俺が悪タイプ使いなのは間違っていない筈だ (ゴーマ)
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第1話

うん、今日もいい天気だ。

洗濯物はよく乾くし、外出していても気分がいい。

かく言う俺は、ヒキガヤ ハチマン。ソウブトレーナーズスクールに通う12歳だ。

そして、今は昼休み。普通なら、友人と楽しく過ごしているだろう。しかし、俺の周りには誰もいない。

 

 

なぜなら、俺と一緒に食事している相手は皆すべて悪タイプのポケモンだからだ。

後、俺の目が腐っていて目付きが悪いのと、生来のコミュ障が原因だ。

一度、バトル後の女子生徒に傷薬を差し出して、手を払いのけられたのはいい思い出だ。

それと、俺の手持ちは皆俺以外には中々懐かない。数少ない例外は妹のコマチぐらいだ。

そもそも悪タイプとは世間では嫌われ者である。事実街を荒らし、人に危害を加える種もいる。凶暴で好戦的でずる賢い。そんな嫌われ者と仲良くしようとする物好きはそういない。そんなポケモンを好き好んで連れ歩くトレーナーにもだ。

というわけで、現在体育館裏でぼっち飯である。

ふと時計を見ると授業開始15分前。そろそろ行こう。

 

 

 

 

放課後、俺はヒラツカという教師に呼び出された。だいたい予想はついている。

あの作文のことだろう。

「さて、ヒキガヤ。なぜ呼び出されたのか分かっているな。」

「ええ、心あたりはあります。」

「具体的には?」

「先週の作文でしょうか?」

「その通りだ。このふざけた内容は!私はトレーナーズスクールでの6年間というテーマを出したはずだ!」

「だが、お前は何を書いた?言ってみろ。」

そう言うとヒラツカ先生は作文を突き返してきた。

「要約してでいいでしょうか?私はこう言いたいんです。

つまらない固定概念に縛られて悪タイプを嫌うトレーナー達よ、砕け散れ、と。」

そう言うとヒラツカ先生は大きく溜息をついた。

「ヒキガヤ、お前友人はいるか?」

「いいえ。聞かなくてもわかるでしょう。悪タイプ使いの腐り目に友人だなんて。」

ヒラツカ先生は呆れたような、しかし納得したような顔をした。

「とりあえず、作文は書き直しだ。それと一つ聞きたいことがある。」

「なんでしょう?」

俺が怪訝な声色で答えた。

「君の手持ちは記憶している限りだが、ブラッキー、ヤミカラス、ヘルガー、ニューラだな。」

「あっています。」

「私が常々疑問に思っているのだが、なぜそこまで悪タイプに拘るのだ?」

「単純です。魅了されたからです。誰にも媚びず、馴れ合わず、気高く強かに振る舞う姿にです。

世間では嫌われ者ですが、悪タイプは様々な地方で四天王と呼ばれるトレーナーの専門タイプでもあります。

正直、悪タイプを引き連れ、その座に上り詰めた彼らのことを尊敬しています。」

そこまで言うとヒラツカ先生は意外そうな顔をしていた。多分腐り目ぼっちから真っ当な理由と「尊敬」なんてワードが出たこと自体が意外なのだろう。

更に続ける。

「それとムカついたんです。物事の上っ面だけ見て、ステレオタイプな考えで本物を見つけようとしない世間に。

世間で認められないなら認めさせればいい。その為に俺は上を目指します。最低でもジムリーダー級の高みまで。」

言い終えるとヒラツカ先生の目をじっと見る。何か言ってみろとばかりに。

そして、ヒラツカ先生は口を開いた。

「そうか、お前なりの理由と信念があってのスタンスだったのか。なんというか、見直したぞ。」

「そんな信念とか大層なものじゃなくてガキの癇癪ですよ。ただ、こうして自分の思いを人に吐き出したのが始めてだったんで、熱くなりすぎたんですよ。」

ヒラツカ先生は頷き、少し思案すると再び口を開いた。

「とりあえず、作文の書き直しは無しだ」

意外な言葉に思わず「えっ」と漏らす。

