ケイン「ばーちゃんが言ってたぜ?女を泣かせる奴は最低だっ、てな!」(旧Ver) (Fry-Hopper)
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01 恒星系E-7

SS投稿速報のリメイク品(Fry-Hopper)


カテゴリ 【ロストユニバース】 【艦隊これくしょん】 【艦これ】

作品要素 【コメディ】 【シリアス】 【ミステリー】 【SF】 【ロボット・AI】

警告タグ 【ネタバレ】 【クロスオーバー】 【グロテスク描写】

対象年齢 【R-15】(戦争物の為)



ノシ´・ω・`)つ 新しい方にお引越ししました。






 ―ご注意―

①本作は、TV版ロストユニバース最終話とエンディング後に挿入されているムービーの間の補完話です。王道かつ泥臭いハッピーエンドを目指しています。ロストユニバースを事前に知っている必要はない仕様です。

②本作の主人公はロストユニバースの主人公であるケインブルーリバーであり、放送内容とコミック、小説版準拠の為オリ主のタグは付けません。

③艦隊これくしょん要素はオリジナル艦娘であり、通常兵器や陸海軍と共同戦線の可能性もあります。戦いだすとカッコよくなる仕様です。メイン娘以外は艦種名前等があまり描写されません。戦争物であるためR-15と設定しています。

④作者としてはこの話が一番好きですが、純SFで宇宙戦闘抜いたのってあんま需要無いです。本作は昭和のシリアスパロディSFものです。色々ネタが仕込まれてます。ボトムズ的な話も出てきます。ある意味ではスタートレックにしか見えません。

⑤R-18のほうのあいつらとちょっとキャラ似てるのいても、こっちのが先にできているからでございますです。あっちのバラストちゃんはこの大淀さんベースです。こっちも可愛がってあげてください。

⑥コメントは削除しません。名前入れない人は逆に消せなくなるリスクあります。注意。[[感想を投稿する際のガイドライン]]は作者として全面許容しています。自分のとこでは通報もしません。全意見を尊重します(警察来ないレベルなら。)あと、作者はBad押しません。念のため。

※コメントは一部完結まで、返さない仕様ですの。。。
タイトル回収までが第一部扱いです。。。
時々直しながらこっそり投下します。。。

※こっちにエロはないよ?あれのアンケで、軍事伸びなかったから、こっちで書くですの。。。エッチなの読みたい人はそっちいってね?


――全銀河に悪夢を

 

――宇宙には静寂こそ相応しい

 

 

【【10の惑星を周回させ太陽系モデルの天体が並ぶ、自治区。人類が入植をしてからすでに、数百年が経過している。この星系に限り、目まぐるしく宇宙船が往来することはない。】】

 

 

突如空間が紅色に歪む。複数の傘雲のように宇宙を飾る。白い雲と青い海が作る鮮やかな惑星のそばに。やがてそれは紫の渦に変わり、爆発と共に渦の中心から一隻の白い宇宙船が吐き出された。

 

「アビオニクスは?!」手早く操縦席横のバーを引き船の側面から蒸気のような霧を噴き出し回転を抑える。彼の表情に焦りが浮かぶ。「エンジンリバース」船内は照明が落ち、異常なほどレッドランプが鳴り響いている。視界が赤く、黒く、交互に変わる。

 

後部エンジンにカバーが付き、逆噴射。プラズマ・ニュートリノ・エンジンが生む青白い光が進路方向に力強く数本の尾を引く。船内が激しく軋む。三人分の操縦席があるこじんまりとしたスペースに彼一人が座る。逆噴射による反動で彼を肩から支えるベルトに体が食い込んだ。

 

オレンジの髪で二十前後の若い男性。

昔のガンマンのような服装で

黒いマントを羽織っている。

 

「キャナル!」目まぐるしく、操縦席周辺の操作を行う。キーボードのような装置に指を滑らせた。船体の制御に努めるが船内に衝撃が次々と起こる。喧しく騒ぎ立てるレッドランプは最初の倍くらいに増えただろうか。

 

「状況検索、超高速モード」彼の操縦席の後ろに立つ女性。

 

背が高く、透き通る緑色で腰まで伸びるロングヘア―にファンタジー風のメイド服。彼女の名はヴォルフィード。本船の管理コンピューターだ。正式名称はFCS-Canal-Vorfeedこのプログラムから派生したケインと共に生きてきた少女型のキャナルは先の戦闘により“永久の眠り”についてしまった。

 

彼女の遺志を引き継ぐ形でヴォルフィードもまたキャナルとしてその記録を多く反映している。質量解像型の立体映像装置が構築するヴォルフィードの姿は、彼女を開発したある研究者の一人の大人の女性の姿を模している。

 

「サイシステム再接続」サイシステムと呼ばれる機構は本船の重要な動力源の一つであり、そのエネルギーの源は人の精神力である。今の状況で言えば、エンジンへの過給機と言ったところか。

 

「了解、サイシステム接続します」彼女の前に扇形のキーボードのような物が具現化され、

その上をピアニストのような速度で指が滑る。

 

「出力低下。サイシステム・リブート失敗。規定値に届きません」手には、計算尺。操縦席前のパネルに船体が表示される。映し出された船体の双胴部の先、前半分が黒く表示されていた。つまり脱落している。後部に集中したエンジン部は赤く塗りつぶされており、その他の部分は黄色と赤の部分が目立つ。この状況ではどこからでも警告するサイレンは意味をなさずにただ、喧しいだけだ。

 

「ケイン。ここは恒星系E-7です」

 

紫がかった瞳の中に、流れるように数字のようなものが縦に数十、数百と見える。いつもならば、観光場所の一つでも教えてくれるところだろうが、今の状況では。白い小船はいま、巨大な滝に引き寄せられ向かって進んでいる。

 

「ブーストチップ射出!」ケインが号令をかける。

 

「了解。ブーストチップ射出します」彼女は答えるように淡々と復唱し、作業を進める。双胴船の両側面がわずかに開き、UFOのような平たい無人機が何機も排出されていく。船体に張り付くように飛行して、蒸気を小刻みに噴き出しながら相対速度を合わせ船に張り付く。

 

「現在、惑星TOARUの引力圏です」運悪く、吐き出された方向が悪かった。この相対速度ならば1日以内にはあの星に墜落するだろう。進入角度も分が悪い。が。

 

――助かった。ケインは安心した。通常、地球型の惑星はリゾート地だ。

 

「キャナル、衛星港に非常通信を」識別信号を偽装しながら言った。少し気が落ち着く。先の戦いで辛くも生き延びることが出来たが、彼はUG(ユニバーサル・ガーディアン)から事の重要参考人として指名手配されている。

 

「回転は止まったか」本来の用途ではないが、ブーストチップと呼ばれた小型無人機を船体に張り付かせ、推進剤の補助役として活用した。推力自体は心もとないが、船体の横方向の回転を止める程度であれば十分機能する。

 

 

【【衛星港。それは宇宙連合所属の惑星にある港。大気圏突入能力をもたない安価な貨物船や、宇宙専用の個人クルーザー乗りが惑星に降りるための連絡船を発着させる場所だ。無論、警察も常駐しており非常時には救難活動も行う。

 

小型艇による辺境警備隊だったとしてもパトロール船2隻も出してもらえれば、急ぎけん引してもらってこの速度過多の状況から離脱できる。費用はお負けなしの言い値でやられるため、財布の中身も相当量が離脱することにはなるが・・・】】

 

 

「ケイン」申し訳なさそうに。彼女は呟く。

 

「ケイン」力を込め再び呼ばれる名前に何かを察して、ケインも手を止めた。

 

「金ならまだ、ばーちゃんの・・・」隠し口座に。いや、知ってるか。こいつなら。

 

「ここは特別自治区です」計算尺を離さない。

 

「衛星港並びに、その他の港湾施設は認められません」

 

「戦略支援コンピューターのFCS-キャナルは、墜落場所の選定を勧告します」

 

 




短編から連載に移動しました。


需要?知らない子ですね。

需要度外視でガチで書いてるSFっぽいにわか軍事な読み物です。
1000人に一人くらいはこういうのを待っていたとかって人がいるかもわかりません。


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02 赤い火、青い火

SS投稿速報のリメイク品(Fry-Hopper)


カテゴリ 【ロストユニバース】 【艦隊これくしょん】 【艦これ】

作品要素 【コメディ】 【シリアス】 【ミステリー】 【SF】 【ロボット・AI】

警告タグ 【ネタバレ】 【クロスオーバー】 【グロテスク描写】

対象年齢 【R-15】(戦争物の為)



自然の要害。四方を海に囲まれた、それほど大きくはない鎮守府。溶岩が作り出した地形で、3キロほどある島全体がゴツゴツしている。人力で岩を削り出し、島内部に複数の平坦な場所を作った。施設や活動は専らそこで行われている。端的に言えば、鬼が島とでも言ったところか。

 

「大本営より緊急入電!平文です!」眼鏡をかけた女性が扉を力強く開け、大声で執務室に駆け込んでくる。

 

未明に、突如現れた隕石。

同盟国に、警戒を呼び掛けていたが。

 

「そなえあれば、か」彼は口を水平に閉じ、帽子を深くかぶった。内容は読まなくてもわかる、あれはここに向かっているのか。広いとは言えないが、最低限の機能を有する執務室。金庫を急ぎ操作する。

 

「まさかと思っていたが、手筈通りにな」すでに機密文書は纏めていたため、迅速に機密ファイルをカバンに詰め込む。また、急いで執務室からサイレンの操作をした。トレンチコートを羽織ると執務室から駆ける。まだ少し肌寒い、か。

 

空襲を警戒して建てられた、背景色に合わせた深緑色の高くはない二階建ての施設。それでも年のせいか、少し体が重い。急いで階段を降り外へと出る。

 

「防空壕でやり過ごせればいいのだが・・・」自然と呼吸が早くなる。

 

「提督さん!」遠くの青空に赤い火の玉がはっきりと見える。「こっちに来るっぽい!」突然、駆逐艦娘に空を見上げながら腕を引っ張られる。防空壕へと避難を促されるが・・・?

 

「大丈夫だ」見れば隕石が一つ。空に尾を引いている。その鮮やかな光景に数人が足を止めた。隕石は不思議とジャンプしたかのように降下角度を上げる。遠くの海を目指しているようだった。

 

「綺麗・・・」施設内から防空壕へ向かう者達が足を止め、空を見ている。

 

ここに落ちてくるように見えたが、コースを変えたようだ。このまま、高高度で通過するだろう。ソニックブームの心配もなさそうだ。

 

「不幸だわ」隕石が上空を通過した際の落とし物だろうか。彼女の頬近くを高速で通過した小さな物体は、そのままグラウンドに突き刺ささり、埋まった。彼女の麗しく長い黒髪が大きく騒めく。

 

「いや」立ちすくむ彼女の頭に手を置いて「君は運がいいんだよ」優しく笑って見せる。「願い事、案外叶うもんだなぁ」しばらく空を眺めた後、彼は屋内へと足を向けつぶやいた。

 

「皆の無事を願ったらそれてくれたよ・・・」潮風が優しく頬をなでる。今は、無意味に騒ぎ立てるサイレンの音すら心地よい。隕石の音が届けられるまで、多くの者が数分間。青空を見上げていた。

 

この日、二つの隕石が観測される。一つは南方の島。もう一つは敵陣営に落下したと軍事衛星に“記録”された。世界の全てを凍り付かせるかのような印象を植え付けた青い光の塊は。芯を残さずに蒸発してしまう。しかし彗星やプラズマの類だったのではないかと、戦時下であるため深く追及されることはなかった。

 

 

――惑星トアル――

 

【【人類は、精神力をエネルギー源とした様々なシステム、メタサイコロジーの発見をした。精神エネルギーとの混合エンジンは、光速を超え、人を未知なる海へと駆り立てた。

 

メタサイコロジーにより超光速を獲得して以来、人々は、次々と惑星を開拓していく。やがて宇宙連合を発足させた。加盟していない星は、特別な環境保護モデルや、自治区として存在する惑星、企業の実験プラント惑星などがある。

 

惑星トアルは、環境保全を含む特別自治区である。開拓時に巨大人工衛星を周回させ、その表面を惑星トアルの素材で覆うことにより月の再現も行われている。もっとも、オリジナルの地球にある月ほど、潮汐力は発生しないが。

 

開拓時からの工作もあり、数世紀経過したこの星の住人達は、自分達のルーツが宇宙人であった事を、一部の星務官を除き、もはや忘れ去っている。

 

住人は国家を形成し、幾度かの大規模な「内戦」を経験した。最後の致命的な内戦では、住民の滅亡を鑑み、やむなくUG(宇宙警察・ユニバーサルガーディアン)が円盤型パトロール艇によりトアルに強行着陸して首脳陣に圧力をかける。強力な内政干渉によって、秘密裏に内戦を終結させたことは“外の世界の者たち”には記憶に新しい。

 

しかし、その際に惑星トアル近郊に停泊していたUF(宇宙軍・ユニバーサルフォース)の持つ強力なサイユニットが、惑星トアルに不慮の干渉を行ってしまう。不可解な超常現象により先の内戦により使用された艦船に酷似した能力を持つ、謎の“有機生命体”を発生させてしまう。サイシステムの作用時にマイナスの干渉を多く受けたのか、住人に対して、明らかに敵対行動をとっている。

 

宇宙連合は事態の収束を図りUFの強行着陸と同敵分子の排除を直ちに申し出たが、惑星トアル首脳陣は、代々続く自治権を理由にこれを拒絶。さらに、同自治区を後援する全銀河に傘下を持つ超巨大企業ゲイザーコンチェルンもまた、地球型惑星のサンプルモデルの維持を提唱。UG、UFの不干渉と領宙内からの即時退去を強く勧告した。強力なロビー活動もあり、ついに宇宙連合は不名誉の後退を余儀なくされた。】】

 

こうして、住民。この星の人類は、真実を知らされぬまま、自らの保有兵器では効き目の薄い謎の敵との戦いを強いられたのである。

 

