臓硯憑依もの (ぴんころ)
しおりを挟む

第一話

 呵々大笑が暗い、陰気な地下室に響き渡る。

 その笑いは、狡猾な悪役、それも長年をかけて目的を達成しようとする老人にこそふさわしい笑い方であるはずなのに、その笑いを催しているのは若い男性。

 けれどなぜかその笑いがとても似合う、不思議なまでに老成した雰囲気を持つ男性だった。

 その男性は地下室と地上を結ぶ階段に立ち、地下室内部で蟲に犯される二人の女性……一組の母子に視線を向けながら、ここに至るまでのことを思い返す。

 それは間違いなく男性……間桐臓硯にとっては地獄であり思い出したくも無い代物でありながら、同時に自らの成功体験、そして間桐臓硯になる前の自分とは違い、今の勝ち組と呼ばれるような立場に納まるまでのことでもあったために、それを幾度も思い出しているのだった。

 

 

 

 

 気がついた時には、自分の体は蟲の集合体だった。

 

 いや、まあ、こうして当時のことを思い出して自分で言葉にしてみたけれど、よくわからない言葉にしかなっていない。

 この肉体の記憶はあるが、この肉体になる前の記憶はない。

 この肉体が持っていた知識はあるし、この肉体になる前の知識もある。

 そして何より、この姿は自分が知っている姿でもある。

 

「間桐、臓硯……」

 

 どういう理屈なのかはわからない。

 けれどどうやら、俺はFate/stay nightが誇る外道の一人、間桐臓硯に憑依したらしい。

 今日は、桜がやってくる日ということに臓硯の記憶を見る限りではなっている。

 彼女の特性である『虚数』に関しては臓硯の知識の中にあるものでは何も有効な修行方法を発見することはできない。

 臓硯の性格を考えれば蟲蔵で犯して強制的に間桐の属性に染めた母体にすることが正解なのだろうが”俺”にはそんな趣味はない。

 臓硯の強い感情……ユスティーツァに向ける感情に引っ張られているのでおそらくは相手がアインツベルン製のホムンクルスであればきっとこれまで通りの、蟲で犯すことを楽しむ間桐臓硯になるのだろうが、桜に対しては”俺”が持つ知識のせいで黒桜に殺されるのではないかという恐怖があるのでそれができない。

 

 そもそも、桜はそこまで好みではないのでやれたとしてもやらないが。

 

「まずするべきは……」

 

 『これまでの間桐臓硯を知る者の排除』だろうか。これからやってくる桜はともかく、鶴野に関しては臓硯の性格をよく知っている。そこで少しでも疑問を抱かれればこれからの行動が面倒になる。

 雁夜が戻ってくることそれ自体には臓硯の策略なんてものは一切関係がない以上、これから一年の準備期間があれば、彼の知識と記憶がある以上は十分に”間桐臓硯”を演じきれるだろう。そこでどうにか騙し通さればそれだけで十分。

 できれば第五次聖杯戦争も俺の知る限りと同じような形にしたいので、慎二に関しては遊学にでも出させればいいだろう。

 

 ただ、自分の知識の中とは一つだけ違うことが臓硯の知識の中にはあった。

 これに関しては本当に『まさか』としか言いようがない。

 まさか、まさかーーー。

 

「第三次で消えたはずの聖杯の欠片を臓硯が回収してたなんて……」

 

 本来ならばこれは、第四次で確保するはずの代物。

 なのになぜか臓硯はすでにそれを確保していた。

 そしてそれはすでに刻印蟲の形に仕立て上げられていて、桜に取り込ませる気満々だったようだ。

 そんなことをしてもしも仮に十一年後の第五次聖杯戦争でHeavens Feelルートに入り込んだとしたら桜に殺されかねない。

 よって、その手段は却下とされた。

 できる限り死なないようにしたいので。

 

 そんなことを考えている最中、チャイムが鳴る。

 おそらく、遠坂時臣がここまで遠坂桜を連れてきたということなのだろう。

 

「初めまして、じゃな。遠坂桜」

 

 その言葉は遠坂時臣の横にいた桜に向けて。

 これが、この世界で初めての”間桐臓硯”としての仕事。

 そして同時に、この世界で生きていくために必要なことでもあった。

 

「儂が間桐臓硯。これよりお主が継ぐことになる間桐家の現当主じゃ」

 

 それは宣誓。

 すでに間桐臓硯になってしまったという現実が変わらない以上、今から抗ってもどうしようもない。

 たとえ聖杯でも、こんな状況を脱することには一切の役に立たないだろう。

 ゆえにこそ、他人に対して宣誓することで『自分が間桐臓硯なのだ』と自分に対して言い聞かせた。

 

 少女も、その父親も俺のそんな気持ちなど知る由もなく。

 ただ当たり前のように、桜は遠坂桜から間桐桜になった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二話

 桜が間桐家にやってきてからすでに一年が経った。つまり、今年のどこかで間桐雁夜が帰ってくるということ。

 間桐臓硯としての知識と記憶があるために帰ってくるとわかりきっているあいつに対して怒りが湧くが、それでも俺の目的を考えるにあいつが帰ってきて聖杯戦争に参加するのをみすみす逃すのは惜しい。

 幸いにもそこに関してだけは教本(原作知識)があるので、頼りにさせてもらうとしよう。

 

「臓硯はどこだ……!」

 

 ……来たようだ。

 さて、俺がこの一年で演じるための努力をして来たかつての間桐臓硯。それがどれほどの完成度なのか、かつての臓硯をよく知る者の目を騙すことができるのであればそれでよし。できなければ勢いでどうにかする。

 こつこつと杖をつきながら歩いていくと、そこにはまだ蟲によって改造されていない頃の間桐雁夜の姿がある。

 

「その姿、二度と見せるなと言ったはずだがな」

 

「間桐が恥さらしな真似をしていると聞いた」

 

 どちらも、久方ぶりの挨拶などするような柄ではない。

 ゆえに話は最初から本題で、だからと言って俺から彼に対して”聖杯戦争に参加しろ”と言い出すのはおかしな話だ。すでに彼の出奔を許した身なのだから。

 よって、まずは桜が間桐の家に引き取られたという事実に対して怒りを隠しきれない雁夜が言葉を放つ。

 

「遠坂の娘を養子にしたそうだな。そんなに間桐の家の存続が大事か?」

 

「それを貴様がいうか? 鶴野よりも魔術的素養のあった貴様が間桐を継いでいればこのようなことにはならなかったであろうに」

 

 暗に、お前が悪いと言葉にした。この言葉は全くの嘘ではない。

 雁夜に魔術的素養があったのは事実だが、それを投げ捨ててしまったからこそ間桐の家は他から入れざるを得なくなった。

 そして、間桐の家がどういった家なのかを理解しながらも投げ捨てた……いいや理解しているからこそ投げ捨てた雁夜は、投げ捨てる前にもう一度よく考えなければならなかった。

 己が受け継ぐのが嫌だからと投げ捨てたそれは、果たして惚れた女やその娘に対して危害を及ぼさないと言い切れるものだったのか。

 

 そこからは基本的に俺の知る限りと全く変わらない内容。

 間桐の悲願である聖杯に関しては自分が持って来るから桜を解放しろ、と。

 

「……ふむ、よかろう。貴様が持ってこられるのであればな。

 だが、落伍者でしかない貴様よりも桜の子の方が期待できることには変わりない。

 貴様が聖杯を持って来るまでの間、桜に対して間桐の魔術を施すことをやめるつもりはないぞ」

 

「なっ……!」

 

「それとも何か? 貴様は自分の価値がそれほどまでに高いとでも思っていたのか?」

 

 ぶっちゃけた話、桜に対しては普通に魔術を教えている。

 間桐の魔術に適した肉体にするために食事に間桐の蟲をすりつぶして粉末にしたものを混ぜていたりするが、今のところ間桐の魔術関係でしているのはそれだけであり、間桐の母体としての完成は臓硯の知識を鑑みるに進み具合は遅々としていると言って問題はないだろう。

 まあ、死ぬよりもマシだ。ゆったりと進めていくとしよう。

 

「……わかった」

 

 絞り出すような雁夜の言葉。

 男を犯して喜ぶような趣味などないが、うざったいこの男を甚振ることができるという一点で諦めて、この男を一年で突貫の魔術師として仕上げてやるとしよう。

 その間にこちらも間桐臓硯の目的(聖杯の獲得)とはまた違う、俺自身の目的のためにやらねばならないことをやっておかなければ。

 

 

 

 

 雁夜を魔術師として仕立て上げるのに使用することができたのは一年。その間に、こちらもやりたいことの準備をすることができた。

 あとは雁夜に召喚をさせるだけだ。

 雁夜が召喚したのがバーサーカーのランスロットであれば、問題など何もない。

 大前提となる部分には何も問題はなかったことだけがはっきりとする。

 少なくとも、魔術師を一名操って時計塔に潜り込ませているためにケイネス・エルメロイ・アーチボルトの参加、ウェイバー・ベルベットが聖遺物を盗んだことはわかっている。遠坂時臣が言峰綺礼を弟子にしたこともわかっているために、あとはキャスターのマスターだけ。

 

「雁夜よ、この一年よく耐えた。召喚の呪文はちゃんと覚えてきたであろうな?」

 

「……ああ」

 

 くかかと笑う。

 この一年でこんな風に笑うことにも結構慣れた。

 

「……いくら魔術師程度にはなることができたとは言っても、お主が魔術師として弱小であることには変わりない。故に、召喚の呪文に一節追加してもらう」

 

 無論、追加するのは狂化の呪文。

 魔法陣をはじめとした残りの準備に関しては整えてある。

 すでに半身が不随となっている今の雁夜であればそれすらも不可能に近いだろうから。

 外典(Apocrypha)のように円卓の欠片でもあれば話は簡単だったのだが、今の間桐家ではそのようなものを手に入れることは望むべくもなく。

 鶴野を先に殺しておいてよかったと思う。あいつが生きたままだと金についてどうのこうのと言ってきそうだったから。もしかしたらお金が足りなくなる可能性もあったのだから。

 

「されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者」

 

 あとは、時期もよかったというべきだろうか。

 あの封印指定の魔術師がタイミングよく金に困っていたおかげで、間桐の財産でどうにか目的のものを手に入れることはできた。

 あとはアインツベルンのホムンクルス……今回の聖杯戦争においてはアイリスフィールを手に入れることができればそれで第四次の目的は達成することができる。

 それを成し遂げるための計画は、バーサーカーのランスロットが雁夜(間桐)によって召喚されることを前提に作っているために、この部分はもはやガチャと言ってもいいだろう。

 バーサーカー(ランスロット)が出るか、それ以外が出るか。

 その答えは。

 

「汝、三大の言霊を纏う七天。抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よーーー!」

 

 雁夜の詠唱が終わるとともに現れた人影の姿によってはっきりとした。

 

「……勝った」

 

 ぼそりと、雁夜には聞こえない程度の声で呟く。

 果たしてそこにあったのはバーサーカー、ランスロットの姿。

 

 これで、目的を達成することができる。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第三話

「さて、ひどいことになったもんじゃの、雁夜」

 

 目の前にいるのは間桐雁夜。しかしそれも皮膚は焼け爛れていることをはじめとして、これまでの蟲蔵による調教を除いたとして目に見れるようなものではなくなってしまっている。

 こうなったのは理由としては至極単純、遠坂時臣との魔術戦に敗北したから。

 雁夜が聖杯戦争の参加者としてバーサーカーのマスターとなったあの時から、基本的には俺の知る通りに道筋は進んだ。

 そうしてつい昨日、深遠川で出現した大海魔とキャスターに対抗するための同盟が発生してキャスターは討伐されたのだ。そして同時に、雁夜は時臣に対して戦闘を挑み完膚なきまでに敗北を喫した。今の雁夜は時臣への憎悪に染まっている。そこに桜を解放するためという名目さえ与えればきっとどのような非道でも行えるのだろう。……彼が憎悪する魔術師と同じように。

 

「じゃが、正直ここまで貴様が生き残るとは思っておらなんだ。

 故に一度だけチャンスを与えてやろう」

 

「チャンス……だと……」

 

 声は掠れている。もはやまともな判断すらもできないのだろうことははっきりとわかった。衝動的に笑いたくなるのをどうにか抑えて、雁夜に対して指令を与える。

 ここからは、もう自分の知る第四次聖杯戦争(Fate/Zero)からは外れることになるとわかりきった、そんな指令を。

 

「アインツベルンのホムンクルスをさらってこい。

 あやつこそがこの聖杯戦争における賞品である聖杯。今ならばサーヴァント三騎を取り込んだ影響で動けんじゃろう。それさえ成せば、もはや貴様が敗れたとしても聖杯はこの手のうちにある。

 聖杯が完成すればその時には貴様に桜をくれてやるとも。」

 

「わかった……」

 

 ゲスな笑みを浮かべたい。浮かべたい気持ちは大きいが、今はまだ恐ろしい怪物としての姿を見せなければならないだろう。こちらは向こうに対して桜という切り札があるが向こうには切り札となりうるものがないと思わせなければならない。

 あくまでも、自分が固執しているのは聖杯であって個人ではないと思わせなければ。

 

「ああ、じゃが気づかれれば面倒なことには変わりない。

 決して気がつかれることはないようにな」

 

 気がつかれれば、それは間桐の家が攻め込まれる理由になって桜も危険に晒されるのだから。

 そう言ってしまえば向こうも従うしかない。間桐臓硯の言うことを聞くと言う一点だけで嫌そうな顔をしながらも、雁夜は頷いた。

 

 

 

 

 やはり雁夜には勿体無いサーヴァントと言うべきか。ランスロットは雁夜の令呪によって”アーサー王を無視しながら””ライダーに化けてアイリスフィールをさらって”きた。とはいえ、雁夜以外ではあのサーヴァントを召喚できる保証はなかったので召喚は雁夜に任せる他なかったのは事実なのだが。

 そんな益体のないことを考えながら、アイリスフィールの肉体を持ち帰ってきたバーサーカーから受け取り蟲蔵に連れて行く。

 

