リリカルなのはvivid Stratos (ドロイデン)
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リンネの朝

 


 ミッドチルダのとある邸宅。ある少女の部屋にて目覚まし時計が鳴り響く。

「んみゅ……」

 けたたましく鳴る目指し音を消し、低血圧で頭が回らない中少女……リンネ・ベルリネッタはふらふらとベッドから立ち上がり、部屋の窓に掛けられたカーテンをサッと開ける。

「……良い天気」

 太陽の光を浴びて漸く頭が働くようになり、すぐにSt.ヒルデの制服に着替え、綺麗なプラチナの髪を机に置いておいたリボンで慣れた髪型へ結ぶと、部屋を出てリビングへ向かう。

「あら、おはようリンネ」

「おはようございます、お母さん」

 既に席についていたお母さんがテーブルから挨拶してきたので、私も返すように挨拶する。

「お父さんはもう仕事?」

「ううん、昨日徹夜で残業してたから、今はベッドで軽く寝てるわ」

「忙しいんですか?仕事の方が」

「そうね……ブランドとして服事態は出来てるみたいだけど、肝心のモデルがいまいちらしいの」

 ファッションブランドの社長として半端なモデルや写真は使いたくないというこだわりらしい。

「リンネ、良かったらモデルやってみたらどうかしら?お友達も誘って遊ぶ形で」

「そんな、お父さんのお仕事の邪魔になっちゃいますから。それに私より専属のモデルさんたちの方が綺麗ですし」

「ふふ、そういうことにしてあげるわ。さ、早く食べないと遅刻しちゃうわよ」

 そう促され、私はお母さんの対面に座る形で席につくと、メイドの1人が朝食のプレートを持ってきて私の前に置いたのだった。

 

 

 

「ところでリンネ、今日は始業式だけだったわね」

 朝食を食べ終え、自分の部屋から鞄を持って降りてくると、お母さんはふと思い出すように聞いてきた。

「はい。学校は午前中で終わりですけど、午後からいつもの練習をするので、夕方には戻ります」

「ふふ、リンネは本当に練習熱心ね。そんなリンネの進級祝いを夜はするから、あまり遅くならないで帰ってらっしゃい。あと、彼にもよろしく伝えておいてあげて」

「はい、分かりました……行ってきます」

 そう言って玄関を出て、私は駆けるように歩き出す。

 ここミッドチルダは時空管理局が管理する第一世界、古来より魔法と科学によって発展してきて、今現在でもさらに進化を続けてる世界。

 数年前までは大きな事件が続けて起きたりと大変だったけど、今はまるでそれが嘘のように平穏です。

 家からの最寄り駅につくと、私は何時ものようにそのすぐそばに併設された駐車場に入って、目当ての車の扉を数度ノックします。

 するとすぐにドアの鍵が開き、私はその助手席に静かに座って運転手の男性に挨拶する。

「お待たせしました……一夏さん」

「いや、こっちも今来た所だから構わないよ」

 中にいたのは少し前に知り合った、私の練習してる事のコーチをしてくれてる人……織斑・S・一夏さんで、家が私の家の近くなのと、職場が近いSt.ヒルデ魔法学院まで好意で送ってくれる、温かくて優しい大切な人です。

「しかし、リンネも今日から最上級生か……」

 車を運転しながら、まるで懐かしいというように笑う一夏さんに私も少しだけ笑う。

「でもSt.ヒルデはエスカレーター方式の学園ですから、最上級生って言っても初等部では、ってことばが付きますけど」

「そう言ってもリンネはまだ11だろ。俺とか地球出身は初等部っていうか、小学生が12までだからなんか実感湧かないんだよな」

「そうなんですか?」

「そうそう。あとこっちでの就労可能年齢が10歳からとかもそんなんで良いのかって、最初は突っ込みたくなったもんだよ」

 かくいう俺もいつの間にか22になってるわけだけど、とそう言う一夏さんの言葉に私はクスリと笑った。

「そう言えば今日は一夏さんは……」

「んにゃ、今日は用事があるから練習には行けないんだ。その代わり、夜は鈴と一緒にベルリネッタ家に招待されてるから、一緒に夕飯を食べれるぞ」

「ホントですか!!」

 少しだけ嬉しくて大きな声を出してしまうが、一夏さんは運転しながらクスリと笑う。

「今日はヴィヴィオも新しい友達連れてくるみたいだし、先輩としてしっかり頑張れよ」

「はい!!頑張ります!!」

「……その勢いで勉強もな」

「が、頑張ります……」

 声が震えたのは私がおバカじゃないと信じたいからで、他意は……他意は本当にない。

 

