魔王と勇者が悟空とベジータ (レイチェル)
しおりを挟む

いつもの平和な昼下がり

 みなさんは覚えているでしょうか?アラレちゃんの世界とドラゴンボールの世界は同じだということを!!


誤字を直しました。それだけです。


 ここはどこの世界にも存在しない場所にある王国、『ルドベキア』。そこはとても平和なところでした。

 しかしあるとき突然魔物がやって来るようになったのです。魔物は村の人たちを襲い、食べ物を奪っていきました。魔物は言います。

 「魔王様はとてもよく食べられるお方だ!お前らは魔王様の役に立っているんだ、ありがたく思え!!」

 国の人たちは歯向かうことができませんでした。それは魔王がとても強いからです。

 でもあるとき、勇気ある青年が言いました。

 「ぼくが魔王を退治するよ!」

 その青年の村の人たちはお金を出し合って、青年のために鎧を作りました。どんな魔法も弾いてしまう素晴らしい青を基調とした鎧です。

 そして青年――勇者は村の人たちに見送られながら、魔王を退治する旅へと出ました。

 

 その様子を大きな水晶で見ていた者がいました。

 「フ………フハハハハ!世に歯向かう者が出てきたか。面白い!かかってくるが良い!!世はここで待っておるぞ!」

それは魔王。勇者が倒すべき相手でした。

 

 

                            「勇者の冒険より抜粋」

 

 

 

 

 

 

 

 

 敵はいない。それでも修行を続ける。いや、だからこそ修行をする男がいた。

 「……チッ。もう300倍の重力じゃあ物足りん。ブルマに頼んで500倍の……いや、1000倍の重力室を作らせるか?」

その男の名はベジータ。魔人ブウとの戦いを経てもなお己を極めようとしていた。

 そしてカプセルコーポレーションの研究室へと向かう。この時間にはいつもブルマがいるからだ。

 「おい」

 「あらベジータ。どうしたの?」

そこには案の定カプセルコーポレーションの女社長、ブルマがいた。

 しかしブルマは怪訝な顔をする。

 「…………ベジータ、あんたまさかまた重力室壊したの?!」

 「ちょっと待て!なんでそうなるんだ?!」

ブルマの予想外の反応に慌てるベジータ。そんなベジータを見てブルマは得意そうに、

 「あのねえ、あたしが一体何回あんたが壊した重力室を直してあげてると思ってんの?!壊す頻度が減ってきたかなあ、なんて思ってたら最近になってまた壊すようになったじゃない!!しかもこの時間、いつもならまだ修行してるはずでしょう?さらに晩ご飯までまだ時間がある。つまりベジータは修行中に重力室を壊して修行ができなくなり、わたしに泣きついてきた。

さあ、このブルマ様の天才的な推理に穴があるっていうの?!」

そう自信満々に言ってきた。

そんな天才的な推理にベジータは、

 「大ありだ!!第一、最近壊しているのはトランクスの方だ。それに物を誤って壊すのは自分の力をコントロールできない未熟者だけだ。このオレがそんなことするわけないだろう?第一、オレは泣きつくような真似はせん」

 「…………え?最近壊してたのはトランクスの方だったの?」

 「当たり前だ。あいつはスーパーサイヤ人になれるとはいえ、まだまだ未熟だからな」

予想外の回答に驚くブルマ。しかし気を取り直してベジータに聞いてみる。

 「じゃあ何しに来たのよ?」

 「重力室の重力が300倍では物足りなくなってな。1000倍………いや、5000倍にまでできるようにしてくれ」

ベジータは5000倍と言った。500でもなく1000でもなく5000。

 その言い方に感じるところがあるらしく、ブルマは不敵に笑った。

 「ふ~ん……なるほどね…………」

ベジータはにやりと、

 「できるだろ?」

と言った。『できるか』ではなく『できるだろ』。

 「時間がかかるけどいい?そうね…………三週間くらいかしら?」

 「ああ。いいだろう」

三週間かかる。この言葉の意味は三週間でベジータの望むものが作れる、ということだ。このベジータの望むものをたった三週間で作れてしまう人は、世界広しといえどもブルマだけだろう。

 世間一般的にいえばかなりずれているが、ある意味仲のいい夫婦だ。

 「あ、そうだ。それじゃあ、あんた暇よね?だったら、ちょっとこの機械使ってみてくれない?」

 「おい。なぜそうなる?!」

そう言ってブルマは何やらよくわからない機械を見せてきた。その機械はロボットのようだった。シルクハットをかぶり目には大きなトンボメガネ。手には傘が握られており、足は一本で固定されている。

 「実はさあ、ほかの会社が新しく売ってる商品があるの。でもその構造が全然わかんないのよ。でも自分で使うのは怖いのよねえ……。その点ベジータなら大丈夫よね。あんた体丈夫だし」

一般人から見れば、ベジータの体は丈夫どころの騒ぎじゃないのだが、ブルマはそれを『丈夫』の一言で片付けてしまった。

 「でもよかった。これ、一応わたし個人で買ったものだから会社の人間を使うわけにもいかなかったからどうしようかと思ってたのよね~」

 ベジータの意志とは関係なくどんどん話は進められていく。しかしこの話を逃せば単調な修行の生活だ。だからベジータはとりあえず話を聞いてみることにした。

 「…………で、その商品とはなんだ?何かの武器か?」

 「そんな物騒なものじゃあない……はずよ。『おとぎマシーン』って言ってどんな本にも入り込むことができる………らしいわ」

そんなブルマの珍しくは切れが悪い物言いに、ベジータは眉をひそめる。

 「なんでさっきから『はず』だの『らしい』だのと言っているんだ?お前らしくもない」

 「だって『どんな本にも入り込める』のよ?!もう明らかに眉唾物じゃない!

そのくせ大量生産はされていないからこれ一個手に入れるのもやっとだったのよ。だからむやみに分解して戻せなくなっても困るしどうしようかと思ってたのよ。だから、ね。お願いねベジータ」

そう言ってブルマはニッコリと笑った。

 かつてのベジータなら、地球に侵略へときた頃のベジータならこう人にいいように使われることをよしとしなかっただろう。

 「ちっ…………仕方ないやつだ。いいだろう、やってやる」

 「ありがと、ベジータ」

随分と丸くなったものである。

 「でもなんの本に入ってもらおうかしらね?」

ブルマはベジータにどんな本に入ってもらおうかと考える。

 ちょうどその時ベジータは見知った気が研究室に近づいてくるのを感じた。

 「パパ、ママ!」

二人の息子、トランクスであった。小脇に一冊の本を抱えている。

 「どうしたの?ママはともかくパパがいるなんて珍しいね」

確かにベジータは用事がない限りここへ来ることはない。

 とりあえずベジータは決定事項だけをトランクスに伝えることにした。

 「重力室の重力を上げることになったからな」

 「うげっ!パパ、それ本当?!最近ようやく(スーパー)サイヤ人にならなくても300倍の重力にも耐えられるようになってきたのに!!」

 「だからこそだ」

ベジータは冷たく言い切る。

 「で、どうしたの?トランクス」

 「大したことじゃないよ。悟天のところへ遊びに行こうと思ってさ」

ちなみにトランクスが気軽に言った『悟天のところ』、すなわち孫家は西の都から数千キロ離れており、普通の人からすれば遊びに行くというよりも旅行と言ったほうが近いのだが………

 「ああそうなの。ちゃんと夕飯までには返ってくるのよ」

 「はーい」

トランクスにとって、いやこの家族にとっては地球なんて庭みたいなものだった。

 「トランクス、お前またその本を読んでいたのか?」

 ベジータがトランクスの持っていた本を見て言う。その本は『勇者の冒険』という絵本で、悪い魔王を退治する勇者とその仲間たちの話だ。トランクスの祖父、つまりブリーフ博士がトランクスに買ってあげたものだった。

 「うん!だってこれすっごく面白いもん!!悟天にも見せてあげるんだ」

つまりはそういうことらしい。

 そのことを聞いたブルマがこんな提案をしてきた。

 「ベジータ、あんたその本にしたら?」

 「なに?」

 「だから、入る本はその本にすればいいのよ。どうせ子供向けの本だし、大丈夫でしょ」

ブルマがそう根拠もなく大丈夫だと言い切った。

 「ねえ、一体何の話?」

トランクスがベジータの服を引いて聞く。

 「どんな本にも入れる装置を俺が使うことになったんだ」

 「え?!すごい!!ママそんな機械作っちゃったの?!」

トランクスのキラキラした目で見られながら、ブルマは悔しそうに

 「残念だけどわたしじゃないわ。なんでも『せんべい』って人と『ターボ』って人が『則巻株式会社』っていう会社で作ったようなの。しかもターボって人はまだ二十代前半よ!悟飯くんとそう歳も離れてないわ!」

と言った。さらにこんなことも言ってきた。

 「おまけにそこの会社で作る製品はみんな、どういうわけか構造が全然わかんないの!しかも噂じゃ地球を割ることのできる人造人間も開発してたらしいわ。もっと驚きなのは、その会社ターボって人が一代で作り上げたものみたいなの。………全く、地球にはとんでもない人がいたもんねえ…………」

ブルマの言葉に二人は驚いた。

 「ち、地球を割る?!」

 「まだ人造人間がいやがったのか…………!」

ブルマは半ば呆れながら、

 「……まあ予想はしていたけど、あんた達ならそこに食いつくわよねえ………」

と言った。そして、おとぎマシーンとかいう機械のスイッチを入れる。

 「おやおや紳士淑女のお二人、それにおぼっちゃんもおはようございます」

おとぎマシーンがしゃべりだした。そう、なぜか本に入ることができるだけの機械がしゃべりだしたのだ。明らかに必要のない機能。それをこの機械、いやロボットが持っているのだ。

だからおとぎマシーンがしゃべるところを初めて見たトランクスとベジータは驚きの声をあげた。

 「フン、ここには淑女なんてやつはいないがな」

驚きの声を…………

 「もう午後だけどなー」

訂正しよう。その程度で驚くような人は一人もいなかった。

 「ちょっと、ベジータそれどういう意味よ?!」

 「自分の胸に聞いてみるんだな」

険悪になる空気。トランクスはその空気を敏感に察知して二人のそばを離れておとぎマシーンに話しかける。伊達に生まれてからずっと二人の息子をやっていない。

 「ねえ、君って本当にパパを本の中に入れることができるの?」

 「はい、できますよ。わたくしはそのためのロボットですからね!」

 「ふ~ん…………」

そう自信満々に言うおとぎマシーン。しかしトランクスは疑っている。

 「トランクス、その本をとっとと貸しやがれ!」

 「うふふ。楽しみにしてるわよ~」

怒ったベジータ。笑顔のブルマ。

どうやらそういうことになったらしい。

 「あ!!」

ベジータはトランクスの本を奪い取り、

 「さあ、とっととオレ様を本の中に入れろ!」

 「は、はい!!」

ベジータのいきなりの剣幕におとぎマシーンもたじたじだ。

 「で、ではその本を後ろの壁に立てかけてください」

 「こうか?」

ベジータはおとぎマシーンの指示通りに、壁に本を立てかけた。けれどベジータの表情は怒りそのものだ。機嫌が悪い上に人(ロボット)の指示に従うという状況は我慢ならないものなのだろう。