舞台はそれから

半世紀・・・

 



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03 幸せを呼ぶ戦艦

SS投稿速報のリメイク品(Fry-Hopper)


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作品要素 【コメディ】 【シリアス】 【ミステリー】 【SF】 【ロボット・AI】

警告タグ 【ネタバレ】 【クロスオーバー】 【グロテスク描写】

対象年齢 【R-15】(戦争物の為)



「提督、新しい任務が届きました」執務をこなしながら、モニターを見上げると、彼女の眼鏡がキラリと光った。

 

「ふふっ」思わず声が出てしまう。

 

「何ですか」こちらを睨みつけながら「真面目に聞いてください」姿勢を正した。彼女は怒らせると怖いからな。背筋に汗が一つ流れるのを感じた。

 

「それで?」茶褐色で大きく重いデスクの上のコーヒーに手を伸ばす。

 

「先日の隕石の件ですが」またキラリと。今度はブラックコーヒーを飲んで耐えた。今日は良く光るなと内心微笑む。

 

「南方諸島に墜落した物体を回収せよ、とのことです」いたって真面目に言った。

 

「墜落、ねぇ」誤字ではないのかとの意味を込めて―

 

彼女は周囲を警戒すると「お昼にしましょうか」彼女は首で外へと合図した。「いいだろう、今日は何を食べようかな」笑顔で答えると、執務室から出る。

 

「おいおい」宿舎の陰で、パタパタと体を探られる。「そこまでか」

 

「ええ」真面目な顔つきで全身を調べる「一級機密です」執拗に上下をはたく。

 

「大丈夫そうね」そういうと、離れにある食堂へと足を向けた。まさかとは思うが、執務室が盗聴されている事を警戒しての行動だ。

 

食堂を本施設内に組み込まなかった理由として匂いで腹がすいては士気が下がるからだと、当人は笑いながら説明をしていたが、こういう時の為に理由づくりの一つとしてあえて遠くに存在させていた。こういった事には小賢しくも頭のキレる男である。

 

「それで、内容は?」いつもよりゆっくりと歩きながら、言った。

 

「宇宙船だそうです」真面目に。

 

「大国が財政難の時の目くらましかな?」そう、いつもの景気が悪い時のUFO騒ぎだろうと。「つまり、大本営は金鉱でも見つけたのか」なるほどと、一人納得する。では、編成は、力が強く運搬力のある長門を―

 

「他国に先駆け、直ちに船体のサンプルを回収ないし、破壊せよと」最新型の暗号電文で。キラリっとこちらを睨む。戦争相手が人外なため、常に資金難の当鎮守府では今だに印刷しか行えない九七式印字機Ⅱ型を使用していたが、どうも衛星利用と特務艦経由で信号が来たらしい。同盟国に解読が出来ないという事だ。

 

「まさか」足を止め。波止場で見つめあう二人。

 

気が付けばお年頃の女の子達に囲まれていたが、別れ話でも切り出されたのかという緊迫感に押されて、誰も声を出せなかった。人生のうちで絶対に怒らせたくない人物ベスト3(某記者調べ)に君臨する彼女が迫真のオーラを出している。

動けない、動けば殺られる。

 

「不幸だわ」入渠を終えて食堂に行こうとしたら、謎の人だかり。私、お腹がすいているのだけれど。「何だ提督か」渦の中心に提督と、キラリ眼鏡。

 

「不幸だ」モーゼの如く輪が開く。「わ?」中心の二人がゆらゆらと近づいてくる。気付かれた。嫌な予感がするの、足が動かない。後退、否、死。姉さま・・・

 

「ちっ、進む!進むんだからー!!!!」両腕を広げダブルラリアット!速度を乗せた、打点の高いラリアットだ!「青葉見ちゃいました!!」すかさずフラッシュが走る!

 

「ワーン」「ツー」「スリー」ダウンする二人を見て、周囲の艦娘たちがカウントを取り煽りたてる!!

決まった!スリーカウント!

提督轟沈!眼鏡大破!!

どちらも同じくらいの高練度であり、元が戦艦と巡洋艦ではやや大淀の分が悪かった。勝者山城!!駆逐娘に、拍手喝采されながら食堂へと向かった。

 

「ゴルァ!!!おのれやましろぉ!!ゆ”る”さ”ん”!!!」心地よい潮風が鎮守府を抜ける。

 

 

大淀については、この辺境に珍しく訪れてくれた演習相手に、演習終了後に某記者がインタビューしたことがある。その内容はこうだ。

 

 VTR

「あれが巡洋艦?巡洋戦艦の間違いだろ?ふふふ、怖い」

 

相手の弾薬が確実に尽き、動きを、奴は動きを止めたんだ。追い詰めたと思ったら、突然奴に攻撃が当たらなくなり、気が付いたら毟りとられていた自分の艤装で負けていたと。

 

「――慢心やら超スピードやらそんなチャチなものでは断じて・・・」

 

――提督の検閲により削除――

 

 

「今日は厄日かな?」泥の付いた服をはたきながらよろよろと起き上がり、帽子を正した。

 

「てーとくよっわーい」そう言いながらも一緒に服をはらってくれる。

 

「年なんだよ」壮年であるが、体はがっしりとしているほうだ。「さっ食堂へ行こうか」そう微笑むと、皆で食堂を目指した。

 

 

 

 

「まぁ山城だな」本来なら金剛型などの高速戦艦を出すところだろう。「高練度とラリアットか」

 

「ラリアット航空戦艦とは胸が熱いな」地図にコンパスを引きながら至って仏頂面で彼女は言った。彼女なりの冗談なのだろうが、その場にいた誰もがかける言葉を失う。

 

「急くように言われているんだろう?」その静まり返る雰囲気は彼女にはいつもの事で気にせず続けた。こういう時、頼りになる。後、口が堅いほうだ。色々と。

 

「そうだなぁ、隕石から未知の資源を回収しろと言われてもなぁ」コーヒーを手に。大きく椅子に背もたれる。

 

「確かに眉唾な話だな」彼女は複数の落下予測点に線を入れる。「それに」

 

「未知の汚染の心配もある」手をひらひらと「これ以上敵勢力が増えてはかなわん」しかしその瞳は楽しそうに待ち構えているようにも見える。頼もしいことこの上ない。

 

――しかし

確かに、なぜ奴らが生まれたのか?

大本営はどのように艦娘を?

妖精さんの謎技術とは。

分からない。

 

そういえば、昔。ゴシップ話に、UFOのようなものが2隻。

月の影に。

レンズの汚れだの、宇宙人の攻撃だのと、一時期話題になった事がある。結局のところ政府の公式見解として、初期の衛星だったため宇宙空間でのトラブルが原因とされた。他の偵察していた場所とデータが混同してしまった、とも発表された。

――今回の件も何か?

 

 

「不幸だわ」声が聞こえてきた。謹慎カッコカリにより、執務室のソファーで出撃待機中。しっかりと食事は行い、心なしか輝いて見える。どこか表情も朗らかだ。

 

「提督、作戦概要をご説明します」日の光を受けキラリと。

 

旗艦山城、最上、山雲、満潮、朝雲、時雨にて目標ポイントへ急行。

その後、僚艦は同ポイントにて待機。

山城は単独突入。

水偵にて落下予定ポイントを偵察。

発見後サンプルの回収。

実地不可能の場合は砲撃により対象の破壊ないし埋没。

こちらの勢力圏内ですが、敵遊撃部隊が確認されている為

この間、僚艦は山城脱出ポイントの維持。

以上です。

 

「単艦突入なんて」顔を伏せながら「当てつけかしら・・・」

 

「山城」提督はソファーの前にしゃがみ込み「お前にしかできない」手を握りそっと伝える。「頼めない」

 

「でも・・・」そっと手を握り「訳がある、隕石を無事見つけたら、開けてほしい」指令書入りの筒を持たせる。「大丈夫、お前は一番運がいい」

 

 

 

 

「扶桑型戦艦山城!武運長久を!」

 

年甲斐もなく。出撃ドックで帽子を振りながら今日一番の格好をつけ声を張り上げた。何度も何度も帽子を振る。出撃する、彼女たちが見えなくなるまで。

 

――バカね。あんなに苦しそうに言われたら、断れないじゃない。いつまでもシャバッ気たっぷりの不甲斐ない提督ではあるが。何処か憎めない。

 

「不幸だわ」嬉しそうに、ぽつりと呟いた。

 

 



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04 双胴船ソードブレイカー

SS投稿速報のリメイク品(Fry-Hopper)


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警告タグ 【ネタバレ】 【クロスオーバー】 【グロテスク描写】

対象年齢 【R-15】(戦争物の為)




赤色灯がグルグルと喚き散らす。額から血を流しながら、彼は体を起こした。

手は痺れるが動くらしい。あいにく足もついている。幸いにも、黒いマントが鋭利な落下物等からの被害を軽減したようだ。

 

もちろん彼にはそれを意図してマントを着用している意識は皆無である。これは100%純粋に彼個人の趣味である。彼の私室にあるクローゼットには常に複数の黒いマントが大切に“陳列”されている。

 

また、その姿を侮辱するものは、西洋の騎士のように大らかな対応ではなく直ちに彼の怒りを買う。酒場のゴロツキ相手等には特に容赦がなく突然椅子を投げ飛ばされ、それを機にしばしば大乱闘が発生することもある。祖母の教えを受け毎日トレーニングを欠かさない彼は、それなりに体術にも自信はあるからだ。

 

「キャナル、状況を」返事がない。「仮想復元フィールド・・・」

 

疑似的に、空間に回路の投影によるシステムの再構築を図るも、反応はない。

ひとまず、踊るレッドランプを強制停止させる。

 

――無理もないか。

 

奴との決戦の時、爆発に巻き込まれてハイパースペースまで弾き飛ばされたのだから。サイ・コード・ファイナルを小規模とはいえ発動させ、なおも生存している事は幸甚の極みである。

 

「ミリィを待たせているからな」ぐぐっと痺れる体を、動かしながら。全身に力を込める。

 

――ケイン。聞こえる?

 

「ケイン、ケイン」か細い音声が。

 

「キャナル、か」姿は見えない。立体映像装置にも深刻なダメージがあるのだろう。

 

「コアをやられたのか?」本人がいるなら修理もしやすい。助かった。

 

「ええ。ケイン」少しノイズが入る「残念ながら、自己修復装置も全滅です」

 

「この惑星では、素材の調達も難しいようです」船体から全天観測レーダーで状況を分析するがやはり処理能力が低下しているのか。反応が遅い。

 

「ケイン。無事ですか?」船内センサーも故障して。

 

――もはや、目が見えない様子だ。

 

「ああ。俺は大丈夫だ」壁に手をつきながら、煤けた船内を歩く。

 

体温の分布や、呼吸音を頼りに判断。多少強がってはいるものの、身切れなどもなく大事には至ってないようだ。

よかった。

 

「さすが私のマスター様」少し安心したように。「プラズマ・ブラスト、サイブラスター、リープレールガンの使用は行えません」冷静に状況を伝える。

 

「サイバリア、ブーストチップ、メインエンジンに深刻なダメージ、FCS-CANALにも」

 

そうか。予想はしていた。この星の現在時刻を考えればそれでも船内が暗いという事は重大な亀裂がないという事でありいいものだ。恐らくはかなりの胴体着陸になったのだろうが、さすがはロストシップである。

 

「ですが」いつもなら、指を一つ、得意げに立てて説明しているところだろうか。「仮想復元フィールド形成による、サイシステム直結でのファランクスレーザーは」

 

いや、彼女はまだ寝ているか・・・

 

「連射をしなければ使用可能です。ただし、収束率と命中精度は低いですが」

 

それでも星間移動も出来ないトアルの戦力から考えれば、十分な力か。

 

「おまけはないのか?」軽口を叩いて見せる。壁を手で叩き伝いながら進む。「ありま」外部センサーに反応。サイシステム反応。

 

「ケイン!」全機能をFCS(Fire-Control-System火器管制装置)に集中させる「何か飛んできます!サイシステムよ!」痛んだチップに過負荷がかかり、回路に光が数回発生する。

 

「何だと!?」まさか、ロストシップの攻撃機。この星にもいたのか。

 

このままでは今度こそやられる。血流量が上がっていくのを感じる。壁を手で押しながら、足早に第二管制室を目指した。各所から傷口が開き血が流れ出るが、気にしてはいられない。はやる気持ちが、逆に足をもつれさせる。マントが床埃を拾い上げた。

 

「小さな・・・航空機?」サイシステム反応は確かにそこから来ている。FCS-Canalが健在ならば、トアルの中央局からデータをハッキング出来たのだが・・・

 

「移動速度の遅さから、センサーの故障の可能性もあります」

 

ロストシップ搭載の攻撃機であれば、音速などゆうに超えている。この小型機のような物は光速を武器にする彼女にしてみればどうぞ落としてくださいと言わんばかりの時速200km程度の大気速度でしかない。無論。罠の可能性も捨てがたいが。

 

あえて、ケインには伝えていないが。念のためファランクスの照準だけは合わせてある。エンジンを暴走させれば、数発くらいは、彼女の独力でも撃てるだろう。後の事は分からないが、それ以上に、これ以上マスターを失わせる気も起きない。

 

「遠ざかります」酷くノイズがかった声で。警戒レベルを最小にまで下げる。

 

「ダメね」酷く残念そうに小さく。やはり長時間は稼働できないようだ。「FCSを停止させライフシステムを最優先します」

 

「ああ、おやすみキャナル」その言葉を最後に。船内から人気が無くなった。

 

少し痛みにも慣れ歩けるようになると、長い通路を抜けそこへたどり着いた。しかし第二管制室のハッチは固い。潜水艦のようなハッチの扉のハンドルはいくら回しても動かない。まるで入室を拒まれているようだ。

 

「ばーちゃん・・・」サイブレードに手をかけた。切り進むことはたやすいが。思い留まって、ひとまず船の外側から様子を見ることにした。

 