 

 

「あ~!!おはようございます!!リンネさん!!」

 学校につくと、丁度同じタイミングでやって来た金髪ツインテールの少女……高町ヴィヴィオさんが声をかけてきた。

 さらにその後ろからはベージュ髪の優等生……コロナ・ティミルと黒髪の元気そうな子……リオ・ウェズリーもやって来ていて二人も揃っておはようと挨拶してきた。

「おはようございます、ヴィヴィオさん。コロナさん、リオさんも」

「リンネさんは今日も一夏さんと一緒に来たんですか?」

「はい。あ、一夏さんからお昼を頂いてますので、練習前に一緒に食べましょう」

「ホントですか!!」

 なんとも嬉しそうな表情をする後輩三人を見て微笑みながら、私は自分のクラスに向かうため先に別れた。

「リンネちゃ~ん、おはよ~」

 と、それを見計らったように後ろから青いシャギーショートの寝ぼけ眼のクラスメイト……エイラ・フェアディが声をかけてきた?

「おはようエイラ。今日もまた夜更かしですか?」

「まぁね~。夜型人間はこういうとき辛いよ~」

「不摂生し過ぎるとまた先生に怒られますよ」

「大丈夫大丈夫、リンネみたいに大食らいじゃないからね」

「人を食いしん坊みたいに言わないでください!!フーちゃんじゃあるまいし」

「……さらっと人の事をディスるのもどうかとわしゃ思うんじゃが」

 と、ここにいるはずのない筈の幼なじみ兼親友……フーカ・レヴェントンの突っ込みに私は少し驚いた。

 彼女は私が孤児院にいた頃からの親友で、今は孤児院から出て、一夏さんが所長を勤める『スカリエッティラボ』で契約社員として働きながら、さらにアルバイトをして生活している。

「え?なんでフーちゃんが学校に!?お仕事は!?」

「その仕事で来たんじゃがな。今日は運転手として、教科書やら教材を運んできたわけじゃ」

 おかげで早起きして眠いとのたまう親友に、私はお疲れ様と声をかける。

「まぁこの後はトーマさんとオットーさんをナカジマ家で拾って、いつもの通りラボでお仕事じゃ」

「フーちゃん、お仕事頑張りすぎじゃない?」

「同い年とはいえ一人暮らしじゃからな。生活費は結構洒落にならんからな」

 フーちゃんはそう言ってるけど、確かフーちゃんは一夏さんのところの社員寮……という名のシェアハウスで暮らしてるからそこまで掛かってなさそうと思ったが……

(そう言えばあそこの人達ってフーちゃん並みに食べるんだっけ)

 しかもシェアハウスに住んでる全員が女性で、一度招かれた時はそこまで食べて良く太らないものだと尊敬したくなった。

「ま、そういうことじゃから、二人は勉強をがんばれ。っと、ワシはそろそろいかんと」

「うん、ありがとねフーちゃん」

「がんばってね~」

 私達二人のそれにフーちゃんは軽く手を振り去っていった。

「さて、じゃあ私たちも教室にむかうかね~」

「教室に向かって机で寝るって事じゃないよね?」

「アハハ、それ以外に何かあるかな~?」

「エイラ~!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オマケ スカリエッティラボの1日 ①

 

「一夏くん、これ言われてた書類ね」

「ん、そこに置いといてくれ」

「いっくん、フーちゃんとトーマ君の実験データ持ってきたよ」

「同じくそこに置いといてくれ」

「……一夏、アレをなんとかして」

「もう虚さんに連絡してあるから少しだけ待ってくれ」

「いっち~、さっき鈴ちゃんがナンパされて……」

「チョット外出テクル!!」(フルドライブモード)

「大丈夫、一緒に居た乱ちゃんとクロエさんがフルボッコにしてたから安心していいよ。あとツァイトに噛まれてたよ、あそこを」

「……なら問題ないな」

(いろんな意味で問題しかないよ一夏!!)



