型月世界において簡単にカルデアに力を貸す方法。 (修司)
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型月世界において簡単にカルデアの力になる方法。

ここにいる皆さんは転生というものを知っていると思う。

 

宗教における輪廻転生ではない。もちろん六道輪廻でもない。

異なる世界で死んだ魂が別の世界へと渡り、未知を体感するという最近流行りのアレだ。

 

ここで言うことなる世界とは何も剣や魔法の世界だけではない。本来の世界よりも高度な文明、はたまた動物しか暮らしていない世界など様々である。

皆さんはそれを画面の向こうから一次元の情報として観測していることだろう。

 

ん?なぜ今更こんなことをしゃべるのかって?それは・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うそやん」

 

 

 

 

 

絶賛体験中だからである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

短編 観測

 

 

 

 

私の名は○○。(皆さんの名前をどうぞ)つい最近まで普通に働いていた、ただの一般人である。

ん?もっと何かないのかって?私をほかの小説主人公と一緒にしてもらっては困る。彼らのようにパッと自己紹介が思いつくほど、際立った特徴はないのだ。それでもあえて言うのなら、私は麺類が好きだ。

 

 

「・・・」

 

空を見上げてため息を吐き出す。

 

皆さんなら状況を察してもらえると思うが今回は敢えて言わせてくれ。

 

 

 

 

私はつい先ほどまで車の中にいた。季節は梅雨の始め。いつもはバイクにて職場に向かうところをその日は雨が降ったため車での通勤を行なっていた。朝から続く土砂降りは容赦なく車のウィンドウへとぶつかり視界をさえぎろうとする。 しかしワイパーが遮る雨水を退かすことですぐにはっきりとした景色が広がる。

それが何回も続く。

 

別に雨は嫌いではない。ジメジメするのは好きではないが、雷や土砂降りを窓越しに眺めるのはなんとなくワクワクする。

私はスリップに気をつけながらウィンドウ越しに外の景色を眺め続けた。渋滞なども特になくこのままいけば職場に後10分程で着くだろう。

この時期、この時間。それはいつもと変わらない光景。これが後1カ月近くは続くのだろうな。と思っていた。

 

 

 

 

しかしこの日は少しだけ違った。

いつも通り、私は職場前の信号を通った後くらいだったか。ハンドルを切る私に突如としてそれは起こった。

 

「⁈」

 

 

轟音とともに目の前が光に包まれる。すると次の瞬間、私の体に突如激痛が走ったのだ。

 

叫びを上げる暇はなかった。

 

光で視界がやられた為か世界がチカチカと点滅しているように感じる。激痛は身体中を走っているが、なぜか私は冷静に周りを見渡すことができた。

そして気づいた。割れたウィンドウの外、そこでは電柱がスパークを起こして倒れていたのだ。

電柱の根本はどす黒い泥のようになっており、長雨の影響で緩んだことが原因とすぐわかった。

 

(ッッッッッッッッ!?ギイィ⁈)

 

想像絶する痛みが全身を駆け巡る。そんな中私は理解した。

 

 

このまま自分は終わるんだって。

 

 

何かを考える暇などない。ゆっくりと眠気のような、しかし絶望的なまでに冷たい感覚とともに、真っ白いひかりがすぐさま私を襲った。

 

 

 

 

 

そして視界が真っ白になった瞬間。

 

 

 

 

 

「ここにいたんだよなぁ」

あの瞬間私は確かに終わった。

最初は死ぬ瞬間の走馬灯かと思った。しかし感覚ははっきりとしている上に頬をつねると痛みが生じる。おかしな点はそれだけではない。全身の怪我が治っている。他にもカバンにいれていたはず財布と携帯電話はなぜか自分のポケットに入っており、服装もスーツから私服へと変わっていたのだ。

 

そして空が晴れている。先ほどまで土砂降りで、ジメジメしていたにもかかわらず。

 

焦った。それはもう焦った。

 

催眠?幻覚?それとも薬?

考えれば考えるほど変な汗が浮かんでくる。

取り敢えず職場に連絡を行おうとして携帯を開く。現在位置をネットで検索し、その地名を見た瞬間、頭が真っ白になった。

 

 

「冬木・・・・冬木かぁ・・・」

 

冬木

 

fateシリーズ、および型月シリーズに存在する架空の都市である。九州に存在し、そこでは様々な怪異や事件が起こる物語の中心地だ。

本来であれば自分の正気を疑うだろう。ゲームの世界に来たなんて到底信じられる話ではない。だからこそ彼はその後すぐ辺りの探索を行ったが、本来本州にあるはずの聖地(漫画、アニメのモデルとなった場所を聖地と呼ぶ)が九州であるはずのこの場所にあったのだ。

 

 

「ひでぇ・・・俺が何をしたって言うんだ。いや、しかし生きているのは日ごろの行いの賜物?」

 

一人公園のベンチで携帯をいじりながら呟く。こんな状況であるにもかかわらず彼は仕事の連絡について考えていた。非常事態やパニックに陥った時日本人はまず仕事を気にしだす。悲しきサガである。

 

 

 

「時間も過ぎてるだろうなぁ・・・いや、そもそも季節も違うしもう気にしなくていいのか?なになに・・・・2015年4月か・・・。過去だし」

 

 

頭をガックリと落としうなだれる。時刻はすでに午後一時半。色々考えてお腹の空いた彼はうだうだしても仕方ないとコンビニを探そうと立ち上がった。

「ん?」

 

立った瞬間彼の頭に違和感がよぎった。

 

なんだこの違和感は?今俺は何と言った?大切な事を忘れてるような・・・・。

 

 

「ゲームの世界に来ちまったって事以外で重要な事?そんなの・・・」

 

 

再び携帯に目を落とす。異世界、当たり前というべきか日付は彼のいた時代とは異なる。数年も前の時間である。

 

 

数年・・・数年前・・・2015年か・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

2015年?

 

 

「あぁ!FGO!」

 

 

 

 

 

 

FGO

正式名称Fate/Grand Order。

それはfateシリーズの中でも、初心者からでも入りやすくされているアプリゲームである。

西暦2015年、魔術がまだ成立していた最後の時代。人類の営みを永遠に存在させるために秘密裏に設立された人理継続保障機関フィニス・カルデアで、「2016年を最後に、人類は絶滅する」という研究結果が“証明”された。

 

原因を調査するうち、カルデアの魔術サイドによって作り上げられた「近未来観測レンズ・シバ」は、突如として過去・西暦2004年の日本のある地方都市に観測不能領域の出現を検知する。ありえない事象にカルデア機関員達は、これこそ人類史が狂い絶滅に至る理由と仮定、テスト段階ではあったが理論上は可能レベルになった霊子転移(レイシフト)による時間遡行を実行する。その目的は2004年に行われた「聖杯戦争」に介入し、狂った歴史を正す事である。

 

 

 

 

 

「そうだよ・・・。ここが本当にゲームと同じ世界なのだとしたら直に全人類が絶滅するんじゃねえか?」

 

 

 

そう、2015年8月。これから後4カ月もしないうちにこの世界の人類は一度滅ぶのである。

「いやいや、待て待て待て。そもそもこの場所がまだゲームの世界と本当に決まった訳じゃないし・・・」

 

彼はネットを繋げてfateと検索する。しかしそこには本来結果として出るべきゲームなどでず、英単語としての意味が表示されるばかりである。他にも色々アニメを検索しても全く見知らぬアニメばかり。

 

「ない、し・・・」

 

そっと携帯を閉じ辺りを見渡す。そこに広がるのはいつの日か眺めたものと同じ風景。

 

そう、冬木公園が広がっていた。

 

 

「ない・・・・・・のか?」

 

背中から変な汗が流れた。彼は一度死にかけ、何の奇跡か生き返った。にもかかわらずまた死ぬかもしれない?

 

「冗談じゃない⁈」

思わず声に出して頭を抱える。

確かにほっといても主人公ともいうべき人物によって世界は救われるだろう。しかしここはゲームの世界なのであってゲームではない。もし主人公が失敗してしまったら?道の途中でいなくなってしまったら?

 

 

もう死の感覚を味わうなんて真っ平御免である。

 

絶望的な感覚だった。まるで熱が液体となり自分から離れていくかのような感覚。

 

「何か・・・何か手はないのか?!」

 

 

そういうと彼は頭を振り絞り考えた。このような状況は2次創作と呼ばれる小説ではよくある展開である。これが主人公であるのならクールな考えを思いつくかもしれない。

 

しかし今の彼には何もない。

 

お家はねぇ!

魔術もねぇ!

頭もそれほど良くはねぇ!

身分もねぇ!

道具もねぇ!

カルデア南極山の上!

 

「俺こんな世は嫌だ!」

 

 

歌っている場合ではない。

 

「くそぅ・・・!このままだとまた死んじまうかもしれない。何か・・何か手は」

 

 

しかし彼にはどうしようもない。この世界魔術とは時代を重ねらば重ねるほど強固な神秘となるという設定がある。もちろんそんなものは持ってないし彼は魔術を使うことはできない。

 

「これがもし数百万年前なら2次創作みたいに物語書いて英雄になるとかできるのに。」

 

 

そう言って彼は再び頭を抱えようとして、

 

 

「・・・待てよ?」

 

 

とある2次創作群のなかに、過去に転生しそこで物語を書くと言う方法がある。確かにそのままならただの物語だろう。しかしここは型月の世界。神秘が重なればそれだけその存在は確かなものとなる。つまり本物として生まれ変わるのだ。

ある魔術師は英雄たちを「存在したかどうかではなく、あるかなかったか」

と捉えていた。

 

 

「神秘を重ねる・・・」

 

「神秘・・・・神秘、歴史か・・・」

 

 

彼は歴史に詳しいわけではない。もちろん魔術に関してもだ。先ほどきたばかりなのだ。当たり前だ。

 

「歴史・・・待てよ、ここが型月、いや、ゲームの世界だと仮定して・・・」

 

「・・・」

 

しかし彼にはひとつだけ奇跡を味わっている。そう、ゲームの世界で生き返るという奇跡。本来であればそんなものは何の役にも立たないものであっただろう。

 

 

 

しかし!その事実を確認した瞬間!彼の脳裏に電流が走った!

 

 

 

「そうだ歴史だ。」

 

 

「この世界は歴史を重ねたものほど強くなる。だからこそ最古の英雄ギルガメッシュはあんなにも強い力を持っている」

 

「逆にいうならこの世界はギルガメッシュ以上の英雄や物語を知らないということでもあるはず」

 

 

「ならば(この世界のギルガメッシュ以上に古い歴史)があったなら?それを認識できたなら?」

 

 

彼はすぐさま携帯を開けると画像ホルダーから何千枚もの画像を編集し出した。彼は前世から好きな漫画を仕事の休み時間でも読めるよう画像として保存している。

仮にもし、もしこの考えが当たったら!

 

 

「彼らの力になるはず!」

 

そして彼はインターネットを開き、とある漫画サイトをひらいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『じゃあ早速召喚に入ろうか』

 

 

第一特異点オルレアン。

 

彼らは草原の真ん中にいた。

「英霊かー、この石をマシュの盾に投げ入れればいいんだよね?」

 

そういうと彼、藤丸リツカは隣に立つ少女、マシュキリエライトに話しかけた。

 

 

「はい、そしたら先輩の力になってくれる英霊、サーヴァントが召喚されるはずです。」

 

「うーん、なんというかソーシャルゲームのガチャみたいだ。嫌な思い出が蘇る・・・」

 

『確かに近いかもね。ランダムに召喚されるってあたり。触媒があれば指定したサーヴァントも呼べるけど、今回の場合は君と最も相性のいいサーヴァントが召喚されるはずさ』

 

 

「不謹慎かもしれないけど、ワクワクするな〜」

 

 

そういうと彼は石を魔法陣の展開されたマシュの大盾に投げ入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界では、神秘を重ねれば重ねるほど強固な存在になる。

当然、この世界において最も強力な英霊はギルガメッシュだろう。

 

 

 

 

しかし、それはこの世界での話だ。

 

仮にもし、この世界の他にも世界があったなら?

そしてその世界が、この世界「型月」が存在するよりも前から存在していたとしたら?

 

 

『緊急事態発生!魔力反応の急激な増大を確認!英霊召喚の陣が持ちません!』

 

『なんだって?!』

 

 

元々存在は匂わせていた。

終局特異点において黒髭はそれを叫んだ。

 

目!鼻!ない!また目!目!目!

 

「なんだか召喚陣膨らんでなッ!?」

 

「異常事態です先輩!離れます!」

 

 

とある島にてアルターエゴ、タマモキャットは言った。

 

オープン、キャーッツ!

イーグル、ジャガー、ベアー!

 

 

藤丸のポケットから何かが落ちる。

「落書きが!?」

『上昇、止まりません!臨界点突破してしまいます!』

 

とある巨人の少女の狭間にて少年は見た。

世界とは・・・神秘とは・・・根源とは。

なぜ1+1は2なのか

 

 

 

 

そして次の瞬間、マシュの盾から光の柱が伸びていった。

 

 

 

 

これらはもちろんゲームにおいてはただのパロディでしかない。しかし、それはこの世界においては通用しない。

 

たとえそんなわずかなつながりでしかなかったとしても、きっかけさえあるならば。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奴らはこちらを見つけ出す。

 

藤丸リツカはゆっくりと目を開けて自分の無事を確認。そして隣にいるマシュに声をかけようとした。

しかしマシュは空の一点を目を見開きながら見ていた。

 

藤丸もつられて上を見る。確かそこには光の渦のようなものがーーー

 

 

「あれって・・・」

 

 

 

 

 

 

それは空を丸ごと覆い尽くすほどの大きさだった。一瞬藤丸はそれが何かわからなかったが、次第にその存在は姿をはっきりさせていった。

 

顔だ。

抽象的、機械的な見た目をしているが、おそらくそれは何かの顔なのだろう。緑色に輝く光の玉がそれの各所を照らし、瞳と思われる部分を照らす。

 

みんなが見つめていた。おそらく、その世界の誰もが見つめていた。

 

そう、その存在の名は

 

 

リツカは地面に落とした落書きを拾い上げつぶやくようにその名前を言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲッター・・・ロボ?

 

 

落書きには、とある機械仕掛けの巨人が描かれていた。




型月世界は神秘を重ねると強くなる
⬇︎
型月作品が生まれるより前の作品、又は漫画を持ってくる。
⬇︎
世界が生まれる以前の神秘。そして型月の世界そのものがアニメ、ゲーム作品がこの世に存在することへの証明。
⬇︎
漫画として世に出すことで世界の繋がりを作る。
知名度出ないわけないよね?こっちで売れてる以上向こうで売れないわけがない。
⬇︎
触媒「絵」で召喚
⬇︎
そうか!なぜあの世界に繋がったのか!全ては他の世界へと手を伸ばすための!

つまりゲッターとは!ゲッターロボ とは!

ガバガバですいません


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ゲッターロボ

「なぁ藤丸、お前この漫画知ってるか?」

 

まだ藤丸リツカが学校に通っていた頃の話。

休み時間お弁当を食べていると隣に座っていた友人から携帯を差し出されだ。

 

「・・・ムグッ。どうした?藪から棒に。」

 

「実はさ、最近あるサイトで話題になってる漫画があるんだ。それがこれだ。」

 

リツカは一度飲み込んで画面を覗き込んだ。その画面には化け物がボロボロのロボットの周りに描かれた表紙と思わしきものが写っていた。

 

「ゲッターロボ ・・・。なんつーか古い感じのロボットだな。父さんたちの子供のころに連載してそうな」

 

「だろ?でもこれかなり面白いんだぜ。なんつーかさ、味がある絵というか、ロボットがイキイキしてると言うか・・・」

 

そう言うと数ページめくって中身を見せてくれた。そこには古い絵ながらも登場人物達が凄まじいアクションを起こしたシーンだった。

 

 

「ふーん、でもなんと言うか最近のロボットみたいなスタイリッシュな感じじゃないな。いつに連載してたの?」

 

 

そう聞くと彼はよくぞ聞いてくれましたとばかりに身を乗り出すと携帯を操作しながら語り始めた。

 

「そう、いつから連載していたか。なんとこれは二週間前に連載を始めたばかりなんだ。だが見ろ。」

 

差し出された画面を覗くそこにはなんと。

 

「35話⁈いやいや、流石にそれはないでしょ。昔どっかに連載してたのを引っ張って来てるに決まってる」

 

リツカは漫画家というわけではないがどう考えても二週間で掲載できるペースではないことは理解できた。友人から携帯を借りページをめくる。内容がすぐに終わる4コマ漫画かとも思ったが1話1話みっちりと書き込まれていた

 

「だよな?だけどここからがまた謎なんだ。宣伝する訳じゃないがこの漫画は面白い。思わず引き込まれてしまうような内容に久しぶりにハマったくらいだ。でもよ、ここまで完成させた作品をそのままほっとくなんてあると思うか?」

 

「最初はネットの住人も疑問に思ったさ。どこかで無断で持ってきた作品を載せてるだけじゃないかって。けどな、どんなに探してもこの作品の痕跡は見つからなかったんだ」

 

 

「見つからなかった?じゃあさ、なんかのパロディってことは・・・」

「いや、中身を読んでもらえればわかるがこんな物切り合わせで出来るようなもんじゃない。それらの情報から書き溜めていたってのが一番の説なんだが・・・」

 

「どこの雑誌にも掲載してないならなぜこんなに書き込んでかつ大量に抱えていたんだ?って話になる。どう考えても掲載誌に載せるつもりで書いてるとしか思えないんだ。」

 

そういうと彼は画面を覗き込む。すると次の瞬間ピアノを鳴らしたかのような音が携帯から鳴り響いた。

 

「お、また更新された。今度は・・・15話⁈なんだこの作者⁈利益とか欲しくないのか⁈ま、まぁ取り敢えず全話無料で読めるからさ、よかったら読んでみろよ。なんつーかさ、すげーワクワクさせてくれる作品だからさ」

 

そういうと彼は他の友人と話し出した。

リツカはその姿をしばらく見つめた後自分の携帯を取り出し、そのロボットについて調べ出した。気になったというのもそうだが、元々友達付き合いのいい彼は勧められるままに物語を読み始めた。

 

 

「ゲッターロボ 、か・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲッターロボ

 

それは、1974年(昭和49年)4月4日から1975年(昭和50年)毎週木曜日19時00分 - 19時30分に全51話が放送された、ロボットアニメおよび同作に主役として登場する架空のロボットの名前であり、3つのマシンが合体して1つのロボットとなる、つまり合体ロボの原初である。

その中でも漫画作品群は、ワイルドとダイナミック。そしてバイオレンスを兼ね備えた作品であり、今も多くのファンを生み出している作品だ。

 

 

「よし、今週の分アップロードおしまい。次に取り掛かろう」

あの後俺は画像をある程度整理した後自分のうちがあるはずのところまで歩いて行った。

みなさんは知っていると思うが冬木市は熊本県に存在すると思われる架空の都市だ。元々の家は熊本の市内に存在し、そこにアパートを借りて暮らしていた。つまり少し距離こそあるが、たどり着けないわけではない。

そうして元アパートがあった場所に行くと驚いた。なんと自分の家はそのままの形で残っていたのだ。気づくべきだったと言うべきか、どうやら私は転生の中でも憑依というものに近い状態らしい。コンビニのトイレに入った時気付いたが、私の体は2015年時のものと同じだったのだ。

しかし気づかなかったのも無理はない。というのもだ。

 

 

「なんでデータだけは前と同じなんだろう・・・」

 

携帯の写真のデータはそのまま前世と同じ形で残っていた。入社式の時の写真も、成人式の写真も全てだ。

 

「携帯は自分の今まで使ってきたものと同種、ただデータだけ前世と同じ・・・か。ここまでくるとなんか誰かの意図を感じるな・・・」

 

そういうとフォルダにまとめた漫画を順番に並べて行く。

彼の立てた作戦。それはこの世界に他のキャラクターを連れてくるという作戦だ。

現実でこそあるがここは型月の世界。そうゲームの世界だ。つまりこの世界の存在こそ他の物語の世界が存在する証拠となりうるわけだ。かつて魔法少女プリズマイリヤがリリカルなのはとクロスオーバーしたことがあるのを皆さんは知っているだろうか。つまりきっかけさえあればこの世界と繋がることが出来るわけだ。

 

 

 

 

しかしそれを行う上で注意せねばならなかったこと。それは繋がる世界の選択だ。

 

ここ型月世界は物語の完成度こそ素晴らしいかつ面白い世界だが過ごすとなるとクソとしか言いようのない世界だ。何と言っても何度も世界が滅びかかる上、たとえ何とかなったとしても最終的には蜘蛛の化け物によって全人類が水晶に飲み込まれて滅ぶことが確定している世界なのだ。

人類はたしかにいつかは滅ぶかもしれない。だが確定してるとなると納得いかない。その頃まで生きているわけではなくても、やはりモヤモヤする。

だからこそ、この世界をまるごと抱え切れるような世界とつながる必要があった。だが・・・

 

 

「さて、そんな中私のフォルダに入っていたのが、

 

これと、 「ゲッターロボ サーガ」

 

これと 「ボボボーボ・ボーボボ」

 

これ「北斗の拳イチゴ味」の三種類だ」

 

 

・・・

 

 

「何でやねんッ!」

 

クソ!こんなことならもっと色々入れときゃ良かった! まともなのがゲッターロボしかない!ボーボボは売れたとしても融合した時に苦労させてしまうし北斗の拳イチゴ味は原作がないから使えない!

