ドラえもん のび太の獣友冒険記 (獅子河馬ブウ)
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番外編
のび太とイエイヌ


またしても更新が遅くなってすいません。今回は後編を書こうと考えましたが、なぜか番外編の内容が思いついてしまったのでそちらを優先にして書いてしまいました。
なるべく本編も早くかけるように頑張って行きます。

それと今回の話はプロローグののび太視点の続きになっていますから、読むときはプロローグを先に読んでください。


ドラえもん達と離れ離れになったのび太は森の中で出会った少女の住む家に招き入れてもらって話を聞いていた。因みに家に着くまでに互いに自己紹介を行った。

 

 

「えーと、つまりイエイヌちゃんは元々動物で"サンドスター"って言うのに当たったらそんな姿になっていたの?」

 

「その通りです! 流石はご主人様、話が早いです!」

 

「えへへ、それ程でも……」

 

 

可愛い少女に褒められると顔を赤くして照れるのび太だが、先ほど少女が言った言葉に思わず耳を疑った。

 

 

「ま、待って! と言うか僕はイエイヌちゃんの事を全然知らないよ? 僕達これが初対面だよ」

 

「いえ! きっとご主人様は"きおくそーしつ"で私の事を忘れているだけです!」

 

「そんな無茶苦茶な……」

 

 

記憶喪失で押し通そうとする少女にのび太は思わず頭を悩ませ、なんとか誤解を解こうと普段からあまり使えない脳を必死に動かして考える。

 

 

「そうだ! 僕は野比のび太って名前だからイエイヌちゃんのご主人様の名前とは違うよ」

 

 

流石にこんな珍しい名前のご主人様はそういないだろうと自虐的な思いをしながら言うが、

 

 

「大丈夫ですよ。わたしもご主人様の名前を忘れてしまいましたが、きっとその名前でした」

 

「そんなぁ〜!」

 

 

まさかのイエイヌ自身がご主人の名前を忘れているありえない事態が発生した。というよりご主人の名前を忘れてなぜのび太がご主人とわかったのか全くわからない。そこに気づかないのがのび太らしいが、

 

 

(どうしよう、どうすればこの子は僕がご主人様じゃないとわかってくれるんだろう)

 

 

のび太は必死になってなんとかイエイヌにご主人では無いことを説明しようと考えるが、中々思い浮かばず頭を悩ませる。そんな姿を見て彼女はある事を思いつく。

 

 

「あ、少し待っててください」

 

「え?」

 

 

するとイエイヌは部屋の奥に行くとお盆に謎の赤い液体が入った透明感溢れるガラスのポッドとカップを持ってきた。

 

 

「どうぞ……これはご主人様がいつも飲んでいた葉っぱを浸けたお湯です」

 

 

彼女はポッドの中身をカップに注ぐとそれをのび太に渡した。彼は彼女から貰ったコップの中身を覗くとそこには紅く透き通る上品な香りがするお湯が入っていた。

 

 

「えっと、お茶の事かな?」

 

 

謎の液体の正体は洋菓子と共に飲む紅茶と判断したのび太は恐る恐るイエイヌがカップの中に淹れてくれた紅茶をチビチビと口に入れる。

 

 

「うん、美味しい!」

 

「ありがとうございます! それとじゃぱりまんも食べませんか?」

 

 

再び部屋の奥へ行くと、自分の拳より1.5倍デカイ饅頭らしき食べ物を持ってきて、のび太に渡した。その饅頭には大きな"の"の模様が描かれており何処と無く親近感が湧き、丁度お腹を空かしていた為、有り難く頂いた。

 

 

「ぷはぁー、美味しかった」

 

「それは何よりです。それじゃあ、ご主人様、食後の運動にコレを投げて遊んでください」

 

 

そう言って彼女はのび太に黄色い円盤、"フリスビー"を渡した。このフリスビーもじゃぱりまん同様に大きな"の"の模様が描かれている事に親近感が湧く。普段ののび太なら食事を終えたらすぐ昼寝るのだが、

 

 

「うん、喜んで!」

 

 

女の子の頼みとなればどんな事も聞いてあげる。それが野比のび太という人なのです。

 

 

●●●●●

 

 

2人はお家から出るとある程度距離を取り、まるで西部劇に出てくるガンマンの決闘のように互いに緊張感が走る。

 

 

「いくよ〜、それ!」

 

 

のび太はイエイヌに向かってフリスビーを投げる。しかし、のび太はあまりフリスビーをうまく投げられず、真っ直ぐ飛ばずイエイヌの斜め左に高く飛んでいくが、

 

 

「わおーん!」

 

 

なんと、彼女は絶対に届きそうではないフリスビーに向かって大きくジャンプして口でキャッチする。そのシュールな姿にのび太は思わず笑い声をあげる。

 

 

「ははっ、口でキャッチするんだ」

 

「はひ、ほうなんれふ(はい、そうなんです)」

 

 

口にフリスビーを咥える彼女を見てのび太はかつて飼っていたある犬の事を思い出しながら、慣れた手つきで彼女からフリスビーを受け取ると、もう片方の手でイエイヌの頭を撫でる。すると、彼女はとても幸せそうな表情を浮かべて「くぅ〜ん」と声を漏らす。

 

 

「なんでしょう、ご主人様に撫でられるととても心が穏やかになっていく感じがします」

 

「え、そうなの?」

 

 

心が穏やかになっていくと聞いて、のび太は一瞬首を傾げるが、イエイヌが幸せなら別にどうでもいいかと判断し、あまり詳しくは聞かなかった。

 

 

「そうです!ご主人様何か命令してくれませんか?」

 

「へ?急に何言い出すの?」

 

 

突然自分に命令してほしいというイエイヌにのび太は思わず、疑問符を浮かべる。

 

 

「はい、今思い返してみたら私はご主人様にお願いしているばかりで、本来ならご主人様のお願いを聞くのが私の役割と生き甲斐ですから、なんでも命令をして欲しいのです」

 

「急に言われても……うーん」

 

 

イエイヌはなんでも命令して下さいと言ったが、のび太は彼女をフレンズ(動物)ではなく、ひとりの人間としてみているため、あまり雑な命令は出来ないと思い、その結果────。

 

 

「よし、決めた!イエイヌちゃん!」

 

「なんでしょう!」

 

 

イエイヌは己の尻尾を振りながらのび太の命令を待った。

 

 

「一緒に散歩しよう」

 

「はい!」

 

 

●●●●●

 

 

それからのび太はイエイヌと共にお家の周辺の森の中をしばらく散歩した後、お家に戻ってくると、

 

 

「あ!そろそろ暗くなってしまいますね……」

 

「本当だ、もう日が沈み始めてる……」

 

 

2人の視線には地平線の彼方に沈む橙色の夕日があり、もうすぐ夜になるとわかった。その時、のび太の胃が鳴り響く。どうやら彼の腹時計がそろそろ夕飯の時間だと告げているようだ。それを察したイエイヌは何処かへ出かけようとする。

 

 

「それじゃあ"ラッキーさん"のところでご主人様の分のジャパリまんを貰ってきますのでちょっと待っていてくださいね」

 

「う、うん……」

 

「あ、そうそう。外にはセルリアンが居るからおうちからは出ないでくださいね!」

 

 

そう言ってイエイヌは家を出てこの近くにいるラッキーさんの元へじゃぱりまんを取りに家を出て行った。

 

 

「留守番か……」

 

 

留守番を任されたが、なにして時間を潰そうか悩んだ。此処には漫画やゲーム、テレビなんて存在しない。だとすると、残っているのは昼寝しかないと思ったのび太はその場でゴロンと横になって寝ようとするが、

 

 

「……ん?あれは……」

 

 

部屋の隅っこでなにかを見つけ、部屋の隅まで歩くとその何かを拾う。

 

 

「これは……毛糸?」

 

 

のび太は手に取った毛糸を暫く眺めていると、ある事を思いついた。

 

 

「毛糸か……そうだ!あやとりをして待っていようか」

 

 

早速あやとりをしようと毛糸の切れ端と切れ端を結び輪っか状にすると、指と指に絡ませて自身のアートを作っていくのだった。

 

 

 

 

「遅いなぁイエイヌちゃん……」

 

 

 

あれから2時間が経ち、外はもう日が完全に沈んでしまい、少しずつ月の光が窓に差し込んできた。のび太はあやとりをやりだしてから、今の時間までもう何十通りも色々な形を作ってきたが、流石にあやとりでは空腹は紛れず段々と飽きてきた。のび太は窓の外をみて、イエイヌが帰ってきていないか気になって仕方なかった。

 

 

「ひょっとして迷子になっちゃったのかな?」

 

 

流石に此処に長く住んでいる彼女が迷子するなど考えにくいが、もしかしたら本当に迷子になっているかもしれないと心配していた。

 

 

「少しなら外に出ても……」

 

 

お留守番を任されたのび太はイエイヌとの約束を破ってしまう事に罪悪感を感じながらも玄関を開けて外へ出る。

 

 

(あれ、これってもしかしてドラえもんを探しに行けるチャンスなんじゃ?)

 

 

今ならイエイヌが見ていないためドラえもんたちを探しに行ける。のび太はそう考えて、イエイヌのお家から出て探しに行こうとするが、

 

 

「っ!駄目だ‼︎今はイエイヌちゃんを探しに行かないと!」

 

 

知り合った女の子を放っておく事は出来ない。のび太は昼間に森の中を散歩した時の道を思い出して、イエイヌを探しに行った。

 

 

 

「ご主人様遅くなってごめんなさい。じゃぱりまんを配っているラッキーさんが途中溝にハマっていたので助けてきました……あれ?ご主人様?」

 

 

のび太がお家を出て二、三分後にイエイヌはお家に帰ってきたが、そこにはもうのび太は居ないと認識するの数秒後だった。

 

 

●●●●●

 

 

のび太がイエイヌの住処から抜け、森のなかへ入ること数分後が経過する…………。

 

 

「イエイヌちゃぁ〜〜〜〜ん!!」

 

 

のび太は彷徨っていた。と、言うよりも森の中で迷っていた。ジャパリパーク内の地図すら持っていない彼が迷子(仮)のイエイヌを探す。ましてや案内の1人も居ないとなれば不可能に近い事である。そして昼間に散歩した道をもう忘れてしまっていた為、彼は宛もなく歩き回る。

 

 

「イエイヌちゃ〜〜ん!何処に居るの〜〜〜!」

 

 

何度も大声で呼びかけるが、返事をする者は誰も居ない。フレンズどころか鳥一匹すら姿を現さない真っ黒な空を見上げ、のび太は膝から崩れ落ちる。

 

 

「疲れた〜、こんなのなら抜け出さなければ良かったよ……」

 

 

そもそも、のび太自身運動音痴であり、長時間歩き続けるのは無理がある。こんな事ならイエイヌが帰ってくるのを待っていれば良かったと後悔する。

そんな時である。近くの茂みから音が鳴る。びっくりして尻餅をつきながら、のび太は口を開く。

 

 

「だっ、誰!?」

 

 

そう呼びかけ、イエイヌかと期待するのび太。彼の視界に入って来たのは……。

 

 

「………」

 

 

無言でコチラをジッと見つめる。赤目を持つ()()()()()であった。しばらくして、のび太を射抜いていた赤い瞳は木々の陰へ姿を消していった。

 

 

「変なの、緑色の身体で羽根なんか生やしちゃってさ」

 

 

イエイヌじゃない事に落胆しながら起き上がり、重い足を動かそうとするのび太であったが、とある事に気付く。

 

 

「………あっ!さっきの子なら道が分かるかも!」

 

 

先程見かけたのは、恐らく此処ら辺に住む誰かなのだろう。その子ならばきっと道案内してくれると希望を抱きながら生い茂った獣道を進んでいく。

 

 

「おーーーーい!ちょっと待って〜〜〜〜!」

 

 

茂みを掻き分けて行くと、緑色の姿をした何かが現れる。やっと追いついたと肩で息をしながら追いつくと、ブヨブヨと赤い瞳をした緑の何かは、のび太に襲い掛かって来た。

 

 

「わーーーーーっ!!?(さ、さっき見かけたのは……!コレだったの〜〜〜!?)」

 

 

襲い掛かって来る自分よりも一回りも二回りも大きな怪物から必死で逃げ惑う。

 

 

「あっ!ぶべぇ!」

 

 

その途中に木の根に躓いてしまい、その場でバタリと転んでしまう。今にも背後からその巨大で自分を呑み込んでしまうのではないかと言う恐怖にのび太は叫ぶ。

 

 

「ドラえも〜〜〜〜ん!!」

 

 

その時、近くの茂みから何かが飛び出してきた。自分を守る形でイエイヌが現れる。

 

 

「野生解放です!」

 

 

目が輝き、大きく跳んだかと思うとそのまま怪物であるセルリアンの頭上に向かって腕を伸ばす。ピキッ!と、何かが割れる音と共にぱっかーん!とセルリアンがバラバラに弾け飛んだ。

 

 

「大丈夫ですかご主人様!」

 

「え、あっ! イエイヌちゃん!

 

 あ、ありがとう! ……でも、さっきのって何?」

 

 

自身を助けてくれたイエイヌにお礼を言いながら自分を襲ってきた謎の怪物について聞く。

 

 

「セルリアンですよ。知らないんですか? ここら辺はセルリアンが多いので出るのは危険と言ったじゃないですか」

 

「そ、そうだったっけ……ごめん。けど、イエイヌちゃんが無事でよかったよ」

 

「え?」

 

 

家を出る前に彼女が忠告していたセルリアンは先ほどの怪物の事を言っていたのかとわかったのび太は彼女を探すためとはいえ、忠告を無視してしまった為、のび太は彼女に謝った。

 

 

「……ご主人様、いえ、のび太さん此方こそごめんなさい」

 

「え?」

 

 

突然イエイヌも頭を下げて謝る。のび太はその姿をみて思わず呆然となる。謝るのは此方である筈だ。のび太は彼女のお家でお茶とじゃぱりまんをご馳走させてもらい、さらには周辺の地理について教えてもらったり、(しかし、のび太は全く理解出来なかったが)先ほど自分を襲ってきたセルリアンを倒してくれたのだ。そんな彼女が自分に何か悪いことをしたような事は身に覚えがなかった。

 

 

「なんでイエイヌちゃんが謝るの?悪いのは忠告を無視して家を出た僕の方なのに……」

 

「そうじゃないんです。本当はのび太さんがわたしのご主人様ではない事は分かっていました。わたしは久し振りにヒトと会ったので浮かれてしまってついご主人様と呼んでしまいました」

 

 

どうやら彼女はのび太がご主人様ではないとわかっていながらものび太をご主人様と呼んでいたようだ。

 

 

「そうだったんだ……じゃあ、あの時ご主人様の名前を忘れちゃったのは嘘なの?」

 

「いえ、それは本当です。さらに言うと私はご主人様の顔すらも覚えていません」

 

「ええっ⁉︎本当に記憶喪失だったの?」

 

 

記憶喪失は演技だと思っていたのび太は本当に彼女が記憶喪失である事に驚きの表情を見せる。

 

 

「ただ、はっきり覚えているのはご主人様はのび太さんのようにとても優しいヒトでいつも私の隣にいるだけで楽しい方だということなんです」

 

「いや〜、照れるなぁ〜」

 

 

どうやら彼女は自身のご主人様の姿は忘れてしまったが、人間性はどのような物なのかはしっかりと覚えているようだ。そして、のび太は自分の事を優しく楽しい人と呼ばれ、照れた表情を浮かべる。

 

 

「そう言えばイエイヌちゃんはどうして僕の居場所がわかったの?」

 

「はい、のび太さんの匂いを探して見つけました」

 

「そっか、イエイヌちゃんは元々犬だから鼻が良いんだね」

 

 

だから自分の居場所が分かったのだと理解したのび太だった。すると、彼女はある事を思い出してのび太に質問する。

 

 

「そういえばのび太さんはお家を出た理由は誰かを探しにいこうとしたからですか?」

 

「まぁ、最初はそうだったけど、イエイヌちゃんが心配だったからイエイヌちゃんを探す為森の中を歩いたんだけど道に迷っちゃってね」

 

 

イエイヌはそのままのび太から事情を聞き、暫く考えた後口を開いた。

 

 

「のび太さん誰かをお探しなら探偵に頼んでみたらいかがですか?」

 

「え?此処には探偵がいるの?」

 

「はい、この先を行けば探偵をやっているフレンズさん達のじむしょというところへ行けますよ。よかったら案内しましょうか?」

 

「うん、お願いするね」

 

 

彼女から探偵に頼ると言う提案を受けた後、とある場所へ案内される。

 

 

 

そして、その2人の姿を遠くから見つめる者達がいた。

 

 

「良かったのか?我々が助けなくて」

 

「ああ、別にいいさ。いずれは奴等に関わる。それにイエイヌは記憶がなくなってもその本質は変わらない事を確認できた」

 

 

そこにいたのは胸に黄色または鮮やかな緑色に光る大きな蝶ネクタイを身につけた黒い少女と青く光る翼を広げた鳥のような形をした胸飾りを身につけた少女がいた。

 

 

「確かにな、それで我々はこれからどうする?」

 

「無論、このままあの2人の監視を続けるぞ」

 

「そうか、それじゃあ残りのヒトは誰が監視する?」

 

 

胸飾りを付けた少女が蝶ネクタイの少女にそう話すと、蝶ネクタイの少女はしばらく考えると口を開いた。

 

 

「……確かその内の1人はPPPの元にいたな。ならそれに適した人物がいるじゃないか」

 

「ああ、あいつか。とするとゴリラとキツネ擬きのヒトは誰が監視する?」

 

「あそこは……別にいんじゃないか?」

 

「何故……ああ、そういうことか」

 

 

何故かジャイアンとスネ夫だけには監視は無用だという蝶ネクタイの少女の言葉に胸飾りの少女は少し何か考えると納得した表情をする。

 

 

「しかし、招いた我々が言うのもなんだが、本当にあのヒト達がジャパリパーク、いや世界を救えるとは思いにくいが……」

 

「確かにそう思う……だが、厳密に言えば我々が選んだわけではない。パークチケットが選んだんだ。恐らくあのヒトはかつてこのパークを救ったヒトのように特別な何かを持っているかもしれない」

 

「そこまで言うほどあのヒトは凄いのか?」

 

「いや、正直わたしもあの程度のセルリアンで怯える姿を見たら自信をなくして微妙な気持ちだ」

 

 

先ほどのセルリアンに対して生まれたての子鹿のように足を震わせていたのび太を見ていた彼女達は頭を悩ませていた。

 

 

「とりあえず我々はこのまま監視を続けるとしよう」

 

「いいだろう。なら、わたしは同士達に報告と他のヒトの監視を頼んでくる」

 

「頼んだぞ」

 

そう言って胸飾りの少女はどこかへ飛んで行き蝶ネクタイの少女はそのままのび太達の監視を続けるのだった。

 

 

●●●●●

 

 

一方のび太はイエイヌの案内により森の中をしばらく歩いて行くと、木が数本しか生えていない広場らしき所についた。そして、その中心にはわすれものせんたーと言う看板が掛けられた大きな樹木に建てられた小屋があった。

 

 

「あそこがイエイヌちゃんの言っていた探偵がいるところなの?」

 

「そうです。きっと、お友達を探すのに手を貸してくれますよ」

 

 

2人は近くにあった階段を上ると探偵社の出入り口に立つ。

 

 

「ごめんくださ〜い」

 

 

二回扉に向かってノックするとのび太は扉を開けた。すると、その瞬間、のび太の視界に鋭い眼光を放つ黒い影が飛び込んで来た。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!!?た、食べないでぇぇぇぇええええ!!!」

 

「たべないよ」

 

「えっ、あ、あれ?」

 

 

目を凝らすと、そこには確かに目付きは鋭いが灰色の服を着た女の子が立っていた。

日が暮れて来た為、恐ろしい怪物に見えてしまったのだろう。腰を抜かしたのび太をイエイヌが起き上がらせる。

 

 

「えっと、君は?」

 

 

のび太は事務所の中から出てきた少女に何者かと聞くと、少女は答えようと口を開くが、

 

「いったいどうしたんですかハシビロさん?」

 

「ひょっとしてまた誰か怖がらせちゃったの?」

 

 

其処へ事務所の中から更に2人の女の子が出てきた。

 

 

●●●●●

 

 

 

「ごめんなさい」

 

「い、いえ、こっちもいきなり叫んでごめんなさい」

 

 

あれから数分後、事務所の中に招かれたのび太とイエイヌはソファに座り、お茶を頂いていた。のび太を驚かせた(事故)少女はのび太に謝ると、のび太も謝罪した。

 

 

「すいませんねハシビロさんは目つきは少し鋭いですが、とても優しいフレンズだから安心してください。あ、自己紹介が遅れました私はここの探偵じむしょのしょちょーをやっているオオセンザンコウです」

 

 

桃色の服を纏ったフレンズ…オオセンザンコウは目つきの悪いフレンズ…ハシビロコウは善人であると説明し、そのまま自己紹介をした。

 

 

「私はその助手のオオアルマジローだよ。長いからアルマーって呼んでね」

 

「……書記と事務員のハシビロコウ」

 

 

続いてオオセンザンコウと似た格好をしたフレンズ…アルマジローとハシビロコウが自己紹介を行う。

 

 

「僕はヒトののび太です」

 

「私は犬のフレンズのイエイヌです」

 

 

のび太達も自己紹介を行った。

 

 

「成る程、"ヒトの"のび太さんに"犬のフレンズ"のイエイヌさんですか。これからよろしくお願いします」

 

「うん、こちらこそよろしくね。それにしても凄いな〜」

 

 

のび太は首を動かして事務所の中を見た。其処は何処と無く自分の家の部屋に何気なく似ていて、本棚にはいくつかマンガ本らしきものが置いてあった。

 

 

「このお仕事は3人でやっているの?」

 

「はい、ですが、偶に手が回らない時はヘラジカ様の所からカメレオンさんやシロサイさんの力も借りますけど」

 

「ヘラジカ様?」

 

 

オオセンザンコウの口から出た初めて聞く名前にのび太は首をかしげる。

 

 

「そーだよ、私たちは元々へいげんちほーに住むヘラジカ様率いるヘラジカ軍の一員なんだよ」

 

「今は"訳あって"この探偵という仕事をしているの」

 

「「訳あって?」」

 

 

ハシビロコウの口から出た訳あってという単語にのび太とイエイヌは思わず疑問符を浮かべた。

 

 

「いったい何があったんですか?」

 

「それは……」

 

 

ハシビロコウとオオセンザンコウは言いづらそうな表情(ハシビロコウの表情は大して変わりないが)ちらりとオオアルマジローに視線を移す。

 

 

「なになに?どうしたの?」

 

 

2人に見つめられるオオアルマジローは不思議に思いながらなぜ見つめるのか聞くが、2人は「いえ、なんでも」と素っ気なく答える。恐らくこの探偵の仕事をやる根本的なキッカケは彼女なんだろうとイエイヌは察するが、のび太は全く分からず首を傾げて疑問符を浮かべたままだった。

 

 

「そ、それでご依頼の方は?」

 

 

とりあえず話を進めようとオオセンザンコウは営業スマイル(和かな笑顔)を浮かべながらのび太達に依頼の内容を聞いてきた。

 

 

「実はこちらにいるのび太さんのお友達を探してほしいんです」

 

「そうですか、お友達を探して欲しいですか………ん?…今、なんと言いましたか?」

 

 

イエイヌから仕事の内容を告げられたオオセンザンコウは動きが止まり、首をギギギと音を鳴らしながらイエイヌの方に向けて恐る恐る聞き返した。

 

 

「だから僕の友達を探してほしいんだ」

 

「それってつまり……人探しの依頼ィィィィィィィィイッ!?」

 

 

のび太の言葉を聞いて彼女は大きく目を見開きながら奇声を発した。それを聞いた2人は「うわっ⁉︎」と驚きの声を上げる。

 

 

「や、やったよセンちゃん人探しの依頼だって!」

 

「ようやくですよ!この仕事は絶対やり遂げましょう!」

 

 

のび太の依頼に2人は手を取り合って大はしゃぎする。それを見たのび太とイエイヌは呆然となる。しかし、すぐに意識を取り戻し近くにいたハシビロコウに恐る恐る訳を聞く。

 

 

「どうしてあんなに喜んでいるんですか?」

 

「……わたし達は事務所を構えて1年半、それまで探偵っぽい仕事がなかったからあなた達の依頼が探偵っぽい依頼だから嬉しいの」

 

「へ、へぇ〜、そうなんだ」

 

 

幾ら探偵っぽい仕事が今までできなかったとはいえ、若干オーバーなのではと心の中に思うのび太だった。

 

 

「ちなみにそれまで何をしていたのですか?」

 

「……オオセンザンコウ、アルマジロー話してもいい?」

 

 

イエイヌは彼女たちは普段どんな仕事をしているのか興味があり、ハシビロコウに聞くと彼女は未だに大はしゃぎしているオオセンザンコウに話しかける。

 

 

「やったやったー!ハッ⁉︎……ゴホン!……か、構いませんよハシビロさん」

 

 

しばらくはしゃいでいたオオセンザンコウはハシビロコウの声にハッとなり、だんだんと顔を赤くしていくが、咳払いをして誤魔化しながら窓の方を向いてのび太達に表情は見せないようにして、ハシビロコウに許可をした。許可を得た彼女は自身の机の引き出しから数十枚の紙を取り出して、そこに書かれていた文章を読み上げる。

 

 

「主にやっていた仕事は博士やカフェのアルパカからりょーりの材料やお茶の材料を取ってくるように依頼をされていた」

 

「えーと、それって」

 

「おつかい?って事かな?」

 

 

2人は依頼の内容はおつかい。つまり買い物の依頼だと思ったが、オオセンザンコウは否定した。

 

 

「いえ、ただボスの管理する畑から食材をバレないようにとってくる依頼ばかりです」

 

「え?それって、野菜泥棒じゃ「私たちじゃ、その依頼はこなせないからカメレオンさんに任せていました‼︎」あ、ハイ」

 

 

自分たちもやっている事が泥棒である事を自覚していたのか、のび太の台詞に被せるように話を続けて誤魔化した。

 

 

●●●●●

 

 

それからオオセンザンコウは自身の机に座り、ハシビロコウが淹れた紅茶を飲んで冷静になり、某碇司令のように腕を組みのび太と目を合わせる。

 

 

「それでどんな方をお探しですか?」

 

「探して欲しいのは4人でそのうちの1人はドラえもんって言うんだけど、青くて丸いずんぐりむっくりとした体型が特徴なんだ」

 

 

オオセンザンコウはのび太からドラえもんの特徴を聞くが、「うーん?」と唸り声を上げながら顎に手を当てて考えるが、どうもピンとこない様子だ。

 

 

「えーっと、青くて丸くてずんぐりむっくり……すみません、想像しづらいの出来たら絵でその…ドラえもん?でしたか、その方を描いてくれませんか?」

 

 

そう言ってオオセンザンコウは机の引き出しから色鉛筆と一枚の白紙を取り出し、のび太に渡した。すると、それを見たイエイヌは「あっ」と呟いた。

 

 

「どうしたのイエイヌちゃん?」

 

「いえ、なんでもありません。ただ、その道具を見て何か一瞬ですけど頭に何かが過ったんです」

 

「色鉛筆のこと?オオセンザンコウさんその色鉛筆をどこで手に入れたの?」

 

 

イエイヌが注目した色鉛筆を見てのび太はどこで手に入れたのかオオセンザンコウに聞くが、彼女の代わりにアルマジローが答えた。

 

 

「これはね、へいげんちほーのライオンの城にあった物なんだよ」

 

「はい、わたし達がこの探偵業を始めるときヘラジカ様を通じてライオン達から頂いた物です」

 

「ら、ライオン⁉︎」

 

 

色鉛筆をライオンから貰ったと聞いてのび太は驚きの声を上げる。ライオンと聞いて大きな鬣を持ち、腹ペコなイメージがある為、フレンズの状態でも常に肉に飢えている恐ろしいイメージが湧いた。

 

 

「よ、よく無事だったね」

 

「?なんで怯えているの?」

 

 

アルマジローはのび太の中のライオン像を知らない為、どうして彼が怯えているのか全く分からなかった。一方、オオセンザンコウは目を半開きにして、何かを察した様子だ。

 

 

「ゴホン、それではのび太さんそのドラえもんと言う方を絵で書いてください」

 

「わ、わかったよ。えーと、最初は確か…まるかいてちょん、まるかいてちょん、まるかいてちょん、あれ、3回だっけ?ま、いっか、おまめにめがでてうえきばち~うえきばち~、七月七日にUFOが~あっちいって、そっちいって、おっこちて~、お池が四つできました~!お池におふねをうかべたら~お空に満月のぼってた~。ひげをつけたら……よし、出来たよ」

 

「見せて下さい」

 

 

のび太の描いたドラえもんの絵を受け取ったオオセンザンコウは早速その絵を見た。アルマジローとハシビロコウも隣から覗くと、アルマジローは微妙な表情を浮かべる。

 

 

「ね、ねぇセンちゃん。こんなフレンズ本当にいるのかな……?」

 

「い、いやしかし、よく見ればタヌキのフレンズに見えなくも……」

 

「………」

 

 

3人はのび太の描いた絵を見て若干引いていた。のび太はドラえもんの絵描き歌を歌いながら描いたが、所々歌詞が異なり画伯の絵みたいな感じになってしまった。

 

 

「それでもこんな真っ青なフレンズって……⁉︎」

 

「あの、ドラえもんはフレンズじゃないんだけど」

 

「え⁉︎フレンズじゃないんですか!?」

 

(え?そこまでおどろくことかな?)

 

 

のび太が描いた絵はフレンズではない事を知り、余計に3人は表情を歪めて絵を見る。ただし、ハシビロコウの表情はあまり変わらないが、

 

 

「えっと、このドラえもんという方はフレンズじゃなければ何者なんですか?」

 

「うん、ドラえもんはそんな見た目だけど一応猫型ロボットなんだ」

 

「ね、ネコ型?」

 

「ろぼっと〜?」

 

 

フレンズじゃない見た目をしているドラえもんがもしかしたらセルリアンではないかと思ったオオセンザンコウは恐る恐るのび太からドラえもんについて聞くが、初めて聞く言葉にアルマジローとともに首をかしげる。

 

 

(アルマーさんよくわかりませんが、どうやらこの方は猫らしいですね)

 

(え〜、そうかな?それにしては耳がないよ。というかろぼっとってなんだろう?)

 

(う〜ん、わかりません。あとで博士にでも聞きに行きますか)

 

 

ロボットについて全く知らない彼女達はドラえもんについて考えるのをやめて残りの3人の情報を知るために話を続ける。

 

 

「それで他の方々は?」

 

「えっと、あと3人いて僕と同じヒトなんだけど、1人目はしずかちゃんって言うんだ。とても可愛い女の子で黒髪の二つ結びの髪型をしているんだ。あと、ジャイアンなんだけどゴリラのような怖い顔をした奴なんだ。凶暴でいつも僕を虐めたり音痴な歌を歌うガキ大将なんだ。スネ夫はジャイアンといつもいてキツネみたいな顔をして、ジャイアンと一緒に僕を虐めたりご機嫌をとったりする奴なんだ」

 

「……なんでしょう、そのしずか…ちゃんでしたか?その方以外のお二人はあまり印象がよろしくない様子ですね」

 

 

明らかにジャイアンとスネ夫と比べてしずかちゃんを贔屓している事にオオセンザンコウは微妙な表情を浮かべる。

 

 

「センちゃんがきだいしょうってなんだろうね?」

 

 

そして、アルマジローはジャイアンの情報の中にあったガキ大将という単語を聞いてオオセンザンコウに質問する。

 

 

「よくわかりませんが、ライオン軍にいるオーロックス達がライオンの事をたいしょうって呼んでいたから、群れのボスみたいなものじゃないでしょうか?」

 

「え、てことはジャイアンってヒトはヒトの群れのリーダーって事?」

 

「おそらくそうだと思います」

 

「……」

 

 

ガキ大将と呼ばれているジャイアンが人の群れのリーダーだと思い込む、2人に対してハシビロコウはただ黙ったままだが、その目からは"多分違う"という否定的な感情がこもっていた。

 

 

「わかりました。我々はこの方々を探してみせましょう」

 

「ところで報酬はどんなものですか?」

 

「え?報酬?」

 

「当たり前ですよ。わたし達はあくまでも仕事でこの探偵をやっているのでただ働きはちょっと……」

 

「ええ!?そんなぁ〜」

 

 

せっかくドラえもん達を見つける少ない手段だというのにのび太はどうにかできないかと悩んでいると、

 

 

「安心してください。報酬ならしっかり私が出します」

 

「い、イエイヌちゃん⁉︎」

 

「ほほう。それで報酬はどんなものですか?」

 

 

再び机に座るオオセンザンコウは威厳を出すためにもう一度某碇司令のように腕を組みながら報酬について聞く。

 

 

「はい!報酬はジャパリスティックとじゃぱりまん限定カレー味になります!」

 

「「カレー味……!?」」

 

「………」

 

 

カレー味。それはあるフレンズが「じゃぱりまんに料理を付けて食べたらどうだろう」という言葉がきっかけで博士達が広めた新たなじゃぱりまんであり、その生産個数は1日30個だけと言われている希少なじゃぱりまんなのだ。ちなみにジャパリスティックも希少なのだが、限定のカレー味と比べるとインパクトが薄くなってしまう。

 

 

「私達に任せてください! ……じゅるり」

 

「きっとその友達と言う方を探してみせます! ……じゅるり」

 

 

2人はのび太の依頼に全力を尽くすつもりだが、口からよだれが流れていて探偵としての威厳があまり感じない。

 

 

「急に乗り気になったね」

 

「これも全てじゃぱりまん……いえ、依頼主の為!」

 

「私達がきっとじゃぱりまん、いや、依頼を解決するよ! 行こうセンちゃん! あ、ハシビロちゃん留守番お願いね!」

 

 

2人はそう言って事務所から出て明後日の方向へ走っていった。のび太達も遅れて外に出ると既に2人は遠くへ行ってしまった。

 

 

「ドラえもん……見つかると良いなぁ……」

 

 

少し不安だが、ここはオオセンザンコウ達に任せるしかなかった。

 

 

「ここがあのフレンズの"たんていじむしょ"ね‼︎」

 

「うわっ!?え、誰?」

 

 

突然2人の後ろから大きな声が響き、のび太は思わず驚きのあまり大きく飛び上がる。イエイヌは咄嗟に後ろを振り返るとそこにはマフラーを巻いた1人の少女が立っていた事に気づく。

 

 

「あなたは……アミメキリンですか?」

 

「キリンって……あの首が長い?」

 

 

彼女の事をキリンと呼ぶとのび太はあの首の長いキリンを思い浮かべた。すると、彼女ものび太達の存在に気づいた。

 

 

「む!アナタ達は?」

 

「僕の名前は……」

 

「待って!この名探偵である私にかかればアナタがどんなフレンズなんかはお見通しよ!」

 

「え!?」

 

 

自己紹介をしようとしたが、急にアミメキリンはのび太を頭から爪先までじーっと見ると、眉間に指を当てて考え出した。

 

 

「その大きくて丸い特徴的な目に、さっき驚いた時に見せたジャンプ力……アナタ、メガネザルね!」

 

「メガネザルだって!?違うよ!」

 

 

アミメキリンの出した推理でメガネザルと呼び、のび太は思わず大声で否定した。

 

 

「なっ!?名探偵であるこの私が間違える筈が……」

 

 

自分の推理が誤っている訳がないアミメキリンはのび太が何か嘘をついているのではと思い、問い詰めようと考えたが、

 

 

「い、いや、それよりも私はここにいるギロギロ、じゃなくてオオセンザンコウさんに依頼を受けてもらおうと」

 

「え?あなたもオオセンザンコウさん達に依頼を?」

 

「え、ひょっとしてあなた達もなの?」

 

 

アミメキリンものび太達と同じようにオオセンザンコウに依頼をしにきた事を知る。

 

 

「残念だけど、探偵のオオセンザンコウさん達ならもうわたし達の依頼を受けて行ってしまいましたよ」

 

「そっ、そんな!?」

 

 

イエイヌからオオセンザンコウとアルマジローが今はいないと知ると、彼女は頭をガクリと下げて項垂れる。

 

 

「うぅ、行方知れずになった先生を捜索してもらおうと思ったのに……」

 

「大丈夫?」

 

「それにギロギロのモデルになったオオセンザンコウにも会えないなんて……!」

 

「ぎろぎろ?」

 

 

彼女の口から出た聞きなれない単語にのび太は聞き返すと、彼女は懐から一冊の本を取り出してみせる。

 

 

「ギロギロって言うのは私の大好きなオオカミ先生が描くホラー探偵ギロギロの漫画の主人公よ」

 

「あ、この表紙に描かれているのってオオセンザンコウさんだ!(あれ、この漫画は字が全く書かれていないや)」

 

「ふふん、そうよ。私はギロギロの元となったオオセンザンコウが探偵をやっていると知って依頼を受けてもらおうと思ったのにぃ〜。いないなんてぇ〜!」

 

 

アミメキリンから彼女がここへやってきた事を知ったのび太はまた項垂れる彼女の姿を見て可哀想だと思い、声をかける。

 

 

「事情は良く分からないけど、僕にできる事があるなら手伝おうか?」

 

「ご主人様の言う通りです。私も手伝います」

 

「ありがとう、……はっ!?」

 

 

2人が自分に協力してくれる優しさに心打たれたアミメキリンだが、ここで何かに気づいた。

 

 

「そうよ!探偵に頼らなくても名探偵である私が直々に探しに行けばいいんだわ!」

 

 

オオセンザンコウ達がいない今は名探偵(自称)である自身が探しに行くという発想が思いついた彼女は早速動いた。

 

 

「誰かは知らないけどありがとう!私、先生を捜しに行ってくる!」

 

 

彼女は2人にお礼を言うと背を向けてオオセンザンコウ達が向かった先へ走り去って行った。

 

 

「「あの子、何しに来たんだろう……」」

 

「………」

 

 

嵐のように去って行ったアミメキリンにのび太とイエイヌは困惑するのであった。ハシビロコウは相変わらず何も喋らずただ、彼女の走っていく姿を見ていくだけだった。

 

 

「じゃあ、僕たちも行こうか」

 

 

もう、此処には特に用はなくなったのび太はあとはイエイヌのお家でオオセンザンコウ達がドラえもんを連れてきてくれるのを待つばかりだと思い、イエイヌと共にお家へ帰ろうとするが、

 

 

「待ってください」

 

「ん?どうしたの?」

 

 

突然イエイヌがのび太に待ったと声をかけて止めると、ハシビロコウに話しかける。

 

 

「ハシビロコウさんお願いがあります」

 

「なに?」

 

「しばらくのび太さんをここに居させてください」

 

「え!急にどうしたのイエイヌちゃん⁉︎」

 

 

突然のイエイヌの発言にのび太は困惑しながらもイエイヌから事情を聞こうとすると、イエイヌはのび太の方に体を向けて口を開いた。

 

 

「私はのび太さんに迷惑をかけてしまいました。無理やり私のご主人様に仕立て上げようとしたから、共にいることなんて出来ません」

 

 

どうやら彼女はのび太を騙していた事に罪悪感を感じて、のび太と一緒にいる事がいけないと思っているようだ。

 

 

「そんな事ないよ!確かにイエイヌちゃんは僕を騙していたけど、僕は全然気にしていないよ!」

 

「それでも!優しいのび太さんを騙した事は変わりないんです!」

 

「イエイヌちゃん……」

 

彼女の心からの声にのび太は思わず、何も言えなくなる。

 

 

「のび太さんたった1日でしたが、ありがとうございます。久しぶりにヒトと一緒にいられて本当に楽しかったです!私はこれからも本当のご主人様がお家に帰ってくるまで頑張って行きますから」

 

 

彼女はのび太が心配しないように精一杯の笑顔を見せる。

 

 

「そうだ!最後に言ってもらえませんか?おうちにお帰りって」

 

 

彼女はのび太にそう言うと、のび太は一瞬目を見開くとすぐに目を元に戻してゆっくりと口を開く。

 

 

 

「……お家にお帰り」

 

「………はi「ただし、一緒に帰ろうね」……え!?」

 

 

のび太の命令を聞いたイエイヌはそのまま帰ろうとしたが、次に言った言葉に思わず驚きの表情を見せる。

 

 

「な、なんで⁉︎」

 

「放っておけないよ、君を1人にするなんて……僕には出来ないよ!それに君をみているとあの子を思い出すんだ」

 

「あの子って……?」

 

 

彼女はのび太が自身とある人物と重ねている事に首を傾げながらあの子と言うのについて聞くと、のび太は語った。

 

 

「うん僕の友達だよ。駄目駄目な僕と違って物覚えが良かったんだ」

 

 

のび太はその友達と色々な事を教え、遊び、厳しい事もあったけど忘れられない日々だった事を話した。

 

 

「素敵な友達だったんですね。その子は今どうしているんですか?」

 

「うん、遠いところへ行っちゃったんだ」

 

「遠いところ……ですか?」

 

 

のび太は頷く。イエイヌがその友達はどこへ行ったのか聞くと誇らしく空に向かって指をさした。

 

 

「空……?あぁ!分かった!鳥のフレンズさんなんですね!」

 

「鳥?いや違うよ。イエイヌちゃんと同じ犬だよ」

 

「そうなんですか?それじゃ空を飛ぶことは出来ないんじゃ……」

 

 

するとのび太は「あっ」と呟き、何かを考えたような素振りを見せると続きの言葉を口から出した。

 

 

「友達はね、宇宙へ行ったんだよ」

 

「"うちゅー"?【うちゅーちほー】と言う所があるんですか?」

 

「いや、違うよ。宇宙は……そう、空のずっと向こうにあるんだ」

 

「空のずっと向こうって……あの星空が浮かんでいる"あそこ"へ飛んでいったんですか!?」

 

 

宇宙へ行くという自体にイエイヌの脳内のキャパシティがオーバーしそうになる。鳥のフレンズでさえも空のずっと上の方へ行ったことのあるものは居ないと聞いている。

 

 

「そんなの、どうやって会いに行くんですか?……いえ、そもそも会えるかどうか……」

 

「うん。でも……、きっとまた会えるって僕は信じているんだ」

 

「また、会える……」

 

「うん。友達は……【イチ】は、ずっと僕の事を待ってくれていたから」

 

 

 たとえ1000年経っても、友達と交わした約束を忘れる事はなかった奇跡があった。それを目の当たりにしたのび太だからこそ言える。

 

 

「きっと、ご主人様は迎えに来てくれる。僕はイエイヌちゃんのご主人様じゃないけど、……しばらくの間、友達として一緒に待つ事が出来るよ」

 

「友達?」

 

「うん!……あ、そうだ。イエイヌちゃん。こんな感じに小指を出して?」

 

 

たどたどしくもイエイヌは小指を出し、のび太はとある言葉を口に出しながら指を動かした。

 

 

「ゆーびきーりげんまん嘘ついたら、針千本のーます。指きった」

 

 

「これは……?」

 

「僕とイエイヌちゃんの友達の証だよ

 

 約束する。きっとイエイヌちゃんはご主人様と会えるよ」

 

 

「はい!私も信じています!ご主人と会える事を!」

 

 

彼女は自分とそのイチが境遇がどことなく似ている事に共感して、彼の代わりにのび太と一緒にいようと決意し、のび太の差し出された手を握る。

 

 

「じゃあ、行こうか」

 

「はい!」

 

 

そして、2人はイエイヌの家に帰ろうとするが、ハシビロコウがのび太の服の袖を掴む。

 

 

「あの、どうかしましたか?」

 

「………」

 

 

2人はなにも喋らずただ彼女の鋭い目に見られて10秒が経つと漸く彼女の口が開き、

 

 

「……私も行っていい?」

 

「「え?」」

 

 

その後、ハシビロコウを含めて3人はイエイヌのお家へ暫く住む事になった。やったねのび太くん。女の子と一つ屋根の下暮らしだよ。

 




【あとがきの小ネタ】


「ところでのび太さんのイチさんと言うのはどんなフレンズなんですか?」

「フレンズと言うか……、犬と猫の王国の大統領だよ?」

「だい…とう……?」

「あー、えーっと、イチは王様なんだよ!」

「なんだー、王様なんですね………王様!?」



「そうそう!それで自力で【タイムマシン】を作ったけど何年も後の未来に移動しちゃって子供の姿で出会ったんだ!それで隕石が衝突するのを回避する為、宇宙船に乗り込んで……」

「たいむま……いんせ……うちゅー…せん……」

「それで……イエイヌちゃん?」


「わっかんないや!」

「イエイヌちゃん!?」


「あ、ハシビロちゃんはどうだった?」

「わっかんないや!」

「ハシビロちゃん!?」



その時イエイヌとハシビロコウの顔はそれはそれはみん味(みんみ)を感じたとのび太は語る……。


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ジャイアン&スネ夫とじゃんぐるちほー

ついに始まりましたけものフレンズ3!自分もハマりにハマってしまいましたよ!ちなみにガチャはブラックジャガーが当たりました。

なお、そのせいで執筆が遅れた模様。



ドラえもん達と離れ離れになったジャイアンとスネ夫はジャングルちほーで彷徨いそこで出会ったゴリラと名乗るフレンズから食事を誘われ、彼女の縄張りに案内してもらい、そこでジャパリまんをご馳走してもらっている。

 

 

「美味えなぁ!この饅頭!」

 

「ジャイアン、少しは遠慮したらどう?」

 

 

彼等の目の前には山のように積まれていたジャパリまんがあった。それをジャイアンがものすごい速さで半分以上も胃袋に詰め込み、途中喉に詰まらせる事もあったが、ジャパリソーダを流し込んだ。それを見たスネ夫も幾ら彼女が奢ってくれるというからって限度はあるだろうと言うが、

 

 

「良いだろ!俺たちは腹ペコだったんだからもっと食べてもバチはあたらねぇよ!」

 

「じゃ、ジャイアンこの人の前でそんな堂々と言わなくても⁉︎」

 

 

ジャパリソーダを飲みながら失礼なことを言うジャイアンにスネ夫はチラチラとゴリラの表情を見ながら声を荒げる。

 

 

「ははっ、別に構わないさ。もともとこの量じゃ私1人では食べきれないからね」

 

 

対して彼女(ゴリラ)は機嫌よく笑って許した。それを見たスネ夫は器の広さがジャイアンとは大違いと思って安心すると自分の手に握っているジャパリまんを見て彼女にあることを聞く。

 

 

「ところでこのジャパリまんでしたっけ?これって誰が作っているんですか?」

 

 

スネ夫は今食べているジャパリまんがどれも形は精巧で大きさも均等になっている事に手作業で作れる訳ないと思い、何処かにジャパリまんを作る工場があるのではと予想したスネ夫だが、

 

 

「ジャパリまんを誰が作ったかだって?……うーん、そんな事一度も考えた事なかったな」

 

「えっ、知らないんですか!?じゃ、じゃあ何処からジャパリまんを取ってきているんですか?」

 

 

彼女はスネ夫の質問に対して少し考えたが、どうやらジャパリまんの製造元を知らないようだ。それを聞いたスネ夫は驚きの声を上げるが、代わりに何処から取ってきたのか聞いてみた。

 

 

「いや、取ってくるんじゃなくてラッキーさんが持ってきてくれるんだ」

 

「ラッキーさん?」

 

 

彼女が言ったジャパリまんを持ってきてくれるラッキーさんとは何者なのだろうかとスネ夫は考える。

 

 

「ひょっとして、ラッキーさんっていうのはさっきゴリラさんが言っていた人のことですか?」

 

「いや、違うぞ。ラッキーさんは……なんて言ったら良いんだろう」

 

 

スネ夫にラッキーさんは何者かと言われ、答えようとするが中々ラッキーさんがどんなけもの…または生き物なのか自身の知識の中ではそれらしき物が思いつかず、口からは説明する事が出来なかった。

 

 

「まあ、ラッキーさんはわたし達の為にジャパリまんを運んできてくれる良い…けもの?」

 

(なんで疑問符が付くの⁉︎)

 

 

結局のところ彼女もラッキーさんについてはフレンズの為にジャパリまんを運んできてくれる存在と思っていたようだ。

 

 

●●●●●

 

 

「それにしてもタケシはすごい食べるな」

 

「へへ、俺は大食いには自信があるんだ」

 

 

ジャパリまんを食べ終えた後、彼女は関心した様子でジャイアンを見ると、彼も自身の胃袋の広さを自慢する。一方、スネ夫も腹が満たされた事で話を切り出す。

 

 

「ところでゴリラさんちょっと聞きたい事があるんだけど」

 

「どうしたんだ?」

 

「さっき此処はジャパリパークって言っていたけど、それってなんなの?」

 

 

ジャパリまんをご馳走させてもらったのは感謝するが、此処はもともと自分達がくる予定だったの未来の動物園とは思えなかった。

 

 

「む?お前たちは此処を知らないのか?」

 

「いや〜、俺たちはタイムマシンに乗って気づいたら此処に居たんだ?」

 

「たいむ……なんだ?」

 

「あ、気にしないで下さい」

 

 

スネ夫は無闇にタイムマシンの事を話すと、色々とややこしい事態になりそうと思い。あまりドラえもんの道具について語らない方がいいと判断して彼女に誤魔化した。同時にある事を確信した。

 

 

(此処はドラえもんが言っていた動物園じゃないんだ)

 

 

元々行く予定だった動物園は24世紀つまりドラえもんが元々いた時代にあるものだ。その時代にはドラえもんやその妹のドラミちゃんが使っているタイムマシンが普及されているのだ。それなのに先ほどのゴリラの表情からしてタイムマシンについて全く知らなそうだ。

 

 

(という事は此処はまた別の星、それとも世界かな?)

 

 

過去に別の世界や星へと行ったことがあるため多少は耐性があるものの、やはり不安な気持ちで一杯一杯だ。早くドラえもん達と合流して元の世界に戻ろうと思っていると、

 

 

「どうしたんだ。先ほどから黙って?」

 

「あっ、な、なんでもないです!そ、そういえばゴリラさんの名前ってジャイアンみたいにあだ名のようなものですか?」

 

 

毎度見知らぬ土地に冒険をする際、いつも自分達が不幸な目にあっている為、今回はそれを避けるため彼女の警戒を解こうと必死にスネ夫は頭を働かせて答えたのだ。

 

 

「あだ名?いや私はゴリラなんだが……まあ、厳密に言えばゴリラの"フレンズ"なんだがな」

 

「「フレンズ?」」

 

 

彼女の発言した聞き慣れたい言葉に2人は思わず、首を傾げて復唱する。

 

 

「スネ夫、フレンズってこの間お前が言っていたフランス料理の名前か?」

 

「それはフレンチ!…まあ、フレンズっていうのは英語で"友達"って意味だった筈なんだけど、多分ゴリラさんの言うフレンズとは意味が違うんじゃないかな?」

 

 

ジャイアンの何時もの天然ボケにツッコミを入れるが、自分達の知るフレンズとゴリラの発言したフレンズという言葉の意味は異なる物だと思った。すると2人の会話を聞いたゴリラは「うーん」と唸り声をあげて考える。

 

 

「フレンズも知らないのか……なら教えよう。フレンズというのは動物(けもの)がヒトの姿に変化したアニマルガール…通称フレンズ事を言うんだ」

 

「え、それってつまり……」

 

「そろそろ察しているようだな。此処にいるのはサンドスターによってフレンズになったけもの達が住んでいるんだ」

 

「「えええええええっ!!!?」」

 

 

ゴリラの説明を聞いた2人はフレンズというものを理解し驚愕した。そして、ジャイアンは恐る恐る彼女に尋ねる。

 

 

「と、と言う事はゴリラさんは元々本物のゴリラだったんですか!?」

 

「その通りだ」

 

「いいーーっ!?」

 

「…なぜ怯えるんだ?正直心が傷付くぞ」

 

 

彼女が自身は動物のゴリラだと明かすとジャイアンは顔を青ざめて怖い物を見たような怯えた顔になる。対してゴリラは何故ジャイアンが怯えた顔をするのか全く分からなかった。しかし、スネ夫はジャイアンが怯える理由を知っている。

 

 

(そっか、だからジャイアンはあの時のトラウマが蘇ってゴリラさんの言う事を聞いたのか)

 

 

スネ夫達は以前学校の裏山に発生したひみつ道具の"どこでもガス"に入り込み、ジャイアンと共に迷い込んでなんやかんやあってアニマル星に来て、そこで出会ったゴリラの親父に自分の息子と間違われて拳骨を食らった事があり、それ以来ゴリラにトラウマが出来てしまい、目の前にいるゴリラのフレンズである彼女の言う事を反射的に聞いてしまったのに納得できる。すると、彼女は軽く咳払いをして口を開く。

 

 

「ところで君たち本当にヒトなのか?」

 

「そ、そうだ…です」

 

「ぼ、僕たちは正真正銘…人間…ですよ」

 

 

彼女はジャイアン達がまだ人とは確信できていないようで再び2人に尋問するように追求すると2人はビビりながらも自分たちは人だと答える。それを聞いた彼女は「それなら」と言って2人に質問する。

 

 

「君たちは"動物を思いのままに操る方法"を知らないかい?」

 

「え?"動物を思いのままに操る方法"?」

 

 

唐突に動物を思いのままに操る方法について聞いてきた彼女に2人は思わず首をかしげる。一方で彼女も話を続ける。

 

 

「ああ、昔ヒトは動物を意のままに操っていたと聞いてな。君たちが本当にヒトならそれが一体なんなのか知っているかと思ったんだ」

 

「え?そんなの簡単だろ。犬小屋と美味い餌をやって命令を聞かせればいいだけだろ?」

 

「まあ、僕の場合はチルチルをいつも豪華な食事に環境、専用の寝床に毎週一回マッサージに連れて行っていくから僕の言う事は必ず聞くんだ」

 

 

2人は自分の家に飼っている犬のムク、猫のチルチルのお世話する日常を思い出しながら自分達の飼育方法をそのまま伝えると、

 

 

「そんな事でいいのか?」

 

 

2人から動物を操る方法?を聞いたものの意外と簡単そうだとゴリラはそう思っていると、ジャイアンが補足を入れる。

 

 

「ああ、仮にそれで言うことが聞かなかったらぶん殴って言う事を聞かせればいいだけだしな」

 

「ぶ、ぶ、ぶん殴る!?」

 

 

彼女はジャイアンの口から出た暴力を振るう発言を聞いて思わず目を見開いて、聞き返してしまった。

 

 

「い、今のはジャイアンの軽い冗談ですよ」

 

「そ、そうだよな。幾ら何でもぶん殴るなんてそんな野蛮な事はするわけないよな」

 

 

彼女はスネ夫からジャイアンの言うことは冗談であると聞くと、苦笑いを浮かべた。それを見たスネ夫は内心ホッとした。

 

 

「え、何言ってんだ?俺は冗談なんt──「ああ、そうだ!ほら最後のジャパリまんをあげるよ!」フゴッ!?」

 

 

余計な事を言いそうになったジャイアンにスネ夫は持っていたジャパリまんで無理矢理口を塞いだ。

 

 

「でも、なんでゴリラさんが動物を操る方法を知りたいんですか?失礼かもしないけど、元動物のあなたが動物を操る方法を知りたいなんてちょっとへんな感じがして……」

 

「ああ、実はな───」

 

 

ゴリラは2人に動物を操る方法を知りたい理由を告げようとした時、遠くからバタバタと足音が聞こえてきたのだ。2人はまさか猛獣がジャパリまんの匂いに誘われてきたのではと警戒する一方でゴリラはなんの警戒することなく話を一旦中断して、足音が聞こえてくる方向に首を向ける。

 

 

「ゴリラさん大変だよー!」

 

「何とかしてよー!」

 

 

すると、そこへ全身黒い少女とそれとは対照的に全身が白い少女がやってきた。

 

 

「マレーバクにミナミコアリクイか、一体どうしたんだ?」

 

(動物の名前?この2人もフレンズなのか)

 

 

2人ともゴリラから動物の名前で呼ばれていることから彼女達もゴリラと同じフレンズだと気づく。

 

 

「またヒョウとワニ達が喧嘩しているの」

 

「はぁー、またか……」

 

「またって?」

 

「実はここ最近いくつかのフレンズ縄張りが誰かに壊されてしまって、その中で新しい縄張りを巡ってフレンズ同士の縄張り争いが起きているんだ」

 

 

スネ夫はゴリラが発言した縄張り争いが起きていると聞いて、思わずゾッとした。もしもゴリラのような心優しい性格をしたフレンズではなく争いの真ん中にいたらとんでもない目に遭っていたかもしれない一方、スネ夫が考えている事を他所にゴリラは腰を上げて地面から立ち上がる。

 

 

「とりあえずあいつらを止めに行くか」

 

「本当にありがとうゴリラさん!」

 

「ゴリラさんありがとうだよぉー!感謝のポーズ!」

 

 

2人はゴリラにお礼を言う。ただしミナミコアリクイは何故か両腕を広げて感謝?のポーズをした。それをみて彼女は思わず苦笑いを浮かべると視線をスネ夫達に移した。

 

 

「私はこれから争い事をしているヒョウ達を止めに行くが、お前たちはどうする?」

 

 

ゴリラからここで待っているか、それとも一緒に来るかと選択肢を出されると、スネ夫はもちろん前者を選ぶ、強そうなゴリラと一緒にいるのが良さそうだが、これから向かう先に凶暴な動物が待ち構えている事を考えるとここで待っていた方が身の為だ。そう思ったスネ夫はここで待っていると言おうとしたが、

 

 

「スネ夫俺たちも行こうぜ!」

 

「えっ!?で、でも、これから会いに行くのはヒョウとワニだよ」

 

 

その前にジャイアンが後者を選んでしまった。スネ夫は彼を説得しようと試みるが、

 

 

「なぁに、心配するな。たとえ襲いかかってきたとしても俺様が一捻りにしてやるよ」

 

 

右腕を"ブンブン"と音が鳴るくらい右腕を回しながらまたしても命知らずな発言をするジャイアンをみてスネ夫は思わずため息をつく。

 

 

「そう言って、さっきビビっていた癖に……」

 

「なんか言ったか?」

 

「え?あ、いや!な、なんでもないよ!」

 

 

うっかり口を滑らせたスネ夫だが、幸いにもジャイアンの耳にはっきりと聞こえてなかった為、ボコボコにされずに済んだ事にホッとする。

 

 

「そうか、なら私の後についてくるんだ。それと勝手な行動をするなよ」

 

「はーい!」

 

「は、はーい……」

 

 

彼女から許可を貰った際2人は彼女の中核を聞くとそれぞれ対称となる返事をすると、ゴリラを先頭に2人はその後に続いて行った。

 

 

●●●●●

 

 

ゴリラを先頭に3人はジャングルの中をしばらく歩いてると、だんだんと何か言い争っている声が聞こえてきた。彼女は腰を下ろすと目の前にある茂みに身を隠しながら奥を覗いた。それにつられて2人も茂みから覗く。

 

 

「彼処で言い争いをしているのが、ヒョウとクロヒョウにイリエワニとメガネカイマンだ」

 

「え、あそこで言い争いをしている4人が?」

 

 

3人の視線の先にはガミガミと言い争って、既に一触即発な状態にある4人の女の姿があった。

 

 

「なんだ、てっきり動物の方かと思ったらフレンズの方か、ビビって損した」

 

「いや、僕からしたらあまり怪我せずに済みそうかな」

 

 

ジャイアンはてっきり猛獣がいるかと思ったら目の前には4人のフレンズ達と分かると落胆し、スネ夫は暴力沙汰にはなりそうにないと一安心する。

 

 

「一応言っておくが、フレンズのあいつらは元の動物だった頃よりも何倍も強力になっているぞ」

 

「ええええーっ!?」

 

「おい!大きな声を出すなよ!」

 

 

すると、スネ夫の声を聞いたヒョウとイリエワニがジャイアン達が隠れている茂みを鋭い眼光で睨みつけた。

 

 

「誰や!そこに隠れているんわ!」

 

「出てこないとそこから引きずり出すよ!」

 

「や、やばいよジャイアン!僕たちの方を睨んでいるよ!」

 

「お、落ち着けって」

 

 

今にも隠れている自分たちを引きずり出そうとするヒョウ達に睨まれて、スネ夫は若干パニックに陥り、ジャイアンはそんなスネ夫を宥めようとする。

 

 

「はぁ〜、仕方ない」

 

 

ゴリラは軽く溜息をつくと今までの雰囲気違って強そうなオーラを出して茂みから出る。

 

 

「お前たち、また縄張り争いか?」

 

「「「「お、親分!?」」」」

 

 

すると、ヒョウ達は先ほどと打って変わって態度が変化した。

 

 

「ミナミコアリクイ達から聞いたぞ?お前たちまだ縄張りは決まっていなかったのか」

 

 

ほかのフレンズに迷惑がかかっていると聞くと、彼女たちはそれを自覚したのか、とても気不味い表情を浮かべる。

 

 

「せ、せやけど、こいつらが此処は自分たちの物やって言うんです!」

 

「そうや!ウチらただでさえ水飲み場が少ないのにこのワニどもが此処の水飲み場を寄越せって言うんです」

 

 

すると、ゴリラに弁明するようにヒョウ達は自分達は悪くない悪いのはワニ達だと主張すると、ワニ達は「なんだと⁉︎」と声を荒くする。

 

 

「そもそもお前たちはそれ程水飲み場は必要ないだろ!」

 

「その通りです!その分私達が同等の縄張りと交換するって言うのにこれだからネコ科は……」

 

「「なんやとぉーっ!?」」

 

 

また言い争いを始めた事にゴリラは額に手を当て、ため息を吐く。

 

 

「とにかく今は言い争いをやめろ!」

 

「「「「は、はい!」」」」

 

 

そして、ゴリラが4人をたった一言で言い争いを止めた事に2人はすごいと思った。

 

 

「ところで親分そこに隠れているのは誰ですか?」

 

 

メガネカイマンに茂みに隠れている2人のことを指摘され、その瞬間茂みは"ガサッ"と音をたてて揺れる。それを見たヒョウとワニ達は2人が隠れている事を確信した。すると、ゴリラは「仕方ない」とこれ以上は隠すことは出来ないと思い、茂みの方に視線を向ける。

 

 

「ほら、2人とも出てこい」

 

 

これ以上隠していたらヒョウとワニの争いにジャイアン達が巻き込まれしまうと、感じ2人には茂みから出てきてもらい4人の警戒を解こうと考えたのだ。

 

 

「親分、其奴らは誰ですか?」

 

 

イリエワニは初めて見るスネ夫とジャイアンを頭から足先までじっと見つめる。

 

 

「こいつらは私の客だ。くれぐれも失礼のないようにしろ」

 

 

彼女は2人を自身の客と4人に説明しておけば、余程のことじゃない限り手を出すことはない思っていた。一方でスネ夫とジャイアンは品定めをするような目で彼女たちに睨まれている事に額に汗をかいていた。

 

 

「そんであんたらはなんて名前なんや?」

 

「あ、どうも僕は骨川スネ夫です」

 

「ホネカワスネオ?」

 

「なんかひょろそう名前やな」

 

「ひょろォーッ!?」

 

自分の名前がヒョロいと言われた事に思わずスネ夫は叫んでしまった。

 

「それでこちらの体の大きいあなたはなんて名前ですか?」

 

 

「おう!俺は剛田武って言いまーす!ジャイアンって呼んでくれ」

 

「ゴウダタケシ?(威勢が良いな)」

 

「なんでしょうか、こちらの方は強そうな名前をしてますね」

 

「そ、そうか?」

 

 

一方ジャイアンはワニ達に自分の名前を褒められた事から照れた顔を浮かべる。

 

 

「親分、この2人は何者ですか?」

 

「あー、実はこの2人はヒトだ」

 

「え?ヒトって前に親分が言っていた体が大きくて、力が強く、怖い顔をしたあのヒトですか?」

 

 

怪しむようにメガネカイマンはジャイアンとスネ夫を見つめ、残りの3人も同じく2人を見つめる。一方、彼女の台詞を聞いてジャイアン達を耳を疑った。

 

 

「なんだ?あいつらヒトを化け物と勘違いしているんじゃないのか?」

 

「そうだよね。と言ってもそんな人って該当するのは精々ジャイアンくらいだもn「んだとぉ!?スネ夫ォ!!!」グエッ!?」

 

 

スネ夫が誤って失言してしまい、ジャイアンに胸倉を掴まれて怒りの形相で睨まれていた。

 

 

「ま、待てタケシ!!!」

 

 

ゴリラはいきなりスネ夫を今にも殴ろうとするジャイアンを止めるように声を出すが、今の彼は怒りが頂点に達し、さらに先ほどゴリラに止められて不完全燃焼だった為、ゴリラの止める声は耳に入らなかった。唯一止める方法は最終兵器(かあちゃん)しかないが、勿論ここにいるはずもなく、スネ夫の運命は決まった。そして、ジャイアンはもう片方の拳を天高く掲げる。それを見たスネ夫は顔を青ざめてお決まりの台詞を吐く。

 

 

「ママァァァァァァァァーーッ!!!!」

 

 

ジャングルちほーにスネ夫の悲鳴が鳴り響いた。

 

 

●●●●●

 

 

「また次に言ったらギッタンギッタンのメッタメッタにしてやるからな!」

 

「も、もう、されてまぁ〜す……」

 

 

スネ夫をボコボコにしたジャイアンはすっかり機嫌を取り戻した。対してスネ夫はジャイアンにツッコミを言うと気絶した。そして、スネ夫に暴力の限りを尽くしたジャイアンの姿を見たゴリラ達の顔は青ざめていた。

 

 

「ほ、ほんまや!アレは間違いないほんまのヒトや!」

 

「あ、アレが親分の言ってたヒト……なんて恐ろし奴や!」

 

「幾らアタイたちでもあそこまでしないのに……」

 

「ヒトは正に親分の言っていた通り怖い生き物だったんですね」

 

 

上からヒョウ、クロヒョウ、イリエワニ、メガネカイマンがジャイアンの恐ろしさを口にすると、ゴリラは4人の呟きを聞いて我に帰ると、慌ててジャイアンに近寄った。

 

 

「た、タケシ!君は本当に何者なんだ!?」

 

「え?いや、だから俺は剛田武、ジャイアンだって」

 

「そうじゃなくて……⁉︎も、もしかして君はさっきまでの行動を見る限りヒトの群れのリーダーをやっていたのか!?」

 

 

彼女はスネ夫に対する接し方が暴力的だが、明らかにジャイアンの方が上でスネ夫は一歩引いた姿勢で会話をしていた事からジャイアンはヒトの群れのリーダーをやっているのではと思っていた。

 

 

「そんな大袈裟な。まぁ、空き地で"ガキ大将"をやっているけどな」

 

「なっ!"たいしょう"だって!?」

 

 

ジャイアンが口にしたガキ大将という言葉を聞いてゴリラは何かに気づくと、数秒間口元に手を当てて考えると、先程の威厳ある顔に戻すとヒョウ達の方に振り返る。

 

 

「お前たちはここで待っていろ。私はこれからタケシさんと話をしてくる」

 

「「「「は、はい!」」」」

 

「へ?…たけしさん?」

 

 

急に彼女がジャイアンをさん付けした事に彼は呆然をなっているのを他所に彼女は地面に横たわるスネ夫を担ぐとジャイアンと共に自身の縄張りに戻った。

 

 

●●●●●

 

 

「突然すまないが、話を聞いてくれ」

 

「は、はい」

 

 

縄張りに戻った2人はまず気絶しているスネ夫をゴリラが寝床として使っている大きな葉っぱのベッドの上に寝かした後、2人は向かい合って座っていた。

 

 

「実はタケシ、君に折り入って頼みがある」

 

 

ゴリラの真剣な眼差しにジャイアンは思わず唾を飲み込む。

 

 

「どうかヒョウ達を喧嘩させないように此処のボスをやってくれないか?」

 

「……は?」

 

 

彼女の発言に思わずジャイアンは耳を疑った。

 

 

「頼む!この通りだ!」

 

 

