東方酒呑錄 (aodama)
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プロローグ

友人に書けと促された。後悔は無い


気がついたら鬼になっていた。

 

 

いや、別にトラックに轢かれた訳でも、神様名乗る存在にあった訳でもないよ? ただ家に着いて、飯食って風呂入って「あぁ、明日も仕事かぁ」って思いながらベットにダイブした所まではハッキリと憶えてるんだけどな? 目が覚めたら、身体が縮んで(物理)しまっていたんだ。

 

しかも自分の住んでるポロアパートじゃなくて、今じゃ失われつつある自然豊かな木々のカーテンが起きたら目の前にあるんだぜ? 起きた時悟ったわ「俺、転生したんやな」って·····

 

で、なんで鬼になったか分かったかって?単純な理由だよ 取り敢えず今の場所が森だと判断した俺は川を探したんだ、時間掛かるかと思ったが案外すんなりと見つかってな、とりあえず喉を潤そうとして水面とこんにちはしたら、あったんだよ 立派な角が2本も。

 

ただ俺が1番びっくりしたのはそこじゃない。水面に写った俺の顔があの、fgoの酒呑童子(しゅてんどうじ)だったんだよ。<ナ、ナンダッテー!?

 

 

水面を見るまでは心のどこかで誘拐やドッキリかと思ったが、俺にそんな金がある訳でもないし、友達も居る訳でもないしな·····自分で言ってて悲しくなってきたぞ。

 

 

まぁ、そんなことで開き直った俺はもう人生?を謳歌した。そりゃもう、やんちゃしまくった。盗んだお馬で走り出したことだってあった。同種である鬼に喧嘩を売ったこともあった。

 

そしたら、鬼の四天王とかヒトの間で呼ばれるようになっちゃって、色んな陰陽師とかが退治しようと襲ってきたこともあったなぁ·····まぁ、全部返り討ちにしたけど。

 

そんな訳で、何やかんやあったこの半世紀、遂に帝が動いたらしい。

 

さすがにヤヴァイと感じた俺はここらでトンズラしようと思った訳だが、どうやら奴さんも相当本気だったらしく、私はボロ雑巾のようにされてしまった。

 

ちなみに相手はあのゴールデンな坂田金時と、頼光ママが相手です。普通に無理です。ついでにこの世界線が型月作品だと確信しました。·····これがシュタインズ・ゲートの選択か·····

 

 

「残念だぜ、こんな形でお前さんとの決着をつけなきゃならねぇとはな」

 

 

そうだよ、なんでバーサーカーの方なんだよ。毒仕込むとかマジでアサシンかよ。いや、鬼になったせいかあの毒酒には抗えんのだけどね·····。っていうかライダーの方だったら一緒にお馬で走り出せた仲になれたと思うぜ俺、これがホントの竹馬の友、なんちって

 

 

「金時、喋っている暇はありません。瀕死とはいえあの鬼の四天王、油断してはなりません·····早くトドメを」

 

「あぁ、分かってるぜ大将·····悪ぃな」

 

「ふふっ、怖い顔·····、あんさんが気にしなはる事はあらへんで? むしろ誇ってウチの首もって帰りぃ」

 

 

殺されそうになってるのに随分と余裕が有るって? だって座に登録されて、カルデアに召喚されたらこれ(金時)と仲間やろ?なら怖いんもはねぇ!

 

 

「··········御免!!」

 

 

ザシュッ!!

 

 

刀が首に食い込む感触と共に俺の意識は暗転した·····。

 

 

 

 

 

 

 

★☆ ☆★ ★☆ ☆★

 

 

 

 

 

···············。

 

 

·····、意識が浮上する感覚·····。

なるほど、これが()()()()()感覚か·····。例えるならレム睡眠からノンレム睡眠になる時みたいな感じか·····ん? 深い方がノンレム睡眠だっけ? ·····なんてやってたらすっごく明るくなってきたぞ!? あれか! めのまえが まっしろに なった ! って奴か!

 

 

「サーヴァント、アサシン·····ウチを召喚してくれておおきにな·····

あんさんがウチのますたぁでよろ·····し、·····」

 

 

ふう、言ってみたかった台詞第7位をいえて俺は満足だぜ。さて、俺のマスターは一体どっちの立花なん·····だ·····

 

 

「·····また、森?」

 

マスターどころかカルデアとは一番縁遠そうな森に俺はポツンと一人立っていた。

 

 

 

 

 

···················································································································

 

················································································

 

·······················································

 

 

 

 

ふむ、1回状況を整理しよう。たしかに俺は召喚されるような感覚は感じ取っていた。しかし結果とは裏腹にマスターらしき人物の影は見当たらない、となると·····

 

 

 

「カウンター召喚、ってやつなんやろか?」

 

 

現に、fgoでは章ごとにカウンター召喚と呼ばれる現象が起き、そこで召喚されたサーヴァントは基本的にマスターの仲間となっていった·····

となると·····

 

 

「今回も、そっちのパターンなんやろ」

 

 

そう仮定するならば、辻褄はあう

 

 

「ほな、、ますたぁを探しに行きまひょか」

 

 

そう思ってその場をあとにしようと前を向き直した瞬間、茂みからこちらを覗く目と目が合ってしまった。

 

 

「···············」「···················」

 

 

目と目が あったら ポケモンバトル!!! ··········なんか変な電波を受信した気がする。 てか、目の前の女の子くびかしげちゃってるけど·····どうしよう?

 

 

「·········なぁあんさん·」

 

「·····なにー?」

 

「突然で悪いんやけど、此処が何処か教えてくれへん?」

 

「此処? 此処は()()()だよ?」

 

 

·····ぱーどぅん?

 

 

「·····えっと?」

 

「じゃあらこっちも質問!」

 

「な、なんやろか?」

 

()()()()()()()()()()()()

 

俺が聞いた事あるフレーズに固まっていると、目の前の女の子は元気に俺に質問をしようとしてくる。戸惑った姿が面白いのか犬歯がちらりと見える嗤いをし、此方に肉食獣のような眼を向ける。その質問には少なからず殺気が乗っており、どう考えても俺へ向けて発せられているのが分かるが·····

 

 

「いや、ウチ妖怪やねんけど?」

 

 

と、思わず空気の読めない発言をしてしまい、内心「あっ·····」と思ってしまったがそれが納得のいく答えだったのか「そーなのかー·····」と残念そうに肩を落としていた。·····ってかこの子どっかで見たことあるなって思ったらルーミアじゃないか?

 

 

「なぁあんさん、ウチは人気のある場所に行きたいんやけど、近くにいい場所知らへん?」

 

「人里を知らないの?」

 

「ウチは今ここに来たばかりだからあんまし此処の地理に詳しくないんよ、だから案内してくれへんか?」

 

「んー、いいよー! 人里はこっちにあるから着いてきて!」

 

 

どうやら俺はカルデアでなく、幻想郷に召喚されてしまったようだ。色々な疑問が残るがまずは何より·····

 

 

「祭りは、楽しまなあかんなぁ·····人も鬼も、楽しむのが一番やさかい」

 

 

 

この世界を思いっきり楽しむことだ!

 

 

 

 

 

 



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東方紅魔郷
第一話


勢いがあるうちに投稿

戦闘描写は今回はサクサクと ·····戦闘描写ってどうやって書くん·····?


※タグ増やしました


  

  

取り敢えず、お互いに自己紹介を済ませ、その後にルーミアに人里まで道案内を頼むことが出来たのは良かった……。なんでカルデアじゃなくて、幻想郷に召喚されたのかは疑問に残るが……うん、分かんねぇや。他にも今の時代がどれくらいなのか気になったりするが、まず先に一つだけ言っておくぞ……

 

 

「どーしたのー? 早く行こうよー」

 

 

ルーミアさん……私飛べないんです。

 

 

 

 

………………………………………………………………………………

 

 

…………………………………………………

 

 

……………………………

 

 

 

 

ということで歩いて行く事になりました。飛べないことにルーミアは驚いていたが、散歩しながら行こうと誘うと「いいよー!」と満面の笑みで返してくれた。さっきまで殺気を飛ばしていた子と同一人物だとは思えないくらいぐぅ天使。守りたい、この笑顔……ッ

 

 

「―――それでねー! チルノちゃんがカエルさんを凍らせるんだけど、それを大ちゃんがめっ!ってしたの!」

 

 

最近あった事なのか、楽しそうに友達のことを話すルーミアちゃん……マジ天使。ちなみにさっき飛ぼうとしたときについでに試したんだけど、霊体化しようとしたら出来なかった……というか、これ受肉しちゃってるんだよなぁ。それか俺のやり方がおかしいだけなのかもしれないが……

 

 

「―――しゅてんー?……ぉおー?」

 

「ッ、なんやぁ?」

 

 

紅、先ず俺の目に飛び込んできた光景はそれだった。よく見ると、赤色に侵された雲だということが分かったがそれと同時に妖力の混じった紅い霧が辺り一帯に充満し始めた。

 

 

「なんや、ヒト吸うたら危ないもん漂い始めたなぁ?」

 

「えー! もしかしてこれ人間が吸ったら死んじゃう?」

 

「今はまだ少ししか含まれてへんけど、時間経ったら死んでまうかもしれへんね?」

 

「やだー! そんなの可哀そうだよー!」

 

 

ルーミアちゃんが可愛い不満を聞いていると、何やら後ろから視線を感じるので、その方向を見る。貴様! 見ているなッ!?

 

 

「……アンタ、一体何者?」

 

 

ジョジョっぽく指をさしながら振り返ってみると、そこには黒髪に大きな赤いリボンを付け、右手に持つお祓い棒をこちらに向けてくる、警戒MAXの楽園の素敵な巫女さんが立っていた。

 

 

「何者って言われても、ウチはしがあらへん妖怪やで?」

 

 

ニッコリスマイルを添えて置こう

 

 

「冗談にしては笑えないわね。一体アンタの何処がしがない妖怪なのよ……」

 

 

ちょっとしたお茶目のつもりだったんだが、更に警戒させてしまったようだ。今よりも深い構えをとると何時でも動けるような態勢で俺の事を睨んでくる。

 

 

「単刀直入に聞くけど……アンタがこの異変の犯人?」

 

「ちゃうよ、ウチらはただここら辺を散歩していただけやで」

 

 

「……そう」

 

 

言葉では納得の意を表してくれたが、依然警戒の態勢は解いてくれない巫女さん……それとは別に俺はあの巫女服が気になるんだけど……実にエr、げふんげふん、けしからんですなぁ

 

 

「ほな、もう行ってええ? ウチらには用事があるんやけど」

 

「ッ! 待ちなさい! アンタがこの異変の犯人じゃないって証拠はあるの!?」

 

「いや、あらへんけど」

 

「……なら、私に着いてきなさい」

 

 

……ほへ?

 

 

「いや、なんでなん?」

 

「アンタ自身に身の潔白を証明できる物が無いなら、その身で証明してもらうしかないからよ」

 

 

つまりあれですか? 身体で払ってもらおうか案件ですか? 俺の身体は今、美少女だけどさぁ……

 

 

「はぁ、分かった……ついて行けばええん?」

 

「そう、分かればいいのよ。じゃあ出発するから着いてきなさい」

 

 

そう言って直ぐに空を飛んで、俺が出発するのを待っている。

 

 

「·····ちゅう訳で、残念やけど、此処でお別れや」

 

「えー?しゅてんもう行っちゃうのー?」

 

「ほんま堪忍なぁ、また今度埋め合わせするやさかい」

 

「ほんとー? なら、また一緒に散歩しよーねー!」

 

 

ばいばーい! と元気よく手を振りながら空を飛んで去っていくルーミアちゃん·····あぁ、俺の癒しが·····

 

 

「·····ほなら、さっと行って解決してきましょうか。ちなみに方向はこっちで合ってるん?」

 

「えぇ、合っているわ·····あぁ、私の事なら心配いらないわアンタが出発した後でも追いつけるから」

 

「そぉか? なら、遠慮なく·····」

 

方向は合っているようなのでそちらに身体を向けつつ、身体に妖力を纏い地面に力を伝え、一気に爆発させるように力強く踏み込むと、ダァン! と地面から聞こえては行けないような音が聞こえる。瞬間、凄まじい衝撃と共に、体が直進する。そしてまた、地面を蹴るこれを数回繰り返していると薄らとだがそれらしき赤い屋敷が見えてきた。

 

 

「アン、タ·····ッ! 無茶苦茶ねッ!? 普通は空飛んで行くでしょッ!?」

 

「へぇ、もう追いついたんか? 凄いやないかい·····そういや、自己紹介がまだやったなぁ、ウチは酒呑童子、酒呑でかまわへんで」

 

「·····霊夢、博麗霊夢(はくれい れいむ)よ」

 

 

やっぱり霊夢ちゃんだったか·····確信はしてたけど自己紹介する事が大事だからね、っと、そうしているうちに着いたな

 

 

「ほな、どうするんよ? 真正面から馬鹿みたいに突っ込むんか?」

 

「そうはさせませんよ」

 

何奴っ!?

 

 

「私はこの館の門番をさせて貰っている紅美鈴(ホン メイリン)という者です。以後、お見知り置きを」

 

「·····まぁ、普通は門番の一人や二人は居るもんよね·····それで、()()()()()のルールは分かるかしら?」

 

「えぇ、勿論。郷に入れば郷に従え·····存じ上げております」

 

「ならいいわ、スペルカードは3枚でいい?」

 

「それでお願いします」

 

「それじゃあ行くわ···よッ!」

 

 

俺の知らないところで話が進められ、いつの間にか弾幕ごっこが始まっていた。ってか美鈴、滅茶苦茶真面目だったな。こう·····武術家!みたいな感じでオーラ的なものが素人目に見ても分かるもん。はへぇ、凄いなぁ、あ、でも弾幕ごっこは苦手みたい。もう三枚目を攻略されそうになってる·····弾幕は綺麗なんだけどなぁ·····

 

 

「くッ! まだまだァ!」

 

「いいえ、終わりよ。 霊符『夢想封印』!」

 

「く、ああぁぁぁぁ!!!」

 

 

どうやら勝敗が着いたらしい。少しの間、お互いに何かを話した後に、霊夢は何かに気づいたように急いで中に入っていった。

 

 

「·····それで、貴方はどうしますか? 貴方もスペルカード3枚で良いのですか?」

 

まぁ、俺に振ってくるわな·····

 

「残念やけど、ウチは此処に着いたばっかやさかい、すぺるかーど? は持ってへんねん」

 

 

だけど、な?

 

 

「こっちやったなら、相手になれるで?」

 

 

そう言って俺は美鈴の前に握った拳を見せる。要はステゴロで勝負しようぜ! って話なんやけど

 

 

「ッ! ·····分かりました。なら、私も胸を借りるつもりで行かせてもらいます!」

 

 

そう言うと美鈴は弾幕ごっこの時には見せなかった構えを取った。

·····あれは、八極拳かなにかか? まぁ、取り敢えず俺が出来るのはただ一つ

 

 

「懐がお留守やで?」

 

「ッ!? が、は·····ッ!?」

 

 

相手に視認されないスピードで一撃を叩き込む。これに尽きるな。

 

 

「ぐ、ぅ·····油断したつもりはなかったんですが·····まさかその戦闘スタイルも作戦のうちと言うことですか·····」

 

「? あんさんには足りひん物があった、それだけよ」

 

そう! お前に足りないものは、それは!

情熱・思想・理念・頭脳・気品・優雅さ・勤勉さ!そしてなによりもォォォオオオオッ!!

 

 

「速さが足りひん」

 

「·····ッ、ご教授、感謝いた、し、ます·····」

 

 

先程の疲労もあったのか、直ぐに意識を手放し、倒れ伏す美鈴·····さて、これで俺も入れるな。ってか俺の身の潔白を証明するためにここ来たのに、霊夢は俺の事を見張ってなくてもいいんですかねぇ·····?

