けものフレンズR ~Rebirth~ (悠希とふ)
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0話 ぷろろーぐ 

けものフレンズ二次創作である『けものフレンズR』を元とした三次創作です。
この0話は前日譚で、1話以降のストーリーを補完する位置付けになります。

最終話まで放映が終わった後に公開された5~10分程度のオマケ映像というイメージ
(もしくはDVD最終巻の特典映像)


人工知能の開発が進み、機能に制限を設けながらも、

AIを搭載したロボットが世の中を賑わし始めた時代。

試験的に、ジャパリパークでも、パークガイドとしてヒト型アンドロイド、

通称ヒューマノイドの開発が行われる運びとなった。

 

パークガイドの象徴である、帽子の左右に取り付けられた赤と青の羽根。

これを模して、右目と左目にはそれぞれ赤と青の異なる色が採用された。

 

記念すべきヒューマノイド型パークガイド第一号の名前は、

パークの来場客から一般公募によって募られた。

そこから絞られた候補の中から最終的には職員内での投票により「ともえ」と決まる。

 

パークでの稼働が始まり、一躍時の人(?)となったともえに、

皆が様々な知識を連日のように与え続ける。

好奇心旺盛なともえはそのどれもに目を輝かせたが、

なかでも強い関心を持ったのが「絵」であった。

自分でも描いてみたい。

そう思うまでには、たいして時間はかからなかった。

 

あの子といえばスケッチブック。

皆が口を揃える程に、いつでも持ち歩いていたのがお気に入りのスケッチブックであった。

パークの行く先々で楽しそうにスケッチする姿は、パークの職員、来場客だけでなく、

フレンズ達の心も和ませた。

 

 

だが、幸せな日々にも終わりがやって来る。

急速に拡大を始めたセルリアンによる被害は、

もはやパークの運営を断念せざるを得ないレベルに達していた。

職員は避難、パークからの脱出を余儀なくされた。

ともえをパーク外に連れ出すのは早計という判断の下、パーク内研究施設において、

スリープモードで保管される事が決まる。

 

「必ず帰って来るからね」

 

研究員のその言葉と共に、

ともえの眠る、ポッドの扉は閉じられた・・・。

 

 

 

時は流れ

 

 

 

ここ数年でも一際大きい地震が、ジャパリパークに起こった日。

とある地方の老朽化した研究所、

その天上の一部が大きな音を立てて落下した。

天上や壁、相次ぐ崩落の衝撃で、一つのポッドの扉が開かれる。

 

ポッドの中には少女が一人。永い眠りから目覚めた所だった。

衝撃の影響でどこか頭をぶつけたのだろうか、

はたまた想定外の長きに渡る眠りが起こした予期せぬエラーかもしれない、

ともえの記憶回路には異常が発生していた。

パークで過ごした記憶は、その多くが失われてしまったようだった。

 

目覚めたともえには、ここがどこで、自分が誰かが分からない。

傍らには肩掛けかばん、緑と黄色から成る表紙のスケッチブック。

気のせいだろうか、何故だかそれらに親しみを覚えてしまう自分に気付く。

 

 

ともえはかばんに腕を通し、スケッチブックをしっかり両手で抱き締める。

再び目覚めた機械の少女は、

薄暗く埃っぽい瓦礫の中をおっかなびっくり歩み始める。

光の刺す方へと。

 

 

 

 



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1話 りばーす  【Aパート】

アニメーション作品、けものフレンズ2の二次創作である『けものフレンズR』を元にした三次創作です。


ここ数年で一際大きい地震の起こった日。

ジャパリパーク内、とある地方の老朽化した研究所、その天上の一部が大きな音を立て落下した。

施設の崩壊はそれだけでは止まらない、壁や機材、あらゆる物が元ある形を失っていった。

 

崩壊が一段落し、静けさを取り戻した研究所。

相次ぐ崩落の影響か、一つのポッドの扉が音を立て開かれた。

 

ポッドの中に居たのは一人の少女であった。

年恰好は十をいくつか過ぎたといったところだろうか。

先程の地震でぶつけたのか、しきりに頭を押さえている。

 

「痛たーーーーー・・・・・・・」

我に返り、黙り込む少女。

 

「ここは・・・・・・どこ?」

 

「というかわたしは・・・誰??」

 

怪訝な顔をして首を傾げている。

どうやら少女は記憶を失っているらしい。

 

