IF日本国召喚~憲法改正後の日本が転移しました (RIM-156 SM-2ER)
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プロローグ 転移

皆さまどうもSM-2です。今回より新シリーズの投稿を始めます。こちらは不定期に投稿させていただきますが応援して頂けるとありがたいです。


20XX年

 

十五年前に体験した尖閣紛争で日本は憲法改正を行い自衛隊は国防軍に生まれ変わった。空母や爆撃機、弾道ミサイルや核などの攻撃兵器を導入しアジアで3番目の軍事力を持つ*1ようになった。また、集団的自衛権が認められ、日米地位協定などの条約も改正された*2

そんな日本は突如として異世界に転移してしまうのだった。

―――――――

まず、その異変に気が付いたのは喜界島通信所だった。突如として大陸からの電波が消えたのだ。通信所の職員は直ちにそのことを防衛省に連絡した。

次に異変に気が付いたのは国立天文台だった。星の位置がまるっきり違ったのだ。そのほかにも領空外を飛行していた航空機がレーダーから突如消えたり、海外と通信がつながらなくなった。事態の収拾をはかるため日本政府は国防軍に対し付近の調査やレーダーから消えた航空機の捜索を命じた。

―――――――

中央暦1639年1月24日

 

クワ・トイネ公国軍の竜騎士マールパティマは自身のワイバーンを操り公国より北東約100kmを哨戒飛行していた。公国から北東には何もなくただ大海原が広がるだけである。新天地を求める冒険者が北東の方角に向かったが帰ってきたものはいまだ一人としていない。

さて、マールパティマは雲一つない青空を心地よく飛んでいると違和感を覚えた。違和感の正体をつかむべく、その違和感があったほうを見ると何かが見えた。

そのなにかは黒くのっぺりしており羽ばたいていなかった。

 

「なんだ!あれは!」

 

ワイバーンや鳥ではない何かが自分しかいないはずの空を飛んでいた。マールパティマは魔信機のスイッチを入れると司令部に連絡した。

 

「我、未確認騎を発見!これより要撃を行う」

 

相手は相当早いらしくすでに輪郭がはっきりするほどまで近づいた。その飛行物体は翼の先をピカピカと光らせキィーーンという甲高い音を発していた。

未確認騎とすれ違うと反転し一気に距離を詰める・・・・はずだった。だが未確認騎はとても早く時速235kmを誇るワイバーンをいともたやすくおいていく。

 

「くそ!なんなんだ!あれは!」

 

マールパティマは驚愕しつつも司令部に連絡を入れた。

―――――――

一方マールパティマとすれ違った未確認騎―――R-3戦略偵察機のパイロットとガンナーも驚いていた。なにせ、架空の生物であるはずのドラゴン(正確にはワイバーン)とすれ違ったのだ。

するとガンナーがとあることに気がついた。

 

「機長!レーダーコンタクト(レーダー探知)正面に機数12!!速度124ノット!まっすぐ近づいてきます!」

「124・・・・・?航空機にしては遅くないか?民間のセスナより遅いぞ?」

 

パイロットは報告を怪訝に思いつつ前方に目を凝らした。すると青い空にぽつぽつと黒い点が見えた。じっと目を凝らして見ると先ほどと同じドラゴンのようであった。

 

「ドラゴンだ!さっきのと同じ奴だと思う」

 

そのまま機をまっすぐ進める距離が2kmほどになったところでドラゴンの口に炎が見えた。パイロットはそれが自分たちに対する攻撃だと理解するとジョイスティックを操作し機体を上昇させた。

機体下部に設置された高性能カメラでドラゴンをみると、その背には人らしきものが乗っており驚いた様子で此方を見上げていた。どういうわけだかドラゴンたちはそれ以上上昇してくることはなかった。パイロットはほっとしつつ機をドラゴンたちが来た方向に向けた。

すると、すぐに何やら都市のようなものが見えた。高性能カメラで見ると都市は此方をみて混乱しているようだった。腰を抜かしていたり馬が暴れまわったりしている。都市は現代のように鉄筋コンクリートでできたビルが乱立しているのではなく中世のような作りだった。するとパイロットはガンナーに指示を出す。

 

「おい、この都市の様子をカメラで撮っておけ」

「はい!」

 

ガンナーはタッチパネルを操作し、高性能カメラや赤外線カメラなどあらゆるカメラで都市のいたるところを撮影した。3分ほど写真を撮り続けた後パイロットはこう言った。

 

「この写真、必ず日本に持ち帰るぞ」

 

パイロットは日本の方向に機体をむけた。

その日の内にこのR-3やそのほかの偵察機、哨戒機などが撮影した写真は市ヶ谷の防衛省に届けられ、精査されたのち、緊急の閣僚会議が開かれ満場一致でまずドラゴンなどの存在から日本が異世界に転移したことの認定やこの写真の国家との国交樹立が決定。また大規模な穀倉地帯が見られたためこの国からの食糧輸入を目指すことなどが決定された。

そして後日、佐世保の軽航空母艦「りゅうじょう」*3を旗艦とする第3空母護衛艦隊を護衛につけた使節団を派遣した。

*1
1位はロシア、2位は中国である

*2
イタリアやドイツのように大使館以外の土地の管理権が日本になった

*3
詳しくは「ストライクウィッチーズの世界に日本が転移!?」の艦艇設定集をご覧ください




R-3戦略偵察機 サイレントスカウター
最大離陸重量 17トン
最大速度 マッハ1
行動半径 10932km
全長 21m
全幅 35m
エンジン ゼネラル・エレクトリック F124 2基
乗員 2名 
武装 AIM-9 サンドワインダー 4発(自衛用)
ボーイング社が開発した高高度用ステルス戦略偵察機。高度なステルス性と赤外線カメラや超高精度カメラなどの高性能偵察機器を搭載している。限界高度は高度25000mである。ただ武装は自衛用のAIM-9サンドワインダ―4発を翼下のハ―ドポイントに搭載できるのみである。音速での飛行が可能。ただやはり偵察機、戦闘機ほどではない。愛称はサイレントスカウター(静かな斥候)

――――――
いかがでしたでしょうか?
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次回

第1話 使節団派遣1


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第1話 使節団派遣1

はい、皆さまどうもSM-2です。
今回は、「ストライクウィッチーズの世界に日本が転移!?」の設定を改良した船や航空機がまぁまぁ出てきます。
では本編どうぞ!

※艦隊名を第3空母護衛艦隊から第4空母護衛艦隊に変更
※ドローンの母艦をミサイル駆逐艦「てんりゅう」からミサイル巡洋艦「さかい」に変更
※外交官を乗せ先行する艦を「さつき」から汎用駆逐艦「ゆきかぜ」に変更
※旗艦を「りゅうじょう」から「つくば」に変更


大海原を6隻の艦隊が進んでいた。艦隊は輪形陣をくみ、その真ん中にはヘリ空母の先端にスキージャンプ台を取り付けたような大型艦がいた。その艦こそ、この第4空母護衛艦隊の旗艦であるCV-188「つくば」であった。いぶき型軽航空母艦の3番艦でF-35JBを20機、対潜哨戒ヘリを10機搭載できる航空母艦だ。原子力空母と違いF-35のみを搭載しているのは彼女の主任務が離島などの防空任務だからだ。また、F-35は対艦・対地戦闘も行える統合打撃戦闘機であるため、20機しか固定翼機を扱えない彼女にとっては非常に使い勝手が良かった。

彼女らは母港である佐世保を離れ、北西に1000kmほど行った未知の大陸にある未知の国まで外務省の使節団を運ぶ任務が課せられていた。もし、使節団に何かあった場合、搭載機であるF-35JBや護衛の駆逐艦、フリーゲートまた同伴している国防海軍特殊任務部隊を使いあらゆる措置に出ることも任務に入っていた。

またバックアップとして後方500kmには第1空母打撃艦隊が控えておりF-35JCとF/A-3Cが即時に発進できる状態であった。また、同艦隊所属のE-2J早期警戒機が艦隊の上空で監視の目を光らせていた。

そんな中E-2Jから報告があがる。

 

「司令。E-2Jより報告です。前方50kmにある水上目標、針路及び速力から1時間ほどで我が艦隊と接触する可能性があります」

「ふむ・・・・・・・「さかい」にドローンを飛ばし同水上目標を偵察するように伝えよ」

 

艦隊司令は暫く考えた後隣にいた航海参謀にそう伝える。航海参謀は直ちに護衛のミサイル巡洋艦「さかい」に連絡し搭載してある偵察ドローンで前方50kmにいる水上目標を偵察するように伝えた

―――――――

「砲雷長。偵察ドローン準備整いました」

 

さかいに搭載されている偵察ドローンは見た目は民間のドローンに似ているもののバッテリーの強化や通信装備の強化で50kmまで操作可能になっている。ただ、普通のリモコンではなく車両や艦艇に搭載するほどの大きさの通信設備が必要となる。この偵察ドローンは地上目標への偵察や潜水艦捜索のためなどに使われる。大きさが小さいため発見される可能性が少なく、おとされても人員に損害がないというメリットがある。ただ、ジャミングなどに弱く、妨害電波や磁気嵐等をくらうと操縦不能になってしまう。また、速度が遅いため歩兵の持っている小銃などで容易くおとされてしまう。また、制空権が確保できていない状況で使用すると敵に位置がばれ母艦が撃沈される可能性もある。そのため、必ず制空権が取れており尚且つ半径200km以内に敵艦艇ないし潜水艦、敵対艦ミサイル発射機がない状況で使用するのが好ましいという、扱いずらいものであった。ただ格納庫がいらないため哨戒ヘリを積めないDDGなどに搭載されていた。この、さかいには哨戒ヘリ2機が搭載してあったが、R-3などの偵察写真の結果、未知の国家の文明レベルは中世ほどとされヘリを飛ばすと変に威圧してしまう可能性があるのと、燃料の節約を兼ね、ドローンを搭載していたのだ。

さて、砲雷長はモニターにドローンから送られてくる映像が映ることを確認するとこう指示した。

 

「よし、偵察ドローン発艦せよ!」

 

後部の飛行甲板に置いてあったドローンは小さなモーター音を発し始めると雲一つない大空に飛び立っていくのであった。

―――――――

20分ほどするとドローンのカメラが一隻の小型船舶を捉えた。CICにいた幹部はモニターに映されるその光景を食い入るように見ていた。船は見たところ木造で、甲板には中世の騎士のような鎧を着込んだ兵士が複数いた。高度1000mから高性能カメラで撮られた映像に幹部たちはくぎ付けとなった。どうやら兵士たちはドローンの存在には気がついていないようだった。3分ほど経過して艦隊司令が口を開いた。

 

「もういい。さかいに偵察用ドローンを収容するように連絡せよ」

「はっ」

 

通信士が艦隊司令の指示を聞きてんりゅうにドローンを収容するように伝える。同時にドローンとの通信が切られモニターが色鮮やかな映像から真っ黒な画面に変わった。

 

「どうするかね・・・・」

 

艦隊司令はあごに手をあててそう言った。

 

「SHで使節団には汎用駆逐艦「ゆきかぜ」に移ってもらい、ゆきかぜを先行させてはどうだろう?護衛にF-35を4機上空に上げておこう」

「そうですね・・・・。SHの準備と使節団への連絡をしておきます」

 

作戦参謀がそういうと艦隊司令は頷いた。

 

「よろしく頼んだ」

 

作戦参謀は艦隊司令に敬礼をするとCICから出て行った。




いかがでしたでしょうか?
今の技術で50km先からドローンほどのサイズの航空機から映像が受け取れるかは分かりませんが、2030年から2040年代と言う設定なので、技術の進歩です。
ご意見ご感想ご質問お気に入り登録お待ちしております。
では、さようならぁ

次回 第2話 使節団派遣2

※SH-60Jを対潜哨戒ヘリに変更(そのうち詳細なスペックを造ります)


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第2話 使節団派遣2

皆さまどうも、SM-2です。
オスグットになぅてしまいました。これで二度目です(泣)今度、剣道の昇段審査と大会があるんだけどなぁ・・・・・・。
では、本編どうぞ


マイハーク港

 

クワ・トイネ公国軍第2艦隊の母港である、この港は経済都市マイハークの北のやや離れたところにある。普段は軍船がひしめき合っている港も今日は閑散としていた。

なぜなら、今から3日前にマイハーク上空に未確認騎が侵入したことが理由だった。単騎でクワ・トイネの防空網をいともたやすく突破したその騎は、特に攻撃を仕掛けたわけではなかったので軍部では単なる偵察と判断された。ただ、今回確認された騎は緊張状態にあるロウリア王国や第3文明圏の列強、パーパルディア皇国の保有しているどのワイバーンとも違った。つまり、正体不明なのである。そのため、何が起こるかわからずクワ・トイネ公国軍は厳戒態勢に入り、普段この港に停泊している軍船はすべて哨戒に出てしまっていた。

さて、第2艦隊の司令部がある建物の一室に艦隊の幹部が集まっていた。

 

「ノウカ司令、今回の未確認騎の正体は何だと思いますか?」

 

若い参謀がそう聞くと、司令は葉巻に火をつけうまそうにすいつつこう答えた。

 

「俺は見ていないから、言いようがないな・・・・。だた、竜騎士一人が見ただけなら与太話で済むが、第6飛竜隊全員が目撃していて、さらにマイハークの住人や騎士団からの目撃証言もある。少なくとも未確認騎が存在しているのは間違いない」

 

司令は一旦そこで区切ると、すっていた葉巻の灰を灰皿の捨てるとさらにつづけた。

 

「未確認騎が飛来した東には国はないし、北東には群島と集落があったはずだが、報告にあったような騎はとても持てまい・・・・。可能性のあるのはロウリア王国と北の第3文明圏列強、パーパルディア皇国だが、この2国の兵装に当てはまるものはない・・・・。新鋭騎という可能性もあるが、根本的に形が違う。俺の勘ではどちらの国のものでもないと考えている」

「そうですか・・・・・・」

 

若手の参謀は司令の推測を聞いて少し不安そうにした。その時、部屋の扉が勢いよく開き、通信士が報告書を持って入ってきた。

 

「司令!!報告します!」

 

通信士は司令の前に立つとピッと敬礼し、持っていた報告書に書いてある内容を読み上げた。

 

「読み上げます!『発:軍船ピーマ。宛:クワ・トイネ公国第2艦隊司令部。未確認の大型船を発見。現在地、マイハーク港より北に60km。これより臨検を行うため同船に向かう』以上であります!」

「大型船だと・・・・・?」

 

司令は通信士より羊皮紙でできた報告書を受け取ると、その内容に目を通す。

発見されたのは未確認騎ではなかったが、報告された大型船も未確認騎に関係している可能性が極めて高かった。

 

「軍船ピーマといえばミドリ船長の船か?・・・・・ピーマには同船の臨検に当たり受傷事故等防止に十分配慮し、同船の所属など詳細が判明次第報告し、不審点を徹底的に洗い出すように指示せよ」

 

通信士は司令から指示を受けると部屋から出て行った。

――――――――――

さて、未確認の不審船を発見したピーマは帆をめいっぱい張り太鼓の音に合わせ両舷に突き出たオールを漕いで、不審船に向っていた。

乗組員は鎧を身にまとい、帯剣をした兵士は最上甲板に整列して弓の準備をしており、船は戦闘態勢に入っていた。

しばらくすると未確認船がはっきりと見えてきた。未確認船は彼らの乗るピーマより4倍ほど大きく全体的に角ばった印象だった。甲板にはよくわからない筒のようなものや棒が立っておりどんな船なのかわからなかった。

 

「目標の大型船は帆を下し停船しています」

「ふむ・・・・・臨検は私が先陣をきる。何かあれば副長に全てを任せる」

 

船長のミドリは副長にそう言った。副長が頷いたのを確認するとミドリは大型船を注視した。だが近づいて彼らは気がついた。

 

「副長・・・・あの船だいぶ大きくないか?」

「ええ・・・・・この船より4倍はありそうです・・・・。パ―パルディア皇国の100門級戦列艦と言う兵器よりも大きいです・・・・」

 

よく見ると船尾に白字に赤い丸の付いた旗とその旗の赤い丸から赤い線が広がっている旗を確認した。

 

「あんな国旗・・・・見たことあるか?」

「いいえ・・・・・見たことがありません・・・・・」

 

ミドリの問いかけに副長はそう答えた。

 

「もしかしたら新興国の船かもしれん・・・・。国家間のやり取りとなるため臨検隊員諸君には不用意に高圧的な態度はとらないように頼む」

「あっ!船長、あれを・・・・」

 

ミドリは副長に言われた方を見ると、青っぽい服をきた人がこちらに手を振っていた。どうやら敵意がないことを示しているらしい。

 

「よし・・・・行くぞ!」

―――――――

「艦長!目標を確認しました。どうやら臨検の準備をしているようです・・・・・」

 

航海長がそういうと艦長はコーヒーを置いてこう指示した。

 

「舷梯を下せ、臨検を受け入れるぞ。それと案内は念のため立検隊の隊員にやらせろ、見えないように拳銃も所持させておけ」

「はっ!」

「それと田中外交官にも伝えておくように」

 

艦長から指示を受けた航海長はブリッジから出て行った。

―――――――

「・・・・本当にこれは船なのか?」

ミドリは「ゆきかぜ」の余りの大きさに驚いていた。国防海軍の主力艦艇の中では中くらいの大きさである、はつがぜ型汎用駆逐艦であっても、クワ・トイネの船からしたらものすごく大きいのだ。

すると、一緒にいた臨検隊員がとある場所を指差す。

 

「船長!あれを・・・・・」

 

ミドリが指が指された方向を見ると、数人の青い服をきた水夫が何やら操作していた。すると階段のようなものが出てきた。ミドリ達は目の前の光景に唖然としてしまったが、青い服を着た水夫がこちらに手を振って敵対の意志がないことを伝えているのを見て、我に返る。

 

「よし!乗り込むぞ!2名ほどついてこい!」

 

部下を2名選ぶと、船を下りてきた階段の横につけ乗り込む。階段を上がるとそこには、青い服を着た先ほどの水夫が2名と白い服を着た2名、そして何やらパリッとした黒い服を着た男1名の計5名が立っていた。

ミドリは辺りを見渡すと、何やら筒を三つ束ねたようなもの(HOS-303 3連装魚雷発射管)丸太を4つ束ねたようなもの(17式艦対艦誘導弾 4連装発射筒)黒い箱に細い黒い棒をつけたようなもの(M2ブローニング50口径12.7mm重機関銃)が置いてあった。

 

――あれらは一体何なのだ!それに、こんなに大きな船だ、乗組員もさぞ多いのだろう。目の前の彼らに斬りかかれば命はないぞ・・・・・

 

ミドリはそう思ったがどうやら相手に敵対の意志はないようなので、意を決して口を開いた。

 

「私はクワ・トイネ公国海軍第2艦隊、軍船ピーマの船長ミドリです。ココは我がクワ・トイネ公国近海であり、このまま進みますと我が国の領海に入ります。貴船の国籍、航行目的を教えていただきたい」

 

すると、目の前の5人は驚いたような顔をする。すると、パリッとした服を着た担当者が嬉しそうな顔をする。

 

「日本語が通じるのですね!!」

 

なにがそんなに嬉しいのか分からず、ミドリは困惑した。

 

「失礼、私は日本国外務省アジア大洋州局大洋州課の田中と申します。貴国はクワ・トイネ公国と言うのですね、わが国、日本国政府は貴国と交流を持ち、状況により国交を結びたいと考えております。そのため、貴国の外務担当者に御取次いただけると幸いです」

「つまり、あなた方は一国の使者と言うことですね」

 

ミドリがそういうと田中はコクリと頷いた。

 

「ええ、我々には敵対の意志はありませんのでご安心ください」

 

そういうとミドリと部下2名はほっとした。

 

「分かりました。本国に報告いたしましょう。・・・・・・最後に一つ、先日我が国のハイマーク上空に現れた竜騎士は貴国のものでしょうか?」

 

田中は一瞬、竜騎士という単語に首をかしげる。

 

「竜騎士・・・・・?我が国のR-3戦略偵察機の事でしたら左様です。その件については公式に謝罪したく思います」

 

”アールスリーせんりゃくていさつき”という単語は3人とも聞いたことがなく、顔を見合わせた。

 

「わが国は4日前に突如この世界に転移してきたと思われます。多方向に飛ばした哨戒機、偵察機の調査の結果、その確信を得ました。その飛ばした航空機の内、一機が貴国の領空を侵犯してしまいました」

 

国が転移してくるなど信じられず、再びミドリ達は顔を見合わせる。無理もない、我々だって国ごと転移してきました、なんて言われたところで信じられないだろう。

ミドリは信じられなかったが、田中や周りの人物の状況から嘘をついているようには思えなかった。

 

「分かりました。その旨も本国に伝えますので、お待ちください」

「えっと、どれほど待てばいいのでしょう?」

 

田中の表情が少し曇る。田中は可及的速やかに国交を樹立するための交渉をし、食料品の輸入が出来るようにしなければならない。食料自給率が低い日本にとって一日でも時間が惜しいのだ。だが船や兵士の装備から、本国の報告には何日も時間をかけられてしまうと思ったのだ。

だがミドリはその予想を裏切る回答をした。

 

「魔信で今すぐに本国に報告しますので、少々お待ちして頂ければ結構です」

「ほぅ・・・・・通信手段があるのですね・・・・・」

 

田中や周りの国防軍士官たちは少し驚いた後、興味深そうにそう言うのだった。




いかがでしたでしょうか?
今回、かなり長くなってしまいました。ですが楽しんでいただけたでしょうか?
ご意見ご感想ご質問お気に入り登録お待ちしております。
それでは、また次回。さようならぁ!

次回 第3話 接触

おたのしみに!


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第3話 接触

皆様どうもSM-2です!
長らくお待たせいたしました!
では本編どうぞ!


「司令!軍船ピーマより続報!」

 

通信士が部屋に入ってくると、司令と参謀は立ち上がった。

 

「読め!」

 

司令の声を聞き、通信士はその場で立ち止まり持っていた紙を広げると、内容を読み上げる。

 

「『先の大型船の臨検を行ったところ、同船に不審物等はなく敵対の意志はなし。また同船には、同船の派遣先である日本国の外務担当者が乗船しており、我が国との国交締結を視野に入れた会談を希望している。同船の大きさは目測で長さ120m以上幅は16mほどである。なお、帆やオールのようなものは確認できない』」

 

司令は報告された内容に絶句する。クワ・トイネ公国海軍の軍船の全長は平均で35mほどなので、その4倍ほどの船があるなど信じられないのだ。

だが通信士はさらに驚くべき内容を続ける。

 

「『また、同船の僚船5隻が合流。いずれも同船より大型であり内一隻は目測で270mを超えている模様』」

「なっ・・・・・・・」

 

120mを超える船がいるだけでも驚きなのに、それより大きな船が5隻も、しかも1隻は270mを超える大型船ときた。驚くなと言う方が無理だった。そんな物を派遣する日本国とは一体どんな国家なのか、司令はわずかに興味を持つ。

 

「『先日の未確認騎については日本国の偵察騎が哨戒飛行中に我が国に進入したとのこと。同事案について外務担当者は公式に謝罪をしたいと申し入れている。なお、日本国については国ごとこの世界に転移してきたと担当者が申し立てている』・・・・以上です!」

 

国ごと転移してきたという、報告に司令たちは驚いた。世界で強いとされる5大列強のム―の神話でしか、そのような話しは聞いたことがなかった。

 

「国ごと転移だと!?そんな荒唐無稽なことを、上に報告せねばならんのか!」

 

すると参謀が横から意見具申をした。

 

「確かに270mを超えている船が動いているというのも荒唐無稽な話ですが、彼らの目で確かめた事実ですので、報告した方がよろしいかと・・・・・。それと、国交樹立を視野に入れた会談を希望しているとのことですから外務部に連絡した方がよろしいのでは?」

「・・・とんでもないことになったな・・・・そうだ!!」

 

司令は何かを思い出したように手を叩く。

 

「未確認騎の件で今、政治部会が開かれているはずだ!至急、報告をするんだ!」

「はっ!」

 

通信士が部屋から出ていく。そして、臨検の状況をクワ・トイネ公国の公都に魔力通信で送信した。

―――――――

国の首脳陣が集まるこの政治部会で、クワ・トイネ公国首相カナタは悩んでいた。

発端は、3日前に国の経済を支える都市であるマイハーク上空に未確認騎が進入し都市を偵察するように旋回して去っていったと、国の国防をつかさどる軍務卿から報告があがったことである。

ワイバーンが追いつけないほどの速度と高高度で進入してきたという。

所属は不明であり、翼と胴体に赤い丸が書いてあったが、赤い丸だけの国旗の国などこの世界には存在しない。

 

「今回の報告についてどう思う?」

 

カナタがそういうと情報分析部長が手を挙げて発言する。

 

「情報分析班によれば、同物体は西方の第2文明圏にある列強国『ムー』の開発している飛行機械に酷似しているとのことです。しかしムーの飛行機械は、最新のものでも最高速度は時速350kmほどらしいのですが、今回の飛行物体は明らかに時速800kmを超えています。・・・・・ただ・・・・・」

 

情報分析部長が少しためらったので、その場にいた全員が何事だろうと思い耳を傾ける。

 

「ム―の遥か西。文明圏から外れた西の果てに自らを『第8帝国』と名乗る新興国家が出現し、圧倒的武力で周辺国家を侵略し猛威をふるっているそうです。第2文明圏全体に宣戦布告したと今朝、諜報部より報告がありました。かの国の軍事力については全くの不明です」

 

すると、会場に笑いが起こる。本来、弱小の文明国にすら敵わないような、文明圏外の新興国家が3文明圏五大列強の内、2つの列強国が存在する第2文明圏の全てを敵に回し宣戦布告をするなど、無謀にもほどがあった。

 

「しかし、第8帝国はムーの遥か西。ムーからの距離でさえ、2万kmも離れております。いくら圧倒的武力を持つとはいえ今回の物体がかの国のものであるとは考えにくいのです」

 

会議は行き詰ってしまった。

隣国のロウリア王国との緊張が高まり、準戦時体制のこの状況で、未確認だの正体不明だの、不確定要素が多すぎる情報は、この国の首脳陣を悩ませた。

そもそも、味方ならば接触してくればいいだけの話、領空侵犯と言う敵対行動ともとれる行動をされたため警戒しているのだ。

するとその時、外務部の若手幹部が息を切らして飛び込んできた。通常では考えられない、明らかに緊急事態であった。

 

「何事だ!」

 

外務卿が声を張り上げ、若手幹部にそう尋ねた。

 

「ほ、報告します!」

 

若手幹部が報告した内容を要約すると以下の通りであった。

 

本日明朝、クワ・トイネ公国より北側の海上に130mを超える大型船が現れ、海軍が臨検したところ「日本」という国の外交官と接触。敵隊の意志はないと伝えてきた。また、その後大型船の所属する艦隊の船、5隻と合流しいずれも先の大型船よりも大型であり、内一隻は目測で270mを超えている。捜査の結果、複数事項が判明した。なお本人の申し立てである。

・日本国は突如としてこの世界に転移してきた。

・元の世界の全ての国家との通信手段が断絶されたため、偵察騎にて付近の探索を行っていた。その際、わが国の国土であるロデ二ウス大陸を発見した。探索中に我が国の領空を侵犯したことについては深く謝罪する。

・クワ・トイネ公国と会談を行いたい。

 

余りに現実離れした報告に、政治部会の誰もが信じられなかった。国ごと転移など神話の話のようであり、現実的にはあり得ない。だが、日本国の担当者は礼節をわきまえており、謝罪や会談の申し入れは筋が通っていた。

一時、会議は紛糾したものの「日本国」の外交官を官邸に招致することが決まった。




いかがでしたでしょうか?
このシリーズ、久しぶりに更新する気がします。
ご意見ご感想お気に入り登録お待ちしております
ではまた次回!さようなら!

次回 第4話 会談

お楽しみに!