 「そういえば、設定はどうしましょうか?売り出すにあたって新たに加わったものなのですが…………」

 「そんなもの適当でいい。早くしろ」

 「え?!で、ですがしかし…………」

 「どうやら殺されたいらしいな………」

そう言ってベジータは気を上げ始めた。おとぎマシーンのピンチだ。だからトランクスはベジータに注意する。

 「ちょ、ちょっとパパ!そんなに気をあげたらこのロボットどころか家も壊れちゃうよ!!」

 「い、家が壊れる?!一体何を言っているんですか?!というか私の体の心配は?!!」

おとぎマシーンが驚いている。それにブルマも、

 「そうよ!!それ滅多に手に入らない貴重品なんですからね!壊すなら使った後にして頂戴」

 「私が壊れることが前提?!一体どうなっているんですかこの家は?!!」

 「そりゃまあ、お前機械だからな」

トランクスがそう言うとブルマも、

 「それにしちゃあ随分と人間っぽいけど」

結局、おとぎマシーンの体(?)の心配をしてくれる人なんてここにはいなかった。

 「で、どうなんだ?壊されたいのか、壊されたくないのか?!」

 「は、はい!直ちに!!」

そしてベジータを本の中に入れるため、おとぎマシーンは掛け声をかける!

 「本に~……………入れや!!」

するとベジータの体が本に吸い込まれるようにして入っていった。

 「えっと…………随分とあっさり入っていったみたいだけど、成功したの?」

ブルマはおとぎマシーンに聞く。

 「はい、そのはずですよ。なんならあなたも入ってみますか?」

 「やめとくわ。こっちも忙しいの。明日も朝早いのよね~」

 トランクスはさっきからずっと気になっていたことを聞いてみた。

 「ねえ、どうやって本から出るの?」

 「簡単ですよ。本の物語が終わる時に自動的に出ますし、私が強制的に出させることもできます。………まあ本の中で死んでも出てこれますけど………」

後半は小声だ。

 「ふ~ん………あ、じゃあもう一つ!さっき言ってた新機能って何?」

 「それはですね、なんと登場人物になることができるんです!!」

トランクスは首をかしげる。

 「………えっと、どういう意味?」

 「簡単なことですよ。例えば『桃太郎』という本の中に入った時にこの機能を使うと、自分が桃太郎として生まれてくることができるかもしれないんです!…………もしかしたらおじいさんになるという可能性もありますが…………ですがご心配なく。大抵は物語の中心人物ですよ」

その説明にトランクスは冷や汗をかく。

 「マ、ママ…………。どうしよう…………」

 「トランクス、どうしたの?」

 「……ママはこの本のストーリーって知ってる?」

ブルマははたと気が付いた。

 「そういえば知らないわね。どういう話なの?」

トランクスが震えながら言う。

 「簡単に言うと勇者が魔王を倒してめでたしめでたしっていう話だよ…………しかも物語の主要な人物になれるってことはさ…………」

そこでようやくブルマも気がついた。

 「つまりベジータが魔王になっているっていうこと…………?」

その言葉にトランクスは頷いて、

 「だってパパはサイヤ人の王子だったんでしょ?しかもパパってチョー強いから、戦いにきた勇者が絶対返り討ちにされるよ!そしたら話が終わらなくてパパが本から出てこれなくなっちゃうよ!」

 「…………あの~、もしよろしければ私がさっき入って行った人を外に出しましょうか?」

おとぎマシーンの提案に二人は首を振る。

 「それだけはやめておいたほうがいいわね」

 「え、なんでですか?」

 「ただえさえパパはプライドが高くて誰かに指図されるのが嫌いなのに、その上自分の意志とは関係なく自分の体をいいようにされたら…………オレが重力室でどうなるか………」

 「えっと…………やらないほうがいいんですね?」

 「ええ、何もしな…………」

そこでブルマは言葉を切った。そして何かを思いついたようにこう言った。

 「いえ、あなたにはもうひと仕事をしてもらうわ」

 「?それってどういう…………」

ブルマはトランクスに言う。

 「トランクス、あんた孫くん呼んで来なさい。ベジータを倒せるのは孫くんしかいないわ」

 「!わ、分かった!!」

トランクスはそう言うが否や、すぐに部屋を出て行った。

 「………あの~、その『孫くん』という方はどなたなのでしょうか?そして私は何をすれば良いのでしょうか?」

ブルマは説明をする。

 「簡単に言うと、魔王になったベジータを倒せる勇者よ。その本の勇者がどれだけ強いのかは知らないけど。ベジータを倒せるのは孫くんしかいないわ。だからあなたには孫くんをその本の中に送ってもらいたいの。できるわよね?」

 「は、はあ………そりゃあできますけど………。その『ベジータ』さんが魔王になったとは限りま…………」

おとぎマシーンがそう言っていた途中で部屋に三人が突然(、、)現れた。

 「あら。早かったわね、トランクス」

瞬間移動でやってきた悟空、トランクス、それになぜか悟天の三人だった。

ブルマの疑問に悟空が答える。

 「買い物に西の都まで悟天と来てたんだ。まだなんにも買ってねえけどな。それよりもブルマ、なんかあったんか?」

 「ねえトランクス君、何か面白いことでもあるの?」

それにしても早い。流石Z戦士と言ったところか。

 「とりあえず孫くんには、ちょっと本の中に入ってもらうわよ。そんでもってベジータを倒してきてちょうだい。そうすれば出れるから」

そしてブルマは本の前に悟空を無理やり立たせる。

 ブルマは焦っていた。なぜなら早くしないとベジータが勇者を倒してしまうのではないかと思っていたからだ。

 「は?ちょ、ちょっと………」

 「大丈夫。きっと行けばわかるわよ。………おとぎマシーン君、孫くんを本の中に入れちゃって~!」

 「………は、はい!」

おとぎマシーンは戸惑いながらも掛け声をかける。

 「本に~……………入れや!!」

 「ちょっと!ブルマァァァァァ…………」

悟空も吸い込まれるように入って行ってしまった。

その様子に驚いたのは悟天だ。

 「ねえトランクス君。お父さんどうなっちゃったの?」

 「本の中に入ったんだよ………たぶん」

後半は悟天に聞こえないようにこっそりと言った。

 「本の中に?!」

悟天はキラキラした目でトランクスに聞く。

 「ねえ、ぼくも入れるのかなあ?」

その言葉にトランクスは驚く。

 「お前、入ってみたいのかよ?!」

 「え?だって面白そうじゃん!それにその本って、前にトランクス君がぼくに貸してくれるって言ってた本でしょ?!ぼくも入ってみたい!!」

そう悟天に言われてトランクスも興味がわいてきた。

 「ママ、オレ達も入っていい?」

ブルマは少し考えると、あっさりと言う。

 「ん、いいわよ。行ってらっしゃい。どうせ孫くんもベジータもいるんだし、なんとかなるでしょう。あ、でもちゃんと『魔王』を倒して帰ってくるのよ」

 「「は~い!!」」

というわけで悟天とトランクスの二人も本の中に入ることになった。

その様子におとぎマシーンも笑いながら、

 「ではいきますよ?」

その言葉に二人は慌てて本の前に立つ。

 「本に~…………入れや!!」

おとぎマシーンも慣れたものである。

 ブルマは、無事に二人も本の中に入ったのを確認し、一息ついた。

 「ふう……。四人とも早く帰って来なさいよ…………」

 

 

 

 一方、ブルマに無理やり本の中へ入れられた悟空はというと…………

 「魔王様!」

 「へ?魔王ってオラのことか?」

 「当たり前じゃないですか、何を言っておられるのですか?そんなとぼけたことを言っておられると、魔王の側近である私も恥ずかしいですよ………」

悟空は大きな水晶のある部屋で『魔王』と呼ばれていた。

 

 そしてベジータは…………

 「頑張れよー!」

 「お願い!早く魔王を倒して!!」

 「な…………なにい?!」

青を基調とした鎧を身に付け、たくさんの村人に見送られながら『勇者』として出発していた。

 




勇者「魔王を倒す!!」
魔王「やってみるがいい!」

ベジータ「カカロットはこのオレが倒す!」
悟空「おら強い奴と戦いてえぞ!!」


・・・・っていう発想から書いてみました。ほかに書いている小説もあるのに別の小説を書き始めたアホです。もうひとつの方が更新止まっているのにね!キャラを動かすのがしんどいどいう理由で止まっているアホですよ!!(同時に投稿している人はすごいですね。尊敬します)

ちなみにこの世界の天才度は、
ターボ>>>せんべい>>ブルマ>>ゲロ>>>アラレ>>悟飯>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>悟空
だと思っています。
あとターボはみどり先生の血を引いているから絶対イケメンだ!間違いない。

批評、酷評お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔王になった悟空

大変長らくお待たせしました!
テスト勉強で忙しかったんです

・・・・もっとも、テストは今週の木曜日と金曜日ですけど。

今回からオリキャラをバンバン出していきますのでご了承ください。
・・・というか出していかないと話が進みません。


魔王城には大きな水晶のある部屋があります。そこに魔王がました。魔王は水晶で人間界の様子を見るのが日課です。その部屋に魔王の側近である魔物が入ってきました。頭に二本の角が生えている魔物です。

 「魔王様、人間界で何か面白いことがあったのですか?」

魔王が答えます。

 「ああ。ついに我を倒そうとする勇者が出た。」

側近が言います。

 「厄介なことにならないうちに、始末しておいたほうがいいのでは?」

魔王が笑って答えます。

 「いや、あいつはそのまま泳がせる。最近暇だったからな。久々にいい暇つぶしができた。だが少し…………いや、かなり弱いのが難点だな」

その魔王の言葉を聞いて側近はこんな提案をしました。

 「ではこの勇者を強くいたしましょうか?」

魔王は少し驚いて側近に聞き返しました。

 「何?そんなことができるのか?」

 「簡単なことでございます。弱い魔物からあえて勇者に戦わせ、経験積ませるのです。そうすれば最後に残るのは…………」

魔王が頷いて言いました。

 「なるほど。魔王の覇者であるこの我、ということだな」

側近の提案を魔王はとても気に入りました。

 「良いだろう。方法はお主に任せる。勇者を強くしろ」

 「仰せのままに」

そう言う魔王の手首には、蛇の形を模したブレスレットがあります。その蛇の目が怪しく光りました。

                              「勇者の冒険」より抜粋

 

 

 

 ここは魔王城の水晶のある部屋。その部屋にいたのは、

 「魔王様、本当に何もわからないのですか?!」

頭に二本の角が生えた魔族(、、)と、

 「ああ。オラなんのことだかさっぱりだ」

魔王と言われた…………悟空だった。

 「よくわかんなかったからもう一回説明してくれねえか、べリアル?」

側近、いや、『べリアル』と呼ばれた魔族は息を一つついて、

 「いいですか?まずこの世界は大きく二つに分けることができます。魔族が住むここ魔界。そして人間と、エルフや人魚など少数の種族が住む人間界があります。ここまではいいですね?」

と言った。

 「ああ」

そして衝撃的な事実を告げる!

