気がついたらアキレウスだった男の話 (とある下級の野菜人)
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気がついたらアキレウスだった男の話

マジか先生

※誤字報告ありがとうございます!


俺には、生まれたときから意識があった。

いや…記憶があった、と言うべきか。

 

建ち並ぶ巨大な鉄の塔。馬も牛も無しに走る車。精密な像を映し出す光る箱。エトセトラ…

 

 

そんな記憶が突然頭に放り込まれ、俺が生まれた。

 

あんときゃ死ぬかと思ったなぁ…何せ、生まれた瞬間に訳の分からん記憶を頭に植え付けられたんだ。割れるように頭が痛むってのはマジだったんだな…

 

とにかく俺には、いわゆる前世の記憶ってのがあったわけだ。

 

お陰さんで、録に泣きもしない、妙に理解力のある赤ん坊の完成だ。普通だったら不気味がられて捨てられそうなもんだが…俺の生まれた時代は普通じゃない。むしろ稀に見る神童だと喜ばれた。その辺は感謝したな。

 

 

もっとも、すぐに撤回したが。

 

突然頭から火の中に突っ込まれたんだ。文句の一つも言いたくなるだろう。全くもってイカれてる。この時代じゃなけりゃ、児童虐待で訴えられてるだろうよ。

 

…本物の神を裁ければ、の話だがな。

 

 

そう。俺を火の中にくべたのは俺の実の母であり、本物の神様ってやつだ。ここまで言やぁ、ある程度のヤツは、俺が誰だか分かるだろう。

 

 

我が名はアキレウス。英雄ペーレウスと、女神テティスの間に生まれ、賢者ケイローンに教えを授けられた、人類最速の大英雄。それが、今生における俺だ。

 

 

実に奇々怪々な話だ。この前世の記憶が俺の妄想の類いじゃないなら、俺は古代ギリシャ、それも神話の世界に転生してたわけだ。

まぁ、お前らの世界じゃあ、よくある話だろう?当事者の俺としては冗談じゃないが。

だってそうだろう?

俺にとって、この世界は完全にアウェーだ。

 

まず価値観が違う。ここは、鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス、が常識の世界だ。腹が立つヤツは殺す。イラついてたら殺す。八つ当たりに殺す。そんな連中がゴマンといやがる。

 

次に環境が違う。遥か未来。発達した科学で悠々自適に暮らしていた記憶がある俺からしたら、この世界の暮らしはあまりに不便だ。この体のスペックが悪かったら、余計そう思ってたとこだろう。

 

最後に、俺が転生した先が問題だ。

 

話は変わるが、俺は父に連れられ、これから自分を養育してくれる人物がいるという森に向かった。

間違いなく、賢者ケイローンの場所だと思ったし、実際その通りだった。だが…

 

 

「貴方がアキレウスですね?本日より貴方の教育を任された、ケイローンと言うものです。これより私は、貴方に知恵と武を授けましょう。」

 

 

我が師、ケイローンの姿を見て、俺は確信した。

 

 

 

 

 

ここ型月時空じゃねぇか!!!

 

 

 

 

 

それに気づいたとき、俺は色々と諦めた。

 

この世界が型月の世界ってことは、間違いなく俺は死ぬ。そう運命付けられている。よしんば生き残ったとしても、抑止力が無理矢理辻褄を合わせにくるだろう。この身は確かに英雄だ。だが、世界を相手にするには、俺はあまりにちっぽけだ。

 

 

 

 

あぁ、だが。運命は変えられなくとも、過程を変えることぐらいは出来るはずだ。

 

神話におけるアキレウスは、はっきり言ってクソ野郎だ。身内には良いヤツだったかもしれないが、それでもあまりに野蛮すぎる。自分と一騎討ちをした相手の死体を二度に渡って辱しめ、死後になってさえ、自身の女々しい欲望によって、一人の女を殺しやがった。あぁ、全くもって胸糞悪い。

 

だから俺は、せめて恥じることの無い人生を送りたい。例え死は避けられなくとも、誇りある死を。自らの人生に後悔なんぞ無かったのだと、そう生きられれば、幾らか上等な人生を歩めたと、笑って死ねるだろう。

 

 

 

 

 

それから、俺の地獄の日々が始まった。正直、なんであんな決意しちまったんだと何度も思った。

 

戦闘訓練での話だ。速さで翻弄しようとすれば、「貴方の動きの癖を見切れば、移動先を予測するなど容易です。」と言われ見事に腹に一発入れられた。ならばと真正面から戦おうとすれば、「勇気と無謀を履き違えているようでは、私に傷ひとつ付けられませんよ。」と言われ、関節をバキバキに折られた。おまけに、いくら傷を付けられても治癒の魔術で治され、「治りましたね?さぁ続きです。」となり、そのままサイヤ人方式の修行がエンドレス…やめろぉ先生!人の関節はそんな方向に曲がらねぇよぉ!!

 

 

 

…すまん、取り乱した。

まぁ、武術に関しちゃ鬼神もかくやな人だったが、それ以外に関しちゃぁ本当に良い師匠だった。正直、この時代の人間の誰よりも人格者だったぜ。

まさかこの世界で、人として当たり前の一般教養や道徳を習うことになるとは思わなかった。お陰で、前より随分と、心に余裕が出来た気がする。

 

覚えられることは全て覚えた───どっちかっつーと叩き込まれたんだが───本当に様々な事を教わった。先生には、感謝してもしきれない。

 

…ただ…この時代では一般的なんだろうがよぉ…俺の貞操を狙うのは勘弁してほしかったぜ先生…

 

 

そんなわけで、色んな意味で必死に駆け抜けた甲斐もあり、それなりには強くなったと思う。

 

卒業祝い、っつーには豪勢だが、先生から短槍を戴いた。青銅とトネリコの木を合わせて作られているから、軽すぎず重すぎないし、柔軟性を維持しているから下手に固い槍よりも余程頑強。俺好みの良い槍だ。

いや、アンタじゃなくて槍の事だよ先生!

