珈琲 (おたふみ)
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一話

予備校の帰り道。

ぼーっとして歩いていたら、道を間違えて薄暗い路地に入ってしまった。

ふと目に入ったコーヒーショップ。何か吸い込まれるように店の中へ。

 

 

「いらっしゃいませ」

「あ、ど、どうも」

「高校生とは、うちの店には珍しいお客さんだ。カウンターへどうぞ」

「は、はい」

 

コーヒーとタバコの匂いが漂う。

 

「難しい話をしてもわからんだろうから、ブレンドでいいかい?」

「じゃあ、それで」

 

素人でもわかる丁寧な作業でコーヒーを煎れるマスター。

 

「はい、ブレンドね」

「あ、ありがとうございます」

 

いつものように、砂糖とミルクを入れようとすると、マスターに止められる。

 

「まずは、ブラックで飲んでみてくれ。それで飲めないなら、砂糖とミルクを入れな」

「は、はぁ」

 

ブラックのコーヒーは苦手だが、口にふくんでみると…。

 

「うまい…」

「だろ。本当に美味いコーヒーはブラックで飲めるんだよ」

 

苦味と共にくる旨味。そしてほのかな酸味が口の中をすっきりとさせる。

 

「お兄さんも、ここのコーヒーの味がわかったかい」

奥に座る老紳士が語りかけてきた。

「はい。とても美味しいです」

「それはよかった。マスター、彼の代金は私の伝票につけてくれないかな?」

「そ、そんな!悪いですよ!」

「ここの味を知ってくれた同士だ。おごらせてくれないか」

「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて…」

 

しばらく三人で他愛もない話をして、その日は店を出た。

 

翌日、奉仕部の部室。

 

「ヒッキー、遅いね」

「そうね」

「私より先に教室出たのに」

 

そんな会話をしていると、部室の扉が開く

 

「う~す」

「ヒッキー、遅い!」

「そうよ。連絡ひとつ、まともに出来ないのかしら」

 

女性陣から非難の声があがる。

 

「悪かったよ。ちょっと寄り道してたんだよ」

「そう…。では、紅茶を淹れましょうか」

「わ~い、お茶の時間だ」

「悪い、俺は今日はパスだ」

 

すると、鞄から数本の缶コーヒーを出す。しかも、全部ブラック。

 

「ひ、比企谷君、どうしたの?」

「MAXコーヒーじゃない!しかも、ブラックだよ!ヒッキー、どうしちゃったの!?」

「いや、なんとなくだけど」

「『マッカンを飲まないなんて千葉県民じゃない』と言ってた貴方が…」

「『マッカン飲まないと死んじゃう』て言ってたヒッキーが…」

「そこまで言ってないからね。言ってないよね?」

 

文庫本を読みながら、一本目の缶コーヒーを口にする…。

 

「ん…。これはこんなモンか…」

「ヒッキー、苦くないの?」

「まぁ苦いな」

「どうしたのかしら?貴方の人生に甘いことなんてないはずよ」

「まぁな。だからマッカンだったんだけどな。なんとなく、のんでみたかったんだよ」

「そう」

 

小説を読みながら、別の缶コーヒーを口にする。

 

「こっちはダメだな」

「コーヒー飲みながら、独り言を言わないでくれないからしら。気持ち悪い」

「悪かったな」

 

そんなやりとりをしながら、部活の時間は過ぎてゆく…。

 

 



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二話

数日後、予備校の帰りに、コーヒーショップに寄る。

 

「いらっしゃいませ」

「また、来ました…」

「嬉しいね。ブレンドでいいかい?」

「はい。お願いします」

 

マスターの煎れる所作をじっと見つめる。

 

「どうしたんだい?そんなに見て」

「家でやってみようかと…」

「ほう…。じゃあ、よく見ていきな」

「ありがとうございます」

 

「はい、お待たせ」

「いただきます。…やっぱり、美味いです」

「砂糖とミルク入れて飲むコーヒーも否定はしないが、ブラックの美味さを知ってもらいたいからな」

「俺はMAXコーヒー命だったんですが…」

「はははっ!あれはあれでいいんだよ。あれも違う意味で美味いと思うぞ。俺も千葉県民だ、たまに飲むぞ」

 

その日はマスターと千葉のソウルドリンクについて熱く語った…。

 

数日後の奉仕部。

 

「う~す」

「やっはろー!ゆきのん!」

「こんにちは、由比ヶ浜さん。それと…。…。…。こんにちは」

「おい!俺の名前を忘れてるじゃねぇか!」

「そんなことないわよ。えっと、ひ、ひ、ひき…。ひき…君」

「おい!最後濁しただろ」

「冗談よ」

「あはは。ヒッキーとゆきのんは、仲がいいね」

「そんなことねぇ」

「そんなことないわ」

 

しっかりとハモった後、いつもの席に座る。

 

「比企谷君、今日は紅茶を飲むのかしら?」

「すまん、湯飲みだけ使う」

「そう」

 

すると、鞄から保温の水筒を取り出した。

 

「ヒッキー、それなに?」

「あぁ、中身はコーヒーだ」

 

コーヒーを湯飲みに注ぎ口にする。

 

「やっぱり酸味が出ちゃうなぁ…」

「ひ、比企谷君」

「あ~、すまん。また独り言を言ってたな」

「い、いえ…。その…、それは貴方が煎れたのかしら?」

「あぁ、俺が家で煎れて持ってきた」

「その…、少し頂いてもいいかしら?」

「かまわねぇが、美味くないぞ。時間経ってるから、酸味が強くなってるし」

「それでもかまわないわ」

「じゃあ、少しだけ…」

「ひ、ヒッキー!私にも」

 

二人のカップにコーヒーを注ぐ。そして、二人が口にすると…。

 

「美味しいわ」

「うん!私でも飲める!」

「そうか?まだまだだと思うんだがな」

「そんなことないわ。普段、紅茶しか飲まない私が美味しいと思うのだもの」

「そうだよ、ヒッキー!」

「そ、そうか。あ、ありがとな。その…、なんだ…。雪ノ下が淹れる紅茶も美味いぞ」

「そ、そう。あ、ありがとう…」

「むぅ…。じゃあ、私はクッキー焼いてくる」

「やめてください。死んでしまいます」

「ヒッキー!ヒドイ!キモイ!」

「キモイ関係ないからね」

「由比ヶ浜さんは、私と一緒に作りましょう」

「ゆきのん、大好き!」

「由比ヶ浜さん、暑いわ」

 

奉仕部は、しばらくコーヒー談義と紅茶談義をして、その日の活動を終了した。

 

 

 



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三話

今日も予備校帰りにコーヒーショップに寄っている。

いつものように、マスターの所作をガン見している。

 

「前よりは上手く煎れられるようになったかい?」

「亀の歩みぐらいには…」

「はははっ!そんなに簡単に出来ても困るからな!俺が商売出来なくなっちまう」

「ですね」

 

そんな会話をしていると、カウンターの端から男性が話かけてくる。歳は八幡の父親と同じぐらいだろうか。

 

「彼が前に言ってた有望株かい?」

「あぁ、将来は美味いコーヒーを煎れられるようになるぞ」

「やっぱり、男の子が出来るまで頑張ってみるべきだったかな。はははっ!」

「は、はぁ…」

「ウチは俺以外は紅茶党でな、肩身が狭いんだよ」

「はぁ…」

「しかも、下の娘は家に寄り付きもしない…。嫌われてるのかなぁ…」

「俺でよければ、ここで話を聞くぐらいならしますよ」

「そうか!いやぁ、この店に通う楽しみが増えたな」

「俺もコミュニケーションが下手なんで、練習相手になってもらえれば、助かります」

「おぉ!Win-Winの関係だな」

「はい」

「早く飲まねぇと冷めちまうぞ」

 

マスターに促され、コーヒーをすすりながら会話に花を咲かせた。

 

翌日の放課後の教室。荷物をまとめて、部活に向かおうとすると、ひとりの女子生徒に話しかけられた。

 

「ちょっとアンタ」

「あ、え~と、川…川…、川畑さん?」

「川崎だけど、殴るよ」

「やめてください。死んでしまいます」

「まったく…」

「で、なんの用だ?」

「アンタ、予備校の後どこへ行ってるんだい?」

「あぁ、アレだ。息抜き」

「タバコの臭いがするって、小町が心配してたらしい」

「そうか、小町に心配を…。まて。今『らしい』と言ったか?」

「言ったよ」

「それは、誰かから聞いたということだよな?」

「大志から聞いた」

「あの小僧…。潰す」

「その前に、私がアンタを潰すよ」

「冗談です。ごめんなさい」

「まったく。私が言うのもナンだけど、あんま心配かけるなよ」

「わかったよ」

 

川崎沙希とそんな会話をしてから、部室に向かう。

 

「う~す」

「ヒッキー、サキサキとなに話してたの?」

「小町に大志が近づいているらしい…。あの小僧め」

「大概にしなさい、シスコン谷君」

「ちげぇよ」

「あはは」

「今日は水筒持っているのかしら?」

「いや、紅茶貰ってもいいか?」

「かまわないわよ」

 

丁寧な所作で紅茶を淹れる姿にマスターを重ねて見つめてしまう。

しかし、容姿端麗な雪ノ下雪乃がやっていると様になる。

 

しばらく見ていると、雪ノ下が赤い顔をしながら目線を泳がせている。

 

「ひ、比企谷君。そんなに見つめられると…」

「うわぁ!すまん!キモかったな」

「あ、いや、あの、嫌という訳では…」

「むぅ…」

「なんだ由比ヶ浜。リスのマネか?」

「違うし!私も紅茶淹れる!」

「許してください。死にたくありません」

「飲んでも死なないし!」

「由比ヶ浜さん、私も遠慮するわ」

「ゆきのんもヒドイ!」

 

そんなことがあったが、つつがなく下校時刻になる。

 

「ゆきのん、一緒に帰ろう」

「ええ。では、鍵を返しに行ってくるわ」

 

ふと、昨日の店での会話を思い出す

「あ~、雪ノ下」

「なにかしら?」

「父親というのは娘と会話をしたいらしいぞ」

「どういうことかしら?」

「まぁ、あれだ。娘と会話したいという人の話をたまたま聞いただけだ」

「そう…」

「ウチでもパパと喧嘩して口きかないと、寂しそうにしてるよ」

「ウチの親父も小町に無視されると、この世の終わりみたいな顔してたな」

「そういうものなのね。考えてみるわ」

「そうしてくれ」

 

人の家のことまで気にするなんて、どうしたんだろと考えながら帰路についた。



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四話

土日の休みを挟んで月曜日。ブルーマンデーにブルーマウンテン…。予備校の後に寄るつもりだから、マスターにどんな特徴がある豆なのか聞いてみようと思いながら、部室に入る。

 

「う~す」

「ヒッキー!やっはろー!」

「こんにちは、比企谷君」

 

由比ヶ浜が口をモゴモゴ動かしている。

「由比ヶ浜、なに食ってんだ?」

「ゆきのんが焼いたクッキーだよ」

「食べながらしゃべるなよ」

「由比ヶ浜さん、お行儀が悪いわよ」

「えへへ、ごめんね」

「比企谷君、紅茶は飲むのかしら?」

「すまん。予備校行くから、顔出しただけなんだ」

「そう。では、こ、これを、貰ってくれないかしら…」

 

それは、小袋に入ったクッキーだった。

 

「週末に実家へ行って、父と話をしてきたの…。思いの外、充実した会話が出来たので、そのお礼…」

「それは、良かったんだが、貰っていいのか?」

「ええ」

「雪ノ下のクッキーは美味いからな。ありがたく、頂くよ」

「か、感謝しながら食べなさい」

 

ツンデレな雪ノ下とリスのようにクッキーを頬張る由比ヶ浜に別れを告げて予備校に向かった。

 

予備校が終わり、小町にメールをしてからコーヒーショップに立ち寄る。

 

いつも座る席の隣に中年の男性が座っていた。

 

「すいません。隣、いいですか?」

「そこが君の定位置かい?」

「はい。マスターの手元が良く見えるので」

「男同士で横並びで色気がなくて、すまんね」

「いえいえ。後から来たのに、すいません。それに…」

「それに?」

「ここで、いろんな方と話をするのも楽しみなので」

「はい、ブレンドお待たせ。初めて来た時は緊張した顔してたが、最近は表情が柔らかくなったな」

「そうかもしれませんね。挙動不審でしたしね」

 

三人で談笑し、マスターに聞いたブルーマウンテンの特徴をメモしようとカバンを開けると雪ノ下に貰ったクッキーが目に入った。

 

「あの、貰い物なんですが、クッキー食べませんか?」

「ウチには菓子がねぇからな」

「頂いてもいいのかい?見たところ、手作りのようだけど…」

「はい。部活仲間が作ったものです。美味しいですよ」

「彼女じゃないの?」

「そ、そんな…ち、違いますよ」

「満更ではなさそうだね」

 

「これは…。店で出したいぐらいだな」

「ですよね。料理もプロ級なんですよ」

「はぁぁぁ…」

「ど、どうしたんですか」

「ウチの娘は、料理全般的に壊滅的でね…」

「ああ…。いますね、そういうコ」

「その腕前でクッキー作ったりするから…」

「あぁぁ…」

「どうしたらいいのやら…」

「こんなこと言うのもおこがましいのですが…」

「言ってみて」

「まず、作ろうとする姿勢と努力を誉めてあげてください」

「ふむ」

「センスがない、作れないって諦めてしまうのは簡単です。諦めないで努力してるって、すごいことですよ」

「確かにね」

「それと、一緒に作ってみたらどうですか?」

「クッキー作りを?」

「はい。俺も妹と料理しますけど、楽しいですよ」

「なるほど…。いいかもしれないね」

 

雪ノ下のクッキーを食べながら、料理やお菓子作りの話で盛り上がった。

 

数日後の奉仕部では…。

 

「ねぇねぇ、ゆきのん」

「なにかしら?」

「ゆきのんのクッキーのレシピ教えて」

「ま、まさか、由比ヶ浜さん…」

「パパがね、一緒にクッキー作ろうって言ってたんだ。だから、パパとママと三人で作るんだ」

「それはいいことね。…私も父とやってみようかしら…」

「う~す」

「ヒッキー、遅い!」

「俺は日直だ。仕方ないだろ」

「え?そうだっけ?」

「はいはい。どうせ認識されてませんよ」

「こんにちは、比企谷君。では、お茶にしましょうか」

「俺にも貰えるか?」

「わかったわ」

「わ~い、お茶の時間だ♪」

「比企谷君」

「なんだ?」

「その…。比企谷君が煎れたコーヒーをまた飲んでみたいのだけど…」

「ヒッキー、私も!」

「わかったよ。また持ってくるよ」

「そ、そう…」

 

次はもっと上手く煎れようと思い、部活の時間は過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

閑話

 

比企谷のヤツ、予備校の帰りにどこ行ってるんだ?

 

比企谷の寄り道が気になって、後をつけてみる…。

暗い路地に入っていくので、心配になってきた…。

 

とある店に入っていくのが見えた。

喫茶店?ちょっと覗いてみよう…。

 

なんかオッサン達とコーヒー(?)飲みながら談笑してる。アイツあんな顔して笑ったりするんだ。新しい発見だ。

 

小町には心配ないって連絡しておこう…。



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五話

金曜の深夜。勉強も一段落して、気分転換にコーヒーを飲もうとリビングで、ドリップしていると…。

 

「ただいま」

「おかえり。遅くまで大変だな、親父」

「家のローンやお前らの学費…。まだまだ頑張らないとな」

「まったく、頭が下がるよ。メシは?」

「食ってきた。ん?コーヒーか?」

「あぁ。飲むか?」

「八幡の煎れたコーヒーか。頂こうかな」

「おう。待っててくれ」

「ほぅ。ペーパードリップか」

「最近、凝っててな」

「MAXコーヒー命だったお前が…。大人になったな」

「どんな基準だよ。ほい、どうぞ」

「どれどれ」

「どう?」

「うん、美味いな」

「だろ?」

「だが、まだまだだな」

「なんだよ、それ」

「でも、家庭でこのレベルのコーヒーが出るとは思わなかったがな」

「そうか…」

「悲観するな。上には上が居るんだよ。今度、美味いコーヒーの店、教えてやるよ」

「頼むよ、親父」

「じゃあ、俺は風呂入って、寝る。ご馳走さん」

「おう」

 

缶コーヒーやコーヒーメーカーで煎れるコーヒーよりは美味い…。でも、一時期より味が落ちた気がする…。何故だ?理由がわからない…。マスターに相談してみるか…。

 

翌日、勉強に区切りがついたので、マスターの元へ

 

「どう思いますか?」

「お前さん、慣れで煎れてないかい?」

「慣れ?」

「そうだ。ただやり方をなぞって煎れていないか?」

思い返せば、そうかもしれない。

「わかったつもりでやっていると、美味くはならない。お湯の温度、注ぐ量、蒸らし具合、おざなりにやってるんじゃないか」

「…そうかもしれません」

「完全に理解したと思って自惚れてたんじゃないのか」

「…そうかもしれません」

「人付き合いだって同じだ」

「え?」

「コーヒーのことを理解したつもりで上手く出来なかった。相手を理解したつもりで、わだかまりが出来た。そんなところだろ」

「…ぐうの音もでませんね」

「思い悩み、辛い思いをしてきたんだろ?お前さんの目はそういう目だ」

「…よく腐った目だと言われますよ」

「はははっ!腐った目で大いに結構!」

「なんですか、それ…」

「美味くないコーヒーなら、もう一度煎れ直せ、人付き合いなら尚更だ。会話をしろ、努力を惜しむな。お前さん自身がここで話していたことだろ」

 

そうだ。コミュニケーションの練習と言って話相手になった。努力や諦めない姿勢をすごいことだと言った。それをアイツらに出来ていたのか?解っていると勘違いして、会話をしてなかったんじらないか。相手のことを理解しようという努力を怠ったんじゃないか。→会話をしてなかったんじゃないか

「なにか思い当たるのかい?」

「…はい」

「そうか。それなら今度は美味いコーヒーが煎れられそうだな」

「はい。それをアイツらと飲みたいです。ありがとうございます」

 

明日は練習して、月曜日にアイツらに美味いコーヒーを煎れてやろう。





――――――――――――――
私の脳内でマスターはCV大塚明夫です(笑)


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六話

月曜日。授業が終わり放課後。

覚悟を持って挑む。

 

「ヒッキー!部活行こう!」

「おう」

「何?その荷物」

「部室に着いてからの、お楽しみだ」

「ふ~ん」

「興味ねぇのかよ」

 

由比ヶ浜と共に部室へ入る。

 

「やっはろー!」

「う~す」

「こんにちは、由比ヶ浜、比企谷君」

 

由比ヶ浜はいつもの席へ。八幡は二人の正面へ…。

 

「比企谷君…」

「ヒッキー?」

ひとつ深呼吸してから

「ここで、二人にコーヒーを煎れたいんだが、いいか?」

「え、ええ。いいわよ」

「うん」

「雪ノ下、お湯沸かしてもらえるか?」

「ええ」

 

コーヒーカップなどを準備しているのを由比ヶ浜がじっと見つめている。

「この荷物だったんだね」

「そうだ」

「このコーヒーカップはヒッキーの?」

「いや、借りてきた」

「この道具は?」

「この辺りのは自前だ」

「コーヒーメーカーでゴボゴボやってると思った」

「それでも適度に美味いコーヒーにはなるんだがな…。今は俺に出来る最高のコーヒーを煎れたいんだ…」

「ヒッキー…」

「比企谷君…」

 

ほどなくお湯が沸き丁寧にドリップしていく…。家で練習した行為を実践する。豆と対話をして、努力してきた成果…。

 

「…よし!出来たぞ」

 

雪ノ下と由比ヶ浜と、そして自分に…。

神妙な面持ちでコーヒーを口にする三人。

 

「ひ、比企谷君…」

「ヒッキー、これ…」

「うん。今までで最高の出来だ!」

 

三人の顔が綻ぶ。

意を決して、話し出す。

 

「こんな話をするのもなんだがな…」

 

二人が彼に向かう。

 

「俺は、コーヒーが上手く煎れられなかった」

「え?でも、こんなに美味しいよ」

「それには理由があるんだ」

 

「コーヒーの煎れ方に慣れていて、おざなりに煎れていたんだ。雪ノ下にも経験ないかな?流れで紅茶を淹れることが」

「ええ、あるわ。その時は確かに美味しくないわ」

「そんな時に、俺の師匠ともいうべき人に相談したんだ。そしたら、『理解したつもりでいたんだろ』ってな。そして、『人付き合いも同じだ』と」

「比企谷君…」

「ヒッキー…」

「俺は口下手で会話が下手だ。それでいて理解したつもりでいた。努力を惜しんだ。そして、あのザマだ。その人はこうも言った『もう一度煎れなおせ』と…」

 

「俺は、この空間が…、この三人の関係が好きだ。手離したくない。もう理解したつもりで動かない、努力も惜しまない。だから…、だから…、俺ともう一度やり直してくれないか!」

 

しばらくの静寂の後、雪ノ下が口を開く。

 

「比企谷君…。それは私にも当てはまるのよ」

「雪ノ下…」

「私は父のことを、まったく理解してなかったわ。家族なのにね」

「ゆきのん…」

「私は比企谷君と申し入れを受け入れるわ」

「ありがとう、雪ノ下」

「私も…。私も一人じゃ出来ないけど、三人なら…。この三人なら出来ると思う」

「ありがとう、由比ヶ浜」

「ふふっ。これで一歩前に進めたわね」

「そうだな」

「比企谷君、これだけは約束して」

「ん?なんだ」

「自己犠牲で問題を解決するのはやめて。その行為で心を痛める人が居る…。私や由比ヶ浜さんは、それを見るのが辛いわ。だから…」

「そうだよ、ヒッキー」

「わかったよ。でも、それは雪ノ下もだぞ。潰れるまで一人で抱えこむな」

「そうだよ、ゆきのん」

「わかったわ」

「それに、由比ヶ浜。お前は思慮深くなれ」

「しりょぶかく?」

「すまん、難しかったな」

「難しくないし!えっと…、あれでしょ?あれ」

「由比ヶ浜さんは、もっと考えてから発言・行動するようにしましょう」

「ヒッキー、最初からそう言ってよ」

「いや、そういう意味だからね」

 

ふりだしに戻ったのか、やっとスタートラインに立てたのか、それともリセットなのか…。

 

とても、清々しい顔でコーヒーを飲む三人…。

 

「ヒッキーの師匠に会ってみたい」

「そうね。是非、その人が煎れたコーヒーを飲んでみたいわ」

「あぁ、三人で行こうぜ。俺の比じゃないくらい、美味いぞ」

 

 




―――――――――――――――――


次は、話に絡んでこない人です(笑)


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閑話

一色いろはの想い

 

奉仕部に遊びに来たら、凄い場面に遭遇してしまった。思わず聞き耳を立ててしまったけど…。

 

やっぱり、あの三人の間に入るの無理なのかなぁ…。少しギクシャクしてるように見えた時もあったけど、あの絆は羨ましい。私もあの中に入れたらなぁ…。敵わないなぁ…。

 

でも、恋愛は別!先輩を諦めた訳じゃない!お二人には負けません!

 

先輩が煎れたコーヒー、飲んでみたいなぁ。今度、おねだりしてみようかな♪

 

 

――――――――――――――――――――

 

川崎沙希の心配

 

小町には心配ないって連絡したけど、どんな店なんだろう。

勇気を出して、入ってみよう。

 

「いらっしゃい。若いお嬢さんとは、珍しいな」

「…どうも」

 

渋いおじさん?おじさま?とにかく、渋くて格好いいマスターだ。

 

「何にしますか?」

「えっと…」

「特に決まってないなら、ブレンドが無難だ。それに、自信もある」

 

何そのニヤリとした顔。年上好きの娘がみたら、即落ちしそう。

 

「じゃ、じゃあ、それで」

 

素人の私にもわかる…。ものすごく丁寧に…、繊細に…。不味いはずがない。

 

「お待たせ」

「あ、ありがとう…ございます…」

「初めて来た時のアイツみたいだな」

「たぶん、私のクラスメイトです」

「そうか。アイツと仲良くしてやってくれ」

「え?」

「アイツは、たぶん辛い思いをしてきたんだろうな。そうじゃなきゃ、あの歳であんな目にはならない」

「…はい。優しいのに周りに気づいてもらえなくて、人助けをする為に自分が傷ついて、自分に向けられる行為の裏を考えて動けなくなって…。たぶん、たくさん裏切られたりしたんだと思います」

「嬢ちゃんは、アイツのことよく見てるんだな」

「あっ、いや…、その…私もアイツに助けられました。なにか恩返しがしたいんですが『気にするな』の一点張りで…」

「そういうところが憎めないんだよ」

「はい」

「あんな目になっちまうほど、辛い思いをしても、どこかで人を信用している」

「そうじゃなきゃ、人助けなんて出来ませんから」

「そうだな」

「アイツは今も苦しんでいるのかな…」

「大丈夫だろ」

「どうしてですか?」

「この前、コーヒーの煎れ方を悩んでいたが、ちょっと教えたら、なにか憑き物が落ちたみたいな顔してたからな。何か掴んだんだろうな。いい目をして帰っていったぞ」

「そう…ですか」

「だが、またつまずいたりするだろう。その時は、嬢ちゃんの出番があるかもしれない。その時は助けてやってくれ」

「はい、必ず!」

「嬢ちゃんも、いい顔になったな」

「あ、いや、その…」

「はははっ!」

 

 

「ご馳走さまでした」

「気が向いたら、また来てくれ」

 

この店、入って良かった。比企谷のことも少しわかったし…。

今度はアイツと二人で来たいな…。

 



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七話

部室で渾身のコーヒーを煎れてから数日。いつもと変わらない、でも確かに変わった日常風景。雪ノ下の紅茶セット横にコーヒーのセットも置かれるようになった。

 

「ねぇねぇ、ヒッキー」

「なんだ?」

「コーヒーメーカーとか缶コーヒーじゃダメなの?」

「ダメじゃねよ」

「じゃあ、どうして?」

「毎日だと飽きるしな。それに、大衆に迎合してる感じするから…かな」

「たいしゅうにげいごう?」

「すまん、難しかったな」

「そんなことないし!」

「あ~、そうだな。缶コーヒーは…、葉山」

「ぷっ!くくくっ!缶コーヒーが…、葉山君…くくくっ!」

「ゆきのん?」

「単一の豆で落としたのが、俺や雪ノ下や由比ヶ浜かな」

「?」

「苦味が強かったり酸味ばっかりだったり」

「貴方は腐っているんじゃなくて?」

「うるせぇ。まぁ、それを絶妙に合わせたのがブレンドだ」

「それをカップ一杯分煎れたのが俺達だ」

「なんかいいね!」

「上手くまとめたつもりでしょうけど、ダメね」

「悪かったな」

「でも、迎合した缶コーヒーではないのは確かね」

 

「なぁ、二人とも、この後暇か?」

「うん、帰るだけだよ」

「私も特に用事はないわ」

「コーヒー飲みに行かないか?」

「えっ…」

「えっ…」

「まぁ、俺の誘いなんか嫌だよな。悪かった」

「違う!違くて!ヒッキーが誘ってくれるなんて思ってなくて、ビックリしただけ!」

「お、おう。そうか」

「行く!行くよ!ゆきのんも行くよね?」

「ええ。折角の比企谷君からのお誘いですもの」

「じゃあ、決まりだな」

 

 

「こんにちは」

「いらっしゃい」

「今日は部活仲間を連れてきました」

「ほう、可愛い嬢ちゃん二人も。お前さんもやるねぇ」

「そんなんじゃないですよ。あっちのBOX席いいですか?」

「あぁ、いいぞ」

「ブレンド3つで」

「ほら、座るぞ」

「え、ええ。ごめんなさい」

「う、うん」

「どうした?」

「可愛い嬢ちゃんって…」

「えへへ」

「よかったな。俺は他のお客さんきたら、声かけたいから、入り口が見えるこっちがいいんだが」

「じゃあ、こっちに私とゆきのんで座るね」

「悪いな」

「驚いたわ。貴方が積極的にコミュニケーションをとろうとするなんて」

「まあな」

「ブレンド、お待たせ。こいつ、オッサンたちと、よく話してるぜ」

「へぇ、ヒッキーしゃべるんだ」

「俺だってしゃべるよ」

「コーヒーしかねぇが、ゆっくりしてくれ」

「ありがとうございます」

「ありがとうございま~す」

 

「ん、磐石の美味さだな」

「美味しい…」

「美味しいね♪」

 

 

「いらっしゃい」

「おう、来たぞ」

 

「すまん、ちょっと外すぞ」

「えぇ」

「いってらっしゃ~い」

 

「こんにちは」

「おぅ」

「娘さんと話出来ましたか?」

「急に帰って来てな、ビックリしたがな。有意義な話が出来たよ」

 

「あの声…」

「ゆきのん?」

「お父さん…」

「雪乃…」

「え?この人って、雪ノ下の…」

「えぇ、父よ」

「マジかぁ…」

「雪乃、知り合いなのか?」

「えぇ…。部活仲間の比企谷君よ。そちらに居るのは由比ヶ浜さん」

「そうか。君たちが…。その節は…、事故の時はすまなかった」

「あ、頭を上げてください。もう終わったことじゃないですか」

「そう言ってくれると助かる」

「では、お父さん。また帰った時に」

「そうだな。次は、比企谷君と由比ヶ浜さんも連れてきなさい」

「ええ、二人が良ければ」

「断る理由もないし」

「ゆきのんの実家、行ってみたい」

「では、楽しみにしているよ」

「はい」

「そうだ!比企谷君、婿に来ないかね。君のような息子なら大歓迎だ」

「へ?」

「え?」

「な、なななな、なにを言ってるの、お父さん!!!」

「婿がダメなら、雪乃を嫁にもらってくれるか?」

「あ、いや、その…」

「あわわわわ…」

「ひ、比企谷君のお嫁さんに…」

「おい、高校生に何をバカな事言ってるんだ。コーヒー出来たぞ」

「おぉ、そうか。では、比企谷君、検討してくれたまえ。前向きにな」

 

席に戻ったあとも、雪ノ下の意識はしばらく帰ってこなかった…。

 



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八話

雪ノ下の意識が戻り、コーヒーを飲みながら談笑中。

 

「ヒッキーってさ、いろはちゃんに甘いよね」

「そうね。もっと突き放してもいいと思うわ。…わ、私の…なのだから」

「最後、聞き取れなかったんだが、何?」

「な、なんでもないわ」

「まぁ、俺が生徒会長にしちまったからな。仕方ない」

 

 

「いらっしゃい」

「彼は来てるかい?」

 

「こんにちは」

「あ、いたいた。今度、娘と嫁さんと三人でクッキーを作ることになったよ」

「頑張ってくださいね」

「ありがとう…。ん?」

「よっ!由比ヶ浜!」

「なんだ、雪ノ下もいたのか」

「え?お知り合いなんですか?え?由比ヶ浜?」

「パパ!」

「結衣!」

「え?パパ?」

「ヒッキー、ウチのパパだよ」

「えっと、結衣さんのクラスメイトで部活仲間の比企谷八幡です」

「比企谷君でヒッキーだったんだな。結衣はヒッキーとしか言わないから。いつぞやは、すまなかったな。ありがとう、ウチの大事な家族を助けてくれて」

「いえいえ、お気になさらず…。それと、雪ノ下さんとはお知り合いなんですか?」

「高校時代からの悪友だよ。な?」

「ま、その表現が妥当だな。同級生だよ」

「そうか、そうか。君がヒッキーだったのか…」

「な、なにか?」

「結衣から色々聞いているんだが、君のような聡明なコが結衣と結婚してくれれば…」

「なっ!」

「えっ!」

「パ、パパ、何言ってるの!」

「結衣がいつも…」

「わー!わー!なんでもない!なんでもないよ、ヒッキー!」

「お、おう…」

「おい、由比ヶ浜。彼に先に目をつけたのはウチだそ。比企谷君は雪乃に…」

「お、お父さん!」

「なんだ、嫌なのか?なら陽乃の…」

「勘弁してください」

「なんだ、陽乃も知っているのか」

「ええ、まぁ」

「それなら話は早い。どちらでもいいぞ!」

「いや、ウチの結衣を…」

「バカなこと言ってないで、座ってコーヒーを飲め!」

「はい」

「はい」

「まったく、このバカ親父どもは」

 

「ふぅ。なんか疲れたなぁ…」

「…比企谷君は私の…姉さんには…」

「ヒッキーが私の…えへへ」

 

二人の意識が戻るまで小説を読むことにした。

 

「はっ!はちま…。比企谷君…」

「お帰り、雪ノ下。由比ヶ浜を連れ戻してくれ」

「由比ヶ浜さん、由比ヶ浜さん」

「はっ!ゆきのん!ヒッキーは私の…」

「俺がどうかしたか、由比ヶ浜」

「え!なに!なんでもないよ!ヒッキー何言ってるの!キモイ!マジキモイ!」

「はいはい。で、コーヒーのおかわり頼むか?」

「えぇ、お願い」

「うん」

「コーヒーおかわり3つ」

「はいよ」

 

意識が戻った二人とコーヒーを待つ…。



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九話

仕切り直して、会話をする

 

「雪ノ下と由比ヶ浜の親父さんが同級生とは…」

「知らなかったわ」

「私も知らなかったよ」

「人の縁はわからんもんだな」

 

「いらっしゃい、久しぶりだな」

「う~す、ブレンドくれ~」

 

「お、親父…」

「八幡、なんでこんなところに…」

「こんなところで悪かったな。とりあえず、座れ」

「よぉ、比企谷!」

「雪ノ下に由比ヶ浜!お前らまで居たのか!」

「え?親父、知り合いなのか?」

「高校の同級生だ」

「マジか…」

「大マジだ」

「なんか目眩がしてきた…」

「ウチのパパと」

「私の父と」

「ウチの親父が…」

「そうだ。言ってなかったか」

「このクソ親父め…」

 

「ねぇねぇ、ゆきのん」

「何かしら?」

「近くの席に移動しない?楽しそうだよ」

「由比ヶ浜さんが、そういうなら」

 

「ヒッキー!こっちの席移動したからね」

「雪ノ下、お前まで…」

「何か聞かれたら不味い話でもあるのかしら」

「ねぇけどよ…」

 

「なぁ、八幡」

「なんだよ」

「お前、事故に遭った時、相手が見舞いに来ないのを不思議に思わなかったか?」

「まぁな」

「それに、示談がスムーズだと思わなかったか?」

「…そういうことか」

「察しが良くて助かる」

「ヒッキー、どういうこと?」

「この三人で事故の話をまとめたんだよ」

「お父さん、事故のことは何とかするって…」

「パパにまかせろって…」

「そういうことだったんだよ」

「比企谷君…」

「なんだよ」

「私も目眩がしてきたわ」

 

「そうだ、比企谷」

「なんだ?」

「八幡君の嫁にウチの雪乃はどうだ?」

「いやいや、ウチの結衣を嫁に」

「お父さん!」

「パパ!」

「まだその話、終わってなかったのかよ」

 

「俺達は、そろそろ帰るか」

「そうね」

「うん」

「親父、先に帰るぞ」

「おう。気をつけて帰れよ。犬と黒塗りの車に気をつけてな」

「そのブラックジョーク止めろ。殴るぞ。マスター、俺達の伝票は親父につけてください」

「おいおい」

「ブラックジョークの罰だ」

「はいよ、伝票書き換えておく」

「早く仕事終わったなら、早く帰ってこいよ」

「はいはい。いつも、遅くなる原因は雪ノ下のせいだからな。雪乃ちゃんからも言ってくれ」

「は、はい…」

「お前んとこの仕事は大変なんだぞ。残業と休日出勤の原因の半分は雪ノ下関係だからな」

「ウチの会社もそうだなぁ」

「雪ノ下無しでは、千葉の経済は回らないからな」

「お前、持ち上げ過ぎ」

 

 

「じゃあな、親父」

「では、お父さん。失礼します」

「パパも早く帰ってきてね」

 

 

「俺達の子供も大きくなったな」

「まったくだ」

「お前らと、あんなカタチで再会するとは思ってもなかったよ」

「八幡には悪いが、感謝してるよ」

「なぁ、ウチの結衣をもらってくれよ。料理はアレだが…」

「あんな愚息のどこがいいんだよ」

「愚息っていうなら、ウチに婿にくれ。立派な社長にするぞ」

「息子から仕事が来るなんて、ごめんだね」

「じゃあ、やっぱり結衣を嫁に」

 

父親達三人の会話は、夜遅くまで続いた。




――――――――――――――

ここで、一旦区切りです。
以降の話を書いたり消したりしながら練っていますので、次の更新は時間掛かると思います。


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十話

比企谷家

 

「たで~ま」

「おかえり~」

「疲れた…」

「どうしたの?お兄ちゃん」

「やはり俺の青春ラブコメがまちがったのは親父のせいだ!」

「なにそれ?」

「説明するから、マッカンくれ」

 

「あぁ、疲れた体と心と脳に糖分がしみわたる…」

「お兄ちゃん、キモイよ」

「うるせぇ」

「しかし、雪乃さんと結衣さんのお父さんがウチのお父さんと同級生だったとは…」

「しかも、事故の話をまとめてた…。あのクソ親父め」

「でも、結衣さんはウチに来たよね。お茶菓子持ってさ」

「あれは、由比ヶ浜の独断だろうな」

「お兄ちゃんさ…」

「なんだ?」

「さっき、『ラブコメ』って言ったよね?」

「ん?い、言ったかな?言ってないんじゃないかな?」

「お兄ちゃん!」

「ひゃい!言いました」

「て、ことは…。お兄ちゃんには好きな人が居る!! 」

「なん…だと…」

「そんなこと言って、とぼけてもダメだよ」

「ちっ!」

「ただいま~」

「ほら、母ちゃん帰ってきたぞ」

「お兄ちゃん、今度話してもらうからね」

 

「なあ、母ちゃん。親父が俺の事故の話をまとめたのは知ってるか?」

「あぁ、あれね。説教してやったわ」

「親父が正座させられてる姿が目に浮かぶ…」

 

 

ほぼ同時刻

雪ノ下雪乃のマンション

 

(まったく、父さんも困ったものだわ。勝手に話をしていたなんて。私のモヤモヤしてたあの時間を返して欲しいわ)

(…でも、比企谷君のお嫁さんなんて…。比企谷君も満更でもなさそうだったし…)

「比企谷雪乃、雪ノ下八幡…。うふふ」

「雪乃ちゃん、どうしたの?」

「ね、姉さん!いつから居たの!」

「さっきから声かけてたのに、まったく気がつかなかったのよ」

「そ、そう」

「雪乃ちゃ~ん」

「な、なにかしら」

「今のところ独り言は何かなぁ?」

「きょ、今日、たまたま父さんに会ったら、比企谷君に私を嫁になんて言ったから…」

「ほほう」

「そ、そうだ!姉さん!父さんと比企谷君のお父さんと由比ヶ浜さんのお父さんが友人って、知ってた?」

「え?初耳だけど…」

「やっぱり」

「雪乃ちゃん、どういうこと?」

「あの事故の話、父さん達でまとめたのよ」

「そうゆうことか」

「姉さん、どうかしたの?」

「事故の後、しばらくして、父さんが母さんに怒られてた。しかも、正座して」

「まったく…」

 

 

ほぼ同時刻

由比ヶ浜家

 

「ただいま~」

「お帰りなさ~い」

「パパにあったよ」

「へぇ~、どこで?」

「ん~と、喫茶店?」

「たぶん、いつものところね」

「そしたらね、ヒッキーとゆきのんのお父さんも居てね、三人が友達だったんだよ。知ってた?」

「ヒッキー君の事故の時に聞いたわ」

「それでね、ゆきのんのお父さんが、ゆきのんをヒッキーのお嫁さんにって言ったら、パパが結衣をお嫁さんにって…」

「パパ、よく言ったわ!結衣も雪乃ちゃんに負けちゃダメよ」

「それと、パパが事故の話をしてたの知ってる?」

「パパが勝手に話をしてきたから、お説教しちゃった。テヘッ」

「テヘッって…」

 

 

父親達は奥さんに頭が上がらないのでした。

 

 

 




――――――――――――――――――――

感想・評価ありがとうございます。

とても励みになります。


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十一話

今日も奉仕部は平常運転。

由比ヶ浜のスキンシップが多くなり、雪ノ下の罵倒が少なくなってはいたが。

 

「こんにちは~」

「いろはちゃん、やっはろー」

「こんにちは、一色さん」

「げっ!」

「先輩なんですか、その反応は!」

「お前は厄介事しかもってこないからな」

「そんなことありません!ブーブー!」

「あざといあざとい」

「あざとくないです!」

「で、今日はなんだ?」

「生徒会が終わって、サッカー部に行く前に寄りました」

「へぇ、そうなんだ」

「ここは休憩所ではないのだけど…。まぁ、いいわ。一色さん紅茶は?」

「紅茶ですか…」

「一色さん?」

「い、いえ、いただきます」

「?」

「?」

「?」

 

翌日

 

「こんにちは」

「いろはちゃん、やっはろー!」

「こんにちは、一色さん」

「あれ?先輩は?」

「ヒッキーなら、サキサキに引っ張られて、予備校行ったよ」

「まったく、私と言う……が居るのに…」

「ゆきのん?」

「な、なんでもないわ」

「?」

「?」

「一色さん、紅茶は?」

「あ、今日はもう行きますんで。ではでは~」

 

さらに、翌日

 

「比企谷君、説明してもらいましょうか」

「だから、川崎の妹が俺と遊びたいって言ってたから、川崎ん家に寄っただけだ」

「やっぱり、ロリコンだったのね」

「ちげぇよ!」

「まぁまぁ、二人とも…」

「こんにちは~」

「げっ!一色!」

「なんですか、先輩!」

「いろはちゃん、やっはろー!」

「一色さんが来たから、このぐらいで勘弁してあげましょう」

「へいへい」

「まったく、私の部屋に遊びに…」

「何か言ったか?」

「なんでもないわ」

「そうだ!ゆきのん!紅茶淹れてよ!リラックス出来るんでしょ?」

「そうね。そうしましょう」

「……が飲みたいです」

「一色さん?」

「いろはちゃん?」

「先輩の苦いのが飲みたいです!!」

「!!」

「!!」

「??」

「一色!それ、お外で言っちゃダメなヤツ!!」

「ヒッキー、いろはちゃんになに飲ませてるの!キモイ!マジキモイ!」

「無い無い、断じてそんなことはない!」

「由比ヶ浜さん、何をかしら?」

「え、えっと…」

「結衣先輩や雪ノ下先輩だけに飲ませて、私には飲ませてくれないんですか!」

「へ?」

「え?」

「?」

「ティーセットの横にあるじゃないですか…」

「一色、コーヒーのこと?」

「そうです!先輩が煎れたコーヒーが飲みたいんです!」

「お前、言い方考えろ…」

「勘違いしちゃったよ…」

「由比ヶ浜さんは、何とコーヒーを、勘違いしたのかしら?」

「それは、え~と、あはは…」

「雪ノ下、聞くな、頼む」

「で、飲ませてくれるんですか?」

「仕方ねぇな。お前らも飲むか?」

「うんっ!飲みたい」

「では、いただこうかしら」

 

「はいよ、お待たせ」

「いい香りですね。いただきます」

「先輩!美味しいです!」

「うん!美味しい!」

「比企谷君、また腕を上げたわね」

「そりゃ、どうも」

 

また一人、比企谷八幡のコーヒーに魅いられました。



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十二話

奉仕部部室は平常運転中。一緒に生徒会長兼サッカー部マネージャーが居るのも、もはや平常運転。

 

今日はコーヒーを飲んでいる。3日に1回はコーヒーである。

 

「比企谷、居る?」

「えっと、川、川…川瀬さん?」

「川崎だけど、殴るよ」

「やめてください、死んでしまいます」

「サキサキ、やっはろー!」

「川崎先輩、どうもで~す」

「川崎さん、そこのヒキ、ヒキ…。彼に何かご用かしら?」

「おい、完全に忘れるな。俺と川崎はこれがデフォルトだ」

「まったく…」

「川崎、コーヒー飲むか?」

「いいのかい?」

「特に依頼もないしかまわないわ」

「なんで、川崎先輩には、すっと出すんですか?」

「あ?みんな飲んでるのに、川崎だけ出さないのは、おかしいだろ」

「ブーブー!」

「はいはい、あざといよ」

 

「ほいよ」

「ありかと」

 

「美味しいね」

「ありがとよ」

「それでね、比企谷に京華から手紙を預かってきたから、はい」

「けーちゃんからか。どれどれ」

「ヒッキー、私にも見せて!」

「これは、比企谷君かしら。アホ毛があるわよ」

「子供が描いても目が腐ってますよ」

「うるせぇ。どれどれ」

 

【はーちゃんへ いつもあそんでくれてありがとう】

 

「改めて、手紙にされると、嬉しいな」

 

【おおきくなったらはーちゃんのおよめさんになりたいです】

 

「…貴方、幼稚園児になにをしてるのかしら…」

「ヒッキー!キモイ!」

「先輩、シスコンからロリコンに鞍替えしたんですか…」

「子供の言うこと真に受けるなよ」

 

【はーちゃんがくるとさーちゃんもたのしそうなのでさーちゃんとけっこんしておにいちゃんでもいいです】

 

「さーちゃん?」

「誰?」

「さ、さ、さ、…沙希?」

「こ、子供が言ってることを真に受けちゃダメだよな、な!比企谷!」

「あ、あぁ、そうだな」

「ヒッキーは、私の…なのに…」

「比企谷君の…は私なのに…」

「結衣先輩?雪ノ下先輩?」

「コーヒーごちそうさま!私は帰るね」

「お、おい!川崎!…。まったく、子供は何を言うかわからんな。って、お前らどうかしたか?」

「な、なんでもないわ」

「そ、そうだよ、ヒッキー」

「先輩、デート1回で許してあげます」

「なんで、一色とデートしなきゃならんのだ。葉山を誘えばいいだろ」

「そうだよ、いろはちゃん!」

「そうよ、一色さん。この男にまともなデートなんて出来ないのだから、私がしっかり調教しないと…」

「ゆきのん、ズルイ!」

 

奉仕部は下校時間まで騒がしかった。

川崎沙希は京華を誉めてあげようと思いながら 帰宅した。

 



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十三話

少し修正しました。


予備校の帰りに声をかけられる。

 

「比企谷」

「えっと、川、川、川…川岸さん?」

「川崎だけど、殴るよ」

「やめてください。死んでしまいます」

「まぁ、いい。アンタ、今日も寄り道するのかい?」

「まぁな」

「あの…、わ、私も行っていいかな?」

「かまわないが、どこへいくか知ってるのか?」

「前に店に入るの見かけて、私も行ったことあるから」

「そうか」

 

「いらっしゃい。今日は嬢ちゃんも一緒か」

「予備校が一緒なんで」

「まぁ、ゆっくりしていきな」

 

「比企谷の煎れたコーヒーも美味しかったけど、ここのは格別だね」

「俺も練習してるんだけどな」

「ふ~ん」

 

「ひゃっはろー!比企谷君」

「いらっしゃい」

「げっ!雪ノ下さん」

「こんな美人のお姉さんを捕まえて『げっ!』とはなにかな~」

「雪ノ下さん?」

「あぁ、雪ノ下の姉だ」

「そっちの娘は誰かなぁ?雪乃ちゃんがいるのに、浮気はダメだぞ」

「雪ノ下とは付き合ってないので、浮気もなにもありません」

「お嬢さん、注文は?」

「え~と、ブレンドでいいわ」

 

「それで、何か用ですか?雪ノ下さん」

「未来のお義姉さんに冷たいなぁ」

「そんな未来はありません」

「もう!比企谷君が女の子とここに入るのが見えたから」

「川崎はそんなんじゃ、ありません。只のクラスメイトです」

「ふ~ん、川崎さんはそうでもなさそうだけどね」

「た、只のクラスメイトです!」

「比企谷君に手を出したらダメだからね。彼は雪乃ちゃんの彼氏になるんだから」

「雪ノ下には、友達申請を二回も断られてるんですから、彼氏になるわけないでしょ」

「『本物』だったかしら…。それはどうなのかな?」

「くっ!」

「やれやれ。お嬢さん、それぐらいで勘弁してくれ。ここはコーヒーとタバコと会話を楽しむ場所だ」

「え~、会話楽しんでるじゃない」

「彼が楽しんでるようには見えないんだがね」

「私は楽しんでるわよ。邪魔をしないで」

「邪魔じゃない。常連さんに助け船を出しただけだ」

「マスター。気にしないでください」

「そうはいかないな。ここは俺の店だからな」

「マスター、ヤバいですって!この人は…」

「大丈夫だ、坊主。お嬢さん、気に入らないかね」

「えぇ、とっても…」

「お嬢さん、もう少し大人になりな」

「それ、どういう意味かしら?」

「言葉の通りだ」

「貴方、私を怒らせたいの?」

「いや、常連さんが困ってたからな。お嬢さんに喧嘩を売った訳じゃない」

「そのお嬢さんて言い方も勘に触るわね」

「そう、カッカしなさんな」

「一々勘に触るわね」

「少し冷静になってもらおうか。ちょっと失礼」

「スマホなんか出してどうする気?」

「ちょっと、友人に助けてもらうのさ」

「あ~、俺だ。すまんな忙しいのに…。店に厄介な客が居てな。ちょっと相手に電話代わる…。ほら、お嬢さん話してくれ」

「もしもし、代わりました。貴方、この店のオーナーか何かなの?」

 

すると、雪ノ下さんの顔色が青くなる。

 

「はい、すいません。後程ご説明したします。失礼します…」

「お嬢さん、そういうことだ」

「…はい」

「マスター。誰に電話したんですか?」

「お前の親父の悪友だよ」

「あ~」

 

「お嬢さん、これ飲んでみな」

「はい。いただきます…。凄く甘い…。でも懐かしい味…」

「お嬢さんが小さい頃に、父親に連れられて来たことがあるんだよ。その時、こいつを飲ませたら、美味しそうに飲んでたよ」

「あ、思い出しました。この店だったんですね。大変失礼いたしました。いつ、私だと気がついたんですか?」

「店に入った時からだよ。俺にしたら、あの時の可愛らしいお嬢ちゃんだったよ」

「そう…でしたか…」

「あんまり、気に病むなよ。煽った俺も悪い。また来てくれよ」

「はい、ありがとうございます」

「その時は、余所行きの顔じゃなくて、肩の力を抜いて、コーヒーだけを楽しんでくれ」

「!!!…はい。今日は失礼します」

 

「マスター、ちょっと電話かけますけど」

「かまわないぞ」

 

「あぁ、親父か。雪ノ下さんて連絡できるか?あぁ、陽乃さんを責めないように伝えてくれ。そう言えばわかる。帰ったら説明するから。悪いな」

 

「お前も甘いな」

「助けてもらってることもあるのでね」

 

「比企谷、どういうことだったの?」

「悪い川崎。雪ノ下さんが行き過ぎたことをしないように、マスターが釘をさしたってところかな」

「お、いい読みをするな」

「まったくわからないんだけど…」

「川崎、わからない方がいいこともある。今はコーヒーを楽しもうぜ」

「???…。わかったよ」

「マスター、さっき雪ノ下さんに出した甘いコーヒーって俺も飲んでみたいす」

「あぁ、まってな」

 

「ほらよ、おまたせ」

「いただきます。…甘くて美味い」

「だろ。MAXコーヒー好きのお前さんなら、好きな味だ」

「ひ、比企谷、一口貰ってもいい?」

「い、いや、そんなことしたら、か、か、か、間接キ…」

「小学生じゃないんだから、気にしないの!」

「あっ!飲みやがった…」

「甘い…。でも美味しい…」

「マスター、このレシピは…」

「こいつは教えられないな」

「えぇ…。わかりました。盗みます」

「おう。がんばれよ」

 

甘いコーヒーを研究した後、二人で帰路についた。

 

―――――――――――――

 

おまけ

 

 

(あっ、電話だ)

「もしもし」

『比企谷さんすか?大志っす』

「大志君、どうしたの?」

『姉ちゃんが壊れたっす』

「どういうかとかな?」

「帰ってきたら、部屋でヒャッホーとか奇声を出してて…」

「あぁ、たぶんお兄ちゃんのせいだよ」

「お兄さんとなにかあったっすか?」

「一緒にコーヒー飲んで来たとか言ってたよ」

「あぁ…。姉ちゃん、お兄さんのこと好き過ぎ…」

「そうだね…」




―――――――――――――

マスターVS陽乃を、上手く表現出来ない(;o;)


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十四話

『休日とは木の影で休む日である』なんて考えを巡らせている土曜日の朝…。

 

「おはよう、比企谷君」

「おはよう、雪ノ下」

「早く起きて着替えてくれないかしら」

「いや待て。まず、お前が俺の部屋に居ることを説明してくれ」

「小町さんに案内されたのだけど」

「そっちじゃねぇよ。理由の方だよ」

「今から私の実家に行くわよ」

「断る」

「それを断るわ」

「嫌だよ。だって、魔王と大魔王が居るんだろ?村人Aには攻略不可能だよ」

「大丈夫よ。父さんが居るわ。今日の目的は父さんと話をすることなのだから」

「あぁ、前に来いって言われたな」

「今日は珍しく父さんも時間があるから是非にと」

「ちなみに、由比ヶ浜は?」

「三浦さん達と遊ぶ予定があるそうよ」

「今、凄い悪い笑い方しませんでしたか?」

「気のせいよ。さぁ、早く着替えなさい」

「…なぁ、雪ノ下」

「なにかしら?」

「俺の着替え見たいのか?」

「!!!…ごめんなさい。すぐ出るわ」

 

「お待たせ…」

「カマクラさん。ニャ~♪うふふ」

 

5分経過

「ニャ~♪ニャ~♪うふふ」

「パンあったかな…」

 

10分経過

「ニャニャ?ニャ~♪うふふ」

「モグモグ」

 

15分経過

「大人しいわね♪ニャ~ン♪」

「さてと、歯を磨いて…」

 

20分経過

「モフモフモフ~♪うふふ」

「小町、そろそろ声かけていいかな?」

「あと少し待ってあげたら」

 

30分経過

「いい毛並みですね~♪うふふ」

「小町、もういいか」

「あんまり遅くなってもアレだから、いいんじゃないかな」

「あ~、雪ノ下。お楽しみのところを悪いが…」

「はっ!」

「そろそろ行くか?」

「え、えぇ。そうね」

 

「都築、行くわよ」

「かしこまりました」

「都築さん、駐禁切られませんでしたか?」

「パトカーは来ましたが、ナンバーを確認して通過していきました」

「これが忖度かぁ」

 

 

 

「御嬢様、比企谷様、到着いたしました」

「ありがとう、都築」

「都築さん、ありがとうございます」

 

「……」

「何か言ったらどう?」

「でけぇ」

「粗末な日本語ね。本当に国語学年三位なのかしら」

「平民がこんな豪邸見たらこうなるっつうの」

「父さんも待っているわ。行きましょう」

 

 

「ただいま帰りました」

「お邪魔しま~す」

「ようこそ、比企谷さん」

「…母さん」

「ご無沙汰しています」

「先日は陽乃がご迷惑を…」

「い、いえ、お気になさらずに…」

「比企谷君、姉さんと何かあったのかしら?」

「睨まないでください。ちょっとマスターの店で会っただけだよ」

「では、主人が待っていますので、応接室に」

「はい…」

 

応接室に入ると、雪ノ下父と陽乃さんが待っていた。

 

「比企谷君、よく来たね」

「比企谷さん、先日は大変失礼いたしました…」

「わ、わ、陽乃さん、やめてくださいよ」

「陽乃さん?貴方、姉さんを名前で呼ぶなんて…」

「仕方ないだろ、みんな『雪ノ下さん』なんだから」

「あのマスターも意地の悪いところがあるからな。お灸をすえたってところだろう」

「ご明察です。だから、陽乃さんも気にしないでください」

「ありがとう。それに、父さんにもフォローを入れてくれたみたいで…」

「まぁ、あれです。貸し1にしてください」

「もう、比企谷君は優しいんだから。お姉さん好きになっちゃうよ。あ!その貸し1で『俺の女になれ』とか言っちゃう?」

「言いませんから」

「姉さん、いい加減にしてくれるかしら…」

「雪ノ下、陽乃さん怒りながら、足踏むのやめてもらえませんかね?」

「まぁ、座りなさい」

「はい、失礼します」

 

程なく、雪ノ下母が紅茶を運んでくる。

 

「こういうのって、お手伝いさんとかがやると思ってました」

「紅茶に関しては女性陣がうるさくてね」

「でも、雪ノ下…。雪乃さんの淹れる紅茶は美味しいですから」

「雪乃ちゃん、良かったね」

「雪乃さんの淹れる紅茶は美味しい…、雪乃さんの淹れる紅茶は美味しい…、うふふ」

「雪乃!しっかりしなさい!」

「はっ!すいません、母さん」

「君は学校でコーヒーを煎れているらしいじゃないか」

「部活仲間に振る舞う程度ですが」

「是非、君が煎れたコーヒーを飲んでみたいな」

「あら?アナタは私の淹れた紅茶がお気に召さないのかしら」

「い、いや、そうじゃない。比企谷君が煎れたコーヒーを飲んでみたいだけだ」

「ふふふ、冗談よ」

(うわぁ…。雪ノ下にそっくりだ…)

 

「時に比企谷君、雪乃とはどうだい?」

「質問の意味がわからないのですが…」

「雪乃を嫁にもらってくれるかという話だ」

「父さん!」

「い、いや、それは…」

「陽乃は、それなりに社交的だから、大丈夫だと思うが、雪乃はご存知の通りだ」

「アナタ、まだ早いわよ」

「早くはないぞ。由比ヶ浜も娘を嫁にと言ってるからな。比企谷君には雪乃を選んでもらいたいからな」

「アナタ、雪乃の気持ちもあるのだから」

「わ、私は別に…」

「雪乃ちゃんがいらないなら、私が比企谷君もらっちゃうよ」

「そ、それはダメ!ダメよ!」

「あら、雪乃も満更ではないようね」

「いやいやいや。まだ高校生ですよ。この先、どうなるかわかりませんから。雪ノ下、なんか言ってくれ」

「比企谷雪乃…、雪ノ下八幡…。うふふ」

「雪ノ下!頼むから、帰ってきてくれ~!」

 

 

休日の雪ノ下家は賑やかでした。

 

 

 



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十五話

『休日とは木の影で休む日である』なんて考えを巡らせている日曜日の朝…。

 

「やっはろー、ヒッキー」

「おはよう、由比ヶ浜」

「早く起きて着替えてよ」

「いや待て。まず、お前が俺の部屋に居ることを説明してくれ」

「小町ちゃんに教えもらったよ」

「そっちじゃねぇよ。理由の方だよ」

「今からね、ウチに行くの」

「断る」

「ダメ!ゆきのんだけズルイ!」

「うわぁ…。なんだろう、このデジャヴ感…」

「雪ノ下はどうした?」

「実家から出れないみたいだよ」

「今、凄い悪い笑い方しませんでしたか?」

「気のせいだよ!早く着替えてよ!」

「俺の着替え見たいのか?」

「ヒッキー!何言ってるの!キモイ!」

 

 

「由比ヶ浜、お待たせ」

「でね、その時優美子がね」

「ほうほう」

 

5分経過

「そしたら、戸部っちがね」

「ふむふむ」

「マッカンあったかななぁ」→あったかなぁ

 

10分経過

「ママったら、パパにね」

「マジですか」

「朝のマッカンうまぁ」

 

15分経過

「姫菜が池袋行こうって誘ってきてね」

「池袋?」

「歯磨き♪歯磨き~♪」

 

20分経過

「そしたら、昨日ゆきのんから電話が来てね」

「私もビックリしました」

「リア充のトーク力パネェ…」

 

30分経過

「パパとママに相談したら、ヒッキーを連れて来いって」

「なるほど。それで今朝にいたるんですね」

「やっと話が着地したな」

「ヒッキー!聞いてたのマジキモイ!」

「ゴミぃちゃん、盗み聞きはポイント低いよ」

「待ってただけで、なんなのこれ…。行かなくてもいい?いいよね?」

「ダメダメ!行くよ!ヒッキー!」

「いってらっしゃい、お兄ちゃん。結衣さん、またです」

「2日連続休日出勤なんて、俺マジ社畜…」

 

 

「ただいま!」

「お邪魔します」

「ヒッキー君、いらっしゃい」

「い、いきなり抱きつかないでください!」

「マ、ママ!」

「結衣は、これぐらいのスキンシップしないの?」

「普通はしないよ!」

「う~ん、ママはパパと毎日ギュ~ってしてるわよ」

「あはは…。仲の良いご夫婦なんですね」

「ワンワン♪」

「おぉ、subway元気だったか?」

「違うし!サブレ!」

「そっか、悪かったな鳩サブレ」

「鳩もいらないし!」

「ワンワン♪」

「この首輪…」

「前にね、ヒッキーがプレゼントしくれた首輪だよ」

「使ってくれてるんだ。サンキューな」

「えへへっ」

 

「八幡君、いらっしゃい」

「先日はどうも」

「よく来てくれたね。…下には負けられないからな」

「何かおっしゃいましたか?」

「何でもないぞ、うん」

「ヒッキー!キッチンに来て!」

 

「どうした?」

「今日はね、ヒッキーとクッキーを作りたいんだ」

「ほう、なるほどな。いいんじゃね」

「結衣とヒッキーの『初めての共同作業』ね」

「なんスか、そのケーキ入刀みたいな…」

「マ、ママは向こう行ってて!」

「はいはい」

 

 

「うん。上手く出来たんじゃねぇか」

「うん、美味しい!」

 

「ヒッキー君はコーヒーでいい?」

「はい、いただきます」

「これを結衣と八幡君で作ったんだ。大したモンだ」

「由比ヶ浜…。結衣さんは、やれば出来る娘なんで」

「良かったわね、結衣」

「やっぱり、結衣と八幡君は相性が抜群だ。やはり、八幡君には結衣を嫁に…」

「ここでもかぁ…」

「えへへ…。ヒッキーと…。えへへ…」

「おい!由比ヶ浜!帰ってきてくれ~!」

 

由比ヶ浜家の日曜日は賑やかに過ぎていきました…。

 



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閑話 その二

一色いろはは挫けない

 

「こんにちは~」

「いろはちゃん、やっはろー」

「こんにちは、一色さん」

「また、生徒会の仕事か?」

「先輩、何言ってるんですか?生徒会室で二人っきりになりたいんですか?私もやぶさかではないですが、ドキドキが収まらないので、またにしてください。ごめんなさい」

「はいはい。振られた振られた」

「先輩!扱いが雑です!」

「あざといあざとい」

「今日はいろはちゃん、どうしたの?」

「今日は生徒会も終わりましたし、サッカー部は休みなので、ここでゆっくりしようかと…」

「ここは休憩所ではないのだけど…」

「えぇ~、いいじゃん。ゆきのん」

「由比ヶ浜さん、暑いわ。…仕方ないわね」

「雪ノ下、お湯を貰えるか?」

「ええ」

「今日はコーヒーの日なんですね♪」

「あぁ、少し待ってろ」

 

コーヒーの飲み談笑していると…。

 

「一色、居るか?」

「平塚先生、ノックを」

「いやぁ、すまんな。おぉ居た居た。生徒会のことなんだがな…」

「これは…。資料が生徒会室なんで…」

「では、生徒会室に行くか。お前達は終わっていいぞ。鍵はここで預かろう」

 

 

「では、失礼します」

「じゃあな」

「いろはちゃん、先生、また明日」

「また明日で~す」

「気をつけて帰れよ」

 

「ねぇねぇ、あのコーヒー屋さん行こうよ」

「美味しいコーヒーもいいわね」

「いいけど、由比ヶ浜、騒ぐなよ」

(何それ!知らない!私も行きたい!)

