俺は強欲 (駄文書き)
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誓い

 ワーニング、ワーニング!これは二次創作です。


 目を覚ませば、そこは鉄格子のある部屋であった。別段それに違和感を覚えるでもなく俺は硬い木のベッドの横の粗末なテーブルにある少し濁っている水を飲み干した。

 

「‥‥‥‥ふぅ」

 

そうして目覚めが悪い頭を叩いて起こしながら周りを見やる。鉄格子の外には自分と同じような部屋に入っている人たちが見えた。俺たちは別に犯罪を犯して捕まっているわけではない、俺たちは

 

「――早く起きろグズどもッ!仕事を始めるぞ!!」

 

どこの国にもいる奴隷なのだ。

 

 

 

 俺は奴隷の子供だったらしい、ここの主人が買った奴隷の女が母親だ。奴隷は奴隷同士で交流を深めることは禁止されているため必然的に俺の父親はここの主人となる。が、そんなことは認められず俺もここで奴隷として暮らしているのだ。そして母親はそれに絶望し舌を噛み切って自殺した。別に悔しいとかそういった感情はない、なにせ俺の自我が目覚める前であったのだから。

俺の名前は

 

「77番、ボーッとしてるとまた叩かれるぜ?」

 

「ああ、悪い79番」

 

77番、そんな記号で呼ばれている。ちなみに現在は畑に種を植えている。大体今いる奴隷の数は...25.6である。奴隷の癖して2桁の数なら数えられるので褒めて欲しいところだ。79番は俺と同じ頃買われた奴隷でいろんなところに気が利く兄貴的存在である。

ここは生活環境こそ酷いが奴隷業界の中ではましな方だと79番は前にこっそりと教えてくれた。

 

『酷い所はまず人間と同じような行動はさせてもらえないし個室もない、ここは生きて暮らせる以上大分ましだ』

 

そう語った79番の目が寂しげだったのをよく覚えている。とにかく、ここで生きれるのならそれでいいのかもしれないと言っていた。

だが俺はそれが気に入らなかった。遠くで酒を飲みながら煙草を吸っている主人を見るといつも殺したいほど怒りが湧き上がってきた。

俺は強欲、それは痛いほど理解していた。だから、俺は夢を捨てずに今日も生きている。

 

「(いつかあいつと同じ、いやもっと上へ昇ってやる!全部奪ってやる!!)」

 

そう俺が誓ったのは9歳の頃であった。

 

 

 だが、今すぐに反乱を起こそうとするほど馬鹿ではない。俺の非力さは俺が一番知っていた。鍬を握れば疲れ果て重たいものを運べばまた疲れ果てる。こんな様ではここの主人達を出し抜く前に死ぬのが関の山だといつも自分に囁いていた。

 

とはいえ、何もせずに手をこまねいていたわけではない。ひたすら体を鍛えていたのだ。眠い目をこすり見張りの目をかいくぐって鍛えていたのだ。少しでも待遇がよくなることを願って従順なふりをしていたのだ。

御蔭で12になった頃にはすっかり待遇は改善されていた。とはいえ、食料が他の奴隷より少し増えたぐらいなのだが正直言って鍛えたら腹がよく減るようになったのでありがたかった。既に誓ってから4年ほど経ってしまったが今でもその炎は燃え続けている。

 

そういえば、待遇改善の他にも変わったことがあった。

今年から俺は主人の護衛の一人になったのだ。これはとても大きな出来事と言える、だがそれと同時に見張りの目が強くなってしまったことは言うまでもない。護衛は10人、その中でも護衛になったため剣の訓練を最近許可された俺は一番弱い。

 

「おい77番、これを片付けておけ」

 

「わかりました先輩」

 

「77番、ついでにこれもな」

 

「わかりました先輩、すぐに致します」

 

漸く奴隷の中で格が上がったが無論誓いのとおり、この程度で満足する気などない。見ていろクズ共、いつかそのムカつく顔全部を胴体とおさらばさせてやる。

 