 

 

 

何はともあれ、先生の元を離れた俺は、観光がてら世界を見て回った。正直不安ではあったが、自分の脚で旅をするのも、思いの外楽しいもんだ。

おまけにこの体はアキレウス。あらゆる英雄の中でも最も迅いと言われるだけあり、下手な車よりずっと迅い。自分の思う通りに体が動くっていうのは、気持ちいいもんだ。

 

ただ、行く先々で勝負を挑まれるのは、少々参ったが。

こちとら頭の中には前世の価値観が染み付いてるからな。あまり波風たてないようにしたかったんだが、周りから見ると臆病者に見えるらしくて、すぐに喧嘩を吹っ掛けられる。まぁ、尽く打ち払ってやったが。

 

 

 

旅の途中、俺はトンでもない人と出会った。

金から翡翠へと、グラデーションのかかった美しい髪。翠緑の衣にしなやかな肢体を包んだ、気品の中に野生の如き荒々しさを孕んだ女性。

 

どうみてもアタランテの姐さんだわ…

 

なんでも、色んな連中からの求婚が鬱陶しくて逃げ回っている最中らしい。なんと言うか…御愁傷様だ。俺も気持ちは分かる。

 

自慢になっちまうが、俺もモテる。この世界は基本的に、顔が良くて腕が立てばモテるからな。俺の場合、女に対する偏見が無いってのもあるんだろう。

 

 

なんやかやと意気投合した俺たちは、しばらく共に旅をする事になった。誰かと旅をするってのは良いもんだ。話し相手に事欠かないのが良い。おまけに、姐さんも俊足を謳われた人だ。速駆けをするときも難なく共に走れた。姐さんは驚いてたが。

…もっとも、襲撃者は増えちまったがな。姐さんみたいな美人と旅をしてんだから、有名税、とはちょい違うが、まぁ仕方ないか。

…何赤くなってんだ、姐さん?

 

 

姐さんとの旅をし始めてかなり経ったころ、女神アルテミス(スイーツ脳)が降臨した。いや、なんでさ。

「貴方がウチのアタランテちゃんを誑かしてる悪い子ね~!」とか言われた後にアホかと思うほど矢を射たれた。いや、本当になんで?

狩猟の女神と言われるだけあり、全力疾走しても紙一重でかわせる程度だった。なんであんな出鱈目な射ち方で正確にこっちに飛んでくるんだよ…ミサイルか何かかよ…

 

しばらくした後、なぜか固まってた姐さんが再起動して、女神アルテミスを止めてくれたんだが…今度は「アタランテちゃんをよろしくね!泣かせたら、天罰下しちゃうゾ⭐」とか言って去っていった。それ冗談じゃ済まねぇから…

 

 

女神襲撃事件からしばらくした後、俺は猛烈に嫌な予感を覚えた。何故かは分からなかったが、今すぐ先生の下へ行かなければならないと思った。

ダメで元々、姐さんに頼み込むと、呆れながらも共に来てくれる事になった。これほど心強いことはない。俺たちは早速、あの懐かしの森へ駆けた。

 

 

 

 

本当に肝が冷えた。予感通り、先生はあと一歩のところで死ぬところだったんだ。

森へ来た俺の目に飛び込んで来たのは、森の中へと猛スピードで飛来する一本の矢だった。その時のことは、あまり記憶に無い。ただ必死に駆け抜け、気付いたら先生の前に立ち、地面には巨大な矢が突き刺さっていた。

 

これをやった犯人は分かってる。ヘラクレスだ。最高峰の知名度を誇り、十二の難業を成し遂げた、万夫不当の大英雄。

 

 

 

 

 

だが、それがどうした。

野郎は、よりによって先生を殺そうとしやがった。

それも取るに足らん、あまりにもくだらん理由で、我が師父を殺そうとしやがった!!

 

今思い出すだけでも(はらわた)が煮えくり返りそうだ。

 

 

 

 

 

そこからはまた記憶が飛んでるが、野郎と一戦交えたことは確からしい。気がついたら、幼少期を過ごした懐かしの小屋の、これまた懐かしい俺の部屋にいた。

アタランテの姐さんが運んでくれたらしく、先生は俺に飯を作ってくれているとのことだった。それを伝えたときの姐さんの顔は、とてつもなく微妙な顔をしていたのを覚えてる。

 

それもそのはず。飯を持ってきたのは、先生に似た美女だった。というか女体化した先生だった。マジか先生。

 

自身の神としての権能を使ったとかなんとか言ってた気がしたが、正直あまり覚えていない。というか覚えられるわけ無いだろ!

長年師として、親の様に慕ってた先生が、突然女になるとかどうなってんだよ!なんで女になったんだって聞いたら、「それを私に言わせるのですか。」とか頬を赤らめながら、親同然の人に言われるとかどういう心境で聞きゃいいんだ!しかも無駄に様になってるのが余計に嫌だよ!

 

一頻り(ひとしき)混乱したあと、姐さんに肩をポン、と叩かれた。その時の姐さんは、やっぱり微妙な顔をしていた。

 

 

 

それからしばらくは姐さん共々、先生の家で厄介になることになった。思い起こすと、この辺りが俺の人生で一番楽しかった時期だと思う。

 

理知的な見た目に反して意外と無茶苦茶やらかす先生と、粗野な見た目とは裏腹に割と常識人な姐さん。この二人と平和に過ごしていたあの頃が、俺にとって一番楽しかった。

 

 

 

 

 

その後はどうなったかって?

 

 

───なんのこたぁ無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっぱり俺は、運命には勝てなかった───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何が不味かったんだろうな。

 

 

いや、何も不味くなかったんだろう。

 

 

実際、過程は変えられた。

 

 

アガメムノンとの確執は未然に防いだ。

パトロクロスも死ななかった。

ヘクトールのおっさんとは強敵(とも)として渡り合ったし、

ペンテシレイアのヤツとは、互いに誇りある戦士として、尋常なる戦いをすることも出来た。

 

 

だが、こうなっちまったのは…そうだな。

 

 

 

───()()()()()()。ただ、それだけなんだろう。

 

 

 

 

 

あぁ、目の前が霞んできやがった。いよいよ、限界ってヤツが来たんだろう。

 

 

父上、母上、パトロクロス、ヘクトール、ペンテシレイア、先生、アタランテの姐さん…

 

 

本当にすまねぇ。

 

 

俺はとんでもない大馬鹿野郎だ。

 

 

 

まぁ、せめて最後まで、全力で抗ってみせよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オリュンポスの神々よ。願わくば、我に栄誉ある死を与えたまえ───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アキレウス。

 

ギリシャ神話最大の英雄の一人であり、人体の一部、アキレス腱の語源ともなった人物。世界最速の英雄としても知られ、駿足のアキレウスと称された。

 

英雄ペーレウスと女神テティスとの間に生まれ、トロイア戦争においては獅子奮迅の活躍を見せた。

 

 

生まれた瞬間から言葉を発した、と言われており、ペーレウスとテティスは神の如き子を授かったと喜び、三日三晩宴を催したと言う。

 

非常に公明正大な人物であったとされ、決して不当な戦いを起こすことはなかったが、誰からの挑戦も断ることはなく、その全てにおいて勝利を収めた。

また、男尊女卑の風潮が強い古代において、誰よりも女性を尊重したとされ、現代においてもレディ・ファーストを実践する紳士的な男性を「アキーリオス(アキレウスの如く紳士的な人)」と称する。