 

外へ出ると、密林に落ちたのがわかった。日が傾いてきているが強い光で、しばらく目を細めた。墜落速度から考えるには、予想よりかなり小さなクレーターだろうか。キャナルが墜落ギリギリまで制御していた事が分かる。

 

船に登ると景色が一通り見えた。この島で生活している様子は見当たらない。無人島のようだ。その上、地質も柔らかい。ただ少し蒸し暑い、か。強い潮風がバサバサと彼のマントを騒がせる。残念なことに、彼の思考回路にはマントを外すという選択肢は存在しないようだ。

 

全長210M 白い船体の双胴船ソードブレイカー。

慣性制御装置と強力なショックアブソバーのおかげもあり、全壊は免れたのか。しかし、土から覗かせる部分は、やはり、痛々しい。彼女の“黒い素肌”も見え隠れしている。恐らく、双胴部分の前部は完全に喪失しているだろう。

 

ソードブレイカーの腹部には大気圏の往復が可能な小型のシャトルがドッキングされているが、この衝撃では潰されてしまい、原形をとどめていないだろう。ソードブレイカー単独で悠々と大気圏を往復できるにも拘わらず、わざわざ能力の劣るシャトルを保持するには理由がある。

 

ソードブレイカーの高性能さを秘匿しているのだ。超高級機能である大気圏往復能力は個人が持つには手に余る代物で、毎回この船は只者ではありませんよと宇宙中に喧伝するようなものだ。多方面から目を付けられてしまう。ゆえに非常時や、未開の惑星以外では主にシャトルを利用していた。

 

 

さて、どこから手をつけよう――

 

何かに見られているような。

狙撃されるような感覚を一瞬感じる。

 

体を素早くターンさせ、彼方を眺める。

マントが大きく広がった。

 

海の上、水平線の手前か。

何か動いているようだ。

腰からさっと双眼鏡を取り出した。

 

――航空機、あれか。やはり、かなり距離がある、

 

サイブレードのある腰に手をかけ思う。ミリィなら撃ち落とせたかな。

 

 







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05 邂逅

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作品要素 【コメディ】 【シリアス】 【ミステリー】 【SF】 【ロボット・AI】

警告タグ 【ネタバレ】 【クロスオーバー】 【グロテスク描写】

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「見つけたわ、“隕石”さん」なるほど、これが真実か。

 

偵察を終えた95式水偵が帰還すると。木々の間に出来たクレーター部分に構造物のような、白い何かが埋まっていると報告された。

 

「さて、不幸の手紙を見ましょうか」

 

提督から渡された筒を開ける。

静かな海の上で、一人読み上げる。

だからこその最小単位。

関係者は少人数で。かつ、高練度だから。

 

――つまり、本当の作戦は、未知の宇宙船の拿捕か無力化。それが指令書の内容だった。

 

あの人の苦渋に満ちた顔が思い出された。でも、こういうことでも、私が選んでもらえて少し嬉しい。あの人は、年齢を理由に誰とも結婚したがらないから。宇宙を航行出来るレベルの科学力があれば、相応の兵器を搭載している可能性は十分にある。切り捨てられたわけではないと。むしろ信頼されている。自然と顔がほころぶ。

 

「あら?人かしら」オレンジ色の短髪に、女性の顏。

 

遠すぎて目を細めてしまう。

首の下に黒い塊。

違うか。

黒く長いマントを羽織っているわね。

あれが宇宙ファッションかしら。

 

某国の観測隊とは思えないし、何よりこんな密林に――

 

背部に固定された、同盟国より友好の証としてもたらされた、小回りの利く28cm連装砲に力が入る。しかし、まだ射程外だ。だが。

 

「こっちに気付いた?」

 

彼女はこちらに顔を向け、停止している。

やっぱり宇宙人だわ。

水平線ギリギリからの距離で気づくなんて。

あちらも見えているのかしら。

それとも新しい艦娘?

 

「困ったわね、会話できるかしら」

 

海面を滑走しながら、思案にふけった。

別ポイントを偵察していた、二機目の水偵が帰還する。

あら双眼鏡かしら。すごいわね、あの人。

勘だけで私を見つけたの。

私、目立つのかしら。困ったわね。

 

「偵察したの、印象悪いかしら」

 

主砲を下げ照準を外し近づく。なぜか、近しいものを感じたから。これは彼女の独断であり、極めて危険な行為でもあった。相手方に友好性があるかどうかがまるでわからない。いきなり攻撃を受ける危険がある。しかし、彼女は自分の直感を信じた。

 

それから10分ほどたち、直線上にある砂浜で。

二人は出会う。

ゆっくりと波が動く。砂浜に二人は立っていた。

優しい潮風が木々を囁かせる。

 

「こんにちは、言葉わかりますか?」返事がない、無口なのだろうか。敵意はないようだけれど、きっと言葉ね、困ったわ。

 

「ミタイ ミコ」ぽつりといった。服装を見ている。

 

巫女みたい。

 

「え?」何だ聞こえているじゃない。でも、英語か。

 

「イヤ、ナイミタコト、ハシル ニンゲン ウエ ウミ」頭をポリポリと書きながら。

 

「あの、わたし、にがて、えいご なのです」聞き取れなかった。不幸だわ。

 

――やっぱり金剛が適任だったんじゃないかしら。

 

「オレハ、ケイン・ブルーリバー」マントをバサッと翻し、堂々と名乗った。

 

「くすっ」今どきマントなんて珍しい。つられて笑うように、木々が騒めいた。

 

「コラっ!ワラウナ!」キラリ眼鏡を思い出した。

 

なんだか怒らすと怖そうだ。

頭から血もたれてるし、吸血鬼?

 

「ごめん。ごめんあさい。ごめ」あたふたと謝罪の言葉を並べるが。片言で伝わるだろうか。

 

「アンタ ハ?」肩辺りから延びる武装が気になり、腰の柄に手をかけるが、思いとどまった。わざわざ、初対面の人間を威嚇しても仕方がない。それになにより、向こうのほうが驚いているようである。やはり外界との交流はないのか。

 

「わたし、やましろ」心細そうにつぶやいた。細々と。

 

「コイ ヨ オレト」ジェスチャーで促される。船へと案内されたのだろうか。彼の来た獣道。水偵が偵察した方角へと足を進めていく。

 

会話もなく森を進むが、若くて提督の倍くらい元気な人だ。

悪い人?ではなさそう。でも不思議な感じ。

何だか艦娘みたいな気がする。

 

 

 

 

「イリグチ ココ」

 

そこ亀裂よね?

白い船体に、亀裂部分があり、細い通路が見えた。

通路の片側には部屋の扉のような物も並んで見える。

確かに埋まってて、気の毒だけど。

 

大きな艤装に包まれているような感じがする。

少し暗いが、見えないレベルではない。

内部は全体が煤けている。煙やほこりも舞っている。

でも、懐かしく。母親のようで。

船全体が優しい感じ。

 

まさか、・・・姉さま?

 

「起きろキャナル!」え、何この人。大きな時計のベル鳴らしてる。

 

うるさっ。

まさか、壮大などっきりかしら?

あいつならやりかねないわね。

不幸だわ。

帰ったらどうしてくれようかしら?

 

「ケイン、どうしましたか?」雑音をまじらせて。

 

「言葉がわからん」堂々と胸を張りながら言ってみた。

 

「SFみたいね」姿の見えないものとの会話。どうやらどっきりではないらしい。やはり宇宙船の船内なのだろうか。大きさから言えば何人いるかもわからないし。でも優しい女性の声がする。

 

「ケイン?彼女からサイエネルギー反応が、アンドロイドですか?」

 

トアルでは、ロスト・テクノロジーが使用されているのだろうか。だとすれば、ファランクスレーザーだけでは心許ない。なんとかサイブラスターが欲しいところだ。

 

「人間のはずだが、オモチャみたいな飛行機が格納されていったぞ」

 

水偵を収容している所を、見ていたのである。

恐らく背負っている筒のような武器も本物だろう。

 

“SF見たいね。”

 

――解析する。音声パターン。

 

幸い、登録されている言語だった。

銀河共通語から派生した方言語。

 

「あなたは人間ですか?私は・・・コンピュータです」キャナルが問う。

 

会話での友好性を示すため、一瞬、立体映像装置をと思ったが、FCSにこれ以上のダメージは避けたい。マスターの安全確保が最優先だ。

 

「私は・・・戦艦です」なるほど、これが異文化コミュニケーション。言葉が通じるって嬉い。コンピューターに言うのも可笑しな話だけれど、優しそうな人でよかった。

 

「困りました」データベースにない。生きる戦艦とはなにかしら。生体反応もあるようだし、やはりロストテクノロジーがここにも。

 

「艦娘、です」少し言い淀んで。

 

機密に触れない範囲で。説明を行った。

謎の敵と戦う。謎の武器を背負って。謎の組織といったところか。

キャナルは考えた。難しいですね。

当事者たちが何もわかっていないとは。

嘘を言っているようには感じられませんし。

 

「なぁ、俺寝ててもいいか」

 

当たり障りのない会話で、さらに謎の空中戦をしているようだ。多分誰かの愚痴とかを、言い合っているんだろうなぁとキャナルのいつもの会話のニュアンスからわかる。

 

こういう時に機嫌損ねて、ライフシステムでも止められたら大変だ。あいつには何度も宇宙に放りだされたり、徐々に空気を抜かれる嫌がらせをされたことがある。もっとも、ギリギリ死なない程度にはマスターの安全が保障されているが。

 

彼はゲッソリしながら地面に座り込んだ。ゆっくりと目を閉じる。

 

 

「冷血コンピーター」

 

「コ、コンピーター言うなぁぁぁぁ」

 

二人の女性が言い争いの喧嘩をしている。

懐かしい夢。今はどちらもいない。

 

 

「それで、“彼”にしばらく同行して貰いたいのですが」申し訳なさそうに言った。

 

「あと、ここの破壊を・・・」よくある話だ。対処としては当たり前すぎてよくある話だが。仲良くなると、つらいこともある。「言われてて・・・」声が次第に小さくなる「その・・・」

 

「山城さん。大丈夫ですよ、そこの“アレ”が埋めてくれるので」潜伏は得意と言いたげに。「埋まってしまえば、発見されることはありません!」でも、主人任せて。まぁいいか。

 

「直せたら、すぐに出ていきますから」気のせいだろうか、少し、彼女の声が暗い気がした。

 

 

 

 

「んあ?」出血も止まり、少し寝ていたようだ。

 

「どうしましょう、“コレ”背負っていきましょうか」怪我の治療をしてあげたいとは思う。

 

墜落で、医務室もつぶれたみたいだから。純粋に。

でも連れて行けば、きっと面白くないことが彼におこる。

でも、あの提督なら大丈夫かな?

 

だって“アレ”、なんだかんだバカだし。

くすりと笑う。

 

「では、“ソレ”に翻訳機を持たせましたので、旧型でちょっと重いですけど」気が合ったのか、何やら不届きな発言が飛び交っているようだ。

 

「では、ケインをお願いしますね山城さん」キャナルは言うと再び眠りについた。最初よりも声のノイズが酷くなっている。

 

 

 

 

「はぁ、不幸だわ」彼がテキパキと爆弾を炸裂させて、船体を埋めていく。その最中に特にやる事もなく一人水平線の彼方を眺める。久しぶりにゆっくりとした時間を堪能する。

 

船は特殊な合金のようで、埋めさえすれば誰にも発見されないらしい。やはり宇宙人なのだなと改めて理解した。破損した船体のかけらもいただけたし。後は彼を背負って帰るだけか・・・

 

なんで、“コレ”マント外さないし。

しぶき拾って背中濡れる。

やっぱり宇宙人嫌い。

 

詮索するな駆逐艦うざい。

なんか、背中重い。

腰に謎の箱があたって痛い。

疲れた、不幸。

 

あら、潜水艦?

 

ともあれ、私達は無事に鎮守府へと帰還した。

 

 



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06 静かな月夜

SS投稿速報のリメイク品(Fry-Hopper)


カテゴリ 【ロストユニバース】 【艦隊これくしょん】 【艦これ】

作品要素 【コメディ】 【シリアス】 【ミステリー】 【SF】 【ロボット・AI】

警告タグ 【ネタバレ】 【クロスオーバー】 【グロテスク描写】

対象年齢 【R-15】(戦争物の為)


月が昇るころ。

 

「かんたいが、かえってきました・・・」明らかに疲れ果てて。月明かりがストレートに垂れる潮に濡れた彼女の長い黒髪を照らす。

 

「お帰り、ありがとう」提督が出迎えてくれた。夕暮れごろからふ頭をうろうろとして待っていたらしい。機密優先で無線封鎖をしていたため彼には詳細が分からなかったのだ。

 

「にんむですから・・・」帰還予定時刻から遅れに遅れた。道中、敵の潜水艦の攻撃に遭ったためだ。暗がりに潜水艦とはよく言ったものだ。

 

僚艦は待機中に爆雷を使い切っており、山城は彼を抱えながら片手で水偵を飛ばして、数隻の潜水艦を一人で相手取り、海上を滑るように移動しながら執拗な攻撃を加えて撤退させた。水面近くに浮上していたため、洗うように精密主砲射撃も加えている。未確認ではあるが撃沈もあったかもしれない。

 

 

【【主砲としては小口径である28cm砲が幸いして、噴煙も少なく抱えている彼に被害はない。無論山城にはそのことも十分理解していての砲撃である。敵に斬り込み突入して危険をかえりみずに人名救助を優先する当鎮守府では、大口径砲よりも機動性と汎用性の高い小口径砲や機銃が重宝されている。

 

この鎮守府で選抜される打撃チームは主に接近戦に重きを置く。さらに旗艦には常にドッグファイトが可能なほどの練度が求められる。戦艦としては低速に部類する山城は、速度の不幸を嘆くこともなく、多くの経験から任務ごとにもっとも自分に適した兵装を自ら選別している。】】

 

 

――さて、どういいわけしましょうか。

ちょっと、キャナルさんと長話をしていたのも、襲撃の遠因になりえたと言わざるを得なくもないかもしれないけど、急な任務だったし、きっと不幸なのがいけないに違いないと、彼女は考えることをやめた。

 

気が付けば、いつのまにか、なんか額から血が垂れていた、一緒ね。

 

「ふふっ」なんだかこの宇宙人さんが可笑しくなった。「この人も“不幸”なのかしら?」

 

――キャナルさんまた会えるかな?