そう言って彼女はジャイアンに手を合わせて頼み込む、その姿から彼女がどれだけ真剣なのかわかる。

 

 

「ちょ、ちょっと待っててくれ!なんで俺が此処のボスをやんなきゃいけねえんだ?俺じゃなくてゴリラさんがやりゃいいじゃんかよ」

 

「いや、実を言うと私は普段彼奴らには強気な姿勢を見せているが……」

 

 

すると、彼女の腹からギュルルルゥ〜と明らかに腹を空いた時に鳴る音ではなく段々と彼女の顔は青ざめていき全身からは脂汗が出る。

 

 

「ちょ…ちょっと…待ってく、れぇぇぇぇえええええっ!!!!」

 

 

彼女は腹と臀部を抑えながら森の奥へと走っていった。その場に残されたジャイアンは彼女の後ろ姿を見て呆然とする。 そして、しばらくして彼女は戻ってきたが、ジャイアンは彼女の顔を見て思わず「うおっ!?」と驚きの声を上げる。それもそのはず、今の彼女は戻ってくる前と違って若干頬が痩せこけ、ヒョウ達に見せた強者のオーラが微塵も感じなかった。

 

 

「は、話を戻すよ、私は元々親分って呼ばれる程精神は持ち合わせていないんだよぉ〜!」

 

「えええええっ!!!?じゃあ、なんであんたは親分やってんだよ」

 

 

ジャイアンの意見は最もだ。些細な事で腹を壊すくらいストレスが溜まるなら何故わざわざここのリーダーをしているのか聞くと、彼女はその訳を話してくれた。

 

 

「実は元々このジャングルちほーにはトラブルが起きた時に相談に乗ってくれる"ジャガー"がいたんだけど、いつのまにか何処かへ行って、それでジャガーの代わりは誰がやるのか相談しあった結果、みんなが私を指名するんだよ〜!」

 

 

要するに学校で委員会決めでクラスのみんなに面倒な保険委員を押し付けられたようなものだ。

 

 

「だから私はみんなが争わないように強いイメージをリーダーや集団のボスについて学ぼうと勉強したり、へいげんちほーにいるライオンやヘラジカから"たいしょう"や"リーダー"について教わったんだ」

 

「え?ゴリラさんって、ライオンと知り合いなのかよ!?」

 

「まあね、ライオンも私と同じように部下の前では威厳を示すために強気な口調と姿勢をしているけど、私はあの子程の精神はないからすぐお腹を壊して毎日毎日辛いんだ」

 

 

頭を抱えてストレスが溜まる日常があって、彼女はとても辛そうだとジャイアン自身もこれは同情せざる得なかったが、

 

 

「けどよぉ、俺も逸れた友達を探しに行かなきゃ行けねえんだよ。飯を奢ってくれたのは感謝してるけど、此処のボスはやれねぇよ」

 

「そんなぁー!」

 

 

彼女が若干涙目になっている事からそれほど必死に頼んでいることが理解できる。しかし、こちらにも事情がある為ジャイアンはキッパリと断る姿勢を見せる。

 

 

「じゃ、じゃあ!せめて……その友達が見つかるまでの間だけで良い!ボスをやって!1人が嫌なら私と君とで半分半分でいいよ!もちろんタダとは言わないよ。寝床と食料も提供する!」

 

 

しかし、ゴリラも負けじとジャイアンに条件を付けて待遇が良いと説得し続ける。

 

 

「あー、わかった。そこまで言うなら引き受けるよ」

 

「本当に⁉︎ありがとう〜!」

 

 

ついにジャイアンはゴリラの説得に負けて、期間限定だがジャングルちほーでボスを引き受ける事になった。一方でゴリラはジャイアンがボスをやる事を引き受ける事に心の底から喜び、感激の涙を流していた。

 

 

「そのかわり条件があるんだけど聞いてくれるか?」

 

「いいよ、ボスをやってくれるならなんでも聞くよ」

 

 

この先腹を壊さない生活を送れて、尚且つヒョウとワニが争わずに済むならなんでもする彼女はジャイアンの条件を呑むことにした。

 

 

●●●●●

 

 

ヒョウ達4人とゴリラの呼びかけに応じたジャングルちほーに住むフレンズ達の前には大きな切り株にはジャイアンが立っており、その隣にはゴリラが腕を組んで立っていた。因みにその後ろには気絶したスネ夫が横たわっていた。

 

 

「みんな聞いてくれ!突然だが今日から私と共にこのジャングルちほーを治める新たなボスを紹介する!それはヒトのタケシさんだ!」

 

「どーも!俺が剛田武ことジャイアン様だ!今日からここにいるゴリラさんと共にボスをやっていくからよろしくな!」

 

 

新しいボスが加わると聞いて、特にフレンズ達は不満などは持たずジャイアンに向かって「よろしく」や「がんばってね」といった声と拍手を送っていった。

 

 

「そして、ボスになったタケシさんが我々にプレゼントをしたいようだ」

 

「今から俺がお前たちのボスとなった記念に一曲歌ってやるよ」

 

 

そう言うとジャイアンはマイク代わりに手頃な枝を右手で握ってた。

 

 

「歌って事はペパプみたいに歌うんかな?」

 

「ヒトってどんな風に歌うんやろ?」

 

「歌はもともとヒトが作ったて聞いたからな、恐らくとても上手いだろうな」

 

「さすがイリエワニさんの知識ですね」

 

 

ヒョウ姉妹とワニ達はこれから始まるであろう地獄のライブの事を知らず、呑気な事を言っていた。

 

 

「ヒトのライブだって、ミナミコアリクイちゃん楽しみだねー?」

 

「うん、どんな歌を歌ってくれるんだろぉ?」

 

 

彼女達も同様にジャイアンの歌を楽しみにしていた。そして、地獄のショー(ジャイアンリサイタル)の時間がやってきた。

 

 

「それじゃあ、いくぜぇぇぇぇえっ!!!!」

 

 

ジャイアンは大きく息を吸うと手に握っているマイク代わりの枝を口元に寄せる。

 

 

「ボエェェェェェェエエエエエエエエエエッ!!!!」

 

 

「「「「「ギャァァァァァァァァァァァ!!!!」」」」」

 

 

ジャイアンに至近距離にいたゴリラ達は彼の強烈な音痴の歌を聴いて悲鳴をあげながらその場で倒れてもがき苦しんだ。

 

 

「ぎゃぁぁあああああああ!!!?」

 

 

そして、タイミング悪くスネ夫が目を覚ましてしまい、ジャングルちほーに住むフレンズ達と共に地獄のリサイタルを味わう羽目になってしまったのだった。ドラえもん達が此処に訪れるまではジャイアンによる支配が続き、ゴリラ達はけものを操る方法を身をもって知ったのだった。(違う)



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本編
プロローグ


東京都練馬区月見台すすきが原、その地域にある一件の住宅地に何時もの様に眼鏡をかけた少年が居候のロボットである彼の名を泣きながら叫んだ。

 

「ドラえも〜ん!!!」

 

「どうしたんだいのび太君?」

 

野比のび太(眼鏡の少年)の名を呼んだ未来からやって来た猫型ロボットのドラえもんは特に慌てる様子なく、手慣れた様にのび太に泣いている訳を聞く。

 

「スネ夫がまた僕を除け者にしたんだ!」

 

「またか、それで今度は何に除け者されたんだ?」

 

「今度世界中の動物達が集まってる動物園に行くって、言うんだ!」

 

「世界中の?それは普通の動物園じゃないの?」

 

グスグスと泣きながら、眼鏡を下から涙を流す彼の言葉にどうせいつもの事だろうと考えながら"一応"耳を傾ける。

 

「違うんだ!その動物園は絶滅危惧種の動物がいくつも居るんだ」

 

「ふーーん、そりゃ凄いね」

 

興味なさそうに返事をしながら漫画の続きを読み始めるが、のび太が抱きついてきた。

 

「そうなんだ!だから僕も連れて行ってよ〜!」

 

「また無茶な事をだけど、動物園なんて未来の方がよっぽど凄いのがあるよ」

 

「本当に?」

 

「うん、最近出来たばかりなんだけど其処は世界中の動物が生きられる環境になっているんだ。しかも絶滅した動物も最先端の技術で蘇らせているんだ」

 

「すっごーい!ねぇ、なら早くその動物園に連れて行ってよ!」

 

「落ち着いてのび太君。確かにその動物園は凄いけど、その動物園に行けるのは抽選式になっているんだ。仮に応募しても当たる確率は砂漠の中から米粒を探し出すのと同じなんだぞ」

 

「ええ〜ッ!?そんなぁ……」

 

「まっ、早々に諦めるんだね」

 

「そこをなんとかしてよぉ〜!」

 

「動物見たいなら、図鑑とかテレビとかあるでしょ」

 

「僕は本物が見たいの〜〜〜!」

 

 

グラグラと青のボディを揺らすのび太に呆れつつも、これ以上言わせたら何をしでかすか分かったものでは無いドラえもんは溜息を吐き、腹部にある白のポケットの中へ手を入れた。

 

「まぁ、取り敢えずあまり期待しない方が良いよ」

 

落ち込む彼に気の毒に思ったドラえもんはなんとか抽選に当たろうと思い、お腹に付いている四次元ポケットからハガキを5枚取り出した。

 

「応募用のハガキはたったの5枚しかないけど、1枚当たるだけで最大5人まで連れて行けるからね」

 

「5人か〜、当たったらしずかちゃんも誘おう」

 

「スネ夫とジャイアンはどうする?」

 

「スネ夫とジャイアンは僕を除け者にしたんだから絶対誘わないよ!」

 

「はいはい(これはまた何時ものパターンだ)」

 

ドラえもんは過去に何回ものび太が冒険へ行く時必ずジャイアンとスネ夫が強引で着いて来ていた事がある為、今回もそうなるんだろうなと思いながら応募ハガキを5枚書くと、机の引き出しを開いた。

 

「あれ?何処に行くの」

 

「このハガキは22世紀の郵便ポストに入れてくるよ。それまでちょっと待っててね」

 

「うん、わかった。気をつけてね」

 

 

ドラえもんは引き出しの中へ入っていった。それからのび太はが彼が早く帰ってこないかと待ちわびた。暫くするとドラえもんは引き出しから出てくる。

 

 

「ど、どうだったドラえもん⁉︎」

 

「さぁ、わかんないよ。結果なんてすぐ来る訳じゃないから早くても明日か明後日ぐらいだよ」

 

結果が待ち遠しいのび太はドラえもんに当たったか聞くが、まだ送ったばかりで結果は来ていないと告げる。それを聞いたのび太は一瞬がっかりするが、

 

「ん?ドラえもん引き出しがなんか光っているよ」

 

「へ?」

 

目を向けた先には引き出しの隙間から溢れんばかりの七色の光が漏れ出している光景だった。ドラえもんが恐る恐る引き出しの取っ手に触れようとした瞬間。

 

 

「うわぁ!な、なんだこれは!?」

 

二人の視界が埋め尽くされる程のキラキラと輝く結晶が引き出しの中から幻想的に現れたのだ。するとのび太は足元に何か紙切れのような物を拾い上げる。結晶の中に紛れていたのは先ほど話していた動物園のチケットらしき物であった

 

 

「こ、これはまさか………!」

 

 

思わず目を疑ってしまい何度も目をこすった確認したが、その紙にはパークチケットと書かれてあった。

 

「動物園のチケットだぁーーっ!」

 

それは先ほど話していた動物園のチケットである。のび太はその場で"やったー"と連呼しながら喜ぶ。一方、ドラえもんはそんなのび太と反対に喜ばず、チケットに疑心の目を向ける。

 

 

「そんな馬鹿な、いくらなんでも結果が出るのが早すぎる。しかも抽選に当たるなんて……」

 

 

当選した場合には事前に連絡が届く、または配達ロボットがチケットを渡す等があるのが普通だ。ドラえもんはチケットと共に引き出しから出てきた謎の結晶に胡散臭さを感じた。

 

「のび太君、行くのはもうちょっと待ってくれないかな?」

 

「え?どうして……」

 

「ひょっとしたら、これは何かの間違いで動物園側のミスかもしれないからもう一度22世紀に行って確かめてくるよ」

 

「そんな事しなくてもいいじゃない!これはきっと僕の日頃の行いが良かったからに違いないよ!」

 

「日頃の行い?」

 

チケットが当たったは日頃の行いと言い切るのび太にドラえもんは思わず目を細くした。今までドラえもんはのび太の日常の行動を見てきたが、遅刻に宿題忘れや他にも授業中の居眠りにテストで0点を多く取っている。それが当たり前のような日々の何処が行いがいいのかと口では言わず、心の中で思っていた。

 

「(まぁ、危なくなったらすぐに帰ればいいか)わかった。そこまで言うなら行こうか、ただし3日後に行こう。その間夏休みの宿題を出来るだけやっておいてよ」

 

「わかってるわかってる」

 

 

……それから3日後。

ドラえもんの眼前にはいつもと同じメンバーの面々が揃った光景が広がっていた。

 

 

「まぁ、こうなる事は予想していたよ」

 

「とほほ〜……」

 

「大丈夫のび太さん?」

 

「流石心の友だ!」

 

「やっぱり持つべきものは友だよね!」

 

 

折角しずかちゃんが誘いに乗ってくれたのに其処へタイミングよくあらわれたジャイアン達に自分たちも連れて行けと2人の気迫に負けてしまい、仕方なくジャイアンとスネ夫を連れてきたのび太は落ち込む。隣にいるしずかちゃんはのび太を励ます。

そして、肝心の2人はにっこりと笑みを浮かべていた。

 

「それにしてものび太水くさいじゃないか、そんな楽しい動物園に俺たちを誘い忘れるなんて」

 

「ほんとそうだよね。僕らはいつも一緒運命共同体なんだよ」

 

「よく言うよ。この間は僕を除け者にしてしずかちゃんと一緒に動物園に行こうとしたじゃないか?」

 

「まぁ、それはこれであいこって事にしとこうぜ」

 

ジャイアンはそう言ってのび太の肩を叩いた。

 

「まぁ、いいじゃない。実は僕も動物園は楽しみにしていたんだよ……ん?」

 

(あれ?これから行く動物園のチケットにこんな変なマークなんて書かれていたっけ?)

 

ドラえもんは動物園のチケットを見てみると、所々これから行く先の動物園のチケットと酷似しているが、全く別物だと気付く。

 

(何かおかしいぞ。このチケットは応募した動物園のチケットじゃないぞ)

 

「どうしたのドラえもん?」

 

神妙な顔をしてチケットを睨んでいたドラえもんに不審に思ったのび太は彼に話しかける。

 

「あ、いや、このチケットなんだけど今日はやっぱり行くのやめようかなって、グエッ⁉︎」

 

瞬間、ジャイアンの表情が一変しドラえもんの胸ぐらを掴み上げる。次第にドラえもんの顔は青ざめていく。

 

「なにぃ〜〜ッ?ドラえもんここまで来て俺たちの楽しみを無駄にする気か!?」

 

「ぐ、ぐるじぃ」

 

「そうだそうだ!せっかく僕が動物園を行くのを取りやめてやったんだ!此処で行かないなんて許さないぞ!」

 

ジャイアンとスネ夫は元々はこれから動物園に行く予定だったが、のび太の話を聞いて未来の動物園がもっと凄そうだった為急遽動物園にいくのを取りやめてのび太に無理矢理来付いて着ているのだ。その為、2人の発言は理不尽極まりない。

 

「わ、わかった!わかったから放して……!」

 

だが、ドラえもんは首を絞められ窒息しかけていて耐えきれずジャイアンの言う事を聞き、未来の動物園に行く事にした。

 

「そうか、やっぱりさっきのは冗談だったよな」

 

ドラえもんの言葉を聞いてジャイアンはにっこりと笑みを浮かべて、彼を丁寧に床に下ろす。それからドラえもんはあまり気が進まないが、荷物の最終確認を行った。

 

 

「それじゃあ、いざ動物園に出っぱーつ!」

 

「「「「おおーーっ!!!」」」」

 

5人はのび太の机の引き出しを開くと、すぐ真下にある絨毯型の乗り物(タイムマシン)に乗り込み、ドラえもんは操縦席に座り操縦桿を引き、タイムマシンを起動させた。

 

 

「じゃあ、後はタイムマシンにこのチケットのナンバーを打ち込むだけだ」

 

ドラえもんはそう言うとチケットに書かれている数字をタイムマシンに打ち込むと、突如、タイムマシンから変なブザー音が鳴り出した。

 

 

「うわっ!?何ッ?一体何が起きたの⁉︎」

 

「ど、ドラえもん何か様子がおかしくない!?」

 

「これって大丈夫なのかしら?」

 

「おいドラえもん!この変な音を早く消せよ!」

 

タイムマシンから鳴る聞きなれないブザー音に困惑の表情を見せるジャイアンとスネ夫としずかとのび太はドラえもんに早く止める様に言う。

 

「そ、そんな事言ったって、僕だってこんなことは初めてなんだ!」

 

必死にドラえもんはブザー音を止めようとタイムマシンの装置を弄るが、一向に音は止まる気配を見せない。

 

『目標地点ジャパリパ-ク。コレヨリ直チニ出発致シマス。シ-トベルトヲ締メテ衝撃ニ備エテクダサイ』

 

すると、タイムマシンから音声が鳴るとタイムマシンは激しく揺れ出した。

 

「い、今衝撃に備えてって言ったよ!」

 

「てことはこれから猛スピードで動くって事?」

 

「み、みんなぁ!何かに捕まって!そうしないとタイムマシンから振り落とされちゃうよ!!!」

 

全員はドラえもんの座るシートをしっかり離さないように握ると、タイムマシンはものすごい速さで動き出した。

 

 

「「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」」」」」

 

タイムマシンから振り落とされないように全員は必死にしがみつきながら時空間の中を飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやら、チケットは無事届いたようだ」

 

「ええ、我々は待っていた。ジャパリパークを救ってくれる希望を……」

 

 

●●●●●

 

「……う〜ん……あ、あれ?」

 

瞼をゆっくりと日差しが目に差し込み、思わず欠伸をして上体を起こして周囲を見渡す。視界には風で生い茂る草原が広がっていた。

 

「僕は……そうだ!暴走したタイムマシンに乗っていたらいつのまにか気絶しちゃっていたんだ!」

 

 

ハッと漸く自分の今の状況を飲み込めたドラえもんは立ち上がると、一緒に乗ってきたのび太達がいない事に気付き周囲を見渡しながら彼等の名を呼ぶ。

 

 

「おーい!のび太くーん!しずかちゃーん!スネ夫ー!ジャイアーン!」

 

 

大きな声で彼等の名前を呼ぶドラえもんだが、彼等の声は返ってこなかった。

 

 

「参ったな、此処がどういうところかまだわからないのにみんなバラバラになっちゃった」

 

兎に角なんとかみんなを探し出そうとポケットの中に手を入れて、道具を取り出そうとするが、

 

 

ガサガサ!

 

「え?」

 

すぐ近くの茂みが揺れる音に気が付き反射的に振り返る。仮に此処が目的地の動物園なら出てくるのは動物か又は此処の関係者そしてのび太達かもしれない。ドラえもんはそう考えるが、もしも出て来るのが危険な動物かもしれない。そう思ったドラえもんはポケットから袋に入った団子(桃太郎印のきびだんご)を取り出す。

 

そして、茂みからは黄色く先っちょの黒い耳がピョコっと現れる。

 

(あの耳はサーバルキャット。だけど、サーバルキャットってあんなにデカかったけ?)

 

ドラえもんの知識は豊富だが、目の前の茂みに隠れているのは仮にサーバルキャットだったとしても耳が大きすぎる為、確信出来ない。そして、その茂みから謎の耳の正体が出てくる。

 

 

「お、女の子?」

 

そこに居たのは頭から耳を生やした少女だ。ドラえもんは思わず目を丸くする。一方、少女はドラえもんの姿を暫く見ると、にっこりと笑顔を見せて近づいてくる。

 

 

「はじめまして、私はサーバルキャットのサーバル。あなた何のフレンズ?何処から来たの?」

 

「へ?……フレンズ?」

 

ドラえもんは突然少女が自己紹介をしたかと思えば、そのあとに言った聞いたことのない単語に思わず首を傾げた。

 

 

「フレンズっていうのはよくわからないけど、僕ドラえもんです。君は此処に住んでいる人なの?」

 

「うん、ここはさばんなちほーだよ」

 

「サバンナ⁉︎ということは此処はアフリカなのかな?」

 

「あふりか?……わかんないや」

 

 

彼女の性格に少々調子が狂うドラえもんだが、此処はさばんなちほーという所は理解出来たが、今いる場所はなんのサバンナと呼ばれる場所なのか聞こうとするが、

 

 

「あ!そうだった。私急がなきゃ!」

 

「え、何処に行くの?」

 

慌ててその場から走り去ろうとした彼女にどうしたのかと聞くと彼女は答える。

 

「さっき、ロバにカラカルがセルリアンに襲われているって聞いて今助けに行くところなの」

 

「セルリアン?」

 

 

またも出てきた知らない単語にドラえもんは首を傾げる。彼はそれはなんなのかと彼女に聞こうとするが、

 

 

「それじゃあ私行くね。バイバイ、ドラえもんちゃん!」

 

「あっ、ちょっと待っ!……行っちゃった……」

 

 

サーバルはドラえもんが話しかける前にもう遠くへ走って行ってしまった。その場に残されたドラえもんはこれからどうするか考える。

 

 

「……とりあえず今はあの子について行ってみよう」

 

 

周囲にサーバル以外の人の気配はない為、彼女についていこうとしたが、彼女の足は速く、自分の速さじゃ見失うと悟るドラえもんはポケットからタケコプターを取り出すと頭に付け、空を飛んで彼女の後を追いかける。

暫く飛んでいると、森の中にサーバルと彼女に似た耳と服を着た少女と帽子を被った少女を見つける。

 

「あれはなんだ?」

 

彼女達の目の前には巨大なカメラの様な一つ目の化け物が立っていた。

 

 

「ひょっとしてあれがサーバルちゃんの言っていたセルリアン?」

 

 

先ほど彼女との会話に出てきたセルリアンが今目の前にいるモンスターであるなら納得いく。そして、考えている間そのセルリアンはサーバル達に襲いかかった。

 

 

「危ない!」

 

 

ドラえもんは丸腰の彼女達を助けようとポケットから道具を取り出そうとするが、彼女達はオリンピック選手顔負けの運動神経でセルリアンの攻撃を避け、サーバルは人間ではありえないほど高く飛び上がり、セルリアンの真上から右手を叩きつける。すると、セルリアンの体はバラバラに吹き飛んだ。

 

 

「あがっ!?」

 

 

思わず信じられない光景を見てドラえもんは顎が外れるくらい口を大きく開けて呆然となる。しかし、そんな呑気にしている場合ではなかった。帽子を被った少女の後ろに先ほどサーバルが倒したセルリアンと同じ種類のものが近づいている事に気付きドラえもんはサーバル達の方を見るが、彼女達は先ほどセルリアンを倒したばかりに油断をして、もう一体のセルリアンの存在に気づいていなかった。

セルリアンは三脚の様な足を帽子の少女に向かって振り上げる。その少女も漸くセルリアンの存在に気付き悲鳴をあげ、サーバル達はその少女の悲鳴を聞いてもう一体のセルリアンの存在に気がつく。

 

 

「もう一体いたなんて!?」

 

「危ない!」

 

 

彼女達はその少女を助けようとセルリアンに向かって走るが、セルリアンの方が速く動き帽子の少女に向かって足を振り下ろす。

 

 

「た、助けてぇぇぇぇぇぇええっ!!!」

 

 

帽子の少女は声を上げて助けを求める。その瞬間、セルリアンの攻撃により地面は抉れ、砂煙が舞う。サーバル達はそんな光景を見て思わず絶望感に包まれるものの、サーバルの耳が動きだす。

 

 

「あれ、あの音は?」

 

 

サーバルは音のした所を振り向くと、其処には先ほどセルリアンの攻撃にやられたかと思っていた少女とその少女を抱えながら空を飛ぶドラえもんの姿があった。

 

 

「大丈夫?」

 

「へ?……う、わわわわっ!ぼ、僕飛んでいる!?」

 

「ちょっ!暴れないで!」

 

 

帽子の少女は自身が空を飛んでいる事に状況が飲み込めず体を揺らした。

 

 

「ドラえもんちゃん!」

 

「なにあれ⁉︎」

 

 

サーバル達は空を飛んでいるドラえもんに一瞬驚くが、帽子の少女が無事だと分かるとホッとする。

ドラえもんはセルリアンから少し距離が離れたところに少女を降ろすと地面にぺたりと座る。どうやら先ほどのセルリアンの攻撃と空を飛ぶという体験をして腰が抜けてしまった様だ。

 

 

「大丈夫?怪我していない」

 

「ぼ、僕は大丈夫……」

 

「そう、それは良かった」

 

 

少女は怪我をしてないと分かるとドラえもんは安心する。が、其処へ先ほど少女に襲いかかったセルリアンがこちらにやってくる。

 

 

「ま、また来た!」

 

「ドラえもんちゃん逃げて!」

 

 

先ほど襲われたことがトラウマになってしまった少女は涙目になってセルリアンに怯える。サーバル達もドラえもん達に先ほどの様に空へ飛んで逃げる様に言うが、ドラえもんは少女の頭をそっと優しく撫でる。

 

 

「え?」

 

「大丈夫、安心して」

 

 

ドラえもんはそう言うとセルリアンの方に向き、ポケットの中に手を入れると其処から懐中電灯の様な道具を取り出す。

 

 

「スモールライト!」

 

そう叫びながらスモールライトのボタンを押すと、セルリアンに光が当たる。すると、みるみる小さくなっていき最終的には10cm程の大きさになり、ドラえもん達を見上げる。

 

 

「………」

 

「………」

 

 

その場にいた少女達は突然の出来事に目を見開いた。先程まで大きく凶暴なセルリアンが自分達の身長の半分も満たない大きさになるという現象に驚く。

そして、セルリアンは自分がドラえもんより小さくなった事が分かるとそそくさにその場から逃げようとする。

 

 

「逃がすわけないじゃない!」

 

 

たが、サーバルと一緒にいた少女がセルリアンに向かって飛び、その勢いで拳を叩きつけてバラバラにする。

 

 

「ありがとう」

 

「あ、いや、此方こそ」

 

 

セルリアンを小さくした張本人であるドラえもんに御礼を言われる彼女は少し複雑な気持ちになりながらも素直にお礼の言葉を受け取る。一方、サーバルと帽子の少女は未だにぽかーんと呆然になっており、そんな彼女達の姿を見た彼女は呆れて溜め息を吐き、サーバルに近づく。

 

 

「いつまで棒立ちしているのよサーバル」

 

彼女はサーバルの名前を呼びながら肩を揺らすと、漸く意識が戻りドラえもんに視線を移す。

 

 

「すっごーーい!何あれ!何あれ!セルリアンを小さくしたよ!!!それにドラえもんちゃん空も飛んでいたよ!!!あっ!ひょっとしてドラえもんちゃんは鳥のフレンズ?」

 

「ちょっ!サーバルちゃん⁉︎」

 

純粋な子供の様に目を輝かせながら質問攻めしてくるサーバルにドラえもんは思わず困惑の表情をするが、耳の生えた少女がサーバルを後ろから羽交い締めしてドラえもんから引き剥がす。

 

 

「サーバル近づき過ぎよ!そのドラえもん?も驚いているわよ」

 

「あ、ごめんね。つい凄かったから」

 

 

サーバルも流石にやり過ぎたと反省をする。対してドラえもんは別に気にしてないと言う。

 

 

「ところで君は?」

 

「私?私はカラカルよ」

 

「一応知っていると思うけど、僕ドラえもんです」

 

 

サーバルと同じ格好をした少女カラカルは自己紹介を行う。一方、ドラえもんも改めて自己紹介を行った。そして、サーバルは帽子の少女と目が合い近寄る。

 

 

「こんにちは!私はサーバル!あなたは何のフレンズ?」

 

「あの…えっと…その…」

 

 

いきなり話しかけられた事から驚いてしまい、なんて答えれば良いのかわからないようだ。それに気付いたドラえもんは帽子の少女に近づく。

 

 

「落ち着いて深呼吸をするんだ。自分のペースで話してごらん」

 

「あ、う、うん」

 

 

ドラえもんのアドバイスを聞いて深呼吸を2、3回繰り返すと気分が落ち着き緊張がほぐれたようだ。その様子を見ていたカラカルはドラえもんの行動に関心を覚えた。

 

 

「えっと、ぼ、僕の名前はわ、わかりません。その、フレンズ?というのもなんなのか……」

 

 

どうやら帽子の少女は自分の名前がわからないようだ。そんな少女にドラえもんは少し困った表情を浮かべながら話す。

 

 

「何処から来たのもわからないの?」

 

「わ、わかりません」

 

「そっか…」

 

 

結論からしてドラえもんはこの少女は記憶喪失しているとわかり、行く宛もなくここら辺を歩き回っていたところ先セルリアンに襲われた事がよほど怖かったのだろうと思っていた。そんなドラえもんを他所にサーバルは帽子の少女を見つめて何かを考えている。

 

 

「う〜ん」

 

「どうしたのサーバル?」

 

「いや、前にもこういう自分の事がわからない子と話した事があった気がするんだ」

 

「それって、前に言ってたヒトのフレンズの事?」

 

「うん、でもその時の事はうまく思い出せないんだけどね」

 

「ねぇ、カラカルちゃんは僕とサーバルちゃんが来る前に会っていたの?」

 

「会ったのはセルリアンに襲われる直前よ。その子ここら辺をウロチョロと歩き回っていたからセルリアンに襲われるわよって忠告しようとしたら、丁度セルリアンに襲われたの」

 

「そっか」

 

 

てっきり、カラカルはこの少女について何か知っているのかと思ったドラえもんは的が外れてどうしようかと悩んでいると、

 

 

「ねぇねぇ!この子の名前を決めるのはどうかな?」

 

「「へ?」」

 

「僕の名前?」

 

「確かに名前がないとなんて呼んだらいいかわからないわよね」

 

 

その時少女のお腹からきゅるるる〜と音を鳴り、顔は段々と赤く染まっていく。どうやらお腹を空かしているようだ。

瞬間、サーバルは何かを閃く。

 

 

「わかった!あなたの名前はキュルルちゃんね」

 

「へ?」

 

「だって今きゅるる〜って!」

 

「いや、それはただお腹が空いたから音を鳴らせちゃっただけだと思うんだけど」

 

「よろしくねキュルルちゃん!」

 

「あ…えと…よ…よろしく」

 

(受け入れた⁉︎)

 

 

安直過ぎる名前に思わずカラカルは困惑の表情を見せるが、肝心の本人が受け入れた為、何も言えなかった。

 

 

「ま、まぁ、今は仮の名前って事で良いんじゃないかな?」

 

「そ、そうね」

 

 

ドラえもんの指摘にカラカルは納得する。これはあくまでも本当の名前が思い出すまでの仮の名だ。今はキュルルの名前でもいいかと思うのだった。

 

 

「そうだ。私たちもお腹が空いているからロバのところに行こう。あそこなら何でもあるから」

 

「そうね」

 

 

サーバルの提案に賛成したカラカルはドラえもんの方に向いて手招きをする。

 

 

「ほら、アンタも来なさいよ」

 

「え、僕もいいの?」

 

「勿論だよ。だって、キュルルちゃんを助けてくれたしね」

 

「それにアンタがまだなんのフレンズか聞いていないしね」

 

 

サーバルとカラカルは先ほどのお礼を兼ねて話をしたいようだ。キュルルもコクリと頷いている。ドラえもんは少し頭を俯かせて考える。この先で今いるところががどういう所なのか、それとのび太達が今いる場所について情報が手に入れられるかもしれない。

 

 

「じゃあ、お言葉に甘えるよ」

 

そう思ったドラえもんは彼女達の誘いを受ける。そして、サーバルは「あっ」と声を漏らし、ドラえもんとキュルルにある事を聞く。

 

 

「そういえばキュルルちゃんとドラえもんちゃんはどんなものを食べるの?」

 

「ごはん?」

 

「僕は特に好き嫌いはないよ」

 

「ぼ、僕も何でも食べるよ!」

 

 

2人は素直に答えると、サーバルはニヤリと悪巧みを思いついた子供のような顔をする。

 

 

「なんでも〜?てことはもしかして〜」

 

「へ?」

 

サーバルの深みのある言葉にキュルルはキョトンとするが、何かを察したカラカルは目を細くしてサーバルを見つめると、

 

 

「キャーッ‼︎食べないでーー!」

 

「た、食べないよ〜!」

 

 

サーバルの悪ふざけに間に受けたキュルルは否定しながら彼女を追いかける。その様子を見たカラカルは呆れた表情をする。ドラえもんはカラカルとは違って2人が楽しそうだと思っている。

 

 

「うふふふ、面白い子達だ(それにしてものび太君達はどうしているんだろう?無事だと良いんだけど……)」

 

 

何処かにいるのび太達の安全を祈るドラえもんはサーバル達の後を追いかけていった。

 

 

●●●●●

 

 

その頃、ドラえもん達と同じように離れ離れになってしまったのび太はサバンナちほーとは別の森の中に倒れていた。しばらくすると手がピクリと動き出す。

 

 

「う、うーん」

 

 

のび太はゆっくりと瞼が開く一瞬視界がぼやけて見えるが、次第に目が慣れていき視界に映る緑生い茂る木々がハッキリと見えてくる。

状況をあまり把握できていないのび太は周囲を見渡す。

 

 

「此処は……何処だろう?……ねぇドラえもん」

 

 

のび太は隣にいてくれる彼に話しかけるが、そこにはドラえもんや一緒に来たしずか達の姿が何処にも見当たらなかった。

 

 

「あれ?ド、ドラえもん⁉︎何処にいったの?それにみんなは?」

 

 

あたりを見渡しながら彼等を探すが、何処にも見当たらなかった。

 

 

「みんな何処に行ったんだよぉ〜!」

 

 

誰も見つからず一人ぼっちなのび太はべそをかきながら、行くあてもなく森の中を歩き回っていると、

 

 

ガサガサ

 

「な、なにっ?」

 

 

すると、すぐ近くにあった茂みが揺れ、のび太は恐る恐るその茂みに近く。

 

 

ガサガサガサガサッ

 

「うわぁぁぁ〜〜〜〜〜〜ッ!?」

 

 

先ほどよりも茂みは大きく激しく揺れ、のび太は思わず大きな悲鳴を上げてその場で身を丸くして、ガタガタと震える。しかし、一向に何もやってこないことから何かおかしい事に気付き、ゆっくりと瞼を開けると、其処には頭に犬のような耳と尻尾の生えた全身灰色の服を着た少女がキョトンとした顔でのび太を見つめていた。

 

 

「き、君は一体?」

 

 

目の前にいる犬の様な少女にのび太も驚いた。少女はのび太の声を聞いてハッとなり次第に表情は笑顔になっていく。

 

 

「あ、あい……」

 

「あい?」

 

 

ボソリと呟いた声にのび太は首を傾げると、

 

 

「会いたかったぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」

 

「え、うわぁぁぁぁぁあああ!?」

 

 

そこから思いっきりのび太に向かって飛び跳ねてそのまま抱きついた。そこから少女はのび太の服に顔を擦り擦りとあてながら匂いを嗅ぎだす。

 

 

「くんくん、懐かしいな〜この匂い」

 

「あ、ははは、ちょ、ちょっとくすぐったいよ〜」

 

 

そう言っているものの顔を赤くして鼻の下を伸ばして嬉しそうな表情をする。下心丸出しなのび太であった。だが、すぐに我に返ると改めて彼女の面と向き合う。

 

 

「ちょ、ちょっと待って!君は一体……?それと、此処はどこなの?」

 

「? 此処ですか、此処は─────」

 

 

 

●●●●●

 

 

その頃、また別の場所ではしずかはライブ会場みたいな場所の近くで眼鏡をかけたネコ耳を生やした女性と会話をしていた。

 

 

「大丈夫ですか?」

 

「ええ、あ、ありがとうございます」

 

「別に大丈夫ですよ、それにしてもいきなりコウテイさんが気絶した貴女を背負ってくるなんて羨まっ、ゴホッゴホン!…なんて驚きましたよ」

 

 

一瞬何やら下心を剥き出した女性だが、しずかちゃんに気づかれないよう咳払いをしてごまかす。

 

 

「そ、そうなんですか……ところで、私以外に人は見ませんでしたか?」

 

「え?"ヒト"なら心当たりがありますが………」

 

 

すると、眼鏡をかけた人物はジッとしずかの顔を見つめる。

 

 

「ど、どうしたんですか?」

 

「………貴女アイドルに興味ありませんか?」

 

「あ、アイドル!?ちょ、ちょっと待ってください。その前に聞かせて?」

 

「はい、何でしょうか?」

 

「えっと……此処ってどこなんですか?」

 

「何処って、それは勿論───」

 

 

 

●●●●●

 

 

「なぁスネ夫、ここって本当に動物園なのか?」

 

「ドラえもんが世界中の動物が生きられる環境になっているって言っていたから、ジャングルじゃない?」

 

 

スネ夫とジャイアンは運良く同じところにいて、共にジャングルの中を歩き回っている。

 

 

「そうなのか?まぁ、良いや!せっかくだからライオンとかゾウとか強そうな動物でも見に行こうぜ」

 

「ええ!?待ってよジャイアン!ドラえもん達が来るまで待っていようよ〜!」

 

あまり人気がないジャングルの中もし猛獣と出くわしたらどうしようと怯えながらジャイアンにドラえもん達を待とうというが、自信満々なジャイアンは右腕を出して力をアピールする。

 

 

「大丈夫だ、どんな動物が現れたってこのジャイアン様の敵じゃない!」

 

「調子のいい事言っちゃって、もぉ〜……」

 

 

怖いもの知らずのジャイアンに溜息を吐いていると、

 

 

ガサガサ

 

2人の近くの草木の陰から物音が鳴る。それを聞いた2人は思わず音が鳴った方向にゆっくりと首を向ける。

 

 

「なっ、なんだ?誰か居るのか!?」

 

「ど、ドラえもんなの?それともしずかちゃん?の、のび太なんだろ、どうせ僕達を脅かそうって魂胆なんだろ!?……何か言ってよねぇ!!」

 

 

スネ夫とジャイアンは強気に言うが、それはもはや強がりに過ぎなかった。2人は互いに身を寄せ合っている。すると、草木から何かがジャイアンとスネ夫に向かって飛び出した。

 

 

「ママァーーーッ!!!」

 

「母ちゃーーん!!!」

 

 

2人は思わず目をつぶり悲鳴をあげる。だが、

 

 

「お前たちは誰だ?」

 

 

2人は話かけられた声を聞いて恐る恐る目を開くと、そこには黒いニット帽を被ったタンクトップ姿の女性が立っていた。2人は目の前にいるのが猛獣ではないと分かると大きく息を吐いて全身の力を抜く。

 

 

「な、なんだ人かぁ〜」

 

「びっくりしたぜ。てっきりライオンかと思ったのによ〜」

 

「ライオン?ライオンは此処にはいないぞ」

 

 

女性はジャイアンが言った事に返事をすると、目を細くして2人の顔を見つめる。

 

 

「それよりもお前達は何者だ?ここら辺では見ない顔だが」

 

 

見たことない2人を見て警戒をする女性を見てスネ夫はジャイアンに自己紹介をしようと提案をする。ジャイアンもスネ夫の提案に即賛成した。だが、よく見てみるとジャイアンの額からは汗が一滴流れる。

 

 

「(気の所為かどっかで感じた事あるんだよなこの感覚)俺は剛田たけし。ジャイアンとよんでくれ」

 

「僕は骨川スネ夫」

 

 

2人は自己紹介をすると女性は首を傾げながら2人の名前を復唱して考え事をする。

 

 

「ゴウダタケシ?ホネカワスネオ?そんな名前したけものなんていたか?」

 

「けもの?何言ってんだ俺たちは人だぜ?」

 

「人⁉︎お前たちが……」

 

 

女性はジャイアン達が人だと言う事に驚きの表情を見せるが、すぐに表情を戻し2人の体全体を見た。

 

 

「……わたしの知る人には全く似ていないな」

 

(私の知る人には似ていない?それってどう言う事だ?)

 

 

彼女の会話を聞いてスネ夫は何か違和感を感じた。

 

 

「それにしてもあんたはいったい誰なんだ?」

 

「私か?私はゴリラだが」

 

「ゴ、ゴリラだぁ!?」

 

 

自らゴリラと名乗る女性に面食らった表情を見せるジャイアンとスネ夫の二人。その内片方のスネ夫はうーんと何かを考えた素ぶりを見せる。

 

 

「ゴリラ?変わった名前、まるでジャイアンのあだ名みたい……」

 

「んだとぉ!?スネ夫ッ!!!もういっぺん言ってみろ!!!」

 

「じょ、冗談だからその拳を納めてよ!」

 

 

スネ夫がつい言ってしまった台詞を聞いてジャイアンは怒りが湧き上がって思わずスネ夫を殴ろうと右腕を振り上げながら怒鳴る。スネ夫はなんとか殴られないようにジャイアンを宥めていると、

 

 

「喧嘩は良くない!今すぐやめろ!」

 

「は、はい!」

 

 

ゴリラはジャイアンに止めるように言うと、思わずジャイアンは兵士のように返事をして拳を納めた。それを見たスネ夫は信じられないと言わんばかり表情をする。

 

 

「あのジャイアンが拳を納めるなんて……」

 

「う、うるせぇやい!女の人は殴らないのは当たり前だろう!」

 

「もー、強がり言っちゃってさ……」

 

 

拳を納めたジャイアン自身も何故か体が勝手に動いた自分自身に驚いていた。だが、すぐその後ゴリラは顔を青ざめて地面に膝をつく。

 

 

「ぐぅ…」

 

「あ、お、おい。あんた大丈夫か⁉︎」

 

 

スネ夫とジャイアンは彼女の身の心配をするが、彼女はなんとか立ち上がり左手で腹を押さえながら右手をジャイアン達に突き出した。

 

 

「し、心配するな、は、腹が痛いだけだ」

 

「なんだ〜、びっくりした」

 

「うん、てっきり俺は何処か怪我したのかと思ったんだけどな」

 

 

2人は彼女がただの腹痛だと分かるとホッと一安心する。すると、その時、彼等のお腹の音が鳴り響く。それを聞いた彼女は思わず笑い声をあげる。

 

 

「ハハッ、お前たちは腹を空かしているのか?私はこれから昼食を食べに行くのだが、良かったら一緒に食べないか?」

 

「いいのか⁉︎丁度俺たち朝飯も食っていなかったから腹ペコだったんだ」

 

「うーん、じゃあ、僕もお言葉に甘えようかな」

 

 

2人は彼女が食事をご馳走してくれると聞いて、目を輝かせた。

 

 

「よし、なら私の縄張りはこっちだ。付いて来い」

 

「お、おう!ところでよ。此処ってどこなんだ?」

 

「此処か?此処はな────」

 

 

 

 

 

 

「「「ジャパリパークです(だ)!」」」




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第1話 しゅっぱつしんこー!



けものフレンズ(たつき版)を見ながら小説を書くと心が癒されるのじゃ〜。


セルリアンを倒したドラえもん達はサーバルの案内でパンのロバ屋と呼ばれるキッチンカーにやってきていた。其処では食べ物をくれるロバから幾多もの食べ物を貰って食事をしていた。

 

 

「おいしい〜!」

 

「ほんと美味しいね。特にこのジャパリまんはどら焼きの様な味がして僕好みだよ」

 

 

お腹を空かせていたキュルルはじゃぱりまんやジャパリパン、ジャパリチップス、ジャパリソーダなどを頬張っていく、ドラえもんもじゃぱりまんを美味しそうに食べている。その2人の食いっぷりを灰色の服を着た少女のロバが感心した目で見ていた。

 

 

「よく食べますねー」

 

「うん、キュルルちゃんとドラえもんちゃんは好き嫌いがないみたい」

 

「てっきりドラえもんはキュルル以上に食べると思ったらそうでもないのね」

 

 

キュルルと比べて図体がデカいドラえもんはキュルル以上に食べると思っていたカラカルは実際はそうでもなかった事に意外だなと思っている。

 

 

「いや、僕はそこまでお腹は空いていないからね。あと、一個ジャパリまんを食べればお腹が満たされるよ。」

 

ドラえもんはじゃぱりまんを頬張りながキュルルは「あっ」と声を漏らして何かを思い出し、ドラえもんに話しかける。

 

「ねぇ、お腹で思い出したんだけど、あの時ドラえもんは僕を助ける時にそのポケットからライトみたいなの取り出していたけど、あれはなんなの?」

 

 

キュルルはドラえもんに助けてもらう時にお腹に付いているポケットに手を入れてスモールライトを取り出した事を思い出す。サーバルとカラカルもその事を思い出す。

 

 

「そういえばそうね」

 

「うん、あの時は本当にびっくりしたな〜」

 

「ポケット?……もしかしてドラえもんさんはカンガルーのフレンズですか?」

 

 

事情を知らないロバはドラえもんの腹部にポケットが付いている事からカンガルーのフレンズと勘違いをする。

 

 

「僕はカンガルーじゃなくて猫型ロボットなんだけど」

 

「猫型ろぼっと?よくわかんないけどあんたって猫っていうよりたぬきに見えるんだけど」

 

「ぼ、僕はたぬきじゃない‼︎」

 

「ご、ごめん。というか、怒鳴るくらい嫌なの?」

 

 

カンガルーと勘違いされたドラえもんは訂正をするが、カラカルがうっかりたぬきみたいだと口を滑らせる。ドラえもんも自分がたぬき呼ばわりされた為、反射的に怒鳴ってしまう。カラカルはすぐ謝罪をしたが、ドラえもんはたぬきに何か恨みでもあるのかと思った。

 

 

「あ、いや……ただいつも、たぬきって間違われるからつい……」

 

「そう、こっちもたぬきって呼んで悪いわね」

 

「いや、僕こそいきなり怒鳴ってごめんね」

 

 

少し経って冷静に戻ったドラえもんはカラカルに頭を下げる。それを見たサーバルはなんとか空気を変えようと話しかける。

 

 

「そ、それでそのポケットは一体なんなの?」

 

「ああ、これ?これは四次元ポケットさ」

 

「四次元?」

 

「「「ポケット?」」」

 

「そう、このポケットは僕の持っている秘密道具がしまってあるんだ」

 

「秘密道具ってなに?」

 

「秘密道具っていうのはね、これらのことさ」

 

 

ドラえもんは例としてポケットから先ほど使ったタケコプターとスモールライトを取り出すと、サーバルはタケコプターに注目する。

 

 

「あっ、それって確かドラえもんちゃんが飛んでいた時に頭につけていた羽!」

 

「羽じゃないよ、これはタケコプターって言うんだ。これを頭につけてスイッチを押せば空を飛ぶことができる」

 

「へぇ〜、鳥のフレンズじゃないのに空も飛べるってドラえもんってますます不思議よね」

 

 

カラカルは興味深そうにタケコプターを眺めていると、サーバルがドラえもんに頼み事をする。

 

 

「なにそれ面白そう!ドラえもんちゃん、私にも貸して!私も空飛びたーい!」

 

「無理でしょ、これはドラえもんの羽みたいなものだから」

 

 

だが、カラカルはドラえもんの道具を体の一部と認識している為、サーバルでは使えないと思いながら無理だろうというが、

 

 

「別に構わないよ。タケコプターは誰でも使えるようになっているからね」

 

「えっ、そうなの⁉︎」

 

 

本人からタケコプターは他人でも使える事を知ったカラカルは驚いた表情を見せる。一方のサーバルは「やったー!」と喜びの声を上げながらドラえもんからタケコプターを受け取り、ドラえもんが使っていた時の事を思い出しながら頭の上に乗せる。

 

 

「サーバル大丈夫なの?」

 

「平気平気、えっと、これを押せばいんだね」

 

 

カラカルは心配するが、サーバルは自信満々に大丈夫と言ってタケコプターのボタンを押すとタケコプターの羽は勢いよく回り始め、足が地面から離れる。それを見たカラカル達は「おお」と声を漏らす。

 

 

「うみゃぁぁぁぁぁああああああああ!!!?」

 

「「「「サーバル(ちゃん)(さん)⁉︎」」」」

 

 

しかし、サーバルは空中を縦横無尽に飛び回りタケコプターに振り回される結果となる。しばらくすると地面に降り立ち、怪我こそは負わなかったが目を回し、フラフラと足元がおぼつかない様子だった。

 

 

「サーバル大丈夫?」

 

「ミャ、みゃ〜、だ、大丈夫だよ〜」

 

 

カラカルがサーバルの身を心配するが、サーバルは目を回しながらも大丈夫だと答える。ドラえもん達はそんなサーバルの姿をしてホッとする。

 

 

「大丈夫サーバルちゃん?」

 

「う、うん、まだ目が回るけど大丈夫だよ〜」

 

 

サーバルはそう言うとドラえもんにタケコプターを返した。ドラえもんもタケコプターを受け取るとポケットにしまう。因みにカラカル達はサーバルの姿を見てタケコプターを借りなくて良かったと内心そう思っていた。

 

 

の の の の の

 

 

 

それから十分後、サーバルの調子が元に戻るとドラえもんは先ほどタケコプターと共に取り出したスモールライトを見せた。

 

 

「それはセルリアンを小さくした道具だね」

 

「そ、これはスモールライトって言ってこのライトから出る光を浴びせるとなんでも小さくする事が出来る。例えば……このじゃぱりまんに光を浴びせる」

 

 

ドラえもんは実験として、貰ったじゃぱりまんにスモールライトの光を浴びせる。すると、みるみる小さくなっていき、最終的には1cm程の大きさになる。

 

 

「「すっごーい!」」

 

「本当に凄いわね」

 

「じゃ、ジャパリまんが小さくなってしまいました」

 

 

サーバルとキュルルは年相応の子供のように大きな反応を示す。カラカルもサーバル達ほどではないが、驚いた顔を見せる。ロバは事前にスモールライトの効果を見ていない為、彼女たちよりも大きく驚いた反応を見せた。

 

 

「どう?これがスモールライトの効果だよ」

 

「でも、これだと食べてもお腹は膨れないよ」

 

 

キュルルは小さくなったじゃぱりまんを手に乗せてドラえもんに言う。

 

 

「大丈夫。スモールライトの光を浴びた物はもう一度浴びれば元の大きさに戻るんだ」

 

 

ドラえもんはキュルルからじゃぱりまんを受け取り、スモールライトの光を小さくしたじゃぱりまんに浴びせると、じゃぱりまんは元の大きさに戻る。

 

 

「凄いや!」

 

「ちゃんと元の大きさに戻ってる」

 

「まるで魔法みたいですね」

 

「そうね」

 

 

元に戻ったじゃぱりまんを見た彼女たちはスモールライトの効果を改めて凄いと思った。

 

 

「どう、他にも凄い道具がまだまだたくさんあるんだよ」

 

「ええーーっ!?まだたくさんあるの!?」

 

「私は空を飛ぶだけでも驚いているのにまだ沢山あるなんてこれ以上驚いていたら疲れるわよ」

 

 

まだ秘密道具があると知るとサーバルは更にわくわくさせる。一方、カラカルは今日一日中驚いていた為、少し疲れた表情を見せる。そんな姿を見てロバ「ふふ」と笑い声を漏らす。

 

 

「ドラえもんさんは本当に凄いフレンズなんですね」

 

「今更なんだけどそのフレンズってなに?あと、此処がなんなのかもよくわからないんだけど」

 

「あ、僕も気になっていたんだ」

 

 

ロバの話を聞いてフレンズという単語を思い出したドラえもんはどういうものなのか聞く。キュルルもフレンズという言葉の意味を知らない為、ドラえもんに便乗する。

 

 

「知らなかったの?……フレンズっていうのはサンドスターっていうのが動物に当たってなった者の事を言うのよ」

 

「そして、此処はジャパリパークのさばんなちほーだよ」

 

 

カラカルとサーバルからフレンズと今いる場所(ジャパリパーク)について聞いた2人は今いる場所について理解するが、

 

 

「サンドスター?」

 

「なにそれ?」

 

 

カラカルの説明の中に出てきたサンドスターについて首を傾げる。すると、サーバルが話に入ってくる。

 

 

「サンドスターっていうのはあの火山から出て来るキラキラの事をいうんだよ」

 

 

遠くの方に指を指すとドラえもん達もつられてその先を見る、遠くの方に見える山の頂に芸術作品のような大きな結晶の塊が存在していた。

 

 

「うわぁ〜!綺麗〜」

 

「あれがサンドスターか」

 

 

ドラえもんとキュルルはその結晶に思わず心が奪われる。だが、ドラえもんはしばらく見て何かに気づく。

 

 

(あれ?…あれって、どこかで見た事あるような)

 

 

暫くサンドスターを見て似たような物を何処かで見たような気がするドラえもんは記憶を思い返すが全く思い出せなかった。

 

 

(まぁ、今思い出さなくても良いかな。それにしてもあのサンドスターが動物に当たるとフレンズになるのか………ん⁉︎待てよ……)

 

 

此処でドラえもんはサーバル達の耳や尻尾を見る。最初は何かのコスプレと思っていたが、自分たちを動物の名前で呼び合いその動物にあった特徴を持っている。例としてサーバルはセルリアンに攻撃するとき動物のサーバルキャットの様に高いジャンプ力を見せていた。

 

 

(あの時は動物の力を持った女の子かと思っていたけどサンドスターの説明で漸くわかった。サーバルちゃん達はサンドスターによって独自の進化をした動物だったんだ)

 

 

以前ドラえもんは独自の進化をした動物達を見た事がある為、彼女達(フレンズ)についてすぐに理解出来たドラえもん。同時にある事に気づく。サンドスターという物質はドラえもんの知る限り22世紀どころか地球上に存在しない。

 

 

(ひょっとすると此処はアニマル星やバードピアのような別の世界、または別の星かもしれない)

 

 

此処がまだ別の世界と確信出来ないのはロバが開いているお店に日本語で"パンのロバ屋"と書かれている事だ。店の名前が日本語で書かれているという事は此処は日本の何処かにある誰かが作った場所かもしれない。少なくとも此処は自分たちの知る常識とは異なる場所であると考える。そして、どうやって此処へやってこれたのだろうと考えていると、ある事を思い出す。

 

 

(もしかしたらあのチケットが原因かもしれない)

 

 

あの時ドラえもんはチケットに書いてあった数字をタイムマシンに打ち込んだ結果タイムマシンは暴走してこの場所にまよいこんでしまった。

 

 

(この場所の名称とフレンズについて大まか理解できた。後は此処はどこまで文明が発達しているかだ)

 

 

先ほどドラえもん達が食べたじゃぱりまんは明らかに一つ一つ形がほぼ同じで少なくとも手作業では難しい。恐らくこのジャパリパークの何処かに工場があり、其処でじゃぱりまんなどの食品を作って、誰かがロバのところまで運んで来てくれる。恐らくその運んでくる人物ならジャパリパークについて詳しく教えてもらえるだろう。

 

 

「どう、わかった?」

 

 

その時、先ほどまでジャパリパークについて考えていたドラえもんだが、サーバルの声でハッとなりサーバルにフレンズについて理解した事を伝える。

 

 

「僕はわかったよ。キュルルちゃんはサンドスターとフレンズについてわかったかな?」

 

「び、微妙かな…」

 

 

若干頬をひきつらせながら返事をするキュルルの顔を見たドラえもんはこれはわかっていないなと確信して、彼女にもわかりやすい様に説明をする。

 

 

「簡単に説明すると彼女達フレンズは元々は動物だったけど、サンドスターに当たって今の姿になったんだよ」

 

「ええーーっ!?そうなの!?」

 

「そうだよ!」「そうよ」「ええ」

 

 

ドラえもんの説明を聞いてサーバル達が元動物だった事を知ると驚愕の表情をするキュルル、ドラえもんはそんなキュルルの反応がのび太に似ている事から親近感を感じた。

 

 

「そういえばキュルルとドラえもんは何処から来たの?」

 

「僕は友達と一緒に遠いところから来たんだ」

 

「ドラえもんの友達ってドラえもんと同じ姿をしているの?」

 

「いや、一緒に来たのはキュルルちゃんの様な姿をした子達だよ」

 

「えっ、僕?」

 

 

友達がキュルルと似ていると聞いて、キュルルはキョトンとする。

 

 

「という事はその友達は人なの?」

 

「そうだよ」

 

 

カラカルは内心人という存在は少ないと思っていたが、実際は結構いるものだと思っていた。

 

 

「それでキュルルちゃんは何処から来たの?」

 

「僕はあそこから」

 

 

サーバルの問いにキュルルは自分がやって来たところに指をさすと其処には森の奥に巨大な建物が見えていた。

 

 

(こんな森の中にあんな大きな建物が建てられているなんて……ますます、ここの文明がわからなくなってきた。でも、あそこに行けば何かわかるかもしれない)

 

 

自然豊かな土地に明らかに場違いな建物が建っている事にドラえもんは其処に行けば何か情報を得られるかもしれないと思っていた。

 

 

「大きな建物ね」

 

「ひょっとして、あれはキュルルちゃんの縄張り?」

 

「えっと、多分違うと思う」

 

 

記憶がないキュルルにとってあの建物はどういうものなのか、キュルル自身もわからなかった。

 

 

「まぁ、あそこに行けば何か分かると思うよ」

 

 

ドラえもんは其処に行けばキュルルの失われる前の記憶についての手がかりが見つかるだろうと提案をする。

 

 

「確かにそうね」

 

「じゃあ、行ってみようよ!」

 

 

サーバルはドラえもんの提案に賛成をすると一目散に建物の方へ走っていった。カラカルはそんなサーバルに頭を悩ませながらも走っていく。その後をドラえもん達も行くが、その前に2人はロバの方に振り返る。

 

 

「ロバさんご飯ありがとう!」

 

「ご馳走さまでした〜!」

 

「はい、皆さんも気をつけてください」

 

 

2人はロバにお礼を言うとロバも2人を見送る。ロバは2人が走っていくのを確認すると自分の店に戻っていく。

 

 

「あれ?これって……」

 

 

その途中地面に何か落ちている事に気付いたロバはそれを拾い上げた。

 

 

 

 

それはドラえもんのスモールライトだった。どうやら、うっかり仕舞い忘れてそのまま置いていってしまったようだ。彼女はドラえもんにスモールライトを届けようと考えたが、店にいなくては駄目な為、店に戻ることにした。

 

 

(きっと、無いことに気づいてすぐ戻ってくるでしょうしね)

 

 

そう考えたロバは店へ戻っていった。

 

 

の の の の の

 

 

ロバと別れたサーバル達は森の中を進んでいると、謎の建物の前へやってきた。遠くから見てあまりわからなかったが、近くで見るとその建物の壁は所々ボロボロで、窓ガラスもいくつか割れていた。そんな建物にこれから入る事からサーバルを除いた3人は息を飲んだ。

 

 

「ほ、本当に此処から来たの?」

 

「う、うん多分此処であっている……筈」

 

(ネズミが出ませんようにネズミが出ませんようにネズミが出ませんように!!!)

 

 

若干カラカルは建物の不気味さに恐怖を感じながらキュルルに確認をするが、キュルルも建物の不気味さにすこし怯えながら自信なさげに答える。対してドラえもんは自分の天敵であるネズミが出ない事を必死に祈っていた。

 

 

「3人とも何してるの〜?早く入ろうよー!」

 

 

そんな中サーバルは恐怖とは無縁で逆にこの建物の中に何があるのだろうとワクワクしていた。そんなサーバルを見て2人は次第に彼女に感化されていった。

 

 

「わ、わかったわよ。ほら、キュルルもドラえもんもいくわよ」

 

「う、うん」

 

「そ、そうだね」

 

 

3人はサーバルの後に続き建物の中へ入っていく。その中は明かりはなく薄暗い空間が広がっていた。所々に隙間風が吹き、天井からは水滴が垂れている。

 

 

「暗くて涼しいね〜。暑い日には丁度いいよね〜!」

 

「ちょっと静かにして、ひょっとしたらセルリアンがいるかもしれないでしょ!」

 

「えっ!セルリアン!?」

 

 

カラカルがセルリアンがいるかもしれないと聞いて、キュルルはセルリアンに襲われた事を思い出しその場で身を丸くした。カラカルも失言だった事に気付き、なんとか落ち着かせようとするが、口が悪い自分では逆効果になるのではと思っていると、サーバルがキュルルに駆け寄る。

 

 

「大丈夫だよー、もしセルリアンが出たとしても自慢の爪でやっつけちゃうんだから!」

 

「サーバルちゃん……う、うん、ありがとう」

 

 

サーバルに勇気付けられてキュルルはなんとか立ち直る。そんな2人をカラカルは複雑そうな表情で見る。そんな彼女にドラえもんは話しかける。

 

 

「大丈夫だよ、カラカルちゃんもキュルルちゃんを落ち着かせようとしたんでしょ?」

 

「べ、別に、私はただこんな事で怯えていたらきりが無いから注意しようとしただけなんだから!」

 

「ふふ、今はそう思っておくよ」

 

「ほ、本当なんだからーーっ!!!」

 

 

自分の本心をなかなか打ち明けられないカラカルはドラえもんに否定するが、ドラえもんは温かい目でそんなカラカルを見ていた。いつのまにかサーバルとキュルルもそんな2人を見て思わず笑った。

 

 

「な、何がおかしいのよー!?」

 

「ううん、なんでも無いよ〜!」

 

「嘘おっしゃい!」

 

「きゃー!食べないでー!」

 

「食べないわよ!」

 

 

悪ふざけするサーバルと追いかけ回すカラカルだが、先ほどの顔と比べてとてもいい笑顔を見せていた。

 

 

「2人とも元気がいいな、此処は暗いのに2人が明るく見え……あ、そうだ!」

 

 

元気よく走り回る2人を見てドラえもんはなにかを思いつき、ポケットの中に手を入れる。

 

 

「どうしたの?」

 

「うん、2人を見て思いついたんだ。確か暗いところを明るくする道具は……あった!」

 

 

ドラえもんはキュルルの質問に答えながらポケットの中を探っていると、目的の物を見つけて取り出した。

 

 

「ピッカリゴケ〜!」

 

「なにそれ?」

 

 

ドラえもんの取り出した小さな小袋にキュルルは首を傾げながらそれはなんだと聞くが、ドラえもんは見れば分かるといって小袋の封を取りその中に入っていた苔を地面にふりかけるとそこから明るくなっていき、だんだんと周りにも広がっていった。

 

 

「すっご〜い!」

 

「さっきまで暗かったのに外みたいに明るくなっちゃった」

 

 

サーバルとカラカルは周りが幻想的に明るくなっていく事に思わず心が奪われていき、建物の中の全てが明るくなっていくところを眺めていた。

 

 

「これで探しやすくなった。さぁ、行こう」

 

「「「うん!(ええ)」」」

 

 

ドラえもんの言葉に3人は元気よく返事をして奥に進んでいると、扉が開いている部屋を見つける。

 

 

「ねぇ、あそこはなんだろう?」

 

「入ってみるわよ」

 

 

サーバル達は部屋に入ると其処には数台の壊れたなにかの装置と唯一無事な装置を見つける。

 

「これなに?」

 

「ここがキュルルちゃんの(おうち)?」

 

「わからない……でもここでずっと眠っていた気がする」

 

謎の装置の中に眠っていたと思っているキュルルは曖昧な発言をする。ドラえもんも目の前にある装置は一体何かと考える。

 

 

(うん?部屋の奥にまだなにかあるな)

 

 

なにかを見つけたドラえもんは部屋の奥に向かうと頑丈そうな扉を見つける。

 

 

「これはなんだろう」

 

 

見たところなにか大事なものが入っていそうなその扉の奥はなにがあるのだろうと思いながら、ドアノブを探そうとするがそれらしきものは見つからなかった。

 

 

「こういう時は通り抜けフープを使おう」

 

 

そう言ってドラえもんは再びポケットの中に手を入れて道具を取り出そうとした時にサーバル達が呼んでいる事に気付き、サーバル達の元へ向かった。

 

 

「ドラえもんちゃーん!」

 

「もう、1人で行動すると危険よ」

 

「ごめんごめん、ところでなにか見つけたの?」

 

 

呼びかけたと言うことは何か手がかりになるものを見つけたのだろうと思っていると、キュルルはドラえもんに見つけたものを見せる。

 

 

「うん、これなんだけど」

 

「スケッチブック?」

 

「ドラえもんも知っているんだ」

 

「まぁね、けどそのスケッチブックはどうしたの?」

 

「それがね、これを見て」

 

 

そう言ってキュルルはスケッチブックのページを開いて其処に描いてあった絵をドラえもんに見せる。

 

 

「これは湖?」

 

 

描いてあったのは湖の絵だが、ドラえもんは全く見覚えのない光景だった。

 

 

「この絵の場所は私たちも行ったことのある場所なのよ」

 

「うん、きっと其処に行けばキュルルちゃんのおうちがあると思うんだ!」

 

 

どうやらサーバルとカラカルは見たことある場所であるらしく、この近くにキュルルのお家、または手掛かりになるものがあるとサーバルは思っている。

 

 

「そうか、ひょっとしたら其処にのび太君達もいるかもしれない」

 

「「「のびた?」」」

 

 

聞いたことのない名前にサーバル達は首を傾げる。

 

 

「あ、そういえば言っていなかったね。さっき話していた友達の1人で僕の大親友なんだ」

 

「へぇ〜、いると良いわね」

 

 

カラカルはこれから行く湖にのび太達がいるといいと言うと、ドラえもんは彼女にお礼を言う。

 

 

「ありがとう。じゃあ、取り敢えずその絵の場所まで案内してくれる?」

 

「まっかせてー!ガイドは得意だから」

 

「あっ!ちょっと、1人で突っ走らないでよ!」

 

 

自信満々にサーバルは建物の出口へと走っていき、カラカルはその後を追いかけて部屋を出て行った。その場に残されたドラえもんとキュルルは互いに目を合わせる。

 

 

「それじゃあ、僕らも行こうか」

 

「うん、あっ!ちょっと待ってて!」

 

キュルルは装置の中に何かある事に気付きそれを取り出す。

 

 

「それはかばんに水筒?」

 

「うん、多分これも僕のだと思う。それにこのかばんにスケッチブックを入れれば運びやすいし、湖でこの水筒に水を入れようと思ってる」

 

「うん、旅はなにがあるかわからないしね」

 

 

2人は話し合いながら部屋を出ると建物の出口にはサーバルとカラカルが待っていた。

 

 

「遅いよ〜」

 

「なにのんびりしているのよ」

 

「ごめん、ちょっとね」

 

 

ドラえもんは彼女たちに謝るといっしょに建物から出た。

 

 

「それじゃあ、キュルルちゃんの(おうち)と!」

 

「ドラえもんの友達を探しに!」

 

 

 

「「「「レッツゴーーー!!!」」」」

 

 

こうしてドラえもん達のジャパリパークを巡る冒険が始まった。

 

 

 

 

 




フレンズ図鑑

サーバル

ネコ目ネコ科レプタイルルス属

Leptailurus serval

聴力やジャンプ力に優れたフレンズ。
背の高い草木のある草原や、川辺近くの葦の茂み、草むらなどを好んで生息していて、主に夜間に活動する。しかし、朝夕の日差しが強くないときには、昼間もよく活動する。

カラカル

ネコ目ネコ科カラカル属

Caracal caracal

乾燥した地域に住み、耳の先端に特徴的な房毛を持つフレンズ。
森林やサバンナ、ヤブ地などに生息しているが、岩山などでも姿が見られる。砂漠地帯には生息していないが、乾燥した土地を好み、サーバルキャットなどよりも乾燥した環境に適応している。
主に夜行性の動物で、昼間は茂みや木の上などで潜んでいることが多い。

ロバ

ウマ目ウマ科ウマ属

Equus asinus

体は小さいものの、賢く力持ちなフレンズ。
ロバは粗食にも耐え、厳しい条件下でも働くことができ、また力も強いので、現在でもアフリカやアジアで乗用や運搬、耕作などに使われている大切な使役動物である。


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第2話 じゃんぷ

まさかノリで書いてみた小説に評価バーに色がつくとは思ってもみませんでしたが、逆に期待されるとよりやる気が満ち溢れます。
目指せ!優しい世界!


