悪性隔絶魔界都市<新宿> (ハイカラさんかれあ)
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悪性隔絶魔界都市<新宿>-序章- (Ⅰ)

淫獄都市ブルースの嘘予告を正式に書いてみた。
予告と違うのはご愛嬌


『―――塩基配列 ヒトゲノムと確認

―――霊器属性 善性・中立と確認』

 『ようこそ、人類の未来を語る資料館へ。ここは人理継続保障機関 カルデア』

『指紋認証 声帯認証 遺伝子認証 クリア。魔術回路の測定……完了しました。登録名と一致します。貴方を霊長類の一員である事を認めます』

『はじめまして。貴方は本日 最後の来館者です。どうぞ、善き時間をお過ごしください』

 

1、

「でち……こない……じ…ゅ…れん…たれ……だけ…やめ…」

 

無人の廊下で一人の少女が呻いていた、夢の中で悪夢に苛まれいるのかその表情は苦悩に歪んでいる。

その姿を見かねたのか小さな白い動物が近寄って頬を舐めた。

 

「フォウ……? キュウ……キュウ? フォウ! フー、フォーウ!」

「あの。 朝でも夜でもありませんから、起きてください、先輩」

「……はっ!? ここはどこ、君は誰? わたしはアイドルとシャンシャンしていたはずでは!?」

 

10連で☆4以上が優雅たれしかこなかった? でも、それは夢や。

夢の中の出来事は実際の世界には関係ないんですよ?

「メルヘンやファンタジーじゃあるまいし夢の世界があるわけないじゃないですか」って典明がいってた。

……あれ、鏡の世界だっけ? けど鏡の世界はあったような?

 

「シャンシャン? ここはどこかは簡単ですが、私が誰かはいきなり難しい質問なので、返答に困ります。 名乗るほどのものではない―――とか?」

 

動物の鳴き声に続いて控えめでどこか無機質な声が響き目を開くと明らかに日本人ではない白衣に眼鏡をかけた少女がそこにいた。

これが藤丸立香とマシュ・キリエライトとの始まりの出会い、これから始まる長い長い旅の始まりの終わりだった。

 

2、

「そう、マギ☆マリは最高なんだよなんでそれがわかんないかなー!」

「まだ続くのその話、ループって怖くない?」

 

あの後、マシュと、なんだかサーカスとかにいそうな格好のレフ教授と話したりしたり色々あった後に全員が集まった時に眠気に襲われうっかり寝入ってしまいブリーフィングルームから追放されました。

 

しょうがないのでフォウくんと呼ばれる白い小動物を肩に載せて自室に割り当てられた部屋に行ったら、アメコミの眼から光線を放つミュータントヒーローみたいなバイザーを付けた黒尽くめの人物となにやら興奮して捲し立てている白衣を着た人物の二人がいた。

 

「あっ、誰か来た。 こんにちは、悪いね騒がしくて」

「あ、はいどうも」

「聞いているのかい! って、うえええええええええ!? 誰だい君は!? ここはボクたちのサボり場だぞ!? 誰のことわりがあって入ってくるんだい!?」

「いつもサボってる仲間みたいに言うのやめてくれない?」

 

白衣の男性はちらっとこちらを向いていきなり叫び出した。

あまり大声を出すと血圧が高まって血管に負担がかかりますよ?

明らかに助かったーという声色のバイザーをつけた男性はもの凄い美声の持ち主であった、顔半分が隠れているのに整っているとわかる容姿に思わず頰が熱く、赤くなった。

よく見れば騒いでた白衣の人も顔は整っていた。

 

「誰だってか、そうです、わたしが藤丸さんちの立香さんです」

「「誰?」」

 

イケメン二人に注目を浴びるというかつてないシチュエーションにちょっとテンパってネタ発言をぶっぱなしてしまった、これじゃ変なおばさんだよ!

……開き直ってネタ発言を続けることにする。

ひゃっはー!! もう何も怖くないZe★

 

「そういう貴方達こそ誰ですか? 今日からこの部屋はわたしだけの『世界』だぜ?」

 

┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨ ┣¨┣¨……

 

「嘘だろ承太郎!」

「 『ウソ』は いってない皮膚と汗だ……こいつには やると言ったら やる…… 『スゴ味』があるッ!」

 

三人揃って、ふっと口元が緩む、ピシ、ガシ、グッ、グッ、グッ。

友情は時として時間をかけずに花が咲くこともあるのだ、彼らは分かり合えた。

藤丸の奇妙な冒険始まったな。

 

「それで、えぇと君は静・ジョースターくんだっけ?」

「そういう君はロマ二・アーキマン」

「いやそれはもういいですから、というか名作で海外翻訳もでてますけど日本の漫画に詳しすぎじゃないですか?」

 

初対面にも関わらずネタ発言をしたら同じ作品ネタで返してくるとは中々に話せる二人だが、このノリに付き合っていたらいつまでたっても話が終わらないので先を促す。

 

「いやぁー、ここに居るいつわくんに勧められたけど面白いね! 作品の根底にある勇気で運命に立ち向かうっていう人間賛歌が素晴らしいよマギ☆マリ程じゃないけど!」

「喜んで貰って勧めた甲斐があるけどネットアイドルと比べられてもなー」

「何度もいうけど最高じゃないかマギ☆マリ、なんでわからんかな!」

「だって女アイドルの中の人が男とかあるじゃんネットアイドル」

「マギ☆マリに中の人などいない!」

「おーい、もしもーし」

 

あれれぇ? おかしいなーいつの間にか立香さん蚊帳の外だよ。

初対面の女子を置き去りにするこの二人のキャラの濃さに逆に困惑してくるよ。

わたしはついていけるだろうか? わたしが眼中にいない二人の世界のスピードに。

 

「フォウ、フォー(いやいるよ中の人、ろくでもないクズ男だよ)」

「いや、話を最初に脱線させて悪かったけどさー結局だれだよ二人とも」

 

なんやかんやで今度こそ会話を進めることに成功した。

 

「ボクはどこからどう見ても健全な、真面目に働くお医者さん、医療部門のトップ、ロマニ・アーキマン。 

なぜかみんなからDr.ロマンと略されていてね。理由は分からないけど言いやすいし、君も遠慮なくロマンと呼んでくれていいとも。 

実際、ロマンって響きはいいよね。格好いいし、どことなく甘くていいかげんな感じがするし」

「栗はマロンだから甘いのはきっと錯覚」

「はじめまして、ドクター」

 

ゆるふわな性格でドルオタだけどなんとなくいい人みたいな気がする、ドルオタだけど。

 

「ええーと、そっちの頭の中をかきまわされてしまったA級ジャンパーみたいな人は?」

「名前は秋いつわ、確かに黒ずくめでバイザーつけてるけど……結構前のアニメよく知ってるね、某ロボゲー参戦ユニットの元ネタ調べるタイプ?」

「Yes、That's right.」

「おーいえー、逸材だ。 ……別にコスプレとかじゃなくてここの職員が目に悪いから(、、、、、、)付けろっていうからね」

 

そういってバイザーを撫でた、表情がよく見えないが苦笑している?

 

「?? 目の病気なんですか?」

「どっちかというと目に病気というか、病気にさせるというかそんな感じだよね」

 

よく分からないがなんだか色々事情があるらしい、ドクターはフォウくんを手懐けようとして鼻で笑われたことにショックを受けていたが、こちらの会話に横から入ってきた。

 

「察するに君は今日来たばかりの新人で、所長のカミナリを受けたってところだろ? ならボクたちと同類だ。 何を隠そう、ボクと彼も所長に叱られて待機中だったんだ。」

「バイザーはずせといわれて外したら外したで文句言われて、邪魔になるって追い出すとかひどい話だよ」

「ボクも所長に「ロマニが現場にいると空気が緩むのよ!」って追い出されたしねー、最近荒れてるよね……しょうがない部分もあるんだけどね」

「若くして立場が得るといろいろ面倒くさい」

 

二人して所長のヒステリーで追い出されたらしい、もしかして昼寝してしまって所長が激おこぷんぷん丸で追い出したのはすでに追い出したこの二人がいたからでは?

 

「でも、そんな時にキミが来てくれた。地獄に仏、ぼっちにメル友とはこのコトさ。 所在ないものたち同士、ここでのんびり世間話でもして交友を深めようじゃあないか!」

「なにする、ゲームでもする? それともアニメ鑑賞? ネットアイドルは語らせると長いので却下ね」

「(´・ω・`)そんなー」

 

秋さんはガサゴソ部屋の片隅から色々と物を引っ張り出してきた、元空き部屋(現在はわたしの部屋)でサボって遊ぶためのグッズをたくさん持ち込んでいるらしい、この二人は職場に何しに来ているのだろうか?

 

「――――別にわたし、ぼっちじゃないけど」

「な……来たばかりの新人なのにもう友人がいるなんて、なんてコミュ力なんだ……! あやかりたい!」

「ドクター友達いないしね」

「ひどい! 自分はぼっちとは違うみたいにいうけど君だって友達いないだろ!」

「と、友達はペペとキリシュタリアいるし、なんだか他に避けられてるのは性格関係ないし……(震え声)」

 

ついぼっちという言葉に反発してしまったが二人のトラウマを切開してしまったらしい。

やだ、この二人わたしと同じ目をしている……。

違うし、友達いたし、ただ付き合いが浅く広かっただけでぼっちじゃないし(謎の言い訳)

献血からの拉致されて始まったこのアルバイト、なんとかやっていけるような気がしてきました。

 

3、

「――いま医務室だろ? そこからなら二分で到着できる筈だ。」

 

だらだらと雑談に混じってカルデアのことを聞いていたら突然入ってきたレフ教授の要請にドクターがあわあわしていた、秋さんは漫画を読んでいる。

 

「ここ医務室じゃないですよね、サボってるから……」

「あわわわわ、そ、それはいいっこなしだよ、……まあいいやボクみたいな平凡な医者が少しくらい遅れても問題ないし、それよりBチームのいつわくんはレイシフトの実験開始だからサボりはここまでだ」

「はいはい」

 

マイペースに漫画を読んでいた秋さんはパタと漫画を閉じて巻数順に並べ始めた。

聞いた話によるとドクターのようなサポートスタッフではなくわたしと同じ実験メンバーの立場らしい。

しかもわたしのような飛び入り一般枠ではなく選抜チームのメインメンバーに選ばれているエリートだとか。

……それなのに堂々とサボるって図太すぎィ!