 

戦いにおいては正々堂々を良しとする一方、戦場に立つ者は誰であれ、戦士として敬意を払った。

彼にとって最高の好敵手と謳われる、ヘクトールのあらゆる手段を使った立ち回りに対して「なんて機転の利く男だ!あれほど知恵の回る男を、自分は片手の指の数ほども見たことがない!」と評し、ヘクトールの死後、アキレウスは誰よりもその死を悼み、篤く弔ったという。

また、アマゾンの女王ペンテシレイアとの戦いでも、見目を気にせず、最後まで一人の戦士として接し、彼女の死後も、彼女の遺体が弄ばれることが無いように、彼女の遺体が弔われる間、常に敵味方の誰からも目を離すことは無かった。

 

 

アキレウスを語るうえで欠かせないのは、その恋愛模様であり、あらゆる題材にも取り上げられている。

それが、アキレウスの養育者であった半人半馬(ケンタウロス)の賢者ケイローンと、ギリシャ最高の狩人と名高いアタランテとの悲恋だ。

 

アタランテは、高まった名声により迫り来る求婚者たちから逃れるために放浪していたところ、旅をしていたアキレウスと出会い、仲間として共に過ごしていたが、アキレウスの何処までも実直な性格に惹かれた。アキレウスはその際、アタランテの信仰していた月女神アルテミスに襲撃を受けたが、その俊足で以て、アルテミスの放つ幾万もの矢をかわしてみせた。その見事さにアルテミスは感服し、アタランテとアキレウスの交際を認めた。

 

この逸話から、男性が女性との付き合いを親に認めてもらうために、一つの試練を出すことがヨーロッパでの慣例となっており、これを「アルテミスへの宣誓」と言われている。

 

 

ケイローンは、アキレウスの教育者であり、アキレウスの幼年期は彼と共にあった。驚異的な早さで自身の知慧と武技を学んでいくアキレウスに、ケイローンは誇らしく思っていた。この時点ではまだケイローンは彼であったし、アキレウスを弟子として見ていた。

 

しかしある日、ケイローンの住む森の近くにギリシャ神話の誇るもう一人の大英雄、ヘラクレスが来た。十二の難業の一つ、エリュマントスの大猪の狩猟のためだ。

ヘラクレスは、エリュマントスの大猪を狩猟をする際に、ケンタウロスのポロスの助力を請い、見事に成し遂げた。しかしこの時ヘラクレスは、ポロスの持っていたケンタウロス族の秘酒を誤って飲んでしまった。それに大層怒りを懐いたケンタウロス一族とヘラクレスが戦うこととなったのは知っているだろう。

この時ヘラクレスは、ヒュドラを退治した際に手に入れた、神ですら死に至らしめるほどのヒュドラの毒を用いた矢を使っていた。

 

ここでヘラクレスにとっての誤算が生じる。なんとヘラクレスの放った毒矢が、自身の武術の師であるケイローンのいる方向に飛んでいってしまったのだ。

あまりの速さで迫り来る毒矢を前に、ケイローンは死を覚悟した。

 

それを救ったのが、かつての弟子、アキレウスである。

 

アキレウスは、旅先で嫌な予感を覚え、その駿足の足で以て、恩師ケイローンの下まで駆け抜けたのだ。

この事からアキレウスには、母である女神テティスの予言の力を受け継いでいたとも言われている。

 

自身の恩師を殺されかけたアキレウスは激怒し、矢を射ったヘラクレスと戦った。

大英雄たる二人の戦いは周囲に天変地異を巻き起こした。

嵐が起こり、大地が抉れ、森の一角は吹き飛んだ。余りの衝撃に、神々ですら眺めることしか出来なかった。それほどまでに、アキレウスの怒りは凄まじかったのだ。

少なくとも、彼らの死闘の後らしきクレーターは、現在でもヨーロッパのとある森の近くで確認されている。

 

アキレウスが本当に怒ったのは、後にも先にも、この一回のみと言われている。

 

二人の死闘は十日間にも及び、結果は両者相討ち。アキレウスはケイローンの小屋に運ばれ、九日間に渡り眠り続けた。

 

この時ケイローンは、自身を救ったアキレウスに恋情を感じ、自身を男から女へと変じた。これ以降、彼は彼女となったのだ。

このことから、現代ヨーロッパは同性愛に寛容であり、結婚も可能となっている。

 

 

この後、アキレウス、ケイローン、アタランテの三人は、しばらくケイローンの小屋で過ごした。

 

しかし、平和な日々も長く続く事はなく、ある日アキレウスたちの下にギリシャ軍からの使者が来た。アキレウスをトロイア戦争に参加させようとやって来たのだ。

 

ケイローン、アタランテはこの使者を追い返したが、戦争に参加すると言ったのは、他でもないアキレウスだった。

アキレウスは知っていた。いずれ自分が戦争に参加することを。そしてその戦争で自分は命を落とすことを。

それが自身の運命であると語るアキレウスを、ケイローンとアタランテは止めようと、アキレウスに勝負を挑んだ。

しかし、ギリシャ最大の英雄であるアキレウスに敵うことはなく、二人は気絶させられ、それ以降、三人が共に出会うことはなかった。

 

その後予言通り、アキレウスはトロイア戦争にて戦死。その最後はどこまでも誇り高く、堂々とした仁王立ちのままの死であったという。

 

その事に深く嘆き悲しんだケイローンとアタランテ。

 

ケイローンは己の不死性をゼウスに頼んでプロメテウスに譲り渡し、アキレウスの後を追うように死を選んだ。

その事を残念に思ったゼウスは、ケイローンの姿を星の形として象ったという。これが、射手座の由来だ。

 

アタランテはその後の詳しいことは書かれていない。ケイローンと同じく、アキレウスを追って死んだとも、実はアキレウスの子供を身籠っており、その子を産んで育てたとも。諸説ある。

 

ただ一つ確かなのは、彼女たちにとって、アキレウスの存在は非常に大きなものだったということだろう。




色々書いてないので補足。


原作との相違点
・女装イベント回避。
・内輪揉めを回避。
・お友達の死亡フラグポッキリ。
・ヘクおじとお友達(仲良死)に。
・エルバサさんの恋愛フラグ建築。
・アルケイデスさんと死闘(ガチ)
・姐さんと遭遇。
先生がTS


Q.J(´ー`)し「私の出番は?」

A.すまない…原作とほとんど立ち位置変わらんかったし、話の都合上出なくても問題なかったんだ…本当にすまない…


Q.女装イベなんで抜かしたん?

