ロウきゅーぶ ~もう一人の委員長~ (Mr.アヒルマン)
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外伝
登場人物説明その壱


今更ですが登場人物について


主人公

 

名前 神条 創玄(しんじょう そうげん)

 

身長 172cm

 

体重 70kg

 

所属 慧心学園初等部女子バスケットボール部マネージャー

 

服装 慧心学園のブラウスに黒いコートを着ていて、茶色い手袋をしている。(黒いコートは男子用のブレザーを用意できなかったため。手袋は後に着けている理由が判明する。)

 

プロフィール(ネタバレしない程度)

 

海外から紗季たちのクラスへ転入してきた男子生徒。口調が大人びており、慧心学園初等部女子バスケ部のマネージャーを担当。大きな武家屋敷に老人と二人で住んでおり、何故この国へ来たかなどはまだ明かされていない。過去に何かしらの秘密を抱えているようだが、今はまだ謎である。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

創玄と住んでいる老人

 

名前 ???

 

身長 186cm

 

体重 98kg

 

所属 ???

 

プロフィール(ネタバレしない程度)

 

創玄と共に暮らしている老人。日本に来た創玄に家と名を与えた。武術道場「神条流」の護身術を生徒たちに教えていたが、とある事件により生徒たちは全員入院。(尚、この話は直接本編と関わり合いがない。)その際に自身が不治の病にかかってしまい、寿命が残り少なくなってしまった。創玄が日本に来たきっかけを作った張本人。

 

 

 

 

 

創玄が呟いた少女

 

名前 アリシア

 

身長 ???

 

体重 ???

 

所属 ???

 

本編中に創玄が呟いた名前の少女。創玄との関わりが何なのか未だ謎の存在。

 

 

 

 

 

慧心学園女子バスケットボール部

 

メインヒロイン兼女バスの司令塔

 

名前 永塚 紗季(ながつか さき)

 

身長 148cm

 

体重 ???

 

所属 慧心学園初等部女子バスケットボール部

 

プロフィール

 

お好み焼き屋「永塚」の看板娘。幼馴染の真帆と共に女バスに参加。クラス内の役割は委員長。よく暴れまわる真帆のサポートをしている苦労人。優しいところは優しくして厳しくする所はきちんと厳しくする性格の持ち主。二つ名は「氷の絶対女王政(アイス・エイジ)」。将来は器量の良い奥さんになるだろう。

 

 

 

 

女バスのエース

 

 

名前 湊 智花(みなと ともか)

 

身長 142cm

 

体重 ???

 

所属 慧心学園初等部女子バスケットボール部

 

プロフィール

 

女バス設立時はチーム唯一のバスケ経験者。反射神経・動体視力を含む身体能力全般が非常に高く、運動神経の優れた女バスメンバーの中でも突出している。二つ名は「雨上がりに咲く花(シャイニー・ギフト)」ちなみに、昴への恋心は女バスの全員から応援されている。頑張れ。

 

 

 

 

 

女バスのムードメーカー

 

名前 三沢 真帆(みさわ まほ)

 

身長 145cm

 

体重 ???

 

所属 慧心学園初等部女子バスケットボール部

 

プロフィール

 

物怖じしない天真爛漫な性格でチームの中心的存在。コーチに就任したばかりの昴を部員全員でメイド服を着て出迎えるなど突飛な思いつきで周囲を振り回すトラブルメーカーだが、友達想いであるためなんだかんだで女バスメンバーからは頼りにされている。その性格から「打ち上げ花火(ファイヤー・ワークス)」の二つ名を命名される。実は作者の一番好きな子。

 

 

 

 

 

女バスの癒し枠

 

名前 袴田 ひなた(はかまだ ひなた)

 

身長 131cm

 

体重 ???

 

所属 慧心学園初等部女子バスケットボール部

 

プロフィール

 

いつも笑顔を絶やさず保護欲をかきたてるような儚げな印象を与える。性格はマイペースでやや天然。幼い印象に反して内面的には達観していて大人びた面もある。二つ名は「無垢なる魔性(イノセント・チャーム)」。女バスのメンバーの中で一番の努力家。えらい。

 

 

 

 

 

女バスの切り札

 

名前 香椎 愛莉(かしい あいり)

 

身長 ???

 

体重 ???

 

所属 慧心学園初等部女子バスケットボール部

 

プロフィール

 

小学生ながら172cmの昴とほとんど変わらない長身であるが、それがコンプレックスとなって気弱で引っ込み思案な性格。身長のことを少しでも触れられると泣き出してしまう。智花と並び慧心女バスの良心的存在であり、他のメンバーが巻き起こす騒動に巻き込まれて赤面していることが多い。二つ名は「七色彩蕾(プリズマティック・バド)」。なんだかんだこの子も成長がすごいタイプ。ファイト。

 

 




他のメンバーについてはまたいずれ書きたいと思います。それではまた。


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序章
第一話 出会い


どうも、アヒルマンです。この度はこの小説を読んで頂き、誠に有難うございます。初投稿な上に脳の出来が悪い作者が作った駄作ですが、読んで楽しんでもらえるよう頑張ります。


追記 紗季のミホ姉の呼び方を変更しました。

美星先生→みーたんに変更しました。


慧心初等部、5-Cはある一つの話題で盛り上がっていた。

 

紗季side

 

今日は騒がしいわね。まあ理由はなんとなくわかってるからいいんだけど。

 

「なあなあ、紗季!」

 

「どうしたの?真帆」

 

「今日転校生が来るって話じゃん!」

 

「ああ、その話ね。悪いけど、みーたんがサプライズのほうが楽しいから内緒って言ってたわよ。」

 

「えーっつまんない。みーたんもどうせなら教えてくれてもいいのに。でもまあいいや、みーたんがあとで教えてくれるだろうし。」

 

ガララッ

 

…っと、みーたんが入ってきたし、そろそろ席に着いたほうがいいかしら。

 

「ほら真帆、席に着きなさい。」

 

「分かった分かった。もー紗季はうるさいなー。」

 

「余計なお世話よ!」

 

全く…。相変わらず一言多いわね。

 

「全員席につけ―。転校生を紹介するぞー。」

 

ザワザワ

 

『おぉついにか』

 

『どんな人かな?』

 

『男か女かどっちだろうね?』

 

「よし、それじゃあ入ってきていいぞ。」

 

ガラッ コツッコツッコツッ 

 

入ってきたのは、深紅色の髪と赤い瞳、そしてと小学生とは思えない顔立ちと身長がとても高い男の子だった。

 

「それじゃあ自己紹介してくれ」

 

紗季side終了

 

ここが俺の教室か…。やっぱり、小学生に混じって勉強というのは中々に奇妙な事だな。

 

「それじゃあ自己紹介してくれ」

 

「分かりました。名前は、神条 創玄という名だ。これからよろしく頼む。」

 

挨拶だし、こんなものでいいだろう。

 

「なんか難しい名前だねー。」

 

「しんじょうー?」

 

「なんて書くのー?」

 

やっぱり、小学生には難しい漢字だったか‥。

 

「神様の神に条件の条と書いてしんじょうと呼ぶんだ。それで覚えていてもらえたらいい。」

 

『へえー』

 

『神様って書くんだってー』

 

『凄いねー』

 

「にゃふふ、やっぱりお前らもそう思うだろ?」

 

「先生もそう思っているんですか。」

 

「だって珍しい名前じゃん。しゃべり方も普通の小学生っぽくないし。」

 

「まあそうですが…。」

 

「まあまあ、とりあえず座れ。そうだなー。じゃあ紗季の隣空いてるし、そこに座っとけ。」

 

「分かりました。」

 

コツッコツッカタンッ

 

席に座った後、隣にいる少女に軽く挨拶をする。

 

「よろしく頼む。」

 

「ええ、よろしくね。」

 

この少女は大人しそうだな。この分なら小学校生活も問題ないか…。

 

「にゃふふ、紗季は委員長だからな。困ったことがあったら聞くといいぞ。」

 

「お願いしてもいいか?」

 

「ええ、色々教えるから、何でも聞いてね。」

 

安心した。今の段階でこの学校の事を色々知っておけば後々便利そうだ。

 

紗季side

 

転校生の男の子が隣に座ったのを確認した時、向こうから挨拶してきた。

 

「よろしく頼む。」

 

「ええ、よろしくね。」

 

この分だと苦労しなさそうね。良かったわ、真帆みたいなのだったら私が過労死してたわ…。

 

「にゃふふ、紗季は委員長だからな。困ったことがあったら聞くといいぞ。」

 

みーたんにも言われたし、ちゃんと教えてあげないとね。

 

「お願いしてもいいか?」

 

「ええ、色々教えるから、何でも聞いてね。」

 

紗季side終了

 

「じゃあこれからは自由時間だ。あいつになんでも質問していいぞー。」

 

何?

 

『ほんとー?』

 

『じゃあ色々質問する―』

 

知らない間に周りを囲まれていたので、逃げ道が無くなっていた。

 

『ねえねえ、前はどこの小学校だったの?』

 

「すまない、それに関しては少々問題があって質問に答えられそうに無い。」

 

『えー?』

 

『じゃあさ、好きな食べ物と飲み物は?』

 

「好きな食べ物はパン。飲み物はコーヒーだ。」

 

『なんか渋いね』

 

ハハハハハハハハ

 

眩しい。これが小学生の純粋さか…。

 

美星side

 

にゃふふ、小学生の中にちゃんと溶け込めるか心配だったけど、どうやら問題なさそうだな。この後体育だし、男子との仲も仲良くなりそうだな。

 

美星side終了

 

キーンコーンカーンコーン

 

チャイムが鳴ってようやく質問攻めが終わった。これで解放される…。

 

「ほらほら、次は体育なんだからちゃんと準備しろよー。」

 

『はーい!』

 

ふむ、次は体育か。得意分野なので大丈夫そうだな。

 

「おい神条、さっさと着替えようぜ。」

 

話しかけてきたのは確か出席名簿で見た事がある男子だった。確か…竹中夏陽といったか。

 

瞳の中に眠っている闘志も凄そうだ。ここまでの闘志の持ち主は中々いないだろう。

 

「ああ、そうするか。それと、名前で呼んでいいぞ。呼びづらいだろう?」

 

「いや、別にそんなことないから大丈夫だ。それより次はバスケだし、俺結構得意なんだぜ。」

 

「ほう。バスケが得意なのか?」

 

「ああ、これでもバスケ部のエースでありキャプテンだからな。」

 

「それは頼もしいな。体育では頼らせてもらおう。」

 

「いや、お前身長めちゃくちゃ高いし、バスケでは凄い有利だぞ。」

 

「そうか?昔バスケをやっていたが、あまり上手くは無かったんだが。」

 

「そうなのか?でも、ちゃんと練習すればお前めちゃくちゃ強くなると思うし、バスケ部入らないか?」

 

バスケ部か…。

 

「ん?どうした?急に険しい顔になったけど。」

 

「いや、すまない。昔、嫌な事件があってな。それ以来バスケをしていないんだ。」

 

「そうだったのか…。悪いな、変なこと言っちまって。」

 

「いや、こちらこそすまないな。」

 

そろそろ着替え終わったし、体育館へ行くか。

 

「そろそろ行こうか。もう着替え終わったことだしな。」

 

「ああ、そうだな。」

 

こうして、俺たちは体育館へ向かった。

 

 




いかがでしたか?問題点があったら感想、コメント等で指摘してくれると有り難いです。後個人的な考えなのですが、慧心の出席簿ってなんか名前と顔が貼ってありそうだなーと思ったのでそうしました。
それでは読んで頂き、有難うございました。次回もお楽しみに!


