キーラ・ゲオルギエヴナ・グルジェワ様の優雅な雄英生活 (DEMIDEMI)
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第一話  如是畜生発菩提心

氷餅様、誤字報告ありがとうございます。


部屋の中には少女が一人横たわっていた。

 

彼女はひたすら美しかった。

彼女を一言で表現するなら、美の顕現。それ以外言い表せないであろう。

光を受け輝く銀髪も、極上の陶磁器を思わせる透き通るような白い肌も、普通より大きめのその双眸も、何もかもがこれ以上ない絶妙のバランス、黄金比を保ってそこに存在した。

窓の外に舞い散る雪明りを受ける彼女は、まさに雪の妖精。

少しでも動けばそのまま彼女は淡雪の如く溶けて消えてしまうのではないか。そんな儚さを感じさせる彼女はまさに眠り姫であった。

 

しかしそんな逡巡を覚えたのは束の間、自身の持つヒーローとしての使命感が彼を突き動かし、彼女を驚かせないよう願いながらもその巨体を部屋の中へと乗り入れた。

 

気配を感じてか、彼女の瞼がゆっくりと持ち上がる。

二三度瞬きをした後、さらにゆっくりとした動きで半身を持ち上げこちらに顔を向けた。

ああ、その瞳。

その瞳はガラス玉を思わせた。

意志の光を宿すことなく、何を映すこともなく、ただぼんやりとこちらに向けられているだけ。

 

今までどんな苦難が彼女に課せられてきたのか。

今までどんな実験が彼女を苦しめてきたのか。

今まで彼女は何を奪われてきたのか。

その瞳にはどのような地獄が映し出されてきたのか。

 

自身の意思を奪われたかのような、全てを諦めたかのような、そんな力なき瞳を見つめてるうちに、彼の総身に彼女を襲った理不尽な運命に対する憤りと共に力が蘇ってきた。

 

おもむろに彼女に近寄り万感の想いを込め抱きしめると、もう大丈夫、何もあなたを傷つけることはないとばかりに高らかに宣言する。

 

 

 

「もう大丈夫。私が来た!!」

 

 

 

しかしその声を聴いても、彼女の双眸からはぼんやりと力が抜けたままであった。

 

 

 

・・・

 

 

 

 

 

 

 

☆     ☆     ☆

 

 

目が覚めると女の子になっていた。

何を言っているのかわからないと思うが 

俺も何が起こっているかわからない。

 

 

起きてぼんやりと鏡を見た時、第一に思い浮かんだのはそんな言葉でした。

 

あれ?俺って確か高校中退引きニートだよね。

ここ十余年部屋か一歩も出た事なくて、仕事も将来の貯えもない。

そんな人生ナイトメアモードから一発逆転の目が出たのかしら。しかもこの体結構美人じゃない、やったーこれで人生イージーモードだ。レッツ玉の輿。

混乱の余りアホな事を考えながら辺りを見回すとあら不思議。

ここ自分の部屋じゃございません。

人に見られたら恥ずかしさの余り全身の穴から血を噴き出して憤死するようないらんデーターが入ったパソコンも、トイレ替わりのペットボトルも、中学の同級生が結婚したと聞いて憤怒の余り穴を開けた壁も、ここには全くないではありませぬか。

代わりにこの部屋にゃベッドが一つ鏡が一つあるだけ、他には家具も何もないどころか生活感が一切ありませぬ。

あとは窓が一つあるのとドアが一つあるだけ。

 

と、ここまで

あれ?これってもしかして転生ってヤツですか?

今にあのドアを開けて神様が入ってくるはず、そしてチートを与えてくれるはず。

どんなチートがいいかな。

ゲートオブバビロンは当然かな~。スタンド全種類でも全然OK。

神様が美人だったら付いてきてもらうってのもいいな~。

夢は広がる。

あ、でも神様転生だったらおまけで自宅のあのパソコン破壊してくれんかな。

と、自分はワクワクしながら待っておりました。

 

やがて扉がゆっくり開くと…

そこから入ってきたのは汚らしいおっさんだった…

俺の夢と希望とワクワクを返せ…。

 

自分の目が凄い速度で濁っていくのがはっきりとわかりました。

で、そんな濁った目を見て、何か自分が絶望してるとか勘違いしたおっさんは得意げに自分の状況を語り始めたわけでありまして…

 

曰く、ここは個性が幅を利かせる世界だとか

曰く、自分はヴィランでもう助けは来ないだとか

曰く、最強の個性を作るだとか

 

まあ聞いてない事までベラベラ喋る喋る。絶対このおっさん小物だわ、と自分の中で評価が確定した瞬間でありました。

で、この小物のいう事を要約すると

ここは個性っていう一人一人違った特殊能力が使える世界で、おっさんはヴィランって悪役側。

で、そのヴィランにはオ…何とかいう個性を奪う厄介なのがいて、おっさんの所属してたトコはその傘下になれと脅されたのを断ったら、あっさり壊滅させられるという始末。

で、その何とか(現在の写真を見せられたら黒マスクに変なスーツなので、以下変態仮面に統一)に復讐すべく、最強の個性を作りだすべくワタシに目を付け、妹以外身内がいないので攫ってきたらしいのですわ。

 

後、今の説明じゃ正直なんで女の子になってのか全くわからないけど、憑依って奴なのかなあ。

深く考えるとなんでこの世界に飛ばされたのかわけわかんなくなるし、うん、今そう決めた。

 

 

で、肝心の俺の持つ個性は『黄金瞳』。

総身から溢れ出るカリスマで平伏した相手を細胞の一片まで支配するという、

要はニコポ、ナデポの上位互換みたいなもんですな。

 

「お姉ちゃん」

「会いたかったよー」

 

で、そんな個性を「妹たちの命が惜しければ協力する事だな」とか高笑いしてるおっさんに使ってみたところ…あっさり妹たちを連れてきました。

この妹たちがもう可愛いのなんの。

名前はロムルス、レムスというらしいんだけど。

今の俺に似た整った顔立ちに輝くような銀髪。透き通るような白い肌。

髪は俺と違いショートカットなんだけど、それが似合う似合う。

そんな二人が

「お姉ちゃん」

といって縋り付いて甘えてくるわけですよ。

おお、楽園はここにあった。

うんうん、これからはお姉ちゃんがずっと一緒にいてあげるからね。

 

 

 

…物理的に一緒になるとは思わなかった。

 

いやね、喜びの余りその晩は一緒に寝たわけです。大きめのベッドに川の字になって。

うおお、妹が両側から縋り付いてくる。

やわらけー、いい匂い。

見よ!全て遠き理想郷はここにあった。

と至福に包まれながら俺も眠りに落ちたわけですが…

 

朝起きると両足が妹になっていた。

何を言っているのかわからないと思うが、

自分自身ホント何が起きているのかわからない。

 

で半泣きになりながら妹が起きるのを待ち、何が起きたのか聞いてみたところ…

どうもこの妹のうち一人の個性が「融合」というもので、効果は自分自身が好きなものと一体化できるというやつらしいです。

で、その個性と俺の「黄金瞳」が上手い具合に組み合ってこうなったと。

さらにはそれを見ていたもう一人が、ずるいずるいと騒いだものでもう片方の足にくっつけてあげたと。

うん、優しいね。良く出来たね。もうそういう問題じゃないけど。

え?大丈夫?普段は中に隠れているから、出てくるまで見た目は以前通り?

うん、良く出来たね。問題の本質はそこじゃないけど。

じゃ満足したら離れようか。え?細胞レベルで支配されてるからもう離れれない?

いやそれ大問題だよね。

 

「これでずっと一緒だよ」

「私たちもうお姉ちゃんから離れないよ」

「ロムもレムも」

 

悲報。妹たちがヤンデレでした。

これで

「モウ ズット ニガサナイ」

とか言われたらちょっとちびってたかもしれない。

 

さらに最悪なのは、そこに朝食持ってきたおっさんが来たこと。

ほら、妹たち。おっさん何かティンときたって顔してるじゃん。

 

え?妹みたいにどんどん俺と融合させていったら、個性が進化して強くなるかもしれない?

だめだから。それ絶対に失敗してドツボに嵌るルートだから。

妹も家族が増えるって言葉に嬉しそうにうなずくんじゃない。

 

おっさんホントに黄金瞳の影響下にあるんだろうな。

え?強くなければいけませぬ。実験せねば覚えませぬ。

いやそんなトチ狂った武士道求めてないから。

 

変態仮面も他から力取ってるけど大丈夫だった?

いや、あれどう見てもラスボスの器だから。

こっちはヒロインだから、ね、無茶やめよ。

どう考えても、変態仮面より、ずっと強い!!ってならないよ。

 

大体今あんたどんな顔してるかわかる?

俺がメガテンで合体事故目当てに、リセマラした時の顔だよ、それ。

 

え?材料は攫ってくるから大丈夫?

おっさん、あんた今材料って言ったね。

やっぱメガテンのノリじゃねーか。

 

 

 

で、それからのおっさんは俺と融合さすべく様々な人を攫ってきたわけなんですが、

気になるのはそれが男ばっかりで、しかもワタクシを見る目が完全にオタサーの姫を見るヲタの目なのであります。

多分これ、黄金瞳使わなくても反応が変わらない気がする…。

で、融合して一つになったらもう戻れんよ、もう逃げられんがなあ。とおっさんから脅されても、なんのその、アイドルの握手会に並ぶような勢いで嬉々として融合されるわけです。

おっさん、これ人選完全に間違ってるよ。

嬉しそうなその様子に相手の人生を取り込むという行為に対しての良心の呵責は一片たりとも浮かぶことなく、逆にホントにいいの?お前ら軽く考えすぎじゃね?とこちらが不安になってくる始末。

でもかつての自分を思い出してみると、美女に「私と一緒になって」なんて誘いが来たりすると何の迷いもなくホイホイその誘いに乗るだろうし…あ、これって完全に類友というか同族が集まってるわ。

 

で、そんなかつてのワタシみたいな連中を融合する事、幾百日。

とうとう自分の中の総軍が三千を超えました。

もうね、内部完全に握手会どころかコンサート。

響き渡るは武道館やドームを揺るがさんがばかりの俺を湛えるコール。

黄金瞳と融合の副作用か何かで彼らに親愛の情を抱いてなかったら耐えきれなかったね。俺じゃなきゃ完全に参ってるよ。

あとおっさんが完全にマネージャーか何かにしか見えなくなってきた。

 

 

 

でそんな融合融合の毎日を送っていたわけなんですが、

ある朝ふと目を覚ますと、何やら様子が違う。

起き抜けの寝ぼけ眼で入り口を見ると、全身タイツの金髪ガチムチが立ってました。

いつも融合してる連中と毛色が違うし、もしかして変態?ワタシ貞操の危機?