A.テティスさんて(アキレウスくん限定で)子煩悩っぽいし、ヤダヤダすればしょうがないにゃ~ってなると思うの(偏見)


Q.お友達の死亡フラグとかどしたのよ。

A.アルテミスさんとかが何とかしてくれたんだよ(震え声)


Q.結局憑依なのか何なのかハッキリしろや。

A.日本語って曖昧な表現多いやん?(目そらし)


Q.先生TSってどういうことじゃオラァン!

A.気付いたら書いていた。後悔も反省もしていない。




こんな感じで。
多分まだまだ書いてないのもあるけど、今はこれで許してちょ。
気が向いたら続きとか他の人視点を書く気がする。


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ステータス

ぼくのかんがえたかっこいいあきれうす。
こんなに評価されると思ってなかったので、取り敢えずステータスでお茶を濁しておく。

ただでさえ公式チートがさらに増量されてるので、苦手な人はご注意を。


真名:アキレウス

 

クラス:ライダー

 

性別:男性

 

身長:185cm

 

体重:97kg

 

好きなもの:平和 ケイローン アタランテ

 

嫌いなもの:運命 無意味な争い ヘラクレス

 

天敵:ケイローン アタランテ

 

出典:ギリシャ神話

 

属性:秩序・善

 

 

ステータス

 

筋力:A 耐久:A

 

敏捷:A+ 魔力:C

 

幸運:D-  宝具:A+++

 

 

クラススキル

 

対魔力:C

二節詠唱以下の魔術を無効化する。生半可な魔術では、アキレウスを害せない。

 

騎乗:A+

竜種を除く、あらゆる乗り物を乗りこなす才能。たまにバイクを乗り回したくなるとか。

 

 

保有スキル

 

戦闘続行:A+

戦争中、弱点の踵を射抜かれ、追い詰められたアキレウスだったが、その後は文字通り死ぬまで戦い続けた。たとえ致命的なダメージを負ったとしても、アキレウスの戦闘能力が落ちることはない。

ヘラクレスとの戦いの経験により、本来の彼よりしぶとくなっている。

 

勇猛:A+

自身の運命を呪わず、立ち向かったアキレウスは、最高峰の勇猛さを誇る。あらゆる精神的干渉をカットし、格闘能力が向上する。

 

女神の寵愛:B+++

母である女神テティスの祝福。魔力、幸運以外のステータスを上昇させる。

トロイア戦争に赴く際に、彼の母テティスはアキレウスのために神獣二頭立ての戦車をポセイドンから譲り受け(奪い取り)、鍛冶神ヘパイストスに頼んで(脅して)武具を作らせた。まさにモンスターペアレント。

 

神性:B+

英雄ペーレウスと女神テティスの間に生まれたアキレウスは、高い神性を宿している。

また、女神テティスの予見の力を受け継いでいたとされ、他の様々な活躍から一部の地域では信仰の対象となっている。

 

予見:C+

女神テティスの力を受け継いでいたとされるアキレウスは、これから起こるであろう出来事を見通すことが出来る。

特に、“自身に関わりが深いこと”ほど、精度が高まる。

元々は持っていなかった、と本人は思っているが、異常に鋭い勘など、兆し自体はあった。それが、後世の解釈などによって強化された、稀有なスキル。

 

庇護者:B

誰よりも理不尽を許さず、弱き者たちの盾となり、矛となったアキレウスは、守るという行為を好とする。『何かを守るために戦う』際に、自身のステータスにプラス補正を与える。

 

先駆けの紳士:C+

男尊女卑の時代にあって、どこまでも公平さを持つ彼は、一説にはレディーファーストという概念の先駆けともされる。直接戦闘に役立つ効果は無いが、異性からの印象を良いものとする。ハーレム系主人公みたいなスキル。魔術的なものではないため、対魔力等では防げない。

本来は同性相手でも発動するはずだったが、女性に対して紳士的であったことが有名になりすぎた為、女性に対するそれよりも効果は低くなっている。

 

 

 

宝具

 

 

疾風怒濤の不死戦車(トロイアス・トラゴーイディア)

ランク:A 種別:対軍宝具

レンジ:2~60 最大捕捉:50人

 

アキレウスが戦場で駆った三頭立ての戦車。アキレウスがライダーとして召喚される由縁。

トロイア戦争へ行くアキレウスへの餞別として譲り受けた二頭の神馬『クサントス』と『バリオス』、トロイア戦争中、エーエティオーンの街を“壊さない条件”として譲り受けた稀代の名馬『ペーダソス』からなる。

ただ駆け抜けるだけで戦場を蹂躙、一気呵成に敵陣を粉砕する。速度の向上に比例して追加でダメージを与え、最高速度となると大型ジャンボ機ですら瞬時に解体する。

 

 

彗星走法(ドロメウス・コメーテス)

ランク:A+ 種別:対人宝具

レンジ:0 最大捕捉:1人

 

“あらゆる時代、あらゆる英雄の中で最も迅い”とされるアキレウスの伝説が宝具として昇華されたもの。

どれほど広大な戦場であろうと一呼吸のうちに駆け抜け、如何なる障害物であろうとも、その走りを妨げることは敵わない。その速度はもはや瞬間移動並みの速さであり、目に写る視界の全てが間合いだという。

弱点の踵を貫かれれば効果は消失し、速度は7割減少するが、“神がかった腕前”でもない限りまず不可能な話だ。

 

 

勇者の不凋花(アンドレアス・アマラントス)

ランク:B 種別:対人宝具

レンジ:0 最大捕捉:1人

 

女神テティスがアキレウスの体を聖なる火で炙った際に体得した不死の肉体を、宝具として昇華したもの。

踵を除く全身に不死の祝福を授けられており、神性持ち、または神造兵器を除いたあらゆる攻撃を無効化する。神に愛された者でなければ、アキレウスの前に立つことすら許されない。

また、神性や、神造兵器持ちであろうとも、“ランクB以上”のものでなければ、攻撃は減衰する。

弱点の踵を貫かれた場合、彗星走法と共に消滅する。

 

 

宙駆ける星の(ディアトレコーン・アスティール)穂先(・ロンケーイ)

ランク:B+ 種別:対人宝具

レンジ:2~10 最大捕捉:1人

 

アキレウスの師、賢者ケイローンがアキレウスの為にあつらえた青銅とトネリコの槍。元々は、持ち主の元へと戻る機能と、相手に与えた傷の治療を阻害する機能がついている。

しかし、ライダーで召喚された場合は、アキレウス自身が作成した大魔術を発動するための触媒として機能する。

槍を地面に突き立てると、それを基点にドーム状に空間を切り取り、一対一の戦いを強制する闘技場を作り出す。空間内は時間が静止しており、他者の介入は許されず、如何なる偶然も起き得ない。相手はもちろん、アキレウス自身のスキルと宝具が使用不可能となり、完全な実力勝負でのみ決着をつけられる。