ふと、少女は自身の傍らに置かれている物に気付く。

斜めがけの肩掛けかばん、それに緑と黄色、2色からなる表紙の付いたスケッチブック。

何故だかそれらを見ていると、妙な親しみを感じてしまう自分に気付く。

 

「わたしの・・・なのかな・・」

 

疑問は次から次へ湧いてくるが、

とにかくここにじっとしてるわけにもいかない。

そう思い、恐る恐るポッドの外に顔を出してみる。

 

研究所の中は薄暗く、瓦礫があちらこちらに転がっていた。

 

意を決し、

少女はかばんに腕を通し、スケッチブックをしっかり両手に抱き締める。

崩落から時間を経ていない、まだ埃っぽい施設の中を、おっかなびっくり歩み始めた。

目指すのは、暗闇の中、かすかに刺し込む光の方へ。

 

光の場所まで辿り着いた少女はそこが扉である事に気付く。

取っ手に手をかけ後ろに引くと、扉はいとも簡単に開いた。

 

突然、少女は光に包まれる。

目の前には溢れんばかりの陽の光、そして見渡す限りの草原が広がった。

少女の口から思わず言葉が漏れる。

 

「綺麗・・・・・」

 

 

少女は歩いている。

行く先は分からない。

とにかくただ歩いている。

目に入って来るのは、行けども行けども代わり映えのしない草原だったが、

暖かな日差し、吹き抜ける風は心地よく、不安な気持ちは遠のいていた。

 

しばらくすると、遠くに何かが見えてくる。

 

「あれは・・・なんだろう」

 

ぼんやりとだが遠くに小さな建造物が確認できた。

ようやく現れた目印、少女の歩調が速くなる。

 

近付くにつれ分かってきたのは、建物自体はそこまで大きいものでなく、

そうした物がいくつか集まっている場所という事だった。

 

建物もその周りも、辺り一帯が綺麗に手入れされている。

しかし、それとは裏腹に生き物の気配は不思議と希薄だった。

誰も居ないのか。少女が思ったその時、ひとつの建物の扉が開く。

 

「どなたですか?」

 

出てきたのは頭に大きな耳のある、髪も服装も灰色の少女であった。

 

「あ、こんにちは!」

 

「こんにちは。何か御用ですか」

 

「えと、えと」

少女は突然の事態に戸惑い、うまく反応できない。

 

「・・・あなた・・見かけない顔ですが、何のフレンズです?」

灰色の少女は訝しげに尋ねた。

 

「フレ・・ンズ?」

 

「・・・・?」

(変わった子ですね。それに、今迄に嗅いだ事のない不思議な匂い。

知っているどのフレンズとも違う。・・・・もしかして!)

 

「あなた!ひょっとして、ヒト・・ですか!?」

尻尾を大きく振りながら白い少女は興奮した様子で身を乗り出す。

 

「ふえっ、今度はヒト!? ・・・ごめんなさい。ソレも分からない」

 

「・・・そうですか」

打って変わってしょんぼりとする灰色の少女。

尻尾も一緒にうなだれている。

 

二人の間に沈黙が流れる。

 

その時、気まずい時間を終わらせるように、大きく間の抜けた音が辺りに鳴り響いた。

 

キュルルルルル・・・・・

 

音の出所はスケッチブックの少女のお腹からだった。

 

灰色の少女は微笑みながら

「お腹は・・すいてるみたいですね」

 

「それは・・・そう・・みたい・・」

よほど恥ずかしかったのか、赤面し、俯いたまま肯定する。

 

スケッチブックの少女は、

招かれた家の中、振舞われたジャパリまんを頬張りながら説明した。

自分が今しがた目覚めた事、そして記憶を失ってしまった事。

 

灰色の少女は興味深そうに話に耳を傾けている。

家の主、灰色の少女は、名をイエイヌと言い、

ヒトの社会の中で、共に生活する動物。の「フレンズ」だった。

 

「フレンズというのは、動物がサンドスターの影響でヒトとそっくりな姿に変化したもの。

 なんです」

 

「ふぇーー。すっごいね。じゃあ、もしかして、

 わたしもそのフレンズなのかな」

 

「そう・・だと思います。でもあなたのようなフレンズを見た事はないのですよね」

 

「じゃあ・・、もしかしたらヒトかも!」

 

「・・かもしれません。私はヒトを見た事がないので自信はありませんが」

 

「うーーーん・・・そっかぁ」

少女は腕を組み、目を瞑り考え込む。

 

「・・・その・・、もしよかったら、記憶が戻るまで、ここで私と暮らしませんか」

 

