振るうと、振った軌跡に沿って俺がさっき投げたクナイが浮いた状態で出現した。

 

「これって…!」

 

「先ほど忍者さんが使ったクナイを再現しました!

狙いを定めて撃てば、あの魔女を無力化できます!

えぇい!!」

 

そう言って女の子は武器を振ると、それに連動するようにクナイが奴に目掛けて発射されて、見事に全部の目に命中した。

 

「助かったぜ!

よし、これでとどめだ!!」

 

『フィニッシュ忍法!!』

 

「煌道のページ!!

一巻の終わりとさせてください!!」

 

俺は全身にオーラを纏いながら連続で蹴りつけて、最後に女の子が杖で極太のビームをぶっ放して爆散した。

 

それであいつの中から飛んできたグリーフシードは、女の子の手に収まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、助けていただいて、ありがとうございました!」

 

「いや、それほどでも…」

 

あの結界を出た後で、女の子にお礼を言われた。

 

「あの、それで思ったのですが…」

 

「何だよ?」

 

「さっきから声を聞いて思ったのですが、ひょっとして先ほどお店にいたお客さんですか?」

 

「うっ、それは…。

…まぁ、元々隠す理由もなかったけど…」

 

俺はあきらめて変身を解除する。

 

「あぁ、やっぱりだったんですね!

あの、私夏目かこといいます!

よろしければお名前を…」

 

「俺の名前は掴、未来掴だ。

よろしくな、かこ」

 

「はい!

えーと、そう言えば本のことを聞いてましたね。

すぐに戻って在庫を…」

 

目の前にいる女の子、かこは俺がさっき聞いた本のことを思い出して店に戻ろうとする。

 

「失礼」

 

「え?」

 

「ん?」

 

俺たちが店に戻ろうとした時に、どこからから声が聞え、振り返ると赤い髪をした少女がいた。

 

「ななかさん?」

 

「かこさん、すみませんが、少し彼と話をさせてもらっても構いませんか?」

 

「えーと、はい。

では、在庫の方を見てきますので、後でお店に来てくださいね!」

 

「あぁ」

 

かこが古本屋に戻っていったことを確認した、ななかと呼ばれた少女は俺を睨みつけた。

 

「あなたは先ほど、未来掴と名乗ってましたね?」

 

「そうだな、そういうお前も、かこからななかって呼ばれてたな」

 

「失敬。

私は常盤ななか、夏目かこさんとは同盟を結んでる者です」

 

「同盟?

ということは、お前も、魔法少女、なのか?」

 

「魔法少女の存在を知ってるんですね。

そうです。

それで、私はあなたに、あることをお願いしようと、前に出ました」

 

「お願い?

どういうことだ?」

 

俺が聞いた途端、ななかは変身して、刀を抜いた。

 

「私と、今ここで、手合わせ願います!」



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花びらと思いつきの知略

「…どういうことだ?」

 

「そのままの意味です。

いざ…!」

 

そう言って、ななかは俺に刀を振ろうとする。

 

「うおっ!?

危ねぇ!」

 

俺は間一髪で避けて距離を取って、腰元と瓢箪を取り出す。

 

「…よくわからないけど、そっちがその気なら!

変身!!」

 

『誰じゃ?俺じゃ?忍者!シノビ 見参!!』

 

シノビに変身し、刀を取って間合いを取る。

 

こいつ、一体何が目的なんだ?

 

そう言えばかことななかは同盟を結んでるって言ってたから、仲間同士だというのはわかる。

 

でも、だからって何でこんなことになってるんだ?

 

…くそっ、全然わからねぇ!

 

とにかく今わかることは、こいつに背を向けたら終わりだってことだ。

 

こっちはまだシノビの使い方をマスターしてないってのに、よくもまぁ斬りかかるやつだ。

 

しかも向こうは何かこっちの出方を完全に見てるような目だ。

 

どうする?

 

俺は魔女とかウワサをいろはたちと一緒に戦ったことはあるけど、魔法少女相手に戦ったことがないからな…。

 

…?

 

そうだ、その手があったか!

 

そうと決まればこれで!

 

俺はあることを思い付いてすぐさまななかに向かって走る。

 

そしてななかも俺を迎え撃とうとしてるのか、抜いた刀を収め構えている。

 

あれは確か、居合だな。

 

だったら…!