 

「いいんですか? ゆるゆるというかぐだぐだな感じでレフ教授に怒られません?」

「おや、彼と面識があったのかい?」

「マシュと話してたら声をかけられて雑談しました」

「ああ、友達ってマシュのことだったのか、まあそうだね呼ばれたならいかないとね、落ち着いたら医務室を訪ねに来てくれ。今度は美味しいケーキぐらいはご馳走するよ。 いつわくん連れてってくれ、そうすれば間に合う」

「はいはい」

 

秋さんが指を開いて閉じてを繰り返しながらドアを開けると、急に明かりが落ちた。

 

「なんだ、明かりが消えるなんて……」

「始まったか…」

 

ドクターが呟くと轟音が響き渡り館内放送がながれた。

 

『緊急事態発生。緊急事態発生。 中央発電所、及び中央管制室で火災が発生しました。中央区画の隔壁は90秒後に閉鎖されます。

職員は速やかに第二ゲートから退避してください』

『繰り返します。 中央発電所、及び中央―――』

 

「今のは爆発音か!?  一体なにが起こっている……!? モニター、管制室を映してくれ! みんなは無事なのか!?」

「……ひどい…………管制室って、あの娘は……?」

 

映し出された映像はあちこちが焦げ付き瓦礫が散乱しているという正に災厄に見舞われたといわんばかりに惨憺たる有様であった。

そして管制室という場所にはあの少女がいたことを思い出す、自分を先輩と呼ぶなんだか浮世離れした雰囲気を持つあの子……。

 

「これは―――立香くん、すぐに避難してくれ。 ボクたちは管制室に行く。 もうじき隔壁が閉鎖するからね。その前にキミだけでも外に出るんだ! いつわくん出してくれ!」

「了解」

 

そういってドクターは秋さんの腰に抱きついた、よくわからないが何らかの手段で秋さんは早く移動する手段を持っているらしい。

なんとなく視線を感じて肩に乗っているフォウくんの方を向くと、もの言いたげな目でこちらをじっと見ているような気がした。

………うん、そうだ。 このまま逃げだすのは多分違う、わたしは何だか、……そう思った。

 

「――わかってるよフォウくん。 マシュを助けに行こう!」

「フォウ!」

 

そういってわたしもフォウくんを片腕に抱いてドクターの反対側から秋さんの腰に抱きついた。

 

「まさかボクたちに付いてくるつもりなのか!? そりゃあ人手があった方が助かるけど……ああもう、言い争ってる時間も惜しい! いつわくん、早く連れてってくれ!」

 

「はいはい、落ちないようにね」

 

そういうと身体がふわっと浮いてジェットコースターに乗ったかのように視界が後ろに流れていく、高速で移動し始めて髪が後ろに靡いた、なんだこれ怖い! どうなってるの!? いきなりの理解不能な状況に秋さんにぎゅっと抱きつき、腕に抱えたフォウくんが潰されて「むぎゅ」っと悲鳴を上げた。

 

「うわぁぁぁぁぁ! 原理は聞いたけど、やっぱ怖いぞこれーーーーーー!」

「声がでかい…」

 

ドクターが悲鳴を上げて、耳元で叫ばれている秋さんは五月蝿そうに憮然としていた。

 

4、

蒼天が人の心に希望をもたらすとするなら、吹雪が止む気配のない場所にいる現状は希望とは無縁なのであろうか?

白い結晶はなおも嵐のような風と共に吹きすさび、周囲を覆い尽くさんとばかりに建物の壁に叩きつけられ続けていた。

荒れ狂うただただ白い景色に時々交じる他の色が雪以外のものがあるという証明だった。

 

そんな風景をただ窓からじっと眺め続ける黒ずくめの少年がいた、名を『秋いつわ』。

いわゆる転生者と呼ばれる神と言う名前の超越存在に見初められた人間の一人である。

 

生前のことは何も覚えていない、山深い場所で特殊な技術を持つ人間たちが作った集落で育ったいわゆる『山育ち』といわれる環境で生を受け、物心がついた頃に自分が『そう』と気づいた、否、思い出した。

生来的に茫洋(ぼうよう)とした捉えどころのない性格だったので周囲から変化に気づかれなかったが、思い出してからずっとあることばかり考えていた。

 

「型月世界のどの作品に転生した?」

 

TYPE-MOONは『月姫』の外伝である『MELTY BLOOD』から入って『月姫』、『月姫PLUS-DISC』、『歌月十夜』セットの『月箱』、『Fate/stay night』、『Fate/hollow ataraxia』、『空の境界』etc と一通り経験済みの歴戦の型月ファンだったが実際に行くことになるとは思っても見なかった。

 

能力やキャラクターは好きだが生きるのには難易度が非常に高い世界なのだ『ここ』は。

なにせ後に世界屈指の実力者になる特殊な才能の持ち主である主人公、

『月姫』の『遠野志貴』、『Fate/stay night』の『衛宮士郎』。 

この二人でもゲーム版だと死にまくってバッドエンド劇場が開けるレベルである。

 

下手な才能があるとみんな大好きケイネス先生みたいになるので、モブとして穏やかに生きればいいと思うかもしれないがモブも登場すると容赦なく死ぬので、関わるなら『幸運EX』のスキルでもないと安心できない。

単に才能だけでなく幸運と常人離れしたメンタルがないとこの先生きのこれない世界である、(奈須)きのこ(創造神の名前)だけに。

更に言うとモブとして生きるのには山育ちの時点でも厳しいのだが、一番の問題は……。

 

「うーん、この顔じゃ絶対無理」

 

鏡に映る顔を眺めて呟いた、そこに映るのは見るものを陶然とさせる天工が作り出したとしか思えない月輪玲瓏(げつりんれいろう)とした美貌の持ち主がそこにいた。

あらゆる者を魅了する美貌と1000分の1ミリのチタン鋼を操る魔界都市ブルースの主人公、『秋せつら』の容姿である。

古い作品なので知らない人がいると思うのでわかりやすく言うと『HELLSING』に登場するウォルターの元ネタである。

……『HELLSING』もちょっと古いか?

 

『輝く貌』『魔貌』と言われる美貌で人生狂わされたディルムッドもびっくりの顔で普通に生きるのはどうあがいても無理ゲーなので、なぜだか里で伝わってる妖糸の技を磨きまくって必殺な仕事をする家業を続けてコネを広げ情報ネットワークを形成して。

「どの作品に転生かわからないけど知ってる原作の要素が出たら回避すればいいじゃん!」と思い至り。

妖糸の腕を磨き続け(転生者補正なのかやはり天才だった)、早十数年。

 

 「ようこそカルデアへ。歓迎するよ。」

 

南極大陸にある人理継続保障機関フィニス・カルデアに就職しました!

……なんでさ?(正義の味方感)




淫獄都市ブルースから独立しましたよろしく。


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続・悪性隔絶魔界都市<新宿>-序章-(Ⅱ)

『もしも特異点Fで呼んだサーヴァントが○○だったら』


虹色の輝きと召喚用に設置した盾が円を描き光を放ち力が集結し何かが呼ばれようとしていた。

「よっし☆5サーヴァントだ!」
「☆5?」
「メタネタ乙」

ガチャガチャー!と踊りを舞いながら何か呪文を唱える藤丸立香(彼氏いない歴=年齢)。
命尽きようとする瞬間に手を握ってくれた憧れの先輩を困った顔で見つめるマシュ・キリエライト(かわいい)。
そして何がでるのか興味深そうに見守る秋いつわ(超絶美形転生者)。

そして光が集結して何者かが現れた。

なんという見事な肉体!
武人などという言葉では物足りぬ!
超人にして軍神!

「百年前の民も百年後の民も神州無敵と問われて答えるのは麻呂の名前だろう」

■■■だった。





「ますたぁ、世に『神州無敵』と称される(くだり)血眼(ちまなこ)にしておろがむが良い」

セイバーのサーヴァント■■■がそういい黒い騎士王の前に一歩踏み出した。

「卑王鉄槌。極光は反転する。光を呑め!約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)!!」

一目で尋常ではないサーヴァントだと判断し最初から宝具を開放し、放たれた黒く染まった極光がこちらを切断しようと迫ってくる。

「最強の聖剣の真名開放だ! なんとかしてかわさないと!?」

慌てるロマニの声を耳にしても、一切動じることもなく■■■は落ち着いて何かを迫り来る光に投げた。

「も、■■■卿大丈夫ですか!?」
「安泰じゃ、我が武器である火薬を詰めた犬を投げ入れ発動した壊れた幻想によって極光を四散させたゆえ」
「ふぉうふぉッ(容赦ないなッ)!?」

宝具が通用しないとみるや黒き騎士王が魔力放出で強化された聖剣で首狙いの斬撃を放つ。
その剛剣の前ではいかなるサーヴァントでさえも無惨に首を切り落とされると思われたが……。

「ば、馬鹿な!? 」
「首と顎で白刃取り!?!?」

鍛え抜かれたという言葉では言い表しきれない鋼の筋肉で首と顎の間に聖剣を挟み見事に死の一撃を食い止めた!
そのまま首をあげて受け止めた刃を離した瞬間に騎士王は後ろに跳んで最大限に距離を取る。
あまりにもありえない光景を自身で体感して物語に謳われる歴戦の剣士である騎士王でさえも冷や汗が止まらない。

「ご無事ですか!」
「押すか引くかしなければ斬れぬ、安泰じゃ」
「もう全部このサーヴァント一人でいいんじゃないかな?」





「びえっくしょん!」
「イヤやわぁ、茨木風邪ひいたん?」
「なにやら寒気がするぞ……」

羅生門で茨木童子はこの先生きのこれるのか!?


『もしも特異点Fで呼んだサーヴァントが『衛府の七忍』の『桃太郎卿』だったら』


前回までのあらすじ

 

藤丸立香♀がカルデアに入館しました!

カルデアが爆破されました!

遡ること数年前に転生者の秋いつわくんがカルデアに就職しました!

「なんでさ」

 

1、

あの人を初めてみた時のことはよく覚えている。

まだまだ短い人生の中でこれ以上に綺麗なものをこれから先に見ることがないだろうと確信できる人だった。

驚いたのはそれなのに彼は自分を飾らず自然体でなんというか――自由だった。

ある日たまたま二人だけで話す機会があったので彼に直接聞いてみた。

日常の中にあって突き抜けて特異な『モノ』を持っているのにどうしてそんなに気取らずにいられるのか。

 

『顔については会う人によくいわれるけどそれが当たり前なんで気にしたことはないかな』

『周囲と自分との違いとかは気にならないんですか?』

『うーん、同じぐらいの顔面偏差値の友人が昔一人いたし』

『貴方と同じくらい綺麗な人間が他にいるんですか!?』

『なんかいたね、従兄弟も仮面つけてるけど同じような顔してるんじゃない?』

『世界は広いですね……、やはりご両親も同じぐらい綺麗なんですか?』

『普通だった気がするけど昔の話なんで覚えてないかな』

『あっ、……すいません悪いことを聞きました』

『いや別に、よくあること(フィクションのキャラの家族構成には)』

 

 

我ながら単純で呆れる。

この上ない綺麗な顔で強烈に惹かれるだけでなく。

自分と違い特別な『才能』を持っていても周囲の期待や羨望をどこ吹く風。

ありのままに揺るがずにただ自分らしくある姿に私は……。

 

「デュエルだキリシュタリア、決着をつけよう!」

「ほう、私にデュエルを……受けて立とう!」

「開始の合図をしろぺぺ!」

「わかったわ、……デュエル開始!」

「先行は貰った、アンタップ、アップキープ、ドロー!」

「MTGかよ!? そこは遊戯王にしろよ!」

 

いつわとぺぺとキリシュタリアの三人の奇行にカドックがツッコミを入れていた。

先日カドックは三人に面白半分に性転換する薬を飲まされて(その後対価として魔術の研究を手伝わせていた)

ダ・ヴィンチに同類を見るような目で見られたりしていた。

そんな目にあっても相変わらず三人組に関わろうとする所にカドックの人の良さが垣間見えていた。

 

私とマシュみたいに距離をとって見るか、この場から足早に去った他の三人の様に関わらないようにすればいいのに。

「これが友人同士のやりとりですか、なるほど…」とマシュは興味深そうに目を輝かせている。

オフェリアはもう一度視線をマシュから三人に変えて遠目に眺めながら口元に柔らかい笑みが浮かんでいた。

これが在りし日のAチームが過ごすありふれた日常の光景である。

 

 

2、

 

前略、お袋さま元気でしょうか? 