「うーーーん・・えっ!?・・・うーーーん・・・」

一瞬反応し、また考え込む少女。

 

「何か・・問題が?」

 

「そう言ってくれるのはとっても嬉しい・・んだけど、今は早く自分が誰なのか思い出したい・・。

手がかりといってもこれしかないんだけどね」

目線を写し、掴もうとしたスケッチブック。ページが開くのに気付く。

 

「ん?なんだこれ」

驚きつつページをめくり始める少女。

 

 

「それは・・もしかして、絵というものではないでしょうか」

 

「絵・・。そうなのかな。たぶん風景を描き残したものなんだと思う」

 

ここに描かれた場所に、自分を思い出す手がかりがあるかもしれない。

もしかたしたら自分を知ってる誰かだってみつかるかもしれない。

希薄だった手がかりが一転、大きな存在感を持つ。

 

「この絵の場所を探してみる。そしたら何か分かるかもしれないから」

 

「そうですか・・・。引き留めてしまってごめんなさい」

 

「ううん、気にしないで。嬉しかったから」

 

「その絵の場所が、早くみつかるといいですね」

 

「うん!ありがとう」

 

少女はイエイヌの家を後にする。

実は近い所にあったスケッチブックという新たな手掛かりを携えて。

 

【 Bパートへつづく 】



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1話 りばーす  【Bパート】

アニメーション作品、けものフレンズ2の二次創作である『けものフレンズR』を元にした三次創作です。


少女を送り出した後、イエイヌは逡巡していた。

本当にあの子一人で行かせてよかったのだろうか。

自分が付いていくべきだったのでは。そうした思いが頭を巡る。

 

慣れ親しんだイエから遠く離れた生活には不安が募る。

目の前に現れかけた大きな変化に尻込みをする自分が居た。

 

それでも、後悔のような念はなかなか消えはしなかった。

(この世界には危険だってないわけじゃない。

 セルリアンだって、居るのだし・・・)

「あっ!?」

とある記憶がイエイヌの脳裏をよぎる。

 

近頃、ここからそう遠くない森にセルリアンが出没している。

以前、旅のフレンズをもてなした際にそういう話を聞いたのだった。

自分には関係のない話。

どこかそういう思いが記憶を隅に追いやっていた。

 

 

 

「うわ~~~~~!!!」

森の中を走る少女。

後ろからは少女の背丈を少し超える、セルリアンと呼ばれる黒い物体が続く。

 

「なんなの~~!!!」

逃げても逃げても追いかけてくるセルリアン。

少女はわけも分からず逃げ惑うしかできない。

 

黒い物体から伸びている触手のような器官は、自身の進行に邪魔な木々を次々に叩き折っていく。

どう考えても友好的な雰囲気ではなさそうだった。

そして相手の力はとてつもなく、とてもじゃないが太刀打ちできそうにない。

 

「はぁはぁ・・あ痛っ!!」

逃げる最中、木の根に足を取られ倒れる少女。

セルリアンとの距離が徐々に縮まっていく。

 

「うぅぅ・・・」

うずくまる少女の頭上に触手の影が差す。そして。

 

触手は少女めがけて降り下ろされる。

「っっっっっ!!」

 

・・・

 

咄嗟に目を瞑り体を強張らせていた少女は、違和感に気付きうっすらと目を開ける。

 

「・・・あれ?」

 

目の前には、セルリアンの触手を受け止める、

先程別れたはずのフレンズの姿があった。

 

「よかった。間に合って・・」

 

「イエイヌ!?」

 

黒い触手は暴れ、イエイヌの手から強引に抜け出し引き戻されていく。

 

新たに現れた標的をセルリアンも認識したようだった。

二本の触手はイエイヌに向かってゆらめいている。

 

 

イエイヌにはフレンズはおろか、セルリアンとさえまともに争った経験がない。

自分の身長程のセルリアンなど、普段であれば当然立ち向かう対象ではないはずだった。

 

しかし、何故だろう。湧いてくるはずの恐怖はどこかへ消えてしまっていた。

この子を護りたい。その一心がイエイヌの全てを満たしていた。

(この子を連れて逃げ切れる保証はない・・)

ぎこちないながらも、覚悟を決めて構えを取る。

 

(この子を・・・護る!!)