 「そしてあなた様は魔界の覇者である魔王様なのです」

 「だからオラは魔王じゃねえぞ。オラ孫悟空だ」

 「つまり、あなたが、『魔王孫悟空』ということでしょう!!」

今、悟空が本の中にやってきて六時間がたっている。

 ただ、ここで六時間が長いと思ってもらってはいけない。ここはどこで私はだあれ?から始まった悟空、もとい魔王に対してべリアルが『魔王様がおかしくなられた!』と騒ぎ出して医者を呼び、当然のことながら診察を拒否した悟空が部屋を飛び出し『オラ腹減っちまった』という悟空が、魔界に住む者なら誰でも知っているはずの毒キノコを食べて死にかけ、なんとか解毒して一命を取り留めて、落ち着いてから魔界について一から教えた。ここまでで六時間だ。

 ちなみにべリアルを含め、周りの者からは『魔王が記憶喪失になっている』ということになっている。

 「大体、オラが魔王だっていう証拠もねえじゃねえか………それなのになんでオラが魔王にならなくちゃいけねえんだ?」

悟空が力なく反論する。

 ちなみにこの魔王だ、魔王でないのやりとりはかれこれ六十二回目だ。

ベリアルが言う。

 「そのブレスレット、『蛇の選定者《セレクトスネイク》』が証拠です!」

 「へ?このセレクト……なんだって?」

そう言い返されてしまった。

 「そうです!その蛇の選定者(セレクトスネイク)は魔王様の一族に代々伝わる特別なもの。それにはある特別な力が施されており、他の者が付けることは絶対にできないのです!」

特別な力、とそう言った。だから悟空はなぜか本の中に入ってから身に着けていたブレスレットを見ながら聞き返す。

 「特別な力?これがかあ?」

悟空の言葉にべリアルが力強く頷く。

 「そうです!それは魔王家に代々伝わる強力なマジックアイテム。強力であるが故に魔王様を除き誰ひとりとして身につけることができなかったことから、魔王様と蛇の選定者(セレクトスネイク)はここ魔界のおいて同義となっているのです!さらにその秘められた力は…………」

ぐうううううぅぅぅぅぅ…………

ベリアルが説明しているところに、場違いな音が聞こえてきた。

 「魔王様、今のは…………」

 「や~、オラ腹減っちまってよ。なんか食うもんねえか?」

 「………………」

 とりあえず食事をすることになった。

 

 

 

 

 

 

 そこではひとつの戦いが繰り広げられていた。やつ(、、)は次から次へと無限に出てくるのだ。だから端から一つずつ片付くていく。一つでも残せばそれが負けを意味することだとわかっているから。

 男は考える。自分の経験からいえば、一つ一つは大したことがない。けれどもやつ(、、)は数を武器に戦ってくる。多勢に無勢だ。この一人の戦いは厳しい。かなりの確率で負けるだろう。けれども自分は一度『やる』と言ってしまったのだ。ここで諦めるのは簡単だ。それでも自分にはなんとしてでも認めさせなくてはならないことがあるのだ。諦めることは絶対にできなかった。

 男が口を開く。

 「……まだだ。まだ食えっぞ」

男―悟空が言う。やつ―料理はその間にも他の使用人やメイドの手によって、次から次へと出されていた。

 ここは魔王城にある食堂。悟空は無駄に縦長のテーブルのお誕生日席に座って、出される料理と格闘していた。もうかれこれ二時間近く経っている。

 「魔王様、無理をなさらないでください。後でお腹を壊しても知りませんよ?」

ベリアルが飄々と言う。

 「へっ、構うもんか。それよりもあの約束を覚えってっだろうな?」

 「はい。魔王様がおっしゃった『オラはいっぱい食べっぞ!ここにある食べ物全部食うことができたら、オラは魔王じゃねえって認めろよ』でしたよね。一語一句漏らさず覚えていますよ?」

それは一つの賭け。何を言っても魔王は悟空だと言って聞かないベリアルに放った言葉だった。つまり、これは最後の希望。

 「…………」

悟空は無言で答える。なんせ出される料理はまだあるのだ。もう二時間近くも共に戦っている相棒―フォークを手に持ち己を奮い立たせる。しかし胃袋は限界に近かった。

 「……けど、オラはやらなくちゃなんねえんだ!!」

それは、世界を幾度となく救った男の姿だった。

 集中する。武道で培った動体視力で出される料理を瞬時に見抜き、鍛えられた瞬発力で手元に運ぶ。そして手に持ったフォークを使い食べ物だけを口に入れる。注意することはだた一つ。皿と飾りの食べられないところを食べないようにすること。

 けれども最初の勢いはない。もう限界だったのだ。

 「……へっ、あともう少しだな」

その言葉は本当だ。テーブルの上にある料理は残り三皿。しかも料理を出していた使用人の姿がない。これが最後なのだ。

 残る料理は、ミートパイ、シチュー、それにムニエル。

 まず比較的量の少ないムニエルを一口で食べる。もちろん付け合せのパセリも一緒に。次に水分補給がてらシチューを一飲みする。もちろん肉や野菜は喉に詰まらせないようによく噛んで。

 最後は量が少し多いミートパイだ。どれくらい多いかと言うと、普通の四人家族が腹を満たせる程度、といえばわかりやすいだろう。それに悟空は失敗したか、と思う。ミートパイは量が少し多い。つまり味が単調になるのだ。普段なら問題ないが、今は限界に近い。悟空は思う。半分食べてからシチューやムニエルを食べてから残り半分を食べたほうがよかった、と。でも、もう遅い。

 悟空はピンチヒッターであるナイフを手にとった。このナイフは一口では食べきれない時にいつも助けてくれた、頼りになる戦友だ。その戦友を使って、ミートパイを半分に切り分けて口へ運ぶ。半分の量でもかなりあるが、それを一口で食べる。そして最後の一口。最後だからよく咀嚼し、飲み込む。

 そして机の上からひとつ残らず料理が消え去った!

 「…………はは。これでオラの勝ちだな」

悟空が疲れきった声でベリアルに言う。

 「いいえ、まだ終わりではありません」

 「…………どういう意味だ?」

ベリアルの言葉は悟空をさらなるどん底へと落とす言葉だった。

 「今パンが焼きあがったようです。もちろんジャムとバターもありますから味についてはご心配なく」

その言葉に、悟空は初めて血の気が引いた。

 止めと言わんばかりに料理を出していたメイドの一人が言う。

 「もしお食事がお済みでしたら、デザートをお持ちしましょうか?」

メイドの言葉を最後に悟空は完全に気を失ってしまった。

 だから悟空には聞くことができなかった。「いつもはこの倍の量を食べておられたのに」というメイドの独り言を。

 

 

 

 

 

 「……はあああぁぁぁぁ…………。全く魔王様は一体どうなってしまったのか……?」

ベリアルがつぶやく。気を失った悟空をとりあえずベットに寝かしつけ、自分の部屋で一息ついていた。必要最低限のものしかない質素な部屋。しかしその床には大きな六芒星の魔法陣が描かれていた。

 「記憶喪失にいては医者に任せるとして、私はいつ記憶を取り戻されてもいいように勇者を強くするか。記憶喪失になられる前は勇者が強くなることを楽しみにしておられたからな」

 その時、コンコンとドアを叩く音が聞こえてきた。

 「お呼びでしょうか、ベリアル様」

 「待っていたぞ、アモス」

そこにいたのはベリアルの部下で、長い尻尾を持つ魔族だった。

 「お前の成すべき事は分かっているな?」

 「はい。人間界へと侵入し、勇者が強くなれるよう手引きをすること。それと、人間どもから効率的に食料を奪うように取り計らうことです。今までは行き当たりばったりでしたから」

ベリアルはアモスの言葉に頷き、労わるように言う。

 「すまないな。私一人の力では、お前一人を送るだけで手一杯なのだ。苦労をかける」

アスモは笑いながら言う。

 「構いません。寧ろ名誉なことです」

そして床に描かれた六芒星の魔法陣の中央に立ち、胸を張って言う。

 「行ってまいります」

人間界、その見知らぬ土地に一人で任務を遂行しに行く。その短い言葉には一体どれだけの意味が込められていただろうか?

 だからベリアルは何も言わない。

その代わりアモスを人間界へと転送する呪文を紡ぐ。

 「……我、万物の力を借り、異界への扉を開く」

魔法陣が赤く光る。アモスが不安がっている様子はない。むしろ嬉しそうにも見える。

 「我の祝福と栄光によって、彼の者を異界へと届けよ!」

ベリアルが言い終わると同時に、部屋全体が目映い光に包まれる。けれどもそれは一瞬。次の瞬間には、アモスはもういなくなっていた。

 「上手くやれよ」

そのつぶやきは、誰にも聞こえない。

 




書いていて思った。「あれ?何も進んでない??」
書きたいことはたくさんあるのになかなか筆が進まない。

それにしても、悟空に食いつぶされないほどの食料がある魔王城。なんて恐ろしいところなんだ!!
無印のころ、悟空は50万近く食べてやっと腹八分目でしたからね。一体魔王は普段どれだけ食べていたんでしょうかねえ・・・・?

次回はベジータの方で書いていきます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

現状把握

狭い部屋って本当に嫌だ。フュージョンの練習をしたら足をベットの脚にぶつけるし、手を電気の傘にぶつけて埃が落ちてきた。

広い部屋に住みたい。


 「……はあ、はあ…………ここまでくれば、やつももう追ってこないだろうな」

そう言って勇者は岩陰に身を隠しました。

勇者はせまりくる魔物から逃げていました。5mくらいの、頭が二つもあるワニの魔物です。勇者はまだ村から出発したばかりで武器もなく、弱かったからです。勇者は知らないことですが、これは頭に二本の角がある魔族が放った魔物でした。

 「よう!何やってんだ?」

 「わ!!」

勇者は突然後ろから声をかけられて驚きの声をあげました。

後ろを振り向くと一人の青年がいました。腰には一振りの剣があります。しかしその剣は状態が悪くボロボロでした。

 「静かに!今向こうに魔物が…………!」

 「ふ~ん………」

そう言うと青年は腰にさした剣をふって、あっという間に魔物を倒してしまったではありませんか!その代わり、剣はあっという間に崩れて使い物にならなくなってしまいました。

 使い物にならなくなった剣をポイっと捨てて、青年は言います。

 「よっと。こんなもんでいいか?」

勇者は目を白黒させてお礼を言いました。

 「えっと………助けてくださりありがとうございます!それにしても強いんですね!

