ある町のとあるレストラン
「ランチメニューAです。」
一人の青年が厨房から料理を客に運んでくる。
彼の名前はツバサ このレストラン『レガリア』の店長兼調理担当を勤めている。
現在は昼の12時 最も客入りが多い時間帯であり、店内は混雑しておりツバサも忙しく働いている。
「店長、12卓のお客様からの注文です。」
ウェイターから客の注文を聞くと直ぐに調理に取り掛かり、あっという間に料理を完成させてしまった。
「はい、次!」
「今度は20卓からの注文です。」
ツバサは忙しそうにしながらも、なんとかこの店の経営を成り立たせており、それは店内の様子を確認する事で明らかとなった。
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時刻は切り替わって、深夜 城下町にて
黒装束の男が町を闊歩する。
それはツバサであった。
彼は正体を隠すために黒衣を身に纏い、手にはダガーらしき物を携えている。
「.......此所か。」
彼が立ち止まった場所、それは殆ど使っていなかったのだろうボロボロの元一軒家である。
「スーッ、ハーッ........よし。」
深呼吸をして一息入れてから扉を蹴破る。
扉はドガッ!、と音を立てて屋内へと倒れる。
「な、何だ!?」
ツバサが中へ入ると周囲からざわついた男達の声が聞こえた。
「......お前らか。」
男達は以前街中で暴れ、女性に対して乱暴を働こうとした際、ツバサに動けなくなるまでボコボコにされ、警備兵に突き出されていたのだが.....
「....噂は本当だったらしいな....どいつもこいつも腐ってやがる.....!!!」
男達の前で怒りを露にするツバサ。
「さっきから...何言ってんだ...テメェ!!!」
男はツバサに対して拳を振り下ろす。
「やっちまえ!」
男の仲間達が奥から囃し立てる...だが、
ブシャー、と血飛沫が男の首から溢れ出してくる。
「あ...が......!!!」
男はドサッ! と背中から倒れ、ピクリとも動かなくなってしまった。
「テメェら....何で釈放されてんだ?......答えろ。」
襲いかかってきた男を殺してから他の男達を睨み付け、質問をする。
「...だ、大臣様が..しゃ、釈放してくれたんだよ..。」
「オイ馬鹿!なに喋ってんだ!!」
「だ、だってよぉ....。」
男達がいざこざを始めるがツバサはそんな事は知らんとばかりに無視して考えた。
「ふむ....大臣....か。」
やはり噂は本当だったかと考え始めるツバサ。
「よし分かった....俺が聞きたいのはそれだけだ。」
男達の顔に安堵の表情が浮かび上がる。
ツバサは近くにいた男に近付いて、
「...じゃあ死ね。」
それだけ言うと、またも首を斬って殺す。
「な....何で、ちゃんと喋ったじゃないか!!!?」
「誰が喋ったら殺さないなんて言った?......俺はテメェら全員殺しにきてんだから全員殺すのは....当たり前だろ?」
悪魔のように笑いながら次々に男達を殺していく。
それはまるで一つの作業をするかのように淡々としていた。
━━━━━━━━━━
「....フゥ、終わった終わった。」
入った時とは違い、返り血まみれの黒衣を纏って廃屋から出てくるツバサ どうやら全員殺し終えたらしい。
これがツバサの『裏』の顔、そして普段レストランで働いている時は『表』の顔である。
ツバサはこの暗殺紛いの殺戮を約半年間も続けており、その噂はこの王都内で響き渡っていた。
「....こんなものか。」
脱走した犯罪者達を惨たらしく殺した後にそう呟いて闇の中に消えていくツバサ。その日以降、街を襲う犯罪者の数が半数にまで減ったそうな。
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翌日、『レガリア』にて、
「ふぅ.......疲れた。」
昨日、夜遅くまで脱走した犯罪者を複数ミンチにしていたツバサは、現在店内で休んでいた。
休憩室で休んでいると声を掛ける人物が一人、
「お疲れ様です、店長。」
「ああ、お疲れ。」
ツバサに声を掛けた人物は、最近この『レガリア』にバイトとして入ってきたシェリーという眼鏡を掛けた女性だ。
今業務を終えて着替える為に別室へ向かう途中、
「ん?」
ふと、ツバサの目に何かが写り混んだ。
「ちょっと待った。」
「へ?...な、何ですか?」
ツバサはシェリーの手を握って彼女の行く手を阻む。
「......君、最近寝不足なんじゃないか?目の下にクマが出来ている....それに、その傷。」
「えっ...あっ....!」
指摘されたシェリーは慌てて握られた手を振りほどき、両手で傷口を隠す。
その傷は彼女の背中に大きく付けられており、見るからに痛々しいものであった。
「....ちょっと待ってて。」
それを見たツバサはシェリーをその場に取り残し、何処かへ行ってしまった。
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「お待たせ。」
戻ってきたツバサは両手に救急箱を抱えていた。
「取り敢えず、上を脱いでくれないか?」
「え、ええっ!!?....こ、此所で...ですか?...せ、せめて人気の無い場所なら...。」
「え?....包帯巻くから上を脱いで貰いたいだけなんだけど。」
「え?」
「え?」
その場に流れる変な空気。
「あー...悪い、誤解させるつもりは無かったんだけど..."その傷、見るからに痛々しいからさ....せめて包帯巻くくらいはしとかないとって思ったんだけど...必要無かったか?」
「あ、いえ...出来れば...その....お願いします。」
「分かった....なら、後ろを向いて上だけ脱いでくれ。」
「....はい。」
そう言うとシェリーは上を脱いで下着姿をツバサに晒した。
「.......」
ツバサは右手に自身の帝具『
その後、ツバサは手慣れた様子でシェリーの背中を消毒してから、するすると包帯を巻き付けていった。
「はい、終わり.....それにしても、何処でこんな傷つけたんだ?」
「え....えーっと....ですね...。」
シェリーは答えたくないのか急に口ごもり始めた。
「....まぁ、なんだって良い...それよりも俺が言いたいのは、どんなかすり傷でもちゃんと治療しないと後で大変な事になるから気を付けろよ。」
シェリーにそう言うとツバサは帝具を即座に隠して救急箱を片付けに行ってしまった。
「さっきの.....やっぱり....。」
シェリーは先程のツバサの言動に何処か思うところがあるのかそう呟いたのだった。
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その日の深夜、
ツバサは昨日と同様に黒装束を身に纏っており、正体を隠して今日も大臣が逃がしたであろう犯罪者達をミンチにしていた。
「さて、今日はこの辺にしとくか。」
明日は料理の仕込みをしないとな、なんて事を考えていると、自分を影から監視している視線を何処からか感じ取った。
(俺を見ているのか...?)