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第4話 会談

皆さまどうもSM-2です。
この話更新するの久しぶりな気がする・・・・・。まぁ、リメイクやら新シリーズやらで忙しかったのであまり書けなかった・・・・・・。
では本編どうぞ。


クワ・トイネ公国の首相カナタは首相官邸の応接室を前に緊張していた。

本来、国交締結は外務局の担当者が交渉や会談の内容を打ち合わせて、外務卿が相手国と交渉し国交締結の目処をつけた上で相手国との元首と会談し国交を結ぶのだ。

だが今回は、根回しも何もできておらず資料はなにもなかった。だが、自国より軍事力の高いロウリア王国との緊張状態がつつき準戦時体制であるこの国は、少しでも友好国が欲しいというのが本音であった。

大型船やワイバーンより早い竜など高い技術力を持っている国との会談に緊張せずにいられなかった。

カナタは勇気を出してドアを開けた。中にいた担当者はカナタの姿を認めると席を立ってお辞儀をした。

 

「日本国外務省アジア大洋州局大洋州課の田中と申します。本日は急な来訪に関わらず首相自ら対応してくださるということで、光栄の至りです。よろしくお願いいたします」

「ええ、よろしくお願いいたします」

 

カナタの後ろにはこの国の外務を取り仕切る外務卿のリンスイと外務局の職員5名がいた。

 

「私はクワ・トイネ公国外務卿のリンスイと申します。よろしくお願いします。・・・・・・早速ですが、貴方方の来訪理由についてお伺いしたい」

「はい、まずは我々の方で作成いたしました資料を配布させていただいてもよろしいでしょうか?」

 

田中は真っ白な上質な紙で作られた資料を手にリンスイにそう尋ねた。リンスイはコクリと頷く。

 

「ええ、構いませんよ」

「では・・・・」

 

リンスイの答えを聞いて田中は横にいた部下に合図をした。合図を受けると部下は資料を持って立ち上がり、会談に参加している全員に資料を配った。

リンスイは配られた資料を手に取り、読もうとすると突如顔をしかめた。

 

「すみませんが、この資料に書いてある文字が全く読めませんが・・・・・・」

 

言葉が通じるので文字も読めるだろうと思っていた田中は予想外の反応に困惑した。

 

「日本語を話されているので、てっきり読めるものだと思っておりました。そういえば、街中で見た看板も我々には全く読めませんでした・・・・」

「ニホンゴ・・・?我々からするとあなた方が大陸共通語を話しているように聞こえますぞ」

 

不可思議な出来事に一同は困惑した。だが両者とも歴戦の外交官、頭を切り替えるとまず田中が口を開いた。

 

「そうなのですね・・・・・。こんな不可思議なことが起こるとは・・・・・・。では口頭にて説明させていただきます。我々はこの国より北東に約1000km付近に位置する、日本国と言う国から参りました。・・・・・・単位は通じますでしょうか?」

 

文字が伝わらなかったので、言葉も伝わらないのではないかと不安になり田中はそう聞いた。その問いにはリンスイが答えた。

 

「無論、大丈夫です。ですが、我々の知る限りその付近に国など存在はしなかったはずです。確か、群島があり海流が乱れる海域だったと記憶しております。一部の島には集落があったと聞いていますが、複数の集落が集まって国を形成したのでしょうか?」

 

だが田中は首を横に振った。

 

「いいえ、我々の国は37万8千㎢の国土を有する人口1億1200万人の島国でありまして、お考えの集落ではありません」

 

田中の言った37万8千㎢という国土の大きさと1億1200万という人口の多さにリンスイとカナタは面食らった。確かに国としては十分な国土の大きさと人口の多さであるが、そんなに多くの人が住む巨大な島を今までの歴史上見逃すはずがなく、そんな島が発見されたなど聞いたことがなかった。クワ・トイネ側の参加者は皆同様にあぜんとしていた。

すると、田中は申し訳なさそうに再び口を開いた。

 

「こう言った公式な外交の場で、非常に申し上げにくいのですが、我々は地球と呼ばれる惑星から、何らかの形でこの世界に転移してきてしまった、と考えております。原因は目下調査中ですが、未だに判明しておりません」

「確かに、わが国の軍船からもそのような報告を受けましたが、国ごと転移など一体どれほどの魔力が必要となるのか見当もつかない。あなた方には失礼な物言いになりますが、我々からすればお伽噺を元にしたほら話を吹聴しているようにしか聞こえないのです」

 

リンスイは苦い顔をしてそういった。

 

「無理もありません。我が国も元居た世界で突然1000km離れたところに国ごと転移してきたと言われたら信じなかったでしょう・・・・・・」

 

リンスイがなおも食い下がろうとするとカナタが横からそれを止めた。

 

「分かりました。国交樹立を前提に交渉をしましょう」

 

するとリンスイが面くらった顔をしてカナタの方を向く。

 

「首相!ですが・・・・・・・!」

「外務卿。貴公の言葉も分かります・・・・・ですが、日本国が別の惑星・世界から転移してきていないというのなら、あの大型未確認騎や大型船の説明がつきません・・・・・・」

 

カナタはそこまで言うと田中たちの方をじっと見据える。

 

「あれほどの武力を持ちながら高圧的に出るでもなく、礼節を持って友好的に接してくる国を、私は信じてみたいのです・・・・・・」

 

田中の顔がぱぁと明るくなる。カナタは立ち上がると右手を差し出しにこやかにこう言った。

 

「私は貴方方を信じることにします」

 

田中は思わずカナタの右手を握りこう言った。

 

「ありがとうございます!」

 

1週間後、クワ・トイネ公国から日本の情報収集と実務者協議のための使節団が派遣されるのだった。




いかがでしたでしょうか?
後半は深夜テンションで書いていたので、めっちゃ適当だったと思います。
5話はもっと早く更新できるように頑張ろう・・・・・・。
ご意見ご感想お気に入り登録お待ちしております。
では、また次回!さようならぁ!

次回 第5話 使節団1

お楽しみに!


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第5話 使節団1

皆さま、お久しぶりです。SM-2です。
3か月も開けてしまいました。読者の皆さま申し訳ありません。
筆が乗らなかった・・・・・・・・・・。
本当に申し訳ありませんでした(土下座
では本編どうぞ。



会談の1週間後、クワ・トイネ使節団は日本の用意する客船に乗って日本に向かうためにマイハ―ク港にいた。

 

「諸君らにはこれから日本国に行ってもらう。日本までは日本が用意した貨客船に乗って移動する。詳しくは事前に配られた資料を見てくれ」

 

使節団の面々は事前に配られていた資料を取り出し、大陸共通語で書かれたそれに目を通す。

 

――なに?日本まで2日で着く?でも日本まで1000kmもあるのにどうやって・・・・・?

 

使節団の一人である、クワ・トイネ公国外務局職員のヤゴウは配られた資料をみてそう思った。クワ・トイネ公国の使っている船といえば、よくて帆船。通常はガレー船であるため、とても二日では1000kmの距離を航行することなど不可能であった。

 

「・・・・・・どうやら我々の常識が通用しない国らしいな・・・・・・」

 

ヤゴウは相手国に行く前から、頭が痛くなる。すると、日本から派遣された案内役の田中が使節団の元にやってきた。

 

「迎えの船が参りました。どうぞこちらへ・・・・」

 

使節団は荷物を持つと田中の後に続く。ヤゴウはその中で何やら憂鬱な顔をした人物がいることに気がつく。その人物は軍事をつかさどる軍務局から一時的に外務局に出向している「ハンキ」であった。

 

「ハンキ殿、どういたしました?」

「ああ、ヤゴウ殿か・・・・。今から船旅だと思うと気が重くてな・・・・・・・」

「ああ、なるほど・・・・・」

 

ハンキの言葉を聞いて、ヤゴウもがっくりとうなだれた。

クワ・トイネ公国の属するロデ二ウス大陸の船舶はガレー船が一般的であり、よくて帆船程度しかない。無論、電気なんて便利な物はなく、真水をつくる蒸留装置のないため、一度航海に出れば、生鮮食品は二日ほどでなくなり、真水は貴重なためめったに使えない。また、換気系設備も不十分なため、船内は薄暗く湿っぽい。排水量も100トンがいいとこなため、大波を受ければすぐに転覆してしまう。

そのような状態で長旅をしようものなら敗血病や感染症にかかり、多数の人間が命を落としてしまうのだ。

 

「今回、日本は二日ほどで着くと言っているらしいが、正直に言って、何らかのやり取りのミスがあったとしか思えない。1000kmもの距離を二日で行くなど無理だからな・・・・・・・」

「私も時間の計算がおかしいとは思いましたが、あの鉄竜を飛ばす国です。何らかの方法があるのかもしれません」

 

そう2人が話していると、田中が立ち止まり使節団に向かって大声を上げた。

 

「見えてきました。あれが我が国の保有する豪華客船「飛鳥Ⅳ」でございます」

 

田中が指を指した方には、一切帆がない巨大な船があった。まっ白なその外観は一種の美しさを感じる。「飛鳥Ⅳ」の近くには飛鳥Ⅳよりも一回りほど小さな灰色の船が2隻停泊していた。

 

「田中殿、横にいる2隻の船は・・・・・?」

 

ハンキがそう聞く。

 

「ああ、あれは日本までの護衛を行います。国防海軍の駆逐艦でございます」

「つまり、軍船ということか?」

 

ハンキとは別の使節団員がそう聞く

 

「はい。そう思っていただいて構いません。ただこの港の水深が浅く、あの船はここまで来れませんのでココからは小舟で移動いたします」

 

そういうと、既に桟橋には小型の船があり、船の上には純白の制服を着た男女が1隻辺り二人、計8名が乗っていた。

使節団は田中の指示に従って、荷物を全て一隻の小舟に乗せると、そのほかの3隻にそれぞれ乗り込み、沖合に停泊している「飛鳥Ⅳ」に向かう。

遠目で見ても大きかった「飛鳥Ⅳ」であるが、近づけば近づくほど大きくなっていく豪華客船に使節団一行は圧倒された。

 

「で、でかい・・・・・!!」

「帆もオールもないのにどうやって動いているんだ?」

 

使節団は見れば見るほど不思議な「飛鳥Ⅳ」に興味津々のようだ。そのまま、小舟は「飛鳥Ⅳ」に向かい、使節団一行とその荷物は、無事に「飛鳥Ⅳ」に乗り込んだ。

 

「この船、鉄でできているのか・・・・?どうやって、浮かんでいるんだ・・・・・」

「中が明るい・・・・・・。光の妖精でも飼ってるのか・・・・・?」

 

湿っぽいはずの船の中が、まるで宮殿のような空間になっていることに使節団は再び驚いた。

翌日。使節団を乗せた「飛鳥Ⅳ」は、護衛として派遣された、国防海軍第2艦隊の「すずなみ」「ふゆづき」と共に、日本に向けて出航するのであった。




いかがでしたでしょうか?
ストパンの方の話も資料集めがうまくいってない・・・・・。(ゲ○で注文しようかな・・・)。ネット見た感じだと、かいて大丈夫かなと思ったりしますが、流れが合わなかったりとか、細かい部分を見たいので書けません・・・・・・。まぁ、気長にお待ちください。
ご意見ご感想お気に入り登録の方お待ちしております。
では、また次回、さようなら~

次回 第6話 使節団2

お楽しみに~


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第6話 使節団2

皆さまどうもSM-2です。
今回はもうチョイ煮詰められたかな・・・・・・?今回は使節団が日本国内に入国します。会談はもうちょっと後になりますね。
では本編どうぞ。

※乗る飛行機を政府専用機から旅客機に変更しました


「いやはや、本当にこの船はすごいですな・・・」

 

出航した翌日の朝。ハンキは朝食を食べながら、向かいにいるヤゴウにそう言った。

 

「ええ。船全体が鉄でできているようですし、揺れも異様に少ない・・・」

「田中殿に特別に見せてもらった、キカンシツとやらもすごかったですなぁ・・・」

 

ハンキがそういうとヤゴウは食事をする手を止め、ため息をつく。

 

「明日の朝に日本につく予定でしたな・・・。この船を見ていると日本という国がどんな国なのか興味がある反面不安でもあります・・・」

「ええ、明日は気を引き締めていかねば・・・」

 

その場にいた使節団の面々はハンキの言葉にこくりと頷いた。

―――――――

翌日の朝。使節団一行は甲板に出ていた。このような船を造る日本という国に、今日着くのだと思うと興奮してしまうのだ。

すると、ぼんやりと船の進む先に陸地が見えてきた。

 

「おお!あれが日本か!!」

 

使節団の全員がそう言って目を輝かしていると、後ろから田中がやってきた。

 

「皆さま、お待たせしました。あちらに見えますのが我が国の九州地方に属する長崎県佐世保です」

 

国防海軍やアメリカ海軍の母港でもある佐世保港が徐々に近づいてくる。

当初、日本側は同じ九州地方の博多港に使節団の乗った客船を入港させるつもりだったが、護衛に国防海軍の汎用駆逐艦が付いているため民間の港に入れるわけにはいかず、尚且つ博多まで行くとなると距離的にも遠くなってしまうため、国防海軍の基地があり国際旅客船拠点形成港湾として「飛鳥Ⅳ」でも入港可能な佐世保に入港させることになったのだ。

「飛鳥Ⅳ」はこの佐世保で使節団を下す。護衛の汎用駆逐艦2隻は、国防海軍佐世保基地で燃料を補給し、使節団の帰りの護衛に備えるのだ。

速度を落とし、ゆっくりと埠頭に近づく「飛鳥Ⅳ」。タグボートの力を借りて港に接岸すると、錨をおろしてタラップをつける。

 

「おお!す、すごい」

 

使節団の人間は、自分の荷物を持ってタラップを降りながら、周りに見えるビルや自動車をみて目を輝かせた。

 

「では、あちらの乗り物にお乗りください」

 

田中がそう言って案内した先には黒塗りの乗用車が多数、止まっていた。転移前は海外の国家元首や政府高官などが来日した際に使う公用車であった。また、その近くには警護のための白バイや警察車両が多数止まっている。

使節団は公用車に乗り込むと車列はゆっくりと動き出した。車列が埠頭をでると、多数の報道関係者が待ち構えていた。使節団が乗り込んだ車列に向けカメラを向け、アナウンサーはマイクを片手にしきりに喋る。

その様子に使節団は目を丸くした。

 

「あ、あれはなんだ・・・?」

「あれは報道関係者です。使節団の方々の来日を国民に向けて知らせるために来ているのですよ」

 

それぞれの車に同乗していた外交官は使節団の問いに丁寧に答えた。

今回の来日では政府から各報道機関にカメラのフラッシュ撮影の禁止が通知されていた。理由としては、使節団の方々を不用意に不安にしかねないというものである。そのため、普段、フラッシュ撮影が眩しく、うっとうしく思っていた運転手や警護の警察官などは幾分か楽そうである。

車列はそのまま出発し、九州の玄関口、福岡に向かうのだった。

2時間ほど走り続け、車窓を流れる、美しい海の景色や緑豊かな山の景色を楽しみつつ、車列はとうとう福岡市に入った。

 

「おぉ・・・・」

 

使節団は、行きかう車や天高くそびえたつビルを見て感嘆のため息を漏らす。

彼らは多数の警護車両に囲まれた黒塗りの公用車に乗り、九州最大の都市、福岡市のある高級ホテルに向かった。彼らはそこで一泊したのちに翌日、福岡空港から政府専用機で東京に向かうこととなる。

夕方ぐらいになり、宿泊先であるグランドハイット博多についた。通常の宿泊客はおらず、貸し切り状態である。至る所に警察官が配置され、ホテルの周りにも、福岡県警のほか、近隣県警の警察官や警視庁の警察官がひっきりなしにパトロールしてる。

田中の案内で使節団は部屋に案内され、荷物を置くと夕食を取るべく、ホテル内のレストランに向かった。

そこには、国産食材を使った三ツ星シェフの手による料理が並んでおり、使節団は慣れぬ異国の料理に舌鼓を打つ。

 

「うまいな・・・・・。これは牛の肉か?えらく柔らかい・・・・・」

「パンもふわふわしていて旨い!」

 

クワ・トイネ公国は食料自給率が100%を超えて200%以上あり、食文化も豊かなのだがミシュラン3つ星を取ったようなシェフが作る、ステーキやパンに魅了されていた。

すると、レストランに田中達、外交官がやってくる。

 

「皆様、食事は口に合いますでしょうか?」

「おお、田中殿か!この料理、とても美味いな。わが国も食文化豊かで、食に関してなら第3文明圏にも劣らないと思っていたが、この料理はそのさらに上をゆく・・・・・」

 

ハンキがそう言って料理をほめたたえると、田中はにっこりと笑った。

 

「お気に召されたようでなによりです。ところで、食事の場ではありますが。この場で明日の予定について簡潔にご説明させていただきます」

 

ハンキ達は一旦食事をする手を止めて、田中の方を注視する。

本来なら来日前に幾度とない実務者協議を繰り返して予定を決めるため案内役の外交官から来日中に予定を説明するようなことはないのだが、今回は使節団派遣決定からの時間が短かったため、各省庁との予定が合わず、来日中にココに行く、ぐらいの大まかな予定しか決まっていなかったのだ。

 

「では、説明させていただきます・・・・・・・」

 

田中が手に持った予定表を見て、翌日の予定を読み上げ始める。

翌日は福岡空港から旅客機で羽田に向かい、そこから車で東京の外務省に向かい、実務者協議を行う。実務者協議ののち昼食休憩をはさんだのちに使節団はいくつかに分かれ、国立理化学研究所や国防空軍百里基地などに向かい、視察するという予定であった。

 

「・・・・以上が明日の予定でございますが、何かご質問はございますか?」

「田中殿。”リョカッキ”とはなんですか?」

 

ヤゴウがそう質問した。

 

「はい。大人数を乗せて空を飛べる乗り物です」

「・・・・ワイバーンのようなものか・・・・・」

「他にはございますか?」

 

その後も様々な質問が飛び、田中は丁寧にそれにこたえていく。結局説明が終わったのは30分後であった。




いかがでしたか?
使節団が新幹線で移動なんてあるのでしょうかねぇ・・・・?今回は、旅客機で東京まで移動です。途中まで車にしようかどうしようか悩みましたが、車じゃ時間がかかるので飛行機での移動です。
次回は使節団から少しばかり離れます。
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ではまた次回、さようならぁ~

次回 第7話 閣議

お楽しみに


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第7話 閣議

皆さま、どうもSM-2です
今回は閣議とういうテーマで書きました。
実際の閣議ってどんなものなのでしょう。一応、「日本の一番長い日」の閣議をイメージしながら書きました。
では本編どうぞ。


「ふむ、使節団は無事に着いたようだな」

 

首相官邸のある一室では内閣総理大臣である菅原(すがわら) 雄一(ゆういち)の召集の元、各省庁の大臣や長官が出席する会議が行われていた。

菅原は報告書をテーブルにバサッとおくと、外務大臣に向かって問いかけた。

 

「クワ・トイネとはどういう国なのか、分かったか?」

「ええ。ですが、報告によるとクワ・トイネ公国の政治形態はどうやら、特殊というかなんというか・・・・・」

 

外務大臣が何やら返答に困っているようで、他の大臣たちはどういうことなのだと、外務大臣を注視する。

 

「公国との名の通り”大公”と呼ばれる国家元首はいるようなのですが、実権を握っているのは、その外の貴族から選出された首相のようです」

「つまり、転移前にあったモナコの国務大臣の権限強化版の政治体制ということか?」

 

環境大臣が外務大臣にそう確認すると、外務大臣はコクリと頷く。

 

「確かに・・・・・。少しばかり特殊だな。制限君主制、象徴君主制ではあるが、民主主義ではなく首相は貴族が選ぶと・・・・・」

 

菅原はそう呟いた。

たいがい、君主はいるが政治権力が付与されていないものを制限君主制という*1。ココまでは普通なのだが、制限君主制の場合は主権は国民にある場合が多い、貴族が主権を持っているというのは非常に珍しいのだ。

 

「絶対君主制でも国民主権でもなく、貴族が主権を持つのか・・・・・」

「いうなれば貴族主権・・・ですかね?」

 

会議に出席している大臣たちは口々にそう言った。

 

「ふむ。ココまでは分かった。他には・・・?」

「はい。まず、技術力は中世初期なみでして基幹産業は農林水産業だとのことです。特に農業が盛んで、何でも大した手入れをしなくとも豊富な作物が自然環境下で勝手に取れるとか・・・・・」

「まるで大規模食糧生産タワーの自然版だな・・・・・・」

 

農林水産大臣が苦笑しながらそう言った。

ちなみに大規模食糧生産タワーとは、転移前に増え続ける世界人口から近い将来に食糧不足が深刻になると判断したアメリカ、ロシアが開発していた食糧生産プラントで、AIが温度・湿度を管理し種まきから収穫まで全て機械で行うタワーのような形をした全自動の農園だ。転移する前にアメリカで第1号機が完成しており、日本でも導入計画が進んでいた。ちなみに1プラントのすべてを小麦の生産に使うと1回の収穫で200トン近い小麦を収穫できる*2のだが、アメリカではこれを2500プラント立てる予定だった。

 

「また民族形態はいわゆるファンタジー系の小説に出てきそうなものであり、エルフやドワーフ、獣人と呼ばれる民族も確認しています。もちろん人間も確認されていますが・・・・・。今分かっていることはこれだけです」

 

外務大臣はそこまで言うと、自分の席に座る。顎に手を当てて、菅原はじっと考える。

 

「石油やレアアースなどの鉱物資源は確認されていないんだな?」

 

すると防衛大臣がスッと手を挙げた。

 

「実は、転移翌日の偵察活動でこのような写真が・・・・・」

 

すると後ろにいた防衛省の職員が数枚の写真をだす。出席していた大臣たちが覗き込むように写真を見る。

 

「こ、これは・・・・・・・」

「油井か・・・・・?」

「この赤っぽい岩盤・・・・・ボーキサイトでは?」

 

そう写真にはボーキサイト鉱床によく似た赤い岩盤や小規模な油井のようなものが映っていた。

 

「これはどこで・・・・・?」

「クワ・トイネ公国から南の荒涼地帯です。クワ・トイネ公国の方にそれとなく聞いたところ、この写真が撮られたのはクイラ王国と呼ばれる国家の領土だとの回答を得ました」

 

防衛大臣がそういうと外務大臣が驚いたような顔をした。

 

「いつ聞いたんですか?」

「昨晩に情報局の職員を派遣して確認させた。急を要したので外務省は通さなかった。それに関しては謝ろう」

 

縦割り行政に置いて、他省庁の縄張りに勝手に入っていくのは後々に溝を生みかねないため、防衛大臣は下手ないい訳をせずに外務大臣に謝った。

素直に謝られれば外務大臣も何も言えず。

 

「まぁ、今度はきちんと話を通してくださいよ」

 

というにとどまった。菅原は外務大臣と防衛大臣の話がひと段落したと判断し、外務大臣にこう指示した。

 

「外務大臣。クワ・トイネ公国との交渉を重ねつつ、このクイラ王国にも接触し国交開設に向けた交渉をしてくれ」

「わかりました。ですが我々が準備なしで使節団を派遣するよりも、クワ・トイネ公国との国交を樹立したのちに仲介してもらうのがいいと思うのですが」

 

外務大臣がそういうと、菅原は重々しく頷く。

 

「それに関しては外務大臣に一任しよう。だがなるべく早くお願いしたい。我が国の戦略資源の備蓄は少ないからな・・・・・」

「わかりました。クワ・トイネ公国との国交開設後、すぐさま行動できるように準備します」

 

菅原は居並ぶ閣僚たちを見ると口を開く。

 

「引き続き、この世界の情報を入手しつつ、新たな国家との国交開設に向けて各省庁は尽力してくれ」

「「「わかりました」」」

 

菅原は横にいた総理秘書官に合図すると、秘書官は椅子から立ち上がる。

 

「では、これで本日の閣議を終了させていただきます」

 

その合図とともに閣僚たちは閣議で配られた資料をもって部屋から出ていくのだった。

*1
憲法によって政治権力を制限・剥奪しているものが立憲君主制。現代に置いて、憲法が制定されていない国家はないため、同じものとして扱われることが多い

*2
小麦などの農作物の品種改良も進み、収穫できる量も増えている




いかがでしたか?
公国というのは貴族が国家元首の国のことなので設定に苦労しました。首相は国家元首ではない(首相は国家元首の下にいる宰相みたいなポジション)ので日本の天皇陛下を大公にして首相は貴族の中から選ぶという、新種の政治形態を発明?しました。
ちなみにリアルでも公国はありますが、小さな都市国家の場合が多く、防衛や外交は近隣の大国にゆだねてます(フランスはアンドラ公国とモナコ公国の防衛を担ってるんですよ)
ご意見ご感想お気に入り登録よろしくお願いします
それではまた次回!さようならぁ!

次回 第8話 協議

お楽しみに!!