 

 

 

〜数十分後〜

 

 

やべぇぇ、迷った(;´・ω・)

 

てかここ広すぎるだろ、さっきから似たような廊下を行ったり来たりしてるし、階段も登ったり降りたりを繰り返してるせいで今自分が今何処にいるか分かんねぇよ·····。よし、決めた。次入った部屋の中に人がいたら全力で道案内を頼もう、そうしよう。よし! そうと決まればここの扉をノックandオープン! お邪魔しまぁぁす!!!

 

 

「貴方·····だぁれ?」

 

 

···············詰み?

 

 

 

 




今回は短め、次回は霊夢sideと美鈴sideを書いてから主人公視点を書きたいなぁと思っています。


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第二話

一日空いてしまったこと許してヒヤシンス·····。学校でテストがあったねん·····。その分倍で書いといたから·····。

それはそうと、京都弁難しいな·····。間違っていたらすみません。

ちなみに 霊夢→美鈴→主人公 の視点でお送りします。





★☆ ☆★ ★☆ ☆★

 

 

赤く、紅く、赫く·····空を覆い尽くさんとばかりに広がったアカい雲·····小さな異変なら、こなしてきた私だったがここまで大規模な異変は初めてかもしれない·····だからなのか、知らずのうちに気分が高揚していたのかもしれない。だから道中にあんな存在がいるなんて思いもしなかった·····。

 

最初は、背丈がほぼ同じの妖怪二体が戯れているとしか思えなかった。しかし、2体のうちの1匹が視線に気づいたのか、此方に振り返る。

 

 

瞬間、

 

 

恐怖が身体を支配した。指先なんかは冷水を浴びせられたかのように震えだし、全身には冷たい汗が浸走る。頬は強張り、歯と歯が噛み合わず小さくカチカチと音を鳴らす。何より、私が恐怖を感じたのは·····

 

 

「(何なの·····()()()())」

 

 

紫苑色をした瞳から放たれる圧により、震えた声を出しながら、目の前の存在に問いかける。

 

 

「·····アンタ、一体何者?」

 

「何者って言われても、ウチはしがあらへん妖怪やで?」

 

 

私の問いに対してまるで、無邪気な子供のような笑みを浮かべて答える。その笑みですら私には、恐怖を煽る材料のひとつにしか見えなかった。生存本能を刺激されたのか、震えていた身体は何時でも戦闘に入れるよう深く構えを取っていた。

 

 

 

「冗談にしては笑えないわね。一体アンタの何処がしがない妖怪なのよ·····」

 

 

最低でも紫レベル·····()()()とタメ張れる力は持ってると私の勘が告げてるわ。

 

 

「単刀直入に聞くけど·····アンタがこの異変の犯人?」

 

 

普段は、早く終わらせたいがために、犯人であってくれる方が有難いのだが·····今回ばかりは違ってていることを願う。

 

 

「ちゃうよ、ウチらはただここら辺を散歩していただけやで」

 

「·····そう」

 

 

違っていた事に安堵しながら、すぐ様気を引き締める。と、同時に新たな疑問が浮かんでくる。

 

 

「(なんで·····大妖怪と呼べる程の存在がこんな所に?)」

 

 

もう少し先に行ったら異変の中心と呼べる館に着くはずだが、この大妖怪は此処で何をしていた? 目的が分からない·····。

 

 

「ほな、もう行ってええ? ウチらには用事があるんやけど。」

 

 

ッ!? 異変をほっとくのは不味いが、目的がわからない以上この妖怪をほったらかすのはもっと不味いと私の勘が言ってるわ!

 

 

「·····なら、私に着いてきなさい。」

 

 

最初は、どちらかと言えば驚いた表情したが、直ぐにふんわりとした笑みを浮かべ「はぁ、分かった·····ついて行けばええん?」と、肯定の意を示してくる。その仕草·····と言うより、こんなあっさり着いてくることになったせいか、尚更この妖怪の目的が分からなくなった。最初に言っていた用事とは何だったのか·····? こんなあっさり着いてくるようになったのには何か裏があるのか·····?

 

 

「(駄目、まだコイツの正確な目的が分からない·····けど。)」

 

 

素直に着いてきてくれるのが、不幸中の幸いと言ったところか·····

 

 

「·····ちゅう訳で、残念やさかい、此処でお別れや」

 

「えー?しゅてんもう行っちゃうのー?」

 

「ほんま堪忍なぁ、また今度埋め合わせするやさかい」

 

 

そんな私の思案など知ったこっちゃないと言わんばかりに、もう一体の妖怪と話をしている。会話だけ聞いたら、駄々を捏ねる妹を宥めるら姉のようだが、身長差が余り無いからか、どちらかと言うと友達同士の会話にしか聞こえなかった。

 

 

「ほなら、さっと行って解決してきましょうか。ちなみに方向はこっちで合ってるん?」

 

「えぇ、合っているわ·····あぁ、私の事なら心配いらないわアンタが出発した後でも追いつけるから」

 

 

監視の意味を込めて、私は後から飛ぶことを選ぶ。

 

 

「そぉか? なら、遠慮なく·····」

 

 

ダァン!

 

 

と、爆発音が聞こえたと思ったらそこには小さなクレーターが出来ており、館の方へ直進するアイツが目に付いた。慌てて私は追いつこうとするが、思っていたよりも速く、やっと追いついたと思ったら舘はもう目の前だった。

 

 

「アン、タ·····ッ! 無茶苦茶ねッ!? 普通は空飛んで行くでしょッ!?」

 

「へぇ、もう追いついたんか? 凄いやないかい·····そういや、自己紹介がまだやったなぁ、ウチは酒呑童子、酒呑でかまわへんで」

 

「·····霊夢、博麗霊夢よ」

 

 

 

ここでやっと初めて自己紹介をしあうが、先程のこともあったせいか、若干の警戒を含みながらの自己紹介となってしまった。

 

 

「(酒呑童子·····、やっぱり聞いたことが無いわね。今度、紫辺りにでも聞こうかしら。)」

 

「ほな、どうするんよ? 真正面から馬鹿みたいに突っ込むんか?」

 

 

 

 

「そうはさせませんよ」

 

 

 

 

 

★☆ ☆★ ★☆ ☆★

 

 

 

 

 

「私はこの館の門番をさせて貰っている紅美鈴という者です。以後、お見知り置きを」

 

 

私の前に立つのは噂に聞いていた博麗の巫女で間違いないだろう。しかし、もう1人の方は一体·····?

 

 

「·····まぁ、普通は門番の一人や二人は居るもんよね·····それで、弾・幕・ご・っ・こ・のルールは分かるかしら?」

 

「えぇ、勿論。郷に入れば郷に従え·····存じ上げております」

 

 

幻想入りする時に、あの胡散臭い妖怪からルールは聞いている。

 

 

「ならいいわ、スペルカードは3枚でいい?」

 

「それでお願いします」

 

「それじゃあ行くわ···よッ!」

 

 

そして、開始とともに、博麗の巫女が弾幕をばら撒く。やはり、こちらより、場数を踏んでいる為か隙がなく、何より美しい。

 

 

「ッ! 流石ですね! 此方は避けるのに精一杯だと言うのに·····」

 

 

なら、最初のスペルカードです!

 

 

「華符『芳華絢爛』!」

 

「無駄よ!」

 

私のスペルカードをいとも容易く避ける·····そんなのは予想済みだ。

 

 

「虹符『彩虹の風鈴』!」

 

「っ!2枚連続で!?」

 

 

1枚目の攻略をされた瞬間を見計らって2枚目のスペルカードを切る。最初は驚いたものの、辛うじで全てを避けきる様は、やはり“博麗”の名を継ぐに相応しい実力の動きだった。

 

 

「ははっ·····流石にあれを避けられるのはキツイですね·····」

 

 

そもそも弾幕ごっこ自体があまり得意でもないのに·····。

 

 

「確かに、驚きはしたけど、別にこの戦法を初めて食らうって訳でもないしね」

 

「·····何故初めてでは無いのに、驚きはしたのですか?」

 

()()()()()()()()。スペルカードは言わば切り札。それも3枚という少ないルールの中でいきなり2枚もぶっぱなしてきたからよ。·····それに、アンタの動き方からして弾幕ごっこは初めてでしょう? 初めてにしては随分と思い切りのいいことをするなと思っただけよ。」

 

「·····お見事です、素晴らしい観察眼のお持ちのようで。」

 

「まぁ、勘で答えた部分も少しはあるけどね。」

 

「なら、最後の1枚です。·····彩符『極彩颱風』!」

 

 

最後の1枚、これに全てをかけて放つ。色彩鮮やかな弾幕は四方八方から襲い掛かる。

 

 

「·······弾幕ごっこっていうのはね、こういうことも出来るのよ」

 

「·····ッ!?(自分の弾幕を私の弾幕の軌道上に放って少しだけずらしているだと!? しかも、美しさを損なわない程度の量で·····)」

 

 

弾幕を弾幕でいなすようにしながら、軽やかに避けていく·····最後の弾幕も少ないのに!

 

 

「くッ! まだまだァ!」

 

「いいえ、終わりよ。 霊符『夢想封印』!」

 

「く、ああぁぁぁぁ!!!」

 

 

勝負は、相手のスペルカードの発動とともに着いた。

 

 

「·····完敗です。どうぞ中でお嬢様がお待ちです。」

 

「そ、なら遠慮なく入らせてもらうわよ。」

 

「えぇ、どうぞ私の役目は終わりました。·····あぁ、そうだ、気づいておられないようなので、一つ忠告を····この赤い霧、お嬢様の妖力を素に造られています。私達妖怪や貴方の様な人間はともかく·····人里にいるただの人間が吸い続けたら·····」

 

 

どうなるか、察しのいい貴方なら理解できますよね?

 

 

「ーーーッ!?」

 

 

私の言葉を聞くと反射的に身体が動いたのか、一目散に屋敷の中に入っていく·····

 

 

「(ふふっ、ちょっと言葉で揺さぶったらこれ·····子供の反応をしたと思えば、実力は1級品。本当に才能に恵まれた子のようですね。)」

 

 

·····それで、貴方はどうしますか? 貴方もスペルカード3枚で良いのですか?

 

 

「残念やさかい、ウチは此処に着いたばっかやさかい、すぺるかーど? は持ってへんねん·····。せやけどな? こっちやったなら、相手になれるで?」

 

 

そう言って拳を握り拳を私に見せつけてくると同時に抑えていたのか、洗練された妖力が身体から滲み出ている·····成程。確かに此方の方が私達妖怪にとってやりやすいのかもしれない、が·····

 

 

 

「(あの妖怪は·····確か“鬼”·····)」

 

 

私がまだ武者修行で旅をしている時期に何度か会ったことがある。その度に命からがら逃げ出した苦い思い出のある相手だが·····

 

 

「(違う、今まであった鬼とは桁が違う·····)なら、」

 

 

今まで出会ったの鬼が雑魚に思えるほど、相手の()が違った。しかし、おかしな点があった。

 

 

「(構えが·····素人、隙だらけだ·····)」

 

 

身体から滲み出ているオーラは玄人そのものだが、構えについては素人同然の構え方。かと言ってやはり強者のオーラは隠しきれない、なんともチグハグな存在だった

 

 

「(何なんだ、この違和感は·····? それにあの動き·····()()()()()()()()()()()·····)」

 

 

そうして熟考していると、突然目の前の敵が消えた。と、同時に腹部から激しい痛みを感じる。

 

 

「ぐ、ぅ·····油断したつもりはなかったんですが·····まさかその戦闘スタイルも作戦のうちと言うことですか·····」

 

 

まさか、素人同然の動きがフェイク、そしてそれについて、相手に思考させる事により隙を生み出す戦略·····見事、としか言い様がない·····

 

 

「? あんさんには足りひん物があった、それだけよ」

 

 

·····何?

 

 

「速さが足りひん」

 

 

なるほど·····私には思考速度、純粋な速さ、判断力の速さ·····数々の速さが足りなかったのか·····

 

 

「·····ッ、ご教授、感謝いた、し、ます·····」

 

 

敵ながら、天晴れ。そこで私の意識は完全に落ちた·····。

 

 

 

 

 

★☆ ☆★ ★☆ ☆★

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、く、·····ぅぅ」

 

「アハハ! どうしたの? まさかもう打つ手がないのかしら?」

 

 

·····クソ! 本当に強いな·····。 この俺が手も足も出ないとなると、いよいよ終わりかもしれん。

 

 

「ほんなら、この手ならどや!?」

 

 

俺の苦し紛れに放った一撃は無情にも彼女には届かず、俺のもがく姿か愉しいのか、最期の一撃をくりだす。

 

 

「ーーーはい! これでまた私の勝ち!10連勝目ー! しゅてんチェス弱ーい!」

 

「くぅ、やるやあらへんか! もういっぺん勝負や!」

 

 

くそ、·····なんでこんないたいけな幼女と指しあい(意味深)をすることになったんだっけ·····?

 

 

 

···················································································································

 

················································································

 

·······················································

 

 

 

「貴方·····だぁれ?」

 

目の前に座る幼女·····もとい、少女は首をかしげながら此方に名前を聞いてくる。

 

 

「ウチは酒呑童子っちゅうもんよ。お嬢ちゃんの名前聞いてもえぇ?」

 

「フラン。フランドール・スカーレット。」

 

 

·····やっぱりフランだったか。金髪に、口から小さく見れる尖った犬歯。何より特徴的なのは7色の宝石のようなものがからぶらさがっている背中から生えている羽根だろう。

 

 

 

「ほな、フランちゃん? フランちゃんは此処で一体何をしているん?」

 

「··········良い子にしてる」

 

「良い子?」

 

「そう、お姉様に言われたの。貴方はここで良い子にしていなさいって·····そしたらいつか、外に遊べれるようになる日が来るって·····」

 

 

··········よし

 

 

「·····なぁ、フランちゃん。ウチとゲームしいひんか?」

 

 

「·····ゲーム?」

 

 

 

 

 

···········································

 

·······································································

 

····································································································

 

 

 

と、いうことだったはず。いやぁ、それにしてもフランちゃん強ぇわ。てか強すぎるわ。チェスどころか、トランプにUNO、更にはオセロでも負け続きなんだからな。

 

 

「ねぇねぇ! 次は何して遊ぶ? ドミノとかもあるよ!」

 

「なぁ、フラン? 外に、出てみたくはないんか?」

 

 

俺の言葉に先程まで心の底から楽しそうに笑っていたフランは、ピタリと止まり、顔を俯かせ静かに首を振る。

 

 

「無理だよ。この部屋には結界が貼ってあって私が出ると直ぐにバレちゃう仕組みになってる。それに、外に出たらお姉様に叱られちゃう·····」

 

「ーーーなら、()()も一緒に叱られてやる。」

 

「·····え?」

 

「お姉ちゃんだけ、外に出てるなんて狡いと思わないか?一緒に出て、一緒に外で遊んで、一緒に怒られよう、な?」

 

 

言葉と共に差し出した手に、戸惑いながら手を伸ばすフラン。しかし、やはり姉が怖いのか中々手を取ろうとしない。そこで、俺からフランの手をつかみに行く。

 

 

「·····あっ」

 

「せや、お姉ちゃんに反抗しいひんか? その様子だと、喧嘩もしたことないんやろ? だったら、自分の思いはしっかりと伝えなあかんで」

 

「·····うん!」

 

 

納得したのか、吹っ切れたのかは分からないが、俺の言葉に力強く頷いて自身の手に妖力を集め始める。·····能力を使う気だな?

 

 

「離れてて! “ギュ”っとして“ドカーン”!」

 

 

そんな可愛らしい声とは裏腹に、俺が入ってきた扉は木っ端微塵に破壊された。

 

 

「しゅてん! 行こ! お姉様に文句言ってやる!」

 

「せや、アンさんの溜まりに溜まった鬱憤を全部ぶつけたり?」

 

「うん!」

 

 

という訳だ。可愛い妹の反抗だぞ?待ってろよ、お姉ちゃん?