だが、実害が無い事を考えるとそのまま放置しても良いものなのかと彼の中で疑問が浮かび上がる。
(....まぁいい....それよりも今は、)
視線を感じた方向から顔を背け、今は目の前の悪を殺し尽くすだけだと思い返し、目の前の建物に入っていった。
そして数時間後、様々な悲鳴や断末魔の叫び声が建物内から響き渡り、それはまるでオーケストラが奏でるシンフォニーのようであった。
「ふぃー...終わった終わった。」
(今回は強敵だったな。)
━━━━━━━━━━━━━
遡ること数時間前、
ツバサが建物に侵入すると其処には、武装した犯罪者達がツバサを見ていた。それはまるでツバサが殺しに来る事を悟っていたようであった。
「は!?....何で!?」
一瞬、固まったが即座に『天叢雲』を使い、眼前にいた男達複数人を真っ二つに切り裂いた。
断面からは壊れた蛇口のように血が噴出している。
「来たぞ!『
(え?....もしかしてそれが俺の二つ名....?...何かダサいんだけど....まぁ、いいか。)
俺はただ、目の前の悪を切り捨てるだけだ。
そう自分に言い聞かせて殺す。
殺し終わったのは、それから数時間後のことであった。
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「さて。」
ツバサは気配を感じた方向に向かって、
「其処の二人組、隠れてないで出てきたらどうだ?」
声を掛ける。
するとツバサの背後から何かが巻き付いてきた。
「何だこれ....ロープ?」
「糸さ。」
「...後ろか!?」
「いいや、前だ。」
気が付いた時には、二人組の男女に拘束されてしまい、目の前の女性はツバサに銃口を向けている。
「.....参ったな。」
(どうにもならないな.....この状況。)
「大人しくしていろ。」
「さて、どうしますか?」
現状、ツバサに打開する手段や手立ては何もなく、二人の隙を見て逃げるしかないが、
(この二人組....全く隙が無い....!)
それほどまでに二人と自分の力量に差がある事を思い知らされてしまう。
「......それで、お二人さんは俺に何の用で?」
こうなりゃ、腹を括るしかない。 そう諦めて、二人に降参のジェスチャーを送る。
「いやなに、君の実力を試してみたかっただけなんだが、.....こうも隙が大きいと、直ぐに殺されてしまうな。」
女性からは随分と辛口な評価が出される。
「でも、初心者としては合格ラインでしょうよ?」
「馬鹿者、ギリギリ合格だ......背後をとられては暗殺者として失格だ。」
呆れた様子で女性はやれやれと首を横に振る。
「へぇ.....背後をとられては暗殺者として失格.....成る程ね。」
ニヤリとほくそ笑んで二人組を睨み付ける。
「何が可笑しい?」
「いや.....だって今二人とも.....」
次の瞬間、ツバサの口から発せられる声と同時に首筋に冷たい物を二人は感じた。
「"俺に"背後をとられてる....その時点で二人の方が暗殺者として失格だぜ。」
「「な!?」」
二人の背後には"もう一人"のツバサが立っていた。......
「ば、馬鹿な....一体どうやって私達の背後に回ったんだ...?...いや、それどころか...気配すら感じられなかった。」
「そりゃそうだろ...."こいつ"の
「.....!」
「幻覚...だと....!?」
今までに見たことも聞いた事もない能力に驚愕してしまう二人組。
そして、
「..なん..だ...!?」
「力が....入らない....?」
二人組は次第に身体に力が入らなくなってきている。
「
「
「そのままの意味さ、やっと仕掛けた
「毒!?」
「とは言ったが....これは、毒というよりも筋弛緩剤の方が正しいな。」
(一体何時、私達に筋弛緩剤を仕込んだんだ?....)
思考する様子のツバサを一瞥し、女性は何時自分達に薬を仕込んだのかを考える。
「さて、次はこちらの質問だ......何故、俺を狙ったか答えてもらおう....今は少し息苦しいだけの軽い毒を流しているが....返答によっては、即死する毒をお前らに散布する。」
ツバサは今まで犯罪者を殺した時と同じ冷たい表情で二人を睨んだ。
(....素直に答えた方が身のためだな。)
その後、女性はツバサを狙った理由と動機を話し始めた。
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「私の名はナジェンダ、此方はラバック....私達は所謂殺し屋だ...と言ってもただの殺し屋じゃない、革命軍だ。」
「革命軍?」
ツバサも名前だけは聞いたことがある。
この街の犯罪発生率が高くなっておりその理由として、大臣が裏で糸を引いている。それがきっかけで革命軍が地方で活動を行っているということを噂で聞いていた。
「....噂は本当だった訳だ。」
ラバックとナジェンダは互いに向き合って頷く。
「我々は王都のやり方に反発し、革命軍を組織した。」
ナジェンダが口を開いて説明を始める。
「そして今は、戦力強化のために仲間を集めている...って訳。」
次にラバックが説明をする。
「....その仲間になれと、俺をスカウトに来たのか。」
ツバサはいずれはこうなる事を予期していたのかそう答えた。
「そうだ。」
ナジェンダは肯定し、ツバサの答えを待つ。
「分かった......但し、条件がある。」
「....何だ?」
「....ウチの従業員を匿ってはくれないか?」
「...?どういう事だ?」
女性は分からないという表情でツバサを見据える。
「...実は、ウチの従業員は全員...王都で暗殺専門の部隊として非人道的な実験を受けていた。」
「.....!!!」
ツバサの言葉を聞いてナジェンダは戦慄した。
その部隊というのは、数年前に反乱分子を粛清という名の殺人を行わせる為に王都が編成した暗殺専門の部隊のことである。
「....用済みとして捨てられるところを俺が救い出してウチの従業員として働かせている。」
「まさか」
「ああ、まさか
ラバックの言葉にツバサは耳を疑った。
「...今、アカメといったか?」
「?......ああ、言ったが?」
ラバックからその言葉を聞いたツバサはその場に泣き崩れた。
「お...おい!」
「良かった.....あいつ、生きてたのか...!」
その表情は何処か晴れやかでとても幸せそうであった。
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「あんたらの仲間になろう。」
ツバサはナジェンダに仲間の証として右手で握手を求める。
「....っ!」
それに対してナジェンダは少しだけ躊躇いを見せる。
「おっと...失礼した...左手にすれば良かったか?」
ツバサは配慮が足りなかったと思い、右手を下げようとするが、
「...いや、こちらの手で構わない。」
ナジェンダは義手を突き出してツバサと握手を交わす。
「これから宜しく頼む...えっと...」
「失礼、まだ此方からは名乗っていなかったな...ツバサだ。」
「ツバサ、これから宜しく頼む。」
「此方こそですよ....ナジェさん。」
これが王都の歴史上、最強と称された暗殺者 ツバサの物語の始まりである。
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『ナイトレイド』
「では、今から我々のアジトに案内しよう。付いてこい。」
ナジェンダはラバックと共にそそくさと先に行ってしまう。
ツバサもナジェンダを見失うまいと、後を追いかける。
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夜が明けて、朝となったがツバサ達は何処かを目指して歩き続けていた。
「それで?俺を何処に連れていくんです?...革命軍のアジトですか?」
「......少し違うな、というかまだ説明してなかったな。」
「?....何の話です?」
先頭のナジェンダが立ち止まり、振り向く。
「私達は革命軍の一員だが、本当は『ナイトレイド』という暗殺者集団なんだ。」
「『ナイトレイド』.....。」
聞き覚えがない名前に戸惑いを隠せないツバサ。
「ま、聞いたことが無いのも無理ない....俺達は周囲に気付かれる事なく、此処までやってきたんだから。」
と、ラバックが語る。
(聞いたことがないが、暗殺者集団としては名の知れた組織なのだろう....でなければ俺がスカウトされる事もないだろうしな。)
と、少し調子に乗ったツバサ。
そして暫く歩いて行くと山の中に入っていく。
そして、
「此処だ。」
「へ?」
辿り着いた場所にあったのは、崖を背にした建物が一件。
「ここ....なんですか?」
「まぁ、中に入れば分かるって。」
ラバックにそう言われて二人の後に付いていくと、そこには...