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チーム・ナカジマ

 ミッドチルダのとあるスポーツセンター、その入口の柱のそばで一人の女性が本を片手に、そろそろ来るであろう少女たちを待っていた。

「お待たせノーヴェ!!」

 と、何時ものように元気な声が聞こえてきて女性……ノーヴェ・O・スカリエッティは持っていた本を閉じて顔を上げる。

 そこにはヴィヴィオを筆頭に5人の少女が歩いてやって来ていた。

「いいや、こっちも今来たところだ。コロナとリンネ、エイラと……それとリオだっけか、ヴィヴィオから話は聞いてるよ」

「はい、これからよろしくお願いします!!先生」

「先生じゃねぇって」

 ノーヴェは恥ずかしがるように否定するが、

「でもいつも教えてもらってるよね」

「うん、先生だよね」

「ええ、ノーヴェさんはとても良い先生だと思いますよ」

「隣に同じくだね~」

 ヴィヴィオ含むノーヴェとの付き合いの長い四人が先生コールを続けて言う。

「ふ、ノーヴェは人柄が良いからな。教師や指導者には向いてると私は思うぞ」

「ち、千冬さんまで!?」

 さらには少し遅れて到着した自身の義姉……管理局武装隊特殊空戦部隊所属の織斑千冬までからかうように言ってのけ、ノーヴェの表情は羞恥でいっぱいいっぱいだった。

「たまに練習やスパーに付き合ってるだけで、先生ってことじゃ」

「それを先生って呼ぶんじゃないの?」

「そうだなヴィヴィオ、ノーヴェは立派な先生だな」

 普段のスーツ姿ではなく、ラフな私服姿で頭を撫でる千冬に、ヴィヴィオはどこかくすぐったそうにしていた。

「と、とにかく5人は早く着替えてこいって、こっちはこっちで準備するから」

 そう言いながらも、ノーヴェの表情はどこか嬉しそうだったと、義妹を見ながら千冬自身もクスリと笑うのだった。

 

 

 

「けど意外だよね~」

「?何が」

 着替えてる最中、リオが不思議そうに言葉を漏らす。

「いや皆が格闘技習ってるって不思議だな~って、私以外のみんなってどちらかと言えば文系のイメージだから。はじめてヴィヴィオと会ったのも無限書庫だったし」

「えへへ、文系だけどこっちも好きだもん」

「私はそこまで上手くないけど」

 ヴィヴィオはそう言い、コロナは謙遜するが、リオとしては少し疑いの目だった。

「でもそれ以上に、リンネさんはもっと文系のイメージだよね。あと端からでも分かるお嬢様って感じ。エイラさんに至ってはそもそも運動しているイメージが無いです」

「えぇ、そんなイメージあります?」

「リンネの場合は天然のお嬢様みたいな雰囲気あるからね~。外見だけは」

「エイラ?何か言った?」

 なんでもな~いとうそぶく友人に苦笑しつつも、そんなとりとめのない話は続いていく。

「でも、私としてはエイラとリオさんが羨ましいです。自分専用のインテリ型デバイスを持ってるなんて」

「確かに、うちのママも……」

 

『基礎を勉強し終えるまで自分専用のデバイスなんて必要ありません』

 

「って、結構厳しくて」

「私も一夏さんから」

 

『少なくとも、最低限の技術をノーヴェ達から学び終えるまでは、デバイスはむしろ邪魔になるから要らないよ』

 

「って、言ってました」

「さ、さすが管理局のトップエース二人のお言葉」

 さすがのリオだけでなく、その人ことを聞いた他二人も同様に苦笑していた。

「でもやっぱり、自分専用のデバイスってカッコいいですよね」

「うん!!カッコいい!!」

 そうかな~と照れるリオだったが、その左手にはちゃっかり自らのデバイスであるソルフージュを握っていて、まるで某水戸の御老公のように掲げていた。

「ところでエイラ、ちゃんと準備は……」

 リンネは愕然とした、今脱いだエイラの体のその一部に、そして自分の同じ場所を見て……

「あれ?どうしたのリンネ?」

「エイラ、あとで全力のスパーに付き合ってください」

「まさかの処刑宣告されちゃったよ!?」

 思わぬ一言にエイラは驚愕するが、リンネからしたらそれどころじゃない。

(ヴィヴィオさんと一緒に練習したアレなら、アレならまだ私の方が……)