俺は強欲なんだ。

 




いきなり時間が進んで「えっ?」となった方はいるでしょうか、ですが流石に長いのでそこの展開はカットさせていただきました。プロローグは1452文字ですが次回からは2倍以上をボーダーラインとして投稿させていただきますので少し更新が遅いかもしれません。
あと少年のくせして 俺 とか 強欲 とか使うのは少しスルーしていただけるとありがたいです。


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-1

 俺の主人、名前はロドリゲスとかそんな感じの名前である。そんな感じ、とはどういうことかといえば普段は名前など使わずにご主人様とかそういったことでしか呼ぶことは許されないし心の内で叫ぶのはクソ野郎とかトカゲ野郎とかそういった罵倒でしかないためだ。

 

「77番、よえぇなてめぇ」

 

「いやぁ、本当に先輩にはかないませんて‥‥‥‥」

 

今日もまた特訓という名でのいじめが始まっていた。普段あまり仕事がない護衛たちはストレスが溜まっておりそのはけ口は新入りである俺に向けられる。

12歳にしてはやや大きい体と鍛えた頑丈さが護衛たちの気を大きく、また感覚を鈍らせていた。やろうと思えば俺だって一矢報いるとか出来そうなんだがそんな事をしたらもっと面倒くさいことになってしまう。

痛みになれる特訓だと思って俺は甘んじて受け入れる。

 

そもそも、護衛たちの平均年齢は俺を抜いたら20~22程度、身体能力で勝てるはずがないのだ、そんな奴らの模擬刀の一撃を防いでいたらいつの間にか溝に一撃が叩き込まれる。

 

――弱い、俺はそんな感情を自分に抱いていた。

そんな時であった、急に訓練室に使用人の一人が入ってきて俺たちを直ぐに外へ出るよう命じた。それを聞き少し痛みが走る体を抑えながら俺も歩き出した。

 

 

 

 俺たちがいるところは、東の海(イートスブルー)と呼ばれているところらしく世界の中ではかなり平和な地域のようだ。どうでもいいがな。

そんな平和な海の中、ここは主人が隠居しのんびり過ごすために買った島らしく住んでいるのは島のど真ん中に位置する館の住人のみだけらしい。

で、そんな島に訪れるような輩といえば‥‥‥‥

 

「久々に暴れられるぜ!」

 

そんな一番強い護衛の言葉に周りも合わせてオゥッ!と声を上げる。

話が途切れたが今回の相手は

 

「海賊どもを叩き殺せ!!」

 

だそうだ。

どうやら見張り役がこの島に近づいてくるドクロマークの旗を掲げた船を見つけたため護衛集団に声がかかったわけである。数は大凡15程度、一人1.5人を相手にしなくてはならない。だが周りは数で不利だというのに全く不利に感じていないようで剣を振る者や醜悪な笑みを浮かべるものばかり。

 

これはチャンスではないか、俺はそう思った。この時を利用して両者相打ちを狙えばこいつらを恐れる必要はなくなるのではないか。そう思った。

だがしかし、運命といものはそうやすやすと俺には傾いてくれないようである。

 

「77番、まずお前があいつらに何か慌てるようなことをしろ」

 

護衛の中ではNo.2の指揮官役が俺にそう命令した。

周りの護衛は真正面からぶつからないことに少し不満を漏らす者も格上には逆らうまいと口を閉ざす。そんな状況において俺は

 

「―――分かりました、先輩」

 

ただ頷くことしかできない自分を呪った。

 

 

 海賊も、少しは頭が回るのか島にこそ付けたが夜を待つこととしたらしい。だが既に見つかっているというifは頭の中にないようで見張りを一人つけ全員船の中へと入っていった。

俺はそれをずっと近くの林の中から見ていた、これでも眼はいい方であると自負している。だから真昼間に百数十メートル離れたところからでも容易にその間抜けどもの姿を鮮明に捉えることができた。先程まで甲板に出ていた人数が全員であるのならしっかりとした数は17、腕の立ちそうなのは4,5人程度だった。

 

「(さて、どうしたものか‥‥‥‥)」

 

そう呟いて俺は先程支給され現在腰に装備している小刀二本を見やる。これでは心臓を突き刺すことも難しい、そしてすぐに殺せる自信もない。あの偵察に声を挙げられたらthe・end、といった所だ。偵察はまったく疲れる素振りも見せずこちら側を見張って‥‥‥‥待てよ?