「おお.....!!」
中に入るとかなり大きな居住スペースが設けられており、集団生活をしている事が伺える。
「ようこそ、我ら『ナイトレイド』のアジトへ。」
「凄い......これが、アジト....!」
ツバサの心境は、例えるならば小学生が秘密基地になりそうな場所を見つけた時のそれに近いものである。
「今は任務ででばってる奴もいるから全員は紹介出来ないな。」
ナジェンダがツバサにそう言うが、今のツバサにはその言葉は聞こえていなかった。
「たっだいま~!」
「ぐえっ!」
突如として、ツバサ達が入ってきた入り口から飛び込んできた人物が一人 そのままツバサの上にのし掛かり、ツバサは気絶してしまった。
「お~ナジェンダとラバックじゃん、もう帰ってたのか。」
その場に座り込み、露出の多い服を着た女性がニシシ、と笑う。
「....レオーネ、それよりも早く退いてやれ...ツバサが潰れてしまう。」
「え?....うわっ!?...何でこんなところに人が倒れてるんだ?」
「姐さん....自分でやっといてそりゃないぜ。」
その後、ツバサが目覚めるまで全員待つことにしたのだった。
━━━━━━━━━━━━
「先ほど、お前にのし掛かったのがメンバーの一人、レオーネだ。」
「どうも~私レオーネ、宜しくな。」
「あ、ああ、よろしく。」
目覚めたツバサはメンバーの一人、レオーネと握手を交わす。
「ところでボス、コイツ誰?」
レオーネ以外の全員がその場でずっこけた。
「レオーネ...知らずに握手してたのか....。」
そう言えばまだ自己紹介してなかったなと気付き、余興のつもりで、
「ツバサだ....それともこう言った方がいいかな...."元"反乱分子暗殺部隊隊長 ツバサ...と。」
「「「!!!」」」
その瞬間、ツバサの雰囲気が先程とは打って変わって優しいものから暗殺者特有のものに変わっていた。
「ちょっと待て...暗殺部隊って....!」
「数年前、アカメが所属していた部隊だ。」
「そんな奴が...新入り...!?」
三人は今のツバサに少なからず恐怖心を抱いた。
「...でもまぁ、今はあんた達の仲間だ...争うつもりはない..そこだけは保証する。」
そう言ったツバサの雰囲気は暗殺者特有のものから優しいものへと戻っていた。
(とんでもない新人が入ったな。)
"彼女"の頼みでスカウトしたはいいもののこれから先、手を焼きそうだと思うナジェンダであった。
「皆の反応を見る限り、やっぱり居るんだな....アカメ。」
「ああ、今は河原の方にいる筈だ。」
「ああ....納得した。」
ツバサの表情はやっぱりか、と言いたげな面持ちだ。
━━━━━━━━━━━
レオーネに案内されてツバサはアカメの様子を確認しようと河原に向かう。
「この先に居る筈...あっ、いた。」
レオーネの言葉に反応したツバサが見たもの、それは巨大な怪鳥を串刺しにして焼きながら、その肉を喰らっている少女の、後ろ姿がそこにあった。
「....」
レオーネが後ろから近付いて来るのに気付いたのか、黒髪の少女
アカメが振り向く。
「相変わらず野性味溢れてるな...アカメ。」
ツバサが声を掛けるとアカメは殺気をツバサに向ける...が、顔を見た途端、彼女から殺気が煙のように消える。
「....!...ツバサ!」
「よぉ、久しぶり。」
ツバサがアカメに近付いて頭を撫でる。
「ちゃんと飯食ってるか?....じゃないと大きくなれないぞ。」
まるで実の兄のようにアカメに接するツバサ。アカメも何処か嬉しそうに目を細める。
レオーネはその様子を見て、唖然としていた。
(あのアカメが、優しい目をしている....!?)
「あのーツバサさん?」
「ん?何?レオーネ。」
「あ、いや....その、アカメとどういう関係なのかな...って。」
「?...隊長とその部下?」
「そうだな。」
「にしては、まるで兄弟のようなやり取りを...」
「まぁ、俺がこいつらの兄貴分だったし...兄弟みたいに見えたなら仕方ない。」
「こいつ
「....その話はまた今度だ...さて、」
ふと、何かを思い付いたのか、ツバサはアジトの方を見て突然走りだした。
「ちょっと!?何処に行くの?」
「少し待っててくれ。」
それだけ言い残すとツバサはアジトへと向かっていき、アカメだけでなくレオーネまで取り残されるのだった。
━━━━━━━━━━━━
「お待たせ。」
「遅い!...一体何やって...!?」
戻ってきたツバサの手には、定番のショートケーキが二切れと紅茶が入ったポットが携えられていた。
「はい、どうぞ。」
「あ、ありがとう。」
「ほら、アカメも。」
「うん、戴こう。」
二人同時にケーキを手に取り、口に運ぶ。
「何これうっまい!」
「うん、やっぱりツバサの作るものは美味しい。」
「喜んで頂けて何よりです。」
そう言って、執事のような振る舞いを二人に見せたツバサ。この出来事が切っ掛けで、食事当番は暫くの間、ツバサが担当することになったそうな。
━━━━━━━━━━━
「さて、これから新しい任務が入った....が、その前にツバサ」
「はい。」
「お前の帝具の事を説明してくれ。」
「ああ、はい。」
ナジェンダの言葉に従ってツバサは右腕を前に突き出す。
「?....何もないけど?」
レオーネがそう言った時、
「!?」
いつの間にかツバサの手に刀が握られていた。
「これが俺の帝具...『天叢雲』、能力は様々な毒を生成、及び解毒する事。そして固体、液体、気体の三つの性質を併せ持つ。」
「ふむ....面白い。」
「因みに、能力を応用して見た目を変化させる事も可能だ。」
そう言って刀を消した。
「さて、俺の紹介よりも他のメンバーに会わせてくれないですかね?」
皮肉っぽく言ってメンバー紹介を促す。