 

 

 

 




霊夢・美鈴「コイツ·····出来るッ!?」
※主人公は基本何も考えておりません。

勘違いタグ増やした方が良いのかなぁ?



※2019/05/31 修正しました


·····次の投稿は三日後とかになりそうかも·····。


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第三話

待 た せ た な!!(cv: 大塚明夫)


という訳で、第三話どぞー


★☆ ☆★ ★☆ ☆★

 

 

 

「“ギュ”として“ドカーン”!」

 

 

フランちゃん、尽く扉を破壊して突き進んでるけど·····別に最初の地下以外には結界はついてないと思うから普通に開ければいいと思うんだど·····ああー、修理代とか幾らかかるんだよこれ? 俺知らへんで。

 

 

「確か! この部屋だったと思う! お姉様のお部屋!」

 

 

可愛い人差し指でさした方向には明らかにほかの部屋とは違う造りがされていた。確かに、他の部屋とは違って扉には装飾が施されており、上品な雰囲気が醸しだされて「“ギュ”として! “ドカーン”!」·····本当に俺知らへんで。

 

 

「お姉様! いるんでしょ!?」

 

「残念やけど、此処には居ぃひんみたいやな」

 

「その通りでございます。」

 

「「ッ!」」

 

 

部屋の中を軽く物色し引き返そうとすると、後ろから俺たちの会話を肯定する返事が帰ってきた。

 

 

「··········咲夜」

 

「妹様、困ります。パチュリー様が張っていた結界を破壊するなど·····さぁ、地下室へお戻りください。」

 

「やだ! 私はもう戻らないよ! お姉様に私の思いをぶつけるんだもん!」

 

 

メイド服に身を包み銀髪銀眼が特徴的な人物である咲夜と呼ばれる人物が現れる。

 

 

「(十六夜咲夜、確か“時を操る程度の能力”·やったな·····厄介やな。能力を使われる前に、落としとこか。)」

 

 

アサシンの特性である“気配遮断”を意識して、と·····ゆっく~り後ろに回って、首筋に·····天誅ゥッ!

 

 

「(? あの侵入者は何処に·····?)·····がッ!?」

 

 

一撃で意識を刈りとることに成功、うむ。上手くいってよかった。

 

 

「堪忍してくれやぁ、ウチら今急いでんねん」

 

「もしかして、しゅてん? しゅてんがやったの?」

 

 

·····あ、そうか“気配遮断”中だから分かんないのか。じゃあ、取り敢えず解除して、っと

 

 

「しゅてん!」

 

「ほな、行くで」

 

「咲夜は?」

 

「意識を刈り取っただけやで、別に死んどらんよ」

 

「·····ありがとう。でも行くって何処に?」

 

 

弾幕ごっこができる広さを持ち、且つ吸血鬼であることを最大限生かせる場所と言えば·····

 

 

「屋上に決まってるやさかい」

 

 

そうと決まれば、迷う必要は無い。急いで外へ·····屋上へと向かう。そして1番最初に目に入ったのは、普段の何倍も大きく見える赤い月と蝙蝠の様な羽根を大きく広げこちらを見下ろす、紅い眼だった。

 

 

「·····貴様。咲夜をどうした?」

 

「あのメイドはんか? ちぃとばかし、眠ってもろうてんで」

 

「ッ、イレギュラーめ、やはり運命は見えない、か·····」

 

 

? 独り言なのか、ブツブツと何か呟いているが、全く聞こえない。

 

 

「お姉様!」

 

「フラン、どうして地下室から出てきてしまったの? 」

 

「お姉様の言いなりになるのはもう嫌! 私は·····お姉様を倒して外に出るの!」

 

「·····そこのイレギュラーに唆されたのね。フラン、これは貴方の為でもあるの。地下室へ戻りなさい。」

 

「やだっ!」

 

「·····聞き分けのない子には、お仕置きが必要ね。」

 

 

その言葉を皮切りに、2人は戦闘を始めてしまう。片方は焔の剣を、もう片方は妖力で編んだであろう槍を。お互いがぶつかり会う度に余波が此方にも届いてくる。

 

 

「酒呑。アンタ何処で油売ってたのよ。」

 

「あら? 誰かと思うたら、霊夢はんちゃうか。あんさんが置いてったんやん。」

 

「·····そ、それはアンタが着いてこないのが悪いわ。」

 

「いや、目ぇ逸らしやな」

 

 

せめてこっち見て話さんかい。

 

 

「だ、だって仕方ないじゃない。あんなこと言われたら居ても経っても居られなくて·····」

 

「はぁ·····ま、気にしてもしゃあないわ。それに、今そないな事言うとる場合でもななったしなぁ」

 

 

いつの間にか、戦闘(喧嘩)を終えたのか、仲良く手を握りながら此方に近づいてくる2人。

 

 

「姉妹喧嘩は終わったんか?」

 

「うん。 ありがとうしゅてん。どうやら私、お姉様の事勘違いしてたみたい。」

 

「当たり前じゃない。私にとってフランは大切な家族なんですもの。」

 

 

「さて」「よいしょっ」っと、2人は体制を整えこちらを向く。

 

 

「改めて、名乗りましょう。紅魔館当主であり誇り高き吸血鬼、レミリア・スカーレットよ。」

 

「妹のフランドール・スカーレットです。よろしくね、しゅてん。」

 

 

レミリアは優雅に、フランは無邪気に、反対に思える反応だが、俺には2人は本当に姉妹なんだなぁとしか思えなかった。

 

 

「さて、1対1が2対2になった所で別に勝利は揺らがないわ。」

 

 

··········ん?

 

 

 

「なぁ、霊夢。」

 

「何かしら? 言っとくけど拒否権ないから。」

 

「いや、ウチはスペルカードを持ってへんから弾幕ごっこは出来へんで。」

 

「·····はぁッ!?」

 

「せやから、2対2ちゃうくて、2対1」

 

「それは·····正直キツいわね。」

 

 

それでも勝てないって言わないあたり。霊夢はどんだけ自信があるんだよって思うわ。·····なんて思っていたら弾幕ごっこが始まっちまってるじゃねぇか。傍観に徹しよ。

 

 

「ほらほらぁ! どうした博麗の巫女!? その程度の実力なのか!?」

 

「ちっ! 煩いわね! ちょっと黙ってなさい!」

 

 

 

やはり、2対1という状況のせいか、普段の力を出し切れない霊夢がじわじわと追い詰められていってるな。これは·····少しまずいか?今の所は紙一重で避け続けてるが、これも時間の問題だろう·····。

 

 

 

 

 

★☆ ☆★ ★☆ ☆★

 

 

 

 

 

「っ!? もう、しつこいわね!」

 

 

流石に、2対1という状況の弾幕ごっこは初めてだ。しかも、相手は大妖怪2人。慣れない状況も相まって、防戦一方になる。

 

 

捌いて

 

 

避けて

 

 

捌いて、避けて

 

 

捌いて、避けて、捌いて、避けて、捌いて、避けて、捌いて、避けて、捌いて、避けて、捌いて、避けて、捌いて、避けて、捌いて、避けて、捌いて、避けて、捌いて、避けて、捌いて、避けて、捌いて、避けて。

 

 

 

気が遠くなるような量を捌いて避けて、そして

 

 

「残念だけど、これで終わりよ!」

 

「ーーーあっ·····」

 

 

遂に、弾幕に追いつかれる。スペルカード·····間に合わない。ここから導き出せることは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

詰み

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「··········えっ?」

 

「よっ! 霊夢! 弾幕ごっこなのに私の存在を忘れてもらったら困るなぁ!」

 

「魔理沙·····」

 

「おう! “普通の魔法使い”霧雨魔理沙(きりさめ まりさ)さんだぜ!」

 

 

弾幕が当たる直前に、私の前を流星が·····、いや、流星の様な弾幕が通り、当たるはずだった相手の弾幕は掻き消された。

 

 

「おいおい、負ける寸前まで追い詰められるなんて霊夢にしては珍しいな。」

 

「煩いわね。·····でも、助かったわ。ありがとう。」

 

「·····熱でも有るんじゃないか霊夢? お前が私に素直にお礼を言うなんて。」

 

「本当に煩いわね!?」

 

 

白黒の服にエプロンを付けたいかにも『魔法使い』と言わんばかりの格好に三角帽に大きな白いリボンを付け、そこから覗く金色のウェーブのかかった長髪は同性の私でも見惚れるぐらい綺麗だが、性格で損をしてしまっているとしか思えない。·····こんな奴にお礼を言うんじゃなかった·····

 

 

「あら、新しいお友達かしら?」

 

「おう! 霧雨魔理沙! 普通の魔法使いだぜ! あ、狡いとか言うなよ。お前らだって2人なんだからな!」

 

 

吸血鬼に対して強気に指摘する魔理沙。コイツ、心臓に毛が生えてるんじゃないかと思うのよね。

 

 

「·····えぇ、言わないわ。そんな事。」

 

「それに! お姉様と私だったら負ける心配ないよ!」

 

「おう! 望むところだぜ!」

 

「魔理沙。何相手をやる気にさせてるのよ。」

 

「大丈夫だって!私と霊夢が組めば敵無しだって!」

 

「·····ちゃんと合わせなさいよ。」

 

 

此処からは、順調に進めれた。私が弾幕で牽制し、魔理沙が狙いを絞り、追い詰める。時には、逆に魔理沙が牽制し私が詰める。

 

 

「神槍『スピア・ザ・グングニル』!!」「禁忌『レーヴァテイン』!!」

 

「恋符『マスタースパーク』!!!」「霊符『夢想封印』!!!」

 

「ぐぅぅ、っ」「う、うぅ·····」

 

「「うあぁぁぁぁ!!!!」」

 

 

拮抗は一瞬。決着は直ぐに着いた。

 

 

「私達の!」「勝ちだぜ!」

 

 

 

 

 

★☆ ☆★ ★☆ ☆★

 

 

 

 

激しい戦闘が終わり、此方に降りてくる2人、勝った方がボロボロで負けた方がまだ余裕があるというなんとも言えない終わりとなってしまった。でも本人達が納得してるからいいのかな?ちなみに魔理沙とはお互いに挨拶し終えたところだ。

 

取り敢えず、霧は止めてもらい。2人は人里の医者に寄って行くらしい。·····私には先に博麗神社に向かっておいて欲しいと言われたが·····場所知らんねんけど。

 

 

「取り敢えず向かいましょうか。」

 

「あら、どちらまで?」

 

「そんなん、博麗神社に決ま·····って·····」

 

 

待て? 俺は今誰と話している?ゆっくりと振り返ってみると·····

 

 

「こんばんわ、小さな鬼さん?」

 

 

··········アイエエエ!!! ユカリサン!? ユカリサンナンデ!?

 

 

「幻想郷の管理者である 八雲 紫 (やくも ゆかり)と申します。」

 

 

はい、存じております。

 

 

「今回、ワタクシが気になったのは貴方ほどの大妖怪が何故? 今このタイミングで幻想入りを?」

 

 

何故って言われても知らんがな·····

 

 

「·····そやねぇ、この世界を見て回りたいと思うたのと、現代に飽いたって理由やな。」

 

「····················」

 

 

む、無言の圧力ゥ〜

 

 

「·····貴方の目的は分かりました。ようこそ、幻想郷は全てを受け入れますわ」

 

 

お、おー良かったわぁ消されずに済んだぁ·····あ、そうだ

 

 

「ウチは酒呑童子っちゅう者や。ところで、一つ聞いてええか?」

 

「·····何でしょう?」

 

「博麗神社への行き方を教えてくれへんか?」

 

「ッ!? ·····いいでしょう。折角なので、送っていきますよ。」

 

「ほんまに? そりゃおおきにな」

 

 

そう言って空間にスキマを開き、中に入っていく紫さん。 うぇぇ、目玉がぐるぐる·····気持ち悪ぃ。行くしかないか·····。

 

 

「ほな、失礼な」

 

 

スキマを抜けた先には知識にあるような博麗神社が目と鼻の先にあった。振り返ってスキマを確認すると、既に閉じた後なのか、博麗神社の鳥居だけが大きく目に写っていた。

 

 

 

 

 




まず、一言。咲夜ファンの皆さんごめんなさい!(土下座)

咲夜さんは後から出番あるからそこで活躍させる予定なので今回は残念な子に·····。じゃないと魔理沙の影が薄くなっちゃうねん·····許してやぁ。


※タグを短編から連載に変えときました。




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第四話

ワイ「(そういや、この小説書くきっかけとなったのはコイツだったな·····次の視点の要望聞いてやるか)お前はフランかレミリアどっちが好きなん?」

友人A「両方! プラスで藍しゃまを登場させた紫様視点でオナシャス!」

ワイ「·········· 」

友人A「あとお前の作品日刊の方に載ってたぞ。」

ワイ「 」


という訳で、日刊だけでなく。お気に入り350越え、UA7000越えと、この場を借りて御礼申し上げます。有難うございます。

では、引き続き第四話、どぞ。









★☆ ☆★ ★☆ ☆★

 

 

 

暗い、

 

 

『フラン、此処が貴方の新しい部屋よ』

 

 

赤い、

 

 

『妹様、食事です』

 

 

くラい、

 

 

『また結界を壊してしまったのね。フランドール』

 

 

あカい、

 

 

 

 

 

··········皆、

 

 

 

 

 

コワれちャエばいイのに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方·····だぁれ?」

 

 

私の前に現れたのは、同程度の身長をして二本の立派な角が特徴的な妖怪だった。

 

 

 

 

「ウチは酒呑童子っちゅうもんよ。お嬢ちゃんの名前聞いてもえぇ?」

 

「フラン。フランドール・スカーレット。」

 

 

相手が名乗ってきたので、こちらも名乗り返す。

 

 

 

「ほな、フランちゃん? フランちゃんは此処で一体何をしているん?」

 

「··········良い子にしてる」

 

「良い子?」

 

「そう、お姉様に言われたの。貴方はここで良い子にしていなさいって·····そしたらいつか、外に遊べれるようになる日が来るって·····」

 

 

そう·····良い子にして、いい子にして、イイ子にしテ。·····そしたらいつか、お外で遊べるんだ。でも·····

 

 

ーーー『貴方が頑張る必要は無いの。』

 

「ッ、·····」

 

 

お姉様の声が頭の中で反響する。

 

 

『私に全部任せておきなさい。』

 

 

 

私は·····必要ないのかな·····?足でまといなのかな·····?

 

 

 

 

 

 

 

ワ た シ は イ ら な イ 子 な の カ な ?

 

 

 

 

 

「·····なぁ、フランちゃん。ウチとゲームしいひんか?」

 

「·····ゲーム?」

 

 

無意識のまま能力を使ってしまっていたみたいで、()()()()()()を浮かばせていたが、しゅてんの言葉に反応した為か、掌の目は崩れ散る。

 

そこからは色々なゲームをした·····。トランプを初めに、UNO、オセロ·、チェス·····凄く楽しかった。 すごく新鮮だった。誰かと一緒に遊ぶ事がこんなにも楽しいことだったなんて·····。気づいたら私はすっかり彼女に気を許していた。

 

 

「ねぇねぇ! 次は何して遊ぶ? ドミノとかもあるよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーなぁ、フラン? 外に、出てみたくはないんか?」

 

 

外。その言葉に反射的に身体が強ばってしまう。しかし理解とともに身体の硬直がゆっくりと解けていく。

 

 

「無理だよ。この部屋には結界が貼ってあって私が出ると直ぐにバレちゃう仕組みになってる。それに、外に出たらお姉様に叱られちゃう·····」

 

 

嘘だ。確かに結界は張ってあって外に出たら怒られるかもしれないけど·····ただ、それ以上に自分自身に勇気がないだけ·····。

 

 

「ーーーなら、()()も一緒に叱られてやる。」

 

「·····え?」

 

「お姉ちゃんだけ、外に出てるなんて狡いと思わないか?一緒に出て、一緒に外で遊んで、一緒に怒られよう、な?」」

 

 

突然の口調の変化に驚くけど、それ以上に驚いたのは彼女の面影に、()()()()()()()が重なってる様に見えた。彼女の言葉に惹き付けられた私は差し出してきた手を掴むように自分も手を伸ばすーーー

 

 

ーーー『私に全部任せておきなさい。』

 

「(ッ!?)」 

 

 

お姉様に言われたことが再び頭の中に蘇り、伸ばしかけていた手が止まる。しかし、一拍置いて、しゅてんが私の手を掴んで引いてくれる。

 

 

「·····あっ」

 

「せや、お姉ちゃんに反抗しいひんか? その様子だと、喧嘩もしたことないんやろ? だったら、自分の思いはしっかりと伝えなあかんで」

 

 

先程の影はもう無かった。しかし、言葉から溢れるカリスマは未だ続いており、聞いているだけで勇気づけてくれる。

 

 

「·····うん!」

 

 

私の中にあったドス黒い感情はもう無かった。

 

 

「 離れてて! “ギュ”っとして“ドカーン”!」

 

 

私はもう、何も迷わない!