仕事場で知り合ったDrロマニという人物によると(ガチャのし過ぎで)お金に困っていたので二つ返事でOKして就職した人理継続保障機関フィニス・カルデアフという組織は人類が絶滅するという結果を観測してそれを回避するということを目的に結成された国連承認の団体だったようです。

 

正直胡散臭さ大爆発ですが今更気が変わったので帰りまーす(^^

といって帰ることも出来なさそうなので社会人へと一歩を踏み出そうとしたのですが。

来てそうそう爆発事故というトラブルに襲われ、知り合ったマシュ・キリエライトという少女が巻き込まれて瀕死の重傷を負いました。

 

その時にわたしが出来たこと言えば彼女の手を握って「大丈夫だよ」と繰り返すことしか言えませんでした。

そんな無力なわたしが気がついたら冬木という街に居ます。

炎上する都市の中でおちこむこともあるけどわたしは元気です。

 

『なにをやってるんだい立香君?』

「遺書を書いてます」

「ふぉう!?」

『縁起でもないよ!?』

 

 

そう言って明かりのない和室の机の上にあった便箋(びんせん)の用紙に筆ペンでつらつらと文章を書いていた立香は顔を上げた。

小説投稿サイトで低評価を貰ったことのある程度の文章力なので当然遺書書きなど知らないのでかなり適当である。

なお当時書いていたジャンルはボーイズがラブっているよくあるジャンルであった。

 

「死ぬつもりはないけど遺書を書く機会ってないので書いてみようかなーって」

 

HAHAHAと陽気な声をあげてぽりぽり頭を掻いてから持っていた筆ペンを置いて立香はフォウの頭を撫でた。

 

「良ーし、よしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしいいねいいね!よしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしいい子だフォウくん」

「ふぉ!」

「それで霊子転移(レイシフト)でしたっけ? タイムスリップしてここにいる理由は」

 

今いるのは西暦2004年の冬木という地方都市、そこにある武家屋敷の一室である。

 

『そう、難しい話をするとそこは"特異点"と呼ばれる正確な時間軸から切り離された場所になっているんだ。 

通常の時間旅行よりは簡単に出来るとはいえコフィンなしでよく意味消失に耐えてくれたよ。

大体のことはわかってくれたかい?』

「所々黒歴史(ちゅうにびょうじだいのあくむ)を思わせるワードが出てくるなぁぐらいにしかわかりませぬ!」

 

きっぱりと答えた。 

あまりにも堂々とした態度は清々しく。

爽やかさすら感じた。

 

『ええー!? いやでも、そこは理解してもらわないと』

「大丈夫だ、問題ない」

『それダメなやつ!』

「大丈夫だよドクター。 わたしも、これから頑張っていくから」

『よくわからないけど最期のお別れっぽい台詞はやめてくれ!』

「冗談はさておいて細かい事情はともかくわたしは生きる為に全力で頑張るだけです」

「――うん、まあ、そうだね。 いつわ君もレイシフトに成功してそちらに向かっているんで合流してなんとか頑張って生き残って……!? マズイ立香君逃げてくれ!」

 

ふんすと気合を入れる立香を見て一瞬呆気にとられたがロマニは納得したように頷いた。

しかし次の瞬間に慌てて声を荒げて空間に投影されていた画像が途絶える。

 

 

「ドクター……? ドクター!! 応答してロマァァーーーーーーーーーーーーン!!」

 

ガシャン!!

 

唐突に切れた通信に向かって呼びかけるが反応はなく。

ステルスゲームの無線のような声を上げてしまったがその直後。

屋敷の入口付近から大きな音によって打ち消された。

何者かが侵入してきたのだ。

身を隠すものは部屋になにもないのでフォウを抱えて部屋の片隅に退避する。

 

(うわーい、まるでホラー映画見たいだぞぅー……怖ッ!)

 

息を潜め、身を隠してフォウをぎゅっと抱きしめて部屋で縮こまって侵入者をやり過ごそうとする。

ギシギシと足音が響く音が自分の方に近づいてくるのがわかった。

 

(ひぇぇぇぇえ! めちゃくちゃ怖い! ダンボール箱かステルス迷彩が欲しいよー!)

 

気分は蛇の名前を持つ潜入工作員が見つかってアラートが消えるのを待つソレである。

ゲームや映画で見るのと実際に経験するのとでは怖さが段違いである。

「こんな経験は正直したくなかったよーひーん!」と立香は嘆いた。

足音はすぐそこまで迫っていた。

 

          

そして足音が止まった瞬間に嫌な予感がして全力でその場から離れる。

野生の本能とか直感とかそういうのが全力でわたしに逃げろと言っている!

 

ゴッ!!

 

轟音と共に障子が破壊された。

自分のすぐ上を飛んでいった障子の枠に肝を冷やす。

恐怖を噛み殺してフォウを抱えて脇目もふらずに先程まで障子があった場所に向かって全力で走る。

今まで居た部屋は縁側なので眼の前にはすぐ庭がある。

うまく行けば障子を破壊した相手がこちらを視認する前に逃げることも可能――。

 

(嘘、もう一体!?)

 

敵性存在(エネミー)をやりすごしたと思ったら新しい敵性存在(エネミー)がいた。

後ろにいる個体に比べると小柄だが自分を殺すには十分すぎる相手だと分かった。

いつか動物園で見た腹を減らした時のライオンなんて目じゃない威圧感を感じる。

 

「は、はぁい調子いい? あ、あいむゆあー…」

 

息を止めた直後に全力疾走したせいで一瞬酸欠で頭が真っ白になったがすぐに大きく深呼吸をして友好的な挨拶をしてみた。

返答は無言の攻撃であった。

 

(あ、ダメだこれ)

 

髑髏の仮面をつけた怪人の蹴りが迫るのをスローモーションで感じた。

これが噂の走馬灯が流れる前兆というやつかと冷静にどこか他人事のように感じる自分がいる。

視線の端で何かがわずかに銀色の光が煌めいた気がした。

そして黒い足が自分に当たる直前で攻撃が弾かれた(、、、、)

 

「走って」

 

決して大きい声ではないがよく通るとても綺麗な声が聞こえた。

その声に命ぜられるまま周囲を咄嗟に見渡して土蔵を見つけてそこに向かって走った。

バタンと大きな音をたてて扉を開き、そして素早く振り返って閉めた。

咄嗟に閂を見つけてかける。

ハアハアと暗がりの中で自分の呼吸音が響いた。

連続で全力行動をしたせいで息が荒い。

フォウくんが自分の腕から離れて心配そうにこちらを見ている。

 

(……全力で逃げてきたけど、これ、居場所バレバレで逃げ場がないよね?)

 

ふらふらと扉を離れて反対側の壁によりかかりながら呼吸を整えて気づく。

 

ガッ!! ゴッ!!

 

その考えを肯定するように扉を思いっきり殴りつけるような音が響いた。

一撃ごとに閂が曲がっていくのが目に見えて分かった。

 

ドガッ!!

 

強烈な一撃が閂ごと壊れた扉が飛んできた。

部屋の片隅に逃げていたことで難を逃れたがこちらを見つめる怪人二体。

逃げ場もなく、状況を改善するような一発逆転のアイディアは何もない。

もはや乾いた笑いしか出ない。

 

「これはもうだめかもわからんね」

「ふぉーう…」

 

立香は体格が大きい方の怪人が拳を振りかぶったのを見て。

腕に抱えているフォウを庇うべく背を向けて体を固くした。

 

ゴッ!!

 

大きな打撃音が響いたが予想していた衝撃が一切こないことを疑問に思い目を開いた。

眼の前に居たのは――

 

「マスター、よかった間に合いました。 サーヴァント、マシュ・キリエライトこれより――」

「マシュ! 何故マシュがここに!? 怪我は? 生きてたのか、自力で治療を? マシュ! うぷッ」 

「(無言の顔パン) ふぉ、ふぉうふぉー(訳:落ち着け、決め台詞を邪魔するな)」

 

カルデアで知り合った少女マシュ・キリエライトであった。

爆発により死にかけていた彼女は再開したい今、大きな盾で攻撃を防ぎ、立香を護る英霊(サーヴァント)を自称していた。

壊れた土蔵の隙間から降り注ぐ月の光に照らされる彼女はまるで物語の英雄のようだった。

 

3、

「僕だけ置いてくの酷くない? いや、いいけどね」

 

屋根の上に立ついつわは飛び上がって遠くに移動する立香とマシュの姿をぼけーっと見送った。

アサシンらしきサーヴァントの攻撃から立香を糸を使って護ったのは彼である。

立香が土蔵に逃げた隙に戦闘態勢を整えていたら勢いよくこの武家屋敷に駆けつけたマシュに気づいた。

 

サーヴァント特有の直感からか立香の大まかな位置を把握していたマシュは大きな音がする方向へ移動して土蔵の中に居る立香を見つけた。

新手の存在を迎撃しようとする敵性存在(エネミー)二体をいつわは糸を使い捌き。

二人が合流するのをサポートしていたのだがマシュはそのまま立香とフォウを抱えて飛び上がって急速に場から離脱していた。

多分いつわが居たのに二人共気付いていないのだろう。

 

 

爆発事故に巻き込まれた人員の応急処置を終えたカルデアスタッフは秋いつわを特異点F。

つまり西暦2004年の冬木に送り込んだ。

特異点の解決と強制的に霊子転移(レイシフト)に巻き込まれた藤丸立香とマシュ・キリエライトを救出ためだ。

 

レイシフト適正と戦闘力はAチームでも随一ではあるが前所長の肝いりかつ魔術師としては素人の彼に対する現在の所長との仲の悪さは有名なのでAチームメンバーでありながらボイコットしてたことも緊急時故に不幸中の幸いとして唯一の無事なマスターとしてお咎め無しである。

 

オルガマリーへの対応も素顔でいればどうとでもなったのだが顔を隠してカルデアで過ごす日々をおくった甲斐があって当初の目標であった爆弾回避に成功である。

もっともここからが長いのだが……。

 

『いつわ君、聞こえるか! 先程立香君との連絡が途絶えた!!』

「はいはい聞こえてますよー、彼女は変な格好をしているキリエライト嬢が抱えて安全地帯へと離脱したよ」

『マシュが!? 一体全体どういうことなんだい!?』

 

いつわは飛んできたダークを糸で弾き飛ばす。

こちらに気付いたアサシンのサーヴァントによる攻撃である。

 

「悪いけど立香嬢を狙っていた敵性存在(エネミー)がこちらに気づいて攻撃を仕掛けてきたので一旦切るよ。

――さて、しょうがないレオナルド・ダ・ヴィンチ作の糸と身につけた技がサーヴァントに通用するか試してみるか。……ダメなら逃げよう」

 

そう言って指を折り曲げて糸を放ちいつわは戦闘を開始した。

 




淫獄都市ブルースで募集したアンケートにて。
投票数第一位を得たことを記念して第二話を投稿。

連載になったので場所を移しました。
投稿速度は遅いでしょうが今後もよろしくおねがいします


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新・悪性隔絶魔界都市<新宿>-序章-(Ⅲ)

転生担当の神(年齢不明)は語る。

神「話をしよう、あれは今から36万・・・いや、1万4000周前だったか
まあいい 私にとってはつい昨日の出来事だが、
君たちにとってはたぶん明日の出来事だ」





「拝啓おふくろ様、今年もまたジューンブライドというイベント業界に踊らされる連中の結婚報告が届きました。
たまに知己に会うと『ウチの彼女がさー!』『嫁がさー!』『子どもがさー!』と愚痴風自慢をしてきて非常にウザいです。

かー! アイツラマジで死なないかなー! 
宝くじでも当たって絶頂まっただかなかで急死して、残った家族が路頭に迷わないように財産とか後始末キッチリした状態になって死なないかなー!!!
……残される家族が可愛そうだからやっぱ死ぬの無しで。
あー! マジであいつら体を伸ばしてる時に足でも攣らねーかなー!」

神「(うわぁ…)そんなんで大丈夫か?」

「ああッ!? 色々やりました…。やったんですよ!
これでもモテるために必死に!  その結果がこれ(非モテ魔法使い)なんですよ!!