キュルルが眠っていた謎の建物にあったスケッチブックの絵を頼りにドラえもん達は湖の所へ向かっていた。幸いにも近くにあり、道中セルリアンに襲われる事なく湖へたどり着いたドラえもん一行。

 

 

「着いたよ!どう?此処にキュルルちゃんの(おうち)はありそう?」

 

「う〜ん、絵の場所は此処みたいだけど、お家とは違うみたい」

 

 

スケッチブックの絵と目の前に広がる湖を見比べてみて、同じ場所だがキュルルの家らしきものは見当たらなかった。ドラえもんもあたりを見渡しているとカラカルが話しかけてきた。

 

 

「ドラえもんあんたの友達は見つかった?」

 

「それが、さっきから探しているけど全く見当たらないんだ」

 

 

ドラえもんも周囲を見渡すが誰一人と見当たらなかった。ドラえもんは此処にのび太達がいないと分かると深く息を吐く。

 

 

「はぁ〜、のび太君達はいったい何処にいるんだ?」

 

 

ただでさえジャパリパークの情報を把握していないのにセルリアンという巨大なモンスターがいるからのび太達を見つける前にセルリアンに襲われる可能性がある。

 

 

(ジャパリパークの地形情報を知らないからどこでもドアは使えない。地道に探していくしかないのか……)

 

 

最初はどこでもドアを使ってのび太達のいる場所へ行こうと考えたが、どこでもドアは目的地の地図情報がインプットされてなければ使えない為、このジャパリパークでは現在のところ使用が不可能だ。仕方なくドラえもんは人探しに適した道具を使おうとポケットの中に手を入れる。すると、サーバル達がドラえもんがポケットに手を入れている事に気づく。

 

 

「ドラえもん何してるの?」

 

「いやね、ちょっと人探しに丁度いい道具を探しているんだ」

 

「なになに!?今度はどんな道具を出すの!?」

 

「サーバル分からない事もないけど興奮し過ぎよ」

 

 

興奮しているサーバルをカラカルとキュルルが落ち着かせている間にドラえもんは探していた道具を見つけ出した。

 

 

「あった!たずね人ステッキ〜!」

 

 

ドラえもんが取り出した道具は持ち手の部分に機械が付いた杖を取り出した。

 

 

「たずね人ステッキ?」

 

「よく分からないけどその棒で友達が見つかるの?」

 

 

キュルルとカラカルはドラえもんの出した道具を不思議に思いながらものび太達を探しだせるのか聞くと、ドラえもんは少々苦笑いを浮かべる。

 

 

「まぁ、当たる確率は70%なんだけどね」

 

「それはまた微妙な道具ね」

 

 

たずね人ステッキが確実に方角を示してくれる物じゃないとしると、キュルルとカラカルは苦笑いを浮かべるが、サーバルだけキョトンとした顔になっていた。

 

 

「あれ、サーバルちゃんどうしたの?」

 

「ななじゅっぱーせんとって何?」

 

「「「ズコーーッ!?」」」

 

「みゃ?」

 

ドラえもん達はサーバルがパーセントという単語自体知らない事に一斉にその場にこける。

 

 

「よ、要するに10回やって7回当たるって事だよ」

 

「そうなんだ。あっ、その棒を使えば友達は見つかるという事だね」

 

 

ドラえもんの説明を聞いたサーバルは大雑把過ぎるがパーセントの意味を理解してくれた様だ。

 

 

「それで、その棒はどうやって使うの?」

 

「使い方は簡単。ステッキを地面に突き付けて探したい人物の名前を言いながらステッキから手を放すとその人がいる方角に倒れる仕組みになっているんだ。では早速、『のび太君達は何処?』」

 

 

たずね人ステッキの使い方を説明すると早速のび太の場所を探し出そうとステッキから手を放すと、ステッキは湖の先へ倒れた。

 

 

「どうやら方角はあっちの様だ」

 

「でも、当たっているのは70%だけど」

 

「うっ、ま、まぁ、スケッチブックに描かれてある絵の場所もわからないから道具を信じてみよう」

 

 

ドラえもんは半分不安になりつつもたずね人ステッキがちゃんとのび太達の居場所に倒れた事を祈りながらをポケットにしまう。

 

 

「あら、先客がいましたの?」

 

「うん?」

 

 

そこへ後ろから声が聞こえきて、ドラえもん達は思わず振り返ると其処には毛先が赤いライダースーツを着た女性と黒と白のシマシマ模様の服を着た少女が立っていた。

 

 

(この人達もフレンズ?)

 

 

現れた2人は頭から耳が生えている事から人ではなくフレンズと瞬時に理解できたドラえもんは彼女たちの姿を観察する。

 

 

(この女の子は全身白と黒の模様をしているからシマウマのフレンズかな?)

 

 

2人の内白黒模様の服を着た少女はシマウマと判断するドラえもんだが何処かしら違和感を感じるが、あまり気にしなかった。もう1人の女性はサーバル達の服や耳と比べると全く似ても似つかない見た目を持つ女性だ。この事から少なくとも犬やネコ科動物ではないと確信するが、どういう動物かわからなかった。ドラえもんは暫くその女性はなんの動物か考察していると、サーバルとカラカルが彼女達の名を呼ぶ。

 

 

「あっ、カバ!」

 

「それにアードウルフじゃない」

 

「サーバルとカラカルも居ましたの」

 

「こんにちは〜」

 

 

どうやら彼女たちはサーバルの知り合いらしく親しく挨拶を交わした。その様子を見ていたドラえもんは白黒の女の子が自分の予想したシマウマではなかった事に少し残念感を覚えるが、それ以上に驚きの表情を浮かべる。

 

 

(この人があのカバ⁉︎)

 

 

ドラえもんは目の前でサーバルとカラカルに親しそうに挨拶をする女性があの大口のカバとは全く思えなかった。しかし、よくよく見ると目の前の女性の癖のある髪はカバの牙に似ており更に耳と尻尾もカバそのものだ。

 

 

「知り合いなの?」

 

「うん、2人とも私たちの友達だよ」

 

「私達はさばんなちほーに住んでいるフレンズ達とは殆ど知り合いなのよ」

 

「へぇ〜、そうなんだ」

 

 

サーバルの返事を聞いたキュルルは彼女達が色んなフレンズの友達を持つその顔の広さに素直に凄いと感じた。

 

 

「そっか、2人は社交的なんだね」

 

「しゃこーてき?……えっへん!そうなんだ私たちはしゃこーてきなんだよ」

 

「いや、サーバルあんた意味わかってないでしょ」

 

 

ドラえもんが口に出した"社交的"という単語を聞いたサーバルはその単語の意味を知らないが、自分は褒められているとわかり威張るが、カラカルはそんなサーバルに思わずツッコミを入れる。

 

 

「ところでそちらの2人は見ない顔ね。あなた達もサーバルの知り合い?」

 

 

カバとアードウルフは初めて会うドラえもん達がサーバル達と親しく話している姿を見て、サーバル達の知り合いか聞くとサーバルが答える。

 

 

「あ、そういえばカバ達は知らなかったね。こっちはキュルルちゃんでこっちはドラえもんちゃん」

 

「初めましてキュルルです」

 

「こんにちは、ぼくドラえもんです」

 

 

サーバルに紹介された2人はカバ達に挨拶をする。対してカバ達は疑問符を浮かべながら首を傾げる。

 

 

「キュルルにドラえもん?」

 

「初めて聞く動物ですね」

 

 

聞いた事ない名前に最近生まれたフレンズだと思った2人だが、サーバルがそれを否定する。

 

 

「実はキュルルちゃんはヒトなんだって」

 

「えーーっ⁉︎ヒトなんですか!?」

 

(人って……そんなに驚く事かなぁ)

 

「ヒトって、そんなまさか……」

 

 

ドラえもんはアードウルフの大きなリアクションにやれやれと呆れた様子を見せるがカバはキュルルのある物をみて何かに気付く。

 

 

「貴女……その頭に被っているものは……」

 

「え?帽子がどうかしましたか?」

 

「よく見させて下さい」

 

「え、急にどうしたのカバ⁉︎」

 

 

突然の帽子を見せろといったカバにサーバルはどうしたんだと聞くが、カバの真剣な表情を見て驚いてしまう。カラカル達もカバの放つ威圧感に怯み、ただ黙ってその様子を見ていた。

 

 

「い、いいですけど……」

 

 

キュルルは若干カバの気迫にビビりながらも帽子を脱ぎカバに渡す。キュルルの帽子を受け取ったカバはその帽子を見つめる。それからしばらくしてカバの表情は緩み威圧感が消えるとキュルルに帽子を返した。

 

 

「驚かせてごめんなさい。帽子を返しますわ」

 

「は、はぁ……」

 

「カ、カバさん急にどうしたの?キュルルさんの帽子を見て」

 

 

いきなり帽子を眺めたカバの行動にアードウルフはキュルルの帽子に何かあったのかと思いカバに話しかける。すると、カバがアードウルフに笑みを浮かべながら口を開く。

 

 

「いえ、ただ素敵な帽子と思っただけですわ」

 

 

カバはキュルルの帽子が素敵だと言うとアードウルフは「そうですかと」言って納得する。サーバル達も何も起きなかった事にホッとする。だが、ドラえもんは目を細めてカバを怪しんで見ていた。

 

 

(このカバって人はなんでキュルルちゃんの帽子を見ようとしたんだ?)

 

 

ひょっとしたらキュルルについてなにかを知っているのかもしれない、そう考えるドラえもんだが、カバが視線をドラえもんに移すとドラえもんはドキッと蛇に睨まれたカエルのように体が動かなくなり頭から冷や汗を流す。ひょっとして、先ほど観察していたことがバレたのかと思っていると、

 

 

「ところであなたドラえもんだったかしら?貴方はヒトには見えませんわ」

 

 

どうやらドラえもんはなんの動物か知りたかったようだ。ドラえもんはそう言う事かと理解すると自分の事を説明する。

 

 

「いえ、僕は人じゃなくて猫型ロボットです」

 

「猫型ろぼっと?よくわかりませんが、貴方猫なのに耳が生えてありませんね。それに体が青い猫なんて聞いたことないですわ」

 

 

猫と聞いてカバはドラえもんの体を見渡すが特にこれといった猫という特徴はなくあるとしたら精々髭しかない為、カバは全く猫とは思えなかった。すると、カバの言葉に便乗するようにアードウルフが思っていた事を口にする。

 

 

「私もそう思います。それに猫というよりたぬきじゃ「僕はたぬきじゃない!!!」ひゃっ!ご、ごめんなさい!」

 

「あ、こ、こちらこそいきなり怒鳴ってごめん…なさい」

 

「なんで敬語なのよ?」

 

 

たぬきと言われたドラえもんはアードウルフに怒鳴るとアードウルフは驚きの声を上げて謝る。対してドラえもんはカバが威圧感を放ちながら睨んでいる事から慌ててアードウルフに謝る。その様子を見たカラカルは敬語を使っている事に疑問を思いつつもため息を吐きながらドラえもんに注意をする。

 

 

「というかドラえもん。いくらたぬきに間違われるのが嫌だからって、少しは怒鳴る事に自重した方が良いわよ。アードウルフみたいに気弱なフレンズを怖がらせちゃうかもしれないわよ」

 

「うぅ、本当に面目ありません」

 

 

カラカルに注意されたドラえもんも流石に言い返しの余地は無く、ドラえもんもやり過ぎた事を反省する。場の空気を変えようとサーバルはカバ達に話しかける。

 

 

「ところで2人は今日どうしたの?」

 

「はい、私とカバさんは其処にある水飲み場にやってきました」

 

「そうなの。今日は日差しが強くて喉が渇いたから水を飲もうと思ったのよ」

 

「水飲み場?」

 

サーバルの質問に2人は答えるとそれを聞いていたキュルルは目の前に広がる湖に視線を移す。

 

 

「この湖が水飲み場なの?」

 

「そうだよ、この湖はこのさばんなちほーに住んでいるフレンズが使っている水飲み場なの」

 

「そっか、だから2人はこの湖の事を知っていたんだ」

 

 

ドラえもんは2人が湖の場所について知っていた理由が此処が彼女達フレンズの水飲み場なんだと分かると納得した。すると、暫く湖を眺めていたキュルルは「そうだ!」と声を上げてかばんの中から持ってきた水筒を取り出す。

 

 

「ここならこの水筒に水を溜められるよ」

 

「お〜、確かに此処ならみんなが飲んでいるから特に体には害はなさそうだから安心して水筒に入れられるね」

 

 

キュルルは持ってきた水筒が早くも役に立つと思いさっそく湖の側に近寄り水筒の中に水を入れる。サーバル達も湖の水に口をつけて飲みだす。

 

 

「そういえば2人はキュルルちゃんの巣について何か知らない?」

 

「おうちですか?」

 

「いわゆる縄張りみたいなものよ」

 

 

サーバルにキュルルのお家を知らないか聞かれたアードウルフは聞き慣れないお家という単語を聞いて首を傾げると、カラカルは補足を付ける。

 

 

「すいません。私にはわかりません」

 

「自分の縄張りを忘れるなんて、何というか少し抜けてますわね〜」

 

「相変わらずカバはストレートにいうわね」

 

(この人結構な毒舌家だなぁ)

 

 

アードウルフはキュルルのお家については全く知らなく、カバはさらっと容赦のない一言を言う。ドラえもんはそれを見てカバの性格を理解した。

 

 

「まぁ、サーバルのように自分の縄張りを長期間放置していつの間にか他の子に取られることもあるから」

 

「えっ?サーバルちゃん縄張りを取られた事があったの?」

 

「うん、1回あったよ」

 

 

カバの話の中でサーバルは縄張りを取られた事があったことにドラえもんは本当かサーバルに聞くと彼女は肯定すると、視線をカラカルに移した。対するカラカルは苦虫を噛み潰したような顔を浮かべる。

 

 

「私が他のちほーに遊びに行って帰ってきたらカラカルが私の縄張りを取っていたんだ。けど今は仲良く一緒の縄張りに住んでいるの」

 

「は、初めて会った時の事を掘り返さないでよ!あの時は誰もいないからラッキーだと思っていたのよ」

 

 

サーバルは楽しくカラカルに初めて出会った時の話をするが、カラカルは恥ずかしそうに顔を赤くして止める様に言う。

 

 

「2人はそうやって出会ったんだね」

 

「だから、そんなに仲が良いんだね」

 

 

ドラえもんとキュルルは2人の出会った時の話を聞いて、仲が良い理由が同じ縄張りに住んでいると分かると2人は納得の表情を見せる。

 

 

「私もここ最近は自分の縄張りには戻らず、こうしてアードウルフと共にしているからサーバルのことをあまり悪く言えませんが」

 

「………」

 

 

カバもサーバルの様に現在長期間縄張りから離れてアードウルフと行動をしている事を話すと、アードウルフは複雑そうな表情を浮かべる。

 

 

「アードウルフどうかなさったの?」

 

「い、いえ!なんでもないです……」

 

 

カバに心配されたアードウルフは慌ててなんでもないと言うとカバは「そう」と呟いて気にしなかった。アードウルフもカバがあまり気にしなかった事に安堵の表情を見せた。

 

 

「それじゃあ、ドラえもんちゃんの友達について知らない?」

 

「ドラえもんさんのお友達ですか?」

 

「でも、貴方の友達と言っても、そんな珍しい姿をしていればすぐ目立つけど見た事ないわ」

 

「カバ違うよ。ドラえもんちゃんの友達はヒトなんだって」

 

「ヒト⁉︎キュルルさん以外にもいるんだ……」

 

 

サーバルからドラえもんの友達は人だと知るとアードウルフは驚きの表情を見せる。

 

 

「………」

 

「カバ?」

 

一方カバは口に手を当て、真剣な表情を浮かべながら何か考え事していた。それに気づいたカラカルはカバに話しかけると、カバはハッとなる。

 

 

「いえ、なんでも……残念ながら私は何も知りませんわ」

 

「私も知らないです」

 

 

カバとアードウルフはのび太達の事を知らないとするとドラえもんは残念な顔を浮かべる。

 

 

「そっか……じゃあ、この絵に書いてある場所はわかる?」

 

 

サーバルはキュルルからスケッチブックを借りると、そこ湖ではない何かの建物が書かれた絵を見せる。その絵を目を凝らしながらカバとアードウルフは見覚えがあるか記憶を探っていくと、カバは両手を叩き思い出す。

 

 

「そうですわ!その絵に似た物がある場所なら確かこの先にありますわ」

 

 

すると、偶然にもカバが指をさした方向はたずね人ステッキと同じく湖の先だった。

 

 

「ありがとう!」

 

「教えてくれてありがとうございます」

 

 

教えてくれたカバにサーバル達は御礼を言うと、カバとアードウルフにお別れの挨拶を告げると、絵に書いてある建物がある方向へ向かおうとする。

 

 

「あっ、待ちなさいサーバル。セルリアンと会ったら、基本逃げるのですよ?どうしても戦う時は1人じゃなくカラカルや他のフレンズと協力するのよ」

 

「わかってるよ」

 

カバの忠告を聞いたサーバルは返事をすると再び歩き出す。

 

 

「あぁ、後…ちゃんとお水もたくさん飲んでおくのですよ!あなたほとんど汗かかないのですから!」

 

「大丈夫だよ、さっき沢山飲んだから」

 

「それから上り坂下り坂は足をくじかない様に気をつけt「はーい」

 

 

 

 

「なんか過保護過ぎるよね」

 

「はは、まるでサーバルちゃんのお母さんみたいだ」

 

何度もサーバルに心配そうに忠告をするカバの姿を見てドラえもん達は微笑ましく思えた。すると、キュルルが「あっ」と声を漏らした。

 

「どうしたのキュルルちゃん?」

 

「ごめん、みんなちょっと待っててくれない?」

 

キュルルはドラえもん達に一言謝るとカバ達の方に戻ってきた。

 

「あら、何か忘れ物でもしたのかしら?」

 

「いえ……まぁ、忘れ物といえば忘れ物ですね」

 

キュルルはカバにそう答えるとスケッチブックと数本の色鉛筆を取り出してスケッチブックに何かを描き始めた。カバとアードウルフは首を傾げながらキュルルの行動をそのまま見ていると、キュルルは満足した表情を浮かべると、なんとスケッチブックから1枚紙を切り取った。

 

 

「「えっ⁉︎」」

 

「はい、どうぞ」

 

 

突然のキュルルの行動に驚きながらもカバ達は恐る恐るその紙を受け取り、その紙を見てみると2人は驚きの表情を浮かべてたその顔は次第に笑顔になっていった。

カバ達がキュルルから貰った紙には先ほどキュルルが見せてくれたこの湖の絵だった。しかし、その絵は先ほどと違っていくつか書き加えられていた。それは、湖の水を美味しそうに飲むカバとアードウルフにサーバル達が載っていた。

 

 

「凄いです‼︎カバさん見てください‼︎私たちが描かれていますよ‼︎」

 

「本当に凄いわね、でも良いのかしら?これは貴方の巣の手掛かりでしょ?」

 

「大丈夫です。ちゃんと描いた絵の事は覚えているからまた同じのを描きます。それに僕は記憶がないからその日にあった人達の事を忘れないようにこうやって思い出を残していこうと思ったんです」

 

 

キュルルは笑顔を浮かべながら絵を渡す理由を言うとカバは思わず面食らった表情になる。それから暫くしてカバは表情を戻すとキュルルにある事を告げる。

 

 

「そう。それなら貴女に絵のお礼として二つこのジャパリパークについての掟を教えますわ」

 

「え、掟?」

 

 

いきなりカバからジャパリパークの掟を教わる事になったキュルルは若干困惑しながらも聴くことにした。

 

 

「先ず一つ目はこのジャパリパークでは自分の力で生きること。自分の身は自分で護るのですよ?サーバル達任せじゃダメよ?」

 

「は、はい」

 

「それともう一つはどうしても自分の力だけで出来ない事があればフレンズ達に助けを求める事よ。きっと、貴女を助けてくれるわよ」

 

「ッ!……はい!」

 

 

最初の掟を聞いてキュルルは一瞬落ち込むが、次の掟を聞いて自信に満ち溢れていった。

 

 

「ありがとうございました!」

 

 

キュルルはお礼を言うとサーバル達の元へと走っていった。

 

 

「カバさんは本当に優しいですね」

 

「そうかしら?私は自分でも厳しいと思っているのだけど」

 

 

サーバル達の元へ走っていくキュルルの後ろ姿を見るカバとアードウルフは彼女たちの旅が上手くいくように心の中で祈るのだった。

 

 

の の の の の

 

 

カバとアードウルフと別れた一行はカバに言われた通りの方角に道を歩いていた。

 

 

「ぼーけん!ぼーけん!」

 

 

サーバルは機嫌よく後ろを向きながら道を歩いている。それを見たキュルルはサーバルに話しかける。

 

 

「サーバルちゃん、ちゃんと前を向いていないと転んで怪我するよ」

 

「平気平気!」

 

 

しかし、サーバルはキュルルの警告を無視してそのまま後ろを向きながらスキップをし始めるが、

 

 

ピーッ!!!

 

 

「「「「うわぁっ!?」」」」

 

其処へ大きなホイッスルの音が響き渡りドラえもん達は驚きの声を上げ、音が響いた方向に振り向く旗を片手にエプロンを着た女性が立っていた。

 

 

「そこの皆さんストップです!列が乱れていますよ!バラバラに行動するのは危険なのです!」

 

 

女性はピシッと指をさしてサーバル達に一列に並ぶ様に注意をしていると、カラカルはその女性の正体に気づく。

 

 

「あ!カルガモじゃない!」

 

「知り合い?」

 

「この辺りに住んでいるフレンズで団体行動にとーーっても厳しいの!」

 

(まるで風紀委員みたいだ)

 

 

サーバルにカルガモの性格を聞いたドラえもんはルールには厳しいと聞いて面倒くさそうなフレンズだと思っていた。

 

 

「そう!歩く時は前を見て!周りにも注意して歩かねばなりません!特に貴女は後ろ歩きをしていた!そんな事をすると、地面にある小石に躓いて転んで怪我をしますよ!」

 

 

どうやら先ほどのサーバルの話を聞いていたらしくサーバルに対して注意をする。対してサーバルは余りにも突っ掛かってくる彼女の話をなんとか逸らそうとスケッチブックの絵を彼女に見せる。

 

 

「か、カルガモ!ところでこういう場所見た事ない?」

 

「ん、何ですかこれは?」

 

「スケッチブックって言って絵を描く道具なんだ」

 

「絵を描く道具ですか……成る程。そういえばパークの何処かにいる()()()という物を描くフレンズもこれと似た様なものを持っていると聞いた事がありますね」

 

(フレンズも漫画を描くんだ……)

 

 

ドラえもんはカルガモの話に漫画を描くフレンズの存在がいる事に意外と思っていた。幾ら動物がフレンズに進化したと言ってもサーバルとカラカルを見たところアニマル星やバードピアの住人の様にそれ程文化を身につけて居なさそうな為、漫画という文化がこのジャパリパークに、しかもフレンズが書いている事に驚いていた。ドラえもんはフレンズの書いた漫画を機会があれば是非読んでみたいと思っている。

 

 

「あのぉ……それでこの絵のある場所を見たことありませんか?」

 

「おっと、話が逸れましたね」

 

「まぁ、そう簡単に知っているフレンズなんていないと思うけど、せめて何かヒントでも…「知っていますよ」知ってた!?」

 

 

カラカルは都合よく絵の情報が手に入らないだろうと思っていたが、カルガモの返事に思わず驚きの声を上げる。すると、カラカルの良い反応を見て機嫌を良くしたのかカルガモは辺りを踊る様に動き出した。

 

 

「ええ♪すぐ近くですから案内してあげますよ」

 

「「本当⁉︎」」

 

「そんなわざわざ悪いわよ」

 

「そうですよ。場所さえ教えてくれればそれで良いですから」

 

 

ドラえもんとカラカルはそこまで自分たちを手伝わなくても良いと遠慮するが、

 

 

「遠慮しないでくださいっ!私、誰かが旅を始めようとしているのを見ると案内せずにはいられない性格なんです!」

 

 

彼女は自分以外の人達が安全で尚且つ楽しく旅をさせる事を生き甲斐としているようだ。

 

 

「ふふ、とても優しい人だね」

 

 

彼女の人柄の良さにドラえもんは素直に褒めると、それを聞いたカルガモは少し照れてそれを隠すように一列に並ぶように旗を振る。

 

 

「さ、さあ皆さん私の後ろに並んでついてきて下さい‼︎一列になって!」

 

「わーい!なんだか楽しいねーー!」

 

「うん、僕も楽しくなってきちゃった!」

 

「仕方ないか……」

 

 

楽しそうにカルガモの後ろに並ぶサーバルとキュルルに対してカラカルはあまり気が進まないようだ。

 

 

「まぁまぁ、旅は盛り上がる方が楽しいから」

 

「……まぁ、ドラえもんがそういうなら納得するしかないわね」

 

 

カラカルは面倒くさそうだが、ドラえもんの話を聞いて渋々納得してカルガモを先頭にすると、5人は彼女の後ろ付きカルガモ探検隊となり一列に並んで道を歩き出した。すると、それからまだ五分足らずでカルガモは何かに気づいて足を止める。

 

 

「皆さんストップー!」

 

「ええ⁉︎何⁉︎」

 

「まさかセルリアン⁉︎」

 

「み、見てください!」

 

 

カルガモ探検隊の前に現れたのは………。

 

 

 

 

「危険な溝が!危険な溝が走っています!」

 

 

なんと地面に大きな亀裂が入っており、それが道に横一線に広がっていた。

 

 

「いや、絶対大丈夫でしょ……」

 

「ただの小さい溝だよ」

 

 

ドラえもんとカラカルはそれ程騒ぐほど大きいものではないと言うが、カルガモは「危険です!」と叫ぶ。

 

 

「ひとりでも落ちたらと思うと私は……私は……!」

 

(すごい心配性な人だな)

 

(相変わらず変な子ね…)

 

カルガモの人一倍心配性な性格に難を覚えながらもドラえもんは「どうするの?」と問うと、カルガモはその溝に向かって助走を付け、

 

 

「とう!」

 

 

大きく飛び、溝を超えると綺麗に着地して最後にはポーズまで決める。

 

 

「「すっごーーい!」」

 

「「ええーーー!?」」

 

 

すると、サーバルとキュルルはカルガモのジャンプに思わず目を輝かせながら拍手を送る。そんな2人にドラえもんとカラカルはそこまで凄いものなのかと困惑の表情を浮かべる。

 

 

「今のは普通でしょ?並みのジャンプだったでしょ⁉︎」

 

「さあ次は皆さんの番ですよ〜」

 

「聞きなさいよ人の話‼︎」

 

「ま、まぁ、落ち着いて」

 

 

カルガモにスルーされたカラカルをドラえもんはなんとか宥めようとする。一方、サーバルは次に溝を飛び越えたいと立候補する。

 

 

「じゃあいくよ〜。えーーい!」

 

 

サーバルは掛け声と共に溝を余裕で高く飛び越え地面に着地すると、カルガモのようにポーズを取る。

 

 

「え⁉︎それもやるの⁉︎」

 

 

カラカルはジャンプだけじゃなくポーズを取る事も知ると、思わず嫌そうな顔になる。

 

 

「次はカラカルです。ジャンプは得意だと聞いていますよ?見せて頂きましょうか!」

 

「グヌヌ…」

 

 

カルガモをカラカルに煽るように言うと、カラカルは顔を歪める。しばらくするとカラカルは腹をくくり、覚悟を決める。

 

 

「そんなに言うなら見てなさーーーい!」

 

 

カラカルは地面を蹴り上げると先ほどのサーバルのジャンプと比べて高く飛びあがらないが、サーバルとカルガモが着地した位置よりも奥へと着地し、顔を赤くしながらもポーズを決めた。

 

 

「失格!」

 

「何でよ!?」

 

 

カラカルはカルガモに失格と言われて思わず吠える。わざわざ恥ずかしいポーズを決めてしまった上それが失格呼ばわりされた彼女は怒鳴らざるえなかった。

 

 

「私より前に出たら隊列が乱れるじゃないですか!」

 

「先に言ってよ!」

 

「言いました!」

 

 

カルガモとカラカルが言い争っている間にキュルルはサーバル達が飛び越えた溝を覗くと、溝は大きく見え思わず恐怖を感じて足をその場に止めてしまう。

 

 

「キュルルちゃん?」

 

 

すぐ隣にいたドラえもんはどうしたのだろうと思っていたが、直ぐに溝に怖がっていた事が理解できたドラえもんは溝に脅える彼女の手助けをしようとポケットに手を伸ばそうとする。

 

 

『ぼく一人の力で君に勝たないと、ドラえもんが安心して未来に帰れないんだ!』

 

 

不意に彼の言葉が過ぎる。

 

 

(いや、やっぱり道具は使わないでおこう)

 

 

ドラえもんは思い留まりポケットから手を引いた。こんな小さな溝ぐらいでこの先も道具に頼っていたら彼女の教育によろしくない。そう思ったドラえもんは意を決して彼女に話しかける。

 

 

「心配する事ないよキュルルちゃん。こんな溝大した事ないよ」

 

「え?」

 

 

ドラえもんは彼女に安心させるように言うと溝の前に立つ。

 

 

「やぁーー!」

 

 

そして、先に飛んだ3人と比べると平凡なジャンプをして、溝を飛び越え地面に着地するとキュルルに対して笑顔を浮かべながらポーズを見せる。

 

 

「ねぇ、こんなの簡単だよ」

 

「そうだよキュルルちゃんこんなのへっちゃらだよ!」

 

「足が短いドラえもんだって出来たんだからキュルルが出来ない事じゃないわ!」

 

「足が短いのは余計だ!」

 

 

サーバルとカラカルもドラえもんに便乗するように応援すると、先ほどまで怯えていたキュルルの顔は変わり、勇気を出して彼女達の応援を応えるように地面を蹴り上げ、溝を飛び越えて地面に着地すると彼女達に向かってポーズを決める。その姿を見てドラえもん達は彼女が一皮向けた事に喜びを感じた。

 

 

「合格です!」

 

「やったー!キュルルちゃんすっごーい!」

 

「やればできるじゃない」

 

「おめでとうキュルルちゃん!」

 

「うん、みんなのおかげだよ!ありがとう!」

 

 

サーバル達に褒められたキュルルは彼女達にお礼を言う。そして、カルガモの号令により再び一列に並ぶ。

 

 

「さぁ、皆さん絵の場所はこの先ですからね〜!私の後にしっかりついて来てください!」

 

「「「はーい!」」」

 

「ええー⁉︎まだこのノリ続けるの〜?」

 

 

カラカルはもううんざりだと言わんばかりの顔をするが、しばらくして満更でもない顔を浮かべながらも一列に並びながら道を歩いていくのだった。




フレンズ図鑑

カバ

偶蹄目カバ科カバ属

Hippopotamus

力が強く時には厳しく時には優しいフレンズ。
湖や河川、沼などの水辺近くで生活しているが、半水生の哺乳類で、1日のほとんどを水中で過ごしている。
主に夕方から夜間にかけて、陸上で草類や芽、茎、樹皮などを採食するが、50cm程もある幅広い筋肉質の唇は地面の草を食べるのに適していて、木の根などを掘り出すことはない。

アードウルフ

哺乳ネコ目ハイエナ科アードウルフ属

人見知りで臆病・引っ込み思案な性格のフレンズ。
草原やサバンナ、低木林などに生息する。単独で生活し0.5-2平方キロメートルの縄張りを形成する。夜行性で、昼間は巣穴で休む。巣穴は岩の隙間や自分で掘った穴のほか、ツチブタやトビウサギの古巣を用いることもある。

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第3話 ものれーる

まさか評価バーの色が早くも橙色に変わるとは思っても見ませんでした。これからも読者の皆様の期待に応えて頑張っていきます。


???「タカキも頑張ってるし、俺も頑張らないと」


カルガモの案内により絵の描かれた場所を目指すドラえもん一行は途中大きな危険(小さな溝)に遭遇するもの彼等はそれを乗り越えてまた一つ絆が深まった。そして、それから特にセルリアンや新たな危険とかに遭遇せず暫く歩いていると、一番前に歩いているカルガモが全員に足を止める様に指示した。

 

 

「はーい、皆さん止まってくださーい!」

 

「どうしたの?また地面でも割れているの?」

 

 

急に足を止める様に言ったカルガモがまた些細な事で大袈裟にリアクションを取るのかとドラえもんはそう思っていた。だが、カルガモはドラえもんの言葉に首を横に振って否定する。

 

 

「違います。目的地に着きましたよ」

 

「え、着いたの?」

 

 

カルガモが絵の場所に着いたと言いうと、其処にはキュルルが眠っていた建物とはまた違った形をした大きな建物が建てられていた。キュルルはスケッチブックを取り出すとドラえもん達と共にその建物と描かれている絵を見比べる。

 

 

「あれ?でも絵の場所と違うよ?」

 

「どう言う事?」

 

 

サーバルとキュルルが絵と目の前の風景が全くどころか一つも合っていなかった。絵には沢山の風車が建っているが、目の前にあるのは大きな建物に遠くまで建てられている乗り物のレールだった。サーバル達は何度も比較するが何処も一致するところは見当たらなかった。

 

 

「カルガモひょっとして道を間違えたんじゃないの?」

 

「とんでもない!私はそんな初歩的なミスを犯しませんよ!」

 

 

カラカルはカルガモが道を間違えたのかと疑うが、カルガモはそれを否定する。すると、ドラえもんはあるところを見つめて何かに気付き2人に話しかける。

 

 

「カルガモさんの言う通りだよ。それに絵の場所は多分あそこの事を言っているよ」

 

 

ドラえもんはカルガモを擁護する様に建物とは違った場所を指を指すと、其処には荒れた大地に絵に描かれていた風車が建てられていた。

 

 

「あー!あんな所にあった」

 

「たしかに絵の場所はあっているみたいだけど、少し雰囲気が異なるね」

 

 

サーバルとキュルルはスケッチブックの絵と実際の風景を比べてみると、ドラえもんもスケッチブックを覗いて比較してみると思わず目を細くした。

 

 

(あれ、おかしいな。いくらなんでも絵の風景と実際の風景が異なっている。どういう事だ?)

 

 

改めてキュルルの絵と実際の風景を比べるドラえもんは明らかに風景が全く違う事に気づく。

 

 

(ひょっとして見ている場所が絵とは違うのかな?)

 

 

ドラえもんは今いる場所が実際に絵の書いた場所ではないと考えるが、それ以上に何かが引っかかっている感じがするものの絵の場所はあっている事から取り敢えずそれはそれで納得をする。カラカルも絵の場所だと分かるとカルガモに頭を下げる。

 

 

「カルガモさっきは疑ったりして悪かったわね」

 

「いえ、お気にならずに。ところでキュルルさんは何かわかりましたか?」

 

 

ドラえもんが考えている横でカラカルは先ほどカルガモに絵の場所じゃないと疑った事に謝ると、カルガモは気にしていなかった。カルガモは視線をキュルルに移して何かわかったかと聞くが、キュルルは「う〜ん」と唸り声をあげながら考えている様子だ。

 

 

「お役に立てませんでしたか?」

 

「そ…そんな事ないよ!」

 

「そうだよ!カルガモが居なかったからここまでたどり着けなかったよ」

 

 

申し訳なさそうな表情を浮かべるカルガモに慌ててキュルルは否定をする。サーバルもここまで来れたのはカルガモのおかげだと言うが、カルガモは浮かない顔をしていた。キュルルはカルガモの浮かない顔を見て、どうしようかと悩んでいると持っていたスケッチブックに目が入る。

 

 

「あ、そうだ!」

 

「どうしたの急に声を上げて?」

 

 

急に声を上げたキュルルにドラえもんはどうしたのだろうと聞くとキュルルは「ちょっとね」と言って、色鉛筆を取り出してスケッチブックに何かを書き込んでいき、暫くして満足した表情を浮かべるとスケッチブックの紙を切り取った。

 

 

「え!?」

 

「ちょ!何やっているのよ!」

 

 

いきなりキュルルがスケッチブックから紙を切り取る行動に思わず驚きの声を上げるが、ドラえもんはキュルルが何をしたいのかすぐ理解した。

 

 

「はい」

 

「これは……」

 

 

キュルルからスケッチブックの紙を受け取ったカルガモは恐る恐る見てみると、途端にカルガモの顔は笑顔を浮かべる。カルガモがキュルルから受け取ったその紙は先ほどまで見ていた風車の絵であった。しかし、その絵は先ほどと比べて違う箇所がある。それは旗を振りながら先頭に立つカルガモとその後ろに一列で並んでいるサーバル達の姿があった。

 

 

「手伝ってくれてありがとう」

 

「わ!コレ私達!?」

 

 

サーバルとカラカルもカルガモの横から絵を覗き込み自分たちが絵に描き加わっている事に気がつく。

 

 

「うん、今日の思い出に……。お礼はこのくらいしかできないけど……」

 

「感動です!険しい道のりを一人も欠ける事なく乗り越え───こんな素敵なお礼まで……!」

 

 

すると、カルガモは嬉しそうに絵を掲げて辺りを踊り回り感動を表現する。その姿にサーバル達は思わず苦笑いを浮かべる。

 

 

「それ程険しくなかったけど……」

 

「まあまあ、いいじゃない」

 

 

大袈裟な事を言うカルガモに思わずツッコミを入れるが、サーバルはそんなカラカルを宥めると、突然ある事を思い出す。

 

 

「あれ、もしかしてキュルルちゃんはさっきカバ達と別れた時にもカルガモと同じ絵を渡したの?」

 

「うん、さっきまでいた湖にカバさんやみんなの絵を描いて渡したんだ」

 

 

サーバルはキュルルに此処へ来る前にもカバとアードウルフに絵を渡したのかと聞くと、キュルルは頷いて渡したと答える。それを横で聞いていたカラカルは不満気な顔をする。

 

 

「ちょっと!それなら渡す前に私達にも見せてくれたって良かったじゃない」

 

「ご、ごめん。次からはそうするよ」

 

 

絵を見せてくれなかった事にカラカルはキュルルに不満をぶつける。実はカラカルはキュルルがどんな風に湖の絵を描いたのか気になっていたのだ。

すると、キュルルは偶然視界にこの場所へ来た時に初めて見た建物が入る。その建物を見たキュルルは何故か懐かしく感じた。

 

 

「どうしたのキュルルちゃん?」

 

「いや、あの建物が気になって……」

 

 

サーバルにどうしたのかと聞かれたキュルルは目の前の建物に指をさした。サーバルとカラカルはその建物が一体なんだろうと互いに眉間に皺を寄せながら考えていると、ドラえもんが口を開いた。

 

 

「あれは恐らくモノレールの駅だよ」

 

「「「ものれーるのえき?」」」

 

 

初めて聞く単語にサーバル達は同時に首を傾げながら復唱する。

 

 

「駅というのはあそこにあるモノレールが止まれるようになっている建物の事を言うんだ」

 

「じゃあ、ものれーるってなに?」

 

「モノレールは駅と駅に繋がっているレールという道の上を走る乗り物なんだ」

 

 

3人はドラえもんのモノレールと駅についての説明を聞いて「へ〜」と口から理解した声を漏らした。

 

 

「ドラえもんちゃんって本当になんでも知ってるね」

 

「いや〜、それ程でも〜」

 

「その割には結構満更でもない顔をしているわよ」

 

 

サーバルに褒められたドラえもんは口では大した事無いと言っているが、カラカルは鼻の下を伸ばしているドラえもんに指摘する。

 

 

「けど、そのモノレールだっけ?キュルルはなんであの…えきが気になったの?」

 

「いや、駅の方じゃなくてモノレールの方なんだけど前に僕はあれに乗った事がある気がするんだ」

 

 

サーバルは何故キュルルが駅を気になったのかを聞くが、キュルルは駅ではなくモノレールが気になると訂正しつつ記憶が失われる前にモノレールに乗ってきたかもしれないと言うと、サーバルは目を輝かせる。

 

 

「じゃあ!あれに乗ればキュルルちゃんの巣に行けるかも!」

 

「いや、そう都合よく行くかしら?」

 

 

サーバルの発言にカラカルは不安を覚える。そしてキュルルも仮にモノレールに乗っても行く先にお家があるとは想像しづらかった。

 

 

「まあ、少なくともキュルルちゃんの記憶の手掛かりになるからあのモノレールを調べても多分損は無いと思うよ」

 

 

ドラえもんはモノレールを調べようと彼女達に提案をすると、突然カルガモは「あっ」と声を漏らして踊り回るのを止めて、キュルルに話しかける。

 

 

「ところで今更なんですけど、皆さんはどうしてこの絵の場所を探しているのですか?」

 

「ほんと今更ね」

 

「というか、さっきまで踊り回りつづけていたんだ……」

 

 

カルガモが絵の場所に到着してから聞いてくる事に思わずカラカルは呆れた表情を見せ、ドラえもんも苦笑いを浮かべながら自分たちが考え合っている間踊り回っていた事に、その隣でサーバルはカルガモに絵の場所を探している訳を伝える。

 

 

「うん、実は私たちはこの絵を頼りにキュルルちゃんの巣とドラえもんちゃんの友達を探しているの」

 

「キュルルさんはのおうちとドラえもんさんの友達ですか?」

 

「そう、カルガモは何か知らないかしら?あ、因みにドラえもんの友達はヒトらしいから」

 

 

サーバルとカラカルにお家とドラえもんの友達について知らないかと聞かれるとカルガモは暫く考える。

 

 

「う〜ん、残念ながら私は結構さばんなちほーを歩いてはほかのフレンズに道を案内していたりしますが、キュルルさん以外のヒトや巣については何も知りません」

 

「そっか「あっ、でも!」え?」

 

 

キュルルはカルガモは何も知らないと聞いて顔を伏せるが、カルガモの声を聞いて思わず伏せていた顔を上げる。

 

 

「私の知り合いにジャパリパーク中を旅しているフレンズがいます。その方ならもしかしたら何か知っているかもしれません」

 

「ジャパリパーク中を旅しているフレンズって、カルガモよりも団体行動が厳しそうね」

 

「あ、ははは、そうかもね」

 

 

カラカルはそのフレンズがカルガモよりも面倒くさそうなフレンズだと想像して嫌そうな表情を見せる。ドラえもんも苦笑いを浮かべながら同意する。

 

 

「それでそのフレンズはなんていう名前なんですか?」

 

「はい、その方の名前は……⁉︎」

 

 

ズシィィーーン!!!

 

 

瞬間、地面に大きな音が響き渡る。

 

 

「な、なんだぁー!?」

 

「一体何が起きたの!?」

 

 

いきなりの出来事にドラえもん達はパニック状態になるが、唯一サーバルが何かに気付く。

 

 

「みんなあそこを見て!」

 

 

サーバルが指をさした方向は先ほど見ていた風車のある丘であった。ドラえもん達は何も変わっていないじゃないかと思っていると、大きな足音を響かせながらその足音の持ち主が姿を見せる。

 

 

「せ、セルリアンだぁーー!」

 

 

丘の上から出てきたのはサーバル達が此処へ来る前に倒したセルリアンに似た姿をしたセルリアンであった。しかし、違うところが二つあった。それは目の前に現れたセルリアンの形はサーバル達が倒したカメラのような形ではなく映像を撮るテレビカメラの形をしていた。そして、二つ目は大きさが倒したセルリアンの約二倍のデカさだ。

 

 

「すっごーい!さっき見たのより大きいよ!」

 

「そんな呑気な事を言っている場合じゃないよ‼︎」

 

「これ程の大きさじゃ分が悪いわ。逃げるわよ!」

 

「に、逃げるって一体どこに……」

 

 

サーバル達は何処へ逃げようと周囲を見渡していると、

 

 

「皆さんこちらの建物に入ってください!」

 

 

カルガモが駅の崩れた壁の中から入るようにサーバル達に言うと、サーバル達は慌てて駅の方に入っていった。だが、駅の中に入っていたサーバル達を追いかけて来たセルリアンが勢いよく駅の壁に衝突し、その衝撃でカルガモは地面に倒れてしまった。

 

 

「あ、カルガモがさんが!」

 

「助けなきゃ!」

 

 

倒れたカルガモの姿を見てキュルルとドラえもんはカルガモを助けようと引き返そうとする。

 

 

「大丈夫!」

 

「だ、大丈夫って、このままだとカルガモさんがセルリアンにやられちゃうよ!」

 

 

だが、引き返そうとしたキュルルとドラえもんの腕をサーバル達が掴み引き止めた。サーバル達はカルガモなら大丈夫だと言っているが、目の前でカルガモがやられそうな姿を放って置く訳にいかなかった。

 

 

「大丈夫よ!あれはやられたふりをしているのよ!」

 

「ふり?」

 

 

すると、倒れているカルガモに対してセルリアンは鋭い爪を振り下ろすと、カルガモはそれをタイミングよく避ける。その姿を見てキュルルはホッとした。ドラえもんはカルガモの行動を見てある事を思い出す。

 

 

(そうだった!カルガモは仲間を危険から遠ざけるため()()という行動を取るんだ!)

 

 

カルガモの生態を思い出したドラえもんはカルガモが自分の身を犠牲にして囮の役を引き受けた事に少し心を痛めながらもサーバル達と共に駅の中にある階段を駆け上がり、モノレールが止まっているホームへと辿り着く。

 

 

「どうしよう行き止まりだよ!」

 

「どこかに逃げ道はないの!?」

 

 

どこにも逃げ道がない事にサーバルとカラカルは辺りを必死に見渡して逃げるところを探しいると、ドラえもんはモノレールが目に入る。

 

 

「モノレールに乗って逃げよう!」

 

「そうだね!って、あれ?」

 

「どうしたの?」

 

 

ドラえもんの意見に賛成したキュルルは何かに気付く。

 

 

「そ、それが入り口が開かないんだ!」

 

「そ、そんなー!?これじゃあ乗れないよ!」

 

 

ドラえもん達は何とかしてモノレールの扉を開けようとする。サーバルとカラカルは扉を開けようと扉を引っ張るが、ビクともしない。一方ドラえもんとキュルルは何処かに扉を開けるスイッチがないか探していると、扉に手の模様が付いている事に気付き、恐る恐るそれに触れると、扉が開いた。

 

 

「「うわぁぁああ!?」」バターーン!!!

 

 

だが、扉を開けようとしたサーバルとカラカルは急に開いた扉に勢い誤ってそのままモノレールの中へ転ぶ形で入った。

 

 

「サーバルちゃん!?」

 

「カラカルちゃんも大丈夫?」

 

「うみゃ〜、平気だよ」

 

「いてて、私も平気よ……あっ!」

 

 

すると、カラカルは何かに気づいた。カラカルの視線の先には海賊の帽子と眼帯をつけたキツネ?をデフォルメした様な()()の姿があった。

 

 

「ラッキーさん?」

 

「「ラッキーさん?」」

 

 

カラカルが誰に対して呼んだのかわからないドラえもんとキュルルはカラカルの視線の先を追いかける。視線の先にいたラッキーさんと呼ばれる物の姿を見て、ドラえもんは思わず呟いた。

 

 

「ロボット?」

 

「みゃ?違うよ、ラッキーさんだよー」

 

 

ドラえもんはラッキーさんの正体が自分と同じロボットである事に驚く。その隣にいたサーバルはドラえもんがラッキーさんをロボットと呼んだことから名前を間違えたと思いサーバルは訂正する。すると、その時ラッキーさんの瞳が発光する。

 

 

『アヅアエンイキものれーるハマモナク発車シマス。オノリノ方ハゴ注意下サイ───』

 

「ラッキーさんって喋れたの⁉︎」

 

「普段は喋らないの?」

 

 

カラカルの様子を見てキュルルはラッキーさんは普段は喋らないのかと思っていると、

 

 

『トビラシマリマース、ゴ注意下サイ』

 

「え、わっ!?」

 

 

ラッキーさんの声とともにモノレールの扉がプシューという蒸気の様な音を鳴らしながら閉まる。すぐ近くにいたキュルルは突然閉まった扉に思わず驚きの声を上げる。

 

 

『ハッシャシマース』

 

 

ラッキーさんの声とともにモノレールはゆっくりと動き出し、駅を出てレールの上を走り出した。サーバル達は窓の外から下を見下ろすとセルリアンが駅の中を暴れていた。

 

 

「やった!」

 

「これでセルリアンから逃げられるわ」

 

 

サーバルとカラカルはこのままモノレールが走り続ければセルリアンからの逃げられると安心する。しかし、その隣でドラえもんとキュルルはサーバル達とは反対に浮かない顔をしていた。

 

 

「けど、カルガモさんが……」

 

「僕たちの為に……」

 

 

自分たちの為に囮となったカルガモがどうなったかと不安になっていると、サーバルはその不安を払おうとする。

 

 

「大丈夫だよ、カルガモはとーってもすばしっこいから直ぐにセルリアンから逃げられるよ」

 

「だと良んだけど……」

 

 

サーバルに宥められるキュルルだが、それでもカルガモが今どうなっているか不安だった。

 

 

ガシャーーン

 

 

「「「「うわぁぁぁぁぁああ!!?」」」」

 

 

その時、駅にいた大型セルリアンはドラえもん達の乗るモノレールに標的を変え、レールの上に飛び乗ってモノレールを追いかけ始めた。

 

 

「セルリアンがこっちにやってきた!」

 

「私たちよりもすごいジャンプだね!」

 

「言ってる場合か〜〜ッ!!!」

 

 

自分たちが襲われそうだというのにこんな時でも呑気なことを言うサーバルにカラカルは思わずツッコムが、その間セルリアンは大きな足音を立てながら徐々にモノレールに近づいて来る。

 

 

「どんどん近づいてくるよ!」

 

「もっと速く走れないの!?」

 

『ムリダヨ』

 

「いや、其処は頑張りなさいよ‼︎」

 

『ムリダヨ』

 

 

もっとスピードを上げられないかとサーバルはラッキーさんに聞くが、ラッキーさんは無理の一言を即答する。カラカルも思わずツッコミを交えながら努力しろというが返ってきた返事は同じ一言だった。

 

 

「ど、ど、どうしよう⁉︎」

 

 

ドラえもん迫って来るセルリアンにパニック状態に陥っていると、キュルルは「あっ!」と何かを思いついた声を上げる。

 

 

「そうだ!ドラえもんスモールライトだよ!あれを使えばセルリアンを小さくできるよ」

 

「そうか!その手があったか!」

 

「「おお〜!」」

 

 

ドラえもんはキュルルの思いついた作戦を聞いて早速スモールライトを使おうとポケットに手を入れる。サーバルとカラカルも感心の声を上げながらドラえもんを見ていると、

 

 

「……あれ?」

 

 

突然ドラえもんは何かおかしい事に気付く。サーバル達もドラえもんの声を聞いて思わず首を傾げる。

 

 

「どうしたの?」

 

「いや、ちょっと待ってて」

 

 

もう一度ドラえもんはポケットに両手を入れるとそこから沢山のスモールライトに似たような形をしたライトを取り出した。サーバル達は恐る恐る出てきたライトを手に取ってみた。

 

 

「これもスモールライト?」

 

「でも、全然形が違うよ」

 

「似たようなのが結構あるのね」

 

 

余談だが3人が手に取った道具はそれぞれビックライトともどりライトに月光灯の三つだ。そして、更にドラえもんはライト系の道具を暫く出していると、漸く手の動きが止まる。それをみたサーバル達は不審に思い「どうしたの」と訪ねようとしようとしたら、

 

 

「……ない」

 

「「「え?」」」

 

 

と、ドラえもんの一言にサーバル達は疑問の声を上げ、暫くすると3人はドラえもんの言葉の意味を察した。

 

 

「ま、まさか……!」

 

「あんた……!」

 

「スモールライトを……!」

 

 

3人は今同じ事を考えていた。決してそうであって欲しくないと思いながらドラえもんにスモールライトはどうしたのだと問うと、ドラえもんは彼女たちの方に振り向く。

 

 

「あ、ははは、す、スモールライトを何処かで落としちゃったみたい」

 

「笑っている場合かーーッ‼︎」

 

「うわぁぁぁぁ!どんどん近づいて来る!」

 

 

笑って誤魔化そうとするドラえもんにカラカルが怒っていると、その間にセルリアンは段々とモノレールの距離を詰めていった。ドラえもんは迫って来るセルリアンを見て慌ててポケットに手を入れる。

 

 

「こうなったら空気砲!」

 

 

ドラえもんはスモールライトの代わりにポケットから黒色の筒(空気砲)を取り出すとそれを右手に装備する。そして迫ってくるセルリアンに向かって空気砲を向けた。

 

 

「ドカーン‼︎」

 

 

ドラえもんの爆発の様な声が引き金となり、空気砲から圧縮された空気の塊が発射され、セルリアンの巨体に命中する。しかし衝撃こそ与えたがダメージは与えられず、こちらに迫って来る

 

 

「くっ、今度はリミッターを解除だ!ドカァァァァーーン!!!」

 

 

ドラえもんは空気砲のリミッターを外すと、先程よりも強力な空気の塊を発射する。すると、セルリアンに命中してその巨体はバラバラになって吹き飛んでいった。

 

 

「すっごーい!ドラえもんちゃんセルリアンをやっつけちゃったよー!」

 

「はぁ〜、一時はどうなるかとおもったけど……」

 

「いや〜、それほどでも〜」

 

 

サーバルとカラカルは自分たちの危機を救ってくれたドラえもんにお礼を言うと、ドラえもんは顔を赤くしながら謙遜する。

 

 

「………」

 

 

だが、キュルルだけは呆然として先程までセルリアンがいたところを見ていた。それに気づいたカラカルはキュルルに話しかける。

 

 

「キュルルどうしたの?さっきから黙って……」

 

「あ、ううん、なんでもないよ」

 

 

カラカルの声を聞いて我に返ったキュルルはなんでもないと返事をすると、カラカルは「そう?」と言って納得する。

 

 

(なんだろう、あの時ドラえもんがセルリアンに攻撃した時に誰かいた様な気がする)

 

 

ドラえもん達はセルリアンに集中していた為、気がつかなかったがキュルルだけはセルリアンに空気砲のタイミングに合わせる様に攻撃した人影がいた様な気がしていた。だが、その人影はセルリアンがバラバラになると同時に消え、まるで最初からそんな物は存在していなかった様に見えた。キュルルはそう考えようとしたが、先程の人影について考えると奇妙な感覚を感じ、気がつくと無意識に自分の胸に手を当てていた。

 

 

(それになんだろうこの気持ち……妙に懐かしい様な気がする……)

 

 

なぜ懐かしい気持ちになるのだろう、その問いにはこの場にいる誰もわからない事だろう。キュルルは永遠にわからない謎を考えていると、

 

 

「みなさーん!大丈夫ですかー?」

 

 

その時外から聞き覚えのある声が聞こえてきてキュルルは我に返った。

 

 

「その声はカルガモさんって、ええっ!?」

 

「どうしたのキュル……ええっ!?」

 

 

先程自分たちの為に囮になってくれたカルガモの声が外から聞こえて、ドラえもんは窓の外を見て思わず驚きの声を上げ、キュルルもドラえもんに釣られて驚きの声を上げる。外にはモノレールと並行に飛ぶカルガモの姿があった。

 

 

「か、カルガモさん!?」

 

「そ、空を飛んでいるゥ!?」

 

 

ドラえもんとキュルルは目が飛び出るほどカルガモの飛んでいる姿に驚いていると、カラカルとサーバルは2人の驚いている姿を見て首を傾げながら話しかける。

 

 

「そこまで驚く事かしら?」

 

「カルガモは鳥のフレンズだからわたし達と違って頭に生えている羽で空を飛ぶことが出来るんだよ」

 

「「え、そうなの?」」

 

 

サーバルの説明を聞いて元々カルガモは飛べる様になっているのだと聞かされると、ドラえもんは思い出してみればフレンズは元々動物で鳥の動物がフレンズ化すれば飛べるのは当たり前だと気がつく。

 

 

「それでは皆さんここから先は別のちほーになりますのでわたしの案内はここまでで〜す」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

 

 

カルガモはそう言ってさばんなちほーに引き返そうとするが、カラカルは慌ててカルガモを呼び止める。

 

 

「帰る前にパーク中を旅している知り合いのフレンズの名前を教えなさいよ」

 

「あ、すいません!セルリアンが襲ってきたので言いそびれていました」

 

 

引き返そうとしたカルガモは知り合いのフレンズの名をまだ伝えていない事を思い出し、慌ててモノレールの隣を飛びながら話す。

 

 

「それでそのフレンズの名前はなんて言うんですか?」

 

「はい、その方はリョコウバトさんと言って様々のちほーを旅しているフレンズなので恐らくキュルルさんの巣について何か知っているかもしれません」

 

「わかったリョコウバトだね」

 

 

カルガモはサーバル達に知り合いの名を言うと、だんだんとモノレールから離れていった。

 

 

「それでは皆さん良い旅を〜!」

 

「ありがと〜!」

 

「さようなら〜!」

 

「カルガモさんも気をつけて〜!」

 

 

サーバル達はさばんなちほーに帰っていくカルガモにそれぞれ別れの挨拶とお礼を言いながら姿が見えなくなるまで手を振った。

 

 

の の の の の

 

 

カルガモと別れた後、サーバル達はこの後の方針について考え出した。

 

 

「それじゃあ、この後どうする?」

 

「取り敢えず今はこのモノレールに乗って、この先にあるちほーにキュルルちゃんと僕の友達を探そう」

 

「「「そうだね(ええ)(うん)!」」」

 

 

ドラえもんの意見を聞いてサーバル達は異議なしと言う代わりに頷きながら返事をする。

 

 

「そうだ!ねえ、キュルルちゃん。もう少しスケッチブックを見たら?さっきの絵みたいに何か描かれているかも」

 

「うん」

 

 

サーバルの提案を聞いてキュルルはカバンからスケッチブックを取り出してページを捲るといくつか絵が描かれていた。

 

 

「あれ?」

 

 

スケッチブックのページを捲っているとキュルルは何かを見つける。

 

 

(このページ……破り取られている)

 

 

絵が描かれているページと何も描かれていないページの真ん中に紙を雑に切り取られた後を見つける。そして更にページを捲るとまた一つ破り取られた後を見つける。

 

 

(こっちのページもだ)

 

 

何故スケッチブックの紙が2枚程なくなっているのか疑問に思うキュルルは記憶を失う前に誰かに絵を描いて渡したのかと考えていると、

 

 

『ツギハ アヅアエン マエ アヅアエン マエ』

 

 

その時ラッキーさんが次の駅の名前を報告する。それを聞いたキュルルは一旦考えるのをやめる。

 

 

「次の駅にはのび太くん達はいるかな?」

 

 

さっきまでいたさばんなちほーには結局のび太達はいなかった為、ドラえもんは不安そうにのび太達がこの先にあるアヅアエンと呼ばれるちほーにいて欲しいと思っていた。その様子を見ていたカラカルがドラえもんに話しかける。

 

 

「ドラえもんもう一度たずね人ステッキを使ってみたら?今度はちゃんとわかるかもしれないわよ」

 

「あ、そうだね!」

 

 

ドラえもんはカラカルの提案を聞いて少し元気が出てポケットからたずね人ステッキを取り出した。

 

 

『のび太くん達は何処?』

 

 

ドラえもんはそう言ってステッキから手を離すとステッキは真っ直ぐ続くモノレールの先へ倒れる。

 

 

「どうやらこの先にいるみたいね」

 

「うん、そうみたいだ……あ、そうだ。リョコウバトさんの場所も調べないと」

 

 

ドラえもんはたずね人ステッキを仕舞おうとしたが、キュルルの事を思い出してもう一度たずね人ステッキを床につける。

 

 

『リョコウバトさんは何処?』

 

 

先程と同様にドラえもんはステッキから手を離すと、先程倒れた同じ方向に倒れた。

 

 

「うーん、どうやらリョコウバトさんもこの先にいるみたいだね」

 

「けど、友達とリョコウバトも次の場所にいるとは限らないわよ」

 

「その時は駅でもう一度ステッキを使って確かめるよ」

 

 

カラカルにそう言うとドラえもんはたずね人ステッキをポケットにしまうと、外から夕日の光が窓から入り込む。

 

 

「それにしてももう日が沈んできたね……そうだ、みんなお腹は空いていない?」

 

「そういえば、今日はセルリアンに襲われたからお腹ぺこぺこだよ」

 

「わたしも〜」

 

「僕も」

 

「じゃあ、そろそろ夕飯にしようか」

 

 

ドラえもんは3人に腹を空かしていないかと聞くと案の定腹の音を立てながら空かしていた。それを見てドラえもんはポケットから何か道具を出そうとポケットに手を伸ばすが、

 

 

『チョット待ッテテ』

 

「ラッキーさん?」

 

 

其処へモノレールの先頭にいたラッキーさんがサーバル達の前にやってくる。彼女たちはどうしたんだろうと疑問を浮かべていると、席に座るキュルルの前に歩み寄った。

 

 

『チョットドイテ』

 

「あ、はい」

 

 

キュルルはラッキーさんに言われた通りに席から立ち上がってどいた。そして、ラッキーさんはシートに向かって軽く体当たりをすると、シートが開きそこから大量のじゃぱりまんやその他の食料が出てきた。

 

 

「あ!じゃぱりまんとジャパリパンだ!」

 

「椅子の下に入っているんだ……」

 

 

キュルルとドラえもんはまさか椅子の下に食料を仕舞ってあるとは思ってもみなく、呆然と椅子の下から出てきた食料を眺めているとラッキーさんが話しかける。

 

 

『コノものれーるハ駅ト駅トノ距離ガ一日カカルカラ、ソノ間ノ食料ヲ乗セテイルンダ』

 

「へぇ〜、それならこの先も安心だね」

 

「ところでドラえもんは何を出そうとしたの?」

 

「まあ、ちょっと道具を使ってみんなのご飯を用意しようと思ったんだけどね、これは次の機会に使うよ」

 

 

ドラえもんは自分の持つ秘密道具が活躍出来ない事に少し残念感を覚えながらもサーバル達と共にじゃぱりまんを食べ始めるのだった。

 

 

の の の の の

 

 

その頃、さばんなちほーにあるキュルルがいた建物の中では2人のフレンズが何かを探し回っていた。

 

 

(ロバさんの情報通り此処にいた痕跡がありますね)

 

 

茶色い帽子と桃色の服を纏った松ぼっくりの様な鱗のついた尻尾を生やしたフレンズはキュルルが眠っていた装置を観察している。

 

 

「ねえねえ、センちゃん」

 

(それにしてもこの場所は一体なんでしょうか)

 

「ねえったら!」

 

「ちょっとうるさいですよアルマーさん!」

 

 

センちゃんと呼ばれるフレンズはもう1人一緒に調査しにきたアルマーと呼ばれるフレンズに静かにする様に言う。彼女の目の前にはセンちゃんと似た格好をしているが肩や肘に膝にプロテクターを着けていた。

 

 

「見てみて、面白いの見つけたよー」

 

 

彼女が手にしていたのは何かの装置の操作パネルの様な物だ。しかも裏側には無理やり外した後が付いていた。それをみたセンちゃんは顔を青ざめる。

 

 

「何やっているんですか⁉︎わたし達が此処に来たのは遊びに来たんじゃなくて調査が目的ですよ!遊んでいる暇があったら貴方も何かターゲットが残した痕跡を見つけてください!」

 

「はーい、もうつまんないよー!」

 

(うう、こんな事ならアルマーさんを留守番にしてハシビロさんを連れてくるべきでした)

 

 

一緒にきたアルマーが全く調査しようとはせず、遊び始めてしまった事に悩まされるセンちゃんは溜息を吐きながら調査を再開しようとするが、アルマーが持っていた操作盤を放り投げる。

 

 

ドンガラガッシャーン!!!