 

「ふんっ!!」

 

「せいっ!」

 

俺が投げた数本のクナイを、一瞬の速さで刀を抜いて弾く。

 

そして俺は肉薄するように小刀で切りかかる。

 

「はぁ!!」

 

「…っ!」

 

俺の小刀とななかの刀が弾きあう。

 

何度も火花が散って、何度も金属音が聞えた。

 

だが流石に分が悪くなったのか、先ほどの鞘からもう一つ刀を抜く。

 

「散りなさい!!」

 

「うお!?」

 

俺は間一髪で避けて間合いを取って印を結ぶ。

 

「忍法 分身の術!」

 

『ブンシン忍法!!』

 

俺は分身してななかを囲いながら走る。

 

「くっ、分身、ですか…」

 

「悪いが、これで終わらせる!」

 

『忍法キリステ!!』

 

俺は分身を使って小刀をななかに向けて振るう。

 

しかし、ななかは落ち着いた様子で動じていない。

 

むしろ、何かをするかのように集中してるようだった。

 

「…白椿!」

 

瞬間、二つの刃が花びらが舞うかのように一閃し、俺を分身ごと切り裂いた。

 

ように見えた。

 

それを証明するように、俺も消えた。

 

「…!?」

 

分身もろとも俺が消えたことに流石に驚いたのか、少し忙しなく周りを見る。

 

するとキンッと、音が鳴り、ななかは思わず身構えながら振り返る。

 

「え…?」

 

ななかが見たのは地面に突き刺さったクナイとそれに寄り添うように倒れた一本のクナイ。

 

しかし、振り返った時がななかのミスだった。

 

「どこ見てるんだ?

俺はここだぞ?」

 

「しまっ!?」

 

ななかは慌てて振り返るが、それと同時に俺はななかを突き飛ばして仰向けになってしまう。

 

それに追い打ちをかけるようにクナイで、ななかの服の袖とスカートの足の間の部分に投げつける形で地面に縛り付けて身動きを取れなくさせる。

 

「…っ!」

 

「ここまでだ」

 

そう言って身動きの取れないななかに小刀を向ける。

 

ななかは少し悔しそうになっていたがすぐに頭を冷やして落ち着かせる。

 

「…参りました」

 

「…そうか。

じゃあクナイ取るからじっとしてろよ?」

 

ななかが降参したことを確認した俺は、地面に縫い付けていたクナイを抜き取って自由にさせる。

 

実は俺がやったのは、予め分身の術でななかを翻弄してる間に、影の中に入って身を潜めていた。

 

そして動揺してる隙を突いて地面に突き刺さってたクナイに向かってクナイを投げつけてぶつけさせた。

 

「まさか、私をここまで追い込むとは。

かこさんと一緒だったとは言え、魔女を倒したのその実力は頷けますね」

 

「全部思いつきだけどな。

じゃなきゃお前にすら勝てねぇよ。

それで、何でさっき手合わせしてきたんだ?」

 

「それは、あなたの実力を試したかったからです。

魔女を戦える実力、しかも魔法少女でもないのにその力、とても不思議に思いましてね。

改めて聞きますが、あなたは一体何者ですか?

見かけない顔ですが、何のためにこの街に?」

 

「えぇ…?」

 

何者って言われてもな…。

 

俺自体は普通の奴だとは思ってるけど、いやこの力を使ってる時点でもう普通じゃないか…。

 

でもこの力については本当にどう説明すべきか迷う。

 

…しょうがない、だったら正直に話せるところは話して、できないところはできないと言うか…。

 

「俺は、俺自身はただの人間だよ、少なくとも、そう思ってる。

けど、少なくとも、この力については俺も説明ができないし、信じてもらえないかもしれないから言うつもりはない。

でも、この街に来たのは幼馴染の妹を探すため、それだけだ」

 

「幼馴染みの妹さん、ですか?」

 

「あぁ、一応この街の交番でも確認したぞ?

けど迷子の連絡が来てなくてな。

それで、この街で何か魔女と似た奴がいるから、それに関係してるんじゃないかって、それでこの街の魔法少女と、その幼馴染みと一緒にこの街のウワサを探してるんだ。

今回は二手に別れた結果がこれなんだよ」

 

「…つまり、あなたは本当に人探しのためにこの街に来たと?

それでその一環でかこさんに接触したと、そう言うのですか?」

 

「あぁ。

元々この街の知識が欲しかったからな。

最初にかこのいた本屋に行ったんだよ」

 

「…」

 

ななかは何か考えるように目を閉じる。

 

「…なるほど、そういう事情ですか。

それならば是非、私たちと協力してもらっても良いですか?」

 

「え?」

 

「そのウワサとやらは私も存じませんが、私たちもまた、ある魔女を追ってます。

もしかしたら、そのウワサかその魔女に巻き込まれてる可能性も」

 

「良いのか?

俺は魔法少女じゃねぇし、むしろ男だ。

それに俺自身この力が使いこなせてないし、日によってどれに変身するのか変わるし。

それこそ次の日も同じかはたまた別のに変身できるのか、だ。

おまけにそれぞれで勝手も違う。

それでも良いのか?」

 

「構いません。

その時はその時です。

それに、先ほどのことであなたがむやみに人を傷付ける人ではないと理解しましたので」

 

「そうかよ。

そういうなら、俺も協力する。

なるべく足を引っ張らない程度には頑張るさ。

そっちも、ウワサについて調べるのに協力してくれるか?」

 

「えぇ、そうさせてもらいます。

では、かこさんをあまり待たせては行けませんでしたね。

行きましょう」

 

「あぁ」

 

そう言って俺たちはかこの店に行って、ウワサや都市伝説、この街の地図を買って調べた。

 

こうして、俺はななかたちと協力することになったのであった。

 

 



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