語り継がれるハグレたちの歌 (ファイナル咲夜)
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0.プロローグ

恥ずかしながら帰ってまいりました。
某動画サイトでざくざくアクターズの動画を見て、思わず自分もやりはじめ、
気がつけば公式設定資料集と絵日記を購入するまでどっぷりハマりました。

またこの小説を書くきっかけとなったのはハーメルン内のおなじざくざくアクターズ小説
やーなん様作の「アナザー・アクターズ」に影響されたのもあります。

長い前書きはここいらで、本編をどうぞ。


彼女との出会いは、デーリッチと共に王国となる場所を探す旅の途中で立ち寄った小さな村。

一晩だけでもと、泊まれそうな宿を見つけ、受付を済ませた時だった。

 

「初めまして!もしよろしければ一曲聞いて行かれませんか?」

 

紺色の髪を揺らしながら、デーリッチよりも背の引く少女が私たちに声をかけてきた。

どう見ても10歳程度にしか見えない少女は、自分よりも背が高く重そうなリュートを背中に背負い、

満面の笑みでこちらを見ている。

 

ハグレだろうか?たとえハグレだったとしても今の私たちには曲を聞いて恵むほどの財力はあまりない。

 

「すみません、私たちあまりお金がなくて…。」

 

やんわりと断ろうと言葉を口に出す、が。

 

「お金なんていいですよ!聞いてくれるならそれだけで十分です!」

 

なんて、言うものだから、

 

「ほんとでちか!?ねぇねぇローズマリー、タダで音楽が聴けるみたいでちよ!」

 

デーリッチが嬉しそうに食いついてしまった、こうなると中々諦めてくれないのはわかっている。

ここは素直に厚意に甘えよう。

 

「じゃあ…お言葉に甘えて」

 

そういって、小さな彼女に連れられ、宿の食事処に案内される。

食事処は小さな酒場も兼任しており、夜のとばりが落ち始めた頃もあって村人や旅人で賑わっている。

そんな賑わいの中から、声が上がった。

 

『歌姫様が来てくださったぞー!』

 

その声を皮切りに、あっちこっちから熱の入ったコールが飛ぶ。

 

「す、すごい人気でちね…。」

「ああ…よほど彼女はこの村で人気なんだろうね。」

 

小さく置かれたステージに向かって歩む彼女を見て二人で言葉を交わしながら、空いてるテーブルに着く。

 

頭を下げて「どうも、どうも!」と元気よく周りの人たちに声をかけていくその様は、

隣にいる未来のビッグな王様にとてもよく似ている。

 

やがて小さなステージに上がると、深々とお辞儀をしながら、言葉を紡ぎ始めた。

 

「こんばんわ、この度もこのような席を設けてくれた宿の店主様や皆様にまずは感謝を。」

「初めての方もいらっしゃいますので改めて自己紹介をさせて頂きます。」

「私は吟遊詩人のユナ、この夜も皆様のために歌を紡がせてもらいます。」

 

先ほどの無邪気な笑顔から一変して、大人のような笑みを含めた笑顔でそう言うと、

リュートを手に持ち、ゆっくりと弦に指をかけ、周りを見渡し

 

「まずは一曲目、曲のタイトルは【英雄の旅立ち】」

 

そう言って、歌と共にリュートを鳴らし始めた。

 

 

……

 

 

一曲目が終わる頃には、私もデーリッチも歌に魔法でも掛かっていたのではないかと疑うほどに魅了されていた。

たかが歌だと思っていた自分が少し恥ずかしいと思ってしまうほど、その歌には言葉では表せない魅力があった。

 

「すごいでち!こんな綺麗な歌は初めてでち!」

 

デーリッチの言葉に只々頷くしかなかった。

そして二曲めに差し掛かろうとしたとき、私たちに声をかけてくる人物がいた。

 

『楽しんでいるかい、お客さん?』

 

それは先ほど受付で対応してくれた女主人の方だった。

 

「ええ、すごくいい歌ですね。」

『でしょう?にしてもほんとに運がよかったわね。』

「? 運がいいとは?」

『実はね、ユナちゃん…明日にはこの村を出るのよ。』

「え!?」

 

その言葉に思わず声を上げてしまう、周りの熱狂でどうやら気づかれてはいなかったのは幸いだった。

 

「どうしてでちか?こんなに人気なのに?」

 

デーリッチが不思議そうな顔をして女主人に問いかける、私も同じ気持ちだ…一体どうして?

