MONSTER HUNTERーアビスレイジー (きさらん)
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死を乗り越え今彼らは…
その昔、最強と謳われた2人の狩人がいた。
1人は漆黒に輝く大鎌を自由自在に操り空を舞いながら戦う姿から『月の女神』と呼ばれたルナ・アリアハート。
もう1人はオレンジの髪を靡かせオレンジ色に輝く弓を持ち戦場を自由に走り回る姿から『太陽の女神』と呼ばれたソル・ツヴァイスクローバー。
その常人離れした動きにより村ーーいや、彼女らを知ってる人達は「本当に神の使いなのかもしれない」と、噂していた。
しかし、そんな彼女達もやっぱり同じ人なんだなと紐付ける事件が起きた。
それは、彼女達の突然の死。
彼女達はひとりのハンターの前に小さい子供を持つ母親でもあった。
そして、この物語は伝説と呼ばれた彼女達の子供の話である。
事件から数年後。
気持ちのいい朝日が差し込む中やかましい声に起こされ若干不機嫌気味な起床。
「もう、せっかく起こしてあげたのに怒らないでよー」
このオレンジの髪に黄色の瞳を持ちレイア装備を着込んでる女はイリス・ツヴァイスクローバー。
名前から察する通りソルさんの娘で俺の幼馴染&相棒。
「お前なー、休みの日に無理矢理起こされて不機嫌にならない奴なんかいるか?」
「休み?何言ってるの?今日はハンターライセンスの取得試験の試験監督をやるんでしょ?」
「あっ」
「はぁ、忘れてたんだね。まあ、いいやさっさと朝ご飯食べて行こうよ。お墓参りもしたいしさ」
イリスは俺のレウス装備を磨きながら俺を見つめる。
「はいはい」
のんびり朝飯を食い終えピカピカになったレウス装備を装備し武器を担ぎ家の外へと足を進める。
「っと、母さん行ってきます」
遺影に手を合わせイリスの待つ広場へと向かった。
「いつ見てもその武器すごいね。ちゃんと使えてるの?」
「当たり前だろ。作ったの俺だぞ?」
俺の担いでる武器は『牙竜翼』って言う俺と加工屋のおっちゃんが協力して使った新武器だ。
説明するとこんな感じ
『牙竜翼』
背中にセットする武器。
遠距離攻撃と近距離攻撃を両方扱うことが可能な特殊な武器。
遠距離では、羽を飛ばして攻撃(斬撃)近距離は翼を叩きつけて攻撃。
回避は後方への長距離飛翔。
空を飛ぶ事も可能だが数秒しか飛べない。
翼の付け根に仕込んだ衝撃を与えると雷などが発生する特殊な石により羽に属性を与える事が可能。
切れ味を回復させるには砥石では無く研磨油を使用しなければならない
てな、感じ。本当は両翼にしたかったんだけど両翼にすると重量が重くなり機動性が死ぬので方翼にした。
ちなみにイリスの使ってるのは『指突弓』って言う一年前に開発された武器で指に付け爪みたいな物をつけその爪に特殊な糸を編み込んだ紐を引っ掛け、弓矢の矢より短い矢を使って攻撃する武器。
弓矢と違って瓶を使用せず特殊な球を矢の先端につける事で麻痺などの効果を発動出来る。しかも、複数同時使用が可能な為割と人気の武器である。
「お前こそ、それつかえてんの?」
「まあ、ぼちぼちかな」
「ぼちぼちってお前……まあ、いいや。っと、着いたな」
俺達はそれぞれ母親が眠る墓の前にしゃがみこみ手を合わせる。
「あれからもう10年か……ここに来ると今でも思い出すよ母さんの安心した様な笑顔と滴り落ちる血。それに、その奥で怪しげに光る四つの赤い瞳……いつか必ず仇うつから……また、来るよ」
さて、墓参りも済んだし仕事行きますかねー。
イリスの母親が眠る墓の前でしゃがみこみ涙を流すイリスの横にしゃがむ。
「ヒック……お母さん……」
「お前さーいい加減ここに来ると泣くのやめろよなぁ」
釣られて涙でるじゃんか……。
「だって……あの日、私達がこっそり狩りに着いていかなければお母さん達は死なずに済んだんだよ……うぇぇぇん」
こうなると長いんだよなぁ……。
そこから、しばらくイリスの頭を撫でていると落ち着いたようで涙を拭き取り立ち上がる。
「さ!お墓参りも済んだしお仕事行こっか」
「はいはい」
俺はやれやれと呟きイリスの後を追い足を進めた。
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ハンターライセンス会得試験
「さてと、今日お前らの担当となったノア・アリアハートだ」
「同じく貴方達の担当のイリス・ツヴァイスクローバーです!よろしくね」
今年は6人か…少ないな。去年は10人は居たときいたんだが……。
