灯火の星 〜The One Story of Ours〜 (蘭沙)
しおりを挟む

舞台設定

・この世界

ファイター達の世界とは違う世界。ファイター達はこの世界に集まり、大乱闘を繰り広げる。一説には創造神がつくった世界とも言われているが、真相は明らかになっていない。ただ、どこかに創造神と破壊神という二柱の神が存在しているのは確かである。

本小説では、イメージを吹き込んだフィギュアという設定を無視しております。

 

 

・フィギュア化

この世界で、違う世界の生命を奪うと元の世界の歴史や運命が変わってしまう危険性がある。それを防ぐために、この世界に呼ばれたファイターが大怪我や致命傷を喰らうと、フィギュアになる。早い話、死を回避するための手段。

ファイターが元に戻す意思を持って台座に触れると傷が治った状態で元に戻る。但し、疲れはとれない。

 

 

・ファイター

様々な世界から選ばれ、この世界に集められた者達の通称。この世界に来ると、ファイター達の力を均衡させるため、一部のファイターは力が制限される。

そして、彼等は死を回避するためフィギュア化する力と、戦う全員の同意を得て専用ステージに移動し大乱闘を始められる力を得る。

但し、後者の方はキーラにステージの権限取られ、今は使えない。

 

 

・スピリット

ファイターとは違い大乱闘を行うことはできないが、ファイターの応援や付き添いなど、様々な理由でこの世界に来ることが許された者たちが、キーラの被害にあい、実体と力を失った者達である。

元々だが、ファイター以上に力が制限されている。

実体を失った結果、ファイターの体に乗り移る力を手に入れた。

 

 

・ゼルダの伝説シリーズのファイター

『ブレスオブザワイルド』のリンクと『神々のトライフォース』のゼルダはこの世界に来るのは初めてである。

『時のオカリナ』のガノンドロフと『時のオカリナ』及び『ムジュラの仮面』のこどもリンクは久しぶりにこの世界に来る。

『風のタクト』及び『夢幻の砂時計』のトゥーンリンクと『トワイライトプリンセス』のシークは前回の彼等と同一人物。

今のリンク、ゼルダ、ガノンドロフは『亜空の使者』での一件を知らない。今のシークは前作のシーク及びゼルダと同一人物である。

 

 

 

その他明確な公式の性格設定が存在しないようなキャラクターは存在しますが、そちらについては後々にキャラクター設定の枠を取らせていただきます。正確にはそのファイターが救出された次の話の前書き辺りに乗っける予定でいます。

そして、そういうキャラクターの性格はあくまで本小説のみの性格であることをご了承ください。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

オープニング 空が落ちたあの日
灯火の星


遥かなる大海の上空。そこに悠然と佇む化身に銃を構える。

 

 

「きょうこそ決着をつけてやる!!」

 

 

その銃を構えるのは人間にあらず。雇われ遊撃隊スターフォックスのリーダー、フォックスだ。

その後ろには73のファイター。かつては英雄だった、かつては宿敵だった仲間達。

 

彼らが立ち向かうのは、上空に浮かぶ化身。そして、その者に従うように浮かぶ無数の創造神。

 

 

「ひとりで10体ぐらい倒せればいけるか?」

 

 

冷静に敵の数を分析するのは、後の時代に英雄王として崇められる者。暗黒戦争と英雄戦争、2つの大きな戦乱の時代を生き延びた者、マルスだ。

 

 

「ここまで来たらやるしかないでしょう」

 

 

ハイラル王家の血を受け継ぐ王女、ゼルダ。その手の甲には知恵のトライフォースが宿っている。

 

 

「ボクたちならきっと勝てる!!」

 

 

仲間を信頼し鼓舞する天使、ピット。見た目はまだ幼さの残る顔だが、冥府の女王を二度も討った功績を持っているのだ。

 

 

 

 

 

─無数のマスターハンドを従え新たなる創世を狙う“キーラ”

 

 

全てのマスターハンドの白い姿が崩れ、青い光となっていった。

無数の創造神だったものは無数の光となってキーラに収束していく。

 

 

 

 

─反抗勢力であるファイター全軍との最終決戦は……

 

 

機神を断つ剣モナドを手に持つホムスの少年、シュルクの目が青く光る。モナドを手にしてから備わった、因果の流れを読み、未来の危機を見る力、『ビジョン』。

シュルクの目に映ったのは─全滅の未来。

 

全てを理解してしまい、勢いよく振り向く。

 

 

「みんな! 逃げ─」

 

 

 

 

─圧倒的な光に包まれて終焉を迎えた

 

 

キーラが変質した、深淵を覗いているような暗い穴。そこから数多の光の奔流がファイター達を襲う。

 

 

 

 

「ぐっ… うわああ!」

 

 

緑の服ではなく、先代達とは違う、青き英傑の服を纏った勇者リンク。

ハイラルの盾で一撃は弾く。振るった退魔の剣を光はふわりと躱す。

だが、三撃目の光に強く弾かれ、次の攻撃を防ぐことが出来ず、光の奔流に呑まれていった。

 

 

「リンク! くぅ…!」

 

 

光に呑まれていった戦友を気遣いながらも、攻撃をやめないサムス。宇宙最強のバウンティハンター。しかし、放ったミサイルを歯牙にもかけず彼女も光に呑まれていった。

 

 

『…!』

「はぁっ!」

 

 

ゼルダと共に迎え討つのは、人間の手により造られたいでんしポケモン、ミュウツー。それぞれ飛び道具を弾く力を持つ『ネールの愛』と『ねんりき』をくりだす。だが、光は二人を容易く呑み込んだ。キーラはファイターとしての力など軽く超越しているのだ。

 

 

「Hey! ピカチュウ、こっちだ!」

 

「ピッ…!」

 

 

光の奔流に占められた空の下、荒野を駆ける音速のハリネズミ、ソニックと電気を操るねずみポケモン、ピカチュウ。

短い手足で必死に逃げるピカチュウをほっとくことなど出来ず、ソニックは減速しながら手を伸ばした。

しかし、後ろから迫っていた光にピカチュウは呑まれていく。誰にも掴まられることのなかった手は宙においてかれ、後を追うかの如く、彼も光に呑まれていった。

 

 

「っ…! まさかっ…!」

 

 

周りを光に囲まれながらも、両手のラブイズブルーを放ち抵抗する、アンブラの魔女ベヨネッタ。直接狙ってきた光を『バットウィズイン』で回避するが、蝙蝠が集まり人の形に戻ったところを狙われ、呑まれていった。

 

 

「ゼニガメ、ハイドロポンプ! フシギソウ、ソーラービーム! リザードン、かえんほうしゃ!」

 

「その程度でくたばるワガハイだと思うな! がああっ…!」

 

 

チャンピオンを目指し、日々鍛錬を続けているポケモントレーナー、レッド。今持っている三体のポケモンに指示を出し、抗う。その隣で大魔王クッパも炎を吐く。正面から食い止めようとするが、まとめてやられてしまった。

 

 

「うおっ!?」

 

 

超一流F-ZEROパイロット、通称キャプテン・ファルコン。愛機ブルーファルコンに乗り逃げようとするも、乗り込む前に愛機ごと光に呑まれていった。

 

 

『来たか… なっ!?』

 

「コウッ!」

 

 

『みきり』をきめ、しのびポケモンゲッコウガの側に現れるはどうポケモンルカリオ。だが、避けた後の隙を突かれ、まとめて襲おうとする。ゲッコウガは宙に跳んで逃げたが、ルカリオは躱すことができず、ゲッコウガもまた、宙にて光に呑まれていった。

 

 

「地面を塗って… もう来たっ!?」

 

 

橙色のインクを大地に塗り、イカ状態になってやり過ごそうとするのはハイカラシティにてイカしたナワバリバトルを楽しむインクリング。この個体はオオデンチナマズを助けたヒーロー3号でもあるのだが、そんな肩書きが今、いったい何の役に立つのだろうか。

オレンジに染められた大地ごと光の奔流は彼女を貫いていった。

 

 

「チッ… 後ろか…ッ!」

 

 

元宇宙暴走族のヘッドであり、現スターフォックスのエース・パイロット、ファルコ。超高性能全領域戦闘機アーウィンに乗り込み空へ逃げ出すも、雲海の中に隠れた光線に右ウイングを撃たれ、避けていた後ろからの幾つもの光に呑まれていった。

 

 

「パルテナ様…」

 

「…うるせぇ、前見てろよ。」

 

 

青色の奇跡を翼に纏わせ飛ぶのは、ピット。そして、真実の魔鏡によって生まれた彼のコピーのブラックピット。

彼らの後ろにはピットが仕える、光の女神パルテナがいた。『飛翔の奇跡』により彼らを逃しながら、単独で時間稼ぎを試みた。『反射板』を展開させるも、キーラが放った光はパルテナを容易く呑み込んだ。

それによって奇跡の消えた翼は落ちていく。地面に叩きつけられそうになる前に、突き上げるような軌道の光は風を掴めぬ翼を呑み込んでいった。

 

 

「…っ!」

 

 

荒地に似つかぬ段ボール箱の中に身を潜め、息を殺しているのはソリッド・スネーク。伝説の傭兵と呼ばれる者。自ら正体を現してでの戦いでは、彼の全力は出せれない。並の相手ならばともかく、数多のファイターと共に戦い、それでも手も足も出ないキーラが、彼のことを見逃すことはなかった。

 

 

「ディディーさん、急いで!」

 

「キィッ!」

 

 

ここまでくると最早まともに勝てる相手ではないと、判断する者も多かった。この二人もそう考えたのだ。赤いベストに赤い帽子。とはいえ人ではない、チンパンジーのディディーコング。そして、ほうき星の天文台に住む魔女、星の子達の母、ロゼッタ。

それぞれ『バレルジェット』、『ギャラクシージャンプ』で空へ逃げるも、キーラの光を振り切れず、呑まれていった。

 

 

「どうしよ!? 来てる来てる!」

 

「クゥー…」

 

「こうなったら… 一か八か…」

 

 

すま村の村長であるむらびと。カモと犬、そして異次元の狙撃手のトリオという異色のファイター、ダックハント。人々に健康を教えるフィットネスの達人、Wii Fit トレーナー。元々戦いの世界を生きる者ではない彼らの目には絶望が映っていた。数多の仲間が敗れていって慌てる者、諦める者、最後の賭けに出る者。その全てを嘲笑うように、光は全て呑み込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別々の世界からやってきた多くのファイター。この世界の存在が無ければ、決して会うこともなかった者達が、敗れ、散っていく。

 

その上空。空を裂くかと思えるほどに速度を上げて飛ぶ一つの星。

宙を駆けるそれはワープスター。甲高い音を鳴らしそれを操り、乗りこなす者がいた。

カービィ。あきれかえるほどに平和な国プププランドに、はるかぜとともにやってきた旅人である。シュルクの警告を誰よりも早く受け取った彼はあの場から一足早く離脱していたのだ。

 

 

彼に迫る光の嵐はあの場にいた誰一人として逃す気などない。自らを襲う光を上へ左へ、螺旋を描き、躱すカービィ。

光の嵐が彼の視界を埋め尽くすほどに攻撃が激しくなり、ワープスターの星の音は徐々に高くなり───カービィは消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一つの世界が、全ての世界が。キーラの光によって包まれていく───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─かくして“この世界”はキーラの手に落ちた

─戦えるファイターは全滅した

 

 

 

実体のない魂だけの存在が、命の気配を感じられない荒地に寂しく浮いていた。

 

 

─他の者はすべて身体を失い“スピリット”と化した

 

 

 

刹那─きらりと光る星があった。

それは、ふらふらになりながらも主の離脱に成功したワープスターだった。

地面に激突したワープスターはまるで気力を使い果たしたかのように、弾けて消えていった。

ぽよんとひとつ。ピンクの体は地面を跳ね、大地に体を擦られながら、静止した。

重力のあるがままに力無く垂れた手足を動かし、立ち上がるカービィ。

 

 

─生き残ったのはたったひとり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─“希望の星”は混沌の中でか細くまたたいていた

 

 

星を閉じ込めたようなカービィの目には、継ぎ接ぎだらけになった“ひとつの世界”が広がっていた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一章 はるかから受け継いだ光
一話 始めの一歩


ぼー、と暫く立ち尽くすしかなかった。

あれだけ仲間がいたというのに、今ここにいるのは自分一人なのだ。

 

 

「めたないとー!! でででー!!」

 

 

親しき者の名前を呼ぶ。

だが、それに答える者はいなかった。

 

 

今までだって一人で戦った事はあった。ポップスターを救った時のこと。

でも、形は問わずとも協力してくれた者がいた。安全圏で自分の無事を祈ってくれていた者がいた。

 

少し前、この世界でも同じ様なことはあった。タブーがファイターの殆どをフィギュアにした時のこと。

でも、何もわからない内だったから実感がなかった。だから何か余計なことを考える前に、一心に前へ進めたのだ。

 

 

 

何もかもが今とは違う。

いくら叫んでも、誰も返事をくれない。小鳥のさえずりすらも聞こえない。寂しく風が草木を揺らすだけ。

命ある者はもう自分だけなのか、と思ってしまう程に、カービィの耳に入る声はなかった。

 

 

「ぷぅ…」

 

 

そう思ってしまうと、カービィは強烈な孤独感を感じた。何度も銀河の危機を救った英雄であっても、彼の精神は無邪気な子供と大差がない。星を閉じ込めた瞳は途端に涙で潤み始め、耐えきれなくなり、下り坂となった所を走り出す。

 

 

「めたぁー! ででぇー!」

 

 

ライバルとして、ときに仲間として。一緒に戦ってくれた二人はどこにいるのだろう。

 

 

「ま、り、おー!」

 

 

この世界に呼ばれてから、今まで一緒に戦ってきた彼の名前を呼ぶ。誰も答えない。

 

 

「ふぉっくすー!」

 

 

あの時最前線にいた彼は、きっと何も出来ずに倒されたのだろうか。どこかにいてほしい、と期待する。そんなことも無駄だって薄々気づいていた筈なのに。

 

 

「しゅる…ぽっ!?」

 

 

赤色の足が石につまづき、転んでしまう。

ワンバウンドして、丸い体は転がっていく。

 

 

「ぷぃ…」

 

 

下り坂が終わって、漸く止まった。

目に涙を浮かべながらゴシゴシと、短い手で土を払う。

 

 

「ぽぅ…?」

 

 

立ち上がったカービィが視線を少し上に上げると、白いオーブのようなものが浮いているのを見つけた。しかし、それに無機物にある冷たさは感じられなかった。明らかに意思を感じるのだ。

 

なのに、オーブのような物はまるでこちらを認識したように感じられない。

ここまで相手に気づかれずに近くに寄るのは、たとえそういう意図を持っていてもカービィには不可能だ。できるのはシークやスネークあたりだろうか。

 

 

「ぽう… ぷっ!」

 

 

まごついていても状況が変わらない。

そう思ったカービィは、背伸びし手を伸ばして、それに触れてみることにした。

 

 

「ぽっ!?」

 

 

触れた途端、カービィの視界が黒に染まる。

急に地面がなくなり、足はぶらりんと空を蹴る。なのに、落ちていく感覚はなかった。

 

何処か別の場所に引っ張られるような、そんな感覚だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぷいっ!」

 

 

黒の世界からいきなり違う場所にワープしたカービィは、太陽の日差しが目に入り小さな悲鳴を上げて、目を手で覆った。

ちょっとずつ目が慣れ、手を取り払ったカービィ。見渡した世界は明らかに前の場所とは違う、そしてカービィが何度も見たことがある場所であった。

 

『とある星』。ファイターの一人、キャプテン・オリマーが遭難した星をイメージして、創造神によって造られたバトルフィールドの一つだった。

ただし、通常のステージとは違い、シンプルで戦い易い『戦場』に近い大地になっていた。

 

 

ファイター達に渡されている台座には死を回避するフィギュア化の他にも、その大乱闘に参加する者全員の同意を得て、ステージにワープする力をファイターに与える。

カービィ本人もその力は何度も何度も使用している。だからこそ、思ったのだ。ステージへのワープはここまで禍々しい物であったのか。

 

 

「ぽ〜…ぽよっ!?」

 

 

カービィの目に入ってきたのは、立派な髭、デニムのオーバーオール。彼は。

 

 

「まり…」

 

『…』

 

 

マリオだった。姿形だけは。トレードマークの赤い帽子は黒くなっていたが、そんなレベルの話ではなかった。

創造神がこの世界を作り上げる際に一番始めに呼んだ彼。ファイター達のリーダーとも言える彼は、カービィを視界に入れても再開の言葉一つすら口に出さなかった。なによりカービィを映すその目。キーラの呪縛のかかった赤眼は正気の下のマリオとは思えなかった。

 

マリオとは思えぬそれはカービィ目掛けて殴りかかってきた。

 

 

「ぷい!?」

 

 

反射的に後ろに引いて回避するカービィ。

なおも襲ってくる誰かに対して一発回し蹴りを入れ、ジャンプして足場に登る。

 

 

『…っ!』

 

「ぽやっ…!」

 

 

体を大の字にしてのスピン。連続して拳が襲い、未だ考えのまとまらないカービィを飛ばす。

 

 

「ぷぅ…」

 

 

だが、この短い攻防の中でわかったことがある。目の前の彼はマリオではない。姿はマリオだが、違う誰かがマリオの姿で戦っているのだ。

 

そして、その誰かもキーラによる支配を受けている。このマリオの中にいる誰かが、マリオと同じような人間だったとしても、戸惑いが無いどころか、違う人の体で戦うことによるぎこちなさは払拭できるものではないだろう。

だが、目の前の相手は戦略や戦い方こそ違うものの、マリオの体術を完璧に使いこなしている。

 

 

 

この考察により、カービィは目の前の相手が、自身の意思で戦っているのではないという結論に達した。キーラの支配に抗えず、マリオの体で無理矢理戦っている。目の前の誰かもキーラの被害者なのだ。放って置けない。体の砂を払い、やる気のこもった目を相手に見せつけた。

 

 

『…っ!』

 

「ぷっ… うりゃああ!」

 

 

三連続の『ファイアーボール』をシールドで守り、ダッシュ。相手との距離が近くなると、回りながら炎を纏って突撃した。『バーニングアタック』である。まともに食らった相手は吹き飛んだ。が、致命傷にはならず、相手の近くで、体全体を回転させて攻撃する『ティンクルスター』は空中で躱されてしまった。

 

 

『…』

 

「…とおっ!」

 

 

先に着地した相手は、カービィの着地隙を狙ってスライディングで攻撃してきた。しかし、この攻撃はカービィにとって想定の範囲内。回避で攻撃を避けながら、上手く相手の背後に回ることが出来た。そして、その背中に思いっきり飛び蹴りを放った。

 

 

「ぷっ? ぽよ!?」

 

 

ガツンと、カービィの足に違和感のある衝撃が走る。言うなれば壁を蹴ったような硬い感覚。不思議に思って相手の方を見ると、なんと相手の体が金属に覆われていたのだ。木漏れ日に反射し、キラリと輝く金属光沢。

予想外の出来事に、カービィは一瞬体を止めてしまい、隙を突かれ、炎を纏った強力な一撃を食らってしまった。

 

 

「ぷぃ…」

 

 

丸い体に当たった一撃はとても重い。

傷ついていながらも、ふらつきながら立ち上がるカービィを、相手は待ってくれない。

 

 

「ぷぎゃ… うわあああ!」

 

 

相手はカービィに組みつき、体を回転しながら真後ろへぶん投げた。遠心力が働き、球体のカービィは大きく飛ばされた。

 

 

『…っ!』

 

 

宙に浮かんだカービィにとどめを刺すべく、地をジャンプで飛び上がり、カービィ目掛けて握った拳を振り上げる。その時だった。

 

 

「はあああ…!」

 

 

これを、機と思ったのはカービィも同じだった。空中で体制を立て直したカービィは短い両手に星が刻まれたハンマーを握っていた。

 

 

『!』

 

「とりゃああ!」

 

 

グリップを握り、思いっきりハンマーをスイング。攻撃の体制に入っていた相手は、回避に回ることができなかった。

 

ハンマーに当たった相手は、ステージを挟んで反対側に飛ばされ、光を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一つ瞬きをすると、周りは元居た、作り物の世界に戻っていた。違うのはさっき触ったオーブのような物が消えていたこと。そして、その代わりに、先程まで戦っていた相手が黒いマリオのフィギュアとして横になっていた。

 

怪しく思い、銅像部分をチョンチョンと触っていると、一瞬にしてフィギュアは溶け、金色の液体のような物になり、消えていった。

そして残ったのは、キーラに体を奪われた者であった。オリマーの不時着した星の原生生物。上手く生まれることが出来なかったとされる者。

 

 

「ぽよーい?」

 

 

ふわふわとまごつき浮く者。それに、対戦相手であったカービィはそっと手を出した。

 

 

本当にこの生物が、カービィの受け取った通りの感情を持っていたか、は不明だ。

でも、彼は、自分と同じ感情を持っていると感じたのだ。

 

 

─一緒に来てくれる?

 

 

「おいで!」

 

 

もうカービィは一人じゃない。

カービィと『ドドロ』。奇妙にして異色なペアが、この物語の始めの一歩だった。

 

 




カービィ「ぽよよぱゆゆぽよ… ぷゆいぽよぽよ?(みんなキーラにやられちゃったよ… 誰もいないのかな?)」

カービィ「ぱゆ、ぽよよよい! ぽっゆいぽよよぽよゆよぱーゆ!(でも、負けるもんか! 絶対みんな助けるから待っててね!)」


カービィ「ぽゆい! 『ぱゆやゆゆぱーゆぽよよよ』!(次回! 『始まりはいつだって君だった』!)」


カービィ「ぷぃ…? ぱーゆぽゆ…ぱゆゆいぱっゆぽよよ…?ぽよ、ぽよよぱぷよよ…?(あれ…? こんなこと… 前にもやったような…? でも、卵はないし…?)」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二話 始まりはいつも君だった

後書きの次回予告は本編に足りないギャグ成分を補給する為のものです。本編とは関係ありませんのでご了承下さい。


天高くに悠然と佇むは、光の化身キーラ。その元には、キーラによって創りだされた作り物の世界が広がっていた。奴が支配下に置いた世界の一部分を模倣し、繋ぎ合わせたパッチワークの世界。

 

空には雲の流れる天空の国、その同高度に、星の広がる銀河の海。そこには、まるで島のように点在する、お月様よりずっと大きく見える惑星。

 

火山、雪山、と地形も気候もバラバラなこの世界に命ある者は存在しない。

 

 

たった一人の例外を除けば。

キーラの猛攻から、ただ一人逃れたカービィ。キーラへの革命の萌芽となるファイターだ。但し一つの刃だけで、この世界に君臨する皇帝を玉座から下ろすことは出来まい。今はまだ、刃は研ぎ澄ます時期なのだ。共に刃を振るう仲間を助け、そしていつか必ず、この刃はキーラの首元に届かせる。

 

カービィがここまで深く考えているかは不明だが、友を助けるという意思、キーラを討つという覚悟はその瞳に見られる。みんながどこにいるかもわからないが、彼は例え地の果てでも探して見つけ出すのだろう。

 

だからカービィは進む。全員で一緒に帰るのだ、と。強い決意を抱いて進む。

 

 

 

道なりに沿って歩くカービィ。自然の形成は不自然な程に安定しており、細工された世界だ。

 

 

「ぽよーい?」

 

 

目の前にあるのは、これまた異質な存在であった。雰囲気は先程のオーブに似てはいたが、外見は大きく異なり、人の形を模した物体が浮いていた。その周りにはキーラの翼のようなものが付き従うように存在している。

 

 

「ぷゆっ!」

 

 

恐らくは先程の、新たな仲間と同じようにキーラの被害者なのだろう。同じように、これに触れればステージにワープし、解放する為の戦いが始まる筈だ。なんの戸惑いもなく、カービィはそれに触れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗闇が払われ、カービィの目に入ったのは、まさしく銀河のようであった。カービィがよく目にする静寂に包まれた宇宙とは違う、作り物のように多く散らばるのは、色とりどりの星だった。一点に集約されたり、暗闇全体に拡散したり。この幻想的な世界は『終点』。大乱闘が始まり、終わる場所。シンプルだが、それ故に戦いやすい世界。

 

 

ぐっと気合いを入れ、やる気のこもった目を、相手に向ける。だが、その表情はすぐに消えた。

 

 

『…』

 

「まいおっ!?」

 

 

目の前の者は確かに先程戦った者と同じ姿をしていた。しかし、違う。ドドロと同じような存在には見えなかった。だって、全くの違和感がなかったのだ。彼から感じたのは、明らかなマリオの心であった。

 

それでも、彼は正気ではない。ドドロが持っていたキーラの呪縛と同じように、赤い瞳を持ち、白い、光のオーラを纏っていた。

 

 

『…!』

 

「ぷいっ!」

 

 

スライディングをジャンプで回避。空中で二度蹴りを入れるが、上手く避けられてしまう。

 

一旦後ろに下がり距離をとる。

牽制なのか、撃ってきた『ファイヤーボール』をシールドで守り、掴もうとした手をその場で避け、片足でマリオを蹴り上げる。一つダメージが入ったが、二度目の蹴り上げはジャンプで躱され、二発ほど火の玉に当たってしまう。

 

 

「ぷっ… やあ! えぇい!」

 

 

マリオから離れ、『ファイナルカッター』。

直接刀身に当たることはないが、斬撃は地を這い、衝撃となってマリオを襲う。怯んだ隙を見逃さず、跳び蹴りを放つが、空中で体制を立て直したマリオに避けられてしまう。

 

 

「ぷゅ… ぽ〜っ!」

 

 

マリオのパンチと蹴りをシールドで守りながら、カービィはあの時のことを考えていた。

 

 

 

タブーが亜空軍を率い、この世界を手中に収めんとした時の話だ。今程、ファイターも多くなかった時の。マリオと戦う時は、必ずあのスタジアムでのことを思い出すのだ。

 

砲撃で空の彼方へと飛ばされる様を見るだけしか出来なかった挙句、ピーチがフィギュア化されて、連れ去られてしまった。ワリオを追おうとした時に亜空間爆弾が起動して、観客は諦め、ゼルダ、今のシークを連れて逃げるしかなかった。

思えば、亜空間爆弾の危険性を知っていた上で止めようとしたのだろう。それとも、直感だったのか。聞いたことはないけれど。

 

能天気で済まされないようなことだとはわかっているのだが、だから騙されたりするのだとわかっているのだが、結局は信じてしまう。疑うなんて出来ないのだ。

 

あの時、リンクとヨッシーを助け、ピットとともに行動していたマリオと合流した時は、嬉しさもあったのだが、同時に申し訳ないとも思った。もう少し冷静でいられたら、ピーチやネスたちも助けることが出来たのか。ゼルダとはぐれたと気づいたのも相当後であった。

 

 

カービィは、終わり良ければ全て良しだの、明日は明日の風が吹くだのをしっかりと体現していた。そう、過程を気にしさえしなければ全てを丸く収めていたのだ。

そのことを指摘されたこともあったが、悪役ぶってても、ちゃんと理由あって行動してたデデデの言えたことではない。

 

 

結末というのは、カービィにとって、全てそうであった。そして、この世界に限れば、始まりも同じ。始まりはいつも君だった。自分と同じく、最初からこの世界に呼ばれているマリオと乱闘していた。

 

 

 

ここで彼と戦うのは、必然なのだろう。

亜空軍との戦いだって、火蓋を切ったのはマリオとカービィの乱闘だった。それならば、光の化身を陥とす戦いだって、彼らの乱闘で始まる。

 

後ろに回避し、一つ跳び蹴りを入れる。

そして、見えないキーラを全力でにらめつけた。

 

 

─ぼくとマリオを最初に戦わせた時点で、君の負けは決まってるのだ!

 

 

しかし、マリオだって強い。

足払いをジャンプで躱したカービィに合わせ、拳を振り下ろした。

 

 

「ぷぃっ!」

 

『…』

 

「うわああっ!?」

 

 

地面に叩きつけられたカービィは一つバウンド。視界が一転二転して、理解が追い付かないカービィに、マリオの上体を反らして勢いをつけたパンチがまともに入る。

 

ジャンプ、そして一回転の蹴りと『スーパージャンプパンチ』で追撃される。

カービィはまともに受け、地面に倒れてしまった。

 

 

「ぷぃ…」

 

 

強い。

今のカービィが知る由もないが、大乱闘やこの世界のルールにすら干渉できるキーラは、スピリットや囚われたファイター達のリミットを解除している。

だが、どうやら元の世界の能力をそのまま使えるようではないらしい。

そこまでしては、フィギュア化のシステムまで停止してしまい、この世界で本当に死んでしまう。スピリットの体となる母体を得られなくなるため、キーラにとっても利にならない。

 

 

とどめを刺さんべく、跳び上がって近づいてきたマリオの後ろをとり、『すいこみ』。ごくん、と飲み込んだカービィの頭には赤い帽子を被っていた。カービィの得意技。相手を吸い込んで相手の持つ能力をコピーする、コピー能力だ。

 

 

「ぷよっ!」

 

『…』

 

 

軽快な音をたてて、カービィの短い手から火の玉が生み出される。 マリオの『ファイヤーボール』の技を会得した。

だが、それを的確に『スーパーマント』で跳ね返す。そこまではカービィの計算の内であった。跳ね返った火の玉をジャンプでかわし、背後にまわり、マリオを思いっきり蹴ろうとした。

 

 

『…!』

 

「ぷい!?」

 

 

しかし、ばさっと布を振るう音が聞こえたかと思うと、カービィの目の前にはマリオではなく崖があった。『スーパーマント』でカービィの体は反転していた。

 

 

「ぷいやっ〜!」

 

 

大きな隙が出来たところを炎を纏った強烈な一撃をくらってしまい、コピーしたマリオの力は星となって消えていった。

 

 

「…ぷ…」

 

 

何とか崖に右手が届いた。ステージ上はマリオが出張っているので、崖を掴んだ。

ここまでの激戦でカービィの体はボロボロであった。攻撃を食らった体躯がジンジンと痛む。頭に敗北の二文字がちらつきながらも逆転への道を探っていた時であった。

 

空を見上げるカービィの視界に、確かに七色の魂が入った。突然のことに状況も忘れて呆気にとられるカービィ。瞬間、体が自分の物ではなくなったかのような浮遊感を感じた後、左手に魂とは違う確かな質量に気づいた。

 

 

「ぷゅ…? たあ!」

 

 

崖際に寄っていたマリオを、ステージに上がりながら蹴り払う。吹っ飛んだマリオに、カービィは思いっきり左手の物体…『ウニラ』を投げた。

 

 

『…がっ!!』

 

 

マリオにぶつかりながら大地に立った『ウニラ』の伸びた突起は思いっきりマリオに突き刺さり、彼を吹っ飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元の緑溢れる草原に戻ってきたカービィは思わず尻餅をついてしまった。体はボロボロだったし、疲れもしていたが、それ以上に先程起こったことに頭がついていかなかったのだ。そして、カービィの周りでふよふよと浮かぶ魂。

 

 

「…ぽーよ?」

 

 

もしかして先程助けてくれたのはこの子ではないのだろうか?

舌足らずな言葉では聞くことすら出来ないけれど、カービィはほぼ確信していた。

 

カービィが気づくと、魂は倒れたマリオの上に移動する。

 

 

「ぽ…」

 

 

先程とは違い、鈍色のフィギュアは崩れたりしない。疲れた体を引きずり、何とか跳んで台座に触れた。フィギュアが輝きを増す。

 

 

「うっ…カービィ…?」

 

「ぽ…」

 

 

マリオが復活した。

その事実を受け止めると、カービィの両目は涙で潤み始める。

 

 

「カービィ? どうしたんだ? うわっ」

 

「ぷりゃあああ…!」

 

 

マリオに抱きついて、無事だったことに嬉しくて泣いた。なんとなく状況を理解したマリオは子供をあやすようにカービィを撫でた。

 

寂しくなった世界でまた会えた。




マリオ「ここまで一緒にいて言葉通じないのも悲しいな…」

カービィ「ぷゆ…」

マリオ「ちょっと絵で説明できるかい?」

カービィ「はーい!」

マリオ「全くわからない… な、ならボディランゲージだ!」

カービィ「ぽうよ、ぽよぽよ!」

マリオ「腕とかないから余計わからない…」


マリオ「次回、『絶対助けなきゃ』」


マリオ「それより重要なことに気づいた…」

カービィ「ぽ?」

マリオ「この方法… 字だけじゃ余計わからないじゃないか!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三話 絶対助けなきゃ

心の中の3号倒したふおおおおおおお!