 

 

その時アルマーの投げた操作盤が近くにあった部品の山にあたりそれが大きく崩れて激しい物音を立てる。瞬間、2人は土下座する形でその場に蹲った。

 

 

「きょ、今日はもう暗いですからまた明日にしましょう」

 

「そ、そうだね〜」

 

 

2人はそう言うと建物の外に出た。

 

 

「はぁ〜、それにしても何処にターゲットがいるんでしょうね」

 

 

そう言ってセンちゃんは胸ポケットからターゲットの絵が描かれた折紙を取り出すとその姿を見た。その隣でアルマーもその紙を覗き込む。

 

 

「というか本当にこんなのが存在するかな〜?」

 

「アルマーさん我々が依頼人を信じなくてどうするんですか。取り敢えず明日から近くにある湖に行ってそこで聞き込み調査をしますよ」

 

「はーい」

 

 

センちゃんに返事をするアルマーはそのまま自分たちの持つ縄張りへ帰っていった。そして、センちゃんの持つ紙に描かれていたのは全体的に青くて丸っぽい何かであった。それは何処と無くドラえもんの姿に似ているのだった。




フレンズ図鑑

カルガモ

カモ目カモ科マガモ属

Anas zonorhyncha

親子でお引越し、が印象的なカルガモのフレンズ。
河川や湖沼・湿地・干潟・水田などに生息する。
全体的に黒褐色で、顔は白っぽく二本の黒褐色線があります。口ばしは黒く先端は黄色でよく目立ちます。足は橙赤色。飛行時の翼下面の風切花の黒褐色と雨覆羽の白色の対照が鮮やかです。
仲間を危険から遠ざける為、「偽傷」という行動をとることができる。

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第4話 こーえん

何時も小説に感想を書いてくれてありがとうございます。そのおかげで小説の書くモチベーションが上がっていきます。これからも頑張って書いていきます。



???「見事だよ、諸君達にも聖戦士の資格があるとみた!」


モノレールで一夜を明かしたサーバル一行。朝日が昇り窓から太陽の光が射してカラカルの顔に当たり、彼女は若干眠気を感じながらも寝床として使っていたシートから起き上がると目元を擦りながら欠伸をする。

 

 

「ぅぅ、ふわぁぁ〜……」

 

 

まだ眠気が覚めきれないカラカルは足元がおぼつかなく、シートから降りると、反対側のシートに眠るサーバルとキュルルを起こそうと近づこうとするが、すぐ横でドラえもんが床に座りながら何かをしている事に気がつく。

 

 

「……ドラえもん何やってるの?」

 

「ん?あ、おはようカラカルちゃん」

 

 

ドラえもんはカラカルが起きたことに気づくとカラカルの方に振り返って挨拶をする。カラカルも挨拶を返そうとするが、ドラえもんが手に昨日使った空気砲と布切れを持っている事に気付く。

 

 

「それって確か昨日セルリアンを倒す時に使った道具よね」

 

「そうだよ。これは空気砲って言うんだ。昨日リミッター、力の制限を解除したから結構負担が掛かったんだ。だから手入れをしているんだ」

 

「ふーん」

 

 

空気砲を見て昨日の自分たちでも倒す事が無理な大型セルリアンを倒した事を脳裏に蘇らせる。

 

 

「たしかに昨日はあんな大きなセルリアンをあっという間に倒すなんて凄かったわね」

 

「いや、カラカルちゃんとサーバルちゃんは一発で倒せているじゃない」

 

 

ドラえもんを褒めるがドラえもんは謙遜な態度を取り、逆にカラカル達は自分たちよりも凄いと言うと、少し顔を赤くして照れた表情を見せる。

 

 

「ま、まぁ、あれはちょっと()()()()して力を上げてたから倒せたのよ」

 

「野性解放?」

 

 

またも始めて聞く言葉にドラえもんは首をかしげる。

 

 

「えーと、私でもうまく説明しにくいんだけど。なんて言うかこう、体の中から力が溢れるような感じなのよ」

 

「う〜ん、ちょっとわかんないかな」

 

 

カラカルの説明を聞いたドラえもんだが、いまいち理解出来ていなかった。すると、其処へラッキーさんがやってきた。

 

 

『野性解放ト言ウノハ、フレンズガ己ノサンドスターヲ消費シテケモノノ頃ノ力ヲ一時的ニ呼ビ覚マシテ、戦闘能力ヲ向上サセル能力ナンダ』

 

「へぇ〜、そうなんだ(所謂ドーピングみたいなものかな?)」

 

 

ラッキーさんの説明を聞いて一時的に能力を高める事から野性解放はフレンズにとってのドーピングだと思ったドラえもんだが、

 

 

「あれ、そういえばさサンドスターが無くなるとどうなるの?」

 

 

ドーピングは種類によっては副作用があるため、使うと体になんらかの悪影響を及ぼす事がある。それに伴って野性解放を使うと体内のサンドスターは減少して何か悪影響が起きるのではと思い、カラカルに聞くと、カラカルは一瞬顔を歪めるが直ぐに元に戻ると口を開いた。

 

「…サンドスターが無くなるt『マモナク アヅアエンマエ アヅアエンマエ』…ちょっ⁉︎ラッキーさん割り込まないでよ」

 

 

その時、タイミングが悪くラッキーさんがもうすぐアヅアエンに到着する事を報告した。

 

 

「そっか、もうすぐ着くならそろそろ2人を起こさないと」

 

報告を聞いたドラえもんはサーバルとキュルルを起こそうと思った後、先程ラッキーさんの報告の所為で聞きそびれたサンドスターが無くなるとどうなるのか改めて聞こうとカラカルの方に向く。

 

 

「それで言いかけたけど、無くなるとどうなるの」

 

「あー、それは後で話すわ。今は2人を起こすわよ」

 

 

そう言うとドラえもんは特に急いで聞く訳でもないから納得して「わかった」と返事をするとシートに横になって眠るサーバルとキュルルを起こしに行った。そして、この時カラカルは少し複雑そうな表情を浮かべていた。

 

 

の の の の の

 

 

「う、う〜ん。よく寝たぁ〜」

 

「ふわぁぁ〜」

 

モノレールがアヅアエンの駅に到着する頃にはサーバルとキュルルはまだ眠気が覚めきれていないが上体を起こし背伸びをした。

 

 

「2人ともおはよう」

 

「ドラえもんちゃんにカラカルもおはよう」

 

 

ドラえもんが起きたサーバル達に挨拶をすると2人は少し眠そうにしながらも、その場から起き上がる。

 

 

「2人は今日は早起きだね」

 

「いや、あんた達が起きるのが遅いだけよ」

 

 

カラカルはそう言いながら朝食のじゃぱりまんをサーバルとキュルルに渡した。2人はカラカルから受け取ったじゃぱりまんを食べようとしたが、サーバルが窓の外の景色に気がつき、目を輝かせる。

 

 

「うわぁ〜!何あれ何あれ⁉︎」

 

 

サーバルが目にしたのはさばんなちほーには存在しない植物である竹で、彼女にとって珍しいのか好奇心がうずいていたのだ。

 

「ねぇ、あれってなんて言う木なの?」

 

「あれは『アレハ竹ダヨ』dよ…って、被らないでよ!」

 

 

キュルルの質問に答えようとしたドラえもんだが、ラッキーさんが被るように答えた。自分の活躍の場を取られたドラえもんは咳払いをした後、改めて子守り用ロボットとして口を開く。

 

 

「竹ってどういう木なの?」

 

「ゴホン、竹はs『竹ハ木ト草イマダニドチラノ植物ナノカワカッテイナインダ』nだ……って、だから僕が説明しようとしたのに‼︎」

 

「まあまあ、落ち着きなさいって」

 

 

またしても出番を取られてしまったドラえもんは怒るが、カラカルが宥める。一方キュルルは先ほどからドラえもんの台詞を被るようにするラッキーさんの行動をみて思ったことを口にする。

 

 

「ひょっとしてラッキーさんはガイドがしたいんじゃないのかな?」

 

「そうなのラッキーさん?」

 

 

キュルルの考察を聞いたサーバルはラッキーさんに問い詰める。

 

 

『………』

 

 

だが、ラッキーさんはサーバルに返事を返さず無言を貫く。

 

 

「なんで返事をしないの〜?」

 

 

不満そうな表情をしながらサーバルはラッキーさんに何故無言なのかを問うが、その問いにも答えなかった。その様子を見てドラえもんは流石に変だと思い話しかける。

 

 

「ねぇ、ラッキーさんはどうしてサーバルちゃん達と会話しないの?」

 

 

すると、ドラえもんの声に反応して体をドラえもんの方向に向ける。

 

 

『僕達ラッキービーストハ極力フレンズトノ干渉ハ禁止サレテイルンダ』

 

「らっきーびーすと?」

 

「それがラッキーさんの本当の名前なの?」

 

 

サーバルとカラカルはラッキーさんが言ったラッキービーストという名が本名なのかと思っていると、ドラえもんはある事に気がつく。

 

 

「あれ?フレンズとお話が出来ないのにみんなはどうしてラッキーさんって呼んでいたの?」

 

 

フレンズはラッキーさんと会話が出来なければラッキーさんの名前を知ることが出来ないはずなのに知っている矛盾がある事にドラえもんはその事についてサーバル達に問いかける。

 

 

「結構前までは()()って呼ばれていたけど、博士達がラッキーさんって名前を広めたのよ」

 

「まあけど、今も一部のフレンズはラッキーさんの事をボスって呼んでいるんだ」

 

「ボス?」

 

(それにしても博士だっけ?その人はもしかしてフレンズじゃなくて人なのかな?そうだとしたらその人に会ってジャパリパークについて詳しく聞いた方が良さそう)

 

「あ、そういえばセルリアンに追われていた時にサーバルちゃん達の声に反応していたよね」

 

「言われてみればそうね」

 

 

サーバルはセルリアンが追いかけていた時に無我夢中でラッキーさんにモノレールの速さを上げるように言った時にラッキーさんが「ムリダヨ」と答えていたのだ。

 

 

「あれ?じゃあ、なんであの時はおはなし出来たんだろう」

 

「たしかにそうよね。ラッキーさんってわたし達と会話が出来ないのにあの時だけ話せていたなんて不思議よね」

 

 

改めてその時の出来事を思い出した2人は何故だろうと疑問符を浮かべる。それを見たドラえもんはサーバル達の代わりにラッキーさんに聞いてみた。

 

 

「ラッキーさんそこら辺はどうなの?」

 

『僕達ハ例外トシテオ客様ノ緊急事対応時ノミ干渉ヲ許サレルンダ』

 

「そっか、ラッキーさんも大変なんだね」

 

 

同じロボットとして自由に行動ができないラッキーさんに共感してドラえもんは同情し、隣で聞いていたサーバルもラッキーさんが可哀想だと思っていた。一方カラカルはキュルルに話しかけていた。

 

 

「ところでキュルル、スケッチブックにはここら辺の絵は描かれていないの?」

 

「ちょっとまってて」

 

 

キュルルはカラカルに言われてスケッチブックのページを開き、暫く捲って探していると、あるページを見つける。

 

 

「あったよ!」

 

「どれどれ」

 

「見せて見せて〜!」

 

 

キュルルが見つけたページを横からカラカル達が覗くと其処には丁度外にある竹林と同じ光景が描かれた絵があった。

 

 

「どうやら次はこの竹林に手掛かりがありそうだね」

 

「でも、これって周りは全て同じ景色だから何処らへんで描いた絵かわからないよ」

 

 

スケッチブックに描かれている竹林の絵が外の景色と全て同じである為、全く見分けのつかない事にサーバルは悩んだ。

 

 

「そうね……ねぇ、もうちょっと特徴のある絵はないの?」

 

「えっと……あ、あった!」

 

 

キュルルは竹林の絵のページを捲ると其処には同じ竹林の絵だが先ほどと違って滑り台やブランコが描かれていた。

 

 

「これは公園かな?」

 

「こーえん?」

 

「要するに小さな遊び場みたいなものだよ……あれ?」

 

 

ドラえもんはサーバルに対して公園について特に被る事なく説明出来た事に疑問に思いラッキーさんの方に振り返ると、ラッキーさんはただドラえもんの方を見つめていただけだった。

 

 

「あ、そっか、ラッキーさんが反応するのはキュルルちゃんや僕しかいなかったんだ」

 

 

ラッキーさんはフレンズと会話できない事にドラえもんは納得した。そして、キュルルは公園の描かれた絵とモノレールの外に広がる竹林を見て不安そう表情を浮かべていた。

 

 

「それにしてもこんな広いところでこの公園を見つけられることが出来るかな?」

 

『チョット待ッテテ』

 

「ラッキーさん?」

 

 

すると、ラッキーさんは目を緑色に点滅させて、それから3分が経つと緑色の光が収まりキュルルの方に向いた。

 

 

『今、コノ近クニイルラッキービーストヲ駅ノ前マデ呼ンダカラ公園マデハソノ個体ニガイドシテモラウンダ』

 

「えっと、どういう事?」

 

 

突然のラッキーさんの話にドラえもんとキュルルは理解出来ていなかった。

 

 

「よくわからないけど、駅の外に行ってみればわかるんじゃないかな?」

 

「じゃあ、早速行ってみようよ!」

 

 

サーバルはそう言ってモノレールから出るとその後をカラカル、キュルル、ドラえもんも続く。だが、ドラえもん一旦足を止めてモノレールから一歩も出ないラッキーさんの姿に気付く。

 

 

「どうしたのドラえもんちゃん?」

 

「ちょっとみんなは先に行ってて、ちょっと気になる事があるから」

 

 

ドラえもんはサーバル達にそう言うと、モノレールの方へと引き返しラッキーさんの前にやってきた。

 

 

『ドウカシタ?』

 

「いや、ラッキーさんはどうしてついてこないのかな?」

 

『僕ノ仕事ハオ客様ヲものれーるヲ運転スル事デ、オ客様ヲ案内スル仕事ジャナインダ』

 

 

ラッキーさんは自分がドラえもん達と共に行動できない理由を言うと、ドラえもんは納得する。

 

「そうなんだ。じゃあ、ラッキーさんはまた別のちほーまでモノレールを運転するんだね」

 

ラッキーさんは元々モノレールを運転するのが仕事だ。なら、いつまでもこの駅に留まっている訳ではない。そう思ったドラえもんはラッキーさんにここまで乗せて行ってくれたお礼を言おうとするが、

 

 

『ソレハ違ウ。現在コノものれーるハ貸シ切リ状態デ、オ客様ハ君達ダケナンダ』

 

「え?つまり、ラッキーさんは僕達が帰ってくるまで待っているって事?」

 

『ソウダヨ』

 

 

ドラえもんはラッキーさんが自分たちの帰りまでモノレールを動かさない事に嬉しく思うが、

 

 

「でも、僕達以外の人にも乗せないのは不味いんじゃないかな?」

 

 

自分達の為に他のお客さん達に迷惑になるのはとても申し訳ないと思っていると、ラッキーさんは話を続けた。

 

 

『大丈夫、現在コノパークニハオ客様ハ君達シカイナインダ』

 

「それはどういうk「ドラえもーん!早く来なさいよ」

 

 

ラッキーさんに言葉の意味を知ろうとしたが、其処へカラカルが大きな声でドラえもんの名を呼んでいた。どうやら声の様子から待ちくたびれているようだからこれ以上長く会話は出来ない。

 

 

「わかった今行くよ!ラッキーさん話の続きは帰ってきたらしよう」

 

『ワカッタヨ』

 

そう言ってドラえもんはラッキーさんにモノレールの留守番を任せて駅の外で待っているサーバル達の元へと向かった。

 

 

の の の の の

 

 

駅から出たドラえもんはサーバル達と合流して周囲の光景を見渡すが、一面竹林が広がっていた。

 

 

「本当に此処は竹ばかりね」

 

「これはこーえんを見つけるのがとても大変そうだね」

 

 

サーバルとカラカルは周りが竹林ばかりしか無く此処から公園を見つけに行くのに一苦労しそうだと思っていた。

 

 

「こうなったらここら辺に住んでいる子に聞いてみるしかないね」

 

「それはいい考えだ!じゃあ、こういう時はたずね人ステッキを使って探し出そう!」

 

 

一方、キュルルは近くにいるフレンズから聞き込みを行うと提案すると、ドラえもんはそれに賛成し、こういう時に役に立つたずね人ステッキを使おうとポケットの中を漁りだす。

 

 

ガサガサ

 

 

その時、ドラえもん達の目の前にある茂みが音を立てた。その音に気づいたドラえもん達は一斉に茂みに意識が集中する。

 

 

「な、なに⁉︎」

 

「キュルルは私たちの後ろに隠れて!」

 

「う、うん!」

 

キュルルはドラえもん達の後ろに隠れるとドラえもん達はキュルルを守るように戦闘の構えを取る。そして、目の前の茂みはさらに激しく揺れると、そこから在るものが出てきた。それを見たドラえもん達は目を丸くした。

 

 

「あ、あれ?」

 

「あれって、もしかして」

 

 

そこに現れたのは先ほどまでモノレールで留守番をしていたラッキーさんだった。

 

 

「ら、ラッキーさん⁉︎」

 

「あ、あれ?でも、ラッキーさんは今モノレールに居るはずなんじゃ……」

 

 

キュルルとドラえもんは現れたのは知り合いであるラッキーさんだと安心したが、後ろの駅の中にいるラッキーさんが目の前に現れた事におかしい事だと気づく。何故なんだろうと2人は考えようとしたが、

 

 

「なんか勘違いをしていそうだから言っておくけど、そこにいるラッキーさんはさっき別れたラッキーさんとは違うから」

 

「え、違うの?」

 

 

カラカルの発言を聞いたキュルルは更に頭を悩ませる。その隣でドラえもんはカラカルの言っている意味を理解してきた。そして、この後のサーバルの発言を聞いて確信を得た。

 

 

「そうだよ、ラッキーさんは色んなところに沢山いるんだ」

 

「成る程、つまりラッキーさんはジャパリパークの至る所にいるわけか」

 

 

ドラえもんはラッキーさんがジャパリパーク中に沢山いると知ると同時に自分と同じ量産型のロボットだと分かると益々親近感が湧いてきた。

 

 

「そっか、このラッキーさんは今モノレールにいるラッキーさんとは別人って事だね。よく見たら結構違うところがあるしね」

 

 

キュルルは目の前のラッキーさんとモノレールにいるラッキーさんの見た目を思い出して比較してみた。冷静に確認してみると今目の前にいるラッキーさんの体の色はドラえもんのように青く。モノレールにいるラッキーさんと違って帽子や眼帯などはつけては居なかった更にはお腹に付いている装飾品のレンズの形はシンプルな四角となっていた。

 

 

「本当にそうだね、青い体の色をしているからドラえもんちゃんと同じ色だね」

 

 

このラッキーさんがドラえもんと色が似ていると言うとカラカルとキュルルも頷いて同意すると、サーバルは先ほどモノレールで別れたラッキーさんの台詞を思い出した。

 

 

「あ、そういえばものれーるに乗っていたラッキーさんは他のラッキーさんを呼んで公園を案内してくれるって言っていたよね?」

 

「てことはこのラッキーさんが公園まで案内してくれるって事?」

 

「多分そうだと思う」

 

 

目の前に現れたラッキーさんがモノレールにいるラッキーさんが呼んだ案内役だと思うと、全員は一斉にラッキーさんに視線を向ける。すると、ラッキーさんは「ピョコピョコ」と可愛らしい足音を立てながらドラえもんとキュルルの前に来ると2人の顔を見上げた。

 

 

『初メマシテ、僕はラッキービーストダヨ。よろしくネ』

 

「よろしく」

 

「こちらこそよろしく」

 

ラッキーさんはドラえもんとキュルルに挨拶をすると、2人も挨拶をして返した。そして、その様子を見ていたサーバルは何かを思いつき、キュルルの隣に立った。

 

 

「ラッキーさん私はサーバルだよー」

 

『………』

 

 

サーバルはドラえもんとキュルルの後に話しかければもしかしたら会話する事が出来ると思ったが、ラッキーさんはサーバルとは会話せず黙ってしまった。

 

 

「やっぱり駄目か〜」

 

「諦めなさいよサーバル」

 

 

サーバルはラッキーさんと会話出来ない事にガッカリしてしまう。それを見たカラカルは呆れた表情を見せる。そして、ラッキーさんはドラえもん達と会話を続ける。

 

 

『君タチの名前はドラえもんとキュルルで良いカナ?』

 

「あ、はい」

 

「たしかに僕たちの名前だけど、なんで知っているの?」

 

 

ドラえもんは自分たちはまだ自己紹介をしていないのに何故ラッキーさんは名前を知っているのか不思議に思い、知っている訳を聞くと、ラッキーさん答えた。

 

 

『モノレールの操縦をするラッキービーストから君タチの名前と情報を交信したカラ知っているヨ』

 

「へぇ〜、そうだったんだ」

 

 

恐らくモノレールにいるラッキーさんが話をスムーズに進めやすいように前もって伝えてくれたのだろうと考えた。

 

 

「じゃあ、君が僕たちを案内してくれるの?」

 

『ソウダヨ、アヅアエンのガイドは僕に任セテ、君タチは何が見たい?』

 

 

キュルルの問いにラッキーさんは肯定すると、ドラえもん達に何処が行きたいかを聞いてきた。それを聞いたキュルルはカバンからスケッチブックを取り出した。

 

 

「じゃあ、僕たちは此処に行きたいんだけど……」

 

『検索中…検索中』

 

 

キュルルは公園の絵をラッキーさんに見せると、ラッキーさんは目を光らせて自身の持つアヅアエンの地図データと絵に描かれた公園の場所を探し出した。暫くすると目の光は収まり、再びキュルルに話しかけた。

 

 

『目的地は自然公園で良いカナ?』

 

「自然公園?よくわからないけど、其処でお願いします」

 

 

ラッキーさんはキュルルから公園までの案内をするかと問うと、キュルルはラッキーさんに了承した。

 

 

『じゃあ、自然公園までのガイドを開始するヨ。よろしくネ』

 

「こちらこそお願いします」

 

 

ラッキーさんを先頭にドラえもん達は竹林の中にある道を歩き出していった。

 

 

の の の の の

 

 

ラッキーさんに公園までの案内をさせてもらっているドラえもん達一行はいつまでも続く変わらぬ竹林の光景に少し飽きてきていた。

 

 

「それにしてもさっきから同じ景色だね」

 

「なんかこう見るとさばんなちほーと比べて此処は殆どが竹だからあまり目立ったものはなさそうね」

 

「そうかな?結構竹林は珍しくて良いと思うけど」

 

さばんなちほーに住んでいたサーバルとカラカルは特に面白そうなところがない事に少し楽しくなさそうな表情を浮かべていた。逆にドラえもんは和の文化の一つである竹に馴染み深い為、辺りを見渡しても飽きることはなかった。

 

 

「それにしても、『竹』って細いけど大きいよね」

 

「しかも、ツルツルしてるみたいだから木登りには向いていない感じね」

 

 

サーバルとカラカルは近くの竹で爪研ぎをするが、やり難いのか微妙な表情を浮かべている。そんな2人につられてキュルルも竹を触り始める

 

 

「ホントだ。それに……とてもグラグラするね」

 

『竹h「竹は水を通さない節で複数に仕切られていて、中身はほぼ空洞に近いんだ」……』

 

「そうなんだ!それにしても大きい竹だよね。……でも、なんで小さい竹が見当たらないんだろう」

 

『それはt「それは竹の成長するスピードが速いからだよ。1番成長する時では1日に1m以上……あー、僕達の背の高さよりも大きく伸びるんだ」アワワワ』

 

「そうなんだね……って、ラッキーさん⁉︎」

 

 

モノレールの時とは逆にガイドの言葉を遮る形でドラえもんが説明を行い始めたせいか、ショートしてしまう。

 

 

「でも、さすがにたった1日でそんなに大きく伸びるのかしら?」

 

「ううーん、確かにカラカルの言う通りかも……」

 

 

サーバルもカラカルと同じく、半信半疑の意をドラえもんに見せる。するとドラえもんは

 

 

「うーん、……それじゃあ実際に成長するところ見てみる?」

 

「「「え?」」」

 

 

3人が呟いた後、ドラえもんは四次元ポケットから細長い形状の容器を取り出した。

 

 

「アットグングン〜!」

 

 

取り出した新しいひみつ道具にサーバルは竹林を見た時と同じように目を輝かせる。

 

 

「あっとぐんぐん?何それ!食べれるの?」

 

「食べちゃ駄目だよ!これは生き物が"あっというまにグングン"成長させる栄養剤なんだ」

 

「あっという間にって、そっちの方が信じられないんだけど……」

 

「私、見てみたい!見てみたーい!」

 

「僕も見てみたい!」

 

「それじゃあ、えぇっと……あったあった」

 

 

カラカルとは対照的に興味津々な2人の期待に応え、ドラえもんが竹の根元で声を上げる。キュルル達が注目するとそこには、小さな茶色いものが地面から生えていた。

 

 

「ドラえもん、これって何?」

 

「これは"タケノコ"と言って竹が大きく成長する前の姿なんだ」

 

「えーっ!これが竹なの?こんなに小さいの⁉︎」

 

「だとしたらますます信じられないわね……」

 

「まぁ、見てて。このタケノコにアットグングンを少々……」

 

 

ドラえもんはタケノコに粉末状のアットグングンを振りかけると、急いでその場から離れる。するとタケノコはみるみるうちに大きく成長していき10秒もかからず周りと同じような高さまで伸びきってしまった。

 

 

「す、すっごーーい!!ホントに大きくなっちゃった!」

 

「な、中々やるじゃない。……でも、さっきまで小さかったのにあそこまで伸びるなんて……」

 

『アワ、アワワワワワワ』

 

「ああ!またラッキーさんが!」

 

 

サーバル達が関心する中、ガイドであるラッキーさんはドラえもんのひみつ道具によって引き起こされた超常現象に対して、その場で震えるしかなかった。

 

 

の の の の の

 

 

ドラえもんの竹についての勉強会が終わり、暫く竹林を歩いているが一向に景色は変わらず、此処に住んでいるであろうフレンズすら遭遇しなかった。

 

 

「ラッキーさん本当にこの道であっているの?」

 

『任セテ、公園は其処の道を左に曲がればあるヨ』

 

 

キュルルは復活したラッキーさんに公園までの道は合っているのか聞くとラッキーさんは器用に小さな足でキュルルに体を向けて後ろ歩きをして会話をする。それを聞いたサーバル達は絵にあった公園は一体どんなものなのか楽しみに思い、道を左に曲がると広いところに出た。

 

 

「あれ?」

 

「これはどう言うこと?」

 

 

しかし、サーバル達が思っていたものとは異なり其処には滑り台やブランコやその他遊具は何処にも存在しなかった。

 

 

「こーえんが無いよ!」

 

「ラッキーさん公園は一体何処に…?」

 

 

サーバル達はラッキーさんに公園がないと確認を取ろうと視線をラッキーさんに移すと、

 

 

『マ、マママ、ママ、マカ』

 

「「「ラッキーさん!?」」」

 

「これはまたショートしちゃったみたいだ」

 

 

突然ラッキーさんは公園が存在しない事態にフリーズし、サーバル達は不安そうな表情になる。ドラえもんもラッキーさんがこんな事態を想定していなかった事に気付く。

 

 

「ひょっとしてラッキーさんは道を間違えたのかな?」

 

「というかそもそも公園の絵は別のちほーで描いたんじゃないの?」

 

「どうだろう……」

 

ラッキーさんが道を間違えたのかとサーバルとカラカルは言うが、それを確かめる術がないキュルルはどうすれば良いか考えていると、その隣でドラえもんは何か閃く。

 

 

「よし、それなら()()の出番だ!」

 

「え、()()?」

 

 

急にドラえもんはポケットに手を入れ中を暫く漁るとそこからある道具を取り出した。

 

 

「◎✖️占い〜!」

 

 

ドラえもんが出したのは赤い◎と青い✖️形をした物体だった。また始めてみる道具にサーバル達は興味津々でその道具を見ていた。

 

 

「今度はどんな道具なの?」

 

「これは◎✖️占いと言って、この◎と✖️に向かって質問をすると確実に答えてくれる道具なんだ」

 

「へぇ〜、じゃあそれを使って公園の場所を探すんだね」

 

「そうだよ。じゃあ、早速、『公園は此処?』」

 

◎ピンポーン

 

 

すると、ドラえもんの声に反応して地面に置いた◎が宙に浮かんだ。

 

 

「これって、つまり……」

 

「公園は此処って事?」

 

「そうみたいだね」

 

 

◎✖️占いが◎と反応を示した為、ここにあるのはわかったが、肝心の公園の遊具は何処にも見当たらなかった。すると、今度はサーバルが◎✖️占いに向かって質問をする。

 

 

「じゃあ、『こーえんは何処にあるの?』」

 

 

サーバルはこの質問なら公園の詳しい場所について何か知ることが出来るだろうと思ったが、◎と✖️はどちらも宙に浮かばなかった。

 

 

「あれ?どっちも浮かばないよ」

 

「ドラえもんこれはどういう事?」

 

「あ〜、それが◎✖️占いは質問が◎と✖️つまり、()()()()()のどちらかで答えられる質問じゃ無いと動かない仕組みなんだ」

 

「なんでも答えるって訳じゃ無いのね」

 

 

カラカルはドラえもんの道具はなんでも万能ではないとわかり、少し残念な顔を浮かべる。

 

 

「困ったな、これじゃあ公園の場所がわからないな」

 

「なんか良い質問はないかな」

 

 

彼等はこのままでは公園を見つけることができないと困り果てていると、

 

 

「みゃ?」

 

「どうしたのサーバル?」

 

 

サーバルが空き地の奥に視線を移した。カラカルはそんなサーバルにどうしたのかと聞く。

 

 

「いや、あそこに誰かいるよ」

 

「「「え?」」」

 

 

サーバルは広場の奥の方に指を指すと3人もつられて指の方向に顔を向けると、其処にはたしかに人影らしきものがいた。4人は正体を知るべく、その人影に近づくと思わず目を見開く。その人影の正体は白いセーラー服と黒のスカートを履いた少女が倒れていた。

 

 

「だ、大丈夫⁉︎」

 

「ま、まさかセルリアンに襲われたの⁉︎」

 

「ドラえもんなんとかならない⁉︎」

 

「ま、待ってて今お医者さんカバンを出すから!」

 

 

目の前で倒れている少女を見て全員はパニック状態になっていた。そんな中ドラえもんはパニックになりながらも、その少女を助けようとポケットの中を漁っていると、

 

 

「ふわぁ〜〜、よく寝たぁ〜」

 

「「「「…え?」」」」

 

 

すると、突然倒れていた少女は大きく欠伸をしながら上体を起こした。それを見た彼等は思わず目が点になって呆然とする。

 

 

「あれぇ、あなたちだれぇ?」

 

 

目を覚めたら目の前にいるドラえもん達に名前を聞くが、まだ眠気が覚めない少女はちゃんと舌が回らなかった。対してドラえもん達はその少女の声に意識が戻る。

 

 

「あ、わ、私はサーバル。こっちは友達のカラカルにキュルルちゃんとドラえもんちゃんだよ」

 

「どうも」

 

「よろしく」

 

「はじめまして」

 

 

4人はそれぞれ挨拶をすると、少女も欠伸をしながらも自己紹介をする。

 

 

「私はジャイアントパンダァ〜〜」

 

(確かにこの白と黒の髪に服はジャイアントパンダの特徴を捉えている)

 

 

目の前の少女がジャイアントパンダだと知ったドラえもんはその少女の姿をよく見てみるとちゃんとジャイアントパンダの白と黒の模様がある事にジャイアントパンダだと納得した。その隣でサーバル達はジャイアントパンダに心配そうに話しかける。

 

 

「大丈夫?こんな所で倒れて」

 

「んあ?お昼寝していただけだよぉ〜」

 

「昼寝!?こんなところで!?」

 

「そう、どんな所でも寝れるのが私の特技なんだぁ〜」

 

「なんだ、そうだったんだ」

 

(この子、まるでのび太くんみたいだな)

 

どんな所でもすぐ寝てしまうジャイアントパンダの特技に親友である彼と同じ特技である事に何処と無く親近感と複雑な感情を感じていた。

 

 

(本当ならこんなところで寝ているのは危ないって注意したいけど、元々の動物だった彼女たちの習性を考えると注意できないな)

 

 

ジャイアントパンダは1日の半分は食事で残りは睡眠を取っているのだ。そう考えるとドラえもんは注意することは出来ない。一方ドラえもんがそんな事を考えているのを知らないサーバル達はジャイアントパンダの様子からして此処に住んでいるフレンズだとわかり、公園の場所を聞こうと公園の絵を見せた。

 

 

「あの、僕たちこの絵の場所を探しているんだけど、知りませんか?」

 

「あ───知っているよぉ〜〜」

 

「「本当!?」」

 

「やったわね!これで探していた公園の場所がわかるわね」

 

「うん」

 

 

ジャイアントパンダが公園について知っていると分かると彼等は喜びの表情を浮かべると、ジャイアントパンダに公園の場所について聞こうとする。

 

 

「それでこーえんは何処にあるの?」

 

「えっとねー、なんとその場所はぁ〜ほんとうはぁ〜ここのねぇ──」

 

「あれ?」

 

 

キュルルはジャイアントパンダの様子がおかしいことに気付く。すると、彼女の瞼は次第に閉じて段々と声が小さくなっていく。

 

 

「ここ…にょ…」

 

 

やがてそれが最後の一言となり睡魔に耐えられずその場に倒れて、イビキをかきながら寝始めた。

 

 

「ぐぅ〜〜〜〜〜」

 

「えええええっ!?」

 

「喋りながら寝た⁉︎」

 

「どうしよう……」

 

 

サーバル達は会話中に寝てしまったジャイアントパンダをどうしようと相談するが、実際に会話中に寝る人と接したことが無いためどうするか悩み出した。

 

 

「どうしようったって……ドラえもん何とかならない?」

 

 

カラカルは今までのドラえもんの行動を見てきてこういう時はどうすれば良いのか相談をする。

 

 

「そ、そんな急に言われても、取り敢えず起こして聞いてみるしかないね」

 

「そ、そうね!ねぇ、起きなさいよ。此処を教えてくれるだけで良いんだから!」

 

 

ドラえもんの考えを早速実行し、カラカルはジャイアントパンダの肩を揺さぶりながら呼び掛ける。するとジャイアントパンダは寝言のように返事をする。

 

 

「朝は起きてジャパリまんを取りに行くでしょ?そしたら、歩いて疲れて眠くなるでしょ?そして友達と一緒に遊んでクタクタになって眠くなるでしょ?そしてジャパリまんを食べたら満足して眠くなる。……と言うわけで、グゥ」

 

「いや、その理屈はおかしい……って、これじゃ本当にのび太君そのままじゃないか!」

 

 

あまりにもデジャヴを感じる台詞にドラえもんは頭を悩ませ、若干苛立つ。

 

 

「あっ!そうだ、ねぇ一緒に狩りごっこして遊ぼうよ!寝るよりもずーっと楽しいよ!」

 

「……むにゃ」

 

「お?」

 

すると、サーバルの呼びかけに先ほどと違った反応を見せるジャイアントパンダの姿を見たドラえもんはこれならいけるんじゃないかと思ったが、

 

 

「……暖かな日向の下でぐっすり寝る。これ以上に……楽しいことは無い……グゥ〜」

 

「うう、駄目か……」

 

 

またもやジャイアントパンダを起こす作戦は失敗に終わってしまった。今度はキュルルがジャイアントパンダを起こそうと近づこうとするが、

 

 

「……もう、我慢出来ない……!」

 

「え、ドラえもん?」

 

 

ドラえもんは体を震わせていた。その姿を見たキュルルは不安そうにドラえもんに話しかけようとした瞬間、地面で寝ているジャイアントパンダに近づくと大きく息を吸い込む。

 

 

「コラァァァァァ!!!起きろォォォォォォォオオオ!!!」

 

「「「うわぁぁぁ!?」」」

 

 

突然ドラえもんの大声にサーバル達は思わず耳を閉じて驚きの声を上げる。

 

 

「全く何時も何時も寝て!!それなんだから君はノロマなんだ!!少しは寝るのを我慢しろぉぉぉぉぉおおおおお!!!」

 

「いやいや⁉︎ドラえもんあなたこの子とは初めて会うでしょ⁉︎」

 

カラカルはドラえもんの台詞に思わずツッコミを入れる。だが、ドラえもんは止まらずそのまま怒鳴り続けた。

 

 

「偶には昼寝を辞めて勉強と外であそんでこぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおい!!!」

 

「ドラえもんちゃん急になに言い出すの⁉︎」

 

「ど、ドラえもんちょっと落ち着いて!」

 

 

3人は眠るジャイアントパンダに向かって怒鳴るドラえもんを何とか鎮めようとしていると、すぐ近くの茂みから赤茶の髪の色をした少女(フレンズ)が出てきた。

 

 

「ジャイアントパンダちゃ〜ん……あ!またそんなところで、って、ああああああーーっ!!?なにやっているんですか!?無理矢理ジャイアントパンダちゃんを起こしちゃダメですよぉーーっ!!!」

 

 

 

この後、赤茶髪の少女も加わって何とかドラえもんを鎮めるのだった。




フレンズ図鑑

ジャイアントパンダ

ネコ目クマ科ジャイアントパンダ属

Ailuropoda melanoleuca

白黒な体毛でおなじみ、ジャイアントパンダのフレンズ。
標高1,200 - 4,100メートル(主に1,500 - 3,000メートル)にある竹林に生息する。全身は分厚い体毛で覆われている。耳介や眼の周囲・肩から前肢・後肢は黒く、他は白い。何処でも寝れちゃうおっとりマイペース屋さんで、友達思い。怒るとコワイ。とてもコワイ(大事だから二度言う)小型セルリアンの群れを一瞬で殲滅出来るほどの戦闘能力も高い。


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第5話 ともだち前編

投稿が遅れてすいませんでした。現実で色々と忙しかったものだから中々執筆するのに時間が掛かってしまいました。本当ならアヅアエン編はこれで終わらせる予定でしたが、キリが良かったので前編後編とわけることにしました。
後半は近いうちに投稿する予定です。


公園を探していたドラえもん一行はアヅアエンのラッキーさんの案内されたものの、案内された場所は公園というには何も無いただの広場であった。そこに居たジャイアントパンダに公園について聞こうとするが、会話中に寝てしまいそれを見たドラえもんはのび太と姿が重なりつい暴走してしまったのだった。

それから数十分後、ドラえもんは冷静になりサーバル達と途中から入ってきた少女の前に立っていた。

 

 

「本当にごめん」

 

「いい加減頭を上げなさいって」

 

「そうだよ、ドラえもんが反省する態度がしっかり見れたからそれでいいよ」

 

「わたし達はドラえもんちゃんを怒ってないから大丈夫だよ」

 

「は、はい、わたしもジャイアントパンダちゃんが起こされていなければ大丈夫ですよ」

 

 

ドラえもんは彼女たちに頭を下げて暴走した事について謝罪をしていると、彼女達はそれほど怒ってなくドラえもんを許したのだ。

 

 

(本当になんて優しい子達だろう!)

 

 

本来ならドラえもんの行動に対して多少の非難があってもおかしくはないのに、サーバル達はドラえもんを特に咎める事なく許した事にドラえもんは思わず泣き出しそうになる。

 

 

(これからはなんとか気持ちを抑えて彼女たちの迷惑にならないようにしよう)

 

 

それが今の自分が出来る事だ。ドラえもんはそう思うとこれからはしっかりしようと決めた。

 

 

「そういえばすっかり忘れていたけど、あなたって誰?」

 

 

サーバルはいつのまにか隣にいた赤茶髪の少女に何者なのか聞くと、ドラえもん達も「そういえば」と呟いた。あまりにも会話の中に違和感無く入ってきた事に誰も彼女の存在に気がつかなかったようだ。

 

 

「あ、す、すいません!自己紹介が遅れました。私はレッサーパンダです。レッサーと呼んでください」

 

「レッサー……パンダ?」

 

「さっき其処に眠っているジャイアントパンダさんもパンダって名前が付いているけど、仲間なのかな?」

 

 

キュルルは2人とも同じパンダと呼ばれている事からすると、同じ動物かと考えていると、そこへ先ほどまでフリーズしていたラッキーさんがキュルルの方にやってきた。

 

 

『レッサーパンダとジャイアントパンダは同じ哺乳綱食肉目イヌ型亜目だケド、ジャイアントパンダはクマ科でレッサーパンダはレッサーパンダ科、どちらかと言えばイタチの仲間だネ』

 

「つまり、2人とも全く違うけものって事?」

 

「でも、なんで2人とも違うなら同じパンダって名前なの?」

 

 

ラッキーさんの解説を聞いてもピンと来ないサーバルとカラカルに今度はドラえもん解説した。

 

 

「それはねパンダはネパール語……まぁ、とある国の言葉では笹を食べるものと言う意味があって呼ばれていたんだ。最初に発見されたパンダはレッサーパンダで発見された当時はレッサーパンダって呼ばれなく、パンダって呼ばれていたんだけど、後日にジャイアントパンダが発見された事によりパンダは()()()()()()()=()()()()()()と呼ばれるようになったんだ」

 

「へぇ〜、つまりレッサーさんは元祖パンダってことだね」

 

「そ、そんな私なんかが……あれ?さっきラッキーさんって喋りませんでしたか?」

 

 

先ほどラッキーさんが話していた事を思い出して、レッサーパンダは恐る恐るサーバルに聞いてみる。

 

 

「そうだよ、ラッキーさんは喋れたんだよ」

 

「でも、キュルルとドラえもんとしか喋ってくれないのよね」

 

「そうなんですか……ラッキーさんが喋るの初めてみましたよ」

 

 

基本的ラッキーさんはフレンズと会話をしないとレッサーパンダを含めたフレンズ達は認識しているため、ラッキーさんが喋る姿はとても珍しがったのだ。

 

 

「そういえば、貴女も此処に住んでいるの?」

 

「はい、そうです」

 

 

彼女もアヅアエンに住むフレンズだと知ると、ドラえもんは自分たちがここへきた目的について語る。

 

 

「実は僕たちはこの絵に描いてある所を探しているんだ。そこに寝ているジャイアントパンダちゃんからその場所を聞こうとしたんだけど、途中で寝ちゃって困っていたんだ」

 

「そうだったんですか」

 

 

ジャイアントパンダが会話中に寝てしまった事を聞いて、レッサーパンダは思わず苦笑いを浮かべる。その隣でカラカルはジャイアントパンダとレッサーパンダを見比べた。

 

 

「それにしても貴女とジャイアントパンダって、全く似ていないわね」

 

「そうですよね…わたしって地味ですよね……」

 

「へ?」

 

カラカルが思わず口にした言葉を聞いたレッサーパンダは急に表情が暗くなった。それを見たカラカルは思わず声を漏らす。そして、レッサーパンダはそのまま話し続ける。

 

 

「わかってます。私ジャイアントパンダちゃんみたいに華はないし何処でも寝れる様な特技もないですし……」

 

「いや、寝る特技ってあまり必要ないんじゃないの?」

 

 

話の中で絶対役に立たなそうな特技を求めたレッサーパンダにカラカルはツッコミを入れる。

 

 

「そ、それでも、私は地味でこれといった特技がないから少しでも何か特徴や特技とかあったら良いななんて……」

 

「そんな事ないよ、レッサーだって小さくて毛並みもフサフサしていて目も可愛いよ」

 

「そうだよ、少しは自分に自信を持ちなよ。レッサーパンダちゃんも十分魅力的だよ」

 

「か、可愛いだなんてそんな……」

 

 

自身に過小評価なレッサーパンダだが、あまり他人に褒められた事がない為サーバルとドラえもんに可愛いと言われた事から照れた顔を浮かべた。

 

 

「ところでレッサーさんはここが何処にあるか知りませんか?」

 

 

キュルルは公園の絵をレッサーパンダに見せる。レッサーパンダもジャイアントパンダと一緒に此処に住んでいる為、もしかしたら公園の場所について何か知っているかもしれないと思い聞いて見たのだ。

 

 

「えっと、此処ですか?」

 

「うん、さっき僕らは其処に寝ているジャイアントパンダさんが公園の場所について詳しく知ってそうだから聞こうとしたんだけど、寝ちゃって困っていたんだ」

 

「あ、だからジャイアントパンダちゃんを起こそうとしたんですね」

 

 

レッサーパンダはキュルル達が絵の場所を探していると分かると、彼女たちがジャイアントパンダを起こそうとした理由を理解した。

 

 

「それであんたはこの場所を知っているの」

 

「えっと……は、はい、知っています」

 

(あれ?一瞬目が泳いだぞ)

 

 

ドラえもんはカラカルがレッサーパンダに絵の場所は知っているかと聞いた瞬間、彼女はカラカラに視線を逸らしながら答えたのだ。

 

 

「そう、よかったらその公園は何処にあるか教えてくれない?」

 

「えっ⁉︎」

 

「どうしたのよ、そんな声を上げて?」

 

 

公園について知っていそうなレッサーパンダにジャイアントパンダの代わりに教えてもらおうとするが、彼女は困惑の表情を浮かべていた。

 

 

「あ、べ、別になんでもありませんよ!」

 

(何か怪しい)

 

 

レッサーパンダの態度を見てカラカルも彼女の挙動不審な姿を見て怪しく思った。

 

 

「確か……こ、こっちにある……と思います」

 

 

自信なさげにレッサーパンダは遠くの方を指で指した。それを見たドラえもんとカラカルはますます怪しく思った。本当なら何も知っていないだろうと指摘をしたいが、まだ確信していない為口には出さなかった。そして、レッサーパンダは公園までドラえもん達を案内しようとする。

 

 

「あ、でもジャイアントパンダは起こさなくていいの?」

 

「友達でしょ?」

 

 

サーバル達は寝ているジャイアントパンダをそのままにしても良いのかと聞く。

 

 

「ジャイアントパンダちゃんは怒ると怖いんですよ〜、無理に起こさない方が良いです!」

 

「そんな風に見えないけどな〜」

 

「確かにこんな気持ちよさそうに寝ている姿からは全く想像出来ないわね」

 

「そうだね」

 

サーバルは気持ちよさそうに眠るジャイアントパンダが怒る姿は想像できなかった。キュルルとカラカルも同じく意見だった。

 

 

『いや、ジャイアントパンダはクマ科だカラ、見た目とは裏腹に気性ガ荒いんダ』

 

「え、それって本当なのラッキーさん?」

 

 

ラッキーさんの説明を聞いて思わず確認をとると、「そうダヨ」と返事をした。

 

 

「それに…私が友達なんてとんでもないです。いつも迷惑ばっかりかけてますし」

 

「友達は迷惑とか役に立つとかで成り立つんじゃないよ。ただ、一緒にいて楽しければ友達になれるんだよ」

 

 

自分の所為でジャイアントパンダが迷惑をかけていると思っているレッサーパンダにドラえもんは友達について語る。

 

 

「だ、だけど、私は何か面白い遊びとか知っているわけじゃないんですよ……それに私のような性格のフレンズが友達になったところでジャイアントパンダちゃんの邪魔になりそうだし」

 

(なんだろう、この子ものび太君に見えてきたぞ)

 

 

先ほどからのレッサーパンダの後ろ向きな言動を聞いて、ドラえもんはレッサーパンダがのび太の姿に重なって見えてしまった。

 

 

「大丈夫だよ、フレンズによっては得意な事があるから直ぐにレッサーの得意な事が分かるよ」

 

「サーバルさん……ありがとうございます」

 

 

サーバルに励まされたレッサーパンダは気持ちを改めて、彼女たちを公園まで案内をする。

 

 

「それでは案内をしますね」

 

「よろしくね」

 

「よろしく」

 

 

そう言って彼女達はレッサーパンダを先頭に広場から出ようとする。

 

 

(あれ、これは何だろう?)

 

 

だが、広場から出ようとしたキュルルは足元に何かが落ちている事に気が付き、それを拾った。

 

 

(これは何かのガラクタかな?)

 

 

よくよく拾ったガラクタを観察してみると、見た目は小型の車輪がついた物で明らかに人工で作られた物だ。

 

 

(よく見たらこの広場のあちこちに落ちている)

 

 

キュルルは周囲をよく見てみると辺りにガラクタらしきものがいくつも落ちていた。そして、そのうちの一つに目に入る。

 

 

(あれ、あの物体は何処かで見たような……)

 

 

彼女が目にしたのはガラクタの中で一際目立つ大きな梯子らしきものだ。何処と無く既視感があり、詳しく見ようと近づこうとする。

 

 

「キュルルちゃん行くよー!」

 

 

だが、先に言っていたサーバルの呼び声が聞こえ広場の外で待っている彼女達の方に顔を向ける。

 

 

「あ、待ってよ〜!」

 

 

謎のガラクタの観察は戻ってきた時にしようとキュルルはサーバル達の元へと走っていった。

 

 

の の の の の

 

 

レッサーパンダに公園まで案内してもらっているドラえもん一行は暫く竹林を歩いていたが、途中何もトラブルは起こらず目的の場所へと到着した。

 

 

「着きましたよー!」

 

「おお……?」

 

「これが…こーえん?」

 

 

目の前の景色サーバルとカラカルは困惑の表情を浮かべる。それもそのはず、其処はスケッチブックに描かれていた公園は存在しておらず、あるのは遠くから見える山の景色だ。

 

 

「えーと……」

 

「何か、全然違う感じがするんだけど……」

 

「レッサーさん此処は公園じゃなさそうなんだけど……」

 

 

サーバル達が違うというと、レッサーパンダは汗を一滴流しながら首を向ける。

 

 

「そ、そうですか?あ…じゃ、じゃあ、あちらへ行きましょう!きっとお探しの場所だと思いますよ!」

 

(本当かな?)

 

 

ドラえもん達は不安を覚えながらもレッサーパンダを信じて案内を続けてもらった。

 

そして、しばらく歩いていると最初にいた広場のように広い場所に到着した。

 

 

「こちらはどうでしょうか?」

 

 

次に来たところは激しい水の音が響く滝の近くだが、

 

 

「違うかな」

 

 

其処にも公園は存在しなかった。

 

 

「そ、それならこちらはどうでしょう?」

 

 

その次に行ったのは崩れた吊り橋が存在する岩場であるが、

 

 

「違うね」

 

 

此処にも公園は存在しなかった。

 

 

「だ、だったらこちらで……!」

 

 

最後に連れてきた場所は公園の背景にあった竹林の中にある広場だが、

 

 

「確かにそれっぽい場所だけど……って、此処は最初に会った場所じゃないの!」

 

「え⁉︎いや…あの…その…」

 

 

どうやら、無我夢中になって動いていた為、レッサーパンダは最初の広場であると気づかなかったようだ。

 

 

「アンタ本当に知っている訳?」

 

「ヘアッ⁉︎いやっ、あのっ、そのっ、アワワワワワ」

 

 

流石に怪しく思ったカラカルはレッサーパンダを睨むように公園を本当に知っているか聞くと、彼女は何か言おうとするが、何も思い浮かばず、

 

 

「あ、あの……ご、ごめんなさい‼︎」

 

 

これ以上は言い逃れが出来ないことがわかり、レッサーパンダはサーバル達に頭を下げて謝った。

 

 

「私あまり役に立つ事なくて…折角頼ってもらってうれしくて……とりあえず歩いてたら見つからんじゃないかなーって」

 

「それじゃダメでしょうに‼︎」

 

 

宛ても無く歩き回れば見つかると考えたレッサーパンダにカラカルは思わず怒鳴る。そして、それを聞いたレッサーパンダは目に涙が溜まり、

 

 

「うわぁ〜ん!やっぱり私何の役にも立たないんだ〜!」

 

「な、何も泣くことは無いじゃない⁉︎」

 

 

泣き出してしまったレッサーパンダにカラカルは困り果てていると隣からドラえもんが話しかけてきた。

 

 

「ま、まぁ、カラカルちゃんもそう怒鳴っちゃ駄目だよ、此処は冷静になろう」

 

「けど、ドラえもん…この子が最初から知らないって言えば、こんな事にはならなかったのよ」

 

 

ドラえもんはカラカルを宥めようとするものの、彼女の意見も一理ある為あまり強くは言えなかった。

 

 

「それはそうだけど、この子もこの子なりに僕らの役に立とうと努力してくれたんだよ」

 

 

ドラえもんはそう言うと泣いているレッサーパンダに近寄る。

 

 

「ほら、泣かないで」

 

「うう、すいません。私皆さんに嘘をついてしまいました」

 

 

レッサーパンダは自分に騙されていたドラえもんに慰めてもらっていることから罪悪感を感じていたが、そんな彼はレッサーパンダの頭を撫で始める。すると、次第にレッサーパンダの涙は薄れていく。

 

 

「確かに君は僕たちに嘘をついた。それは悪いことだよ。でも、僕たちの為に一緒に公園を探そうとしてくれたんだよね?それに君は僕たちに嘘をついたけど、正直に言ってくれたじゃないか。嘘を正直に話す事はとても勇気がいる事だよ」

 

「うう…グスッ、あ、ありがどう゛ございまず〜‼︎」

 

「うわぁっ!?…もう、さっき泣き止んだかと思ったらまた泣いちゃったよ」

 

 

レッサーパンダはてっきりドラえもん達を騙した事に怒られるかと思ったが、逆に褒められるとは思っても見なかった為、また涙を流しながらドラえもんに抱きついた。ドラえもんもいきなり抱きつかれるとは思わなかった為、一瞬驚いたが、すぐ慣れた手つきでレッサーパンダの頭を再び撫で始める。

 

 

「全く、ドラえもんは甘いんだから……」

 

「まあまあ」

 

 

それを見ていたカラカルは頰を膨らませる。それをサーバルが隣で宥める。しかし、カラカルは全く怒っておらず、逆に自分の所為で泣き出してしまったレッサーパンダを代わりに相手をしてくれた事に心からドラえもんに感謝していた。

 

 

「そうだよ、レッサーさんも善意で僕たちを手伝ってくれようとしたんだから……」

 

 

一方、キュルルはカラカルが本当に怒っていると勘違いしながらもサーバルと同じように宥めようとカラカルに近づこうとするが、

 

 

「ぶべッ!?」

 

 

キュルルは何かに足をぶつけてしまい、そのまま勢いよく地面に転んでしまった。

 

 

「ちょ⁉︎大丈夫?」

 

「な、何とかね…」

 

 

地面に転んでしまったキュルルを見て、カラカルはキュルルに心配すると「大丈夫」と返事をして顔を抑えながらカラカルに手を貸してもらい立ち上がる。

 

 

「これは何だろう?」

 

「あー、それですけど、それはもともとこの広場やその周りにおちていた物なんです」

 

 

サーバルはキュルルが足をぶつけた物体を手にとって観察する。それを隣でみたレッサーパンダは謎の物体について他にもある事を説明する。そして、キュルルの近くにも先ほど足をぶつけた物とは違った物体を見つける。

 

 

(あれ?これは……)

 

 

スケッチブックを取り出して公園の絵と目の前にある物を見比べた。そこには絵にある遊具の一つとの部分に酷似しているところがあった。

 

 

(竹林の中にある公園の絵、広場に存在しない公園、広場にある沢山の物体……もしかしたら……!)

 

 

瞬間、彼女の脳裏にはある考えが思いついた。

 

 

「みんなに手伝って欲しいことがあるんだ!」

 

「「「「?」」」」

 

 

突然のキュルルの言葉にドラえもん達は疑問符を浮かべながら首を傾げながらも話を聞くのだった。

 

 

の の の の の

 

 

「よし、これで広場に落ちているものは全て集まったね」

 

「うん、集めるのに苦労したよ」

 

 

キュルルから広場に落ちている謎の物体を全て集めるように言われたドラえもん達は全てのガラクタを集める事が出来た。

 

 

(最初はロボッターで一気に全て集めようと思ったけど、全てのガラクタの位置が把握できていないから無闇に使うと、小石まで飛んでくるかもしれないからなぁ〜)

 

 

楽に全てのガラクタを集めようと思ったドラえもんだが、ロボッターは対象物であるガラクタにちゃんと付けないといけない為、ロボッターは使えなかった。

 

 

「けど、こんなにも沢山あるなんてね」

 

「私も沢山あると知っていましたが、まさかこれ程あるとは思ってもみませんでした」

 

 

ドラえもん達の目の前には山のように積み上げられたガラクタの山が出来上がっていた。

 

 

「それでキュルルこのガラクタの山をどうするの?」

 

「うん、このガラクタを元どおりに組み立てるんだ」

 

「組み立てる?」

 

「どういうこと?」

 

 

集めたガラクタを組み立てると聞いてサーバル達は首を傾げる。だが、ドラえもんだけはすぐにキュルルの言葉の意味を理解する。

 

 

「あ、もしかしてこのガラクタの正体は……!」

 

「多分ドラえもんの考えている通りだよ」

 

 

彼も自分の考えを察した事にキュルルはそうだと肯定する、

 

 

「ちょっと、わたし達にも教えなさいよ」

 

「えっ、なになに?どういう事?」

 

 

サーバルとカラカルはまだこのガラクタの正体についてわからないようだ。キュルルは「ごめんごめん」と軽く謝りながらガラクタの山の一部に手を当てる。

 

 

「この集まったガラクタの一つ、公園の絵のここ部分によく似ているからもしかしたらこれらのガラクタは全て公園の遊具だと思ったんだ」

 

 

キュルルはガラクタの山の中で梯子らしき物と絵に描いてあるすべり台の梯子部分を見せる。それを見たサーバル達は漸く理解した。

 

 

「それじゃあ、このガラクタがこーえんですか?」

 

「いや、このガラクタは公園の遊具の残骸でこれを元どおりに組み立てればこの広場は本来の姿、つまり公園になるという事だよ」

 

「そっか!だからこーえんがなかったんだね」

 

「てことは最初からラッキーさんは公園の場所まで案内してくれたのね」

 

 

すぐ足元にいるラッキーさんを見下ろしながら彼女達はラッキーさんが自分たちをちゃんと案内してくれた事を理解する。同時にラッキーさんは基本的に表情は変わらないが、何処と無くドヤ顔しているように見えた。

 

 

「それじゃあ、みんなこの広場を元に戻したいからもう一度手伝ってくれる?」

 

「もちろんだよ!」

 

「ここまできたら最後までやらないとね!」

 

「わ、私も皆さんの役に立てるのならなんだってしますよ!」

 

 

その場にいる全員は気持ちが一つになり、一緒に公園を戻そうと動き出した。

 

 

の の の の の

 

 

サーバル達はそれぞれガラクタを運び出し、キュルルの指定された場所に持っていくと公園の絵を設計図代わりとして少しずつ組み立てていく。

 

 

「これ、便利だね!えっと……」

 

「スーパー手袋。これを手に嵌めておけばどんな重い物も楽に運べるよ」

 

 

キュルルはドラえもんの道具を借りて大きなガラクタを運んでいた。最初彼女はみんなに指示をしていたが、ガラクタを運ぶサーバル達を見て自分も指示だけじゃなく、体を動かそうとしてドラえもんの協力を得て重いガラクタを運んでいたのだ。

 

 

「ふふん、困った事があれば僕に頼ってね、出来る限りの事はするからさ」

 

 

ドラえもん自身 頼ってほしいという欲求に見舞われ、いつもは道具に頼る事はロクな結果にならないという"彼"に対する教訓が頭から抜けているらしい。

もしかすると彼女達の爪の垢でも飲ませればもう少しはマシになるんじゃないかという考えも浮かび上がってくる。

 

 

「ありがとうドラえもん!」

 

(やっぱり、女の子に頼られるのは気持ちが良いな)

 

 

それ以上にドラえもんは女の子に頼られる事に喜びを感じているのが一番なのは言うまでも無い。

そして、その後、着々と公園の遊具が組み立てられていく。その中でも一番活躍していたのは意外にもレッサーパンダであった。すべり台ともう一つの遊具であるブランコを組み立てる途中でバラバラにならないようにロープで縛って固定していたのだ。それをサーバル達は感心した目で見ていた。

 

 

「レッサーって手先が器用なのね」

 

「うん、それに木登りが得意だしね」

 

「そ、そうですか?」

 

 

2人から褒められたレッサーパンダは照れた表現を見せる。特技がなかった自分がみんなの役に立っている事に嬉しく思っていた。

それから残りのガラクタを組み上げていくき、しばらくすると漸く公園は完成した。

 

 

「出来たぁー!」

 

「すっご〜い!絵の通りだ!」

 

「まさか、 本当に絵の通りに私たちが作ったなんて信じられないわね」

 

 

サーバル達は出来た公園の遊具を見て絵にそっくりに出来た事に驚きと嬉しさが湧き上がる。

 

 

「これもレッサーさんのお陰だよ」

 

「え、私が?」

 

 

突然キュルルが公園が完成したのはレッサーパンダだと言う発言に彼女は目を丸くする。すると、キュルルは口を開き理由を説明する。

 

 

「うん、色々歩き回ったからわかったんだ。最初から絵の場所にいたこととか、地面に絵に描いてあったものが落ちていたこととか」

 

「そっか!レッサーが案内してくれたから気がついたんだね!」

 

「その通り!」

 

 

サーバルがキュルルの説明を聞いて、レッサーパンダがアヅアエンの色んな場所に案内した事から遊具であったガラクタや絵の背景に描かれていた竹林から、公園の場所がしっかり絞られていったのだと理解し、キュルルもそれに肯定した。

 

 

「私が…役に立ったんですかぁ〜」

 

 

レッサーパンダは目から涙を流しながら恐る恐る聞いてきた。

 

 

「そうだよ」

 

「うん、ありがとうレッサーさん!」

 

 

サーバルとキュルルはレッサーパンダにお礼を言う。そして、それを聞いたレッサーパンダは段々と目に涙が溜まっていき、

 

 

「うわぁ〜〜ん!うれしいです〜〜〜〜〜!」

 

 

その涙を一気に流しだす。しかし、それは悲しみの涙ではなく自分が誰かの為に役に立った事から流した嬉し泣きであった。

 

 

「ほら、また泣き出しちゃって」

 

「ごめんなさ〜〜い!」

 

「いや、別に謝んなくていいんだけど」

 

 

泣き出したレッサーパンダの目元をポケットから取り出したハンカチで拭くものの、次から次へと涙は流れ続けてドラえもんは一苦労であった。そして、その様子をサーバル達3人は微笑ましく見ていた。

 

 

「キュルルちゃんは優しいね」

 

「え…そうかな?」

 

「うん、ちょっと見直した」

 

「え⁉︎カラカルって僕をそれほどよく思っていなかったの⁉︎」

 

「冗談よ」

 

 

カラカルはペロリと舌を出してそう言う、どうやらキュルルをからかったようだ。それを聞いたキュルルはムッとなり、カラカルに文句を言おうとしたが、

 

 

「あれ?」

 

「どうしたのキュルルちゃん?」

 

 

疑問の声を漏らす彼女にサーバルはどうしたんだと聞いてくる。

 

 

「いや、ただなにかが足りない気がして」

 

「え、なに言っているのよ。ちゃんと私たちは絵の通りに公園を作ったのよ。落ちていたガラクタももう無いし、これ以上になにが足りないって言うのよ」

 

「確かにそうだけど……」

 

 

カラカルの言うことは確かである。キュルルも其処は同意するが、何か引っかかる感覚に見舞われた。

 

 

「まあまあ、取り敢えず出来た公園で遊んでみようよ、きっと何かわかるかもしれないしね」

 

「そうですよ。皆さんで作ったこの公園で遊んでみましょう」

 

 

ドラえもんとレッサーパンダの意見にサーバル達も賛成すると、早速出来上がった公園を楽しむのであった。

 

 

の の の の の

 

 

一方、此処はさばんなちほーにある湖では3人のフレンズが話し合いをしていた。

 

 

「つまり我々はこの方を探しているんです」

 

「正直私たちもこんなセルリアンみたいなものがいるとは思いにくいんだけど、何か知らない?」

 

 

そう言ったのは昨日キュルルがいた建物の中を調査していた。センちゃんとアルマーと呼ばれるフレンズが青い何かが描かれた紙を丁度水浴びをしに湖へやってきたカバに見せる。

 

 

「なんか、とても奇抜な見た目をしていますが、これに似た方なら昨日あっちの方角に行きましたわ」

 

「情報提供ありがとうございます!もし何か困ったことがあれば我々のじむしょに来てください」

 

「人捜しや物探し、なんでもするよぉ〜」

 

 

すると、カバはアルマーが言った言葉にピクリと反応をすると、しばらく考え事をして口を開く。

 

 

「そう、それなら少し探して欲しい方がいますわ」

 

「やったねセンちゃん!新しい仕事だよー!」

 

 

仕事を依頼するカバの発言を聞いてアルマーは喜びの笑顔を浮かべる。

 

 

「そうですね!あっ、だけど今我々はターゲットを先に見つけないといけません。新しい仕事はターゲットを依頼主まで連れて行かないといけません!」

 

「あ、そっか、ごめんなさい。カバさんの依頼は今やっている仕事が終わってからでいいかな?」

 

「ええ、私は構いませんわ」

 

 

センちゃんも最初はアルマーと同じように笑顔を浮かべたが、直ぐに自分たちはまだ仕事の途中だと思い出し、今やっている仕事を放棄するわけにもいかず、カバからの依頼は一旦保留する形にする。それを聞いたカバは特に不満もなくセンちゃんの話に応じる。

 

 

「本当に申し訳ありません。では、じむしょに留守番兼、事務の仕事を担当しているハシビロさんがいるので、その人に依頼内容をお伝えください」

 

「そしたら、仕事をやった後に私たちがハシビロちゃんから仕事の内容を聞いてすぐに行動するからね」

 

「よろしくお願いしますわ」

 

「それでは情報提供ありがとうございます」

 

「ありがとねぇ〜」

 

 

2人は情報を提供してくれたカバに一礼すると、彼女が教えてくれた方角に向かった。

 

 

 

「センちゃん良かったね。新しい仕事の依頼があって」

 

カバに言われた方向をしばらく歩いていたはアルマーは次の仕事の目処が立ってうれしかったのだ

 

 

「油断しては駄目ですよアルマーさん、今我々はターゲットを見つけ出す仕事をしているんですよ。もし、見つからなければ新しい仕事は出来ませんから」

 

「あっ、それもそうだね」

 

 

しかし、冷静なセンちゃんは次の仕事よりも今やっている仕事を最優先としているため、アルマーに浮かれては駄目だと言う。

 

 

「それにしてもカバさんは大雑把に言ってくれましたが、もっと詳しく聞くべきでしたね」

 

 

先ほどから歩いているが、何か目立った物や足跡が見当たらない事にセンちゃんは少し焦りを感じていた。カバから方角しか聞かなかったことに後悔をしていた。

 

 

「そうだ!それならまた聞き込みをしようよ。そうすればだれか1人ぐらいはどこに行ったのか詳しい情報がわかるかもしれないよ」

 

「確かにそうかもしれませんね。しかし、そう都合よく誰かと出会えm「ピィーーーッ!!!」うわぁっ!?」

 

 

突如とその場にホイッスルの音が鳴り響く。其処に現れたのは以前ドラえもん達をモノレールの駅まで案内をしたカルガモであった。

 

 

「あなた方ストップです!列が乱れて…って、何をしているんですか?」

 

 

列が乱れていることに注意しようとしたカルガモは急に身を丸くする2人を見て困惑の表情を浮かべるのであった。

 

 




フレンズ図鑑

レッサーパンダ

ネコ目レッサーパンダ科レッサーパンダ属

Ailurus fulgens

威嚇のポーズが可愛らしいレッサーパンダのフレンズ。
標高1,500 - 4,800メートルにある温帯・亜熱帯の森林や竹林に生息する。全身は長く柔らかい体毛で被われ、足裏も体毛で被われる。背面は赤褐色で、腹面や四肢・耳介外側は黒い。鼻面や唇、頬、耳介の外縁は白くなっている。
尾には淡褐色の帯模様が入る耳介はやや大型で三角形。指趾の数は5本。爪はやや引っ込めることができる。前肢の種子骨が指状の突起に変化し指と向かい合っているため物をつかむことができる。自己評価が低く誰かの役に立とうとして空回りしてしまうこともある。しかし優しさと思いやりを持ち合わせる、心温かな子。


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第6話 ともだち後編

本編の投稿が遅れてすいませんでした。最近は台湾に行ってきたり、喉を痛めたりなどがあり結構身体と精神的に疲れてしまいましたが、ようやく後編を完成させる事が出来ました。今回はちょっと長く書きましたからどうぞ読んでください。


バラバラだった遊具を組み立てあげたドラえもん達は先ずは滑り台から遊ぼうと提案をして、一同もその意見に賛成した。

 

 

「じゃあ、先ず誰が先に滑り台であそぶ?」

 

 

ドラえもんは誰が一番に遊ぶかを決めようとすると、サーバル達はそれぞれは互いの顔を見合わせて誰が最初に滑り台を遊ぶのか相談した結果。レッサーパンダが恐る恐る手をあげる。

 

 

「じゃ、じゃあ、私が先に遊んでもよろしいでしょうか」

 

「どうぞ」

 

 

最初に滑り台で遊びたいと真っ先に手を挙げたのはレッサーパンダだ。彼女は初めて自分とドラえもん達の力で作った滑り台に愛着が湧いていて、自分が先に滑ってみたいと思っていたのだ。ドラえもん達も彼女の気持ちに気付いたのか、一番最初は譲る事にした。

 

 

「ありがとうございます。じゃあ早速いきます!」

 

「うん。……あれ?」

 

 

ドラえもんが腑抜けた声を漏らすが、それもそのはず。レッサーパンダは滑り台の梯子の部分ではなく滑るす方の部分で登り始めたのだ。

 

 

「んしょ、んしょ……うわぁぁっ」

 

 

もう少しで登りきれそうだったが、耐えきれずそのままズルズルと下の方まで滑り落ちていった。

 

 

「大丈夫レッサーさん?」

 

「だ、大丈夫です」

 

 

心配そうにキュルルは彼女に話しかけると、彼女は大丈夫だと言って立ち上がった。

そもそも遊具の遊び方自体を知らないのだろう。ドラえもんは滑り台の正しいやり方を教えようとすると

 

 

「違うよレッサー、そっちで登るんじゃなくてこっちから登って滑るんだよ」

 

「そうなんですか?」

 

「あれ?サーバルちゃんは滑り台をしっているの?」

 

「うーん、なんか前にこれと似たような物を見た事がある気がしてね」

 

「けど、サーバル私たちの住んでいたさばんなちほーには滑り台や似たような物はなかったと思うけど」

 

 

自分でもなぜ知っているのかわからないサーバルは自分たちのいたさばんなちほーの何処かで似たような物を見たのだろうと思ったが、カラカルは否定する。

 

 

「あれ、そうだっけ?」

 

「あなたねぇ」

 

「まあ、今は別にいいんじゃないの?キュルルちゃん同様に遊んでいたら何処かで思い出すかもしれないよ」

 

「そうだね!」

 

「そ、それじゃあ今度こそ!」

 

 

レッサーパンダはサーバルに教わった方法でもう一度滑り台に挑み、今度は滑り台の梯子を使って登りきると、彼女は斜面に腰掛け下まで滑り降りて行った。

 

 

「どうだった?」

 

「はい!楽しかったです!」

 

 

滑り台を初めて滑る彼女の感想を聞くと、彼女は笑顔を浮かべながら興奮気味で語った。その姿を見たサーバルも自身の好奇心が疼きだすし始めたのか目を輝かせる。

 

 

「よーし、じゃあ次は私が滑るよー!」

 

 

サーバルはレッサーパンダがやったように自分も梯子を登りきり、斜面に腰掛ける。

 

 

「わーい!」

 

 

好奇心旺盛なサーバルは上から滑り降りると、興奮した様子で感想を口にする。

 

 

 

「おおおおー!なんか、凄くいい感じだね!」

 

「ただ、滑っただけなんだけどね」

 

「私!もう一回やるー!」

 

 

カラカルがやれやれとした表情を浮かべるが、先ほど滑ったばかりのサーバルは目を輝かせ、梯子を登り再び滑り降りる。

 

 

「あはは!たーのしー!」

 

「楽しそうで何よりだね」

 

「うん」

 

 

楽しく滑るサーバルの姿を見て滑り台を組み立てたドラえもん達も嬉しい気持ちになる。

 

 

「あは!あはは!あはーーーッ!」

 

「サーバル〜、程々にねー!」

 

「分かってるよー!だけどもう一回!」

 

 

滑り終えたサーバルはそこから5、6回更に滑っていく。しばらくして、サーバルも落ち着くだろうと思っていたキュルル達だが甘く見ていた。サーバルの底知れぬスタミナを…

 

 

 

の の の の の

 

 

 

「わーい!たーのしー!」

 

「「「………」」」

 

「あはは!うぃひひひ!たーのしーーーッ!」

 

「何回やれば気が済むの!?」

 

 

更に数十回も滑り台から滑っていくサーバルは心の底から楽しんでいる様子を見て思わず、ドラえもんは声を上げる。隣ではキュルルとレッサーパンダが苦笑いを浮かべる。

 

 

「はあ〜、何かじゃんぐるちほーに似たようなフレンズが居た気がする……」

 

 

額を抑えながらカラカルは呟く。だが、キュルルはサーバルが滑る度にソワソワとする彼女の仕草を見逃さなかった。

 

 

「ねぇ、カラカルは滑らないの?」

 

「えっ、いや!私は……」

 

 

滑らないと言おうとしたが、そこへサーバルが話に入り込んできた。

 

 

「カラカルも一緒に滑ろうよ!」

 

「……し、仕方ないわね!」

 

 

最初は断ろうとしたが、サーバルの笑顔に惹かれて彼女はサーバルと共に梯子を登ると、目の前の光景に「おお」と呟く。

 

 

「なんか、ツルツルしてるわね……」

 

「カラカルー!早く早く!」

 

 

恐る恐る滑る部分に爪研ぎをするカラカル。すると、後ろで待機しているサーバルに向けて口を開く。

 

 

「一応言っておくけど、押さないでねサーバル!絶対に押しちゃダメだからねサーバル!」

 

 

いきなり後ろから押してこないようにカラカルは彼女に対して念入りに忠告する。

 

 

「分かったよ、カラカル……それじゃ一緒に滑ろっか」

 

「ええ、そうね………え?」

 

 

すると何の躊躇いもなくサーバルはカラカルを背後から抱きしめ、滑り始めた。

 

 

「わぁぁああああッ!?」

 

「わぁぁぁーーーい!」

 

 

心の準備ができていなかったカラカルの情けない悲鳴とサーバルの嬉しそうな声が混ざり合う。

 

 

「あー、楽しかったねカラカル!」

 

「や、やってくれたわねサーバル!」

 

「きゃーっ!狩りごっこだね!」

 

 

そのまま滑り台を中心にカラカルとサーバルの追いかけっこ(狩りごっこ)が始まる。

その後2人をそっとしておいてキュルル、ラッキービーストを抱えたドラえもんは滑り台を楽しんだ。

 

 

 

の の の の の

 

 

 

「楽しかったね」

 

「うん、こーえんってこんなにも楽しい物とは思わなかったわ」

 

「滑り台は途中から狩りごっこに変わっていたけどね」

 

「よし、じゃあ次はこのブランコだね」

 

 

一同は次にとなりにあるブランコに目線を移す。其処には2人同時に遊べるようになっていた。片方はシンプルな板を上から吊るした二本の縄で支えるようになっており、もう片方は板ではなく大きなタイヤが使われて、大きさ故に二本の縄ではバランスよく支えられないため三本の縄が使われていた。

 

 

「これはどうやって遊ぶの?」

 

「サーバルは知ってるの?」

 

「ううん、全くわからないや」

 

 

滑り台の遊び方はサーバルが知っていたものの、ブランコの遊び方は知らないようだ。その様子を見たドラえもんは3人に話しかける。

 

 

「じゃあ、僕がブランコについての遊び方を教えるよ」

 

 

そう答えたのはドラえもんであった。

 

 

「ブランコの遊びも先ほどの滑り台同様にシンプルさ、先ずブランコに座った状態で少し下がって、そこから自身の体重を使って前後に動くんだ……どうわかった?」

 

 

説明を終えたドラえもんは彼女達に理解出来たのか聞くと、

 

 

「わっかんないや」

 

「あらら」

 

 

真っ先にサーバルが理解できなかったと答え、ドラえもんはガクリと肩を下ろした。だが、よく見れば他の皆も理解できていない様子だ。

 

 

「ドラえもんもうちょっと簡単に説明してくれない?」

 

「難しすぎるわよ」

 

「私ももうちょっとわかりやすくお願いします」

 

 

もっと簡単に説明をするように求む彼女たちの姿を見てドラえもんはしばらく考えた。

 

 

「うーん、じゃあ、実際に見たほうが早いよね」

 

 

説明するのが若干面倒臭くなったドラえもんは実際にタイヤのブランコに乗ると自身の体重を使って前後に揺らした。

 

 

「こんな感じで遊ぶんだよ」

 

「成る程、そうやるんですね」

 

 

ブランコを自身の体重で揺らすドラえもんの姿を見て、先ほど聞いた説明を少しずつ彼女たちは理解していった。

 

 

「ドラえもんちゃんは本当に物知りだね」

 

「いやぁ〜、そうでもないよ〜」

 

「ほんと、口ではそう言っているけど、顔で本音が現れているわよ」

 

 

またしてもドラえもんがニヤニヤと笑みを浮かべている姿を見てカラカルは呆れる。だが、ドラえもんはしっかりとブランコについての遊び方を教えた為、あまり強く言えなかった。そして、彼女は空いているブランコに近づいた。

 

 

「じゃあ、私が先にやっていいかしら?」

 

「どうぞ」

 

 

カラカルはドラえもんの隣のブランコに座ると、二本の縄を握りながら自身も体を揺らし始めた。

 

 

「へぇー、結構楽しいじゃない」

 

 

最初はあまり楽しくなさそうと思っていたカラカルだったが、次第に楽しそうにしているのが目に見えて分かる。

そんな彼女を見て自分もやりたく気持ちになったサーバルかドラえもんに声をかける。

 

 

「私もやるー!」

 

「はい、どうぞ」

 

 

次にサーバルを載せる為、ドラえもんはブランコから降りようと勢いよくジャンプし綺麗に地面に着地するドラえもん。その様子を見ていたサーバル達が「おお!」と声を上げる。

 

 

「凄いねカラカル!ねぇねぇ、私達もあんな感じに飛んでみようよ!」

 

「私も!?」

 

「どっちが遠くまで飛べるか競争だよ!」

 

 

そう言うとサーバルは先程までドラえもんが座っていたブランコに座ると身体を前後に動かし始め、大きな跳躍を見せ着地をする。

 

 

「はいっ!カルガモの時のポーズッッ!」

 

「わー!凄いよサーバルちゃん!」

 

「ほんと凄いですよ!」

 

「そうだね大きいジャンプだったよ(ブランコはそう言う遊び方じゃないんだけどね)」

 

 

ドラえもんは内心そう思いながらサーバルのジャンプに拍手を送る。

 

 

「面白いわね、私も負けないんだから!」

 

 

彼女の跳躍を見たカラカルも負けじとブランコを漕ぎ始め、大きなジャンプを行い空中で回転を行いながら着地を行った。

 

 

「ハィィィイッ!!」

 

「「「おおおーーっ!」」」

 

 

先ほどのサーバルと同じように3人はカラカルに拍手を送った。その拍手を受けたカラカルは「ふふん」と得意げな表情を浮かべる。

 

 

「凄いですよお二人共!」

 

「そうでしょ!」

 

「まぁ、私が本気を出せばこんなものよ」

 

 

賞賛を浴びる2人は鼻を高くすると、レッサーの方に近づいて肩に手を置いた。

 

 

「じゃあ、次はレッサーの番だよ!」

 

「わっ、私ですかぁぁ!?そんな!ネコ科のサーバルさん達よりも大きなジャンプなんて出来るわけないですよ!」

 

 

先ほど見た2人の跳躍力を見た為、重いプレッシャーがのしかかり、あたふたと自分は出来ないと言ってブランコに乗るのを拒否するが、

 

 

「大丈夫、大丈夫。フレンズによって得意な事全然違うから。気にしなくて良いよ」

 

「いやそう言う意味じゃなくてぇ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「サーバル!パスよ!」

 

「次はこっちだね!」

 

「うぅ、どんどん速くなっていくよ……!」

 

 

それから2人の押しに負けたレッサーはブランコに渋々乗って揺らしていたが、途中でサーバルとカラカルが彼女の乗るブランコを激しく揺らし、二人の乗っていたブランコが霞んで見える程の凄まじいスピードと化していた。

 

 

「マズイよドラえもん!多分だけど収拾つかなくなってる!?」

 

「わわわ、早く止めないと……!」

 

『ア、ワワワワワワ』

 

 

レッサーの乗るブランコの揺れる速さが次第に速く大きくなっていく姿を見てキュルルはこのままではレッサーの身が危険だとドラえもんになんとかするように頼む。

 

 

「行けーーッ!レッサー!」

 

「ネコ科のプライドを見せる時よーー!」

 

「うわぁぁあ!あと私はネコ科じゃなくてパンダ何ですけど……!」

 

 

何故か熱くなっているサーバルとカラカルは徐々にブランコのスピードが速くなっていく。その光景に思わずキュルルは声を上げる。

 

 

「ストップ!ストーーーップ!」

 

「どうしたのキュルルちゃん!」

 

「あっ!ちょっとサーバル!?」

 

 

その時、キュルルの声にサーバルが反応し、ブランコから手を離してしまう。サーバルの手はブランコのスピードを上げていたと同時に行き過ぎないように制限も掛けていた。それが解かれたならばどうなるか……それは今にも分かる。

 

 

「「「あ」」」

 

「ああああああああああああああッ!!」

 

 

レッサーが乗るブランコは凄まじい勢いに乗り、一回転してもおかしくない……いや、必ず一回転してしまうだろう。

 

 

(このままじゃ……!)

