文月学園での新たな生活 (Argo(不定期更新))
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閑話
主要設定


 主要キャラ、世界観の設定です。


世界観

 

 SAOとバカテスが混じった感じ、基本的にバカテスの流れを中心にちょくちょくSAOを入れるかも?

 キリシノです。

明久の彼女は決まってません。

 もしかすると、姫路と島田はアンチ・ヘイトになるかもなのでタグは一応つけました。

 

 和人と詩乃はSAOでも普通に頭がいいのですが、ここではさらに強化されております。

木綿季、藍子、サチは生存してる設定です。

木綿季、藍子、詩乃はSAOに参加していた。

 

 和人ですが、SAOの『朝露の少女』でカーディナルの隙をついてユイが削除されるのを防ぐ為に彼女をアイテム化+データをキリト自身のナーヴギアに保存する場面が一つ、もう一つSAOの『マザーズ・ロザリオ』で、ユウキの為に《視聴覚双方向通信プローブ》という機械をメカトロニクスコースを一緒に受講している仲間と製作しました。

 このように和人は機械に強いのです。これを利用した場面が来るかもしれません。

なので、先に説明をここに置いておきます。

 

補足ですがオーディナル・スケールと劇場版の題名にもなっていますが、あくまで劇中のARゲームのタイトルのことです。

 

OSとは?・・・Ordinal Scaleの略語です。

 

蒼弓の戦士・・・SAOでの詩乃の二つ名。

瞬速の蒼黒・・・和人と詩乃のVRゲームでの通り名。ALOの空を全速力で飛んでいたらこの名がついた。

 

 

道具

 

ネクタイピン・・・菊岡が面白がってノリで作った総務省の技術の結晶。

SAO経験者と和人・詩乃の仲間という要素があり、和人たちが許可を出せば誰でも使える。

ダイヤルを数字、または色に合わせ特定の言葉を発すれば登録された機能が発動します。

追加でシステム登録可能。形は小さいが変幻自在!

 

和人ver.

形はダークリパルサーとエリュシデータを交差させた感じです。

 

0・・・発動キーは『展開』

アウェイクンとでも、普通にてんかいとでも読んでもらって構いません。

機能・・・フィールドの展開

 

1・・・発動キーは『ブースト』

機能・・・そのまんま、身体能力のブースト。

 

2・・・通常モード。ただのネクタイピン。

通常のつうをツー、twoとして考えただけ、深い意味はない。

 

3・・・発動キーは『来い!○○○○』

(○には武器の銘が入る)

武器実体化。武器がちょうど良いところに実体化する。重さは和人に合った重さで、でてくる。

機能・・・仮想世界のキリトの武器を現実世界で召喚する。護身用の武器。主にFFF団の武器破壊と撃退で活躍する。

自分が持っている。持っていた武器にのみ有効。

 

4・・・発動キーは『○○○○起動!』

(○にはスキル名が入る)

機能・・・隠密スキルや索敵スキルなどモロモロのスキルが使える。もし、隠密スキルを使えば景色と同化します。

 

5・・・????(未定)

機能・・・????(未定)

 

黒・・・発動キーは『リンク・スタート』

機能・・・キリトとしてのフル装備状態になる。召喚獣同様、右手の人差し指、中指を揃えて下におろすとメニューがでてくる。既定の項目をタップすれば。装備が変わるし、変えられる。OSの個人バージョンで考えると分かりやすいかもしれない。

 

詩乃ver.

 

0・・・発動キーは『展開』

アウェイクンとでも、普通にてんかいとでも読んでもらって構いません。

機能・・・フィールドの展開

 

1・・・発動キーは『ブースト』

機能・・・そのまんま、身体能力のブースト。

 

2・・・通常モード。ただのネクタイピン。

通常のつうをツー、twoとして考えただけ、深い意味はない。

 

3・・・発動キーは『来て!○○○○』

(○には武器の銘が入る)

武器実体化。武器が背中or手元に実体化する。重さは詩乃に合った重さででてくる。

機能・・・仮想世界のシノンの武器を現実世界で召喚する。護身用の武器。主にFFF団の武器破壊と撃退で活躍する。

自分が持っている、持っていた武器のみ有効。

 

4・・・発動キーは『○○○○起動!』

(○にはスキル名が入る)

機能・・・隠密スキルや索敵スキルなどモロモロのスキルが使える。もし、隠密スキルを使えば景色と同化します。

 

5・・・????(未定)

機能・・・????(未定)

 

蒼・・・発動キーは『リンク・スタート』

機能・・・シノンとしてのフル装備状態になる。召喚獣同様、右手の人差し指、中指を揃えて下におろすとメニューがでてくる。既定の項目をタップすれば。装備は変わるし、変えられる。OSの個人バージョンで考えると分かりやすいかもしれない。

 

 

共通項

 

ほとんど武器はFFF団対策で使用される。

防具もしっかり有効。現実世界のナイフやらなんやらは一切効かない。

OSの性能が高過ぎる個人バージョン。

まだまだ、機能追加可能である。

 

 

 

キャラクター(SAO側)

 

名前 桐ヶ谷和人(男) CV.松岡 禎丞さん

年齢 16(17)歳

成績 第2学年主席

好きなもの 詩乃、家族、ゲーム、友達、剣道

嫌いなもの FFF団、詩乃や友達を傷つける者

相違点 現実の身体能力強化。秀才→天才。

    詩乃が彼女。木綿季、藍子が家族。

    スポーツ万能。

性格 誰にでも優しい。天然ジゴロ。

   頭がいいにもかかわらず敬遠されること

   はない、それほど馴染みやすい。

 

補足的な?

 Dクラスの清水美晴に初めて会った時から《お兄ちゃん》と呼ばれ慕われている。不思議なことに誰も違和感を感じていない。

 

 

名前 朝田詩乃(女) CV.沢城みゆきさん

年齢 16(17)歳

成績 第2学年次席

好きなもの 和人、家族、ゲーム、友達、読書、

      北欧神話

嫌いなもの FFF団、和人や友達を傷つける者、黒星54式

相違点 SAOに参加した。

    SAOで和人と出会って自分の過去を全

    てさらけ出し、和人がそれを本当の意

    味で理解し、受け入れて結ばれた。

    そのためトラウマを早い段階で克服で

    きた。天才。 現実の身体能力強化。

    和人の家に住んでいる。

性格 クール。でも優しい。

   デレるときはデレる。

 

補足的な?

 劇場版SAO《オーディナル・スケール》で拡張現実(以下AR)のOSでは銃を握っても問題ないようでしたのでネクタイピンのヤツは矛盾点ではないはずです。

 

 

名前 桐ヶ谷直葉(女) CV.竹達彩奈さん

年齢 15(16)歳

成績 ???

好きなもの お兄ちゃん、家族、剣道、仲間、

      北欧神話、詩乃、ALOで飛ぶこと

嫌いなもの 理不尽な暴力、不正

相違点 あんまりない

性格 優しい。文武両道。正義感が強い。

 

補足的な?

 美晴と全然性格が違うのだが、ものすごく打ち解け合えた。ナンデデショウネ?

 

 

名前 桐ヶ谷(紺野)木綿季(女)CV.悠木碧さん

年齢 14(15)歳

成績 ???

好きなもの 家族、姉ちゃん、学校、仲間、

      食べること、ゲーム

嫌いなもの 家族を傷つける人

相違点 HIVから奇跡的に回復したこと。

性格 元気。優しい。アウトドア派

 

補足的な?

 和人のことは和兄か和人と呼んでいる。直葉は直葉かスグ姉、藍子は姉ちゃん。双子の妹。

 

 

名前 桐ヶ谷(紺野)藍子(女) CV.

年齢 14(15)歳

成績 ???

好きなもの 家族、木綿季、学校、ゲーム

嫌いなもの 家族を傷つける人

相違点 HIVから奇跡的に回復したこと。

性格 おとなしい。優しい。

 

補足的な?

 和人兄さんか、和人さんと呼んでいる。直葉のことは直葉姉さんか直葉さん。木綿季は木綿季。双子の姉。

 

 

 

キャラ紹介(バカテス)

 

 

名前 吉井明久(男) CV.下野紘さん

年齢 16(17)歳

成績 第2学年4席

好きなもの 家族、友人、ゲーム、料理をすること

嫌いなもの FFF団、理不尽な暴力

相違点 バカじゃない。天才。家が金持ち。

性格 温厚。誰にでも優しい。仲間を大事にする

 

補足的な?

 これからの展開次第で彼女が???

 

 

名前 霧島翔子(女) CV.磯村知美さん

年齢 16(17)歳

成績 第2学年3席

好きなもの 雄二 

嫌いなもの 雄二を傷つける人、FFF団

相違点 病んでない・・・・はず

性格 静か。おとなしい。

 

補足的な?

 女子人気ランキングで詩乃と同率1位。

 

 

名前 坂本雄二(男) CV.鈴木達央さん

年齢 16(17)歳

成績 本気出すとAクラス

好きなもの 翔子、家族、料理、ゲーム

嫌いなもの FFF団

相違点 ほぼない

性格 割りと優しい。

 

補足的な?

 神童の名は健在。下克上のためにわざとFクラス代表程度の成績に調節した。

 

 

名前 木下優子(女) CV.加藤英美里さん

年齢 16(17)歳

成績 Aクラス上位

好きなもの 読書、勉強、家族

嫌いなもの FFF団

相違点 料理は普通。秀吉に攻撃しない。

性格 怒るときは怒れるし、褒めるときは褒め

   れる。割りと素直。優しい。

 

補足的な?

 BLは目覚めてない。ゲームもする。

 

 

名前 木下秀吉(男) CV.加藤英美里さん

年齢 16(17)歳

成績 Aクラス下位

好きなもの 演技、友人、家族、ゲーム

嫌いなもの FFF団、暴力を振るう人

相違点 成績UP。

性格 一つのことに真っ直ぐ集中できる。

   ポーカーフェイスはお手のもの。

 

補足的な?

 雄二と明久に勉強を教えてもらい成績UP!その恩を雄二に返すため、下克上の手伝いをしている。

 

 

名前 工藤愛子(女) CV.南條愛乃さん

年齢 16(17)歳

成績 Aクラス中位(保体はトップレベル)

好きなもの 水泳、からかうこと、保健体育

嫌いなもの FFF団

相違点 ほぼない。

性格 元気。やんちゃ。

 

補足的な?

 原作とほぼ変わらない。と思う。

 

 

名前 土屋康太(男) CV.宮田幸季さん

年齢 16(17)歳

成績 Aクラス下位

好きなもの 女性、保健体育、写真撮影

嫌いなもの FFF団

相違点 FFF団の団員ではない。成績UP!

性格 むっつりスケベ。

 

補足的な?

 秀吉と共に、明久、雄二に勉強を教えてもらい成績UP!に成功。その恩を返すため雄二の下克上を手伝っている。




 まだ、設定に出てないキャラは本編に出たら紹介します。(というのは建前で疲れたから・・・)


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年の終わりに

 どうも!Argo改め、桜秋夜空です!
 この話、本当は2020の大晦日に上げたかった。


 桐ヶ谷家で初めて迎える大晦日が来た。実家の方にはもう顔を出したし、年末の大掃除は忙しい翠さん達に代わって私達が協力して執り行ったので今日は何もすることはない。

 

「どうしようかしら。課題をこんな日までするのも何だかなぁ・・・」

 

 ALOかGGO辺りにログインしようかとも思ったけれど生憎、皆は用事があるらしい。

 明日奈は親戚の集まりが。本人は見栄の張り合いばかりで面白くないと心底イヤそうに言っていたのが心に残っている。

 咲智、里香、珪子は家族で出掛けたりして過ごすのだとか。

 エギルは年末は予約が入って忙しい、とのこと。ま、ダイシーカフェの料理や飲み物は贔屓目無しで見ても美味しいモノばかりだからしょうがないのかもしれない。

 クラインは忘年会で上司のありがたーいお言葉を聞かなきゃなんねぇ、と愚痴っていた。

社会人特有の付き合いがあるのだろう。

 他の皆も各々の予定が詰まっていてログイン出来そうにないと言っていた。

 

「本は読み終わっちゃったし・・・」

 

 ベッドから立ち上がりグッと伸びをして、部屋をぐるりと見てみる。

 

「コーヒーでも淹れようかしら」

 

 炬燵台の上に空のまま置きっぱにしていたマグカップを手に取り、自室を出る。

 

「「あ・・・」」

 

 何の偶然か、丁度和人も廊下に出てきて鉢合わせる。談笑でもしながらリビングへ行きたいところだが、廊下は冷凍庫のように冷えきっていて寒い。なので、二人とも少し早足になりながら暖かいリビングを目指す。

 バタン!と少し勢い良くリビングに入り込むと炬燵台に顎を乗せただらけきった状態でTVを見る義妹たちが。

 

「ちょっと、お兄ちゃんも詩乃さんもゆっくり入ってきてよ~、冷気が来て寒いから!」

「そうそう~」「右に同じくです~」

「ご、ごめん。でも廊下寒いから早くリビングに入りたくてさ、な?詩乃」

「ええ。寒い寒いとは思ってたけど、まさか雪が降るほどだったなんて・・・。あ、私コーヒー淹れるけど、皆は飲み物いるかしら?」

「詩乃さん、手伝いましょうか?」

「別にいいわよ、直葉。気持ちだけもらっておくわ」

「んー、ではお言葉に甘えてあたしは緑茶をお願いします」

「じゃあ、俺はコーヒーで。」

「ボクと姉ちゃんはココアで」

「了解」

 

 ポットの再沸騰ボタンをポチッと押してお湯が沸くまでの間にマグカップを人数分とお茶の葉の用意と、ココアの粉とインスタントコーヒーを適量用意する。今の私に豆から挽く気力はないのだ。

 ピピッと機会音が鳴り、沸騰したことを知らせる。お湯をマグカップに注ぎ、スプーンでかき混ぜる。緑茶はもちろん急須で。

 流石に手で運びきれる量では無いので、お盆に乗せて、炬燵で溶けきっている皆の元へ向かう。

 

「はい、どーぞ」

「ありがとう、詩乃」

「ありがとうございます!」

「ありがと~!」

「詩乃さん、ありがとうございます」

 

 ヒョイヒョイと手が伸びてお盆の上から自分のカップを受け取る。空になったお盆を横によけて、和人の隣に座る。

 

「んー、暇だからリビングに来たけどパッとしないわね」

「じゃあ、ゲームでもするか?」

「ゲーム?」

「そう。」

 

 バラエティー番組を見てた三人もこっちに注目する。和人は腰を上げて、リビングを出る。どうやら、自室にあるらしい。戻って来るまでコーヒーでも飲んでおこう。

 

「あー、やっぱり廊下は寒いな」

 

 パタパタと急いでリビングに戻ってきた和人が呟く。うっ、冷気が・・・!直葉達の言う通りだわ。今度から気を付けましょう。

 

「さむっ、それで、ゲームって?」

「ああ。これ、皆見たことないか?」

 

 そう言って取り出したのは数年前に大ヒットし、品薄状態にもなったゲーム機だった。

 

「和人、それ・・・」

「ああ、懐かしいだろ?これ、発売当初に1番に並んで買ったんだ。そのあと、品薄状態になったりしたから、本当に早めに買っておいてラッキーだったよ」

 

 当時の事を話ながら和人はテキパキとテレビとコンセントにコードを繋ぎ、本体の液晶を規定の位置へセットする。

 

「かずにぃ~」

「なんだ?」

「プロコンいくつあるの?」

「2つだ。あとは本体備え付けのと同じコントローラーが2組。どのコントローラーが良いかは皆で話し合ってくれ。俺は何でもいいから」

 

 和人は木綿季の質問に答えながら液晶の両側からカシャカシャとコントローラーを引き抜き、ストラップと呼ばれる器具をつけたり、本体備え付けのプロコンのようにして使える器具へコントローラーを填めたりする。

 

「プロコン使いたい人いるかしら?」

「「はい!」」

 

 詩乃が聞くとビシッ!と直葉と木綿季が手を挙げる。

 

「じゃあ、直葉と木綿季がプロコンで。プロコンモドキはどうしましょ?」

「では、わたしが使ってもいいですか?」

 

 小さく手を掲げて藍子が希望する。

 

「ん。いいわよ。じゃあ私はこれね」

「おっ、決まったみたいだな。」

 

 炬燵から出てしなければならない作業が終わったのか、和人が隣に戻ってくる。

 

「で、和人兄さん。今から何のゲームをするんですか?」

「それはな・・・・」

 

 丁度ソフトが起動し終わり、スタート画面が表示される。そのソフトはかなり有名なタイトルのものだった。

 

「マリカだ!」

「久しぶりにするわね」

「そもそもビデオゲームが久しぶりだよ」

「お兄ちゃん持ってたのスマブラだけじゃなかったんだね」

「レースゲームは久しぶりな気がします」

 

 各々が自由に喋る。それに軽く相槌を打ちながら和人が操作を進める。

 

「まずは王道のレースでいいよな?」

 

 もちろん、異論はない。それを確認した和人が次の画面へ飛ぶ。速さは150ccで決定。

次は、キャラ選択だ。

 

「じゃ、俺はキングテレサで」 1P

「私はロゼッタにするわ」   2P

「あたしは緑ヨッシーにするね」3P

「ボクは黒ヘイホーで!」   4P

「わたしはしずえさんにします」5P

 

 殆ど一瞬で決まった。皆のを見ると中々個性的なキャラばかりだな、と心の中で思う。

 次は機体選びだ。

 

「安定を選ぶなら車か・・・」

「私はバギーにしとこ」

「あたしはヨッシーに似合うヤツで揃えよ」

「ボクはバイクにしておこっと」

「わたしはしずえさんに合うように揃えようかな」

 

 若干悩みつつもノーマルシリーズで揃えたので早く決まる。決定まで少し掛かりそうなので他の四人のカスタムを眺める。

 

和人・・・ゴツい竜のようなバイクにボタンを象ったタイヤ。仕上げのグライダーはピーチ姫の傘みたいなやつ。究極的アンバランスの体現のようなカスタムだった。てか、テレサ自体が浮いてるから更に奇妙さが増している。

直葉・・・カブトムシの車に大きくも小さくもない丁度良い感じのタイヤとグライダーはモモンガみたいなやつ。自然を感じる。というか、ヨッシーバイクじゃないのね?

木綿季・・・ノーマルバイクに大きい方の通常タイヤ。グライダーは花のヤツ。性能を見ながらしてたからきっと自信作なのだろう。

藍子・・・キャラ次第で模様が変わるバイクに何故かあった企業もののタイヤ。グライダーは紙飛行機。しずえとも合っていてこの中では1番可愛いと個人的に思う。

 

 皆が決定したので次の画面へ。今度はコース決めだ。

 

「したいコースはあるか?」

「私は特にないわ」

「んー。レインボーロードはあんまりしたくないな」

「えー、楽しいのに~!」

「兄さん。決まりそうにないし、モーモーカントリーのあるコースでいいんじゃないでしょうか?」

「ん、そうだな」

 

 和人自体にしたいコースはないのか、藍子の提案を快諾する。木綿季が少し残念そうな顔をしたので次はレインボーロードのあるコースにすると約束する。そうすれば、さっきまでの残念そうな表情は何処へやらやる気満々でコントローラーを握り直した。

 

 コースの簡単な紹介のダイジェストをすっ飛ばして、スタートの場面に切り替わり、ジュゲムが現れてカウントダウンを開始する。

 

 3

 2

 1

 

 2のカウントに合わせてブレーキを踏み込む。スタートダッシュは大成功。一気に前へ躍り出る。

 コースは覚えていないから1ラップ目は様子見に徹する。2ラップ目からはジャンプ台や、グライダーが開ける方へそれて出来るだけトップと距離を詰める。

 ちなみに、一位は木綿季だ。アイテムボックスを獲得しながら皆の位置を小マップで軽く確認していると横すれすれを青こうらが通過する。危なかった・・・。

 ヒヤリとしたものを感じつつ、爆破に巻き込まれた二人を追い越してアイテムスロットを確認すると最強アイテムが。

 

「みんな、このステージ。私がもらったわ」

「「へ?」」

 

 反応したのは上位の木綿季と和人だけだったが二人は私のアイテムを確認して絶望の表情を浮かべる。

 

「さ、三連赤こうらだと!」

「これじゃあ、迂闊に前に出れないよ!」

 

 それに対して二人のアイテムはバナナや緑こうら、コインばかり。

 

「くっ!この緑こうらに賭ける!」

 

 シュパ!とこうらを私に投げるが追尾性能がない緑こうらを避けるのなどワケがない。

 すいっと横にずれて、お返しに赤こうらを後ろへ投げる。私はゴールしたので置き土産と嫌がらせだ。

 

「あぶなっ!」

「目の前にバナナ落ちてなかったらクラッシュしてたぞ!」

「木綿季は兎も角、和人は打ち消されたんだから良いじゃない。」

 

 和人は少し不満そうだが、その通りなので何も言えないようだ。ラストがゴールするのを見届けて1コース目の順位が表示される。

 

1位 ロゼッタ(詩乃)   2P

2位 黒ヘイホー(木綿季) 4P

3位 リンク(NPC)

4位 キングテレサ(和人) 1P

11位 しずえ(藍子)    5P

12位 緑ヨッシー(直葉)   3P

 

 1ステージ目の結果はこの通りだ。残りのステージは割愛するが、2ステージ目の途中からコツを掴んだ藍子と直葉が追い上げを見せたり、木綿季はバナナの皮に引っ掛かってから連続でNPCや皆が適当に投げたアイテムを受けるという悲しい事件が起きたりと散々だった。

 ちなみに、最終結果はコチラ↓

 

1位 ロゼッタ(詩乃)   2P

2位 キングテレサ(和人) 1P

3位 むらびと(NPC)

4位 黒ヘイホー(木綿季) 4P

5位 リンク(NPC)

6位 緑ヨッシー(直葉)  3P

7位 しずえ(藍子)    5P

8位 キノピコ(NPC)

9位 デイジー(NPC)

10位 ワリオ(NPC)

11位 メタルマリオ(NPC)

12位 ワルイージ(NPC)

 

 和人はギリギリ詩乃には及ばず優勝を逃した。木綿季はとあるステージで起きたフルボッコの悲劇で順位を落とす結果に。直葉と藍子は大躍進。見事最下位を抜け出した。

 

「ふぅ~。私の勝ち、ね」

「ぐっ!ラストのコースで詩乃に勝ててれば!」

「うぅ~、なんでボクばっかりアイテムの被害に・・・。バナナの皮を避けたタイミングで青こうらが通過してそれに捲き込まれるなんてどんな確率なのさ・・・」

「やったー!藍子ちゃんに勝てた!」

「ぐぬぬ・・・、兄さん!もう一度です!」

「おう!」

 

 いそいそともう一度レースを始める為に和人がコントローラーを操作する。

 カーテンの隙間から見える外の世界は真っ白で見てるだけでも凍えてしまいそうだ。

 

(でも、ま)

 

 窓から視線を戻し、わちゃわちゃとカスタムを変えながら楽しそうにする皆を見る。

 

 こんな寒さの日でも凍えずに済むのは、頬が弛むのを自覚しながらも、それを正せないのはきっと──

 

(ここが温かいからかしらね)

 

─らしくないな。そんな事を思いながら次の年へ想像を膨らませる。まぁ、なんにせよ。

 この温もりが来年もずっと続けばいい。

 

「よし!やるぞ!」

「「「おーーー!!!」」」

「負けないわよ!」

 

 やる気に満ち溢れた家族を見ながら、詩乃は改めてコントローラーを握るのであった。




 ご拝読、ありがとうございました!
 相変わらず拙作&遅筆ではありますが、今年もよろしくお願いいたします!


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閑話.ある生徒のはなし

 どうも、私です。例のごとく期間が空きましたがそれはおいといて、前回、ブクマやお気に入り登録をしてくださった皆さん、ありがとうございます!私の励みになります!


Side.S川

 

──Aクラスとの試召戦争に負けたあの日、俺たちは変わった。坂本たちに見限られたことも、島田に散々文句を言われたのもどうでも良かった。それを上回る衝撃でそれどころではなかったから。

 ・・・いや、嘘だ。島田は置いといて、坂本たちに見限られたのは正直ヘコんだ。自分達が原因だったとしても、1年生からの腐れ縁だったし。アイツらがいい奴だってのも知ってたから。

 だから、尚更ヘコんだんだ。

 そんないい奴らにすら見限られたから。

 それがわかった直後にいつものように騒ぐことなんてできなかった。

 せめて祝おうと思った。どうしようもない自分達に不可能とされた下克上を─流石にAクラスは失敗したが─成功させ、短い間夢を見せてくれた彼らがのしあがって、相応しい場に立つのだからと。

 

 

 そう思わせたのは、嫉妬に任せ、暴走したときに知った坂本の過去の話が大きい。

その話を思い出すと、自分達がどうしようもなく愚かに思えて祝うことすらできず部屋の隅で泣くしかできなかった。祝いたいのに体は動かなかった。そんなとき、奴は現れた。

 

「・・・うおっ、負のオーラとまるで我が子にめでたいことがあったかのようなオーラが混ざっててなんとも言えない。」

 

 的確に俺達の雰囲気を表現した声が聞こえ、俯けていた顔を上げると数週間前に転入してきた男が立っていた。

 

「う、うっ!っ!な、なんだ?桐ヶ谷か?」

「そうだ、それにしてもどうしたんだ?」

 

 桐ヶ谷の目にはどうにも俺たちが異質に写ったようだった。それも仕方がなかったと今では思える。2年に進級してから俺たちは暴走ばかりしていてそんな姿ばかりを見せられていた桐ヶ谷からすれば気味が悪いのもいいところだろう。

 少し引いてはいたが、桐ヶ谷は物怖じせずに話を聞こうとしてくれた。利用価値とかも考えていたかもしれない、それでも俺からすれば確かに、嬉しかったんだ。

 

「ずっ、そこは坂本に聞けば半分は分かる。もう半分は自分達が寂しい奴らだな、と思うと目から水が止まらなくて」

 

 とある団員がそう答えたが、それはFFF団の団員の全ての心の内を代弁していた。

 

「そうか、それなら俺がお前らの評判を上げて女子と仲良くなる方法を教えようか?」

 

 長らくそれが願いだったFFF団からすれば願ってもないことだった。だが、俺はそれよりもこれが変わるきっかけになると思った。

 

「なにっ!?本当か!?」「俺たちもお前らのようにリア充になれるのか!?」

 

 他のメンバーも同じ想いだったのか、桐ヶ谷の話に勢いよく食いついた。

・・・・・・いや、アイツらのことだからただ女子と仲良くなれる方法ってところ食いついただけという線も考えられるか。

 そんなことをポツポツと考えていると桐ヶ谷は苦笑いしながら先を続けた。

 

「ああ。だがお前ら次第だ。俺が言う方法は地道な好感度上げ。でも確実ではある。」

「何でも良い。やってやるぜ!」「独り身の俺達に失うものはなにもない!」

 

 メンバーは見るからに暗い雰囲気を捨て去り、立ち上がった。俺ももちろん立ち上がって意気込む。少々身構える俺たちを余所に桐ヶ谷が出した案は拍子抜けするほど当たり前であるべきことだった。

 

「簡単だ。お前らは人に対して敬意をもて、そして誠実でいろ。正直、嫉妬や私怨で動くお前らは見苦しかった。そのエネルギーを周囲のために使うことで今の評価からは確実に上がる」

「た、確かに。俺たちは一方的に感情を押し付けていた」「あんなことをしていれば普通は嫌われて当然だよな・・・」

 

 普通は当たり前過ぎて意識することすら無くなった考えだった。俺たちは果たして、FFF団として活動していたとき、カップルが相応の努力をして結ばれたということを1度でも考えたことがあっただろうか?その苦労を少しでも理解しようとしただろうか?

 坂本の話だって知ろうとして知ったわけではなくて、偶然耳にする機会があってようやく知れただけだった。

 

『俺はなにをしていたのだろうか?

 何がしたかったんだろうか?

 これからどう過ごせばいいのだろうか?』

 

 ぐるぐるとそんなことが頭の中をよぎる。

 それでも、少しずつ、自分なりに整理をしていく。解るように言葉を噛み砕く。

・・・最悪な俺たちを桐ヶ谷は見捨てずに気にかけてくれた。桐ヶ谷がどうしてここまでしてくれたのかは分からないが、俺たちに話をする間、真剣な表情を1度も崩さなかった。

多分、こういうことなのだと思う。

 下へ向けていた顔を正面へ戻す。見慣れた黒いローブを着た仲間がそこにいた。何に促されるわけでもなく、自然と頷き合う。

 バサリと一斉にローブを脱いだ。団長として、全体に声をかける。

 

「よし、お前ら!これからは人の為に動くんだ!」

「そうだな!今までの迷惑分も俺達の行動で払っていくぞ!」

『うおおおおーーー!!!』

 

 

 

─ ̄─_─ ̄─ ̄

 

 

 

 坂本たちがクラスを出たあと俺が代表となった。桐ヶ谷が言ったことを基にボランティアなどに積極的に参加したり、授業を真面目に受けたりした。

 最初は気味悪がられたし、怪しまれたし、授業についていけなかったが、徐々に変わっていった。やっと、人並みになれたのだ。

・・・・・・とはいっても、変われない奴(島田)もいた。今度は俺達が変えられるだろうか、間違ってることを理不尽な言葉でなく、相手に馴染むような言葉で伝えられるだろうか。

 

「今度は間違えねぇ!」

「団長!行こうぜ!」

「おう!」




 彼らはもう大丈夫。
初めて使う機能があるので、変だったら教えてもらえると有難いです。


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規格外の転入生
二人は学園に転入する


 どうも、初めまして。駄文ですが見てもらえると嬉しいです。よろしくお願いします!