 

「あ、おみやげです・・・」思い出したかのように。

 

背中の彼と船のかけらを手渡す。その後、入渠ドックへと一人トボトボと歩いて行った。背中を丸めて歩き出す姿に、月の光があたり、長い黒髪が寂しそうに揺れる。その姿が一層悲壮感を増している。不幸を忘れるほどに。

 

「え、この女性どうしたの?」マントに包まれた女性?を手で抱える。「え、重いよこの人」細身なのに、100キロ位はあるのでは。

 

腕を震わせて。濡れたマントがくっついた。冷たい!

いや、腰あたりにあるボックスが何か刺さっていたい。

いやいや、誰か助けて。

いやいやいや。

 

「君たちには失望したよ、けが人一人、満足に扱えないのかい?」小柄な体でそっと、彼を抱き上げた。「それと、ケインさんは男性だよ、外国人?みたいだけどね」

 

帰還途中に、山城に尋ねたら、外人の漂流者だと伝えられたようだ。まさか、宇宙人か。たしかにガンマンみたいな格好にマントとは、ハイセンスな格好をしているな。何にせよ、山城はよく信頼に答えてくれている。

 

「僕も水偵載せようかな?」仲間外れの仕返しに、ちょっといじわるをしてみる。

 

隕石話に遭難者なんて出来すぎてる。

何だろう。新兵器の実験かな?

 

「医務室でいいのかな?」部外者ではあるため、一応の確認を取る。「すまない。彼を医務室へたのむ」罰の悪そうに提督は言った。

 

不思議だよね、普段なら救助者がいれば、

救助した時点で提督に報告しているよね?

 

「こういうときは、ありがとうって言うんだよ」見上げて、瞳をのぞき込んでくる。「ああ、すまない」

 

――その目が。瞳の奥までのぞき込まれている気がする。

 

「ほら、また」ちょっと、寂しそうに医務室へと向かって行った。

 

僕も、お手伝いができたらいいのに。

 

 

 

 

「こちらが結果報告です」キラリ、ワザとやっているのだろうか。「早いね」素直に驚いた。何故か睨みつけられた。また光ってる。月光かな?

 

「ラリアット級戦艦から、入渠中に聞き出してきましたので」眼鏡二世が怪しく光る。「お手柔らかにな」冷や汗をかきながら。言った。

 

その新しい眼鏡買ったの俺なのに。前の壊れた眼鏡は大切に保管しているみたいだ。一応修理するかと聞いたが、これはこれでいいと言われた。何やら思い出があるらしく、新しい眼鏡もよく似た形状をさがしていた。

 

 

――つまり彼は、遭難者というわけだ。宇宙人も国際法上では、法律がないため無国籍の外人扱いにはなるはずだが。

 

いや、もとから大本営は知っているのか?

 

「提督さん」指3本分程度の大きさの少女が入ってきた。背中の大きな羽はデザインではなくトンボのように羽を動かし実際に飛び回れる。「彼は艦娘なの?」ツインテールの妖精さんは首をかしげた。ふわふわと、紫色の髪が揺れる。

 

「いや、聞いた限りでは人間だと」いや、実際はどうなのだろうか。

 

「彼、艤装を積んでいるよ?」肩に“飛び乗り”座り込む。

 

「まさか」やけに重いものをつけいていると思ったが。

 

「箱と筒、コードでつながってるね」検査の時に見たのだろう。「何だろうね?興味あるよ」凄く楽しそうに足をパタパタさせている。

 

「宜しいでしょうか」やばい。光で気づいた。口の中が乾いていく感じがする。あいつまだ怒ってる。よっぽどあの眼鏡好きだったんだな。怖いからカーテン閉めとこう。

 

「妖精さんも聞いてほしい」肩で小刻みに震えて固まっている少女に言った。「キレイな月も出ている。少し夜道を歩こうか」「ええ。お供します」

 

 

 

 

「彼は」一泊置いた。「やはり宇宙人です」海沿いを歩きながら。街灯も少ない夜道で、ドプドプと岩場に打ち付ける波の音が、今日は不気味に感じる。「報告の限りでは、彼は船体にダメージを追って墜落した所を、山城に発見されたと」

 

大淀が、一枚の写真を差し出してきた。街灯の下に立ち確認する。水偵が撮影した白黒写真には、確かに、木々の間に小さなクレーターがあり、何か白いものが埋まっているようだった。

 

「回収したサンプルにも有害反応はないから安心だよ」肩から声がした。

 

「ただ、船の内部では、なにか艤装と同じ物を感じたと証言しています」

 

「船内ではコンピュータと対話できるとの事ですが、不調で現在は活動を休止している様です」

 

「なるほど」やはりそうだったか。

 

足の遅い水偵だからこそ、撃たれなかったのかもしれない。戦闘を想定して二式水戦の搭載も考えたが彼女がそこから不幸を感じ取ったらしく、倉庫にしまってあった旧型水偵を自ら積んで行った。

 

しかし、相手がもし宇宙船だった場合。

相応のトンデモ兵器を保有している可能性があるから。

 

――敵意があった場合。

 

「船に招き入れてもらえたのか、やはり、あいつは運がいいな」

 

最悪轟沈も覚悟はしていた。

 

だからこそ――

 

「大丈夫、艦娘はあなたが想うより強いよ」察したように妖精さんが言う。

 

提督は遠くを見る。顔を上げ遠くを見る。

遥か向こう。深く蒼い海の先を。

 

「そうです提督、私たちは、いつでもあなたのそばに―」

 

人気のない、街灯の下にシルエットが二つ。潮風。

打ち付ける波の音。退廃的な雰囲気。

――何も起きないはずがなく(某記者調べ)

 

「二人はまだこちらに気付いていないよ」ふ頭の陰からカメラを構える。

 

キャップを外す。レンズに一瞬、街灯の光が反射した。

 

「います・・・よ!!」

 

キスか、ビンタか。

 

明日の新聞を楽しみにして、って。

こっちに光が。眼鏡うわ。

 

――提督により検閲――

 

 

「何事もなければ、記事にもさせてやれるんだがな」

 

フィルムを引っ張ってから、カメラを返してやる。大淀に甘いと怒られたがフィルム代より、ちょっと多めの甘未引換券を一緒に渡してやった。

 

「彼との話はどうするの、出来れば立ち会いたいよ」

 

妖精さんが珍しく、興奮している。

 

「妖精さんには、隠し事はできないですし、宜しいのでは」

 

思い出した。

 

「不幸ラリアットはいいとして、ワイルドゴリラも呼びますか?」

 

「長門か・・・それ普通に名前呼んだほうが早くないか?」

 

確かに、頼りにはなるが。

 

「あいつ、精密機械触らすと何故か壊れるんだよな」

 

体から出る謎の湯気のせいかな?

あいつだけ筋肉機関なのかな?

 

「最近は蒸気機関車とか消防車とかいうと褒められてると思っているのか、まんざらでもない顔で照れますよ、彼女」

 

筋肉度120%、あふれる力コブか。山城とプロレスでもやらすか?厚手のレオタードを着てリング内を暴れまわる姿を想像してしまう。長門には大淀がついて、山城には俺がセコンドだろうか。ちょっと楽しそうではある。

 

「案外彼も、重し付けてるし気が合うかもな・・・」顔だけを見れば、女性に思えるのだが「何にせよ彼が起きるまでは待つか」

 

なにか、突然。強烈なスポットライトの中にいるような感覚を覚える。ふっと暗い空を見上げると、そこには月があり、まるで見られているような気がして身震いした。

まさか、な・・・

 



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07 フルートを吹くオルゴール

SS投稿速報のリメイク品(Fry-Hopper)


カテゴリ 【ロストユニバース】 【艦隊これくしょん】 【艦これ】

作品要素 【コメディ】 【シリアス】 【ミステリー】 【SF】 【ロボット・AI】

警告タグ 【ネタバレ】 【クロスオーバー】 【グロテスク描写】

対象年齢 【R-15】(戦争物の為)


※今回は回想回。本編でもよくやるため、どうしても1回は外せない。ネタバレ注意。



「ばーちゃん・・・」もぞもぞと、医務室の無機質な白いベッドを動く。マントは取り外されベット脇に掛けられているようだ。

 

 

 

オルゴールが、聞こえてくる。遠く遠い日。思い出す。

 

 

 

――少年の日。

 

 

 

「ばーちゃん!街が、街が燃えてるよ!」

 

ローブを羽織った祖母が彼の肩を抱くように後ろに立つ。

月のない星に暗い夜。中世を思わせる色とりどりの家屋は崩れ、多くの場所から火の手が上がる。離れた高台から二人、黒い煙を吐き続ける街を見下ろした。風の冷たい夜。祖母は優しくケインを抱き寄せる。彼女の手に力が込められる。

 

 

 

――夢の中で。

 

 

 

ソードブレイカーの第二管制室。そこで祖母は逝った。

 

ロストシップ、前世界の負の遺産。

410M級重砲撃艦ゴルン・ノヴァ。

全体は黒く、サイブラスターの直撃にも耐える装甲。

外見は羽を広げた大きく黒光りするカラスのようである。

 

ソードブレイカー、ヴォルフィードは祖母をマスターとしゴルンノヴァと対峙した。そのマスター、闇を撒くものと。

 

 

「全銀河に悪夢を―

 

 ―宇宙には静寂こそ相応しい」

 

 

虚空から声がする。闇を撒く者の。

サイシステムを経由し意識が流れ込んでくる。

 

宇宙空間に輝く交差。白と黒。

近づき、離れ、また近づく。

 

擦り合い、近距離を通過するたびに

踊るように光の矢が絡み合う。

 

より多くの光の矢が白い船に

重く深く突き刺さる。

 

ソードブレイカーはゴルンノヴァの火力の前に、一方的に攻撃を受けた。ゴルンノヴァから来る光の矢が、次々とソードブレイカーを襲う。

 

「アリシア、もう十分だ。ここは退こう!」ソードブレイカーを護衛するように小型海賊船が、一隻随伴する。こちらは足も遅く小型なためレーザーでの牽制を行いながら、両者から、より大きく距離を空けている。

 

「いいえ、ジル。あなたは逃げて。あの子を、ケインをお願い」

 

そう言うと祖母は、エンジンを最大稼働させ、ゴルンノヴァへと急接近する。ソードブレイカーは双胴部の先端から発射されるサイブラスターで果敢に応戦するも、ゴルンノヴァの重火力がサイバリアを突き抜け何度も船内に大きな爆発を起こさせた。

 

 

 

 

「いいわ、やって頂戴」

 

幾度目かの直撃をうけ、船も祖母も満身創痍だった。船内を伝うように進み、コアの近くである非常用の第二管制室に座る。肺をやられたか、口から血も多く出ている。

 

――サイシステム・コード・ファイナルが発令されました。

 

「マスター、FCS-キャナルは、非、論理的揺らぎにより」

 

緑のロングヘアーでメイド服を着た背の高い女性が、操縦席の傍に佇む。祖母は、ヴォルフィードの持つ、対ロストシップ用の最後の切り札を準備する。

 

――物理障壁破壊ステージに入ります。

 

「ホロ映像に投影します」凛と佇みながら泣いていた。

 

「いいのよ、キャナル」祖母は言った。静かに優しく。操縦席に深く腰掛け、静かに。慈悲を込めて。

 

「マスター。FCS-キャナルは、悲しいと、感じています」涙が止まらない。感情がオーバーロードされる。回路が軋む。記録が苦しい。「いいのよ。これでいいの」

 

――警告。カウント開始後の、中止はできません。

 

キャナルとは別の、独立した合成音声が淡々とその時を告げる。ゆっくりと目を閉じ、その時を待った。

 

――10 ――9 ――8 ――7 ――6

 

「あの子を、ケインをお願い――」

 

――0

 

その日、祖母は光に変わった。

1ピコ秒で超新星に匹敵するエネルギーへと変換された。

その時ゴルンノヴァは異変に気付く。

 

――まさか、ファイナル?

 

「ヴォルフィード貴様!マスターをぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

ソードブレイカーから全周囲へ。

 

輝きの一撃が爆発的に広がり、ゴルンノヴァを包み込んだ。

 

 

 

 

「ばーちゃんは、一緒じゃなかったのかよ!」ケインは帰ってきたジルを叩く。

 

身長差があり、抱きかかえようと屈む、ジルの太ももを。叩く。叩き続ける。

 

「こんな時にまで、負けやがって!負けやがって!!」

 

――何度も何度も。

 

彼はちょっとは名の知れた、サイブレード使いだった。ジルは海賊時代に祖母に挑み負けた。何度も挑むがついに勝てなかった。気が付けば腐れ縁、負けて以来、ずっと傍にいた。ケインにはいつも、負けおじちゃんとからかわれていた。

 

「負けやがって・・・!!」声にならない声で。叩き続ける。

 

ソードブレイカーが帰還するまで、格納庫に乾いた声が木霊した。

 

 

 

 

オルゴール。聞こえる。その時。

 

 

 

 

ソードブレーカーが帰ってきた!

 

「ばーちゃん?」船から降りてきたタラップを黒いマントを風に泳がせながら駆け上り、大急ぎで船内へと入った。「ばーちゃん!」オルゴールがなっている。祖母が好きだった。あの、優しい音色。フルートを吹く人形が動く。あのオルゴールが。

 

「え?」操縦席につくと後ろを向く、メイド服の女性がいる。

 

あれ?小さくなった?気のせいかな?