マリオは未だ泣き止まないカービィの手を引いて遺跡の跡地のような場所に来ていた。

 

 

「ここは…」

 

「ぷい…? ぽよ! よ!」

 

「ん?どうしたんだい、カービィ?」

 

 

三叉に別れた道の先には一人ずつ、囚われていたファイターがいた。先程のマリオと同じだ。

これに触ると乱闘が始まる。そして、勝てば仲間を解放出来るんだ。カービィはそう伝えようとしたが、せいぜい単語を発音するのが限度のカービィでは、説明出来ない。

 

 

「ボクに何か伝えようとしているのか…?」

 

「ぽよ!」

 

 

肯定の言葉。それを見たマリオは朧げな記憶を辿って、先程の戦いを思い出そうとしていた。

 

 

「(そういえば… 誰かと戦っていた気がする…誰と?)」

 

 

それはカービィ以外には考えられない。今、この世界で自らの意思で戦えるのは、キーラから逃げおおせた彼しかいないのだ。

では、何故自分はカービィと戦っていたのか。あの、動けない暗闇の牢獄から先程の場所にワープさせられ…

 

 

「(そうか! キーラはボクに強制的に戦わせていた! カービィと戦って、負けて…気づいたら正気に戻っていた。)」

 

 

だとすると、目の前のあの物体はもしかして…

 

 

「カービィ、もしかしてあれはファイターなのか?」

 

「ぽ! ぽよ、ぽよ!」

 

「勝てば正気に戻せるんだね?」

 

「ぽよ!」

 

 

どうやら正解のようだ。

 

 

「わかった。カービィはそこで休んでて。」

 

「ぽよっ!? ん〜やっ!」

 

「心配してくれるのはありがとう。でも、さっきのダメージも残ってるからさ。そして、万が一二人共フィギュア化されたら、それこそ本当に終わりだ。」

 

「ぷぃ…」

 

 

カービィはまだ納得のいかない顔であったが、渋々腰を下ろした。

 

 

「さて…」

 

 

ここに囚われているファイターは三人。誰かはわからない。が、ひとまず左から助けていくことにする。

戦いの場に移動しようと、ファイターに触れようとすると、カービィから激励の声が上がる。

 

 

「がんばえ〜!」

 

「…! ああ、行ってくる!」

 

 

顔だけをカービィの方へ向け、笑顔でそう答えると、マリオの視界は黒で埋め尽くされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワープした先の世界は先程カービィとマリオが戦った『終点』であった。

 

 

「ここは… マルス、君か…」

 

『…』

 

 

マリオの相手はマルス。アリティア国の王子であり、遥か先の時代では英雄王として崇められる者である。

暗黒竜を討つため、神剣ファルシオンを手に取り、アリティア軍を率いて戦った。

 

 

『…!』

 

「っと! いきなりか… やはり、話の通じる状態ではないんだ…」

 

 

跳びながら切りかかってきた斬撃を躱す。

マルスの人を見定める目は、キーラの支配によって血の色に染まっていた。こころなしか、手に持つ剣もくすんで見える。何より彼は、人の話を聞かずに戦闘を始めはしない。

 

牽制の意味で撃った『ファイアーボール』は冷静にシールドで守られる。

キーラにより意思を感じれなくなったマルスを見ても、マリオの戦意は揺らがない。勝つことで助けられると知っていたら尚更だ。

 

 

マルスは数多の命がなくなる戦争を嫌っている。敵国の兵士が死んでいくことすら気にやむ程に優しい人間なのだ。

だが、それ以上に平和を掴むためには戦わなければならない時があるということを知っている。

そんなマルスがこうしてキーラの支配下で否が応でも戦わせられているというのに、マリオが仲間と戦いたくないと逃げる訳にはいかないのだ。

 

 

「くっ…」

 

 

剣先がマリオの胴を掠める。主の本当の意思が消えていようが、その剣術は恐ろしく繊細だ。秀麗な剣さばきには芸術すら感じられる。

 

しかし、大した傷にはなっていない。体の軸がぶれたりすることはなく、右足のキックはマルスの足に当たる。

これを受け、手数で勝負することにしたのか素早い剣技を繰り出してきた。

 

 

「いっ…! くっ…」

 

 

『マーベラスコンビネーション』。パワーではなく、スピードとコンボを重視した技であり、相手の動きに対してフィニッシュを変更できる技だ。

次々と襲いかかる剣技に対し、マリオは宙へ逃げようとするも、見破られていたのか上方向に斬り上げる技となった。

打ち上げられたマリオは咄嗟に後ろ方向へのジャンプでマルスの追撃を躱す。

 

 

「(速い…! 一度展開を取られたらジリ貧になる!)」

 

 

距離を取っているうちに『ポンプ』に水を溜める。キラリと光り、限界まで溜まったことを確認した時、無防備なマリオを一突きにせんと、マルスが迫り来る。

この攻撃は、上体を逸らし間一髪で躱した。しかし、彼はそのまま神剣を薙ぎ、無理矢理マリオに攻撃を当てようとしたのだ。

 

 

「がっ…!」

 

 

虚をつかれたマリオはこの攻撃に思いっきり当たってしまう。無理な姿勢での攻撃のおかげなのか思ったよりも傷は浅そうだ。ただ、身体にダメージを与える攻撃となったのは言うまでもない。

 

 

「(つらいなあ… 距離を取っても一気に詰められるし…)」

 

 

逆に半端に距離を詰めれば強烈な一撃を食らうことになる。マルスのファルシオンは剣先になるほど鋭さを増す。となると、限界まで近づくのがいいのだろうか。そこを対策できないとは思えない。

 

振るう剣の刃に触れないように受け流し、足払いをかける。さらに追撃をしようとしたところ、近寄らせはしないとばかりに体の周りで剣を振るったので、断念。一つ火の玉を当てた。

 

 

「くっ…! 攻撃自体は当たるけどそこからが繋がらない! 隙がない!」

 

 

宙にて両足を揃えて突っ込むも、剣で防がれてしまい、後方ジャンプで離脱して着地する。

 

 

「…ちょっと攻撃が雑だったかな…!?」

 

 

ならばと、戦法を変更。

マルスが攻めきれない程に高密度な量の遠距離攻撃を加える。

ステージの崖っぷちギリギリまで身を引き、そこから全力で『ファイアーボール』を打ち続ける。右手にあらん限りの気力を込め、多くの火の玉を繰り出す。

 

 

『…』

 

「うわ… 全部撃ち落とすのか…」

 

 

しかし、キーラの支配によって余分な思考の消えたマルスの剣術は恐ろしく正確だ。

一筋きらりと鈍い光を放つ神剣は大量の火の玉を落としていった。

 

 

「普通に撃っても防がれる!っ!?」

 

 

一閃をくらわせんと、寄ってきたマルスに対して、マリオは咄嗟にシールドを展開。但し、マルスは身を横に向け、剣を持つ右手を引いている。

 

 

「(『シールドブレイカー』か!)」

 

 

相手の急所を突き、シールドを大幅に削る防御殺しの必殺技。このまま、この攻撃に当たればシールドが割れて目眩を受ける。これは当たってはいけない。シールドをやめ、突いてくる剣をなんとか躱す。

 

 

「(本人の知能が操られてもなお、生きているのか!? 何にせよ成功法では勝てない! それなら多少はリスクを承知で…!)」

 

 

半端な策では勝てないだろう。

今考えられる最高の策を。

 

 

「なら、絡み手ならどうだい!」

 

『…!』

 

 

一つ剣が当たり、マリオの顔が歪む。が、無理矢理マルスを掴み、ステージの外へぶん投げる。

 

 

「いつっ…! ていや!」

 

『…っ!』

 

「当然復帰してくるよね! でも、こうするまでさ!」

 

 

空中を蹴り、『ドルフィンスラッシュ』での復帰を試みた。それに対しマリオは『ポンプ』を取り出し、勢いよく水を噴射した。

 

 

『あっ…』

 

 

伸ばした左手は届かない。この戦場には似つかわしくない、ふと漏れた声が印象的であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マルスー?」

 

「んっ… くっ…」

 

「大丈夫かい?」

 

 

ぼやけた視界に映るのは、桃色と赤色。何回か目を閉じたり開けたりを繰り返すとそれは傷だらけのカービィとマリオだと気づいた。

 

 

「カービィ…? マリオ…? ここは一体… 僕は何を?」

 

「ここは… ちょっとよくわかってないけど。」

 

 

だんだんと意識がはっきりしてくる。そして今までの状況を一気に思い出した。

 

 

「っ!? みんなは!? あの後どうなったんだ!?」

 

「ストップストップ! 落ち着いてくれ!」

 

「しゅとっぷ〜!」

 

 

慌て出すマルスを諌めて、会話を切り出す。

 

 

「キーラの攻撃を受けた時、多分カービィだけが逃げ延びたみたいで… ボクもさっき助けられたばかりさ。」

 

「じゃあ… 他のみんなは…」

 

「おそらく… ボクやキミと同じように。」

 

 

心から純粋な闘志だけが湧き上がり、戦うだけしか考えられなかった先程のこと。マリオと戦っていた者は自分じゃない誰かのようにすら感じられる。でも、剣を向けたのは紛れもなく自分なのだ。

 

 

「ごめん、マリオ。僕はなんてことを…」

 

「気にしないでくれよ。それを言うならボクだって同じさ。」

 

 

マリオもカービィに助けられたのだろう。彼の方にも目を向けると少し不安げな顔をしている。

 

 

「僕なら大丈夫だよ、かえってスッキリしてるんだ。」

 

「ぽぅよ?」

 

「本当のことだよ。強がりでもない。」

 

 

どちらかと言えば、傷だらけの二人の方が気になる。

 

 

「マリオ。キーラに囚われた後のことを覚えているかい?」

 

「何となくだね。全く光の届かない場所で上も下もわからずにどうやっても動けなかった。」

 

 

マリオの証言はマルスの朧げな記憶とも一致する。ならば、他のみんなも同じだ。あの暗闇の世界に囚われて、キーラの為に戦うことになる。想像すると血の気が引き、震えが止まらなくなっていた。

 

 

「助けなきゃ… 絶対助けなきゃ…」

 

「ああ、まずはここにいる他の二人を…っ!」

 

 

強大な重圧を感じ、三人は反射的に空を見上げる。そこにいたのは、キーラの傀儡となっていた筈の。

 

 

「マスターハンド…!?」

 




マルス「ファ〜イアーエ〜ムブレム♪ 手強いシュミレーション♪ はい。」

マリオ「ファ〜イヤーエ〜ンブレム…?」

マルス「違う。ファイアーエムブレムだよ。」

マリオ「発音はどう聞いたって同じじゃないか…」

マルス「細かいけど重要なところだよ。もう一回。はい。」

カービィ「…スゥ…」

マリオ「えっカービィ何そのマイク」


マルス「次回『折れる訳にはいかない』!」


マリオ「灯火の星、完!」

マルス「待って、終わらせないで! 折れたりしない!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四話 折れる訳にはいかない

イレブン参戦ってマジ?
他勇者も参戦ってマジ?
バンカズ参戦ってマジ?
ブレワイ続編って(ry


冷や汗が止まらない。

遥か上空に存在するキーラがこちらの状況を把握出来ない訳がない。これが現実。上を見上げれば、創造の化身、マスターハンドがマルス達に影を作っている。

 

 

「(どうする…!?)」

 

 

今戦えるファイターは三人しかいない。それも、マリオとカービィは手負いの状況である。

さらに、いつもの余興の戦いとは違い、キーラに操られているマスターハンドは間違いなく全力を出してくるだろう。この状況で勝てる保証はない。

では逃走か? それも無理だ。この世界はキーラが創り出した世界。マスターハンドから逃げ切れる保証だってない上、キーラに延々と捕捉され続けるのがオチであろう。

 

二人を見捨てるなんて考えはマルスにはない。故に頭をフル回転させ、突破口を探す。

マリオは? カービィはどう動く? 登る道と自身の背後に進める道があるがどっちに行くなら正解だ?

 

 

「マルス! 安心してくれ。ボクもカービィも足手まといにはならないさ!」

 

「ぽよ!」

 

 

二人はそう言ってくれるが、強がりであるだろう。マスターハンドの真の実力がどの位か不明だが、度重なる展開の変化で精神的にも疲れている。勝てるのか?

 

 

注意深く観察する。最悪の場合、二人を連れて逃げなければならないだろう。もしくは自分が単独で囮になって二人を…!

 

マスターハンドが指をパチリと鳴らす。ファルシオンを構え、戦闘体勢をとる。どんな攻撃がきても対応できるように…!

囚われている二人のファイターの前に見えない障壁が現れる。それだけをすると、フッとマスターハンドは消えてしまった。

 

 

「はぁ… はぁ…」

 

 

あそこまで真剣に考えていたのが馬鹿みたいとすら思える。気が抜けたマルスは崩れるように尻餅をついた。

 

 

 

 

 

それから、マスターハンドが生み出した障壁をどうにか出来ないかと色々試してみたが、カービィのハンマーもマリオの蹴りもマルスの突きにも応えなかった。

彼らは障壁の破壊を断念。ここでは聞きにくいと、置いていくファイター二人にすまないと一言言い残し、先の道を進む。それなりに進むと、それなりに見下ろせる場所で座り、休息がてら情報共有をすることにした。

 

 

「あの丸いオーブがファイター以外の人々だ。多分この世界に来ていた人が巻き込まれたと思うんだ。」

 

「キーラにやられたのはファイターだけではなかったのか…」

 

「彼らは全員力を抑えられている。満足に抵抗もできなかったんだと思う。それで、キーラに魂だけの存在にされて…」

 

「僕達ファイターのフィギュアから生み出された体に憑依させられ、僕達にぶつけている。」

 

「ああ、そして色々とボク達が戦いにくいように細工をしているようで、さっき戦ったロボットは巨大化していた。」

 

「大乱闘でのアイテムの効果を発揮させることができると。さっき試したけど今の僕達は自分からステージへワープできない。大乱闘ができない。これは僕の予想なんだけどキーラは大乱闘のシステムを乗っ取ってしまったじゃないか?」

 

「…確かに。そうかもしれないね。」

 

 

一息ついたことで、頭の回転も円滑になる。マリオからの情報により、様々なことに一応の想像がついた。

 

 

「とりあえずファイター以外の人々は総称してスピリットとでも呼ぼう。それと今わかっていることを書き記しておくよ。」

 

「…まあ、助けるたびに説明するのも大変だもんね。」

 

 

懐から出した紙に記していく。こっちの世界の紙は傷みにくいし、ペンは一々インクを付け直す心配もなく、その上書きやすい。

どうやら中に元からインクが入っているらしいが、どうして一気にインクが飛び出してくないのか不思議でならない。

 

 

「今わかっているのはこのくらいだね。」

 

「そうか…」

 

 

今現在の全ファイターは74人。キーラに囚われているファイターはまだ71人もいるのだ。果てしない道のりに気が遠くなるが、折れる訳にはいかない。

 

 

「できる限りスピリットにされたみんなも助けよう。人が増えれば余裕もできるさ。」

 

「ああ、そろそろ行こうか。だいぶ疲れも取れた。」

 

「ごー!」

 

 

三人は立ち上がり、道を下っていく。

先程見えた大きなキノコの足場エリアについた。

 

 

「これ… 乗れるのかな? ああ、待ってカービィ!」

 

「ぽよーい!」

 

 

巨大キノコに乗り、大丈夫だよ! と証明するようにキノコの上で飛び跳ねてみた。

 

 

「多分乗れるってことを知らせようとしてるんだと思うけど…」

 

 

落ちても飛べるから確かめに行ったんだろうけどと、マルスは後に続ける。

 

 

「そもそもカービィは軽いからどの道安全かどうかはわからないよね!」

 

 

マリオの言葉に頷くと、聞こえてないのかカービィは体ごと傾けた。

 

 

 

 

 

結局、どうにか回り込めないかと上の道を進むことにした。スピリットにされた者達は、三人に挑み、手加減無しで襲いかかってくる。

 

 

「スピリットたちの数も多い。是非とも戦える人材を増やしたいが…」

 

「キノコの所にいたファイターには足場がなくて行けない…っ!」

 

「ぽよ?」

 

 

唐突に発言を切ったマリオを心配し、二人はマリオを見る。反応はせず、ただただ一つのオーブの方を見るだけだ。

 

 

「どうしたんだ? マリオ」

 

「なんか… 変な感覚が…」

 

「へ〜ん?」

 

 

言葉にするのは難しいらしいが、マリオの顔は至って真剣だ。まっすぐにスピリットの方を見つめている。

 

 

「行ってくるよ、彼女も助けなきゃいけない。」

 

「あ… ああ、んっ? 彼女?」

 

 

まるで目の前のスピリットが誰かわかっているような言い方だ。一拍遅れてそのことを問い正そうとした時、既に彼はこの場にいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やってきたのは、マリオが今の姿ではなく、Mr.ゲーム&ウォッチのような平面な姿持った時の世界。彼の名前をとって『ペーパーマリオ』と名付けられたこのステージは、ステージ右側の風車が特徴的である。

 

 

『…』

 

 

目の前にいるのはベヨネッタ。手に夢を見せる道具である『スターロッド』を持っていたりはするが、姿はベヨネッタである。

常に余裕のある態度で天使を狩っていた彼女と同一人物のは思えない。当然だ。彼女はベヨネッタではない。ベヨネッタの姿を借りているだけ。目の前の人物の真なる姿を、マリオは直感で感じ取っていた。

 

 

「ここまで本来と違うと逆にやりにくいな〜」

 

『…』

 

 

両手に持つ二丁の銃に力が込められ、迷うことなく引き金が引かれる。どちらかというと威力より連射性能を重視した射撃は容易に躱せはしない。

 

 

「おおっと」

 

 

何発か当たりながらも、マリオはジャンプ。体を回転させ、『マリオトルネード』を当てる。相手は回避が間に合わず、薔薇の花弁が飛び散った。

 

 

「いてっ…」

 

 

『スターロッド』の弱攻撃で仰け反った隙を見て、今度は強攻撃。夢を具現化させたかのような星形弾を放つ。それにも当たってしまう。

 

 

「悪いけど、こんな状況だ。負けられないんだ!」

 

 

足払いをかけ、一つ二つパンチをし、蹴り上げる。負けじと相手も『スターロッド』を投げ、マリオにぶつける。その時、ファイターの体が見えなくなった。

 

 

「(これは透明? ボクにもか? 今はいいか。)」

 

 

恐らく、相手は自分がどこにいるかわかっていない。しかし、逆はどうだ。先程からマリオが感じている妙な感覚は相手が誰かを直感的にわからせた。それを利用すれば、相手の居場所は大体わかる。音を立てないようにこっそり近づいていく。

 

 

「すぅ…ここっ!」

 

 

大きく息を吸って炎を宿した掌をぶつける。その一撃は、一つの狂いもなく相手の体にぶつかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう…」

 

「…戦うって言うならそれでもいいけど、急に行かないでくれ。」

 

 

マリオを咎めるマルス。

 

 

「ごめんマルス。彼女が何となくだけど誰かわかっちゃって。」

 

「どうしてだい? 戦う前に既にわかっていたようだけど。」

 

「わからない… 別に特に仲が良かった訳じゃないけど… もしかしたら同じ世界から来たことが何か関係あるのかも。」

 

 

カービィは呑気に彼女に向かってはあい! と挨拶をしている。

 

 

「なあ、君はどう思うんだ?」

 

『はあ…? 私が知る訳ないぢゃ。』

 

 

ピンクのローブに眼鏡。クッパ軍団の一味であるカメックババの魂がそこにいた。

 

 

 

 

 




マリオ「マルス、反省。」

マルス「えっ、待って僕何かした!?」

マリオ「『折れる訳にはいかない』ってタイトルは… 流石にマスターハンドと戦う感じの流れじゃないか! だが、実際は妨害だけして帰っていった!」

マルス「それ僕の所為なのか!? マスターハンドの方が悪いよ!」


マリオ「次回、『決意の剣』!」


マリオ「いっちょ前に後輩の口癖パクってさあ…」

マルス「パクった訳では…無意識に出ちゃっただけ!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五話 決意の剣

カメックババの口調が掴めない(焦)


カメ一族の一人。他のカメックとは違い、ピンクのローブ着ている老婆。一族の中でも偉い、クッパの知恵袋と呼ばれるカメックババ。

 

 

「彼女は…?」

 

「カメックババ。ざっくり言えばクッパ軍団の一味だ。」

 

『ふん。何が悲しくてマリオなんかに助けられなきゃいけないんぢゃ!』

 

 

主人であるクッパが許しても、己のプライドが許せない時がある。

 

 

『助けられっぱなしはやぢゃ! そこのピンク玉、ついてくるっぢゃ!』

 

「ぷい?」

 

 

カメックババを先頭に、カービィ、マルス、マリオの順でキノコの足場を進む。最初キノコに踏み込んだマルスは恐る恐るであったが、カメックババに叱咤され、問題ないことがわかるとそのまま進み始めた。

途中道を塞ぐスピリット達は順に撃破していき、たどり着いたのは、足場が無くて後回しにしていたファイターであった。

 

 

「ここで何する気なんだ?」

 

『マリオ! おまえの為にするんじゃないぢゃ! 大人しく見ているぢゃ!』

 

 

そう言うと、カメックババはカービィの体に入っていった。途端にカービィの表情が変化する。

 

 

「カービィ?」

 

「…」

 

 

呼びかけたマリオの方を見るカービィ。彼がしないであろう目を向けた。

 

 

「えっ?」

 

 

一見だけして空中へ飛ぶと、カービィの手から魔法が放たれる。するとキノコが大きくなり、通行に問題ないまでに成長した。ファイターを助けにいくことができるようになったのだ。

 

マリオ達の元に戻ったカービィから、魂が出てくる。

 

 

「今のは…」

 

「まさか… 彼らと同じようにスピリットがファイターに取り憑いたのか!?」

 

『この程度お安い御用ぢゃ。』

 

「あいがとー!」

 

 

カービィの感謝に続いてマリオも感謝を伝えようとする。

 

 

「本当に助かった… っていないし。」

 

「多分彼女は、君からの感謝は聞きたくなかったんだと思うよ。さて… 二人にはさっき行ってもらったからね。僕が行こう。」

 

「わかった、気をつけて。」

 

「ああ。」

 

 

ファイターに触れ、マルスの視界は黒に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このステージは確か『とある星』と言ったかな…」

 

 

カービィが最初に戦ったステージ『とある星』。『終点』の形となった、見慣れぬ生物が跋扈する大地がまたもや戦場となる。

 

 

『…』

 

「… あの時マリオからはこう見えていたのか… 尚更感謝だね。」

 

 

目の前の彼は戦闘の用途とは全く違う、宇宙服を着ていた。キャプテン・オリマー。ホコタテ星の運送会社に勤めるベテラン社員。戦いとは程遠い存在であるが、ファイターとして呼ばれた者。

その理由は、不時着した星を脱出するため使役したピクミンの存在であった。だが、不気味な程に平静を保つオリマーを不思議に思ってか、戸惑っているように見える。が、彼らは従うしかない。

 

そんな彼らの様子を見て、マルスの背筋にヒヤリとした物が襲う。自分もちょっと前まではこうなっていたのだ。

 

もし、助けが来なかったら? キーラの傀儡として、例え相手が誰であろうと躊躇いなくその神剣を振りかざしていただろう。ファルシオンは血の色に染まり、自分の名に冠された通り、戦神と成り果てていた。

 

 

「(他の誰にもそんな思いをさせる訳には行かない…!)」

 

 

神剣は今や決意の剣。走り寄って振るった刃は木漏れ日に照らされ、キラリと光る。

 

数発撃ってきた拳を左手でいなす。最後の一発は、体を引いて躱し、その体勢から突きを繰り出す。

オリマーはそこから受け身をとり、そのまま後方へ転がって立つ。

マルスは走り込んで、追撃を加えようとする。

 

 

『…』

 

「…ピクミン!」

 

 

オリマーから投げられた赤ピクミン、黄ピクミン。咄嗟にシールドを貼り、二匹の強襲から身を守った。

 

だが、その隙を突いてオリマーに掴まれ、赤黄青のピクミンとの連携で、場外へと飛ばす。しかし、ダメージが溜まっていない故、多少空中に浮かされる程度で済んだ。

 

 

『…』

 

 

宙に浮いているマルスに対してオリマーは青ピクミンと赤ピクミンを投げる。マルスは攻撃を見てから空気を足場としてジャンプした。進行方向に標的の居なくなったピクミンはそのまま下の闇に落ちていった。

 

 

「なっ…!? ピクミンが!?」

 

 

マルスは驚愕した。今までの乱闘でピクミンが死ぬことがなかった訳ではない。相手の剣に刻まれたこともあったし、相手の炎で焼かれたこともある。ただし、それはあくまで相手方の攻撃によるものであり、オリマー自身は、ピクミンの犠牲が前提となる戦法をとらなかった。

思わぬ不意をつかれたマルスは、追ってきたオリマーが振り回した黄ピクミンに当たってしまう。

 

 

「いっ… これは」

 

 

相手が避けるだなんてわかっていた筈だ。

特別仲がいい訳ではないが、実力を知れる程度には戦ってきた。マルスがオリマーの基本戦法を知っているのだから、オリマーがマルスの実力を知っていても不思議じゃない。

罠であった。落としたピクミンを囮にしたのだ。そう考えているマルスを見ながらも、次の一手の為に白と紫のピクミンを引っこ抜いている。

 

 

「やはり、キーラの呪いは思った以上に強いらしい…」

 

 

少なくとも人を変えてしまうほどにはキーラの力は大きいものである。

 

ジャンプで後ろへと回り込む。体を逸らして振るった剣はシールドでガードされる。剣先がギギギと嫌な音をたて、弾かれる。

体勢が崩れたと判断したオリマーは三匹のピクミンを投げるが、マルスは一瞬で立て直した。だが、ピクミンは止まらない。

貼りつくことのできない紫ピクミンを除いて白ピクミンと蕾となった黄ピクミンがマルスにくっついて攻撃する。

 

 

「っ… はぁ!」

 

 

体を引いたマルスは、ダッシュをし、空中に跳んで一回転。ピクミン二匹を振り落とすと、オリマーに向かって剣を薙ぐ。少々吹っ飛ばされたオリマーにピクミンは合流し、砂ぼこりを上げてマルスも着地した。

 

 

「たあっ!」

 

 

『マーベラスコンビネーション』。今回のフィニッシュは刺突を数発繰り返す、ダメージを優先した連撃である。

 

始動は回避できたものの、二発からは避けられなかった。マルスはさらに手痛い一撃をくらわせんと構える。オリマーはそれに対し、紫ピクミンをぶつけようとする。

 

 

『…っ!?』

 

 

意思を奪われている筈のオリマーに動揺が走る。マルスは迫るピクミンを見た途端、構えを中断。横に跳んでオリマーを斬り上げたのだ。ピクミンを斬らぬように。なんて事はない。オリマーは何時もしていること。だが、オリマーを操るキーラには理解出来なかった。

 

 

「(知っている。単なる僕のエゴさ。)」

 

 

マルスはこの戦いで、出来る限りピクミンを殺さないと決めたのだ。別にこれで、先に死んでしまった二匹のピクミンが報われるとは思っていない。今までの大乱闘で倒してきたピクミンだっている。そもそもピクミンが死にたくないと考えているのかもわからない。

 

 

「でも、せめて貴方が自らの意思を取り戻すまでは! 僕が代わりにピクミン達を死なせはしない!」

 

 

無尽蔵に生まれるからといって、死んでいい訳ではないだろう。戦いの中、一人も死なせないということがどれだけ難しいことかマルスは知っている。だからこそ、決断に後悔はしたくない。迷ってしまったら、それこそ死んでいった命に申し訳が立たないのだ。

 

 

『…っ』

 

 

次々にピクミンを投げるオリマー。だが、マルスは跳んだり体を屈めたりとうまく躱す。だが、躱せばピクミンが落ちるという時は決して避けなかった。

 

 

「うっ…! でも…負けるかぁ!」

 

 

幾度かの攻防を繰り返し、互いに疲労が溜まってきた時であった。花の咲いた黄ピクミンを振り切るより先に、オリマーの体に剣先が鋭く突き刺さった。大きく吹っ飛ばされたオリマーはそのまま光となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか…そんなことがあったのか… 迷惑をかけてしまって申し訳ない。」

 

「カービィ以外みんなそうさ。あまり気にしないでくれ。」

 

 

その後、フィギュアから元に戻ったオリマーに状況を説明した。

 

 

「つまりは私達以外の全員もこの世界のどこかにいるのか?」

 

「多分そう。まだまだボク達の物語は始まったばかりさ!」

 

「そうだね。カービィも随分と退屈しちゃって寝ちゃってるし。」

 

 

どこにあったのか、緑のナイトキャップを被ったカービィが寝ている。

 

 

「そういえば、日が落ちている気がしない。時間が経っていないというよりはそもそも太陽が動いてないような…」

 

「そうなのか? ならば不定期でも適度に休息をとろうか。カービィ、動くぞ。」

 

「ぷぃ…」

 

 

マルスとオリマー。どちらも多を率いる者。マリオとは方向性の違うリーダーシップは、ファイター達をまとめ上げるのにとても役に立つのだろう。それはまだ未来の話である。

 




オリマー「口を開けてもらって気付いたが… カービィに歯はない。」

カービィ「モグモグ…」

オリマー「だったら、この咀嚼のように見えたこれは消化ではないか?」

カービィ「すうううぅ…」

オリマー「急速に消化していたのなら、体積以上の食料を食べられるのも納得がいく。なら何故コピー時、私達ファイターは消化されずにいられるのか… カービィにとっては、同じ口に入れる行為でも、決定的な違いがあるのか…」


オリマー「次回、『きっと絆は結ばれている』」


マルス「オリマー、貯めてあった食料を知らないかい?」

オリマー「ドキッ!?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

六話 きっと絆は結ばれている

DQ10「やあ! 後輩がスマブラ参戦したことだしスイッチ版買ってまた始めないか?」
作者「やりゅ〜!!」






覚醒「(#^ω^)ビキビキ」
DQ11「早く裏エンディングに行かせろっ…!」


打倒キーラに向けて着々と仲間を助けるファイター達。強い決意を持ち、キーラの尖兵達を倒し、ファイターの救出、キーラの討伐が目的である。そんな彼らが今何をしているかというと…

 

 

「カービィ! そっちにゼニガメ行った!」

 

「ぽよっ!」

 

「躱された! マリオ、先回りしてくれ!」

 

「OK!」

 

 

金色のゼニガメ、否、オオコガネモチとの鬼ごっこ中である。

 

同じ世界の出身故かどんなスピリットか感じ取ったオリマーからの数がいりそうとの助言から、オリマーとの戦いで疲弊したマルス以外のファイターがこの大乱闘に参加している。

 

オリマーの投げた赤ピクミンがヒットし、体力を削りきった頃には、ファイター達は別の意味で疲れていた。

 

 

「お疲れ様… 大丈夫かい?」

 

「なんとか…」

 

「…ぽよー」

 

「すまないが、少し休ませていれ… 若いっていいな…」

 

 

年齢という概念があるかもわからないカービィは除いて、周りよりも長く生きているオリマーは年の所為か疲労が激しい。

 

 

 

休息も済み、彼らは進む。

少し歩くと、囚われたファイターを見つけたのだが…

 

 

「これは…護衛のつもりか?」

 

 

道の真ん中にいたファイターの周りには、ファイターを守るようにスピリットが配置されていた。今までされてなかったことに少し戸惑うファイター達。

 

 

「だけど助ける他ない。とりあえずボクが行くね!」

 

 

マリオがスピリットの救出に向かい、カービィとマルスが他の道や助け残したスピリットがいないかの探索、オリマーはマリオを待って、待機する。この方針でいくことにした。

 

 

少し待つと、白いオーブがふっと消え、ドンキーコングのフィギュアとワープしてきたマリオが現れる。

偽物のフィギュアは溶けて金色の液体になって地面に吸い込まれていった。オリマーはその現象に既視感を覚えるが、思い出すのも嫌なことなので無理矢理頭の中から追い払った。

 

 

「おかえり。」

 

「ああ、ただいま。マルスとカービィはまだもどってないのかな?」

 