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第二話 対立

どうも、アヒルマンです。一か月振りの投稿となりましたが、やはり駄作のようです(笑)まあ、こいつだししょうがないよね、と生暖かい目で見てもらえると嬉しいです。それと、今回竹中チームのメンバーの名前を勝手に決めさせてもらいました。(∀`*ゞ)テヘッ
すいません、キモかったですね。それではどうぞ!


「それじゃ今から体育の授業を始めるぞー。」

 

『ハーイ!!』

 

なんか、テンションが高いな‥。そんなにも嬉しいのだろうか。

 

「じゃあチーム分けだけど、掃除班の6チームでやってもらうぞ。対戦ペアは1班対2班、3班対4班、5班対6班でやってもらう。ついでに、創玄は6班に入ってもらうからな。」

 

「わかりました。」

 

「よし、じゃあまずは柔軟体操をした後15分間チームで練習した後試合するからな。怪我はするなよー。」

 

『ハーイ!』

 

よし、それじゃあ班員と挨拶を交わしておくか。

 

班員は…っと、紗季と金髪の子、それからピンク色の髪をした二人と茶髪の身長が高い女子か。

 

「せっかくだから、自己紹介でもしましょうか。」

 

紗季がそう提案すると、金髪の子が便乗してきた。

 

「サンセーイ!!私は三沢 真帆!真帆かまほまほって呼んでね!ゲッソー!」

 

「ゲ、ゲッソー?」

 

「うん!そうげんだから逆から読んでゲッソーって呼ぶことにした!」

 

「ちょっと真帆!いきなり失礼でしょ!ごめんね、神条君。ほら、真帆も謝って!」

 

「えーっ、いいじゃん別に!ゲッソーだって、こう呼んでもらったほうがいいに決まってるよ!ねっ?」

 

ねっ?て言われても・・。

 

「こら真帆!」

 

「いや、別に呼び方は好きにしてくれ、こっちも紗季と真帆って呼ぶことにさせてもらうから。」

 

「いいの?じゃあこっちも創玄って呼ばせてもらうわね。」

 

「ああ、よろしく頼む。」

 

やはり、紗季はしっかりとした女子のようだな。真帆のせいで苦労していることもあるだろうが、なんだかんだ良いコンビなんだろう。

 

「…っと、話が逸れたな。次は誰が自己紹介する?」

 

「じゃあひながするー。」

 

ピンク髪の小柄な女子が手を挙げてそう言っている。それにしても、この子は小さいな。

 

「ひなは、袴田 ひなた。みんなはひなって呼んでるから、そーげんもそう呼んでいいよー。」

 

「ああ、じゃあそうさせてもらうことにしよう。」

 

なんだか、こうフワフワした子だな。まるで小動物のような感じだ。

 

「えっと…。つっ次は私が自己紹介するね。えっと、香椎 愛莉です。よろしくね。創玄君。」

 

「ああ、よろしく頼む。愛莉。」

 

この子はやたら身長が高いな。男子としては羨ましいが、女子としてはどうなんだろうか。本人も気にしているのかもしれんし、言わぬが華、というやつだな。

 

「ねえねえ、ゲッソー。」

 

真帆が急に小声で話しかけてきたが、何の用だろうか。

 

「どうした?真帆。」

 

「アイリーンは身長の事スゲー気にしてるみたいだから、あんま言わないでやってくれよな。」

 

なるほど…。愛莉についてはなんとなく予想していた通りだったが、真帆はどうやらとても仲間思いのようだな。

 

「大丈夫だ。その事には薄々感づいていたから問題はない。」

 

「そっか。ならいいや!」

 

なんというか、変わり身がとても速いな。別に悪いことじゃないが。

 

「じゃあ次、君に自己紹介を頼めるか?」

 

まだ自己紹介をしていないピンク髪の少女に、俺はそう言った。

 

「う、うん。えっと、湊 智花です。よろしくお願いします。」

 

真帆たちに比べて、ずいぶん控えめだったな。まあそういう性格なのだろう。

 

 

「一応私も自己紹介しておくわね。永塚 紗季。このクラスの委員長をやっているわ。」

 

紗季についてはそんな所か。こっちも自己紹介しないとな。

 

「俺もしておこうか。神条 創玄だ。外国育ちだが元は日本人とのハーフだ。よろしく頼む。」

 

俺の自己紹介もこんなものか。とりあえず、柔軟体操も終わったことだし、バスケの練習でもするか。

 

「よし、そろそろ練習しようか。まず全員でパス回しの後、ドリブル練習の順でやって行こう。」

 

「オッケー!よーし、5班の奴に絶対勝つぞー!オー!」

 

『オー!』

 

やはり、小学生というのは無邪気だな。少なくとも、この子たちは穢れをまだ知らないようだ。このまま純粋に育ってくれるといいんだが…。等と考えていると智花のほうからさっきまでとは違う空気を感じた。

 

ダンっダンっダンとリズムよくボールをバウンドさせながらとても綺麗なフォームでゴールを決めていた。

 

(今のは小学生が出来るようなシュートじゃない。俺でもあんな綺麗なフォームで投げることは出来ん。どうやら、素晴らしい才能の持ち主のようだな。将来性があると見た。)

 

しかし、なぜそんな素質を持った子があんな控えめにボールに触れているんだ?この年頃の子は目立ちたがるものと思っていたが。

 

(気になるな...。だが、本人に聞くと言うのも気が引ける。ここは美星先生に聞いてみるか...。)

 

「すまない、美星先生に用があるから皆で練習しといてくれ。」

 

「解ったわ、みんなにはそう伝えておくから安心して。」

 

紗季にもそう伝えたし、俺も行くとするか。

 

「美星先生、ちょっといいですか?」

 

「なんだ?何かあったのか?」

 

「いえ、智花のことで、質問があるんですが。」

 

「智花の事で?」

 

「ええ、どうもバスケをすることに遠慮をしているように感じるんです。動きが初心者なら、下手にみんなに迷惑をかけないようにしようとしているのなら、分かるんですが…。」

 

「ああー、それな。昔色々あったみたいでさ、まあ深くは突っ込まないでやってくれ。」

 

「分かりました。気をつけます。」

 

やはり、智花の遠慮には理由があったか。だが智花が話したがらないのなら、下手に触れるのも失礼か…。そんなことを考えていると、怒鳴り声と泣き声が聞こえてきた。

 

「な、なんだ?何が起こったんだ?」

 

美星先生が血相を変えて飛び出していったし、俺も確かめに行くか…。

 

 

 

 

「もういっぺん言ってみろよ!夏陽!」

 

「ふん、何度でも言ってやるさ!へたくそがシュートするな!」

 

なんだ?いったい何が起きてるんだ?

 

「何があった?紗季」

 

「あ、創玄。実は…。」

 

紗季から聞いた話によると、夏陽と同じ班の女子がシュートを放ったが外れてしまい、それに対して夏陽が言ったことに真帆が食って掛かったらしい。

 

「あーもー、分かった分かった。じゃあこうしよう。夏陽のチームと真帆のチームで勝負するんだ。それで勝ったほうが負けたほうに何でも言うことを聞かせる。てのはどうだ?」

 

成程、確かにそれなら互いにフェアだし、特に問題は無いだろう。

 

「分かったよみーたん。見とけよ夏陽!絶対に謝らせてやるからな!」

 

「は、俺もそれでいいぜ。真帆なんかに負ける訳無いからな!」

 

「じゃあチーム分けだけど、メンバーはさっき練習した班でやってもらうぞ。そこから一人抜く形でやってくれ。」

 

これなら、さっき夏陽が泣かせた女子が試合に出る必要が無くなるのか

 

「よーし、それじゃゲッソー達!一回集合して!」

 

「はいはい、分かったから一旦落ち着きなさい。」

 

「ああ、今行く。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…それで?一体どうするつもりだ?」

 

「どうするも何も、あたしたちで夏陽の奴をぶっ飛ばす!それしかない!」

 

「一旦落ち着きなさい、真帆。あんたがやる気でも、夏陽はバスケ部のエースなのよ?普通に考えて無理だわ」

 

「なんだと~!?じゃあ紗季はどうすんのさ!夏陽が好き勝手言ってんの許すってのか!?」

 

「そうは言ってないでしょ!でも、何か作戦を考えないと負けるのは目に見えてるでしょ!」

 

不味いな…。夏陽たちと試合する前にこっちで仲間割れが始まったぞ‥‥。このままじゃ負ける事が確定してしまうし、何とかするか…。

 

「ねっねえ、どうするの?創玄君。このままじゃ…。」

 

「おー。ひな達、負ける…?」

 

「いや、大丈夫だ。俺に任せておけば何とかなる。」

 

「えっ…?」

 

「二人とも、一旦落ち着け。ここで揉めていても何も解決しないぞ。」

 

「うっ…。」

 

「そ、そうね。私としたことが、うっかりしてたわ…。」

 

「落ち着いたか。じゃあ今から作戦をお前たちに伝える。」

 

「作戦?」

 

「ああ、作戦と言っても別に大したものじゃない。それぞれ役割分担をするだけだ。」

 

「役割分担って具体的にどうするの?」

 

「簡単に言うとすれば、こちら側の一人が相手の一人をマークしてもらう。竹中は智花。鈴木は紗季。田中はひなた。吉田は愛莉。斎藤は真帆に担当してもらう。」

 

「あたしが夏陽を抑えてちゃダメなの?」

 

「ああ、他は素人同然だが竹中は恐らくかなりの実力者だ。カードの切り方を間違えればこちらが劣勢になる。」

 

「つまり、湊さんなら夏陽に対抗できるってこと?」

 

「その通りだ、紗季。上手くいけばこのまま奴らを負かすことができる。」

 

「にしし、いーじゃんいーじゃん!オッケー!あたしは乗った!」

 

「ええ、私もいいわよ。」

 

「うん。私も頑張ってみるね。」

 

「おー。ひな、頑張る。」

 

「私は…。」

 

やはり、智花には迷いがあるようだ。なら…

 

「本気出してもいいぞ。」ボソッ

 

「!!」

 

智花の迷いの原因は十中八九、以前居た学校の事だろう。なら、今はその迷いを一時的に忘れさせて試合に全力で集中してもらうことにする。その後は美星先生に何とかしてもらうしかないが…。

 

「後の事なら俺と美星先生が何とかする。だから、気にしないでやればいいさ。」

 

「・・・それなら。」

 

これでいい…。少なくとも、智花の意識は試合に向いたんだ。後はなるようになれだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よーし、それじゃ今から試合始めるぞ。真帆チームVS竹中チームだ。制限時間は10分。先に三点取るか試合終了時間に点数が多かったほうが勝ちってことで。」

 

「なんだ、神条の奴は出ないのか。これじゃ俺の勝ちは決まったようなもんだな。」

 

「ふん!あたしたちにはスッゲー作戦があるんだからな!お前らなんかぼっこぼこにしてやる!」

 

「「ふんぬぬぬ…!!」」

 

「お前らの幼稚園児並みの喧嘩で時間をつぶすのも持ったいねーだろ。早くしろ。」

 