まだ半分寝てる頭で混乱してると、

このガチムチはつかつかと近寄ってきて、あろうことかワタクシを抱きしめたではありませんか。

「もう大丈夫。私が来た!!」

いや、呼んでねーよ。それにいきなり抱きついてくるって、やっぱりこのガチムチ変態だ。

え?何?俺、変なビデオに売られたの?

これから下着一つでレスリングでもしなきゃいけないの?

 

 

ガチムチの汗臭さに包まれながら、どんどん目が死んでいくのが自分でもわかりましたとさ。

 

 




くりえぃと☆雄英高校

エンデヴァー「おはよう、焦凍。今日も朝からがんばってるねぇ」
轟焦凍   「誰だ?お前?」


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第二話  蟲キング

8周目様、誤字報告ありがとうございます。


そこにあるのはただの修羅道。

虫たちにとっての地獄。

 

彼らは互いに争い合う。己が意に反して…。

 

蟷螂が斧を振り上げる。

蟻が黒い軍勢と化し、相手を引き裂かんと覆いつくす。

蝶はその優美さを失い、空中から攻撃の機を窺い

飛蝗は力の限り跳躍し、その蝶にむしゃぶりつく。

 

弱肉強食

強肉弱食

 

そこには肉食も草食も関係なく

互いが互いを襲う悪夢が顕現していた。

 

この悪夢を引き起こしたのは少女の双眸。

その金色に輝く瞳は何の感情も映すことなく、ただ無慈悲に虫たちの争いを見ている。

 

 

そしてそんな彼女を見つめる二人と一匹の影。

その瞳はただただ痛ましさだけが溢れていた。

 

「かくして彼女はオールマイトに救出されたものの、犯人は自爆というわけさ。だよね、塚内君」

男の肩に乗ったネズミが喋る。

「わずかに残されたメモから、彼女が何らかの実験を受けていたことは明らかなのですが…それがどのようなものだったのかは、残された手掛かりから推測することは…その、不可能で…」

語尾を震わせる男の声に被せるように、女の声が響いた。

「攫われた人々の安否も不明、今世論はヒーロー協会に対する非難の声で溢れてるわね」

そこで微かにため息をつき

「まあそちらは出来るだけ公安委員会の力で抑えてみるわ。で根津校長」

「先ほど言った事、考えてみてくれるかしら」

 

そうして再び彼らは目を少女に向ける。

少女は他に興味を示すことなく、一心に…ただ一心に虫たちの争いを見ている。

 

 

根津校長は考える。

かつて自分を襲った様々な実験を。

一体彼女はその昏い双眸で何を見つめてきたのか。

せめて、せめて同じ過去を背負った自分に何かできる事はないのかと。

 

 

塚内直正は考える。

オールマイトによって救われたにもかかわらず、全てを拒絶するような一切の感情を感じさせないあの目。

あんな目を作り出してはいけない。

そしてそんな目をした人は救わなくてはいけない。

それが出来ずして何のための警察か。

 

ヒーロー公案委員会会長は知っている。

この世の中が決して光ばかりではない事を。ただ彼女の様な幼い子がその闇の中に囚われたままでいいはずがない。

せめて、せめて自分の立場で何かできないかと。

 

 

三人は以前に見た彼女の自己紹介を思い出す。

 

「下郎共、たかが人間どもの分際で私の前に立てる事を誇りに思うがよい」

「私がお前らと同じと思うな」

「私が貴様らに期待することはたった一つ」

「我が尖兵となって、私のためだけに戦い死ね」

 

それは自分以外に価値を認めない獣の思想。

己以外は全て劣等と断ずる悪夢の思想。

 

彼女は人間に対して絶望している。

ならば我は人に非ず。

 

彼女が頼りにしているのはこの人間という集団ではなく、ただ一人己だけ。

 

三人が心を痛めるのは、そのような思想を彼女に押し付けたのが一人のヴィランであり、強いてはそれを生み出した現在の人間社会であるからだ。

 

その時、根津校長はかつての己と少女が重なって見えた。

実験、また実験の日々。

絶える事の無いその日々の中から生まれるのは、己の心の闇であった。

 

このままではいけない。

自分は素晴らしい同僚の先生や生徒たちに囲まれ、その闇を抑える事ができた。

どうか願わくば、彼女にもその心の闇を抑える仲間たちができますように。

 

そして、それを手助けできるのは自分たちだけなのだ。

 

そして彼は迷うことなく、先ほど聞かされた話に返答する。

「わかりました。現実問題として彼女の強力な個性を制御する方法を教える必要があるでしょう。万が一、ヴィランに利用されることがあったら大きな被害が予想される。雄英高校は彼女の飛び級編入について前向きに考えます」

 

そして根津校長は会長が手に持った紙に目を向ける。

 

少女の語った言葉。

「私の中には兄弟たちがいる」

そして断片的な会話から導き出された彼女の個性。

 

 

その手に持った紙には

 

キーラ・ゲオルギエヴナ・グルジェワ

個性『軍勢』

 

と記されていた。

 

 

 

 

☆     ☆     ☆

 

 

 

 

 

皆様、ごきげんよう。

こちらキーラでございます。

 

あ、申し遅れましたこちらの世界での俺の名前はどうやら

『キーラ・ゲオルギエヴナ・グルジェワ』

というらしいです。

前世が引きニートには似つかわしくない素敵な名前だと言えるでしょう。

 

えー、ワタクシ今何をやっているかと言いますと

 

昔懐かし虫相撲でございます。

 

死んだ目で土俵上で押し合いへし合いしている虫たちを見てるとあら不思議、

自分が虫以下の存在になりそうで、ぐっと鬱メーターが上昇してきます。

 

で、なんで俺がこのような地味な遊びをやってるかと申しますと…

 

 

 

デビューに失敗したんだよ!こん畜生!!

 

 

 

前回あのガチムチに抱きしめられて、割とマジでシャレにならないくらい貞操の危機を覚悟したわけですが、

どうもあのガチムチは割と有名どころのヒーローだったらしく、俺は無事解放されて警察の手に渡ったわけですな。

抱きしめられてる間中、あのガチムチの暑苦しさと汗臭さに当てられて、解放後も死んだサバの目みたいになってたのは絶対自分のせいではないと思う。

 

で自分、どうもあのおっさんに攫われる前から妹以外天涯孤独な身の上であったらしく、いわゆる身寄りのない少年少女が集団生活する場所に至るといったわけなのです。

 

これがアイマス転生とかだったらこの美貌を武器にアイドルの世界を駆け上がるというストーリーだったんでしょうけど、こちらはあのような夢溢れる世界じゃなく個性を持った変人が蠢く殺伐とした世界。

ところがどっこい…あのような希望に満ちた世界じゃありません。現実です…これが現実。

 

とまあそういう理由で孤児院にやってきたわけですが、

ここでワタクシ大きな壁に突き当たることになりました。

それは

 

 

自己紹介ですよ、自己紹介。

 

 

ええ、小学生から社会人、万人が通る道にして基本。

それなりの経験を積んだ人間なら危なげなく通る道なのでしょうけど…

 

あいにくこちら筋金入りの引きニート。

十数年来人と話した事がないという、逆の意味でとんでもない経験を積んでおるわけです。

 

知ってるか、ガチムチ。

余りに長期間人と喋らないと言葉の出し方を忘れるんだぞ。

 

試しに自分の内側にいる兄弟に向かって自己紹介の練習をしてみましょう。

 

 

「ア…ソノ…ウャ、ウャシハ…キラ…ワ…チョシミャ」

(訳:私はキーラ・ゲオルギエヴナ・グルジェワと申します)

 

「キュ…キョア…ミャシャンチョ…ミャラ…ミュ…ミャハロフ…チュパチーナ」

(訳:今日から皆さんと仲良く過ごしたいと思います)

 

「ド…ドヤァ…キュリフラ…ミョロシ…ミョリョシーキュ…チェネ」

(訳:どうかこれからよろしくしてくださいね)

 

 

完璧である。

まさにコミュ障の本領を発揮した素晴らしい自己紹介と言えるだろう。

 

事実兄弟は喜んでくれましたよ。

もう満場一致のスタンディグオベーションで、中にはどうやったのかサイリウム振ってる奴までいる始末で。

どいつもこいつもオバカアイドルが失敗するのを期待して、期待通り失敗したのを見るような優しい目をしていたのが気になるけど。

 

 

って…言えるか!こんな挨拶!!