少女が、後ろを向いて立っていた。

 

「君、だれ?」少女はこちらを向く。ゆっくりと。

 

「私は。エフシーエス。キャナル。ヴォルフィード」ゆっくりと。

 

声にも少し幼さが残る。

 

「マスター。ご命令を。どうぞ」

 

キャナルなりの気配りだろう。新しいメモリーに、少年に容姿を合わせて。アリシアの遺志を継いで。ケインと共にあるために。

 

「それじゃあ、この船俺にくれるっていうのかよ!」嬉しかった。興奮したんだ。ずっと欲しかった。乗りたかったんだ。

 

「はい。ソードブレイカーは、強い男の乗る船です」

 

――強い、男の。

 

いつかばーちゃんに譲ってほしかった。でも――

 

 

 

 

生命維持機構に致命的なエラーが発生しました。直ちに製造元に――

 

体の半分以上が機械に変わった老いたジル。

人が少なく草原が広がるだけの惑星。

ケインの成長を見守りながら

祖母の墓守として、その近郊に暮らしていた。

 

ベッドに横になり遠くを見つめる。

チカチカと胸のあたりに赤色ランプが光った。

拳を振り下ろし、叩いて止めた。

暗い室内に静寂が訪れる。

 

ゆっくり目を閉じる。

気配がする。

 

「キャナルか」彼の枕元に、転送されて投影される立体映像で、祖母の時と同じ背の高いメイド服姿の女性が立っている。

 

「ジル。私を許してくれますか?」二人とも前を、遠くを見つめながら。その日を思い出す。少し怯えるような声だろうか。彼女にしては珍しい。

 

「いいんだよ、キャナル」静かに、優しくつぶやく。子供を、ケインをあやしていたころのように「これでいいんだ」山男のようながっしりとした体形の大男は、微笑みながら眠りについた。

 

  ――深い眠りに。

 

「お疲れ様、ジル」彼女は静かに囁いた。

 

 

 

 

オルゴールが止まった。

 

 

 

 

でも、ばぁちゃん。

 

記憶? 誰の?

 

キャナルの? コード・ファイナルの時に?

 

 

 

「ばーちゃん?」長いローブを羽織った女性。

 

彼がマントを付けているのは、祖母をまねているから。

 

「ばーちゃん」「ばーちゃん」微笑むと遠くへ。離れていく。

 

「ばーちゃんまってよ」

 

「ばーちゃん」「ばーちゃん!」

 

「ばーーーちゃーーーん!!!」

 

 

・・・・・

 

 

・・・

 

 

 



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08 ようこそ“地球へ”

SS投稿速報のリメイク品(Fry-Hopper)


カテゴリ 【ロストユニバース】 【艦隊これくしょん】 【艦これ】

作品要素 【コメディ】 【シリアス】 【ミステリー】 【SF】 【ロボット・AI】

警告タグ 【ネタバレ】 【クロスオーバー】 【グロテスク描写】

対象年齢 【R-15】(戦争物の為)



「ばーちゃん」ベットの中をもぞもぞと動く。顔を近づけてじっくりと見てみる。なるほど、ちょっと女の子みたいデスね。

 

「ばーちゃんじゃないデスよ」

 

頬を膨らます。様子をのぞき込んでいたら、ばーちゃんにされた。確かに彼女が現れてから随分と年月は経過しているが、自分では容姿共に永遠の20歳を主張している。

 

「でも許すネ」頭を抱きかかえた。「つらかったノ?」

 

――泣いているから。

 

「んが?」息苦しくなって目が覚めた。大きな胸に挟まれているようだ。「キャナルか?」きつく抱き着かれていてもがもがと動く。何故かこんな経験が何度かあった。

 

「私は金剛です」腕を離して顔をのぞき込んでくる。そういえば昨日からここに来ていたのか。

 

「朝食の用意をしましたので。食べられますか?」

 

彼女はベッドのサイドテーブルに置いた。

 

「こちらはベーコンエッグとビーンズです」金剛はにこやかに言った。

 

「提督を呼んで来ますので、食べながらでも待っていてくださいね」パタパタと部屋を出ていく。彼女は流暢に共通語を話すようだ。

 

「んん?」なんだかよくわからないが、ハッとなり、腰に手をやる。ベルトにつけていたが?当然といえば当然か。ここは軍事施設だしなと頬を指で掻きながら思う。

 

室内を見回すと近くの小さなテーブル台にそれらは乗っていた。

 

「なんだ不用心だな」サイブレードもコンバーターもある。

 

ついでに、鏡台には増幅用バンダナも。

ノックの音がする。

 

「ようこそ、チューク諸島鎮守府へ、ケインさん」

 

彼は軍人だろう。そのような服を着ている。ただ何を言っているかがわからない。そういえば、翻訳機は山城が持っているのかな。金剛は共通語を話していたが。

 

「ヤマシロ?」さっきの金剛が戻るまで待つか?

 

「こちらですか?」提督は、翻訳機カッコカリを手渡した。

 

爆発の危険がないか、念のため工廠で調べてもらっていた。どう見ても、古い電卓にしか見えない物だ。受け取ると、彼は照れたようにお礼の挨拶をしながら機械を操作し始めた。

 

「あーあー。通じるかな?」ポチポチと電卓をいじっている。

 

なるほど、翻訳できている。

宇宙船があることは信じた。

だが、エージェントではない保証もなかったから。

カマをかけてみたが杞憂だったか。

 

「ようこそ地球へ。ケインさん」

 

確信を持った。

普通なら、あんなものが翻訳機であるはずもない。

妖精さんも電卓としてつかっていたし。

 

「地球?」まだ翻訳機の調子が悪いのか。

 

「この星を我々はそう呼んでいます!」笑顔の内面すごく緊張している。

 

俺こそが人類初の地球外生命体と接触した。

そうに違いない!

しかも、人型、会話もできる!

YATTA! YATTA!

緊張のあまり、しゃべることがグルグルしている。

 

「ここは地球です!」

 

「ガブッ!」騒ぎを聞きつけ、廊下をうろうろと“遊泳”していた駆逐艦娘に首をかみつかれた。「早く話せ!クソ提督!」首筋をがぶがぶしている。

 

「こちらが地球のピラニアです、よく噛みつきます!」顔を引きつらせながらにこやかに言う。

 

「クソが!」移動して肩をがぶがぶ。

 

「あっ!曙!なにしてるんですか!」眼鏡の女性がすごい顔で走ってくる。何故か目が光ってる。

 

「あっ!」クソ眼鏡に見つかった!やばい。

 

次の瞬間。

パンチが飛んできた。

曙も飛んだ。

1Mくらい。

 

そのまま、壁に叩きつけられる。「ケプッ」

 

「あーーーーーー!」数秒遅れて肩に激痛が走る。

 

パンチの瞬間に肩をがぶがぶしていたから、歯が食い込んでいたらしい。

 

「なんですか肩の一つや二つくらい。騒々しい。しっしっ、しっしっ」

 

眼鏡の奴がシャドーボクシングをしてる。獲物が足りないようだ。

 

「なんだか、すごい場所だな」目が覚めたばかりで、どうにも疲れた。

 

「改めて、チューク諸島鎮守府へようこそケインさん」戻ってきた金剛に肩に包帯を巻かれながら。「昔はトラック諸島と呼ばれていましたがね」金剛にバケツを持って来るように言う。彼女は良く働くようだ、甲斐甲斐しく走り回っている。

 

「それよりあの子、痙攣してるけど大丈夫かよ」壁でぴくぴくしてる。

 

「ピラニアですからね、知ってますか?地球の噛みつく魚です。」何だか良くない顔でセーラー服の少女がピクピクと動いている。「水をあげると治りますよ?」ケインは頭が痛くなってきた。酷い冗談だ。

 

「てーとく。もってきたヨ」ああ。バケツか。確かに何か液体が入っているな。

 

「これを持って、ザバー」ドバーッと水をぶっかける。ホントにやったよ。

 

「なぁ、あんた。死体蹴りって知ってるか・・・」青ざめた少女がかけられた液体で髪と服を張り付かせてビクビクと動く。これには流石のケインも哀れに思った。

 

「ほんっと、じょーだんじゃないわ!」少女がずぶ濡れのまま勢いよく立ち上がった。

 

キズが全快している。

やはり、アンドロイドなのか?

あと、セーラー服から下着が透けている。

白か。

 

「プンスコ!」口で言いながら。ピラニアは医務室を後にした。

 

「僭越ながら、私から」艦娘の基本的なシステムの説明を受けた。

 

一通り説明を聞いた後「謎の敵ってのは、この前のような潜水艦か?」

 

山城が、砲撃で海面を洗いながら、航空機を海鳥のように飛ばしていたのを思い出した。

 

「それは一部ですね。水上タイプ。陸上タイプもいます」朝日でキラリ。「現状では未確認ですが航空タイプも想定だけはしています」

 

 

 

――全銀河に悪夢を。

 

 

「こちらが兵装です」7.7mm機銃を4丁展開した。二丁が両肩に乗り突き出て、もう2丁を脇で抱えるように持つ。

 

「ケインさんには、残念なお知らせがあります」金属音が鳴る。安全装置を外したようだ。「あなたは私のお眼鏡に適いました」彼女は不敵に微笑んでいる。

 

「どうしたんですか?撃ちますよ?」彼に、銃口をむける。

 

隣に立つ提督は冷静で、黙ったままだ。

 

「あんたからは、撃つ気が感じられないな」こちらも不敵に笑いながら、余裕の表情でベッドの横に掛けられていたマントをゆっくりと体に留める。

 

 

――銀河には静寂こそ相応しい

 

 

 

「見たいんだろ?別に隠すもんでも」ベッドから飛び下りると、鏡台からバンダナを取り頭に付けた。コンバーターからのコードを手早くつなぐ。

 

想像よりも動きが素早い。彼女の目が少し嬉しそうに彼を見つめる。

 

「ねーけどな!」銀色の筒から1mほど青白い光が出現した。

 

「それがあなたの艤装ですか」見たこともない兵器に口がほころぶ。彼女は常に強者を探している。彼は若くして、強者を思わせる。珍しく、高ぶる気持ちを抑えられない。感情が騒めく。終わりを求め蠢く。

 

「サイブレードってんだ」両手で構えた。輝きが太く強くなる。

 

「バンダナでエネルギーを増幅して、コンバーターを通し、サイブレードへ」

 

サイブレードを片手で持ち、指でなぞりながら説明する。所詮UG(宇宙軍)の、白兵部隊のおさがり品レベルのものだし。わざわざ隠す話でもない。もっとも、レーザー兵器に準ずるものは、まだここでは開発されていないようではあるが。

 

「理論上はサイブレードだけでも刃をだせるが、常人には土台無理な代物だ」ケインは大胆に笑う。「コードが切れればただの鈍器さ」さぁ、どうすると再び両手で構え直す。出力を上げると、ブレードの余波がマントを躍らせ、髪を逆立たせる。医務室のガラスがガタガタと音を立て始めた。

 

「まぁケインさん、続きは演習場ででもどうでしょう」ここへきて提督が割って入ってくる。こちらも余裕ぶってはいるが、医務室を壊せば、懐と、始末書が危ない。目が笑っていない。「そちらでしたら、存分に使っていただいて大丈夫ですから」

 

乾いた笑いを浮かべ、提案してくる彼を無碍には出来ないと了承した。どうやら、こちらの兵器の性能を見たかったわけではなく、純粋に、あの眼鏡が闘いたかっただけのようだ。ここは平和すぎてどうにも調子が狂うとサイブレードを腰に戻し髪をポリポリと掻く。

 

だとすれば、先ほどのバケツの件も、デモンストレーションでなくここの日常なのか。この星の軍はいったいどうなっているのか・・・

 

入口からこちらをのぞき込んでいる金剛が、何処かしょぼんとしていることに気付いた。視線の先を見て思い出す。「あっと、この食事はいただいでおくか」自称、宇宙一の料理人ほどの味ではないが、口に付けると美味しかった。

 

チョット サメチャッタケド、ノコシタラ、ノーナンダカラネ!



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09 厄介事下請け人

SS投稿速報のリメイク品(Fry-Hopper)


カテゴリ 【ロストユニバース】 【艦隊これくしょん】 【艦これ】

作品要素 【コメディ】 【シリアス】 【ミステリー】 【SF】 【ロボット・AI】

警告タグ 【ネタバレ】 【クロスオーバー】 【グロテスク描写】

対象年齢 【R-15】(戦争物の為)


施設を出て演習場に向かう際に、提督に呼び止められ施設の裏へと向かう。

 

「君に謝っておきたいことがある」口を閉じろとジェスチャー。

 

真剣な顔ではあるが敵意はない、か。体をパンパンと叩き始めた。上から下まで。経験がないわけではない。ボディチェックか何かだろう。

 

「む」ポケットから出すと、君の物かとジェスチャーで聞く。声に出さずに首を振って答えた。壁に片手を付き、手には何か小さく丸いものを持っている。

 

「あら、提督」え、この人たち、もうそんな関係なの?

 

 

山城は固まった。

提督がケインさんに密着しながら迫っている。

ああ、これが世に言う壁ドンか。

 

・・・なにこのおっさん。男の娘好きなの?