「それで、今日お前らに狩って貰うのはフルフルだ。本当はイャンクックでも良いかと思ったんだがな、簡単すぎても面白くないという事でフルフルになった」
「それじゃ、早速三人パーティ組んで貰おうかな。自由に組んでいいからねー」
生徒達がパーティを組む中イリスが俺の耳元で囁く。
「ねぇ、フルフルは厳しくない?」
「お前俺達の時のモンスター忘れたのか?」
「……ナルガクルガ」
「あれに比べたらフルフルなんて楽勝だろ」
毎年、試験で狩るモンスターは担当のハンターが気まぐれで決める為難易度は運任せという事になる。
これは、いかなる不足の事態にも対処出来る様にという理由からで賛否両論あるが基本的には賛成派が多いようだ。
「先生、組み終わりました」
「了解。じゃあ、そっちの3人は俺が見る。残りの奴らはイリスの前に行ってくれ」
さてさて、こっちは大剣が一人に双剣が一人、それと弓が一人か。
回復系の技を使える奴が居ないのは少し痛いがまあ、大丈夫だろう。
イリスの方は、太刀が一人にライトボウガンが一人、後はランスが一人か。
遠中近と揃ってなかなかいい感じじゃないか。
「まず支給品と地図を配る。3人で協力してフルフルを探し出し討伐しろ。勿論、死にそうになったら助けるが全員を助けれるとは思わないでくれ。
お互いに協力してこそ一人前のハンターって事だ」
「まあ、パーティが苦手でソロでやってる人もいるけどねー」
「そう言う奴は色々な修羅場をくぐってきた奴だから真似しないように。
制限時間は30分。それ以上は命の危険が跳ね上がると見て強制的に村へと帰って貰う。以上それじゃ、早速開始だ」
俺は、時計のタイマーをセットしイリスに「またここで落ち合おう」とだけ言い3人へと向き直る。
「まず、いそうな場所に印をつけようぜ」
「その前に自己紹介がいいと思いますが」
「……」
男二人がいろいろ話し合っているが弓の女の子はうなづくだけで意見を言おうという感じでは無かったのに若干の違和感を覚える。
「俺様はベンだ!見ての通り大剣使いだ」
「僕はイト。察しのとおり双剣使いです」
「私はレイナ。弓を使う」
なんだ?なぜ俺を見る?
「俺もか?」
3人がうなづいたのでため息をつきながら自己紹介をすることにした。
「ノア。武器は牙竜翼。詳しい事は教えない」
説明がめんどくさいからな。
こっちは、地道にマップを回る作戦のようで居そうな場所に印を付けていく感じらしい。
イリスの方は……なるほどライトボウガンの奴が木の上から索敵する感じね。
両方いい手だとは思うが、そもそも木々が生い茂ってるからあまり見えないとは思う。
おっと、俺の方が動き出したようなので見失わない様について行こう。
探し始めて5分後
「居たぞ!」
「ペイント付けます」
「私、離れて弓構えるね」
それぞれが持ち場に着く中俺は近くの木に登りどう動くかを双眼鏡で覗く。
「イト!横から頼む!レイナは何もしなくていい足手まといだ」
「それには僕も同感ですね」
「……わかった」
ふむ、どうやらレイナはあまり自分の意見を言わないみたいだ。いや、言わせてもらえないって言うのが正しいか。
このままじゃ、遅かれ早かれ死ぬな。少し助言してやるか。
俺は弓をしまって俯いているレイナの横に降り立ち頭をポンっと叩く。
「なーにを俯いているのかね?」
「私、落ちこぼれだからいつも足手纏いになるからみんなから嫌われてるんです」
「いいか?ガンナーは勇逸戦況を見渡せる職種だ。
そんなガンナーが戦況も見ず俯いていたら成功する狩りも成功しないぞ?
言ってみればガンナーは司令官だ。仲間を導き、仲間が動きやすい様に援護する。それが、ガンナーの役割だ。お前が何にそんなに怯えてるか知らないが勇気を持ち声を出せ」
「司令官……わかりました!やってみます」
レイナは弓に瓶をセットし弦を引き絞る。
「うぐっ、かてぇ」
「ベン!危ない!」
フルフルは弾かれ怯んでいるベンに狙いを済まし雷を纏って飛びかかる。
ベンにあたる直前にレイナの放った矢が頭に当たりフルフルが吹き飛ぶ。
「みんな!一度集まって!」
「くそ!余計な事するな!俺様ならあれくらいやれた!」
「いいから、集まって!!死にたいの!?」
レイナの突然の大声にベンとイトは驚いた顔をし舌打ちをしながらも武器をしまい集まる。
「さて、イリスこっちはどうにかなりそうだ。お前の方は大丈夫だよな?」
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