 

「レッサー!飛ぶのよ!」

 

「頑張れレッサー!」

 

「無理はしないで!」

 

「勇気を出して!」

 

「うわぁぁあああああああああッッ!」

 

 

遂にブランコが一回転すると余りの勢いに宙にレッサーは宙へ放り出される。

 

 

「「「レ、レッサー(ちゃん)!?」」」

 

 

そのまま彼女の身体は回転しながら地面へとストンッと無事に着地する事に成功する。

恐る恐る目を開くレッサー自身何が起きているのか良く分かっていない様子だ。

 

 

「あ、あれ?私、何を……」

 

「す、すっごーーーーい!!レッサーちゃんすごいよ!!」

 

「えっ、えええ!?」

 

 

レッサーは興奮するサーバルに若干の戸惑いを見せながらも顔を赤く染める。それに続くようにドラえもん達も感心したように拍手を送る。

 

 

「やるじゃない。見直したわ!」

 

「とても凄いジャンプだったよ!」

 

「さすがレッサーちゃんだね!」

 

「そ、そんな!さっきのは偶然で……」

 

 

先ほどのジャンプはまぐれだと否定しようとするが、

 

 

「いやいや。さすがはレッサーだよー」

 

「そ、そんな事……ってジャイアントパンダちゃん⁉︎」

 

 

いつの間にかブランコで遊んでいるジャイアントパンダの姿にレッサーを始めた一同が驚愕する。

 

 

「いつの間に!?」

 

「これって、バラバラだったものでしょ?よく作ったねぇ」

 

 

レッサーパンダが指を指したところへ向くと其処にはドラえもん達と組み立て遊具があった。彼女はそれを見て凄いと感じたのだろう。

 

 

「うん、これもレッサーさんのおかげなんだ」

 

「え⁉︎」

 

「そうなのレッサー?」

 

「え、わ、私は別に…」

 

 

突然のキュルルの発言にレッサーは困惑をして否定しようとするが、ジャイアントパンダが確認をしてくるが、彼女はまるで手柄を独り占めにすると思ってしまい、違うと答えようとするが、そこへ後押しをするようにドラえもんも口を開く。

 

 

「なに言っているんだい?この公園が見つかったのもバラバラだった遊具をちゃんと組み立てる事が出来たのはレッサーパンダちゃんのおかげでしょ」

 

「ヘェ〜、レッサーは凄いね」

 

 

ドラえもん達も遊具を組み立てられたのは彼女のお陰だと答え、それを聞いたジャイアントパンダはレッサーパンダを褒めると彼女の顔が明るくなった。

 

 

「うん!これでようやく私もジャイアントパンダちゃんのお友達に」

 

「ん?なに言っているのレッサー?」

 

「えっ⁉︎」

 

 

レッサーパンダの発言を聞いて思わず、ジャイアントパンダは彼女に聞き返した。

 

 

「え!?ち、違うの?……そ、そうだよねぇ、私みたいな地味でダメダメなフレンズがジャイアントパンダちゃんの友達な訳ないy「違うよ、私とレッサーが友達なのは最初からだよ〜」ふぇ?」

 

 

やっぱり自分がジャイアントパンダの友達になれる訳ないと自虐的な言葉を口にするが、それを割り込むようにジャイアントパンダが否定したことに思わず彼女は疑問の声を漏らす。

 

 

「だって、レッサーはいつも私に美味しい竹を見つけてくれたり、気持ちいい寝床を探してくれたり、寝ているばかりの私と一緒にいてくれるもの。だから大切な友達だよ」

 

「ジャイアントパンダちゃん……」

 

 

彼女の最初の発言を聞いてレッサーパンダは呆然となる。

 

 

「それに今日だってこんなに楽しい遊び道具をををっ!!!」

 

「は、はしゃぎ過ぎだよ!」

 

 

ブランコにすっかりハマり凄まじスピードで体を揺らすジャイアントパンダ。時々残像をを作りながら楽しんでいるのは恐らく目の錯覚なのだろう………。

 

 

「よかったねレッサー」

 

「はい!」

 

 

2人が仲良くしている姿を見たサーバルはレッサーの肩を軽く叩いた。

 

 

「ほんと良かったね」

 

「うん、そうだね…ん?」

 

 

すると、となりにいるカラカルが肩を震わせている事に気付いた彼女はカラカルの顔を覗きこむ。

 

 

「カラカル⁉︎」

 

「え゛っ゛? な゛、な゛に゛よ゛?」

 

 

彼女の目から大量の涙を流している事にサーバルが驚愕する。あの、ややドライな性格をしたカラカルが涙を流すとは夢にも思わなかったキュルルは口を開いた、

 

 

「どど…どうしたのカラカル⁉︎どこか痛いの⁉︎」

 

「な、なんでそうなるのよ!」

 

「え、違うの?」

 

 

キュルルの問いに対して違うと否定したものの、泣いていた理由を素直に話す事はカラカルにとって難しい事だ。

彼女は適当な理由をでっち上げようと考えようとしたが、

 

 

「カラカルは感動屋さんだもんねぇ〜」

 

「え、そうなの?」

 

「ち、違うわよ!」

 

「もう、恥ずかしがっちゃって」

 

「ドラえもんまで⁉︎……なによその目?」

 

 

サーバルに便乗したドラえもんの目つきが明らかに変だ。それは今まであった下心とかではなく、どちらかと言えば優しい目に近いが、なんとなくイライラしてくる感じの目だ。

 

 

「温かい目だよ」

 

「やめなさい!」

 

 

よくわからないが長時間その目で見られるとカンに触る為、彼女はドラえもんに止めるように強く言う。その様子をパンダコンビは見ていた。

 

 

「あの子達も仲良しだね〜」

 

「うん!」

 

 

ドラえもんとサーバルに対して怒っているカラカルが少し口元が緩んでいる事に気付いたパンダコンビは微笑ましく見ていた。

そんな中キュルルがジャイアントパンダを見てある事を思い出す。

 

 

「あ!そういえばャイアントパンダさんは公園のことを知っていたんだよね?」

 

「そ〜だよ」

 

「じゃあ、この2つの遊具以外に何かなかった?」

 

 

公園のことを知っていたジャイアントパンダならもしかしたら今ある遊具以外の事を知っているのではと睨んだキュルルは質問をする。そしてジャイアントパンダは真剣に考えているのだろうが、今にも寝てしまいそうな表情をしながら唸り声をあげていた。

 

 

「いや、キュルルそれはあなたの思い違いd「あ〜、そういえばあったような気がする」って、えええええっ!?」

 

 

カラカルはキュルルが思い違いをしていると指摘をしようとするが、ジャイアントパンダの"あった"という発言に思わず驚きの声を上げる。

 

 

「うーん、なんかあった気がするんだけど、あまり思い出せないんだよね〜」

 

 

しかし、ジャイアントパンダはキュルル同様に詳しい事は覚えておらずその遊具がどんなものだったか知らないようだ。

 

 

「ジャイアントパンダちゃんも記憶がないの?」

 

「い〜や、このこーえんを見たのはすっごい前だったからその時の事があまり覚えていないんだ。それに私はいつも寝ているからね〜、ふわぁ〜」

 

「そっか」

 

 

ジャイアントパンダも残りの遊具について詳しく知らない事にキュルルは肩を落とす。

 

 

「ごめんね〜、でも私にできる……事があ…る……なら…いつでも力に………グゥ」

 

「ああっ!また寝ちゃった!」

 

「もう、本当にのび太君そっくりだな!」

 

 

一方、ドラえもんは彼女達の会話の内容を聞いて考える。

 

 

(2人とも公園には遊具がまだあったかもしれないと言っているけど、その遊具の手がかりが見つからないんだよな。だけど、2人が同じ事を言う偶然なんてそうないからなぁ…)

 

 

ドラえもんは彼女たちがそして、恐らくキュルルはこのアヅアエンに以前来たことがあるためその時にその遊具を見たのだろうと考えたが、その遊具の特徴や痕跡が1つも見当たらない事に疑問を持っていた。

 

 

(もしかしたら、見つかってないだけであるかもしれない)

 

 

周囲に遊具の手がかりがないか探そうと動こうとすると、

 

 

『警告シマス!近くにセルリアンが発生しまシタ!お客様はただちニ避難してくだサイ』

 

「え、いきなりなに?」

 

「ラッキーさん急にどうしたの?」

 

 

突然サイレンのような音をならしなにかを警告するラッキーさんの言葉にサーバルとキュルルそして、隣で聞いていたパンダコンビは首を傾げる。

 

 

「ねぇ、今セルリアンだが発生するって言っていなかった?」

 

「てことは……」

 

 

一方、ドラえもんとカラカルは警告の意味を理解するとだんだんと顔が青ざめていく。すると、すぐ近くの竹林から大量の小型セルリアンが現れた。

 

 

「ああっ!セルリアンだ!」

 

「ここにもいるの!?」

 

 

てっきり、セルリアンがいるのはさばんなちほーだけだと思っていた2人は驚いていると、咄嗟にカラカルが2人の前に出た。

 

 

「小さくてもこれだけの数じゃ戦ってもキリがないわよ!」

 

「うん、みんな一先ず逃げよう!」

 

 

この数を全て相手にするのは難しいと判断したカラカルの意見に賛成したサーバルはドラえもん達に逃げるように言う。ドラえもん達も勿論その意見に賛成して、寝ているジャイアントパンダをドラえもんが背負いそのままセルリアンから逃げようと公園を出るが、

 

 

「あれ?」

 

 

サーバルが何かに気づいてその場を振り返った。

 

 

「サーバル何しているのよ!早く逃げるわよ!」

 

「でも、何か様子がへんだよ」

 

 

サーバルはそう言って指をさすと、其処には自分たちを追いかけてこなく、滑り台とブランコを壊していた。

 

 

「セルリアンが滑り台とブランコを攻撃している?」

 

 

何故、自分達ではなく公園の遊具を攻撃するのかドラえもん達は全く分からなかった。

 

 

「なにはともあれ今がチャンスだ。この隙に逃げるんd「やめてくださいー!!!」レッサーパンダちゃん!?」

 

 

セルリアンが遊具を攻撃しているうちにその場から離れようとしたが、レッサーパンダが引き返してしまった。

 

 

「レッサー!?」

 

「なにしているのよ!」

 

「だって、せっかくみんなで一生懸命組み立てたのに公園なんです!壊すのはやめてくださいー!」

 

 

自分たちが組み立てた公園の遊具を目の前で壊されていくところを我慢出来なかった彼女はセルリアンを追い払おうと威嚇をする。

しかし、それが裏目に出て狙いを遊具から威嚇をするレッサーパンダに変え、セルリアンは一斉に襲いかかるが、

 

 

「みゃみゃみゃみゃー!」

 

「ハアアアッ!」

 

 

瞬間、サーバルとカラカルがレッサーパンダに襲いかかるセルリアンを自分たちの爪で切り裂いてバラバラにした。しかし、まだ数匹残っており、サーバル達を避けてレッサーパンダに迫るが、

 

 

「ドカーン!!!」

 

「ひゃっ!?」

 

 

その時、レッサーパンダの目の前にいたセルリアンが彼女の後方から飛んできた空気の塊に命中してバラバラに吹き飛んだ。レッサーパンダはバラバラになったセルリアンを見て数秒程呆然となるが、意識が戻り後ろをふりかえると、そこには空気砲を右手に装備したドラえもんとその後ろでレッサーパンダを心配そうに見つめるキュルルがいた。

 

 

「レッサーパンダちゃん大丈夫⁉︎」

 

「は、はい!ありがとうございます!」

 

「2人はジャイアントパンダちゃんを連れて後ろに隠れていて、セルリアンは僕等が倒す!」

 

 

そう言ってドラえもんは左手をポケットに突っ込むともう一丁の空気砲を取り出して左手に装備すると、セルリアンに向かって撃ち始める。サーバルとカラカルも負けじと小型のセルリアンを爪や拳で倒していく。しかし、

 

 

「空気砲が効かない⁉︎」

 

 

しばらくして大量のセルリアンを半分以上倒したが、先ほどからドラえもんが相手をしている数匹のセルリアンは空気砲を何度も喰らっているが、全く倒れなかった。

 

 

(おかしい、幾ら何でも頑丈過ぎる。モノレールや森にいた大きなセルリアンだってすぐ倒せたのに何でこのセルリアンは倒せないんだ⁉︎)

 

 

先ほどまで倒したセルリアンと今相手をしているセルリアンは特に見た目や特徴に何ら変わりはないのに何故これ程も頑丈なのか不思議に思っていると、

 

 

「見て!あのセルリアン(ヘシ)があるよ!」

 

「え、へし?」

 

「倒しきれなかったセルリアンをよく見て」

 

 

突然サーバルがセルリアンを指で指しながら言った言葉に首を傾げる。そこへ補足を入れるようにカラカルの言葉を聞いて、ドラえもんは目を凝らしながらセルリアンの体を観察すると、太陽の光に反射している何かを見つける。

 

 

「あっ!何か付いている」

 

「そう!あれが石よ!あの石がついたセルリアンはさばんなの時にいたセルリアンよりも物凄く頑丈なのよ!」

 

 

カラカルから石のついたセルリアンの特徴について教わるが、

 

 

「それじゃあ、どうやって倒せばいいのさ?」

 

「大丈夫、石のついたセルリアンは石を壊せば倒すことができるよ」

 

「そうか!なら早速!」

 

 

弱点を知ったドラえもんは早速セルリアンの石に向かって空気砲を構えるが、その瞬間セルリアン達は素早く動きそのまま合体して大きくなっていった。

 

 

「ひ、1つになっちゃった」

 

「しかも弱点も隠しちゃったよ」

 

「うう、これじゃあ倒せないよー!」

 

 

合体する前はそれぞれが足を剥き出しにしていたが、合体する事により石を内側に隠したのだ。これにより、益々セルリアンを倒しにくくなってしまった。

 

 

「こうなったら体を削っていくしかないわね」

 

 

カラカルの提案で長期戦になるが、石が剥き出しになるまで体を少しずつ削っていかしかないと聞いた2人は戦う方法がそれしかないため選ばずにいられなかった。

 

 

「サーバル!野性解放して」

 

「うん、わかった!」

 

 

カラカラに返事をすると2人は目を光らせるとセルリアンに向かって飛び上がり、その後ろでドラえもんは両腕に装備した空気砲をセルリアンに向かって連続で撃ち始める。

 

 

 

ドラえもん達がセルリアンを相手にしている頃、その近くにある茂みにキュルルとレッサーパンダとジャイアントパンダは身を隠しながら自分たちの代わりに戦っている3人をただ見ているしかなかった。

 

 

「どうしよう」

 

「うう、私の所為で皆さんが危険に……」

 

 

レッサーパンダはあの時セルリアンに向かって威嚇をして、戦う羽目になり戦う術がない彼女の代わりにドラえもん達が戦う事になってしまった事に自分を責めていた。そんな彼女の姿を見てキュルルはそっと肩に手を置いた。

 

 

「レッサーさんの所為じゃないよ。自分たちが組み立てた公園の遊具を目の前で壊されていくところを黙ってられないのは当たり前の事だよ」

 

「キュルルさん……」

 

(けど、本当にどうしよう。ここで僕たちが出たらジャイアントパンダさんを守る人がいなくなるし、出てもサーバルちゃん達の邪魔になりそうだ)

 

 

自分達もこのまま指を咥えて見ているだけじゃなく、今でもドラえもん達のところへ行き一緒に戦いたいが、戦う力がない自分達が出たところで役に立たないと理解している。

 

 

(だけど、このまま見ているだけなんて出来ない)

 

 

どうにかしてドラえもん達の邪魔にならないで尚且つセルリアンを倒す方法を考えていると、脳裏にさばんなちほーで出会ったカバの言葉を思い出す。

 

 

「先ず一つ目はこのジャパリパークでは自分の力で生きること。自分の身は自分で護るのですよ?サーバル達任せじゃダメよ?」

 

「それともう一つはどうしても自分の力だけで出来ない事があればフレンズ達に助けを求める事よ。きっと、貴女を助けてくれるわよ」

 

 

何でもサーバル達に頼っていては駄目だ。前者と後者は言っている事は矛盾になる言葉だが今思ってみると、それは違う意味であると気づいた。

 

 

(お互いに助け合う……)

 

 

そして、先程までバラバラだったガラクタをみんなと協力した事を思い返した。あの時のようにドラえもん達と協力し合いセルリアンを倒せればと思った彼女は周囲を見渡しながら何か良い方法はないかと考えていると、

 

 

「あれは確か」

 

 

彼女の視線の先には地面からまだ出てきたばかりだろうタケノコが生えていた。同時にキュルルはここへくる途中ドラえもんが道具を使ってタケノコを急成長させて長い竹にした事を思い出す。

 

 

(そうだ!あれを使えばやっつけられるかもしれない!)

 

 

そう思ったキュルルはサーバル達と共にセルリアンを攻撃しているドラえもんの名を呼んだ。

 

 

「ドラえもん!」

 

「ドカン!ドカン!なんだいキュルルちゃん⁉︎」

 

 

空気砲でセルリアンを攻撃しながらキュルルの呼びかけに答える。

 

 

「ドラえもんセルリアンを倒す方法が思いついたよ!」

 

「なんだってそれは本当…ギャッ!?」

 

「ドラえもーん!?」

 

 

キュルルがセルリアンを倒す方法を思いついたと聞いて一瞬、攻撃をやめるとセルリアンの攻撃により彼女たちの隠れている茂みの方まで飛んできた。

 

 

「だ、大丈夫、それでその方法って?」

 

「うん、ちょっと耳を貸して」

 

 

ドラえもんはキュルルに耳を寄せる。というかドラえもんの耳はない為、側頭部のところで手を当ててコソコソと会話をする。

 

 

「……成る程!その手があったか!」

 

 

キュルルの作戦を聞いたドラえもんはそれに賛同し一旦空気砲をしまいながら戦っているサーバルを呼ぶ。

 

 

「2人ともセルリアンをこっちに引き寄せて!」

 

「なんでよ?」

 

「いいから!」

 

 

急にセルリアンをおびき寄せるように発言したドラえもんに疑問を思うが、

 

 

「わかったよ!カラカルも!」

 

「サーバル⁉︎…ああ、わかったわよ!やればいいんでしょ!」

 

 

それとは対称的にサーバルは素直に返事をした為、カラカルは仕方なくサーバルと共にセルリアンをおびき寄せようとする。

 

 

「こっちを向きなさい!」

 

「へへ!こっちが美味しいよー!」

 

 

2人はセルリアンに向かって両手を振りながらドラえもん達のいる茂みの方まで誘い込むとドラえもんはポケットから"ある物"を取り出す。

 

 

「今だ!」

 

 

ドラえもんはセルリアンの真下にあったタケノコに向かって"ある物"を投げるとタケノコは物凄いスピードで成長する。槍のようにセルリアンの巨体を貫き隠れていた石も破壊され、爆散した。

 

 

「「「「やったー!」」」」

 

「す、凄い!ドラえもんさんはさっきい何を投げたんですか?」

 

 

先程タケノコに投げつけた物を知らないレッサーは何を投げたのか聞いてきた。

 

「これはアットグングンって言って、これを使ってタケノコを急成長させたんだ」

 

 

彼女たちはセルリアンをやっつけたと安心するが、竹林から更に数匹のセルリアンが現れた。

 

 

「まだいるの⁉︎」

 

「こうなったらとことん…うっ!」

 

「カラカル⁉︎」

 

「ちょ、ちょっと厳しいかな」

 

「サーバルちゃんまで⁉︎」

 

 

セルリアンに攻撃しようとしたサーバルとカラカルが突然地面に膝をついて苦しそうな表情を浮かべる。その様子を見てドラえもんとキュルルは何処か怪我をしたのか心配していると、

 

 

「まさかお二人のサンドスターがなくなってきたんですか⁉︎」

 

 

レッサーパンダが慌てて2人に駆け寄り話しかけると、その内容を隣で聞いていたドラえもん達は彼女に追求する。

 

 

「レッサーパンダちゃん知っているの⁉︎」

 

「サンドスターがなくなるとフレンズは元の動物に戻ってしまうんですよ!」

 

「ええっ!?」

 

「なんだって⁉︎」

 

ドラえもんはモノレールの時にカラカルがサンドスターがなくなるとどうなるのか聞くと言いづらそうな顔をしていた事を思い出した。

 

 

(そうか、だからあの時辛そうな顔を浮かべていたのか、それに僕たちに心配させないようにして……)

 

 

カラカルが教えなかったのは彼女なりの心遣いであると感じ、ドラえもんは彼女達がいつもこの命に関わる日常を過ごしているのだと気づき。そして、セルリアン達は動かなくなったサーバルとカラカルに襲いかかってきた。

 

 

「あ、危ない!」

 

「「「「ドラえもん(ちゃん)(さん)‼︎」」」」

 

 

ドラえもんは両腕を広げ襲いかかってくるセルリアンからサーバル達を守るように前に出るが、

 

 

パッカァァァァン

 

 

なにかが破裂したような音が辺りに響き渡る。ドラえもん達は突然響き渡る音に呆然となるが、

 

 

「みんなが直してくれた遊び道具を……それに大事な友達のレッサーとみんなを傷つけるなんて───」

 

 

目の前には先程まで寝ていたジャイアントパンダがわなわなと体を震わせて立っていた事に気がつく。

 

 

「ジャイアントパンダ!」

 

「待って、わたし達も今助けるわよ!」

 

 

サーバルとカラカルもジャイアントパンダに加勢しようと動けない体を無理やり動こかして立ち上がるが、レッサーパンダが制するように手を出した。

 

 

「駄目です!前に出てはいけません!」

 

「なに言っているのよ!」

 

「大丈夫セルリアンはすぐにやっつけるから」

 

「そうじゃありません!ジャイアントパンダちゃんが怒ってます!」

 

「「「「え?」」」」

 

 

彼女の発言に思わず声を漏らした一同だが、セルリアンがジャイアントパンダに襲いかかる光景を見て助けようと足を一歩踏み出した瞬間だ。

 

 

「許さなーい!!!!」

 

バッゴォォォォォォォン!!!

 

 

なんと、ジャイアントパンダは腕を振ると周りにいたセルリアンは全て吹っ飛び、そのまま爆散した。

 

 

「「「………!?」」」

 

 

圧倒的な強さを見せたジャイアントパンダ。

ドラえもん達は自分がもしジャイアントパンダを無理やり起こしていたら先ほどのセルリアンのようになっていたかもしれないと青ざめていた。

だが、全て倒しきれていなかった。

 

 

「まだ他にも……!?」

 

 

パッカァァァァン!!!

 

 

「「「えっ!?」」」

 

 

他のセルリアンも電光石火の如く彼女の黒腕がブレた瞬間に弾け飛ぶ。さらに彼女は何時もの眠気ある眼とは裏腹に今は明確な殺意を持った眼光を宿し全身に力を込める。

 

 

「──秘技」

 

「……思い出した!」

 

「カラカル?」

 

 

突然のカラカルの発言にキュルルはどうしたのだと話しかけると、ポツリと口を開く。

 

 

「じゃぱりパークに存在するインドゾウ、シロサイ、ヒグマ、カバに匹敵するパワフルなフレンズ。そしてジャイアントパンダ。彼女に付けられた異名は……!」

 

 

「怒りの大突撃」

 

バッカァァァァァァァァァン

 

「じゃぱりパークの核弾頭……!」

 

 

目の前にはセルリアンの破片とその真ん中に立つ強者のオーラを漂わせる核弾頭(ジャイアントパンダ)が立っていた。

 

 

 

の の の の の

 

 

セルリアンがパークの核弾頭(ジャイアントパンダ)により倒された後、サンドスターを多く消耗したサーバル達はラッキーさんが持ってきたじゃぱりまんを食べ、中に含まれているサンドスターを摂取する事により体を動かす事が出来た。

 

 

「みんなが無事でよかったね」

 

 

誰一人セルリアンにやられる事なく怪我もしなかった事にドラえもんは安心する。

 

 

「うう、だけどみんなで作った公園がバラバラに……」

 

 

しかし、セルリアンによって壊された遊具はバラバラになり、それを見たレッサーパンダは落ち込んでいた。しかし、サーバルは彼女に手を置きながら優しく話しかける。

 

 

「大丈夫、バラバラになったのならまた組立てようよ」

 

「だけど、サーバル見て見なさい」

 

 

カラカルはそう言って足元に落ちていたバラバラになった滑り台の一部を拾ってみせる。それは大きさも形も最初と比べて細かく形が歪んでおり、簡単には直せそうにはなかった。それを見たサーバルも「あ」と声を漏らして、顔を下に向ける。

 

 

「大丈夫だよ。ここは僕に任せて」

 

「ドラえもんちゃん?」

 

「いったいどうするつもりなの?」

 

「まあ、見てて〜」

 

 

ドラえもんがポケットに手を入れるとパンダコンビは不思議そうな顔を浮かべる。一方でサーバル達3人はワクワクしながら何を出すのか気になっていた。

 

 

「タイムふろしき〜!」

 

 

ポケットから取り出したのは時計の模様が描かれた赤と青の布…タイムふろしきをバラバラになった遊具に被せる。

 

 

「タイムふろしきをバラバラになった遊具に被せれば、あ〜ら不思議!」

 

 

ふろしきを外すとそこにはセルリアンに壊される前のすべり台とブランコが建っていた。

 

 

「エエエエエエッ!!!?」

 

「すご〜い、こーえんがもと通りだよ〜」

 

 

元に戻った遊具を見てレッサーパンダは顎が外れる勢いで口が大きく開き、ジャイアントパンダは一瞬驚いた表情になるが、すぐに何時もの眠気のある顔に戻る。

 

 

「すっごーい!こーえんが元に戻った!」

 

「もう、私は突っ込まないと決めていたけど言わせてもらうわ。ほんととんでも無いわね!」

 

 

ドラえもんの出したタイムふろしきの効果にサーバルとカラカルはスモールライトの効果を初めてみたよりも大きな反応を示していた。

 

 

「凄いよ!今のまるで手品みた…い……だ?」

 

「ん?キュル……ちゃ………ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、彼女の視界はぼやけ、隣にいるサーバルの声が段々と遠くなっていく感じがしていた。彼女は目を擦り改めて目の前の光景を見ると、そこにはドラえもん達はいなかった。

 

 

「──え?みんな何処に行ったの?」

 

 

キュルルは周囲を見渡すがそこにはドラえもん達の影も形もなく、あるのは竹林しかなかった。

彼女はみんながどこに行ったのか探し出そうと数歩程歩くと頭に違和感を感じ、恐る恐る触ってみた。

 

 

「あれ、帽子がない⁉︎」

 

 

そう、キュルルは今帽子を被っていなかった。彼女はドラえもん達がいない上に自分の帽子をいつのまにか無くしてしまった事にショックを感じていると、

 

 

「おーい!■■〜!」

 

 

目の前の道から誰かの名前を呼ぶ女の子らしき人物がこちらに向かって走ってきた。

 

 

(誰だろう?)

 

 

やってきたのは小さなシルクハットを被ったサーバルやカラカルと同じネコ科らしきフレンズだ。

 

 

「まさか旅の途中に公園を見つけるとは思わなかったね■■」

 

 

謎のフレンズはキュルルを■■と呼び、彼女は周囲に誰かいないか確認するが誰もいなく自分の事を指している事に気付いた。

 

 

「■■?それが僕の名前?」

 

「なに言っているんだ?」

 

 

■■と呼ばれたキュルルは違和感を感じ、目の前にいる謎のフレンズにそうなのかと首を傾げながら質問すると、謎のフレンズも思わず首をかしげる。

 

 

「それよりも見てよ■■。君の提案したしーそーとじゃんぐるじむは人気だぞ」

 

 

そう言ってキュルルに後ろを向くように指を指すとキュルルは後ろを振り返り、思わず目を疑った。そこには先程まで誰もいなかったはずなのに沢山のフレンズが滑り台やブランコ以外の遊具で楽しく遊んでいる姿があった。

 

 

「みんなが楽しそうに遊んでいる……これは僕が作ったの!?」

 

「違う違う、■■は考えてくれて、組み立てたのは私やあそこのブランコで丁度遊んでいる2人だよ」

 

 

そう言って謎のフレンズはブランコを指差すとそこには楽しそうにブランコを漕ぐレッサーパンダとジャイアントパンダの姿があった。

 

 

「あ、レッサーさんにジャイアントパンダさん!」

 

 

ようやく知り合いの彼女たちに出会えたと安心していると、謎のフレンズが急にキュルルの手を掴む。

 

 

「わたし達もあれで遊ぼうか」

 

 

そう言って謎のフレンズの視線の先には沢山のフレンズ達が楽しそうに遊んでいる竹で作られたシーソーとジャングルジムが存在していた。

 

 

「え、でも僕は……」

 

 

レッサーパンダとジャイアントパンダに用があると答えたかったが、何故かそれ以上口には出せなかった。何故かはわからないが、ここで彼女の誘いを断れば後悔する事になると感じたキュルルは暫く考えた後、口を開き。

 

 

「いや、遊ぼっか」

 

「うん、ありがとう」

 

 

そう言った瞬間、謎のフレンズはとても嬉しそうな顔になると早速2人でシーソーとジャングルジムに並び、自分の番が回ってくると楽しく遊んだ。

 

 

「いや〜、■■の考えた遊具はとても面白かったね」

 

「うん、ありがとう」

 

 

謎のフレンズに褒められたキュルルはドラえもん達に褒められるよりもなぜか嬉しく思えた。

 

 

「あのさ、僕君の名前わすれちゃってね……」

 

「酷いな〜、親友の私の名前を忘れるなんて冗談が過ぎるよ」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

「まぁ、いいか。だけどもうそんな冗談を言わないでね」

 

「私の名前は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ルちゃん……キュルルちゃん!」

 

「……あれ、サーバルちゃん?」

 

 

彼女は気がつくと元いた公園に戻ってきており目の前には自分の名を呼ぶサーバルが立っていた。

 

 

「あれ、あの子は?」

 

「なに言っているのよ?あんた先までボーッと突っ立ていたわよ」

 

「そうなの⁉︎」

 

「キュルルちゃんどうしたの?もしかして何処か怪我をしたの?」

 

「じ、実は……」

 

 

キュルルが先程まで起きていた事をサーバル達に話そうとした瞬間、彼女のお腹からきゅるるる〜と音が鳴り響いた。

 

 

「あ、わかった!キュルルちゃんお腹が空いたんだね」

 

「まぁ、仕方ないわよ。今日は色々あったから疲れているのよ」

 

「ち、違うよ!僕は「きゅるるるる〜」うう……」

 

 

彼女は否定しようとしたが、体は正直答えるのだった。

※下心の意味ではない

 

 

の の の の の

 

 

キュルルの他にドラえもん達もお腹を空いていた為、ラッキーさんが持ってきたじゃぱりまんを食べ、その後に彼女が先程体験した事をドラえもん達に話した。

 

 

「つまりさっきまでボーッとしていたのは記憶が少し蘇ったの?」

 

「うん、一瞬だけだったけど残りの遊具も確認できたよ」

 

 

キュルルは先ほどまで見た自身の記憶を今でも振り返る事が出来るが、それ以前や以降は全く記憶が思い出せない。

 

 

「じゃあ、早速作ってみようか」

 

「えっ、作るの?」

 

 

カラカルは今日は色々と動き回った為、これ以上は動きたくはなかった為嫌そうな表情を浮かべていた

 

 

「作らないの?」

 

「……仕方ないわね。良いわよ」

 

「確か材料は竹なんだっけ?」

 

 

ドラえもんはこれから作る遊具の材料は竹が必要だとわかるとパンダコンビに目を合わせる。

 

 

「ここの竹は使っても大丈夫?」

 

「いいよ〜」

 

「どうぞお好きに」

 

「ありがとう」

 

 

ドラえもんはパンダコンビから許可を得ると、サーバル達に目を合わせる。

 

 

「じゃあみんなで残りの遊具を作るぞー!」

 

「「おおおーっ!」」

 

「はぁ、やれやれ」

 

 

それからドラえもん達は材料である竹を調達した後、キュルルの記憶を頼りに出来るだけ再現を行い。サーバルとカラカルがそれぞれの遊具のサイズに合うように竹を爪で切り、バラバラにならないように組み立て後、ブランコのようにレッサーパンダがしっかりと縄で固定した。

 

 

「へぇー、これがあなたが見た残りの遊具ね」

 

「うん、記憶通りだ!」

 

 

一同の前には緑色でこのアヅアエンのイメージである竹を使ったシーソーとジャングルジムが作られ、絵と同じ光景が広がった。

 

 

 

の の の の の

 

 

「本当にいいんですか?」

 

「もうちょっとのんびりしていけばいいのに〜」

 

「ありがとう。だけど、もう夕方だからそろそろモノレールにいるラッキーさんの元へ戻らないとね」

 

 

シーソーとジャングルジムを作り上げたドラえもん達は早速遊ぼうとしたが、出来上がった時はもう夕方であった為、これ以上長居するのはモノレールにいるラッキーさんに心配をかけてしまうと思い、彼等はモノレールの駅に帰ってきていて、パンダコンビは見送りに来ていた。

 

 

「私は遊びたかったなぁ〜」

 

「わがまま言わないの」

 

 

サーバルは折角新しい遊具を作って遊べると楽しみにしてに遊ばず帰ることにがっかりしていた。

 

 

「またいつでも遊びに来てね〜」

 

「うん、今度遊びに来たらあの2つを遊ばせてね」

 

 

サーバルは次来た時に新しく作ったシーソーとジャングルジムを遊ぶ事を2人に約束する。一方、ドラえもんはキュルルに話しかける。

 

 

「キュルルちゃん此処にはお家は無かったね」

 

「でも、とても楽しかったよ」

 

 

此処にはお家がなかったが、キュルルは楽しめた事と自身の記憶が一部思い出せた事もあり得るものはあったのだ。

 

 

「ドラえもんの方は友達はいたの?」

 

「一応、調べたけど此処にはいないみたい」

 

 

ドラえもんの方はたずね人ステッキを使ってみたが、どうやら此処にはのび太達はいなかったようだ。

 

 

「次のちほーで見つかると良いね……あ、そうだ!」

 

 

彼女はスケッチブックを取り出すと色鉛筆で開いたページに絵を描き加えるとその絵を切り取る。

 

 

「2人ともこれは公園のお礼だよ」

 

 

彼女はパンダコンビに自分の描いた絵を渡す。パンダコンビはその絵をみて嬉しそうな表情を浮かべる。其処には公園の絵が描かれているが以前と違ってシーソーとジャングルジムが追加されており、それを楽しそうに遊んでいるパンダコンビが描かれてあった。

 

 

「これは私たちですか⁉︎」

 

「不思議な事が出来るのね〜」

 

「えへへ……そうだラッキーさんにも」

 

 

キュルルはもう一枚の竹林の絵に描き加えると、その絵をスケッチブックから切り取る。

 

 

「ラッキーさんもこれをどうぞ」

 

『ありがとうね』

 

 

ラッキーさんはキュルルから貰った絵を自分の耳で器用に挟み込み、彼女に御礼を言った。その後ろからカラカルがラッキーさんの絵を覗き込むと其処にはラッキーさんを先頭に竹林を歩く自分たちの絵が描かれていた。

 

 

 

『扉 閉マリマス。オノリノカタハオイソギクダサイ』

 

 

モノレールに乗っているラッキーさんが出発する事を告げると、ドラえもん達はモノレールに乗り込む。

 

 

「じゃあ、僕たちはそろそろ行くよ」

 

「ハイ、お気をつけて!」

 

 

お互いに挨拶した彼女たちは次のちほーに向かって出発しようとした瞬間、ジャイアントパンダが口を開く。

 

 

「あ、そういえばこの間ジャングルちほーからやってきたフレンズがヒトを見たって言っていたね」

 

「「「「え?」」」」

 

プシューッ

 

 

その時、モノレールの扉は閉まり次の駅に向かって車輪を動かした。

 

 

「「さようなら〜!」」

 

『元気デネ』

 

 

パンダコンビはモノレールが見えなくなるまで手を振り続けた。ラッキーさんはぴょんぴょんと跳ねながら見送った。

 

 

 

 

「……なんか最後にすごく気になる事を言っていたわね」

 

「うん…」

 

「ねぇ、ジャングルちほーで見たヒトってドラえもんちゃんの友達かな?」

 

「うーん、もしかしたらそうかもしれない……でも情報は手に入ったから」

 

「ドラえもんは……此処で私たちと別れて友達を探しにいくの?」

 

「僕は……本当ならのび太くん達を探す目的でみんなと行動してきたけど、のび太くん達も恐らく其処にいるフレンズ達と共に行動していると思うから遠回りなるけど、このままゆっくりと行くよ」

 

「本当にいいのドラえもんちゃん?」

 

「僕たちは今まで色んなところに行って冒険してきたから多分大丈夫(のび太くんは物凄く不安だけど)」

 

 

さまざまなところで冒険して育んできた絆で信頼しているからドラえもんだからこそ大丈夫だと答えられるのだ。

 

 

「それに今はキュルルちゃんのお家を探すのも大事だからね」

 

「ドラえもん……ありがとう!」

 

 

彼女はドラえもんが自分のお家を探す事を優先してくれる事に嬉しく思った。すると彼女は窓の外にちらっと視界に入り、驚愕の表情を見せる。

 

 

「見てアレ!」

 

 

窓の外には先ほどまでいた竹林ではなくレールの下には夕日の光が反射される一面青い景色が広がっていた。

 

 

「何アレ…全部水───?」

 

「すっごーい!」

 

「あれは海って言って魚や鯨が泳いでいる一面広がる塩水だよ」

 

「へぇ〜」

 

 

ドラえもんから海について聞いたサーバルは関心した声を出す。

 

 

『ツギノテイシャエキハカイジュウエンマエ カイジュウエンマエ────』

 

 

ラッキーさんのアナウンスが響き渡りながらモノレールは次の駅に向かってレールの上を走るのだった。

 

 

 

の の の の の

 

 

「ぜ、せんちゃ〜ん…」

 

 

一方その頃、さばんなちほーの湖から少し離れた道では3人のフレンズが歩いていた。

 

 

「フウ…フウ…も、もう先に進もうよ〜」

 

「ヒイ…ヒイ…そ、そんな事言ったて…」

 

 

息を荒くしながら道を歩くのはアルマーとセンちゃんだ。2人は人探しの仕事であちこちを歩きまわったりしているが、今回はやけに辛そうな顔を浮かべていた。

 

 

「ハイそこ!列を乱さないで!」

 

 

彼女達の前を走るのはドラえもん達を駅まで案内したカルガモだった。あの後、彼女たちから絵に描かれた人物の行方について尋ねたらところ知っている事を伝え、2人から教えてほしいと言われたが、教えるよりも案内した方が早いと判断した彼女は2人をこうやって駅まで案内していた。

 

 

「わ、私たちはあなたが会った…ぜえ、ぜえ……子達の事を聞かせて貰えれb「お気になさらず!」

 

 

センちゃんの話に割り込むようにカルガモはやる気のある顔を見せながら答える。

 

 

「何言っても私!だれかをあんないするのが大好きなもので!」

 

 

2人は気づく、今のカルガモの目はやると言ったらやるスゴ味を感じさせる目であると、

 

 

「さぁ、右見て左見て前進!」

 

「「ヒィ〜〜〜〜〜!!!」」

 

 

彼女達はこれから先もずっと不幸な目に遭うことはまだ彼女たち自身も予想できない事だろう。



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第7話 うみのしょー

いつもながら謝罪します。本当に遅くなってすいません!!!この先自分の苦手な戦う描写がないから楽に書けるかなぁ〜、なんて思って気を抜いていたら一ヶ月近く投稿が遅れてしまいました。これからはもうすこし早く書けるように精神的に努力していきます。


我が弟が描いてくれた挿絵です。何なりとご覧ください。(`・ωメ)

【挿絵表示】



アヅアエンでパンダコンビと別れたドラえもん一行はモノレールに乗り、次なるちほーのカイジュウエンへ辿り着いていた。一行はモノレールを降りてすぐ駅を出ると、そこには広大な海が広がっていた。

 

 

「うわー!きれーい!」

 

「そうだね」

 

 

海を初めて見るサーバルは視界に果てしなく広がる景色と太陽の光に反射して宝石のように輝くその光景に興奮していた。その隣でキュルルもサーバルのように楽しそうな笑顔を浮かべていた。

 

 

「水が行ったり来たりしているよー!カラカルも遊ぼうよ!」

 

「カラカルちゃん近くで見ないの?」

 

「わ、私はやめとくわ」

 

 

一方、カラカルは浜辺に生えているヤシの木に身を隠しながら海を警戒して、その隣でドラえもんは彼女が海に対して物凄く警戒になっているのか気になっていた。

 

 

「カラカルちゃんもしかして海が怖いの?」

 

「ちょ、ちょっとだけ……本当にちょっとだけなんだから!」

 

 

どうやら初めて見る海に彼女は怖がっていた。ドラえもんは沢山の動物についての知識を持っており、カラカルが本来警戒心が高く臆病な性格である事は知っている為、これが本来の彼女の姿なんだろうと思っていた。

 

 

「そ、それよりも私たちはあなたの友達やキュルルのお家を探す為に来ているのよ。早く調べて行きましょうよ」

 

「ええー、せっかく海に来たんだから遊んで行こうよ〜」

 

 

早く帰りたいと内心思っているカラカルの気持ちを察したのかドラえもんは苦笑いを浮かべる。すると、そこへ"ピョコピョコ"と音がこちらに近づいてくる事に気付いた。ドラえもん達はその音の方へ顔を向けるとそこにはアヅアエン同様にモノレールのラッキーさんが呼んだであろうカイジュウエンにいるラッキーさんだった。

 

 

『アロハ〜、海は好きカイ?』

 

「また新しいラッキーさんだ!」

 

「今度はピンク色なのね」

 

 

目の前にいるラッキーさんはボディは今まで見てきた中では全く異なる桃色でゴーグルやシュノーケルに浮き輪をつけていた。そして、口調も陽気で親しみやすそう性格をしていた。

 

 

『ボクはカイジュウエンを担当スルラッキービーストだよ、君達の事はモノレールにいるラッキービーストやアヅアエンのラッキービーストから聞いているヨ。此処で聞きたい事あったら何でも言うんだヨ』

 

「ありがとうラッキーさん。早速なんだけど、この場所を知らない?」

 

 

早速キュルルはラッキーさんにスケッチブックの絵を見せる。そのページには海の上に作られた建物とその隣には大きなステージが描かれていた。

 

 

『オッケー!早速ケンサクするヨ』

 

 

ラッキーさんは彼女の頼みに答えるとその絵を頼りにカイジュウエンの地図データと照らし合わせて調べ始めた。

 

 

『ケンサク完了!ヒットしたヨ』

 

「本当に⁉︎」

 

「思ったより早いわね」

 

 

カラカルはラッキーさんが絵の建物の場所を調べ終えるのが意外と早かった事に驚きの表情を見せる。それもそのはずだ。比較として前回公園まで案内してもらったラッキービーストが検索が完了するまでの時間が約10秒前後なら目の前にいるラッキーさんは5秒程で調べあげたのだ。

 

 

「ここのラッキーさんはアヅアエンのラッキーさんよりも情報処理能力が優れていそうだね」

 

『その通りだヨ。ボクはアヅアエンの個体と比べると結構後に作られたんダ。だからその分機能は向上しているヨ』

 

 

ラッキーさんはそう言って胸を張るように胴体を突き出し、顔は変わらないがどことなくドヤ顔をしているように見えた。

 

 

「ドラえもんちゃん、その…じょーほーしょりってなんなの?」

 

「簡単に言えば頭がとても良いって事だよ」

 

「へぇー、そうなんだ」

 

 

サーバルからの質問に答えると、一同はラッキーさんを先頭に浜辺を歩き出し絵に描かれた建物へと目指して行った。

 

 

 

 

4人は浜辺をしばらく歩いていると目の前に海に面した建物が見えてきた。

 

 

「あれは…」

 

「どうやら、建物みたいだね」

 

 

浜辺にある大きな建物を見たキュルルはスケッチブックを開き目の前にある建物と自分の書いた建物の絵を見比べるとほぼ同一の建物だと理解した。

 

 

「やっぱりそうだ。絵と同じ建物だよ」

 

「やったね、早速行ってみようよ!」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

 

 

先にサーバルとキュルルは遅れてカラカルとラッキーさんを抱えるドラえもんが建物の奥へ行くとそこには防波堤のところで2人のフレンズらしき人物が互いに距離を取り向かい合っていた。

 

 

「なにしているんだろう?」

 

「さあ?」

 

 

目の前にいる2人に此処について詳しく聞こうとするが、彼女達は好奇心が高くこれからあの2人がなにをするのか黙って見ていた。

 

 

「ハイ!」

 

「そりゃー!」

 

 

メガネをつけた女性は持っていたボールを高く投げる。すると、水色のセーラー服を着た少女はボールに向かって高く飛び上がると、そのボールに口付けをする。オーバーヘッドキックを決めると、ボールは女性の手の中に勢いよく飛んでいき、バシィィィンと音を響かせながらボールを受け止める。それはさながら某超次元サッカーを連想させる。

 

 

「す、凄い!」

 

「すっご〜い!凄い技だね!」

 

「うん、凄いジャンプだったよ」

 

「やるじゃない…!」

 

 

2人のやりとりを見てドラえもん達も関心した声を上げながら2人に拍手を送っていた。一方、2人はドラえもん達の存在に気がつかなかったのか面食らった表情を見せ顔を赤くしていた。その様子を見たドラえもんは2人は恥ずかしがっているのかと思っていた。

 

 

「ご、ゴホン……えっと、あなた達は?」

 

 

眼鏡の女性は冷静になる為、咳払いをすると突然やってきたドラえもん達が何者なのかと聞いてきた。

 

 

「あ、自己紹介が遅れたね。僕はドラえもん」

 

「サーバルキャットのサーバルだよ」

 

「人のキュルルです」

 

「カラカルよ」

 

 

4人はそれぞれ自己紹介を行うと、それを聞いていた眼鏡の女性はとセーラー服の少女は「う〜ん?」と唸り声をあげながらドラえもんの姿を観察するように見ていた。一方、ドラえもんも疑問符を浮かべて彼女達の行動に黙って見ていた。

 

 

「ドラえもん……もしかして、アザラシのフレンズですか?」

 

「きっとそうだよアシカちゃん」

 

「あ、アザラシッ!?」

 

 

ドラえもんは思わず衝撃を受ける。今までは"たぬき"などと呼ばれていたが、アザラシと呼ばれるのは初めてであった為、新鮮さを感じるものの自分の事を呼び間違えた事実は変わらない為、頬を膨らませながら怒った表情をして2人に訂正する。

 

 

「あの!僕は猫型ロボットなんですけど!」

 

「ねこがたろぼっと?」

 

「お魚の名前かな?」

 

 

自分の事を猫型ロボットとと言うものの勿論フレンズ達はロボットについて知らない為、ドラえもんが何者なのか益々わからなかった。彼はイルカが魚と勘違いした事から思わず肩をがくりと落とす。

 

 

「と、とにかく僕は猫なの!誰がなにを言おうと猫なんだ!」

 

「いや、そう言われましても……」

 

「全然猫っぽくないよ、だって耳が無いし」

 

 

あくまでも猫だと貫き通すドラえもんの意思に2人は猫要素があまり無いドラえもんに困惑の表情を見せる。それを見ていたサーバルとキュルルは苦笑いを見せ、カラカルは額に手を当て溜息をつくとドラえもんに近寄った。

 

 

「ドラえもんそこまでにしなさい。それ以上やるとキリがないわよ」

 

「あ、ご、ごめんなさい」

 

 

ドラえもんはまたしてもやってしまった事に自分自身が情けなく思ってきた。

 

 

「あはは、なんかドラえもんちゃんが怒るのって、当たり前に思えてきたね」

 

「そうだね」

 

 

一方、サーバルとキュルルはドラえもんとカラカルのやりとりにすっかり慣れて、思わず笑いがこみ上げてきた。一方、初めて見る2人組みのフレンズは呆然としていた。それに気づいたサーバルは「あっ」と声を上げて2人に話しかける。

 

 

「それであなた達はなんのフレンズなの?」

 

「……はっ⁉︎…忘れていました。イルカさん私たちもやりますよ」

 

「う、うん!」

 

 

呆然としていた彼女達は軽く打ち合わせを行うとサーバル達に向かって小さく「せーの」と声を出すとアトラクションなどのショーのノリで2人は自己紹介を行う

 

 

「私はカルフォルニアアシカ!」

 

「私はバンドウイルカ!」

 

「「よろしくねぇ〜!」」

 

「あ…うん、よろしく」

 

 

2人の挨拶を聞いたがカルフォルニアアシカとバンドウイルカはそのまま笑顔を浮かべながら手を振り続けた。そのことに4人は疑問を浮かべると、代表としてキュルルが聞いてきた。

 

 

「なんで手を振り続けているの?」

 

「「ええっ!?」」

 

 

すると何故か2人は驚きの表情を見せると、慌ててカルフォルニアアシカが訳を話す。

 

 

「ご褒美ですよ!手を振っているとご褒美がもらえるハズです!」

 

「何よそれ!?なんで手を振るだけでご褒美がもらえるのよ!?」

 

 

カラカルはカルフォルニアアシカの説明を聞いて思わず声を上げてしまった。それは当然の反応だ。手を振る動作でご褒美を貰える話は聞いたことがない。勿論ドラえもん達もそんな話は知らない為、カラカルと同じ気持ちだが、冷静になって2人から訳を聞くことにした。

 

 

「手を振るだけでご褒美を貰える……そう言うフレンズって事?」

 

「うん、昔からそういう決まりになっているんだ」

 

 

キュルルが友好的にバンドウイルカから訳を聞くと彼女は自分たちの中では決まっていると言う。それを聞いた彼女は納得すると鞄の中からモノレールから持ってきたジャパリコロネを取り出す。

 

 

「うーん、じゃあコレはどう?」

 

「「ご褒美!」」

 

 

2人はキュルルからジャパリコロネを受け取るととても良い笑顔を見せていた。その様子を見たドラえもんは彼女たちについて考える。

 

 

(ひょっとしてこの2人は水族館にいる水中ショーの動物からフレンズ化したかも、だからその時の習慣がフレンズ化した今でも残っているのか)

 

 

サーバルやカラカルのような野生動物ではなく人に飼育または躾されていた動物ではないかと考える。そうであると目の前にある建物がなんなのか大体見当がつく。しかし、まだ確信はない為、しばらくは自分の内に閉まっておこうと思った。

 

 

「ん?」

 

「……」

 

 

一方、サーバルは大はしゃぎで喜んでいるバンドウイルカに対してカルフォルニアアシカはあまり笑顔を浮かべていないことに気づいたが、特に口に出すことは無かった。

 

 

の の の の の

 

 

キュルルから貰ったご褒美(ジャパリコロネ)を食べ終えた彼女たちはドラえもん達と話し合いをする。

 

 

「ところでみなさんは何しにこちらへやって来たんですか?」

 

「わたし達はキュルルちゃんの巣とドラえもんちゃんのお友達を探しにきたの」

 

「あと、僕の友達はみんなキュルルちゃんと同じ人だから」

 

 

カルフォルニアアシカから此処へ来た理由を聞かれた4人はキュルルの巣とドラえもんの友達(のび太達)について言うと2人は「う〜ん」と唸り声をあげながら考える。

 

 

「キュルルさんの巣にドラえもんさんの友達ですか」

 

「でもでも、わたし達はけっこう長くここにいるけど、巣やヒトは見たことないよ」

 

 

2人は全く知らないと答えるとキュルルはガッカリするもののそこで諦めず、すぐにスケッチブックに描かれた絵を2人に見せる。

 

 

「僕たちはこの絵を頼りにお家を探しているんだ」

 

「……確かにコレはわたし達の住処ですね。ほら、すぐそこにありますよ」

 

 

カルフォルニアアシカ達はじっと絵を見つめながら目の前の建物と絵に描かれてある建物は同一の物であると伝えると、キュルルは少し顔を明るくして、絵と同一である建物の外観を眺める。

 

 

「キュルルちゃん何か思い出しかい?」

 

「ううん、何も思い出せない……ドラえもんの方は友達はいそう?」

 

ドラえもんはキュルルが何か思い出したかと聞くが、彼女は首を横に振って答える。次に彼女はドラえもんに友達はいるのかと聞くと、ドラえもんはたずね人ステッキを取り出して使ってみるものの、ステッキはレールの先の方向へ倒れた。

 

 

「僕の方も駄目だ」

 

「そっか」

 

 

2人は互いに収穫が無い事に肩を落とし、ため息を深く吐いた。それを見たカラカルが慌てて2人に話しかける。

 

 

「ね、ねぇ!ここには巣や友達はいないから次のところへいきましょう」

 

「カラカル…」

 

「……まだ早過ぎるよ」

 

 

サーバルとドラえもんは苦笑いをする。一方、カルフォルニアアシカがドラえもん達に話しかけてくると、絵に描かれてあるステージに指をさしながら答える。

 

 

「あの、こちらの建物は知っているわ」

 

「本当に⁉︎」

 

「でも、それはどこにあるの?」

 

 

辺りを見渡すサーバルだが、それらしき建物は全く見当たらなかった。

 

 

「ええ、この建物はここじゃなくて」

 

「海の方にあるんだよ!」

 

「海って……」

 

 

4人はバンドウイルカからステージの場所を聞いて、視線を海の方に向ける。すると、真っ先にカラカルは声を上げる。

 

 

「い、言っておくけど、私は泳げないから!」

 

「私も苦手かなぁ」

 

「僕もあまり…」

 

 

それを聞いたドラえもんはそれはしょうがないと思った。サーバルとカラカルはネコ科動物であるため、泳ぐのは不得意であり、キュルルの場合は記憶喪失をしているため泳ぎ方を覚えていない。

 

 

「うーん、ラッキーさん此処には船とかないかな?」

 

 

ドラえもんは足元にいるラッキーさんに話しかけて海へ行ける手段はないかと聞くとラッキーさんは答える。

 

 

『それナラ、ボートがあるカラそれに乗って行こう』

 

「本当に⁉︎それは良かった」

 

「ええっ!?行くのー!?」

 

 

カラカルは露骨に嫌そうな表情を見せると、サーバルはカラカルの方に向きいたずらっ子のような顔を浮かべる。

 

 

「それならカラカルは此処で1人お留守番する?」

 

「うっ!…わ、わかったわよ!行けば良いんでしょ!」

 

 

カラカルは渋々とサーバル達と共に海へ行くことになったが、

 

 

「「ら、ラッキーさんが喋った!?」」

 

「まぁ、その反応するよね」

 

 

ラッキーさんの喋る姿を初めて見た彼女達は大きなリアクションを見て、ドラえもんやサーバル達は軽く笑った。

 

 

の の の の の

 

 

ラッキーさんの案内で建物の中に置かれていたボート、というよりはクジラの姿を模した小型の船を使って行こうとしたが、長く使用していなかった為、燃料であるバッテリー切れを起こして動かすことが出来なかったが、バンドウイルカとカルフォルニアアシカに押してもらう事になった。

 

 

「ギニャーッ‼︎」

 

 

海の上を進む船からはカラカルの情けない叫び声が響き渡る。彼女は激しく揺れる船から振り落とされない様にしっかりとしがみついていた。その姿をみてドラえもんとキュルルは思わず苦笑いを浮かべる。

 

 

「すっごーい!みてみてカラカル!」

 

「いい!やめて!」

 

 

一方サーバルはカラカルとは反対に激しく揺れる船をもろともせずに楽しそうに海の景色を眺めていた。

 

 

「別に無理について来なくても良かったのに……」

 

「そ、それはあんた達だけじゃ心配っていうか……」

 

「もう、カラカルちゃんったら本当は1人じゃ寂しいからでしょ」

 

「ドラえもん‼︎…ヒィッ!」

 

 

"余計な事を言うな"と言わんばかりにカラカルはドラえもんに対して強気な視線を送るが、激しく揺れる船に乗っている為すぐに怯えた姿勢に戻る。それを見たドラえもんは思わず苦笑いを浮かべる。そして、しばらく船が進んでいくとスピードも落ちていき、次第に船は止まった。

 

 

「此処だよ」

 

「え?でも建物なんて…」

 

 

辺りを見渡すキュルルだがそこにはステージどころか何も存在していなかった。すると、自分たちの足元から叩く音がして下を向くとそこには海の中が見えるようにガラスが張られてカルフォルニアアシカが軽く叩いていた。

 

 

「アシカさん⁉︎」

 

「流石アシカのフレンズだ」

 

「うわぁ〜!ボートの底から海の中が見えるよ」

 

 

一方でカルフォルニアアシカは指を下に向けてみんなに下を向くように表現をする。それにつられて4人は下の方に視線を向けると、

 

 

「あれは!」

 

 

そこには絵に描かれていたステージが存在していた。4人は海にあるステージを見て呆然となる。

 

 

「海の中にあったんだ……」

 

「どうするの?」

 

 

カラカルは自分達は海の中にいる2人の様に泳げない為、どうやって海の中にあるステージまで行くか悩んでいると、キュルルはラッキーさんに話しかける。

 

 

「ラッキーさんどうにかならない?」

 

『大丈夫、此処にハ海中でフレンズと触れ合うための酸素ボンベとウェットスーツが備わっているヨ』

 

「本当に?」

 

『うん、船内の中にあるカラそれに着替えるんだヨ』

 

 

ラッキーさんと共にキュルルは船室へと入って行き、数分が経過すると、船室からウェットスーツを着た彼女が、ガラスのボンベを抱えて出てきた。その姿を見たサーバルとカラカルは顔色は青ざめ驚愕の表情を見せる。

 

 

「どうしたのよその毛皮は!?」

 

「キュルルちゃんの毛皮って取れるの!?」

 

「え?2人とも急にどうしたの?」

 

 

何故か慌てふためく2人の姿にキュルルは困惑の表情を浮かべて首を傾げる。

 

 

「だって、自分の毛皮を剥いで別の毛皮を体に付けるなんてあんた気でも狂ったの!?」

 

「えっ!?ち、違うよ!コレは毛皮じゃなくて"服"なんだけど」

 

「「"ふく"?」」

 

 