「一色!どうした?」

「え?急用を思い出しました…」

「何を言ってるんだ!早く生徒会室に行くぞ」

「えぇぇぇ!」

 

今度、先輩に連れてって貰おうと思った一色いろはでした。

 

―――――――――――――――

 

雪ノ下陽乃の謝罪

 

先日のやりとりを詫びる為に、コーヒーショップへやってきた。

 

「お邪魔します」

「いらっしゃい」

「また、来てくれたんだな」

「先日は、大変ご無礼を…」

「なぁ、お嬢さん」

「はい」

「確か、ピアノ弾けたよな?」

「よくご存知ですね」

「うちの店にもピアノがあるんだが、弾き手がいなくてな」

「はい」

「ジャズなんて弾けるかい?」

「はい」

「ちょっと聞かせてもらえないか?それでチャラでどうだい?」

「え、ええ。私は構いません」

 

ピアノの前に座り一曲弾く…。

 

「さすがだな」

「いえいえ」

「たまにでいいんだが、ピアノを弾きに来てくれないか?コーヒーぐらいしかサービス出来ないがな」

「是非、弾かせてください」

 

ダンディな立ち居振舞いと笑顔で、惚れそうになってしまう、雪ノ下陽乃なのでした。

 

 

――――――――――――――――

 

川崎沙希と雪ノ下陽乃

 

比企谷は予備校がない日。一人だけど、寄ってみようかな。

 

「こんばんわ」

「いらっしゃい」

「あ、ピアノ…」

マスターが奥を指差す…。たしか、雪ノ下陽乃さん。ピアノを弾く姿が、とても綺麗。

見惚れていると、弾き終った雪ノ下さんが近づいてくる。

「貴方は比企谷君と一緒に居た…」

「川崎沙希です」

「隣、いいかな?」

「どうぞ」

「この前はゴメンね」

「いえ、大丈夫です」

「ねぇ、川崎さん」

「はい」

「川崎さんは比企谷君のこと、好きなの?」

「い、いや、そんな…」

「顔、真っ赤だよ」

「うぅぅ」

「私はね、比企谷君のこと好きだよ」

「え…」

「だからね、この前はこんなに可愛い娘と一緒に彼が居たからヤキモチ妬いてあんなことに…。妹が…、雪乃ちゃんが好きな男の子だから、どうしていいかわからなくて…」

「わ、私も比企谷のこと好きです。今まで異性を好きになったことがなくて、どうしていいかわからなくて…」

「そっかそっかぁ…。私と川崎さんはライバルだね」

「そう…ですね」

「ライバル多過ぎだよ」

「そうですね。雪ノ下さんみたいな美人ばっかりで」

「『陽乃』でいいよ」

「じゃあ、私も『沙希』で」

「沙希ちゃんだって美人だよ。笑うととっても可愛いしね」

「そ、そんな…」

「じゃあ、そんな沙希ちゃんに一曲プレゼントするよ。マスター、いいかな」

「任せる」

「ありがとうございます」

 

陽乃さんがピアノを弾き始める。タイトルは知らないけど、どこかで聞いたことのある優しい曲。

マスターが隣に座る。

 

「マスター、そのグラスは?」

「ウイスキーだ」

「お店は…」

「こんな良いピアノ聞いて仕事してたら、もったいない。もうcloseにしたよ」

「ふふっ。そうですね」

 

素敵なピアノを聞きながら飲むコーヒーは格別なのでした。

 

 

 

 



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十六話

ゴールデンウィーク。それは、映画業界から発生した言葉で……。

 

「おい、八幡」

「なんだよ、人がモノローグにふけっている時に」

「お前、バイトしてこい」

「親父、俺は受験生だぞ」

「それは、ペンを握っている学生が言う言葉だ。お前が握っているのは携帯ゲーム機だ」

「ぐっ!親父のクセに正論を…」

「マスターの店に行ってくれ。勿論、勉強の合間でかまわん。予備校もあるだろうしな」

「マスターの店か…」

「技を盗むには、良い機会だろ?」

「わかったよ」

 

マスターに午後から行く旨を連絡しておく。

 

「おっ、来たな。奥に服が準備してあるから、着替えてくれ」

「うす」

「とりあえず、接客を頼む。余裕が出来たら、煎れ方を教える」

「わかりました」

 

程なく、女子大生3人組が入ってきた。

「めぐりは、この店初めて?」

「そうだよ」

(めぐり?)

「いらっしゃいませ」

「こんな格好いいボーイさんいたっけ?」

「アルバイトです」

「あ~!比企谷君だ!」

「城廻先輩、お久しぶりです」

「めぐり、知り合い?」

「高校の後輩だよ」

「高校生なんだ」

「はい」

「ご注文は?」

「比企谷君は何がオススメ?」

「俺はいつもブレンドっすね」

「じゃあ、それで」

「マスター、ブレンド3つです」

 

「坊主、知り合いか?」

「高校の先輩です」

 

「比企谷君、アルバイトはいつ入ってるの?」

「ゴールデンウィーク中限定で不定期ですね。勉強もあるんで」

「そっか~。比企谷君が居る時にまた来たいなぁ」

「めぐり、このコが好きなの?」

「大学で男を寄せつけないと思ったら」

「そ、そんなことないよぉ」

「顔が赤いよ」

「もう!!」

(城廻先輩特有のほんわか空気いただきました)

 

 

「じゃあ、比企谷君、また来るね」

「ありがとうございました」

「めぐりがまた会いに来るって」

「もう、違うよ!」

 

そして、夕方…。

 

「こんばんわ」

「雪ノ下さん、いらっしゃいませ」

「あ~!比企谷君、どうしたのその格好!」

「アルバイトです。雪ノ下さんはコーヒーを?」

「違うよ。ピアノを弾きに来たんだ」

「え?」

「お嬢さんには、たまにピアノを弾いてもらってるんだよ」

「へぇ」

「じゃあ、お邪魔しますね」

 

しばらく、雪ノ下さんのピアノをBGMに仕事をする。

 

「こんばんわ」

「川崎、いらっしゃい」

「比企谷、どうしたの?」

「アルバイトだ。どうた、この格好?」

「え?あ?うん、に、似合ってるよ…」

「ありがとよ」

「陽乃さんも、こんばんわ」

「沙希ちゃん、ひゃっはろー」

「え?」

「私と沙希ちゃんは名前で呼びあう仲なんだ。羨ましい?」

「羨ましいより、驚きですね」

「そうだ!比企谷君か沙希ちゃん、何かリクエストある?」

「雪ノ下さん、『FLY ME TO THE MOON』をお願いします」

「どんな曲?」

「大人気アニメのエンディングにも使われたジャズの名曲だよ。川崎も聞いたことあるかもな」

「任せて。弾き終わったら、お姉さんに惚れちゃうかもよ?」

「それはないと思いますけど、演奏は期待してます」

「もう、比企谷君はつれないなぁ」

 

♪♪♪♪

 

「比企谷君、どうだった?」

「すげぇ上手かったです」

「お姉さんに惚れちゃったかな?」

「あ、大丈夫で~す」

「もう!」

「比企谷、勉強は大丈夫なの?」

「空き時間には、裏でやってるから大丈夫だ」

「お姉さんが見てあげようか?」

「何もお返しできないんで、遠慮します」

「損得抜きって言ったら?」

「それこそ裏が有りそうで怖いです」

「じゃあ陽乃さん、私に教えてください」

「いいよ」

「いつの間に、そんなに仲良くなったんだ?」

「それは秘密だよ。ね、沙希ちゃん」

「はい」

「よくわからん」

 

そんな感じで、アルバイト1日目は過ぎていきました。

 

 

 



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十七話

アルバイト2日目。

何故か朝から、川崎と雪ノ下さんが居る…。

 

「あ!文句あんの?」

「ないです。睨まないでください」

「お姉さんに会えて嬉しいくせに」

「いえ、間に合ってます」

 

どうやら、雪ノ下さんが川崎の勉強を見ているようだ。

 

「比企谷君も見てあげようか?」

「遠慮します。後が怖いんで」

「陽乃さん、教え方上手いですね」

「そう?沙希ちゃんの覚えがいいんだよ」

 

若干の百合空間を眺めていると、昼になる。

 

「じゃあ、私たちお昼食べに行ってくるね」

マスターのこだわりで食べ物系は、ほぼないこの店。

 

「坊主、お前も飯にしな」

「ありがとうございます」

 

すると、お客さんか…。

 

「いらっしゃいま…。あ!」

「ひ、比企谷君、こんにちは」

「雪ノ下、どうしたんだ?」

「あ、あの、小町さんに聞いたら、ここでアルバイトしてるって…」

「まあな。悪いけど、今から飯なんだ」

「あ、あの…、お、お弁当作ってきたのだけど…」

「へ?」

「あ、貴方、日本語も理解出来ないのかしら?」

「いやいや。言ってる意味がは理解出来るが、理由が理解出来ん。さては、毒入りか?」

「違うわ。小町さんに頼まれて…」

「そっかぁ。小町が無理言って、すまんな」

「その、貴方のアルバイトしている姿も見たかったし…」

「まぁ、俺が働くなんてレアだしな」

「それに、その服が、…格好…て」

「え?なに?よく聞き取れなかったんだが」

「はぁぁぁ」

「マスター、ため息ついて、どうしたんですか?」

「いや、お嬢ちゃん達は大変だな」

「はい、この朴念仁には参ります」

「なんでディスられてるの?」

「わからないなら、気にするな。裏で飯食ってこい」

「うっす」

 

「私もここで頂くわ」

「お前もここで食うのかよ。てか、弁当はわかるんだが、その大荷物は何?」

「ティーセットよ」

「は?」

「ごめんなさい。紅茶用具一式よ」

「いや、日本語に直さなくてもわかるから。理由がわからんのだが」

「マスター、お湯を頂けるかしら」

「おう、いいぜ」

「マスターに、たまには紅茶を飲んで頂こうかと思ったのよ」

「お、紅茶か。たまにはいいな。お嬢ちゃん、頂くよ」

「はい、少し待ってくださいね」

 

「どうぞ」

「ん、香り・味共に素晴らしい。お嬢ちゃん、相当練習したんだろ?」

「はい」

「坊主、お前も見習えよ」

「鋭意努力しております」

「理系もそれぐらいやれば、私と同じ…に」

「俺も雪ノ下さんに教えてもらおうかなぁ…」

「え?姉さん?」

「さっきまで、川崎に教えてて、今は昼飯に出ていったぞ」

「なんで川崎さんと…。まあいいわ。比企谷君!」

「なんだ?」

「私が教えてあげるわ」

「いや、お前も受験勉強が…」

「黙りなさい!」

「はい…」

「アルバイトが終わったら、みっちり教えてあげるわ」

「拒否権は?」

「あると思う?」

「ないんですね…。はい、知ってました」

 

アルバイトの終了時間が憂鬱になる比企谷八幡でした。

 

 

 



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十八話

アルバイト2日目。雪ノ下の弁当を食べ、午後に備える。

 

「そんなに構えるな。疲れちまうぞ」

「はい。でも、なんかすげぇ見られてるんで…」

「何かしら?」

「なんでもありません」

「そう…」

「なんで帰らないんだよ…」

「何か言った?」

「何でもありませんです、はい」

「よろしい」

 

「マスター、比企谷君、ただいま」

「戻りました」

「あ~!雪乃ちゃんだ!」

「こんにちは、お二人さん」

「どうして、雪ノ下が」

「比企谷君にお弁当を届けにきたのよ。ね、比企谷君」

「あ、え、お、おう」

「ふ~ん、雪乃ちゃんがぁ…」

「ひ、比企谷!」

「お、おう、どうした?」

「あ、明日は私がお弁当作るよ」

「大丈夫よ、川崎さん。私が小町さんから依頼を受けているのだから。ゴールデンウィーク中は毎日、私が届けるわ」

「お、おい、それは悪いから…」

「貴方は黙りなさい」

「比企谷は黙って」

「…はい」

「じゃあ、間を取ってお姉さんが作ってあげる」

「勘弁してください」

「あんまり騒ぐなよ。ほかの客が入りにくくなるだろ」

「すいません」

「すいません」

「すいません」

 

「じゃあ沙希ちゃん、勉強再開しようか。比企谷君、コーヒー頂戴」

「かしこまりました」

「マスター、あとでピアノ弾いてもいい?」

「あぁ」

「ピアノ?」

「奥にあるんだ。雪ノ下さんがたまに弾いてる」

「私も弾いてるみようかしら…」

「雪ノ下も弾けるのか?」

「えぇ、一応…」

「雪乃ちゃんは、お堅いクラシックでしょ?」

「いけないかしら?比企谷君、何かリクエストはあるかしら?」

「リクエスト?そうだな…」

「葬送行進曲でいいかしら?」

「いや、死んでないからね。ゾンビじゃないから」

「あら、違ったの?」

「違うわ!雪ノ下は『猫のワルツ』とか得意そうだな」

「猫…。え、えぇ、弾けるわ」

「マスター、弾いてもいいかしら?」

「いいぞ」

 

♪♪♪♪♪♪

 

「…」

「比企谷君、どうだった?」

「…」

「比企谷君?」

「あ、すまん。見惚れてた…」

「え?」

「あ、いや、違う…、いや違わなくて…、その、すげぇ上手かったぞ」

「そ、そう…」

「雪乃ちゃんも比企谷君も顔が真っ赤だよ」

「…」

「…」

「チッ」

 

「坊主、今日はもういいぞ」

「はい、ありがとうございます。さて、帰るか…」

「比企谷君、何を言っているのかしら?」

「ほら、家で小町が待ってるから…」

「小町さんにはメールで連絡済みよ」

「ですよね…」

 

テーブルを借りて、陽乃さんのピアノをBGMにクタクタになるまで、理系の勉強会になった…。

 




――――――――――――――――――

気がつけば、UA 30000以上 お気に入り300以上
ありがとうございます。


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十九話

アルバイト3日目、午前中は予備校に行き、午後から店へ。

昼飯は雪ノ下が持ってくるとか言ってたからなぁ…。

 

「お疲れ様です」

「おう、来たな。お嬢ちゃんがお待ちかねだぞ」

「こんにちは、比企谷君」

「うす」

「さぁ、お昼ご飯にしましょう」

 

雪ノ下の弁当に舌鼓を打ったあと、仕事を始める。

 

「今日は雪ノ下さんと川崎は来てないんですね」

「姉さんもそんなに暇ではないわ」

「なるほどな。で、雪ノ下は暇なのか?」

「わ、私は…。そ、そう!比企谷君がちゃんと仕事をしてるか、監視してるのよ、奉仕部部長として」

「へいへい。仕事熱心なことで」

 

しばらくすると、独特な挨拶で元気に入店してくるお客さんが…。

 

「やっはろー!」

「お客様、静かにお願いいたします」

「ヒッキーが仕事してる…」

「悪いかよ」

「小町ちゃんに聞いた時は、嘘だと思ったらモン」→嘘だと思ったんだモン

「ちゃんとやってるよ」

「あ、ゆきのん!やっはろー!」

「だから、静かに」

「は~い」

「こんにちは、由比ヶ浜さん」

「とりあえず、お前ら座れ」

 

「ねぇねぇ、ゆきのん」

「なにかしら?」

「ヒッキー、なんか格好いいね」

「え、えぇ。ほんの少しだけね」

 

「ほい、お待たせ。二人してなんなんだよ」

「そうだ!ゆきのん、ズルイよ!ヒッキーがバイトしてたの昨日から知ってたんでしょ?」

「その…、ごめんなさい。友達を誘うとか、上手く出来なくて…」

「もう、仕方ないなぁ、ゆきのんは。今度は誘ってね」

「ええ、そうさせてもらうわ」

「それと、ヒッキー!明日は私がお弁当作ってあげるね」

「やめてください。死んでしまいます」

「お店に迷惑がかかってしまうわ」

「二人してともヒドイ!」

「由比ヶ浜さん、一緒に作りましょう」

「やったー!ゆきのん大好き!」

「雪ノ下、一曲弾いてやれよ」

「そうね」

「一曲?」

「奥にピアノがあるんだよ」

「へ~、知らなかった」

「俺もまったく気がつかなかった」

「何がいいかしら?」

「『子犬のワルツ』なんてどうだ?由比ヶ浜にぴったりだと思うが」

「子犬のワルツ?」

「俺はマンガ読んで知ったけど、なかなか軽快な曲だぞ」

「へぇ」

「興味深いマンガね」

「雪ノ下、頼む」

「ゆきのん、お願い」

「ええ、いいわよ」

 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪

 

「ゆきのん、すご~い!」

「さすが雪ノ下だな」

「そ、そうかしら」

 

「そうだ!ヒッキー、写真撮らせて」

「断る」

「えぇ~、いいじゃん」

「なんで、俺なんかの写真が撮りたいんだよ」

「だって、いろはちゃん誘ったら旅行中でゴールデンウィークは来れないから、写真送ってって」

「比企谷君、観念しなさい」

「わかったよ」

「ヒッキー、もうちょっと笑ってよ」

「嫌だね。俺が笑うとキモイとか言われかねん」

「もう!撮るよ」

 

「ゆ、由比ヶ浜さん」

「なに?」

「わ、私にも送ってもらえないかしら」

「うん、いいよ」

「何こそこそ話してんだよ」

「ヒッキー、女子トークに絡むとかキモイ!」

「盗み聞きしないでくれるかしら、盗聴谷君」

「へいへい。悪うございました」

 

「おう、坊主。今日はいいぞ」

「はい、お疲れ様です」

「さぁ、比企谷君始めましょうか」

「あ、やるのね…」

「ゆきのん、何するの?」

「今から、理系をみっちりと教えるのよ」

「あ、由比ヶ浜も一緒にやるか?」

「あ~!私、用事思い出した。じゃあね、ゆきのん、ヒッキー」

「逃げた…」

「逃げたわね…」

 

 

 



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二十話

アルバイト4日目。

 

「マスター」

「なんだ?」

「この店、女性客こんなに多かったんですか?」

「いや、オッサンばっかりだったがな」

「いやいや、オッサン肩身が狭そうなんですけど」

 

「いらっしゃいませ」

「あ、ヒキオじゃん」

「ヒキタニ君、はろはろ~」

「どうしたん?」

「バイト中だ」

「ヒキタニ君、バイトしてたんだね」

「まあな。そこ空いてるから、どうぞ」

「ん~」

「ご注文は?基本、ブレンドが多いけどな」

「ケーキとかはないの?」

「ないな」

「ふ~ん、じゃあブレンドで」

「はいよ」

 

「お待たせ」

「ねぇ、ヒキオ」

「あん?」

「ここにイケメンの店員が居るってウワサがあるんだけど、知らない?」

「ん?マスターと俺しか居ないからな。ガセだな」

「マスターとヒキタニ君、キマシタワー!!」

「姫菜、擬態しろし!」

「でも意外だな。葉山一筋の三浦がミーハーだとは思わなかった」

「あーしも、一応チェックしないとね」

「リア充の話題作りか。大変だな」

「すいませ~ん」

「悪いな。ゆっくりしてくれ」

「あんがと」

 

「ねぇねぇ、優美子」

「どうした?」

「ヒキタニ君、すごい笑顔で接客してるよ」

「なんか教室と違う…」

「それと、私達すごい睨まれてる…」

「な、なんで?」

「ウワサのイケメンて、ヒキタニ君なのかな?」

「まさか…」

「もう一回呼んでみればわかるかも…」

「ねぇ、ヒキオ」

「ん、なんだ」

「コーヒーおかわり」

「はいよ」

 

「やっぱり睨まれた…」

「じゃあ、ウワサのイケメンて…」

「ヒキオ!」

「ヒキタニ君!」

 

「こんにちは、比企谷君」

「やっはろー!」

「いらっしゃいませ」

「休憩してこい」

「はい、ありがとうございます」

 

「この玉子焼き、ジャリって…。由比ヶ浜か…」

「えへへ」

「いや、えへへじゃねぇから」

「この唐揚げは雪ノ下か」

「ええ、そうよ」

「旨いな。さすがだよ」

「むぅぅぅ」

「ほれ、食ってみろ」

「あ~ん」

「なにやってるの?」

「食べさせて」

「何言ってるの?」

「早く!あ~ん」

「わかったよ、ほれ」

「ぱくっ。えへへ」

「で、なんで雪ノ下は口開けてんだ?」

「ゆ、由比ヶ浜さんにやったのだから、私にも…」

「ほれ」

「あ~ん。…うふふ」

「ん?どうした?」

「比企谷君とこんなことする日が来るなんて、うふふ」

 

「そういえば、三浦と海老名さんが来たぞ」

「優美子と姫菜が?」

「なんか、この店にイケメン店員がいるってガセネタが出回ってるらしい」

「それで、女性客が多いのね」

「なんで、そんなガセネタが出回ったんだろうな」

「…」

「…」

「ん?なんだ?」

「なんでもない」

「なんでもないわ」

「それと、夕方ぐらいから、雪ノ下さん目当てのオッサンが増える」

「姉さんは、そんなに頻繁に来てるの?」

「結構来てるな。来てピアノ弾いてる。オッサン達は見惚れるからな」

「…貴方はどうなの?」

「まぁ、あれだけの美人が弾いてれば見るな。雪ノ下が弾いてる時にも…。なんでもない」

「何?何?」

「何かしら?」

「自分でもキモイと思ったから、言わない」

「ヒッキー、気になる!」

「さぁ、言いなさい!」

「仕事に戻らなきゃ」




―――――――――――――

何か長編になってきてしまいました(汗)
お付き合いありがとうございます。


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二十一話

ゴールデンウィーク最終日。

勉強とアルバイトの毎日…。やっぱり、あの両親の息子…。

 

今朝は小町に髪型をセットしてもらった。

 

「おはようございます」

「おう、おはよう。いいな、その髪型」

「ありがとうございます。妹にやってもらいました」

「今日も頼むぞ」

「はい」

 

「いらっしゃいませ」

「あ、比企谷…」

「おぅ、相模か」

「なんで、比企谷がここに…」

「バイトだよ。…あ~、相模」

「何?」

「ウワサを聞いて来たなら、ここにはイケメンはいないからな」

「そう…なんだ」

「無理して居なくてもいいからな」

「せっかく来たから、コーヒー頂戴」

「はいよ。カウンターでいいか」

「うん」

 

「はい、お待たせ」

「ありがと」

「え~と、相模…」

「何?」

「その…。文化祭では、悪かったな」

「え?」

「あのな、あれはワザとやったんだ…」

「どういうこと?」

「閉会式のセレモニーに相模が居なかったら、文化祭は成功とはいえないだろ?今まで頑張ってた連中が可哀想でな…。それに、相模をステージに連れてくるって信じて時間を稼いでくれてる人達にもな。なんとか相模に閉会式に来てほしかったんだ。俺にはあんな方法しか出来なかったんだ…」

「だからって…」

「今さらなのは、俺もわかってる…。それでもな…、せっかく話せる機会が出来たから言っておきたかったんだ」

「…」

「それは俺のオゴリだ。じゃあ、ごゆっくり」

 

 

「いらっしゃい」

「こんにちは、比企谷君」

「由比ヶ浜は?」

「今日は家族で出かけるそうよ」

「もう少しで休憩だから、待っててくれ」

「そうさせてもらうわ。…あら、相模さん」

「こ、こんにちは」

「貴方もウワサのイケメン目当てかしら?」

「まぁ、そうかな…」

「そう」

「雪ノ下さん」

「何かしら?」

「ちょっと話を聞いてもらえるかな?」

「え、えぇ、いいわよ。比企谷君、奥の席を借りるわ」

「おう」

 

「話というのは?」

「さっき、比企谷に文化祭でのことを謝られた」

「そう…」

「でも、なんかすっきりしないんだ」

「彼が最初にやらかしたのは覚えてる?」

「スローガン決めだよね?」

「そう。あの時の文実はバラバラだったわ。彼は集団をまとめるひとつの方法を取った。それは『共通の敵を作る』ということ」

「それって…」

「彼は文実の『敵』になったのよ」

「他にやり方は…」

「リーダーシップ…。そういう方法もあるけど、貴方にあったと思う?もちろん、私にもないわ」

「…」

「実際には『敵』どころか、一番仕事をしてたと言っても過言ではないわ」

「…」

「そして、閉会式。彼は貴方に相当辛辣なことを言ったらしいわね」

「うん…」

「あの時は、貴方を探すのに大勢では騒ぎになる。そこで私は時間稼ぎ、彼に探してもらう選択をしたわ。それしか方法がなかっと言い切ってもいいわ。そして、彼は貴方を見つけた…」

「ウチは…」

「そして、貴方への罵詈雑言。彼の立場・周りから評価、そして、あの場に葉山君が居たことを考えての彼なりの最善手だったのよ」

「…」

「結果、貴方は閉会式に間に合った。貴方は罵詈雑言を言われても閉会式に出た悲劇のヒロイン、彼は文実委員長を泣かせたヒール、そんなところかしらね」

「…」

「貴方はステップアップしたいと言ってたわね。ステータス的にはステップアップ出来たわ。問題は中身…。ここまで話して何も感じないなら、貴方にステップアップは無理ね」

「ウチは…」

「彼は変わろうと努力しているの。今までの彼なら接客なんてやろうともしなかったわ。彼は人に想いを伝える、相手の想いを受けとる。それが上手く出来てなくて苦い経験をして成長しようとしている。そんな彼を手助けしたくて、こんな話をしたの。貴方はどうなのかしら?」

 

「おい、雪ノ下。相模に何を言ったんだ?涙目になってるぞ。相模、あんまり気にするなよ」

「あら、貴方は相模さんをかばうのかしら?」

「雪ノ下の言葉は辛辣過ぎて、常人には耐えられないだろ」

「そうね。貴方は異常だから、何を言っても大丈夫そうね」

「俺も泣いてるからね、心で」

「相模さん、もう終わったことだから、今すぐ答えを出さなくてもいいわ。ゆっくり考えてみて」

 

「雪ノ下、相模と何を話していたんだ?」

「さぁ、女性であれば優しくするスケコマシ谷君には関係ないわ」

「なにそれ、語呂悪すぎ。しかも、スケコマシって何の嫌味?」

「ふんっ!」

「そうだ。今日は早めに終われるから、ファミレスで勉強見てくれないか?」

「貴方のオゴリなら、いいわよ」

「チクショウ、お嬢様のクセに貧乏人に…。わかったよ」

「うふふっ」




――――――――――――――――

サガミンにタネアカシ…。難しい…。
もう少し練り直すかも…。


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閑話 その三

相模南の邂逅

 

ユッコも遥も家族旅行…。

せっかく一緒にイケメンが居るとウワサのコーヒーショップへ行こうと思ったのに…。

仕方ない、一人で行こう。

 

「いらっしゃいませ」

 

なんで比企谷がいるの?しかも、髪の毛セットしてちょっと格好いいかも…。いや、比企谷はウチにあんなことを言ったんだ。

 

比企谷曰く、イケメンはガセネタらしい。

 

比企谷って、あんな笑顔出来るんだ。お客さんとも話をしてる。

 

「その…。文化祭では、悪かったな」

 

えっ?謝られた…。ウチを動かす為にワザとやった…。わからない…。

コーヒーはオゴリだと言って仕事に戻った…。

 

あっ、雪ノ下さん…。比企谷と同じ奉仕部の部長。雪ノ下さんなら、わかるかも…。

 

『敵』になる?わからない…。なんで、そんなことを…。

なんで悪役になってまで文化祭を成功させたかったの?

 

「おい、雪ノ下。相模に何を言ったんだ?涙目になってるぞ。相模、あんまり気にするなよ」

 

比企谷と雪ノ下さんが言い合いをしている。でも、なんだろう。お互いを見ている目が優しい気がする…。

もしかしたら、比企谷は…。

 

家に帰って思いかえす。ウチも成長しなきゃ!

まず、比企谷と雪ノ下さんに謝ろう。そこからだ!

 

でも、今日の比企谷…、格好よかったなぁ…。

 

 

――――――――――――――――

 

一色いろはは見てみたい

 

 

やっと家に着いた。もう夕方だ、早くしないと。

結衣先輩から場所は聞いてる。先輩の働いてる姿を生でも見たい!写真を見たら、余計にそう思ってしまった。

 

店内に入ると渋いおじ様が一人カウンターの中に。

コーヒーをもらって、店内を見回してると…。

 

「お嬢ちゃんもウワサを聞いて来たクチかい?」

「ウワサ?いえ、学校の先輩がアルバイトしてると聞いて…」

「そうか。あの坊主なら、もうあがっちまったぞ」

「そうなんですか…」

「また夏休みにでも頼むつもりだから、その時には来てやってくれ」

「はい」

夏休みには、絶対に見てやる!

 

 

――――――――――――――――

 

平塚静は恋(?)をする

 

「こんばんは!」

「いらっしゃい」

「あれ?比企谷君は?」

「黒髪のお嬢ちゃんと勉強だとよ」

「な~んだ。せっかく静ちゃん連れてきたのに」

「比企谷がどうかしたのか?」

「ここでアルバイトしてたの。静ちゃんにも見せたかったなぁ」

「比企谷がアルバイト!あの『働きたくないでごさる』とか言ってた比企谷が!」

「あの坊主は、コーヒーの入れ方を見たかったってのもあるがな」

「…」

「静ちゃん、どうしたの?」

「い、いやなんでもない」

「マスター、お客さんもいないし

、一曲弾いてもいいかな?」

「いいぞ。店もcloseにするか」

「で、では、私は失礼する」

「えっと…」

「平塚です。平塚静といいます。総武高で教師をしています」

「坊主のトコの先生か。平塚さん、酒はいけるかい?」

「えぇ」

「一杯付き合ってもらえるかい?」

「私で良ければ…」

「あのピアノを肴に、平塚さんみたいな美人に付き合ってもらったら最高だよ」

「び、美人…。恐縮です」

「坊主め、こんな美人の先生がいるなら、早く連れてこいって。はははっ!」

 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪

 

「マスター、私も一杯もらっていい?」

「おう、待ってろよ」

「静ちゃん、顔赤いよ」

「よ、酔っているんだ」

「ふ~ん、なるほどね」

「な、なんだ陽乃」

「なんでもない。ちなみに、マスター独身らしいよ」

「そ、そうか!」

 

平塚静も常連になりました。

 



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二十二話

ゴールデンウィークも終わり、奉仕部も平常運転に戻る。

本日は珈琲たいむ。何、ヤク○トの製品?千葉はロッテでしょ。

 

「そろそろアイスコーヒーだな」

「そうね」

「アイスコーヒーって、煎れたあとに冷やすの?」

「それでもいいんだが、水出しにしてみようと思う」

「へ~。お水でも出来るんだね」

「マスターに聞いてみよう。それにあう豆とかもあるだろうしな」

「コーヒーも奥が深いのね」

「なら、取り込まれないようにしないとな『深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのだ』か」

「何それ?中二?」

「ニーチェね」

「さすがユキペディアさんだ」

「その呼び方、やめてもらえるかしら」

「悪い。由比ヶ浜の意見もあながち間違ってないな。ラノベやアニメに多用されてるからな」

「へぇ」

 

来客を告げるノックがする。

 

「どうぞ」

「お邪魔します」

「さ、サガミン、やっはろー」

「ん?何か依頼か?」

「きょ、今日はその…」

「相模さん、とりあえず座ったら」

「ありがとう」

 

「んで、どうしたんだ?」

「どうして、学校だと気だるそうなの?」

「ハイテンションで挨拶したら『元気なのキモイ』って言われる。ソースは俺」

「うわぁ」

「うわぁ」

「うわぁ」

「んなことは、どうでもいいんだよ」

「そうだ、えっと…。比企谷、雪ノ下さん、結衣ちゃん、文化祭の時はごめんなさい」

「えっ!ちょ、待て待て。なんで相模が謝るんだよ」

「比企谷が謝ってくれた後、雪ノ下さんと話をしたの。それで…」

「雪ノ下、お前な…」

「過去のことを気にしない、貴方らしくないことをしたからよ」

「くっ!たしかに…」

「人は変わるものよ」

「それで、色々考えて…」

「相模、ちょっと待ってろ」

「えっ?」

 

「ほらよ。マスターほどの腕前じゃないが、それなりに旨いコーヒーのつもりだ」

「比企谷って、そんな笑い方するんだね」

「ん?」

「笑ってた方がいいよ。…その…いいから」

「何?」

「な、なんでもない!」

「むぅ!」

「ふん!」

「なんで由比ヶ浜むくれてるの?雪ノ下さん、睨まないでください」

「美味しい…。ありがとう」

「俺は相模に謝罪した。相模も俺達に謝罪した。それでいいだろ。な、お前らも」

「うん!」

「そうね」

「ありがとう」

 

 

憑き物が取れた表情で相模は席を立った。部室を出る間際に声をかける。

「相模、今年はお互いにいい文化祭にしような」

「…比企谷、その笑顔は反則だよ…」

「?」

「むぅぅぅ!」

「ふんっ!」

 

翌日から、相模と挨拶や一言二言ぐらい会話をするようになった。取り巻き二人も驚いていたが…。

何故か相模の顔が赤い気がしたが、気のせいだろう。



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二十三話

生徒会室。

毎度のことながら、あざとい後輩こと一色いろは生徒会長に拉致されてここにいる。

 

「副会長と書記はどうした?」

「備品の買い出しに行って、そのまま直帰という名のデートです」

「あの二人、上手くやってるんだな」

「そうですね。時々、二人で目配せしてるんで、買い出しをお願いしたりしてるんです」

「そういう気づかい出来るんだな」

「そうですよ。だから、先輩も私を気遣ってくださいねっ」

「あざといあざとい」

「あざとくないです~」

「ほら、ここ計算間違ってるぞ」

「あっ!すいません」

 

「こんにちは~」

「城廻先輩、こんにちは」

「うす」

「一色さん、また比企谷君に手伝ってもらってるの。ダメだよ~」

「は~い」

 

「比企谷君、この前はビックリしたよ~」

「あぁ、俺も驚きました」

「あの店でアルバイトしてるなんて」

「ええ、まぁ」

「また行くね。一色さんも一緒に行く?」

「はい、ぜひ~♪」

「バイト、ゴールデンウィークだけだったんですけど…」

「え?」

「え~、そうなんだ~。夏休みとかは?」

「未定ですね。なんせ、受験生なんで」

「先輩、私も行ったんですよ…」

「そうなのか?」

「そしたら、もうバイト終わってたんです!」

「仕方ないだろ」

「先輩が働いてる姿を見たかったです」

「あの服、格好良かったね~」

「馬子にも衣装ですよ」

「私も見たかった~」

「お前、由比ヶ浜に写メもらっただろ」

「生がいいです~」

「それ、お外で言っちゃダメ!」

 

「一色、これは書いたのお前だろ?」

「はい、そうですよ」

「文章が稚拙過ぎる。副会長のを手本に書いた方がいいぞ」

「比企谷君、厳しいね~」

「まぁ、雪ノ下よりは優しいつもりですよ」

「先輩だって、充分厳しいですよ~」

「よし。これを雪ノ下にみせるか」

「やめてください」

「二人は仲良しだねぇ~」

「そ、そんなことないですよ~」

「まぁ、ボッチの俺をからかって遊んでるだけですよ、こいつは」

 

「さて、今日はこれでいいか?」

「はい、ありがとうございました。これどうぞ」

「マッカンか。気が利くな」

「なんですか?口説いてるんですか?先輩だけに気を使ってるとかそんなことないんで無理ですごめんなさい」

「はいはい」

「あははは」

「じゃあ、俺は奉仕部行ってコーヒー飲んでから帰る」

「じゃあ、私も行くよ~」

「先輩!私も!」

「一色、お前の分は終わってないだろ」

「それは、明日で大丈夫ですっ」

「はぁぁ。わかったよ。行くぞ」

 

 

「ただいま」

「こんにちは~」

「お邪魔しま~す」

 

「いろはちゃん、城廻先輩、やっはろー!ヒッキーおかえり」

「城廻先輩、こんにちは。一色さん、備品の返却お疲れ様」

「おい!」

「備品なら、生徒会でもらってもいいですか?」

「ダメよ!」

「ダメだよ!」

「いいじゃないですか~」

「比企谷君は、その…私の…なのだから…」

「ヒッキーは、私の…だから…」

「?」

「?」

「?」

 

「コーヒー煎れるけど、飲むか?」

「いただくわ」

「わ~い、ヒッキーのコーヒーだ!」

「先輩、私にもください」

「城廻先輩は?」

「私ももらっていいの?」

「もちろん。店ほどではないですが」

「ありがと~♪」

 

めぐりゾーンに包まれまながら、活動をする奉仕部でした。

 






――――――――――――――――

この話には、サイカニウム(戸塚成分)が足りない!!(笑)


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二十四話

今日も社畜のごとく、奉仕部へ。

 

「う~す」

「こんにちは、比企谷君」

「由比ヶ浜は休みだとよ」

「連絡が来ているわ。三浦さんたちと、出かけるそうよ」

「Baskin-Robbins行ったよ」

「そう」

「まぁ、二人きりになれて丁度良かった」

「二人きり…。うふふ」

「どうした?」

「はっ!あ、貴方は何かいかがわしいことを考えているのでは…」

「違ぇよ。由比ヶ浜の誕生日が近いから、その相談だよ」

「…そ、そう」

「去年は、ほら、あの、二人で見ただろ?まぁ、小町にしてやられたが…」

「ひ、比企谷君!」

「うおっ!ビックリした。急に大きな声出すなよ。どうした?」

「こ、ここ、今年も二人で見に行かないかしら?」

「まぁ、そうだな…。それがいいかな」

「えぇ、そうしましょう」

「参考書でもプレゼントしてやるか」

「ふふっ。それもいいかもしれないわね」

「冗談は置いといて、どんなモノがいいかね」

「そうね…」

 

しばらく思案しても名案は出ず…

 

「お前たち、そろそろ下校の時間だぞ」

「平塚先生、ノックを…」

「いやぁ、すまんすまん」

「雪ノ下、この後時間あるか?」

「え、ええ、大丈夫よ」

「コーヒーでも飲みながら、考えるか?」

「えぇ、いいわね」

「比企谷、コーヒーとは?」

「行きつけの店があるので、そこへ行くつもりです」

「ひ、比企谷」

「はい、なんですか?」

「その店のマスターは独身なのか?」

「ええ、たぶんですが。奥さんや彼女の話は一切出ないですね…。って、平塚先生、なんで知ってるんですか?」

「あぁ、陽乃に連れられてな。

…そうか、独身か…。うんうん」

(マスター、貰ってあげて!)

「鍵はここで預かろう」

「はい、では失礼します」

 

自転車をひき、雪ノ下と一緒に歩き出すと…。

 

「はちま~ん!」

「おう、戸塚!部活終わったのか?」

「うん、今日は雪ノ下さんと帰るんだ」

「ああ、相談事があってな…」

「…」

「雪ノ下?なんで戸塚を睨んでるんだ?」

「は!ごめんなさい」

「そうだ!戸塚、由比ヶ浜の誕生日パーティーをやりたいんだが、決まったら参加するか?」

「僕も参加していいの?」

「戸塚なら大歓迎だ!な、雪ノ下」

「ええ、そうね」

「嬉しいな。じゃあ、決まったら教えてね」

「おう」

「じゃあ、僕帰るね。バイバ~イ」

「おう、また明日な」

 

「なぁ、雪ノ下」

「なにかしら?」

「俺の隣を歩いていて平気か?」

「大丈夫よ、腐敗臭はしないから」

「ゾンビじゃねぇから」

「ふふっ。貴方の悪評なんて知らないわ。たまには、いいじゃない」

「そうかい…」

 

 

店に着き、コーヒーを飲む。

「去年はエプロンと犬の首輪だろ?」

「そうね。何がいいかしら…」

「赤本?参考書?問題集?」

「貴方は、由比ヶ浜さんに嫌われたいのかしら?」

「冗談だよ…。アクセサリーは重いよなぁ…。てか、俺からだとキモイよなぁ…」

「そ、そうね、アクセサリーはやめなさい。…私には…アクセサリーでも…」

「え?何?」

「なんでもないわ」

「う~ん、またペット用品が無難かなぁ」

「私はお菓子作りの道具にしましょうか。由比ヶ浜さん、がんばってるみたいだし…」

「あとは現物を見て決めよう」

「何を話してるんだい?」

「おう、川崎。予備校の帰りか?」

「こんにちは、川崎さん。由比ヶ浜さんの誕生日プレゼントの相談よ」

「へぇ」

「川崎も誕生日パーティーやるって言ったら参加するか?」

「いいのかい?」

「えぇ、歓迎するわ」

「場所はどうする?」

「カラオケボックスかしら」

「それが無難か…」

「ここ使うか?」

「マスター、いいんですか?」

「場所代はいらない。その代わり、条件がある」

「な、なんでしょうか?」

「坊主、夏休みのバイトを頼む」

「あ、いや、ほら…、俺は受験生じゃないですか」

「平塚さんから、成績は悪くないと聞いているが」

「俺のプライバシーはないの?」

「比企谷君、観念しなさい」

「比企谷、また遊びに来てやるよ」

「勉強の息抜き程度に来てくれればいい。それでどうだ?」

「…わかりました」

 

比企谷八幡、夏休みのアルバイト決定!

 

 




―――――――――――――――

戸塚、初登場!
…材木座?誰それ


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二十五話

休日のららぽ入口10:00…。

待ち合わせの30分前…。

なんで、雪ノ下さんもう居るの?なんかもじもじして、楽しみにしてたの?しかも、去年と同じツインテール…。

 

あ、ナンパされてる…。

男が半泣きで去っていく。御愁傷様です。

通りすぎる男達がチラチラ見てる…。行きずれぇ!

 

あっ!気付かれた!仕方ない行くか…。

 

「おはようさん、早いな」

「おはよう。時間前に来るのは当然よ」

「あ~、その、なんだ…。ツインテールもやっぱり似合うな」

「そ、そう…。ありがと…」

「い、行くか」

「え、ええ」

 

「さて、先にキッチン用品を見るか」

「先にペットコーナーでもいいわよ」

「ダメだ。雪ノ下が仔猫から離れなくなるからな」

「う!反論出来ないわ」

「と、いう訳だ。行くぞ」

 

「良いものあったか?」

「えぇ、これにするわ」

 

「少し休むか」

「ええ」

「あれ~。雪乃ちゃんと比企谷君だぁ」

「何、この嫌な既視感…」

「まったくだわ…」

「ねぇ、デート?デートなの?デートだよね?」

(雪ノ下さんは俺達を動揺させようとしてるはず。ならば…)

「ええ、そうですよ」

「え?」

「で、で、で、デート…。比企谷君とデート…」

「ゆ、雪ノ下?」

「雪乃ちゃん?」

「うふふ…。比企谷君とデート…」

「誤爆したぁぁぁ!」

 

「…と、いう訳ですよ、雪ノ下さん」

「な~んだ」

「雪ノ下、落ち着いたか?」

「まったく…。ひ、比企谷君とデートなんて、嬉しくないわ」

(何、このツンデレのテンプレなセリフ)

「ねぇねぇ、私も参加していいかな?」

「どうする?雪ノ下」

「余計なことをしないと約束出来るかしら?」

「しないわよ。したこともない」

「雪ノ下さん、場所はいつものコーヒーショップですよ」

「うっ!本当に余計なこと出来ない…」

「どういうことかしら?」

「なんでもねぇよ。じゃあ、雪ノ下さんも参加だな」

 

ペットコーナーで犬用のガム・ボール等を購入。

雪ノ下はというと…。

 

「にゃ~」

「…」

「にゃにゃ?」

「…なぁ」

「にゃん」

「…雪ノ下」

「にゃにゃにゃ~」

「…そろそろ飯にしないか?」

「にゃ!」

「雪ノ下さん…」

「にゃにかしら」

「ぷっ!」

「忘れなさい」

「いや、それは…」

「わ・す・れ・な・さ・い!!」

「はい!忘れました!」

「それで、何かしら?」

「いや、昼飯にしないかと…」

「そうね」

「簡単なモンでいいか?」

「ええ、いいわよ」

 

「さて、買い物も終わって、飯も食ったし、俺は本屋に行きたいんだが、どうする?」

「そうね、私も!行こうかしら…」

 

「嘘…。ヒッキーとゆきのん…」

「あ、由比ヶ浜」

「由比ヶ浜さん、これは違うのよ…」

「だって、休みに二人で…」

「由比ヶ浜さん、誤解よ!」

「誤解じゃないよ!だって…」

「あ~、由比ヶ浜」

「なんか、聞きたくないよ…」

「そう言わずに、まず聞け」

「…何?」

「一年前にも、同じ様なことなかったか?」

「…あったかも」

「その時、俺達が何を買っていたか知ってるだろ?」

「あっ!」

「ネタばらしになっちまったが、そういう事だ」

「由比ヶ浜さん、私がこの男と、で、で、で、デートなんてするわけないでしょ!」

「へいへい、俺で悪かったな」

「こほん。それとこの男は置いといて」

「俺、置いてかれるの?」

「由比ヶ浜さん、誕生日パーティーも考えているから」

「うわぁ、ありがとう、ゆきのん!」

「三浦さんたちとも、パーティーはあるでしょうから、また日時を調整しましょう」

「うん、わかった!」

「じゃあな、由比ヶ浜」

「また、明日。由比ヶ浜さん」

「ばいば~い」

 

「なんか、疲れたな」

「えぇ」

「帰るか」

「えぇ」

 

 

 

 




―――――――――――――――

あっ!コーヒー出てこなかった!


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二十六話

「小町さん、生クリームを泡立ててくれるかしら」

「アイアイサー!」

「一色さん、クッキーの方は順調かしら」

「任せてください!」

 

女性陣がキッチンで忙しく働いている。

う~ん、働きたくないでござる。

「比企谷君、出来た料理を並べてくれるかしら」

「へ~い。戸塚、手伝ってくれ」

「わかった」

「八幡、我は?」

「届いてるピザを持ってきてくれ」

「承知した!」

「ひゃっはろー!」

「雪ノ下さん、まだ早いですよ」

「いつもはピアノだけど、今日はバイオリン持ってきたから、練習したくてね」

「…さすが、上流階級」

「邪魔しないから、練習させてね」

「はいはい」

 

♪♪♪♪♪♪♪♪

 

「なんで、曲のチョイスが『ライオン』なんですか、ヲタリストですか?」

「Y〇uTubeで見たからね。比企谷君、好きでしょ?」

「俺も好きですが、材木座が感涙してます…」

「八幡、この曲知ってるの?格好いい曲だね」

「少し前のアニソンだ」

「へぇ。そのアニメ面白い?」

「面白いぞ」

「今度、一緒に見てくれる?」

「お、おう」

 

「こんにちは」

「おう、相模」

「もう準備出来てるんだ。ウチは手伝わなくて大丈夫だったの」

「大丈夫だ。それとも、雪ノ下の下で準備したかったか?」

「…遠慮する」

「とりあえず、くつろいで待っててくれ」

 

「こんにちは~」

「城廻先輩、こんにちは」

「卒業生の私も参加していいのかな~?」

「ノリノリの卒業生に聞かせたいですね…」

「比企谷君、なんか言った?」

「なんでもないです」

「はるさんも居るなら大丈夫かな」

 

「こんにちは」

「こんにちはッス」

「こんにちは!」

「川崎兄弟も来たな」

「はーちゃん!」

「けーちゃん、よく来たね」

「うん!」

「お兄さん、俺も居るッス」

「俺をお兄さんと呼ぶな!埋めるぞ」

「ヒドイッス!」

「その前に、私がアンタを埋めてやる」

「ちっ!命拾いしたな」

「ゴメンね、手伝えなくて…」

「気にするな。それに、雪ノ下と川崎が同じキッチンに居たら、バトルになりそうだしな」

「私はしないよ」

「…雪ノ下が対抗心燃やしそうだからな」

「何かしら、比企谷君」

「ナンデモアリマセン」

「まったく…。そろそろ由比ヶ浜さんのエスコートを…」

「了解」

「平塚先生はまだなのね」

「静ちゃん、メイクに手間取っているかな」

「ぷぶっ!そうかもしれませんね」

「どういうことかしら?」

「そのうち、わかるさ」

「?」

「じゃあ、行ってくる」

 

 

「ふぇ~。ここでやるんだね」

「あぁ。そのおかげで、俺の夏休みが…」

「ヒッキー?」

「なんでもない、入れよ」

 

「誕生日!おめでとう!!」

 

「雪ノ下、ケーキを」

「えぇ」

「すごい!ゆきのんの手作り?」

「小町さんと一色さんにも手伝ってもらったわ」

「ありがとう!!」

「由比ヶ浜、ろうそくの火を」

「ふ~~~~~~~~~!」

「わぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「おめでとう!」

 

「由比ヶ浜、俺からのプレゼントだ」

「ありがとう!なんだろう」

「開けてみな」

「えへへ。…ヒッキー、何これ?」

「参考書」

「ヒッキー!ヒドイ!キモイ!」

「キモイ関係ないよね?冗談だよ。こっちが本命」

「もう!…これは…」

「サブレのオモチャとか詰め合わせ」

「ヒッキー、ありがとう!」

「由比ヶ浜さん、これは私から」

「ゆきのん、ありがとう!何かなぁ…。ゆきのん?これ…」

「参考書よ」

「ふふっ」

「くくっ」

「もう!ゆきのんまで!」

「冗談よ。こっちが本物よ」

「これは…。キッチン用品?」

「えぇ、お菓子とか頑張っているのでしょう?」

「ゆきのん、ありがとう!」

「参考書もちゃんと持って帰れよ」

「えぇ~!」

 

「いいな、若いモンは」

「みんな、いい生徒達です」

「平塚さん、生徒に慕われてるね」

「はい、教師冥利につきます」

「みんな、気持ちのいい連中だ。今日は肩の力抜いたらどうだい?」

「いえ、そんな…」

「ちょっと早いが、飲むかい?」

「え、あ、あの…。頂きます」

 

「雪ノ下さん」

「なに、比企谷君」

「平塚先生がスカートなんですが…」

「うん、そうだね」

「やっぱり、そういうことなんですよね?」

「静ちゃんも、わかりやすいなぁ」

 

「ねぇ、さがみん」

「なに?」

「なんで、ヒッキーの隣に座ってるの?」

「え?あの、なんとなく…」

「由比ヶ浜、どこに座ってもいいだろ」

「ヒッキー!こっちに座って!」

「へいへい」

「えへへ」

 

「由比ヶ浜、京華がこれを」

「ゆぃちゃん、これあげる」

「けーちゃん、ありがとう」

「おっ、似顔絵か。お団子頭が由比ヶ浜そっくりだな」

「そうね」

「ゆぃちゃん、こんどあそんでね」

「わかったよ、けーちゃん。遊ぼうね」

 

 

「諸君、そろそろいい時間だ」

「お、もうこんな時間か」

「名残惜しいけどな」

「比企谷君、由比ヶ浜さんをお願い」

「おう、じゃあ行くぞ、由比ヶ浜」

「みんな、ありがとう。またね」

 

 

「楽しかったなぁ」

「楽しんでもらえて、何よりだ」

「次はヒッキーの誕生日だね」

「俺はいいよ」

「ダメだよ!絶対にやるからね」

「お手柔らかに」

「えへへ」

 

「戻ったぞ。悪いな先に片付けてもらって」

「大丈夫よ」

「大人組は飲んでますけどね」

「マスター、その肴はどうしたんですか?」

「雪ノ下の嬢ちゃんお手製だ」

「雪乃ちゃんは料理上手だからね」

「姉さん、飲み過ぎないでね」

「平塚先生もですよ」

「問題ない」

「雪乃さん、今度料理教えてください」

「小町さん、出来てるじゃない」

「いやいや、雪乃さんの料理は小町より美味しかったですから」

「そうね、今度一緒に料理しましょう」

「やったー!」

「小町、ほどほどにな」

 

「比企谷君」

「ん?」

「次は貴方の誕生日ね」

「由比ヶ浜にも言われたよ」

「ふふっ、覚悟しなさい。逃がさないわよ」

「怖いよ、何されるんだよ」

「しっかりお祝いしてあげるわ」

「お手柔らかに頼む」

 

 




―――――――――――――――――――

なんか、難しかった…


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二十七話

奉仕部部室

 

「もうすぐ夏休みだね。海とか行きたいなぁ」

「雪ノ下」

「何かしら?」

「由比ヶ浜が現実逃避してるんだが…」

「そうね…」

「夏祭りもいいよね」

「そろそろ、現実に戻した方が、いいか?」

「そうしましょう」

「おい、由比ヶ浜

「聞きたくない…」

「由比ヶ浜さん、現実から目をそらしてはダメよ」

「嫌だ」

「夏休みの前には期末試験があるんだぞ」

「ヒッキー、なんで言うの!キモイ!」

「キモイ関係ないからね」

「由比ヶ浜さん、比企谷君は気持ち悪いけど、期末試験は事実よ」

「おい、キモイ肯定するなよ」

「ゆきのん、助けて!」

「雪ノ下、由比ヶ浜の勉強見てやれよ」

「そうね。由比ヶ浜さん、勉強会する?」

「わ~い」

「現金なヤツだな」

「ヒッキーは来ないの?」

「俺は呼ばれてない」

「ねぇねぇ、ヒッキーは呼ばないの?」

「誠に遺憾だけれども、ひ、比企谷君も来るのかしら?遺憾だけど」

「なんで、二回言ったの?大事なことなの?遺憾なら行かねぇよ」

「そ、そんなつもりでは…」

「ヒッキーも一緒に勉強しようよ~」

「わかったよ。雪ノ下、悪いが俺の理系科目も見てくれると助かる」

「そ、そうね」

「三人で勉強会だね」

「遊びじゃないからな」

「由比ヶ浜さん、私が教えるからには、上位を目指しましょう」

「え?ゆきのん?目が怖いよ」

「良かったな、由比ヶ浜」

「ひ、ヒッキー、助けてくれないの…」

「比企谷君、貴方もよ」

「マジか!」

「ふふふっ」

「怖ぇよ」

 

「こんにちは」

「いらっしゃい」

「マスター、ブレンド3つ。また勉強させてください」

「好きなトコ使いな。コーヒー持っていってやるから」

「ありがとうございます」

 

「う~ん、ゆきのん、もう無理…」

「そうね、今日はこれくらいにしましょうか」

「もういい時間だしな」

「こんばんは」

「平塚さん、いらっしゃい」

「平塚先生、こんばんは」

「な!お前たち、何をしている…」

「試験勉強ですけど…。雪ノ下、由比ヶ浜、帰るぞ」

「え?ヒッキー?」

「比企谷君?」

「平塚先生、ごゆっくり」

「ひ、比企谷!違うんだ!」

「まあまあ。お前ら早くしろ」

「ヒッキー待ってよ」

「比企谷君、説明しなさい」

「後でな。マスター、ご馳走さまでした」

 

「ヒッキー、どうしたの?」

「比企谷君、説明を」

「平塚先生は、おそらくマスターに気がある…」

「やっぱり…」

「そうなの、比企谷君」

「この前、雪ノ下さんとも話したけど、どうやらそうらしい」

「そう、それで…」

「ま、俺にはこれぐらいの気づかいしか出来ないがな」

「貴方にも、そういう気づかいが出来るのね…」

 

数日後

 

「う~す」

「こんにちは、比企谷君」

「由比ヶ浜は、三浦達とカラオケだとよ。期末試験の打ち上げだとか…。さすがリア充」

「そう…」

「あ~、雪ノ下」

「何かしら」

「数学のテストとかな、ペンが思いの外進んだよ。ありがとな」

「そう」

「その…なんだ…、俺達も打ち上げやるか?コーヒーぐらいなら奢るぞ」

「どういう風の吹きまわしかしら…」

「嫌なら断ってくれ」

「そうね。依頼もないし、行きましょうか」

「でも、店に平塚先生が来る前には帰るぞ」

「ふふっ。そうね」

 

数日後

 

「やっはろー!」

「う~す」

「由比ヶ浜さん、比企谷君、こんにちは」

「ゆきのんのおかげで、赤点回避どころか、結構好成績だったよ。ありがとう♪」

「由比ヶ浜さん、暑いわ」

「えへへ」

「比企谷君はどうだったの?」

「理系もそこそこ良かった、ありがとな」

「貴方は、やれば出来るのに…」

「ちなみに、国語は一位だった」

「あら、奇遇ね。私も一位よ」

「ヤダこの二人…」

 

「これで夏休みは遊べるぞ~!」

「何を言ってるのかしら、由比ヶ浜さん」

「お前、受験生だろ」

「私がしっかり見てあげるわ」

「うわ~ん、ゆきのんの目が怖いよ~」

 




―――――――――――――――

次回から夏休み編です。

関係ないけど、青ブタ劇場版面白かった


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二十八話

夏休み…。社畜の如く行かなければならない学校もなく…

 

「おい、八幡。早くバイトへ行け」

「俺のモノローグの邪魔をするな、クソ親父」

「いいから、早く行け」

「おのれ…」

 

「おはようございます」

「おう、今日から頼むな」

「うす」

 

「マスター、あそこの蛍光灯が切れてますよ」

「倉庫の予備を出してくれ」

 

「マスター、予備ないですよ」

「仕方ない。坊主、買いに行ってきてくれ」

「うす」

「ちゃんと、領収書もらってこいよ」

 

(早く蛍光灯交換しないとな…)

「…八幡?」

「お前…」

「『お前』じゃない。留美」

「ルミルミ、こんなところで何をやってるんだ?」

「ルミルミじゃない。クラスの…。その…、友達と…待ち合わせしてるの」

「そっか。友達か…」

「うん。友達…。待ち合わせの時間まで少しあるから、遠回りしてたの。八幡は?それにその格好…」

「そこのコーヒー屋でバイト中」

「ふ~ん」

「寄って行くか?」

「うん」

 

「只今帰りました。その辺りに座ってくれ」

「わかった」

「坊主…、そんな娘まで…」

「何を考えてるんですか。違いますよ。マスターのスペシャルをこの娘に」

「はいよ」

 

「お嬢ちゃん、どうぞ」

「ありがとう」

「留美、どうだ?」

「甘いけど、美味しい」

「良かった。時間までゆっくりしてくれ」

「うん」

 

留美が居なくなってから、しばらくして…。

 

「いらっしゃいま…、げ!」

「比企谷じゃん。何その格好と髪型。ウケるんですけど」

「ウケねぇから。バイトだよ」

「へぇ」

「で、なんで折本はここに?」

「この店にイケメンが居るってウワサが…。なるほどね」

「何を納得してるか知らんが、そのウワサはガセだ。わかったら帰れ」

「何それ、ウケるwww」

「ウケねぇから」

「ねぇ、比企谷。アイスコーヒーちょうだい。これでお客だから文句ないでしょ?」

「わかったよ。適当に座っとけ」

 

「ほれ、お待たせ。お友達はどうした?」

「受験勉強してるよ」

「お前はいいのかよ?」

「私は推薦もらえそうだから。そういう比企谷は?」

「普通受験だけど、合格判定もらえてるからな」

「余裕なんだ。ウケる」

「だから、ウケねぇよ」

 

「いらっしゃいま…げ!」

「『げ!』って、なんですか!かわいい後輩が遊びに来ましたよ♪」

「うぜぇ!あと、あざとい。遊びに来たなら帰れ。俺は仕事してるんだ」

「もう!本当は嬉しいクセに」

「ウレシイデスヨ」

「嬉しいって…。はっ!なんですか告白ですか『お前とコーヒー飲みたい』的な感じですかせめてバイト終わってからにしてくださいごめんなさい」

「はいはい。適当に座っとけ」

「ぶ~!」

「ここ座る?」

「えっと、海浜総合の…」

「折本かおり。クリスマスイベント以来だね、総武の生徒会長ちゃん」

「一色いろはです。じゃあ、失礼します…。折本さんはどうしてここに?」

「イケメン店員が居るってウワサがあったからね」

「あぁ、海浜までウワサ届いてるんですね」

「そうそう。来たら比企谷が居たからさ、マジでウケたよ」

「じゃあ、ハズレでしたね」

「どうして、そう思うの?」

「だって先輩ですよ」

「そう思うなら、なんで一色ちゃんは来たの?」

「そ、それは…」

「比企谷、中学の時より格好良くなった…。今、告白されたら…」

「え?」

「なんでもないよ。私、帰るね。比企谷!また来るよ」

「また来るのかよ…」

「何それ、ウケるwww」

「草生やすな。じゃなあ」

「先輩…」

「なんだよ」

「爆発しろ」

「しねぇよ。訳がわからん」




――――――――――――――――

ルミルミと折本、初登場!