「いやそもそもゲッターロボも使っていいのかわからんぞ!何で俺は世紀末漫画しか持ってこなかったんだクソ!」

 

 

と ないものは仕方ない。

この世界というかfgoではよくゲッターロボのパロディとかもやってるし相性もそこまで悪くないだろう。

 

 

「とはいえゲッターロボかー、これ混ぜていいもんなのか?最悪というか何というか。最終的にゲーティア以上の存在であるあれと戦う事になったりしないだろうな?」

 

 

そう、確かにゲッターロボ の世界は強力だ。仮にこの作戦が成功したら大きな力となって彼らのサポートを行ってくれるかもしれない。

だが、それは(新たな敵)を呼び寄せるきっかけにもなりうる可能性があるのだ。

 

 

「・・・・・嫌、ごちゃごちゃ考えても仕方ない。どうせ成功するかもわかんない策だし。それにお金も欲しいしな。」

 

そもそも型月シリーズより古い作品を選ぶ必要がある。それぞれがいつに出来たかはっきりわからない以上ゲッターロボしか選択肢はない。

 

「神秘は神秘でしか破壊できない。つまりこの世界が生まれるよりも前から存在した作品であるゲッターロボ ならきっと大きな力になるはず。それに、fgo とも相性はいいだろうしな。」

 

先ほども語ったがfgoという作品はたまに他の作品の台詞などをパロディとして使うことがある。そんな中でもゲッターロボのネタはちょくちょく使われてきている。

 

最終決戦であるゲーティアとの戦いで海賊黒髭はゲッターロボパイロット、神隼人の台詞をパロディとして使っていた。

宮本武蔵のイベントではタマモキャットが3つに分かれて見せた。これはゲッターロボ が3つのマシンに分離できる事のパロディだし、実際それぞれの機体もイーグル号、ジャガー号、ベアー号である。

ポールバニヤンのイベントにおいては主人公藤丸は何とゲッター線に触れかける描写すらあるし、ムーンキャンサーの邪神BBは真ゲッターロボのような攻撃を行う。

前回も言った通りこのままではただのメタ発言でしかないだろう。しかし観測世界の住人である自分がここにいる以上それは世界をつなぐ鍵となる。

 

「さて、そろそろ作業を始めよう。広告収入も日頃の努力があってこそ、だ。」

 

まぁ他人の作品を無断転載して得た金ではあるが。

人類の未来と自分の生活のためである以上仕方ないだろう。

 

「今は亡き先生。これで得た金のほとんどは宣伝に使いますのでどうかお許しください・・・」

 

ちなみに今の自分は無職だった。そのかわり世界を救う一手を生み出すので勘弁してください。

 

 

その後藤丸リツカは見事ゲッターロボにのめり込み、特異点でとんでもない存在を呼び出すこととなる。

作戦そのものは確かに〇〇の思い描いた通り成功だ。しかしそれがきっかけで自分まで戦いに巻き込まれる事になる事は、今は知らない。



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クロスオーバー

「戻ってきたね。レイシフトしてすぐ戻してしまい申し訳ない」

 

特異点から一時戻ってきたリツカとマシュにドクターは頭を下げる。

 

 

「バカな⁈太陽系と同スケールだと!そんなもの重力崩壊を起こさず存在できるわけがない」

 

「魔力を一切感じません!確実にそこに存在しています!」

「さっきまで何の反応もなかったはずだ!一体どうなっている⁈」

 

「英霊召喚第四号、特異点をロストしてから反応がありません」

 

「もっとよく探せ!どこかに手がかりがあるはずだ!あれと同じタイミングでのロストだ、無関係なはずがない」

 

現在カルデアの中は大混乱となっており、全員が突如として現れた謎の存在の解析を行っていた。

 

 

「・・・さっきまで存在していた光輪が何もなかったかのように消えていた。そのものが消えたのか、それとも世界そのものがあれから移動したのか、それはわからない。霊基反応の急上昇とともにあれは出現した。一体・・・・」

 

 

ドクターは今を掻きながら早くようにそう呟いた。マシュはそんなドクターを見て気を遣いながら登場したあの存在についての疑問を挙げた。

 

「何なのでしょうあれ、何というか・・・巨大な顔のように見えます。」

 

 

「ああ、まさしくその通りあれは顔だ。しかしただの顔じゃあない、太陽以上の質量と大きさを誇る巨大な顔さ。その下には胸部らしきものが観測されたし、バランスから考えるとおそらく太陽系くらいの大きさはある、と思う」

 

 

呆然としていた。

当然だ。これからやっと反撃を始めようと一歩踏み入れたばかりなのだ。なのにもかかわらず急にあのようなものが現れた。

もしかしたらあの存在が我々の敵の親玉なのか?もしそうだとして、我々は勝てるのか?いや、絶対むりだ。そもそも質量差が圧倒的すぎる。

 

慌ただしく解析が行われていくミーティングルーム。しかしそんな空気を消し去ったのは

 

 

「あれ、多分ゲッターロボだよ!すげー!新しいししかも本物⁈」

 

 

何と藤丸リツカだった。

 

「え?」

 

「藤丸くん?!君はあの存在について何か知っているのかな!」

 

「ああ、もちろんしってるよ。色々変わってしまってるけど、あれは間違いなくゲッターロボ だよ。つい最近知ったばかりではあるけどさ」

 

そういうとリツカは瞳をキラキラさせながらモニターを眺める。ほかのスタッフ達にも聞こえたのか全員がリツカに顔を向けていた。そんな様子を見てカルデアのサポートとして召喚されていた英霊、レオナルドダヴィンチが疑問符を浮かべる。

 

 

「ゲッター、ロボ?あれはロボットなのかい?」

 

「ああ、色々デザインとか変わってしまってるけど間違い無いよ。ちょっと待ってて?」

 

そういうとリツカはマイルームへと向かい自分の携帯を持ってきた。

 

「えー、と。ネットは繋がらないから・・・、画像フォルダに・・・あった!ほらこれ。」

 

「これは・・・・・」

 

 

リツカの見せた画像。そこには細部こそ違えど確かに共通するデザインをしたロボットのデザインが描かれていた。科学者である以前に芸術家でもあるダヴィンチちゃんは、確かにそれが同じ作者の感性によってデザインされているのがわかった。

 

「今年の春くらいだったかな、インターネットで連載していた漫画のロボットだよ。わずか一週間で10話くらいの漫画を仕上げては投稿してるって話題になってたよ」

 

「漫画のキャラクター・・・」

 

 

「あ、いや、ごめん。不謹慎だった。俺この漫画のファンだったからさ・・・」

 

そういうとリツカは目をそらした。状況を考えて申し訳ないと思ったのだろう。そんな様子を見たマシュはリツカをフォローする。

 

 

「で、ですが素敵なお話ですね先輩。物語から出てきたキャラクターに会えるなんて」

 

「突拍子もない話だったからさ。今のは忘れてーーー」

 

 

 

「いや、案外バカに出来ないよ」

 

 

そしてそんな中ドクターはリツカ達の言葉に待ったをかけた。

 

「ドクター?」

 

「リツカくん、忘れてるよ。ほら、冬木で出くわしたサーヴァントについて考えてみなよ」

 

「サーヴァントって・・・確かあの人は・・・」

最初の特異点、冬木で彼らが遭遇したサーヴァント。それは何らかの外的要因で黒く染まったアーサー王だった。そう、アーサー王伝説に登場する主人公。アーサーペンドラゴンである。

 

 

「リツカくん、君は特異点に行った時制服の他に何か持って行ってたかい?」

 

「え、えーと。暇な時間に描いた落書き中身くらいしか・・・でも本当にただの落書きだよ?」

 

「そうでもない。英霊召喚というのはそもそも聖遺物を触媒として指定した存在を呼び出すものなんだ。そしてあの存在は召喚陣の魔力上昇と同時に現れた。ここから考えるに、あの魔力上昇によって現れたあのロボットは、サーヴァントの宝具である可能性がある」

 

 

 

 

 

「・・・・・え?じゃあこのゲッターロボの作者は将来英雄になるってこと」

 

「もちろん普通はありえない。だけど人理焼却という今の状態はあらゆる事象があやふやなまま成り立っている。ここから考えて・・・」

 

 

「ごく僅かですが、特異点の反応が現れました!」

 

 

その時慌てた様子のスタッフの叫び声が響き渡った。隣にいたスタッフはモニターに目を向けて補足しようとする。

 

「年代は・・・2015年?なんだごく僅かな時空の歪みじゃないか!そんなことより今は第1特異点の観測をーーー」

 

 

「ま、待って!そのままその特異点を観測してくれ!」

 

 

様子を見たドクターが声を荒げながらそのスタッフ達のモニターを覗き見る。

 

(2015年7月・・・そしてこの反応パターン)

 

 

「すまない、先程オルレアンで観測した霊基パターンをもう一度見せてくれ。これは・・・」

ドクターが目を向ける先。そこにはほんの一瞬ではあったが、マシュの盾より上がった反応パターンが表記されていた。そしてたった今観測した特異点の反応パターンと見比べる。

 

 

「完全に一致している・・・。バカな。サーヴァントが不安定な霊基のまま時代を渡ったとでもいうのか!?」

 

 

 

完全に一致。そう、最初に召喚陣からあった英霊反応と全く同じ存在がたった今観測した時代にて確認されたのだ。

 

 

「あの・・・ドクター?」

 

「すまないリツカくん、マシュ。今すぐこの特異点にレイシフトして欲しい。おそらく・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君たちが召喚したサーヴァントは、そこにいる。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グッズ開発?」

 

 

部屋で今週の分の投稿を行なっていたら、運営から連絡が届いた。

連載を始めて3カ月。初の単行本発売からしばらくの事だった。あれからうなぎ登りで読者を増やした自分の元には、決して少なくはない収入が入っていた。

元々特異点の助けになるかもな、と思いつきで行った試みではあった。しかし自分の好きな作品を新たに知ってもらうというのはなんだかんだ言っていいものだ。

しかし同時に罪悪感も抱えていた。それはそうだ。何と言ってもこれは無断転写である。ファンの風上にも置けない事だろう。しかしこれが彼らの助けになる可能性が1パーセントでもある限り続けようと思う。今まで儲けたほとんどの収入はこの作品を広めるために使っている。

 

え?贅沢に興味はないのかって?しない。宣伝に使う。自分にも得があるのだ。

 

 

「これがうまくいけば新しいゲッターロボのフィギュアが出る可能性があるしな。向こうじゃもうあまり作らないし、何より納得のいくゲッターロボ発売の前に死んじまったしなぁ・・・」

 

 

私が死んだのは6月の梅雨の時期である。あと数十日経てば自分にとってベストなゲッターロボが発売したはずなのだ。

元の世界、画面の向こうの貴方達の世界にはもちろん沢山のゲッターロボフィギュアが発売している。しかしゲッターロボのデザインゆえというべきか、その人にとってのベストという立体物はなかなかない。大きくアレンジされたもの、アニメに寄せたもの。王道の超合金シリーズなど。これらは実際に買ってみないとわからない。ゆえにダイナミックロボットファンは同じロボットをたくさん買いがちである。

 

「30日発売予定のゲッターロボ 欲しかったなぁ・・・。関節がしっかり蛇腹になってマシンガン取り出せるやつ。」

 

しかし死んだのだから仕方ない。これからは自分がゲッターロボを監修する必要があるのだ。である以上全員を納得させるまで頑張ろう。

 

「それに原作漫画版ゲッターロボのアクションフィギュアも発売されるかもしれないしな。向こうじゃ非稼動というかソフビっぽいのしか売ってなかったんだよなぁ」

 

 

発売したら実に嬉しい。

ちなみに画面の皆さんはどのゲッターロボ 立体物が出たら嬉しいですか?ちなみに私はネオゲッターロボ登場の初代ゲッターが好きです。

 

「もちろん・・・お願いします・・・と。打ち合わせは・・・10日に・・・と。ふぅ、それにしても・・・」

 

 

 

「あと一カ月ちょい、か」

 

 

 

そう、人理焼却が始まるまであと一カ月と少しである。そしたら自分は気づかぬうちにこの世界の人たちと共に光輪の材料となってしまうのだ。

 

「・・・」

 

この日まで結構頑張った方だと思う。漫画連載から始まり海外での翻訳。特にイタリアで受けが多かったらしい。朝のニュースなどでも特集をするというのも聞いた。

 

 

「世界の壁を壊す、かぁ・・・。自分じゃどうにも成果が実感できないのがもどかしいなぁ。」

 

全ては何か力になれればと始めた事だった。しかしこれは肝心な藤丸リツカがこの漫画にハマってくれなければ意味がない。それに繋がったとして彼らは力を貸してくれるだろうか?同じ人類ではあるがこの世界の人たちはいろんな意味で繊細な人たちだ。

協力を求めたとしても、もしかしたら竜馬あたりから「甘ったれてんじゃねえ!」とか怒られたりするかもしれない。

 

 

 

 

「今は亡き先生、どうかこのいろんな意味で哀れなこの世界の人たちと俺に、どうか力を貸してください」

 

 

 

 

ピンポーン

 

 

 

 

「ん?」

 

 

すると突然、部屋の中にチャイムの音が鳴り響いた。何だろう?ネットでは何も注文してないし、編集からも何か送るとか聞いてない。地域住人もこの時間ほとんど働きに出ている。

 

 

「どっこいしょ、と。何だ?新聞か宗教の勧誘か?ハーイ!」

 

 

急ぎ足で玄関に向かう。雨で濡れてる可能性もあるためスリッパを履いてロックを外すと扉の向こうにいるであろう人物に話しかけた。

 

 

 

 

「はい、どちら様ーーー

 

 

 

 

 

「あの、すいません。私たちカルデアという企業のものなんですけど・・・」

 

 

 

え?」

 

 

 

 

その姿を見た〇〇は、あまりの衝撃に頭が真っ白になった。そこには何と、かつて画面越しに眺め続けてきたあの二人にそっくりな二人組がスーツ姿で立っていのだ。

 

 

 

「うそやん」

 

 

 

 

 

 



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遭遇

「・・・ここが、先輩の故郷」

 

「正確には隣町だけどね。俺もあまりきた事なかったなぁ」

 

藤丸達は今回の異常事態を解決するために2015年の日本、冬木市の隣の熊本市に来ていた。

 

「うーん、やっぱり日本の町は親しみがあるなぁ。普通の町を見るのも久しぶりなきがする」

 

『ちょうど君がカルデアに来る一カ月前だね。現地の君に会わないように気をつけてね』

 

「大丈夫、その頃に俺は熊本に来たことはなかったし」

 

ダヴィンチの言葉にリツカはそう答える。

今回の特異点での目的は召喚に応じたと思われるサーヴァントの誘導及び状況の解明である。

 

「しかしまさか隣町に特異点の反応があるなんて・・・ていうかどうしよ、今のうちに買い物でもしとこうかな。」

 

「もし事態がすぐ解決できたらそれもいいかもしれませんね。それに資源の確保も行わないといけませんし」

 

『現代日本の食材の保存技術はすごいからね。他の時代だと感染なんかの恐れもあるし・・・』

 

 

そう言いながら彼らは電車を降りると現場であるアパートに向かう。現在藤丸達はスーツを着用しているのだが季節は初夏。その上雨も降っていたためジメッとした空気がまとわりつく。

 

 

「あっつ・・・。目的地まであとどのくらいだっけマシュ?」

 

「はい、地図によるとあと少し・・・あ、あれではありませんか?」

 

 

マシュが指差した先、そこには赤い屋根が特徴的な二階建てのアパートが建っていた。見たところとくに変わった様子のない普通のマンションだ。しかしーーー

 

 

『うん、やっぱりここだね。中の解析を行ったけど普通の一般人と重なっているように見える。これはデミサーヴァントのマシュに近いね。』

 

「しかしアクションを何も起こさないところを見ると、もしかしたら何も気づいてない可能性があります。念のため、我々は企業か何かの人間と言っといたほうがいいかもしれませんね」

 

 

「それなら大丈夫。俺も一応学校でそう言うのは習ったから。」

 

少し錆びついた階段は一歩登るたびに埃のようなものを地面に落とした。随分とボロボロな印象だ。本当にここに住人が住んでいるのだろうか?階段を上り終わって一番端の部屋の表札を見る。そこには小さなカードに〇〇と書いてあった。

 

 

「このお部屋ですね。それでは、僭越ながら私が。」

 

 

そういうとマシュはゆっくりとインターホンを鳴らした。ピンポンという音と共に中から誰かが歩いてくるような音が聞こえ、チェーンを外す音と共にその人物は中から出てきた。

 

 

 

 

 

 

「すいません、私たちカルデアという企業のものなんですけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前にいる二人組を見る。それと同時に胸にこみ上げるワクワクする気持ちが湧き上がってきた。

 

(ほ、本人だ〜!)

 

彼らには悟られないように気をつけようとした。しかし改めて落ち着こうと考えた時点でそれは無理なことに気づいた。止められるわけがない。この気持ちを。

 

 

(うわー、嬉しい・・・。ここに二人が来たということは多分俺の作戦がなんらかの成果を出したってことだし。何より)

 

 

そう、何より彼らに会えたことが嬉しかった。彼は前の世界ではゲームを配信し始めた頃から続けていた。彼らの軌跡を画面越しとはいえ眺めていたのだ。

そう、一緒に冒険してきたのだ。

本来の転生者や転移者などなら自身の事情を隠そう隠そうとするだろう。当然だ。どんな危険なトラブルが押し寄せてくるかわからないからだ。しかし彼は違った。なぜならーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそ、二人とも!ゆっくりしていって!」

 

 

 

ワクワクを我慢出来なかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お茶菓子を準備している男の背中を見てマシュとリツカはこっそりと話した。

 

「♩〜」

 

(あの・・・先輩?日本人が親しみやすい民族というのはあらかじめ知ってはいましたが、いきなり来た人にここまで機嫌をよくするものなのでしょうか?)

 

 

(ないないないない!流石にこんなにフレンドリーなのはおかしいよ。ていうか日本人なら基本いきなり来た人には怪訝な顔を浮かべるもん)

 

 

(で、では先輩の元知り合いとか?見たところ年齢も先輩と近そうですし何処かであったとか?)