彼女が毛皮を服と呼んだ事に今度は2人が首をかしげる。その様子を先ほどから黙ってみていたドラえもんが口を開く。

 

 

「服って言うのはサーバルちゃん達でいう毛皮の事だよ。きっとフレンズだからその服も脱げる筈だよ」

 

「本当に⁉︎」

 

 

するとサーバルはドラえもん達の言っていることが本当か確認しようと真っ先に自分の毛皮()に手をかける。それを見たドラえもんとキュルルは慌ててサーバルを止める。

 

 

「ちょ、ちょ⁉︎なにやっているのサーバルちゃん!!!」

 

「え?何って、毛皮を取ろうと」

 

「ひ、人前でやらないでよ!」

 

 

ドラえもんとキュルルは顔を赤くして毛皮を脱ぐ事になにも躊躇しないサーバルに注意をするが、それを見ていたカラカルが疑問符を浮かべる。

 

 

「なんでそこまで慌てるのよ?」

 

「「カラカル(ちゃん)⁉︎」」

 

 

まさかこの中で一番の常識であるカラカルがサーバルがいきなり毛皮()を脱ぐ行為に何も思っていない事に思わず驚きの声を上げるがドラえもんは冷静になって考えてみた。

 

 

(そうだった、この子(フレンズ)達は動物から人に進化した姿をしているけど元々の知識は動物だった頃のままであまり人の常識についてはあまり知らないんだった)

 

 

彼女たちは動物だった頃は言わば常に裸である為、それに対しての羞恥心は特にないのだ。その事に気付いたドラえもんは思わず額に手を当て、冷静になる。

 

 

「と、兎に角その毛皮を人前じゃ脱いじゃ駄目だからね!」

 

「どうしても?」

 

「どうしても駄目ッ!!!」

 

「わ、わかったわよ、ドラえもんがそこまで言うんだから何か不味い事でもあるんでしょう」

 

 

迫真の顔で駄目だと迫るドラえもんを見てサーバル達は気が進まないが渋々納得した。そんな様子を隣で見ていたキュルルは話を変えようと口を開く。

 

 

「とりあえずみんなもこれに着替えようよ」

 

「そうだね、その毛皮を着ればわたし達も海を泳げるもんね」

 

「それじゃあ、ラッキーさんサーバルちゃん達の分を用意してくれないかな?」

 

 

サーバルは自分たちも海を泳げるようになると楽しみにしていた。だが、そんな彼女にラッキーさんは残念なお知らせを告げる。

 

 

『悪いケド、ウェットスーツと酸素ボンベは1人分しかないヨ』

 

「ええーーっ!」

 

「1つしかないのか…」

 

 

水中へ泳げるウェットスーツがキュルルの着ているものしかないと知り、サーバルはガクリと落胆してしまう。一方カラカルは泳げなくて済むと知り一安心していた。

 

 

「あの〜、まだですか?」

 

「早く潜ろうよ」

 

「あ、すいません。ちょっと待っててください」

 

 

そこへ先ほどから海中で待っていた2人が痺れを切らし船に上がってきた。彼女たちを見てキュルルはこれ以上待たせるのはいけないと思い早く海に潜ろうとする。

 

 

「じゃあ、僕はアシカさん達と行ってくるから留守番を頼むよ」

 

「いいな〜、私も海の中を潜ってみたいな」

 

 

サーバルは海中にあるステージを見に行けるキュルル達の様に自分も行ってみたいと羨ましく思っていた。

 

 

「諦めなさいよ泳ぐための毛皮がキュルルの分しかないんだから」

 

「そうだよね………ん?」

 

 

カラカルから自分達は泳げない事を指摘され、途端に頭をガクリと下げて項垂れているが、彼女の視線の先は偶然にもドラえもんの腹部、つまり四次元ポケットがあった。すると、彼女はある事を思いつく。

 

 

「そうだ!ドラえもんちゃんなら泳げる道具を持っているんじゃないかな?」

 

「いや、サーバル幾らドラえもんが規格外の道具を持っているからって泳げる道具は………あるの?」

 

 

今までの無理難題を解決してきたドラえもんなら泳げる道具を持っているんじゃないかとサーバルは思い、カラカルも最初はそんな都合が良い道具を持っているわけ無いと思ったが、アヅアエンの時にあった出来事を思い出して、泳げる道具よりも凄い道具を使っていた為、泳げる道具くらいなら持っていそうな予感がしていた。

 

 

「あるにはあるけd「本当に!?」う、うん、あるよ」

 

 

ドラえもんは2人の問いに肯定した瞬間、サーバルは目を輝かせながらドラえもんの顔がくっつきそうなくらいに近づいた。一方ドラえもんの秘密道具について何も知らないカルフォルニアアシカ達は首を傾げる。

 

 

「あ、でもその前にコレを使おう」

 

「ん?」

 

 

何か思い出したドラえもんはポケットからピンク色のカメラを取り出すと、カルフォルニアアシカは驚きの表情を見せ、バンドウイルカは興味津々にドラえもんの持つピンク色のカメラを見る。一方、3人はまた初めて見る道具を見て今回はどんな道具なのかドラえもんに聞いてみる。

 

 

「なにそれ?」

 

「コレは着せ替えカメラって言って服を変える…君たちにとっては毛皮を別の動物の毛皮に変える道具だよ。とりあえずコレを使ってアシカさんやイルカちゃんの様に泳ぎに適した毛皮を着てもらうよ」

 

「でも、その道具でどうやってサーバルちゃん達に水着を着させるの?というかそれ以前にその水着が何処にもないんだけど」

 

 

キュルルの意見に2人は頷く、それもそのはずドラえもんが取り出したのは水着ではなく着せ替えカメラだ。そのカメラからどうやって2人に水着を着せるのか予想できなかった。

 

 

「ちょっと待っててね」

 

 

ドラえもんはカメラを持たない左手をポケットの中に入れるとそこから二枚の紙を取り出した。

 

 

「キュルルちゃんこの二枚の紙に2人に似合う水着を描いてくれない?」

 

「え?別にいいけど…」

 

 

彼女はドラえもんの頼みを聞いて紙を受け取ると自身の色鉛筆を使って2人分の水着の絵を描き上げるとドラえもんにその二枚をわたす。

 

 

「描いたけど、その絵をどうするの?」

 

「その絵をこのカメラに入れて2人の姿に合わせて撮るとキュルルちゃんの描いた水着がそのままサーバルちゃん達が着るんだ」

 

「?…よくわからないんだけど」

 

「まあ、見てて」

 

 

ドラえもんはそう言うとキュルルに描いてもらった水着の絵を着せ替えカメラの中に入れる。

 

 

「じゃあ、先ずはどっちからする?」

 

「わ、わたしは後からで良いわよ」

 

 

カラカルはドラえもんの道具は今まで凄かった物ばかりであったと認識しているが、それがいざ自分に向けられると思わず警戒してしまっている。

 

 

「じゃあ、サーバルちゃんからだよ」

 

「うん、お願いね」

 

 

一方サーバルはカラカルとは対照的に警戒などせず、ドラえもんに任せる。ドラえもんはレンズの中に映るサーバルの身体と水着の絵が一致するように合わせる。

 

 

「はい、チーズ」

 

「?…ちーず?」

 

パシャッ

 

 

写真撮影の定番の台詞にサーバルはキョトンとしながらもボソリと呟き、ドラえもんはそのタイミングでカメラのシャッターを切ると、サーバルの着ていた毛皮が変わり彼女の色にあった黄色と白を基準とした黒の水玉模様の水着になっていた。

 

 

「「「えええええーーッ!?」」」

 

「わぁ〜!毛皮が変わったよ。なんかスゥスゥして気持ち良いよ」

 

「なんか変な感じね」

 

『アワワ、アワワワワ』

 

 

サーバルは自分の普段着ている毛皮とは違って露出が高い為、違和感を感じているが悪くなさそうだ。隣で見ていたカラカルもサーバルの水着姿を見て違和感を覚えるが、それはそれで悪くないと感じていた。一方、キュルルは2人よりも大きな反応を見せていた。そして、ラッキーさんはアヅアエンのラッキーさんと同じようにフリーズを起こした。

 

 

「すごい!僕の描いた水着をサーバルちゃんが着ている!」

 

「これが着せ替えカメラの力だよ。これは描いた服の絵をそのまま実体化させる道具なんだ」

 

 

目の前で自分の描いた水着が実体化した上にそれがそのままサーバルが着た姿を見て我ながらよく似合っていると思っていた。

 

 

「さて、次はカラカルちゃんd「コレで泳げるようになったんだし、早速海を泳ぐね」…え?」

 

 

ドラえもんは次にカラカルも着せ替えカメラで水着を着させようとしたが、サーバルの発言に思わず彼女の方に振り返ると、そこにはサーバルが海へ飛び込もうとしていた。

 

 

「サーバルちゃん違うよ!着せ替えカメラは「だいじょーぶだいじょーぶ!先に泳いでいるから!」ちょ、まっ⁉︎」

 

 

ドラえもんの制止を無視して、彼女はその場から高く飛びそのまま海へと飛び込んでいき大きな水柱を立てる。5人は水柱を見て嫌な予感がして、恐る恐る海をのぞいてみると、

 

 

 

 

「ブクブクブク……」

 

「「「「「サーバル(ちゃん)(さん)!!!」」」」」

 

 

サーバルはブクブクと音を立てながら海に沈んでいった。その後すぐに彼女はカルフォルニアアシカ達が助け、船に引き上げた。

 

 

の の の の の

 

 

 

「もう、話は最後まで聞いてよ」

 

「ごめんね、ゲホッ!ゴホッ!…先走っちゃって…」

 

「サーバルちゃん大丈夫?」

 

「もう、サーバルはおっちょこちょいなんだから」

 

 

カルフォルニアアシカ達に助けてもらったサーバルはドラえもんとカラカルの説教を聞き、耳が垂れるほど落ち込んで反省する姿を見せていた。そんな姿を見てキュルル達はサーバルを心配そうにしていた。

 

 

「僕がしたのはあくまでも着せ替えカメラで2人の服を海に泳ぐのを適した水着に変えただけで、別に泳げるようになる道具じゃないんだよ」

 

「じゃあ、なんでサーバルの毛皮を変えたの?」

 

 

サーバルを海から引き上げた後にカラカルは着せ替えカメラで自分の毛皮を水着に変えたものの、先ほどのサーバルが泳げない所を見てこの道具は意味がないのではと思っていた。

 

 

「水着を着ると海を泳ぐ時気持ち良く感じるからだよ」

 

「ふーん、よくわからないわね」

 

 

ドラえもんの話を聞くカラカルだが、彼女はいまいち納得出来なかった。それもその筈だ、サーバルとカラカルはもともと海には無縁の場所に住んでいた為、水着に着替える意味を理解できなかった。

 

 

「それじゃあ、海を泳げるアシカさん達はその水着で気持ちよく泳いでいるって事?」

 

 

何時も海辺に住んでいる彼女達に問いを投げると、2人は返事を返した。

 

 

「私たちは自分達の毛皮についてあまり考えず泳いでいましたが、今思うと特に不快感はありませんね」

 

「うん、私もよくわかんないけど海を泳いでいるととても気持ち良いんだよ」

 

 

今まで自分たちの毛皮()を意識せず泳いでいたため、カラカルに指摘された事から改めて自分達の着ている毛皮の性能を感じていた。

 

 

「成る程、それで結局海を泳げる様になる道具は何なの?」

 

「あー、ごめん。すっかり忘れてた」

 

 

ドラえもんは軽く謝るとポケットに手を突っ込みそこから光線銃の様な道具を取り出した。それを見たキュルルを除いた彼女(フレンズ)達4人は一斉にビクッと驚きドラえもんから一歩離れて警戒した。

 

 

「これが海の中で溺れなくなる道具だよ」

 

「へぇー、なんて名前なの?」

 

「テキオー灯って言うんだ。これから出る光線に浴びれば海の中で息が出来るようになる」

 

「本当に⁉︎じゃあ、早くかけてかけて!」

 

「い、痛くないわよね?」

 

 

ドラえもんの説明を聞いたサーバルは警戒を解き、今度こそ海の中でも泳げる様になると楽しみにしているが、カラカルも説明を聞いてある程度警戒を解くが、何処と無く危険な形をしているテキオー灯に対して顔を歪めながらも渋々とサーバルと浴びる事にした。

 

 

「じゃあ、2人とも行くよ」

 

「わっ!」

 

「きゃっ!」

 

 

ドラえもんがテキオー灯の引き金を引くと銃口からは光が照射され2人の体に数秒間浴びせた。2人は視界に入る光に思わず目を瞑ってしまうが、光が治ると目をゆっくり開けるが、

 

 

「うーん、特に何も変わってないと思うけど」

 

「ほんとに効果あるの?」

 

 

彼女達は自身の体をじっくりとみて、両拳を開いたり握りしめたりするが、テキオー灯を浴びる前と浴びた後、大した変化は見当たらなかった。

 

 

「大丈夫だよ。見た目は全く変わらないけどちゃんと効果はあるから安心して海に泳いで」

 

「そう?それならいいんだけど……」

 

 

ドラえもんからも問題はないと聞くが、いざ海を泳ぐとなると足が全く動かなくなる。

 

 

「よーし、およぐぞー!」

 

「サーバル…今度は勝手に一人で行かないのよ」

 

「わかってるって」

 

 

だが、サーバルは元気よく声を上げて泳ごうとする姿をみてカラカルは不安な気持ちが薄くなった。

 

 

「ついでにもしもという場合があるからキュルルちゃんにもかけるね」

 

「うん、わかった」

 

 

ひょっとしたらなにかトラブルで酸素ボンベが壊れる恐れがある為、彼女にもテキオー灯の光を浴びせる。そして、テキオー灯を浴びせたドラえもんは彼女の着ているウェットスーツとサーバル達の着ている水着を見た。

 

 

「ところでキュルルちゃんも着せ替えカメラでサーバルちゃん達みたいに水着を着てみる?」

 

「いや、僕はラッキーさんが用意してくれたこの服で海を潜るよ」

 

 

彼女はせっかくラッキーさんが用意したウェットスーツと酸素ボンベを使わないのは勿体無いと思い、テキオー灯で海の中でも呼吸が出来ても気分としてウェットスーツと酸素ボンベを着ることにしたのだ。それを聞いていたラッキーさんは表情は変わらないが何処と無く嬉しそうな瞳をして彼女に向けた。

 

 

「じゃあ、みんな準備できた事だからアシカさん達を先頭にステージの所へ行こうか」

 

「「「うん(そうね)」」」

 

「それじゃあ皆さん私とイルカさんの後についてきてください」

 

 

カルフォルニアアシカはバンドウイルカと共に先に海に潜ると、その後をドラえもん達も海の中へ潜って行った。

 

 

の の の の の

 

 

船から海中へ潜ると目の前に広がるのは上から刺してくる太陽の光によって反射して海の中を泳ぐ魚達や岩に付いてサンゴが宝石の様に輝き、青い世界が幻想的に広がっていた。

 

 

「「うわぁ〜、きれ〜い!」」

 

 

目の前に広がる光景を初めて見るサーバルとキュルルは目を輝かせて眺めていた。すると、サーバルの目の前に一匹の小魚が横切った瞬間、サーバルの本能が目覚める。

 

 

「みゃ、みゃみゃっ!みゃみゃみゃみゃっ!!!」

 

「さ、サーバルちゃん!?」

 

 

急にサーバルが鳴き声を出しながら目の前を泳ぐ小魚を捕まえようと必死に手と足をばたつかせて動かすが、全く進まず、小魚は逃げてしまった。そして、隣でサーバルの行動を見ていたキュルルは思わず困惑の表情を浮かべた。

 

 

「何やっているのよサーバルは……?」

 

「多分、魚を捕まえようと泳いでいたんじゃないのかな?」

 

 

ドラえもんとカラカルもサーバルの泳ぐ、と言うよりは海の中でもがいている姿に見え、カラカルは呆れ、その隣でドラえもんは苦笑いを浮かべた。

 

 

「それにしてもドラえもんの道具は凄いわね。本当に海の中で息ができるなんて」

 

 

先ほどから海の中を慣れない手つきで泳ぐカラカルだが、呼吸ができ、全く目がしみらない事に船の上では分からなかったテキオー灯の効果が今身をもって感じていた。

 

 

「みんなー、こっちだよー!」

 

 

4人は一斉に声が聞こえた方向に振り向くと其処には目的のステージの前にいるカルフォルニアアシカとバンドウイルカが手を振って呼んでいた。呼ばれた4人はステージまで泳いでいる途中にキュルルがある事に気がつく。

 

 

「あれ?なんでイルカさんの声が聞こえるの?」

 

 

今思って見ると、彼女はテキオー灯を浴びていないにも関わらず会話が出来ていることにキュルルは不思議に思っていると、彼女とともにいたラッキーさんが答える。

 

 

『イルカは超音波を使って仲間とコミュニケーションを取るエコーロケーションが出来るんダヨ〜』

 

「へぇー、そうなんだ……あれ?ラッキーさんの声も聞こえる」

 

 

今度はラッキーさんの声も聞こえた事にひょっとしたら、ラッキーさんも超音波を使って会話しているのかと思ったが、すぐにラッキーさんは答える。

 

 

『その酸素ボンベは海中でもガイドが出来るヨウニ僕たちラッキービーストの声が聞こえるヨウにスピーカーとマイクが内蔵しているんダ』

 

「へぇー、それはとても便利だね」

 

 

この酸素ボンベがただ酸素を供給するだけではなく、海の中で唯一ラッキーさんと会話が出来るものだと分かると、身につけて良かったと思っていた。そして、しばらく泳ぐとキュルル達はステージに辿り着き、その圧倒的な大きさに呆然となる。

 

 

「うわ〜、大っきいねー!」

 

「近くで見ると意外と広いのね此処は」

 

 

サーバルとカラカルもここまで広いステージを見るのは初めてらしく、興味津々にあたりを見ていた。すると、彼女たちの意見に同意するようにバンドウイルカも声を上げる。

 

 

「そうでしょ!そうでしょ!ここって物凄く広いんだ!それにここってPPP(ペパプ)が歌を歌ってくれそうならいぶ会場に似ていて、面白いでしょ?」

 

「ぺぱぷ?」

 

 

バンドウイルカの口にした"ペパプ"という言葉にドラえもんは思わず復唱する。それを聞いたカラカルは口を開く。

 

 

「ドラえもんはペパプを知らないの?ペパプって言うのはペンギンのフレンズ達が組んだ"あいどる"の事よ」

 

「え、アイドルなの?(ここにはアイドルの概念もあるのか……)」

 

 

これまでドラえもんはサバンナちほーにある場違いな建物やモノレールに公園と言った物を見てきたが、彼女(フレンズ)達はそれがなんなのか知らないにも関わらず、漫画やアイドルと言った特定の文化について知っている事から、彼女たちの生活スタイルと文化がバラバラでややこしく思ってきた。

 

 

「あ、そういえば最近ここに来た子たちから聞いたんだけど、最近ペパプに新しい子が入ったんだって」

 

「へぇー!ペパプに新しいメンバーか、一体誰なんだろう?」

 

 

文化の違いについて頭を悩ませているドラえもんを他所にサーバル達はペパプについて話し合っていた。

 

 

「………」

 

 

一方、キュルルは彼女たちの話に混ざらずただ黙って観客席を見渡す。すると何処からともなく沢山の人の声と拍手が聞こえたような気がする。彼女はしばらく眺めた後、

 

 

「ん?…あれは何だろう」

 

 

観客席の1つにヒラヒラと揺れるなにかを見つける。彼女はそれがなんなのか気になり近づいた。赤い大きな布が観客席に引っかかっていた。なんで布がこんなところにあるんだろうと不思議に思いながら布に手を伸ばした瞬間、あたりの雰囲気が変わった。

 

 

「……え?」

 

 

気がつくとガラガラに空いていた観客席は満席になりそこには沢山のフレンズが歓声と拍手をあげていた。

 

 

「いつの間に沢山のフレンズが!?」

 

 

自分が気づかないうちに沢山のフレンズが席に座っている事に驚くが、それ以前に今いる場所がどこなのか気が付いた。

 

 

「ていうか、ここは海中じゃない…というか酸素ボンベがなくなったているし、服も戻っている!?」

 

 

そう言って彼女はあたりを見渡すが身が軽い事に気がつき視界も酸素ボンベを付けている前よりも綺麗だと気がつくと彼女は先ほどまで付けていた酸素ボンベは消え、着ている服はいつも自身が着ている半袖シャツとズボン気づき、更に帽子はかぶっていなかった。

 

 

「なんで帽子だけg…うわっ!」

 

 

突然観客席が軽く揺れる。地震かと思いあたりを見渡すと観客席の周りは海が広がっていた。それを見た彼女は気づいた。

 

 

「観客席が海に浮いている⁉︎」

 

 

そう、観客席が船のように海の上に浮いているのだ。そして、しばらくして冷静になったキュルルは考える。

 

 

(これはもしかして、アヅアエンの時と同じ)

 

 

そうなると、今見ているのは突如と一斉にフレンズ達の歓声が上がり、何事だとフレンズ達の視線の先を見てみる。

 

 

「レディースアンドジェントルメン!!!これより、■■■■■■と海のフレンズとのコラボマジックショーを行うよ!」

 

「あの子はあの時の!」

 

 

ステージの中央にはアヅアエンの時に見たシルクハットを被ったフレンズが立っていた。

 

 

「今回私と協力してくれるのはこの2人だ!」

 

「みなさんこんにちわ〜!カルフォルニアアシカと…」

 

「バンドウイルカだよぉ〜!」

 

 

2人はキュルル達と初めて会った時と同じく観客席にいるフレンズ達に両手を振って挨拶をしていて、その表情は生き生きとしていた。

 

 

「アシカさんとイルカさんもいる!」

 

 

なぜ2人が彼女と一緒にステージに立っているのだろうと不思議に思いつつも、彼女はそのままフレンズ達と共にステージを眺める。

 

 

「さて、それじゃあここに来てくれたお客さん達に奇跡の水中マジックを披露しよう」

 

 

そういうとカルフォルニアアシカ達は自分たちが入りそうな箱を用意する。

 

 

「さあ、ここにあるのはタネも仕掛けもないただの箱です」

 

 

そう言って彼女は箱を軽く叩き観客席にいるフレンズ達に仕掛けがないことをアピールすると、その中に2人が入っていくと、その箱に大きな錠前を付けて2人を出れないようにする。

 

 

「さあ、これで2人出れなくなりました。しかし、私が3つ数えると2人はこの箱から脱出する事が出来るんだよ」

 

 

そういうと彼女は箱を覆い尽くすほどの面積がある赤い布を被せる。

 

 

「それでは観客席に座っているお客さんも数えてください!せーの!」

 

 

観客席に座るフレンズは彼女に言われた通り大きな声で数える。

 

 

「「「「3!」」」」

 

「「「「2!」」」」

 

「「「「1!」」」」

 

「ゼロ!」バサッ!

 

 

カウントがゼロになった瞬間、箱から赤い布を取り箱についていた錠前を開け、蓋をあけるとそこには2人はいなかった。

 

 

「消えちゃった!?」

 

 

先ほどまで箱に入っていた2人は何処へ行ったのだろうとキュルルを含めたフレンズ達も周囲を見渡すが、消えた2人はどこにも見当たらなかった。

 

 

「おっと、皆さん安心して下さい2人は無事です。彼女たちは今、彼処にいます!」

 

 

そう言って指をさした先にはステージと客席の間にある海面だったすると、そこから二つの黒い影が浮かび、「バシャーンッ!」と水柱を立てながら2人は高く飛んで現れた。

 

 

「それ!」

 

ポーンッ!

 

すると、シルクハットを被っていた彼女は自身の帽子を彼女たちに向けると、帽子からビーチボールが射出される。

 

 

「あ、危ない!」

 

 

このままでは2人にボールが激突してしまうと、キュルルは声を上げてしまう。

 

 

「えい!」

 

 

しかし、彼女は飛んできたボールを蹴り返した。蹴り返されたボールはそのままボールを射出した彼女に向かって飛んでいくが、

 

 

「ふん!」

 

 

バンドウイルカが蹴り返したボールを持っていた赤い布に覆うよう受け止め、布を解くとそこにはボールではなく三つの浮き輪をリズム良く投げる。すると、今度はカルフォルニアアシカがその浮き輪に飛ぶと、浮き輪に身体を通しそのまま着地する。

 

 

「「「ハイ!」」」

 

 

そして、マジックショーのフィナーレを飾るため、3人はそれぞれポーズを決めた。

 

 

「「「「「ワァーーーーッ!!!!」」」」」

 

 

先ほどのマジックとパフォーマンスが大好評だったらしくあたりは歓声と拍手の音が響き渡っていた。

 

 

「す、すごい!」

 

 

そして、キュルルも気がついたら黙って最後まで見ていて、3人のフレンズによるパフォーマンスの感想を述べ、大きな拍手を送った。

 

 

「ねえ、キュルルちゃん。何さっきから拍手なんてしてるの?」

 

「…え?……うわっ!?あ、あれ?」

 

 

突然ドラえもんが隣から現れた事にキュルルは驚くと、彼女は先ほどまで観客席に座っていたフレンズがいない事やここが元の海底だと気がついた。

 

 

「ど、ドラえもん今少しだけどまた僕の記憶が蘇ったよ」

 

「それは本当かい!?よかったじゃないか、それで今回はどんな記憶なの」

 

「うん、それなんだけど」

 

 

彼女はドラえもんに自分が見た光景を伝えようとするが、

 

 

「みんな〜、そろそろ戻った方が良いかも」

 

 

そこへバンドウイルカがタイミング悪く全員を呼んだ。

 

 

「急にどうしたの?」

 

「アシカちゃんがそろそろ戻った方が良いって」

 

「戻るって、まだ五分も経っていないよ」

 

 

サーバルはせっかく海底に来たからもうすこしここを見て回りたい思って彼女に抗議しようとするが、

 

 

「実は最近海のご機嫌が悪いの。だからここにいたら危険だよ」

 

 

すると、カルフォルニアアシカはバンドウイルカと違ってエコーロケーションが使えない為ジェスチャーを行なって何かを伝えるが、ドラえもん達4人は彼女がなにを言っているのか全く理解できなかったが、唯一バンドウイルカはカルフォルニアの言いたい事を理解するように「うんうん」と頷いていた。

 

 

「仕方ないサーバルちゃん、帰るよ」

 

「えー、もうすこし遊んでいようよ」

 

「わがまま言わないの、海のご機嫌が何かわからないけど2人が危険だって言っているのよ?ここは帰るべきよ」

 

「そうだよサーバルちゃん、長くここに居たらなにが起きるかわからないけど、僕も此処は帰るべきだと思うよ」

 

「はーい……」

 

 

カラカルとキュルル説得によってサーバルは渋々帰ることにした。一方、ドラえもんはすこし考えた。

 

 

(それにしても"海のご機嫌"って何だろう……ん?)

 

 

ドラえもんは彼女達の言った海のご機嫌とはなんなのか考えていると、一瞬、遠い岩陰に"黒い何か"が見えた。しかし、それは瞬きした瞬間消えていた。

 

 

(なんだったんだろう。今のは……)

 

 

先ほど見たのは何だったんだ。もしかしたらサメ、クジラ、或いは魚と考えたドラえもんだが、

 

 

「ドラえもんなにぼーっと立っているのよ?」

 

「あ、ごめんごめん、今行くよ」

 

 

カラカルがドラえもんを呼び、ドラえもんは慌てて彼女達の元へ行き海上に向かって泳ぐ。その途中先ほど見たものは恐らく先ほど魚か何かだろう。そう自分に言い聞かせてドラえもんは海の中を上がっていった。




フレンズ図鑑

バンドウイルカ

クジラ偶蹄目マイルカ科ハンドウイルカ属

Tursiops truncatus

高い遊泳力を持ち人懐っこい、水族館の主役・バンドウイルカのフレンズ。
外洋から沿岸などに生息しているが、内湾や大きな河川の汽水域などでも見られる。普段は水深1m程のところを遊泳していて、3~45m程のところを定期的に潜ったりしている。バンドウイルカは一見ほぼ全身灰色であるが、詳しくみると、背びれの先端の辺りの濃い灰色から、腹面にかけての明るい灰色にまで変化し、腹部はほぼ白である。この配色のため、水中を泳いでいる時には、上方向からも下方向からも見つけ難いようになっている。バンドウイルカは「泳ぎの達人」と称され、その遊泳力は高く昔から人間の羨望の対象とされてきた。通常は5km/hから11km/h程度の速度で泳ぐが、短時間ならば45km/h程度の速度で泳ぐこともできる。また65km/hで航行する高速船と競ってさらに速く泳いだという目撃情報もあることから、瞬間的には70km/h近い猛スピードを出す個体もいると考えられる。最高速度では82km/hに達するシャチにかなわないものの、相対的に体が小さく体重も軽いバンドウイルカのほうが制動力やジャンプ力に優れている。笑顔満点で天真爛漫。驚異的なパフォーマンス能力を有し、ボール遊びが「遊び」の範囲を超えるほど真剣。


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第8話とくべつなごほうび

いや〜、ハーメルンを運営している人には感謝しかありません。まさかけものフレンズの文字が再現できるfontを作ってくれるとは、これで小説のモチベーションが上がるといいなぁ。


そんな事でこれからはけもフレ文字を使って、今まで再現したかった場面チェンジのところを修正していきますので、今後ともよろしくお願いいたします。


海の中にあるステージを調査していたドラえもん達一行は途中カリフォルニアアシカが長時間海にいるのは危険だと伝え、船の上に戻って来ていた。

 

 

「んー!楽しかったね!」

 

「まあ、ちょっと驚いたけど中々面白かったわ」

 

 

まだ全て調査しきれていなかったが、アヅアエンの様にキュルルの記憶の一部が蘇った事だけでも良い収穫だ。サーバル達は彼女の記憶はなんなのか聞くが、「帰ったら教えるよと」言って彼女はもったいぶる。すると、それを聞いたカラカルは目を輝かせる。

 

 

「じゃあ!もう此処には用が無いからさっさと帰りましょう!あと少ししたら辺りも暗くなるから帰るときが大変になるわ!」

 

 

先ほどまで海の中を泳いでいたが、やはり海上は海中と違って波風に船が揺れ、転覆するかもしれないと考えて彼女はこれ以上長くいるのは精神的に耐えられない為、陸に戻ろう催促する。カラカルの必死な表情を見てドラえもん達は思わず苦笑いを浮かべる。それと余談だが、仮に船が転覆したとしてもテキオー灯の効果はまだ続いている為、カラカル達が溺れる事はない。

 

 

「じゃあ、陸まで送ってくれない?」

 

「いいよ〜」

 

「ですが、その前にご褒美をお願いします」

 

「あ、あんた達こんな時でも現金な性格してるわね」

 

 

カラカルの意見に賛成したドラえもん達一行はカリフォルニアアシカ達に船を押して貰うよう頼むと、2人は両手を出して頑なにご褒美を要求してきた。それを見たカラカルは呆れた表情を見せる。一方でキュルルは不満も言わず2人に「待ってて」と言って鞄に手を入れる。

 

 

「はい、ご褒美です」

 

「わーい!ご褒美♪」

 

 

彼女は鞄に入っていたジャパリコロネを取り出すと、それを2人に差し出そうとする。バンドウイルカは喜んでジャパリコロネを受け取ろうとする。それを見たカラカルは安心して陸へ帰れるとホッとする。

 

 

「待ってください!」

 

「え?」

 

「アシカちゃん?」

 

 

しかし、カリフォルニアアシカがジャパリコロネを渡そうとするキュルルを止める。突然の彼女の行動にバンドウイルカを含めた5人が困惑の表情を見せる。

 

 

「ひょっとして、ジャパリコロネはもういらないんですか?」

 

「あっ。いえ!別にジャパリコロネは好きなんですけど……」

 

「じゃあ、なんなの?」

 

 

何か言いたそうなアシカだが、言うべきか言わないべきかしばらく悩んだところ彼女は意を決心して口を開いた。

 

 

「あの!ジャパリコロネではなく特別なご褒美をお願いします!」

 

「特別な……」

 

「ご褒美……?」

 

 

サーバルとキュルルは2人揃ってアシカの発言を復唱すると、頭の上に疑問符を浮かべて首を傾げる。

 

 

「ちょっと!こっちはジャパリコロネをあげるのにそれとは別の物が欲しいって図々しいじゃないの!」

 

「ちょ、ちょっとカラカルちゃん!」

 

 

一方でカリフォルニアアシカの発言に文句を言うカラカルと彼女をドラえもんは宥めようとする。しかし、彼は内心カラカルの意見と同じだ。

 

 

「すいません、確かに自分でも図々しいと思っています。ですが、わたし達はどうしても"特別なご褒美"が欲しいんです」

 

「そもそもその特別なご褒美ってなんなの?」

 

 

"特別なご褒美"というものに執着するカリフォルニアアシカを見てサーバルは彼女にそれはなんなのかと質問した。

 

 

「わかりません」

 

「ハァッ!?」

 

「わからないの?」

 

 

特別なご褒美について要求してきたカリフォルニアアシカ自身がどんなものか分からないことに4人は面食らった表情を見せる。彼女が欲しい物を知らないとなると、その特別なご褒美はどんな物なのか想像する事が出来ず、4人は頭を悩ませる。すると、その中でドラえもんは一つ気になった事があり、カリフォルニアアシカに質問する。

 

 

「そもそもどうして特別なご褒美を求めるの?」

 

「そ、それは……」

 

 

ドラえもんの質問に彼女は言葉をつまらせる。すると、サーバルが「あっ」と声をあげて何かに気づいた様子だ。

 

 

「そういえばアシカはここへ来る前にキュルルちゃんからジャパリコロネを貰ったけどあまり嬉しそうな顔をしてなかったよ。もしかしてそれと関係があるんじゃないかな?」

 

「そうなの?」

 

 

サーバルの発言を聞いてドラえもんはカリフォルニアアシカに確認する。

 

 

「……はい。実は私たちは毎日互いに芸を見せて、ご褒美を出し合っていたんですけど、全く満足出来ないんです。だからこそ私たちの"何か"を満たしてくれる"特別なご褒美"が欲しいんです」

 

「そうだったんだ……」

 

 

彼女達が自身の心を満たせるように自分たちの得意とする芸を行っているが、どうにも納得出来ていないようだ。

 

 

「けど、なんで僕たちなの?」

 

「そうよ、なんで私たちにその"特別なご褒美"を要求するのよ?」

 

 

自分たちもわからない特別なご褒美を求めてくる事にキュルルとカラカルは疑問に思っていると、彼女は答える。

 

 

「それは貴方達が私たちの事を褒めてくれた時に何か…こう……心から嬉しい気持ちが溢れてきて……今まではこんな事はなかったので、もしかしたら私たちが今まで満たしてくれなかった物を貴方達なら満たしてくれると思ったんです」

 

「アシカさん……」

 

 

カリフォルニアアシカは4人に会った時から自分たちの満たされなかった物を満たしてくれる可能性があると気付き、特別なご褒美を求めたようだ。

 

 

「無茶なお願いとは分かっています!それでもお願いします!」

 

 

彼女の真剣な表情を浮かべ4人に頭を下げる。その隣で先程からバンドウイルカはどうしたら良いのかオロオロと悩んでいた。そして、その2人を見て4人は思わず黙って互いに顔を見合わせる。

 

 

「………わかった!じゃあ、アシカさん達の満足する"特別なご褒美"を用意するよ!」

 

「うん、アシカさん達がここまで連れてきてくれたから記憶も戻ったからお礼はちゃんとするよ」

 

「仕方ないわね」

 

「任せて、2人が喜ぶ特別なご褒美をちゃんと用意するから」

 

 

ドラえもん達はカリフォルニアアシカの熱意を聞いて彼女達にここまで運んで貰った感謝も兼ねて頼みに応えようと思った。

 

 

「「ありがとう(ございます)!」」

 

 

4人の話を聞いた2人は笑顔を浮かべるとドラえもん達にお礼を言った。

 

 

●●●●●

 

 

ドラえもん達はアシカ達に外で待っている様にと言って、船室に入ると特別なご褒美について考えていた。

 

 

「とは言ったものの、アシカさん達が喜ぶ特別なご褒美って何だろう」

 

「私もつい勢いで言っちゃったけど、あの2人が喜ぶ物って何かしら?」

 

 

 

しかし、3人は互いにアシカ達が喜びそうなご褒美について考えるものの、全く思いつかなかった。

 

 

「サーバルちゃん何かわかる?」

 

「うーん……」

 

 

ドラえもんは先ほどアシカの心情にいち早く気付く事が出来たサーバルならわかるかもしれないと思った。一方のサーバルは近くにあったビーチボールを転がしながら目を瞑り真剣に考えている様子だ。その姿からドラえもんとキュルルは期待できそうな考えを思い浮かべそうと予想しているが、

 

 

「……わかんないや」

 

「あらら」

 

「そ、そんなにすぐに思い浮かばないよね」

 

「……まぁ、サーバルの反応は予想できていたわ」

 

 

カラカルは長い付き合いの所為か、サーバルがわかんないと返答するのは予想できていたようだ。

 

 

「あ、今思ったんだけど、ドラえもんならアシカ達が満足出来るような特別なご褒美を持っているんじゃないの?」

 

「そっか!ドラえもんちゃんのポケットの中ならありそうだね」

 

「おー!その手があったか」

 

 

盲点だったと言わんばかりにドラえもんは2人の意見を聞いて、早速アシカ達が満足出来そうな適当な道具を取り出そうとするが、

 

 

「待って!」

 

 

しかし、キュルルがドラえもんを呼び止めた。3人はいきなり止めに入った彼女に顔を向ける。

 

 

「どうしたのキュルルちゃん?」

 

「いや、なんでもドラえもんの道具で解決するのはどうかなって…」

 

「いいじゃない、私だってこのまま海の上に長くいたくないから、早く済ませちゃいたいのよ」

 

「カラカル……」

 

 

さらっと、本音を言うカラカルにサーバルは苦笑いを浮かべ、キュルルとドラえもんは思わず呆れた表情を浮かべる。

 

 

「でも…何も努力せずに楽な事で解決するのは僕たちに期待しているアシカさん達に失礼じゃないかな……」

 

 

彼女の発言を聞いてカラカルとドラえもん、サーバルの3人は黙ってしまった。確かにそうだ。アシカ達は真剣な表情をして自分達に特別なご褒美を求めていたのだ。ここで道具に頼ればそれこそ彼女たちの期待を裏切る行為になる。それに気づいた3人は自分達がやろうとした事に恥ずかしく思った。

 

 

「そうだね、あの子達はわたし達が用意する特別なご褒美を楽しみにしているんだったね」

 

「ごめんなさいキュルル。わたしが間違っていたわ」

 

「べ、別に謝らなくていいよ……ん?ドラえもん」

 

 

2人はキュルルに対して謝ると彼女は頭を上げて欲しいと頼むが、先ほどから黙っているドラえもんが顔を俯かせ気がつきどうしたのだろうと思いながら話しかける。

 

 

 

「偉い!!!キュルルちゃん君はなんて偉いんだ!!!」

 

「へ?」

 

 

今日一番大きな声を出したドラえもんにキュルルは思わず呆然となる。一方でサーバル達は近くにいた為、思わず耳を塞いでしまう。

 

 

「自分の力でアシカさん達の満足させようとするその姿勢はとっても偉いよ!」

 

「ど、ドラえもん?」

 

 

普段よりも興奮して話すドラえもんにキュルルはどうしたんだ気になった。すると、ドラえもんは急にテンションが下がりボソリと語り出した。

 

 

「それに比べて日頃ののび太くんと比べたら、宿題をやる時も道具出してや、しずかちゃんにいい所を見せたいから道具出して〜、他にも無茶の多い要求をしてくるんだ。僕とした事が一番道具に頼ってはいけないって何時ものび太くんに注意してきたのに僕自身が最初から道具に頼るなんて……」

 

「なんか知らないけど、ドラえもんも苦労しているのね」

 

 

ほぼのび太に対する愚痴を言っていたドラえもんに3人は思わず同情する。普段からのび太が何かしらトラブルにあった時に甘えてきて、最初は努力しろと厳しく接するが、結局の所すぐに道具を使ってしまうが、彼女は全く違った。

 

 

「それじゃあ、キュルルちゃんは一体どうするの?」

 

「えっと、そうだね……」

 

 

とは言え、何も最初から考えている訳じゃない彼女は船室内を見渡して何かご褒美に繋がる物はないか探していると、サーバルが手元で転がしているビーチボールが視界にはいる。

 

 

(そういえば、あの時も……)

 

 

彼女は海中のステージで蘇った記憶の中にカルフォルニアアシカとバンドウイルカが"あの少女"と共にショーをしていた時にボールを使っていた事を思い出す。そして、ここへきた時もアシカと共にボールで遊んでいた事もあった。

 

 

「(もしかしたらイルカさんのご褒美に繋がるかも)サーバルちゃん!そのボールを貸してくれない?」

 

「へ?…別に良いけど」

 

 

サーバルはとくに拒む事なくビーチボールをキュルル渡した。彼女は先ずイルカのご褒美について検討が付いてきた。しかし、ただボールだけで遊ぶのはいつもやっている事だと思い、何かボールに一手間加えようと再び辺りを見回して何かないかと探そうと思ったが、丁度足元にいたラッキーさんの存在に気がつく。

 

 

「そうだ!ラッキーさんここにはこのボール以外に何があるの?」

 

 

この船の内部構造はラッキーさんが知っている為、ボールや酸素ボンベ以外にも何かあるのではと思い彼女は話しかける。

 

 

『ココには、主に海でのフレンズと遊べるように釣り竿やボール。その他にも色々揃っているヨ〜』

 

「釣り竿か…じゃあ、その釣り竿は何処にあるの?」

 

『任セテ、釣り竿は目の前の壁に…壁に……』

 

 

ラッキーさんは釣り竿を取ろうと動き出す。しかし、目の前には沢山の箱や色々な道具で山積みになって釣り竿がどこにあるのかわからなかった。

 

 

『マカワワワワワワ』

 

「ラッキーさん⁉︎」

 

「またなの?」

 

「肝心な時にこれね」

 

 

いつもの様にラッキーさんはフリーズを起こしてしまう。それは仕方ない事だ。ラッキーさんに手が有れば荷物をどかして釣り竿を取り出す事が出来るが、手がない為手伝うことができないのだ。そのことを察したキュルルはラッキーさんの頭に手を乗せる。

 

 

「ありがとうラッキーさんあとは僕に任せて」

 

 

ラッキーさんにお礼を言うと辺りの物を手当たり次第どかし始める。どうやらなにかを探している様だ。

 

 

「キュルルちゃんはなにをしているのかな?」

 

「さあ、なにか探している様だけど手伝った方が良いかしら?」

 

 

2人は船室の中にある積まれた荷物をどかして何かを探している彼女の姿を見て、自分達も手伝おうと思ったが、

 

 

「いや、ここはキュルルちゃん1人でやってもらおう」

 

 

だが、ドラえもんがサーバル達に手伝うのを止める。

 

 

「なんでよ?」

 

「そうだよみんなでやったほうが早く出来そうだよ」

 

 

サーバルとカラカルは効率を考えてやった方がいいと提案する。

 

 

「2人ともキュルルちゃんの顔をよく見て」

 

「「ん?」」

 

 

2人はドラえもんに言われた通り、キュルルの顔を見ると真剣な眼差しで集中している様子だった。その表情は今までも何回も見たことがあった顔だ。

 

 

「今のキュルルちゃんはアシカさん達の為に一生懸命何かをしようとしているんだ。それを僕たちが手伝おうっていうのはキュルルちゃんにとって妨げになるかもしれないよ」

 

 

そう言われると、2人は納得したのか少し黙り込む。

 

 

「……そうだね、じゃあ見ているよ」

 

「まあ、たしかにキュルルのあの姿を見ると手伝いにくいわね」

 

 

2人はキュルルの行動を見守ることにした。一方でキュルルは様々な荷物を退かしていると、ある物が目に入る。

 

 

「見つけた!」

 

 

彼女が取り出したの長い棒に先端には細い糸が付いている物だ。それを見たドラえもんはその道具の名前を言う。

 

 

「それって釣り竿?」

 

「つりざおってなに?」

 

「魚を釣るための道具だよ。糸の先端にある釣り針に魚の餌をつけて魚を釣り上げるんだよ」

 

「すごーい!ねえ、私も触りたい!」

 

「いいよ」

 

 

初めて見る釣り竿にワクワクしたサーバルはキュルルに貸してほしいと頼む。対して彼女は釣り竿をサーバルに渡した。

 

 

「へえ、これがつりざおか〜」

 

「これで本当に魚が釣れるの?」

 

 

手に取った釣り竿を見てサーバルはじっくりと観察した。隣にはカラカルがいるがいまいち釣り竿を信用していなかった。そして、その様子をドラえもんは親が玩具で遊んでいる子供を見る目で見ていた。

 

 

「見せてくれて、ありがとう」

 

「うん、じゃあ早速作るよ」

 

 

満足したサーバルは釣り竿をキュルルに返した。釣り竿を返してもらった彼女は釣り竿を探していた時に見つけた道具箱からいくつか道具を取り出して、釣竿を組み合わせ始めた。

 

 

(そうそう、前にのび太君も鳥人間の翼を作ろうとこんな感じに集中してやっていたな)

 

 

その後ろ姿からはドラえもんの目には紙と木で翼を作ろうとするのび太の姿と重なっていた。一方でサーバル達は気になって彼女を挟む様に隣に座って組み合わせていくところを見ていた。

 

 

「出来た!」

 

 

ボールと釣り竿を組み合わせたキュルルはそれを3人に見せる様に掲げる。

 

 

「これが……」

 

「特別なご褒美?」

 

 

2人の前には船室にあった釣り竿と吊り下げられたビーチボールだ。カラカルはキュルルの作った物に全く特別凄いような物は感じなかった。しかし、サーバルは目を輝かせ釣り竿に吊るされるボールを思わず叩いた。

 

 

「みゃ!みゃみゃ!」

 

「さ、サーバルちゃん⁉︎」

 

「ふふ、どうやらサーバルちゃんは気に入ったようだね」

 

 

作った本人である彼女はいきなりサーバルがボールを叩いてきた事から驚くものの、ドラえもんがサーバルは喜んでいると聞いてキュルルは笑顔を浮かべた。

 

 

「あれ、カラカルはやらないの?」

 

「や、やらないわよ!」

 

 

一方でカラカルはサーバルと違ってやるつもりはないと言っているが、先ほどからチラチラとボールを叩いているサーバルを見ていた。どうやら口ではそう言っているが、体は正直なようだ。

 

 

「キュルルちゃんこれでいいの?」

 

「うん、イルカさんの特別なご褒美はこれにするよ」

 

 

ドラえもんはこれで完成したのかと確認すると彼女は満足した表情を浮かべて肯定する。サーバル達もキュルルの作った物を特別なご褒美に賛成した。

 

 

「あとはアシカの特別なご褒美だけどどうする?」

 

「そもそもアシカが喜ぶ物って何かしら?」

 

 

サーバル達はイルカの特別なご褒美は決まったものの、アシカの特別なご褒美についてはどうしようかと

 

 

「わからないな…ん?」

 

 

するとキュルルは部屋の隅にブルーシートで隠された何かを見つける。気になった彼女はブルーシートの方に近づいた。

 

 

「何だろう……これは!」

 

 

ブルーシートを引き剥がすと其処には山のように積まれた浮き輪が置かれていた。そして、彼女の後ろではサーバル達が気になって覗いてきた。

 

 

「何かしらこれは?」

 

「真ん中に穴が空いているよ。なんだか。アヅアエンの時にあった“ぶらんこ"に似ているね」

 

 

カラカルは初めて見る浮き輪を手に取って眺める。一方でサーバルはアヅアエンで組み立てたブランコに使われていたタイヤと形が似ていることからブランコの一部か思っていた。

 

 

「タイヤの事だね。いや、そうじゃなくてこれは浮き輪だよ」

 

「「うきわ?」」

 

 

また初めて聞く言葉にサーバルとカラカルは首を傾げる。

 

 

「浮き輪っていうのはこうやって胴体に……どお゛た゛い゛にぃー!!!」

 

 

ドラえもんは手に浮き輪をとって使い方を披露しようと浮き輪の穴に体を通そうとするが、ドラえもんの体はでかい為なかなか穴の中に入らなかった。その様子を見て3人は思わず笑いそうになる。そして、しばらくして「はぁ、はぁ」と息を荒くしたドラえもんはチラリとサーバル達に視線を向ける、

 

 

「と、取り敢えずこれを体に通せば海とかで溺れずに済むよ」

 

(((誤魔化した…)))

 

 

 

浮き輪を体に通せない事を誤魔化したドラえもんに3人は口には出さず心の中で呟いていた。すると、キュルルはドラえもんが手に持つ浮き輪を見て考えていた。

 

 

(そういえば記憶の中でもアシカさんはこの浮き輪を使っていた…)

 

 

 

イルカ同様に過去の記憶の中でアシカは浮き輪を使ったパフォーマンスを披露していた事を思い出した。

 

 

「決めた!これならアシカさんの特別なご褒美になる筈だよ」

 

「それには特に何かしないのね」

 

 

先ほどのイルカの為に作った特別なご褒美のように浮き輪には何も手を加えない事に意外と思っていた。

 

 

「うん、この浮き輪はどこか付け加えなくてもアシカさんを楽しませることができるよ」

 

「そうかしら?」

 

 

イマイチ浮き輪の何処にアシカを満足させられる要素があるのかわからないカラカルは取り敢えずキュルルの言葉を信じることにした。対して彼女はある事を思っていた。

 

 

(なんだろうこの違和感は……)

 

 

2人の特別なご褒美が決まった筈なのに内心では何処か違うと訴える自分がいたが、何が違うのかわからなかった。

 

 

●●●●●

 

 

アシカ達のご褒美を用意したドラえもん達は船室から出てくるとそこにはアシカ達が楽しみに待っていた。

 

 

「部屋を出てきたということは……」

 

「特別なご褒美は出来たの?」

 

「そうだよ。キュルルちゃんが用意したんだよ」

 

 

そう言うと4人は早速アシカ達に特別なご褒美を見せる。

 

 

「これが…」

 

「特別なご褒美」

 

 

釣り竿に吊るされたボールを見て思わず呆気にとられる2人。てっきり、自分たちの為に作る特別なご褒美だからとてもすごい物を用意してくれると思ったが、目の前に出されたのはいつも遊んでいるボールにそれを吊り下がる釣り竿をくっつけただけなのだ。しかし、イルカはそう思いつつも自身の尾びれを揺らして体がうずうずしていた。

 

 

「じゃあ、さっそく遊んでみようか。イルカさんはこのボールを触ってみて」

 

「う、うん!」

 

 

イルカはキュルルに返事をすると彼女の持つボールに目掛けて飛び上がろうとするが、キュルルは竿を揺らしてイルカから逸らした。それをみたイルカはもう一度触れようとするが、またしても竿を揺らしてイルカからボールを遠ざける。普通なら此処で「なぜ揺らす」などと聞くのだが、イルカはそんな事を言わず、触れられないボールにワクワクしていた。

 

 

「そーれ!」

 

「あっ、待てー!」

 

 

今度は竿を大きく振りかぶってそのまま海のほうに向かって振り下ろすと、吊るされたボールは海のほうに飛んでいき、それをイルカは海に飛び込んで追いかける。

 

 

「えーい!」

 

 

イルカはボールに近づくとそのまま頭突きを決め、ボールを船の方まで飛ばした。そして、彼女も船まで帰ってきた。

 

 

「どうかな?」

 

「うん、とっても楽しいよ!!!」

 

 

今までしてきたボール遊びよりもキュルルが作った道具でやる遊びの方が一番楽しく感じていた。

 

 

(なんだかとても楽しそう)

 

 

一方でイルカがとても楽しそうにしているのを見て、アシカは少し羨ましく思っていた。そして、キュルルはある程度イルカと遊ぶと今度は浮き輪を3つ抱えてアシカに近寄る。

 

 

「それじゃあ、今度はアシカさんだよ」

 

「え?…私ですか?」

 

 

少しぼーっとしていたアシカはいきなり話を振られた事に戸惑ってしまう。しかし、そんな事関係なくキュルルは浮き輪を構える。

 

 

「行くよ。それっ!」

 

「え、ま、まだ準備が────」

 

 

アシカがまだ準備をしていないというのに彼女は浮き輪を三つ同時に投げる。しかし、アシカは飛んでくる浮き輪に向かって飛び上がり、自身の体を浮き輪の穴に通した。

 

 

「「「「「おおおーッ!!!!」」」」

 

「凄いよアシカちゃん!」

 

「か、体が勝手に……」

 

 

飛んできた浮き輪に彼女は自身が対応出来ると思わず、自身でも驚いていた。

 

 

(でも、楽しい)

 

 

だが、驚きよりも楽しいと言う感情が多く出ていた。

 

 

「すっごーい!一回で三つも体を通すなんてアシカはすごいよ」

 

「いったいどうやったの?」

 

「え、えっと…わたしにもよくわかりませんが、体が勝手に反応してしまいました」

 

 

すると、先ほどのアシカの動きをみたサーバルが称賛の声を上げる。それを聞いたアシカは2人に褒められた事により頬を赤く染める。

 

 

「どうだったアシカさん?」

 

「はい、とても良い気持ちです」

 

 

こんな気持ち今までになかったそう伝えると、カラカルはニヤリと笑みを浮かべる。

 

 

「じゃあ、これで帰れr「いえ、まだ満足できてません」

 

 

アシカが満足したと思ったカラカルだったが、当の本人がまだ納得できていないと発言するのだ。

 

 

「ええーーっ!?まだ満足できないのぉ〜!?」

 

「ちょっとカラカルちゃん!」

 

 

アシカの発言からして満足したのかと思ったカラカルだが、まだ満足出来てないと聞いて、とてつもなく絶望に見舞われた表情を浮かべる。ドラえもんはあまりにも失礼な発言をする彼女に注意した。

 

 

(2人がまだ満足出来ない訳はなんだろう?)

 

 

一方でキュルルは彼女がまだ満足出来ない訳を考え出す。自分が作り出した特別なご褒美は蘇った記憶を頼りに作った為、ひょっとするとその記憶の中にアシカが満足できるヒントがあるかも知らないと思い、記憶を振り返る。

 

 

(まず、2人がいた場所はあのステージ。そして、周りには沢山のフレンズ達。そのフレンズ達に2人はショーを披露していた……そうか!)

 

 

2人が"どう言う場所"で"どんな状況"で"何をしていたのか"一つ一つのピースを埋めていき何かに気づくと彼女はドラえもんの方振り返る。

 

 

「ねえドラえもん。ドラえもんは海の上に浮かぶステージとフレンズ達を呼ぶ道具は持ってない?」

 

「へ?まあ、一応あるにはあるけど「あるの!?」…だけど、僕のポケットの中にあるステージは海に浮かばないし、仮にフレンズのみんなを呼んでも海に溺れちゃうよ」

 

「そっか……」

 

 

ドラえもんに海に浮かぶステージはないかと聞いたが、ドラえもんはないと答え、キュルルは残念そうな表情を浮かべる。

 

 

「……でも、なんとか出来そうな道具はあるよ」

 

 

それを聞いたキュルル達は思わず驚愕の表情を浮かべてドラえもんに顔を向ける。対してドラえもんはいつものようにポケットの中に手を突っ込むとそこから道具を取り出す。

 

 

「室内旅行機〜!」

 

「それはなんですか?」

 

「それもご褒美?」

 

 

ドラえもんが出した道具を見て、もしかしたらご褒美と思ったアシカとイルカだった。

 

 

「まあ、そんなものかな。それでキュルルちゃんは海の上に浮くステージとお客さんで良いんだっけ?」

 

「あ、うん…」

 

 

ドラえもんはキュルルに質問すると、彼女は何がなんだかわからないが思わず肯定する。一方でサーバル達4人もドラえもんの出した新たな道具に興味津々の様子だ。

 

 

「ドラえもんちゃん次はどんな道具なの?」

 

「ひょっとしてステージを出す道具だったりして」

 

 

カラカルは冗談半分でそう答えると、ドラえもんはニヤリと笑みを浮かべる。

 

 

「ちょっと違うかな」

 

「え?…ちょっと?」

 

 

ドラえもんの発言を聞いて思わず彼女は聞き返した。一方でドラえもんは取り出した室内旅行機を船の上に置くと、それについている幾つかのボタンを押し出した。

 

 

「えっと、設定は海に浮かぶステージと観客席っと……これでよし!」

 

「「「「「うわっ(きゃ)⁉︎」」」」」

 

 

ドラえもんは室内旅行機に付いているスイッチを幾つか押すと、光出した。サーバル達は室内旅行機から発する光に思わず目を瞑る。そして、暫くして光が止み、彼女達は恐る恐る目を開けると思わず声を上げる。それもそのはず、今彼女達は船の上にいるのではなく見覚えのないステージの上に立っているのだ。

 

 

「私たち先ほどまで船の上にいた筈なのに……」

 

「どうなっているの?」

 

「なにこれ!なにこれ!」

 

「なんだか、海にあったステージに似ていますね」

 

「うん、それになんだかワクワクしてきたよ!」

 

 

5人は目の前に起こった現象に思わず驚きと好奇心が溢れていた。

 

 

『アワワワワワワワ』

 

 

一方でラッキーさんはアヅアエンのラッキーさんの情報や着せ替えカメラとテキオー灯の力を間近で見てある程度耐性がついているのかと思いきや、まさか自分たちのいる場所が全く変わる現象にフリーズを起こしていた。

 

 

「うわ〜!とってもひろ〜い!」

 

「サーバル、走ると危険よ」

 

「へーき、へーk──「ガンッ!」うぎゃぁっ!!!」

 

「「サーバル(ちゃん)!?」」

 

 

サーバルはステージの上を走り回っていると、彼女の足に何かが強打してしまい彼女は足を押さえながら転がった。それを見たカラカル達は慌ててサーバルに駆け寄る。

 

 

「大丈夫サーバルちゃん?」

 

「ぅぅ…何かが足にぶつかった」

 

「何かって、何にぶつかったのよ?」

 

「足元には何も転がってないよ」

 

 

カラカル達の言う通りである。彼女が足を強打した場所とその周辺には何も障害物は置かれてはいなかった。サーバルもそれを見て不思議に思った。

 

 

「あー、ごめんごめん。説明するのを忘れてた」

 

 

サーバルに軽く謝るドラえもんだが、何かを知っていそうな口ぶりだった。

 

 

「ドラえもんちゃんどうなっているの?」

 

「今いる場所はに室内旅行機から作り出された映像なんだよ」

 

「「「「えーぞー?」」」」

 

 

ドラえもんの説明に出た"映像"と言う言葉にキュルルを除いた4人は思わず首を傾げる。一方、映像の意味を知るキュルルはドラえもんの言っている意味がすぐに理解できなかったが、次第に理解してきた。

 

 

「要する此処は幻のステージで実際僕たちは船の上にいるだけなんだよ。周りの景色だけをステージに変えただけだから、船の構造は全く変わっていないから多分サーバルちゃんは船の柵に足をぶつけたんだと思うよ」

 

 

ドラえもんがさらにわかりやすく説明をしたところで4人は「あ〜」と納得の声を上げる。

 

 

「それなら先に言って欲しかったな」

 

「説明する前にサーバルちゃんが走り回るから言うのが遅れちゃったんだよ」

 

 

ドラえもんは半分自身に責任がある事を理解しているが、もう半分は何も考えずに走り回ったサーバルの自業自得である。そのことに指摘された彼女は「あ、ははは…」と乾いた笑い声を出して誤魔化した。

 

 

「取り敢えず次はお客さんを出そうか」

 

 

そう言ってドラえもんは室内旅行機のスイッチを押すと、誰も座っていない観客席に沢山の人間のお客さんが現れた。

 

 

「お、お客さん達だ!」

 

「すごい!あんなにもいるなんて初めて見ました!」

 

 

イルカとアシカは観客席が満席になる程の数のお客さんを見て大興奮していた。しかし、それを他所にサーバル達があることに気がつく。

 

 

「あれ、でもあそこにいるのは耳のないフレンズばかりね」

 

「本当だ」

 

「ドラえもんあそこにいるのは?」

 

 

観客席に座っているお客さんが頭には耳は生えておらずさらには老若男女がいることにドラえもんあそこにいるのは誰なんだと3人は聞いてきた。

 

 

「あそこにいるのは全てフレンズじゃなくてヒトだよ」

 

「え?てことはキュルルちゃんと同じヒトなの?」

 

「キュルル以外のヒトは初めてみるわ」

 

 

目の前に座るお客さん達は人であると知りサーバルとカラカルはじっくりと観察する。キュルルも自分以外初めてみる人に思わずじーっと見つめていた。すると、此処でサーバルがある事を思いついた。

 

 

「そうだ!あそこにいるヒト達にキュルルちゃんの巣はどこにあるか聞いてみようよ」

 

「良いわね!」

 

 

観客席にいる誰かならキュルルのお家の手がかりを知っているかもしれないと考えたサーバルとカラカルは早速話しかけようとする。

 

 

「サーバルちゃんそれはできないよ」

 

「え?どうして?」

 

 

しかし、サーバル達はドラえもんに止められる。2人はなぜ話をすることができないのか訳を聞くと、ドラえもんは説明する。

 

 

「あそこにいる人たちはこのステージ同様に室内旅行機から作り出された映像なんだよ」

 

「そうなの⁉︎」

 

「そっか……」

 

 

目の前に座るお客さんは全員本物の人では無いと知るとがっかりするサーバル達。それを見たドラえもんとアシカ達は3人のがっかりする姿を見て心が痛んだ。

 

 

「せっかくキュルルちゃんの巣の手がかりが見つかると思ったのにな〜……」

 

「……ま、まあ、とにかく。今はアシカさん達を楽しませよう!」

 

 

本当なら一番キュルルががっかりするにも関わらず彼女は自身よりもアシカ達の望みを叶えようとする姿勢を見せたのだ。

 

 

「…そうだね」

 

「けど、なんでこの幻のステージとお客さんが必要な訳なの?」

 

「多分2人にとっての特別なご褒美は自分たちの芸を見てくれたお客さんの声と笑顔だと思うんだ。僕の思い出した記憶には2人はとても嬉しそうだったしね」

 

 

キュルルは記憶の中で生き生きとお客さん達に芸を見せるアシカとイルカの姿を思い出す。彼女はそれを見て特別なご褒美とはお客さんの声と笑顔であると推測し、それができるように記憶の中のショーを再現しようと考えたのだ。

 

 

「ドラえもんあそこに座っているお客さんは動くの?」

 

「うん、ちゃんと本物のように動くからアシカさん達の芸に反応する様になっているよ」

 

 

ドラえもんはキュルルにそう返すと、彼女は笑みを浮かべ「わかった」と返事をしてアシカ達に視線を向ける。

 

 

「それじゃあ、アシカさんにイルカさん。2人の芸を此処にいるみんなに見せてよ」

 

「「……はい(うん)!」」

 

 

2人は元気よく返事をすると、ステージの真ん中に立ち、いつもやっている芸を含めキュルル達と協力した芸を映像であるがお客さんに見せると歓声と拍手を送った。その途中サーバルやドラえもん達もアシカ達を真似てショーをやるが、所々失敗して観客席から笑い声が上がったり、サーバルがステージの端っこに行こうとしたら、誤って海から落っこちるアクシデントもあったものの、それを助けるようにイルカが海に潜ってサーフボードのようにサーバルを背中に乗せ、波に乗りステージに戻ると一番の歓声と拍手を浴びるのだった。

 

 

●●●●●

 

 

アシカとイルカが満足するまでショーをやっていたら、夕方になってしまい。ドラえもん達はアシカ達に船を押してもらい陸まで戻ってきていた。

 

 

「皆さん今日はどうもありがとうございました」

 

「ありがとう!」

 

 

アシカとイルカは自分たちの求めていたご褒美をくれたドラえもん達に感謝の言葉を送った。

 

 

「いや、こちこそとても楽しかったよ」

 

「うん、本当に楽しかったよ」

 

「ほんと、海に落ちたサーバルを2回も助けてくれてありがとうね」

 

「カラカル〜!」

 

 

4人もそれぞれアシカ達に感謝の言葉を送ると、イルカが両手を後ろに何かを隠していることに気づいた。

 

 

「はい、これをあげるよ」

 

 

イルカはドラえもん達に自分たちが普段遊んでいるボールを渡した。

 

 

「うわ〜!もらって良いの?」

 

「うん、おともだちの証だよ」

 

「それにボールは沢山ありますから」

 

「それじゃあ、こちらも今日のお礼にどうぞ」

 

 

アシカとイルカからボールを受け取ると、対してキュルルもお返しとしてスケッチブックから紙を切り取るとそれをアシカ達に渡す、するとその紙を見た2人は笑顔を浮かべる。そこにはステージの上でお客さんにショーを見せるアシカとイルカの絵が描かれていた。

 

 

「ちょっと波で船が揺れていたからあまり上手く描けなかったけど、どうかな?」

 

 

キュルルはあまり出来の良い物では無いと言うが、2人にとってはその絵はとても良い絵に見えた。

 

 

「うん!とっても良いよ!」

 

「はい、私たちにとってこれは最高のご褒美です。そうです!皆さんが困った事が有れば我々は何処からでも駆けつけますからね」

 

「ありがとう。けど、そこまで言われると照れるなぁ」

 

 

2人に凄く褒められた事にキュルルは嬉しそうな顔を浮かべる。すると、波が大きく「ザパーン」と音を立てると全員は一斉に海の方向に首を向ける。

 

 

「あっ、夕日が沈んでいく」

 

「とても綺麗ね」

 

 

昼間までは天高く登っていた太陽はオレンジ色に変わり、海に沈んでいくように見える事から彼女達にとって今までの中でとても良い景色だと思っていた。

 

 

「そうだ!夕陽を背景にしてもう一枚これを背景に絵を描いてみよっと」

 

「はは、それはいいね」

 

 

キュルルの創作意欲は燃えて、スケッチブックを取り出して色鉛筆を片手に目の前の光景を絵に描いていた。それを見たドラえもんは微笑ましく思っていた。

 

 

「私たちは何時もこの時間はあの夕陽を見ているんだ」

 

「ええ、こうやって眺めると心がとても落ち着ますからね」

 

「へぇー、そうなんだ」

 

 

アシカ達もこの景色はとても好きなようで昼間は散々彼女達に振り回されたカラカルだが、この景色に対する思いは共感できていた。一方でサーバルも夕陽を眺めていた。サーバルも夕日が海に沈んでいか景色を見て心を打たれる。

 

 

「うわぁー、きれ……え?」

 

 

 

だが、その一瞬目の前の夕日は燃え盛る船とそれにしがみつく黒い大きなセルリアンに見えた。

 

 

 

「なに、今のは……?」

 

「どうしたのサーバルちゃん?」

 

 

ドラえもんは呆然としているサーバルが気になって、話しかけてきた。

 

 

「あ、なんでもないよ」

 

「そう?それなら良いけど……」

 

 

ドラえもんは彼女は本当になんでも無さそうだと分かるとそれ以上追求はしなかった。対して、サーバルはもう一度夕陽を見つめるが、特に先程のように夕日では無い別の何かに見える事はなかった。

 

 

(なんだったんだろうさっきのは……?)

 

 

全く見覚えのない物を見てサーバルはそれが一体なんなのだろうと考えるが、

 

 

(なんでだろう……考えるととても胸が締め付けらるように痛い)

 

 

彼女はどうして胸が痛むのかわからなかった。だが、考えると胸が痛くなるのなら考えなければ良いとそう思った。

 

 

(これ以上胸が痛くなるのは嫌なのに、それ以上に考えるのをやめたくない……なんでだろう?)