「...そうだな、流石に自分達だけ名乗らないのもな...なぁ、お前達?」
ナジェンダが振り向いた場所には、彼女の言うメンバーなのだろうか、こちらの様子を伺っている様子の二人組がいた。
「.....」
一人はツインテールの少女で見るからに機嫌が悪そうな様子。
「彼女の名前はマイン。」
そしてもう一人は、
「あれっ!?...シェリー!?」
ツバサにとっては見覚えのある女性がそこにいた。
「彼女はシェーレ、我らの仲間だ。」
ナジェンダが助け船を出して彼女をフォローする。
「因みに、君をスカウトするように頼んだのは彼女だ。」
「マジですか...。」
(何故、シェリー...いや、シェーレが俺に近付いて俺をスカウトするように頼んだのか....まるで分からない。)
「シェーレ...でいいのか?」
「あ...はい。」
「何で俺なんだ?」
シェーレに何故自分をスカウトするように頼んだのか聞いてみることに、
「ちょっとあんた、いきなりシェーレに対して馴れ馴れしいわよ!」
その事に対して、マインがシェーレを守るようにツバサの眼前に立ち塞がる。
「......」
「......」
ツバサとマインは互いに睨みあい、互いに次の打つ手を模索していた。
「あのっ...ですね。」
「ん?」
「以前、街でツバサさんが犯罪者を暗殺している所を目撃しまして。」
「...それで、俺をスカウトした...そういうこと?」
「はい。」
「ふーん...。」
「何よ、そのふーんって。」
「いや、別に。」
ツバサの言葉に対してマインは少しムッとした様子。
「言っとくけど、アカメの所属していた部隊の隊長だったからって私は認めないからね!」
「...ならそれでいい、今の俺は目的の為に殺しを手段としているだけだ。」
とこれを軽く一蹴、マインはバツが悪そうな様子である。
「ボス、そろそろ教えてくれ...『ナイトレイド』とは何だ?」
ボスであるナジェンダに顔を向けてツバサは問いかける。
「...私達が革命軍に所属しているという話はしたな?」
「ええ。」
「革命軍は最初、小さな集団だった...が、現在は大規模な組織に成長している。...すると必然的に情報の収集や暗殺など日の当たらない部隊が設立された。」
「成る程、それが『ナイトレイド』という訳か。」
首を縦に振って肯定の意を示すナジェンダ。
「我々の目標は、軍が決起した際混乱に乗じて腐敗の原因である大臣をこの手で討つ!」
「俺と目的が一致しているな...それで、策はあるんですね?」
「流石に決起の時期について詳しくは言えんが...勝つ為の策は用意している....その時が来れば、確実にこの国は変わる。」
ナジェンダの言葉に強い意思と覚悟を感じ取ったツバサ。これ以上聞くことは無いな、と気持ちを切り替える。
「さて、ここからが本題だ。」
ナジェンダの言葉にその場にいた全員の雰囲気がガラリと変わる。
「帝都内で違法に売春を斡旋している組織がある。」
「組織名は『リンドウ』そして、その組織のリーダーはクロッカスという男だ...今回の任務は組織の壊滅、及びリーダーの抹殺だ。」
「ならボス、その男の始末は私に...「その男の始末は俺にやらせてくれ。」!!?」
マインが立候補しようとした時、ツバサが立候補する。
「ちょっとアンタ!...今回は私がやるつもりだったのよ!」
「だからどうした?」
「ハァ!?」
「俺も最初は、誰かに任せるつもりでいた...だが、気が変わった。」
「ほう?...威勢が良いのは別に構わないが、今回はかなり重要な任務だぞ?」
ナジェンダの目を見ると出会った頃と同じ目をしてこちらを見ていた。
「...俺は今までの殺しで失敗したことは一度もないし失敗するつもりもない...そこは信用してもらいたい。」
「ボス、私からも頼む。」
「アカメも!?」
「...分かった。今回はツバサに任せよう...だが、確実に仕留めてこい。」
「了解。」
ツバサの頼みを擁護するようにアカメまで頭を下げる事に何かを見出だしたのか、ツバサを指名することにしたようだ。
「では、作戦開始だ!」
ナジェンダの言葉を皮切りにしてツバサ達はアジトを飛び出す。
依頼をこなす為、又帝都の悪を取り除く為に...
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初任務
帝都の最南端のある建物前に辿り着いたツバサ。
「.....」
(こんな...何の変哲もない建物の中で)
以前の自分を思い出す、もう使わないと決めていた力を再び使い始めたあの日から...自分は再び、暗殺者としてここに立っている。
「そろそろ時間か....よし。」
ツバサは帝具を使用、即座に自分の見た目を女性に変化させる。
その姿は見るからに美人で胸も大きい、はっきり言って最高のプロポーションを持った女性そのものである。
(これでよし...後は、)
建物の中に入り、娼婦として捕らえられ、首輪を付けられた女性達の中に入っていく。女性達の様子は憔悴しきっており、まるで廃人のようである。
(女達から薬の匂いがするな...。)
ツバサの言うとおり、女達には"とある薬"が使用されており、その性で女達は逃げ出す事が出来ずにいた。
(待ってろ...必ず助けてやるからな。)
天叢雲で首輪を作り、近くの女性の首輪に付いた鎖と接続する。
(準備完了....後は、リーダー『クロッカス』を抹殺するだけ。)
目の前には、女達が付けられている首輪に付けられた鎖を一手に握りしめている巨漢の男の背中がツバサの視界を被い尽くしている。
(こいつも『リンドウ』のメンバーか...全く、どいつもこいつも救いようがない。)
そして男は、ある扉の前で立ち止まった。
━━━━━━━━━━━
「"クロッカス"様、本日の女達を献上しに参りました。」
(クロッカス...!)