しかしこれは、アキレウス自身が難敵だと認めたものにしか、使われることはない。

 

 

蒼天囲みし小世界(アキレウス・コスモス)

ランク:A+ 種別:結界宝具

レンジ:0 最大捕捉:1人

 

アキレウスの母、女神テティスが彼の為に鍛冶神ヘパイストスに作らせた盾。全面に渡って凄まじく精微な意匠が施されている。

アキレウス自身の見た世界を象徴する大盾であり、真名解放を行うことで極小の世界を展開し攻撃を防ぐ。この盾を破壊するには、文字通り世界を壊すほどの攻撃力が必要。

またこの盾は─────

 

 

怒れる勇者(スィモス・デカ・ヘーメラ)

ランク:B+++ 種別:対英雄宝具

レンジ:0 最大捕捉:1人

 

賢者ケイローンを殺されかけた際に見せた、アキレウスの唯一の激情。アキレウスの狂暴性が誇張され、宝具となったもの。

ギリシャ屈指の大英雄ヘラクレスと引き分けた、という逸話から昇華されたもので、ステータスが上昇し、ヘラクレスに優位をとれるようになる。

ヘラクレスの宝具“十二の試練(ゴッド・ハンド)”のBランク以下の宝具の攻撃を無力化、同じ手段では殺せなくなる、という効果を無効化し、無理矢理ダメージを通す。ただし、蘇生の呪いを消すことは出来ないため、キッチリ12回殺さなければならない。

弱点として理性が飛び、属性も秩序・狂へ変化。最低限の言うことは聞くが、ヘラクレスを見たとたんに怒り狂い、大英雄を殺すことのみに執着する悪鬼と化す。

普段は任意発動型であり、自制も出来る。

バーサーカーで召喚された場合は常時発動型の宝具として機能するが、相手にヘラクレスがいる場合でないとまず召喚はされない。

 

 

⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛

ランク:A+++ 種別:対人宝具

レンジ:? 最大捕捉:?

 

───宝具開帳時に解放───

 

 

 

 

 

設定

 

 

ギリシャ神話の誇る大英雄の一人、として生まれた、現代日本の記憶を持つ男。原典のアキレウスの粗暴さを嫌悪し、この世界の仕組みを悟り、せめて“ぼくのかんがえたかっこいいえいゆー”になろうと思い、実行した。

さっぱりとした気質をしており、余程話の通じない相手でもない限り、大抵の者と仲良くなれる。また情に厚く、身内と認めた者は心の底から信じ、敵だとしても敬意を払う。

 

救える者は全て救い、無用な争いはしないよう心掛けたが、あまりに好戦的な古代ギリシャの人々に、若干グロッキーになったりしていた。

アキレウスとしての性格面が強くなってからも、日本人としての気質は消えず、女性には優しく、目上の人物には丁寧に接していたら褒め称えられて困惑したり、そのことが後世に残っているのを知り頭を抱えたり、意外と苦労性。

そして、殺し、と言うものを嫌悪しており、必要に迫られた時以外は不殺を心掛けた。

 

ケイローンが殺されかけた件を根に持っており、ヘラクレスに関しては、彼の矜持は適応されない。ただしつけもの、テメーはダメだ。ヘラクレスを相手取ることになったら嬉々として殺しに行き、「ヘェラクレスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」と叫ぶ暴走特急と化す。

エルバサのフラグを叩きおっていたと思ったらテイクアウトしただけだったでござる。

 

ケイローンとアタランテのことは、生前における唯一の後悔として、今でも気にしている。もし二人と出会うことがあれば、許されずとも謝り倒し、二人に処分を任せようと決めている。




Q.街壊されなかったん?

A.鼠の様に逃げおおせるかぁ、こぉのばで死ぬかぁ…!どぉちらかぁぇらべぇぇぇい!!(平和的交渉)したからね。是非も無いネ。


Q.チートガン積み過ぎぃ!

A.すまん、手が滑った。


Q.ヤンデレかーちゃん

A.(ヤンデレじゃ)ないです。愛情がおっきなだけです(優しい表現)。


Q.男版エルバサ?

A.ああ!



その内トロイア戦争編やら他の人視点を書こうかなと思ってる今日このごろ。
基本的にその場のノリで書いているから、矛盾が出てきたりしても気にするんじゃないゾ。キャットがこたつでスイカを食べる羽目になる(あーぱー感)

アンケートも置いとくので、良かったらどうぞ。


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ある狩人の最期(アタランテ視点)

おや?姐さんの様子が…


私にとって転機があったとすれば、きっと、あのとき旅に出たことだろう。

 

 

私の名声を聞きつけやってきた、数々の求婚者たち。私は、女神アルテミス様を信仰し、純潔であることを誓った身。結婚などしないと、何度言っても引き下がらない連中に辟易としていた私は、遠くに逃げようと思った。私に追い付ける者など、彼奴を置いてそうはいない。

無論、連中は私に追い付くことなど無かった。

 

しかし考えてみれば、宛ての無い旅、というものをするのは初めての経験だった。

 

アルゴー船への参加、カリュドーンの討伐、どちらも大元の目的があったが、今回は単なる逃避だ。何をどうすればいいのか分からない。しかし今さら、あの連中の相手をするのも御免だ。

 

そんな頃だった。若草色の髪と、琥珀色の瞳を持った、あの馬鹿者と出会ったのは。

 

 

 

始まりはただの気紛れだった。

 

女を見る男の目、というのは、大抵が欲望に塗れている。しかし、彼奴からはそういった、邪な類いのモノが感じられなかった。

だからだろうか。彼奴に話しかけられたときも、特に拒もうとは思わなかった。

 

アキレウスと名乗った其奴は私の名を聞くと、何やら得心がいった様な顔をしていた。彼奴の父がペーレウスだと知った時は驚いたものだ。まさかあの時私が負かした者の息子だとは。

 

その後はあれやこれやと話をした。私はあまり饒舌な方ではないが、それでも興が乗り、中々話し込んでしまった。きっと、彼奴が驚くほど話上手だったからだな。

姐さんなどと気安く呼びおって…全く…

 

 

 

 

彼奴は、私の知るどの男とも違っていた。

 

 

まず、自分の武勇を誇ることはあれど誇示はしない。戦う者、というのは、大なり小なり自分を強く見せようという者が多い。さも自身が最強であるかのように話を誇張し、無駄に偉ぶるのが普通だ。