 

あの偵察、いくら何でも(こっち)を見過ぎではないだろうか。というか全く海側を覗いていないぞ?まるで敵襲は陸からしかこないと思い込んでいるような、

 

それだ!!

すぐに準備しなくては、と俺は気づかれないように林を後にした。

 

 

 そして俺は現在泳いでいる、別に逃亡しているわけではない、俺は考えたのだ。

海賊たちが優雅に陸からだけの敵を眺めているというのであれば、海から攻めればいいのだと。そう気がついた俺は夏に入りかけの時期でまだ冷たい海の中へと飛び込んだ。泳ぎ方はなんとなくに近い、だが波の音が泳ぐ音を消してくれているので下手でも大丈夫である。

冷たいなどと感じながらも船の近くによることができた。後はこの船底に穴を開けてやればこんな海賊船なんて直ぐに沈むだろう。そう思い一息吸って水中へと潜る。普段見る水とは違い綺麗ではあるが少々目が痛いと感じる。これが"海"といものなのだろうか。

しかし、そんな事を感じてなどいられない、俺は腰から小刀を一本抜き出して硬い木で出来た船底に突き刺した。

 

一撃ではその硬さを破ることが出来ず、水という動きを縛る中で何度も何度も突き刺す。次第にそこから泡が出るようになったことを確認すると息が苦しくなり一旦浮上した。

そうして息を荒げていても船は全く騒いでいない。それに少し腹を立てた俺は再び水中へと潜る。

船底には確かに小さい穴ができていたがあまり泡は出ていない、どういうことなのだろうかと少し離れた場所にまた穴を開けた。すると

 

「――モガ?!」

 

急に出てくる泡の量が増えその泡の攻撃をモロにくらってしまった。どうやら二つ穴を開けないといけなかったようである。船が沈みかけたら海賊たちは大慌てで陸に上がるだろう、だがそこに待ち構えているのは護衛達だ。人数の差を考えればそれぐらいのハンデで戦えばだいぶいい勝負になるはず。

俺はその様子を見ていようと海から上がりかけて、欲が出た。

 

「(そういやこの船‥‥‥‥海賊船だったよな?ならどっかに宝とか食い物とか入ってねぇのかな)」

 

そう考えてしまえば俺は自信の強欲にとらわれてしまい別の行動をしたくなってしまった。もう一度水中へと潜り穴と穴をつなぐように剣で印を付けると俺はその真ん中に渾身の一撃を叩き込んだ。

するとどうだろうか、ギリギリながらも子供一人入れる程度の大きさの穴が出来上がり俺は笑いながらその中へとはいる。

久々の何かを踏む感覚を楽しみながら入るとそこはもう膝ぐらいまで浸水していた。そこにあるのは木箱や宝箱、俺はそれを見て歓喜し宝箱を開ける。

 

―――だが、中身は空であった。

 

「は?」

 

俺は慌てて他の宝箱も開けるが全く何か入っていた痕跡すら見つからない。ならこの木箱か?俺はそう思って乱暴に木箱を開ける、そこには柑橘類などが入った所謂果物箱であった

 

財宝は?うまそうな食い物は?強そうな剣や盾は?

