平凡青春時空 私立カルデア学園 (清姫可愛いよね)
しおりを挟む
1話
てくてくと、歩きなれた道を往く。卒業生を見送った時は満開に咲きほこり、辺りをピンク色に染めあげていた桜並木も、今じゃ見渡す限りの真っ茶色になっていた。道端にはたくさんの花びらが落ちている。ううむ、昨日の大雨が原因かなぁ。
後ろからパタパタと音がした。振り向けばそこには可愛い後輩の姿が。
「おはようございます、先輩!」
「おはよう、マシュ。今日も元気だね」
「そ、そうでしょうか」
薄紫色の髪を揺らし、わずかにはにかむ彼女。相変わらず可愛いなあとデレデレしていれば、はっ、なにか嫌な予感がするっ!?
「・・・・・・ふ、ふふ、未来の妻を差し置いてイチャイチャと登校するなんて・・・・・・うふ、うふふ、うふふふふ」
「よぅし走ろうマシュ!!!今日もいい天気だしね!!!!」
「えっ、あっ、はい!ですが先輩、あそこの木の後ろでこちらを覗いているのは清姫さんでは、」
「何も見てない聞こえない!!!さあ健全な女子高生なら朝は走るべきだよね!!レオニダス先生もそう言ってた!!」
「な、なるほど!レオニダス先生が仰るなら間違いないですね!」
そうして2人、全力ダッシュを決め込む。純真な後輩を騙すような真似には心が痛んだが、悪いね、マシュ。自分のココロとカラダはまだ健全に保っていたいんだ。
「あぁっ、お待ちください
────私、藤丸立香。
私立カルデア学園に通っている、ごくごく普通の高校生です。・・・・・・ごくごく普通の高校生、だったんです。
✳︎
清姫の俊敏さには勝てなかったよ。
校門を過ぎた辺りで普通に捕まってしまいました。ただいま下駄箱に向かいつつ尋問され中です。助けてください女神様。そこで笑ってる女神様。楽しくないです女神様。チクショウ私もあんな風に優雅に登校したいなぁ!
「もう、どうして逃げてしまうのですか?そんなにも
「いや嫌いではない、嫌いではないから早とちりしないで欲しいなぁ!」
「おはようございます、清姫さん。先程は何をされていたのですか?」
「うふふ、おはようございます
「ええといや違うんですよあれはほら朝の運動というか有酸素運動って大事だよねってことをマシュにも伝えたくてほら、ね?」
というか今不審なルビつけなかった?
「先輩、あれは有酸素運動ではありません。有酸素運動とはマラソンや水泳などの長時間にわたりペースを保つ運動のことを指します」
「うーん教えてくれてありがとうねマシュ!君はいつでも真面目だね!!普段ならそういうとこ大好きだけどね!!」
「え、えへへぇ」
「・・・・・・
「そんなつもりは無いし助けて誰か!!」
「はいはーい、センパイってば可愛く可憐なウルトラ女子高生BBちゃんの事をお呼びですかぁ?」
「BB!」
ぱあっと自分の顔が明るくなるのがわかった。天の助けだやったぜ!
長い紫の髪を揺らし、可愛らしくウインクまで決める彼女の名はBB。実はAIらしい。真偽の程はわからないが、時折ノイズみたいなものが走るし機械に強いから多分本当なのだろう。こんな人間らしいAIが居てたまるか、とは思うけれど。世界って広いね。
まあカルデア学園でやっていくには多少のことで動じてはならない。全くの他人なのに同じ顔とかいるし。彼女の(書類上の)姉とさっき通りすぎてった自称美の女神とか。いや確かに美人だけど!
「むっ、なんか嫌な感じがします。具体的にいえばどこかの(野蛮な)女神様とか褒められませんでした?」
「えっなんでわかるのAI怖い」
「ちょっと舐めないでください、センパイの思考とかマルっとお見通しですから。ところでいいんですか、褒めてしまったと素直に認めて。後ろの方々の笑顔怖くないんです?」
「・・・・・・(にこっ)」
「先輩?やはり私よりもBBさんの方がお好きなんですか?」
「怖いから振り向かないようにしてるんだよ察して!!というか嘘をついてもつかなくてもアウトとか何その死にゲー!余計窮地に陥らせてるんじゃん私を助けてくれるんじゃなかったの?!」
あとマシュ安心して君の方が好きだから!BBは頼りになるけどトラブルメイカーだし!