 

『ここで歌の許可をもらいに来た時に教えてくれたんだけどねぇ…ユナちゃん、夢があるらしいのよ。』

「夢…ですか?」

「一体どんな夢なんでちか?」

『…いろんな種族の人たちと友達になることが夢だそうよ。』

「友達でちか?」

『ええ、前にいた世界でも同じ夢を持って過ごしてたらしいのよ。』

「なるほど…でもやはり村としては彼女を引き留めたいとは思わないのですか?」

『そりゃぁこの村のもんは誰だってそう思うさね…けどね…』

『ユナちゃんは半年もここで歌を歌って…それどころか稼ぎにもならない小さな手伝いを自分から率先してやって…』

『そんな優しい子が夢を追いかけてるってなれば、だれも引き留められないわよ。』

「……なるほど。」

 

その話を聞いて、ステージの上の彼女を見る。

太陽のように輝く笑顔を振りまきながら、歌う姿は誰かが言った【歌姫】のようで、

そんな小さな体に、周りが聞けば笑ってしまうような大きな夢を背負っている。

 

「デーリッチみたいな子だね。」

「そうでちか?そういわれるとデーリッチも恥ずかしいというか…。」

『仲がいいのね、あなたたち。』

「でーっちっち!デーリッチとローズマリーは家族のようなものでちからね。」

『仲がいいことは良いことだよ、もし何か食べたいでもあれば用意するからね』

「ありがとうございます、わざわざ。」

 

お礼を言うと『良いのよ、良いのよ』と言って女主人が去っていく。

その姿を見送ると、また二人で彼女の歌に耳を傾けた…。

 

 

……

 

 

――――その日の就寝前

 

「ローズマリー、相談があるんでち。」

「どうしたんだいデーリッチ?」

 

一つのベッドに二人で横になりながら、デーリッチの話を聞く。

 

「あのでちね…デーリッチ少し考えたんでちが。」

「…もしかしなくても、ユナって子を誘いたいとか?」

「うぐ…バレバレでちか…。」

「まぁ、明日この村から出るって話を聞いた後ソワソワしてたからね…でもどうするんだい?

彼女の夢の話は聞いただろう?」

「そこでち、デーリッチたちは今ハグレたちのための王国を作ろうとしてるでち。」

「まぁ、まだ王国になる場所を探してる最中だけどね。」

「うっ…ま、まぁそれは今はいいんでち!王国をつくればいろんなハグレが王国にきっとくるでち。」

「…そうすれば自然といろんな種族の友達も増えるから一石二鳥だって言いたいんだね?」

「先読みされまくってるでち…。」

「確かにそうかもしれないけど、王国が本当にできるかだってまだ不明確なうえにハグレが集まるかもわからない…

今の状態じゃ説得力もあった物じゃないってわかっているだろう?」

「そ、それは…そうなんでちが…。」

「……でも、そうだね もしその話で彼女が頷いてくれる可能性がないわけでもない。」

「ローズマリー?」

「…明日の朝、君が直々に話をしに行くといい やってみないとわからないんだ。」

「! そうでち!がんばるでちよ!」

「…それじゃ、明日に備えて今日はもう寝ようか。」

「うん、お休みでち、ローズマリー。」

 

 

……

 

 

――――次の日の朝

 

荷支度を整え宿の食事処に向かう、

女主人さんが彼女は朝はここに居ると教えてくれたので先に向かったデーリッチは話をしている頃だろう。

彼女がついてきてくれるかは正直わからないけど…。

受付までやってくるとデーリッチが笑顔で待ってくれていた。

その横には

 

「あの!デーリッチちゃんからお話を聞きました!私でよろしければ未熟者ですがよろしくお願いします!」

 

たどたどしく挨拶する彼女…いや、【ユナ】に私は、

 

「こちらこそ、よろしくお願いするよ、ユナ」

 

――――これは、やがて【ハグレ王国】と呼ばれる小さな国の、はじまりの叙事詩である。




この小説を書こうと思ったきっかけは、ざくざくアクターズをプレイしてて、
「そういえばサポート重視のキャラはいるけど特化してるキャラっていないなぁ」
と思った事と
「これだけ立派な王国だから、吟遊詩人がお話として語り継ぎそうだなぁ」
と思った事が原因です。(

今回オリジナルのキャラクターの設定を作る際、SW2.0というTRPGで自身が作成した
吟遊詩人(バード)のキャラクターを少し弄って出しているため、
このキャラの設定にSW2.0の設定が混ざることを先に言っておきます。