 あの地獄のデスゲーム、ソード・アート・オンライン───通称SAOをクリアしてから4ヶ月が経った。

途中、レクトの重役であり、アルヴ・ヘイム・オンライン──通称ALOの運営責任者、須郷伸之のSAO生還者(サバイバー)300人あまりを利用した悪魔の実験に囚われたアスナを俺の相棒兼恋人である詩乃─アバター名はシノン─、リーファこと義妹の直葉で救出したりなどしてようやく本当の意味でのゲームクリアが成し遂げられた。

 SAOでの仲間+直葉でオフ会兼ゲームクリアのパーティー+木綿季、藍子の回復祝いをしたときは思わず泣いてしまったのはいい思いでだろう。

無論、楽しいことばかりでは無かった。SAOで護れなかったサチ(サチはホームを買うために第一層に降りていたので生きている)を除いた月夜の黒猫団のお墓参り、定期的なSAOの事情聴取、その他 etc.

 それらを乗り越え、今ここに立っていられるのはひとえに仲間と家族、恋人のお蔭だと断言できる。

SAOという非日常を過ごし現実世界(リアル)に戻った後の新しい日常は非常に新鮮で何物にも替えることなどできない。

 SAO事件前後の違いもできた、詩乃と木綿季と藍子が桐ヶ谷家に住むことになったことだ。

詩乃はあの事件の後に一人暮らしは心配という母親と祖父母の懸念から。

木綿季と藍子は後天性免疫不全症候群により早期に両親を無くしていたが、親族たちはこの病気への理解を持っておらず二人を気味悪がり、親権を手放したためSAO内において面識のあった(というかスゴくなつかれていた)キリトこと和人の家の桐ヶ谷家において養子縁組として迎え入れることにした、これには直葉も大喜びで『お姉ちゃんと妹ができた!』と家の中でジャンプしたり、それを窘める和人の口許もしっかり緩んでいた。

 

 

 しかし、だ。その間に菊岡に借りた恩は数知れない。SAOの後に詩乃と仲間の病院巡りと黒猫団のお墓参り、対価としてSAOの事情聴取はあったがそれでは埋め合わせができないほどなのだ、そのため内心どんな依頼が来るかビクビクしている。

 今日は、その依頼の話で銀座のいかにも高そうな喫茶店で詩乃と一緒にお呼びがかかってる。

 

「やあ、よく来たねキリト君、シノン君」

「菊岡さん、こっちでプレイヤーネームを呼ぶのは止めてくれ。それで、今日は何の用なんだ?」

「ああ、そうだね。では単刀直入に言おう、キリト君とシノン君にはSAO生還者支援学校には入らず、文月学園に編入および入学してもらう」

「・・・は?しかも、文月学園?」

「そうだよ」

「あの、時間内問題数無制限でテストの点数が試験召喚獣の力になるって言う?」 

「そう、ちなみにこれは決定事項だ。」

「拒否権はないってことか」

「そういうことだね」

「一般生徒との違いは?」

「今のところ制服くらいだね、一般的には女子の冬服は男子と同じ黒に金のラインが入ったブレザーとワイシャツ、赤いスカートに赤いネクタイ、夏服は半袖のワイシャツに赤いネクタイと赤いスカート。男子の冬服は女子と同じブレザーとワイシャツ、青いスラックスと青いネクタイ、夏服は半袖のワイシャツ、青いスラックスと青いネクタイ。男女共に頭髪は基本自由。」

「・・・・続けてくれ」

「キリト君たちはまず冬服だが、男女揃って青みがかったワイシャツ、生還者支援学校と同じブレザー、深紅のネクタイ、黒のスカートに黒のスラックス。夏服は男女共に青みがかった半袖のワイシャツ、深紅のネクタイ、黒のスカート、黒のスラックス。ネクタイピンはそれぞれの好きなように特注したまえ、頭髪は基本自由。クラスは君たちの実力次第。でも、権限は君たちが高いよ。ちなみに教材、制服代は全額政府が負担することになってるよ」

「ネクタイピンが特注ってなんなのよ・・・」

「それは一旦置いとこう。んで、何をすればいいんだ?」

「何も、ただこの学校に通ってもらい定期的に試験召喚戦争(しけんしょうかんせんそう)の感想を言ってもらうだけ」

「狙いはシステムってか?」

「いいや、きちんとこのシステムで成績は上がるのか?というのを側で見てもらうだけだよ。」

「・・・・分かった。もう帰っていいか?」

「構わないよ。お疲れ様。あ、そうそう。転入は一ヶ月後その間にできるだけ勉強しときなよ、あの学園では成績が全てだからね。といっても中学生の頃隠れた天才と言われた君とシノン君が成績に困るとは思えないが」

「まあ、な。せいぜい努力するさ。な、詩乃」

「ええ」

 

 この会談の後、学園の方針を詳細に調べ、詩乃に話をしたところ『それなら勉強するに越したことはない』と、すぐさま勉強会が行われた。

自分で言うのもなんだが俺達は基礎学力が高い、なのであまり心配はいらなかったが、一応勉強をすることにした。基本問題を解きまくるという形を半月行い、残りの半月は応用問題をこれまたひたすら解きまくる、という勉強生活を送り編入試験では見事Aクラスと同等かそれ以上の成果を挙げることができた。

 

 

 

 

 そんなこんなで、一ヶ月後の今日の全校集会で学園長による説明および、俺たちの自己紹介が行われる。

 

「アンタたち、SAOは知っているだろう?この二人はその生還者さ。それと、勉強の加減を間違えて成績は化け物さね。クラスはAクラスに入ることになってる。

以上、アタシからの説明は終わり、次は二人の自己紹介さね。拍手は後回しにするように」

 

 ステージに上がり、詩乃から自己紹介を始める

 

「朝田詩乃です。よろしくお願いします」

「桐ヶ谷和人だ、よろしく。詩乃は俺の彼女だ傷つけたらただじゃおかないからな」ニコ

 

パチパチという拍手に乗って「わ、イケメン!」「可愛い!」「笑ってるのに目が笑ってない!?」「美形は帰れ!」「異端者には死を!!」などの声が聞こえてくる。最後の方は二年Fクラスが言ったようだ。

・・・・・・物騒だな。

 

「これにて全校集会を終了する。各クラス速やかに退場するさね」

 

 この後はAクラスに行かなきゃだよな。よし、それじゃあ

 

「行こうか、詩乃」

「全校生徒の前でよくも恥ずかしげもなく言ったわね。」

「事実だろう?」

「そうだけど・・・、そこまで堂々とされると照れてる私がなんだかバカらしくなるわね」

「俺はそんな詩乃も好きだけどな、それに詩乃はバカなんかじゃないさ」

「~~~っ!////。はぁ、もういいわ速く行きましょ」

 

 そんなこんなで話をしているうちにAクラスに到着した。Aクラス担任で、第二学年主任の高橋教諭が皆に説明をしている。

 

「───です。それでは、桐ヶ谷君、朝田さん入ってください」

「「はい」」

「先ほど、自己紹介しましたが、改めまして。桐ヶ谷和人だ。これからよろしく頼む」

「朝田詩乃です。よろしくお願いします」

パチパチパチパチ

「よろしくー!」「やっぱり美男美女だわ」

「皆さん静かに、学年主席は桐ヶ谷君、学年次席は朝田さんです。つまり、Aクラス代表は桐ヶ谷君になります。それでは授業を『プルルル』はい、高橋です。・・・分かりました。Fクラスが試召戦争を始めたようなので一時間目は自習とします。終わった人は自由に過ごしてください。」

『はい』

「はぁ~!つっかれたーー!」

「そうね、にしてもまだ進級してすぐでしょう?何を考えてるのかしら?」

「・・・・・・Aクラスへの下克上。」

「へー、そうなのか。んで、君はだれだ?」

「・・・・・・霧島翔子。」

「ちょっと、翔子!突然現れたらビックリ・・・・してなかったわね。木下優子よ。よろしく、桐ヶ谷君、朝田さん」

「大抵の人はビックリするんだけどなー!ぼくの名前は工藤愛子だよ。よろしく、二人とも!良ければなんでビックリしなかったか教えてくれない?」

「ああ、よろしく」

「よろしくね」

「なんでビックリしなかったかというと気配かな?」

「まあ、普通の人よりは気配を殺せてたけど私達を欺くにはまだまだね」

「・・・・・・それも、SAOの成果?」

「翔子!」

「ああ、いいんだ。まあ、その通りだよ。霧島さん、あの世界ではスキルだけじゃ足りない時はごまんとあったそれを補うためにプレイヤー個人個人の技術は必須だったんだよ」

「例えば、隠れているモンスターがいないかどうか、とかね」

「・・・・・・そう。話を変える。桐ヶ谷は点数何点なの?」

「そうそう!それ僕も気になってたんだよね。あ、横からごめんね僕の名前は吉井明久。こんな感じだけど一応学年第四席なんだよ」

「総合点でいいか?詳しい点数は分からんが5000点はいってると思うぞ」

「主席だから、すごいとは思ってたけどまさかここまでとはなぁ。」

「ボク的には、召喚獣の装備が気になるなぁ~。」

「確かに、装備は大事だものね」

「・・・・でも、先生がいないとフィールドは展開できない」

「そうなんだよなぁ、残念」

「できるわよ」

「「「「「(・・・・・・)はい?」」」」」

「和人、なんでアンタまで不思議そうな顔してるのよ」

「いや、だって知らないし」

「菊岡さんがふざけたメール寄越して来たでしょ?あれの一番下に書いてあったのよ」

「マジか、あまりにふざけた内容だったから途中で読むのめんどくさくなってやめたんだよなぁ。で、どうすればいいんだ?」

「特注のネクタイピン」

「これか?」

「そう」

 

 形以外は極普通のネクタイピンだ。俺のはダークリパルサーとエリュシデータを交差させたようなの形、詩乃のは青い弓と狙撃銃をこれまた交差させたような形だ。

 

「このネクタイピンの裏を見てみなさい」

「・・・・。何、このダイヤル」

「着けるときに気づきなさいよ」

「寝ぼけてたからムリ」

「はあ・・・・、とりあえず。このダイヤルを2から0に合わせて」

「合わせて・・・・?」

「『展開』って言ってみなさい」

「分かった。『展開!!』」

 

 その瞬間俺を中心として、5×5×5メートルの立方体が現れた。半透明の壁にはXやらYやらが映っている、どうやら教科は数学のようだ。

 

『おお~!』

「・・・・・・凄い」

「よ~し、召喚獣の召喚は僕達に一日の長がある。桐ヶ谷君、僕を真似してみて《サモン!》」

「おう、サモン!」

 

 すると、幾何学的模様の魔方陣が足下に現れる。ぽむん!という可愛らしい音と共に現れたのは俺をちっちゃくデフォルメしたらこうなるだろうなという体に少し尖った耳、そして黒い犬のようなふさふさしたしっぽが生えていた。

 

「ほう。これが召喚獣か、どれどれ装備は・・・・」

 

SAOの装備そのものだった。

 

「和人、これって。」

「ああ、菊岡さんだな」

「桐ヶ谷君もしかして?」

「これは俺がSAOで装備していた物だ」

 

 説明しながら背中から剣を抜く。

 

「右手に持っている黒い剣が《エリュシデータ》、左手に持っている透き通るような水色の剣が《ダークリパルサー》二本とも俺の愛剣だよ。この黒いコートの名前は《コート・オブ・ダークシェード》傍から見れば薄い防具だが、俺にとっては金属防具よりよほどいい。」

 

 剣を鞘に納め、試しに右の人差し指と中指を揃え下ろしてみる。しゃりんという鈴の音のような音がしてメニューが現れる。

再現度高過ぎだろ。俺の方にも見えるし。変わった項目は無いかと見ているとフォームチェンジという欄があったので押してみるするとどうだろう。青白い光に包まれた召喚獣は黒い羽を生やしていた。

 

「和人、これALOの装備よね」

「ああ、フォームチェンジを押したらこうなった。詩乃も召喚してみたらどうだ?」

「そうね、サモン」

 

 現れた詩乃の召喚獣は詩乃をデフォルメし、猫のようなしっぽをつけていた。(ホロウ・フラグメントの装備で考えてください)

 

「私のもそのまま、和人フォームチェンジの欄はどこにあったの?」

「ああ、それはだな────だよ」

「オーケー」

 

 青白い光に包まれる。そこにいたのはALOシノンの装備に身を包んだ召喚獣だった。ご丁寧に猫妖精《ケットシー》の特徴であるネコミミもつけてある。髪の色は水色、しっぽも同色。

 

「おお!まんまシノンじゃないか!」

「それを言うなら和人もキリトじゃない!」

「わー!待った待った!」

「「なに?吉井(君)」」

「今、キリトとシノンっていった?」

「「言ったけど(が)、ってああ!」」

「君たちがあの瞬速の蒼黒?僕もゲームが好きでねALOしてるんだよ。」

「ど、どうする?詩乃」コソコソ

「吉井君確信してるから、隠しても無駄よ。にしても、こんなに恥ずかしい二つ名誰がつけたんだか」コソコソ

「・・・・・・待って、吉井。それ以上に黒の剣士と蒼弓の戦士の名前と同じ」

「「・・・っ!!」」ビクッ

((なぜその二つ名を!?))

「・・・・・・これを読んだ」

((SAO事件記録全集!?))

「・・・・・・曰く黒の剣士はこう言ったそうだ。《俺が生きているうちはパーティーメンバーは殺させやしない!》と」

「~~~~っ!////」

「そういえば言ってたわねそんなキザなセリフ」

「・・・・・・曰く蒼弓の戦士はこう言ったそうだ。《相手の手数が多いのなら、それを全て矢で弾き返せばいいのよ》と」

「~~~~~っ!////」

「あ~、あれは凄かった。まさに百発百中だったな」

「霧島さん、ナチュラルに心読まないで。ナチュラルすぎてなんの違和感もなく会話してたわ」 

「・・・・・・二人とも認めた」

「「あっ!」」

 

 ゆっくり後ろを振り返る、そこには・・・。

ものすごくいい笑顔をした吉井を筆頭とするクラスメイトがいた。

 

『『『さあ、お話(質問)を始めよう』』』

「うわぁぁぁあぁぁああ!!」

「いやぁぁぁあぁぁああ!!」

 

この後、衝撃的な放送が流れるまで問い詰められるのであった。




 こんな調子で続けます。誤字、脱字の訂正はいつでもwelcomeです。よろしくお願いします。
 


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・・・・ゑ?

 どうも、こんにちは作者です。お気に入り等してくださってありがとうございます。
 駄文ですが、楽しんでもらえると幸いです。


 それは、吉井と霧島さんの華麗な誘導?により。質問攻めになってしまった俺と詩乃が困り果てていたときのことだった。

 

ピーンポーンパーンポーン!

『連絡致します。船越先生、船越先生。吉井明久君がAクラス教室で待っています。

生徒と教師の垣根を越えた、男と女の大事な話があるそうです。』

 

『「・・・・・・ゑ?」』

 

 クラス中の視線が吉井に集まる。えが微妙に違う気がするのは気のせいだろうか?

当の本人はというと、放送の内容が飲み込めていないようだった。放送は続く・・・

 

『繰り返します。船越先生。吉井明久君がAクラス教室で待っています。

生徒と教師の垣根を越えた、男と女の大事な話があるそうです、彼の為に早く行ってあげてください』

 

 沈黙が教室を包み込む。

 

「・・・・・・す」

『す?』

「須川ぁぁああああああっっ!」

 

 耳がキーンとするほどの絶叫。

 

「どうしよう!?何てことしてくれたんだ彼は!」

「ど、どうしたんだ?吉井。船越先生ってそんなに怖い先生なのか?」

「そうね、ある意味怖いかも。」

「具体的にいうと?」

「船越先生(45歳独身)は仕事に集中し、婚期を逃して、ついに生徒たちに単位を盾に交際を迫るようになった恐ろしい先生だよ!須川君は今の放送をした生徒だよ。一年の時同じクラスだったんだ」ガタガタガタガタ

「なるほど!それは確かに恐ろしい!」

 

 その時、廊下から《ダダダダダタダっ!》

という足音が聞こえてきた。吉井は震え上がり急いでプライベートルームへ避難する。

が、時既に遅し。廊下を全力疾走してきた何者かが《ダンッ!》という音とともに扉を勢いよく開く。

 

「はぁっ!はあっ!よ、吉井君!話って、なにかしら!?」

「ひ、ひいぃっ!」

「来てもらって申し訳ありませんが。先生、手違いなんです」

「・・・・・・・はい?貴女は?」

「朝田詩乃です。本当に先生に用事があるのは吉井君ではなく、放送した須川君です。

 彼は先生を呼び出すのを恥ずかしがって、焦った結果、吉井君の名前を出してしまったのです。

今、私の彼氏でAクラス代表の桐ヶ谷和人が放送室に行き彼を説得しています。

たぶん、もう少しで・・・・」

 

ピーンポーンパーンポーン

『先程の連絡、訂正致します。船越先生、須川君が放送室で先生を待っています。

今すぐ、婚姻届と印鑑、消しゴムでは消せないペンを持ってここに来てください。

それと、緊張のあまり、彼は失神してしまってますのであとはご自由してください。

これで連絡を終わります』

 

『「「「・・・・・」」」』シーン

「ありがとう!朝田さん!桐ヶ谷君!

そして、待っててね須川くーん!」ダダッ!

 

『ガタッ!ゴトン!

「・・・・うわぁぁあああ!」「・・・フフフフフッ!さあ、須川くん。この婚姻届にサインしてね」「た、たすけt・・・」』ブツッ

 

 この音声を最後にスピーカーからはなにも聞こえなくなった。

 

「成功、ね」

「ああ」

 

 コツンと詩乃と拳を合わせる。

 

「桐ヶ谷君、どうやったのよ?」

「ん?ああ、最初の放送から船越先生が来るまでの間にネクタイピンの機能が他に無いかを詩乃に聞いて、案の定あったからそれを活用した」

「よく、朝田さんは合わせられたね」

「いつも誰かさんに無茶ぶりばかりされてるからね。慣れたものよ」

「ははは、感謝してます。」

「桐ヶ谷君!朝田さんっ!本当にありがとう!にしても、この放送は誰が仕組んだんだろう?須川君はFクラスで今は試召戦争の最中、それなら船越先生を戦場から遠ざける為にあんな放送をしたんだろうけど・・・」

「・・・・・・雄二はそんなことは指示しない」

「「雄二?」」

「Fクラス代表の坂本雄二、僕の悪友だよ。今でこそ僕は学年4席なんて立場だけど、去年まではFクラスくらいの成績だったんだ。そんな僕の勉強を手伝ってくれたりもしたんだ。見た目は不良っぽいけどいいヤツだよ、彼は」

「へぇ・・・・!霧島さんは坂本のこと呼び捨てにしてるけど仲がいいのか?」

「・・・・・・私と雄二は幼馴染み」

『ええっ!?』

「・・・・・・吉井は知ってたでしょう?」

「ならなんで吉井君まで驚いてるのよ?」

「つられたから?」

「何故に疑問形・・・・」

「と、とりあえず話を戻そうよ!」

「そうだな、今の話を聞く限りだと、坂本が吉井を陥れたとは考えられない・・・。

なあ、今Fクラスにいるヤツでこいつが指示したんじゃないかという心当たりないか?」

「あるよ」

「それは誰だ?」

「雄二達を除くFクラス生徒全員」

「そうか、・・・・は?」

「だから、全員」

「・・・・・」

「・・・・・お前なにしたんだよ?」

「なにもしてないんだよね、これが。強いて言うなら僕がAクラスに入ったからかな?」

「なによ、それ」

「ぼくも転校してきて驚いたんだけど、Fクラスには坂本くん、木下くん、土屋くんを除く全員がFFF団っていう組織に入ってるんだ。FFF団の会長はさっき放送した須川くん。この組織の目的はリア充を別れさせること、そのためには手段は選ばない。FFF団は嫉妬と私怨と独り身の男子で構成されてるんだ。

合言葉は『男とは愛を捨て、哀に生きる者!』だって」

「・・・・・・私と雄二が喋っているときに黒いフードとマントを羽織って斧や鎌を持って本気で雄二に襲いかかりに来る。

雄二が返り討ちにしてもゴキ○リ並みの生命力ですぐに回復してキリがない」

「桐ヶ谷君は全校集会で付き合ってます宣言したから気をつけて。転校生だろうと何だろうと男なら躊躇なく襲ってくるから」

「んー、了解した」

「和人・・・・」

「大丈夫って!これでもジム通いして、剣道も少しずつ再開してるんだ。それに、いざとなればこれがあるだろ?」

 

そう言いながらネクタイピンを指差す。

 

「確かにそうだけど。私はあなたに傷ついてほしくない。それだけは覚えていてよね」

「ああ・・・・!ありがとな、詩乃」ニコ

「~~~~////。その笑顔は反則よ・・・・!」ボソッ

「ん?なにか言ったか?」

「なーんにも!」

 

詩乃は本当に優しいなぁ。

 

「・・・・二人は本当に仲がいいね。正直、羨ましいよ」

「・・・・・・私もいつかきっと雄二と・・・」

「ブラックコーヒーが飲みたくなったわね。淹れようかしら」

「あ、ぼくにも頼むよ♪」

「いいわよ」

 

 こんな話をしつつ、お茶をしていると・・・

『平賀源二、戦死!よって勝者Fクラス。』

という放送が流れてきた。その直後には、

『っしゃぁぁあああぁあ!!』

という歓喜の声と、

『うわぁぁあああ』

という悲嘆の声が聞こえた

 

「勝負あったようだな、予想通り坂本率いるFクラスの勝利。勝利したクラスが得られるものといえば・・・・」

「教室ね。でも、両クラス代表の合意の上でなら教室交換をしない代わりになにか一つ言うことを聞いてもらうっていうのも有り」

「雄二なら後者を取るだろうね、ここで教室交換なんてしなくとも勝ったことで雄二への信頼は確実になった、上位クラスに勝つというのはそれほど大きい事だしね」

「・・・・・・目標である私たちAクラスに勝つには指揮や作戦をしっかり実行してもらわなければいくら雄二でも勝てない。それは、雄二の本意じゃない」

「それを防ぐ為になおさら教室交換はしないでしょうね」

「それに、手札は多いに越したことはないからな。士気を上げることができ、なおかつ活用できる手段を増やす。まさに一石二鳥だ」

 

 今回の試召戦争の狙いなどについて考察し合う。指揮とか作戦とか聞くとアスナ思い出すんだよなぁ。SAOでは攻略会議で何度ももめて、デュエルで決めたりもしたな・・・・。

懐かしいなぁ・・・・。

 そんなことを考えているとドアからノックが聞こえてきた。

 

「どうぞ」

「失礼する。Fクラス代表の坂本雄二だ、試召戦争中にうちのクラスメイトがAクラスに迷惑をかけてしまい、申し訳なかった。

今後、このような事が起こらないように努める。明久、本当に申し訳ない。」

「・・・・俺からも、申し訳ない」

「ワシからもすまぬ」

「Aクラス自体にはほぼ迷惑はかかっていない、自習時間だったからな。問題は吉井だ」

「お前の言う通りだ、桐ヶ谷。明久、改めてすまなかった。」

「大丈夫だよ、あの放送は桐ヶ谷君と朝田さんのお陰で僕が犠牲ならずにすんだから。雄二、康太、秀吉一つ聞いても良い?」

「なんだ?」

「あの放送を須川君に指示したのは誰?」

「・・・・島田、俺の盗聴機に現場での会話が録れていた」

「またか、僕がなにをしたっていうんだ」

「また、とは?」

「あやつは一年の頃から明久に対し、叩く、殴る等をFFF団とともにしておったのじゃ」

「確かに、明久にもデリカシーのないところはあったがそこまでされるほどじゃなかった」

「なるほどね。」

「今さらだが、自己紹介が遅れたな、俺は桐ヶ谷和人。好きに呼んでくれて構わない。

詩乃は俺の彼女だ、よろしくな」

「私は朝田詩乃。よろしく」

「知ってるようだが、俺の名前は坂本雄二だ。好きなように呼んでくれ。和人、朝田、よろしく」

「・・・・土屋康太。和人、朝田よろしく」

「ワシは木下秀吉じゃ、見ての通り木下優子はワシの双子の姉じゃ。よく間違われるから言うとくがワシは男じゃ。和人、朝田よろしく頼む」

「一卵性じゃないんだから、こんなに似なくても良かったと思うのよね。私たちの事は紛らわしいから下の名前で呼んでね」

「了解」「わかったわ」

「にしても、和人達はよく驚かなかったな。大抵のヤツは木下が二人いる!?ってパニクるんだが」

「まあ、制服違ったし」

「髪型も少し違うからな」

「そりゃそうだ。」

 

 放送事件の黒幕やら、自己紹介やらしているとチャイムがなった。

 

「そうか、今日は4限だけだったな。じゃあ、帰るか」

「和人君たちはどこ方面に家があるの?」

「川越市だ。」

「ちょっと遠いね」

「まあ、帰還者学校よりは近いさ」

「じゃあ、また明日」

「うん、気をつけて帰ってね」

 

 さーて、木綿季達も今日は早いはずだし、急ごう。文月学園、思ったより中々面白そうだ。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、転校初日は(吉井にとって)波乱の幕開けとなったのだった。




 読んでくださり、ありがとうございます。
誤字、脱字等の訂正はいつでもウェルカムです。


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帰宅のちほんの少しの非日常

 ども、Argoです。体育大会でちょっと死んでました。どうにか生き返った次第です。駄文ですけど、どうぞよろしくお願いします。
では、本編へどうぞ!


「「ただいま~!」」

「「「お帰りなさい!」」」

 

 学園がある文月から現在、川越市の実家へ帰宅した。

ちなみに詩乃は俺の家に住んでいる。理由はSAOをクリアした後での一人暮らしは心配だという点と文月学園─には絶対通わなければならないため─にある程度近く、家で融通がきき、なおかつ詩乃が絶対的な信頼をおいている友人という項目を満たしたのが何を隠そう我が桐ヶ谷家だった。

詩乃がお願いしたときの家族の反応は・・・・

母の翠は笑顔で『大歓迎よ!詩乃ちゃん!和人のことよろしくね!』と快諾。

父である峰高は『和人、いくら恋人でも節度を持てよ?』と要らぬ心配とともに快諾。

妹の直葉は『私は別にいいよお兄ちゃんとは昔の仲に戻れたし、それはきっと詩乃さんがいてくれたから。それに、詩乃さんとは北欧神話の話ができるし!というか、住んで!』と、これまた快諾。

 このように、家族からも許可がでたので晴れて詩乃はこの家に滞在することになった。

 でも、それだけじゃない。先ほど聞こえた3つのお帰りの声は直葉、父さん、母さん合わせてでの声ではない。

なぜなら、父さんは出張してるし、母さんは締切が迫ってるので、部屋で缶詰めになっている。では、直葉を除いた2つの声は誰の声か?

 ユウキとラン、・・・・つまり木綿季と藍子の声だ。二人とはSAOの《森の秘薬》クエストで出会った。

 二人はもともと後天性免疫不全症候群でヒト免疫不全ウイルスの薬剤耐性型にかかっており、薬が効きにくく危うい状態だったが、SAOの最中に新薬の完成、投与が行われ、皮肉なことに囚われたことで理解ある仲間ができ『精神衛生が向上』それも手伝って今では走り回れるほどに回復した。

 では、その二人がなぜ桐ヶ谷家にいるのか?それは、二人の両親が亡くなってしまっていることと、彼女らの親族が関係する。

 両親が亡くなり、帰る場所がなくなってしまった。ならば、当然親族が引き取るのが当たり前だ。しかし、彼女達の親族は二人がかかっていた病気に理解がなかった。何も知らない、分かっていない、分かろうとしない。そんな親族たちは二人を毛嫌いし、遠退けた。引き取り手に名乗り出た者はいたが、結局二人の家の土地が目当てだった。倉橋医師が引き取るという案もでたが、彼も立派な医師で二人を引き取る時間的な余裕は控えめに言ってもなかった。

この事を母さんに相談したところ『それなら、私達が引き取ればいいじゃない。』と、事も無げに言われた時はビックリしたものだ。その後、菊岡に頼んで養子縁組の手続きを円滑に行い晴れて二人は家族となった。

 

「お昼ごはんなに!?お腹すいたよー!」

「はいはい、着替えてから作るからちょっと待って」

 

____________________

 ちなみに詩乃の部屋は2階の直葉の隣、木綿季と藍子は屋根裏部屋だ。

屋根裏部屋といえば薄暗く、ボロボロで埃が舞う、というイメージがあることだろう。

しかし、我が家の屋根裏部屋は違う。他の部屋同様、明るい照明、綺麗な壁とフローリング、天井には空を寝転がって見ることができる大きな窓、壁にもしっかり窓はある。高さは190cmと少し低いが広さは和人と直葉の部屋を合わせたくらいでとても広い。寝室は詩乃の真上の部屋を使用している。勉強、ゴロゴロ、読書等は和人と直葉の真上の部屋でしている。一応、他にも部屋はあったのだがここがいい!の一点張りだったので即決した。

────────────────────

 

 

 高校の制服から黒の部屋着に着替え、詩乃とともに階下のリビングへむかう。

よほどごはんが待ち遠しいのか、木綿季が落ち着かない様子でソファーに藍子と直葉と座りチラチラとこちら(階段)の方へ視線を送っていた。余談だが、詩乃はSAO以前まで、一人暮らしで自炊もしていたので料理はお手の物だし、その上うまい。

そのため俺たち、桐ヶ谷一家は完全に詩乃に胃袋を握られている。

 

「ふっふーん♪まっだかな~まっだかな~」

「木綿季、落ち着きなさい」

「スグもな」

「「は~い」」

 

    ~調理&食事タイム~

 

「「「「ご馳走さまでした!」」」」

「はい、お粗末さま!」

「美味しかった~!」

「そうそう!ご飯の粒がパラパラだったね」

「ちょっとした工夫をすれば二人にも作れるわよ。それじゃ、ごはんも食べたし課題でもしましょ」

「了解」「「は~い!」」「そうですね」

「和人兄さん、詩乃さん、教えてくださいませんか?」

「私も!」

「ボクも!」

「ああ、いいぜ」

「今日は少ししか課題は出ていないから大丈夫よ」

「ありがとうございます!では、早速ですが・・・・・」

「ああ、これは~~~~ってすれば良いのよ」

「なるほど」

「お兄ちゃん、これは?」

「おお、そこは分配法則を使ってだな」

「和兄!宿題終わったら遊んでね!」

「ああ」

「木綿季、あまり和人兄さんに迷惑をかけないように」

「分かってるって!」

 

~~約2時間後~~

 

「終わった!」

「ボクも!」

「私もです!」

「ふぅ~、疲れたな」

「そうね、今は15時くらいか・・・・」

「お腹すいたよ~」

「おいおい、さっきおやつ食べたばかりだろう?」

「そうだけど、勉強したらお腹すいちゃうんだよ!」

「あら?木綿季は途中からうたた寝してたでしょう」

「えへへ、寝つきは良いんだ////」

「褒めてないから!まったく・・・・」

「まあまあ、それは置いといて和兄!遊ぼうよ!」

「んー、良いけど。何をするんだ?」

「・・・和人兄さんは木綿季に甘過ぎます」

「あはははは、それはまあお兄ちゃんだし」

「そうね、和人だもの」

「なんか、失礼なこと言われた気がするんだが・・・」

「「「気のせい、気のせい」」」

「そ、そうか・・・。木綿季、こんなのはどうだ?」

「なになに!?」

「試験召喚獣の話はしただろ?木綿季も召喚してみたくないか?」

「したい!!でも、できるの?」

「ああ、藍子たちもどうだ?」

「では、お言葉に甘えて」

「私も~!召喚獣は可愛いって評判だし」

「和人、学園の生徒じゃなくても召喚はできるのかしら?」

「大丈夫だろ、たぶん・・・」

「貴方って人は・・・はぁ~」

「ま、まあやってみようぜ!道場はもちろんダメだし、よし庭でやるか」

「「おー!」」

 

 靴を持ち縁側を通って小さな池のあるまあまあ広い庭へ出る。

 召喚獣等について一通り教えたところで実践に移る。さて、召喚はできるのか?