それと剣が使い物にならなくなったみたいですけど大丈夫なんですか?」

 「そんなんじゃあねえよ。オレはただ腹が減っていただけだ。

剣は……まあ、いつものことだ。その辺の盗賊からとった安物だしな」

勇者は驚きました。青年の腹が減っていた、という言葉に対してです。

 「えっ?これって食べられるの?!」

 「当ったり前だろ!料理すれば結構うまいんだぜ、これ」

そう言って青年は魔物の死体を担いで歩き出しました。

 「オレの剣はもう使い物にならないからな。街まで行って、一緒に食おうぜ!」

そう言って青年はニッと笑いました。

その言葉に、勇者はとても喜びました。

 「本当に?!実ぼく、魔王を倒すために村を出てからまだ何も食べていないんだ」

 「ふ~ん。お前も大変なんだな……」

すると青年は驚くべきことを口にしました。

 「なあ、オレもついて行っていいか?」

 「え?」

 「だから、オレもその魔王を倒す旅について行くって言ってるんだよ!」

勇者は戸惑いながら尋ねます。

 「もちろん大歓迎だけど、本当にいいの?」

 「ああ。オレはさ、これでも一応剣士で今は武者修行の旅の最中なんだ。だから魔王を倒しに行くっていうのは願ったり叶ったりなんだよ。それに………」

 「それに?」

青年―いえ、剣士はニヤリと笑いました。

 「面白そうだからだ!」

勇者は思いっきり吹き出して笑いました。

 「これからよろしく」

 「ああ、一緒にやっていこうぜ!」

こうして、勇者の旅に剣を持たない剣士が加わりました。

                           「勇者の冒険」より抜粋

 

 

 

 

 

 さて、悟空が診察を拒否して逃げ回っている頃、ベジータはといえば、

 「カカロットの奴が魔王でオレが勇者だと?ふざけるな!!」

ものすごく機嫌が悪かった。

 ちなみにベジータは青い鎧をきている。脱いだところで、ほかに着るものがないからだ。

 「しかもオレがあの貧相な村の出身だと?!」

どうやら村の人たちから色々と話を聞いたらしい。

 「オレは………!」

サイヤ人の王子なんだ。そう言おうとして、

 「………」

やめた。

 思えばフリーザの下で働いているとき―いや、言いなりになることしかできなかったときは、こう言って自分の存在意義を確立してきた。そう言わないと自分がどこにでもいる普通の人になってしまうような気がしたからだ。

 サイヤ人の王子だと口に出して言わなくなったのはいつからだろうか?

そしてベジータは、

 「…………フン、くだらん」

考えるのをやめた。そして拳を前に突き出す。風が吹く。草が、木が、揺れる。また突き出す。

 いつもの修行だった。そうしているうちに少し機嫌が直ってきた。

 修行している間は、自分が強くなることだけを考えていればいいからだ。

 「ん?」

 しばらくすると、ベジータは自分に近づいてくる気に気がついた。明らかに人間の気ではない。

 「GYOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」

現れたのは頭が二つある5mくらいの巨大なワニの魔物。それが雄叫びを上げて走ってくる。

 そう。なぜか一直線にベジータに向かって。それにベジータは、

 「消えろ」

ただ一言だけつぶやく。そう言って、右手を魔物に向かって突き出す。右手に少しだけ気を込める。そして気功波を出して二つの頭だけを消滅させた。そう、気功波。ファイナルフラシュでもなく、ビックバンアタックでもなくただの気功波だった。

 それで終わり。いともあっさりと魔物を倒してしまった。

 ………まあ、ベジータだから当然といえば当然かもしれないが。

 「ウォーミングアップにもならなかったな」

そう言ってあたりを見回す。誰もいない。

ぐー…………

ベジータの腹の虫が鳴った。そして横には倒したばかりのワニの魔物の死体。

 「…………美味ければいいんだがな」

 

 数分後、ワニの魔物の死体はベジータの手によってこんがりと焼かれていた。

それをベジータは一口食べた。

 「…………」

眉間に皺を寄せる。どうやら不味かったようだ。まあ、塩やこしょうがない上に血抜きもせず、ただ焼いただけの肉なんぞ不味くて当然なのだが………

 「………フン」

また一口食べる。これしか食べるものがないし、何よりお腹が空いていたからだ。

 そんな今の自分の状況に、ベジータは昔を思い出していた。

 「そいうえば、昔はよくこうしていたな………」

それは自分がフリーザ軍の兵士としてほかの惑星を攻め落としていた時のこと。攻め落とし、異星人を皆殺しにして、その殺した異星人を、『食べて』いた。

 「…………」

 地球に馴染んだ今から思い出しても、それが間違った選択だとは思っていない。むしろ食べていなくては、きっと死んでいだのは自分だ。だから後悔はしない。それにこの肉は、その時に食べていた異星人よりも幾分うまい。だがブルマの作った料理には足元にも及ばなくて………

 「………クソッ!」

なぜかブルマのことを思い出してしまった。

だからそんな考えを頭の中から追い出すように、また肉をほうばる。

 すると、またこちらに何かの気が近づいてくるのを感じた。けれど今度はそちらに顔を向けない。見知った気だったからだ。

 「パパー!」

 「トランクス、お前も来たのか」

そう、面白そうだからと悟天と二人で来たトランクスだった。だが悟天は近くにいない。

 「ところで……なんだ、その剣は?」

ベジータはトランクスの腰に下げられたボロボロの剣を指差しながら聞く。

 だけどそれよりも気になったことがあったのか、トランクスは声を荒げて、

 「パパこそなんでその青い鎧着てるの?魔王をやっているんじゃ………ま、まさか勇者から奪い取ったの?!!」

と聞いた。ベジータは、何を言っているんだ、というようにトランクスの言葉を訂正する。

 「違う。ここへ来たら服がこの鎧になってたんだ」

 「え?ってことは……パパが勇者?!」

ベジータは舌打ちしながら、何も知らないであろうトランクスにこんなことを教えた。

 「カカロットのやつは魔王と呼ばれているらしい」

ベジータの言葉に、トランクスは大げさとも思えるような声を出す。

 「嘘だあ!」

 「そう思いたいのなら、勝手にそう思っていろ」

そう言ってベジータはまたワニ肉を食べ始めた。どうやらこの話はこれで終わらせたいようだ。

 一方でトランクスはまだ戸惑っている。

 「え、ってことはパパが勇者で悟空さんが魔王………。それで、この話は勇者が魔王を倒して終わるから………」

トランクスは冷や汗をかきながらベジータに聞く。

 「…………パパ、勇者のパパは魔王の悟空さんに勝てるの?」

 「なぜそんなことを聞く?」

 「いや、その………ここから出るには、この本の話を終わらせなくちゃいけないみたいで………で、この話は勇者が魔王を倒してめでたしめでたしだから………」

トランクスがそーっとベジータをみる。

 「…………」

 どうやらベジータもこの状況が分かったようだ、しかし何も言わない。いや、何も言うことができないのか。

 「パ、パパ?」

 「……カカロットなんぞこのオレが少し修行すれば必ず倒せる」

ベジータはそう言った。だけどトランクスも馬鹿じゃあない。だから二人の実力もわかる。

 「悟空さんに勝てるの?」

 「……当たり前だ」

一瞬の間があり、答えた。それだけでトランクスは分かってしまった。

 すなわち、本から出るのは難しい、と。

 「……パパ、俺もこの肉食べていい?」

もうこうなったら現実逃避である。

 「好きにしろ」

そう言われて、トランクスはベジータの横に座り肉を一口ほうばる。とたんに顔をしかめる。

 「うわ……まず」

 「そりゃあそうだろ。なんせただ焼いただけだからな」

 「………」

それでもトランクスは食べる。お腹が空いているとかそういう問題ではない。ただ単に、残すのがもったいないからだ。

 しばらくしてベジータがさっきの質問をもう一度してきた。

 「トランクス、その腰にさしたボロい剣はなんだ?」

 「これ?ん~……見ての通りすぐに壊れるボロい剣だよ。」

ベジータは訳がわからない、という顔でまた聞く。

 「なぜそんなものを持っている?」

 「もしかしたら俺、剣を持たない剣士かもしれないから、かな?」

なぜか最後は疑問形だった。

 「オレに聞くな。それよりもなんだ、剣を持たない剣士というのは?」

 「『勇者』の一番最初の『仲間』だよ。でも笑っちゃうよな、剣を持たないのに剣士だなんてさ」

笑いながらそう言った。

 しかしベジータは笑わなかった。代わりにこんなことを言い出した。

 「未来からやってきたお前の話は覚えているな?」

 「え……ああ、未来を変えるためにタイムマシーンに乗ってやってきた『トランクス』のこと?うん、覚えてるよ。ママも、悟飯さんも話してくてたしね」

トランクスは突然こんな話が始まって不思議そうだ。

 「ならあいつが剣を持って戦っていたことは知ってるか?」

トランクスは大きく頷く。

 「その剣でフリーザとその父親をやっつけたんでしょ?でもその後クリリンさんの奥さんと戦った時に壊れ………あれ?」

どうやら共通する部分を見つけたようだ。

ベジータが少し笑いながら言う。

 「壊れるまで、その剣で戦ってみるのも悪くないと思うぞ」

 そんな風に言われて、トランクスはもう一度剣を見る。かざしたり、軽く振ってみたりする。

 「俺、ここにいる間は剣で戦ってみるよ」

そう宣言した。ベジータは満足そうな顔をしている。

 「よーし、その意気だ。いろんな戦い方を身につければ、それだけで強くなれる」

どうやらトランクスを強くしたくて、こんな提案をしたようだ。

 「それに、例えものにならなくても、いい経験になるなからな」

ワニ肉を食べ終わったベジータは、立ち上がってトランクスに言う。

 「よし、そうと決まれば早速修行だ」

 「は、はい!」

こうしてトランクスの、剣を使った初めての修行が始まった。

 「やあああああ!」

 「そんなものか、トランクス!」

そう、一緒に来たはずの悟天のことなどすっかり忘れて。

 




わかる人はいないと思いますが、勇者の一人称を俺からぼくに変更しました。

 ところで、ヒルデガーンと未来悟飯と未来トランクスの力関係ってどうなっているんでしょうかね?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

悟天合流

 え~・・・実はこの小説を読んでくださっている方に謝らなければならないことがあります。
感想に「悟空が魔王になったことについて、その適応についてどうなっているの?」と質問がありましたが、おいおい書きますと言い説明しなかったことがあります。
 その理由はいたってシンプルです。何を隠そうそのことについては何も考えていなかったからです!(一応考えたのですが、何も思い浮かばなかったんです)まあ、魔王が記憶喪失うんたらかんたらは、本来魔王であるはずの人(?)がこんな行動を取ったら周りの人はこう思うだろうな~と思っって、そういうことにしました。
 「魔王が悟空で勇者がベジータだったら面白そうだな~」という軽い気持ちで書いたものなので皆様もそれくらい軽い気持ちで読んでくださると嬉しいです。


~あらすじ~

 ブルマによって半ば強引に本の中に入れられた悟空とベジータ。(あと面白そうだからと入った悟天とトランクス)本から出るには魔王になった悟空を勇者になったベジータが倒さなければならない!

