お嬢様と悪魔王 (あったかお風呂)
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悪魔王は突然に

生徒の護衛獣変更モノが少ない(作者の前作以外知らない)→生徒の護衛獣変更モノもっと増えろ!→自分でかけばええんや!(自給自足)


 名も無き島の浜辺に停泊している海賊船の一室で、本日の授業が行われていた。

 茶色の髪をリボンで左右に縛った少女は、自身の家庭教師に見守られながら彼の言葉を思い返していた。

 

『まずは護衛獣との誓約をやってみようか?』

 

 この名も無き島に漂着してから数日がたち、その中で行われた授業で召喚術の基礎を覚えた少女は、家庭教師のレックスに次のステップへ進むよう提案される。

 すでに誓約済みの召喚獣を呼ぶのではなく、自分で召喚獣との誓約を行う『誓約の儀式』を含む次の段階だ。

 レックスが最初の誓約の対象として選んだのが護衛獣。

 護衛獣とは召喚師の身の回りを世話したり、護衛をするいわば相棒とも言える存在。

 これから苦楽を共にするであろうパートナーを召喚することに緊張しているのか、少女の脚は生まれたての小鹿のようにプルプルと震えていた。

 

「(護衛獣……私のパートナーを召喚するんだ……緊張する……どんな召喚獣が来てくれるんだろう? 出来れば本の王子様みたいな……)」

 

「アリーゼ、落ち着いて。教えたとおりにやれば大丈夫だから」

 

 少女──アリーゼは家庭教師の言葉に頷き、紫色のサモナイト石へと魔力を込める。

 

「(先生に教わった通りに……先生に教わった通りに……)」

 

 内心で自己暗示のように繰り返したアリーゼは相変わらず緊張で震えたままサモナイト石へと魔力を送ると、石が光を発し始めた。

 

「いいぞ。そのまま、そのまま……」

 

 レックスから見ても召喚は順調そうに見えた──が。

 

「(このまま……このまま……えっえい!)」

 

 緊張のためか力んだアリーゼが多めに魔力を込めてしまうと、サモナイト石の輝きが急に強くなる。

 そればかりか、サモナイト石がバチバチと紫色のスパークを発し始めた。

 

「アリーゼ!? 力み過ぎだ! 落ち着いて……」

 

「古き英知の術と我が声によって今ここに召喚の門を開かん」

 

 アリーゼが呪文を唱え始めると、光は部屋を覆い尽くすほど強くなり、スパークはより激しくなっていく。

 

「一旦中止しよう! このままじゃ危ない!」

 

「我が魔力に応えて異界より来たれ」

 

「聞こえていないのか!?」

 

 危険を感じたレックスが慌てて制止するが、教わった呪文を必死で思い出そうと意識を埋没させるアリーゼには聞こえていないようだ。

 

「新たなる誓約の名の下にアリーゼが命じる」

 

「アリーゼ!!」

 

「呼びかけに応えよ異界の者よ!!」

 

 レックスの呼びかけも虚しく、呪文は最後まで唱えられると雷の落ちたような爆音と共に室内に衝撃が齎される。

 サモナイト石を中心にして巻き起こったそれによって、アリーゼとレックスは勢いよく壁へと叩きつけられる。

 

「きゃあああ!?」

 

「ぐぅ……いててて。アリーゼ! 無事か──」

 

 痛みが走った背中をさするレックスが生徒を心配して顔を上げると、煙に包まれる衝撃の中心地にうっすらと影が見えた。

 つまり、レックスの呼びかけに応えなかったアリーゼの呼びかけに応えた存在がいるということ。

 アリーゼの召喚術自体は成功したのだ。

 

「いやはや、ずいぶんと手荒い召喚ですねぇ……」

 

 煙の中から男の声が聞こえると、アリーゼたちの視界が晴れていき、その姿がようやく見えるようになる。

 まず目に入るのは美しく輝く銀色の長髪。

 そして一目見たアリーゼが思わず顔を赤くしてしまうほどの端麗な顔立ち。

 肌は白く、線が細い身体つきは乱暴ごとには無縁に見える。

 

「あ……成功、したの?」

 

「ほう……私を召喚したのがこんなに可愛らしいお嬢さんとは」

 

 壁際で尻餅をついたアリーゼが呟くと、召喚獣が少女へと手を差し出す。

 アリーゼはお顔を赤らめつつも容姿端麗な男の手を取ると立ち上がった。

 

「あの……私、アリーゼっていいます。あなたが私の護衛獣なんですよね?」

 

「なるほど、お嬢さんの名前はアリーゼというのですか。それに護衛獣とは……。アリーゼさんの言う通り、どうやら私は護衛獣としてあなたに召喚されたようです」

 

「よかった……やっぱり成功したんだ。あのっ! お名前を教えてくれませんか?」

 

「ふふふ……成功も成功、大成功ですよ。なにせこの私……メルギトスを召喚したのですから」

 

 メルギトスと名乗った男は召喚の成功を喜ぶアリーゼを興味深そうに見る。

 自身を召喚した少女の秘める末恐ろしい才能と、自分が小さな少女の護衛獣として召喚されたというこの状況が面白くて仕方が無かったのだ。

 

「メルギトス……覚えました。これからよろしくお願いします、メルギトス」

 

「ええ、こちらこそよろしくお願いします。アリーゼさん」

 

 メルギトスが柔らかい笑みをアリーゼへと向けると、少女はくらっとしてしまう。

 召喚した護衛獣がまさかの美形の男で、しかもとても優しそうなのだから、アリーゼにはメルギトスが運命の王子様に見えてしまっていた。

 既にアリーゼの脳内では自分が花畑の中心でメルギトスにお姫様抱っこされる光景が繰り広げられる。

 アリーゼの頭の中がお花畑になっていることに気が付きもしないレックスは、生徒と護衛獣の初めての邂逅に一区切りがついたことを察すると、二人へと声をかけた。

 

「アリーゼ、おめでとう。無事……とはいかないけど成功したね」

 

「……」

 

 アリーゼを労ったレックスだったが、生徒がうへへとだらしない顔をしているのを見るとメルギトスへと視線を変更した。

 

「俺はアリーゼの家庭教師をやっているレックスだ。生徒共々これからよろしく頼むよ」

 

「アリーゼさんの家庭教師の方でしたか。いい生徒をお持ちですね……末恐ろしいお嬢さんですよ」

 

「ありがとう。そういえば、メルギトスの種族は一体なんなんだい? 霊や天使には見えないけど……」

 

 アリーゼは霊属性と相性が良く、使ったサモナイト石も紫色のものだったことから、メルギトスが霊界サプレスの住人であることが推測できる。

 だがその姿は天使にも見えなければ、霊でもなさそうだ。

 

「ああ、私の種族ですか? 私はねぇ──悪魔なんですよ」

 

「な……悪魔!?」

 

 メルギトスの種族を聞いたレックスは表情を驚愕と焦燥に染めながらも、素早く生徒を庇うように立つ。

 悪魔とは霊界サプレスに住む種族の一つであり、リィンバウムでも有名な種族だ。

 たった数体の悪魔を倒すのにいくつもの部隊が必要になるほどの戦闘力と、人々に破滅をもたらす性質から恐れられている。

 