「まさかここまでうまく行くとは思わなかったな」

 

 アイリスフィールという人間の姿をした外装の機能はすでに停止を始めていて、残り二騎倒れれば完全に停止することになるだろう。聖杯が降臨するのは五騎の英霊が倒れてからになるのだが、今の、三騎しか倒れていない時点でアイリスフィールの肉体が生命活動を停止しても聖杯は確実に降臨することになる。

 

 蟲蔵にたどり着いた。普段の、雁夜に対する魔術師としての授業であればここで行うのだが、アイリスフィールに関しては誰かに見られるのは好ましくない。”間桐臓硯”の蟲蔵とはまた違う、俺自身の蟲蔵へと連れて行くとしよう。

 そうと決まれば話は早い。俺が手をとある一点に触れるとそこが開いて階段が現れる。アイリスフィールは未だ目覚めず、運ぶのには苦労しない。誰も知らない、皆が知る蟲蔵よりは小さく、けれど間桐の家のリビングよりかは広い地下室(蟲蔵)にアイリスフィールを寝かせ。

 

 ()()()()()()()()()()()()

 

「ああ……やはり蒼崎に頼んでよかった」

 

 魂が移動したことで動き始めた肉体を試してそう呟く。

 これが、雁夜がやって来る前からアクセスを取っていて、雁夜がやってきてからの一年でどうにか作ってもらった己の新しい肉体。本来の臓硯であれば魂の劣化によって原作の姿しか取れないのだが、”俺”は別に劣化なんてしていないので問題はなく若い姿になることができる。ついでに、これを本体とするつもりなので、この中にはこれまで自分の本体であった、聖杯の欠片を使って作った刻印蟲も心臓と同化する形で埋め込まれている。

 己の肉体の横には、同様にして作ってもらったアイリスフィールの新しい肉体がある。間桐臓硯が生き残るために行ってきた延命手段は魂の移動。それを使えば、すでに生命として終わりかけているアイリスフィールの抵抗など怖いものではなく、もう一つの肉体に移すのは簡単なこと。

 

 そして何より、新しい肉体の方は魔術回路は開いていない。

 魔術回路の数は間桐臓硯の知るユスティーツァについての記憶から、ある程度の想定はついている。そして蒼崎曰く魔術師としてとても優秀な状態に整えてあるらしい。聖杯としての機能は望むべくもないが、そこに関しては魔術回路を移植することでその特性を受け継がせればいいだろう。

 

「ククク……」

 

 ようやく、アインツベルンの女が手に入る。

 間桐臓硯に憑依したあの時からずっと、”間桐臓硯”の悲願と”俺”の欲望が混じり合ってとてもドロドロとした感情を向けていた相手が。

 そう思えば、どうしようもなく笑いが止まらない。アイリスフィールの魂を移し変えるその作業が終わるまで、久方ぶりに感情を抑えきれない時間を過ごすことになった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第四話

「ぎっ……あぁ……っ!」

 

 私……アイリスフィール・フォン・アインツベルンが目を覚ましたのは、最悪の感覚に引きずられる形だった。

 その感覚の出所を見れば、そこにはぬめぬめとした気持ちの悪い生き物が私の股に潜り込もうとしている姿が見える。

 数えることすら億劫になるほどの量の蟲によって構成された、まさしく蟲風呂と言うべき場所に気がつけば入れられていた私の身体に、その蟲風呂を構成する蟲たちが我先にと襲いかかってきた。

 瞬く間に周囲は蟲に取り囲まれ、三騎もの英霊を取り込んだためにすでに人間としての機能が死に始めているはずの私の肉体は、なぜかサーヴァントの魂を取り込むよりも前と同じように動きながらも、この状況を脱するために一番必要な魔術だけは発動せずに、一切の抵抗が許されずに貪られることになる。

 男性器を模したのだと、かつて切嗣のそれを見たことがあったために理解できてしまったその蟲たち。それが、私の胎内に向けてうねうねと入り込んでくるのが敏感な肉体に伝わってくる。

 

 ぶつり、と聞こえる筈がない音を感じて、それが私の処女膜が破れた音だと理解する。

 

 ありえない。私の処女はすでに切嗣に捧げたはずだ。そうでなければイリヤが存在する理由にならない。

 そうは思っても現実は変わらず、秘所からは初めてを経験した証である赤い液体が垂れてきている。

 

 一歩遅れて、一切の準備がされていない私の膣内を蹂躙されたことによる激痛が襲いかかって来た。

 いくらぬめぬめとした体液を表面に纏っていても、そもそも人体に対して入れるような大きさではない蟲が強引に入り込んで来たことによって発生した大きすぎる痛みに意識が朦朧とする。

 

 痛い、それ以外の感情が湧き上がらない。中で暴れ狂うそれはいっそ感触としては冷たいと思われるが、切嗣のそれよりもはるかに大きなそれが、人間ではなく蟲であるためにできる挙動によって与えてくる股が裂けるような痛みがその冷たさを上書きする。

 

 外見は陰茎に近いとは言え、甲殻も持たないただの蟲。アインツベルン、そこにあった蟲についての資料は間桐のものだけ。その間桐についての資料にあった蟲でいうならば、見た目は芋虫が一番近い。ならば外皮は柔らかいはずなのに、今はその全身を私を貫く凶器にして、聖杯の器ではない、アイリスフィールという女性としての尊厳を抉りに来ている。

 

「ひ……っ! むぐ……っ!」

 

 我が物顔で私の中を突き進む蟲の感触に、そしてそれが私の弱いところを探り当てたのか快楽を感じてしまったという事実に悲鳴をあげようとした刹那、口を開けてしまったことが失策だったと悟る。私の口の中に同じ蟲が我先にとたくさん飛び込んで来たのだ。

 口の中一杯に広がるぬめぬめした感触と、蟲たちの怖気が走るほどに生暖かな体温に吐き気を催すが、自分の体はこんな状況下でも生きたいと思っているのかその嘔吐感に身を任せられない。反射的にそれをこらえてしまう。

 けれど蟲はそんなことに構うことなく、自分の仲間で圧迫されている私の口内を好き勝手に暴れまわる。歯の隅から隅へと粘液が塗りたくられ、舌は、その上を転がる蟲が分泌している液体から臭う形容しがたい何かによって麻痺していく。

 

 一体いつまで犯されることになるのか、もうここにいては時間の感覚がおかしくなる。早く終わって欲しい。切嗣、助けに来て。聖杯戦争に参加する魔術師としての夫のことを思えばこそ、そこに愛情からではなくとも合理的な考えとしてきっと助けに来てくれると願いを抱いて、同時にこんな姿を見られたくないとも思う。

 

 そんなことを思っていたからだろうか、気がつくのが遅れた。

 

「ん、んん……っ!?」

 

 私のお尻の穴に、別の蟲がぐいぐいと身体を押し付けている事に。

 何をされるか理解して血の気が引いたが、もう遅い。

 蟲はそのまま私のお尻の穴に潜り込み、一瞬にしてその全身を埋めてしまった。

 切嗣にすら許していない場所を犯されて絶望する私のことなんて一切考慮することもなく、蟲はその本能に従って私の尻穴を蹂躙する。

 

「んぅ、んんんんんん……っ!」

 

 女性器と、口と、お尻。その全てを蟲という本来入れるべきではない存在に汚辱の限りを尽くされて蹂躙された私は、悲鳴すらあげられずに身体を痙攣させた。

 

 膣内を蠢く蟲の感触は身の毛がよだつ程おぞましいし、お尻を埋め尽くす蟲の存在は私のお腹を圧迫して私を苦しめる。口の中を好き放題動いている蟲の所為で呼吸すら碌に行えず、意識を遠のかせる。けれど、お腹の異物感の所為で意識を失う事すら許されない。

 ぞぶり、ぞぶり、と身体の奥を這い回る蟲の感触は、私から気絶という選択肢を奪っていた。

 

 そして何よりも最悪なのが、その蟲たちの蠢きによって私の体が快楽を得てしまっているという事実。

 どれだけ心の中で否定してもその事実に変わりはない。少しずつ肉体が順応して来たのか、それとも蟲たちが私の気持ちいいと感じるところを理解したのか。そのどちらにせよ切嗣の貞淑な妻という私の立場、切嗣の理解者という立場すらも自らの手で穢しているようで、涙が出てくる。

 それぞれが思うがままに動いているために人間の行為にあるリズムなんてものは一切なく、けれどあの最悪のタイミングだけはなぜか一致していた。

 

 訪れたその時に、私の股とお尻に突き刺さった蟲と口の中を蠢く蟲が同時にびくん、と痙攣する。

 

 それが何かを私が理解する前に、全身をぶるぶると震わせた蟲の先端から生暖かい液体が噴き出した。

 

「んん……っ!? んぅーー……っ!!」 

 

 その液体はあっという間に私の穴という穴を埋め尽くして、どろっとした粘液が私の体内に注ぎ込まれる。

 蟲に溺れる私は抵抗すら許されず、滾々と注がれるその汚液を受け入れるしかない。

 そして、その液体がその蟲の精液であると気付き、私は蟲の子供を孕んでしまう自分を幻視した。

 イリヤを孕んだあの時とはまるで違う絶望感に満ち溢れた、けれど全く同じ行為。

 

「……ぁ……」

 

 子種を吐き出して満足した蟲が、私の口の中からずるりと這い出て行く。

 同じように股やお尻から出て行く蟲の姿を眺めながら、私は先の見えない絶望によって意識を失う事を選択した。

 

 けれど、私の身体を貪る蟲達は今精を放ったものだけではなく。

 そして残りの蟲たちも私の状態なんてものを考慮しての容赦をするわけがない。

 

 すぐさま別の蟲が私の穴を埋め尽くし、意識を失うことすらも許されず私は再び蟲風呂の中での凌辱を享受する他なかった。

 

 

 

 

 その光景を眺める俺は、暗い喜悦が浮かんでくるのがわかった。

 眺める、とは言っても実際のところ俺はその蟲蔵にいたわけではない。

 つい先ほど、アイリスフィールを蟲蔵に運ぶまでの間に使っていた肉体を構成していた蟲たち、彼女の体表に射精したその蟲たちの視界を通して確認しただけのことであり、汚辱に塗れた聖女の体は未だ自らの瞳で捉えてはいない。蟲に犯させたことに後悔などあるはずもなく、先ほどまで己の肉体だったのだから俺自身の手で犯したといっても過言ではないだろう。むしろ充実した気分だった。

 

 だが、いい気分になるよりも先に、やるべきことがあった。

 

「さて、と」

 

 別の蟲たちを使って誰もが知る”間桐臓硯”を作り上げる。

 それに、魂を移し終えた後の死骸でしかないアイリスフィールの肉体を冬木市公民館にまで運ばせた。

 遠坂邸の監視をしていたので、すでに遠坂時臣が言峰綺礼によって殺されたのは見た。

 ”間桐臓硯”という老獪と思われている人物は”外道”という言葉がよく似合うし、そして何より原作と呼ばれるもので言峰綺礼に対して突きつけた事実は俺もすでに突きつけた。

 できる限り第五次は開始時の条件は同じにしたいので、”衛宮切嗣は言峰綺礼の求めたのとはまるで違う人物だ”という現実を突きつけて二人の間で戦う理由を作らせることで、聖杯の泥にて衛宮切嗣を五年後に殺すために彼に渡す。

 

 それが、俺のやらなければならないこと。

 

「……」

 

 俺は本物の間桐臓硯の知識を持ってはいるが、言ってしまえばそれだけだ。

 Fate/staynightの世界を知っているから、本来の間桐臓硯が知りようもない知識を知っているがそれ以上のことは何もない。

 本物であればアサシンを媒介に真アサシンを召喚するような外法をパッと思いついてそこから色々と実行できるのだが、俺にはきっととっさにそこまで狡猾な策謀を張り巡らせることはできない。

 勘違いしてはいけないことだが、間桐臓硯は『間桐桜が聖杯に覚醒する』という予想外の事件が起きたにもかかわらず、本来ならあと五十年後に実行する予定だった計画を現代でも起こせるようにしたのだ。

 俺には、そんなことはできない。だから万全を期すのであれば、できる限り状況は俺が知っているものに近づけるべき。

 俺がこれからするのは、そのための行動なのだ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第五話

本日二話目ー


「初めまして、アインツベルンの聖杯。貴様の身柄、この間桐臓硯が貰い受けた。すでに逆らえんと思っておくがいい」

 

「……そう、あなたが」

 

 言峰綺礼に対して聖杯と化す前のアイリスフィールの肉体を渡し終えて戻ってきた後、”間桐臓硯”の肉体のまま蟲蔵の奥に行けばアイリスフィールはすでに目覚めていた。気絶するまで犯され、それを新たな蟲に犯されることで起こされ、全ての蟲が満足するまで続けたアイリスフィールには体力なんて欠片も残ってなどいなかったが、それでも冬の聖女の生き写しは、気丈にこちらを睨んできていた。

 裸で、汚辱にまみれた姿であってもその気高さは変わらず、気の弱い人物であればそれだけで失神すらしかねないほどの怒りと侮蔑を向けてきているのだが、こちらはそれに対して特に思うことはない。間桐臓硯の知識は、記憶は、思い返しただけでその世間知らずの姫君の睨みを超える恐怖がいくつもあったために。むしろこの女性が最終的にこちらに対して媚びた視線と言葉、そして仕草で快楽を求めるようになる未来を思えば、それがあまりにも楽しみで。

 

「無駄だ」

 

「ん……ひぃっ!?」

 

 すでに聖杯の外装だった元々の肉体から魔術回路は移植しているため、それに伴う形で新しい肉体の魔術回路も励起している。それを知ってか知らずか、おそらくは肉体が変わったことすら知らないまま、これまで通りに魔術を使用しようとしたのか、彼女の体から魔力の高ぶりを感じた。けれどそれは発動することはなく、アイリスフィールの肉体はびくりと震える。その時に漏れた声は快楽にまみれた俗物的なもので。そして快楽を貪った彼女は今の状況を不本意ながらにも理解しているのだろう。