イエイヌの瞳がかすかに発光する。

 

ゆらめく触手はその動きを止め、そしてイエイヌに向けて放たれた。

「バチィィッ!!」

 

凄まじい音が辺りにこだまする。

触手をかろうじて弾き返したイエイヌだったが、両腕は大きく痺れたままだ。

尚もセルリアンの攻撃は止まらない。

 

「バチィッ!」

 

触手をなんとか弾きはしたがイエイヌ自身も大きく身を揺るがせる。

そしてもう一本の触手がイエイヌを襲う。

 

「くっっ!!」

 

すんでの所で後ろに飛びのき難を逃れる。

触手は地面に突き刺さっていた。

 

「イエイヌもういいよ。私を置いて逃げて!」

 

少女の声が耳に入った。だが、それは聞けない相談だ。

 

(セルリアンの倒し方なら話に聞いて知っている・・。

体のどこかに存在するコアを破壊する。それだけだ)

 

接近しなくてはならない。

しかし、それを二本の触手が阻む。

 

近付いては離される。

そうした攻防が幾度か繰り返され、徐々にイエイヌの体力を奪っていく。

 

「ふぅっ、ふぅっ」

 

だが繰り返し続くやり取りの中、気付いた事もあるにはあった。

攻撃の威力は凄まじいが、その動作自体は単調で、

一定のリズムがある事に。

徐々にイエイヌが攻撃を躱す回数が増えていく。

 

肩で息をしながらも、

触手の動きに集中し、脚に力を蓄える。

 

(1,2の・・3!)

 

触手が放たれると同時に、身をかがめ前に駆け出した。

頭上スレスレを触手が通過する。掠めた髪の何本かが宙を舞う。

 

残った体力を振り絞り全速力で疾走する。

 

「ウゥゥゥゥ・・・でやぁっ!」

イエイヌの右手がセルリアンの「目」を掴む。

 

(ここで決めてみせる)

 

さらに左手を使って上下から押し潰す。

両手に自分のありったけを込める。

 

「ぐぅぅぅぅぅ!!」

 

ピシッ

 

目から亀裂の入った音がする。しかし破壊には到らない。

大慌てで踵を返した触手はイエイヌに向かって迫り来る。

 

(もうこんな機会は訪れないかもしれない。決めるんだ)

「うぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

「イエイヌ!しゃがんで!!」

声が耳に入ると同時に、さっきまでの力は嘘のように抜け、

イエイヌの体は自然に動いていた。

 

イエイヌを貫くはずだった触手は、標的の動きに反応できず、

セルリアン自身のコアを貫いていた。

 

「パッカァーーン」

大きな音を立て、セルリアンの体は粉々に砕け散る。

 

(終わった・・・)

(あの子の助けがなければ危ない所だった)

瞳の発光は消え、元のように戻っていく。

 

イエイヌは疲れ切りながらも、安堵の表情を浮かべ、少女の方へ振り返る。

その時、束の間の平穏は絶望に変わる。

 

 

少女の後ろから、もう2体の同型セルリアンがこちらに近づいて来るのが見える。

騒ぎを察知し集まって来たのだろう。

 

少女も、どうしていいか分からず呆然とそれを見つめている。

 

(やれ・・・るのか。いや、やるしかないんだ!)

折れかけた心を再び呼び起こす。

イエイヌが少女の方へ走り寄ろうとした瞬間、

 

二体のセルリアンの間を何かの影が奔り抜けた。

「パカパッカァーン!!」

 

突如爆散する2体のセルリアン。

 

それを成したであろう張本人は、振り返りもせず平然と立ち去っていく。

外套を頭まで被った出で立ちで、表情も何も窺い知る事は出来ない。

 

(ぽっかーん・・・) 

 

「助かった・・んだよね」

 

二人は呆然としたまま、小さくなっていく人影を見つめていた。

 

人影がついには見えなくなる程遠くへ行った頃、

脅威は去った。

やっとそういう認識が二人の間で起こり始めた。

 

「う・・うぇぇぇぇぇん!怖かったよ~~!!」

溜まっていた不安や恐怖が一気に噴出したのだろう。

少女はイエイヌに抱き着き安堵の涙を流す。

 

イエイヌはなだめるように少女を抱き寄せる

 

(なんとか護る事ができた・・。)

イエイヌは安堵すると同時に、今迄感じた事がない程の達成感を感じていた。

 

「イエイヌ!大丈夫だった。怪我してない!?」

 

「フフ・・大丈夫です。私達フレンズは頑丈にできてるんです」

空元気をみせつつ、少女のスケッチブックが落ちてる事に気付き、それを拾い上げる。

 