しかし、この男は自身の今までの戦いを語ろうとはしなかった。何故かと聞くと「餓鬼の喧嘩を自慢する馬鹿がどこにいる。」と答えた。

自分が自慢をすることがあるとすれば、自身に武を授けてくれた師匠の話と、これから先、尋常なる戦いをした時。無意味な争いを自慢するほど馬鹿馬鹿しいものはない、と。

 

…アルゴー船にはその手の馬鹿が大勢いたな…

 

 

そして…そうだな…根本的に考え方がズレている、と言えば良いのだろうか。

無闇に暴力を振るってはならない、力無き者たちに理不尽を強いてはならない、女は守るべき者であると同時に対等な者、そんなことを、当たり前の事だと信じている。

力こそ正義、というのがこの世の真理だ。あらゆる人間がそう考えているだろうし、私自身そう思っている。

しかし、あの男にとって、力のある無しは問題にはならない。ただ生きているだけで、彼奴にとっては価値があったのだろう。

 

 

一晩語り明かした吾々は、自分でも驚く程にあっさりと、共に旅をする事になった。全くもって可笑しな話だ。男から逃げていた私が、皮肉にもその男と旅をするのだから。

 

 

 

 

自覚したのは随分後だったが、もしかしたら私はこの時から、既に彼奴に惹かれていたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

共に旅をして分かったが、彼奴は私と会ってから、ただの一度も虚言を吐いていなかった。

その言葉通りに、自身の武をひけらかす事無く、然れど卑屈になることも無い。理不尽を許さず、あらゆる者と対等に接する。

まるで、世直しの旅でもしているのかと呆れたものだ。彼奴からすれば、ただ当たり前のことをしていただけなのだろうが。

 

そして驚いたのは、彼奴の速さだ。

私も脚にはかなり自信があった。森と共に生きてきた私は獣と同等の速さで駆けられる。事実、それまで私に着いてこれた者はいなかった。

だが、彼奴は私にアッサリと追い付いただけでなく、時には私が追う側に回らざるを得なかった。

悔しい、という思いを抱くのは初めての経験だった。結局、一度も勝つことは出来なかったな。

 

 

 

 

鍛え抜かれた肉体、洗練された武術、誇り高い精神。これだけのものを揃えているアキレウスだったが、唯一の弱点として、彼奴は酷く甘い心根をしていた。

 

 

彼奴は人を、何かを殺す、ということを疎んでいた。

 

腕に自信のある者たちは、こぞって彼奴との死闘を臨み、彼奴もまた断らなかった。しかし、彼奴は決して相手を殺さなかった。

 

 

「甘い、と言いたきゃ好きにすればいいさ。俺からすれば、平気で命を奪えるアンタら(・ ・ ・ ・)の方がよっぽど恥知らずに見えるぜ。」

 

 

尋常なる戦いを臨んだというのに情けを掛けるとは自分を侮辱しているのか、と宣った輩に、彼奴はこう言い放っていた。

だが不思議と、彼奴の言葉は私の耳に酷く残った。

 

 

 

なぜ、そうも殺しを忌避するのか。

ある日の野営の最中に、私は問いかけた。

 

 

「戦争で殺すなら、それは納得できる。相手も殺す気で来るんだ。殺らなきゃこっちの仲間が殺られる。」

「狩猟で動物を殺すのも分かる。肉も皮も骨も、生活するにはかかせないからな。」

「だが、そうでもなけりゃ、殺しなんざ冗談じゃねぇ。その殺した相手の家族は?友は?残された者たちは、死んだ者を一生背負っていかなければならなくなる。」

 

「…まぁ、そうだな…何だかんだと言ってはみたが、これは単なる俺の弱さ。もっと言えば、エゴってヤツなんだろうさ。」

 

 

そう語っていたあの男の顔は、焚き火の暖かな光に照らされながら、自嘲的な笑みを浮かべていた。

 

確かに、甘い思想だろう。

結局のところ、この世は弱肉強食。強者が支配し、弱者はただ隸属するしかない。どこに行こうとも、それは変わらない。

しかし私は、彼奴の言う弱さを好ましく思った。

 

私とて、好き好んで悪逆を為そうとは思わない。何よりも、理不尽な目に合う子供たちを、見捨てることなど出来はしない。

 

 

私は生誕を望まれなかった身だ。別に、両親を恨む何てことはない。顔も見たこともない連中。何か思いを抱けというのが、無理な話だ。

 

───しかし、だからこそ、せめて他の子供たちは。

周りに脅かされず、何にも利用されず、ただ親に愛され、健やかに育つ。そんな幸せ(当たり前)を掴んでほしい。

 

…私のような、人でなしになる前に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

共に旅を始めてから随分と経った頃、私は信じられない…いや…信じたくない出来事に直面した。

 

 

「貴方がウチのアタランテちゃんを誑かしてる悪い子ね~!」

 

「ちょっと待て、突然出てきて一体なんの話…危なッ!?」

 

 

うん…いや…今でも信じたくない。私が信仰していた神が、あんな…アレな性格だったなんて誰が思う?

月と狩猟の女神アルテミス様と言えば、もっとこう…いや、それにしたって、せめて威厳を…

 

 

 

私がアルテミス様の誤解を解いたのは、随分と時が過ぎてからだ。

…もう少し早く止めれば良かったのだが、いつの間にか、時が過ぎていたのだ。許せ、アキレウス。

 

いやしかし…結果的に見れば、アルテミス様の誤解は、実質誤解では無かったというか…むしろ私の方が拐かす側というか…うむ…私は、あの馬鹿者にいつの間にやら…惹かれていた。

 

 

自分でも自分が信じられなかったさ。彼奴と私、一体幾つ年が離れていると…そもそも、私はアルテミス様に純潔を誓った身。愛だの恋だのに浮かれている場合は…

 

 

「別に大丈夫よ~?そりゃあ体裁としてちょっとした罰は必要だけど、好きなら好きって言えば良いんじゃない?」

 

 

 

 

「てっきりアタランテちゃんを騙して手籠めにしようとしてる悪い子なのかと思ったけど、アタランテちゃんの方が好きなら話は別よ。たっぷり祝福してあげる!」

 

 

いや、その

 

 

「いい、アタランテちゃん?恋をしたなら、とにかくゴーゴーゴーよ!私の矢をあんなに避ける勇士なんてそうそう居ないんだから、きっとあの子もダーリンみたいにモテモテに違いないわ!」

 

 

あ、はい、それはもう

 

 

