ケロロ軍曹の憂鬱 (ゼロん)
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前編 であります!

宇宙人つながりで。つい書いてしまった。


答えはいつも私の胸に……


 1億2680万人。

 

 日本の総人口数、そして……あたしはその数の一割にも満たない、ありふれた者の一人。

 

 今までずっと自分のことを特別な人間と思っていた小学六年の時。

 

 あたしはその事実を痛感した。

 

 それに気がついた時、周りの世界が色あせて、何もかもが灰色に見えた。

 

 けど……そんなのは嫌だった。

 

 これだけ人がいて、なんで面白い人間が一人もいないのか。面白い人生を、充実した日々を送って過ごしている人だっているはずだって。

 

 あたしは──その中の一人になりたかった。

 

 思い続けて……はや一年。

 あたしは念願の中学一年生になった。

 

 これから。以前から決めていた通り、あたしは行動を起こすことにしていた。

 

 無茶も無謀も関係ない。

 

 あたしは変わって、退屈な毎日を捨て去ろうとした。

 

 そんな日々を過ごすうちに、徐々にイライラしていったのはなんでだったろう。

 

 こんなにたくさん、常人が考えないような……そう、色んなことをしているのに、何も起きない退屈な毎日。そんな毎日にイライラしていたのかもしれない。

 

 まぁ、どうだっていいことだ。

 

 だって────

 

「見つけたわよっ!! 宇宙人!! 黙ってないで、出てきちゃいなさいっ!!」

 

 退屈が逃げ去るようなことが、

 

 

「……ゲッ、ゲロォ……な、なぜ……なぜバレたでありますか……!?」

 

 

 あちらの方から、飛び込んで来てくれたんだから。

 

 

 ***

 

 

 

「ふぁ〜ぁ……」

 

 カバではないが……大口を開けて、あたしこと、涼宮ハルヒは起床する。ベッドから気だるげに身を起こし、パジャマを脱ぎ捨てる。

 

 側から見れば、下着姿で何をやっているのか、という状態であたしはさっきまで見ていた夢の内容を思い返す。

 

 素敵な夢は……すぐに忘れられてしまうものだから。

 

「……思い返せば変な夢よね。夢って人が頭の中で考えてることが出るっていうけど、本当なのかしら……」

 

 夢の中では、高校生になったあたしは、とある部室で、未来人、宇宙人、超能力者と……なぜか取るに足らない平凡な男子生徒と一緒に、部活動に勤しんでいるというものだった。

 

 夢の中でも……あたしはあたしだったけど。

 それでも、今のあたしよりもずっと生き生きしてて、まるで……

 

「昔みたい、ねぇ……。ま、あくまで夢よね」

 

 けど、もし……もし本当にそんな未来があったとしたら……。それは本当に素敵なことなのだろうなぁ。

 

「まさか、あたしの部屋にも宇宙人とか、UMAとかが姿を隠して潜んでたりして」

 

 なんてね、と。あたしはつまらなそうな顔をして下着姿のまま勉強机の椅子に座る。

 そして、すこしため息を吐いて、

 

 

「そこにいるんでしょっ!! 宇宙人!!! 姿を隠してないで出てきなさい!!!」

 

 

 ちょうどベッドの向こうにあった壁に向かって指を突きつける。

 それはもう、逆転裁判も顔負けの。

 

「黙ってないで…………観念して出てきちゃいなさいっ!!!!」

 

 大声をあげたはいいものの……ちょっとした思いつきでやったから、その後のことは考えてない。

 

 まぁ……本当はわかってる。宇宙人とか、UMAとか人が噂してるってだけで、本当はいないんだって。

 

 指を少しづつ下げて、あげた腰を再び椅子に戻す。

 

 ……あたしは何をやっているんだろう。

 

「はぁ……」

 

 ため息をつくと、目の前であたしの想像をはるかに超えたことが起こった。

 

「ゲッ、ゲロォ……な、なぜ……!?」

 

 最初は気のせいかなって思ってた。空耳の類でしょって。けど、それは気のせいでもなんでもなくて。

 

 ちょうどあたしが指を指した場所。そこが忍者の術にあるような偽の壁紙が少しづつ剥がれていって。

 

「……。……? ……! えっ……!?」

 

「なぜバレたでありますか……!?」

 

 完全に緑の……巨大カエルと思わしき姿が露わになった。

 

 

 ***

 

 

 西暦、20XX年5月。

 

 我輩こと、ケロロ軍曹は地球侵略の下調べ……またの名を調査任務に抜擢されたのであります。

 

 事の発端は一年前、地球において目撃された『謎の超常現象』。

 

 本部は『謎の超エネルギー反応』と呼んでいたでありますが……。

 

 とにかく、我輩はその意味わからないエネルギーの実態を調査すべく、地球に向かっていたのであります。

 

「……ていうかさ。なんで我輩一人を派遣させるわけ? いや、そりゃあ……吾輩にしかできない任務かもしてないけどさ」

 

 ほかの隊員は有給休暇ってマジふざけるなよな、オイ。

 

 

「我輩にだって用事くらいあるっつーの。ガンプラ作ったり、まだ観てない機動戦士ガンダムユニコーンとか、宇宙戦艦ヤマト2199とか!」

 

 

 本部は『暇でしょ?』みたいなノリで任されたし、まぁ……おだてにおだてられて仕方なく来ちゃったけどさ。

 

『これはチミにしかできない最重要任務だ!』とか言われちゃったけどさぁ。

 

「……ま、いっか! クルル曹長から貰ったアイテムがあれば『謎の超エネルギー源』の調査なんて楽勝っしょ!」

 

 まぁ、深くは考えないことにしたであります。

 

 それに地球は我輩の大好物なサブカルチャーの宝庫。任務なんてサッサと終わらせて、本部には仕事と称して、余った時間はゆっくり楽しませてもらうであります。

 

 あぁ、ついでに地球のwifiでもジャックして観てないアニメも観ちゃおうかな。こっちじゃ地球に比べて数年か放送遅れてるし。

 

「ゲ、ゲロッ。もう大気圏突入でありますか」

 

 

 ***

 

 

「さてさて……無事に大気圏は抜けたでありますな……」

 

 クルルから預かったアイテム……『スキャウター』を帽子から取り出して、と。

 

「つーか、どっかで見たことあるなー……この機械。なになに……えーと、これを使ってエネルギー反応の高い対象を探す……でありますか。どれ、試しに……」

 

『スキャウター』のスイッチを起動し、自分に向けてみる。起動音もまんまだ。これ。

 

「ふっ……。ケロン星にいた頃の我輩には及びはしないものの、最低でもエネルギー値は100万は確実でありますなぁ……!」

 

 と言っている間に数値測定が終わったようで、ピロピロピロ、という音がした瞬間に『スキャウター』をのぞいてみる。

 

 やっぱこれ、ドラゴ○ボールに出てくるやつだよ。ベジー○とかフリー○がつけてるアレ。

 

「どれどれ我輩の戦闘力は……」

 

 しかも戦闘力って言っちゃったよ。我輩。

 

 ケロロ軍曹 エネルギー値 分析結果

 

 [53]

 

 WEAK(倒すに値しないゴミ)

 

「はぁっ!? なに!? どゆこと、これ!!」

 

 低っ!?

 しかもバカにしてるのかな、この数字!? 