残念ながら、美星先生の言う通りだな。ここで時間を潰す訳にはいかない。

 

「ほら、さっさと始めるぞ。」

 

美星先生がそう言った後、真帆たちは自分たちのポジションへ行った。

 

「それじゃあ、試合開始!」

 

ホイッスルと同時に、全員が一斉に動き出した。

 

 




いかがでしたでしょうか?ぶっちゃけるとここまで書くのにものすっげえ時間かけちゃったんですよね…。次はもうちょい早く書けるように頑張ろうと思います。それでは皆さん。またいつか~。


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第一章
第三話 試合


へいどうも。アヒルマンです。物凄い急ピッチで仕上げたので短いうえに駄文ですが、まあ良ければ見て行ってください。


ホイッスルが鳴ると同時に竹中がジャンプボールを制した。

 

「へ、お前らに俺のドリブルなんて止められる筈がないんだよ!」

 

そう言って、竹中は智花を抜こうとするが、智花は竹中が動くよりも早くボールを取った。

 

「なっ…!?」

 

「いいぞ、智花!そのまま一点先制してしまえ!」

 

「っ!」

 

そこで放ったのが、先ほど俺に見せたジャンプシュートだった。

 

(やはり、智花の実力は想像以上のものだったな。これなら、余程油断しない限りは大丈夫だろう。しかし、何故智花が控えめに練習していたのかはやはり気になる…。いや、今は試合に集中したほうがよさそうだ。)

 

「くそ、先に一点取られちまったか…。でも、どうせまぐれで入っただけだ。こんなのすぐに追いついてやるさ!」

 

竹中はどうやらまぐれだと思っているらしいな…。なら、そこを狙わせてもらおうか。

 

「お前ら、ボールを取ったら積極的に智花に渡してくれ。勝ちたいなら、それが最善策だ。」

 

「分かったよ、ゲッソー!」

 

「ええ、了解よ。」

 

「うん、私も頑張ってボールを取るようにするね。」

 

「おー、ひなも頑張る。」

 

「え…、でもそれじゃ…。」

 

「大丈夫だ、さっきも言っただろ?後の事は俺と美星先生が何とかするから安心してプレーに集中してくれ。」

 

「…うん。」

 

よし、後は二点獲得するだけだ。この調子なら…

 

ピーっ!!

 

「一本取りに行くぞ、鈴木!」

 

「おうよ!」

 

鈴木が動き出したか・・・。なら、

 

「紗季!」

 

「ええ、分かってるわ!」

 

「ゲっ永塚…。」

 

「あら、ゲッとは何よ失礼ね。そんな態度取るのなら、私にも考えがあるんだから。」

 

「な、なんだと?」

 

「みんなーっ!鈴木君がこの前ねー」

 

「ちょ、何言うつもりなんだよ!?」

 

「隙あり☆」

 

「あ」

 

…なんなんだ、今のコントは。というか、それでボールを取るとは中々にえげつないことをするな。紗季は…。

 

「湊さん、パス!」

 

「うん!」パシッ

 

「しまった!お前ら全員戻ってこ…」

 

竹中の奴、今更気づいたようだな。

 

「…なんだよこれ、味方が全員マークされてる…!?まさか、真帆が言ってた作戦って…。」

 

そう、経験者の竹中以外を全員マークすることで、実力者の智花と竹中だけの試合になったも同然。更に言ってしまえば、恐らく実力面では智花が竹中を上回っているだろうから、竹中チームの勝つ見込みを完全に潰すことができる。そして今竹中はこのことに夢中で智花の事を完全に忘れているだろうから…。

 

ガコンッ

 

「ッ!しまった…余所見してる間に…。」

 

「へっへーんだ。どうだ夏陽!うちらのチームワークは!」

 

「いや、あんた別に何もしてないでしょ…。」

 

「でも、湊さん凄いよね…。私にはあんなことできないや…。」

 

「おー。ひなも、頑張る。」

 

まさか、ここまでとはな…。期待以上だ。これなら、問題ないだろう。

 

 ピーッ!

 

「斎藤!」

 

「オッケー、任せとけ!」パシッ

 

「斎藤に行ったか…。真帆!」

 

「よし来た!見てろよー!」

 

「三沢か‥、竹中!」ヒュッ

 

「よし、いいz」

 

パシッ

 

「「え!?」」

 

「残念、貰っておくわね。」

 

紗季の奴、完全にパスコースを読んでいたか…。

 

「湊さん!」

 

「有難う!」パシッ

 

「不味い、湊にあのシュートを打たせるな!」

 

遅かったな、智花はもうジャンプシュートを打つ準備をしているんだ。もうお前らに勝ち目はない。

 

ガコンッ

 

三本目が入った…。この試合、どうやら勝てたようだな。

 

「はいはいここまで。この試合、先に三点取った真帆チームの勝ち!」

 

ワアアアアアアアアッ!

 

「ハアッハアッ…。」

 

「(またやっちゃった…。これじゃもう、友達ができることは…。)」

 

「ねえねえ!」

 

「へ?」

 

「さっきのシュート、スッゲーかっこよかったよ!あたしもああいうのやってみたいな!」

 

「え、えーと…。」

 

…どうやら、あの調子なら問題なさそうだな。友達に関してももう大丈夫そうだし、俺が何かする必要は無くなったか…。

 

「にゃふふ、お疲れ様。」

 

「…俺は特に何かした覚えはありませんよ。全部彼女たちの実力です。」

 

「そういうことにしといてやるよ。」

 

やれやれ…。とことん食えない人だな、この人は…。だが、彼女たちはやはり特別な何かがありそうだ。まるで、出会うことが当然のような…。いや、気のせいか…。なんにせよ、これで体育の授業が終わり、ほかの授業も終わった放課後に、真帆が智花を連れてこちらにやって来た。

 

「ねえねえ、ゲッソー!」

 

「どうしたんだ?真帆に智花。俺に何か用か?」

 

「きひひ、ゲッソーにお願いがあってやって来たんだよ!」

 

「お願い?」

 

「実はさっきの体育の授業で組んだメンバーで女バス作ることにしたんだ!」

 

何故だろうか。この後に言われる言葉が聞かなくても分かるような気がしてきたんだが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あたしたちの女バスに入ってよ!ゲッソー!」




ぶっちゃけるとさっさとこの部分終わらせたかったんですよね…。次の投稿も早くできるように心がけるので、良ければまた見て行ってください!それではまた次回~。


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第四話 始まり

へーいどうも。アヒルマンです。いやー、やっと書きたかった部分の一つが書けたんでちょっとだけ満足しました。今回は今までよりほんのちょっっっっっっとだけ長いです。
それではどうぞ!


…女バスに入れと言われたが、まず根本的な問題が何も解決してない気が…。

 

「いいか真帆。俺は男なんだぞ?女バスというのは女子バスケットボール部の略称なんだろう?」

 

「うん!そうだよゲッソー。何当たり前のことを言ってんの?」

 

ああ…。駄目だこの子、問題点を全く理解していない…。

 

「…その部活は名前の通り女子用の部活なんだ。普通に考えて男の俺が入るというのはおかしいだろう?」

 

「えー、なんでさ。別にいいじゃん。あたしたちはそんなの気にしないから!」

 

いや、お前たちが気にしなくても俺が気にするんだが……てちょっと待った。あたしたち?

 

「なあ真帆。もしかして、その女バスのメンバーは他にいるのか?」

 

「うん!紗季とアイリーン、それにひなともっかんも居るよ!」

 

oh…そこまで決まっていたとはな…。正直真帆の行動力を侮っていた…。しょうがないな、ここまで決まっているのなら最早断るのは逆に無礼というものか…。

 

「…はあ、分かった。ただし、条件がある。」

 

「条件?」

 

「俺はやるのはあくまでマネージャーだ。作戦参謀として入ることを許可してくれるなら、俺も参加しよう。」

 

「うーん…。どうする?もっかん。」

 

「わ、私に聞かれても…。私的には入ってくれるのなら嬉しいんだけど…。」

 

「じゃあそう言うことでいっか!じゃあゲッソー、マネージャーよろしく!」

 

「ああ、こちらこそ。」

 

転校初日にして中々に面白いことになったな…。まあ、彼女たちとなら面白い日常が送れそうだ。それから俺たちは部活という名の遊びを続けているうちに、あっという間に時間が過ぎていき六年生となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…どうやら、俺たちは全員同じクラスのようだな。」

 

「にしし、やったじゃん!担任もみーたんだし、完璧じゃん!」

 

「こら真帆、嬉しいのも分かるけど少し落ち着きなさい。」

 

「でも嬉しいな。みんなと同じクラスになれて…。」

 

「えへへ、私も嬉しいよ。智花ちゃん。」

 

「おー、ひなも嬉しい。」

 

これも美星先生が何とかしてくれたんだろう。やはり、食えない人だな…。

 

ガララッ

 

「ほらほら、ホームルーム始めるぞー。全員席につけ―。」

 

…っと、美星先生も来たことだし、そろそろ戻るか。

 

「じゃあな紗季、また後で。」

 

「ええ、ほら真帆も。早く席に着きなさい。」

 

「へいへーい。」

 

「全員席についたな?それじゃあ一応自己紹介しておくぞ。今日からこの6-Cの担任になった篁 美星だ。皆よろしくなー。」

 

『よろしくお願いしまーす!』

 

「よろしくみーたん!」

 

…一人だけ愛称で呼んでいる奴もいたような気もするが、気にしないでおこう。

 

「にゃふふ、みんな元気があってよろしい!さて、それじゃ今のうちに係を決めておくぞー。」

 

『えー。』

 

『つまんなーい』

 

『遊ぼうよー』

 

「おいおい、いいかお前ら。こういうのはな、さっさと決めておいた方が後々楽なんだぞ~?」

 

まあ、それに関しては否定は出来んな。確かに係を決めておいたほうが面倒ごとは減るし、その方がいい。

 

「あーあとな、今年から大体の係は男子と女子が一人ずつやることになったから、それぞれ誰が出るか決めといてくれよ。あたしはちょっとプリント取ってくるから。」

 

「分かりました。それじゃ女子のみんな―!こっちに来て―!」

 

そう言って紗季が女子を集めた。…どうやら、女子の方の委員長は決まりそうだな。

 

「ほら男子も集まれ。こっちでもある程度どの係になりたいか決めておくぞ。」

 

俺の方も男子を集めて決めておくか…。

 

「思ったんだけどさ。」

 

「どうした?」

 

「神条が委員長やればよくね?」

 

「何?」

 

「確かに。俺もそう思った。」

 

「なんか大人びてるし、背も高いし、完璧だな。」

 

な、なんという緩い判断基準だ…。いや、小学生なのだからむしろ間違ってないのか…?