 

「よし、じゃあやってみてくれ」

「おっけー!」「分かった~!」「はい!」

「「「サモン!」」」

 

 少し時間を置いてから可愛らしいぽむん!

という音がしてスグ、藍子、木綿季の召喚獣が出てきた。スグはALOのリーファの装備を現実のスグをデフォルメした召喚獣が装備している、種族はシルフだ。藍子は濃紺を基調とした装備に紫がかった濃い藍色の片手剣を装備している、種族はインプだ。木綿季は紫を基調としたALOの装備でかためている。武器は細剣と見間違うほど細い片手剣を装備している。頭にはトレードマークの赤いカチューシャもついている。

 

「おお!木綿季達でもできるのか!」

「みたいね・・・」

「わあ!可愛い!この子ってさわれるの?」

「ん、実体化すればさわれるがそうするとフィードバックがくるから操作に慣れるまではダメだ。」

「そっかー、よし!じゃあ、頑張って慣れるぞ~!」

「「おー!」」

 

 それから木綿季達に操作などを教え自分も操作の練習をしているとスマホに着信がきた。相手は菊岡だった。

 

「すまん、電話きたから少し抜ける」

「「おっけー!」」「はい」「分かったわ」

 

 縁側に腰をかけて通話を開始する。

 

「菊岡さん、何のようだ?」

『やあやあ、キリトくん。にしても、酷いなあ会話の最初がそれだなんて。』

「ああ、で要件は?無いなら切るぞ」

『わ~まったまった!そう急かさないでくれ。まったく、急ぐとロクなことは無いよ?

要件はユウキくん達にも例のネクタイピンの能力は有効だと伝えようかと思ってね』

 

あんたはノンビリしすぎなんだよ!という心の声を抑え会話を続ける。

 

「どの条件下で有効になるんだ?」

『SAO生還者で今もVRMMOゲームを続けているキリトくん、シノンくんに近しい人物にのみ有効となるよ』

「なるほどな・・・。一つ質問いいか?」

『ああ、言ってみてくれ。』

「文月学園とは関係のないユウキ達が召喚をできた理由は?」

『簡単なことだよキリトくん。彼女達のゲームアバターデータが読み込まれただけさ。現に君たちが召喚したときよりも出現するのは遅かっただろう?試験召喚システムは《ザ・シード》も利用されてるからね。

何も可笑しくはないだろう?』

「まあ、確かに」

『ああ、そうそう。ネクタイピンの能力はリーファくんも使えるように設定しているからいざという時は使いたまえ、機能の追加は無制限にできるからキミの好きなようにしてみるといい。』

「分かった。で、それだけか?」

『あと、一つだけ。今でこそネクタイピンの形になっているが強く願うだけでどんな物にも形状変化ができるよ、では、これらのことはシノンくんにも伝えておいてくれ。じゃ、これで』

「じゃあな」

 

《形状変化、か。使えそうだな。》そう思いつつスマホをポケットにしまい、庭へ顔を向ける。

・・・そこにはすごい動きをしながら戦う召喚獣が、つーか操作に慣れるの速すぎだろ。

 

「和兄、操作慣れたよ!」

「そうだよ!お兄ちゃん!」

「実体化の許可を!」

「あー、分かった分かった。詩乃」

 

詩乃に合図を送る。

 

「はいはい。えーと、ここをこうして、と。オッケーよ」

「さわってみてくれ」

「「「はーい!」」」

「わ!しっぽフサフサだ!」(* >ω<)

「かーわいー」( 〃▽〃)

「癒されますね」(o⌒∇⌒o)

 

   ~~それから20分~~

 

「満足、満足♪」

「少し嫌がられたのはショックだったなぁ」

「まあ、苦しそうでしたし」

「よし、今日はここまでな」

「私は夜ごはんの準備してくる」

「あ、詩乃さん。私も手伝いますよ」

「あら、ありがと。直葉」

「よ~し!ボクは洗濯物を取り込むよ」

「私もユウキを手伝いますね。」

「じゃあ俺は風呂の準備でもするか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、いつもとは少し違う日常は幕を閉じた。




 ここまで読んでいただきありがとうございます!
お気に入り等してくださった読者様ありがとうございます!感謝感激雨霰です!


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対Bクラス戦と卑怯者の策略

 中間テストようやく終わった、今回から50点満点、理科だけ返ってきたけど。なかなかよかった?のかな?

 それでは、物語へリンク・スタート!


「・・・それでは、自習を開始してください」

 

 編入から2日目の今日もFクラスによる試召戦争が行われていた。昨日は対Dクラスだったが今日の相手は俺たちのひとつ下のBクラスだ。

明久にBクラスの情報を聞いたところ代表の名前は《根本恭二》。

過去にCクラス代表の《小山友香》さんと交際しており、絶賛FFF団から標的にされていたという。明久とは仲の良い友人らしい(FFF団から逃げる際に強力しあった仲だとか)。

ちなみに交際して"いた"というのはその当時根本は勝つためには手段を選ばないというスタンスをとっていたのだが、それがあまりにも酷く、小山さんは見放したのだとか。

その失恋と明久との出会いをキッカケに改心し、現在ではクラス内を円滑に運営するためにクラスメイトの仲を取り持っており、支持は絶大らしい。だが、1人例外がいるようでソイツは昔の根本のように手段を選ばず好き勝手しているようだ。

 さて、今回はどうなる?

 

「今日のBクラスはさすがにキツいか?」

「一部生徒を除き、Fクラスの戦力差は大きいものね」

「・・・・・・・今日も雄二が勝つ。ただ、Bクラスには《江藤颯》がいるからどうなるかわからない」

「例のナルシストで卑怯者の?」

「まあ、そうだよ。彼のせいで恭二は卑怯者のままなんて誤解されてるんだ」

「ナルシストは嫌いよ、自己中心的だもの」

「俺も、詩乃と同じく。なんか苦手なんだよなぁ」

「あははー、彼を好いてる人はいないと思うけどねぇ。それに流石のぼくでも彼は専門外かな♪」

 

と、話しているとき。Aクラスの天井から黒い影が降りてきた。

 

『うわぁ!』

 

「土屋、どうしたんだ?そんなに慌てて」

「・・・・手を貸してほしい」

「はい、ちょっと待った~!」

「(・・・・)なんだ?」

「まず、土屋くんキミどこから登場してるのさ!?」

「しかも桐ヶ谷くんと朝田さん!何で驚かないのよ。翔子の出現よりよっぽどビックリするでしょ!?普通!!!え?なに?これも気配で分かったとか!?」

「「そうだけど、何?」」

((いやいやいや、おかしいでしょ!))

「普通だろ?で、土屋どうした?」

「・・・・FクラスにCクラスがけしかけられそうなんだ」

「誰が仕組んだのかしら?」

「・・・・江藤颯だ。ヤツは小山達の貴重品をバックから盗みFクラスに模擬試召戦争を申し込まなければ返さないと脅されている」

「なるほど、模擬試召戦争を申し込めば上位クラスであるCの申し込みは断れないし、その時減った分の点数は戻らないからFクラスの弱体化が狙えると・・・。それを防ぐ為に、手を貸して欲しいってことか?」

「・・・・ああ、そうだ」

「いいぜ。」

「ちょ、桐ヶ谷くん!」

「大丈夫だ、ちょうどいいしな」

「ちょうどいい?」

「そうだよ、詩乃説明よろしく。俺はCクラスに行ってくる」

「はぁー。分かったわよ、任せなさい」

 

【え?あれで分かったの?やば、すげぇ!】

その時、二人を除くAクラスの面々は心がひとつになった。

 

さーて、ちょいと行きますか!

そうして俺は歩き出した。

 

 

 

 

 

side詩乃

 

 和人が教室から出たのを見届けて私は教壇へ上がる。まったく、私はアスナと違って人の前に出るのは苦手なのに・・・。

まあ、なんとかなるでしょう。

・・・このお返しは銀座でケーキね。一番高いのでも頼んでやろうかしら、ダイシーカフェでもいいけれど。とりあえず・・・・・

 

「みんな注目!」

『はい!』

「じゃ、和人の考えを伝えます。和人はCクラスがFクラスに模擬試召戦争を申し込む前にAクラスがCクラスに申し込もうとしてます」

「・・・・・・Aクラスにメリットは?」

「私たちの召喚獣の操作の向上。

私たちAクラスは高得点保持者で成り立っているでしょう?他クラスとの点差は歴然。

ほぼ一撃で私達は勝てる。けど、それは逆にいうと召喚獣の操作にいつまで経っても慣れることはないということ。いくら高得点保持者でも技術に圧倒的な差や召喚獣の理解がある相手なら負けることなんてザラよ。

だからこそ、和人は万が一に備えて操作を慣れさせようとしてるんじゃないかしら」

「・・・・・・成程、分かった」

「他にないかしら?」

モブ「あ、あの!」

「何か?」

モブ「さっきあれだけで分かったの?」

「さすがにそんなこと無いわよ」

モブ「で、ですよね・・・!」

「アイコンタクト無しで分かるわけ・・・、 あるけど無いわ」

『いや、あんのかい!』

「ふぇっ!?」ビクッ

「・・・・普通は、アイコンタクト無しで分かることなんて無い」

「そう?目が合ったらわかるでしょう?」

「さすがにそれは無いわよ」

「そんなものかしら?」

「そんなものよ!」

「優子さん、代表夫婦につっこむのはもう諦めよう。身が持たないや」

「奇遇ね、明久君。私も諦めようか悩んでいたところなの」

「あははー♪流石のぼくでも疲れるかな」

「・・・・・・私も、いつか、きっと・・・!」

「みんな、どうしたのかしら?」

『(・・・・・・)何でもない(よ)』

「そう?それじゃ、他に質問はないかしら?」

 

シーーーーン

 

「オーケー、それじゃ各自模擬試召戦争の準備等をして和人を待ちましょ」

『分かりました!』

 

 ふぅ~!まあ、こんなところかな。それにしても、はぁー、疲れた。ていうか、アイコンタクトをとるのってそんなに難しいかしら?だとしても、あんなに驚かなくてもいいでしょうに。

 

 

 規格外カップルの一端が見れたような気がしたAクラス一同であった

 

詩乃sideout

 

 

 

 

 

 

 えっと、ここがCクラスだな。うーむ、Aクラスまでとはいかないけどなかなか豪華な設備だな。少なくとも普通の学校じゃあり得ない設備だ。

さて、ずっと入り口に立ってる訳にもいかないし、ちょっと気合い入れて入室しますか!

 

「失礼する!Aクラス代表、桐ヶ谷和人だ。このクラスに用があったので来た。入ってもいいだろうか?」

 

 ちょっと威圧感があるようなしゃべり方をしてしまったが、まあ、些細なことだ。

ドアを開け、中へ一歩足を進める。

うん、うん、驚いてる驚いてる。なんて言ってるかな?

 

『あ、転入初日で学園イケメンランキング第一位に輝いた桐ヶ谷君だ。』『んー、やっぱりイケメンね』『くそっ・・・!俺には見える、見えるぞ!桐ヶ谷が女子をおとしてる姿が!』『おお!イケメンだ!イケメンって本当にサッカー上手いのか?』『ふむ、いつもはどんな男も嫌いですが、あのお方は何故か親近感がわきますね。親族のような、家庭教師のような・・・、不思議です』

 

 なんて声が聞こえてきた。なんだ?イケメンランキングって、しかも三番目のヤツ失礼な俺は詩乃だけだっての、人聞きの悪い。

4番目の人、サッカーは上手いかはわからんが、少なくとも下手ではないと思うぞ。

それと、5番目の子。なんか、めっちゃ直葉と声似てる気がする。しかも、家庭教師なんかしたこと無いのに五つ子の姉妹の家庭教師しててその次女っぽい人が思い浮かんだ。

ははっ、我ながらなに考えてんだか、五つ子なんてあり得ないだろ、さすがに。

 あ、ヤバい。本来の目的忘れるとこだった。危ない危ない。

 

「なんの用?桐ヶ谷くん」

「えっと、君が代表の・・・」

「小山友香よ。よろしく」

 

小山さんから握手を求められた。なので、握り返す。

 

「ああ、よろしく。小山さん」

「それで、何の用なの?」

「そうそう、AクラスはCクラスと模擬試召戦争を申し込む」

『ええぇぇぇえ!?』

「い、今なんて?」

「だから、AクラスはCクラスに交流試合を申し込むって言ったんだ」

「理由を聞いても?」

「今日、本来はBクラスに申し込む予定だったのだがFクラスと試召戦争を始めてできなくなったからさ。だから、Bクラスの次に強い君たちに申し込むことにしたんだ」

 

 すると、小山さんは泣きそうな困った顔をした。ってことは、土屋が言った情報は本当みたいだな。それなら・・・

 

「安心してくれ、江藤に盗まれた貴重品は俺が責任を持って取り返す。だから、大丈夫だ。」ボソッ

「ほ、ホントに!?」

「ああ、黒の剣士の名に誓って」

「分かった。あなたを信じる、その模擬戦争受けます!」

 

 その後、開始時刻や負けた時どうするか等を取り決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回へ続く




 ここまで読んでくださりありがとうございます!
 不定期投稿、気長に待ってほしいです。

 お気に入り登録や、投票等してくださりありがとうございます!
駄文ですがこれからもよろしくお願いします!(* >ω<)


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波乱の昼休み

 どうも、お久しぶりです。そして、言い訳させてください・・・・・。しょうがないんですよ!テストが!連続で!行われたんです!それでは本編へドーゾ!


『キーンコーンカーンコーン』

 午後からの模擬試召戦争に備えて、作戦や配置等を決定し終えたところで昼休みを告げるチャイムが鳴り響いた。

(この学校には屋上に鐘が釣ってあるというのになぜ使わないのだろう?)という素朴な疑問をよそに皆と一緒に詩乃が作ってくれた弁当をまったりと食べていたら──もちろん、詩乃は俺の隣だ──突然、Aクラスのドアが乱暴に開かれた。

 

?「吉井っ!なんでアンタなんかがAクラスにいるのよ!アンタはFクラスでしょ!さ!教室に行くわよ!」

?「そうですよ、吉井君。吉井君はおバカさんなんですからAクラスなんてあり得ません。」

 

 背中からこれでもかと黒い負のオーラを撒き散らした黄色いリボンでポニーテールをつくっている赤い髪の女子とその女子よりも幾分か背が小さくピンクの髪の毛の女子が断りもなく入ってきた。両者とも手には血のついた釘バットが握られており控え目に言っても洒落にならない装いをしている。

 

「なあ、吉井。もしかしてあいつらが?」

「うん、桐ヶ谷君が思ってる通り。島田と姫路だよ」

 

 やはり、思った通りだった。話には聞いていたが、あれ、殴る蹴るどころじゃないだろ。傷害沙汰になるくらいのものだ。

 奴らが持っている獲物を見て分析していると吉井が呆れたように喋り始めた。

 

「島田さん、姫路さん。いい加減にしてよ、僕は姉さんや雄二に教わって勉強をして正真正銘"自分の"実力でこのクラスに来たんだ」

「うるさいっ!そんなこと聞いてないわよ!アンタはバカなんだからどれだけ勉強したってAクラスになれるわけないじゃない!」

「そうですよ、吉井君。吉井君がAクラスになんてなれるわけがありません。カンニングしたんですよね?」

「・・・・おい」「・・・・ねえ」

 

 気がつけば、俺達は手と口が動いていた。

あの特殊ネクタイピンのダイヤルを秘かに3に合わせる。

 

「「それ以上喋るな(らないで)」」

 

 静かに、低く。しかし、それ以上の大きな威圧を言葉に乗せる。

あの世界で培った物は伊達ではない。

 

「な、なによ!!事実を言ったまでじゃない!!アンタら何様のつもりよ!」

「そうです!あなた達に吉井君の何が分かるっていうんですか!」

「それは、こちらのセリフだ!吉井は努力してここまで来たんだ!授業だって真剣に受けてる。成績だって学年第4席だ!」

「それに、吉井君から聞いたけれど彼の試験に見回っていた先生は西村先生よ。あの人が不正を見逃すはずが無いじゃない」

「うるさいうるさいうるさい!!!!アンタ達には関係無いじゃない!!」

「関係あるわよ!私達はクラスメイトなんだから!こっちに来て少しだけれどあなた達なんかより彼のことは分かってるつもり!」

「~~~っ!そんなの知るもんですか!瑞希!!」

「はい、美波ちゃん!」

 

 ダメだ。理屈が通じないどころか釘バッドを振り下ろして来やがった。

もう、いいよな?

 

「「起動開始!」」

 

 青白い光に全身が包まれる。うん、一応防具つけとくか。横を見て詩乃にも伝える。

(了解!)

右手の指2本を素早く揃え下に下げる。メニューが出てきたのでアイテム欄を開き防具であるコート・オブ・ミッドナイトと書いてあるところをタップする。──ちなみにこのコートは第1層ボスのラストアタックで取得したものだ。現実で防具を装備すれば怪我はすることはないらしいので極端にいえば第1層の武器屋の防具でもいい──を万が一の為に身につける。詩乃はブラック・ウイングコートにしたようだ。ちなみにこれは俺が2個入手したので詩乃にあげたのである。

 突然、俺達にコートが出現したので島田・姫路は立ち止まった。

が、すぐに復活し、殴りかかってきた。俺は詩乃の前に立ちフッと息を吐いて両手で2つのバッドを受け止め、力を入れてバッドをへし折る。周りはなにやら驚いているがそれどころではない。

 

「シノン!」

「分かってる・・・わ!」

 

 詩乃が瞬時に島田達の背後に回り首に手刀を打ち込む。

ガクッと、倒れたところを見ると上手く気絶したようだ。

 

「「ふぅ・・・」」

「お疲れ様、詩乃」

「ええ、和人も」

 

 コツン、と拳を合わせる。

当たり前だが、この二人は俺達の敵じゃない。それほどに弱い。

そういえば、他にもFFF団っていう奴らがいるって言ってたよな・・・次にSA:Oにログインしたら前にリーファが買った木刀でも入手しておくか・・・。

 そう思いながら回りを見渡すと・・・、あんぐり、という言葉はこのためにあるのかというくらい口を大きくあけ目を点にしているクラスメイト達がいた。

いや、霧島さんだけパチパチと拍手をしてる。俺よくマイペースだって言われるけれど霧島さんも大概だな。

 さて、この二人をどうしてくれようか・・・

そう悩んでいるとバタバタと廊下を走る音が聞こえた。

 

「すまん!ここに島田達が来なかったか!?って、こいつら!」

「ああ、なんか【吉井を連れ戻す】的なことを言ってこっちが反論したらうるさい!つって釘バッドを振り下ろして来たから気絶させたんだ」

 

 後ろで皆が『うんうん』と首を振っている。少し前から思ってたけどAクラスの皆って結構ノリ良いよな・・・、おっと!そうじゃない

 

「はぁ、やっぱりか・・・。すまない、オレのクラスメイトが迷惑をかけてしまった」

「大丈夫・・・、ではないけれどあなたに非は無いのは分かってる。すべてこの人たちの独断行動でしょ?」

「そうだが、しかし・・・」

「大丈夫だよ、雄二」

「明久!ケガは!?」

「ケガする前に桐ヶ谷夫妻が島田さん達を戦闘不能にしたから問題無いよ」

「そうか、二人ともありがとう」

「気にするな、俺達はクラスメイトを護っただけだ」

「そうよ、仲間は護るのが普通よ」

「そうか、明久を頼む」

 

詩乃と目を合わせる。やはり、考えていることは同じなようだ。

 

「「任されました!」」

 

 うんうん、これ一回言ってみたかったんだよな~!

 

 

 

~~~~都内・帰還者学校~~~~

 

「・・・」ピクッ

「どうしたのよ?明日菜」

「何かとてもしかめっ面になってますよ?」

「あ、リズ、シリカちゃん。いや、なんだろう?私の名ゼリフ的なのをとても良く知ってる人に真似された気がしちゃって」

「あんた・・・、ま、まあいいわ!にしても詩乃が羨ましいわね。アイツと一緒に学校行ってるなんて・・・・」

「そうですよね・・・、しかも一緒に住んでるらしいですよ?」

「「・・・」」

「これは・・・」

「忌々しき事態ね」

「よし、皆に召集をかけてキリト君の家に行っちゃおう!」

「「おーー!」」

 

という会話が起こったとさ

 

~~~~~~~~

 

 

 

「・・・・」ブルッ

「どうかした?桐ヶ谷君」

「ああ、吉井か。いや、なんか知らないうちに自分の首を締めた気がしてな。あ、言い忘れてたが俺のことは名前で呼んでくれ」

「( ≧∀≦)分かったよ!僕のことも明久って気軽に呼んでね!」

 

なんて会話が起こったちなみに坂本はあの二人を引きずって連行し、波乱の昼休みは終結したのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回へ続く!




 読んで下さりありがとうございます。
次もちゃんと出せたら良いなぁ~


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模擬戦争、終結

 どうも、作者です。
 誤字・脱字があれば優しく指摘してもらえると有り難いです。


 島田達の襲撃から30分後の今、俺達は授業開始5分前にもかかわらず教室に集合していた。んー、これで全員集まったな。

よし、始めるか。

 

「皆、聞いてくれ。土屋の情報通り、Cクラス代表の小山さんは貴重品を盗まれているみたいだ。こんな横暴許すわけにはいかないそうだろ?皆!」

『そうだ!そうだ!』『そもそも人としてやっちゃいけないことだ』『卑怯過ぎて逆に引く・・・』

「ヤツの策通りにはさせないAクラスだからっていう油断はいらない!本気で望むんだ!こっちがうまくやれば坂本達が貴重品を取り返してくれる。いいか?」

『おおー!』

「勝つぞ!」

『おおー!』

 

キーンコーンカーンコーン

 

モブA「さ、配置につけ!」

モブB「召喚獣の操作もコツを掴もうな!」

 

 

 Aクラスの皆はやる気十分なようだ。

Cクラスにわざと負けてもらうことできるが、それだとヤツが黙ってはいないだろう。ならば、本気で勝ちに行く以外ない。

まあ、本気でやんないと面白くないし。

 

「詩乃、ちょっと暴れてくるから援護よろしく頼む!」

「はぁ~、分かったわよ、任せなさい!」

「頼んだ!」

 

 よし、やっと戦える。存分に暴れまわろう!

 

「お、あそこにいるな。3人か、ちょうどいいAクラス桐ヶ谷和人そこの3人に技術で勝負を申し込む!」

「中村洋一、受けます!」

「清水正樹、受けます!」

「山下碧、右に同じく!」

「承認します!」

「「「「召喚(サモン)」」」」

 

         技術

 

Aクラス代表 桐ヶ谷和人 856点

        VS

Cクラス    中村洋一  121点

 〃    清水正樹  135点

 〃    山下碧   110点

 

「なっ!800越えだと!?」

「副教科だからって、油断してたかも!」

「くそ!こうなったら3人がかりで!行くぞ!」

「てや!」

「ふっ!」

「やぁぁ!」

「ほっ!」

「うぉぉぉ!」

「よっと!」

 

中村が最初に金属バッドを振りかぶったが、動きが大きいので数歩後ろに下がり余裕で回避できた。

すると、両側から挟み撃ちしてきたがタイミングに差があったので先に山下さんの薙刀をジャンプで避け、さらに足場にし、上へ逃げて清水の刀を回避した

(※もちろん召喚獣の戦闘です)

 

「ダメだ、全然当たらねぇ!」

「どうなってんだよ!」

「薙刀を足場にした!?」

「んー、これくらい普通じゃないか?」

「「「んなわけあるか!」」」

 

キレられた。でも召喚獣の操作って菊岡の依頼をこなすよりも簡単なんだがなぁ。しかも、この前木綿季達の相手したからこのくらいの速さなら見切れるし。

 

「よし、じゃあ片付けますかね」

「っ!清水下がれ!」

「ん?うわぁ!」

「ふっ!」

 

 背中からエリュシデータを抜き、一番近かった清水に斬りかかる。それに中村が気づいたが遅い。頭の天辺からまっすぐ振り下ろし、剣を引き戻す。見事清水の召喚獣は真っ二つになり点数は0に。あ、やばい、グロいことなった・・・・。

 

「お、オレの召喚獣が・・・」

「うぅ、気持ち悪いぃぃい!」

「中身を・・・、見て、しまった・・・(-""-;)」

 

その場にいた他の二人も見てしまい死にそうになっている。自分がしたとはいえ相当グロいグロすぎる。

気を取り直し、続けて右にいた山下に横に剣を払うが召喚獣を一歩下がらせたので腹にかするだけとなった、追撃しようとすると後ろから中村が俺の召喚獣に金属バッドを再び振りかぶるが詩乃の銃弾がバッドを貫き金属片へと変化した。

 

「この範囲なら・・・!」

 

 二人の召喚獣に黄緑の光を帯びたエリュシデータが襲いかかる。

 

「片手剣ソードスキル、スネークバイト!」

 

 スネークバイトは自身を中心とした周囲に地面と平行な黄緑の円形を描く2連撃のソードスキルだ。光の軌跡は召喚獣を横に真っ二つにした。エリュシデータを左右に軽く振り払い背中の鞘に納刀する。

 

         技術

 

Aクラス代表 桐ヶ谷和人 856点 winner!

        VS

Cクラス    中村洋一  0点

 〃    清水正樹  0点

 〃    山下碧   0点

 

 召喚獣の頭上の点数のさらに上にwinnerの表示が出る。それを眺めていると近くの段ボールから西村先生が出てきた。

 

「戦死者は補習!」

「「「嫌だぁぁ!」」」

「安心しろ、趣味は勉強。尊敬する人は二宮金次郎という模範生徒にしてやるからな!」

「先生、それはもはや洗脳です」ボソ

「ん?なんか言ったか?桐ヶ谷」

「いえいえ、何も無いですよ。」

「そうか?なら、いいが。先程の召喚獣の操作、見事だった。それに、援護の朝田も良い動きをしていた。」

「ありがとうございます。」

「このまましっかり励めよ?」

「「はい!」」

 

 なんだ、堅いだけの教師じゃないのか、しっかり生徒を見てくれてる。

 にしても、何をどうすればこんなに体が鍛えられるんだよ?そういえば趣味はトライアスロンって言ってたな。

ああ、なるほどそれの成果か。ん?いや、待てトライアスロンだけでそんなになるのか?

 よし、止めよう。たぶんこれは答えにたどり着かない。うんうん。止めよ。

 

「・・・ていっ!」

「あいたっ!」

「何やってるのよ和人、ここは戦場よ?マヌケな表情で突っ立ってたら狙って下さいって言ってるようなものよ。」

「すまんすまん、ナイス援護だったよ詩乃」

「ええ、あなたも。ナイス剣捌き。」

 

 詩乃と拳を合わせる。ちなみに召喚獣も俺達と同じ動きをしている。

 

「それじゃ、急ぎましょ。今が一番動きやすいでしょ?」

「そうだな」

 

 そう、俺達にはすべき事があるのだ。

 

────────────────────────────

──────

 

Side優子

 

(・・・・・!来たわね。まさかここまで桐ヶ谷君の思い通りなんてね。味方だから頼もしいけれど敵には回したくないわね)

『B隊!作戦通りにC隊と協力しつつ、A隊の援護を!良い?いくら今有利でも油断はしないで!』

 

 

Side明久

 

(B隊が動き始めた。ならこっちも!)

『C隊、君たちの仕事はB隊のサポートと道を切り開くことだ!いいかい?桐ヶ谷君達が来るまでに終わらせるんだ!』

『『おおぉぉ~~~!』』

『行くよ!』

 

 

───────────────────────────

─────

 

『おりゃぁ!』『やぁ!』『はぁぁああ!』

 

「始まったみたいだな」

「ええ、そうみたいね」

「じゃ、俺達も行くとしますかね」

 

 

 作戦はこうだ、まず、A隊B隊C隊に分かれB隊C隊は戦力を分散させるために目立つ位置に配置し、ある程度弱まったところで近くに隠れていたA隊がCクラスに突撃する。

B隊C隊は余力のある数人をA隊の援護にまわすというシンプルな策だ。

──さて、戦局はどうなってるかな?