 

「我輩をゴミとか、ふざけんなよ! あのぐるぐるメガネ! ……故障! こんなの『スキャウター』の故障であります!!」

 

 ついつい握り潰したくなるが、堪える。

 いくら不良品でも、目安にはなるはずだ。

 

「いかんいかん……とりあえず、しばらく雨風を過ごせる前線基地が必要であります」

 

 どこか適当な民家を探して占拠して、地球人の生態調査も兼ねて捕虜とするであります。

 

 ついでに食事とか、お掃除とかやって貰ったり……。

 

「やべぇ……完璧じゃね?」

 

 ゴクリと息を呑んで、我輩は早速近くにあった適当な民家に降り立ったのであります。

 

「……あれ? そういえば地球人に見つからないようにするアイテムとかあったっけ……?」

 

 そういえば本部がなんか説明してたっけ……。

 

「やっべ、忘れた。…………ま、いっか!!」

 

 

 ***

 

 

「ほうほう……これが地球人の部屋でありますか……結構広いでありますなぁ」

 

 窓をゆっくりと開けてと。

 

 しめしめ、部屋の持ち主は寝ているようであります。窓も閉めないとは不用心な。

 

「まぁ、隣り合う部屋もない一軒家でありますからなぁ……2階へ飛びのってくるやつもいないだろうし。ヨッケロショっと」

 

 窓枠をまたいで住居内に侵入成功。これより部屋の中枢へ。

 

「ん……っ」

 

「ゲロッ!?」

 

 ──ぐぅぁ!? 

 

 ま、マズイぃ! これはマズイでありますっ! 

 部屋の持ち主が起きそうであります! 

 

「た、たしかここに……あっ、あった!!」

 

 帽子からクルル曹長のひみつ道具、『擬態ふろしき』を広げて、急いで壁にひっついて隠れなければ。

 

『擬態ふろしき』はたしか……身体ごとこの風呂敷を壁に貼り付けることで、敵をやり過ごす。イワユル、ステルス迷彩っ!! 素敵ぃ! 

 

 しかも、こっちからは一方的に向こうの姿が見える……。やるじゃん、あのぐるぐるメガネ。

 

 しばらく起きた部屋の持ち主……地球人の女を観察。隙を見て、まずはこの部屋……しまいには家を乗っ取ってやるであります。ゲーロゲロゲロゲロリンチョ! 

 

 ……。それにしても、さっきから彼女、ずっとブツブツと独り言を言っているでありますが……なんとももったいないでありますなぁ。

 

 冴えない顔してるでありますなぁ。笑ってたほうがもっと可愛いだろうに。

 

 しかし、その次に彼女が言った言葉は我輩の度肝を冷やしたであります。

 

 

「まさか、あたしの部屋にも宇宙人とか、UMAとかが姿を隠して潜んでたりして」

 

 

 ……ん?

 いやーまっさかぁ。ただの妄想でしょ? 

 

 そんな我輩の淡い幻想をぶっ壊すように、女はちょうど我輩の方に指を向けてきた。

 ……ウソ!? 

 

 

 

「そこにいるんでしょっ!! 宇宙人!!! 姿を隠してないで出てきなさい!!!」

 

 

 げぇぇぇぇぇっっっ!? 

 バカな、そんにゃバカな!! 

 

 いやいや……落ち着けケロロ。あんなの、ただのハッタリであります。地球人の戯言であります。たかがっ、たかが妄言ごときになに冷や汗かいているでありますかっ。

 

 いくら地球人の文化レベルが予想より高かったとしても、たかが民間人ごときに見破れる訳がないでありますっ! 

 

 

 

「黙ってないで…………観念して出てきちゃいなさいっ!!!!」

 

 

 

 ……あ、やべ。完全にバレてる。どうしよ。

 

 しまった。驚きすぎて『擬態ふろしき』が離れ……! 

 

「……。……? ……えっ……?」

 

 あー……もういいや。

 後学のため、素直に聞いてみよっと。

 

「な、なぜバレたでありますか……?」

 

「う、ウソ……本当に、本当に……宇宙人」

 

 女はふらふらとした足どりでこっちに近づいてきた。まずい。我輩としたことが、ショックで接近を許してしまったであります。

 

「ついに! ついに見つけたわぁぁぁぁぁ!!」

 

「おわっち!!」

 

 ギィヤァァァァァァァァァァァッ!!! 

 持つな! 頭を持つな!! 苦しい! 酔う! 

 振り回すなでありますぅぅぅ……!! 

 

「こ、この星の生き物は大変凶暴であります……ぅ!」

 

 だから頭わしづかみにするなって! え、急に抱き寄せ、

 

「あんた! あんた本当に本物!? 本物の宇宙人なんでしょ!? そうなんでしょ!?」

 

「うぐぁ……た、頼むからそんなに強く抱きしめるなであります。息ができ、ぶっ!!」

 

 余計に身体に押しつけられた。マズイ! 

 ガチで! ガチで死ぬ! 息できない! 

 

「こんな時に学校なんて行ってらんないわ! お母さんにはだるいから休むって伝えとこっと!」

 

 よし! わずかだが腕の力が弱まったぁ! 

 

「隙ありであります!!」

 

 腕をすり抜け緊急脱出!

 

「あぁっ!?」

 

「ゲーロゲロゲロ!! 甘いでありますなぁ、地球人! 一瞬の油断が命取りであります!」

 

 ニヤニヤと笑い、ケロボールを取り出す。

 

「見られた以上は仕方がない……。地球人の女、貴様には死んでもらうであります!」

 

「うわぁ……!! 宇宙人に一度でいいから言われたかったのよねそのセリフ……!!」

 

 一応『スキャウター』で戦闘力……じゃなかった。エネルギー値を測定……殺れるか? 

 

 [5*****]

 

 ふっ……エネルギー値たったの5! ゴミめぇ! (人のこと言えない)

 

 我輩のエネルギー値(53)に遠く及ばないであります! 

 

「おぉっ! なんかそれっぽいの取り出してきたわね……!! 面白いわ! じゃあ早速何ができるか見せてもらおうじゃないの!!」

 

 えっ……?

 何その反応。あんた今殺されかけてるんダヨ? 

 

「調子狂うでありますが……しねぇ!! 『ドロドロ光線』!!」

 

 ケロボールのスイッチを押し、凄まじい勢いで放たれた光線が女に向かっていく。

 

 ゲーロゲロゲロ! さらばだ! 地球じ

 

「なるほどねぇ。まぁ、宇宙人って言えば光線銃ってイメージを壊さないところは良いことよね」

 

「!? よ、避けた!?」

 

 女は我輩の放った光線をあっさりと避け、呑気にも感心する始末。

 

「ふっやるなぁ……地球人の女。侮れん、しかし当たりさえすれば、貴様などぉ……!!」

 

「当たらなければどうということはないわ!」

 

「こしゃくなぁ!!」

 

 そのセリフは我輩が言いたかったであります! 

 

 激戦が始まると思いきや、『スキャウター』から計測終了の音が。

 

「なによそれ」

 

 ほほう、ケロン人の科学力に興味津々のようでありますなぁ。どうせだから、死ぬ前に教えておいてやるであります。

 

「ふふふ……これは相手のエネルギー値を計測する機械。たった今、貴様の計測が終了したであります」

 

 せっかくだから指とか突きつけちゃお。くぅー! 我輩、ぃかす! 

 

「へぇ……! で、あたしの力はどれくらいなのよ」

 

 いやだから、なんでそんなに興奮してんの? 

 

「ふん、見るまでもない。貴様のエネルギー値など我輩に比べればゴミでありま」

 

 目の前の地球人 エネルギー値 分析結果。

 

 [530000]

 

 !! DANGER!! ヤバし!!

 

 スグハナレロ!! 

 

「えぇーと……」

 

 うん……あ、えっとあれ……53万? 

 ちょ、ウソ。我輩がゴミじゃん。ネイルさんにも及ばないジャン。

 

 

「で? どうなの宇宙人」

 

 

 くっ……!! 気取られてる。我輩の方が弱いことがバレてるであります。

 

「その顔見れば嫌でもわかるわよ」

 

 小さく舌打ちをして『スキャウター』を床に叩きつける。

 

「はっ、はんっ! ちょ、ちょっと故障中のようでありますな。では、もう一度くらうでありま」

 

『ドロドロ光線』スイッチを押そうとしたその瞬間、不覚にも地球人の女にケロボールをぶんどられてしまった。

 

「あぁっ!!」

 

「へぇ〜なにこれ!? まさかひょっとしてとんでもない秘密兵器とかだったりするわけ!?」

 

「か、返せ! 早く返すであります!!」

 

「イヤよ。それよりもこれがどんなものか教えないさいよ!」

 

 女はケロボールを高々と上に上げて……! 