「はい、落とし物ですよ」

 

「あっ、ありがとう・・・・・って、あっ~~~~!!??」

スケッチブックを手渡された少女が今迄で一番大きな声を上げる。

 

「どっ、どうしました!?」

咄嗟の事に面食らうイエイヌ。

 

「ともえだ・・・」

 

「?・・とも・・え?」

 

「うん!ともえだ!わたしの名前!!」

少女は上気した顔で、スケッチブックの一点を指さして応えた。

 

落とした際にページが開いたスケッチブック。

顕わになったその背表紙には小さく「ともえ」と書かれていた。

 

恐怖のどん底から一転して、これ以上ない喜びが訪れる。

感情は爆発し、もう何が何やら分からない。

そして何故だか涙が溢れてくる。

 

「ともえだ!!ともえ!!」

 

イエイヌもつられ我が事のように喜ぶ。つられて涙もこぼれ出す。

 

「ともえ!ともえ!!」

名前を連呼しながら、泣き、喜ぶ奇妙な二人組。

その姿はそれから暫らくの間続いた。

気付けば辺りは夕暮れ時、そろそろ暗くなり始める頃合いだった。

 

 

夜が更け、二人は森の出口で眠りについていた。

 

ここからなら何かあってもすぐに森を抜けられる。

日の落ちたなか、家まで向かうよりは、身を潜めていた方が賢明に思えた。そして何より家に帰る気力が湧いてこない程疲れていた。

 

傍らで眠るともえを優しく見守るイエイヌ。

胸中にはとある思いが固まっていた。

 

 

 

夜が明け、目を覚ますともえ。イエイヌが声をかける。

「おはようございます」

 

「ふわ~~。おはよう。イエイヌ」

目を覚ましたともえは、この後イエイヌと再度の別れがある事を思い出す。寂しさからか不安からか表情に影が差す。

 

イエイヌは、立ち上がり、

 

「さあ!夜も明けたし、出発しますよ!

 ともえ!・・・・・さん」

 

先陣を切って森の出口へ歩み出す。

 

少女は一瞬呆然とし、そしてすぐさま満点の笑顔で駆け出した。

 

「ともえでいいよ!!」

 

目の前の背中に飛び付く。

 

天気は快晴。降り注ぐ陽の光の中、笑顔の二人は歩み出す。

記憶を失くした少女、ともえ、とイエイヌの旅が今ここに始まった。

 



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6話 すぴーど  【Aパート】

「それにしても。この辺の道は結構入り組んでいますね~」

「そうだね。油断したらすぐ迷っちゃいそう。・・よっと」

 

ともえが地面の小さな亀裂を飛び越え、垣根から姿を出したその時、

右から猛スピードで接近してくる物体があった。

 

「うおおおおおおお!!!!!どけーーーー!!!」

 

「!?」

 

ガチィィィィィン!!

 

為す術もなく声の主と正面から激突するともえ。

互いの額が快音を打ち鳴らした。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

顔を抑えて左右に転げまわるフレンズらしき存在。

頭部に付いた羽根から察するに、おそらく鳥類のフレンズのようだ。

 

「・・・・・・・・・・・・・」

対するともえは膝から崩れ落ち、白目をむいて天を仰いでいる。

気のせいだろうか、口から昇る煙が見える。

 

「お、お前ら!突然飛び出して来たらあぶないじゃねーーか!!」

辺りを転げ回っていたフレンズはやっとの事で立ち上がりこう告げた。

 

あまりの事に狼狽えていたイエイヌだったが、思いがけない一方的な抗議を受け、

溜まらず言い返す。

「そ、そっちこそ、そんなに速く走っていたら危ないでしょう!」

 

「なに~~!!」

「なんです!!」

 

二人の言い争いが激しさを増そうという時、横から茶々が入れられる。

「あ~~、またゴマスリが揉め事起こしてる~~」

「いけないんだ~~」

 

声の主は、こちらも鳥類だろうか。

全身が黒に染まったフレンズの二人組だ。

 

「うるせー!今は取り込み中だ!」

 

 

「まーーた懲りずにケンカしてんのあんた達」

騒ぎを聞きつけたのか新たなフレンズがまた一人。

 

「うぇ~~んチーター。ロードランナーがいじめる~~」

「いじめる~~」

 

「はいはい」

チーターと呼ばれたフレンズに泣きつく二人組。

こっそり振り向き二人同時にあっかんべ。

 