男の目の前にある扉。その先に『リンドウ』のリーダー クロッカスが待ち構えている。
「....入れ。」
扉が開き、中へ入るとそこには男が一人 その場に立ち尽くしていた。
(こいつがクロッカスか...。)
男は、金髪でオールバック そして身体の至るところに金のアクセサリーを纏っている。
「ほう....こいつらが、」
「はい、本日捕らえた女達でございます。」
(ああ、成る程...."納得"した。..女達は拐われて此所に連れてこられ、そして最後はゴミのように捨てる...まるで消耗品のように...。)
ツバサは怒りと殺気が漏れそうになるのを、必死で抑え、自分が奴に選ばれるように前へ前へと歩み寄る。
「ふむ.....どいつから頂こうか....。」
その時、クロッカスの目に一人の女性が写りこんだ。
それは、『天叢雲』で見た目を変化させたツバサであった。
「決めたぞ、お前にしよう。」
そう言ってツバサの首輪に繋がれた鎖を掴んで、自分の方へ引っ張る。
「キャッ!」
ツバサは自分が男だとバレないように最大限、女性のフリをしてクロッカスに近付く。
「俺はコイツの具合を見ておく、お前達は引き続き女達を捕らえてこい。」
「はっ、直ちに。」
クロッカスは部下達に指示を出すと、部屋の奥 クロッカスの寝室へとツバサを連れていく。
━━━━━━━━━━━━━
「キャッ!」
ツバサをベッドに押し倒し、衣服を脱いでいく。
「私を、どうするつもりですか...!」
出来る限りの嫌がるフリをして暗殺の機会を伺う。
「今からお前を犯すのさ。」
クロッカスはこちらに向かってある"モノ"を見せつける。
それを見てツバサは、
(えっ、ちっさ)
とだけ思い、口を開いた。
「こんなことをして...タダで済むと思ってるの...!」
「フッ、フハハハハハハ!!!....当たり前だろ、俺達を裁くものなんて何処にも居やしない....つまり、何をやっても許されるのさ!」
と、高らかに宣言した。
「.....ホント、救い用がない。」
「は?」
するとツバサは、身体に纏っていた『天叢雲』の毒をクロッカスに飛ばした。
「ぐあっ!...な、何だこれは!?」
クロッカスは突然の事態に慌てふためき、取り乱す。
「成る程、確かにお前の言うとおり...裁くものが居なければ地外報件だ...だがな、もし裁くものが居るならば...それは俺達の事だ...ゴミが!」
いつの間にかクロッカスの背後に回り込んでおり、頸動脈を狙って首を斬る。
「ぐあぁぁぁぁぁ!?!!」
斬られたクロッカスは混乱していた。
いつの間に自分の背後に回り込んだのか、先程の女は何処へ行ったのか、いつの間にこの部屋に忍び込んだのか、
そんな疑問が幾つも浮かんでは消えていく。そして首から吹き出す血を見て即座に我に帰る。
「き、貴様ァァァァ!!!」
吹き出す血を右手で押さえながら部屋の扉に手を掛け、部屋を飛び出す。
そこにあったのは、
「な!?」
先程まで会話をしていた部下達の死体が山積みになっており、その上にアカメが座っていた。
「そっちは終わったか。」
「ああ。」
アカメとの会話はそれで終了し、二人はクロッカスに目を向ける。
「な、何だお前ら....何なんだよォォォォォ!!?」
「うーん...話した方がいいのか?」
アカメがきょとんとした顔で首をかしげる。
「言わなくてもいいんじゃないか?....どうせ直ぐに死ぬ。」
ツバサはアカメにそう言うと再びクロッカスの見た。
「どういう意味ッ!!!?」
クロッカスは自身の体内に何か強烈な痛みを感じた。
「グァァァァァ!!....ァァァァァ!!!」
クロッカスはその場に踞ると、転げ回るように苦しみ始めた。
「俺の『天叢雲』は、斬ったと同時に、"毒"を対象に射ち込む帝具でな....俺が射った毒は、
ツバサはクロッカスに背を向け、歩いていく。アカメも死体の山の上から降りてツバサの後に続く。
「今まで女性達を苦しめた分、テメェが苦しめ...クソ野郎...!」
この日からまた一つ、
━━━━━━━━━━━━━━
翌日、
「失礼します、ランチメニューになります。」
レストランでキリキリと働くツバサ達の姿がそこにあった。
「少し休憩してくる。」
「は~い。」
漸く、客足が途絶えて休憩出来る時間帯となり 裏の休憩室へと歩いていく。
(それにしても....昨日の出来事がまるで嘘みたいだな。)
昨夜、自分が殺した男 『クロッカス』が何者かによって殺されたという情報は広まり、客足が多かったのもそれが理由であった。
(そういや客の大半は娘や妻を誘拐された人達だったな。)
以前からリンドウの活動は知れ渡っており、今回の一件でそれが明るみとなり、今まで奴隷として売り捌かれた女達は全て革命軍が保護したそうだ。
(まったく、革命軍様々だな....。)
自分が昨日から所属したナイトレイドは革命軍あっての暗殺部隊、過去に自分が隊長として所属した部隊とは違うのだと自分に言い聞かせながらも、それでも散っていった仲間達の事を思い出さずにはいられないのであった。
━━━━━━━━━━━━━━━
閉店後、
「さて、と」
店の戸締まりをしてから従業員を家まで送り届け、自分も家路に着こうと夜道を歩いていた。
「オイ」
「ん?」
ふと声を掛けられ振り向くと、そこには
昨夜壊滅させた組織『リンドウ』の構成メンバーの一人であった男がこちらを睨み付けていた。
「...何か用?」
仕事で疲れていたのでめんどくさそうに男を睨み付ける。
「テメェのせいで....俺達は、俺達はァァァァ!!!」
(あー...つまりは逆恨みか...全く、自分達の事を棚上げしてよくもまぁ...)
半分呆れながらも、剣を振り下ろしてきた男に一撃を与える。
「え...?」
「あれはテメェらの自業自得...こっちは逆恨みされる理由なんて一つも無い...だからこれは...俺の単なる...実験...今からお前は俺のおもちゃだ...!」
その時のツバサは口角が上がり、表現するならば...まるで新しいおもちゃを見つけた時の子供のような喜び様であった。
「ひ...ひぃぃぃぃ...!!!」
ツバサの放つ異様な雰囲気にすっかり怯えきってしまった男は腰が抜け、何とかその場から立ち去ろうとしてほふく前進のようになってしまう。
「おいおい...逃げてんじゃねぇよ...言ったろ?"今からお前は俺のおもちゃ"だって...な?」
「い...嫌だ...たす、助けて....」
「い~い表情だ...それでこそ楽しみがいがある...さぁ、良い声で
その日を境に『リンドウ』は壊滅、残されたメンバー達も全て消息を絶ったそうな
━━━━━━━━━━━━
翌日、
この日は店が定休日となっていたのでツバサは普段からウェイターとして働いてくれている少女 レムスと食品の買い出しに来ていた。
「さて、先ずはどれから買っていこうか...。」
自分で用意した買い物メモを見ながら悩む。
「先ずは一番近い店から見ていきましょうよ...隊...じゃなくて店長。」
「おぅ...そうするか...それと、もう俺はお前達の隊長じゃないから...そのまま店長で通してくれよ。」
「は、はい。」
因みに彼女はアカメと同様、ツバサの指揮する部隊に所属していたが、ある戦いで重症を負ってしまい、味方の軍に薬を盛られて処分される所をツバサが薬の成分を中和して助け、今はこうしてツバサの店で働いている。
まぁ、それはそうとして...
二人が近くの店から出てきた時、ザワザワと街の中心部が騒がしくなっていた。
「何だ?」
「あっちからです...行ってみましょう。」
レムスに連れられ、街の中心部に向かう。するとそこには、
「これは.....!」
「惨い...。」
十字架に張り付けにされた男女がそこにいた。
(これは恐らく見せしめ....大臣に逆らった者達への...)