 あぁっ、そ、そんな高いところに持ち上げないで!? 

 

「くぅっ、くそぅ! くそぅ!」

 

「あははは、ほらほら、取れるものなら取ってみなさい?」

 

 ちっきしょう!! 隊長たる我輩がなんたるザマ……プロの軍人たる我輩が、これじゃあただのいじめられっ子であります!! 

 

「もっと、もっと我輩に身長があれば……!!」

 

「それよりも早く使い方教えなさいよ。さっきの光線とか、いろいろ出せるんでしょ?」

 

 おのれ……!! 我輩のケロボールをぷらぷらと振り回しおってぇ……! 

 

「ふっ、貴様ごとき民間人に教える義理などないであります」

 

「ふーん、なるほど。これ、機密事項とかある重要な物なのね」

 

 やけに頭働かせおってこのアマぁァァァァァ。

 

 青筋が立った瞬間、ケロボールから本部からの通信が入った。

 

『こちら本部。ケロロ軍曹、調査の方はどうか────』

 

 あぁそっか、ちょうど定期報告の時間だったから、

 

 

「えい」

 

「あぁぁぁぁぁぁっ!?!?」

 

 

 すると女はいきなり部屋の床にケロボールを叩きつけた。

 

 な……なんということを……! 我輩がそれを手にするのにどれほどの歳月と苦労をしたと思っているでありますかぁ……!! 

 

「仲間に連絡なんて取らせないわよ?」

 

 今ので通信機能がイカレたのか、テレビでよくある、ザーッという音しか聞こえない。

 

「きっっっっ……summerぁっ!! 壊れたらどうするでありますかぁ!?」

 

「その時はその時よ。あたしはアンタに興味があるんだもん」

 

 虚を突かれ、コケにされ、プライドを傷つけられ……遂にはケロボールまで……! 

 

 我輩の中で、なにかがキレた。

 

「ふ。ふふふっ、ふふふ……! とうとう我輩を怒らせたでありますなぁ……!?」

 

 全身に力をみなぎらせ、短時間ではあるが通常の3倍の力を発揮する……フルパワーケロン! 

 

「さぁてお待たせしましたねぇ……ここまでは単なるおふざけ。──これから始まる最終攻撃のための準備運動でありますっ!」

 

「な、なに……?」

 

 しめしめ、怯えているであります。怯んでいる今が絶好のチャンス! 

 

 足に思いっきり力を入れて地面をもヘコませる勢いで(気分)…………!! 

 

「ひぃやああああああああああ!!!!」

 

 思いっきり飛び蹴りキィィィィッック!! 

 

『ケロロ軍曹! こちら本部! 繰り返す、こちら地球侵略部隊本部!』

 

「え?」

 

 キックは女にぶつかる前に宙で止まった。

 というか通信! 早く助けを呼ぶであります!! 

 

「お、おおーい!! ヘルプ! 本部ヘルプ!!」

 

「ああっ!! いつのまにか直ってる!?」

 

 しめた! これでこの星からもオサラバであります! 

 

『緊急のため、これは一方的な通信となる! 繰り返す! このメッセージは貴殿へ一方的に送られるものである! 凶暴な敵性生命体に貴殿が襲われた可能性がある故────我々は一時撤退する! 繰り返す! 我々は貴殿を置いて、一時撤退する!』

 

 

 え? 

 

『貴殿を救助できないまま去るのは不本意ではあるが、これは決定事項である! 幸運を祈る!』

 

 

 通信はそこで終わった。

 

 

 ***

 

 

「つまり、あんたは見捨てられちゃったと」

 

「グサッ!?」

 

 哀れではあるが、どうやらこの宇宙人は仲間に見捨てられたのだとさ。

 

「じゃあしばらくの間よろしくねっケロロ!」

 

「ゲ……ゲロォ──────ーッ…………!」

 

 

 

 ケロロ軍曹の憂鬱は、ここからだったとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


ハッピー令和スタート!

令和初の作品になりました。
既存のシリーズも見てくれている方はありがとう! ゼロんです。

そっかぁ……いよいよ自分の見ていたアニメマンガ作品が、えっ、平成の作品だよねって言われるようになるのかぁ。昭和ね、みたく。

……なんか寂しい。

そんなことより!

ハルヒの派生作品を含め、アニメを全見した後、ケロロ軍曹の漫画を全部読んで、あのマーチをたまたま聴いたらピンと来て書いてしまった本作です。

本当はもっと長い感じにしようと思った汗。
ガンプラ遊びや別れのシーンとか!

希望があれば描きたいです。最近疲れ気味なのよね……他にも色々描きたいのに。くっそう。

読んでくれてありがとう! 令和でもよろしく!


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中編 であります!

読み切り……あとは想像に任せよっかなーとか思ってたら、続けて欲しいと希望がきました! 嬉しい!

時間がかかったけど、納得できる内容かな……?
いつのまにか全話が評価たけぇ! まじかよ! 何があったよ!

続きです。誤字脱字あったらごめんね!





「ハルヒー! ご飯だぞー!」

 

 いつまで経っても降りてこない娘にハルヒの父親は二階に向かって声をかける。

 

『……あっ。ちょ、ちょっと待ってて親父! ああっ、コ、コラァッ! 逃げるなぁっ!!』

 

『────ゲ、ゲニョオォッ……!』

 

「……?」

 

 ハルヒ父は首を傾げる。

 

 また娘がノラ猫か何かでも連れ込んでいるのだろうか。

 

 ハルヒ父は痩せ気味な腕で電子レンジから温めた昨夜の夕飯の残りと即席ご飯をテーブルに置く。

 

「まったく困った子だ……」

 

 そう言いつつハルヒ父は家族写真を見て穏やかに笑う。

 

「今日も平穏に過ごせますように……」

 

 しばらくして彼女の部屋のドアが開き、ハルヒが階段をトトト、と降りてくる。

 

「おはよう、ハルヒ」

 

「おはよー親父」

 

 ハルヒは勢いよく席に着き朝食を食べ始めてから『いただきます』を言う。

 

「いただきますは食べる前にしような……」

 

 ハルヒ父は苦笑しつつ自分も箸を合わせ『いただきます』を言う。

 

「……もご……いいじゃない別に」

 

「せめて口の中の物を飲み込んでから話しなさい」

 

 ハルヒはご飯を口につめてモゴモゴと口を動かす。

 

「食事前に『いただきます』だなんて、一体どこの世界の誰がそんなことを決めたのよ?」

 

「地球という星の、北緯二十度から四十六度。東経百二十三から百五十四度の間にある島国。昭和時代の日本人かな」

 

「細かっ。誰もそんなこと聞いてないわよっ!」

 

「知りたいのかなって」

 

「どうでもいいわよそんなの」

 

 ハルヒはコップに入った牛乳を一気に飲み干しテーブルに置く。

 その頰はいつもよりも少しほころんでいた。

 まるでこれから起こる出来事にワクワクしているような、そんな風に感じ取れる。

 

「なんか機嫌良さそうだね、ハルヒ」

 

「────んっ!?」

 

 飲んだはずの牛乳が上がってきたのか、ドンドンとハルヒは胸元を叩き咳き込む。

 

「……べ、別に? いつも通りよ?」

 

「なにか嬉しいことでもあったのかい?」

 

 ニコニコと愛想良く父は問いかける。

 

「ま、まぁね」

 

「可愛い猫か何かでも見つけてきたのかなー?」

 

「そそ、そんなわけないでしょ!?」

 

 そう答えたハルヒの口元は引きつっている。

 

「わ、私がネコなんか拾ってくるわけないじゃない」

 