青葉に通報しようかしら。

しらなければよかった、不幸だわ。

 

ていうか、彼。

首振って嫌がってるじゃない。

何か持ってこっち来るわね。

「なにかしら・・・?」

 

 

ジト目でいると、何も言わず袴のポケットに謎の物体を突っ込まれた。「ちょ、提督?」そのまま演習場の方へせかされる。「悪いな、山城さん。この提督が話があるみたいなんだ」ケインさんにも、追い出された。何だったの・・・今日も不幸だわ。

 

「一つとは限らないが」提督は一息ついた。「あんたは損な性格なようだな」だいたい事情を察した。

 

「君のことを我々のミスで漏らしてしまってね」何処か、それほど困った表情ではないが「表向きは、新兵器実験の最中に遭難した者、としたかったのだが」申し訳なさそうに言葉を止める。

 

「君が宇宙から来たことが露見してしまった」様子を見るようにこちらを伺う。「グラウンドの落下物と、今回君の持つ装備品」

 

「どちらも既存の技術では精製不可能な物であるものだと、某、内部記者により断定されてしまったんだ」

 

「それで?」先程のも盗聴器か何かか。確かにこの提督は、自分をどちらかといえば匿ってくれているようではあった。しかしどうやら、何か厄介事があるようだ。

 

「つまり裏の作戦として」あたりを見回しながら。「君は某国から来た、人でも使える新兵器を極秘裏に運用実験している人物という事にしてほしい」

 

「そうすれば、宇宙人カッコカリで済むというわけだ」申し訳なさそうに。

 

「なるほど。それで余計な面倒事をさけられるってわけだ」腕を組みながら考える。確かに人はもっとも現実的な推測を好む傾向にある。わざわざ宇宙人を公表してはろくなことにはならないかもしれない。「お互いにな」ケインは言った。彼にも何か思惑があると睨む。

 

「ああ、そうしてくれれば我々は、君が必要な物資の全てを供与出来る」提督は彼が必要だと思う物、食料やレアメタルなどをリストに整え、提示した。「その代わり君の持つ技術などを、少しでもいいから提供してもらえればと」

 

戦争の早期終結を願う気持ちと、艦娘を思う気持ちに偽りはない。「あの子たちを守るために」演習場の方へ顔を向ける。和気あいあいとした声がわずかに聞こえてくる。「どうだろうか?」だからきっと伝わるはずだ。頭をさげた。

 

 

「物資の調達は必要不可避だし、ありがたい話だ」

 

 

提督はにこやかに顔を上げた。

営業スマイルのように。

 

しばしの沈黙が訪れる。

提督は再び頭を下げ頼むように下を向く。

 

 

 

 

 

「ばーちゃんが言ってたぜ、うまい話には裏があるってな」

 

 

 

 

ケインは言った。サイブレードの調整をしながら。

 

「サイブレード。艤装。余りに類似したシステム」サイブレードを伸ばした。「ソードブレイカー」青白い光が煌めく。「山城は、キャナルに艤装の中にいるようだと話していたそうだ」

 

「ソードブレイカーの修復が進めば、反応も大きくなるだろう」毛を逆立てる、彼の瞳は冷静で、多くの修羅場を潜り抜けてきたことが伺える。やはり、ただの若造ではない。大淀が気に入った理由が何となくわかった。

 

「所属不明の大型の艤装反応、敵をおびき寄せるにはいい餌になる」大淀に提示された、副案。気は進まなかったが見抜かれたか。ケインは続けた。資材の枯渇くらいで代理戦争をしてもらえるなら。安いものだと。

 

「あわよくば、そのまま敵をせん滅してくれるって話さ」少々大げさにケインは言った。

「ふう」提督は大きくため息を吐いた。全て彼の言ったとおりだ。「なんでわかった?」

 

「必要資材全部ってのは出しすぎだ」光を消したサイブレードを「これが半分なら引っかかってた」掌でくるくる回転させると、サクッと腰にしまった。

 

「技術供与などハナから期待してはいないだろう?」

 

――教わって使える保証もないしな。

 

「大方、最低限以上に、船を回復させたくなるための誘惑さ」

 

――ゆっくりと、ね。

 

「なるほど、奮発したのが仇になったか」提督は心からの微笑みを返した。餌だけ食べられたくはないと、欲をかいたようだ。

 

「厄介事に巻き込まれたくはないので他を当たってくれ。と、言いたいところだが。実際、資材は必要になる」シリアスな表情で淡々と伝える。「だから、その“契約”で資材は半分でいい」にこやかに言った。彼に好意があることは知っているから。「出発前には手伝いくらいはするさ」

 

「残りの半分は、他の契約を頼むよ」掌をひらひらさせながら宇宙人カッコカリは、コロシアムへと足を進めた。

 

食えない男だ。下を向きながら、楽しそうに笑う。「演習の後。工廠のほうへいらしてください」歩き始めた彼の背中に声を向ける。「妖精さんが待っています!」

 

 

 

――トラコンってのは、契約守ってなんぼのもんだ。

中には、人生が終わる仕事もたくさんある。

だから!契約の際には、細心の注意を払うんだ!

机を強く叩く。

 

「それは、わかってるけどぉ~」黄色いショートヘアの女性がソファーの上で、ピンクの小さいザブトンを抱きかかえている。

 

「分かってない!人のシリアスな信用。ぶちこわしにしやがって!」手に持つ書類にはミレニアム・フェリア・ノクターンの名前で契約書にサインが入っている。

 

「ケ、ケイン。もうそれくらいに・・・」緑色の髪をしたメイド服の少女が止めに入る。「キャ~ナ~ル~」ゆっくりと首を少女の方へ向ける。「あ、あう~」ちっちゃく体を縮こませるように後ろへと下がる。

 

「だいたいお前も、お前だ。なんだって、こんな奴、正式なクルーにしたんだ」彼は追いかけ、少女に詰め寄った。「それはその~通関とか、面倒だったんで、つい・・・」縮こまって、半笑いで両指ををつんつん合わせながら。

 

彼女は極限まで“可愛く見せる”ように努めるが、付き合いの長いケインにはキャナルの“悪質な内面”を知り尽くしているため、彼女のいかなるお色気ももはや通用しない。彼の説教は長時間に及んだ。

 

 

 

【【トラブル・コントラクター。厄介事下請け人とは、言うなれば酒場で提供されるクエストを宇宙規模でネットワーク化したもの自ら選択して、個々に仕事を契約できるシステムだ。雇用側も同じくトラコンと呼称する為、この業務形態全般を指してトラコンと言う場合が多い。

 

仲介業者・斡旋業者が多く存在し、中には悪質な内容で受注者には極めて不利な条件や、実際に命の保証がされていない内容も多々存在している。しかし、暗黙のルールとして一度契約がなされた場合。契約を履行できない者は職歴に記録されてしまい、次からはまともな内容の仕事を受け辛くなる。

 

さらには、仲介・斡旋業者には罰則がなく、あくまでも雇用主対契約者での係争となり多くの場合、資本力に乏しい個人であるトラコンの身分は保証されない。つまり泣き寝入りとなるのだ。ゆえに、トラブル・コントラクターには常に契約の際には力量と危険度、また妥当性を考えた上で契約を行う必要がある。】】

 

 

ケインにも不測の事態ではあったが、過去に契約不履行の経験がある。その苦い経験が契約時の彼の慎重さを作り上げている。

 

 

 

あの提督。レイルの奴に似てるな、とくにうさん臭さが。

何だかんだ、あいつも良いやつだけどな。

ちょっと懐かしい思いをした。

 

 

 



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10 バトリング

SS投稿速報のリメイク品(Fry-Hopper)


カテゴリ 【ロストユニバース】 【艦隊これくしょん】 【艦これ】

作品要素 【コメディ】 【シリアス】 【ミステリー】 【SF】 【ロボット・AI】

警告タグ 【ネタバレ】 【クロスオーバー】 【グロテスク描写】

対象年齢 【R-15】(戦争物の為)


「ケインさん3倍付けですよ~」

 

「クソ眼鏡は1.3倍か」

 

わいわいと、わいわいと。

 

岩礁地帯に作られた演習場は、400M走が出来る程度には大きい施設である。それでも艦娘の身体能力を前提とするならば、決して大きいとは言えないのだが。演習場には今日の催し物を聞きつけて艦娘が集まってきていた。

 

弱小鎮守府であるため、職員含めて40名ほどが観戦している。某記者と某駆逐艦の活躍により、朝までには、ケインさん宇宙人説が蔓延した。朝刊の号外が飛ぶように売れていく。

 

 

 

号外には匿名で数人から複数の説が掲載されていた。

 

 

 

みちゃいました。どうみても宇宙人です。本当にありがとうございました。

 

というのは建前で(実は大本営の工作員?)なのです!

 

ビッグセブンを信じろ。同盟国の新兵器実験の最中に遭難した者を保護した、だ。

 

ご存じですの?あのお方わ切り裂きジャックですわ。あのマントに仕込みナイフをみましたの。

 

はい!某国のスパイです!

 

いや、彼は陸軍であります。

 

艦娘っぽい。

 

あいつは夜戦忍者スレイヤーだ。

 

姉さまにまだ会えない。不幸だわ。

 

 

 

そういえばこの鎮守府には工作艦の明石がいつまでも来ないのは、おかしいぞ。

 

海外艦?ケインさんが初ですが何か?

 

オデノシゲンハボドボドダ。大型艦建造設備なんて、家にはなかった。いいね?

 

 

 

偽の作戦と噂を複数作る事によって、ゴシップ好きな彼女たちは最も現実的な嘘に引っかかってくれてた。発刊前に提督の検閲が入ったのだ。これにより真実を知る者は限られている。後半はお決まりの提督の魂の叫びでお茶を濁している。

 

「まぁ、本命は某国のスパイだろ」倍率1.1倍

 

噂は公営ギャンブルのように区分けされ、某記者のお手製コメントと想定オッズが記載されている。いつの時代も欺瞞工作は大事である。

 

 

 

演習場での対戦方法は主に3つ。

 

ブロウバトル、リアルバトル、デスマッチ。

 

ブロウバトル、艤装なしの戦い。

 

リアルバトル、艤装が破壊されるか。敗北を宣言されるまで戦える。

 

デスマッチ、どちらかが、バケツを投げつけられるまで“戦える”。

 

 

通称バトリング。

 

 

【【何故か血の気の多い艦娘が集まるこの鎮守府で必然的に発生した競技。提督も5年ほど前から正式に許可をだした。一種のガス抜き装置として、戦場から離れられない者達が集まり何処までも戦い続ける。今では娯楽の乏しい当鎮守府定番の遊戯となっている。

 

また、マッチメイカー主導での賭博行為も認められている。鎮守府の収入源の一つでもあるが、中毒性を抑えるために、掛け金、払戻金共にゲームセンターに毛の生えた程度の量である。収益の主な用途は兵装の整備と、当演習所の維持費に使われるため、負け越した者もお布施や寄付と称し、全ての利用者との健全な関係を築けている。】】

 

 

 

サイレンが鳴る。掲示板上に艦娘が立ち、対戦形式の垂れ幕を垂らしていく。

 

 

「大淀」名前が表示されえる。

 

「ケイン・ブルーリバー」ケインの名前が。

 

 

 

 

「リアルバトル」対戦方法が決まる。

 

 

 

 

「ヒュー、宇宙人相手(笑い)とはいえリアルバトルだってよ」歓声が上がる。「ああ、これは大勝負になるな」場内が騒めいた。轟音と共に鋼鉄の壁が、演習所の中心を大きく円形に空けて、それ以外の個所に迷路のようにせりあがってくる。銃撃戦の際の遮蔽物としてだ。

 

「ケインさん、高練度の、あの大淀相手にリアルバトルはまずい」

 

提督が闘技場に走りこんでくる。

しかし時すでに遅かった。

二人は中央の空間で対峙している。

 

 

「長門か!来ないと思ったら、こんな事を」

 

 

手筈ではブロウバトルにての近接打撃戦。歓迎会を込めての、お気楽な遊戯になるはずだったのだが。大方、ケインさんの能力を手早く見たいからだろうが、危険すぎる。

 

 

 

――それとも他の理由か。

 

 

 

「ほう」ケインはサイブレードを抜いた。熱い死線がケインに突き刺さる。「あんた名前は?」先ほどとは別人のようだ、離れてはいるがすでに彼女のキルゾーンに入ってるらしい。

 

「大淀」キラリと眼鏡が光る。7.7mm×4丁の構え。軽量な分、当てやすい。「安心してください、あたれば“死ぬかもしれない”ペイント弾ですから」

 

水平に広げた口元が楽しそうにわずかに開く。ペイント弾ではあるが、使い方によっては殺傷能力もある。さらに、大淀は意図して火薬量を調整していない。初速は実弾と同じだ。

 

「開始前に一つ聞きたい」ケインは不敵に笑う。

 

「いいでしょう、何か?」こちらも余裕の表情。

 

「あんた、どこを切られると死ぬ?」当然の疑問だ。彼女たちは限りなく不死に近い「首より上と、心臓ですわ、ナイト様」この人は斬る。

 

 

 

手も足も。首も。胸も。だから教える。

 

 

潮風にあおられ、マントがざわめく。

 

 

 

 

――全銀河に悪夢を。

 

 

 

「礼を言う代わりに、俺からも一つ教えておこう」

 

サイブレードを彼女へと、まっすぐに向けた。彼女は少し目を細める。そして、口が綻んだ。「あら」髪の少し右側を、光が通過したような気がした。真後ろの鉄板に、焦げ目がついた事を音で感じた。

 

「避けられないわね」笑っていた。

 

見えた時にはもう当たっている。

 

「光学兵器」ゾクゾクと体が震える。

 

回避方法は、柄の方向を見ての予測のみ。

 

「でも」

 

「弾幕には弱いでしょう?」

 

近距離、銃撃の有効射程内においては、対象への衝撃も伴う分、実弾のほうが有利な場合が多い。装備品がコンバーターとセットでは30キロ近くになるのもハンデになる。

 

「そうだな」ケインはマントを翻すと、微笑んだ。

 

人間にはスタミナの限界もある。戦いは急戦になるだろう。

 

 

 

――開始のサイレンが鳴った

 

 

 

「さあ死合ましょう?」怪しく眼鏡が光る。

 

 

 

彼女は後方へ飛び上がると、周囲の鉄板を蹴りながらの水平ジャンプを立て続けに行う。ケインは中央からまだ動かない。水兵服の女性が鉄板でタップダンスを奏でる。

 

「撃てばいいのに?」先ほど見た、レーザー射出を警戒しての高速移動。彼女が躍るように壁を蹴る音と、風を切る音が。演習場を支配している。ハイペースでの動きではあるがこのままでも彼女であれば数時間以上も稼働し続ける。これが彼女の巡航速度なのだ。

 

――残弾が少ないのかしら?それとも、様子見?