「そうだ。さて、次のファイターだけど私がいこう。君はそれなりに手酷くやられているからな。」

 

 

マリオの特徴的なオーバーオールは所々破けており、顔には擦り傷がついている。

 

 

「…結構強いんだ。気をつけて行ってね。」

 

「わかった。」

 

 

短く答えると人の形をしたオブジェに触れる。生存戦略でもない、ただ純粋な戦いはどうしても慣れないものだな、と黒に独占される視界の中ふとオリマーは思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『パックランド』。パックマンが迷子の妖精をフェアリーランドに送り届ける際の冒険譚

をステージに纏めた世界である。ただし、『終点』化された物語は既に終了しているのだ。そして、この場で戦うのは勿論、

 

 

「パックマンか…」

 

 

黄色い伝説パックマン。丸くて黄色の球体の屈託無い笑顔は、誰にも不快さを与えまい。

だが、その笑顔もキーラの毒牙にかかった今では不要なものと化している。

 

戦うべき相手を見て、ふと視線を後ろにやると、ピクミンがオリマーの方をじっと見つめている。

 

 

「…さっきは済まなかった。君達をあんな目に遭わせてしまって。」

 

 

赤黄青のピクミンはわかっていないのか、葉をぶら下げて首を傾げるだけだ。…黄ピクミンだけ遅れている。

 

 

「彼を助けたい。手伝ってくれるか?」

 

 

ピクミンの顔も仕草もいつもと変わらない。それをオリマーは承諾と受け取った。急に墜落してきた自分を助けてくれ、仲間を殺してしまってもピクミン達はついてきてくれた。例えそれが、種の延命のための行動だとしてもきっと絆は結ばれている。それはきっとファイター達だって。

 

 

「よし、いこう。」

 

 

パックマンの先制の蹴り。ジャストのタイミングでシールドで防御。そのまま二連パンチをして、赤ピクミンを引っ付ける。

パックマンの攻撃が赤ピクミンにヒットする前に『ピクミン整列』。笛を吹き、パックマンの攻撃がピクミンに当たる前に赤ピクミンを呼び寄せた。

 

 

「危ない… っ! あの動き確か…『フルーツターゲット』!」

 

 

パックマンが右手を上げると、美味しそうな果実が現れる。何となくオリマーの遭難した星で回収した宝物に似ているものがあるのは気のせいだろうか? ロボットの頭部なんかにも似た宝があったが。

 

貯めれば貯める程強いという訳でもないのだが、厄介なものが後半に多いのも事実。止めるべく黄ピクミンを投げると、その場で回避。しかし、『フルーツターゲット』の切り替えは持続したままである。

 

 

「たあっ!」

 

『…っ!』

 

 

青ピクミンを持って殴りかかる。

回避の隙をつかれた攻撃は流石に避けられまい。更にパックマンを掴む。遅れて合流した黄ピクミンも参加し、三匹で後ろにぶん投げる。…さっきから黄ピクミンの動きがワンテンポ遅い。

 

 

『…』

 

「よし、畳み掛け…あっ!」

 

 

少し飛ばされた先でパックマンは『消火栓』をセット。アカベエを召喚した強烈な攻撃で消火栓を飛ばした。

走り出していたオリマーは反応が間に合わず、消火栓にぶつかり大ダメージを受けてしまう。

 

 

「ぐっ…くうぅ…」

 

 

パックマンの反撃。跳び上がってリンゴを飛ばしてオリマーにぶつけた後、落下してきて二度蹴りをし、着地をすると、再びアカベエの強烈な攻撃を放った。

 

怒涛の連続攻撃はまだ続く。

オリマーはいきなり空中で体勢を立て直すようなことは出来ない。どうにか上下の感覚が戻り、崖下から復帰しようとすると、真上から急に赤い何かが落ちてくる。咄嗟にオリマーは空中で身を引き何とか避けると、『消火栓』が奈落へと落ちていくのが見えた。

 

当たっていたらと想像すると顔の血の気が引いてくる。とりあえず『羽ピクミン』で復帰を行う。捕まった崖を登ると、『フルーツターゲット』の切り替えが完全に終わった時であった。

 

 

「(一番最後の『フルーツターゲット』! 確かカギは…!)」

 

 

威力、ぶっ飛ばし力。どちらも高い上に弾速の速すぎる攻撃だ。予測していなければ間違いなく当たる。

 

 

「(一体いつ使う? どうにか出来る方法はないか?)」

 

 

あいにくオリマーは飛び道具を跳ね返すリフレクト系の技を持っていない。持っていたとしても結局は技に合わせる必要があるのだが。

 

 

「(わからない。だから今はいつあの攻撃が来てもいいように心構えをしておくしかないな。)」

 

 

戦闘経験からくる予測も、オリマーにはできない。彼が戦ってきたのは本能で生きる原生生物達。考えて動くなんてことはなかったからだ。

 

 

「ここはあえて攻めてみる!」

 

 

赤黄青。全てのピクミンを投げてパックマンに貼り付ける。チクチクとしたダメージはぶっ飛ばす力はないが、蓄積されるといつのまにか大きなダメージとなっていく。

相手の様子を見て、ピクミンに攻撃しようとしていると判断するやいなや、『ピクミン整列』で三匹のピクミンを呼ぶ。

 

 

「っ! まずい! 急げ!」

 

 

だが、ここを見逃す程軟い伝説ではない。

離れたピクミンの位置を予測して、キックを食らわすと、魂となり、ピクミンは他界してしまった。

 

自分にできないことを軽くこなしたこと。ピクミンを死なせてしまったこと。二つが重なり少しの間棒立ちしてしまった。予測以前の問題だ。カギはオリマーに突き刺さり、大きく飛ばされてしまった。

 

 

「はあ…! がっ、ぐうぅ…」

 

 

ステージの端から反対側に飛ばされたので、彼は紙一重で生きていた。場所が場所ならば完璧に負けていた一撃である。

 

ふらつきながらも着地する。

体全体で支え、前を見たオリマーの目に飛び込んできたのは、蕾になっていた黄ピクミンだ。

 

 

「くっ… !? お前…!」

 

 

同じピクミンといっても実は細かいところで個体差がある。先程オリマーへの反応が遅れた、とろい黄ピクミンらしい。そのおかげでパックマンの蹴りに当たることはなかったが。

 

 

「…よし、ここが最後の攻撃だ。」

 

 

負けたらフィギュアとされたら、無事である保証はない。再びキーラの牢獄に逆戻り… という可能性はある。正真正銘、後のない戦いだ。

 

パックマンは再び『フルーツターゲット』。今度は真っ直ぐに飛ぶオレンジだ。オリマーは冷静にシールドでガード。すると、隙を狙ってパックマンが距離を詰めてくる。

 

 

「(やはりそう来るか! だが… 慌てるな。)」

 

 

『パワーエサ』が線を引き、軌道が見える。

 

 

「(引くぞ!)」

 

 

軌道の外へ、終点に攻撃が届くくらいに。

パックマンは回避してくるだろう。

でも、黄ピクミンは攻撃のリーチが長い。

 

 

「その上… このピクミンは鈍い!」

 

 

回避のタイミングが合わない。別に動きの遅いことは戦いにおいて必ずしも短所にはならないのだ。

溜めに溜めた強力な黄色の一撃が、黄色い伝説に直撃した。

 

 

 




カービィ「ぷぃ…?ぽよぽよ?」

マルス「うーん、思ってる以上にぷにぷにしてる… それとも、本人? の言う通りぽよぽよかな?」

カービィ「ぽりゃ!ぷりゃりゃ!」

マルス「あっ!ごめん、くすぐったいかな。」


マルス「次回、『ファイター達自身の希望』!」


マルス「まんまるだなぁ…」

カービィ「まるすもー?」

マルス「えっ、確かに…僕も…マルだね…」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

七話 ファイター達自身の希望

「ただいま、何かあったかい?」

 

「ただいあ〜!」

 

 

マルスとカービィが見回りから帰ってきた。

時は丁度、オリマーがパックマンを救出した時期であった。

 

 

「パックマン! 君だったのか!」

 

 

パックマンは二人を見つけると大きく手を振る。そして、謝罪のつもりなのか、両手を前で組んでペコリと頭を下げる。気にしていないと一言伝えると、ニコッと笑ってサムズアップ。ゴー! というつもりで片腕を上げる明るい彼。いつもの彼が戻ってきた。

 

カービィとマリオも、拳を握り腕を上げて、ゴー! と合わせる。マルスとオリマーも頷いて同感の意を示す。

だんだんと仲間が集まっていく。今や、この世界に残された最後の希望。そしてファイター達自身の希望でもあった。

 

 

 

少し歩くと、大きな基地のようなものが見えてきた。マルスやカービィには少し慣れないコンクリートの壁。壁の周りを沿って歩いていくと門が見えてくる。

 

 

「ここは一体…」

 

「どこかの軍事基地にも見えるが… どうしたんだ? パックマン。」

 

 

門の前にあったのは、画面にLOCKと書かれたコンピュータであった。だが、マルスなど現代機械に馴染みのない者達はそれがよくわからなかったが。

とりあえずオリマーがアンロックに取り組んでみる。だが、彼もいうて機械に詳しいわけではない。

 

 

「すまない… さっぱりわからない。スネーク辺りに頼んだ方がいいだろう。」

 

「そっか… じゃあ仕方ないね。後回しにしようか。」

 

 

マリオが励ます。わからないのなら変に触らない方がいいだろうというのは、マリオにも分かった。

 

 

基地の周りをぐるりと回って森林地帯に着く。彼らを誘うかのように入り口らしき場所は開けている。

 

 

「しかし、ここまで露骨だと逆に怪しく思えてくるな…」

 

「さっきのキノコの場所といい、この世界は何もかもが現実味ないんだよね。あそこまで大きく育つのなら周りに幼生のキノコがあってもいい筈なのに。」

 

「確かに… 最初の方の遺跡みたいな場所も、辺りには何か建っていた跡もなかったね。」

 

 

意見を出し合う三人と、頭を使うのが苦手で会話に入れない二球。何か見つけたのか、どこかに歩き出すカービィとパックマン。他三人はまだ気づいていない。

 

 

「罠なのか、こういう世界を作りたかったのか知らないがこの森にも何かあるのは間違いなさそうだ。」

 

「恐らくね。でも、周りを回って大体の大きさを把握してからでも遅くはない… あれ、カービィとパックマンは?」

 

 

カービィが手を振っている。三人が気づくと、こっち! と言わんばかりに森の脇を通り抜けて走っていく。

 

 

「ストップ! カービィ!」

 

「どこに行くんだい!?」

 

 

カービィを追ってたどり着いたのは少しだけ拓けた場所であった。そこには緑色のスイッチがあった。

 

 

「スイッチ? 一体何のスイッチだろうか?」

 

「とりあえず目星がつくまではそっとしておこうか… 話聞いてた?」

 

 

カチリッ!

本当に話の聞かない球達だ。ピンクの体は飛び上がって、精一杯体重を掛けて、既にスイッチを押していた。

 

マルスは警戒をマックスにするが…

 

 

「何も起こらない…?」

 

「少しヒヤッとしたぞ…」

 

「いっぱい敵が降ってくるかなって思ったけど違うんだね。」

 

 

あからさまなスイッチに罠の可能性を疑ったのだが、どうやらそうでもないらしい。

 

 

「もしかしたらここではない、もっと遠くの場所で何か起きたのかもしれない。」

 

 

実際にマルスのこの推理は正解である。神殿へ向かう道のバリアが一つ剥がれている。だが、それを彼らが知る余地はない。

 

 

「緑があるなら、他にもあるかもしれない。みんなを助ける傍らで探しておこう。」

 

 

オリマーのこの発言で探し物が増えた。

因みに独断行動に走ったカービィとパックマンは後でしっかり怒られた。マルスの叱り方が子供を諭すような、良心を揺さぶられる叱り方だったおかげで最後二人は涙目だった。

カービィはともかく、パックマンが妻子持ちであると知った後、マルスが平謝りになったことを追記しておこう。彼に年齢という概念があるかは兎も角、確実にマルスよりは生きている。

 

 

 

「建物だ。」

 

「建物だね。」

 

「たてもにょ。」

 

「道場…かな?」

 

 

パックマンが顔、否、体を傾けて疑問に思う。言いたいことは全員わかった。何故、ここに道場があるのか。

ちなみに上から、オリマー、マルス、カービィ、マリオの順で発言している。

 

そして、入るなと言いたげな足止めスピリット。これを退けなければ建物内に入ることは出来ないだろう。

 

 

「さて、誰がいくか…」

 

「はあい!」

 

「カービィ行く? …えっパックマンも?」

 

 

カービィと同じタイミングで手を上げるパックマン。いつのまにこの二人は仲良くなったのか。

 

 

「やる気なのはいいことだね! じゃあ行ってもらおうかな。気をつけて!」

 

 

マリオの呼びかけに、二人は振り向き、手を振る。同時にオーブに触れた二人のワープが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Mr.ビデオゲーム、マリオ。彼が冒険した世界は両手で数えられないほどに存在する。ここもその一つだ。『マリオUワールド』。またもや彼の名前を冠したステージであり、冒険の道中を再現した大地や、クッパ軍団の妨害が特徴的なステージだ。今は形状こそシンプルなものの、足場がぐらつき大地が斜めに揺れる不安定なステージである。

 

 

「ぽよ!」

 

 

パックマンも相手を現認し、コクリと頷く。『レイガン』というアイテムを持った、千の顔を持つ武闘家。ルフレやカムイと同じく、伝承の曖昧な勇者の姿は、本人とはかけ離れたものであった。

 

 

一発目。『レイガン』の蛍光色に光る緑のエネルギー弾を左右に分かれて避ける。相手から見て、右にパックマン、左にカービィ。

 

カービィは前にダッシュし、パックマンは『フルーツターゲット』の切り替えを始める。二発目のエネルギー弾。これはカービィ が当たってしまう。三発目、四発目と続き、五発目で漸くシールドに成功した。

 

 

「ぽっ、ぽりょりょりょりょりゃあ!」

 

 

小さな拳から、フィニッシュの『バルカンフィニッシュ』。小さい攻撃はヒットしたものの、フィニッシュは決まらなかった。

 

 

「こーたい!」

 

『…っ!』

 

 

攻撃を終えたカービィは後ろに引き、相手の目の前には、宙よりパックマンが『消火栓』を落としてきた。放たれた水流に押され、崖際に寄せられた。ぐらっとステージが傾き、相手と消火栓の位置どりがとても悪くなっていく。空中でピザ欠けパックマンとなって一回転、そのまま、トラクタービームで相手を掴む。

 

 

『…っ!』

 

 

相手はそのままステージの外に投げられた。そしてパックマンの更なる追撃。『フルーツターゲット』のベルを投げた。

 

ベルには、当たった相手を痺れさせる効果がある。それは空中でも同じこと。その間落下はしないものの、そんな大きな隙を見逃すファイターではない。

空中での戦いに長けたカービィは、相手を追ってステージ外へジャンプ。回転しながら無理矢理相手を落とそうとする。

 

 

『っ…』

 

「ぷゆっ!?」

 

 

それほどダメージは溜まっていない。故にカービィの攻撃はとどめとなり得なかった。ステージに復帰しようと『天地キック』で飛び上がる。

 

しかし、忘れてはならない。戦うファイターはもう一人、パックマンがいることを。

崖へ向かう相手に対して、『消火栓』を落とす。復帰に全力を尽くしていた相手は避けることが出来ず、消火栓と共に奈落の闇に叩き落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スピリット、アタリメ司令を救出したファイター達は、奥にあった道場で、今後の方針を決めると同時に休息を取っていた。

 

 

「現状私達が行けるのは、森林と魔法の森のような森、そして町だな。」

 

「他二つよりは見渡しは良さそうだね… 僕は町に行きたい。」

 

「うん、問題ないよ!」

 

 

といった感じで作戦会議をしていると、おはぎを持ってきたアタリメ司令がやってくる。

 

 

『なんじゃおぬしら、あの変な奴倒しにいくんか? こんな姿じゃなきゃワシの竹筒銃で一発なんじゃが…』

 

「本来の姿でもやめたほうがいいです。キーラは簡単に倒せるような存在ではない。」

 

 

杖がわりにしている十四式竹筒銃を持つ手が震えている。この震えは別に恐怖ではなく、単純に老いからくるものだとなんとなくわかった。

 

 

『じゃあ、代わりに3号を探してくれんか?逸れたままこんなことになりおったのじゃ。』

 

「3号?」

 

 

聞き返すとアタリメ司令は非常に素早く、スケッチブックに絵を描いた。

 

 

「『探シ人求ム イカしたガールです』…?」

 

「この子ってインクリングだよね?」

 

「いやマリオ、ファイター登録名のインクリングはピカチュウみたいな種族名だ。あの子であるとは限らない。」

 

 

なるほど… と納得するマリオ。ちなみに既におはぎは完売済みだ。

 

 

「そろそろいこう。場所を貸していただきありがとうございました。」

 

『うむ。』

 

 

ファイター達が立ち去った後…

 

 

『ヌワッ!?ワシのおはぎがない!』

 

 

全て暴飲暴食なピンクボールと黄色玉の所為である。

 

 

 

見下ろす町にはまた、多くのファイターとスピリット達が存在している。動くことのない太陽が五人を照らし、これからの旅を暗示するような影を作っていた。

 

 

 

 

 

 

 




オリマー「すまない… さっぱりわからない。スネーク辺りに… ってなんなんだその『そりゃそうだ』と言いたげな顔は。」

マリオ「まあね、あんまり言いたくはないけどパーツにヒビ入ったから土で塞いだような人だしな〜」

オリマー「えっどうしてそれを!?」


マリオ「次回、『私、頑張ります』」


オリマー「マルス! 機械工学というものは意外と難しくてだな…」

マルス「金属だった物を土で修理なんて… 僕でもまずいってわかるよ。強度が全く違う。」

オリマー「マルスにすら言われた…」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

八話 私、頑張ります

本小説製作における最大の誤算
自身の名前も長い、技の名前覚えれない、技の描写も面倒くさい。
そんな小説家殺しのファイターがいるらしいっすよ?(批難する意図はございません。)


ファイター達が向かった町は、通路を挟んで北南でわかられており、その双方にファイターが一人ずつ存在していた。

実際は、北の方の町にゲートに遮られているファイターがもう一人いるが。

 

 

「どっちから行こうか?」

 

「うーん… 北のほうかな。こっちの方がスピリットが少ない。全員助けるつもりだけど、僕達が全滅してしまったら元も子もない。無茶はしない方がいいからね。」

 

 

オリマーがマルスに問い、マルスはそれに答える。

 

 

「OK! じゃ、行こうか。」

 

 

通路を降りた先の町は、鉄骨で出来た塔が印象深い広場だった。ここはポケモン達の世界、カロス地方のミアレシティに非常によく似ているのだが、彼らの中にそれを知っている者はいない。

キーラは掌握した世界を切り取り、それらを繋げてこの世界を創っている。このミアレシティもカロス地方から直に切り取ったものなのだろう。

 

彼らは一人いるファイターを第一に救うことを考えている。しっかり確認したのだが、ゲートの先にいるファイターには現状手が届かないので後回しにするしかない。合理的だ。救ったファイターは即戦力になる。人数が多いと言えないのがファイター達の現状だ。

とはいえ、スピリットの中にはファイター達とも負けず劣らずの実力を持ったスピリットだって存在する。

 

その一人のファイターの前に立ち塞がるスピリットにはマリオ、オリマー、カービィの三人で向かったのだが…

 

 

「あっ、戻ってきた… ってえっ! これどういうことだい!?」

 

「マルス… ははっ、アシストフィギュアにもいたジェフだっけか。すごく強くて…」

 

 

カービィとオリマーはフィギュアとなっていて、マリオも満身創痍。かろうじて勝てたのか魂となったジェフは平謝りだ。

 

 

「ファイターは目の前なのに… パックマン、次行けるかい?」

 

 

マルスの言葉にコクリと頷く。

ぐるっと塔を周ったパックマンの視界の片隅に、フィギュア化解除の光が映ったのとパックマンの手がファイターに触れたのは同時であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白い場所。壁には人型のシルエットが念入りにストレッチをしている。

『Wii Fit スタジオ』。ファイターの一人であるWii Fitトレーナーが使用しているトレーニングルームをイメージして、大乱闘用にアレンジしたステージである。そして、このステージもまた、他のファイターとの戦いと同じように『終点』の形となっている。

 

このステージと同じような、陶器の如く白い肌を持つファイター、Wii Fit トレーナー。白いオーラは兎も角、真っ白な肌にキーラの赤い瞳は非常に目立つ。

 

パックマンは両の拳を握りしめ、気合いを入れる。それを戦闘開始の合図と受け取ったのか、Wii Fit トレーナーは『ヘディング』で緑のボールを飛ばしてくる。

片足を上げ、体を逸らして回避。両手を回してバランスを取る。

 

 

『…!』

 

 

お返しとばかりにチェリーを投げつける。しかし、バウンドした場所で相手も避ける。

 

『フルーツターゲット』は切り替えの出来る技の都合上、隙が発生する。相手は体のことに詳しいスペシャリスト。あの隙があればすぐに立て直すことが出来るだろう。パックマンは肉弾戦に切り替えることにした。

『ヘディング』もまた、ボールを頭上まで上げる都合上、技発動までディナイが出来る。ならば、その柔軟な体で直接攻撃を仕掛ければいい。『腹式呼吸』をして、頭を落ち着けると同時に指先ひとつまで力が湧き上がってくるのを感じる。そして、姿勢のいい走り方でパックマンの方へ寄る。

 

不幸か幸か、両者の考えは一致した。

まずはパックマンの飛び蹴りがヒット。『腹式呼吸』のお陰で一瞬早く動いたのはパックマンだった。その場でピザ欠けパックマンで一回転。

 

 

『…』

 

 

次はWii Fit トレーナーの反撃、左足を左手で持って身体の後ろで上げる『ダンスのポーズ』。バランスを取るための右手に当たってしまい、Wii Fit トレーナーのターンはまだ続く。空中で体を折りたたむ『ジャックナイフ』にヒットし、さらにもう一度同じ技に当たる。

続いて上半身を傾けて、右足と右腕を一直線に伸ばす『片足バランスウォーク』を繰り出すも、シールドで何とかガードする。

 

 

『…っ!』

 

 

ガードして隙を作らせたパックマンは『パワーエサ』で軌道を描いて強襲。最後は上方向に進んだので上手く打ち上げることが出来た。宙返りしながらに蹴る『パックサマーソルト』を繰り出し、着実にダメージを稼ぐ。

 

対し、Wii Fit トレーナーは宙で脇に逸れて、これ以上の被弾を防ぐ。そのまま『太陽礼拝』を撃ってパックマンを牽制する。

 

 

元の世界で戦っていることが日常という訳では無いはずなのに強いな、と思う。

この異世界の強者に紛れて、己の身一つで戦い抜くことが出来ているのは、ひとえに彼女の性格によるものであろう。

同じタイミングでスマッシュブラザーズに参戦した身としては、彼女を見て、より頑張ろうと思ったのだ。

最初の頃こそ、彼女は負けてばかりだったのだが、その負けず嫌いな性格が影響してメキメキと力をつけ、徐々に勝ち数を増やしていったのだ。だからといって、大乱闘をドタキャンしての山籠りはやめてほしいが。

 

そんな頑張りやの彼女を見て影響を受けたファイターは少なくないだろう。

 

だから彼女は、いや、誰一人として欠けていい存在などいない。

 

 

『ヘディング』で飛ばしてきた緑のボールを蹴って返す。これは読んでいたのか駆け寄りながらのジャンプで躱されてしまう。

 

しゃがんで体を横にしながら、腕を伸ばして滑り込む『かんぬきのポーズ』。

パックマンの着地を狙った攻撃は流石に避けられない。そのまま掴まれて、『サーブ』で叩き飛ばされる。

 

 

『…』

 

 

飛ばされながらも空中で『フルーツターゲット』の切り替えを行う姿を注意深く観察するWii Fit トレーナー。止まったのは。

 

 

『…』

 

 

メロン。弧を描く軌道が特徴だ。大きな吹っ飛ばし力を持っているが、その分速度は遅い。

 

 

『…』

 

 

その攻撃を適当に繰り出す訳がない。

恐らくここぞという時に出してくる。それは、その特徴的な軌道で読めない時に狙うか、もしくは速度など問題ないほどに接近した時に撃ってくるか。

 

片腕を上に、もう片方を開いた足にくっつけてる『三角のポーズ』でパックマンを宙に上げ、頭の上で両手を合わせ、傾けた上半身を一気に反対側にする『三日月のポーズ』で追撃を図る。当たりはしたが、パックマンは脇側にそれていた。

 

 

『…っ!』

 

 

半端に空中の攻撃をしたのが仇となり、着地点にはパックマンの呼び出す『アカベエ』が待ち受けていた。

 

 

『…だっ…!』

 

 

それなりに吹っ飛ばされたが、溜めが少なかったお陰で命拾い。だが、まだステージの外だ。パックマンの追撃を空中回避し、何とかステージ上に戻ろうとするが、追撃を終え、一足早く戻ったパックマンが、『フルーツターゲット』、メロンを投げる。

 

 

『…!』

 

 

回避したばかりの彼女にはもう避ける手段はない。真正面からぶつかり、光となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

共に帰還したフィギュアの台座部分に触れ、Wii Fit トレーナーを元の姿に戻す。

 

 

「う〜ん… ここは…?」

 

「トレさん! 平気かい?」

 

「マリオさん…?」

 

 

ファイター達はWii Fit トレーナーの名前を短く呼ぶ。トレーナーとそのまま呼んだり、マリオのように短くしたり。

彼女自身がそんな感じに呼んでほしいと頼んだからだ。単純に長いので誰だってそうやって呼ぶ。

 

 

「えっと… 私は一体… いえ、なんとなく覚えています。パックマンさん、ありがとうございます。そして、皆さんご迷惑をおかけしました…」

 

「気にしなくて大丈夫さ。みんなそうだった。」

 

「…はい。」

 

 

とはいえ、まっすぐ背筋を伸ばして体操座りをする彼女にいつもの快活さはない。それを見て、マルスは片膝を地面につけ、彼女に目を合わせて話した。

 

 

「トレさん。そこまで気にするなら、ずっとそう思っていても構わない。でも、まだ60を超えるファイターがキーラに捕らえられている。君みたいな思いをする人は後で何人もいるだろう。」

 

「…! そうですね。私がここでウジウジするのは簡単ですが、後の方達に失礼です。」

 

 

立ち上がって、右腕に左腕を重ね、右腕を伸ばす。そして腕を組み替え、左腕も伸ばす。

 

 

「私、頑張ります! あのキーラを倒し、再び私達の笑える世界を取り返さねば!」

 

 

軽いストレッチを行い、他のファイターを鼓舞する。

 

 

「先を急ぎましょう! 休んでいる暇などありません!」

 

「待ってくれ、トレくん! まだ疲れが…!」

 

「ぽよぉ〜…!」

 

 

姿勢よく走り出すWii Fit トレーナーを止めようとする、未だに座り込んでいるオリマーとカービィ。やれやれという表情で見つめるマリオとマルス。パックマンは手を頭の後ろで組んで、ニコニコと笑っている。

 

そう。このハキハキとした明るさがいつもの彼女なのだ。

 




トレーナー「まずはお腹のマッサージからいきましょう!」

カービィ「ぽうよ…?」

トレーナー「カービィさん… どうして胸を指して…?」

カービィ「ぽよ!」

トレーナー「もしかして… そこ… 胸なんですか!?」


トレーナー「次回!『マイナスから彼女の道は始まるのだ』」


トレーナー「ややこしい体してますね…! えっと… ならここの辺りでしょうか…?」

カービィ「ぷぅや!」

トレーナー「ここも違うんですか!?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

九話 マイナスから彼女の道は始まるのだ

スプラトゥーン2ラストフェスにて
相手チームのお名前

ティーダ ロック フリオニール ノクティス

てめーら、なんで混沌(カオス)派なんだ!?

私は秩序組です。星なしランク38付近でバケツばかり使っている下手くそは私です。もし会ったら全力でぶっ潰してください。
結局ガチ殆どやらなかったなあ…








本日(限りのコーナーである)のパワーワード
ストレッチのような打撃


これ以上の言葉が見つからなかったんや…
(探してみてね!)