「悪魔? おとぎ話や物語によく出てくる、あの悪魔ですか?」

 

 どうやらアリーゼは絵本や小説の中でしか悪魔の存在を知らないようで、首を傾げる。

 アリーゼには護衛獣として召喚された青年が、恐ろしい存在として描かれる悪魔にはとても見えなかった。

 

「その悪魔ですよ、アリーゼさん。私はこうみえても恐ろしい悪魔。それも……それなりに有名な、ね」

 

「まさか、自分の生徒が悪魔を護衛獣として召喚するとは思ってもみなかったな」

 

「そう警戒しなくてもいいでしょう? 私は誓約によって縛られた身。アリーゼさんに手出しは出来ませんよ。それに、私はアリーゼさんに感謝しているのです」

 

「感謝……ですか?」

 

「ええ。実は私……情けないことにかなり弱っていたのですよ。実体化すら出来ないほどに」

 

 かつてリィンバウムに攻め込み、召喚兵器アルミネと相討ちになったメルギトスは、アルミネスの森に封印されていた。

 魔力が大きく減退し、実体化さえ困難になっていたメルギトスだったが、今回の召喚に際してアリーゼの魔力が彼に流れ込み、受け取った魔力によって肉体を得ることが出来たのだ。

 メルギトスが今の銀髪の青年の姿になったのは元となった魔力の持ち主であるアリーゼの影響は大きい。

 読書を趣味とする彼女は特に主人公の女の子が王子様と出会うような物語を好んだ。

 夢見る少女アリーゼは今回の護衛獣召喚に物語のような王子様との出会いを無意識の内に求めた結果、今はもう記憶の彼方である初恋の相手──昔『天使の羽』なる品を求めて父の元を訪ねてきた召喚師のイメージを魔力と共にメルギトスへと送っていたのだ。

 

「今実体化できているのはアリーゼのおかげということ?」

 

「肉体を失い、彷徨うだけだった私にこうして新たな身体をくださったのです。アリーゼさんには感謝してもしきれません」

 

「ねぇ……先生」

 

 アリーゼが自分の護衛獣を警戒する教師に声をかけると、レックスは溜息をついた後に頷く。

 

「わかった、信じるよ。悪魔だからって決めつけは良くないし、誓約があるから下手なことは出来ないはずだしね」

 

「ふぅ……よかったですね、メルギトス」

 

「それでは改めて……お二方とも、これからお願いしますよ」

 

 レックスとアリーゼに手を差し出したメルギトスは握手しながら、内心嗤う。

 あのまま森で封印されたままでいるよりも、こちらのほうがよっぽど楽しめそうだと。

 




前作と同じでは芸が無いので護衛獣は2方式の通常ユニット。
そもそも技数少ないからユニット召喚+技召喚タイプには出来ないけども。

■メルギトス
虚言と奸計を司る悪魔王。
機械天使アルミネとの戦いによって弱り、長い間封印されていた。

■アリーゼ
商家のお嬢様。
読書などが好き。

■召喚師?
メルギトスの姿の元になった召喚師。
原作通り禁忌の森に入った彼は悪魔に殺された。南無。


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はぐれ者たちと悪魔王

 丸い月に照らされる甲板の上でメルギトスはアリーゼ、レックスから彼女たちの事情とこの島の事情について聞いていた。

 

「なるほど……魔剣にはぐれ召喚獣たちの島ですか。これは興味深い……。そして、貴方方はこの島に漂流してやって来たと」

 

 アリーゼは家庭教師のレックスとともに軍学校がある工船都市バスティスへと向かっていたが、途中で海賊の襲撃と嵐に会いこの島に漂流してしまったのだ。

 その漂流した先の島は召喚師たちに捨てられたはぐれ召喚獣たちの住む島だったのだ。

 

「ああ、そうだよ。この島には俺たち以外にも海賊たちや帝国軍たちも──」

 

 突然、レックスの言葉を遮るように爆音と振動が夜の静寂を乱す。

 

「これは……大砲!? アリーゼ、ここで待ってってくれ!」

 

「えっ……先生!?」

 

 レックスは立ちあがると困惑するアリーゼを置いて船の外を飛び出してしまう。

 護衛獣とともに置いて行かれたアリーゼは、自分の先生が消えた先をじっと見つめる。

 

「(置いて行かれちゃった……仕方ないよ……私は子供だから)」

 

「自分は子供だからこうやって仲間外れにされてしまう……それが不満ですか?」

 

「えっ……どうして……」

 

 メルギトスは読心の奇跡の力を持つ悪魔だ。

 人間のココロなど彼の前では丸裸同然。

 

「人のココロの機敏には敏いのですよ。なにせ、悪魔ですからね。それで、どうしますか? あなたは行かないのですか?」

 

 だがメルギトスはその力を持っていることは言わない。

 人のココロというものをよく理解している彼は、心を読める存在が人間たちからどう扱われるのかよく知っているからだ。

 

「でも先生が待っていろって……」

 

「身を守る力が無いあなたを心配したのでしょう。でも今は護衛獣がいる。身を守る力があるわけです。違いますか?」

 

 なにせ『護衛』獣がいるのだから、もうアリーゼはなんの力も持たぬか弱い少女ではない。

 

「あ……そっか。そうですよね。今の私にはメルギトスがいるから……」

 

「ふふふ……それでは、エスコートしましょうか? お嬢さん」

 

「お願いします…………王子様……」

 

 アリーゼはおずおずとメルギトスの手を握ると顔を赤らめる。

 

「あっははははは! 王子様と来ましたか(王子どころか悪魔の王なのですが……言わぬが華というものでしょうかね)」

 

「あ……ご、ごめんなさい」

 

 メルギトスが笑うと、彼をつい王子様と呼んでしまったアリーゼが頭を下げる。

 

「いえいえ、構いませんよ。参りましょうか、お姫様」

 

 王子様にお姫様と呼ばれた少女は嬉しさと恥ずかしさを織り交ぜた表情で頷くと、爆音のした方向へと駆け出した。

 

 

 

 メルギトスとアリーゼが爆音のした地点の付近に到着すると、帝国軍の制服を着た顔に入れ墨のある緑の髪の男が召喚獣たちを攻撃していた。

 

「イヒヒヒヒ! 化け物どもが! 死んじまえ!」

 

 逃げ惑う召喚獣たちに大砲を放つ男の声が爆音と共に辺りに響く。

 砲撃にさらされる召喚獣たちは傷つき、怯えながらも蜘蛛を散らすように必死に走っていた。

 

「あれが見えますか? アリーゼさん。人間というものは自分たちと違う者を受け入れられない。ああして排除しようとするとても臆病な生き物なのです。その臆病さも愛おしいのですけどね……」

 

「確かにそうかもしれません。……ああいう酷い人たちもいます。でも……」

 

「やめろ!! こんなやりやり方は間違ってる!!」

 

 アリーゼの視線の先では赤髪の男が召喚獣たちを守るために、緑の髪の男の前に立ちふさがっていた。

 