 

(いや、だとしたらそれこそ俺も覚えているはずだし・・・)

 

 

やがてお盆を持った彼がちゃぶ台に座る二人の前に冷たいお茶とゼリーを置いた。それを見て二人は姿勢を直し改めて彼に向き直る。

 

「暑い中お疲れ様。安物だけど良かったら食べてよ」

 

「あ、はい。ありがとうございます」

 

「いただきます」

 

お茶を手にとって飲み始めたのを見届けると彼は部屋の隅に置かれたパソコンの上に置いてあるクーラーのリモコンを取るとそれを操作し出した。

やがて冷たく心地のいい風が流れ、火照った体を冷やしていく。

 

 

「うーん・・・」

 

「あ、あの・・・」

 

「あ、ごめんね。流石に馴れ馴れしすぎたかな?」

 

「い、いや。こちらこそありがとうございます。いきなり家に上がってその上お菓子まで・・・」

 

「気にしないで。こっちとしても君たちの事情というか要件は、多分ずっと聞きたかったことだと思うから」

 

そういうと座布団を二人の前にしきちょうど向かい会う形で顔を合わせた。

マシュとリツカは顔を合わせ疑問符を浮かべる。そしてお茶を飲み終わると同時に二人は自己紹介を始めた。

 

「とりあえず、俺は藤丸リツカって言います。カルデアって企業に所属しています。そしてこっちが・・・」

 

「は、はい。先輩の部下で、マシュ・キリエライトと申します。よろしくお願いします」

 

 

「よろしく。俺は〇〇。まぁこのアパートを借りて暮らしている元学生だ。」

 

「えー、と。今回私たちは「あー、いや大丈夫。」?」

 

「さっきも言ったけど君達のことはある程度知ってるよ。なんつーか大変なのにわざわざこんなとこに来てもらって悪かったね」

 

 

「そ、それは我々がどういう者たちか知っているということでよろしいでしょうか?」

 

「うん。とりあえずモニターしている人たちも参加していいよ?俺も事情を話したいし。」

 

 

その言葉にマシュとリツカ、カルデア所属の者たちは驚いた。彼のことは事前に調べていた。少し前まで学生だったのだがある時期を境にアパートに引きこもるようになったということ。魔術にはなんの関わりもないこと。ただの少年と判断していた。

 

「うん、まぁ警戒しちゃうよねぇ・・・。いきなり知らない人からお前たちについて知っている!なんて言われれば怖いよなぁ」

 

 

「あ、貴方は一体・・・」

 

 

「えーと、ドクターロマンと、ダヴィンチちゃん?であってるよね?」

 

 

『・・・そこまでわかっているなら、我々も話に参加させてもらうよ』

 

虚空に声が響いたかと思うと、立体映像のドクターとダヴィンチもちゃぶ台の真ん中に写す形で姿を現した。それを見た〇〇は再び瞳を輝かせて机の上の二人を見た。

 

「おお!これが本当の立体映像!すごいな、通信機器だけでもここまで力を入れるのかぁ!」

 

最初険しい顔をして現れた二人だったがそんな〇〇の顔を見て、あっけに取られた表情を浮かべた。

わからない。彼の様子を見るにこちらの事情は把握しているようだ。だがこうして見ると本当にただの一般人のようにかんじる。

 

 

 

「うん、もちろん警戒されるってのはわかってたけどさ。俺腹芸とか出来ないし、あとあと気まずい空気とかも勘弁して欲しいしね。何より君達にあまり嘘をつきたくない」

 

そう言って〇〇は机のお茶を一杯飲む。その様子を4人は食い入るように見つめていたた。

 

(わからない・・・彼は一体なんなのだろう。話からするとこちらのことを完全に理解している。であるにもかかわらず友好的だ。いや、これは友好なんて言う感じではない。親しみすら感じている・・・)

 

 

「えーと、とりあえず。〇〇さんって何者なの?」

 

「〇〇でいいよ。今は同い年だと思うし。とりあえずさ、疑問はもっともだろうからこちらから話させてくれないか?」

 

 

「あ、しかし我々の事情の方も話した方が・・・」

 

「そっちは最後に聞かせてくれ。ある意味その話は俺にとって最高の報酬になると思うからさ」

 

 

その言葉とともに一度〇〇は口を閉じる。そして全員の顔がこちらに向いたのを確認すると自身の事を語り出した。

 

 

 

「俺こと、〇〇は元学生だ。高校2年になったのを始めに辞め、今はこの漫画を世に送り出している。」

 

そう言って彼は携帯の画面を彼らに見えるように表示する。そこには

 

「あ、ゲッターロボ !じゃあ〇〇さんってゲッターロボ の作者だったの?!」

 

 

「あ、いや。作者ではないんだ。俺はあくまでこの作品の原稿データを持ってただけだよ。」

 

 

スライドさせながら画面を見せる。そこにはリツカが見てきた物語の続きと思わしき内容がどんどん流れている。

 

「さて、なぜいきなり引きこもることになったのか、なぜ君達の事を知ってるのか。それを説明する上でまずこの漫画について教えようか。これはね、わかりやすく言えば異世界について描かれたものだよ」

 

いきなりぶっ飛んだ話が出てきた。唐突に出てきたワードに一同は唖然とし、あたりに静寂が訪れた。それは何も部屋だけに限った事ではない。同じくモニターしていたスタッフの間にまで訪れた。

 

『・・・異世界?並行世界ではなくて?』

 

「そう、それを知った上でまず俺について説明しよう。俺こと〇〇は、元〇〇(皆さんの職場をどうぞ)企業ってところに勤めていた。入社したのは2018年の四月だ」

 

「⁈今度は未来?じゃあ〇〇さんは未来人「早い早い、落ち着いて」す、すみません」

 

「そこから俺はまぁ気怠げながら一年仕事を続けたよ。そして2019年の6月。俺はいつも通りに職場に向かっていた。そしたら、雨で地面がぬかるんだんだろうね、俺の車に電柱が倒れてきたんだ」

 

 

その時の様子を思い浮かべながら〇〇はぶるりと身を震わせる。

今は話している途中、そう考え改めて2人を見据えた。

 

「もちろん死んだよ。いや、死んだと思ったというべきか。たしかに俺は車の中で押しつぶされたはずだったんだけど、気がつくと知らない公園に立っていたんだ。そして地名を知って驚いたよ。冬木市、どうして俺がこの地名に驚いたかというと、そんな都市は存在しないはずだったからだ。」

 

「存在しない?それはどういう・・・」

 

 

「・・・これを見てくれ。」

 

再び携帯を操作して画面を見せる。そこにはーーー

 

「Fate/stay night?なにこれ?ゲーム?でもどこかで・・・」

 

「あ!先輩!この真ん中に写っている女性って、アーサー王ではありませんか?」

 

 

「・・・型月。これが今我々が住んでいる世界の名前だよ。」

 

 

「そのシリーズおよびゲーム、漫画なんかを全て含めたもの。それがこの世界だ。」

 

 

呆然とした。いきなり話が跳躍しすぎてわけがわからなくなっている。

 

「それと・・・はい、これ」

 

「これって・・・俺の部屋!」

そこに写っていたのはカルデアに存在するリツカの部屋だった。しかし現実のものというより、背景のようなイラストとして描かれた部屋だ。

スライドするとそれだけではない。英霊と思わしき存在のイラスト、エネミーと思われるものとデフォルメされた自分たちまで。

 

 

「うん、俺は君達の冒険をずっと眺め続けていた。藤丸くんや、マシュちゃん。ドクターやダヴィンチちゃんの軌跡を見てきたんだ。僕がなぜ驚いたのかというと、本来冬木市というのはゲームの中の存在だと思っていたからなんだ」

 

 

場が凍りついた。ゲーム?今我々が過ごしているこの世界が漫画や、それに類する世界?そんなバカな、では我々は、我々がやろうとしているのは・・・

 

「そ、それじゃあ私たちは、「ストップ。」」

 

「言おうとしていることはわかるし理解しているよ。自分たちはただのキャラクターで、この世界は偽物なんじゃないか?、と思ったんだろう。心配せずともそれは違うと思うよ」

 

そう言って〇〇は本棚の中から一冊の本を取り出した。

 

「この本なんだけどさ、内容は熊本で大地震が起こりそこで過ごす被災者の日常って言う内容なんだけど・・・これ、本当に俺の世界で実際におこってる。」

 

 

「?え、でもこれフィクションって・・・」

 

「そう。でもこの近所にあるスーパーは見たよね?俺の世界ではそのスーパーがこうなった」

 

再び画面を見せる。今度はリツカ達が通りすがったスーパーが無残に崩れ去って瓦礫となったものが写っていた。

 

「俺の世界が生まれたから、君達の世界が生まれたのか、それともその逆か。それこそ考え始めたらきりがない。鶏が先か、卵が先かと同じで。つまり、どこの世界も本物かどうかなんて、誰も決めることは出来ないものなんだよ・・・」

 

「・・・・」

 

「話が逸れたね。つまり俺は、この世界や君達の軌跡をサブカルチャーを通して観測していた世界から来たんだ。つまり異世界人だな。もちろん最初は焦ったよ。物語だと思っていた世界に1人きてしまったんだから。でもそんな考えは、日付を見て消し飛んだ」

 

 

「まさか・・・」

 

「そう、人理崩壊だ。俺はこの世界の人間がこのままでは滅んでしまうことを知っていた。それと同時に思った。この世界は少なくとも現実に近く、ゲームのように都合よく行かない、と」

 

「でも俺はこの世界の未来を知ってるだけの一般人だ。特別な力はないし、魔術なんて使い方もわかんなかったし。でも俺には考えがあった。」

 

 

「俺は異世界人なんだが、多分そんな異世界の中でも結構原初に近い異世界だったんだろうね。こことは比較にならないくらい多くの物語があった。そしてこの世界に来た時同時に思った。もしかしたら他にも異世界は存在するんじゃないか、と」

 

 

 

「他の異世界?」

 

「そう、他の異世界。というより他の漫画の世界か。この世界に来れた時点で俺は他の異世界も実在するということを知っていた。そしてその考えに至ったとき、ある一つの考えを思い浮かべたんだ」

 

「世界を超えられるほどのヒーローをこの世界に呼べるようにして、藤丸くん達の助けになれるようにしようって。そしてそれこそがこの漫画「ゲッターロボ 」を世に広め始めた理由だよ」

 

 

この考えを思い浮かべるにあたり一つ懸念事項があった。それはただ絵を描くだけでそこまで劇的な変化を起こすことができるのだろうかという点だ。

この世界は数多くある物語の世界でもかなり細かく描写されている世界であり、それに説得力を与える法則や設定がそんざいする。そんな世界でたかが絵を描いた如きでなにかを起こせるはずはない。

 

 

しかしそれらの問題を解決したのもまた、この世界の法則だった。

 

 

「幸いこの世界は歴史のあるものほどより強い神秘に変わるという法則で成り立っている世界だ。そんなこの世界に世界そのものが生まれるよりも前から存在するロボットの物語を正確に描写する。その上、漫画として世に出すことで知名度という点においても力を入れた。」

 

 

「もちろん可能性があるかもわかんない賭けだ。というか成功するかもわからない問題だ。でも俺には何もせずにいるってことだけは出来なかったんだ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが、俺が君達を知っているかつ事情を説明した理由だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全てを聴き終わり、部屋には静寂が訪れていた。

漫画を世に広めるために得てきた金のほとんどを使ってきた事。

本当に助けになるのかもわからない中がむしゃらだった事。

全て聞いた。全て知らされた。

 

 

しかしその静寂を破ったのはしばらく考えこんでいたドクターだった。

 

 

 

『ちょっと待ってくれ。我々の助けになろうとしたらしいけど、なんでわざわざここまでしようと思ったんだい?』

 

 

 

 

 

それをいわれ〇〇は少し顔を赤くして俯いた。その変化に再び4人は目を丸くする。先ほどまでの上機嫌が嘘のようだ。

 

 

 

 

 

「そ、それは・・・さ。仕方ないじゃん。」

 

「こんなこと言われても、上から目線とか、気持ち悪いだけかもしれないけどさ。俺は君達が必死に頑張ってきたのをずっと見てきたんだ。色んな苦難があってさ、その度に君達が苦労を乗り越えて、笑いあって、そんな様子を一緒に旅するように見てきたんだ。藤丸くんも、マシュちゃんも、ロマンさんもダヴィンチちゃんも。そしてスタッフの皆さんや英霊のみんなも。」

 

 

「親心じゃないけどさ、それが現実になったらやっぱり・・・嬉しくなっちゃうじゃん。肩入れしたくなるじゃん・・・」

 

 

 

 

それを聞いた4人、否カルデアの全員が今度は〇〇と同じように赤くなった。誰にも讃えられることのない事は覚悟していた。全ての戦いが終われば、誰の記憶にも残ることなんてない。そのはずだった。

 

しかしそれらの軌跡は、否これから先に続くであろう道を見てくれている人たちがいた。それがなんだかむず痒かった。

 

 

「と、とりあえずこちらの事情はないの話した。今度はなぜ君達がうちに来たのかを聞かせてくれ。」

 

「す、すいません。なんだかこちらも照れ臭いと申しますか・・・」

 

 

そのあとリツカ達は語った。

最初の特異点の攻略を始めようとした事。

 

始めての召喚で強力な反応を示した事。

 

それと同時にリツカの触媒がキーとなり、特異点の空を覆い尽くすほどの大きさの何かが出た事。

 

その間に英霊の霊気反応はこの部屋の、〇〇の元に時間を超えてきた事。

 

 

 

もちろん守秘しなければならなかったかもしれない。しかしこれだけ多くを語り、助けになろうとしてくれていた彼に、何かしてあげたくなったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕焼けが差し込む部屋の中、窓を見つめながら〇〇は呟くように言った。

「・・・そっか。彼らは・・・」

 

「はい、こちらがその映像記録です。」

 

マシュが見せたそのモニターには特異点の空を覆い尽くすその存在が映されていた。

 

「ゲッターエンペラー。それがそのロボットの名前だよ。人類が生み出した絶対無敵のスーパーロボット。もし彼らの協力が得られればきっと・・・」

 

 

そういうと再び窓の外を見る。それを見たリツカとマシュは〇〇の前に立ちーーー

 

 

 

 

「〇〇さん」

 

「ん?」

 

 

「俺、人類最後のマスターになって、戦うと決心して、でも本当はなんで俺なんだって気持ちは少しあったんだ。」

 

 

押入れの隙間から紙が出てきている。その中には数千枚にも及ぶ出来かけのゲッターロボのイラストと、汚れた道具が山となっていた。

 

「・・・」

 

「仮に全てを終わらせたとしても、誰の記憶にも残らない。もちろん賞賛が欲しいってわけじゃない。けど、そんな寂しい戦いを続けなくちゃいけないんだと思うと、なんだか悲しかった。そして多分それは、カルデアの全員が少なからず思っている。」

 

そう、彼は決してただアップロードするだけではなかった。ない技術を駆使し、時間の許す限りゲッターロボを描き、より多くの人に広まるようにポスターを作り、その殆どの財産と時間をこの作品を広め、人々に認識してもらうためだけに使ってきたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全ては、彼らの旅路が無駄にならないために。

少しでも、助けになればいいと願いを込めて。

 

 

 

 

「だからこそ、俺はみんなを代表して貴方に言いたいんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう。俺たちのためにここまでしてくれて。見守っていてくれて。忘れないでいてくれる人がいる。それこそが何よりも嬉しかったです。」

 

 

 

夕日に照らされる〇〇の表情はわからない。

ただ一つわかること、それはーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ・・・よかった・・・」

 

この場にいる誰よりも、喜びを感じていたという事だろう。

 




説明回苦手やわぁ。
誤字脱字ありがとうございます!突貫工事なもんでなかなか多くなりがちでして汗


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カルデア

 

「ふう・・・・・」

 

月が見える窓際で〇〇はため息を一つ付き冷えたコーラを飲み干した。

あの後三人は資源回収として近くのホームセンターとスーパーで大量の買い物を行った。

カルデアはその立地上常に資源不足である上、今後の特異点において安全な食材が手に入る保証がない為とてつもない量の買い物となった。荷物の運搬として台車も購入したがそれでも男2人でやっと動かせるほど。

 

ん?マシュ?いやいや、女の子に力仕事任せるのはちょっと・・・。

 

リツカも同意見だったのか、あの時は阿吽の呼吸で分かり合えていた気がする。

ついでにカルデアのスタッフ全員の要望も聞き娯楽用品や酒なども購入。閉鎖空間である為メンタルのリフレッシュは大切だろう。余分に多く買っておいた。

 

そんな買い物の中でも特にいい買い物と感じたのは胡椒の大量に入った麻袋だ。最近のホームセンターでは野菜や種なども売るところがあり、大安売りで置いてあったので全部買った。ちなみに金は全部俺が出した。貯金が全て消し飛びそうなほどの大量買に全員遠慮していたがもう気にしない。なぜならーーー

 

 

(そんなに胡椒どうするんだ?)

 

(これから俺たちがいくのは過去だろう?である以上胡椒はお金としても使えるし野生の獣の臭みを消すのにも使える)

 

 

そう、俺もカルデアに行くことにした。

彼らによると今の自分は召喚した何かが重なっているような状態であるらしく、詳しい検査などを行うとのこと。

 

だがそれだけではないだろう。

 

 

 

『〇〇くん、少しいいかい?』

 

 

「ん?」

 

電気を消して暗い中からドクターロマンの立体映像が飛び出した。

 

現在リツカとマシュは同じ布団でぐっすり眠っている。

帰ってきた後2人を歓迎する為パーティーとして焼肉を行った。焼けた肉をリツカくんのお皿に移すマシュちゃんは可愛かったしそれに照れるリツカくんも微笑ましかった。

2人は焼けた肉を美味しそうに食べた後、今日の疲れからか眠ってしまった。

 

 

「どうしましたドクターさん?カルデアでの注意とかですか?」

 

『いや、それは君がこちらに来てからすれば良い。そうじゃなくてね・・・』

 

 

ドクターは一瞬躊躇うように間を開けて、すぐ決心したように俺に告げた。

 

 

 

『今後はこんな事をするのは控えて欲しいんだ・・・』

 

 

・・・

 

 

 

『君なら知っていると思うが、物語を世の中に送るだけでここまでの影響を及ぼすなんて、アラヤやガイアがきっと黙っていない。いや、それだけでなく知られれば魔術師もほっとかないだろう。君の為にもならない・・・』

 

「・・・」

 

『約束してくれ。今後もうこんな危険なことはやめると』

 

ドクターの心配はきっと本当だろう。俺はカルデア全員から、未来で自分達がどうなるか、生き残れるのか?という質問にだけは答えなかった。勝つ可能性は存在する、だけ言っただけである。そんな胡散臭い状態でも関わらず、このように注意してくるのだ。

真っ先に特異点崩壊の危険や自分達の安否をださないあたりやはり人がいいのだろう。

 

 

 

 

しかしそれを約束するわけにはいかない。

 

 

 

この世界の問題はグランドオーダー後にある。

たしかに選択肢がなかったのはたしかだが、俺は何も考えずにゲッターロボ の世界と繋げたわけではない。なぜゲッターロボ なのか、それは抑止力の存在だ。

抑止力とはこの世界の人類の行き先と終着点を定め、それを邪魔する存在を陰ながら排除しようとする概念のようなものだ。

行き先と終着

 

そう、この世界の人間は終わりが決まっているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

人類は、水晶の谷に飲み込まれるーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

これが人間の手によって引き起こされてしまったのなら文句の言いようがない。

人間が一生懸命戦って、争って、それでもダメだったのなら仕方ないだろう。

 

しかしこれはダメだ。

滅ぶ事がFate(運命)だなんて認めない。

この世界の人間がどうする事も出来ないのなら、俺がどうにかできる奴らを呼ぶ。なんとかなる可能性がある限り、俺は手を休めない。

 

 

 

それこそが、多分俺がこの世界に来た意味なのだから。

 

 

「ロマニさん、ありがとうございます。」

 

『〇〇くん?』

 

「大丈夫です。その特異点に行き、彼らと交渉してうまくいけばもう俺の役目は終わりです。そしたらこのデータを消すだけでいい」

 

『・・・うまく行かなかったら?」

 

そう、明日彼らとの交渉にこぎつけられればもうこのデータに用はない。

深刻に考えずともこれでうまくいけばいいのだ。

 

 

「悪い方は今は考えなくて良いですよ。仮に協力してもらえなくても、彼らは人類の味方だから酷いことにはならないし、カルデアにスタッフが1人増える程度しか変わらないですよ」

 

『そうかもしれない、けど・・・』

 

「今日は力仕事で疲れました。俺はもう寝ます。おやすみなさい」

 

 

そういうと〇〇はを座布団を枕にして目をつぶった。そしてしばらくすると、穏やかな寝息を立てて彼は眠った。

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・しっかり約束してくれない、か。なんだか他人とは思えないな。そういう自己犠牲なところ・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー翌朝ー

 

 

 

 

「2人とも、朝ごはん出来たよ」

 

翌朝リツカとマシュは香ばしい匂いと自身を呼ぶ声で目が覚めた。なんだか昨日はいつもよりぐっすり眠れた気がする。それはマシュも同様なのか自分と同じタイミングで目覚めている。

 

ん?同じタイミング?

 

 

「あ・・・・おはようございます、先輩」

 

「う、うん。おはよう・・・」

 

「いやごめんね。昨日2人が寝たあと布団が一つしかないの忘れててさ」

 

〇〇さんがフライパンを持ちながら申し訳なさそうにこちらを見る。

どうやら昨日俺はマシュと一緒の布団で寝たらしい。〇〇さんが布団で寝てないのとマシュと一緒に寝た恥ずかしさから少し声に詰まる。

マシュも目が完全に覚め現状を把握したのか頬に少し赤みがさしている。

 

「そ、そうだったんですか。我々お邪魔している立場なのに申し訳ありません」

 

「良いよ良いよ。もともとどこでも寝れる性格だし」

「先輩もごめんなさい、私寝相悪くありませんでしたか?」

 

「い、いや大丈夫。全然そんなことはなかったよ。」

 

そういうと俺とマシュは気恥ずかしそうに顔を下げた。

き、昨日は疲れてしまったのか全然気づかなかった。

「とりあえず食べよう。もう少ししたら転送が始まるんだろう?そしたらゆっくりする暇はしばらくないだろう」

 

「あ、はいありがとうございます。いただきます」

 

「い、いただきます・・・」

 

俺とマシュはそう言って程よく焼けたトーストを口にする。それを見届けた〇〇さんも席につき牛乳をコップに注いだ。

「いよいよ今日から俺もカルデアに行くことになるのか・・・」

 

「はい、今後〇〇さんは外部協力者という事でカルデアに在籍していただくことになります。詳しい説明は第1特異点の彼らとの交渉が終わり次第となっております」

 

 

「いやー、なんかドキドキするよ。まさかホントにカルデアまで漕ぎ着けられるとは」

 

 

そう言って考え込む〇〇さんを見て俺は思わず呟いた。

 

「それにしても〇〇さん、よくこんな事思いつきましたね。まさか他の世界と繋げるだなんて・・・」

 

 

「それに関してはほとんど偶然というか・・・。そもそも縁が結べたらな、って程度の思いつきだったし。ていうか俺からしたら君があの絵を持っていてくれたお陰で事が早く済んだ。本当ならなんの変化もなく終わっても不思議ではないのに・・・」

 

 

言われると確かに。まさか暇な時間に描いた落書きがここまで事を大きくするとは・・・。

目玉焼きを箸でつまんで考える。もともと自分のサーヴァントを呼ぶために現地で行った召喚は、いつのまにかとてつもない事態に変わっていった。それでもこんな風にゆっくり出来るのは、特異点においてまだ大きな事件が起こっていないのと、この時代の歪みが穏やかなものだったからだろう。

 

 

 

 

それにしても、自分の召喚したサーヴァントは結局なんだったんだろう?詳しくは調べてないが〇〇さんに特別変わった様子はなさそうだし、〇〇さんも英霊が入ったなんて自覚もなかった。

 

そもそもなぜその英霊は〇〇さんの中に入ったんだろう。

 

 

 

「りつかくん?」

 

 

「あ、・・・はい、どうしました?」

 

 

「いや、なんだか考え事してるみたいだったから」

 

「ああ、すいません。なんでもないです。ただ〇〇さんに入った英霊って誰なんだろうなーとか考えただけで・・・」

 

 

 

うん、自分が難しく考えても仕方ない。そういうのはドクターやダヴィンチちゃんの仕事だし、俺はとりあえず現地に着いたら何をするのか考えよう。

目玉焼きを頬張り牛乳で流し込む。

 

すると喉に詰まりかけ思わずむせてしまった。

 

そんな様子を見てマシュと〇〇さんが慌てて背中をさすってくれたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

「・・・俺の中の英霊、か。いや、そもそも・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コフィンが開く音とともに自分の意識がはっきりしていく。それと同時に腹から込み上げてくるような吐き気が襲った。

劇中でも描写させていた酔いというやつだろう、しかし藤丸くんは何度か経験しているためか平気そうな顔だ。

 

 

「〇〇さん、気分は大丈夫ですか?」

 

「ああ、それよりも・・・」

 

 

そう、それよりも今は懐かしさとワクワクを抑えられない。吐き気もすぐきにならなくなった。そう、ここが!