「そういえばマリオさん。」

 

「どうしたんだい?」

 

 

ふと思い浮かんだ疑問を本人に問おうとする。

 

 

「Dr.マリオってあるじゃないですか。あれ、今もなれるんですか?」

 

 

ファイターの中には、一人で二人分のファイターを登録している者がいる。マリオもその中の一人だ。いつもの赤い帽子にオーバーオールの姿とは別に白衣を纏ったDr.マリオの姿がある。

 

 

「…そういえば。切り替えができないや。これはどうなっているんだろう。」

 

 

魔法で目の色まで変化するシークに着想を得たのか、マリオもまた、己の意思一つで姿が変化するように創造神は動いた。ただ単に白衣を着ただけではないのだ。

 

それは、フィギュアになっていなければ、いつだって切り替えが出来た筈だ。乱闘中の切り替えは禁止されているのだが、出来ない訳ではない。かつてはそれも戦略として加えられていたこともあったが、今は禁じられている。

 

 

「………」

 

 

噂をすれば影が差す。少し町を外れた場所にファイターが存在していた。そして、マリオにはそれが自分自身であることを直観的に把握していた。

 

 

「マリオ? 誰かわかるのかい? それは一体」

 

「ボクだよ。」

 

「えっ」

 

「ボクだよ。」

 

 

繰り返す。正直本当に理解できていないのは自分だ。目の前のファイターが自分自身だなんて。

 

 

「もしかして… Dr.マリオか?」

 

「キーラはマリオの中にあるもう一つの姿までも奪うことが出来たのか…?」

 

 

ならば二人のサムスが共存しているかもしれない。頭に入れておこうとマルスは考えた。

 

 

「何これ… どう反応すればいいんだ…?」

 

「ならば私が戦います。先程助けてくださった訳ですし。」

 

「そうして欲しい。リンクやピットじゃないんだ。増してやこんな状態でボク自身と戦えだなんてね…」

 

 

ビビアンと会った時は不可抗力だったけどさあ… だの、あの時とは少し違うけど… だのボソボソと呟いている。

だが、彼らやカービィなどと違い、Dr.マリオは完全にマリオ自身である。

 

 

「行ってきますね!」

 

「ふぁいと〜!」

 

 

手を挙げて返答するオリマー。あいも変わらず、舌足らずに話すカービィ。マルスとパックマンもこくりと頷いて答える。

 

凛とした表情をして、それに触れる。戦いの場に誘う。自分もこうであったと知らしめる結果となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を開くとそこは暗い世界。

茶色のレンガの足場と、背景に緑の土管。光源となりそうなものは存在しないのに、不思議と目は通常通り働くのだった。『マリオブラザーズ』。マリオ兄弟の名前のステージは遥か昔、二人の兄弟が冒険した世界であった。変にカクカクしていて、こんな場所を冒険していたのかと他人事ながら思う。

 

 

「とても不思議な気分です。送り出してくれた仲間なのに、ワープした先でこうして敵として相見えるだなんて。」

 

 

マリオは多趣味だ。クッパにさらわれるピーチを助けるだけじゃなく、そんな敵と一緒にスポーツをしたり、パーティゲームをしたり。

 

医者までしてるのだ。Dr.マリオとはそんな医者の姿をしたマリオだ。サムスと違って明確すぎる戦法の変化はないが、油断は禁物。そんな細かな違いは時として伏兵になりうるのだ。

 

 

『…』

 

「っ! 来ますか!」

 

 

Dr.マリオの右手から火の玉、ではなく薬の『カプセル』が飛び出す。赤と青、青と黄色という派手な色のカプセルはおおよそ彼女の世界では見たことのないものであった。技術的には不可能ではないかもしれないが。

特定のウイルスを倒すのに特化したカプセルは、この大乱闘においてファイターを蹴散らす武器だ。Wii Fit トレーナーはジャンプで躱す。

 

 

「行きます!」

 

 

そのまま空中でDr.マリオに寄って『ジャックナイフ』。これはDr.マリオにその場で躱された。その隙を突いて電気を纏った掌底が襲うが、ギリギリシールドを貼るのが間に合い、大きくシールドが削れる。

 

 

「次はこちらからです!」

 

『…』

 

 

『横足上げ』、『片足ひねり』から『ランジ』のコンボ。先の攻撃の火力アップのために近くにいたDr.マリオの体は地に埋まる。

中々抜け出せないDr.マリオに対して、『橋のポーズ』で追撃を加える。

 

 

『…っ』

 

 

地面から抜け出せたDr.マリオは勢いのままに後ろに引く。そしてWii Fit トレーナーに向かって、両手を広げ回転に巻き込む『ドクタートルネード』を繰り出す。

 

 

「いっ…」

 

 

そこから空中での、上に向けた回転蹴りを二発くらい、追い込みの『スーパージャンプパンチ』。

 

 

「ああっ…!」

 

 

着地して、さらに両足を揃えた飛び蹴りをくらい、やり返そうと思って『片足バランスウォーク』で反撃しようとするも、『スーパーシーツ』で方向を逆転され、拳でステージに叩きつけられる。

地面に這いつくばって思う。

 

 

「いつもの… マリオさんの戦法とは全く違います…!」

 

 

当然だ。今マリオの意思は彼女を待つ彼の方にある。では、目の前の彼は? マリオからもう一つのファイターの性質を奪い、ただそれだけでDr.マリオの姿を形作っただけの真の意味での人形だ。そこに意思なんて存在しない。

 

あるとすればキーラの純粋な殺意だけだ。他の思考は存在しないのだから当然だ。

 

カエサルのものはカエサルに。Dr.マリオの姿は、神と認められぬキーラではなく、マリオにしっかり返すべきだ。

それが当然の理。当然の帰結。今の彼女の真理だ。故に彼女に負ける道はない。いつだってマイナスから彼女の道は始まるのだ。

 

 

「少し荒っぽくなりますが… 虎穴に入らずんば虎子を得ずです!」

 

 

立ち上がり、近くに寄って見様見真似で足払いを繰り出す。とは言え普段はやらないことなので転ばせたり、体勢を崩すことは出来なかった。が、少なくとも相手の注意を逸らすことはできた。

 

 

『っ!』

 

 

足元に気が向いた所でガッツリと掴み、ストレッチのような打撃を加える。相手の抵抗がより強くなってきたのを感じると、上に向かって『トス』をした。さらにと言わんばかりに、手を頭上に合わせ、体を捻って攻撃する『三日月のポーズ』で宙に上がったDr.マリオを追撃する。

 

 

「ふう…」

 

 

過度なトレーニングは体に毒。それは知っているのだが、休む暇はないし、あっても休む気にはなれない。故に一息つくだけで、すぐに次の行動に打って出た。

 

 

「『太陽礼拝』!」

 

 

最大級の光弾がDr.マリオを襲う。

『腹式呼吸』と同じように、微量ながらも回復の効果もある珍しい技だ。溜めれば溜めるほど威力も大きさも速度も上がっていくが、隙を作るでもなく放った攻撃は普通に避けられる。

 

 

「まあ、避けますよね…」

 

 

最初から期待などしていなかったのか、気負いはせずに動く。

接近戦で戦うことになり、その場でDr.マリオのキックをその場でサラッと回避すると、また見様見真似の足払いを掛ける。ただ、同じ手にかかるほど単純な相手ではない。

 

が、同じ手をするほど彼女は弱くはない。上方向への回避を誘った足払いは成功した。そこから後ろへ引いたDr.マリオに対し、『かんぬきのポーズ』で着地点を狙う。Dr.マリオが吹っ飛ばされたのはステージの外。

 

 

「復帰はさせません!」

 

 

復帰しようとするが、先にWii Fit トレーナーが動く。両手は合わせて前に、両足は勢いよく下に伸ばした『腰かけのポーズ』。Dr.マリオの真上を取った攻撃が相手を襲い、奈落へと叩き落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戻ってきました!」

 

「お疲れ様。それで、Dr.マリオのフィギュアは出てくるのか…」

 

 

Wii Fit トレーナーとともに戻ってきたのは、マリオがDr.マリオとしての乱闘時にフィギュア化する姿そのものであった。

そして、またマリオが変な顔をした。

 

 

「まあ、気持ちはわかるけど… どうしようか。」

 

「普通に戻してみればいいんじゃないのか?」

 

 

オリマーの声を受け、他の人のフィギュアを戻す時と同じように台座に触れてみる。

いつもの金色の光が現れたと思いきや次の瞬間、Dr.マリオのフィギュアは消えていた。

 

 

「消えちゃいましたけど…」

 

「どこー?」

 

「えっ… さ、さあ、どこでしょうね?」

 

 

考え込んでいたマルスがはっと、思いついたようにマリオに問いかける。

 

 

「マリオ、もう一度切り替えてみてくれないか?」

 

 

その声を聞き、白衣の姿をイメージする。すると、くるくると回って輝かしいエフェクトが出たと思いきや、Dr.マリオの姿となっていた。目は普通に青く、白いオーラも纏っていない。

 

 

「ワオ! できちゃった!」

 

「お医者さんだね。」

 

「ファイターの力が戻ってきたのかな? ともかく一件落着だね。」

 

 

しかし、ファイターの性質だけで体を創り出すのは可能なのだろうか? もしかしたら、周りのスピリットのようにマリオのボディを使っていたのかもしれない。

 

理由はわからないが、マリオの中のDr.マリオも仲間の一人であることには変わりない。少しずつだが、着実に進めている。マリオの声に呼ばれ、マルスは思考を先の事に戻すのであった。

 




オリマー「パックマンもよく食べる。どこにあの食料が行くのだろう。」

パックマン「パクパク」

オリマー「いや、それより通称ピザ欠けパックマンの秘密だ。目が見当たらないがどうやって前方を確認しているのだろうか。」

パックマン「パクパク」

オリマー「外から見えていないだけか、それともピット器官のようなものがあるのか…」

パックマン「…?」

オリマー「…君がピット君だとは言っていないんだがな。」


オリマー「次回、『本物のヒーロー』」


オリマー「俗に言うサーモグラフィーだな。蛇などについているんだ」

パックマン「?」

オリマー「…わかってないな。」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十話 本物のヒーロー

祝! 十話突破です!
話数的には既に突破済みですが、ノーカンノーカン。


ちなみに次回から初見プレイ時の迷走っぷりが如実に現れてきます。ご注意を。


二人のファイターを解放したファイター達一行は、先に進むのではなく先程から見えていた街の南方面に来ていた。ここにもう一人ファイターがいるのを確認できていたからだ。

 

 

「こっちの方もあまり変わらないな…」

 

 

落ち着かないように周りをチラチラと見回すマルス。ステージにいるのは大体乱闘中なのであまり気にならないのだが、やはり現代の街並みというのは彼にとっては新鮮なものであるらしい。

 

 

「ここにも多くのスピリットがいますね…」

 

「うむ… この人数だと骨が折れそうだ。」

 

 

共感するかのようにパックマンがコクンと頷く。

 

 

「少しずつ進めていこう! 始めないと終わらないしね!」

 

「ぽよ。」

 

 

こうしてスピリットの解放を進めていくことになる。常に二人は残るように、順繰りで行けるところを交代して攻略していくことにした。

 

 

 

 

「ただいあ!」

 

「おかえりカービィ! あっ、君はアシストフィギュアにもなっている」

 

『おっ、兄さん達チワッス! なんか大乱闘ではバス運転してもいいって言われてたのにこんな状況だい…』

 

「兄さんか… その呼ばれ方は新鮮だな。」

 

 

街や島への移動を行ってくれるかっぱのかっぺいだが、元の世界のすま村にいたというのにキーラによってこの世界に連れてこられたらしい。

 

 

「次はマリオか… ファイターに挑むのか?」

 

「そのつもりさ! 助けてあげなくちゃ!」

 

「…さらに聞くがDr.マリオで挑むつもりかい?」

 

 

そう。いつのまに変わったのか、今マリオはDr.マリオの姿になっている。

 

 

「ああ! ちゃんと戦えるか確かめなくちゃいけないしね!」

 

「まあ、止める意味もないが…」

 

『兄さんガンバ!』

 

「がんば!」

 

 

ファイターに触れる。黒一面に染まった視界は彼の纏った白衣とは正反対であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

舞台は遥かな空。超高高度の駐車場『タチウオパーキング』である。車を入れる駐車場として機能している他、ナワバリバトルのステージとしても有名な場所だ。

今はあのうねりくねった道も、山のような高低差もない『終点』のステージとなっている。

 

 

「おっと、インクリングじゃないか。」

 

 

オレンジのイカの足をツインテールのように揺らすガール。ファイターの登録名はインクリング。それは種族名なので、しっかりとした名前がある筈なのだが、教わった覚えはない。というか、本人が気にしていない。

彼女もまた、キーラの呪いによって戦うだけの人形と化していた。

 

ジリジリと近寄るインクリング。それに応えるようにマリオも少しずつ距離を縮める。先に動いたのはインクリング。『バケットスロッシャー』の中に突如橙色のインクが現れたかと思いきや、それを思いっきり振り下ろした。間一髪での回避が間に合った。後ろへ跳んだマリオ。

 

 

「あぶない… って白衣が汚れちゃった。」

 

 

直撃はしなかったが飛沫が飛んでオレンジの斑点模様が出来てしまった。インクリングのインクは時間経過で空気中の微生物に分解されて消える。その微生物を、この世界で人体に影響のない程度に増殖された結果、インクが分解される速度は大幅に上昇している。

故にマリオの心配は全くの杞憂である。

 

飛び蹴り、そして上半身を逸らし勢いをつけてのヘッドアタック。インクリングも負けじと少し吹き飛ばされた所から『スプラシューター』を撃ちマリオの衣服を染め上げる。

 

 

「あーあ、こりゃ買い換えかな。もう!」

 

 

冗談ぽく言うマリオ。最早白衣ではなく橙衣というレベルに塗りたくられていた。少し経てばインクは落ちるのだが、マリオが気にしているのはそこではない。

大乱闘でのインクは、付着しているだけで受けるダメージが増量される。普段はなんともない打撃も、骨にまでダメージが及んだりするのだ。それは確実に気のせいなどではない。

 

 

『…』

「ていっ!」

 

 

互いの蹴りが交錯する。その最中インクリングの手元がゴソゴソしているのをマリオは見逃さなかった。

 

 

「あぶなっ!」

 

 

咄嗟に飛び上がると、マリオのいた場所には『パブロ』が振られていた。遅かったら確実に巻き込まれていただろう。

『ドクタートルネード』で少し飛ばすと、インクリングは『スプラッシュボム』を投げる。マリオの回避は間に合わず、少しインクが取れていた白衣はまた染められた。

 

 

「イテテ… せっかく取れてきてたのになあ!」

 

 

ジャンプで近寄りながらの『カプセル』はシールドで防がれるが、上から来てもそのまま着地。フェイントに釣られ、インクリングがシールドを解いた所で再びジャンプからの地面への殴りつけだ。インクリングの脳天がぐらりと揺れる。

 

 

『…っ!』

 

 

本能的に危険を感じ取ったのか、インクリングは『スーパージャンプ』で離脱。マリオの全身を使った足払いは不発に終わる。着地し、イカ状態からヒトに戻ると、『スプラローラー』を転がし始める。

 

 

「ワオ… ぐべ!」

 

 

ジャンプで躱すが、切り返してきたローラーは防げず、轢かれて、コンクリートの大地に埋められた。

 

その後の『パブロ』の攻撃は流石に避けれない。地面からも綺麗にぶっ飛ばされる。

 

 

「いったー!よっ…と」

 

 

空中で体勢を立て直し、相手を見ると、センプクしてインクの補給中である。

インクだって無限ではない。回復しなければ必ずいつか尽きる。後を見越し、マリオへの追撃は断念していた。

 

 

「(センプクしてる間にどうこうっていうのは… 流石に間に合わないか。)」

 

 

出来ればこの隙を突きたいというのは山々なのだが、相手とて隙を突かれるようなタイミングでセンプクする程愚かではない。今は見逃すしかないのだ。

 

マリオが着地した瞬間、インクリングもヒト状態に戻り、図らずも再開の合図となった。

 

 

「たあ!」

 

 

マリオはスライディングの攻撃、インクリングは素手での殴り。パンチの攻撃をすり抜けることは出来なかったため、マリオにも少なからずダメージがあったが、競り勝ったのはマリオだ。吹っ飛んだインクリングに追撃を加えようとダッシュするが、彼女の放り投げた『スプラッシュボム』に対応出来ず、直撃。

 

 

『…』

 

「ぐうっ!」

 

 

ぶっ飛んだマリオに向かって肘打ち。横腹を打たれ、くぐもった声を出すも現実は変わらない。インクリングはそのままマリオの真下に周り、『ホットブラスター』で、爆発させる。

 

 

「がっ… はあ…はあ…」

 

 

体に染み込んだ動作に従い、ほぼ無意識に受け身を取って立ち上がる。ここのあたりは流石歴戦のファイターといった所だろう。

 

 

「(まずいや… 後一発くらったらやばいかも。)」

 

 

ギリギリの戦い。インクの効果により、マリオの方がダメージをくらってはいるが、インクリングだってそれなりにダメージをくらっている。なんとかなる範囲だが、本人はそれを許すだろうか。

元々かなり戦闘慣れしていたと感じてはいたが、本人の、調子に乗る悪い癖が抜けて、初期から呼ばれているマリオとも渡り合っている現状だ。

 

 

「(隙を伺うんだ! 冷静に…冷静に…)」

 

 

スプラシューターを振り下ろす。軽く体を逸らして最小限の動きで躱す。

マリオを掴もうと左手を伸ばす。咄嗟に下方向に弾く。

そして、インクリングは右手に持つスプラシューターを思いっきりマリオのこめかみ辺りに振りかぶって…

 

 

「ここだあああ!」

 

 

電撃を纏いし掌底を思いっきり叩きつけた。インクリングは完全に攻撃の姿勢に入っていた。防ぐ術などない。

 

 

『…ん…にぃ…!』

 

 

しかし、命拾い。完全なアウトゾーンに入るギリギリの所でとどまった。慌ててステージに戻ろうとする。

 

 

「…へへっ」

 

『…!』

 

 

飛ばなかったのならばもう一度当てるだけ。着地点に再び、バチバチと電撃を手に纏わせるマリオ。気付きはしたが体が反応しない。赤くなったインクリングの目には、マリオの電撃が眩しく点滅するのが見えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とても長い間眠っていたような気がする。町の建物の隙間から覗く日光に視界が悲鳴を上げ、反射的に目を強く閉じた。

 

 

「あ…うあ…」

 

「インクリング。大丈夫かい?」

 

 

意識のない間、ヒーローを見ていた気がする。自分の憧れた本物のヒーロー。

 

 

「あっ…大丈夫。まだちょっとクラクラするだけ。」

 

「そっか、それは良かった。他に何かあったらボクに言ってね!」

 

 

夢の世界にいた白いヒーローはいつもの赤い服に戻っていた。

 

 

「んー? どういう状況? よいしょっと。…圏外…だって…!?」

 

「今、何確認してたんだい…」

 

 

可愛いので気に入っていたカービィを膝の上に乗せ、イカの形を模した携帯端末の画面を覗くと現れる無情な二文字。前まではそれっぽい建物など見当たらなくても、どこだって電波は完全に受信していたのに。

 

 

「むーー!キーラ許さないんだから!」

 

「そう… あっそうだ! アタリメ司令って人がこの3号って人を探してるらしいんだけど同じインクリングとして何か知ってるかい?」

 

「あ、はい何か御用… もごもご!」

 

 

破られたページに載っているのは自分に間違えない。咄嗟に反応しそうになり、両手で自分の口を塞ぐ。

 

 

「(あっぶなー! ヒーローは秘密があるからカッコいいのに台無しにする所だった!)さ、さあ、あたし知らない!」

 

「…うん、そうなんだ。」

 

「ぷゆ。」

 

 

慌てすぎな反応と裏返った声で彼女の秘密を知ってしまった。だが、何か理由があって秘密にしているのだろうと深くは聞かない事にした。実際は自分のヒーロー像を守る為だけというくだらない理由である。

 

話を切り上げたマリオを見て誤魔化せたことにほっとする。そして無意識に懐のヒーローコスチュームに手を伸ばす。

 

 

「は!? な、無い!」

 

「えっ? 何が?」

 

「あっ、いや何でもないよ! 何でもないの!」

 

 

ヒーローコスチュームが無い。どこかで落としたのだろうか。あれが別の誰かに見つかると自分がNew!カラストンビ隊3号なのがバレてしまう。それを引いても仲間達との絆の証のようなものである(お下がりだが)。

こうして彼女はキーラ以外のものとも戦うことになる。なお、理由は然程深刻ではない。

 

 




マリオ「そういえば… 3号というなら1号2号もいるのかな?」

インクリング「えっ… 何であたしに聞くの?」

マリオ「だってカービィ喋れないし…」

インクリング「ああ、そっか! てっきりあたしは、あたしを3号だと確信しているのかと」

マリオ「…隠す気あるのかい?」


インクリング「次回!『これが連携ですね』!」


インクリング「はっ!? もしかしてこれって… ユウドウジンモンって奴!? その手には乗るかー!」

マリオ「手遅れじゃなイカ?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十一話 これが連携ですね

エイトくんがめたんこいいっ!バナナの皮で転んだ時とか寝ちゃった時とかのモーションがめちゃいい!スペシャルフラッグ掲げた時の手首のスナップ利かせてる奴もやばい!というか、くびれとか服の皺とか細かすぎてやばいやばい!オススメはスライムと戯れる下アピール!スマブラではカッコいいとこばかりだけど、本編の少しぼんやりした一面を彷彿とさせる表情!最高ですか?最高です!ちょこんとポケットに入ってるお… トーポもキュート!いっそ、エイト表記で切り札ドラゴンソウルでも全然OKだった(殴)

失礼しました。三主もソロくんもイレブンくんも好きですよ。三主は公式ではアルスですが、七主の印象強いですよね。一方三主の名前は小説ネームのアレルが強い。


八月の投稿強化月間です。水曜日も混じって週二投稿となります。持ってけー!私の書きだめー!かきだめ〜(ごまだれ風に)

インクリングの設定置いときますねー。
・インクリング
今時の女子高生のような性格。上手くいくとすぐに調子に乗ってしまう。New!カラストンビ隊3号だが周りには隠している。変装時はヒーロー然とした口調だが、ふとした時に素が出ることもあり、ドジっ子なこともあって、周りからはバレバレである。ヒーローコスチュームはキーラに襲われた時にどこかへ落としてしまったようだ。


新たに救出したインクリングを加え、街の制圧を終わらせたファイター達は魔の森に来ていた。

 

 

「…どうしよう、私3号だってバレちゃう。もういっそ他の誰かが見つけないように祈るしか」

 

「インクリングさん? どうかしましたか?」

 

「うわあああああああ!」

 

「うおおお!?」

 

唐突なる悲鳴に思わず耳を塞ぐ一行。ヘルメットの所為で耳を塞げないオリマーは近くにいたのもあり、釣られて声を上げてしまった。

 

 

「び、び、び、び、びっくりした! トレさん!? バレた…じゃなくて、出たのかと思った!」

 

「君の声にこっちがびっくりしたんだが…」

 

「出たって… お化け?」

 

「幽霊! あたし幽霊の笑い声聞いたことがあるもん!」

 

「ああ、うん。そうなんだね。」

 

 

お化けと幽霊は彼女の中でどう違うのか。ボクはお化けの方が怖い、捕まったことあるもん。と心の中で付け足すマリオであった。

 

 

 

 

 

魔の森に入っていくと、入り口のすぐ近くに、森にあるには新し過ぎて逆に不自然な建物が見えた。

 

 

「…怪しいよね。明らかにここにあった物ではない。」

 

「入る?」

 

「入る!」

 

「インクリング!?」

 

「とつげき〜!」

 

「カービィ!? パックマンまで!」

 

 

ダッシュで入っていくインクリングの後を追う。この子、やけになってはいないか。

中は、街の電気を供給する電力プラントとなっていた。インクリングにとっては見たことある物もあり、何よりその広さに圧倒された。

 

 

「うっそーん…」

 

「なんだろう、ここは…」

 

「これは…おかしい。明らかに外見と中の広さがあっていない。」

 

「中に入ったと思いましたが、実はワープしていたのでしょうか…?」

 

 

各々三者三様な反応をする。工場のような建物に入ったかと思いきや、この電気仕掛けの世界だ。そこにあったのはデンチナマズ。インクリングがヒーロー3号として救っていったハイカラシティやハイカラスクエアのエネルギー源。

 

 

「えっとね、この子は電気を生み出すから、ここの機械に入れるとほら。」

 

 

仕掛けが作動し、足場が現れる。

 

 

「ワオ! すごいや!」

 

「君達の世界のエネルギーなのかい?」

 

「あっ、うん。そうなの。でもオオデンチナマズがいなくなっても、気にしてないから周りが知っているかどうかは…」

 

「つまり君は気にしていたと。」

 

「えっ… さ、さあ? そんな気もするし、しない気もする! ってあっ、ほら見て! あたしが教えた仕掛け早速解いてるよ!」

 

 

きょどりすぎだ。

 

 

「ここの足場が消えてしまうので… ここは奥のデンチナマズをここに…できました、カービィさん!」

 

「ぽよ!」

 

 

道中のスピリットを倒し、仕掛けにより断絶されている道を繋げて、ファイターの元に辿り着いた。尚、やったのはカービィである。

 

 

「よし、いきましょう!」

 

「ぽよ!」

 

 

Wii Fit トレーナーとカービィは二人でファイター戦へ行ってしまった。

 

 

「待って…ってもう行っちゃった。独断先行はやめろってあれほど言ったのに…」

 

「やめろの三文字で済ませられる怒り方ではなかったが…」

 

「ん?」

 

「仕方ない。私達は周りの探索をしつつ、スピリットの解放に向かうとしよう。」

 

 

手付かずの奥へ向かう。そこを中心に解放を進めていくことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ファイターの解放に向かったカービィとWii Fit トレーナーの二人。

ワープした先のステージは『プリズムタワー』。カロス地方、ミアレシティの建物だ。とはいえ、ミアレシティを一望できるステージは『終点』の姿となっている。

 

 

「ぽよー!」

 

「ピチューさん!」

 

 

こねずみポケモンピチュー。ウツギ博士により発見されたピカチュウの進化前の姿。まだ電気袋の発達が不十分なピチューは、自分の使う電撃でも痺れてしまう。

そんなハンデを背負っている上にとても軽い。が、大乱闘ではそのハンデを物ともせず、本人の性格通り、とてもパワフルで、攻撃的な戦い方をしている。

 

 

『…』

 

「ぽ!」

 

 

『でんげき』の先制攻撃。ジャンプで躱す。それを見て、ピチューは素早い動きで電撃を身に纏った攻撃を放つ。動きが速くてカービィは避けることが出来なかった。

 

 

「カービィさん!」

 

 

『太陽礼拝』を撃ち、自らも彼等の元に寄る。

 

 

『…』

 

 

すると、ピチューは追ってくると予想していたのか、自ら、Wii Fit トレーナーへ向かってくる。

 

 

「ぽよ!」

 

 

先制攻撃を受けたカービィもピチューの元へ向かう。これでは挟み撃ちだ。

 

 

『…』

 

 

だが、このピチューは挟み撃ち程度で臆するほど臆病ではないのだ。『太陽礼拝』はジャストガードで防御し、寄ってきた二人をまとめて、電撃を纏う体を回転する攻撃に巻き込んでしまった。

 

 

「ぽう…!」

 

「きゃあ…!」

 

 

少し飛ばされ、必然的にピチューと距離を取る形になった。しかし、二人のダメージ量は違う。次にピチューが攻撃を続けるとしたら、ターゲットは、ピチューに近い相手は、ダメージ量が少ない者は。

 

 

「やああ…!」

 

 

当然Wii Fit トレーナーだ。ダッシュで勢いをつけてからの頭をぶつけるたいあたり。そこから浮き上がったWii Fit トレーナーを尻尾で追撃を始める。

 

 

「やあ! えい!」

 

 

カービィの『ファイナルカッター』の斬撃がピチューを襲う。カービィの唯一の遠距離技である。Wii Fit トレーナーはピチューの蓮撃から抜け出すことに成功し、カービィの後衛に回る。

 

 

「助かりました… ピチューさん素早くて隙もないです。どうしましょう…」

 

「ぽよっ!」

 

 

誇らしげな顔で、胸らしき場所を手で叩くカービィ。

 

 

「任せて、ということでしょうか?」

 

「ぱゆ!」

 

「わかりました! 私がサポートしますね!」

 

「ぽよーい!」

 

 

カービィが前に出る。そんなカービィに向かってピチューは『ロケットずつき』で突進するも、カービィはシールドでガードした。

 

 

「ぷっ!」

 

『…っ!」

 

 

目の前で失速したピチューを掴み、三つ程打撃をいれ、ピチューの上に回り、何度も踏みつける。

 

 

「ていっ!」

 

 

カービィから離れたピチューを『ヘディング』で打ち出されたボールで狙う。

 

 

『…っ』

 

 

この攻撃は空中で体を捻ることで回避したが、そこを狙ってカービィに吸い込まれる。

ゴクンと飲み込んだカービィの頭には、ピチューの頭を模した帽子が被ってあった。

 

 

「ぴーちゅ!」

 

 

ピチューの『でんげき』をコピーしたカービィ。ピチューをコピーしたため、自分では制御できない程の電圧がカービィを苦しめるが、カービィに足りない遠距離攻撃が出来るのは有難い。

 

 

『ピ…』

 

 

ならば、と言わんばかりにピチューも本家オリジナルの『でんげき』を撃つ。威力は互角。相殺されていてどちらにも届いていない。

 

 

「カービィさん! 離れて!」

 

 

この声を受け、カービィがジャンプして離脱すると、最大火力の『太陽礼拝』がピチューを襲う。

 

 

「ぽよっ。」

 

「カービィさん、大丈夫ですか? ピチューさんをコピーした以上、電気を使えばカービィさんにもダメージが…」

 

「ぽい!」

 

 

Wii Fit トレーナーは心配する。得意不得意で前衛後衛を決めているとはいえ、前の方がダメージは集中する上に、ピチューのコピーで自らダメージをくらう。彼女はそれを心配していた。

だが、カービィは体を横にふり、大丈夫だと行動で示す。だが、彼女の心配は絶えない。

 

 

「何事もやり過ぎは良くありません。まだこれから戦いは続くのに。」

 

 

自らの為を思って、言っていることはわかった。心配をさせるのはカービィの本意ではない。でも、カービィが後衛でもやれる事はない。せめてと思い、コピーを解除し、すっぴんで戦うことにした。

 

 

「…わかりました。それで妥協しましょう。行きますよ!」

 

「ぽい!」

 

 

腰を低くした戦闘態勢のピチュー。ピチューは感情が高ぶる際、無意識に電気が漏れ出す。それが気にならない程に彼は気分が高まっており、いつ飛びかかってもおかしくない状況だ。

 

 

「ぽよっ!」

 

『…チュウ…!』

 

 

かかってこい、と言わんばかりにカービィが一声を掛けると、電撃を身に纏いながら、ピチューが飛びかかってくる。

 

 

「ぽっ…ぽよ!」

 

 

シールドを使って回避するも、ピチューはガンガン攻撃を続け、シールドの限界が迫ってきた。しかし、完全にピチューはカービィしか見えていない。

 

 

「なるほど… これが連携ですね!」

 

 

ジャンプでピチューの背後に回り、『ランジ』でピチューを埋める。カービィに集中していたピチューは避けることが出来ない。

 

 

「とおっ!」

 

 

カービィの強烈な飛び蹴りが埋まっているピチューにヒットする。あまり攻撃をくわえられていないが、自傷ダメージとピチューの軽さなら決着をつけるのに十分であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう… なんとか勝てました!」

 

 

Wii Fit トレーナーの目の前には、ピチューのフィギュアが倒れてあった。

 

 

「ぷぃ…あう…」

 

「これも上手く連携が…って、カービィさん!?」

 

 

勝負には勝ったが、少々無理をしていたカービィは座り込んでしまう。

 

 

「すみません、無理をさせてしまって…」

 

「ぽーぽ…」

 

 

顔を横にふり、気にしないでと促す。

 

 

「では… ピチューさん。」

 

 

ピチューのフィギュアの台座に触れる。光を放つと、ピチューが倒れていた。ピクンと倒れていた耳が立ち、気がついた。

 

 

「ピ…チュピ…?」

 

「ピチューさん、お加減はいかがですか?」

 

「ぽよ。」

 

 

膝を折り、出来る限り高さを合わせるWii Fit トレーナー。座り込みながらも手を上げて挨拶するカービィ。

状況が飲めていないのか辺りをキョロキョロ見回すピチュー。

 

 

「ピチュ…ピチュピ!ピチュ!」

 

 

はっとしたかと思いきや、身軽な身を生かし、ジャンプ。仕掛けを無視して奥に走っていってしまう。

 

 

「ちょっとっ!? ピチューさん!?」

 

「ぽっ!?」

 

 

Wii Fit トレーナーは呼びかけるが、暫く動けないカービィを気にしてピチューを追えない。

 

 

「ピチュ…ピッ!」

 

 

短い手足で走るピチュー。悔しかった。一方的に負けた自分が許せなかった。例えそれが一人以外の全てに勝った者だとしても。

その屈辱を原動力に変えて、屈辱を無理矢理振り払うように突き進んでいた。




オリマー「さて、みんながスピリットの解放に向かっている。安全の為に残るが、せめて仕掛けを解いておこうか。」

パックマン「コクコク」

オリマー「このデンチナマズは… いっ!」

パックマン「!」

オリマー「なんでもない。電気を抑えてくれないか?」

パックマン「…っ!」

オリマー「気性が荒い! …負けてられるか! 絶対運んでやろう!」


オリマー「次回、『その願いは』」


オリマー「…黄ピクミン三匹。最初からこうしてれば良かったな。もう黒焦げだし、なんかさっき骨見えたし。」

パックマン「…コクリ」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十二話 その願いは

22時からポケモンダイレクトです!どわすれした方はじゃんじゃんくろいきりしちゃいましょうね〜

今更ですが、ボスとファイター戦の時、多人数で戦っていた場合、実際使用したのはとどめを刺したファイターです。前回の場合はカービィですね。スピリット戦? メモっていません。

ピチューの設定置いときますねー
・ピチュー
性別♂。いじっぱりな性格。からいものが好き。ピカチュウとは兄弟のように仲がいい。見た目通りの扱いをされるのが嫌いで、負けず嫌い。


『いや〜、助かったよ。流石スーパースター!』

 

「ボクだからね! 当然さ!」

 

 

ピチューの解放に向かった二人以外は、奥でスピリットの救出に手を出していた。

 

スターフォックスの一人であるスリッピーを救出したマリオ。その対戦の内容は、フォックスのボディに戦わせ、スリッピーが宿っていたゲッコウガのボディが逃げ回るという情けない物であったが、残念ながらそれを気にする者はここに居なかった。

 

 

『あれ? あの子…』

 

「ん?」

 

 

先にスリッピーが気づき、その声に反応してマリオも気がついた。全速力で走る黄色い影。あの姿は。

 

 

「ピチュー!? そうか、カービィ達が… 待って、どこに行くんだ!?」

 

 

マリオの呼びかけにも反応せず、ピチューは走っていってしまう。

 

 

「急がなきゃ!」

 

『待って! おいらを忘れちゃやだよ〜!』

 

 

ピチューを追って走り出すマリオを追うスリッピー。何がピチューをここまでさせるのか。それを今知っている者はいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別のステージ。別の時間。ファイターの一人、仮面の騎士メタナイトの所蔵する『戦艦ハルバード』。亜空の一件でも物語の核を担った戦艦のイメージで作られたステージだ。

 

『シャトルループ』をシールドでガード。防がれた相手はマントを蝙蝠のような翼に変えて後ろへ引いた。

 

 

「おそらくは… カービィ達の関係者だろうか。今は勝つだけだ。」

 

 

誰かを宿したしずえのボディと護衛のように立ち回るメタル化しているメタナイトの体。

それらに立ち向かうのはマルスだ。亜空の件において、いきなりメタナイトがあの戦艦ハルバードに向けて飛び去った時はびっくりしたが、船首が彼の仮面に酷似していたので、彼の所有物なのはすぐにわかった。

 

 

「たあっ!」

 

『…』

 

 

振るってきたギャラクシアをファルシオンで受け流す。しかし、この戦いは二対一だ。

 

 

「あぶないっ…!」

 

『…』

 

 