「召喚獣たちを守ろうとしているのも人間じゃないですか。酷い人もいるけど、先生みたいな人だってきっといます」

 

「なるほど……どうやら例外もいるようですね」

 

 レックスの心を読んだメルギトスはその心の異様さにすぐに気が付く。

 他者が傷つくことを極端に嫌い、自分を犠牲にしてでもそれを避けようとするレックスのココロの在り様は聖人とも呼べるが──その実は一種の破綻者だ。

 自分が犠牲になることで悲しむ人がいることや、残される者の気持ちを一切考えないある種の傲慢。

 自分の利益を無視して他者を助けようとする、人間として持つ自己愛の欠けたある種の狂人。

 人間の中でもまさしく例外、イカレているともいえるレックスのココロを見たメルギトスは面白い人間を見つけたとほくそ笑む。

 

「メルギトス。先生を助けてくれませんか?」

 

「……いいでしょう。アリーゼさんのお望みとあらば(それに、せっかくの面白いオモチャがここで壊れてしまってはつまらないですからねぇ)」

 

 レックスは帝国軍の兵士たちと果敢に戦うが多勢に無勢、徐々に押され始めていた。

 

「苦戦なされているようですねえ、家庭教師殿?」

 

「メルギトス!? どうしてここに……」

 

「アリーゼさんにお願いされたのですよ。自分も連れて行ってほしいと」

 

「アリーゼ……待っていろっていったのに……」

 

 メルギトスが視線をよこした方向をレックスも見ると、アリーゼが心配そうな顔で自分を見ていた。

 

「アリーゼさんはあなたを心配なさっていますよ。無鉄砲に敵に挑んで危機に陥りつつあるあなたをね。教師が生徒に心配をかけるとは……立場が逆ではありませんか?」

 

「うっ……それは……」

 

「情けない教師もいたものですねぇ」

 

「うう……。君はそれを言いに来たのか?」

 

「いやいやまさか。あなたに加勢しに来てあげたのですよ。情けない教師を心配したアリーゼさんに頼まれて」

 

「助かるよ。後でアリーゼにお礼を言わないとな」

 

「私にとってもいい機会です。力を失ってからはずっと戦いとはご無沙汰でしたからねぇ。肩慣らしには調度いいでしょう」

 

 メルギトスは大昔に封印されて以降、ずっと森の中に閉じ込められていた。

 戦闘訓練を受けた兵士たちは鈍った感覚を取り戻すのにうってつけだろうと、帝国兵たちを動く的でも見るかのように見つめる。

 

「肩慣らしだとぉ? なめやがって……構うことはねえ! あの銀髪もまとめてやっちまえ!」

 

 入れ墨の男はメルギトスが自分たちを見下しているのに感づいたのか、イラだちを顔に浮かべると周りの兵士たちと共にメルギトスとレックスに向かってくる。

 

「おい、優男。戦場ってのはお前みたいなのが来る場所じゃねぇぜ。家でおねんねしてな」

 

 兵士の一人がおよそ荒事向きではないメルギトスの姿を見て笑うと、周囲の兵士たちも同調して笑い出した。

 

「無知は罪とは言いますが……あなたがたは特段お馬鹿さんのようですね」

 

「あ? 人がせっかく忠告してやったってのによぉ!」

 

 挑発されても顔色を変えないどころか、挑発し返すメルギトスに苛立った兵士は手に持った剣で斬りかかるが──パチンと指を鳴らす音と共に兵士の足元から黒い魔力の炎が噴き出す。

 

「ぎゃっ!? あちぃ! も、燃えて!? 俺の身体が燃えて!?」

 

「久しぶりですねぇ……人間の恐怖と苦痛に歪んだ顔を見るのは! ひひひ……」

 

 黒い炎に包まれた兵士が地面を転がってばたつくと、銀髪の優男の顔が愉悦に染まる。

 

「た、助けてくれぇ! 炎が! 炎がぁ!」

 

 全身を焼かれる兵士は周囲に助けを求めるが、周囲に水場は無い。

 火だるまになっている人物と先ほどまで笑っていた兵士たちはあとずさり、その表情は明らかに怯えていた。

 

「ふむ……。今の状態ではこの程度の威力ですか。まあいいでしょう。じわじわと嬲り殺すのには最適ですからね」

 

 本来なら人間一人など消し炭にする威力がある一撃だったが、力を大きく失った今では威力がかなり下がっていた。

 だがその分、人間をいたぶって遊ぶのにはちょうど良い威力だ。

 メルギトスが次のエモノを見定めるべく兵士たちを順番に眺めると、次のエモノが自分になるのではないかと彼らは震えはじめる。

 

「ひっ!?」

 

「その表情! その感情! 最高ですよ! さあ、怯えなさい! あなた方のその感情が、私にとっての最高の美酒となるのです!」

 

 メルギトスが怯えて足がすくむ彼らを眺めて笑っていると、その手が小さな柔らかく温かい手に包まれた。

 

「メルギトス、やめてください。もう十分ですよね?」

 

 メルギトスの白い手を握ったアリーゼは護衛獣の顔を見上げて懇願する。

 アリーゼから見てもう兵士たちに戦意は無く、これ以上戦いを続ける意味は無いように見えた。

 

「なにをおっしゃいますか。お楽しみはこれからでしょう?」

 

「楽しみ……? 楽しくなんかありません! 私はメルギトスに必要以上にあの人たちを苦しめてほしくありません!」

 

「ほう……ならばどうしますか? 誓約の力で無理やり私を従えますか?」

 

 召喚術には召喚師が召喚獣を無理やり従え、言うことを聞かせるための誓約の力がある。

 それによって召喚獣の意志を無視して、やりたくもないことをやらせることが出来るのだ。

 

「そんなことしません。無理やり言うことを聞かせたらもう対等なパートナーにはなれないから……だから、これはお願いです」

 

 召喚師から護衛獣への命令ではなく、アリーゼからメルギトスへのお願い。

 一切の強制力を持たない、ただの言葉。

 

「お願い……ですか。それでは私が止めるかわかりませんよ?」

 

「そうですね、止めてくれるかわかりません。だから、信じます」

 

「あなたは悪魔の私を信じると?」

 

「私には悪魔とか……あんまりよくわかりません。でも、メルギトスが私の護衛獣だってことは分かってます。私の想いを察してくれて、ここまで連れてきてくれた優しい護衛獣だってことは分かってます」

 

「私を優しいと……可笑しな人だ。まあ、いいでしょう。肩慣らしは済ませましたし、武器も調達できましたしね」

 

 兵士たちが慌てて逃げ出すと、それを尻目にメルギトスは兵士の落とした剣を拾い、刀身を撫でる。

 レックスのほうも決着がついたようで、緑の髪の男は他の兵士たちと一緒に逃げ出したようだった。

 この戦いに参加した目的は果たし、剣も手に入れた。

 これ以上戦いを続けてアリーゼとの関係を悪くするメリットは現状無いのだ。

 

「ありがとう……」

 

「アリーゼ! メルギトス! 二人とも無事みたいだね」

 

「先生こそ……無事でよかったです」

 

「ごめん、アリーゼ。心配かけたね。それと、助かったよ」

 