 

──────────────────────────────

───────

 

Side久保

 

ん、道は大体開けたみたいだね。行こうか

 

「・・・A隊!突撃開始だ!」

『おぉーーー!』

 

 

 

Side Cクラス

 

「代表!Aクラスがこちらへ突撃をしかけました!」

「なっ!?予備戦力は?」

「あちら側の分隊を抑えるために出払っており実質、近衛部隊はこの教室内にいる私達だけです!」

「解ったわ、ありがとう。皆、聞いてちょうだい!これからAクラスがここへ来る。正直勝てるとは思えないわ」

「代表!」

「でも、上等じゃない!勝てないなら勝てないで思う存分暴れて悔いが残らないようにしましょ。さあ、迎撃の準備を!」

『おー!』

 

 

「竹中先生!召喚許可を!」

「承認します」

「「「「「「「「「召喚」」」」」」」」」

 

        古典

 

Cクラス代表 小山友香  143点

Cクラス   新野すみれ 122点

 〃    黒崎トオル  106点

  〃    村田奈々   133点

  〃    野口一心   100点

〃    岡島久美   121点

〃    神戸新    136点

〃    新沼京子 139点

〃    新山猛 125点

 

 皆が召喚し終えたところでクラスの扉が開かれた。

 

「失礼する!Aクラス、久保利光。Cクラス代表小山さんに勝負を────」

「その勝負、小山さんに代わりCクラス新野と」「同じくCクラス新沼京子が受けます!」

「・・・・くっ!早めに片付けさせてもらうよ!召喚!」

 

(クラス内では同じ局面が広がっている。何とか抑えているものの私に辿り着くのは時間の問題だ。となると・・・・)

思考を巡らせる私を嘲笑うかのように小さくだが良く通る声が響いた。

 

「・・・・・・・Aクラス、霧島翔子。小山さんに勝負を申し込みます」

「・・・っ!」

「・・・・・・・召喚」

 

Aクラス   霧島翔子 435点

         VS

Cクラス代表 小山友香 143点

 

 

 彼女の足元から、自らをデフォルメしたような小さな影が現れる。動き易さを重視したような甲冑にこれまた重量が軽そうな刀が左腰の鞘に納めてある。

 

「・・・・・・・驚いている暇はあるの?」

「・・・っ!───」

「・・・・・・遅い。《絶空》」

 

 彼女の召喚獣がフッと消えたかと思うと私の正面に移動していた。赤い線のようなものが召喚獣のお腹辺りに浮かび上がる。

 霧島さんが刀を納刀すると私の召喚獣がポフンと消えてしまった。

 

Aクラス   霧島翔子 435点

         VS

Cクラス代表 小山友香   0点

 

「・・・・・・ふぅ、桐ヶ谷に教えてもらった技、成功して良かった」

「えっ!?」

『そこまで!Cクラス代表小山、戦死!よって勝者Aクラス!』

『や、やったー!/そ、そんなぁ~!』

 

歓声と悲鳴が辺りを包む。だが、叫びたくなる気持ちも分かる。

 

「・・・・・・お疲れ様、もう少しで桐ヶ谷はここに来る」

「ええ、ありがとう。ちなみにさっきの技?は何なの?」

「・・・・・・あれは─」

「ソードスキルさ。小山さん」

「桐ヶ谷君!?」

「さて、君たちが盗られたものはこれであってるかな?」

「っ!そうよ!でも、どうやって・・・?」

「んー、それは、ヒミツということで」

 

 ずるいな、そんなに良い笑顔で言われたら聞けないじゃない。はぁ、いつでもその笑顔が見られる朝田さんが羨ましい。

 

「じゃ、上手く言って他の子にも返しといてくれな」

「ちょ、ちょっと!戦後対談は?」

「ああ、AクラスはCクラスにペナルティを科すつもりは無いよ。今まで通り楽しく過ごしてくれ」

「・・・重ね重ね礼を言うわ、ありがとう」

「大丈夫だ、問題無い」

「ちなみに朝田さんは?」

「ここにいるわよ」

「・・・」ビクッ!

「よぉ、詩乃」

「い、今どこから!?」

「細かいことは気にしないで、それより、ナルシストがここに接近中よ。大丈夫?」

「・・・・!ええ、握られる弱みが無い今、恐れる物は何一つ無いもの!」

「そう・・・、私達は隠れるわね」

「何から何までありがとう」

「良いわよ。こちらも今回は有意義なモノになったし。そうよね?和人」

「ああ、じゃ俺達は隠れるから」

 

 次の瞬間、桐ヶ谷君達の姿は見えなくなってしまった。それと同時に乱暴に扉は開かれる。

 

「オイ!どういうことだ!?」

「何がよ?」

「なに勝手に戦って勝手に負けてんだ!?って言ってるんだよ!」

「勝手も何もしょうがないじゃない。貴方と手を組むよりもAクラスと模擬戦争する方が有意義かつ、利益があったのだから」

「利益だと!?」

「ええ、例えばこの貴方に盗られた貴重品とかね」

「そ、それをどうやって。ロッカーに厳重に入れていた筈なのにっ!」

「残念だったわね。もう、用は良いかしら?なら、早くここから出ていきなさい!」

「何だと!Cクラスの分際で!」

「《Cクラスの分際で!》?よく言うわよ犯罪者が!」

「は、犯罪者だと!?」

「そうよ!窃盗、恐喝。あんたがしてるのは立派な犯罪じゃない!」

「そうだぞ、江藤」

「「西村先生!?」」

「話は朝田から聞いている。今からお前に常識、道徳を叩き込んでやる!さあ、行くぞ」

「う、うわぁぁぁあぁぁぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────後に聞いた話によると、生徒指導室で西村先生により徹底的に授業が行われたそうだ・・・・




 ここまで読んでくださりありがとうございます!
それでは、また今度!


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Bクラス戦、終結

 どうも!Argoです!
前回、お気に入りや、評価してくださった皆様ありがとうございます!これを励みに頑張ります!


 時間は少々遡る

 

────────────────────

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

「よし!開始だ!」

『うおぉぉおおぉおお!』

「わしに続くのじゃ!」

『ひゃっほぉー!』

 

 士気は十分の様だ。・・・・秀吉の掛け声の後のヤツらがおかしいのは気のせいだろう。

うん、気のせい気のせい。

 

「のう、雄二。わしの所だけテンションがおかしい気がするのじゃが・・・・」

「き、気のせいだ秀吉!さあ、行け!ヤツらはお前の指示を待ってるぞ!」

「お、押すな雄二。」

 

 秀吉は勘が鋭いなぁ、さて。俺はここで情報の整理でもするかね。

あ、そうそう。

 

「おい、えっと何だっけ?そうだ須川!!」

「おい、今俺の名前忘れてなかったか?」

「いや、そんなことは無いぞ。それより、もしFクラスの野郎どもが逃げそうになったら《逃げたらコロス》と伝えてくれ。

あと、秀吉に《士気が下がったらBクラスの江藤は女子を泣かせていると野郎どもに伝えろ》と伝えてこい。いいな?」

「はっ!」

 

 さて、これで前線は保たれる。あと、考えられるのは江藤による妨害だな。どうでるかね、お手並み拝見と行こうじゃないか。

 

「と思ってたのは良いもののまさか協定を持ちかけられるとはな」

 

今、俺は視聴覚室へと向かっていた。

Bクラスに

・午後五時になっても過ぎても決着がつかなかった場合、試召戦争を明日へ持ち越す。

・なお、その間─午後五時~明日の朝8時─に試召戦争に関係する一切のことに関わってはいけない。

関わった場合協定違反とみなし、すぐさま攻撃を開始する。

という内容の協定に判を押すためだ。護衛はいない。判を押すに当たって護衛の同行は認めないと言われた為だ。

なぜ、こうも危険を冒してまで印を押そうとしているのかというと相手の罠にワザとひっかかるためだ。俺が調印に行っている間にヤツは必ず何らかの行動を起こす。それを見極める為だ。

あ?島田と姫路の為じゃないのか?だと?アイツらはそんなか弱く無いだろ。か弱い女子はお人好しの男子を釘バットを持って追いかけたりしない。っと、ついたな

 

コンコン

「Fクラス代表。坂本雄二だ」

「入ってくれ」

「失礼する。・・・よぉ、根本。」

「よ、坂本。すまんなうちのが迷惑かけて」

「いいさ、お前はしっかりクラスを纏めてんだからよ」

「さて、世間話はそこまでです。調印の立ち会いは第2学年主任、高橋が見届けます」

「俺達Fクラスはこの調印を受け入れる」

「分かりました。では、この用紙に名前と印を押してください」

「ああ・・・・・。よし、これでいいか?」

「はい、確かにではこれで調印は終了します。先に坂本君から退室してください。各自、教室につくまで奇襲は認めません。

そのような事が確認された場合。奇襲した生徒を生徒指導室へ強制連行します。いいですね?」

「「はい」」

「それでは戻って下さい」

「失礼した」

 

さて、教室はどうなってるかな。

 

「雄二!どこに行っておったのじゃ!お主がおらぬ間に教室が・・・・!」

「ほう、こう来たか。」

 

そこには、ただでさえボロいちゃぶ台と座布団がさらにボロくされ、鞄や畳に傷をつけられていたり鞄の中を荒らされた跡があったりと色々だった。

 

「ふむ、秀吉の鞄はまず大丈夫だろ」

「む?ほ、ほんとじゃ。何故だ?」

「そりゃ、あれだろ学園のアイドルの持ち物荒らしたりなんかすれば学園中の非リアに叩きのめされるからだろ」

「誰が学園のアイドルじゃと!?」

 

 後ろでワシは男というのに!と憤慨している秀吉をよそに無事な座布団とちゃぶ台を自分のと交換していると天井から康太が降りてきた。

 

「うおっ!康太か、どした?」

「俺もいるぞ」

 

なんとなんと桐ヶ谷までいた。

 

「にしても、天井裏って結構綺麗だな」

「おい、桐ヶ谷。何でお前がここにいる?」

「んー?模擬試召戦争が終わったから。

あ、そうそう小山さん達の貴重品は取り返したから安心しろ。十分に戦ってくれ」

「おいおい、それだと取り引きの意味が」

「あー、それなら今度ジュースでも奢ってくれ。それで貸し借りナシだ」

「はぁ~、分かった。それだけ言いにここに来たのか?」

「いーや、発破をかけに。早く終わらせてくれよ?じゃないと、クラスの人達にずっと勉強教えなきゃいけなくなるし、それにこのままだと昼寝できない」

「昼寝って・・・、分かったよ。なら、ソッコーで終わらせてやる。康太、大島は確保したか?」

「・・・・・・・滞りなく」

「よし、十分Bクラスのやつらは引き付けたな?秀吉」

「もちろんじゃ」

「康太、予定通り、窓から突入しろ!

秀吉、須川からの伝言の最後の切り札は使ったか?」

「まだじゃ」

「よし、ならBクラスの出入口で戦ってる奴らに伝えてくれ、そうすれば奴らは自爆も厭わず敵を倒してくれるハズだ」

「了解した!」

「桐ヶ谷、見てろ5分で片付く」

「・・・・」

「桐ヶ谷?」

「・・・・ZZZZZ」

「寝てやがる!」

 

よし、後で少し仕返ししてやろう。場合によっちゃダメージは図りしれんが。そんな下らない事を考えていると放送が流れた。

 

『そこまで!Bクラス代表、根本恭二戦死!よって勝者Fクラス!』

『「よっしゃあ~!」』

「よし、計画通りだな。」

 

そう思っているとドアがノックされた。

 

「何だ?・・・・ああ、朝田か。桐ヶ谷ならここにいるぞ」

「やっぱり・・・・。はぁ、和人!起きなさい!教室に戻るわよ!」

「んん・・・、あと5」

「5?」

「50年」

「「長いわ(よ)っっ!!!」」

「そこは普通5分だろう!」

「そんなに寝れるわけ無いでしょ!こち亀でも、四年間に1度は起きるわよ!」

「んん~、どうしたんだ?詩乃?落ち着いて・・・、ほら、よしよし」

「・・・・////。じゃなくて!起きなさい!和人!!!」

「わぁっ!なんだよ!?どうした!?敵襲か!!??レジェンダリーウェポンでも見つかったのか!?新しいクエストでも見つかったのか!!??」

「起きたら敵襲って・・、ここは現実だぞ」

「落ち着いて、和人。試召戦争が終わったから教室に戻るわよ」

「なんだ、分かったよ。ふぁ~、ねむ」

「邪魔したわね、坂本君。」

「いや、じゃあ俺もBクラスに行かないと」

 

 こいつら、もう夫婦でいいじゃん。てか、桐ヶ谷よくこんなとこで寝れるな。

 

「ん、ここがBだな。じゃあな桐ヶ谷夫妻」

「「まだ夫妻じゃないっ!!」」

「まだなら問題ないな」

「「っ!/////」」

 

この二人、夫婦ネタ使うといじりやすいな反応も面白いし、桐ヶ谷にいじられたらこれでからかうか。

 

ガラガラ

「失礼する」

 

さぁ、戦後対談の始まりだ───




 ここまで読んで下さった皆様、ありがとうございます!
次回も、楽しみにして頂ければ嬉しいです!


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戦後対談&恐怖パニック

 お久しぶりです。前回、お気に入り登録してくださった皆様ありがとうございます!


「さて、嬉し恥ずかし戦後対談といこうか」 

 

 お、明らかにBクラスのテンション下がったな。Fクラスの野郎共は女子に反応してうるさい。

 

「だが、まぁ。俺も鬼じゃない、そこでだ。あることを条件に設備の交換を見逃してやってもいい」

『おい!なんだよ!それ!』『横暴だ!』

「黙れ!もし、ここで設備を交換すればお前らはここで満足してしまうだろう!」

『ギクッ!』

「・・・・・その条件は?」

「なーに、簡単さ。この女子の制服を江藤が着てAクラスにBクラスはAクラスに対して試召戦争を仕掛ける用意がある、と。言って来ればいい。無論、宣戦布告はするなよ。

あ、後女口調で」

「バ、バカ言えっ!何で俺がそんなこと!」

「分かった。その条件、受け入れる。」

「だ、代表!!???」

「任せて!意地でも着替えさせるわ!」

「や、やめろ!そんなことするくらいなら設備を交換したほ、ぐはぁっ!!」

「黙らせました!」(*`・ω・)ゞ

「お、おう。・・・・・せっかくだ、可愛くしてやってくれ」

「それはムリ。土台と性根が腐ってるから」

「自分の結果が招いたこととはいえ、哀れ」

「・・・・・っ!お、俺はいったぐほぉっ!!」

「ちょっと!大人しくしててよね」

 

 鳩尾に、2発・・・・・。しかもかなり重いヤツを・・・・、あらやだ、女子って怖い。

 

──10分後──

 

「な、なんだ。これは!」

「うえっ!吐き気が止まらない」

「こ、康太。撮ったか?おえぇ」

「・・・・・・コクッ。うぇぇ」

 

 Bクラスは地獄絵図と化していた。死屍累々と転がる屍の山。Fクラスの野郎共はヤツが動いた瞬間気絶し、女子でさえ吐き気を隠す様子もなくグッタリとしている。

 

「もう、いい。早くAクラスに行ってこい。んで、永遠に戻ってくるな・・・・」パタッ

「「ね、根本ぉぉ!!」」

「分かったわよ!行けばいいんざんしょ?」

「お、おうぇぇえ。」

「チクショウ!」

 

 そういって、生物兵器は教室から出て行った。うぇぇ。

 

 

──Aクラス──

 

 

「・・・・・・!」

「どうしたの和人?」

「皆!急いで目を瞑ってくれ!!もしくは色の濃すぎるサングラスを着けろ!いいか!?絶対廊下側を見るんじゃない!」

「ちょっ!和人。見えない、見えないわ」

「来るぞ!3、2、1」

「失礼するわっ!」

 

 野太い女口調の何かがドアを開く。ちなみに詩乃は俺が手で直接目を覆っている。メガネはしっかり外したよ、もちろん。

 

ガラガラ

 

ドアが完全に開かれた。

 

『お、おえぇぇえ』

 

目を塞ぎ遅れた者は手遅れになったようだ。

近くからは──

 

「あ!あれは死んだばあちゃんだ!」

「は、犯人は・・・・え、とう」ガクッ

「え?何!何がどうなってるの!?」

 

恐る恐る目を開ける。そこには地獄が広がっており思ったよりも酷かった。

 

「詩乃、絶対に目は開けるなよ。俺が良いと言うまで」

「え、ええ。分かったわ」

 

ゆっくり、ゆっくりと視線をAクラスのドアに向ける。そこには

 

「う、うわぁぁぁぁ!」

 

ゾンビがいた。

 

「何故だ!何故俺の姿を見て吐くのよ!」

「くそ!必殺!鏡返し!」

「お、おえっ!なんてモノみせやがんだ!」

「これがお前の今の姿だ!目を逸らして当然だろう!!」

「た、確かにっ!」

「さあ!その化粧落として、出直せ!」

「わ、わかった。」

「皆!一旦危機は去った。早く談話室やプライベートルームに隠れろ!ヤツが女装姿のままなのは変わらない!」

『はい!』

 

慌ただしく皆が避難を始める。

 

「あの、和人。これどういう状況?耳まで塞いだから何一つ分からないんだけど」

「ああ、詩乃。皆と談話室に行ってくれ。

これから江藤がくるから」

「ん、それだけの理由とは思えないけど嫌な予感しかしないから大人しく行くわね。ちなみに和人は?」

「もちろん、逃げます!」

『(そりゃそうだ)』

 

と、Aクラスの面々は納得した。

その後、再び江藤が来たが談話室、プライベートルームは内側から施錠できるのでヤツは諦めて帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───ちなみに、江藤の登場で散らかった教室は皆で頑張って掃除したとか。




 ここまで読んでいただきありがとうございます!


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A vs.F《宣戦布告》

 どうもです。今回は短いです。


恐怖、江藤颯の女装襲撃事件の翌日。ヤツを見た者は甚大なダメージを負っていた。

主に精神的に・・・・。

と、まぁそれは置いとくとして。

B vs.F戦はAクラス首脳陣の予想通り、Fクラスが勝利する、という結果に落ち着いた。

ヤツが女装でAクラスに襲撃したのは教室の交換とヤツの犠牲を天秤にかけた結果である。かくして、Fクラスは計画通りに事を進めていったのである。

 本日の出来事もまたその一部───

 

コンコン

 

 Aクラスの戸がノックされる。今は朝のHRがちょうど終了した時間。ここ最近、試召戦争により授業が依然として進んでおらず、今日ようやく始まると思っていた所に来訪者が。

 Aクラスの代表、桐ヶ谷和人が静かに入室を促す。彼の傍らには彼をSAOで支えてきた少女が見守り、寄り添うようにいる。

 

「どうぞ」

「失礼する!」

 

 Aグラス代表の許可を受け、赤髪長身のガタイの良い生徒が同クラスの見知った少年二人を引き連れAクラスに入室する。

 

「遂に来たか、坂本。」

「おう、分かってるようだがルールなんでな。FクラスはAクラスに試召戦争を申し込む!」

 

 いつもの態度とは違い、代表という名に相応しい貫禄を持ち、戦争の引き金を引いた。

 

「だが、ただの試召戦争では、俺達は勝てない。そのため変則的な試合の提案をしたい。」

「具体的には?」

「5対5の代表者戦だ。勝ち抜きは無し。教科選択は1試合ずつ決める。選択権は・・・・・」

「そちらに全て譲ろう。」

「願ってもない条件だが良いのか?」

「ああ。負けるつもりは毛頭も無いからな」

「言ってくれるじゃねぇか・・・・!」

 

 駆け引きも何も無い。絶対に負ける事は無いとでも言うように桐ヶ谷和人は科目選択権を手放した。

 

「・・・・・・条件に付け足しを要求する」

 

 思わぬ声に代表達は発生源の方へ視線を寄越す。威圧感あるその視線に物怖じせず少女(翔子)は続ける。

 

「・・・・・・敗者は勝者の言うことを何でも1つ聞く権利を。これはクラスの勝ち負け関係なく個人の勝敗により得られる。その権利を」

 

 リスクも高いがリターンも高い。そんな条件の追加要求を受け代表達はもう一度向かい合う。

 

「俺は構わない」

「俺もだ・・・・、ということは」

「成立、だな。開始の時刻と場所は?」

「5時限のチャイムから、先生・・・・」

「学園長が、学園の紹介としてホームページに載せる為Aクラスでやれ、だそうですよ」

「という訳だが、良いか?」

「ああ。異論は無いさ」

「そろそろ、授業が始まるな。ギリギリまで失礼した。」

「いや、大丈夫だ。」

 

 代表達の雰囲気に呑まれていた教室だったが、坂本が退室したことにより空気が緩んだ。

 

キーンコーンカーンコーン

 

授業開始のチャイムが鳴る。

 

「起立、気をつけ、礼!」

 

妙な雰囲気のまま、日直の号令の下、今年度初の授業が開始したのであった。




 読んでくださりありがとうございます。
前回、お気に入り登録等をしてくださった皆様ありがとうございます!


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A vs.F《第1回戦》

 どもです!遅くなりましたが心の広いお方はお読みください。


翌日

 

「それでは、試召戦争を開始します!クラス代表は私の前にて、握手を。」

 

 迎えた今日はA vs.Fの試合。他の2年生クラスもこの試合をモニターやタブレット端末で観ている。

両クラスとも負ける気などサラサラなく。むしろギラギラと試合を待ちわびていた。

審判の高橋教諭のもと、戦いの火蓋は切って落とされた。

 

「手を抜くなよ、坂本」

「たりめーだ。桐ヶ谷」

 

 代表の二人が表面上穏やかに握手をかわす。しかし、眼は笑ってなどいない。

数瞬の駆け引きを終え、互いに陣営に戻る。

 

 

「1試合目、両クラス代表者は前へ!」

「はい!」

「分かったのじゃ!」

 

 迎えた1試合目はAクラスからは木下優子が、Fクラスからはその弟の木下秀吉という、姉弟対決となった。

 

「頼んだ、優子さん。」

「任せて、桐ヶ谷くん」

「姉上、負けるつもりは毛頭無いぞ!」

「上等!それでこそ、やりがいがあるわ!」

 

 見た目そっくり、まさに瓜二つの姉弟はその顔に似合わない挑戦的な表情で向き合う。

 

「本当は成長したことを見せるために別の教科にしたいところじゃが、いかんせん、この勝負は負けられん!高橋女史、古典でお願いする!召喚!」

「なめないでよね、秀吉。私だって、Aクラスに来て、自分の小ささを知ったのよ!

だからこそ!それを教えてくれたクラスの為にも負けるわけにはいかない!召喚!」

 

Aクラス 木下優子  413点

          vs.

Fクラス 木下秀吉  420点

 

「驚いたのう、姉上は古典が苦手じゃったろうに。ここまで伸ばすとは」

「ええ、苦手だったわ。苦手だから、勉強するのよ、友人や先生達の手を借りてね」

「それでは、始めて下さい」

 

 話が一段落したのを見計らい、高橋先生が試合解除を宣言する。

 

「姉上!覚悟!」

「喋る暇があるならこっちから行くわ!」

 

先手は優子さんだ。優子さんの召喚獣の獲物はランスだ。ランスの扱いはほぼ細剣と変わらない、つまりは突きがメインで斬撃には向いていない。対して、秀吉の獲物は薙刀、間合いを詰められなければリーチを活かしてじわじわ削れるだろう。

そして、技術は互角だ。どちらが勝っても、どちらが負けてもおかしくはない。

 激しい打ち合いは続く。

優子さんが間を詰めれば秀吉は直ぐ様持ち手を解体し、間合いを調整する。逆に秀吉が連続で斬ろうとすれば優子さんは最小限の動きでいなす。

そんな一進一退の攻防は続き、両者は同時に後ろに下がる。

 

Aクラス 木下優子  375点

          vs.

Fクラス 木下秀吉  380点

 

 完璧に防ぐことはやはり難しいらしく、互いが高得点であるためにかすっただけで少なくない点数が削られている。

 

「やるじゃない。まさかここまでとはね」

「姉上こそ!たった1度しか試召戦争をしてない割には技術は高いようじゃが?」

「・・・・端的に言えば桐ヶ谷君のお陰よ。

ねえ、秀吉。」

「なんじゃ?」

「私はもう出し惜しみしないわ。負けたく無いならあんたも腕輪を使うことね」

「・・・・!受けて立つ!」

「《アイシクルランス》!」

「《模倣・アイシクルランス》!」

 

 優子さんが腕輪を使い、氷の槍を秀吉へと放つ。しかし、秀吉の腕輪能力《模倣》によってそっくりそのまま氷の槍が放たれた。

 

「これは・・・・・」

「削り合いになりそうね。あとは、どれだけ命中するか、数に任せても当たらなければ結局は意味は無いものね。」

「ああ、ま、それがこのままこのスキルを使い続けた場合。だけどな。」

 

 その時、戦局は動いた。

 

「・・・《追跡》」ボソッ

「なっ!追ってきたじゃと!?ハッ!」

「無駄よ、その槍はどこへ逃げようとターゲットを追い続ける。たとえ、召喚獣が戦死したとしても、槍さえ残っていればずっとね」

 

 優子による何らかの技により氷槍が秀吉を追うのだ。氷槍を模倣で相殺させようとするが、的が小さいので当たりにくい。

 

「へぇ・・・。アンタ、もしかして模倣する相手の口から聞き、見た技じゃないと模倣できないのかしら?」

「・・・・流石じゃな。その通り、ワシの技には制限がある。しかし、ワシは1度も『オリジナル技が無い』とは言っておらんぞ!」

「なんですって!?」

「《鎌鼬・焔》」

 

 秀吉から放たれる焔の斬撃は氷槍を次々に破壊していく。

 

Aクラス 木下優子  164点

          vs.

Fクラス 木下秀吉  159点

 

 秀吉のオリジナル技はさすがに消費点数が大きかったらしく、優子よりも僅かに点数は劣っていた。

 

「・・・・やるわね。秀吉、次で決めましょ」

「承った!」

 

 双方、次々に氷槍や焔を用意する。

周囲は白と紅が目立つ異様な空間が広まった。点数のギリギリまでどんどんそれらを生み出していく。

 

「「・・・・・!」」

「《追跡》!」「《鎌鼬》!」

 

 同時にそれらは放たれる。穿ち、斬り。

徐々に数は減少していく。

 

「はぁぁっ!」

「なに!?」

 

 優子の召喚獣本体も秀吉の本体へと襲いかかる。

 

「くっ!なるようになれっ!《追跡》!」

「なっ!」

 

Aクラス 木下優子  0点

          vs.

Fクラス 木下秀吉  9点

 

 秀吉が殺られたかと思われたが最後の悪足掻きが功を奏し、秀吉にランスが当たるよりも早く、優子に斬撃が当たり

 

「勝者、木下秀吉!」

 

秀吉が勝利した。




 追跡はホーミング。鎌鼬・焔はかまいたち・ほむらと、お読みください。
前回、お気に入り登録等をしてくださった皆様ありがとうございます!
では、またの機会に!


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A vs.F《愚か者》

第1回戦は僅差で秀吉が勝利した。

 

「ごめんなさいね。負けてしまったわ」

「大丈夫だ。君が後悔してないならそれで良いと俺は思う。」

「そうよ、良いものを見せてもらったし。

お疲れさま。後は任せなさい。」

「・・・ありがとう」

『第2試合を始めます!代表者は前へ』

 

 強者は挫折を味わってより強者となる。

彼女はこれからもっとずっと強くなることだろう。

 

「詩乃、頼むよ」

「任せなさい。30秒で片付けてやるわ」

 

 そう言って、詩乃は特設リングへと歩いていく。

 

「随分と余裕そうじゃない」

「当たり前でしょ、貴女じゃ役不足も良いところよ」

「ふんっ!今に見てなさい!高橋先生、数学でお願いします!」

「承認します」

「「召喚」」

 

      数学

 

Aクラス 朝田詩乃  ???点

       vs.

Fクラス 島田美波  218点

 

「ふふん!どう?数学はBクラス並はあるんだから!」

「はぁ・・・・。あんたバカでしょ?いえ、愚か者と言い直すべきかしら?バカでも分かることをあんたは分かってないものね。」

 

 遅れて詩乃の点数が表示される。

 

      数学

 

Aクラス 朝田詩乃  795点

       vs.

Fクラス 島田美波  218点

 

「なっ・・・・!」

「あんたが今相手してるのはAクラス。それも、学年次席よ?Bクラス程度の点数で相手になるわけ無いじゃない。その上、操作技術も大差ないんだから」

「くっ・・・!やぁっ!」

「・・・・・遅い。」

 

 勝敗は静かに決した。

飛び掛かってきた島田の召喚獣が眼前に来た瞬間、体を少し右にずらし透き通るような水色の片手剣を島田の召喚獣の首に添える。

 後は簡単だ。島田の召喚獣は勢いを止めれずにそのまま通過。召喚獣の首はキレイに首を舞った。

 構えを解いた詩乃の召喚獣は剣を左右に払い、背中の鞘に納刀する。

 

      数学

 

Aクラス 朝田詩乃  795点

       vs.