 リンネのために補足しておくと、若いうちに筋肉を付けすぎたりすると、たまに体の成長速度が遅くなる事があるが、まだ一応予断はあるとここに明記しておくとする。

 

 

 

「お、来たな」

 着替え終え練習場へとやって来ると、既に準備を終えたノーヴェさんと千冬さんの二人が居た。

「お待たせしました、ノーヴェさん」

「いや、大丈夫大丈夫……」

 と、その時上のギャラリーから声が聞こえてきて、何事かと思うと、

「あれって、確かスカリエッティラボの人達ですよね?」

「ていうより、ナンバーズ組勢揃いしてるし」

 茶髪眼鏡のクアットロさんを始め、ディエチさん、ウェンディさん、チンクさん、そしてトゥーレさんの5人がそれぞれ私服姿でそこに居た。

「面白そうだから見学だそうだ」

「まったく、トゥーレは一夏の秘書だろうに、こんなところで油売ってて良いのかよ」

 何やら千冬さんとノーヴェが苦笑いしてるが、ヴィヴィオさんも全員といろんな意味で繋がりがあるからか、同じく苦笑いをしていた。

「さて、それじゃあまずストレッチ、その跡は各自基本の型の練習な」

 しかし、すぐに切り替えたノーヴェさんがそう指示し、私達は格闘技……ストライクアーツの練習を始めるのだった。

 

 

 

「ヴィヴィオ達、楽しそうッスね」

「うん、みんな生き生きとしてる」

 見学しながらウェンディとディエチがそんな感想を述べる。

「私としては陛下が格闘技を始めたときは少しどうかと思ったんですけど……その心配は杞憂だったようね」

 クアットロも普段の作り笑いじゃなく、自然な笑みになりながら少女5人の姿を見守る。

「姉上の心配ももっともですが、ヴィヴィオはヴィヴィオでしっかりと友が出来てるので、安心するべきかと」

「そうだね、けど……クアットロって案外心配性なんだ」

 チンクの一言に続けて、末妹のトゥーレが苦笑しながら問いかける。

「失礼ね、これでも一応更正してるし、何より陛下には色々と……まぁ、負い目みたいなものもありますし」

「でもヴィヴィオは気にしてないと思うけどね」

「こっちが勝手にそう思ってるだけよ。そんなことよりトゥーレ、貴方そろそろ戻らないと一夏君に……」

 そう言いかけたが、クアットロはその途中であることに気付いて言葉を止めた。

「クアットロ、何のために一夏が今日居ないのか忘れてないよね」

「そうだった……最近実験に急がしすぎて頭が回ってないのかしら」

「束さんと簪さんに混ざって黒魔法的な実験ばかりしてるからでしょ。事務やってる私から見ても異常な光景だからね」

 ディエチからも口撃され、クアットロはたまらずノックアウト。

「……今度有給でも使おうかしら」

「有給使ってシャマルさんと一緒に四葉としての活動するんですね、分かります」

「……姉上、あとでお話があります」

 あぁぁぁんまぁぁぁりだぁぁ!!と、最近ネタキャラ化が進んでるクアットロであった。

 

 

 

オマケ スカリエッティラボの1日 ②

 