「あまり無茶はしないでください……あと、お礼ならメルギトスに……」

 

「メルギトスも、ありがとう」

 

「私はただ召喚師殿の頼みを聞いただけですよ。私にとっても収穫がある戦いでしたしね」

 

 アリーゼとレックスは目を合わせると、悪魔とは素直じゃないんだとな思って小さく笑った。

 

 

 

 船に帰ったアリーゼはレックスと別れ、メルギトスと共に自室へと入った彼女はうんうんと頭を悩ませていた。

 

「どうしよう……一緒に寝るわけにはいかないよね……」

 

 アリーゼの悩みとは、メルギトスの寝床をどうするのかということだ。

 海賊船内には他に空き部屋は無い上、この部屋にあるベットも一つだけ。

 いくら護衛獣とはいえ、明らかに男の姿をしたメルギトスと一緒に寝るのはアリーゼとしても避けたい。

 

「ああ、寝床の事ですか。そのことなら心配ありませんよ」

 

 一緒に寝るのは避けたいが、彼を床に寝かせるわけにもいかず──と頭を抱えるアリーゼを見かねたのか、護衛獣から声がかかる。

 

「えっ……心配ないって?」

 

「我々サプレスの住人はリィンバウムにいる間は主に夜間を活動時間とするのです。その理由はご存知ですか?」

 

「えっと……わかりません」

 

「不勉強はいけません。あなたは見習いとはいえ霊属性の召喚師なのですから。……サプレス出身である我々はリィンバウムに存在している間、常に魔力を消費し続けています。ですから、マナが多く含まれる月の光を浴びることが出来る夜間が我々にとって一番活動しやすい時間帯なのですよ」

 

「なるほど……」

 

 メルギトスがまるで生徒に教えるかのようにサプレスについての講釈をすると、アリーゼは霊属性の召喚師としての自覚を持ち始めているのか真剣に聞いていた。

 

「だから、私には寝床など不要なのです。なにせこれからが私の時間ですからね。では私は月の光を浴びてきますので……」

 

「……」

 

「……どうしましたか?」

 

 扉へと向きを変えようとしたメルギトスだったが、アリーゼの反応が無いためその動きを一旦止める。

 

「月の光を浴びて来るってなんだか……ロマンチックですよね」

 

「はぁ……?」

 

 目を輝かせるアリーゼに首を傾げたメルギトスは今度こそ扉を開けて部屋の外に出る。

 そのまま甲板に出ると、星とともに丸い月が輝いていた。

 

「やはり月のマナは格別ですねぇ……それにしても、ロマンチック……? 私にとっては食事のようなものですが……」

 

 心が読めても女の子というものはよくわからない、それを思い知ったメルギトスだった。

 



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悪魔王の正体

 メルギトスがアリーゼに召喚されてから一夜が明けた。

 ベットから身を起こしたアリーゼが目をこすりながら部屋の中を見渡すが、メルギトスの姿が見えない。

 

「あれ……メルギトス……まだ帰ってきてないんだ……」

 

「おや、遅いお目覚めですね。おはようございます」

 

 アリーゼが呟くと、扉が開いてメルギトスが顔を見せる。

 

「遅い? ああっもうこんな時間……帰ってきているんだったら起こしてくれても……」

 

 時計を見て慌てたアリーゼがメルギトスに抗議するが、彼は微笑を浮かべて受け流す。

 

「女性が寝ている部屋に入るわけにもいかないでしょう?」

 

「それは……そうですけど」

 

 ちまいち納得が出来無いアリーゼだったが、メルギトスが顔を引っ込めて扉を閉じると支度を始めるのだった。

 

 

 

 メルギトスとアリーゼが海賊船の食堂に入ると他の全員はもう揃っていた。

 一番遅く起きたのはアリーゼだったようだ。

 

「あの……おはようございます」

 

「おう! おそかったじゃねぇか! って……後ろのソイツは誰だ?」

 

 遅れてきたアリーゼに挨拶する体格のいい金髪の男は、少女の後ろからついて来た見たことが無い男に気が付いて疑問符を浮かべる。

 

「ヤダ、美男子じゃないの」

 

「うわぁ……ほんとに綺麗な人だ」

 

 黒髪の男がヒューと口笛を鳴らす。

 女性のような口調で喋る黒い髪の男と金髪の女性は、メルギトスの容姿に注目しているようだ。

 

「アリーゼ、一体どこでそんな美青年を捕まえてきたのよ」

 

「あたしたちにもその人紹介してよ!」

 

「えっ!? その……捕まえてきたとか……そういうのじゃなくて……その……彼は私の護衛獣なんです!」

 

 一見ただの美形な男にしか見えないメルギトスの登場に興奮する黒髪の男と金髪の女性に詰め寄られるアリーゼは、迫る二人に押されぎみだ。

 

「護衛獣……? なによそれ。ヤード、知ってる?」

 

 黒髪の男は召喚術には疎いようで、『護衛獣』という単語に首を傾げると灰色の髪の男へと顔を向けた。

 

「護衛獣とは召喚師が己の護衛や手伝いのために召喚する、いわばパートナーのような召喚獣のことですよ」

 

「へぇーこの男の人がパートナーかー」

 

「アリーゼ、あなた見かけによらず案外やるじゃない」

 

「も、もう! そんなんじゃないです!」

 

 からかう二人と顔を赤くして否定するアリーゼのやりとりが終わると、それを見計らってメルギトスがアリーゼの隣へと進み出た。

 

「みなさん、はじめまして。アリーゼさんの護衛獣として召喚されたメルギトスと申します。お見知りおきを」

 

 メルギトスが右ひじを曲げて綺麗にお辞儀をすると、堂に入ったその動きに海賊たちから感嘆の声が漏れる。

 

「メルギトスか。俺は海賊カイル一家の船長、カイルってんだ。よろしくな」

 

 金髪の男はカイルと名乗り、メルギトスに握手を求める。

 メルギトスは嫌な顔もせず、がっちりとした太い腕に自身の細い腕を差し出した。

 

「あたしはソノラ! 一味の狙撃主をやってるんだ。よろしくね」

 

 金髪の女性ソノラは名乗るとメルギトスへ元気よく手を振る。

 

「それで、アタシがスカーレル。航海士兼ご意見番ってところね」

 

 黒髪の男はスカーレルと名乗り、ウィンクをひとつ。

 

「私はヤード。レックスさんたちと同じく、カイル一家の客分です」

 

 最後に灰色の髪の男ヤードが名乗ると、カイルが再び口を開く。

 

「アリーゼの護衛獣なら、メルギトスも俺たちカイル一家の客分だな。ようこそ、カイル一家へ!」

 

 陽気な海賊たちに歓迎され、カイル一味の客分に悪魔王メルギトスが加わった。

 

 

 

 海賊たちへの自己紹介と朝食を済ませたメルギトスはアリーゼの申し出で島内を案内されていた。

 

「この浜辺が、私が最初に流れ着いた場所なんですよ」

 

「その歳で海に投げ出されて、よく無事でいられましたね。あなたは運がいい」

 

「そ、そうですよね……もしかしたら今頃……」

 