 

「あな、た……! 私の体に何を……!」

 

「なに、刻印蟲を植えつけたにすぎんよ。貴様の魔力を吸って活動することは間違いないが、それで浅ましくも快楽を味わったのは貴様の肉体。アインツベルンはとんだ淫乱を作り出したものだな」

 

 お尻の中の刻印蟲。それが彼女が魔力を行使しようとしたことに気がついてその魔力を貪り食らった。それによって活発になった刻印蟲の活動で彼女が快楽を感じ取ったところまでは俺の管轄ではない。……さすがに1日にも満たない時間でここまで快楽を貪るようになるとは思わなかったが。本来は激痛と魔術に回そうとした魔力を吸われることになって魔術を使用できなくする程度だったのだ。

 そして同時に、刻印蟲も本来の用途から改造されている。本来ならば魔力を食らうだけのそれだが、彼女の胎内にいるのはその魔力を使って『生命維持に必要な成分』を錬成する蟲。彼女が魔術回路を持ったままの限り、彼女は刻印蟲に魔力を吸われ快楽を味わうことになるためこの部屋から出ることはできず、彼女が魔術回路を捨てれば魔術を使えないために工房からの脱出は不可能。

 

 詳しい効果までは知らないだろうが、少なくとも己の手での脱出は無理だと悟ったのだろう。わずかに瞳に恐怖が混じる。ただそれよりも、自分の言葉は彼女の琴線に触れたらしい。恐怖よりも大きな怒りが瞳は浮かんでいる。

 

「ふざけないで……!」

 

「ふざけてなどいないさ。俺は、少なくともこの時点では痛みと魔力不足による脱出ができないと踏んでいた。ユスティーツァという聖女を知っていたからな。だが、貴様はたかが1日も犯されていないにも関わらずすでに蟲を受け入れる体になっている。これを淫乱と言わずになんという」

 

「……っ!」

 

 もはや殺意なのではないかと疑うほどの視線。それに対して愉快な感情しか抱くことができない。彼女のそれはつまり、自分が……いや、自分の肉体ではないのだが、それでも自分の手で彼女の肉体を貪ったことの証明なのだから。

 彼女には、すでに肉体を入れ替えたことを伝えることだけはしない。少なくとも聖杯戦争が終結するまでは。それは『三騎が倒れた以上死んでも聖杯として完成できる』と思わせることで、『聖杯を切嗣に与える』という思考を起こさせ、生命活動を自ら終わらせることで逃げるための手段を潰す、間桐が戦わずに逃げ切って聖杯を使ってしまうという手段をとらせないために。

 少なくとも聖杯戦争の間、彼女には間桐の蟲に犯され続けてもらう。それ以降は俺の妻となるか、あるいはただ蟲を産むためだけの母体となるか。どちらになるのかは未だわからないが。

 

 

 

 

「そこに風呂があるから、汚れを洗い流しておくといい」

 

 間桐臓硯は、そう言って地下室を出て行った。

 アイリスフィールはその言葉に対してあなたがやったのだろうが、という怒りを覚えないわけではなかったが、『切嗣が助けに来てくれる』という希望は残っているために彼が助けに来た時に見られる姿ではないといけない。……たとえそれが、妻を探しに来たのではなく『聖杯』を探しに来たのだとしても。

 その時のためにも、隣に設置されているというシャワールームを使わせてもらうことにした。

 

「あら、案外普通のシャワールームなのね」

 

 蟲の体液で作られた風呂、なんてものも最悪の想定としてはあったので、そういう意味では普通のお風呂があるだけマシだった。

 シャワーの水を出して、水がかからないように少し離れる。

 間桐の魔術属性が『水』であるためにシャワーの水にも何かあるのではないかと疑ったが、アイリスフィールに感じ取れる限りでは魔力の痕跡すらも、この水が魔力にまみれているわけでもない。

 安心しきってしまうのはだめだが、それでもその美しい裸身を穢している汚液を流してしまいたいとアイリスフィールが思ったのは事実であり、だからこそその流水に身をさらけ出した。

 

「ひぅ……っ!?」

 

 さらけ出したところで、蟲に犯され鋭敏になった感覚が彼女に快楽を伝える。

 流水が当たった場所が乳房であったことも、彼女にとっては不幸だったのか。

 それでも、シャワーですらも今の彼女には感じる要因となる、ということがわかってしまえば、蟲によって与えられるものに比べれば遥かに小さな快楽など耐えられる。

 それでも確かに体にはじくじくと熱が溜まり、思考を鈍化させて行く。

 

「ん……ぁ……」

 

 漏れた小さな声は、いつの間にやら秘部に触れていた白魚のような指の刺激によって。

 快楽に溺れているとしか見えないその姿、瞳にも快楽はあるが彼女はきっと認めないだろう。彼女はそこに、『蟲に中出しされた精液を掻き出す』という名目を見つけたのだから。

 

 自慰に耽ける彼女は知らない。

 この状況を見られているということも。

 今、彼女が浴びているシャワーは、普通ではない地下室に引いた水道ということで後ろ暗いところがあるということも。

 そのシャワーには希釈された『間桐の蟲が好む香水』が混じっていて、嗅覚が鋭敏な間桐の蟲たちが『アイリスフィールが戻ってきたら好きに犯してもいい』と命令されたために今か今かと待っているということも。

 

 十数分後に受けることになる新たな辱めについて、何も想像すらしていなかった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第六話

 つい先日、蟲によって確認した聖杯戦争の終焉。それは俺が知るものと全く同じように衛宮切嗣によって聖杯が破壊される形で幕を閉じた。

 その光景を思い出し、漏れそうになる笑いを抑えながらも俺は蟲蔵でアイリスフィールと対峙する。

 

「衛宮切嗣は貴様を裏切ったようだな」

 

「……当然でしょう。切嗣は聖杯を使って世界を救うのだもの。私なんかに構っている暇なんてないわ。……残念ね、間桐の老人。私を人質に、なんてことは意味がないわ」

 

 その言葉を放つアイリスフィールは、見捨てられたと聞いた割には心が折れることはなく強い光をたたえた瞳でこちらに嫌悪の視線を向けている。つい先ほどまで蟲に犯されていて体の感覚は鋭敏なまま、白い肌には蟲の精液によって汚れていない場所がないほどだが、その状態で気丈にこちらを睨むその姿は生来の気質に裏打ちされたものだけではない。

 きっと、彼女は『聖杯(アイリ)を助ける必要がある』と信じているから、衛宮切嗣の理想は嘘ではないと知っているから俺の言葉を嘘だと思っているのだろうが、今の状況下ではそれは全く彼女の心を支えるに至らない。

 

「いいや、衛宮切嗣が願いを叶えることはない」

 

「……何ですって」

 

 夫を馬鹿にされたからかアイリスフィールの顔に再度の怒りが浮かぶ。これまでに見たもののどれよりも怒りを見せている。

 ただ、こちらにもそれを言い切れる理由が一つ。アイリスフィールを捕獲したのはキャスター討伐の翌日、つまりはランサーの消滅した翌日でもあり、俺が知る原作では本来ライダーに化けたバーサーカーに攫われた日付と同じはず。そこからの流れは細かなところまではわからないとは言え、そこから一日中彼女のことを蟲で犯していたのですでに原作における第四次聖杯戦争の終了の日程は迎えている。

 

 そして、この世界でもアイリスフィールが世間的には死んでいるという事実があるし、できる限りそちらに沿うようにして進めたために、同じように衛宮切嗣がセイバーに宝具を使わせることで聖杯を破壊した。

 

「これが何かわかるか?」

 

「それって……! 嘘、なんで……」

 

 見せたのは、回収して来た第四次の……つまりはアイリスフィールの肉体でもあった聖杯の破片。

 彼女自身はそれを見たことがなかっただろうが、それでも『ユスティーツァの同型機』には魂の繋がりがあったらしいしわかるのはそこまでおかしなことではないだろう。

 

「貴様の今の体が魂だけ移したものだからに決まっているだろう」

 

 だからここで、この聖杯の欠片が偽物だと断言することはさせない。間桐が作った聖杯の失敗作だとも言わせない。間桐ではこの程度の破片しか作れないと思わせてしまえば、彼女から希望を奪うことはできない。

 

「な、そんな、こと……」

 

「そうでもなければ、夫婦であるにもかかわらず貴様から破瓜の血が流れるわけがなかろうに」

 

 それ以外にも、少し考えてみればよくわかる証拠。

 まずは目覚めた直後、蟲に体を犯される前であったにもかかわらず起動しなかった魔術回路について。

 彼女が実際に魔術回路を起動させようとしたのかどうかはわからないが、あの状況下から脱することができる可能性をわざわざ試さないはずがないだろうから、使っていたのだろう。

 他にも、聖杯の器としてサーヴァントを吸収したことで体調が悪くなっているはずなのに彼女がサーヴァントを取り込む前と同じように喋ることができているという事実。

 

 そういったところをちまちまと突きつけていけば、彼女も現実を受け入れざるを得ない。

 

 すなわち、衛宮切嗣はアイリスフィール・フォン・アインツベルンを死んだものと見なしているために助けに来ることはない、ということを。

 

「ああ、それと」

 

 監視用の蟲に取らせた衛宮邸の映像を壁に映す。そこには衛宮士郎と並んで座る甚平姿の切嗣の姿。彼女はそれを見ても何を言いたいのかわからないらしい。まあ、確かにそうだと思う。この状況だけならば確かに、衛宮切嗣が何をしているのかわからないだろう。

 

 答えは、何もしていない、だ。

 

「え……?」

 

「貴様らの娘を助けに行こうとすらせず、ただ拾った息子と駄弁っておるだけよ」

 

 迎えに行くという約束すらも破っている。

 『聖杯を破壊した』という時点でアインツベルンから裏切り者と呼ばれているだろうし、それを裏切ることにまでは理由があるのだと納得ができたとしても『イリヤスフィールを迎えに行く』という約束を裏切られたことにまでは理解が及んでいないのか、それとも理解したくないのか。

 まあ、それも仕方ないことだろう。『アインツベルンにとっての裏切り者』というのはそもそも『サーヴァント六騎で叶えられる願い』を叶えようとした時点ですでに最初からわかりきっていた。サーヴァント六騎の魔力による願いを叶えた時点で聖杯戦争が終了するのだから。その時点で七騎目が還るのとラグが発生してたどり着くことができるはずがない。

 だが、『イリヤスフィールを迎えに行かない』というのはアインツベルンは関係ない、妻との約束に対する裏切りだ。だからこそ、心の底から彼を愛していたアイリスフィールはそれを認めることができない。

 『迎えにいけない』ではなく、『迎えに行かない』のだから、約束を破るつもりはないのに約束を破ってしまった、ではなく、『最初から約束を破るつもりだった』ということになる。

 実際のところはこれから先になんども迎えに行こうとするのだろうが、そんなことは今の彼女には関係ない。彼は迎えに行かない。たったそれだけが、今の彼女には事実として、映像として入っている。

 

「……っ! なに、これ……っ!」

 

 愕然としていたアイリスフィールが、いきなりそのお腹を押さえ始める。

 それに、何があったのかを察して笑う。笑いが地下室に響き、その笑いから俺が原因だとわかったアイリスフィールがこちらを苦悶の表情のまま睨んでくる。

 

「何、など考えるまでもないだろう。貴様がこの数日間されていたことを考えればな」

 

 出産、以外にあり得るはずもない。

 

「っ!」

 

 聞けば、彼女は青褪める。そして同時にその腹の奥で蟲が暴れ回るのか、さらに苦悶を深くした。

 

 

 

 

「……っ!!」

 

 痛い。はち切れそうなくらいに、お腹が痛い。

 そんな感覚が、アイリスフィールの全身を覆い尽くす。見目は普通と変わらないお腹の痛みが、そのまま脳へと届いていく。

 夫がいて、娘がいて、確かに愛されている実感があって。その上で夫の理想のために殉じるつもりもあったのに。

 それが、死ぬことすらも許されず、見知らぬ男どころか、人ですらないものに孕まされる未来にたどり着くことになるなんて、誰が予想しただろうか。

 

「こんな、こんなの……」

 

 毎日、暇さえあれば常に蟲に犯されていた。

 そんなことをされたくもないのに、気絶している間、そして間桐臓硯が良しとした時間以外は常に蟲の精液によって子宮を満たされることになった。

 蟲の子供を孕んでしまっている。

 彼女の中にいるのは、化け物だ。

 普通の赤子ではなく、自分とは違う種族すらも孕ませることができる、魔蟲なのだ。

 

「あっ……!!」

 

 どくんと、腹が跳ねた。

 外部から見ても何もわからないが、それを内包している彼女にはわかる。

 

「動かっ、ない……で……!」

 

 苦しいはずなのに、体はそれに快楽を得てしまっている。

 腹のなかの蟲が暴れ回る感覚に、かつて娘を産んだ時の陣痛とはまるで違う快楽を覚えて、それを堪えるようにして叫んでいた彼女は、不意に絶頂という形でその快楽に順応した。

 

「ーーーっ!!」

 

 出口を見つけたそれが、ずるりと子宮口を抉じ開ける。

 貫かれた痛み(快楽)が彼女の全身に電流となって走ったのも束の間、今度はそれが膣壁を押し上げる感覚に彼女は支配された。

 

「いや……あ、あ……あぁああ……っ!!」

 

 ぷしゃぁっと愛液を吹きながら、アイリスフィールはその女性器から蟲を出産する。

 無数に生まれ出でた蟲たちは両手の指では数え切れないほど。大量の蟲が彼女の胎から誕生していた。

 

「うっ……!」

 

 だが、産んだというのに腹の疼きは収まらない。膨その下で蠢く何かも、その蠢きが生み出す快楽も、一向に収まらない。

 

「うそ……これで終わりじゃ、ないの……?」

 

 そんな彼女の声に反応したかのように、子宮口が痛む。再度出現する、普通の出産で生まれる痛みとはまるで違う出産の快楽。それが産道を通して、アイリスフィールへと襲い掛かった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第七話

皆さー、人妻アイリさん犯されるのに興奮しすぎじゃなーい?