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二十九話

今日のバイトは夕方からなので、図書館で勉強。野生のバニーガールとか居ないかなぁ…。

 

イヤホンをして外界と意識を切り離して勉強に没頭する…。

 

問題集の項目が変わるタイミングで一息。イヤホンを外し外の世界へと戻る。

 

「こんにちは、比企谷君」

「うっ!…。脅かすなよ」

「こんにちは、比企谷君」

「こ、こんにちは。どうしたんだ、こんなところに」

「小町さんに聞いたわ」

「俺のプライバシー&プライベート…」

「あるわけないでしょ」

「ですよね…」

「お昼はどうするのかしら?」

「コンビニかな」

「お弁当を作ってきたのだけど…」

「何故?」

「小町さんにお願いされたの」

「図書館のどこで食うんだよ」

「司書の方に確認したら、中庭なら大丈夫だそうよ」

「わかった。先に行っててくれ。マッカン買ってくる」

「ブラックではないの?」

「頭使ったからな。雪ノ下は紅茶でいいか?」

「ええ、お願いするわ」

 

「ご馳走さま。相変わらず旨かった」

「お粗末様でした。午後はどうするのかしら?」

「夕方からバイトだから、もう少し勉強していくよ」

「そう…。私も本を読んでいこうかしら…」

 

俺は勉強、雪ノ下は読書に没頭する。

勉強に集中していると、雪ノ下に肩を叩かれる。

「比企谷君、時間は大丈夫?」

「あっ、ヤベ!」

 

図書館の玄関を一緒に出る。

「悪いな、雪ノ下。弁当もらったのに、何も相手をしなくて」

「気にしないで、私がやりたくてやったことだから」

「そうか、じゃあまたな」

「比企谷君」

「ん?」

「いってらっしゃい」

「お、おう。行ってきます」

昼は小町に頼まれて弁当作ったって言ってたけど、今は…。言葉の綾かな。しかも、いってらっしゃいって…。

 

店に着き、着替えて髪をセットして店内へ出る。

 

「坊主、今日からも頼むぞ」

「うす」

「あ~、比企谷く~ん♪」

「城廻先輩、いらっしゃいませ」

「はぁぁ」

「どうしたんですか、ため息ついて。俺の顔がキモイですか?」

「ち、違うよぉ。比企谷君は…だから…」

「?」

「今から合コンなんだよぉ」

「さすが女子大生ですね」

「お酒はまだ飲めないし、男の人が絡んでくるのが…」

「城廻先輩、苦手そうですね」

「そうだぁ!比企谷君、写真撮らせて」

「あぁ、虫除けですか。俺で良ければいいですよ」

「…なんで、隣に来たんですか?」

「2ショットで撮らないと信憑性がないからね。もっと寄ってくれないと入らないよ」

近い!いい匂い!柔らかい!

「比企谷君、ありがとう♪」

「どういたしまして」

 

翌日、城廻先輩が友人とやってきた。

 

「いらっしゃいませ」

「へぇ~、君がめぐりの彼氏なんだ」

城廻先輩がペロッと舌を出して視線をこちらに送ってきた…。すげぇ可愛い。この人の彼氏になる男か羨ましい!

察しましたよ、城廻先輩。

 

「ええ、まあ」

「比企谷君は、おしゃべりが苦手だから、勘弁してあげて」

「めぐりのこと、大事にしてあげてね」

「うす」

 

城廻先輩と友人はしばくコーヒーを飲んでいたが、城廻先輩の顔が終始赤かった…。冷房弱かったかな…。



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三十話

予備校の後、バイトに入る。

今日はバイトの後に店の一角で雪ノ下と由比ヶ浜と勉強会の予定だ。

夕暮れ時、お客は雪ノ下と由比ヶ浜のみ。由比ヶ浜の話に雪ノ下が相槌を打つ。

そんな静寂を破るお客様が来店しました。

 

「比企谷君!」

「あ、雪ノ下さん、いらっしゃいませ」

「どういうことか説明して!」

「何をですか?」

「めぐりと付き合ってるって、どういうこと!」

「!!」

「!!」

「?」

「ひ、ヒッキー…?」

「ひ、比企谷君、どうやって城廻先輩を脅したのかしら?」

「由比ヶ浜、何故に半べそなんだ?雪ノ下、まず携帯をしまってくれ。雪ノ下さん、なんですかそれは?知らないですよ、胸ぐら掴まないでください。落ち着いてください!」

 

「雪ノ下さん。どういう経緯で俺と城廻先輩が付き合ってることになってるんですか?」

「めぐりと共通の知り合いから聞いたんだけど、めぐりに彼氏が出来て、それがこの店の男の子だと。写真も見たって言ってた」

「あぁ、そういうことか」

「比企谷君、一人で納得してないで、私達にわかるように説明しなさい」

「雪ノ下、睨むなよ」

「ヒッキー、早く説明してよ」

「いやな、城廻先輩が合コンの虫除けが欲しいってことで、写真を撮ったんだよ。それが彼氏って話に誤変換されてるだけだ」

「な~んだ、ヒッキー驚かさないでよ」

「奉仕部から犯罪者を出さなくて良かったわ」

「めぐりったら…」

 

もう一人、騒がしい来客が…。

 

「先輩!なんですか、あの城廻先輩との写真は!」

「一色、今その話は終わったところだ」

「二人でくっついて、鼻の下のばして」

「…比企谷君?」

「…ヒッキー?」

「だから説明しただろ。虫除けに写真を撮ったって」

「『二人で』とは言ってないわよね?」

「言ってないが、何か問題があるのか?」

「ヒッキー、ズルイ!キモイ!」

「今、めぐりに連絡したら、近くに居るから来るって」

 

「こんにちは~♪」

「城廻先輩、助けてください」

「めぐり、写真見せて!」

「は~い」

「こ、これは…」

「見方によってはラブラブカップル…」

「先輩、何やってるんですか…」

「城廻先輩の要望通りに写っただけだ」

「比企谷君、助かったよ~」

「ヒッキー!私とも撮って!」

「比企谷君、私と撮りなさい」

「先輩!私と!」

「なんでだよ」

「こ、告白されたりして、断るのに」

「そ、そうね。私は美少女だから、虫除けが必要なのよ」

「せんぱ~い、私も断るの大変なんで」

「お前らに悪評が拡がるから出来ん。それに、相手が3人同じって、可笑しいだろ」

「うっ!」

「確かに…」

「むぅ…」

「その論法だと、私は大丈夫だよね」

「ゆ、雪ノ下さんは、ほら、これがあれだから…」

「大丈夫だよね?」

「…はい」

「ヒッキー!やっぱり私とも撮って!」

「私も!」

「私もです!」

「はぁ~、わかったよ」

「比企谷君、ごめんね~」

 

この後、勉強会にはならず、写真撮影会でした。

 

 




―――――――――――――

長いなぁ。こんなに長い連載になってしまって、良いのでしょうか…


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閑話 その四

親父達の話

 

とある日の店内

 

「沙希ちゃん、またね」

「陽乃さん、またお願いします」

 

「おい、陽乃。今の娘さんは?」

「川崎沙希ちゃん。雪乃ちゃん達の同級生だよ」

「ほう。じゃあ、受験生か」

「そう。勉強見てあげてるんだ。父さん、私は先に帰るね」

「おう、気をつけてな」

 

「雪ノ下、どうした?」

「どこかで見た気がするんだよ」

「その歳でナンパか?」

「比企谷と一緒にするな」

「俺は小町一筋だ。可愛いぞ」

「うちの結衣の方が可愛いね。嫁さんに似て胸も…」

「うちの娘達は美人姉妹で有名だからな」

「それで?どこかで見たって?」

「見たというか、面影というか…」

「ん?青みかかった髪、鋭い目つき…」

「あっ!『川崎』って言ったよな?」

「確か…」

「クラス違ったけど、川崎ってヤツ居たよな?」

「ああ、ぶっきらぼうだけど、いいヤツだったな」

「似てないか?」

「似てるかも…」

「たぶん、そうだぞ」

「世間は狭いなぁ…」

 

 

マスターと平塚静の話

 

閉店後の店内

 

「あのお嬢ちゃんと坊主には、そんなことが…」

「そんなことがあって、比企谷になついているだと思います」

「千葉村で林間学校かぁ。俺も若い頃は単車にテントとシュラフ積んでキャンプへ行ったなぁ」

「今、流行のソロキャンの先駆けですね」

「久しぶりに、キャンプも行きたいなぁ」

「じゃ、じゃあ、私と…」

「坊主でも連れ出すか。…平塚さん何か…」

「い、いえ、何も…」

「そうだ。平塚さんも一緒にどうですか?嬢ちゃん達も誘って」

「い、いいですね」

「よし!坊主達に話してみるか」

 

 

小町と大志

 

「比企谷さん、もう限界ッス。宿題はここまでにしましょう」

「小町も限界だよ…。大志君、息抜きしに行こう!」

「どこへ行くッスか?」

「お兄ちゃんのバイト先。あそこのコーヒー美味しいんだ」

「由比ヶ浜先輩の誕生日パーティーやったところッスね。コーヒー飲んでないッス」

「じゃあ、行こうか」

 

「いらっしゃい。嬢ちゃんの兄貴は休みだぞ」

「知ってます。今日はコーヒー飲みに来ました」

「そっちの少年は彼氏かい?誕生日パーティーの時も居たが…」

「いえ、全然違います。友達です」

「…」

「そ、そうか。まあ座りな」

「大志君、座ってて。お手洗い行ってくる」

 

「少年、まだ先は長い。諦めるな」

「ありがとうございます」

 

 

海老名姫菜の夏

 

もう少しで描き上がる。夏コミに間に合いそう。

ヒキタニ君、ううん。比企谷君に伝わるように…。

私のファンの人達、ごめんね。今回はBLじゃないんだ。冬にはBL描くからね。

比企谷君に会いたいなぁ。入稿したら、あのコーヒーショップへ行こう。

比企谷君とマスターの絡みが、愚腐腐…。いけないいけない。これが終わるまで、BL妄想は我慢しないと…。



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三十一話

一日の終わり。小説を閉じて布団に入ろうとすると、携帯が鳴る。

 

『あ、ヒッキー!やっはろー!』

「お前、こんな時間なのにテンション高いな」

『明日は暇だよね?』

「明日は、あれがこれでそれだ。そして、夕方からバイトだ」

『バイトまでは暇なんだよね?』

「…一応、図書館に行くつもりでした」

『買い物に付き合ってよ』

「雪ノ下は?」

『なんか忙しいみたい』

「は~、仕方ない。荷物持ちしてやるよ」

『じゃあ、明日10時に駅前ね』

「わかったよ。おやすみ」

『おやすみ~』

 

「暑い…、ダルい…、帰りたい…」

「お店に入ったら冷房効いてるから」

「リア充の巣窟…」

「早く行くよー」

「へいへい」

 

「冷房、最高。ここから動きたくない」

「いきなりベンチに座らないでよー」

「で、今日は何を買うんだ?」

「新しい水着♪」

「pardon?」

「水着♪」

「いや、何を買うんだ?って?」

「だから、水着!!」

「帰る!」

「なんで帰ろうとするし!」

「俺が女性物水着売り場に居たら通報される!」

「それはヒッキーが挙動不審になるからでしょ!私と居れば大丈夫だから!行くよ!」

「腕を掴むな~!」

(柔らかい!柔らかい!柔らかい!)

 

「ふぇ~、こんな紐みたいな水着あるんだ…」

「由比ヶ浜はチャレンジャーだな。こんなん選ぶとは…」

「ちちちち、違うし!見ただけだよ!」

「わかってるよ」

「ひ、ヒッキーは、こういう水着が好きなの?」

「いやいやいや、こんな水着着てるヤツは二次元しか見たことないし!それに、こんなん由比ヶ浜が来たら、こぼれ落とそう…」

「こぼれ落ちる…。ヒッキーのバカ!変態!マジキモイ!」

「バカ!デカイ声だすな!」

「あわわわわ、ごめん」

「ほれ、店の中見るんだろ」

「う、うん」

 

「あれ、ヒッキー?入らないの?」

「ATフィールドが…」

「なにそれ?早くぅ」

「あ、だから腕を掴むな」

 

「ヒッキー!これとこれ、どっちがいい?」

「えっと…」

「ちゃんと見てよ」

「…直視できません」

「服の上から当ててるだけじゃん」

「そ、それでもだなぁ…」

「ほら、ヒッキー!」

「ゆ、由比ヶ浜、布の面積少なくないか?」

「え~、優美子なんて、もっと際どいよ!」

(あーしさん、どんな水着選んだんですか!)

「わかった!」

「何がわかったんだ?」

「試着してみる」

「まてまてまて!」

「だって、着てみないとわからないじゃん。とりあえず、これかな」

 

「ヒッキー、どう?」

「あ、えっと、とても素晴らしいと思います…」

「ちゃんと見てよ!」

「見ろって言われましても…」

「似合うかどうかわかんないじゃん!」

「キモイとか言うかとなよ」

「言わないから」

「…すげぇ似合ってると思うぞ」

「えへへ。そうかな」

「胸元の小さい飾りとかもいいと思う…」

「胸元…。ヒッキーのエッチ!変態!キモイ!」

「やっぱり、キモイって言われたよ…」

 

「なぁ、由比ヶ浜」

「何?」

「昼飯、食べないか?」

「え?もうそんな時間?」

「もう2時です…」

「ごめんね、夢中になっちゃって」

 

「なぁ、由比ヶ浜」

「何?」

「この後、どうする?帰るか?」

「え~!もっと遊ぼうよ~」

「いや、俺は夕方から仕事だからな」

「そっかぁ」

「本屋でも行くか」

「何買うの?」

「ラノベと問題集」

「勉強してるんだね」

「一応な。由比ヶ浜は?」

「あ、うん、あはは」

「大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ…。たぶん」

 

 

「さて、そろそろバイト行くけど、由比ヶ浜はどうする?」

「さっき、ゆきのんからメールがあって、お店来てだって。だから私も行くよ」

「ほう。仲の良いことで」

 

「こんにちは」

「やっはろー!」

「よう、雪ノ下。…平塚先生早いですね」

「こんにちは、由比ヶ浜さん、比企谷君」

「まぁ、君たちに話があってな」

「坊主、先に着替えてきな」

「うす」

 

「お待たせしました」

「マスター、話を進めても?」

「平塚さんに任せます」

「では、君たち、キャンプに行くぞ」

「…」

「…」

「…はい?」

「奉仕部の合宿と思ってもらってもかまわん」

「嫌ですよ」

「坊主、想像してみろ。夜になって、少し肌寒くなった時、夕食の残り火でお湯を沸かし、満天の星空の下で飲むコーヒー…。どうだ?」

「…行きます」

「まったく、貴方は…。平塚先生、行くメンバーは?」

「お前らと私とマスター。車にはあと3、4人は乗れるから、誰か誘ってもかまわんぞ」

「わかりました」

「はぁ、ゆ○△キャンでも見直すか」

「平塚先生、泳げる場所あるかな?」

「もちろん、あるぞ」

「じゃあ、さっき買った水着のお披露目だね、ヒッキー」

「あ、おま、バカ!」

「比企谷君、どういうことかしら?」

「い、いやぁ、由比ヶ浜の荷物持ちで買い物に付き合って…」

「ヒッキーに、水着選んでもらったんだ」

「比企谷君…」

「ナンデショウカ」

「明日、私の水着も選びなさい」

「俺が女性の水着を選ぶなんて…。そ、それに、雪ノ下だって俺なんかに見られたくないだろ…」

「比企谷君…」

「ハイ」

「いいわね」

「YES MY LORD」

「では、次の土日。遅刻しないように」

 

 

 




―――――――――――

ゆ○△キャンの聖地まで、車で1時間で行けます。

次回はキャンプ編です。


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三十ニ話

土曜の早朝…。

眠い、暑い、ダルい…。

「お兄ちゃん、シャキっとしてよ」

「あいよ」

「早く行くよ」

 

「小町ちゃん、やっはろー!ヒッキーも、やっはろー!」

「う~す」

「結衣さん、やっはろー!」

「小町ちゃん、そのバカっぽい挨拶やめなさい」

「小町さん、おはよう」

「雪乃さん、やっはろー」

「や、…コホン。背後霊だと思ったら、比企谷君。おはよう」

「誤魔化すついでにディスるのやめてもらえませんかね」

「挨拶も出来ないのかしら。やっぱり、背後霊?」

「ちげぇよ。おはようさん」

「お、揃ったな」

「おはようございます、平塚先生」

「荷物を積みたまえ」

「あれ?他の連中は?」

「もう乗っているぞ」

「はちま~ん」

「おぉ、戸塚♪おはよう」

「先輩、可愛い後輩も居ますよ」

「朝からあざといな。おはよう」

「あざとくないです」

「ん?デカイ荷物があるな、早く後ろへ…」

「はちえも~ん!」

「え~い!ウザイ!キモイ!暑苦しい!」

「ガバッ!」

「八幡、材木座君が虫の息だよ」

「ほっとけ、すぐ生き返る」

 

「よし!では、出発するか」

「先生、マスターは?」

「安心したまえ。途中のサービスエリアで合流する」

「マスター、バイクで来るんですか?」

「その通りだ。よく知っていたな」

「バイクに乗る話は聞いていたんで」

「あの人がバイクに乗る姿…」

「平塚先生?」

「はっ!」

「なんでもない、なんでもないぞ。はははっ」

 

「ヒッキー、ポッキー食べる?」

「なんだよ、共食いみてえじゃねぇか」

「じゃあ食べない?」

「食べるよ」

「先生にもあげてね」

 

「雪ノ下先輩、水着持って来ましたか?」

「えぇ、比企谷君に選んでもらったわ」

「え?」

「私もヒッキーに選んでもらったよ」

「え?」

「先輩、どういうことですか?」

「お兄ちゃん…。小町が知らないところで…。小町嬉しいよ」

「おのれ八幡…。この我を裏切ったな!リア充爆発しろ!」

「中ニうっさい!」

「はい、すいません」

「由比ヶ浜には騙されたんだよ。雪ノ下は由比ヶ浜だけじゃ不公平だから行っただけだ」

「先輩、私を誘ってくれてもいいじゃないですか!」

「嫌だよ、葉山でも誘えばいいだろ」

「だって、三浦先輩コワイし…」

「八幡、どんな水着を選んだの?」

「俺は戸塚のを選びたかった…」

「ヒッキー、キモイ」

「比企谷君、気持ち悪いわ」

「先輩、キモイです」

「はぁぁぁ、これだからゴミぃちゃんは」

「我は同意」

「八幡、僕男の子だよ」

 

「よし、着いたぞ。マスターが来るまで自由時間だ。私は喫煙スペース付近に居るからな」

「ゆきのん、いろはちゃん、小町ちゃん、ソフトクリーム食べようよ」

「八幡、僕たちも何か食べようよ」

「おう」

「八幡、地域限定ガチャガチャだぞ!我は回すぞ!」

「好きにしろ」

 

「俺、平塚先生に缶コーヒー渡してくるわ」

「いってらっしゃい、八幡」

「毎朝言ってくれないか?」

「もう何言ってるの」

 

「先生、運転お疲れ様です」

「お、気が利くじゃないか」

「平塚さん、お待たせしましたか?」

「い、いえ、大丈夫です」

「マスター、カッコいいっすね。ねぇ、先生?」

「あ、お、うん…。とても、よくお似合いです」

「バイクはあれですか?」

「あぁ、そうだ」

「デカイですね。二人乗りとか出来るんですか?」

「あぁ、出来る。坊主、後ろ乗ってみるか?」

「俺は自分で運転してみたいので遠慮します。先生どうっすか?」

「え、あ、あの、良ければ今度乗せてもらっても…」

「是非。平塚さんとなら良いツーリングになりそうだ」

「…比企谷、何をニヤニヤしてるんだ?」

「なんでもないです」

 

「あ、マスター来てる」

「こんにちは」

「カッコいいバイク」

「なかなか良い鉄馬よ」

「ふぇ~、おっきいなぁ」

「由比ヶ浜もビーノに乗って一人キャンプはどうだ?」

「しないし!」

「頭に団子もあるから、やるかと思った」

「なにそれ?」

「気にするな」

「我はわかるぞ」

 

「では、出発しようか!」

「は~い」

 

 




――――――――――――

中の人ネタをやってしまった…。我慢出来なかった…。


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三十三話

「到着だ。各自、荷物を下ろしてくれ。私はテントの設営場所を確保してくる」

 

平塚先生の号令で車を降りる。

 

「八幡、あっちに釣り堀があるよ」

「戸塚、後で行ってみよぜ」

「八幡、我も行くぞ」

「ヒッキー、西瓜どうしよう?」

「川で冷せば…」

「ヒッキー、どうしたの?」

「な、なんでもない(西瓜と由比ヶ浜のメロンのコラボレーション!!)」

「比企谷君…」

「はひっ!」

「どこを見ていたのかしら?」

「ミテマセン」

「先輩、目がエロい…」

「ゴミぃちゃん…」

「ひ、ヒッキーが見たいなら…」

「場所が決まったぞ。荷物を運んでくれ。それが終わったら昼食だ」

(助かった…)

 

「雪乃さんのサンドイッチ美味しい!」

「小町さんのおにぎりも美味しいわ」

「雪ノ下、ジャリって…」

「それは由比ヶ浜さんね」

「えへへ」

「えへへじゃねぇ」

「先輩、私が作った唐揚げも食べてください」

「おう…」

「どうですか?」

「普通に旨いな」

「でしょ」

「その、あざとい笑顔がなければ完璧だったな」

「あざとくないです!!」

「マスター、テントを設営したら、どうしますか?」

「暗くなるまで、自由行動だ。晩飯は俺がカレーを作ってやる」

「ヤバい、すげぇ旨そうです」

「私達に手伝うことはありますか?」

「う~ん、平塚さんには手伝ってもらうとして…。誰か飯盒で米を炊いてくれ。出来るか?」

「ならば、我に任せよ」

「材木座、お前出来るのか?」

「同胞にサバゲマニアがおってな」

「うむ、飯炊きは材木座に任せよう」

「俺は来る途中にあった無人の野菜売り場に行って、野菜を調達してサラダでも作りますよ」

「比企谷君、私も行くわ」

「いいよ、雪ノ下。俺だけで」

「私はトマトが食べたいけど、貴方は買ってこないでしょ?」

「ぐっ、確かに…。わかったよ」

「ヒッキー、私も行く!」

「先輩、私も」

「八幡、モテモテだね」

「おのれ…、爆発しろ」

「材木座、聞こえてるぞ」

 

「では、こうしよう。私とマスターでカレーの準備。材木座は飯炊き。比企谷・雪ノ下・由比ヶ浜が野菜の買い出し、戸塚・一色・小町君で水汲み。では、行動開始!」

「材木座、ちょっと…」

「うむ、なんだ?」

「実はな…」

「な、なんと!我も馬に蹴られて死にたくはないのでな。了解したぞ」

 

「ヒッキー、中ニと何話してたの?」

「平塚先生の邪魔するなって言っただけだ」

「貴方は、変なところで気がきくのね」

「ほっとけ」

 

「ヒッキー、見て!キュウリがこんなに曲がってる」

「由比ヶ浜、こっちのナスもすごいぞ」

「まるで、誰かさんみたいに捻れてるわね」

「ほっとけ」

「あら、自覚があったのね」

 

「買って来たよ~」

「おかえりなさ~い。すごい捻れたキュウリですね。まるで先輩みたい」

「お前もかよ!」

「結衣さん、あっちで女子高生がキャンプしてましたよ!コーギーが可愛かったんで、あとで行きましょう!」

「行く行く!」

「材木座、どうだった?」

「八幡、我完全に空気だった…」

「そ、そうか…」

「心の中でエクスプロージョンを…」

「それは爆発じゃねぇ、爆裂だ」

 

「よし出来た!明るいうちに晩飯食べちまおうか」

 

「マスター、旨いです」

「だろ」

「米も上手く炊けてる」

「我にかかれば造作もない」

「このカレー…。どうやったら、この味が出るのかしら…」

「嬢ちゃんには、あとで教えてやるよ」

「私も聞きたいです」

「このキュウリ、味が濃い」

「ナスも美味しい」

「比企谷君、トマトをどうぞ」

「なんの嫌がらせだ…」

「とっても美味しいわよ、はい」

「目が怖い…」

 

「ご飯食べ終わったら、花火しようよ」

「由比ヶ浜、準備がいいな」

「えへへ」

「俺は一杯やらせてもらう」

「お付き合いします」

「俺はコーヒーでも煎れようかな」

「ヒッキー、花火やらないの?」

「コーヒー飲んだらな」

「早く来てね」

 

ひとしきり花火をしたあと、テントに入る。

 

(眠れん…)

 

「まだ飲んでるんですか?」

「好きなモ○ルスーツについて語っていた。坊主も混ざるか?」

「結構です。どうせ、マスターがケ○プファーで、平塚先生がゴッドガン○ムでしょ?」

「ぐっ!何故わかった…」

「ふっ…。俺は散歩してきます」

「あまり、遠くへ行くなよ」

 

(月が綺麗だなぁ。普段、月なんて興味ねぇのに)

 

(…誰か居るなぁ。幽霊、オバケ?)

 

(雪ノ下か…。月明かりに照らされて…)

 

「綺麗だ…」

「え?」

「え?」

「比企谷…君?」

「お、おう。雪ノ下、こんなところでなにやってるんだ?」

「ちょっと夜風にあたっていたところよ」

「そうか…。邪魔したな」

「待ちなさい」

「なんでしょうか?」

「少し…、話をしない?」

「俺でよければ」

 

「比企谷君」

「ん?」

「修学旅行の時は、ごめんなさい」

「な!あれば俺が暴走したから、俺が悪いんだ」

「初めて部室でコーヒーを煎れてくれた時、もう一度やり直してくれと言われた時、嬉しかった…」

「雪ノ下…」

「私も冷静になって思い返してしたの。貴方のことを信じると言ったのに、やり方が嫌いなんて…」

「だから、そのことはいいんだって」

「良くないわ。貴方は意味もなくあんなことはしないわ」

「まあな」

「…海老名さんかしら」

「…」

「沈黙は肯定よ」

「守秘義務だ」

「葉山君と戸部君が出た後に海老名さんが来た…。出来すぎよね?」

「さあな」

「あくまで、答えないのね。それは、そのうち、問い詰めるわ」

「怖ぇよ」

「でも、一つわかったことがあるわ」

「なんだ?」

「貴方に特別な感情があること…」

「は?」

「でも、この感情の名前がわからないの…」

「それは俺にもわからんな」

「この答えは私自身で出すしかないの。この答えが出たら聞いてくれるかしら?」

「その時は聞いてやるよ」

「ありがとう」

「おう、どういたしまして」

「それと…」

「まだあるのか?」

「貴方、私を見つけた時、なんて言ったのかしら?」

「なんか言ったか?」

「えぇ」

「気のせいじゃねぇか」

「そう…」

「そろそろ戻ろうぜ」

「…」

「その…、一緒に戻ると…」

「あぁ、悪い」

「でも、…途中まで一緒に…」

「はいよ」



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三十四話

一夜明けて、朝のコーヒーを飲む。うむ、うまい!

 

「お兄ちゃん!」

「おう、小町。おはようさん」

「昨夜はお楽しみでしたね」

「どこの宿屋の主人だよ。なんの話だ?」

「え~!雪乃さんと一緒に居たんじゃないの?」

「散歩してたら、見かけて少し話ただけだ」

「むふふ」

「小町さん、笑い方が下品よ」

「なにそれ?雪乃さんのマネ?」

「私のマネをするとはいい度胸ね、比企谷君」

「雪乃さん、おはようございます」

「おはよう、小町さん」

「お、おはよう、雪ノ下」

「おはよう、マネ谷君」

「雪乃さん、お兄ちゃんとどんな話したんですか?」

「え、べ、別にたいした話はしてないわ」

「ふ~ん」

「何、ニヤニヤしてんだよ」

「別に~♪」

 

「坊主、みんなの分のコーヒー頼む」

「わかりました」

「ホットサンド出来たぞ」

「わ~♪美味しそう」

「食べ終わるころには、アイツらも着くだろう」

 

「ひゃっはろー」

「雪ノ下さん、運転出来たんですね」

「時々、運転してるよ。なになに~、お姉さんの助手席に乗ってみたい~?」

「遠慮します」

「比企谷、おはよう」

「川崎、おはようさん」

「私達も来て良かったの?」

「いいんじゃねぇの」

「は~ちゃん!おはよう」

「お、けーちゃん!おはよう」

「お兄さん、おはようッス」

「お兄さんと呼ぶな。川に流すぞ」

「ヒドイッス!」

「その前にアンタを川に流すよ」

「命拾いしたな」

「八幡…」

「ルミルミ、よく来たな」

「ルミルミじゃない」

「はーちゃん、るーちゃんだよ」

「る、るーちゃん…」

「留美もけーちゃんには勝てないな」

「るーちゃん、やさしいからすき~」

「あ、ありがとう」

 

「みんな、川遊びしようよ!」

「なんだ、由比ヶ浜。急に」

「だって、せっかく水着持ってきたんだから」

「ゆぃちゃん、あそぼう」

「けーちゃんも川遊びする?」

「する~!」

「じゃあ、決まり~!」

「きまり~」

「先輩も行きますよね?」

「お、俺は…」

「八幡、行こうよ」

「戸塚が行くなら」

「先輩…」

「ヒッキー…」

「わ、私は遠慮しようかしら…」

「え~、雪乃ちゃん、比企谷君に選んでもらった水着着ないのかぁ?」

「そ、それは…」

「雪ノ下、観念しなよ」

「川崎さんまで…。仕方ないわね」

「わ、我は?」

 

「ヒッキー!」

「ば、バカ!走るな!」

「バカとはなんだし!」

「そ、それはその…、目のやり場に…」

「ヒッキー…。に、似合うかな…」

「お、おう。試着で見ただろ…」

「で、でも…」

「先輩!私の水着姿、どうですか?」

「お、おう…」

「ちゃんと見てください!」

「はーちゃん!」

「お、けーちゃん」

「かわいい?」

「おう、可愛いぞ」

「やたー!」

「八幡…、わ、私は?」

「ルミルミも可愛いぞ」

「う、うん、ありがとう…」

「アンタ、子供口説いてどうするのさ」

「何言ってんだ、川崎。口説くわけな…」

「どうした?」

「な、なんでもない」

「な!バカ!あんまり見るな!」

「す、すまん!」

「だったら、お姉さんを見る?」

「ゆ、雪ノ下さん…、み、見れません!」

「それじゃあ、雪乃ちゃんは?」

「ね、姉さん…」

「…」

「何か言いなさいよ」

「に、似合ってるぞ。そ、その水着…」

「あ、ありがとう…」

「お兄ちゃ~ん」

「お、小町」

「どう?どう?小町の水着!新調したんだよ」

「おぉ、可愛い可愛い」

「比企谷さん、可愛いッス!」

「大志!お前は見るな!」

「無理ッス!」

 

「ダメだ、目のやり場に困る…。材木座、釣りに行くぞ」

「うむ」

「俺とお前のスキルから、誰にも気づかれずに行けるはず…」

「心得た」

「戸塚にだけ言って、後で合流してもらう」

 

「あれ?ヒッキーは?」

「居ませんね」

「大志君、知らない?」

「わからないッス!」

「戸塚君も居ないわね」

「比企谷君達なら、戸塚君と材木座君と釣りに行ったわよ」

「何故、姉さんが知ってるのかしら」

「お昼ご飯の調達って、静ちゃんが言ってたから」

「またあの男は…」

「ヒッキー、ズルイ」

「さーちゃん、はーちゃんは?」

「お魚釣ってくるって」

「八幡に置いていかれた…」

「留美ちゃんが凹んでる…」

 

しばらくして、お昼時…。

 

「はーちゃん、おさかなおいしー」

「おう、けーちゃんの為に釣ってきたからな」

「由比ヶ浜さん…」

「なに、ゆきのん…」

「ちょっとだけ、京華さんが羨ましいわ…」

「そうだね…」

 

「留美、今日は写真いっぱい撮れたか?」

「うん、帰ってお母さんに見せる」

「そうか」

 

「先輩!私にもお魚ください!」

「へいへい」

「比企谷さん、魚焼けたッス!」

「おのれ大志!」

「アンタ、私には魚くれないのかい?」

「ハイ、タダイマ…」

 

「ねぇねぇ、比企谷君」

「なんですか?雪ノ下さん」

「マスターと静ちゃんて、どうだった?」

「かなり、いい感じです。ただ…」

「ただ?」

「好きなモビルスーツの話は…」

「まぁ、静ちゃんが飾らないで、話が出来てるならいいんじゃないかな」

「飾らなさすぎです。次にボト○ズの話始めたら、上坂す○れじゃないですか」

「誰?」

「気にしないでください」

「ところで、比企谷君は雪乃ちゃんと何かあった?」

「雪ノ下さんが考えてるようなことはありませんよ」

「そうなの?雪乃ちゃん、凄くいい顔してるから」

「いつもと変わらないと思いますが」

「そう?じゃあ、そういうことにしといてあげる」

「そりゃどうも」

 

「そろそろ片付けるぞ」

「うす」

「坊主、どうだった?」

「まぁ、楽しかったですかね」

「そうか!ははははっ!」

 




―――――――――――
キャンプ編、何事もなく終了です(笑)

全然関係ないですが、昨日私用で千葉県市川市の本八幡(もとやわた)駅を利用しました。「はちまん」て読みたくなります(笑)


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特別編

ちょっとした、クロスオーバーです。



キャンプ初日

 

「可愛い犬だね、なんて名前なの?」

「チクワだよ」

「どこから来たの?私達は千葉」

「私達は山梨だよ」

「うちは大阪からや」

「え!!」

「うそやで~」

「結衣ちゃんて、お団子がリンちゃんとお揃いだね。なんとなく声も似てる?」

「テンションはなでしこだけどね」

 

――――――――――――――――――

 

キャンプ数日後。

とあるパーティー

 

「はぁ、なんで貴方たちまで居るのかしら」

「仕方ねぇだろ。雪ノ下さんが来いって言うんだから」

「あはは…」

「大人しくしていてほしいわね」

「そうだぞ、由比ヶ浜」

「そういうヒッキーだって」

「俺はいつでも大人しい。大人し過ぎて誰もきがつかないまである」

「来たわ。今日のパーティーの主催者のご令嬢よ」

「雪乃さん、お久しぶりね」

「かぐやさん、お久しぶりです」

「そんなに畏まらずに」

「ありがとうございます」

「そちらは?」

「はい、部活仲間の比企谷八幡君と由比ヶ浜結衣さんです」

「は、初めて、比企谷です」

「ゆ、由比ヶ浜です」

「はじめまして。私は四宮かぐやと申します」

「ゆ、雪ノ下」

「なにかしら?」

「し、四宮って…」

「四宮財閥のご令嬢よ」

「マジか…」

「かぐやさん、そちらのお二人は?」

「秀知院学園で生徒会を一緒にやっている生徒会長の白銀会長と書記の藤原さんです」

「はじめまして、白銀です」

「藤原です~」

 

「由比ヶ浜さんて、可愛いですね~」

「藤原さんも可愛いです」

「えへへ」

「えへへ」

 

「なんつーか、ピンク髪同士、波長が合うのかね」

「初対面でも、仲良く出来るのは彼女らの長所ではないのかな」

(目付き悪い男だな)

(目付き悪い男だな)

 

「かぐやさん、白銀さんとその後は…」

「え!いえ、会長とは…」

「進展ないんですね…」

「そういう雪乃さんは」

「わ、私は別に比企谷君のことなんて…」

「あら、私は一言も比企谷さんなんて言ってないわよ」

「はっ!」

「雪乃さんて本当に、『お可愛いこと…』」

 

「どうした?白銀さん」

「今、寒気がした…」

「なんか黒髪二人は、難しい顔してるな」

「四宮は真面目だからな」

「雪ノ下も真面目だから」

 

「うちのペスは可愛いですよ」

「うちのサブレも可愛いよ」

「由比ヶ浜さん、ドレスで跳ねないで」

(クッ!)

「藤原さんもよ、はしたない」

(クッ!)

 

―――――――――――――――――

 

とある撮影スタジオ

 

「なぁ、雪ノ下」

「なにかしら?」

「俺はここに居ていいのか?」

「貴方、桜島麻衣のファンて言ってたでしょ?」

「確かに言ったが…。だからって、CM撮影のスタジオに、俺なんか入っていいのかよ」

「うちの会社のCMなのだから、いいに決まってるわ。広告代理店も了承済みよ」

「さいですか…」

「サインとかもらわないの?」

「キョドって、『なにこいつ?キモイ』みたいな顔されるから、やめておく」

「そう。私は挨拶してくるわ」

「いってらっしゃい」

 

(ん?あそこに居るやつも見学か?高校生…、だよな?)

 

「よう、見学か?」

(こいつ、目が死んでる)

「あぁ。アンタもか?」

(こいつ、目が腐ってる)

「俺は広告主のご令嬢と知人でな。好意で見学会させてもらってる。あそこで主演女優と話してるだろ。アイツだ」

「俺は、その主演女優の彼氏だ」

「なるほど、アンタだったか」

「驚かないのか?」

「驚いてはいるが、本人が公言してるんだ、見学しててもおかしくないだろ」

「大したもんだ」

「思春期症候群…か」

「!」

「沈黙は肯定と取るぜ」

「どうしてそう思った…」

「こう言ったら悪いが、アンタみたいに目が死んでるヤツと桜島麻衣が何事もなく付き合うとは思えん」

「目が腐ってるヤツに言われたくないが、その通りだ」

「腐った目だから、見えることもある。都市伝説だと思っていたが…」

「事実だ。俺の周りでは起きている」

「興味深い話だが、興味本位で聞くのも悪いから、ここまでだ」

「いいのか?」

「それに、桜島麻衣が目の前に居るのに見ないのは失礼だからな」

「確かに。見なかったら、麻衣さんに何をされるか…」

「な、なんで嬉しそうなんだ…」

 

「そういえば、名乗ってなかったな。俺は比企谷八幡だ」

「鎌倉出身なのか?」

「いや、生粋の千葉県民だ」

「俺は梓川咲太。梓川サービスエリアの梓川に、花咲く太郎の咲太だ」

 

 




深く突っ込まないでください。ただの思いつきですm(__)m


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三十五話

アルバイト中…。

 

「よお、比企谷」

「折本か。いらっしゃい」

「アンタ、まだバイトしてたんだね、ウケるwww」

「ウケないからな。適当座ってくれ。注文は?」

「アイスコーヒー」

「はいよ」

 

「こんにちは、比企谷」

「相模か。いらっしゃい」

「この前、お店休みだったんだね」

「あぁ、マスター達とキャンプ行ってた」

「へぇ、意外」

「比企谷、この娘は?」

「クラスメイトの相模だ」

「私は同中で同じクラスだった折本って言うんだ。よろしく」

「『元』・クラスメイトね」

「何?ウケるんですけど」

「別にウケないけど」

(なんか火花が見える気が…)

 

「八幡…、来た」

「お、るーちゃん、いらっしゃい」

「るーちゃんじゃない、留美!」

「はいはい。いつものでいいか?」

「うん」

 

「比企谷、この娘は?」

「常連の留美だ」

「留美ちゃんね。私は折本かおり」

「わ、私は相模南」

「ふ~ん。八幡、バーベキュー楽しかった」

「お、おう。そうだな」

「な!」

「比企谷!この娘も行ったの?」

「お、おう」

(今、留美がすごい悪い顔した気がする…)

 

「こんにちは、比企谷君」

「雪ノ下か、いらっしゃい。適当に待っててくれ。アイスコーヒーでいいか?」

「ええ、お願い」

 

「はい、お待たせ」

「ありがとう。梓川君だったかしら?また貴方と話をしてみたいそうよ」

「了解。神奈川まで行くの面倒だな」

「私も桜島さんに会う予定があるから、その時にでも一緒にどうかしら?」

「雪ノ下が良ければ頼む」

「わかったわ。なんで、彼と仲良くなったのかしら…」

「お互いボッチだからじゃねぇの」

「彼は恋人が居るのだから、ボッチじゃないと思うのだけど…」

 

「ねぇ、相模さん」

「何?」

「あの二人って、やっぱり付き合ってるの?」

「付き合ってないみたい。そんなことになったら、結衣ちゃんが黙ってないと思う」

「あぁ、お団子の娘ね」

「まだチャンスはあると思うよ」

「相模さんも比企谷を?」

「え?折本さん違うの?」

「私も狙ってるよ。マジウケるwww」

「私も…」

「留美ちゃんまで…」

 

 

「ねぇ、比企谷君」

「どうした?」

「そ、その…、花火を見に行こうかと思うのだけど…、その…」

「去年、由比ヶ浜と行ったなあ」

「い、一緒に行ってもらえないかしら…」

「家のこととか大丈夫なのか?」

「観覧席に行ったら、挨拶ぐらいするわ。それに、連れが居るって断れるから」

「なるほどな。それなら、勉強も見てもらってるし、その対価でボディーガードぐらいはするぞ」

「じゃ、じゃあ…」

「三人で行くか」

「さ、三人…。え、ええ、そうね」

(朴念仁!!)

「お嬢ちゃんも苦労するな」

「はい…」



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三十六話

只今、閉店後の掃除中。

マスターも俺も花火大会に行く為、早めの閉店。

マスターは自分の煎れたコーヒーを飲んでいる。

「コーヒーが旨いと気分がいい」

「砂漠の虎が居る…。どんだけガンダム好きなんですか」

「ガンダムの話は、平塚さんと盛り上がるからな」

「そろそろ、愛しのアイシャが来ますよ」

「よし、車をまわしてくる」

 

マスターが車を出しに行ってすぐ、浴衣の女性が店に入って来た。

 

「すいません、今日はもう閉て…」

「ひ、比企谷、マスターは…」

「ひ、平塚先生!!」

「どうした、比企谷。私だ、平塚だ」

「み、見違えました…」

「そ、そうか」

「すげぇ、綺麗です」

「そ、そうか…」

 

車を準備してきたマスターが戻ってきた。

 

「…」

「に、似合わないでしょうか…」

「いや、平塚さんは浴衣も似合う。俺の方が気後れしそうだ」

「マスター、平塚先生、写真撮っていいですか?」

「ひ、比企谷、何を…」

「おぉ、坊主、俺にもデータよこせよ」

「もちろん!」

写真を数枚撮ったあと、マスターと平塚先生は店を出る。

 

「後は任せたぞ、ダコスタ君」

「誰がダコスタですか!ヨーグルトソースのケバブでも食ってください」

「ではな、比企谷」

「いってらっしゃい、アイシャさん」

「なっ!」

「では、行こうか、アイシャ」

「え、えぇ、アンディ…」

「そこはネタにノるんですね…」

 

しばらくすると、独特な挨拶で由比ヶ浜が店内に入ってくる。

「やっはろー!」

「おぅ、由比ヶ浜」

「…」

「ヒッキー、なんか言うことないの?」

「に、似合ってるぞ、浴衣…って、言わすなよ恥ずかしいんだよ」

「う、うん。でも、言ってもらえると嬉しいんだよ」

「俺が言うとキモイだけだろ」

「そんなこと…ないし…」

「ゆ、雪ノ下は一緒じゃないのか?」

「車でここまで送ってもらうって言ってたよ」

 

そんな会話をしていると、雪ノ下が到着した。

 

「ごめんなさい。遅くなってしまったかしら」

「ゆきのん、やっはろー!」

「…」

「浴衣、すごい似合ってるね」

「そ、そうかしら…」

「…」

「ねぇ、ヒッキー!」

「…」

「ヒッキー、ゆきのん見過ぎ…」

「うわっ、す、すまん!」

「い、いえ…。大丈夫よ」

「むぅ…」

「そ、そうだ!さっき平塚先生が浴衣で来たぞ」

「そうなの!」

「写真撮ったぞ。見るか?」

「見る~!」

「是非、見たいわ」

「ほら」

「うわぁ、すごい綺麗」

「とてもお似合いの二人ね」

(なんとか誤魔化せた…)

 

三人で花火大会の会場へ。

由比ヶ浜は、雪ノ下を右へ左へと引っ張り、雪ノ下も露店が珍しいのか繁々と覗いていた。

そして、俺の手には、お好み焼き・たこ焼き・焼きそば・焼きとうもろこし…etc。二人はりんご飴を食べている。こんなに食えるのかよ…。

「ゆきのん、ケバブ売ってるよ。やっぱりチリソースだよね」

「そうなの?」

「いやいや、ケバブにはヨーグルトソースだ」

「そうなの?」

「某・砂漠の虎が言っていた」

「?」

「?」

「そうですよね、通じないですよね…」

 

「花火、どこで見ようか?」

「観覧席に姉さんが居るから、そこへ行きましょう」

「おいおい、大丈夫なのか?」

「?」

「『なにが?』見たいに首傾げて。お偉いさんとかに挨拶を…」

「私もそれくらいは出来るのはわ」

「でも…」

「それに、今日は『友人が居ますので』って、断れるから」

「それにしたって…」

「大丈夫よ。今日は心強い味方が二人も居るから」

「そうだよ、ゆきのん!」

「まぁ、案山子だがな」

 

観覧席へ行くと、雪ノ下さんが待っていた。

 

「ひゃっはろー!」

「姉さん、その挨拶やめてちょうだい」

「雪ノ下さん、こんばんは」

「こ、こんばんは」

「待ってたよ。こっちに座って」

 

「…で、何故姉さんが比企谷君の隣なのかしら?」

「だって~、比企谷君の隣がいいんだモン。比企谷君もそう思うでしょ?」

「か、勘弁してください」

 

「ほら雪乃ちゃん、後援会長さん。挨拶行かなきゃ」

「はい、ちょっと行ってくるわ」

「ゆきのん、頑張って!」

「雪ノ下…」

「何?」

「無理…すんなよ」

「ありがとう」

 

「やぁ、陽乃ちゃん、雪乃ちゃん」

「この度は、無理を聞いてくださって、ありがとうございます」

「なに、雪ノ下さんの頼みだ。席ぐらいはなんともない。それに」

「それに?」

「男の子の方は、雪乃ちゃんの意中の人らしいじゃないか」

「なっ!」

「その反応は、間違いなさそうだね」

「お、お恥ずかしい…」

「いやいや、雪乃ちゃんにもそういう人が現れて。彼がそうかい?」

「…」

「なかなか、いい男じゃないか。これなら、安心だな。ゆっくりしていきなさい」

「…ありがとうございます」

 

「ゆきのん、お帰り~。顔真っ赤だけど、大丈夫?」

「だ、大丈夫よ」

 

四人で座り、花火を観賞。

つつがなく、花火大会は終了し、雪ノ下の好意で車で送ってもらう。

車中は若干だが百合の雰囲気が漂ったが、黙っておく。

由比ヶ浜家前に着くと、ガハママが出てきたので、挨拶をしたら、何故か家に拉致…、招かれそうになったので、丁重にお断りをして、車へ戻った。

由比ヶ浜が居なくなった車中では、雪ノ下さんが絡んで来るのを全力で拒否していた。

比企谷家前に着くと、車を待たせ雪ノ下も降りた。

「悪かったな、送ってもらって」

「大丈夫よ、私が誘ったのだから」

「そこからだよな。誘ってくれて、ありがとうな。嬉しかった」

「そ、そう…」

「それと…だな…」

「な、なにかしら?」

「あ、あの…、こんなタイミングになっちまったがな…。その…だな…、ゆ、浴衣!す、すげぇ、似合ってて、綺麗だぞ!」

「!!!!!」

「じゃあ、またな。おやすみ」

 

「雪乃ちゃん、大丈夫?」

「…」

「雪乃ちゃ~ん!」

 

八幡は部屋に帰って布団の中で悶絶、雪乃はしばらく放心状態でした。

 



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三十七話

「お兄ちゃん、予備校?」

「ん?あぁ、そのあとバイト」

「まっすぐ帰って来てね。ケーキ買っておくから」

「ありがとな、小町。いってきます」

「いってらっしゃい」

 

8月8日、俺の誕生日。雪ノ下や由比ヶ浜はお祝いしてくれると言ったが、予備校とバイトだと断った。

今まで誕生日は友達と過ごすなんてなかったから、気恥ずかしいのだ。

誕生日なんて祝ってもらわなくても、雪ノ下や由比ヶ浜、みんなにはたくさんのモノをもらっている。これ以上望んだら、バチがあたる。だから、今日も普通の日でいいんだ。

 

「比企谷」

「え、えっと…、川…川田さん?」

「川崎だけど、埋めるよ」

「ごめんなさい、冗談です」

「アンタ…」

「ん?」

「誕生日なんだろ?おめでとう」

「お、おう」

「パーティーとかやらないの?」

「ガラじゃねぇんだよ。察してくれ」

「ふ~ん」

「川崎」

「何?」

「その…、ありがとな」

「う、うん。じゃあ、私は先に帰るよ」

「お疲れ」

「さて、俺はもうひとがんばり…」

 

予備校が終わりバイトへ。

店の裏口から入る。

「お疲れで~す」

「坊主、着替える前に店来い」

マスターに呼ばれたので店内に向かう。

「マスター、なんです…」

 

「HAPPYBIRTHDAY 八幡!!」

 

みんなの声とクラッカーの音に驚く…。

「なっ…」

「何を驚いているのかしら、比企谷君」

「今日はヒッキーの誕生日だよ」

「まぁ、そうなんだが…」

「比企谷のことだから、『俺の誕生日なんて、祝わなくていい』とか思ってたんだろ?」

「これだから、ゴミぃちゃんは」

「次はヒッキーの番って言ったよね?」

「私は覚悟しなさいと言ったわよね?」

「負けたよ、降参だ」

「ほら、座りなよ」

「川崎~、芝居しやがったな」

「さてね」

 

「さがみん、折本さん…」

「何?」

「なにかな?」

「なんでヒッキーの隣に座ってるの?」

「いいじゃん、席決まってないし」

「マジウケるんですけどwww」

 

「留美さん」

「何?」

「比企谷君の膝から降りなさい」

「嫌」

「比企谷君が困るでしょ?」

「八幡、嫌?」

「嫌なわけないだろ」

「ほら」

「ぐっ!」

「はーちゃんとこ、けーかもすわりたい」

「けーちゃんもおいで」

「先輩は年下に甘いんですから。じゃあ、私も…」

「いろはちゃんはダメ!」

「一色さんはダメ!」

「チッ!」

 

「八幡、誕生日おめでとう!これプレゼント」

「戸塚!ありがとな。開けていいか?」

「どうぞ」

「マリオパーティじゃねぇか」

「材木座君と選んだんだよ」

「うむ」

「みんなで遊ぼね」

「ありがとう、戸塚、材木座」

 

「比企谷!」

「折本。お前まで居るとは思わなかったぞ」

「あの頃の私が見たら、ウケてただろうね」

「まったくだ」

「これプレゼント。使ってよ」

「このペン…、高かっただろ?」

「そんなことないよ」

「さ、さんきゅな」

「なに、その言い方、ウケるwww」

「ウケねぇよ」

 

「比企谷」

「相模…。なんか不思議だな、相模に祝ってもらえるなんて」

「きっかけは、比企谷に迷惑かけちゃったけど、許してもらえたなら、この繋がりは大事にしたいな」

「そうか」

「これ、大したモンじゃないけど、プレゼント」

「モバイルバッテリーか。実用的だな」

「だって、何がいいかわからなかったから…」

「嬉しいよ、ありがとな」

 

「はーちゃん、これぷれぜんとぉ」

「けーちゃん、ありがとな。また似顔絵描いてくれだんだ。嬉しいよ」

「えへへっ。さーちゃん、はーちゃん、うれしいって!」

「良かったね、けーちゃん。私からはこれ…」

「ん?服じゃねぇか」

「古着を改造してみたんだ」

「おぉ、いいよ。新品みたいだ。ありがとな」

 

「八幡…これ」

「ハンカチ…。留美、ありがとな」

「うん」

 

「ではでは、私と大志君からは、これです」

「まて小町。大志と買いに行ったのか?」

「お兄ちゃんが心配することはありませんよ~。お友達だもんね、大志君」

「そ、そうッスよ、あはは…」

(少し大志が不憫に思えてきた)

「ん?Tシャツ…。ウサミンじゃねぇか」

「ウサミン星(千葉)在住アイドルの安倍菜々ちゃんTシャツ!それと、悠木碧のDVD!」

「悠木碧、マジ天使!さすが小町。わかってるな…。みんな若干引いてる?」

「仕方ないよ、ゴミぃちゃんなんだから」

 

「比企谷、私からはこれだ!」

「餃子無料券て…」

「その、あれだ、ラーメン屋に比企谷を誘う機会も減るだろうから…」

「平塚先生…。ありがたくいただきます」

「君が成人したら、ピッタリの酒があるからそれをプレゼントしよう」

「はいはい『ぼっち』ですね」

「チッ!もうやりつくされたネタか…」

 

「先輩!わたしからはこれです!」

「おっ!クッキーか。ありがとな。お菓子作り得意な設定だからな」

「設定って、なんですか!」

「冗談だよ」

 

「比企谷君、私からはバイオリンの生演奏だよ」

「雪ノ下さん、ありがとうございます」

「何かリクエストある?」

「やなぎなぎの曲は出来ますか?」

「リサーチ済み。お姉さんに任せなさい」

 

「ヒッキー!私からはこれ!」

「ありがとう、由比ヶ浜。開けていいか?」

「どうぞ」

「…おい、由比ヶ浜」

「なに?」

「トマトって…」

「ヒッキーが苦手を克服出来るようにだよ」

「参考書の意趣返しか?」

「いしゅがえし?よくわかんないけど、こっちが本当のプレゼントだよ」

「Bluetoothイヤホンか」

「よく教室で聴いてるから」

「由比ヶ浜、ありがとな。嬉しいよ」

 

「比企谷君、私からはこれを」

「ありがとな、雪ノ下。…おい!」

「なにかしら?」

「お前もトマトかよ!」

「冗談よ。それはあとで料理に使うわ。こっちが本物よ」

「まったく…。お、桜島麻衣のサインだ。…それと、豊浜のどかのサインもあるぞ」

「何!八幡、我にも見せよ!」

「ヒッキー、桜島麻衣はわかるけど、もう一人は?」

「スイートバレット知らないのかよ」

「うむ。絶賛売り出し中のアイドルグループよ」

「材木座、説明ありがとう」

「うむ」

「あと、白銀さんとかぐやさんから伝言よ。秀知院に遊びに来いと」

「嫌だよ」

「ヒッキー、私も一緒に行くから行こうよ」

「由比ヶ浜、お前は藤原さんだっけ?仲良くなったからいいけど、俺には無理ゲーだ。一色、お前行ってこい。生徒会運営の意見交換出来るぞ」

「私だって嫌ですよ」

「比企谷君、どうするのかしら?」

「…善処します」

 

ワイワイとパーティは盛り上がり、いい時間になった。

 

「いいのか?片付け任せて」

「貴方は主賓よ」

「そうだよ、ヒッキー!小町ちゃん、ヒッキーお願いね」

「はーい、小町にお任せあれ」

 

「比企谷君」

「なんだ?」

「これを…。一人の時に開けて」

「お、おう」

 

帰り道。

 

「お兄ちゃん、どうだった?」

「あぁ、良かったんじゃねぇの」

「もう、素直じゃないなぁ」

「こんな、誕生日は初めてでな」

「お兄ちゃんには、こんなにたくさん、誕生日を祝ってくれる人が居るんだよ」

「あぁ…」

「もうボッチ返上だね」

「…かもな」

「お兄ちゃん?」

「ん?」

「泣いてるの?」

「ば、バカ。泣いてねぇよ」

「お兄ちゃん♪」

「なんだよ」

「なんでもない♪」

 

部屋に帰り、雪ノ下から渡されたモノを開けると、雪ノ下とお揃いのPC眼鏡が…。

布団を被って悶絶してると、小町にゴミを見るような目で見られました。

 




―――――――――――――――――

誕生日と花火は逆だったかな?逆だな、うん。ごめんなさい。

夏休み編は、そろそろ終わりですかね。


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三十八話

8月31日からループするエンドレスなエイトもなく、夏休みも終わり、あっという間に通常授業。

 

「夏休み、終わっちゃったね」

「そうね」

「いろんな意味で充実した夏休みだったな」

「そうね」

「ゆきのん、お悩み相談メール来てるかな?」

「確認してみましょう」

 

雪ノ下がPC眼鏡をかける…。思い出してしまう…。

「ヒッキー、どうかした?」

「なんでもない」

「おかしなヒッキー」

「比企谷君がおかしいのは、いつものことよ」

(誰のせいでドキドキしてると思ってんだよ!)