ここまでの読んでいただきありがとうございます、次回をお楽しみに。


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第一章
1.ハグレ王国


基本は原作に沿って話が進んでいきますが、少しセリフが変わってたりしますのでご了承を。


「…ローズマリーちゃん、本当にデーリッチちゃん大丈夫かな?」

「大丈夫だとは思います…一度目の前で実際にワープをしているので座標を間違えない限りは」

 

遺跡に残っていた資料を読みながら、ユナに返事を返す。

…ちなみにちゃん付けで呼ばれているのはユナ曰く年齢が28歳で年上だからだそうだ。

デーリッチより低く、見た目は本当に少女にしか見えないので心底驚いた、

なおユナと呼んでいるのは本人がそう呼んで欲しいとのことだったからだ。

そんなことを話していると、

 

シュイン

「うおおっ!?本当にワープできたでち!?――ってごほっ、ごぶほっ!」

 

話をすればなんとやら、件のデーリッチが無事…とは言わないが戻ってきたようだ。

 

「大丈夫?デーリッチちゃん?」煤を払い払い

「大体座標通りに出てくるみたいだね。距離に制限もないみたいだし……。」

「全身煤だらけでち!もうちょっとマシな場所に呼べなかったでちか!?」

「壁に埋まらなかっただけ良かったと思ってくれよ。それに座標を計算したのは私だけど、

ゲートはデーリッチの魔力で開いてるから。」

「そうなんでちか?まぁ、細かいことはいいでちっ!今はこの凄い力で何をするかが大事でち!」

「…(このアイテム、確かにキーオブパンドラ……。しかし最初の召喚士と呼ばれていた者の杖が、こんな辺境の遺跡に転がってるなんてことが…)」

「聞いてるでちか?」

「え、何を……あぁ、まさかデーリッチ、昨日言ってたことを、本当に実行する気なのかい?」

「勿論でち!このキーオブパンドラさえあればどんな場所でもひとっ飛びでち!そうなれば

ここを拠点に私たちの王国を作る事もできるでち!」

「確かに、その鍵の力を使えば、遠くに散らばった仲間たちを集めることができるかもしれない……。

山も国境も関係なくなるしね。」

「ただ、まだこの鍵のことは依然としてよく分かってないことも多いのもからね、

その鍵の実験は個人的にしてみたいな。」

「おお、じゃあ早速……。」

「あ、あのー!」

 

デーリッチとそんな話をしているとユナがおずおずと挙手して声をかけてきた。

 

「えっと、もし最初によかったら私も転送できるかどうか実験をー……。」

「あぁ、そうだったね、デーリッチはまだ魔力に余裕はあるかい?」

「全然大丈夫でちよ!」

「それじゃあユナ、デーリッチの傍に。」

「はい!」

「…(にしてもユナが人間とは違う種族で変わった体質を持ってるとは思わなかったな。)」

 

ユナが仲間になった後、ユナから教えてもらったことだが。

なんでもユナは前の世界では【グラスランナー】と呼ばれる種族であり、

なんと魔力を持たない種族だという。

そのことにも驚いたが、もっと驚いたのはその後、

魔力を持たない代わりに魔法に対してもかなり鈍く、自分に向けらた魔法をかき消すこともできるそうだ。

そのため、キーオブパンドラの転移にこの能力が発動してしまう懸念があった。

 

「それじゃいくでちよ!」パァァァァ

シュイン

 

「おお」

 

結果から言うと、デーリッチもユナも無事目の前からワープしていた。

 

シュイン

「ただいまでちー!」

「戻りました!」

 

そして今度は暖炉の中ではなく、しっかりと部屋の中央に座標が合わせれたようだ。

 

「おかえり二人とも、どこか変な感じがしたりしてないかい?」

「特にはないでちね」

「私も特にはないです!」

「それならよかった、これで懸念していたこともどうにかなったわけだし……。」

「早速王国作りでちね!それじゃ――。」

「…まずはどうするでち?」

「ああ、うん…だろうね……。そのあたりはいろいろと説明するから。

仲間が増えるまで、しばらく私に任せてくれないかい?」

「勿論いいでち!ローズマリーが参謀なら100人力でち!」

「私もお手伝いできることがあれば手伝います!」

 

 