 最初の出産から、一体どれほどの時間が経っただろうか。

 彼女の周りには、数え切れない、部屋の一角を覆い尽くすほどの小さな影があった。そのどれもが同じような姿を彼女に擦り付け、その柔肌の温度を味わっていた。

 そんな、彼女の秘裂の中からは、この異形の出産にもかかわらず彼女が感じていたことを示すように愛液がこぼれ落ちて床にシミを作っている。

 

「あ……あ、あっ……」

 

 連続する出産、それに伴う快楽に溺れてしまった彼女は、もはや抵抗する気力もないようだった。

 心はともかくとして肉体が快楽を感じていたことは変えられない事実であり、その快楽が奪った体力は気力にも直結していた。

 体のいたるところにつけられた蟲たちの精液はすでに臓硯の魔術によって洗い流され、白さを取り戻した肌の上を新しく生まれた赤子()が這い回っている。

 普通の、人間の赤子がするのと同じようにアイリスフィールの母乳を啜る個体もいれば、これまでの個体と同じように彼女の口、女性器、お尻と言った穴の中に入り込む個体もいる。

 彼らが望んでいるのは母体の体液。俺が俺でなかった頃の間桐の家は、『霊地が間桐の属性とは相性が悪い』という理由で今の場所に邸宅を構え、第四次の時のライダーのマスターであるウェイバー・ベルベットはライダーを召喚した地がもっともライダーとの相性がいい、という理由でそこでライダーの魔力回復に勤しんだ。

 

 つまり、魔力を持った個体とは相性のいい魔力というものがある。

 

 然らばアイリスフィールの胎から生まれた蟲たちともっとも相性がいいのは考えるまでもなく彼女の魔力。よってそれらが大量に含まれた彼女の体液を欲するのはある意味当然だった。

 

「くかか。蟲より得られる法悦は気持ちよかろう。たっぷり感じて、たっぷり乳を出して育ててやるといい」

 

 俺の言葉も耳に届いていないのかもしれない。彼女の体を這い回った催淫効果のある体液を纏った蟲たちによってすでに口も、胸も、女性器も、尻穴も、全てが通常よりも鋭敏な性感帯となっている。母乳を吸われるだけで絶頂し、膣の中を進まれるだけで愛液をこぼして、体をビクビクと震わせている姿から、それはみて取れる。

 

 幼蟲が、母から魔力を吸い上げてその肉体を育て上げていく。

 現状を嘆いたためか流れた涙を啜り、口の中を蹂躙して唾液を吸い、胸を絞り上げて母乳を吸い出す。

 激しい交尾によって流れた汗を表面を這い回る蟲が舐め取って、我慢できなかったのか流れた尿を開けた口から飲み込んで、膣の中に己の体を押し付けることで漏れ出す愛液を全身で吸収する。

 刻印蟲がいた腸内も、すでにその刻印蟲がさらに彼女の肉体の中心に向かったのか存在することはなく、他の蟲が蹂躙を始めた。

 

「せっかく洗い流したというのに……」

 

 直後、蟲達がまた精液を放出する。それができるぐらいにまでこのわずかな時で成長したというのには驚いたが、アイリスフィールがそれだけ優秀だったということなのだろう。おそらくはそれでまた妊娠したのであろう彼女は、今度は先ほどまでは精液に穢されていなかったその美貌まで汚れきってしまっている。それでも、わずかな隙間から見える瞳にはもう快楽以外の色は見えなくて。けれど完全に堕ちたというわけではないと思う。

 

「さて、ここからはどうするべきか……」

 

 最後の一押し、それをどうやって持ってくるのかについて悩んでいる。

 

 

 

 

「あっあぁっ……! いやっ、いやぁ……っ!」

 

 アイリスフィールが十度ほど出産をした頃、彼女に対して新しい役割を与えた。

 要するに、彼女に蟲の出産ではなく、俺の子供を産ませることにした。

 これだけで彼女の心を折ることはできないとは思うが、それでも彼女に絶望を与えるには十分にすぎる。

 

「なら、蟲の子を孕み続けるか……?」

 

「っ!」

 

 アイリスフィールが完全に堕落するまでこの地下室の外に出すつもりはない。蟲の出産をさせることで戦力を整えることでもよければ、俺の子供を孕ませることでハーフホムンクルスを作り出してそれを魔力タンクとすることでも、どちらであっても問題はないのだ。

 彼女がその未来を思い描いて体を固まらせたタイミングで、彼女のことを背後から突く。

 美しい裸身、穢れを知らないようにも思える裸身。蟲に犯され、されどその名残は感度の良さ以外には残していない純白の、黄金比を保った体。それを舐める。

 一切の予備動作を見せることもなく、彼女の鋭敏になった感覚を蹂躙するように、彼女の総身を舐め始める。

 背後から始めたそれは、脇、首筋といったところも舐めれば、頬や怖気が走って流れたのであろう涙すらも舐めとる。そうして最後には、それは乳房にまで及ばせる。

 

「ひゃあっ……やめ、なさ……!」

 

 鷲掴んだ果実の先に、芽吹いた淡い色の蕾。そこから絞り出される、甘い甘い果汁。それを啜るために俺は舌を激しく暴れ回らせて蹂躙する。

 

「あっ、吸わな……っ、あっ……」

 

 魔蟲も魔力を内包する生き物であり、その精液には豊富な魔力が含まれている。妊娠した彼女はその父親となる蟲から受け取った魔力を母乳という形で産んだ子供にずっと供給し続けてきた。その動作はすでに体が覚えてしまっていて、胸を吸われたら母乳が出るほどにまで。

 繋がったままぐるりと彼女を回転させて向かい合う形に。彼女の背中に回した片腕でその体を支え、口で吸うたびに噴射する甘い母乳を吸いながら、アイリスフィールの肉体を愛撫する。

 脇や首筋といった敏感な部分はもちろんのこと、太ももやふくらはぎなど柔らかさに満ちた部分にまで手の空いている腕で撫で回す。

 快楽を覚えたことで絶頂を迎え逸物を締め付ける膣の感覚に射精を堪えることなどできるはずもなく、彼女の子宮を俺の精液が犯し尽くした。

 

「ーーーっ!!」

 

 声にならない悲鳴をあげた彼女の体が跳ね上がるバネのように弾け飛ぶ。さらなる絶頂。彼女の体がすでに元の生活に戻れないほどに快楽に溺れていることがわかる。

 

「……っっはあっ! はぁっ、はぁーっ……っ!」

 

 荒い息で肩を上下させて、それでもなんとか耐え切ったと言わんばかりの彼女。

 その最奥をもう一度突く。

 

「こっちはまだ満足していないんだ、付き合ってもらうぞ」

 

 その言葉に絶望したような表情を浮かべて、アイリスフィールはさらなる悲鳴をあげて絶頂のスパイラルへと落ちていった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第八話

 アイリスフィールを捕らえてから約一年。それだけの期間を犯し続けてきたわけだが、それとはまるで別の問題に今悩まされていた。

 その問題の名前は間桐桜。魔術師の後継として連れてこられたために後六年経てば慎二にいじめられることが確定している少女について。

 彼女に対して聖杯の欠片を植えつけてもいいのだろうか、ということからまず始まる。

 より正確に彼女についての問題点を言うのであれば『原作の黒桜になりかねない行動をしてもいいのだろうか』と言うこと。

 いや、その気になれば問題はないのだ。原作終盤で間桐臓硯が殺されたのは、彼女の心臓に己の本体を置いていたことが原因。ならば、本体を体の中に入れたままの状態の俺が彼女を蟲蔵で犯し、今所持している聖杯の欠片を仕立て上げて作った刻印蟲を植えつけてしまえば、原作と同じような状況を作ることはできる。

 

 ただ、原作と同じように彼女が俺に従ってくれるかどうかと言う不安もあるのだが。

 

「俺の目的は死なないこと」

 

 それと第三魔法によって不老不死を得ること。

 そして最後にイリヤスフィールも捕らえて、自らの所有物として調教すること。

 最悪の場合、死にさえしなければアイリスフィールという性欲をぶつける相手がいるので三つ目はどうしようもなければ諦めてもいいのだが、それでもできることなら総取りしたい。

 

 それを再度確認して、もう一度考える。

 

 俺の中では『間桐桜がメドゥーサを召喚すること』を作戦に組み込んでいる。というか、俺のできる範囲での干渉で変化する可能性が高いのはこいつだけだと思う。

 あれは間桐桜との『いずれ怪物になる運命を持つ』という共通点から呼び出されたサーヴァントだ。原作における怪物と化す原因である『間桐桜への聖杯の欠片の投与』と『蟲蔵での調教』という二つの要素が抜けている現状、それを呼び出すことができるかどうかわからない。そして、それを召喚できないということは俺の作戦の大前提すら崩れてしまい、さらには召喚されたのが俺の敵となりうる『秩序・善』の属性だったりしたら最悪だ。

 

 だが、だからと言って安易に『黒桜』を作り上げることもアウトだろう。

 理由は考えるまでもなく自らの死の危険が増えるため。

 

「……いや、待て」

 

 今、改めて考えてみたが黒桜を作り上げずにメドゥーサを召喚させるのは不可能ではない、のだろうか……?

 いや、だがメドゥーサとの『怪物に成り果てる』という共通点。その『怪物』というのが黒桜のことであれば聖杯の欠片を埋め込む必要がある。

 だいたい十分程度悩んで、そして決めた。

 

「やるか……」

 

 桜を犯して調教する。要するに『黒桜に成り果てる』可能性さえあれば何も問題はなくメドゥーサを呼べるはず。そこから『黒桜に成り果ててしまう』未来はHeavens Feelルート以外にはありはしない。少し楽観的と言わざるを得ないが、それ以外のルートになる可能性を狙うとしよう。

 

 とはいえ、今日は桜が出かけている最中。彼女が帰ってきてからそれを実行することになるだろう。

 

「仕方ない、アイリスフィールで遊ぶか」

 

 今日の予定が決まったところで、地下室へと足を向ける。

 この一年、犯さない日は一日たりともなかったのだが未だに堕ちていない彼女、けれど間桐の蟲と俺から得られる人外の快楽がなければすでに体が物足りなくなってしまっていることは、シャワーを浴びている最中にオナニーをしてしまっていることからわかりやすい。

 

 そんな彼女は今。

 

「くかか、気持ち良さそうに犯されているな」

 

「あっあぁっ……はぁっ、あああぁぁっ……!」

 

 地下室で、アイリスフィールの卵子と俺の精子から生まれた子供に犯されている。

 その子供はアイリスフィールとそっくりの顔、全く同じ銀髪と紅目を持って、けれど彼女とはまるで違ういきり立った肉棒で彼女の肛門を犯している。

 少し視線をずらせば、彼女の子供が男女入り混じって性行為を行っているのだが、アイリスフィールはそこにまで気を回すことができていない。

 ”間桐臓硯”の肉体は蟲によって構成されているとは言え、その蟲たちは人間としての機能を果たすために精子すらも人間に近しいものを出せる個体が性器の部分に存在した。そのために生まれる個体も人間としてのそれにすることは可能であり、そして俺が犯す場合にはそうして子供を孕ませていた。

 中で受精したらその卵を引きずり出して、体外で強制的に育て上げることを俺が想定していた最低限の人数が揃うまでは行ったために、この地下室の中ではアイリスフィールを犯している彼女の息子、自らの姉妹を孕ませる息子、自らの兄弟の精を子宮で受け止めて子供を孕む彼女の娘、蟲によって犯されて蟲を産んでいる娘の四種類が入り混じっていて、アイリスフィール以外の全てが蟲を脳内に入れられることで思考が死んでいる。

 さらに少し離れたところでは、受精卵から成長過程の彼女の子供が入った人工溶液に満たされたポッドがある。

 

 そして、それらすべての母であるアイリスフィールだが。

 

「そろそろ産んでもおかしくない時期だろうよ」

 

 もう後は子供達が性行為を繰り返していることで勝手に数が増えてくれるので、彼女が孕んだら体外にすぐに出して育て上げるということをしなくてもよくなったために普通に孕んでもらっている。

 ボテ腹と呼ばれるような状態の彼女の肛門からは犯されすぎて収まらなくなった精液が溢れている。

 

「アイリスフィール、そろそろ俺のものになる決心はできたか?」

 

「あ……あぁ……」

 

「……まともに返答もできないか」

 

 快楽に溺れている彼女は返答もできないようなので、一旦諦める。

 とりあえず、彼女に対してだけありとあらゆる性的な行動をできないように脳内の蟲を通じて命令をして、アイリスフィールの体を洗ってから放置することまでもしっかりと厳命して、地下室から出て行く。

 

 

 

 

 アイリスフィールを放置することを命令したその日の夜、俺は桜と向き合っていた。

 

「桜、お前に間桐の魔術をそろそろ教えようと思う」

 

「本当ですか……?」

 

 これまで教えてこれたのは彼女の属性である『虚数』と、あとは使い魔に関する簡単なもの。

 ここからは本当の意味で間桐の魔術を教えるのだが、それはつまり桜を犯すということであり、さすがにちょっと心が痛む。

 原作のそれよりもマシなものにはしてやりたいと思うが、正直言ってあれぐらいやらないと意味がないということもわかりきっている。

 どうするべきかと悩んだ結果、今日の彼女に対する訓練については決まった。

 

 とりあえず、蟲の好きにさせよう。

 

「我が家は使い魔に造詣が深い家系。故に桜にも使い魔を使役する魔術を教えてきた。だが、結局のところ実践はさせてこなかったからな。とりあえず今日は、間桐の……俺の使い魔である蟲の使役についてやってみろ。下手をすれば……うん、まあ死にはしない」

 

「……はい」

 

 何か嫌なものを感じ取ったのかもしれない。桜を相手に何もしてこなかったとはいえ、雁夜とは桜も接触をしていただろうから。けれど、だからこそ逆らおうという気力も浮かばないのだろう。逆らえばああなるかもしれないという恐怖もあるから。そんなところだろうか。