 アドニアス港からパスティスへと向かう定期船に乗っていたアリーゼとレックスは途中で海賊たちと嵐に襲われ、海へと投げ出された。

 もしもこの島に流れ着いていなかったら、幼く体力のないアリーゼはどうなっていただろうか。

 有り得たかもしれない自身の末路を想像したアリーゼは顔を青くしていた。

 

「醜い水死体になっていたかもしれませんねぇ。ふふふ……本当にあなたは運がいい。……おや、あれは……」

 

 俯きながら『水死体』という言葉に身体を震わせるアリーゼを見ながら嗤うメルギトスは、遠方に何かを見つけた。

 メルギトスの声に気が付いたアリーゼが顔を上げると、浜辺に何かが見える。

 

「あれは……人!?」

 

 それが流れ着いた人間だと気が付いたアリーゼは慌てて駆け出す。

 少女の脳裏には先ほどメルギトスの言葉が焼き付き、何度もこだましていた。

 

 

 

 幸い、人影は水死体ではなく息がある人間だった。

 か細い呼吸を繰り返す黒髪の青年を見て少女はホッと溜息をつく。

 

「生きてる……よかった……」

 

「ですが身体が冷えているようですね。かなり弱っているのではないですか?」

 

「えっと……そ、そうだ! リペアセンターに連れて行きましょう」

 

 青年に触れたメルギトスが体温を確認すると、アリーゼはホッとしている場合じゃないとあわあわと思考を巡らせ、この島の医療施設を思い出す。

 アリーゼに青年の運搬を頼まれたメルギトスは主人の案内で機界集落ラトリクスへと向かうこととなった。

 

 

 

 機界ロレイラル出身の召喚獣たちが暮らす集落、ラトリクス。

 自然が多くあるこの島において、鋼鉄製の建造物が乱立する地区の一角にリペアセンターはあった。

 

「お預かりした患者は衰弱がみられるものの、生命活動に支障をきたすものではありません。このまま安静にしておくべきです」

 

「命に別状はないんですね……よかったぁ……」

 

 看護用の機械人形<フラーゼン>のクノンに青年の容態を告げられたアリーゼは今度こそ安心できたようで、大きくため息をついた。

 

「あの青年はこちらで様子を見るわ。……ところで、そこのあなたは初めてよね?」

 

「ああ、申し遅れました。私はメルギトス。アリーゼさんの護衛獣として召喚されました」

 

「護衛獣、か……ごめんなさい、私も名乗らないと失礼ね。私はアルディラ。このラトリクスの同朋たちを纏めている護人よ」

 

 かつてハイネル・コープスという人物の護衛獣として召喚されたアルディラは、護衛獣という言葉に思うところがあるのか、目を細める。

 どこか昔を懐かしんでいるようなアルディラに居心地の悪さを感じたアリーゼは、メルギトスの手を引くとリペアセンターを後にした。

 

「(彼に憑いていたのはほぼ間違いなく病魔。これはまた面白いオモチャを見つけてしまいました。アリーゼさん、本当にあなたには感謝していますよ。あなたといると退屈しない)」

 

 自身の手を引く少女の背を見ながら、悪魔は嗤う。

 サプレスの悪魔王はあの青年に憑依している病魔を見抜き、彼の抱える事情を察した。

 彼は弱って死にかけていた? とんでもない。

 あの青年は恐らく死にたくても死ねないのだとメルギトスは推測する。

 だがそれを口には出さない。アリーゼたちに教えない。

 なぜならきっと──そのほうが面白いから。

 

 

 

 メルギトスの手を引いたまま歩くアリーゼは次の集落に辿り着く。

 緑が生い茂る森と、所々から生える水晶。

 およそ人が暮らす場所ではないそここそが、精神生命体であるサプレスの者たちが暮らす霊界集落・狭間の領域。

 

「おや……ここは?」

 

「サプレス出身のみなさんが暮らしている……狭間の領域です。メルギトスもサプレスの召喚獣だから喜んでくれるかなって……」

 

「なるほど……確かに居心地がいいですね」

 

 ありがとうございます、とメルギトスが微笑むとアリーゼも笑顔を浮かべる。

 サプレス出身のメルギトスならと思ってここに連れてきたのは正解だったようだ。

 アリーゼと向かい合ってにこにことしていたメルギトスだったが、突如腰にぶらさげた剣の柄に手を添える。

 柄と剣が擦れる音と共に凶器を抜き放つ。

 その剣は先日帝国兵から奪った、軍で正式に採用されている剣。

 

「メルギトス? なにを──」

 

 人の命を奪える武器を取り出した護衛獣に戸惑うアリーゼだが、メルギトスは相変わらずの笑顔だ。

 

「居心地がいい場所ではありますが……どうやら邪魔者がいるようですね!」

 

 その剣はアリーゼには振り下ろされず、即座に後ろ振り向いたメルギトスによって先ほどまで背後だった空間に振るわれた。

 そしてその剣は金属どうしがぶつかる音と共に、もう一つの剣と組み合う。

 もう一つの剣の主は、長い金髪の男だった。

 

「悪魔め! この狭間の領域に何をしに現れた!?」

 

「天使……いや、堕天使ですか」

 

「どうしていきなり攻撃するんですか!?」

 

「お嬢さん、離れてください。そいつは悪魔です! ファルゼン様の副官フレイズ、悪魔にこの場所を汚させはしない!」

 

「堕天使如きが私に挑みますか……実に不愉快です。あの忌々しい天使を思い出してしまいますよ」

 

 フレイズと名乗った金髪の天使はアリーゼに警告しつつも、メルギトスへと強い敵意がこもった視線を向けている。

 銀髪の悪魔と金髪の天使の間に緊張が走り、一触即発にみえた。

 

「悪魔でもメルギトスは私の護衛獣です! だから……やめてください!」

 

「……は? 護衛獣……? いや、それより……メルギトス!?」

 

 二人を止めるため、アリーゼは懸命に大声を上げた。

 その声の内容に驚きの声を漏らしたのはフレイズだ。

 

「わかったらもうやめて──」

 

「よくわかりましたよ。尚更引けないと言うことがね」

 

 フレイズはより強く剣を握る。

 メルギトスの名を聞いて、刺し違えてでも目の前の悪魔を倒そうと決意をしていた。

 

「どうして!?」

 

「お嬢さんは知らない様なので教えましょう。メルギトスはサプレスでも有名な悪魔です。もっとも狡賢い悪魔の王として!」

 

「悪魔の……王? メルギトスが……?」

 

 メルギトスが悪魔王であると知らされたアリーゼは呆然としていた。

 

「おや、知られてしまいましたか。予定よりもずいぶんと早くばれてしまいましたねぇ」

 

「魔王メルギトス。それがそいつの正体ですよ」

 

 当のメルギトスは予定がズレてしまったようで、少し残念そうだ。

 そしてフレイズは念を押すようにもう一度メルギトスの正体を告げる。

 次にアリーゼが口を動かすのをメルギトスは楽しみにしていた。

 自分の護衛獣の正体が魔王だと知った少女はどのような反応を示すのか。

 そしてついにアリーゼの口が開かれる。

 