「剣豪将軍から多数と…」

「それはヒッキーに任せたよ」

「へいへい」

「PN,ワンカラーさん。文化祭の実行委員になってください。特に先輩…一色さんね」

「断る」

「あはは…」

 

「文実委員は、懲り懲りだ。雪ノ下だってそうだろ?」

「そうね」

「ヒッキーは、クラスの方に参加?」

「働きたくないでゴサル」

「それじゃニートじゃん!ヒキニートじゃん!」

「人をクズマみたいに言うな!俺はひかれても死ななかったし!アイツひかれてないのに死んだし!…あっ」

「その…ごめんなさい」

「こ、こちらこそ…」

 

 

「せんぱ~い」

奉仕部の扉が開かれ、あざとい後輩の登場。

「やらん!」

「まだ何も言ってないじゃないですか!」

「文実委員だろ?絶対にやらん!」

「なんでですか!」

「去年の悪評知ってるだろ?」

「で、でも、あれは…。雪ノ下先輩もお願いします」

「私も断るわ」

「いろはちゃん、私がやろうか?」

「え~!お二人ともやってくれないんですかぁ」

「スルーされたし!」

「今年の文化祭は、静かにすごしたい」

「えぇ!」

「まぁ、一色。コーヒーでも飲むか?」

「いただきます…」

 

「ほらよ」

「どうも…」

「どうかしたか?」

「先輩方、奉仕部でお店出しませんか?」

「は?」

「先輩のコーヒーと雪ノ下先輩の紅茶を!」

「はっ?何言ってるの?」

「あ!面白そう!ゆきのん、ヒッキー!」

「それは、どうなのかしら…」

「働きたくないでゴサル!!」

「えぇ~、やろうよ」

「コーヒーと紅茶の、どちらが売れるか勝負とか…」

「バカ!一色、なんてことを…」

「勝負…。それは負けられないわね」

「あ~、火がついちゃった…。一色、わざとだろ?」

「さぁ?」

「雪ノ下の煽り方覚えやがって…」

「じゃあ、私はウエイトレスやる♪」

「由比ヶ浜さん、楽しみね。うふふ」

「はぁぁぁ、仕方ないな」

「後日、申請用紙持ってくるので、よろしくです」

「一色めぇ…」

「まあまあ、ヒッキー…」

「でも、楽しそうね」

「まあな。クラスでやるよりは、気心知れてるからな」

 

一色が爆弾投下した翌日。

 

「ウエイトレスが由比ヶ浜一人じゃ大変だろうから、戸塚に頼んだら、OKしてくれたよ」

「彩ちゃん、ウェイターやってくれるんだ」

「え?戸塚もウエイトレスじゃないの?」

「まったく…。戸塚君は男性よ」

「失念してた」

(戸塚、ウエイトレスでもよくない?)

 

扉をノックする音…。平塚先生ではない。

 

「どうぞ」

「はろはろー」

「姫菜~。どうしたの?」

「マン研に場所借りて、同人誌売るんだけど、比企谷君たちに見てもらおうかと思ってね」

(ヒキタニ呼びじゃない…)

「そうなんだ。見せて~」

「材木座の小説読むより数倍いいな」

「私はマンガは読まないのだけど…」

「まあまあ、雪ノ下さんも」

 

登場人物の名前こそ違うけど、これは…

 

「海老名さんこれは…」

「あ?気がついた?」

「姫菜…、これ…」

「こんなことだろうと思ってわ」

 

修学旅行の嘘告白の顛末…。

 

「嘘…。姫菜、これって…」

「私が知りうる限りの真実だよ」

「じゃあ、ヒッキーがしたことって…」

「そういうことだ。雪ノ下は薄々感づいていたがな」

「じゃあ、この最後に結ばれてるのも…」

「ん?あ!海老名さん、何改変してるの!何!付き合い始めてることになってるの!」

「あ!バレた?」

「比企谷君、どういうことなのかしら?」

「そこはフィクションだ!」

「まぁ、そうなんだけどね」

「まったく…。おい、海老名さん!」

「何?」

「これR18本じゃねぇか!こんなもん文化祭で売れるか!」

「え?」

「え?」

「あ~!間違えて、比企谷君に夏コミ版渡しちゃった。てへっ♪」

(わざとか!)

「これ、コミケで売ったの?」

「結構、売れたよ。うちの生徒が買ったかは不明だけどね」

「却下だ!一般向けでも、文化祭でこれを売ったら…」

「もう印刷あがってるよ」

「マジか…」

「差し止めするなら、買い取りね」

「はぁ~。三浦とか戸部にバレないように売ってくれ」

「ペンネームだからバレないよ」

「『プリンセス・シュリンプ』なんて、ベタな名前でバレない方がおかしい!」

「あ、そういう…」

「おい、由比ヶ浜…。今かよ…」

「はぁ、仕方ないわね」

「いいのかよ、雪ノ下」

「登場人物の名前も違うし、大丈夫じゃないかしら」

「だといいがな」

「今日は報告に来ただけだから、じゃあね」

「またね、姫菜」

「比企谷君、ちょいちょい」

「海老名さん、またなにかあるのか?」

「あの終わり方、冗談じゃないかもよ?」

「え?あ!は?」

「ではでは~」

 

海老名さんが去った奉仕部…。

 

「ヒッキー…」

「ん?」

「その…、ごめんなさい。あんなこと言って…」

「あれは、俺が暴走しただけだ。俺の方こそ、すまなかった」

「そうね。貴方は確かに暴走した。でも、理由があった」

「そうだな」

「私も、あんなこと言って、ごめんなさい」

「もう、いいんだ。俺が悪かったんだ」

「でも…」

「由比ヶ浜さん…。比企谷君はもうあんなことはしないわ。そして、私達も…。だから…」

「ゆきのん…」

「そうだな。マスターに教えられた。俺達はやり直しの真っ最中だ」

「うん!」

「そのためにも、文化祭の喫茶店、頑張ろうぜ」

「あら、比企谷君が頑張るなんて、明日は雪かしら」

「人が誤魔化してるのに…」

「高校最後の文化祭、楽しみだね」

「あぁ」

「そうね」

 



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三十九話

校内も文化祭モードに突入。

奉仕部も準備を始めてるいる。

 

「ねぇヒッキー」

「ん?」

「姫菜が持ってきたマンガ読み返したんだけど…」

「R18か?」

「ち、違うし!全年齢版!」

「それで?」

「隼人君は知ってて、奉仕部に…ヒッキーにお願いしたんだよね?」

「さてね。一年近く前のことだから、覚えてねぇな」

「ヒッキーは、それでいいの?」

「いいもなにも、終わったことだしな」

「でも…」

「でももストもねぇよ。お前らともリスタート出来てる。それでいいんだ」

「でも、あの男…。能力が無くて困って振ったのか。それとも、ワザとなのかしら…。」

「葉山のことなんか知らねぇよ。俺の管轄外だ。なぁ、チラシの原稿は、こんなんでいいか?」

「さすが海老名さんね。よく描けたイラストだわ」

「でも、煽り過ぎじゃねぇか。対決感がハンパないんですけど…。あれか!平塚先生の趣味か!」

「それもあるわね」

「うん!カッコいいよ!」

「俺と雪ノ下がコーヒー・紅茶を淹れて、由比ヶ浜と戸塚に接客してもらうとして…。精算はだれにしてもらおうか?小町は文実委員で張り切ってたし…」

「隼人君と戸部っちと優美子はクラスの出し物でしょ?姫菜はマン研…」

「こうなれば…ざい」

「川崎さんは?」

「サキサキに聞いてみよう!」

「貴方、誰を呼ぼうとしたのかしら?」

「シ○ー・アマダ」

「?」

「忘れてくれ」

「明日、教室で聞いてみるね」

「お願いね、由比ヶ浜さん」

 

翌日。

 

「へぇ、アンタ達そんなことやるんだ」

「でね、サキサキに会計やってもらいたいんだけど、どうかな?」

「アンタ達には世話になってるしな」

「ウチも参加していい?」

「さがみんも?」

「ほら、文化祭…、ウチは居場所がなくて…」

「由比ヶ浜、察してやれ。俺としては賛成だ」

「じゃあ、ゆきのんに聞いてみるね」

「放課後、部室行こうか?」

「その方が早そうだな。川崎、相模、頼めるか?」

「私はいいよ」

「ウチも大丈夫」

「あとは、戸塚に来てもらうか」

 

放課後、奉仕部。

 

「戸塚君と川崎さんはわかるけど、何故相模さんが来たのかしら」

「相模も手伝いたいってさ」

「だ、ダメかな?」

「相模だって、最後の文化祭だ。いい思い出を作りたいだろうし、去年のことを払拭したいだろうしな。それはおれも雪ノ下も同じだろ?」

「甘いわね、貴方は」

「かもな」

「でも、嫌いじゃないわ」

「お、おう」

「改めて、戸塚君、川崎さん、相模さん、お願い出来るかしら」

「僕はOKだよ」

「私もいいよ」

「ウチはお願いする立場だから」

「よし!じゃあ、よろしく頼む」

「よろしくね♪」

 

カップの類いは雪ノ下が準備出来る。コーヒー豆はマスターの店から仕入れて、茶葉は雪ノ下が持ち込む。

すると、川崎が…。

 

「服はどうするの?」

「しまった!盲点だったわ」

「俺は店の服借りるつもりだった」

「僕も八幡みたいな服着たいな」

「戸塚とお揃い…ふひっ♪」

「ヒッキー、キモイ」

「比企谷君、気持ち悪いわ」

「比企谷、アンタ…」

「比企谷って…」

「こほん。俺と戸塚はいいとして、お前らどうするんだ?」

「ヒッキーは、どんなんがいいと思う?」

(普通にウエイトレス?ここはメイド?意表を突いてナースとか?バニーガールは無理だよな。でも、由比ヶ浜が着るとしたら…)

「アンナミラーズ…」

「え?」

「え?」

「え?」

「え?」

「え?」

「やべっ!口に出てた!忘れてくれ!」

「八幡、それって…」

「スケベ!」

「変態!」

「ヒッキーが着て欲しいなら…」

「それはどんな服なのかしら?」

「雪ノ下、頼むから忘れてくれ」

「雪ノ下、こんな感じ」

「川崎、やめてくれ。画像を見せないで!」

「比企谷君…」

「はひっ!」

「…却下」

「はい…」

 

このあと、みんなでレンタル衣装を見に行きました。

 



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四十話

文化祭初日。

奉仕部喫茶。只今準備中…。

 

先に女性陣の準備。男の仕度なんぞは早く出来るからな。

 

「久しぶりに着たけど、どうかな?」

川崎はバーテンダー。

「前に見た時も思ったが、似合うよな」

「そ、そう…」

次は相模…。

「どうかな?」

「ん?ファミレスの制服っぽいけど…」

「なんか、北海道にあるファミレスの制服らしいよ。確かワグナ○アだっけ?」

「…。誰の入れ知恵だ?」

「材木座君が比企谷が喜ぶって…。ダメ?」

「いや、ごちそうさまです」

 

由比ヶ浜は、うさぎを注文したくなる喫茶店風。

「ヒッキー!どうかな?」

「これも材木座の入れ知恵か?」

「ヒッキーなら、食いつくって中二が言ってた」

「あの野郎…」

「ダメ?」

「いや、大丈夫だ。推奨するまである」

 

雪ノ下は着物にエプロン。

うさぎを注文したくなる喫茶店のご近所、某和風喫茶の看板娘っぽい。

「紅茶を出すのに着物って、どうなのかしら…」

「雪ノ下は着物似合うから、いいんじゃねぇの」

「そ、そう…」

おのれ材木座め。俺の心がピョンピョンしちまうじゃねぇか。アイツはコーヒーサービスだ。

 

次は、俺と戸塚の番。

俺はバイトの服に着替え、髪をセット。プラス銀縁の伊達眼鏡。

「八幡、カッコいいよ!」

「ありがとう。戸塚も似合ってるぞ」

戸塚も店に合うサイズがあったので、借りてきた。

実は、戸塚は男装しているマフィアのヒットマンではないだろうか…。

「八幡、どうかした?」

「いや、なんでもない」

 

無言で女性陣に見つめられる。

「なんだよ。変か?」

「ふん!」

「に、似合ってるよ」

「ヒッキー、普段からその髪型すればいいのに」

「ダメよ、由比ヶ浜さん。そんなことしたら…ゴニョゴニョ」

「そ、そうだね」

「?」

 

さて開店だな。

 

「由比ヶ浜さんと相模さんはチラシを配ってきて貰えるかしら」

「わかったよ」

「いってきます」

「川崎さんは前払いの会計をお願い。戸塚君は接客を」

「はいよ」

「はい」

 

最初は恐る恐るの営業。致し方ない。誰?うちの生徒?とか聞こえるけど、気にしない。

俺も出来る時は、接客をする。

すると、一人の女子生徒に話かけられた。

「すいません。写真いいですか?」

「いいですよ。スマホ貸してください」

「いえ、一緒に写真を…」

「へ?俺と?」

「はい。ダメですか?」

「いや、参ったな…」

「比企谷、ちょっと…」

川崎に呼ばれ、耳打ちされる。

「撮影一回100円もらって。売上になるから」

「そんなに儲けてどうするんだよ?」

「打ち上げの軍資金」

「なるほどね。じゃあ、入り口に書いておいてくれ」

「了解」

 

「すいません、写真一回100円いただきますが、いいですか?」

「はい。お願いします!」

 

「比企谷君、どういうことなのかしら?」

「川崎から言われた。打ち上げの軍資金にするんだとよ。入り口のポスターに書いてもらった。雪ノ下も男子生徒に言われたら頼む」

「まったく…。但し書きでSNSにアップしないようにと、書き添えなさい」

「了解、川崎に伝えておく」

 

コーヒーと紅茶の売上棒グラフが着々と伸びていく。

おい、いつのまに写真撮影の棒グラフ作ったんだよ。

 

「せんぱ~い!」

「出たよ…」

「なんですかそれ!」

「今は営業中で忙しいんだよ!」

「私もお客ですよ」

「へいへい」

「むむむ…」

「なんだよ、川平慈英か?」

「違いますよ。普段の先輩と違うんで」

「バイト中と変わらん」

「先輩!写真撮りましょう」

「一回100円な」

「え~!私からお金取るんですか!」

「当たり前だ」

「ぶーぶー」

「はいはい、あざとい」

「扱い方が雑です!」

「へいへい」

「…楽しそう…ですね…」

「ん?そうか?」

「だって、先輩笑ってますよ」

「だったら、楽しいんでろうな」→だったら、楽しいんだろうな

「私もこっちに参加したかったなぁ…」

「生徒会だって、楽しいだろ?」

「先輩方との文化祭って、最後なので…」

「ほぅ…。一色、このあと空き時間とかあるのか?」

「12時ぐらいまでないなら…」

「ちょっと待ってろ」

「はぁ…」

 

「雪ノ下、ちょっと」

「なにかしら?」

「実は一色がな…」

「それで…」

「…て、したいんだが、どうだ?」

「やっぱり、貴方は一色さんに甘いわね」

「俺は働かせたいだけだ」

「どうかしらね。いいわよ」

 

「一色、12時までの時間を俺にくれ」

「なんですか口説いてるんですか文化祭ていう特別なイベントで告白なんて素敵なんですが場所を考えてくださいごめんなさい」

「違ぇよ。お前を働かせてやる」

「え?」

「相模!一色と服替えろ。戸塚!このチラシをコピーしてきてくれ」

 

「先輩、着替えました」

「一色は時間まで接客を頼む。相模と戸塚で、この『時間限定、生徒会長がウエイトレス!!』チラシを適当に配ってくれ」

「わかった」

「わかったよ、八幡」

「先輩、本当にやるんですか?」

「あぁ、なんつうの…。思い出作り…かな?」

「いろはちゃん、可愛いよ!一緒にがんばろうね」

「結衣先輩…」

「一色さん、頼むわね」

「雪ノ下先輩…」

「何泣いてんだよ」

「泣いてないですよ!」

「ほら、お客さんだ」

「はい!」

 

一色も参加して、初日の午前中が過ぎていく…。

 

 

 




――――――――――――――――

京アニ放火事件で、お亡くなりになられた方々、お悔やみ申し上げます。ケガをされた方々の一刻も早い回復をお祈り申し上げます。

警察・消防の方々、大変なご苦労だと思います。

アニメファンとして、非常に残念な事件です。一刻も早い真相解明を期待します。

後書きに相応しくないとは思いますが、ご了承下さい。


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四十一話

一色が生徒会に戻る時間がきたので、記念撮影をして見送る。

午後も働くのかぁ…。

 

「お兄ちゃ~ん!」

「小町~!」

「誰?」

「小町!ヒドイ!お兄ちゃん、泣いちゃうよ!」

「え?お兄ちゃん!!」

「そう!小町のお兄ちゃん!」

「でも、目が腐って…。はっ!眼鏡!」

「眼鏡でそんなに変わるのか?」

「そうだよ、お兄ちゃん!眼鏡かけたらモテモテになるSSは山ほどあるよ!」

「そのメタ発言はやめなさい」

「小町ちゃん、やっはろー!」

「結衣さん、やっはろー!結衣さん、可愛い!ね、お兄ちゃん?」

「ん?あぁ」

「えへへ~」

「小町もこんなの着て参加したかったなぁ」

「さっき、いろはちゃんが時間限定でウエイトレスやったよ」

「いいなぁ」

「小町の衣装はないぞ」

「えぇ~」

「小町が着るなら、ピンクの魔法少女だな」

「お兄ちゃん、またアニメネタ?これだから、ゴミぃちゃんは」

「まぁ、休んでな」

「小町さん、いらっしゃい」

「雪乃さん、着物可愛い!」

「そ、そう…」

「お兄ちゃん、売上の棒グラフはわかるけど、写真撮影の棒グラフは?」

「一回100円で写真撮影してるんだよ」

「ふむ、結衣さんがトップで雪乃さんが二位かぁ」

「バカ!言うな!」

「え?なんで?」

「私が二位…。由比ヶ浜さん、私も積極的に接客するわ」

「ほら、火がついちゃった…」

「あちゃ~」

 

あっという間に、閉店時間。

「お疲れ様~」

「疲れた~」

「あとは、私達でやるから、川崎さんと相模さんと戸塚君は帰って大丈夫よ」

「いいの?」

「大丈夫だ。それに…」

「ヒッキー?」

「そろそろ来るだろう…」

「そうね」

「ゆきのん?」

「私は京華のお迎えがあるから」

「じゃあ、ウチも帰るね」

「また明日ね八幡」

 

「ゆきのん、ヒッキー、誰か来るの?」

「や、やぁ…」

「来たか」

「遅かったわね」

「隼人君…」

「姫菜が売ってた同人誌なんだが…」

「俺は何も言うことはない。あれを見てお前やおまえの周りがどう思うかだ」

「そうね。私も言うことはないわ。あえて言うなら、私の中の貴方への評価がさらに下がった…」

「隼人君、優美子や戸部っちは知ってるの?」

「それは…」

 

「ヒキタニ君!」

「ヒキオ!」

「ドアは静かに開けろ」

「ごめん。でも、これ…。あ、隼人君…」

「隼人…」

「俺は知らん。お前らで話してくれ。俺達を…、奉仕部をこれ以上巻き込むな」

「そうね。葉山君、貴方の不始末よ」

「私も隼人君と戸部っちの依頼を受けたのは軽率だったと思ってる。隼人君、知ってたなら教えて欲しかった…。優美子ごめん、何も話さなくて…」

「結衣…」

「そういうことだ。俺らの中では終わったことだ。あとは、お前らで話してくれ」

「平塚先生には、話をしてこの場所を提供するわ」

「だそうだ、海老名さん。アンタも当事者だろ?」

「さすが比企谷君。バレてたんだ」

「ボッチのサーチスキルなめんなよ」

「じゃあ、私達は出るわね」

「優美子、姫菜、私は友達だと思ってる…。今までも、これからも…」

「結衣、ありがとうね」

「結衣…」

 

「ヒキオ」

「あん?」

「あーし達のために、その…、ありがとう」

「俺は依頼を解消したまでだ。気にするな」

「それでも、ありがとう」

「おう」

 

「比企谷、俺は…どうすればよかったんだ…」

「お前のことなんぞ知らん。自分で考えな」

「そう…だな…」

「葉山、お前は千葉ポートタワー登ったことあるか?」

「あぁ」

「上から見ると、沢山の人が見える。それこそ例のセリフを言いたくなるほどな」

「…」

「だが、その人達が笑ってるのか怒ってるのか泣いてるのかなんて上から見たらわからん。ちゃんと下へ降りて表情を見ないとな」

「!!!」

「広い視野も結構なんだが、一人一人をちゃんと見ないヤツに『みんな仲良く』なんて出来ないと思うんだがな」

「…」

「ま、ボッチの俺の意見だから気にするな。じゃあな」

 

 

「貴方…」

「あん?」

「本当に甘いわね」

「まぁ、マッカン大好きだからな」

「はぁ…。でも、嫌いじゃないわ。貴方のそういうところ」

「お、おう。ありがとよ」

「でも…」

「ん?」

「明日、姉さんがアレを見たらどうなるのかしら…」

「俺の管轄外だ。知らん」

「そうね。私も知らないわ。ふふふ」

 




――――――――――――

もしかして、葉山と戸部って初登場?


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四十二話

文化祭2日目。

今日は校外の人も来場する。

 

「今日も一日がんばるぞい」

「ヒッキーがやる気だ」

「言ってみたかっただけだ」

「いろはちゃん、今日もウエイトレスやるって」

「マジか!」

「私と同じ衣装だよ」

「…それ、いいのかよ」

「いいんじゃないの?」

「いや…。まぁ、中の人的な」

「?」

 

最初のお客から、度肝を抜かされる…。

 

「いらっしゃいませ…あ」

「ひゃっはろー!」

「陽乃、それは挨拶なんですか?挨拶はちゃんとしなさい」

「はい…」

「比企谷さん、ご無沙汰してます」

「雪ノ下さんに、雪ノ下のお母さん。いらっしゃいませ」

「よく、お似合いですよ」

「誉めても何もでませんよ」

「姉さんに、母さん…」

「雪乃、順調ですか?」

「はい…」

「雪乃ちゃん、紅茶を二つね」

「かしこまりました」

 

「お待たせしました」

「雪乃も私の娘ね。着物がよく似合ってるわ」

「ありがとうございます」

「そう固くならずに」

「はい」

 

「雪乃」

「はい」

「腕を上げましたね。とても美味しいわ」

「ありがとうございます」

「比企谷さん」

「はい」

「雪乃をよろしくお願いしますね」

「それは、どういう意味ですかね?」

「さぁ。ふふふ」

(笑い方そっくりだな、この親子)

「本当は主人も比企谷さんに会いたいと言っていたんですが、公務がありまして…」

「それは、残念でしたね…」

「駄々をこねたので、お説教しました」

「はぁ…」

「さて、雪乃の顔も見たし、私は校長に挨拶して帰ります。陽乃はどうするんですか?」

「もう少し見ていくよ」

「雪乃、たまには帰ってきなさい」

「はい」

「その時は、比企谷さんを連れてきなさい」

「か、母さん!」

「ふふふ。では、失礼します」

「ありがとうございました」

 

「で、雪ノ下さんは、何かご用ですか?」

「ちょっと気になることがあってね」

「ちなみに、なんですか?」

「修学旅行…」

「…」

「ふ~ん。比企谷君、思い当たる節があるんだ」

「あったとしても、終わったことですから」

「雪乃ちゃんとガハマちゃんは、それでいいの?」

「私は気にしてないわ」

「わ、私も…」

「比企谷君がなにかしたの?」

「さぁね。やったとしても、雪ノ下さんには言いませんがね」

「比企谷君のケチ!」

「なんとでも言ってください」

「じゃあ、勝手に調べるね」

「俺達に迷惑がかからないようにしてください」

「さぁね。隼人次第かな」

(頼むぞ葉山!)

「陽乃さん、いらっしゃい」

「沙希ちゃんはバーテンダー風なんだね」

「昔とった杵柄です」

「むしりとったきぬがさ?」

「由比ヶ浜は勉強しような」

「文化祭で勉強のこと言わないでよ!」

「南ちゃんはファミレス?」

「そうですよ」

「京都の高校の制服か?某女子高の制服かと思った」

「メタ発言やめてください」

「冒頭でネタを入れたヒッキーがそれ言うんだ…」

「じゃあ、私はマン研行ってから、隼人を探すから」

「くれぐれも、お手柔らかに」

「は~い」

 

まだ一組目だぞ…。先が思いやられる…。

 




―――――――――――――――――

もうネタ・メタ発言連発です。


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四十三話

嵐(雪ノ下母・雪ノ下さん)が無事にさってから、しばらく…。可愛らしいお客さんが来店。

 

「さーちゃん、来たよ」

「こんにちは」

「けーちゃん、よく来たね。留美ちゃん、ありがとう」

「お、けーちゃんにるーちゃん、いらっしゃい」

「るーちゃんじゃない」

「悪かったよ、ルミルミ」

「ルミルミじゃない」

「はーちゃん、るーちゃんだよ」

「そうだな。ほら、こっちに座って」

「比企谷君、ちょっと…」

「なんだ、雪ノ下」

「あの娘たちが飲める飲み物がないのよ」

「しまった!」

「ヒッキー、私が買ってきたジュースがあるよ」

「さんきゅ、由比ヶ浜」

 

(ふむ、こんだけ種類があるのか…。ん?マスターに借りた道具の中にシェイカーがあったな…)

 

「川崎!」

「なに、比企谷」

「シェイカー振れるか?」

「え?振れるけど、なに?」

「けーちゃんと留美にカクテル作ってやってくれ」

「アンタ、子供に酒飲ます気なの?」

「心配すんな。ここに酒は無い」

「じゃあ、なにさ」

「…を、けーちゃんと留美に作ってやれ。材料は確認済みだ」

「他のひとも居るのにシェイカー振るのかい?」

「休憩にしちまえ。それくらい優遇してもバチは当たらん。な、雪ノ下」

「はぁ、仕方ないわね。川崎さんには手伝ってもらっているのだし…」

 

無理やり休憩にして、お客はけーちゃんと留美だけにする。

 

「留美、けーちゃん。今から川崎がカクテル作ってくれるからな」

「ヒッキー、カクテルって!」

「まあ、見てな」

 

川崎が颯爽とシェイカーを振る。

 

「川崎さん、カッコいい」

「本物のバーテンダーみたい…」

 

戸塚と相模が感嘆の声をあげる。

 

「お待たせしました。『シンデレラ』です」

「さーちゃん、これ飲んでいいの?」

「ああ、いいよ」

 

「おいしー」

「美味しいです」

 

「ヒッキー、あれお酒じゃないの?」

「ノンアルコールカクテルだよ。マスターから借りた道具に混じってたから、思いついたんだ」

「サキサキ、私も飲みたい!」

「川崎さん、ウチも」

「僕もお願いしていい?」

「あ、ああ、いいよ」

「雪ノ下はいいのか?」

「私はパーティーで飲んだことがあるから。それより、私にコーヒーを煎れてもらえるかしら」

「はいよ。雪ノ下は俺の分の紅茶を頼む」

「えぇ」

 

「ア○ナー!」

「うるさいぞ!材木座!けーちゃんと留美がビビってるじゃねぇか!誰だよ、ア○ナって」

「並行世界(パラレルワールド)での、我が恋人だ。ここに来なかったか?」

「知るかよ、来てねぇぞ」

「そうか…、失礼した」

「まったくだ」

「また来るぞ!八幡!サラバじゃ」

「もう来るなよ。まったく…」

 

「はーちゃん、あのひとだれ?」

「けーちゃんは知らなくていいひとだよ」

「ふ~ん」

「バカばっか…」

 

まだまだ文化祭は続く…

 

 



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四十四話

けーちゃんとルミルミを、小町と大志が迎えに来た。

大志を睨んでいたら、川崎に刺すような視線を向けられたので、視線を小町へ移す。小町マジ天使。

入れ替わるように、一色がやってくる。

 

「またお手伝いに来ましたよ」

「悪いな一色」

「一色さん、お願いね」

「いろはちゃん、こっちに衣装あるからね」

「は~い」

 

「せんぱ~い、どうですか?」

「かわいいかわいい」

「ヴァェェェェェ!先輩が適当だよ~」

「一色、お前がその声出すと、大変だぞ」

「え?どうしてですか?」

「…声豚が集まってくる」

「肥豚?」

「なんか字が違う気がするが…。まぁ、気にするな」

「はぁ」

 

今日も生徒会長ウエイトレスタイムは好調。…というか、材木座のお友達が大勢来た…。

あれ?コスプレ喫茶に変更したっけ?最初からコスプレ喫茶だった?

 

「せんぱ~い」

「ん?なんだ」

「一緒に写真撮りましょう♪」

「断る」

「こんなに可愛い衣装を着た可愛い後輩と写真が撮れるんですよ」

「あざとい。だから断る」

「ヴァェェェェェ!」

「だから、それはやめなさい。わかったよ…」

「最初から、素直に一緒に写りたいって言えばいいんですよ」

「はいはい」

 

数枚、一色と写真を撮り終わると。

「次はみなさんと撮りたいです」

「だとよ。生徒会長様のご命令だぞ」

「なんですか、それ!」

「はぁ、仕方ないわね。由比ヶ浜さんは大丈夫?」

「大丈夫だよ。サキサキとさがみんは?」

「ウチはOKだよ」

「私も」

「戸塚はどうだ?」

「僕も大丈夫だよ」

「肥豚…もとい、材木座写真頼む」

「何故か失礼なことを言われた気がするがいいだろう。我が撮ってやろう。いいものを見せてもらったからな」

 

ワイワイ言いながら、写真を撮る。…これじゃあ、リア充だ。ウェイウェイ言うまである。ないな…。

 

「まったく、貴方は…」

「ん?なんだ雪ノ下」

「年下の娘に甘いのね」

「まぁ『お兄ちゃん』だからな」

「私だって、妹なのに…」

「なんか言ったか?」

「いえ、何も…」

「俺だって、頭撫でてみてよ…」

「何か言ったかしら?」

「何も言ってねぇよ」

 

生徒会長ウエイトレスタイムが終わり、もうすぐ昼休憩の時間…。

 

「あ!居た!比企谷!」

「デカイ声を出すなよ、ビックリするだろ、折本」

「何それウケるwww」

「ウケないから。で、何しに来たんだ?」

「比企谷が何やってるのかと思って。それと校内の案内頼もうと思ってさ。もうすぐ休憩でしょ?」

「なんで知ってるんだよ」

「さっき生徒会長ちゃんに聞いた」

「一色~!」

「ほら、行くよ」

「せめて、着替えさせろよ」

「いいよ。そのままの方がカッコいいから」

「そ、そうか」

「なにキョドッてるの。ウケるwww」

「うるせぇよ。雪ノ下、由比ヶ浜、ちょっと行ってくる」

「ちょ、比企谷君…」

「ヒッキー…」

 

「はぁ、比企谷君は女性に甘いのね…」

 

 

 



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四十五話

折本に散々振り回され奉仕部へ戻っる。

 

「たでーま」

「デートは楽しかったかしら、スケコマシ君」

「ヒッキー、デートだったの?」

「違ぇよ。雪ノ下、原形留めてない呼び方はやめて」

「アンタたち、休憩はもういいだろ?」

「川崎、すこし休ませてくれ」

「他校の女子と遊んでたヤツを休ませる訳にはいかないね」

「えぇ~。相模、助けてくれ」

「ウチも知らない」

「戸塚~」

「頑張ってね、八幡」

「戸塚まで…」

 

「みんな~、遊びに来たよ~」

「城廻先輩、いらっしゃいませ」

「みんな、衣装可愛いね」

「ありがとうございます」

「ねぇ、比企谷君。写真撮ろうよ」

「いいですけど、一回100円ですよ」

「え?お金取るの?」

「あのグラフでカウントしてます」

「なんで、一色さんの名前があるの?しかも、三位って…」

「時間限定でウエイトレスやってもらったら、すごい人気で…」

「じゃあ、比企谷君の順位が上がるように貢献するね♪」

「いや、俺は目立ちたくないので…」

「500円で5回ね。これで、一色さんと同率三位だね」

「なん…だと…」

「ほら、撮ろうよ」

「そ、そんなに、くっつかないでください」

(可愛い!いい匂い!柔らかい!)

「ヒッキー、なにデレデレしてるの?」

「何をしているかしら、エロ谷君…」

「い、いや、これは、城廻先輩が…」

「あと3枚ね♪」

 

めぐりん襲撃から数分後…。

 

「やってるかね」

「平塚先生、いらっしゃいませ」

「お客を連れてきたぞ」

「坊主ども、やってるか?」

「マスター!いらっしゃいませ」

「では、私は…」

「由比ヶ浜、マスターと平塚先生を席に」

「は~い」

「ゆ、由比ヶ浜、私は仕事が…」

「まぁまぁ、少しぐらいじゃないですか」

「平塚さん、お茶を一杯お付き合いいただけますか?」

「…はい」

 

「あの二人、お似合いだよな」

「ええ、そうね」

 

マスターと平塚先生も帰り、閉店まであと少し…。

 

「よう愚息。働いてるか」

「結衣、頑張ってるか」

「親父」

「パパ!」

「…後ろの眼鏡とマスクのあからさまに怪しい人は、もしかして…」

「まさか、父さん?」

「ははは…。雪乃…」

「はぁ…。とりあえず、座ってくれ」

 

「親父、仕事はいいのかよ」

「小町の初めての文化祭だからな。由比ヶ浜誘ったら、雪ノ下も釣れた」

「父さん、公務はどうしたのかしら?」

「終わらせた」

「はぁ…。母さんは知ってるの?」

「もちろんだ。『ただし、バレないようにね。最優先事項よ』って」

「結衣、その衣装可愛いな」

「えへへ。そうかなぁ」

「八幡君も、そう思うよな?」

「ええ、まぁ」

「雪乃だって、可愛いだろ?な、八幡君」

「そうですね」

「やっぱり、結衣を嫁に…」

「いや、雪乃だ」

「まだ、その話終わってなかったのかよ!」

 

眼鏡にマスクの不審者の情報を聞き、厚木先生が奉仕部を訪れ、その正体が県議会議員のパパのんとわかると、校長先生がまで奉仕部へ来て、大変な騒ぎになった…。

 

後で、ママのんに怒られるんだろうなぁ…。

 




――――――――――――

文化祭編も、もうすぐ終わりますます。

…みずほ先生ネタを入れてしまいました…。
17歳ネタは無理でした。


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四十六話

後片付けも終わり、毎度お馴染みのカラオケパーティールームで打ち上げ。

 

「やぁ、比企谷」

「なんで、お前らが居るんだよ」

「結衣がどうしてもってね」

「ほ~ん。で、俺になんか用か?」

「改めて、すまなかった」

「謝罪なんぞ、いらん。俺は俺の目の前のことを俺の考えで俺の為に動いただけだ」

「だが…」

「自己犠牲とか、俺が救われたいとか大きなお世話だ」

「だが、君は…」

「俺を否定するな。俺の行為が俺に返って来た。それだけだ」

「君はそれでいいのか?」

「俺は、たぶん、自分の力量以上のことをやったんじゃないかと思っている…。そのツケなんじゃないかと…。ある意味、お前のやり方は正解だよ葉山。自分の力量にあまることを人任せにする」

「…陽乃さんと同じようなことを言うんだな」

「あん?そんなこた言われたのか?」

「無意識にしても、意識的にしても力量以上のことを請け負って人に押し付けてるとね。キツイお叱りを受けたよ」

「さすが雪ノ下さんだな。葉山、次に自分の器に余ることがあったらどうする?」

「仲間を頼るさ」

「それは?」

「優美子にも、キツク言われたよ。私を頼ってってね」

「さすが、あーしさんだな」

「まったくだ」

「葉山、お前には仲間が沢山居る。それは強みだ。それを生かさないでどうする」

「そうだな」

「お前なら出来るさ」

「君はどうするんだい?」

「決まってる…。逃げるさ。だが、どうしようもなくなった、アイツらに頼るさ」

「それがいい。君と話せてよかったよ」

「俺は良くない。見てみろ、海老名さんが鼻血の噴水作ってる…」

「あはは…」

「ほら、三浦が呼んでるぞ」

 

「ヒキタニく~ん」

「なんだ戸部」

「マジ、ごめんね」

「気にするな。フラれたくない気持ちもわかるからな」

「ありがとね~、ヒキタニ君」

「おう」

「それと…。俺、ヒキ…。比企谷君に負けねぇからね」

「なんだかわからんが、がんばれよ」

 

「比企谷君」

「海老名さん、鼻血は大丈夫なのか?」

「いやぁ、ハヤ×ハチの後トベ×ハチ見せられたら…」

「さいなら~」

「ちょちょ、待って」

「なんだよ」

「比企谷君なら、あの18禁本みたいこと、してもいいよ…」

「なっ!」

「そういうことだよ、じゃあね」

 

「ここ、いいかしら?」

「おう、雪ノ下か」

「貴方は歌わないの?」

「アニソンをここで歌う勇気はねぇよ」

「材木座君は歌ってるわよ」

「ヤツは勇者だよ。勇者王まである」

「私も歌うのは苦手なのだけど…」

「なんで曲のチョイスが『フォローバックが止まらない』なの?南極行くの?」

「行かないわよ。まったく…」

「なんだよ」

「貴方、変わったわね…」

「そうか?変わったつもりはないがな」

「いえ、変わったわ。それに私も変えられてしまった…」

「そんなことねぇだろ。雪ノ下は、あの時のまま眩しいよ…」

「え?」

「なんでもねぇよ」

「そ、そう…」

「なぁ、雪ノ下。世界は変えられたか?」

「変えられたか?…私の見方が変えられてしまったのかもしれないわね…」

「ほう、それはどんな風に?」

「そうね…。以前より、世界は色鮮やかに見えるようになったわ」

「それは、良かったのか?」

「えぇ、とても」

「それは、良かった…」

「貴方のせい…。いえ、貴方のお陰よ、比企谷君…」

 

 

「ねぇ、いろはちゃん」

「なんですか、結衣先輩」

「ヒッキーとゆきのんて、なにげなく二人になるよね」

「あぁ、私も同じこと考えてました」

「負けないよ、ゆきのん!」

「負けませんよ、雪ノ下先輩!」

 

 

 




―――――――――――――

文化祭編終了です。
次は…、ノープランです。


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四十七話

文化祭も終わり、通常営業に戻った奉仕部。

 

「ゆきのん、この写真とかどうかな?」

「えぇ、よく撮れてるわね」

「こっちは?」

「由比ヶ浜さん、この写真のデータいただけるかしら?」

「うん、いいよ」

 

珍しくドアをノックする音がする。

 

「どうぞ」

「失礼します」

「ん?藤沢じゃねぇか」

「書記ちゃんだよね?」

「依頼…、かしら?」

「いえ、依頼ではなくて、比企谷先輩に書類を見てもらおうかと…」

「一色はどうした?」

「家の用事で帰ってしまいました」

「そんな時こそ、本牧だろう。アイツはどうした?」

「本牧さんとは、ちょっと…」

「どうかしたのか?」

「ヒッキー。あんまり、そういうこと聞いちゃダメだよ」

「そんなモンかね。んで、書類ってのは?」

「これなんですけど…」

「ここがおかしいんだよ。んで、こうすると…」

「なるほど…」

 

「ひ、比企谷君」

「なんだ?」

「そ、その…。藤沢さんと…ち、近くないかしら…」

「そうだよ、ヒッキー!」

「ん?そうか?藤沢、悪かったな」

「い、いえ、そんなこと…ないです…」

 

「よし!これでOKだな」

「はい!ありがとうございます!それと…」

「まだ何かあるのか?」

「あ、あの、写真撮らせてください!」

「へ?」

「!」

「!」

「ダメ…ですか?」

「い、いやダメじゃないが、俺の写真なんでどうするんだ?さては、インターネットにさらして…」

「クラスの友達に頼まれまして…。比企谷先輩って、結構人気なんですよ」

「え?マジで?」

「マジです。でも、どこを探しても見つからないって…。奉仕部は敷居が高くて来れないので、私にと…」

「ほ~ん、さすがステルスヒッキーだな。文化祭の一時的なノリみたいなもんだろ。仕方ねぇな」

「ヒッキー、いいの?」

「数少ない後輩の頼みだからな」

「ありがとうございます」

 

書記の藤沢が訪れた翌日

 

「先輩!書記ちゃんに何をしたんですか!」

「一色さん、ノックを」

「すいません」

「藤沢なら昨日書類を持ってきたから、修正箇所教えただけだぞ。ウソだと思うなら、二人に聞いてくれ」

「う~ん、先輩がそこまで言うなら…」

「比企谷君、言葉が足りないわよ」

「そうだよ、ヒッキー!写真撮ってたじゃん」

「あぁ、友達に頼まれたとか言ってたな」

「そういうことか…」

「一色さん、どうかしたのかしら?」

「副会長と書記ちゃんが付き合う手前までいってたらしいんですけど、最近ピリピリしてまして…」

「それで?」

「さっき、書記ちゃんが携帯見てたから、覗いたら先輩の写真だったので…」

「あ~、あれだ。友達にデータ渡す前に確認してたんじゃねぇの」

「はぁ~」

「はぁ~」

「はぁ~」

「なんだと、三人ともため息ついて」

「バカ」

「ボケナス」

「ハチマン」

「なにその分割。ハチマンは悪口じゃないからね」

「朴念仁」

「唐変木」

「鈍感難聴系主人公」

「なにその、いわれのない悪口。泣いちゃうよ」

「そういえば!」

「由比ヶ浜さん、どうかしたの?」

「最近、海浜の生徒が校門に居る時があるんだけど…」

「葉山目当てじゃねぇの?」

「今度、かおりんに聞いてみるけど…」

「なんだ?歯切れが悪いけと、折本がどうかしたのか?」

「なんでもない…」

「結衣先輩、もしかして…」

「そうかもしれないわね」

「なんだかよくわらからん」

 

「そうだ!先輩はどうでもいいんです!」

「噛みついてきて、どうでもいいのかよ」

「みなさんに、体育祭の相談があったんですよ!」

「…はい?」

 

 

 

 




――――――――――――――

次回は体育祭かな?


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四十八話

一色の依頼…。体育祭を盛り上げたい…。

 

「却下!無理!帰れ!」

「先輩、ヒドイです!考えてくださいよ」

「去年と同じでいいだろ」

「民衆は常に新しい娯楽に飢えてるんですよ」

「なにを、それっぽいこと言ってるんだよ」

「雪ノ下先輩、結衣先輩、お願いしますよ~」

「ねぇねぇ、ゆきのん」

「毎年、新しい競技をするのは難しいわね…」

「ほらみろ」

「せめて、考えるだけでも…」

「仕方ないわね。会議に参加するぐらいなら…」

「さすが雪ノ下先輩!」

「会議に参加するだけだからな。意見が出なくても、文句言うなよ」

「はい♪」

「良かったね、いろはちゃん♪」

 

翌日、生徒会室での会議に出席することになった。

 

「う~す」

「あ、先輩、適当に座ってください」

「よお、雪ノ下。相変わらず早いな」

「貴方は教室で話す相手が居ないのに、遅いわね」

「ほっとけ。マッカン買ってたんだよ」

「そう」

「由比ヶ浜は教室で三浦達としゃべってたから…。ほかの連中は?」

「すぐに来ますよ」

 

「お疲れ様です」

「副会長、お疲れ様です」

「よお、本牧」

「比企谷…。いや言うまい…」

「なんだよ」

「なんでもない」

「あそ」

 

「やっはろー!」

「由比ヶ浜、うるさい」

「由比ヶ浜さん、静かに」

「結衣先輩、静かにしてください」

「なんでこんなにアウェイ!」

「適当に座っとけ」

「うん」

 

「すいません、遅くなりました」

「書記ちゃん、お疲れ様」

「お疲れ様です」

「じゃあ、席について」

「は、はい」

 

「…ねぇ、書記ちゃん」

「はい」

「なんで、先輩の隣に座ったの?」

「ごめんなさい。席、決まってたんですか?」

「そうじゃないけど…」

「では、ここで。比企谷先輩もいいですか?」

「あ、別にかまわん」

「くっ…」

 

「で、では体育祭の新競技の会議を始めます」

「中止がいいと思います」

「先輩、マジメに」

「はい、すいません」

「去年の新競技はどうするのかしら?」

「出来れば、継続したいですね」

「なるほどね~」

「コスプレでリレーするのはどつうかな?」

「騎馬戦でコスプレしてるだろ」

「ふたつあってもいいじゃん」

「それも案としては有りですね」

「かなり出尽くしているから、難しいわね」

 

良い案が出ないまま、下校時刻。

 

「では、明日もよろしくお願いします」

「じゃ、お疲れ」

「ヒッキー、帰るの?」

「あ、コーヒー飲みながら一考してから帰る」

「私も行く~」

「私も行こうかしら」

「お前らも行くのかよ」

「先輩、私も行きま~す」

「一色まで来るのかよ」

「僕は行ったことないから、興味がある」

「本牧まで…」

「比企谷先輩、私もいいですか?」

「結局、全員じゃねぇか」

 

「こんばんは」

「おう、今日は大勢だな」

「生徒会の役員も一緒なんで。アイスコーヒー6で」

「坊主、ちょっと手が離せないから、頼む」

「了解です。適当に座っててくれ」

 

「ほい、お待たせ」

「先輩、ありがとうございます」

「本牧と藤沢は初めてだよな?ここのコーヒーは旨いぞ」

「比企谷が饒舌だ…」

「い、いただきます」

「ほい、雪ノ下に由比ヶ浜…」

「ヒッキーって、こぼしたりしないよね」

「そうね、バランス感覚かしら…」

「ステルスモードの応用だ」

「なるほど」

「それなら、納得出来るわね」

「…ん。これって、競技に出来ねぇか?」

「どういうことですか?」

「マスター、プラスチックとか落としても割れないカップありますか?」

「子供用のカップがいくつかあったな」

「ちょっと借ります」

 

「これでよし。由比ヶ浜、お盆に載せて運んでみてくれ。出来るだけ早くな」

「わかった。…意外と難しいね」

「結構、こぼれたな。一色は運動神経は?」

「サッカー部のマネージャーなめないでください」

「じゃあ、やってみな」

 

「よっ、ほっ、あれ?」

「どうだ?」

「難しいですね」

「藤沢は運動は?」

「あまり得意では…」

「やってみてくれ」

「はい」

 

「こぼさないようにすると遅くなりますね」

「でも、こぼれてないな」

「本牧もやってみてくれ」

「わかった」

 

「こぼれてないようにするのと、早く運ぶことの両立は難しいな」

「これで競技の…」

「待ちなさい」

「なんだよ、雪ノ下。不服か?」

「私にもやらせなさい」

「お前、出来ちゃうだろ」

 

「視線をぶれないようにすれば、こぼれてないわね」

「もう攻略法見つけちゃったよ…」

 

「ハイスペックの雪ノ下が出来たのはイレギュラーとして、競技としてはどうだ?」

「ゴールする順番じゃダメですよね…」

「タイムを競う。規定量より少なければ、ペナルティでタイムをプラスする」

「なるほど…。プラカップとかでラインを書いて、その線より少なくなっていたら、ペナルティ10秒とか…」

「さすが本牧。キレるな」

「比企谷に言われてもうれしくないな」

「まぁ、そう言うなよ」

「…」

「どうした?」

「先輩と副会長って、仲が良いんですね」

「いや、別に」

「顔みたら、少し話す程度だけどな」

「まず、比企谷の顔をなかなか見ないけどな」

「ほっとけ」

「いやいや、普通に会話してるじゃないですか。先輩が普通に会話してるのが、珍しいですよ」

「よく話すぞ、戸塚とか戸塚とか戸塚」

「全部、彩ちゃんだし」

「先輩、キモイです」

「まったく、比企谷君は…」

「比企谷先輩って…」

「比企谷…」

 

新競技決定!!

コスプレリレー?採用されました。

 



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四十九話

体育祭…。やりたくねぇなぁ…。

とりあえず、救護所で雪ノ下・由比ヶ浜と合流しますか。

 

「うす」

「やっはろー!」

「こんにちは、比企谷君」

「また紅組だな」

「一緒にがんばろうね」

「誠に遺憾だけれども、よろしく」

「一言多いんだよ」

 

競技が始まると、リア充どもがウェイウェイ騒いでいる。中でも白組の葉山がキャーキャー言われてる。羨ましくなんかないモン!

 

「せんぱ~い」

「なんだ、敵情視察か、白組の一色」

「違いますよ。そろそろ先輩の出番なので、可愛い後輩が応援に来ましたよ♪」

「お前に応援されたら、白組の男子に殺されるから、やめてくれ」

「いいじゃないですか~」

「あ~もう、くっつくな!好きにしろ」

「はぁい、好きにしま~す」

「あ、あの、比企谷先輩」

「おぉ、藤沢。お前も違う組だけど、がんばれよ」

「は、はい。比企谷先輩、頑張ってください」

「ん、ありがとよ」

「先輩、私と書記ちゃんで対応が違います!」

「藤沢、あざとくないからな」

「私だって素ですよ!」

 

さて、自分達で考えた競技だ。負けるわけにはいかないな。

 

「やぁ、比企谷」

「なんだよ、葉山」

「君もこの競技に出るんだな」

「まあな」

「君には、負けたくないな」

「あ、そ」

「君は負けてもいいのかい?」

「身体能力の差は歴然だからな」

「そうか」

(向こうで、由比ヶ浜がブンブン手を振ってる…。雪ノ下は胸元で小さく手を振ってる…。仕方ない、やる気出すか)

「葉山、気が変わった。お前に勝つ」

「…なるほど。だが、俺も負けられないからな」

(あぁ、あーしさんがすげぇ応援してますもんね)

「お互い、負けられねぇな」

「あぁ、そうだな」

 

結果

 

一位 比企谷

二位 本牧

三位 葉山

 

「やるな、本牧」

「比企谷に手本を見せてもらったからな」

「な、何故だ。何故負けた…」

「じゃあな、葉山」

 

「やったね、ヒッキー!」

「お、おう…。なんだ、手を上げて」

「ハイタッチだよ!イェーイ!」

「痛ぇよ、加減しろよ」

「だって、嬉しかったんだもん!ほら、ゆきのんも」

「え、えぇ」

雪ノ下が上げた手に、手を合わせる

「はいよ」

「二人とも、もっと嬉しそうに出来ないの?」

「馴れてないんだよ、察してくれ

。次はお前らの『千葉戦』だろ?」

「うん!がんばるよ!」

「行ってくるわ」

「おう、ケガしないようにな」

 

今年も雪ノ下無双です。

強ぇなぁ。悪鬼・羅刹・雪ノ下だな。

「比企谷君。今、失礼なこと考えなかったかしら…」

「うおっ!ビックリしたぁ。考えてませんよ…。お疲れさん」

「なら、いいのだけど」

「あれ?ヒッキー、棒倒しは?」

「あ?去年の反則で出場停止だとよ」

「あはは…」

 

棒倒しは、葉山率いる白組の勝利…。

尾張幕府家鳴将軍家直轄預奉所軍所総監督。奇策士・比企谷八幡が居ないと勝てないか…。居ても反則負けなんですけどね。

 

次はコスプレリレーか…。やるの?本当に?

 




―――――――――――――――

次は、間違いなくネタ・メタ連発です。


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五十話

なんで俺はこんな格好しているんだ…。

「いいよ、比企谷君のアイドル風衣装」

「海老名さん、なんなのこれ?」

「ソシャゲのキャラだよ」

「やぁ、比企谷」

「葉山…。お前もか」

「作品の垣根の越えて、キマシタワー!」

「姫菜!擬態しろし!」

「三浦も出るのか?って、銀髪に眼帯って…」

「姫菜が着ろって…」

「本当はドリル的な作品の方が良かったけど…」

「あんなの着れないし!」

「海老名さんは、セーラー服なんだな」

「もってけセーラー服的な感じだね」

「ヒッキー!」

「由比ヶ浜も制服っぽいけど、金髪ポニテ…」

「どうかな?」

「いいんじゃねぇの」

「そう?えへへ」

「八幡!」

「おう、戸塚…。戸塚も制服っぽいな。しかも、デカイリボンだな」

「あとね、由比ヶ浜さんのことを『お嬢』って呼ぶようにって」

「なるほどな」

(すると、戸塚は女なのか?)

「何か気持ち悪いことを考えてないかしら?」

「うおっ!雪ノ下か、脅かすなよ」

「どうかしら、この衣装?」

「なんか、魔法を使いそうな衣装だな(氷系)」

「材木座君も、そんなことを言っていたわ」

「試しに『お兄様』と言ってみてくれ」

「お兄様」

「ぐはっ!」

「ど、どうしたの!比企谷君!」

「だ、大丈夫だ」

「グリーンのワンピースもあったのだけど、すごい姉が居る設定と聞いて、やめたわ」

「リアルにすごい姉が居るからな」

 

「お兄ちゃ~ん」

「小町、お前も出るのか?」

「そうだよ。どう?この衣装?」

「グリーンのワンピース…。居たよ、すごい姉」

「何?文句あるわけ?」

「文句ねぇよ、S級2位」

「私だけで、十分なのよ。ふんっ」

「行っちゃったよ…」

 

「わわわ、忘れ物~♪あ、ヒキタニ」

「大岡、お前も出るのか?」

「なんかブレザー着せられたよ」

「まぁ、がんばれよ。たにぐ…、大岡」

 

これが最後の競技。これで勝てば逆転…。まぁ、俺がアンカーの時点で負けだな。

 

「ねぇ、比企谷君」

「どうした、雪ノ下」

「去年、城廻先輩が勝ちたいって言ってたのが、少しわかったわ」

「…そうか」

「比企谷君…。勝ちましょうね」

 

おいおい、そんな顔すんなよ。

 

リレーが始まり、抜きつ抜かれつのデットヒート。

「うわ~ん、抜かれちゃったよぉ」

「由比ヶ浜、よく頑張ったよ」

「由比ヶ浜さん、私が逆転するわ」

 

有言実行、雪ノ下は見事に逆転。

そろそろ、俺の番か…。少しリードはしているが、相手は葉山。厳しいな。

 

「比企谷君」

「なんだ、雪ノ下」

「…勝って」

「そんな悲壮な顔するな。出来れば、笑顔で送り出してくれ」

「え、えぇ。そうね」

「それに…」

「それに?」

「俺は逃げ足は早いんだよ」

「ふふっ、そうね」

「やっぱ、雪ノ下は…。なんでもない。行ってくる」

 

「よう、葉山」

「君とアンカー対決とはね」

「ま、気楽にやってくれや」

「いや。君には負けたくないからね」

「そんなに、気負うなよ。ここで負けたって、ほかはお前が勝ってるだろ」

「そうでもないさ」

「そうか?」

「いずれわかるさ」

「じゃあな」

 

スタートしたのはいいが、差が微妙だな。

葉山もスタートしたみたいだな。すげぇな黄色い声援が。さすがリア充王だな。

なんか『比企谷先輩』とか『比企谷さん』とか聞こえるけど、キモイとか言われてるんですかね。

やべぇ、葉山早ぇよ、並ばれたぞ。

…雪ノ下。そんな顔して見んなよ。俺はお前のそんな顔見たくないんだ…よ!!!!

 

 

 

 

「比企谷君!!」

「はぁはぁはぁ…。勝ったぞ、雪ノ下!!」

「えぇ」

「はぁはぁはぁ、やっぱ雪ノ下は笑顔の方がいいな…」

「え?」

「はぁはぁはぁ…。疲れた…」

 

「ヒッキー!!」

「おう!由比ヶ浜。勝ったぞ」

「やったね!!」

「なにをやっているのかしら?」

「だ、だだだ、抱きつくな!」

「わぁ、ごめん」

 

逆転で赤組の勝利で体育祭は終わった。

 

打ち上げ?帰らせてください。

 



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五十一話

リア充は打ち上げしないと死んでしまうんですかね?