 

 

「しゅてん! 行こ! お姉様に文句言ってやる!」

 

「せや、アンさんの溜まりに溜まった鬱憤を全部ぶつけたり?」

 

「うん!」

 

 

いっぱい文句を言おう。滅茶苦茶我儘を言おう。

 

 

 

 

怒られるのは、それからだ。

 

 

 

 

★ ☆ ☆ ★ ★ ☆ ☆ ★

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

「お嬢様? どうか致しましたか?」

 

 

紅魔館が誇るメイド長、十六夜咲夜(いざよい さくや)が私のことを心配して顔を覗き込んでくる。

 

 

「·····咲夜、今すぐ地下室へ向かいなさい。フランが地下室から出る運命が見えたわ。」

 

「しかし、博麗の巫女の方はどうしますか?」

 

「私が直接相手をするわ。」

 

「·····了解しました。」

 

 

「では、失礼します。」と私の前から消える咲夜。彼女が用意してくれた紅茶を飲み干し。紅魔館のエントランスへと繋がる階段を降りてゆく。暫くしてエントランスへ着くと、噂に違わぬ博麗の巫女がそこには立っており、手に持っているお祓い棒を私に向けて言葉を放つ。

 

 

「アンタがこの異変の黒幕かしら?」

 

「えぇ、そうよ。それで犯人がわかった博麗の巫女はどうするつもりなのかしら?」

 

「決まってるじゃない。アンタを退治してぶっ飛ばす。」

 

「出来るのかしら? たかが人間風情が?」

 

 

返って来たのは言葉ではなく、弾幕だった。どちらかと言えば様子見の牽制の様だが、紅魔館内では(吸血鬼)の身体能力は活かしきれない。弾幕を避けながら、外へと誘導する。

 

 

「屋上·····?」

 

「そうだ。紅魔館は広いが、吸血鬼である私には少し狭くてな。さて、仕切り直しと·····ッ!?」

 

 

直後に感じる、二つの大きな妖力。自身の真下から感じるソレに目を向ける。相手は私の眼光など、まるで気にしていないかのように飄々とした態度で私を見つめ返してくる。

 

 

「·····貴様。咲夜をどうした?」

 

「あのメイドはんか? ちぃとばかし、眠ってもろうてんで」

 

「ッ、イレギュラーめ、やはり運命は見えない、か·····」

 

 

コイツ自身を介して咲夜の容態を調べようと“運命を操る程度の能力”を使ったが、モヤがかかったようにハッキリと見えはしなかった。

先程みたいに、突然運命が見えたりすることもあるがソレははっきりいって稀だ。普段は今回の様に意図的に使う事が普通だが、ここまで相手の運命が見えない事は初めてかもしれない。

 

 

「お姉様!」

 

本来の運命であれば咲夜によって地下室に戻されているであろうフランが此方に声をかけてくる。

 

 

「フラン、どうして地下室から出てきてしまったの? 」

 

「お姉様の言いなりになるのはもう嫌! 私は·····お姉様を倒して外に出るの!」

 

「·····そこのイレギュラーに唆されたのね。フラン、これは貴方の為でもあるの。地下室へ戻りなさい。」

 

「やだっ!」

 

「·····聞き分けのない子には、お仕置きが必要ね。」

 

 

手に意識を集め、妖力で出来た槍を顕現させる。フランも私と同じように剣を創り、私に突っ込んできた。

 

 

「わぁぁぁぁ!!! お姉様のバカぁー!!」

 

「くぅッ······」

 

 

フランの方が力が強い·····が、巧さは私の方が上! なら、ギリギリでフランの剣を弾いて!

 

 

「ッ!?」

 

「そこ!」

 

 

バランスを崩したフランの剣を私の槍で突き穿ち、妖力を飛散させる。そしてそのまま私はそっとフランを抱きしめた。

 

 

「·····え?」

 

「フラン·····成長したわね。」

 

「な、何で? お姉様は私の事が嫌いじゃないの?」

 

「何を言ってるの? 私はフランの事が大事で仕方が無いのよ。今回の異変だってそう。この異変の後に私達は幻想郷に受け入れられる事になってる。そうすれば、前みたいに私達を狙ってくる輩はもう居ないのよ。」

 

 

あの胡散臭い妖怪の言うことはイマイチ信用出来ないが、幻想郷の事になると我が子を自慢するかのように語るのだ。今回の契約も嘘ではないだろう。

 

 

「·····本当?」

 

「えぇ」

 

「ほんとに本当?」

 

「えぇ、嘘じゃないわ。この異変が終わったら2人で外に行きましょう?」

 

「ッ! うん!!」

 

 

やれやれ、我が妹ながら、少しばかり純情過ぎないか? 変な蟲に騙される前に蟲は駆除しなきゃいけないわね。

 

 

「姉妹喧嘩は終わったんか?」

 

「うん。 ありがとうしゅてん。どうやら私、お姉様の事勘違いしてたみたい。」

 

 

当たり前じゃない。私にとってフランは大切な家族なんですもの。·····さて、体制を整え目の前の敵をもう一度見る。

 

 

「改めて、名乗りましょう。紅魔館当主であり誇り高き吸血鬼、レミリア・スカーレットよ。」

 

「妹のフランドール・スカーレットです。よろしくね、しゅてん。」

 

 

コイツは確かに侵入者だが、フランがここまで成長出来たのもコイツのおかげかもしれない。

 

 

「さて、1対1が2対2になった所で別に勝利は揺らがないわ。」

 

 

確かに、私達姉妹はお互いに全力でぶつかりあった為妖力の残りも少ない。それに対し、相手はほぼ万全の状態と言ってもいい。さらにあの酒呑と呼ばれる妖怪の強さも未知数だ。

 

 

「なぁ、霊夢。」

 

「何かしら? 言っとくけど拒否権ないから。」

 

「いや、ウチはスペルカードを持ってへんから弾幕ごっこは出来へんで。」

 

「·····はぁッ!?」

 

「せやから、2対2ちゃうくて、2対1」

 

 

·····へぇ? それはいい事を聞いたわ。

 

 

「それは·····正直キツいわね。」

 

 

今の状況が有利なら、それに越したことはない。弾幕を放つが、先程とは明らかに違う、ぎこちない動きをしながら、弾幕を回避している。

 

 

「ほらほらぁ! どうした博麗の巫女!? その程度の実力なのか!?」

 

「ちっ! 煩いわね! ちょっと黙ってなさい!」

 

 

口ではそういうものの、流石に二人分の弾幕を一人で捌ききるのは厳しいのか、紙一重の回避を見せる。しかし、無理やり避けた為大きな隙が出来る。それを見逃してあげるほど私は優しくはない。

 

 

「(穫った!!)」

 

 

確信。 勝利。そこまで見えていたビジョンは目の前を駆けて行く流星に全て持っていかれた。どうやら、博麗の巫女の仲間らしい。

 

 

「あら、新しいお友達かしら?」

 

「おう! 霧雨魔理沙! 普通の魔法使いだぜ! あ、狡いとか言うなよ。お前らだって2人なんだからな!」

 

「·····えぇ、言わないわ。そんな事。」

 

「それに! お姉様と私だったら負ける心配ないよ!」

 

 

フラン、それは“ふらぐ”と呼ばれるものよ。

 

 

「おう! 望むところだぜ!」

 

「魔理沙。何相手をやる気にさせてるのよ。」

 

「大丈夫だって!私と霊夢が組めば敵無しだって!」

 

「·····ちゃんと合わせなさいよ。」

 

 

そこから先は思い出したくない。 ただ、先程の調子を取り戻した博麗の巫女と桁違いのパワーを持つあの白黒の人間のコンビネーションが私達の想像を上回ったとだけ言っておきましょうか。その後はちゃんと霧を止め、悔しいが負けを認めた。

 

 

 

 

ただ、

 

 

まぁ、

 

 

「(フランが楽しそうだったからいっか。)」

 

 

壊れかけた紅魔館の壁に背を預けながら、幸せそうな顔で熟睡する妹を見ながら、私も意識を落とした。

 

 

 

 

★☆ ☆★ ★☆ ☆★

 

 

「紫様、ご報告したいことが·····」

 

 

畏まった様子で報告してくるのは私の式神であり、最強の妖獣でもある九尾の八雲藍(やくも らん)だ。

 

 

「あら? どうしたの?」

 

「結界を透過してきたものがおります。」

 

「別に、結界を透過して来るのは珍しい事ではないわよ?」

 

「はい。ですが、その透過してきた者が鬼なのです」

 

 

鬼、その単語に私は違和感を覚える。鬼は確か、数百万年前に人間に絶望して地底に移住したはずでは?

 

 

「その鬼の実力などは分かりますか?」

 

「·····少なく見積っても大妖怪クラスかと。」

 

 

中級程度であれば“はぐれ”として、ありえない話でもないが、大妖怪クラスともなれば話は違う。私がそのような鬼のことを知らないはずがないのだ。

 

 

「どうしますか? 紫様?」

 

「·····私が行って確かめてくるわ。」

 

 

藍から詳しい場所を聞き、スキマでその場所へ向かう。スキマを出た先は丁度話に出ていた鬼の背後であった。どうやら、何処かへと向かう予定らしく、私は訪ねてみることにした、

 

 

「あら、どちらまで?」

 

「そんなん、博麗神社に決ま·····って·····」

 

 

相手はゆっくりと振り返ってこちらを見る。何か驚いたような表情をするが直ぐに、表情を戻す。

 

 

「(私を知っている? 私が知らないのに·····?)」

 

 

外の世界では、幻想郷の事は妖怪の間で噂になっているらしいから知られているのはおかしくはない。ただ、管理者である私の事を知っていると捉えるならば、不自然だ。それに·····

 

 

「(博麗神社·····と言いましたか?)」

 

 

何故幻想郷に来たばかりの彼女がその神社の名前を知っている?

·····少し探ってみるか?

 

 

「こんばんわ、小さな鬼さん? 幻想郷の管理者である 八雲 紫 やくも ゆかりと申します。·····今回、ワタクシが気になったのは貴方ほどの大妖怪が何故? 今このタイミングで幻想入りを?」

 

 

何故? 数百万年前の移動ではない? 近年生まれた妖怪? それにしては強すぎる·····

 

 

「·····そやねぇ、この世界を見て回りたいと思うたのと、現代に飽いたって理由やな。」

 

「····················」

 

 

現代に飽きた? 現代に飽きたということは、昔の神秘がまだ残っていた時代を生きてきた可能性が浮上してくる。それに世界を見て回ると言ったか? それはつまり、この世界の実力を測るという意味か? もしや、幻想郷の支配·····?考えすぎかもしれない·····だが、確かに目の前にいる存在は力だけでいえば幻想郷のトップに入れるであろう実量は持っている。

 

 

「(摘んでおくか? 危険分子を生かしておく理由はない·····)」

 

 

気づかれないように能力に使い、存在を境界を操ろうとする·····

 

 

 

ーーー『それでも私は信じたかったんだよ』

 

「(ッ、)」

 

 

能力の使用直前に、()()()()()()()()を思い出す。

 

 

ーーー『鬼たちはバカしかいないけど·····嘘を嫌うから本当のことしか言わない。悪い奴なんて一人もいないよ。』

 

 

·························

 

 

「·····貴方の目的は分かりました。ようこそ、幻想郷は全てを受け入れますわ」

 

 

もう少しだけ、様子を見てみよう。そこからでも、判断を下すのは遅くないだろう。博麗神社の事も考えすぎだろう·····きっと幻想入りする前に何処かで耳にしたのだろう。

 

 

「ウチは酒呑童子っちゅう者や。ところで、一つ聞いてええか?」

 

「·····何でしょう?」

 

()()()()()()()()()を教えてくれへんか?」

 

「ッ!? ·····いいでしょう。折角なので、送っていきますよ。」

 

 

博麗神社の存在を知っているのに場所を知らない·····なんともチグハグな存在だ。

 

 

「ほんまに? そりゃおおきに·······ほな、失礼な」

 

 

スキマに躊躇なく入っていき、見えなくなってからスキマを閉じ、新たに別のスキマを開いて屋敷へと戻る。

 

 

「紫様、どうでしたか?」

 

「·····暫く様子を見る事にしたわ。」

 

 

一応許可は出したが、警戒は解かない様にしないと·····

 

 

「では、幻想郷のルールは説明なされたのですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

···············あ

 

 

 

 

 




Q:なんで紫様は主人公に幻想郷のルールを説明し忘れたの?

A:作者が第三話で書き忘れた為


はい。という訳で紫さんには作者のポカのせいで若干残念な子になってしまいました。·····紫ファンの皆さんごめんなさい。

前回の話なんて見直してみたらまぁ、酷かった。正直今回も無理やり繋げた感じなので、こう·····酷いです(語彙力皆無)




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第五話 後日談

ネタとプロットが尽きたよぅ( ´・ω・`)







※タグ増やしました
※タイトル変更しました。


★☆ ☆★ ★☆ ☆★

 

 

 

紅霧異変が終わり、博麗神社に着いた次の日に改めて紫さんから幻想郷のルールについて教わった。確かにあの夜だけじゃあ説明仕切れない部分もあっただろうから、今日に全部説明したんだと思う。流石紫さんだな。それを言ったら目を逸らされたけど·····嫌われてんのかな?

 

ん? 俺? 今?

 

 

「待てやゴラァッ!!」「逃がさへんぞぉッ!?」「取材ネタァ·····ッ!」「ちくわ大明神」「誰だいまの!?」

 

 

現在進行形で、ヤクザ(天狗)に追いかけられてます。

 

 

 

 

 

………………………………………………………………………………

 

 

…………………………………………………

 

 

……………………………

 

 

 

「はぁ·····結局霊夢はん。帰ってこんかったなぁ·····」

 

 

縁側で足をブラブラさせながら起きて待っていたのだが·····霊夢を迎えようとしてたのに結局徹夜か·····。社畜経験のお陰か徹夜には馴れているけどさぁ? 今日中には戻ってこなかったか·····。

 

 

「(せやけど·····異変解決したって事は、そろそろ()()()が来てもおかしくないんか?)」

 

 

異変解決のあとのお約束。宴会も勿論だが、果たして異変解決をどうやって知らせているのか?

 

 

「(答えは·····どうやら向こうから来てくれたみたいやな」

 

 

気配を感じ、座っていた縁側から立ち上がり、目の前に急速に降りてきた影を見つめる。

 

ーーー漆黒の潤沢ある翼。

 

ーーー手に持つはペンとメモ帳。

 

ーーーそして誰もが見惚れるであろう美貌を持つ

 

 

「え?」

 

 

ーーー漢

 

 

 

「え゛?」

 

 

 

ーーーしかも五人

 

 

 

 

………………………………………………………………………………

 

 

…………………………………………………

 

 

……………………………

 

 

てな訳でな? 最初は丁寧にお断りしてたんだよ? でも、なんか途中から面倒臭くなってダッシュで逃げたってわけ。そしたらほら、追っかけてくるんだぜ?