しずえの体を借りた者から『パチンコ』の玉が飛んでくる。咄嗟に左腕でガードし、目に当たることはなかったものの、ダメージは入っている。

 

 

「(わかっていたけど… 容赦無しだね。)」

 

 

この世界でなら、当たりどころが悪くても失明はしないだろうが、戦いにおいて目の不調は大きな弱点となる。積極的に狙ってくるというならば、尚更油断できないだろう。自身の隙は最小限に行け。

 

 

キィィンと音が鳴り、神剣と宝剣が重なる。空いている左手でメタナイトの体を掴み、援護に向かっていたもう一人に飛んでいくように切り上げた。

 

 

「まだだ!」

 

 

メタル化して動きが鈍い上に、もう一人もその下に潰されているのですぐに動けない。その二人に向かってダッシュで近寄り、斬りつける。

今までに与えたダメージよりも、まだメタル化の恩恵が大きい。銀の輝きを持つ相手にジャンプしながら斬りつけると、丁度ハッチが開き、ハルバードが飛び立とうとする時であった。

 

 

「…っ」

 

 

夕日に照らされ、相手の体を反射して眩しく感じる。マルスは目を細めた。しずえの体をした者が転びながらも植木鉢をぶん投げてくる。

 

 

「おっと…」

 

『…』

 

 

体を捻って回避する。転んだ相手に力強く剣を振るう。ダメージは少ないが故に飛ばなくても、スマッシュ攻撃は大きなダメージとなる。

 

 

「!」

 

『…』

 

 

もう一人が『マッハトルネイド』で攻撃しようとするのをマルスは確認した。剣を構えて『カウンター』の構えをする。回転して襲ってくる剣を体全体で受け流し、流れのままに斬りつけた。

 

 

「わっ…! うわっ!」

 

 

メタル化した相手を飛ばすと、自分の服に何かが引っかかり、妙な浮遊感を感じた。最初はそれが何かわからなかったが、すぐにそれが『つりざお』であることに気づいた。

釣られて相手の近くに寄せられたマルスは、相手に地面に叩きつけられて釣り針から解放される。

 

 

「たあっ! やはり数が多いと苦戦する…」

 

 

転んでもただでは起きぬ。下に存在することになった相手に一発攻撃すると、後ろに跳んで距離をとった。

 

その時、浮いていた足場がハルバードに着陸する。ステージが広くなるのは有難い。

 

 

「そろそろ一人墜としたいところだが…」

 

 

ボンボンを持って回転する攻撃を『カウンター』で飛ばす。狙いは鉄となったメタナイトのボディだ。

 

 

『…』

 

「いくよ…!」

 

 

『マーベラスコンビネーション』だ。一つ斬りつけ、二つ三つ。フィニッシュは決まっている。メタル化した相手は吹っ飛ばされにくい代わりに体が重いのだ。足元を狙って連続突きだ。残念ながらこれは全てシールドで防がれ、キキィと嫌な音を立てる。

 

 

「ならばこれでどうだ!」

 

 

右半身を引いて『シールドブレイカー』。散々削れていたシールドが限界を迎えた。パチンと相手は弾かれ目眩を起こして暫く動けそうにない。

 

 

「よし!」

 

 

冷静に場外に向けての斬りつけ。もう防げない。斬り出され、一閃の光となって飛んでいき、永久にこの乱闘に干渉する権利を失った。

 

 

「…これで後一人だ。」

 

『…』

 

 

残るはしずえの姿をしたスピリット。仲間が倒れているというのに、その表情はピクリとも動かない。

 

 

恐る恐る近づくマルスに対して相手は後ろに下がっているので、距離が縮まない。

緊迫感の漂う中、突如重い爆音が響く。

 

 

「…!? がっ…!」

 

『…』

 

 

ハルバードの二連主砲の大砲が発射された音だった。黒い砲丸に気を取られ、集中力が切れてしまったところを思いっきり傘で叩かれた。ハルバードを見たことがあっても、発射音をまじまじと聞いたことはないらしい。あの静けさの中なので、余計に驚いたようだ。

 

神剣を薙ぎ、相手を退かせる。退き様にも、『パチンコ』が飛んでくるが、これはシールドで防いだ。

 

 

「たああ!」

 

 

走りながらの斬り込みは躱された。だが、目的はそこではない。空いている左手で相手を掴むことに成功した。膝をぶつけてダメージを稼ぐ。そんな中、変な機械音がマルスの耳に届いた。

 

 

「(…! この音… 大砲の射線を予想すると…)」

 

 

マルスは投げない。自分の投げ技よりも、もっと強い攻撃があるからだ。

 

二連主砲のレーザー砲から、青白いレーザーが相手の体を射抜く。

 

 

「危ないっ!」

 

 

無意識に声に出しながら、手を離して後ろへジャンプした。レーザーが収縮された時、ステージ上に相手の姿はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう…」

 

『…あらあら、大丈夫でしょうか?』

 

 

溶けたしずえのボディからはピンク色の髪をした女性のスピリットが現れた。青い瞳とかぶったヘルメットのような機械が印象的だった。

 

 

「…ええ。問題ありません。あなたこそお怪我はありませんか? 手加減は出来ませんでした。」

 

『なんともありませんわ。あら私ったら名前も言わずに… スージーと申します。』

 

「マルスです。」

 

 

名前をを教えあっていると、走っている足音が聞こえる。

 

 

「マルス〜!居た!」

 

「ぽよぉ!すーじー!」

 

『カー…ピンクの原住民!?あんたどうしてここに…』

 

 

マリオ、カービィ、オリマー、パックマン、Wii Fit トレーナー、インクリング。マルス以外のファイターから呼びかけられた。不思議なことにカービィとWii Fit トレーナーが解放した筈の誰かがいない。

 

 

「すまない、再開を喜んでいる場合じゃないんだ! ピチューが独断で奥に!」

 

「ピチュー!? どうしてピチューが…」

 

 

どうしてピチューが出てくるのかわからないマルス。戦い疲れた所では、頭も回らない。

 

 

「私とカービィさんでピチューさんを助けたのですが… フィギュア化を解除した途端奥に行ってしまって…!」

 

「なんだって!?」

 

 

自分達の手の届かぬ所でフィギュアにされてしまったらどうなるかわかったものではない。ジェフとの乱闘の時のカービィやオリマーは、マリオが勝ち残ったから無事だったのだ。ピチューがフィギュアになってしまったら、乱闘自体に負けてしまったら。無事でいられる保証はない。

 

 

「先に行ってくれ! 後から向かう!」

 

「りょーかい! 先行ってるね!」

 

 

デンチナマズを動かし、足場を変えて進む。

 

 

「(頼む…! はやまらないでくれ!)」

 

 

マルスの必死の願い。その願いは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピ…チュ…!」

 

『…』

 

 

より強大な電撃により打ち砕かれていた。




インクリング「やめて! オオデンチナマズの電撃でステージ上が通電したら、乱闘中のピチューまで痺れてしまう!」

インクリング「お願い、死なないでピチュー! あんたが今ここで倒れたらマリオやマルスの願いはどうなっちゃうの!?」

インクリング「ダメージはまだ溜まっていない。ここを耐えればオオデンチナマズに勝てるんだから!」


インクリング「次回、ピチュー 死す…じゃない、『悔しくない筈ないのに』!」


インクリング「デュエルスタンバイ!」

マリオ「ねえ! フラグ立てるのワザとなの!?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十三話 悔しくない筈ないのに

軽めのダイレクトでしたね。まさかガラルでもリージョンフォルムを使うとは予想外。これドガース族とジグザグマ族は普通の姿も内定と考えていいのかな?
御三家の進化と新ブイズを期待してましたが、まだ焦らされるようです。


「みんな!」

 

 

遅れていたマルスが合流した。他のファイターは各々心配そうに、一つのスピリットを見つめている。

 

 

「既にピチューはここにはいなかった。これ以上奥はない。間違いなく、ピチューは今ここで乱闘中だ。」

 

「途中で乱入出来るか試しましたが… 出来ませんでした…」

 

 

その中で慌ててて、今一番落ち着きがない者がいた。

 

 

「インクリング? もしかしてこのスピリットとは知り合いなのかい?」

 

「あっ… えっと知り合いというのもちょっと違うけど、知ってるよ。」

 

 

話しながらも落ち着かず、あっちこっちを行ったり来たりしている。

 

 

「オオデンチナマズ。みんなで見てきたデンチナマズよりずっとずっと大きくて、その分電力も大きいの。ハイカラシティの電力の殆どを維持しているもん。」

 

「…強いのか?」

 

「…わかんない。戦ってるとこ見たことないし。」

 

 

そう思いながら、インクリングは真っ直ぐにスピリットを見つめる。一種のもどかしさを感じながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピ…チュ…!」

 

『…』

 

 

緑色のバンダナを巻いた巨大なピカチュウのボディ。おまけと言わんばかりに『終点』化された『プリズムタワー』のステージには電気が走っていた。『でんげき』を当てて、着地したピチューをより強力な電撃が襲う。

 

 

「ピ…ピチュー!」

 

 

『かみなり』を落とすが、相手には当たらない。その後にくりだした『ロケットずつき』は当たったが、着地時に痺れてしまう。

 

 

「ピッ…!」

 

『…!』

 

 

相手は、ピチューと違って痺れやしない。相手が用意したフィールドだから当然だ。相当力を込めた一撃が小鼠を襲った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈍い音がなり、ピチューのフィギュアが現れる。スピリットは依然としてそこにあった。

 

 

「ああっ! ピチュー!」

 

「負けてしまったか…」

 

 

オリマーが近寄り、台座に触れて解除する。周りの様子を見て、負けてしまったのだと悟り、ピチューはギリッ…と歯ぎしりをした。

 

 

「大丈夫だったかい? ダメじゃないか、一人で行っちゃ。」

 

「ピ…」

 

 

ふんっとマリオから顔を背ける。

 

 

「ぴちゅー…」

 

「問題ありませんよ。最悪な状況にはなっていません。」

 

 

パックマンも心配そうにピチューを覗き込んでいる。

 

 

「キーラの手も届かないようでなによりだ。だが、妙に動きがないね。」

 

「あの時、私達を襲った光… あれが簡単に何発も撃てるとは思いたくないです…」

 

「あの光線は… キーラ自身もあまり連発できないかもしれないな。」

 

 

オリマーの言葉に納得したファイター達。ピチューの体から小さくバチバチと音が鳴っていることに気づく者はいなかった。

 

 

「そうだね、あの技を受けたら勝てない。これからはそれなりにスピードも意識して…」

 

 

あの技を受けたら勝てない。

『勝てない』? 『勝てない』…!

 

 

「チュウゥゥゥ!」

 

「いっ…! ピチュー!?」

 

 

マルスの言葉に過剰な程に反応したピチューはマルスに電撃を放った。そして、飛び出して再びスピリットに触れた。というか叩いた。周りの制止の言葉など聞こえない。勝てない訳があるものか。目の前の相手にも、キーラにも…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を開き、ワープしたと認識した瞬間、ピチューの体に電流が走った。

 

 

「ピチュウゥゥ!」

 

 

相手は同じ、緑のバンダナを巻いた大きなピカチュウのボディ。ステージも同じ、『終点』化された『プリズムタワー』。ピチューの動機もまた同じ。

 

 

「ピーチュッ!」

 

『…』

 

 

飛び上がって『でんげき』だ。しかし、それは相手のより強力な『でんげき』にかき消されてしまう。

 

 

「ピッ…」

 

 

ならば、空中戦を占めてやる。自慢のスピードと軽さならば、空中戦はこちらに分がある。着地時にまたもや電流が走るが、そんなことを気にしてられない。

 

 

「ピチュ!」

 

 

体全体を回転させ、思いっきり短い尻尾をぶつける。だが、巨大になっていることもあり、ダメージが通っているはずなのにそう思えないのだ。

 

 

『…!』

 

「チュッ…!」

 

 

相手の只の『ずつき』だけでピチューはそれなりにぶっ飛ばされた。重力に叩きつけられ、また電撃が襲う。

 

 

「チュウゥ…!」

 

 

散々に押され気味で、熱くなった頭では冷静な思考もできやしない。空中で勢いをためて、『ロケットずつき』をするも、相手には回避され、その着地でまたステージ上の電撃を受けた。

 

 

「チュ…!」

 

 

辛い、苦しい。ピチューの持てる限りの技の何をしたって勝てるビジョンが全く見えない。どうすればいいか。どうするべきだ?

 

違う。この状況の解決策をこの場にいない者に聞いたってどうにもならない。どうすることも出来ない。

 

 

「ピィッ…!」

 

 

思いっきり電気を貯めて放とうとした。その前にステージに設置されている電流がピチューを襲った。

 

 

「ピッチュ!」

 

 

『でんげきスクリュー』で相手を叩き落とそうとした。相手は落ちずに『でんこうせっか』で返り討ちにされた。

 

 

「ピチュー…!」

 

 

『かみなり』の強力な攻撃で吹っ飛ばそうとした。シールドで防がれ、より強力な電撃を受けた。

 

 

『…!』

 

「ピチュッ!」

 

 

空中に飛ばされる。

 

 

「チュ…ピ…」

 

 

ピチューの戦意は完全に喪失していた。それでも威嚇と戦うのをやめないのはただの意地でプライドだった。

 

万策尽きた。ステージの電撃の対処法も無ければ、今のピチューの能力では敵いっこない。電撃を纏って跳んでくる相手がスローモーションに見える。やるならさっさとやれ。情けをかけるな、早くひんしにしてみろ。一瞬がとても長く感じて、ピチューのプライドは粉々に砕け散った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先程と同じように、ピチューのフィギュアはそこに倒れた。スピリットがいることだって、何も変わっていない。

 

 

「ピチュー…」

 

 

まだ少し痺れのある体で、マルスはピチューのフィギュアを持ち上げる。

 

 

「…行こう、ここで元に戻したらピチューはきっとまた挑戦する。」

 

「え…でもオオデンチナマズのことは」

 

「…ごめん、インクリング。君の知り合いを後回しにすることになる。」

 

「…ならせめてあたしが行くよ!」

 

「…ピチューの気持ちも汲んでやってほしい。僕が言えることじゃないけどね…」

 

 

かといって、マルスが地雷を踏んだ事に関しては彼に非はない。ピチューの闘争心を湧かせるのはあれで充分だっただけ。ピチューが曲解し過ぎなのだ。今のマルスにそう考えつくかは別なのだが。

 

気遣ってパックマンが仕掛けを解いてくれている。その優しさが今は辛かった。

 

 

 

 

『なんじゃ、またお主らか…ってヌオッ!? 3号!?』

 

「しぃぃぃぃっっっ! あたしが3号なのは、みんなには秘密なの!」

 

『ワワッ! わかったわかった!」

 

 

インクリングのあまりの迫力にアタリメ司令は黙るしかなかった。

今この世界でゆっくり休める場所と言えばアタリメ司令のいる道場しかない。

 

 

「お邪魔するよー」

 

「また…すみません。」

 

「誰ですか、あの人?」

 

 

また続々と入ってくるファイター達。Wii Fit トレーナーとは、完全に初対面である。

 

 

「…」

 

 

マルスはそっとピチューのフィギュアを床に下ろす。少し、見つめた後、黄金色の台座に触れた。

 

 

「ピッ…」

 

 

光り輝き、ピチューは元の姿に戻る。周りの風景が変化していることに驚くが、うつ伏せになったまま顔を床で隠して俯いてしまった。

 

 

「…ピチュー。聞いてほしい。」

 

 

マルスが話を始める。ピチューは反応しなかった。

 

 

「さっきの軽率な言葉を許してほしい。そして、半ば強引な手口であの場から離脱させてしまったことも詫びる。」

 

「で、でも、あれはマルスが状況を考えた上での発言で…もがもが」

 

「インクリング、ストップだ。ここはマルスに任せよう。」

 

 

オリマーがインクリングの口を塞ぐ。

 

 

「ピチュ…ピ」

 

 

この時以上に自らの言葉が人に届かないことを悔やんだことはない。マルスは続ける。

 

 

「安全が、危険だって… 君の気持ちを蔑ろにしていたんだ。悔しくない筈ないのに。」

 

 

そうだよ。その通り。でも、自己中に動いて心配させたのはこっちだ。

戦いから離れ、ピチューの思考も冷静になってきた。

 

 

「ピチュ…」

 

「本当に申し訳なかった。許されなくても仕方ない。」

 

 

違う。それは許すどころか、そもそも怒る資格は自分に無かったのだ。マルスは例えの話をしただけなのに。

 

 

「でも、僕達と一緒に来てほしい。僕のことは嫌っていても構わないから…」

 

「ピ…!?」

 

 

嫌うだって? そんな馬鹿な。嫌われることはあっても嫌う資格はないのに。そもそも自分は理不尽に放った電撃のことをまだ謝っていない。わかっていても、身振り手振りで伝えられる程ピチューは器用じゃない。

 

 

「…お邪魔しました。みんな行こう。燻っている暇はない。」

 

 

誰かを追っていた何時も以上に背中が小さくなるのが早く感じる。短い手足で追いかける。一言謝らなければならないのに、ピチューの内情を示すかのように萎縮して距離は縮まなかった。




インクリング「ヒーローの3号っていうのはね、New!カラストンビ隊の隊員の三人目。だから3号なんだよ!」

カービィ「しゃんごー?」

インクリング「3号だよ! さ、ん、ご、う!」

カービィ「おこめー!」

インクリング「3合じゃなあ〜い!」


インクリング「次回、『お互い自己中なんだよ』!」


インクリング「まあ、3号というだけあって、2号、1号も居てね」

カービィ「ぽょ…」

インクリング「お米減ってるんじゃないから!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十四話 お互い自己中なんだよ

オオデンチナマズ戦、実際のプレイでは電気床無効のスピリットはつけていましたが、横スマのリーチに完敗しております。さらに言えば、ピチュー戦では最初フィットレを使っていましたが、ボコボコにされてカービィに切り替えています。作者の腕がはっきりわかるね。


光で出来たキーボードの上を指が軽やかに打ち付ける。ハッキングに取り組んでいるのは、マルス。いや、彼の物より薄い水色の目をする彼女は秘書スージーだ。かつてはポップスターをキカイ化しようとしたハルトマンワークカンパニーの秘書。故にこの程度のセキュリティは意味を成さない。

 

最後のキーを打ち込むと、画面にはUNLOCKと表示され、堅固な扉が開かれた。それを確認すると、スージーはマルスの体から抜け出した。

 

 

『…これでいいでしょ? カー…ピンクの原住民。』

 

「すーじー! あいがとっ!」

 

「ああ、助かった。スネークやサムスを先に見つけなければいけないと思っていたからな。」

 

「まあ、多くの世界の人々がスピリットとなっていますから、中にはこういう方もいるでしょう。カービィさんのお知り合いにいたのは予想外でしたが。」

 

「ボクもボクも! こういうのポップスターには無いと思ってた。」

 

 

彼女の技術は別の星から持ち込まれた物なので、マリオ達の思い込みは間違っていない。

 

 

「…プィ」

 

「…」

 

 

後ろで歩いていたピチューだけ会話に入らず、そっと顔を背けたのをただ一人が気づいていた。

 

分かれ道の片方にいたスピリットを退け、前方が開かれると、ファイターが一人いるのを見つけた。ちなみにそのスピリットは解放するや否や、どこかに飛んで行った。薄情な奴である。

 

 

「おっと、誰かいるね。」

 

 

続けて、誰なのかわかる人! とマリオは声を上げる。各々反応を見るが、手を上げるような者はいない。

 

 

「う〜ん、誰もわかんないか〜」

 

「仕方あるまい、誰が戦うかだが…」

 

 

ピッと短い手を挙げる。頭が大きいので、手では高さを稼げていなかった。

 

 

「ピチューさんですか? でも先程の疲れが…」

 

「…いいよ、行っておいで」

 

「マルスさん!?」

 

 

驚いてマルスの方を見るWii Fit トレーナー。先程のことがあって、それでもピチューを乱闘にかりたたせるのか。

 

 

「…そうだ。僕はさっきまでは安全重視だった。でも気づいたんだ。」

 

 

マルスは一つ区切って言葉を続ける。まるで、独り言のように小さく呟く。Wii Fit トレーナーの制止は今のピチューには効かない。

 

 

「ピチューさん!」

 

「ピチューは…ここまで心配されなければならない程弱くはないんだ。」

 

 

ピチューがワープした。もう、彼らは大乱闘が終わるまでこの戦いに干渉する術はない。

 

 

「………」

 

 

マルスはピチューがいた場所を見つめていた。ピチューが一番嫌いなことは、見た目通りの扱いを受けることだった。手加減も弱者扱いされるのも嫌であった。

 

 

「(忘れていたらしい… ダメだな、僕は。)」

 

 

自重気味に笑う。自意識過剰のつもりはないが、ルキナやクロムから英雄王と言われ、少し調子に乗っていたのかもしれない。

 

マルスの左肩をポンポンと叩く。振り向くと慌てた顔のパックマンがいた。

 

 

「どうしたの?」

 

 

周りを手で差しぐるりと回し、そこから腕でバツマークをつくる。そして囚われているファイターの方角に手をやった。

 

 

「…?」

 

 

彼の手が動かすがままに周りを見渡し、ファイターを見渡し… 一人足りない。インクリングだ。

 

 

「インクリング!? インクリング!」

 

「あれっ? ホントだ、いない!?」

 

 

パックマンが囚われているファイターの方角を指していたことを思い出し、全てを理解した。

 

 

「まさか…」

 

 

やはり、自分は何も見えていない。ピチューは悔しかったのだろう。

ではもう一人。あの強力なスピリットの知り合いと言った彼女は何を思ったのか。どう思っていたのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは『ワイリー基地』。ロックマンの宿敵であるDr.ワイリーの根城だ。ここで最後の守りとして、Dr.ワイリーは手下達をどんどんとロックマンにぶつけてくる。元々地形がシンプルなので、変わりないように見えるが、ここも『終点』化されているのだろう。

 

 

「…! チュウゥゥゥ…」

 

 

相手を確認する。ロックマンだ。この世の平和のために自ら戦いに身を投じたロボットだ。ロボットに似つかわぬ子供のような精神は鳴りを潜め、無機質にファイター達に襲いかかる。

 

 

『メタルブレード』がピチューに飛んでいく。ジャンプで躱そうかと思った時、鉄の刃はおもちゃのような銃に弾かれた。

 

 

「ピッ…!?」

 

「もー、随分仏頂面になっちゃったねー。ほら、スマイルスマイル!」

 

 

インクリングだ。こっそりとこの乱闘に参加していたのか。

 

 

「…ッ! ピチューピッ!ピチュピチュ!」

 

 

電撃を漏れ出しながら、インクリングに抗議する。

 

 

「あははっ、ゴメンね。でも、あたしも悔しかったのよ。」

 

 

ピチューのことを考えていたマルスに従ってあの場は離れた。でもオオデンチナマズのことを考えるなら無理にでも戦うべきだったのかもしれない。マルスのことを自分への言い訳に使っていたのだ。彼女が悔しかったのはオオデンチナマズを解放できなかったことではない。自分のエゴで動かなかったことだ。

 

 

「あたしはね、どうしても守らなきゃいけない秘密があるんだ。あそこで戦うことでその秘密がバレるんじゃないかって不安になってぇ…!」

 

 

そんなことは御構い無しと言わんばかりにロックマンは『フレイムソード』で攻撃する。間一髪シールドが間に合った。

 

 

「話してる途中でしょっ!」

 

 

『スプラシューター』から放たれたインクがカス当たりした。足のつま先を少しだけ染めた。

 

 

「ふう… まあ、言い訳って訳じゃないけどね。でも戦うべきだったって思うよ。その秘密って別にオオデンチナマズには関係ないし。」

 

「… ピッ…!」

 

 

ダッシュで近づいていたロックマンを『でんげき』で牽制する。跳んで回避したところをインクリングの投げた『スプラッシュボム』が直撃した。

 

 

「だーかーらー! 話の途中だってさっきから…!」

 

 

いつのまについていたのか。インクリングの身体には『クラッシュボム』が貼り付いていた。ピチューは気づいていない。

 

 

「ヤバイッ!」

 

 

ピチューと距離を置き、爆発に巻き込まれないようにする。急に離れたインクリングにピチューが少しあっけな顔をしていたのを見た次の瞬間、身体から爆風が放たれた。

 

 

「いったー…」

 

「ピチュッピ!」

 

「んー、平気平気。なんともなーい! それでさ、なんか親近感湧いちゃってさ、お互い自己中なんだよ。あたし達。」

 

 

ピチューの心配していた顔は曇った表情になった。自己中。そうだろう。その通り。マルス達の制止も聞かずに飛び出していってしまったのだから。

 

 

「ピチューはオオデンチナマズにリベンジしたい。あたしは助けたい。いつになるかはわかんないけど二人で戦おう。それでいいんじゃないかな?」

 

「ピッ…」

 

 

ピチューは何かを考えるように一度俯いて。そして、インクリングと隣り合って並び立つ。

 

 

「(それまでには絶対ヒーローコス見つけてやる!)」

 

 

ピチューがいつもの好戦的な顔をすると、インクリングも新たな決意を固める。

 

 

「あっ、マルスには後でちゃーんと謝ること!いいね!」

 

「ピチュ!」

 

「んじゃ、待たせたねロックマン!」

 

 

スプラシューターを構えて、銃口を相手に向ける。それは改めて開戦の合図となった。

 

 

ピチューがジャンプで跳びだす。ロックマンの狙いはインクリングだ。『リーフシールド』を展開し、インクリングに向けて発射する。

 

 

「シールドにはシールドだよっ!」

 

 

シールドで己の身を守る。その後のロックマンにはピチューが襲いかかった。『フレイムバーナー』の炎を『こうそくいどう』で避け切る。自分の背後に回り込んだピチューを狙い、『チャージショット』を撃とうとする。

 

 

『…っ!』

 

「背後がお留守だよー!」

 

 

『スプラローラー』で轢かれて地面に埋まるロックマンに『スプラシューター』の橙色の弾丸を撃つインクリング。

 

 

「ピチュー!」

 

『っ!』

 

 

そしてピチューの『かみなり』をモロにくらうロックマン。飛ばされても、まだピチューは空中での攻撃を続ける。自らの身体に電撃を纏って攻撃し、さらにドリルのように体を回転させ、地面にロックマンを叩きつけた。

 

 

『…うっ…!』

 

 

決して長くない攻防であったが、ロックマンのダメージは溜まっていた。よく考えれば必然だ。

 

自らも傷つけてしまうほどに強力な電撃を使うピチュー。

インクの効果により相手へのダメージを増やすインクリング。

 

攻撃力とデバフが合わさり、とても強力なアタッカーコンビ。

 

 

「ピー…チュッ!」

 

 

『ロケットずつき』だ。これはロックマンは回避で対処した。

 

 

「はいっ! いい物あげる!」

 

『!』

 

 

ロックマンのいる所に『スプラッシュボム』を投げてきた。ロックマンは即座に近くのピチューとは逆の方に回避する。だが、もうピチューは相手の隙を見逃さない。

 

 

「ピーチューー!」

 

 

ロックマンのいる方に動いて『かみなり』を落とす。乱闘を終わらせる強力な電撃であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやったー! コレはショート間違いなしでしょ!」

 

「やめなさい…」

 

「いったっ!」

 

 

ステージにいるつもりで放った言葉だが、タイミング悪く、他のファイター達に聞かれた。オリマーが軽く頭を叩いて諌め、インクリングはオーバーリアクションで頭を抱えた。涙目になっていそうな顔からピチューを見ると、手を肩ぐらいの高さに挙げる。理解したピチューは跳び上がってハイタッチした。

 

 

「ピッチュ!」

 

「イエイ!」

 

「あ、そうそう…」

 

 

ピチューを連れて、一歩引いた位置から俯いていたマルスに近寄る。

 

 

「マルスー、ピチューが電撃くらわせちゃったこと謝りたいって。」

 

「ピチューピチュ…」

 

「………」

 

 

マルスは反応しない。俯いたままだ。

 

 

「マルス? おーい、マールースー?」

 

「…えっ…!? ごめん、何の話だった?」

 

「もー、ピチューがビリビリやっちゃったこと謝りたいって話!」

 

「ああ、その話か、気にしてないよ。大丈夫だ。」

 

「だって! よかったね、ピチュー!」

 

「ピチュ!」

 

 

弾けた笑顔が浮かぶ。一人と一匹は笑いあった。

 

 

「あ、ロックマンほったらかしだ! 行こ!」

 

「ピー!」

 

 

ピチューを伴ってインクリングは行ってしまう。

 

 

「(気にしてない… そう、気にしてないんだ。何もかも…)」

 

 

気づかなければいけないことも気にしていない。気づいていない。見えていない… こんな時、どうすればいいのだろうか。でも、マルスは誰かに何かを聞けるような立場じゃなかった。




マリオ「唐突だけどこの小説、だんだんと趣旨から外れてない?」

オリマー「そ、そうか?」

マリオ「初プレイを小説風って言ってるのに、複数人乱闘とか、成長描写とかやられても困ると思うんだよなー」

マリオ「ま、いっか。作者は自己満足で書いているようなものだし。」

オリマー「そ、そうか…」


マリオ「次回『連携で行こう』」


オリマー「ところで小説とか作者って何の話だ?」

マリオ「それは画面の前のみんなはわかってるから問題ないよ!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十五話 連携で行こう

ピコーン♪
テロテロテロテロタタッタッターンタタッタッタターン
パラッパンパララパラッパパラパラパラララン♪
パラッパンパララパラッパパラパラパラララン♪
パラッパンパララパラッパンパラッパン
っっっタン♪













0% 0% 0%
/ドン☆\



注:太字機能を使ってみたかっただけです。


「わああ…! ここもひろーい!」

 

「ピー!」

 

「やはり外観と広さが一致しない気がするのだが…」

 

「走るならば前を見て! 擦り傷からもばい菌は入りますよ!」

 

「キミの目指す健康とベクトル違うよね?」

 

 

ファイター達は、基地のエリア内に乗り込んでいる。仲良くなったピチューと共に一番前で乗り込むインクリング。その後に続くカービィ、パックマンの球体コンビ。注意するWii Fit トレーナーに突っ込むマリオ。やはりの異質さを感じるオリマー。最後尾で何かを考えているマルス。そして。

 

 

「やっぱりぼくはこういう場所の方が好きかな。野原で寝転がるのも悪くないけどね。」

 

「おー、流石メカっ子。あたしはもっと派手なほうがいいー」

 

 

インクリングとピチューが助けたヒーロー、ロックマン。今までの状況を説明すると、すぐに協力してくれた。元々家庭用ロボットだったのを世界を守るために戦闘用に改造してほしいと自ら志願した程だ。平和を願う想いの強さは誰にも負けない。

 

 

「何か壁がありますね…」

 

「う〜ん… ダメだ、通れそうにないや。」

 

 

三つある道の二つを塞ぐ『2』と書かれた電子の壁。マリオが手を通してみようとするが、そこに感じるのは確かな質量。見た目通りバリケードの役割を果たしているようだ。

 

 

「前方の道を行くしかないか。」

 

「どうにか出来るものあるかな?」

 

「それはわからないが… 進む道はここしかない。」

 

 

彼らは空いていた唯一の道を進んだ。最後尾でただついてくるだけで、ぼっーとしているように見えるマルスにオリマーは話しかける。

 

 

「マルス? さっきからどうしたんだ?」

 

「…ああ、うん。何でもない。少しこのキカイというものがわからなくて上の空だった。」

 

「そうか、そんなことか。」

 

 

会話はここで途切れる。ピチューのようなあからさまな反応を見せなかったマルスの悩みには気づけなかったのだ。だが、自分の頭の中ではその悩みで埋め尽くされていた。

 

 

 

 

 

「…パックマン?」

 

「ぱっくまんー?」

 

「どんな感じ?」

 

「ピチュー?」

 

 

キーボードの真上に手を浮かばせたまま動かないパックマン。散々思考した結果、両の手を拳にして、キーボードに叩きつけた。

 

パーン!

