教師の紗夜と妻となったリサとオリキャラが+α (フレット)
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教師の紗夜と妻となったリサとオリキャラが+α

アタシは結婚した。

子供も一人出来た。

 

生まれたときはそれはもう何にも変えられないくらい嬉しくて、何度も何度もその子にキスをした。これからアタシが支えていくからね、一緒に生きていこうね、という思いを込めて。

 

旦那にもキスをした。アタシと人生を作る決断をしてくれてありがとう、またこれからもよろしくね、って意味を込めて。

 

 

これも全て、紗夜のおかげだ。高校時代のバンドを組んでいた時、紗夜はアタシに、努力の仕方を教えてくれた。効率よく、無駄がないように頑張る術を教えてくれた。そこからのアタシは、もう今までのアタシではなかった。効率よく、自分に甘えずにひたすら止まらずに頑張った。

周りは「そこまでしなくてもよくない?」というけれど、夢が見つかってなかったアタシにとっては、とりあえず上を目指すしかなかったのだ。

そして、頑張り続けた結果、なんとか自分が第一志望の某有名大学に行くことができた。

 

 

その大学で、サークルが一緒やら趣味が合うやらいろいろなことがあって、今の彼と一緒にいることが増えた。そして二年目に、

 

「あの...さ、今井。」

「ん?どーしたの、悩み事?」

「...実は...」

 

みたいなことがあって、付き合い始めて、結婚生活を満喫している。

今思うと、結構ありきたりなのかな?なんて。

 

 

そして現在、アタシのかわいいかわいい娘は中学一年生の前期、その中でも最初の方だ。世間では反抗期が始まったーとか何とかで嘆く親も多い中、アタシの娘、美沙は全然そんなことなく、

 

「ねぇお母さん、こんな感じでいい?」

「ん?どれどれ~...お!いい感じじゃん!」

「本当!?よかった~。」

「美沙はできる子だね~」

「ちょ、ちょっとお母さん!なでないでよも~!」

「あはは!ごめんね!」

「も~、えへへっ」

 

あ~~~~~~っっっっ!!!うちの娘可愛すぎるっ!えへへって言ってそんなかわいく笑うのホントずるいって!絶対やばいってこれ!

 

「...お母さん?」

 

おっと危ない。美沙のかわいさにまた心をやられるところだった。今はお菓子作りの時間だからね。集中しよ、集中っ!

 

「お母さん、もう焼いてもいい?」

「うん、いいよ!」

「じゃあオーブンに入れるね~」

「落とさないように気をつけてね。」

「はーい。」

「じゃあ焼いてこうか、時間は~....20分くらいかなっ」

「おっけー、じゃあスタートするね!」

「はーい。...ん~..どれどれ~...お~、いい感じじゃん!ちゃんと焼けてるね!」

「わぁ~~~!すごい!」

 

....やっぱかわいいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私には、妹がいる。

それも、酷く出来の良い妹である。

 

それはもう、常軌を逸するほどに天才だった。することやること何でもスイスイと成し遂げ、私や周りにいる人を何度も驚かせる。そして一言言い放つのだ。「なんでみんな出来ないの?」と。今考えても、本当に恐ろしい力を持っていると感じる。

 

そんな妹を持つ私は、凡人だ。才能という言葉とは無縁中の無縁である。頑張らないと何にも出来ない。でも出来ないこともある。むしろ出来ないことの方が多い。本当に双子かと思うほど、何も出来なかった。

 

私は妹を妬み、恨み、呪っていた。何度も何度も夢の中で妹の首を絞める程に。そしてその度に、私の心は狂っていった。

このような日々に、私は苦しみ続けていた。何でも出来る妹も、それを恨む心の狭い私も、何もかもが嫌いだった。

 

そんな私を救ってくれたのは、他でもない今井さんだった。何度も相談に乗ってもらって、何度も私の心を安定させてくれた。

 

『もう過去の私のような愚かな人間を生み出したくない。』

 

彼女のおかげで生きる力を得た私は、その夢を叶えるため、中学教師となった。中学のうちにしっかりと自分を受け止められる人間になって、高校はしっかりと将来を見据えてもらうために。

 

 

 

 

「一次方程式は練習を積むのが一番大事です。様々な問題を解くことで、実力が確立していきます。後に、二次方程式、やら不等式、を学ぶことになるので、ここで必ず基本を押さえましょう。まずは...」

 

私は数学の教師をしている。今年で5年目。毎年1年生の担任をしながら、1~3年生の数学を教えている。

どうして数学なのか、ということについてだが、昔から数学は差ができやすくて有名な教科なので、悩んでいる人をより救ってあげられるのでは、と思ったからだ。数学好きの教師が聞いたら怒りそうね...数学をいいように利用しているって感じに捉えられてもおかしくないわけですし。