口に出した瞬間、ドン引きされて便所飯コース一直線じゃねぇか。

便所飯どころか便所でフルコースな挨拶だわ、コレ。

 

しかしもう時間は余り残されていない。

どうすべきか、うんうん唸ってた私の前に

 

「お姉ちゃんは考えすぎるんだよ」

「そうそう、ここは私たちに任せておいて」

「うん、バッチリ決めてあげるから」

 

妹というイエホーシュアが顕現した。

よし、ここは任せた。ロムルス、レムス、ばしっと理想の自己紹介を決めてあげなさい。

 

 

 

どうしてこうなった。

自己紹介だよ、自己紹介。

普通に自分の名前言うだけで良かったんだよ。

 

何で南斗鳳凰拳伝承者みたいな事言ってんの。

私がやったら完全イチゴの方だよ。

 

「やったね、ロム」

「うん、レム。これでお姉ちゃんの偉大さがちょっとでも伝わったよ」

 

喜ぶ妹たちを尻目に、俺は自分の目がどんどん濁ってくるのが自覚できました。

 

 

 

結果、自己紹介でドン引きされたワタクシの食堂は便所となり、友達は虫たちだけとなりましたとさ。

某パンマンと違って、愛と勇気以外にも友達いるのが救いかな。

 

わーい、個性「黄金瞳」って軽く使うとべんり~。

虫さんたちがね、俺の指示通りお相撲さんとってくれるの~。

 

 

という具合に、死んだ魚の目で虫さんたちと遊んでいたところ、

目の前におっさんとお姉さん、ネズミが近寄ってきました。

 

 

え?何?

高校?この俺にまた学校に行けと?

 

しかもトップクラスのエリート校?

あ、学校に対するトラウマが…学校とはいったい、うごごご。

 

いやホント、どうしてこうなった…




次回主人公登場!!

緑谷出久の光はキーラの心の闇を晴らせるのか!!


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第三話  ドルオタ

五武蓮様、らすとすたんど様、誤字報告ありがとうございます。


僕、緑谷出久が彼女と初めて会ったのは試験会場だったんだ。

 

その時僕は会場の扉を前にして、ガチガチに緊張していた。

オールマイトからワン・フォー・オールを受け継いだのはこの間の事だし、周りの受験生はみんな個性を使いこなせているような人ばかり。

本当に僕で大丈夫なんだろうかと、先ほど女の子と話した浮ついた気分はどこかへ吹き飛んで緊張感だけが膨れ上がっていた。

大丈夫、落ち着け。あれほど体を鍛えたんだ。オールマイトのお墨付きもあるし、きっと大丈夫。

いくらそのように考えても、次から次へと襲ってくる体の震えは止まらない。

 

 

その時、ふと目の端に彼女の姿が映ったんだ。

 

輝くような銀髪に少々目は大きいものの黄金比ともいえる顔。他の受験生より一回り以上小さいその体は、とても同じ年齢には見えない。

その小ささも相まって、譬えるなら魂を吹き込まれた人形が動き出した。

僕にとって彼女の第一印象はそのようだったんだ。

そして何よりその目が気になった。

外見の美しさに反比例するように、その目はとても濁ってた。

世界を拒絶するようなその目。

その目がつっと動き、僕の目と合った、その時

その目を見た途端、僕は彼女のその目から目を離せなくなったんだ。

その目で・・・

彼女は何か助けを求めている。証拠はないけど、彼女の助けてというような声が聞こえた気がした。

それが僕には何故か、小さい女の子が泣いているような・・・とても悲痛な泣き声に聞こえて、彼女の方に一歩足を踏み出しかけた。

 

でもその瞬間・・・

 

「はいスタート」

急に試験が始まった。

とまどってると他のみんなが会場に向かって走っていくのが見えた。

わー出遅れた。

 

急いでその後を追おうとすると、残っているのが僕だけじゃない事に気が付いた。

白い彼女もその集団に交ざろうとせずに。

 

「ふん」

彼女は我先にと走り去っていく集団に目を向けると

心底馬鹿にしたようにため息をついたんだ。

その顔にはさっきの悲痛な助けを求めるような様子は一切無かった。

「目先の利益に釣られた馬鹿共に同調しない所は、流石の見識と誉めてやろう」

そしてそのまま僕の目を真っ直ぐに見て

「ただ我が幕下にするにはいささか力不足だ。励むが良い」

 

そういうとゆっくりと振り向くと歩き去っていったんだ。

 

その後ろ姿を見ていると、母さんとオールマイト以外に初めて認められた気がしてきた。

心の底から何か不思議な力が湧きだしてくる。

先ほどまであった不安はどこかに吹き飛んでいた。

 

「はいっ」

 

思わずそう答えると、僕は彼女の後に続くようにロボット達に向かっていった。

 

 

 

 

 

☆     ☆     ☆

 

 

 

 

 

皆様如何お過ごしでしょうか?

こちらキーラ・ゲオルギエヴナ・グルジェワでございます。

 

前回、喋る畜生めに学校に入らないかと勧誘されたワタクシめですが、

学校と言えばコミュ障にとっての地獄。

コミュ障オブコミュ障、史上最強のコミュ障、コミュ障を超えたコミュ障、コミュ障を極めし者ともいえるワタクシにとっては無間地獄とも言えるでしょう。

 

無論ワタクシは断る気バリバリでした。

しかし何という事でしょう。

前世でのトラウマを思い出して固まった隙を突かれ、妹たちにYESと返答されてしまったのです。

おお、一番の敵は身内に居るというのはこのことだったのでしょう。

 

「大丈夫だよ、お姉ちゃん」

「私たちお姉ちゃんのやりたい事知ってるから協力する」

 

呆然としている耳に妹たちのたわ言が響き渡ります。

私のやりたい事?

私のやりたい事とは完全な引き籠り生活で、学校に行くという事とは対極に位置するんですが…。

 

「大丈夫。きっと夢は叶うから」

 

そのセリフ、某しろがね司令とか思い出すから止めてくれませんかね。

 

 

「それじゃあ一応形式として試験だけ受けてもらうのさ。君の個性が気になっている先生方も多いしさ」

 

私の承諾の言葉を聞くと「詳しくはここの先生から聞いてくれ」と、災厄をもたらした畜生めと影の薄そうな兄ちゃん、腹に何か抱えてそうな金髪のおばは…お姉さんは満足げに去っていきました。

 

うおおお、カムバック。カムバック。

私に断りの言葉を言わせて!!

 

その後・・・

なんとか断る口実を見つけるべく奮闘していたのですが、便所飯を主食とするワタクシには相談すべき友達もおらず、先生方は厄介払いする気満々で、ここから雄英高校の入学者が出るのは名誉な事という口実で積極的に追い出しにかかる始末。

 

コミュ障の割に空気が読めて、肝心なところで小心者なワタクシがそんな雰囲気に竿を差せるはずもなく・・・

 

 

 

気が付けば受験の日が来てしまっておりました。

 

受験勉強?やるわけないでしょ。

前日どころか今朝まで遊び惚けておったわ。

おかげさまで完全寝不足。ただでさえ生気の無い目が、余計に生気がなくなっております。

 

やる気とか完全マイナス120%のまま会場に入ると、そこは嫌になるほど暑苦しかった。

どいつもこいつも目を血走らせて必死だねぇ。

ま、わたしゃ一足先にリタイアさせてもらうかね。

ついでに実生活からもリタイアできて、引き籠り生活に入れるんだったらベストなんだけど。

 

そう考えながら全くやる気のない目で会場を見渡していると、

ふいに緑っぽい黒髪の男の子が目に入った。

 

うーん、あんまり似てないというか完全別人なんだけど、何となくあの子ってガチムチと同じ雰囲気なんだよね。

漂わせてる空気とか、内にある力とか。

 

そこまで考えて、私の脳裏に稲妻のようにある考えが閃いた。

あの二人の共通項。

ガチムチと男の子、似ても似つかぬ二人を結び付ける線がはっきりと見える気がした。

 

あの二人…まさかあの二人に共通しているものは・・・

 

 

どう考えても変な性癖に違いない。

 

一方のガチムチはいきなり私に抱き着いてくるロリコン。

一方の男の子は、どう贔屓目に見てもオタク。絶対部屋に好きなアイドルとかキャラのフィギア飾っているタイプでしょう。

そう囁くのよ、私の中の兄弟が。

 

基本私の中の総軍にも、類友という事でオタクが多い。

というか融合された経緯を見るに、ほとんどオタなわけであって…自分の精神状態に悪いのとブーメランになるのでこれ以上深く考えない事にするが、その彼らが囁いてくるのです。

 

ヤツは俺らと同類だ。

いやヤツは我々よりもっと濃い。

いや俺の方がもっと濃い。

 

底辺同士のマウンティングが始まったのを無視して、彼について考える。

 

問題は彼の対象が二次であるか、三次であるかですが・・・

そこで私の中の兄弟たちが再び囁く。

あのタイプは二次元には興味が無い。三次だ、三次元に執着するタイプだ。

 

流石は類友、こういうのを見抜くのは上手い。

 

というわけで自分は彼をドルオタと呼ぶことに決定しました。

きっと彼の部屋には記念品やらフィギアやらが、所狭しと並べられてるに違いない。

 

そこまで考えた時、ふと彼と目が合ってしまいました。

その目、数ある受験生の中から私だけに興味を持ったかのような目。

私は…私は…あのドルオタに目を付けられたのではないか。

 

あのガチムチといいコイツといい、なんで自分が変質者ホイホイみたいになってるの??

やばい、助けて・・・。

うわ、何か寄って来そうな雰囲気。

 

「はいスタート」

とかなんとか言ってるうちに、いきなり試験が始まった。

合図も無しかよ。

ロシアの死刑囚だって、よーいドンくらい言ってくれますぞ。

 

売れないまま歳だけとった中年バンドマンみたいなのが、なにやらわめきたてて煽っております。

中年バンドマンがえらそーに学生に向かって説教する姿は、老害の見本みたいですね。

俺のようになるなって意味ですかね?

ああ、もっと若いうちからリーマンとか真っ当に働いておけば。

実戦にカウントダウンは無い。とかそんな事言ってますが、実際にカウントダウンが迫っているのは彼の人生みたいな気もするのですが・・・。

 

一斉に受験生が入り口に殺到する!!