ジムに通って! 話題作りのために本やTVや映画などの情報集して! 
趣味でもない流行の音楽を聞いて! 
興味のないアイドルユニット全員の名前と顔を全部覚えてプロフィール暗記して!
それなのに今はこうして女っ気が砂漠みたいな人生を歩き終わってる!
これ以上何をどうしろって言うんです!?  何と戦えって言うんですか!?」

神「お願い話を聞いて」

「・・・・・・モテたい! この狂おしいまでの渇望、決して女性にはわからない!
モテたい!! モテたいんだよ!! この願いが叶わぬならもはや生きていてもしょうがない

そうだ、腹を斬ろう! この熱い血潮を持って世界中のリア充達への異議申し立て、
及び呪いになるようにここに辞世の句を刻みます(チャキッ)
『モテたいな あぁモテたいな モテたいな』 フンッ! (ザシュ)」

「介錯しもす!」

そのまま首を刎ねられた。

「非モテを笑うたこと許せ!」
「合掌ばい!」


神「死んだ後に神に会っていきなり切腹とかないわ(唖然) 
ってかあんたら誰???」
「薩摩の狂犬ども。 獣とは貴様らの如きを言う!」
神「いや、お前も誰だよ!」





神は言っている、ここで死ぬ定めではないと


神「――そうしてモテるように生まれ変わったのがお前だ!」
いつわ「嘘だと言ってよバーニィ!
――ああ、そういえば、前にもこの話をしていたな」
神「然り。然り。百億回も繰り返した」


というわけでいつ新宿にいけるかわからない
暗闇の荒野を疾走する悪性隔絶魔界都市<新宿>-序章-
はーじめーるよー


「それじゃあシミュレーションを開始するよ」

「はーい」

 

現在いつわはカルデアで初めて戦闘訓練を行うべくシミュレーター室に居た。

シミュレーターを稼働させるカルデアのスタッフ達は皆サングラスやバイザーなどをつけていた。

そうでないと網膜にその美貌が焼き付いて脳内麻薬の成分と化したように記憶野の一部に運ばれ、長い間、もしかしたら一生離れてはくれないのだ。

 

「おー、実体化した」

 

目の前に現れたゴーレムにいつわは感嘆の声をあげた。

普通の人間なら攻撃が当たったら一発で昇天しかねない質量のゴーレムをみながら本人は『リアルソリッドビジョンだ、後でデュエルが出来ないか聞いてみよう』と呑気な事を考えていた。

 

 

「大丈夫なんですかあの子?」

「本人は大丈夫だと言っている」

 

カルデアの職員がすぐ側の同僚に尋ねた。

この世の住人とは思えない程の玲瓏な顔を持つ少年のことである。

一目で尋常じゃない人物だとはわかるが魔術師ではないと聞く。

いくらシミュレーションとはいえサーヴァントなし。

しかも相手は立ち回り次第でサーヴァントすら不覚を取りかねないゴーレムだ。

普通に考えると逃げることがせいぜいで倒すことなど出来ないはずだが?

 

シュミレーションが開始していつわにゴーレムが襲いかかる。

それに対していつわは「わー、すごーい、たーのしー!」と棒読みしながら棒立ちしたままであった。

他の職員が本当に大丈夫なのかと眉をしかめた時にそれは起きた。

殴りかかろうとするゴーレムが腕を振りかぶった次の瞬間にその腕が後方に吹き飛んだ。

ゴーレムに対して起きた奇妙な現象に職員たちは目を開いた。

機材の方を見ると一切の魔術反応は感知されていない

 

「おー、すごい、下手したら反応しないかもしれないと思ったけどちゃんと出来てる」

 

それを成したであろう魔貌の持ち主はいっさいその場から動いておらず何かをしたようには見えない。

いつわは動物学者が希少動物の行動を観察するようにゴーレムを興味深そうに見つめていた。

これが生物であるならその得体の知れない攻撃に慄き逃げ出す準備をしたかもしれないが

命ぜられるまま行動するしかできない哀れなゴーレムはそのまま逆の手で殴りかかろうとして、身体を十字に薄紙にハサミを入れたかのように簡単に裂け崩れ落ちた。

職員達からするといつわがただ棒立ちしているだけでゴーレムが自壊したようにした見えない。

 

 

その姿を見て職員は「美」という漢字の由来を思い出した。

丸々と肥えた大きな羊を神への供物にした姿だという説がある。

羊を頭から真っ直ぐ真っ二つに割いて広げた状態にするらしい、それを表わしている字なのだと。

ゴーレムの姿はさながら現世に降り立った神に対して生贄に捧げられた供物にも見えた。

 

 

いつわはシミュレーションが終了したのを確認するとそのままスタスタと部屋から出て行き職員達に声をかけている。

魔術師でなくともカルデアの一員として認めることに否を唱えるものはすでにいなくなった。

しかし、いつわの背中を見て職員は思った。

醜悪な怪物らしい怪物などと違い危険な存在とわかっていても目の話すことの出来ない魂さえも虜にしてしまう、とてもとても綺麗で。

――残酷な、あの姿。

あの少年は凡庸な自分のような人間などでは理解できないぐらいの怪物なのではないのか?、と。

 

(シミュレーターでどうやって遊ぼうかなー! 

いや、待て私的利用だと文句言われそうだな説得する上手い手段は……)

 

秋いつわは顔と技量に似合わず内面はライトなオタクであることをカルデアの職員は知るはずもなかった。

これはカルデアでジャパニーズサブカルチャーが流行る前の話。

流行った後にシミュレーターを最も使用したのはいつわであるのは余談である。

 

 

 

1、

秋いつわが使う武器は特殊鋼で作られた太さ1000分の1ミクロン、ナノサイズだ。

風にそよぎ、軽さはほとんど感じられず、存在していることすら認識できないような糸である。

だが秋いつわの神業ともいえる指さばきによりチタン合金でさえ斬断し、数ミリから数キロを移動してのける。

血を這い、壁を伝い、密閉された大金庫の隙間から忍び込み、接触した相手の情報を伝え、緊縛した者を激痛地獄に落とし、死者さえも操り人形として自在に操作するのだ。

 

「筋骨隆々で拳を武器にすることからおそらく一体は『怪腕のゴズール』、うーん、もう一体は誰だろ?」

 

 

立香とマシュが戦場から離脱したことにより戦闘に突入したいつわとサーヴァント。

少々曖昧な記憶だと特異点Fの冬木で行われた聖杯戦争のアサシンクラスは『呪腕』のハサンだった気がするが複数の個体を使役するとなると『百の貌』のハサン、あるいは『百貌』のハサンであると推測される。

自分という異物が居るのでこの程度の差異はいつわの想定内に収まっている。

 

いつわの眼の前に拳ダコが見えるぐらいの距離まで拳が迫る。

その拳がいつわの命へと届いたと相手が認識した刹那、いつわの体が糸で引っ張られ移動する。

すぐ横を通り過ぎる巨漢を切り裂かんと指に意識を向けると冷たい感触が頭に向けられているのを感じ、意識を攻撃から防御へと切り替える。

するとすかさずこちらの頭部をめがけて弾丸もかくやという速度で短剣が飛んでくるのを妖糸を使い弾く。

 

 

その巨体に見合った人体を容易くしうる破壊力を持つ巨漢とその陰に隠れながらこちらが攻撃を回避するタイミングで生まれる隙を狙い短剣を投げる痩せっぽち。

 

(デカイ方の攻撃を食らう気は全くしないけど回避して反撃に移る前にしてくる牽制の投げナイフで、こちらの攻撃をする『機』を与えないコンビネーション、相手の立ち回りが上手くて嫌になるね)

 

秋いつわは魔術師ではない、魔術の才覚はあるらしいが本人に命をチップに根源に辿り着くという野心もないので最低限の暗示や人払いだけは学んでいるが正直素人に毛が生えた程度である。

魔術師としての実力はカルデアの中でもダントツの最下位である。

 

だが山奥に存在する退魔の血を引く特殊な技術を継承する一族の出であり、その中でも歴史に残る天才と称された天賦の才は圧倒的でカルデアのエリート中のエリートたちが集められたAチームに所属するに足る実力であった。

その戦闘能力は三騎士に劣るとはいえ対人戦闘に特化したマスター殺しのクラスのアサシンと二体一で妖糸のみで渡り合うその神業、否、魔技とよぶべき恐るべき技量であった。

――しかし。

 

(ぜんぜんあたんなーい)

 

微細に指を動かし見えざる刃を縦横に振るうが滑るような動きでアサシン達は避けた。

いつわ隙をうかがい何度か訪れたチャンスに反撃を試みるが躱されている。

暗殺手段に似たような技術があるのか?

視線や攻撃時の殺気や呼吸から読んでいるのか?

対人特化のアサシンクラスといつわの戦闘手段が噛み合いすぎているのか? 

本来なら攻撃手段もわからない筈の妖糸の攻撃を何故か避けられていた。

 

(やっぱりサーヴァントを倒すにはちと使える技の数が足りないなー経験不足、レベルが足りない!)

 

先祖返りをした混血、先祖代々の独自の術を使う術者などを相手にしてきたいつわだが生まれ持った天賦の才と類まれ糸を使った戦闘方法により同じ技を使う同輩以外で苦戦した経験がまったくないため本人の想定以上に苦戦を強いられていた。

現在のいつわでは攻撃と防御を同時にこなす技が使えないため否応なしに長期戦を強いられていた。

このままでは自分の技術が通用しない事実に焦ってしまい調子が崩れ緊張と疲労の果てにその命を奪われてしまうだろう。

『普通』なら。

 

(相手は短剣を生み出すんじゃなくて使い回すタイプだから、その内弾切れするだろう、避け続けてれば反撃のチャンスがくるだろうからじっくり行こうかな)

 

 

秋いつわの戦闘スタイルは針に糸を通すなどという次元では語れない精緻にして精妙な技であらゆる事態に対処する妖糸、そしていかなる時も自身のペースを崩さない図太さである。

人間の命など容易く奪うサーヴァントを相手にしてもまったく揺るがない精神性こそが秋いつわの強みである。

そして秋いつわの最大の長所は……。

 

バキィーン!!

 

まともに食らったら人体など柘榴のように爆ぜるであろう巨漢の鉄拳を普段どおりの顔で避け。

――ようとして顔に着けていたバイザーが破壊された。

思考の海を漂っていたためバイザーを着用しての戦闘であったのを忘れていたのだ。

一瞬足を止めてその生まれた隙を突くようにいつわに投げられた短刀を妖糸で捌く。

そしてアサシンの二人は『見て』しまった、秋いつわの顔を。

 

 

カルデアのサーヴァント第三号にして技術局特別名誉顧問にして技術開発部部長である人類史上最高峰の天才、『レオナルド・ダ・ヴィンチ』が自分の作ったどんな作品、それこそ自分の代名詞である『モナ・リザ』さえ、その美しさには遥かに及ばないと歯噛みする隔絶した美。*1

たとえどんな苛烈な生を送り、死後も英霊として使役され幾万年の月日を得たとしても。

絶対にその美しさだけは忘れることがないと言い切れる美の結晶がここにあった。

 

見よ! その顔を見てしまったアサシン二人がありえない美を目にしたために動きを止めている。

聖杯に汚染され思考が濁っているが暗殺のプロフェッショナルであるアサシンすらその使命を忘れてしまうのだ。

その美を目撃した対価とでもいわんばかりに若き死神は二体のサーヴァントの首を刈り取った。

秋いつわ、その美しさ、技倆、正に魔人と呼ぶに一切の不足なし。

 

「『バイザーがなければ即死だった』、……うーん、いや、『顔の差かな』の方か?」

 

サーヴァントを倒した直後に言う決め台詞を迷っていた。

実力や風貌はともかく人格の方は魔人と呼ぶには程遠いのが秋いつわである。

 

 

2、

「聖杯戦争、ですか?」

「そうよ、この街の破壊は災害でなく人為的なもの。 となれば聖杯戦争が原因と考えるのが妥当だわ」

「say hi戦争? なんだか馴れ馴れしいテンションの戦争ですね」

「うん、貴女はちょっと黙ってなさい。 簡単にいうとあらゆる願いが叶う『聖杯』を巡っての殺し合いのこと、実はこの冬木では2004年に行われたという記録が確認されている」