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第8話 協議

皆さまどうもSM-2です。
外交交渉ってどんな感じなんだろうか・・・・・。自分の中では自身がありつつも、その手のことを知っている人が見たらどう思うのかと考えることが時々ある。
個人で趣味で書いてるから、細かいこととかあんま分からん・・・・。特に行政とか外交とかは・・・・。
では本編どうぞ。


「で、でかい!!」

 

一般人が立ち入り禁止となり、クワ・トイネ公国使節団しかいない福岡空港の中から、滑走路にずらりと並ぶ旅客機を見てヤゴウは思わずそう言った。

ワイバーンという人を乗せて空を飛べる生き物がいるとはいえ、百人単位で人を乗せて長距離を飛ぶことのできるジェット機など見たことがないのだから当たり前である。

 

「皆様こちらでございます」

 

田中の案内で、使節団はその場を後にし、彼らがこれから乗る飛行機の搭乗口に向かう。その間も歩いている廊下などの窓から見える飛行機はどれも大きく、使節団は興味津々だった。

 

「皆様、あの飛行機に乗って東京に向かいます」

 

田中が指さした先には、先ほどから見える飛行機よりも一回り大きな飛行機であった。

 

「あれがボーイング797型機です」

 

その飛行機は政府が今回の使節団来日のために日本航空よりチャーターした前世界で世界最大の旅客機であったボーイング797型だ。ボーイング797は2027年に米ボーイング社がボーイング747に次ぐ4発のジャンボジェット旅客機として開発されたものであり、転移前は導入から20年以上の政府専用機の3代目としての導入が検討されていたものだ。

 

「田中殿、あれは二ホンが作ったのか?」

「いえ、あれは転移前に我が国の同盟国であったアメリカという国のボーイング社が開発したものですが、現在わが国ではあれに匹敵する航空機の開発計画がございます」

 

田中がそういうと使節団は再び絶句した。今の田中の言葉は、日本が転移してくる前にいた世界ではあのような物を造る国が普通に存在しており、日本もあれと同じような物が簡単に作れてしまう国だという意味だからだ。クワ・トイネ公国では何十年かかろうともあのような物は造れない。

使節団は来日してから何度目にかなる驚愕と日本への恐怖心を胸に飛行機に乗りこみ、離陸した飛行機の窓から見える景色を楽しみながら、東京に向かうのだ。

――――――

2時間後

「おお!!」

 

羽田に降り立った彼らは、待機していた車に乗り込むといよいよ東京に入った。そこから見える数々の自動車*1や高層ビルなどを見て再び目を丸くする。

そうこうしているうちに使節団ののった車列は東京都霞が関の外務省に入っていく。警備の関係上、地下駐車場から外務省内部に入り、職員の案内である一室に通された。

使節団は用意された椅子に各々座って、日本の担当者を待っていると、ガチャリと高級そうなドアが開き中年の女性と幾人かの男性が入ってきた。

 

「クワ・トイネ公国の皆さま、始めまして。日本国外務省外務審議官*2御厨(みくりや) さくらと申します。よろしくお願いします」

 

外務審議官という役職は分からないが、日本側の高官であるというのは理解できた使節団は、いきなりの政府高官の登場に驚いた。だが彼らも外交のプロだ。元々、外務局出身の者は驚きを顔に出さず、それ以外の今回の使節団派遣で他の部署から加わった者もすぐさま表情を変える。

 

「クワ・トイネ公国使節団のヤゴウと申します。よろしくお願いします」

 

今回の使節団の中で外務担当者の責任者*3であったヤゴウが自己紹介をすると御厨が差し出してきた右手をギュッと握り握手をする。

同じように各担当の責任者が自己紹介をすると、日本側もその他のメンバーが挨拶をする。日本側のメンバーは総合外交政策局の副局長や室長など上から下までの役職が勢ぞろいであった。

一通り自己紹介が終わると、双方が椅子に座ると司会役の外交官が口を開く。

 

「ではこれより、日本クワ・トイネ公国間協議を始めさせていただきます。11時55分を持って今日の協議は終了とさせていただきます」

 

それだけ言うと司会役はそそくさと自分の席に戻る。先に口を開いたのは日本側だった。

 

「早速ですが、我々は貴国と友好的かつ対等な関係を結びたいと考えています。出来れば国交樹立を視野に入れてです」

「具体的に日本側は何を求めるのですか?」

 

ヤゴウがそう聞くと、御厨は手元の資料を持ってこう言った。

 

「我々が求めるのは・・・・1国交樹立、2通商条約の締結、3領事裁判権を認める、42国間での人材交流、5この世界の情報、6為替レートの設定・・・・・の6つです」

 

するとヤゴウが渋い顔をする。

 

「分かりました・・・・・ですが、この3番の条件。領事裁判権の要求ですが・・・・・これは対等な関係というのは程遠いのでは?」

 

領事裁判権を認めるということは日本人がクワ・トイネ公国内で何か犯罪を犯してもクワ・トイネ公国の法律では裁けない可能性が出てしまう。そうなればクワ・トイネ公国で悪質な日本人が跳梁跋扈する事態になりかねないのだ。

だが、御厨はこの答えを予想していたらしく涼しい顔でこう言った。

 

「我々が領事裁判権を求めるのには、わが国の”憲法”が関係しています」

「ケンポウ・・・・?」

 

聞き慣れない言葉に使節団は首をかしげる。

 

「わが国の最高法規でございます。これはいかなる法律も憲法に違反していれば廃止されてしまいますし、改正には我が国の国民の民意が必要なのです」

「つまり、誰も逆らえない法律ということですか?」

 

ヤゴウは憲法というものをそのように解釈した。

 

「ええ、そのようにとらえていただいて結構です。その憲法の中に、”残虐な刑罰ならびに拷問の禁止”というものがございます。これは、貴国で行われているような拷問や斬首刑や火刑などの残虐な刑罰を禁止するものです。無論わが国にも死刑制度はございますが、絞首刑のみと決められています」

「それが何か?貴国の国内法の話でございましょう?我が国には関係ないのではないですか」

 

ヤゴウがそう返すと御厨は意味ありげな笑みを浮かべる。

 

「ええ、確かにその通りですが。拷問等を体験どころか想像もしたことのない日本人が貴国で犯罪を犯し、拷問を受けたり、火刑や斬首刑に処された場合、わが国の国民が貴国に対して”野蛮な国家”という間違った認識を持つ可能性もございます。中には軍事力で叩いてしまえ等という過激な思想をいだく者もいるでしょう。わが国は国民の民意によって動く国です。国民の大多数がそのような思想をいだいてしまえば、わが国も何かしら行動を起こさざる得なくなるのです」

 

御厨は若干のブラフを混ぜながらヤゴウを遠回しに脅す。確かに日本は国民の民意に従わなければならない国家だが、「自己責任」という言葉が広がり、横のつながりが薄れている日本でそのような意見が広がる可能性はマスコミが変な煽り方さえしなければ0である。

それに日本は憲法で軍事的挑発や自分からの侵攻を禁止しているため、軍事力でクワ・トイネを潰そうなどとは考えていない。だがクワ・トイネへの誤解を防ぐために領事裁判権を要求しているのは事実であった。

 

「・・・・・」

 

そうとは知らない、ヤゴウは表面上は真顔を保ちつつ、冷や汗をかいていた。今までのってきた自動車や飛行機などのクワ・トイネ公国からしたら超技術の固まりが民間で普及しているような国を敵に回せばどうなってしまうか、考えるのも恐ろしかった。だが、治外法権を認めれば国内は無法地帯となってしまう可能性もある。

日本側は「クワ・トイネ公国国内法にのっとり、公正に裁判を行うが刑罰の方式や取り調べ方式は日本国内と同じやり方で行う」という折衷案を既に用意していたが、御厨はクワ・トイネ公国側の外交官がどれほど優秀なのか見るためにわざと切り出さない。

それを見て同席している日本側の外交官はこう思った。

 

――御厨外務審議官・・・・ずいぶん意地の悪いことを・・・・・クワ・トイネの外交官がかわいそうだ・・・・

 

「いかがですか?」

 

御厨は悪魔的な笑みを浮かべたまま、ヤゴウにそう尋ねた。ヤゴウは暫く考えた後にこう切り出した。

 

「では、犯罪はクワ・トイネ公国の国内法にのっとり摘発するが、捜査ならびに刑罰の方法は日本と同じもので行う・・・・・・・というのはいかがでしょうか?」

 

御厨は少しだけ目を丸くした。使節団だけでの打ち合わせの時間などを設けてくるか保留にして翌日に持ち越すものと思っていたものだから、この短時間で日本が用意していた折衷案と同じものを一人で考え付いたヤゴウという外交官の優秀さに驚いたのだ。

そして、先ほどとは違う優しさを含んだ笑みを浮かべると御厨はコクリと頷く

 

「ええ・・・・・その方法ならば双方に損はなさそうですね・・・・。その案でいきましょう」

 

その後、協議は領事裁判権という難所の一つを超えたため1日目の協議はその後スムーズに進み、協議を終えた後に使節団はいくつかのグループに分かれて視察に向かうのだった。

*1
転移の影響でガソリンの流通制限が掛けられているのと、使節団警護の関係で転移前の車の数と比べるととても少なくなっている

*2
外務審議官は外務省設置法に置いて「命を受けて、外務省の所掌事務に係る重要な政策に関する事務を総括整理する」となっており、一般的には、日本国内で外交政策の企画立案や外務省の事務の統括を行う外務事務次官に代わり、諸外国との外交交渉を担当する。特に「次官級交渉」という場合、外務審議官が交渉の現場に立つ事が多い。

*3
今回の使節団は外務局以外からも日本の技術力を図るため経済局や軍など様々な部署から人員が派遣されていた




いかがでしょうか?
ストパンの話が全く更新できていない・・・・・。○オで元ネタ漫画を注文しよう、しようと思っていて結局忘れてしまう・・・・・。そろそろ更新せねば・・・・・。
そういえば「西側諸国召喚」ですが、此方の話と時間を合わせるために、暫く更新はしません。といっても此方も使節団編は1~3話ぐらいで終わるかな・・・・?
此方の使節団編が終わったら更新します。
そして、ご意見ご感想お気に入り登録お願いします。
それではまた次回。さようなら!!

次回 第9話 空軍視察

お楽しみに


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第9話 空軍視察

皆さまどうもSM-2です。
寒い・・・・・・ガクブル。いやぁ、冷え込んでまいりましたねぇ・・・・。皆さん風邪はひいておりませんでしょうか?体調管理に気を付けてくださいね。
では本編どうぞ。


さて外務省での協議の一日目を終えた後、クワ・トイネ公国使節団の軍事担当であったハンキと他3名は国防空軍百里基地の視察に来ていた。

使節団は、百里基地内で国防空軍や百里基地について説明するビデオを見た後に格納庫に向かい、航空救難団百里救難隊*1の航空機の説明を受けた後に、航空偵察団第501偵察飛行隊*2の偵察機や無人偵察機の視察を行い、無人で航空機を飛ばす日本の技術力の高さに驚愕した使節団はついに、首都防衛を担う戦闘機部隊。第1航空団の視察を行うのだった。

 

「最後になりますね。こちらは第1航空団の格納庫になります。第1航空団の任務ですが、首都防空が主任務となりまして、戦技教導航空団に続き、国防空軍随一の錬度を誇る部隊です。また装備も平時は最新の物が優先で配備されますね。ではどうぞこちらへ」

 

広報担当が第1航空団について軽く説明すると、格納庫の耐爆扉がゆっくりと開いていく。全てが開くと中から灰色に塗装されたのっぺりとした印象の航空機が、格納庫の中に4機ほど止まっていた。

 

「あちらが我が国の主力戦闘機F-35JAです。ココからは第1航空団のパイロットの三波中尉に説明を願いましょう。三波中尉お願いします」

 

広報がそういうと、いつの間にか隣にいた制服を身にまとった女性が出てきた。

 

「国防空軍第1航空団第101航空隊所属の三波と申します。よろしくお願いします」

 

女性のパイロットということもあり、使節団は多少面食らうが、日本に来てからは驚きの連続であったのですぐに気持ちを落ち着かせる。

 

「我が国の主力戦闘機であるF-35Jには陸上基地用のA型、短距離離陸垂直着陸機のB型、艦載機型のC型に分かれておりまして、国防空軍ではA型を使用しています」

 

使節団は三波の説明を聞きながらF-35の近くまで近寄り、じっくり観察する。

 

「最高速度はマッハ1.6、巡航速度はマッハ1.1で25mm航空機関砲を1門を搭載。任務によって装備が変わりますが空対空ミサイルを11発搭載可能でありまして、高い格闘性能とステルス性能を保有します」

「三波殿。すまんがよくわからん単語がところどころででてくるが、マッハとはなんじゃ?」

 

ハンキは三波の説明が区切れるとそう質問した。

 

「ああ、マッハは音速を意味し、マッハ1.6は音の速さの1.6倍で飛行できることを意味します」

「なんと!!この鉄竜は音より早いのか!!」

 

ハンキは音より早い戦闘機を見て驚愕した。クワ・トイネ公国のワイバーンが時速250km前後とヘリコプターほどの速度しかないため、遷音速どころか超音速で飛行する航空機を見て驚かない方がおかしい。

するとハンキとは違う使節団員から質問が飛ぶ。

 

「ではキカンホウやミサイルというのはなんでしょうか?」

「あ・・・・・では見た方が早いかもしれませんね」

 

そういうと三波は広報担当者に何やらひそひそと話すと、広報担当者は短く「わかりました」とだけ言って何処かに行ってしまった。暫くすると広報担当者は幾人かの作業服を着た国防軍の軍人と細長い筒のようなものを数人がかりで運んできた。

作業服を着た軍人の内二人が使節団が見ていたF-35に近寄り何か作業をするとパカッとそこのカバーが開いて中から無骨な印象の棒を束ねたようなものが現れる。

 

「この中に入っているものが機関砲です。これは25mmの砲弾というものを飛ばすものでして毎分3600発という速度で砲弾を発射し敵の戦闘機などを撃墜します。ミサイルは此方の筒状の物になりまして、貴国のワイバーンには導力火炎弾なるものがあると聞いておりますが、それがですね音の4倍から6倍の速度で飛翔するものでして、狙った敵が欺瞞弾などの対抗手段を行わない限り、回避行動を取ろうと必ず命中します」

 

使節団は再び絶句する。導力火炎弾が音の4倍以上の速さで飛翔し必ず命中する。そしてそれを防ぐ手立てがないと聞いたら絶句もするだろう。

 

「・・・・回避する方法はないのかね?」

「チャフやフレアと呼ばれる欺瞞弾があり、それが回避手段ですが、製造方法などは軍事機密ですので教えられません。後は同じようなミサイルで撃墜するくらいしか方法はありません」

 

現代のミサイルはただアルミ箔をばらまけば避けられるわけではなく、敵の誘導電波の波長に合わせた長さに切断したアルミ箔をばらまき、ミサイルが命中する寸前に避けなければならない。その誘導電波の波長に合わせて切断されたアルミ箔がチャフなのだ。

 

「えー、説明を再開させていただきます。この戦闘機にはミサイル、機関砲のほかにも対地攻撃用の爆弾といったものが搭載できます」

「バクダン?それは一体どんなものなのかね」

 

すると三波は予想していたかのように横にいた整備員に合図する。すると整備員はずいぶん大きな何かを持ってきた。

 

「此方が我が国が保有する通常爆弾の中で最大の威力を誇る、Mk.84 2000ポンド普通爆弾になります。2000ポンドはキロ・トンに直しますと約1トンの爆弾でして、地上に投下しましてこれが地上に達すると同時に爆発。破片などをまきちらし、周囲の兵員や車両を破壊する兵器です」

「す、すごい・・・・」

 

使節団は日本の兵器の多種多様さや高性能さに舌を巻く。

三波はそこで自身の腕時計を確認した。

 

「あ、そろそろ時間ですね・・・・。では皆様、これよりF-35が展示飛行を行いますので、少し移動しましょう」

 

三波の案内で使節団は、駐機場の一角に設けられた特設テントに向かう。そのテントからは滑走路の横で待機している2機のF-35JAが見えた。

三波はその二機を指差した。

 

「これよりあちらに見えますF-35JAが2機が展示飛行を行います。飛行を行いますのは第101飛行隊所属リチャード隊の編隊長、加嶋中佐と2番機の仁川少佐になります」

 

するとフライトスーツに身を包んだ男が2人ほどが使節団に一礼した後F-35に乗り込んでゆく。三波はそれを確認すると特設テント内に設置された無線機を手に取った。

 

「こちら三波。百里管制へ。展示飛行の準備整いました。オーバー」

『こちら百里管制。了解。アウト』

 

無線が切れて暫くすると駐機してあったF-35の周りの整備員はすぐさまそこをどく。そして機体後部から見える炎が強まり、2機はゆっくりと滑走路の進入する。

一旦そこで2機は止まるが10秒ほどして1番機がやや置いて2番機が動き始め、あっという間に加速していく。使節団はその加速力のよさに舌を巻いた。見る見るうちに速度があがっていき、ランディングギアが滑走路から離れる。すぐにランディングギアは機体に収納され、その後2機はあっという間に加速していき見えなくなった。

三波は暫く2機が飛んで行った方を見ていた。暫くすると使節団にこう言った。

 

「先ほどの2機があちらから戻ってまいりました」

「えっ!どこだ?」

 

使節団の面々は三波が指を指した方に目を凝らすが2機の姿は見えない。さては嘘をついたのかと思ったその時だった。

 

ゴォオオオオオオッ

 

すさまじい轟音とともに三波の指差した方向から2機の飛行機が現れ、時速750kmで滑走路の上空をフライパスした。

 

「す、すさまじい・・・・・」

 

その後、2機は滑走路の上空で旋回やバレルロール、急上昇などを披露していく。その間にも三波の事細かな説明があったが、使節団の耳には届いていなかった。

使節団は2機を見ながら、自国のワイバーンがあの2機に容易く撃墜されていく様を想像していた。

*1
航空自衛隊の救難隊は航空救難団と呼ばれる部隊の所属であり、その基地の指揮下にいるわけではない

*2
RF-15Jなどを保有し、全国に配備されている航空偵察部隊の一つ。有事の際には、他担当方面への増援や侵攻地点からの敵地偵察などの遊撃任務に近い任務を負う




いかがでしたでしょうか?
今、空自に女性戦闘機パイロットは一人しかいませんがこれからはもっと増えていくと思い、女性戦闘機パイロットを出させていただきました。
あと、外交交渉はめっちゃめんどくさいのでもう書かないと思います。
それと下のアンケートに答えてくださると幸いです。
ご意見ご感想お気に入り登録お待ちしております。
ではまた次回、さようならぁ!

次回 第10話 陸軍視察

お楽しみに!


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第10話 陸軍視察

どうもSM-2です。
とっとと戦闘回に行きたいんじゃぁ(T-T)今回は深夜テンションで書きあげたのでおかしいかも・・・・・。
では本編どうぞ。


翌日、外務省に置いて2度目の協議が行われた。為替レートや通商条約の内容についての協議と食糧輸出や開発援助などの協議であった。協議では経済産業省貿易経済協力局の職員や財務省国際局の職員、農林水産省消費・安全局の職員なども交えて具体的な内容の作成が行われた。為替レートではある程度もめたがそれ以外は順調に進み、通商条約の内容などの大まかな部分が作成された。それは以下の通りであった。

 

【日鍬通商基本条約案】

<第1条>

・この条約は日鍬友好条約の締結と同時に公布し、その1か月後に施行する。

・日本国とクワ・トイネ公国は永久に対等かつ友好的かつ自由な通商を行う。

<第2条>

・クワ・トイネ公国通貨と日本国通貨はクワ・トイネ公国において使用される銀貨に含まれる銀の日本国内での値段に応じて交換される。

・両替はクワ・トイネ公国内に設置される日本大使館・領事館ないしは日本国内に設置されるクワ・トイネ公国大使館・領事館において行われるものとする。

・前項より、クワ・トイネ公国内に金融証券取引所などの金融機関が設立され経済体制が確立されたと両国間で確認された場合、前項に置ける両替の業務は当該金融機関に譲渡する。

<第3条>

・日本国へのクワ・トイネ公国からの輸入品は日本国税関の正式な検査を受ける。

・クワ・トイネ国への日本国からの輸入品はクワ・トイネ公国税関の正式な検査を受ける。

・荷主の申請に虚偽の疑いがある場合においては両国間の税関は適当な額を提示してその荷の買取を申し出ることができる。荷主はその値段で該当する荷物を売るか、あるいは提示金額に該当する関税を支払う。

・関税は他国からの干渉を受けず国家の主権に属するものであるから、両国間は関税を自由に課すことができる。

<第4条>

・日本国内において法律により所持・使用の禁止している危険薬物は、それを所持し両国を行き来することは何人であっても処罰される。

・日鍬通商基本条約所持禁止物品規約に規定されている公安を乱す凶器等の物品を所持し両国を行き来することは何人であっても処罰される

・前2項を犯したものは当該容疑者の国籍の有する国の領事が裁くものとする。

 

以上が条約案として決定された。為替レートで銀貨に含まれる銀の日本国内での値段に応じて交換するというのはクワ・トイネ公国からの異常な通貨の流出を防ぎ、経済的混乱を避けるためであった。クワ・トイネ公国の通貨交換比率*1で金や銅の相場に応じた両替にしてしまうと金や銀がクワ・トイネ公国から流れ出し、早い話、幕末日本に近い状態になることが予想されたからであった。日本は永久的な市場は求めていたが、市場を自ら荒らしそこに住む住人の反感を買う気などさらさらなかった。

―――――

二日目の協議も終了し、翌日は日本との友好条約の作成にかかる。とは言っても、日本側が大概の案を既に制作しており、それをクワ・トイネ側に見せて修正するという感じであるが。順調にそしてスピーディに条約案はまとまってゆく。それもこれも日本側が急いでるからに他ならなかった。理由は転移前の食料の備蓄が少なく、早急に輸入を再開できなければ日常生活に支障をきたし最悪、餓死者がでる。そのために残された猶予は1年もなかったのだ。

そんな日本側の心の内を知る由もなく、使節団は再びいくつかのグループに分かれて視察に向かう、今日のハンキ達は富士演習場で国防陸軍第1遊撃師団の視察を行う予定であった。すでに富士演習場には第1遊撃師団所属の戦車部隊や歩兵、砲兵部隊、装甲車部隊などが待機していた。ハンキ達は用意された自動車に乗り高速道路を使って富士演習場に移動した。

1時間ほどで富士演習場に到着すると第1遊撃師団師団長の陸軍中将が出迎えた。

 

「国防陸軍第1遊撃師団師団長の内宮と申します。クワ・トイネ公国の皆さま本日はよろしくお願いします」

 

前日での百里基地視察の時と違いに師団長の案内で演習場の中に入っていく。その道中で第1遊撃師団の任務が説明された。

 

「わが第1遊撃師団は日中紛争後の20XX年に国防力増強計画の一環で設立され、有事の際は各方面軍と協力し事態に対処する遊撃部隊になります。様々な任務に対応するため多種多様な最新鋭の装備とトップレベルの錬度を誇る兵員が配備されております」

 

説明をしているうちに演習場内に設置されたテントにつく。

 

「あちらが第1遊撃師団の基幹部隊である第1歩兵遊撃旅団第101歩兵大隊*2所属の中隊です。彼らは装甲化された輸送車両にて現場に急行し事態の対処に当たる部隊です」

 

そこには迷彩柄の装軌式・装輪式装甲車とその隣で静かにピシッとした態勢で立っている600名前後の兵士が並んでいた。その横には四角い箱を2つくっつけ、そこに丸太を取り付けたようなものが鎮座していた。

 

「ウチミヤ殿あの珍妙な物は一体?」

「あれは第103戦車大隊所属第1戦車中隊第3小隊です。31式戦車という130mm滑腔砲を搭載した乗り物を操りまして、敵戦車の撃破や歩兵支援に当たる部隊です。歩兵の銃撃をものともしない強靭な装甲を備えており、貴国ですと・・・・・重装騎兵といったところでしょうか」

 

重装騎兵はクワ・トイネにもあるため、戦車がどういった戦い方をするのか想像がつく。敵陣に突っ込んでいき、敵の重装騎兵や歩兵を叩いて後続の軽騎兵や歩兵の活路を開くのが重装騎兵の役目だからである。

 

「では実際に見ていただきましょう」

 

そういうと内宮は後ろにいた通信兵に合図を送った。すぐさま通信兵は無線を手に取る。

 

「第101歩兵大隊歩兵第1中隊。状況開始」

 

短くそういうと、待機していた歩兵中隊がすぐさま動きだす。素早い動きで装甲車に乗り込んでゆく姿はほれぼれするほどである。

クワ・トイネ公国使節団の面々はその動きが高い錬度によって成り立っているものだとすぐさま察した。2分もしないうちに全ての兵士が装甲車に乗り込み、綺麗な車列を組んで使節団の前までつくと、装甲車は急停車し兵士が次々と出てきたかと思えば、素早く展開し持っていた丸太のようなもの(無反動砲)黒っぽい何か(自動小銃)を構える。

中隊長の指示でそれらの引き金が一斉にひかれた。

それはまるで光の嵐のようだとクワ・トイネ公国使節団は感じた。赤い光弾が連続して発射され、丸太のようなものが火を噴いたかと思えば、その先で大きな爆発が巻き起こる。クワ・トイネ公国使節団の脳裏にはまたもや、自国の騎兵や歩兵がなすすべもなく倒されていく情景が思い浮かんだ。

しばらくすると中隊長の指示で射撃が終わり、再び装甲車に乗り込み撤収してゆく。その代わりに戦車が入れ違いで入ってきた。

始めてみる戦車の重厚さと巨大さに使節団は圧倒された。

 

「す、すごい・・・・」

 

電動モーターを搭載し、静粛性とパワーを備え赤外線誘導対戦車ミサイル対策が施された日本にとっても最新の戦車である31式戦車は音も出さずに滑らかな動きで車列を組んで使節団の前の広場に入ってくる。

無線から聞こえてくる戦車小隊長の合図で、戦車は一斉に止まる。そして搭載された55口径130㎜滑腔砲が1km先の的に狙いを定め火を噴いた。

 

ドォォォオン

 

4台の戦車から放たれた130㎜APSFDSは1km先の的を寸分たがわず破壊した。

それをテント内に設置されたテレビで見ていた使節団はその威力と命中率に驚愕した。すると戦車は再び動き出す。その巨大さからは想像できないような軽々しい動きだった。

暫く走行してから、テントの前に戻ってくると無線から再び戦車小隊長の声が聞こえてきた。それと同時に4台は急停車すると今度は間髪入れずに発砲した。

 

ドォォォオン

 

再び、4発の130㎜APSFDSは寸分たがわず命中する。

 

「なっ・・・・・」

 

クワ・トイネ公国にも弓騎兵とよばれる兵科がある。馬に乗り弓を撃つのだ。だが馬が止まった直後や入っているときに矢を射かけても、揺れているため熟練の射手でもない限り命中率は50%を切る。止まった状態では百発百中を誇る名手でも80%ほどに落ちる*3だがあの戦車という乗り物は発射された4発すべてを命中させた。つまり100%の命中率を誇るということである。ただでさえ、威力が高いのに百発百中ともなればクワ・トイネ公国軍では到底かなうものではなかったのだ。

その後、4台の戦車は再び動き出し行進間射撃を披露した後使節団の前から去っていった。

同じように榴弾砲の射撃演習や6問の榴弾砲を使い、空中に富士山を描く曲芸。高射砲兵隊所属の自走高射機関砲の射撃演習にヘリコプター隊の射撃・ヘリボーン訓練などが次々と披露され、すべてが終わったのは日も暮れかかった午後4時であった。

見せられた国防陸軍の演習は、クワ・トイネ公国軍との圧倒的技術格差を使節団に示すだけでなく、練度の面でも到底かなうものではないと知らしめるものであった。クワ・トイネ公国使節団は日本が覇権主義国家でなかったことを感謝すると同時に、日本を味方にして迫るロウリア王国の脅威に立ち向かおうと心に誓わせた。

*1
クワ・トイネ公国の交換比率は4gの銅を含む銅貨を最低価値貨幣として、100枚の銅貨で30gの銀を含む、銀貨と交換できた。最高価値貨幣の金貨は銀貨100枚と交換でき金の含有量は6gであった

*2
番号には規則があり100番台は第1遊撃師団所属の部隊。200番台は第1空挺師団、300番台は遊撃旅団、400番台は空挺旅団、500番台は団、600番台は乙タイプ師団、700番台は丙タイプ師団、800番台はその他通常旅団、900番台はその他の陸上総軍旗下部隊に所属する部隊の部隊番号

*3
熟練になると手で揺れを制御できるためかなり当たる。初期の機銃搭載の戦車も肩当で撃っていたころは行進間射撃でもかなり当たったらしい




いかがでしたでしょうか?
日鍬通称基本条約は日米修好通商条約をもとにして書きました。めっちゃ省略したなぁ・・・・。
政治より戦闘回の方が皆さまも喜ぶでしょ?でも後チョイ!後チョイです!あと2,3話で戦闘回だぁ!!長かった・・・・。
それと下のアンケート2つに回答お願いします。
ご意見ご感想お気に入り登録お待ちしております。
ではまた次回、さようならぁ!

次回 第11話 戦乱の気配

国防海軍&海兵隊>え、俺らは?
作者>アンタ(国防海軍)は戦闘回になったら他の軍以上に出番あるし、書きにくい。オマエさん(海兵隊)は国防陸軍と装備が対して変わらないからなぁ・・・・
海兵隊>チッキショー!!