「やっぱり!他の女に取られる前に、既成事実なりなんなりつくちゃいなさい?アタランテちゃんが迫れば、大体の男はイチコロよ!」

「そうだ!これを機に、アタランテちゃんにもい~っぱい祝福をあげるわ!初めての恋だもの、叶わなくっちゃ嘘よね!ついでに、弓矢の腕もマシマシにしてあげる!」

 

 

あ、はい、ありがとうございます

 

 

「罰は…そうだわ、獣人っぽくなる感じがいいわね!これなら奥手なアタランテちゃんも、発情期になったら強引にイケるし、より身体能力も上がる。なによりとっても可愛らしいわ!」

 

 

ア、ハイ、ソレデイイデス

 

 

「それじゃあね、アタランテちゃん!絶対、ぜ~ったい、恋を叶えるのよ~!」

 

 

ハイ、サヨウナラ

 

 

 

 

 

 

 

 

はっ…頭が痛い…何か胃も痛い…これ以上考えるのは止めておこう。さらに酷いことになりそうだ。

 

 

 

ま、まぁ、こうして、私は獣の如き耳と尾を付けられた。アルテミス様の仰っていた通り、身体能力もより上がっていた。

 

…ただ、私が何より、その…嬉しいと感じたのは…彼奴の態度が変わっていなかったことだ。

 

 

 

「どんな姿だろうと、姐さんは姐さんだろ?俺が好きな姐さんは、何にも変わっちゃいないさ。」

 

 

 

…本当に、彼奴と共にいると、驚くことばかりだ。

以前の私であれば、姿が変わろうと何も思わなかった。彼奴の言葉も、きっと一笑に伏していた。

 

それがまるで生娘の様に、一人の男の反応を不安に思い、今はこうして安堵している。

 

そして、好き、という言葉に、こうも心を揺り動かされる…

 

 

考えてみれば、必然だったのかもしれない。

私よりも強く、迅く、英雄にありがちな傲慢さも持ち合わせていない。弱き者を守るために戦う優しさがあり、時おり見せる子供の様な表情は愛らし…ごほん…

 

とにかく、これだけの魅力が揃っているのだ。一人の女として、惹かれるのも当然だろう。

 

 

だが…彼奴が私に向けている感情は、親愛。あくまでも友に向けるそれだと、分かっている。

 

アルテミス様の仰っていた様に、子を成してしまう方が早いだろう。誠実な彼奴の事だ。きっと、共にいてくれる…が…何故だろうな…あまり、良い気分はしない。

それに、今の関係に安心している私もいる。

 

…恋というのは、こうも人を臆病にするのだな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、幾分か時が経った。

 

ある日、彼奴は不吉な予感がするから恩師の下へ行く、と言い出した。これは単なる自分の我が儘だ。私が付き合う道理は無い。今まで世話になった、と。

 

無論断った。

理由が勘、というのは些か呆れたが、余程焦っているであろうことは見てとれた。ならば私も行った方が何らかの助けになる、と。

…それに、私は存外、執着的な女だったようでな。今さら彼奴と離れようとは、どうしても思えなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

そして共に、彼奴の故郷であるという森に着いた───生家は別にあるが、彼奴にとっての故郷はここらしい。

 

 

…そして私はそこで、懐かしい顔と、知らない顔を同時に見ることになった。

 

 

 

 

 

 

 

「がああぁぁ⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!!!!」

 

「ぐっ、おぉおぉおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

 

まるで暴風、地震、嵐。考えうる災害をまとめてこの場にひっくり返した様な。地獄が作り上げられる光景を見せられているような。それほどの闘いが繰り広げられていた。

 

 

思いがけず、懐かしい顔を見た。

 

かつて私が出会った、アルゴー船に集いし英傑たちの中にあって、一際大きく、強き者。ギリシャ中にその名を轟かせる、巌の如き英雄。ヘラクレスが、そこにいた。

 

私とて、奴の活躍は耳にしていた。無双の獅子を打ち倒し、不死身の毒竜を殺し、他にも様々な冒険をしているという。

ギリシャのあらゆる英雄の中でも、まさしく最強だといえる、万夫不当の大英雄。

 

 

 

 

 

そんな奴が、()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思えば私は、彼奴の怒る姿を、一度も目にしていなかった。

 

 

 

ギリシャの男というのは、総じて気が荒い。

酒が入れば乱闘騒ぎ、目が合えば取っ組み合い、何となくで殴り合う者もいる。

 

彼奴には、そんなギリシャ男児特有の躁急さが皆無なのだ。

 

大抵の者とはすぐに打ち解けるし、相手側が怒りを見せようものなら宥めすかして、いつの間にやら煙に巻いている。

 

 

 

そんな彼奴が────ああも怒りを露にしている。

 

 

 

 

 

 

 

その時は、一瞬だった。

 

森に着いた時に見えた、一条の光。彼奴の姿が一瞬にして掻き消えた。

私も全速力で向かったが、既に矢は叩き落とされ、彼奴はその場で立ち尽くしていた。彼奴の後ろには、一人の男が庇われる様に立っている。

彼奴があの矢を止めなければ、恐らく─────

 

 

 

 

 

 

 

「…………………す………」

 

 

 

 

 

突如、体が酷く重くなった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………ろす…………」

 

 

 

 

 

あまりにも濃いそれに、意識すら遠退き…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────殺す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

息をすることすら忘れていたことを思いだし、視界が戻ってくる。そうして気づいたら、今の惨状だった。

 

ヘラクレス(懐かしい顔)は苦悶の表情で、アキレウス(知らない顔)は怒り狂い、我を忘れたかのような形相で、相争っていた。

 

 

私に向けられたものではなく、距離も離れているというのに、肌に突き刺さるような濃密さ。

 

 

信じられなかった。あのヘラクレスが。アルゴナウタイに集った者たちが、敵わないと認めたあの男が、ああも追い詰められている。

 

信じられなかった。あのアキレウスが。殺しを嫌悪し、誰よりも生を尊重しているあの男が、ああも殺気を纏って刃を振るっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし私は心の内で、もうひとつ別のことを考えていた。

 

 

 

 

 

もし、

 

 

 

 

─────もしも、私が同じような状況に陥っていたら、彼奴は…同じように怒りを見せるだろうか─────。

 

 

 

 

 

 

 

そのとき、空には美しい三日月が昇っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あらそ)いが終わったのは10日後のことだった。

 

私は、二人が争っている間、ケイローンの小屋に避難させてもらっていた────まさか彼奴の師が、音に聞こえし人馬(ケンタウロス)の賢者だとは、驚いたものだ────。

 

 

「彼はきっと…私たちの森を傷つけることはしないでしょう。」

 

 

その言葉通り、あれほどの激闘の後だとは思えないほど、小屋の周囲は小綺麗なままだった。周辺の森も、穏やかなものだ。

 