「悪魔の王……メルギトスは王子様じゃなくて王様だったんですね」

 

「……は?」

 

「あっはははははははは!!!! アリーゼさん、あなたは本当に……ひひひ」

 

 少女言葉への反応は、意味が分からないと言いたげな疑問符と爆笑。

 

「お嬢さん、意味を理解していますか? メルギトスは魔王なのですよ?」

 

 腹を抱えて笑い出したメルギトスを視界に収めつつも、フレイズはアリーゼを見つめて問う。

 

「悪魔の王様なんですよね? メルギトスがとっても偉い悪魔だってわかりました。……でも、メルギトスは私の護衛獣……パートナーなんです」

 

 サプレスで悪魔と戦い続けたフレイズと、結界が張られて異界からの侵略を受けなくなった現代のリィンバウムに生きるアリーゼではそもそもの認識が違う。

 アリーゼにとってはメルギトスが初めてあった悪魔であり、魔王という存在がどれだけ高位の存在であるかも知らない。

 フレイズと同じ認識をアリーゼに求めること自体が間違いなのだ。

 

「あなたは魔王の脅威を認識していない! いくら護衛獣とはいえ……護衛獣……? メルギトスが……魔王が護衛獣!?」

 

「……さっきもいいましたけど……」

 

 メルギトスの名ばかりに気を取られていたフレイズは自分で口にすることで、ようやく護衛獣という言葉を認識したようだ。

 

「一体どういうことですか!?」

 

「言葉通りの意味ですよ。アリーゼさんがこの私──メルギトスを護衛獣として召喚したということです」

 

「魔王を護衛獣に……? そんな話、聞いたこともない……」

 

「だからこそ面白いのですよ。彼女はとんだ番狂わせですからねぇ」

 

 あの悪魔王メルギトスが人間の少女の護衛獣になっているという事実を受け止められないフレイズが口をぽかんと開けていると、突然近くに雷が落ちる音がした。

 



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いじわるな悪魔王

 雷の原因はサプレスの魔精タケシーだった。

 泣きわめく黄色く丸い雷精霊は傍迷惑なことに、周囲に雷をまき散らしている。

 

「ゲレッゲレレ……ゲレレェェーン!!」

 

「あの子……どうして泣いているんだろう? メルギトス、聞いてみてもらってもいいですか?」

 

「おやすい御用ですよ」

 

 降り注ぐ雷を気にもせず、メルギトスがタケシーに近づいて話しかける。

 流石王様だなとメルギトスの胆力にアリーゼが感心していると、メルギトスとタケシーがリィンバウム語とは違う言語で会話を始める。同じサプレスの住人であるメルギトスにはタケシーの言葉が分かるようだった。

 アリーゼからしたらよくわからない言語で話していたメルギトスはやがて会話を終えると、現在誓約を結んでいる主人の元に帰ってくる。

 

「それで……なんて言っていたんですか?」

 

「住処を他の召喚獣に襲われて奪われたようです。彼は落ち延びて泣いていたようですね」

 

「ゲレレェ……」

 

 タケシーがメルギトス、アリーゼ、フレイズに縋るような目を向けると、フレイズが白い翼を広げた。

 

「フレイズさん?」

 

「こうして助けをもとめられたんです。私がその召喚獣たちを追い払ってきます」

 

「ただの縄張り争いでしょうに……よくあることではないですか」

 

「彼らにとっては『よくあること』では済まないと分からないのか!?」

 

 正義感を燃やすフレイズを呆れたように見るメルギトス。フレイズはタケシーたちの身に怒ったことを『よくあること』と吐き捨てたメルギトスを睨むと、翼を羽ばたかせて奪われたタケシーたちの住処へと向かっていった。

 

「分かっていないのはどちらなのやら。天使特有の正義感と欺瞞……反吐が出ますね」

 

 

 

「ギシャアアアア!!」

 

 それから少しして、フレイズが向かった方向から複数の咆哮が響いてメルギトスたちの耳に届く。

 その数は三や四ではすまない。

 

「私たちも行かないと……」

 

「我々が行く必要はないでしょう? 彼はあんなにも自信満々に飛び出していったではないですか」

 

 フレイズが向かった元タケシーたちの住処へ行こうとするアリーゼをメルギトスが押しとどめる。

 

「……メルギトス」

 

「なんです? まさかあの堕天使を助けろと?」

 

「お願いできませんか?」

 

「嫌ですよ。悪魔の私が堕ちているとはいえ天使を助けるなど」

 

 少女の願いは護衛獣が首を横に振ったことで却下されてしまう。

 

「どうしても……ですか?」

 

「どうしてもです」

 

「……困っちゃいました」

 

 もう一度頼み込んでも意志の変わらないメルギトスにアリーゼは眉を八の字にした。

 

「どうなさいますか? 私としてはこのまま帰るのをお勧めしますよ」

 

「困っちゃったので……仕方ないです。私だけで助けに行きます」

 

「何を言っているのですか? アリーゼさん一人だけで行ったところで助けになるどころか犠牲者が増えるだけでしょう」

 

 フレイズを見殺しにする選択肢を提示したメルギトスに対してアリーゼが返した答えはあまりにも無意味かつ無謀な答えだ。

 実戦で召喚術を使ったこともない、駆け出し召喚師アリーゼが護衛獣無しで増援にいったところで戦力にならない。

 そして身を守るすべを碌に持たない少女ははぐれ召喚獣たちの手にかかり死んでしまうだろう。

 

「そうですね……私だけ行っても召喚獣たちにやられちゃいます。どこかに私を守ってくれる護衛獣さんがいたら助かるんですけど」

 

「……そうやって私を乗せる気ですか? 悪魔王を甘く見てもらっては困る。そんなに死にたければお一人で行ったらどうです?」

 

 同行を拒否するメルギトスを気落ちしたように見たアリーゼは溜息をつくと、フレイズが向かった方向に走り出した。

 

 

 

 そこかしこに水晶が点在する森の中を駆けるアリーゼの視界に少し開けた場所が見える。

 奪われたタケシーの住処であろうそこにはフレイズを囲むキノコ型の召喚獣プチトードスの姿がある。

 数の暴力によって不利になったフレイズはプチトードスたちに痛めつけられ、地に膝をついていた。

 

「フレイズさん!」

 

「なっ……お嬢さん!? 来てはいけない! 早く逃げなさい!」

 

 プチトードスたちに敗れ、屈辱と痛みに顔を歪めるフレイズが警告するがアリーゼはそれに従わず、紫色のサモナイト石を取り出す。

 レックスに教わったように落ち着こうと、深呼吸をして集中し始めるアリーゼ。

 

「ピコリット! フレイズさんを癒して!」

 

 アリーゼの呼びかけに応えた小さな天使の力が傷ついたフレイズを癒す。

 だが癒されたはずのフレイズの表情には焦りが浮かんでいた。

 

「お嬢さん! 後ろです!!」

 

「えっ……」

 

 召喚術に触れたばかりのアリーゼの授業用に教えられたそれは、戦場で使うには悠長すぎた。

 召喚術に集中していたアリーゼの後ろから接近していたプチトードスは、慌てて振り向こうとする少女へと腕を振るう。

 