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第11話 戦乱の気配

皆様、どうもSM-2です。
ついに2019年も今日で最後!今年はどんな年でしたでしょうか?来年の2020年が皆様にとって良い年になることをお祈りしています。
では本編どうぞ


1ヶ月後、無事に日鍬の国交が樹立され友好条約ならびに通商条約が締結された。その1週間後にはクワ・トイネ公国のインフラ整備のための民間団体や国防陸軍工兵団が大量にクワ・トイネに入国し、鉄道網や水道・ガスなどのインフラ整備が行われた。またクワ・トイネ仲介の元クイラ王国と国交を樹立ボーキサイトやレアメタルの採掘権を獲得し此方にもインフラ整備を開始した。

また技術流出対策基本法が制定され、1960年代までに開発された民需製品の完成品ならば他国への輸出や1940年代までに開発された軍事技術以外の製品の作り方などがその国の発展度合いや文明レベルなどに応じて許可されることとなり、古い日本製品をクワ・トイネに輸出するなどして日本の経済復興を政府は推し進めていた。

―――――――

日本と国交を結んで既に6カ月、ついに都市にインフラが整い始めていた。夜の街にともる電灯の明かりを眺めながら首相のカナタはこうつぶやいた。

 

「いやはや、日本という国はすさまじい国家だな・・・・・生活水準は第3文明圏をも超えるかもしれない。しかもそれでいて日本では時代遅れだというのだから・・・・・・彼の国が味方で本当によかったと思うな・・・・・」

 

ただカナタの心中には一抹の不安もあった。隣の覇権主義国家で亜人排斥を訴えるロウリア王国の存在であった。近年、軍事力の増強を着々と進めているのだが、そのスピードが異様に速く何処かの文明国が援助しているのではないかとも思われていた。

そんなロウリア王国はココ2,3年でクワ・トイネ、クイラ国境線の軍隊を増強し圧力をかけている。ロウリアに派遣した日本使節団は門前払いされたらしく、ロウリアが亜人排斥を訴える危険な国家だと日本に伝えたところ、日本は軍事支援を行うと伝えてきた。*1

すでに日本製のボウガンやコンパウンドボウなどの飛び道具やジュラルミン製の大盾などがクワ・トイネ公国軍に供与された。ただ他国への流出がないように最大限の警備下に置くことなどが求められた。

 

―――なんだか、嫌な予感がする・・・・・

 

カナタを言い表せないような不安が襲うのだった。

―――――――

「――ふむ、ロウリア王国は危険だな・・・・・・」

 

一か月に1回開かれる国家安全保障定例連絡会で議長である菅原は国家戦略情報庁から提出された資料を呼んだ後、一言つぶやいた。

 

「人種差別的かつ覇権主義国家・・・・・しかも今や日本の生命線たるクワ・トイネ、クイラの隣国で年々軍事力を増強している。この上なく危険だ」

「藻類石油*2や地熱発電などでエネルギー面は問題ないですが、ボーキサイトや鉄などのレアメタルに食糧はどうしようも・・・・・」

 

菅原は資料をポンとおくと、顎に手を当てて暫く考える。

 

「もし万が一に備えて、クワ・トイネ防衛計画とロウリア侵攻計画を立てておけ。それとロウリアの内情をマスコミやネットに流すんだ。無論、政府発表とはしないように・・・・・・。覇権主義・人種差別と聞けばロウリア戦に賛同する世論が形成されるだろう・・・・。それと政府発表としてはロウリアは国交がなく、彼の国にも我が国と国交を結ぶ意思はないことから国家ではなく広範囲を支配する武装勢力と発表しておけ。戦争になった時、少しでも動きやすい方がいい」

「分かりました」

 

菅原の指示はその日のうちに実行に移った。最高国防参謀司令本部では対ロウリア戦の計画立案が始められ、国家戦略情報庁はロウリア王国の情報やロウリア王国にいる亜人の扱いなどをネットやマスコミに流した。その日の官房長官の定例記者会見では「ロウリアは国家ではなく武装勢力、20年以上前のISと同じである」と発言した。

ロウリアの人種差別思想が効いたのか、世論ではロウリアにも人権思想をという声が高まり、中には国防軍でロウリア国内にいる亜人たちを助けろという意見もあったほどになる。

余談だが、一番反応が薄かったのはオタクだったらしい。なぜかって?ネット小説だと亜人がひどい扱いを受けるのは定番だからである。

――――――

菅原の指示が実行されて1ヶ月後。今も国家戦略情報庁が火に(ロウリアについての情報)をくべ続けるものだから、日本国内の世論は沸騰したままだった。

そんな頃に自国を叩けなどといわれているとは知らないロウリアでは一つの重大な会議が開かれていた。

 

「ではこれより、御前会議を始めさせていただきます」

 

ロウリア王国の宰相であるマオスがそういうと参加者はスッと背筋を伸ばした。

この会議に参加しているのはロウリア王国の今後を左右する官軍の重役たちであった。

 

「まずは国王陛下よりのお言葉でございます」

 

マオスがそういって座ると同時にロウリア王国国王のハーク・ロウリア34世に合図をする。満足そうにうなずいたハーク・ロウリア34世は居並ぶ重役たちを一瞥すると口を開いた。

 

「皆の者。今まで我が国の国是たる亜人の撲滅を達するため、あるものは厳しい訓練を耐え抜き、あるものは財源確保に寝る間も惜しんで走り、あるものは命を懸けて情報を集めた。我らが悲願を達する前に命を落としたものもいる」

 

重役たちは亜人排斥という目的のための6年という長く苦しい準備期間を思い出し、あるものは涙しあるものは唇をかむ。

 

「だがその地獄のような準備がついに完了したと報告を受けた。ついに先々代からの悲願たる、亜人の排斥を可能にすることができるのだ。諸君らの苦労を労おう」

 

彼らからしたらありがたい国王の言葉に感動する。

 

「おお・・・・・」

「何と恐れ多いお言葉・・・・・・」

 

重役たちのざわめきが収まったとところでハーク・ロウリア34世は横にいた王国防衛騎士団長のパタジンの方を向いた。

 

「パタジン。作戦の説明を行え」

「ははぁ!」

 

パタジンはきらびやかな服装に身を包んでいたが、その下には鍛え抜かれた屈強な肉体が見て取れた。その姿はまさしく英雄の姿というにふさわしいのかもしれない。

 

「我が国は今回の作戦でクワ・トイネとクイラという2つの国を征服し、忌々しい亜人どもをこのロデニウス大陸からは滅し、統一することができるでしょう。両国はとても硬い絆で結ばれており、一方の国に宣戦布告を行えば、片方が参戦してくることは必須でございましょう」

 

パタジンはそういうがとても自身に満ち溢れた表情を浮かべていた。すると少し気の弱い宰相のマオスは少し怖そうな声でパタジンに問いかける。

 

「2か国を同時に相手に回して勝てるのでしょうか?」

 

その問いに、パタジンは表情を変えることなく答えた。

 

「一国は農民どもの集まり、一国は不毛な土地に住まう貧民の国家。高貴なる人間が統べる我が国は質・量ともに勝っております。負けることはありますまい。ご心配なされるな。それよりも数ヶ月前に国交樹立を求めてきた日本とやらの情報を知りたい」

「はい。調べたところによりますと、日本はクワ・トイネから北東に一千キロも離れた新興国家との事です。軍事的脅威はほぼないでしょう。それに彼の国の使節団は竜騎士団をみて”初めてみた”と申しておりました。ワイバーンのいない蛮族と思われます」

 

ワイバーンはこのロウリアやクワ・トイネの属するロデ二ウス大陸や近隣の文明圏外国家、近隣の文明圏である第3文明圏では唯一の航空戦力である。そのワイバーンがいないということはワイバーンによる近接航空支援や制空戦を行えないということを意味する。無論()()()()()()()()()()()()()()()()別だが。だが第1文明圏や第2文明圏ならいざ知らず、辺境の文明圏である第3文明圏ではワイバーン以外の航空戦力はほぼいなかった。

パタジンはマオスの答え聞いて、笑みを深めた。

 

「ほぅ・・・・・ならば今回の作戦に影響はありますまい。仮にクワ・トイネがそのような国家に助けたところで我が国の覇道は阻めぬでしょう」

「ついに余の大願が叶うと思うと嬉しく思うぞ。パタジン」

 

ハーク・ロウリア34世は上機嫌な声でそう言った。すると薄気味悪い甲高い声が会議室に響き渡る。

 

「国王陛下。大陸統一のあかつきにはあの約束もお忘れなきよう・・・・・クックックッ」

 

その声を聞いてハーク・ロウリア34世は一気に不機嫌になった。

 

「分かっておるわ!!!」

 

ハーク・ロウリア34世の怒声が会議室にわんわんと響き渡った。彼の本来の性格であれば薄気味悪い声の主をすぐさま切り捨ててしまう所だがそうできない理由があった。

声の主は会議室の一席に座っている真っ黒なローブを着た男であったが、その正体はロウリアを支援している、第3文明圏の列強国であるパーパルディア皇国から派遣された使者だ。パーパルディア皇国の支援失くしてはこの戦争を出来ないため、そうやすやすと切り捨てることが出来ないのだ。

ハーク・ロウリア34世は怒りをグッと飲み込み、相変わらず不機嫌そうな声でパタジンに話しかけた。

 

「・・・・・パタジン、続きを・・・・・」

「はっ、ははぁ」

 

一瞬、あっけにとられていたパタジンだがハーク・ロウリア34世に命令されたことで作戦の続きを説明し始めた。

そばに用意してあった青い駒をいくつか手に取り、テーブルの上に広げられた地図の上に素早く置いてゆく。つづけて、敵軍を示す赤い駒をいくつか手に取り、クワ・トイネとクイラの位置に置いていく。

 

「まず今回の作戦での戦力ですが、海軍で20万陸軍で30万の計50万人となります。まず、陸軍と海軍は2つに分け、陸軍の20万はクワ・トイネ攻略に、9万は本土防衛に、残る1万はクイラ国境線での警備に当たります」

 

そういうとパタジンは青い駒の内1つをクイラ国境線に20個をクワ・トイネ国境線に移動させる。地図上の陸地のロウリア領土に置いてある駒は9つであった。

 

「まず宣戦布告と同時に、先遣隊3万を派遣し国境の町ギムを制圧いたします」

 

すると対クワ・トイネ侵攻軍の将軍であるパンドールがココで声を上げた。

 

「なお、兵站でございますが。彼の国は食糧が豊富にございます。ギムや近隣の町などから徴収すれば賄えると考えております」

 

パンドールはそれだけ言うと口を閉じた。

 

「先遣隊3万はギム防衛部隊1万とエジェイ攻略先遣隊2万に分かれ東方に55kmいった地点にあります城砦都市エジェイに向かいます。攻略先遣隊は敵の情報を探りつつ、本隊17万の到着を待ちます。本隊が到着したところでエジェイを全力で攻撃し、これを制圧いたします。彼の国はエジェイ以外に城砦都市はなく、首都ですら町ごと城壁で覆うといったことを行っていません。このエジェイさえ攻略してしまえばわれわれの勝利は揺るぎないものになりましょう」

 

陸上にある駒30個のうち20個すべてをクワ・トイネの首都に移動させると、次は再び青い駒を20個ほど取り出し、海の上に乗っける。パタジンはそれを動かしながらさらに続けた。

 

「陸からの侵攻と並行して海からも約20万の海軍を送り込みます。彼の国の経済都市マイハ―クの北岸に上陸し、これを制圧します。食料をクワ・トイネからの輸入で賄っているクイラはコレで飢餓に襲われるでしょう。そして弱ったところを・・・・・・」

 

パタジンは全ての青い駒をクイラに移動させた。

 

「50万全軍で攻撃。占領いたします。これで我が国はこのロデ二ウス大陸を統一できましょう」

 

するとマオスが再び口を開いた。

 

「クワ・トイネ公国の兵力はいかほどか?兵力によっては統一が失敗することもあろう」

「クワ・トイネの総兵力は多くても5万。即応戦力は1万といきますまい。我らの6年の準備期間が実を結びましょう」

 

パタジンの回答を聞き、ついに自分の悲願が達成されると確信したハーク・ロウリア34世は高笑いを始めた。

 

「ついに余の悲願が達成される。クワ・トイネとクイラの両国に宣戦布告の準備をせよ!!忌々しい亜人どもをこの大陸から滅するのだ!」

「「「ははぁ」」」

 

ハーク・ロウリア34世の宣言で会議は終わった。ロウリア王国の重役たちは会議室のテーブルの裏に黒っぽい何ががついていることに誰一人として気がつかず、それを介して会議を盗み聞きしている者がいるなど想像もしていなかった。

―――――

「・・・・・ロウリアが宣戦布告を決定したようだ」

 

首都ジン・ハークの一角にある廃倉庫では数人の人間が何やら機械などを操作していた。そのうちヘッドフォンを付けていた男がそう言ったのだ。

 

「ふむ、とりあえず本国に連絡しよう」

 

彼らの正体は日本国国家戦略情報庁所属のエージェントたちであった。日中紛争のあと日本は情報戦に力を入れ、国家戦略情報庁は敵国の諜報活動やサイバー攻撃を行う部署でこのエージェントたちは転移前、中国や欧州で活動していた。だが日本が転移した数日後に北海道の地にいたのだ。ほかの観光や外交目的で海外にいた日本国籍を持つ人間も同様であり、外務省やNSIは優秀な人材を失わずに済んだ。

するともう一人の女性が口を開く。

 

「それと最近この都市から出ている謎の電波の調査もお願いしてちょうだい」

 

最近、ロウリアの首都であるこのジン・ハークのどこからか日本の使用する電波ではない謎の電波が探知されていた。何やらモールス信号のようなのだが高度な暗号化と見たことのない信号なので簡単なパソコンくらいしかない彼らでは発信源の特定やモールス信号の解析が出来ないのだ。

だが本国の国防空軍の戦略偵察航空隊や国防海軍の航空隊に所属している電子偵察機ならば発信源の特定が出来るし、本国のNSIにあるスーパーコンピューターを使用すれば暗号の解析もできるのだ。

彼らの報告は在クワ・トイネ日本大使館を通じて本国に伝えられた。

―――――

「・・・・・ロウリア軍に対してクワ・トイネはどれほど対抗が可能なのか。それが問題だ」

 

NSIの報告を受けて、菅原は国家安全保障会議を開いた。参加者は日中紛争前の国家安全保障会議の常任議員メンバーに加え、国防参謀司令本部参謀総長*3や国家戦略情報庁長官、公安情報調査庁長官が常任議員としている。また今回、農林水産省の大臣も臨時議員として参加していた。

 

「確かにクワ・トイネなどにはコンパウンドボウなどを輸出してはいますが、根本的な兵装は変わりなく確実に負けてしまうでしょう」

 

菅原の問いに統括参謀総長はそう答えた。農林水産大臣が統括参謀総長に問いかけた。

 

「クワ・トイネ軍が負けてしまえば、我が国はどのようになるでしょう?」

「クワ・トイネ軍が負ければクワ・トイネはロウリアの支配下にはいります。クイラはロウリアと敵対しており、クワ・トイネに食料供給を依存していることからクイラはそれだけで立ち行かなくなります。またロウリアは我が国と国交などもないことから我が国への食糧供給も止まり、クイラが立ち行かなくなることから鉱物資源の供給も止まるでしょうな。最悪、我が国が両国へ輸出したインフラなどからの技術流出の可能性もあります」

 

すると資源の輸入などを担当する経済産業大臣と食料輸入を担当する農林水産大臣が顔を変えた。

 

「それはまずい!食料輸入が止まれば数千万という餓死者を出すことになってしまう!!それだけはどうにかしなければ」

「経産省としても同じだ!クイラからの鉱物資源の輸入で何とか産業が生き返ろうとしているのだ!ここでクイラからの鉱物資源輸入が止まるなどたまったものではない!!」

 

数千万という餓死者の可能性や経済の衰退と聞いて閣僚たちの顔が曇る。

 

「いずれにせよ。クワ・トイネへの侵攻を防がなければ我が国は亡国になるだろうということだ」

 

菅原がそういうと今まで黙っていた国家戦略情報調査庁長官が口を開いた。

 

「幸いにして、先月の官房長官の会見やマスコミへのリークで世論は”ロウリアにも人権思想を”です。振り子が右へ左へ極端に振れる国民性ですから結果は予想以上です。クワ・トイネへの侵略戦争の発表を行えば”戦争やむなし”になるやもしれません」

「だがそれだと戦後に憲法違反だといわれるぞ?戦後にたたかれるような事態は避けたい」

 

すると防衛大臣が居並ぶ閣僚に提案を行う。

 

「クワ・トイネに人道支援と称して1個工兵団をクワ・トイネ軍との演習と称して1個遊撃旅団をクワ・トイネに派遣しましょう。クワ・トイネにすぐさま駆け付けられる位置に1個空母打撃艦隊を異世界で初の訓練航海という名目で派遣しましょう。それと第1遊撃師団と海兵隊には国内での大規模演習の目的という名目でクワ・トイネへの派遣準備を進めてはいかがですか?」

 

防衛大臣の提案を聞いて閣僚たちは真剣に考えこむ。その全員が悪くない案だという顔だ。

 

「ギムあたりで演習の用意をしておいて攻撃を受ければ参戦の名目もたつ・・・・・。国防軍には政治の犠牲となってもらうことになるがなるべく犠牲者を出さないように計画を立ててほしい」

 

菅原は統括参謀総長にそう言った。

 

「了解しました」

 

その日、統括参謀本部では対ロウリア戦の計画が始まった。

また、外務省経由でクワ・トイネにはロウリア王国の計画を秘密裏に伝え、ギム近辺での国防軍との合同演習と人道支援目的での国防陸軍第6工兵団の派遣を打診、クワ・トイネはその打診にある真の目的を察していたため二つ返事で了承。

防衛省や国防陸軍参謀本部は寝る間を惜しんで派遣の準備を進め。事前に警戒レベル*4が4であったため、すべての遊撃部隊が人員招集だけで戦闘状態にはいれる状態だったために西日本防衛担当の第3遊撃旅団の派遣を決定。2週間という短期間でクワ・トイネに派遣された。また陸上総軍旗下の第201工兵旅団は災害にすぐさま対応できるように機材などはそろっていたため、第201工兵旅団の派遣が決定。第3遊撃旅団が派遣された3日後に横須賀基地からクワ・トイネに派遣。即応部隊であった第1空母打撃艦隊を護衛として途中まで随伴し、クワ・トイネ北方200km地点で分かれて第1空母打撃艦隊は5か月間の訓練航海という名目でそこら近辺にとどまった。

その間に国内では第1遊撃師団と海兵隊の機材の準備や第2空母打撃艦隊の出撃準備が整えられた。また謎の電波の情報を収集するために第1空母打撃艦隊所属の電子戦機や空軍戦略偵察航空団所属の第601電子偵察航空隊が出撃準備を整え、参戦した後に工兵団が建設したクワ・トイネの航空基地に移動し電子情報収集任務に就く予定だ。

一連の政府の動きをみた一部の識者は戦争の気配を感じ取るのであった。

*1
これはクワ・トイネが日本の食料供給の生命線であることや人種差別を行う国と国交を持つことで国民から反発を食らう可能性があると判断したから

*2
その名の通り、特殊な藻からとった石油。航空機燃料などに使われる

*3
自衛隊統合幕僚長と同じ役職

*4
日本版デフコン。レベル5が平時であり、レベル4は仮想敵国の情勢や世界情勢が不安定な時。レベル3が准戦時体制でレベル2が戦時体制。レベル1が本土の邦人や領土に何らかの危険があるとき。レベル5では電子情報の調査や諜報員による情報収集。レベル4では戦略偵察機や衛星による情報収集体制の強化や核戦略部隊や1部即応部隊が待機態勢に入り、レベル3では全即応部隊や一部の方面軍基幹部隊などが待機態勢に、レベル2ではすべての部隊が戦闘態勢に入り、レベル1では核攻撃も許可されるのである




《クワ・トイネ軍合同演習参加部隊》
・第3遊撃旅団
兵員数:6,000名
――――――
いかがでしたでしょうか?
流れとしてはもう一つの日本国召喚ものに似ているかな?ですが次回の戦闘回はかなり違ってくると思います。
さて今年の投稿はこれで最後。ここまで投稿を続けられてきたのは皆様のおかげです。来年も相変わらずの応援よろしくお願いします。
それではまた来年!さようならぁ!

次回 第12話 ギム撤退戦

お楽しみに


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第12話 ギム撤退戦(開戦)

皆さまどうもSM-2です。
前回の次回予告でギム撤退戦とだけ書いてありましたが、今回のタイトルは「ギム撤退戦(開戦)」です。もともと一つの話で終わりにしようと思っていたんですが、書いてる途中でなんと18,000文字に・・・・・。このままだと1話で20000文字以上になってしまうと考えいくつか切りのいいところで切って小分けにすることにいたしました。たぶん18,19話辺りまでギム撤退戦です。
それと今回はチョイグロです。
それでは本編、どうぞ。


中央歴1639年4月10日

第3遊撃旅団は日本を出発してから1週間後。ロウリアとクワ・トイネの国境線にある人口3万人*1ギムの町に着いていた。准戦時体制でクワ・トイネ公国軍が集結しており、町の至る所には防塁が築かれていた。

ギムの町にある西部方面騎士団司令部で第3遊撃旅団旅団長の茂木(もぎ)大和(やまと)准将と西部方面騎士団団長モイジ将軍が面会していた。

 

「日本国国防陸軍第3遊撃旅団旅団長の茂木大和です。よろしくお願いします」

「クワ・トイネ公国軍西部方面騎士団団長のモイジ・カーリフです」

 

二人はがっちり握手をする。

 

「今回はクワ・トイネ公国軍とわが第3遊撃旅団での演習。よろしくお願いします。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「ああ」

 

含みを持たせた言い方を茂木はした。クワ・トイネ側の幕僚たちはその言い方に首をかしげていたが、モイジはクワ・トイネ政府より日本が対ロウリア戦に参戦することを伝えられていたためにこやかに対応した。

その後、クワ・トイネ公国軍と日本国国防軍幕僚団で演習の内容などに関しての話し合いが行われたが、内容は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というものであり、ここでクワ・トイネ幕僚団はロウリアが攻撃が仕掛けてきたときに日本とクワ・トイネ公国軍でロウリア軍を足止めし、ギムの住人を後方に避難させる気だと気が付いた。

――――――

「茂木准将。まもなくですね」

 

クワ・トイネ公国軍との会合をおえた日本側幕僚団はそういった。

 

「ああ、情報だとXデイは2日後だ。ロウリアの宣戦布告を受けたら後方に置いてあるヘリをわが軍の撤退という名目で呼び出す。そしてヘリが来る間にわが軍はロウリア王国軍からの攻撃をわざと受け参戦の口実を造り参戦する。そして上空で撤退支援で待機していた戦闘機隊は制空権を確保し、やってきたヘリ部隊にはギムの住人を乗せて後方に避難させる」

「汎用ヘリ部隊と戦闘ヘリ部隊はクワ・トイネ側から情報のあった近隣の村に向かってもらい住人を避難させるという作戦ですね」

 

これらの作戦や会話は一部幕僚や政府高官の頭の中だけにとどめられ書類などにされることはなかった。着実にロウリアに対する作戦が進んでいた。

―――――――

第3遊撃旅団がやってきた翌日。小高い丘の上から国境線付近に集結するロウリア王国軍を眺める男がいた。クワ・トイネ公国側からは何度も国境から軍隊を引くように要請が来ていたが、もはや戦争は決定事項であり無視を決め込んでいた。

 

「明日、わが先遣隊3万でギムを落とす!」

 

男—ロウリア軍先遣隊の指揮官、アデム・ハイトは眼下にみえる3万の軍勢を眺めてそういった。

総勢50万、陸軍だけで30万を超す兵力を持つロウリア王国軍でも3万は総兵力の1割である。歩兵2万、重装歩兵5千、特化兵1500、遊撃兵1千、魔獣使い250、魔導士100、竜騎兵150もの兵力を任されたアデムは大役を任されたという緊張と、信頼されているといううれしさがあった。

特に竜騎兵150はそのうれしさを大きくさせていた。歩兵2万という数に比べて少ないように感じるが、ワイバーンというのは非常に高価かつ強力な兵力でワイバーン1騎で歩兵1万は足止めをできる。それだけ強力な兵科を150というのはとてもうれしいだろう。

だがアデムには不可解なことがあった。それはワイバーンの数だ。ロウリア王国がかき集められるワイバーンはどれだけあがこうと200が限界である。だが今回の作戦には500ものワイバーンが参加する。噂では第3文明圏の列強国パーパルディア皇国の支援があったと聞くが、真相はわからない。何せ、ワイバーンには国籍を示す国章がないため推測するぐらいしかないのだ。

 

「ギムでの戦利品はいかがしましょう?」

 

横にいた伝令兵は、いまだにニタニタした笑みを浮かべているアデムにそう聞いた。

アデムの残虐性はロウリア王国軍において知らないものはいないといわれ、この後どれだけ残虐な命令が下されるのかとちょっとした恐怖心を抱いていた。

 

「ギムでの略奪は一切とがめない。女を嬲ってもよいが、使い終えたら必ず全員処分すること、一人も生かして町から出すな」

「はっ・・・・・・」

 

伝令兵はアデムにしては普通な命令(ロウリア王国軍で占領地の略奪・暴行は当然)に意外さを覚えつつ各軍の司令官に伝えるべく走りだそうとした。だがそこでアデムに呼び止められる。

 

「いや、まて!やはり嬲った後に100人ばかり生かして開放しろ。あとで殺すことに変わりはないが、恐怖を拡散させるのだ。それとギム防衛部隊の家族がいたらなるべく残虐に殺せ!魔獣に生きたまま食わせるでも、火あぶりにするでも、内臓を抉り出すでもなんでもよい。いいな!」

「は、はっ!」

 

伝令兵は各軍の司令官にアデムの命令を忠実に伝えるのだった。

――――――

クワ・トイネ公国北方100km地点

参戦時に対ロウリア侵攻軍の総指揮官となる第1空母打撃艦隊司令官の音羽(おとわ)美優(みゆ)少将は旗艦「あかぎ」のアイランド(艦橋)でロウリア王国軍の宣戦布告の知らせを待っていた。

 

『通信室より艦橋。司令!!在鍬大使館から緊急通信です!!』

 

音羽は近くにあった艦内無線受話器を手に取る。

 

「艦橋より通信室。内容を伝えなさい!」

『はっ。”クワ・トイネはロウリア王国との戦闘状態に入った”!!以上です』

「了解!」

 

音羽は受話器を置くと、艦長と航空団長の方を向くと口を開いた。

 

「艦隊をクワ・トイネ北方50kmに移動させて!!第1戦闘飛行隊は発艦して第3遊撃旅団の()()()()に向かいなさい!第3遊撃旅団の茂木准将に連絡しなさい!!急いで!」

「はい!!」

 

ついに日本が動き始めた。

――――――――

「茂木准将!!第1空母打撃艦隊より緊急電です!!”ロウリア宣戦布告”!!ロウリアが宣戦布告をしました!!