 

ちなみにここは羽丘女子学園中等部だ。個人的には母校の花咲川に行こうと思っていたのだが、羽丘がどんな所なのか、花咲川とどこが違うのか、などといったことが気になり、私にしては珍しく直感で物事を決めた。

 

まぁ別に私の選択は間違ってなかった、と言えるだろう。入ってすぐは新鮮な気持ちを味わったし、今でもいろいろな場面で驚きなどがあり、楽しい毎日を過ごしている。

 

ただ問題があるとしたら、生徒に嫌われているのではないか、という点だろう。もとより、私みたいな堅物ストイックは、子供に好かれるタイプではない。それが教師なら尚更だろう。まぁ実際、教師とは生徒と一定の距離をとらなければいけないものですし、むしろ多少距離がある方が指導しやすいですし、そこまで深刻じゃないんですがね。

 

ともあれ、今は明日から始まる今年度初の定期テスト、1学期中間試験の要項説明をしなければならない。

...今年は、大丈夫かしら。

 

「それでは皆さん、明日から人生初の定期テストが始まりますね。今回はそれについての説明です。定期テストとは小学校のテストとは違い、かなり難易度が高いです。それゆえ、順位の差が多く出ます。小学校では、100点が当たり前、みたいな風潮がありましたが、中学では、そんな簡単にはいきません。平均は70前後、80取れればいい方、という感じになると思います。...と言っても、実感はないでしょう。ということで、今から皆さんに去年の私の数学のテストを配ります。授業終了後、回収するので、下手に書き込まないように。」

「過去問、ってことですか?」

「ええそうよ。と言っても、この通りの問題が出るわけではないので、注意してくださいね。」

「わかりました。」

「それでは皆さん、このプリントに目を通してください。どうぞ。」

 

私はこのように、毎年この時期の1年生には過去問を配り、難易度であったり基準であったりを教えている。そしてその度にいろいろ言われるのだが、今年はどうだろうか。

 

「えーー!!何これ!むずくない!?」

「教科書の問題全然ないやん!どうやってやるん!?」

「応用多くない!?どうしよ!!」

 

あーだ、こーだ。あぁ、やっぱり言われるのね。

毎年、私の作る問題は難しい。たしか去年は平均60だったかしら。それでも高い方なのだけれど。

 

「先生!これ難しくないですか!?」

「中学校の数学はやることがほぼ全て高校に繋がります。つまり、将来の原点になるのです。理不尽を感じるかもしれませんが、ひとまず今年は私の作るテストに耐えてください。」

 

そんな~、という声が出た。

息が合いすぎて怖い。今年度イチじゃないかしら。

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は美沙の初めての定期テストの最終日。うーん、懐かしいなぁ。最終日って最高なんだよね。明日が土曜、ってこともあって「テスト終わったから、明日一日中遊ぼ!」っていう理想的ムーヴが出来るし。きっと美沙も明日は遊びに行くんだろうなぁ。そしたらアタシは何しようかなぁ...あっそういえば......やっぱり!パパ明日休みじゃん!じゃあ明日はパパとデートに行こうかなー!ひっさしぶりだなぁ。美沙が生まれてからは美沙のことばっかりで、あんま行けなかったからね。よーし!明日は楽しもう!覚悟しててよね!パーパ!

って、ん?今ガチャって言った?美沙帰ってきたんだ!会いたかったよー美沙ー!

 

「お帰り、美沙!」

「...お母さん、どうしよう、私...!」

「ちょ、ちょっとどうしたの!」

「今日のテスト、理科と数学だったの...」

「理科と数学?それって美沙の得意教科じゃないの?小学校から理系科目は得意だったじゃん。」

「理科は大丈夫だったの...多分90くらいは取ってると思う。でも、数学がほんとにまずいの!」

「まずいって....どれくらい?70くらい?」

「ううん。自己採点で50中盤くらい。」

「うそっっっ!?そんなにむずいの!?」

「ほんっとーにやばいんだって!そのテスト、みんな低くて、クラスの数学得意な人でも90いかないくらいで!」

「えっマジ!?そのテスト作った人いくら何でもダメなんじゃない!?」

「ちなみに担任なんだよ。」

「よしわかった。じゃあアタシ今度の三者面談でちょっと聞いてみるよ。『何で一発目にこんなにテスト難しくしたんですか』って。」

「えっお母さん、そこまでしなくても...私の勉強が届かなかったっていうのもあるんだし...」

「だーめっ!言わなきゃいけないことはちゃんと言う!抱え込んでたら後悔するよ?大丈夫!アタシに任せて!」

 

 

 

 

 

 

「えーと...今井美沙さんの...お母様でらっしゃいますか?」

「あ...うん...今井リサです...」

「あ...担任の...氷川紗夜です...」 

 

なんてこった。三者面談、ということで気合を入れてきて。絶対に文句を言ってやろう、と思っていたのに。思っていたのに...なんで!!なんでうちの担任が紗夜なのさ!謎すぎる確率発動ほんとわけわかんないんだけど!