 

 

「堪忍やわぁ·····しつこい男は嫌われるでぇ·····?」

 

 

残念だけど、もう心に決めてる人が居るから俺の初めて(のインタビュー)はあげられないね!!

 

 

「感情に流されてッ!」「取材を断念するなど!」「新聞記者としての!!」「恥晒しよ!!」「ロリっ子(*´д`*)ハァハァ」「YESロリータNOタッチ!!」

 

 

お巡りさんコイツらです。

 

いや、もう、ね·····? 身の危険をビンビンに感じるわけですよ? 野郎に追いかけられて嬉しいわけないし。 あと一匹増えてるし。さらに言えば、後ろ二人に捕まったらナニされるか分かんないし·····。

 

 

もう、ゴールしてもいいよね·····?

 

 

 

「「「「「取材ィィィぃぃぃぃぃぃッ!!!」」」」」

 

「い、や·····やわァァッ!?」

 

 

ちくちょう!? こうなったら人里まで逃げ込んでやる!? 後ついでに霊夢を迎えに行ってやるぅッ!?

 

 

 

 

 

★☆ ☆★ ★☆ ☆★

 

 

 

 

一応、医者に診てもらったが疲労が溜まっていただけであり、別にどこも怪我などはないとの診断だった。霊力の枯渇から来る疲労なので、一日安静にしていればすぐに良くなるらしいと言うので一日だけ

人里に泊めてもらった。

 

 

「·····平和ね。」

 

 

昨日、あれだけの規模の異変が起きたというのに、里の皆は相変わらずだった。茶屋の長椅子に腰掛けながら、ふとそんな事を思っていたら、不意に声を掛けられた。

 

 

「何を黄昏ているんだ·····まったく。」

 

「あ、慧音。」

 

「ほら、頼まれていたのもだ。」

 

 

そういって、私の横に座って来るのは人里のまとめ役兼教師の上白沢慧音(かみしらさわ けいね)だ。

 

 

「大変だったんだぞ? まず、異変が始まってから避難の誘導。人里の結界をより強固にして。異変が終わったとなれば今度は被害情報の報告と確認。そこにプラスで君からの調べものとなったら·····私がどれだけ大変だったか分かっているのか?」

 

「·····えっと、ご苦労さま?」

 

「何故そこで疑問系なんだ?」

 

 

「全く·····」と呆れも含みながらため息と共に数枚の紙を渡してくる。

 

 

「君の言う妖怪を記してきた。昨日が満月だったから良かったものを。こういう事はなるべく早めに頼むぞ?」

 

「うん、分かっているわ。」

 

 

資料を見ながら、慧音に曖昧に返答してしまう。それよりも私は昨日出会った酒呑童子の事が気になって仕方がなかった。軽く目を通していると、ある一文で目が止まる。

 

 

「(鬼·····かつて日ノ本を述べていた最強の種族·····)」

 

 

吃驚と共に成程、とも思ってしまう。確かにあれだけの強さだったら、あのオーラを放っていてもなんら不自然では無い。納得しながら読み進んでいると、段々と文字が掠れて読めなくなっている。最後の方では最早読む事すら困難な状態だった。しかし、辛うじで読めた単語に目を奪われる。

 

 

「(()()·····)」

 

 

龍神といえば、お伽噺に出てくる神様の事だ。幻想郷にいるものなら誰でも知っている存在であり、この幻想郷の守神としても有名なのだが·····

 

 

「(酒呑と一体なんの関わりが·····?)」

 

 

必死に読み解こうとしてもこれ以上はどう足掻いても読めそうになかった。

 

 

「慧音·····ここは·····?」

 

「あぁ、そこか。そこは済まないが私にも分からない。」

 

「分からない·····って、どうして?」

 

「たまに有るんだ。そういうことが、な? 原因は分からないが、今までの経験上、読めなくなっている部分は本当の歴史かどうか怪しい部分なんだ。」

 

「本当の歴史?」

 

「ああ。霊夢も知っているだろう? 私の能力。」

 

「えぇ、“歴史を食べる程度の能力”と“歴史を創る程度の能力”でしょ?」

 

「ああ、そしてその両方に共通することは“歴史の改竄”だ。」

 

「? そうね? それがどうかしたの?」

 

「私の能力が働くのはあくまで『本当にあった歴史』もしくは『本来ならあったはずの歴史』にしか効果は出ないんだ。」

 

「??? それがどうして掠れた文字に繋がるのよ?」

 

「·····つまり、私の能力は噂や与太話で残った根拠の無い歴史には弱いという事だよ。」

 

「·····ああ、そういうことね。」

 

 

 

「ウチの事放っておいて何を調べてるん?」

 

「ぅひゃあッ!?」

 

 

慧音の話に相槌を打っていると、急に後ろから声を掛けられ、素っ頓狂な声を上げてしまう。

 

 

「しゅ、酒呑!? どうして此処に!?」

 

「どうしても、こうしてもないやろ。霊夢はんが帰るの遅いからこうして迎えに来たんやで。」

 

 

·····連絡用の式神飛ばすの忘れてた。

 

 

「で、でもアンタ人里がわかんないんじゃなかったの?」

 

「そんなん、博麗神社みたいな高いところから見たら一瞬でわかったわ·····それに、人里までは一本道やったしな。」

 

「·····済まない、ちょっといいか?」

 

「ん? あんさん誰どすか?」

 

「私は上白沢慧音という者だ。寺子屋の教師をやっている。そういう君は?」

 

「ウチは酒呑童子。ただのしがない妖怪やでぇ。」

 

 

妖怪、の部分で警戒をする慧音。·····ややこしくなる前に私が出るか。

 

 

「大丈夫よ慧音。コイツは人里は襲わないと思うわ。」

 

「な、霊夢。 しかしだな·····。そんな根拠が一体どこから·····。」

 

「勘よ。」

 

「かっ、·····はぁ、分かった。霊夢がそう言うなら信じてみよう。君もこの人里では暴れないように。もし此処で暴れたりしたら私や霊夢は勿論、幻想郷の賢者も敵に回すことになるだろうからな。」

 

「勿論。わかっとるでぇ。」

 

「·····ほら、私を迎えに来たんでしょ? もう用事も済んだし、一旦博麗神社に戻るわよ。」

 

「あ、霊夢ちょいと待っとってな? おばちゃん。団子5本持ち帰りでよろしゅう頼める?」

 

「はいよー、あら? 可愛い子供だこと。一本サービスしてあげるわね。」

 

「ほんまに? それはおおきに。」

 

 

待てと言われたから何をするかと思えば、さりげなく買い物を済ませてから私のほうに寄ってくる。

 

 

「·····私の分は有るんでしょうね?」

 

「勿論、ほな、帰ろっか?」

 

 

里の外まで行くと昨日居た金髪のちっちゃい妖怪が門のところで大人しく待っていた。

 

 

「ルーミア、ええ子にしとったか?」

 

「うん! ちゃんといい子で待ってたよ! 」

 

「そか、なら·····ほい、さっき助けられたのも含めて、これ、ご褒美や。」

 

「わぁ! だんごー! 良いのー!?」

 

「ええよ、また今度遊ぼうな」

 

「うん! またねー!」

 

 

3本ほど団子を渡したら、バイバーイ! と元気よく、空を飛んで去って行くルーミア。·····あれ? デジャヴ?

 

 

「さて、そろそろ行こか?」

 

「何アンタが仕切ってんのよ。ほら、さっさと行くわよ。」

 

 

飛べる程度には回復した霊力を使い。博麗神社へ向けて飛ぼうとする。

 

 

「あ、霊夢聞きたいことあるんやけど。」

 

「何? 手短にお願い。」

 

「霊夢は飛ぶ時にどんなイメージで飛んでるん?」

 

「はぁ? なんで急にまたそんなこと聞くのよ?」

 

「ええから、答えてや」

 

「はぁ、私の勝手なイメージだけど。体に霊力を纏わせて浮かせるイメージよ。纏わせるイメージを一番大事にしてるけど、それがどうかしたの?」

 

「ふむ、なら·····霊力を妖力に置き換えて、こないな感じか?」

 

 

そう言ってフワリと、宙に浮く酒呑、まだぎこちなさが残るが、それ以上に私はある事に驚愕していた。

 

 

「なっ!? まさかアンタ()()()()()()()()()()()!?」

 

「そやでー、霊夢の言った事を妖力に置き換えたら何となく行けたでー」

 

 

今飛べるようになった事も驚きだが、まさか酒呑ほどの大妖怪が飛べなかったことに驚きだ。

 

 

「早速やけど霊夢、ゆっくり飛んでくれへんか? まだ飛ぶのには慣れてへんのや。」

 

「·····ちゃんと着いてきなさいよ。」

 

「頑張んで」

 

 

最初こそぎこちなかったが、飛び始めて数分だった頃、すでにコツを掴んだのかほぼ私と並走出来るほど、上達していた。

 

 

「そういや、アンタ私がいない間に何してたの?」

 

「ヤクザにストーカーされとった」

 

「? 何よそれ?」

 

「気にせんでええから」

 

 

他愛もない会話を挟みながら神社へ着くと、そこには疲労困憊といった様が似合う天狗達が居た。

 

 

「わ、我ら天狗を速さで出し抜くとは·····」「しかし我らは天狗の中で最も小物·····」「鴉天狗の面汚しよ·····ッ!」「自分達で言っててなんだが、悲しいなぁ」「止まるんじゃねぇぞ·····ッ!」

 

「酒呑?」

 

 

説明を求め、酒呑の方に顔を向ける。それに対し酒呑はいつものはにかみながら·····いや、若干顔を引き攣らせながら、話し始める。

 

 

「いや、ウチはただ逃げてただけやで?」

 

「全力で?」

 

「全力で」

 

 

それはご愁傷様ね。なんてやり取りをしている最中に一段と強い風が、吹き荒れた。と、思ったら新しい鴉天狗が降りてくる。

 

 

「どうもー! 清く正しい『文々。新聞』でーす!」

 

「なんだ、ブン屋じゃない。 新聞はもう間に合ってるわよ。」

 

「もぉー霊夢さーん! ブン屋じゃなくて射命丸文(しゃめいまる あや)です! 何度言ったら覚えてくれるんですかー!」

 

「はいはい、で要件は何? 私疲れてるからインタビューは無しよ。」

 

「そうです! インタビュー! 確かこの異変では陰に隠れた功績者が居ると聞いて飛んできました! いやー! 上司に押し付けられた仕事を片付けるのに時間は掛かりましたが、この通り! 幻想郷最速の名は誰にも負けてないってことですよー!」

 

 

ぷんぷん、と聞こえてきそうな仕草から一気に顔を輝かせて、私に詰め寄り、しまいには上司の愚痴と自分の自慢をしてくる。正直こうなると面倒くさいので、全部酒呑に放り投げる。

 

 

「もう一人の功績者だったらそこにいるわよ?」

 

「あやや! そうですか! 貴方が功績者だったのですね! 早速ですが取ざい、を·····」

 

 

酒呑を見つめたと思ったら時が止まったかのようにピクリとも動かなくなる。そして、ブリキ人形のようにギギギッ、と若干顔を上にずらし、酒呑の角を見たと思ったら再びギギギッと酒呑の顔に視点を戻す。

 

 

「あ、あのー·····。もしかしなくても、貴方様の種族は鬼ー、だったりしませんかー?」

 

「ほやで? ただのしがない鬼の妖怪や。ほな、どうする? インタビューするんやろ? ウチはいつでも構わへんで?」

 

 

先程までの威勢が嘘のように身体から大量の汗を流しながら、質問している。あ、今ヒュッて文の喉から聞こえた。

 

 

「さ、先程は無礼な真似をして申し訳ありませんでしたァ!!」

 

 

あ、土下座した。

 

 

「全然かわまへんよ? それに、さっきのそいつ等に比べらた紳士的な対応やったで?」

 

「そ、そこのやつですか·····?」

 

 

酒呑が指さした方向を見ると先程見た鴉天狗達が先程よりは回復したものの、やはり疲れているのか、肩で息をしながら佇んでいた。その様子を見ると文は先程までの萎縮していた顔を能面のように、無表情へと変える。

 

 

「貴方達? 朝から姿が見えないと思ったらこんな所で、仕事サボって何してるんですか?」

 

「ち、違うんです文様! コイツらが勝手に!」「なにィ!?元はと言えばロリっ子発見! 取材を開始する!とか言って走り出したのはお前だろうが」「「「そうだそうだ!!!」」」

 

「見苦しい言い訳はよしなさい! それでも誇り高き鴉天狗ですか!? そもそも、ロリっ子なんて一体どこに·····」

 

 

 

「〜♪」←文達に手を振る酒呑

 

 

 

「·····まさかですよね? 貴方達? 今なら嘘といえば笑って許します。 だからお願いだから目を逸らさないで!!」

 

「「「「「反省はしています! 後悔はしていません!」」」」」

 

「そもそも! 貴方達も天狗なら相手が鬼かどうかなんて分かるでしょうッ!? なんでそんな失礼な事をしたの!?」

 

「「「「「途中で気づきました! 間に合わないと思いやけくそになりました!」」」」」

 

「こ、んのお馬鹿さん達がぁ〜!!」

 

「「「「「ぎゃああぁぁぁぁぁ!!! ありがとうございまぁぁぁす!!!」」」」」

 

 

文が何処からか取り出した団扇を振ると、強靭な風が天狗達を包み彼方へと吹き飛ばす。そして直ぐに酒呑の元にダッシュし、先程より美しい土下座を魅せる。

 

 

「大変申し訳ありませんでした! 部下がとんだ無礼な真似を働きました!」

 

「気にしてへんで。少しは楽しめたしなぁ。それでインタビューせぇへんの?」

 

「そ、そんな! とんでもない! 鬼である貴方様にそんな失礼な事は出来ません! 失礼します!」

 

 

豪風と共に飛び去ってしまう文。それを見て酒呑が「取材·····」と若干凹んでいた。何を凹むことがあるのやら。

 

 

「ほら、さっさと中に入るわよ?」

 

「はぁい」

 

「おーい霊夢ー! 遊びに来たぜー!」

 

 

文が飛んで行った方向とは逆から今度は煩いのがやって来た。

 

 

「魔理沙はん。この前はおおきに」

 

「おお!確か酒呑だっけか? お前も最近幻想入りしたんだってな!? 私が弾幕ごっこについて教えてやっても良いんだぜ?」

 

「そらまた今度お願いするわ。今はもうおやつの時間やで?」

 

「そりゃ良い。あ、私の分は有るんだろうな?」

 

 

ワイワイ、ギャーギャーと女3人寄れば姦しいとはよく言ったものだ。実質煩いのはそこの2人だけだが·····。その光景を見ながら再びこの言葉を零した。

 

 

「·····平和ね」

 

 

 

 

 




はい。という訳で東方紅魔郷編は終わりました。次は妖々夢編なんですが、ホントにネタが浮かばなくて困ってます。一体次回はいつになるのやら·····


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東方妖々夢
第六話


第二章開始



※誤字脱字報告をして下さった皆様、本当にありがとうございます。作者は非常にポンコツなので今後も報告して頂けたら幸いです。



ーーー拳を振るう。

 

 

ーーーそれだけで大気は震え、余波で木々が薙ぎ倒されていく。

 

 

ーーー脚を振るう。

 

 

ーーーそれだけで大地に罅が入り、地割れとなって相手を追い詰める。

 

 

ーーーそれでもなお、相対する者の笑みは崩れない。

 

 

「·····お前、()()()()()()?」

 

 

ーーー圧倒的な暴力の嵐を前に、依然として動じないその姿勢に不気味さを感じながら、問いかける。

 

 

ーーー返ってきたのは、笑みを深めた加虐的な顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★☆ ☆★ ★☆ ☆★

 

 

 

 

 

「春ですよー!」

 

 