「ああ、その通りここ冬木で聖杯戦争は行われていた。 もっともオレ達の聖杯戦争は途中で狂っちまったけどな」

 

謎の衣装に身を包んだマシュに抱えられたまま死地から脱出した立香は逃げ回っている所長であるオルガマリー・アニムスフィアを発見、そのままマシュが敵を撃破して救出、そして立香とマシュは冬木の事態についての考察を聞いていた所を鎌を持った女性のサーヴァントに襲われ絶体絶命のときにキャスターのサーヴァントと名乗る人物に助けられていた。

 

「ある夜を境に街は炎に包まれ人間は消え、サーヴァントだけが残りオレ以外はみんなやられちまった」

「え、それっておかしくない? ドクロの仮面をしたサーヴァントや先ほどの鎌を持ったサーヴァントがいたけど」

「妙な話でな、セイバーに倒された連中は奴の手先になった。 つまりだ、セイバーを倒さなきゃこの聖杯戦争は終わらないってことだ」

 

話を聞くところによるとこの青いローブを纏ったケルトの魔術を使うサーヴァントはケルト神話の大英雄であるクー・フーリンがキャスタークラスで呼ばれた存在らしい。

「槍があればなぁ」「獲物がコレ(杖)じゃなくてゲイボルグなら問題なく一人で片付いたんだけどなー」と本人はランサークラスに未練たらたらであった。

 

「へー、なるほど、よくわからんがボスを倒さなきゃゲームはクリアできないと」

「貴女なんでそんな理解力でカルデアいるのよ?」

「回しますか……じゃない、海外での仕事に興味がありますかYES or NOのアンケートでYESに○をして気がついたらカルデアに」

「えぇ……、なにそれ」

「まずいですよ所長、訴えられたら100%負けます!」

「そ、そんな部下の暴走のせいでカルデアの名誉に傷が! 助けてレフ!?」

「いや、別に訴えませんけどね。 でも……そのためにはわかるでしょ?」

 

そう言った立香は「うへへ、これで天井まで回せる」と人類悪顕現とテロップが出そうな乙女がしてはいけない顔をしていた。

ちなみにガチャは自腹派なのでお金を要求しているのではなくカルデアに入館した際に機密情報の保持のため外部と連絡を取れないようにとりあげられた携帯を返せと言っている模様。

そこにいつわから連絡を切られたために立香の方へと回線を繋げて見ていたロマニが会話に加わる。

 

『悪いけど立香くん、今は外の世界が滅んでるからソーシャルゲームはできないよ』

「え"。 ……わたしは生きる意味をなくしたorz」

『そこまで!? 生き残るために頑張るっていってたじゃないか君ッ!』

「ガチャが出来ないならもうゴールしてもいいよね……」

『いやダメだよ! 諦めたら試合終了だよ!』

 

FXを溶かした人並みにテンションがガタ落ちして地べたに這いつくばる立香にマシュはおろおろして、所長は呆れ、ロマニは励まし続け、キャスターは「このお嬢ちゃん出るとこ出てるけどまだまだガキだな」とこっそり思っていた。

 

「……思ってたんだけどドクター本当に日本のサブカル詳しいね」

『いつわくんがカルデアで色々流行らせたからねー、所長とか一部の人間以外は結構詳しいよ』

「ほうほう」

『残ってるスタッフは特にハマっている連中だ』

「そっかー、熱い浪漫について語り合うためには戦って生き残らなければいけないのかー」

『そうそう、だから頑張ってよ』

「しょうがないにゃー、ガチャを引くために頑張るゾイ!」

「立ち直ってくれたのはいいけど、なんでそこまでガチャに情熱を燃やせるかわからない」

「ドクターのドルオタ趣味と似たようなもの」

『いや、マギ☆マリと一緒にしないでくれ(キッパリ)』

 

完全に立ち直った立香はドクターとオタ趣味談義で大盛り上がりをし、その姿をオルガマリーは冷めた目で見ていた。

 

「ガチャで得られる射幸心こそ人間の求める幸福の形だということを理解するんだよドクター!」

『エゴだよそれは! ガチャは人間全ての欲を飲み干せたりしない!』

「人間の知恵はそんなことだって乗り越えられる! マギ☆マリにガチャ引かせたりすれば萌えるでしょ!?」

『なん…だと…その発想はなかった……』

「……なにこの茶番」

「よくわかりませんが先輩が元気になったからよいことなのではないでしょうか?」

「盛り上がってるところ悪いんだけどよ、そろそろ移動しようや嬢ちゃん達」

 

そう言って杖で肩をポンポン叩きながら行動を促していたキャスターが視線を急に空に向けた。

 

「どうしたの?」

「……新手、いや違うな、ありゃ嬢ちゃんたちの知り合いか?」

「はい?」

 

そう言われて空を見るが何も見えない、いや、銀色の鎧を纏った人影とバサバサと服をたなびかせる黒い鳥のようなものが見えた。

 

『んん? あれは…そうだいつわくんだ! けどこの反応、なんでサーヴァントと一緒にいるんだ!?』

 

3、

少々時間は遡る。

アサシン達を倒すことに成功したいつわは先程の戦闘で破壊された土蔵跡に立っていた。

感慨深そうに土蔵の内部を見渡すと瓦礫の下にある床にうっすらと魔方陣が存在するのを発見する。

 

「これがStay nightの名シーンが行われた場所だな!」

 

型月作品ファンとして、心境は聖地巡礼する信徒のそれである。

テンションが高まり溢れ出した結果、立香達と合流することも忘れている。

そしてこともあろうに名場面を再現するために呪文の詠唱を始めだした。

 

「―告げる汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い この意 この理に従うならば応えよ、誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者。

我は常世総ての悪を敷く者。

汝三大の言霊を纏う七天。

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」

 

言ってやったぜとでもいわんばかりに暗記した呪文の詠唱をしたいつわは満足気な顔をした。

じゃあそろそろ立香達と合流するかと目を開け足を翻そうとすると魔法陣が発光していることに気付いた。

 

「……え? うそーん、マジ!?」

 

体から急速に力が抜けていく、魔法陣に魔力が吸収されているのだ。

そして魔法陣に光が集まり眩い光が視界を包んでいき、いつわは手で光を遮り目をつぶる。

光が収まり目を開くとと魔法陣の上には凛とした空気を纏った、金髪の髪を後ろで結い上げ、青と銀の甲冑を着た見目麗しい少女がそこに居た。

 

「問おう。 貴方が私のマスターか」

 

その少女は、宝石のような目でこちらをみると凛とした声で、そう言った。

その日、運命に出会う。

*1
「単純な美では及ばなくても私の『モナ・リザ』は至高の芸術品なのは揺るがぬ事実だからね別に悔しくないさ、それはさておきいつわくんちょっと絵のモデルに……え、ダメ?」byダヴィンチちゃん




百貌さんを分身したのに強い、強くない?と思わないでもないですが
サーヴァントは人間では太刀打ちできない(※出来ないとはいっていない)という設定と
妖糸とアサシン鯖の相性が悪い+いつわくんのレベルが低いということでご了承ください。


そういえば追いガチャでグラブルはネツァワルピリと金月二個手に入りました。
FGOは日数ボーナスで2030年、コードキャスト、柔らかな慈愛が手に入りました。

……違う、そうじゃない、そういえばSRチケットあったなと思いだして回したところ来ました杉玉!
けど一つじゃ足りないんですよね先は長いです……。


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小ネタ もしも屍山血河舞台下総国にあの人が来たら

思いついたらすぐ書けたネタ



「私もまだまだ修行不足だ……」

 

勝負有り! 

勝者アーチャー・インフェルノ 巴 御前!  

 

「うわぁあぁぁぁ!! 武蔵ちゃんがやられたぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「アーチャー相手だとセイバーの武蔵ちゃん不利だから最初にオーダーチェンジで控えのランサーと交代すればよかったのに」

「どこに控えいるんだよォ!? ヤバイヤバイヤバイ超ヤバイ! マジヤバイ!!」

「イベント戦なんだから武蔵ちゃんも反転トリスタンみたいに相性不利なしの等倍だったらいいのにそういうのないからなぁ……」

 

先程まで行われた死闘に固唾を飲んで見守っていたが武蔵が敗北したことにより絶叫する立香。

そしてゲームメタな発言をするいつわ。(※これはゲームではないので仲間サーヴァントはいません)

 

「うわぁぁぁぁ! どうするのどうするのどうするの!?!?」

「動揺しすぎィ! どうするのもなにも糸で斬っても死なないから武蔵ちゃんに任せるしかない。

戦闘不能だけど幸いにもまだ武蔵ちゃんは息がある。

魔界都市〈新宿〉で鍛えたから腕は大分あがってるんで僕でも時間稼ぎぐらいはできるから武蔵ちゃんを連れて逃げ……」

 

次の獲物としてこちらに狙いを定めるアーチャーインフェル。

立香を護るため前に立ちふさがろうとしたいつわ。

両名ともに一瞬で『何か』の気配に気付きバッと視線を向ける

そして立香も強烈な気配を感じて二人が向いて方向を遅れて見る。

 

「武蔵もなかなかに強い、が、我が「鬼哭隊(きこくたい)」の魔剣士になるにはまだ未熟」

「何者!?」

「え、貴方は…!?」

 

孝霊天皇皇子(こうれいてんのうおうじ)    吉備津彦命(きびつひこのみこと)

 

「飛鳥時代の温羅(うら)討伐の軍神、桃太郎卿!?」

「え、新手のサーヴァント!?」

「いや、……違う生身だ、英霊じゃない」

「麻呂は時代(とき)の支配者からまつろわぬ民を粛清する使命を行う代わりに置き血により不老長寿を得ておる、現在は徳川に(くみ)しておるゆえ江戸幕府に仇なす逆賊を討ちに参った」

 

あまりの存在感に超常の武とそれを得るために鍛えに鍛えた独自の超感覚を持つアーチャーインフェルノといつわは動けない。

目の前にいる存在はカルデアのサーヴァントに鍛えられて最低限の護身術を身につけた程度の立香でさえわかるあまりにも常軌を逸した武と肉体の持ち主であった。

桃太郎卿は懐から袋を出し、そこから何かを取り出してアーチャーインフェルノの前に差し出した。

 

「来やれ、腹が減ったろう。 麻呂の団子は格別の醍醐味。 嗅ぐもよし、塗るもよし」

「オホーイ! たまらない! むしろこの立香が食べてしまいたい!」

「(糸で調べたけどアレ重度の麻薬が入ってて食べたら最後、桃太郎卿の意のままになってしまうというのは言わないほうがいいんだろうなぁ……)」

 

返答は業火だった。

その憎悪を具現するインフェルノの名に相応しき猛火が桃太郎卿に襲いかかる。

桃太郎卿は炎に包まれるが腕を振るうと炎はその風圧により一瞬で消え去る。

 

「桃太郎卿!」

「石で出来た狩衣(かりぎぬ)ゆえ燃えぬ」

「お尊顔(かお)は生身…」

「炎も肺に入れなければ安泰じゃ」

 

アーチャーインフェルノの大きな薙刀に炎が宿り桃太郎卿を切り裂かんとその刃を構えた。

 

業火(ほのお)(やいば)! 鬼め! 地獄の番犬気取りか!」

「このお爺さん桃太郎卿の連れ?」

「さあ?」

「おお! 神州無敵の玉剣(ぎょくけん)! いよいよ()き払い(たま)うぞ!」

「一目で凄く強いというのはわかるけど不死身の相手を倒しきれるの?」

「桃太郎卿に是非を問うな、不死身の相手を倒すことは桃太郎卿なら出来る、出来るのだ!」

「ア、ハイ」

 

英霊剣豪改め魔剣豪 五番勝負  

吉備津彦命 神州無敵 桃太郎卿  

VS  

アーチャー・インフェルノ 一切焼却 

巴 御前!  