こんなことなら美沙に詳しく聞いておけばよかった。そもそも。

 

「担任ってどんな先生?」

「5年目の先生でね、お母さんと同い年なんだけど、お母さんとは逆って感じで、厳しめの先生。でも優しくてかっこよくて、割と隠れファンが多いかなぁ」

 

なにこの会話っ!抗議しに行く人の話じゃないでしょこれっ!

 

「えーっと...なんで紗夜は羽丘で教師をしてんの?というか何でアタシたちに何も言ってくれなかったの?アタシ紗夜が教師だっていうことすら知らなかったんだよ?なんで」

「えー..そ、それはですね...」

「えっ!?お母さんと氷川先生って知り合いだったんですか!?」

「え、えぇまあ。高校時代にバンドを組んでいて、私がギター、今井さんはベースだったんですよ。」

「そうそっ、あの時は仲良くしてたよねー。バンド以外の時間でも、お菓子作りを一緒にしたり、ショッピングモールに遊びに行ったり。なのに何故か今は一つも連絡くれなくなったんだよねー。」

「しょ、しょうがなかったんですよ...携帯電話を買い替えて、今からデータを引き継ごう、っていう時に眠くなって、寝ぼけてデータ全部消してしまいまして...実は前日、次の授業資料を作っていて徹夜で...耐えきれなかったんです...その後今井さんの家行っても今井さんいなかったですし...もう無理かと思いまして...」

「ヒナがいるじゃんっ!そこからなら絶対わかるじゃん!なんでそうやってすぐ諦めるの!?なんで元カノのことをそんな簡単に見捨てられるのっ!?」

「ちょ、ちょっと今井さん!それは言っては...」

「ええええーーー!?!?先生とお母さん、元恋人!?どういうこと!?え!?ちょっと待って!!

....え、お母さんも先生も女ですよね!?なんで恋人に!?」

「...今井さん、一生恨みますよ。」

「元カノ兼友達をないがしろにする人に恨まれる筋合いはありませんっ」

「そもそも、あなたは今家族がいる身でしょう?でしたら下手に過去の恋愛を言わないほうがいいのでは...」

「別に大丈夫。恥ずかしい話は何にもないし。それにアタシの娘は安心だし、パパにはもう話したし。」

「あのあのっ、先生、どういうことですかっ!?」

「と、とりあえず!今日は三者面談です。私情は挟まずに、しっかりと面談していきましょう。」

「慌てすぎだよ...もー...」

「オ、オホン。えー、まずは今井美沙さんの学校生活についてですが...特に問題はありません。クラスの行事等でも真面目に、率先して行動してくれますし、友人も多い印象です。学校生活を楽しまれているようなので、私個人的にも、安心でき、信頼できる生徒です。

どうでしょう、美沙さんの方から何か悩みは?」

「いえ、特に。」

「はい。では次は、成績についてです。先日前期中間試験がありましたので、それに関してですが...5教科総合422点。全体的に非常に優秀な成績ですね。問題はないかと。」

「あの...先生、数学は...」

「数学ですか?62点。いいと思いますよ?あの平均点で考えると高いと思いますが。」

「...ねぇ紗夜、これに関してはさ、62点で高い、っていうテストはおかしいんじゃないの?ってアタシ思ったんだけど。」

 

はぁ、ようやく本題が言えた。ここまで長かったなぁ。

 

「...実は、2年後、高校受験を控えた状態になると、多くの人が私に相談しにくるんです。あれがわからない、これがわからないなどと。そしてその範囲って、中学一年生の時の範囲ってことが多いんです。気になって聞いてみると、『中一はテストとか簡単だったから手抜いちゃってて...』という方が多かったんです。それを聞き、このままではダメだ、一年で手を抜くと、三年の忙しい時期に一年の復習で時間を食うのではないか、と思い、一年の授業や試験を難しくしたんです。そしてそれが3年程前からうまくいき、三年時に一年の範囲を忘れた人がいなくなったので、このスタイルが確立されました。」

「...そう、だったんだ。」

 