「くっ!チーター。すぐにアンタのスピードを超えてやるからな。

今に見てろ!!」

 

ともえと衝突したフレンズは捨て台詞を残して、

瞬く間に走り去ってしまった。

 

 

「あぁ面白かった。わたし達も行こ。カンちゃん」

「フフフフ。そうだね。カケちゃん」

 

「じゃあね~~チーター」

ひとしきりからかって満足したのか楽しそうに去って行く二人組。

 

さっきまでの騒ぎが嘘のように、辺りに静寂が戻ってきた。

「やれやれ・・。あなた達、大丈夫?・・・そうじゃないわね」

 

「ハ・・ハイ」

イエイヌの隣でともえは、未だに白目で空を仰いでいる。

 

 

「ところで、あなた達この辺じゃ見かけない顔ね」

 

その言葉でやっと我に返ったともえ、額を抑えながら応える。

 

「うん。わたし達ね、ここに描かれてる場所を探して旅をしてるの」

そう言ってスケッチブックを開いて見せる。

 

「ふーん随分変わった事してるのね。どれどれ」

ページをめくり眺めるチーター。

「・・・うーん、ちょっとどれも・・・知らないわね」

 

「そっか~。残念」

 

「ん~~、まあ、一応アイツにも聞いてみるか。ちょっと付いて来て」

 

 

三人は道すがら、お互いに自己紹介をしながら歩いていた。

 

「さっき私達が出会った方。確か・・ゴマスリ・・さんでしたか?」

 

「あ~、またあの子達が変な事言ってたのね。

ゴマスリってのはあの子達が付けた渾名。ったく、どこでそんな言葉覚えてくるんだか。

走っていった子、あの子の名前はG・ロードランナーよ」

 

「すっごいスピードだったね~」

 

「まあね。私ほどじゃないけれど」

 

「えぇ!?」

チーターの発言に驚く二人。

 

「チーターさんもそんなにお速いんですか!?」

 

「まあ一応ね。この辺では一番速いって事になるかな」

 

どこか得意気に答えるチーターに遠くの方から待ったがかけられた。

「それは聞き捨てならんな~~!!」

「そうだぞ!界隈最速はプロングホーン様に決まってるじゃねーか」

先程ロードランナーと紹介されたフレンズも一緒のようだった。

 

 

「ハァ?何言ってんの。実際に私の方が速いじゃない!」

 

「それは短い距離に限った話だろう?そうでなければ私の方が最速だ!」

「そうだそうだ。距離を区切るだなんてスケールがちっせぇよなぁ。

 笑っちまうぜ!」

 

「ハイハイ・・もうそれでいいわよ。

 まあどっかの誰かさんにはどっちとも勝ってるけどね」

小声で付け足すチーター。

 

「ぐぅ!?くっそ~~!!もう一度特訓のやり直しだ!!

 今に見てろ!!」

ついさっきと同じように再び走り去るロードランナー。

 

「はっはっは。青春よな~~」

「どこがじゃ・・」

 

今まで何度も繰り返されてきたのだろうか、どこか慣れたような彼女らのやり取りを、ともえとイエイヌはぽかーんと眺めている。

 

「それよりチーター。後ろに居られるお二人は誰かな?」

「あぁ、そうだった。この子達がちょっと聞きたい事があるみたいなの  よ」

 

 

ともえとイエイヌは自己紹介の後、

プロングホーンと呼ばれたフレンズにもスケッチブックを見せる。

 

「おぉ。ここに描かれている景色なら似た所を知っているかもしれん」

とあるページに反応するプロングホーン。

 

「ホント!?」

「うむ。だが、ここからはちと遠いのでな。明日になったら途中まで案内しよう。今日はここに泊まっていくと良い」

 

「やったー。ありがとう!」

「いやいや、なんという事はないよ。はっはっは」

 

「よかったわね。じゃあ私はこれで」

「うん、チーターもありがとう!」

 

 

プロングホーンの住処から少し離れた場所、ともえは鼻歌交じりで風景を描いている。

イエイヌは傍らでそれを眺めている。

 

「手がかりがみつかりそうで、よかったですねともえ」

「うん!大きな前進だよ」

 

その時、二人の会話を遮って、誰かの悲鳴が響き渡った。

「キャーーーーーーーーッ」

 

「あの声は・・」

悲鳴はどこか聞き覚えのある声をしていた。

 

「行こう!イエイヌ」

「ハイッ」

 

【Bパートへ続く】

 