「なぁトーマ、男二人だけってなんか新鮮だな」書類整理しながら

「そうですね、リリィも簪さんや本音さん、フーカちゃんと一緒に買い物行ってますし」報告書書きながら

「束さんは束さんで地球のほうで色々やってるからな」

「ですね……あ、そろそろお昼ですけど一夏さんは?」

「鈴が弁当作ってくれてるからな、トーマは?」

「俺はスゥちゃんが作ってくれましたから」

「リリィじゃないのか?」

「……前に料理食べたらEC的な意味で暴走して、スゥちゃんに鎮圧されました。物理的に」

「お、おう……」

 何とも言えない男たちの日常だった。



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その頃の一夏

「あれ、一夏?」

 管理局の技術部、そこに向かう途中で声を掛けられた俺は振り返ってみると、そこには金髪に執務官の黒い制服を着た女性……フェイト・T・ハラオウンがそこにいた。

「フェイトさん?どうしたんですかこんなところに」

「それは私の台詞なんだけど……あ、もしかしてリンネちゃんのデバイスの件かな?」

「てことはそっちはヴィヴィオのデバイスですか。そっちもマリーさんに頼んでたんですね」

 そうだよ、と肯定する彼女と共に並び目的の場所まで向かう。

「けど一夏ならリンネちゃんのデバイスは、それこそスカリエッティラボの方で手掛けるかと思ったんだけどね」

「いや実は俺もなのはさんも、ヴィヴィオとリンネのデバイスを俺のところで作ろうと思ったんですけどね……ちょっとマッドなのが二人居るんで、ここは安全を考慮してマリーさんのところに」

 何せ束さんとクアットロが凄いやる気出そうとしてたからな。下手したら準ロストロギア級デバイスなんて事になったら目も当てられない。

「あはは……けどマリーさんの所ってことは……」

「まぁ先代のスカリエッティことジェイルさんがいますけど、あの人ならそこまでぶっ壊れた性能じゃなくて、ちゃんとパーソナルに合わせた性能にしてくれますから」

 もっともマリーさんと合わさって何やら技術部の一室が大変なことになったと聞いたときはちょっとドン引きしたけど。

「まぁ……そうだろうけど」

「そう言えばヴィヴィオの事で思い出しましたけど……リイスさんがあの傷害事件の事でもしかしたらヴィヴィオが狙われる可能性があるって」

「傷害事件……どういうこと?」

 どうやらフェイトさんの耳には入ってなかったみたいだ。

「事件っていうかどちらかというと決闘に近いもので、なんでも腕の良い格闘家やら武道家に街頭試合を申し込んで」

「倒してるってこと?」

「そうです。しかも名乗ってる名前が『ハイディ・E・S・イングバルト』……古代ベルカの覇王を自称してます」

 その事で納得したのか、フェイトさんはなるほどと頷く。

「つまりヴィヴィオ……聖王に何かしらの因縁がある相手ってこと?」

「そうかもしれません。というかリイスさん曰く自分の受け持ちにその本人が居るかもって」

「St.ヒルデの中等科に?」

 ええ、と俺は呟く。

「まだ確証は無いらしいんでデータは貰えませんけど、一応探りは入れてみるって」

「……個人的にはアインスには普通の教師としていてもらいたいんだけど」

「あれでもヴォルケンリッターの1人ですから。普段は食い道楽に目覚めた新米教師ですけど」

「ふふ、アインスが聞いたら怒るよ?」

 仕方ない。だって最近のプライベートだと大概おはぎやら大福やら羊羮やらと、何かしら食べてるイメージしか無い(なお和菓子系なのは完全にリイスさんの好み)。

 というか八神家エンゲル係数のトップがアインスさんだが、基本的に八神家では自分のみが食べるものは自腹で買うルールらしく、そこまで負担にはなってないという(なお二位はアイス消費の意味でヴィータさんなのはご愛敬)。

「ところで一夏くん、二人のデバイスの性能ってどんな感じなの?」

「純粋な近接徒手格闘(ピュアファイター)タイプですね。ヴィヴィオのもそうですけど、基本的には魔力運用サポートメインで、リンネは特にパワー重視、ヴィヴィオは防御重視のセッティングを頼んでます」

 特にヴィヴィオの場合は魔力防御の能力値が紙同然だからな。ノーヴェが教えてるのがカウンタヒッターらしいし、できるだけ防御に寄せた方が得策だ。

「へぇ~でもこれで二人もオフトレで一緒に一夏と模擬戦できるね」

「そうですね……はい?俺?」

 なんかメンバーに追加されてるんですが

「だって一夏もノーヴェと一緒にコーチしてるでしょ?だったらついてくるべきだと思うな」

「いやいやいや、こっち今は研究職なんで……」

「もうなのはとはやてと一緒にチーム分けしてるし、それに鈴さんからは一緒に行くって連絡もらってるよ」

 マジか……と項垂れる俺は悪くないと思いたい。

 というのも、去年もその件のオフトレに参加した訳なのだが、大人組の模擬戦にて、千冬姉となのはさんという世界最強クラスコンビに2on1をされて、挙げ句最後は同じチームだったはやてさんとティアナ、そして相手のなのはさんとフェイトさんによる収束魔法(ブレイカー)級魔法の激突という最悪な展開をど真ん中で受けた俺の気持ちを考えれば妥当だと思う。