 

だが、あの二人を見つけることは容易かった。

二人の通ったであろう箇所には、何一つとして無かったから。

 

岩も、木々も、草も、最初から何も無かったかのように。

 

道というには荒れた戦いの跡を辿っていくと、一際大きく、地面が陥没した箇所に着いた。中心には人影が見える。

 

 

 

 

 

「久しいな。俊足の狩人。」

 

───そうだな、ヘラの栄光。

 

「その小僧は、お前の知り合いか?」

 

───そうだ。私の、友だ。

 

「そうか…まさかこれほどの猛者がいるとはな。しかもこの若さで…純粋な闘いの末に体が動かなくなる、など、初めての経験だ。」

 

───私も驚いている…これほどまでに、強かったのだな…

 

「あぁ…私は、この者に礼を言うべきなのだろうが…恐らく、また同じようになってしまうだろう。私は、それほどのことをしてしまった…」

 

───…そうか。

 

「さぁ、連れていくといい。私は、今しばらくここにいよう。正直に言うと、話すのがやっとなのだ。こうしているのも、先達としての矜持の様なものだ。」

 

───フッ…そうか。

 

「それと、言伝てを頼みたい、ケイローン師に。謝って許される問題ではないが、すまなかった、と。今の私は、業を清算している身。全てを終わらせ、顔向けが出来るようになれば、必ず謝罪に伺う。そう、伝えてくれないか。」

 

───共に旅をした(よしみ)だ。必ず伝えよう。

 

「ありがたい。それから…いや、やめておこう。いずれ、もしも巡り合う機会があれば、その小僧自身の口から名を聞きたい。私をこれ程までに追い詰めた、最大の強敵よ。」

「…それではな、アタランテ。」

 

───あぁ。達者でな、ヘラクレス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの闘争より数日。彼奴が遂に目を覚ました。

 

最初に気づいた時には驚いていた様だが、すぐに状況を理解したのか、私に礼を言ってきた。別に気にすることでも無いというのに、律儀な奴だ。

 

…ケイローンのことを聞かれたときは…なんと説明すればいいのか困ったな…まぁ、タイミングよく来たお陰で、手間は省けた。が、彼奴は完全に固まっていた。

 

それは…そうだろうな。私とて驚いたのだ。

だが、私はケイローンと接した期間はまだ短い。女になられても、驚きこそすれ、困惑は無かった。

それに、ギリシャでは大して珍しいことでもない。男が女に、女が男にと、意外と男女の境目が曖昧だったりする。なら、うん。そういうこともあるんじゃないか?

 

───まぁ、気を強く持てよ、アキレウス。

 

 

 

 

 

それからの日々は…あぁ、楽しかった。こうまで穏やかに過ごした日が、かつてあっただろうか。

好いた男と共に過ごし、同じ男を好いた者とも、睦まじく過ごす。私にとってあの時間は、何よりも、かけがえのない宝だ。

 

三人での遠駆けは胸が弾んだ。共に行う狩りに心が踊った。いつまでも、こんな時間が続けばいいのにと、心から願った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────だが、その願いは叶わなかった。他ならぬ、彼奴自身の手によって。

 

 

 

 

 

何故、こうなってしまったのだろう。何が悪かったのだろう。

 

私はただ、同じ時を共に過ごす。

 

それだけで良かった。良かったのだ。

 

 

もう、あの爽やかな風の様な男は、私たちの好いた男は、この世のどこにもいない。

 

共に駆けることも、狩りをすることも、語らうことも、出来ない。

 

あの賢者も既に逝ってしまった。あの悲嘆が、慟哭が、耳からいつまでも離れない。

 

 

私も出来ることなら投げ出したかった。しかし、獣としての本能が、自死など許さぬと警鐘を鳴らす。

 

まさしく、この姿は罰となった。愛しい男も、親しき友も失い、それでもなお、死ぬことが出来ない。

 

 

せめて、この想いの一欠片でも、彼奴に伝えたかった。

 

あの時伝えていたら…何かが変わっただろうか?

 

今となっては、もう分からない。

 

 

 

 

 

 

なぁ、アキレウス。

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、どうすれば良かったのだ?

 

 

 

 

 

 

 

私は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたし、は…──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘラクレスは十二の難行以外にも、様々な冒険や、死闘を繰り広げた。その中に、ぺリオン山の麓の森の怪物を打ち倒した、というものがある。

 

その森は、かつてヘラクレスが武術を学んだ場であり、恩師ケイローンがかつて住んでいた場所だ。

 

たまたま森近くの町に立ち寄ったヘラクレスは、町の住人に怪物の噂を聞き、これでは師の森と町の人間が危ないと思い、勇んで討ち取りに出向いた。

 

そこでヘラクレスが見たのは、全身が真っ黒いモヤの様なもので覆われた、世にも恐ろしき魔獣であったという。

 

その魔獣はヘラクレスと打ち合える程の凄まじい怪力の持ち主で、鋭い針状のモノを幾つも飛ばし、翼の様なモノで空を高速で飛び回り、ヘラクレスを苦しめた。

 

無論、ヘラクレスはこの怪物を仕留めたが、そこまでで記述は終わっている。

 

ヘラクレスの師、ケイローンが住んでいた森の下に突如として現れた、ヘラクレスを苦しめる程の怪物の話だというのに、詳しい内容が見当たらないのだ。

 

一体、この怪物はなんだったのか。ぺリオンの魔獣と呼ばれるこの怪物の正体は、未だに謎に包まれている────。




四周年ありがとう!(大遅刻)
推しの大量増加と連続星5召喚でテンション上がりすぎておかしくなってた野菜人です。
追加低レアたちには、一つの共通項がある…それは、顔の良い変態…ということだ…!(生贄不可避)


次はトロイア編を書くといったな?あれは嘘だ。

というか、トロイア書こうと思ったら姐さんと先生視点を先にやっとかないと違和感あるやん、と思いましてね。一先ず、姐さん視点を納めに来ますた( ´_ゝ`)

シリアス苦手なりに、意外となんとかなったんじゃないかと思いますが…後半になると雑になる癖をなんとかせねば…

それと、ヘラクレスさんの口調は原作での一瞬の台詞と、作者の妄想で補完してるので、こんなん違ぇよ!ってなったらすみませぬ…


先生視点の方は、カリクロさんの扱いに悩み中です…fateではしっかり言及されてるので、全く居ないものにするのはさすがに無いですが…いるのならTS先生とかなんやねんってなる…ウゴゴゴ…


それでは、水着イベント頑張りましょう!

マーリン引いた(感謝の素振り)


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