生徒会&奉仕部で打ち上げ…。

 

「先輩~!」

「なんだ、一色」

「歌いましょうよ」

「断る」

「なんでですか~」

「結衣先輩も雪ノ下先輩も歌ってますよ。超上手いですよ」

「知ってるよ。苦手なんだよ、こういうのは。参加しただけでも、誉めてもらいたいね」

「まぁ、先輩ですからね」

「わかったなら、歌ってこいよ」

「なんですか口説いてるんですかお前の歌が聴きたいとか二人っきりの時に言ってくださいごめんなさい」

「はいはい」

 

「比企谷」

「よう、本牧。お疲れさん」

「比企谷が参加するとは思わなかった」

「俺もそう思う」

「なぁ比企谷。藤沢のことどう思う?」

「俺に話しかけてくる希有な後輩」

「それだけか?」

「それだけだな。まぁ、世間一般でいう可愛い部類だと思うぞ」

「なるほどな」

「どうかしたか?」

「いや、なんでもない」

「お前も歌ってこいよ」

「比企谷は歌わないのか?」

「俺が歌ってもキモイだけだ。やめておく」

「そうか?」

「そうだ」

 

「比企谷先輩、お疲れ様でした」

「藤沢、お疲れさん」

「比企谷先輩は歌わないんですか?」

「苦手なんだ。察してくれると助かる」

「比企谷先輩の歌を聴きたかったけど、残念です」

「俺のことはいいから、楽しみな」

「比企谷先輩は誰も放っておかないですよ」

「俺は静に暮らしたい」→静かに

「比企谷先輩らしいですね。では」

「おう」

 

「ヒッキー!歌おうよ!」

「『Angel Breeze』なんて、よく知ってたな」

「ん?なんとなく?」

「上手かったぞ」

「そう?えへへ…。じゃなくて!」

「ちっ!誤魔化せなかったか」

「歌おうよ~」

「雰囲気悪くなったら困るだろ」

「そんなことないって」

「もう少し静観させてくれ」

「もう少しだけだよ」

 

「比企谷君、私も歌ったのだから、貴方も歌いなさい」

「断る。てか、なんで『こいかぜ』歌ったの?由比ヶ浜に合わせたの?」

「知ってる歌が少ないのよ。察しなさい」

「へいへい」

「ねぇ、比企谷」→比企谷君

「ん?」

「本当に勝ってくれたのね。その…、ありがとう」

「別に礼を言われることはしてねぇよ」

「それと…」

「なんだ?」

「貴方、リレーでゴールした時、私になにか言ったかしら…」

「なんか言ったかな……」

「言ったわ、確かに…」

「ああああああああああああ!!!」

「!」

「わ、忘れてくれ~!!!!さぁ、歌うぞ。『吉原ラメント』がいいかな」

 

「本当に逃げ足は速いわね…。忘れないわ、貴方が言ってくれたんですもの…」

 

 



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五十二話

文化祭、体育祭と大きなイベントも終わり、しばらくはまったり…。

 

(昼休みが終わって教室に戻ったら、なんかヒソヒソ言ってる。俺か?俺がキモイのか?由比ヶ浜がなんか言いたそうだが…。まぁ、いい)

 

(なんでもないのか?何事もなく午後の授業も終わったな)

 

「ひ、ヒッキー…」

「どうした、由比ヶ浜」

「あの、今日は部活休みだって、ゆきのんが…」

「そっか…。じゃあ、俺は帰る」

「じゃあ、また明日ね」

「じゃあな」

 

奉仕部部室

 

「ゆきのん!大変だよ」

「由比ヶ浜さん、静かに」

「ごめんなさい…。じゃなくて、これ見て!」

「携帯電話がどうかしたのかしら?」

「このメール…。リンクに進むと…」

「なに…これ…」

「ヒッキーは、この手のメールは見てないはずだから、部活休みって言ってある」

「賢明な判断よ、由比ヶ浜さん」

 

「先輩!!」

「比企谷先輩!」

「比企谷!」

「静に!!」→静かに!!

「雪ノ下先輩、そんなこと言ってる場合じゃないですよ!」

「生徒会役員が取り乱さないで」

「だって、比企谷先輩が…」

「比企谷は、こんな人間じゃない…」

「副会長…」

 

「比企谷、居る?」

「川崎さん、彼は居ないけど」

「このメール…」

「やっぱり…」

 

「結衣ちゃん、雪ノ下さん。比企谷来てない?」

「相模さん、メールの件かしら?」

「そう、このメール…」

 

「比企谷!」

「ヒキオ!」

「ヒキタニくん!」

「比企谷君!」

「貴方たちまで…」

 

「八幡!」

「八幡!八幡はいずこ!」

「戸塚君」

「中二、ウッサイ!」

「ギャフン!」

「みんな、八幡の為に…」

 

「お兄ちゃん!」

「お兄さん!」

「小町さん」

「大志、アンタまで」

 

【3-Fの比企谷八幡は、去年の文化祭で実行委員長を泣かせエンディングセレモニーを台無しにした。修学旅行では、クラスの男子の告白の邪魔をした。同じ部活の女子を泣かせて追いかけまわした。生徒会室に入り浸り運営の邪魔をしている。生徒会長や書記に手を出そうとしている】

 

メールに添付されているリンクに入ると総武高裏サイトに繋がり、このような書き込みが…。

 

「誰がこんなことを…」

「まだヒッキーは知らないと思う…」

「最近、ヒキオ目立って来たからね」

「ウチがあんなことを…」

「さがみん…」

「それを言ったら、私だって…」

「海老名さんのせいじゃないっしょ。俺が…」

「私が先輩に頼ってるせいで…」

「マズイですよ。兄がこの事を知ったら、みなさんと距離を取ろうとします」

「はぁ、彼ならやるわね」

「どうしよう。ゆきのん」

「それに、暴力やイジメに発展しかねないわね」

「そんな…」

「八幡にそんなことさせないよ」

「犯人見つけて、ぶん殴ってやる」

「怖いよ、姉ちゃん」

「あーしも参加していい?」

「優美子まで…」

「まぁまぁ、ふたりとも…」

「隼人はこのままでいいわけ?」

「まさか、アンタじゃないよな?」

「滅相もない。比企谷には感謝してるんだ」

「落ち着きなさい。犯人探しも大事だけど、まずは比企谷君に悟られないようにしないと…。極力、彼と他者が接触しないようにしないと…」

「じゃあ、休み時間とかもヒッキーと一緒に居るようにしないとね」

「私はクラスが違うから、お願い出来るかしら」

「みんなで交代で話しかけよう」

「ヒキオ、面倒くさそうな顔しそうだし」

「俺も話してみるっしょ」

「そうだな、戸部」

「キマシタワー!!」

「姫菜、擬態しろし!」

「大志、アンタは小町を守ってやんな」

「まかせてよ、姉ちゃん!」

「生徒会の手伝いしてもらうのは、我慢します」

「でも、お話するのはいいんですよね?」

「まぁ、比企谷を一人にしないようにする作戦だからな」

 

「小町さん、どうしたのかしら?」

「お兄ちゃん、『俺はエリートボッチ』だとか言ってるクセに、こんなにお兄ちゃんの味方が居るのが嬉しくて…」

「そうね。そんな彼だから、私は…」

「雪乃さん?」

「いえ、なんでもないわ」

 

「でも、犯人探しはどうしよう…」

「ふふふっ、この我に任せよ!」

「中二、ウッサイ!」

「ギャフン!」

「で、どういうことかしら、材木座君」

「なに、我の同志にPCに精通してるモノが、おってな。そやつにメールの出元や書き込みのアカウントなどをさぐってもらうのよ」

「人任せじゃん」

「も、もちろん、我もやるぞ」

「はぁ、そちらはお願いするわ」

「任せよ!」

 

「比企谷!居るか!」

「平塚先生、ノックを」

「あぁ、すまん。比企谷は?」

「今日は部活は休ませてます」

「そうか…。何故、こんなに集まっているんだ?」

「それは…あの…」

「いや、わかった。雪ノ下、君たちに任せていいかね?」

「はい。私達に任せてください」

「むう、私の方でも対処はする」

 

 

 

 

 

 

 

 




―――――――――――

ちょっと事件をおこしてみました。
お気に召さない場合は削除します。

こった締めはないですよ…。


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五十三話

(様子がおかしい…)

 

「お兄ちゃん♪一緒に学校行こう♪」

「お、おう」

 

「比企谷、おはよう」

「お兄さん、おはようっす!」

「お兄さんと呼ぶな!」

(何故、川崎姉弟と一緒?)

 

「ヒッキー!一緒に教室行こう♪」

「お、おう…」

(由比ヶ浜が待ち伏せしてた…。何故だ)

 

「おはよう、八幡」

「俺と夜明けのコーヒーを飲んでくれ」

「もう、なに言ってるの」

「あぁ、すまん。ほら、先生来るぞ」

「また、あとでね」

(戸塚は天使…♪)

 

(さてと、次の授業は…)

「比企谷」

「ヒキオ」

「あ!今、私が話しかけてるんだけど」

「あ!あーしの方が早かったし」

「あ!」

「あ!」

(やめて!仲良くして!)

 

(今日は、よく話かけられるな…。昼休みは静かにベストプレイスへ…)

「どこに行くのかしら、比企谷君」

「よお、雪ノ下。今からパンを買いに…」

「その必要はないわ。食材が余ったから、貴方のお弁当も作ってきたの。食材が余ったから」

(大事なことなので二回言いました)

「べ、別に貴方の為に作ったわけじゃないのだから…」

(ツンデレのテンプレ、いただきました)

「さぁ、今日は由比ヶ浜さんと三人で食べるわよ」

「へいへい」

 

(雪ノ下の弁当は上手かった…。そんなこと考えてたら、もう放課後)

「ヒッキー、部活行こ」

「お、おう…」

 

「あ、居た!先輩!」

「げっ!一色…」

「いろはちゃん、やっはろー!」

「結衣先輩、こんにちは」

「先輩、ちょっと生徒会室まで来てください」

「嫌だ!」

「そんなこと言わないでくださいよ。今日はお仕事じゃないんで」

「だったらなんだ?」

「生徒会室前の掲示板を見てほしくて」

「掲示板?」

「はい。結衣先輩も見てください」

 

「なん…だと…」

「いろはちゃん、この『非常勤庶務』って何?」

「はい、先輩を合法的に、こきつか…、手伝ってもらう為の役職です」

「一色、隠せてないからね。なんだこれは。しかも、平塚先生と校長のハンコまでとは…」

「今日はお仕事はないので、報告だけです」

「すげぇ嫌な事後報告…」

 

「やっはろー!」

「うっす」

「由比ヶ浜さん、比企谷君、こんにちは」

「雪ノ下、一色に聞いたか?」

「やられたわ。あの娘もやるわね」

「まったくだ」

(これで生徒会の手伝いは合法。ネット掲示板の生徒会の類いは嘘になったわ)

 

「そろそろ下校の時間ね」

「ねぇねぇ、今日は三人で帰ろうよ」

「嫌だよ」

「私も一人で帰るわ」

「たまには、いいじゃん」

「由比ヶ浜さん…。仕方ないわね」

「ねぇ、ヒッキー…」

「しゃあない…」

「やったー!」

(今日は、なんだか人とたくさん話す日だったな。たまには、いいか)

 

翌日

 

「お兄ちゃん♪学校行こう」

「おう。今日も一緒にか?」

「大好きなお兄ちゃんと一緒に学校行きたいな。あ、今の小町的にポイント高い♪」

「あざと可愛い…」

 

「おはよう、比企谷」

「んだよ、葉山」

「教室まで一緒に行かないか」

「断る」

「たまにはいいじゃないか」

「そんなことしたら、朝から海老名さんの鼻血の噴水を見ることになるぞ」

「ま、まぁそうなんだが…」

(そんなこと言ってたら、教室着いちゃった)

「キマシタワー」

「姫菜、擬態しろし!」

「ほらみろ」

「あはは…」

 

(ふう、数学終了…)

「比企谷」

「相模か。どうした?」

「あのさ、あのコーヒーの店に、ゆっこと遥も連れていきたいんだけど、いいかな?」

「騒がしくしなきゃいいんじゃねぇの?」

「やった。それと…、比企谷はもうバイトしないの?」

「おい、受験生だぞ」

「そうだよね」

「春休みに出来ればやるかもな」

「わかった。比企谷のウェイター姿、楽しみにしてるね」

「勘弁してください」

 

(今日も、よく話かけられるな…。なんなんだ?モテ期?ないない…)

 

昼休み

(誰にも見つからずに脱出成功。やっぱりベストプレイスはいい…)

「やっぱりここに居たのね」

「ヒッキー見つけた」

「お前らか。どうかしたか?」

「料理の研究をしてたら作り過ぎてしまったの」

「ほ~ん。それで」

「お弁当にしたから、食べなさい」

「いや、パン買っ…」

「食べなさい」

「…ありがたく、頂戴いたします。へへ~」

「むぅ。明日は私が作ってくるし!」

「やめてください。死んでしまいます」

「由比ヶ浜さん、ゾンビにトドメを刺すつもりかしら」

「二人ともヒドイ!」

「今日はここで食べましょう」

「へいへい」

 

(今日の授業は終了っと。今日は予備校か)

「由比ヶ浜、今日は予備校があるから、部活休むって雪ノ下に伝えてくれ」

「わかった。バイバイ、ヒッキー」

 

「比企谷」

「川…川…、川嶋さん?」

「川崎だけど、殴るよ」

「ごめんなさい。死んでしまいます」

「アンタ、予備校あるよね?」

「あるぞ」

「その、なんだ…。い、一緒に行かないか」

「別に一緒に行かなくても…」

「あっ!文句あるの?」

「お供させていただきます」

 

(予備校終了。コーヒー飲んでから、帰るか)

 

「こんばんは」

「おう、坊主。来たか」

「ブレンドお願いします」

「はいよ」

 

「う~ん」

「どうした?悩み事か?」

「なんか異様に話かけられるんですよね」

「ほう」

「それこそ、休み時間のたびに…」

「何か問題なのか?」

「問題…。問題というより、問題を隠されてる気がするんですよね…」

「何か思い当たることでもあるのか?」

「いや、まったくないです」

「ま、坊主の手をわずらわせるほどでもないのか…」

「俺に関わらせたくないのか…」

「いずれにせよ、任せてみたらどうだ?」

「なんか、悪いというか、俺の為に…」

「たまにはいいだろ」

「でも…」

「アイツらのこと、信用してないのか?」

「そんなことは…」

「だったら、信じてやんな」

「はぁ」

「もしかしたら、問題の方から来るかもしれないだろ?」

「それもありますね」

「それまでは、普段通りのお前でいろ」

「ふむ」

「そして、問題が来たら…」

「来たら?」

「美味しいとこだけもらっておけ」

「マスター、いい性格してますね」

「お前に言われたくねぇな。面倒臭ぇ性格してるお前にはな」

「ちょっと軽くなりました」

「そうか」

「アイツらのやり方にノッてみますよ」

 

「じゃあ、帰ります」

「おう、気をつけてな」

「比企谷、帰りか?」

「平塚先生、いらっしゃい。ちょっとマスターと話してまして」

「気をつけて帰るんだぞ」

 

「なるほど、そんなことが」

「アイツがこのことを知ったら、問題はアイツが解消するでしょう。だが、また自分を傷つける…」

「そうさせまいと、周りが動いていると…」

「気がつくのも時間の問題でしょうが…」

「静さん、アイツらを信じてやりな」

「ですが…」

「静さんの生徒だろ?だったら大丈夫たよ」

「それに、貴方の弟子ですからね」

「そういうことだ」

「それと、ツーリングですが…」

「おぉ、そうだな。どこがいいかな?」

「貴方と一緒ならどこでも…」

「まいったな。はははっ」



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五十四話

「お兄ちゃん♪」

,「小町、一緒に行こうぜ」

「う、うん…」

「どうした?嫌か?」

「そんことないよ。お兄ちゃんと一緒に学校行きたい♪あ、今小町的にポイント高い♪」

「おう、高いぞ」

 

「ヒッキー!おはよう!」

「うす、由比ヶ浜。教室まで一緒するか?」

「え?」

「嫌なら、いい」

「い、嫌じゃないよ!」

 

「海老名さん、昨日のヤツ見たか?」

「ひ、比企谷君。見たよ」

「あの展開はないわ」

「いやいや、主人公とライバルが…愚腐腐…」

「おっと、そっちは勘弁してくれ」

 

「戸塚、一緒に昼飯食おうぜ」

「うん」

「ひ、比企谷君…」

「雪ノ下か。悪いな今日は戸塚と昼飯食べるんだ」

「そ、そう…。ではお弁当だけ渡すわ」

「悪いな」

 

「由比ヶ浜!部室行くぞ」

「待ってよ、ヒッキー!」

 

「せんぱ~い!」

「どうした?一色」

「助けてくださ~い」

「よし、行くか。雪ノ下、由比ヶ浜、いいか?」

「え?」

「え?」

「え?」

「ダメなら行かないが…」

「い、行きましょう、先輩」

「えぇ、大丈夫よ」

「ヒッキー、行ってらっしゃい」

 

「なんか、素直なヒッキーって気持ち悪いね」

「なんか不気味だわ」

「ねぇ、ゆきのん…」

「なにかしら?」

「ヒッキー、気がついたのかな?」

「…気がついたというより、こちらの思惑にわざとノッている…、という感じかしら…」

「どうなるのかな?」

「大丈夫よ、由比ヶ浜さん。彼も手探りのはずだから」

 

数日後

 

(俺に向けられてる視線はわかった…。たぶん、間違いない。あとは…)

 

「悪いな、材木座。呼び出したりして」

「うむ、我に何の用じゃな」

「人に聞かれたくない。場所を変えよう」

 

「それでだ、材木座」

「うむ」

「どこまで知ってる」

「な、なんのことだ?」

「俺の周りで起きてることだ」

「わ、我にはわからぬ」

「ほほう。ここ数日間、休み時間や行き帰りに一人になったことはほぼない。トイレに戸部がついてきて海老名さんが噴水作ってたまである」

「…」

「だが、お前はどうだ?いつもはウザイぐらい絡んでくるのに、姿すら見せなかった…。材木座、裏で動いていたな?」

「な、なんのことかな。我輩には検討もつかぬ」

「一人称が変わってるぞ」

「ぐぬぬぬ」

「まぁいいお前が教えてくれたら、これをやろう」

「そ、それは…」

「そう…。スイートバレットのライブチケットだ」

「な、なんと…」

「しかも、握手券付きだ。お前が行かないと無駄になるかなぁ…」

「ひ、卑怯なり!比企谷八幡!」

「おう、褒め言葉と受けとるぜ。で、どうする?」

「じ、実は…」

 

「なるほどな。犯人は特定出来てるのか?」

「まだだ」

「じゃあ、ホームページだけ潰してくれ」

「それでは犯人が…」

「俺の方で目星がついてる」

「では、そいつを…」

「いや、だからこそ穏便に済ませたい。動機もおそらく…」

「では、誰なんだ?」

「すまん、それは言えない…」

「そうか、わかった」

「俺に話したことがバレたら、俺に脅されたとでも言ってくれ」

「安心せい。そんなことは言わぬ」

「そうか。その、ありがとな…」

「八幡がデレた!」

「うるせぇ!チケットやらねぇぞ!」

「話したのだから、よこせ!」

「余計なこと言うとやらんぞ!」

 

「あぁ、そうだ。このメモを雪ノ下に渡してくれ」

「わ、我にはJ組に行けと?」

「そうだ。頼んだぜ、材木座。じゃあ」

「ま、待て!我には無理~!」

(さてと、あとは…)

 

翌日 昼休み

 

(ステルスヒッキー全開で、誰にも見つからずに教室を出る。人気のない屋上へ続く階段の踊り場…)

 

「よお、会いたかったぜ…」

 

 




――――――――――――

次回、クライマックスです。
お願いですから、期待しないでくださいm(__)m


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五十五話

「よお、会いたかったぜ。相模弟。残念だが、お前の目論見はハズレだ」

「どうして俺だとわかった…」

「最近、俺を一人にしないように周りが動いてくれていた。お前は目論見と違っていたから、自分で状況を確認をしようとして俺の周りをウロウロしていた。そんなお前を俺は見つけた。俺が一人になるタイミングで直接仕掛けてくる、そう確信していた。そしたら案の定…」

「くっ!何故だ!アンタは学校一の嫌われ者のはずだ!」

「確かに、そんな時期もあったが、最近は色々とあってな。そうでもないんだ」

「だ、だけど、あんな悪評が広がれば…」

「トップカーストの発信力ってすげぇよな。勿論、その中にお前の姉も含まれるんだがな」

「な、なんでだ…。アンタは姉さんを泣かせた…」

「そうだったな…」

「でも、最近はアンタの話ばっかりだ。しかも嬉しそうに…」

「まぁ、お前の気持ちがわからんでもないがな」

「アンタに何がわかる!」

「わかるさ。俺にも妹がいてな…。妹が変なヤツのことを楽しそうに話をするなんて思うとな…」

「そうだろ…」

「だがな、妹を信じてやろうとも思う。自分で確かめて、本当にダメなヤツだったら、全力で排除するがな」

「…」

「俺とお前の姉はな、色々あってだな、やっと普通に話が出来るようになったんだ。少年漫画じゃねぇけど、ケンカしてから仲良くなることもあるんだなと初めて思ったよ」

「…」

「お前の姉がどう思ってるか知らんが、俺はお前の姉と話が出来て嬉しく思ってる。俺のことは信じなくていい。だが、姉のことは信じてやれ。そして、こんなことをして、悲しませるな」

「…」

「今すぐ納得しろとは言わん。噂に流されず、お前の目で俺を見てくれ。それでも気に入らないなら、もう一度俺のところへ来い。話を聞いてやる」

「…わかった。今日のところは引く」

「そうしてくれると助かる。そうしないと、俺の周りの人間が何をしでかすか…」

「アンタのこと、しっかり見させてもらうからな」

「おう、そうしてくれ。それとホームページはこちらで削除させてもらう。いいな」

「…わかった」

「じゃあな、シスコン」

 

 

「さてと…。出てきていいぞ、雪ノ下」

「まったく、貴方って人は…」

「悪いな、色々してくれてたみたいだったが」

「本当よ。私がどれだけ心配したか…」

「あん?」

「な、なんでもないわ。で、何故私をここに呼んだのかしら?」

「危ないことをやっていないって証人が欲しかった。それと…」

「それと…なに?」

「今の俺のやり方を見て欲しかった…。少し前のおれなら、ヘイトを俺に集めて距離を取ろうとしただろうな。でも今は違うやり方が出来る、出来るようになったと言った方がいいか…」

「それなら、別の誰かに見てもらって、事後報告でも良かったんではないのかしら?」

「なんでだろうな?」

「私が聞いているのだけど…」

「見て欲しかったんだと思う。…雪ノ下雪乃に…」

「私…に?」

「いつだろうか…。変わることは逃げだと言った…。逃げてない変わり方を見て欲しかったのかもしれないな」

「…そう」

「それに、雪ノ下が変えた世界のほんの一部分だが、見て欲しかったのかもしれないな」

「そう…なのね…」

「なぁ、雪ノ下」

「なにかしら?」

「雪ノ下が変えてゆく世界を俺に見せてくれないか」

「え?」

「前に『世界が色鮮やかに見える』って言ってたよな」

「えぇ」

「雪ノ下の見え方が変わったのかもしれないが、世界も少しずつ変わっているはずだ。そんな雪ノ下から見える色鮮やかな世界を俺も見たい。だから、俺にも見せてくれ」

「それって…」

「ダメか?」

「いいえ。見せてあげるわ。でも…」

「でも?なんだ?」

「一人では出来ないわ。貴方も力を貸してくれるかしら?」

「お、おう。俺の力なんて些細なモンだがな」

「そんなことないわ。貴方は私の…」

「なんだ?」

「なんでもないわ」

「?」

「それで、この後はどうするつもりなのかしら?」

「あ~、放課後にみんなを集めてくれないか?俺から説明する」

「相模さんには?」

「言わんでいいだろ。相模だって、弟がシスコン拗らせてるなんて知りたくないだろうしな」

「それを貴方が言うのもどうかと思うのだけど…」

「俺は違うぞ。小町も大事だが、同じくらい大事なモノを見つけたからな」

「それは何なのかしら?」

「それは言えん。…まだな…」

「じゃあ、いつか教えてくれるのかしら?」

「あぁ、いつか…な」

 

放課後

奉仕部部室

 

「…と、いうわけで、お前らが動いてくれたことで、犯人をあぶり出すことが出来た。で、そいつも反省して、もうやらないと言ってくれた。その…、なんだ…、みんな…、あ、ありが…とう…」

「ヒッキー、危ないこととか、ヒッキーが一人で抱え込むことしてない?」

「それは私が保証するわ、大丈夫よ」

「なんで、雪ノ下がそんなこと言えるんだ?」

「それは…」

「それはな、川崎。たまたま、雪ノ下が通りがかって、話を聞かれたからだ」

「ふ~ん、たまたまね」

「んで、ヒキオ。犯人て誰だったの?」

「それは言えない。次になにかあった時に先入観でソイツを見ちまうからな」

「比企谷、君はそれでいいのかい?」

「葉山。お前がそれを言うのかよ。お前の好きな『みんなを仲良く』だ」

「くっ」

「ヒキオ!」

「冗談だ。まぁ、俺にも思うところがあってな。あまりソイツを責められん」

「あ~、なんか消化不良でムシャクシャするし!」

「三浦、なんか気が合うね。私もだよ」

「三浦さん、川崎さん…」

「結衣、海老名、カラオケ行くし!川崎さんも行くっしょ?」

「あぁ、付き合うよ」

「こ、怖ぇ…」

「ヒキオ、今回は勘弁してあげるから、カラオケオゴリね」

「お、おい…」

「隼人、戸部行くよ」

「比企谷、悪いな」

「比企谷くん、ゴチで~す」

「葉山!戸部!」

「比企谷君、よろしく~」

「ヒッキー、お願いね」

「海老名さん、由比ヶ浜…」

「生徒会も参加しますからね。先輩」

「悪いな、比企谷」

「比企谷先輩、すいません」

「お前ら、俺は手伝いしてるだろ」

「お兄ちゃん、小町に言わないなんて、ポイント低いけど、これで勘弁してあげる♪」

「お兄さん、ゴチっす」

「こ、小町~!…あと大志、お兄さんと呼ぶな」

「八幡、無事だったから良かったけど、気をつけてね。あ、カラオケ僕も参加するから」

「戸塚、心配してくれたのは嬉しいけど、止めてくれないのね…」

「我も参加するぞ。俺の歌を聞け~!」

「なんで、お前も参加するの?バサラなの?」

「比企谷、無茶しなかった?」

「相模、ありがとな。大丈夫だ」

「良かった…」

「そうだ、弟に会ったぞ」

「ウチの?」

「おう。姉思いのいい弟だな」

「そ、そんなことないよ」

 

「さぁ、今日は何を歌おうかしら?」

「はぁ…。雪ノ下もかよ…」

「みんなに心配かけたんだから、これくらいは当然よ」

「ATM寄らないと…」

「私も少し出すわ」

「そうしてくれると助かる…」

「ねぇ、比企谷君」

「なんだ?」

「なんか、私達『リア充』みたいね」

「かもな」

「貴方の更正は順調のようね」

「根っこはボッチだよ」

「まだそんなこと言ってるのね」

「事実だから仕方ねぇだろ」

「まだまだ、私が調きょ…教育しないとダメね」

「今、調教って言いかけたよね?」

「その代わりに、貴方にも色鮮やかな世界を見せてあげるわ」

「あぁ、頼む。俺もそれまでには…」

「なにかしら?」

「なんでもねぇよ」

 

「ヒッキー!ゆきのん!早く行くよ~!」

「はいよ」

「今、行くわ」

 




――――――――――――

何回も再考しましたが、今はこれが精一杯。

皆さんが、納得する結末ではないかもしれませんが、ご容赦くださいm(__)m



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五十六話

嫌な夢を見た。

みんなに拒絶される夢…。

小町に、由比ヶ浜に、一色に、川崎に、クラスメイトに、生徒会に、平塚先生に、雪ノ下さんに…。

でも、一筋の光と共に清んだ声が聞こえる

『比企谷君…。私は貴方を信じるわ…』

『雪ノ…下…』

 

 

「お兄ちゃん、どうしたの?うなされてたよ。大丈夫?」

「あぁ、大丈夫だ。汗かいたら、シャワー浴びてから朝飯にする」

「じゃあ、待ってるからね」

「おう」

「それと…、『雪ノ下』って言ってたよ。ニシシッ♪」

「あああああああああっ!」

 

「お兄ちゃん、一通り奇行は終わった?」

「小町ちゃん、聞こえてないフリって知ってる?」

「難聴系じゃないから知らな~い」

「あれだ、雪ノ下が『やさしい希望』なんて歌うからだ」

「え~、すごい上手かったじゃん」

「上手かったから、お兄ちゃんの心をえぐったの」

「ふ~ん」

「だから、忘れてくれ。頼む。お願いします。プリン買ってあげるから」

「ハッピープッチンプリンね」

「探すの面倒くさい」

「じゃあ、忘れない」

「草の根掻き分けてでも探して買ってきます」

「…お兄ちゃん」

「なんだ?」

「今日も学校一緒に行かない?」

「ん?あれは終わったんだろ?」

「ダメ?」

「上目遣いでうるうるされたら、お兄ちゃん断り方がわかりません」

「やった!」

「誰に教わった?」

「生徒会長!」

「おのれ、一色。小町が無敵になってしまうではないか…」

 

「通学ダルい…」

「お兄ちゃん、シャキッとしてよ」

「お、おはよう、比企谷」

「おはようございます。比企谷さん、お兄さん」

「川崎、おはよ。大志、俺をお兄さんと呼ぶな、蹴るぞ」

「その前に私がアンタを蹴るよ」

「ごめんなさい、死んでしまいます」

「まったく…。あ、あのさ、学校まで一緒に行かない?」

「あれは終わったんだろ?」

「それはどうでもいいの。返事は、『はい』なの?『YES』なの?」

「否定出来ねぇじゃねぇかよ。どこの暴君だよ。ピーター・アーツなの?まぁ、構わんがな」

 

「ヒッキー、おはよう♪」

「おはよう、由比ヶ浜。テンション高いな。『やっはろー』じゃねぇかよ」

「間違えちゃった。テヘッ」

「おい、あざといぞ。まさかとは思うが…」

「いろはちゃんが、こうするとヒッキーが喜ぶって」

「一色…、変なこと布教しないでくれ…」

 

「おはよう、八幡!」

「おはよう、戸塚!元気だな」

「うん、八幡は元気じゃないの?」

「たった今元気になった」

「おかしな八幡♪」

「またあとでね」

 

「おはよう、比企谷」

「ち~す、比企谷君」

「うす、葉山、戸部」

「なんかそっけないな」

「そうだよ~比企谷君」

「早く行くよ席に戻れ、海老名さんが過呼吸になりそうだぞ」

「ハヤ×トベ×ハチ!!!」

「海老名、擬態!」

「言わんこっちゃない…」

 

「比企谷、おはよう」

「おう、相模。おはよう」

「弟になんか言った?」

「いや」

「なんか変なんだよね」

「アイツ、重度のシスコンだぞ」

「そんなことないよ。てか、比企谷に言われたら終わりだよ」

「俺は違う。小町が天使なだけだ」

「それをシスコンて言うんだけど…」

 

「比企谷!」

「ヒキオ!」

「あ!今、私が話かけてるんだけど」

「あ!あーしの方がはやかったし」

(なにこのデシャヴ感!やめて!仲良くしてぇ!)

 

(さて、昼になったし購買へ…)

「ヒッキー!ゆきのんと三人で食べよう!」

「あ、いや、ほら、あれだから…」

「比企谷君…」

「うわっ!雪ノ下」

「早く部室へ行くわよ」

「先に行っててくれ。購買にパンを…」

「お弁当、作ってきたのだけど」

「え?」

「ひとつ作るのもふたつ作るのも変わらないわ」

「でも、あれって、期間限定じゃ…」

「細かいことは、いいわ。早く行くよ」

「はい…」

 

(昼飯?美味しいお弁当でしたよ。雪ノ下の顔はまともに見れなかったけど…)

 

「ヒッキー!部活行こう!」

「お、おう」

(あれ?午後の授業の記憶が…。でも、ノートはとってる。俺、優秀)

 

「う~す」

「やっはろー!」

「こんにちは、由比ヶ浜さん、比企谷君」

「雪ノ下、紅茶もらっていいか?」

「ええ、いいわよ」

「わ~い、お茶の時間だ♪」

 

「せんぱ~い」

「一色さん、ノックを」

「すいません…。先輩、助けてください」

「断る!あの体制は終わったんだろ」

「何を言ってるんですか!先輩はまだ『非常勤庶務』ですよ!」

「マジか!」

「マジです。と、いうわけで先輩借りますね」

「仕方ねぇな。悪い、ちょっと行ってくる」

 

「はぁ…。こんな時間までコキ使いやがって…。藤沢まで上目遣い覚えてるし、本牧は助けてくれねぇし…」

「すまん、遅くなった…。あれ、由比ヶ浜は?」

「貴方が遅いから、帰ったわ。私も鍵を締めて帰りたかったのだけど」

「悪かったよ…。あっ!」

「どうしたの?急に大きな声出して」

「いや、マスターにも相談したから、解決したって、報告しないと…」

「そ、それなら、私も行っていいかしら?」

「あ、ああ、構わないぞ」

(なんか、意識しちまうな…)

 

 

「こんにちは」

「いらっしゃい。今日は嬢ちゃんも一緒か」

「こんにちは」

 

「マスターの言う通り、美味しいとこだけもらって解決しました」

「それは良かった。嬢ちゃんもそれでいいかい?」

「はい」

「おっと、そうだ!俺は倉庫行ってくるから、店番頼む」

「わかりました」

 

「ねぇ、比企谷君」

「お、おう、どうした?」

「私、夢を見たの…」

「ふ、ふ~ん。どんな?」

「みんな、私を見てくれないの。私を通して家や姉さんを見てるの…」

「それで?」

「真っ暗闇の中で下を向いていたら、比企谷君が『俺はお前を見ている』って言ってくれるの…」

「雪ノ下…」

「なにかしら?」

「俺も今朝、夢を見た…」

「どんな?」

「周りの人に拒絶しまくってる暗闇の中、雪ノ下だけが『信じてる』って言ってくれたんだ…」

「ふふっ…」

「なんだよ」

「やっぱり、私達って似た者同士なのね」

「かもな」

 

「悪かったな、留守にして」

「いえ、お客さんも来てないので大丈夫です」

「うん?」

「どうかしました?」

「なんかお前さん達、いい顔してるな」

「そうなんですかね?」

「俺が席を外してる間になんかあったか?」

「ちょっと…」

「良かったな、嬢ちゃん」

「…はい」

 




―――――――――――――

後話でした。


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五十七話

奉仕部部室

 

「う~す」

「やっはろー!」

「あれ?由比ヶ浜だけか?」

「ゆきのんは平塚先生に呼ばれて、職員室行ったよ」

「ほ~ん、そっか」

「どうかしたの?」

「いや、雪ノ下が居ないなら丁度いい」

「なに?」

「少し寝させてくれ」

「寝不足なの?」

「寝付けないから、小説読みはじめたら止まらなくてな」

「わかった。ゆきのん帰ってきたら起こすね」

「すまんが、頼む」

 

(…ん?なんか頭撫でられてる?)

「ヒッキーの寝顔可愛い」

(ゆ、由比ヶ浜!!な、なんで由比ヶ浜に撫でられてるの!)

「撫で心地もいいし」

(な、なんで由比ヶ浜は俺の頭を撫でるんだ?)

「ねぇ、ヒッキー…」

(なんでしょうか?)

「ヒッキーはゆきのんのこと好きなの?」

(そ、それはなんと言いますか)

「私はね、ヒッキーのこと…」

 

コンコン

 

「ひゃ!ひゃい!」

「失礼します」

「あ、書記ちゃん、どうしたの?」

「あの、比企谷先輩にお願いが…」

「ヒッキー、起きて」

「ん、どした…」

「書記ちゃんが来てるよ」

「ごめんなさい、起こしてしまって」

「…いや、大丈夫だ。どうした?」

「重い書類があるんですが、副会長が休みで…」

「一色はどうした?」

「サッカー部に顔出してます」

「仕方ない、行くか。由比ヶ浜、留守番頼めるか?」

「私も行くよ」

「いや、依頼があったら困るだろ?お前にしか頼めない」

「私にしか…?」

「そう。由比ヶ浜にしか…」

「うん!留守番する!」

(ちょろいな)

(ちょろいですね)

 

 

「ふう、これでいいか?」

「ありがとうございます、比企谷先輩」

「これぐらいならな。さてと…」

(部室で寝ると、また由比ヶ浜に撫でられそうだな…)

「藤沢、生徒会室で休んでも平気か?」

「えぇ、大丈夫ですよ」

「んじゃ、少し寝させてもらうわ」

 

(…なんで、藤沢に頭撫でられてるの?)

「比企谷先輩、よく寝てる」

(いいえ、起きてます)

「比企谷先輩は、誰が好きなんですか?」

(そんなこと言えません!)

「私は…」

「書記ちゃん、お待たせ」

「ひゃい!」

「どうしたの?」

「な、なんでもないです、会長」

「?」

「わ、私、用事を思い出したので帰ります!」

「お疲れ様」

 

「先輩、よく寝てる」

(だから、起きてます!起きるタイミングを逃しただけです!)

「一度、やってみたかったんですよね」

(なんで一色まで頭撫でるの!)

「目を閉じていれば、イケメンなんですよね」

(はい、目が色々台無しにしてます)

「先輩は、気がついてなんですかね?」

(なんのことでしょうか?)

「気がついているなら、悪趣味ですよね」

(そういわれましても…)

「私は先輩のことが…」

 

コンコンコン

「は、はい!」

「失礼するわ」

「雪ノ下先輩、どうしたんですか?」

「そこの寝坊助谷君を引き取りに来たの」

「あ、そうなんですね。先輩、起きてください」

「ん、一色…、それに雪ノ下」

「比企谷君、部室に戻るわよ」

「あいよ…。眠い…」

「特別に部室で寝るのを許可するから」

「さんきゅ、雪ノ下」

(由比ヶ浜も雪ノ下が居れば、撫でることもないだろ…)

 

カシャッ

(ん?今、シャッター音がしなかったか?)

「ふふふ♪」

(雪ノ下!!)

「比企谷君の寝顔…。ふふふ♪」

(俺の寝顔撮ったの?)

「ただいま~」

「おかえりなさい、由比ヶ浜さん」

「ヒッキー、まだ寝てるね」

(起きてます)

「そろそろ下校時間だから、起こしましょう」

「ヒッキー、起きて」

「比企谷君、起きなさい」

「ん、おはよう」

「下校時間よ。早く帰って寝なさい」

「おう、そうさせてもらうわ」

(少しも寝れた気がしないからな)

 

 

 

 

 



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五十八話

奉仕部部室

 

「なんとなく、いつもより静かだね」

「2年生が修学旅行だからかしらね」

「一色が厄介事をもってこないから、心に余裕があっていいな」

「修学旅行かぁ…」

「はぁ…。忘れようぜ」

「そうね」

「三人でもっと楽しみたかったなぁ」

「そうだな」

「あら、貴方でもそう思うのね」

「まあな。芝居とはいえ、振られるという黒歴史が増えたからな」

「はぁ、もう一回行けたらいいのになぁ…」

「ジャジャーン!話は聞いたよ!」

「ね、姉さん、何をしに来たのかしら」

「まぁまぁ。で、もう一回三人で京都をまわりたいということだね?」

「まぁ、そういうことですかね」

「なるほどね…。お姉さんに任せなさい。明日の放課後、例のコーヒーショップに来てね。じゃあね」

 

「なんか、嫌な予感しかしないな」

「誠に遺憾だけど、比企谷君と同意見ね、遺憾だけど」

「なんで、二回言ったの?大事なことなの?」

「あはは…」

 

翌日 放課後

 

「そういう訳で、ここで待ち合わせなんです」

「雪ノ下の上の嬢ちゃんがなぁ…。ま、大丈夫だろ」

「マスターは、あの人を知らないから…」

「ここで変なことは出来んだろ。前のこともあるしな」

「まぁ、そうかぁ…」

「前のこと?」

「ヒッキー、何かあったの?」

「俺の口からは言えん」

「まぁ、俺がお灸を据えたんだよ」

「ひゃっはろー!」

「いらっしゃい。三人がお待ちかねだぞ」

「は~い。ブレンドください」

「はいよ」

 

「お待たせ」

「姉さん、呼び出して遅刻とか、どういうことかしら」

「いや~ん、雪乃ちゃんが怖~い。比企谷君、助けて~♪」

「なんで俺が助けるですか。むしろ雪ノ下に助成しますよ」→助勢

「私も雪ノ下だよ」

「くっ!」

「それで、姉さん。何を企んでいるのかしら」

「次の連休は三人とも空いてるかな?」

「私は特に何もないわ」

「私もないかな」

「俺は…」

「比企谷君は答えなくていいよ。小町ちゃんに聞いたから。空いてるって」

「小町~!」

「じゃあ、これを見てくれるかな」

「これは新幹線の切符…。京都までの…」

「ピンポ~ン♪」

「姉さん、これは…」

「三人で楽しんで来て。ホテルも取ってあるからね」

「そ、そんな、悪いですよ」

「大丈夫よ、ガハマちゃん。これは純粋に好意だから」

「なんでですか?」

「ほら、隼人が迷惑かけたでしょ。だから」

「でも、それは雪ノ下さんは関係ないじゃないですか」

「隼人の教育も私の範疇だからね。葉山のおじさまに頼まれてるし…」

「ね、姉さん。本当にいいの?」

「雪乃ちゃん、比企谷君、ガハマちゃん。楽しい思い出作ってきなよ」

「ありがとう、姉さん」

「雪ノ下さん、ありがとうございます」

「ありがとうございます」

「お金はお父さんからだから、顔見たらお礼言ってね」

 

「あ、雪乃ちゃん。ちょっと耳貸して」

「なにかしら?」

「お父さんが『がんばれ』だってさ」

「な、な、何を!」

「雪乃ちゃん、わかるよね?」

「うぅぅ…」




――――――――――――

次回、京都旅行編


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五十九話

 

金曜日 夜

比企谷家

 

「いいなぁ、京都旅行…」

「ん、代わりに行くか?」

「うえぇ。そういうこと言うのはポイント低いよ」

「冗談だ。アイツらに楽しんでほしいんだ。その為には…」

「お兄ちゃんも楽しまないと、雪乃さんも結衣さんも楽しめないよ」

「そういうことだ」

「だからって、聖地巡りは却下だよ」

「うっ!わかったよ」

「今回は、お土産話期待してるよ」

「おう、わかった」

「お~い、愚息」

「なんだよ、クソ親父」

「じゃあ、小遣いは無しだ」

「なんでございましょうか、御父様」

「気持ち悪い」

「お兄ちゃん、キモイよ」

「明日から雪ノ下と由比ヶ浜の娘達と旅行だろ?だから、小遣いをやろう」

「ありがとな、親父」

「あと、これを持っていけ」

「これは…」

「備えあれば憂いなしだ」

「お兄ちゃん何?」

「小町は見ちゃいけません!親父!」

「必要だろ?」

「必要ねぇよ!変なハンドサインをするな!親指をピコピコさせるな!」

「お兄ちゃん何?」

「こ、小町には、まだ早い!って、あっ!」

「これって…。お父さんのスケベ!変態!お母さ~ん!お父さんが…」

「あっ!小町!」

「親父、お袋に怒られてくれ」

 

同時刻

由比ヶ浜家

 

「結衣、支度できた?」

「大丈夫だよ。ママは『ようじやのあぶらとり紙』だね」

「京都土産の定番よね」

「結衣、これも持っていきなさい」

「パパ、なにこれ?」

「八幡君と、もしもの時の為に…」

「パ、パパ!こんなのいらないよ!!」

「え?結衣は使わないの?」

「マ、ママもなに言ってるの!しないからね」

「そんなんじゃ、雪乃ちゃんにヒッキー君とられちゃうわよ」

「うぅ~、がんばるけど…」

「大丈夫!子供が出来たら、パパとママが助けてあげるから」

「まだ付き合ってもないのに、そんなことしないよ!」

「世の中には『既成事実』という言葉があるぞ」

「知らない!!」

 

同時刻

雪ノ下雪乃のマンション

 

「雪乃ちゃん、準備は?」

「大丈夫よ、姉さん」

「私も行きたいなぁ」

「姉さんは、何か用事が?」

「お父さんの名代でね、色々と…」

「ごめんなさい、私ばっかり…」

「気にしないで。今回は雪乃ちゃん達の為だから」

「ありがとう、姉さん」

「あ、お父さんから、これ預かってたんだ」

「何かしら?…姉さん、中身は見たのかしら?」

「ん?見てないよ。なんだったの?」

「こ、これ…」

「あっ!コン○ーム!」

「えっ!いやっ!これを持っていっても…」

「えっ?雪乃ちゃん、使わないでスルの?」

「そういうことじゃなくて、そんなことしないわよ」

「そんなんじゃガハマちゃんにとられちゃうよ」

「うぅぅ…」

 

翌朝

 

「比企谷様、おはようございます」

「おはようございます、都築さん。よろしくお願いします」

「比企谷君、おはよう」

「やっはろー♪」

「うっす」

「では、出発いたします」

 

「東京駅まで、車で送ってもらうのは助かるな」

「そうだね」

「東京駅での京葉線ホームの疎外感たらないからな。千葉への嫌がらせなのか?」

「そんなことはないと思うのだけど…」

「ディステニーランドがある千葉への嫉妬かもしれん」

「それはあるかもしれないわね」

「それはあるんだ…」

「お前らは、どこに行きたいか決まってるのか?」

「太秦映画村行きたい!」

「私は…」

「猫猫寺だろ?」

「何故、それを…」

「ヒッキー、なにそれ?」

「比叡山の麓のテーマパークみたいなモンだ」

「ゆきのんは、そこだね」

「俺は新撰組屯所跡かな」

「楽しみだね」

「ええ、そうね」

「楽しもうな」

 




比企谷家のやりとりを追加しました。


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六十話

「ここがイリスが壊したところか…」

「ヒッキー、何言ってるの?」

「なんでもない」

「ねぇねぇ、ブラバンが演奏してるよ」

「高校生かしら」

「休日出勤とは、社畜だな」

「もう!ヒッキーは!」

「あのサックスのソロはいいわね」

「さすが雪ノ下。わかるのか」

「ええ。それとシンパシーを感じるわ」

「ねぇねぇ、フルートは?」

「居るんじゃねぇの?」

「う~ん、何かが足りない気がする…」

「たぶん二期からだ」

「比企谷君、メタ発言はやめなさい」

「雪ノ下だって、言ってたじやねぇか」

「言ったかしら?」

「小首を傾げるな」

 

 

「ねぇねぇ、何か食べようよ」

「そうだな、京都と言えば…」

「おばんざい」

「抹茶パフェ」

「天下一品」

「見事にバラバラね」

「ヒッキー、ラーメンは千葉でも食べれるじゃん」

「由比ヶ浜、京都に来たら本店に行かないのは失礼だろう」

「そこは前に行ったでしょ」

「あ、バカ…」

「えっ?ヒッキーどういうこと?」

「あ~、修学旅行の夜にだな、平塚先生に俺と雪ノ下で連れていかれた…」

「むぅ…。じゃあ天下一品行く」

「俺はいいんだが、雪ノ下は大丈夫か?」

「大丈夫よ」

 

「相変わらず、狂暴な旨味ね…」

「無理しないでよかったのに…」

「男性向けだよね」

「それ、平塚先生の前で言うなよ」

「次は北野天満宮でも行くか。主に由比ヶ浜の為に」

「どういう意味だし!」

「そうね。由比ヶ浜さんの為にね」

「ゆきのんも肯定した!」

「私は推薦だと思うから…」

「俺は受験だけどA判定だからな」

「ヤダ、この二人…」

 

「ねぇヒッキー。なんで、この和菓子屋さん、こんなに混んでるの?」

「塩見周子の実家だよ」

「そうなの!」

「それで、こんなに混んでいるのね」

「なんか中二っぽい人が多いね…」

 

「おい、雪ノ下」

「なにかしら?」

「確認するが、スイートルームとかじゃないだろうな?」

「そこは、私も止めたから大丈夫よ」

「やっぱりスイートルームにしようとしてたのかよ」

「でも高そうなホテルだよ」

「とりあえず、中に入りましょう。ここに居ては迷惑よ」

 

「凄い料理だったね」

「いいのかよ、本当に…」

「これくらいは普通よ」

「さすがブルジョワ…」

「じゃあ、部屋に戻りましょう」

「部屋が一緒じゃなくて良かったよ。雪ノ下さんなら、やりかねんからな」

「そ、そうね…」

「う、うん…」

「じゃあ、明日の朝9時にロビーな。おやすみ」

「ヒッキー、おやすみ」

「おやすみなさい」

 

「さてと…」

「どこに行くのかしら、比企谷君」

「げっ!雪ノ下」

「どこに行くのかしら?」

「餃子の王将の本店に…」

「そう。私も行くわ」

「なんでだよ。由比ヶ浜はいいのか?」

「寝てしまったわ」

「早ぇな」

「疲れているのよ」

「まぁ、わからんでもないがな」

「さぁ、行くわよ」

「なんで、そんなに気合い入ってるんだよ」

「そ、そんなことないわ」

 

「ふぅ、旨かった」

「そうね」

「やっぱり、俺は庶民だな」

「私だって、いつもコース料理を食べてるわけではないわ」

「自炊してるのは知ってるよ」

「そう。ならいいわ」

「じゃあな、おやす…」

「ひ、比企谷君!」

「ん?どうした?」

「あ、あの…、その…」

「?」

「な、なんでもないわ。おやすみなさい」

「おう…。おやすみ」

 

 



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六十一話

京都 二日目

 

(昨日の夜、雪ノ下とエロゲイベント?ねぇよ、そんなもん)

 

「うっす」

「やっはろー!」

「おはよう、比企谷君」

「今日はどうするんだ?」

「猫猫寺へ行きましょう!」

「由比ヶ浜はそれでいいか?」

「うん!」

 

猫猫寺

「ヒッキー…」

「どうした?」

「場所の選択失敗したかな?」

「いや、大丈夫だ」

「だって、ゆきのん動かないよ」

「時計を見ろ。そろそろ12時だ」

 

「雪ノ下、そろそろ昼飯にしようぜ」

「もう、そんな時間なの!ごめんなさい、夢中になってしまって」

 

「次は?」

「鞍馬寺行くか?」

「ヒッキー、何があるの?」

「牛若丸が天狗に修行してもらった伝説がある」

「そうなんだ!」

「それと、狛犬が変わってる」

「面白そう!」

 

鞍馬寺

「猫…」

「雪ノ下、それは虎なんだが…」

「犬じゃなくて虎なんだね」

「阿吽の虎だな」

「猫…」

「猫科だけど猫じゃねぇよ」

 

「次は太秦行くか」

「やった~!ゆきのん、着物着ようよ」

「私は遠慮するわ」

「えぇ~!着ようよ~」

「仕方ないわね」

(ちょろいな)

(ちょろのん)

 

映画村

「ヒッキー!似合う?」

「おぉ、町娘感がハンパないな」

「なんかバカにされてる?」

「そんなことないぞ。か、可愛いぞ…」

「えへへ…」

「比企谷君、由比ヶ浜さんを視姦しないように」

「してないからね…」

「な、なにかしら…」

「お、おう…。き、着物似合うな…」

「そ、そう…」

「むぅぅ」

「雪ノ下は袴とかも似合いそうだな『ハイカラさんが通る』的な」

「ほう。比企谷君は私がおてんばだと言いたいのかしら?」

「ち、違うぞ!似合うと言っただけだからね」

「ヒッキー!ゆきのんばっかり!私は?」

「ドウドウ、由比ヶ浜!由比ヶ浜は巫女っぽい衣装とかどうだ?語尾を『で~す』とか言うといいぞ」

「巫女さんかぁ~。なんかいいかも」

(ちょろいな)

(ちょろいわね)

 

 

夕食後

「はぁ…、晩ごはん美味しかった」

「カウンターで天ぷらなんて初めて食べたぞ」

「姉さんが店を予約してくれて良かったわ」

「支払いとか大丈夫なのかよ」

「姉さんが根回ししているから、大丈夫よ」

「本当に陽乃さんには感謝だね」

「ホテルに戻って、休みましょう」

「そうだな。雪ノ下は戦利品の確認もしないとならないしな」

「な!そ、そんなこと…」

「あるんだろ?」

「猫猫寺で、いっぱい買ったもんね」

「まったく。マイケル・ジャクソンかと思ったぞ」

 

ホテルに戻ってから、しばらくして…

「さてと…」

「ヒッキー、どこ行くの?」

「『めん馬鹿一代』にラーメンを…」

「私も行く!」

「雪ノ下はいいのか?」

「にゃーにゃー言いながら寝ちゃったよ」

「何をやっているんだか…」

「ヒッキー、早く行こうよ!」

 

「凄いね、ラーメン燃えてたよ」

「味も良かったな」

「明日に備えて寝るか。じゃあ、おや…」

「ヒ、ヒッキー!」

「お、おう、どうした?」

「えっと、その…、なんでもない!おやすみ!」

「おう、おやすみ…」

 

 

 

 

 



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六十二話

京都三日目

 

(由比ヶ浜とエロゲイベント?ねぇよ。悪かったな、ヘタレで)

 

「う~す」

「やっはろー」

「おはよう、比企谷君」

「今日はどうする?帰る?」

「いや、帰るけど、もう少し見ようよ」

「実は、鉄道博物館行きたいんだけど、いいか?」

「なかなか男の子らしい選択ね」

「いつまでも、男は少年の心を持っているんだよ」

 

「すご~い!トーマスの駅みたいだよ」

「この転車台が見たかったんだよ」

「これは興味深いわね」

「男子は鉄道が好きなんたよ。999とかシンカリオンとか、マイガイ…」

「最後、言いかけたげどなに?」

「いや、材木座が出てきそうな気がしたから…」

「さすがに、それはないと思うのだけど…」

 

「さてと、そろそろ新幹線の時間だな」

「残念だけど、そのようね」

「遊んだね。陽乃さんに感謝しないとね」

「まったくだ」

 

「由比ヶ浜さん、寝てしまったわね」

「はしゃいでたからな。仕方ないだろ」

「そうね。ねぇ、比企谷君」

「なんだ?」

「あの時のこと、覚えてる」

「忘れた」

「嘘つき」

「悪かったな。正確に言えば思い出したくない」

「そうよね。私もなの…」

「嫌な記憶なんて蓋しちまえよ」

「時々、夢を見るの。比企谷君が…、貴方が海老名さんに告白して、そのまま一緒に歩いていってしまうの」

「そんなことあるわけ…」

「呼んでも振り向いてもくれない。比企谷君、私を、私を置いていかない…で…」

「雪ノ下?寝ちまったのかよ…。置いていかねぇよ。お前こそ待っててくれよ」

 

「う、ううん…。ヒッキー?」

「由比ヶ浜、起きたのか?」

「うん。ゆきのんは…。寝てるね」

「まだ少しかかるから、寝かしといてやれ」

「うん。ヒッキーは真っ直ぐ帰るの?」

「いや、銀ブラしてこうかと思ってな」

「ぎんぶら?」

「銀ブラ」

「銀…、ブラ…。ヒッキー、エロイ!キモイ!」

「比企谷君が気持ち悪いのは認めるけど、銀ブラは意味が違うわよ、由比ヶ浜さん」

「ごめん、ゆきのん。起こしちゃったね」

「気持ち悪いを認めるなよ」

「『銀座でブラジルコーヒーを飲む』が元で、今では『銀座をブラブラする』ことが銀ブラと言われているのよ」

「へ~。じゃあ、ヒッキーは銀座に行くの?」

「ちょっとな。ブラジルコーヒーではないが、コーヒー屋に寄ろうと思ってな」

「どうして銀座でコーヒーを?」

「マスターが前に、銀座でコーヒーが旨い店があるって言ってたんだよ」

「…。比企谷君、私も行っていいかしら?」

「私も行きたい!」

「かまわないぞ。じゃあ、三人で行くか」

「そうね」

「うん!」

 

 



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特別編2

「さて、ここだな」

「なかなか、趣のある店ね」

 

「いらっしゃいませ」

「三人ですけど」

「空いてるところへどうぞ」

「そこでいいか?」

「猫…」

「雪ノ下?」

「猫…」

「ゆきのん?」

「ね、猫よ!比企谷君!」

「あぁ、猫だな」

「猫よ!由比ヶ浜さん!」

「そうだね、ゆきのん」

「あ、あの、触らしてもらっても…」

「大丈夫ですよ。ほら、ニャンコビッグ」

「デカイ猫だな…」

 

「雪ノ下…」

「にゃ~」

「ゆきのん…」

「モフモフ~」

「コーヒー冷めるぞ」

「にゃ~」

「ヒッキー…」

「ダメだな」

「うん」

 

「多田君、こんにちは」

「いらっしゃい、テレサ」

「あれ?ニャンコビッグさんは?」

「あちらのお客さんのところだよ」

 

「よかったわね、ニャンコビッグ。こんな美人さんに撫でられて」

「び、美人…」

「ごめんなさい、急に」

「ほぇ~、キレイな外国人さんだ」

「テレサっていいます」

「テレサさんは日本語お上手ですね」

「日本語、勉強しましたから。れいん坊将軍で」

「は?」

「は?」

「は?」

「知らないのですか?れいん坊将軍ですよ」

「いや、知ってるけど、勉強になるのか?」

「と、とりあえず、立ち話もなんですから、一緒にどうですか?」

「かたじけない」

「ほら」

「でも、テレサさんが言うと可愛いよね」

「可愛いは正義だ」

 

「さて、そろそろ帰るか」

「テレサさん、話が出来て楽しかったわ」

「またお話ししたいな」

「ぜひ。休みの日はここにいることが多いですから」

 

「コーヒー、旨かったです。また来ます」

「ありがとうございました」

 

 

「いい店だったな」

(あのテレサさんって方、どこかで…)

「雪ノ下、どうかしたか?」

「いえ、なんでもないわ」

(もしかして…)

「あっ!」

「どうしたの?ゆきのん」

「な、なんでもないわ」

(思い出したわ。テレサさんはラルクセンブルクの姫君のはず…。言えないわ)

 

「ヒッキー、コーヒー美味しかったね」

「そうだな。マスターのコーヒーとは、また違う味わいだった」

「コーヒーも奥深いわね」

「俺も、まだまだ練習しないとな」

 

「あとは帰るだけだね」

「あ、俺は東京駅で寄り道してくから」

「まだどこか行くのかしら」

「雪ノ下は体力ないから帰った方がいいな」

「そうね。そうさせてもらうわ」

「由比ヶ浜はどうする?」

「ゆきのんと帰るよ」

「そうだな。雪ノ下一人だと京葉線のホームにたどり着けないからな」

「失礼ね。大丈夫よ。…たぶん」

「ヒッキーはどこいくの?」

「東京駅の中にある東京キャラクターストリートだ」

「なにそれ?」

「いろんなキャラクターショップがあるんだよ」

「へぇ、楽しそう」

「由比ヶ浜さん、行ってもいいのよ」

「たしか、ディステニーのショップもあったかな?」

「比企谷君、由比ヶ浜さん、何をしているの、早くいくわよ」

「ゆきのんが元気になった!」

「おい、雪ノ下。キャラクターストリートは逆だぞ」

 

パンさんグッズを両手いっぱいに買い込み、都築さんに東京駅まで迎えに来てもらいました。

 

 

 




「多田恋」ネタでした。

前から頭の中にあった話をまとめているので、更新遅くなってます。
すいません。


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六十三話

京都旅行も終わり、奉仕部は通常営業中。

 

「こんにちは~」

「いろはちゃん、やっはろー!」

「こんにちは、一色さん」

「げっ!」

「『げっ!』ってなんですか、先輩!可愛い後輩が来たんですよ」

「はい、あざといあざとい」

「あざとくないです!」

「まあまあ、いろはちゃん。生八つ橋食べる?」

「え?私もお土産に買ってきたんですけど…」

「私達も京都行ってきたんだ」

「一色さんも緑茶でいいかしら?」

「あ、はい。いただいます」

 

「実は三人にお願いがありまして…」

「えっ!いろはちゃん。依頼?」

「依頼ではないんですが…」

「依頼ではないと…。だが断る!」

「やめなさい。比企谷君」

「男子の言ってみたいセリフベスト5に入る名言だ。で、どうしたんだ?」

 

一色が一枚の紙を差し出す。

 

「生徒会長選挙の推薦人名簿…、だよね?」

「はい。ぜひ、先輩方に最初に書いて欲しくて」

「一色さん…」

「いろはちゃん…」

「雪ノ下、部長だろ?最初に書いてやれ」

「書かせていただくわね」

 

雪ノ下が書き始めると、ノックが。

 

「どうぞ」

「失礼します。あっ、先を越された」

「書記ちゃん!」

「どうしたのかしら?」

「私も推薦人名簿書いてほしくて…」

「藤沢も会長に?」

「いえ、私は副会長に立候補しようかと。副会ち…本牧さんに推されまして…」

「そうか。ほら、貸しな。書くから」

「先輩、私の時と対応が違います!」

「うるせぇ…。ん、本牧に書いてもらったんだな」

「…はい」

「そうか。前に進んだんだな」

「はい」

 