俺は混乱していた。そもそもここ族というものは余り宵越しの金は持たないもので財宝があったら売っぱらいうまそうな食い物があったら食べるし強そうな剣や盾なんてまずしまわず使っているのだが俺にはそれがわからなかった。

 

「誰かいるのか!!」

 

扉が乱暴に叩かれた。

幸いにして水圧などの関係で扉があかなくなっているようだ。だが時期に入られる、俺は舌打ちをしながらせめてもの収穫だと果物が入った木箱で穴を拡大して脱出した。

 

この選択が俺の人生の分岐路であったことに俺はこの時点ではまだ気がついていない。



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-2

 果物の木箱を抱え様々なところに水が入りえづきながらも必死で浮上すると早速海賊たちとの戦いが始まっていた。俺は木箱と共に岩に上がる。目がいい俺だからこそ見えるがアイツ等ならここは見えないはずだが‥‥‥‥少し不安だな。

木箱を隠して俺は参戦するフリをするとしようか?

 

『コナクソーッ!』

 

ああこの声は自分が一番強いんだとか他の護衛の悪口を言っていた68番だな。胸から血が吹き出てる。だがその血を使って目潰しをして一人斬り殺したな。なかなか頭が回るのかそれとも単なる偶然か...あっ倒れた。そしてそのまま胸に剣突き刺されたから死んだな。

戦況はいい感じに相打ち状態になっているようだな、このまま隠れたほうがよさげだ。

 

『ヌルイゼェェェェェェ!!!』

 

あれは確か戦闘狂の52番だな、3人相手にしているぞ?!化物かよ!しかも52番の獲物は鉄の拳みたいな奴で射程が短いっていうのに。

あぁでも虚勢か、防戦一方じゃないか。

 

『‥‥‥‥シッ!』

 

レイピアとか言うんだっけかあの細い剣、司令官替わりの53番はそれで戦っている。こう見ていると皆武器が違うのによく訓練とか出来たもんだな。

あ、剣飛ばされた。ざまあ見やがれ。

 

さて、見た所完全に拮抗しているとは言い難くなってきたな。やはり数の差は恐ろしいるこのままだと海賊がこの島でのさばることになってしまうな。だからといって今あの戦いに飛び込むのは馬鹿としか言い様がない。

 

「さて、どうしたもんか‥‥‥‥そうだ!」

 

いいことを思いついたので俺は果物箱をしっかりと隠すと直ぐに森の方へと向かった。

 

 

 

 現在、海賊たちは島にある少ない海岸で戦っている。地面は砂地で動きにくく必然的に攻撃を避けることができずにただの斬り合いとかしている。

そしてその海岸は岩を一部分だけを切り取ったように存在しているので横には高い岩肌が存在し、俺はそこにいる。

 

出来ればこのまま護衛たちが死んでいくのをただ眺めたい気持ちもあるものも海賊が残るのもいただけない。なんとか死んでいただくために、俺は策を講じさせてもらう。

俺の手元にあるのはいくつもの拳サイズの岩、この高さから落とせば人を殺すのに十分な凶器となる。それを片手で掴み、しっかりと狙いを定め...投げた。

岩は空を切っていき、その音に反応し空を見上げた間抜けな海賊の顔に命中した音がする。それに反応して全員がこちらを見やるだろうが俺は既に下から見えない位置に隠れていた。

 

そうしてしばらくすれば海賊たちの声は次第に小さくなり、ついに戦闘の音は聞こえなくなった。だから俺はゆっくりと顔を出す。

そこには海賊たちと何人かの護衛の死体、そしてその近くでヘタリこんでいる生きている護衛を見つけた。護衛の数は2人までに減っておりその状況に俺は哂った。俺はそのままその護衛に目掛け、岩を投げた。

 

いくつも投げた、用意していた数がなくなるまで投げ続けた。一投目が当たったあとも投げ続けた。片方の護衛はそれに気がついて直ぐに逃げようとしたが疲れ果てた足と砂が動きを奪う。そして転び慌てて空を向けばそこには大量の岩。護衛は情けない声を出して動かなくなった。

 

「...はは」

 

その光景をこの目に焼き付けていると次第に声が漏れてきた。

 

「ハハハハハハハ!!」

 

生まれてこのかた、こんなに大きな声で笑ったのは初めてだった。

 

「ハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

今、この状況が俺にとっては天国に感じた。

喉が枯れても、笑い続けた。

ただひたすら、感じたことのない高揚感を味わっていた。

 

一時間程笑っていたのではないか、そんな気がしながらも俺はその笑いを渋々止めた。そういえばまだあのトカゲ野郎が生きていたな、とっとと終わらせてもっと高揚感に浸ってやろう。そう言って俺は館に向かった歩き出した。

 

 

 

 館は木製、地下には俺たちの住処がある。

まぁ‥‥‥‥出口封鎖して燃やすか。他の奴隷どもとパニック起こしてくれりゃいいしと近くにあった木の棒や鍬、海岸で拾った武器などを一番大きなドアに詰めていく。

外には海賊が来たためか珍しく人がいない、好都合すぎる。

さて、火はどうするかと思ったが灯りのたいまつを使えばいいな。松明を置いておく鉄製の道具ごと館につけそこに藁を置けばすぐに火なんて上がる...訳でもなかった。どうやら表面に火事防止の何かが施されているようだ。

しょうがないので小刀で壁を少し削れば燃えた。

 

次第に上がっていく悲鳴、館のいたるところから煙が上がっていくのが見えるとまた笑いが起こってくる。ああ、快感だ。でかい館一つがもえる所業を自分がしたと思うと笑いがこみ上げてくる。そして脳裏にはトカゲ野郎共の苦しんでいる姿が自然と思い浮かんでくる。

 

「あぁ、心地いい」

 

そう漏らせば館からの悲鳴で打ち消される。ここにいる奴隷達には大して恨みもないが運が悪かったと思ってくれ。

 

「アチチチチチチチ!!!」

 

再び笑っていた所で館から体を抑えながら一匹のトカゲが館の窓から出てきた。どうやら腹を決めたらしい、だが既に手遅れのようだ。全身には割れたガラスが突き刺さり体のあちこちには大きな火傷が見える。これは手を出さなくても死ぬ、がやはり殺しておくか。そう思い近づけば俺の気配に気がついたのだろう、トカゲが必死で口を開いた。

 

「たのム!なンでもじてやるからダズゲデグれ」

 

「聞く気はない」

 

「?!」

 

どうやら、声で俺だと気がついたらしい。こういうところには鋭い奴だ、と俺は思った。

 

「ぞノゴえ!77バン!!」

 

「その通り、じゃあな♪トカゲ野郎」

 

「マッ!!」

 

その言葉を最後まで言わせず、俺は奴の首を海賊から奪った剣で切り落とした。

我ながらうまく切り落とせたとは思う。

 

さて、奴隷達は地下だから煙でいぶり殺されたか?使用人たちももう脱出しないと医療器具も揃ってないこの島じゃ死ぬだろうしあの果物箱でも取りに行くとするか。

そう思い後ろを向こうとした瞬間、体を衝撃が襲った。

 

「ガッ!?」

 

完全な不意打ちに何も出来ずに地を転がる。

なんとか痛みに耐え顔を上げ目を開けばそこには

 

「何しやがッ」

 

「―――それはこっちのセリフだろ、クソガキ」

 

海賊が一人、俺の眼前に剣を突きつけていた。




今回の教訓、調子に乗りすぎると痛い目にあうよ。

今回の主人公77番君はまともな教育など受けていないため倫理観のかけらもありません。だけど決して燃やすのが好きとかそういことではないですよ?


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-3

ようやく時間取れました・・・!