「その代わり、君には春の校内トーナメントに出場してもらう。君は極力バトルを避けるようだから、多くのものが君の実力を知らない。

私は君の手持ちを見る限り相当の実力があると思うのだがね。

とにかく、これは決定事項だ。」

きっぱりと言い切ったヒラツカ先生にゲンナリした顔で質問する。

「仮に出なかったらどうなるんです?」

「その時は私の授業の単位を一切認めない。君に拒否権はないんだ。」

そう言うとヒラツカ先生は「活躍を期待する」と言って教室を出て行った。

 

 

面倒なことになったと思い、俺は1人溜息をついた。

それと対照的に腰のモンスターボールは嬉しそうに、待ちきれないといった様子で揺れ動いていた。

 

 

 

 

 

 

 




とりあえず思いついたので書いてみた初投稿者です。
まだハチマン達がいる地方が何処なのかも決めていません。色々と至らぬ点もありますが、応援して頂ければ幸いです。
それとハチマンが入手する悪タイプもまだ確定していないのでリクエストなどもして頂ければ嬉しい限りです。


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第2話

結局、単位を物質に取られた俺は10日後のトーナメントに出場することになった。

そして今手持ちの力量を上げるためにトレーニングをしている最中だ。

今俺達がいるのは街の外れの山の中だ。ここはトレーナーは全くいない場所だが道が険しいので、足腰が鍛えられる。加えて、出現する野生のポケモンもレベルが高い。

そんなわけでほとんど俺達専用のトレーニング場になっている。

 

トレーニングの方法は単純。山頂まで登り、出現する野生のポケモンを倒していく。一度に多数出現したり、足場の悪いところでもお構い無しに現れる。トレーナーである俺自身の能力も高められるのだ。今だって、戦闘の真っ最中だ。

「ヘルガーはバークアウトで足止め、ブラッキーは鈍いからしっぺ返し、続いて月の光、ヤミカラスは電磁波からサイコキネシス、ニューラは嫌な音から冷凍パンチ。」野生のポケモンでよく出るのはオニドリル、ザングース、アーボック、スピアーなどの好戦的で縄張り意識の高い連中だ。タイプ相性で不利なスピアーや威力の高い格闘技を繰り出すザングース、状態異常を引き起こしてくるアーボックはトレーニング相手にはもってこいだ。疲れながらも山頂目指して順調に歩を進めている。山頂でのMAXコーヒーが楽しみだ。

だが、そんなことよりも目の前の相手に集中だ。

 

 

 

 

 

それから数時間後、休憩を兼ねて手持ちの回復中。現在、俺の手持ちはブラッキー、ヘルガー、ヤミカラス、ニューラ。

皆俺には勿体ないほどのいい連れだ。

ブラッキーは俺のパートナー。野生のイーブイの時怪我をしているところを保護してそれから遊び相手になった。イーブイの時は無邪気だったが、今はクールな女子だ。進化のキッカケは家出したコマチを探し出したのはいいが夜になり、道に迷ってしまった時だった。進化してくれたのはいいもののポケモンと遊ぶことに夢中になってコマチを放置しちまったことは反省している。

ヤミカラス、ニューラはイーブイが連れてきた。最初こそ威嚇されたが、自分と同じ臭いがしたのか次第に親しくなっていった。ヤミカラスはお喋りな三枚目。コメディアン気質でボケ担当。一方、ニューラはサドっ気のあるツッコミ担当。笑い方が結構可愛い二枚目。

ヘルガーはデルビルの時に最初のバトルゲットしたポケモン。ジョウト四天王のカリンさんの切り札だから、欲しがっていたからめちゃくちゃ嬉しかった。一度カリンさんのヘルガーのバトルを見せたら食い入るように見ていた。同族として対抗心を燃やしたのか以降すっかりバトルジャンキーになってしまった。なのでゲットからあっという間に進化して、現在手持ちの中で最もレベルが高い。