その様子を見ていると通勤快速満員電車で半死半生になったリーマンたちを見ているようで、何とも微笑ましい気分になってきますね。

前世でも今生でもあんな目に合うのは御免こうむりたいものであります。

 

ま、わたしゃ合格する気ないし、のんびり行きますかね。

あれ?あのドルオタも取り残されてる。

え?まさか私と一緒になるためにわざと遅れた!?

 

ターゲットにされたら困るので、皆から取り残されているドルオタの傍によって話しかけておく。

 

あなたがいい人ってのはわかってる。

でも私はあなたと一緒にいられないの、ごめんなさい。

 

まあそういう意味の事を自分なりに伝えると、これ以上接触するのは危険とばかりに彼を後にする。

幸い試験始まってるのでそっちに逃げれるし。

 

これで万事OKと遠ざかりながら、ふと彼を見てみると・・・

どうしよう。私をすっごいキラキラした目で見つめてる。

 

 

その目を見て私は自分の失敗を悟った。

私の中のゴース…もとい兄弟たちも囁く。

 

彼は・・・彼は・・・

彼はドルオタよりもっと厄介な存在、ストーカーだったと。

 

 

やばい、やばい、やばい、やばい、やばい

 

失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した

失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した

失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した

 

あたしは失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した

失敗した失敗した失敗したあたしは失敗した失敗

 

 

優しい言葉でふんわりと伝えたのは間違いだった。

ストーカーって絶対そういうのを勘違いして、自分の都合のいいように捉えるよ。

 

 

しかも彼の様子を見るに、最悪のタイプのストーカーだ。

 

具体的に言うと好きな相手の髪の毛を食べたり、対象の観察日記を記したノートを何十冊も持ってるような・・・。

 

 

いやホントどうしよう・・・。




くりえぃと☆雄英高校
(登山)
爆豪「くぅきがうまぁい」(山頂で)
出久「身体が軽い」(荷物を下ろしながら)
轟 (無言で帰る準備)

次回はヒロアカ二次チート主の本領発揮の入学試験。
デクたちはキーラ様の無双を止めることが出来るのか!!


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第四話  歩道が広い

huntfield様、誤字報告ありがとうございます。

何が起こったああぁぁぁぁぁぁ。

UA一万越え。お気に入り700件越え・・・。

ああ、これはきっと夢だ。万仙陣が回っているに違いない。
世界は私の形に閉じている。

いや、本当にありがとうございます。
今後とも拙作ではありますが、よろしくお願いいたします。


蹂躙。

 

会場を言い表すにはその一言で十分だった。

 

唸りを上げるは二つの車輪。

一点のロボが動こうとして車輪の下で原型を留めず、

飛び掛かろうとする二点のロボは狼に食いちぎられ、

三点のロボは離れた場所から狼の咆哮によって砕け散った。

点の差など関係ない。全ては我が前に粉砕されるのみ。

車輪が唸りを上げる。

獣の咆哮が木霊する。

その声の前に全ては無価値。前に立ちはだかる物は全て粉砕し、押し進むのみ。

 

「軽すぎるぞ、貴様ら。加減が難しいではないか」

玉座に座すは一人の少女。

その双眸には倦怠の色を湛え、ゆったりと椅子に寄り掛かる姿はまさにこの場の王者であった。

 

試験官も受験生も思わず手を停めて、その姿に魅入ってしまう。

 

戦車を曳くは双頭の狼。

彼らが曳くは至高の玉座。

何人たりとも我が前に立ちはだかる事を許さず。

 

・・・・・・・・

 

試験が始まった少し後。

他の受験生に遅れて少女はゆっくりと進み出た。

少しの遅れなど取るには足らない。貴様ら凡愚とはこの程度、ハンデにすらならない。

そう高らかに謳い上げるが如く、彼女が場に顕現させたのは一台の戦車であった。

 

瞬間、他の受験生もそれを見ていた先生方も、全てがそれに目を奪われた。

 

華美と無骨、豪奢と質実。

相対する二律背反を完全に同居させたそれはまさに美術品にして兵器。

 

馬の代わりにそれを曳くのは双頭の狼。

普通の狼を遥かに凌駕する大きさ。一方は目を爛々と輝かせ、一方は目を包帯で覆うという違いはあるものの、全身から発するは獲物は全て逃がさないという狩人の意思。

 

少女はその王座に座すと、身体を左にもたれかからせた。一見リラックスしたようなその姿勢。

「ロムルス、レムス征けい」

しかし彼女がゆったりと身を横たえると同時に・・・空間が爆発した。

文字通りに音を置き去りにして戦車が駆ける。

一瞬にして前に立ちはだかるロボ五体が鉄くずへと還った。

蹂躙は続く。

センサーでこちらの動きを感知する?下らない。動く前に潰せばよかろう。

1点、2点、3点?関係ない。我が前には全てが塵に過ぎん。

言葉にせずとも彼女がそう言うのがわかる。彼女の駆る戦車がその答え。

 

それを見た受験生たちも様々に反応する。

「死ねえ」

ある者はロボットを爆破しながら、決意に満ちた瞳で彼女を見つめる。

「俺が一位になるんだ。邪魔すんじゃねえ」

 

ある者は

「くっ、なんていう強個性だ。早く得点を獲得しておかなければ点数が無くなる」

冷静に計算を立て

 

ある者は

「わわわわわわ」

会場の混乱に右往左往する。

 

 

「凄いわね、彼女」

「アレガ校長ノ言ッテイタ生徒カ。特待生トシテノ実力ハ問題ナサソウダ」

「というか他の生徒に得点行き渡るのか」

その様子を目にした教師達の間にざわめきが起きる。

推薦入学者の個性も強いが、彼女の個性はそれを遥かに凌駕する。

 

しかしそんな騒ぐ先生方とは裏腹にオールマイトの表情は苦り切ったままであった。

出久の事もそうであったが、キーラのあの目。

出会った時と全く変わらない生気を失った目。その目が間に合わなかった。とオールマイトを責めるように感じられるのだ。

「キーラ少女、君はあの日の悪夢からまだ抜け出せていないのか。いや、まだ早い。この雄英高校で生きるべき意味、そして仲間を見つけてくれたなら」

オールマイトの願いとは裏腹に、彼女はひたすら場を蹂躙する。

あたかも全てを拒絶するが如く。

 

しかしその時、ふいに受験生たちは足を止め、すぐさま悲鳴を上げ逆方向に走り、否、逃走を始める。

彼らの前にあったのは巨大な影、すなわちビルほどもある妨害用のロボであった。

それは

逃げようとする者、状況を調べるべく立ち止まる者、いたずらに右往左往する者、場は瞬く間に混乱に包まれた。

 

しかし彼女は揺るがない。

相変わらず一切に興味を失ったかのような光なき目でそれを一瞥すると、瞬く間にその両足をすり抜けるように戦車を駆り、それまでと何ら変わらぬかのように得点を稼ぎ始めたのである。

 

ただそんな中、一人の少女が、瓦礫に足を取られる。

周囲は全てライバル、彼女が脱落するのは時間の問題と見えた。また周囲もわざわざライバルを助けるほどのお人よしはいない。

たった一人の少年を除いて。

 

教員と受験生は再び目を奪われた。

しかし今度その中心となっているのは美しくも容赦ない少女ではなく、たった一人の平凡な少年によって。

オールマイトが笑みをこぼす。

今、彼は自分の蒔いた種が芽吹くのをはっきりと確認したのだ。

 

ただ・・・その下半身は依然として健在。

ただそれは半身を失った影響でふらふらと傾き・・・

助かったと地面に倒れ伏す出久と思わず腹の内容物を出してしまったお茶子。

ゆっくりとその上に・・・。

 

 

「馬鹿な・・・」

彼らは自分の見たものが信じられなかった。

残された妨害用のロボの下半身。それでもビルの半分はあろうかというソレを彼女が片手で持ち上げている。

アレの重さがどれほどあるかなど知りたくない。

それを軽々と持ち上げる彼女。一見少女が玩具を与えられたかのような笑みで軽々と歩を進めるが、その身体にかかっている重さが只事でないのは彼女が歩くたびに地響きがするのをみると一目瞭然。

「そら、受け止めて見せろ」

見下すような、嘲笑するような笑みを浮かべながら

それは軽々と宙を舞い、残っていたロボットを押しつぶした。

 

周りが呆然とする中、一人オールマイトだけが会心の笑みを浮かべていた。

心配していた緑谷少年は、あのエグゼキューター相手に周囲にヒーローとしての輝きを見せつけた。

そして周りの全てを拒絶するような目をした少女も、やはり極限の状況においては人を守るべく動いた。

彼はそれが何よりもうれしかった。

 

 

 

誰もが呆然とする中、一人彼女だけが周囲を睥睨するかの如く薄い笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

☆    ☆     ☆

 

 

 

 

 

ぐーてんもるげん皆様。

キーラ・ゲオルギエヴナ・グルジェワでございます。

今回の挨拶は車上からお送りしております。

 

 

現在のワタクシの状況は戦車の上。

と言っても現代のあの女子高生共が乗りこなす砲塔のついたあちらではなく、

古代ローマとかが使っていた、馬に引くいわゆるチャリオットってヤツです。

妹たちも悪ノリして狼の恰好になって車を引く気満々。

双頭の狼というあんまりなデザインに思わず頭を抱えたくなってしまいます。

妹たちよ、お前たちいつの間に中二病に罹患していたのだ・・・。

 

大体なんで戦車出せるんだよ、狼になれるんだよ、と突っ込むと

「「個性」」

という答えが返ってまいりました。

それ以上突っ込むと負けの様な気がしますので、ここは流しておきます。

 

で調子こいて妹に言われるままに、出発の合図をしたのですが

気分は出発後すぐに後悔に代わりました。

乗り心地が・・・。

 

で、その乗り心地なわけですが

現代の車がいかに研究者の苦心の上に成り立っているかが実感できる乗り心地なわけです。

一言で言うと最悪。

揺れるってレベルじゃない。口開くと舌噛むので何も喋れないし。

 

 

畜生!どうせこんなもの出すんだったら、現代のにしろよ。

ティガーとか男の浪漫に溢れてるだろ。

無理だったらチハでもいいよ。

 

操縦?簡単だろ?