 

「では、行くといい」

 

 そう言って、彼女のことを送り出した。




アイリ犯すのも単調になりそうだしどんどん進めていくよ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第九話

 桜が黒桜となるのはHeavens Feelルートのみ。

 これは大前提であり、では『黒桜』が誕生するのはどういう流れだったのか。

 大まかに分けてその過程は三つ程度。衛宮士郎が手に入る、「この世全ての悪」を使ってサーヴァントを取り込む、そして慎二を殺したことで殺人を自覚する、という状態。

 この中で、俺が関わることができるのは最後の『慎二を殺す』ということのみ。

 あれは臓硯の策略によって発生した事象であり、俺がなんとか慎二をこの家から追い出すことに成功すれば黒桜になるのは遅らせることができるだろう。……それ以前の段階で、俺は黒桜になるルートを削りきる予定ではあるが、絶対に成功するという保証がない以上は保険として慎二を家に置いておかないほうがいい。

 

「はてさて、桜の中に聖杯の欠片を埋め込むことには成功したが……」

 

 ここからだ。

 ここから、桜を黒桜にしないように進めながらも、己の目的を達成するために桜ルートに近い進め方をしなければならない。

 俺がイリヤスフィールを確保することを目的とするのならば、どうしてもそれが一番楽だ。

 俺が聖杯戦争に参加する上で一番状況を崩さないのは、桜ルートの真アサシン召喚による形。

 原作と何も変わらない参加方法であるがために、一番変化が少なく思い描いた通りの形で進められるだろう。

 

 一週間ほど前から始めた桜の調教、それに対しては”俺”の方の意識が上なのか嫌悪感がとても大きいのだが、アイリスフィールを犯すのを見たり、未来でイリヤスフィールを捕らえた後のことを想像したりしても嫌悪よりも征服したという達成感が大きいのは”間桐臓硯”の妄執がそれだけ大きいのか。

 今は桜が学校に行っている時間帯のために彼女を間桐の母体にするということも不可能なので、アイリスフィールのさらなる調教を進める。そう決めて、地下室のさらに地下、アイリスフィールが犯されている空間にまで足を運ぶ。

 

「ずいぶん母親が板についたじゃないか」

 

「くっ……」

 

 こちらに対して反抗的な視線を向けるアイリスフィールの腕に抱かれているのは生まれてから一ヶ月も経っていない。そんな赤子に対して母乳を吸わせることで感じる快感に身を震わせながら、崩れ落ちないように壁に背中を預けたアイリスフィールがそこにはいた。

 犯されている間は快楽に耽るくせに、そうでなければ未だにこちらを睨むほどの余力がある。だからと言って完全に堕ちるまで犯し続ければそれこそ死にかねない。

 

 なかなかに面倒な状態だった。

 

「さて、次はどうするかな」

 

「何をされても心まで渡すつもりはないわ……!」

 

 アイリスフィールの戯言を聞き流し、次の手段を考える。その言葉を言った直後にさらに母乳を吸われて潮を吹いている女の言葉になど一切の説得力もない。

 

「くかか」

 

 彼女が堕ちるまで、堕とすために様々な手段を取れるというのがとても楽しい。聖女のような見目麗しい女性を醜悪な手段で堕とす快感を思えば、その手段は様々なものが思い浮かびそうだった。

 

 

 

 

 さらに四年。アイリスフィールの体はそれだけの期間犯しても一切飽きることがない。

 桜の体を犯すのは反応も死んでいてつまらない、義務的かつ嫌悪するようなものになるが、彼女に対してはそうはならない。

 今日という日に至るまで色々としてきたが、結局のところ屈服させることができなかったのは『切嗣がいつか助けに来てくれる』と信じていたからなのだろう。彼女の口からも実際そんな言葉はよく出て来た。

 だからきっと、彼女はそれを信じていたのだと思う。俺があの日以来衛宮切嗣の様子を見せてはいないこともきっと、『イリヤスフィールを助けたのだ』と信じていたのか。あるいは、そうではなくても『衛宮切嗣はイリヤスフィールを連れ出して一緒に幸せに暮らしているはずだ』とは。

 それさえあれば問題ない、というのであれば。なるほど、彼女は確かに『聖女』であり、『切嗣の妻』であり、『イリヤスフィールの母親』である。

 自分のことを気にするよりも先に娘と夫のことを気にする、そんな彼女に対して絶望を与えるのであれば娘も夫も幸せにならないままに死んでいったという未来を伝えることだろう。

 

 今日は、それができる日だった。

 

「アイリスフィール」

 

「なに、かしら……!」

 

 こちらを睨む彼女に対して、簡潔に起きた出来事を語る。つまりは

 

「衛宮切嗣は死んだぞ」

 

 月下の誓いである。

 昨日発生したその出来事は、衛宮の家を監視していたから知っている。

 本来の間桐臓硯は『衛宮士郎がまともに育てられた魔術師である』ことを当たり前のように信じていたから桜を送りつける形でしか監視することはできなかったが、俺はそうではないことを知っているために監視することができる。

 無論、できる限りは第五次聖杯戦争も俺の知識と同じような始まり方にしたいと思うために、慎二が衛宮士郎を弓道部から追い出したら桜を向かわせる予定ではあるが。

 

 その言葉を聞いて愕然とするアイリスフィールは逃避しようとしたが

 

「う、うそよ……」

 

「嘘ではない」

 

 蟲に、衛宮切嗣の葬式の情景を映させる。

 当然のことながらイリヤスフィールの姿はない。

 彼女を都合のいい夢想の中には逃げさせない。

 

 その状況下で彼女に与えられた絶望と、そして一つだけまだ残っている希望をちらつかせれば、きっと堕ちてくれるのではないかと信じている。

 

「これで、イリヤスフィール(貴様の娘)はアインツベルンの玩具として聖杯戦争に参加することが決まった」

 

 聖杯に魔力はたまったにもかかわらず使用されなかったからな、と笑う。

 聖杯に五騎の魂が宿った状態で、たまった魔力が使用されることなく聖杯戦争が終了した。

 それはほとんどの魔力が散ることなく大聖杯に残ったままということ。

 つまり、知っている俺ではなくとも、アイリスフィールにも第五次聖杯戦争がイリヤスフィールが生きているうちに発生する確率が高いということを理解させる。

 

「娘を助けてやろうか?」

 

「何ですって……?」

 

 そこに付け込む。

 

「知っているだろう。俺が聖杯の欠片を確保したことを。

 それを使って間桐で独自に聖杯を用意している関係で、その気になれば貴様の娘、次代の聖杯に聖杯としての機能を使わせずに人間として生かすことも可能だ」

 

「何が目的なの」

 

 食いついた。

 

 そう思った。

 彼女はやはり母親なのだろう。

 自分の身よりも娘であるイリヤスフィールの身を案じるその姿。

 

「なに、貴様が欲しいというだけのことよ」

 

 それに対しての彼女の返答は…………



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十話

 アイリスフィールはイリヤスフィールのために、俺との契約を行なった。

 契約の内容は至極単純であり、イリヤスフィールが聖杯戦争に参加することは止められないために彼女を聖杯戦争後も普通に人間として生きていけるようにする代わりに、アイリスフィールは快楽を受け入れ、間桐の家の一員として間桐の勝利のために尽力し、俺の命令を全て受け入れること。

 そして、アイリスフィールがそれを受け入れてから数週間。俺やアイリスフィールの肉体を用意した時に既に用意していたイリヤスフィールの肉体を見せることで『イリヤスフィールが生きていくための準備は整った』として、彼女との間に交わされた自己強制証明(セルフギアススクロール)は発動した。

 

 結果としてアイリスフィールは、俺の本来の肉体……間桐臓硯の老人としての肉体ではない、若かりし頃の肉体の妻という形で正式に間桐の一員となっている。ちなみに、俺のこの肉体に関しては『間桐鶴野』の名義をそのまま使わせてもらっている。そのためアイリスフィールの立ち位置は後妻となっているのだが、そこに関してはどうでもいい。

 

 「聖杯の欠片を蟲にしていた」だけだったので特に魔力を吸うこともなく、結果として桜が間桐のものとは違う魔術属性のせいで苦戦しながらも、その契約がなされた数日後に蟲を使い魔として使役することに成功するというちょっとした事件は発生したが、今となってはそれも過ぎたこと。

 

 慎二が、桜が魔術師としての後継者だということを知ったことで桜に対しての対応があれになったこと。

 桜を衛宮士郎の家に監視という名目で向かわせたこと。

 そういった諸々の、そしてそれら以外の俺の知る限りの原作に沿うような行動は、俺が手を出せない部分も、俺の目に届く範囲内ではしっかりと発生していた。

 

「アイリ」

 

 妻となった女に声をかける。

 快楽に耽る正当な理由ができたためか、彼女が溺れるのはほとんど一瞬に近いものだった。

 彼女を犯していた期間は約五年。それだけの期間常に裸で、肌が敏感になりながら犯され続けたからか、今の彼女は服と触れ合うだけでも感じてしまう。そのため、キャミソールにホットパンツというできる限り肌を露出した姿で俺の逸物を咥えていた。

 お嬢様然とした姿とはまるで違う姿でありながらもその姿からは気品が消えておらず、そしてすでに肉体年齢としては三十歳に近いような年代であるにもかかわらず、コスプレ、似合わないといった感想よりも先にエロいという感想が出てくる。慎二もよく前かがみになっている。

 

「イリヤスフィールがついに郊外の城に到着したみたいだぞ」

 

「ん!?」

 

 ゴクリ、と射精をその口で受け止め、喉を鳴らしながら精液を飲み下した彼女は驚きを隠しきれない瞳でこちらを眺めている。

 

「召喚したのはバーサーカーらしい」

 

「バーサーカー……そう、お爺様が選んだのね」

 

「ほう?」

 

「切嗣が裏切った以上、お爺様が考えるのは裏切らない英霊をってことでしょうし」

 

 やはり、アハト翁の考えはわかりやすいらしい。あるいは、アイリスフィールが生まれた時から彼を知っていたからかもしれないが。

 

「それで、この聖杯戦争はどうするつもりなの?」

 

 はべるように、その豊満な肉体を押し付けるように、アイリスフィールは俺にしなだれかかる。そんな彼女の背中の方から腕を回して、彼女のお尻に触れる。喘ぐアイリスフィールを無視して、彼女が聞きたがった今回の聖杯戦争について頭の中で思い描く。

 

「今の所確認できているのがバーサーカー、アサシン、キャスター、ランサー。この中で場所がわかっているのはアサシン、キャスター、バーサーカー。今日、桜に召喚をさせるからさらに一枠埋まる。……まずは桜が召喚を終えねば話は始まらんなぁ」

 

 アサシン、ランサー、バーサーカーの姿は確認できている。その三名は原作と同じく佐々木小次郎、クー・フーリン、ヘラクレスだったので、きっとキャスターも同じだろう。となれば、Heavens Feelルートと同じようにアサシンを媒介に真アサシン……呪腕のハサンを召喚するのがきっと一番目的に近い道となる。

 

「では、俺は桜の召喚を見守る必要があるのでな」

 

 そういって席をはずす。少し物欲しそうにこちらを見るアイリスフィールに、本当に五年前の時点から変わったものだという感想を抱きながら。

 

 

 

 

 その時、桜はすでに蟲蔵にいた。

 

「すでに来ていたか」

 

「……はい、お爺様」

 

 桜が召喚に使う予定の魔法陣はすでに描かれている。

 前回の聖杯戦争で雁夜が使用した魔法陣、それを今回の桜も利用する。

 桜を解放しようとした男が使った魔法陣を桜が使うというのはなかなかに悪趣味だが、そこに関しては今はどうでもいい。

 桜が詠唱をするのを”間桐臓硯”の肉体で見ながら、願わくば召喚される相手がライダー、メドゥーサであることを祈る。

 

「汝、三大の言霊を纏う七天。抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よーーーっ!」

 

 その言葉とともに発生した閃光と暴風。

 蟲たちが吹き飛ばされ壁に押し付けられてプチプチと潰れて行く中、その魔法陣の中心には人影が一人立っていた。

 紫の長髪に、視界をバイザーで隠している女性。ボディコンを纏ったその体は間違いなく豊満で、長身であることも合わせて雑誌のモデルだと言われれば納得できてしまいそうな相手。それがメドゥーサであることを悟り、歓喜が浮かぶ。

 

「桜や、こっちへ来い」

 

「はい」

 

 こちらに寄って来た桜に言葉を告げる。

 それは小声であり、メドゥーサには聞かれたくないということでもある。

 

「衛宮の倅も聖杯戦争に参加するだろう。

 そうなった場合、お前は戦えるのか?」

 

「……それは」

 

「戦えないというのならそれでもいい。その場合は、慎二が望めばの話ではあるがあやつに偽臣の書でも持たせて代理マスターとでもすれば良いだけだからな」

 

「はい」

 

 そこで一度息を吐く。

 桜も、微妙に戦わなくていいかもしれない未来に少しばかりの希望を宿した瞳になっている。

 使い魔に対する支配力はこちらの方が上だが、それでも使い魔使役に対して少しばかり慣れたためか原作の桜よりも少しばかり感情表現が得意に思える。

 まあ、それはいい。

 

「そういうことだ。あとはライダーと話し合うといい」

 

 そう言って、桜のことを送り出した。




感想欄で展開予想されていたのはびびった


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十一話

「……さすがにこれは予想してなかった」

 

 俺が想定していたのは『桜がメドゥーサ以外を召喚する可能性』であり、ましてやこんな可能性など考えることもなかったのだが。

 

「まあ、ありえないことではないか」

 

 ああ、そうだ。別にありえないことではない。

 遠坂凛が父親がギルガメッシュ召喚に使った触媒を発見する可能性とどちらが高いのだろうか、などと考えているあたりまだ冷静ではないのだろうが、それでもきっと俺は冷静だ。

 

「まさか衛宮士郎が召喚したのがセイバー・リリィだとか。一体誰が想像してるよ」

 