 

第3遊撃旅団司令部で数人の幕僚とともに宣戦布告の知らせを待っていた茂木は、飛び込んできた通信士の報告を聞いて指示を出した。

 

「よし!!ヘリ部隊に撤退のために出動するように連絡!!防空部隊は何かあった時のために即時射撃ができるようにしろ!兵士は装甲車両に乗り込んでワイバーンの火炎弾攻撃に備えろ!!」

 

茂木の指示はすぐさま通信士によって第3遊撃旅団全体に通達される。高射砲兵隊はいつでも射撃ができるように移動し、歩兵部隊は装甲車や戦車、石造りの建物などに避難する。

宣戦布告より30分後。12:30分にロウリア王国軍3万がロウリア―クワ・トイネ間国境線を越境した。その先頭部隊であったワイバーン部隊は真っ先にギム上空にたどり着いた。

 

「レーダー探知!!ロウリア王国軍ワイバーンが越境!!あと10分ほどでギム上空にたどり着きます!!クワ・トイネ公国軍ワイバーンが出撃しました!あと10分ほどで交戦します!!」

 

高射砲兵隊に配備されている車載式対空レーダーは越境してくるロウリア王国軍ワイバーン75騎とそれを阻止せんと出撃するクワ・トイネ公国軍ワイバーン24騎を探知した。

10分ほどで両国軍ワイバーン部隊は激突するが、数で劣るクワ・トイネ公国軍は数騎を落としたところで全滅してしまった。

自分たちが早く参戦すれば死ななかった彼らのことを茂木は申し訳なく思った。

 

「ロウリア王国軍。まもなくギム上空!!」

「全部隊は攻撃を受けるまでは一切の攻撃を禁止するように伝えろ!!」

 

ついにその時が迫りつつあった。

――――――――

「クワ・トイネのワイバーンは大したことがないな・・・・」

 

ロウリア王国軍先遣隊の竜騎隊隊長のアルデバランはそうつぶやいた。彼が率いるロウリア王国軍のワイバーン75騎は迎撃に上がってきたクワ・トイネのワイバーン24騎と交戦した。味方のワイバーンが3騎ほど落とされてしまったが数分とかからずに全滅させてギムに向かっていた。

交戦から数分後、ロウリア王国軍竜騎隊はギム上空にたどり着いた。眼下に見えるギムの町では見慣れた街並みや動き回る敵騎士団員やギムの住人がせわしなく動き回っていた。だがところどころに緑マダラの物体や同じような模様の服を着た人間が混じっていた。いったい何なのかわからなかったがギムの町にいるということはクワ・トイネの味方に違いないので気にせず攻撃することにした。

 

「よし!!ギム上空だ!!地上部隊の侵攻を助けるぞ!!地上のすべてのものを焼き払うのだ!!」

「「「「「うぉぉおおお!!」」」」」

 

ロウリア王国軍のワイバーンは、その口に炎を蓄えて火炎弾の発射準備を始めると地上のものを焼き払うべく急降下を始めた。

――――――――

「敵のワイバーンだ!!にげろぉ!!」

 

地上のクワ・トイネ公国軍は急降下してくるロウリア王国軍のワイバーンをみて身近な建物の影に隠れたり、走って逃げたりしていた。第3遊撃旅団の兵員も装甲車の中や陰に隠れたり、火炎弾を食らった時のためにABC消火器を用意したりする。防空高射砲兵隊は機関砲やミサイルの電源を入れいつでも迎撃に入れるようにしていた。

そしてついにその時がやってきた。

 

「敵ワイバーン!!火炎弾を発射!!」

 

上空を双眼鏡で見ていた兵士がそう叫んだ。150騎のワイバーンは一斉に火炎弾を発射した。粘性のある火炎弾はギムの町にある民家や木柵、櫓、地面など様々なところに着弾した。着弾した火炎弾は建物や木柵、近くにいた人間を燃やす。

 

「ギャァアアアアくれぇ!」

「み、水をくれぇ!」

「熱い!熱いよぉ!!」

「火を、火を消してぇ!!」

 

クワ・トイネ軍の兵士や町に住んでいる女性や商人など老若男女にとわず火炎弾の着弾点の近くにいた人間が燃え上がり、気管が焼かれ自分の体が燃え上がる苦しみにもがき苦しむ阿鼻叫喚の光景が広がる。その中にはもちろん、装甲車の陰などに隠れていた第3遊撃旅団の兵士もいた。

 

「くそっ!!火を消せ!!砂をぶっかけろ!!」

 

兵士たちは粘性のある火には水をかけるよりも粉や二酸化炭素を使い、酸素の供給を絶った方がいいことを知っていたため燃え上がった仲間にABC消火器をかけたり、準備してあった砂を体にかけて鎮火させる。

また近くで燃え上がったクワ・トイネ軍の兵士や住人にも消火器や砂を使い、体にまとわりついていた炎を消してゆく。

 

「大丈夫か!おい、衛生兵こっちに来い!!」

「大丈夫ですか?わが軍の野戦病院があります。そこまで行きましょう」

 

火を消した後、無事な第3遊撃旅団の兵士はやけどを負った仲間や住人を担いだり担架に乗せて第3遊撃旅団が()()()()()()()()()()()()()()()に搬送する。

ところどころで火に包まれそうになっている人を見かけると持っていた消火器や軍用シャベルを使って火を消して回る。

この時点でのクワ・トイネ公国軍、民間人、第3遊撃旅団の被害は以下の通りであった。

―――――――――

【クワ・トイネ公国軍】

死者・行方不明者:41名(炎による死者:26名、落ちてきたがれきによる死者:14名、崩れ落ちた建物の下敷き:1名)

重軽症者:77名(やけど:21名、気道熱傷:41名、崩れ落ちた建物のがれきに当たった:18名)

 

【民間人】

死者・行方不明者:59名(炎による死者:8名、落ちてきたがれきによる死者:21名、焼け落ちた建物の下敷き:30名)

重軽症者:109名(やけど:41名、気道熱傷:45名、崩れ落ちてきたがれきによる負傷:23名)

 

【第3遊撃旅団】

死者・行方不明者:10名(炎による死者:8名、落ちてきたがれきによる死者:2名、崩れ落ちた建物の下敷き:0名)

重軽症者:34名(やけど:23名、気道熱傷:7名、崩れ落ちてきたがれきによる負傷者:4名)

 

また建物21棟が全焼という被害を受けていた。特別な消防装備を持っていなかった第3遊撃旅団では有効な消火活動をすることができず、建物被害はさらに広がった。

*1
公式設定では10万人ですがこの作品では3万人とさせていただきます。中世レベルの国家で10万人は首都並みの大都市ですからね




いかがでしたでしょうか?
ギムの町の住人が10万人と知った時は驚いた・・・・。中世レベルの国家で10万人の規模は地方中枢の大都市(日本でいう大阪、名古屋にみたいな?)か首都くらいしかないと思う。国境の一地方都市で10万は日本からしたらすくないですけど中世くらいだったら多すぎるので3万人に減らしました。それに10万人を1日で避難させるのは不可能ですし・・・・。
ご意見ご感想お気に入り登録お待ちしております
ではまた次回。さようならぁ!

次回 第13話 ギム撤退戦(防空戦)

お楽しみに!


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第13話 ギム撤退戦(防空戦)

皆さまどうもSM-2です。
この話、防空戦と言っていますが前半は旅団長の茂木さんと参謀の会話が大半ですw。
では本編どうぞ。


「旅団長!第3即応歩兵連隊が敵火炎弾攻撃を受けました!!かなりの負傷者がいる模様です!!」

 

第3即応歩兵連隊は第3遊撃旅団旗下の部隊だ。つまり第3遊撃旅団が攻撃を受けたことを意味していた。茂木は椅子から立ち上がるとすぐさま指示をだす。

 

「すぐさま第1空母打撃艦隊に連絡!!負傷者は野戦病院へ!クワ・トイネ公国軍と民間人の負傷者もだ!防空部隊には我々を攻撃したトカゲを叩き落とすように命令を出せ!!」

「はい!」

 

報告に来た通信兵はすぐさま部屋を出ていく。茂木はドカッと椅子に座ると目をつむって火炎弾の犠牲になった部下たちに謝った。そして数秒ほどして目を開くと、ふとそばにいた参謀に声をかけた。

 

「・・・・ワイバーンが火炎弾攻撃をしようとした時点で正当防衛で攻撃命令を出せばよかったな・・・・。そうすれば部下が被害にあうこともなかった・・・・・」

「いえ・・・・確かに日中紛争後も国防軍法*1の中に武器使用は国防軍武器等使用法、防衛省武器使用規則*2ならびに警察官職務執行法に準ずるとありますが、あの時点で攻撃命令を出してワイバーンを全機撃墜した場合、後で攻撃目標は我々ではなくクワ・トイネ公国軍だったと難癖をつけられて、国会やマスコミが旅団長や政府のことを叩くこともあったかと・・・・」

 

茂木はワイバーンが火炎弾攻撃をしようとした時点で正当防衛ということで警察官職務執行法にのっとって攻撃命令を出すことが出来たのではないかと後悔していた。

 

「・・・・君は正当防衛の成立要件をおぼえているかね?」

「ええ。急迫不正の侵害、自己または他人の権利を防衛するため、やむえない場合の大きく3つであったと記憶していますが」

「クワ・トイネ公国の人間はその()()には入らないのか?クワ・トイネ公国の人間の権利を防衛するために武力を行使してもよかったのではないか?」

「ですが、それは過剰防衛に値するとまた物議を醸す可能性があります。それにロウリア軍が火炎弾攻撃を準備してから実施するまでは非常に短い時間でした。あの時間では攻撃命令を発しても防空部隊の迎撃は間に合わなかったと考えます」

 

参謀はそう返した。

 

「それでも、やはり考えてしまう・・・・。”もっとやりようはなかったのか?”とね・・・・」

 

茂木はそう言って外をチラリとみた。既に防空部隊が迎撃を始めており、ロウリア王国軍のワイバーンはほとんど残っていなかった。

 

「そういえば君は部隊指揮の経験がほとんどなかったんだったな?君も部隊を任せられるようになればわかるさ。私の苦痛がな・・・・・。政治の犠牲になるのはいつも現場だ・・・・・・。さて、住人の避難を開始しろ!!司令部付憲兵中隊はクワ・トイネ公国軍と協力し住人の避難誘導を開始せよ!」

「はい!」

 

参謀はすぐさま部屋を出て行った。茂木は再び椅子に座るとぽつりとつぶやいた。

 

「・・・・指揮官に必要なのは屍を越えられるだけの強い心・・・・か」

 

茂木はスッと立ち上がり、そばにかけてあった自身の作業帽をかぶると部屋から出て行った。

――――――

「司令部より命令!!攻撃命令だ!!敵ワイバーンを撃墜せよ!!」

 

防空部隊の指揮官がそういうと、兵士たちは素早く動き始める。

 

「目標レーダー探知!ロック完了!いつでもいけます!!」

「よし!攻撃始めぇ!!」

 

自走高射機関砲の砲手は引き金を、地対空誘導弾の射撃担当は発射ボタンを押しこんだ。

 

シュゥウウウウウ

ダダダダダダダ

 

ギムのいたるところから白煙が上り、曳光弾が大空に向かって伸びてゆく。

ロウリア王国軍のワイバーンは一度上昇してから再度火炎弾攻撃をしようと再上昇中だったが、第3遊撃旅団の地対空ミサイルや自走高射機関砲の餌食になってゆく。

爆発で四肢がもげ肉片となった者、騎乗しているワイバーンごど曳光弾に貫かれハチの巣になって落ちてゆく者、形はそれぞれだが与えられている物は全て死であった。

 

「撃て!撃てぇ!我々に攻撃したことを後悔させてやれ!!トカゲ野郎を一匹たりとも逃すな!」

 

防空部隊の兵士たちは皆、犠牲になった仲間の復讐に燃えていた。

――――――

「うぉお!!くそっ!ついてくるな!!・・・・ギャッ!!」

 

また一人、竜騎士が爆煙に飲み込まれて落ちてゆく。アルデバランはその竜騎士を見ながら悪態をついた。

 

「くそっ!!ココは地獄か!!」

 

先ほどがギムの町のいたるところにある緑マダラの何かから、光の矢や光弾が発射されワイバーンを落としてゆく。最初は75騎いたワイバーンは、その数を7まで減らしていた。途中で何人かの竜騎士が光弾を放つ何かを攻撃しようと突っ込んでいったが全て迎撃されてしまった。

 

「ん・・・・・?」

 

アルデバランはまた白煙が上がったのを確認した。

 

「くそっ!またか!!」

 

白煙は光の矢がやってくるサインだ。この光の矢はとてつもない速さでワイバーンに迫ってきて、とても小型なため発見が難しい。発見して避けたとしても針路を変えてまっすぐワイバーンに突っ込んできて近くまで来ると爆発する。

正直、ミサイルが見えているのはアルデバランたち竜騎士が超人的な目の良さを持っているからだ。常人には初期段階以外のミサイルを見ることは難しい。だがその目の良さがアルデバランたちに迫りくる死を認識させ、恐怖心を駆り立てる要因となってしまっていた。

 

「クソォ!!こっちか!!」

 

光の矢はついにアルデバランの方にやってきた。アルデバランは自身のワイバーンを操り、右へ左へ回避運動を取って光の矢を避けようとするが、光の矢はその都度微妙に針路を変えて徐々にアルデバランに迫っていた。

 

「くそっ!くそっ!クソォオオ!!・・・・アギッ」

 

アルデバランは近距離地対空誘導弾の攻撃を受けてギム上空で命を落とした。

――――――

「敵ワイバーン全て撃墜!!」

 

レーダー画面を見ていた兵士は画面から最後の1つの光点が消えたところで嬉しそうにそう報告した。その瞬間、ギムは歓声につつまれた。

 

「まだ次がある!地上部隊が迫っている!!ヘリ部隊はギムの住人の収容を終えるまでは時間を稼ぐぞ!!準備を進めろ!!」

 

茂木の指示はそのまま無線を通じて全軍に伝えられる。第3遊撃旅団の兵士は小銃を持ち、無事な防塁や土嚢に機関銃を据え置いて迎撃の準備を始めた。

*1
自衛隊法を改正し、交戦規定や指揮命令系統、国防軍の規模の範囲などを明記した法律

*2
日中紛争後に決められた国防軍が武器を使用してよい場合などを明記したルール。内閣総理大臣、防衛大臣のいずれかの事前・事後の許可、承認が必要となっている。また宣戦布告を受けていた場合は下士官以上の国防軍人の判断での武器使用が許可されている。国防出動下では全兵士に武器使用判断の権利が与えられるとなっている。また正当防衛が成立する急迫不正の侵害に当たる事態であればいかなる状況でも武器の使用を許可するとなっている




いかがでしたか?
自衛隊の方々は厳しい法環境の中で頑張ってくださっていますね(感謝)。今の平和な日本があるのは自衛隊のおかげだと思います。
とってもプライベートな話ですが私の住む町で自衛隊のイベントが予定されていたのですが一部の団体の批判で中止になった時は少しいらっときました・・・・。意見を言うのは自由ですけど、他の楽しみにしている人の事を考えてほしい(TーT)。あなたたちが見なきゃりゃいいじゃん・・・。
ご意見ご感想お気に入り登録お待ちにしております。
それではまた次回。さようならぁ!

次回 第14話 ギム撤退戦(地上戦~序章~)

お楽しみに~~~


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第14話 ギム撤退戦(地上戦~序章~)

「なっ、ワイバーン部隊との通信が途絶えた!?」

 

アデムは伝令兵の報告を聞いて驚愕した。今回ギム空襲に投入したワイバーンの数はクワ・トイネが保有するワイバーンより圧倒的に多かった。

 

―どういうことだ?何故、ワイバーン部隊が全滅したんだ?

 

「ッ……」

 

考えても一向に出てこないワイバーン全滅の原因にアデムはイラついた。

 

「とにかく、ココまで来たのですから引き返すことはできません。一気にギムの町を攻撃し制圧すべきでは?」

 

アデムの副官が意見具申をしてきた。しばらく考えた後、アデムは指示を下した。

 

「ギムの町に籠る敵は少数だ!!攻め落とすぞ!!」

 

ついに日本、ロウリア両国で激戦と言われたギム撤退戦が行われることとなった。

――――――

「敵襲!!3万はいるぞ!」

 

双眼鏡でロウリア王国軍がやってくるであろう方向を見ていた兵士は、そう叫んだ。

 

「砲兵隊、迫撃砲!!砲撃開始!!敵の勢いを削げ!!」

 

茂木は無線機でそう指示を出した。第3遊撃旅団は規模の大きさなどから配備されている榴弾砲などの火砲は少なく、事前に着弾観測も行っていないため砲撃で敵を壊滅させることは不可能だ。そのため砲兵隊は敵の数を少しでも削り、勢いを削いで少しでも時間を稼ぐことを命令されていた。

ギムの町には平時には3万人の人間が暮らす都市だ。すでに1000人の人間が避難していたが、まだ2万人以上の民間人の避難が完了しておらず、第3遊撃旅団のヘリ部隊や車両、徒歩での避難などを行っても1日か2日はかかると思われている。持ってきた弾薬量などから稼げる時間は1日と何時間かである。そのため今日中でヘリや車両部隊などで女性や老人、子どもを優先して後方のエジェイに避難させ、残りの民間人は徒歩で避難させつつ、ギムにブービートラップなどを大量に仕掛けて時間をさらに稼ぎ、避難民の最後列を第3遊撃旅団とクワ・トイネ公国軍で護衛しつつ、派遣された工兵隊が築いた防御陣地のある要塞都市エジェイまで撤退する計画だ。

 

「……ブービートラップの設置状況は?」

「工兵隊が避難が完了した住人の民家や建物から扉やチェストなどの家具などにIEDを設置しています」

「頼んだぞ。奴らは住人がいない場合、金品を奪おうと家探しを始めるはずだ。殺すんじゃない、怪我をさせるだけでいい」

 

戦場においては敵兵を殺害するよりも負傷させた方が敵に対する被害を増やせる。なぜなら敵兵を殺害するのなら殺害した兵士1人の被害だが負傷させれば負傷した兵士を後方に下げるために無事な兵士が2人は必要となる。そうすれば一気に3人の兵士が戦列から離れなければならないからだ。地雷や手榴弾などの兵器はそう言った目的の兵器なのだ。

――――――

「よし、もうすぐギムだ……」

 

ギムの町が見えてきて、アデムがそう言った時だった。

 

ドォンドォンドォン

 

ロウリア王国軍の周囲やまん中で突如爆発が起こった。アデムは突然の事態に馬を止めて唖然とした。

 

「な、何が起きている!!」

 

アデムは思わずそう叫ぶが答えられる人間はロウリア王国軍にはいなかった。ただ分かっているのはこのままでは死ぬだけだということだった。アデムは瞬時に指示を出した。

 

「くっ!!一旦立て直すぞ!!撤退!」

 

アデムにしては珍しく撤退を命じたため、その場の将兵たちは驚くがアデムの命令に従わなければ死ぬと分かっていたので素直に撤退を始めた。

――――――

「よし……コレでいくらか時間を稼げた。はやく民間人の避難を終えさせろ!!」

 

双眼鏡でロウリア王国軍の様子を見ていた茂木は一旦敵を退けたにもかかわらず険しい顔のままだった。すると一人の通信兵が茂木の元にやってきた。

 

「旅団長!第1空母打撃艦隊からです。戦闘機部隊が敵地上部隊に対し近接航空支援を行うとの連絡です。それと艦載ヘリ17機がギム近辺の集落の住人の避難作業に入ると」

「分かった。近辺集落の避難収容が終わったらギムの住人の避難に来るように伝えておいてくれ」

「了解です」

 

通信兵は茂木の指示に頷くと駆け足で指令所に戻ってくる。

――――――

「どうするべきだ?」

 

アデムは撤退した後に各部隊の指揮官を集めて軍議を開いていた。

 

「敵の爆裂魔法は強力です。密集していれば全滅してしまいますから、散開しての人海戦術で参りましょう」

 

ジューンフィルアという指揮官がそう提案した。

 

「だが、重装歩兵はどうする?彼らの持ち味は密集隊形だ」

「では重装歩兵を先発させ敵の注意を引きつつ、横から散開してギムに突っ込むのがよいのではないか?」

 

作戦は可及的速やかに決まった。生き残った重装歩兵4500は本体から先発してギムの町を目指した。残りは2手に分かれてこっそりとギムの側面に進軍を開始した。




いかがでしたでしょうか?
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ではまた次回。さようならぁ!

次回 第15話 ギム撤退戦(航空攻撃)

お楽しみに!


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第15話 ギム撤退戦(航空攻撃)

皆様、投稿が遅れまして申し訳ございません。SM-2です。
私事で投稿ができない日々が続いておりました。内容は細かくはお伝え出来ませんが、やむを得ない事情があったとご了承いただければ幸いです。
では、本編どうぞ。


ロウリア王国軍重装歩兵部隊がギムの町に進軍を開始した頃、ギムの上空には日本国国防海軍第1空母打撃艦隊の第1空母航空団第111攻撃戦闘飛行隊のF/A-3B戦闘攻撃機、4機と第101制空戦闘飛行隊所属F-35JC4機が到着していた。F/A-3戦闘攻撃機のウェポンベイやハードポイントには500ポンド無誘導爆弾33発が搭載されており、自衛用のAIM-9Yサイドワインダー短距離空対空ミサイルが2発両翼端のハードポイントに搭載されているだけであった。対してF-35はウェポンベイには大量の中距離空対空誘導弾と両翼下の6つのハードポイントのうち2つにはサイドワインダー4発を搭載していたが、胴体下と翼の胴体側のハードポイントには25mm機関砲のガンポットが搭載されていた。

 

ディスイズピクシーファーストワン(こちらピクシー1-1)マイカリエントロケイション(現在地) オブジェクトポイントジロワン(第1目標地点)グラウンドエネミーインサイト(敵地上部隊視認)スタートクロスエアサポートアタック(近接航空支援攻撃開始)

 

攻撃部隊の指揮官であるF/A-3戦闘機の編隊長が無線で航空支援任務を開始することを全機に伝える。

 

『ピクシーセカンドワン。コピー(了解)

 

各編隊の編隊長が作戦開始の合図を受け取った。返答を聞いて指揮官機パイロットは機体をバンクさせ緩降下を開始した、3機もそれについてゆく。

モニター画面には赤外線カメラによって映し出されるロウリア王国軍重装歩兵部隊の姿が映し出されている。4機は彼らの上に爆弾を落とすべく降下しながら徐々に距離を詰めていく。そして対地爆撃用の照準がモニターに映し出され、その照準に中心がロウリア王国軍の部隊と重なろうとしていた。

 

「ピクシーファースト、セカンド。ドロップレディ(爆撃用意)――」

 

編隊長機のガンナーの指示で4機のF-3B戦闘機のガンナーは投下ボタンに手をかける。そして爆撃照準線がロウリア王国軍と重なった。

 

ナウ(投下、今)!!」

 

4機のF-3Bから計132発の500ポンド無誘導爆弾、計66,000ポンド(約30トン)の爆弾の雨がロウリア軍に投下された。

――――――

「もう少しだ・・・・・・」

 

ロウリア王国軍重装歩兵部隊はギムの町まで5km地点まで接近していた。さきほどの強烈な爆裂魔法を受けた地点から既にかなり進んでいるがシーンとした静けさにロウリア王国軍は不気味さをおぼえた。

 

「・・・・?」

 

何人かの耳の良い兵士が何か甲高い音がすることに気がついた。キィイインという聞き慣れない音は徐々に近づいてくるようだ。

 

「なんだ?この音は・・・・」

 

そのうち重装歩兵たち全員がその甲高い音を聞けるようになる。分厚いヘルメットをかぶっていても聞こえてくる高音は兵士たちの神経を逆なでる。ヘルメットの少しのすきまから見える風景にはその甲高い音を出す正体は見えなかった。

いよいよ甲高い音はゴォオオという轟音をともなって近づいてきた。何だかわからないその音の正体に兵士たちはひどい恐怖心をいだいた。

そしてついにその時が訪れた。

 

ヒュゥウウ ドォオオオオオンドォオオオオン

 

突如として爆発が起きた。爆発の近くにいた者は四肢が吹き飛ばされ、あるものは即死する。すこし離れていても破片が刺さり耐えがたい痛みに襲われる。やや遠くにいてもその爆風によって吹き飛ばされてしまい、運の悪いものは軽い脳震盪を起こしヘルメットや槍、盾が吹き飛ばされてしまう。

 

「な、なんだ!!」

 

ヘルメットが吹き飛ばされた者はそれを見ることができた。後ろから赤い炎を2本はき、この世のものとは思えない速度で飛行する大きな何かを。

 

「なっ・・・・あれはいったい――」

 

だが言葉は続くことはなかった。そのあとに聞えてくる獣の雄たけびのようなブォオオオオという音が言葉を強制的に遮った。

それは後続で突入してきたF-35JC4機に搭載された計12基の25mm航空機関砲ガンポットと計4基の20mm航空バルカン砲の発砲音であった。相互に射撃される25mmHEI弾と25mmAPI弾そして20mm×102mm弾が鉄の雨となって地上に降り注ぐ。

 

「ギァアアアアアアア!」

「腕が!!俺の腕が!!」

「助けッ・・・・ぐはっ!」

 

当たり所がよければ現代戦車の装甲をも貫き撃破できる25mm砲弾と人にかすっただけで大穴があいてしまうだけの威力を持つ20mm砲弾の前には重装歩兵の重たい金属盾など紙くずに等しかった。あるものは人体の大半が消え去り、あるものは近くに着弾した25mm砲弾の破片を一身にうけハチの巣になる。効率的な殺傷が繰り返される。

 

「ひぃいいいい!に、にげろ!!」

「もうやだ!なんでこんな目に!!」

 

重装歩兵部隊の指揮命令系統はぐちゃぐちゃになり、士気も最低な彼らは蜘蛛の子を散らすように逃げだしてゆく。それはただ一心に生き残るための行動だった。

だがそれを見逃すほど国防海軍は甘くはなかった。少しでも固まっていれば爆弾を落とし、そうでなくても機銃掃射を行う。

重装歩兵部隊は囮としての役割を全うすることなく、わずか20分という短時間で瓦解した。

――――――

「なっ、重装歩兵部隊が壊滅!?」

 

ギムを北方から攻める予定の攻略隊を指揮していたアデムはやってきた伝令兵に信じられないような内容を聞かされる。

重装歩兵部隊の壊滅――4500もいる重装歩兵部隊を壊滅させるには騎兵や重装騎兵などを投入しワイバーンによる航空支援を行って1~2時間程度かけなければならない。だがアデムが重装歩兵部隊が戦闘を始めたと聞いたのはたったの20分前であった。そこまでの短期間で重装歩兵が壊滅するなど彼は信じることが出来なかった。

 

「・・・・・敵は此方に気がついた様子は?」

 

アデムは敵の行動によっては一旦ギム攻略を断念し、本隊とともに作戦を練り直す必要があると考えていた。

 

「いえ。敵の鉄竜はこちらには攻撃してきませんし、ギムから敵がやってくる気配もありません」

 

伝令兵はそう報告した。だがこの報告が先遣隊の命運を決めることになってしまう。

日本側はきちんとロウリア王国軍別働隊の存在に気がついていた。日本側は確認された正面部隊が少ないことを不審に思い、F-3Bに空襲の後に近隣の捜索を行ってほしいと要請し、第3遊撃旅団自身も赤外線カメラ付きの小型ドローンでの偵察を行っていた。F-3Bやドローンの優秀な赤外線カメラによって彼らの存在は日本側に筒抜けであった。第3遊撃旅団は部隊を二手に分けて西方防衛部隊と北方防衛部隊に分けて移動させていた。戦車などの装甲兵器がない敵には下手に突撃するよりも機関銃を据え置いた陣地で迎撃した方が効率がよいことを日本側は分かっていたのだ。

 

「よし、わかった。西部からの攻略隊にも連絡を入れてタイミングを合わせて挟撃するとしよう」

 

アデムはギム攻略の続行を決定した。




いかがでしたでしょうか?
世間に目を向けてみますと、新型コロナウイルスの感染が拡大しています。読者の皆様方はどうか健康には気を付けながら、手洗いと消毒をしっかりしてこまめに水を飲んでください。うがいよりもこまめに水を飲んだ方が感染予防にはなるようです。水と一緒にウイルスが胃に行くので胃酸で死滅するらしいですよ。
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ではまた次回。さようなら

次回 第16話 ギム撤退戦(現代VS中世~本格的な衝突~)

お楽しみに


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第16話 ギム撤退戦(現代VS中世~本格的な衝突~)

※ヘリの番号および機種を変更


バタタタタ

 

空気を叩く音がギムの町に響き渡る。中世的な街並みに迷彩柄のヘリコプターが降り立つというのは何ともシュールな光景だった。避難民の第3陣がCH-1Aキャリアー大型輸送ヘリコプターやMV-22オスプレイに乗り込んでいく。乗せられる限界まで人を乗せるとヘリ部隊は上昇し後方のエジェイに向けて飛んでいく。

茂木が飛びゆくヘリコプターを眺めていると副官が小走りに近寄ってくる。

 

「旅団長!敵別働隊をここより北方5km地点と南方6km地点に確認しました。それと第1空母打撃艦隊から近隣の集落からの住人の避難は間もなく完了するとの事です」

「そうか・・・・。事前計画通りに1個戦車小隊と1個歩兵大隊を配備した迎撃部隊を北と南に配置し偵察中隊は西方の警戒を、残る部隊は遊撃部隊として敵のかく乱だ!いいな?」

「はい」

 

副官は司令部に戻り、迎撃配備の指令をだした。

この命令を受け第3即応歩兵連隊所属の2個歩兵大隊は即応戦車中隊所属の2個戦車小隊と合流しそれぞれ敵別働隊がくるであろう北と西に配備される。第3強襲偵察中隊の歩兵3個小隊と装甲車両1個小隊、バイク1個小隊の計5個小隊はロウリアとの国境線である西方の監視を開始。1個歩兵大隊と1個戦車小隊、2個装輪装甲戦闘車小隊は遊撃部隊として必要な時にすぐさま出撃が出来るように警戒をしていた。防空砲兵大隊近距離防空中隊所属の2個自走高射機関砲小隊は周囲にワイバーンの脅威がないことから二手に分かれて、北と南の防衛部隊に参加した。