 

 

しかし、サーバルは胸の痛みを感じながらも先程の光景について考える自分に矛盾を感じていた。そして、今までこんなにも深く考えた事はないサーバルは"先程の光景"と"謎の痛み"と"深く考える己"の三つは何かを意味している……そうじゃないか推測するが、

 

 

「ちょっと、早く行きましょう?もう用は済んだんだから……」

 

「……カラカル」

 

 

てっきりもう海は克服したかと思えば未だに海を怖がるカラカルの声を聞いてサーバルは思考を停止させる。すると、先程考えた事を忘れるように半ば呆れたように苦笑いを浮かべる。側に居るドラえもんとキュルルも同じ様子だ。

 

 

「皆、疲れてるみたいだからそろそろ行かないとだね」

 

「そっか、もうお別れかぁ……楽しかったのにな〜〜」

 

「そうですね。皆さん、私達に付き合ってくれてありがとうございました」

 

 

ドラえもんの言葉に名残惜しそうな様子のイルカとアシカ。そんな二人の言葉にキュルルは「お礼を言うのは僕達の方だよ」と答える。すると、今日一日4人についてきてくれたラッキーさんは前に立つ。

 

 

『カイジュウエンは楽しめたかな?ボクのガイドはここまでだケド、道中は気を付けるんだヨ〜』

 

「そっか、案内ありがとうね。ラッキーさん!……あ、そうだ!」

 

 

キュルルはラッキーさんにお礼を言うと何かを思い出し、スケッチブックのページを開き、筆を走らせる事数分。彼女はスケッチブックから一枚紙を切り取り、それをラッキーさんに渡した。キュルルを除いた全員はラッキーさんの耳に挟まれている絵を覗くと、そこには今日このカイジュウエンを冒険するきっかけとなったアシカ達の水族館とステージの絵に自分たちがショーをやっている姿が描かれていた。

 

 

『マハロ(ありがとう)!マーラマ・ポノ(元気でね)!』

 

「「「「「「ラッキーさんありがとう!」」」」」」

 

 

ラッキーさんはドラえもん達にお礼を言うと、ドラえもん達もラッキーさんにお礼を返すと、ラッキーさんは一足先に絵を持ってぴょんぴょんと跳ねてその場から去っていった。すると、今度はアシカとイルカがは互いの顔を見合わせ始めた。

 

 

「それじゃ、最後にアレやろっか!」

 

「そうですね。……せーの」

 

「「さよーなら〜〜〜〜」」

 

 

彼女達は初めて会った時と同じように手を振りながら別れの挨拶をいう。

 

「さようなら!アシカさん!イルカさん!」

 

「元気でね〜〜」

 

 

そう言い、アシカとイルカは手を振る。そう、別れを告げ、手を振る。手を振る、振る、振る、振る、振る─────

 

 

「………アナタ達?いつまでそれをやって?」

 

 

まだ自分達は一歩も歩いていないのに、手を振り続ける彼女たちを見て変だと思っていた。すると、だんだんと手を振るのが辛くなってきたのか少し手を振る速さが遅くなり、2人の顔もだんだんと赤くなってきた。

 

 

「ごめんね、早く行って!」

 

「これ一度やると、見ている子が居なくなるまでやめられないの!」

 

「「「ええ!?」」」

 

「あー、確かに。見た事あるなぁ」

 

 

水族館のショーでアシカとイルカがお別れをする際、器用に前脚を振る姿をドラえもんは頭に浮かべつつ、キュルル一行は彼女達の身のために颯爽とその場を後にしたのだった。

そして、ドラえもん達が去った事により漸く手を振るのをやめられた彼女達は深く息を吐いた。

 

 

「行っちゃったね〜」

 

「えぇ、困った時はいつでも呼んでと言ったけれど……大丈夫かしら?」

 

「うん。最近、海のご機嫌も良くない見たいだし……」

 

 

夕焼けに照らされ、橙色に染まる海。

そこに不穏な黒い光が浮かんだ事はまだ誰も知らない。

 

 

●●●●●

 

 

一方同時刻のアヅアエンでは、ドラえもん達の活躍で直った公園はそこに住むフレンズ達の遊び場となっていた。

 

 

「というわけで我々はこの方を探しているのですが知りませんか?」

 

「え、えーと、こんな姿した人は私やジャイアントパンダちゃんの知り合いにいませんよ……」

 

 

すると、その公園には先日までさばんなちほーにいた探偵のセンちゃんがレッサーと話をしていた。

 

 

「わーい!」

 

「zzzz〜」

 

 

一方でアルマーさんは仕事をしているセンちゃんを他所にブランコで楽しく遊んでおり、その隣のタイヤのブランコでは相変わらずジャイアントパンダが寝ていた。

 

 

「お願いします。なんでも良いのでの情報をください!」

 

「えっと、あ!…それならその絵に似た人が昨日此処に来ましたよ」

 

「その方はどこに居ますか⁉︎」

 

 

レッサーパンダがこの絵に描かれている何かがドラえもんに似ていると気づき、その事を口にするとセンちゃんは聞き逃さず、その事について追求するが、

 

 

「センちゃんも一緒にぶらんこで遊ぼうよ〜!」

 

 

ブランコで楽しく遊ぶアルマーさんがセンちゃんを誘ってくる。それを見た彼女は一旦レッサーパンダから情報を聞くのをやめて、アルマーの方に振り返る。

 

 

「アルマーさん!私たちは遊んでいる暇はありませんよ!」

 

 

自分たちがこうしている間にも探している人物はどんどん遠くへ行くと言うが、アルマーはキョトンとした顔になる。その目はおかしな物を見るような目であった。何故彼女は相方をそんな目で見るのはすぐわかった。

 

 

「そう言っているけど、センちゃんはそのしーそーって物に乗っているじゃん」

 

「うっ!」

 

 

そう、彼女はシーソーに座って反対側に座るレッサーパンダから情報を聞いていたようだ。どうやら彼女もこの公園や遊ぶフレンズ達を見て遊びたい気持ちが一杯のようだ。

 

 

"公園遊ばずにはいられない!"

 

何処かでそんな声が聞こえた気がする。

 

 

「い、いいんですよ!私はレッサーパンダさんが答えやすいように仕方なく!このシーソーに座っているだけで、決して仕事を建前に遊んでいる訳じゃないんです!」

 

「そうかな?その割には随分楽しそうだったけど」

 

「うぐっ⁉︎」

 

 

アルマーさんに自身の本心を見抜かれた彼女は思わず呻き声を上げるが、そのあとすぐに先払いをして冷静になると、レッサーパンダの方に向き直る。

 

 

「そ、それよりも先ほど話の続きを聞かせてください!」

 

「えっと、確かあそこにあるものれーる?に乗ってあっちの方へ行きましたよ」

 

 

レッサーパンダが指を刺した方向には此処へくる途中目にしたモノレールのレールがあった。

 

 

「あっちの方角は確かカイジュウエンでしたね……貴重な情報ありがとうございます!」

 

 

センちゃんはレッサーパンダにお礼を言ったが、突然レッサーパンダの方から「ズズッ」と音が聞こえ、なんだろうと思いながら彼女の方を見ると、

 

 

「あ…や、やった!私まだや゛ぐに゛だっだよ゛ぉぉぉぉ!」

 

「えええっ!?何故泣くんですか⁉︎」

 

 

突然泣き出したレッサーにセンちゃんは戸惑ってしまう。すると、周りから視線を感じ、恐る恐る振り返るとそこには先程まで遊んでいたフレンズが冷めた目でセンちゃんを見ていた。

 

 

「ち、違います!わ、私が泣かしたんじゃないんですよ!」

 

 

センちゃんは慌てて否定するが、その必死さが余計怪しくフレンズ達は先程よりも敵意を彼女に向ける。

 

 

「あ、アルマーさん助けてって、いなぁぁーい!?」

 

 

先程までブランコで遊んでいたアルマーさんはどうやら逃げてしまったようだ。そして、1人残されたセンちゃんはなんとか泣くのをやめさせようと努力するが、全く効果はなかった。

 

 

「い、いくら探偵の私でも泣いている子を慰める事なんて事はできませんよー!ヘラジカ様助けてくださーい!」

 

 

アヅアエンの中心にセンちゃんの嘆きの声が響き渡るのだった。これから先彼女は一体どうなるのやら、それはまた次の話に続くのであった。




フレンズ図鑑

カリフォルニアアシカ

ネコ目アシカ科アシカ属

Zalophus californianus

器用で芸達者なショーの人気者、カリフォルニアアシカのフレンズ。
アラスカ南東部からメキシコの中央部辺りにかけて分布し、普通は海岸線に沿って生息しているが、北太平洋沿岸では河川でも発見されている。体はトドやオタリアのように水中を泳ぐのに適した紡錘形をしている。耳や尾は短く、下毛はなく体毛も極めて短い。毛色は雄は黒褐色や暗褐色で、雌はやや明るく黄褐色などをしている。のどと胸は濃く、四肢は黒色に近くて、成熟した雄の首の毛はやや長くてたてがみ状をしている。また、雌よりも雄の方が体が大きく、成長したカリフォルニアアシカの雄は額がこぶのように盛り上がってくる。四肢にはそれぞれ5本の指があるが、いずれも厚い水かきでつながっていて、魚のひれのようになっている。また、尾はきわめて短く、後足の間に隠れるようになっている。泳ぐ時には体を上下に運動させるだけではなく、前足を巧みに使って自由に泳ぎまわることができる。ふつうは水面に頭を出して泳いでいるが、急ぐときには潜水し、水中では25~30km/h程の速さで泳ぐことができる。潜水能力にも優れ、水に潜るときには鼻の穴を閉じることができ、長ければおよそ15分程も潜っていることができるほか、潜水深度は270~300mに達すると言われている。律技でちょっとお固いところがあるものの、しっかりさん。バンドウイルカの「ドルフィンキック」で放たれたボールを受け止められる唯一のフレンズらしい。


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第9話ひっこし

けものフレンズ3は本当に面白いですね〜。約一週間ごとにイベントがあって飽きずに更に新しいフレンズが出てくるから楽しくてしょうがないですよ。

それにジャイアント先輩の声がまさかのサトシになるとは……実装されたらゲットあるのみです!

あと、投稿が遅れてすみません。


カイジュウエンでアシカとイルカの願いを叶えたドラえもん達は彼女達と別れて、キュルルのお家とのび太達を探す冒険を再開し、次なるちほーを目指してモノレールに乗っていた。だが、今回は今までよりも道は長く昼の時間は過ぎて夕方になってまだ駅には着いていなかった。

 

 

「はぁ〜、まだ次のちほーには着かないの?」

 

 

モノレールの窓を開けてそこからレールの先を覗くカラカルだが、一向に駅の影も形も見えなく、彼女はため息をつく。本来サーバルとカラカルは夜行性であるが、ここ最近はドラえもんとキュルルに行動を合わせて昼間に動いている為、すっかり生活リズムが崩れているのだ。

 

 

「みゃ、みゃみゃっ♪」

 

 

一方でサーバルはイルカ達から貰ったボールを楽しそうに転がして遊んでいた。その姿にドラえもんは微笑ましく思えた。

 

 

「ほんと、サーバルは楽しそうね」

 

「まあ、モノレールに乗っている間は特にやる事が無かったから遊べる物があって、本当に楽しそうだね」

 

 

楽しそうに遊んでいるサーバルを見るカラカルに同意するドラえもんだが、彼女がボールをチラチラと見ていることに気づいた。

 

 

「カラカルちゃんも遊んだら?」

 

「や、やらないわよ!」

 

 

ドラえもんはサーバルと遊べば良いと提案するが、彼女は一瞬戸惑うものの拒否する。

 

 

「カラカルも遊ぼうよ。楽しいよ」

 

「うっ……まあ、サーバルがどうしてもって言うのならやるわよ」

 

「やった!」

 

 

カラカルは仕方なさそうに言うが、サーバルからボールを受け取るとサーバルとともにボールを転がして、笑みを浮かべていることから本当に楽しんでいることがわかる

 

 

「ドラえもんちゃんもどう?」

 

「いや、僕はいいや」

 

 

ドラえもんもいつもなら近所の猫と一緒に遊んだりするが、此処最近2人は一緒に遊ぶ事はなかった為、今だけでも2人だけで遊ばせようと彼なりの気遣いをする。

 

 

「そっか、じゃあキュルルちゃんはどうする?」

 

「うーん」

 

 

一方サーバルはドラえもんが断ると今度はキュルルを誘うが、彼女はサーバルの誘いを聞いておらず、スケッチブックを見て何やら考え事をしていた。

 

 

「どうしたのキュルルちゃん?」

 

 

普段のキュルルなら例え考え事をしていても返事はする筈だが、今の彼女は全く返事をする様子はなく絵を集中している。それが不思議に思ったドラえもんは彼女の肩を軽く揺らして話しかける。

 

 

「…え、ドラえもんどうしたの?」

 

「どうしたのはこっちの台詞だよ」

 

 

漸く彼女はドラえもんが自身に話しかけている事に気付き、対してドラえもんは本当に自分たちの声を聞いていなかった事に思わず、呆れた表情を浮かべる。そして、

 

 

「あんたさっきからサーバルが呼んでいるのに全く返事を返さない物だから一体どうしたのよ?」

 

「あっ、もしかしてまた記憶を思い出したの?」

 

「ううん、違うよ」

 

「じゃあ、いったいどうしたの?」

 

「いや、この絵はなんだろうと思って」

 

「見せて見せて」

 

 

3人はスケッチブックを覗き込むと、そこには星空の下に草原から生えている謎の黒い物体が無数に描かれていた。よく見ると、その物体には幾つものの光が描かれてある。

 

 

「何コレ⁉︎たくさん目があるね。もしかしてそういうフレンズ?」

 

「「ええっ⁉︎」」

 

 

この謎の物体の正体をフレンズだと思ったサーバルにドラえもんとカラカルは思わず声を上げる。すると、カラカルはサーバルの言ったことを元に想像してみると思わず、気味が悪くなった。

 

 

「メッチャ恐いじゃない!」

 

「えー?目が多いと色々見えて便利じゃない?」

 

「逆に僕はこれがフレンズだと思ったサーバルちゃんの想像力に驚いたんだけど」

 

 

3人はこの謎の物体の正体について考えると、キュルルが手を上げる。

 

 

「これは多分"街"じゃないかな?」

 

「「「まち?」」」

 

 

キュルルはこの絵にある謎の物体が街ではないのかと、口にするとサーバル達はそれはなんなのか疑問符を浮かべる。一方でドラえもんは街がなんなのか知っているが、どうして彼女はこの絵が街の絵であると思ったのか気になった。

 

 

「えーと…たくさんのお家が集まっていて、この一つ一つの光がお家なんだ」

 

「つまり集合住宅(マンション)かな?」

 

 

先ほどサーバルが言っていた謎の物体にある無数の目と呼んでいた物を光と考えたキュルル。ドラえもんはそれがマンションだということを口にするとキュルルはうーんと考えるような素振りを見せる。

 

 

「すっごーい!こんなに沢山あるなら今度こそキュルルちゃんのお家は見つかるかもね」

 

「うん!」

 

 

サーバルはこの絵がマンション街であるなら今度こそ彼女のお家、または手がかりが見つかるかもしれないと思い、キュルルは嬉しそうに返事をした。だが、それとは反対にカラカルは何か言いたそうな顔を浮かべていた。

 

 

(本当にこれはマンションなのかな?)

 

 

一方、ドラえもんはこの絵に描かれている謎の物体が本当にマンションなのか半分思えなかった。確かにマンションとしての特徴は結構表されているが、背景から見ると草原のところにある。そんな場所に不自然にマンションが建っているのだろうか。

 

ゴゴゴ……

 

「「「ん?」」」

 

「なんだ?」

 

 

すると、彼の思考を強制的に止まるようにモノレールが揺れ出し、次第にその揺れは激しくなっていく。

 

 

「「「うわぁっ!?」」」

 

「うぐっ⁉︎」

 

 

サーバル達3人は突然の地震に驚き、反射的にドラえもんに抱きついた。そのまま、1分程揺れてだんだんと収まっていった。

 

 

「結構大きく揺れたね」

 

「びっくりしたなー」

 

「な、なんなのよ……?」

 

 

3人は地震が収まると安心するが、自分たちは今なにかを抱きしめている事に気づき、その抱きしめている物に視線を移すと、

 

 

「ぐ、ぐるじぃ……」

 

「「「あっ、ごめーん‼︎」」」

 

 

ドラえもんが苦しんでいる事に気がついたサーバル達は慌ててドラえもんを離した。

一方で解放されたドラえもんは大きく息を吸って呼吸を整えると地震にびっくりしたサーバル達に抱きつかれたドラえもんは思っていた以上にサーバル達の抱きしめる力は強く顔色は瞬時に赤から青へと変わった。それもそのはず、彼女たちは巨大なセルリアンを武器や道具を使わず己の力のみで倒し遊具を組み立てるときには大きなパーツを軽々と持ち上げたのだ。当然力はそこいらの少女に比較できない。

 

 

「し、死ぬかどおもっだぁ〜……」

 

「ご、ごめんねドラえもんちゃん」

 

「流石にちょっと力を入れ過ぎたわ」

 

 

サーバル達もやり過ぎた事に心からドラえもんに反省する。

 

 

「ドラえもん大丈夫?」

 

「だ、だいじょぶ、だよ、こ、これぐらい……」

 

 

キュルルは2人と比べると力は劣るが、それでもドラえもんの首を力強く抱き締めてしまった事に苦しませた為、彼女はドラえもんが本当に大丈夫か不安になっていたが、ドラえもんは彼女を心配させないように口ではそう言うが、とても辛い表情を浮かべていることから我慢している事がバレバレであった。

 

 

●●●●●

 

 

「それにしてもさっきの地震は凄かったなぁ」

 

 

先程起きた地震は普通の地震と比べて大きく揺れ、このジャパリパークに被害が出てそうだと思った。

 

 

「最近はよく地面が揺れるんだ」

 

「そうなの?」

 

「うん…少し前からなんだけど」

 

 

サーバル達の話からここ最近まで先程と同じように地震が何回も繰り返しに起こっているらしい。

 

 

(今の地震…普通の地震なら良いんだけど)

 

 

ドラえもんは呼吸が安定して考える。最近までフレンズ達と接して、楽しい毎日を送っていたが、此処は本来自分達の住む世界、または時代ではない事を思い出す。そして、何よりこの世界には普通の生き物とは違った謎の生命体セルリアンという存在。そして、サーバル達から聞いた地震。

 

 

(キュルルちゃんの記憶とお家も大事だけど、一刻も早くのび太くん達それにタイムマシンを探さなきゃ)

 

 

このジャパリパークで知り合った友達も大切だが、事故で一緒に来てしまったのび太達の身の安全を優先して考えるが、

 

 

「ドラえもんどうしたのよ。そんな怖い顔をして…?」

 

「へ?……い、いや、別になんでもないよ」

 

「ふーん」

 

 

ドラえもんはカラカルに自身が考えている事を誤魔化すと、彼女はドラえもんの言動を怪しんで目を細くして彼を見る。

 

 

『ゴジョウシャシテイルオキャクサマニモウシアゲマス。先ホドノ地震ニヨリ、本車両ハ次ノ駅デ暫ク運休サセテモライマス』

 

「え、どう言う事?」

 

 

突然のラッキーさんのアナウンスに4人はどう言う事なのか理解できず、モノレールはゆっくりと動き出した。

 

 

「動き出したみたいだけど、さっきよりも遅いね」

 

「このスピードじゃ、次の駅に着く前に日が暮れちゃうな」

 

 

地震が起きた為、ラッキーさんは安全を配慮して、モノレールのスピードを遅くして発進させ、ドラえもん達は気が遠くなりそうだと思っていると、

 

 

「ねぇ、あれ見て!」

 

「「「あっ!」」」

 

 

カラカルは窓の外にあるものに指を刺す。ドラえもん達もその先を見るとそこには駅が存在していた。どうやら、モノレールは既に駅の近くまで来ていたようだ。

 

 

「どうやらあの駅に止まるみたいだね」

 

「ようやく降りられるのね」

 

 

カラカルは一日中モノレールの中という狭い空間に閉じ込められていた彼女は漸く外へ出られることに安堵する。

 

 

『マモナク、みなみめーりかえん みなみめーりかえん ゴ搭乗ノオ客様は降リテ下サイ』

 

 

モノレールはみなみめーりかえんと呼ばれる駅に着くと、だんだんとスピードは遅くなってその駅に止まった。

 

 

「着いたみたいだね」

 

「じゃあ、早速降りようか」

 

 

4人は新たなちほー"みなみえーりかえん"と呼ばれる所に着くと、モノレールから降りた。

 

 

「それじゃあ、ラッキーさん僕たちこの近くを見てくるから留守番をよろしくね」

 

 

そう言って4人はラッキーさんにモノレールの留守番を任せて、駅から出ようとする。

 

 

『残念ダケド、此処デオ別レダネ』

 

「「「「え?」」」」

 

 

だが、ラッキーさんの放った言葉に全員は耳を疑い、一斉にラッキーさんの方に振り返る。

 

 

「お別れって」

 

「それってどう言う事?」

 

 

カラカルとドラえもんはラッキーさんの言った"お別れ"と言う言葉について詳しく聞く。すると、ラッキーさんは語り出す。

 

 

『僕ハオ客様ヲ目的地マデものれーるニ乗セテ行クノガ仕事ダカラ、君達ハコレカラ先他ノパークガイドニ頼ッテネ』

 

「そんな事ないよ。ちゃんと戻ってくるから」

 

 

此処まで連れてきてくれたラッキーさんと別れるのはとても辛いキュルルはラッキーさんの元へ必ず戻ると言うが、

 

 

『ものれーるヲ四日間動カシテ、整備ヤエネルギーヲ補給シテナイ、ソレニ先程ノ地震デコノ先ノレールガ崩レテイルカモシレナイ。ダカラコレ以上走ラセルノハ危険ダヨ』

 

「それじゃあ、ラッキーさんとは本当に此処でお別れ?」

 

「そっか……」

 

 

ラッキーさんの話を聞いて、本当に別れざる得ないと理解したサーバルとカラカルだが、まだ納得できていなかった。

 

 

「しょうがないよ。これ以上モノレールを走らせるのは危険なんだから」

 

 

ドラえもんは2人を説得するも内心は同じロボットの友達になれたのに此処で別れるのはとても悲しく思っていた。

 

 

『君達ヲ運ベル事ガ出来テ僕ハトテモ嬉シカッタヨ』

 

 

ラッキーさんは4人にお礼を言うが、その声は普段と変わらず感情は感じない筈なのに何故か4人にとってはラッキーさんの気持ちが感じ取れた気がした。

 

 

「私たちも此処まで乗せていってくれてありがとう」

 

「うん、ラッキーさんがいなかった此処まで来れなかったわよ」

 

「僕もラッキーさんに感謝しているよ」

 

「また今度僕たちを乗せてね」

 

 

4人はそれぞれ此処まで乗せてきてくれたラッキーさんにお礼を言う。すると、ラッキーさんは表情は変わらない筈なのに何処となく嬉しそうな感じをしていた。

 

 

「此処まで僕たちを乗せてくれたお礼にラッキーさんにこれをあげるよ」

 

 

キュルルはそう言うと、スケッチブックから1枚絵を切り取るとそれをラッキーさんに渡した。その絵はモノレールに乗る自分たちとその隣にラッキーが強調されるように描かれていた。

 

 

道中御無事ニ(ボンボヤージュ)!良イ思イ出ヲ!』

 

 

4人はラッキーさんからお別れの言葉を貰うと、手を振って駅を出て行くのだった。

 

 

●●●●●

 

 

ラッキーさんと別れたドラえもん達は駅を出て、周りを見渡すと辺りには草原が広がっていた。

 

 

「此処がラッキーさんが言っていた"みなみえーりかえん"か」

 

「此処にはなにがあるんだろう」

 

 

ドラえもんとキュルルは辺りを見渡して、なにか目立った物が無いか探していると、先程からサーバル達が黙っている事に気づき、彼女たちの方に振り返る。

すると、サーバルとカラカルは初めてくるちほーの筈なのに落ち着いた様子だ。

 

 

「あれ、カラカルどうしたの?」

 

「それにサーバルちゃんまで」

 

 

2人は普段の彼女達は初めてからちほーに好奇心と警戒心それぞれが高い筈なのに今回はやけに静かに辺りを見渡していることが不思議におもっていた。

 

 

「なんか此処がさばんなちほーに似ているから帰ってきたのかと思っちゃったわ」

 

「うん、なんだかとっても此処は落ち着くんだ」

 

 

どうやらこの"みなみえーりかえん"という場所の環境はさばんなちほーと似ていて、まるで故郷に帰ってきたように2人は落ち着いているようだ。

 

 

「あれ?…何か来るよ」

 

「あっちの方から来るわよ」

 

 

「「え?」」

 

 

その時、サーバルとカラカル耳にこちらに近づく何かの音が聞こえてきた。それを知ったドラえもん達は音のする方向を警戒するが、だんだんと視線の先には見覚えのある影が見えて来て段々と姿がハッキリしてきた。

 

 

「あれは!」

 

「ラッキーさんだ」

 

 

恐らくモノレールにいるラッキーさんが呼んだ"みなみえーりかえん"を担当するラッキービーストでると思った4人は安心する。

 

 

「今度は黄色だね」

 

 

まだ距離は離れているが身体の色はまた今までと異なった色で今回は黄色の身体をしていた。すると、そのラッキーさんを見たドラえもんは懐かしく思っていた。

 

 

「はは、なんか親近感が湧くなぁ」

 

「なんで親近感が湧くの?」

 

 

唐突にラッキーさんを見て親近感が湧いたと聞いて、カラカルは何故今そんな事を言うのか疑問に思う。以前アヅアエンで案内をしてもらったラッキーさんはドラえもんと同じ色で親近感を湧くと聞いてまだ納得出来るが、今こちらにやってくるラッキーさんは全くドラえもんと色や別に耳が無い訳でも無いのに何故親近感が湧くのか不思議でしょうがない。

 

 

「昔は僕の身体の色は黄色でちゃんとサーバルちゃんやカラカルちゃんみたいに耳も付いていたんだよ」

 

「でも、なんで今は耳が無くて身体の色は青なの?」

 

「そ、そこは……あまり、聞かないで欲しいな」

 

「ドラえもん……?」

 

 

途中キュルルとサーバルも話を聞いて、彼は何故今は耳を持たず身体の色が青になっているのかと聞くとドラえもんは酷く落ち込んだ様子でそれ以上自身の過去について明かさなかった。その姿を見た3人はドラえもんの過去になにがあったのかとても気になるが、彼自身話したく無い為、それ以上は追求しなかった。

 

 

●●●●●

 

 

そして、話している内にメキシカン帽子を被った黄色いラッキーさんは4人の前にやってきた。

 

 

『ブエノスタルデ〜ス!ボクはみなみえーりか園のパークガイドだよ〜!』

 

「「「「へ?」」」」

 

 

突然の癖のある会話に4人は思わず目が点になる。

 

 

『連絡は受けている〜ね。ここからは僕が案内する〜ね』

 

「な、なんかカイジュウエンを案内してくれたラッキーさんよりも…」

 

「喋り方に癖があるね」

 

 

今まで出会ったラッキービーストの中でもカイジュウエンにいたラッキーさんを超えるほどの陽気な口癖に4人は調子が狂う。一方でラッキーさんはキュルルに話しかける。

 

 

『君は何処へ行きたい〜の?』

 

「と、とりあえずこの絵の……」

 

 

案内をして欲しい場所にキュルルは絵を見せてその場所まで案内をしてもらおうとしたが、その時ある考えが頭に過ぎる。

 

 

「キュルル?」

 

「どうしたの?黙っちゃって」

 

 

絵を見せようとしたキュルルが突然考え出した様子を見てどうしたんだろうと2人は思っていた。すると、彼女は3人に「ねぇ」と話しかけてある事を聞いた。

 

 

「考えたんだけど、ラッキーさんって絵の描いてある場所について知っているよね」

 

「確かにそうだね」

 

「けど、それがどうしたの?」

 

 

4人は今まで旅ではこのジャパリパークについて恐らく一番知っているラッキーさんのおかげで絵の場所について案内をしてもらった事はわかっているが、何故今その話を持ちかけるのかドラえもん達3人は分からなかった。

 

 

「もしかしたら、ラッキーさんなら僕のお家について何か知っているんじゃ無いかな?」

 

「「「!」」」

 

 

キュルルの推測を聞いて、3人は面食らう。確かに今までは絵を頼りに旅をしてきて、その先にいるラッキーさんはジャパリパークについて把握していた。それならラッキーさんが知っててもおかしくはなかった。

 

 

「なら早速聞いてみようよ!」

 

「うん!ラッキーさん僕たちはお家を探しているんだけど知らない?」

 

 

サーバルの考えを聞いて、早速キュルルはラッキーさんに自身のお家の場所について聞いた。

 

 

『オウチ……検索中…検索中…』

 

「知ってるの⁉︎」

 

 

ラッキーさんはキュルルのオウチについてパーク中の地図から探し出す。だが、何時もと違って検索する時間は長く1分以上も経っている事に流石におかしいと思い、4人は顔を曇らせる。

 

 

『検索完了』

 

「それで、どうだった?」

 

 

漸くお家の場所について検索を終えたラッキーさんにキュルルは結果を聞く。

 

 

『このパーク内に"おうち"という施設はない〜よ』

 

「パーク内に───ない?」

 

 

お家がないそれを聞いたキュルルは声を失う。その隣でドラえもんは考える。

 

 

(パーク内にお家がないって事はやっぱりキュルルちゃんはパークの外にやってきたのかな)

 

 

だが、ここで思い出すのはキュルルがいた謎の施設。あそこにあった装置に眠っていたキュルルにその隣には壊れたが、同じ装置らしき物が幾つもある。更にまだ調べてない扉の奥。まだあの施設には彼女に関する物があるかもしれない。

 

 

「でも…ラッキーさん「ちょっと待ちなさいよ!」

 

 

サーバルはラッキーさんに話しかけようとした時、カラカルが割って入った。

 

 

「こいつも必死で探しているの!だからそんな一言で引き下がる訳にはいかない。もう一回ちゃんと思い出してみて!」

 

「カラカル…」

 

 

ラッキーさんと会話できない事はカラカル自身理解していた。だが、それでも彼女はここまで旅をしてきたキュルルと自分達の行動を無駄にしたくないそう思った彼女だからこそ、ラッキーさんに言ったのだ。

 

 

『……ピピッ…他にも手掛かりがあるなら教えて〜ね』

 

「ラッキーさんが…」

 

「カラカルちゃんに答えた」

 

 

すると、カラカルの思いが伝わったのか本来フレンズと関わる事が禁止されているラッキーさんは彼女の声に答えたのだ。ドラえもんとキュルルはその光景に呆然となる。勿論カラカル自身もそうだ。まさか自身の声に反応するなんて彼女ですら驚いていたのだ。

 

 

「すっごーーい!カラカル凄いよ!!!」

 

「へ、サーバル?」

 

 

突然大声でサーバルはカラカルをを褒める。対してカラカルは自身を褒める彼女に思わず呆然となる。

 

 

「カラカルどうやってラッキーさんとお話ししたの?」

 

「さ、さぁ、私も無我夢中だったからわかんないわ…って、そんな事よりもキュルル!ラッキーさんに絵を見せなさいよ」

 

「あ、うん!」

 

 

キュルルはスケッチブックを取り出すとページをめくり、モノレールの時に見ていた謎の物体の絵をラッキーさんに見せる。今いる場所は草原であるため、スケッチブックの中で草原を背景にしたこの絵を見せたのだ。

 

 

『スキャン完了…検索中…検索中…』

 

 

スケッチブックの絵をスキャンし、改めて自身の持つみなみめーりか園の地図から照らし合わせて、10秒が経つと検索が完了する。

 

 

『近くに似ている場所がある〜よ。案内するからついてきて〜ね』

 

「本当⁉︎」

 

「よかったねキュルルちゃん!」

 

「うん!」

 

 

3人はお家の手がかりがあると知ると笑顔を浮かべる。

 

 

(フレンズと会話する事を禁じられている筈なのに、それを逆らってカラカルちゃんの気持ちを答えるなんて凄いな)

 

 

一方でドラえもんはプログラムに反した行動を取ったラッキーさんの意思に同じロボットとして尊敬する。と3人と共にラッキーさんの後を歩き出した。

 

 

●●●●●

 

 

4人はラッキーさんに案内してもらい絵に描かれてある建物?がある場所まで歩いていると、サーバルが周りの景色を見て思わず口を開いた。

 

 

「そう言えばここはサバンナに似ているね」

 

「そうね。けど、何処か違和感を感じるわ」

 

 

辺りにはさばんなちほーと同じで道には草原が生えているものの、彼女達自身何かが異なる事を感じていた。

 

 

「そうなの?僕はよくわからないけど」

 

「ラッキーさんは何か知っている?」

 

 

ドラえもんとキュルルはサーバル達と違ってさばんなちほーとの違いがわからないため、ラッキーさんに聞いてみる。

 

 

『此処はパーク建設時にサバンナちほーとして開発されていたんだけど、面積が小さすぎて途中で開発を中止されたんだ〜よ』

 

「そうなんだ」

 

「えっと、どういう事?」

 

 

ラッキーさんは質問に答えてドラえもんとキュルルは理解出来たが、隣で聞いていたサーバルとカラカルは理解できていない様子だ。

 

 

「つまりここは中途半端だけど、さばんなちほーと似たようになっているって事だよ」

 

「そうなんだ」

 

「だから何処となく違和感を感じるのね」

 

 

2人とも納得すると、そのまま他愛のない話を交えながらみなみえーりかえんを歩いて行く。

 

 

『着いた〜よ』

 

「着いたって……」

 

「ここが?」

 

 

ラッキーさんに謎の建造物まで案内をしてもらい数十分が経ち、4人の目の前にはマンションなどではキュルルの推測通り集合住宅(マンション)ではなく、幾つもの大きな岩のような物が存在していた。

 

 

「だいぶ絵と違うみたいだけど……」

 

『条件に一番近いのはここだ〜よ』

 

「これって岩?」

 

「けど、何か変な感じがするわね」

 

 

カラカルとキュルルは恐る恐る謎の岩?を観察するが、妙に怪しい為触れようとはしなかった。だが、反対にドラえもんとサーバルは謎の岩を特に警戒する事無く触れる。

 

 

「これはどうやら砂みたいだね」

 

「あっ、本当だ」

 

「え、これは砂なの?」

 

「けど、なんでこんなところにこんな大きな砂の塊があるんだろう。それにこの沢山の穴はなんだろう?」

 

 

こんな草原の真ん中に大きな砂の山はさばんなちほーでもあまり見たことがないキュルルだが、よく観察すると沢山の穴が見えた。そんな彼女の発言を聞いたドラえもんは閃く。

 

 

「そっか。これは蟻塚だね」

 

「「ありづか?」」

 

「ってなに?」

 

 

またも初めて聞く言葉に3人はそれがなんなのか質問すると、ドラえもんは「ふふん」と得意げな顔になって説明する。

 

 

「蟻塚って言うのh『こう言う砂や土の山から作ったアリの巣の事を言うんだ〜よ』…だよ。って、僕が説明しようとしたのに〜!」

 

 

キュルルの問いに反応したラッキーさんにのこりの説明をされた事にがっかりとするドラえもん。そんな彼をサーバルは「まぁまぁ」と声をかけながら宥めていると、

 

 

「あれ、サーバルさん達じゃないですか!」

 

「うみゃ?」

 

「今の声って」

 

 

ここにいるはずのない声を聞いた4人は声が聞こえた方向に振り返ると、そこには白と黒の縞模様の服を着た少女(フレンズ)のアードウルフが立っていた。

 

 

「アードウルフ!」

 

「アードウルフ久しぶりだね」

 

「久しぶりって、4日前に会っていましたよ」

 

 

サーバル達は4日ぶりに会うアードウルフに挨拶をすると彼女も挨拶を返した。

 

 

「アードウルフちゃんこんにちわ」

 

「さばんなちほーではありがとうございました」

 

「あ、キュルルさんとドラえもんさんもお元気そうですね」

 

 

ドラえもんとキュルルの2人もアードウルフに挨拶をした。そして、挨拶を終えるとカラカルはアードウルフに質問する。

 

 

「それよりもなんであんたがここに居るの?ひょっとしてカバも来ているの?」

 

「カバさんですか……」

 

 

カラカルはいつも彼女がカバと共にいる為、この場にもカバが来ているのかと思い彼女に聞くが、彼女は顔を曇らせる。それを不思議に思ったサーバルとカラカルは疑問符を浮かべる。

 

 

「どうしたの?」

 

「ひょっとしてカバと何かあった?」

 

「い、いえ!特になんでもありません!カバさんはさばんなちほーにいます。私1人しかいません」

 

 

どうやら彼女は1人でこのみなみえーりかえんに来たようだ。だが、その様子が何処となく落ち着きがない事に怪しく思い、カラカルは追求する。

 

 

「1人って、こんなところまで何しにきたの?」

 

「実は私巣を引っ越そうとおもいまして」

 

「え、また引っ越すの?」

 

「「また?」」

 

 

カラカルのまたと言う言葉にキュルルとドラえもんは気になった。そんな2人にサーバルは答える。

 

 

「ここ最近じゃ引っ越さなくなったけど、前まではさばんなちほーの中で結構引っ越していたの」

 

「へぇー、そうだったんだ」

 

 

サーバルからアードウルフの事を教えてもらうとキュルルは納得の声を上げる。一方でドラえもんも納得するが少しある事が気になり、アードウルフに話しかける。

 

 

「けど、ここってさばんなちほーから結構遠いのにどうやってきたの?」

 

 

自分達でも此処へ来るまではモノレールで4日も掛かったと言うのに彼女は自身の足でここまで歩けるとは思えなかった。

 

 

「実は此処へ来る途中に出会ったフレンズにここまで乗せて行ってくれました」

 

「「「「乗せる?」」」」

 

 

アードウルフの"乗せる"と言う言葉に4人は思わず疑問符を浮かべながら復唱する。

 

 

「アードウルフ、知り合いが見えたからって私を置いて行かないでくれよ」

 

 

その時、背後から声が聞こえ4人は思わず振り返ると自分たちよりも大きな狼が口を開けて今にも自分達を食べようとしていた。

 

 

「「「「うわぁっ!?」」」」

 

「おっ、いい顔頂き」

 

「「「「へ?」」」」

 

 

だが、その狼から人の声が聞こえた事に4人はよくその狼を見ていると、それは本物ではなく狼の頭の飾りが付いた乗り物であった。

 

 

「これってバスかな?」

 

「「「ばす?」」」

 

 

すると、ドラえもんはその乗り物をよく観察すると自分達の住んでいるところにもある人を乗せる乗り物(バス)に特徴に似ている事から目の前の乗り物がバスではないのかと口に出すと、バスを知らないサーバル達は口を揃えて疑問符を浮かべる。

 

 

「バスっていうのは僕たちが乗ってきたモノレールと同じで人を乗せて地面を走る乗り物だよ」

 

「ほーう、よく知っているね」

 

「ま、また喋った⁉︎」

 

 

するとまたしても車から声が聞こえた。ドラえもんはもしかすると、ラッキーさんの様に人工のAIを搭載したバスと思っているが、あまりにも馴染みやすい喋り方とラッキーさんのようなやや機械的な声ではない事にドラえもんは違和感を覚える。

 

 

「けど、このばすだっけ?モノレールと違ってお話することが出来るんだね」

 

「違いますよキュルルさん」

 

「え?」

 

 

バスは自分で話をする事が出来ると思ったキュルルだが、すぐにそれはアードウルフが否定する。

 

 

「喋ったのは私だよ」

 

 

そう言ってバス…否、そのバスから降りてきた人物が否定して姿を見せる。その車から降りてきた人物は黒のロングヘアーに頭にはサーバル達同様に獣耳と尻尾を生やし、瞳の色が左右異なった女性だ。

 

 

「えっと、貴女は?」

 

「自己紹介が遅れたね。わたしは作家のタイリクオオカミだよ」

 

「「さっか?」」

 

 

タイリクオオカミが自己紹介をした際に言った作家と言う言葉にサーバルとカラカルはそれがなんなのか知らなかった。

 

 

「そうなんです。オオカミさんはホラー探偵ギロギロという"まんが"を描いているフレンズなんですよ」

 

「そう、こんな感じのね」

 

 

そう言ってオオカミはバスの中からキュルルと似たスケッチブックを取り出してそこに書かれている怪しく目を光らせるオオセンザンコウのフレンズの絵を見せる。

 

 

「すごい、僕の絵よりも上手く描けている」

 

「君も絵を描くのかい?」

 

「はい、でもオオカミさんのと比べると下手ですけど」

 

 

キュルルはオオカミのクオリティの高い絵を見て、自身の絵と比べるとやはりオオカミの絵よりも絵の出来が悪い事を自覚してしまう。

 

 

「そんな事ないよ、キュルルちゃんもとっても絵が上手いよ」

 

「確かに絵はちょっとオオカミよりは劣るけど、あんたはその絵で色んなフレンズを喜ばせてきたじゃない」

 

「そうだよ。キュルルちゃんの絵にはちゃんと魅力があるから」

 

 

「さ、3人とも…」

 

 

ドラえもん達が自身の絵を褒めてくれる事にキュルルは嬉しく思った。

 

 

「へぇ〜、興味があるね。是非君の絵を見せて貰いたいね」

 

「そ、そうですか?」

 

 

オオカミは自分以外にも絵を描くフレンズがあまり居ないため、キュルルの絵に興味があり、更にサーバル達の話を聞いて益々興味が湧いているのだ。一方でサーバルはタイリクオオカミが持つスケッチブックに目が入っていた。

 

 

「あれ?よく見たらオオカミのそれもキュルルちゃんと同じスケッチブックだね」

 

「そういえばそうだね」

 

 

よく見るとオオカミの持つスケッチブックは表紙がキュルルと同じ柄をしている事に気がつくと、更に彼女はさばんなちほーでの出来事を思い出す。

 

 

「そういえば、前にカルガモが言っていたよね」

 

 

サーバルの言葉に3人はさばんなちほーで道を案内してもらったカルガモが"パークの何処かにいるまんがという物を描くフレンズもこれと似た様なものを持っていると"言っていた事を思い出して、改めてオオカミの絵を眺める。

 

 

「という事はオオカミがカルガモの言っていたまんがを描くフレンズ?」

 

「まあ、私の知る限り絵や漫画を描くフレンズは私以外に知らないから、多分それは私だと思うよ」

 

 

どうやら彼女がカルガモの言っていたまんがを描くフレンズの様だ。それを知るとドラえもんはある事をオオカミに聞く。

 

 

「オオカミさんそのスケッチブックを何処で手に入れたの?」

 

 

オオカミの持つスケッチブックはキュルルと同じ種類である為、もしかしたら彼女が入手した経緯にキュルルのお家について何かわかるかもしれないとドラえもんは思い、彼女に聞いてみる。

 

 

「これかい?これは博士から頂いた物だよ」

 

「「博士?」」

 

 

オオカミは自身のスケッチブックは博士という人物からの貰い物と説明すると、ドラえもんとキュルルはその博士という人物の存在が気になった。

 

 

「カラカル、博士ってどんな人なの?」

 

 

博士の事を知らないキュルルはカラカルに博士について聞く。

 

 

「私たちも実際にあった事はないんだけど、とても物知りで私たちがわからない事や知らない事をなんでも知っているらしいの」

 

「それに博士達はこの()()()()()()()()()()なんです」

 

「おさ?…て事は……ジャパリパークで一番偉いって事⁉︎」

 

「えええっ!?」

 

 

博士という人物についてカラカルが説明すると、更にアードウルフが長だと補足をいれる。長と聞いてキュルルはすぐにはわからなかったが、ドラえもんはすぐに理解して驚きの声を上げると、キュルルもドラえもんの話を聞いて驚きの声を上げる。そして、その2人の顔を見てオオカミは「お、良い顔いただき」と言って2人の顔をスケッチブックに書き込む中々の性格をしたフレンズである。

 

 

「へいげんちほーの隣にある図書館にいたんだけど、いつの間にか助手と一緒に居なくなっちゃったんだ」

 

「てことは……行方不明⁉︎」

 

(行方不明じゃ、その人に詳しい事を聞くのは難しそうだな)

 

 

場所が分かり次第ラッキーさんに博士の元まで案内してもらおうと思ったが、居ないと分かりがっかりする。

 

 

「そういえばすっかり忘れていたんだけど、オオカミはどうして此処にきたの?」

 

 

すっかりスケッチブックや博士という存在についての話をしていたが、アードウルフを乗せてきた彼女は一体何しにここに来たのも聞くのを忘れていた。

 

 

「ああ、丁度この先に少し用があってね。ついでに道中彼女と出会ってここまで乗せてきたんだ」

 

「そうなんだ。それでオオカミはこの先になんの用があるの?」

 

 

サーバルはオオカミから此処から先にどういう用事があるのか聞いてみるものの、

 

 

「それは秘密さ」

 

「ええ〜、別に秘密にしなくていいじゃない」

 

 

だが、オオカミは人差し指を口元に寄せ、自身のこの先の用事を明かさなかった。それを聞いたサーバルは不満を募らせるが、

 

 

「サーバルそこまでして別に知る必要はないでしょ」

 

「だって、気になるんだもん」

 

 

オオカミから目的を聞こうとするサーバルをカラカルが止めに入り、そのまま何とか説得して、サーバルも渋々引き下がる。

 

 

「まあ、この先にも用はあるけど此処にアードウルフの新しい巣を紹介してくれるフレンズにもちょっと用があるんだよ」

 

 

最初の用事については明かさなかったが、どうやらもう一つの用事があり此処に来るフレンズに用があると言ったが、キュルルはそれは誰なのか聞こうとするが、

 

 

「お待たせしてすいません」

 

 

その時、背後からまた聞き覚えのない声を聞き、4人は振り返るとそこへ頭に鳥の羽を付けた眼鏡を掛けた女性がやってきた。

 

 

「鳥のフレンズ?」

 

「みたいだね」

 

 

現れた女性の頭についている鳥の羽を見て、ドラえもんとキュルルはカルガモの事を思い出し、彼女と同じ鳥のフレンズだと判断した。

 

 

「どうも、私は様々なフレンズさん達に合った住処を提供しているアリツカゲラです。今日一日よろしくお願いします」

 

 

どうやら彼女はアードウルフに巣を紹介する為に来たフレンズの様だ。

 

 

「住処を提供するって?」

 

『アリツカゲラは集団で行動する習性がある〜よ。繁殖期になるといろんな場所に巣作りする〜よ』

 

「要するにそのフレンズ達にあった(おうち)を紹介しているって事だね」

 

「その通りです」

 

 

一方でキュルルは住処を提供する事とはどういう事なのか口に出すと、ラッキーさんが反応してアリツカゲラの習性について解説し、ドラえもんが更にわかりやすく説明すると、アリツカゲラ本人が肯定する。

そして、それを聞いたキュルルも納得の表情を浮かべる。

 

 

「ラ、ラッキーさんが喋りました⁉︎」

 

 

ほぼ恒例になっている初めて喋るラッキーさんを見たフレンズの反応に今回はアードウルフが驚愕した表情を浮かべる。だが、一方でアリツカゲラとオオカミはラッキーさんが喋る様子に特に驚きの顔や珍しがる表情を見せなかった。

 

 

「あれ、2人は驚かないの?」

 

 

初めて会うフレンズは大抵喋るラッキーさんを見て驚くのに2人は驚かない事にサーバル達は不思議に思った。

 

 

「まあ、私も前にボスが以前喋っているのを見たことがあるからね」

 

 

すると、オオカミの声を聞いたアリツカゲラは驚きの表情を浮かべて、彼女の方に振り向く。

 

 

「あ、オオカミさんじゃないですか!いらしていたんですか⁉︎」

 

「やぁ、久しぶりだねアリツさん」

 

 

オオカミの存在に気がついたアリツカゲラは挨拶をすると、オオカミも親しげにアリツカゲラと会話をする。

 

 

「え、2人は知り合いなの?」

 

「はい、タイリクオオカミさんは以前まで私の経営するロッジに住んでいたお客さんです」

 

「ジャパリパークにはロッジもあるのか……」

 

 

此処まで人のお家などは見ていないが、ジャパリパークにはロッジなどの宿泊施設があると知ると、ドラえもんは此処が益々なんなのかわからなくなってきた。その一方でアリツカゲラは辺りをキョロキョロと見渡して何かを探している様子だ。

 

 

「あれ、アミメキリンさんはどうされました?ロッジアリツカを出る時に一緒について行った筈では?」

 

「ああ、実は彼女なんだけど、いつの間にか何処かへ居なくなってしまったんだ」

 

「アミメキリンって?」

 

 

初めて聞くその名前からそのアミメキリンなる人物(フレンズ)は2人の知り合いのようだ。

 

 

「アミメキリンさんはオオカミさんの手伝いをしているフレンズさんで探偵もしているんですよ」

 

「探偵…」

 

 

実際にそのアミメキリンというフレンズにはあった事はないが、そのフレンズもアリツカゲラやオオカミ同様に仕事をしているフレンズであると理解した。

 

 

「まあ、彼女は私のファンでもあるけどね」

 

「ファンって、オオカミさんが描く漫画のファンって事?」

 

「そうだよ。良かったら君たちも私の描いた"ホラー探偵ギロギロ"を後で読むかい?」

 

「是非お願いします!」

 

 

ドラえもんは漫画が大好きな為、オオカミの描く漫画を楽しみにした。

 

 

「それにしても今日はアードウルフさんだけかと思いましたが、たくさんの方がいますね」

 

「私たち迷惑だった?」

 

 

サーバルはアリツカゲラにとって仕事の邪魔になるのではと思ったが、アリツカゲラは首を横に振って否定する。

 

 

「いえ、ただ初めて見る方が多いもので……ん?」

 

 

アリツカゲラはそう言いながらこの場にいる全員の姿を見渡すと、キュルルの姿が目に入り、そのまましばらく彼女の姿を見つめた。

 

 

「どうしたんですか?」

 

「……あ、いえ!な、なんでもありません」

 

「?」

 

 

アリツカゲラに見つめられたキュルルはどうしたのだろうと彼女に聞くと、キュルルの声に我に返ったアリツカゲラは手を振りながら何でも無いと伝えた。その姿にドラえもん達は不思議に思った。

 

 

「えっと……あ、それであなた方は何という名前ですか?」

 

 

4人の視線にアリツカゲラはどうにかしようと咄嗟に彼女達の名前を聞こうと話題を変える。

 

 

「なんか変な感じがするけど、まぁいいわ。私はカラカル」

 

「サーバルキャットのサーバルだよ」

 

「僕はキュルルです」

 

「ぼくドラえもんです」

 

 

4人は益々アリツカゲラの行動に不審を思ったが、確かに彼女の言葉にも一理ある為それぞれ自己紹介を行った。

 

 

「サーバルさんにカラカルさんにキュルルさんとドラえもんさんですね。…ところでドラえもんさんはねこですか?」

 

「もう!だから僕はねッ⁉︎……今、なんて言いました?」

 

 

ドラえもんはまたしても自分を狸とかの動物に間違えられたと思い、怒鳴ろうとするが、何か違和感を感じて口を閉じ、アリツカゲラに先程の言った言葉を繰り返して欲しいと頼む。

 

 

「いえ、ネコのドラえもんさんだと」

 

「ぅぅ……!」

 

 

すると、ドラえもんの両目に涙が流れる。それを見た一同は驚きの表情を浮かべる。

 

 

「ど、どうしたのよドラえもん⁉︎」

 

「何処か痛いの⁉︎」

 

「な、何か私失礼な事を言いましたか⁉︎」

 

「違うよォ!」

 

 

カラカルとキュルルはドラえもんの身を心配し、アリツカゲラはドラえもんの気に触る事を言ってしまったのかと思ったが、ドラえもんは涙を流しながら否定する。

 

 

「僕をタヌキやアザラシじゃなくてネコって言ってくれるなんて、うう〜!」

 

「いや、泣くほど嬉しいの⁉︎」

 

 

いくらなんでも大袈裟すぎるドラえもんの反応にカラカルは思わずツッコミを入れる。一方で、ドラえもんがをタヌキなどに間違えずネコと呼んだアリツカゲラにサーバルとキュルルは凄いと思っていた。そして、アードウルフは前回たぬき呼ばわりしたことを思い出し、少々罪悪感に見舞われ、オオカミはそれを見て軽く笑った。

 

 

 

●●●●●

 

 

それから数分が経ちドラえもんが落ち着いた後、アリツカゲラは話を再開する。

 

 

「それで今回アードウルフさんの住処を紹介するんですけど、よろしかったら皆さんにも住処を紹介しましょうか?」

 

「いや、僕たちはキュルルちゃんのお家を探しているんだけど」

 

 

ドラえもんはこのちほーに来た目的は引っ越しをしに来たのではなくキュルルのお家を探しに来た事を説明する。

 

 

「成る程、それなら任せてください。アードウルフさんだけじゃなく、キュルルさんにも住処を探してみせましょう」

 

「アリツさんの腕はすごいからね。君たちの期待に応えてくれると思うよ」

 

 

自信満々にアードウルフの新しい住処とキュルルのお家を探してくれる事に彼女も協力してくれるようだ。そして、その自信を押すようにオオカミが捕捉を入れる。

 

 

「ありがとうございます。でも、良いんですか?」

 

 

本当なら今日アリツカゲラはアードウルフに新しい住処を提供するだけだった筈なのに更にキュルルのお家探しに手伝ってもらうのは躊躇してしまう。

 

 

「良いですよ。私の仕事はフレンズさんに合った住処の提供と探す事ですから。それでキュルルさんのお家って、どんな所なんですか?」

 

「一応これが手掛かりなんだけど」

 

 

そう言ってキュルルはアリツカゲラに絵を見せる。すると、彼女はキョトンとした顔になる。

 

 

「これって、ここの蟻塚ですよ」

 

「え⁉︎だって、全然…」

 

 

絵と違うとキュルルは言うが、アリツカゲラは「うーん」と唸り声を上げながら少し考える。

 

 

「そうですね……それなら少し時間を頂けます?そうしたらわかってもらえると思いますが」

 

「別に良いですけど」

 

 

特にこの後、予定とかは無い為キュルルはドラえもん達にも相談するとアリツカゲラの言う事を聞く事にした。

 

 

「それでは時間が経つまでアードウルフさんの住処を探していきましょう!」

 

「「「「「おー!」」」」」

 

 

絵の謎が分かるまではアードウルフの新しい住処を探しに行こうと決めると、オオカミが手をあげる。

 

 

「それならこのバスに乗って行かないかい?道中楽だとおもうよ」

 

 

オオカミはこの"みなみめーりかえん"はここまで来る時にさばんなちほーのように平らな道もあるが、歩き辛い場所も通って来た事を説明し、バスに乗りながら新しい住処に向かおうと提案する。

 

 

「はい、是非お願いしますオオカミさん」

 

 

オオカミの運転するバスに全員はお言葉に甘えて乗り込んでいく。そんな中カラカルだけはその場に立ちある事を考えた。

 

 

(そういえばなんでアリツカゲラはキュルルだけを不思議そうに見ていたのかしら?)

 

 

カラカルはにアリツカゲラが自分たちの姿を確認する際にキュルルだけは不思議そうに見ていた事を思い出して、疑問を抱いていた。

 

 

「カラカルちゃーん!早くなりなよ!」

 

「早く早く!」

 

「置いて行っちゃうよー!」

 

「あ、今行くー!」

 

 

しかし、そこへ先にバスに乗っているドラえもん達3人が呼んでいる事に気付き、一旦考えるのをやめて、今はアードウルフの新しい住処探しに専念しようとバスに乗り込むのであった。




フレンズ図鑑

タイリクオオカミ

ネコ目イヌ科イヌ属

Canis lupus

怖い話と絵を描くのが得意なフレンズ。
雌雄のペアを中心に平均4から8頭程の社会的群れを形成する。群れはそれぞれ縄張りをもち、広さは食物量に影響され100 - 1000平方キロメートルに及ぶ。縄張りの外から来た他のオオカミはたいてい追い払われる。稀に、仲間とうまくコミュニケーションがとれなかったり、群れのリーダーを決める争いに敗れ群れから孤立し単独で活動しているオオカミもおり、これが「一匹狼」の語源にもなっている。
オオカミは肉食でシカやイノシシ、野生のヤギなどの有蹄類と齧歯類小動物を狩る。最高速度の時速70キロメートルなら20分間、時速30キロメートル前後なら7時間以上獲物を追い回す事ができる。


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第10話おうちめぐり

なんか次に公開されるドラえもんの映画、結構面白そうですよね。自分ドラえもんの映画は基本的にはレンタルした物を見ているんですけど、今回の映画のcmやpvを見る限りもしかしたらあの恐竜が出るかもしれないと言う噂ですよね。絶対に見に行きます。


それと遅れてすいません。


ドラえもん達は時間が経つまでアリツカゲラ達と共にアードウルフの新しい住処探しにオオカミの運転するバスに乗っており、サーバルとカラカルにキュルルはモノレールとは違った乗り物であるバスを興味深そうに辺りを見ていた。アリツカゲラとアードウルフはこれから向かう物件についての詳細を話し合い、ドラえもんは運転席でバスを運転するオオカミと話をしている。

 

 

「オオカミさんってバスの運転が出来るんですね」

 

「まぁね、漫画を描くにあたっては色々と経験が必要だからね」

 

 

彼女は他のフレンズよりも道具や乗り物を使いこなしている事にドラえもんは珍しく思っていた。

最初はてっきり、このバスにもラッキーさんがいて運転しているのかと思い込んでいたが、オオカミ自身が運転していた事に少々驚いていたのだ。

 

 

「まあ、そこにいるボスも一応運転出来るはずだよ」

 

「そうなのラッキーさん?」

 

『僕たちラッキービーストはパークの乗り物を運転してお客様をガイドする事ができるんだ〜よ』

 

 

どうやらパークガイドを務めるラッキービーストは案内だけで無く他にも多くの事ができるようだ。ドラえもんはそれを聞いてラッキーさんがモノレールを動かせた事に納得する。

一方でサーバル達はモノレールとはまた異なる乗り物のバスにそれぞれ反応する。

 

 

「なんか、モノレールに似ているけど少し揺れるわね」

 

「そうかな?とてもワクワクするよ」

 

 

カラカルは安定したレールを走るモノレールより凸凹した道を走り揺れるバスに不安になるが、対してサーバルはその状況を楽しそうな表情を浮かべながらバスの壁に爪を研ぐ。

 

 

「さ、サーバルちゃんバスの壁を引っ掻いたらダメだって!」

 

「そうですよ!これはオオカミさんの乗り物なんですから傷つけてはダメですよ」

 

 

バスの壁を引っ掻くサーバルを見てキュルルとアードウルフは慌てて止めるように言う。すると、運転しているオオカミは2人の話声を聞いてニヤリと悪そうな笑みを浮かべて口を開く。

 

 

「ふーん、私の大事なバスに傷をつけるなんてサーバルは酷いね」

 

「あっ⁉︎ご、ごめんね!」

 

 

サーバルは慌てて壁に爪を砥ぐのをやめてオオカミに謝る。すると、オオカミは「ふふふ」と軽く笑う。

 

 

「今のは冗談だよ。別に私はそういう目に残るものはその日に何があったか覚えやすいからね」

 

「そう?それなr「ただし」へ?」

 

 

許してくれそうなオオカミにサーバルは一度安心するが、彼女が話を続けた事に話を聞いていると、オオカミがバスを一旦停車させる。

 

 

 

「過剰にやったらガブリといくよ」

 

「あ、ハイ」

 

 

サーバルの方に振り向いた彼女は一瞬だけ野生解放をしてサーバルに次は無いと言わんばかりに注意すると再び運転を再開する。一方でサーバルは顔色は青くなり、壊れたロボットのように硬い返事をする。

 

 

「オオカミさん今のって冗談ですよね」

 

「……さあ、どうだろうね」

 

「え?」

 

 

アードウルフは先ほどサーバルに注意した事は冗談であると思ったが、オオカミの考えさせる発言に思わず表情が固まってしまった。彼女の発言からするとどうやら半分本気のようだ。

 

 

「そ、それよりもオオカミさん私のためにありがとうございます」

 

「気にする事ないよ。困ったらお互い様って言うからね」

 

 

アードウルフは話題を変えようと、自身の住処の為にバスに乗せてくれたオオカミにお礼を言う。対してオオカミは気にするなと言っていた。それを見たキュルルは2人の仲の良さを見て思わず口に出した。

 

 

「それにしてもアードウルフさんとオオカミさんはどっちもイヌ科だから仲がいいんだね」

 

『それは違う〜よ』

 

「え?違うの」

 

 

2人とも同じイヌ科だと思っていたキュルルだが、それを否定したラッキーさんの言葉に耳を傾ける。

 

 

『タイリクオオカミはイヌ科だけど、アードウルフはイヌ科じゃなくてハイエナ科なんだ〜よ』

 

「そうなの⁉︎」

 

「はい、ラッキーさんの言う通り私は一応ハイエナ科です」

 

 

キュルルはてっきりアードウルフも見た目と名前にウルフがついているからてっきりイヌ科だと思っていたようだ。

 

 

「まあ、ハイエナって聞くと少し怖いイメージがあるけど、アードウルフは小さくて可愛らしいって事からそのイメージをひっくり返しているんだ」

 

「可愛いだなんてそんな…」

 

 

可愛いと言われたアードウルフは若干照れて、尻尾を揺らした。一方でキュルルは気になることがまだあった。

 

 

「でも、なんでハイエナの仲間なのにウルフって名前なの?」

 

『ハイ「ハイエナは前足の指が基本は4本なんだけど、アードウルフはオオカミなどのイヌ科と同じ前足の指が5本ある事から言われているんだよ」……』

 

「な、成る程…」

 

 

キュルルの質問に答えようとしたラッキーさんだが、先ほどのお返しと言わんばかりにドラえもんが割り込むように説明した。キュルルはそれを見て、納得したドラえもんが大人気なくラッキーさんにドヤ顔を浮かべている姿を見て苦笑いを浮かべる。カラカルもドラえもんを見て呆れた表情を浮かべる。すると、窓の外を見ていたアリツカゲラが声を上げる。

 

 

「あ、オオカミさんここら辺で止めてください」

 

「はいよ」

 

 

オオカミはアリツカゲラの声に応じてバスを停止させる。アリツカゲラはバスが止まった事を確認するとドラえもん達の方に顔を向ける。

 

 

「皆さん。紹介する2つの物件に着きましたので降りましょう」

 

「着いたんだね」

 

「いったいどんな物件か楽しみです」

 

 

全員はアリツカゲラを先頭にバスから降りると、これから見る物件を楽しみにしながら歩き出す。

そして、バスから少し歩いた先にはタイヤが外れ、少し錆が目立ち、一部窓ガラスが破損している小型のバスがあった。

 

 

「こちらは先ほどまでわたし達が乗っていたバスとは少し違った物でバスハコバスハイツと言います。とても丈夫ですし、いい感じに狭くて安心する感じ…元ラーテルさんの巣です」

 

「え、誰かがもう住んでいたの?」

 

「はい、アードウルフさんのご要望は少し古くて、尚且つセキュリティが良い物件が良いとの事でこちらの物件にしました」

 

「なんで新しい巣じゃなくて古い巣なの?」

 

 

キュルルにとっては新しい方が古い物件よりも頑丈で清潔感がある為、古い物件を選んだアードウルフに疑問の声を述べる。

 

 

『アードウルフは主に草原やサバンナなどの低い木々の茂った場所に住んでいる〜よ。巣は自分で掘った穴を使ったり、ツチブタやトビウサギの古巣を利用する事もある〜よ』

 

「そう言う習性なんだ」

 

 

すると、ラッキーさんがアードウルフの習性を説明すると、彼女が古巣を選んだ理由について理解した。

 

 

「はい!それに先に住んでいた子がいたって事はその場所がきっと安全だったって事だと思うんです〜」

 

「へぇ〜、ちゃんと理屈が通っているね」

 

 

ドラえもんはアードウルフが古巣を選んだ理由にちゃんと理屈が通っている事から感心する。しかし、それを聞いていたカラカルが少し疑問を持つ。

 

 

「何かあったから引き払うって事もあるでしょ」

 

「は⁉︎…そ、それは……」

 

「そこまでは考えていなかったんだね」

 

 

カラカルの発言に思わずアードウルフはそれは盲点だったと言わんばかりの驚愕の表情を浮かべる。それを見たドラえもんは苦笑いを浮かべる。

 

 

「事故物件は扱ってないのでご安心を」

 

「そ…そうですか」

 

 

アリツカゲラが事故物件は用意してないと聞くとアードウルフは安堵の息を吐く。一方サーバルはハコバスハイツに興味深そうに眺めていた。

 

 

「ねぇ、中に入って良い?」

 

「はい、実際に中で横になった方が住み心地が良くわかると思いますよ」

 

「やったー!」

 

 

アリツカゲラから許可を得られた事にサーバルは喜び、そのままハコバスハイツに入り込むと、彼女はハコバスハイツから顔をみせる。

 

 

「みんなもおいでよ」

 

 

そう言ってサーバルは手を招き、全員はハコバスハイツに近づき中を覗くと、そこにはトタン板を毛布がわりにして横になっているサーバルの姿があった。

 

 

「なんかワクワクしてきたよ」

 

「そう…かしら?」

 

「ふむふむ、横になるときの姿はこんな感じか」

 

 

トタン板を使って横になっているサーバル姿にカラカルはシュールに思えた。その隣にいたオオカミは今のサーバルの姿をスケッチする。

 

 

「そうだ!キュルルちゃんもどう?こうすればお家について何かわかるかもしれないよ」

 

 

サーバルに誘われたキュルルは少し考えると、「いいよ」と返事をしてハコバスハイツに乗り込むとサーバルの隣に横になる。

 

 

「……なんだろう。僕もこうしてみると懐かしく思ってきたよ」

 

「ひょっとして、これがキュルルちゃんの巣かな?」

 

「うーん、違うかな」

 

 

キュルルが"懐かしく思った"と聞いて、サーバルはこのハコバスハイツが彼女のお家と思ったが、どうやら違ったようだ。それを聞いたドラえもんは"まぁ、そうだろうね"と心の中で呟いていた。

 

 

「アードウルフさんはどうですか?」

 

「えっと、まだ他のを見てから決めます」

 

 

アリツカゲラにハコバスハイツは如何か聞くが、まだアードウルフは真剣に考えて、もう一つの物件を見てからまだ決めるようだ。

そして、ある程度ハコバスハイツを満喫した一同は続いてそのすぐ隣に置かれてある物置の前に移動した。

 

 

「続いて紹介するのはこちらもかつてヒトが使っていた、沢山の荷物を入れていた大きな箱、"モノオキハウス"です。見た目はやや汚れていますが、頑丈で出来ているため、雨風を凌ぐ事ができます。そして、何よりこれは上と下が分かれているため、2人で住むことが可能です」

 

 

アリツカゲラが"モノオキハウス"について説明すると、サーバルは先ほどと同じようにモノオキハウスの上の段にに入って横になる。カラカルもサーバルと同じく興味深そうに恐る恐る下の段に入り込んだ。

 

 

「うわぁ、なんかここも落ち着くね〜」

 

「確かにそうね」

 

 

2人とも満足そうにしている顔を浮かべている事からアードウルフはモノオキハウスを気にしていた。一方でドラえもんが2人の様子を細目で見ていた事にキュルルは気づいた。

 

 

「あれ、どうしたのドラえもん?」

 

「いや、なんかとても見覚えある光景なんだけど」

 

 

物置の上の段に横になるサーバルを見て、のび太の部屋にある押入れで寝る自身の姿と重なって見えたのだ。

 

 

「ドラえもんちゃんもどう?」

 

 

先ほどからモノオキハウスにいたサーバルが出てくると、試しに寝てみないかと今度はドラえもんを誘い、誘われたドラえもんは「いいけど」と返事をして、先ほどまでサーバルがいた上の段に上がり、そこで横になる。

 

 

「ほぉ、なかなかいい絵になるね〜」

 

 

モノオキハウスに横になったドラえもんの姿にオオカミはスケッチブックにドラえもんの絵を描き込む、

 

 

「ドラえもんちゃんすっごく似合うよ」

 

「僕も何故だかわからないけど、ドラえもんにぴったりだね」

 

 

サーバルとキュルルはモノオキハウスの中で横になるドラえもんを褒める。2人の隣にいたカラカルはドラえもんの表情を見て何かに気づく。

 

 

「どうしたの?あんまり嬉しそうじゃないみたいだけど」

 

「いや、なんていうか。この状態を褒められてもそれ程喜べないかな」

 

 

ドラえもんは普段のび太の家ではのび太の部屋にある押入れを寝床にしている為、親近感と微妙な感覚に見舞われていた。その様子をアードウルフとアリツカゲラも見ていた。

 

 

「どうですかアードウルフさん?こちらのモノオキハウスも中々良いと思いますけど」

 

「やっぱり両方とも目立ち過ぎる気がして……セルリアンに見つからないか不安ですし」

 

「そうかしら?」

 

 

ドラえもん達の姿を見てモノオキハウスを新しい住処にするかと聞くが、アードウルフはセルリアンに見つかる可能性を考えて不安になる。

 

 

「あの箱ごとメリメリグシャグシャと…ああ!考えるだけに恐ろしい──もっと、もっと安全をー‼︎」

 

「い、イメージ膨らませ過ぎない?」

 

「おっ、いい顔いただき」

 

「何処がいい顔なのよ⁉︎」

 

 

更にアードウルフはまるで悪霊に取り憑かれたように顔面蒼白になって想像を膨らませる。それを見たカラカルは若干引いていた。その隣にいたオオカミはアードウルフの顔をスケッチブックに書き写していく。

 

 

「な、なんかアードウルフさんってこんなにも心配性だったんだね」

 

「僕も驚いているよ」

 

 

そして、ドラえもんとキュルルは初めてさばんなちほーで出会った彼女と目の前にいる彼女のギャップが全く異なる事に思わず困惑する。

しかし、サーバルだけは不思議そうにアードウルフを見ていた。

 

 

●●●●●

 

 

それからアードウルフはアリツカゲラに更にセキュリティの高い物件を求めるが、この近くには無い為、次の物件までは再びバスを動かして移動するが、その途中にあった森の入り口でバスを停止させる。

 

 

「ここから先は道が狭くなっている為歩いていきましょう」

 

「なんか蟻塚からどんどん遠ざかっていくね」

 

「すいません無理を言ってしまって」

 

 

アードウルフは自分の我がままで蟻塚から遠く離れた物件を巡ることになってしまった事にドラえもん達に申し訳ないと謝罪をする。

 

 

「大丈夫。すぐにアードウルフの新しい巣が見つかるよ」

 

「そうだといいんですが……」

 

 

夜までにはまだ時間があり、それまでには新しい住処が決まるだろうとサーバルは思っていた。

 

 

「そういえば、アードウルフちゃんって今回の引越しって何回目なの?」

 

 

少し前にサーバルからアードウルフはさばんなちほーで何回も引っ越しをしていたと聞いていた為、それがいったい何回かをドラえもんは好奇心で聞いてみる。

 

 

「引っ越しというよりは物件巡りなんですけど、先ほどの二つで50件目となります」

 

「「「「50件⁉︎」」」」

 

 

どうやら以前の引っ越しの時までは48件をめく巡って決めたようだ。

よくみるとアリツカゲラの目の下に薄らとクマができており、若干やつれている。その表情から彼女が長くアードウルフの為に物件を探している苦労がよくわかる。

 

 

「結構引っ越したって聞いたけど、幾らなんでも慎重過ぎるんじゃないかな?」

 

「すいません。私自分自身でも心配症なんです」

 

(これは慎重や心配症ではなく最早病気のような気が……)

 

 

キュルルとアードウルフが話し合う中でドラえもんはアードウルフのあまりの慎重さに内心やや引いていた。

一方でオオカミは窶れているアリツカゲラに近寄り心配そうに話しかけていた。

 

 

「アリツさん……大丈夫?」

 

「いえ、オオカミさん心配には及びません。これも私の不徳の致すところ。お客様に安心して頂ける物件を探すのが私の使命…そして、生き甲斐!