 

 

「わああ!」

 

「ぽっ!?」

 

「ちょっと、壊しちゃうのは… ってあれ、なんか冷静… もしかして、やってみたかっただけ?」

 

 

右手で頭をかいて、ちょっと照れ笑いを浮かべた。

 

 

「あー、そういうことなんだ。まあ、壊れてはないみたいならいいの…かな?」

 

「どれどれ…この程度ならあたしでも出来そう。ちょっと貸して!」

 

「どうして中のセキュリティだけイマイチなんですか…」

 

「う〜ん、現代っ子!」

 

 

後からマリオと共に歩いてきたWii Fit トレーナーがぼやく。

 

 

「あ、ゲート開いた! 数字が連動してるんだね。」

 

「ぽよ〜!」

 

「カービィ、そっちにもあるー!?」

 

「ぽよっ!」

 

「オーケー! そっち行くー!」

 

 

インクリングは駆け出していく。後から着いたマルスは少し罪悪感のような物を感じながら見つめていた。

 

 

「しかしまあ、この世界はどうなっているのやら… 物理法則は無視されるし、まるで自然は昔からそこにあったかのようだ。」

 

「もしかしてさ、ぼく達の元の世界を切り貼りしてるのかもしれないよ。」

 

「確かに。この世界も掌握できるのなら元の世界だってどうにかなっちゃうかもね。」

 

「みんなー! ハズレ引いたらスピリットでたから手伝ってー!」

 

「ああ、今行く!」

 

 

 

 

この後も道中立ち塞がるスピリットを倒しながら進み、機械を起動させていった。そして、彼らが行ける範囲でのスピリットは一つとなった。動かせそうにないコンテナの壁の向こうには、5と書かれたゲートと、3番の機械が設置してあった。どちらもスピリットを倒さなければ行けない配置だ。

 

 

「…そういえば最初の方に何重にも壁がある道があったな。」

 

「そこが5番の機械に繋がっているのかな?」

 

「…じゃあ、僕が行ってくるよ。君達は目の前のスピリットを倒して3番の装置を動かしてくれ。」

 

「あれ? マルス、使い方わかる?」

 

「もう何回も見たから大丈夫。」

 

 

そうやってマルスは一人で元来た道を引き返していく。

 

 

「何かあったらぼく達を呼んでくれー!」

 

「ああ。わかってるさ。」

 

 

返事をしてマルスは行く。

一人になって、周りから一切の音が無くなって、ただ自分の足音だけが響く。今はともかく一人になりたかった。

 

 

「………」

 

 

自分の判断は正しかったのか。彼女達の希望を背いてまで撤退させるのは良かったのか。わからない。わからない。

 

 

「(父上… 僕はまだ人の上に立つ者として未熟でした。)」

 

 

先王ならどう動いたのだろうか。父はもういない。マルス自身、この問いを投げかけるつもりはなかった。その唯一の人はもういない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『戦艦ハルバード』はタブーがこの世界に侵攻してきた際に亜空軍に乗っ取られている。そして、ハルバード奪還の際にはある怪物が立ちふさがっていた。

 

 

『…』

『…』

 

「わわっ! アイスクライマー…じゃないんだよね。」

 

「後で聞いてたけど… もしかしてピーチ姫が戦ったディオンって奴のスピリット?」

 

 

巨大なアイスクライマーのボディ。双子でも恋人でもないらしい二人は揃いに揃って無表情だ。今回先頭となるナナのボディは『スーパースコープ』を持っている。

今回戦うのはそれなりにスピリット戦を理解できたロックマンと、先輩面したかったのか進んで参加したマリオだ。

 

 

「ワオ! くるよ!」

 

 

『スーパースコープ』は連射力を犠牲にして威力を上げる、ため射撃が可能だ。ナナの体を使う相手は溜めて、強力な射撃を放った。マリオはジャンプして足場に乗り、ロックマンは『チャージショット』を放って相殺する。

 

 

「よっ! おっと、」

 

 

その隙を突こうと、一つ『ファイアーボール』を撃って近寄り、自分の拳をくらわせようとする。だが、巨大となってる以上、リーチも伸びている木槌が振るわれ、後ろに飛び退く。

 

 

「いけー! うわ、わあ!」

 

 

前方に燃える剣を振り下ろす。『フレイムソード』だ。ヒットしたが、返しの『アイスショット』で打ち出した氷にぶつかり、木槌の追撃をくらう。

 

 

「ロックマン! とうっ」

 

 

ロックマンへの追撃を狙う相手の背後にマリオはついた。これで相手を挟む形になる。

 

 

『…』

 

「うっ…!」

 

 

対して相手は『スーパースコープ』を連射する。その厚い弾幕を中々抜け出せない。

 

 

「そこまでだ!」

 

 

飛び蹴りに掛かるマリオ。蹴りはポポのボディに当たり、ロックマンはナナのボディに『スラッシュクロー』を仕掛けた。

 

 

『…っ』

 

「まだまだ!」

 

 

二人纏めて、『マリオトルネード』に巻き込む。空中に飛ばされた所を、ナナのボディにくっつけていた『クラッシュボム』が爆発した。

 

 

『!』

 

「いっけー!」

 

 

ロックマンが追撃にかかる。叩き落とそうと、腕の銃器部分を拳にし、切り離して攻撃する『ハードナックル』。

 

 

「あっ、避けた! マリオお願い!」

 

「OK!」

 

 

ポポのボディにはヒットしたものの、決定打にはならず、もう片方には空中で回避された。ポポのボディが遅れて崖に手をかけ、同時に上がる。

 

 

「ん〜…やあ!」

 

『『…っ!』』

 

 

上体を逸らした反動で思いっきり頭突きをする。2名にヒットした衝撃で『スーパースコープ』を手放した。再びステージ外に追い込むが、空中にいたロックマンは既にステージに戻っている。

 

 

「まだまだ!」

 

「っ! マリオ!」

 

 

ステージ外からの反撃。最大ではないが、大きく溜めた射撃が、マリオを撃ち抜く。

 

 

「ああっ! うっ」

 

 

吹っ飛んだマリオを気遣いながらも、シールドを貼り、『ブリザード』を防ぐ。

 

 

「そうだっ…!よし、」

 

 

『ブリザード』の攻撃が終了したと同時に大地を蹴り出した。アームで掴み、真上に放り投げた。

 

 

「そして、こうっ!」

 

 

投げた相手に向かって、ジャンプ後の『エアシューター』。巻き上げられた竜巻は相手を巻き込み、相手の体力を削りきった。

 

 

「よし!」

 

「ロックマン! そっちポポだ!」

 

 

え、と声が溢れた刹那、つららを砕くかのような上への木槌の一撃がロックマンを襲った。

 

 

「ううっ… ラッシュ!」

 

 

頼れる相棒を呼び出す。この世界のどこにいるのやら、ステージ外から浮き上がって崖に捕まる。

 

 

「よっ…と、またそっち行ってる! そこまでだよ!」

 

 

敵の落とした『スーパースコープ』を拾い、ロックマンを狙う相手を邪魔する。だが、何発か撃ったところで、カチカチと軽い音をしながら煙を出した。

 

 

「あ、弾切れ! ここで!?」

 

「大丈夫! 間に合ってるよ!」

 

相手を足止めしていたお陰でロックマンは無事に復帰できた。投げた銃が躱されているマリオの後ろにつく。

 

 

「多分ナナの方もあとちょっとの筈!」

 

「うん! 連携で行こう!」

 

 

マリオも頷いた。マリオが足場に登る。ロックマンは下だ。敵と向かい合う。牽制の『ブリザード』はシールドで守った。

 

 

「よっ!」

 

 

相手の方に寄りながら『ロックバスター』だ。機械であるがゆえに、ロックマンは歩きながらでも狙いのブレない射撃が可能だ。『チャージショット』はその威力が災いし、溜めながら動くことはできなかったが、『ロックバスター』はそれよりも威力が低いのでこのような芸当が可能なのだ。

 

 

「さあ! これでとどめだ!」

 

『…っ!』

 

 

そして放たれる『チャージショット』。青い光弾が相手を襲う。ただし、間一髪のところで敵は回避出来た。

 

 

「まあ、でも… ボクがいるんだよね!」

 

『…!』

 

 

敵の背後に回り込んでいたマリオが『スーパーマント』で光弾を弾き飛ばす。訳も分からぬままに体力が尽きて相手は負けた。当然だ。姿形は同じでも、この体の真の姿は二人組のアイスクライマー。コンビネーションで劣るというのに勝てるわけがないのだ。




パックマン「………」

トレーナー「パックマンさん、真っ直ぐにキーボードを睨みつけてます。ここは緊張の一瞬。」

ロックマン「…実況?」

パックマン「…っ!!!」

トレーナー「おおっと、パックマンさん、両手でキーボードの端を持ち上げて…」

ロックマン「まさか…」

パックマン「〜っ!!!」

トレーナー「叩きつけたあ!」

ロックマン「やっぱり!」


トレーナー「次回、『伊達じゃない』!」


トレーナー「タピオカパーン!」

ロックマン「ねえ、キーボードクラッシャー… 壊れちゃったんだけど…」

パックマン「ガクガクブルブル」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十六話 伊達じゃない

未プレイ出身ファイターを調べて驚いたことはリヒターが闇堕ちしていたことと、2次創作でよく見るスネークの段ボール愛に女好きが割と原作通りだったことです。


「………」

 

 

もしも止めていなかったら。そんな仮定が頭に浮かんでは消えていく。フィギュアの世界だから全員無事だった。でも、もしこれが現実の世界だったら? フィギュア化の力がきえていたら? 誰を失っていたとしても後悔していただろう。

 

 

「…どうして誰も責めないんだ。」

 

 

ピチューの意向を無下にした。インクリングの知り合いを後回しにした。自分が知っている中でもこれだ。実際はもっとあるかもしれない。

 

もしも、なんて道はマルスにはない。白の道、黒の道、狭間の道。マルスにそこまでの選択の余地はない。誰が死ぬか誰が生きるかだけ。それだけがマルスの道なのだ。

 

 

「あっ…」

 

 

電子の壁が消えた。ここに来た目的を思い出す。機械を動かさなければ。だが、それは相変わらず自分の頭の中から消えなかった。

 

 

 

 

「ふう… 無事勝利です!」

 

「いえーい!トレさんナイスゥ!」

 

 

マルスが動かした機械に対応した壁が消え、先に進めるようになったファイター達。囚われているファイターの目の前に立ち塞がるようにいたスピリットを解放した。

勝利したWii Fit トレーナーをねぎらうように笑いながら跳ねるインクリングとその真似をするパックマン。

 

 

「ぽょ…?」

 

「これ、どう見ても機械なのだが… 魂?」

 

「あるって思った方が楽しいよ?」

 

 

このスピリットはどう見たって機械なのだが、魂という概念があるのだろうか。ロックマンは自分がロボットということもあり、あまり気にしていない。

 

 

「マルス…遅くないかい?」

 

「んー、たしかに。なんでだろ、わかる?」

 

「ピチュチュ。」

 

 

ピチューは首を横に振る。

 

 

「…私が行ってこよう。少し気になることもあるからな。」

 

「気になることかい?」

 

「何でもない。こちらの話だ。」

 

 

首を傾げるマリオの隣で、いいよ、と言わんばかりにサムズアップをするパックマン。それを了承と受け取った。

 

 

「では、行ってくる。」

 

「はいよ〜! それで次誰が戦う?」

 

 

オリマーは元来た道を戻っていく。その後、インクリングが目の前のファイターの話に軌道修正した。

 

 

「はーい、ぼく行くよ!」

 

「んー? でもさっきマリオと一緒に行ってなかったっけ?」

 

「大丈夫、十分休めたから!」

 

 

とはいえ、一戦しか挟んでいない。万全とは言いにくいだろうに。

 

 

「本当に大丈夫ですか? 無理のしすぎは健康によろしくありませんよ?」

 

「健康? ロックマンに?」

 

「けんこー?」

 

「ピーチュー?」

 

 

この人、天然なのか。ロボットに健康という概念があるかどうかは、本人か製作者ぐらいにしかわからないのではないか。

 

 

「ま、本人が大丈夫って言ってるなら大丈夫じゃない? いざとなったら別の人が行けばいいじゃん。」

 

「キミはお気楽過ぎないかい?」

 

「割とマリオさんもそうですよね?」

 

「強い反対意見はなかったから、ぼくが行ってくるね、じゃ!」

 

 

パックマンが手を振っているのを見届げて、フィールドへ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薄暗い空間であった。とは言え、不思議と目は通常通りに見える。それは、ロックマンがロボットである故か、それともこの世界による加護のためなのか。極寒の孤島『シャドーモセス島』。『終点』化されたこのステージは、雪が降っている。ファイター達の体温を奪う筈の寒さは、同じ理由なのか全く感じない。当然、キーラに用意されたこのフィールドの影響を眷属が受けることもなく。

 

 

「あ、スネーク。なんか久しぶりな気がするよ。いや、まだこの言葉は早いかな?」

 

『…』

 

 

伝説の英雄、不可能を可能にする男、ソリッド・スネーク。彼も例に違わずキーラの支配を受けていた。

 

 

「とおっ!」

 

 

『メタルブレード』を発射。ただ、これは普通に防がれるか躱されるかするだろう。続いて『リーフシールド』を展開し、ダッシュで近づく。

 

対してスネーク。鉄の刃はその場で回避した。近づいてくるロックマンを見て、『ロケットランチャー』を取り出し、目の前の地面に向かって撃ち放った。

 

 

「わわっ! あぶない!」

 

 

咄嗟に身を引き対処する。そして距離を置いたところで、展開していた『リーフシールド』をスネークに対して発射する。

 

 

『…』

 

 

スネークは『手榴弾』を投げる。飛び道具のぶつかり合い。勝ったのは、

 

 

「うん!」

 

 

『手榴弾』は爆破した。『リーフシールド』も威力こそ落ちたが、まだ死んではいない。そんな高性能な葉はスネークに襲いかかる。

 

 

「ていっ! やあ!」

 

 

さらに懐まで近づいて『フレイムソード』を振るった。追撃はくらったが、流石に場数が違うのか。空中に飛んだまま『リモコンミサイル』を発射した。

 

 

「えっ、うわわわっ!」

 

 

正確なコントロールでロックマンにヒットさせ、さらには『手榴弾』もおまけプレゼントだ。

 

 

「ん… ! まだくる!」

 

 

倍返しだ、と言わんばかりに懐に入り込み、足を上に開脚させて蹴り上げる。

 

 

『…!』

 

「うう、ラッシュ!」

 

 

さらに浮き上がったロックマンに、空中で上下反転して蹴るも、緊急退避したロックマンには当たらなかった。

 

 

「んー… やっぱり隙ないよね…」

 

 

ふとぼやく。英雄の名は伊達じゃない。潜入作戦がメインといっても、彼は20世紀史上最強の兵士のクローン。その戦闘能力は桁外れなのだ。

 

 

「じゃあ、こうだ!」

 

 

爆弾には爆弾を。『クラッシュボム』を発射する。スネークは体を伏せて避けた。

 

 

「まだまだ!」

 

 

走って近づき、『タップスピン』を試みる。伏せた状態ならどうしようも出来ないと感じた上での行動だ。

 

 

『…』

 

「えっ! 嘘!?」

 

 

即座に立ち上がり、シールドを展開させた。スネークを巻き込むことなく通り過ぎたロックマンは攻撃がくると察知し、無意識に距離を取る。実際、それは当たっており、爆発物を使用したのか、スネークのすぐ下の地面から黒い煙が上がっている。

 

 

「うわあ… ってまだくるよ!」

 

 

近づいてくる。これは格闘技で畳み掛けてくるのかもしれない。どちらかというと、遠距離戦の方が得意なロックマンには辛い展開だ。

 

 

「(なら…!)」

 

 

攻撃は先制させてもらおう。『スライディング』で相手の足元を崩す。足を蹴りながら通過し、思い通りスネークの体勢を崩した。

 

 

「ていっ!」

 

 

そのまま背後を斬り込む『スラッシュクロー』だ。スネークはこれを躱せはしなかったが、身を引いて退避。ロックマンの攻撃は続かなかった。

 

 

「やあ! わっ」

『…っ!』

 

 

『ロックアッパー』と『膝蹴り』が互いにぶつかる。結果としては痛み分けだが、スネークの技は吹っ飛ばすような技ではなかったので、ロックマンはすぐに地面に着地出来た。だが、スネークは上方向へぶっ飛ばされる。

 

 

「チャンス!」

 

 

ダッ、と地面を蹴った。追撃に向かうつもりだろうが、ただ単純に技を出しても避けられるだけだろう。頭をフル回転させる。どうやって決着をつけるか。

 

 

「(よし、じゃあ…!)」

 

 

スネークは宙に浮いている。ならば、と思い、軽い作戦を組み立て、実行する。

 

スネークの真下に行き、『エアーシューター』。突き上げる起動で動く竜巻を発生させた。それは避けられるだろう。だが、問題はない。この技をくらっても、場外へ追い出される。次に何が待っていようと勝負を捨てない限りは、ここを避けるしかないのだ。

 

 

「そうして… こうっ!」

 

 

両手を電極にして、頭上で電撃を放つ『スパークショック』。スネークの着地点を予測し、強烈な電撃を浴びせた。吹き飛ばされ、大乱闘の勝敗が決したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スネーク、おかえりー!」

 

「おかえりー!」

 

「おう、なんか世話になっちまったみたいだな。悪いな、手間かけて。」

 

「気にしなくたっていいよ。」

 

 

フィギュアから元の姿に戻ったスネークは、まずマリオとカービィのお出迎えに応えた。キーラに操られて戦っていたことについてはあまり気にしていないようだが、ファイター達にとってはその方が気が楽だ。

 

 

「で、状況はどうなっている? 今、お前らだけか?」

 

「今離れてるけど、マルスとオリマーもいるよ! あとちょっと探索してないところがあるから、合流してそこ行こ!」

 

「なるほどな…」

 

 

懐から煙草を取り出し、口に咥え、ライターで火をつける。

 

 

「…煙草は程々に。そして、副流煙がくるので遠くでお願いします。子供もいるのですよ。」

 

「…あっ、子供ってあたしのこと!?」

 

「まあ、今回は勘弁してくれ。ヤニが切れてると落ち着かねえんだ。」

 

 

静かに、それでいて強く注意するWii Fit トレーナーの子供扱いに、あうー、と困惑しながら続けた言葉が、

 

 

「あたし大人だからっ! どんどん吸ってくれたまえ!?」

 

「お、おう…」

 

 

大暴投した。

 

 

「よーし、では次行きましょう!」

 

「うんうん、そうだね、合流しよう!」

 

「待って二人とも! まだスネークとの話は終わってないの! 絶対わかってないのに! しっかり説明するからよく聞いてね!」

 

「歩きながら聞くぞ。」

 

「いやいや、早急にお願い! ああ、ピチューもカービィもパックマンも! ちょっとだけ! ちょっとだけでいいから話聞いてよー!」

 

 

離れたところから聞こえるインクリングの声が寂しく反響する。どうせ、都合のいい時は子供認定するのに。だが、彼女も戦士。戦うと決めたからついて行く。先に待ち受ける脅威。それはとある彼にとっては驚愕のものであった。




スネーク「なんだ、なんだ? ロボットに健康? 魂?」

ロックマン「あるよ! ロボット差別ですよ!」

スネーク「あ、いや、悪い」

ロックマン「あなたを詐欺罪と器物損壊罪で訴えます!」

スネーク「どこに詐欺と器物損壊が」

ロックマン「ちかいうちに訴えます。裁判も起こします!」

スネーク「話聞けよ!」


ロックマン「次回、『狡猾な知能を持つ機械』!」


ロックマン「貴方は犯罪者です!」

スネーク「え・ん・ざ・い・だ!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十七話 狡猾な知能を持つ機械

コンクリート色の建物の中で、マルスは思考を張り巡らせていた。色々な考えが頭の中でぐるぐる回ってすっきりしない。

 

 

「さっきから、どうしたんだ? やっぱり何か悩みがあるんだな。」

 

「…っ!? オリマー!?」

 

 

先の道からやってきたのは、マルスよりも背の低い、でもマルスよりも世界を生きているオリマーであった。

 

 

「…何でもない。気のせいだよ。」

 

「嘘だろう?」

 

 

一瞬、固まった。オリマーの返答は疑問に思うような言い方ではなく、確信していて確認のために聞いたような言い方だったからだ。

 

 

「………」

 

「君たちにはまだわからなくても、私くらいの歳になれば、見えない物も見えてくるようになる。なんとなくな。」

 

 

年の功というやつだ、まだ40だが… と自虐している言葉を続ける。

 

 

「だが、これは何となくわかる。その悩みを素直に相談出来ないのは… 君が王子という立場だからか?」

 

「えっ…?」

 

 

ふと漏らした言葉。ドンピシャだった。

 

 

「私の星の政治は王政ではなくとも、その知識はあるんだ。もっとも、本当に推測の域を超えないのだが…」

 

 

自分の倍を超える時間を生きている年長者の言葉を一字一句洩らさずに聞いているマルスがいた。

 

 

「マルスという人間でも、ここにいる以上王子の肩書きは関係ない。人も神も勇者も魔王も、別の世界にいる者は単なるファイターだ。人柄は認めていても、肩書きなんて気にしないさ。」

 

「でも、僕は…!」

 

「王子って言いたいのか? それともリーダー? では、聞くが君は故郷の世界でも王族として完璧だったと言えるかい?」

 

「…っ!?」

 

 

言い返せなかった。政治云々のことを言っているのではないとはわかった。きっとオリマーが言いたいのは、囮を使って自分の逃走作戦を組み立てていたのを阻止しようとしたり、若き兵士の身を案じて単独での逃走を図ろうとしたことだろう。だが、そのことに関しては、マルスは反論しなければならなかった。

 

 

「…だったら、死んでもよかったのか? 王子を守れれば死んでもよかったと?」

 

「違う、そういうことを言いたいじゃないんだ。私が言いたいのは」

 

「ピーチュー!」

 

「こんなところで井戸端会議してたー! 最後のとこの道が開いたの! 行こう!」

 

 

ピチューが走ってきて、その後を追ってインクリングも走ってきた。二人の手を掴んで連れて行こうとする。

 

 

「あっ…待ってくれ、インクリング。少し二人で話を」

 

「後、後! また誰か居たらどうするの?」

 

 

無邪気な子供の力というのは想像以上に強かった。抵抗も出来ずに、引っ張られて行く。

 

 

「やれやれ… 仕方ない、話は後だ。」

 

「…わかった。」

 

 

彼に習い、マルスも早々に抵抗の意思を投げ捨てた。

 

 

 

 

四人が他ファイター達と集合し、今自由に動けるファイターが集まった。

 

 

「よう、色々迷惑かけちまったみたいだな。」

 

「…スネーク。気にしなくていいよ。」

 

「うん?」

 

 

ファイター達に発破をかけていた時のマルスとは全く違う様子に怪訝に思うが、スネークには確信に至らなかった。ロックマンにも目を向けるが、彼にだってわからない。

 

全員で道を進んでいくと、少し開けた場所にでた。今までを考えると、異様な雰囲気だ。

 

 

「ぽよ〜!」

 

「広ーい!」

 

 

少しはしゃぐ、カービィとインクリング。

 

 

「君達、少しは落ち着きというものを…っ!」

 

 

ガンっと鉄の塊が落ちてくる。ファイターの大きさなど、ゆうに超えている。

 

 

「全員散らばるんだ!」

 

 

オリマーの一声に散らばって、即座に戦闘態勢を整えるファイター達。

 

鉄の塊は、変型し、人の体に近い形になっていく。二本の腕、足。その足で立ち上がったその機械はファイターを認識すると、一つ雄叫びのような大きな機械音を鳴らした。

その姿に、マルスは同様を隠しきれない。

 

 

「なっ…!? ガレオム!? 亜空軍の!?」

 

「ガレオム?」

 

「リュカとレッドが倒した筈なのに…」

 

「どう見たってコイツ機械だろう! 設計図が残っていれば再度作ることも難しいことじゃない!」

 

 

そうスネークが返す。唐突な状況の変化に対応できるのは流石ということか。

 

 

「つまりはボスってことね… よおし! あたし達がお相手よ!」

 

「ぽよっ!」

 

 

拳をインクリングとカービィは飛び跳ねて避ける。鉄の塊で殴られるようなものだ。当たったらひとたまりもない。

インクリングは肩部分に蹴りを、カービィは『ファイナルカッター』を腕と足に当てる。

 

 

「固ーい!」

 

「ぷぃ…」

 

「はああっ!」

 

 

最大まで溜めた『太陽礼拝』をヒットさせる。ガレオムを挟んで、『ロケットランチャー』も撃たれ、ガレオムと比べると、明らかに小さな爆発が起きる。

 

 

「よし、ここはボクが行くしかないね!」

 

 

マリオは炎を手に纏わせて、ガレオムの背後から近づく。『消火栓』も飛んできた。

 

ガレオムが動く。背中から、ロケットのような物が飛んでくる。

 

 

「ミサイルか!」

 

「不味い! 離れなきゃ!」

 

「待った! 近くにいた方がいい! パックマンも懐へ!」

 

 

オリマーの咄嗟の指示に従い、近くに寄る。ミサイルの追尾のロックオンは、近くの者は映らない。故にマリオとパックマンにはその脅威の影響はなかった。放たれたミサイルのロックオン対象は。

 

 

「一本来てる!」

 

 

一人離れたところに居たロックマン。

 

 

「壁に隠れて深呼吸のパターンだ!」

 

「隠れられるような壁なんてありませんよ!」

 

「ぽっ…ぽっ…ぽよっ!」

 

 

先程の攻撃に参加していたWii Fit トレーナー、インクリング、カービィ。

 

 

「追ってくるのか…!」

 

「どこに4本も詰め込んでるんだ…」

 

 

道の近くにいたマルスとスネーク。

 

 

「思った通り、マリオやパックマンのところには来ていないか。」

 

 

そしてオリマーだ。

 

 

「みんなが大変だ!うわっ…!」

 

 

ガレオムの近くに居たマリオとパックマンはガレオムにスマッシュ攻撃を入れていたが、ガレオムが体を捻ったことに気づき、咄嗟に後ろに下がる。ガレオムは、体を駒のように回転させた。反応が遅かったのか、マリオ達は攻撃にかすってしまう。だが、壁まで吹き飛ばすには充分だった。

 

 

「ロックマン!」

 

「オリマーさん!」

 

 

ミサイルから走って逃げていた、二人がすれ違う。真っ直ぐ彼らを追っていたミサイルは互いにぶつかり、爆発した。

 

 

「すう… はあ… よし、シールドで防御します!カービィさん、インクリングさん! 後ろへ!」

 

「うん!」 「ぽよ!」

 

 

『腹式呼吸』を一つ入れ、ミサイルに対してシールドを展開する。爆発が近くで発生し、思わず二人は目を閉じる。全員怪我はなかったが、シールドが完全に破壊され、Wii Fit トレーナーは強い眩暈に襲われていた。当分動けそうにない。

 

 

「わわっ、トレさん、大丈夫!?」

 

「ぽ〜!」

 

「ううっ…ああ…」

 

 

そして、もう一つ。最後のミサイルがスネークとマルスを追っていた。

 

 

「ちっ… いいから先行け!」

 

「スネーク…!」

 

 

銃火器を携帯しているために足の遅いスネークを気遣って中々前に進めないマルス。

 

 

「(振り切れねえ…!)伏せろ!」

 

「っ! くっ」

 

 

最低限、伏せて頭を守る。そうすれば酷い怪我にはならない筈だ。爆発するのは時間の問題。マルスが思いっきり目を閉じた時だ。

 

 

「ピチューー!」

 

 

どこからともなく黒い雲が現れ、一つ稲光が生じる。ピチューだ。壁を走って移動し、二人を追っていたミサイルに『かみなり』を落としたのだ。雷撃に見舞われたミサイルはその電圧に耐えられず、その場で爆発した。マルスのマントが少し焦げたものの、本人にダメージは入っていない。

 

 

「ふぃ〜。助かったぜ、ちびっ子。」

 

「ピッ!? ピチュッピ!」

 

「おっと、ちびっ子扱いはいやだったか?」

 

 

ぷくー、とプリンのように、電気袋のある頬を膨らませるピチュー。その姿はまさに子供っぽくて微笑ましい。

 

 

「(くっ… 僕だけだ。何も役に立っていない!)」

 

 

鋼鉄の体に、自らの剣撃は届くのだろうか。辺りを見回す。激突して、へこんだ壁から抜け出すマリオとパックマン。遠距離から『手榴弾』と『でんげき』で少しずつダメージを稼ぐスネークとピチュー。三色ピクミンと『クラッシュボム』を貼り付けるオリマーとロックマン。未だ前線に復帰できないWii Fit トレーナーを案じるカービィとインクリング。すると、突然ガレオムに異変が起きた。

 

 

「むっ…!? 赤くなった?」

 

「オーバーヒートか? いや、これは…」

 

 

長時間戦い、ダメージが蓄積されたことによりガレオムも本気モードとなった。自らの最後にリュカとレッドを道連れにしようとする狡猾な知能を持つ機械だ。大方、今まで手加減していたのだろう。

 

赤くなったガレオムは、天井近くまで飛び上がった。ピクミンは無理矢理振り払われ、リーダーの元に戻る。

 

 

「嘘だろ!?」

 

「あの巨体で跳び上がるかっ…!?」

 

 

マリオとオリマーは驚愕する。

まさかここまでの機動力があるとは思わなかったのだ。ガレオムは狡猾に動けぬ者を狙う。それを本能的に気づいたスネーク。

 

 

「まずい! 嬢ちゃん、まん丸!」

 

「ぽよ? あっ…」

 

 

動けないWii Fit トレーナーと、近くにいるインクリングとカービィ。自分達の視界に巨大な影が差し、漸く自分達に迫る危機に気づいた。

 

大きな土埃が舞い、彼女達の末路を想像し、思わず目を閉じた。




マリオ「このままでは、トレさんやインクリングやカービィが潰されてしまうけどボクは元気です。」

スネーク「本編の区切り方がアレっていうのに次回予告のコーナーはいつもどおりだな…」

マリオ「ここのボク達、サザエさん時空で進んでおりますですはい。」

スネーク「本編の俺たちとは別人設定だったのかよ…」


スネーク「次回、『後の時代の英雄王』」


マリオ「別にそこまで深く… そんな冒瀆的な事実に気づいてしまった貴方は成功で1D10、失敗で1D100のSANチェックを」

スネーク「邪神クラスかよ! っていうか今付け足しただろ!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十八話 後の時代の英雄王

一章完結編です。この調子だとクイズとかヤバイのですが(白目)


 

 

「ピ…ピチュウゥゥーー!」

 

「みんな…!? …あれっ?」

 

 

ロックマンは気づいた。ガレオムの鉄塊が完全に地に着いておらず、前方の方が少し浮き上がっていることに。

 

 

「んぐっ…うっ…くうぅ…」

 

「まるすぅ!」

 

「あっ!」

 

 

彼女達三人の前方に立ち、マルスはファルシオンで、ガレオムの押し潰しを防いでいたのだ。

 

 

「でも、長くは持たない! どうにかしてアイツをどかすぞ!」

 

「OK!」

 

 

見た目はどちらかというと、華奢な方のマルスが普通に考えてガレオムの機重を支えることなど出来ない。可能にしているのは、仲間を傷つけさせまいとする強い意志と土壇場による生存本能だ。だが、そんな物がいつまでも続くものではない。

 

 

「(まずい… 力が…!)早く、横に避けるんだ…!」

 

「でも、マルスは!?」

 

「僕は… いい、はや…くっ!」

 

 

マルスの手から血が引き、震えが止まらなくなる。抜けていく力を重心を前に向けることでカバーしているのが現状だ。

 

『追撃砲』を当て、『アオスケ』を呼び出したりしているが、ガレオムは無視して押しつぶすことを優先している。

 

 

「うぅ… ぐう…!(だめだ…! もう…!)」

 

「あっち行けーー!」

 

「!?」

 

 

なんとインクリングが立ち上がり、『スプラローラー』を振り上げ、鍔迫り合いに参加し始めたのだ。

 

 

「はあああああぁぁぁ…!」

 

「すみません! 遅くなりました!」

 

 

カービィも『ハンマー』で、Wii Fit トレーナーも素手で押し上げようと、参戦した。

 

 

「君たち…」

 

「わかってるんだよ? んっ…! マルスが今までのことみんなあたし達のこと考えて…! くれてたこと。やっぱ…り、復活出来るから結構雑な戦いになっちゃうんだけど…も。」

 

 

押し返しで途切れ途切れになりながらも、えへへ、と笑って伝えるインクリング。

相手のインクを受けて、死んだと思ってもインクリングはリスポーンできる。

野生のポケモンも、トレーナーのポケモンも精々ひんしにする程度しか技を使ってこない。

それがインクリングとピチューの世界。わかっていたのだ。マルスの世界がここまで上手く行くような世界ではないことを。

 