トーナメントに出場することが決まった時、一番嬉しそうにしていたのがこいつだ。

現在地は山頂。見晴らしの良いこの場所は人目を気にせず寛げる。

ブラッキーは昼寝していて、ニューラとヤミカラスはじゃれている。けど、時々ニューラがヤミカラスをど突いているが気にしない。いつものことだ。そして、ヘルガーは脇目も振らず食事中。あれだけバトルすれば腹も減るだろう。この時点でヤミカラスの倍は食べている。

こいつらの様子を見てると嫌われ者とは到底思えない。それだけ世間からのレッテルや偏見の影響が強いのだろう。

さて、そろそろ休憩は終わりだ。俺はMAXコーヒーを飲み干すとこいつらに帰宅すると伝えた。

山の下りは足に負荷がかかる。注意しないと怪我をすると伝えるとこいつらはうなづいた。

 

 

 

 

「こいつは大物だ」俺はボソッと漏らす。

俺の目の前に存在するポケモンはライボルト。出会い頭に電撃を放ってきた。大方縄張りに入り混んでしまったのだろう。鋭い目付きで威嚇してきてる。野生のポケモン相手にしては珍しく俺の手持ちは皆臨戦態勢に入っている。特にヘルガーは体制を低くして唸り声を出している。目を見れば真剣そのもの。ライボルトを強敵として認めているのか好戦的な笑みまで浮かべている。

「如何にも闘いたいって顔してるな。」ヘルガーにそう言うと、ちらりと目で答える。一目で分かる。「俺にやらせろ!」と訴えかけている。

「なら、任せるぞ。」と答え、他の手持ちをボールに戻してヘルガーだけを場に残す。

戦闘開始だ。

「ヘルガー、バークアウト!」

命じると途端に大音声で口汚くまくし立てる。命中するがライボルトは顔を顰めながらも睨み続ける。

だが、黙ってやられているわけもなく全身に電気を集め始める。

「充電か。ヘルガー、悪だくみ!」

バークアウトで下げられた特攻の低下を補うため充電するライボルト。つぎは威力倍増の電撃がくる。

なら、こちらも特攻倍増の悪だくみを積む。

「火炎放射!」と命ずるとすぐにライボルトは10万ボルトを繰り出す。

爆風が起こり、それが晴れるとライボルトはもう目の前にはいない。

何処だ、と思う間もなくヘルガーにライボルトの電光石火が刺さる。続けて雷の牙をヘルガーに食らわせる。

身体に直に流れる電流に顔を歪めるヘルガー。だが、面白いとばかりに笑みを浮かべる。

「ヘルガー、やれるな。そのままブレスをかけてやれ!」

すると、ヘルガーはライボルトの顔面を目掛けてブレスを吹き付ける。

途端、牙を放して後ろに飛びのくライボルト。当然だろう。ヘルガーの吐く炎には毒素が含まれる。

それを利用して毒の息を顔面目掛けて掛けたのだ。畳み掛けるなら今だ。

「ヘルガー、バークアウト!」

再び大声でまくし立てる。ライボルトはさっき受けたブレスの毒素の影響で反応が遅れてもろにくらう。

負けじと電光石火で近付こうとするが、ヘルガーはブレスの毒素を頼りに進路を予測してヘドロ爆弾を撒き散らす。

慌てて回避するライボルト。毒素を受けた身体にヘドロ爆弾をくらうのはマズイだろう。特攻を2段階も下げられたのなら力も出ない筈だ。

勝負はあっただろう。この辺が潮時だ。ヘルガーにちらりと目で指示する。真意を悟り、頷くヘルガー。

「火炎放射。」

放たれた火炎放射はライボルトの顔のすぐ横を通れすぎる。最初から当てる気は無い。もう闘う気は無いこと、これ以上やり合う様なら容赦しないという意思表示だ。

再度忌々しげにこちらを睨み付けると10万ボルトの光で目を眩ませて電光石火で離脱するライボルト

物足りないって顔してるがこんなものだろう。

「終わりだ、ヘルガー。後で傷見せてみろ。」

そう言うと俺はヘルガーをボールに戻す。ボール越しにヘルガーが暴れ足りないって態度してる。

こりゃ、トーナメントで暴れされなきゃ気が済まないみたいだ。

 