 さあ、ベジータは悟空を倒すことができるのか?!

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔物を倒しに行く勇者と剣士。勇者は剣士に剣の修行をつけてもらっていました。ただ、使っているものは真剣ではありません。木刀にもならないような棒きれです。

 剣士が笑って勇者に言います。

 「やっぱお前素質あるよ。そのうちオレよりも強くなるんじゃないか?」

剣士はそう言いますが、勇者は剣士に負勝ったことがありません。

 「ううん。そんなことないよ。ぼくなんかまだまださ」

でも剣士にはわかります。勇者が自分よりも剣の素質があり、そのうち自分を追い越す実力があることを。

 「さあ、もう一度だ!」

 「ああ!」

剣の修行が再開し、カンカンと木がぶつかる音があたりに響きます。

 しかし、二人が修行しているところに、一人の少女がやってきました。長袖の服を着た、緑色の髪の可愛らしい少女です。

 「あの!あなた方があのワニの魔物を倒した人たちですか?!」

剣の修行をやめて、勇者は言います。

 「いいや、それはそこの剣士のこと。ぼくは見ているだけしかできなかったからね。それよりも何か用かい?」

少女は何かを決心したかのように言います。

 「実は、盗賊から魔法の杖を奪われてしまって……取り返すのを手伝って欲しいんです!」

それを聞いた剣士は面白そうに言います。

 「へえ!魔法の杖?もしかして君って、魔法使い?」

 「は、はい……ただ杖がないので魔法を発動することもできないんです」

少女、もとい魔法使いはがっくりうなだれてそう言いました。

 「でもなんで盗賊は魔法の杖なんかをとったりしたのかな?」

不思議そうな勇者に魔法使いは説明します。

 「私の杖には、特殊な鉱石が使われているんです。それが高値で売れるので、狙ったんだと思います」

そう言うとまた落ち込んでしまいました。

 そんな魔法使いを勇者は元気づけるように言います。

 「大丈夫!ぼくたちが取り返してあげるよ!」

剣士も言います。

 「おう!盗賊なんて、腕試しのちょうどいい機会だ!」

 盗賊から魔法の杖を奪い返して欲しい。そんなムチャクチャな願いをすぐに聞き入れてくれた勇者と剣士。魔法使いは、嬉しくて涙が出そうでした。

 「……ありがとう」

                             『勇者の冒険』より抜粋

 

 

 

 本の中に入ったベジータとトランクス。トランクスはいい機会だからと、ここでは剣を使って戦っていくことにした。それに伴ってベジータに稽古を付けてもらっていた。いたのだが………

 「……随分とあっさり壊れたな」

 「……うん。まあ、本でもワニの魔物を倒しただけであっさりと壊れちゃったからね」

あっさりと壊れてしまった。真っ二つにポキンと折れたのならまだわかる。だが根元からバラバラになってしまったのだ。そう、バラバラ。地面にはいくつもの剣の破片が転がっている。トランクスの手の中には剣の柄の部分しかない。

 ことの顛末はこうだ。

 トランクスがベジータに剣を振る。しかしその動きは遅く、躱されてしまう。そして間髪いれずにトランクスはベジータに剣をつく。ベジータは剣の腹を手で押し、軌道を逸らすことで攻撃を回避する。しかしそこで剣がメキメキを音を立てて壊れてしまったのだ。

 つまり………ベジータが剣を手で押しただけで壊れてしまったのだ。それは剣がもともと壊れやすかったからか、あるいはサイヤ人の力故なのか……おそらくは後者が大きいだろう。

 ベジータがトランクスに聞く。

 「ワニの魔物?」

 「うん。頭が二つある、5メートルくらいのワニ」

 「ああ、あれか」

ベジータは何か納得したように頷く。

 「パパ、知ってるの?!」

 「お前が不味いと言いながら食べたあの肉がそうだ」

 「……マ、マジかよ」

 二人はこちらに近づいてくる気を感じた。よく見知った気だ。

 「トランクスくーん!あ、ベジータさんもこんにちは!」

すっかり忘れ去られていた悟天だった。いつもの道着ではなく長袖の服を着ている。

その服に見覚えがあったトランクスは悟天に聞く。

 「なあ、悟天。魔法の杖っぽいの持ってなかったか?」

 「え?うん持ってたけど………」

 「けど?」

 「近くにいたおじさん達が欲しいって言ったからあげちゃった!」

その悟天の言葉にトランクスは頭を抱えた。

さらに聞く。

 「……な、なあ悟天。その『おじさん達』ってどういう人だった?」

 「ん~とね………なんかいかつい顔の人たちばかりで……」

 「で?」

 「自分たちのことを『盗賊』って言ってたよ……ってどうしたの、トランクス君?そんなに頭を抱えてさ」

 「……いや、自分から盗賊に進んで物を差し出す人がいるんだな~と思ってさ………」

そんな会話を聞いてたベジータは訳がわからないというふうにトランクスに聞く。

 「おい、トランクス。一体何をそんなに悩んでいるんだ?」

そんなベジータにトランクスは、本で読んだことを思い出してベジータに教える。

 「えっと……その杖には特殊な鉱石が使われていて、それが結構高く売れて………」

そこまで言いかけてベジータがわかったように頷く。

 「なるほど。『勇者御一行』はその杖を売って路銀にするのか」

 「え?!いや、ちょっと違……」

訂正しかけたところで悟天が無邪気に、というか空気を読まずに聞く。

 「ねえ、『ろぎん』ってなあに?」

トランクスが答える。

 「えっと、旅に必要なお金とかそういう意味だったばず。………って杖は売らな……」

 「そっか!お金って大事だもんね!」

トランクスは『杖は売らない』ということをどうやって説明しようかと考える。でも悟天が魔法を使っているところが想像できなくて………というか、いつも魔法みたいな力を使って空を飛んだり攻撃したりしているのを思い出して、

 「……うん、そうだよな……。お金って大事だよな………」

説明するのを諦めた。

 「おい、悟天!その盗賊とやらの気を覚えているか?」

ベジータが悟天に聞く。

 「うん!なんか嫌な気だったから覚えてるよ。あっちの方!」

そう言ってトランクスの後ろの方を指差した。

 「なんで嫌な気がする奴に杖を渡しちゃったんだよ………」

 「え?だって持ってたって邪魔だったんだもん!」

 「………」

この時トランクスは思った。自分は、自分だけはしっかりしていないと、と。

 「盗賊か……少しは骨のあるやつがいればいいんだがな」

 「お金があったら~……お菓子とおもちゃが欲しいなあ!」

 「……はあ……もうどうでもいいか………」

こうして盗賊の元へ、悟天が自らあげた杖を強奪しに行くという、どっちが盗賊だかわからないことをすることになった。

 「ところでトランクス君、その手に持っているの何?」

 「……剣だったものだよ」

 

 

 

 

~ある盗賊の日記~

 今日は散々な日だった。途中までは良かったんだ。なぜか魔法使いしか持たないような杖を年端もいかない子どもが持っていたんだからな。案の定なんの価値も知らずに、あっさりと渡してきた。強奪したんじゃあねえぞ!こっちが欲しいって言ったら、向こうが進んで渡してきたんだ!向こうが進んで渡してきたんだ!!(ここ重要!)

 杖には特殊な鉱石が使われているからな。後はそれを街に持っていって売るだけ。そうすれば当分は仲間30人、遊んで暮らせたんだ。そう、後は売るだけだったんだ。

 それなのにどうだ!アジトへ帰ったと同時にあの時の子供がきやがった!しかも青い鎧を着た男と、もうひとりの子供のおまけ付きで!

 何も問題ないと思ったんだ。こっちは三十人。向こうは三人。所詮は多勢に無勢、しかも子供、いやガキが二人に大人が一人だ。どう考えたってこっちが勝つ。そいつらが入ってきた瞬間、誰もがそう思っていた。

 それなのにどうだ!男が入ってすぐに、親分が『なんだテメエは!?』そう言おうとしたんだ。それなのに『なん……』までしか言えなかったんだ!親分が男によって吹っ飛ばされたからだ!!

 男の動きは、俺には全く見えなかった。一瞬消えたと思ったら、後ろにいた親分が吹っ飛ばされていたんだ!それで男はなんて言ったんだと思う?『一番強い奴はどいつだ?』そう言いやがったんだ!!そんなの親分が一番強いに決まってるじゃねーか!その親分が男によって倒されて伸びている。もう絶望的な状況だった。全員体が動かなかった。

 俺の兄貴は最高だと思う。こんな状況でも指示を出してくれたんだからな。まあ、『全員でかかれ!』なんて作戦もへったくれもないような指示だったけど、その指示のおかげで俺たちはなんとか体を動かすことができた。

 だけど、男との実力差は圧倒的だった。なんせ相手はひとりだっていうのに十秒もしないうちに二十人がやられたんだ。

 その時、兄貴が俺に目で指示を送ってきた。目線の先にはガキが二人。そこからの行動は素早かった。駆け出すと同時に腰のナイフを取り出し黒髪の方のガキの首筋にナイフを当てる。そしてこう叫んだんだ。『こいつの命が惜しければ大人しく言うことを聞け』ってな。

 だけどそこから先は覚えてねえんだ。ガキの体勢が崩れた、と思ったら顎に衝撃が走って、気がついたらベットの上だった。どうやらガキに一発お見舞いされて気を失っちまったらしい。

 兄貴に話を聞くと………まあ、聞くまでもなく結果は惨敗。杖はもちろん食料と有り金全部取られた。つまり俺たち全員無一文だ。俺はというと、ガキにお見舞いされたおかげで顎が骨折。歯も5本折れた。おかげで喋れないし飲み食いができない。一体俺たちが何をしたって言うんだ?!

 今日は本当に散々な一日だった。

 あの男……は敵いそうもねえからガキの方、いつか絶対ぶっ殺してやる!