ツバサの読みは正しい。
この場に張り付けられている者達は大臣のやり方に反発し、反旗を翻した者達の、謂わば一つの結末であった。
失敗し、捕らえられ、四肢の一部を切断され、自分に逆らえば次はお前達がこうなる。そういった反乱分子に対する見せしめである。
「なぁ、これは何時まで此処にあるんだ?」
ふと、何かを思い付き、近くにいた男性に訪ねてみた。
「あぁ、明日の朝までだな。」
その返答を聞いてツバサは、自分の考えを実行することが出来ると悟り、笑いを堪えるのに必死であった。
━━━━━━━━━━━━
深夜、街の中心部
「誰だ?」
張り付けられている一人の女性が訪ねる。
「あんた達と取引に来た。」
ツバサは何時もの黒装束を身に纏っており、それだけを女性に告げた。
「取引....だと?....大臣暗殺に失敗し、明日の朝には処刑されてしまう私達にか?」
「あぁ...そちらにも悪い話ではない。」
「.......」
女性は少し考え、ツバサが嘘を付いていないことを理解すると、
「分かった....取引に応じよう。」
そう言ってツバサの提案を呑んでくれた。
「感謝する。」
「それで?....取引ってのはどういった内容だい?」
「簡単な話だ...俺はあんた達全員を助け、切断された四肢を元に戻す....その代わり、あんた達には俺が作る"部隊"に参加してもらいたい。」
「部隊?...いや、その前に...あんた今、何て言った?...私達の切断された四肢を"元"に戻す?」
「あぁ...と言っても、正確には新しい四肢をこちらで用意する...といったものだが。」
「面白い....何なら今すぐ用意して貰おうじゃないか。」
ハッタリだ。そう思いながら女性は眼下のツバサを文字通り見下す。
「ならその前に...」
ツバサが十字架を指差すと、まるで最初からそこに存在していなかったように十字架が消えていた。
「え?....は?」
張り付けにされていた面々の反応はそんな感じであった。
「さて、さっきの続きといこう....切断面を見せてくれ。」
包帯で傷口を巻かれている四肢を確認するとツバサは指を鳴らした。
すると彼女達の切断面に、新しい腕や脚が付いていた。
「暫くは歩く練習とかをした方が良さそうだな...」
と、呟いたあと
「これで満足か?」
と、女性に問いただした。
「あ、ああ。」
女性は確信した。この男なら大臣を殺れると。
「さて、次に俺の作る部隊って話だが...」
女性達はツバサの言葉に耳を傾け、彼の作る部隊についてそれならば奴らの不意を付けると喜んだのである。
━━━━━━━━━━━━━
「それで?話とは?」
現在ツバサはナイトレイドのアジト内、ナジェンダの部屋で一つの案を話し始めた。
「俺が考えているある部隊の編成を認めて欲しい...というものです。」
ツバサが用意した計画書にはデカデカと"
「これは?」
「簡単に言えば、街の広場で張り付けにされていた人達を集めて奇襲をかける部隊を編成したい....という事です。」
「成る程...」
ナジェンダは計画書を捲り、一枚一枚、内容を読み込んでいった。
「個人的には面白いとは思うが、どうやって奴らに死人だと認識させるんだ?」
「簡単な話ですよ...彼らにはそのまま反乱分子を"処刑"してもらいます。」
「!....成る程...流石と言った所か。」
「どうでしょうか?...戦力は多い方が有利だと思われますが?」
ナジェンダの顔色を伺いながら計画の採用の有無を待つ。
「...私から本部に話しておく...それまで少し待ってくれ。」
「ありがとうございます。」
━━━━━━━━━━━━━━━
「それで...本部から許可が下りて、無事に生きる屍部隊が結成出来たと...?」
「まぁそうだな...。」
ツバサはラバックに結果を伝え、今後は忙しくなると嬉しそうに語った。
「別に部隊編成するのは良いんだけどさ....その指揮...お前が執るの?」
「?...まぁ、そのつもりではいたけど...」
「けど?」
「本部にその役回り、盗られちゃった。」
アハハ、と笑うしかないツバサ
それを見てラバックは
こいつホントにあのアカメと行動を共にしてたのか?
と、疑ってしまうラバックであった。
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そして、そんな王都でも動きがあった。
「"奴"を呼び戻せ。」
「はっ!」
大臣が一枚の写真を手に、部下に命じる。
その写真には....ツバサの姿があった。
果たしてツバサの運命は如何に━━━━━━
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三つの顔
「これで全員か...」
深夜、ツバサはナイトレイドの任務で今日も暗殺へと赴いていた。
今日のターゲットは、王都内で至福を肥やしていた政治家一家であった。
しかし、ツバサの手に掛かれば断末魔を上げさせる事なく、全員始末することに成功したのだ。
現在、任務を終えて政治家一家の家の屋根から夜空を見上げていた。
「......つまらないな。」
それだけ呟くと、 屋根から飛び降りる。しかし、その先にツバサは居なかった。
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「...はぁ。」
「どうしました隊長、今日三度目のため息ですよ。」
「今の俺は隊長じゃないぞ...ちゃんと店長と呼べ店長と。」
店員の一人、 レムスに声を掛けられそう返す。
「まぁ、ため息も出ますよね....この状況じゃ。」
そこには、客数が普段よりもかなり少なくなった店内があった。
「このままじゃ今日の売上は赤字だぞ···はぁ。」
再びため息を漏らすツバサ。その時、店の扉が開かれる。
お客さんが来たと思ったレムスは、入口へと向かい決まり文句を口にしようとした所、
「いらっしゃいま....」
入ってきた人物を見て、レムスは固まった。
「ツバサは居るか?....話がある。」
突然の来訪者にあたふたとし、どうすべきかと悩んでいた所で、
「俺に何か用か?....ケンガン」
ケンガンと呼ばれた男は、ツバサを見ると嫌らしい笑みを浮かべた。
━━━━━━━━━━
「話ってなんだ?」
ケンガンを睨み付けながらツバサは本題に入る。二人は店のスタッフルームにて話をしている。
「相変わらずつれねぇな...昔は同僚だったろうがよ」
ツバサを見てニヤニヤと笑みを浮かべるケンガン。
「....そうだな、お前が悪徳に手を染めなかった頃はな...!」
このケンガンという男、ツバサの帝国時代の同僚である。
ツバサは初め、互いに信頼のおける関係だと思っていた。
しかし、ある時ケンガンは大臣同様、自身の欲望のままに行動するようになってしまった。
それを知ったツバサは、ケンガンを改心させようとしたが、聞く耳を持たなかった。その結果、二人は袂を分かったのである。
「···単刀直入に言わせてもらう....ツバサ、帝国に戻れ。」
「な....ふざけるな!!!」
ケンガンの言葉にツバサは戸惑いを見せたが、直ぐ様怒りを剥き出しにした。
「奴らの.....クズどもの下で働けというのか!」
「ああそうだ。」
怒りを剥き出しにしているツバサとは対称的に、ケンガンは至って冷静であった。