「アギィィ!」

 

 咆哮と共に振るわれた腕は少女の小さな体躯を打ち据えて、いとも簡単に吹き飛ばす。

 

「あああああああ!? ……痛い……痛いよ……」

 

 草が生い茂る地面を転がったアリーゼが苦痛に悶える。

 アリーゼを殴りつけたプチトードスが獲物へと歩き始めるが、少女の身体は言うことを聞かず、動かない。

 ピコリットに癒されたフレイズがアリーゼを助けに行こうとするが、元々プチトードスたちに包囲されているのだ。

 当然阻まれて命を奪われようとしている少女を助けに行くことは叶わない。

 

「くっ……行かせない気ですか……。主人の危機にメルギトスは一体何を……護衛獣になってもやはり悪魔は悪魔か」

 

「……メルギトス……助けて……」

 

 プチトードスは既にアリーゼの目前まで来ていた。

 か細く呟くアリーゼへ止めをさすべくプチトードスが再び腕を振り上げる。

 自身の命を奪う一撃に怯え、アリーゼは目を瞑る。

 だがその一撃は振るわれず代わりに──。

 

「ギュアアアアアアアア!?」

 

 プチトードスの悲鳴がアリーゼの耳に届いた。

 目を開けたアリーゼが見たのは腕が黒い炎に包まれて悶えるプチトードスと──。

 

「馬鹿ですか、あなたは」

 

 プチトードスの頭に剣を振り下ろして絶命させるメルギトスの姿だった。

 

「メルギトス……来てくれた」

 

「何故こんな無茶をしたのですか? 私が来なかったらあなたはあのまま死んでいたのですよ」

 

 横たわるアリーゼを見つめるメルギトスは心底わからないといった風に言う。

 

「信じてたから……王子様が助けに来てくれるって」

 

「……またそれですか。先ほど聞いたでしょう? 私は王子ではなく、悪魔たちの王だと」

 

「こうやって助けに来てくれたじゃないですか……だから私にとっては王子様です」

 

「度し難い……よくもこんな状況でそんなことが言えますね。その度胸だけは認めましょう」

 

 そう言ってアリーゼから視線を外したメルギトスはプチトードスと戦いを続けるフレイズを見る。

 せっかくなのだから、この状況を利用しない手はない。

 口元を歪ませるメルギトスは自身の能力を行使する。

 黒い炎を出現させるその力は──フレイズの背後から襲いかかろうとしていたプチトードスの身体を焼いた。

 

「っ!? メルギトス!?」

 

「おやおや……あんなに偉そうな口を叩いておいてこのザマですか。この程度の実力で悪魔王メルギトスに挑もうとしていたとはお笑い草ですねぇ」

 

「くっ……」

 

「お優しいアリーゼさんのお願いで助けて差し上げますよ。嬉しいでしょう? 口だけの天使さん?」

 

「……」

 

「それとも悔しいですか? 天使が悪魔に助けられるなんてねぇ! あっははははは!」

 

 魔王メルギトスが天使フレイズを煽る。その誇り高いプライドを踏みにじり、屈辱を与えるように。

 フレイズが唇を噛んでメルギトスの言葉を耐える姿が悪魔に愉悦を与える。

 その間にもメルギトスの剣がプチトードスたちを倒し、フレイズもまた悔しげにしながらもプチトードスの数を減らしていった。

 そして最後の一体が崩れ落ち、ついには動けるプチトードスはいなくなる。

 辺りを見渡して安全を確認したフレイズは一息つくと頭を下げる。その先にいたのは天敵であるはずのメルギトスだった。

 

「……感謝します」

 

「おや?」

 

「悔しいですが……助けられたのは事実です。それに、私を癒してくれたお嬢さんの命をお前は守った」

 

「案外素直に認めるのですね。面白くない……もっとくやしがってくれると思ったのですが」

 

「内心では腸が煮えくり返りそうですよ。だがこれは己の不甲斐無さへの怒りであってお前への怒りではありません」

 

「全く……生真面目過ぎてからかいがいがありませんねぇ……」

 

 思ったよりも楽しめなかったと残念そうにしつつ、メルギトスは倒れたアリーゼへと近づく。そして小さな手の中に握られたサモナイト石を取ると、召喚術を行使した。

 

「ピコリット。アリーゼさんを回復しなさい」

 

 さきほどのアリーゼが使った召喚術よりもよほど手際よく召喚された、霊界サプレスの小さな天使が傷ついた少女の身体を光で包む。

 光が消えると、アリーゼの身体に出来た痣などがさっぱり消えていた。

 

「ありがとう、助けに来てくれて……メルギトスも召喚術が使えるんですか?」

 

 身体から痛みが消えたアリーゼは立ち上がると、ぺこりと護衛獣に頭を下げる。

 

「召喚術を扱えるのは何も人間だけではありません。召喚獣でも知識さえあれば、召喚術を扱えるのですよ」

 

「そうなんだ……メルギトスも誰かに召喚術を教えてもらったんですか?」

 

「ああ、それは──」

 

 アリーゼがレックスに召喚術を教わっているように、メルギトスにとっての先生もいるのではないかと思ったことで生まれた疑問。

 それへの答えは、立てた人差し指を口元に持って行ったメルギトスの『秘密です』という言葉だった。

 

「いじわる……教えてくれても……」

 

「ええ、いじわるですよ。なにせ悪魔ですからねぇ」

 

 不満そうに頬を膨らめる少女となにを当たり前のことを言っているんだと笑う悪魔。

 二人は狭間の領域を離れて海賊船へと戻るのだった。



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嘘つきと悪魔王

 狭間の領域から帰ったアリーゼが甲板へ上がると、そこにはレックスが待っていた。

 

「先生? どうしたんですか?」

 

「アリーゼ、話があるんだ」

 

 レックスに来てほしいと言われ、アリーゼはその後ろをついていく。

 既に日は暮れ、甲板を漂う空気は肌寒い。

 船首付近に着くとレックスは足を止めて振り向いた。

 

「なんですか話って……」

 

 家庭教師が改まって話があるなどと言いだしたことに生徒は疑問を浮かべる。

 

「実は……」

 

 レックスから語られたのは今日の昼間に彼の側で起こった出来事だった。

 鬼妖怪シルターン出身の住人達が暮らす風雷の郷を訪れたレックスは、鬼姫ミスミと出会う。

 一児の母でもある彼女は、子供たちに島の外のことを教えてほしいとレックスに言う。

 ミスミに頼まれて、島の子供たちの先生をやることになってしまったのだ。

 

「……そういうことで、島の子供たちの先生をやろうと思う。アリーゼは嫌かな?」

 

 レックスとしては家庭教師としての誠意としてアリーゼに説明をしたつもりだった。

 だが──。

 

「ずるいですよ……先生はもう約束しちゃったんでしょう?」

 

 レックスのそれは事後報告だ。事前にアリーゼに確認したわけでもなく、彼女の意志を無視して約束し、その後に報告しているだけだ。

 そこに誠意はあるのだろうか、と疑問に思ったからこそアリーゼはずるいと評する。

 