 衛宮士郎というマスターの元、まともに契約を結んでいないためにステータスが低下していることは間違い無いのだが、その状況下でランサーを撃退したのはまさしく百合騎士、俺の知るセイバー・リリィと呼ばれる類のサーヴァントだった。

 

「……まあ、撃退とは言ってもランサーが退いてくれただけなんだけどな」

 

 令呪の効果で戻っただけであり、きっと次の戦いの折には本気のランサーが見られることだろう。そうなればセイバーの敗北は必至。とは言え。

 

「そんなことをさせるつもりはないがな」

 

 言葉にして、こちらもこちらで準備を整える。

 明日に行う予定である真アサシンと呼ばれる存在の召喚。外法らしいが、臓硯の知識の中にはちゃんとある。よって召喚に関しても特に苦労することはないだろう。召喚に成功してもあいつがこちらをマスターとして認めてくれるのかは謎だが。

 

 

 

 

「さて、アサシン。俺はお前のマスターとしてふさわしいか?」

 

 翌日、召喚に成功したアサシン。それは未だ俺のサーヴァントではない。召喚したのは俺でありながらも、触媒には”キャスターが召喚した”アサシンのサーヴァントである佐々木小次郎を使用したのだ。つまり、未だ彼女に縛られているまま。

 だから俺は一人で部屋の中で呟く。

 彼が俺のサーヴァントとして活動するために必要となる、キャスターとの契約破棄が行われるまでの間、俺にできることは一つしかないのだから。

 

「さてと、キャスターを捕らえる準備をしておくか」

 

 蟲を放つ。正直、セイバーがセイバーではなくてセイバーリリィだったためにちょっと予定が変更されている。『王の選定のやり直し』なんてことを望んでいないであろう若かりし頃のアーサー王なのだ。そんな相手が焦ったかのようにして勝ちに行くと楽観することはできない。

 アサシンを召喚したことで、いいやそれよりも先にアーサー王ではなくセイバーリリィが召喚された時点で、俺の知る『Fate/staynight』の物語を元にした作戦はほとんど通用しない。

 アサシンを召喚したのはいいが、これでもしも『衛宮士郎が桜以外を選ぶ』ことがあればそれこそ俺の知らない物語だ。

 一応、昨日衛宮士郎のことを監視していたので。イリヤスフィールに敗北してアヴァロンによって復活したことも知っている。ただ、遠坂凛と衛宮士郎の間の会話までは聞き取れなかった故に『遠坂凛と衛宮士郎が手を結んだか』まではわからない。

 つまり、衛宮士郎が一人で夜の見回りをしてキャスターにたどり着くかどうかはわからないということ。

 

 なのでアサシンに葛木宗一郎を虫の息にさせることでキャスターとの契約を破棄させることを持ちかけさせる。その上で潰す。原作のようにそれでキャスターを殺してしまえば、こちらの手駒がさらに増える。ライダーとはほとんど敵対関係と考えてもいいだろうから、この時点では二騎が配下に入るわけだが、逆に言えばその程度だ。

 

「マジかよ……」

 

 蟲を送りながらもアサシンと視界を同調させてキャスターの姿を捉える。

 そこに見つけたのはキャスターの姿なのだが、俺の思っていたキャスターとはまるで違う……というわけではないが確かに違う存在。

 

「キャスターまでリリィとか……」

 

 さすがにこれは想定していなかった。……これは、キャスターとの契約を破棄できるのだろうか?

 アサシンとの視界を共有していると、やはりキャスターが少女時代(リリィ)であるとは言え神代の魔女であることが幸いしてか、彼女自身の魔術の腕で契約を解除させることに成功した。

 そのまま回復するよりも早く彼女の霊格を砕いたことを確認して、心臓に埋め込んだ第三次の聖杯の欠片を介して大聖杯から魔力を引き出す。「この世全ての悪」も同時に己の心臓を通じて引き出され、その思考を悪性のそれへと染め上げて行く。

 今はまだ桜とは違って理性は働くようだが、それもどこまで保ったものかわかったものではない。

 今のうちに、やらなければならないことを済ませる必要がある。

 

「さて、キャスターを喰らい尽くせ」

 

 ほぼ死体と化しているキャスターの中に蟲が入り込んで行く。死体を犯す趣味はないが、その周囲をも蟲が取り囲み、キャスターの体を俺が魔力とともに引き出した泥を使ってキャスターを取り込んで行く。

 

「……明日はキャスターを完全に支配下に置くことに集中するか」

 

 おまけで慎二を助ける方向性で。

 俺の記憶が正しければ、そして衛宮士郎が遠坂凛との同盟を結んでいなければ、慎二がライダーを衛宮にけしかけてぼろ負けする日のはずだ。

 それまでにはキャスターをしっかりと支配下に置いておきたい。

 自らの中にとても大きな何かが入り込んできたことを理解して、それが痛くて、けれどこれも必要なことなのだと理解していたから、どうにか1回目のこれは耐えることができた。

 これに耐えていたとなると原作の桜は化け物だな、と思いながら今日は一旦意識を落とすことになるのだった。




セイバー:アルトリア[リリィ]
アーチャー:エミヤ
ランサー:クー・フーリン
ライダー:メドゥーサ
キャスター:メディア[リリィ]
アサシン:佐々木小次郎→真アサシン
バーサーカー:ヘラクレス

うん、普通の第五次ですね。え? キャスターのマスターのアトラムくん? ……ああ、あいつはいいやつだったよ……(憐憫を込めた眼差しでパンケーキを見る)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十二話

 間桐桜が『黒桜』あるいは『マキリの杯』と呼ばれるような存在へと至るにはいくつかのプロセスが存在する。

 その最後のひと押しが慎二の殺害だったから、慎二を別のところにでも放り出そうかと考えていたわけだが、よくよく考えてみればそんなことにはなんの意味もない……とまでは言わずともそこまで効果がないということを理解した。

 慎二の殺害は『最後のひと押し』だっただけで、別にその状態になってしまえばいつ黒桜に覚醒してもおかしくはないのだ。黒桜に覚醒させないことを目的とするのであれば、まずその時限爆弾がいつ爆発してもおかしくはない状況を作り上げないこと……つまり火種を取り除いてしまえばいい。

 ではその火種がなんだったのかと言われると答えは簡単。マキリの杯が取り込んだ無数のサーヴァントであり、ならば間桐桜にサーヴァントの魂を吸収させなければそれでいいのだ。

 そのための用意は、自分が予想していた使い方とは違うことにはなるが、それでも用意することができていた。

 

「さて、早めにキャスターを黒化させねばな」

 

 己の内側、内包されてしまった「この世全ての悪」とそれに取り込まれたキャスターの魂に対して意識を向ける。

 少女時代のメディアの表面をこの世全ての悪が這い回り、汚泥が服の内側に潜り込んでその美しい裸身を穢している様子が見える。

 彼女を黒化してしまえば、間桐の使い魔の使役に関する造詣の深さもあって、聖杯の泥を使役しているのと同じようにして使役することは可能なはず。

 

 そう、つまりは黒桜とは別の……俺の肉体を間桐の聖杯としてしまうことで黒桜の誕生を封じるというのが俺の選んだ手段。

 

 今現在中にいるキャスターの黒化の割合としてはだいたい三十パーセント程度だろうか。今日、あるいは明日の昼。そこまでにはキャスターを泥で犯し尽くして黒化を終わらせなければ、セイバーを捕まえる予定が狂ってしまう。

 ただでさえ、キャスターとセイバーがリリィだったことで本来ならば使い捨てる予定だったキャスターを生き残らせる必要が出てきて面倒なことになっているので、これ以上の変化はできることなら遠慮願いたい。

 

 そういうわけで、俺の中でキャスターの魂と霊基を侵食をしている最中の泥に対して意識を向けた。

 

 

 

 

 魂だけの状態のキャスター、それを犯しているようなイメージを臓硯は抱いていたが実際には魂を泥の中に浸けて、体を構成する魔力を全て泥に移し替えて黒化を完了させるための作業。

 

「……んぅぅ、ふぁ、あぁ――……くぅぁ、はぁ、はぁ……」

 

 そこに放り込まれているキャスター……メディアリリィの魂は地獄の快楽を味わっていた。

 泥が表面を這い回っているだけだというのにもかかわらず、それだけで彼女の性感が刺激されるのは『姦淫』という『悪』をその泥は含んでいるからか。

 少女はこの空間を天上(現実)から覗く視線に気がつくことすらできず、ただドロドロとした人類全体が持つ悪意を受け入れることしかできることはない。

 その艶姿は彼女の思考が蕩けさせられていることを示し、その侵食に彼女の魂が穢されていくたびに痴態はより扇情的に。

 

「ひあぁ……! あぁぁっ、あっ! ……中、たくさん、ごりごりってぇ……ふぅっ……! あ、き、もちいぃっ……!」

 

 泥の動きが変わる。

 ただ這い回るだけだった泥が、彼女の女性器の中に入り込む。

 その変化は臓硯が使役をしたのかどうか。

 これまでのメディアリリィはただ泥の中に落とされて、その中を彼女が落ちていくことで表面を泥が這い回っていただけだったが、臓硯がこちらに意識を向けたことによって泥の中の意識が臓硯が知る女を堕落させる方法を認識して、その方法を取り始めた。

 泥は流体のように彼女の内側も這い回り、刺激を繰り返す。

 叩きつけられるような快楽にメディアリリィの意識は蕩けていき、そして。

 

「目覚めたか」

 

 彼女が気がつけば、見知らぬ男の……臓硯の部屋の中にいた。

 メディアはこの男からも先ほどの泥の気配がすることは理解して、そしてこの男が己のマスターなのだと理解した。

 葛木宗一郎をマスターとして認めていたはずの彼女はそのことを忘れてはおらず、けれど同時に男に対しても忠誠を誓うようにして彼の前に跪く。

 

「マスター、ご用命を」

 

 男から向けられるぶしつけな視線だけで彼女の股は濡れてしまいそうで。

 けれどその様子は見せずに、キャスターは命令を待つ。

 姿形、服装すらも一切の変化はないのだが確かに霊基が変化したことを臓硯は理解して、命令を下す。

 

「わかりました」

 

 その命令にキャスターは微笑んで、そして泥の中に溶けるようにして一度戻り、命令を果たすために行かなければならない場所への移動を開始した。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十三話

「初めまして、だな、セイバーのマスター。いつも俺の孫が世話になっているようで」

 

「……孫?」

 

 キャスターに命令したのは『柳洞寺にて街中から魔力を集める』こと。要するに原作のキャスターと同じことをするように命令した。ただ、これまでもやっていたらしいので結局は一日二日程度やらなかっただけということになるのだが。

 そうして一日が過ぎて、二日が過ぎて、その間に魔力補給のために人間を襲わせていたところを見つかったらしい慎二がぼろ負けして帰ってきて。アサシンに蟲を与えておくことでランサーと戦った時に桜ルートと同じような結末になるよう調整して。

 

 そうして今日、衛宮士郎が柳洞寺にまでやってきた。

 

「ああ。俺は間桐臓硯。お前の友人である慎二と、後輩である桜の祖父だよ」

 

 彼の驚きも最もだろう。今の俺の肉体は蟲によって構成されたそれではない。

 つまり若かりし頃の間桐臓硯の肉体である俺を見て、慎二の父親であるとは思えても祖父であるとは思えないに違いない。

 

「あんたが慎二と桜の爺さん……?

 ……いや、いいさ。それなら、キャスターに人を襲わせるのをやめてくれないか」

 

「なぜ止めねばならん」

 

「え……」

 

「これは戦争だぞ。勝てるように最大の努力をするのは当然の話だろう。……貴様の父親がそうしたように」

 

 言葉と同時に、姿を隠したままのキャスターが転移魔術を完成させる。対象は俺と衛宮士郎。

 俺の記憶が正しければセイバー・リリィの対魔力はBランク。大魔術などでも傷つけるのは難しいが、それならば俺と衛宮士郎を対象にして魔術を扱えばマスターとサーヴァントで分けることなど難しくもない。

 

「マスター!」

 

 父親と同じと聞いて、衛宮士郎が動揺した隙を狙っての魔術。彼を助けようとするセイバーの動きは影に隠れたアサシンが放つ暗剣によって邪魔される。

 バーサーカーを倒すにはセイバーの力がいるが、これが通常のセイバーではなくリリィであるために実力と武器に不安が残る。よって、キャスターを死なせずにセイバーを黒化させる必要に駆られている。キャスターによる支援があればきっとどうにかなると思うから。

 

 そんな思いで、とりあえずまずはセイバー組を脱落させることから始めることにした。

 

 

 

 

 衛宮士郎とは、第五次聖杯戦争における最大の不確定要素である。

 それは原作を知るからこその懸念であり、こいつの処理は早めにしておきたいと思うのはきっとこの世界のことを知る聖杯戦争参加者の総意だろう。こいつにつけば死なないと思うバカはきっといない。死ぬタイミングはたくさん存在する。

 よって俺は、最初から本気で殺しにかかっていた。

 

「とっとと死んではくれんか?」

 

「誰が……!」

 

 衛宮士郎の持つ木刀が強化され、飛びかかる蟲を潰していく。数と大きさの影響でほとんど意味を為してはいないが、それでもこちらに近づけず逃げるしかない状況を少しでも長く続けているということには意味がある。

 俺は本来の臓硯とは違って自分の手で聖杯の泥を操る必要性がある関係で、そちらも使用している間は彼ほど多くの蟲を使役することができない。それが、本気で殺しにかかっているのに未だに殺しきれていない理由だった。

 蟲にも意識を向けながら、泥にも意識を向ける。面倒なことながらも、衛宮士郎を逃すわけにはいかず、サーヴァントをどちらも失うわけにはいかない状況であるがためにやめるわけにはいかない。

 同じサーヴァント、同じ条件下で戦ったとしても勝敗が定かではない聖杯戦争という状況、さらにそこに俺の知るものとは違うリリィという不確定要素が二つもある。そのためどのような結果になるのか判断がつかず、自らにとって最良の結果に少しでも近づけたいがために、泥に意識を割かないという選択肢はない。