驚いた。紗夜はストイックだから、ただただ厳しくしてたわけじゃなかったんだね。ちゃんと考えがあって、成功例があって、確信があってこそのスタイルなんだね。よかった。

 

「...ねぇ、紗夜。」

「...はい。」

「美沙のこと、これからもよろしく。」

「...もちろんです。」

 

 

 

 

 

 

 

※ここからはおまけとなります。その後の話的な感じです。

 

 

case1.今井リサ

 

 

家に帰ってきた。三者面談は、充実したものになったと思う。

さて、今からどうしようかな。あの後美沙は「友達の家でお泊まり会するねー。明日の夜には帰るよ。」なんて言って行ってしまった。パパはまだ帰ってこないしなぁ...夕食時でもないから、まだ作らなくてもいいしなぁ...

と、することがなくて唸っているアタシに、電話がかかってきた。

 

「ん?パパ?」

 

パパはまだ仕事中のはずなのに、どうしたんだろう。

 

「もしもーし、パパ?どしたの?」

「リサ!」

「ちょ、ちょっとどうしたの急に!」

「俺と明日...デートしてくれ!」

「...えっ!?」

「...ダメ、なのか?」

「うんうん!そんなことない!嬉しかったんだよ!」

「...そうなのか?」

「うん!実はね、アタシもおんなじこと思っていたんだ!最近あなたと出かけられなかったから、いつか行けないかなぁって思ってたんだ!」

「...!!リサ!ありがとう!愛してるよ!」

「~~~っっっ!!!パパ!は、恥ずいって!」

「いや~、今のリサの顔、きっとめちゃくちゃかわいいんだろうなぁ。見れないのが悲しいよ。」

「~~~~~~~~っっ!!!!あ~~~!!!もう!切るよ!」

「ははは、わかった。」

「じゃあね!...アタシも愛してるボソッ」

「なっ!?リサ!リサ!」

 

ツーツー

 

「そんな...うう。」

「あれ?係長!?こんなところでうずくまってどうしたんですか!?」

「やばいんだ....うちの嫁が、可愛すぎて辛い。」

「あ、そうですか...(またいつものかなぁ...係長、仕事はエリートなのに奥さんの話になると急におかしくなるんだよなぁ...)」

 

 

 

 

 

 

 

 

うぅぅ~~~~!!!やった!パパとデートだ!どうしよう!何着てこう!?とびっきりのオシャレしよう!そうだ!今の時間のうちに服買いに行こう!早く準備を

 

ヴゥー

 

ん?メール?誰からだろっ?

 

 

 

氷川紗夜:申し訳ありません

 

今井さん、お忙しいところ恐れ入ります。氷川紗夜です。

日菜を通して、連絡先を知り、メールさせていただきました。

 

まず、今まで申し訳ございませんでした。

数多くの場面でお世話になり、さらには恋人だった今井さんをないがしろにしてしまいました。

本当に申し訳ありません。

 

お詫びと言っては何ですが、明日、食事なんてどうでしょうか?

私が全額支払いますので。

 

氷川紗夜

 

 

 

...お詫びだなんて、そんな。

でもごめんね、明日は。

 

 

 

今井リサ:ごめんねっ!

 

紗夜、メールありがとうっ!ようやく連絡してくれたね~~待ってたよ?

 

明日なんだけどごめん!アタシ、パパとデートだからいけないや!

 

ごめんね!

 

今井リサ

 

 

 

ふぅ、ごめんね、紗夜。せっかく言ってくれたのに。

...って、ん?もう返信?

 

 

 

氷川紗夜:なら

 

なら、来週は空いてますか?

 

 

 

......今度はちゃんと、諦めないんだね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

case2.氷川紗夜の場合

 

 

 

「......はぁ。」

「氷川先生?どうしましたか?」

「あっ、い、いえ、すいません。」

 

しまった。職員室でため息はまずいわね。生徒に見られてなくてよかった...。

 

「ご迷惑をおかけして、申し訳ありません。住吉先生。」

「いえいえ。もしかしてあれですか?テストが難しかった、って生徒に言われちゃいました?」

「別にそれは慣れてますよ。」

「あはは~...そうですか~。でも、氷川先生問題むずすぎますって。あれ私も見ましたが、社会科教師の実力じゃ全部解けませんよー。」

「まぁ、平均50点程度ですからね。生徒は相当大変だったと思います。でも、住吉先生のテストは簡単すぎるような気がしますけどね。」

「あはは~、まぁ平均90点だったですしね...ダメですかね。」

「いえ、歴史は全体がつながるので、むしろ今は試験を簡単にして、歴史への意欲を高めるのがいいと思いますよ。対して数学は、一年を基礎、基盤にして行うため、しっかりと今を大事にして頂きたいのです。」