日本側の準備はついに整った。

――――――

戦闘開始は日本側が配置を完了してから約1時間ほどしてからであった。高い錬度をうかがわせる綺麗な隊列を組んだロウリア王国軍の2つの別動隊はほぼ同じ時刻に誇らしげにギムに向かって行進を始めた。クワ・トイネ公国軍ならばその綺麗な隊列と兵士の数を見ただけでおそれおののき、有効な攻撃もできただろう。

だが残念なことに日本側からしてみれば綺麗な隊列で固まって動く軍隊など的以外の何物でもなかった。そうとは知らないロウリア王国軍はどんどんとギムに近づいてくる。

クワ・トイネ公国軍が討って出てくる気配も見せないことにロウリア王国軍の兵士たちの心の中にはちょっとした安堵感が生まれる。

だがその安堵は瞬時にして失われることとなった。

 

「敵が1km地点を切った!戦車小隊は機関銃・主砲の準備!!」

 

ギム西方を守る、4台の31式戦車の主砲である55口径130mm戦車砲に31式翼安定榴弾*1が装填される*2

砲手が砲弾が装填されたことを確認すると砲塔旋回装置を操作して迫りくるロウリア軍に照準を合わせる。

 

「撃てぇええええ!」

 

戦車小隊長はインカムを使って号令を出した。その瞬間4台の戦車の砲手は主砲の引き金を引いた。

 

ドォオオンドォオオンドォオオンドォオオン

 

4発の翼安定榴弾はロウリア王国軍の隊列のど真ん中に命中した。

 

ドカァアンドカァアンドカァアンドカァアン

 

500ポンド無誘導爆弾まで及ばないもののそれなりの威力を持つ130mm榴弾は近くにいた兵士を殺傷していく。砲弾の外殻の破片や中に仕込まれていたワイヤーが爆風によって飛ばされ近くにいた兵士の肉を切り裂く。

のどや胸、頭などに破片が刺さったり、爆発で即死したものは幸せだろう。少なくとも自身の体に破片が刺さり取れない苦しみを味合わずに済むのだから。

 

「ギャァアア!痛い!痛い!」

「何だ!なんかが刺さってる!!とってくれぇえええ!」

 

そんなロウリア王国軍の惨劇を気にせず、31式戦車はさらに榴弾を撃ちこんでいく。2秒に1回というペースで放たれる榴弾は隊列のいたるところに着弾し、死傷者を量産する。

 

「くっ!!突撃だ!!ココにたむろしていてもやられるだけだ!速さでかく乱するんだ!!」

 

南方攻略隊の指揮官ジューンフィルアはそう指示をだす。その指示をきいて、騎兵隊が全速力で駆けてゆく、敵の攻撃かく乱するためだ。爆裂魔法も高速で移動する騎兵にはなかなか当たらないと考えていた。ジューンフィルアはそのわずかな望みにかけることにした。

だが日本国国防陸軍はそのわずかな希望をも容赦なく叩き潰す。騎兵隊がギムまで500mまで迫った時だった。

 

タタタタタタ

 

軽い破裂音とともに多数の曳光弾がロウリア王国軍騎馬隊に殺到する。6.8㎜*3、7.62㎜、8.58mm弾*412,7㎜ありとあらゆる銃から放たれるさまざまな弾丸は騎兵が装備していた金属鎧を貫通し、体内に侵入すると内臓や骨、血管を傷つけ、かき回して騎兵を死に至らしめてゆく。

 

「ぐぼぉぁっ!」

「グフッ・・・・・!」

 

ロウリア王国軍は知らないだろうが歩兵や騎兵が防御陣地に突っ込んでくるときに何が一番防御に最適かというと機関銃を大量に運用し弾幕を張ることである。地球上においては機関銃の存在が騎兵という兵科を終わらせたといえることからもわかる通り、騎兵にとって機関銃は天敵なのだ*5

 

「な、なんなんだ!奴らは!」

 

ジューンフィルアは悪態をつく。事前の斥候の情報などからこの陣地を守る敵はたった600ほどだと知っていた。1万もの大軍で襲い掛かればアッという間に全滅させられるのではないかと敵の防御兵力の少なさに哀れみすら抱いた。だがふたを開けてみれば騎兵は穴だらけにされ歩兵が吹き飛ぶ。そんな悪夢のような光景が目の前に広がっていた。いまだに9000ほどの味方が残ってはいるがそれは隊列の後ろの方にいてギムに突撃していないからである。ギムに突撃すればあの光弾に貫かれあっという間に壊滅してしまうことは目に見えていた。すでに前線部隊の士気は最悪で隊列を抜けて勝手に離脱するものもちらほらいる。

たった600の敵に負けたという事実にジューンフィルアは歯噛みするが無作為に兵を死なせるわけにもいかず、苦々しい面持ちで口を開いた。

 

「・・・・・撤退だ・・・・・」

 

後方の部隊である7500ほどはまだ無事であり、指揮命令系統が生きていることからジューンフィルアの指示がきちんと届きまとまって撤退ができた。

だが前線の部隊の残り1500は指揮命令系統がすでに壊滅状態であり、あるものは勇気を振り絞り近くにいたどこの部隊の所属とも知れない兵士とともに突撃し機銃弾に貫かれ、あるものは一人か近くで生き残ってた味方と散り散りになって逃亡し、あるものは発狂して近くにいた兵士を刺し殺し直後に飛んできた機銃弾に貫かれる

ロウリア王国軍クワ・トイネ侵攻軍先遣隊ギム攻略西方別動隊は2500もの兵士を失い撤退した。

―――――――

そのころ北方でも似たような光景が繰り広げられていた。

飛んできた榴弾に吹き飛ばされ、NATO弾に貫かれる。溶けるように兵士が減っていく。

 

「くっ!!これでは・・・・・・」

 

アデムは前線から少し離れた後方で吹き飛ばされてゆく味方を見ながら悪態をつく。すでに2000ほどの兵が死んでいる。戦闘開始から30分もたっていない。

重装歩兵に敵がくぎ付けになっているすきに横から奇襲する作戦だったが、重装歩兵部隊は早くも壊滅してしまいひそかに出発し念には念を入れて大きく迂回していたにも関わらず敵に別動隊のことがばれてしまっており、奇襲作戦は破綻していた。

その時、アデムのもとに伝令兵がやってくる。

 

「アデム様!!南方攻略別動隊のジューンフィルア隊が撤退を始めました!!」

「なっ、なにぃ!!」

 

勝手に撤退を始めたという報告を聞いてアデムは一瞬頭に血が上ったが、すぐに考え込んで思考回路を変えた。

一回撤退して崩れかけた隊列を立て直し、改めて作戦を練り直す必要があると思った。そして伝令兵に伝えた。

 

「我々も撤退を始める!!後方でジューンフィルア隊と合流し再度作戦を練り直す」

「了解!」

 

アデムたちもついに撤退を始めた。やはり撤退の様子はジューンフィルア達と似たようなもので前線部隊は崩壊し、後方だけがなんとかまとまって撤退が出来た。

――――――

「敵、北方部隊撤退開始しました!全軍引き上げていきます」

 

双眼鏡で敵の様子を眺めていた参謀は、横にいた茂木にそう報告をした。茂木も双眼鏡から目を離すと重々しく頷いた。

 

「今のうちに各部隊は負傷者の搬送と武器弾薬の補充をすましておけ」

「はい」

 

通信兵が茂木の指示を伝えるべく走り出し、その後ろ姿が見えなくなると参謀は小さな声で茂木に話しかける。

 

「旅団長。さすがにもう連中も懲りたのでは?本隊の合流まで侵攻を行わないかもしれません」

「そうだな・・・。確かにその可能性もある。だがたぶん敵はまた来る。今度のは今までの2回の戦闘よりも激しくなるだろう。偵察部隊と防空部隊を3つに分けて、ギムの前方、北方、西方に配備しておけ。ドローンや偵察機を使って敵の動向を把握しろ!主力の戦車と歩兵部隊はギム中央でいつでも出撃できるように準備しておくんだ。いいな!」

「はっ」

 

この後、茂木の予想は的中することになる。

*1
HEFSと呼ばれ、成形怍薬弾と比べ威力が大きいこの砲弾は対歩兵戦闘にぴったりだった

*2
31式戦車は特殊な機構によって自動装てんと半自動装てんを選択できる

*3
6.8㎜×43㎜NATO弾。貫通力はあるが威力の弱く、遠距離での命中率が悪い5.56㎜弾に変わり、貫通力があり、口径が上がったことで威力が増したためストッピングパワーも向上し、遠距離での命中率も向上したNATO用ライフル弾

*4
SOCOMが338ノルマ・マグナム弾を使用する機関銃を採用したことで、NATOの7.62mm弾の後継として採用されたライフル弾

*5
代わりに戦車という装甲化された車両が生まれた




いかがでしたでしょうか?
ギム防衛戦、長い・・・・・。自分でまいた種だけれども、書くの嫌になるぐらい長い・・・・・。でも、終わりは見えてきた!たぶん23話でギム防衛戦終了だと思います!
ご意見ご感想お気に入り登録お待ちしております
ではまた次回。さようならぁ

次回 第17話 ギム防衛戦(慢心)

お楽しみに


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第17話 ギム撤退戦(慢心)

どうも、SM-2です。
この話の日本は原作みたいに犠牲者0、超強いみたいなことはしません。軍人だって人間ですから油断もします。接近戦になれば死者も出ます。どんなに技術格差があっても犠牲0は難しい。まぁ、法律も条約もルールもくそくらえと言わんばかりに核乱打でもすれば別物ですが・・・・・。
では本編どうぞ


「アデム様!」

 

撤退を終えたアデムの元に一人の男が駆け寄ってくる。南方攻略部隊の指揮を執っていたジューンフィルアであった。彼は、アデムの性格から勝手に撤退の指示を出した自分が殺されると考えており、その顔はとても青ざめていた。震える声で恐る恐る喋り始めた。

 

「勝手に撤退の判断を下してしまい、申し訳ありませんでした」

 

チャキ、という金属のすれる音を聞いてジューンフィルアは自分が殺されると思い顔を青ざめさせる。逃げようと思ってもその恐ろしさの余り足がすくんで動けなかった。

だがアデムは彼の予想外の行動に出た。

 

「いや、むしろ撤退してくれたおかげで素早い合流が出来た礼を言おう」

 

金属のすれる音を鳴らしながら彼は馬から降りる。先ほどの音は剣を抜く音ではなく馬から降りようとした時に鞍と鎧がこすれる音だったらしい。

アデムの予想外の行動にジューンフィルアはぽかんとしてしまう。

 

「すぐに軍議を開く!」

「は、はっ!」

 

ジューンフィルアはアデムの声ではっとするとアデムについていく。

10分ほどで再び指揮官が集まってきたが、作戦前と比べるとその顔触れは明らかに減っており、指揮官の顔も疲労に染まっていた。

 

「さて、どうするかだ。ギムをどう攻略をする?」

「本隊の到着を待っての攻略をするべきだ」

「いやっ!敵は撤退の準備を始めているらしい!本隊の到着を待っていれば逃げられてしまう。勝ち逃げなど許さない」

「では、どう攻略するのだ?敵は恐ろしい魔導兵器を持っているぞ!!」

 

すると騎兵隊の隊長が声を上げた。

 

「我々騎兵隊が囮となって敵主力をひきつけているすきに、ギム後方から全軍で突撃、攻略するべきだと考えます」

 

するとジューンフィルアは反対の声を上げた。

 

「攻略するとなると残った兵士の8から9割は必要だ!!分散していてはあの魔導兵器で各個撃破されるからな。だが残った部隊の囮では敵主力の誘因は不可能だ!!」

 

すると騎兵隊長は不敵な笑みを浮かべる。

 

「いえ。霧を使えば出来ます」

「霧?」

 

ジューンフィルアの声に騎兵隊長はコクリと頷いた。

 

「はっ。この時期この近辺は朝は冷え込みます。加えて近くを流れているキノエ川から霧が発生します。ココ1週間は毎日のように霧が発生しています。恐らく明日の早朝も発生するでしょう。そして霧にまぎれ旗を大量に立てて進軍を開始すれば敵は我々を主力と誤認するはず。そして敵主力を誘引したところで全軍で攻撃します」

「なるほど……だが森を抜けて後方に回るのは出来ないのか?そちらの方が効果があろう?」

 

アデムがそう聞くと、代わりにジューンフィルアが報告をした。

 

「実は先の戦闘の後、敗残兵の一部がギムの後方に回ろうとしたのですが、森を抜けた瞬間に爆裂魔法を受けたようです」

 

敗残兵を襲ったのは開戦前に国防陸軍工兵隊がギム後方に回り込まれないように設置した、不活性化機能ならびに自爆装置付きの対人地雷とクレイモアであった。一部の部隊が見張りに立っており、ロウリア王国軍が回り込もうとしてきたらクレイモアを起爆する算段であった。今回は敗残兵が十数人程度だったので対人地雷と狙撃銃で対処したが、本隊が回り込もうとしてきたらそれらのクレイモアによって無視できない損害を受けることになるだろう。

 

「つまり後方に抜けようとするのは危険なのだな?」

「はい」

 

ジューンフィルアの返事を聞いてアデムは少し考え込む。そして暫くして口を開いた。

 

「よかろう!この作戦を採用する。明日は早い!早めに寝ておけ」

「「「「はっ!」」」」

 

ついにギム撤退戦の中で最も激戦だったギム二日目の戦闘が開始されようとしていた。

―――――

翌日。騎兵隊長の読みが当たりギム周辺は深い霧に包まれた。夜のうちから個人用の暗視装置などで周囲を監視していたが夜間からの低い気温のせいで電圧が下がってしまい、モイジが「霧はすぐに晴れるでしょう」といったこともあり、第3遊撃旅団の兵士たちは裸眼での監視を行っていた。だがモイジの予想に反し、当日が曇りであったことが災いし霧は1時間たっても濃いままであった。茂木もさすがにまずいと判断し赤外線カメラの使用を命じたが、起伏の激しい地形やところどころにある岩などの障害物のせいで監視能力がダウンしていた。

 

「さすがに昨日の戦闘で懲りたんじゃないのか?」

 

国防陸軍の兵士の一人が戦闘糧食のカレーを食べながら同僚に話しかけた。

 

「確かにな。このまま撤退完了まで何もないかもしれないな。何せ中世対現代だ。目をつむっていても勝てるさ」

 

そう圧倒的技術格差という安心感も彼らの慢心に拍車をかける事態となっていた。さらに1時間ほどたってようやく気温が上昇し始め、霧も徐々に晴れてきた。茂木はその事実を踏まえて赤外線カメラの使用をやめさせた。ギムは電気が通っていないために発電車や畜電車などから電子機器の電力を賄っているのだが、現代では戦車や装甲車などの車両にも電力は必要で、曇っているせいで太陽光発電もできず発電用燃料も少なくなってきており、低い気温のせいで畜電車の電圧も下がっているためなるべく電気を使いたくなかったのだ。霧ももうすぐ晴れるだろうという慢心もあり赤外線カメラの使用をやめてしまった。

だがそれが辛い辛い撤退戦の引き金となった。

 

「……ん?」

 

一人の兵士が霧の中に何やら動く影を見つける。彼はそばにあった双眼鏡を手にとって影の正体が何なのか確かめた。

そして彼は見た。霧の狭間に無数のロウリア王国軍旗が並んでいるのを、そしてゆっくりとそれでいて確実にギムに向かってくる様子を見たのだ。彼はすぐさま胸についている個人用無線機の受話器を手にとり、プレストークボタンを押しこむと叫んだ。

 

「ギム西方より敵襲!!!かなりの数だ!!増援をもとむ!!」

 

軍旗というのは中世の軍隊だとある程度の数の部隊に一つあるものでその部隊がどこの所属なのか、部隊の指揮官がどこにいるのかを表すものだった。

それが無数に立っているのだから敵軍の総攻撃だと認識したのだ。それは司令部も同じだった。

 

「くっ、やはり総攻撃か!各個撃破されないようにまとまった方向からある程度散開しながら来るつもりだ!数が数だけに中途半端な戦力では防ぎきれない!」

「待機中の遊撃部隊に連絡しろ!ギム西方に急行し敵の侵攻を食い止めろと!いそげ!」

「はい!」

 

戦闘開始と同時に司令部はあわただしく動き始める。茂木は近くにいた参謀に問いかけた。

 

「住人の避難は?」

「はっ。輸送大型ヘリ6機、オスプレイ10機、汎用ヘリ6機の昼夜問わずの輸送作戦のおかげで、残り人数6800人ほどです」

 

ギムからエジェイまではヘリの巡航速度で往復30分ほどオスプレイだと15分だ。ヘリに乗る住人に必要最低限以外の荷物を全て捨てさせぎゅうぎゅうになるまで押し込んだ場合に1度の往復で輸送できる人数は380名である。オスプレイはその間2往復でき1往復で450名を輸送可能なので、ヘリ部隊が1往復している間に900名が輸送可能である。途中の燃料補給なども考えても6800という人数は少ないと言えた。

 

「撤退完了まであと何時間かかる?」

「はい。住人の撤退が終わった後はクワ・トイネ公国軍の兵士もヘリに載せて撤退させなければなりませんから民間人の避難完了まで後4時間。我々の撤退開始までは6時間、撤退完了までは7時間かかります」

 

撤退完了は第3遊撃旅団が陸路でこのギムから完全に撤退するまでの時間だった。民間人避難完了までの4時間。クワ・トイネ公国軍は戦えるので最悪取り残されてもよいと考えると彼らは後4時間の時間を稼ぐ必要があった。

4時間程度なら圧倒的技術格差を持ってすれば耐え忍ぶことが出来る。日本側にはそんな気持ちが芽生えていた。




いかがでしたでしょうか?
ギム撤退戦。何とか23話で書き上げた・・・・。読み返してみてもなげぇ・・・・。ちょくちょく出していきます。
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ではまた次回、さようならぁ。

次回 第18話 ギム撤退戦(最後の最初)

お楽しみに


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第18話 ギム撤退戦(最後の最初)

ドンドンドン

 

30mm機関砲の重厚な発砲音が連続してギムに響き渡る。偵察部隊所属の偵察警戒車には30mm機関砲が装備してある。弾種によっては現代戦車も後部装甲なら貫徹しエンジンを確実に破壊できる30mm砲弾は歩兵や騎兵などの非装甲化部隊には脅威すぎる。

西方では元々警戒に当たっていた偵察隊と対空機関砲部隊が侵攻してくるロウリア王国軍に対し応戦した。重厚な機関砲の音や深い霧のせいで未だに敵の姿があまり良く見えていないが、時々霧の隙間から見える()()()()()()()()()ロウリア王国軍の規模は相当な物だと予想できた。いくら技術格差があるとはいえ100名もいない部隊でロウリア王国軍18000を足止めしろというのは不可能だった。だからこそ彼らは後方の主力部隊に救援を要請した。それが敵の狙い通りとも知らずに。

――――――

ロウリア王国軍囮部隊の隊長であるホーンは地面をえぐる30mm砲弾をみて恐怖した。

 

――あんなものが当たれば自分は死ぬだけでは済まない・・・・・!

 

彼らは爆裂魔法を警戒して散開しながら進んでいた。500名ほどの兵士たちは全員が旗を持ち、大声を張り上げて大軍であると誤認させようとしている。

機動力の高い騎兵ということもあってか今のところ30名ほどが落馬しただけで、放たれたほとんどの30mm砲弾は地面をえぐるだけで終わっていた。

 

「うぉおおおおお!我らがロウリアの栄光の礎となるのだ!!」

 

死を覚悟した兵士たちの勢いたるやすさまじく。鬼神もかくやという勢いでギムに突進してきた。

全ては敵主力をひきつけるため、全てはロウリアの勝利のために。

――――――

「くそっ!奴ら味方の死体を超えて向かってきやがる!!」

 

偵察警戒車の車長はキューポラから顔を出して見えない敵にM2ブローニング重機関銃を放ちながら悪態をついた。先ほどから撃っても撃っても勢いのそがれない敵に恐怖した。(実際は広範囲に散開しつつ少数で向かってきているため全体的な被害はロウリア軍には少なかった)

 

「うぉおおお!友軍が来るまで撃て撃て!!ココに近づけさせるな!!」

 

車長は弾切れになったM2に弾薬を装填しながら指示を出す。その時、後ろから大地の揺れるような何かをかんじる。国防陸軍の兵士たちはそれが何なのかすぐさま理解した。

 

「戦車だ!!主力部隊が来たぞ!!」

「うぉおおお!勝った!」

 

ついにギム中央で待機していた防衛遊撃部隊主力がたどり着いたのだ。装甲車から歩兵が吐き出され戦車は配置につくと戦車砲を放つ。姿が見えないため彼らは機銃やアサルトライフルをその頭数や連射力に物を言わせて前方のいたるところに発砲した。

――――――

「うぉおおおお!」

 

ホーンは一層激しさを増した弾幕を見て即座に理解した。

 

――敵主力を誘引したぞ!!やった!役目は全うしたんだ!

 

そう自分たちの役目は果たしたのだと。そして部下に命じた。

 

「このまま敵主力をひきつけるぞ!頑張れ!もうひと踏ん張りだ!!」

 

だが先ほどと比べて弾幕は激しさを増していた。地面をえぐる銃砲弾の数も増えたがそれに比例してロウリア王国軍に当たる弾の数も圧倒的に増えていた。

だが彼らの目的は敵主力を西方に誘引し友軍主力が南方から攻めやすくすることであるため、目的型はされた今は撤退するも攻撃するも彼らの自由であったが囮部隊は仲間の無念を晴らすべく、敵に一太刀浴びせようと攻撃を選んでいた。死を覚悟していた彼らは仲間が横で死のうとも、わき目も振らずに突撃してゆく。

 

「もう少し・・・・もう少し・・・・・!グワッ!」

 

ホーンの頭部と胸部にそれぞれ3発づつ6.8mm弾が命中した。

頭部の銃弾は鉄兜を貫通して頭蓋骨に穴をあけ彼の脳内に入ると途端に弾道がぶれて脳内をかきまわし破壊する。胸部の弾丸は1発は鉄製の甲冑を貫き体内に侵入したあと肋骨に命中し、それを砕いた後すぐに止まったが他の2発の銃弾は心臓と肺を貫き、心臓や傷つけられた動脈からは大量の血が流れ出す。

痛みを感じることなく即死した彼の体は暫くは馬の上にあったが数十メートルを進んだところで馬の走る振動に耐えきれずに落馬した。

ロウリア王国軍囮部隊は日本国国防陸軍第3遊撃旅団主力部隊の誘引に成功すると総攻撃を開始。主力部隊の迎撃に合い、10分ほどで全滅した。

――――――

「・・・・・?」

 

第3遊撃旅団側の指揮官である中佐は指揮通信車のキューポラから顔を出して双眼鏡で突撃してくるロウリア軍の様子を見ていたが、さきほどまで発砲音にまぎれてかすかに聞こえていたロウリア王国軍の叫び声が突如聞こえなくなったことに違和感を覚えた。

 

「発砲やめ!!やめるんだ!!」

 

無線機を手に取りそう指示をすると彼らはすぐさま引き金から手を離して発砲をやめた。静かになった状態で耳を澄ましてもロウリア王国軍の叫び声は聞こえてこない。中佐は双眼鏡で前方を見るが先ほどまで立っていた軍旗も無くなっていた。

 

「全滅したのか・・・・・?」

 

主力部隊到達からわずか10分という短期間で未だに2万も残っている敵が全滅するとは考えずらく敵が撤退したのかもしれないとも考えたが、過去2度の戦闘でこういった攻撃が来ることは相手も予想できたであろうから、それを覚悟して総攻撃してきた敵が撤退するとも考えられずに中佐は余りの手ごたえのなさに違和感を覚えた。

 

「とりあえず司令部に知らせろ」

「はい!」

 

中佐は司令部に南部の敵部隊を退けた事を報告した。




いかがでしたでしょうか?
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ではまた次回、さようならぁ

次回 第19話 ギム撤退戦(予期せぬ攻撃)

お楽しみに


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第19話 ギム撤退戦(予期せぬ攻撃)

皆さま、どうもSM-2です。
今日で東日本大震災から9年が過ぎました。東日本大震災の影響で亡くなった方のご冥福をお祈りするとともに、被災されて未だ避難している方々が一刻も早く被災前の生活に戻れるようお祈りさせていただきます。



「どういうことだ?明らかに手ごたえがなさすぎる・・・・」

 

第3遊撃旅団司令部では西方から来た敵軍の手ごたえのなさに頭を悩ませていた。2万近い敵が総攻撃を仕掛けてきたのならもっと手ごたえがあってもよいはずなのだ。

 

「・・・・・何か見落としている・・・・・」

 

茂木は参謀たちとともにテーブルの上に敷かれたギム近辺の地図を睨む。茂木が暫く顎に手を当てて考えていると。ふと顔を上げる。

 

「・・・・確か敵軍を認識したのは敵軍の軍旗を大量に発見したからだよな・・・・」

「はい。霧の間にロウリア王国軍旗が無数にあったため敵軍と認識したと・・・・・」

 

情報通信参謀が茂木の質問に答えた。

 

「ッ・・・・!」

 

茂木は再び地図を食い入るように見つめる。そしてぽつりとつぶやいた。

 

「そうか・・・・・そういうことか!主力部隊を呼び戻せ!!南北の警戒部隊は赤外線カメラを用いて偵察を再開しろ!!」

「は、はい!!」

「いそげ!!」

 

その時、滝のように汗をかいた通信士が司令部の中に勢いよく入ってきた。通信士はゼェゼェと荒い呼吸をしているが報告を始める。

 

「ほ、報告します。ハァハァ・・・・・南方警戒隊より緊急電・・・・・『南方より敵主力部隊と思われる大規模部隊の接近を確認。至急増援を求める』以上です・・・・・」

「くそっ!!やっぱりか!!敵がなだれ込んでくるぞ!急いで友軍を呼び戻せ!!」

 

茂木は通信士の報告を聞いて悪態をついた。

――――――

時はさかのぼり、南方警戒隊では楽観的な雰囲気が漂っていた。

 

「西方から敵が総攻撃をしてきたそうだぞ」

 

87式偵察警戒車の後継として2026年に採用された27式偵察戦闘車の後部ハッチから出てきた後部偵察員の兵長と前部偵察員の一等兵が双眼鏡を片手に話し合っていた。

 

「前日の戦闘でわからせてやったというのに懲りないやつですね」

「まったくだ。かなりの大軍だという話だからやけっぱちになって突っ込んできたのかもしれない」

 

今までの戦闘で圧勝していたことが若い2人の兵士の慢心を増幅させていた。いや、2人だけでなかった。第3遊撃旅団全体に同じような雰囲気が漂っていた。

すると砲塔上部にある車長用キューポラから身を乗り出して監視していた車長の上等陸曹が2人に声をかけた。

 

「おい!監視を怠るな!敵の別動隊が来るかもしれんぞ!」

 

上等陸曹は20代の二人と違いかなりのベテランで日中紛争の時に占領された島に上陸し住人開放作戦にも参加したことのある人物だ。彼は若い二人と違い、追い詰められた敵がどれほど恐ろしいものなのかもわかっており、圧勝していたとしても油断は禁物だということを十分に理解していたのだ。

そんなベテランの注意に兵長が返す。

 

「はい。ですが敵は瀕死状態。西に総攻撃をかけてきたという話ですから、2万前後の敵部隊に別動隊は出せないでしょう」

 

兵長の言葉を聞いて、上等陸曹は彼をぎろりとにらみつける。死線を潜り抜けたベテランの視線に兵長はビクッとしてしまう。

 

「確かにな。・・・・・だが油断は禁物だ。窮鼠は猫をかむんだぞ。少数であっても死を覚悟したものの勢いはすさまじいものだ」

「で、ですがその時は圧倒的な技術格差があります。少数であれば我々の敵では・・・・・・ウッ!!」

 