紅霧異変から数ヶ月、あれから色々あった·····。取り敢えず紅霧異変解決後の宴会をしたり、その宴会で改めて天狗達を引き連れた文が謝りに来たり等々·····。騒がしい夏が過ぎたと思ったら·····

 

 

「春やねぇ·····」

 

「春ねぇ·····」

 

 

リリーホワイト(春告精)が飛び回り、春が来たことを告げる。が、周りには依然雪が積もっており、その光景を見ながらポツリと呟く。

 

 

「冬やねぇ·····」

 

「冬ねぇ·····」

 

「いいえ! 春です! 誰がなんと言おうと春なんです!」

 

 

リリーホワイトが、俺らの零した言葉に勢いよく喰いついてくる。興奮しているのか、鼻息が若干当たるが、我々の業界ではご褒美です。はい。

 

 

「って言っても、この状況見なさいよ。まだ雪も積もってるし春には程遠いわよ。」

 

「うっ·····で、でも!確かに春の兆しを感じたんです!」

 

「じゃあこの状況の一体何処が春なのか教えて頂戴?」

 

「そ、それは·····その·····」

 

「『異変による春の遅延』·····と、言ったところかしら?」

 

 

リリーと霊夢が言い争っている最中に襖が開き、奥から咲夜が出てくる。手にしている瓶を無造作にこちらに放り投げ、キャッチして中をみると桜色の花弁が入っていた。

 

 

「ちょっと咲夜? 何勝手に入ってきてんのよ?」

 

「別にいいじゃない。減るもんでもないし。」

 

「私はコタツでぬくぬくするのに忙し「はい。お土産の焼き菓子。作ってきてあげたわよ。」何を突っ立ってるのさっさと入りなさい風邪ひくわよ。」

 

 

見事な手のひら返しだ

 

 

「なぁ、コントなんてしとらんでコレについての説明はないんか?」

 

「見ての通り、春の結晶よ。」

 

「結晶?」

 

「そう、その花弁こそが春という概念が詰まった結晶体。それが今幻想郷からどんどん無くなっているのよ。」

 

「へぇ、ウチにはそんな大層なものには見えへ「春ぅぅぅッ!?」」

 

 

咲夜からの説明を受けている最中に横から勢いよくリリーが横切り、過ぎた跡には手に持っていた瓶が消えていた。

 

 

「はぁ♡ 探しましたよぉ·····一体何処に隠れていたんですかぁ·····」

 

 

うへへぇ、と最早先程までの面影が全く残らないほど顔を蕩けさせ、大事そうに春の結晶が入った瓶を抱えている。

 

 

「·····ほな、この春の結晶を集めると、春が戻ってくるんやね?」

 

「そういう事、だからこそ霊夢。いえ、“博麗の巫女”に依頼するわ。この異変を解決して欲しいと。」

 

「えーめんどーくさー」

 

 

ちゃっかり咲夜に作って来てもらったクッキーを頬張りながら、怠そうに炬燵の中でゴロゴロと怠けている。それでいいのか博麗の巫女·····

 

 

「お菓子、作ってきてあげたわよね?」

 

「·····」

 

「私も着いていくから」

 

「·····はぁ、分かったわよ。私も丁度、冬には飽きてきた所だし。」

 

 

「それじゃあ、行ってくるわ。」と咲夜と共に出ていこうとするが「あっ」と何かを思い出したようで、こちらに振り返る。

 

 

「そうそう、慧音がアンタのことを呼んでたわよ?」

 

「慧音が? ウチを? 何で?」

 

「知らないわよ。行ったら分かるでしょ。」

 

 

「伝えたわよー。」と今度こそ咲夜と共に飛んでいってしまう。リリーはどうするのかと思って炬燵の方を見てみると

 

 

「クンカクンカ···うへへぇ♡ スゥ·····ハァ·····うっ! ふぅ·····」

 

 

·····さて、人里行くか·····

 

 

 

 

 

………………………………………………………………………………

 

 

…………………………………………………

 

 

……………………………

 

 

 

 

 

到着、と

 

 

「む? 来たか。」

 

「で、ウチに用ってなんや?」

 

「いや、正確には私では無いんだ。ある人から君を連れてきてくれと仲介人として頼まれてな。」

 

「ある人?」

 

「ああ。そこら辺の詳しい話も含めて着いてから話すよ。」

 

 

待っていたであろう慧音は歩き出し、俺もそれに着いて行く。見えてきたのは超がつくほどの立派なお屋敷。·····なるほどねぇ

 

 

「さて、着いたぞ。」

 

 

屋敷について早速使用人と思われる人物に案内され、部屋の前に着く。すると、中から「どうぞ·····」と声がするので慧音と共に部屋に入る。そこには、此方を見つめる一人の美少女が美しい正座をしながら待っていた。

 

 

「お待ちしておりました。私、稗田家九代目当主を努めさせて頂いております。稗田阿求(ひえだのあきゅう)と申す者です。どうぞ宜しくお願い致します。」

 

 

挨拶と同時に綺麗に頭を下げるあっきゅん。

 

 

「この度、お越しいただいたのは他でもありません。私が編纂している『幻想郷縁起』に貴方様の事を載せたいと思っております。ご協力をお願いしたいのですが·····」

 

 

·····か、硬っ苦しい

 

 

「別にええけど、一つ条件つけるわ。」

 

「何でしょうか?」

 

「敬語辞めてほしいんよ。 さっきから肩凝ってしゃあないねん。」

 

「し、しかし·····」

 

 

俺の条件に渋っていると、思わぬところから助け舟が来る。

 

 

「良いじゃないか阿求。その条件を飲めば。」

 

「慧音さん·····」

 

「昨日だって「ああ! 緊張するー! どうしよう·····私敬語苦手なんですよねー」っと言っていたではないか?」

 

「慧音さんッ!?」

 

 

おお。なら丁度良いな。あっきゅんも苦手な敬語を使わなくていい。俺もむず痒くなくなる。win-winの関係じゃねぇか。

 

 

「ほな、そういう事でよろしゅうな?」

 

「む、むむむ·····分かりました。でも! 後から敬語に直せって言われても遅いですからね!」

 

 

こほん。と一度咳払いをしてからこちらに向き直り、質問を開始するあっきゅん。

 

 

「まず、貴方の種族を教えてください。」

 

「鬼」

 

「(鬼、ですか? 確か初期の方の書物に載っていたはず。後で見返しますか·····)では次に、貴方の二つ名は何ですか?」

 

「二つ名ねぇ·····ウチそんな大層なモンあらへんで。」

 

「(こっちで適当にでっち上げますか·····)分かりました。 じゃあ人間についてどう思いますか?」

 

「人なんてどうでもええわ。ウチはウチのやりたいようにやるだけやさかい。」

 

「··········ふむ、分かりました。(危険度は高、人間友好度は低·····と言った所でしょうか? いえ、でもこうして話もしてくれますし雑とはいえ此方に気を使ったような発言もしばしば····友好度は普通にしておきましょうか。)」

 

 

だいぶ考えていた、今。

 

 

「では最後に·····()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

俺の能力、か·····

 

 

「知らんで?」

 

「なるほど、知らな·····え?」

 

「ウチ、最近幻想郷来たばっかやねん。その程度の能力についてなんも知らんねん」

 

 

嘘は言っていない。()()程度の能力は知らないからな。

 

 

「なるほど·····では、私が教えよう」

 

「慧音さん?」

 

「いや、正確には“能力を知るための方法”なんだが·····」

 

「へぇ、具体的にはどうすればいいん?」

 

 

コップに水溜めて葉っぱでも浮かべるのか?

 

 

「そうだな····まず、胡座をかいて、目を瞑り、胸の中心に霊力·····酒呑の場合だと妖力を集中させる。そうすれば心の中に薄らとだが見えてくるはずだよ。所詮、瞑想というやつだな。」

 

 

魔力····じゃない、妖力を言われた通り胸のあたりに集中させる。すると、能力と思われる名前が薄らとだが確かに浮かんでくる。

 

 

「·····『酒に融かす程度の能力』」

 

「酒に·····融かす·····ですか····(あまり危険ではなさそうですね·····)」

 

「具体的には何が出来るんだ?」

 

「そうやねぇ·····実際試した方が速いやろ」

 

 

能力名と同時に、使い方も分かったので試してみる。阿求に言って近くにあった要らない紙と器などを貰う。そして、器の上に紙をのせ能力を発動すると、紙だったものはドンドンと溶けていき、最終的には透き通った液体になってしまった。

 

 

「なるほど、いわば酒に変える能力ですか。」

 

「これなら酒に困らへんなぁ」

 

 

 

 

 

………………………………………………………………………………

 

 

…………………………………………………

 

 

……………………………

 

 

 

 

 

「酒呑さん。今回はありがとうございました。お礼も少ししか出来ませんが·····」

 

「別に気にしいひんで、こんだけ貰えれば十分や」

 

 

お金は要らないと言うと、「なら、これだけでも」と、勢いに負けて、今人里で一番人気のお菓子をもらってしまった·····霊夢にあげたらどんな反応になるのだろうか?

 

 

「ほな、またな」

 

「ええ。ありがとうございました。」

 

「じゃあ、気をつけて帰りたまえ」

 

 

随分と時間が掛かったもんだ·····でも貴重な体験も出来たし、俺の程度の能力についても分かったことだし良しとするか。にしても·····使い方次第ではチートじゃねぇか?·····と、もう着いたのか。

 

 

「博麗神社に着いた事だし、色々試してみよか。」

 

「へぇ? 一体何をだい?」

 

「能力の効果範囲に、·····」

 

 

 

 

 

 

 

ーーー待て? 俺は今、誰と話している?

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、脇腹に激痛が走り視界は反転し、身体が一瞬浮いたと思ったら直ぐに数回地面に叩きつけられる。直ぐに体勢を立て直し、攻撃してきたであろう人物を目のあたりにし、硬直する。

 

 

「なら、アタシが試してやるよ? 嗚呼、心配は要らない。どうせすぐに使えなくなるんだから·····」

 

 

おいおい、冗談だろう·····。

 

 

「アタシの名前は伊吹萃香(いぶきすいか)()()()()()()()()()。」

 

 

 

 




遂に酒呑ちゃんの“程度の能力”公開です。私の頭の悪さではこれが限界です。(泣)
どういった使い方があるか皆さんも想像してみてください。フフフ····


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第七話

書いてて分かった。私には戦闘描写の才能は無い。




※前話で、阿求が鬼の事を知らないのは可笑しいんじゃないかというご指摘を多く受けたので、修正がてら今回のネタに使わさせていただきました。


「なんですか! これ!」

 

 

酒呑さんが帰った後、改めて調べてみたら····出てくる情報は全て驚愕すべきものしか無かった。曰く、最強の人攫い。 曰く、最強の種族。曰く、最強の豪酒·····。嘘か誠か、出てくる鬼の情報はどれも“最強”の称号ばかり。昔の自分は酒に酔って話を大きくし過ぎただけなのでは? と、疑ってしまうほど、調べれば調べるほど鬼という存在が出鱈目な存在にしか見えてこなかった。

 

 

「見つかったのかい、阿求?」

 

「あ·····慧音さん。すみません。没頭してしまって····。資料探しを手伝って貰ったというのに。」

 

「いや、気にしなくていい。で、どうだった?」

 

「はい。あるにはあったんですが·····」

 

 

そう言って渡した資料に軽く目を通すと、むぅ·····、と唸ってしまった。

 

 

「私が歴史を調べた時はここまで大きく鬼の事は評価されてなかったぞ?」

 

「で、ですよねー! こんな妖怪がいてたまるかって話ですよね!いやぁ、昔の私は寝ぼけてたんですよ! きっと!」

 

 

きっと私はその時、乾いた笑みを浮かべていただろう。そしてふと、疑問に思うことがある。

 

 

「慧音さん。もし、もしですよ? ここに書いてある最強の妖怪である()()()()()()()()一体どうなると思いますか?」

 

「すまない。私には想像もつかないことだ。」

 

「そ、そうですよね。すみません。変な事聞いちゃって·····」

 

「·····そうだな。ただ、ここに書いてあることが全て本当で、鬼同士が戦ったとするならば·····」

 

 

 

ーーーきっと、尋常ではない被害が出ることだろう。

 

 

 

 

 

★☆ ☆★ ★☆ ☆★

 

 

 

 

 

「あたしの名前は伊吹萃香。()()()()()()()()()。」

 

 

待って。

 

 

え·····いや、ホント、ちょっと待って? 何故? Why? 一体何が起こったというのだ·····?

 

 

「アンタも鬼を·····しかも酒呑童子を名乗るんだったら分かっているよな?鬼がどういう事が大っ嫌いなのかって事をよぉ?」

 

 

あっ·····

 

 

 

 

 

ああぁぁぁそうだったぁぁぁ!!!伊吹萃香って酒呑童子をモチーフにしてんじゃんッ!? そりゃ萃香から見れば自分を名乗る大馬鹿者なんだから、殺りに来てもおかしくないよねッ!?

 

 

「私達は嘘が大っ嫌いでねぇ? その上、自分が鬼を名乗って、挙句の果てには酒呑童子を名乗る? そうかそうか·····」

 

 

ッ!? 萃香の妖力が飛躍的に上がって·····不味ッ!?

 

 

「愚弄するのも大概にしろ、小娘。」

 

 

消えた。

 

 

 

直後に横から感じる強い衝撃。

 

 

「ッ!? づ、ぅ·····ッ!?」

 

「楽に死ねると思うなよ? 鬼の逆鱗に触れた事·····どういう事か、その身で味わえ」

 

 

違う! 消えたんじゃない! 目に見えないほど小さくなっているだけかッ!? ってか味わうどころかそのまま昇天する勢いですけどこれッ!?

 

 

「ッ、そぉらッ!?」

 

「ッ!? へぇ·····腕っ節はアタシ達()に匹敵する力を持っているようだね·····」

 

 

何とか小さくなった萃香を見つけて、拳を突き出す。同様に萃香も一撃繰り出していたようで、互いに拳をぶつけ、衝撃波が周囲の石畳を抉り返す。それを数度繰り返しているうちに萃香が罵声にも似た疑問をぶつけてくる。

 

 

「どうしてそれだけの力がありながら態々自身を鬼と偽るッ!?」

 

「どう、も! こうも無いわ·····ッ! ウチは酒呑童子! それ以上でもそれ以下でもないッ!?」

 

「だからァッ!? それが嘘だっつってんだろォッ!?」

 

 

小さくなったり、大きくなったりを繰り返し、能力を巧みに使い此方を撹乱させながら追い詰めてくる萃香。相手の気迫に押され、一撃を顔に食らってしまい後ろへ数歩タタラを踏んでしまう。

 

 

「酒呑童子はアタシの昔の名だッ!あの醜い人間共に騙され! ()()()()()()()()()()()()()()。 私の罪を·····勇儀や紫にも話したことのない事を何故お前が知っているッ!?」

 

 

··········

 

 

「··········知らんわそんなモン。」

 

「何?」

 

「ウチはウチや。他の誰でもない。昔悪さをして、金時の小僧や頼光の牛女に殺された·····酒呑童子。それがウチや。」

 

 

だってそれ以外説明の仕様がないんだもん。

 

 

「殺され·····お前、何を言って·····いや、嘘はついてない?·····ッ! そうか、ハハッそうかそうか! そういう事だったのかッ!? アハハハハッ!?」

 

 

お、おおぅ? なんか知らんがいきなり爆笑し始めたぞ?

 

 

「いやぁ参ったねこりゃ·····そういう事ならお前さんも早く言えよ。これじゃあ私が馬鹿みたいじゃないか?」

 

 

ん? んん〜? 笑い終わったと思えば今度は納得して·····一体なんだってばよ?

 

 

「で、アンタは能力を試したいんだっけ? 良いよ良いよ! 何時でも掛かってきな!」

 

 

いつの間に再び戦闘態勢に入っている萃香さん。ちょっと待ってね? 頭ん中混乱の嵐に包まれているわけよこっちは?