「約束したからやろうってわけじゃないんだ。胸を張って君の先生だって言えるように、先生としての勉強をしたいんだよ」

 

 レックスにとって家庭教師をするのは今回が初めての経験だ。

 だからこそ彼は先生としてまだ未熟であり、アリーゼに先生らしいことがあまり出来ていないと自分でも思っている。

 アリーゼの家庭教師としてスキルアップするためにも経験を積ませてほしいということだった。

 

「……わかりました。でも、私の勉強もちゃんと見てくださいね。先生は私の家庭教師ですから……」

 

「わかってるよ。アリーゼのこともちゃんと見るって約束する」

 

「……絶対ですからね」

 

「うん。……さあ、明日の準備をしなくちゃな。俺は部屋に戻ってるから、アリーゼも早く寝るように」

 

 そう言ってレックスが船内へ入ると、甲板に積まれた木箱の影から銀髪の男が姿を現した。

 

「アリーゼさん、本当によかったのですか?」

 

 二人の話を隠れて立ち聞きをしていたメルギトスは少女の隣に歩み寄る。

 

「……良いわけないです。でも、あそこで私が反対したら先生困っちゃうから……」

 

「でしょうねぇ。彼は決定事項をアリーゼさんに伝えただけですから」

 

 実質的にアリーゼに拒否権は無かったと言ってもいいだろう。

 有無を言わさず頷かされた形となったアリーゼの中では不満が生まれていた。

 

「……先生は約束してくれました。私の勉強もちゃんと見てくれるって。だから……不満が無いわけじゃないけど……信じます」

 

 ちゃんと自分の勉強も見ると約束したレックスを信じて、アリーゼは生まれた不満を抑え込む。

 まだ短いながらも生徒と先生として過ごす中で、アリーゼはレックスに少しずつ信頼を寄せ始めていた。

 

 

 

 そして、翌日。初めて島の子供たちも参加する授業が始まった。

 

 

 

『青空学校』は湖の畔に作られた。

 切り株を椅子がわりにして、小さな黒板をノート代わりに。

 大きな木の枝に大きな黒板が掛けられ、そのにレックスが文字を書きこむ形式となる。

 

「今日から君たちにこの世界の勉強を教える、先生のレックスだよ。よろしくね」

 

 大きな黒板の前に立つレックスが自己紹介をしたことで青空学校が始まる。

 

「ほう……案外順調みたいですねぇ」

 

 それを少し離れたところで見ている人影が三人。

 メルギトス、ミスミ、そして昨日レックスに先生としての心得を叩きこんだ老人ゲンジだ。

 

「さまになっとるようじゃな……ところで、お主は?」

 

 先生として授業を進めるレックスに感心するミスミは綺麗な黒髪を揺らして横に立つメルギトスの顔を見た。

 

「申し遅れました。あちらで授業を受けているアリーゼさんの護衛獣メルギトスと申します」

 

「妾も自己紹介が遅れたの。ほれ、あそこに鬼の子がおるじゃろう? あの子──スバルの母ミスミじゃ」

 

「なんじゃ、あのお嬢ちゃんの知り合いか。ワシはゲンジと言う。さて、あとはあの若造に任せるとしようかい」

 

「心配して見に来る必要もなかったみたいじゃからな。それじゃあメルギトス、妾たちはお先に失礼するぞ」

 

 ミスミとゲンジが立ち去ってしばらくすると、青空教室に変化が起こり始めた。

 

「先生、この部分の計算がわからないです……」

 

「どれどれ……」

 

「やめろってば!!」

 

 計算問題を解いていたアリーゼだったが、分からない箇所が出てきたらしく、レックスに尋ねる。

 レックスがアリーゼの教科書を覗き込むと、スバルの大声が青空学校に響く。

 

「ごめん、ちょっと待ってて」

 

 アリーゼに教えるのを中断したレックスは、計算が解けなくて困っている少女の目線をうけながらも、大声の発生源に向かってしまう。

 子供たちの集中力が切れてふざけ始めてしまったようだ。

 レックスは子供たちに注意をすると、アリーゼの下に戻ってくる。

 

「お待たせ、アリーゼ。ここの計算はね──」

 

「返してってば!!」

 

「……また……」

 

 今度の大声はスバルの友達、犬の獣人パナシェの声だった。

 再びふざけ始めた子供たちを注意するためまたレックスがアリーゼから離れ、レックスは島の子供たちにかかりきりになってしまう。

 レックスが子供たちを止めようと注意を続けるが、彼らは聞かずにはしゃぎ続ける。

 先生は離れていなくなってしまい、子供たちの大声が響き、授業が滅茶苦茶になってしまったことで、ついにアリーゼの堪忍袋が切れる。

 少女は約束を破った先生と、五月蠅い子供たちに腹を立てて立ち上がり、苛立ちのままに叫び声を上げようとする。

 

『いい加減にして!!』と普段は物静かなアリーゼから怒鳴り声が放たれようとする──その時だった。

 

「アリーゼさん。この計算式はここの部分の応用ですよ」

 

「……メルギトス?」

 

 彼女の護衛獣が教科書を覗き込み、落ち着いた声で語りかけたのだ。

 メルギトスの優しげな声を聞いて熱くなった思考が冷めたアリーゼは、護衛獣の色白の顔を見つめる。

 

「ほら、やってみてごらんなさい」

 

「うん……ほんとだ、出来た……」

 

 メルギトスのアドバイスを受けたアリーゼが先ほど解けなかった問題に挑戦すると、今度はいとも簡単に解けてしまった。

 

「わかってしまえば簡単でしょう?」

 

「うん……ありがとう」

 

「さあ、次に行きましょうか」

 

 アリーゼはメルギトスの教えを受けて次々に問題を解いていく。

 もう彼女の顔に先ほどまでの苛立ちは無く、青空教室の終了を知らせる鐘が鳴った時までずっと笑顔だった。

 

 

 

「先生!! またね!!」

 

 授業が終わり、子どもたちはそれぞれの集落への帰路に着く。

 元気よく手を振る子供たちに手を振り返し、見えなくなるまで見送ったレックスは疲れたように肩を落とした。

 

「はあ……先生って大変だな……。子供たちがあんなに元気だなんて」

 

「ずいぶんとお疲れのようですね」

 

「ありがとう、メルギトス。アリーゼの勉強を見てくれて」

 

「いえいえ、お気になさらず」

 

 レックスは心底助かったといった風に言う。

 彼はこの授業がメルギトスの助けでなんとか無事に終わったと思っているようだ。

 

「(ふふふ……本当にそれでいいのですか、レックスさん? 手遅れになっても知りませんよ)」

 

 メルギトスはレックスの浅はかな思考を嗤う。

 レックスは気が付いていない。

 メルギトスの隣にいるアリーゼがレックスに向ける目が以前とは変わっていることに。

 少女の目は自身の家庭教師を『うそつき』と暗に糾弾していることに。

 自分が一番最初の生徒からの信頼を無くしてしまったことに。

 すでに歯車が狂い始めていることに。

 悪魔王は嗤う。嗤う。

 




ここの先生は正直擁護できない。
そして悪魔はそこにつけこむ。


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