 

「え?」

 

「アードウルフさんに安心して頂ける最高のセキュリティ!究極の安心物件…ご案内させていただけます!」

 

「あ、アリツさん?」

 

 

先ほどまでと比べて急にテンションが高くなったアリツカゲラにオオカミは思わず目が点になる。

それから森の中を暫く歩くと、次の物件に着いたのかアリツカゲラが足を止める。

 

 

「皆さん、次の物件に着きました」

 

「次の物件って……」

 

「何も無さそうだけど?」

 

 

アリツカゲラが次の物件に着いたと言うが、サーバル達は周りを見渡すが、何処にも物件らしきものは無かった。

 

 

「何を言っているんですか、次の物件はこちらです!」

 

「こちらって……」

 

 

アリツカゲラが指を指したところを見ると、そこには周りの木と比べて一回り大きな木が生えていた。どうやらこの気が物件のようらしい。

 

 

「それでは紹介させていただきます。まず究極の刺客その1ッ!」

 

「「刺客⁉︎」」

 

 

アリツカゲラの発言にドラえもんとカラカルの2人は思わず声を上げる。対して、アリツカゲラは2人の話は聞かずそのまま物件の紹介を始める。

 

 

「こちらは先日までキゴシツリスドリさんの物件だった"ツリツリツリーハウス"です!」

 

 

周りの木と比べて一回り高い木が生えており、その木の枝には幾つもの食虫植物(ウツボカズラ)に似た籠が引っ掛けられていた。それを見たオオカミは「ほほう」と興味を示した声を漏らし、スケッチブックに目の前の巣を描いていく、

 

 

(ツリツリツリーハウスって……駄洒落じゃん)

 

「キゴシツリスドリ?」

 

『"キゴシツリスドリ"は木の枝に籠状の巣を作る鳥なんだ〜よ。コロニーを作る習性があるから一つの木に沢山の巣がぶら下がっている様子が見られる〜ね』

 

「あの籠の中なら外敵は心配無用です」

 

「でも、ちょっと目立ち過ぎる気も…」

 

「そうかな〜?」

 

 

目の前の物件を見てアードウルフは目立つと心配する。しかし、アリツカゲラは「ふふん」と得意げな顔を見せる。

 

 

「安心してください。そこでさらなるセキュリティを配しています」

 

「なんと!」

 

「アードウルフ、ノリノリだね」

 

「そ、そうね…」

 

 

アリツカゲラの影響でテンションが高くなっているアードウルフにサーバルは嬉しそうな顔を浮かべるが、対してカラカルは若干引き気味であった。

 

 

「でも、更なるセキュリティってなんだろう?」

 

「さぁ」

 

 

ドラえもんとキュルルは辺りを見渡すが、何処にもそれらしき物は存在しなかった。キュルルはひょっとしてあの巣の中に何か秘密があるのではと考える。

 

 

「ん?…まてよ」

 

「どうしたのドラえもん?」

 

 

一方でドラえもんは何かに気づいたようだ。

 

 

「確かキゴシツリスドリって巣の近くに……あ、そうだ!」

 

「何か思い出したの?」

 

「うん、キゴシツリスドリって"スズメバチの巣"の近くに自分の巣を作っているんだった」

 

「「「「「へぇ〜……え?」」」」」

 

 

アリツカゲラ以外の全員はドラえもんの発言を聞いて最初は納得した声を上げるが、少し間が空くと疑問の声を漏らす。

 

 

「ま、まさか」

 

「セキュリティって……」

 

 

ドラえもんの話を聞いたオオカミとカラカルは段々と顔色が青くなっていく。そして、背後からは「ブーン」と言う音が聞こえ、全員は恐る恐る背後を振り返るとそこにはスズメバチの大軍がこちらを鋭い複眼で睨んでいた。

 

 

「「「「に、逃げろぉぉぉー!」」」」

 

 

襲いかかってくるスズメバチの大軍に全員はその場から全力疾走する。それから暫くしてスズメバチから振り切り、ツリツリツリーハウスから離れたところの木の下で休憩していた。

 

 

「はぁ、はぁ、す、スズメバチの巣が近く、に、あるなら、さ、ざきに言いなさいよ、は、はぁ」

 

「す、す、すいません、こ、こんな、こ、事になる、とは思っても、み、み、みませんでした」

 

 

スズメバチの事を前もって教えなかったアリツカゲラにカラカルは息を切らしながら文句を言う。対して説明不足だった彼女も息を切らしながら謝った。

 

 

「で、ですが、はぁ、はぁ、これはすごいセキュリティです」

 

「身の、安全がはぁ、守られない、はぁ、セキュリティなんて、はぁ、き、危険よ!」

 

 

アードウルフのズレた発言にカラカルはなんとか声を上げる。一方で、3人の話に交わらないドラえもん達は地面にぐったりと倒れていた。

 

 

「ちょ、ちょっと、走り過ぎて、喉が渇いた…」

 

「あ、アリツカゲラァ〜、どこかに水が、飲める、場所はないのぉ?」

 

 

一同を代表にサーバルとカラカルの2人はアリツカゲラに水飲み場は何処かと聞くと、アリツカゲラは息を整えて答える。

 

 

「それなら、次の紹介する物件に水飲み場があるのでそこでお水を飲みましょう」

 

 

そう言うと、アリツカゲラはサーバル達を再び次の物件までの案内をする。

 

 

●●●●●

 

 

次の物件の近くに辿り着いた一行はそこにあった激しく流れる滝のしたにある滝壺の水を飲み、渇いた喉を潤わせた。

 

 

「さて、水を飲んだ所で早速物件紹介といきましょう」

 

 

そう言ってアリツカゲラは滝の裏側の岩壁を登り出す。その後をアードウルフとサーバルとドラえもんが付いていく。

 

 

「それではご紹介いたします!究極の刺客その2ッ‼︎」

 

「どうですかあああ!!大迫力でしょおおお!!」

 

「すっごおおおおおい!!」

 

 

4人は滝の大きな音に自分たちの声が消えない様に声を張り上げながら岩壁を登っていく。

 

 

「や、やっぱり危険だから降りよおおおお!!」

 

「へーきぃ!!へーきぃ!!」

 

 

一方でドラえもんは危険である為、3人に止める様に言うが、サーバルはいつもの様に呑気な発言をする。※但し声は大きい。

一方でアードウルフは先程から激しく流れる滝の飛沫に耐えながら周りを見渡すが、何処にも物件らしきものは見当たらなかった。

 

 

「あのおおお!!それで巣はいったい何処にぃぃぃー!!」

 

「此処ですぅぅ!!」

 

「へ⁉︎」

 

 

アリツカゲラの発言に彼女は思わず声の大きさが元に戻って呆然となり、アリツカゲラはそのまま話を続ける。

 

 

「此処が元オオムジアマツバメさんの巣…滝裏ゴーゴー庵です!」

 

「え、あんなところにも住んでいるの?」

 

 

アリツカゲラの物件の説明を聞いたキュルルは滝の裏側に住む動物がいる事に驚きの声を上げる。すると、その声に反応したラッキーさんが解説を始める。

 

 

『オオムジアマツバメは滝の裏を巣にしている鳥なんだ〜よ。滝裏の岩壁にしがみついて外敵から身を守るんだ〜よ。因みに出入りは滝の正面から突入する〜よ』

 

「これ、完全にあの子向きじゃないよね」

 

「ははは…確かにね」

 

 

ラッキーさんの解説を聞いたカラカルはアードウルフに全く適した物件ではないと思い、キュルルも苦笑いを浮かべながら同意する。

 

 

「うぎゃー!」

 

「あ、サーバルが落ちた!」

 

 

その時、サーバルの掴んでいた岩壁部分が脆かった所為で崩れ、そのまま真下にいるドラえもんの方に真っ逆さまに落ちていく。

 

 

「へ?」

 

ガァァァーン!!!!

 

「「ぐえっ⁉︎」」

 

「あ、ドラえもんも巻き込まれた」

 

 

上から落ちてきたサーバルにドラえもんは見上げたが、すでに手遅れで、そのまま2人の頭は激突して、ドラえもんはあまりの衝撃で岩壁から手を離してしまい。サーバルと共に滝壺へ落ちていった。

 

 

●●●●●

 

 

滝壺に落ちたサーバルとドラえもんは下にいた3人に岸に引き上げられて、なんとか命に関わる事は起きなかったが、サーバルの頭には大きなタンコブができていた。

 

 

「うう…頭が痛いよぉ〜」

 

「大丈夫サーバルちゃん」

 

 

自身の石頭の所為でできてしまった痛々しいタンコブを見てドラえもんは心配そうにする。

 

 

「ドラえもんは甘やかさなくて良いわよ。そもそもサーバルがドラえもんの忠告を無視したからそうなったのよ」

 

「うう……」

 

 

カラカルに的確な事を言われたサーバルはぐうの音も出なかった。すると、風が吹き全身ずぶ濡れのサーバルの体を余計に冷やす。

 

 

「へ、へっくーしょん!」

 

「うわっ⁉︎ちょっとサーバル!くしゃみするならこっちでやらないでよ」

 

「ご、ごめーん」

 

 

誤ってカラカルの方にくしゃみをしてしまったサーバルは彼女に謝るが、そこから2、3回くしゃみをしてしまった。

 

 

「このままにすると風邪を引くかもしれないから取り敢えずその服を乾かさないとね」

 

 

そう言うとドラえもんは右手をポケットに突っ込むとそこから道具を取り出した。

 

 

「瞬間クリーニングドライヤー」

 

「なんですかそれは?」

 

 

ドラえもんのポケットに入っている道具を初めて見るアードウルフ達は興味深そうに見つめていた。

 

 

「これは水とかで濡れた物を一瞬で乾かす事のできるドライ…道具だよ。使い方は簡単。この道具をサーバルちゃんに向けてスイッチを押す」

 

 

そう言うとドラえもんはサーバルの濡れた体に瞬間クリーニングドライヤーの吹き出し口から出てくる熱風を当てると10秒くらいで濡れた体は乾いた。

 

 

「うわぁ〜!毛皮がもう乾いたよ!それに体がポカポカするー!」

 

 

先程まで冷えていた体があっという間に暖かくなった事にサーバルは気持ちよさそうな顔を浮かべる。

 

 

「すごいや!……あれ、カラカル何か言わないの?」

 

 

いつもドラえもんの出す道具にツッコミを入れる彼女が今回はただ黙って見ている事にキュルルは不思議に思っていた。

 

 

「いや、なんていうか。今まで見てきた道具と比べると今使っている道具が普通に見えるのよ」

 

「ま、まぁ、確かにそうだね」

 

 

ドラえもんは今までなにかとあっと驚く凄い道具を出してきたが、今使っている道具は熱風を出す道具(ドライヤー)である為、驚く事は無かった。

 

 

「ほう、君のポケットには不思議物が入っているようだね」

 

「凄いですよドラえもんさん!」

 

「他にもまだあるんですか?」

 

 

3人はドラえもんに寄って追求する。カラカルにとっては地味な道具に見えたかもしれないが3人にとっては物凄い道具であると認識している。

 

 

「いや〜、照れるなぁ〜」

 

 

ドラえもんはオオカミ達に褒められた事にまた鼻の下を伸ばして顔を赤くする。それを見たカラカルは呆れた表情を浮かべ、キュルルは苦笑いを浮かべる。そして、サーバルはそれを見て自分の事みたいにドラえもんを自慢する。

 

 

「ドラえもんちゃんはすごいんだよ!何時もこうして私たちや他のみんなを助けてくれるの!」

 

「「っ!」」

 

 

すると、サーバルの発言にオオカミとアリツカゲラは目を見開く。対してサーバルは2人の顔を見て疑問符を浮かべる。

 

 

「あれ、私変なこと言った?」

 

「い、いえ、なんでもないです!」

 

「………」

 

(なんか怪しい)

 

 

アリツカゲラは慌てて否定するが、カラカルは一瞬だったがアリツカゲラの目が泳いだところを見逃さなかった。

カラカルの視線に気付いたアリツカゲラは何か言おうと考えだす。

 

 

「そ、そう言えばドラえもんさんって、爪とか指が無さそうですけど、どうやってその手で物を持ったり壁を登ることができるのですか?」

 

「へ、僕の手?」

 

 

急に話題を振られた事にドラえもんは自身の手に視線を移した。

 

 

「そう言えばそうだね」

 

「……まぁ、確かに私たちそこはあまり考えた事がなかったわね」

 

「ドラえもんいったいその手はどうなっているの?」

 

 

サーバル達もあまり意識していなかったが、意識するとドラえもんの手が何故物を掴めるのか疑問を感じ、3人は彼の手に視線を移す。

 

 

「ふふん、それは僕にはもともと道具以外にも常に備わっている物があるんだ」

 

「それはいったいなんですか?」

 

 

ドラえもんは得意げな顔を浮かべると、いつもの様にポケットの中に手をしばらく入れてそこから手を出した。

 

 

「ペタリハンド!」

 

「なにも持っていないじゃない」

 

 

カラカルの言う通りでドラえもんの手には何も持っていなく、いつもの団子みたいな手しかなかった。

 

 

「違うよ。ペタリハンドは僕の手の事で触れた物を意識している間この手にくっ付ける事が可能なんだよ」

 

 

そう言って足元に落ちていた小石を拾って、そのまま石を振り払う様に払うが、全く手から石が落ちなかった。

 

 

「へぇー、だからドラえもんは道具を持てたのね」

 

「そーゆう事。まあ、例えばさっきの岩壁とかはサーバルちゃんと頭をぶつける前までは落ちる様子はなかったでしょ」

 

「成る程…」

 

 

一同はドラえもんからペタリハンドについての説明を聞きいて理解した。

 

 

「そういえばアードウルフさんはどうするの?さっきの物件にするの?」

 

「いえ、さっきのサーバルさんを見てやっぱりやめようと思います。それに岩壁に長時間しがみついていられるか不安ですし」

 

「うん、それがいいよ」

 

 

アードウルフもドラえもんや岩壁に長時間しがみつく事は出来ないと判断して、別の物件にする事にした。一方でカラカルはそんなアードウルフに声をかける。

 

 

「ねえ、やっぱりさばんなちほーに戻ったらどうなの?」

 

「え?」

 

「そうだよ。サバンナにいればカバがいるからセルリアンに襲われる心配はないよ」

 

 

サーバル達にとってカバはさばんなちほーの中でも1、2を争う程の実力を持っている為、彼女の近くにいれば安全であると言うが、

 

 

「だ、駄目です!」

 

「え?」

 

「アードウルフ?」

 

 

突然アードウルフは血相を変えて叫んだ事にその場にいた全員は呆然とする。

 

 

「私がカバさんのところにいると……」

 

「カバがどうかしたの?」

 

 

アードウルフの発言に不審に思ったカラカルは追求するが、彼女はハッとなり慌てて首を横に振る。

 

 

「い、いえ、なんでもありません!そ、それよりもアリツカゲラさん次の物件をお願いします!」

 

 

アードウルフはアリツカゲラに次の物件紹介を頼むと彼女は目を輝かせる。

 

 

「ご安心して下さい!それなら次なる刺客を…!」

 

「ちょっとアリツさん興奮し過ぎだよ」

 

「は⁉︎…す、すいません。私とした事が」

 

 

オオカミに止められたアリツカゲラは冷静になり、もっと安全に住める物件の資料を整理してアードウルフに相談する。

一方でドラえもん達はアードウルフ達が相談している間に彼女を見つめていた。

 

 

「さっきのアードウルフさん変だね」

 

「あの慌てっぷりは絶対に何かを隠しているわね」

 

 

先程の慌てて誤魔化したアードウルフにキュルルとカラカルは何かを隠していると確信していた。

 

 

「ひょっとしてカバと喧嘩でもしたのかしら?」

 

「え、そうかな?とても仲が良い筈なのに」

 

 

カラカルは先程アードウルフがポツリとカバと呟いたところを見て、カバと何かあったのではと思っていた。それとは反対にサーバルは違うと思っていた。

 

 

「取り敢えず、もう少しアードウルフちゃんに付き合えばこの引越しの動機を聞けると思うよ」

 

「そうね。それじゃあ、もう少し付き合ってみましょうか」

 

「「うん」」

 

 

3人はドラえもんの意見に賛成して、もう少し様子を見る事にした。そして、この後次の物件紹介が始まるのであった。




フレンズ図鑑

アリツカゲラ

キツツキ目キツツキ科ハシボソキツツキ属

Colaptes campestris

お家を紹介する事が得意なフレンズ。
その名が表す様に蟻塚に巣を作ることで知られるが、通常は他のキツツキと同様、木のうろなどを利用して営巣する。また、木が生えていない場所では蟻塚の他にも土手などで営巣する。蟻塚には15cmほどの穴を上部に開け、その中で抱卵、雛の育成をする。4、5個の卵を産み、抱卵は雌雄で行われる。群居性があり、小さな群れをつくって生活しており、繁殖時には小さなコロニーを作る。基本的には地上性であり、アリやシロアリを主食とする。


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第11話いちばんのぶっけん


本当に遅れてすいません!色々と忙しかったもので中々小説が書けずしまいでした。ですが、待たせた分より良い話が出来るよう努力していくつもりです。今後ともよろしくお願いします。


あと、投稿が遅れたお詫びに兼ねて私の弟が今回の話のあるシーンの挿絵を描いてくれましたからどうぞご覧になってください。


再び森の中を歩き出した一同は次の物件を目指して、先程よりも深い森の奥へと進んでいた。しかし、奥に進むと段々と暗くなっているのを見てカラカルは不安そうにアリツカゲラに話しかける。

 

 

「今度は安全なんでしょうね」

 

「だ、大丈夫です。次はなるべく住んでいる方に危険がない物件を紹介します」

 

「だと良いんだけど……」

 

 

そうは言っても先程まで紹介された物件はアードウルフに全く適していなかった為、カラカルの中のアリツカゲラの印象はあまりよく無かった。

 

 

「大丈夫だよ。アリツさんもさっきので反省しているから」

 

「…まぁ、そこまで言うなら」

 

 

前の2つは流石にやり過ぎたとアリツカゲラも反省している事をオオカミが説明すると、カラカルも渋々納得する。一方でサーバル達は辺りをキョロキョロと見渡しいた。

 

 

「それにしても此処は暗いね」

 

「うん、もしかしたら茂みとかにセルリアンが隠れているかもしれないね」

 

「こ、怖い事を言わないでください!」

 

 

セルリアンが出るかもしれないと聞いてアードウルフはびびってしまい、サーバルもそれを見て謝るが、

 

 

ガサガサ

 

 

「ひっ⁉︎…な、なんですか?」

 

 

その時近くの茂みが揺れ、それを見たアードウルフはビビってしまう。

 

 

「まさか、本当にセルリアン⁉︎」

 

 

キュルルも隠れているのはセルリアンなのではと警戒すると、ドラえもん達も警戒して茂みを見つめる。しかし、アリツカゲラだけは揺れる茂みを見て何かに気付くと警戒を解く。

 

 

「安心してください。あれはセルリアンではありませんよ」

 

「「え?」」

 

 

アリツカゲラの言葉に2人は呆然する。すると、その茂みから眠たそうな顔をしたフレンズが現れ、そのまま通り過ぎて行った。

 

 

「今の子は?」

 

「はい、先ほどの方は私が紹介した物件に住んでいるフレンズさんです」

 

 

どうやら先程出てきたフレンズはアリツカゲラの知り合いのようらしい。すると、サーバルとカラカルは近くに何人かのフレンズの姿や声を自身の目と耳で確認する。

 

 

「此処には他の子達も住んでいるんだね」

 

「はい、この森には隠れるところが多いですし、他のフレンズさん達が住んでいるので協力し合っていけるようになっています」

 

(まるでシェアハウスみたいだ)

 

 

協力していると聞いてドラえもんは安心する。この森に多くのフレンズが住んでいる為、寂しい思いをせず、コミュニケーションを取れる事からアードウルフにピッタリな場所であると思えた。

それから暫く歩くとアリツカゲラは足を止める。

 

 

「それでは紹介します刺客その3…元ナミチスイコウモリさんの巣"コーモリバンサンカン"です」

 

 

一同の目の前には幾つもの木にツタが巻かれていた。サーバル達は今までとまた違った物件に興味深そうに見るが、唯一カラカルだけがその物件を胡散臭く感じていた。

 

 

「…結局刺客なのね」

 

「だ、大丈夫です!今度の物件は安全を重視していますから!」

 

 

また"刺客"と口に出した事にカラカルは呆れた表情を浮かべる。対してアリツカゲラは先程まで紹介した物件もは異なることを説明して誤解を解こうとする。

 

 

「あの、アリツカゲラさん。さっきナミチスイコウモリさんが住んでいたって言うけど、それって他の子にも対応出来ているんですか?」

 

「そういえばそうだね」

 

 

それぞれの住処には動物の特徴を生かした物が多くあるため紹介してもその物件がアードウルフが適さなかったら全く意味が無いのだ。

 

 

「それならご心配ありません。ちゃんと他の方にも住みやすいようにこのコーモリバンサンカンにはハンモックという専用の寝床を用意してあります」

 

 

そう言ってアリツカゲラは木と木の間を繋ぐツタで作られた網目状の寝床(ハンモック)に指を刺す。すると、サーバル達は初めて見るにハンモックに興味津々だ。

 

 

「なんか気持ちよさそうだね」

 

「ねぇねぇ、あれに乗っていい?」

 

「どうぞどうぞ」

 

 

木と木を繋ぐツタで作られたハンモックを見てサーバルはアリツカゲラに許可を貰うと「やったー!」と歓喜の声を上げて大きくジャンプをしてハンモックに乗っかるが、

 

 

「おっと、結構揺れるんだね」

 

 

着地した衝撃でハンモックは大きく揺れ、サーバルはバランスを崩して落ちそうになるがなんとか耐えた。その様子をみたカラカルは心配そうに見つめる。

 

 

「サーバル気をつけなさいよ」

 

「へーきへーき」

 

「いや、平気って…」

 

 

ドラえもんはサーバルの発言に思わず呆れた顔を浮かべる。先程だって平気と言って滝壺に落っこちたばかりだというのにもう忘れてしまったようだ。

 

 

(ひょっとしたらサーバルちゃんって、のび太くんと同じドジかもしれない)

 

 

ドラえもんは内心今までの彼女の行動を振り返って考えた結果、のび太と同等のドジと思っていた。しかし、実際はそれ以上とは思うまい。サーバルはサバンナや他の所に住んでいるフレンズからはサバンナ1のトラブルメーカーという不名誉なあだ名でそれなりに有名なのだ。

 

 

「うわぁ〜、とっても気持ち良いよ〜」

 

「いいな〜」

 

 

一方でサーバルは落ちないようにゆっくりと体を横にすると程々に揺れるハンモックに満足する。キュルルもサーバルの気持ちよさそうな顔を見て羨ましく思った。

 

 

「へぇ〜、あのハンモックって見たところ手作りだけど頑丈に作られているね」

 

「アリツカゲラって物を作ったりする事が出来るのね」

 

 

ドラえもんとカラカルもちょっとやそっとの衝撃で壊れないハンモックを用意したアリツカゲラに感心の声を上げる。

 

 

「まさか、あのハンモックは私が作ったんじゃありませんよ」

 

「「え?」」

 

「違うんですか?じゃあ、あれはだれが作ったんですか?」

 

 

アードウルフもドラえもん達と同じようにアリツカゲラが作ったと思っていたが、違うとなると誰が作ったのか気になっていた。

 

 

「あのハンモックを作ったのはビーバーとプレリードッグだよ」

 

 

すると、アリツカゲラが答えようとする前にオオカミが作った人物について答えた。

 

 

「え⁉︎……ビーバーにプレリードッグ…?」

 

「どうしたのドラえもん?」

 

 

すると何故か急に顔を青ざめるドラえもんにキュルルは不思議そうに思いながら話しかける。

 

 

「な、なんでも無いよ!そ、それよりもその2人は一体どんな子達なの?」

 

 

ドラえもんはキュルル達に誤魔化すようにビーバー達について詳しく聞こうとすると、カラカルが「あっ」と何かを思い出したような声を漏らす。

 

 

「たしか、ビーバーとプレーリードックは"こはんちほー"ってところに住んでいるフレンズよね」

 

「カラカル知っているの?」

 

「いや、私は実際にあった事無いけど色々な物や他のフレンズの住処を作ったりするって噂は聞いたことあるわ」

 

 

どうやらその2人もさばんなちほーに住むカラカル達が知っている事から有名なフレンズのようだ。

 

 

「その通りです。私とビーバーさん達は知り合いで今回のように他のフレンズさんが住みやすくしてもらうようにハンモックを作って貰いました」

 

「へぇ、そうなんだ」

 

 

他のフレンズと協力している彼女の努力を見てキュルルは凄いと思っていた。対してアリツカゲラはアードウルフにハンモックの機能について説明していた。

 

 

「アードウルフさん如何ですか?ハンモックはただ寝れるだけではなく、高いところに設置されているのでセルリアンなどに襲われないように避難する事が可能ですよ」

 

「確かに良いですね。決めました!私はこn「あら、お客様かしら?」へ?」

 

 

アードウルフはこの物件に住むと答えようとした時に突然木の上から声が聞こえ、ドラえもん達は木の上をみると木の枝に逆向きにぶら下がっている鳥の翼とは異なる翼を背中に生やした少女が見下ろしていた。

 

 

「君はだれ?」

 

「私?私はね…「ナミチスイコウモリさん⁉︎」…あら、アリツカゲラさんもいたのね」

 

 

どうやらこの少女の名前はナミチスイコウモリのようだが、此処でオオカミはある事に気が付く。

 

 

「あれ?アリツさん確かナミチスイコウモリって前まで此処に住んでいて今は住んでいなかったんじゃ?」

 

「そういえばそうだね」

 

 

本来はもう此処に住んでいない為、この"コーモリバンサンカン"をアードウルフに紹介する筈なのにナミチスイコウモリがまだ住んでいる矛盾に一同は疑問を抱いた。

 

 

「どういう事なの?」

 

「す、すいません。どうやら私の記憶違いみたいでした。ナミチスイコウモリさんもお騒がせしてすいません」

 

「キヒヒ〜ッ、別に良いわよ」

 

 

アリツカゲラは自身の記憶違いだった事に勝手に住まいに侵入した事に彼女はナミチスイコウモリに謝ると、彼女は気にしていない様子で上体を起こして何処からかギターを取り出すと弦を弾いて音を鳴らす。

 

 

「それで今日はどうしたの?」

 

「はい、実は此方の方々に物件を紹介しているところなんです」

 

「そう、それはお疲れさん…キヒヒッ」

 

 

アードウルフ達に物件を紹介しているアリツカゲラに彼女は労いの言葉をかけ、更にギターの弦を弾いて"ポロロン"と音を鳴らす。

 

 

「ところで貴方達お腹空いていない?私は今から食事しようと思っていたんだけど」

 

「そういえば私お腹が空いちゃったな」

 

 

先ほどからハンモックに横になっていたサーバルは腹の音を鳴らしていた。それもその筈、先程から動いてばかりいる事もあるが、時間的にそろそろ夕飯の時間帯なのだ。

 

 

「あら、それは良いタイミングね。たった今新鮮なご飯が手に入ったからさ。よかったら一緒にどう?」

 

「えっと、それってつまり……」

 

 

すると、ナミチスイコウモリはサーバルの発言を聞いて一同に食事をしないかと誘う。しかし、キュルルは彼女の話の中にあった"新鮮なご飯"という言葉を聞いて何故か嫌な予感を感じた。

 

 

『ナミチスイコウモリは森林に生息する夜行性の生き物だ〜よ。鋭い前歯を持ち牛や馬などの皮膚を傷つけ血を飲むんだ〜よ』

 

 

その時、タイミング良いのか悪いのか、ラッキーさんはキュルルの言葉に反応してナミチスイコウモリの生態を解説し出した。

 

 

「と、いう事は……」

 

「まさかご飯って……」

 

 

ナミチスイコウモリの生態で"血を飲む"と聞いたキュルルとアードウルフは先程彼女が言った"新鮮なご飯"について段々と想像出来て顔が青ざめていく。

 

 

「さぁ、遠慮なくどうぞ」

 

 

そう言ってナミチスイコウモリは瞳を怪しい光を放ちながら舌を舐めずり回す。

 

 

「「……た」」

 

「「「「「た?」」」」」

 

「「食べないで(ください)ー!!!」」

 

 

その時、キュルルとアードウルフは全速力で走り出してその場から離れて行った。その姿にその場に残ったドラえもん達は数秒ほど放心状態になる。

 

 

「ちょ、待ちなさいよ2人とも!」

 

「あっ、カラカルちゃんも勝手に走ったら危険だよー!」

 

「お、お騒がせしてすいませんでしたナミチスイコウモリさん!待ってくださいよー!」

 

 

正気に戻ったカラカルは2人を追いかけ、その後をドラえもんがラッキーさんを抱えて走り去っていった。アリツカゲラはナミチスイコウモリに謝るとカラカル達の後を追いかけて行き、更にサーバルとオオカミもその後を追った。一方でその場に残されたナミチスイコウモリは彼女達が去った方向を見つめる。

 

 

「……面白そう」

 

 

そう言って去っていく一同の後ろ姿を彼女はその妖しく光る瞳に写していた。

 

 

●●●●●

 

 

その頃、ナミチスイコウモリから逃げたキュルルとアードウルフにカラカル達はなんとか合流できたが、2人は先程彼女にした事に対して罪悪感を感じていた。

 

 

「さっきナミチスイコウモリさんに酷いことしちゃったね」

 

「そうですね…どうやって謝ればいいんでしょうか」

 

 

2人はあくまでもラッキーさんが言ったことを鵜呑みにしてしまい、ナミチスイコウモリが自分たちの血を吸ってくると思い込んでしまって、彼女の前から逃げ出した事にどう謝ったら良いのか悩んでいた。

 

 

「大丈夫だよ。ちゃんと私も一緒に謝るよ」

 

「そうよ。私も付き合うわよ」

 

「2人とも……ありがとう」

 

 

サーバルとカラカルが共に謝ると聞いてキュルルは嬉しく思い2人にお礼を言った。その様子を見たドラえもんは微笑ましく思った。

 

 

「まぁ、でもさっきのはラッキーさんの冗談だよね」

 

「そ、そうですよ!ラッキーさんも場を和ませようとあんな事を言ったから決して悪気はないと思いますよ。いくらなんでも血を吸うなんて無いですよ」

 

 

自分たちを驚かそうとした事だと血を吸うのはラッキーさんの嘘だろうとキュルルとアードウルフは思っているが、

 

 

「いや、ナミチスイコウモリって、本当に血を吸うよ」

 

「「え?」」

 

 

ドラえもんが血を吸うのは本当だと発言した事に2人はドラえもんの方に振り返る。

 

 

「ナミチスイコウモリは吸血蝙蝠って呼ばれていてその名の通り血を吸う動物なんだよ。それにただ吸うだけじゃなく傷口に病原体を媒介させてその動物を病気にさせてしまう事があるんだよ」

 

「「ひぃっ!」」

 

 

ドラえもんの解説の中にあった"病原体を媒介させる"と聞いたキュルルとアードウルフは互いに抱き締めて体を震わせ、更に涙目になっていた。

 

 

「ちょっとドラえもん!余計に怖がらせてどうするの!」

 

「ご、ごめん!そんなつもりじゃなかったんだ」

 

 

ドラえもんはつい何時もの調子で解説を行ったが、それが逆にキュルル達を余計に怖がらせてしまった事に気付き慌てて謝る。

 

 

「ハハハッ、ドラえもん君はなかなか怖がらせるのが上手だね」

 

「オオカミさんは悪ノリしないでください!」

 

 

ドラえもん達の様子を見て面白がるオオカミにアリツカゲラは注意する。

 

 

「いや、たしかに笑うのは…ん?」

 

 

すると、オオカミは話の途中で何故か空を見上げる。

 

 

「どうしたの?」

 

「何かあったんですか?」

 

 

ドラえもんとキュルルは急に空を見上げたオオカミが気になり話しかける。

 

 

「おや?」

 

「これは……」

 

「…降るわね」

 

「そうみたいだね」

 

 

サーバルを含めたフレンズ4人組も急に辺りの匂いを嗅いで何かに気付く。その行動を見てドラえもんとキュルルは益々不思議に思った。

 

 

「降るって何のこと?」

 

 

未だにフレンズ達の行動の意味がわからない2人はオオカミに話しかけると、

 

 

「何って雨だよ」

 

「「え、雨?」」

 

 

その時、遠くの方からゴロゴロと音が鳴りそちらに向く灰色に濁った雲がこちらに近づいていた。2人はそれを見て漸くサーバル達が雨雲が近づいてきている事に察知した事を理解した。

 

 

「あの雲からして沢山降りそうですね」

 

「うん、それに見たところ雷も鳴っているからこの辺り一帯が土砂降りになりそうだね」

 

 

ドラえもんは雨雲の状態からして周りにある木々で雨を凌ぐ事が出来ないと判断して直ぐこの場から離れた方がいいと全員に伝える。

 

 

「それじゃあ、早くバスに戻ろう」

 

「いや、今からバスに戻るったとしても此処からバスまでは結構離れているから、バスに着く前に私たちがずぶ濡れになってしまうよ」

 

 

一刻も早くバスに戻ろうと提案したサーバルだが、オオカミが今からでは間に合わないと告げると焦った表情を見せる。

 

 

「ええっ⁉︎じゃあ、どうしよう…?」

 

 

サーバルもさっき毛皮を乾かしたばかりなのにまたずぶ濡れになるのは嫌な為、何処か雨風を凌ぐ場所がないか周囲を見渡すもなかなかそれらしきものが見つからず焦り始める。するとアリツカゲラが口を開いた。

 

 

「それならこの先に洞窟があるのでそこで雨が止むまで入っていましょうか」

 

 

彼女の提案に一同は賛成すると、雨に濡れる前に彼女の案内の元洞窟に向かうのであった。

 

 

●●●●●

 

 

アリツカゲラの案内で全員は雨が降る前に洞窟に辿り着き、それと同時に雨が降ってきた事から間一髪濡れずに済んだ。

 

 

「皆さん濡れずに済みましたね」

 

「うん、これもアリツカゲラのお陰だよ」

 

 

そう言ってサーバル達はお礼の言葉を贈るが、彼女は若干複雑な気持ちを抱いた。先ほどまでやっていた物件紹介ではあまり良い物件を紹介出来ず、挙句にはまだ他のフレンズが住んでいる物件を紹介すると言う失態を犯したのだ。簡潔に言えば彼女が早くアードウルフに納得できる物件を紹介していれば雨宿りせずに済んだだろうと、罪悪感を感じていたのだ。

 

 

「ところでこの洞窟の奥はどこまで広がっているんですか?」

 

 

その時、先ほどから洞窟の奥を覗き込んでいたアードウルフがアリツカゲラに洞窟の広さについて聞いてきた。

 

 

「いえ、実はこの洞窟は最近見つけたばかりなのでまだ奥の方は把握していません」

 

 

アリツカゲラも把握していないと聞くと全員は洞窟の奥を覗き込む。そこには光は一つもない深い闇が広がっていた。すると、カラカルはキュルルが何やら落ち着きのない顔になっている事に気付いた。

 

 

「キュルルどうしたの?」

 

「い、いや、ただ僕はこの洞窟の奥に何があるんだろうと思っただけだよ」

 

 

カラカルの問いかけになんでも無いと彼女は答えるが、内心は少し恐怖を感じていたのだ。

 

 

「……そう言えばこんな噂を知っているかい?」

 

「「「「「噂?」」」」」

 

 

すると、先程まで黙っていたオオカミが急に話だし、その内容にドラえもん達は疑問符を浮かべながら耳を傾ける。一方でアリツカゲラは何か察したのか呆れた表情を浮かべる。

 

 

「実はこのジャパリパークの洞窟には地下に繋がる道があって、そこにはヒトの街があるらしいんだ」

 

「本当⁉︎なら、ひょっとしてこの洞窟の奥にヒトの街があるのかな」

 

「じゃあ、確かめに行こう!」

 

 

サーバルとキュルルはオオカミの話が本当かもしれないと思い、洞窟の奥へ進もうとする。

 

 

「やめといたほうが良いよ」

 

「え、どうして?」

 

だが、それをオオカミが止める。2人は何故止める

 

 

「その地下にはとても恐ろしい赤い霧があるからさ」

 

「「「「「赤い霧……?」」」」」

 

「そう、その霧に体が触れると体はドロドロに溶けていくんだ」

 

「「ヒィッ⁉︎」」

 

 

キュルルとアードウルフはドロドロと体が溶けると聞いて思わず悲鳴を上げ、ドラえもんの後ろに隠れる。対してアリツカゲラは呆れた表情を浮かべため息を吐き、サーバルは興味津々に聞き、ドラえもんとカラカルは胡散臭そうに思っていた。

 

 

「更にその赤い霧が発生するところにはセルリアンではない大きな怪物が現れて、フレンズを食べてしまうんだ」

 

「「こ、怖い!」」

 

 

赤い霧に出現する怪物がフレンズを食べると聞いて2人は涙目になる。しかし、オオカミは2人の顔を見て「クスクス」と笑い出した。

 

 

「いい顔頂き」

 

「え?」

 

「ど、どう言う事?」

 

 

彼女の発言に3人は何がなんだかわからなかった。すると、痺れを切らしたのかアリツカゲラがオオカミのかわりに訳を話した。

 

 

「キュルルさんアードウルフさん安心してください。オオカミさんは怖い話をして驚かせているんですよ」

 

「てことはさっきの話は……」

 

「最近描いている漫画の内容だよ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

そう言って彼女は数枚の(原稿)を見せると、2人はまんまと騙された事に理解する。

 

 

「酷いよ!」

 

「オオカミさん嘘はいけませんよ!」

 

「いや〜、ごめんごめん」

 

 

自分たちを怖がらせたオオカミに2人は怒るが、対して彼女は謝罪の言葉を言うものの、顔は全く反省していなかった。

 

 

「もう!嘘をつくのは悪い事ですよ」

 

「それはあんただって同じでしょ?」

 

「え?」

 

 

突然話に関わってきたカラカルがオオカミと同じ嘘つき呼ばわりされた事にアードウルフは思わず彼女の方に振り向いた。

 

 

「嘘付いているのが顔に出ているわよ」

 

「な、なんの事ですか?」

 

 

カラカルの発言にアードウルフは一瞬目が泳ぐのだが、カラカルはそれを見逃さなかった。すると、追い討ちをかけるようにドラえもんが話しかけてくる。

 

 

「ねぇ、アードウルフちゃんもしかして、今回の引っ越しってやっぱりカバさんに何か関わりがあるんじゃ無いかな?」

 

「ど、どうして、カバさんが関係してるって……」

 

「だって君は滝のところでさばんなちほーに帰ったらって、相談したら強く拒んだ上にカバさんの名前が出たじゃ無いか。ひょっとしたらアードウルフちゃんはカバさんと何かあったんじゃ無いと思ったからだよ」

 

 

滝壺の時に彼女の話にカバの名前が出た事からカバと何かトラブルがあったのではとドラえもんは指摘する。

 

 

「あ、あれは別にカバさんに迷惑を掛けてるって訳じゃ」

 

「あら、ドラえもんはカバの名前を言っただけで別に迷惑とかは言っていないわよ」

 

「え⁉︎」

 

 

引っ越しの動機について明かさないようにしたアードウルフだが見事にドラえもんとカラカルの誘導尋問に嵌り、石のように表情を固まらせる。

 

 

「アードウルフさん話してくれないかな?僕も仲が良い筈の2人がどうして離れるなんて想像できないよ」

 

「私もだよ。何時も仲良く一緒にいる2人が喧嘩して別れるなんてあり得ないよ」

 

「キュルルさん、サーバルさん……」

 

 

サーバルもアードウルフとカバの2人が仲が良いのは良く理解しており、キュルルも自分の描いた絵を喜んでくれた2人が別れるなんて考えられず、彼女から訳を聞こうとする。そして、アードウルフは4人の真剣な眼差しをみて観念したのか口を開いた。

 

 

「……実はこの引っ越しの目的はカバさんを助ける為なんです」

 

「「カバさんを助けるため?」」

 

 

ドラえもんとキュルルの2人は口を揃えて疑問符を浮かべる。

 

 

「カバに何かあったの⁉︎」

 

「まさか、怪我でもしたの⁉︎」

 

 

一方でサーバルとカラカルは"助ける"と聞いてカバの身に何かあったのか想像してしまう。アードウルフに迫って聞いた。

 

 

「ち、違います!……ただ、私のせいでカバさんに迷惑をかけているんです」

 

「どう言う事?」

 

 

彼女が自身の所為でカバに迷惑を掛けているという発言に一同は首を傾げる。

 

 

「ドラえもんとキュルルさんは知りませんが、サーバルさん達はここ最近カバさんが私やさばんなちほーにいるフレンズの皆さんを守るためセルリアンと戦っていることを知っていますよね」

 

「うん、知っているけど…」

 

 

さばんなちほーに住んでいたサーバル達はアードウルフの話を特に疑問に思わず聞いているが、

 

 

「カバさんって強いの?」

 

 

キュルルは以前アヅアエンでカラカルが思わず口走ったパワフルなフレンズと呼んだ事を思い出すが、実際にカバがセルリアンと戦っているところを見た事がない為、あまりピンとこなかった。すると、彼女の疑問にラッキーさんが反応する。

 

 

『カバは温厚なイメージがあるけど、ライオンやワニに勝る強さを持っているんだ〜よ』

 

「そうなの?」

 

 

ラッキーさんの話を聞いてカバの姿を想像するが、それでも強いイメージは湧かなかった。ましてや百獣の王とも呼ばれるライオンに勝つと聞いて想像しずらかった。

 

 

「まあ、確かに気持ちはわかるけど、実際に動物のカバは3.5mから4mぐらいの大きさで分厚い皮膚と脂肪に覆われているから基本的に肉食動物の牙や爪では傷がつかないんだよ。それに特徴的な顎の力は1tもあるんだ」

 

「そ、そうなんだ……」

 

 

まだ納得出来なかった彼女にドラえもんはカバの詳しい生態を説明すると、漸くカバの強さを理解して納得の声を漏らす。

 

 

「そうだよ。カバは戦えない子の代わりにもセルリアンと闘ってくれるんだよ」

 

「まあ、偶に私たちと協力してセルリアンを倒す事もあるけど」

 

 

2人はさばんなちほーにいた頃にカバと共に戦う事があった為、カバの強さをよく理解していた。それは身近にいたアードウルフも理解しているが、顔は俯いたままだ。

 

 

「でも、最近出てくるセルリアンは大きくて更には強いからカバさんも手を焼いてしまうんです」

 

「あのカバが手を焼く?」

 

「まさか、私たちだっていつもじゃないけど、デカイのならギリギリ3匹までなら倒せるけど……カバは1人で2、3匹余裕で倒しちゃうから、あまり手を焼くとは思えないけど」

 

 

2人はカバの実力を知っている為、大型セルリアン相手に手を焼くとは想像しづらくアードウルフの話が信じられなかった。

 

 

「いいえ、カバさんはここ最近毎日1()0()()ぐらいの大型セルリアンと戦っているんです」

 

「「「「「10匹⁉︎」」」」」

 

 

彼女の口から10匹も大型セルリアンと対峙していると聞いて、サーバルとカラカルだけでなくその場にいた全員は驚愕の表情を浮かべ、思わず声を上げてしまう。

 

 

「ちょ、ちょっと待って!カバさんは大型セルリアンを10匹倒しているの⁉︎それも1人で⁉︎」

 

「いや、それ以前にさばんなちほーに大型セルリアンが毎日10匹の数がいるの⁉︎」

 

「わ、私たちも初めて知ったんだけど…」

 

 

アードウルフから明かされた情報にキュルルとドラえもんはさばんなちほーに住んでいたサーバル達も知らなかったようだ。

 

 

「………ふむ」

 

「オオカミさんどうされましたか?」

 

 

一方でオオカミは驚愕の表情を浮かべるサーバル達とは異なり何か神妙な表情を浮かべる。その様子にアリツカゲラは気づいて彼女に質問する。

 

 

「いや、ただ流石に小型セルリアンが大量に発生するならまだしも大型セルリアンが最近異常に発生するなんて明らかに不自然だと思ってね」

 

「そうなんですか?」

 

 

オオカミの話を聞いたドラえもんは口を閉じ考え始めた。ドラえもんとキュルルはジャパリパークを冒険してまだ四日目である為そもそもフレンズを襲うセルリアンについてはまだあまり理解していない。

一体何処から現れてどうやって生まれているのか謎の存在と認識している。

 

 

「ねぇ、今までもそうだけどセルリアンって普段から沢山いるの?」

 

「いや、普通は毎日じゃ無いけど、前までは小さいのが2、3匹が出るくらいなんだ。だけど、最近は何故か大型セルリアンがあちこちで見られる事が多かなっているんだ」

 

 

どうやら以前まではそこまでセルリアンがいなかったが、今のジャパリパークに現れるセルリアンの数は尋常ではないとドラえもんは理解し、改めて危機感を覚えた。

 

 

「セルリアンが大量に現れていることはわかったけど、それとアードウルフさんの引っ越しとどう繋がるの?」

 

 

サバンナちほーではカバが多数の大型セルリアンと対峙していると理解したが、何故アードウルフが引っ越しをすることでカバが助かるのかはまだ理解できずにいた。勿論彼女だけではなく全員も同じ考えだ。

すると、キュルルの問いを聞いたアードウルフはしばらく黙り込むとポツリと語り出す。

 

 

「……私が弱いからです」

 

「え、それはどういうこと?」

 

 

自身が弱い為と言う言葉に全員は首を傾げるものの、そのまま彼女の話を聞いた。

 

 

「カバさんは私のような戦いが苦手な子の分セルリアンと戦っているから、私がカバさんと離れれば負担が減ると思ったんです。引っ越ししようと考えたんです」

 

「アードウルフ……」

 

 

弱い自身を身を挺して守るカバの為、守る対象である己が離れる事によってカバの負担が無くなると聞いた全員はだが、カラカルは黙ってアードウルフに近づくと、

 

 

ベチンッ!

 

「いだっ!」

 

「か、カラカル⁉︎」

 

 

全員は驚いた。それもその筈、カラカルがいきなりアードウルフの額にデコピンをお見舞いしたのだ。すると、頭を抑えている彼女にカラカルは呆れた表情を浮かべる。

 

 

「…あんた馬鹿じゃないの?なんでそばにいるだけでカバの迷惑になると思っているの」

 

「だ、だって、私みたいな力もないフレンズがカバさんの側にいる事が余計な力を使わせてしまって迷惑になってしまっているんですよ!それにカバさんは"ジャパリパークでは自分の力で生きること"だって言っていたじゃないですか」

 

 

痛む額を抑えながらアードウルフはカバ自身が言ったジャパリパークの掟を指摘してカラカルに反論する。

 

 

「でも、カバさんは"自分の力だけで出来ない事があればフレンズ達に助けを求める事"も言っていたよね。何も守られるだけじゃなくてそれ以外の事で助ければ問題ないと思うけど」

 

「そ、それは……」

 

 

だが、隣にいたキュルルにジャパリパークのもう一つの掟にについて指摘されると、アードウルフは戸惑いを見せる。

 

 

「で、でも!私は今までカバさんに助けられるばかりでカバさんの役に立つ事なんて一つm「そんな事ないよ。カバはアードウルフが近くにいるから戦えるんだよ」……え?」

 

 

一つもないと言い切ろうとしたアードウルフだが、サーバルの発言に彼女は思わず耳を傾ける。

 

 

「私が近くにいるから戦える?…それってどういう意味ですか?」

 

「カバは大事な友達であるあんたや他の皆を守りたいという気持ちでセルリアンと戦っているのよ」

 

「それにカバがいくら強くても助けられなかった子だっているのよ」

 

「きっと、カバさんは友達であるアードウルフさんを近くで守る事が出来るから戦えるんだよ」

 

 

アードウルフを慰めようとする皆。しかし、彼女はそれでも躊躇ってしまう。そんな彼女をどうにかして力になれないかとキュルルは悩む。

 

 

(アードウルフさん本当はカバさんと一緒にいたい筈なのに中々本音を言ってくれない……どうしたら良いんだろう)

 

 

中々自身の本音を明かさない彼女をどうにか出来ないか暫く考え始める。

 

 

(こういう時に絵を描いてもあまり役に立つ事が出来なそう……)

 

 

何時もならフレンズ達の絵を描いて笑顔を満たす事が出来るが、今回はただ絵を描いても自身の求める結果が出せないだろうとスケッチブックを鞄の中に入れると、

 

 

(…ん、これは?)

 

 

鞄の底にある何かがスケッチブックに当たっている事に気づき鞄の中に手を入れて()()を取り出してみると、

 

 

(これって、ハサミ?)

 

 

それは紙を切る為のハサミが入っていた。恐らくこれも自身が記憶をなくす前に入れた物であると思いキュルルはこの状況にも関わらずハサミを眺め出した。

 

 

(待てよ……スケッチブックにハサミを使えば……これだ‼︎)

 

 

すると何か閃いたのか、仕舞い込もうとしたスケッチブックから何も描かれていない白紙のページを切り取ると、

 

 

「え、キュルルさん⁉︎」

 

「何しているのよ⁉︎」

 

 

それを鞄の中に入っていたハサミを使ってバラバラにしたのだ。オオカミとアリツカゲラを除く全員はスケッチブックを取り出したから何時ものように絵を描くのかと思い込んだが、実際に予想したものとは全く別の事をし、更には普段絵を描く道具をバラバラにした事に思わず驚く。一方で彼女は幾つかに切り分けた紙を束ねて手に取ると、鞄から色鉛筆も取り出してアードウルフに渡した。

 

 

「はい、これにアードウルフさんとアードウルフさんの友達を描いてみて」

 

「え、私がですか?」

 

 

突然小さい紙の束と色鉛筆を渡されたアードウルフは困惑の表情を浮かべる。

 

 

「キュルルちゃん急にどうしたの?」

 

「そうよいきなりスケッチブックをバラバラにしたと思ったらアードウルフに絵を描いてもらうなんて……」

 

「いや、まって2人とも」

 

 

サーバルとカラカルはキュルルにアードウルフに何をさせるのか問い詰めようとするが、ドラえもんに止められた。

 

 

「此処は黙って2人を見ているんだ」

 

「えぇ?私はキュルルちゃんが何をするのか気になっちゃうよ……」

 

「私もあの子が一体何をするか見当が付かないから少し不安ね」

 

 

しかし、彼女達はキュルルを信頼しているが今までとは全く異なりお家の手がかりとなるスケッチブックの白紙を1枚バラバラに切った事から不安を覚えていた。

 

 

「ここは彼の言う通りにした方がいいよ。ここでネタバレを聞いたらつまらなくなってしまうからね」

 

 

まだ納得できていない2人だったが、オオカミの意見を聞いて渋々納得して黙ってみる事にした。

 

 

(それにあの子もヒトなら()()と同じようにこの困難を必ず乗り越えて見せる筈だ)

 

ドラえもん達が2人を説得している一方でアードウルフはキュルルから髪の束と色鉛筆を受け取ろうとしなかった。

 

 

「でも、私はキュルルさんのように上手くは描けませんよ」

 

「大丈夫。自信を持って描いて見てよ」

 

 

しかし、一歩も引き下がらず説得をするキュルルの姿勢に負け、ついに言われるがまま色鉛筆を使って数分程の時間をかけて何人かフレンズを描いて見せた。

 

 

「うう、やっぱり上手く書けません」

 

「そんな事ないよ。十分上手だよ」

 

「そ、そうですか?」

 

 

書き上がった自身の絵を見たアードウルフは沈むがキュルルはそうでもないと否定する。

 

 

「じゃあ、アードウルフさんが描いてくれた絵をもっと凄い物にしてみせるよ」

 

「私の描いた絵がすごい物に……?」

 

 

フレンズの絵を受け取った彼女はスケッチブックから既に出来上がっているとある絵を切り取った。すると、その絵を見たサーバル達は気づいた。

 

 

「あっ、その絵はアシカ達の時に描いた絵だね」

 

「うん、そうだよ」

 

 

カイジュウエンで描いた夕日の絵をサーバル達に見せると、その時にあった出来事が頭の中で過ぎって行くが、唯一カラカルだけは目を細くしてその絵を見て疑問を浮かべる。

 

 

「でも、フレンズとかは描いていないのね」

 

「あ、本当だ」

 

「この絵は風景画なのかな?」

 

 

誰も描かれていない事を指摘されるとドラえもんとサーバルも気がつく。夕日の絵は綺麗に描かれているが、何時もの様にフレンズやその他は全く描かれていない。3人はその絵を改めて眺めると物足りなさを感じた。

 

 

「何も描かれていないから良いんだよ」

 

「?…それってどう言う事?」

 

 

意味不明な発言にドラえもんはどう言う意味なのか追求するが、彼女は「まぁ見てて」と言って意味を明かさず、鞄に再び手を入れる。そして、彼女は鞄からハサミと同様にサーバル達が見た事ない()を取り出したが、唯一ドラえもんだけはそれがなんなのか見て理解した。

 

 

「それって()()?」

 

 

その手に持つ物は丁度片手で収まる赤いキャップで蓋がされてある液体のりであった。

 

 

「ドラえもんのりってなんなの?」

 

 

また初めてみる道具にカラカルはドラえもんに液体のりについて聞いてきた。

 

 

「簡単に言えば物と物をくっ付ける道具なんだ」

 

「うん、のりはこうしてアードウルフさんの描いた絵の裏に塗って……」

 

 

ドラえもんの解説を肯定すると彼女は海に沈む夕陽の絵にアードウルフが書いたフレンズ(友達)の絵の裏にのりを塗りつけて夕陽の絵に貼り付けた。

 

 

「これは……!」

 

「すごーい!キュルルちゃんの絵とアードウルフの絵が一つになったよ」

 

 

全員はその絵をみて思わず心が奪われた。あまり上手ではないがアードウルフの書いたフレンズの絵は何処となく楽しそうに浜辺を歩いているような絵が出来上がったのだ。

 

 

「2人の描いた絵を1つにするなんて、すごい発想ですね」

 

「私の場合は全て一人で描くけど、こうやって描き方が異なる絵を合わせると全く別の絵に変わるなんてね。作家として一つ勉強になったよ」

 

「い、いや〜、それほどでも…」

 

 

アリツカゲラとオオカミに褒められたキュルルは満更でもなく照れた表情を浮かべた。その様子を見てドラえもんは思わずクスリと笑みが溢れた。

 

 

「あの、キュルルさん……もう一枚絵を描いてくれませんか?」

 

「いいよ」

 

 

一方でアードウルフは自身の絵が凄くなるのを見たくなりキュルルにもう一枚描いてもらうように頼むと、彼女も笑顔を浮かべながら要望に応え再びスケッチブックにスラスラと絵を描きあげる。

 

 

「今度はどんな絵を描きましたか?」

 

「私にも見せて見せてー!」

 

 

早速書き上がった絵を見ようとアードウルフはスケッチブックを受け取り、その隣でサーバルも覗く。次に書いたのは乾燥した草原のある大地の絵だ。すると、それを覗き込むように見たサーバルとカラカルは「あっ」と声を上げる。

 

 

「私ここ知っているよ!」

 

「うん、私たちの縄張りによく似ているわね」

 

「僕は特に意識して描いたつもりはないけど、サーバルちゃん達の住んでいるさばんなちほーをイメージして描いてみたんだ。アードウルフさんこんな感じでどうかな?」

 

 

サーバルとカラカルは好評だった為、アードウルフにも聞いてみると、

 

 

「はい!とっても良いです!」

 

 

どうやらアードウルフも満足のようだ。キュルルは彼女が納得したことを確認するとその絵をスケッチブックから切り取り彼女に渡した。

 

 

「それじゃあ今度はアードウルフさんが好きな場所に貼ってみて」

 

「はい!綺麗に貼って見せます!」

 

 

そしてアードウルフは絵と水のりを受け取ると、自分の書いた友達(フレンズ)の絵の裏にのりを塗りつけて適当な場所に貼り付けていく。

 

 

(あ……)

 

 

しかし、彼女は絵を貼り付けている途中にある物が視界に入り手を止めてしまう。その視線の先にあるのは自分自身の絵とその隣には自身を何時も守ってくれる友達(カバ)の絵があった。

どうやら無意識に自身の絵の隣に貼り付けていた様だ。

 

 

(カバさん……)

 

 

さばんなちほーから黙って出てしまった事に彼女自身は後悔はしていないと言い聞かせていたつもりだったが、自身と仲が良さそうなカバの絵を見てアードウルフは彼女とのさばんなちほーで思い出が映像のように流れる。ある時には腹を空かせた時にジャパリまんを分け合って食べたり、また自分がセルリアンに襲われそうになった時に助けてくれたり、他にも広大な大地や生茂る野原を楽しく散歩していた事などか次々と出てくる。そして、それは次第に彼女の心が揺らぎ、やがて涙が流れてきた。

 

 

「……グスッ、カバさん……」

 

「アードウルフ……」

 

「涙が流れて……」

 

 

涙を流してカバの名を発する事から彼女の姿に全員はそのまま彼女が泣き止むまで暫く待つ事にした。

 

 

●●●●●

 

 

「す、すいません。恥ずかしいところをお見せして……」

 

「ううん、気にしないで良いよ」

 

「うん、逆に僕たちはアードウルフさんが素直になってくれた事が嬉しいから」

 

 

それから数分後、アードウルフは漸く泣き止み頭が冷静になると人前に自身のみっともない姿を見せた事に顔を赤くして全員に謝罪をした。

 

 

「それでアードウルフさんはこれからどうされますか?このまま次の物件を紹介しましょうか、それとも……」

 

 

まだアードウルフの新たな物件について決まっていない為、アリツカゲラは他の物件の資料をアードウルフに見せて紹介しようとするが、

 

 

「……アリツカゲラさん今まで私の我がままに付き合って本当にすいません。やっぱり私はカバさんのところが一番です」

 

 

自身の為に一緒に物件を探し続けていてくれたアリツカゲラの努力を踏みにじる様で申し訳ないと思いながら彼女は物件紹介を断った。

 

 

「うん、それが良いとおもうよ」

 

「どうやらカバさんの隣がアードウルフさんの一番の物件なんですね」

 

「はい!」

 

 

アリツカゲラの問いに元気よく発言した事から彼女はもう悩みは完全になくなった様子だ。

 

 

「それじゃあ、アードウルフはいつサバンナまで戻るの?」

 

「そ、そうですね……来た時はオオカミさんに乗せてくれましたからここまで着いたんですけど、帰り道はセルリアンに合わないように遠回りで行きますよ」

 

 

先ほど帰る決心は付いたものの、サバンナちほーまでセルリアンが出るかもと不安になり仕方なく遠回りをしようとする。

 

 

「それなら、私が明日バスでさばんなちほーまで送るよ」

 

 

しかし、オオカミが彼女をサバンナちほーへ送り届けると手を上げたのだ。

 

 

「え、でもオオカミさんはこの先に用があるんじゃ」

 

 

バスに乗っけて貰えると聞いて一瞬安心するが、元々オオカミはこの先に用があるため態々自身の為に道を引き返すのは心が痛む。

 

 

「まあ、そうだけど、先ほどから話を聞いていればカバには黙って出ていったんだろう?」

 

「うっ、そ、そうです」

 

「なら、彼女も心配していると思うから早く帰ったほうがいいと思うよ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「よかったですねアードウルフさん」

 

 

アードウルフはオオカミのご好意を受ける。サーバル達も彼女が早くサバンナに帰れる事に友達として嬉しいようだ。

一方でカラカルは彼女達との会話には混ざらずドラえもんと話をしていた。

 

 

「ねぇ、ドラえもん。あんたならアードウルフを正直にする事が出来たんじゃないの?」

 

「……出来なくはないよ。だけど、僕としては道具に頼るよりも自分自身から正直になった方が一番良いと思うんだ」

 

 

彼女の問いにドラえもんは肯定した。実際に彼はひみつ道具の正直電波という道具を持っているが、この道具はある意味洗脳に近い為使おうと思わなかった。

カラカルもそれを聞いて納得すると、それ以上は追及しなかった。

 

 

(それにしてもキュルルちゃんは凄いなアードウルフちゃんの本音を曝け出す事が出来るなんて……)

 

 

改めて彼女が己の力だけでアードウルフの心の本音を曝け出した事には凄いと思っていた。他人の本音を暴くには結構な時間とコミュニケーション能力が必要であるが、短時間で彼女はそれをやって見せたのだ。

そう考えるとドラえもんはある事に気がついた。

 

 

(そうか、だからキュルルちゃんは何処となくのび太君と似ているのか……)

 

 

今までキュルルは大抵の事は自身の力でフレンズ達の悩みを解決して、流石に出来ない所はドラえもんの道具を使う。一方で最初からドラえもんの道具に何時も頼りきるのび太は禄に自分の力で解決しようとする姿勢は滅多に無い。側から見れば真逆に見える2人であるが、唯一共通する所がある。

それは他人の気持ちを理解する所だ。2人とも姿、性別、性格は異なるがどちらも相手の気持ちを理解し、共感する事の出来る人格を持っている素晴らしい人間だ。ドラえもんはそんな彼女の為にも必ず帰るお家を見つけようと決心する。

 

 

「出来ました」

 

「見せて見せて〜!」

 

「あ、私たちの絵が貼られているわね」

 

 

一方でフレンズの絵を全て貼り切ていなかったアードウルフは残りの絵を全て貼り終えて完成した絵を全員に見せると「おお〜」と声を上げた。何よりサーバルとカラカルは自分たちの絵がある事がとても嬉しかった。

 

 

「あれ、僕たちの絵もあるよ……」

 

「本当だ……」

 

 

一方でドラえもん達4人は自分達の絵が貼られている事に気がつく。すると、貼った本人である彼女は笑顔を浮かべながら話した。

 

 

「皆さんも私の友達なのでちゃんと書いてみました」

 

『アードウルフ(さん)(ちゃん)』

 

 

自分たちもアードウルフの友達であると言われ、ドラえもんとキュルルとアリツカゲラは照れた顔になり、オオカミは3人程ではないが嬉しそうに笑みを浮かべる。

それから全員はしばらく絵を眺めていると、キュルルは何かに気づき恐る恐るアードウルフに話しかけた。

 

 

「あの、アードウルフさんちょっといい?」

 

「なんですか?」

 

「いや、この絵の端っこに描いてあるのは何の絵かなと……」

 

 

そう言ってキュルルは絵のとある部分に指をさすと、全員もその場所を見つめる。

 

 

「え……何これ?」

 

 

ドラえもんも漸くその存在に気がついた。そこにはアードウルフと同じように全身白と黒の縞模様の女の子の姿とその隣には()()()()()()()()()()()()()()()()が存在していた。

 

 

「なにって、私達の友達のサバンナシマウマさんですけど?」

 

「いや、そうじゃ無くてその隣に書いてあるフレンズじゃないのは一体なに?」

 

 

ドラえもんとキュルルの2人は明らかにフレンズでもセルリアンではない存在に内心軽くパニック状態になりつつもアードウルフに追求する。

 

 

「ああ、其方はサバンナシマシマオオナメクジさんですよ」

 

「「サバンナシマシマオオナメクジ!?」」

 

 

謎の存在改めてサバンナシマシマオオナメクジの名を聞いて2人は過去最大の驚愕した表情を見せた。それもそのはず、セルリアンならまだしもフレンズでも明らかに動物じゃない存在を見て驚かない筈がない。

 

 

「そうなんだよ。ナメクジちゃんはシマウマちゃんと何時も一緒にいるんだよ」

 

「そうそう、後ろ姿だとどっちか分からないから」

 

 

そう言ってサバンナ出身のフレンズ達は笑いながら話をするが、ドラえもんとキュルルは"サバンナシマシマオオナメクジ"の絵をまじまじと見つめながら微妙な顔を浮かべる。

 

 

(これって、生き物なの?…というか本当にいるの?)

 

 

決してサーバル達が嘘をついているとは思っていないが、こんなUMAみたいな存在がジャパリパークにいるとは到底思えなかった。



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