 正直に言って、油断していた。

余りにも目で見た結果を信じすぎていた。

その結果が今、俺に牙をむく。

 

「よくも俺様の作戦をぶち壊しやがってこのクソガキ!!」

 

倒れた背中に容赦なく海賊の蹴りがめり込む、同時に肺から空気が漏れるのを感じてえずくが胃に何もないためか胃液さえも上がってこない。

よくよく考えれば、あそこに海賊は全員いたという思い込みがこの結果を招いたのだろう。あぁ、その代わりに血が出たかのか上手くしゃべることが出来ない。

 

「ッグゾがァァァ!」

「へっ!そんな剣当るかよ」

 

立ち上がりながら奪った海賊剣を抜くものも全くと言っていいほど相手にされていない、実力が違うとはこういうことなのだろうか。同じような形だが恐らくあの剣の方が高いというのがその見た目で理解できた。

 

「オラ」

「しまっぐッ?!」

 

あっという間に剣をはじかれて腹に蹴りが突き刺さり背中から地面へと吹き飛ばされる。直ぐに起き上がろうとすると、俺の眼前に剣を突き付けられ動けなくなってしまった。

 

―――もう無理なのか?

 

そんな考えが頭をよぎった、このままとどめを刺されると思った。

だが、海賊は急に動きを止めた。

 

「………?」

「木箱、何処に隠しやがった」

「へ?」

 

木箱って、確か果物が入ってたやつ...だよな?

けどなんで俺が知っていると………あの時扉をたたいていた奴なのか?

 

「さっさと言えこのクソガキ!!」

「わ、わかったから!」

 

とにかくまだこいつは俺を殺すとまずい状況のようだ、

ならギリギリまで生き抜いて隙があらば殺してやる。

 

◆◇◆

 

 

「ここなんだな?」

「………はい」

 

俺が言った場所、海岸近くの岩にたどり着く。何故か水は引いていて岩は海岸からつながっていた。そこまで腕を縛られて道案内をさせられた。正直言って今すぐこの海賊の首にかみついて殺したい程憎悪は膨れ上がっている。

 

海賊は岩のくぼみに隠してあった木箱を見つけると俺の手をほどき、開けるように命じた。

俺はそれに従い箱を開ける、何もないことを確認すると海賊は俺を押しつけて木箱の中の果物をあさっては捨てていく。何がしたいのだろうか、と疑問に思った次の瞬間に海賊は歓喜の表情になった。

 

「(何かを見つけのか......って、果物?)」

「うぅん?なんだそりゃって顔してるなクソガキ」

 

目的のものを見つけたからか、海賊は気持ち悪いほどの笑顔になっていた。はっきり言ってとびかかり顔の皮をひきがしたい程にだ。

海賊は聞いてもいないというのに勝手に説明を始める、

 

「悪魔の実、こいつはそう呼ばれてる」

「悪魔………?」

「そう、食うだけで悪魔のような力を手にするとか悪魔が宿るとかそういわれている実なのさ。下手したらこれ一個で島一つ買える」

「な?!」

 

悪魔の実、そんな宝があの中にあったのか?悪魔の力が手に入れば、こんな奴にだって余裕で勝てるのではないか、と頭の中を一瞬にして様々な思考が駆け巡る。

そして一つの解答を導き出す

 

――欲しい、と。

そして目の前でその実を今まさに口にしようとしている海賊を見て、ついに我慢の限界がカウントダウンを実感しながらおとずれた。

 

「お?いいぜ実験台にしてやる………って不味いなこれ」

「てんめえぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

海賊がその実をかじりのみこむ頃、俺は懐に潜り込んでいた。そして力一杯の拳を海賊の腹に叩き込む、吐き出しやがれ。

 

「ぐっ、だがぬるい!」

 

海賊は一瞬顔をゆがめたがそのまま剣を抜こうと下がる、剣を抜かれたら獲物のないこちらの終わりだ。

させると思うのか、と俺はそのまま下がった海賊にタックルを仕掛けた。

すると、俺のタックルによって海賊は剣を落とし、体が岩から離れ下へと落ちた。だが下には少し海水があり落ちてもあまりダメージになっていないようでまだ生きている。この時の俺はまだ知らぬことだが悪魔の実を食べたものは海水に触れると力が抜けて動けなくなってしまうらしくこの海賊はまさにそんな状況であったのだろう。

俺はそのまま落ちた剣をとり海賊の腹めがけて剣を下に向けて飛び降りた。

 