 

「ここがカルデアかぁ!」

 

「はい、ここが人類最後の砦。人理継続保証機関フィニス・カルデアになります」

 

実際に目にするその場所は、まるで宇宙船のようであり、神秘的だった。

全体的に青い空間は少し広い体育館ほどの広さで、自分の降りたコフィンの上、空間の真ん中にある巨大な地球儀がカルデアスなのだろう。それは暗くなってはいるものの、まるで本物の星のように感じさせる存在だった。

 

 

「ようこそ、〇〇くん?我々フィニス・カルデアは君を歓迎しよう。それと物資の支援ありがとね♫」

 

 

カルデアで最初に出迎えてくれた人は例の天才レオナルド・ダ・ヴィンチ。

彼、否彼女はこちらに手を伸ばし握手をすると同時にウインクをした。

一瞬ドキッとしたがこの人は男と自分に言い聞かせ自分も手を握り返した。

 

「改めてはじめまして、〇〇です。それじゃあさっそく・・・」

 

「あぁ。いきなりきてすぐ向かってもらうのは悪いけど、君たちはさっそく第1特異点に向かって欲しい。我々としても未知の存在だ、彼らを知っている君がいってくれると交渉もスムーズに進む」

 

そういうとダヴィンチちゃんはその手に持っていた大きな機械を自身に手渡した。

 

「これは?」

 

「通信機だ。流石に宇宙まで向かってもらうことは難しいし、ラジオのようにあらゆる方向に電波を発信できるこれを持って言ってくれれば繋がるかもしれない。もっとも、あちらの規格と合えばいいんだけど・・・」

 

 

「わかりました、任せてください。」

 

「とりあえず協力は得られなくても、最悪何事もなく済めばそれで十分だから。そんなに力まないで、落ち着いてね」

 

「いや、絶対何かしら結果を持ち帰りますよ。少し怖いけど、これが俺にとって最期の計画なので」

 

 

そういうと同時に案内役であろうスタッフの方が話しかけてきた。彼女は自分に挨拶すると同時に物資や娯楽品のお礼をいい、コフィンの中の説明をする。

なんだか照れ臭い。

 

「マシュとリツカくんもよろしく。」

「了解です。ではさっそく向かうことにします」

 

「うん、こちらも任せて!」

 

 

そして2人がコフィンに入るのを確認すると中にいたスタッフは全員管制室へと向かった。しばらく沈黙が続き、やがて空間全体に聞こえるようにアナウンスがなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇〇レイシフト適正値、94パーセント。基準値内。

 

 

アンサモンプログラム・スタート。

 

 

霊子変換を開始 します。

 

 

いよいよだ。いよいよ初のレイシフト。そして、初のーーー

 

 

全行程、完了。

 

 

グランドオーダー、実行を開始ーーーー

 

 

 

 

 

 

その瞬間、俺の視界は光に包まれた。

 

え?

 

 

 

 

「緊急事態です!〇〇さんのコフィンになんらかの力場が発生!強制レイシフトに切り替わりました!」

 

 

「なんだって!?」




早くゲッターロボ を出したい・・・!


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仕事

 

 

 

 

 

 

ゆっくりと意識が浮上して行く。

きだるげな頭に降り注ぐこの感覚は太陽だろうか。強すぎず、弱すぎず心地の良い暖かさだ。

 

「ん・・・・・」

 

 

 

気づけば座っていた。

窓際の席で机にうつ伏せになっていたためか、ゆっくり身体を起こすと軋むような痛みが走った。それを身体を伸ばすことでごまかし、改めて今どこにいるかを確認した。

 

 

 

 

「・・・」

 

 

 

作業場、だろうか。

 

いくつかの机の上には資料らしき紙が幾重にも重なっており、ペン立てにはさまざまな筆や鉛筆、雲形定規、カッター、修正液。他にも文房具屋で見るような道具が敷き詰められていた。

そう、まるで一昔前の漫画家の作業場の様な場所にいた。

 

 

 

「・・・えーと、」

 

 

ここに来る前のことが思い出せない。何か大変な作業をやろうとしていたことは、感覚的に思い出せる。

とりあえず誰かいないか、そう思い歩き出そうとした時ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

カリカリカリ シャー

 

 

 

 

 

 

後ろで音が聞こえた。

誰もいないと思っていたため思わずびくり、と身体を強張らせ後ろを見る。

 

 

 

 

 

 

「・・・・ん?ああ、起きたのか・・・」

 

 

 

そこには、机に向かい何かの作業をしている男がいた。 その男はこちらに目を向けキョトンとした目を向ける。

 

「あ、はい・・・なんか寝てたみたいで、すいません」

 

「気にしなくていい。この天気だ、思わず眠ってしまうのも無理はない」

 

 

男のぱっと見た印象は、一昔前の漫画家の様である。中肉中背で頭にはベレー帽、軽そうなシャツにジーンズ。顎のあたりから無精髭を生やし髪にはうっすらと白髪が混じっている。

いや、一つ訂正しよう。

 

 

「あの、貴方はいったいーーーー」

 

 

「起きたてで悪いが少し手伝ってくれ。なんといってもアシスタントなんて昔に雇ったっきりなもんで、いくら時間があるからって1人では辛くてね」

 

 

「え、こ、これって・・・」

 

 

 

 

漫画家の様ではなく、本当に漫画家みたいだ。

男の渡した原稿には迫力のあるキャラクターが写っており、しかし所々に変な空白が目立っていた。おそらくベタや模様を描いてないからだろう。そのせいでイマイチ足りないのがわかる。

 

 

「あの、いいんですか?素人の俺に任せて・・・」

 

思わず声をかける。見た所この原稿を描いた彼はとても腕のいい方なのだろう。細部まで書き込まれたそれに自分の様な素人が手を出すのは気が引けた。

 

しかし男は

 

「いや、君なら大丈夫だ。何せこれが初めてというわけでもないからな」

 

そういうとカッターとトーン、インクをこちらに手渡した。その答えにおれは思わずめんどくさい、と感じると同時に何故か嬉しさに似た感覚を感じた。

 

 

 

 

 

 

「さ、少しだけ頑張ろう。お昼はカツ丼におまけで味噌汁を奢るよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか虚数空間にでも落ちたのか⁈」

 

 

「いいえ、虚数空間の反応はありません!」

 

 

「特異点にはどうだ!それにもう2人は!」

 

 

「リツカくんとマシュの反応は確認できます、しかし〇〇さんの反応

が・・・!」

 

 

 

 

 

管制室に慌てた様な声が響き渡る。

 

レイシフト中に起こった事件、それは特異点に向かった〇〇が唐突に謎の力場とともに行方不明になった事だ。〇〇のレイシフト適正値は90代を超えているため、ただレイシフトに失敗しただけというのは考えにくい。それに解析によると、一瞬ではあるが謎の力場が発生した事を数値が示しておりそれが同時にレイシフトを行なったにもかかわらず〇〇にだけ影響を与えるというのは考えにくい。

 

「リツカくん!マシュ!近くに〇〇くんは見えないかい⁈何か道具とかでもいい!」

 

 

『いや、こっちでは何も・・・いや!あれはまさか!』

 

周りを見渡したリツカとマシュは、草原には違和感のある四角い物が落ちていることに気づいた。そこにあったのはーーー

 

 

『〇〇さんのスマホ・・・!』

 

 

『ドクター!〇〇さんは一体・・・!』

 

「まだわからない!そっちでも捜索を続けて・・・ちょっと待って!」

 

慌てた様子だったロマンが何かに気づいた様な声を上げ、スタッフに指示し出した。

 

「何かあったのかい?」

 

「いや、あの携帯が画面に収まった時、変な反応が・・・。すまないが、あの携帯を少し解析してくれるかい」

 

スタッフが〇〇の捜索とともに携帯をあらゆる角度から解析し始める。

最初は何事かと感じたスタッフだったが、解析結果を見て驚きの声を上げた。

 

「これは!聖杯の反応です。ごくわずか、カケラほどの反応ではありますが、間違いなく聖杯です!」

 

 

その答えに一同は思わず〇〇の携帯を見る。リツカとマシュもそれを聞き、魔術解析のスクロールを展開した。すると画面の点滅がおこり立体映像を映し出すかの様に、小さくはあるが聖杯を顕現させた。

 

 

「・・・なるほど。何故〇〇くんが異世界の情報とはいえ、それだけで縁が繋がったのか。冬木の特異点反応が極小だったのか、あらかたの説明がつく」

 

「どういう事?」

 

「おそらくあれは、最初の特異点において回収した聖杯のかけらなのだろう。特異点が消滅した後でも聖杯のかけらは残る。それもあらゆる時代のその場所にね。だからこそ特異点において聖杯は、完全な形で持ち帰る必要がある。」

 

「しかしレフライノールの攻撃によって、ほんの僅かではあるが聖杯の一部が破損したのだろう。そして僅かな時の間その時代に放置された事で、大地から魔力を吸収し次元震の様なものを起こしたんだと思う。」

 

「しかし我々が気づかなかったのは何故か、それは特異点の修復というはじめての体験で、その後どうなるかという事について全くの無知だったからだ。修復後、何が起こるかわかっていなかった我々はその後に発生した揺れを時代の修正される揺れと勘違いした」

 

「つまりあれかい、〇〇くんがこの世界に流れ着いたのは聖杯のかけらが隣接した次元に穴を開け、そこから流れた魂とこの世界の同位体とが融合した結果だと?」

 

「そして聖杯は修復された時代において異物とも言える〇〇くんと繋がった。ちょうど結晶の様に異物同士が惹かれあったのだろう。」

 

「特異点の反応はないはずさ。彼は聖杯のかけらで願った事自体は特異点を形成するほどのものじゃないのだから。しかし、その影響で少なくとも縁は繋がった!」

 

 

 

『ちょっと、待ってよ・・・』

 

 

特異点からリツカの呆然とした声が響いた。隣にいたマシュはそのただならない様子に声をかけようとし、しかし紡がれた次の言葉に同じく衝撃を受けた。

 

 

『話はほとんど難しくてわからなかった。でも、もしかして〇〇さんが向こうの世界で死んだのって・・・電柱がぶつかったのって・・・その次元震とかいうのが原因じゃないの・・・?』

 

 

 

 

 

 

 

「「「!!!!!!ッ」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、普通に考えれば確かにおかしい。

 

 

 

 

 

 

〇〇は過去の話において雨でぬかるんで電柱が倒れたと言っていた。しかしよく考えて欲しい。彼の住んでいたのは都市部だ。しかも地面はコンクリートで舗装されているはず。コンクリートは生半可な雨程度では液状化しない。

それに彼は死の直前、目の前が真っ白になったという。最初は雷の高圧電流による光かと思われた。しかしその光は、「倒れる前」に起こった。

 

それはつまり

 

 

 

 

『〇〇さんを死んだ原因は・・・俺がしっかり聖杯を回収してなかったからなんじゃないの・・・・?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

今、誰か俺を呼んだような・・・。

 

 

「ありがとう、君のおかげで何とかなりそうだ。これは心からのお礼だ」

 

「え、あ、ありがとうございます。いただきます」

 

そう言って〇〇は目の前のどんぶりの上蓋を開ける。

あれから数時間、〇〇は男の指示に従い漫画の手伝いを行なった。最初はちょくちょくはみ出したり滲んだりがあったがそれもすぐになれ、いつのまにかスラスラと進められるまでになった。

そして時刻は12時、開けた中には出来立てからか湯気を出しているカツ丼が入っており、そのどんぶりの隣にはお椀に味噌汁が入っている。

 

 

 「昔俺もこんなふうに友人の手伝いをして、飯奢って貰ってたもんだ」

 

 「青春の頃の思い出ってやつですか?」

 

  「あぁ、お互いアイディアだしあってなぁ・・・まさか半々に描いたキャラクターがそのまま使われるなんて今考えても笑えるよ」

 

 

 そう言って男は丼の端に添えられた沢庵をポリポリとかじる。自分もその様子を見て卵で包まれたカツ丼を箸で挟み口へ持っていった。

 

 

「それにしても」

 

 

「は、はい」

 

「君のタッチはなかなかいいな。自分の絵に良く合わせられている。結構癖のある絵と自分で思っていたからびっくりだ」

 

「それはまぁ、かなり描いてきましたんで・・・」

 

ん?いま、自分は何と言った。かなり描いてきた?いや、こんな絵を描くのは初めてのはずーーー

 

 

(もーすーータッーーーーしくしー)

 

 

(あれ?今のーーーー)

 

「びっくりといえばーーー」

 

その声に意識が現実に引き戻される。男はこちらの様子を一瞬伺うと再び語り出す。

 

「君はどこで自分の作品を知ったの?こう言っちゃあなんだけど結構古い作品だろう?」

 

 

問いに対し疑問符が一瞬浮かびーーー消える。その作品とは?と語ろうとした瞬間、少しだけ自分の中の記憶「思い出」が引き出しを開けるかのように思い浮かんだ。

 

 

 

 

 

「・・・・えー、と、小さい頃、まだ曜日とか時間とかを理解してなかった頃、どの時間どのチャンネルでアニメをやってるかわからず、自分の見る物は親と一緒にレンタルで借りに行ってました。」

 

「字ももちろん読めなかったので借りる際に判断基準としたのは、パッケージの絵と親に聞いた題名でした。」

 

 

そう、まだレンタルできるもののほぼ全てがビデオデッキだった頃の話。

その頃はまだインターネットも始まったばかりでアニメや漫画の情報も全て雑誌などで開催されることが多かった。

もちろん字の読めない俺はそんな雑誌わかるはずもなく、仕方なくビデオ屋に直接行き探すしかなかった。

 

 

「そんな時に親から勧められたのがその作品でして・・・。自分の身長では届かない場所にあるビデオを見て最初は何というかギャグアニメかなんかだと思って借りました。ゲタの形をしたロボットなのかなって」

 

 

そこからだった。俺がその作品との長い付き合いになったのは。

 

 

「3歳の頃です。当時子供番組しか知らなかったのであまりの画面の綺麗さに驚いたのを覚えています。そしてワクワクしてました。」

 

 

 

 

 

 

はじめに借りたのは2巻だった。

一巻は借りられていて見れなかったが、今ではそれで良かったと思っている。

 

 

 

「合体のシーン!あれがまたすごくて、あんなにヌルヌル動く作画を見たのは初めてでしたよ。」

 

 

「そのあと原作漫画とアニメの存在を知りましたよ。いやー、痩せたゲッターロボは本当に新鮮な感じがしました。あ、あとおもちゃがないのがすごく困って、あっても小さいフィギュアばっかりでしたねぇ」

 

 

 

「それで仕方なくコピー用紙を丸めたおもちゃをつくりましたよ。

でもこれが意外に丈夫でですね、」

その頃そのロボットはほとんど商品展開されてなく、ほとんどが食玩などのコレクション品か高額フィギュアくらいしかなかった。可動式の食玩フィギュアが発売した時などは感動と同時にあまりの脆さに泣いたものだ。

他にも自分自身で作った紙人形。シンプルなデザインだったため幼かった自分でも簡単に作れた。

 

そう、どれも尊い思い出だった。

 

「・・・君は」 「はい?」

 

 

 

 

 

 

 

「君はこの作品が大好きなんだね」

 

聞かれた質問に〇〇は少し考え、やがて満遍の笑みで答えた。

 

「はい!大好きです。少なくとも、18年近く見続けるくらいには」

 

その答えに男は少し笑みを浮かべる。

 

「そうか。そうかぁ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ君、そろそろもう帰っていいよ。」

 

 

原稿を描き上げていると、唐突に男は自分の方に手を乗せそう言ってきた。

顔を上げるといつの間にやら外は真っ暗になっており、確かにこのままでは終電を逃してしまうかもしれない。

 

 

  「もうこんな時間・・・かなり長い時間まで居ちゃって・・・」

 

   「いやいや気にしないでくれ。君のおかげで僕もいい感じに「仕事」ができた。教えるのなんて久しぶりだったし」

 

「あぁ、すいません。お手数おかけしました」

 

「大丈夫大丈夫。よし、後は私に任せて。君の親御さんも心配しているだろうからね。」

 

ドアの方を向き体を起こす。男は相変わらず笑みを浮かべたままだ。

 

「さぁ、出口はその扉の向こうさ。給料は次の日に私が振り込んでおこう。」

 

 

「何から何までありがとうございます。それでは、お疲れ様でした。」

 

 

なんだかとても長い時間ここで作業をしていた気がする。きっと両親も心配してるだろう。疲れも溜まってきたし、今夜はぐっすり眠ろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、考えたはずなのに。

 

 

 

「・・・」

 

 

ドアノブに手をかけふと立ち止まる。

後ろでは急に動きを止めたことで先ほどまでニコニコした表情の男が不思議そうにこちらを見た。

 

 

「どうしたんだい?そこのドアを開けるとそれだけで君は帰れるよ?」

 

そんな不思議な扉あるわけないと思いながらも、心の奥でそれは真実だと直感する。

 

 

えと、少し忘れ物をしてしまって・・・。

 

「忘れ物?そんなはずはない。君ここに来た時何も持ってなかったじゃないか」

 

男の言葉にそう言えばそうか、と納得する。

そして再びドアノブに手をかけーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手を離した。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 

「・・・・」

 

 

 

・・・・・

 

 

 

「・・・・」

 

 

・・・・・

 

 

 

「・・・・」

 

 

 

・・・・・

 

 

 

「・・・・」

 

 

 

 

 

 

「いいのかい?」

 

 

最初に沈黙を破ったのは男だ。

 

「これを逃さなければ、間違いなく君は帰れるよ?」

 

 

はい。

 

 

「そうすればもう君は苦労せずにすむ。後は我々に任せてしまえばいい。」

 

 

はい。

 

 

 

 

「・・・・そんなにその忘れ物が大事なのかい?」

 

 

・・・・

 

 

「君自身わかっていたはずだろう?君をここに呼んだのは彼らだ。事故とは言え、君をここに無理やり連れてきた。最初だったにせよ、少なからず君は傷ついただろう」

 

 

 

 

はい、

 

その通りです。

 

最初は「確かに傷ついた。どうしてこんな目にとも思いました。ひとりぼっちな気がして寂しかった。」

 

「でも」

 

「彼らにあって、そんなことどうでもよくなりました。彼の手のひら、彼は何かを強く握りしめたかのように爪痕のような傷を作っていました。彼女は歩きなれないためか、ほんの少しだけど違和感のある歩き方をしていました。」

 

 

「・・・・」

 

 

 

男は黙って聞いている。

 

 

 

「それ見てると、なんだかモヤモヤした気持ちがどんどん浮かび上がるんです。知ってますか?彼らは今回の戦いが終わってもまた多くの仲間を失って新たな戦いに挑むんです。本当はやりたくなんかないのに、悲しみすらも置き去りにして・・・」

 

 

「そんなにして頑張って救うであろうこの世界には、滅びが確定してるんですって。あのわけのわからないガイアやアラヤなんてのは、自身の運命に沿ってないからサポートするんだとか。」

 

 

 

「だから忘れ物を探すのかい?そんなの・・・」

 

 

その通り、ただの意地だ。

 

納得いかないから。気にくわないなんて理由で家族に再び会える機会を蹴るのだ。

 

でもそれを承知の上で手助けしたかったのだ。いや、したいのだ。

 

そうでなければ自分にはーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「胸を張れる未来が来ない!!」

 

 

そう言って〇〇は机に置いてあった紙袋を勢いよくひっくり返した。

 

それは作文用紙だ。本当に少ない数のたばであったが、それは部屋中に散らばっていった。

 

彼の忘れ物。

 

用紙の題名にはこう書かれていた。

 

 

 

 

 

「型月世界において簡単にカルデアに力を貸す方法」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇〇はその一番前の用紙を細かくおってポッケに入れる。そして男の横を通り過ぎ前へ前へと進んでいった。

 

 

 

 

 

 

ーーーー そこはもう部屋ではなかった。ーーーー

 

「僕らは手は出せないよ?」

 

 

「構いません」

 

「それが目的だったのに?」

 

 

「呼んでしまってごめんなさい。でももう大丈夫です。」

 

 

「・・・そんなに自分で助けたいのかい?」

 

言われてみればそうだ。自分の手で助ける方がスッキリする。

 

だってそれこそがーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゲッター(奪還者)ロボ 、でしょう?先生」

 

 

先生はにっと笑った。

 

「まったく、作者が題名忘れるなんてどうかしてたよ」

 

 

 

「しょうがないですよ。せんせいもう歳でしょう?」

 

 

「言いやがったなこいつ」

 

 

そして俺も笑った。しばらく笑って、息を大きくすい、おれは前を見据えた。そこには、無限に続くんじゃないかと思われるほどの空間が広がっていた。

 

 

「俺も行くぞ」

 

「先生も?」

 

「ああ。たまには寄り道も悪くない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉を皮切りに俺は走り出した。

本当にすっかり遅くなってしまった。もしかしたらリツカくん達がピンチかもしれない。少なくとも心配させてしまったことを謝りたい。

 

 

広い空間を走り続ける。

するとやがて地平線の彼方に人型が見えた。それは近づくに連れ輪郭がはっきりし、大きさがはっきりし、やがてその姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 

そして俺はその人型に手を置き、一呼吸置くと見上げて。子供のようにキラキラにした目でその人型の名前を叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寄り道終わったか?