 

 

帰宅後、手持ちの様子を確認する。ヘルガーの傷は浅かったものの拗らせるとまずいので傷薬で治療。ヘルガーはこれくらいなんてことないと言いたげだった。後、まだ傷薬が沁みるのに慣れないらしい。少し顔を顰めてた。その様子を見たヤミカラスがケラケラ笑って威嚇されていたが、これも日常風景だ。ブラッキーは鈍いの使用が多かったので入念に筋肉マッサージしてシャワーを浴びせた。あいつも女子なのか

シャワーと毛繕いされるとご機嫌のようだ。その内ウトウトし始めた。お疲れ様。ニューラは傷の治療の後、すぐにうちのニャルマーのカマクラと一緒になって爪研ぎしていた。

仲はいいのだがお互いマイペースなのであまり一緒にいることは少ない。最後にヤミカラス。何だかんだ言って一番こいつが回避が得意のようだ。空が飛べるとはいえヒラリヒラリと攻撃を躱せる能力には俺も他の手持ちも感心している。ただ、戦闘中でもゲラゲラ笑うのはどうかと思う。どう見ても煽ってるし、相手が気の毒に思えてくるまである。今日も攻撃を悉く回避されたオニドリルが笑い声に頭にきてドリル嘴を仕掛けたら、イカサマで受け流され地面に直撃してた。あのオニドリルには同情したね。

さて、ここからが本題だ。

「明日、トーナメントのエントリーと抽選がある。」

そう言うと俺の手持ちは真剣な表情で向き直る。あのヤミカラスでさえもだ。

「ルールを説明する。1試合1対1、ポケモンの見せ合いなしのトーナメント方式。

試合ごとに違うポケモンを使っても良い。シード権はない。

使うポケモンにタイプやサイズの制限無し。」

一息置いて続ける。

「出場出来る生徒は全て六年生。それと教師からの推薦が必要。つまり、ある一定のレベルがある連中相手だ。」

そこまで言うとニューラとヘルガーが笑みを浮かべる。予想していたが、本当に悪い笑顔だ。

「ボコボコにしていいんだよな。」って絶対思ってる。

「最後に優勝者には優勝景品がある。

進化の石一式と好きな進化アイテム一つだそうだ。」

ニューラが一層やる気に満ちた顔になる。そういや、こいつマニューラになりたがっていたな。

「出場するからには優勝狙うぞ。悪タイプの実力を世間に認めさせるのが俺達の目標だ。

こんなところでグズグズしてられないよな?」

そう問えば全員無言でうなづいた。

そして、俺は続ける。

「そうと決まればやるぞ。優勝景品の進化アイテムだが、鋭い爪を選ぼうと思う。

ニューラが次に進むために手を貸してくれないか?」

そう聞けば当たり前だとうなづく。ニューラはヤミカラスから励まされている。

「何処の誰でも手を抜くな。全力で倒しに行け。

思い切り暴れてこい!」

最後にそう言えば、皆一斉に気合の声を上げる。

全員のコンディションもモチベーションも良好。後は俺のトレーナーとしての能力が試される。

絶対無様な試合はしない。そう誓うと手持ちの食事の支度に取り掛かった。




一応続きました。設定上ハチマンはカロス地方にいます。なので多分アローラのポケモンはでないと思います。次回から学内トーナメント編です。バトル描写が下手なので投稿が遅くなってしまったらごめんなさい。
ご感想など頂ければ幸いです。