Fクラス 島田美波  0点

 

 

 

『『・・・・・・・』』

「しょ、勝者Aクラス朝田詩乃」

「ま、当然よね」

 

いち早く我に返った高橋先生が勝者の名を呼ぶ。さすがに先生も驚いたようだ。

 

「お疲れ様、詩乃。流石だな」

「お疲れ様と言われる程じゃないけど、その言葉有り難く受け取っておくわ。」

「ははっ、そうしてくれ。」

「ま、待ちなさいよ!」

「何だ?」

「こんなの可笑しいわ!無効よ、無効!」

「それはなぜ?」

「決まってるじゃない。こんな点数、不正でもしない限り有り得ないわ!」

「はぁ、1つ教えてやる。テストを受けた際の監督の先生は西村先生だ。そして、俺達は個別にテストを受けた。」

「なっ!本当ですか!?先生!」

「桐ヶ谷の言う通りだ。不正も何も無い。実力で彼らは先程の点数を出している。教職人生を賭けても良い。正真正銘彼らの実力だ。」

「ちっ・・・・・!覚えてなさい!」

 

 ヤツはそれだけ言うとAクラスから飛び出していった。勝手にキレて、勝手に恨んでご苦労なことだ。

 

「はぁ・・・・・・。」

「先生も大変ですね」

「ああ・・・・。アイツもあれで前までは正直な生徒だったんだが・・・・。最近の行動は目も当てられん。吉井が絡むと特にな」

「そうですか・・・。ムリは体に毒ですよ?」

「む、そうだな。気遣い感謝する。」

「いえ・・・・。次の試合が始まりますよ」

「・・・・・うむ」

 

 圧倒的な実力と島田の残念さでなんとも言えなくなった雰囲気は消えないまま、第3試合が始まろうとしていた。




 前回、お気に入り登録及びブクマと評価をしてくださった皆様、ありがとうございます!
 これからも細々と頑張ります!


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A vs.F《ムッツリだけが取り柄じゃない!》

こんにちは、皆さん今年はお疲れ様でした。
私のこの小説に評価をつけて下さった時はとても嬉しかったです。来年もよろしくお願いします!
 良いお年を!


「第三回戦を開始します!代表選手は前へ」

 

 Fクラスからは土屋が、うちのクラスからは久保がでる。

 

「・・・よろしく」

「よろしく頼む。それにしても君たちも大変だね。彼女があそこまで分からず屋とは」

「・・・今日はいつもよりマシ。いつもなら釘バットを取り出している・・・」

「・・・・大変だね。」

「・・・ああ。」

 

 いたたまれない空気になってしまった。

 

「教科はどうするんだい?君は保健体育が得意だと聞いたんだが」

「・・・確かに得意。だが、現国でお願いする」

「承認します!」

「良いのかい?召喚」

「・・・ああ。召喚」

 

 久保の召喚獣は巨大な鎌を持っている。かたや、土屋の召喚獣は脇差し一本のみ。

 

 

      現国

 

Aクラス 久保利光  469点

       vs.

Fクラス 土屋康太  382点

 

 

「・・・勝負っ!」

 

 先手は土屋、速さが明らかに他の召喚獣とは違うので目で追いにくい。だが・・・・・・

 

「へぇ、速いけどいまいちだな」

「私達からすれば遅いのは当たり前よ」

「まぁ、アルゴの速さを知ってればな」

 

 鼠のアルゴ、あの世界で脱出の為にいち速く攻略本を纏め、ゲームクリアの頃にはほとんどのプレイヤーの信頼を勝ち取ったアインクラッド1の情報屋。AGI全振りなので速さもアインクラッド1だ。本人の実力的に攻略組にも参加できるプレイヤーだったが、彼女は終始情報屋を貫いた。

 現在でも彼女は数あるタイトルの中で情報屋として活動している。

 

「元気にしてるかな?」

「アルゴだもの、そのうちひょこっと出てくるに決まってるわ」

「だな!おっと、終わりそうだぞ詩乃」

「あら、点数差があったとはいえよくここまで保ったわね。流石ね。」

 

 

      現国

 

Aクラス 久保利光  199点

       vs.

Fクラス 土屋康太  103点

 

 

「これで最後だ、【鎌鼬】!」

 

 久保の腕輪の能力、鎌鼬が土屋を襲う。

 

「・・・っ!はあぁっ!」

 

 普段の物静かな彼からは考えられない気迫を持った声が聞こえる。迫る鎌鼬ものともせず、久保の召喚獣へと近づく。

 

「くっ!だが、少し足りなかったね。

・・・・・・僕の勝ちだ。」

「・・・無念。」

 

 ぽむん!という音と共に土屋の召喚獣は消えた。

 

      現国

 

Aクラス 久保利光  19点

       vs.

Fクラス 土屋康太  0点

 

 

「勝者、Aクラス 久保利光!」

『うおぉぉぉぉ!』

 

 どうも、昔のことを思い出していた時に近接戦闘があったらしく、両クラス共に大いに盛り上がっていた。

 

「・・・・次は俺か。応援頼むよ、詩乃」

「もちろん、・・・応援する前に決着がつきそうだけどね」

「まぁそう言うなって。じゃ、行ってくる」

「ええ。行ってらっしゃい・・・和人」

 

 黒の剣士は立ち上がる。名誉等は求めず、ただ、仲間の為に。



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A vs.F《最強の代表》

 今年もよろしくお願いいたします!


一回戦はFクラス。続く二・三回戦はAクラスが勝利を納めている。現状、リードしているのはAクラスだ。しかし、相手がとてもFクラスとは思えない程に戦いは白熱していた。

 しかし、彼が動いた。Aクラス代表にして、第二学年首席。過去最高点数を叩き出したSAO帰還者の転校生──桐ヶ谷和人。

 

「来やがったか・・・」

 

 冷や汗を垂らしながら呟くのはもう一人の代表、Fクラスの代表でありながら並みの生徒に凌ぐ学力の持ち主。

しかし、彼は動かない。彼が求める相手は和人ではない。その次だ。故に──

 

「──行け、姫路。」

 

 捨て駒を差し出す。もとより設備になど興味はない。あるのはアイツだけ。

 それを知るものはきっと気付いただろう。彼が変わろうとしないFクラスを完璧に捨てたことを。

 

「何で吉井君じゃ無いんですか。何で何で何で何で何で何で何で何でなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデ・・・」

「うるさいな、黙ってくれ」

「・・・」ピタッ

「勝負は何にしますか?」

「総合点数で、お願いします」

「承認します!」

 

 ヤバイ方向へケープアウトしそうになっている毒女に静かに言う和人。

 

「一つ問おう」

「ブツブツブツブツ」ピクッ

「何故お前は明久を傷付ける?何故お前は対話すれば済むことを暴力で訴える?」

「それは、吉井君が女の子にイヤらしいことをしているからです!」

「具体的には?」

「そ、それはジッと女の子を見つめたりするから、私達がお仕置きをしてあげてるんです!」

「その理論でいくならこの世のほとんどの人間が見つめた相手に対して邪な気持ちを抱いていることになるな、相手と大事な話をしている時も相手と目を合わせる。教師は生徒に異変が無いかを判断するために心配する生徒を見つめる。恋心を持っている子が焦がれる相手に少しでも想いが伝わるようにと相手をジッと見て訴える。

 純粋な気持ちであってもお前はイヤらしいと判断するのだろう?そして、お仕置きと言う名の私刑を下す。

これからもずっとずっと人を傷つけ続けそして、とうとう人を殺す。

自分勝手な理由で、根拠も証拠もなく罪もない人間を、だ。」

「あ、あぁ・・・」

「実に愚かとしか言えないな、アンタ、レッド以下だよ。レッドの中には誰かを守るために、殺しをしてしまったヤツもいた、いきなり襲い掛かられて訳もわからず生きる為に殺してしまったヤツもいた、ソイツはずっと苦しんでたよ、自分が相手を傷つけた。相手を殺したってな。

 だが、お前はどうだ?守るどころか傷つけ、奪うことしかできない。誰かの為って訳じゃない。全部自分の為じゃないか。傷つけても反省もしていない。

 明久が観察処分者になりかけた理由は全部、人を想う気持ちが空回っただけだ。自分の為じゃない。見ず知らずの人間を庇って、助けて、自分の身を砕いて、笑顔で人の為に尽くしてる。それが真っ直ぐ評価に繋がらなかっただけだ。

そんな明久を、レッド以下のアンタがお仕置きだって?笑わせてくれるよ。」

「・・・・・・・」

「そのしおらしい態度も一時だけだ、そして、責任転嫁してまた明久が悪いからと暴力を再開するんだろうな。

 これ以上は言わない。自分で答えを見つけろ。話すのも飽きた。秒で終わらす。せいぜい抵抗しろよ。・・・召喚」

「サ、召喚」

 

 渦巻く怒りを隠そうともせず、淡々と話をした和人。SAOの時のことを思い出していたのだろう。あのエリアに突然放り込まれた少女の苦しみを知っているからこそ彼は怒っている、彼の最愛の彼女も幼き頃に巻き込まれた事件に真っ直ぐ向き合い、ずっと苦しんでいた。楽しく過ごせたハズの時を失い。最後には自分の罪をずっと背負うことを決意した。あの義妹も自分が生きているだけで周りに迷惑をかけると、薬や機械を無駄遣いしすると思い悩んでいた。

 生きる意味について真剣に考え続けてる彼女達を想うとあまりにも簡単に他人を傷つける毒女達を許すことなど到底できなかった。

 

 

      総合科目

 

Aクラス 桐ヶ谷和人  7302点

       vs.

Fクラス  姫路瑞季  4208点

 

 

 圧倒的な差にその場にいた者は均しく戦いた。在学中にこの点数にお目にかかることはそうそう無いだろう。

 

「アンタにソードスキルはもったいないし、腕輪も使う必要もないな。」

 

 そう言うとしゃりんと黒の剣、エリュシデータを抜刀し、次の瞬間には姫路の後方に移動していた。剣を左右に払い、キンと高い音をさせながら納めた。

 

「派手にやったわね、和人」

 

 そんな声が静かに響く。そのとき、誰かが気付いた。

 

 

      総合科目

 

Aクラス 桐ヶ谷和人  7302点

       vs.

Fクラス  姫路瑞季  0点

 

 

「み、見ろ!姫路が0点になってる!」

「は?はぁ!?本当だ!じゃあ召喚獣は?

ヒィッ・・・!」

 

 もう一度姫路の召喚獣を見ると召喚獣は武器も含め輪切りとなり床に落ちていった。

バラバラと散らばるソレはどう見ても元が人型のモノだと一目で分かるものはいない。

 

「・・・先生、終わりました」

「は、はい。勝者、Aクラス桐ヶ谷和人!」

 

 彼はゆっくりと舞台から降りて行った。彼の歩みを遮るものはおらず、真っ直ぐに最愛の彼女のもとへと戻った。

 舞台に残るは、立ち尽くす敗者のみ。

 

 第四回戦は圧倒的な差をつけ、Aクラスの勝利となった。




 和人さんはあの世界にいたからこそ人を傷つけることを絶対に許さないと思うんですよね。


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A vs.F《最終試合》

試召戦争はAクラスの勝利となった。だが、まだあと一試合ある。今回は試召戦争でありながらエキシビションでもあるので五回戦まで行うのだ。

 

「最終試合を始めます。両クラスの代表者は前へ出てきてください。」

 

 落ち着いたのかハキハキとした口調で進めていく高橋先生。Fクラスから坂本雄二がAクラスからは霧島翔子が特設ステージに登る。

 

「科目選択はどうしますか?」

「総合科目でお願いする」

「承認します!」

「・・・・・・「召喚!!」」

 

 ぽむんと小さな爆発に合わせデフォルメされた二体が幾何学模様の陣から現れる。

 

      総合科目

 

Aクラス    霧島翔子  4432点

       vs.

Fクラス代表   坂本雄二   4359点

 

 

「なっ!?」「アイツ本当にFクラスか!?」「な、なぁ坂本って昔神童って言われてたんだよな?」「らしいぜ!」「神童の名は伊達じゃねぇってか」

 

 到底Fクラスとは思えない点数を見せつけられ先程まで針を落とせば大きく響きそうなほど静かだった会場がざわめく。

 

「流石だな翔子。」

「・・・・・・雄二こそ、数年のブランクがあったとは思えない。」

「はっ!良く言うぜ!それだけの点数を取っておいてよ!」

「・・・・・・点数の差はほとんど無いに等しいし、操作技術だってまだ甘い」

「っ!これで甘いってんなら三年生だってまだまだってことになるぞ!」

 

 会話をしながら和人達には及ばないまでもトップクラスに入るだろう操作を続けている。攻撃の速さといったら一般人がどうにか目で追える程度。

 雄二のメリケンサックと翔子の日本刀が高い音を出しながらぶつかり合う。

 

「おらっ!」

「・・・・・・っ!いつの間にっ!?」

 

 流れが変わった。雄二が翔子を圧した時、持っていた武器はメリケンサックではなかったから。

 

      総合科目

 

Aクラス    霧島翔子  4293点

       vs.

Fクラス代表   坂本雄二   4289点

 

 

「点差が更に縮まった!」「見ろよ、アイツが持ってる武器・・・」「あれ?さっきまでメリケンサックじゃなかった?」「だよね?」

「何で両手剣を持ってるの?」

 

 そう。彼の武器は換わっていた。メリケンサックから姫路と同じくらいの大きさの両手剣へと・・・!

 

「・・・・・・もしかして、それが雄二の腕輪の力?」

「ご明察。オレの能力は武器の交換。30点を引き換えに別の武器へと交換することができる。」

「・・・・・・それが、雄二の本気?」

「ああ!同じ武器のままだとお前にパターンを覚えられて反撃されるのがオチだ!だから、一定のペースで交換しようと思ってな、武器の扱い方はそれぞれ違う。攻撃方法を変えれば簡単にはペースは掴めないだろう?」

「・・・・・・確かに、さっきと違って攻撃のパターンが変化した。攻撃も掴みにくい。でも、私の本気はここから」

 

 そう言って霧島さんは両手剣を強く弾く。

そして、日本刀を掲げ。呟いた。

 

「・・・・・・腕輪発動。雷撃!」

 

 瞬間、刀と召喚獣に雷がまとわりつく。そして一瞬で雄二の召喚獣に迫る。

 

「くっ!」

「・・・・・・この雷は一定時間相手に麻痺と持続ダメージを与える。」

 

 先程とは明らかに動きが鈍くなった雄二。点数も少しずつ減少していっている。

 

「・・・・・・命令権は私がもらう!」

 

 ふんす!と息巻く翔子さんは張り詰めていた空気を一気に弛緩させた。

 

「え?」「そこなの?」「えぇ・・・!!」

「あー、確かに命令権を志願したの翔子さんだもんな」

「だったわね、このタイミングでそれを言うとは思わなかったけど・・・」

 

 生徒のツッコミや呆れ声を軽やかにスルーした翔子さんはチャキッと刀を握り直して、思い切り振り下ろす。

 

「・・・・・・えいっ!」

「うおぁ!?」

 

 可愛い掛け声とは裏腹に雷によって強化された刀は先程とは比べ物にならないくらいに素早く雄二の首へ吸い寄せられていく。

が、間一髪で雄二は転がり避ける。麻痺してるとはいえ、動けないわけではないのだ。

 

「・・・・・・雄二、じっとしてて?」

「できるかぁ!」

 

必死に抵抗する雄二は徐々に逃げ場を失う。

 

「・・・浮気した旦那の末路を見せられてるみたいじゃな。」

「はは・・・。激しく同意するよ」

 

 秀吉と明久がポツポツと遠い目をしながら話している。あれだけで済むなら安いものだと思うんだが・・・。

 

「和人、坂本君麻痺から回復したみたいよ」

「お、ホントだ。」

 

 見れば、雄二は追いかけてくる霧島さんから全力で逃げている。

 

「くっ!死なばもろともっ!」

「・・・・・・なっ!」

 

 武器をバズーカに替えた雄二は霧島さんに向けて放った。

 ドカン!と大きな音の後に霧島さんの召喚獣はパタンと倒れ、召喚された時と同じようにぽむん!という音と共に消えた。

 

       総合科目

 

Aクラス    霧島翔子  0点

       vs.

Fクラス代表   坂本雄二   32点

 

「しょ、勝者Fクラス!」

 

 妙に静まり返った教室は正気を取り戻した和人が戦後対談の準備を指示するまで破られることはなかった。




 前回、お気に入り登録及びブックマークをしてくださった皆さん。ありがとうございます!
評価もしてくださると嬉しいです。


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A vs.F《戦後対談》

 ヤバイ。入試への緊張で胃が・・・・!!


ここはAクラス、和人の指示によって速やかに特設リングは撤収され、元の姿を取り戻している。

 

「戦後対談を行う。まずは両クラスの今回の代表者出てきてくれ」

「・・・全員出たぞ」

「よし、今回の試合ではクラスの勝ち負け関わらず、試合の代表者の間だけに適用される命令権が賭けられていた。一試合目の勝者から順に命令をするように」

 

「ワシじゃな。では姉上。今後も勉強の指導をお願いする」

「お安いご用よ、任せなさい」

 

 本当にそっくりだな・・・。

 

「次は私ね。あんたは今後どれだけ良い点数を取ろうとAクラスに来ることはできない」

「横暴よ!そんな命令無効に決まってるわ!」

「言うと思ったわ、西村先生。」

「学園長も認めた。自分の行いを悔やめ」

 

 学園長もコイツらには参ってたんだろうなこんな奴らが居たら上がる評判も上がらない。比較的まし?なFFF団に少し入れ知恵してやるか。

 

「・・・・次は俺。俺と友達になってくれないか?」

「もちろんだよ!これからヨロシクね!康太君♪」

 

 気づいたらくっついてそうだな。よし、こっちも入れ知恵決定。

 

「次は俺か。姫路、少しは反省したか?」

「私、私は、何てことを。そうですよね。桐ヶ谷君にああ言われて当然です。」

「・・・」

「それに吉井くんは通報しようと思えばいつでもできました。当たり前です。暴力は法に違反してるんですから。それでも彼はしなかった。優しさに甘えてたんです。」

「なんだ、分かってるじゃないか。」

「はい。私に誰かを好きになる資格はありません、それが分かりました。暴力に逃げてて伝わるわけが無かったんです」

「そこまで分かれば良い。俺からは1つだけ、明久に謝罪するんだ。姫路の処罰は西村先生に任せます。」

「了解した。責任もってその任を預かろう」

 

 正直言うと驚いた、懲りずに喚くものと俺は予想していた。いや、決めつけていた。俺も反省すべきだな。

 そう一人でポツポツと考え、最後の二人に目を向ける。

 

「俺の番だな。・・・・・・いざとなったら何を言えば良いか解らないものだな。ま、迷うのも俺らしくないか。

・・・・・・翔子、遅くなって悪かった。こんな俺を真っ直ぐ好きでいてくれて本当に嬉しかった。だけどそれも今日までだ。」

「・・・・・・な、んで?雄二、私気に障るようなことした?謝るから、嫌いにならないで!」

「ちげぇから泣くなっ!ったく、もう。

・・・好きだ、翔子。あの日からずっと、こんな俺だけど精一杯、お前を守ってみせる。

だから、俺と付き合ってくれ。」

「・・・・・・ほん、とうに・・・?夢じゃない?」

「ああ。」

 

 雄二の返答を聞いた瞬間、霧島さんは雄二に抱きついた。それも泣きながら、彼女がどれだけ雄二を想っていたのかが伝わってきた。未だ泣きながらゆっくりと顔を上げ雄二を見上げて彼女は言った。

 

「・・・・・・よろしくお願い、します」

「おう」

 

 雄二は困ったようにグレーのハンカチを翔子に差し出す。

 

「・・・・・・雄二」

「ん?なんだ?」

「私・・・、やっぱり何も間違ってなかった!あの時も、今まで待ってたのも!」

 

 普段は無表情なその顔に見る者全てを幸せにするような笑顔をただ一人へ向ける。

──ここに新たなバカップルが爆誕したのであった。

 

 しかし、積年の思いが繋がった感動の瞬間に空気を読めずぶち壊そうという輩が数十名。何を隠そう独身の集まりFFF団である!

だが、少々様子がおかしい。

 

「うっ、感動する。ううっ!」

「良かったなぁ!うっ!」

 

 そう、この連中。泣いているのだ。

この悲しき独り身の集まりは翔子が何故そこまで雄二に拘るのかと疑問に思い、独自の調査により大体の事情を知っていた。

現在の心境はさしずめ孫が漸く彼女をつくりその過程を死ぬほど応援した祖父である。

 正直、黒い服着た連中が豪華な部屋の隅で集まり泣いているのはどこからどうみてもシュールであった。

 

「・・・うおっ、負のオーラとまるで我が子にめでたいことがあったかのようなオーラが混ざっててなんとも言えない。」

「う、うっ!っ!な、なんだ?桐ヶ谷か?」

「そうだ、それにしてもどうしたんだ?」

「ずっ、そこは坂本に聞けば半分は分かる。もう半分は自分達が寂しい奴らだな、と思うと目から水が止まらなくて」

「そうか、それなら俺がお前らの評判を上げて女子と仲良くなる方法を教えようか?」

「なにっ!?本当か!?」「俺たちもお前らのようにリア充になれるのか!?」

「ああ。だがお前ら次第だ。俺が言う方法は地道な好感度上げ。でも確実ではある。」

「何でも良い。やってやるぜ!」「独り身の俺達に失うものはなにもない!」

 

 和人は男子達の勢いに少々気圧されながらもその【方法】とやらを口にした。

 

「簡単だ。お前らは人に対して敬意をもて、そして誠実でいろ。正直、嫉妬や私怨で動くお前らは見苦しかった。そのエネルギーを周囲のために使うことで今の評価からは確実に上がる」

「た、確かに。俺たちは一方的に感情を押し付けていた」「あんなことをしていれば普通は嫌われて当然だよな・・・」

 

 そう。和人が言ったのは人としての在り方だった。真っ当な評価を得たいのなら自分が変わるしかないのだ。

 当たり前のことだが、和人が言うと妙な重みが言葉にあった。FFF団はゆっくりと理解していったようで互いに頷き合い。一斉にバサッ!と黒い装束を脱いだ。

 

「よし、お前ら!これからは人の為に動くんだ!」「そうだな!今までの迷惑分も俺達の行動で払っていくぞ!」

『うおおおおーーー!!!』

 

 須川が声を掛ければ団員達がしっかり返した。眼には光が宿っている。団員達は一斉に駆け出し、ボランティアを開始するのであった。

 

「さて、俺たちAクラスからの要求は今回試合に出た島田を除く代表者のAクラスへの編入だ。話はつけてある、三日後に行う試験で良い結果を出せばこちらに編入しても良いとのことだ。健闘を祈る」

 

 要求というにはあまりにも一部のF側に利があるものだったが雄二の本来の目的は達成されたので断る理由もない。Fクラス側はその条件を飲み込むのであった。

 

───────

───────────────

───

 三日後、見事島田を除いた四人は好成績を叩き出し、Aクラスへの移籍は完了したのだった。




 前回、ブクマやいいねをくださった皆様ありがとうございます!


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清涼祭!
学園祭に向けて


 


Aクラスに新たに生徒が加入して1週間経った頃、学園は生徒の楽しそうな声に包まれていた。

 

「───ということで1日目は執事&メイド喫茶、2日目はコスプレ喫茶で良いか?」

 

という問いかけに対して賛成の声が次々と上がる。

 

「よっし!清涼祭の最優秀店舗を目指して頑張ろう!皆!」

『おおっ!』

「それじゃあ皆持ち場についてくれ!」

 

 代表の指示を受け、各自資料や道具を片手に散らばる。

 

「和人、この学園予算の額が可笑しくないかしら?明らかに普通の学校を越えている気がするのだけど」

「詩乃、そこは気にしたら負けだ。というか、それを言い始めたら俺達の教室だって充分に可笑しいぞ」

「そうね・・・。深く考えないことにするわ。

それにしても───」

 

窓の外へと詩乃は目線を向ける。

 

「──Fクラスはあれで大丈夫なのかしら?」

「ゴミ拾いしてるな・・・。あ、西村先生が走ってる。・・・・すげぇ、どうやればあんなに統率のとれた行進ができるんだ?」

「Fクラス最近変わったわね、和人は何故か知ってる?」

「・・・・・・さぁな」

 

 

────Fクラスside────

 

「お前らぁ!」

「おい、西村先生がいらっしゃったぞ!」

「・・・何やっとるんだ?」

「見ての通りゴミ拾いです。それにしても、ポイ捨てをするなんてけしからんやつらですね。」

「ああ。そうだな。しかし、今は授業中だ。後の時間にしなさい」

「分かりました!皆、撤収だ!」

『了解です!リーダー!』

「せいれーつ!いちに!」

 

 綺麗に並び終えるとFクラスのメンバーは西村先生を先頭に玄関へと入っていくのであった。

 

─────────────

 

 

「・・・うん、やっぱり桐ヶ谷くん何かしたでしょう?」

「いや、ちょっとアドバイスをしただけだ。まさかここまで効果があるとは思わなかった・・・。彼らは随分たんじゅ、純粋なんだな」

「ねぇ、桐ヶ谷君。今単純って言いかけたわよね?」

「ははは・・・、そんなこと無いよ。優子さんの気のせいじゃないか?な、詩乃」

「さあ、どうでしょうね?」

「・・・・・・・・・・・。」

 

 

「ねぇ、雄二」

「何だ、明久?オレは何気に予算決定やら、チラシのデザインやらで忙しいんだが」

「もしかしたらだよ?」

「おう?」

「僕らの代表って僕らが思ってるよりももっとスゴいのかもしれない」

「んなことねぇ、・・・って言いたいところだけどよ。生憎アイツらは底が見える気がしねぇからなぁ・・・」

「そう考えるとさ、僕らの代表ってやっぱりチートスペック・・・」

「・・・もう言うな明久・・・・・・。これから更にチートさが発掘されたらどうするんだ!?」

「雄二・・・、それはフラグだと僕は思うんだ・・・」

「・・・」

「・・・」

「「敵に回らないことを祈ろう(か)!!」」

 

 裏でこんな話があったことを本人達は知るよしもない。




 受験で余裕が無いので今回はここまで・・・。


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学園長の依頼

 お久しぶりです。色々、終わったので投稿を再開します!感想や評価、感謝です!


清涼祭の準備が進む中、Aクラス代表桐ヶ谷和人は学園長に呼び出されていた。

 

「えーと、ここか?」

 

 目の前には立派な扉が。中からは争うような声が聞こえてくる。

 

「──を、────として──」

「あ──、許可────」

「・・・とりあえず入室するか」

 

 和人は少し強めにノックして声が止んだのを確認し、氏名とクラスを言って入室する。

 

「2年Aクラス、桐ヶ谷です。学園長に呼ばれ来たのですが、入ってもよろしいでしょうか?」

「いいさね、入りな」

「失礼します」

 

 重厚なドアを開けて中に入ると立派な事務机に座る学園長の藤堂カヲルと教頭の竹中がいた。

 

「桐ヶ谷君か、君の話は聞いている。とても優秀なそうだね。私も君の活躍に期待しているよ、それでは失礼する」

 

 竹中は和人にそう言うと部屋の隅の観葉植物をチラッと見て退出していった。

 

「なるほどな・・・、ユイ、あれの機能を止めてくれるか?」

「お安いご用です!パパ!データはどうしましょうか?」

「んー、ユイの采配に任せるよ」

「了解しました!」

「・・・桐ヶ谷、その子は?」

「・・・・・・MHCP、メンタル ヘルス カウンセリング プログラムのユイです。あの城で出会った俺の娘です。本当はもう一人いるんですけど今はきっとクエストでもしてるんじゃないでしょうか」

「パパ!終わりました!機能停止くらいはお手のものです!データの転送先はこの学園の教頭室に設定してありました。

ところで、パパ、そちらの方は?」

「ああ、俺達が通っている学園の長だ。」

 

言いながら画面を学園長の方へと向ける。

 

「そうですか、ご紹介に預かりました。パパの娘のユイと言います。ちなみにママは詩乃さんです。スマホの中からで、すみません。」

「構わないさね」

「学園長、お話とは?」

「ああ、アンタのプログラミング技術の事は聞いてるよ、それの技術を見込んで頼みたいことがある」

「なんでしょうか?」

「この腕輪の欠陥を直してほしいんだよ。もちろん報酬は弾むよ」

「しかし、試験召喚システムは口外出来るようなモノでは無いのでは?もし、俺が軍にでも情報を売ればどうするのです?」

「確かに試験召喚獣の力は圧倒的だし、手に入れられれば戦争は免れないだろう。でも、アンタは命掛けで戦うということの意味は知ってるだろう?

まぁ、それでも売ったとすればアタシの見込み違いだったというだけさね。」

「食えない人ですね。いいです、請け負いましょう」

「データはどこに送ればいい?」

「そうですね、ユイ。頼めるか?」

「ハイ!パパのパソコンまで護送すればいいですよね?」

「そうだ。できるか?」

「もちろんです!ユイにお任せください!」

「とのことなのでユイに渡しておいて下さい。用件はこれで終わりでしょうか?」

「ああ」

「では、失礼します。あ、そうだ。

学園長、盗聴にはもっと慎重になられた方がいいかと。」

「なっ!?」

 

 ガチャンと戸を閉め、静かな廊下にカツカツと和人の歩く音が響く。

 

「まさか試験召喚システムについての研究データまでくれるとは・・・。この機会に色々試してみよう。」

 

 楽しみが増えたとでもいうように和人は無邪気に笑った。




 分かってるとは思いますが、腕輪とはアレのことです。それでは失礼します。


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仲間と近況報告

 どうも、Argoです!