彼の言葉は最後まで続かなかった。目を見開くと信じられないといった表情のまま崩れ落ちてゆく。ドサッという音とともに転がった彼の背には矢が生えていた。

近くにいた一等兵は思わず兵長に駆け寄る。

 

「兵長!!・・・・・グフッ!」

 

一等兵は口から血を吐き出すとそのまま倒れこむ。上等陸曹は2人の背中に矢が突き刺さったことですべてを理解した。そしてあらん限りの声で叫んだ。

 

「敵襲ぅうううううう!!!!!」

 

この時点で車両の外にいた兵士のうち4人が犠牲になっていた。無事な兵士は上等陸曹の言葉に反応して素早く車両の中に入って、ハッチやキューポラを閉じてゆく。慢心していたとはいえもともと練度が高い彼らは物の40秒ほどで車両の中に退避した。

南方警戒隊の隊長である中尉は自身の車両である26式偵察警戒車の車長席に着くと悪態を吐いた。

 

「くそっ!!敵はどこだ!石野!!赤外線カメラを使え!!」

「は、はい!」

 

同じく席に着いた前部偵察員の陸曹は車体前方の赤外線カメラのスイッチを入れる。コントロールステックを操作してカメラの向きを変える。

 

「あっ!いました!前方1時の方向!!す、すごい大軍です!!」

「なに!?」

 

中尉は車長席についているモニターを操作して赤外線カメラの映像を映し出す。そこには100、200どころではない万単位の敵軍の熱源反応があった。

 

「くっそぉおおおお!!西方は罠だったのか!!岩渕!!司令部に連絡!『南方より敵大部隊接近。至急増援求む』だ!急げ!!」

「は、はい!!」

 

通信士に後方の第3遊撃旅団司令部報告を行わせると、高性能車載無線機の受話器を手に取りプレストークボタンを押し込むと警戒隊全体に向かって大声で叫んだ。

 

「総員、戦闘開始!ハッチ、キューポラを開けるな!!徹底的に閉鎖しろ!主砲と同軸機銃、銃眼の小銃だけで対処しろ!!亀みたいに引きこもれ!!第1分隊は車両を横に向けてメインストリートをふさげ!!そのほかの車両も小道、脇道!見える限りの道をふさぐんだ!」

 

中尉の指示を受けて第1分隊の偵察警戒車2両がメインストートをふさぐようにして車体を横にする。そのほかの車両は建物の間にある小道や脇道に車両を横づけして道をふさぐ。

車両の横にある銃眼から小銃の銃口を突き出し、砲塔を旋回させて30㎜機関砲を敵に向ける。

 

「射撃開始ぃ!!」

 

中尉の命令で迫ってくるロウリア王国軍に向けて様々な火器が火を噴いた。




今朝、外出した時にバスで赤ちゃんとお母さんが乗ってきたときに「この子は東日本大震災を知らないんだよな・・・・・」と思った時に「なんだか、3.11が阪神淡路などと同じようにとても昔の事のように思える」とあの時の記憶が風化してしまうようで少し考えさせられました。
次回もよろしくお願いします。

次回 第20話 ギム撤退戦(決壊)

お楽しみに


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第20話 ギム撤退戦(決壊)

ドンドンドン

 

ギムの町南方では不気味な破裂音が響き渡っていた。

 

「くっそ!!増援はまだか!持ちこたえられんぞ!!」

 

キューポラから迫る敵軍を睨みつけながら偵察警戒車の車長は悪態をついた。

先ほどから27式自走高射機関砲*1と共に迫りくる敵軍を迎撃しているが、数が多すぎた。

それにファンタジー小説に出てきそうな化け物も多数まぎれていたのだ。6.8㎜弾程度では倒れないそれは国防軍側をさらに不利にさせていた。

 

「車長!!撃っても撃っても切りがないですよ!!あの化け物は30mmを額にぶち込んで

ようやくですし!!」

 

装填手の装填を待ちながら砲手は悲痛な声を上げる。

装填手は弾薬庫から30mm砲弾のベルトを取り出すと、主砲の30mm機関砲に装填する。

 

「装填完了!!」

 

その合図を聞くと再び砲手は主砲の引き金を引く。

 

「車長、30mm弾薬ベルト。200発HEI弾ベルトが2本だけです」

「6.8mmは?」

「30発マガジンが10個ほどです・・・・・」

 

弾切れが近くなってきた。この車両には残りは30mm砲弾400発に6.8mmNATO弾が300発。未だに10000以上入るであろう敵軍を迎撃するのには少なすぎる。

この車両だけでなく他の車両も多少の誤差はあるだろうが似たような状況だろうと車長は思った。

 

『此方R4!!敵に取りつかれた!!誰かやってくれ!!』

 

無線から悲鳴のような声が聞こえる。車長が慌ててキューポラから車外を覗くと1台の偵察警戒車に槍や剣を持った歩兵が2,30人取りついていた。

槍でつついてみたり剣で叩いてみたりしているが12.7mmNATO弾までなら防ぎきれる防弾鋼板を貫けるはずもなくカキンという耳障りな金属音だけが鳴り響く。

4,5人がタイヤや追加装甲板取り付け金具などを上手く使い車体をよじ登り砲塔に張り付く。取りつかれた車両の砲手は砲塔を回して振り落とそうとするが二人ほどが粘りづよく張り付いて離れなかった。

 

「此方R2!!了解、追っ払う!!」

『感謝する!!』

 

車長が砲手に合図すると砲手は素早く砲塔を歩兵に取りつかれた偵察警戒車に向ける。車長はハッチを開けると備え付けてあった折り畳み式銃床の31式6.8㎜小銃の引き金に手をかけ、狙いも定めず乱射した。

 

タタタタタタタタタ

 

乾いた連続した発砲音とともに6.8mmNATO弾が撃ちだされる。偵察警戒車に張り付いていた兵士はたちまち穴だらけになって転げ落ちてゆく。

車長は、急いでハッチを閉めて、キューポラから外の様子を伺い、フゥと溜息をついた。

張り付いていたのが普通の歩兵でよかったとも思った。いまは接近される前に大口径機関砲で対処しているから貼りつかれることはないが、あの異常に堅い化け物が張り付いてしまえばどうしようもなかった。それこそ味方もろとも機関砲で撃ち抜くしかなかっただろう。

 

「さっきは何とかなったが、このままだときついぞ!!」

 

この後、何分間続くか分からないこの数の暴力はいくら技術格差があっても厄介きわまりない。

すると再び無線機から凶報が入る。

 

『こちらメインストリート防衛班!!すまない敵に抜かれた!!』

 

はっとして車長がメインストリートの方を見ると、多数の歩兵がそこを守っていた2台の偵察警戒車と自走式対空砲のわずかな隙間をくぐりぬけ、車体によじ登り、次々と町に侵入している。3台とも主砲や機銃を使って必死に応戦しているが1人倒れるだけで、そこが倍の人数で埋まるほどの人数だ。たった3台の車両では防ぎようがない。

しかも敵は数に任せて他の路地裏などからの侵入も試みているから路地裏の入口を守備している車両もおいそれと射撃目標を変更できない。メインストリートの守備に車両を回せば路地裏などから侵入される、だが今のままではメインストリートからの敵の侵入を許してしまう。どうしようもないジレンマに車長は唇をかんだ。

*1
愛称は蠅たたき2世。87式自走高射機関砲の後継として2027年に正式採用された装輪式自走高射機関砲。武装は日本鉄鋼所製25式40mmCTA機関砲2門と27式近距離地対空誘導弾8発が搭載されている。




いかがでしたでしょうか?
この話、深夜テンションで書きあげた気がするのでおかしいところがあるかも・・・・?指摘して頂けるとありがたいです。
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ではまた次回。さようならぁ

次回 第21話 ギム撤退戦(市街戦)

お楽しみに


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第21話 ギム撤退戦(市街戦)

「・・・・・どれくらい残っているんだ・・・・」

 

ギムの町中を進むロウリア王国軍歩兵部隊約700。その指揮を臨時で取っているハーベルトは疲れた様子でそう言った。

圧倒的な数の暴力で配備数の少ないギムの町の南側からギムを奇襲攻撃し後方から敵部隊を叩くという作戦だった。ギム南方を守るのは200名以下の小部隊。敵の主力を誘引した状態で2万という大軍で攻め込めば多少の犠牲はあろうとも、ギムの町に侵攻できると考えていた。だが実際は2万の軍勢の内約3000名が戦死、敵は堅い箱のような物の中にこもってしまい、数名しか戦死していない。そんな思いをしてようやく突破できたのは約800名ほど。疲れるのも無理はなかった。

それに拍車をかけたのが先ほどから食料や金品を略奪し疲れた体に一息つかせようと民家を家探ししているのだが、扉を開いた瞬間謎の爆発が起こるということが多発し、最初は800いた兵士の内23名が死亡し、60名弱が怪我で戦闘不能となってしまっていた。

 

「くそっ!!たったの700か!」

 

ハーベルトは拳をギュッと握ると自分の太ももにたたきつける。

すると斥候に放っていた兵士が戻ってきた。

 

「隊長!!」

「どうだった?報告をしろ」

「はい。この先にございます広場に敵が陣地を展開しているのを確認いたしました」

 

敵――平たい箱の上にさらに棒の付いた箱のようなものが乗っており、棒の先端から強力な爆裂魔法や光弾が飛んでくる”あれ”を想像し、ハーベルトは冷や汗をかいた。あの何かが1体でもいれば、700程度の軍勢でどうにかできる相手ではないからだ。

 

「敵の陣容は?」

「はい。歩兵ばかりでござました。めぼしい武器というと短槍を構えておりました」

 

未知の兵器を持っている可能性はあるが、短槍が主武器であり、()()()がいないのなら700でも十分に侵攻可能だと考えた。

もし被害が出ても、我が軍は今も着々と町に侵入している。その部隊の到着を待てば十分に対処可能だと思った。

だがハーベルトは未だに躊躇していた。何の()()()もないのに敵を攻撃したところで損するだけである。骨折り損のくたびれ儲けということだ。わざわざ攻撃する必要もない。

すると斥候が追加でこう報告した。

 

「広場には多数の住人がおりました・・・・。中にはよい女も混じっておりました」

 

ハーベルトは斥候の言葉を聞いてにやりといやらし笑みを浮かべた。

ロウリア王国軍に置いて占領地の女性へ対する性的暴行はよくある話だ。というか兵士たちは略奪によって得られる金品と強姦によって得られる快楽、そして一部の兵士は血を求めて戦っているといってもよい状況だ。ハーベルトもそんな兵士の一人。よい女性が混じっていると聞けば襲わない手はない。それどころか、顔の良い女を上官に差し出せば覚えめでたくもなるだろうと考えた。

 

「ご苦労だった。貴様も少し休め。10分後にココを出発する。それと兵士には”捕らえた女は好きにしてよい”と伝えておけ」

「はい」

 

斥候は隊の中に消えていった。

ハーベルトはいやらしい笑みを浮かべたまま空を見上げた。当初は被害が出るかもしれないと慎重だった彼はもうそこにはいなかった。敵が寡兵であり尚且つ装甲車がいないというだけで楽観視をし始めた。いや、それどころか守備隊のことなど頭に無かった。学のない彼は目の前にあるであろう快楽のことで頭がいっぱいだったのだ。

いや、彼だけではない。彼の指示を聞いたロウリア王国軍兵士全員が同じであったであろう。

――――――――

「押さないでください!荷物は最低限にしてスペースを確保してください!子どもがいる方は絶対に手を離さないでください!」

 

小銃を背負い迷彩服に身を包んだ憲兵の腕章をつけた兵士が大声でヘリに乗る避難民に呼びかける。

その間、不埒な人間や不審な人間がいないかどうか周りでは3個小隊約120名の歩兵が小銃を片手に警備している。

すると指揮を執っている憲兵小隊長の元に通信兵が駆け寄ってきた。

 

「小隊長!!司令部から連絡です!!」

 

慌てた様子の彼を見て憲兵小隊長は嫌な予感がした。

 

「どうしたんだ?」

「南方警戒隊が敵主力の総攻撃を受けた模様です!その際、何百人単位の敵兵が町に侵入したと!!」

「ッ・・・!ちょっと待て!西に総攻撃が来たんじゃないのか!?」

「それが、そちらは囮だったようだと」

 

憲兵小隊長は嫌な汗を垂らした。未だに3000人以上の住人の避難が完了していない。かなり広い広場であるココに避難を待つ住人を集め、ここから避難する住人を町の郊外に着陸するヘリまで誘導している。幸いにもこの広場は司令部がある領主館の近くにあり司令部との連絡が取りやすく、町の東端付近にあるためココからヘリの発着場まではあまり時間がかからず避難もスムーズに進んでいたが、町に敵兵が侵入した今、敵は領主館を目指してくるだろう。そうすれば領主館に隣接するこの広場にも敵が殺到してくるのは目に見えていた。

 

「まずい!!生田少尉に指示を出してくれ!!この広場に繋がっている道を全てふさげ!!それと司令部に連絡して3個歩兵小隊の増援を要請してくれ!ヘリ発着場とそこまでの道を死守する戦力が必要だ!憲兵隊は避難住民を護衛しつつヘリ発着場まで案内するんだ!!いそげ!!」

「はい!!」

 

通信兵はすぐさま背負い式の野戦通信機を使って連絡を取る。護衛の3個小隊は北、南、西のメインストリートにクレイモアを仕掛けると万が一に備えて用意してあった鉄条網を使ったバリケードを設置し、さらに土嚢を積み上げて機関銃や無反動砲を設置する。

 

「小隊長!!司令部より連絡!!増援として1個中型輸送中隊と2個歩兵小隊を送るそうです!」

「輸送とはいえ1個中隊もか!ありがたい」

 

輸送中隊といえども遊撃旅団の輸送大隊は危険な最前線までの物資運搬などが仕事であるため、小銃や対戦車火器、近SAMなどの火器も配備されており、本職の歩兵部隊ほどではないがある程度の戦闘はこなせるのだ。今回、司令部には予備戦力として1個歩兵中隊、2個歩兵小隊が残っていた。だが歩兵中隊は司令部防衛のため動かすことが出来ず、歩兵2個小隊しか増援として送ることが出来なかった。だがそこに避難民をエジェイまで避難させる地上部隊としてギム―エジェイ間を往復していた部隊の内、第3即応独立輸送大隊所属の1個輸送中隊が到着したのだ。

戦力不足にあえいでいた司令部は輸送中隊に避難民護衛任務を下命したのだ。

 

「輸送中隊はヘリ発着場及びこの広場からヘリ発着場までの道のりを警戒するように伝えてくれ!増援の2個歩兵小隊は避難民をヘリ発着場まで案内する時に護衛するんだ!!」

「了解!!」

 

通信兵と話している憲兵小隊長の元に凶報が舞い込んだ。

 

「岩崎少尉!!西から敵歩兵接近とのこと!!数およそ700!!」

 

司令部からの通信だった。小型ドローンで西からやってくる敵兵を発見したのだ。

 

「くっ・・・・!戦闘態勢だ!!以後の本隊の指揮権は生田歩兵小隊長に譲渡する!!」

 

憲兵小隊長は治安維持部隊長の自分では戦闘指揮は不可能だと判断し、3個歩兵小隊の小隊長の中で最も軍歴の長い小隊長に指揮権を譲渡した。

 

「了解!!憲兵小隊は分隊ごとに役割を分ける!!酒巻分隊は避難民の誘導!!清川分隊は北方を警戒し敵別働隊に注意!!下田分隊は南方を警戒しろ!!歩兵小隊は全て西方に向かえ!!敵別働隊が来たらその都度迎撃隊を送ることにする!以上」

 

その場にいた全員が歩兵小隊長の指示に従った。120名近い兵員は6列に分かれる。メインストリートといっても狭い道。全員を展開させるのは不可能だ。そのため部隊を伏せ撃ちの1列目と膝撃ちの2列目、そして無反動砲などを操作する3列目と、後詰の部隊に分けた。

 

「全員、白兵戦に備えて着け剣しておけ!!」

 

兵士たちは腰の銃剣を抜くと小銃の先に持っていく。カチンという小気味よい音を立て銃剣がセットされた。

アサルトライフルや機関銃のコッキングレバーが引かれ、無反動砲には榴弾が装填され発射の用意がされる。装甲車から取り外してきた躑弾銃の引き金に指が掛けられる。

兵士たちは敵兵の多さに不安になりながらも後ろにいる住人たちは守らなければならないと心を奮い立たせる。

すると曲がりくねった幅の広い道の向こうからガシャガシャという金属と金属がすれる音と多数の足音が聞こえてきた。

 

「き、きた・・・・・」

 

今回初めて戦闘を行う若い兵士が不安げにそうつぶやいた。そしてついにロウリア王国軍764名が姿を現した。

 

「「「「うぉおおおおおおおおお!!」」」」

 

槍を構え、勇ましい声とともに突撃してくるロウリア王国軍の歩兵。一瞬、余りの迫力に若い兵士たちは圧倒されてしまった。だが指揮を執る歩兵小隊長はそれに負けぬ迫力のある声で叫んだ。

 

「射撃開始!!!」

 

ついにギム防衛戦の中でも最後の戦いである「ギム領主館前広場攻防戦」の幕が切って落とされた。




いかがでしたでしょうか。
パ皇戦・・・・・いつになるんでしょう・・・。はやく行けるように頑張ります。
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ではまた次回さようならぁ

次回 第22話 ギム撤退戦(好転の兆し)

お楽しみに


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第22話 ギム撤退戦(好転の兆し)

タタタタタタタ

 

ここ数日で何度目か分からない発砲音が鳴り響く。だが、音の発生源は今までとはまるで違っている。今までは町の郊外で鳴り響いていた発砲音だったが、今回は町のど真ん中で鳴っている。

それに加え、建物に使われている石材を銃弾が削る音も混じっていた。

 

「くそっ!!撃て撃て!!奴らを近づけさせるんじゃない!!」

 

歩兵小隊長は小銃の引き金を引きながら部下に指示を必死で出す。最初、700ばかりだった敵だが徐々に増えているようにも感じられた。

 

「くそっ!南方警戒隊の装甲車は何やってるんだ!!こいつらぞろぞろ増えてくるぞ!!」

 

先ほどから敵の増援がちまちまと町に侵入してきているようだった。さすがに百数十ばかりでは十倍以上の敵を食い止めることはかなり厳しい。

西に誘引された主力部隊も戻ってくる気配がなく、このままでは部隊が全滅し避難民にも甚大な被害が出るだろう。しかも避難民の中には女性などもいる。彼女らがどんな扱いを受けることになるのか、想像したくもなかった。

 

「4分隊!!グレネードで奴らを吹っ飛ばせ!!」

「りょ、了解!!」

 

彼の小隊で4人いる分隊長の中でも最も若い陸曹が配下の小銃兵に指示を出す。

指示を出された小銃兵はアサルトライフルの下にあるグレネードランチャーの引き金に手をかけ、目分量で狙いを定める。

 

「擲弾!てぇ!!」

 

ポンポンポン

 

連続した発射音が響き、ランチャーから放たれたグレネードがロウリア王国軍に向かって発射された。放物線を描いてグレネードはロウリア軍の頭上に降り注ぐ。

 

ドォンドォンドォン

 

着弾したグレネードは辺りに外殻の破片や仕込まれていたワイヤーをまきちらし、ロウリア兵を殺傷していく。

だがロウリア軍は続々と町に侵入してきていた。一向に減る気配を見せない敵に小隊長は焦り始めていた。

 

「っ~~~~!!くそっ!主力部隊はまだなのか!!」

――――――

「やられたな・・・・」

 

発砲音とロウリア軍の怒声がかすかに聞こえてくる第3遊撃旅団司令部では茂木と幾人かの参謀がそう呟いていた。

 

「歩兵連隊と戦車大隊は?」

「はい。第3即応歩兵連隊の内、第302即応歩兵大隊と第312即応歩兵大隊及び第302即応対戦車中隊は撤収作業を完了し、此方に向かってきていますが第302装甲躑弾兵中隊と、2個装甲車中隊を除く第302即応独立戦車大隊は車両の撤収が進まず、未だに西に取り残されたままです」

 

茂木の問いに作戦参謀が答えながらギムの地図の上の駒を動かす。そのうえで作戦参謀は今後の作戦案を述べた。

 

「今後としては主力部隊を2手に分けて、一方を民間人保護のために此方に撤退させて広場防衛に回します。もう一方を敵兵の侵入を防ぐべく南方に展開し南方警戒隊とともに迎撃に当たります。また北方警戒隊および西方警戒隊も偵察警戒車2台を残し、南方に展開させます」

「部隊の編成はどうする?」

 

参謀長は作戦参謀の立てた作戦に理解を示しつつ、どんな部隊編成にするのか尋ねた。

 

「広場の防衛は完全な市街地戦ですので、車両は不向きです。2個装甲車中隊と2個歩兵大隊、1個対戦車中隊を向けましょう。対して南方迎撃戦は場所を選べば野戦です。此方は車両が活躍できるでしょうから3個戦車中隊、1個装甲躑弾兵中隊、1個装輪戦闘車両中隊、1個軽装甲戦闘車中隊を展開させましょう」

「部隊には同士撃ちを防ぎ十字砲火となるように部隊展開場所を選ばせよう」

 

この戦いを乗り切る方法は着実に固まっていった。

 

「撤退時はどうする?合流してから撤退を開始するのか?」

「いえ、中央部隊と南方部隊は各個で撤退しギム後方で合流しましょう」

 

撤退時に分けた部隊をどうするのかを議論する。事前の計画ではある程度余裕を持って撤退できる予定だったので、一旦ギムで合流してから撤退する予定だったのだ。

 

「だが、ギム近隣の森には地雷原があるのではないのか?撤退時に味方の地雷で被害を受けたのではたまらんぞ?」

「確かに地雷はありますが、対人地雷のみです。南方部隊は装甲車両のみですし、歩兵部隊も少なくとも装甲車に収容可能ですから被害を受ける可能性は低いかと。何より電気式自爆装置が付いていることをお忘れですか?」

 

情報通信参謀の意見に工兵幕僚が被害を受ける可能性が低いと答えた。するとこう言う声も上がる。

 

「第1空母打撃艦隊に要請して空爆の要請は出来ないのか?」

「なるほど・・・・南方の戦闘は既に接近戦闘ですからできませんが、市街地に侵入した敵軍に対してなら出来るかもしれません」

「では至急海軍に空爆要請を出してくれ」

「分かりました」

 

迫りくるロウリア王国軍の魔の手から住人を守り抜くべく、日本国国防軍は速やかに作戦を練り直した。




いかがでしたでしょうか。
次回でギム撤退戦はおしまいです。ようやくパ皇戦に向けて1歩前進した・・・・。
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ではまた次回。さようならぁ

次回 第23話 ギム撤退戦(終結)

お楽しみに


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第23話 ギム撤退戦(終結)

皆様どうもSM-2です。
すいません。投稿をすっかり忘れて、CODにはまっていました。どうかご容赦くださいませ。
それとだいぶ前にですが「話のペースが遅い」とご指摘をいただきました。私も誠心誠意、話を何とか短くできるように努力させていただきますが、なにとぞ大目に見て頂けるとありがたいです。
では本編どうぞ。


キィイイイン

 

高く響き渡るエンジン音。

洋上に浮かぶ一隻のスーパーキャリア(原子力空母)の飛行甲板の先端に設置されている電磁式カタパルトに2機のF/A-3B戦闘爆撃機がセットされていた。

2機のF/A-3BにはLJDAM(レーザー誘導システム)を取り付けたMk.82 500ポンド爆弾であるGBU-54精密誘導爆弾を多数搭載していた。胴体内のウェポンベイには12発、胴体下のハ―ドポイントには1発、翼下のハードポイントには1つ辺り5つの爆弾を搭載できるパイロンが搭載され合計20発がつりさげられている。翼端には自衛用と思われるサイドワインダーが搭載されていた。

 

「第3遊撃旅団の救援任務。敵さんもなかなか賢いみたいね・・・・・。運にも味方されたようだけど」

 

艦橋から4機を眺めていた音羽はぽつりとそう呟いた。

霧にまぎれて囮部隊を出し、主力と誤認させ第3遊撃旅団主力部隊を誘引した後に別方向からの総攻撃。言うのは簡単だがやるのはなかなか難しい。成功したのは第3遊撃旅団のみならず日本国国防軍全体が圧倒的技術格差によって油断していたという幸運に恵まれたからだ。

油断していなければ上空からドローンや航空機による偵察を徹底させただろうし、第3遊撃旅団も霧が完全に晴れるまでは赤外線カメラを使って敵兵の状況を監視していただろう。

どんなに圧倒的であっても油断してはいけない。この戦いから得られた教訓と言えた。

 

「何がともあれ、民間人には絶対被害を出さないこと。これは出撃するパイロットにも厳命しておいて」

「はい」

 

横にいた航空団司令が音羽の指示を快諾した。

その時、出撃する予定のパイロット4名が出てきて自身の乗機に乗り込んだ。周りにいた整備士はミサイルの安全ピンを抜いてパイロットに見せる。

キャノピーが閉められ、パイロットは計器を見て機体に異常がないことを確認した。

エンジンの出力があがり、エンジンから噴き出る炎の勢いが目に見えて増した。そして次の瞬間、電磁カタパルトによって機体が撃ちだされた。カタパルトの恩恵で瞬時に離陸可能速度まで加速する機体は大空へと飛び立った。

――――――

「いけぇ!いけぇ!ここを乗り越えギムに乗り込むのだ!!」

 

南方では未だに死闘が繰り広げられていた。

偵察警戒車の主砲の30mm機関砲は既に弾切れで、南方警戒隊はアサルトライフルと対空戦車の40mm機関砲で何とか戦っていたが、自走高射機関砲の40mm機関砲もアサルトライフルも弾切れが近い。

早く増援が来なければ撤退するしか道はなかった。

 

「くそっ!!増援はまだなのか!!もう撤退するしかないぞ!!」

 

ロウリア軍は既に3000人近い戦死者が出ていたが圧倒的数で攻めているため、一向に減る気配が見えない。

南方警戒隊の指揮を執っていた中尉は撤退を考え始めていたその時だった。

 

「中尉!!総司令部よりです!!3個戦車中隊を基幹とする増援部隊が後5分で到着するとの事です!!」

「増援?それは本当か!?」

「間違いありません!」

 

戦車を基幹とする増援部隊。撤退を考えていた中尉、いや南方警戒隊の全員に希望の光が見え始めた。

 

「ならば後5分は持ちこたえるぞ!5分後、増援部隊が到着したらここの防衛を引き継ぎ我が隊は撤退すると司令部に伝えておけ」

「了解です!」

 

南方警戒隊約100名はなにがなんでもココを守り通す覚悟を決めた。

――――――

ビーグル3(ビーグル(あかぎ所属第131早期警戒隊)3番機) ディスイズヴェクターフォースワン(こちらヴェクター4-1)ターゲットポイント(目標地点)近辺にボギー(敵性航空機)はいるか?」

 

空爆に向かっているのは昨日の部隊とは違う第112戦闘攻撃飛行隊(ヴェクター隊)第4編隊の2機であった。2機は巡航速度であるマッハ1.1でギムに向かっていた。

編隊長のヴェクター4-1の機長は上空10000メートルで監視活動にあたっている早期警戒機にギム上空の航空機の有無を尋ねた。いくら技術格差があるといってもワイバーンがいれば精密爆撃に影響が出る可能性もあるからだ。

 

『ディスイズビーグル3。ギム上空にボギーなし。安心してプレゼントを渡せるぞ』

「安心した。ではプレゼントを宅配するとしよう」

『それと、ギム上空に着いたら地上部隊から指示がある。チャンネル4に合わせておけ』

「ラジャー」

 