「それで、まずはどうするんでちか?ローズマリー」

「うん、じゃあまず最初だけど……。たった三人だけじゃ王国もヘッタクレもないわけだ。

さっき君が言った通りまずは仲間を集めよう。」

「ハグレたちは基本的に僻地に潜んでいる。魔物や追いはぎ等の危険を考えると、

まずは戦闘できるメンバーとして四人は欲しい。」

「そういえばユナちんは戦闘ができないんでちたね…」

「も、申し訳ございません…」

「いや、気にしてないよ、むしろユナの呪歌や鼓咆、あれには私たちには到底できない力があるからね、支援に期待しているよ。」

「そうでち!」

「あ、ありがとうございます…!」

「…話を戻すよ、とりあえずのメンバー候補として、昨日リストアップしておいたものがある。

今から向かう場所は、ほら、ここだ。」

「えーっと…て、てこてこ山――?ぱっとしない地名でちね?」

「初歩的な魔物しか出現しないし、座標もはっきりしている。まずはここに飛んでみよう。」

「ここには何がいるんでちか?」

「それは行ってから説明するよ。さぁデーリッチ。

準備ができたらキーオブパンドラでこの座標にワープをお願いするよ。」

「任せるでち!」

「えいえいおーです!」




次回、てこてこ山へ!


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2.てこてこ山

このあたりから地の文をローズマリーからオリジナルキャラのユナに変更していきます。


 

シュイン

何度目かの転移の音と共に、景色ががらりと変わっていく。

無機質な石材の空間から一転して、澄み渡る青空と木々の騒めきが耳をくすぐる。

 

「よし、ほどんどズレもなくついたね。ここが、てこてこ山の中腹あたりになる。」

「おお!野外への長距離移動は初めてでち!良い空気でちねー!気分爽快!」

「うん、これならお弁当を作って持ってきてもよさそうだね!」

「こらこら、ピクニックに来たわけじゃないんだぞ二人とも。これから勧誘の旅をするんだ。」

「ああ、そうでちたね。ここでは何が仲間になるんでちか?」

「うん……。ベロベロスという三つ首の犬と、ハピコというハーピーの子供がハグレとしてこの山のこのあたりにいるはずだ。」

「ええ!?記念すべき初の王国仲間が犬と鷲人間なんでちか!?」

「ハーピーは鳥人じゃないかなー?」

「どっちでも同じでちよ!デーリッチは最初はせめて人型いいでちー!」

「贅沢を言うな。そう簡単に立派な奴らが首を縦に振ってくれるわけがない、王国には私たち三人しかいないんだぞ?」

「うぐっ……そこを言われたら言い返せないでち……!」

「今回は妥協して、まずは落としやすいところから始めようじゃないか。さ、進むぞデーリッチ、ユナ。」

「うぅ…はーいでち。」

「はーい!」

 

そうやってローズマリーちゃん、デーリッチちゃんと一緒に山を登り始めて本当にすぐだった。

山から流れる滝の前の道を塞ぐように、二体の…ブロブなのかな?あれ?

 

「ローズマリーちゃん、なんかブロブみたいなのがいるよ?」

「ブロブ?……ああ、あれはスライムって言う下級の魔物ですね。」

「敵でちか?」

「人を襲う敵だけど、私たちの力でも十分に勝てる。適当にあしらっておこう。」

「了解でち!」

「わかりました!」

 

と威勢よく言ったけど、ローズマリーちゃんのアイスという魔法と、

デーリッチちゃんのフルスイングで一瞬で終わっちゃったんだけどね!

 

「よし、勝ったでち!」

「うん、その調子だ。ただ戦闘後に体力を消耗しているなら、その後の回復を忘れるなよ?」

「わかったでち。」

 

そう言いながら三人で再び山登りを始める。

滝の前の道を進み終えると、今度は謎の魔方陣をみつけた。

 

「この魔方陣はなんでちか?」

「これは回復魔方陣だな。先人たちが残した遺産だというんだが、詳しいことは良く分かっていない。」

「へぇ……、遺産ってことは作ったりできないの?」

「うーん……少なくとも私は今の技術で作ったなんて話は聞かなかったかな。

ただ、少なくともこれはどうやっても壊すこともできない超文明技術で造られているからね。」

「なるほどぉ……やっぱりローズマリーの話はためになるでちね。」

「そう思うなら勉強を頑張ってほしいなぁ……。

まぁ、この回復魔方陣は今後も色んなところで見かけることになるだろう。

ここでは体力と魔力を回復することができるから有効活用していこう。」

 

回復魔方陣を後にしてさらに進んでいく。

道中ではスライムの他に大きなナメクジやクワガタ、カマキリなどの魔物が出てきたけど、

ローズマリーちゃんのアイス、デーリッチちゃんのフルスイングでうやっぱり一瞬で終わっちゃうから、二人ともすごいなぁって感心しちゃう。

 

「あ、宝箱があるでち!」

 