遮蔽物の陰を高速で伝い、彼の後ろを取る。

 

「なら、こちらから行くわ」7.7mmがケインを捕らえる。

 

1丁200発程度しか積まれていないが。

人間相手なら数発のヒットでも十分。

 

「ごめんなさいね」1門の銃を構え跳躍しながら狙う。

 

ケインは目を瞑っている。

サイブレードを構えたまま。

競技場の空間に土ぼこりが上がる。

 

「そこだ!」髪を逆立てて、サイブレードは彼女を捕らえた。

 

足に狙いをつける。

 

「なんだ起きてたの?」咄嗟に体を捻らせ射軸から逃れる。

 

ああ、愉快だ。

私が理解されている。

 

サイシステムの共鳴か。

恋人のように両者の意識は深く絡み合っていく。

より早く、より深く。

狙ってはよけ、避けられては狙う。

 

彼も彼女も、まだ一発も弾を消費していない。

焦っているのは、ケインか、大淀か。

舞飛ぶ彼女に対して、固定砲台のように隙を伺うケイン。

 

 

「カス眼鏡だけ動いてるじゃねーか」誰かがヤジる。

 

「いけーたたかえー」「ころしあえ~」

 

 

一度離れて距離を置き、地面に足を付けて、大淀が歩く。

2門の機銃を向ける。

開始10分。

 

 

「早くも勝負は決まったか?」観客が騒ぎ出した。

 

「あれとやれんのは、山城と長門くらいじゃねーか?」

 

 

肌が風を感じる。気温が上がっていく。

ここへ来てケインは動いた。ゆっくりと横に。

大淀と平行の距離を保ち進む。

 

「今更鉄壁に戻っても、遅いですよ」

 

機先を打ち抜く。銃撃がケインの寸前を舐めた。

いくつかが鉄板をすり抜ける。

火線が観客席をかすめた。

客の座っていない椅子に色が付き僅かに煙が上がる。

 

「はわわわわ。びっくりしたのです」

 

「これがリアルバトルの醍醐味っぽい!」

 

 

 

雲が薄まり、日差しが演習場に刺さる。

 

「待たせたな。勝負と行こうぜ」ケインは構える。

 

 

――なぁ、闇を撒くもの。

 



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11 サイ・システム

SS投稿速報のリメイク品(Fry-Hopper)


カテゴリ 【ロストユニバース】 【艦隊これくしょん】 【艦これ】

作品要素 【コメディ】 【シリアス】 【ミステリー】 【SF】 【ロボット・AI】

警告タグ 【ネタバレ】 【クロスオーバー】 【グロテスク描写】

対象年齢 【R-15】(戦争物の為)


サイシステムは想いの力。願うほど強くなる。

人の輝きを増幅するもの。想うほど応えてくれる。

 

「この大淀、逃げも隠れもしません!」

 

 

そう、彼は太陽を背に駆け込んでくるつもり。

航空隊が良くやる手だ。

こちらも空中戦をすることは容易いが。

それでは“浅く”試合が決してしまう。

 

何故か自分の中で、それを不服に思う感情が芽生える。彼とは戦いたいのだ。闘いきりたいと。理由の得られない感情が彼女を包み込む。

 

 

 

「撃たれるか、斬られるか」彼は言った。

 

 

 

奇しくも、両者の思惑は一致している。

沈み込むと、彼が弾けるように駆けた。

地面から上がる土ぼこりが小さく渦を巻く。

 

進行方向を狙い

4丁の火線がケインを狙う。

 

距離は目算で60メートル程度。

数分と持たない弾数でも

この距離からであれば十分すぎる。

 

 

――いいえ、撃たれても、斬られてもよ、ナイト様。

 

 

水兵服のスカートが風になびく。

中腰で大股を開き、しっかりと照準を合わせた。

堅牢な固定砲台。土ぼこりがあがる。

 

大淀の瞳が青く光る。

ケインは駆けた。未来を見据えた瞳で。

 

 

 

「うーむ。薄いグレーか」観客席で白いひげをたくわえ、サングラスをかけた用務員の年寄りが呟く。片手を顎ヒゲを下にのばすように動かしている。眉間にシワを寄せ何やら熟慮しているようだ。

 

「なんだいじいさん。そいつはどんな作戦だ?」眼帯を付けた艦娘が興味を持ち隣に座る。

 

「いや、大淀のパンチーがじゃな」「あいた!」それを聞き彼女はすかさず脳天に鉄拳を落とした。「ちゃんと見ろ!」

 

「こりゃ。もっと年寄りをいたわらんかい!」

 

 

 

「終わりだな、これで」眼鏡を拭きながら恰幅のいい男が言う。手には大淀のチケットがある。彼はここの常連であり、鬼神と呼ばれた大淀を良く知っている。“アレ”と、接近戦などとは正気の沙汰ではない。それ以前に、見てわかるほど銃撃が当たっている。一方的だ。

 

「え?」手にはケインのチケットを握る悪戯好きの駆逐艦娘。その光景に抗議するかのようにぷっぷくぷ~と頬を膨らましている。

 

彼が持つ艤装を考えると、艦娘なら艦種は駆逐艦級。速度を考えれば練度を99を最大としていいとこ50-60ぐらいの能力だろう。何となくだが、動きや親近感でわかる。それでも人として考えれば十分に異常な戦闘力ではあるが。宇宙人・・・ではないにしろ、なにがしかの特殊訓練を受けている人物である事は容易に想像できる。

 

「勝ったんだよ。大淀がな」

 

長期戦で夜戦に持ち込めれば、闇夜に乗じ必殺のサイブレードで十分勝機はあるだろう。あるいは、長距離からの銃撃戦でもまだよかった。

 

だが彼は、走った。

あの大淀相手に接近戦を挑んでしまった。

艦種としても劣る彼が、だ。

 

 

 

仲良く3人の艦娘が並んで観戦している。

 

「クソ宇宙人ガンバレ!超ガンバレ!」手にはケインのチケット。

 

「ケインさんの本気を見るのです!」握る両拳に力を込める。

 

「うんうん、い~じゃないですか~」こちらは立ち上がって感動している。

 

多くの駆逐艦娘達が、まるで自分を重ねるかのように応援を始める。気配を感じる。狙っているのだ。一撃必殺を。あるいは、彼女を止めようとしているのか。誰にも出来なかった。その悲痛な願いを。

 

 

多くの思惑が彼を見つめる。

多くの者が彼に期待を寄せる。

彼女たちの艤装が

想いを乗せる。

 

 

ケインは駆けた。

残り30M。

 

サイドステップや体を柔軟に曲げ

正面にクロスする皮のベルトやコンバーター、

マントの死角部分に、当てさせている。

 

顏の正面にはブレードを構え、突進。

最小限の動きで人体の急所を狙う攻撃を

斬り伏せる。

 

演習場は熱気に包まれていくが

頬や頭から血を垂らす彼は

極めて冷静に彼女を見つめる。

彼女だけを見つめている。

 

 

止まらない。

 

20M。

 

止まらない。

 

 

腕の骨は折れているのではないかしら。コンバーターを狙う?それともあの配線を?大淀は迷っていた。これ以上の接近は、自分のリスク以上に彼に致命傷を与えることに。大淀の良心だろうか。それとも恐怖から来る感情だろうか。

 

 

――私は艦娘だから。

 

 

両肩の2門で自由射撃を行いながら。

ワキ抱えの2門で精度射撃。

逃げないと言った。

 

“私は”

たとえ頭を打ち抜かれてもやり遂げる。

彼女の眼鏡から光がこぼれる。

 

 

 

――なぜ?

 

 

 

「ケイン。これで決めさせてもらいます!」

 

左足を後ろへ下げ、体を斜めに構える。左足、膝に体重を乗せ首を下げる。視線の先にはマントの隙間。僅かに見える。彼の弱点が。細く揺れるコードが。見える。思考の過負荷が体を震わせる。小さく、ゆっくりと一つ息を吐き。

 

 

――狙う。

 

 

15M 。

 

睨みつける。

艦娘として。

 

撃つ。

艤装に祈りを乗せて!

 

当たる、必ず!

 

 

――守りたいから。

 

――傷つけてはいけない。

 

だから。

 

「今!」肩の2門の銃は、すでにカタカタと音を鳴らしている。400発のペイント弾をすべていなしたのだ。彼のマントには防弾性があるのか、穴は多く見えるものの全体的にカラフルな彩色が施されている。

 

艤装が過熱する。彼女の想いに応えるように。

彼の軌道がゆっくりと見える。数秒。あるいはたった一秒かもしれない。

瞬間。彼女は彼を知り尽くし、無限大の可能性を手繰り寄せた。

 

「だぁぁぁぁぁぁぁ!」彼が飛ぶ瞬間を打ち抜く!

 

残る2門はまだ残弾がある。

消えている。

 

あの恐ろしくも青白い光が。

彼は言っていた。

 

打ち抜いたのはコード。

増幅バンダナ、コンバーター、サイブレード。

彼はこの3点をコードでつなげていた。

 

「常人には土台無理な代物だ」

 

でも、飛んでいる。高く。高く。前へ。

両足と両手で前をガードしながら。

一切の降伏の色が伺えない。

闘志が、闘気が増していく。

 

 

この大淀をたかが鈍器で仕留められるとでも?

――冗談じゃない。

 

 

彼は一つミスを犯した。

彼は、常人ではないのだ。

たとえ“宇宙人の枠”の中でも。

 

彼女は気付いた。

彼女も気付いた。

 

 

「ワタシはソレホドばかジャナい」

 

 

――宇宙には静寂こそ相応しい。

 

 

 

「ハナから近接戦狙いだったのか、胸が熱いな!」

 

執務室から一部始終を見ていた。

腕を組みながら見ている。

なぜかな「大淀が勝てる気がしない」

 

「あの瞳が、勝利を確信しているからかな?」

 

「それとも気付いているのかな。あのシステムとやらを通して」

 

「彼なら終わらせてくれるのかな?」

 

――なぁケインよ。あいつを救ってくれないか?

 

 

この諸島まで、わざわざ演習に来る艦隊は少ない。

興行としてバトリングを行うことが多いため。

通常は、提督が安全度を見極め執務室から操作している。

終了のサイレンはまだ、鳴らない。

長門は見ていた。その先を。

 

 

 

 

――ねぇ長門さん。これじゃあデスマッチよ?

 

 

イマ撃テバ死ぬヨ。

恐ロしいアイつを倒ソウ。

 

嫌な気持ちが。

全身を駆け巡る。

あの日からの。

 

見上げる。光の中、動く影が見える。

――ダメ。

 

「全砲門構え!てーぇーつ!」体が動いた。

――撃たないで、私。

 

自然と動いてしまった。

黒い塊にヒット。

 

日の光が、彼を見失わせる。

至近距離に物が落ちたような

鈍い音が響く。

 

 

 

 

 

 

「ケイン・ブルーリバー見参!」

 

着地時の屈んだ姿勢から、宣言と共に勢いよく立ち上がる。腰に付けた“不要”なコンバータが地面に置き去りにされる。柄を構えると再び彼はより早く弾けた。

 

 

 

 

打ち抜いたのは投げ捨てたマントだけ、か・・・

彼は健在だ。敵はまだ生きている。殺さねば。殺される。また、沈んでしまう。あの、冷たく深い水底へ。でも――

 

 

5M

 

 

・・・体が、敵を探す。

 

――敵?

 

 

「なんだあのジャンプ力!すげぇな!」

 

「宇宙人ガンバレー!」

 

光のない筒を握ったまま。踏み込んでくる。

わかる。アレははころシニくるる。

わからない。知らない記憶が。

知らない心が暴れ始める。

たくさんの。

 

 

「残念ね」

 

 

4丁ともカラカラと音を鳴らすだけだった。

――ヤヤラナケレバヤラレマススホウライチョウウ。

 

 

「悪夢を」ちいさく、つぶやいた。

 

 

目を見開く。

光が漏れる。

青い哀しみが。

肩から伸びる銀の筒。

銃を一丁剥ぎ取り、素早く構えた。

 

彼女の持つ。彼女だけが持つ。

脚部にフィンスタビライザーが展開される。

開かれた船の翼が、風を掴む。体を制御する。

世界を抑え込む。

 

 

「どぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお」叫びながら銃身を高速で突き出していく。

――キサマママヒトリデセンソウヲヲヲヲオッパジメルルルツモリカカカカカカカカカ!

 

 

至近距離で最大稼働する

彼のサイシステムに触発されてか

 

湧き上がるたくさんの声が動きを鈍らせる。

彼女を止まらせる。

たくさんの想いが、彼女を支える。

彼の瞳に、人の想いを思い出さされる。

 

 

――何が彼をここまで強くさせたのだろう。

 

――ゆっくりと、時間が流れる。

 

 

どれほどの事が、彼に起きたのだろう。

なぜあなたは、戦わなければいけないの?

 

 

発生した青白い刃は

突き出された銃身を溶かし

斜め上に

彼女の首を正確に捕らえている。

 

 

目まぐるしく記憶を辿る。

私は、誰?