「以前拾ってきてたよね。それも五匹も。子猫も含めて十匹」

 

「あ、あれは……ほんの気の迷いよ。ペットショップで見たやつよりも可愛かったから衝動的に……」

 

 ハルヒはモジモジと指をすりあわせる。

 

「ってその話は、ちゃんと他の飼い主を探して終わったはずでしょ!? 掘り返さないでよ!」

 

「いや、さっき騒がしかったから────」

 

「なん・でも・ない!!」

 

 娘に無理やり押し切られ苦笑する父。

 その図がまさにこれだ。

 

「それより母さんは? 今日の朝食、私作ってないし。ご飯だって電子レンジだし」

 

「ごまかすように話題そらすね我が娘は。あと、父さんに向かってアンタとか言わない」

 

「か・あ・さ・んはっ!?」

 

「わかったわかった。母さんならもう出たよ。冷蔵庫に残りがあるから食べてって」

 

 いちいち小言うるさい、と言わんばかりにハルヒは叫ぶ。

 

「ごちそうさま。私支度して出るから。皿を出して先出てて。帰ったら洗っとくから」

 

 ハルヒは席から立ち、食器を簡単に水で注いでから部屋へと戻ろうとする。

 

「今日はいつもよりも食べるの早いねハルヒ。ちゃんと噛まないと消化に良くないよ?」

 

「うるさいわよ。……男のくせに細かいことは気にしすぎだっての」

 

 そう言ってハルヒは階段を登る。

 

「あれ? 行ってきますのチューは? 小学生の頃はいつも──────」

 

「いってらっしゃい」

 

 ぶっきらぼうに挨拶だけして部屋に入っていった。

 

「……まったく、しょうがない娘だ」

 

 娘のハルヒももう中学一年。大人にも近くなってくるし、責任感も芽生えてもいい頃だ。

 

「よいしゃっと。皿は流しにっと。ハルヒは隠すのが下手くそだなぁ」

 

 ……面倒がないうちは母さんには黙っておいてあげよう。

 

 

 

 ============

 

 

 

 

「……で? クルル曹長。結局本部が言ってた『謎のエネルギー反応』ってなんなのよ」

 

 

 一度全身の関節をバッキバキに砕いてから縄による拘束を脱出。

 

 次に手際よく棚に入れられたケロボールを奪取。救援ついでに部下に連絡をとる。さすが我輩、超軍人(自画自賛)。

 

『クク……クククククッ。休暇中に呼び出すんじゃねーよぉ』

 

「あんだよ!? そっちだって暇だろぉ!?」

 

 声が出るのも我慢できずケロロは叫ぶ。

 

 冗談じゃない。部下がバカンスで暇つぶししてる時になんで我輩だけ命の危険に晒されなくちゃならんのでありますか!? 

 

『こっちだってプライベートがあるっつーの……』

 

「こっちにだってあるよ、ちみぃ!!」

 

『んなことは本部に言えっつーにょ』

 

 クルルは鼻をほじり、ペイっと掘り出し物を指で弾く。……汚い。

 

「とにかくクルえもん、手伝ってよ!」

 

『…………めんどくせぇ〜』

 

「頼むよう……今度ケロイチで奢るからさー……」

 

『カレーライス。二日奢りでなぁ……』

 

「……吾輩上司なのに……!」

 

 部下に頭を下げ、協力を依頼。

 

『……。なるほどぉ、こいつはくせ者だゼェ……く〜っくっくっく』

 

 映像が転送され、ケロボールの真上に青白いスクリーンが浮かび上がる。

 

 画面には赤い点が地球及び宇宙全体に広がり、エネルギー量の値を示すパラメータが表示される。

 

『隊長ぉ。本部からの資料には目を通してあんのかよぉ?』

 

「ええっ……!?」

 

 額から謎の汗が。

 

「あっつ〜ほんと暑いなーペコポンの気温はーええっと。どうだったかな……ははは」

 

『通してねぇなぁ……クク』

 

「……ぎくり」

 

 クルルは平時通りに意地悪く笑いながら顔をスクリーンに近づける。

 

『どうせ見る時間も惜しいから、例のごとくガンプラの塗装でもしてたんだろぉ? く〜っくっくっく……』

 

「ぐさぐさぁ!?」

 

 心臓をロンギヌスの槍かなんかで貫かれた感じがする。二本ぐらいか刺さったかなぁ、エ◯ァの第二使徒? 

 

『しょうがねぇなぁ。この俺様が、わかりやすく説明してやるゼェ〜……く〜っくっくっく……』

 

「……お、おねがいします……ぅ」

 

 クルルに本部へ職務怠慢を報告されるのではとドキドキしつつ、冷や汗とともに顔を俯かせる。

 

『────この反応が見られる場合において必ず発生する現象は二つ。一つは人工的な巨大空間の形成。もう一つは巨大な情報量の爆発と操作だぁ』

 

「空間の形成……? 地球には人工的な空間の形成を行うほどの技術は無いでありますよ。ケロボールがあるわけでもあるまいし……」

 

 ケロン人の科学力なら思うがままの空間を作ることなど容易い。

 

 だが、地球には今までそのような技術はなかった。年数の経過により技術は発展しても、我々に追いつくのは数百年先の話。

 

 そのような反応が見られるのは極めて妙だ。

 

「それに情報の爆発……操作ってなにさ?」

 

『隊長でもわかるように簡単に言えば、「世界を自分の思う通りに変えちまう」力だよぉ。く〜っくっくっく……』

 

「……はぁっ!? ナニソレ!? そんなんなんでもありじゃん!」

 

 なにそれ欲しい。宇宙世紀とかマジ夢じゃねぇ! モビルスーツ乗って発進してぇ! 

 

『だぁから問題なんだヨゥ。もし宇宙人がいない世界が──────なんて書き換えられたら、俺たちの存在まで消えちまうんだからなぁ……く〜っくっくっく……』

 

「あっ、そっか。やっぱヤベー!!」

 

 カレーがない世界も嫌だけどなぁ、とクルルは茶化す。

 

『そして、そのエネルギー源は物体からじゃねぇ。その源は……ある一人の地球人から発せられているぅ』

 

 先の図の代わりに映し出されたのは──────涼宮ハルヒ。

 

『それが、隊長が接触を果たした地球人。涼宮ハルヒだぜぇ〜。く〜っくっくっく……!』

 

「──────っっぁー…………ぁ……」

 

 ケロロ、マジ絶句。

 

『じゃっ、出前のカレー来たから切るぜ。……ほいほーい今出まーす』

 

「……あっ、ちょ!? ちょい待てよ黄色メガネ! おい! 聞いてんのか!?」

 

 説明してもらった感謝すら頭の隅に置いて、クルルに怒鳴るが、クルルは聞く耳を持たない。

 

『……おっと。通信ボタン切るの忘れてたぜ……まぁ、最後に俺のカレー食う姿だけおさめとけや……く〜っくっくっ………………っ……!? ───────これボルシチじゃねーか!!』

 

 クルルの文句を最後に通信は断絶。

 

「……ざまぁ」

 

「カエル人〜!! いるんでしょう!? 親父も居なくなったし、たっぷり遊びましょ!!」

 

 ハルヒがドアを大きく開けて部屋に入ってきた。

 

「……吾輩もザマァ?」

 

「あっ!? いつのまにかボール取ってる! 返しなさい……よっ!」

 

 ハルヒ、わずか数秒でケロボール奪取。

 

「ゲロッ!? あぁ元々吾輩のなのにぃっ!」

 

「じゃあじゃあ! なにして遊ぶ、宇宙人! バスケとか……サッカーとかどうかしら!」

 

 聞いてないしこの人。

 

「えーと……」

 

 やべっち、多分ボール用意してるし球技だよなぁ。

 

『サッカーやろうぜ、お前ボールな!』

『バスケやろーぜ! お前バスケボールな! ダンクシュゥゥゥッ!』

 

 うん、どっちも地獄にしか聞こえない。

 

「そうだ! サッカーにしましょう! それがいいわ!」

 

「か、会話が一方通行(アクセラレーター)であります……!」

 

 こ、こうなったら、遊びの間にもこのハルヒとかいうペコポン人からそのエネルギーとやらを奪うしかないであります……! 