 

「じゃあ神条が委員長ってことで決定な。他のも決めちまおーぜ。」

 

「な、なんだと?」

 

しまった…。考え事をしているうちに委員長をやらされることになっていた…。まあいい。別にそこまで面倒ってわけじゃないからな…。それより、女子の方も決まったようだな。

 

ガラッ

 

「お待たせー。」

 

「あ、美星先生。女子の方は係決まりました。」

 

「男子の方も決まりましたよ。」

 

「ん、オッケーオッケー。委員長は紗季と創玄に決まったんだな。他も決まったみたいだし、それじゃ係決めはこれにて終了!次の時間はなんと、お待ちかねの自由時間だー!」

 

『オー!』

 

「やれやれ…。今からこの調子なら、先が思いやられるな…。」

 

「ええ…。まったくね…。」

 

「まあこれから一年間、よろしくな。紗季。」

 

「ええ、よろしく。創玄。」

 

それから俺たちは交流会という意味も含めて様々な遊びをした。そして放課後、俺たちが部活動をしていたら、竹中たち男子バスケ部がやって来た。

 

「どうしたんだ?竹中。」

 

「お前ら、いい加減にしろよ。」

 

「一体何の話だ?」

 

「とぼけんなよ、お前なら分かってんだろ神条。お前らのお遊びのせいで俺たちの部活の時間が減ってんだよ!いい加減迷惑なんだ。お前らのせいで三日間も練習時間が無くなってんだぞ!」

 

ぐ…、それを言われると否定は出来んな。だが、ここまで言われる筋合いはないだろう。

 

「それに関しては、申し訳なく思うさ。だがな、お前もちょっと言いすぎじゃないか?練習時間が大事なのも分かるが…。」

 

「俺たちは大会が迫ってんだ。その大会に向けての練習をしたいのに、お前らが邪魔で満足に練習できないんだよ!」

 

「なんだと夏陽!」

 

「ふん、真帆は黙ってろよ!俺は今神条と話してんだよ。」

 

「なにを~!?」

 

「真帆、落ち着け。それで竹中、お前はどうしたいんだ?」

 

「俺たちと勝負しろ!それでお前たちが勝ったら今まで通りに部活をやってもいい。だけど俺たちが勝ったら女バスは廃部してもらう。」

 

なんという身勝手な…。

 

「ちょっと。いくら何でもそれはないんじゃないの?」

 

「そうだぞ夏陽!お前ら身勝手すぎるぞ!」

 

「お前たちにだけは言われたくない!」

 

「ちょっと待て竹中。今の試合のルールはお前たちが勝手に決めた事なのか?」

 

「いや、決めたのは俺たちじゃなくて…」

 

「それに関しては、私から説明してやろう。女バス諸君。」

 

この聞いただけで虫唾が走る嫌味ったらしい声は…。

 

「カマキリ!邪魔すんじゃねえよ!」

 

「ふん、どうやら女バスは運動性能だけでなく知性の方も駄目なようだな。」

 

「何~!?」

 

「ちょっと真帆、あんたは黙ってなさい。」

 

 

「まあいいさ、説明してあげよう。いいかね?これは私と、篁先生が決めたことだ。君たち女バスのやっている行為は男バスへの被害だけじゃなく、ひいては他の部活への迷惑行為にもなっているんだ。だから私が作り上げた男バスがお遊びチームの女バスを叩きのめし、他の部活を救い上げようというとても素晴らしい話なのだよ。」

 

「…それで?他の部活は俺たちの存在が迷惑だとはっきりアンタに言ったのか?」

 

「そんなもの、聞かずとも分かるさ。この私には言えずに困っている生徒たちの声が聞こえてくるよ。『このはた迷惑なやつらを早く叩きのめして!』とな。」

 

「その想像力には最早敬意を表したいところだがな、俺にも聞こえるんだ。生徒たちの心の声がな。」

 

「おやおや、どうやら君のような奴でも分かっているらしいな。ほうら、今もそこら中から聞こえて…」

 

「ああ、『早くこの嫌味ったらしい馬鹿を黙らせてくれ』っていう悲痛な声が聞こえてくるぞ?」

 

「…何?」

 

「つまりは、口だけ達者の唐変木のアンタに救いを求める声なんざ聞こえないって言ってんだよ。そもそも、この試合には俺たちのメリットがなにも存在しない。にも関わらず、そっちが勝ったら廃部になってこっちが勝っても何の得もなしっていうのは余りにも横暴すぎないか?というか、アンタはただ単に『生徒がバスケがうまくなったのは先生のお陰です』ってちやほやされて出世したい為なんだろうが。そんなアンタの都合でこっちが廃部になるなんて、道理が通らないだろうがこの三流教師が。」

 

「グググ…、言わせておけば…。」

 

「怒るのか?別にいいさ、単にアンタが『正論を言われたから逆上して手を挙げた』っていう不名誉な結果が残るんだからな。」

 

「ええい、見ておけ!お前の作り上げたチームを完膚なきまでに叩きのめし、今言った事を後悔させてやるからな!」

 

「ああ、それで構わん。その代わり、こっちが勝ったらアンタにはとてつもない罰ゲームを準備しておいてやるさ。精々首を洗って待っておけ、この馬鹿が。」

 

「グウウ…!いいか!勝負は二週間後だ!その時に白黒はっきりとつけてやろうじゃないか!」

 

「はいはい、分かったから、さっさと出て行け。今日はこっちの練習時間だからな。」

 

「チィッ!帰るぞ!」

 

『は、はい!』

 

 

 

 

「‥‥勝手に決めてしまってすまなかった。」

 

「ううん、いいんだよゲッソー。あたしも、カマキリにはスッゲームカついてたからちょうどいい!」

 

「ええ、あの横暴さにはもううんざりしてたし。寧ろよく言ってくれたわ。』

 

「私も…。この部活が無くなっちゃうのは嫌だし、私だと怖くて何も言えなかったと思うから…。」

 

「おー。ひなも、そーげんみたいに言い返したかった。」

 

「いや、ひなには多分無理だったと思うわよ…。」

 

…俺は、とてもいい仲間に巡り合えたみたいだ。見てるか?アリシア。お前が手に入れるはずだった分の幸せも、この子達を守るために使わせてくれ。

 

「…でも、このままじゃ私たちに勝ち目なんてないよ…。どうしたらいいのかな、せっかく見つけた居場所なのに…。」

 

智花…。

 

「それじゃ、私がいいことを教えてやろう。」

 

「みーたん!」

 

「にゃふふ、話は聞かせてもらったぞ。あいつらに一泡吹かせるために、私は策を講じておいたのさ!」

 

「…そんなことより美星先生。俺たちに話もせずに勝手に勝負の約束を決めてたというのは、あまり良くないんじゃないですか?」

 

「にゃはは、いや~悪い悪い。ちょっとばかし助っ人を呼ぶのに手間取ってお前らに話す時間なかったんだ。」

 

「助っ人?」

 

「ああ、私の甥で高校一年生なんだ。バスケの実力に関しちゃまったくもって問題ないから、安心してコーチを任せられる。今訳あって暇だから今度連れてくる。」

 

美星先生の甥か…。恐らく問題ないんだろうが、一応用心しておくか‥‥。

 

「スッゲー、助っ人呼べたんなら絶対勝てるって!」

 

「あのね真帆、もしアンタがその人に失礼な事したらお仕置きだからね!」

 

「うっせーなあ紗季は。分かってるよ。」

 

‥‥この分なら、この子達は大丈夫だろう。後は、その人がどれだけ上手く彼女たちに教えられるかという問題が残っているわけだな。まあ、なるようになれ。としか言いようがないか…。

 

 

 




なんともまあ中途半端なところで終わりましたね(笑)今回カマキリにはだいぶうざいキャラになってもらいました。次回こそは昴出せるかなーと淡い期待を持っています。それではまた次回!


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第五話 コーチ

いやーどうも。アヒルマンです。更新おくれてすいません。ちょっとネタが思いつか無くて悪戦苦闘してたんですよね…。まあ、こんなどうでもいい話はさておき、本編どうぞ!


昼休み、女バスの五人は集まって話し合っていた。

 

「何の話をしているんだ?」

 

「あ、ゲッソー!いやさぁ、コーチが来てくれるって話があったじゃん?だからそのコーチが来たときに、どうやっておもてなしするのか考えてんの!」

 

なるほど、その発想は一切なかったな。

 

「それで真帆は、色々案を持ってきてくれてるんだけど…。」

 

「どんな案があるんだ?」

 

「んーとね、妹攻めか、メイド服か、後は―・・・。」

 

待て待て待て

 

「ちょっと待ってくれ。真帆、お前のその案は一体誰がやる事を想定しているんだ?」

 

「そんなの、あたしら六人に決まってるじゃん!」

 

「…あのな真帆。おまえが今言った案には致命的な欠陥がある。」

 

「え?なんか変なとこあった?」

 

「まず第一に、俺は男だ。その時点で妹攻めとやらは実行できない。そして第二に、メイド服を着るのはお前たちだけにするんだ。そうでないと、色々と滑稽なことになる。」

 

そう、女子がそんなことをするのならまったくと言ってもいいほど問題は存在しないのだ。しかし、俺がやればこれ以上滑稽なことはないし、何より俺の精神が崩壊する。

 

「そうね、創玄にそんなことさせるのは可哀想だわ。」

 

流石は紗季だな。俺の意思を汲み取ってくれている。

 

「えー。じゃあゲッソーは何すんの?」

 

「俺はコーチを出迎えてくる。その後の事はお前たちに任せるしかないが...。」

 

「ええ、そこから先は私たちがどうにかするわ。」

 

「頼む。俺は俺の仕事を頑張るとしよう。」

 

…正直、紗季が居てくれてほっとしている。あのままじゃ俺が大変な目に遭っていた…。こんなやり取りをしていた時、チャイムが鳴ったので皆慌てて自分の席に着いた。

 

ガラッ

 

「ほいほーい。授業始めるぞー。紗季、号令。」

 

「あ、はい。起立、気をつけ。礼。」

 

紗季の号令と共に、午後の授業が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうそろそろ来るはずなんだけどなー…。」

 

俺は今、美星先生と共に臨時コーチを出迎えるために校門前で待機していた。

 

「美星先生、本当にそのコーチは来るんですか?」

 

「んー…。多分来ると思うけど、まあ来なかったら無理やり連れてくるから安心しとけ。」

 

ああ…。そのコーチの苦労が何となく伝わってきた気がした…。

 

「お、来たぞ。あいつだ。」

 

美星先生が指さした方向には、校門前で立ち尽くしている高校生くらいの男子生徒だった。髪は茶髪で、身長は170㎝くらいだろうか。明らかに進むことを躊躇している高校生に美星先生が飛び蹴りをかました。

 

「遅いぞ、昴。」

 

「っつー…。幾らなんでも蹴る事はないだろ、ミホ姉!」

 

今のやり取りを見ている限り、この人が美星先生の甥というのは間違いではないんだろう。

 

「それじゃ、私は仕事残ってるから職員室戻ってるわ。」

 

「ええ!?ちょっと待てよミホ姉!…って行っちまった…。」

 

そろそろ話しかけても大丈夫そうだな。俺もあの人のところ引くか。

 

「大丈夫ですか?」

 

「あ、ああ。ありがとう。えっと、君は?」

 

「俺は、神条 創玄と言います。女バスのサポーターなどをやっています。」

 

「ああ、そうなのか。よろしく。俺は、長谷川 昴。篁美星の甥で、高校一年生です。」

 

「よろしくお願いします。あと、俺のことは創玄と呼んでもらって構いません。それと、別に敬語を使わなくても大丈夫ですよ。長谷川さん。」

 

「そっか。創玄も俺の事名前で呼んでもらって大丈夫だよ。」

 

「分かりました。ですが、一応年上なので敬語は使わせてもらいますよ。昴さん。」

 

「了解。それじゃ、女バスのところへ案内してもらえると助かるんだけど…。」

 