 

いざ 尋常に  

勝負!! 

 

 

「三厳よ、(わし)は今神話を目の当たりにしておる!」

「三厳…、もしかして柳生三厳(通称:柳生十兵衛)のこと? だとしたらこの人は……」

「な、笛とな!?」

「よくわかんないけどこの人、桃太郎卿のこと好きすぎじゃない?」

「おほ! あれがかの桃太郎卿の三つの下僕!」

「エンジョイしすぎだろこの人」

「……そろそろ誰か私の傷の手当して欲しいんだけど」

 

 

『もしも屍山血河舞台下総国に桃太郎卿が来たら』




みんな大好き桃太郎卿シリーズその2。
羅生門よりも屍山血河舞台下総国のほうが衛府の七忍ぽいので書いてみた。
ちょうど魔剣豪の武蔵ちゃんや桃太郎卿の大ファンの宗矩もいるしね!(※同一人物だけど人違いです)
五番勝負になってるけど一人武蔵ちゃんが倒して一人抜けたからあってます。
一体何宗矩が抜けたんだ……。
次に桃太郎卿inFGOやるなら大奥イベかな?


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悪性隔絶魔界都市<新宿>-幕間- とある夢での出会い

──────ふと、目が覚めた。 暗い夜。 家の中にみんなはいない。
一人きりはこわいからみんなにあいたいくて庭にでた。
屋敷の庭はすごく広くてまわり塀に囲まれて。
それはまるでどこかの舞台みたい。

ざあとかぜがふいてすぐに演劇が始まるのかとわくわくした。
遠くでいろんな音がしてる。
街のなかでみんなが楽しそうに騒いでる。
幕はまだ開かない。

一面 まっかになってる街のひろば。
───わからない。
わたしをバラバラにするために見知らぬかめんの人がやってくる。
───よく わからない。
けれど誰かが前にやってきてわたしをつれようと手をひっぱった。
───わたしは子供だから よく わからない。
そのましゅという人はわたしをかかえてとびあがった。
───ほんとうに よくわからないけれど。

意味もなく 泣いてしまいそうだった。
夜空には、ただ一人きりの月がある。

すごく不思議。 どうしていままで気がつかなかったんだろう。
───なんて、ツメタイ───わるい、ユメ。
ああ───気がつかなかった。
こんやはこんなにも。
つきが、きれい──────だ──────

月姫           
Blue Blue Grand Moon.Under The Crimson Order.   
A.D.2001  幻影再演劇場都市 三咲町 





         制作・著作
         ━━━━━
         ■■■■■■


「つきが、きれいだ……ってなんだ夢か」

 

暗闇の中を誰かに抱えられた夢を見ていた立香が目を開くと白い見慣れぬ天井がそこにあった。

天上はまるでラクガキされたように黒い線だらけでその黒い線に触れたらいきなり線をなぞるようにモノがばらばらになる……なんてことはまったくない普通の天井だった。

 

「知らない天井だ!」

 

ろくな大人がいない環境で鬱になってしまった汎用人型決戦兵器の第二パイロットの名言が口から情熱と愛と共に迸り溢れ出した。

いつかは言ってみたい台詞ランキングのナンバー7を言えた満足感に暫し浸り正気に返ると左右をキョロキョロと見回した。

 

「あー、そっかここはカルデアか」

 

ドクターロマ二といつわの二人と話をした部屋と一緒の間取りだった。

違いといえば部屋に漫画やDVDやブルーレイディスク、ゲーム機がないということだけである。

腕を上げてみると白い袖口から支給された制服だと分かった。

 

「んんんんん???」

 

先程から聞き覚えのない低い声が部屋に響いて違和感を感じて下を見ると黒いズボンを穿いているのが見えた。

あれ、ズボンなんか穿いてたっけ?

……いやおかしいなんでそもそも真下を向いたのに胸に邪魔されないでズボンが見えるんだ!?

 

「え、嘘! 胸がなくなってる!?」

 

手で胸をペタペタ触るとそれなりに豊かな膨らみがなくなっていた。

かわりに硬い筋肉の感触が伝わった。

 

「まさかまさかまさか!?」

 

股間を触ると本来なにもなかった場所に柔らかい感触があった。

部屋に置いてあった姿見をみると黒髪の少年がこちらを驚いた顔で見返している

 

 

「お、男になってるぅぅ!?」 

 

「先輩どうしました!?」

 

そういって部屋に白衣を纏って眼鏡をかけている銀髪の少女、マシュ・キリエライトが駆け込んで来た。

 

「大変だよマシュ! 中国の呪われた泉に入った記憶もなく水も被ってないのに変身しているこれは新手のスタンド攻撃かもしれない!」

「ええーと、泉? スタンド…? すいませんよくわからないです、それで先輩いったい何があったんですか……?」

「つまり男になってる!」

「はい? もともと先輩は男性では?」

「なん…だと……」

 

マシュは対人経験が少なそうではあるがさすがに男と勘違いされるとは立香はショックを受けた、ちゃんと胸もあったしけっこう可愛いほうだとちょっぴり……うん、ちょっぴりだけ自惚れていたのにあんまりだ。

 

「う~~ううう あんまりだ…H E E E E Y Y Y Y あ ァ ァ ァ ん ま り だ ァ ァ ア ァ

AHYYY AHYYY AHY WHOOOOOOOHHHHHHHH!!」

 

「ええ!? 先輩今度はいきなり泣きだして本当にどうしたんです!?」

「フー スッとしたぜ! 激昂してトチ狂いそうになると 泣きわめいて頭を冷静にするといいと焔柱の男の人がやってた」

「えぇ……」

「とにかく起きたら自分の認識だと女だったのに男になってるんだよ、そちらの認識だと最初から男なのマシュ?」

「え、ええ、失礼かもしれないですが先輩の容姿は中性的ではありませんし出会ったときから男性だと……」

「うーん? どういうことだろ、……そもそもわたしは冬木という街に居た気がするんだけど」

「冬木ですか? 最初にレイシフトした」

「そうそう、それでマシュに助けられて……あれ? そのあとが思い出せない」

 

冬木に転移して武家屋敷で遺書書いて襲われてマシュに助けられて……誰かにあったようなそれは誰だっけ?

思い出そうとしたらなんだか顔が熱くなってきた……知恵熱かな?

 

「先輩、たいへんです顔が真っ赤になってます! もしかしたら疲労で熱が出たせいで混乱しているのでは! ドクターに一度見てもらいましょう!」

 

そう言ってマシュはサーヴァント形態に変身してお姫様抱っこで立香を運んで駆け出した。

立香は冬木でもこんな感じだったなーと思いふけりながら医務室まで運ばれ廊下ですれ違うカルデアスタッフの視線から現実逃避した。

 

 

「ふむ、失敬」

 

そういって指を立香に近づけるとそのまま指が水面の如く顔に沈んでいった、あまりにも常軌を逸した光景であるがそれをみるマシュは立香を心配そうな顔で見守るだけであった。

慣れているのだこの男の起こす奇怪な現象をみることに。

 

そして知っているのだ彼にとって治せない症状は死からの蘇生だけだと。

カルデアの職員全員が彼に抱く感情、それは信者が信奉する神に対しての畏怖に似ていた。

もっとも名前からして彼は神ではなく悪魔に近いのだが。

 

「――なるほど、把握した」

 

そう言って指を引き抜く。

指を抜かれた立香は指を入れる前と何も変わらない様子であった。

つまりあまりにも美しすぎるモノを見てしまった衝撃で固まったままということである。

 

「話せるかね?」

「あ…はい……」

「君の状況はレイシフトによる後遺症のようなものだ。一時的な存在の揺ぎと意識が薄れたことによって起きた平行世界への意識だけの転移だ、夢のようなものと捉えて構わんよ」

「はぁ……」

「治療は施した。あとは目を閉じ再び目を開けば元の場所に戻る、夢から覚めたまえ」

 

さながら高名な数学者が学生のやっている宿題を気まぐれで解いたような何の感慨もない声で治療は終わったと告げる。

元に戻れるという喜びの気持ちよりも立香の胸に残るのは一つの疑問であった。

 

秋いつわすら上回る美貌の持ち主である白い男性は誰だろう?

秋いつわが天使の美貌だとするとこの眼の前の人物は神の美貌だ。

どこか親しみを感じさせ心に生涯焼き付くようないつわの美貌に対して目の前の人物は美しさに崇敬の気持ちしかわかない。

どちらも極まった美だが目の前の人物は正に超越者であると感じた。

 

「あの……、あなたはいったい何者ですか?」

 

カルデアでドクターと呼ばれる人物はロマ二・アーキマンではなかったか?

その問いに対して彼は答えた。

 

「――名乗っていなかったな、私は医者だ名をメフィストという」

 

その名乗りを聞いたとたんに立香の意識は闇に落ちていった。

 

2、

 

「先輩。 起きてください、先輩。……起きません。ここは正式な敬称で呼びかけるべきでしょうか……。」

「つきが、きれい───だ───」

「なんだか聞き覚えがあるフレーズ」

「あぁもう、なにやっているの! いい加減正気に戻りなさい!!」

『いつわ君、いつわ君、顔! 顔隠して! 立香君には初めて見る君の顔は刺激が強すぎる!』

 

立香は顔を真赤にしてぶつぶつとなにやら呟いている。

マシュは正気に戻らない立香にどんな言葉をかければいいのか試行錯誤を繰り返し。

思い通りに物事が上手くいかないことにオルガマリーは喚き散らし。

ロマニは立香がこうなった原因の人物に注意を促し続け。

 

原因の人物であるいつわは立香の独り言が夏目漱石の『I Love you』を日本語に翻訳するなら『月が綺麗ですね』と遠まわしな表現にしたほうが言ったというエピソードか、月姫の冒頭の台詞のどっちだろと思案していた。

 

「……しかしたまげた、あんな色男みたことないぜ同郷の後輩に『輝く(かお)』と呼ばれるやつが居るがここまでじゃないだろうよ」

「『輝く(かお)』……、ディルムッド・オディナですか懐かしい名前です」

 

「おっ、どっかで会ってたかセイバー?」

「ええ、貴方と同じように聖杯戦争で。 ランサーのサーヴァントとして召喚された彼と剣を交えたことがあります」

「ランサーか、じゃあオレとは聖杯戦争で顔を合せる可能性は低そうだ」

 

サーヴァント二人は遠巻きながらその様子をみて談笑している。

一体何故この様な状況になったのか?

 

「問おう。 貴方が私のマスターか」

 

そう問いかける少女騎士の頬が染まり動きが止まる。

宝石はその絢爛さ希少性により価値が決まるという、地中で気が遠くなるような年月によって発生し様々な道具や熱意によって採掘し類まれな技術により研磨された石は物によっては常人では一生手が届かない程の価値が付与される。

 

しかし宝石のその希少性と美しさすら彼を見たら道端の石に感じさせる美、神はどれほどの年月と情熱と技術と熱意が注げて作り上げたのかと問いたくなるであろう顔。

 

その美しさを何かと比べるという相対的な評価は対象を貶めるだけの無意味な行為であると断言できる絶対的な美しさの持ち主こそが秋いつわである。

 

先程のアサシンのサーヴァントとの戦闘により顔を隠していたバイザーが壊されたことにより素顔になったいつわの顔をみてしまったものは同じ様な美しさを持っていない限り誰であろうとこうなるのである。

それをなした万物を魅了する美貌の少年はというと?

 

(しまった、なんか光ってたときに尻もちついた体勢にするべきだったリテイク希望!)

 

そんなことを考えていた。

 

 

3、

「要約すると敵から藤丸さんを逃がすべく援護してたらなんかおいてけぼりくらって残った敵と戦闘になって倒して、戦力不足を感じてダメモトで召喚してみたらなんか成功した」

「ダメで元々で騎士王呼ぶとか騎士王ゆかりの触媒を体に埋め込まれてでもいるのかい!? 