「いろはちゃん。ヒッキーと書記ちゃんて、何かあったの?」

「書記ちゃん、先輩に告白したらしいんです」

「えっ!」

「声が大きいですよ。先輩はフッたみたいなんですけど、副会長が慰めてたら…」

 

「何こそこそしゃべってるんだ?藤沢のも書いてやれ」

「う、うん…」

「一色さん、由比ヶ浜さん」

「ひゃい!」

「へゃい!」

「その話、あとで私にも詳しく…」

 

藤沢の推薦人名簿を書いていると、またノックが

 

「こんにちは!」

「おぉ、小町!お兄ちゃんに会いたくなったか?」

「うへぇ、そんなわけないでしょ」

「やめなさい、シスコン谷君」

「小町ちゃん、どうしたの?」

「これを書いてもらおうかと!ババン!」

「SEを口で言わないでね、小町ちゃん」

「ゴミぃちゃんは、ほっといて」

「ひでぇ」

「生徒会役員に立候補します!バーン!」

「だから、やめなさい」

「小町ちゃんも」

「私としては、先輩の妹ちゃんが生徒会に入ってくれれば、助かります」

「藤沢はどうだ?」

「文実での働きも良かったですし、問題ないと思います」

「だとよ、小町」

「ではでは小町は会計に立候補します!」

「総武高は安泰だな」

「一色さん、来年は助けてあげられないけど、しっかりね」

「はい」

「いろはちゃん、頑張ってね」

「はい」

「ま、小町が居るから大丈夫だろ」

「シスコン!」

「ちげぇよ」

 

「今日は終わりにしましょうか」

「いろはちゃん、一緒に帰ろう♪」

「ゆきのんも♪」

「えぇ」

「小町もご一緒しても?」

「いいよ♪」

「あの…、私も…」

「サワサワも来なよ」

「おい、それは藤沢のことか?」

「え?そうだよ」

「由比ヶ浜さん、それは…」

「結衣先輩、そのアダ名は…」

「えぇ!可愛いじゃん」

「結衣さん、かわいくないです…」

「あ!俺は用事があるから行くぞ。お先に」

 

「比企谷君が用事?」

「ヒッキーが?」

「先輩が?」

「比企谷先輩が?」

「お兄ちゃんが?」

 

サイゼリア

「藤沢さん」

「はい」

「私達は決して、面白半分に聞く訳ではなくて、真剣に聞きたいの」

「はい」

「その…、比企谷君に…こ、こく…」

「告白したの?」

「由比ヶ浜さん!」

「あ、ごめんね」

「いえ…。告白したというより、好きな人を聞いてみたんです…」

「ふんふん、それで」

「一色さん、食い付き過ぎよ」

「それで、『私はどうですか?』って聞いたら…」

「うんうん」

「『薄々そうじゃないかと思っていたが。悪いが、藤沢とは付き合えない』って…」

「そう…、だったのね…」

「先輩が『とは』と言ったってことは…」

「比企谷先輩は『今、目指してるところがある。そこにたどり着けたら、告白する』って。誰かまでは聞けませんでした」

「お兄ちゃんの好きな人かぁ…」

「あと、『藤沢のこと、見てくれてるヤツが居るから、ソイツを大事にしろ』って言われました」

「比企谷君らしいわね。でも、その彼の為にフッた訳ではなさそうね」

 

コーヒーショップ

「悪いな、本牧。数字見てもらって。雪ノ下ばっかりだと悪くて」

「比企谷、ここ間違えてる」

「マジか」

「マジだ」

「…で、どうなんだ?」

「何がだ?」

「藤沢だよ」

「傷心につけこんでるみたいで、心苦しいんだがな…」

「それでも、俺みたいなヤツよりは、お前の方がいいだろ」

「そんなことないだろ」

「それに…」

「それに?なんだ?」

「いや、なんでもない」

「好きなひとがいるんだろ?」

「な、なぜそれを…」

「カマかけただけだ」

「おのれ、本牧…」

「ここ、計算ミス」

「はい、すいません…」

「誰かは聞かないが、頑張れよ」

「ありがとよ」

 



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六十四話

生徒会役員選挙も無事に終わり、役員が決まった。

生徒会長:一色いろは

副会長:藤沢沙和子

会計:比企谷小町

書記:川崎大志

 

「おのれ、あの小僧め」

「比企谷君、まだ言ってるの…。はぁ、見苦しいわよ」

「いや、だって小町が…」

「ヒッキーも妹離れしなよ」

「小町~…」

「まったく…。こんな男のどこがいいのかしら…」

「ん?何か言ったか?」

「なんでもないわ。鈍感難聴残念主人公谷君」

「おい、俺をラノベ主人公みたいに言うな。しかも長い」

 

「あ、そうだ」

「どうしたのかしら?さっきの名前に『記憶喪失』もつけましょうか?」

「ちゃんと思い出しただろ。二人に頼みがあるんだが」

「ヒッキーからのお願い?」

「誠に遺憾だけど、聞いてあげるわ。遺憾だけど」

「二回言うな。しかも、雪ノ下には拒否出来ないと思うがな」

「え~と、『だが、断る』だったかしら?」

「覚えてたのかよ…。じゃあ、雪ノ下は断る前提で聞いてくれ」

「なになに?」

「私は断るわ」

「そんな強気なのも今の内だ。実はな…」

「うんうん」

「奉仕部でカマクラを1日預かって欲しい」

「カマクラを?」

「ひ、比企谷君…」

「カマクラさんて、比企谷君のお宅の、ね、猫よね?」

「そうだぞ。あぁ、雪ノ下には断られてしまうのかぁ…」

「うぅ…」

「ヒッキー、ゆきのんをイジメないで」

「わかってるよ、冗談だ」

「そ、それで何故カマクラさんを?」

「何故『さん』付けなのかは、置いといて…」

「置いておくんだ…」

「動物病院に連れて行きたいんだが、予約のタイミングが合わなくてな。明日の夕方連れて行きたい。それで、奉仕部で預かってもらいたい」

「私は大丈夫だよ」

「し、仕方ないわね。カマクラさんなら…」

「『仕方ない』だったら、別に無理しなくてもいいぞ」

「うぅ…」

「ヒッキー!」

「はいはい、悪かった。ちゃんとキャリーには入れておく」

「部室の中なら、出してもいいんじゃないかな?」

「えぇ、そうね」

「ま、夕方までだから」

「猫…カマクラさん…」

「ヒッキー…」

「ゆきのん、大丈夫かな?」

「明日の授業は上の空だろうな」

 

翌日

「悪いな、雪ノ下。早く来て部室開けてもらって」

「えぇ、大丈夫よ。さ、早くカマクラさんを!!」

「カマクラ、大人しくしてよろ」

「にゃ~」

「おい、雪ノ下」

「にゃ~」

「雪ノ下さん?」

「にゃにかしら?」

「ぷっ」

「忘れなさい」

「えぇ~」

「忘れなさい!」

「はい…」

 

「よしと、カマクラ昼休み来るからな」

「カマクラさん、またね…」

「おい、今生の別れじゃないんだから、早く行かないと授業に遅れるぞ」

 

昼休み

「カマクラ~。元気かぁ」

「にゃ~」

「おい、雪ノ下」

「何かしら?」

「その猫じゃらしはどっから持ってきた…」

「私の私物よ」

「ヒッキーからも、ゆきのんにご飯食べるように言って」

「あ~、雪ノ下」

「なにかしら?」

「カマクラを休ましてくれないか?」

「そう…。そういうことなら、仕方ないわね」

「雪ノ下、確認だが、休み時間ごとに来てないよな?」

「そ、そんなことにゃいわ」

「…来てるんだ」

「…来てるな」

 