「ええ、了解しました。それじゃ、今から案内します。」

 

「ところで、君は男子なのにどうして女バスに入ってるの?」

 

「ああ…。まあ、彼女たちの熱意に負けたってとこですかね。」

 

「熱意に負けた?」

 

「会えばわかりますよ。っと、着きました。ここが体育館です。この中に女バスの皆は待っているはずです。」

 

「う、うん。」

 

…この反応。

 

「もしかして、緊張していますか?」

 

「え、えっと…。恥ずかしながら、こういうのは苦手で…。」

 

「気楽にいけば大丈夫ですよ。変に考えるより出たとこ勝負でいいと思います。」

 

「そ、そう?よし、それじゃいざ…!」ガチャッ

 

昴さんがそう言って体育館の扉を開けて

 

『お帰りなさいませ、ご主人様!!』

 

「………」バタンッ

 

無言で閉めた。…まさか、本当にやるとは思わなかった。

 

「えーっと…。今のは…。」

 

「…もう一度開けたらわかるんじゃないですか?」

 

「う、うん。そうだね。」

 

「(今のはきっと幻覚なんだろう‥。うん。そう思うことにしよう…。)」ガチャッ

 

『お帰りなさいませ、ご主人様!!』

 

…昴さんがフリーズしている。…俺も頭痛くなってきた…。

 

「…お前たち、本当にメイドをやる事にしたんだな…。」

 

「うん!服も用意してあったし、後はその場のノリで何とかなる!って思ってたから。」

 

真帆は本当にb…天然なんだな…。

 

「全く…。取り合えず昴さん?起きてください。」

 

「うぇ!?あ、ああうん。」

 

大分混乱していたみたいだな…。気持ちは痛いほどわかるが。

 

「じゃあ、皆自己紹介していこうか。」

 

俺の一言をきっかけに、全員が自己紹介を始めた。真帆が名前呼びを強調し、真帆が全員のスカートをめくったりしていた。…真帆は問題しか起こさないような気がしてきたな。

 

「えっと、皆ポジションとかは決めてたりするのかな?」

 

「ポジション?」

 

「うん。スポーツにはそれぞれ自分の役割みたいなものがあるんだ。」

 

「例えば、サッカーなどでいうところのキーパーやディフェンダーと言ったところだな。」

 

「へ~。流石ゲッソー!うちらの頭脳担当!」

 

「あんたは少しくらい常識ってもんを知りなさい。」

 

「ちぇ、うっさいなあ紗季は。流石クラス委員チョー。」

 

「こら、喧嘩するな。すみません昴さん。」

 

「ははは、いいよ。それで、愛莉はセンターが向いてるんじゃないかと思ったんだけど…。」

 

「私が、ですか?」

 

「ねえすばるん。センターって何?」

 

「センターっていうのはゴール下で活躍する人の事だよ。センターは主に身長の高い人がするものだから、愛莉に向いてるんじゃないかって思ったんだけど…あれ?どうしたの、みんな。急に黙りこんじゃって…。」

 

しまった…。昴さんに大事なことを伝えておくのをすっかり忘れていた…。

 

「う…っひぐっ…えぐっ…。」

 

「え?」

 

「うわぁぁあぁぁぁぁああぁぁん!!やっぱり、私って、大きいんだ!デカ女なんだぁ!」

 

「え!?えーと…。」

 

不味いことになったな…。このままじゃ練習どころじゃないし、一旦愛莉を落ち着かせるか…。

 

「アイリーン!駄目じゃないか!すばるんにちゃんと誕生日を教えとかないから、勘違いされちゃったんだぞ!」

 

「そうだよっ。愛莉は4月生まれだから少し成長が早いだけ!中学生になればみんな同じくらいになるよ!」

 

「おー。あいり、ティッシュあるよ。」

 

向こうは三人に任せて、俺と紗季は昴さんに事情を説明しておくか…。」

 

「愛莉は高身長がひどいコンプレックスなんです。ちょっとでも背の事を言われるといつもあんなかんじになっちゃって。」

 

「…そうだったのか。悪いことしちゃったな…。」

 

「いえ、これは教えておかなかった俺にも責任がありますからね。申し訳ありません。」

 

「いや、いいよ。」

 

…まだ知り合って十数分だが、この人は何かあるのを感じる…。後ろめたいことがあるというかなんというか…。まるで、バスケに関わることを躊躇しているように見える。この人の過去は知らないが、何かあったんだろうな…。結局、愛莉が泣き止むのは、部活の終了時間までかかってしまった。

 

「うっ、ひぐ、ごめんなさい。私のせいで…。」

 

「ううん。俺のほうこそ、無神経なこと言っちゃってごめんな。もうそろそろスクールバスが来るんでしょ?早く着替えてこないと…。」

 

「それもそうですね。ほら、行こう。愛莉。」

 

女バスの皆は更衣室へ歩いて行ったことだし、俺もそろそろ帰るとするか…。

 

「それじゃ、俺もそろそろ帰るとしますよ。」

 

「え?創玄はバスで帰らないの?」

 

「ええ、俺はいつも歩いて帰っていますからね。それじゃ、また明後日に。」

 

「うん。それじゃあまたね。」

 

別れの挨拶もほどほどに、俺は体育館を出た。

 

「もうこんな時間か…。」

 

 

6時半ともなればこの季節でも暗くなり始める時間だし、さっさと帰るとするか…。こうして俺は、足早に帰路についた。

 

 




いかがでしたか?いやー、ようやく昴を出せたので安心しました。ここからが面白くなっていきますよ!それではまた次回!


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第六話 その男

どうも、アヒルマンです。今回はロウきゅーぶキャラが出ないし短いので、そこんとこよろしくお願いします。



俺は、今暮らしている大きな武家屋敷へと足を運んでいた。そこが俺の親戚であり、絶望に染まった俺を救い上げてくれた男の住処であったからだ。その男の家は神条という名の通った武家の血筋だそうだ。部活が終わって帰宅した俺は、着いてすぐにある一室へ向かった。

 

「爺さん、俺だ。入ってもいいか?」

 

「…ああ、構わん。入ってこい。」

 

返事が来たので、俺は入ることにした。

 

ガラッ

 

「…ただいま。爺さん。」

 

「……おかえり、その様子だと、学校で何かあったようじゃな。」

 

「…やはり分かるのか?」

 

「ふ、お前さんは顔に出やすい。見れば大体の事は察しが付く。」

 

「相変わらずアンタは凄いな…。」

 

「…それで?何があった?」

 

「ああ、実は…。」

 

俺は今までの事を話した。部活で男バスに勝負を申し込まれたこと。負ければ女バスは廃部になるという事。そして新しいコーチが来たという事。部員のプライベートな問題に触れてしまって泣いてしまったこと。そのまま帰ってきたこと。それらを話し終えたとき、

 

「成程な…。それは確かに向こうも横暴だな。それで、お前はそのコーチとやらを信用しているのか?」

 

「…今のところはまだ判断材料が圧倒的に足りない。それにまだ初日だし、焦らずゆっくり見るさ。」

 

「…そうか。お前がそういうのなら、それが一番いいのだろう。」

 

「…それより、アンタの方はどうなんだ。その体、もう長くは保たないんだろう?」

 

「…ああ、日に日に弱っていくのが感じる。保って後一ヵ月と言った所か…。」

 

「…そうか。」

 

「なに、わしの事は心配するな。少なくともわしはまだ生きていられるんだ。その間にお前に残してやれるものは全て用意するつもりだ。」

 

「…ああ。何から何まで、すまない。…創玄爺さん。」

 

「…その名はもうお主にくれてやったわ。今のわしはただの老いぼれじゃ。」

 

「…そうだな。」

 

「…今はもう寝るといい。また明日、話をしようじゃないか。」

 

「ああ、分かった。…おやすみ。」

 

「おやすみ。」

 

そう言って俺は部屋を出た。・・・やはり、もう長くはないのか。俺は何も恩返しができてないのに、また俺は目の前で恩人を見殺しにするというのか。

 

「…クソッッッ!!!」ドンッ

 

分かっているはずなのに、俺にはどうしても割り切れない。どうして俺の大切な人は皆俺の目の前からいなくなり、結果的に俺しか残らないんだ。こんな世界、間違っている。だが、俺にはどうしようもない。俺はただの…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現実から逃げ出した、卑怯者に過ぎないのだから。

 




いかがでしたか?創玄が日本に来た詳しい理由とかもいずれ話すつもりですので、その時までお待ちください!それではまた次回~。


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第七話 大事な何か

どうもどうも。アヒルマンでございやす。投稿期間が開いてしまい申し訳ありません。
中々ネタが思いつかなくて苦労してたんです。取りあえずは書き終わりましたので投稿することにしました。今回は主人公の過去が少しだけ明かされます。ほんの片鱗ですけど。それではどうぞ!


爺さんと会話を終えた俺は、自分の寝室へ向かうことにした。もう時間的に寝ても問題ない時間だった。

 

「しかし、どうしたものか…。」

 

明後日から本格的にコーチをしてもらえるのだが…。正直、今日の様に昴さんと部員の衝突がまた起きてもおかしいくない。そうなった場合、俺にできることは無いに等しいだろう。

 

「すべてが未知数…という事か。」

 

全く。今からが不安でしょうがないな…。そう思いながら俺の意識は堕ちて行った。

 

 

 

 

 

 

次の練習まで話を割愛させてもらうことになるが、俺は美星先生に用事を頼まれて少し部活に遅れたところからになる。

 

「美星先生め…。どれだけプリントを溜めればあの量になるんだ…?」

 

走りながらそんなことを考えていたら、いつの間にか体育館に着いていた。

 

「やれやれ。やっと部活ができるな…。」

 

体育館のドアを開けると、昴さんを含めた女バスのメンバーがミニゲームをしていた。

 

「遅れてすいません。ちょっと野暮用が…。」

 

「遅いぞ、ゲッソー!」

 

「こら真帆、創玄は委員長の仕事をしてたんだから仕方ないでしょ。」

 

「ああ、大丈夫だよ。まだ始まったばかりだから。」

 

「分かりました。それじゃ、俺は見学させてもらいますね。」

 

「え?創玄は部活しないの?」

 

「創玄は主に私たちの成長記録などをやってくれているんです。」

 

「成長記録?」

 

「ええ、この日は誰がどれだけ上手くなったか。どんなプレーが良かったかなどをまとめてくれているんです。だから、私たちも反省会がしやすいんです。」

 

「にしし、それにゲッソーはあたし達に点数もつけるんだよ!今日のあたしは60点って感じで!」

 

「へえ、そんな事をしていたんだ。」

 

「ええ、それなら次の練習でどこを気をつければいいか分かりやすいので。」

 

「でも、それじゃ俺別に要らなかったんじゃ…。」

 

「いえ、俺がするのはあくまで記録だけです。専門的な指導はやはり慣れた人じゃないと上手くできないと思うので。」

 

「そっか。まあそんな長い間教えてあげる事は出来ないけど、俺もできる限りコーチをやらせてもらうよ。」

 

「…ええ。お願いします。」

 

「?うん。それじゃ皆。取り合えずキリがいいから十分間休憩しよう。また後で練習開始しよう。」

 

『ハーイ!』

 

さて、それじゃ俺も昴さんと今後の事について話すとするか…。

 

「昴さん。少しいいですか?」

 