女子高生でも出来るんだよ。大和撫子の嗜みだろ。

 

これホント揺れるんだよ。

座席にしがみついとかなきゃ振り落とされるし、

ちょっと気を緩めたら腹の中のものが全部逆流、

ゲロインの座待ったなしだよ。

 

 

あ、失礼。取り乱しました。

 

というわけでゲロを我慢しつつ、いつもながら死んだサバの目で座席にしがみついているわけですが、

正直揺れて揺れて周りに気を配る余裕がねぇ。

 

何か車輪の下でグシャグシャと何かひき潰すような音が聞こえるんですが、まさか他の参加者轢いてたりしないよね。

他の人轢いて許されるのはGTAの主人公とDIO様だけですよ。

 

ここは運転してる妹たちの良識に期待したいところですが、ここ最近の彼女ら斜め下への突っ走りっぷりを見ているとそれが神頼みよりさらに低い可能性であるのはファイガを見るよりも明らか。

 

なんか耳に妹たちの嬉しそうな騒ぎ声が聞こえてきて、それと同時に何か壊れる音するんですが、それに比例してこちらのテンションは下がっていくわけであります。

 

ホント警察沙汰だけは勘弁してください。

あと人型の物を轢いてるのも、ホンモノじゃありませんように。もし本物でも試験中の事故って事で勘弁してくれますように。

 

でもまあこれで試験無事落ちれるだろうなあ。

元より落ちる気満々で試験の内容あんまり聞いてなかったけど、確かロボット倒していくんですよね。

確かにロボット倒しているけど、これだけ会場引っ掻き回して物をぶっ壊して周りの受験生の邪魔しているんだから落ちれますよね。

普通試験会場で騒ぎまくるヤツとか、退場ですよね。

お願いだからそう言って・・・。

 

で、妹がちまちまとロボット相手にカーマゲドンをやっているのを、友達がゲームやってるのを横で見てるような感じでボーっとゲロ我慢しながら見ておったわけですが、

急に周りが悲鳴を上げて逃げ出し始めました。

何事かと見ますと、ビルくらいあるでかいロボが出現しておりました。

 

そういえば何か隠しキャラでるとか言ってたようなそうでないような・・・。

エク…何とかいったような気がしましたが良く覚えていないので、仮にゴンザレスと命名。

倒したら15ポイントくらい貰えたような気がするな、コイツ。

 

で、まあ妹らはコイツも轢き潰すのかと思いきや、

思いっきりドリフトかけて、でかいのを無視。小さいのをプチプチと轢いております。

なるほど、でかいボスキャラより小さい雑魚を多数倒す事で高得点を目指すというクリア上の知恵なわけですね。

あのでかいのも一撃で倒せそうだから、ポイント取っておいた方が良さそうなのになあ。

隠しトロフィーとかもらえそうな感じだし。

 

とまあデカブツを無視して相変わらずGTAを楽しんでおりましたら、

ファッ!!!!!!

あのドルオタ、デカブツをぶっ壊しやがった。

 

マジかあ・・・。

きれいに上半身を消し飛ばしやがった・・・。

性欲異常者と強個性、最悪のコラボを有する彼を見て、今後の警察に対して涙を禁じえません。

 

と思ってると、壊し残した下半身がぐらりと揺れて、

あ、親方!ゴンザレスの下半身がドルオタと女の子の上に。

うは、彼らの冒険はここで終わってしまうのか?

女の子は気の毒ですが、ドルオタがここでリタイアするのは今後の世界の為になるでしょう。

 

ん、ドルオタの近くに何か光ってるものが・・・・

 

アレ私のスマホじゃねぇか!!!!!!

やばい やばい やばい やばい

終わったらトイレでスマホのゲームやろうと黙って持ち込んでたのが裏目に出たあ。

間に合え、間に合え、間に合え。

 

意外と何とかなるもんですね。

無我夢中で飛び込んだら、何とか間に合いました。

データー保存してなかったので、死活問題。人間死ぬ気になれば何でもできるものですな。

自分のスマホを守る。

これは女の子の色香に惹かれたドルオタを上回る偉業だと言えましょう。

しかしコレ軽いな。

先生か業者、予算を中抜きして肝心な部分以外ハリボテで作ってるんじゃなかろうか。

 

どうせここまで妹方が色々壊しておる会場をですが、落ちるための止めとしてもう少し壊しとくことにします。

そーら、ポイっと。

 

ストライク。良い感じで命中したので思わず会心の笑みがこぼれます。

ビルが二三棟半壊状態になったし、これだけあちこちぶっ壊しておいたら落ちれるでしょう。

見たか、妹。これがお姉ちゃんだよ。

妹も感動したのか、投げる時何か言ってたし。

 

 

で、終わった後なんですが、先ほど大活躍したドルオタ、なんか地獄の淵を覗き込んだような顔して蹲ってるのが面白かったです。

あれだけ大活躍したら合格決まったようなもんだろうになあ。

 

終わった後にお気に入りの結婚引退でも聞いたのかな。



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第五話  ポイント

psycho law様、誤字指摘ありがとうございます。


彼女が教室に足を踏み入れた瞬間、時間が凍り付いた。

少なくともその場にいた全員がそのような感覚に襲われた。

 

見た目は普通の少女。

しかし受験会場にいた彼らは知っている。彼女が会場を蹂躙する様を。

あの狼の咆哮を。

 

新学年、新生活ともなれば誰もが浮かれるもの。

しかし彼女はそんな事を一切感じさせない、感情が一切浮かんでいない凍ったような目でクラスを一瞥すると、自分の席につきひたすら正面を見ていた。

それは一切感情を感じさせないロボットのような動き。

周囲を拒絶するかのようなその動きに、誰もが声をかける事が出来なかった。

しかしそれも彼女が席に着くまで。

静かだった教室は彼女を除いて、再び活気に溢れた会話に満ち溢れだした。

 

しかしその会話も再び静まる事となる。

 

「おい、白女」

先ほどまで飯田と言い争いをしていた爆豪が、つかつかと彼女の前に近寄って行き、

指さし宣言するように言い放った。

「お前合格一位だからって調子に乗ってんじゃねーぞ!!次は俺が絶対に勝つ!」

堂々とした宣言に辺りがさらに静まりかえる。

対した彼女は・・・

「ふう」

と呆れたように息をついた。

「ふん、弱い犬ほど良く吠える。というのは本当らしいな」

あまりと言えばあまりな言葉に一瞬爆豪はあっけに取られるも、

「お前、どういう意味だ!!」

凶悪な顔をさらに凶悪にして彼女に詰め寄る。

一触即発。言葉通りの空気が辺りに満ち、周りの人間も固唾を飲んでその様子を見守る。

「騒ぐな凡愚。どういうも何も言葉通りの意味だ。自分の力量も弁えず喚き立てるなど、己の無力を際立たせるにすぎん。私に勝ちたいのなら黙って行動に移したらどうだ。もっとも・・・」

と、顎で入り口を差し占めると、再び言葉を続けた。

「機会はすぐにありそうだがな。もっともそれを生かせるかどうかは貴様次第だが」

と彼女の言葉に示された方向を見ると、入り口に担任らしき男が立っていた。

「はい、騒いでたのは二人だけ。合理的と言いたいけどそういう空気でもないね。ま、とりあえずお前ら、着替えてグラウンドに出ろ」

 

 

「次、キーラ」

(やれやれ)

相澤は心の中で秘かにため息をついた。

ゆっくりと前へ進み出た少女。相変わらずその目に光は宿っていない。

(オールマイトから聞いたヴィランの犠牲者か)

それはそうとして問題は彼女が過去のトラウマを乗り越えられるかどうかだ。

(入試の様子を見ると前向きになろうとはしているみたいなんだがなあ)

しかしこの様子を見ると、自発的に何かを成そうとは考えていないのかもしれない。

ヒーローは個性だけで務まる甘いものじゃないと相澤は知っている。

ヒーローは一芸だけで務まるようなものではないのだ。

故にいかに凄い個性を持っていてもやる気が無ければ彼女とて・・・

「ほう・・・」

彼女の投げた白球は軽々と空の彼方へと消えていった。

続いての競技もそのハイスペックな身体能力を生かし、楽々とトップを取っていく。

 

しかしその様は

過去のトラウマから自ら抜け出そうとあがく少女。それを落とす事はもう相澤は考えていなかった。

 

「ちなみに除籍ってのは嘘な。お前らをやる気にさせる合理的虚偽」

 

その言葉を聞いた瞬間、わっと湧きたつ生徒たち。

ただそんな中、ひたすら輝き無き絶望したような目で自分を見つめていた少女が、心に棘の様に刺さっていた。

 

 

 

 

 

☆     ☆     ☆

 

 

 

 

 

桜舞う入学の季節。皆様如何お過ごしでしょうか。

キーラ・ゲオルギエヴナ・グルジェワでございます。

 

入試が終わって一安心。どうせ落ちただろうし、これからは引き籠り生活を満喫するぞ。と新生活に向けて意気込んでいたワタクシですが、しばらくして合否の通知書が届きました。

で封を切ってみると現れたのはまさかのガチムチではありませんか。

映像だけとはいえ、外見小娘の部屋に入れた彼は心持嬉しそうです。あーやだやだ。

 

 

で、そのガチムチ。

試験の寸評をどうのこうの言ってたのですが、結果はまさかの合格。

しかも何か特待生とかいうわけのわからない称号付き。

ゲームの隠しトロフィーとかは嬉しいのですが、現実の称号ってのは基本面倒ごとが付属してくるので全然うれしくありません。

バイトリーダーとか名ばかりの責任者とか・・・。

しかしあれだけ試験会場壊しまくって暴れたのに何故合格なのでしょうか。

「当然だね」

「お姉ちゃんが落ちるはずないもんね」

主犯者達が何やら足で言っております。意には沿いませんが叱る気にならない、くっ、これが可愛いは正義というヤツですか。

爪牙どもも自分の中で「然り然り」「ウラーウラー」と大騒ぎ。

お前らは可愛くないから黙れ。

 

ところで今ガチムチの台詞の中に聞き逃せない言葉が入っていました。

「私も雄英高校に勤めることになる」

・・・正気でしょうか?