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第3話

今俺がいるのは体育館の列の中。トーナメントのエントリーをしに来ている。エントリーだの列だの言っても六年生しかいないので大した人数ではない。それにエントリーでするここといってもポケモンの登録と本人確認だけだ。俺に限っては何の確認もいらない筈だ。こんな腐り目で悪タイプのポケモンを連れ歩くのは俺しかいないからだ。特徴的だろ?今も列の中で異様に間隔が俺のところだけ広く空いている。時折、これ見よがしにヒソヒソと陰口叩く声が聞こえるが、無視を決め込んでいる。群れても正面から罵倒出来ないグズなんて相手してられない。群れても弱くて意気地のないままでいるより強くて孤立している方がマシだ。おっと、時間のようだ。教師の点呼が聞こえた。

エントリー資格を持つのは俺を含めて16人。全員いることを確認して抽選が始まった。

 

 

 

数十分後、対戦相手が決定し、解散を命じられた。俺の一回戦の相手はユイガハマ ユイとかいう女子だった。お気の毒様、こんな腐り目と当たってしまって。対戦拒否とかされないよな?ハチマン心配。コマチも観戦に来るらしいし醜態は晒せないな。

それと、トーナメント出場者で予想外の人物を見つけた。俺とそこそこ仲いい奴だ。あれを除けばトレーナーとしての腕ももっと評価されると思うのだが。と、そんなことを思っているとどすどすと如何にも鈍重そうな足音が聞こえた。