早期警戒機の管制官の答えに編隊長は軽口をたたいたが、最後の指示は友軍に対して爆弾を投下しないようにする重要なものだった。目標地点であるギムはもうすぐだった。

高度5000mからの市街地で集結している敵軍の上空に爆弾を落とし、下にいる第3遊撃旅団を援護するのが彼らの任務だ。

 

「ヴェクターフォースツー。ボーミングレディ(爆撃用意)EOTSオン(EOTS起動) オプションエアトゥグラウンド(空対地モード選択)

『ラジャー』

 

F/A-3Bの機体下部に搭載されている電子式光学照準システムの電源が入れられ、地上の熱源がはっきりとディスプレイに映し出された。映像はまるで白黒映像のようだった。映し出されるギムの町並み。ところどころでワイバーンの火炎弾攻撃で発生したと思われる火の熱源反応が白くくっきりと映し出されていた。

 

『ヴェクターフォースワン。ムービングターゲットコンタクト(動目標探知)。5つのグループに分かれています』

 

2番機が地上で戦っている第3遊撃旅団とロウリア王国軍らしき熱源を捉えた。2番機とデータを共有しているため、1番機にも映像が送られてくる。

動目標はおもに4つのグループに分かれ、1つ目のグループは戦車を伴っており市街地の外を南に進んでおり、2つ目のグループは市街地の入口あたりで槍などを構えた軍団と装甲車部隊が攻防戦を繰り広げていたが、槍を持った兵士がちらほらと町に侵入していた。3つ目のグループは装甲車を伴っており、装甲車の上や周りには銃器を持った歩兵らしき影も見えた。4つ目は少し広めの広場のような所に集まっており、何も持たない民間人らしき影と銃や無反動砲を持った兵士が伏せ撃ちの状態で5つ目のグループと戦っているのが分かる。最後のグループは1000人ほどで槍や剣で武装しており、広場に侵入しようと数に物を言わせてじわじわと進んでいた。

最後の確認をとるために地上部隊に連絡を取った。

 

「此方、第1空母打撃艦隊所属第112戦闘攻撃隊。現在ギム上空。爆撃目標の指示をくれ。オーバー」

『・・・・・こちら第3遊撃旅団。増援感謝する。爆撃目標は市街地に侵入している敵軍だ。誤爆を避けるために友軍部隊からは閃光信号弾を発射させる。そちらで確認できるか?オーバー』

「閃光信号弾を友軍から発射させるんだな?了解した。確認しだい敵軍に爆撃する。オーバー」

『よろしく頼んだ。アウト』

 

地上の第3遊撃旅団司令部に所属する前線航空管制官との通信を終えると2機のガンナーは地上から放たれるであろう閃光信号弾を待っていた。

本来ならGPSなどを使って座標を送信し、敵座標に爆弾を誘導してもらうのだがこの世界に来てGPS衛星が消えてしまったため、このような原始的な方法をとるしかなかったのだ。

 

「!閃光信号弾を確認!ボーミングターゲットコンフィメイション(爆撃目標確認)

 

市街地にいる3つのグループの内2つのグループから閃光信号弾が放たれた。

爆撃目標を確定させた2機のガンナーは敵軍にレーザー波を照射する。2機は爆弾を投下し、確実に誘導するため一旦旋回し、エアブレーキを開いて速度を落とした。

 

ヴェクターフォース(第112戦闘攻撃飛行隊第4編隊)ドロップレディ(投下用意)・・・・・・・ナウ(投下)!!!」

 

2機のF/A-3Bから合計26発の爆弾が投下された。

投下された爆弾は搭載するセンサーのみで自身の位置や速度を把握し、まっすぐ落ちてゆく。高度2000mほどでエアブレーキを開き速度を調整するとレーザーシーカーを起動させ、投下母機である2機から照射されたレーダー波の反射反応を頼りに目標に向かっていく。

ヒュウという風を切る音とともに24発の爆弾はどんどん地面に近づいてゆく。そして爆弾が市街地に侵入していたロウリア王国兵1000名の近くに着弾し、弾頭信管が起爆した。

 

ドォオオオオン

 

弾頭信管の爆発によって本体に詰め込まれている87kgもの高性能軍用爆薬も起爆し、合計2.2tにも及ぶ爆薬の爆発がロウリア軍に襲いかかった。

大半のロウリア兵は近くに爆弾が着弾したことで破片や爆風で即死した。辺りには人間の体の一部や肉片が飛び散り、建物は半径200m圏内は全壊した。

 

「よし!!ついでに大軍に襲われている友軍も援護するぞ!爆弾のバーゲンセールだ!」

 

2機は任務の達成を確認すると急降下で1500mほどまで降りる。そのまま南方警戒隊が戦闘を繰り広げているところまで向かうと、突撃している敵軍の後方に残りの40発の爆弾をばらまいた。

 

ドォオンドォオン

 

連続した爆発が起こり、ロウリア王国軍本隊の後詰の部隊は壊滅した。

爆弾は市街地から500mほど離れた位置に投下しているので第3遊撃旅団には被害は一切なかった。

 

ミッションコンププリート(任務完了)RTB(母艦へ帰還する)

 

2機の猛禽はロウリア王国軍には混乱と絶望を、第3遊撃旅団には希望を残して巣に帰っていった。

――――――

「くっ!!何なのだ!!奴らは一体!!」

 

アデムは運よくF/A-3Bの空爆から逃れることが出来たが、部隊の他の指揮官はほぼ戦死。ロウリア王国軍の指揮命令系統は南方警戒隊との戦闘でただでさえ弱っていたところに空爆が加わったことで、完全に破壊された。

 

「あ、アデム様!あそこに!や、奴らが!!!」

 

同じように運よく生き残った兵士の内の一人がある方向を指差した。

アデムが慌ててその方を見ると、そこには戦車や装甲戦闘車の大群が迫っていた。

 

「あ・・・・あああ!ぁああああああ!!撤退だ!!撤退だぁああああああ!!」

 

アデムは余りの恐怖にそう叫びながら馬に乗って駈け出した。ついにロウリア王国軍ギム攻略隊が完全に壊滅した瞬間だった。

――――――

「戦車隊、前進!!奴らに今までの借りを返してやれ!!」

 

戦車大隊長の指示で3個戦車中隊を基幹とする45台もの戦車は主砲である130mm滑腔砲を撃ちながら、指揮命令系統を失いただの烏合の衆と化したロウリア王国軍にとどめを刺すべく、前進を続けていた。

 

「撃て!撃てぇ!!くそったれどもを血の海に沈めてやれ!!」

 

日中紛争を経験した戦車大隊長はそう指示を出すが、気の弱い若い兵士は悲惨な光景に吐き気をおぼえていた。だが、ここで手を抜けば奴らが盗賊となり民間人が犠牲になると自分に言い聞かせ、必死で任務にあたっていた。

 

ドォンドォンドォン

 

130mm榴弾がロウリア王国軍のいたるところで着弾し、周りにいた兵士を吹き飛ばしてゆく。ちりぢりになって逃げようとする兵士も、16式装輪装甲戦闘車の105mmライフル砲から放たれる榴弾や27式歩兵戦闘車*1の40mm機関砲の餌食となっていく。

このギム防衛戦中に何度も繰り返された火薬と鉄によって生み出される効率的な殺戮と血の海が広がるばかりであった。

その後、ロウリア軍が散り散りになって逃走したためクワ・トイネ側に逃げた兵士を拘束もしくは殺害する残敵掃討戦に移行。

戦車2個中隊と歩兵1個大隊、1個装甲躑弾兵中隊、1個対空大隊を残し、残敵掃討に向かいった。

午後12時に住人の避難が完了しクワ・トイネ公国軍が撤退を開始、さらに2時間後にはクワ・トイネ公国軍の撤退が完了したため、残敵掃討戦を終了し掃討担当部隊は事前に決められた地点で合流した後、防衛陣地を構築中のエジェイに撤退を開始。ギム残留部隊も撤退を開始し、1個戦車中隊ならびに1個歩兵中隊、1個装甲車中隊を殿軍としてギムから撤退した。

これで2日間にわたって繰り広げられたギム撤退戦は終了した。

――――――

【ギム撤退戦】

日本国国防軍

投入兵力:14,781名

投入部隊:国防陸軍第3遊撃旅団

     国防陸軍第1航空師団第5輸送ヘリコプター中隊

     国防海軍第1空母打撃艦隊

死者・行方不明者:23名(当初のワイバーンによる空襲の影響による死者:10名、ギム攻防戦での死者:6名、残敵掃討時の死者、7名)

負傷者:52名(軽症者:37名、重傷者:14名、意識不明:1名)

捕虜:0名

 

クワ・トイネ公国軍

投入兵力:3,554名

投入部隊:西部方面騎士団

死者・行方不明者:69名(制空戦での死者:24名、空襲時の死者:41名、ギム攻防戦時:1名、撤退時:3名)

負傷者:103名(軽症者:61名、重傷者:39名、意識不明:3名)

捕虜:0名

 

ロウリア王国軍

投入兵力:28.000名

投入部隊:ロウリア王国陸軍クワ・トイネ侵攻方面軍ギム攻略先遣隊

死者・行方不明者:20,356名(制空戦:150名、第1次総攻撃:1,561名、第2次総攻撃:7,891名、第3次総攻撃並びにギム領主館前広場攻防戦:8,863名、残敵掃討時:1,891名

負傷者:6,921名(軽症者:2,001名、重傷者:4,915名、意識不明:5名)

捕虜:561名

―――――――

このギムで流れた血は日本に衝撃をもたらした。野党からは「戦争が予測できた地域に、部隊をわざわざ派遣したのでは?」という追及があったが、政府与党の答弁は「確かにロウリア王国はクワ・トイネとの緊張状態にあり、我が国も仮想敵国と認識してはいたものの、演習期間中にロウリア王国軍が攻撃を仕掛けてくることは予想できず、本演習の目的も人道的観点から戦争時に民間人に対し被害が及ばないよう。民間人の避難及びその方法等を現地当局並びに軍事組織に対し、教導する目的でありました」とシラを切り、ロウリア王国からの攻撃を根拠として、ギム攻防戦終結の僅か2日後に個別的自衛権の行使を行い、参戦を決定した。

これにより、クワ・トイネ公国には第2空母打撃艦隊及び第2艦隊、第1揚陸艦隊、第2揚陸艦隊、第41揚陸任務群と海兵隊2個師団、陸軍1個師団、2個旅団、1個工兵団の派遣を行った。

ロウリア王国軍は先遣隊との連絡が取れなくなったことで偵察隊をギムに派遣。その際、負傷者を含む生存者983名を保護し、ギム攻略先遣隊の壊滅を認識。本隊のクワ・トイネ侵攻方面軍本隊約18万がギム及びその周囲に侵攻するがギムはもぬけの殻。また第3遊撃旅団の設置したブービートラップで多数の死傷者が出たため、ギムの放棄を決定。ギムからクワ・トイネ側に10kmほど進んだところに布陣するも予想外の損害に頭を悩ませることとなった。

 

 

 

 

 

*1
89式装甲戦闘車の後継として2027年に正式採用された。対戦車ミサイル2発と7.62mm汎用機関銃、12.7mm重機関銃を各1丁づつと主砲として40mmCTA機関砲を搭載している。2036年以降に生産された後期型は7.62mm汎用機関銃を8.58mm汎用機関銃に換装している




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ではまた次回。さようならぁ!

次回 第24話 本格的な戦争

お楽しみに!!



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第24話 本格的な戦争

みなさまどうもSM−2です。
今回の話は深夜テンションでかきあげたので不自然な点がところどころ・・・・・。
見つけたら直してはいますが、まだ不自然な点があるかもしれません。指摘していただけると幸いです。
では本編どうぞ!


「ギムの住人は無事エジェイに避難できたのだな?」

 

クワ・トイネ公国の首相カナタは西部方面騎士団から提出された報告書を読んでホッとした。

住人に被害が出なかった。それは何よりも喜ばしい知らせに違いなかった。外務卿がカナタにさらに報告した。

 

「首相。先ほど日本国政府から連絡がありまして・・・・・」

 

外務卿はそこでいったん切ると、横にいた補佐官に報告書を取らせる。

エルフの補佐官は日本からの連絡を記した報告書を外務卿に手渡した。

 

「えー、”日本国政府はロウリア王国から国防軍が攻撃を受けたことを受け、ロウリア王国に対し個別的自衛権を発動し、対ロウリア王国戦に参戦することを決定した”とのことです」

「本当か?」

 

閣僚たちは日本から輸入されたインフラや道具、またコンパウンドボウなどを見てとてつもない技術を持った国であると認識していた。しかもクワ・トイネ公国では軍用として使われているボウガンやコンパウンドボウは日本では軍用ではなくスポーツ用や狩猟などの民生品として使われており、軽くて丈夫と兵士から好評のジュラルミン製の大盾も一昔前に日本の治安当局で使われていた物なのだ。

そんな国の軍隊となればどれだけ強いのか、彼らには想像もつかなかった。

 

「はい。現在、我が国に派遣している1万5千に加えて、新たに8万5千もの大軍勢を派遣してくれるということです」

「なに!?8万5千もか!?」

「あれだけの技術を持つ国の軍隊が10万も・・・・・この戦は勝てるぞ!」

 

外務卿の報告に閣僚たちは口々にそう述べた。

 

「日本の援軍は明日到着する予定です。到着しだい軍務卿を含め打ち合わせをする予定です」

 

日本は既にロウリアが戦争の準備を進めていると把握した時点から国防陸軍第3遊撃旅団、第201工兵旅団、国防海軍第1空母打撃艦隊のほかに陸軍2個師団、10個ヘリコプター中隊、3個砲兵連隊、海兵隊2個師団。海軍空母打撃艦隊1個と1個艦隊、2個揚陸艦隊と1個揚陸任務群の派遣を準備していた。

歩兵部隊などは民間の客船を使い、戦車は自動車運搬船を使って大急ぎでクワ・トイネに増援部隊を派遣していた。その第1陣となる陸軍第1遊撃師団が呉を母港とする国防海軍第2艦隊の護衛の元にクワ・トイネに到着する予定であった。

 

「よろしく頼んだぞ。可能な限り日本に協力するんだ」

「わかりました」

 

外務卿はカナタの指示にコクリと頷いた。

――――――

翌日の夕方。マイハーク港に陸軍第1遊撃師団が到着した。この部隊は民間客船2隻と自動車運搬船3隻、強襲揚陸艦2隻、ドック揚陸艦4隻の艦隊が運搬してきた。日本の支援の元整備された港には合計11隻もの船が接岸し、車両や機材、兵士や弾薬などを下してゆく。

にわかに騒がしくなった港にはやってきた日本の援軍を一目見ようとマイハ―クの住人も集まっていた。

戦車や装甲車。陣地構築用の建設機材などに住人たちは興味シンシンだった。

第1遊撃師団司令部付き憲兵が規制線を張って、住人達が近づかないように警備している横を1台の高機動車がゆっくりと進んでいった。

高機動車には陸軍第1遊撃師団師団長の佐野(さの) 三輝男(みきお)少将と、今回のロデ二ウス大陸派遣部隊の司令官として派遣された、統合国防参謀総監部作戦参謀総監部*1作戦参謀総監付きの加藤(かとう) 文護(ぶんご)中将が乗っていた。

 

「しかし、かなりの数の民間人だ・・・・・・。あそこにスパイが2,3人紛れ込んでいても分からんな・・・・・」

 

加藤は高機動車の車上から港に集まる住人たちを見て苦笑しながらそう呟いた。

佐野はその言葉で何かを思い出したらしく口を開いた。

 

「そういえば、ロウリア王国では最近正体不明の電波が探知されていると聞きましたが。あちらの方の調査は・・・・・?」

 

それは今回派遣される部隊の中でも将官クラスの高級将校と一部の参謀将校しか知らない情報だった。

 

「うん・・・・空軍の第1電子偵察飛行隊が担当するらしい。まぁ、必要とあらば政府からSART*2を動かすように連絡が来るらしい」

「なるほど、では私が気を使うことではないようですね。SARTとの同士撃ちは避けるようにだけ留意しておきます」

 

佐野はそれっきりその会話をすることをやめた。特殊部隊を動かすということはかなりデリケートな問題には違いないからだ。そういった問題にはなるべく首を突っ込まないのが得策だと考えた。

この後、第1空母打撃艦隊司令の音羽少将を交え、日鍬合同軍事連絡会が開かれ対ロウリア戦略などが話し合われた。

決定した防衛戦略では事前の情報を基に空母2隻所属の艦載機のエアカバーを受けつつ、エジェイの周囲に半円を描くように塹壕陣地を構築。その内側に砲兵陣地と簡易ヘリコプター発着場を設け、進行してくる敵軍主力を撃破。同時に国防海軍第2艦隊は海上から侵攻してくる敵軍を、海兵隊航空部隊とともに撃破し、その後ギムを奪還。そののちにロウリア王国に進攻することがきめられた。エジェイはクワ・トイネ公国の西部に位置しており。クワ・トイネ-クイラ国境から西部の中央辺りまで南北約1200kmにわたってそそり立つエージェイ山脈の北端にある城塞都市である。尾根の上にある平たい台地にあるこの都市は高い城壁と相まって敵の攻撃を困難にさせる。

 

――――――――――――――――――――

 

それから2週間ほどして。エジェイが建っている台地は北と北西、西を高い崖に南西、南、南東を急峻なエージェイ山脈の山に囲まれており、ロウリア軍でも登ることが可能なのは、東と北東にある緩やかな坂ぐらいだろう。

麓にはギムから首都まで続く街道が横切っており、敵がもしエジェイを無視して首都に向かおうものならばエジェイに籠城する部隊が首都防衛部隊と敵を挟み討ちにすることも可能であるため、ロウリア軍は必ずやこの都市を攻め落としに来るだろうと考えられていた。

エジェイの石レンガの城壁と塔は周りの自然豊かな草原と相まって、まさしく中世ヨーロッパのような雰囲気を醸し出していた。台地の奥、山に近い方に立つエジェイの正面は台地が余っており、北にある崖まで最も近くて500mはある。その500mの土地には中世ヨーロッパのような風景とはおよそ不釣り合いな、近代的な物が多数置かれていた。

オリーブドラブのテントや木箱が多数並んでおり、厭に現代チックな軍用車両が多数停車している。ところどころに土嚢や鉄条網が配置され、ロケット砲や榴弾砲が多数配置されている。普段はなにもない丘も塹壕に鉄条網、トーチカが配置され、迫撃砲や機関銃が置いてある。麓の街道にも横切る形で塹壕と鉄条網が設置され、そちらに至っては塹壕の300mほど前方にはところどころに赤い旗が立っており、特徴的などくろマークと日本語、大陸共通語で「この先、200mほど地雷原」と書かれていた。確かによく見てみると地面に黒っぽい何かがところどころに見える。それらは日本国国防陸軍が敷設した不活性化機能*3付き対人地雷であった。エジェイの人間には地雷のことが説明してあるがロウリア王国軍は何も知らずに突っ込んでくるだろう。

このように装甲車両や砲兵*4のいないロウリア王国軍には地獄のような防衛陣地が引かれていた。

――――――

「ほんとに・・・・・オーバーキルにもほどがあるんじゃないか?」

 

その陣地を守るエジェイ防衛部隊の総司令官になった第1遊撃師団師団長の佐野は防衛陣地とそこにいる兵士たちを見て溜息をついた。

ちなみに加藤中将はクワ・トイネ公国首都にロデ二ウス派遣部隊総司令部を設置し、そこで全体の指揮を執っていた。

この陣地を守るのは彼が指揮する第1遊撃師団他、第3遊撃旅団、第7師団、第1機動砲兵連隊と第2機動砲兵連隊、第3機動防空連隊の約4万2千余の現代装備に身を固めた地上部隊と陸軍第1航空師団から派遣された第1、第2対戦車ヘリコプター中隊と第4、第5、第6輸送ヘリコプター中隊、第1、第2、第9、第10強襲ヘリコプター中隊、第5偵察ヘリコプター中隊のヘリ部隊と海軍第1、第2空母打撃艦隊の航空機部隊などのロウリア王国軍が軽く消し飛ぶほどの戦力であった。

そんな強力な戦力にロウリア王国は挑むことになるのだが、彼らはまだ知らなかった。

――――――

クワ・トイネ侵攻軍本隊17万は占領したギムより5kmほどクワ・トイネ側に侵入した場所に駐留していた。

冷静かつ正確に戦争の状況を把握している日本、クワ・トイネ側に対し、ロウリア王国は対照的に混乱していた。

ギムの町を占領するべく派遣された先遣隊3万は壊滅。ギムの町やその周辺には敵の死体や武器などは一切なく、あるのはロウリア王国兵の数え切れないほどの死体ともぬけの殻となった家ばかりであった。生き残って本隊に収容された味方も錯乱していたり、要領を得ないことばかりを言うのでなぜ先遣隊が全滅したのか一切分からずにいた。

 

「なぜだ・・・どういうことだ」

 

パンドールと幕僚たちは日夜、先遣隊壊滅について話していたが一向に話が進まず、進展のない連日の会議に疲れ果てていた。

敵の情報がなくては作戦も立てられないし、いたずらに被害を増やすだけであった。

 

「パンドール将軍。ココは小規模の騎兵による偵察で敵の情報を集めましょう」

「そうだな・・・・適当に部隊を見つくろっておいてくれ」

 

幕僚の一人の提案にパンドールや他の幕僚たちは賛同した。もはや撃てる手立てはそれしかないからだ。

その日から連日、5~8騎ほどの騎兵による偵察部隊が繰り出されることになった。

――――――

「チッ・・・・先遣隊が上手くやってくれりゃ、ギムで美味しい思いもできたのによォ・・・」

 

部下を率いながらエジェイに向かって馬を走らせるのは赤目のジョーヴという山賊上がりの兵士であった。素行が悪く、気に入らない部下は戦場で切り捨てるような残忍な性格を持っていた。そんな彼の部隊も兵士というより山賊や夜盗と言われた方がしっくりくるような人間ばかりであった。

 

「もうすぐエジェイだ!!エジェイには手を出さないが、近くに女がいれば襲っていいぞ」

 

その指示に部下たちは沸き立った。みんな快楽に飢えているのだ。エジェイに手を出すのは自殺行為だが、きっとエジェイに逃げようという避難民はいくらかはいるはずだとジョーヴ達は考えていた。その避難民を襲えば金品や女が手に入ると。

彼らは速度を落とし、慎重にエジェイにいる兵に見つからないように進んでいたが彼らの姿は既に捉えられていた。

――――――

「ッ!!熱源探知!」

 

国防陸軍第5偵察ヘリコプター中隊所属のOH-1は高度2000mを飛行していた。

するとエジェイから西に12kmほどの地点に6ほどの騎兵と思われる熱源を探知したのだ。OH-1の偵察員はすぐさま本部に連絡した。

 

「CP!こちらファイブリーコンズフォーワン。エジェイより西に12kmほどの地点に6つの熱源を探知。時速20kmほどでエジェイに接近。オクレ」

『・・・・・こちらCP。了解。戦闘ヘリユニットを1つ派遣する。貴機はそのまま監視任務を続行せよ。オクレ』

 

暫くしてから帰ってきた本部からの返答はごくごく単純なものだった戦闘ヘリを送るからそれまで監視しておけ。ちょっと空いた時間はクワ・トイネ公国軍に確認を取っていたのだろう。

OH-1は高度を維持しつつ、見失わないように監視を続けた。

―――――――

赤目のジョーヴは先ほどから何処か気持ち悪い視線を感じ続けていた。

 

―どこからかみられているのか?

 

そこらを見渡してみても何もいない。

その視線はOH-1からの物だったが、隠密性の高いOH-1はエンジン音も非常に静かであるため発見することもできなかった。

だが彼の部下は違うものを発見できた。

 

「お、御頭!!あれを・・・・!」

「あ・・・・?」

 

部下が指差した方向をジョーヴが見ると、羽虫のような物が7つ浮かんでいた。

 

「な、なんだありゃ!?」

 

その時、羽虫たちの脇に付いている樽のようなものから何かが飛んできた。

 

「に、にげろ・・・・!!」

 

そう言った瞬間、彼らを猛烈な爆発が包み込んだ。兜や人間の破片が空を舞う。辺りに人間の破片が飛び散った。

 

「ひっ、ひぃいいいいい!」

 

運よく生き残ったジョーヴは死んだ馬から降りると走って逃げようとする。だがそれは余命をいくばくか伸ばしただけだった。

羽虫の内1匹だけ、体の下に棒が付いている個体が前に出て棒をジョーヴに向ける。そしてそこから猛烈な光弾の嵐をまきちらした。

 

「アギャッ・・・・!」

 

土煙とともに血や肉片が飛び散る。土煙が晴れると、そこにあったのは人間だった何かの塊であった。

戦闘開始から1分もしないうちに騎兵は全滅した。

―――――

「CP。こちらワンアタッカーズツーツー。目標の殲滅を確認。任務完了。オクレ」

 

彼らを全滅させたのは第1対戦車ヘリコプター中隊所属のAH-64JGアパッチ・フォートレス*51機とそれに操作されていた6機の無人戦闘ヘリDAH-1 サムライ*6であった。

 

『こちらCP。了解。基地へ帰還せよ。オクレ』

「こちらワンアタッカーズツーツー。了解。基地へ帰還する。オワリ」

 

戦闘ヘリユニットはエジェイ近辺に設置された仮設飛行場に帰っていく。

この後も騎兵による偵察部隊と思わしき小規模部隊がちょくちょくやってきたが、そのたびに日本は戦闘ヘリ部隊を出動させ全滅させている。

この偵察部隊の相次ぐ未帰還にロウリア王国軍はさらに頭を悩ませた。

*1
日本が進行を受けた際の基本的な戦略を立案する部署

*2
サート。海兵隊特殊強襲偵察隊の事。海兵隊の特殊部隊で敵奥地への侵入やヘリボーンなど様々な任務をこなす。この時代の特殊作戦群も同じだが、隠密部隊というよりはどちらかというと奇襲・強襲部隊なので破壊工作や暗殺などの任務は行わないため隊員は自分がこの部隊にいることを話しても全然大丈夫。

*3
国防陸軍の地雷は特殊な爆薬を使用しており、設置と同時に安全ピンを抜くと信管が使用可能になるほか空気穴が開くようになっておりその空気穴を通じて爆薬が1カ月ほど外気に触れると酸化して爆発しなくなる機能が付いている。特殊コーティングによって1ヶ月かかって徐々に酸化が進むのではなく、1か月後に一気に酸化が進むようになっているので完全に使用不可能になるまで爆発力は衰退しない

*4
正確には魔導砲部隊がいるのだが、ただの球形弾を撃ってくるだけなので地雷原が潰されたり塹壕が破壊される可能性は低い

*5
2025年にボーイング社が開発したアパッチ・ガーディアンの改良型。2032年に正式採用された。もともと、原型のG型は装甲、電子装備が改良されており、レーダーの索敵範囲が強化され、装甲も25mm砲弾が当たっても最低1時間飛行可能と「要塞」の名にふさわしい防弾性がある。JG型では追加装甲のゲージ装甲や爆発反応装甲などが装備可能など、主力戦車なみの装備が出来る。また機体強度があがったため超過禁止速度と実用上昇高度は上がったものの、重量が増したため、巡航速度と航続距離が減少した。また無人機運用能力も優れている

*6
日本の川崎重工業が開発した無人戦闘ヘリ。アパッチJ・Gシリーズからの運用が可能となっている。武装も強力な物が積めるため、アパッチ1機でこのサムライを最大の6機まで運用した場合は最大で64発の対戦車ミサイルが同時運用できる。




いかがでしたでしょうか
最近友人がプログラミングしているのを見て、なぜか劣等感をいだきました。プログラミングできたらかっこいいですよねぇ。皆様方にも友人の得意なことに嫉妬したり劣等感をいだいた経験はあるんじゃないでしょうか?
まぁ、人には得意不得意があるからできないもんはしゃあないと気持ちを切り替えましょう。
ご意見ご感想お気に入り登録お待ちしております。
ではまた次回。さようならぁ!

次回 第25話 空襲

お楽しみに!


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