                             ある盗賊の日記より抜粋

 

 

 

 

 一方その頃、悟空はというと、

 「……な、なあベリアル、あと何枚の書類にサインしなきゃなんねえんだ?」

ここは魔王城の執務室。

悟空はというと、なぜか書類に押しつぶされて死にかけていた。

 「なあに、あとほんの二百枚ほどですよ。」

ベリアルと呼ばれた、頭に二本の角が生えている魔族がそう答えた。

 あと二百枚と聞いた悟空は、

 「………勘弁してくれよ………」

と力なく答えた。

 「これも魔王様の仕事のうちですよ。やってもらわないと路頭に迷うものが約三千人、明日のご飯が食べられない者が約5千人出てくるのです。まあ、その者達がどうなってもいいというのなら、気絶するなり寝てしまうなりなんなりしてくださっても結構ですよ」

そいってベリアルは部屋から出て行った。

 「もうやだ………こんなところ……」

ここで悟空はブルマの言葉を思い出した。

 「そういえばブルマはベジータを倒せばいいようなこと言ってたっけな……。これが終わったらベジータと組手でもすっか!」

悟空は、ベジータと組手をするという予定が立って、だいぶ元気になった。

 出て行ったベリアルが戻ってきた。しかもなぜか手には書類が山ほどある。

 「魔王様、申し訳ありません追加であと三百二十八枚お願いします」

それを聞いた悟空は机に突っ伏した。

 




 ベジータと盗賊。一体どっちが悪党なんだか・・・

 というかこの調子で本当に魔王の悟空を倒せるのか不安になってきた。
修行回でも入れようかな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

本にもう一人入るようです

防音室が欲しい。
しゅ、趣味のサックスを練習するためなんだからね!別に『魔貫光殺砲』とか『気円斬』とか大声で練習したいわけじゃあないんだからねッ!!


~あらすじ~

 本の中に入った悟空、ベジータ、悟天、トランクス。悟空は魔王の仕事である書類仕事に悪戦苦闘。ベジータと悟天とトランクスの三人は盗賊(三十人)から食料金品を強奪。

 本から出るには勇者のベジータが魔王の悟空に勝たなくてはならない。

 こんな調子で、果たして出られるのでしょうかね?

 

 

 

 

 

 ここはカプセルコーポレーションのブルマの研究室。そこに何故かヤムチャがいた。

ブルマが聞く。

 「ねえヤムチャ、本当にいいの?確かに入ってもらたほうがデータがたくさん取れていいんだけど……」

ブルマの言葉を遮るようにしてヤムチャが言う。

 「何言ってんだよ、水臭いな。ここんところ暇だったからな。ここへ来たのだって暇つぶしだ。それに悟空やベジータ………はともかく、トランクスや悟天が本から出てこなくて心配なんだろ?」

ブルマが心配そうに言う。

 「そりゃあそうだけど………あんた、あいつらに比べて弱いでしょ?」

そんなブルマの言葉にヤムチャは困ったように笑いながら言う。

 「厳しいこと言うなあ~………。確かに俺はあいつらに比べたら弱いけどさ、それでも地球人の中じゃあ結構強い方なんだぜ?それに…………」

 「それに?」

ヤムチャは少しおどけたように言う。

 「もし強い奴がいても、悟空やベジータがすぐやっつけるだろ?」

その言葉にブルマは笑いながら言う。

 「それもそうね。それじゃあ頼んだわよ」

 「おう!」

ブルマがシルクハットに傘を持ったロボット―おとぎマシーンをヤムチャのもとに持っていく。

 「おや、また誰か入るのですか?」

相変わらず人間のように流暢にしゃべるロボット。そんなロボットに驚きもせず、ヤムチャが答える。

 「ああ、俺が入ることになった。よろしくな!」

 「はい、よろしくお願いします。それでは本を後ろの壁に立てかけてもらえますか?」

ヤムチャは『勇者の冒険』と書かれた本を壁に立てかけた。

おとぎマシーンが掛け声をかける!

 「ちゃんとまっすぐに立ってくださいね?いきますよ…………本に~入れや!」

次の瞬間、ヤムチャは悟空やベジータたちと同じく本に吸い込まれるようにして入っていった。

 「早く帰ってなさいよ………」

その時、研究室に飛び込むようにして入って来る者がいた。

 「ヤムチャ様!あれ?ブルマさん、ヤムチャ様はどこですか?」

 「あら、プーアルじゃない。今までどこに行ってたの?」

 「さっきまでお手洗いに………ってそんなことはどうでもいいんですよ!トイレの窓から外を見たら女の人が『ヤムチャはどこにいるの?!』って鬼のような形相でこっちに向かってくるのが見えて……」

それだけでブルマはどんな状況なのか分かってしまった。

 「つまり、ヤムチャはまた彼女と喧嘩したわけね。それでここに逃げてきたと………。全く、なにが暇つぶし、よ!」

男女の修羅場に進んで巻き込まれたいと思う人はいない。だからそんな状況に巻き込まれてしまったブルマは、ここにはいないヤムチャに向かって文句を言う。

 「はああ。あ~あ、………全く、ヤムチャは相変わらずね」

文句を………

 「そういえば、ブルマさんも昔はよくヤムチャ様と喧嘩してまたね」

 「ふふ。懐かしいわね~。丁度その頃だったわ、孫くんのお兄さんのラディッツって人が地球に来て、そんでもって孫くんが死んじゃったのは」

 「その後に来たベジータさんにヤムチャ様は殺されちゃって………」

 「で、わたしがそのベジータと子供を作っちゃうんだものね~。ほんと、世の中どうなるかわからないわよね」

ブルマの心は大きかった。

 「ところで、ヤムチャ様はどこにいるんです?」

ブルマは『勇者の冒険』と書かれた本を指差して言う。

 「その中」

 「へ?」

世の中、どうなるかなんてわからない。

 

 

 

 

 

 ここはとある村の酒場。勇者と剣士と魔法使いは盗賊たちを見事に倒し、勝利の祝杯を上げていました。

 勇者が剣士に言います。

 「盗賊たちの剣を奪っては切りつけ、また奪っては切りつけて。あっという間にやっつけちゃうんだもん。ぼくなんて五人くらいしか倒せなかったよ。」

勇者に褒められても剣士は浮かない顔です。

 「いや、そんなことねえよ。振るった剣、みんな壊しちまったからな。奴らの使ってた剣が安物だってことを差し引いても、壊しちまうのはよくねえよ。まだまだ未熟だってことさ」

剣士が勇者に向き直って言います。

 「それよりもさ、よく盗賊の親分を倒せたな!鍛えていて強くなったなあ……とは思ってたけど、まさかあんな強い奴を倒しちまうなんて思わなかったぜ!」

その言葉に勇者は首を振ります。

 「そんなことないよ。あいつの方が明らかに強かった。ぼくが勝てたのなんて運が良かったからだよ。

 それにあの時魔法で怪我を治してくれなかったら、ぼくはこうして生きていられなかったからね。助けてくれてありがとう」

そう言って魔法使いにお礼を言いました。

魔法使いは少し照れたように言います。

 「私はそれしか特技がないから………。教会にいた頃も他の魔法は全然発動できなかったの」

 「は!?お前、教会にいたのかよ!

剣士は驚いて魔法使いに聞きました。

 「う、うん。私はお父さんもお母さんもいないから……」

そう言って悲しそうに目を伏せました。

けれども剣士はさらに聞きます。

 「ん?普通そういう場合はシスターか僧侶になって、教会で街の人たちを助けたりするんじゃないのかよ?」

 「えっ……そ、それは……その…………」

そう言って魔法使いは黙ってしまいました。

 勇者は剣士を窘めます。

 「もうやめなよ!変なこと聞いてごめんね」

魔法使いは首を振って答えます。

 「ううん。あなたが謝ることなんてないの。変なのは『私』だから……」

魔法使いが何かに思いつめて言った言葉に、勇者と剣士は何も言えませんでした。

 そんな雰囲気を壊すように勇者がわざと明るく言います。

 「そんな顔しないで。いっぱい美味しいもの食べて、嫌なことは忘れちゃおうよ!!」

 「……ありがとう」

 そしてまた楽しく食べ始めました。

 勇者が魔法使いに聞きます。

 「そういえば君はどこに行くの?ぼくらは魔王を倒しに、人間界と魔界をつなぐ『銀鏡の湖(シルバーレイク)』へ行くつもりなんだ。魔界へはそこを通らないといけないからね。もっとも、高位の術師になれば魔法でいけるって聞いたことがあるけどさ」

魔法使いは驚いて答えます。

 「え?あなたたちも?!」

 「なんだ、お前も行くのか?ずいぶん物好きだな」

剣士が可笑しそうに言いました。

 それもそのはず。銀鏡の湖(シルバーレイク)は勇者たちのいる場所から山脈を二つ、川を三つ超えた先の森の奥にあり、人が立ち入らないようなところにあるからです。

 「……あ。いえ、私は……その………」

 「丁度いいや。一緒に行こうよ。他にも盗賊がいるかもしれないし、道中危ないよ」

 「………」

魔法使いは黙って下を向いてしまいました。何かを考えているようです。

 「それとも、もしかして他に一緒に行く人がいるの?」

 「だけどな、一人で行こうっていうのはなしだからな」

魔法使いは何かを決意したように前を向きました。

 「………ちょっとこっちに来てください」

魔法使いはそう言って、酒場の奥の人目につかないところまで歩いて行きました。

勇者と剣士も後に続きます。

 「え?!ちょ、ま!!」

 「わああああ!一体何やってるの?!」

剣士と勇者がうろたえました。なんと魔法使いは、着ていた長袖の服を脱ごうとしていたからです。

 当然のことながら勇者と剣士は男で、魔法使いは女の子です。

 「これを見てください」

魔法使いは長袖の服を脱ぎました。

 「「!!!」」

勇者と剣士は息を飲みました。

 そこにあったのは少女の白い肌に発育が期待される膨らみかけた胸………ではありません。明らかに人間のものではない鱗でした。少女と同じ緑色の髪の鱗です。それが体の中心から広がるようにしてあったのです。

 勇者と剣士がその鱗を見るのを確認した魔法使いは服を着ました。

 「………初めは胸の辺りの皮膚が固くなったことだったんです」

少女がぽつりぽつりと語り始めました。

 「……それがだんだん緑色になり、鱗になって……どんどん広がっていきました」

 少女はそこで言葉を切りました。まるで、何から話せばいいのかを考えているようでした。

 勇者と剣士はじっと待ちました。

 「ある日、教会の前で赤ん坊を抱いたひとりの女性が倒れていたそうです。ですけどその女性はひどく衰弱していて、次の日に亡くなったそうです」

剣士が言います。

 「まさかその赤ん坊って………」

魔法使いは頷いて答えます。

 「はい。母は事切れる前『娘のことをよろしくお願いします』と言ったそうです」

 「あ、あの……えっと、その……」

勇者は声をかけますが、言葉になりません。

魔法使いはにっこり笑って、

 「大丈夫です。そういうのは珍しくないので」

と言いましたが、その顔は今にも泣き出しそうでした。

 「私の鱗は見た通り、人間のものではありません。調べたところによると、人間と魔族が交配することによって生まれることがあるそうです」

勇者と剣士はなんとなく話が見えてきました。

 「じゃあ、銀鏡の湖(シルバーレイク)に行くっていうのはもしかして……」

勇者の問いに魔法使いは頷いて答えます。

 「はい。魔界に行けば父に、お父さんに会えるかと思って………私はもう教会にはいられないから」

それを聞いた剣士は、厳しい顔で尋ねます。

 「お前さ、父親に会えば自分の抱えていること、全部解決すると思ってんのかよ?」

 「っ!」

その物言いに勇者は慌てました。

 「ちょ、やめなよ!こんなにもお父さんに会いたがっているのに、そんな言い方……」

 「魔界に行ったところで父親に会えないかもしれない。もし会えたとしても、お前を娘だと認めてくれないかもしれない。もしかしたら父親も死んじまっているかもしれない!それに………」