 

 

「来ないのかい? なら、コッチから行くよ!」

 

 

地を蹴り、一直線に此方へ向かってくる萃香·····先程より何か早くなってません?

 

 

「おらァッ!」

 

「(大振りはフェイク·····本命は、脚ィッ!)」

 

 

上段から下段へ向けて大振りの右、そのまま勢いを殺さずに踵落としを繰り出してくる。繰り出してきた大振りは避け、踵落としは腕をクロスし、受け止め防ぐ。

 

「ッ!? やっぱアタシをモチーフにしているだけはあるねッ!」

 

「なんの話しやさかいッ!?」

 

「気にすんな! こっちの話だ!」

 

 

依然にして攻撃の手を緩めない萃香、攻撃をいなしながら笑顔を見せる。ほら、俺の笑顔見て? 今の俺(外見だけ)美少女だから。 ラブ&ピース、 平和が一番! 暴力いくない!

 

 

「お前·····ナニモンだよ?」

 

 

え?

 

 

「これだけの殺気や力を前に笑顔を浮かべるなんて·····くぅぅ! 久々に滾ってきたァッ!?」

 

 

どうやら相手をやる気にさせてしまったらしい。うん、逆効果。酒呑失敗テヘペロ☆

 

 

「行くぞォッ!!!」

 

 

ちっきしょー! やってやらぁー!

 

 

 

 

 

★☆ ☆★ ★☆ ☆★

 

 

 

 

 

「新しい鬼が外から来たって?」

 

 

久々に紫と会って話してみたら、随分と面白そうな話を持ってきてくれたもんだ。コイツは酒の肴になりそうだね。

 

 

「相当珍しい奴だな、ソイツ。·····鬼なのに、現代に残ってたんだろ? 随分とモノ好きな奴なんだろうな?」

 

「下っ端の鬼どころじゃないわ。少なく見積っても、私達と同じ大妖怪クラスはあるわ。」

 

「へぇ? 紫がそこまで言うのは珍しいね。ソイツの名前とか分かるのかい?」

 

「確か·····酒呑童子と名乗っていたわ。」

 

 

ーーーーーーあ゛?

 

 

「今、ナンテ言った?」

 

「(ッ!? 萃香がキレて·····?)酒呑童子、と·····」

 

 

成程ねぇ·····

 

 

「ちょっくら、挨拶しに行ってくるよ。」

 

「萃香·····?」

 

「それで、その酒呑童子って奴はどこに居るんだい?」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「今は博麗神社に居候しているはずだわ。」

 

「そうかい·····ありがとよ。」

 

「喧嘩は程々に、くれぐれも博麗神社付近ではしないでよね。」

 

「大丈夫だって紫。」

 

 

ーーー喧嘩なんて生易しいモンじゃねぇから。

 

 

そのまま能力を使い、直ぐに博麗神社へと移動する。境内を見てみると、紫の言っていた特徴に当てはまる存在が居た。

 

 

「博麗神社に着いた事だし、色々試してみよか。」

 

「へぇ? 一体何をだい?」

 

「能力の効果範囲に、·····」

 

 

その言葉を聞き終わる前に奴の脇腹に向けて、蹴りを放つ。相手の身体は、まるで鞠のようにポンポンと跳ねるが、直ぐに体勢を立て直して此方へ向き直してくる。

 

 

「なら、アタシが試してやるよ? 嗚呼、心配は要らない。どうせすぐに使えなくなるんだから·····。アタシの名前は伊吹萃香。()()()()()()()()()

 

 

相手は驚きのあまりどうやら硬直しているみたいだ。

 

 

「アンタも鬼を·····しかも酒呑童子を名乗るんだったら分かっているよな?鬼がどういう事が大っ嫌いなのかって事をよぉ?」

 

 

嘘は勿論。卑怯なことも大っ嫌いだ。

 

 

「私達は嘘が大っ嫌いでねぇ? その上、自分が鬼を名乗って、挙句の果てには酒呑童子を名乗る? そうかそうか·····」

 

 

まぁ、取り敢えず

 

 

「愚弄するのも大概にしろ、小娘。」

 

 

殺すか。

 

 

 

 

能力で身体を小さくし、本気を出して相手の背後に回り、渾身の打撃を加える。

 

 

「ッ!? づ、ぅ·····ッ!?」

 

 

ッ!? 無意識か? 打撃が当たる直前で後ろに飛んでダメージを軽減しただと?

 

 

「楽に死ねると思うなよ? 鬼の逆鱗に触れた事·····どういう事か、その身で味わえ」

 

 

まぁ、その分苦しむのはコイツだから此方もやりやすい。同じ方向から手を加える。が

 

 

「ッ、そぉらッ!?」

 

「ッ!? へぇ·····腕っ節はアタシ達鬼に匹敵する力を持っているようだね·····」

 

 

何度か拳を交わす事に、此奴から伝わる力にふつふつと怒りが湧いてくる。

 

 

「どうしてそれだけの力がありながら態々自身を鬼と偽るッ!?」

 

「どう、も! こうも無いわ·····ッ! ウチは酒呑童子! それ以上でもそれ以下でもないッ!?」

 

「だからァッ!? それが嘘だっつってんだろォッ!?」

 

 

此奴から感じる怒りの方が大きい為、良い一撃が入った喜びを感じる暇もない。

 

 

「酒呑童子はアタシの昔の名だッ!あの醜い人間共に騙され! ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

そうだ·····あの時私は、あの毒酒を飲み、体の自由を奪われて·····能力を使って必死に逃げだした。

 

 

「私の罪を·····勇儀や紫にも話したことのない事を何故お前が知っているッ!?」

 

 

その時居た仲間は全員死んだ。そうだ·····コレは私の罪だ。けど、人間達を言い訳にして、酒呑童子の名を捨てて、その罪から逃れようと·····逃げようとしていた。

 

 

でも、

 

 

それでも、

 

 

その名(酒呑童子)を使われると、哀しいんだよ。

 

 

·····死にたくなるんだよ。

 

 

 

 

 

「··········知らんわそんなモン。」

 

「何?」

 

「ウチはウチや。他の誰でもない。昔悪さをして、金時の小僧や頼光の牛女に殺された·····酒呑童子。それがウチや。」

 

「殺され·····お前、何を言って·····いや、嘘はついてない?」

 

 

嘘はついてないとなると、コイツは本当に鬼·····それも酒呑童子? いや、でも酒呑童子は本来私の事だ。·····ッ!? そうかッ!?そういう事か!

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

(酒呑童子)という鬼を殺しきれなかったあのグズ達は、都に·····帝にすら嘘をついたんだな!「討伐した」と! 「殺した」と! そうだよな。本気で私を殺しに来て、「殺せませんでした」なんて奴らのメンツが丸潰れだもんな!その間違った伝承から新たにコイツが生まれたのか!

 

 

·····嗚呼、そうか·····紫は全部気づいていたんだな。気づいた上で、私にこうやって過去とのケジメを付けさせてくれる場を用意してくれたんだ。

 

 

「いやぁ参ったねこりゃ·····そういう事ならお前さんも早く言えよ。これじゃあ私が馬鹿みたいじゃないか?」

 

 

ここまで全て紫の掌の上ということか·····我が友とはいえ恐ろしいよ。

 

 

「で、アンタは能力を試したいんだっけ? 良いよ良いよ! 何時でも掛かってきな!」

 

 

アタシが戦闘態勢を解除したのが原因か。混乱しているのが目に見えてわかる。

 

 

「来ないのかい? なら、コッチから行くよ!」

 

 

迷わない。被害者とはいえ関わったのは私だ。なら、コイツとのケジメは私が付けなきゃ駄目だろう。

 

 

「おらァッ!」

 

 

上段から下段へ向けて大振りの右、そのまま勢いを殺さずに踵落としを繰り出す。が、バレていたのか軽く避けられ、踵落としは腕を十字に組まれ防がれる。

 

 

「ッ!? やっぱアタシをモチーフにしているだけはあるねッ!」

 

「なんの話しやさかいッ!?」

 

「気にすんな! こっちの話だ!」

 

 

おかしい。先程より攻撃は威烈さを増すばかりな筈なのだが、コイツは笑みを深めていくばかりだ。

 

 

「お前·····ナニモンだよ?」

 

 

ぞくっ、と背中を嫌な汗が垂れるのを感じる。

 

 

「これだけの殺気や力を前に笑顔を浮かべるなんて·····くぅぅ! 久々に滾ってきたァッ!?」

 

 

どうやらこれは、私も本気でやらなきゃ駄目みたいだね。

 

 

「行くぞォッ!!!」

 

 

これならどうだ?

 

 

ーーー四天王奥義「三歩壊廃」

 

 

0.007

 

 

ーーー一歩、足に力を極限まで貯める。

 

 

0.053

 

 

ーーー二歩、一気に爆発させ、相手の懐に踏み込む。

 

 

0.737

 

 

ーーー三歩、能力で大きくした腕を叩きつける。

 

 

0.999

 

 

ドガァァァン!!! と、その力の強大さ故か綺麗に整備されていた石畳は崩れ、鳥居に至っては最早原型を留めておらず、余波で倒れた木々がその惨状を物語っていた。

 

 

「流石に·····やり過ぎたか?」

 

 

能力により巨大化した腕を退けると·····

 

 

「·····居ない?」

 

 

そこには倒れた相手の身体ではなく()()()()()()()()()()()()()()()しかなかった。

 

 

その時だった、

 

 

「ッ!? がぽぁッ!?」

 

 

地面から腕が出てきて引きずり込まれたと思ったら、数ヶ所から鈍い痛みを感じる。そして、首出せたと思ったら、先程まで水のようだった地面は再び土と石でできた道に戻っていた。

 

 

「どうや? これでウチの勝ちや」

 

 

動けない。いや、本気を出せばここから抜け出すことなど造作もないが、ここまで油断してやられたのだ。実質こっちの負けと言ったところだろう·····それに

 

 

「(負けたのに、妙に清々しいな)」

 

 

過去のケジメを自分なりにつけれたおかげか、まるで朝の起床のように心が軽かった。

 

 

「参った、降参だよ。」

 

 

 

 

 

★☆ ☆★ ★☆ ☆★

 

 

 

 

 

「参った、降参だよ。」

 

 

死ぬかと思った。死ぬかと思った。(二回目)

 

 

もう萃香の腕見た瞬間に「避!? 否!? 死!?」を実感したね。咄嗟に地面を酒に変えて逃げたからいいものの·····。でも、まぁ、結果的に能力の範囲と酒にした物を戻すことが出来るっていう融通ががきくことがわかったし良しとしますか。

 

 

「なぁ? そろそろここから出して欲しいんだけど?」

 

「·····襲わへん?」

 

「襲わん襲わん。鬼は嘘をつかないんだよ。」

 

「·····さっき殺すって」

 

「あれはジョークだからセーフ」

 

「·····てか自分で抜け出せるやろ」

 

「めんどい、疲れた、出して。」

 

 

こ、の·····ロリ鬼めッ! 良いだろう、大人をからかうとどういう事になるか教えてやる!

 

 

「そうそう、そうやって丁寧に出して·····ってどこ触ってるんだいッ!? ひゃっ!? わ、脇はやめろぉ!? う、んっ! そこ、だめぇ!?」

 

 

ふぅ、いい事したナー。

 

 

「はぁ、はぁ·····後で覚えとけよ。」

 

 

なんかの事だかナー?

 

 

「まぁ、これでーーーッ!?」

 

 

 

刹那、空気が変わった。

 

 

 

正確に言えば、僅かだが、幻想郷全体に“死”の気配が漂い始めた。極限まで集中してやっとわかる程度だが一つ確信した事がある。

 

 

ーーーこのままでは幻想郷がヤバい

 

 

「·····成程、これが紫の言っていた妖怪桜の力か」

 

 

知っているのか雷電!?

 

 

「冥界に存在する一本の桜の妖怪が化け物級に強いってのは聞いたかな? 止めるにしても、このままだとまずいね·····」

 

 

それってもしかして西行妖の事か!? え? 嘘だろ!? だって原作じゃあ封印とかれてないじゃんッ!?

 

 

「はよ行って止めな!」

 

「とは言ってもアンタ行き方知ってんのかい?」

 

 

確か知識だと、空に大きな穴が開いていて、そこから繋がってるんじゃなかったっけ?

 

 

「アンタ一人で行くつもりかい。」

 

「それでも、このままやと幻想郷が危ないやろ。なら行かな」

 

 

俺の存在も危ねぇッ!?

 

 

「面白そうだし。アンタについて行くよ」

 

「ええんか?」

 

「アタシ達はもうダチだろ? なら、最後まで付き合ってやんよ。」

 

 

マジか! 萃香さんが来てくれるなら、心強いでェッ!

 

 

「ほな、直ぐに向かうで!」

 

 

脳裏にふと、一人の少女が浮かぶ。無愛想で、不器用で、それでいてお節介で優しい楽園の素敵な巫女。

 

 

「(待ってろよ! 霊夢!)」

 

 

冥界へ向けて、二人の鬼が博麗神社を後にした。

 

 

 

 

 

 

 




紫「え? 何それ知らない。」
※紫さんからしたら萃香だったらこの鬼知ってんじゃね? という軽い気持ちで聞いただけです。


萃香が逃げ延びる(この時点で萃香生存)

武士側「やべえ殺せなかったって言ったら怒られる·····嘘でもいいから殺したってことにしよ。」

大半の人がこの嘘の伝承を信じたが、武士本人達は萃香が生きている事を知っているので恐れを抱いていた。

その恐れから酒呑童子が生まれた。と萃香は解釈した。

と、解釈してください。自分でもかなり強引だと分かっていますがこうでもしなきゃ無理だったんですぅ·····泣



※詳しく調べてみると阿求の能力は実は秘術のうちの一つで厳密に言うと能力ではないらしいですね。なので今回は独自解釈という形で前世の記憶はやや曖昧といった風に捉えさせて頂きました。完璧に憶えているのではなく「あー確かそんな種族いたなー」程度の設定です。


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第八話

壁|ω・`)

壁|ω・`)……

壁 |)彡 サッ



★☆ ☆★ ★☆ ☆★

 

 

 

「あー、もう! 本っ当に寒いわねぇッ!」

 

 

取り敢えず、博麗神社から飛び出したは良いものの、明確に向かうべき場所を決めていなかったせいで、現在寒さと格闘する為になっていた。

 

 

「で、霊夢。貴方一体何処へ向かっているの?」

 

「それが分かってるなら苦労しないわよ·····」

 

「あら? 博麗の巫女である貴方でも今回の異変はお手上げ状態かしら?」

 

「あのねぇ·····。私だって人の子なのよ。そんな簡単に異変をホイホイ解決出来ないわよ。」

 

「確かにそうね。でも·····。」

 

 

チラリと目線を横に向け、その方向を見ると

 

 

「きゅ~」「ぐむむむ·····!」

 

 

氷精と妖怪が一匹ずつ倒れていた。

 

 

「敵を一瞥もせずに撃墜する貴方は本当に人の子かしら?」

 

「あら? 私ほど胸を張って普通に人間やってる人なんて他にいるのかしら?」

 

「取り敢えず貴方は人里で一所懸命働いている普通の人たちに謝りなさい。」

 

 

内容が物騒な会話を繰り返していると氷精の方が「うがーっ!!」と飛び起き、頭をブンブンと勢いよく振ったと思ったら、私たちの方をキッ、と睨むとその小さい人差し指を此方に向けて宣戦布告とも呼べる宣言をしてきた。

 

 

「やい! あたいともう一回しょーぶしろ!」

 

「呆れた頑丈さね……。」

 

「加減していたとはいえ、あれだけの弾幕を受けても平気なんて冬時の氷精は頑丈なのね?」

 

 

最も、一度負けているのだが。

 

 

「あたいの事をむしするなー! くらえ!『アイシクルフォール』!」

 

 