 けれどこのままでは、俺が衛宮士郎を殺すよりも先にライダーがこの場所を嗅ぎつけてくるかもしれない。そうなれば目的を果たすことができない。

 

「仕方ない、か」

 

 ありがたいことに、セイバーは対魔力のランクがB。大魔術などでも傷つけるのは”難しい”レベルであって不可能なわけではない。つまりはキャスターの魔術ならば通用する可能性がある。彼女とアサシンが抑えてくれることを信じて数秒だけ泥に割いていた意識をこちらに向ける。

 

「死ぬといい、衛宮の倅よ」

 

 俺たちが今いる部屋は柳洞寺の一室ではなく大聖杯が存在する大空洞。

 大聖杯が起動を始めていないとはいえ、サーヴァントが取り込まれているわけだから多少は俺たちが魔力を使用しても問題なくバレないであろう空間である。

 汲み上げた魔力を泥として放出する。この空間の唯一の出口(入り口)を泥で封鎖し、さらには衛宮士郎の周囲に泥を纏った蟲たちを飛び回らせる。

 細かな蟲が沢山飛び回っているだけなので無論穴はあるのだが、無数の蟲が飛び交う関係でその穴は人間では通ることができない程度のもの。衛宮士郎がアヴァロンを使用できるのであればともかく、今の彼はその存在すらも知らないだろう。

 

「このっ……!」

 

 蟲を木刀で潰しながら、けれど潰すのとほぼ同時に他の蟲が逃げ場を奪っていく。

 

 彼の奮戦も虚しく生存圏は奪われていき、そして衛宮士郎はあまりもあっけなく死んでいた。




知らないうちに消えてたランサーくん、南無。幸運Eだからね。描写すらされない不幸を嘆くといい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十四話

「そろそろイリヤスフィールを脱落させに行こうか」

 

 その言葉を口にしたのは衛宮士郎を殺した翌日、セイバーの調教を済ませた時のことだった。

 俺の肉体もだいぶ「この世全ての悪」に犯されてきたようで、言峰の心臓を「この世全ての悪」が代行しているのと同じように俺の体液も移り変わってきたらしい。セイバーに射精したはずなのに実際に出たのは泥のような色をした液体であり、そしてそれに対してセイバーは苦悶と快楽が混じったような声をあげていた。

 部屋の中にいるのは裸の男女のみ。ただし男女の比率は一対三。俺一人と、アイリ、キャスター、セイバーの三名。

 

「ようやく、イリヤに会えるのね」

 

 感慨深げに言うアイリ。本来なら二度と会えないはずだったのだが会える可能性を得てから十年。その日々はあまりにも長かったことだろう。すでに彼女の倫理観は狂っている。五年近く受け入れさせた『自らの息子、娘も加えての乱交』でとろけさせることには成功したのだ。

 

「バーサーカー、ですか。今の私で倒せるでしょうか……」

 

 黒化によってこれまでの白い衣装から漆黒のワンピースドレスに変わり、そしてそれを脱いだセイバーが少しだけ自信なさげに言う。聖杯戦争開始の夜……つまりは彼女が召喚された日に一度戦っているからこその少しばかり不安が残っているのだろう。

 

「大丈夫ですよ、セイバーさん」

 

 キャスターはいつものようにニコニコと。「この世全ての悪」がどう言うものなのか、神代の魔術師である彼女だからこそそれを一番よく理解しているのだろう。その顔には不安は一切見えない。

 

 ずぶり、とセイバーの中で射精した直後の逸物を引き抜く。

 決行は今夜、アインツベルン城に進撃することで。

 

「これを使用するのも久しぶりな気がするな」

 

 目の前にあるのは蟲によって形作られた俺の爺状態の……つまりは皆が想像する間桐臓硯の姿。

 そしてその後ろに控えているのは俺が召喚したアサシン。

 

「アサシン、バーサーカーをセイバーとキャスターが倒したら即座にそのマスターを確保して連れ帰ってこい」

 

「御意」

 

 意識をそちらに移す直前にアサシンに一言だけ残して、そちらの肉体を構成する蟲を四散させて一匹一匹個別にアインツベルン城の前にて集合するようにする。それと同時、セイバーとキャスターを泥に包み一度中に戻して、俺の使い魔のような状態となっているその老人の肉体を通してそちらで顕現させる。ついでアサシンも出撃したことで、ついにアインツベルンとの戦いが始まる。

 

 

 

 

「マキリ・ゾォルケン。人の家に土足で踏み込むなんて礼儀がなっていないのね」

 

「くかか、人間のふりをしているだけの小娘がよく吠えるな」

 

 アインツベルンの森の中、イリヤスフィールと相対する。今はまだアサシンをはじめとしてどのサーヴァントも現界していない。この場にあるのはイリヤスフィールの背後に佇むバーサーカーのみ。

 

「アインツベルンの小聖杯。この間桐臓硯が貰い受ける」

 

 言葉と同時に現界したのはアサシン。そして闇夜によって視界の全てが隠された森の中を縦横無尽に駆け巡り、様々な方向から暗剣ダークを放つ。

 

「■■■■■■ーーーーッ!」

 

 バーサーカーが吠える。斧剣を振るい、あるいはその肉体でイリヤスフィールの肉体に襲いかかる全てのダークを弾き、ついでと言わんばかりに俺が放った普通の蟲たちも吹き飛ばされ、体液を撒き散らしながら死んで行く。

 わかっていたことだがここまで一方的だともはや笑いたくなってくる。……仕方ない。

 

「あら、威勢はよかった割にここまで弱いなんて思わなかったわ」

 

 イリヤスフィールが何かさえずっているが、もはやどうでもいいことだ。セイバーごと巻き込むつもりで泥に落とせばそれでいいだろう。

 

「ほう、ならばこれはどうだ?」

 

 泥が這い出でて、そこから現れ宙に浮かんだキャスターがバーサーカーの動きを阻害するための魔術を放ち、地上に顕現したセイバーがバーサーカーに正面から切り込む。今の彼女は勝利すべき黄金の剣(カリバーン)ではなく、泥を固めて作った剣を手にしているのでバーサーカーは一撃でももらえばそれでおしまい。そこから泥が入り込み、俺の本体を探し当てるよりも先に死ぬだろう。

 

「な……!? セイバーに、キャスター!?」

 

 アサシンも含めて三騎のサーヴァントの同時使役。さらにはセイバーに関しては衛宮士郎と戦ったことを確認しているために驚きも一入だろう。

 

「終わらせろ」

 

 無言の肯定。セイバーとキャスターはバーサーカーを殺しにかかる。キャスターがステータスを下降させたバーサーカーをセイバーの持つ剣の形をした汚泥が切り裂き、その内側まで染み渡りながら彼の体を構成する魔力を食らって行く。かと言ってセイバーだけに注視すればキャスターの魔術が飛んできてバーサーカーの命は奪われる。

 どちらを狙ったとしてももう片方は確実にバーサーカーを殺す手段を備えているために、そしてキャスターとセイバーを同時に狙うことが不可能なために、バーサーカーは殺されるだけ。

 だからと言って俺を狙っても、俺のこれは蟲の集合体でしかないために意味もなく。

 

「食らいつくせ」

 

 俺を狙ったバーサーカーを二人は止めることをせず。そして俺の肉体を構成していた蟲……聖杯の泥を浴びた蟲たちがバーサーカーによって潰され、その肉体を泥で消滅させる。

 それによって俺の意識は強制的に間桐邸の本体に戻され、アインツベルン城の監視をしている蟲に、再度の視覚共有を行ってその最後を確認する。

 体が蟲喰い状態になったバーサーカーの心臓にセイバーが持っていた泥の剣が突き立てられ、その終焉を彩る。

 イリヤスフィールは一切の行動をすることができずに、アサシンによって気絶させられて連れ帰ってくることになる。

 

 視界の共有を解除して、そばに侍るアイリスフィールに視線を向ける。

 

「イリヤスフィールを捕らえることに成功したぞ」

 

 その言葉に、彼女は聖母のような笑みを浮かべていた。




そろそろ母子丼ができる……長かった……

〜〜〜ここから先は前回の士郎死亡によるタイガー道場です。見ない方はブラウザバック推奨です〜〜〜












???「はい、というわけでタイガー道場番外編スタートだよー」

???「おーっす。士郎視点でないせいで、どこの選択肢でミスったのかよくわからないあなたを地獄から救う救済の場、タイガー道場だよ!」

???「今回の死因は……あちゃー、ゾォルケンに目をつけられちゃったせいなのね」

???「そう! こっちの楽屋裏から飛び出て本編に介入している情け容赦もない認知症のおじいちゃん! 町内会では人格者で知られているあの人が簡単に手を下すことができるように行動していたせい! どうして常に遠坂さんと一緒に行動しようとしなかった! ど素人が一人で行動してどうにかなるほど甘くないのはこれまでの経験で知っていたでしょうに!」

???「師匠! そうは言っても召喚したサーヴァントがセイバーではなくてセイバー・リリィな時点で本来なら存在しないはずのデッドエンドフラグが増えすぎてて、まともにやってても一番最初のルートエンドにすらたどり着けないんです! 『これまでの経験』そのものがないんです!」

???「それは言っちゃいかんやつ!」

???「あいたぁっ!?」

???「まぁ、そういうわけで基本的には遠坂さんと行動しなさいな。そうすればこのエンドは免れるわ。代わりに桜ちゃんがちょっとまずいことにはなるけれど……」

???「まあ、そんなの軽いわよねー。わた……イリヤがこれから蟲爺に犯されるエンドにたどり着いてCG解放されるなんてことを考えたら、普通の感性を持つ人はこんなエンドを二度と体験しようとは思わないでしょうし」

???「そうよー。どうしてイリヤちゃんなの! どうして魅惑のタイガールートは解放されないの!」

???「……解放されたかったの?」

???「いや、さすがにこんなルートは嫌だ」

〜〜完〜〜


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十五話

 アサシンによって気絶させられたイリヤスフィールの魂を移し替える作業は終了した。

 自分の時、アイリスフィールの時、とすでに二回実行した作業ではあったので難易度が高くともそこまで苦労するようなものではなかった。

 しばらくの間は聖杯戦争について考える必要はない。ランサーとバーサーカーが脱落したことで残る間桐以外の勢力はアーチャーのみ。ライダーに関しては桜の心臓に植え付けた蟲を爆発させて殺せばどうとでもなることを考えれば、それこそアーチャーを倒してしまえばそれで終了なのだ。

 そして遠坂凛は今現在残りのサーヴァントの状況を知らない。バーサーカーとアサシンが倒れたことは知ることができたとしても、それ以上を知ることは不可能。

 

「ねえ、あなた」

 

「どうした、アイリ?」

 

 イリヤスフィールの魂を人形に移し替えたところでアイリから声をかけられる。

 

「イリヤには気持ちいいことだけ教えてあげて欲しいの」

 

「何……?」

 

「私の時みたいに、蟲に犯されるんじゃなくて、あなたの手で快楽だけあげて欲しい」

 

「別に、それぐらいならいいさ」

 

 イリヤスフィールを含めてアインツベルンの女を手に入れることは最初から確定していた。アイリスフィールの時には『第五次聖杯戦争の用意をしなければならない』という前提があったために蟲の苗床にする必要性に駆られていたが、今はそんなことは別に残っていない。

 彼女が俺のものになるのであればそれで問題はないのだ。

 

 

 

 

 部屋に入れば、緩やかに胸元を上下させている裸のイリヤスフィールの姿が。

 今は魂の移し替えをしたばかりで、深い眠りについているのだろう。俺やアイリスフィールの時もそうだった。

 そんな彼女が眠っているこの部屋は俺の部屋であり、近くの棚にある霊薬の数々の中から一つだけ取り出す。これはキャスターが作ったものであり、簡単に言えば媚薬。後ついでに惚れ薬。使う予定だったのは俺が作った方の媚薬だったのだが、アイリスフィールから頼まれた以上は少しでも気持ちよくなれるようにしてやったほうがいいだろう。別に大したものではなく、魔術の一種である『支配』で恋愛感情を強制的に呼び起こしてしまうだけのものなのだが、シンプルながらも俺自身の血液……束縛や吸収に対して強い適性を持つ俺の血も加わっているので彼女の気持ちを俺に対する恋愛で束縛してしまうことができる。

 少女の体を抱き起こして、口を指で開かせて液体を飲ませる。喉がこくりこくりと動いてその液体を飲み込んでいる様が目撃できたところで、イリヤスフィールは身じろぎとともに目を覚ます。

 

「っ!? あなた、一体何を……っ!」

 

 すぐに口を離したがもうすでに遅い。かなりの量……それも原液で摂取してしまったために、イリヤスフィールの真白の肌は朱が差している。息は荒々しく変わり、身悶えしながらベッドにその体を擦り付けている。足は内股で、ガクガクと震えている彼女は、誰がどう見ても発情していると言わざるを得ない状態だった。

 

「何よ、これ……っ!」

 

 そんなことを言っているイリヤスフィールのことを後ろから抱きかかえるようにして股の間に座らせる。

 そうして彼女の股の間、秘部にまで触れればすでに湿っていて、この媚薬の影響が多大なものなのだということを教えてくれる。こちらを振り返る彼女の瞳は熱に浮かれたような、憎らしい相手を見るような、恋い焦がれた相手を見るような、それらすべてが入り混じった色をしている。

 惚れ薬としての一点はまだ改良の余地があるのか、と冷静に考える思考とは別に、秘部に対しての愛撫は止まることはなく。さらには空いた手は彼女の慎ましやかな胸をいじり始め、この部屋にはイリヤスフィールの喘ぎ声と水音だけが響いている。

 

「んんっ!」

 

 こちらを向いたイリヤスフィールの瞳が快楽に濡れ始めたのを確認して少女の唇を奪う。抵抗はなく、むしろ彼女の口内に侵入した舌を彼女の方から絡ませにくる。その最中何度か限界に達したのか彼女は体を跳ねさせ、絶頂を迎えたことを全身で表現するのだが、そんなことは俺からすれば関係はない。むしろ準備が整っていくだけのことなので続行する。