剣士は続けて言います。

 「もしそうなったら傷つくのはお前なんだぞ!!」

声を荒げてそう言いました。

その時の剣士の顔がちょぴり赤くなっていたことが、勇者にだけはわかりました。

 「………のよ」

魔法使いが小さな声で言いました。

 「え?なんて言ったの?」

勇者が聞き返します。

 「あなたには解らないのよ!」

今度は大きい声で言いました。

 「教会でいつも治療していた町の人が、この鱗を見て私のことを『化物』って呼ぶ。その気持ちがわかるっていうの?!」

 「…………」

剣士は何も言いません。

 「………私には夢があったの。どんな重傷の怪我でも、治せないのもあるけど病気も治すことのできるこの力で、町の人たちを助ける僧侶かシスターになるっていう夢が………。でも、いつも頼っていた人がこの鱗を見るなり手のひら返し。神父様はここにいてもいいっておしゃってくださったけど、もう無理。私には、もう、ここに居場所なんてないのよ………」

勇者と剣士は黙って聞いています。

 「……私は、『お父さん』に会いたい…………。例え、私を娘だと思ってくれなくても。お母さんが死ぬ直前まで私を思ってくれた。そんなお母さんはもういない。私にはもうお父さんしかいないの!」

魔法使いが勇者と剣士に向き直って言います。

 「だから私はあなたたちと一緒に行くことはできません。今まで私に良くしてくれてありがとうござい………」

 「そんなこと言うなよ!」

剣士が怒鳴るようにして、魔法使いの話を遮ります。

 「そうだよ。ぼくらがそんな理由で可愛い君を除け者にするはずないじゃないか!」

勇者の言葉を魔法使いは否定します。

 「可愛くない!私には鱗があるの!!鱗は今でも広がり続けてる。それに私は結構体が丈夫なの。だから一人で旅を………」

 「じゃあなんで!」

剣士は言います。

 「なんでお前はそんな辛そうな顔で泣いてるんだよ?!」

 「え?」

そう言われて、魔法使いは初めて自分が泣いていることに気づきました。

 「え?あれ?………教会を出るとき、もう泣かないって決めたのに………」

魔法使いは手で涙を拭きますが、次から次へと溢れてきます。

 「辛い時は無理するなよ。そのための『仲間』だろ」

 「………仲、間?」

勇者も頷いて言います。

 「そうだよ。盗賊の親分にやられたとき、君が魔法で治してくれなかったら、ぼく死んでたもん。君がいないと困るんだよ」

魔法使いがうつむいて言います。

 「………私、一緒にいてもいいの?だってあなたたちは魔王を倒しに行くんでしょ?私のお父さんは魔族で人間じゃないし………」

剣士が言います。

 「あんな死にかけた人を、魔法といえど一瞬で治すのはかなり難しいはずだ。お前はそれをあっさりとやってのけた。それだけ努力したんだろ?そんな人が悪い奴じゃないってことくらいは分かるさ」

勇者も言います。

 「魔物たちはさ、魔王のために食料を奪ってるんだ。それってさ、魔界にある食料だけじゃあ足りないってことだろ?ぼくの予想だけど、きっと他の魔族や魔物もそんな魔王にうんざりしてると思うんだ。それに、ぼくはこう見えても『勇者』だからね。困っている可愛い女の子を放ってはおけないよ!」

魔法使いは聞きます。

 「………一緒にいてもいいの?」

勇者は答えます。

 「もちろん」

 「………仲間になってもいいの?」

 「もうなってるじゃないか」

 「………町の人たちみたいに、私を『化物』って呼んだりしない?」

 「そう呼んだりなんて、絶対にしない」

勇者は魔法使いに手を差し出して言います。

 「ぼくたちと一緒に行こう!」

 「………ありがとう!」

勇者の手を取ってそう言った魔法使いは、今度は嬉しさで泣き出しました。

 そんな様子を影で見つめる者が一人。

 「勇者の一行に魔族のハーフ………。これは報告しておいたほうが良さそうですね」

そう言って、なんと長い尻尾が出てきました。それは人間ではない、すなわち魔族であることの証拠でした。

 「おっと、危ない危ない。全く、長い尻尾は邪魔ですね。さて次は…………王都へ行き、どこの村に大量の食料があるのかを調べなくては。せっかく魔物で襲わせても、何もなかったじゃあ洒落になりませんから」

そうして、その魔族はいつの間にか消えてしまいました。

 

 弱い勇者と、剣を持たない剣士と、僧侶になれなかった魔法使い。三人の旅は、まだ始まったばかりです。

                              『勇者の冒険』より抜粋

 

 

 

 

 さて、盗賊から食料金品を強奪したベジータ、悟天、トランクスの三人はといえば、

 「で、トランクス。本当にカカロットはこっちに来ているんだろうな?気が感じられんのだが?」

 「うん、絶対に来てるよ。だって入るところをこの目で見たからね。………って、あ!悟天それオレの肉!!」

 「へへ、早い者勝ちだよ!」

食事の真っ最中だった。奪った食料だけでは足りず、奪った金で酒池肉林の豪遊三昧だ。

 ちなみに三人がいるところは国で一番大きい町である王都の食堂だ。近くの街よりも王都の方が魔法の杖が高く売れるから、という情報を盗賊の一人から少し(ベジータにとってのほんの少し)乱暴に聞き出し、やってきたというわけだ。魔法の杖を売るついでにベジータの着ていた青い鎧も売った。もちろんその価値を知っていたトランクスは止めたのだが、ベジータの『邪魔だ。動きにくい』という言葉に逆らえる訳がなかった。というわけで、いまベジータは農夫が着るような貧相………もとい動きやすい服を着ている。

 トランクスはといえば、盗賊が使っていた剣をちゃっかり拝借していた。その数、なんと六本。壊してしまった時のための予備だ。

 魔法の杖と勇者の青い鎧を売ったことにより、かなり高額な路銀が手に入った。どれくらい高額かというと、少なくとも十年は遊んで暮らせるくらいだ。

 テーブルの上にの料理が少なくなっていき、ベジータが口を開く。

 「おい、店員!このメニューに書いてあるもの、全部もってこい」

 「お、お客さんそれ今日でもう四回目じゃないですか!ちゃんとお金はあるんでしょうね?」

ベジータがテーブルに『どん』と、金貨が大量に詰まった麻袋を無言で置く。

それを見た店員は焦ったように、

 「は、はい!すぐにご用意いたします!!」

と厨房の方へ走って行ってしまった。

 この調子だと、路銀が尽きる日は近いかもしれない。

 ベジータがトランクスに向き直って言う。

 「で、お前は『魔王』とやらになったカカロットがどこにいるのか知っているのか?」

 「本で読んだだけだから正確な場所とかはわからないけど、どうやって行けばいいのかはだいたいわかるよ」

 「え?お父さん魔王なの?」

トランクスは、悟天の言葉をとりあえず無視してベジータに説明する。

 「まず、この世界は二つの世界に分かれているみたいなんだ。今オレ達がいる人間界と、魔族や魔物が住んでいる魔界」

そこまで説明したところで悟天が話に割り込んできた。

 「ねえ、魔族や魔物ってなに?」

それにトランクスは、どう答えようか少し考える。

 「ん~……なんていえばいいかな?魔界に住む人間みたいなやつが魔族で、動物みたいなのが魔物って言えばいいのかな?あ、でも人間みたいって言っても、角が生えてたり尻尾があったり鱗があったりするけどな。さっき言った動物みたいな魔物も、頭が二つあるワニだったり………まあいろいろあるんだよ」

 「ふ~ん………」

どうやら悟天は納得したようだ。

 「で、この二つの世界は隣り合ってはいるけど、地続きにはなっていなくて、ある特別な場所からでしか行き来することができないんだ」

 「特別な場所?」

ベジータが聞き返す。

 「うん。銀鏡の湖(シルバーレイク)って呼ばれる湖みたいなところ。確か山脈を二つと川を三つ超えた山奥にあるらしいよ」

山脈を二つと川を三つ。当然のことながら、移動手段に車も電車もないこの世界だ。常人ならば、どんなに早くても数週間はかかるだろう。

 「へえ~、結構近くにあるんだね!」

 「飛んでいけば二十分くらいか?」

そんなすべての旅人を敵に回すような、悟天とベジータの発言にトランクスは、

 「………うん。まあオレたちならそれくらいで着くけどさあ……」

頷くことしかできなかった。

 「隣り合っているけど、それぞれ別の世界として存在してるから、悟空さんの気が感じられないと思うんだけど?」

トランクスがベジータの疑問にそう答えた。

 「確かに、あの世にいる界王や界王神の気も感じにくいからな」

どうやらベジータは納得したようだ。

 その時、ベジータが追加で注文した料理が来た。

 「じゃあこれ食べ終わったらさ、お父さんのところに行こうよ!」

そう悟天が提案した。しかしベジータは何とも言えない微妙な顔になる。

 「別にそう急ぐこともないだろ?」

 「え、どうして?」

なんでだかわからない、という顔をする悟天にトランクスが小声で説明する。

 「実はな、パパが勇者で悟空さんが魔王なんだ」

 「え?そうなの?!」

小声、と言っても三人はテーブルを囲んでいる。

 「しかも、どうやらこの本から出るにはこの話を終わらせなくちゃならないみたいなんだ」

 「この話ってどうやって終わるの?」

二人の会話は、

 「そりゃあもちろん勇者が魔王を倒してめでたしめでたし、だよ」

 「えっ!じゃあここから出られないじゃん!!ベジータさんがお父さんに敵うわけないよ!」

ベジータに筒抜けだった。

 「バカ!声が大きい!!パパに聞かれたらどうするんだよ?!」

 「あ、……ごめん。聞こえてないかな?」

この時、ベジータはよっぽど「聞こえてるぞ」と言いたくなった。

 「じゃあトランクスくん、ぼくたちどうすればいいの?」

 「オレが知るかよ………。ん、待てよ………」

 「どうしたの?」

トランクスが向き直って言う。

 「あのさあ、」

今度は小声ではない。

 「やっぱりこれ食べ終わったら銀鏡の湖(シルバーレイク)に行こう。そこの近くに住んでる人で、会ってみたい人がいるんだ」

 「どんなやつだ?」

ベジータが聞く。

 「『番人』って呼ばれている人。もしかしたらだけど、オレたちもっと強くなれるかもしれない」

そう言ったトランクスの目は、真剣そのものだった。

 

 

 

 

 一方その頃ヤムチャはというと、

 「……う、う~ん…………。ここはどこだ?」

 「あ、兄貴起きましたか?」

なぜかむさくるしい男から兄貴と呼ばれていた。

 




前回言った修行回。次の次辺りになりそうです。

批評、酷評お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ちょっと視点を変えて

 さて、前回なんだかんだあってなんか強くなれそうとか、修行すればベジータは悟空に勝てるかもとか書きましたが、やっぱ無理じゃね?と思い、単体最強覚醒くんを登場させます。悟飯ならきっと何とかしてくれるはず!