 

いや、もう少し寄らせてくれ。

 

ああ?まだ構うのかよめんどくせぇ。

 

いいだろう?ファンサービスというやつさ。

 

・・・ったく。すぐまた迎えに行くからな?

 

世話かけるね。

 

 

まったくだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なかなか良い根性したガキだったな。

 

ああ、それはそうと

 

わかってらぁ。そろそろ始まるんだろう?新しい戦いが。

 

 

準備しとけよ。

 

 

誰にものを言ってやがる。

んじゃ、動くとするかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲッターロボ!!発進!!!!

 




俺にエンペラーの中身なんてかけるわけないでしょう!!



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死ぬ覚悟

嘆く暇はなかった。

あのあとリツカ達は必死で〇〇を探したがその消息は一切掴めなかった。彼の携帯、聖杯は魔力の痕跡こそあったがリソースはほとんどない器のような状態だったらしく、その痕跡を辿ることはできない。

 

 

 

同時にもう一つ事態が大きく動いた。

 

 

 

あの巨大な人型兵器、ゲッターエンペラーが突如として消えたのだ。

あれほどのものが急に消える。レーダーでの観測にも映らず突如として。地球への重力変動による環境の変化もあるはずなのに、何故か最初から何もなかったかのように消え失せたのだ。

 

あまりに突然すぎる二つの事態。決して無関係ではないはずだが、それらの事態を解決しようにも情報が足りない以上動くほかない。

 

 

 

 

 

「グッ・・・!マシュ!」

 

 

「先輩!下がってください」

 

激しい金属音を辺りに響かせながらマシュはリツカを守るように盾を構える。

しかしそれもつかの間、そこから更に打撃を受けたことにより完全に体制を整えていなかったマシュは後ろのリツカとともに吹き飛ばされる。

 

「ぐああッ!」

 

「先輩!?」

 

そのまま石畳にぶつかる寸前、リツカは空中でマシュを抱えるとそのまま守るような体勢で衝撃に備えた。

人間1人と大楯という質量が重なったことでリツカは血反吐を吐き出す。

 

「先輩!大丈夫ですか?先輩!」

「ふー・・・!ふー・・・!だ、大丈、夫。まだ動ける。」

 

そう言って咳き込みながら2人は改めて民家の中から吹き飛ばした対象を見る。

 

「あ、あれは・・・。やっぱりあのワイバーンの・・・」

 

 

それはすこし前に遡るーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

広い草原を2人歩く。

当然表情は影が差しておりどこか元気がない。

 

「〇〇さんは・・・」

 

「先輩・・・?」

 

「〇〇さんは、なんて言うかな?この世界に来てしまった原因が、俺のせいかもしれないって言った時」

 

「先輩、それは決して先輩のせいではありません。あの特異点が崩壊していく中では私たちはどうしようもなかった」

 

『そうだよ、それにあの聖杯のかけらがそもそも原因と決まったわけじゃないし』

 

 

 

呟いたリツカに2人は言う。

それでも彼の内心は穏やかではない。もし本当にこれが事実であったなら、自分はどんな顔をして彼に伝えればいいのか。

 

 

 

 

そう考え始めた時、少し遠くの場所に大きな街が見え始めた。街は大きな外壁で囲まれているが、肝心の外壁は何故かボロボロだ。

特異点を起こしている何かが原因だろうか?徐々に近づくその光景に集中すると、前方から何か大きな荷物を抱えた馬車のようなものがこちらに歩いてきていた。

 

 

「あ、あれは現地の方ですかね?もしかしたら何か情報が手に入るかもしれません。話しかけて見ましょう」

 

そう言って駆け足にその馬車に近づいたマシュは馬車をはっきり見た途端、唐突に足を止めその場に立ち止まった。

 

「・・・?マシュ?」

 

その動きの変化を不思議に思ったリツカは急いでマシュの元に近づいた。

 

「マシュ、どうしたの?急に足を・・・」

 

『・・・これは』

 

 

 

 

 

彼らが見た馬車。それ自体は特に変わった様子のない普通のものだ。当然それを操っている馬も人も変わった様子はない。

 

異様だったのはその積荷だ。男の引く馬車、そこには何と大量の生き物の死骸が乗せられていたのだ。

 

ただの死骸ではない。

 

明らかに現世では確認できない様な生き物の死骸の山である。

 

「と、とりあえず。あの人は町から来たみたいだし。ドクター、あの人の反応って普通の人間だよね?」

 

『うん、そこは間違いないよ。それにしてもその積荷、すごい魔力汚染だ。この時代では考えられない神秘がその積荷から確認できるよ・・・」

 

立ち止まり呆然としているとこちらに気づいた馬車がだんだん近づいてきた。馬車を操っていた男はリツカとマシュを視界に収めると珍しいものでも見たかのような顔をする。

 

 

「なんだぁあんたら。外国からの旅行者か?ここらじゃ見ない顔立ちだが・・・・」

 

「あ、はい。初めまして。私たち世界を旅してまして・・・。貴方はあの町の住民ですか?」

 

「あぁ。俺は普段野菜を売ってすごしてんだが、しかしまた大変な時期にきちまったなあんたら。」

 

「大変な時期?」

 

 

「後ろのこれだよ。」

 

 

そう言って男は積荷の中身を見せる。

改めて近くで見ればわかる。元は爬虫類に近い生き物だったのだろうがその名残は今や鱗や甲羅しかない。

 

(蕩けている)とでも表現すればいいだろうか。その死骸の殆どがグズグズに溶けてしまっているのだ。

腐ってしまったわけではない。そうであるのならこの死骸の量、悪臭が周りに起きてとても彼らは近づけなかっただろう。その死骸はまるで、生きたままスライムになったかのように蕩けていたのだ。完全に蕩けてしまったわけではなく、強固であろう甲羅や鱗の一部がそのままの形で残り隙間から蕩けた内臓が流れている。

 

異様な死骸だった。

 

 

「信じられねぇかもしれないが、数日前に処刑されたジャンヌダルクが地獄の化け物、後ろのこいつらなんだが。を連れて町に襲撃してきたんだ。風の噂によると、あの処刑に携わったピエール神父やその関係者も全員燃やし尽くされたそうだ。」

 

 

「ジャンヌダルク、ですか?」

 

「知ってんのか?まぁ軍も抵抗したんだが槍も弓も奴らには通じず酷い有様だったらしく、そんな奴らが俺たちの町にもやってきたんだ。軍すらどうにも出来ない奴らを俺たちがどうにかできるわけない。はずだったんだが・・・・」

 

「でもこれは・・・」

 

「それがなぁ、俺たちの町で暴れて出そうとしたこいつらは、なぜかこんな風に蕩けちまったんだ。急に前触れもなく地面に落ちていってな。被害が少なかったのはいいんだがお陰で掃除が大変で・・・」

 

そう言って彼は顔をしかめると馬を動かして離れていく。

それにつられて2人はもう一度荷台に目を向ける。蕩けた、それもなんの前触れもなく。

幻想の 生き物とはいえそんなことがあり得るのだろうか。

 

「自重で潰れた?いや・・・」

生き物というものはそれぞれ必要であるゆえにその形をしている。鳥は空を飛ぶゆえに空気抵抗の少ない形かつ骨を軽くし、人間は二足歩行により走るのが遅くなったゆえに頭脳を発達させ逃げるのではなく戦う形へと進化したのだ。

たしかにこの生き物たちは普通なら生きることができなくても、魔力の多い過去で生き残れるような形になっているはずなのだ。

 

なので自重で潰れたというのは間違っている。

仮にそれで潰れたのだとしても、このように蕩けることはないのだが。

「まてよ・・・・」

 

「先輩?」

 

「ドクター、そこの計器って放射線量なんかも調べられる?量だけでいいんだけど・・・」

 

 

『放射線量?いきなりどうしたんだい?』

 

 

「いや、〇〇さんはこの世界と他の世界を繋げたと言っていたよね?だとしたらあの作品の設定上なんか変化があると思って」

 

『変化ってーーーーーうん?どうしたの?・・・・ええ!?バカな!そんなわけがない!ならなぜ彼らは平気なんだ?』

 

 

急にロマンが大声をあげたのを聞き2人は怪訝そうな顔をする。そして再びホログラムに移った彼は、焦るように2人の顔をみた。

 

「ドクター?どうしました?」

 

『どうもこうも、今君達が立っているフランスの放射線量がその時代では考えられないくらい膨れ上がっているんだ!こんなのありえない。チェルノなんて目じゃないぞこの数値は!』

 

「やっぱりか。ということは〇〇さんの作戦は・・・。ドクター、心配しないで。この放射線は多分人体には無害だから」

 

 

 

しかし反対にリツカは冷静だった。その周りと違う様子にロマンが疑問符

をあげる。

 

『リツカくんはこのことについてしっているのかい?』

 

「うーん、予想というか。間違ってたら恥ずかしいからまだ言えないかな。でもさっきの人が体調に変化がないところを見るに、大丈夫だとは思う」

 

 

『でも・・・マシュの影響があるとはいえ一度精密検査を行わないと君がどうなっているかーーー』

 

放射線は日本人にとって恐怖の対象だ。戦時中に投下された二つの爆弾の効果は現代においても多く語られており、だんだん内蔵の機能を損なわせやがては生きた屍のように変わっていく。

だがなぜ彼は一切慌てた様子がないのだろう。そう考えロマンが尋ね

 

 

 

地響きがなった。

 

 

 

「うわっ⁈」

 

「きゃっ!」

 

 

否、地響きではない。

 

それは音だ。生きているもの、命あるものが思わず怯んでしまうような巨大な轟音。その音とともに先ほどまで歩いていた森から鳥たちが群れをなして逃げ去っている。

 

思わず尻餅をついた二人は顔を見合わせ、やがては轟音が起こった方角に目を向ける。

 

 

「あ、あれって・・・・」

 

リツカたちが目を向けた先。そこは先ほどまで向かっていた町の方角だ。しかし先ほどとは明らかに違う点がある。

 

それは土煙。

 

 

まるで巨大な何かが降ってきたかのように、町の中心部から凄まじい土煙が上がっているのだ。

それだけではない。先ほどの轟音に比べれば小さいが、明らかに破壊音のような音も連続で響いている。

 

 

「な、なんだ?!ドクター、町からなんかすごい煙と音が!」

『ーーーこ、これは・・・サーヴァントを上回る超特大の生命反応?!しまった!あのロボットの捜索で確認していなかった!』

 

 

「ドクタアアアアッ!!」

 

『ヒエっ?!ご、ごめん!でも幸いなことにそれはまだ町の中だ。今なら十分逃げられる』

 

 

 

「・・・・!マシュ、急ごう!」

 

『ええ?!』

「え、あれ、え?!先輩⁈」

 

 

 

次の瞬間マシュの手を取りリツカは走り出した。あまりの切り返しの早さにロマンは衝撃を受ける。

 

 

『ち、ちょっとリツカくん?!話は聞いてたのかい⁈サーヴァント以上の生命反応だよ?!そんなものがいる町に飛び込んでどうするんだ!』

 

 

「さっきのおじさんによるとまだ町にはひとがいるそうじゃないか!それにあの破壊音・・・反応の主は暴れてるんだろ!少しでも町の人を逃さないと!」

 

 

 

 

 

 

『・・・!リツカくん、今の君達では・・・』

 

 

「・・・・・わかってる。無茶はしないよ。それに俺にはマシュもついてるし」

 

「お任せください!必ず先輩を守ってみせます。だからドクター、お願いします!」

 

 

「「俺(私)達に行かせてくれ(ください)!」」

 

 

そう言うと二人はモニターに映るロマンの瞳を覗く。そしてしばらく考え込んだロマンはやがて決心したように顔を上げた。

 

 

 

 

 

 

『ぐむむ・・・!なら約束してくれ!自分の命を最優先にすると!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ドクター、ごめん。もう少し無理させてくれ」

 

そして場面は元に戻る。

リツカの前にいる怪物、それはおよそ人の感性から大きく外れた造形の何かだった。

遠目で見たら巨大なドラゴンのように見える。

しかし近くとその違いが出てくる。そのドラゴンは先ほど見たワイバーン、それらの死体を無理やりつなぎ合わせることでドラゴンの形を形成しているのだ。

所々に突き出た手足は虫のように痙攣を起こしている。虫の複眼のようになった目玉をこちらへと向ける。食事の邪魔をされたせいかこちらに向けて凄まじい殺気が背筋を凍らせた。

 

「マシュ・・・」

 

「くぅぅ・・・!すいません先輩、肩を・・・」

 

 

 

リツカはマシュの謝罪を聞きつつも視線は目の前の怪物から晒すことはなかった。

その町に住んでいた人々の避難はすでに終わっている。しかし目の前の怪物は巨大な見た目をしていながら俊敏な動きをしており、さらに体から突き出た元のワイバーンの手足を巧みに操り自身よりずっと小さいであろう二人を追い詰めていった。

 

(せめて、もう一人くらいサーヴァントがいれば・・・)

 

 

「・・・先輩。どうかもう先に行ってください。此処は私が」

 

 

「⁈ッそんなことできるわけないだろマシュ。生き残るなら必ず全員でだ。」

 

「しかし!先輩は、先輩だけは絶対にいきのこらないと!そうでなければ私たちの時代は、世界は!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいか、マシュ」

 

 

 

 

ボロボロのマシュの瞳を見据えリツカは教えるように言う。

マシュの瞳は死の恐怖と覚悟。そして俺だけは生かして見せるという決意を覗かせていた。

 

 

 

 

 

 

だがダメだ。

そんな事、俺はゆるさない。

 

 

 

「いいか、マシュ。死の覚悟なんてそんなものを抱えるな。」

 

「よく死ぬ覚悟も出来てないなんて、戦場で戦う人たちは言うけど、そんな物にはなんの価値もない。」

 

 

 

「絶対に生きる。そして勝つ。俺たちは、そんな決意を抱いて戦うべきだ。」

 

 

 

「そうじゃなきゃ・・・」

 

 

リツカは足元にあった木の棒を掴み正面に構える。

その様子を見た化け物は、リツカ目掛けて触手を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「明日の日なんて取り戻せない!」

 

 

 

 

振りかぶる。このまま行けばリツカはまた建物へと突っ込むことになるだろう。しかし今度は決してすぐには動けない。だが、それでもリツカの瞳には生存を、必ず二人で生き残るという覚悟が垣間見えた。

 

 

 

作戦なんかない。今彼を動かしているのはがむしゃらなまでに生きたいという願いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな彼だからこそ、その男は味方した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドリルアーム!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「い、今のは・・・」

 

 

リツカの眼前まで迫っていた無数の触手。だが気がつけばそれらの凶器は目の前から姿を消していた。

 

 

今彼らの目の前にあるもの、それは爆発でも起こったかのような噴煙とそこから突き出た謎の塔だった。 煙が深くてよくは見えないが突き出たその塔は金属特有の光沢を輝かせており、機械音のような音を辺りに響かせている。

 

(いや、違う・・・!)

 

否、ようなではない。

その謎の塔は実際に機械なのだろう。なぜなら塔と思わしきそれから聞こえる音は、その塔が高速回転することによってなっているのだから。回転は徐々におさまって行き、最終的に見せたその姿はーーー

 

 

 

「ど、ドリル?」

 

「リツカくん!」

 

 

ふと、自分のそばにだれか立っていることに気がついた。

一瞬の思考停止、だがその聞き覚えのある声によって思考は再び稼働する。

そうだ。この声、そして見上げた先にあるその顔。

 

「〇〇、さん」

 

「ごめん、急に何も言わずにどっかいってしまっ・・て・・・?」

 

姿を確認すると同時にリツカはその男に縋り付いた。

 

最初はどこにいってたか、あのドリルはあなたが?などいろいろ聞こうと思った。しかしそれらを押しのけ彼の口から出た言葉はーーー

 

「ごめんなさい・・・!」

 

 

謝罪だった。

 

 

「〇〇さん、あなたが、あなたが此処にいるのは、俺がしっかり聖杯を確保してなかったからなんです・・・!」

 

「あなたをこの世界に呼び出したのは、俺なんです!俺のせいで、俺のせいであなたは・・・!」

 

 

「・・・・」

 

 

そう、リツカは後悔していた。自分のせいでただ普通の人を戦場に引き連れてしまったことを。本来ちがう世界の人間である彼をまきこんでしまったことを。

此処は自分たちの世界だ。そうである以上人理は自分達の力で取り戻す必要があった。だからこそロマンの推測を聞いてリツカは、自分が〇〇を地獄に落としてしまったと感じたのだ。

〇〇の服を強く掴みリツカは続ける。

 

 

 

「俺のせいであなたはひとりぼっちになってしまった、俺のせいであなたは戦場なんて所に行くことになってしまった・・・!」

 

 

「・・・・」

 

「俺の・・・!?」

 

 

しかしそんなリツカの言葉を、〇〇は瞳を合わせることで閉じさせた。〇〇の瞳に浮かんでいたもの、それはーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リツカくん・・・・

 

 

 

 

ありがとう」

 

 

 

感謝であった。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・え?」

 

 

「リツカくん、おれこの世界でずっと感じていたんだ。此処にいる意味はあるのかって。何かを成す資格があるのかって」

 

「だって俺はこの世界の人間じゃない。この世界で育った命じゃない。完全なよそ者だ。そんな存在が、この世界に生きる人たちに関わってはいけない。」

 

「そう、思ってた・・・」

 

あの日を思い出す。聖杯の光が目の前を照らした、自分が死んだ日。事故によってただ死んで行くはずだった時。

「聞こえたんだ。君の声が」

 

そして同時に思い出す。車の中で潰され、血に濡れる瞳に映った光、聖杯とはまた違う暖かな光、その光から聞こえた声をーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

(どうか・・・力を貸してください!)

 

 

 

 

 

「君が俺を見つけてくれた。ただ死ぬだけだった自分をすくい上げてくれた。必要だと願ってくれた。」

 

 

 

 

 

「この世界にいてもいいんだと思わせてくれた・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから俺は・・・この世界に来れてよかった!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「〇〇さん・・・」

 

見上げた〇〇の目線の先、土煙の舞い上がる先には、超巨大なドリルに貫かれた化け物がのたうち回っていた。

 

 

「いや、違う・・・」

 

 

「え?」

 

「今の俺は、〇〇という名前じゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サーヴァント フォーリナー、召喚に応じて参上した。

真名をケン・イシカワという。しがない漫画家だが、恩人の君の力となることを約束しよう。」

 



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チェンジ!!

フォーリナー

 

 

 

外宇宙、もしくは別次元より飛来した存在を根ざすサーヴァントクラス。

地球、さらに言えばその一円に類する内的宇宙に連なる真理から外れた、異邦から呼び寄せられた存在に縁深い英霊。 しかしーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

深いーーー

 

 

 

深いーーー

 

 

ここはどこだ?

あれはなんだ?

なぜ・・・・私はここにいる?

 

くらい闇の底に向かって、一つの魂が落ちていく。

 

長い、永い、ながい時間ずっと落ち続ける。

うっすらと影が見え、やがてそれはどんどん輪郭をはっきりとさせたいった。

 

 

 

これ・・・は・・・

 

 

 

すべての無限の中核で冒瀆の言辞を吐きちらして沸きかえる、

 

最下の混沌の最後の無定形の暗影にほかならぬ―

 

すなわち時を超越した想像もおよばぬ無明の房室で、

 

下劣な太鼓のくぐもった狂おしき連打と、

 

呪われたフルートのかぼそき単調な音色の只中、

 

餓えて齧りつづけるは、あえてその名を口にした者とておらぬ、果しなきーーーーー

 

 

 

魂が見たのは絶望だった。

 

魂が見たのは命の冒涜だった。

 

魂が見たのはこの世で最も邪悪なものだ。

 

魂が見たのはこの世で最も美しいものだ。

 

 

 

こんなものが、この世に存在するのか・・・?

