ポケモンに転生した人間の話 (藤宮シノ(仮))
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野生時代
タマゴが かえって ○○○○が うまれた!
ふと、目を覚ます。
暖かい日差し、爽やかな風、葉の擦れる音、水が流れる音。
実にいい二度寝日和だ。ここがどこだか知らないが、もう一眠りしてしまおう。
今日は休日だし、特にやらなければいけないこともなかった筈だ。
よし、寝よう。
………
待て、ここは何処だ?
急に眠気が吹っ飛んだ。
自分は昨日、確かに自室のベッドで寝た筈だ。何故ここにいる?
とりあえずは起き上がろう。話はそれからだ。
……
何でか体がうまく動かない。仕方がないので首だけ動かしてあたりを見回す。
まず視界に入るのは草木、少し離れた所に川。そして自分のすぐ近くに茶色と白の何かの破片。
聞こえるのは葉の擦れる音、水が流れる音、遠くの方から何かの鳴き声。
視線を胸元にやると、白いもふもふしたものが目につく。何だこれは。
手足を動かしてみると、白いもふもふの下から茶色い小さなものがちらちら出てくる。…嫌な予感がする。
しばらくしてある程度体が動くようになってきたので、立ち上がってみる。
……一応四つん這いにはなれた。が、この時点で明らかにおかしい点がいくつかある。
普通四つん這いになったら、手のひらと膝が地につく筈だが、何故か足の裏が地についている。
次に視点だが、異様に低い。寝転がっていた時とあまり変わらない。
そして、2本足で立てない。何度試しても転んでしまう。
自分は今、どうなっている?
近くに川がある。水面に姿を写して見よう。
よたよたと歩いて川に近づき、落ちないようにそっと覗きこむ。
………
水面に写ったのは、ピンと立った長い耳、茶色い毛で覆われた顔、胸元に白いもふもふの毛、短い前足、お尻のあたりから生えている、狐に似た茶色と白の尻尾。
「い…いぶぃ……」
酷い既視感を覚える。あたりに散らばっていた茶色と白の破片からして間違いないだろう。嫌な予感が当たってしまった。
「ぃぶいっぶいいぃーーーっ!!!」
自分はどうやら、イーブイになってしまったらしい。
しかも生まれたての。
………
「ぶいぅ……」
何とか落ち着いてきた。
改めて周りをよく見てみると、結構ポケモンがいる。
草むらや木の上にはパラスやビードル、時々コクーン。
水辺にはコイキング、コダック、たまにニョロモ。
空を見上げるとポッポやオニスズメが飛んでいる。
今まで気付かなかったのが不思議な位沢山いる。
こちらの様子を伺うように見つめてくるポケモンもいるが、その辺は何かしてこない限り無視でいいだろう。
それよりも重要な事がある。
腹が減ったのだ。
自分は卵から孵ったばかりのポケモン。生まれてから恐らく何も食べていない。このままでは餓死してしまう。
というかイーブイって何を食べるんだ?
生まれたての赤ちゃんポケモンの自分に食べられる物はこの森にあるのか?
考えてる時間はない。早く何か口にしなければ餓死まっしぐらだ。
イーブイ Lv1 ♀
きまぐれな せいかく。
????ねん?がつ?にち
どこかのもりで たまごから かえった。
もとは にんげんだった。
ものおとに びんかん。
特性:てきおうりょく
現在覚えている技
・しっぽをふる
・たいあたり
・てだすけ
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