ロリコンと教師って絶対混ぜてはいけない言葉。人体錬成とかメじゃない最悪の錬金術じゃないですかね??

すごいなー雄英高校。「ぷらすうるとら」って良識を超えていけって意味も含まれてるんすかね?

今からあの畜生が報道陣に囲まれて頭を下げる姿が目に見えるようです。

 

 

 

で呆然としているうちに時間は過ぎ、入学の日になってしまいました。

 

ワタクシなぜか学校の寮に入れることになったのですが、

 

嫌々ながら登校すると教室がまたうるさい。

お子様が入ってきたのが珍しいのか一瞬静かになりますが、しばらくすると何事も無かったかのようにまた騒ぎ出します。

やたら騒ぎまわる若人たちを前にすると、これからこの騒がしい連中と過ごさなければいけないのか。と自分の目がマッハで濁ってくるのが自覚できます。

とりあえず昼食に備えて便所の場所をまず確認してこようと思います。

 

何やらヤンキーとガリ勉風の眼鏡が言い争っております。

ヤンキーは一見突っ張ってそうですが、実は細かい事にうじうじ悩む感じ。格下に負けただけで退学考えちゃうようなタイプで、

眼鏡の方は一見真面目そうなのですが、何やらやたら兄弟に拘るタイプとみた。

だから私は彼らを「ヘタレ」「ブラコン」と心の中で呼ぶようにしてあげました。

あと教室にはドルオタもいました。

ドルオタも何やら試験中に知り合ったらしき女の子と話しております。ストーキングのターゲットがそちらに向かったのは一安心。後は彼女が警察に駆け込む事のないよう祈るばかりです。

部屋に盗聴器とか仕掛けないよね??

 

幸いドルオタ以外顔見知りはいないので、自分の机に向かうとぼんやりと宙を見つめて話しかけるなオーラを自分の周りに展開。

これで余程のことが無い限り、自分に声をかけようという酔狂な御仁はいなくなったでしょう。

あーあ、早く放課後にならないかなあ。

 

とか考えておりますと、空気が読めないのかヘタレがこちらに向かってきます。

何やら一位がどうのこうの吠えておりますが、中身はヘタレでも見た目はヤンキー。かつて勇気を出して近所のコンビニに行った折にオタク狩りにあったトラウマが蘇り、こちらもヘタレな自分としては何も言う事が出来ませなんだ。なんか妹が代わりに言ってたような気がしますが・・・。

 

で、そんなヘタレとの言い合いを他人事のように見ていますとチャイムが鳴って、何か小汚い男が入ってまいりました。

ホームレスかな?

このおっさん、いきなり何やら喋りだすにどうもこのクラスの担任らしい。

え?この生活無能力者っぽい人が?

 

この不審者が言う事をぼんやり聞いてますと、合理的じゃないとかこれから体力測定みたいなのやるから庭に出ろとおっしゃっておられます。

素晴らしい。私も合理的じゃないのは嫌いなんです。

何より自己紹介とかいう無駄なものがなくなったのは、何より歓迎すべきことだと思います。

無駄は嫌いです。無駄なんだ…無駄だから嫌いなんだ。無駄無駄…。

素晴らしい先生に当たって一年間楽しそうです。

私は心の中で彼に3キーラポイント上げました。ちなみにキーラポイントを一万貯めると何かいい事が起こります。

 

で同じクラスのJK共が何やら話しかけてくるのに、適当に相手をしながら着替え校庭に出て

始まりました体力測定っぽいの。

何やら個性を使ってボール投げたりジャンプしたらいいらしく、周囲がにわかにざわめき出します。

でそれを鎮めるように担任が一言、

「最下位は除籍にする」

・・・は?今なんと?

最下位は除籍?

・・・除籍、なんと素晴らしい言葉。

ようはここで最下位になれば、あの素晴らしい引き籠り生活をまた送れるのですね。

引き籠り…それはアーサー王の目的がアヴァロンで引き籠り生活だったのを見ればわかるように、人類永遠の夢です。

普遍的無意識の最上位なのです。

それに協力してくれるとはなんとありがたい。

生活無能力者改め担任の先生に2キーラポイント差し上げましょう。これで合計5ポイント、彼には頑張ってもらいたいものです。

 

でまずはボール投げ。「死ねぇ」とか物騒な声上げるヘタレを筆頭に、皆それぞれ人間とは思えないような記録を出しております。

さて、私の番です。ではここで「やーん、ワタシお箸より重いものを持った事ないのー」的なアレを醸し出しながら記録一メートルでも目指すと・・・

「「だめだよ、お姉ちゃん」」

ウェッ!いきなり妹たちに声をかけられて思わず力んでしまい、その拍子に白球はぐんぐん空へと・・・。

「測定不能」

無慈悲な声と共に周りが騒ぎ出します。ああ、自分の目が死んでいるのが自分でもわかってしまう。

「だめだよ、お姉ちゃん。わざと退学目指そうなんて」

「そうそう、ちょっとは力を入れないとね」

オーマイガ。妹たちには当然ながら見抜かれていました。でも怒る事はできません。

なぜなら可愛いは正義。彼女らは特別な存在だからです。

「然り然り」「ウラーウラー」

お前らは黙れ。

 

ともあれ妹たちに応援されたのでその後は普通に頑張りました。

この体妙にスペック高いので、割とあっさり一位に。

この結果には妹たちも大喜び。

爪牙たちもサイリウム振って、一糸乱れぬオタ芸を披露しております。

ちょっと待て、お前ら。その揃ってきてる法被どこから出した?

え?個性?個性って言ったら何でも許されると思うな。

 

ちなみにワタクシに勝つ宣言してきたヘタレは二位にもなれませんでした。

二位は何か色んな道具作り出していたお嬢様っぽい人。とりあえず彼女の事は発育の暴力と読んでおくことにしましょう。

戦闘で核兵器とか作ってこないよな・・・。

大気圏外から鉄の棒とか落とされたらどうしよう・・・。

 

「ちなみに除籍ってのは嘘な」

ファッ!!!

今何と・・・最後に担任の先生から信じられない言葉が発せられました。

今日はだめでもこの先きっと除籍になれると信じていたのに・・・。

 

先生は私を裏切った・・・私の心を弄んだんですね・・・

先生改め住所不定無職にマイナス25ポイント。

 

ぐぬぬぬぬぬ。

 




現在のキーラポイント

ふわふわ女子:50ポイント(ストーカーのデコイとしてポイントアップ)
担任    :20ポイント
ストーカー :-50ポイント(ストーカーこわい)
ガチムチ  :-一万ポイント(言わずもがな)


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ヴィラン編
其ノ一  もしヴィラ


フリスケ様、氷餅様、誤字報告ありがとうございます。


どう、と音を立てて男の体が崩れ落ちた。

ふう、潰した組織の残党の割には、少し手間を貸せさせてくれたね。

「やらせは・・・彼女だけはやらせは・・・せんぞ」

それが男の最後の言葉だった。

それきり身動きしなくなったその身体を乗り越え奥へと進む。

 

ふむ、体は本調子ではないが活動する分には問題なさそうだ。

だが、まだだ。まだ個性のストックが足りない。

オールマイトと再び戦うにはまだまだ集めなければいけない。

そう考えると、仮面の下で傷ついた顔が疼くような気がした。

 

一日に何人もの人間が姿を消すという奇妙な失踪事件を耳にしてから数日。

少しばかり気になって調べさせたが、過去に潰した組織の男が関与していることはすぐにわかった。

手に入ってくる様々な情報。そして過去の組織の動向や攫っている人数の多さなどから、おそらくやっている事は人体実験。

やれやれ、どのようなのが出来ているか楽しみだね。

 

 

「へえ、これは・・・」

最後の扉を開けたところに少女が眠っていた。

いや、美少女というべきかな。

 

ふむ、起こすのも可哀そうだ。

このまま個性を・・・。

そこまで考えた時、体中に衝撃が走った。

いや、本能が警告したというべきかな、この場合。

前にこの感覚を覚えたのは、オールマイトがはらわたを撒き散らしながら向かってきた時以来だ。

 

この個性を奪ってはいけない。

奪ってはとんでもない事になる。

 

あれ以来、自分の感覚は信じるようにしているし・・・

さて、この子をどうすべきか。

そう考えていると、少女がゆっくりと目を覚ました。

 

ゆっくりと半身を起こし、こちらを見つめる。

ああ、その目。

初めて会った時の弔とはまた違った、それでいて似たような目。

ああ弔。彼はひたすら絶望に染まった目をしていた。

この世の全てに希望を無くしたその目。

 

それとはまたベクトルが違うが、彼女もまた実にそそる目をしていた。

輝きの無いその目の中に・・・

何十人、何百人、何千人分もの悪夢が詰め込まれているような気がした。

それも一瞬、それは消えて少女の目には絶望だけが浮かんでいた。

 

これはいい。

先ほどのヴィランが攫った人間で何らかの実験をしていたのはわかっているんだが、彼女もその被験者だろう。

このような絶望を味わったという事は、さてさて彼女はどのような事をされたのか。

 

「可哀そうに、誰も助けてくれなかったんだね」

これはダメか。どんな実験をされたのか知らないが、完全に壊れてる。

色々声をかけてみたが、彼女に反応はない。

これはいっそ脳無の材料にするしかないかな。

そう思いつつ・・・

 