「うん。大丈夫だよ。どうしたの?」

 

「ええ、今後どういった形で練習するのか確認しようかと。」

 

「ああ、それなら…。」

 

話し合いを進める中、一つの視線に気が付いた。

 

「…智花?どうした。」

 

「えっと‥。」

 

「ああ、昴さんと話したいのか。」

 

「ふぇ!?」

 

「なに、気にするな。俺は紗季たちの方へ行くから安心してくれ。」

 

「いいいやいや、ちょっと待って!」

 

「遠慮せずに話して来い。それじゃ昴さん。後はごゆっくり。」

 

「う、うん…。」

 

後ろで頭から湯気が出そうなくらい赤面している智花と困惑している昴さんを放置…もとい二人きりにし、休憩中の皆の所へ行くことにする。

 

「どうだ?調子は。」

 

「今のところは問題なさそうよ。真帆ったら、さっきからずっと早く続きがしたい!なんて言ってるわよ。」

 

「だってさ、すばるんに早くあたしたちの事知ってもらわなきゃダメじゃん。」

 

「それはそうだけど…。でも、焦って失敗したら余計厄介なことになるわよ。」

 

「そうだね…。取り合えず今は、長谷川さんに私達の事ちゃんと知ってもらう所から始めなきゃ。」

 

「おー。ひな、お兄ちゃんにいっぱい知ってもらう。」

 

「ああ、取り合えず今の目標はそれでいいだろう。今後の事は俺がどうにか出来ないか相談してみよう。」

 

「サンキューゲッソー!よーし、あたしもすばるんの好感度上げてこよーっと!」

 

そういって真帆が駆けだしたのを、俺たちは見送った。

 

「全く真帆は…。変な事言って長谷川さんを怒らせなきゃいいけど…。」

 

紗季の心配ももっともだが、真帆はそこら辺をちゃんと弁えてあるから大丈夫だろう。…多分。

 

「取り合えず今は休憩することだけ考えておけ。次から俺と長谷川さんが考えたメニューで練習するつもりだ。」

 

「おー。どんとこい。」

 

ひなたの体力が持つかどうかが一番心配だったが、大丈夫そうだな。

 

「困るよっ!無理とか困る!」

 

急に真帆の怒鳴り声、というよりは訴えに近い声が聞こえてきた。

 

「なんで無理なの!?ゲームだとひと晩粘ればレベル10くらい上がるじゃん!」

 

「真帆…。」

 

「紗季、俺たちが今どういう状況か昴さんに伝えたか?」

 

「ううん。まだ話せてないの…。」

 

こいつは面倒なことになったな…。この様子じゃ、今日もろくな練習ができないだろう。しょうがない…。

 

「三人とも、今日はここまでだ。シャワーを浴びて帰る準備をして来い。」

 

「え、でも…。」

 

「大丈夫だ。俺がなんとかしてみよう。」

 

「…そうね。愛莉、ひな。ここは創玄に任せて私たちはシャワーの準備をしてきましょ。」

 

「う、うん。」

 

「おー。ひなもお手伝いする。」

 

さて、三人とも行った事だし、俺も行くか…。

 

「一ヵ月も待てないよ!!」

 

「真帆…。」

 

「真帆、そこまでにしておけ。」

 

「ゲッソー…。」

 

「今日の練習はここまでだ。こんな気持ちじゃバスケが上手くなる筈が無い。一旦シャワーでも浴びて頭を冷やしてくるといい。智花、真帆を頼む。」

 

「うん。真帆、行こう?」

 

「……。」

 

トボトボ歩いていく真帆の後ろ姿に、少々の罪悪感を覚えた。だがここで立ち止まるわけにもいかない。

 

「すみません、昴さん。真帆がご迷惑をおかけしたようで…。」

 

「ううん。俺の方こそ、なんかごめんね。真帆を怒らせちゃったみたいで…。」

 

「まあ、俺たちにも時間があまりないんです。詳しいことは俺からは言えません。仮にもし言ったとしても、昴さんがどうするかは俺が決める訳じゃありませんので。」

 

「ははは…。創玄は凄いね。なんだか、小学生には見えないよ。」

 

「……まあ、その通りなんですがね。」

 

「え?」

 

「いえ、俺の事より昴さん。俺は貴方の事が心配だ。」

 

「俺のこと?」

 

「ええ。貴方は今、何かから目を逸らしている…いや、目を逸らそうとしています。」

 

「ッ!」

 

「貴方の事情は俺は知りません。ですが、一つ言えることはあります。」

 

「…それは?」

 

「大事な物から一度目を逸らしただけで、自分の中の何かが崩壊します。たった一度目を逸らしただけで、自分が積み重ねて来たものが全て消えます。」

 

「たった一度目を逸らしただけで…。」

 

「俺はそれで家族と幼馴染を失いました。ですが、貴方は違う。まだ間に合う。どうか、自分の一番を否定しないでください。俺はもう二度と目の前で失いたくないんです…。」

 

「創玄…。」

 

「すいません、長話をしてしまって。俺は今から帰ります。女バスの皆と美星先生によろしくお願いします。」

 

「うん…。」

 

やれやれ…。偉そうなことが言えるほど、俺も過去を割り切れたんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

昴side

 

一番を否定しないで…か。小学生に諭されるんじゃ、俺なんかまだまだって事かな。でも、今日の真帆や創玄の事といい、このチーム、何かあるんだろうな…。でも、どうせ俺が関わるのは金曜日で最後だ…。ってほんの数分前の俺なら言ってたんだろうな。でも、創玄の言葉で俺の中にある何かに火が灯ったような気がする。創玄があんなにしっかりしてるのに、俺がこんなんじゃ示しがつかないよな。とか考えながらロッカーを開けると、一枚の紙切れが入っていた。その紙には

 

『今すぐ女子バスケ部のコーチをやめろ!さもないと不幸がお前におそいかかるだろう!』

 

と書かれていた。何これ。脅迫状…?

 

「なんだこれ…。」

 




なんかめっちゃ中途半端なとこで終わってしまった。すいません。次からは気をつけます。また不定期投稿になると思いますが、次回もお楽しみに!


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第八話 危機

どうも、アヒルマンです。皆さん、この度は長い間お待たせしてしまい大変申し訳ありませんでした!ぶっちゃけるとスランプに陥っていて中々書けなかったんですよね…。それと、お気に入り17人有難うございます!
まあどうでもいい話はここまでにして、本編どうぞ!


金曜日の午後。授業も終わり、紗季たちは部活のために着替えていた。その間に俺は今日の部活用の練習メニューを見直していた。

 

「…取りあえずはこんなものでいいか。後は昴さんと細かいところを決めないとな。」

 

「おーいゲッソー!」

 

「遅くなってごめんなさいね。真帆が遊ばなければもう少し早く来れたんだけど…。」

 

「別にあたしは遊んで何かないし!」

 

「分かった分かった。喧嘩するな。それじゃ取り合えず、お前たちは柔軟体操をしておいてくれ。俺はちょっと用事があってな。」

 

「ん?ゲッソーどっか行くの?」

 

「ああ、昴さんを迎えに行こうかと思ってな。」

 

「すばるんを?」

 

「ああ、一応今日が最終日だし、俺が昴さんに事情を説明してみるよ。」

 

「そうね。そういう事は創玄に任せておいたほうがよさそう。じゃあ皆、私たちは柔軟体操をしましょうか。」

 

「オッケー!任せたよ、ゲッソー!」

 

「ああ、任せておいてくれ。」

 

今日昴さんを説得できなければ、俺たちの部活はほとんど廃部決定となってしまう。もしそうなれば、俺は退学覚悟で行動しなければならなくなる。そんなことが起きないように、頑張るしかないか…。

 

「…それにしても、昴さんは一体どこに行ったんだ…?」

 

今日もこの時間帯に昴さんは来ていると思ったが、まだ来てないのか…?

 

「…ん?あれは…。」

 

向こうの方で五人の少年達…もとい男バスの連中が昴さんを拘束して囲んでいた。

 

「あいつら、何をしているんだ?」

 

取り合えず行ってみるか…。

 

 

 

 

 

 

 

昴side

 

困ったな…。小学生相手に手をだす訳にもいかないし…。

 

 

「手紙で忠告はしたはずだぞ。」

 

「…。」

 

「何とか言えよ!」

 

どうするかな…。下手に怪我でもさせちゃ面倒だし…。

 

「…余裕こきやがって。後で謝っても手遅れだからな。」

 

「…ふん。どう手遅れになるか楽しみだよ。」

 

『……』

 

ふふん。大人の余裕を見せつけてやったぞ。さて、ここからどういう行動に出るかな?

 

「おいお前ら。こいつにションベンぶっかけるぞ。」

 

……はい?ちょちょちょちょ、

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」

 

さ、最近の小学生はとんでもないこと考えやがる…!!取り合えず、何とかしないと…。

 

「待て待て!女バスのコーチなら今日で終わりだ!」

 

『……』

 

「マジで?」

 

「マジで。」

 

「じゃあ、もう試合の日まであいつらには関わらない?」

 

「…試合?」

 

「俺ら男バスとの対抗試合。アンタそのための臨時コーチなんだろ?」

 

一体何のことだ…?少なくとも、ミホ姉からは何も聞いてないし。

 

「…本当に何も知らねーのか。」

 

「なあ。真帆の話だとすごい選手なんだろ?だったら分かってくれるんじゃないか?」

 

「そうだな。…実は来週の日曜に試合。体育館の割り当てを懸けてるんだ。」

 

「割り当て?」

 

「あいつらが勝てば三日ずつのまま。けど俺らが勝てば男バスが毎日使えるようになる。」

 

「毎日…?じゃあ女バスは…。」

 

「廃部だ。」

 

そんな…。

 

「…なんだそれ。幾らなんでも可哀想だろ。」

 

「全然かわいそうじゃねえよ!!」

 

「!?」

 

な、なんだ?急に態度が…。

 

「…あのさ。俺たち去年、地区優勝したんだ。でも県大会は一回戦でボロ負け。」

 

地区優勝!?こいつら結構な実力があるんじゃないか…?

 

「死ぬほど悔しかったんだ。もっと練習しなきゃって思うくらいに。けどもう場所が余ってなかったんだ。後からできた女バスのせいでさ!」

 

女バスのせいで…。

 

「別に真面目にやってるならいいんだ。けどあいつら遊んでるだけじゃねえか!監督も女バスに時間譲ってくれるよう頼んだんだけど、美星が急に女子の味方し始めてさ。だから俺たちも真帆たちに時間と場所譲ってくれるように頼みに行ったらさ、神条の奴が邪魔したんだ!」

 

ミホ姉…。あのバカ、何勝手に決めてるんだよ…。ってちょっと待って。神条?