というかサーヴァントを倒した!?」

「いかにもアサシンという風体の割には突撃と投げナイフ攻撃ばかりだったしおそらくまともな思考をしてなかったと思うので正気なら厳しかったね」

 

 

Fateシリーズの恒例のサーヴァントとの対面イベントをこなして立香の元へと(空を駆けながら)合流したいつわだったが、しばし顔を赤らめて惚けただけで済んだセイバー(真名:アルトリア・ペンドラゴン)と違い一般人である立香がいつわの顔をみたことにより完全に意識が飛んでしまっていた。

 

マシュは久しぶりにいつわの素顔を見て惚けていたがなんとか正気に戻り意識が飛んでいる立香を正気に戻そうとしている、キャスターはいつわの顔を見て驚いたがそれ以上にいつわのすぐ側に居たセイバーを見て驚いた。

場を混乱させた元凶のいつわ本人は登場時に決め台詞を言ったが全員にスルーされたことを残念がっていた。

 

「それでもサーヴァントとやりあって魔術を使わずに無傷とは……とんでもないな君は」

「それはどーも」

 

 

確かに『化け物(サーヴァント)には化け物(サーヴァント)をぶつけるんだよ! 』という考えが主流である。

だからこそ『サーヴァントには人間じゃ勝てねぇ、武術を習っていないサーヴァントでもだ、ならなっちゃえばいいじゃんサーヴァントに』というデミサーヴァントを作ろうという考えが生まれているのである。

しかし原典(Stay Night)からすでにサーヴァントを倒せる人間(だがここに例外が存在する)が何人もいるのを知っている上にキリシュタリアは神霊をやっつけたとかおぼろげに記憶している。

それに比べて危うくやられかけたし大したことでもないといつわは思っていた。

 

「今年の水着ガチャはオッキーしかこなかったからこれ(騎士王召喚)ぐらいはね、ガチャ運は収束する!」

「――ボクには君が何を言っているかわからない」

「君は知るだろう、目当てのキャラに容易く辿り着く者とそうでないものとの差は残酷なまでの開きがあるという事実を、存在を求める心は僕らを過酷なガチャへと駆り立て続ける、降りるということは許されなかった」

「知りたくないよ!? 唐突なデスポエムはやめてくれ!」

 

ドルオタにはガーチャーと呼ばれる人種の苦悩はわからないかと視線を同志へと向けるが相変わらず天地乖離す開闢の意識状態(意味不明)な立香をみるとマシュに介抱されている。

 

「───マスター。マスター、起きてください、起きないと殺しますよ」

「あ ァ ァ ァ ん ま り だ ァ ァ ア ァ 」

『これは返事? それとも寝言?』

「というかもしかしてレムレムしてない?」

 

顔を見ると支障が生ずるということで顔を隠していたがサーヴァントとの戦闘でその美貌を遮るものがなくなったことで、その顔を見てしまった立香は恍惚に浸っていた。

マシュもオルガマリーも同様にいつわの顔をみて忘我状態だったが過去に見ていたこともありしょうがないのでロマンから支給された対魅了礼装(サングラス)を装備させてから数分程度で正気に戻った。

 

「たかが目隠しがとれた程度でこれとは相変わらず面倒くさい」

 

 

「先輩大丈夫ですか?」

「だいじょうぶだ、わたしはしょうきにもどった────よくあることです、ここは魔界都市<新宿>です」

『いや冬木町だからね?』

「駄目みたいですね」

(なんで魔界都市なんて地名が? この世界にはあの作品ないはずだけど)

 

キャスターがルーン魔術を使ってなんとか会話ができる程度に回復したがこりゃあかんということで一時的に学校に避難して夜を明かすことに決めた。




次回予告

「親父が聖杯戦争に参加してたっていうのか!?」
「そうだ、まず衛宮切嗣は虚空でだかだかと足踏みをした」
「足踏み」
「そして無を手に入れた」
「無」
「EDが始まってムービーエンドだ、奴は聖杯戦争をそうやって最後まで勝ち残った」
「爺さんがTASさんだったなんて……」

「セイバーとの会話は必要最低限の3回だけして乱数調整して終わらせます。これが一番速いと思います」
「NKT……」

【Fate/Zero】TASさんが第四次聖杯戦争を一日で終わらせるそうです

公開未定!

八月が終わってないからセーフ!……だめ?


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激・悪性隔絶魔界都市<新宿>-序章-(Ⅳ)

柱合会議の前に始まった鬼を引き連れた鬼滅隊隊士の竈門炭治郎と柱との諍いも一段落ついた。


「でしたら竈門君は私の屋敷でお預かり致しましょう」

蝶柱である胡蝶しのぶは那田蜘蛛山で負傷をした炭治郎の治療をする為に自分の屋敷で預かると提案した。
その朗らかな笑顔に炭治郎はあっけにとられ、同性である甘露寺蜜璃は見惚れてキュンとトキメイていた。

「はい連れて行ってください!」

ぱんぱんと手を鳴らして顔を隠している鬼殺隊の支援要員である隠を呼び寄せ運ぼうとしたが炭治郎は柱(人じゃなくて建物の方)にしがみついて。
妹である禰豆子を刺した風柱の不死川実弥にせめて頭突きでやり返させてくれと喚いていた。

「頭突きなら隊律違反にならないはず……はぶぇ!?」

そしてお館様を慕う霞柱の時透無一郎が進行を邪魔されたので石をぶつけられていた。

「お館様のお話を遮ったら駄目だよ」

その胸中の苛立ちをあらわすかのようにその手に握られた小石はビキッと割れた。
雲の上の存在である柱がキレている様子を見て隠の二名は内心ガクガクと怯え。
そして甘露寺嬢はその怒っている無一郎の姿にトキメイていた。

「早くさがって」
「あのーちょっといいですか?」

また妨害するやつのが出たのかと無一郎は石を声のした方に向け、凍りつくように動きを止めた。
あたふたとその場を去ろうとした隠に掴まれていた手が離れて石をぶつけられ目を回した炭治郎が正気に戻り顔を上げるとその声の方向を向いている岩柱以外の柱の顔が顔を赤らめぼけっーとしている。

「お館様ッ!」

何かしらの異常を感じた岩柱である悲鳴嶼行冥は跪いた姿勢からその体格から信じられない程の身軽さで飛び出しお館様の方の前に盾になるべく庇う態勢をとった。
その光景にあっけにとられた炭治郎は険しい顔をしている岩柱に対して穏やかなままのお館様とその横にいる他の柱と同様になっており顔を赤らめている子供を見てもしやと近くにいる隠の顔を見ると布で覆われていない部分が同様に赤くなっていた。
まさかなんらかの血鬼術かと炭治郎は痛み動かない体に鞭を入れて立ち上がろうとする。


「大丈夫だよ行冥、――それでどうしたのかな、いつわ?」

いつもどおりの心に染み渡るような声音でお館様が語りかけた方向を見ると炭治郎も他と同じように顔を赤らめた。

「ちょっと確認したいことがありまして」
「無惨の居所がつかめたのかい?」
「それらしき人物は見つけた」
「「「「「「「「「なんだって!?」」」」」」」」」

その人物は鬼滅隊の人間がするように黒尽くめだがこの時代では珍しい洋装をしていた。
そしてその顔はこの世すべての美というもの集めて作り出したかのように美しかった。
その顔に心奪われた柱たちも流石というべきか鬼殺隊の宿敵である鬼舞辻無惨の名前が出たことで正気を取り戻す。

「見つけたのはいいけど本人だとすると下手に追い詰めると周りにいる人間を殺したり鬼にして囮にして混乱を引き起こして自分はさっさと逃げるようなタイプ……性格みたいなんでちょっと裏付けが欲しくて」

そういうと懐から紙を取り出して炭治郎へ見せた。
あまりに常軌を逸した目の前の美貌にぼーっと呆けた炭治郎が自分に相手が自分に向けていること気づき。
慌てて目の前の紙に目を通す。
そこには幼い少年の姿だが浅草で見かけた鬼舞辻無惨に違いなかった。

「無惨!」
「間違いない?」
「子供の姿だけど浅草で自分が見かけたのはこいつです!」
「裏は取れたね」

無惨の似顔絵を見るべく駆け寄ってくる柱達から距離を取りいつわと呼ばれた人物はお屋形様の下へ移動する。

「場所は何処だい?」

普段の穏やかな顔は変わらないがそこからは怒りの感情を隠しきれていないが無理もない。
一族代々が宿敵と定めた相手の居場所が分かったのだ決着がつくかもしれないと思うと心が嵐のように荒れ狂っているであろうことは察した。

「とある製薬会社の創始者の家へ養子として入ってる、恐らく太陽を克服する薬の開発に好都合だと思っているんでしょう場所は――」

場所を告げると迂闊に攻め込むと逃げられた挙句いたずらに被害を広げるだけ、
いかにして効率よく追い詰めるかを柱達と話し合い始め要は済んだと立ち去る黒い美影。
目が眩むような美が去り世界が色あせた様に感じながら去っていった美を思い返す。
先ほどの人はいったい誰なんだろうと思いながら炭治郎は蝶屋敷に運ばれたのであった。

◆◆◆

「……鬼狩りでは…ない…変わった装束だ…」
「どうみてもやばい奴だこれ」

無惨討伐のために戦力を集めて襲撃したところ追い詰めた無惨はいかんなくその生き汚さを発揮してピンチを感じた途端即座に鬼殺隊を無限城へと飛し。
いつわとはぐれた立香は上弦の壱である黒死牟に遭遇していた。

見るだけでこれまで戦ったサーヴァントと同じくあまりにもかけ離れた強さを持つであろう鬼を相手にして竦むがこれまでの世界を救うための戦いの経験が磨き上げた強い意思は窮地において彼女を強く奮い立たせた。
そう、自分自身は弱くても頼れるサーヴァントが自分にはいるのだ。

「セイバー任せた!」

その言葉に今まで霊体化していたサーヴァントが実体化する。
突然あらわれた人物に、否、あまりのもありえない人物をみたことに心の底から驚愕していた。

「――――あり得ぬ。 お前は死んだはず、なぜそこにいる、なぜ!?」
「お労しや 兄上」

あの時と同じく過去に感情を見せなかった男が自分を憐れむかのように涙をながしていた。
しかし前と違い共に鬼狩りをしていた時の容貌のまま剣のクラスのサーヴァント、継国縁壱の姿がそこにあった。



亜種特異点『大正鬼殺活動過狩り狩り小史』に続かない











無惨「(無言の全力疾走)」
炭治郎「ムザンガニゲテル!」
いつわ「すでに追跡用に糸は巻いてあるよ」



久しぶりの悪性隔絶魔界都市<新宿>-序章- 始めます。


いつわは学校にたどり着くと入り口で背負っていた立香を降ろしてマシュに預けると、朝にラジオ体操をするかのように腕を上げて開いて下ろすことを繰り返した。

 

「何してるのよ貴方?」

「ちょっとね」

 

動作を終えたいつわは建物に入ると廊下を勝手知ったるといわんばかりの足取りで教室に移動した。

他のメンバーは訝しげな顔で後を追いかけた勝手な行動に文句がでないのは、この少年の茫洋な美は薄暗い廊下をただ歩くだけでも闇夜に抱擁され光をもたらすような錯覚を見るものの心理に起こすからだ。

 

「ちょっとここで待ってね」

 

とセイバーだけ連れて初めて訪れたはずなのに薄暗い学校をまるでこの場所には何があるか把握しているかの様に軽やかにいくつかの部屋を行き来した。

数分後には防災用道具が入ったリュックや毛布など使えそうな物を集めてだして教室の教壇に置いたあとに毛布を敷いてそこに立香を横たえさせた。

 