「もう大丈夫。僕が来た」

最後にそう声をかけたその瞬間。

 

その時、少女の体が小刻みに震え始めた。

今まで意思なき光に支配されていた死んだようなその目、その目に光が満ち始める。

 

ああ、これだ。この光が見たかった。

まるで弔に初めて出会った時のことを思い出すね。

 

ああ

 

やがて彼女は感動のあまり、俯くとその身を震えさせる。

「君の仲間がいる」

そう声をかけると泣き出すのを我慢していた彼女は顔を上げる。

その顔は真っ赤に紅潮し、こらえきれなくなったのか涙が目尻から零れ落ちる。

 

喜びなさい、弔。君と同じような闇を持った仲間が生まれたよ。

 

 

「神々の最終戦争。『ギガントマキア』はもう居るし、君は『ラグナロク』ラグナロクと名乗るといい。その身に宿した混沌、ぴったりだろう」

 

 

 

 

 

☆     ☆     ☆

 

 

 

 

 

目を覚ましたら目の前にマスクマンがいた。

何を言っているのかわからないと思うが 

俺も何が起こっているかわからない。

 

夢の中でですね。

何かゴリラみたいな人が巨大ロボに向けて銃を乱射したのは覚えております。

こんな変な悪夢を見るって疲れてるのかな?労働はニートの天敵です。

で、目が覚めたら部屋の入口にこんな変なのが立っているわけですよ。

 

え?何?今で色々な人と融合してきて、その中には結構イロモノいたけど、これはまた意外過ぎる。

レスラーかな?

 

レスラーの中には自分のマスクにこだわりを持っていて議員になっても外さないって人いたけど、多分彼もその類なんでしょう。

スーツをピッシリと着こなしている点も、レスラーは普段私生活はきっちりしている人が多いと聞くので不思議はありません。

 

でこのマスクマン何やら喋っているのですが、起き抜けのため頭がぼんやりしてて内容が頭に入って来ません。

死んだサバの目で彼を見つつ、かろうじて理解できたのが、何やらもう大丈夫とか私を迎えに来たとかそんな言葉。

え?私ニート志望ですが、決してレスラーになろうなんて夢は抱いていませんが。

まあ女子レスラーとくんずほぐれつキャットファイトというのも、まあ夢がある話ではありますけど。

 

しかしレスラーが迎えに来るって・・・あのおっさんいよいよ私のマネージャーじみてきたな。

プロレスに参戦って何かのバラエティ番組でも見て思いついたんですかね?

 

私が気付いていないだけで、実はここはアイマス世界。

私はイロモノ枠に転生したのかも知れません。

確かニート志望のアイドルがいた記憶があるので、キャラが被るのが心配ですが。

他にも心霊系とかガンバリマスロボとかいたような・・・。

 

絶望した!!

基本色物アイドルしかいないこの世界に絶望した!!

 

 

でもこのマスクマン、何か見覚えがあるんですよね。

どこで見たのかな・・・。

 

 

・・・・・!!!!!!!!!!!!!

 

 

その時、頭の中を覆っている霞が晴れるかの如く、私はその事実に気が付いた。

目が澄み渡る。今まで霧に覆われていたような視界が不意にはっきりする。

 

目の前で何やらくっちゃべってるマスクマン。

そのマスクどこかで見たことがあるなと感じていたのですが、アレだ。

 

 

目の前の彼。

パンスト被った強盗にそっくりではありませんか。

 

 

うっすらと顔の形が浮かび上がっている所なんてもうそっくり。

 

そう思いついた瞬間、もうだめだと思った。

全身が震える。

呼気が肺から飛び出そうとする。

腹筋が引き攣る。

だめだ・・・まだ笑うな・・・堪えるんだ。

 

ぷるぷると震えている私を勘違いしたのか、ますます彼が得意げに何かを喋っている。

けどその内容は私の中に入ってこない。

想像してみてください。目の前にパンスト被った人がいて、真面目にその話を聞く気になれます?

少なくとも私は無理だった。

 

このマスクマンが喋るたびに前世で見たバラエティ番組、その中で頭からパンスト被った芸人二人が引っ張り合いするシーンが脳裏にフラッシュバックするんすわ。

マスクマンが動くたびにその事が思い浮かんで、もうね。

 

マジで我慢できなくなって下を向いて笑いをこらえていると、このパンスト何を勘違いしたのか

「仲間がいる」とか何とか言い出すわけですよ。

パンスト仮面とか滅多に見られるもんじゃないわ~。もっかい見といたろ。

顔を上げると笑いを我慢していたせいか、顔が熱く涙が零れてしまう。

で目の前にはパンスト。

我慢しろ私。今が堪え時だ。

 

で、このパンスト。

私を仲間に誘ってるらしいのですが、ないわー。

悪の組織って言ったらもっとスタイシッシュなものでしょ。地球儀の上に組織のマーク置いたり、ワイングラス片手にバスローブ姿で高笑いしたりするもんでしょ。

それがパンストって・・・コントの強盗かよ。

 

いや私もね、そんな間抜けな組織の勧誘断る気十分だったんですよ。

「我が正義に燃える心は決して悪には屈しない」

とかね。

万が一喧嘩になっても大丈夫。パンスト強盗が強いわけないじゃないですか。RPGのチュートリアルで出てくる雑魚みたいなもんでしょ?コイツ。

負けて

「くっころ」

女騎士状態にはならないって。

 

そう思ってキリッと格好つけようとする前に・・・

妹が勝手にイエスの返事をしてしまいました。

 

マジすか?妹?

君ら芸人に憧れてたの?

ヴィランになるとしても、せめてもう少しスタイリッシュな・・・

せめて洋画に出てくるようなギャングみたいな集団にしましょうよ。

ギャングいいよ、ギャング。

今なら黄金の精神もった下っ端がボスの娘護衛してるかも知れないし。

 

でその後何故かなし崩しに、このコント集団の仲間になることになりました。

妹たちも

「やったねお姉ちゃん。私たち悪の幹部だ」

「失敗したら床に穴が開いて落とされるのかな。あと蝶々マスクも被らなきゃ」

と大興奮です。

爪牙たちも悪の女幹部という言葉に何か琴線に触れるものがあったのか、当然ながら大喜び。

一糸乱れぬオタ芸を披露しております。

アレ?私の意思は?

 

 

で、何か私「ラグナロク」とかいうコードネーム貰ったんすけど、アレですかね?

このパンストもいい歳して、まだ中二病から回復していないんすかね??



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其ノ二  フィギア

死柄木弔は初めからその少女が気に入らなかった。

 

死んだような何の感情も映しださないその目。

ヴィランの中には死んだような目をする者は珍しくないのだが、彼女の目はそれらとは全く違っていた。

まるで・・・まるで生きながら地獄を覗き込んだ事のあるような目。

かつて個性を発動させた時の自分の様な目。

 

そう思った時、彼は思わず彼女の頭を掴んでいた。

間髪入れず個性を発動させる。

結果、彼女の頭は塵になった。

・・・これで大丈夫。自分の鏡はもういない。

自分は二人もいらない。先生に目をかけてもらえるのは自分だけでいい。

 

そう思った瞬間、

腹部に強烈な衝撃が走った。

「がっ!!」

有り得ない、彼女の頭は確かに自分の個性で崩したはず。

なのに、一瞬で再生している。

これは超回復、それに自分の腹部を襲った衝撃は明らかに人の出す力を逸脱していて・・・。

二つの個性?まさか、コイツ先生から個性をもらって・・・。

 

「再生に超パワー・・・なんだよ、それ、チートかよ、その個性」

 

吐瀉物に塗れながらも見上げるも、その双眸は何も宿さないままこちらを見下ろしていた。

負けられない。コイツは俺だ。

起き上がろうと四つん這いになった時、顎に強烈な衝撃が走った。

蹴り上げられた…。

そうわかったのは背中を大地に打ち付けた後であった。

「ぐ・・・」

呻きながらも起き上がろうとするも、脳が揺らされたのか全身に力が入らない。

唯一動く目だけに力を込めて、せめてもの抵抗に彼女を見返す。

自分をあれ程痛めつけたにも関わらず感情を感じさせないその瞳。そしてその傍に落ちているのは・・・。

「父さん・・・父さん・・・」

そのまま死柄木の意識は闇に落ちていった。

 

その後もこの少女は死柄木の感情を逆なでする行動を取り続けた。

自分らがアジトとしているバーに事もあろうにヒーローの人形を飾りだしたのである。

それも選りによってオールマイトとエンデヴァーを・・・。

自分の原点を汚すような、自分の原点を嘲笑うかのような行動。

耐え切れず少女の頭を砕くべく一歩前に出・・・ようとした

行動に移さなかったのはまた彼女の眼を見てしまったため。

No.1ヒーローとNo.2ヒーローを見つめるその目に言い知れぬ絶望を見てしまったからだ。

言い知れぬ哀しみを秘めたその瞳から、一筋の涙が流れ落ちるのを見てしまったからだ。

「もう大丈夫、僕が来た」

かつて先生に言われた言葉が脳裏に蘇る。

ああ、そうか。コイツも。

ヒーローに対して言い知れぬ絶望を抱えているのか。

ヒーロー人形を前に涙を堪え立ち尽くす少女。その少女にかける言葉は無く、死柄木はそのままそっと踵を返した。

 

 

やがて準備は整った。

とはいえ自分は雄英高校に忍び込んだ他はほぼ何もしておらず、計画を立て準備を整えたのはほぼ先生であるが。

まあ、そんな事はどうでもいい。必要なのはオールマイトを殺すというゲームをクリアする事だけだ。

しかし集められたヴィラン・・・

「なんだ、こんなガキがボスかよ」

「コイツ殺して俺がリーダー乗っ取った方が早くねえか」

騒ぎ立てるヴィランたちを前に死柄木は軽く絶望していた。

先生が集めてくれたのはいいが、どいつもこいつも数合わせ。

大した個性も無いくせに口だけは一人前の輩ばかりが揃っている。

俺はこんなバカどもとオールマイトと闘わなければいけないのか。

いやオールマイトは予定通りに脳無に殺させるとして、こいつらには子供の相手をさせるつもりだが、先ほどから騒ぎ立てるばかりでこちらの言う事等聞きもしない。

とんだクソゲーになるなら、いっそ今のうちに・・・。

 