「俺がどんな気持ちで帝国についていたか....俺がどんな気持ちで...」
「お前の意見など聞いていない....お前には
「...どういう意味だ...!?」
「お前が断れば、お前の店の従業員を人質に取れと命じられている。」
「貴様...!」
ケンガンの言葉にツバサの怒りが沸々と沸き上がってくる。
「そこまで堕ちたかケンガン!....貴様ぁ!」
ケンガンの首を掴み、壁に叩きつけて首を腕で押さえ込む。
「···因みに、俺にこれ以上危害を加えるようなら部隊を突入させても構わないと指示もされている。」
「な...!?」
「さぁ...どうする?」
もはやツバサに選択肢など無かった。始めからツバサに自由など無かったかのようにケンガンは問いかける。
ツバサは即座にケンガンから離れ、俯いた。
「...此所で、店を続けさせて貰えるのなら働く......そう伝えろ。」
「意見なんかできると思ってるのか?....と、言いたい所だが、それぐらいなら構わない....明日の朝8時に王都に来い、詳しい事はそこで説明する。」
「....ああ。」
それだけ言い残し、ケンガンは去っていった。
「はぁ~」
大きくため息を吐いて今後の事を考え始めるツバサ。
「どうするんですか店長!」
「どうするも何も決まった事だ...俺は行く...幸い、店は続けさせて貰えるみたいだしな。」
自虐的に笑いながらそう言うが、ツバサの心境は穏やかなものではなかった。
━━━━━━━━━━
翌朝 王都にて、
「.....」
コンコンと目の前の扉をノックする。
「どうぞ。」
中からの返答を聞いてから扉を開ける。
「失礼します。」
「来たか...."元"暗殺部隊隊長ツバサ。」
「......。」
敬意を込めてそう呼ばれたが、ツバサは警戒して口を告ぐんだ。
「そう警戒するな....お前にはある
「
部隊という言葉に反応を見せるツバサ。
「入ってくれ。」
男が扉に向かってそう言うと、
「失礼します。」
扉を開けて入ってきた人物が一人。
「セリュー・ユビキタス、今日からお前が指揮する部隊の一人だ。」
その人物は、少女であった。
栗色の髪をポニーテールにしており、その後ろに二足歩行する白黒の犬を連れていた。
「ご紹介に預かりましたセリュー・ユビキタスです。」
少女は敬礼を男とツバサにした。
「...ツバサだ、今日から宜しく頼む。」
ツバサもセリューに対して敬礼を返した。
「...ではツバサ、お前がこれから所属する帝都警備隊について説明する。」
帝都警備隊とは、その名の通り帝都で起こった犯罪等を取り締まる為に帝都の警備を行う部隊の事である。
(とんだ皮肉だな...帝都を守る為に暗躍していた俺が、再び帝都に戻ってくるなんてな。)
そんな事を考えたが、自分が従わなければかつての部下であり、同僚が殺されてしまう為、今は従うしかない。そう割り切るしかなかった。
━━━━━━━━━━
「それでは、警備隊の駐屯地へ案内します。」
「ああ。」
セリューの後に続いて、警備隊の駐屯地へとツバサは付いていく。
━━━━━━━━━━━━━
「以上がこの帝都警備隊の駐屯地になります....質問はありますか?」
「......特に無い。」
セリューに質問の有無を尋ねられても、ツバサは直ぐに理解してしまったので質問する必要性は感じないと思った。
「あの....私から質問しても良いですか?」
「?...何だ?」
「ツバサ隊長にとって..."正義"って何ですか?」
「"正義"...?...これまた唐突だな....。」
突然そんな事を尋ねられても...とは思ったが、ここは隊長らしく何か答えないと....そう思っていると、セリューが再び口を開いた。
「私にとって、正義とは...決して悪に屈してはならないものだと思ってます...だから、」
次の瞬間、セリューから信じられない言葉が飛び出してきた。
「悪は必ず滅ぼします....悪人は全て殺す....それが私にとっての正義です。」
先程の優しい笑顔から一変してセリューの表情は、まるで悪魔に取り憑かれたように変化した。
「それは違う。」
セリューの言葉を聞いて、ツバサは異を唱えた。
「正義ってのは、人によって変化するものだ....例えば、俺ら警備隊が取り締まる犯罪者達にとっては、俺達警備隊を含めた帝都の軍人が悪であり、それを降す為に戦う自分達が正義であるように···俺達警備隊にとって、犯罪者が悪であり、それを取り締まる俺達は正義といった感じで正義って言葉の意味は人によって変化する。」
セリューを諭すように自分にとっての正義を語るツバサ。だが、
セリューにはそうではない。
「それは違います!...私達こそが正義であり、悪は必ず滅ぼさなければならないものです!」
セリューの言葉にツバサは呆れてしまう。
「ハァ...あのさぁ...何か勘違いしてないか?」
「はい?」
「俺達警備隊は、犯罪者を"取り締まる"事が仕事の筈だ、それなのにセリュー、お前は犯罪者を"殺す"事が正義だと言い張る...それは意味合いとしては矛盾している筈だ。」
「それ...は...」
ツバサの正論に対抗する言葉を持ち合わせていなかった為か、セリューは言葉を詰まらせてしまう。
「それともう一つ....俺達の仕事は、犯罪者を取り締まり更正させることだ....それを"殺す"だと?....処刑人になったつもりか!今一度考え直せ!セリュー・ユビキタス!」
それだけ言って、ツバサは屯所から出ていった。
「私は....父さんの言葉を.....私は...」
今まで妄信的に信じてきた正義という自身の価値観が崩されたことによってセリューは崩れ落ちる。
━━━━━━━━━━━━━━━━
暫くしてツバサは、自分の店の近くにある『貸本屋』へと来ていた。
「いらっしゃい。」
「やぁラバック。」
店主であり、『ナイトレイド』の仲間ラバックに軽く挨拶を交わすと周りに見えないように"手紙"を渡す。
「後で読んでくれ。」
「...分かった。」
ツバサはラバックにそれだけ伝えると、店を後にした。
「.....」
「おい」
そのまま自宅へと帰ろうとした矢先、ケンガンに呼び止められる。
「......なんだ?」
うっとおしいと思いながらもツバサは反応した。
「お前、あの店主と何してた?」
「....何の事だ?」
いきなり何を言い出すのだろうか?あの店内には気配を入れても自分とラバックしかいなかった筈だ。そう思った。
「しらばっくれてんじゃねぇよ」
しかし、ケンガンの問いかけはまるで先程の自分の様子を見てきたかのようにツバサを問い詰めている。
「...成る程、帝具か。」
ケンガンの問いかけの理由に、ツバサは帝具が関係していると判断し問い掛けた。
「...あぁそうだ...帝具 "バロールの眼"コイツで今日一日、テメェを見ていた。」
そう言うとケンガンは、付けていた額当てを指差す。
「成る程ね...」
さて、どうしたものかと頭を悩ませるツバサ
「さぁ、何をしていたのか話して貰おうか?」
「······」
これ以上の沈黙はマズイ。なにか返答しなければ、と考えた時
「···!」
咄嗟に思い付く。
「コレだ。」
ツバサはケンガンにあるモノを見せる。
「······ん?」
それは男ならば必ず見るであろう成人向け雑誌であった。
「コイツを借りられないかって事で話をして貸して貰ってたんだが···なにか不味かったか?」