「はぁ……またあの世紀末な最終戦争を食らう目になるのか」

「その事だけど一夏、今回のにスカリエッティラボの面々も連れてきてくれないかな?」

「……道連れですか?」

「違うよ!!今回ははやての方もシグナムとヴィータ以外全員来られるみたいだから、人数も多いし4チームにしようって、なのはが」

 なるほど、考えてみればちびっこ組が現在5人、大人組が俺、千冬姉、なのはさん、フェイトさん、はやてさん、リイスさん、シャマルさん、ザフィーラ、スバル、ティアナ、エリオ、キャロ、そしてオフトレの場所ことカルナージに住むルーとちびっこ組の引率である師匠のノーヴェ14人(なおアギトとツヴァイに関しては融合機なのでカウントしない)。

 単純に計算しても19人で、だいたい1チーム6~8人前後で行うため、3チームでは切りが悪いのでさらに人数を、ということか。

「でもラボで行けそうなのは俺を除くとトーマ、クアットロ、簪ぐらいだしな……束さんは一応副所長だから離れられないし……」

「フーカはどうなの?確かラボでの実験で試作機を色々と振り回してるって聞くけど」

「アイツはまだ専用のデバイス持ってませんし、どちらかというとフーカは格闘技系の方が向いてるんで、来ても見学ですかね……」

「そっか……あ、でもザフィーラが期待の選手が教えてるのに居るって言ってたけど」

「あー、ミウラのことか」

 前に八神家に行ったときに会ったあのオレンジっぽいピンクの髪の子の事を言ってるのだろうが……。

「ミウラはその……とても言えないレベルでお馬鹿だから無理かもしれない」

「えっと、勉強ができないってこと?」

「できないどころか、はやてさん曰くテストが毎回毎回ヤバいらしくて、あのリイスさんが家庭教師して漸く赤点回避らしいです」

「そこまで!?」

 というのもリイスさん……リインフォース・アインスの現在現役のSt.ヒルデの中等科新米教師……専門科目は歴史(古代ベルカ史)と、古代ベルカの戦乱を戦った本人が教えるとはこれいかに……そんな彼女が直接教えて、しかもSt.ヒルデの中等科より偏差値が若干下の学校だというのに赤点回避ギリギリなのだから、察して余りある。

「まぁはやてさんとかも居るし、にこにこと毒舌を言いながら教えるはやてさんの姿が目に浮かぶな……『ミウラの学習能力はちょうぽんこつなんやろうか』とかなんとか」

「そ、そんなこと……ていうかはやてのモノマネ上手じゃない?」

「六課組のメンバーのモノマネならある程度できますよ。なのはさんなら……っと通信メッセージ……なのはさんから?」

 はてさて内容は

『一夏くん、少し……頭冷やそうか』

 とんでもない脅しだった。

「え、ちょ、どっかで聞いてるのなのはさん!?」

「もう、オフトレのときに痛い目にあっても知らないからね」

「……いつもオフトレのウォームアップでバテてるフェイトさんに言われても」

「ば、バテてなんか無いから!!」

 いやどう見てもバテてます、そう言いながらマリーさんの元へ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オマケ リインフォース食い道記 ①

 

「ふんふん♪」

「ありゃ?何作っとるのアインス?」

「あぁ主、道場の皆のおやつに白玉ゼリーをと思いまして」

「そかそか……けどアインス、その金魚鉢並みに大きい器はなんなんや?」

「?私個人で食べる物ですが」

「いや大き過ぎやろ!?いくらうちの冷蔵庫が業務用並みに大きいからって限度があるで!?」

「いえ、これぐらい普通に食べれますよ?あ、主も一緒に食べますか?」

「食べますか?やないわ!!アインスは私を太らせたいんか!!」

「……知ってますか主」

「なんやいきなり」

「和菓子はですね……太りにくい食べ物なんですよ」

「ほんまか!!」

 暫くしてはやてはアインスと共に和菓子を食べては体重計に乗って歓喜してる姿があったとか、はたまた逆だったとか。



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