 

 そうして數十分、一息ついた頃には彼女はこれ以上なく情欲をそそる姿になっていた。

 

 アインツベルン城で出会った当初のアインツベルンのマスターとしての姿はもう存在しない。その表情は快楽にとろけきっており、嫌悪も快楽に塗りつぶされて、結果として彼女の中に残っているのは薬の効果で強制的に貼り付けられた思慕の情と、快楽を懇願する浅ましい雌としての姿のみ。アインツベルンの……聖女と呼ばれたユスティーツァの同型機、それを堕としたという事実に対して感じる征服欲、支配欲、それもこれが最後かと思うと寂しく感じる部分がないわけではないが、今は彼女の体が俺の情欲を受け入れても壊れないほどにほぐれたという事実だけが重要で。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 妖精のような少女が快楽に溺れている姿を見たことで、どうしようもないほどにいきり立った逸物をズボンの中から取り出す。

 そしてイリヤスフィールと向かい合うような体勢になってから、彼女の足を広げさせ邪魔にならないようにさせてから愛液で濡れた秘所に一気に逸物を突き入れた。




今回はここまでー。シーン解放は次回……


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十六話

 突いて、引いて。それを繰り返す単純な作業。けれどイリヤスフィールはたったそれだけで絶頂を迎えるほどに薬の影響が出ていた。純潔を失うという本来ならば痛みを伴うはずの行為であるにもかかわらず快楽以外の色がない声をあげるほどに。イリヤスフィールの幼い体躯に見合った狭さの膣に、さらに絶頂という状況も加わっての締め付けに、堪えきれずに射精する。

 それと同時に、胤の中に混じった「この世全ての悪」が彼女を子宮から作り変えていく。

 アイリスフィール、セイバー、キャスターの三名に対して行ったのと同じような彼女の肉体を作り変える行為そのものが彼女に快楽を与えながら、抗う余地など与えずに彼女の全てを俺だけのものへと変化させる。

 快楽によって抵抗するだけの余力を全て奪われた彼女がこちらに対して向ける感情は、惚れ薬によって強制的に抱かされ、もう抵抗の余地も抵抗しようと思う心すらも奪われた状態での恋愛感情。俺の”お願い”を聞いて体位を変えてくれる程度には、俺が射精すると快楽に流されながらも嬉しそうになる程度には強制的に形作られたその感情は強かった。

 

「あら、順調のようね」

 

「アイリか。……ああ、見ての通りな」

 

 彼女の目の前には死んだはずの母親が来たにもかかわらず俺のことしか見えていない、俺にすり寄ってくるイリヤスフィールの姿が。秘部を見れば未だに俺とつながっていて、ゆるゆると動きながら気持ちよくなろうと、快楽に溺れた彼女の娘の姿がある。

 アイリスフィールもアイリスフィールで、本来ならば第三魔法を成就させるときにのみ着用するはずの天のドレスを泥で模してセックスの時に着ているのだからまあエロいことに変わりないのだが、イリヤスフィールのこのエロさはまた別のものがある。

 

「イリヤにも早めに堕ちてもらいましょう」

 

 そのためにちょっとだけ貸して欲しいの、とセックスの最中にもかかわらず俺が誰か他の人間と会話をしていることに対してご立腹らしいイリヤスフィールのことを眺めるアイリスフィールからの言葉。

 イリヤスフィールはすでに惚れ薬の影響で俺のこと以外考えられなくなってしまっている状況を視認しての言葉。もうアイリスフィールが裏切ることはないとわかっているけれど、それでもこの状況下で何をするつもりなのか、少しだけ訝しむ。

 

「ああ、わかった」

 

 なので、今この場で、俺もいる状況で行ってもらうことにして、イリヤスフィールの子宮を逸物で突いて強引に快楽を与えて気絶させる。

 はてさて、一体何をするつもりなのやら。

 

 

 

 

 気がついた時に、これは夢だと断言できた。

 

「起きたかしら、イリヤ?」

 

「お母様……」

 

 だって死んだはずのアイリスフィール・フォン・アインツベルン……お母様がいたのだから。

 この部屋には見覚えがないけれど、夢なのだからきっと私が望んだ空間なのだろう。私もお母様も裸で、きっとこれは胸の内をさらけ出したいと思う私の深層意識か何か、といったところだろうか。

 

「ねえ、イリヤ」

 

 ポスン、と抱きしめられ、たわわに実った胸に顔を埋める。抱きしめられた時にお母様の指が背中に触れて、それだけで身体中に快楽の電流が走り声を上げてしまう。恥ずかしさで顔を赤くしてしまうが、お母様はそんな私にも頓着することはなく。

 

「イリヤは、どうしたいの?」

 

「どうしたいって……」

 

 言葉にされて考える。そもそも私を犯したあの男……おそらくは臓硯の縁者か何かに復讐がしたいのか、と言われると殺したくはないと心が全力で叫んでいる。

 きっとあの薬にそんな類の呪いがかけられていたか何かだとは思うが、それでも抵抗できなかったのは事実で、そして抵抗したくないと心が感じてしまっている時点でおしまいだ。

 心と体を切り離して、なんてことは私にはできないし薬のせいとはいえ今の私は少なくともあの男を好いてしまっているという事実だけがここにはある。この感情を消そうとすることができない限り、私にはどうしようもない。

 

「あの人の女になりたいの?」

 

「それは……はい……」

 

 これが薬のせいだとはいえそういう感情が生まれていることには変わりない。自分の夢の中で嘘をついてもしょうがないことなのだろう、と諦めて頷く。彼に犯されたい、彼の手で気持ちよくなりたい、彼を気持ちよくさせてあげたい、彼専用の体にしてほしい、そういった感情が渦巻いていて、なるほど。これは好きと言わざるを得ないだろうと納得してしまう。それを一言でまとめるとつまりはお母様が言葉にした通りで。

 

「ふふっ。別に怒るつもりはないわ。あなたがそれで幸せになれるなら、それでいいじゃない」

 

「え……?」

 

 ただそれはアインツベルンの女としては……聖杯を追い求めるアインツベルンのマスターとしては失格の行為である。すでに敗北したのだからそういう意味では別に問題のないことなのだが、それでも少しばかり引っかかってしまう。だからその言葉には驚いた。

 

「あら、そんなにおかしなことかしら? 私がイリヤに幸せになってほしいって思うよりもアインツベルンとしての務めを果たしなさいなんて言うと思ってたの……?」

 

「……そんなことないわ」

 

 ただ、よくよく考えればこれは私の夢だ。つまり、私はこの感情に従っていい理由を欲していて。だからお母様はこうして良しとしているのだろう。だったら、それに従ってしまった方が楽だ。

 

「なら、何をすればいいのかはわかるわね?」

 

「はい」

 

 彼に犯されることを想像しただけで心が跳ねてしまっている。それもこれも全部薬のせいだから、ともう開けっぴろげにしてしまっても問題はない。だったら心の赴くままに全部言葉にして彼に対して迫ってみよう。もしかしたら驚いて、戸惑ってくれるかもしれない。そうなれば少し爽快だ。

 

「そこまで決まってしまえばあとは現実に戻るだけよ。……眠ってしまえば現実の方に戻れるわ」

 

「はい!」

 

 そうして目を閉じればお母様の子守唄が聞こえてくる。夢の中で眠ると言うのはなかなか不思議な体験だが、それはそれでいいだろう。

 目を覚ました後に訪れるであろう自分の行動で驚くであろう彼が見られる未来を思えば、少しばかり溜飲が下がったので、今の私はそれで良しとしておこう。




イリヤちゃんにはひどい目にあって欲しくないですからね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十七話

 アイリスフィールとイリヤスフィールの会話が終わり、イリヤスフィールに俺のことを受け入れさせようとする言葉を彼女が受け入れ、アイリスフィールに体を預けて眠りについた直後、近くで隠れていた俺は姿を再度見せて、眠るイリヤスフィールに近づく。

 

「これで、もう問題ないんだよな?」

 

「ええ。きっとこの子もあなたから受ける快楽を受け入れてくれるわ。……受け入れてくれないなら、その時はその時。もう、そのこと以外考えられないくらいに犯してあげればいいだけよ」

 

「それもそうだ」

 

 アイリスフィールがイリヤスフィールを反転させてこちらを向かせる。今度は彼女が足を広げさせて俺に対して彼女の秘部を丸見えにする。犯す準備が整えられたところで、未だにコプコプと愛液を溢す女性器にギンギンに勃起した逸物を押し当て、強引にねじ込んだ。

 

「ーーーっ!!」

 

 たったそれだけで、眠っていた彼女は強制的に叩き起こされる。

 快楽による絶頂で強制的に起こされた彼女は、背後に自分の母親がいることもわからないまま、こちらにすがりついてくるようにして体を預けてくる。アイリスフィールの言葉で俺に全部預けてもいいんだと思ってしまったために、もう彼女がためらう理由はない。こちらに抱きついてくる彼女を押さえつけて、一突きごとに絶頂を迎えてしまうイリヤスフィールの肉体の中に、一切の躊躇も容赦もなくこちらが気持ちよくなるためだけの抽送を続ける。

 狭く短い膣を強引に一番奥まで、それこそ子宮口をこじ開けるほどに乱暴に行われる抽送にもはや幾度絶頂を迎えているのかわからないイリヤスフィールを、俺専用の性玩具として扱う。

 

「うぅ、あぁぁ……っ!」

 

「ああ、そうだ……っ!」

 

 彼女の腹が膨らむほどに精液を中に出して、彼女を快楽の坩堝の中に誘いながら、一つの思いつきを実行しようと考えた。植えつけられた恋心に従ってこちらに甘える少女の全てが、俺の子供を欲しいとねだっている。逸物で子宮を圧迫するように押し付けながらその最奥に射精して、気絶したイリヤスフィールの中から逸物を引き抜いた。

 

 

 

 

「あはっ」

 

 目覚めた直後、愛しいと感じるあの人から頼みをされた。私に、蟲の母体となって欲しいという頼みごと。普通なら断るのが当然なのだろうが、好いた人のためになれるのならば受けるに決まっている。間髪入れずに了承した時の気持ちとしてはそんなもの。

 今私の中でタネを植え付けようとしている蟲は、彼の使い魔として一時的に魂を移したこともある蟲らしい。彼の肉体を形作っていた蟲、というだけで今の私の体は疼いてしまうのだからどうしようもないのだろう。

 しかもこれがお母様の孕んだ蟲らしく、比べるような発言までされてしまえば、彼への愛で満たされている私の思考がお母様よりも優秀な苗床になろうとするのは止められない。

 一体何度産んだのだろうか。多分、両手両足の指の数では数え切れない数だと思う。そんな折に私のところにあの人がやってきて私のことを抱き上げる。たったそれだけで私の心臓はひどく高鳴って、彼の言葉を聞き逃さないようにしようとする。

 

「そろそろお前にも母親と一緒に苗床になってもらおうかな」

 

 そんな言葉だけでポーッとする私の思考。どんどん彼への恋愛感情が強くなっているような気すらする。今だって、本来ならお母様にそんなことをさせていることに対して怒らないといけないはずなのに、お母様に会わせてもらえるという部分が強調されて彼への恋が強くなっていく。

 

「父親違いの兄弟の子供を産んで、今度はその子供にお前の母親を孕ませてもらう」

 

「はあい」

 

 そんな言葉にすら甘ったるい声を返して、彼の手で別の部屋に連れて行かれる。

 その部屋にいたお母様は私が連れてこられたことに対して驚いたような様子だったが、私が今幸せなのだということをわかってくれたからかすぐに頬を緩めておいでおいでと手を振る。お母様とまた話ができるなんて幸せすぎて涙が出てきそう。

 

「もう、イリヤまでここにきちゃったの?」

 

 ぎゅっと抱きしめられただけで恥ずかしいことに声を上げてしまって。お母様は気にしていないけれど私は顔を赤くしてしまう。それでも頷けば、お母様は何かを言おうとして、けれどそれを言葉にするよりも先に秘部からムカデのような蟲が這い出てきて、それが体を全て脱出させるよりも先に今度は私の秘部に入り込んでくる。

 

「んっ……!」

 

「お姉ちゃんのことを気持ちよくして上げたいなんていい弟ね……んっ!」

 

 その言葉から、このムカデもお母様が産んだ蟲なのだとわかる。今の私たちはムカデによって秘部が繋がれている間抜けな格好なのだろうけど、この子を通してお母様の鼓動も伝わってくる現状が、そしてそれが私の幸せだけではなく愛しいあの人の力になることがとても嬉しい。

 

 お母様の産んだ子供……私からすれば弟にあたる蟲が今度は私を孕ませて、その間に今度はお母様が私の産んだ子供……お母様からすれば孫にあたる蟲がお母様を孕ませる。たまに私の産んだ蟲がそのまま私の中に戻ってきたり、お母様の産んだ蟲がお母様のお尻に入ろうとしていたり、子供を産む部屋以外も蟲たちは好んだりしているけれど、それでもあの人のための子供を産むことができているのが幸せだ。

 

「今度はどんな子かなぁ……」

 

 私の産んだ子供がお母様を孕ませて生まれた、私からすれば弟であって孫にもあたる蟲。それがまた私のことを孕ませて、ともう解くことすら不可能なほどに絡まった家系図。それがさらに新しく絡まって、私のお腹が孕んだことを示すように膨らんでいる。

 

「イリヤも、聖杯戦争が終わったらあそこの子たちみたいに普通の人間も孕めるわ」

 

 ワクワクしている私に、お母様は兄弟姉妹で互いのことを犯している私の弟妹たちを見せてくれる。そんな未来を夢見て、彼の子供を産めるなんてとても幸せだろうな、と思いながら私の意識は疲労によって安寧の中に落ちていくのだった。




ふぅ……ちょっと変則的だとは思うが母子丼の完成だ……長かった……書いたよ……切嗣……(天井に向けて拳を突き上げる)


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。