「ハチマーン、探したぞ。我の手を煩わせるなど貴殿ぐらいなものだぞ。」

「ザイモクザ、お前も出場するんだろ。意外だな。」

俺の目の前にいる男こそザイモクザ ヨシテル。俺と好き好んで対戦したがる物好きなトレーナー、数少ない俺の友人だ。

ただ、こいつには途轍もなく残念な点がある。なにかと言えばだ。

「勿論であろう。この剣豪将軍にかかれば優勝など容易いことだ。」

こいつは某将軍と名が同じで剣豪将軍と事あるごとに自称する。つまり、重度の厨二病患者なのだ。

相当アクの強いやつだが、それは俺の手持ちで慣れている。

「そうか、。知っているだろうが、俺も出場者だ。」

「おう、知っているとも。しかし、ハチマンが出るとは予想だにしていなかったぞ。」

「ああ、ヒラツカ先生に単位を物質に取られて、仕方なしにだが。」

「そういうことなら得心がいった。なんとも貴殿らしい。」

「放っとけ。」

短くそう返せば、ふと気になることがあった。

「そういえば、最後に対戦したのは1カ月前だったな。新しく手持ちに加えたやつはいるのか?」

「おう、いるとも。さあ、出てくるのだ。」

そう言ってボールからポケモンを出す。

そこには歯車ようなポケモンと宙に浮かぶ腕のようなポケモンがいた。

「ギギアルにダンバル。我の新たな家臣である。」

「ギギアルはギアルが進化したのだろうから分かるとして、ダンバルはどう入手した?」

「我もまさか入手できるとは思わなんだ。ゲーム大会の優勝景品がこのダンバルだったのだ」

「それは幸運だったな。まあ、お前自身の実力も多分にあるだろうが。」

そう言うと、ザイモクザが口を開く。

「ハチマンよ、貴殿の手持ちを拝見したい。良いか?」

「勿論だ。後お前のも見せろよ。それで全てじゃないだろ。」

「うむ、とくと見るがいい。」

そして、俺達は手持ちを全て外に出す。

俺の手持ちはいつもと同じ。ブラッキー、ニューラ、ヤミカラス、ヘルガー。

ザイモクザはギギアル、ダンバル、レアコイル。

こいつはこういう機械のようなポケモンを好んで使う。

「一層鋭さが増したな、ハチマンよ。我を唸らせるとはなかなかのもの。」

「お前もますます実力をつけたな。ギギアルとレアコイルから受ける印象がまるで違う。」

手持ちの様子を見るとザイモクザの実力の向上が分かる。あのヘルガーが笑っている。闘うのが楽しみだという笑いだ。

「こりゃ、トーナメントが楽しみだ。」

「貴殿が勝ち上がるのが目に浮かぶ。だが、何処で当たっても我が勝つがな。」

お互いにそう言うとそこから立ち去っていく。

あいつには悪いが全員全力で叩く。

その気を察したのか手持ちの面構えがさっと変わる。

こういうときに感じる。

ライバルとか友人とかってこんなにも刺激になるんだな。

 

 

「お兄ちゃん、お帰り。」

帰宅すると妹のコマチが出迎える。

「ただいま、帰ってたのか。」

「うん、お兄ちゃん遅かったけど何かあったの?」

「ザイモクザと話し込んで遅くなった。あいつもトーナメント出場者でさ。」

「あれ、そうだったの?意外だなー。」

「けどな、あいつの腕は確かだ。お前じゃ一勝できるかどうかだ。」

「何その言い方。」

少しむすっとした顔をするコマチ。

コマチは今四年生。四月にポケモンを持ったばかりだ。

「ちゃんとフォッコもメェークルも成長してるからね。お兄ちゃんには全敗してるけど。」

「それでも学年だとかなり強いんだろ。」

「そうだけど、お兄ちゃんのトレーニングがハードでポケモンのスタミナが他の子のポケモンと比べて高くなりすぎて

ドーピング疑われたんだからね。お兄ちゃんの所為だよ。」

事実、俺のトレーニングはハードで最初はコマチが半泣きになった。フォッコもメェークルも俺の手持ちに揉まれて着実に成長してる。

それは喜ばしいことだ。

「ところでお兄ちゃん、明日がトーナメントだけど自信はあるの?公式戦は初めてでしょ。」

「自信ってなんだよ。」

「いや、優勝するとか、勝てるかなー、とか。」

「勝つさ、俺の目標はもっともっと上だ。それに決めた。相手が何処の誰でも全力で勝ちに行く。

それが相手に対する俺なりの礼儀だと思う。」

「ふーん、そうなの。けど、珍しくやる気あるじゃん。明日コマチも張り切って応援しちゃうね。」

「ほどほどにしてくれ。恥ずかしい。」

そういうと手持ちをボールから出して最終調整に入る。

明日が楽しみになってきた。




続きました。これまで感想を下さった方に感謝します。次回はトーナメントの一回戦です。投稿が長引いてしまったらごめんなさい。
それとこの作品のハチマンは普段はダウナーだけどやる気出すと最後までやり尽くすという性格です。
それとこの作品でのハチマンは偏見が特に嫌いなので敬遠されがちなザイモクザとも友人になれたという設定です。
また、ご感想頂ければ幸いです。ご精読ありがとうこざいました。


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第4話

スタンドには大勢の人。もう既に席は満席で立ちながら観戦する連中が大勢いる。

今俺はスタジアムのフィールドの中でトーナメントの開会式に参加している。皆黙ってはいるが教師の話しなど聞いてないだろう。事実俺も聞いてない。口から出てくるのは決まりきった陳腐で聞き飽きた文言ばかりだ

そこでどんな反応をすればいいのかわからない。それに俺の意識はもう一回戦のことにシフトしていた。

こちらが選出するのはニューラ。持ち物は持たせて良いとのルールなのでニューラにはチーゴの実を持たせるつもりだ。ニューラは物理攻撃主体なので火傷の状態異常が怖い。

そんなこんなで開会式が終わり、トレーナーはそれぞれ解散していく。

俺は手持ちのアップをするため隣接するグラウンドに向かった。

最後までぬかってはいけない。

 

 

 

 