学校が休校となり、する事がないのでずっと動画見て過ごす日々・・・。暇ですわ・・・


学園祭まで数日となったある日、御徒町の知る人ぞ知るCLOSEの看板が掛かっているカフェで若者たちが集まっていた。

 カランコロンとドアベルが鳴る。

 

「おう、来たか」

「悪いな、遅れた上にわざわざ貸しきってもらって」

「気にするな、お前には借りがあるからな」

 

 ハハッと黒人の大男──エギルは豪快に笑い、和人達を迎え入れた。

 

「それに和人さん達はこの中じゃお家が一番遠いですし、しょうがないですよ」

「そうよ!それより、早速詩乃達の学校の話を聞かせてちょうだい!」

「こんにちは、キリト君、詩乃のん、木綿季、藍子ちゃん、直葉ちゃん」

「ええ、こんにちは明日奈。あなた達の話も聞かせてよね?」

「もちろん!さ、座って!」

 

 久しぶり再会に皆騒がしかった。エギルは飲み物の準備を、和人と詩乃はカウンターに座ろうとしたのだがそこには先客がいた。

 

「こんな時間から飲んでていいのかよ、クライン。」

「うっせぇ!こちとら、良い歳したオッサン達の接待で疲れてんだよ!それに比べてオメーはよぉ、良いご身分だな彼女もいて、女子に囲まれて」

「彼女が欲しいならまず昼から飲むのをやめたらどうだ?」

「くぅっ!これが彼女持ちの余裕かっ!」

「うるさいわよ!クライン。」

「はい、すみません」

 

 この一連流れを見た仲間達から笑いが出る

 

「くっそー!エギル!もう一杯!」

「はいよ、飲みすぎんなよ?」

「分かってる!」

 

クラインの背中に哀愁が漂っていた。

 

「さて!そろそろ聞かせてもらうわよ!」

「どんなトコなの?」

「勉強は難しい?」

「学園祭はいつなのかしら?」

「───」

「───」

 

 矢継ぎ早に質問が繰り出され、その一つ一つに丁寧に答えていると入店の合図であるドアベルが鳴った。

 

「やぁ、キリトくん。久しぶりだね」

 

 胡散臭い笑みを浮かべたその男は総務省の役人菊岡誠二郎だ。SAO事件では対策本部の長を勤め、キリト達に依頼と厄介事を運ぶ男。メンバーからの印象は良くないと言える。

 

「アンタは呼んで無かったと思うんだがな菊岡さん」

「まあまあ、そうツレない事を言わないでくれよ。今回は君たちにとっても悪くない案件だと思うよ?」

「何だと?」

「この場にいるキリト君シノン君以外の学生諸君にとって、だけどね。いや、二人にとっても良いことかな?」

 

 学生メンバーが一斉に菊岡に視線を送る。

 

「そう急かさないでくれ。」

「なら勿体ぶらずに早く言ってください」

 

 キラーンと菊岡の眼鏡が光る。

 

「君たちもキリト君と同じ高校に通いたくはないかい?」

「「なっ!!??」」

『「「その話、詳しく!!!!!」」』

 

 二人は驚き。他のメンバーは食いついた。

 

「なるほど、つまり・・・」

「生還者の学生が普通の学校でどう受け入れられるかを知るために、」

「学生であり、尚且つ面識のある私達に依頼したということですね?」

「ああ、そう受け取ってもらって構わない。僕としては普通の学生として楽しく過ごして貰いたいんだ、でも、理由付けしないと君らは信じてくれないだろう?」

「それは貴方の態度次第です。でも、皆と過ごせるなら喜んで、特別クラスも設けるなんて随分と手厚いわね」

「君ら何だかんだ言って成績良いし、逆にこんな成績のヤツらをAクラスだけに集中させるくらいなら新しくクラスを作った方が生徒の意欲も高まるだろうとは藤堂氏の言葉だ。今回の提案も元は彼女からの無茶振りでもあるんだよ」

 

 珍しく真剣な表情で菊岡はそう言い席をたった。

 

「さて、これ以上君達の集まりの妨げになるのも忍びない。返事はいつでも良いから考えておいてくれたまえ」

「いえ、その必要はありません」

「ボクも返事は決まってるよ!」

「私達も同じです」

「ほう?それは?」

「もちろん、転校するわ!学年を越えて皆で同じクラスなんて素敵じゃない!」

「私も!試験召喚戦争なんて興味しかないわ!」

「君たちならそう言うと思ってたよ。早速準備をしよう。手続きは此方で進めるよ」

 

 そう言うと菊岡は店から出て行った。

 

「よーし!こうなったら詳しく学園について教えてもらおうかしら!覚悟しなさい!二人とも!」

 

 そう言うと先程以上に根掘り葉掘り聞かれ、二人は机に突っ伏す。

 

「つ、つかれたぁ・・・!」

「あぁ。でも──」

 

そこで和人は区切り、未だにはしゃいでる仲間達を見る。

 

「──こんな幸せな疲れなら良いかな」

「ええ、そうね」

 

 二人は目を合わせて微笑んだ。

 

 

 

______

──────────

 ̄ ̄ ̄ ̄

 

【おまけ】

 

 

「なぁ、クラインよ・・・」

「待て、言いたい事は分かった。だから、言うな」

「これ、俺たち忘れられてるよな?」

「なあぁぁぁ!言うなぁぁ!」

 

 空気と化した男達が寂しく笑った。




 ここまでお読み頂きありがとうございました!
ここで皆様に質問です。私はサチが生きていることにして、この作品に出したいなと思っています。
 pixivにて投稿させていただいている【SAO+α】という作品でサチは生存している設定にしてまして、私としてはこの作品と【SAO+α】がちょっとした流れになっていれば面白いかと思っているのですが皆さんはどうでしょう?是非、ご感想を下さると嬉しいです。
 アンケート機能も試してみますのでもし、機能を使いこなせたらお答え下さると幸いです。

 最後に、ブックマーク、お気に入り登録や、評価をしてくださった皆様ありがとうございます!凄く嬉しいです!これからもよろしくお願いいたします!


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文化祭準備(のはず)・・・

 どもArgoです。アンケートに思ったよりも沢山答えてもらって嬉しい限りです!これからもよろしくお願いします!


清涼祭が五日後に迫ったその日、Aクラスは先日と比べ物々しい雰囲気に包まれていた。

 原因は言うまでもない、普段この場にいることの出来ない者が突然Aクラスに突撃してきたからだ。ノックも名乗りも無く、それどころか大きな音を立て周りを威圧するように。

 

 ここまで言えばお察しいただけるだろう。

何を隠そう島田美波だ。後ろには引き留めようとする新生FFF団と姫路瑞希がいた。

 

「・・・何の用だ島田美波」

 

 フリーズした面々の中で最初に正気を取り戻したのは我らが代表桐ヶ谷和人。

 

「すまん、桐ヶ谷。止めようとしたが我等は男子。島田とは言え女子に不用意に触れる訳にもいかず!」

「すみません、私も止めようとしたのですが」

 

と、須川と姫路が言う。

 

「・・・いい。今のお前の言葉は信じよう」

「謝る必要ないわよ!二人とも!」

 

和人の声に被せ気味に響いた声は島田のモノだ。

 

「・・・・・・確かに、そこの二人が謝る必要は無いな。むしろ、二人に迷惑を掛けたお前が謝るべきだな。それと、人の言葉は遮らない方が良い。」

「知らないわ!そんなこと!それよりあんたたち協力しなさい!」

 

 ふんっ、と偉そうに腕を組みそんなことを宣う。

 

「何故お前に協力しなければならない?

それに、その態度は人にモノを頼む態度ではないだろう。断ってくれと言っているようなものだ。」

「細かい事は良いのよ!!黙ってウチの指示に従ってればそれでっ!」

 

 和人が静かに注意してもそれを無視して横暴な事を言い出した。これにはA,F両クラスとも呆れて物も言えない。唯一その中で詩乃が口を開いた。

 

「はぁ・・・。あなた本当に人の話を聞かないわね。というか、そもそもこの学校は学力至上主義よ。Fクラス・・・しかも素行不良な人間と成績優秀な品行方正な人間では、もちろん後者の方が発言力がある。あなたの要求が私達の承諾なしで通るわけ無いじゃない」

 

 ひとつ間を置いて続ける。

 

「ま、でも。島田美波以外のFクラス生は歓迎するわ。ね?和人」

「ああ、彼らなら協力しても良い。」

「な、なんでよ!!」

 

 案の定、ヤツが食いついた。

 

「それも分からないのか・・・」

「うっるさいわねっ!!驕って偉そうにしてるアンタ達の考えなんか分かりたくもない!」

 

 その言葉に周りはピタッと静かになった。

そして、誰かがこう言った

 

「・・・出てけよ」

 

 その言葉を皮切りに島田へとA,F両クラスから罵倒の嵐が押し寄せる。

 

「そうだ!」「出ていけ!!」「私達は努力してこのクラスに入ったのよ!」「偉そうになんてしてない!」「何も知らないクセに勝手なこと言うな!」「アンタに何が分かるの!?」「さすがに今のは無いだろう」「我々の立場は彼らを見下だせる程高い場所にはいないぞ」「むしろ、努力し続ける彼らを見習うべきだ」「ここまで理不尽だといっそ清々しいな」「ある意味スゲーわ」

 

 当の本人は罵倒される意味が分からずただ俯いている。

 

「・・・・・・ょ。いいわ、出ていってやるわよ!・・・覚えておきなさい(ボソッ」

 

 島田にしては珍しく大人しく下がった。そして、その時呟かれた言葉を聞いた者はいなかった。

 

_____

────────

 ̄ ̄ ̄

 

「すまない。Aクラスを巻き込みたくは無かったのだが」

「構わない、それにしても大人しく引き下がったな」

「なにかあると見るべきかしら?」

「多少は警戒しておくべきだろうな」

 

 須川の謝罪を聞き入れた二人は相も変わらずクールだ。そんな二人が仲間内ではその鉄仮面を外し、コロコロと表情を変えることを彼らは知らない。

 

「それで、Fクラスは結局どうするんだ?

俺たちの協力は必要なのか?」

「正直有り難いが。俺たちはAクラスに甘えすぎてる。今回は俺達で乗りきってみせる。だから、協力は遠慮する。」

「そうか、頑張れよ」

「ああ、それでは失礼した」

 

 そう言うと須川達は教室を出ていった。

 

「時間が思ったよりも長引いたな。これ以上は予定を組み直さなければならなくなる。巻いていくぞ」

「おうっ」

 

 こうして文化祭準備は和人の主導で順調に過ぎていった。




 文才がほしい。ブクマ、いいね、お気に入りありがとうございます!どうにか完走させるので生暖かい目で見守っててください!


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清涼祭 1日目

どうも、Argoです。前回、お気に入りやこの作品を見てくださった皆様ありがとうございます!
 励みになります!
 サチ生存設定で行くことにしました。
 この作品でのサチのリアルネームは『漣 知優』でいきたいと思います。読み方は、『さざなみ ちひろ』です。
 名字と名前の一文字目を取ればサチになるようになってます。
今回も短いですが、お楽しみ頂ければ幸いです!


晴れた空にパンパンッ!と爆竹の音が響く。一通り鳴った後についにスタートのゴングが鳴った。

 

『では、ただ今より文月学園 清涼祭の開催をここに宣言します!生徒は今までの準備の成果を存分に発揮してください。先生方は各々配置に着いてください。また、特設ステージでは本日と明日の二日間に渡り、試験召喚獣を用いたエキシビションマッチが行われます。興味がおありの方はぜひ、いらしてください!それでは、規則を守り楽しく過ごしましょう!』

 

 『えい、えい、おー!』と言って放送は締め括られた。9時開始にしてはお客さんは多く、広い学園内にお好み焼きやいか焼きが匂い。店をアピールする生徒の声とその熱気がこれでもかと立ち込める。

 

「よし、とうとう文化祭は始まった。今日までの準備は無駄にはならない!店の運営も大切だけどしっかり楽しもう!」

「厄介事があれば先生か和人に相談してちょうだい。力になってくれるわ。」

『了解!』

「それじゃあ始めよう!」

 

 そして、2-Aの扉は開かれた。ちなみに1日目は執事&メイド喫茶だ。接客の基本は霧島さんの家の執事さんやメイドさんに指導してもらった。霧島財閥の名は伊達じゃない。

 

 詩乃と俺はホール担当になった。本当は厨房班に行こうとしていたのだがクラスメイト達が『は?何いってんの?君たちは接客担当に決まってるでしょ?え?自分達よりも適任者がいる?いやいやいや、君たち以上の適任者がいるわけないでしょ。何?文句でも?

うん、無いみたいだね。じゃあ決定☆』となった。・・・解せぬ(´・ω・`)

 というか詩乃のメイド服を俺以外のヤツに見せたく無いんだけど。

という想いも虚しく敢えなく俺達は接客組に放り込まれたのであった。

ということで

 

_______

──────────

 ̄ ̄ ̄

 

「お帰りなさいませ、お嬢様。さ、こちらの席へお座りください(ニコ」

 

 絶賛張り付けた営業スマイルをばらまいております。後ろからの詩乃の視線が怖い。

オーラが出てる・・・。でも、あんなに嫉妬して可愛い・・・。

 

 執事&メイド喫茶は開店早々ほとんどの席が埋まった。最初こそAクラスの設備に興味を惹かれた人が来ていたのだろう。しかし、喫茶で実際に過ごした人が知り合い等に話したりしたのだろう。

 時間が経つごとに設備目当てではなく、2-Aというクラスで受けられるサービス、品を求めて来店するようになっていった。正直言うと、嬉しい。中学とは違う。自分達が主体となって準備してきたものが成功し、人に楽しんで貰える。自分達の力でしてきたからこそ、達成感は計り知れない。

 

 シフトは詩乃と揃えているので二人で文化祭を楽しめる。サチ達は1日目も2日目もどちらも来るらしい。つい先程来たようで、俺達の写真をこれでもかと撮っていた。恥ずかしいから止めてくれ・・・。なんて言葉がテンション上がった彼女らに通じるわけもなく、俺達の業務が終わるまで撮られ続けた。

 

 制服に着替え、文化祭を楽しむ予定だったのだが、クラスの広報担当に宣伝の為にそのままの格好で回るようにと言われたときは絞めてやろうかと思ったのはここでは内緒だ。

 

 ちなみにエキシビションマッチ予選は余裕で勝利した。リズの応援が俺達のところまで届いたときは思わず頬が緩んだものだ。

 そのあとは、皆と合流して文化祭を楽しんだ。明日もあるとはいえ、俺達のように1日目と2日目で出店内容を変える店がいくつもあるので今日回りきっても明日飽きることはないのは有難い。

 

 そうこうしているうちに1日目が終了した。売り上げは上々。昼過ぎ頃に2-Aに関する不穏な噂が流れたらしいが、それ以上に実際に来てくださったお客様のお陰で、噂が嘘であることが広まったため、客足は衰えることなく1日目にして、莫大な利益を得ることができたのであった。

 

 

___

─────

 ̄ ̄

 

 しかし、噂の出所をきちんと把握しなかったことを後悔することになるとはこの時の俺は知る由もなかった。




 ここまで読んでいただきありがとうございます!
次回をお楽しみに!


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清涼祭 2日目 前編

 どもども、Argoです!
最近、私の住んでる県が大雨で災害がいくつも起こりました。幸い、私の住む地域は目立つ被害は無かったのですが、他の地域で犠牲者さんが出てしまいました。
 元々災害の多い県ではあったのですが、ニュースで河川の氾濫の映像を見る度にゾッとします。
正直、怖いです。いつまた大きな地震が来るかも分かりませんし、台風が来ればきっと今年も大きな爪痕を残していくのだと思います。
 皆さん、防災の準備はしていますか?いつ、災害が起こるかなんて誰にも分かりません。数年前の地震も車中泊を余儀なくされましたし、水が通らず、店で買おうとしても売り切れで本当に困りました。
 皆さんはどうか気をつけてください。備え有ればいざと言うときほんの少しだけ心に余裕がもてます。
 話半分でも構いません。少しでも心の片隅に留めてもらえれば何よりです。皆さんが私の様にいざと言うときに苦労しないことを心の底から願っています。
 地震の時はご近所さんと開けた駐車場に集まりました。集まっただけ、たったそれだけなのに心に余裕ができます。当時のことは、今でも覚えています。少しでもご近所さんと関わりを持ちませんか?
話せる人が家族以外にもいる。それだけでも気が楽になります。災害は自分に関係無いなんて思わないでください。お願いします。
 長々と喋りましたが、この前書きを読んで下さった人はありがとうございます。どうか、私の拙い文章で皆さんが楽しめますように。


2日目が開始した。店内にいるのは執事やメイドではなく、戦士やヒーロー達だ。

先日と打って変わって店内は騒がしい声で溢れていた。

 

『クオリティやばっ』『ふわぁぁ、推しが目の前にっ!』『というか、美男美女揃いすぎでしょ。』『レベル違いすぎて嫉妬すら起きねぇわ(笑)』

 

等々である。そんな中で一際目立つ人物が二人ほどいる。和人と詩乃、その人である。

この二人はアニメキャラ等のコスプレではなく、SAOのラストにおいて装備していた衣装を着ている。

 

 あの世界のモノはあの世界だけの唯一無二だが、厄介ごとでお馴染み菊岡によって用意されたのであるオーダーメイドで。背中にはエリュシデータとダークリパルサーを模した剣が吊るされている。詩乃には弓矢と、澄んだ水色の片手剣が用意されていたが、和人に合わせたのか、背中に片手剣のスタイルで弓矢は今回はお留守番だ。

 

 ちなみにこの衣装だが、持って帰って良いらしい。相変わらず、菊岡という人は何をしたいのか謎な人物だ。オーダーメイドで作らずともネクタイピンの機能でどうとでもなったのでは?と苦言を申し出れば、実物としてきちんと形に残るものが良いんじゃないかい?と言われた。

 

確かにそうだと思うが、相手が菊岡なので素直に言葉を受け取ることはできなかった。

『僕の扱いが酷くないかい!?』という声が聞こえたのは全くもって気のせい。幻聴だ。

 

 そんな事を考えていれば、サチ達がやって来た。なんと今回は七色までいる。最年少の天才科学者は忙しいハズだが?と疑問に思いながらも、呼ばれたからには行かないわけにはいかない。大人しく詩乃と一緒に彼女たちのテーブルへ近寄る。

 

「やっほ!二人とも、今日も来たわよ!

今日はコスプレなのね、二人はあの世界の衣装か・・・。うん、よく似合ってるわ」

「和人と詩乃のこの格好は久しぶりに見たなぁ。同じパーティだった頃を思い出すよ」

 

 上からリズ・・じゃなくて里香、紗智─サチのこと読みもまんまサチ─が言う。

 

「うん、キリト君とシノのんはこうだよね」

「お二人ともカッコいいです!」

「和にぃ、似合ってるよ!そうだ!後でボクにコート貸してくれない?ずっと着てみたかったんだ!」

「詩乃さんも似合ってますよ!って、こら、木綿季ムチャ言っちゃダメでしょう?すみません、和人兄さん」

 

と、明日奈、珪子、木綿季、藍子。

 

「ありがとう藍子。お世辞でも嬉しいわ」

「家でなら別に構わないよ、なんなら藍子も羽織ってみるか?」

「どういたしまして、詩乃さん。そうですね、少しだけ羽織らせて貰おうかな」

「二人ばっかりずるい!お兄ちゃん、私もコートいい?」

「汚したり、破いたりしなければ別に問題ないさ」

 

『やったぁ!』と直葉はガッツポーズをする。兄妹の会話が一段落したところで別の声が掛かる。

 

「プリヴィエート、和人くん、シノンちゃん。昨日ぶりだね」

「プリヴィエート、和人、詩乃。私とは久しぶりね。元気にしてたかしら?」

「やぁ、虹架。昨日の出し物は満足してくれたみたいで嬉しいよ。七色はここにいて大丈夫なのか?」

「虹架ったら、昨日は凄くはしゃいでたものね。バイトでメイドさんしてるだけあるわね。七色は残念だったわね。昨日来れたら貴女のお姉さんのはしゃぎ具合が見れたのに」

「あら、それは残念ね。見たかったわお姉ちゃんがはしゃいでる所。もちろん、二人の接客具合もね。今日は一応ここの学園長と互いの研究について知るために来たの。これも仕事の内よ。」

「あっはは~、私ってそんなにはしゃいでたかな?あと、七色は働きすぎ。もっと休んで」

「私は良いの、趣味でもあるんだから」

 

この二人は枳殻虹架と七色・アルシャービン。名字は違うが正真正銘姉妹だ。紆余曲折あって今に至る。ちなみに二人はロシアと日本のハーフである。

 

「私を忘れないでー!」

「大丈夫、ちゃんと覚えてるから、琴音。

アルゴは元気そうだな」

「そうよ、落ち着いて琴音。ってアルゴ?」

「にゃはは~、流石キー坊だ。オレっちに気付くとはな。」

「あなた、どこから・・・。まあ、アルゴだし可笑しくはないか。」

「オレっちだカラ、という点に非常に物申したいが、今回は写真だけで見逃そうじゃないカ」

「「いつの間にっ!!??」」

「さあ?いつだろうナ?」

 

 ニヤリ、と不敵に笑う彼女はあの世界での情報屋の時を彷彿とさせる。一連の流れを琴音は楽しそうに見ていた。

 

「懐かしいメンツが揃ったわね」

「言うほど会ってないわけじゃないけど、俺達は色々忙しかったからなぁ・・・」

 

 試召戦争に暴力女子や嫉妬軍団を諭したり。あとは学祭の準備を指揮したり。本当に色々あった。

 

「なんか、その・・・・お疲れ様?」

「はは・・・、ありがとう」

 

 遠くを見ながら『あぁ、あの時は大変だったなぁ』と呟くキリトを見て思わず琴音は労いの言葉をかけたのであった・・・。

 

『すみません!注文いいですか?』

「はい!直ぐに向かいます!ごめん、皆。またあとで。午後からエキシビションマッチもあるから是非見に来てくれ!会場は昨日と同じだから里香、案内は頼んで良いか?」

「オッケーよ!任せなさい」

「ありがとう、じゃあまたあとで。詩乃行こうか」

 

 皆の元を離れて呼び出しを受けたテーブルへと歩く。

 皆のお陰で気持ちに余裕ができた。良い仲間を持ったと素直に思える。

 

 それからいくつも注文を受け、時間はどんどん過ぎていった。

 

「和人、そろそろ行きましょう?」

「ああ、行こうか。」

 

 クラスメイトの応援を背に受けて、特別会場へ向かう。

 

_____

───────

 ̄ ̄ ̄ ̄

 

 結果的に言えば和人達が優勝した。

 初戦の相手は同学年の男女ペアでそれほど時間を掛けずに決着をつけた。

 二戦目は三年生のBクラスの男子ペア、一年多く経験を積んでいるだけあってその操作技術には目を見張る物があったが和人と詩乃と比べればどちらが細やかに動かせるかは歴然であり、火力も和人達が勝っているためこちらもそれほど時間はかからなかった。

 準決勝の相手は三年のAクラス生徒と二年のAクラス生徒の男女ペア。ただ、名字が同じで顔も若干似ていたので兄妹だと思われる。

 操作技術が拙い妹をカバーしながらも自ら攻撃を続け、腕輪の能力も持っている彼には思わず感心してしまったし、攻撃の息も二戦目の男子ペアとは比べ物にはならないほど合っており少々苦戦した、が、こちらも詩乃との連携を見せつけた。二年間、ほぼ毎日一緒に戦って来たのは伊達ではないので腕輪は使用することなく勝利した。しかし、若干点数が削られたと言えば彼ら兄妹の強さは表現出来るだろうか?

 決勝は明久と優子さんだった。二人とも高得点者だし、明久の操作技術は和人達にも匹敵する。言わば準決勝ペアの完全な上位互換だ、優子さんも俺達が操作の指導をしてきただけあって下手な三年生よりも余程器用に動かせている。今までで一番楽しめる戦闘だった。ちなみにトドメはソードスキル《ヴォーパル・ストライク》の動きを再現したキリトである。現在は表彰式だ。

 

「見事な戦いだった。これに怠けず日々精進していくことを学園長として期待するさね。今回、負けてしまった生徒もここで腐らず努力をつづけるんだね。結果は保証しないが、これからのアンタ達を形作っていくことには代わり無い。

 優勝者の二人には如月グランドパークのチケットと対の腕輪を贈呈する。二人とも起動してみるさね。発動キーは《共闘》だ」

 

 この腕輪は俺が依頼を受けて修繕した物だ、腕輪の効果は・・・

 

「《共闘》!」

「効果は見ただけじゃ解らないが、対の腕輪の所持者が同じフィールドにいる場合は相手に点数を分け与えたりすることができるさね。腕輪の能力を同時発動することでより強力な能力が発動する。」

 

生徒達がざわつく、発動状況が固定されるが強力な腕輪に違いないのだ。

 

「以上で表彰式を終了する。引き続き、清涼祭を楽しんで過ごすことさね」

 

 興奮冷めやらぬままにエキシビションマッチは終了した。




 ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
また、前回感想及び、お気に入りに追加してくださった方々、ありがとうございます!励みになります!
更新は不定期ですが、これからもよろしくお願いします!


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清涼祭 2日目 後編

 どもどもArgoです!
 最近、ボカロを良く聞いております。それだけです!
 そのうち、キリシノの問題児パロを書こうと画策中。

 前回、ブクマ、すきボタンをポチって下さった皆さん、ありがとうございます!私の励みになります!
 感想も少しずつしてくれてる人がいてとても嬉しい限りです。今後ともよろしくお願いします!


 異変は閉店間近に起きた。和人が材料倉庫に最後の分の材料を取りに行った時だ。

 

「確か、ここに・・・」

『おい、オメェかぁ?桐ヶ谷和人ってのはよぉ』

 

 見るからにチンピラのような小者感溢れる男が数名現れた。

 

「確かに私が桐ヶ谷です。お客様、ここは立ち入り禁止となっておりますので速やかに立ち去ってください」

『ハッ、んなこと知るかってんだ。こちとら依頼がかかってんだからなぁ!』

 

 接客モードで対応するがニヤニヤと気色の悪い笑みを浮かべた男がそんなことを言いつつ襲い掛かってきた。1発目は大人しく殴られる。

 

『へっ、抵抗もでき[バキッ]グハ・・・』

「ユイ・・・」

「はい、パパ!今のシーン─最初に和人が囲まれて殴られるところ─はあちらのカメラでキチンと撮りました!なので、思う存分やっちゃってください!」

「ああ、ありがとう。埋め合わせは今度ALOで、何が良いか考えておいてくれ」

「はーい!」

 

 ユイが去ったのを確認し、ギロリとチンピラを睨む。過度に反撃をしなければ正当防衛として俺に罪はない。証拠も取れた、気兼ねなくコイツらを潰せるな。

 

「さて、これでこれから俺がお前らを殴っても問題無くなったな。・・・掛かってこいよ」

『くっそぉ!!』

 

 正面のチンピラ2号が走って殴り掛かってくる、しかし──

 

「遅い。」

 

 和人は身体を半身にして攻撃を避けると2号に足を引っ掛けて背後の4号へ倒れ込ませた。勢いが良かったせいか身体を打ち付けた4号は悶絶している。

 

『なに余裕かましてんだ!』

 

 叫びながら右側の3号が右ストレートを、左側の2号はボディブローを繰り出す。

和人は屈んでそれを避け、2号と3号の攻撃が互いに入ったのを見計らい、片手を床に付けてブレイクダンスのように足を回転させ、二人の鳩尾へ蹴りを決めた。軽くふっ飛んだ奴らは痛みからか失神した。

 

「この程度か・・・?」

『チッ!これでも食らいやがれっ!』

 

 卑怯にも4号は倉庫にあった看板に使った余りの棒を和人へ振り下ろす。

 

「なめてるのか?こんな大振りの攻撃が当たるわけ無いだろう」

『グガッ!』

 

 大振りの攻撃など、的でしかない。棒を軽くかわし、4号が棒を握る右手首に拳をぶつけて、痛みに棒を離したところを見逃さず一本背負いを食らわせる。

 

「後はお前だけだ・・・」

『ヒイッ、ば、ばけもの・・・』

 

 一連の流れを見ていた1号は和人に恐れを抱いた。人数差をものともせず、淡々と捌ききった和人に・・・。

 もし、今の数倍の人数が和人に襲撃したとしても、結果は変わらなかっただろう。

 

「選べ、俺に殴られて全てを吐くか。殴られる前に洗いざらい話すか・・・」

『は、話させていただきます!ど、どうかご勘弁を・・・!』

 

 顔を青白くさせた1号は全てを語った。

 

『───ということです!誓って嘘は言っておりません!』

「ほう。赤髪に黄色いリボンのこの学園の女生徒に依頼された・・・ね。」

『は、はい!俺たちの他にも数人います!