 

「なあ、その神条って、神条創玄の事か?」

 

「なんだ、アンタあいつの事知ってたのか?それでさ、あいつが俺たちの顧問を口で言い負かしちゃってさ。」

 

く、口で言い負かしたって…。創玄って、実はすごいんだな。

 

「とにかく、そういう訳で俺たちは女バスの奴らと試合で決着をつけることにしたんだ。」

 

「そういう事だったのか…。」

 

ようやく、真帆たちの行動の意味が分かった気がする。でも俺は…。

 

「…事情は分かった。でも、さっきも言った通り俺の役割は今日までだ。だからお前たちの試合には関わらないし関われない。」

 

「…ほんとに、あいつらにはもう関わらないんだな?」

 

「…ああ。」

 

「…良かった。」

 

この子達が何やら嬉しそうに話しているけど、俺は今自分の発言に対して後悔をしていた。

 

昴side終了

 

夏陽達が去ってから、俺は呆然としている昴さんの所へ向かった。

 

「こんにちは、昴さん。」

 

「....創玄。」

 

「...その様子だと、あいつらから事情は聞いたようですね。」

 

「!?...なんでその事を...。」

 

「この時期に男バスの連中に絡まれているとなると察しはつきます。」

 

「そっか....。」

 

「それで、昴さんはどうしますか?」

 

「どうするって...。」

 

「俺は女バスの皆を勝たせてあげたい。その為ならどんな汚れ仕事だろうとやってみます。」

 

「...創玄は凄いね。そこまではっきりと言えるなんて、とても小学生とは思えないよ。」

 

「...。」

 

「申し訳ないけど、俺はやっぱりこれ以上コーチをしてあげることは出来ない。」

 

「...分かりました。だったら、最後にしっかり女バスの皆に挨拶をしてあげてください。」

 

「うん...。」

 

「すみませんが、俺は美星先生に用があるので一緒に行くことは出来ません。」

 

「分かった。俺もけじめをつけてくるよ。」

 

「はい。それでは失礼します。」

 

そう言い残し、俺は昴さんを背に職員室へ歩き出した。

 

「(...やはり、危惧していた事が起きてしまったな。俺じゃもうこれ以上何かをすることはできん。後はあいつらに任せるとしよう。)」

 

 

昴side

 

創玄との会話を終えて、体育館の前に立っている俺は扉を開けることを躊躇していた。

 

「(やっぱり、まだあの子達のコーチをしてあげるべきなのかな...。)」

 

いや、このままずるずると引きずる方があの子達に失礼だ。そう思い、扉を開けた。

 

「あ、長谷川さん!」

 

智花が俺に気づいて声をかけた。それに反応して皆がこっちに集まっているのを見て、俺は決心が鈍るのを感じた。

 

「よかった。来てくれた!」

 

「…。」

 

「あの、コーチの事なんですけど、できればこの次も――」

 

これは、きついよ…。

 

「ごめん、俺には無理だ。」

 

「え…。」

 

彼女たち全員の顔が驚愕の色に染まった。

 

「さっき男バスの子たちから聞いたよ。試合のこと。」

 

「あ…。」

 

「俺には君たちを勝たせてやれるような指導は出来ない。今からでも他の方法を考えたほうがいい。」

 

「そんな…。」

 

「短い間だったけど、結構楽しかったよ。ありがとう。」

 

「すばるん!」

 

真帆が大声で俺を呼んだ。

 

「他の方法なんてないよ!あたし達にはもう、すばるんしかいないもん!」

 

「…真帆、ごめん。それに…、男バスの気持ちも分からなくはないんだ。」

 

「――!!」

 

真帆の顔に怒りと悲しみの感情が浮かんだ。

 

「ひどいよ…。」

 

「…ごめん。」

 

「長谷川さん!」

 

扉から出ようとした俺に智花が声をかけた。

 

「まだちょっと練習できますよね。最終日のコーチ、お願いします。」

 

振り返った俺の目に映った智花の顔は、何かを吹っ切ろうとしているように見えた。

 

「…分かった。」

 

それから重い雰囲気の中、最後の練習をした。

 

 

 

 

 

 

紗季side

 

練習が終わって長谷川さんが帰った後、皆とこれからの事について皆と話していた。

 

「終わっちゃったね…。どうしよっか、これから…。」

 

「……。」

 

「長谷川さんの作ってくれたメニューで頑張ってみるしかないと思う。」

 

「ねえ智花ちゃん。試合の延期って、できないのかな…。」

 

「間違いなく無理。絶対勝てると思ったから試合受けたんでしょ、あのカマキリ教師。」

 

「おー…。お兄ちゃん、もう来ない?」

 

「それはどうだろうな。」

 

ドアの向こうから創玄がこちらへ声をかけた。

 

「おー。そーげん、どこに行ってたの?」

 

「ああ、ちょっと美星先生とちょっとした作業をしていたんだ。」

 

「作業?」

 

「気にしなくていい。それより、今日の練習はどうだった?」

 

「…それは。」

 

皆言いづらそうにしている。私も、ちょっと言いづらいかも…。

 

「…いや、言わなくてもいい。お前たちの表情で何となく察しはつく。」

 

「……。」

 

「それで、昴さんはもう来ないと思うか?」

 

「来るよ!すばるんは絶対助けに来る!ムカついたけどみーたんが連れてきてくれた奴だから信じることにした!」

 

「…そうか。」

 

創玄は安心したように笑った。

 

「なら、早く帰って体を休めるんだ。俺はもう少し作業が残ってるから後で帰る。」

 

「さっきも言ってたけど、その作業って何なの?」

 

「それは、後のお楽しみだ。」

 

そう言った創玄は邪悪な笑みを浮かべていた…。

 

 




如何でしたか?久しぶりなのに短くてすいません‥。次はもう少し早く出せるよう頑張りたいと思います。それでは、また次回~。


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第九話 秘策

どうも。アヒルマンでございやす。短いですがとりあえず書けたので投稿します。今回は会話文中心になりました。それでは本編どうぞ!


「それで、結局作業ってなにすんの?ゲッソー。」

 

「簡単に言うと、カマキリのパソコンにとある仕掛けを施すんだ。」

 

「仕掛け?」

 

「仕掛けと言っても大したことじゃない。ただ奴のパソコンにウイルスを感染させるだけだ。」

 

「ちょ、ちょっと。ウイルスなんて簡単に感染させれないでしょ?」

 

紗季の疑問はもっともだ。普通ならそう簡単にできるような作業じゃない。だが…

 

「問題ない。そういった事の専門家に知り合いがいてな。そいつに任せてある。」

 

「でも、先生のパソコンにウイルスを感染させてどうするの?」

 

「奴のパソコンには男バスの試合映像、選手の個人のデータ、今のレギュラーのリストが入っている。それらをウイルスで別のパソコンに移動させる。」

 

「な、中々にえげつないことをするわね…。」

 

「今、データが美星先生のパソコンに入るように橋作りをしている途中なんだ。」

 

「そっか。みーたんの所に情報が入ってくれば、後はそのデータをCDか何かに映し出せば…。」

 

「ご名答だ。今のその作業を美星先生がしてくれている。」

 

「でもさゲッソー。カマキリにバレたらどーすんの?」

 

「それは問題ない。奴はもう既に帰宅している事は確認済みだ。」

 

「それならいい…のかな?」

 

「トモ、良くはないわよ。帰ってるって言ったって、パソコンがウイルスにかかってたら普通分かるんじゃないの?」

 

「いや、ウイルスは目的を果たしたら痕跡を残さず退去していくシステムになっている。まず分かる事は無いさ。」

 

「アンタ今結構問題発言してるわよ。創玄。」

 

「なに、俺は勝つためならどんな事だってするさ。あくまで良識の範囲内だがな。」

 

「思いっきり良識吹っ飛ばしてるわよ…。」

 

「まあまあいいじゃん。ゲッソーがあたし達のためにやってくれてんだからさ!」

 

「それはそうだけど…。」

 

「紗季ちゃん、創玄君は私達が勝つって信じてくれて行動してくれた。私は、創玄君の期待に応えたい。」

 

「おー。ひなも、一緒に頑張る。」

 

「私も、この場所を守るために頑張りたい。だから、私も出来ることを頑張る!」

 

「…そうね。創玄にこれだけの事をさせたんだもの。私達が勝たなきゃ、意味が無くなっちゃうもんね。」

 

…俺は、いい仲間に恵まれたな…。この幸せを手放すなんてことはしないさ。俺の命にかけてでも守ってみせる…。だから、見守っていてくれ…アリシア…。

 

「…俺は職員室に戻って作業を終わらせてくる。お前たちは着替えて先に帰っていてくれ。」

 

「分かったわ。作業、頑張ってね。」

 

「ああ。」

 

そう言って俺は、職員室へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました。美星先生。」

 

「おー、お帰り。あの子たちの様子はどうだった?」

 

「…少し落ち込んではいましたが、あの分なら問題ないでしょう。」

 

「…そっか。こっちの作業も、もうそろそろ終わるけど。」

 

「なら、そのデータを資料と共に自宅へ持って帰っておいてください。」

 

「いいけど。学校に置いとかなくていいの?」

 

「万が一バレたら、俺たちはただじゃすみませんからね。それに、昴さんが戻ってきたときに資料があったほうが、効率がいいでしょう?」

 

「昴が戻ってきたらって…。それに、あいつが私の所に来るとは限らないんだぞ?」

 

「この状況下で一番データが手に入りやすそうなのは、美星先生の所だけですからね。」

 

「…なあ、アンタはどう思う?」

 

「どうとは?」

 

「男バスとの試合。勝てると思う?」

 

「…可能性は低い。精々5%と言ったところでしょう。」

 

「昴がコーチしてくれたら、勝率はどのくらい上がる?」

 

「練習の内容にもよりますが、恐らく10%強くらいかと。」

 

「……そっか。」

 

「ですが、それは策がない場合の話です。」

 

「え?」

 

「俺もいくつか策を考えてありますが、策の数と内容次第じゃ、勝率を50%まで上げれます。」

 

「そんなに!?」

 

「ええ。問題は、男バス相手にどこまで通じるか。それと―――」

 

「昴の奴が戻ってくるか。だよね。」

 

「それが一番不確定要素なんですがね…。」

 

「大丈夫。あいつは戻ってくるよ。」

 

「…なら、安心ですね。」

 

「ああ、安心しとけ。それじゃ、さっさと帰ってあんたも寝たら?ここ最近、隈がひどいよ?」

 

「…バレてましたか。」

 

「担任なめんなっての。自分の生徒くらい、ちゃんと見てるっての。」

 

「やれやれ…。やはり、貴女は凄い人ですよ。美星先生。」

 

「にゃふふ、アンタは頑張りすぎなんだよ。もうちょっと肩の力抜いてもいいんじゃない?」

 

「肩の力、ですか…。」

 

「アンタ結構目立ってんだから、これ以上目立つようなことはあんましないほうがいいんじゃない?普通の小学生(・・・・・・)として活動するならさ。」

 

「…。」

 

「あたしはアンタの詳しい事情までは分からない。でもさ、今のアンタが気負いすぎてるのは分かる。」

 

「…。」

 

「無理に休めとは言わないけどさ。アンタが無理してんのは多分、皆気づいてるよ。」

 

「…そうですか。」

 

「そう。だからあの子たちの為にも、今は帰って寝な。それが一番いい。」

 

「…分かりました。それでは先生、失礼します。」

 

「おう、お休み。」

 

痛いところを突かれたな…。だが、体が限界に近付いているのも分かる。ここはゆっくり休むとするか…。その帰り道、普段は遠く感じる道のりが、今は少し短くなっているように感じた。

 




如何でしたか?眠い状態で書いたのであんまり出来が良くないかもしれないですが、面白く思ってもらえたならよかったです。それではまた次回~。


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第十話 帰還

どうも、アヒルマンです。二か月以上待たせてしまい、申し訳ありませんでした。作者としてはそれなりの出来になったかなと思います。それでは、本編どうぞ!