いよいよ俺たちの出番が回ってきた。試合の様子を見る限り校内の実力者であると分かった。だが、俺が彼らに劣っているなどとは微塵も思っていない。むしろ相手が強いほど戦り甲斐があるものだ。さて、頑張っちゃおうかな。

俺がフィールドに入った途端馬鹿でかいアナウンスが入った。色々言ってるみたいだが、正直興味ないので無視。

今はバトルに集中だ。

相手はユイガハマ ユイという女子。俺が相手だから対戦拒否されるかもしれないと思っていたが、それは杞憂に終わったようだ。

さあ、やりますか。

 

 

「それでは試合開始!」

そう宣言されるとお互いモンスターボールを手に取り、ポケモンを繰り出す。

「ニューラ、出番だ。」

俺はあらかじめ決めておいた通りニューラを出す。

「行って、サブレ。」

ユイガハマはサブレという名のハーデリアを繰り出した。

タイプ相性は互角、互いに弱点をつける技を覚える。どうでてくるのか?

いきなりユイガハマが仕掛けた。

「サブレ、炎の牙!」

ハーデリアが犬歯に炎を纏って嚙みつこうとしてくる。やはり弱点をつける技を持っていた。

だが、俺は何も指示を出さない。ギリギリまで引きつける。後一歩、もう一歩。よし、きた!

「ニューラ、騙し討ち」

言うが早いかニューラはハーデリアの下から強烈な一撃を入れた。綺麗に顎に入っている。そして、後方に吹っ飛ぶ。

先程まで騒がしかったスタジアムが静まり返る。

そして、一斉にブーイングが始まる。

そりゃそうだろう。騙し討ちという狡猾な技、急所を狙うえげつなさ。反感をかうのは当然だ。

聞いていて気持ちのいいものではないが無視を決め込む。

今はバトルの最中、ヤジを飛ばす連中には後で目にもの見せてやるからほっておく。

「サブレ、大丈夫!?」

ユイガハマが焦りながらハーデリアを気遣う。確かに心配だろう。事実ハーデリアは足をフラつかせている。

ここが攻め時だ。

「サブレ、奮い立てる。」

ハーデリアが全身を震わせ攻撃と特攻を上げ始める。だが、黙って放っておくわけがない。

「嫌な音!」

ニューラが爪を擦り立てて耳をつん裂く音を鳴らす。 加えて防御を大きく下げる。

堪らずハーデリアは奮い立てるを解除する。

「電光石火」

すぐさまニューラがハーデリア目掛けて突撃する。単純にまっすぐ向かうのではなくフェイントを織り交ぜている。

だが、ユイガハマも応戦する。

「サブレ、嗅ぎ分けるでニューラを見つけて。」

ハーデリアが鼻を鳴らして、ニューラがいる方向に向き直る。

だったら、小細工なしでいく。

「冷凍パンチ!」

冷気を纏った拳がハーデリア目掛けて振るわれる。

「サブレ、恩返し!」

二つの技がぶつかり合い鍔迫り合いが起きる。

鍔迫り合いの末、ハーデリアが跳ね飛ばされる。

目を回して戦闘不能だ。

ニューラは荒息つきながら立っている。

俺達の勝ちのようだ。

フィールドの主審が俺の勝利を宣言、俺の二回戦進出が決まった。

俺はニューラをボールに仕舞い、一礼してから退場する。

「バトルお疲れ様、後で腕を見せてみろ」

そう言うとうなづくニューラ。やはり痛かったのか時折腕をさすってる。

なんだかんだ言ってやはり出場者は一定の実力があるようだ。

これでは一層楽しみになってくる。

そんなことを考えながらニューラへのご褒美としてサイコソーダを購入した。

次の対戦カードを確認しておこう。




短くてごめんなさい。また続きました。次が二回戦。バトルにはヤミカラスがでます。
バトル等の描写が上手くいっているかはわからないですが応援よろしくお願いします。
ご感想頂ければ幸いです。では次回もたのしんでいただけるように努力します。


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