 

「でもさ… これは同じっ…!だよ。マルスがあたし達のこと思ってくれてるように、あたし、達も、マルスのこと考えてるの…! マルスがフィギュアにさせておくのも嫌っていうなら、あたしだって嫌だよ! 例えその相手があたしでもマルスでも!」

 

 

はっ、と啓示が舞い降りてきたかのようだった。王子であるとか関係無しに自分を大切に思ってくれてる仲間がいる。そんなこと、考えもしなかった。でも、ようやくわかった。

 

 

「ああ… そういうことか…」

 

 

危機的状況なのに、無意識に笑みがこぼれた。今までの苦悩が嘘のように、戦況が頭に入ってくる。誰かがこちらへ駆けてくる足音がする。ガレオムに向かっている。この心地よい足音はブーツ。見なくともわかる。マリオだ。

 

 

「離れろー!」

 

 

マリオが拳でガレオムに飛びかかる。その後ろでは、パックマンがベルを投げた。ガレオムに当たり、痺れたところにパンチがヒットし、少し機体が傾く。

 

 

「抜けるよっ!」

 

 

傾いた方向にタイミングを合わせて、力を込める。大きくぐらついた隙を見計らって、四人は離脱に成功。他ファイターと合流する。

 

 

「ピチュッ!」

 

「ゴメンね、心配かけちゃった!」

 

「肝を冷やしたぞ…」

 

「マルス。顔つきが前のに戻っているな。」

 

「そうかい? ありがとう。さて…」

 

 

ガレオムの様子を見る。即座に体勢を立て直し、迎え討とうというのか。

 

 

「(前は、前にリュカとレッドがとどめを刺した時…)」

 

 

リュカのPSIを受けて、道連れにしようとしたガレオムのアームを壊した筈。自分達とリュカ達との戦いで消耗していたとはいえ、『PKサンダー』の一発で腕部分を破壊した。

 

 

「(機械だし容量を超える電撃には耐えられないのかもしれない。ただ、ピチューの『でんげき』や、パックマンのベルが効いた様子はなかった。)」

 

 

ベルの大きさとガレオムの大きさを考えるに、効いていないのが普通なのかもしれない。あの時とは違い、ガレオムがそこまで疲弊していないのも一つの理由なのかもしれない。

 

 

「電気か…」

 

「マルス?」

 

「マリオ、電気の攻撃を使えるDr.マリオに変身してくれないか?」

 

「んー? 構わないけど、何するの?」

 

「…任せてみよう。」

 

 

マリオは白衣を纏ったDr.マリオに姿を変えた。これで電気を使用できるのは、マリオ、ピチュー、ロックマン。それにパックマンの『フルーツターゲット』のベルとオリマーの黄ピクミンに、ピチューをコピーしたカービィだが、先程ピチューの『でんげき』は大して効かなかったことから見て、今のガレオムに致命的なダメージを与えるには、かなり強い電撃を浴びせないと駄目かもしれない。となるとカービィは電撃班に回す意味はない。

 

 

「パックマンはさっきのベルをもう一度仕込んでくれ! パックマン、マリオ、ピチュー、ロックマン、オリマーは時が来たら一気に強力な電撃を浴びせるんだ!」

 

「電撃…!? 黄ピクミンか!」

 

「ああ、他は彼らの援護! 電気をくらわせる為に動くんだ!」

 

「了解だ。」

 

「はいよー!」

 

 

全員が散らばる。電撃班はガレオムの遠くに位置し、他は様子を見ながらヒットアンドアウェイを繰り返していた。

パックマンは『フルーツターゲット』の切り替えを行う。その前方で、マルスは戦況を把握していた。辺りを見渡し戦略を練る。

 

 

「(Dr.マリオの時は… 色々持ってていつもより遅い。ピチューはかなり素早くて、ロックマンが普通というところか? オリマーはピクミンを掴む時間があるから、それも考えなければ…)」

 

 

『ヘディング』のボールが機体に当たるが、その本機は気にしてすらいない。

 

 

「あんまり効いてないよー!」

 

「構いません! 私達は気を惹き続けるのです!」

 

「気を惹くっていうならこれだな!」

 

「電撃班! 名前を呼ばれたらガレオムに向かってダッシュだ!」

 

 

軌道が操作可能な『リモコンミサイル』を相手の視線近くに動かす。ガレオムの視線は誰から見てもわかる程にミサイルに釘付けになっている。わかる。今まで見えていなかったものが、乾いた砂が飢えて、水分を取るかのように、戦況という知識がマルスの頭の中に入ってくる。

 

 

「マリオ! オリマー!」

 

「OK!」「ああ!」

 

 

マリオは右手に電撃を、オリマーは黄ピクミンを握る。ガレオムはミサイルに対してパンチを振るが小さなミサイルには当たらない。

 

 

「ロックマン! ピチュー!」

 

「うん!」 「ピチュッ!」

 

 

アームを変化させ、バチバチと電流を迸る。ガレオムはそこで近づく三人に気づいたが、インクリングの『スプラッシュボム』が当たり、視界がインクで包まれ、見当違いの場所を叩き潰す。

 

 

「パックマン! ベルを投げるんだ!」

 

 

黄色のベルがガレオムに向かって投げられ、ぶつかった。同時に、『心臓マッサージ』が、『スパークショック』が、『ショートでんげき』が、『ピクミンはたき』がガレオムの大胸部分に直撃した。

 

側から見ても、眩しい電撃にファイターは目を覆う。無事なのはこの攻撃を繰り出した五人と、真っ直ぐ見つめるマルスだけだ。

 

 

「まさか… 最初から同時に当てるつもりだったのでしょうか…!?」

 

「だからって…! 合図も何もなく、あいつらの足の速さを計算するだけで、タイミングをぴったり合わせさせるなんて…!?」

 

 

これが、後の時代の英雄王。自軍の個性から身体能力まで全て把握し、犠牲を出さぬよう最適な戦法をとる手腕。

 

 

「(オリマーはこれを言いたかったんだ…! この世界で僕は王子と見られてはいないけど、同じように受け入れてくれるけど… だからといって、決して僕のことを考えていない訳じゃない! お互い様なんだ! 僕が彼らを思っているなら、彼らも僕のことを思ってくれていると! ピチューもインクリングも、他のみんなも知っていた!)」

 

 

ガレオムは強力な電気を浴び、機体全体に電流が迸る。装甲が剥がれ、部品が飛び散り、内部が露わになった。電撃の修得者達は後ろに飛び退く。そして、マルスが駆け、跳び上がった。

 

 

「ここだあ!」

 

 

人で言う所の心臓部品。装甲が剥がれた箇所にファルシオンを突き刺した。確かな手ごたえを感じる。微弱な熱風を感じると、ファルシオンを引き抜いて、自らも逃げながらも、退却の指示をする。ガレオムは痙攣しながら爆発四散し、後には巨大な鉄塊だけが残った。




現ファイター

カービィ
マリオ
マルス
ピクミン&オリマー
パックマン
Wii Fit トレーナー
Dr.マリオ
インクリング
ピチュー
ロックマン
スネーク


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一章 まとめ

バーチャルコンソールのムジュラの仮面でデバックメニューを呼ぶ方法が見つかったとか。
少し前はGC風のタクトの堅牢なハイラルバリアが突破され、もっと前はスカイウォードソードが劇的に短くなり… 次は…トワプリですかね?(適当)


この回が存在する理由は本文にありますので省略しますが、本編とは関係ないのでとばしてもらっても構いません。


作者でございます。ご愛読ありがとうございます。今回は一章のまとめということで枠を取らせていただきます。ゲストはこちら、灯火の星の都合上、出番の少ない最終決戦エリアの四人組でございます。

 

 

「えっ、あー、えっーと、よろしく…お願いします?」

 

「よろしくお願いしまーす♪」

 

「…」

 

「ええ、よろしくね。」

 

 

よろしくお願いします。ちなみにこの空間も本編とは全く関係ないので四人は囚われたままです。

後、ダムス氏は喋れないのです、多分。フェイゾンの塊です。エネルギー物体なので、マジで『中身などないっ!』なのです。

 

 

「偉そうに言いますが、作者も知らなかったですよね。」

 

「メトロイド未プレイだものねえ。」

 

 

うるせーやい。

さて、今回こんな枠をとらせていただいた理由は、八月いっぱいで一章が終わってキリがいい…というのは建前で、やれ風花雪月だのドラクエ10だのやっていて書きだめが溶けたからです。急ピッチで進めてはいますが、やる気が出ない。なので終わったらやろうとしていたキャラについてのぼやきを今やろうとなった訳です。

 

 

「つまり、サボってた訳か…」

 

「………」

 

 

だからうるさいよーだ。

ぼやきと言ってもこの小説の中での話に限ります故、御容赦下さい。

 

 

 

順に参りましょう。カービィ。次回予告とかでも大活躍(?)。ぽよぽよ可愛くて私も好きです。

 

 

「贔屓してまーす!」

 

 

シャラップお茶目神。

最初の方で目立つのは仕方ありませんが、中盤以降もでも活躍の場は用意してあります。

 

 

 

マリオ。ついでに同一人物なのでDr.マリオもまとめて。本編ではあまりですが、外伝の方でよく喋っています。ここでは、元々持っていた『いただきストリートDS』の性格を元にしています。

 

 

「確かドラクエとマリオブラザーズでのコラボだったわね。」

 

 

はい。ところどころリアクションが大きいところがあって、少しナルシスト。そんな感じです。ナルシストが上手く表現出来ているかは自信ないですがね。

 

 

 

マルス。最初の三択で選んだ理由は紹介ムービーでそうだったから、という浅い理由です。

 

 

「………」

 

 

ええ、それだけです。小説内ではファイター達のリーダー格のように引っ張っています。後少しいじめました。

 

 

「か、軽い…」

 

 

十人十色どころか、十人百色のファイター達の手綱を握るのは大変なのでしょう。

…というのは建前で、おかしいな、プロットだとピチュー以外の成長描写いれるつもりなかったのに。

 

 

 

オリマー。マルスと同じく頭脳派となっています。この小説だと出来る限りピクミンを殺さない戦い方をします。あのルーイすら許してやってほしいと言うほどですから元々優しい性格なのでしょう。

オリマーはここまで。ファイター毎に紹介量の差があることをご了承ください。

 

 

「わー…」

 

 

そんな目で見ないでロイ君…

 

 

 

さて、次はパックマン。実は家庭持ちでございます。彼で悩んだのはずばり、喋らせるか、喋らせないかです。

 

 

「直球ね。」

 

 

喋るパックマンはあまり評判よくなかったので悩みましたが、ダムスなど喋らないファイターもいたので、喋らないことにしたのですが、そのおかげで忘れかけることもしばしば… 反省しています。

 

 

 

続いてWii Fit トレーナー。ラスボスです。

 

 

「なにそれ!?」

 

 

名前長い、技名覚えられない、描写むずいの三冠の達成ですおめでとうございますー

 

 

「落ち着いてください、作者」

 

 

マイ辞典で登録したりしてましたが、気休めにしかなりません。ただ、ぶん殴ったり蹴ったりさせるのはプライドに反します。血反吐を吐こうがここは譲れません。

性格関連ですが、かなり公式で設定されていて驚きでした。作者未プレイシリーズ第一弾。未プレイのゲームは調べるなりプレイ動画を見るなりして勉強しております。

 

 

 

Dr.マリオを飛ばしてインクリング。3号でもあります。amiiboのギアに制服がある所から、インスタ映えを気にする女子高生のような性格に仕上がりました。ですが、子供っぽいところもあり、フィクションのヒーローに憧れています。

 

 

「ですが、根本的なところは、楽観的で享楽的ですね。」

 

 

インクリングという種族ですから仕方ありません。割と好戦的で、経験が戦闘センスに直結しています。才能の影響もありますが。でも、ことが上手く運ぶと調子に乗る悪い癖が足を引っ張って、多分ウデマエいってもX前半辺りかな。

 

 

 

続いてピチュー。他の二次創作ではリストラ組からロイ君とかと仲がいいものが多いですが、リストラ組という言葉はこの小説には存在しません。

 

 

「あ、うん…」

 

 

ロイとピチューのコンビ、嫌いじゃないんですがね。この戦闘狂とも言えるような性格のピチューと合わないのですよ。

こういう性格にした訳はちびっ子がガンガンいこうぜ、という展開が好きなのですよ。小さいのにスピードで翻弄しているという戦法も大好きです。ただ一つピチューに関して私が言いたいことは…

 

 

「……?」

 

 

なんでカラーバリエーションにウクレレピチューがないんじゃサークライィィィ!

 

 

「この小説消されても知らないわよ?」

 

 

この小説ではインクリングと仲良くなりました。他にはまだ出てきてませんがピカチュウ とガオガエンとも仲良しです。インクリングとの友人関係とはまた違う感じの仲です。

 

 

 

続いてエアーマンが倒せないでも有名なロックマンです。

 

 

「作者未プレイシリーズ第二弾ですねー」

 

 

さっきから女神様辛辣一言多いわー。

ググったりセリフ集や漫画の画像を検索したりした私のイメージは、普段は心優しい少年だが、敵には少し口が悪くなる。悪を許さないけど使われているだけの者まで悪だとは割り切れない感じです。

多分、大体合ってる!

 

 

「その自信はどこからくるのですか?」

 

 

作者にも不明です。根拠のない自信というやつです。

 

 

 

今回最後の紹介です。ソリッド・スネーク。メタルギアも作者未プレイシリーズですね。第三弾です。なんか難解なのか私の頭が御粗末なのか、スネークを調べれば調べるほどよくわからなくなっていきました。コピーした人造人間の認識で大丈夫ですか?

 

 

「多分ね…」

 

 

多分単独参戦ならそこまで掘り下げないから大丈夫かと思いますがね。彼について調べて驚いたことは、二次創作で見るダンボール愛が普通に公式に準じていたところですね。

 

 

 

 

 

 

ああ、よく見る二次創作の性格と原作設定を比べてみると面白いかもしれません。ここでは基本原作に忠実なのですが、ロイ君やピット君などはかなり違いますね。

 

 

「え? 僕?」

 

「この坊やの場合はスマブラが先だもの。そっちのイメージが先についちゃったのね。」

 

「ピットの敬語キャラは…」

 

 

恐らくX時の勝利演出の『勝ちましたよ!』からでしょうかね。後は天使という種族のイメージからです。多分。

今度からは二次創作でよく見る原作との違いも追いかけていきましょうか。割と楽しかったです。

 

 

「次もあるのか… ていうかベヨネッタ、坊やって…」

 

「あら、違うのかしら?」

 

 

まあ、女神や魔女の寿命から見れば15なんて赤ん坊もいいところ…

 

 

「作者、いい天気なので散歩でも行きません?」

 

「少しレディの扱い方を勉強する必要がありそうねぇ…」

 

 

あっ、ごめんなさい。わざとじゃ、待って誘っときながらどう考えても強制招集と変わらないんじゃ!? 誰か助けてー!

 

 

「あっ…… えっと…」

 

「………」

 

「…ま、また二章の終わりに会いましょう。」

 

「………」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二章 駆けるさだめと絆
十九話 プロの一秒


なんかもうやばすぎで、
ゼノブレリメイクとかホームランコンテストとかスーファミオンラインとかサンズMiiコスとかカービィハンターズとかなんかもう頭の整理が追いつかないけどDLC製作続行のお陰でテリー参戦が霞んだのは確か。諦めかけてたバンワドもワンチャン…!

あ、新ポケはポットデス可愛かった。


「うーん、疲れたー!」

 

 

基地の外に出て、太陽の光が彼らを讃えるように出迎える。

 

 

「まっさか、亜空軍の兵器とまた戦うことになるとはね! そういえば何で居たんだろ?」

 

「亜空軍を生み出す影虫。それを生むウォッチも囚われている。いること自体は別におかしいことじゃないけど…」

 

「わざわざスピリットにする必要があるのだろうか?」

 

「そもそも、何でタブーは影虫を操れていたんだ? 実はウォッチ自身が操ってたりしてたのか? でも、こっち側来ても普通に襲ってきてたな…」

 

「あくまで、亜空間の中での話だがな。」

 

「そもそも、そのディオンというのは兎も角、ガレオムって影虫からできているのかな?」

 

「ロックマンさん、何話してるかわかります?」

 

「ううん、全然…」

 

 

あの事件に関わっていた者のみがわかる話なのだ。パックマンも頭を傾げている。

 

 

「わからないや。とりあえず、次に…っ!」

 

 

これは、地鳴りか、空震か。大きく揺れた気がして思わず耳を塞ぐ。反射的に空、キーラの居る天空を見上げた。キーラの周りの空間がひび割れ、砕け散った。

 

 

「ぽよ〜!」

 

「キーラのバリアが!」

 

「もしかして、ガレオムを叩きのめしちゃったからかな?」

 

「ま、よくわかんねえが、一歩前進というところか。」

 

 

現状が見えてきた。ファイターとスピリットを解放しながら、キーラの守りが切れるまで、各地の敵を打ち倒していくのだ。果ての見えない冒険だが、必ず成せると確信していた。

 

 

 

 

一度、マルスのいた遺跡跡地に戻ってきたファイター達。そこには変わらず二人のファイター。だが、行く手を塞いでいた障壁は消えていた。

 

 

「マルスの予想通り! キーラの力が弱まったなら結界も消えてるんじゃないかって!」

 

「今まで行けなかったのですね。」

 

「なるほどな…」

 

 

向かい側と左側にファイター。今までほったらかしにしていたことを申し訳なく思う。

 

 

「俺が行こう。他は仮眠でも取っていてくれ。もう一人も俺が戦う。」

 

「ぽよ〜?」

 

「次いつ休めるかわからないだろう? 俺は解放されたばかりで、さっきもあまり動けなかったからな。まだ戦える。まあ、もう一人の方も少しなら許してくれるだろう。」

 

「んー、じゃあ頑張れー。割とあたし眠かったかも… ピチューおいでー。一緒に寝よー」

 

「チュウ。」

 

「ホントは女子全員で恋バナでもしたかったけど… ねむねむ…」

 

「おやすみなさいー。ぼくはまだ動けるからなあ。他の人も休んでていいよ。」

 

 

眠り始めた一人と一匹に、マルスがマントを外して掛けてあげたり、Wii Fit トレーナーがストレッチを始めたり。想い想いの休息を取ってる姿を見て、スネークは戦いの場へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ場所にいたマルスと同じように、この戦いの場も『終点』であった。黒いメタリックの足場から見える景色は幻想的で美しいが、引き込まれてしまうような恐怖すら感じた。

 

 

「…よう、坊主。」

 

『…』

 

 

赤いシャツの男の子。見た目相応の精神をしているが、これでもすま村の村長だ。むらびと。彼には超能力のような力もなければ、世界を救うような偉業を成し遂げた訳でもない。それでも、村で手に入れた様々な道具を駆使してこの大乱闘の舞台に立っている。

 

 

「まずは挨拶といこうじゃないか。お前みたいなただの小僧には負けねえよ。」

 

『…っ!』

 

 

殴って殴って蹴る。銃火器を使わないのは、大抵の物はどこかにしまってしまうむらびとが相手だからだ。銃火器の有用性を知っているからこそ、それが自分に向く危険を避けている。全く使わない訳ではないだろうが、まだ使う時ではないと判断した。

 

 

『…』

 

 

スネークに対して、『かさ』を振り回すむらびと。こんな珍妙なもので、剣にも匹敵する打撃を繰り出すのだから異世界というのは到底理解できない。『かさ』の攻撃は痛かったものの、そんな痛みなど死ぬほど経験した。殴打されながらも掴んで締め上げる。流石にキーラの手下となろうが、戦闘経験はスネークの方が上だ。

 

 

「ふんっ!」

 

『いっ…!』

 

 

前方にむらびとを放り投げる。空中で慌てているところに強力な回し蹴りを放った。

 

 

「なるほどな… 動きまでは変わらないか… できないことはできないと。」

 

 

恐らく周りが思っている以上に、自分はこの世界を好いている。ここでは、何も知らない人々が戦いに巻き込まれたりはしない。戦いそのものが娯楽で見世物になっているところは複雑だが、死ななければきっとなんだって出来るから。

ファイターではない者まで巻き込んだキーラを許しはしない。だから目の前の相手が誰であっても手加減はしない。

 

 

「っ!」

 

 

後ろに下がって『リモコンミサイル』を撃つ。体勢の崩れていたむらびとは咄嗟に動けず、被弾。だが、割とすぐに立て直した。

 

 

「おわっ!?」

 

『…!』

 

 

ダッシュで『うえきばち』を放り投げられる。とても戦いとは言えない戦い方に呆気に取られて一瞬だけ固まる。確かに鈍器にはなり得るが、それなりに重量がある筈の鉢を一体どこにしまっているのだろうか。傘や花火もかさばる筈なのだが。少しだけ考えて、すぐ思考を放棄した。異世界の文化は違う。これだけで結論づけた。

 

 

「本当変な技使いやがる…っ!」

 

 

むらびと本人も乗り込んだ上での『ハニワくんロケット』が襲いかかる。スネークに当たって爆発した。

 

 

「ちっ… だが、俺が銃だけの男とは思わない方がいいぞ?」

 

 

伝説の名を冠する戦士に遠近での得手不得手など存在しない。CQCという格闘技だって出来るのだ。

 

ぶつかる時にむらびとに貼り付けておいた『C4爆弾』が爆発する。近くでの爆音と衝撃で、大きな隙を晒した。

 

 

地面を蹴って『前転』。さらに『膝蹴り』からの『ハンマーナックル』で叩き、真上に蹴り上げ、浮き上がった相手を追って、『かかと落とし』でステージに叩きつけた。

 

 

『う…』

 

「はああ!」

 

 

叩きつけられ、再び浮き上がったむらびとはスネークの方に、パチンコを撃つも、銃弾よりも遅い弾が、一対一で当たる訳がない。死角からの攻撃ですらないというのに、苦し紛れのショットが当たる訳がない。

 

 

「ふんっ…」

 

 

空中で移動、足下にいるむらびとに対して、4回踏みつける形で蹴る。

 

 

『…っ!』

 

「どわっ…!」

 

 

先に足を地面につけたむらびとに先を越された。戦闘技術も経験もスネークが圧倒的に上と言っても、彼もファイターの一人なのだ。スコップを手に持ち、前後に穴を掘った。まだ宙にいたスネークにスコップがぶつかり、真横に飛ばされ落ちそうになるのだが、手を伸ばして崖を掴んだ。ぐっと体が勢いに乗って浮き上がるが、重力に従って垂れるような姿勢となる。勢いを完全にころすことに成功したようだ。

 

 

「ふんっ、はっ!」

 

 

素早く跳び上がって、ステージ上に復帰する。ダッシュで近づいてくるむらびとが見える。手には赤のボクシンググローブが着けてある。勢いをつけて殴ってくるようだ。

 

 

「へっ。(わかりやすくて助かるな。)」

 

 

素人の一秒とプロの一秒の認識は全く違う。側から見れば同じ時間でも、頭に入る情報量とやれる行動が大違いなのだ。思いっきり振りかぶってきた右ストレートを、腕を弾いて右側に逸らす。これならば、右腕が邪魔で左手でのパンチが出しにくい。体勢的にも力が入らない。ぐらりと体が偏った所を見逃さず、スネークは右手で『C4爆弾』を貼り付け、ほぼ同タイミングでむらびとを蹴り飛ばした。

 

 

『…っ!?』

 

 

パンチを防がれ、逆にカウンターされたというのはわかるが、どうにも思考が働かない。スネークの今の行動の全てを理解できるほど、むらびとは頭が良くないし、戦闘センスも高くはない。静かに爆弾が起動され、何もわからぬままに負けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、なるほど… それでこの人数なんだ…」

 

「ま、そういうこった。」

 

 

フィギュアから戻ったむらびとだったが、年相応に慌てていた。落ち着かせて、現状の理解をさせていた。ちなみにヒーローは熟睡中である。

 

 

「へーき?」

 

「大丈夫、大丈夫。」

 

「いえ、無理は良くありません! 痛い所があるならば何でもおっしゃって下さい!」

 

「いや、別に… あっ」

 

 

この時、一部を除いたファイター達はむらびとの頭上に豆電球が光る姿を見たという。

 

 

「あいたたた! 痛い痛い!」

 

「っ!? どこの辺りですか!?」

 

「あれ? むらびと? 本当に?」

 

「本当だよ、ロックマン! えっと、うなじと手の甲と…」

 

「待て待て! そんな所攻撃していないぞ!? 」

 

「大丈夫、治療費で我慢する。」

 

「それが目的だな!?」

 

 

親指と人差し指で丸をつくって、甲を下に向ける。目がベルだ。

 

 

「マリオ… むらびと相変わらずだね…」

 

「相変わらずがめついというか、守銭奴というか。これが無ければ、普通の少年なのにねー」

 

 

マルスとマリオが会話する。ワリオのような度の過ぎたことはしないのだが、非常にがめついのだ。

 

 

「ま、今回はいいか… 別に道具は壊れてないし、落としてないし。」

 

「んにゃ…むにゃ… ヒーローコスチュームどこ〜…」

 

 

比較的平らな地面に算盤を置いて、計算をしようとするが、損失は見受けられないため、弾かれることなくしまわれた。そして、インクリングの寝言は全員で聞いてない振りをした。

 

 

「よし、キーラを倒して慰謝料貰いに行こう!」

 

「おー! …ってあれ? むらびと…?」

 

「キーラってお金を持っているのですね…」

 

「そこじゃない。つっこむところはそこじゃない…」

 

 

はあ、とため息をついて頭を抱える。キーラにまで金をいただこうとするなんて、自分はある意味とんでもない少年と戦っていたのかもしれない。そんなことを考えながら。

 




むらびと「いつだって財産の管理は基本! 算盤は常備だよ!」

オリマー「電卓は使わないのか? かさばるぞ?」

むらびと「かさばる?」

オリマー「…? ところでその算盤は乱闘に使わないんだな。」

むらびと「算盤は戦いに使う物じゃないでしょ? 何言ってるの?」

オリマー「????」


むらびと「次回、『自分もそうなりたいと思った』!」


むらびと「たまに算盤でローラースケートはするけど」

オリマー「それこそ本来の使い方ではないじゃないか…」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二十話 自分もそうなりたいと思った

風花雪月1ルートでも長すぎワロタ




むらびとの設定置いておきますねー
・むらびと
すま村の村長ではあるが、村長の仕事はサボってばかりのため、しずえには度々怒られて苦手意識を感じている。節約家で守銭奴。他の趣味趣向は年齢相当。


「それでそれで次のファイターがいるのが…」

 

「お隣さんにほら。」

 

「………」

 

 

マリオが指差すファイターは、自分が倒れていた場所の隣。窓から不在か否かの確認が取れる程のご近所さんであった。引っ越したら蕎麦を持っていくような。回覧板を回すようなそんな関係の位置だった。生憎、家ではないし、同意もなしに引っ越されたようなものだし、蕎麦を渡す余裕もない。例え余裕があっても、蕎麦は渡していないのだが。近所付き合いはベルの無駄にならないやり方で行っている。

 

 

「俺もついてくぞ。坊主は初めてだし、保護者みたいなもんとしてな。」

 

「えー。おっさんも?」

 

「おっさん言うな!」

 

「じゃあおじさん」

 

「おじっ…!?」

 

 

子供まで巻き込むことに気は進まないが、本人の立場というものもある。止められはしないだろうが、せめて自分が着いていけばなんとかなる。なんとかすると思ったスネークだったが、思わず言葉が続かなくなる。この坊主、未だに守銭奴モードなのか非常に辛辣のままだ。

 

 

「…救助料は6:4でいい?」

 

「「「「「えっ」」」」」

 

「たかろうとするな」

 

「じゃあ全額貰うね」

 

「せめて5:5だ!」

 

「「「「「(ここでボケないでスネーク!?)」」」」」

 

 

ツッコむところはそこではない。どうしてこの状況で被害者であるファイターに請求しようとするのか。むらびとも同じく被害者ではあるが、それでも状況を理解できたのならばここはお互い様に抑えておくべきなのに。

 

 

「まあ、それは兎も角として… むらびとに今回の戦いの雰囲気を理解して貰うために、ここで戦ってもらう、というのはありだと思う。救助したファイター全員がここにいるし、フォローも出来る。まだ完全に呑み込めている訳じゃないと思うけど… いいかい、むらびと?」

 

「うん。そもそも自分から言いだしたことだし。お金も取れるし。」

 

「………」

 

「むらびと…」

 

「そういうのはやめましょう? むらびとさん…」

 

「あはは…」

 

「オウ…」

 

 

なんという強欲な少年なのだ。マルスの不安を変な意味でぶち壊してくれる。ロックマンとパックマンはジト目で、Wii Fit トレーナーは呆れながらも優しく諭す。マルスは苦笑いしてマリオは思わず頭を抱えた。

 

 

「金の話は兎も角、本当に戦うっていうなら一緒に行くぞ。そもそも、こいつとも俺が戦うつもりだったからな。」

 

 

と、スネークが言うと、むらびとを小脇に抱えて移動し始めた。

 

 

「タクシー代金は払わないからねー」

 

「いらねえよ… 俺は子供に金をせびるほど落ちぶれちゃいねえぞ。」

 

 

むらびとを抱えていて空いていない手とは逆の左手でそれに触れる。右腕にかかった力が随分と強いことに少し疑問に思ったが、それは転移と同時に霧散していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また、このフィールドか… ほら、おろすぞ。」

 

「また?」

 

「坊主と戦った時もここだったんだよ。」

 

 

そう、今回の戦場もまた『終点』であった。明るくなったり暗くなったりする摩訶不思議な宇宙のような世界。むらびとの黒色の目に色とりどりの光が映る。神々しさと同時に妖しさすらも感じられる銀河。そんな場所に一人取り残されたかのような錯覚に陥る。

 

 

「さて、相手は…」

 

『…』

 

「っと、お嬢さんじゃないか。」

 

「シーク!」

 

 

茶髪の麗しき姫君の姿を幻視する。だが、現実には中性的な姿格好をしている金髪の人間がそこにいた。普段よりも濃い血すらも思わせる紅の瞳に薄ら寒いものを感じる。

 

 

「わわっ、くるよ、くる!」

 

「落ち着け、2対1ではあるが、いつもの乱闘と変わらない。」

 

『…!』

 

「避けろ!」

 

「うわっ!」

 

 

大地も削れるのではと思えるほどの鋭いキックが放たれる。スネークの掛け声に遅れはしたものの、間一髪で攻撃の回避に成功した。そのままここに居たら、ひとたまりもなかっただろう。とはいえ、図らずともシークを挟み撃ちに出来る立ち位置になったことに、しめしめと思うも、むらびとへの叱咤は忘れてはならない。

 

 

「気をぬくな! シークのスピードだと一気に詰められる!」

 

「わかってるっ…! よ!」

 

 

走り込んで懐を突くように切り裂く『疾風』をむらびとに向かって繰り出す。普段ならば防御が困難なほどに速い攻撃だが、早めにシールドを展開していたので防ぐことが出来た。

 

 

「はあっ!」

 

『…!』

 

 

『ストレート』で拳を当てる。シークの赤い瞳がスネークへ向いた。追撃をすることも選択肢にあったが、受け止められるか、躱されてしまうと思ったのでやめた。やはり、挟み撃ちとなる現状をどうにかするだろうと、シークは回り込むと予測していた。そして、背後をとったならば、攻撃を繰り出すだろう。

 

 

「…っ」

 

『…』

 

 

シークの投げる小型爆弾、『炸裂弾』が炸裂する。普段は避けるが、今は後ろにむらびとがいるので避ける訳にはいかない。いつもは殆ど使わないシールドで対処した。

 

 

「…ちっ」

 

 

『リモコンミサイル』は素早いシークには当てづらいし、そのほかの銃も有効とは言い難い。『手榴弾』や『C4爆弾』などもむらびとのことを考えると、狭いフィールドで安易に使う訳にはいかない。ここは格闘技と、心苦しいがむらびとに頑張ってもらう他ないだろう。そう思い、その旨を後ろの少年に伝えようとしていた時であった。そっと摘むようにスネークの服の袖を握る震えた手があった。

 

 

「…坊主?」

 

「…」

 

 

返答はない。恐怖しているとは思えないほど真剣な表情で彼なりの戦闘体勢をとっている。手は震えているが、他の器官は至って正常に見える。

 

 

「何して…あっ。」

 

「…」

 

 

またもや答えず。何かを気づいたようにスネークは言葉を止めるが、それについて触れる発言もなかった。

 

怖いのだ。目の前のシークではなく、物語の結末にいるであろうキーラが。殆どのファイターに完膚なきまでの敗北を味わせた絶対なる支配者が。スネークが知ることではないが一筋の希望だけを残したあの場所にて、友も仲間も散っていき今度は自分というタイミングで文字通り何も出来なかったのだ。

この世界で出来た友達の持つ、世界を救うような意思や心の強さに惹かれたむらびと。少年ならば誰だって憧れる悪者を倒す勇者の物語。絵本から飛び出してきたような友に憧れた。自分もそうなりたいと思った。

 

だが、結果はどうだ?