こっちの話などまるで聞いておらず、スペルカードを使って攻撃してくる。私達の側面に、まるで滝から水が流れるような形で氷柱を模様した様な弾幕が挟むような形で迫ってくる、が·····

 

 

「前に移動するだけで避けれるのよね、 これ。」

 

 

側面からの攻撃は凄いが、それだけ。咲夜に至っては上に飛ぶだけで回避していた。

 

 

「むっがー! なんでよけるんだよ! あたれよ!」

 

「何バカなこと言ってんのよ……」

 

 

むっきー! と、空中で地団駄を踏むという器用な事をしている相手に対して魔が差したのか、呆れながらもアドバイスを飛ばす。

 

 

「ねぇ、アンt「あたいにはチルノって名前があんの!」……チルノ。あんたの弾幕は左右しか張られてないから簡単に避けられるのよ。もっと工夫して張らないと今みたいに簡単に避けられるわよ。」

 

「なにー!? あたいの完璧なスペルカードに弱点なんてあるわけないだろう!」

 

「なら、せめてもう少し弾幕の数を増やしなさい。どんだけ避けやすくても、綺麗さだけは損なわないようにしなさい。」

 

「む? むむむ……。しょーがないな。けんとーしといてあげる!」

 

「……はぁ、で本題に入るけどアンタこの異変の犯人もしくは手掛かりかなんか知らない?」

 

「異変? そういえば今年は冬が長いってレティが言ってたような……」

 

「レティ? ……嗚呼、そこに転がってるあれの事ね。」

 

 

 

「··········」←あれ

 

 

 

「ねぇ、霊夢? 私たちの前に現れたあれが最初に言ったセリフ覚えてる?」

 

 

何時の間にか私の傍に寄って来ていた咲夜が私に聞いてくる。

 

 

『くろまく~』

 

 

「ってんな訳ないでしょう。黒幕がこんな雑魚な訳ないでしょう?」

 

「ふふっ、言ってみただけよ。私もこんな呆気ない異変解決なんて御免だわ。あなたもそう思うでしょ? 黒幕さん?」

 

「痛っー。あんた達容赦ないわねぇ……。で、いつから? 私に意識があるって気付いてたの?」

 

 

フラフラ~、っと今にも落ちそうな不安定さを残しながら私たちの傍まで飛んでくる。

 

 

「そうね、そこの氷精がスペルカードを使ったあたりかしら?」

 

「殆ど最初からじゃない……。あーあ、こりゃ敵わんわ。」

 

「ほら、アンタ達負けたんだから、知ってる情報全て吐きなさい。」

 

「おー怖。今代の博麗の巫女ってこんなに野蛮なのかしら? まぁいいけど……。そうね、あんた達は『春の欠片』って何か知ってる?」

 

「花弁を模した様な形をした春という概念の塊。ある程度集まると『春の結晶』と化す物でしょ?」

 

「お、よく知ってるねー。もしかしてそこのメイドさん実物持ってたりする?」

 

「えぇ、勿論。これの事でしょう?」

 

 

咲夜が新たに大量に瓶詰めされた『春の欠片』をレティに見せる。

 

 

「そうそうそれそれ。ふーん、結構集まってるんだ……。オッケー、それを宙に撒きな。そしたら後はソレが導いてくれる筈さ。」

 

 

言われた通りに欠片を瓶から放ると天空へ(いざな)われるかのよう上へ上へと登っていく。二人にお礼を残し、その場を後にし、ぐんぐんと登っていく欠片を追って行く。気が付けば、霧がかっていた視界は晴れ、雲の平原と呼べるほど辺り一面には何もなかった。

 

 

「……いや、違う」

 

 

空に……ぽっかりと孔が空いていた。

 

 

「欠片が……」

 

 

追っていた欠片はその孔に吸い込まれていき、まるでその孔に飛び込めと示唆されているように感じた。……私の勘も告げている。この先に真の黒幕がいることを……

 

 

「咲夜、帰るなら今の内よ。この先は生者には優しくなさそうよ。」

 

「あら? 自分の事でなく私の心配? ……もしかして怖気づいたとかじゃないわよね?」

 

「冗談言えるだけの余裕があるなら大丈夫ね。……覚悟はいい?」

 

「いつでも。」

 

 

そうして私たちはどちらが言うでもなく同時に、飛び込んだ。暗い道が続き、明らかにこの世の物ではない白くフワフワしたものが辺りを漂い始める。咲夜はその光景が珍しいらしくフワフワと飛ぶソレに釘付けのようだ。

 

 

「……『人魂』?」

 

「あまり迂闊に近づくんじゃないわよ。霊力のない人は憑かれたりでもしたら最悪死ぬんだから。私たちも長時間触れてたらどうなるか「あ、ひんやりしてて感触はモチモチしてるわ」って言った傍からッ!?」

 

 

近くにいた二つの人魂の内小さい方をとっ捕まえて腕の中でギューッとした後、指でツンツンと人魂をつつく咲夜。なんとか抜け出そうとしている小さな人魂に、もう一つの大きな人魂は咲夜の周りでオロオロと飛び回っているばかりだ。

 

 

「ちょッ、ばッ! 早く放しなさい! 悪霊だったらどうするつもりよッ!?」

 

「普通の人だったら危険なんでしょう? だったら私は大丈夫よ。だって普通の人じゃないもの。」

 

「そう言う事じゃ……ッ!? いいから早く放しなさいッ!?」

 

 

そういうと咲夜は「むぅー……」と若干拗ねながら渋々と人魂を放した。解放された人魂は先程の大きな人魂と合流し、そそくさと退散する。咲夜の行動に呆れながら先へ進むと先程とは一転して風情ある石詰めの道が現れ始める。

 

 

「……待って。階段の上に誰かいる。」

 

 

咲夜を手で制し、上を見上げる。そこには銀髪ショートカットの少女が立っていた。手には二口(ふたふり)の刀が握られ、その刀身からは微かな妖気が放たれており、その刀が業物だと素人でも一目でで分かるほど美しかった。そして何よりも特徴的なのが少女の周りを漂う一際大きな人魂だった。

 

 

「去れ、侵入者よ。此処は冥界……生者が気軽に来ていい場所ではない。」

 

「生憎と私はこの異変を終わらせるためにここに来たの。帰れと言われてはい、そうですかなんて頷けるわけないでしょう。」

 

「……」

 

「……咲夜?」

 

 

お祓い棒を構え、何時でも戦闘に入れる私の横を通り抜けていく咲夜。

 

 

「ここは私に譲りなさい。」

 

「はぁ? アンタ何を言って……?」

 

「適材適所ってやつよ。貴方の目的は異変解決。そこの亡霊少女を倒すことではないでしょう? それに……」

 

 

一旦、ナイフを構え

 

 

「彼女には、何故か負けたくないの。」

 

「……あー。分かったわよ。此処は譲ってあげるわ。じゃあ後で追いつきなさいよッ!。」

 

「ッ、行かせると思って……ッ!?」

 

「貴方の相手はこの私、あの子を追うのは私を倒してからにしてね。」

 

「くッ! 面倒な……ッ!?」

 

 

その場を咲夜に任せ私は先にぐんぐんと進んでいく。そして見えてくるのは昔話にでも出てきそうな程大きな屋敷と、大量の『春の欠片』が吸い込まれていく巨大な桜の木だった。

 

 

「……()()()()?」

 

「えぇ、そう。その木……西行妖(さいぎょうあやかし)が咲いているところは誰も見たことが無いの。」

 

「ッ!?」

 

 

唐突に後ろから声が聞こえたので振り向いてみると……

 

 

「だから咲かせてみようと思ったの……。幻想郷全土の春を使ってね。」

 

「ッッッ……!!!」

 

 

 

〝死〟

 

 

 

その姿が、その仕草が、その言葉が、その目が、その口が……あらゆる動作が此方に明確な死を連想させる『理不尽』が人の形をして立っているように感じた。

 

 

「ところで、ウチの妖夢はどうしたのかしら?」

 

「……あの二刀流剣士ならウチの相方が相手してるわよ。」

 

「そう、ならいいわ。」

 

「随分余裕ね、自分とこの可愛い可愛い従者が心配じゃないのかしら?」

 

「心配無用よ。まだまだ未熟な部分もあるけど、後れを取るほどではないわ。……さて、改めまして此方白玉楼当主を務めています西行寺幽々子(さいぎょうじゆゆこ)と申します。宜しくね?」

 

「博麗霊夢よ。この異変の黒幕であるアンタを倒しにね。」

 

 

優雅に、そして何処となく魅惑的な笑みで自自己紹介をしてくる幽々子。対して私は……

 

 

「先手必勝ッ!」

 

 

不意を突き、先に弾幕を張る。放たれた弾幕は真っ直ぐに幽々子の方へ飛んでいき、硬直しているのかあと数センチといったところまで弾幕が迫る。

 

 

「あらあら、危ないわねぇ。」

 

「ッ……やっぱそう簡単に上手くいくわけないか。」

 

 

どうやら当たる直前に幽々子も弾幕を出していたようだった。幽々子が放った弾幕を確認すると同時に先程抱いたイメージが再び脳裏を過ぎる。

 

 

「(嗚呼……さっきの〝死〟のイメージの正体はこれか……)」

 

 

蝶の形を彩った弾幕がまるで意思を持ってるかのように動き回る。

 

 

「この弾幕が気になるって言った顔ね? この弾幕には私の能力である『死を操る程度の能力』を付与させてるの。」

 

「ッ、弾幕ごっこのルールにはッ!?」

 

「知ってるわ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……」

 

 

蝶を彩った自由度の高い弾幕、それに加えて此方の弾幕を掻き消してくる凶悪な能力……

 

 

「(……でも、それだけだ。)」

 

 

逆にそれさえ攻略できてしまえば、此方にも勝機は十分ある。幽々子から決して目を離さず現状確認をしながら自身の使える手札を再認識する。

 

 

「来ないの? なら今度はこっちから行かせてもらうわよ。」

 

 

今度は向こうから仕掛けてくる。弾幕を避けていく。生きていると錯覚するほどの弾幕を必死に避けていく。

 

 

「(……でも、法則は掴めてきた。後は隙を窺って……)」

 

「―――亡郷『亡我郷 -宿罪-』」

 

「―――え?」

 

 

直後、爆風。弾幕同士のぶつかりによる爆発によって視界が阻まれる。

 

 

「(独特の法則によって動く弾幕。加えて最良のタイミングにスペルカード。手応えはあったわ。)」

 

 

爆風によって阻まれてた視界がが晴れ、周りの状況が確認出来るようになる。

 

 

「……一歩も動いてない?」

 

「夢符『封魔陣』」

 

「ッッッ!?」

 

「ッち、今の一撃を避けるなんてどうなってるのよ?」

 

「どういうこと? 手応えは確かにあった。なのに何故貴方は傷一つもついていないどころか、()()()()()()()()?」

 

「ああ、それは簡単よ」

 

 

そう言って下を指さす。そこには霊夢と思われていたものが大量の御札に変わる瞬間だった。

 

 

「念を入れといてよかったわ。……こんな騙し討ち一回しか使えないからね。本当はギリギリまで使いたくなかったんだけど。」

 

「……」

 

「見誤らないでよ。人間(私たち)の力を」

 

「……そうね。正直油断していたわ。あの状況からひっくり返すだけじゃなく、反撃してくるなんて。」

 

 

一息入れる。

 

 

「だから、こっから全力で行かせてもらうわ。」

 

 

 

―――桜符『完全なる墨染の桜 -開花-』

 

 

 

先ほどのスペルカードの比にならない程の弾幕の数。針の穴に糸を通す程精密な動きを流れの逆らわずスイスイと間を潜り抜けていく。

 

 

「残念、予想済みよ」

 

「ッ!? 何故!? 初見にもかかわらずこ の弾幕量を裁けるなんて!?」

 

「勘」

 

「な、え……?」

 

 

束の間の思考、静止。一瞬とはいえ確かな隙が生まれる。

 

 

「―――隙、見せたわね」

 

 

 

―――霊符『夢想封印』

 

 

 

「(……ここからじゃあ、弾幕に能力付与する時間もないわね。)」

 

 

―――『そうね。正直油断していたわ』『だから、こっから全力で行かせてもらうわ。』

 

 

「(……結局、言葉にしても心の何処かで慢心してた部分があったのよね。)」

 

 

―――『見誤らないでよ。人間(私たち)の力を』

 

 

「(……それでも)」

 

 

迫る弾幕に、最後の手札(ラストスペル)を切る。

 

 

「最後まで諦めないわよ。」

 

 

 

―――『反魂蝶 -八分咲-』

 

 

 

禍々しい色をした蝶の弾幕が、霊夢の夢想封印と衝突する。

 

 

「はあああぁぁぁ!!!」

 

「……」

 

 

―――ちょっと、油断しちゃったな……。

 

 

拮抗したかと思うと、弾幕を呑み込んだと思うと、そのまま幽々子本人も呑み込む。辺りは強い光りに包まれ、次第に光りが収まると既に勝負は着いていた。

 

 

「私の勝ちね。」

 

「えぇ、そして私の負けよ。」

 

 

 

―――ン

 

 

 

「さぁ、敗者は敗者らしく勝者の言う事を聞きなさい。」

 

「えぇ~。ちょっとは休ませてよ~。」

 

 

 

―――クン

 

 

 

「いいからさっさと春を戻しなさいよ。ってかアンタ口調変わってない?」

 

「戦い終わったんだもの~。今オフモードよ~。」

 

 

 

―――トクン

 

 

 

「じゃあ、少し休んだら解除してもらうわよ。こっちも疲れたし休みたいし……。」

 

「しっかりと休む。大事な事よ~。」

 

 

 

―――ドクンッ!!!

 

 

 

「「ッ!?」」

 

 

再び〝死〟の気配が辺りに漂い始める。ただ

 

 

「幽々子……。あんた今能力使ってる?」

 

「使ってないわ。むしろ万全な私でもここまで濃厚な〝死〟は操れないわ。」

 

 

先ほど幽々子が能力で使っていた〝死〟とは比べ物にならない程の異烈さが二人を襲う。気配を発している元凶となる方へ目を向ける。

 

 

「……桜?」

 

「あ、」

 

「幽々子?」

 

 

 

 

 

「―――ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

「幽々子ッ!?」

 

「――――――」

 

「幽々子ッ!? しっかりしてッ!? 幽々子ッ!?」

 

 

突如、幽々子が叫び出したこと思うと、そのままプッツリと意識を失う。必死に声を掛けるが、起き上がる気配はない。その間にも〝死〟の気配はどんどん大きくなり遂には霊夢の身体にまで影響が出始める。

 

 

「ッ!?(なにッ!? この気色悪い感覚ッ!?)」

 

 

眩暈と共に訪れる謎の虚無感。まるで命という水が滴り落ちていくという確実に死に近づいていく感覚だった。

 

 

「(駄目……ッ! 意識が朦朧として……!)」

 

 

歪む視界で捉えたのは、木に施されていた封印の名残だった。

 

 

「(あれは……? 封印の名残? あれを使えば、もう一度封印できるかもしれない……けどッ)」

 

 

片や、意識喪失。片や満身創痍。残っている霊力の事を考えると、封印以外のことに回す霊力など残っていなかった。

 

 

 

―――ギチ、ギチ

 

 

 

「(あぁ、なんとなく分かる。()()()()()()()()()())」

 

 

西行妖が枝を此方に伸ばしてくる。枝は真っ直ぐと此方に伸びてきて、それはまるで死神の鎌を幻視してしまう。そしてそのまま枝は徐々に速度を上げ、霊夢の身体を貫いた―――

 

 

 

 

 




遅くなってごめんなさい。リアルが忙し過ぎたです。(´;ω;`)
しかもスランプに陥るっていう·····。全然筆が進まないし、ネタも浮かばない·····。
……次回は出来るだけもっと早く出せるようにします(汗)


あ、あとお気に入り登録1000越え、UA35000越えと、評価して下さりありがとうございます。これからも頑張っていきますので、どうかよろしくお願いします。

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