 

「で、ハルヒ殿……その、さっかー? とやらは、こ、この部屋でやるでありますか……!?」

 

「うん! そうよ!」

 

「そうよ、って……散らかして怒られやしないでありますか?」

 

 吾輩はいつもそうだった。

 

『こんガキきゃあ! 何でもかんでも集めて部屋散らかしてきおって!!』

 

『あぁっ! あぁぁあ!!』

 

 あの時は親父にこれでもかというくらい尻を叩かれて……っ! 

 

「不可抗力なんでありますぅ……!」

 

「……? 何急にうずくまってんのよ? いいから早くボールを真ん中に置いて……」

 

 ……ボール? ボール? ボール……? 

 

 その瞬間、吾輩の中の小宇宙(コスモ)が大炸裂。

 ──────閃いちゃった。

 

「ハルヒ殿! 吾輩に名案があるであります!」

 

「……?」

 

 何を言っているのだ、と言いたげだ。

 ハルヒが首を傾げている。

 

「ケロン人の技術を使えば、部屋の中でも、もっと広い場所でさっかー? とやらができるでありますよ?」

 

「そ、そうなの!? 早く見せて見せて!」

 

 くくく……この引っかかりよう。

 この娘ちょろいであります。

 

「では、我がケロン軍技術の粋であるケロボールを……」

 

「いいわよいいわよ! さぁ! 早く早く!」

 

 ケロボールがすぐさま吾輩の手元に……! 

 やった! これでこの小娘にドロドロ光線を喰らわせてやれば……! 

 

『──────避けたっ!?』

 

 ……!? 

 

 ……なんだろう。今、脳裏になんかよぎった。

 もしかして我輩ニュータイプ? 気のせいか……いや。

 なんか……とてつもないなにかが、よくわからんけど唐突になんか変なビジョンが浮かんだ気がする。

 

 アレ……手の震えが、トマラナイヨ……? 

 

『宇宙人なんか信用できないわ! こんなのいない方がマシよ!』

 

『えっ!? ちょ──────アッ────!!』

 

 もし……もしもだけど、さ。避けられたら……ヤバくね? ていうか、殺っちゃっていいの(自問自答)? 

 

 命令って監視だよね? 調査だよね? 

 排除しちゃっていいの(全て自問自答)? ダメっぽくね? 

 

「……? どうしたの? できるならやってよ」

 

「あっ、ごめんごめん! ちょっとボーッとしてたであります!」

 

 とにかく……ここは従っておくのが良さそうでありますな。それに面倒な仕事は、もっと凄腕の部隊に任せればいっか。

 

 

 ****

 

 

 

「す、すごい……! すごいすごい! あんた、ひょっとして大したことないかと思ってたけど、結構やるじゃない! ケロン人の科学力は宇宙一ってやつね!」

 

「ま、まあネー……」

 

 ひとまず、ハルヒが言うサッカー場……とやらを押し入れの中に再現したのだが。

 し、しかし、う、宇宙一……そ、そうかなぁ……お褒めいただき恐縮……って、はっ! 

 

 なぜ懐柔されそうになっているのだ、ケロロ軍曹! 所詮はペコポンの科学力。あちらから見ればなんでもすごく見えるに決まっている! 

 

 きっと、吾輩をおだてていいように操る気であります! ふーっ……あっぶね〜! 

 

「……なんだけどさ、その……」

 

「ゲロ?」

 

「そのムキムキのキモい格好はどうにかならないの……?」

 

 キモい……キモい? 

 

「このペコポン人スーツがでありますか? ふんっ! ふんぬっ!」

 

 試しにポーズを取ってみると、露骨に嫌そうな顔するハルヒ。

 

 なにを顔をしかめている? 見よ、この完成された美しい鋼の肉体を! 

 

「ぺ、ペコポン人……?」

 

「この星の人類にぴったり馴染めているでありましょ?」

 

「……もう、色々突っ込むのめんどくさいわ……ていうか、あたしたちがそう見えてるって言うのも衝撃的だわ……」

 

「さぁっ! こいっ!! 受け止めてやるでありますっ!」

 

 ハルヒ殿に教わったさっかーなるもの……どうやら2人でやる時はPK? なるものをやるそうであります。

 

「まっ、やる気があるならいいわ……ちょうど体型もハンデにならないしね……」

 

 実に興味深い……とはいえ、所詮は遊戯、蹴り放ってくる女子のボールを受け止めるなど容易いことで、

 

「せいっ!!」

 

「──────────!?」

 

 瞬時に顔面に走る痛みの波紋疾走(オーバードライブ)

 

「あっ、ごめん! ちょっとやりすぎちゃったみたい!」

 

「……? ……!?」

 

 なんだ……? 今一瞬、空が近く見えた。あれは……死兆星か? んん? 

 なぜ俺の掌に赤い水が付いている。錯覚か? 立ちくらみ……と言うやつなのか? 吾輩が?(ようやく自分を取り戻し始めた)

 

「あっ、けどボール入ってる! ゴールよ! やったーっ!」

 

 えっ……ちょっと、意味わかんないんすけど。

 吾輩負け……え……!? 鼻血出てる! 

 

「次のいってもいいかしらー?」

 

「……!? ストップ! ハルヒ殿ストォーップ!! 」

 

 ────鬼畜かテメェ。

 急ぎTの字を作り、次弾装填しかけたハルヒを制止。

 

「ルール確認。まず、顔面はアリでありますか?」

 

「えぇ。全身を使ってボールをゴールに入れないようにするの。ゴール真下の白い線を越えてもアウトよ!」

 

「そ、そうでありますか……」

 

 な、なんと……これは、なんということだ……! 

 

 これは遊びと偽った処刑玉法(しょけいぎょくほう)……!! 

 

「ち、ちなみに……この遊びはいつ教わったでありますかー?」

 

「十一人の一チーム組んでやるサッカーの細かいルールはもっと後だったけど……そうね〜……概念としては幼稚園くらいかしら。あ、幼稚園は三歳くらいに行く学校ね」

 

 なん、だと……!? チーム。で!? 

 

 *イメージ映像

 

『おらー死ねギロロー!!』

 

『グオハッ────!? …………(フラフラ)ぐ、う……ど、どおした!? その……その程度か!』

 

『ちっ……しぶとい奴……では二撃目であります! タママー!』

 

『な、なにぃっ!?』

 

『先行を譲ったのは貴様だギロロ……! さぁ、あと十人!』

 

 な、なんと野蛮な(違う)……! 

 

 幼少期からこのような拷問を受け、いずれ砲弾を物ともしない頑強な身体を作り上げようとするとは(断じて間違った解釈)……! 

 

『次は耳だ。タママ』

 

『はい軍曹さん!』

 

 しかも打つのは一人ではなくチームで……! 

 

「ふふ……ふっはっはっは……! 面白いであります! 軍人である吾輩がこの試練を乗り越えられぬとでも? ────さぁこい!」

 

「……なんか気合入ってるじゃない! じゃあ────行くわよ!」

 

 

 ****

 

 

「ギブ!! 無理ぃ!!」

 

 五球目。心が折れた。

 

「ていうかなんでさっきから顔面ばっかなのよ!? もっと身体に打てよ!! 身体に!」

 

「じゃあ腕で掴めばいいじゃない!!」

 

「パンが無ければ────みたいなこと言うんじゃないであります!! せめて頭上を狙うのをやめるであります!!」

 

 着用したユニフォームをビリビリに引き裂き、地面に叩きつける。

 

「ええいやってられるかぁ!! もっと文化的でかつ知的な遊びをするであります!!」

 

「えぇ〜せっかく面白くなってきたのにー」

 

「ハルヒ殿は人のツラを被った鬼でありますか!? このままだとワガハイ、良くて脳震盪であります!」

 

「じゃあなんなのよ、文化的で知的な遊びって ? 言ってみなさいよ?」

 

 つまんなかったら承知しない……そんな声色でありますな。

 

 ふふふ……我輩の推奨する文化的遊び……それは……! 