「しまっ!!...カハッ」

 

海賊の体に確かに剣が刺さるのも確認せずにひたすら剣で何度も突き刺した。それに応じて血が噴き出し、体を染めていく。

血が完全に出なくなった頃にはもはや元海賊の体が浮かばない程の惨状となりはてていた。それを確認して、俺は再び岩に上った。

 

「………フー」

 

疲れた、そう口に出したらきっと倒れるだろうから言わないでおくがこのままだと本当に死ぬかもしれん。とにかく、何かを口にせねばと海賊が放り投げた果物を皮は向かずに口に入れていく。

 

その時であった、海賊が口にしたはずの悪魔の実そっくりの実が箱の中に入っているのを見つけた。

こうしてじっくり見てみるとその異様さがよくわかる、普通のみかんのような大きさだが皮に変な模様が描いてあり色も少しおかしい、きっと何も知らずに見れば腐っていると勘違いしてしまったかもしれない。

 

「どうすっか、これ」

 

確か売れば島一つほどの値段である、どんな力が手に入るかもわからず食ってしまうのにも少し惜しい。かといって俺が売ろうとしてちゃんと買ってくれるかどうかさえ怪しいのだが。そしてさっき食ったはずの海賊もその力を見せることなく死んでしまった、まさかそんな力なんてないのだろうかとさえ思う。

 

 

まぁいい、とにかく食べてみようとくちを大きく開けようとした瞬間突如として空から鷲が襲ってきた。

 

慌てて回避した所、手に持っていた実が持ってかれてしまった。そのまま飛んでいく鷲に向けて剣を投げると運よくその翼に当たり鷲もろとも少し遠い海に落ちた。

 

「ったくあの鳥!」

 

もう死んだであろう鷲に舌打ちをしながら海に入っていく、早くしないと実が沖に流されてしまうではないか。

俺はすぐに海に入り実へと近づく、とんだ邪魔が入ったと考えているとすぐに実へとたどり着いた。だが海の底から来た何かが俺を飲み込んだ。

 

 




………悪魔の実?食わせるわけないでしょ。


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-4

死んだと思ったか?
スランプだよ大佐ぁ...


 気が付けば、俺は砂浜に大の字になって倒れていた。

目を覚まして周りを見渡してみれば今までいた島とは違うのというのを雰囲気で俺は感じ取った。結局、俺はどうしてここにいるのだろうか。

 

そんな疑問を頭がよぎったがどうせ答えてくれる人間は周りにいないのであるし知っても仕方がないので心の奥底にしまうこととした。

そして今一度改めて状況を俺は確認した、

 

・持ち物

なんかベタベタする剣

ほぼ布きれ同然の服

 

・周り

砂浜←今ここ

森、かなり木が高い

隣になんか変な服着たおっさん

 

………ちょっと待て、なんかいるじゃねぇかよ。

俺は今の今までその存在に気が付くことが出来なかったおっさんの方を見つめた。

白を基調とした服、その背中には………正義?変なデザインだ。

 

「おーい、おっさん。生きてるかー?」

 

そう言いながら寝ているおっさんの頬をぺちぺちと叩くが一向に起きる気配なし、死んでるのか?

 

「(構ってる余裕はないな、さっさとここがどこか付き止めねぇと)」

 

俺は海賊刀を抜き、刃こぼれしていないかどうかを見て直ぐに森の中へと入っていった。

 

 

 そして、10分もたたずにまた砂浜へと走って戻ってきていた。

息を切らしてだ、先ほどまでの俺は恐らく人生最大級に走りぬいたと思う。

 

あの森の中は生態系がおかしい、そう言いたかった。俺の腕ぐらいある巨大な昆虫や見たことのない獣が大勢いた。そしてそいつらは森の中で互いに殺しあっていた。

そんな奴らは俺を見つけた瞬間、襲い掛かってきた。お蔭でただでさえ布きれ同然であった服は囮に使い喪失、食い物を見つけようにもあいつらが邪魔過ぎて滞る。

詰みだ、そうため息をついて気が付いた。

 

あのおっさんは何処に行った?