たしか、Aクラスの女生徒を拐うとかなんとか・・・。拐った後はここから少し離れたカラオケに連れていくと・・・・』

「・・・・・・へぇ・・・。」

 

 追加情報を聞いた和人はより機嫌が悪くなる。詩乃も体術で闘えるが心配なことに変わりはない。

 

「おい、今すぐソイツらに聞け。無事に拐えたか、と」

『わ、わかりました』

「ユイ、いるか?」

「はい、パパ!」

「話は聞いていたか?」

「データを保存してから待機してたのでバッチリです!」

「よし、この男のメールの送信先を辿ってどこのカラオケボックスか突き止めてくれ。」

「了解しました!」

 

ユイを待っていると扉が勢いよく開かれた。

 

「大変だ桐ヶ谷・・・!朝田達が拐われた!」

「坂本か、そのようだな」

「『そのようだな』って・・・!」

「拐われたのは誰だ?」

「あ、あぁ・・・。朝田と桐ヶ谷妹、翔子に姫路。あと秀吉だ。他の四人を人質に取られたせいで朝田は思うように動けなかったようだ。」

「そうか。って、は・・・?木下?アイツは男だろうが」

「いやぁ、アイツはほぼ必ず初見のヤツに性別を間違われるんだよ・・・」

「そ、そうか・・・」

 

 何だか、気が削がれた。まぁ、落ち着けたと考えよう、うん。

そんなことを考えているとユイが─スマホに─戻ってきた。

 

「パパ、場所の特定が完了しました!」

「パパぁ!?」

「坂本、うるさい。ユイ案内頼めるか?」

「はい、もちろんです!」

 

 背負っていた模擬の剣を坂本に渡す。

 

「坂本、これを里香に渡しといてくれ。模擬とはいえ、この2本を安心して預けられるのは彼女だけだ。あと、この男達を西村先生に引き渡してくれ」

「お、おう。分かった」

「じゃあ、行ってくる」

「行くって、まさか!おい、待て!」

 

 窓を開けて外へ飛び出す。桜の枝を掴み、勢いを殺して地面に着地する。

 

「ユイ!」

「目的地は駅の近くです!まずはいつも通りの道を辿って下さい!途中途中で近道をナビゲートします!」

「分かった!」

 

 正直、俺は腹が立っている。拐った連中と指示した島田。そして、この状況を許してしまった自分自身に、だ。

 

 パルクールの技術を応用してどんどん進む。次々とショートカットしているので車で進むよりは確実に速い。

 

「ここです、パパ!」

「あぁ・・・(本当に、奴らをどう調理してくれようか・・・。)」

 

 ユイの話によると203号室にいるらしい。

 

「いらっしゃいませ~」

「すみません、203号室の人と待ち合わせしてる者です」

「了解しました。203号室はあちらです。」

「どうも。」

 

 203号室は2階に上がって直ぐの所だった。部屋からは汚い笑い声が聞こえてくる。

 

『ひゃひゃひゃひゃ、あっちも成功したらしいぜ』

『んなこたぁ、どうでもいい。コイツら、もういいんだろ?』

 

 バンッ!と勢いよくドアを開ける。

 

「誰がやられたって?」

『ああん?誰だてめっ!?ひっ!』

『どうした?ってお前!?』

 

 ただ笑顔を浮かべているだけだというのに何故顔を強張らせているのか。

 

「さて、オマエら覚悟は出来てるよな?」

『ぐっ、くそぉっ!!』

 

 3人同時に来るが手加減はしてやれない。

鳩尾に1発ずつキレイにかつ、素早く叩き込む。ドサドサッという音と共に男たちは倒れた。

 

「さて、大丈夫か?・・・っと」

「お兄ちゃーーん!!」

 

 直葉が抱き着いてくる。いくら武道を嗜んでいるとはいえ、怖いに決まってる。

 

「よく我慢したな。後は俺に任せろ。」

「うん・・・!」

 

 どうやら、ユイが学園長に連絡をしていてくれたらしく、外に迎えの車が来ていた。

今回は本当にユイに頼りきりになってしまった。帰ったら全力で甘やかそう。さて、と

 

「詩乃・・・、遅くなってゴメン。」

「何で謝るのよ?私は来てくれるって信じてたわ」

 

 詩乃はそう言って笑う。ああ、もう!本当に愛しい。詩乃を抱き寄せる。

 

「ありがとう、助けに来てくれて」

「約束しただろ?絶対に君を守るって。こちらこそ、信じてくれてありがとう。」

 

 顔を見合わせながら微笑み合う。あの日のように。

 

 

 

 

 

 

 

 

※ちなみに、男達は西村先生の授業によってせんの・・・、常識を叩き込まれた後警察に突き出されました。和人くんは予定通り証拠画像を提供することで正当防衛であることを証明しましたとさ。




 ユイを知らない人の為に。
 ユイはSAO【アインクラッド編】で登場したキャラクターでございます。元はMHCP《メンタル・ヘルス・カウンセリング・プログラム》として用意されたAIだったのですが、デスゲーム中ではその役割を封じられ、システムの中から絶望するプレイヤーを見ることしか出来ませんでした。その途中、ユイは今までとは違う幸せに満ち足りた人間を観測します。それがこの作品ではキリトとシノンとなっています。
 まあ、後はpixi〇の方で投稿させていただいている【SAO+α】を見てください。こちらもキリシノ作品です。所謂、原作再構成?的なことです。
 ユイ登場の朝露の少女はまだ投稿出来てはいませんが、これから書く予定です。どうぞ、2作品ともよろしくお願いいたします!(あれ?宣伝みたいになっちゃった)


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打ち上げ

 どうも、Argoです!
 前回、ブクマや感想を下さった皆さん!ありがとうございます!私の励みになります!


───side学園長

 

「──というのが、今回のあらましです。」

「へぇ・・・、赤い髪に黄色いリボンね。大方予想は付くがまさかここまで馬鹿とは思わなかったよ。」

「如何されるおつもりで?生半可な罰では俺は納得しませんよ?それに、教頭のこともある。」

「本当に面倒なことを起こしてくれた・・・。

罰は合宿の期間中、謹慎処分にしようかと思う。それと、合宿の間多少の融通は聞いてやろうじゃないか。・・・・教頭の事だが、アンタ証拠持ってんじゃないのかい?」

「ふむ・・・・。良いでしょう。今回はそれで手を打ちます。ま、アイツがこのまま反省しないのならば天罰は必ず落ちるでしょうがね。

・・・というか落とす(ボソッ)

 証拠についてはその通りですよ。正直、教育者としての彼の在り方には疑問だった。貴方に協力し、彼が居なくなるのなら協力するのも吝かではない。」

「なら、頼もうかね。・・・腕輪の件といい、今回の件といい。あんたには借りが出来る一方だ。」

「お気になさらず。それはこちらにも利があったからこそだ。では、そろそろ宜しいですか?クラス会があるので」

「ああ、ご苦労だったね。」

「それでは・・・・・・」

 

 バタンと重みのある木の扉を閉じて桐ヶ谷は退出する。それを見送り、漸く息を吐く。

 

「ったく、何を経験したらあんな眼をするようになるんだか・・・。恨むよ、茅場」

 

 生徒に対して乱暴な態度をする学園長だが、やはり教育者というべきか。生徒を大切に思っているのに代わりなどない。

 かつての研究仲間へ恨みを送っているとパソコンにピコン!と通知が届く。

 

「例の証拠か・・・。ふむ、これだけあれば事足りるさね。西村に協力してもらうとしよう」

 

 生徒達が花火を見ながらクラス会を楽しむ中でひっそりと動き出す。

 

「アレも合宿から始動だって言うのに・・・」

 

(面倒だ。)そう愚痴っている割には学園長の顔は楽しそうであった。

 

 

Side out・・・

 

────────────────────

 

 

 

 

「悪い、遅れた」

 

 すまん、と片手をあげて詩乃の隣に並ぶ。 

 

「というか、これはどういう状況なんだ?」

 

 クラスメイトが床に死屍累々と転がる様子を見て和人は訪ねる。

 

「あ、お兄ちゃん!」

 

 それに反応したのは隣の詩乃ではなく、近くにいた直葉だった。

 

「それなんだけどね、土屋って人が撮った

《江藤颯》の女装写真を見よう、ってことになってね・・・・」

「あまりの気持ち悪さに全員がダウンしたってことか?」

「その通り!あたしは丁度その場に居なかったから良かったけど、珪子ちゃん達はあの辺りで・・・・」

 

 スッと直葉が指し示す方向を見ると、ジェットコースターに連続で10回乗ったのかってくらいに顔を青くした皆がいた。

 

「うぷ、しぬ・・・・」「リトル・ネペントよりも醜悪なモノがこの世にあったなんて・・・」

「し、しっかり~!明日奈!」「・・・・・・」

 

「なるほど、地獄絵図だな」

「だね・・・・」

 

 兄妹二人して遠い目をしていた所で和人はさっきから気になっていたことを直葉に問いかける。

 

「で、何でアレを見ようってなったんだ?あと、詩乃が喋らないけど何かあったのか?」

「そ、それはだね・・・」

 

 言い淀む直葉を急かさずに待つ。

 

「買い出し班の人が間違ってアルコール入りのモノを買っちゃったらしくて、それに気付かないで飲んだ人たちが勢い付いて・・・・」

「はぁ、何してんだアイツら・・・。スグ達は大丈夫か?木綿季も藍子も飲んでないよな?」

「あたし達は大丈夫だったんだけどね?」

 

 含みのある言い方をするスグの視線の先には先程から一言も喋らない詩乃の姿が。

 

「おいおい、まさか・・・」

「そのまさかです。頑張ってね!」

 

 イイ笑顔でそれだけ言うとスグはサッと逃げる。追おうとしたところで右手の袖を捕まれて動きを制限される。

 

「し、詩乃・・・さん?」

「・・・・・・・」

 

 ギギギギと錆びた人形のように振り返り、ゆっくりと捕まれた手を辿ると、ユラァと謎のオーラを醸し出す詩乃の姿が・・・。

 ワタワタしているうちに詩乃は和人に抱き付く。

 

「ふふーん♪」

「ちょっ!?」

 

 やっと言葉を発したと思えばえらくご機嫌な鼻歌が少し下から聞こえる。

 身を引こうとすると逃がさないとばかりに詩乃の両手が和人の首の後ろで繋がる。背が高い和人は前のめりになるのだが、詩乃はお構い無しだ。

 スリスリと和人の首筋に頬擦りをして飽きる様子がない。

 

「・・・・・・まぁ、いっか」

「・・・・♪」

 

 愛しい彼女を引き剥がすなんて和人に出来るハズもない。ただ、立ったままなのも辛いので近くの1人掛のソファに座り、足の間に詩乃を座らせて後ろからぎゅっと抱き締める。

 子どもみたいに純粋に喜ぶ彼女を見て頬を緩ませながら頭を撫でる和人を見て、クラス内で正気を保っているメンバーはこう思ったという・・・・・・

 

『お爺ちゃんと孫みたい・・・・』

 

 どちらも普通は高校生のカップルに対して抱く感想では無いハズだが、二人のまったりとした雰囲気を感じれば、真っ当な評価だったのであった・・・・。

 

 

 その後、どうにか(二通りの)酔いが覚めた所で打ち上げは終了。正気に戻った詩乃は顔を真っ赤にしていた。

 設営の解体は業者がしてくれるらしく、その間生徒達には文化祭の振替日として三日間休暇が与えられた。

 

──清涼祭を終えた彼らを次に待つのは、高原の地域で行われる《夏の強化合宿》だ。

 

                

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、これを期に新クラスが導入される。




 ここまで読んでくださった皆さん!ありがとうございます!次回もよろしくお願いします!

 ばいちゃ!


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Sクラス
始動はもうすぐ


 遅くなりまくりました!!ごめんなさい!
でも、目的のシリーズは完結させてきました!
ので、多少は余裕が出来るかと思います!!

 SAOはゲームキャラも出て来はじめるので、キャラの簡単な説明が欲しいときは感想で言ってください。
キャラ紹介を設けますので。

↓件のサチのリアルネームです。
早見 咲智(はやみ さち)。
名字の方はサチの中の人からお借りしました。名前は私が勝手に付けました。

あと、知ってるかと思いますが、鼠の情報屋《アルゴ》のリアルネームが帆坂朋です。こちらは公式ですぞい。


里香「ん~!いよいよね!試験も無事にSクラスレベルも取れたし!」

明日奈「落ち着いて、リズ・・・あ」

里香「もう!こっちでは里香って呼びなさいって言ってるでしょ!万に一つでもアカウント特定に繋がったら───」

珪子「あはは・・・、里香さんその辺りにしましょう。ね?」

咲智「でも、里香の言う通りだよ。」

明日奈「うっ、気を付けます・・・」

 

 駅のベンチで時間より早めに到着していた四人が駄弁っていると、遅れて他のメンバーが到着した。これで全員だ。

 一応、咲智がこの班のリーダーを任されているのでバインダーに挟んだ名簿をみながら、チェックを入れていく。

 

咲智「虹架」『いるよー!』

  「直葉ちゃん」『います!』

  「藍子ちゃん」『はい』

  「木綿季ちゃ『はーい!』元気だなぁ」

  「里香と明日奈と珪子ちゃんは聞くまでもなし『「えぇ!?」』当たり前でしょ?」

  「琴音さん『ふぁ・・・』眠そうですね」

 

 テキパキと作業を進める中で、咲智はとある名前を見つけた。

 

咲智「帆坂、朋?」

 

 明日奈はサッとペケを付けたため、明日奈の上に位置するその名前にさっきは気付かなかったので、尚更驚きである。

 

咲智「誰か分かる人~?」

虹架「うーん・・・?」

明日奈「アリシャさん説を推します!」

琴音「え?明日奈いきなりどしたの?」

里香「あたしはサクヤ説を推すわ!」

珪子「り、里香さんまで!?」

 

 漸く覚醒した琴音が話についていけずに混乱する。しかし、里香は構わずに話を続ける。

常識人枠の里香の裏切りに珪子が目を回す。

 ベンチ待機組+琴音がわちゃわちゃと混乱している側で桐ヶ谷一家が謎の冷静さを見せる。

 

木綿季「姉ちゃん、分かる?」

藍子「いいえ、見当もつきません。そういう木綿季はどうなんですか?」

木綿季「ボクはもしかしたらって思う人はいるけど、っと直葉は分かる?」

直葉「あ、あたし?そうだなぁ・・・。菊岡さんのことだから多分あたし達に近しい人じゃないかな?それでいて、年が近そうな人・・・」

??「君たち、ちょっと声が大きいゾ。もう少し抑えないと周りに迷惑ダ。」

 

 直葉が何かを掴みかけたその時、駅の端っことはいえ騒がしかった彼女らに注意する人物が。

 

咲智「す、すみません!」

 

 慌てて咲智が頭を下げると声の主は『頭を上げてクレ』という。どこか聞き覚えのある声に内心首を傾げつつ、素直に頭を上げるとそこには見知った人物が。

 

??「や、遅くなってすまナイ。」

 

 ピッ!と手刀を斬って謝るその少女は間違いなく咲智達の知っている人物で。半ば予想していた木綿季以外のメンバーが驚きで悲鳴に近い声を上げていた。

 

朋「落ち着ケ、さっきよりもうるさいゾ」

 

 鶴の一声とは正にこの事だろう。騒がれている本人の声によって取り敢えずは収まる。

 

朋「それに、サーちゃん。そろそろ時間じゃないのカ?」

咲智「あっ、本当だ。皆、聞きたいことは沢山あるだろうけど、一旦電車に乗ろう。」

皆『「了解(ダ)!」「はーい!」』

 

 こうして少女達は他の生徒より遅れて駅を出発した。行き先は文月学園が買い取った元旅館・・・、分かりやすく言えば、二年生の強化合宿が行われる地である。

 

 

──電車の中で──

 

 

 電車を乗り継ぎ、乗客が殆んどいなくなってから漸く駅での疑問を少女達はぶつける。

 

里香「で?どうしてア・・・、朋がここに?」

朋「なんダ。りかっちはおねーサンに会いたく無かったのカ?カナシイナー(棒)」

里香「そんなことは言ってないでしょ!じゃなくて、単純に意外なのよ」

朋「ほう?」

里香「だって、オフ会でも頑なに年齢や名前は隠してきたのに今になって、って思うじゃない?」

咲智「菊岡さんの話を受けたのも意外だよね」

 

 咲智の言葉に肩を竦めて朋は返す。

 

朋「なに、ただの気まぐれダヨ。強いて言うナラ・・・」

 

 一旦区切ってニヤリと笑う。

 

 「こっちの方が面白そうダロ?」

木綿季「うん!兄ちゃん達もいるから絶対に退屈しないよ!システムだって面白いし!」 

琴音「うんうん。皆ともう一回くらい高校生活を送るってのも悪くないよ」

 

 そもそも、このメンバーが纏めて同じクラスに属するのだからツマラナイことになるわけが無いのだ。

 

 それからもメンバーは楽し気に会話をしながら目的地へと着実に距離を詰めていた。

 

 

 

 

 

 

☆★☆

 

 

 

 

 

 一方その頃、和人達は──

 

和人「まったく。学園長は何を考えているのやら・・・」

詩乃「そうね、《楽しみにしておけ》だけじゃ何も分からないわ。それに・・・」

 

 少し頬を赤らめて詩乃は顔を反らしながらブツブツと小声で愚痴る。

 

詩乃「いくら私達が付き合ってるからって相部屋にするなんて・・・。しかも、風呂付き。

SAOの時で慣れてるけど、学校行事でこれは如何なものかしら・・・。もしかして、楽しみにしておけってこの部屋のこと!?」

和人「詩乃、西村先生が今後の打ち合わせするから来いってよ。

それと、15時まで自由行動らしいから、この合宿所の周り散歩しようぜ」

詩乃「ええ。分かったわ。散歩ついでに一応建物の構造もチェックしておきましょう。

火災等は起こらないに越したことはないけど、有事の際に知っていた方が速やかな避難指示を期待できるわ」

 

 若干混乱し始めていた所に和人の呼び掛けが、瞬間水を掛けられたかのように冷静になる頭。詩乃は文月学園だからしょうがないと思うことによって自らを納得させた。

 

 彼女の中でこの学園のイメージがどうなっているのか、それはほぼ毎日学園で巻き起こる騒動を経験すれば自ずと見えてくることだろう。戸締まりをして部屋を出る。

 楽しそうに喋りながら歩く二人にとって、この合宿期間が良いものとなればいいのだが、ここは文月学園。

何も起こらない筈もない。無意識にそれを悟った二人は束の間の平穏を噛み締めるのであった。




ご拝読、ありがとうございました~!


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自習だぜ

 どもどもです!前回、ブクマとかしてくれた方々ありがとうございます。私の励みになります!
 別でカゲプロ×バカテスの嫌われ書いてます。興味が有れば是非見てもらえると有難いです!
 それではどうぞ~!



 散歩や構造チェックを済ませ、この合宿のメインである他クラスとの合同自習が始まった。Aクラスはまず、Eクラスと一緒に行う。

 Eクラスの特徴といえば部活に所属している生徒が多いことだろう。部活動を精力的に行うあまりに学力が落ちてしまった者達が在籍している。代表は中林宏美、テニス部のエースとして知られている。

 

 さて、自習の概要だがただテキストを解くだけではない。合同にしたことで上位クラスはああなりたくはない、下位クラスはああなりたいと思わせることで学習意欲を高めるのが学園の狙いだとか。

 しかし、その思惑は良い方向で外れた。

 

「桐ヶ谷くん、ここってどうしたら解けるのかな?この式までは出せたんだけど・・・」

「ん?あぁ、ここは変形するんだ」

「吉井~、そいつ終わったら今度は俺に教えてくれ!」

「分かったよ、ちょっと待っててね」

「こっちも~!」「終わったら来て~!」

 

 早めにテキストが終わった成績上位勢がヘルプに応え、問題に詰まってる人へアドバイスをし始めたからだ。答を教えるなんてことはもちろんしない。解き方やポイントを教えたりして、回答へ導くのだ。

 教わる側はテキストも進むし、教わる相手が同級生ということもあり遠慮なく質問ができる。欠けていた知識を埋め直せる。

 教える側も意外と大変だったりする。まず前提として、自分が理解出来てなければならないし、よしんば理解出来ていたとしてもそれを相手に分かりやすく伝えられなければ意味がないのだ。

 Eクラスは言わずもがなこの合同自習の恩恵を受けるし、Aクラスとしても理解が深められる良い機会になる。

 

「学園側の想定とは違いましたが、良い傾向ですね・・・。シンプルですが効果は間違いありません」

「高橋先生」

「あら、どうされましたか?西村先生」

「桐ヶ谷と朝田を呼んでもらえますか?」

「なるほど・・・、少し待っていてください」

 

(西村先生が来たな自習監督は大丈夫なのか?あ、高橋先生がこっちに来た。)

 

「桐ヶ谷君、朝田さん。西村先生がお呼びです」

「分かりました、詩乃・・・」

「聞いてたわ、行きましょう」

 

二人は高橋に会釈をして西村の元へ向かう。

 

「む、来たか」

「何の用でしょうか?」

「彼女達からの連絡だ。《夕方頃に到着予定》だそうだ」

「了解しました。」

「ありがとうございます」

「気にするな。では、俺は監督に戻る」

 

 それだけ言うと西村はスタスタと何処か急ぎ足で戻っていく。ちなみに急いでいる理由は、西村の今の時間の担当場所がBクラスとFクラスであるためだ。Bには少し前に騒ぎ─女装による精神攻撃の時のこと─を起こした江藤颯がいるため、西村は急いでいたのだった。

 

 

 

 

☆★☆

 

 

 

【Side電車組】

 

 

「ふあぁ~、暇だねぇ・・・」

「そうダナ・・・」

「姉ちゃんと虹架と明日菜、琴音は寝ちゃったし、咲智は何か連絡してるしなぁ。んー。珪子~何かない~?」

「そんな急に言われても・・・。そうだ!里香さんは何かありませんか?」

「あ、あたし?そうねぇ・・・、あぁちょうど良いのを思い出したわ」

 

 そう言うと里香は鞄からスマホを取り出し、ポチポチと操作をする。すると里香と咲智以外の今起きているメンバーのスマホがメッセージが来たことを知らせる。

 

「グループ招待?」

「まぁ、まずは参加して」

「オレっちはもう参加したゾ」

「私もしましたよ!」

「ボクもオッケーだよ!ねぇ、里香。メンバー欄のこの人狼GMって誰なの?」

「これからするゲームの進行をしてくれるbotよ。今送ったアカウントを追加して・・・」

「トークルームが出てきたらオーケーだったヨナ?」

「その通りよ、やっぱり朋は知ってたのね」

「まぁ、一時期は流行ったからナ」

 

 全員の準備ができたところで里香がゲームについて軽く説明して開始コマンドを呟く。

GMが出てきて、里香は設定を変更していく。

設定が決まり、参加ボタンを押してようやくゲームがスタートした。

 

 

    ~ハショリーヌ4世~

 

 

「くっ、朋に勝てないわ・・・!」

「言葉の端々から情報を拾うのがオレっちの仕事だったからナ。このくらい当たり前サ」

「さ、さすがです・・・」

「むむっ・・・!」

 

 そう、鼠の情報屋のアルゴこと朋が無双していたのだ。人狼側でも村人側でも上手く情報を引き出したり活用して見事自陣営を勝利へと導いていたのだ。

 

「あれ?どうしたの皆・・・」

「「「助けて!咲智(さん)!!」」」

「え、えぇ?」

「だそうだゾ、サーちゃん」

「せ、せめて経緯を教えて?」

 

 その後、咲智や寝ていたメンバーも起きて楽しくゲームに励んだそうだ。




 誰だよハショリーヌ4世・・・((


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Sクラス

 眠い、キツい、足が痛い


 自習が終わった頃には夕方になっていた。

 今後の予定は1度部屋へ戻り、予定時間になってから食堂へ移動を開始。夕飯の後はクラスと秀吉毎に割り振られたスケジュールに従い、風呂に入り少しの自由時間を挟み、就寝となっている。

 

「詩乃、そろそろ行こう」

「そうね・・・」

 

 だが、この二人はとある用事が有るため、息つく暇もなく所定の場所へ向かう。

 

「それにしても、皆と高校生活を過ごせるなんてね」

「ああ、嬉しい限りだよ」

「文月の皆が嫌ってわけでは決して無いけど、やっぱり気心知れた仲間は嬉しいわね」

「そうだな・・・。男女比以外は俺に文句は無いよ、男女比以外は」

「二回言っても変わらないものは変わらないわ。諦めなさい」

「だよな~・・・・・・」

 

 会話の途中で和人が男女比について不満が有る様子だったが、そう思うのも仕方がないことなのだ。

なんと、Sクラスの男女比は驚異の1:10。

女子の会話が分からず、和人が肩身の狭い思いをすることは想像に難くない。

 

「まぁ、そこは菊岡さんに期待しとくか・・・」

「あの人ならむしろ面白がりそうね」

「・・・だよなぁ」

 

 和人が溜め息を吐いた所で二人は目的の場所に到着する。ちなみに今の二人は体操着でも浴衣でもなく、制服を着ている。理由はこれから嫌でも分かることだろう・・・。

 目的の部屋の前に到着した二人はノックをする。

 

「和人と詩乃だ。入ってもいいか?」

「いいわよー!」

 

 中からの返事を聞いて二人はガチャリと扉を開けた。

 

「おお!似合ってるじゃないか」

「ええ。みんな素敵よ」

 

 扉を開くと目に入るのは二人と同じ制服を身に纏った皆の姿だった。夏服は基本は生還者支援学校と同じとはいえ、少しずつ違いはあるから新鮮な事に変わりはない。それに、直葉や朋、虹架、琴音に関しては別の学校にいたのだから殊更新鮮である。

 

「それはどうもありがとう!二人ともこの間振りね!」

「ボク達は今朝会ったからなぁ」

「久しぶり!和人、詩乃、元気してた?」

「和人くん!しののん!オフ会ぶりだね!」

「「・・・あ、あははは(情報量が多い!!)」」

「まぁまぁ、皆落ち着いてよ。和人たち困っちゃってるよ?」

 

 里香から始まった挨拶ラッシュを上手く聞き取ることができず苦笑いをしていると、困っていることに気づいてくれた咲智がどうにか止めてくれたので、二人はこれ幸いと一人一人に対応していく。

 

「里香、元気そうでよかったわ」

「皆といたからかしら?詩乃こそ元気そうで何よりよ!」

 

 扉に一番近い里香に詩乃が話しかける。和やかに話す二人はにこにこと楽しそうだ。

 

「スグや木綿季たちが無事に到着してくれて安心したよ」

「皆のおかげだよ!!」

「咲智さんがちゃんと纏めてくれたからね」

「移動は少々疲れましたが楽しかったです」

「わたしとしても、三人ともちゃんと指示に従ってくれたから助かったよ」

 

 和人は妹たちと咲智の方へ、直葉たちが元気そうな様子を見るとあからさまにホッとした表情をする。三人はそれを見ると、顔を合わせてリーダーの咲智のお陰だよと彼に伝える。咲智は少し照れ臭そうにしながら自分だけの成果ではないと謙遜するのであった。

 

「琴音は・・・、かなり久しぶりね」

「この間の集まりの時は学校だったんだっけ?」

「そうなの、オフ会楽しみだったんだけどなぁ~・・・」

 

 話が一区切りつくと、二人はこの間は会えなかった友人のもとへ足を動かした。彼女は学校行事の一つが重なり来れなかったのである。なので、他の皆よりずっと長く会っていなかった。

 

「それじゃあ、合宿から戻ったら振替休日を利用して皆でダイシーカフェに行くか?」

「うんっ、行く!楽しみにしてるよ!」

 

 見るからに落ち込んだ様子の琴音を見かねて和人は琴音に提案をする。その提案を二つ返事で受け入れた琴音は嬉しそうに笑うのであった。

 

「プリヴィエート!二人とも!」

「やぁ、虹架。虹架も元気そうで良かったよ!」

「七色博士も元気?」

「ふふっ、姉妹揃って元気だよ!七色も最近はキッチリ休んでるから安心してね!」

 

 次は最近は会う機会も減っていた灰色の髪の少女のもとへ向かう。相変わらずの笑みに二人も釣られるように頬を緩める。詩乃はふと気になって、幼い天才博士について聞く。虹架は妹の代わりに元気であることを伝えた。

 

 

 

 という挨拶を一通りして、二人はようやく違和感に気付く。そう、あの日ダイシーカフェにいなかった琴音たちを抜きにしても一人多いのだ。

 

「よっ、二人トモ。元気してたカ?」

「その話し方はまさか・・・」

「これを取ればもっと分かりやすいダロ」

 

 特徴的な口調の主がパサリと被っていたフードを外すと黄金色の髪と透き通るような黄色の瞳、イタズラっぽく笑う口元が現れた。

 

「自己紹介と行こうカ?オレっちは帆坂朋、かつてアインクラッド最速の情報屋、鼠のアルゴ、なんて呼ばれたアルゴでもアル。」

「マジか・・・」

「予想外ね」

 

 数時間前の咲智たちと同じような反応をする二人に本人はまたか、と呆れる。

 

「というカ、さっきからオレっちはここにいただろーガ・・・」

 

 先程の苦笑とは打って変わって半目でこちらを睨むアルゴ・・・、じゃなくて朋に二人は慌てて弁明をする。

 

「い、いや、違和感が無さすぎて」

「その通り!馴染み過ぎて疑問すら沸かなかったというか・・・」

「そうなのカ?」

「「そうなの!!」」

「ふーん?ま、そういうことにしておいてやろうじゃないカ」

 

 やれやれと朋が肩を竦めた所で談笑していた皆へ咲智が声をかける。

 

「ね、そろそろじゃないかな?」

「あ、本当だ。」

 

 備え付けの壁時計を見れば、予定時刻が直ぐそこに迫っていた。和やかな時間は終わりを迎え、和人達は気合いを入れ直す。

 

「みんな、準備はいいな?」

「ええ」「バッチリだよ!」「うんっ!」「「もちろん!」」「はい!」「いいよ~」「いいゾ」

 

 廊下に他の生徒がいないのを確認して移動を済ませる。和人達以外の生徒は今頃食堂に集まっていることだろう。

 最初に到着した和人が食堂のドアからチラリと中の様子を見ると丁度、高橋による連絡が終わったようだった。

 そして、こちらへ戻る─入り口近くの壁際に教師が並んでいるため─高橋と入れ替わりで西村が出ていく。

 

「オレからは学園長に頼まれた用事だ。説明すると色々と長くなる・・・、まぁ見た方が早いだろう。入ってこい!」

 

 西村が疲れたような顔をしながらも合図を出したので、和人達は強力なボスを前にした時のような真剣な顔付きで扉を開いた。

 

『・・・・・・Σ( ̄□ ̄;)!?』

 

 和人と詩乃がまず入り、西村の方へ歩く。

 それを生徒はざわざわと喋りながら迎え入れたが、二人の後ろにこの学園で二人しか着ることを許されなかった制服を見たこともない女子生徒たちが着用して現れたことにより、皆の口が一斉にポカンと開き、もれなく全員同じ反応を示す。もはやコントの域だ。

いつもはクールなあの久保や小山でさえも今は間抜けな表情を浮かべている。

 

「見ての通り、転入生が入ったのが一つだ。二つ目は・・・」

 

 珍しく、少し言いづらそうに口ごもる西村から言葉を引き継ぎ、和人が喋る。表面上は何もない風を装っているが、これから知らせることはAクラスの人を裏切ったようなものなので心の中は冷や汗ダラダラだ。

 

「新クラスの発足についてだ。今回転入してきた皆と俺と詩乃はSクラスに配属された」

「本来なら説明をしたいところだけれど、今日は時間がないからSクラスについての詳細な説明が聞きたければ、各クラスの担任の先生に質問してちょうだい」

 

 そんな内心を露ほども見せず、和人は言葉を紡ぎ、詩乃は補足をする。

 

「ここに立っている俺たち以外の皆がSクラスに入ることは出来ない。まぁ、外部からの人は分かんないけどね。

振り分け試験を受けても皆の最高目標はこれまで通りAクラスのみ。

 ただ、俺たちは設備とクラス確定の恩恵を受ける代わりに学園から高い学力を要求されているから舐めてかかると痛い目を見るだろう。まぁ、とりあえずはこれだけだ。

 あと、元々Aクラス代表だった俺は今から別クラスになってしまうので、急で本当に申し訳ないが、霧島翔子さんに代表をバトンタッチする。」

『・・・・・・(´・ω・`)?』

 

 急展開についていけないらしく、またもや一斉に生徒たちが『何を言ってるんだこいつらは?』みたいな顔をする。

 何でそんなに息ピッタリなのか・・・、いつもはあんなに競いあっているのに。

 

「こほん・・・。混乱してるところ申し訳ないが、時間も押しているので、今回転入してきた皆の簡単な自己紹介をする」

 

 和人は皆のリアクションに驚いたが、気を取り直して次に話を進める。皆の反応を待たない辺り、本当に時間が無いようだ。

 自己紹介は咲智からスタートした。

 並んでいる列から一歩前へ出て咲智は自己紹介を始める。

 

「皆さん、こんばんは」

『( ゚д゚)ハッ!こ、こんばんは・・・?』

 

 穏やかな挨拶に数人が正気に戻ったらしく戸惑いつつも咲智へきちんと挨拶を返す。

 

「今回、転入してきた早見咲智です。さっき和人が言った通りSクラス所属になります。

不慣れな部分も多いので助けてくれたら嬉しいです。これからよろしくお願いします」

 

 咲智の落ち着いた声に皆の混乱が少し収まったのか話が終わるとパラパラと拍手が起こる。咲智の声には人を落ち着かせるバフでも掛かってるのかもしれない・・・。

 当の咲智は元の場所に戻ってホッと一息をついて、自分の次に発表する人物の声へ耳を傾けていた。

 

「次はあたしね!こんばんは!」

『こ、こんばんは・・・!』

 

 さっきの咲智と大きく変わってパワフルな声が食堂に響く。その挨拶にさっきよりも多くの人が正(ry・・・。

 

「あたしは篠崎里香!こう見えてもまぁまぁ成績は良いから覚悟してちょうだいね!これからヨロシク!」

 

 いい笑顔で堂々と自己紹介を終えた里香へ拍手が送られる。本人は言うことは言えたと満足げだ。まぁまぁなんて謙遜したが里香は普通に成績良いので騙されてはいけない。

 

「次はオレっちダ。」

『・・・・・・・!?』

 

 朋はフードを被ったまま発表するようだ、彼女の特徴的なしゃべり方に多くの生徒がビクリと肩を揺らす。

 

「この中でゲームをしている奴ナラ、この口調で分かることだろウ。さて、そんなお前達にやさしーいオレっちからは自己紹介というヨリ、忠告を贈ろうじゃないカ。

 知らない人も心して聞くとイイ」

 

 深く被ったフードから辛うじて見える口元がニヤリと弧を描く。それを見た幾人かは顔を青くしてガタガタ震えだす。ちなみに、その中にはムッツリーニこと土屋康太もいる。

 

「オレっちに対して余計な詮索はしないことをオススメするヨ。我が身が惜しいなら尚更ナ・・・、このオレっちが無償で教えてやったんダ。無駄にしてくれるナヨ?