放課後

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

「あら?ここは?…草原みたいだけど…」

「見かけないコだね?どこから来たの?」

「わからないわ。目が覚めたらここに…」

「なんていう名前なの?」

「雪ノ下雪乃よ」

「私はサーバルキャットのサーバル」

「コスプレではないのかしら?」

「こすぷれ?なにそれ?」

「ちょっと耳を触ってもいいかしら?」

「いいよ」

「はぁぁぁぁ、モフモフ…」

「くすぐったいよ」

「撫でていいかしら?」

「いいよ」

「はぁぁぁぁ、最高よ、サーバルさん」

「雪乃ちゃんは、撫でるのが上手なブレンズなんだね」

「貴方のような方は他にもいるのかしら?」

「ここには、いろんなブレンズが居るよ」

「ぜひ、お会いしたいわ」

「じゃあ、着いてきてよ」

 

~~~~~~~~~~~~~

 

「お~い、雪ノ下。起きてくれ。カマクラを抱いたまま寝るな~」

「うふふ、猫科のブレンズがいっぱい…」

「どんな夢見てるんだよ…。おい、雪ノ下…」

「…あ、目が濁ったブレンズ…」

「うるさいよ。起きたか?」

「はっ!私は…」

「カマクラ病院連れていくから、離してくれ」

「あ、ごめんなさい」

「じゃあ、俺は行くからな」

「え、ええ」

 

「あ~、なんだ…」

「カマクラ撫でたかったら、家に来い…。小町も喜ぶし…」

「え、ええ。是非」

「んじゃな」

 

(比企谷君とカマクラさん…。どちらも素敵ね。ふふふっ)




―――――――――――――――

頂いた、感想を元に書いてみました。


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六十五話

いつも通りの放課後

 

「ねぇねぇ、ヒッキー」

「ん?なんだ」

「川島瑞樹と高垣楓のどっちが好き?」

「お前、そんなこと聞いてないで勉強しろよ」

「いいじゃん!」

「それは、私も聞きたいわね」

「雪ノ下も食い付くなよ」

「ねぇねぇ、どっち?」

「どっちなのかしら?」

「なんで、そんなにノリノリなんだよ」

(助けて!誰か依頼に来て!)

 

ガラガラ

「夜空の星が輝く陰で

悪(ワル)の笑いがこだまする

星から星に泣く人の

涙せおって宇宙の始末

銀河旋風ブ○イガ―

およびとあらば、即参上!」

「…」

「…」

「…平塚先生、呼んでないです」

「平塚先生、ノックを…」

「で、ブラ○ガーをマスターと観たってノロケ話ですか?」

「い、いや、ノロケではなくてだな…、まだ付き合ってないというか…」

「へ~」

「ふ~ん」

「な、なんだ!ニヤニヤするな!」

「平塚先生、今日は依頼ですか?」

「ああ、そうだった。入りたまえ」

「はろはろ~」

「姫菜、どうしたの?」

「依頼…というか、比企谷君に頼みが…」

「比企谷君に?」

「ヒッキーに?」

「おい雪ノ下、俺を睨むな。由比ヶ浜、目のハイライトを消すな」

「比企谷君!冬コミの原稿手伝って!」

「もう、そんな時期か…。で、なんで俺なんだ?」

「夏コミのオリジナルが好評で、ストーリーの意見も聞きたくて…。ダメ?」

(上目遣いとか卑怯だろ)

「あれかぁ…。まぁ、あれだ。部長の許可がないとな」

「仕方ないわね。同人誌に関しては、私も由比ヶ浜さんも力になれないから」

「わかった。引き受ける」

「じゃあ、早速今日からね」

「えっ!マジ!」

「マジだよ」

「じゃあ、行ってくる」

 

「ねぇ、ゆきのん」

「なにかしら?」

「姫菜の手伝いって、どこでやるのかな?」

「漫研かしら?」

「姫菜、漫研入ってないよ」

「まさか…」

「そんなことないよね…」

 

 

「なあ?」

「なにかな?比企谷君」

「なんで、俺は海老名さんの部屋に居るんだ?」

「同人誌の手伝いの為だよ」

「いや、他にも場所あったでしょ?」

「まさか、女の子と二人っきりだからって…」

「お、おい…」

「エロ同人誌みたいなことするのね」

「ネタじゃねぇかよ…。まったく。で、進捗は?」

「こんな感じ…」

「どれどれ………。ほぼ完成してるな」

「そうだね」

「…。で、本当の目的は?」

「いやぁ、比企谷君は理解が早くて助かるよ」

「まあな」

「…京都駅でさ、比企谷君となら付き合えるかもって言ったの覚えてる?」

「あぁ、あと時はヒキタニ君だったがな」

「あれさ…、少し変わったんだ」

「ふ~ん」

「私ね、比企谷君と付き合いたい」

「え~と、隠しカメラとボイスレコーダーを出せ」

「そんなことしない。本気で好きなんだ…」

「はぐらかして、すまなかった」

「比企谷君なら、言うかもとは思ってた」

「あ、そ」

「返事…、聞かせてくれないかな?」

「海老名さんみたいに可愛い女の子に告白されて嬉しく思う。…でも、すまない。海老名さんとは付き合えない」

「やっはりなぁ…。それは、私が腐ってるからかな?」

「それは関係ないかな」

「これから入試とか冬コミとかで忙しくなるから、胸のモヤモヤをすっきりさせたかったんだ。だから、これは自己満足かな」

「そんなことない。告白するのって、凄い勇気がいることだから、すげぇと思う。俺にはまだ…」

「ありがと。…そんな比企谷君にお願いがあります」

「俺で出来ることであれば…」

「この漫画の中だけ、私とのハッピーエンドにさせて…」

「それでいいのか?」

「本当はお付き合い出来ればいいよ。でも、出来ないなら、漫画の中だけでも…」

「海老名さんの好きにしていいよ」

「ありがとう」

「お礼を言うのは俺の方だ」

「それと、好きな人にちゃんと告白してね」

「おう、わかってるさ」

 

「じゃあ、帰るよ」

「じゃあ、また学校でね」

「またな」

 

「やっはり、あの娘たちには勝てないかぁ…」

 



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六十六話

コーヒーショップ

「…折本、すまない。お前とは付き合えない」

「だよね~、ははは…」

「別に、折本のことが嫌いな訳じゃないんだ…。中学のことも関係ない…。ただ…」

「うん、いいんだ。ありがとう、比企谷」

「折本…」

「これは私のケジメなの」

「そうか…」

「でも、友達…だよね」

「あぁ、そうだな」

「比企谷と友達とか、ウケるwww」

「ウケるのかよ」

「じゃあ、私…、行くね」

「おう」

「またね、比企谷」

「またな」

 

「マスター、スペシャルください」

「はいよ」

 

「甘っ」

「坊主、頑張ったな」

「フラレることには百戦錬磨でしたけど、フるのは…」

「そういうことで、大人になるんだよ。お前も、さっきの嬢ちゃんもな」

「苦いっすね…。これは激甘ですけど」

「人生は苦いからMAXコーヒーが旨いんだろ?」

「そうでしたね」

 

とある公園

(帰って、数学の復習でもするか…。ん?あそこで、猫とコミニュケーションしてるのは…)

 

「おい、雪ノ下…」

「にゃ~」

「何を野良猫をもふってるんだよ」

「にゃにゃ~」

「あ~、これは言いたくなかったんだが…」

「にゃにゃにゃ?」

「パンツ見えてるぞ」

「!!!」

「おい、携帯をしまってくれ!俺は注意喚起しただけだろ!」

「あ、貴方、見たのね…」

「い、いや、その…」

「み・た・の・ね!」

「…はい」

「私の下着を見たのと、逃げた猫の責任をとりなさい」

「ど、どうすれば…、よろしいでしょうか…」

 

比企谷家

「カマクラさん、元気だった?いいこね~。にゃ~」

「ねぇ、お兄ちゃん」

「なんだ妹よ」

「なんで急に雪乃さんが来たの?」

「ま、前からカマクラもふりたいって言ってたし、さっき偶然会ったんだよ」

「ふ~ん」

「にゃ~」

「雪乃さん、どこから猫じゃらし出したの?」

「たぶん、鞄の中の常備品だ。気にするな」

「ふ~ん」

「少し、ほっといてやろう」

「じゃあ、私は買い物行くね」

「お、おい、小町…」

「お兄ちゃんは雪乃さんこと、よろしく♪あっ、今の小町的にポイント高い♪」

「あ、おい!…」

「にゃ~♪」

「仕方ない、ここで勉強するか」

 

(あれ?雪ノ下が静かになった。寝てるし…。スカートで不用意に寝るなよ、またパンツ見えてる。見せたいのかね?毛布かけてやるか)

 

 

(あ、寝ちまった…。嫌な夢を見ちまった…。藤沢の顔、海老名さんの顔折本の顔、辛そうだったな…)

「比企谷君?」

「雪ノ下、起きたのか」

「えぇ、毛布ありがとう」

「どういたしまして」

「その…、大丈夫かしら?」

「何がだ?」

「すごく…、辛そうな顔してたから…」

「ん、ああ、なに、大丈夫だ、気にするな」

「嘘…。また一人で抱え込むの?」

「っ!これは、俺の問題だから…」

「それでも!…それでも、貴方の辛そうな顔は見たくないの…」

「すまん…。じゃあ、聞いてくれるか?」

「えぇ」

「さっき、折本に告白された…」

「え…」

「断ったんだがな…」

「えぇ」

「その前に、海老名さんと藤沢にも…」

「そう…だったのね…」

「『俺じゃ釣り合わない』とか『俺を陥れようと』とかで断ったわけじゃない。真剣に告白されたから、俺も真剣にお断りしたんだ。理由は聞かないでいてくれると助かる」

「わかったわ」

「でもな、あいつらの顔を思い出すと…」

「そう…」

「ゆ、雪ノ下!何をしてるんだ!」

「貴方を抱き締めてるのよ」

「そ、それはわかるが、何故だ!」

「小さい時に、よく姉さんがしてくれたのよ。こうしてもらうと、落ち着いたのよ」

「雪ノ下…」

「なに?」

「ありがとな」

「気にしないで」

 

「雪ノ下」

「なにかしら」

「顔に柔らかいモノが当たってるんですが…」

「え~と、こういう時は『当ててるのよ』だったわね」

「なんで知ってるんだよ」

 

「だだいま♪お兄ちゃん、雪乃さん…あ」

「あ」

「あ」

 

 



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六十七話

奉仕部

 

「もうすぐクリスマスだねぇ。パーティーしたないなぁ」

「なぁ、雪ノ下」

「なにかしら?」

「由比ヶ浜は現実に戻した方が良くないか?」

「あら、奇遇ね。私もそう思っていたわ」

「なぁ、由比ヶ浜」

「聞きたくない…」

「由比ヶ浜さん」

「聞きたくない…」

「クリスマスの前に期末試験」

「いやぁぁぁぁ」

「はぁ、雪ノ下。由比ヶ浜の勉強見てやれよ」

 

コンコンコン

「どうぞ」

「比企谷居る?」

「おう、あ、え~と…」

「もう、そのネタいらないから」

「んだよ、川崎」

「今日、予備校だよね?」

「ああ、そうだが」

「そのあと、話あるから顔かしな」

「お、お金なら、ないでふ…」

「カツアゲじゃないから。じゃあ、頼むね」

「あいよ」

 

「なんだろうね?」

「また家のことかもな」

「それならいいんだけど…」

「ゆきのん?」

「いえ、なんでもないわ」

 

コーヒーショップ

「悪いね」

「いや、大丈夫だ。で、どうした?」

「あ、あのさ…。期末試験まであと少しだよね」

「ああ、そうだな」

「それでさ、私の気持ちの問題というか…」

「どうした?歯切れが悪いが…」

「その…、比企谷は、さ…。好きな人とかって居るの?」

「どうしたんだ?藪からスティックに?」

「茶化さないで!」

「お、おう。悪い…」

「で、どうなの?」

「い、居る」

「そう…、なんだ…」

「その人ってさ…」

「すまん、それ以上は言えない…」

「こっちこそ、ごめん…」

「川崎…、お前…、泣いてるのか…」

「ごめん、泣く…つもりはなかったんだけど、比企谷の顔を見て…、好きな人が…私じゃないとでもな、わかったら…」

「すまん…」

「謝らないで…。泣いたら、比企谷は優しいから…。人の痛みがわかっちゃうから…、泣きたくなかったんだけど…」

「…す、」

「謝らないで。お願い…、そんな、辛そうな顔しないで…」

「だが…」

「私は…、大丈夫…だから…」

「川崎…」

「私は…、そんな、優しい…比企谷のこと…、大好きだから…」

「ありがとな」

「うん…。私こそ…、ありがとう…」

「ひゃっはろー…。て、あれ…」

「雪ノ下さん…」

「比企谷君」

「…はい」

「君はもう帰りなさい」

「で、でも…」

「沙希ちゃんのことは、私にまかせて」

「…」

「私じゃ頼りない?」

「いえ、そんなことは…」

「じゃあ、任せなさい」

「わかりました…」

「じゃあ、帰った帰った」

「川崎…」

「なに?」

「ありかとな、俺のこと…好きになってくれて」

「バカ!私も…ありがとう…」

 

とある公園

(なんとく、もしかしたらと思っていたら、川崎もだったか…)

「あれ?ヒッキー?」

ワンワン

「由比ヶ浜…」

「サブレ、大人しくして。ごめんね、サブレもヒッキー大好きだから」

『優しい比企谷のこと大好きだから』

「っ!」

「ヒッキー、どうしたの?」

「だいじょ…」

「大丈夫じゃないよね?」

「…」

「えっと…、『沈黙は肯定』だよ」

「どこで覚えたんだよ…」

「ヒッキー、凄い辛そう…。サキサキとなにかあったの?」

「…川崎に告白された…」

「…そっか」

「そう…だ」

「えいっ!」

「ゆ、由比ヶ浜!な、なにを!」

「え?抱き締めてるんだよ」

「それはわかる!わかるが、何故だ!」

「落ち込んだりしてると、ママがしてくれるんだ」

「だ、だからって…」

「ヒッキーは、他人の痛みがわかっちゃうから、辛いよね。だから、傷つけたくなかったから…。ヒッキーは優しいよね。だから、皆好きなるんだよ、さわさわも姫菜もかおりんも…」

「知ってたのか?」

「うん、三人に聞いた」

「そうか…」

「三人とも後悔してないよ。もちろんサキサキも」

「そう…なのか…」

「そうだよ。だから、ヒッキーも、ね?」

「あ、ああ…」

「えっと…。『大丈夫?おっぱい揉む?』」

「誰に聞いた?」

「姫菜」

「揉みません」

「…ヒッキーだったら、私は…」

「いやいやいや。結構です。大丈夫です!」

「そう?」

「ああ。ありかとな、由比ヶ浜。サブレもありがとよ」

ワンワン

「じゃあ、帰るな」

「私も散歩の続きに行くね」

「またな」

「またね」

 



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六十八話

期末試験も終わり、昼休みもあと少しで終わりとなる時間の廊下

 

「ヒッキー」

「どうした?由比ヶ浜」

「クリパだけど、サキサキとか優美子たちは参加してくれるかな?」

「どうだろうな?」

見慣れない男子生徒が声をかけてきた。

「ねぇ、由比ヶ浜さん。そんなヤツとクリパするより、俺らとやろうぜ」

「い、いやぁ…。私はヒッキー達と…」

「こいつ、悪い噂だらけじゃん。そんなヤツと一緒に居たら、泣かされるよ」

「何なのアンタら」

「川崎…」

「サキサキ…」

「アンタらなんかより、比企谷の方がよっぽどいい男なんだけど」

「でもさ、こんやヤツなんか…」

「結衣、どした?」

「三浦…」

「優美子、あのね…」

「アンタら、ヒキオのこと『こんなヤツ』って言った?」

「こんなヤツで充分だろ?」

「あ?何言ってんの?アンタらなんかより、ヒキオの方が何倍もマシなんだけど。隼人が居なければ、ヒキオと付き合ってたかもしれなし」

「なっ!んなこと、あるわけねけねぇだろ!だってコイツは…」

「何を騒いでいるのかしら」

「ゆきのん…」

「雪ノ下…」

「進学校の総武高校の生徒が、噂に惑わされて、他人を卑下して女の子に声をかけるなんて、最低ね。それで、よく学校に通えるわね。恥ずかしくないのかしら」

「三浦、雪ノ下、黙ってて。私はコイツらに言い足りない」

「あーしも文句言いたいんだけど」

「私は、まだ言いたいことの一割も言ってないのだけど」

(何、この三人。怖い怖いよ)

「何を騒いでいる。もうすぐ授業が始まるぞ」

「平塚先生…」

「ソイツらが比企谷をバカにしてたんで」

「あの二人が結衣とヒキオに絡んでたんで」

「彼らが、比企谷君を卑下するようなことを言っていたので」

「比企谷、由比ヶ浜。間違いないか?」

「はぁ」

「はい」

「教室に入りたまえ。お前らは、放課後に生徒指導室に来い」

「ちっ!」

「今、舌打ちをしたな…」

「えっ!あ、いやぁ…」

「今日の生徒指導が楽しみだ」

(なんで、ウチの学校の女子って怖いの?あ、一人女子じゃなかった)

「比企谷、今失礼なこと考えなかったか?」

「滅相もございません。平塚先生」

「なら良い」

 

「クリスマスパーティー、私も参加させてもらうよ。京華もみんなに会いたがってたし」

「結衣~、あーしらも参加ね」

「川崎さん、ありがとう」

「優美子、ありがとね」

「怒らすと怖いけど、普通にしてたら、みんな可愛いよな」

「な…!」

「へ…!」

「え…!」

「う…!」

「やべぇ!声に出てた!ごめんなさい!忘れてくれ~!」

「ヒッキー!どこいくの!授業始まるよ!…行っちゃった…」

 

放課後 奉仕部

「まだ、そんな輩が居るんですね。生徒会長権限で潰してやりますよ」

(生徒会長様、ご立腹ですわ)

「私も腹が立ったよ。優美子も凄い怒ってたし」

「姉さんに頼めば…」

「おいおい、物騒なことはやめてくれ。俺は静かに暮らせればいいから。それに、平塚先生がキツク言ってくれてるだろ」

「比企谷君が、そういうなら…」

「まぁ、先輩ですし」

「ヒッキー、無理しないでね」

「おう」

 

「本題なんですけど、生徒会もクリパ参加でお願いします」

「結構、大人数ね」

「楽しそう」

「じゃあ、俺は家で…」

「比企谷君?」

「ヒッキー?」

「先輩?」

「喜んで参加します」

「比企谷君、マスターにお願いできるかしら?」

「たぶん、大丈夫だろ。雪ノ下の誕生日パーティーの日も、頼んでおくよ」

「わ、私の誕生日は別に…」

「え~、ゆきのん。やろうよ」

「あ、ちなみに、陽さん先輩には、1月3日はOKだと、了承もらってますので」

「貴方達…」

「雪ノ下が小町に連絡して、俺の退路を断つ方法を取らせてもらった」

「はぁ、仕方ないわね…」

 

ちなみに、八幡に絡んだ輩は、雪ノ下・由比ヶ浜・川崎・三浦・海老名・一色・藤沢・相模・小町に会うたびに睨まれるという精神攻撃を卒業まで受けたという…。

 

 

 

 

 

 




――――――――――――――――

次回、クリパ編。

大丈夫か、受験生?特に由比ヶ浜…


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六十九話

クリスマスパーティー当日。

男性陣は、しばらく待機とのことで、近くのサイゼで待機中。

 

「ねぇねぇ、八幡。女の子達はなにしてるのかな?」

「さあな。ケーキでも作ってるのかね?」

「優美子からメールだ。みんな行こうか」

「へいへい」

「マジ楽しみだわ」

「うん」

「それな」

(大和と大岡が居る意味あるか?いや、無いな)

「ゴラムゴラム。我も楽しみである」

(誰?材木座呼んだの…)

「お兄さん、楽しみッスね」

「お兄さんと呼ぶな」

「あの嬢ちゃん達は何をしてくれるかな?」

「マスターまで締め出すとは…」

 

店に入ってビックリ。何故なら…。

「なんで全員ミニスカサンタなの?」

「ふっふっふっ。私が説明しよう」

「え、海老名さん?」

「プロデュースドバイ私!メイクドバイサキサキ!」

「どこかで聞いたことある気が…」

「海老名さん、マジパネェ」

「目のやり場に困る…」

「隼人、どう?似合ってる?」

「優美子、凄く似合ってるよ」

(なんで葉山はすらっと、そんなこと言えるんですかね)

「ヒッキー!どう?」

「い、いや、どうって…」

「似合う…かな?」

「お、おう。似合ってるんじゃねぇの?」

「エヘヘ…」

 

「八幡…」

「お、ルミルミ」

「ルミルミじゃない!」

「瑠美、似合ってるぞ」

「うん、ありがとう…」

「はーちゃん」

「けーちゃん、可愛いな」

「ありがとー」

「けーちゃん、可愛いよ可愛いよ」

「川崎、落ち着け。写真が手ぶれするぞ」

「けーちゃんのサンタ姿だよ!こんなに可愛いんだよ!落ち着いてられないよ!」

「ダメだ、このシスコン…」

 

「雪乃ちゃん、もっと写真撮らせてよ」

「イヤよ」

「お父さんとお母さんにも見せるんだから」

「あっちのシスコンもダメだ…」

 

「お兄ちゃん♪」

「小町…」

「どうしたの?お兄ちゃん」

「小町可愛い過ぎ…。一番可愛いぞ」

「比企谷さん、最高ッス」

「大志、お前は見るな!」

「お兄さん!目を隠さないでください!見えないッス!」

「お兄ちゃんと大志君て、仲良いよね」

「良くない!」

「良くないッス!」

 

「せんぱ~い、私達も見てくださいよ~♪」

「お前らも可愛いぞ。あと一色、あざとい」

「扱いが雑ですよ!あと、あざとくないです!」

「藤沢、本牧には見てもらったか?」

「はい。可愛いって言ってくれました」

「そうか、よかったな」

 

「比企谷!」

「相模に折本、お前ら仲良いよな」

「まあね」

「比企谷よりはね。ウケるwww」

「草生すな」

 

「なんで、私まで…」

「似合ってますよ、静さん」

「マスター。お恥ずかしい…」

「いえいえ」

 

「なぁ、由比ヶ浜」

「何?」

「海老名さんと材木座って、あんなに仲良かったか?」

「姫菜がコミケノウリコ?を頼んだら、了承してくれて、そっから仲良しらしいよ」

「ほ~ん」

 

「比企谷、ちょっといい?」

「川崎…」

「この前は、ごめんね」

「い、いや…」

「比企谷に言いたいことがあるんだ」

「なんだ?」

「気持ちの整理がつくまで、比企谷のこと好きでいさせてもらう。て、いうか好きでいる」

「お、おう…」

「これは、私の気持ちのだから、誰にも邪魔はさせない。でも、比企谷の邪魔もしない」

「…」

「折本さんだっけ?私と同じ気持ちみたい…」

「そうか…」

「比企谷、頑張りなよ。アンタが頑張らないと、私達がうかばれないからね」

「プレッシャーかけてくれるじゃねぇか」

「まあね」

「ここだけの話だが、いつ告白するかは決めている」

「そっか。逃げないでね」

「おう」

 

「比企谷君」

「なんだ、雪ノ下」

「川崎さんと話をしていたようだけど…」

「ああ…」

「その…、大丈夫なのかしら…」

「気持ちの整理が出来るまで、好きでいるって宣言されたよ」

「そう…」

「川崎もそうだが、折本も藤沢も、俺なんかよりもずっと強いな…」

「そう…、なのかしら…」

「無理してるだけかもしれないがな…」

「わ、私だって…弱いのよ…」

「かもな。だから、依存する。補いあう。ある意味、それでいいのかもな」

「そうね…。でも…」

「『過ぎたるは及ばざるが如し』だろ?」

「先に言わないでくれるかしら?」

「睨むなよ、怖ぇよ。勘弁してくれよ」

「そうね。今日はクリスマスパーティーだものね。勘弁してあげるわ」

「助かる」

「戻りましょうか?」

「あ、雪ノ下…」

「なにかしら?」

「その…、似合ってるぞ…」

「!!!」

「ほら、戻るぞ」

(ず、するいわ…)

 

 

 

 




――――――――――――

クリスマスネタって、クリスマス以外に書くとネタが出て来ませんね


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七十話

1月3日。

奉仕部三人で初詣。

 

「ゆきのん、大丈夫?」

「大丈夫よ。人混みに酔っただけだから…」

「凄い人だよな。無双乱舞したくなる」

「?」

「悪かった…。なんでもない…」

「とりあえず、一旦帰ろう。パーティーは夕方からだから」

「えぇ、そうしましょう」

「ヒッキーが迎えに行くからね」

「待て。初耳だぞ」

「だって、今初めて言ったもん」

「大丈夫よ。この男が迎えに来なくても、一人で行けるわ」

「エスコートだよ。ダメ?」

「はぁ、由比ヶ浜さんがそこまで言うなら」

(チョロいな)

(チョロいね)

 

比企谷家

「お兄ちゃん、雪乃さんのお迎えよろしくね」

「おう。悪いな、準備手伝えなくて」

「雪乃さんのお迎えは大事な仕事だよ」

「わかってる。それと…」

「何?真剣な顔して…」

「由比ヶ浜は絶対に料理に触らせるな」

「結衣さん、料理上手くなったよ」

「そうなのか?」

「うん」

「まぁ、小町が言うなら大丈夫だろ」

 

雪ノ下マンション

「待たせたかしら?」

「いや、今来たとこだ」

「嘘つき…」

「たとえ、嘘であっても、そういうモンだろ?」

「そういうことを言ってしまうのが、貴方らしいわね」

「まあな」

「では、行きましょうか」

「おう」

 

コーヒーショップ

「happybirthday!!」

「みんな、ありがとう」

「これで、ゆきのんも同じ歳だね」

「そうね」

「一緒に免許取りに行く?」

「それもいいわね」

「雪乃ちゃん。それとも婚姻届出しに行っちゃう?」

「姉さん!」

「ごめんごめん」

「姉さん、今日のことを母さんに言ってくれたんでしょ?ありがとう」

「ゆ、雪乃ちゃんが、素直に…。お姉ちゃん嬉しい」

「姉さん、抱きつかないで」

 

「ゆきのん、これプレゼント♪」

「これは、クッキーかしら」

「いろはちゃんと小町ちゃんと三人で作ったんだ。本当は一人で作りたかったけど、不安だったから…」

「由比ヶ浜さん、ありがとう。嬉しいわ」

「俺からは、これだ。画面見てくれ」

「スマホの画面なんか見せて…。比企谷君、これは…」

「プライズのパンさん諸々だ。かさばるから、後で届け…」

「どこにあるの比企谷君。早く行くわよ」

「ま、待て。ちゃんと届けるから」

雪ノ下に次々とプレゼントが贈られていく。

奥から一色と川崎が次々と料理を出してくる。

 

「楽しんでるか?」

「ええ。こんなに楽しい誕生日は初めてかもしれないわね」

「それはよかった」

「ねぇ、比企谷君…」

「ん?」

「あと少しで卒業ね」

「そうだな」

「私達、どうなるのかしらね…」

「わからん。望むにしろ望まざるにしても、前に進むしかない。時計の針は戻せない。少しでも自分の望むカタチになるようにするしかないだろ」

「驚いた。貴方から、そんな前向きな言葉が出てくるとは…」

「ほっとけ。これもあれだ…。雪ノ下が変えた世界の一部だ…」

「…そ、そう」

 

「諸君、楽しい時間ではあるが、そろそろ高校生は帰る時間だ」

平塚先生の号令で終了となる。

 

「ヒッキーは、ゆきのん送ってね」

「片付けはいいのかよ」

「私達に任せて。…ヒッキーは、ゆきのんのこと…、お願い」

「お、おう。わかった」

 

「う~。寒いなぁ」

「そうね、寒いわ」

「…おい」

「なにかしら?」

「腕を絡めてくるな」

「寒いのよ。それに…」

「それに?」

「今日は私の誕生日なのよ」

「そうか。なら仕方ない」

「そうよ。…あ」

「雪か…。どうりで、寒いと思った」

 

雪ノ下が『雪の華』を口ずさむ…。

 

「いい歌だな」

「ええ」

「比企谷君、私…幸せだわ」

「そうか」

「幸せ過ぎて、少し怖い…」

「そうか」

「比企谷君、少しでいいの。少しでいいから、抱きしめて…ほしい…」

「仕方ない。誕生日だから」

「…ありがとう」

「心配すんな」

「え?」

「俺はここに居る」

「ええ、そうね」

 

 

 

 

 

 




―――――――――――――

あと何話になるか…。2~3かなぁ。
もう少し、お付き合い、よろしくお願いします。

歌詞の掲載のご指摘をいただきましたので、修正しました。歌詞書きたかった…。


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七十一話

2月下旬

入試も終わり、合格発表を待つばかり。

 

三年生は、ほぼ登校しない中で一人姿を表す三年生。→現す

 

「比企谷!どうした?」

「師匠!」

「答えよ、比企谷!流派・東方不敗は!」

「王者の風よ!」

「全新!!」

「系裂!!」

「天破侠乱!!」

「見よ!東方は紅く燃えている!!!!」

 

「お二人は、なにやってるんですか?」

「一色に見られた!」

「え?平塚先生と久しぶりに会ったから、挨拶を…」

「はぁ。お久しぶりです、先輩」

「お、おお、久しぶり」

「それで、先輩は平塚先生と拳の語り合いに来たんですか?」

「いや、一色に用事があったんだ」

「へ?私ですか?…いきなり会いに来てドキドキさせてフラグ立てるなんて出来すぎなので無理ですごめんなさい」

「デートの誘いに来たんだが、無理なら帰る」

「デデデ、デート!」

「私もデートしたい…。帰りにマスターのところへ行こう…」

「平塚先生、合格発表の後に、また来ます」

「うむ」

「平塚先生、大丈夫かなぁ?」

「平塚先生なら、大丈夫だ。それより、どうするんだ?」

「え!い、行きます!」

「じゃあ、土曜日に千葉駅前に11時な」

「は、はい」

 

「さてと、次は…」

prrrrr

「あ、由比ヶ浜か?」

『ヒッキー!やっはろー!』

「由比ヶ浜、日曜って暇か?」

『うん、あいてるよ』

「ハニトー行くか?」

『え?ヒッキー、どうしたの?』

「嫌なら、いいんだが…」

『行く行く!』

「女の子がそんな言い方しちゃいけません」

『何が?』

「なんでもない。じゃあ、日曜な」

『うん』

 

そして、数日後。合格発表の日。

 

(よし、合格だ。さてと…)

 

 

コーヒーショップ

「坊主、入試はどうだった?」

「合格しましたよ」

「そりゃ、おめでとうだな」

「はい、ありがとうございます」

「こんなところに居ていいのか?親とかに報告しなくていいのか?」

「親にはメールしました。ひとつ自分の中で賭けをしてまして」

「賭け?」

「賭け…と、いうより、自分を追い込んでいるんです。賭けには勝つ自信はありますから」

「よくわからん」

「たぶん、すぐにわかりますよ」

 

店の扉が開くと…。

「こんにちは」

「いらっしゃい」

「ここに、場所だけ書いて時間指定の無い手紙を書くおバカさんが来てないかしら?」

「賭けには勝ちましたよ」

「よし、俺もお前を追い込んでやるか」

「え?」

「嬢ちゃん、来てくれて早々悪いが、コイツと店番してくれないか?今夜、静さんと飲む酒を切らしてるのを忘れててな」

「あ、あのマスター…」

「一時間ぐらいかかると思うから、よろしく頼む」

「あ、あの…。行ってしまったわ…」

「よう」

「『よう』じゃないわよ」

「コーヒー煎れるから、座れよ」

「貴方が煎れるコーヒーも久しぶりね」

「そうだな」

 

「ほい、お待たせ」

「うん、美味しいわ」

「雪ノ下、話があるんだが…」

 




――――――――――――――


モヤモヤすると思いますが、もうしばらくお付き合いくださいm(__)m


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七十二話

卒業式当日。

式典も無事に終わり、奉仕部に集まる三人。

 

「終わったわね」

「終わっちゃったね」

「ああ」

「色々あったわね」

「そうだね」

「黒歴史ばっかり増えた気がするよ」

 

不意にドアが開く

 

「失礼するぞ」

「平塚先生、ノックを…」

「このやりとりも最後だと思うと感慨深いな」

「それで、どんなご要件ですか?」

「うむ。君たちの勝負の結果を伝えようと思ってな」

「そういえば…」

「あったかも…」

「あはは…」

「では、発表するぞ…」

「…」

「…」

「…」

「勝者は、雪ノ下だ」

「で、その理由はなんですかね?」

「比企谷の更正だな」

「うん、それなら納得だね」

「一番の大仕事でしたから」

「いや、俺は変わらん。ボッチをやめ…」

「『雪ノ下が変えた世界の…』」

「うわ~!更正しました!変わりました!」

「?」

「?」

「何でもいうことをきかせられる権利だが…」

「私は辞退します」

「ん?理由を聞こうか?」

「この二人は、もう私の願いを叶えてくれているからです」

「ゆきのん…」

「なるほどな。次点の由比ヶ浜はどうするかね?」

「わ、私も辞退かな…。理由はゆきのんと同じです」

「仕方ない。比企谷はどうだ?」

「仕方ないって…。俺も別にないですかね」

「では、こうしよう。私からの命令を聞いてもらおうか」

「いや、平塚先生それは…」

「三人とも、これからも、それぞれを補って交流していってくれ。あと、結婚式にも呼んでくれよ」

「平塚先生、確かに承りました」

「俺は…、ほら、あれがこれで忙しいから…」

「この男は、私が責任を持って交流します」

「あはは…」

「俺の意見は…」

「あると思う?」

「何その怖い笑顔…。あと恐い」

「私からは以上だ」

「では、行きましょうか」

「うん!」

「平塚先生、後程パーティーで」

「うむ」

 

コーヒーショップ

「マスター、毎回ありかとうございます」

「なに、かまわないさ」

「助かります」

「そのかわり、バイト頼むぞ」

「うっす」

 

「お、おい…、材木座。お前痩せたか?」

「うむ。訳あってな」

「理由を聞いて大丈夫か?」

「その、だな…。ダイエットに成功して、一緒にコスプレ出来るようになったら、お付き合いしてくれると海老名女史が…」

「いつのまに…」

「挿し絵イラストも描いてくれると…」

「至れり尽くせりじゃねぇか…」

「我、死ぬのかな…」

「お前は簡単には死なねぇよ」

 

「海老名さん」

「なに?比企谷君」

「材木座と…」

「うん。…なんか趣味の話とかコミケの手伝いとかお願いしてるうちにね…」

「なるほどね」

「趣味の話が出来るって重要だよ」

「まぁ、そうだな」

「それに、材木座君は浮気しなさそうだしね」

「だな」

「もし比企谷君と付き合ってたら、気が気じゃないよ」

「…」

「ふふっ。沈黙は肯定だよ」

「うるせぇよ」

 

「比企谷先輩。卒業おめでとうございます」

「ありかとな、藤沢」

「いえ。比企谷先輩と出会えて良かったです」

「そうか?」

「そうですよ」

「早く行けよ。俺は本牧に殺されたくないからな」

「はい!」

 

「比企谷」

「んだよ、葉山。なんな用か?」

「いや、パーティーだから、見かけたら、声をかけるだろ?」

「そんな、リア充ルールは知らん」

「でも、君も立派なリア充じゃないのかな?」

「う、うるせぇよ。ほら、三浦が呼んでるぞ」

「じゃあ、またな」

「葉山、一つ言い忘れた」

「なんだい?」

「俺はお前が嫌いだ」

「奇遇だね。俺も君が嫌いだ」

 

「ヒッキー!なにやってるの?」

「何って、邪魔にならないように、すみっこぐらしを…」

「ほら、そっちに座って!」

「おいおい…」

 

「雪ノ下先輩、なんでそんな隅っっこにいるんですか」

「私は、ここでいいから…」

「向こうへ、行ってください」

「あ、あの…」

 

「なぁ、雪ノ下…」

「なにかしら、比企谷君…」

「何で、お前が隣に座ってるの?」

「誠に遺憾だけれども、貴方と同じことを考えていたわ。遺憾だけど」

「なんで、二回言ったの?大事なことなの?」

「ゆきのんも、そういうこと言わないの!」

「先輩だって、嬉しいんだから、わざわざ言わないでください。当て付けですか?」

「いや、なんというか、ほら…」

「はぁ…。諦めなさい」

「お、おい、雪ノ下。腕を絡めてくるな」

「い、いいじゃない。わ、私は、恋人と腕を組みたいのよ」

「うわ~。ゆきのん大胆」

「やっぱり当て付けじゃないですか」

「一色さん、そんなことないわ。こんな男なんて…」

「じゃあ、先輩もらっていいんですか?」

「ゆきのんがいらないなら、私が貰う!」

「雪乃ちゃん、私にちょうだい!」

「じゃあ、私が連れて帰る。京華も喜ぶし」

「じゃあ、ウチが!」

「ダ、ダメ~!!私の八幡は誰にも渡さない!!」

「…おい、雪ノ下」

「な、何かしら、比企谷君」

「見ろよ、みんなニヤニヤしてるぞ…」

「聞いた、いろはちゃん」

「聞きましたよ、結衣先輩。『私の八幡』だって」

「雪乃ちゃんたら…」

「お兄ちゃん…。小町は嬉しいよ。あれ、涙が…」

「暑い暑い…」

 

「そろそろ、いい時間だ。帰るか」

「ヒッキーは、ゆきのん送ってね」

「いや、俺は小町と…」

「はぁ、これだからゴミぃちゃんは…」

「ひ、比企谷君、送ってくれないしら」

(袖つかんで、上目遣いとか可愛いんだよ)

「雪ノ下、一色の技を使わなくても、ちゃんと送るよ」

「最初から、素直に送りなさい」

「へいへい」

 

帰り道

「ねぇ、比企谷君」

「なんだ?」

「手を…繋いでも…」

「ん」

「…嬉しい」

「雪ノ下と手を繋いで帰る日が来るとはな。あの時の俺が見たらなんで思うかな」

「たぶん、リア充爆発しろよ」

「違いない」

「ねぇ、比企谷君」

「どうして、私を選んだの?」

「さぁな。気がついたら好きになっていた…。恥ずかしいこと言わすな」

「私も同じなの…。気がついたら、目で追っていて…、好きになっていたの…」

「凄く似ていて、全然似てない。そんな感じだったのかな」

「すごい矛盾ね。でも、そうね」

「雪ノ下…」

「何?」

「好きだ」

「私もよ、比企谷君」

「ラブコメの神様に感謝だな」

「ふふっ、そうね」

 

 

 

 

 

 

 




――――――――――――――――――――


一応、本編終了ですが、あと少しお付き合いください。


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それぞれの卒業~一色いろは~

 

卒業式の少し前

千葉駅前

 

「すいませ~ん。支度に手間取ってしまって」

「大丈夫だ。俺も今来たところだ」

「…」

「どうした?」

「なんでもないです…」

「どこ行くんですか?」

「映画とかどうだ?」

「たとえばどんな?」

「う~ん、一色なら恋愛モノかな?」

「意外です」

「なんでだよ」

「先輩なら、『原作ファン阿鼻叫喚の実写化映画』とか言いそうじゃないですか」

「思い当たるから、やめようね」

「あと、違う映画をそれぞれ観ようとか…」

「それ、前に注意されたからな」

「じゃあ、恋愛映画で」

「んじゃ、行きますか」

 

映画鑑賞後

 

「ぐずっ。よかったよぉ」

「思いの外、良かったな。ほれ、ハンカチ使え」

「ありがとうございます…。洗ってお返しします」

「ん、やるよ。予備もあるし」

「そ、そんな…」

「いいから。そろそろ昼飯にしないか?」

「そうですね」

「このあたりに、リーズナブルなイタリアンがあるんだ」

「…先輩、サイゼリアじゃないですよね?」

「いや、違うけど」

「…どうしたんですか?先輩」

「どうもしねぇよ。んで、どうすんだ?」

「…たけがいいです」

「え?」

「なりたけに行きたいです…」

「俺はいいけど…」

「ほら、あれです。女の子一人だと入りにくいんで」

「なるほどな」

「はい。なりたけにハマったけど、入りにくいとか、そんなことないですからね!」

「はいはい…」

 

食事後

「腹ごなしに、卓球でもするか?」

「いいですね。勝負しますか?」

「しねぇよ。『時そば』するヤツがいるから却下だ」

「負けるのが、恐いんですか?」

「その煽りは、俺には効かない。普通に楽しもうぜ」

「は~い」

 

卓球後

「少し疲れたんで、休憩しませんか?」

「お茶でも飲むか」

 

喫茶店

「先輩が、お洒落な喫茶店知ってるとか、引きますね」

「おい…」

「まぁ、いいですけど。写真撮りましょう」

「はいよ」

「…」

「どうした?撮らないのか?」

「い、いえ…」

 

帰り道

「今日のデートは、マイナス100点です」

「なんでだよ…」

「先輩が先輩っぽくなかったので…」

「一色に注意されたところを直したのに…」

「それだけじゃないですけど…」

「あとはなんだよ」

「先輩…、告白するんですよね…」

「ん、ああ」

「比企谷八幡先輩…。好きです、付き合ってください」

「ありがとう、一色。だが、すまん。俺には好きな人が居るんだ」

「知ってます。雪ノ下先輩ですよね」

「そうだ…」

「これは、私のケジメです…。でも、悲しいなぁ…」

「一色…」

「でも、不思議と清々しいです…」

「でも、お前…」

「そりゃあ、泣きますよ。好きな人にフラれたんですから…」

「…一色」

「ほら、行ってください。私は大丈夫ですから…」

「でも…」

「私に構ってるところを、雪ノ下先輩に見られたらどうするんですか!早く行ってください。…そうしてくれないと…、諦められないじゃないですか…」

「わかった。じゃあな、一色」

「はい!先輩、頑張って告白してくださいね」

「あぁ」

 

 

「先輩…。私は先輩のこと好きになって良かったです…」



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それぞれの卒業~由比ヶ浜結衣~

卒業式の少し前

駅前

 

「ヒッキー!」

「お、来た来た」

「やっはろー!」

「おう。じゃあ、行くか」

「もうハニトー行くの?」

「いや、ゲーセンでも行こうかと思ってた」

「行こう!行こう!」

 

ゲームセンター

「ヒッキー!あの太鼓やろうよ!」

「おお、いいぞ」

 

「ヒッキー!エアホッケーやろうよ!」

「お前、スカート気をつけろよ」

「エッチ…」

「うぐっ…」

 

「ヒッキー!あのヌイグルミ取って!」

「無理だろ、あれ」

「えぇ~」

「仕方ないな…」

 

「ヒッキー!プリクラ撮ろう!」

「魂とられるから…」

「そんなことあるわけないじゃん!早く!」

「へいへい」

 

「由比ヶ浜、くっつき過ぎだ(近い!柔らかい!いい匂い!)」

「いいじゃん!」

「ゆ、由比ヶ浜…、その…当たってる…」

「う~んと、当ててるのよ…」

「どこで覚えた…」

「姫菜に聞いた」

(海老名さん、グッジョブ!)

 

「ヒッキー、ちゃんと貼ってよね」

「戸塚と撮ったプリクラの横でいいか?」

「うん、いいよ。ヒッキーって、女の子とプリクラ撮ったこたないの?」

「由比ヶ浜が初めてかな」

「私が初めて…。えへへ」

 

「そろそろパセラ行くか」

「やったー!ハニトー!」

「カラオケも歌うだろ?」

「歌うよ!ヒッキーも歌ってね」

「…善処します」

「それ、やらない感じだし!」

 

帰り道

「ハニトー美味しかった♪」

「それは良かった」

「歌もいっぱい歌ったし」

「そうだな」

「…」

「なぁ、由比ヶ浜。話が…」

「待って…」

「え?」

「私から言わせてくれないかな…」

「お、おう」

「ヒッキー…。ううん、比企谷八幡君。私は貴方が好きです」

「ありがとう、由比ヶ浜。でも、すまない。俺には好きな人が居るんだ」

「ゆきのん…だよね」

「あぁ」

「やっぱり、ゆきのんには勝てなかったか…」

「…すまん」

「謝らないで…」

「おう」

「告白はしたの?」

「いや、今からだ」

「そっかぁ。絶対に上手くいくよ」

「そう…かな…」

「そうだよ。だって、ゆきのんはヒッキーのこと大好きだもん」

「そっか…」

「だから、自信持って」

「ありかとな、由比ヶ浜」

「ゆきのんに負けたなら本望だよ」

「よし!」

「うん。応援してる」

「やっぱり、由比ヶ浜は優しいな」

「そんなこと…ないよ…」

「由比ヶ浜…」

「じゃあ、帰るね」

「でも…」

「行って、ヒッキー…。優しくされたら、諦められなくなっちゃうから…」

「…わかった」

「ゆきのんのこと、お願いね」

「わかった。じゃあまたな」

「うん、またね」

 

 

「バイバイ、ヒッキー…、大好き…だよ……」



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それぞれの卒業~雪ノ下雪乃~

合格発表の日

コーヒーショップ

「雪ノ下、話があるんだが…」

「なにかしら?」

「大学、合格したよ」

「そう。おめで…」

「国立○○大に」

「え?」

「雪ノ下、お前と同じ大学だ」

「嘘…」

「嘘じゃねぇよ。ただ理系は無理だったから、文系だかな」

「本当なのね…」

「あぁ、本当だ」

「そう…なのね…」

「雪ノ下雪乃さん…」

「…はい」

「好きです。俺と…俺と…、付き合ってください!」

「比企谷君…。私で、…私でいいの?」

「雪ノ下がいい。雪ノ下じゃなきゃダメだ」

「そう…。私も比企谷君に話したいことがあるわ」

「なんだ?」

「比企谷八幡君。私は貴方が好きです。私と恋人になってください」

「…断る理由がねぇよ」

「私もよ」

「くくくっ」

「ふふふっ」

「これからも、よろしくな」

「これからも、存分に調教してあげるわ」

「物騒だな」

 

「ねぇ、比企谷君」

「ん?」

「由比ヶ浜さん達には、なんて言えばいいのかしら…」

「一色と由比ヶ浜には、話をしてきた」

「え…」

「それぞれと出かけてな…」

「浮気?」

「違ぇよ」

「そう…。ちゃんと向き合ったのね…」

「まあな」

「私も…向き合わないといけないわね」

「それは…」

「由比ヶ浜さんと一色さんと話すわ」

「無理…するなよ…」

「電話してみるわ…」

「お、おう」

「その前に…。お願いがあるの…」

「なんだ?」

「私に勇気をちょうだい…」

「…!」

「…」

「お、おま、な、なにを!」

「何ってキスよ」

「な、なんなの!」

「日本語で言うと接吻よ」

「そんなこと知ってる!」

「…」

「恥ずかしいなら、するなよ」

「ちょっとだけ…、勇気が欲しかったの…。それと…」

「それと?」

「…理由が欲しかったの」

「なんのだよ」

「…キス…するのに…」

「理由なんて、いらねぇだろ。俺と雪ノ下は…、ほら…、その…、恋人同士な訳だし…」

「そ、そうね。では、もう一度…。貴方からして…」

「お、おう…」

「…」

「…」

「よ、よし!由比ヶ浜さんに電話してみるわ」

「お、おう」

 

prrrrr

「もしもし。由比ヶ浜さん?」

『ゆきのん、やっはろー!そろそろ電話が来ると思ってたんだ』

「それは…」

『ヒッキーに告白されたんでしょ?』

「え、えぇ…」

『で、返事は?』

「私も比企谷君のことが好きだから、お付き合いすることになったわ」

『そっか…。おめでとう、ゆきのん』

「由比ヶ浜さん…その…」

『それ以上は言わないで』

「由比ヶ浜さん…」

『私もヒッキーのこと好きだったけど、ゆきのんのことも好き。だから、だから…おめでとう』

「由比ヶ浜さん…ありがとう…」

『ゆきのん…泣いてるの?』

「ごめんなさい」

『大丈夫だよ。ヒッキーに抱き締めてもらって。私はいろはちゃんと残念会するよ』

「一色さんのこと、お願いね」

『うん。それと、ヒッキーも居るんでしょ?』

「ええ、今はカウンターでコーヒーを煎れてるわ」

『コーヒー屋さんに居るんだ。じゃあ、後で行くね。二人に根掘り葉掘り聞いちゃうからね』

「ええ、待ってるわ」

『じゃあ、また後でね』

「はい…」

p

 

「由比ヶ浜、なんだって?」

「貴方に抱き締めてもらえって」

「ハードル高ぇよ」

「後で事情聴取に来るそうよ」

「帰っていい?」

「ダメよ。ちゃんと向き合わないと」

「そうだな」

「ねぇ、比企谷君…」

「なんだ?」

「由比ヶ浜さん達が来る前に…その…」

「どうした?歯切れが悪いな」

「も、もう一度、その…、キスを…」

「お、おう…」

 

 



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大人たちは…

平塚静は…

 

卒業パーティーの後

コーヒーショップ

 

「彼等が卒業とは、感慨深いです」

「手のかかる子供ほど可愛いもんだからな」

「私も一安心です」

「あの、静さん。話があるんだが…」

「はい。なんでしょうか?」

「俺は株で儲けて、こんな趣味のようなコーヒーショップをやってる訳だが…。その…、出会いというのがなかなかなくて、こんな歳になっちまって…。それで、静さんがこの店に来るようになって、色んな話をしたり、夏祭りに行ったりと、とても楽しかった」

「はい…」

「それで、このチャンスを逃したら、もうないと思っている…」

「はい…」

「その、上手く言えないんだが…」

「…」

「この指輪を受け取ってもらえないか?」

「…私でいいんですか?」

「静さん。貴方がいいんだ。俺と結婚してくれ」

「…はい。謹んでお受けします」

「いやぁ、緊張した…」

「あの…。指輪をしてもらっても…」

「えぇ、もちろん」

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

父親達は…

 

卒業式から数日後

コーヒーショップ

 

「八幡君はわかってるな。うちの雪乃を選ぶとは」

「そうなのか?バカ息子は何も言ってなかったぞ」

「結衣が落ち込んでたのは、それか…」

「まぁ、縁がなかったんだよ。八幡君には、うちの会社か議員秘書に…」

「議員秘書は無理だな。アイツはコミュニケーション能力ねぇからな」

「はぁ、結衣の方が可愛いのに…」

「うちの雪乃の方が可愛いぞ」

「小町が世界一…」

「だが、所詮は高校生の恋愛だ。今から結衣の良さに気がつくかも知れないからな」

「いやいや、八幡君は優秀は人材だ。手放さんぞ」

「あのバカ息子のどこがいいんだか…」

「そんなこと言ってるから、昇進しないんだよ」

「うるせぇよ」

「しかし、子供も大きくなったなぁ」

「あと四年は面倒見ないとな」

「うちは、小町がいるから、まだかかる…」

「がんばれよ、社畜」

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

雪ノ下陽乃は…

 

卒業パーティー前

 

「沙希ちゃん、合格おめでとう」

「ありがとうございます。陽乃さんのおかげです」

「いやぁ、沙希ちゃんは飲み込みが早いから、教えがいがあったよ」

「そんな…」

「元気ないけど、どうしたの?」

「比企谷と妹さんが付き合い始めたって聞いて…」

「そっかそっかぁ、比企谷君は雪乃ちゃんを選んだんだね…」

「私は…フラれました…」

「沙希ちゃんは、ちゃんと告白する勇気があってすごいよ。私なんか…」

「もしかして、陽乃さんも…」

「そう。でも、雪乃ちゃんが比企谷君のこと好きなのはわかってたから、姉としてはね…」

「そうだったんですね…」

「でも、二人をからかうのは止めないよ」

「そのまま、奪い取っちゃいますか?」

「それは比企谷君次第かな」

「はははっ。アイツ、挙動不審になりますよ」

「そうだね。ふふふっ」




――――――――――――――――――

次回、完結予定です。



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二人のスタート

卒業パーティー後

雪ノ下雪乃のマンションの玄関

 

「じゃあ、またな」

「ひ、比企谷君…」

「ん?」

「あの…、お茶を飲んでいかない?」

「遅い時間だけど、いいのか?」

「えぇ。クッキーも焼いてあるの。だから…」

「わかった。お邪魔するよ」

「ありがとう」

 

「適当に座っていて。お茶とクッキーを用意するから」

「なんか手伝うことあるか?」

「いえ、大丈夫よ」

 

「ん、この薫り…。雪ノ下、コーヒー煎れてるのか?」

「えぇ。私も上手く出来るかと思ってね」

「雪ノ下なら、出来るだろ」

「まだ比企谷君のコーヒーには程遠いのよ…」

「そんなに、悔しそうな顔するなよ。可愛い顔が台無しだ」

「か、可愛い…」

「あ、いや、その…、なんだ、言葉の綾というか…。でも、可愛いのは事実で…」

「…嬉しい」

「お、おう…」

 

「はい、お待たせ」

「ありがとな。では…」

「どうかしら?」

「旨いな。たぶん、豆のブレンドが違うんじゃないかな。マスターに今度聞いてみよう」

「えぇ」

 

「あっ!もうこんな時間だ。そろそろお暇するよ」

「あ、あの…」

「?」

「良かったら、泊まっていかない?」

「い、いや…。マズイだろ。それに着替えもないし…」

 

prrrrr

「で、電話だぞ。出なくていいのか?」

「ちょっと失礼するわね」

 

「もしもし」

『ひゃっはろー!雪乃ちゃん!』

「姉さん。今、忙しいの。後にしてもらえるかしら」

『そんなこと言っていいのかな?』

「どういうことかしら?」

『洗面所にダンボールがあるから開けてみて』

「…これは?」

『比企谷君の着替えだよ』

「え?」

『だから、比企谷君の着替えだよ。お泊まりして欲しいんでしょ?』

「え、ええ」

『お姉ちゃんからのプレゼントだよ』

「ありがとう、姉さん」

『後で色々聞かせてね』

「そ、それは…」

『じゃあ、比企谷君によろしくね』

p

 

「雪ノ下さんからか?」

「えぇ。比企谷君の着替えは確保出来たわ」

「マジでか!」

「マジよ」

「その…、あれだ…小町とか心配するから…」

 

prrrrr

「今度は俺に電話かよ」

「どうぞ」

「すまん」

 

「もしもし」

『あ、お兄ちゃん』

「小町か。どうした?」

『今日は帰ってこなくていいから』

「え?」

『て、いうか、帰ってきても、家に入れないから』

「小町、それはどういう…」

『雪乃さんと一緒に居てあげて。あ、今の小町的に超ポイント高い♪』

「いや、でも…」

『じゃあね』

 

p

「切りやがった…」

「小町さん?」

「あぁ。帰って来るなって」

「それは…」

「完全に外堀埋められたよ。すまんが、一晩泊めてくれ」

「私から提案したのだから」

「そうか」

「お風呂、支度してくるわね」

「俺が…」

「大丈夫よ。座っていて」

 

「お風呂出来たから、先に入って」

「いや、俺は後でいいよ」

「私が入ったお湯を飲むのは衛生的に…」

「飲まねぇよ。わかった、先に入るよ」

「そうしてちょうだい」

 

「ふぅ、さっぱりしたわ」

「寝るところはどうする?俺はソファーでも…」

「ダメよ」

「じゃあ、どこに…」

「一緒に寝てくれないの?」

「ああ!もう!可愛いな、こんちくしょう!一緒に寝るよ!」

「それと、こんなモノがあるんだけど…」

「お、お前、それ…」

「京都旅行の時に、父さんが…」

「おのれ、パパのん!」

「使わないの?」

「いや、使う使わない以前に、しないからね」

「私…、魅力がないの?」

「バッカ!世界一可愛いに決まってるだろ!」

「貴方、可愛い連呼し過ぎよ」

「仕方ねぇだろ、事実なんだから。とりあえず寝るぞ」

「これは?」

「とりあえず、枕元に置いておこう」

「比企谷君」

「なんだ?」

「…好き」

「俺も好きだよ、雪ノ下」

「ふふっ」

「んだよ」

「ちゃんと、こっち向いて」

「は、恥ずかしいだろ」

「ダメ」

「はいよ。雪ノ下にはかなわないな」

「ねぇ…、キス…して」

「はいよ」

 

翌朝

「んん…」

「おはよ、雪ノ下」

「…おはよう。名前で呼んでくれないの?」

「ハードル高ぇよ」

「昨日の夜はあんなに高まって名前で呼んでくれたのに…」

「なんか言い方おかしくない?何回も呼ばされただけだよね?」

「ヘタレ」

「うるせぇ」

「そんな比企谷君も好き…」

「言ってから悶えるなよ」

「俺も好きだぞ…雪乃」

「不意打ちはズルいわよ、八幡」

「悪かったよ。んで、今日はどうするんだ?」

「比企谷君の家に行きたいわ」

「カマクラでも、モフるのか?」

「それもあるけど、ご両親に挨拶を…」

「い、いや、結婚するわけじゃないからね」

「貴方もウチの両親に挨拶するのよ」

「マジか」

「マジよ」

 

四月

 

「ほら、ネクタイが曲がってるわよ」

「ん。ありがとな。しかし、あれだな」

「なにかしら?」

「雪ノ下は何着ても似合うな」

「ありがとう。私、美少女だからら」

「知ってるよ」

「比企谷君も似合ってるわ」

「ありかとな」

「貴方に余計な虫がつかないか心配だわ」

「大丈夫だろ、雪ノ下が一緒に居れば」

「そうね」

「さあ、行くか」

「えぇ、行きましょう」




―――――――――――――――――

一応、完結です。

ifルートの希望があったので、話が練れたら書きますので、締めません。

続編の希望があれば、大学編も考えます。

長いお付き合い、ありがとうございました。


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大学編・その1

大学生になって一人暮らしを始めた。雪ノ下の親父さん…、面倒なのでパパのんと呼ぼう。パパのんの口利きで格安で一人暮らしが出来た。最初は「雪乃と同棲すれはいいじゃないか」とか言ってたけど、なんとか一人暮らしで落ち着いた。

うちのクソ親父曰く、由比ヶ浜の親父さん…。面倒だからガハパパにしよう。ネーミングセンス壊滅してるだろ俺。ガハパパが「そんなに早いうちから同棲は良くない」と言ってたらしい。そのあと小声で「結衣にもまだチャンスが」と言っていたらしい。大丈夫か?親父達よ。

それで、とある夜に雪ノ下が部屋に遊びに来て、何故か正座をさせられている俺が居る…。俺ガイル。

「つまらないこと考えてないで、質問に答えなさい」

「…はい」

「この映画のパンフレットは何かしら?」

「映画館で買ってきました」

「誰と行ったのかしら?」

「一人です」

「貴方はこの原作小説は、勿論読んだわよね」

「はい。大変面白かったです」

「そう」

「私も読んでいたのはしってるかしら?」

「本棚にあったのは知っています」

「それなら、どうして一人で行ったのかしら?」

「映画に人を誘う習慣がないので…」

「私は貴方の…」

「彼女です」

「なら、どうして誘ってくれなかったの?」

「いや、忙しいかなぁなんて思いまして…」

「…私だって、映画デートしてみたいのよ」

「え?」

「一緒に映画を観て、そのあとにお茶を飲みながら感想をお話しして…」

「ごめんなさい」

「…に連れていきなさい」

「え?」

「映画に連れて行きなさいと言ったの!」

「はい…。え?」

「比企谷君と一緒に、この映画観たいのよ…」

「雪ノ下」

「なにかしら」

「すまなかったな、気がつかなくて」

「本当よ。…それと…」

「それと?」

「パンさんの劇場版もやってるから、一緒に観てくれないかしら…」

「勿論いいぞ」

「本当!」

「あぁ、本当だ。可愛い彼女の頼みだからな」

「か、可愛いなんて…。比企谷君、ご飯は食べた?」

「いや、まだだけど」

「じゃあ、すぐに作るわね」

 

雪ノ下さん、チョロいですね。チョロのんと呼ぼう。いや、無理だな。

 

後日、二人で映画館に行き、映画を2本観た。雪ノ下がパンさんグッズを根こそぎ買っていたのには驚いた。

 

「ねぇ、比企谷君」

「なんだ?」

「映画デートって、楽しいわね」

「だな。最初から誘えば良かったな」

「本当よ。次はちゃんと誘いなさい」

「わかってるよ。雪ノ下、今からマスターを冷やかしに行かないか?」

「その表現はいただけないけど、コーヒーを飲みに行きましょう」




――――――――――――――――――

とりあえず、書いてみました。

こんなんでいいんですかね?


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大学編・その2

日曜日

コーヒーショップ

「ヒッキー!ゆきのん!やっはろー!」

「おう」

「こんにちは、由比ヶ浜さん」

「マスター、コーヒー1つ」

「坊主、手が離せないから、頼む」

「うす」

 

「ねぇねぇ、二人は大学はどう?」

「はぁ、大変よ。特に比企谷君が…。この前なんて…」

 

~回想~

 

(講義が長引いてしまったわ。比企谷君は中庭のベンチで待ってるって言ってたけど…。比企谷君のところに女の子が…)

 

「へぇ、比企谷君っていうんだね。どこ出身なの?」

「え、あの、千葉です…」

「地元なんだ。ねぇLINEのID交換しようよ」

「LINEやってなくて…」

「じゃあ、メールアドレ…」

「比企谷君、何をやっているのかしら…」

「おぉ、雪ノ下…」

「ひ、比企谷君の彼女?」

「えぇ、まあ」

「そうよ。『私』の比企谷君になにか?」

「なんでもない。じゃあね」

「助かったよ、雪ノ下」

「何を鼻の下を伸ばしていたのかしら、浮気谷君」

「鼻の下も伸ばしてないし、浮気もしてない!本を読んでたら、声をかけられただけだ」

 

~回想終わり~

 

「へぇ、そんなことがあったんだね」

「コーヒーお待たせ。何の話してたんだ?」

「ヒッキー、浮気しちゃダメだよ」

「え?何その濡れ衣」

「この前、女の子に声をかけられて、鼻の下を伸ばしてたじゃない」

「いや、急に声かけられて困ってたんだよ…」

「由比ヶ浜さんはどう?」

「サークルの勧誘とか凄いけど、断ってる。なんかヤバそうだし」

「由比ヶ浜の容姿ならモテモテだろうな」

「えへへ」

「あら、また浮気かしら。これは、調き…、教育が必要かしら」

「今、調教って言おうとしたよね?」

「仲良いね」

「いえ、その…、ごめんなさい、由比ヶ浜さん」

「違うの、ゆきのん。私とヒッキーじゃこうはならないから」

「そ、そうかしら…」

「そうだよ。二人はお似合いだよ」

「由比ヶ浜に言われると自信が持てるな」

 

「坊主!」

「はい、なんですか?」

「ゴールデンウィークはバイト頼めるか?」

「ちょっと待ってください」

「雪ノ下、いいか?」

「貴方が労働に勤しむなんて…」

「うるせぇ。デート代を稼ぐんだよ」

「そ、そう。それなら、仕方ないわね」

「マスター、OKです」

「悪いな、雪ノ下の嬢ちゃん」

「いえ、しっかり働かせてください」

「はいよ」

「マスター、ゴールデンウィークなら奥さんが手伝ってくれるんじゃないですか?」

「バカ!まだ入籍してねぇよ」

「でも、近いうちに…、ですよね」

「そうだな」

「披露宴とかは?」

「まだ考え中だ」

「楽しみですですね」

「お前ら、俺をからかってるだろ?」

「そんなことないですよ。俺の恩師と師匠が結婚するなんて、最高じゃないですか」

「ええい!うるさい!この話は終わりだ」

「うす」

 

「でも、本当に楽しみだね」

「えぇ、そうね」

「だな」

 




―――――――――

こんな、駄文でいいんでしょうか…


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大学編・その3

雪乃の部屋

 

「ふぅ、ごちそうさん」

「お粗末さまでした」

「やっぱり、雪ノ下の料理は旨いな」

「そ、そう。まあ当然よ」

「片付けは俺がやるよ」

「そう?では、お願いするわ」

 

「比企谷君、明日の講義の予定は?」

「ん?午後イチからだ」

「そう。私も午後イチからなのだけど…」

「それで?」

「えっと…、今夜はゆっくり出来るわね」

「ああ、そうだな」

「明日も多少は寝坊しても大丈夫なのよね」

「俺なら昼まで寝る」

「そうじゃなくて…」

「なんだよ…」

「これだから、ニブ谷君は…」

「なんだよ。字面がモリサマーみたいじゃねぇかよ」

「そんなことは、どうでもいいのよ」

「お、おう」

「その、今夜は…、一緒に寝てくれないかしら…」

「…今なんて?」

「えっと…『お構い無く』で合っているのかしら?」

「おう、あってる」

「そうじゃなくて…。だから、泊まっていかない?」

「えっと…、俺はソファーで寝ていいんだよな?」

「ダメよ」

「フローリングは、さすがに硬いかなぁ…」

「…だから、一緒に寝て」

「いや、あのだな…」

「ダメ?」

「だぁ、もう可愛いなコンチクショウ!寝るよ、一緒に!でも、なんにもしないからな」

「ヘタレ!弱虫!八幡!」

「八幡は悪口じゃないからね」

「八幡…。ふふふっ。はちまん」

「な、なんだよ…」

「貴方の名前、好きよ」

「雪乃だって、名前とお前の容姿がピッタリ合ってて好きだぞ」

「あ、ありがとう…」

「こ、こちらこそ…」

 

「おはよう、雪ノ下」

「おはよう、ヘタレ谷君」

「いや、覚悟とか準備が必要だから」

「だったら、いつならいいの?」

「いや、それは、あれが…」

「早く、八幡のモノにしてほしいのに…」

「ぐはっ!」

「ど、どうしたの?」

「お、俺の彼女が可愛い過ぎる…」

「か、可愛い…」

「じゃ、じゃあ、週末に俺の部屋に来るか?」

「え、えぇ、行くわ。覚悟しておくことね」

「え?俺、なにされるの?」

 

翌日 コーヒーショップ

 

「ゆきのん、講義が難しいよ~」

「ノートはしっかり取っているのかしら」

「一応…」

「はぁ、今度見せてみなさい」

「やったー!ゆきのん、大好き!」

「相変わらず、由比ヶ浜に甘いな」

「そ、それはそうでしょう、大切な、ゆ、友人なのだから」

「へいへい」

「ちょっと席を外すわね」

 

「ねえねえヒッキー」

「ん?」

「その…、ゆきのんとは…したの?」

「何をだ?」

「ほら、あの、夜の…」

「げほっげほっ!」

「うわ!ヒッキー汚い!」

「お前が急にそんなこと言うからだろう!このビッチが!」

「ビッチじゃないし!私はまだバ…、な、なんでもない」

「その…、まだだよ」

「どうして!ゆきのんのこと好きじゃないの!」

「バッカ違ぇよ!大好きだよ!」

「じゃあなんで?」

「R18タグがないから…」

「そんなメタはいらないよ。朝、雀が鳴いてて、『雪乃、昨日は良かったよ(イケボ)』って、それでいいじゃん」

「どっから、そのイケボ出したんだよ。それ俺じゃねぇだろ」

「なんの話をしてたのかしら?」

「え、これは、その…」

「ヒッキーがヘタレって話」

「お前、違うぞ。紳士なだけだからな」

「そうね。ヘタレね。でも、週末は…」

「雪ノ下!言うなよ!」

「ヒッキーも覚悟決めたんだね」

「…そうだよ」

「これで、比企谷君のもに…」

「赤い顔して何を言ってるの」

「由比ヶ浜さんには、特別に話してあげるわね」

「はぁ~。今から思いやられるわ」

 

 

 

 

 

 

 




――――――――――――――

八雪のラブラブばっかりですね。


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大学編・その4

やってきました週末。

昼前に雪ノ下を迎えに行って、外でランチ。

 

「うん、旨かった」

「そうね、この価格でこの味ならOkね」

「さて、どこか行きたいところはあるか?」

「比企谷君」

「ん」

「貴方、由比ヶ浜さんとプリクラ撮ったわよね」

「ん、ああ」

「私に内緒で」

「別に内緒にしてたわけじゃねぇよ。付き合う前の話だからな」

「…私とも撮りなさい」

「はいよ。なんか、付き合い始めてから、雪ノ下って変わったよな」

「そ、そうかしら…」

「なんつーの、可愛らしくなったというか…」

「そ、そうかしら…。可愛らしい…。可愛らしい娘は嫌い?」

「いや、大好き。大好き過ぎてお持ち帰りするまである」

「…やっぱり、今夜は…」

「お、おう…」

「うふふ、嬉しい」

「そうか…」

「さぁ、プリクラ撮りに行きましょう」

「はいよ」

 

ゲームセンター

 

「見て!比企谷君!パンさんのフレームよ!」

「そうだな」

「これよ!これにしましょう!」

「向こうには、猫の柄のフレームもあるぞ」

「ね、猫…。そちらも捨てがたいわね…。どうしましょう、比企谷君」

「雪ノ下、両方撮ろうぜ」

「い、いいのかしら…」

「いいんじゃねぇの。カップルらしいこと、沢山しようぜ」

「八幡…」

「おう…」

「大好き!」

「急に抱きつくなよ」

「いいじゃない」

 

「ほら、撮るぞ」

「比企谷君、すごい屈んでもらえないかしら」

「ん?こうか?」

「もう少し」

「これぐらいか?」

「えいっ!」

カシャッ!

「ゆ、ゆ、雪ノ下、今何を…」

「ほっぺにキスを…」

「は、は、は、恥ずかしいだろ」

「い、いいじゃない…。だって、由比ヶ浜さんが、恋人はやるって言ってたから…。ダメだったかしら…」

「そんなことないぞ」

「それに、虫除けにもなるし…」

 

「そろそろ、買い物して帰るか?」

「もうそんな時間なのね」

「そう言うなよ。今夜は一緒に居るんだろ?」

「そうね」

 

八幡の部屋

 

「ふぅ、ごちそうさん」

「お粗末さまでした」

「やっぱり、雪ノ下の作る飯は旨いな。太りそうだよ」

「運動の変わりに洗い物お願いしていいかしら?」

「任せろ」

 

「ゆ、雪ノ下、こっち来ないか?」

「え、ええ…」

「雪ノ下って、いい匂いするよな」

「そ、そんな…」

 

ピンポーン♪

 

「誰だよ」

「貴方を訪ねる人なんて居るのね…」

「新聞の勧誘かなんかだろ。無視しよ…」

 

ピンポーン♪

 

「しつこいな」

「はっ!まさか浮気!」

「ねぇよ」

「だったら、私が見てくるわ」

 

ガチャ

「はちま~ん♪遊びに…あれ、雪ノ下さん…」

「戸塚君…」

「えっとお邪魔だったかな…」

「い、いえ、大丈夫よ」

「比企谷君、戸塚君が来たわよ」

「おう、戸塚。どうした?」

「遊びに来たんだけど…、大丈夫?」

「あ、え、いや、その…」

「大丈夫よ、戸塚君」

「じゃあ、マリオパーティーやろうよ」

 

朝までマリオパーティー三昧でした。

何故?雪ノ下が勝つまでやったからです…。

 



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大学編・その5

コーヒーショップ

 

「ねぇねぇ、ゆきのん。どうだった?」

「それが…」

「ヒッキー、またヘタレたの?」

「いえ、急に戸塚君が遊びに来て…」

「彩ちゃん、泊まってったの?」

「いえ…。徹夜でゲームを…」

「へぇ、そんなに面白いゲームだったの?」

「マリオパーティーを…」

「普通じゃん」

「…」

「ゆきのん?」

「私が勝てなくて…」

「さすが、負けず嫌いノ下さん」

「比企谷君みたいな言い方やてめて」

「まぁ、ゆきのんの性格ならそうたよね…」

「で、でも、プリクラは撮ったわ」

「見せて見せて♪」

「これよ」

「うわ、ゆきのん可愛い。ヒッキー、ビックリしてるね」

「今度は三人で撮りましょう」

「私もほっぺにチューしていいの?」

「それはダメよ」

「はははっ♪」

「ふふふっ♪」

「アンタ達、楽しそうだね」

「あ、サキサキ。やっはろー」

「こんにちは、川崎さん」

「ゆきのんとヒッキーのプリクラ見てたんだよ」

「どれ…。雪ノ下、よくこんなこと出来るね」

「わ、私だって恥ずかしかったわよ」

「でも、羨ましいよね~」

「まったくだね。そういえば、比企谷は?」

「買い出しに行ってるわ」

 

「只今、帰りました」

「悪いな、坊主」

「いえいえ」

「こんにちは」

「お、鶴見のお嬢ちゃん、いらっしゃい」

「途中で一緒になったので」

 

「比企谷君、浮気かしら?」

「違ぇよ」

「そうよ、私の方が本気よ」

「おい、ルミルミ」

「面白いこと言うわね」

「貴方が、『今』の八幡の彼女ね。私が16歳になるまで、貸してあげるわ」

「あら、面白いこと言うのね。比企谷君は、ずっと私の彼氏。そして夫になる男よ」

「八幡のこと名前で呼ばないクセに。それに、名前で呼ばれてないし」

「そんなことないわよ。ベッドの上では、情熱的に呼びあってるわよ」

「嘘ではないけど、なにか違う気がする。…じゃなくて、二人ともいい加減に…」

「比企谷君は黙って!」

「八幡は黙って!」

「ヒィ!」

「由比ヶ浜、川崎、二人が怖いよ」

「バカじゃない」

「まぁ、ヒッキーだから」

 

帰り道

「雪ノ下、子供相手にムキになるなよ」

「だって…、比企谷君は年下に甘いから…」

「確かに。だが、ただの庇護欲だよ」

「本当かしら…」

「本当だよ。小町と同じ扱いだよ」

「時々、小町さんが羨ましい時があるのよ…」

「なんでだ?」

「比企谷君に頭を撫でてもらって…」

「雪ノ下も頭撫でて欲しいのか?」

「…」

「わかったよ。今度してやるよ」

「本当?」

「あぁ、本当だ。ほら、スーパー寄るんだろ?」

「比企谷君…」

「なんだ?」

「手を繋いでも…」

「ほら」

「…嬉しい」



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大学編・その6

大学内

 

(講義長くなっちまったな。雪ノ下、怒ってるんだろうな)

 

(またナンパされてるのか?ナンパ男、半ベソだぞ…。仕方ない…)

 

「悪い、遅くなった」

「本当よ。彼が話相手になってくれたから、よかったけど」

「たぶん、それ会話じゃないよね。一方的にフルボッコだよね。ほら、彼涙目だよ」

「そんなことないわよ。彼の成績とか将来の展望とか下心の有無とか色々聞いたわよ」

「んで、どうだったんだ?」

「貴方の足元にも及ばないわね」

「それは俺への評価が高いのか?彼が低いのか?」

「両方ね…。あれ?居ないわね」

「あれだけ、コテンパンなら逃げたくなるわな」

「貴方は逃げないのね」

「愛情表現の裏返しって知ってるからな」

「…そ、そう」

「すまん。言ってみたら、恥ずかしかった…」

「…その、今日はウチに来るのよね?」

「ん?そのつもりだけど」

「…夕食は何がいいかしら。うなぎ?すっぽん?自然薯?…全部かしら?」

「おい、待て。待って。待ってください」

「あら、何か問題でも?」

「問題しかねぇよ。そんなに食ったら、鼻血出すぞ。それに、食材はどう仕入れるんだよ」

「雪ノ下家の力を使えば…」

「無駄使い!そんなんに力貸してくれないだろ!」

「きっと父さんなら『孫の顔が見れる』とか言うわ」

「パパのんなら言うわ。それに、調理はどうするんだよ」

「うなぎやすっぽんぐらいさばけるわよ」

「さすが、雪ノ下…。って感心してる場合じゃねぇ。それはやめてくれ」

「そう?折角、比企谷君と熱い夜を…」

「やめて、お互い初めてでしょ」

「比企谷君がヘタレないようにしたかったのよ」

「悪かったな、ヘタレで」

「…ごめんなさい。貴方は臆病なだけね…。そして、とっても優しい…。だからでしょ?」

「うぐっ…。そうかもね…」

「それで、今夜はパスタにしようと思うのだけど」

「お、いいな」

「ニンニクたっぷりペペロンチーノとトマトたっぷりミートソース。どっちがいいかしら?」

「なにその究極の選択…」

「冗談よ」

「やめて、心臓に悪いから」

「さ、スーパーに行きましょう♪」

「へいへい」

 

雪乃の部屋

 

「ごちそうさん。ポンゴレとか家で作れるんだな」

「作れるわよ」

「一家に一人雪ノ下だな」

「…そんな、早く嫁にしたいだなんて」

「どう脳内変換した?」

「してくれないの?」

「ま、まぁ、今の予定では…、なってもらいたいです」

「…そう」

「恥ずかしいなら、言うなよ」

「か、片付けするから、先にお風呂入ってきて」

「はいよ。…覗くなよ。てか、入ってくるなよ」

「チッ」

「え?今、舌打ちした?キャラ変わってない?」

「するわけないでしょ」

「いや、今確かに…」

「してないわよね?」

「はい…。風呂入ってきます」

 

「ふぅ、いいお湯だった」

(雪ノ下の入浴シーン?ねぇよ)

「比企谷君、これを一緒に観てくれない?」

「パンさんBlu-ray。それDVD持ってなかったか?」

「Blu-rayが販売されたのに買わない選択肢はないわ」

「相変わらず、パンさんに貪欲なことで。いいよ、観ようぜ」

「貴方と観たくて…」

「そういうとこ、可愛いな」

「もう…」

 

「もうこんな時間か…」

「比企谷…」

「雪ノ下…」

「ベッド…行くか…」

「…はい」

ピンポーン♪

「誰だ?」

「イタズラかしら?」

ピンポーン♪

「ん?」

「もう!」

「とりあえず、出てみたらどうだ?」

「はぁ…」

 

「はい、どちら様ですか?」

『雪乃ちゃん、やっはろー』

「帰って」

『ちょちょちょ、入れてよぉ』

「なに?」

『終電逃しちゃって』

「タクシーで帰ったら」

『お母さんに怒られそうだから…』

「はぁ…。始発で帰ってもらうわよ」

『雪乃ちゃん、ありがとう』

 

ガチャ

「雪乃ちゃん、ありがとう」

「邪魔を…するぞ、…雪ノ下」

「平塚先生まで…。お酒と臭い…」

「いやぁ、静ちゃんのノロケ話聞いてたら…」

「こんばんは」

「比企谷君…。もしかして…」

「比企谷、君も居たのか…」

「うす」

「比企谷君は、お水を。私は布団を出すわ」

「了解」

 

「雪乃ちゃん、邪魔しちゃった?」

「まったくもって、その通りよ」

「ごめんね、埋め合わせわするから」

 

今日も邪魔されました。

 

 



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大学編・その7

「比企谷君、起きなさい」

「あと少し…」

「もう7時よ」

「まだ7時だよ」

「そんな、怠惰な生活はダメよ」

「怠惰万歳…」

『アナタ、怠惰ですねぇ』

「うおっ!」

「どうしたの?比企谷君」

「今、血色の悪いオカッパ頭がいなかったか?」

「変な夢でも見たの?」

「大丈夫だ」

「そう。朝食の準備を手伝ってくれないかしら?」

「顔洗ってくるわ」

 

「うぅぅぅ、頭痛い…」

「私も…。あれ?なんで雪乃ちゃんが居るの?」

「当たり前でしょう。私の部屋よ」

「平塚先生、雪ノ下さん、おはようございます」

「比企谷か。おはよう…。雪ノ下もおはよう」

「おはようございます、平塚先生」

「待って、昨日は静ちゃんのノロケ話を散々聞いて、気がついたら終電がなくなって…」

「とりあえず、朝食にしましょう。ちょうど、しじみがあったから、味噌汁にしたわ」

「さすが、雪ノ下。いい奥さんになるぞ」

「そんな、比企谷君の妻だなんて」

「なんか、最近は変な脳内変換が雪ノ下の中で流行ってるのか?」

「もしかして、私達は雪乃ちゃんと比企谷君の…」

「お説教は朝食の後にたっぷりするわよ、姉さん」

「雪乃ちゃんが怖い…」

 

「雪乃ちゃん、比企谷君、ごめんなさい」

「比企谷、雪ノ下、すまなかった」

「もういいですよ」

「次はないわよ」

 

コーヒーショップ

「今度は姉さんに邪魔されたのよ」

「はああ…」

「折角、覚悟を決めたのに…」

「ねぇ…、ラブホテルとかは?」

「え!いや、ハードルが高いというか…」

「ほい、コーヒーお待たせ」

「ヒッキー、ありがとう」

「ありがとう」

「んで、なんの話をしてたんた?」

「ゆきのんがラブホ行きたいって話!」

「げほっ!」

「ゆ、由比ヶ浜さん、そんなこと言ってないわ!」

「え~、行きたくないの?」

「いや、その、興味がないわけではなくて…」

「そういう由比ヶ浜は行ったことあるのか?」

「あるわけないじゃん、私まだしょ…。わ~!なんでもないし!」

「しょびっち」

「ヒッキー、マジキモい!」

「へいへい。キモい俺はラブホなんて行きませんよ」

「ね、ねぇ、比企谷君…」

「雪ノ下、まさか…」

「そこなら、邪魔されないと思うの…」

「い、いや、ハードル高いというか…」

「ダメ?」

「うぐっ。上目遣いとか…。善処します…」

「それ、やらない人だ」

「それはあれだぞ、R18タグがないとか筆者がエロ描写書けないとかそういうことではないぞ」

「…そうなんだ」

「メタ発言にツッコミなしかよ…」

「比企谷君は私にツッコミなさい」

「ゆきのん、大胆…」

「やめて、キャラ崩壊してるから」

 

 




――――――――――――――

R18タグはつくのか?そして、エロ描写は書けるのか!


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大学編・その8

ラブホ街

「なぁ、雪ノ下」

「何かしら?」

「やめないか」

「ここまで来て怖じ気づいたの」

「いや、恥ずかしいしだな…」

「私だって恥ずかしいわよ」

「知り合いに会ったら気まずいだろ?」

「貴方、知り合い居たの?」

「うっ…」

「でしょ?だったら…」

「おい、待て!」

「なによ」

「あれ、葉山と三浦じゃねぇか?」

「ちょっと遠いけど、そうなのかしら…」

「すげぇ、三浦がグイグイ引っ張ってるぞ」

「葉山君もなんか煮え切らないわね…」

「あっ、こっち見た」

「見られてるわね」

「よ、よし、雪ノ下。帰るぞ」

「何を言ってるのかしら。入るわよ。彼らより先に」

「何を対抗意識燃やしてるんだよ」

(こ、小町。お兄ちゃん大人になるよ…。)

 

「つ、遂に入ったわ」

「葉山達とほぼ同時だったな」

「見て、比企谷君。お風呂がガラス張りよ」

「丸見えじゃねぇか」

「ね、ねぇ、比企谷君」

「ま、まさか…」

「一緒に入らない?」

「い、いや、それはだな…」

「それとも、私が入浴するのをガラスの向こうで見たいの?」

「うっ!一緒に入ります…」

「そう♪」

 

「…」

「何か言ってちょうだい」

「凄い綺麗です…」

「ちゃんとこっちを見て」

「いや、見られたら恥ずかしいだろ?」

「貴方には見て欲しいのよ」

「わ、わかったよ…」

 

「ふぅ。さっぱりしたわ」

「さっぱりしなくてモンモンとしてます」

「これから、さっぱりすっきりしてくれればいいわ。朝まで時間はあるから…」

「あい…」

 

翌朝

「体、大丈夫か?」

「あんなことするなんて…。スケベ!変態!八幡!」

「『八幡』は、悪口じゃないからね。…雪ノ下だって、ノリノリだったなクセに。あんなことってなんだよ」

「言わせないでよ。R18タグついてないし、筆者がエロ描写諦めたんですから。次回作でエロ描写有りのプロットがあるらしいから、そっちに期待しないさい」

「何を言ってんだよ。さらっと、告知するな。まだ別作品も終わってないだろ」

「いいのよ、R18タグ発言連発なんだから、なんでも有りよ」

 

「ひ、比企谷君!」

「葉山達と出るタイミングも一緒かよ…」

(親指を立てながら去って行く葉山…。溶鉱炉に沈むターミネーターのようだ…。あーしさんご機嫌だな。まぁ、雪ノ下もなんだかんだ言いながら、ご機嫌ですからね)

「なぁ、雪ノ下」

「何かしら?」

「総武高の女子って、なんでこんなに強いの?雪ノ下も三浦も川崎も、校風なの?」

「失礼ね、私は強くないわよ」

「口でも、肉体的にも勝てないんですけど…」

「ベッドの上では、あんなだったのに?」

「うぐっ!」

「えっとなんていったかしら…。そう『ベッドヤクザ』」

「どこで覚えた、そんな言葉…」

「Google先生よ」

(Google先生、雪ノ下にそんな言葉教えないでください)

「ふふふっ」

「なんだよ」

「これで、私は比企谷君のモノよ」

「俺も雪ノ下のモンだよ」

「さぁ、朝食にしましょう」

「たまには、朝マックでもするか?」

「そうね。たまにはいいわね」

 



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大学編・その9

八幡の部屋

 

「あの…、なんで正座させられているんでしょうか?」

「貴方、昨日は戸塚君と遊ぶと言っていたわよね?」

「はい」

「では、何故同じ講義の娘に『彼氏が可愛い女の子と歩いてたのを見た』って言われるのかしら?」

「それはですね…」

「しかも、別の娘は『手を繋いで楽しそうだった』と言ってたわよ」

「あう…」

「どういうことかしら?」

「…小町と出かけてました」

「何故、小町さんと出かけるのにウソをつくのかしら…」

「それはですね…」

「まずは、本当に小町さんと出かけたか真偽を確かめます」

 

prrrrr

 

「小町さん?雪ノ下です」

『雪乃さん、こんにちは。どうしましたか?ウチの愚兄が何かしましたか?』

「比企谷君が私に嘘をついているんだけど、ご存知かしら?」

『あちゃ~、バレちゃったんですね』

「では、小町さんと出かけていたのは間違いないのね」

『それはもちろん』

「では、その理由を教えていただけないかしら」

『それは小町の口からは言えません。そこのゴミぃちゃんに聞いてください』

「わかったわ」

『それでは、雪乃お義姉ちゃん』

「ええ、では…。えっ!お、おね、お義姉ちゃん!」

 

p

 

「こほん。比企谷君」

「はい」

「小町さんと出かけていたのはわかりました」

「はい」

「では、その理由を聞かせてもらえるかしら」

「えっとですね…。雪ノ下と俺は付き合ってるじゃないですか」

「そうね」

「クリスマスや誕生日にプレゼントはしたけど、付き合い始めてからプレゼントってないじゃないですか」

「…そうね、ないわね」

「アクセサリーを買いたかったけど、そういう店に入るのは一人では気後れしてしまうので、小町に一緒に行ってもらいました」

「手を繋いでいたのは?」

「プレゼントを買うのを付き合わせたので、お礼にケーキを一緒に食べにいきました。そしたら、ご機嫌で『繋ぐこの手がシンフォギアだ!』と言って…。久しぶりの兄妹の外出だったので、はしゃいでいました。はい」

「そ、そう…」

「サプライズにしたかったので、嘘つきました。すいませんでした!」

「ひ、比企谷君、頭を上げてちょうだい…。私こそ、ごめんなさい」

「いや、大丈夫だ。それでだな、これを…、受け取ってくれないか?」

「あ、開けてもいいかしら」

「どうぞ」

「…ネックレス」

「雪ノ下って、あんまりアクセサリーしないだろ?だから…」

「嬉しい…」

「ごめんな、誤解を招くようなことをして」

「私こそ、ごめんなさい。疑ったりして」

「いや、仕方ないよ」

「ねぇ、比企谷君」

「ん?」

「これ、つけてくれないかしら」

「お、おう」

 

「うなじ…、綺麗だな」

「バカ…。早くつけなさい」

「はい」

「どう…かしら…」

「うん、似合ってる」

「ありがとう、比企谷君。ごめんなさい、返せるモノが…」

「いいんだ。俺が雪ノ下にプレゼントしたかったんだから」

「比企谷君…」

「なんだ?」

「大好き…」

「俺もだ、雪ノ下」

 

翌日 大学

 

「雪ノ下、彼氏の浮気はどうだったの?」

「大丈夫よ、妹さんだったのよ」

「え?でも、手を繋いでいたよ」

「ちょっと、シスコン・ブラコン気味だから」

「…そうなんだ」

「それでね、彼がアクセサリーショップに一人で入るのは気後れするから、妹さんに付き合ってもらったらしいのよ」

「それで、プレゼントしてもらったのが、そのネックレスなんだ」

「えぇ。どうかしら?」

「とってもいいよ。良かったね」

「ええ」

 

 




―――――――――――――

八雪のノロケばっかりだ…


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大学編・その10

ゴールデンウィーク。それは、映画業界から発生した言葉で…。

 

「ねぇ、比企谷君」

「なんだよ、今は絶賛モノローグ中なんだが」

「今日からバイトでしょ?早く起きなさい。朝御飯、出来てるわよ」

「ありがとうございます。昨日、お泊まりした雪ノ下」

「あ、改めて言わないで…」

「わかったよ。昨晩イチャイチャした雪ノ下」

「…バカ!」

 

「じゃあ、行ってくる。鍵は…」

「後で様子を見に行くから、その時に返すわ」

「あ~。今度、合鍵作って渡すわ」

「え、えぇ、ありがとう…」

「それじゃあ、また後で」

「いってらっしゃい」

 

コーヒーショップ

 

「坊主、今日から頼む」

「うっす」

 

「いらっしゃいませ」

「あ~、比企谷君だぁ」

「城廻先輩、いらっしゃい」

「またバイトしてるんだね」

「えぇ、まぁ」

「コーヒー、お願いね」

「うっす」

 

「お待たせしました」

「ありがと~」

「今日は一人なんですか?」

「ここで、待ち合わせしてるんだ」

「そうなんスね」

「比企谷君は、雪ノ下さんと付き合ってるって本当?」

「語弊がないように言うなら、妹の方ですけどね」

「残念だなぁ」

「?」

「比企谷君が大学に入ったら、お付き合いしてもらおうとおもったのに~」

「どこへですか?」

「違うよぉ~。男女交際だよ~」

「え?マジですか?」

「マジだよ」

「え、ええと…。なんか、すいません」

「大丈夫だよぉ。比企谷君は気にしないで」

「は、はぁ…」

 

しばらくして、城廻先輩の友達が来店。コーヒーを飲みながら女子トーク。

 

12時前になると、雪ノ下が来た。

「いらっしゃい」

「ちゃんと働いているようね」

「まあな」

「そんな、比企谷君にはごほうびよ。はい、お弁当」

「さんきゅー」

すると、城廻先輩の友達の一人が駆け寄って来た。

「君はなんで、その娘からお弁当を受け取ってるのかな?」

「え?あ、えっと、彼女なんで…」

「君はめぐりと付き合っているんじゃないの?」

「え?」

「比企谷君、二股とはどういうことかしら?」

「まて雪ノ下!俺は雪ノ下としか付き合ってない!何かの間違いだ!」

「だったら、あの写真はなんだったの?」

「写真?」

「そう。ツーショットの」

「城廻先輩?」

「…はい」

「もしかして、あの『男避け』の写真まだ使ってるんですか?」

「えへへ。ごめんね、比企谷君」

「はぁ…。そういう訳です」

「めぐり~!!」

 

「雪ノ下も、納得したか?」

「以前、そんなことがあったわね。今回は不問にします」

「ありがとよ」

「そ、その代わりに…」

「ん?」

「ま、また一緒に写真を…」

「ああ、いいよ」

 

 

 

 




――――――――――――――

伏線回収…。


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大学編・その11

ゴールデンウィーク初日の夜

雪乃の部屋

 

「なぁ、これ着なきゃダメか?」

「貴方の為に買ったのだから」

「どう考えても俺じゃなくて、雪ノ下の為だよな、このパンさんなりきりパジャマは」

「そ、そんなことないわ。パンさんを着た比企谷君が見たいだとか…」

「欲望だだ漏れだぞ」

「…だって」

「わかったよ、着るよ。その代わりイチャイチャは無しだな」

「ど、どうして…。やっぱり胸が…」

「胸は関係ないからね。むしろスレンダーで好きだぞ」

「なら、どうして…」

「このパジャマ、ツナギタイプだから、脱いだり着たりが大変だろ?」

「それは考えてなかったわ」

「おい!」

「どうしましょう…。お揃いのパンさんパジャマは着たいけど、イチャイチャ出来ないのは…」

「あ、自分の分もあるのね」

「究極の選択ね…」

「そんなに悩ましいのか?」

「ええ、当然よ」

「こうしよう。パンさんは部屋着にして、寝る時はいつものスエットで」

「比企谷君…」

「なんだよ」

「貴方、天才なの?」

「雪ノ下が冷静になれてないだけだ」

「これで、問題は解決できたわ」

「とりあえず、着てみるか…」

「着替え終わったら言って。見ないようにするから」

「おう」

 

「雪ノ下、いいぞ」

「…」

「雪ノ下?」

「パンさ~ん!!!」

「うぐっ!」

「パンさんパンさんパンさん」

「まさか、雪ノ下からスピアを受ける日が来るとは…がふっ」

「…比企谷君?」

「…」

「比企谷君、どうしたの?」

「…」

「寝てしまったのね。仕方のないひと」

 

「…ん。俺はどうしたんだ?雪ノ下にタックルされて…。おい、雪ノ下。起きろ」

「どうしたの?比企谷パンさん八幡…」

「間にパンさんを挟むな。こんなとこで寝てないで、ベッド行こうぜ」

「先に寝たのは貴方なのに」

「雪ノ下のタックルで気絶してたんだよ」

「返事がないから、屍かと思ったわよ」

「勝手に殺すな」

「私を残して死んだらダメよ」

「簡単に死なないよ。それに、俺はゾンビなんだろ?」

「そんなことないわ。貴方は大事な彼氏よ」

「くすぐったいこと言うなよ。ほら、ベッド行くぞ」

「…こ」

「ん?」

「ダッコして…」

「ダッコって、お前…」

「お姫様抱っこして」

「わかったよ、雪乃姫」

「お願いね、八幡王子」

 

 

「比企谷君、起きて。朝よ」

「おはよう、雪ノ下。あんだけしたのに、よく早起き出来るな」

「本当にしたのかしら?」

「しただろうが」

「改行だけですまされてるから、よくわからないわ」

「メタ発言はやめなさい」

「そんなことり、今日もバイトでしょ?」

「よし、起きるか」

 

コーヒーショップ

「うっす」

「今日も頼むぞ」

 

 



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大学編・その12

ゴールデンウィーク2日目

コーヒーショップ

昼前

 

「こんにちは」

「やっはろー」

「雪ノ下、由比ヶ浜、いらっしゃい…。適当に座っててくれ…」

「…満席ね」

「そうだね」

「悪い、呼ばれてる。はい、只今伺います!」

「お嬢ちゃん方、悪いな。急に客が増えてな」

「しかも、女の子ばっかり…」

「ゆきのん、これってヒッキーが…」

「恐らくは…」

「ゆきのん、手伝おうよ」

「え、ええ、そうね。マスター、手伝います」

「すまない、助かる。奥にウエイトレスの制服が何着かあったはずだから、適当に着てくれ!」

「わかりました!」

 

数分後

 

「おい、雪ノ下も由比ヶ浜も…」

「比企谷君、手伝うわ」

「ヒッキー!私も!」

「いや、しかし…」

「いい加減、貴方も人を頼りなさい」

「そうだよ!」

「…そうだな。すまんが、頼む」

 

「せんぱ~い。可愛い後輩が…、て、なんですか、満席じゃないですか!」

「悪い、一色。お前にかまってる暇はない」

「一色さん、ちゃんと順番待ちをしてくれるかしら」

「いろはちゃん、やっはろー」

「坊主!コーヒー出してくれ」

「はい!」

「テーブル片付きました」

「次にお待ちの方、どうぞ」

「わ、わ、わ、どうして…」

「あぁ、面倒くせぇな。一色!立ってるなら、手伝え!」

「で、でも…」

「ショートの嬢ちゃん、暇なら手伝ってくれ」

「わ、わかりました!」

 

夕方

「坊主、closedにしてくれ」

「了解です」

「ありがとな、嬢ちゃん達」

「い、いえ…」

「お客さん、すごかったね」

「先輩、ヒドイです」

「悪かったよ」

「じゃあ、お詫びにデートしてください」

「あ、バカ…」

「一色さん…。何を言ってるのかしら?」

「じょ、冗談ですよ…、ははは」

「いろはちゃん相手でも、容赦ないね、ゆきのん…」

「マスター、厨房お借りします」

「お、おう、かまわないが?」

「一色さんも、手伝ってもらえるかしら」

「雪ノ下先輩、何をするんですか?」

「本当は、お昼にしようかと思っていたんだけど、パンケーキを焼こうと思うの」

「いいですね、手伝います」

「雪ノ下、何か手伝うことはあるか?」

「そうね…。コーヒーを煎れてもらえるかしら」

「任せろ」

 

「パンケーキ旨いな。さすが、雪ノ下」

「そ、そうかしら」

「先輩、私も作りましたよ~」

「はい、あざといあざとい」

「も~!あざとくないです!」

「ゆきのん、私にも出来るかな?」

「今度、一緒に作りましょう」

「わ~い」

「嬢ちゃん達、ありがとな。今日のバイト代だ」

「そ、そんな…」

「いいんだ、俺の気持ちだ」

「ありがとうございます」

「あ、あのマスター…」

「どうした?」

「明日もお手伝いしても…」

「俺はありがたいが…」

「雪ノ下、いいのか?」

「ええ」

「それなら、頼む」

「はい、よろしくお願いします」

「私もやりたいけど、明日は優美子達と出かけるからな…。私も明後日とかいいですか?」

「勿論だ」

「やった~!ゆきのんとヒッキーとバイトだ」

「私は、家族旅行なんです…」

「ショートの嬢ちゃんもありがとな。気持ちだけで充分だ」

「雪ノ下、明日からも頼むな」

「任せて。貴方に悪い虫がつかないようにするわ」

「?」

「やっぱり、ヒッキーは鈍感系だね」

「ですね」



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大学編・その13

ゴールデンウィーク3日目

 

今日もコーヒーショップは大繁盛。

 

「昨日より客が増えてないか?」

「文句言わない!ほら、持って行って」

「はいよ。そっち、注文頼むな」

「わかったわ」

 

「なぁ、雪ノ下」

「なにかしら?」

「昨日より、男性客が増えてないか?」

「そうね。何故かしら?」

「まぁ、昨日のウエイトレスが噂になったんじゃねぇのか」

「そうね。私、可愛いから」

「彼氏の身にもなってくれ」

「それよりも、全般的に女性客が多いのだから、彼女の身になりなさい」

「大丈夫だよ。俺目当てってことはないだろ」

「バカ、ボケナス、鈍感、八幡」

「八幡、悪口じゃないからね。あと、敏感だからね。周囲の視線に敏感過ぎて、気配を消すまである」

「まったく、貴方は…」

「お二人さん、コーヒー出来たぞ。運んでくれ」

「うっす」

「わかりました」

 

「こんにちは」

「川崎、悪い。今、満席だ」

「忙しそうだけど、手伝おうか?」

「マスター!川崎が手伝ってくれるそうですが、どうしますか?」

「助かる。奥に服があるから、適当に着替えてくれ。バイト代はハズむぞ」

「わかりました」

 

「…」

「…」

「どうしたの?二人して、こっち見て」

「いや、接客上手いと思ってな」

「そうね。昔とった杵柄かしらね」

「そういやそうか。な、元・バーテンダー」

「やめてよ」

「ポニテの嬢ちゃんはシェイカー振れるのか?」

「えぇ、一応」

「バイト代増やすから、今度頼めるか?」

「でも…」

「閉店後の個人的な頼みだ」

「そういうことなら」

「俺にも二十歳になったら、頼む」

「川崎さん、私もいいかしら?」

「はいよ」

 

「店閉めるぞ」

「今日も忙しかったぁ。雪ノ下、川崎、ありがとな」

「私は楽しかったわ」

「私もかな」

「明日は、また男性客が増えるな」

「そうね」

「比企谷、雪ノ下、どういうこと?」

「川崎目当ての客が来るってことだよ」

 

「マスター、厨房お借りします」

「また、なにか作ってくれるのかい?」

「ええ」

 

「お待たせしました。今日はフレンチトーストよ」

「いたたまきます」

 

「旨いな。さすが雪ノ下」

「さすが嬢ちゃんだな」

「雪ノ下、今度教えてよ。けーちゃんにも作ってあげたいから」

「えぇ、いいわよ」

「さすがシスコン」

「殴るよ」

「ごめんなさい」

「由比ヶ浜さんにも、パンケーキの作り方教える約束しているから、3人で作りましょう」

「なあ、雪ノ下。小町も入れてやってくれ」

「アンタもシスコンじゃないか」

「うっせえ」

 

「マスター、挽いた豆少し貰います」

「おう、持ってけ」

「比企谷君、それは?」

「俺ん家用、誰かさんが来てくれるから、減りが早くてな」

「そう。じゃあ、帰りに紅茶を買いに行くの付き合ってもらおうかしら。誰かさんがよく来るから、減りが早いから」

「はいはい」

 

 




―――――――――――――――


お邪魔キャラの構想がまとまってきました。
ゴールデンウィーク編の後に登場させます。


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大学編・その14

ゴールデンウィーク4日目

 

「へぇ、昨日はサキサキが手伝ってくれたんだね」

「アイツ、すげぇわ」

「そうね。彼女の営業スマイルに何人の男性客が心奪われたか」

「ほぇ~。さすがサキサキ」

「川崎だけじゃねぇよ。俺が男性客を接客したら、舌打ちされたぞ」

「それは私もよ。女性客はあからさまに睨んできたわ」

「でも、ゆきのんは負けてないよね」

「そうね。笑顔で答えたわ」

「絶対、その笑顔は怖いよ」

「店開けるぞ」

「うっす」

「はい」

「は~い」

 

「なぁ、雪ノ下」

「なにかしら?」

「昨日、川崎もすげぇと思ったが、由比ヶ浜もすげぇな」

「そうね」

「さすが、元・奉仕部のコミュニケーション担当だな」

「あのお客さん、デレデレしちゃって…。比企谷君みたい」

「してねぇよ。してないよね?」

「さぁ、どうなのかしら」

 

「よし、店閉めるぞ」

「うっす」

「明日は休みにするからな」

「どうかしたんですか?」

「あ、明日はだな。その…」

「了解しました」

「わかりました」

「比企谷君、由比ヶ浜さん、どういうことかしら」

「ほら、ゆきのん…」

「由比ヶ浜、雪ノ下に察しろっていうのは無理だ」

「貴方には言われたくないわね。それで、鈍感谷君、どういう理由なのかしら?」

「久しぶりに聞いたわ。まぁ、マスターは平塚先生とデートなんだよ」

「あ、いえ、その…、オシアワセニ

…」

「雪ノ下、大丈夫か?」

「まだ、ゆきのんは耐性が出来てないんだね」

 

「んじゃ、お疲れ」

「ゆきのん、ヒッキー、バイバイ♪」

「またね、由比ヶ浜さん」

 

「比企谷君、今日はどうするのかしら?」

「悪い、雪ノ下。俺は実家の留守番頼まれてるんだ」

「そう…」

「あ~、雪ノ下」

「…なにかしら?」

「カマクラも留守番してるはずだから、来るか?」

「…カマクラさん。…猫。何してるの比企谷君、早く行くわよ!」

「おい、スイッチの切り替え早ぇよ。それに実家は逆方向だ」

「そ、そうね…」

「その前に、部屋に寄って着替えもっていかないとな。雪ノ下はどうする?泊まるか?」

「比企谷君の実家にお泊まり…。カマクラさんとお泊まり…。えぇ、そうするわ」

「思考回路大丈夫か?」

「大丈夫よ」

「着替え持って、食材買って行くか」

「夕食は何がいいかしら?」

「雪ノ下が作るモンはなんでも旨いからな」

「そ、そう…」

「今さら照れるなよ」

「好きな人に誉められるのは、嬉しいのよ」

「お、おう…。そうか」

「貴方だって、照れてるじゃない」

「まだ耐性が不十分なんだよ」

「夜は、あんなに獣みたいになるクセに」

「そんなこと言うと、今夜も獣になるぞ」

「あの…」

「ん?」

「…優しくして」

「…はい」

 

 




―――――――――――――――

…リア充、爆発しろ


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大学編・その15

帰ってきました、我が実家

 

「ただいま~って、誰も居ないんだけどな。まぁ、入れよ」

「お邪魔…します」

ニャ~

「おう、カマクラ。元気だったか?」

ニャ~ン

「お久しぶりね、カマクラさん」

「相変わらず、『さん』づけなんだな」

ニャ?

「先にカマクラのエサの準備するか」

「比企谷君」

「なんだ?」

「私があげても…」

「おう、そうしてくれるか?」

「カマクラさん、ご飯よ」

ニャ~ン♪

「とりあえず、食材は冷蔵庫に入れたぞ」

「ありがとう」

「コーヒー飲むか?」

「いただくわ。ご家族はどこに行ったのかしら?」

「ん?聞いてないな。一泊旅行としか…」

「まったく、貴方ってひとは…」

「い、いや、誘われたんだが、その…、雪ノ下といたいから…」

「そ、そう…なのね…」

ニャ?

「なんでもないわ、カマクラさん」

 

 

「ふ~、いいお湯だったわ」

「じゃあ、俺も風呂行くわ。カマクラをモフッててくれ」

「行ってらっしゃい」

 

「ふ~。あったけぇ…」

「比企谷君、入るわよ」

「えっ!なに?どういうこと?」

「貴方が油断した、この時を待っていたのよ」

「いや、雪ノ下!おかしいだろ!もう風呂入っただろ!」

「貴方と入りたかったのに、頑なに拒否するから、隙をうかがってたのよ」

「…雪ノ下、大胆になったな…」

「だって…。私だって…」

「あぁ、俺の負けだ」

「貴方が私に勝てると思っていたの?」

「はいはい」

 

「さて、寝るか。電気消すぞ」

「えぇ」

「おやすみなさい…。て、本当に寝てしまうの?」

「寝れる訳ないだろ。風呂で我慢してたんだから」

 

 

「おはよ、雪ノ下」

「おはようじゃないわよ。もう10時よ」

「いや、昨日のアレで早起きは無理だわ」

「アレって、なにかしら?」

「言わせるな。言ったら言ったで悶えるクセに」

「し、仕方ないでしょ」

「へいへい」

「ご家族は何時ぐらいに戻るのかしら?」

「3時ぐらいじゃねぇの」

「そう。カマクラさん、いらっしゃい」

ニャ~ン♪

「俺よりなついてるな」

 

「…なんで隣に座るんだよ。広く使えよ」

「嫌よ。それとも、愛しの彼女が隣に居るのが嫌なの?」

「言い方がズルい」

「そんなことないわよね、カマクラさん」

ニャ~♪

「俺は、これ読んでるから、カマクラモフッててくれ」

「そのつもりよ」

 

「雪ノ下?」

「…」

「寝ちまったか。仕方ねぇな。俺も眠いし…」

 

カシャッ カシャッ

「…ん?」

カシャッ

「おい、小町に母親。何をしている」

「あ、お兄ちゃん。おはよう」

「おはよう。んで、おかえり…。何やってるんだ?」

「お兄ちゃんと雪乃さんのツーショット写真を撮ってる」

「オカンまで…。小町を止めてくれよ」

「仕方ないじゃない。雪乃ちゃん、美人なんだから」

「…ん」

「お、起きたか?」

「…八幡。おはようのチューは?」

「おい!起きろ!そんなことしたら大変なことになるぞ」

「…。こ、小町ちゃん!お義母様!お、お帰りなさい!」

「雪乃ちゃん、可愛い寝顔だったわよ」

「お、お義母様…」

「およ?雪乃さん、虫刺されですか?首筋に…」

「あ、バカ!」

「ひ、比企谷君…」

「はい」

「いつの間に…」

「ごめんなさい」

 

「そ、そういえば、親父は?」

「雪ノ下さんと由比ヶ浜さんと3人で飲みに行ったわよ」

「あっそ」

「雪乃ちゃん、夕御飯を作ってもらっていい?」

「え、えぇ。いいですけど…」

「八幡たら、『雪ノ下の料理は最高だ』って、言ってるから、食べてみたくて」

「比企谷君」

「はい」

「さっきのことは不問にします」

「有り難き幸せ」

 



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大学編・その16

ゴールデンウィークも終わり、いつもの大学生活に戻る。

 

講義の合間は、偶然見つけたベストプレイスで小説を読んでいる。たまに、雪ノ下が迎えに来たり、ここで弁当を食ったりしている。

 

でも、そんな場所に来訪者が…。

 

「貴方、いつもここで読書をしていらっしゃるのね」

「あん?」

見目麗しい金髪縦ロールに青い瞳。三浦とは違う本物のブロンド…。

「時々、お見かけしていましたの」

「そうか。占有権を主張するつもりは無いから、邪魔なら退くが?」

「いえ、その姿が凛々しかったので」

「そんなことないな。目は腐ってるし」

「そんなことありませんわ。素敵な瞳です」

「そんなこと言われたことないな」

「また声をお掛けしても、よろしいでしょうか?」

「ま、かまわんが」

「ありがとうございます。わたくし、一年の綾瀬文子(あやせあやこ)と申します」

「一年の比企谷八幡だ」

「比企谷八幡様…。素敵なお名前ですね」

「そうか?」

「ええ、とっても。今日は予定がありますので、これで失礼いたします。ごきげんよう」

「あぁ、ごきげんよう」

 

ま、どうせ来ないだろうと思い、また読書を続ける…。

 

「比企谷君」

「おう、終わったのか?」

「ええ…。何かいい香りがするのだけど…」

「おう、なんか知らない女性に話しかけられた」

「私が居ないと…」

「いや、ここはほとんど人来ないんだけどな。なんでだろう?」

「きっと、比企谷菌のセイね」

「さらっと、菌扱いやめてくれない」

 

数日後

 

一人でベストプレイスで、いつものように読書をしていると…。

「良かった。今日はいらっしゃったのですね、比企谷様」

「比企谷様っ!おいおい、やめてくれ」

「では、なんとお呼びすれば…」

「普通に名字呼び捨てでいい」

「いえ、殿方にそれは失礼かと…」

「だったら、『君』とか『さん』でいいんじゃねぇの、知らんけど」

「では、比企谷さん…」

「おう…、えっと…」

「綾瀬です。綾瀬文子」

「すまん、綾瀬さん。んで、どうしたんだ」

「その…、比企谷様…、比企谷さんと仲良くなりたいと思いまして…」

「ほ~ん、俺と仲良くなっても、面白くねぇぞ」

「そんなことはございません。その…なんというか…」

「?まぁ、話相手ぐらいなら」

「まぁ。ありがとうございます」

 

しばらく綾瀬さんと話をした。ハーフで帰国子女らしい。イイトコのお嬢様だな。

「あら、もうこんな時間」

「やば!俺も講義だ」

「では、比企谷さん、ごきげんよう」

「おう、じゃあな」

 

「比企谷君…、今の女性は…」

「おう、雪ノ下。講義行かないと」

「今の女性の名前は!?」

「ど、どうした?」

「何をしたの、彼女と!」

「いや、世間話だか…。浮気とかじゃないからな」

「彼女、名乗ったの?」

「おう。たしか、綾瀬…文子?だったかな?」

「そう…。帰って来てたのね…」

「知り合いか?」

「比企谷君、『綾瀬興業』は知ってるわよね?」

「おう、雪ノ下建設と肩を並べる…、て、おい、まさか!」

「その、まさかよ。綾瀬興業の令嬢よ」

「マジかよ…。ヤバそうなヤツに捕まっちまったな」

「比企谷君、ベストプレイスは使用禁止よ」

「…わかった」

「…八幡は渡さないわ」

 




――――――――――――

お待ちかね(?)オリジナルでお邪魔なキャラ登場!


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大学編・その17

数日間のコーヒーショップ

アルバイト継続中…。

 

「おい坊主、綾瀬興業っていったら『北の雪ノ下・南の綾瀬』の、あの綾瀬だろ」

「そうなんスよ。なんで俺に絡んできたのか…」

「お、客が来たぞ」

 

「いらっしゃいませ」

「やぁ、比企谷」

「…」

「あれ?比企谷?」

「マスター、ぶぶ漬けお願いします」

「ヒドイじゃないか」

「なんだよ、葉山。何しに来た」

「俺だって、評判のコーヒー屋ぐらいは来るさ」

「お前は来たことあるだろ」

「冗談だよ。優美子と待ち合わせだ」

「お前、変なこと思いださせるな」

「あ!…、す、すまん」

「な、気まずいだろ」

 

「はいよ、コーヒー」

「ありがとう」

「そのキラキラスマイルはどうにかならんのか?」

「なんのことだい?」

「もういい…。それと、葉山は綾瀬文子って知ってるか?」

「あぁ、パーティーで何度か会ったかな」

「どんなヤツだ?」

「天然の小悪魔…かな?」

「なんだそれ?」

「本人に、その気がないのに、周りを引っ掻きまわす」

「なにそれ怖い」

「でも、海外留学中じゃなかったかな?」

「よく知ってるな。だが、帰ってきてる。しかも、ウチの大学に」

「会ったのか?」

「あぁ、向こうから声をかけてきた」

「気をつけろよ」

「気をつけようがないんだが…」

「あはは…」

 

「お邪魔するわ」

「おう、雪ノ下。いらっしゃい」

「やぁ、雪ノ下さん」

「…」

「あ、あれ?」

「マスター、この男にぶぶ漬けを」

「二人ともヒドイな…」

 

「と、まぁ、葉山に綾瀬さんの話を聞いていたんだ」

「なるほどね」

「雪ノ下さんも、あのタイプは苦手だろ?」

「そうね。悪意なくまわりを引っ掻きまわすタイプね」

「葉山と同じ感想なんだな」

「あら、そう。遺憾ながらそうね、遺憾ながら」

「雪ノ下さん、なんで二回言ったの?」

「大事なことだからよ」

「イメージとしては、雪ノ下さんと一色を足して二で割った感じか?」

「そんな感じかしら」

「超怖いし苦手なんですけど…」

 

「隼人~♪」

「やぁ、優美子」

「雪ノ下さんも居たんだ。この前はどうも」

「三浦さん、こんにちは。先日は挨拶もせず、すいませんでした」

「あのタイミングで挨拶するって、どんな強心臓だよ」

「まったくだよ…。優美子も雪ノ下さんも…」

 

「んで、またヒキオのモテ話なの?」

「ちげぇよ!」

「まったくよ。三浦さんからも何か言ってくれないかしら」

「おい、雪ノ下」

「まぁ、ヒキオも天然だからね」

「比企谷の場合は、鈍感と言った方がいいかな」

「バッカ。俺は敏感だぞ。敏感過ぎて、空気読んで俺が空気になるまである」

「貴方ってひとは…」

「んだよ」

「まぁ、いいわ。綾瀬さんには充分に気をつけてちょうだい」

「わかってるよ。雪ノ下、ちょっと耳貸せ」

「なにかしら?」

「俺はお前だけ見てるから大丈夫だ」

「!!!…バカ」

「?」

「雪ノ下さん、顔真っ赤だけど、大丈夫?」

「ええ、大丈夫よ。比企谷君がズルいだけだから」



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大学編・その18

今までのベストプレイスを諦め、探しだした、新ベストプレイスで読書…。俺超クール…、んな訳ないか。

誰にも邪魔されない、心地好い時間。邪魔していいのは、雪ノ下だけ。ゆきのん超好き。…、自分で思ってもキモイ。

 

「あら?比企谷様…、比企谷さん、こちらにいらしたのですか」

見つかった…。見つかってはいけない人に見つかった。

「もう、『様』でも『さん』でもどっちでもいいぞ、綾瀬さん」

「では、比企谷様で」

「んで、何か用でも?」

「いえ、比企谷様とお話ししたかったので…」

「俺と話をしても面白くないと思うがな」

しばらく、綾瀬さんが話し俺が相づちを打つ、そんなことが続いた。

「あの、比企谷様」

「ん?」

「比企谷様は、私の容姿のことを聞かないんですね」

「なんだ? 誉めてほしいのか?」

「いえ、あの、金髪で青い瞳だと、色々と聞かれる方が多いので」

「まぁ、そんだけ美人なら男からはチヤホヤされて女からは嫉妬されるだろうな。それに大企業の令嬢だったら尚更だ」

「…ご存知だったんですね」

「一見、恵まれてるように見えるが、大変なんだろ?」

「…はい」

「下を向くなよ。美人が台無しだ」

「ひ、比企谷様!」

やべぇ、お兄ちゃんスキルで頭撫でてしまった!

「す、すまん」

「い、いえ、大丈夫です。なにより、頭を撫でられるなんて、久しくなかったので、嬉しかったです」

「そ、そうか」

「はい」

「そ、それでだな。俺の身近にも似た境遇のヤツが居るんだがな…」

「…比企谷君」

「ひぃ!」

「あらぁ、雪乃さん。ごきげんよう」

「文子さん、こんにちは」

「脅かすなよ、雪ノ下」

「それで、文子さんは『私の』比企谷君に、何かご用かしら?」

「私の?」

「私の恋人の比企谷君に何かご用?」

「まぁ、雪乃さんの恋人だったんですね」

「まぁな」

「素敵ですね。私も比企谷様の様な恋人が欲しいです」

「文子さんも、見る目があるわね。でも、彼は渡さないわよ」

「そうですか。それは残念です」

「悪いな」

「では、私も恋人にしてくださいまし」

「へ?」

「は?」

「私と雪乃さん。二人の恋人というのはどうでしょうか?」

「イヤイヤイヤ。オカシイよ。倫理君的にオカシイからね」

「文子さん、何を言ってるの!彼は私だけの恋人よ」

「でも、父のご友人は何人も恋人がいらっしゃいますわよ」

「そ、それは…」

「ですから、よろしいですよね?比企谷様」

「い、いや、それはだな…。ゆ、雪ノ下、助けてくれ」

「と、とにかく、ダメなものはダメよ!」

 

その後、講義の時間になり、逃げるようにその場を後にした…。



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大学編・その19

大学内・図書館

 

たまには、こういう所で読書もいいだろう…。

 

………

……

 

「うおっ!」

「図書館では静かにしないさい」

「突然、隣に居たら驚くわ」

「貴方、集中していて全然気がつかないんですもの…」

「そりゃ、悪かったな」

「もうお昼よ」

「じゃあ、飯にするか」

「そうね。どこがいいかしら」

「中庭でいいんじゃねぇの」

 

中庭

「ここの木陰が気持ちいいんだよ」

「なかなか良い場所ね」

「ベストプレイス候補なんだが…」

「けっこう、人が結構居るわね」

 

………

……

 

「ふぅ、ごちそうさま。相変わらず旨いよ」

「ふふっ、良かったわ。貴方、午後はどうするのかしら?」

「休講になったからなぁ。少しここで休んでから、バイトに行くよ」

「そう。夕方にはお店に顔を出すから」

「はいよ」

「では、私は行くわね」

「おう、いってらっしゃい」

「貴方もがんばってね」

 

(少し昼寝でもするか)

………

……

 

(…膝枕されてる?)

「ん?雪ノ下か?」

「目が覚めましたか、比企谷様」

「比企谷…様?…うをっ!」

「?どうかなさいましたか?」

「な、ななななななんで綾瀬さんが膝枕を!」

「比企谷様が気持ち良さそうに寝ていたので、つい…」

「いや、ダメだからね、そんなことしちゃ」

「ダメなんですか?」

「い、いや、そんな悲しそうな顔をされても…」

「では、どうすればよろしいでしょうか?」

「彼氏見つけて、してあげればいいと思うが」

「では、比企谷様!」

「いや、俺は違うからね」

「私も恋人と認めてくだされば、問題ないですね」

「どうして、そういう思考になっちゃうの!」

「良いではありませんか」

「いやいやいや…。あっ!バイトの時間だ!じゃあな」

「あ!比企谷様~」

 

 

コーヒーショップ

 

「ほぇ~。ゆきのんに挑む強者が居たんだね」

「参ったよ…。そのご令嬢にも…」

「どんな感じなの?ハーフらしんだがな、金髪で青い瞳…。セシリアか、ボーゼスか…」

「よくわからないよ」

「まぁ、奔放で参ってるよ」

「そ、それなら、私もヒッキーの恋人にしてほしいな」

「何言ってるの、由比ヶ浜!」

「えぇ~、一人増えるのも二人増えるのも一緒だよ」

「いやいやいや、ハーレムルートとかいらないからね」

 

「雪ノ下、いらっし…ひぃ!」

「ゆきのん、やっは…ひぃ!」

「比企谷君…」

「はひっ!」

「文子さんに膝枕されてたって、どういうことかしら?」

「ヒッキー、そんなことしてたの!じゃあ、私も…」

「由比ヶ浜さん…」

「ひぃ!」

「あ、あれは寝てる間に綾瀬さんが勝手に…」

「問答無用!!」

「ぎゃ~!」

 

この後メチャクチャ土下座した。




――――――――――――――――――

関係ないけど、冴え彼女の育てかたFINE良かったです。


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特別編3

久しぶりのクロスオーバーです。


とある日曜日。

材木座に、サバゲで欠員が出たので参加してくれと頼まれた。

たまにはいいだろう。雪ノ下も由比ヶ浜と買い物と言ってたしな。

「う~す」

「待ちかねたぞ、我が盟友よ」

「うぜぇ」

「八幡、銃はあったか?」

「実家探したけど、コスモドラグーンしかなかった」

「な、何故そんなレア物が…」

「知らね。親父のコレクションだ」

「ならば、こんなこともあろうかと…」

「あっ!テメェ言ってみたいセリフを!」

「ふっ。我のM-16を使え」

「あいよ。相手は女も居るのか?」

「どうやら、そうらしい。だが、かなりの手練れと聞いている」

「ふ~ん。ま、関係ないか。早く死ぬか最後まで残るかだからな」

「おぬし、最後まで残るつもりか!」

「ステルスヒッキーは伊達じゃない」

「言ってみたいセリフ!ズルいぞ八幡!」

「ふっ」

 

ゲームは、半ば予想通りにこっちは俺が残り、相手は女一人…。

 

最後の勝負…。

 

「いやぁ~。参ったであります」

「アンタもなかなかだったよ」

「本当に初心者でありますか?」

「まぁね。目立たないことには自信があるからな」

「いずれ、また戦いましょう」

「機会があったらな。俺は比企谷八幡だ」

「比企谷殿ですね、自分は大和亜季であります。では、失礼します」

 

綺麗な敬礼をして去っていったのは、ミリオタアイドル・大和亜季でした。サイン貰えばよかった…。

 

 

――――――――――――――

 

別の日曜日。

雪ノ下と神田の古書店巡り。

たまには、こういうデートもします。

 

「比企谷君、私は向こうを見てくるわ」

「俺はこの列に居るよ」

しばらくは別々に本選びをする。

すると、数冊の本を抱えた女性がヨロヨロとこちらに向かって来た。

俺の前で見事に本を落としてしまった。

「大丈夫ですか?」

「…すいません」

「手伝います」

「ありがとう…ごさいます…」

落ちた本を拾い、その女性に渡す…。前髪に隠れてはいるが、綺麗な目をしていた。思わず見惚れてしまう。

「では…失礼します…」

「はい…」

しばらく女性を見ていると、後ろから冷気を感じる…。

「何を見惚れているのかしら…」

「うおっ!ビックリした。落とした本を拾っただけだ。それに、見惚れても勘弁してほしい相手だ」

「それは浮気発言かしら?」

「ちげぇよ。あの女性、アイドルの鷺沢文香だよ」

「なるほど、だから見覚えがあったのね」

「そうだろ?」

「でも、見惚れてたのは別問題よ。後で調き…、教育が必要ね」

「今、調教って言おうとしたよね?」

 

この後、大量の荷物持ちをさせられました。調教?逆にベッドでイヂワルしてやりました。

 

 



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大学編・その20

日曜日の午後。

コーヒーショップは休憩時間にも関わらず雪ノ下・由比ヶ浜・川崎が居た。

「由比ヶ浜と川崎は、大学はどうなんだ?」

「うん、サークルの勧誘が凄くて…。でも、優美子が一緒だと追っ払ってくれるから」

(さすが三浦)

「私はサークル入る気がないからね。バイト探しだよ」

「私もバイトしようかしら」

「ゆきのん、バイトするの?」

「社会勉強としては良いのではないかしら」

「私もバイトしようかなぁ」

「由比ヶ浜はファミレスとか似合いそうだね。私には無理だけど」

「雪ノ下は本屋とかいいんじゃねぇの」

「そうね、募集があれば」

 

closeの札にしたはずの、店の扉が開かれた。

 

「すいません、今は…」

「先輩方、こんにちはです~」

「みなさ~ん、やっはろー」

「こんにちはッス」

「こんにちは」

「小町とその他大勢、いらっしゃい」

「うぇ~、お兄ちゃんキモイよ」

「先輩キモイです」

「比企谷君、キモイわよ」

「ヒッキー、キモイ」

「比企谷、それは…」

「比企谷先輩…」

「お兄さん、それは…」

「俺をお兄さんと呼ぶな。蹴るぞ」

「私がアンタを蹴り飛ばすよ」

「そうはさせないわ、川崎さん」

「俺が悪かったからやめて」

「ワンパターンって意見があったから、変化をつけたのだけど、ダメかしら?」

「メタ発言やめて」

「相変わらず、先輩と雪ノ下先輩は仲が良いですね」

「お兄ちゃんは幸せ者だよ…。あれ、目から汗が…」

「んで、今日はどうしたんだ生徒会役員共」

「生徒会の仕事が終わったんで、お茶しにきました。キャハっ♪」

「はい、あざとい」

「先輩の私への態度が雑です!」

「比企谷先輩、ダメでしたか?」

「藤沢、よく来たな」

「扱いの差がヒドイ!」

「だって、藤沢はあざとくないからな」

「お兄ちゃん♪小町は?」

「あざと可愛い」

「まったく、比企谷君は年下に甘いんだから」

「ヒッキー、ゆきのんがヤキモチ妬いてるよ」

「そ、そんなことは…」

「はいはい、ゴチソーサマデス」

「大志、コーヒー煎れるから手伝え」

「了解ッス」

 

 

「んで、大志。実際は小町とはどうなんだ?」

「えっと…、それは…」

「ここなら、向こうには聞こえん」

「…相変わらずです」

「そうか。小町も俺のことは言うクセに子供だからな」

「ははは…。でも、告白はされてるみたいなんですけど、全部断ってるんですよね。恋愛に興味ないって」

「なるほどね。なぁ大志」

「はい」

「お前を待ってるのかもしれないぞ」

「そうなんですかね…」

「知らんけど」

「なんスか、それ」

「だがな、なんやかんやで俺はお前を買ってる」

「ありがとうございます」

「俺は高校にも居ないし、実家にも居ない。それに、今の俺には小町と同じくらい…。いや、小町以上に守りたいヤツが居る」

「はい」

「大志、小町のこと守ってやってくれ」

「はいッス」

「まぁ、お前への対応は変えねぇけどな」

「ヒドイッス!」

「バカ!照れ臭いだろ」

「それなら、わかります」

「じゃあ、そういうことだ」

 

「コーヒー、お待たせ」

「アンタ、大志に変なことしてないでしょうね?」

「ふっ、大志のコーヒーには練乳を入れてやったぜ」

「アンタのコーヒーにも入れるよ」

「川崎さん、比企谷君に対してはご褒美よ」

 




――――――――――――――

感想でヒントをいただきました。


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大学編・その21

大学内のベンチ。

木陰になっていて、暑くもなくさむくもない。絶好の読書日和だ。

 

「お~い、比企谷く~ん」

「ん?城廻先輩、こんにちは」

「こんにちは~。こんな所で読書?」

「ええ、ここは過ごしやすいんで」

「で、隣の娘は誰かな?」

「隣?…おわっ!綾瀬さん!」

「はいっ♪比企谷様♪」

「いつからそこに?」

「う~ん、30分ぐらい前でしょうか」

「全然、気がつかなかった…」

「比企谷様、そちらの方は?」

「あぁ、高校からの先輩で城廻めぐりさんだ」

「こんにちは~」

「城廻先輩、こちらは綾瀬文子さん。俺と同じ一年です」

「はじめまして、綾瀬と申します」

「ご丁寧にどうも~。二人はお友達なのかなぁ?」

「いえ、ちが…」

「恋人です」

「えぇ!!比企谷君二股してるの!」

「違います!俺は雪ノ下一筋です!言い寄られてるだけです」

「比企谷様、そろそろ恋人にしてください」

「こんな感じで…」

「相変わらず、モテモテだね」

「相変わらずってなんですか?」

「高校の時からモテモテだったじゃん」

「いや、そんなことは…」

「さすが比企谷様!高校の時から女性を何人も…」

「綾瀬さん、誤解が甚だしい…」

「比企谷君はモテモテだったんだよぉ」

「城廻さん、是非お聞かせください、比企谷様の武勇伝を!」

「武勇伝無いからね」

「んとねぇ…」

「城廻先輩、やめてください」

「比企谷君…。何をやっているのかしら?」

「ゆ、雪ノ下!助けてくれ!」

 

夕方

コーヒーショップ

「そんなことがあって疲れましたよ」

「坊主の女難はまだまだ続きそうだな」

「勘弁してくたさい…」

「ほら、客だぞ」

「雪ノ下さん、いらしゃ…」

「比企谷君!綾瀬の娘に手を出したって、どういうこと!!」

「ちなみに、誰から聞きました?」

「めぐり。そんなことより…」

「はぁぁぁぁ、それは間違った情報です。コーヒー出すので座ってください」

 

「はい、どうぞ」

「じゃあ、説明してもらおうかな」

「はいはい」

 

~説明中~

 

「あはははっ!それは災難だね」

「笑いながら、バンバン叩かないでください…」

「あの娘、変わってないなぁ」

「雪ノ下さんは、以前から綾瀬さんのこと知っているんですか?」

「まぁ、親が同じ業界だから」

「…」

「比企谷君、どうしたの?」

「いや、彼女は天真爛漫のようで雪ノ下さんのような感じもするんですよ…」

「さすが比企谷君。私のことを『強化外骨格』と揶揄してるだけはあるわね」

「すいません」

「あははっ。私は的確にとらえてるから、その表現は嫌いじゃないよ。それで、私は意識的にやってるんだけど、彼女は無意識…、自己防衛なのかもしれないわね。あの家柄とあの容姿なら…。それに、人を見る目は確かよ」

「それはどうなんですかね?」

「どうして?」

「初見で俺の目を『素敵な瞳』って言いましたからね。この腐った目を」

「う~ん…」

「な、なんですか?そんなに、見つめないでください」

「比企谷君…」

「はひっ!」

「姉妹丼って、どうかな?」

「な、なななな、何を…」

「姉さん…」

「ゆ、雪乃ちゃん!」

「何を言ってるのかしら?」

「わ、私、用事思い出したから、帰るね」

「逃げたわね…」

「お、俺も仕事に…」

「比企谷君…」

「はい…」

「後でゆっくりお話ししましょう」

「俺は無実だ…」




――――――――― ―

原作、完結しましたね。
まだ、読んでないけど…


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大学編・その22

八幡の部屋

 

「ねぇ、比企谷君」

「ん?」

「かまって」

「おい、やめろ。そんなタイトルのSSあるんだから」

「何を言ってるのか、よくわからないわ」

「あっそ。んで、どうした?」

「今日のお昼だけど…」

「どうすっかな?」

「サイゼリアに行かない?」

「行く行く。すぐ行こう」

「…私の手作りよりサイゼリアがいいと?」

「違う違う!ミラノ風ドリアが俺を呼んでるんだ!」

「そんなことある訳ないでしょ」

「んで、なんでサイゼリアなんだ?」

「このSS、サイゼリアネタがないからよ」

「内情暴露するのやめて」

「冗談よ。由比ヶ浜さんと戸塚君と待ち合わせしているのよ」

「それを早く言ってくれ。さあ、行くぞ。戸塚が俺を待っている」

「まったく、貴方は…」

 

サイゼリア

「ゆきのん、ヒッキー!こっち」

「由比ヶ浜さん、静かに」

「戸塚!戸塚が居る…」

「八幡っ!」

「あはは。ヒッキー、相変わらずだね」

「恋人が男色の趣味があるとは…」

「違う。戸塚は性別を超越している。いわば天使だ」

「はぁぁぁ」

「ゆきのんも大変だね」

「ホモ谷君は置いておいて」

「おい、俺を海老名さんが喜びそうな名前で呼ぶな」

 

「んで、只の食事会じゃないだろ」

「さすが八幡」

「おう、任せろ。戸塚のことなら、なんでもわかるぞ」

「やっぱり、ヒッキーキモイ」

「気持ち悪いわ、比企谷君」

「泣いていい?」

「泣き谷君は、泣かせておいて」

「おい、俺の彼女!」

「今日はテニスに行くのよ」

「ほ~ん。なんでこんなまわりくどいやり方をしたんだ?」

「普通に言ったら、貴方行かないでしょ?」

「戸塚が居る所だったら、どこでも行くぞ」

「八幡、それはちょっと…」

「ヒッキー、やっぱキモイ」

「比企谷君、私より戸塚君がそんなにいいの?」

「雪ノ下の方が…雪ノ下じゃなきゃダメに決まってるだろ。言わせんな」

「そ、そう…」

「ゆきのんとヒッキーは相変わらずだね」

「二人は仲良しだね」

「うっ!恥ずかしい…」

「こほん!で、では、食事をしたら、テニスに行きましょう」

 

テニスコート

「彩ちゃん、ヒッキー、お待たせ」

「ごめんなさい、お待たせして」

「ううん、大丈夫だよ。二人ともテニスウエア似合うね。ねぇ、八幡」

「お、おう…」

「そう?えへへ」

「比企谷君の卑猥な目線を感じるわ」

「仕方ねぇだろ…だから…」

「比企谷君。言いたいことはハッキリ言いなさい」

「ゆ、雪ノ下が可愛いんだから、見ちまっても、仕方ねぇって言ったんだよ」

「そ、そう…。あ、ありがと…」

「ど、どういたしまして…」

 

テニス終了

 

「八幡、なまってるよ」

「久しぶりだからな。戸塚は上手くなったな」

「そ、そうかな」

「良かったね、彩ちゃん」

「由比ヶ浜さんも上手くなったななったね」

「そ、そう?えへへ」

「雪ノ下、大丈夫か?」

「だ、大丈夫…よ」

 

「なあ、戸塚と由比ヶ浜は、時々テニスとかしてるのか?」

「たまにね」

「彩ちゃんにダイエットに付き合ってもらってるんだ」

「ほ~ん」

 

「じゃあ、またな戸塚、由比ヶ浜」

「二人とも、またね」

「ヒッキー!ゆきのん!またね」

「八幡、雪ノ下さん、またやろうね」

 

「なぁ、雪ノ下」

「何かしら?」

「戸塚と由比ヶ浜って…」

「私も思ったのだけど…」

「まだ正式にって感じじゃないな」

「でも、秒読みじゃないかしら」

「そうだといいな」

「…ねぇ、比企谷君」

「ん?」

「…テニスウエアを持っているのだけど…」

「お、おう…」

「…今夜は比企谷君の部屋に泊まっても…」

「お、おう、いいぞ」

「そ、それでね…。このテニスウエアを…」

「雪ノ下、それ以上は言わなくていいぞ」

「そ、そう。良かった…。嫌って言われたらどうしようかと…」

「言う訳ないだろ。今夜は寝かせないぞ」

「…今夜も可愛がってね」

「お、おう…」

 

 

 



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大学編・その23

八幡の部屋

 

「ねぇ比企谷君」

「ん?」

「今からティーカップを買いにいかない?」

「おい、やめろ。よそのSSをネタにするな」

「なかなかの良作よ」

「知ってるから。あの展開も好きだから」

「冗談よ。今から由比ヶ浜さんの誕生日プレゼントを買いに行かない?」

「参考書か?」

「貴方もテンドンはやめなさい」

「はい」

「でも、何をプレゼントしようかしら…」

「…戸塚を呼ぶか?」

「貴方、そんなに戸塚君に会いたいのかしら?」

「ちげーよ。戸塚とプレゼント被らないようにする為だ。ついでにパーティーの予定もたてられるだろ」

「なるほど、貴方にしてはいい考えね。貴方にしては」

「何故二回言った…」

 

ショッピングモール

「八幡、雪ノ下さん、お待たせ」

「大丈夫だ」

「私たちも今来たところよ」

「それで、話ってなにかな?」

「いやな、由比ヶ浜の誕生日プレゼントを買おうと思うんだが、戸塚は何をプレゼントするのかと思ってな」

「そ、それは…」

「戸塚が真っ赤に…。かわい…イテテテテッ!」

「あら、どうしたの比企谷君」

「お前も可愛い顔して、足を踏むな」

「それと、パーティーはどうするか聞きたかったんだよ」

「八幡、雪ノ下さん、お願いがあるんだけど」

 

 

「なるほどね」

「ねぇ、比企谷君」

「あぁ、たぶん同じ考えだ」

「戸塚君、貴方の依頼お受けするわ」

「ありがとう」

「戸塚、マジでかわ…イテテテテッ!指の関節をきめるな」

「貴方も学習しないのね」

「学習してるさ。拗ねた雪ノ下も可愛いってな」

「なっ、何を…」

「二人は本当に仲良しだね。僕も…」

「戸塚なら大丈夫だ」

「そうね」

 

由比ヶ浜結衣の誕生日

雪乃の部屋

 

「happybirthday!!」

 

「三人ともありがとう」

「由比ヶ浜さん、これを」

「…テニスラケットと、ウェアだ」

「最近、やってるんだろ?俺と雪ノ下からだ」

「ありがとう。嬉しいよゆきのん!」

「俺は?」

「まあまあ、八幡」

「百合百合しやがって…」

「ゆ、由比ヶ浜さん、一旦離れてくれるかしら」

「えぇ~、いいじゃん」

「ほら、戸塚君からもプレゼントがあるのよ」

「ほら、戸塚」

「う、うん。由比ヶ浜さん、こ、これを」

「開けてもいい?」

「うん…」

「うわ、ネックレス…。可愛い…。ありがとう、彩ちゃん」

「そ、それと…」

「うん?」

「ぼ、ぼくと、つ、付き合ってくださいっ!」

「え、えっと…」

「…」

「…」

「…ダメ…かな…」

「あ、あの、よろしくお願いします」

「よ、よかった…」

「よかったな戸塚」

「う、うん、よかったよ、八幡」

「由比ヶ浜さん…」

「ヒッキーのことは、まだちょっと好きだけど、今は彩ちゃんの方が好き…かな…。だから…」

「そう…」

「雪ノ下、泣くなよ」

「だって…」

「ほら、ハンカチ」

「ありがとう、比企谷君」

「ケーキ出してくるか?」

「お願いできる?」

「おう」

 

「ほら、ケーキだぞ…。なんで由比ヶ浜も泣いてるんだよ」

「だって、ゆきのんが…」

「由比ヶ浜さん…」

「ケーキ食べないのか?」

「食べる~」

 

「じゃあ、戸塚。あ~んしてやれ」

「そ、それは無理だよ」

「じゃあ、ヒッキーとゆきのんがお手本見せてよ」

「え?そ、それは…」

「比企谷君」

「やるの?」

「貴方が言い出したのよ」

「仕方ねぇな。雪ノ下、あ~ん」

「あ~ん。ん、我ながら美味しいわね」

「顔真っ赤だけどな」

「さぁ、戸塚君」

「雪ノ下さんは八幡にやってあげないの?」

「ひ、比企谷君、口を開けなさい」

「あ~ん。ん、旨い…。て、由比ヶ浜、カシャッって…」

「えへへ」

「戸塚、早くやれ。写真撮ってやる」

「八幡、恥ずかしいよ」

「そうだよヒッキー」

「由比ヶ浜さん、覚悟しなさい」

「ゆきのんまで」

「記念だ記念」

 

戸塚と由比ヶ浜が帰った後

「ねぇ、比企谷君」

「ん」

「由比ヶ浜さん、前に進めたのかしら」

「たぶんな」

「私たちは前に進めてるのかしら」

「さあな」

「もう貴方ってひとは…」

「心配すんな。俺の隣に居る雪ノ下雪乃は成長してる」

「それは貴方もよ」

「なら大丈夫だ」

「ねぇ、八幡…」

「ん?」

「こっちも成長したかしら…」

「よし、確認の為にベッドに行こうか」

 

 

 

 



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大学編・その24

夏休み突入!

ビバ!休日!!

 

「坊主、早くコーヒー出してこい」

「イエッサー!」

 

何故、働いている…。

「お待たせしました」

「すいません、写真いいですか?」

「いいですよ。では、携帯を貸して…」

「いえ、一緒に写真を…」

「え?俺ですか?」

「はい。…ダメですか?」

涙目・上目遣いコンボって流行りなの?

「い、一枚だけですよ」

「ありがとうございます♪」

 

なんでだろうな?俺と写真撮ってどうするの?魔除けなの?

 

「貴方と写真撮ってどうするのかしらね?魔除けかしら?どちらかというとゾンビを呼びそうなんだけど…」

「うわっ!雪ノ下!いらっしゃい。そんなこというと、雪ノ下の画像フォルダの『八幡』を全部消してやる」

「何故、その秘密を…。やめて!私の宝物を…」

「本当にあるのかよ…」

「騙したわね」

「騙してねぇよ。カマかけただけだ」

「貴方だって、『雪乃』ってフォルダあるでしょ?」

「あるぞ。見るか?雪ノ下の可愛い寝顔満載だぞ」

「や、やめて…」

「坊主!夫婦ゲンカしてないで、仕事しろ!」

「うっす」

「すいません」

 

「そういえば、上の嬢ちゃんどうした?最近、来ないけど」

「卒論と家のことで、忙しいみたいです」

「そうか。息抜きに寄るように言ってくれ。少しぐらいならサービスするってな」

「ありがとうございます。そう言っていただけると、姉も喜びます」

 

バイト後

「雪ノ下、今日は由比ヶ浜と出かけるって言ってなかったか?」

「戸塚君とデートだそうよ」

「おのれ、由比ヶ浜…。戸塚に手を出すとは…」

「やめない、そのテンプレ」

「テンプレは大事って、某同人ゲームサークル代表が言ってたぞ」

「まぁ、いいわ。それでね、比企谷君」

「なんだ?」

「その…。プールに行かない?」

「嫌だ」

「なっ!ど、どうして…」

「人多いし、暑いし…。なんでリア充イベントを…」

「わ、私の水着姿を見たくないの?」

「見たいけど、むしろそれが問題というか…ゴニョゴニョ」

「ハッキリ言いなさい!!」

「えっと、雪乃の水着姿をほかの男に…見せたくないです…」

「…バカ、ボケナス、八幡」

「八幡を悪口にしないでって、照れ隠しに言うなよ」

「初めての彼氏とリア充イベントをしてみたいのよ…」

「わかったよ、行くよ」

「そう…」

「戸塚と由比ヶ浜も誘ってみるか?」

「いいわね。そうしましょう」

「戸塚の水着姿かぁ…」

「比企谷君…」

「イタタタタタタッ!耳を引っ張るなよ。冗談だよ」

「よろしい。それよりも…」

「なんだ?」

「貴方の視線が由比ヶ浜さんに行かないようにしないと…」

「心配するな。戸塚だけ見てる…イタタタタタタッ!頬をつねるな!」

「まったく、貴方って人は…」

 




―――――――――――――


次回、水着イベント!!ビジュアルはないけと…


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大学編・その25

「なぁ、戸塚」

「何、八幡」

「ここはプールだよな」

「そうだね」

「今、俺達は何をしている?」

「彼女が水着に着替えてくるのを待ってる」

「戸塚!俺はあの時、雪ノ下に告白出来て良かった!」

「八幡!僕も結衣ちゃんに告白して良かったよ!」

「何を男同士で手を握っているのかしら…」

「うをっ!雪ノ下」

「彩ちゃん?」

「結衣ちゃん、これはお互い彼女とプールに来れて良かったって…」

 

と、いうわけで都内大型プール

 

「なんで、二人ともパーカー来てるんだ?」

「だって…。ねぇ、由比ヶ浜さん」

「ねぇ、ゆきのん」

「八幡、二人とも恥ずかしいんだよ」

「雪ノ下の水着姿、見たいな」

「し、仕方ないわね…」

「雪ノ下さん綺麗…」

「彩ちゃん…」

「ゆ、結衣ちゃん、ごめんなさい」

「比企谷君、な、何か言ってほしいのだけど…」

「あっ、す、すまん…。その…、見惚れてた…」

「そ、そう…。それは…仕方ないわね…」

「結衣ちゃんは脱がないの?」

「さぁ、由比ヶ浜さん」

「わっ!ゆきのん」

ジジジジ(ファスナーを下ろす音)

「………」

ジジジジ(ファスナーを上げる音)

「………」

「な、なんでゆきのん、無言なの」

「くっ!」

「如月千早か!」

 

プールで遊ぶ、雪ノ下と由比ヶ浜。それを眺める比企谷と戸塚…。

 

「なぁ、戸塚」

「なに、八幡」

「あそこで遊んでる、白いビキニの娘、綺麗だろ。俺の彼女なんだぜ」

「ねぇ、八幡」

「なんだ、戸塚」

「あそこで遊んでる、赤いビキニの娘、可愛いでしょ。僕の彼女なんだよ」

「ナンパとか心配だな」

「そうだね。ちゃんと見てないとね」

 

知らない女性に声をかけられる二人。

「ねぇ、君たち」

「へ?俺達?」

「そう、格好良い君と可愛い君」

「私達と遊ばない?」

「いや、僕たちは…」

「どうせ、暇なんでしょ?」

「いや、俺達はかの…」

「比企谷君…」

「彩ちゃん…」

「雪ノ下!」

「結衣ちゃん!」

「チッ!彼女連れかよ…」

「おい、舌打ちしたぞ」

「僕、逆ナンて初めてされたよ」

「助かったよ、雪ノ下」

「ありがとう、結衣ちゃん」

「私達も油断したらダメよ、由比ヶ浜さん」

「そうだね、ゆきのん」

 

「比企谷君」

「どうした?」

「あれをやりましょう」

「ウォータースライダーか。大丈夫なのか?」

「だ、大丈夫よ」

「無理はするなよ」

「…あれなら、こういう場所でもくっついていられるから…」

「可愛いな、コンチクショウ!行くぞ」

「その言い方はどうなのかしら」

「雪ノ下が可愛くて仕方ないんだよ!」

 

帰り道

 

「いや~、遊んだな」

「そうね」

「戸塚と由比ヶ浜もうまくやってるみたいだしな」

「誘って良かったわね」

「今夜は泊まっていくか?」

「そうしようかしら」

「なぁ、雪ノ下」

「なにかしら?」

「部屋で水着着てくれないか?」

「なっ!なにを…」

「あ、いや、ちゃんと見たいというか…」

「仕方ないわね」

 

今日もラブラブでした。

 

 



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大学編・その26

雪乃の部屋

 

「ねぇ、由比ヶ浜さん」

「なに、ゆきのん」

「もうすぐ比企谷君の誕生日なのだけど」

「そうだね」

「今年はね、その…」

「二人で過ごしたいんでしょ」

「なっ!え、ええと…」

「恥ずかしがらなくても大丈夫だよ。私だって、来年は彩ちゃんと過ごしたいから」

「そ、そうなのね…」

「ゆきのん、可愛い!」

「だ、抱きつかないでくれないかしら」

「ゆきのんだって、嫌じゃないクセに」

「ゆ、由比ヶ浜さん、そ、そこは…」

「ゆきのん、少し大きくなった?」

「ほ、本当?」

「たぶん…」

「そ、そう…」

「さては、ヒッキーに揉んでもらってるな!じゃあ、私も」

「だ、ダメよ、由比ヶ浜さん」

「おぉ、これはこれは」

「ゆ、由比ヶ浜さんこそ、えいっ!」

「ひゃっ!」

「ま、また大きくなったわね…」

「えへへ」

「悔しいわ。こうしてやる!」

「きゃぁ!お返し!」

「ひゃん!」

 

三十分後

「はぁはぁはぁ、少し…、ふざけすぎたわね」

「はぁはぁはぁ、そうだね」

「そ、それでね、由比ヶ浜さん」

「うん、…なに?」

「比企谷君に何をプレゼントすればいいかしら?」

「う~ん、本人は何か言ってた?」

「『あん?プレゼント?んなもん気にすんな、雪ノ下が祝ってくれたら、それでいい。あ、手作りケーキは頼むな』ですって」

「ぷっ!ゆきのん、ヒッキーのモノマネ上手いね」

「そ、そうかしら…」

「じゃあ、ゆきのんがリボン巻いて『私がプレゼントよ』って」

「そ、それは、どうなのかしら…」

「きっとヒッキー喜ぶよ」

「まぁ、それはベッドの上でやるとして…」

「やるんだ…」

「何がいいのかしら…」

「何か会話でヒントになるようなものはなかった?」

「あっ!二輪の免許が欲しいと言ってたわ。そうね、父さんに頼めば…」

「ゆ、ゆきのん、それは無理だよ」

「そうかしら?父の権力(ちから)で」

「いやいやいや、無理だよ」

「そう…。じゃあ、バイクを…」

「高過ぎだよ!ヒッキービックリしちゃうよ!」

「そう…。それなら…」

………

……

「うん!それなら、いいと思うよ」

「では、それにしましょう」

 

8月8日八幡の部屋

 

「さすが雪ノ下。料理もケーキも最高だったよ」

「ひ、比企谷君」

「ん?」

「こ、これを…」

「気にすんなって言ったのに…。開けてみてもいいか?」

「ど、どうぞ…」

「指輪…」

「私がしてる指輪、わかる?」

「ペアリングか…」

「貴方、お揃いのモノが欲しいって言ってたでしょ?」

「覚えててくれたんだな。嬉しいよ」

「つけてみて」

「ん、ピッタリだ」

「良かった…」

「最高のプレゼントだよ」

「じ、実はもうひとつあるのだけど…」

 

この後、ベッドでリボン姿の雪乃が現れました。



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大学編・その27

八幡の部屋

 

(なんか、重みを感じるな…)

「おはよう、比企谷君」

「雪ノ下か。おはようさん」

「早く起きて欲しいのだけど」

「なぁ、なんで俺にまたがってるの?」

「?」

「なんで首傾げてんだよ。可愛いな、俺の彼女!」

「貴方を迎えに来たのだけど」

「実家に行くって言ってなかったか?」

「貴方も行くのよ」

「え?なんで?普通に嫌なんですけど…」

「両親が連れてこいって…」

「えぇ~。今日はマスターが平塚先生とキャンプに行ってバイトが休みだし、雪ノ下は実家に行くと思っていたから、久しぶりにゲームでもしようと思っていたんだが」

「若干、説明っぽい文章もあったけど、まあいいわ。ゲームって、何をするつもりだったのかしら?」

「新サクラ大戦のクラリス育てようと思ってたんだが」

「クラリスなら許すわ。それは帰ってからにしてちょうだい」

「へいへい」

「そ、それと、比企谷君…」

「な、何かが、あ、当たっているのだけど…」

「赤い顔してモジモジするな」

「…する?」

「しねぇよ。ただの男の生理現象だ。実家に行けなくなるぞ」

「そ、そうね…。残念だけど……」

「何を言ってるんだか、エロノ下さんは…」

「何か?」

「ごめんなさい」

「よろしい」

「それと、またがって起こすのやめてくださいね」

「じゃあ、次はモーニングふ…」

「ストップ!ストップだ雪ノ下!どこで覚えた」

「海老名さんに聞いたわ。同人誌で小町さんが貴方にしていたわ」

「やめてください。口では『千葉の兄妹』とは言っても実際はないからね」

「小町さんに話したらモジモジしていたわよ」

「言うなよ…。とりあえず、着替えるからどいてくれ」

「朝食の準備をしてくるわ」

「頼む…」

 

雪ノ下邸

「久しぶりだね八幡君」

「お久しぶりです、雪ノ下のお父さん」

「『お義父さん』と呼んでくれたまえ」

「なんか雪ノ下さん…、陽乃さんみたいですね」

「ははははっ!」

 

「はいはい、紅茶がはいりましたよ」

「ありがとうございます」

「クッキーも出来たわ」

「ありがとう、雪ノ下」

「比企谷君、ややこしいから『雪乃』って呼んで」

「わかったよ、雪乃」

「よ、よろしい」

「恥ずかしいなら、やめるぞ」

「だ、大丈夫よ」

 

「ははははっ!綾瀬の娘に言い寄られているのか」

「は、はぁ」

「比企谷君たら、鼻の下を伸ばして」

「伸ばしてないからね」

「若いうちはいいじゃないか」

「お父さん!!」

「ところで八幡さん」

「はひぃっ!」

「母娘丼に興味はありますか?」

「ぶふっ!」

「お、お母さん!!」

「ふふふっ、冗談ですよ」

「ごほん!綾瀬には私から言っておくよ」

「助かります」

「で、八幡君」

「なんですか?」

「綾瀬の娘は美人なのか?」

「へ?」

「お父さん…」

「アナタ…」

「ひっ!じょ冗談だよ…。あははは」

 

 

 

 



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特別編4

はぁ~。夏休み登校日ってだけで面倒なのに、事務所にレッスンに行ったらレッスンルームが使えなくて、そのままとんぼ返り…。しかも、ボ~っとしてて降りる駅間違えるし…。今日はツイてないなぁ。気分転換に、この辺を散歩してみよう。

 

…。こんなところにコーヒー屋さんがあったんだ。雰囲気良さそうだし、入ってみよう。

 

「いらっしゃいませ」

「あの、ひとりなんですけど…」

「お好きなところへどうぞ」

 

なんかちょっと格好いい店員さんだな。目がウチのプロデューサーに似てる。ちょっと好みかも…。

さて、メニューはと…。基本コーヒーしかないんだ。ん?この『スペシャル』ってなんだろう。店員さんに聞いてみよう。

あっ、ちょうど近くで片付けしてる…。!!ちょっと待って!なんで鼻歌『DANZEN!ふたりはプリキュア』なの!!わ、私や菜々ちゃんと趣味が似てるの?

 

「あ、あの、すいません」

「はい、お決まりですか?」

「この、『スペシャル』ってなんですか?」

「あぁ、MAXコーヒーはご存知ですか?」

「はい」

「それに似た感じですよ」

「じゃあ、これを」

「はい、かしこまりました」

 

奥のマスターに声かけてる。マスターも渋いなぁ。

 

「お待たせしました」

「ありがとうございます」

 

あ、また片付けに戻った。…!!今度は『ラララ スイートプリキュア』だと!やっぱり、あの店員さんはこちら側だ。

 

…。甘っ!けど美味しい。なんかツイてないと思ったけど、当りの店に入れたからいいかな。今度、凛と加蓮も連れて来ようかな。

他にお客さんもいないし、私がアイドルって気がつかれないのもいいな。あの店員さん、私がアイドルって知らないのかな?私もまだまだだね。もっと頑張らないとな。

 

あっ、お客さんだ。綺麗な人だなぁ。店員さんと話してる。常連さんかな?声が楓さんに似てる…。澄んだ声だな…って、凄い暴言!でも、店員さんも満更じゃなさそう。ドMなの?

 

さてと、ゆっくり休めたし帰ろうかな。

 

「ご馳走さまでした。美味しかったです」

「またお越しください。神谷奈緒さん」

「なっ!知ってたのかよ!」

「ええ、まあ。声かけたら、休めないでしょうからね」

「ちくしょ~。私の決意返せよ!」

「なんでキレてんだ?」

「う、うるさい!」

「わ、悪かったよ」

なんだよ、そのはにかんだ笑顔は!反則だろ!

「ち、ちくしょ~!また来てやるからな!覚えてろよ」

「何そのツンデレ…」

 

くぅ~。知ってて声かけなかったのかよ。

覚えてやがれよ。次は凛と加蓮連れて来て驚かせてやる!

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

「比企谷君」

「ん?」

「今、お客さんと何か話していたわよね?浮気?」

「ちげぇよ」

「では、何なのかしら?」

「アイドルの神谷奈緒だったから、声をかけてみただけだ」

「どこかで見たことあると思ったわ」

「やっぱり本物は可愛いな」

「やっぱり浮気じゃない」

「違うからね」

「今夜はしっかり教育してあげるわ」

「聞いてねぇし」







――――――――――――――――――

更新遅くなって、すいません。


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大学編・その28

夏休みも終わり、講義の合間に図書館でノートPCをひろげ雪ノ下さんに出された宿題を見ている。

 

(これをメールに添付して送信…。よし、一息だな)

 

「比企谷様、終わりましたか?」

「うおっ!綾瀬さん」

「ここは図書館です。お静かに」

「お、おう、すまん」

「かなり集中されてましたが、終りましたか?」

「ん?ああ、終わった」

「では、わたくしとお茶でもいかがですか?」

「い、いや、それは…」

「夏休みの間、お会い出来なくて、一日千秋の思いでした」

「だ、だからといって…」

「…八幡?」

「ゆ、雪ノ下」

「八幡?」

「!なんだ雪乃」

「よろしい。綾瀬さん、わ・た・し・の!八幡に何か御用かしら?」

「はい、比企谷様をお茶に誘っておりました」

「はぁぁぁ。文子さん、お父上から言われませんでしたか?」

「ええ、言われましたわ」

「だったら、お引き取りを」

「お茶に誘ってはいけないとは言われていませんので」

「比企谷君、彼女は天然でこれよ」

「マジか?」

「ええ、マジよ」

「天然とはなんでしょう?」

「文子さん、私もご一緒するわ」

「ええ、いいですわよ」

「あぁ、天然だわ」

 

「…」

「比企谷様、どうかなさいまして?」

「いや、紅茶の美味しい喫茶店だと思ってたから」

「どこの柏原芳恵よ。甘味処だっていいのではないかしら」

「雪ノ下、お前いくつだよ」

「比企谷様、雪乃さん、こちらのあんみつとっても美味しいのよ」

「じゃあ、俺はあんみつを」

「私も同じものを」

「では、あんみつを3つで」

「あん『みつ』を『みっつ』…。ぷふっ」

「おい、雪ノ下大丈夫か?」

「だ、大丈夫よ」

 

「ん、旨いな」

「えぇ、上品な味だわ」

「比企谷様、雪乃さん、お願いがありますの…」

「ん?なんだ?」

「比企谷君は渡さないわ」

「いえ、あの…。お二人に私のお友達になっていただけないかと…」

「ん?どういうことだ?」

「はい、父から『交際相手がいるなら無理強いはダメだと』言われました。ですが、せめてお友達には慣れないでしょうか?わたくしは、こんな容姿で家も大きいので寄ってきてくれる人はいるのですが…」

「雪ノ下」

「…まぁ、いいわ。なりましょう、友達に」

「まぁ、嬉しいですわ」

「過度に比企谷君に密着してはダメよ」

「それは残念ですわね。腕を組むぐらいなら、よろしいですか?」

「ダメよ」

「まぁ。比企谷様、愛されてますわね」

「ん?まあな」

「羨ましいですわ。わたくしも、いつか比企谷様のような男性を見つけますわ」

「そうしてくれるかしら」

「それか…、比企谷様と雪乃さんが別れたら…」

「絶対別れないわ」

「まぁ。うふふ」

 

「あんみつ旨いなぁ。小町に食べさせたい…」

 

八幡、現実逃避。

 

 

 