思わず血が噴き出すのも構わず首筋を掻きむしろうとしたその時。

 

 

ふう。

溜息をつく音が聞こえた。

騒ぐヴィランを嘲笑うかのようなその声は響き渡り・・・。

そちらを見ると、相変わらず死んだ目をした女がいた。

何故か全身を隠すようにローブを身に纏っている。

隠された顔の下でその目が、自分の目と合った、そんな気がした時。

 

その姿が掻き消えると同時に轟音が鳴り響いた。

「・・・!?」

先ほどまで文句を言っていたヴィランは掻き消え、同じ場所には彼女が立っていた。

そのヴィランは向こうで壁にめり込んでいる。

 

辺りは一瞬で静寂に包まれる。

明白な力の差を見せつけられ、先ほどまで騒いでいたヴィランたちは今は狼を前にした羊のように青くなっている。

 

「何を・・・」

何をしているのかと問いかけようとした時、彼女はつと元の場所に戻った。

そして促すようにこちらを見つめる。

 

後は自分に任せるというのか。

ああ、そうだな。オールマイトを殺すのは俺でなくてはいけないんだ。

 

それにしてもいつも余裕の顔しているこいつは・・・

ああ、全く。

本当にこの女は気に入らない。

 

 

 

 

 

☆     ☆     ☆

 

 

 

 

 

皆様ごきげんよう。

こちらキーラ・ゲオルギエヴナ・グルジェワ改めラグナロクでございます。

いやいや、ここは悪の女幹部らしくご挨拶したほうがいいのかしら?

ふははははは、どいつも指の一本程度で消し飛ばせるような雑魚ども、ごきげんよう。

 

というわけで前回パンストの勧誘を受けまして、悪の組織に所属し中二臭い二つ名ももらった私でありますが、

・・・この組織結構ダメダメでありました。

 

いや来た当初は割と期待していたんですよ。

ヴィラン組織に相応しく四天王だとか、強化改造された戦闘員だとか。

この組織、人数がいねえ。

 

勧誘したパンストがボスというか黒幕らしいんですが、これがなかなかベッドから起きれない半病人。

本人が言うには昔No.1ヒーローと戦ってこういう体になったらしいのですが、しょせんパンストが言う事。

それは絶対にフカシで下着ドロでもした際に高所から落ちたとか、そういうんじゃないかと睨んでおります。

いっちょ前に専属の医者も付けるというナマイキっぷり。

 

でいきなりそんな事実を突き付けられて、失敗したなと思ってたところに追い打ち。

この組織、配下が医者のけて二人しかいません。

 

巨大犯罪組織と思ってたのが軽犯罪を楽しむ単なる迷惑な集団だったと判明して、思わず死んだサバの目になる私に彼らが紹介されました。

 

一人は黒霧さんといって、ワタクシごときに丁寧な挨拶をしてくれるという組織唯一の常識人枠。

自分の手足をワープゲートにして移動できるという個性も超便利個性。

私は彼を敬意を込めてどこでもドアと呼んでおります。

 

で、問題はもう一人。

死柄木弔とかいうクソガキがおります。

コイツは初対面の折、いきなり触るというセクハラ犯してきたのでとりあえずボコっておきました。

その際に

「個性が、チートが」

とか呻いていたので、個性中二病とかそういうものでしょう。

大丈夫、無駄に全能感は誰もが通る道だから。

 

この野郎は全身に手の形のアクセサリーをつけるという勘違いファッションが特徴的でして、

多分アレです。ヒッキーだった私にはよくわかりませんが、「はらじゅく」とかいう遠い地にこういう格好のが蠢いていると聞いたことがあるので、そういうのを気取っているのでしょう。

「黒く染まれ」

とか

「ガイアが俺に」

とかそういう雑誌見て勘違いした人間の末路を見ているようで、腹立ちと同時に妙な憐れみを感じます。

あとそういう意識高い系に相応しく目が死んでいるのも特徴。

個性「アンデッド」とかかな?

 

 

で最初の喧嘩の時、このアクセが取れた時に

「倒産、倒産」

と呻いていたわけですが、制作会社が潰れて絶版のレアアイテムになってるんでしょうか。

もしそうなら少し悪い事したなと。

 

他にもギガントマキアとかいう私同様中二称号をもらった人がいるらしいんですが、彼にはまだ会った事がありませぬ。

何でもナンバーワンヒーロー後の戦いを見据えて隠してあるというとか教えてもらったんですが、絶対にフカシで軽犯罪でも犯して捕まったんじゃないかとかってのに推測しております。

立ちションとかね。

 

以上私含め六人が組織の総数であります。

ダメな方向で少数精鋭とはこれ如何に?

 

で、初っ端から気勢をそがれたワタクシでありますが

パンストから次の計画を聞かされた時は思わず目が点になりました。

 

雄英高校襲撃!?

確かこちらに来て仕入れた知識だと、トップクラスの進学校でヒーローも先生として働いてるとか。

名前が売れてないからといって一発でかい花火を打ち上げようとするのは失敗の元なんですが・・・。

 

まあどうせ入ってみたとか言って不法侵入。

それを動画サイトに上げるとかそういうレベルでしょうけどね。

 

で、名前を売るといえばこの組織。今まで名称も無かったらしく急遽決める事になったわけですが、パンストの一声で

『ヴィラン連合』

とかいう身も蓋もない名前に決まってしまいました。

人には中二ネーム与えておきながら、たまに投げやりになるんだよなあ、このパンスト。

 

で基本考えるのはパンストと医者、たまにどこでもドア。

私らはその間何もしていなかったのですが、ガイア君ひたすら陰気臭いだけなのであまり絡まず。

溜まり場らしいバーみたいなトコを、もらったお小遣いで買ったフィギア飾ったりしてオタ部屋に改造して遊んでました。

ただこの世界のフィギア。ヒーローとかいう実在の職業の物が大半を占めているのですが、

一番人気が全身タイツのガチムチという所にこの世界の闇を感じざるを得ません。

二番手のヒーロー、赤髪の暑苦しそうなおっさんのも手に入ったので、並べて飾ってみましたがむさくるしさがさらに倍。

明らかにいけないプレイの真っ最中の二人にしか見えませぬ。

この何となく嫁さんに逃げられて子供は反抗期真っただ中な感じのするおっさん、この背中が煤けてそうなおっさん、彼が炎で作ったらしきバタフライマスクを着けているのがプレイの真っ最中感に拍車をかけております。

このおっさん、この姿でヒーロー活動をするって本気でしょうか?変態という名のカリスマでも目指しているのでしょうか。

名前エン・・・何とか言ったみたいですが、よく覚えられないので仮にパピヨンと呼んでおくことにします。

 

というかテレビ等ぼんやり見ている時、たまにこのおっさん映るのですが、明らかにNo.1のガチムチに対して色々拗らせている様子。

これはアレですね、いわゆる愛情の裏返しというヤツですね。

ガチムチに対してひそかに想いを寄せるパピヨン。その想いは彼の個性「火」となって燃え盛るのであった。

しかしガチムチはその想いに気付く事無く、弟子との禁断の愛に生きるのであった。

絶望するパピヨン、その想いはいつしか愛情から憎悪に代わり、彼はバタフライマスクで己の本心を隠しガチムチをライバル視する事となったのである。

昼ドラみたいですが、多分間違ってないような気がします。

 

しかし手に入るフィギアがほぼおっさんだけとは・・・。

あの美少女フィギアに囲まれたわが城は今いずこ。

俺は美少女並べたいんだよ!!ガチムチのおっさん並べたいわけじゃないんだよ!!

目が死んでいくのが自分でもわかりました。

情けなさに涙が出るのを必死で我慢します。あ、我慢しきれずに涙が二三滴・・・。

ああ18禁ヒーロー。貴女だけが私の救いです。

三十路近いらしいけど。

 

で私が遊んでいるうちに何か計画がどんどん進んでいったらしいのですが、

いやー居るもんですね。暇なバカ。

迷惑動画に参加したいという知識が三歳児の時点で止まってそうなのが、声かけるとワラワラ集まってきたみたいです。

ドイツもコイツもIQ低そうで非常に結構。

 

あ、あと一人こちらには秘密兵器がいます。

色々能力掛け合わしたというワタクシとキャラが被る、見えてる脳みそがチャーミングな脳無君です。

脳があるのに脳無とはこれいかに。

これは死柄木のいう事しか聞かないので、多分ばれた際主犯として出頭する鉄砲玉役でしょう。

高校に不法侵入とか一見してダメとしか言えない事をやっているのに、そういうみみっちい計算をする所が更にダメに輪をかけていると思います。

 

で、万が一迷惑動画がニュースに取り上げられたとします。

基本お茶の間の反応としてはいいとこバカがバカな事してるな。でしょう。

ま、それだけならいいんですが、デジタルタトゥーになって未来永劫恥晒すことになったらと思うと・・・。

こんなバカと同一視されて将来に禍根を残す事になるとまずいので、自分だけは顔が見えないようにローブ被って・・・と。

 

いう事聞かないバカがいて、なんか死柄木が縋るような目で見てきます。仕方ないので一発殴ってと、軽くなる個性か吹っ飛んでいきましたね。

良し大人しくなったね。全く遠足行く前の園児か、お前ら。

 

 

どこでもドアがワープさせてくれるらしいので、ちゃちゃっと行ってちゃちゃっと帰ってきますか。

 

はぁ、行きたくねえ。



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