 前回二話くらい先に修行回を入れると言いましたが、今回入れることにしました。速攻で終わりますけど。


~あらすじ~

 本に入った悟空、ベジータ、悟天、トランクス。出るには勇者のベジータが魔王の悟空を倒さなくてはならない!

 そして入ったまま出てないトランクスと悟天を心配してヤムチャも入った。プーアルは置いてきた。この話にはついていけそうにないからな。

 

 

 

 

 

 

 

 「むう……。全く、困ったものじゃのう」

そこは勇者たちの出発した王国、ルドベキア王国の王が住まう城の一室。でも、困っているのは国王ではありません。王に仕える年老いた魔女です。

 この魔女はルドベキア王国に存在する魔法全てを使うことができるので、王国中の魔法使いから尊敬されていました。

 「わしも年老いた。だから後世の平和のために、わしの知る魔法を全てこの本に書いたというのに………」

そう言って銀で縁取りされた分厚い本、魔道書を見てため息をつきました。

 「各地の貴族がこの本を巡って奪い合うのはのう……」

その時、なんと短剣を持った男二人が部屋に入ってきたではありませんか!

 「その魔道書、頂戴する!!」

そう言って、魔女に襲いかかってきました。

どう見ても穏やかな雰囲気ではありません。しかし、

 「やれやれ、困ったもんじゃのう」

魔女は落ち着き払っていました。

 「ひやああああああああ!」

悲鳴をあげたのは魔女ではありません。二人の男でした。男たちは見えない何かに阻まれ、そのまま気を失ってしまいました。

 「やれやれ、これで今日は三回目。電流結界に触れただけで気を失ってしまうとは、近頃の若い者は情けないのう。」

自分の力で本を狙うものを倒せるとはいえ、魔女はもううんざりでした。

 「おお、そうじゃ!銀鏡の湖(シルバーレイク)にいる番人に、この本も守ってもらおう!あの番人は………まあ、性格がちょいとあれじゃが、まあなんとかなるじゃろうて」

                            「勇者の冒険」より抜粋

 

 

 

 

 

 

 

 

 「魔閃光!」

そう叫んで岩を壊す。悟飯がピッコロから直々に教えてもらった技の一つだ。しかし魔閃光を放ったのは悟飯でもピッコロでもない。なんとビーデルだ。

 「ビーデルさん、いい感じですね!もう魔閃光はバッチリですよ!!」

 「まあね。ありがとう」

 魔人ブウとの戦いで、ミスターサタン以外の地球人は全員死んだ。そのことで無力さを思い知ったビーデルは、舞空術を教えてくれた悟飯に修行をつけてもらうことにしたのだった。

 「それにしても、やっぱりビーデルさんは才能ありますよ!魔閃光の他に、舞空術はもちろん太陽拳やかめはめ波もできるようになったんですから!」

 「やめてよ、そんなお世辞」

嬉しそうな悟飯とは裏腹に、ビーデルは浮かない顔だ。

 「そろそろ日も暮れますし、続きは明日にしましょう。明日は少し難しいけど、魔貫光殺砲か気円斬を教えますよ!」

 「………ありがとう」

ビーデルはそう言って、帰るために悟飯とすれ違う。

 「………後もう少しで辞めるから」

 「っ?!」

小さな声でビーデルが言った言葉に、悟飯は息を呑む。何を言っているのか分からなかった。

 「じゃあね、また明日!」

 「ビーデルさんっ!」

悲しそうに、そしてわざと明るく言ったビーデルの別れの言葉に、悟飯は何も言うことができなかった。

舞空術で飛んで帰っていったビーデルの背中を見つめながら、悟飯はつぶやく。

 「………辞めるなんて、そんな………」

悟飯にはビーデルが何をやめようとしているのかわからない。

 「辞めるって……まさか修行を?!」

自分で言って気づく。

 舞空術を教えていたような始めの頃は、誰よりも強くなりたいと思う人だった。事実、ビーデルは地球人ということなら、上から数えたほうが早いくらいの実力で。けど、魔人ブウの戦いや悟飯が修行を付けているうちに、分かってしまったのだ。

 

 どうあがいても、どんなに努力しても越えられない壁があることに。

 

 「………」

いや、悟飯も心のどこかではわかっていたことだった。

 武道の強さは、修行で身につく。けどそれ以上に自らの持つ才能によって左右される。

修行していた期間と実戦経験の豊富なクリリンと、大きな潜在能力を秘めていた悟飯との差がそのことを如実に表している。

悟飯だってわかっていた。人の幸せは武道で強くなることだけではないと。

美人な奥さんをもち、子供も生まれて『最高に幸せだ』と言っているクリリンを見ればわかることだった。

ビーデルは格闘チャンピオン娘であることを差し引いても、根っからの武道家だ。悟空やベジータと同じく、強くなりたい、強い奴と戦ってみたいと願う人だ。だからこそ悟飯を『天下一武道会に出ないのならグレートサイヤマンの正体をばらす』と脅したのだ。

それは悟飯、というかビーデルを知る者ならすぐに気づくこと。

 「僕は………!」

ビーデルは悟飯の言うとおり才能がある。

 けれどもそれはあくまでも地球人という枠組み内での話。そう考えるとビーデルはどんなに努力しても強くなれないことは明白だった。

 「………はは」

そんな事実に、悟飯は自傷気味に笑う。

 「弱くなりたいよ。……せめてビーデルさんと競い合うくらいには」

そんな、神龍(シェンロン)にも叶えることのできない願いを口にする。

 そして、悟空とベジータ、悟天とトランクスのような関係を羨ましいとも思ってしまう。

 「僕がもっと弱ければビーデルさんはあんな顔をしなかったのに………」

そこまで考えてから、悟飯はその考えを追い出すように頭を振る。

 「いけないよね、そんな風に思っちゃあ。僕のおかげで地球は救われたんだから」

セルとの対決を思いだし、自分に言い聞かせるように言う。

 「………分かっているんだ」

未来から来たトランクスの住む世界では、悟飯は人造人間よりも弱かったから死んだのだ。

 「分かっているけど!」

納得できなかった。大して強さを求めていない悟飯が強く、強さを求めて修行するビーデルが弱いという事実に。同時に、悟飯は自分がビーデルと出会わない方が武道家としては幸せではないのかとも思ってしまった。

 ビーデルの、さり際の悲しそうな顔を思い出してまたつぶやく。

 「僕の好きになったビーデルさんはあんなじゃないのに……」

悟飯は、思わず自分の言った言葉に赤面する。

 「だ、誰にも聞かれてないよね……?」

人影はない。聞かれなかったようだ。

 「シャプナーやイレーザに聞かれてたら、茶化されただろうな……」

悟飯はクラスメイトと自分の言った言葉を思い出す。恥ずかしくなり、自分でも顔が赤くなるのがわかる。

 「と、とりあえず僕も家に帰ろう。西の都に買い物に行った父さんと悟天もそろそろ帰ってきてるとこだと思うし」

そんなことを思いながら、悟飯は帰路についた。

 

 

 一方ビーデルは、

 「早く修行、辞めないと」

空を飛びながら、そんなことを思っていた。

 「強くなりたかったなあ………」

そう言って、唇をきつく噛む。涙が溢れないように。

 「なんで悟飯くんたちはあんなに………」

強いのだろう。そんな言葉を言えないほど、理不尽なまでの実力差があった。

そう、悟飯が自分の強さに悩んでいるのと同じように、ビーデルもまた悩んでいたのだ。

 「さっさと修行辞めないと悟飯くんの修行の邪魔になるのに………」

レベルの違う者同士では修行にならない。ビーデルも伊達に格闘チャンピオンの娘をやっていない。だからそんなことは重々承知の上だった。

 「いっそ悟飯くんと出会わなければ………ううん、そんなのただの逆恨みよね」

ビーデルは思う。今までになかった『気』の力。それはビーデルも含め武道家にとってはなくてはならない力。それと同時に、嫌でも自分と相手との実力もわかってしまう残酷な力だ。

 きっと近い将来、ビーデルはいずれサタンに代わる格闘チャンピオンになっていただろう。いや、『格闘技』というスポーツの第一線で活躍している今でもその可能性は十分にある。しかし悟飯の強さを見た今では、ビーデルはたとえそうなったとしてもチャンピオンなど名乗れなかった。

 「舞空術とか魔貫光殺砲とか、教えてもらって良かったと思うし!」

そんな風にわざと明るく言う。

 「………でも」

ビーデルは自分でもわかっていた。どんなに努力しても、その強さには限界があることに。決して悟飯たちサイヤ人と肩を並べることは不可能だということに!

 「誰よりも強く、なりたかったなあ………」

 ビーデルは、自分でも知らないうちに涙を流していた。

 




言えないよ。この悟飯に口が裂けても戦ってくれなんて言えないよ!というかなんで武道家を敵に回すような発言をしているのでしょうか。ちょっと話を聞いてみましょう!

悟飯「あの、これはですね・・・」
未来悟飯「ちょっといいかな?」
悟飯「あ、あなたは!」
未来「俺のいた世界では人造人間にたくさんの人たちが殺されたんだ。仲間だけじゃない、他の人たちも大勢ね。俺はそんな人造人間たちを倒すために十歳にもなっていない頃から十年以上も修行したんだ。それなのに弱くなりたいとはいったいどういうことかな?」
悟飯「そ、それはその・・・」
未来「言い訳すな!!」
悟飯「う、わあああああああああああああああああああああああああ!!!」

・・・え~、今未来悟飯がブウ編後の悟飯を一方的にボコボコにするというわけのわからないことが起きています。もうどこからどんな文句が来ても何も反論ができません。

 と、いうわけで今回は修行回でした。(ベジータが修行するとはいってない)

※あとがきと本編は一切関係ありません


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。