日曜日の昼、昼食を済ませた俺の携帯に電話がかかってきた。画面には、「三沢真帆」と書いてある。

 

「はい、もしもし。」

 

「あ、ゲッソー?今暇?」

 

「まあ、特にこれと言った用事はないが。」

 

「じゃあさじゃあさ、アタシと紗季の練習に付き合ってくれない?」

 

「ああ、いいぞ。」

 

「ありがと、ゲッソー!学校近くの公園で練習してるから早く来てね!」

 

と言って、真帆は電話を切った。それにしても、練習か…。この状況では少しでも練習をすることが大事だし、悪い事ではないな。さっさと準備を済ませて、公園に向かうとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歩いて十数分の所で公園が見えてきた。ゴールの側に真帆と紗季、それから誰かが揉めているようだが、一体何があったんだ…?

 

「今日は一日、アタシがここを使うって決めたんだかんね!アンタたちに使わせるつもりはないから!」

 

「なんだと!そもそも公園はみんなの場所じゃんか!だったらアタシたちが使っても問題無いだろ!」

 

「フン!小学生のくせに、中学生に意見しようっての?笑っちゃうわ!」

 

「なにをー!」

 

「こら真帆、いったん落ち着きなさい。」

 

「離せ紗季!アタシがコイツをバスケでぼこぼこにしてやる!」

 

「やれるもんならやって見なさいよ!」

 

聴いている感じ、真帆は中学生とバスケのコートを取り合っているようだな。それにしても、これじゃ小学生以下の喧嘩にしかなっていないぞ…。しょうがない、仲裁に入るか。

 

「…何をしているんだ、真帆。」

 

「あ、ゲッソー!聞いてよ!こいつがゴールを独り占めしようとしてんだ!」

 

「それの何が悪いってのよ。どうせヘタクソなアンタたちより上手くて、中学生の中ではトップクラスの実力者であるアタシが使う方がいいに決まってんじゃない!」

 

もの凄い自信だな…。

 

「ねえ創玄、どうにかならないかしら。中学生相手に今の真帆が勝てるわけないし…。」

 

「なるほどな…。大体事情は把握した。ここは俺に任せてくれ。」

 

「ごめんなさいね、創玄。真帆にはきちんとお説教しておくから!」

 

「ああ、任せたぞ。」

 

俺はいまだ言い争いをしている中学生の方に話しかけた。

 

「ちょっといいか。」

 

「なによ、ていうかアンタ誰?。」

 

「俺はそこの二人の友人でな。それでだ、俺達には今どうしても練習しなきゃいけない理由があるんだ。どうだ?今日のところは俺たちにこの場所を譲ってくれないか?」

 

「フン!あんたたちの事情なんか知ったこっちゃない!アタシが使うって決めたんだから、今日はアタシが使うの!」

 

…なんという横暴な発想だ。ここまで身勝手だと、最早感動さえ覚えてくるな。

 

「どうあっても、ここを譲る気は無いと?」

 

「だーかーら。さっきからそう言ってんでしょ?でかい図体のくせに、物覚えが悪いやつ!」

 

「しょうがないな…。じゃあ、勝負をするか。」

 

「は?勝負?」

 

「ルールは簡単。アンタがボールを持った状態で俺を抜いて、そのままゴールに入れられたら勝ちということで。」

 

「…なあにそれ?そんな楽勝な勝負、わざわざする価値あんの?」

 

「楽勝かどうかは、やってみればわかる話だ。それともなんだ?まさか中学生の中でトップクラスの実力者ともあろうお方が、でかい図体のくせに物覚えが悪い奴に勝てないとでも?」

 

「…結構ムカついてたんだな。ゲッソー。」

 

「あんなこと言われたらね…。」

 

後ろで何か言っているような気がするが、この際無視しておこう。

 

「…言ってくれるじゃん。いいよ、その勝負受けて立つ!」

 

「OK。なら、さっさと勝負を始めるとしようか。」

 

「フン!後で泣き事言っても許してやんないからね!」

 

互いに火花を散らしながらゴール前に向かう。

 

「(口ではかなりの実力者だとか言っていたが、恐らくそこまで強くはないと見た。作戦を練ってくるタイプにも見えんし、昔通りのプレーでやって大丈夫そうだな。)」

 

俺が考え事をしている最中に、目の前のアホは何を思ったか、とんでもないことを言い出した。

 

「アンタに普通に勝っても面白くないから、あえてアタシは自分の作戦を宣言してあげる!」

 

どういう事だ…?自らの手の内を明かして揺さぶりでもかけるつもりか。

 

「アタシは右からドリブルでアンタを抜いた後に、華麗なシュートで雌雄を決すると宣言するわ!」

 

「…いいだろう。かかってこい。」

 

相手の狙いが何か当てれば勝率は上がる。だが、もし外したとすれば俺は負ける可能性がある。

 

「(…こんな時、あの男ならどうやって相手の思想を見破る?)」

 

―――いいか、相手の思想という物は身体の動きか顔に出る。特に、余裕を見せびらかしている奴は顔によく現れる事が多い。そこの見分けが出来れば勝ったも当然だ。―――

 

「……なるほど。」ニヤッ

 

「何急に笑ってんの?キモ…。」

 

「俺の事より、今のうちに精々自分が勝つ妄想でもしていたらどうだ?」

 

「ふん、そんなの別にしなくてもアンタには勝てるからするだけ無駄でしょ。」

 

「無駄かどうかは分からんものだ。まあ、アンタ程度の脳みそじゃ大した思考も無いんだろうがな。」

 

「な!アンタ、小学生の癖にアタシにそんなこと言うなんてどうなるかわかってんの?」

 

「大した事にはならんだろうさ。粋がっている中学生に灸を据えてやるだけだからな。」

 

「~~~!!今に見てなさい、ボッコボコにしてやるんだから!」

 

そう言い放ちながら、宣言通り右からドリブルをして俺を抜こうとしていた。

 

「(宣言通り来たか…なら!)」

 

自信満々に突っ込んでくる相手には対策方法がいくつかある。そのうちの一つは―――

 

「そこかッ!」パンッ

 

「な!?」

 

―――相手のスピードと同じ速度でボールを叩き落とす。単純だが、かなりの有効打になっただろう。

 

「……あり得ない。あたしが、こんなやつに負けるなんて!」

 

「あり得ないことは無い。現に、アンタは俺に負けたんだ。」

 

「ふざけんな!もう一回やれば―――」

 

「何度やろうと同じ事だ。自分の惨めさをこれ以上味わいたくなければ、さっさと家に帰るんだな。」

 

「~~~!!!覚えてろーーッッ!!」

 

あの中学生は悔しそうに叫びながら走り去っていった。

 

「やれやれ……。」

 

「すげー!ゲッソー普通にバスケ上手いじゃん!」

 

「…確かに。昔やってたとは聞いてたけど、ここまでとは思ってなかったわ。」

 

「俺は別に大したことはしてないんだが。」

 

「十分すごいよゲッソー!ねえねえ、あたしにも今の教えて!」

 

「私にもお願いできるかしら?ディフェンスは出来るようになった方がいいと思うの。」

 

「…そうだな。教えてもいいが、まず最初にやってもらう事がある。」

 

「やってもらうこと?」

 

「ああ。お前たちはまずシュートの練習を少しやってもらう。」

 

「シュートの練習?私たちがシュートする立場になるの?」

 

「そこの部分はまだ決まってないが、いつ誰がどのタイミングでボールが来るかわからないからな。とりあえず、いろんな角度からシュートをうってもらう。」

 

「でもさ、ボールが入らないと意味ないんでしょ?」

 

「取り敢えずはお前たちに、『ボールをキャッチしてゴールに向かって投げる』ということを体に覚えてもらう。」

 

「そっか。体が覚えておけば幾らかは有利になるわけね。」

 

「そういう事だ。さっき見せたディフェンスはその後だな。」

 

「にしし、そういうことなら任せとけ!」

 

「ええ。私たちは何時でも大丈夫よ。」

 

「よし、それじゃ行くぞ!」

 

こうして夕方まで俺達の練習は続いた。有りとあらゆる場所からのシュートやドリブル。そしてディフェンスについても軽く教えた。そして…

 

「はあ、はあ、はあ、つ、疲れたぁ…。」

 

「ふへ~…。あたしも疲れた…。」

 

「二人とも上出来だ。今教えたことは暇なときにでもやるといい。」

 

「うん…。わかった…。」

 

昴さんが戻ってきたときの為にある程度練習をさせておいたが、少しやり過ぎてしまったかもしれんな。

 

「二人とも、今日はもう遅いし、家に帰ってゆっくりするといい。」

 

「分かったわ。ほら真帆、行くわよ。」

 

「待ってよ紗季~…。」

 

二人の姿が見えなくなってきたし、俺も帰るとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

晩飯を済ませ、風呂から出た直後に携帯にメールが届いた。確認するとどうやら美星先生からのようだった。

 

「どれどれ…。」

 

『昴がコーチを続けてくれることに決まった。あたしも色々と忙しいから、後はアンタたちに任せるよ。』

 

「そうか…。昴さんは戻ってきたか。なら、こっちも作業開始といくか。」

 

そう言って俺は自室のパソコンに向き合った。

 

 

 

 

 

 

少し時間を遡り昴sideへ

 

 

 

 

智香と一緒に晩御飯を食べながら作戦会議をした俺は、母さんに智香の見送りを任せて一人ミホ姉の所へ向かっていた。

 

 

「よ、昴。どうした?こんな時間に。」

 

「何でもいい、男バスのデータを持ってないか?些細な情報でもあった方がいいんだけど。」

 

「ん、ちょっと待ってな。」

 

ミホ姉は一度家の中に戻っていった。しかし…。

 

「(なんなんだろう…。あの遅かれ早かれ来ると思っていたみたいな反応は。)」

 

もしかして、ミホ姉は分かってたのか?俺がコーチを続けることを。

 

「(いや、まさかな…。)」

 

「お待たせーっと。」ポイッ

 

「う、うわっと。」

 

戻ってきたミホ姉が渡してきたのは、段ボール一箱分だった。

 

「こんなにあるのか?いったいどうやって…。」

 

「にゃはは、男バスの顧問がムカつくやつでさー。そいつのパソコンにウイルスかけてデータを引っこ抜いてやったの。」

 

な、なんと言うえげつないことを…。

 

「ミホ姉、そんなことできたんだな…。」

 

「おいおい、勘違いするな。その作業をしたのはアタシじゃなくて創玄のやつだぞ。」

 

「え?」

 

創玄が…?いったいどうやってそんなことを…。

 

「どうやってやったかはアタシもよく分かんないんだけどさ。創玄は、アンタが戻ってくることを想定してたみたいだったよ。」

 

「創玄が…。取り敢えずありがとうな、ミホ姉。」

 

「ねえ昴。…勝てそう?」

 

「…普通は無理だろうな。」

 

そう、普通に考えて女バスが男バスに勝てるはずはない。けど…

 

「だけどよ、その無理をひっくり返すのが楽しいんじゃねえか。」

 

俺はミホ姉にそう言って、家に帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「…おかえり、昴。」

 




如何でしたか?ようやくここまで来れました。ここまでに来るのに十話以上ってどうなってるんですかね。まあ、これからも気楽に見て言ってください。それではまた次回~。


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