「……長い夢を見ていた、具体的には白い医者に会った後に太正桜に浪漫の嵐を経験したぐらい」

「白い医師は心当たりがなくもないけど、太正桜?」

「いずれ会う気がする女王様やくノ一や女剣士に似た声の人と一緒に帝都で戦っていたんだ」

「帝都ですか?」

「帝都で女剣士というと――すぐ吐血する桜なセイバー?」

「なにをいっているんだ、帝都の平和を守れたのは全部神山隊長のおかげじゃないか!」

「誰だよ神山隊長(※劇中はまだ西暦2015年です)」

「フォウ…?(意訳:ねえねえ本当に大丈夫?)」

 

一息ついた所で目を覚まし起きてそうそうよくわからないことを立香が言い出していた、明らかに正気を失っている。

 

「サーヴァント契約の後遺症でただでさえ脳に負荷がかかっていたのが、どこかの誰かさんを見て悪化したのね……」

「それは大変だね」

『彼にそういう遠回しの嫌味は通用しないよ』

「(白い医師ってあいつか、夢の中だとしても一目見ればそれはおかしくもなるか)

 

 

邪神なTRPG風に言うとSAN値が下がりすぎて一時的狂気に陥っているのだ、あまりに美しすぎるものはあまりにも醜すぎるものと同じく人を狂気へと駆り立てるのである。

そんな立香をオルガマリーはぶちぶちと文句をいいながらなんやかんやで世話しているあたり面倒見はいいらしい。

ロマ二は精神的に不安定な人間でも自分よりも状態が悪く世話が必要な人間がいると逆に落ち着くものだなーと感心していた。

 

 

「キラキラのアーチャー狙いで回したらドレイク船長を引いてしまったり、ギリシャロボ使い狙ったらマジカルアサシン引いたり、りゅうたん引いて、ラスト一枚で手足が多い中華ロボ引いた気がするけど*1、わたしは正気に戻った!」

「中華ロボはAチームの芥さんが食いつきそう」

『ダメだね、まだ先があるんだから寝かせてあげて』

「アハハ、大きい...あれは彗星かな。いや、違うな。 彗星は もっと、バァッて動くもんね。 あれは死兆星かな?」

 

カルデアから支給された鎮静剤をいつわはオルガマリーに渡し押さえ込むが「流行らせコラ(HA☆NA☆SE)!!」と立香は喚きながら暴れたが注射されると「タワバ!!!」と声を上げて眠りに落ちた。

とても女性が言うセリフではないが見て見ぬフリをする情けがこのメンバーにはあった。

 

「あの赤い外套のアーチャーがいるのですか……」

「ああ、黒化したお前さんを守ってる。 腹立たしいが骨が折れる相手だ」

 

一方サーヴァント二名は我関せずとこの先にある戦いに備えて情報交換をしていた。

両名共に自分たちの役割である戦闘に集中するべしと英雄として戦争なれしているだけあって完全に割り切った効率重視な行動である。

ギャグ空間に関わりたくなかっただけかもしれない。

 

立香を眠らせるとマシュもオルガマリーも状況の激しい変化に精神的にも肉体的にも疲労の色が濃くなっていたこともあり、サーヴァント二騎に夜営を頼み見つけていた毛布を体に巻いて限界だったのかすぐ眠りに落ちた。

いつわはさすがに女性と同部屋は後々面倒になると思い別の教室に毛布を持って出て移動してから眠りについた。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

「本来は男は男、女は女で護衛した方がいいんだろうけどよ。 あの顔じゃフェルグスの叔父貴みたいに男でも手を出してしまいそうなんでな、頼むわ」

「……は? 何を言っているのですかキャスター!?」

「自分のマスターだし問題ないだろ、仮に襲ってもあの年頃なら女から襲われてもOK出すだろ」

 

正直寝込みの女と一緒のほうがまだ理性が保てそうなんでよろしくなー、とキャスターは手をひらひら振って出ていった。

困ったセイバーがマスターであるいつわの方を見ると、近くの椅子に黒い上着を掛けて万が一に備えて靴を履きながら安らかな眠りについている。

 

黒真珠のような艷やかな髪に、すらっとした耳鼻、紅い唇は思わず吸い寄せられそうな……。

セイバーはハッ、とその寝顔を見詰めながらよからぬことを考え出したことに気付きあわてて顔を振った。

いつわの玲瓏たる美貌を眺め続けるとまさに朧とかすみ続けて見えてくる、あまりの美しさに理性が蕩けてくるのだ。

生前自分を律して公正であると心がけ続けた末に人の心がわからないとまで言われた自分の心をこうも簡単にかき乱すとは……。

 

 

部屋を出ていったキャスターを睨みつけるがキャスターはケルトの戦士らしい独自の価値観を持っており誇り高い、自分がうち倒した女戦士ならともかく寝入っているか弱い婦女子を襲うような卑劣さは持ち合わせていない男だ。

一度交わした約束はきちんと守り抜く義理堅さを持っているので、立香達を守ると言ったのなら守り通すだろう。

 

 

「――はぁ、まったく困ったものです」

 

死を迎える前に聖杯を手に入るという目的でサーヴァントとして様々なマスターに出会った。

こちらと必要最低限しかコミュニケーションを取らないマスターだったり、非力でサーヴァントに気をつけろと口を酸っぱくしても「大丈夫だと」言って護衛を断ってサーヴァントに突撃したりするマスターにも困ったものだが、生前のブリテン時代を含めて容姿が飛び抜け過ぎていて対応に困るというのは初めてのことだった。

どうにも調子が狂って困る、今回の召喚も戦闘以外の方面でも一筋縄ではいかないようだとため息をついた。

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

美しい月夜の姿を遮る炎と黒煙のヴェールにより判りづらいが長かった夜は終わり次の朝を迎えた。 

本来なら朝靄を太陽の光がかき消し、鳥が囀り朝の調べを奏で始める時間であるが、骨だけの死者が跋扈しているこの場所ではいつわ達の耳に届くのは風が鳴く音ぐらいなものだ、その風音の中に笛のような鋭い音が響いた。

 

何かに気付いたセイバーがいつわに声をかけるより早く、椅子に掛けてあった黒い上着が妖糸によりいつわのもとへとふわりと浮かび上がったかと思うと金属に磁石が張り付くように毛布から出した手に収まり、飛び起きたいつわがそれを纏うと同時に手も触れずに部屋の引き戸が開く。

セイバーに体を抱えられたいつわが部屋から出ると背後から瓦礫が崩壊したのは次の刹那だった。

 

「合流しよう」

 

セイバーに降ろされたいつわは短くそう指示をするとそのまま女性三人のいる部屋に飛び込んだ。 

 

「サーヴァントの手を逃れた藤丸立香を待っていたのはまたしても地獄だった(裏声)」

「いつもの調子にもどったようでなにより」

 

どうやら一晩寝たらさすがに錯乱状態から通常の状態に戻ったようだ。

眠りについている間になんらかの耐性がついたのか魅了対策を心得ている他のメンバーと違って対処法をしらないはずの立香が何故か直接いつわの美貌を見て顔を赤らめはしても我を失うことはない様子だった。

 

しかしあくまでも耐性がついたのはいつわの美貌限定らしく立香の顔は恐怖で青ざめ足元はガクガクと震えており、気を紛らわせるために軽口を叩いてなんとかいつもと同じ精神状態を保とうと努力をしているのだといつわは察した。

こりゃ早めに方をつけたほうがいいなといつわは思いつつ視線を部屋に移した。

 

「他の二人は?」

 

部屋の中では攻撃によりパニックになったオルガマリーと呼吸を荒げて明らかに気負いすぎな様子のマシュをキャスターがルーン魔術を使い鎮めている所であった。

さらに視線を走らせると先ほどいつわが居た部屋のすぐ横にあるこの部屋は特に被害がない、キャスターが防御用のルーン魔術を予め施していたようだ。

 

「便利だね、一家に一人ルーン使い」

「あいにくとそこまで使い勝手はよくねぇよ、しかしアイツがまさか弓を持つとはな」

「弓使いをアーチャーって言うんだから、そりゃ弓持ってるんじゃないの?」

 

 

キャスターの発言に立香が疑問を持つ、セイバーは目を逸らした。 

かつての自分の部下は弓使いとして名を馳せているくせに、矢を放たずに弦を弾いて風の刃を撃ちだす騎士だったからである。*2

 

『立香くん、…大変言いづらいんだが弓を使わないアーチャーは結構多いんだ』

 

「うっそでしょ!?」

「聞いたことがあります、遠距離から何か投げたらアーチャー認定受けるぐらいには弓使うアーチャー少ない、らしいです」

「そうなの!?」

「なんでも銃で攻撃してもアーチャーですし、石投げてもアーチャー、なんなら放電攻撃しても、蹴鞠を蹴りだしてもアーチャーになるとか」

「アーチャー認定ガバガバァ!?」

「アーチャーってなんだろうね……(哲学)」

「貴方たち遊んでないで逃げるなり迎撃するなりなんとかしなさい!」

 

アーチャーとは何かを説明するためにサーヴァント銀河の話が長くなりそうになっている背後では、連続で射込まれている矢の衝撃で建物にひびが入り始めていた。

キャスターの防御用ルーン魔術といつわが人知れず巻いていた妖糸の補強でも限界が近い。

 

「こちらの戦力はサーヴァントが実質三騎、だが俺には遠距離から攻撃するアーチャーに同じ距離で対抗できる手段がない。 ルーンはそういうのには向いていないんでな」

『セイバーはどうだい?』

「宝具を使えば可能です。 ……しかし私の宝具は魔力の消費が激しいのでこの後の戦いを考えると使わない方がいいでしょう。 どうにかしてアーチャーに接近する必要がありますね」

「本命は聖杯を守っているというアーサー王。 それ以外の残っているサーヴァントはバーサーカーとアーチャーだったわね?」

「おう、だがバーサーカーは何故かある場所から動かないんで厄介なのはアーチャーの野郎だけだ」

「なら次の為にいかに消耗を少なくして倒すかが問題ね、アーチャーはマシュの盾で攻撃を防ぎながら距離を詰めてセイバーとキャスターで倒すというのが無難かしらね」

「貴女への負担は多いですが、大丈夫ですかマシュ?」

「は、はい、がんばります!」

 

魔術知識が皆無の立香は手持ち無沙汰な様子でアーチャーの攻撃により段々と罅が入ってきている教室の壁を不安そうに見ていると、横でいつわはなにやら指をカタカタとキーボードを叩くように動かしているのが見える。

 

「秋さんなにしてるの?」

「伏兵が居ないか探ってる、……うん、アーチャーの場所もわかった」

 

そう言うと何かを思いついたのかいつわは話し合いの輪に加わった。

その背中に立香は決意を秘めた声をかける。

 

「……ねぇ、わたしに手伝えることないかな」

 

なにもできないのはしょうがないけどなにもしないのは嫌だ、と彼女は言った。 

この中で唯一の素人で魔術やサーヴァントみたいな超常はフィクションでしか認識していなかったものが、自分に現在進行形で襲いかかる現状に気が気でないはずだ。

それでも勇気を振り絞っている姿にマシュは奮い立ち、英霊二人は好感を持ち、オルガマリーは呆れ、ロマニは困った顔をした。

そしていつわはこう告げた。

 

「それじゃあ僕と一緒に囮になって貰おうか」

*1
現実です、鯖出た時点で当たりですけど欲しかったなぁあの二人by作者

*2
なお自分もサマーシーズンでは水鉄砲に聖剣を装着してアーチャーになる模様。




いつわ「囮役はもちろん立香がやる」
ロマニ「卑劣な策だ……」

久々に書いたらアーチャー戦決着~冬木クリアまで長くなってまちま編集してます
春が来るまでになんとか終わらせたいなぁ(遅筆感)


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