「あー、それなんですけども」
そして件のBBは僅かに目線を泳がせ、てへりと舌を出してこう言った。
「助けるも何も、もうタイムオーバーなんですよねっ☆」
────リンゴーンと、無情な鐘が鳴り響いた。
✳︎
「最悪、本当に最悪〜〜!」
「あはは、まぁきよひーに絡まれてたんならしゃーないっしょ!元気出すし!」
クー先生に「初日から遅刻するなんてなあ?」と絞られ、こころなしか頬が痩けたような気がする私に、前の席の鈴鹿が声をかけてきた。
髪と同じ金色の瞳を無邪気に輝かせて彼女は朗らかに笑う。くぅ、これだから不良気取る優等生は。実は一度も怒られたことないくせに。
「はぁ、なんでこう毎度毎度・・・・・・せめて教室ならなあ」
「外でやられると人目とか気になるよねぇ。ま、そんだけイチャイチャしてるってことで?」
「いやいや、清姫is女の子。私am女の子」
「んー、別にいいんじゃない?愛のカタチは十人十色で千差万別。良妻(笑)なあのキツネだってそうなわけだし?好きになるのに性別なんて関係ないって言うか」
「まあ偏見とかはないつもりだけど、当事者になるとなあ」
「てか、そもそもなんで気に入られてんの?きよひーって結構人を寄せつけないタイプだと思うけど」
「えー?」
鈴鹿の言葉にないわーと思う。だってめちゃくちゃ懐いてくる(マイルド表現)じゃん。
でもまあ、心当たりがない訳でもない。
「確か、二年くらい前かなあ。清姫と初めてあって、そんときに色々あってさ。中学生だからね、思春期真っ盛りってやつ?それを私が引っ掻き回しちゃって、なんやかんやあって懐かれちゃった」
「色々だのなんやかんやだのって、そこが一番大事っしょ!詳しく教えた方が身のためだよ?」
「教えませーん」
あんな大立ち回り、もう二度としたくない。私も中三だったから少しカッコつけたとこあるし。鈴鹿に知られたらどんだけ弄られるか。
「どうせ人助けでしょ?あの感じからすると、きよひー関連の痴情のもつれ?きよひー可愛いしモテるよねー」
「お、教えませーん!」
鈴鹿はニカッと笑い、
「ま、そこがリツカの良いところっしょ!さっすがカルデア学園一の人たらし」
「待って異議を申し立てたい」
「却下でーす。というかぐっちゃんパイセンが満更でもなさそうな時点でその称号はリツカのものじゃん?」
「え、虞美人先輩?てか鈴鹿ってば怖いもの知らずだなぁ、ぐっちゃんパイセンって」
「んふふ、色々あるんだなぁーこれが」
意味ありげな笑いを漏らす鈴鹿。困惑するこっちを無視して、ばちこんとウインクをかました。
「恋ってのはやっぱ素敵よね。あとはあの狐を嫌ってるとこも仲間意識もてるし!」
✳︎
「っくしゅっ!」
「どうした、虞よ。よもや風邪でも引いたか」
「い、いえいえ!そんな、項羽様が心配されることなど何も御座いません!恐らくは後輩が噂などをしているのでしょう。まったく」
「ふむ。話は変わるが、虞よ、汝は藤丸の他にも付き合いがあるそうだな?」
「は、鈴鹿御前のことで御座いましょうか。・・・・・・何か、不都合でも御座いましたか?」
「いや、汝の交流の輪が広がるのは喜ばしいことである。ただ、かの少女と汝の共通項が見つからずして」
「ぁえ、ええと、それは、そのぅ、・・・・・・相談に、乗ってもらっているのです。・・・・・・おかしいでしょうか。先を生きたものが己より幼きものに教えを乞うなど・・・・・・」
「なんら奇妙なとこはなし。しかし意外だ。汝ほどの者が何を乞う?」
「ぴぇっ、いえその項羽様には到底お伝えできないような俗物的な話でございますので!!どうぞお気になさらず!!!」
「う、うむ・・・・・・」
初めまして。現パロです。
私が聖杯を捧げたサーヴァントが多く出がちです。是非もなしで流してください。
目次 感想へのリンク しおりを挟む