 

 

魂にはその姿の全てを知覚することができた。本来であれば、それを目にしたものは狂気の世界へと落とされる。

 

 

その存在を知覚したくないと、命そのものが拒絶するからだ。

 

この魂も例外ではない。

 

恐怖を覚えた。

 

絶望を知った。

 

闇を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、それ以上に魂の中から湧き上がったのはーーーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

認めないーーーー。

 

 

命を、愛を、心を冒涜するお前をーーーー。

 

 

 

私は決して認めないッ!!!!!!。

 

 

 

 

 

 

ーーー高らかな怒りだった。

 

 

 

 

 

 

 

しかしその本質は曰く、狂気の内にありながら純粋さを失わない者、狂気に呑まれながら逆にそれを呑み尽くした者とされている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ケン・・・イシカワ・・・さん?」

 

 

「まぁ、今回は本人では無く俺を依代としての召喚だけどね。

 

 

そう、君に助けられた。最初のサーヴァントだ」

 

 

そういうと〇〇ーーーケンイシカワは倒れていたマシュとリツカに手を差し伸べる。二人は口をあけてぽかんとしており状況を飲み込めてない事が見て取れた。

しかしそんな放心状態もすぐに魔獣の叫び声とともにふきとび、二人はその方向に目を向けたままケンの手を握り走り出そうとする。

 

 

「と、とりあえず話はあとです!今はあのモンスターから離れないと!」

 

「〇・・・ケンさんはとりあえず安全なところに・・・!」

 

 

「おっとっと。まぁこんな状況じゃあ混乱してしまうよな。でも今は逃げるときじゃないぞリツカくん」

 

ケンは走り出そうとするリツカの肩に手をやり瞳を覗き込むと、腕に宿った令呪を掴んだ。

 

 

「リツカくん、これから先君には今よりもっともっと残酷な未来が待っている。そして君は決してそれらから逃れることは出来ないはずだった。だが、今ならその運命から逃れる事ができる!」

 

 

 

 

 

 

 

「ケ、ケンさん、今はそれどころじゃーーー」

 

「だからこそ君に問おう。もし君がこれからの戦いから逃れたい、味わいたくないと言うのなら俺は君を日常に戻す事ができるが・・・・・どうする?」

 

 

 

 

 

それを聞き、リツカは頭の中が真っ白になった。

戻れる?

あのいつもの明日がまたやってくる?

 

「・・・」

 

「さっきの君の言葉を聞いて俺も考えた。そもそも君しかこの世界を救えなかったのであって本当は君も巻き込まれただけの子供だ。戻れるのならその方がいいと、俺は思う」

 

 

 

 

「先輩・・・」

 

 

マシュがリツカを見る。本人は少し俯いて地面を見ている。

 

「リツカくん。今なら、今ならまだ引き返せる。だからーーー」

 

「ケンさん、そんなわけにはいかないです」

 

ほんの少しの沈黙。しかしリツカの口から出た言葉は拒絶の一言だった。

ケンの言葉、それはきっと真実だ。短いあいだに彼になにがあったのか、今の自分には想像できない。

 

しかし彼の瞳。会ったときは茶色だったその色は今、うっすらと緑の光を放ちながら螺旋を描いていた。この瞳がなにを意味するかはわからない。だが駆け出しで魔術を教わった自分ですら、それがただの虚言でないことを悟らせるほど、その光からはなにかを感じさせた。

 

 

だがそれでもリツカは首を縦に振ることはなかった。

 

なぜか?

 

「ケンさん。ここは俺の、俺たちが歩んできた世界です。」

 

 

「全人類のみんなを助ける仕事。そんな責任が伴う以上、今貴方に任せた方がいいのかもしれない」

 

 

「でも俺はーーー」

理由?それなら今画面を見ているあなた達が一番知っているはずだ。

 

彼が戦うと決めたのは、正義なんて重たい理由ではない。

 

名声を得たいなんて浅すぎる理由でもない。

 

 

そう、彼はいつだってーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生きるという願いを、誰かに押し付けるわけにはいかないんです」

 

 

 

生きるために戦ってきたのだから。

 

 

 

 

 

 

その言葉を聞いてケンはその口角を上にあげた。

そうだ。その一言だ。だからこそ俺は、俺たちは君と共に歩みたいと願ったのだ。

 

「でもーーー」

 

「ん?」

 

 

 

その言葉の後、リツカはまた言葉を紡いだ。

皮肉な事に、この世界でその願いはけっして一人では成し遂げられない願いだ。

今の彼の腕では自分の命さえ手が届かないかもしれない。

だからこそ彼はーーーーー

 

 

「それは俺一人、いや、俺たちだけではダメなんです」

「こんなこと言うのは筋違いだと思います。でもそれでも俺は貴方に願います。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆んなと手を取り合ったのだ。

「どうか、俺たちに力を貸してください!」

 

 

 

 

それは、あの時と同じ一言。

 

最後の瞬間、答えてあげれなかった一言だ。

 

 

そして、そんな俺の一言は、もう決まっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「了解だ、マスター!!」

 

 

 

 

 

 

 

オープン、ゲェェェットッ!!!!!

その声を上げると同時に、謎のエネミーに突き刺さっていた巨大なドリルが高速回転を始めた。そしてあたりに残骸となったワイバーンを撒き散らした瞬間、ドリルは一瞬で三つの影となって上空に飛び上がった。

 

 

同時に自分の前に三つのうちの一つ、赤い巨大な影が降り立った。

サーヴァントとなった身体能力で飛び上がり影の上ーーーーーコックピットへと自身の体を滑り込ませた。

 

 

 

 

 

 

 

今目の前に広がる狭い空間。計器の明かりに照らされるそこは、少し汚れていて、人によっては良さなどわからないだろう。

だがその空間こそ、 男にとってかなわないはずの夢だった。

自身の世界では決して叶わない夢。

それを胸に、彼はレバーに手を置く。そして指に力を入れて彼は外にまで聞こえるかのような声と共にーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゲッターロボ!!発進」

 

レバーを思いっきり動かした。

 

 

 

 

 

天高く三つの戦闘機、(ゲットマシン)が飛び上がる。その高さはやがて雲の上まで達し、やがて編隊を組み始める。

 

白い戦闘機、ジャガー号の後ろから黄色の戦闘機ベアー号が近づいて行く。影はやがて一つになり辺りに余剰で発生した電撃を噴き出させた。

 

 

 

 

そう、二つの戦闘機は合体したのだ。

 

 

 

するとジャガー号から機械仕掛けのマニピュレーター、コアフレームが飛び出した。

ゆっくりと迫り上がるフレーム。やがてそれを覆い尽くすように赤い装甲板、デジタルプレートが鉱物のようにまとわれてゆく。

 

それと同時にベアー号のロケットブースターも、内部に収納されたコアフレームと繋がりやがてプレートがその姿を変えて行く。

 

 

 

「チェェェェエエエエエエエエエエンジッ!!!!」

 

人形のような形となった2機。そこに 赤い戦闘機、イーグル号も一つとなったことで、それはついにこの世界に姿を現した。

 

 

 

40mはあろう巨体。

赤、白、黄の三色のうち赤を基準とし、まるでマントのような飛行補助翼をたなびかせる。

 

パネルの隙間からは緑に輝く明かりが漏れ、顔に当たる部分は幾何学模様のような形で構成される。

 

鬼のような二本のアンテナ。そして優しそうでもあり、角度によっては相手を睨みつけるかのような形のメインカメラ。

 

 

 

 

 

 

 

それは、合体ロボの原初にして頂点

 

 

進化の化身

 

 

 

奪還者

 

 

そしてーーー我らのスーパーロボット!

 

 

「ゲッタアアアアッワンッ!!!!!!」

 

 

そう、ゲッターロボの完成である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リツカは見た。

太陽を背に遥か彼方からこちらに降りてくるその影を。

やがて輪郭をはっきりさせたその影は、自分たちを捕食しようと迫る化け物に向かって、蹴りの姿勢のまま突撃した。

そう、その影の名はーーー

 

 

 

「ゲッターロボ!!」

 

 

あたりに轟音が響き渡り、激しく土煙が舞い上がる。

 

その闇の中に輝く二つの眼光。ゲッター1は遠くに吹き飛ばされた怪物を見つめており、立ち上がったのを確認すると同時に巨大な足を走らせた。

 

 

 

そしてあたりに轟音が響く。

「◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️⁈」

 

声にならない音を鳴らしながら口に当たる部位から茶色く変色した大量の血液を撒き散らした。

怪物の胸には巨大な腕が突き刺さっており、ゲッターロボはそれを引き抜くと同時に腕のカッターが引っかかるのも御構い無しに引き抜いた。

 

返しのようになったカッターと共に内臓をあたりに散らす。

それと同時に怪物は紅蓮の焔のをゲッターロボに吹きかけた。

「うああッ⁈」

 

「先輩!!私の後ろに!」

 

二人は現在ゲッターロボの後ろにいる。

衝撃と爆風はマシュの盾によってほとんど塞がれているが光と爆音はどうしようもない。

リツカは耳鳴りとチカチカする視界の中なんとかマシュの盾に捕まった。

それにより盾はより安定して二人をその災害から守る。

 

「マシュー!ゆっくりこの場から離れよう!今の俺たちだとどうしても邪魔になってしまう!」

 

「り、了解です!先輩、あれってまさか・・・」

 

「ああ、ケンさんは多分マシュと同じ・・・・」

 

そんな中二人は炎を遮る巨人を眺める。

鋼をも溶かすであろう熱線。それはワイバーンの臓器を直結したことにより放たれるもので、仮にそれを食らえば人骨すら散りへと化すだろう。

 

 

だが、そんな中でもゲッターロボは構わず歩みを進めた。

 

歩く

歩く歩く

 

、走る!

 

 

再び怪物の体、否。口の中にゲッターロボはその拳を突き入れた。噴射口を抑えられ隙間から高温の熱が燃え広がっていく。苦しそうにもがくことも御構い無しに、背中の不自然に盛り上がった羽のようなものをわしずかむ。

怪物は、自分の視界がおかしくなっていることに気づいた。

 

その感覚に疑問符を上げる。何故ならこれは今まで、投げ飛ばされるという感覚を知り得たことがなかったからだ。

生まれたばかりの存在であるから当たり前ではある。しかし不定形で群体であるこれはそのような事態を想像できないのだ。

 

 

◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️

 

 

生き物の声とは思えない叫び。

そんな中でも怪物は全身の触手を伸ばして全身を絡みとろうとする。

 

「そんなものでなぁ!」

 

コックピットの中のケンがスロットを起動させる。するとゲッターロボの肩の部分から何かが構築され始める。マニピュレーターがそれを掴み無理やり引き出す。

 

「こいつをどうにか出来ると思うなよ!!!」

 

ゲッタートマホークッ!!!!

 

一瞬の間をあけ、眼前まで迫っていた触手はバラバラに引き裂かれた。

 

ゲッタートマホーク。

ゲッターロボに搭載されている携帯兵器である。もともと作業用に開発されたものではあるがこれは戦闘用に調整されて構築されている。

その刃にはゲッターロボのエネルギー源であるゲッター線を含んだ特殊金属で構成されており、振り降ろすと同時に刃からエネルギーがあふれる。形成されたエネルギーの刃は対象の構築する原子の隙間に食い込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、この斧は科学的に切れないものはないのだ。

 

 

「捕らえたぞ!」

 

 

胴体と思わしき部分にトマホークを抉りこむと同時に怪物を抱え込む。このまま戦い続けても街に被害が出るだけ。

 

「ここだと邪魔だよなぁ!」

 

 

ゲッターウイング!!

 

ゲッターロボの背部からマント状の補助翼、ゲッターウイングが展開される。それと同時にイーグル号のロケットエンジンがマントの下で起動し巨体を空へと浮き上がらせた。

そのスピードはどんどん上がって行き、やがて雲の上へとーーー

 

 

 

 

「たとえ俺がこの世界の異物であるとしても!」

 

 

 

 

 

 

「たとえこれが只のエゴでしかなくても!!」

 

 

 

 

 

「俺は抗う!助けてくれた彼らのために!」

 

「俺を救ってくれたあの人のために!!!」

 

 

その後彼方へと投げ捨てた怪物に向かってゲッターロボは構える。やがて無限に降り注ぐそのエネルギーは一部へと収束し緑の光を出し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、俺は、否。俺たちは運命というものに全てを奪われた。

 

 

 

だから取り返すのだ。

 

 

 

残酷な運命から。

 

 

 

 

取り戻すのだ。

 

 

奪われたもの全てを。

 

 

そう、

俺は、いや、俺たちは!!

 

 

 

奪還者

 

 

 

「ゲッターロボだッ!!!!」

 

ゲッターロボから放たれた緑の熱線。

 

 

ゲッタービームと呼ばれるそれは、やがて怪物へと吸い込まれ

 

 

その存在を跡形もなく消し去った。

 

 

 

 




次回エピローグ


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エピローグ

「・・・・終わったか」

 

とある場所ーーー因果の彼方にあるその場所で、男は異なる世界を見ていた。

 

「ま、一人乗りの初戦と考えりゃあ上等か。もともと平和ボケしたガキだしな」

 

そういうと男は異なる世界を映し出しているモニターから目線を外し後ろへ振り向く。

その先に広がっていたのは星の海。そしてはるか先まで続く平坦な地平線という不思議な空間であった。男はやがてその空間に立っている一人の男を見つけると話しかける。

 

 

「奴らの様子はどうだ?こっちはなんとか芽が出たぞ」

 

「・・・・今のところはなんの変化も見られんな」

 

「それもそうか。奴らが動いてりゃあもうすでにこの場所も存在してねぇだろうしな。」

 

 

そう言って男は着けていたヘルメットを外し地面に座り込む。こうしてゆっくりとした時間を過ごすのはいつぶりだろうか。思えばここ数年間働きっぱなしであった。

ゆっくりと手のひらを見る。その手は長年なにかを握り込んで来たかのように硬くなった皮膚で覆われており、それを見るたびに男にこれまでの戦いを思い出させた。

だがやがて何かを思い出すように顔を上げた。

「それはそうとありがとうよ。お前のおかげで、俺たちも新しい概念にたどり着きそうだーーーーーーー藤丸」

 

 

 

 

 

 

そう、男の隣に立っていたもの。それは我々の知るあの人物、藤丸立華であった。

 

否ーーーー

 

 

 

「いや、ちげぇか・・・・・。そろそろ元に戻ったらどうだ?」

 

 

「・・・それもそうだな。」

 

 

それを聞いて立華、否、その男はゆっくりと握りこぶしを作り胸の前まで持ち上げる。

 

 

 

 

そして一呼吸置いてから(スイッチ)を起動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男をスパークが覆い尽くす。

 

 

ある時はモザイクに包まれた謎の存在。

 

またある時は人類最後のマスターと同じ姿。

 

はたまたある時は光に包まれた神のごとき存在。

 

 

ーーーーーしかしてその実態は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マジンフラッシュッ!!!!

 

 

 

 

 

 

スパークが止む頃に立っていたのは、藤丸立華とは全く別の人物であった。

「俺たちの世界を物語や漫画であると仮定し、進化を無限に繰り返すことで世界を飲み込み神ーーー否、作者に近い存在へと変わる。俺たちだけでは思いつかなかった概念だ。」

 

「今のお前はその世界、いや、「真マジンガーZERO」という生きた物語と言ったところか。」

 

 

「いや、ここまで至れたのは君たちの助けがあればこそだ。」

 

 

「ゲッターウィルという宇宙そのものを用いた頭脳、そして数多の並行世界のシミュレーションによる強制進化。この実験結果がなければここまでたどり着かなかった。まぁ、その結果俺の方が早く生まれてしまったが・・・」

 

 

「もともと生まれはそっちが先だろう。わざわざ気にすることはねぇ・・・」

 

 

それを最後に場に沈黙が走る。

彼らは一度たりとも目を合わせず目の前に広がる宇宙を見つめ続けている。どれだけ時間が経っただろうか。

 

最初に立華・・・否、◼️ ◼️◼️が口を開く。

 

「我々の世界から、スーパーロボット大戦。次にエヴァンゲリヲンによって繋がった数多の道筋・・そしてここ、型月。やれやれ、随分と深いところまで繋がったものだ。」

 

 

「型月の世界は多くの『神 』が観測している。新たな世界、いや、卵を産みだすならばここに手を伸ばさないわけにゃいかねぇ」

 

「そして我々の予想通り、鑑賞した瞬間新たな物語は始まった・・・」

 

 

 

 

◼️◼️はポケットに入っている携帯を取り出しある場所へと繋ぐ。

 

そこに写っていたのは・・・

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

作品名 型月世界において簡単にカルデアに力を貸す方法。

 

原作 Fate

 

 

掲載開始

2019年5月21日

 

 

UA51853

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「新たに生まれた世界は51853、か。」

 

「お、なかなかいい数じゃねえか。始めとしちゃあ上等だ。」

 

 

 

確認を終えた ◼️◼️は電源を落とすと男に背を向け歩き出す。男はそれを気にする様子もなく見届けてーーーーー

 

 

「もう行くのか?」

 

「あぁ、俺の育てている世界が伸び悩んでいるからな・・・」

 

 

 

 

 

◼️◼️の足元から光が出て、やがて粒子となって消えてゆく。

 

「ーーーーーー先に行くぞ?ゲッターロボ」

 

 

「そっちこそ、追いつかれねえようにするんだな。マジンガー」

 

そして、◼️◼️はこの宇宙から消えた。

 

 

 

 

 

 

いつの日か、全ての世界から1が生まれるだろう。

そして彼らは戦うだろう。命を冒涜するーーーーーと。

 

全ての1が揃うのはいつの日か、それは誰にもわからない。

 

 

だが、戦いの狼煙は既に上がっている。

 

その先陣を切るのは原初のスーパーロボット。

 

 

そしてその次はーーーーーー

 

 

 

 

 

貴方達の秘める世界も、

いつかきっと

 

きっと

 

 

きっと・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エピローグ

彼らに力を課す方法。

 

 

 

 

 

 

「あの・・・・ケンさん」

 

「ん?」

 

コックピットから降りたケンにマシュが話しかける。

戦いが終わった後ゲッターロボから降りたケンは自分がどういった存在なのかを説明した。

 

本来この世界に生まれるはずではなかった存在がいること。

 

それらの中にも英霊になりうる存在が無数に存在すること。

 

そして自身の描いた物語によってその生まれるはずだった人物がこの世界を観測したこと。

 

ただの幽霊の自分を依代としてこの世界に来たこと。

 

「あなたは一体どういった英霊なのですか?」

 

「うーん、そうだね。まぁ言ってしまえばただの漫画家だよ。ただ文字通り次元の規格が違うと言う理由で創造神みたいなものになってるけど、ね」

 

 

でも中身はただの一般人だよ?そう言って頰をかきながらケンは言う。リツカはそれを聞くと同時に自身の腕に宿る令呪に目を向けた。

自身と彼のつながりを感じながら先程言われたことを考える。

すくい上げた、とケンは言った。自分が次元振の事故で死にかけた彼の魂を呼び寄せた、と。

しかし実感がなかった。魔術師として全くのど素人な自分はただ言われるままにサーヴァントを呼び寄せただけだ。それなのにせっかく助かったその命を、自分は戦わせることで再び死の危険に晒そうとしている。

 

「俺は・・・」

 

「リツカくん」

 

 

ふと肩に手を置かれリツカは顔を上げる。

ケンはリツカの目を見て、彼が自分のせいで重荷を感じさせていると考えた。事実リツカは重荷を感じているし、それによって自分を戦わせて良いものなのかと悩んでいた。

だからその重荷を、ケンは降ろさせてやることにした。

 

 

 

「いいか、リツカくん。君が俺を助けたことに対して実感がないということはなんとなく想像がつく。そしてそれを理由に戦わせる事が間違っているのではないかと感じているのもわからないでもないよ。」

 

「ケンさん、俺は・・・」

 

「だからこそ君に俺は言う。それは考えすぎだよ。今回の事はそんなに難しく考えるような事じゃない。君が助けた。それに俺は恩義を感じた。そして一緒に冒険したいと考えた。つまり間が良かった。それで終わりだ」

 

 

「でも、ケンさんはせっかく助かったのに。また命の危険が近くにある戦いに関わろうとしている!怖くないんですか?」

 

 

リツカの言葉を聞いてケンは苦笑する。

たしかに怖い。もともと漫画を描き始めたのも消えるのが怖かったからにすぎない。

 

でも

 

そんな恐怖を抱いていたとしても

 

 

 

 

やっぱり自分はこの世界が大好きなのだ。

 

 

「いいんだよ。死の恐怖はたしかに感じている。でも、俺はやっぱりこの世界が滅びるなんて許せない。」

 

 

そう、物語だったこの世界が自分は好きだ。それに対して多くの人は、二次元としか見ていない、キャラクターとしてしか見ていない。と言うかもしれない。

 

しかし自分は思う。 わらわせるな、と。

 

 

人としてみていない?キャラクターとしてしかみていない?