~~~~~~~~~~~~~~~~~


私の脳内で綾瀬さんは(CV・ゆかな)です。

更新、遅くなって、すいません。


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大学編・その29

八幡の部屋。

正座する八幡に対して、仁王立ちする雪乃。

 

「すいませんでした」

 

「私はこれは何かと聞いているのだけど」

 

「そ、それは、大人の男性のたしなみというか、楽しみというか…」

 

「具体的には?」

 

「アダルトDVDです」

 

「どんな内容なのかしら?一緒に観る?」

 

「そ、そんなレベルの高いプレイは…」

 

「私とは一緒に観れない内容なのかしら?」

 

「はい」

 

「では、タイトルを読みあげてもらいましょうか」

 

「い、いや、それは…」

 

「はい、読みなさい」

 

「…『おっぱいが大きい娘はアホでビッチって本当ですか?』」

 

「次はこれ」

 

「…『あざとい後輩が貴方にエッチなお願い』」

 

「はい次」

 

「『金髪ヤンキーにののしられながら襲われる』」

 

「次」

 

「『眼鏡っ娘は好きですか? 腐った私でいいの?』」

 

「…」スッ

 

「『無口で強気な女を責め立てる』」

 

「問題はここからよ、はい」

 

「『師弟愛 白衣の女教師』」

 

「これ…」

 

「『禁断の兄妹愛 八重歯が当たったらごめんね、お兄ちゃん』」

 

「これは由々しきモノよ」

 

「『やめて!ボク男の子だよ』」

 

「はぁぁぁぁぁ、最後よ」

 

「『高飛車黒髪スレンダー美女が夜にはデレデレ』」

 

「まったく…。どういうつもりなのかしら?しかも、誰かに微妙に似てるのよね」

 

「すいません」

 

「これ、処分するわよ」

 

「あ、いや、それはマズイ」

 

「私より、このDVDの方がいいと?」

 

「そんなことある訳ないだろ。ゆきのん、最高!」

 

「その言い方やめなさい!では、何故?」

 

「俺の物じゃないんだよ」

 

「では、誰の物なのかしら?」

 

「それはプライバシーがあるので」

 

「言うまで『しない』わよ」

 

「そんな殺生な…」

 

「では、言いなさい」

 

「…戸部から回ってきました」

 

「戸部君?貴方、戸部君と交流があるの?」

 

「たまにな。アイツ、フットサルやってるから助っ人にかり出されたりしてる。葉山も居たなぁ」

 

「お、驚いたわ」

 

「まあな。俺自身も意外だと思ってる」

 

「葉山君もこれを観たのかしら?」

 

「順番的に葉山の次が俺だったからな」

 

「後日、戸部君はお説教ね。あと三浦さんに報告ね」

 

(戸部、すまん。だが、ある意味ご褒美だぞ)

 

「ん?雪ノ下、三浦と交流あるのか?」

 

「ええ。由比ヶ浜さんと三人でお茶とか。それに海老名さんも加わったり」

 

「い、以外だな」

 

「そうね。案外、似ているのかもしれないわね」

 

(二人とも女王様ですからね。炎獄と氷雪の女王が手を組んだ!なんか格好いい)

 

「そ、それと…」

 

「ん?」

 

「最後のは、どんな内容だったのかしら?」

 

「へ?」

 

「その、私がしてあげるから…、こういうモノは観ないでほしい…」

 

「雪乃!」

 

「えっ!」

 

「愛してる!」

 

「バカ。こんな時ばっかり…。調子がいいんだから」

 

「愛してるのは本当だぞ」

 

「もう!ズルイわ。私も愛してるわ、八幡」

 

 

 

 

 




~~~~~~~~~~~~~~~


よくある、AVが見つかる話でした。

もう爆発しろよ。


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大学編・その30

コーヒーショップでアルバイト中の八幡。

 

「いらっしゃいませ」

 

「ちぃ~す、ヒキタニ君」

 

「と、戸部…」

 

「この前のDVD良かったっしょ?」

 

「そ、そのことなんだがな…」

 

「返すのはまたでいいから」

 

「お、おう、だからな戸部…」

 

「今日も良かったのを持ってきたよ」

 

「き、聞いてくれ戸部」

 

「隼人君にも好評だったから」

 

「そう、それはどんなタイトルなのかしなね」

 

「ゆ、雪ノ下さん…」

 

「ぜひタイトルを聞きたいわ」

 

「そ、それは…」

 

「早く言ってもらえないかしら?」

 

「…『彼女の姉 どう?妹よりおっぱい大きいでしょ』です」

 

「そう。今から葉山君と三浦さんも来るから、ゆっくりお話ししましょうか」

 

「い、いや、今から用事が…」

 

「いいわよね、戸部君」

 

「はい」

 

(戸部、安らかに死んでくれ)

 

「比企谷君、貴方もよ」

 

「え?俺はいいんじゃねぇの?」

 

「あんなタイトルは許せないわ」

 

(戸部ぇ!!!)

 

数分後、葉山と三浦到着。

 

「おい坊主」

 

「はい、なんですか?」

 

「雪ノ下の嬢ちゃんと金髪の嬢ちゃん、すこぶる機嫌が悪そうなんだが…」

 

「実はですね、さっきのチャラいヤツから借りたアダルトDVDがバレまして…」

 

「ほう、それはどんなタイトルだ?」

 

「かくかくしかじかです」

 

「坊主、俺にも見せろ」

 

「マスターもバレたら死にますよ。平塚先生のラストブリットで」

 

「比企谷君…」

 

「はひっ!」

 

「早くコーヒーを」

 

「はい!ただいま!」

 

「マスター?」

 

「はい?」

 

「平塚先生に言いますよ」

 

「すいませんでした」

 

(ゆきのん、怖い)

 

しばらく、雪ノ下と三浦に説教されていると、由比ヶ浜と戸塚が店に入ってきた。

 

「ゆきの~ん、優美子、聞いてよ」

 

「由比ヶ浜さん、どうしたの?」

 

「結衣、どうした~?」

 

「彩ちゃんがこんなの持ってたの~」

 

それは『爆乳母娘丼』と書いてあるアダルトDVDが…。

 

「戸塚君、貴方もそこに座りなさい」

 

「八幡、これはどういうことなの?」

 

「戸塚、タイミングが最悪だ。俺たちもDVDが見つかって説教されてる最中だ」

 

「うわぁ…」

 

「戸塚く~ん」

 

「なに?戸部君」

 

「今度、それ貸して」

 

「ずいぶんと戸部君は余裕があるのね」

 

「戸部ぇ、何考えてるし!」

 

「戸部っち、最低!」

 

「まあまあ、落ち着いて」

 

「葉虫君は黙って」

 

「隼人、あーしじゃ満足出来ないの?」

 

「それは別腹というか…。なあ、比企谷」

 

「バカ!俺に振るな!」

 

「そうなのかしら、エロ谷君」

 

「お、俺は雪ノ下で満足してるぞ」

 

「そうよね、この前もDVDみたいなプレイを…」

 

「あ、バカ」

 

「雪ノ下さん、あんなことを…」

 

「ゆきのん?」

 

「…バカ、ボケナス、八幡!」

 

「雪ノ下の自爆なのに、ディスられるのね」

 

「隼人、帰るし!」

 

「え?優美子?」

 

「あ、あーしも、その…、あんなことしてみたいし…」

 

「わ、わかった」

 

「戸部!次はないからね」

 

「…はい」

 

葉山、三浦に引きずられるように退場。

 

「彩ちゃん」

 

「はい」

 

「ママはダメだけど、私となら…」

 

戸塚、由比ヶ浜と手を繋いで退場。

 

「比企谷君」

 

「はい。バイト終わるまで待ってください」

 

「戸部君」

 

「はい」

 

「次はないわよ」

 

「はい」

 

三組のカップルは熱い夜を過ごしました。

 

 

 




~~~~~~~~~~~~~



何これ?これでいいのかな?


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特別編5

雪乃、どうして俺をおいていってしまったんだ…

 

 

八幡、貴方をおいてきてしまったことを後悔しているわ…

 

雪乃、お前はどこに行ってしまったんだ…

 

八幡、私はここよ…。もう…会えないのかしら…

 

必ずお前を見つける…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「て、なんだよこれ!」

 

「比企谷君、どこ行ってたのよ」

 

「お前だよ。ショッピングデートしようって言ったのは雪ノ下だろ。勝手に動くなよ、すぐに迷子になるのに」

 

「だって仕方ないじゃない…」

 

「何があったんだよ」

 

「…をやってるって店内広告があったから」

 

「なに?」

 

「『猫ちゃんふれあいイベント』って店内広告があったから…」

 

「だったら、言ってくれ。一緒に行くから」

 

「『一緒にイク』だなんていやらしい…。通報するわよ」

 

「あれ?至極真っ当なこと言ったよね?彼氏だよね俺。じゃあ、行かないのか?」

 

「行きたい…」

 

「ほれ」

 

「なに?この手は?」

 

「手を繋いでいたらはぐれないだろ」

 

「比企谷君…」

 

「イベントステージな」

 

「何かあるの?」

 

「アイドルの新曲イベントだよ」

 

しばらく歩いていると…。

 

「あの~、すいません。イベントステージはどっちでしょうか?」

 

「イベントステージは逆方向ですよ」

 

「あら~、どうしましょう」

 

「ここを真っ直ぐ行って、○○って店を右に曲がればありますから」

 

「ご親切に、ありがとうございます」

 

「いえいえ」

 

「…比企谷君、随分と優しいわね」

 

「そんなことねぇよ」

 

「どこを見ていたのかしら?」

 

「む、胸なんて、み、見てないでしゅ」

 

「あと、どこかで見たことある顔だったのだけど…。誰だったかしら…」

 

「あぁ、アイドルの三浦あずさだよ」

 

「あ、貴方、よく平気で対応したわね」

 

「実は、緊張して平静を装うのが大変だった」

 

そんな話をしていると、雪乃が人とぶつかった。

 

「きゃっ!」

「痛っ!」

 

「ごめんなさい、大丈夫ですか?」

 

「ごめんなさい。…千早ちゃん?」

 

「いえ、人違いです」

 

「あ、ごめんなさい」

 

すると、向こうで彼女を呼ぶ声がする。

 

「春香!こっちよ!」

 

「千早ちゃん、待って~!本当にごめんなさい」

 

「い、いえ…」

 

「千早ちゃん、あずささん見つかった?」

 

「居ないわ。こっちを探しましょう」

 

 

 

 

 

「おい、雪ノ下…。あれって…」

 

「天海春香と如月千早ね」

 

「さすがに知ってたか」

 

「私を如月千早と間違えるなんて…」

 

「雪ノ下?」

 

「やっはり、胸なのね」

 

「…」

 

「くっ!」

 

 

その後…。

 

「あ、あの、お客様?」

 

「にゃ~」

 

「そろそろ…」

 

「にゃにゃ~」

 

「お客様、お時間が…」

 

「にゃ?にゃ~」

 

「すいませんねツレが。雪ノ下?」

 

「にゃにゃ~ん」

 

「仕方ない…。雪乃、愛してるぞ」

 

「はっ!き、急に何を言ってるのかしら!う、嬉しいけとここは公共の場所よ!わきまえなさい。でも、私も愛してるわ、八幡」

 

「おっ、帰ってきた。そろそろ行くぞ。765プロのステージイベントも見たいしな」

 

「そ、そう…。仕方ないわね」

 

「すいません。ご迷惑おかけしました」

 

 




~~~~~~~~~~~~~~~~


方向音痴と貧にゅ、ゲフンゲフン。を書こうとしたら、こんなことに…。

すいません。


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