わざとらしく首を傾げ、ケンガンにそう問い詰めるツバサ。
「い、いや何でもない···何も無いならばいいんだ。」
それだけ話すとケンガンはその場から離れていくのだった。
━━━━━━━━━━━
「そうか。」
今日一日 ケンガンに監視され、分身を使ってリーダー ナジェンダに報告を行う事にしたツバサ。今現在、本体は動けないでいるためである。
「参ったな、そうなると今後ツバサの動きに制限が掛かってしまう訳か···」
「それに、王都の奴らは俺を呼びつけたかと思いきや、いきなり警備隊の隊長をやれ···ですからねぇ···俺の手綱を握るため、ご丁寧に部下を人質にしてるぐらいですからね。」
呆れてものも言えないとはこのことだとツバサは嘆息を吐いた。
(···念の為、布石は打っておいた方がいいか···)
分身は即座に本体のツバサに連絡を取ることにした。
――――――――――――――――
(···了解)
分身からの連絡を受け、時が過ぎるのを待つことにしたツバサだったが、直ぐに任務が入った。
何でも、帝都で窃盗事件が発生したそうだ。
「成程、こういった仕事も俺ら警備隊の役割って事か。」
そう呟くと、ツバサは窃盗事件が発生した現場へと向かおうとして···
「待って下さい隊長!」
「!」
不意に呼び止められ、振り向くと其処にはセリューが犬を連れて立っていた。
「···セリューか。」
昨日、彼女に対して怒鳴るように言った手前、どう話し掛けようかと戸惑っていると、
「···あの後、私なりに考えてみました···”正義“とは何か···」
「···それで、答えは出たのか?」
ツバサはセリューにそう問い掛ける。しかし、セリューは首を横に振った。
「正直、まだ分からないんです···もし、隊長の言った事が正しいのなら···私は間違っているのか。」
「···フッ」
悩むセリューの顔を一瞥し、ツバサは笑みを浮かべる。
「!?」
するとツバサはセリューの頭を撫で始めた。
かつての部下達の姿を思い出し、懐かしく思えたからであった。
「そんだけ悩んでんならいい···これからも答えの無い問題は次々にやってくる。····その時は、悩め。」
「悩む?」
「そうだ。悩んで悩んで····そうして、自分で考えて出した答えが···必ず、お前を助けてくれるだろうさ。」
「自分で···考えて···答えを出す。」
反芻するようにセリューはツバサの言葉を繰り返す。
「ま、今はそれでいいだろう···それよりも、仕事だ···行くぞ副隊長どの。」
「!···はい!隊長!」
先程まで悩んでいたのが嘘のような晴れやかな顔でツバサの後を追いかけるセリュー。彼女の目にはツバサが映り込んでいた。
―――――――――――――
深夜、ツバサの自宅。そこにはツバサの店の従業員達がツバサと共同生活を送っている。その周辺に位置する建物の屋根 そこには、ケンガンをリーダーとした部隊がツバサの元部下達兼現従業員達を暗殺しに来ていたのだ。
ツバサとの契約などケンガン達は始めから守るつもりなど毛頭も無かった。
ただ、何も知らないツバサを自分達の思うがまま操る。そう考えただけでケンガンは下卑た笑みを浮かべずにはいられなかった。
「そろそろ時間だ···皆、手筈通りに···」
そう部下達に告げようと振り向く。
「!」
其処には部下達は居らず、居るとするならば部下達だった肉塊が幾つかその場に転がっていた。
「な···!」
ケンガンは最初から警戒をしていた。油断することなく例え誰かに襲われたとしても直ぐに対応できるようにしていた。しかし、ケンガンのほんの僅か一瞬の隙を突いて、部下達は即座に処断されたのだ。
「やはりな。」
「!」
背後から聞き慣れた声が聞こえ、振り向くも其処には誰も居らず。
「お前が最初から“こうする”事は理解していた。」
再び振り向くとそこには、黒装束に身を包んだツバサが立っていた。
「ツバサ···貴様ぁ···!」
「···」
呆れたような憐れんでいるような表情を浮かべるツバサ。もはや彼にとってケンガンは邪魔者でしか無かった。一息、溜息を漏らすと一言。
「お前は···超えてはならない一線を超えた···!」
「!」
ツバサの言葉には怒りが孕んでおり、ケンガンはそんなツバサに恐怖を覚えた。
「ま、まさか···俺を殺す気か!?···言った筈だ、俺に危害を加えようとすれば···」
「俺の部下···もとい、従業員達を人質にとったとの名目で暗殺する··だろ?」
「あ···あぁ。なら、」
「だがな···お前は端から俺との契約を反故にした···なら、俺がお前との契約を反故にしたとしても何も悪くないよなぁ····!」
「!!!」
ツバサはケンガンを殺すつもりでいた。当然である。自分が命を懸けて守ったものを、この男は蔑ろにしようとしたのだから。
「お前は···必ず殺す···どういう形であれ、お前は必ず。」
もはや修羅と化したツバサ。 鬼気迫る殺意の波動にケンガンは恐怖を感じ、腰を抜かす。
「ヒ、ヒィ···だ、誰か···助けt···」
「お前は···そう言って助けを求めた相手を助けたことがあるのか?」
「ふえ?」
突然の問い掛けにケンガンは怯えながらも振り向いた。
「ある訳無いよな···お前みたいなゴミクズ···助けを求めた奴らを殺してきたお前が····助けを求めてんじゃねぇよ!!!!」
ツバサは天叢雲を刀に変化させ、ケンガンの首を斬った。
「だ···ずげ···で···」
ケンガンは最期まで助けを求めたが、今まで許しを請うたものや助けを懇願してきた者達を次々に殺してきた男だ。当然誰も助けてなんかくれない。自業自得の末路であった。
斬られた断面からは鮮血が迸り、頭はそのまま屋根の下へと落下していった。それを見送ったツバサの手には、ケンガンが所持していた帝具が握られていた。!
「···帝具“バロールの眼”···回収完了。」
冷めた目で帝具を見つめ、振り向いて自宅から漏れ出る灯りを一瞥する。
中では自分の守った部下達が楽しそうに暮らしている。
(これからも俺は···お前たちを守っていく。それだけは···例えこの身を犠牲にしてでも···成し遂げてやる。)
そう決意したツバサであった。
―――――――――――
「ん?」
「どうした?」
「今、あそこにツバサさんがいたような···?」
「まさか!そんな訳無いだろ。」
そう言って窓から指差した場所を見やる。
しかし、そこには誰も居らず暗闇が広がっていた。
「あれ?確かに居た気がするんだけど···?」
「夢でも見たんじゃないのか?」
「ちょっ!なんでそうなるのさ!」
家の中からは談笑が聞こえてくる。これがツバサにとって、かけがえのない大切な存在なのだと教えてくれているかの様である。
―――――――――――――――
次の日、
「ほら、とっとと料理を運ぶ!」
「はい!」
今日も今日とて『レガリア』は大繁盛。
忙しなく料理を作るツバサとキッチン担当の従業員達。
その作られた料理を運ぶウェイター。
こんな日がずっと続けばいいいのに···そう願わずにはいられないツバサであった。
そして、
「此処が帝都か···」
帝都を高台から見下ろす一人の少年。
「待ってろ···必ず稼いでやるからな!」
今、物語は始まろうとしていた。
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