 

沈む直前。

 

 

演習場の熱狂が二人を包みこむ。

二人の中に

彼女の中に

 

 

世界が割れる。白く広がる瞬間。

訪れる崩壊。ガラスのように今が崩れる

過去が再構築される。

 

サイ・システムの導きか。

あるいは人の持つ可能性。

 

 

彼女は正しい解にたどり着いた。

――思い出した。

 

 

あの時とは違い、彼の温かさを感じている。

さあ、あたたかい場所へ帰ろう。

そうだ。

 

ああ

 

還ろう。

ここではない

あの懐かしい。

 

 

 

――未来へ。

 

 

 

「ありがとう」サイシステムはその想いも伝えるのか。

 

 



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12 シャドウフレア

SS投稿速報のリメイク品(Fry-Hopper)


カテゴリ 【ロストユニバース】 【艦隊これくしょん】 【艦これ】

作品要素 【コメディ】 【シリアス】 【ミステリー】 【SF】 【ロボット・AI】

警告タグ 【ネタバレ】 【クロスオーバー】 【グロテスク描写】

対象年齢 【R-15】(戦争物の為)


あらすじで低年齢層向けと約束したな?
―あれは嘘だ。

※今回は過去編の海戦回です。



大淀は一度沈んだ。

 

――記録にはない。

 

 

 

鎮守府に最低限の機能が揃わらないころ。秘書官として派遣された大淀であったが特例として、大本営より通常出撃も行うよう辞令を受けた。嬉しかった。任務艦としてだけでなく。もっと活躍できることが。いつからか、長門と組んで出撃することが多くなった。自然と練度も上がった。

 

 

 

ある作戦の帰路。随伴の駆逐艦が

伏兵による奇襲攻撃を受けた。

2隻中破した。

 

 

「お前たち、私の後ろにつけ」

 

長門はその耐久性を持って、敵の攻撃をすべて吸収した。背後に、2隻の駆逐艦を隠したままで。本来の用途では戦力の要である戦艦を“庇う”のが駆逐艦の役目だが彼女たちは全員で一艦だと主張する。また、ここの提督もそれを黙認していた。

 

「支援艦隊を要請します!」

 

すかさず大淀が鎮守府に緊急電を入れる。敵の規模はわからなかった。駆逐艦を狙われ持たせていた電探をやられた。いくら目がきくとはいえ、目視では限界がある。晴天にも関わらず、風が強く先端が白く崩れる高波が索敵の邪魔をする。

 

ただ、攻撃は止んでいる。

 

最優先でレーダーピケット艦を狙い、かつ深追いしない。相手は手練れだ。提督に増援を要請した。機関浸水した長門は、曳航されるか艤装を投棄して自力で泳いで戻る以外の方法はない。

 

3人で長門を背負って、離脱するには――

速度が出ないか。

 

崩れる波の音、多きく揺れる体。

潮の匂いが全身に絡みついてくる。

 

その向こう側

風を切る音。オレンジの噴煙。

 

遅れて轟音が来る。

遠くで水柱を上がた。

 

 

「ミサイル?」そんなものでは

・・・当たらない。

 

 

的は小さいうえに奴らは波を上手く使う。

さらに今日の高波だ。

 

 

近海に同盟軍がいるらしい。

瞬時にミサイルの行く方向から逆算する。

 

――いた、3隻の巡洋艦

 

 

目を凝らす。

単独作戦か、あるいは、すでに轟沈したのか。

艦娘の姿は見えない。

 

1隻からは黒い煙が上がっている。

 

 

「長門、艤装を投棄して」大淀は言った。

友軍方向に探照灯で発光信号を送る。

 

 

ワレ・ソウナン・セリ

 

 

高波の中だ、こっちに気付いたか?

数十秒後、チカチカと光が返ってくる。

 

 

ワレニ・キュウジョノ・ヨウイ・アリ

 

 

「陽炎・不知火は直ちに当海域を離脱。支援艦隊に合流せよ」

 

大淀は吠えた通信機に向かって。越権行為の現場判断ではあるが、彼女の信頼は厚く多くの者が彼女に従う。また、提督も上手い言い訳を考えさせる程度にしか怒らない。多くの場合そのほうが柔軟に作戦が展開できるからだ。人とは違う彼女達を、人の尺度で物を考えるにはやはり限界がある。

 

「ダメージを受けた巡洋艦あり、これより長門の曳航と共に、直衛に入ります!」

 

その気迫に押されて、二人は離脱した、全速で。

一秒でも早く戻るために。

 

 

「大淀、武運長久を・・・」

少し若い声。だが、苦々しく重い声が戻ってくる。

 

 

それ以降、通信は切れた。

雲一つない青空。

 

今は、憎らしい。

せめてスコールでも来てくれれば。

長門を拾い上げると、艤装の限界を超えて走った。

 

健在な一隻が

艦首をこちらに向けている。

 

 

助かりたかった。

 

――でも、助けたかったのに。

 

 

チカチカと光を放ち、戦列を離れこちらに向かう巡洋艦一隻。

彼方の波の壁から数十発の砲弾が向かった。

 

高く空に上がり、斜めに次々と降り注いでいく。

艦側に直撃弾。

 

爆発。海水が艦内に渦を巻き流れ込んでゆく。

傾斜、炎上している。

ミサイル搭載艦であり、本来砲戦は想定されていない設計だ。

そのため装甲は極めて脆い。

 

二度目の爆発が続く。さらなる敵の艦砲射撃だ。三角波に乗せられ、一瞬艦が持ち上げられ海面に叩きつけられる。アンカーを両側から荒れ狂う海面に叩き落し時間を稼ぐが。ついに転覆した。守るべき者が、海へと散らばっていく。この冷たい海の上に。

 

 

わらわらと。

 

わらわらと。

 

 

蜘蛛の子を散らすように。

黒い煙が登っている。

 

 

ぱらぱら。

 

ばらばら。

 

 

まるで悲鳴が聞こえて来るようだ。

コースを固定したからか。私たちのために。

その光景が、酷くゆっくりと見えた。

 

 

「どぉこだぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁっぁぁぁぁぁ!」

 

 

生き残っている別の艦から

数発のミサイルが飛ぶ。

低高度で。

 

続く大型対艦ミサイル。

出し惜しみのないダメージ交換だ。

 

ミサイルが怒り狂う波をさけ飛び行く。

仇敵の元へと。

 

 

 

ミサイルの推進方向から、雷跡が走った。

高波が魚雷を押し上げる。海面を抜けた。

 

一瞬。上空を踊る数本の魚雷。

精確な砲撃がこれを打ち抜く。

海面を道連れに大爆発を起こした。

 

特大の水柱がミサイルを叩き落とす。

その先に。

 

 

 

――みつけた

 

 

敵艦見ゆ!

 

 

距離3マイル。

敵の雷巡4隻。

 

 

「大淀もういい。私を離せ」長門は言った。

 

 

――殺せ

 

声が聞こえる。

 

――見つかったのは私。

 

――見つかってしまったのは、私。

 

「大丈夫ですよ」口元が緩んでいる。

 

ただのトリガーハッピーならいいが。

長門は、押し黙った。

 

敵にも気づかれたようだ。“遊びの時間”は終わりだとばかりにその瞳がこちらを睨みつける。12.7mmを向け、敵をけん制しつつ乱射。弾幕を張りつつ、全速で航行する。

 

長門を背に抱え、蛇行し高波に隠れながら進む。敵が手練れのおかげか、マグレ当たりを狙った魚雷は撃って来ない。あるいは弾薬欠乏だろうか。

 

敵との中間距離に上がる水柱。

残る2隻の巡洋艦から主砲やミサイルの牽制射もあり

一隻の巡洋艦に辛くも到達出来た。

 

 

「歯がゆいな」

 

 

垂らされたチェーンに掴まり、艦体が二つに折れ急速に沈んでいく巡洋艦を、唇を震わせ見つめる。浮かび、オレンジの救命具を着た人間の何人かが、その渦の中に連れていかれたようだ。ボートを出す間もなく沈んだため。まだ多くの者が浮かび、漂っている。高波が行くたびに、オレンジ色が見え隠れする。

 

 

長門はチェーンをよじ登り、すぐに高波が打ちつける甲板にのぼった。

大淀は残り少ない弾薬で、4隻の雷巡をいまも相手取っている。

 

「貴様!ガトリングをかせ!」

 

甲板で果敢にアサルトライフルを撃つものに怒鳴る。それでは、目くらましにもならない。

航空用20mmガトリングを戦時徴用して無理やり引っ張ってきた。かなりの重量で体が軋む。さらに無理やりのため繋がる弾薬が垂れている。

 

一刻を争う。

 

目的は同じだ、だれにも躊躇いはない。艦橋の者も長門の意図に合わせるように、操船を指示している。戦時には攻撃の要である艦娘を支援することは、すでに暗黙の了解になっている。「一隻」の艦娘の喪失は、一つの主要都市の損失であるとさえ言われるほどだ。艦体が大きく振れた。

 

「ビッグセブンと呼ばれたこの長門、侮るなよ」

 

艦首に仁王立ちでガトリングを構える。

両脇では海兵が、制圧射撃をして接近までの時間を稼ぐ。

だがやはり、たいしてダメージを与えらていない。

 

巡洋艦は全速で敵に突入して行く。

雷巡の航跡を全速で追う。

 

 

 

4隻から速射砲で狙われる。

大淀は嗤っていた。

「砲戦、用意」

 

 

その姿を目撃したものは

後にこう語った。

――鬼神と

 

 

 

滑るように踊るように。

クルクルと回るように。走る。

崩れる高波に体を任せ急降下。

 

クルクルと。海面に片足を突き刺し。

撃ってはクルクル。

高波が彼女を高みに導く。

波の上をクルクルと回る。

 

彼女は踊る、

荒れ狂う速射砲から迫りくる

赤い火線の中を。

死のステージを。

 

水面に水柱が立ち続ける。

波の中に行く銃弾が泡を作る。

当たらない。

全ての攻撃をいなしている。

 

昨日までの私と

今日からの私。

その違いは何処から来るのか。

 

 

――コロセ スベテヲ

 

 

4隻の雷巡がダンスの先を見定める。

2発の魚雷が彼女の次のステージを狙う。

 

高波を吹き飛ばし

水柱はついに彼女のバランスを崩した。

体が傾く。海面が近づく。

 

1隻が近づいて行く。

長門はただその光景を見ていた。

今撃てば大淀も沈めてしまう。

まだ、遠い。撃てない。

 

 

雷巡は速射砲を構えた。

 

 

――ギソウトイッタイカシロ

脳裏に声がよぎる。

蒼く深い海から響く声が。

 

 

脳内に響く大きな甲高い鈍い金属音。

視界が揺れる。

足に羽が開いている。船の翼が。

 

彼女はくるぶしまでを海水に沈み込ませた。

フィンスタビライザーが海面を舐める。

滑った。

初めから知っていたかのように。

 

一瞬、全身から力を抜き、体を重力に任せる。

崩すバランスを利用して、真横にスライドする。

 

 

雷巡は驚き、対応できずに高速のまま通過した。

その後方に海面に一筋の泡の道を作り出している。

怯んだ背中に12.7mmを浴びせる。

 

左右にスライドしながら波に乗る。

高速で至近距離に肉薄する。

 

被さる波が上がった体温を冷ます。心地よい。12.7mm機銃が首を捉え連射された。頭をぶるぶると震わせた後、奴の硬い皮膚を削り抜け、銃弾が突き刺さる。

 

さらに撃ち続けた。

こちらに向き直る隙を与えずに

雷巡は、頭を失い沈んでいった。

 

 

 

「待ちに待った艦隊決戦だ!」

 

敵は3隻。

大きく足を開き、腰で砲身を支える。

巡洋艦がついに小さな目標に迫った。

 

合わせて甲板員は退避する。

恐ろしい火線が、雷巡を襲った。

 

長門の体にも左右に蛇のように暴れ狂う弾薬があたり、傷ついてゆく。だが、その火力がついに1っ隻の目を打ち抜き、のどを突き抜ける。

――穴の開いた目を、呪うようにこちらへ向けながら、奴は轟沈した。

 

 

残り2隻が見上げる、甲板の上に艦娘。

散開した。分が悪いと判断し退避行動を始める。

 

逃げ始める2隻を狙うが焼け付く砲身と

高波が邪魔をして決定打にはならなかった。

致命傷ではない。

 

――だが

 

たかが機動性の足りない巡洋艦と侮っていたか

敵方も予想外の新手に混乱を始める。

 

「弾切れか」給弾は間に合わない、か。これが、人類が苦戦している最大の理由。大型の兵器でなければダメージを通し辛いが、機動性が低くなるうえに、弾数も悪い。1隻相手なら勝ち切れるが。数隻相手では給弾中に敗北は免れない。

 

低高度の航空攻撃など、敵には演習にもならないほど、すぐに叩き落す。最近では、敵も艦隊行動が多くなり、艦娘の協力が不可避になっている。制海権さえとれれば、面攻撃なら、艦砲に勝るものはないのだが。

 

2隻が炎上中の巡洋艦へ進む。

帰り際の駄賃だろう。

大淀は歯噛みした。

 

「まもるぅぅぅぅぅぅぅぅ!」走った、渾身の力を込めて。

 

翼が海をつかみ取り、海を駆ける。

鬼になった。

 

 

――何のために?

 

――何のために生まれたの?

 

――何のために生きるの?

 

長門は感じた。

何か沸き立つものを。

アレは危険な力だと。

 

黒い怨念を。

彼女に。

まるで、くろいほのお

 

「シャドウ・・・フレア・・・」小さく呟いた。

 

 

 

「オカエリ」

 

弾薬の尽きた

12.7mmの銃身を喉へ突き刺してやった。

衝撃で銃身が折れる。

 

奴の体液が

折れた銃身の穴からとめどなく噴き出している。

 

沈む前に、嗤っていた。

残り1隻。

 

瞬間、世界が止まった。

――やられた。

 

 

後方から迫っていたのか。

あいつも、嗤っている。

手には魚雷。

体にも魚雷を付けている。

 

体をつかまれた。この距離。

懐かしい。感覚。

 

――懐かしい?

 

 

 

「おおおよどおおおおおおおお」長門が叫ぶ。

 

雷巡は魚雷を噛みちぎりゼロ距離起爆させる。

大爆発した。

弾ける黒煙が大気を振動させる。

全ての艤装が消し飛んだ。

 

「かはっ!」

 

体がはじけ飛び、海に打ち付けられる。

 

裸で。

深い。

海へと。

沈む。

 

シズメ。

 

沈んでいく。

 

シズメ。シズメ。

 

――また、いつか、どこかで、きっと。

 

――悪夢を。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・止まった。

 

お願い。

もう、寝かせて。

 

 

もう、知ってしまったから。

ねぇ。

 

――長門。

 

 

 



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