 

「ハルヒ殿……」

 

「ん? なによ?」

 

「ハルヒ殿は、機動戦士ガンダム……なるものを知ってるでありますか?」

 

 G・U・N・P・L・A(ガ・ン・プ・ラ)

 

 

 

 




 
おまけ


****


「あっ、テンチョー! これとこれと、コレちょーだい!」

『まいどー!』

「一応親父がガンダム勧めるから観てたけど、これどう建てるの?」

「ゲロゲロ……それは、我輩が教えるでありますよ!」

 意外とノッてくれたという。




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後編、であります! 


あぁー……課題とレポートの連続特殊召喚により、途中で力尽きたので、まだ少し未完全。途中が少し雑になってる……

けど続きが気になるって方も多いと思うので、ひとまず完結まで話は書いたので、置いておきます。

とりあえず流れだけでも知りてぇって方は、途中少し雑になりますがお進みください。

なら待つわって方は一回ブラウザバックを推奨。

後々、少しずつ改稿していくのでご容赦を。







 

「ていうかなんで私ガンダム観てるのかしら……」

 

 ガンプラを買い帰宅した後、父親がいない隙を見計らいテレビを点けた二人(?)。

 

「ゲロゲロゲロ! まずは原作をよく知り、思い入れをもって作るでありますよ!」

 

「はぁ。ロボットものかぁ」

 

「そうため息をつかずとも。自意識の強くなる思春期にはピッタリでありますよ! 歳をとればとるほどこのアニメの深さとかクオリティの高さがよくわかるであります!」

 

 やっぱ劇場版が一番まとまってていいでありますなとケロロは借りてきたDVDを挿入。

 

「けどガンダムってなんだかとっつきにくいのよね。子供っぽいっていうか」

 

「宇宙人とか本気で信じてる人が言うかそれ」

 

「ゔっ。け、けどいたじゃない!」

 

「結果論でしょ、それ……ま、我輩も文明の発達してない星にいたならそう思ったのでありましょうなぁ」

 

 映像が流れ始め、テレビには宇宙空間の暗闇と星々が映し出される。

 

「ま、期待半分で観てみるわ」

 

 *****

 

 開始数分後

 

「うわ、結構凝った設定だったのね。コロニー丸ごと落とすとか頭がおかしいわ……」

 

「我々から観ても結構エゲツない戦法でありますな。星ごとダメにしてしまうなんて三流のやることであります」

 

「侵略に来た宇宙軍人が言うと変な説得力があるわね……」

 

「まぁねー」

 

 そういうケロロ軍曹の部隊評価は三流の三流であるF級である。人材は優秀なのに。

 

 *****

 

 開始数十分後

 

「ガンダム強っ……」

 

「ジオンの技術をリバースエンジニアリングして作られた割には、ザク以上のスペックと耐久性、破壊力を持つヤバいシロモノであります……まだパイロットが性能に振り回されてるでありますが」

 

「ごめん。何言ってるかわかんない」

 

「……戦艦を一発で落とすビームライフルとか、考えるとちょっとゾッとするであります……」

 

「あんたらってあれくらいの兵器とかもってたりするの?」

 

 テレビに現在進行形で流れる、敵ロボを一撃で沈めるビーム砲を指差すハルヒ。その様は軽快に見えて実に無慈悲だ。

 

「じょ、情報漏洩は軍規違反であります!!」

 

「ちぇ〜」

 

「あ、こらハルヒ殿つまんない顔しない!!」

 

 

 *****

 

 赤い彗星シャア登場。

 

『あ、赤い彗星……』

『あれがザクの性能なのか!? 三倍の速度だぞ!』

 

「やばっ……シャアかっこよ……」

 

「ここが全盛期でありますがな」

 

「え?」

 

「え、あ、いや。なんでもないであります! シャア少佐の次の活躍に期待であります! …………復讐に燃える腹黒いとこだけど」

 

『────君のお父上が悪いのだよ』

『シャァァァア!! はかったなシャア!!』

 

 *****

 

 本編視聴後

 

「あ、ザク三体できたわよ!!」

 

「うわ、早ぇぇ!? ハルヒ殿作るの早すぎない!? しかも我輩が口出しするとこもないくらいのハイクオリティ!」

 

 すっかりガンプラにどハマりしたハルヒである。

 

 塗装、シール貼り、凝ったディテールの出来のガンプラをケロロに差し出す。

 ハルヒはどう? と自信たっぷりに胸をはる。

 

「こ、この天然ガンプラ職人め……! ハルヒ殿……恐ろしい子……!」

 

「さぁ次作りましょ! あ、シャア専用ザクの箱ちょうだい!」

 

「だ、ダメぇ! これは我輩が作るんだい!」

 

「よこしなさいよ!」

 

 幼い兄弟が喧嘩するようなガンプラの箱の取り合いを始める二人。

 

「いやだぁい! シャア少佐! 助けてください、シャア少佐ぁぁぁぁぁ!!」

 

「ケロロ、すまない。しかしこの箱は無駄死にではないぞ!」

 

「声真似とかも上手いとかどうかしちゃってんじゃないのォォォォ!? ぎゃああ容赦ねぇぇぇぇぇ腕がとれるぅぅ!」

 

「あ、ごめん」

 

 ハルヒは間違えてうっかりケロロの手まで掴んでしまったようだ。焦ってパッと手を離す。

 

「あ、じゃあわかったこうしましょ!」

 

「……なにかいい方法があるでありますか?」

 

「塗装はあなた! 組み立てを二人でやりましょ!」

 

「──────」

 

 二人でガンプラを作ろう。

 そう異星人から提案を受け困惑するケロロ。

 すぐに正気に戻る。

 

「……いいのでありますか?」

 

「いいの。こういうのは二人で作った方が楽しいじゃない!」

 

 にっと笑うハルヒを見て、ケロロも屈託のない笑みを見せる。

 

「了解であります」

 

「……よーし! じゃあ私、下半身作るわね!」

 

「──────」

 

「ケロロ?」

 

 唖然とするケロロに、ハルヒは不思議そうに手を止める。

 

 そんなケロロが頭の中で思い浮かべていたのは、

 

 ──────こんな風にガンプラを喜んで一緒に作ってくれる存在はいただろうか……

 

 素朴な疑問だった。

 

 ──────思えば、ゼロロはどこか遠慮してるそぶりもあったし……ギロロはあんまり積極的じゃなかった気もする。

 

 いい加減で周りを嫌な意味で巻き込むめんどくさい性格をしていたケロロにとって、ギロロやドロロと出会う前はあまり共通の趣味を持った友達は少なかった。

 

 二人で作ろう……か。

 

「……こんなに暖かい気持ちだったっけ」

 

「どうしたのよ? 急にボーッとして」

 

「ハルヒ殿、我輩……」

 

 ────ハルヒ殿は。

 

「機動戦士。中巻、下巻もあるでありますよ。これが終わった後にまた見ないでありますか? ダメ?」

 

 最後に少し遠慮したそぶりでケロロは茶化す。

 

「もちろん! また観ましょ!」

 

 さも当然、見ない方がおかしい、と言うようにハルヒは顔を輝かせる。

 

 

「────ふふっ、今私、最高に充実してる! なんでだろっ」

 

「……何ででありましょうなぁ」

 

 

 ****

 

 

 閑話

 

 

「……そういえば、我輩、なんで遊んでたんだっけ?」

 

 

 すっかりとハルヒの監視任務についての報告を忘れているケロロであった! 