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設定資料集
設定資料 人物編


自分用の、設定を纏める場所です。


・ともえ

試験的に開発、導入されたパークガイド・ヒューマノイドの一号機。

結果を見て後続が続く予定だったがセルリアンの被害が拡大しパークが閉鎖、計画も立ち消える。ともえは研究施設でスリープモード。

人間味を増し、人々に親しまれるため、エネルギーの補給はジャパリまんによっても行える。

エネルギーが減るとお腹からキュルル音が鳴る。

ジャパリまんを摂取するうえでも、体内にサンドスターを吸収する機構が組み込まれているため、パーク外での活動は未知の部分が多く、パーク閉鎖時は外に連れ出されず待機となった。

 

永年のスリープとサンドスターの減少、それらに地震時の衝撃が加わって、記憶回路に異常が発生、パークでの記憶が断片化し取り出せなくなる(思い出せなくなる)。

データとしては、ガイドとして最低限の、動物、フレンズの知識もインプットされていたが記憶と同様に再生できない(何かの拍子に想起される事はあるが本人も理由は分かっていない)。

 

後にアンドロイドのフレンズとして生まれ変わる際に記憶とデータが統合され復元される。

 

 

・イエイヌ

ヒトに憧れるフレンズ。ヒトを実際に見た事はなく、ヒトに伝わっている話を聞いたり遺物を収集したりするのが好き。

かつてヒトが住んでいたと言われる、家の集まった簡易的な居住スペースをみつけてからはそこに身を寄せ暮らしている。

 

自分の家や周りの家、庭を手入れするのが趣味。

たまに訪れる旅のフレンズや友人が来ると泊めてもてなす。

旅のフレンズからは、知っているヒトの話を教えてもらう。

(紅茶という物もそこで知り、実践を重ねている)

外界や外のフレンズとの交流は乏しいが、当の本人は、ヒトを感じられる生活の方が大事で、そこまで問題に感じていない。

 

食料が減ったらジャパリまんを求めて少々遠出する。

主に近くの集落に住んでいる知人に分けてもらう。

長い外出はこの時くらい。

ラッキービーストはイエイヌが現在もその辺りに生息していると思っており、彼女の分も配給している。

現在イエイヌの住んでいる家は、元々人間の居住スペースで、巡回のコースから外れた管轄外であり、感知していない。

 

 

・G・ロードランナー(オオミチバシリ)

 

意地っ張りで天邪鬼、つい軽口を叩いては反感を買う。

淋しいながらも普段は割と独りで居る事が多い。

大人物と尊敬しているプロングホーンにだけは全面的に従順で賛同する。

 

はーはっはっは(大物風のプロングホーン)

さすがプロングホーン様!

 

師匠と慕っているプロングホーンの腐れ縁で、ライバル的存在、とロードランナーが勝手に思っているチーターには対抗意識を燃やしているが相手にされていない。

いつか走りでチーターを超えるという野望を胸に日夜特訓の日々。

 

野生開放についてプロングホーンから聞かされており、それをモノにしたいと思っているが、上手く発現できず、悩んでいる。

 

 

・アムールトラ 

 

1話でセルリアンを退治するボロの外套に身を包んだ者の正体。

かつて大事な存在(友か、集落などの幾人か)をセルリアンによって失った。その時の生き残り。

セルリアンに恨みを抱いており、各地を放浪し、フレンズから出現情報を聞いては八つ当たりのように戦い続ける。

 

元々の高いポテンシャルに加え、度重なる戦いから戦闘能力が磨かれ、パークでもかなりの上位クラスと言える。

大型のセルリアンに対する際は野生開放も(無意識ながら)発現し、獰猛になる。

 

セルリアンをいくら倒しても心が救われる事はなく、心のどこかで死に場所を求めている。仇であるセルリアンをみつけ、滅ぼす事が目的ではある。

 

他のフレンズはセルリアン退治を感謝しながらも恐れを抱いている。

セルリアンと戦う際の、その恐ろしい姿を見て、裏では、ビーストという渾名で恐れられている。

アムールトラ自身も自分がそう呼ばれている事は気付いている。

恐れる気持ちも理解できるが、どこかどうでもいいというような他者に対する溝ができてしまっている。

 

普段は雨風を凌ぐため、また、自分を見られたくもない、他者に興味もない、種々の感情が入り混じり、どこかでみつけた顔まで覆う外套を着用している。

 

 

 

 

【各キャラ一人称】

ともえ     ;わたし

イエイヌ    ;私

ロードランナー ;アタシ

アムールトラ  ;オレ

 