ま、オレっちとしては面白いから別に守らなくても良いんだがナ」

『誓って詮索はしませんっっっ!!!!!!

((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル』

「それならいいのサ」

 

 彼女の正体に心当たりの無い人も、子どもケータイのマナーモードくらいガタガタと震える人達から何かを感じたのかこれまた揃いも揃って同じリアクションをする。

 愉快そうに口を歪めてその宣誓を聞き届けた朋は「じゃ」と言って彼ら彼女らに背を向け、ひらひらと片手を振った。

 

「あー、彼女のインパクトが強すぎてわたしのこと忘れられちゃいそうだなぁ・・・。

 こほん!とりあえず皆、こんばんは!」

『こんばんは!』

 

 朋の自己紹介のおかげで全員が混乱から覚めたのは良かったものの、今度は恐怖からか訓練されたのかってくらい大きな声でハッキリと挨拶を返す。しかも、マナーモード状態だった人は敬礼までしている。彼らに何があったと言うのか・・・。

 そんな事は気にとめずに琴音はふわりと笑いながら自己紹介を続ける。

 

「わ!皆、元気良いね!うんうん、元気なのは良いことだ!あ、わたしは竹宮琴音って言います!髪の毛は地毛だからあんまり気にしないでね。これからよろしくね!」

『よろしく!』

 

 フレンドリーな琴音は生徒たちと早く打ち解けることだろう。現に生徒達は皆『良かった』『優しそうな人だ!』を繰り返している。吊り橋効果?キノセイダヨ。

 

「こんばんは、みんな!」

『こんばんは!』

 

 にこにこと可愛らしい笑みを浮かべて挨拶をする彼女は夢に向かって努力していることもあり、大衆の注目を集める不思議な魅力を持っている。

 ちなみに言うと、ここに来てようやく二年生達からのマトモな挨拶である。

 

「ふふっ、わたしは枳殻虹架。知ってる人ももしかしたらいるかもだけど、今はただの学生だから普通に接してくれると嬉しいな。

 これからよろしくお願いします!」

 

 ペコリと綺麗なお辞儀をして締める彼女に大きな拍手が送られる。ついでに茶目っ気たっぷりにウィンクをすると男女関係なく『可愛い!』など称賛の声が上がった。

 

「次は私ね。こんばんは皆さん」

『こんばんは!』

 

 長い栗色の髪を靡かせ里香に負けず劣らず堂々と前へ踏み出す。ただそれだけの仕草にどこか迫力めいたものがある。

 一瞬、紅白の装備とレイピアを携えて立っているように見えたとゲーマー少年達は後に証言をする。

 

「私は結城明日奈。この学校で知ってるのは同じクラスになる皆と霧島さんと吉井くんくらいだと思います。この学校のシステムも完全に把握出来てるわけではないので教えてくれると嬉しいです」

『んん~?』

「どうぞ、よろしく」

 

 パッパと手早く終わらせた明日奈は生徒の反応を待つことなく元の場所へ戻った。

 大部分の生徒にとって、気になる単語が出てきたが当の本人達は素知らぬ顔で明日菜の自己紹介へ拍手を送っている。それが逆に白々しい。後で問い詰めよう、と彼らの親しい友人は決意した。

 

「ハイハーイ!次はボク達がやるよ!」

「こら、木綿季。落ち着きなさい」

『・・・・・・(な、和むっ!)』

 

 元気な声と、それを諌める声が明日奈と代わって食堂に響く。現れた少女達は瓜二つの容姿をしていた。片方の少女はニコニコと楽しそうに、もう片方の少女はそれを見て頬を緩めている。

 

「ボクは紺野木綿季!それでこっちのボクそっくりな人が・・・」

「紺野藍子です。見ての通り私達は・・・」

「「双子です!」」

「ボクが妹で・・・」

「私がこの子の姉です。この子はお転婆なので皆さんに迷惑を掛けるでしょうが、根気よく付き合ってもらえればと思います」

「ちょっと~!それじゃ、ボクが問題児みたいじゃないか~!」

「文句は後で聞くから。それでは・・・」

「「これからよろしくお願いします!」」

『よろしく~!』

 

 双子ならでは?のテンポの良い掛け合いは見るものを癒したし、楽しませた。そして、とある双子の姉弟は紺野姉妹と話してみたいと強く思うのであった。

 

「うぅ・・・。あたしが最後になっちゃった」

 

 その声を聞いた瞬間、一部の生徒はババッととある座席に座る人物の方を見た。見られている本人も驚いており、最後の人物から目を離さない。

 

「お兄ちゃん、一緒に出て・・・。」

「おう、いいぞ」

 

 声がDクラスの誰かさんと激似の人物は和人と共に前へ出る。

 

「ほら、頑張れ、スグ」

「はーい・・・。初めまして、皆さん。私は桐ヶ谷直葉と言います。名前の通り、桐ヶ谷和人の妹です。先に言っておきますが・・・」

 

 さっきまでのおどおどしていた様子が嘘のように背筋はピンと伸ばされ、胸を張って立っている。

 

「部活関係で私のことを知ってる人もいるでしょうから簡単なことを一つだけ。」

『・・・・・・ゴクリ』

「私は剣道を誰かを傷つける為には使いませんが、大切な物や人を守るためなら使います。なので、くれぐれも私に竹刀を振らせないでくださいね?」

『は、はい・・・・・・!』

 

 紺野姉妹達の流れから、ほのぼのと終わると思っていた自己紹介は最後に朋とは別の恐怖を与え、幕を閉じるのであった。




 前回、ブクマお気に入り登録をしてくれた方々ありがとうございます!私のやる気に繋がります!


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A~Fクラス、緊急代表者会議

 どうもです!前回からちと()期間が空きましたが続きでございます。
 前回、ブクマやお気に入り登録をしてくださった皆さん、ありがとうございます!嬉しいしやる気に繋がります。調子に乗って新しいシリーズ作って出したら時間とか色々足りないし、アイデアも思い付かなかったのは内緒。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
前回のあらすじ。
 ん?!Σ( ̄□ ̄;)
 ハイ?(´・ω・`)?
 ( ゚д゚)ハッ!
 (゚ロ゚ノ)ノオオッ!
 チカイマス!((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
 ( ≧∀≦)ノオー
 (*σ>∀<)σイイネー
 吉井?霧島さん?(´・ω・`)?
 (* ̄∇ ̄*)ホッコリ
 コワイ((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
 こんな感じ。


 Side 坂本雄二

 

 何とか夕食を摂り終えた俺達は風呂を済ませると鉄人に要請し、会議室を押さえることに成功した。また、今回話し合うことについて質問があるため、鉄人にはそのまま同席してもらうこととなった。

 時刻は《21:30》。入浴も済ませた就寝までの自由時間。勉強尽くしのこの合宿においては心の休まる時間の1つだ。まあ、それも今日に限ってはクラス代表達にそんな時間はないのだが・・・。

 それもこれも全ては唐突に現れた《Sクラス》なるもののせいである。

 

 坂本雄二は《Aクラス代表》の霧島翔子に頼まれて、クラス代表会議に同伴することとなった。だからこそ、この場にいるのだが・・・

 

「(恨むぞ、桐ヶ谷、朝田!)」

「「「「「「・・・・・・」」」」」」

 

 場の空気は最悪である。他クラスの奴らからの『お前達は何か知らなかったのか』という視線がビシビシとぶつけられるのだ。

 

「こうしていても埒が明かん、正直に答えろ坂本。お前達は何か知らなかったのか?」

「残念ながら何も知らなかった。食堂での俺たちの表情を見てればそれは分かるはずだ」

「・・・・・・信じよう」

 

 追及の手が思いの外、緩いことに驚く。そこまで説得力があったかと疑問になるが、根本以外の代表者達は納得した表情で頷くばかり。まぁ、言われてみれば、気味が悪いくらいに皆同じ反応をしていたのだから納得するのも無理はないのかもしれない。

 

「とりあえず、一番聞きたかったことは確認できたわね。次は何について話す?」

「Sクラスの詳細について、じゃないか?僕たちには彼らの情報が不足している。」

「ま、それが妥当かもね」

 

 中林が会議を進めるために代表者たちに問いかける。反応したのは平賀源二、Dクラス代表だ。彼の意見に反対意見は無く、あの小山も素直に賛同している。こうなると、視線は当然あの人に集中する。

 

「うむ、俺から話せることは話そう。それも教師の務めだ。ただ、あまり期待はするな。俺も多くは知らんのだ」

「大丈夫だ、いざとなったらババア長のところに殴り込みに行くからな」

「学園長と呼べバカ者。まぁ、今はいいだろう。消灯までに終わらせねばならんからな、質問の有る者から言え。手早く終わらせよう」

 

 つまり、時間は限られているということだ。必要な情報を優先的に無駄なく聞いていかなければ、あっという間に終わってしまう。

 何について質問するか、俺も含め皆が迷うなか1人の手が上がった。それまで成り行きを静かに見守っていたAクラス代表、霧島翔子だ。

 

「・・・・・・Sクラスは、試召戦争はどうするんですか・・・?いくら好成績者ばかり集めたと言っても難しいのでは・・・?」

「試召戦争に関しては、Sクラスのみで戦う。勝利報酬はクラス設備のワンランクUPだ、ちなみに言っておくとSクラスの設備はAクラスと変わらない」

「・・・・・・そう、ですか」

 

 となると、Aクラスにとって旨味はないな。B,C,D,E,Fクラスが翔子以上の成績を持つSクラスに勝てるとも思えんしな。

 

「私からもいいですか?」

「小山か、何が聞きたい?」

「試召戦争については概ね理解しました。では、先日の学園祭や今回の強化合宿などクラス単位で動く活動はどうするのでしょうか?」

「それは基本的にAクラスと合同で執り行うことになっている。」

「基本的に・・・?」

「そうだ、詳しくはまだ決めてなくてな。学園長や高橋先生を交えて、今後決定するつもりだ」

 

 大体、このくらいか?いや一応あれも聞くだけ聞いてみるか。

 

「先生、総合点数の平均はどのくらいだ?」

「総合点数の平均は6000点前後だ。」

『「「「「「「「「は?」」」」」」」」』

「他はないな?・・・よし、もう時間のようだ。戻って就寝の準備をしなさい」

 

 鉄人はまだ固まっている俺らを急かすようにして追い出す。廊下へ出された俺たちは暫しぼうっとしていたが、戸締まりを終え出てきた鉄人に再度急かされ漸く部屋に戻るのだった。




 文月学園、総合学科っていう設定にしようかな・・・。
 ご拝読ありがとうございます!


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二日目 朝

 どうも、お久しぶりです。前回、ブクマ等をしてくださった方々ありがとうございます。
 今回は登場キャラが多いので「」の横に名前を表記します。今後も登場キャラが多いときは同じようにします。



 二日目の朝。欠伸を噛み殺しながら吉井明久は食堂へとやって来た。寝不足ながら思い出すのは合宿一日目である昨日のこと。短い時間ながらも驚きの連続だった。

 

 クラスメイトが突然別クラスに移動したと思えば、その隣に並ぶのは清涼祭の時に見たことのある少女たち。しかもその内一人はVRゲーム内で散々お世話になった情報屋。本名もアバター名も顔すら出さなかったがあの背丈と特徴的な喋り口調は間違いなくあの情報屋のもの。これからの学校生活が一気に不安になるのも仕方ないだろう。そして、友人の土屋康太ですらそれは同じ。曰く、『情報戦で彼女に勝てることはないだろう』とまで以前言っていた。あの情報屋の機嫌を損ねれば・・・、と考えれば身震いするのも致し方ない。

 

 寝惚けた頭でSクラス(主にアルゴ)への恐怖心を募らせながら、受け取った朝食を手に席に着くと隣の椅子がガタリと動いた。

 

「あれ?桐ヶ谷君だ、おはよう」

「おはよう、吉井。前にも言ったけど名前で呼んでいいぞ。敬称もいらない。もうAクラスの代表でもないし、気にすることは何もないしな」

「そういえばそうだったね。代表じゃなくなったのは残念だけどこれからもよろしくね、和人君。あ、僕も前に言ったけど明久って呼んでよ!」

「分かった。よろしくな、明久」

 

 和人としては昨日のことで怒鳴られても仕方ないよな、と思っていたが、終始和やかなムードで朝食はスタートした。

 そんな和人の心情を知らない明久はそれにしても、と呟く。

 

「和人は同じクラスの人と食べなくていいの?というか朝田さんは?」

「ああ、それはだな・・・」

 

 明久の疑問に和人は遠い目をしつつ答えようとしたが、その前に第三者が答えた。

 

「明久、あっちのテーブル見てみろ」

「あれ?雄二だ、おはよう。それにあっちのテーブル?」

 

 明久の向かいに座った雄二は明久の後ろの方を指差しする。素直に振り向くと、数あるテーブルの中で一際目立つテーブルがあった。

 

「あれ、吉井・・・、じゃなくて明久だったら入っていけるか?」

「い、いや、ちょっと無理かな。」

「坂本は?あ、俺のことは名前で呼んでくれ」

「じゃあ俺も雄二でいいぞ、きりが・・・・・・和人。ちなみに、俺はもちろん無理だ」

「だろ?つまり、そういうことなんだよ」

 

 苦笑いする和人に同情する二人。振り返ったとき、明久の目に入ったのはSクラスの女性メンバーが固まっているテーブルだった。そこへ一人で入っていくのはかなり勇気がいる。

Sクラスの構成は女性が大人数なのに対して、男子は桐ヶ谷和人ただ一人のみ、和人ならなんだかんだ楽しく過ごせるだろうが肩身が少々狭くなるのは必然とも言えた。それを同じ男子である二人が分からないハズもなく・・・。

 

「なるほどね・・・。そういうことなら、他のときも一緒に食べる?」

「いいのか?俺が言うのもなんだけど、俺たちはAクラスを裏切ったようなもんなんだぞ?」

「この学校じゃ日常茶飯事だよ。というか、学園の措置も仕方ないかなって思うんだ」

「仕方ない?」「ほう・・・?」

 

 焼き鮭を頬張りながら明久は考えを述べる。反応は返しつつも二人は特に口出しせず明久の言葉を待つ。

 

「だってさ、彼女たち全員が和人と同レベル・・・、小さく見積もっても久保くんや優子さんレベルなんでしょ?」

「まぁ、そうだな。Aクラス上位レベルは確実だ。」

 

 それに各自、得意科目は違う。彼女達が編入しても和人の学年首席の地位は揺らぐことがなかったが、一人一人の得意教科を見てみれば和人を上回る成績を叩き出している。

 

「そんな人達がもし、そのままAクラスに来てたら、Aクラスは過剰に戦力を得ることになるよね?」

 

 元も十分に大きな戦力をAクラスは持っている。だが、それはやり方さえ工夫すれば下位クラスでもギリギリ打ち勝てるはずだった。しかし、もしSクラスの彼らがAクラスに入っていればそのパワーバランスは大きく崩れていたことだろう。

 雄二の考えた変則的な試合形式も、上手く弱点を突いたこと、操作の技術に一日の長が有ったからこそ持ち込めた。

 だが『もし』だ。もし、あの時、和人や詩乃のように全ての教科が均等に高く、召喚獣の操作が彼ら並に上手い人間がいたら?

 そんな存在からすれば、教科指定の優位など、取るに足らない問題だ。確実にFクラスはコールド負けしていただろう。

 その存在こそが、2年もの間、ゲームの世界に縛られ、そこで生きるか死ぬかの戦いをし、生還した彼らだった。多くのSAO生還者がゲームから離れた、それでもなお、ゲームから離れることを選ばなかった彼らだった。

 そこが分かれば後は簡単。感覚は違えどゲームで生きて順応した彼らからすればこの程度の操作は赤子の手を捻るようなものだ。点数・操作技術、どれを取っても高い素養を持つ人間が元から火力の高かったAクラスに集まれば、過剰という他ない。

 

「ま、確実にそうなるだろうな。ただでさえ、BクラスとAクラスの間には大きな壁がある。そこにAクラス上位レベルの生徒がプラスで9人も現れれば他クラスからしてみれば絶望しかないだろうな。

それに根本的な話だが、この学校は1クラス50人。それがA,B,C,D,E,Fの6クラス編成だ。

だが、今年Aクラスには+2で52人。これでも

十分に大きい差だが、さらに今回で+9人。もしSクラスを作らず、Aに放り込めば61人。他クラスよりも11人多くなっていた。

 それはあまりにアンバランスだ。」

「でしょ?そしたら、あまりの戦力差に元々やる気のない生徒は更にやる気がなくなるだろうし、やる気のあった生徒もほぼ萎えると思うんだ。そうなると試験召喚戦争も起こり得なくなる。学園の特性が殆ど出なくなると思わない?」

「つまり、それを防ぐ為に今までいた生徒と編入生で成績がいい意味で均一な和人たちを区切って一つのクラスとした。って明久は言いたいんだな?」

「うん、そういうこと!どう思う?」

 

 明久の意見にしっかりと自分の考えを付け加えてまとめた雄二の返しに頷きながら明久は和人の方へ意見を聞く。それに対して和人は一度箸を置いて返答を考えた。

 

(一応、帰還者学校ではない学校へ編入した人へ対する周りの対応を調べる、という名目もあるがそれ込みで考えても明久の考えも的外れってわけじゃない。

クラスのパワーバランスが偏りすぎるのも事実だし、それを回避するためにわざわざ調節し直すのも面倒な話だ。それなら新設して今までいた生徒と編入生で切り離して目標を高くした方が楽だしな。クラスを区切っても周囲との関わりという面は今回みたいな行事で十分に補えるし。

というか、学園長の性格から考えても面倒だから付け足した、っていう理由が8割を過ぎると思うけど・・・。)

 

 和人はチラッと明久の様子を見る。当の明久は目を輝かせながら今か今かと和人の口が開くのを待ち続けている。

 

(言えるのか?こんなに反応を期待しているやつに”学園長が楽をしたかったからだと思うぞ”なんて言えるのか?)

 

 明久のキラキラとした笑顔がチクチクと良心に刺さってる気分だ。まさか、笑顔に追い込まれることになろうとは、なんて思いながら和人はようやく心を決め、口を開く。

 

「うん、明久の考えで合っていると思うぞ」

(言えるわけがない!!!しかも、雰囲気が若干木綿季と被るから尚更言えない!!!)

 

 表面上は平然と食事を再開しているが、内心はかなり慌ただしい。だが、仕方ないのだ。純粋な笑みが木綿季とダブり、家族には殊更甘い和人に否定することができなかったのだ。

 

「ほんと!?嬉しいよ!」

 

 和人の内心を知ることなく、わいわいと騒ぐ明久を穏やかに保護者目線で見守っていると向かい側に座る男と目が合った。

 

(ようこそ、こちら側の世界へ)

(雄二もこの笑顔にやられたのか?)

(あれを冷たくあしらえるか?)

(ちょっと無理だな)

 

 アイコンタクトで会話して二人は頷く。

 和人と雄二の仲が深まった瞬間だった。

 

 

 

─深く頷く和人と雄二、未だに無邪気に喜ぶ明久。ちょっと意味のわからない状況ではあるが、そんな謎の状況が出来上がったカオス過ぎるテーブルを遠目に見ながらヒソヒソと囁く者たちがいた。

 

 

 

 

____

───────

 ̄ ̄

 

 

 

 

里香「・・・・・・ねぇ、あれってどういう状況なの?」

詩乃「私に分かるとでも?」

 

 少し引き気味にこそっと詩乃に耳打ちする里香、それに分かるわけないと答えながら件のテーブルへ呆れの視線を送る詩乃。

 

直葉「あたしも流石に分かりません・・・」

琴音「そうだよねぇ」

咲智「それにしたって不思議な状況だね」

虹架「全くだよ。ところで───」

 

 耳聡く二人の会話を聞いた直葉、琴音、咲智、虹架の四人は、あはは、と苦笑しながらもサッと切り替えて別の話題を始める。経験してきたことが経験してきたことなだけあり、この程度では動じないだけなのだろう。興味がないだけとも言える。

 

 

木綿季「なんだかあの3人、兄弟みたいだね」

 

 件の光景を目にした木綿季は唐突にそんな感想をこぼした。

 

藍子「兄弟?」

珪子「あー、分かる気がします!」

明日奈「ふふ、それなら坂本君が長男ね。」

藍子「末っ子は吉井さんですかね」

木綿季「なら、和にぃは必然的に次男だね!」

珪子「思ったより違和感ないかもです・・・」

明日奈「だね。しっかり者の坂本君と・・・」藍子「のんびり屋で頼れるお兄さん・・・」

木綿季「で!子供みたいに純粋なヨッシーだね!」

三人「「「うん?」」」

木綿季「え?何かボク可笑しなこと言ったかな?」

 

 単純に明久のあだ名についてと木綿季の自覚していない彼女自身の特徴を言ったからなのだが、当の本人は至って真面目にそう聞き返すばかり。

 

藍子「大丈夫、特に変なことは言ってないよ。ただ、吉井さんのあだ名に驚いただけ」

珪子「そ、そうですよ!」

明日奈「うん。でも、いいあだ名だと思う」

木綿季「でしょー!」

 

 どや、と胸を張る木綿季に温かく見守るメンバー。奇しくも、それは明久達のテーブルと同じ状況なのであった。

 

 

 

 

 ちなみにアルゴ()はというと。

 

 

「Zzzzzz」

 

 未だに部屋で眠っているのであった。




 アルゴはもうアルゴで統一するつもりです。
私が違和感あるのと、アルゴがキリト達以外のネット民に自分の顔と本名を出さないイメージがあるので。


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二日目 夜①

 新年明けましておめでとうございます。お久しぶりです。私です。長くお待たせしてしまいました。その割りに内容薄っぺらです。ごめんね(´・ω・`)
 でも、次のパートがなんとなく思い浮かんだんで次は3000字くらい書けそうです。たぶん、恐らく、maybe・・
 


~20:26

 

 恙無く夕方まで日程が進み、大半の生徒が入浴を始めた頃、突如として廊下が騒がしくなった。ちなみに詩乃は風呂へ行っている。

 本来なら俺も風呂に入る時間なのだが、学園長に依頼された仕事が思いの外長引いてしまった。

 

「何事だ?」

 

 最初は何かを叫ぶ声だけだったが、次第に足音が聞こえるくらい慌ただしく人の往来が絶えなくなった。

 部屋のドアを開けると先生方や女子生徒が頻繁に廊下を行き交っている。

 

「なぁ、小山さん」

「!?。なんだ、桐ヶ谷くんね。驚いたわ」

 

 皆早足だから中々話しかけられない。仕方なく人並みの方へ少し歩くとようやく、見たことのある人が通ったので話し掛ける。

彼女は警戒するように勢いよく振り返ったが俺だと分かると表情をゆるめた。

 

「呼び止めて悪いけど、どうしても聞きたくてさ。一体何があったんだ?」

「・・・その反応は大丈夫そうね。詩乃は丁度お風呂の時間か、歩きながら話しましょう。今は時間がないの」

「あ、ああ。分かった」

 

 剣幕に圧されつつ、素直に早足の小山さんに追従する。

 

「ここまで大きな騒ぎになっているのはとても単純でそれ故に許されないことをした輩が現れたからよ」

「・・・それは一体なんなんだ?」

「女子風呂の覗きよ」

「は?」

 

 小山さんは如何にも頭が痛そうに顔をしかめるが俺はそれどころではない。浴場には今詩乃たちが行っている。それにお世話になったAクラスの皆も。覗き犯に対して沸々と怒りが揺らめく。隣を走っていた小山さんがぎょっとすると俺から少し離れた。

 

「──えー、こちら小山。応答せよ、桐ヶ谷君がそちらに向かっている。ただし、味方なので彼に攻撃はしないように」

 

 横の小山さんの無線をギリギリ聞きとどけて一気に加速する、これ以上待っていられなかった。俺は彼女の裸を他人に見られて喜ぶような変態ではないし、友人がもしかすれば心に傷を負うかもしれないと分かっていて無視するほどクズになった覚えもない。そもそも、仲間をどんな形であれ傷つけるやつは誰であっても許さない。

 

 

 

 

 

☆★☆

 

~20:31

 

 

 

──その頃の明久たち

 

 

「中々に良い風呂だったな」

「流石、元旅館というべきかのう」

「・・・お湯も良い温度だった」

「ねぇ、なんか騒がしくない?」

「ん?そういえば何だかうるさいな」

「そうじゃ、康太は何か知っておるか?」

「・・・一応知っている」

「一体何が起こってるの?」

「・・・覗き」

「へ?」「はぁ?」「なんじゃと?」

「・・・女湯の覗き、首謀者はBクラス江藤」

「「「・・・・・・」」」

「・・・現在、和人が猛ダッシュで覗き犯をしばきに行っている」

 

 示し合わせたかのように四人は顔を見合わせる。その表情はアイツやっちまったなとも言うべき顔だ。

 

「おいおい」

「江藤くん、もしかしなくてもさ」

「死んだじゃろうな、確実に」

「・・・南無」

「ヤムチャしやがって・・・」

「君のことは三秒くらいは忘れないよ」

 

 四人は静かに死にゆくアホ面を思い描きながら手を合わせた。きっかり三秒で顔を上げた明久は雄二を見る。

 

「ん?どうした明久」

「いやさ、雄二が怒ってないのが意外で」

「はあ?」

「いや、今ってABCクラス女子の入浴時間でしょ?」

「そうだな、人数の少ないSクラスも合同だ・・・あ?」

「それって霧島さんも覗きの被害に遭うってことじゃ・・・」

「・・・・・・」

 

 ガタリと立ち上がる雄二、そんな彼を見上げる明久たち。

 

「行くぞ、お前らぁ!」

「いいけどさ、忘れてたよね?」

「いかにもそういえば、みたいな顔をしとったな」

「・・・分かりやすい」

「うるせぇ!」

 

 桐ヶ谷和人から数分遅れて、坂本雄二率いるAクラス男子の応援が出発した。

 ちなみに雄二たちは少し早めに大浴場に行き、人が少ないうちに体を洗いゆっくり風呂に入ることができたのだった。

 秀吉は残念ながら個別風呂である。本人は兎も角、明久たち以外の男子達が秀吉の性別が男であることを認めないことと学校側からの万が一に備えての容認がでなかったこと、それらが重なった結果であr『納得いかんのじゃー!!』・・・。

 

 

──かくして、後に細々と語り継がれる男子の煩悩とそれに巻き込まれた女性陣及び、一部の紳士達がぶつかり合う、女子風呂覗き事変が開幕するのであった。

 なお、開幕から戦闘力は女性陣に軍配が上がっている。なんなら大義も女性陣にある。

・・・まあ、結末が分かりきった戦いもたまにはよいのではないだろうか。




 どっちが勝つかワクワクですねぇ(すっとぼけ)。
 一応ね?原作通り明久達が凸るのも考えたんですよ?でも、なんか違うよなぁって思いましてね。
 いつも通り、私は思い付いたまま書くしか出来ない者なので先の展開は未来の自分に託します。


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