 

 

 *****

 

 

 

「うんまーっ!! うんまうんま、うんまーい!!」

 

「ちょっ! よく噛んで食べなさいよね!」

 

「この肉野菜炒めといい、味加減が絶妙で……あっこの肉団子も美味であります!!」

 

 ケロロって……なんか愛嬌あるなぁ。

 宇宙人の軍人……それも軍曹。もっと鬼と付くくらい凶暴なのかなって思ったけど、割と大人しい……というか、たまに……いや、かなり子供っぽいところがあるし。

 

「あんたって、ほんと毎日楽しそうよね〜……」

 

「ゲロ?」

 

「……すこし、うらやましいわ」

 

 ここではない遠い世界を見つめる。

 頭の中でこれまでの少ない人生の日々を映画のフィルムのように流して振り返る。

 

「ケロロはさ。今までどんなことがあった?」

 

「そりゃー大変でありますよ。軍人でありますから。ガンプラ作って敵性宇宙人を吹っ飛ばして、休みの日にガンプラを買いに行って未開の惑星を調査したりー」

 

「あんたの人生の大半ってガンプラなわけ?」

 

 ため息半分呆れ半分……いや呆れしかしていないな。

 

「そりゃー楽しみがないと大変なことなんてやってられんでありますよ! 我輩、夏休みの宿題とか夏を遊び倒した後に一気にやる派だしー!」

 

「……そっか。……それに比べてあたしの日々ってなんだろう」

 

「────ハルヒ殿は日々の日常に満足していないでありますか?」

 

 ケロロのその言葉が耳に響く。

 

「……そうね。たぶん」

 

「そうでありますか。何もかもがつまらなくて、どうでもいいって感じ?」

 

「……そうね。宇宙人がいるって直に体験して知ってから世界が広がったーって思ってはいるけど。……けどその前は概ねそんな感じね」

 

 ────ずっと聞かれたかったのかもしれない。ずっと誰かに言いたかったのかもしれない。

 

 親父には悪いけど宇宙人の船にキャトられたいとか、そう言う考えもあったりする。

 ケロロは……そう望めば連れていってくれるのだろうか。あたしの知らない世界に。

 

「思春期とかの悩みって、異星人にも共通なのでありますなぁ。我輩、正直言って少しペコポン人に親近感が湧いてしまうであります」

 

「そう? あなた、あんまり悩まなさそうな性格してるけど」

 

「これでも我輩、結構悩んでんの!! 悩んでることあったりするの!」

 

 ケロロはプンスカと湯気をあげて両手を上げる。

 

「我輩もあーつまんねーな、マジなんなんだろーとか思うことはあったであります。けど結局────面白いことって意外とそこかしこに落ちてるもんでありますよ、ハルヒ殿」

 

「えっ────あっ、とっと」

 

 急にケロロが真面目なことを言い出すものだから握っていたコップをこぼしてしまいそうになる。

 

「過去に楽しかったことがなくても、これから見つければいいでありますよ。いくらでも楽しいことは探せば落ちてるもんだし、あるって信じた方が────きっと楽しいでありますよ」

 

 そっか。

 

「なるほど、ね」

 

 なぜケロロはいつも楽しそうなのか。

 刺激的な毎日が常にあるからとか、色んな世界を知っているからとか、そう言うのじゃなくて。

 

 ────だいぶ、腑に落ちた気がした。

 

 *****

 

 

 

 閑話2

 

「……ハルヒ殿、どうして吾輩にケロボールを容易に差し出しちゃったであります?」

 

「え? なんかケロロって信用できそうな気がしたもの!」

 

 ……ハルヒ殿……。

 

「あー楽しかった! けどまだなんか物足りないわね」

 

 ハルヒがガンプラをじっと見つめる。

 

「ねぇケロロ! なんかロボットみたいなの隠してない? ビームとかビューンって出るやつ!」

 

「は、えっ? そ、そそ、そんなのないでありますよ?」

 

 心当たりがないわけでもないが、とても持ち出せない。

 

「ほら、こう……ガンプラを本物の兵器に変える装置とかあったりしない!?」

 

「ど、ドラえもんの読みすぎであります!」

 

 ある(ナノラ)とは言えない軍曹であった。

 

 しかしまさかこの時、巨大ガンプラで宇宙戦争をやりたいと思ったハルヒによってタンスの中身が一時的に擬似的な宇宙空間に置き換わっていたことは誰も知らない。

 

 *****

 

 

 ────通信が繋がった。

 

 

 この度、司令官に隠れて件の任務について報告をすることとなった。

 

「観察対象……ハルヒ殿は、我々の知る彼女の力の一端すら……自身で認識していない…………善良なる一般市民であります」

 

『そうか……』

 

 一連の流れを説明した。

 

『公私混同は避けるべきだが……ケロロ軍曹』

 

「はい?」

 

『私にも娘がいてね……まだ軍の教育を受けていない純粋無垢な子なのだが……』

 

 写真を取り出す。

 

『なんの変哲も無いその子が……偶然大きな力を持った。そういうことなのかもしれないな』

 

「……司令官どの……」

 

『だがそれはそれ。これはこれだ。────軍務に私情は不要』

 

『────ケロロ軍曹。残念ながら、ケロン人と接触した観察対象の記憶消去は決定事項だ。上の決断は、もう覆りそうに無いだろう』

 

「そ、そんな……司令官どの!!」

 

『君にも休息が必要なようだ。あとで手配をしておくから、メディカルチェックを受けたまえ』

 

 *****

 

「────ただし、ケロロ軍曹。現在本部は対象との接触による記憶消去及び監視を決定してはいる。だが本部の過激派には、観察対象のペコポンを危険因子として抹殺しようと言う意見も少なからずあった」

 

「これは考えうる限りの最悪のケースだが……もし観察対象が何らかの形で暴走した場合────過激派の連中が決定を覆そうとする場合が」

 

 なぜかしんと、ケロロ側からの通信が途絶する。

 

「……あれ? 軍曹? ……ケロロ軍曹?」

 

「通信途絶しました」

 

「どこから?」

 

「過激派の話あたりです」

 

「一番肝心な部分じゃん……」

 

 

 ****

 

 

 

「────記憶の消去って……どういうこと……?」

 

 

「は、ハルヒどのっ……」

 

 しまった! 上官との話勝手に打ち切っちゃったよ!! あとで謝ればどうにかなるお話だっけこれ!? いや、そんなことより今は────

 

「いやよ!! そんなの絶対にいや!!」

 

「ハルヒどの……」

 

「宇宙人もいない! 超能力なんてない! 未知のテクノロジーなんて存在しない! なんにもなれない! あんなつまんない日々に戻るなんて絶対に嫌!!」

 

「お、落ち着くであります、ハルヒ殿!」

 

「いっぱいあったのに!! あなたといた時間が今までの人生の中で一番輝いてた!! ドキドキした! 楽しかった!! ずっとずっと……こんな時間が続くって信じてたのに!!」

 

 ハルヒはその場から逃げて出してしまう。

 

 行方不明になったハルヒを探して走る軍曹。

 しかし辺りの異変に気がつく。

 

 空って……こんなに歪んで見えていたか。

 

 あたりが静まり返り、時間がゆっくりになったり早くなったり。奇怪な現象がつぎつぎに起こる。

 

 ハルヒがこんな寂しい時間が早く過ぎれば。経ってほしくない、時間なんて止まってしまえ。

 

 さまざまな思考から、ハルヒの能力が暴走。

 

 ついには世界が青く静止し、謎の巨人が出現。

 本部、ケロロ共に大混乱に陥る。

 

 本部の過激派がハルヒを消そうと動き出そうとする。

 

 そんな中、ケロロは長門に発見され、状況の説明とハルヒの場所を知らされる。

 

 そんなに状況を把握してるなら、あんたらはどうにかできないわけ!? 