 

それの何が悪い。

 

キャラクターに対して愛を感じてはいけないのか?

物語に愛おしさを感じる事はおかしいのか?

 

目の前にいる二人。彼らの旅路を我々はある意味一番近くで見てきた。そして運命のあの日。

 

クリスマスのあの日。

 

液晶に映った光景に感じた暖かい気持ち。あの感動は絶対に嘘ではない。

 

 

 

 

 

 

「この世界が好きだ。この世界の人たちが好きだ。そりゃ、たまにネガティブすぎていい加減にしろとか思ったこともあるけどさ。それでも俺が戦えたのはーーー」

 

 

 

 

 

それでも思うのだ。

この気持ちこそに意味があってーーー

だからこそ戦うことができてーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

きっとここまで、自分がたどり着けたのはーーー

 

 

 

 

 

「君達が、俺の手を掴んでくれたから・・・だからそれでいいんだよ。」

 

「ケンさん・・・」

 

 

たとえ世界が変わったとしても、今自分は生きてここにいる。

ならいつか家族にだってまた会える。

 

だから悲しむことなんてない。

 

今自分が叶えたい願いはこの世界にある。

 

 

 

 

 

 

 

 

ならば手を貸すことなんて簡単だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リツカくん。君は世界を救うだろう。でもそれは決して君だけで成し遂げる事はできない。そしてその事を君はしっかりわかっている」

 

 

そう、だからこそ彼は最後まで歩んでこれた。

 

衛宮士郎も、岸波ハクノも、沙条綾香も、ジークも、蒼崎青子も。

 

みんなみんな自分一人で背負おうとして、そしてそのことに気付き周りの人たちと手を繋いで世界を救った。

 

リツカもそうだ。

 

かつて味方だったものも、敵対したものも、裏切ったものも。みんなと手を繋ぎあってどこまでも手を伸ばしていけるようになった。

 

 

「だからさーーーーーー

 

 

一緒に戦おう。明日のために」

 

 

 

 

 

 

ケンの伸ばした手。インクで少し汚れたその手をみて、すぐに彼と彼女は手を繋いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲッターロボが選ばれたのは、ある意味必然だったのかもしれない。

 

 

ゲッターロボは原初の合体ロボである。それと同時に、一緒に誰かと戦うことに意味がある。

 

 

 

 

 

 

そう、三つの心が一つになればーーー。

 

 

 

 

「よろしくな!二人とも!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ステータス更新

 

 

「サーヴァントフォーリナー。ケンイシカワだ。これからよろしく!君達の旅路、今度は一緒に歩ませてくれよ」

 

真名 ケン・イシカワ

 

クラス フォーリナー

 

性別 男性

 

身長175cm

 

体重70kg

 

属性 混沌、善

 

好きなもの

スーパーロボット、ロボットのおもちゃ、 型月シリーズ、人、麺類、かつ丼

 

嫌いなもの

ヌルヌルして噛みきれないもの。心を踏みにじること。

 

地域 日本「異世界」

 

一人称俺

 

デザイン 〇〇 皆さんの名前をどうぞ。主人公の姿は、あなたたちの心の中に。

 

 

レア度星4

 

 

 

スキル

人外特攻A

人間以外に対して特攻効果を得る。

 

根源の外EX

彼はこの世界の法則にほぼ縛られないと同時に、この世界のメリットを都合よく受け取れる。

 

 

想像の神A A A

◼️◼️◼️は物語を描いた時点でその世界の神となる。

 

 

宝具

 

なし

 

 

彼に宝具はない。あえて言うのなら彼には世界の法則にほとんど縛られない能力を持つ。だからこそゲッターロボに乗っても肉体は原型をとどめていた。ゲッター自体はあくまで貰い物である。

とはいえゲッターロボになれたのはあくまで、本来の作者である◼️◼️ ◼️が許可したからに他ならない。

 

 

 

 






はい、ここまで付いて来ていただきありがとうございます。

このシリーズはこれにて一旦完結となります。今後はほかのサーヴァントとの絡みや小話などをやっていきたいと考えています。
今回この話を始めるに至ったのは、クロスオーバーをするにはどのような理屈によって起こせばよいかと言うのを考えた時に思いつきました。
まだまだ書いてみたい部分とかもあるのでもしよろしければたまに読んでみてください。
最後に応援してくださった方々、読んでくださった皆様に、心からの感謝を。


この作品の主人公は、皆さんです。



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番外編 その後の小話

久しぶりに筆を取る。まさか本当にfgoがスパロボみたいになっているとは・・・


「そういえばさ・・・」

 

「ん?どうしましたケンさん」

 

「いや、別にたいしたことじゃないんだけどさーーー

 

 

 

 

 

  

こんにちは皆様。ケンイシカワです。

 

いかがお過ごしですか?

 

俺は今もカルデアで楽しく過ごさせてもらっています。

あの戦いからだいぶ時間が立ち、カルデアのスタッフの方々とも打ち解け、新しく力を貸してくれたサーヴァントもたくさん集まってくれました。

 

現在ゲッターロボはカルデアの新たなエネルギー源として役立っています。

そのお陰で現在のカルデアでは豊富な電力により余裕が生まれました。

具体的にいうと毎日10連ガチャが出来ます。リツカくんが泣いて喜んでました。

 

え?ゲッターロボでたたかわないのかって?

それが人理修復の旅において戦いの殆どは等身大の敵ばかりでして。ゲッターロボは主に魔神柱やファヴニールなどの大型エネミーとの戦いでしか出せないのです。

英霊と戦わせようとすると現地の被害が大変なことになるし・・・。

 

とはいえ、俺自身全くの役立たずというわけではなく。

どうやら俺に力を貸してくれた先生はこの世界だとある種の創造神に近い存在らしく、そのおかげで先生の生み出したキャラクターの能力を「被せて」戦うことができるようになったのです。勿論最初ビビりまくっていたけど、今は積極的に前に出て相手と戦えています。

 

 

「神様、ですか?」

 

 「うん。神様」

 

 

現在俺は食堂にてとあるサーヴァントと昼食をとっている。

彼女の名は源頼光。

かつて怪異殺しとして名を馳せた彼女は最近カルデアにて召喚されたバーサーカーだ。

 

(あら?あなたはーーー)

 

彼女は最初自分を見た時はまるで久しぶりに会った友人に向けるかのような目を向けてきた。他のみんなはその様子を見て不思議そうな顔をする。当然だ。異世界人である自分と彼女に関わりなどない。当然俺にもない。

しかしひとつだけこころあたりがあった。

 

話は変わるが、ゲッターロボがこの世界で無限のエネルギーを発電できる理由。その理由自体は簡単だ。

型月において明確に表記されることはなかったがこの世界にもきちんとゲッター線が存在する。以前にも語ったが未来においてリツカくんはポールバニヤンの狭間とサーヴァント時空でゲッター線に取り込まれかけたことがある。

 

ただ誰もその存在に関心を示していなかっただけで確かに近くに存在していた。

だがこの世界は型月世界。認識が力となる世界だ。誰にも認識されなければそれはなんてことはないただの宇宙線で終わるはずだった。

 

しかし自分がこの世界に来たことによってその宇宙線は認識され、本当の力を取り戻すにいたった。

それと同時にこれまで存在しなかったイフの歴史も座にて更新された。

 

 

(あの、突然ですが・・・流竜馬という人について知っていますか?)

 

 

 ここで話を元に戻すが、ゲッターロボの世界にも源頼光は存在する。しかもそれはこの世界と同じ女性としてである。

ゲッターロボ世界の彼女は敵対勢力である黒平安京にて安倍晴明と戦っていた。しかし最後の決戦の前に彼女は主人公流竜馬に怪異殺しの剣、童子切丸を手渡すためその命を剣に捧げてしまう。

 

そして自分に力を貸している先生はゲッターロボの世界において神に相当する。先生は俺を戦えるようにするためよく流竜馬の経験を付与するのだが、おそらくその影響だろう。

 

 (不束者ですがよろしくお願いいたします・・・)

 

  (・・・?え、なんで?)

 

いきなりだった。自分の前に現れた彼女は手を取りそんなことを言った。

まず断っておくがゲッターロボ世界の彼女はこのように上品な人ではない。向こうの世界の彼女はまさにおっぱいのついたハンサムというくらい雄々しい性格をしている。流竜馬との関係も色のあるようなものでは無くあくまで戦友としての感情でしかなかっただろう。

 

だがこの世界の彼女は愛を求めている。無意識に家族を求め、母親としての自分を望んでいる。そんな彼女はゲッターロボ世界の自分の経験を座にて知った時、その自分を羨ましがった。

 

あのような方がいてくれたら。

 

自分と肩を並べられるものがいたら。

 

決して金時達四天王に不満があるわけではないが、彼らは対等ではなく部下にあたる。もちろん家族としての愛も持ち合わせているがとなりで肩を並べるわけではない。

 

だが流竜馬は向こうの自分の友人だ。その上自分の世界には存在しない。

それ故に竜馬と同じ気配を漂わせるケンを見た瞬間一つの思いが浮かび上がった。

 

 彼こそ運命の人ーーー!

 

さすがはバーサーカー。

自分はよく彼女と相席してご飯を食べる。もちろんいきなり夫と言われ混乱もした。しかし一から関係を築こうとしてくる彼女に対し悪い気はしない。美人な人だしおしとやかなのも魅力だ。

流竜馬と重ねたのではなく、彼と同じく共に並んでくれるものとしてのアプローチだ。なので不快な感じもない。

 

  「神霊のサーヴァントならいらっしゃいますよ?」

 

 「そうじゃなくて・・・いや、実はこの世界の歴史について調べることがあってさ。」

 

 話を戻そう。

 

 「神秘が存在しているのと冬木市が存在する以外はこの世界はほぼ俺の世界と同じ歴史だったんだけど、だとしたらこの世界にも菌糸類と竹ーーーいや、間違えた。俺の世界でこの世界の作者にあたる2人が生まれているはずだと思ったんだ。」

 

 

ムーンセルオートマトンこと月の聖杯戦争では初めて月に行った宇宙飛行士であるアームストロングが召喚されたことがあることを思い出した。そしてそれを考えた時、同時にある疑問が浮かんだ。

 

 この世界って、どのくらい自分の世界の歴史と違いがあるのだろう?

 

そこで自分はこの世界において元の世界では著作権関係上あまり触れられない部分、近代クリエイターたちについてしらべはじめた。

例えばアニメという歴史に置いて重要な立ち位置にある存在のあの人。この場ではあえて言葉を濁して王様の父親と呼ぼう。

 

彼は存在した。もちろん世界各国に彼の王国は存在したし自分もテレビで特集をやってたのを見たことがある。

では次に日本漫画界の神であるあの人。ここではオサムシさんと呼ぼう。

そう、この人が歴史においては見つからなかったのだ。

否、彼だけではない。彼以外の近代クリエイター。

宇宙の列車のM0先生。

幻想と妖怪達を描いたm先生

夢をあたえるポケットのF先生、

仮面と人の闇と希望を描いたi先生。

そしてケンにとって大切な友人であるNG先生。

 

そう言った日本サブカルチャーの歴史において重要な彼らについての歴史がどこにも記されていなかったのだ。

とはいえ生まれてないというわけではないと思う。元の世界の友人や家族もこの世界に存在したし同じ文明が築かれている以上いないということはないだろう。

 

「まぁ、本で言うところの作者。この世界を描いた人と同一人物っているんじゃないかって思ってさ。」

 

「おや?何やら面白そうな話をしてるね」

 

 すると横からお盆を持ったレオナルド・ダヴィンチことダヴィンチちゃんが話しかけてきた。

 

「あ、ダヴィンチちゃん。頼んでいた完全変形ゲッターロボの超合金って出来そう?」

 

 「それについてはもう少し待ってくれ。君の注文通りのものってなかなか大変でさ。それはそうとしてだ、この世界の創造神か・・・我々サーヴァントから思うにやはり個性的な人物なのかい?」

 

「あぁ、きのこの形をしていて赤ちゃん口調で今は平行世界で学校の形をした場所でみんなを二頭身にしているよ。」

 

「何言ってんの?」

 

 「き、きのこ?」

 

  「あー、ごめんつい・・・。今言ったのは作者が作品内に登場するにあたってのアバターというか、マスコットというか・・・」

 

 

  変なことを口走り混乱させてしまった。とはいえ作者の人物像と言っても自分自身作者本人まで詳しいわけではないのでこう言うしかない。

 

  「でもどうして急に?また何か面白いことでも?」

 

 「いや?ただ発想の逆転というか、世界のルールの隙間というか・・・それらを利用することも俺にとっての武器だからさ」

 

 ちなみに最初は2人に頼んで世界を平和にしてって言おうと思ったけど言ったところで「そんな話の何が面白いの?」とか言われて終わりだろうからやめた。世界の維持には面白さは重要なのだろう・・・。

まぁそれはともかく

 

「ルールで思い出したけどこの世界の科学と魔術の関係性。これ面白いよね。魔術で出来ることってのは基本科学でも再現は可能。ならば魔術を使って人間の技術を測ることも可能なわけだし」

 

 「魔術を科学の解明に、か。なるほど。たしかに魔術師はそんなこと考えないだろうしね」

 

 

 

 

魔術師か・・・

 

 

 

 

 

 

「ちなみにこれ言っていいかわからないけど作者によると今後この世界に魔法使いは生まれないんだってさ」

 

 ブッ!!

 

 

 次の瞬間、食堂でご飯を食べていた一部のスタッフがご飯を吹き出してこちらに目を向ける。

 

「・・・根源に私は興味ないが、今のはあまり言いふらさない方がいいよ。今の事実は多くの魔術師が首吊りするほどのショックだろうからね」

 

 

 「わるい、でもこういうのってあまり腹に抱えたくないんだよなぁ・・・」

 

 そう呟くと同時に立ち上がりお盆をつかむ。しばらく話し込んだからお椀の中がカピカピだ。早いとか洗ってもらわなくては。

 

「ご馳走様。そんじゃ午後からもゲッターのメンテ行ってくる。やっぱ愛機は自分で修理しなきゃな。」

 

「あ、うん。行っておいで。・・・」

 

離れていく背中を食堂の殆どのスタッフがキョトンとした顔を浮かべている。

 

  「な、なぁ。もしこのことってしれたらカルデア問答無用で消されるんじゃないか?」

 

  「いやいやいや、大丈夫よ・・・。きっと誰も信じないわよ」

 

   「でも彼って俺たちにとっての神様と同じとこから来たようなものなんだろ・・・?」

 

 

  やがて全てのスタッフが判明したとんでもない事態に慌てだす。そんな中ダヴィンチはもう一つのことについて考えていた。

 

 (発想の逆転か・・・物語の外からやってきた彼だからこそできること・・・。しかしそれだけであんな兵器を呼び出せるものなのか・・・?彼自身はサーヴァントとはいえそれほど強い力を持っているわけではない。あくまで力を貸している存在によって戦えている。)

 

 いくら知識があろうと彼はただ漫画を書いただけの一般人である。あれほどの存在がたったそれだけのことでこの世界まで来るだろうか。

 答えは否。

そこまでうまくいくわけではない。考えてみて欲しい。彼はあくまで漫画を書いただけなのだ。もしそれだけで世界がつながるのなら今頃この世界はご都合主義によって埋め尽くされているだろう。

 

 (発想の逆転・・・か。・・・いや、待てよ?もしかして・・・)

 

 

 発想の逆・・・彼があれを呼んだのではなくあれが彼を呼んだ・・・?何のために?

 

(ゲッター と呼ばれるものが彼をよこしこの世界の何を必要としたのか・・・)

 

 

 

「あの、ダヴィンチさん・・・?」

 

思考を巡らせ続けていると前に座っていた頼光に話しかけられる。思わずはっと勢いよく顔を上げるともう周りの騒ぎもある程度収まっている状況。

 

「おっと。つい考えこんでしまった。」

 

 「だいぶ長い時間動かないものだから・・・もしかしてお邪魔でしたか?」

 

 「気にしないでいいよ。別にたいしたことではないからね。それよりどう?カルデアには慣れたかい」

 

 「はい、皆さまよくしてくださいますしマスターもとても良い子です。ケン様もよくしてくださいますし・・・」

 

 「ふむ・・・君とのつながりがよくわからないが、彼とは会ったことあるのかい?」

 

 

  「いえ、あの方とは初対面ですよ。ただ・・・」

 

 カルデアに彼女がきてからだいぶ経つが、初対面のケンに対して異様に親しくするのをみたことがあるものは決して少なくはない。

だが彼女の内心を知るのはカルデアにおいてケン1人だ。彼女は別世界の自分の記憶を誰にも打ち明けていない。それもそのはず。それはこの世界にもいるであろうあの男に悟らせないためである。

 

 そう、あの男。現在彼女の脳裏には2人の同一人物が描かれている。

 

 1人は黒平安京の主

 

 もう1人はこの世界の裏切り者。

 

 しかし語ることはない。何処に奴の目があるかわからない以上この事実は自身の中に潜める事にした。

とはいえ今この質問の答えを答えるとなるとーーー

 

 

 

 

 「なんだかそっくりですもの。あの二人」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ところ変わってカルデア格納庫。

 

現在ゲッターロボはカルデアの電力を支えるエンジンとして稼働している。

本来であれば切り離された場所であるカルデアは無限に降り注ぐゲッターエネルギーの恩義はないはずだが、戦闘においてゲッター を出撃させる際特異点でチャージする事で稼働している。

 

熱線を放出させるほどのエネルギーを生み出すゲッター炉心。その総電力は日本全土の電力を補えるほどのものだが、それでも1日に霊基10回分しか生み出せないあたりサーヴァントというものの強大さがうかがえる。

 

「・・・うん、今日も発電量に異常はないな。」

 

 ケンは現在ツナギ姿で油まみれになりながらゲッターロボの整備を行なっている。ゲッターロボの構造は複雑そうに見えて実は単純に出来ており、ゲッタービーム発射砲、トマホーク生成機能以外は重機に似たものとなっている。

 

 「まぁ当然といや当然か。もともとゲッター は作業用の重機として生まれたんだし。ただ出来たものが強すぎただけで」

 

 そしてある程度の油の拭き取りを終えると同時に腹部コックピットのジャガー号のハッチを閉める。

 

 「おーいケンの旦那。ベアー号脚部のメンテナンス終わったぞー。」

 

 「あんがとー。金時もう上がっていいよ」

 

  下から同じくメンテナンスの手伝いをしてくれていたバーサーカー坂田金時が顔を出す。

 彼にはゲッターロボにおいてベアー号ことゲッター3のパイロットになって貰っている。身体能力と精神力という部分で彼のことに目をつけていた事からパイロットになってくれないかと交渉。快く引き受けてくれた。

ん?武蔵坊弁慶?あの人はなんとなくやめておいた。取り込まれそうな気がしたから・・・

 

 

 

 「それにしても金時ゲッターロボ見てもあんまり驚かなかったよな。」

 

 「ん?まぁ俺も大蜘蛛退治の時に大具足として大型絡繰人形を持っててな。ちょうどこのゲッターロボの2倍くらいの大きさのに乗ってたんだよ。ま、それも振動が激しすぎて乗れるもんが限られてたが」

 

  「マジで?!まさかこの世界の平安がスーパーロボット大戦だったとは・・・」

 

「だがそれでもこいつよりかはマシだったと思うぜ?」

 

 FGO世界の過去に興味を惹かれながらパソコンのエネルギー発生率の記録を読み返していく。

 

  「そういや旦那。今こいつにしてるのって単なるメンテじゃねぇよな?」

 

  「ん?わかるの?」

 

  金時の思わぬ一言につい画面から目を離す。

 

 「だってよ、さっきジャガー号に取り付けてたのって学習マシンだろ?そんなもんなくてもライダーに任せりゃ乗れるのにって思ってよ。」

 

 

「あー、なるほど。それで・・・」

 

そう、今行っているのは単なるメンテではない。幽霊以上英霊未満の自分は霊基再臨を行うことが出来ない。しかしこれから立ち塞がる多くの脅威について考えるとただのゲッターロボでは対処しきれないだろう。

 

 

「これは簡単にいえばゲッターを成長、いや。進化させるための装置だよ。」

 

「進化?」

 

 そこで思いついたのが漫画、ゲッターロボ デボリューションにおいて記載されていたゲッターの人工進化だ。あれはプロトゲッター の電子頭脳にシミュレーションを何万何億と繰り返させ人工的な進化を促すという案だ。

しかしこれには問題がある。シミュレーションをするにあたってのコンピューターが存在しないことだ。だからといって科学者サーヴァントたちに任せる余裕もない。彼らは彼らで忙しいのだ。

 

 「この学習マシンで俺の脳の情報を送信してゲッターのメモリに蓄積する。少しずつ情報をつみかさねたらゲッタードラゴンくらいにはなるんじゃないかと思ってな」

 

 「でもこいつはマシーンなんだろ?そんなことできんのか?」

 

 

  そう。普通なら出来ない。ダヴィンチも調べたがゲッターは兵器こそ凄まじい力があるが見ただけならゲッター はただの巨大ロボットである。しかしゲッターの重要なのはその体ではない。

 

 

  「そう、普通なら出来ない。しかしゲッターは、ゲッター線はそれだけじゃない」

 

  