そんなことを考えてると、デーリッチちゃんが声を上げ、走り出す。

 

「宝箱?山の中にも宝箱ってあるんですね。」

「こういう宝箱は大抵、前にここを訪れた冒険者が残して行ったりしたりするものだけどね。」

 

そう話をしてると、とことこと肩を落としてデーリッチちゃんが帰ってきた。

 

「や、薬草だけだったでち……。」

「ああ、前にやってきた冒険者がわざと残していったんだろうね、初心者に譲ろうと考えて皆に譲りまわっていたわけだ。」

「この辺りには冒険者も来るでちか?」

「昔は駆け出しの冒険者用の舞台としてそこそこ賑わってたみたいだけどね。

今は町の近くにもっといい場所が出来たから、ここまでやってくる冒険者は少ないよ。」

「もっとも、ゼロじゃないだろうから、少しは警戒したほうが良いかもしれない。

ハグレだからと狙ってくる冒険者も少なくないからね、野外で見かけてもあまり関わらないほうが良い。」

「おおう、それは恐ろしいでちね……。」

「仲良くできたらいいのになぁ……。」

「今はまだ難しいだろうね、けど王国が大きくなって、ハグレへの認識が変われば……

その時は、冒険者にも警戒しなくてもいい日が来るかもね。」

 

……

 

――途中イベント「グラスランナー」――

 

「そういえばユナちん、さっきお花に向かって喋ってたでちが、なにか辛いことでもあったでち?デーリッチで良ければ相談にのるでちよ!」

「あ、いや、辛いことを愚痴ってたわけじゃないの。お花さんにその犬さんとハーピーさんを見てないか聞いてたの。」

「え?花にでちか?」

「うん、虫とか植物の声を少しだけなら聞き取ることができるから」

「へぇ、それもグラスランナーって種族の特徴かい?」

「そうなりますね…あ、どうやらこの先にある滝の道を超えると頂上付近らしくて、

そのあたりに居るかもしれないって教えてくれましたよ。」

「おぉ、それは良い情報でち!お花さんありがとうでち!」

「……うん、お花さんもお役に立ててうれしい、だって。」

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

それから少し歩いて、また滝の道に差しかかった時。

 

「んー……。」

「どうしたの?デーリッチちゃん。」

「いやぁ、あともうちょっとなのはわかってるんでちが……でっかい野望なのに、

ちまちま歩いて犬を勧誘するとは、やることが地味だと思ってでちねぇ…。」

「まぁまぁ、最初はなんでも地味なものだよ?デーリッチちゃん」

「それはそうなんでちがー……あ、そうだ!いいこと思いついたでちよ!」

「うん?」

「パンドラゲートを多用して、適当でいいからワープしまくるでち!めっちゃ数打てばそのうち他のハグレにも当たる!」

「うん、却下だよデーリッチ、そんなことをすれば滝から真っ逆さまに落ちたり、

地面に埋まったりする可能性もあるんだから。」

「おうぅ、そういえば結構あいまいなゲートでちたね……。」

「それにタダじゃないんだ。使用には、君の魔力を媒介としている。

あまり無理な使用を続ければ、デーリッチがどうなるか分からない。」

「もうすぐ目的の場所に着くんだ、今回は他のハグレはガマンして欲しい。」

「はーいでち……。」がっくし

 

すこし残念な表情なデーリッチちゃんを励ましながら滝の道を超えて、上へと歩いていくと、二路に分かれた道に差し掛かる。

そこには看板があり、どうやらここが先ほどお花さんから聞いた場所だと分かった。

 

「えーっと…『付近に天使を語るハーピーが出現中!騙されるな、冒険者たちよ!』…こっちの先に件のハーピーがいるみたいでちが、これ大丈夫でちかね…?」

「こっちは…『これより右、ベロベロス棲家。かの犬、狂暴なり!』だって。」

「どうする?デーリッチ。先に勧誘したい方から君が決めるといいよ。」

「そうでちね…、ならここは怪しいハーピーよりもわかりやすい犬のほうでち!」

「わかった、このまま右に進んでいこうか。」

「おー!でち」

「おー!」

 

果たして、ベロベロスとはどんな子なのか。

不安すこし、期待はいっぱい胸に抱えて、三人で右の道へ歩いていく…。




解説
【ブロブ】
ユナが元居た世界におけるスライムのような魔法生物。
柔らかく、酸の体を持っているため、打撃武器が効きづらく、
攻撃をした武器や攻撃を受けた防具を24時間以内に
アルコールで消毒しないと溶けてしまう。


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