「へぇ~...。やっぱり氷川先生はすごいですね。4年間の賜物を感じますよ。」

「何かいつもに増して失礼な気がするんですが?」

「へっ!いっ、いや!別に失礼なことをいったつもりは...!」

「大丈夫です、わかってますよ。それにもう慣れましたし。新任の先生はそれくらいフレッシュな方が生徒人気も厚いでしょう。私の場合は、生徒に文句を山のように言われましたからね。」

「あ~、なんか予想出来ます。」

「こら、言ったそばから。」

 

 

 

 

 

「氷川せんせー!お疲れ様でーす!」

「そんなはしゃがないの、住吉先生。」

「いや~、部活休みって最高ですね。もうすぐ帰れそうですよ。ウキウキしますね~!」

「おや?今日は書道部休みなんですか?」

「はい!」

「奇遇ね。私も弓道部と軽音楽が休みなのよ。」

「あれ?珍しすぎません?そんな天文学的確率が?」

「そこまでじゃないんですが...。今日は弓道部は休養、軽音楽は自主練習なんです。授業資料も出来てますし、私もあと一時間程度で帰ろうかと。」

「えっ、ほんとですか!?じゃあご飯行きましょうよーご飯!久し振りに!」

「久し振りって、つい最近新歓したばかりじゃないですか...まぁ構いませんが。」

「いいんですかっ!?やったー!」

「店はあなたが決めてちょうだい。あなたの行きたいところでいいから。」

「はーい!うぅ~~!楽しみだなぁ~!フレンチかな~、イタリアンかな~!」

「.....まったくもう。」

 

「氷川先生、辛くないのかい?君の性格からすると、住吉先生みたいなタイプは苦手だろう?」

「山越先生。お疲れ様です。いえ、そんなことないですよ。高校時代、住吉先生のような人がいましたから。」

「へぇ~、友達?」

「いえ、彼女です。」

「....えっ?」

「氷川せんせー!ほら早く早く!!中華行きましょう!」

「ええ。今行くわ。」

 

 

「...行っちゃった、氷川先生。.....えっ、彼女?」

 

 

 

 

 

 

「ここですよーここ!前来てから好きになったんです!」

「なんか...本格的ね。」

「はい!ここおいしいんですよー!入りましょう!」

 

 

 

「...あなた、かなりいい選択するわね。」

「でしょー!おいしいですよね!」

「...ふふっ。」

「あー笑った!ようやく笑いましたね!」

「えっ?」

「氷川先生、全然笑わないから。私、氷川先生の笑顔好きなので、もっと笑ってほしいんです。」

「....」

 

『アタシ、紗夜の笑顔好きだよ。だって紗夜だもん。』

 

「こんなところまで、そっくりなのね...」

「ん?どうかしました?」

「...私も、あなたの明るいところ、好きよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

case3.今井美沙(short ver.)

 

 

先生とお母さんが元恋人関係だったなんて知らなかった。なんか2人ってタイプ違うし...意外だなぁ。

あっ、先生だ。

 

「こんにちは、先生。」

「今井さん、こんにちは。」

「先生って、本当にお母さんの元かn...」

「いっ、今井さん!ここでそれはやめてください!」

「意外だなー。まさかお母さんがなー。先生となー。」

「やっ、やめてください!」

「いやー、まさかなー。」

「~~あぁもう!一回ついてきてください!」

「えっ、ちょ、ちょまっ!」

 

 

「先生、急に生徒を防音設備の整った部屋に連行するなんて....まさか...」

「違いますよ、そんな意味じゃないです。」

「そんな意味ってどんな意味ですか?私わかんないですよ。」

「...あなた、そんな性格でしたか?だいぶ変わってますよ。」

「私はなーんにも変わってないですよー。」

「...掴めないわ...なんなのかしら...」

「じゃ、これからよろしくお願いしまーす。」

「ちょ、ちょっと!よろしくってどういうこと!?」

「さよならーっ、先生!」

 

 

 

 

「ただいまー!」

「お帰り~美沙!なんか今日はいつもより元気だね、なんかあったの?」

「お母さんお母さんっ!」

「ん~?どうしたの?」

「氷川先生って、面白いね!」

「....そ、そうだねっ!」

「いや~、明日もまたからかってみようかな~、な~んて。」

「(もしかしてこの子、昔のアタシよりすごいんじゃ...アタシは付き合い立てでもちょっと怖かったのに...)」

「どうしたの、お母さん?」

「...美沙。」

「ん?」

「美沙は、強い子だね。」

「...はぇっ?」

 



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