【相手を呼ぶとき】

ともえ    ;名前呼び

イエイヌ   ;名前呼び

ロードラ   ;おまえ(ともえ) おまえ(イエイヌ)アンタ(トラ)

 

アムールトラ ;青いの(ともえ) 犬(イエイヌ)、鳥(ロードラ)

        全員に対して 貴様→お前 に変わる 

        シリアス展開時は名前呼び

 



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設定資料 展開編(ネタ出し中)

自分用の、設定を纏める場所です。


1話  りばーす Rebirth ともえの復活

12話 り ばーす Re birth ともえの再誕 生まれ変わり(フレンズ化)

 

11話 とうそう 闘争と逃走(ともえ)のダブルミーニング 視聴者に闘争と思わせるミスリード

 

 

9,10話辺りでアムールトラ回

アムールトラが単身強大なセルリアンに挑み、重症を負う。

ともえとの交流が描かれる。かつて仲間を失い、生き残った自身に負い目を感じ、自罰的なアムールトラをともえが赦す。一緒に泣き、哀しむ

 

構うな。オレは・・・ビーストだぞ。

ううん、違う。あなたはフレンズ。アムールトラだよ。

っっ・・!!

 

トラは心のどこかで救いを感じる。外套はこの時を最後に捨てられる(次登場シーンから)

心を開いた事と仲間となった事を表す視覚的変化。

 

 

最終話は 11と12話の前後編

トラが敗北したセルリアンにリベンジする。

そうしないとパークのセルリアンの被害が拡大する設定

 

例えば

1話でともえが目覚める原因となった地震から、フレンズの誰かが火山の噴火が起こり得る事を予見、噴火によるセルリウムの増大の前に、サンドスターろ過装置を修復する必要がある。そこに行くにはそれを邪魔するセルリアンを倒す必要がある。

 

セルリアン倒しとパークの救済 を同じ線に置く

 

11話での噴火云々の設定で行くのなら。

 

11話の最後でともえが腕に大怪我を負う。切断よりも折れる系の方がいいか。怪我もショックの一同だが、傷跡から機械の体をしている事が判明する。ともえはヒトでもフレンズでもない自分の出自を知り、大きく傷つき逃亡(逃走)する。

 

12話で傷つき戦う仲間を見て、奮起する。

自身がヒトでも機械でも仲間を救いたいという気持ちに変わりはないと悟る。

 

体をセルリアンとの接触で損傷しながら火山の装置を修復する。

その後火山が噴火しサンドスターを浴びた仲間は回復。再び立ち上がる。

そしてボロボロの姿からアンドロイドのフレンズとして生まれ変わるともえ。

頭の片隅に存在はしていた。失われていたパークでの記憶も取り戻される。

戦線に復帰し、ボス的なセルリアンとの最後の闘いが始まる。

 

ともえはロボットの特性から発展させ、

計算が得意になるという設定はどうか。

状況を計算し、シュミレーションする。

考えをを生みだすかばんとは違い、在る物をより良い正解に近づける力。

 

ボスに苦戦している中、

脚が早いが決定力に欠けるロードランナー、攻撃力が高いがボスの急所(背後等)を取れない様子を見て、作戦を提案する。

ロードランナーがトラと手を繋いで走り、敵を翻弄し裏に回り込み急所へトラを投げつける。その最中はイエイヌが敵の攻撃を防ぐ。

トラが急所の外郭を剥がし、攻撃を加える。

 

最後は亀裂が入ったコアか何かにロードランナーの頭突きか何かでコアを破壊する(見せ場づくり)

 

攻守走のチームワークが完成する。

それぞれが行動中に野生開放される(瞳が輝く)。

一番強く光るのはアムールトラで、後は淡い(経験値の差)。

 

記憶が戻ったともえは、自身と共に存在していた、人類がどうなったのかが知りたい。イエイヌも、どこかで憧れていたヒトのその後は他人事ではない。他二人の目的に大きな変化はないが同行に変わりはない。

 

ともえの旅が自分探しから、パークに何が起こり、起こっているのか、ヒトはどうなったのかを知る旅に変る。

 

これはアニメ一期で起きたかばんの旅の変化とも対応している。

時間軸をどこに置くか決め込む事も無いがかばんの旅の裏(リバース)

で起こっていた物語とする事が、この話のタイトル(りばーす)的にも意味が生まれるのではないかとも思う。

 

 

 

 

 



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