 

 無理と断言させられる。大元である情報思念も大混乱状態のようだ。

 

 最悪、地球が丸ごと吹っ飛ぶだけでなく、時間帯や因果やさまざまな法則が歪むことによって何もかもがお釈迦。太陽系……はたまた宇宙そのものが吹っ飛びかねないという。

 

 ハルヒに会え。

 長門にはそう告げられて去られてしまう。

 

 長門は本部に区間転移し、事態の説明をしていた。このことと今回の事態が、記憶消去と監視の完全な決定につながる。

 

 ハルヒと会うケロロ。

 

「我輩も楽しかったであります」

 

「やめて……やめてよ!! そんなこと言われたら……本当に! 本当に行っちゃうみたいじゃない!!」

 

「────いい加減にするでありますよ、ハルヒ殿!!」

 

「────っ!!」

 

「……我輩だって、辛いであります。記憶を消されるのは嫌だって、そう思っているのはハルヒ殿だけでないでありますよ」

 

「……えっ? そ、それって」

 

「────おそらく。我輩も、記憶の消去を命じられるであります」

 

 起きないかもしれない。だが起きるかもしれない。彼女に話を聞いてもらうには嘘をつくしかなかった。

 

「い、いやよ。そんなのいや。もっと嫌。ケロロだけが覚えてくれなきゃ。覚えて────」

 

「けど我輩、いい名案があるであります」

 

「な、なに……教えて!」

 

「じゃ、腕を出すであります」

 

「一緒に作ったガンプラ……」

 

「ガンダムの頭を……ぽんっと」

 

「あげるであります。ケロロ軍曹、渾身の出来であります」

 

「我輩たちの思い出って、そう簡単に消えてしまうものでありますかな?」

 

「────!」

 

「いくら薄くなってもいくら色褪せても……消えないものだってあるでありますよ。記憶は木の根のように根深いもの。あれ、ガンダムの頭、どこにやったっけな、ソロモンに落っことして来ちゃったのかなって────」

 

「────?」

 

「あっ、わかってない様子。要するに────」

 

「この欠けたガンプラが、きっと我輩たちの思い出に導いてくれるであります」

 

「きっと、また会えるのかな」

 

「約束はできないでありますが────我輩たちは基本、どこにでも潜んでいるであります」

 

 我輩が下手だっただけだからと自虐的に言う。

 

「────あ、本部? うん……了解であります」

 

「ほんの少しだけ、猶予をもらえるようであります。それまで────もっと色褪せることのない思い出を作るでありますよ。ハルヒ殿」

 

 

 ハルヒの心は情緒を取り戻す。

 きちんとした別れを済ました二人。

 

 

 *******

 

 

「宇宙人はいた。そう覚えていれば。そう信じていればきっと」

 

 ハルヒが眠る合間に別れ、ケロロは母艦へと帰還。

 

 記憶と痕跡の消去が行われ、ハルヒの記憶からはケロロに関する記憶は消去された。

 

 ハルヒは手に握りしめていたガンプラを見て、衝動的に家を飛び出した。

 

 どうすればいいか。自分でもわからないが、とにかく大きな字を。空の上からでも見えるような大きい字を。

 

 あたしらしく。あたしであると。そうわかるように書くにはどうすればいいか。

 

「ちょっとあんた!! 手伝って!!」

 

「え、えっ?」

 

 あたしはここにいる。

 

 ミステリーサークル

 

 裏山で飛び立つ輸送船の窓から、ハッキリと見えた。

 

 ガンプラだけが残っていたとしか。

 

「司令官どの!!」

 

「……なに、ちょっとした細工をな。対象のケロン人にのみ関する情報の消去──────その任務にはなんら支障はない」

 

 ────宇宙人はいた。

 

 その程度の認識があってたところで問題なかろう? と司令官は笑う。

 

「所詮、たった一人がボヤいたところで相手にはされぬよな……いや、なんでもない。引退前のじじいの独り言だよ。聞き流してくれたまえ」

 

「……ありがとうございます……っ!」

 

「それに、君たちには……もう一度ペコポンへ戻ってもらうかも知れんのだからな」

 

「──────え?」

 

 

 20XX年。

 

 地球は異星人の来訪を陰ながら迎える。

 それは他のものから見れば、侵略……とは頑なに言えるものではなかったかもしれない。

 

「こぉらぁぁぁボケガエルゥゥゥ!!」

 

「げ、ゲロォォォォ!? 夏美殿! ご勘弁おおおお!」

 

「軍曹ぉぉぉ!」

 

 言うなれば、原住民とのふれあい。

 

「はい! ケロちゃんにお・み・あ・げ!」

 

「ふおおお! 1/100スケール型ネオジオング! でけぇぇぇ、これは組み立てがいがあるでありますぅぅぅ! ありがとうぉぉママ殿ぉ〜!」

 

「よかったね、軍曹」

 

「ママに感謝しなさいよ、ボケガエル」

 

 交流に近いものであった。

 

 陰ながら彼らの侵略もまた、進んでいる。

 

「ケロロッ! 貴様いつになったらまともな作戦を考えるんだっ!!」

 

「軍曹さんのやる気のなさは今に始まったことじゃないですぅ〜」

 

「ク〜クックックッ……帰ってもいいかぁ〜?」

 

『(欠席)』

 

 そう。陰ながら……誰にも迷惑をかけない。

 地球人に、少しづつとはいえ、たしかに影響を与える。

 

「だってさぁ〜青ダルマくんがいるから完全に侵略っぽい侵略なんて無理なんだって〜」

 

「貴様っ!! またそんな言い訳をっ!!」

 

「いたっ! おい首しめんじゃねーよ赤ダルマ! 上司だぞ! 一応オレ上官だぞっ!」

 

「ならもっと上官らしく振舞ってみろっ!!」

 

 いつもの怒声とあくびの絶えない子供染みた会議室。そんな中で、ケロロ自身は悩んで悩みぬいたのだ。

 

「んだとこの赤ダルマ!」

 

「貴様も緑ダルマだろうが!!」

 

「止めた方がいいっすかね?」

 

「帰ればいいんじゃねーの〜? クククッ」

 

「(欠せ────喧嘩はダメだよギロロくん! ケロロくん!」

 

『うっせぇ黙れ!!』

 

「ひ、ひどい……」

 

 従来の武力による侵略とは違う。

 文化的かつ、知的な侵略。

 

 

『──────今度異星人をテーマにアニメとか作ってみたいかも!! せっかくだから……ノンフィクションでやってみたいわね』

 

「──────あっ!! そっか!!!」

 

「はぁ?」

 

「これとかどうっすかね!!」

 

 平和的で────そう、他の異星人ではない。

 ケロン人。いや、ケロロだからできたこと。

 

 

『ゲロゲロゲロっ! いざ進め〜! 地球侵略せーよっ!』

 

 

 アニメ侵略大作戦。

 

 これは……ケロロたちのノンフィクションの日常を、中毒性のあるオープニング、脚色無しでネットで全国に放映する作戦。

 

 アニメタイトルは『ケロロ軍曹』。

 

 今までのアニメ作品の失敗を、脚本アドバイザー冬樹の指揮のもとで振り返り、

 

 この作戦……もといアニメは多くの人に愛され、地球における、文化に深く根づいた。

 

 後の地球人とケロン人による平和的交流の礎となった作戦である。

 

 

 その中でも、ケロロ自身が脚本を書いた話は、今作品のきっかけ。

 

 その話は最終回として放映された。

 

 

 タイトルは──────

 

 

「『ケロロ軍曹の憂鬱』ってどう? ケロロッ!」

 

 

 副監督(最終回限定)において、決められたそうな。

 

 

 

「おや、ハルヒ殿からのアドバイスでありますかぁ〜ぜひぜひ参考にさせてもらうであります! そういえば、最近はどうであります? 学校で友達は多くできたでありますか?」

 

「えぇ、もっちろんよ!」

 

 

 ────────おしまい。

 



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