  ーーーー傀儡に魂を入れてはならないーーーー 

 

 とある世界のゲッター パイロットが敵に言われた言葉である。

 ただのエネルギーを人型の入れ物に入れたことで何かが生まれた。

ゲッター線の設定は未だ作中において作者も明言していない。

 

 

しかし一つわかっていることは、ただのエネルギーだったものがいずれ宇宙を飲み込むということだ。

 

 

  「だが、それでもまだ足りないと感じるんだ。」

 

そう言ってケンはゲッターロボ の顔を見上げる。

 この世界を甘く見てはいけない。いくらゲッターロボといってもこの世界で完全に立ち打ち出来ると考えるほど楽観視していない。

 

 

(アトランティス・・・前の世界の第5ロストベルト。頼光さんの記憶からしてあれも混ざっている可能性があるわけか・・・だとしたらゲッタードラゴンでも間違いなく足りない。)

 

 

 自身の記憶の存在・・・あの龍だけでも危険なのだ。その上にクリプターやそこを修めている存在までいる。

 

 (つよくならなきゃな。俺もお前も・・・せめて自分が納得できるくらい)

 

 

 

 心中を外に吐き出さぬままケンは金時と共に格納庫から離れていった。

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケンのこの考えは決して無駄ではなかった。

アトランティスに訪れたカルデアはやがてそれを身をもって知る事になる。しかしそれを語るのはいまこの場ではない。

 

 

 

 

 

 

 暗闇に光が灯る。

 

 その光はゲッターロボから発しており辺りを明るく照らす。しかしそれを目にするものはいない。

 

だがもし誰かがその光景を見れば必ず異様に思うだろう。

 

なぜならーーー

 

 

 

 

 

 

 

その光景はまるでゲッター からオーロラが出ているかのようであったのだから・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

     

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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番外編 宇宙の果てより

暗闇に強大な閃光が瞬く。ーーー

 

そしてそれは決して一つや二つではなく、果ての果てまで続いている。ーーー

 

そんな無限に瞬く光の中の一つ。それが一際大きな光を放ちーーー

 

 

 

 

 

 

 

宇宙を震撼させた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あたりに凄まじいまでの爆煙を撒き散らし巨神はその体を崩していく。

爆煙の粒子・・・否、その細胞の一つ一つは、よく見れば無惨にバラバラにされた人型だということがわかる。

ただの人型ではない。全長50mはあろうかという無数の人型だ。それらが数え切れないほどの数を撒き散らされたことで、遥か彼方からはまるで粒子のように見えたのだ。

 

ではそれらを元とする巨神ーーーーーそれもまた凄まじい存在であった。

そこらの惑星や恒星なども何もしないほどの大きさを誇る、異形の巨神であった。

 

 

 

 

 

だがそんなかつては凄まじい姿をしていたであろう巨神は今や見る影もなく、両腕は失われ、足首も破壊され、全身から爆煙を放ち続けている。

 

 

 

だが、それでも抵抗を続けるのであろうその巨神は、首を軋ませながら眼前の敵を睨もうと動かしーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、その体を真っ二つにされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬の静寂の後、巨神ーーーーーースーパーロボット「ゲッターエンペラー」

は凄まじい閃光と共に吹き飛んだ。

 

宇宙を恐怖へと震わせていた破壊神は、仏の姿をした何かによってその幕を閉じた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「怯むなーッ!!!何としてもこの絶対防衛戦を死守するのだ!!」

 

 

 

 

ゲッターエンペラーを真っ二つにした存在、創造神ブラフマーは無量大数のインベーダーの群れへとその杖を向けた。

瞬間、先程破壊されたはずのゲッター エンペラーから無数のゲッター戦艦が溢れ出し周りのインベーダーを消し去ってゆく。その様子に苛立ちながらもブラフマーは眼前に無限に広がる緑色の銀河の群れへと視線を飛ばす。

 

 

 

緑の銀河の群れーーーーーーそれは決して星々の集まりなどではない。

そこにある一つ一つの輝き全てが、数多の「ゲッターエンペラーの群れ」によって構成された存在であった。

 

 

「ブラフマー!!一度引くのだ!そして天帝領3019乗へと向かうのだ!」

 

「⁈馬鹿な!四天王がやられたというのか?!あそこにはエンペラーは一騎もいなかったはずだ!!」

 

「想定以上に奴らの進化が早すぎる!そしてあの領域は宇宙の外への近道、決して奴らに渡してはならん!」

 

 

緑色の光の雨が彼らに降り注ぐ。緑の雨は彼らの体を焼いてゆくが彼らの体はそれ以上の速さで再生することでことなきを得ている。

 

「シャカ!まずいぞ!ユグドラシル方面が完全に落ちた!このままでは空いた穴から奴らは外へと抜け出してしまう!」

 

「ラグース!」

 

「我はこのままユグドラシルの穴を埋める!その間我が領域の守go」

 

次の瞬間、女性に無数の腕を生やした神ラグースは最後まで言い切ることなく上半身を融解された。

 

 

「⁈」

 

シャカとブラフマーが同時にその先へ視線を向ける。

 

ゲッタービームが

 

ミサイルが

 

ドリルが

 

空間を埋め尽くすほどの攻撃が。

 

彼ら神々の軍団に襲いかかる。

それらの攻撃一つ一つが星を、銀河を破壊する程の威力を誇る。対処しようにもバリアは破壊され、防御には意味がなく、避ける隙間などありはしない。その攻撃は神々や使徒、インベーダーの軍団を蹴散らしてゆく。

 

 

「!ま、まずい!?奴らついに始める気だ!」

 

 

その弾幕の隙間からブラフマーは見た。

数多のゲッターエンペラー2が折り重なりなにかを形成してゆくのを。神々の瞳からはその全容を把握することは叶わない。しかしそれらを知性あるものが認識するならばこう答えるだろう。

 

 

あれは骨だと。

骨格であると。

 

骨からドリルが突き出し飛蝗のようなエンペラー戦艦群へと次々突き刺さってゆく。やがてそれらは血管、内臓、筋肉を構成し一つの龍へと変わってゆく。

 

 

「止めろおおおおお!貴様らの育った宇宙が吹き飛ぶのだぞおおおおお!?」

 

 

もはやインベーダーも使徒もそのほとんどが吹き飛んだ空間の中でシャカが叫ぶ。緑の銀河群はそんなことなどお構いなしに次々とエンペラー2で構成された龍の骨格へと吸い込まれてゆく。

 

 

かつて、彼らの故郷地球にて、数え切れないほど無数の量産型ゲッターロボGが全て合体することで真ドラゴンと呼ばれる存在が誕生したことがある。最終形態になるまでゲッター線を貯めこみながら機械の繭のような状態から第1形態、第2形態と成長を続け最終形態になる際には地球上の全てのゲッター線を吸収し、最終進化。

絶大な力を持つ全長6000メートルの超巨大ゲッターロボとしてその姿を表した。

 

これより行われるのはその再現だ。

数多の、銀河よりも巨大なゲッターエンペラー。しかしてそこに共通するのは素体にゲッタードラゴンが使われているということだ。

 

もはや逃げ場などどこにもなく、それでも神々は宇宙を守ろうとエンペラーに突撃するしかない。

 

銀河が重なり

重なり

重なり重なり

 

重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なり重なりーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マルチバースの無数の宇宙が存在する空間にて、一つの宇宙をたまごの殻のように打ち砕きその存在は生まれた。

例えるのならば、それはまるで神話に登場するモンスターラミアのように人型の下半身が蛇のような存在。又は羽のない蜻蛉の様な異形。しかしその上半身に腕はなく、まるで剣山のように莫大な量のゲッター線収集装置を生やしている。

蛇の下半身には無数のゲッターロボの顔を生やしその口にあたるところから無数のゲッターロボを吐き出し続ける。

生まれた存在ーーーーーー真ゲッターエンペラーはやがて視線をそれに向けると一度身をブルリと揺らし蜻蛉の様な羽・・・ゲッターウイングを展開してその存在に向けて飛翔した。

 

 

 

 

 

 

(あぁ、失敗だ。失敗だ。我々神々は失敗した。)

 

(なにが兵器だ。なにが対抗する存在だ。あれはもはや我々の手の内に収まる存在ではなくなった)

 

 

 

銀河のかけらの中で頭だけとなったブラフマーはその存在に視線を向ける。

 

 

(もうこうなっては遅い!奴らにはもはや敵など存在しない!対抗するためのビッグバンももはや奴には餌を与えるのと変わらん!!)

 

 

 

 

視線の先ーーーーーーーー無数の宇宙が連なりとなった空間の先に、それはあった。

そしてそれに真ゲッターエンペラーが、否、その群れがまるで卵子に向かう精子の如く突き刺さり身体の一部と化してゆく。

 

 

 

(何でもいい!どんな存在でも構わない!どうか奴らを、ゲッター をーーーーー

 

 

祈る先など存在するわけもないのにブラフマーは願った。

その視線の先にあったのはーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

時天空を止めてくれ!!!)

 

強大な機械の空間であった。

 

 

 

 

 

 

 

「そう、これまでゲッター線が数多の並行世界に向かったのはゲッターエンペラーを出現させるため。そう、無限の世界から出現するであろうゲッターエンペラーは真ドラゴンのように合体するために生まれるのだ。いずれ全てのゲッターエンペラーは一つとなり真の敵と出会う。」

 

 「その敵の正体は・・・・・」

 

 

 

 

 

  「正体は・・・・・」

 

 

 

 

 

 

  「だー、ダメだ。全く続きが思いつかない。」

 

そう言って机から顔を上げ吐き出すように呟く。

机の上にはまだ誰も見たことのない漫画のラフスケッチがあるがそのほとんどが空白のまま。

 

 

現在ケンはレクリエーションルームにて漫画を描いていた。

それは原作ゲッターロボサーガの続き、ゲッターアーク4巻である。全ての物語を書き終える前に亡くなった彼を宿している〇〇は、新たな進化のためのデータ作りとして筆をとった。

レクリエーションルームにはケンの他にジャンヌオルタ、刑部姫、黒髭、シェイクスピア、アンデルセンが額に鉢巻きを巻いて創作活動に勤しんでいる。

 

 「書き込み・・・書き込み・・・うぅ、締め切り・・・」

 

 「諦めてはそこで試合終了でござる刑部氏・・・もう3か月もないですからな」

 

「二人とも、そろそろ一旦ストップしよう?君たちのタブレット画面もうすり減ってペラペラだぞ・・・」

 

 

「イシカワ氏も手伝ってぇ。その続きには締め切りないでしょ?」

 

「いいけど、へんな癖とかついちゃわないかな・・・」

 

 ケンは一度資料をまとめると黒髭のタブレットをのぞきこむ。その画面には未だ描きかけのキャラクターたちが映っておりページをスライドすると同じような原稿が数枚分入っていた。

 

 

「うーん、なぁ黒髭?もっと背景の多い原稿ない?女の子多いけど俺おっぱいのついたハンサムしか書いたことない・・・」

 

「イシカワ氏ぃ・・・現代の画風に合わせるのも漫画家として大切でごじゃるぞ?それに昔から言うでしょう?ロボとエロは二つに一つって。」

 

 「初耳なんだけど・・・。いや、でもあの人もお色気シーンとか大切にしてたし・・・」

 

「とりあえず下書きなぞって背景描いてもらえるだけで充分ですしお願い致すぞ」

 

「はいよっと・・・。」

 

 

エキタブと繋ぎ早速描いてみる。原稿用紙でしか描いたことのない自分にとってその感覚は新鮮であり、同時に慣れない作業に四苦八苦するのだった。

 

 

「・・・・ん?」

 

 

「イシカワ氏どうしたの?」

 

 

「いや、今何か聞こえたような・・・」

 

 

 

 

 

 

 




初夢が現実にならないように投稿しました。
真ゲッターエンペラーのモチーフには蜻蛉を採用しています。というのもゲッター エンペラーのゲットマシンを見た時ヤゴや蟻地獄の様なデザインだったため採用しました。
それらがまるで蜻蛉や蜻蛉の群れの様に群れをなしてると想像してもらえれば。


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番外編 バレンタインイベント

チョコもらえなかった鬱憤をここに晴らします。


 

 

「おうマスター。ハッピーバレンタイン」

 

廊下を歩いているとリツカを見かけた為挨拶をする。

現在カルデアは空前のバレンタインブーム。あらゆるサーヴァントが日頃の感謝や好意を伝えようとチョコレートを扱い、現在施設内全てが甘ったるい匂いに包まれている。

バレンタインのイベントはかつての世界でも経験があり、その際は男女関係なく何かしらを渡していたことを思い出した。

 

「あ、ケンさん。なんというかすごいねバレンタイン。俺こんなにもらったの生まれて初めてだよ。」

 

「・・・だろうなぁ。その手やつ、全部チョコなんだろう?」

 

そう言って指差す先、腕の中には凄まじい量の箱箱箱・・・。

おそらくそこいらの芸能人ですらもらったことはないであろう質と量のチョコレートの山。

 

「糖尿病になりそうだな・・・。いや、一気に食べると毒扱いになって無力化されるか・・・?」

 

「え?!そうなの?まさか毒耐性にそんな力が・・・」

 

「多分だけどな。ただできる限り一気に食べてしまわないと多分何日もかけて食べると食べた分を消し去るから逆に飢えるかもしれん。」

 

「ええぇ、食べてるのに無くなっていくって・・・」

 

「こう言っちゃなんだが、バレンタインは何処かで歯止めしねーと物資ももったいねーし何より作ってくれたサーヴァントにも失礼だよなぁ・・・」

 

そういうとケンは自分の手の中のチョコレートを見る。

先程もらった鍵型と箱型のチョコレート。生チョコタルトに柏餅。何気にこれだけのチョコレートをもらったのもケンにとって初めてである。

 

(多分増えるよな、まだまだ・・・)

 

増えに増えたカルデアのサーヴァントたち。そんな彼ら彼女らとも深い絆を結んできたリツカ。

心優しい目の前の少年は作ってきたチョコレートやご馳走を全て食べ尽くすだろう。だがそれでいいのだろうか?せっかく作ってきた物を毒として消してしまう。

捨てるよりは遥かにマシとはいえ思いのこもった贈り物だ。糧となる方がいいに決まっている。

だがこれだけの量を一人で消費しよう物なら絶対ナイチンゲールやアスクレピオスの世話となることだろう。

 

「どうしよう・・・。何日もかかるとダメなものもあるしなぁ・・・」

 

そう目の前でぼやくリツカにケンは少し考え・・・・

 

(あ、あれに頼ってみるか。)

 

ふと頭に浮かんだアイデアを伝えることにした。

 

 

「マスター、ちょっと俺の部屋寄ってくんね?」

 

「ケンさんの部屋?なんで?」

 

「いやな、ちょっといい考えが浮かんでな。多分今の君にはピッタリだと思うぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あの、先輩!日頃の感謝を込めて作りました!ぜひ受け取ってください!」

 

 

そう言って手に持ったチョコレートケーキを目の前の彼に差し出した。いつもより少し物静かな彼の姿に少し違和感を覚えながらも受け取ってもらえたとホッとする。

彼女・・・マシュキリエライトはふと手から離れたケーキに思いを馳せながらゆっくりと目の前の少年を見る。手に持ったチョコレートケーキをじっと見つめる彼はやがてマシュに向き直ると口を開いた。

 

「・・・このチョコレート、隠し味にスパイスを少し入れてるんだね。」

 

「え!は、はい。正解です・・・。」

 

「うん、いい香りだ。しかもレイシフトで採取された、野生の力強くしっかりとしたスパイスの香りだ。でも決して主張しすぎない。チョコレートの香りをより良いものにしてる・・・」

 

「に、匂いだけでわかったのですか・・・!凄いです!」

 

 

驚愕と共にわかってもらえたことにうれしさを隠しきれないマシュ。香りだけでここまでわかってもらえるとは。

あらゆる環境下においてやっとの思いで見つけた野生のスパイスたち。それらを少しずつ味わいどのように組み合わせることで味が引き立つのかを調べてようやく到達したマシュオリジナルのチョコレートだ。頑張って試作とレイシフトを繰り返した甲斐があった。

 

「作るのとても大変だったんだね・・・。とても嬉しいよ、マシュ」

 

 「せ、先輩・・・!」

 

思わず飛び上がって喜びそうになるのを耐える。

その様子にリツカは静かに微笑むと手を差し伸べて言う。

 

「マシュ、よければ一緒に食べないか?いいコーヒーもあるんだ・・・」

 

「はい!マシュキリエライト、お供させていただきます!」

 

差し出された手をとってマシュとリツカはマイルームへと歩いていく。そしてそんなリツカの瞳、嬉しそうなマシュは気づかなかったがその瞳には緑の螺旋が渦巻いていた。

 

そしてマイルームの机の上、その上には謎の光を放つ液体を半分ほど残した瓶が置かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分の部屋の天井を見ながらふぅと一息つきケンは口を開いた。

 

「いや〜・・・・本当に効くとはな〜・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飲めるゲッター線」汗

 

 

 

そう呟くと額に少し汗を流す。

ケンがリツカに与えた物、それは瓶に入ったフルーツと緑の液体で満たされた何かだった。

その名をゲッター線フルーツポンチ。またの名を「飲めるゲッター 線」である。かつての世界ではとあるカフェとのコラボで出たそれは、瓶に詰められたメロンソーダのフルーツポンチとして発売された。透明な瓶に詰められた緑の炭酸の中を色とりどりのフルーツが浮かぶ。

かつての世界と違うのは、それに使われたソーダに「本当にゲッター線」が含まれていたことである。

 

 

 

「・・・バレンタインだからな〜。多分イベントに参加させるための口実だとは思うが・・・」

 

 

遡ること10日前、ゲッターロボのメンテナンスをして一汗かいたケンは整備室の冷蔵庫からソーダを取り出して飲もうとコップに注いだところ、何故か緑の光を放つ液体と化していたのだ。

 

 

『なんで?!』

 

 

しかし飲んでみると普通のメロンソーダだしダヴィンチちゃんに調べてもらっても人体に影響はないと言う。

ただその際いやにニコニコして僅かに目が光っていたことに目を逸らしながらその液体を部屋に持って帰った。何かいやな予感がしたと言うのもあるが。

 

 

『え、なにこれ・・・・・』

 

『飲めるゲッター線』

 

『飲めるゲッター線⁈』

 

フルーツポンチに仕立てたそれを目の前にしたリツカは炭酸の泡を吐き出させながら空中に緑の粒子を放ち輝く液体に恐れ慄く。

 

 

『た、多分だけど君のサーヴァントは全員何かしらプレゼントをやるだろう?俺は挨拶ぐらいと考えてたんだけど何故かイチゴだーナタデココだーパインだーと材料からどんどん集まってきて・・・』

 

『ち、ちょっとこれ大丈夫ですか・・・?』

 

『ダヴィンチちゃん曰く体に問題はないらしい。俺も飲んだし・・・。もしかしたら俺の中の先生が用意したのかもって・・・このタイミングだからだけど、多分・・・・・』

 

 

恐る恐る瓶に手をつけストローに口をつける。

マジで飲むのかとゆっくりとストローを登るゲッター線に目を向けながら戦慄するケン。そしてその液体がリツカの口に含まれた瞬間ーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか・・・・・。そうだったのかって呟いてそのまま行っちまったん

だよなぁ・・・・」

 

 

コーヒーを飲みながら僅かにチョコレートタルトを口に含む。生チョコのしっとり柔らかな食感と優しい甘味、サクリと心地よい音と香ばしいタルト生地がお互いを引き立て素晴らしい味わいを広げ、それらを温かいコーヒーが甘さの余韻を残しながらも口の中をスッキリさせる。

その繰り返しによってどんどんフォークを進ませた。

 

 

「うん、うまい。めっちゃ高そうなケーキ屋とかよりもうまい気がする。」

 

そうして先ほど起こったことから目を逸らす。

よく考えたらバレンタイン間近にこんなこと起こるくらいなんだから多分これが俺のチョコ渡しイベントなんだろうと無理やり納得する。

そうだ。きっとこれが俺のチョコ礼装なんだ。

だから大丈夫だよな。多分。

きっと。

メイビー。

 

 

 

 

「・・・あ、マイルームに残りと瓶置きっぱなしだった」

 

 

 

大変だ!茨木童子がマスターの部屋で倒れているぞ!

 

な?!口元がめっちゃ爛れてる?!一体なにが・・・

 

しっかりしろ!襲撃か?

 

瓶が割れてるだけで中身は・・・すこしものこっていない?

 

魔力反応はない。一体なにが起こったと言うのだ・・・

 

 

 

 

「・・・・・」

 

 

 

「明日、イビラギンに謝っとこう・・・・・」

 

 

 




星4礼装
「飲めるゲッター線」

イチゴ、ブルーベリー、ナタデココ、パインの浮いた豪華なフルーツポンチ
・・・


らしき物。人間が飲むとこの世の神秘を垣間見れ、体内に擬似的なゲッターエネルギー炉心のような形となりエネルギーの長期かつ溜め込みを行うことができるようになる。それ以外が飲むと口元が腫れ上がり全身に体の内側から画鋲が飛び出すかの如く痛みが走る。

リツカ「毎年一番最初に飲ませてもらってます。」


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