 

慌てて周りを見渡すが何処にも見当たらない、まさか食われたのか?

そう考えた瞬間、まだ日が落ちていない紅い砂浜を影が覆った。空を見れば先ほど見た獣よりずっと大きな奴がいて、俺は死を悟った。

抗おうにも体がビクついて一指も動かない、獣は俺の丁度横に降り立った。

 

だが、いつまでたっても痛みどころかその獣の鳴き声さえ聞こえなかった。

ゆっくりと首を回し、確認してみればそこには確かに獣がいた………首から血をだし死んでいたのだが。

 

「………は?」

「おお?どうしたガキ」

 

俺の驚きの声とともに獣の上に誰かが乗った。

紫色の短い髪、その顔は引き締まっていて明らかに強いというオーラを纏っているのは

 

「さっきのおっさん!?」

「おっさんはねぇだろこのクソガキ」

 

軽くも重たい調子の声で俺の頭には衝撃が走った。

げんこつ、というやつだ。

 

 

 

 そこから、俺はその海軍大将という立場にいるおっさんを質問攻めにしていた。どうやって獣を倒したのか、ここは何処か、というかこの島は何なんだ、と言えばおっさんは

 

「この拳でだ、それは知らん、そういう島なんだろ」

 

と全く参考にならない情報が戴けた。厳格そうに見えるが少し馬鹿なのだろうか。

とにかく、このおっさんは載っていた船が突如暴れている海王類という海の化け物たちにに襲われてしまったらしい。本来ならこのおっさんにとっては全く持って相手にならない程度の敵らしいのだが何故おっさんまでのみこまれてしまったのかと聞けば、俺が原因らしかった。

どうやらこのおっさんはその海王類とやらに飲み込まれながらも無意識で暴れている俺の姿が見えてそれで助けに来たようだった。

 

「………ありがとよ」

「別に言い、それが"正義"だ」

 

そう言いながらおっさんは俺の頭をガシガシと乱暴に撫でた、正直言って嫌いな部類には入るがここでこのおっさんを敵に回してもしょうがないので我慢する。

 

「ガキ、お前名前は?」

 

その途中でおっさんは俺に名前を聞いてきた、さてどうしたものか。

別に77番が恥ずかしいという訳ではないのだが素直に言うのも癪だ。だがこれといっていい偽名も思いつかないので少し拗ねながら言う。

 

「77番」

「………そうか」

 

その記号を聞いて俺がどういう人間だったのかわかったようだった。それ以上、おっさんは俺のことについては聞かなくなった。

居づらくなった俺は、海軍について尋ねてみた。

 

「おっさん、海軍ってなんなんだ?」

「だからおっさんは.........まぁいい、海軍ってのはな」

 

そこから、海軍大将(自称)のおっさんによる海軍の説明が始まった。

要約していえば、海の安全を"正義"の名のもとに守る組織だそうだ。正直に言って胡散臭いの一言に尽きる。

"正義"、この言葉は野望を失いあそこで生きていくことを決めた奴隷達の中でも多く使われていた。

だからこそ、その言葉は俺の嫌いなワードランキングの中でも上位に食い込む言葉だ。

 

「納得いかない、そんな顔をしてやがるな」

「………"正義"ってものほどやすっべらい言葉もないだろ」

 

その言葉をぶつければ、おっさんはこう返した。

 

「ああ、薄っぺらい奴が使えば薄っぺらい"正義"しかうまれねぇ、そんな薄っぺらい"正義"を潰すのも俺たちの"正義"だガキ」

「………おっさん、あんた名前は?」

 

「俺か?俺の名はゼファー、ほら肉が焼けたぞガキ」

 

ゼファーが渡してきた肉は、人生の中で一番美味かったことは悔しいので言わないこととする。

 

 




ゼファーさん(64)の登場でした。


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