戦うことも、逃げることも、足掻くことも、誰かを助けることもできなかった。何もできなかった己を恥じた。だからこの戦いに参戦したのだ。こうしなければ、最後まで足掻いただろう友に顔向けできないから。

それでも怖いものは怖い。その友すら手も足も出なかった相手と戦うのが怖い。それでもやらない訳にはいかないから、自分が好きなお金の話で恐怖心を誤魔化している。

 

 

「(よくわからないが… 怖いが他の奴らのために戦わなくちゃいけない…ってとこか?)」

 

 

こうした事情はスネークは知らないが、何となくでむらびとのことを読み取った。しかし、下がっていろ、とは言えない。とはいえ、最後のキーラとの戦いで手が震えて戦えないは本人もいやだろう。

 

 

「(仕方ない… 一肌脱いでやるか。)おい、坊主。」

 

「何? おじさん。」

 

「おじさん… まずその呼び方をやめてくれ…」

 

「坊主って呼ぶのやめてくれたらいいよ。もしくは一回500ベル。」

 

「そっちの世界の金を持ってる訳ないだろ。俺をスネークと呼ぶなら、俺もむらびとって呼んでやる…ってそんなことを言いたいんじゃない。ちょっと耳かせ。」

 

 

むらびとは背伸びして話を聞く。だが乱闘中とはいえ、あまりにも簡潔すぎる作戦だった。目をぱちくりさせる。

 

 

「待って! これじゃわかんない!」

 

「それでも何とかするのが俺たちだ。やるしかない! ぐっ…!」

 

『…』

 

 

当然いつまでも相手は待ってくれない。『仕込み針』がスネークの体に刺さり、僅かながら仰け反いたところに『鉈』のように腕を振り下ろし、さらに『錐』のように体を回転させる攻撃を放つ。

 

 

「(最後に蹴りがくる!)」

 

『… うっ…』

 

「ていっ!」

 

 

フィニッシュの上方向へのキックを、体を捻って回避する。シークから離れた時にむらびとのパチンコの玉がヒットするのを確認した。

 

 

『隙は俺がつくる。お前は機を見計らって一撃畳み込め。』

 

「(そんなこと言われたって… 一撃… 一撃…)」

 

 

スネークとシークは未だに肉弾戦中だ。 むらびとはステージの中央付近に種を植える。

 

 

「とあっ!」

『…っ!』

 

 

スネークのローキックとシークの回し蹴りがもろにぶつかる。鋭い脚力は相殺しあい、互いによろめいた。

 

 

『…』

 

「なっ…」

 

 

だが、立て直すスピードはシークの方が速い。重い武器を持っていない為に軽く、細身の身体なら、体の負担も少ないからだ。勢いを乗せたまま、しゃがみ身体全体を使って足払いを放つ。

 

 

「ちっ…」

 

 

崩れた体勢では足払いを避けられない。しかし、スネークもまた幾千の戦いを潜り抜けた傭兵。地に落ちていく身体を動かし、受け身をとって向かい合う形で再び向かい合う。

ちらりとむらびとを見ると、育った木に一発斧の切り込みを入れていた。

 

 

「(いやいやいや!? 確かに機を見計らえとは言ったが!? 木で攻撃なんて一言も… いや、流石に考えすぎだろ… 兎も角、とどめの用意は整った。後は…っ!)」

 

 

シークを掴む。むらびとの切り倒す木が彼女を襲うことをイメージし後方の地面に叩きつけた。だが、

 

 

「うわっ!?」

 

「!」

 

 

計算済みだったのか、木を跨ぐように浮き上がった。むらびとを狙う『跳魚』の体勢だ。ここまで高いところにいると、木なんて当たらない。

 

 

「(まずいっ! フォローに)」

 

「おりゃあああ…!」

 

「っ!?」

 

 

木こりの為の斧を手に、飛び上がったむらびとに驚いて硬直してしまうスネーク。この攻撃はあまりにも杜撰であった。だが、あまりの展開にシークの動きも止まる。大振りすぎる上に目を瞑った攻撃だが、止まっている的にすら当てられない程むらびとは弱くない。大きく吹っ飛ばされていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今回は運が良かったな。あそこで相手動いてたら恐らく躱されてたぞ。」

 

「えー、勝ったんだからいいじゃん。」

 

「運だけどな。」

 

「運も実力のうちっていうじゃんかー 」

 

「フフ… 随分仲良くなってるね。」

 

「うん。色々あったみたいだよ。ゼル…じゃないや、シークさん。」

 

 

フィギュア化が解除されたシークは意外な二人の会話に感想を述べる。今は次のエリアへ移動する為の準備中だ。

 

 

「それにしても、シークって頭イイネ! あたし一度の説明じゃまっ〜たく、わからなかったよ。今もあんまりわかってない!」

 

「ピチュッ!?」

 

「ありがとう。でも、この事件に関してはキミの方が詳しい。結局人伝の話だからね。よろしく頼むよ、センパイ。」

 

「センパイ…ッ! よーしー! センパイに何でも聞いてねっ!」

 

「フフッ…」

 

 

昼寝のお陰か体力満タンのインクリングは非常に乗せやすく、単純な性格だ。

だが、それでいい。一人が全てをする必要はない。

 

 

「そろそろ次へ行こうか。みんな準備出来てる?」

 

「ボクはいつでも準備OKさ!」

 

「はい! 十分な休息は取れました!」

 

「ー!」

 

「パックマンも用意できたか。君たち、喧嘩は構わないが、次に進むぞ。」

 

「了解ー!」

 

「ああ、すぐ行く。」

 

 

むらびとが離れたのを見て、煙草を加え、火をつける。やはりWii Fit トレーナーにとやかく言われるが、今は耳に入らない。

 

団体を仕切れる者、口うるさい者、戦える者がいるのならば、戦えない者もいていいだろう。そうでなければ大勢でいる意味がない。戦うことはあっても敵ではない。戦った後でも隣で相手とくだらない話が出来る。だからこの世界は好きなんだ。

もうむらびとの恐怖は感じられない。




ピチュー「ピッチュチュピッチュチュピッチュッチュー♪」

シーク「ピカチュウのうた基、ピチューのうたってところかな…」

ピチュー「ピチュピチュピチュピチュ♪」

カービィ 「…ぽょぽょぽょぽょ」

シーク「あっ…」


シーク「次回、『彼らは勇者』」


シーク「灯火の星、完!」

マルス「またこのオチ!?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二十一話 彼らは勇者

なんか書きたいこと書いてたらいつもより長くなってしまいましたが、まあいいか。


シークを救出したファイター達一行は、むらびとが塞いでいた道を選び、進むことにした。道の先にいるスピリットを退け、進んだ先にはまたもや分かれ道だ。

 

 

「また分かれ道かー」

 

「ぽよぉ…」

 

 

左に進むか、まっすぐ進むか。木の棒を地面に立てようとするむらびとや、それを見守るパックマンを尻目に、シークはそのまま進む道の先に見たことのある塔を見つけた。

 

 

「ーっ!」

 

 

あの塔は。間違えない。絶対に彼はあそこにいる。確信に近いカンだった。

 

 

「ねえ、みんなが良ければボクはこのまま、まっすぐに進みたいんだ。」

 

「えっ?」

 

 

お間抜けな声を出したむらびとと同じタイミングでシークの方へ向くパックマン。その瞬間、棒は倒れた。奇跡なのか、棒の御告げはシークに従えと言っている。

 

 

「構わないけど、どうして…」

 

「あれを見て欲しい。」

 

 

気づかなかったファイターが、あっ、と声を上げる。そこにあった塔は間違えなくフィールドにもなっている始まりの塔だったのだ。でも、それだけではない。そこは復活の英傑の始まりの場所だった。

 

 

「そうか… じゃああっちにいるファイターには悪いけどこちらを優先させてもらおう。」

 

「ありがとう。」

 

 

シークは一言お礼を言う。気持ち的にも逸っているのか、先頭を歩いている。

 

 

「少し聞いてもいいか、シーク。」

 

「なんだい?」

 

「今のリンクと君とは世界は同じでも住む時間が違うと思うのだが、いつの間にここまで仲良くなっていたんだ?」

 

「ああ、そんなことを聞きたかったのか。」

 

「無理に聞こうとは思わないが…」

 

「別に難しい話じゃない。実はこの服、彼から貰ったのさ。」

 

「おおー! ホントホント!? リンクってばやるじゃん!」

 

「インクリング? 別にそういう関係じゃ… 聞いてないね、うん。」

 

 

オリマーの問いに答えるシーク。そしてその回答に興奮するインクリング。ふおぉぉ、と顔を赤らめていて、シークの否定も全く聞いていない。

 

 

「おんなじ名前のゼルダもいるよね! お姫様のゼルダもいるよね! まさかのリンクが取り合いっこされるポジション! でもリンクは忍者の方のゼルダに矢印伸びてて… ありゃ? トゥーンもリンクだし、こどもリンクもリンクだし… あれれれれ?」

 

 

最初は発達した妄想にさらに赤い顔をしていたが、途中から二人の勇者も参戦して訳がわからなくなる。別の意味で体温が上がって頭から湯気が出た。完璧な知恵熱だ。

 

 

「やっぱりインクリングわかってなかったかー。まあ、最初にリンクとゼルダが違う二人に代わった時驚いたよね?」

 

「そうだね。しっかり説明されるまで検討もつかなかったし…」

 

 

まさか、同じ名前程度にしか思っていなかったとは。そこから話が膨らむマリオとマルス。

 

 

「おい、嬢ちゃん。」

 

「ふぇ?な、何、スネーク…」

 

 

しゃがんでインクリングに耳打ちする。更にインクリングの顔が赤くなっていく。

 

 

「シーク! 早く行こう! あたしはシークもリンク兄弟もゼルダも応援するよ!」

 

「んっ?」

 

 

こてんと首を傾げる。どうやら何か吹き込まれたらしい。

 

 

「スネーク… 何言ったの…?」

 

 

鉄の体よりも冷たい視線でスネークを睨むが、本人はどこ吹く風だ。

 

 

「さあ、どうだろうなあー」

 

「大嘘ついて… 後で訂正してあげてくださいね?」

 

「気が向いたらな〜」

 

 

これ、絶対気が向かないやつだ。渦中のスネークとインクリングとシーク以外のファイターは思った。

 

 

 

 

シークのカンは当たり、始まりの塔と思われる建物の麓には一人のファイターがいた。その周りには多くのスピリットがおり、手分けして彼らを解放しながら進んでいた。

 

 

「とりゃああ! 二枚抜きぃ!」

 

「はやっ!? まだパックマン戻ってないよ!?」

 

 

一体何がここまでインクリングを奮い立たせるのか、ファイターへの道を邪魔するスピリット二組をとてつもないスピードで撃破した。最初はパックマンとほぼ同時にワープしたはずなのに、追加で一戦加えてもなおインクリングの方が速い。ロックマンが驚くのも無理はない。

 

 

「人の恋路を邪魔する奴らはー! 馬という生き物になんとやらー!」

 

「随分と曖昧だね…」

 

 

最早訂正もめんどくさくなったのか、恋路に対しての反応はなかった。ちなみにインクリングが戦った相手はフィオルンとリリーナという、恋路を突き進みまくっている者であった。シュルクやロイとともに戦っているのを見て何も考えなかったのか。

 

 

「はい、どーぞシーク様! リンクへの道はこちらであります!」

 

「ふふっ」

 

 

恐らくレッドカーペットがあれば敷かれていただろう。大袈裟な動作に微笑みを隠しきれなかった。

そして、ゆっくり前を見据え、真剣な表情になる。やはり、間違えなく目の前にいるファイターは彼だ。

 

 

「ありがとう、 …いや、感謝いたします。インクリング。」

 

「うん! …ありゃ?」

 

 

どうして目の前にいる人が麗しきお姫様の姿に見えたのか。シークが転移して、気のせいと判断した錯覚も消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回この世界に呼ばれたのはボクだけだった。前はリンクもあのガノンドロフも居たというのに。みんなに聞いた限りでは、前回とは違う時間の誰かを同じファイターとして呼ぶことがあるらしい。そうやって誰かが呼ばれて… そして誰かが呼ばれなくなる。

でもそれならば、どうしてボクだけを、さらにシークとしての自分だけを呼んだんだ。その理由を知るのは人間より上位の存在だけ。聞いたところで現実は変わらないだろう。

それでも何度見たって、ゼルダとして交流するのはボクじゃないし、ガノンドロフは自分の記憶にあるよりもずっと筋肉質だし─何よりリンクはあそこまで快活な青年ではない。

 

 

『居たー! こどもリンクー!』

 

『トゥーン? ぼくに何か用なの?』

 

『ポポとナナが登山教室するんだって!ボク達も行こ!』

 

『登山? 別に興味ない…ああもう、引っ張るなって、わかった、行くから』

 

『はあ…』

 

 

思わずため息がでる。同じく引き続き呼ばれたトゥーンは最初こそ戸惑っていたものの、新しい友達も出来て楽しそうだった。ボクは彼みたいに割り切れそうもない。

 

 

『おっ、いた、シーク!』

 

『あっ… リ、リンク。』

 

 

青い服を着た彼。彼をリンクと呼ぶのに未だに慣れていない。

 

 

『なんかさ、最初会った時からずっと元気なくね?』

 

『…そう? そう見えるかい?』

 

『うん。それで俺考えたんだけどさ、多分ホームシックじゃないか!?』

 

『えっ?』

 

 

意外な言葉に反射的に驚きが漏れ出す。確かネスがたまに家族を恋しがってた時のことをそう言っていた気がする。家族をリンクや元の世界と捉えればそうかもしれない。

 

 

『だからこいつ持ってきたんだ!』

 

『…服?』

 

『シーカー族の忍びの服! そんなポンポン元の世界には戻れないけど、これでなんとか… ってこっちのシーカー族の文化と同じとは限らないか…』

 

 

クスっと笑った。性格も見た目も住まう時間も違っても彼らは勇者。人のために動けるリンクなんだ。

 

 

『ありがとう、リンク。お陰で元気が出たよ。』

 

『あ、それでいい? ま、喜んでくれたらいっか!』

 

 

そう言って、歯を剥き出しにして、にかっ、とリンクは笑った。

 

 

 

 

『…』

 

「インクリングが聞いてきたよ。こんなこともあったね。」

 

 

譲り受けた服を纏ってシークが立つのは、『終点』の地形となった『始まりの塔』の最上階だ。でも、見渡す景色はさっきまでとは全く違う。真下の大地を見下ろしても、きっと他のファイターは居ないのだろう。

ここに居るファイターはシークと目の前にいるリンクだけ。リンクは奇しくも百年前の自らのように表情が動かぬ冷たい瞳をしていた。その百年前を知らないシークには酷く異質に見える程に。

 

 

「…ハアァ!」

 

『…っ!』

 

 

ほぼ同時に駆け出す二人。退魔の剣の一凪を勢いを殺さぬままに躱し、後方に蹴った。ハイリアの盾でガードされるが、それを足場にして距離をとった。

 

 

「………」

 

 

『仕込み針』を放つ。確実に当たるよう量を多く投げたのだが、剣と盾を扱い、ほとんどが防がれてしまった。

 

 

「さすがマスターソードに選ばれた勇者ってところか… 真正面からぶつかってもまず勝てないね。」

 

 

ドレスを捨てたシークは動きこそ速いが、パワーはそれほどでもない。力とテクニックを兼ね備えたリンクとまともに撃ち合ってもジリ貧になるのだ。とはいえ、速いだけでどうにかなるような相手ではない。

 

 

「(隙を作って少しずつダメージを与えていくしかない。でも、何度も繰り返してたらバレるだろうし、三回が限度かな)」

 

 

トップスピードで、リンクの横を通り抜ける。意表をついたにもかかわらず攻撃はなかった。

 

 

『…っ!?』

 

 

相手に攻撃する気がないのならばそれでいい。こちらはしっかり戦わせてもらう、とばかりに『ブーメラン』を投げる。

 

 

「本当に通り過ぎるだけだって思ったの?」

 

『っ!?』

 

 

投げてから気づいた。リンクの左手付近に『炸裂弾』が投げられていたのだ。盾のガードを警戒したのか体にほど近い場所に。流石に投擲の動作から爆発には間に合わず。爆音が鳴り、一時的に聴覚と視覚を潰した。

 

 

「ここは逃せない!」

 

 

跳び上がって蹴りをくらわせる。さらに手刀での攻撃も放とうとするが、

 

 

「…っ!」

 

 

ここは盾で防がれた。それを知覚した途端、シークは咄嗟に飛び退く。カウンターを受けると予測したからだ。

 

 

「次!」

 

 

引き摺る訳にはいかない。すぐに次の動作に動く。先程と同じように広範囲に『仕込み針』を撃つ。これならば、避けるにせよ防ぐにせよ、何か動きがある。その隙を突こうとしたのだ。

 

 

「なっ…!?」

 

 

だが、リンクが行った対処は、シークの予想の上をいく。その場を動かず、左腕で目の保護をする程度の防御しかしなかった。確かにダメージはあるが、パワーのある攻撃ではないので微々たるダメージしかなかった。そして何より、腕を動かしている程度の動作では隙など作らない。

 

 

「(まさか… もうこの戦術に対応したのか?)がぁっ…!」

 

『…』

 

 

英傑と呼ばれるほどの存在相手には少しの隙すら命取りだ。即座に間合いを詰めて、思考しているシークを捕まえ、腹部に膝を入れる。一瞬意識が飛ぶが、 地面に叩きつけられ追加で肘が入ったところで覚醒した。振るわれた剣を紙一重で回避。即座に離脱し、距離を取る。

 

 

「完全に格上の相手…」

 

 

間違いなく。距離を取るのも、最適解ではない故、集中力を切らせない。

 

 

「だめだ… 少し荒っぽい方法でもやらないと。」

 

 

放たれた矢を最低限の動きで躱す。そして腰を下げた低い体勢のままリンクの方へ走り出した。

 

 

『っ!』

 

 

勝負は一瞬。盾で防がれたらもうアウトだ。

 

 

どう動く?

 

 

何で対処してくる?

 

 

避けるならばどっちに?

 

 

 

 

「(『ブーメラン』!)はっ!」

 

『…!?』

 

躱して、思いっきり蹴りつけた。空へ、ハイラルの空にリンクは投げ出された。後を追ってシークも飛び出す。目指すは外。

 

 

『うっ…!?』

 

 

『跳魚』の技でリンクの体を押し出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インクリングと、彼女に強引に脇へ隠されたロックマンはそっと二人の様子を見ていた。

 

 

「………」

 

「インクリング、ロックマン、こっちの方は片付いたんだが、ちょっとこっちに来て欲しくて…」

 

 

無言でスプラローラーを振り下ろす。

 

 

「待って待って待ってくれ!? 私が一体何をして… わああ!?」

 

「インクリングだめだめ! オリマーさんも静かに! ね!?」

 

「わかった… ただちょっと知恵を借りたいから後で来て欲しい場所がある。」

 

「はーい…」

 

 

むすっ、と膨れながらも、ずっと視線は二人の方へ向いていた。

 

 

「そっか、キーラにやられて… はあ… せっかく送り出してくださった姫様に面目無い…」

 

「気にすることはないよ。そもそもまともに抵抗出来た人の方が少数だからね。…ちなみにその姫様って」

 

「うん、こっちの時代のゼルダ姫。ただ被害は俺たちだけじゃないんだな…」

 

「…ねえ、少し聞いてみたいことがあったんだ。どうしてボクにこの服をくれたの? まさか、本当に元気がないように見えたから?」

 

 

リンクは少し考えてからこう答えた。

 

 

「確かにそれもあるけど、違う時代のゼルダ姫と交流したかったんだ。」

 

 

一度切って、続ける。

 

 

「幾度もハイラルが危機に陥るということだけど、同じ数だけ俺… リンクがいて、ゼルダ姫がいる。それでも違う時代の二人と関わることはない。でも、ここならそれが出来る。ここでしか出来ないならやりたいんだ。」

 

 

ここでしか出来ないことをする。違う時代のゼルダとの交流。

 

 

「そっか…(キミはボクが気づくよりもっと前にボクをゼルダと呼べたんだね。キミの時代のゼルダとは違う人物なのに。)」

 

 

この勇者はとっくに先を行っていた。

 

 

「ふふっ、キミには敵わないね。」

 

「…? 負けたからこうして動いてるんだけど?」

 

「こっちの話だよ。」

 

 

勇者と姫は住む時代も違うけど、それでもリンクで、それでもゼルダ。たとえ姿が変わっても、記憶がなくなっても変わらない。




インクリング「シークさ、たまーにゼルダって呼ばれてない?」

シーク「まあ、本名はゼルダだからね」

インクリング「じゃあさ、トゥーンもこどもリンクもリンクってつくのは何故?」

リンク「え? うーんと… みんな…本名リンク…だから?」


リンク「次回! 『地獄の沙汰もベル次第』! …えっ? これがタイトル?」


スネーク「三人のリンクは、父が亡くなった所為で生き別れた兄弟。だから父と同じ名前を名乗っている。双子の姉であるシークは既に1番上のリンクと恋仲だが、そのリンクが好きな妹ゼルダと気まずくなるから偽名のシークで変装までして付き合っている。それで今は二人のリンクが妹ゼルダを…」

インクリング「キャー!」

シーク「何吹き込んでるの!?」

リンク「事実無根だ!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二十二話 地獄の沙汰もベル次第

どうしてこんな話が出来た\(^o^)/


あ、そうだ(唐突)
ファイアーエムブレム風花雪月、黒鷲帝国ルートクリアしました。これでも短めのルートってマジ? 1週目の相手はシルヴァンでした。











ちなみにif暗夜1週目の相手はラズワルドです。
作者の趣味が知れるね。


リンク救出から、少し時間は遡る。

辺りのスピリットの解放に専念する他ファイター達。

 

その中の一人、キャプテン・オリマーは、傍にあった建物前にいるスピリットを相手にして戦っていた。

このフィールドは戦乱の続くある世界の戦を元にしたフィールドだ。『攻城戦』。城を墜とそうとする戦い、城内の戦い、人の力を凌駕する者との戦いと、城をベースに戦う地形が変化していく。

 

 

オリマーの相手はルキナの姿をした者であった。目も髪も、赤の色に染まってはいたが、それ以上にルキナではないと、確信していた。

 

 

「(ルキナの相手か… …そういえば、私の家族もこうして囚われているのだろうか。)」

 

 

同じく参戦しているクロムの娘と同じ姿を見て、ふと考える。本物のルキナも、クロムもどこかに居るのだろうか。

もし、クロムがルキナと対峙したら、戦うことで救えると知っても剣を振るうことが出来るのだろうか。そもそも、同列に語るのがいけないのかもしれない。自分の家族が戦う姿など似合わない。

 

 

「…もうよそう。本当にここに居たらその時に考えよう。」

 

 

ピクミンの方を見る。こうやって思考の海に入っていることなど感じてすらいないように、いつも通りのピクミンだ。何考えているかわからない。

 

 

『…』

 

「…!」

 

 

裏剣の一突きを横に跳んで躱した。ピクミンにも当たらず、刃は宙へ置き去りにされた。

 

 

「よっと…」

 

『っ!?』

 

 

背後に回り込んで、背中に直接赤ピクミンを貼り付けた。パチリパチリと焼きつくような打撃が背中を襲うが、無理に離すにしろ、切りつけて絶命させるにしろ非常に大きな隙を作ってしまう。特に後者は勘定に入れてはいけない。相手にとって唯一の攻撃の手段を、しばらく封じられてしまうのだ。

 

 

『…っ…!』

 

「わっ!? 集合!」

 

 

ジャンプしてから体を捻らせ、無理やりピクミンを引き剥がした。ぽてん、と赤ピクミンは落下する。笛を吹いて呼び寄せるが、その前に敵が赤ピクミンを切り裂いた。

 

 

「あっ… しまった、くっ…申し訳ない…!」

 

 

少し欲張り過ぎたか、と反省する。しかし、ピクミンの命を無駄に散らしたくない以上、いつでも剣を振るうことのできる正面からピクミンを投げる訳にはいかない。そのまま防御で真っ二つにされてしまうだろう。

ならば、相手の攻撃をかわしてカウンターを繰り出すしかない。受け手になる以上攻撃できるタイミングは減るが故に出来るだけ叩いておきたいという欲が裏目に出てしまったのだ。

 

だが、それでもまだ生きている者達がいる以上、死んでしまって終わった者のために立ち止まってはいけないのだ。

 

 

「しかし、どうもファルシオンの威力が上がっているようだな。その恩恵を私達にも受けられるというなら、他の人が戦った方が良かったか?」

 

 

キーラによる支援なのかどういうわけか、敵が謎のパワーアップをする戦いがあった。逆に自分達に唐突に悪影響を与えてきたりということもあった。

しかし、何故かパワーアップの恩恵を自分達も受けられることもあったのだ。一体どういう仕組みなのか謎だが、それで戦いが有利になるのならば使わない選択はなかった。

 

 

「(今考えても仕方ない。不利でも勝とう。)よし。」

 

『…』

 

 

敵はじりじりと迫ってきている。走るより遅いが、歩く方が敵の動きに対処しやすい。オリマーも相手がいつ動き出してもいいように、真正面から睨みつけている。先に動くのは。

 

 

『…っ!』

 

 

敵側の方であった。マルスやクロムと同じ剣技『マーベラスコンビネーション』、連続して斬りつける技だ。潜り抜けられぬように超速の剣技で抜け道を無くしてしまおうという判断だった。

 

 

『…!?』

 

「…すまないね。」

 

 

それでもオリマーは敵の後ろに回り込んだ。ホコタテ星人は、違う世界の人間より大分小さい。この世界においては創造神の加護故か、彼ら自身の違和感が無いように操作されているのだが、それでもオリマーは小さい方だ。本物のルキナならば適した策もとれたかもしれないが、生憎敵はルキナの体を使っているだけの誰かだ。要するに距離感を見誤った訳だ。

 

 

「さあ、つかみかかれ!」

 

 

青ピクミンと黄ピクミンに指示を出して、敵を抑えにかかる。すぐ近くの後方の行動に対応出来る者はそうそう居ない。身動きの取れない相手に二つパンチを入れる。先程は欲を出しすぎて返り討ちにあったので、ここで次の動きに移る。

 

 

「後ろだ!」

 

 

『ピクミン後投げ』の指示を出す。二匹のピクミンは息のあった動きで後ろの地面へ投げ飛ばした。青ピクミンは投げ攻撃の威力が高い。小さくないダメージとなった。

 

 

『…っ〜!』

 

 

受け身を取り、すぐに立ち上がる相手。その相手に向かって青ピクミンが投げられた。体こそ立ててはいるが、剣の方はまだ勢いが死んでいない。無理に振っても青ピクミンを防げれないだろう。

 

 

『…!』

 

 

ここは跳んで回避するしかない。行き場をなくした青ピクミンは、地べたにピタッと顔から転んだ。

 

 

「大丈夫だ、いい攻撃だった!」

 

 

空中についてきたのはオリマー。彼の手にいるのは黄ピクミン。振りかぶったピクミンがダイレクトに入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スピリット、アンナを救出したオリマーは、目の前に商品を並べられていた。

 

 

「ここはお店だったのか。」

 

『そう! 何か買っていく? 命の恩人なんだし、サービスしちゃうわよ?』

 

 

商品の中にはルフレの使う剣や魔道書などが混ざっている。どうやら彼らと同じ世界、同じ時代の人のようだ。

 

 

「申し訳ないが、今物を買っている余裕はないんだ。それに私はそういう物は使えない。」

 

 

無料ならば、お宝として持って帰って借金返済に充てたかもしれないが、お金が必要ならば…

 

 

「(って、私まで思考がむらびとに似てきてしまった!?)」

 

 

頭をブルブル振って思考を戻す。ここまでがめつくなったのは社長の所為だ。今の借金を返したら絶対に家族全員で旅行に行ってリフレッシュしよう。そう心に決めた。

 

 

『えー? そんなあ。こんな世だからこそ身を守る武器は必要よ? 武器じゃなくても傷薬とか持ってるだけで違うわ。』

 

「そうは言ってもだな…」

 

『じゃあ、これはどう? さっき拾った物なのだけど、服らしいってだけしかわからないのよね。今なら格安にしてあげるわ!』

 

「拾い物を商品にするんじゃ…って、!?」

 

 

お前が言うな発言が飛ぼうとした時、オリマーは硬直した。1が一つ、0が六つほど書かれた値札のついたそれは、円錐型のイヤーカフのような物、黄色を基調としたベストに下に着る黒の服、少しゴツい靴。そう、アタリメ司令から探して欲しいと渡された紙に描かれた、3号、もといインクリングの服装だったのだ。

 

 

「これは…」

 

『目に留まった? ふふっ、どうかしら?』

 

「オリマー、そっちの様子はどうだい?」

 

「マルス! むらびと! 良いところに…」

 

 

マルスとむらびとの姿が見えた。相手方も、アンナの存在を視認したようだ。

 

 

「おや、あなたは…秘密の店の…」

 

『あら? うちに来たことあるのかしら?あなたみたいにカッコいい人なら忘れないと思うんだけどなー』

 

「? だが、ルフレの物と同じ武器が売られているということは…」

 

「でも、ルフレとマルスの時代って大分離れてるよね?」

 

「先祖返り…? あなたの名前は?」

 

『アンナよ。』

 

「名前まで同じ…」

 

『もしかして、姉妹に会ったのかしら? 私には顔も声も名前も同じ姉妹がいるの。』

 

「…それはそれでどうかと思うけど」

 

 

マルスが英雄王として崇められる間の長い時間は決して無視出来る程の時間ではない。

 

 

「って… そうじゃない。マルス、これを」

 

「あっ… これは…」

 

 

微妙な空気になる。インクリングの物なのだから返すべきなのだが、本人としては、3号であることを隠しているので、正面から渡しても否定されるかもしれない。 彼女の矜持を壊してしまおうとは考えれなかった。それに、品物となっている以上、今ヒーローギアはアンナの物である。

 

 

「…直接交渉してもらおうか。呼んでくる。」

 

「わかった。頼んだよ。」

 

「マルス? これが何なの?」

 

 

事情の知らないむらびとが疑問を口にする。

正直に言うのも憚れるので、少し嘘を混ぜて話すことにした。

 

 

「とある人に探して欲しいと言われてるヒーローがいてね。そのヒーローの服装がこの服なんだ。」

 

「ヒーロー…!」

 

 

少し目を輝かせる。こういうところは矢張り子供だ。

 

 

「インクリングの知り合いらしいから、インクリングを通して渡そうと思うんだけど…」

 

「でも、お金無いよね?」

 

「そこはなんとか交渉してもらうか、後払いで許してもらおう。」

 

「マルス、王子だしね。お金のお風呂浸かってるんでしょ、恵んでー」

 

「あはは…」

 

 

隙あらばこうだ。誰のせいなのか。

 

 

「つまりあれがいるんでしょ? 僕に任せて。」

 

「え?」

 

 

アンナに近づいて交渉を始めた。

 

 

「今大変なこと起きててさ、世界が危険なんだよ。」

 

『それでもこっちは商売なのよね。たとえ何があろうと譲る気はないわ。』

 

「うん、でさ、創造神のマスターハンドも捕まってるんだよ。」

 

『あら、そうなの? 大変ね。』

 

「つまり、マスターハンドを助けたらそう、巨万の富が…!」

 

「えっ」

 

 

お金をマスターハンドからぶんどる気か。両手を広げてスケールを表すむらびと。

 

 

「だからさ、1割増額でいいからさ、後払いで売ってくれない?」

 

『ん〜、2割! 2割増額ならいいわ!』

 

「オッケー。2割ね、了解。」

 

『まいど〜! 一筆もらっておくわね。』

 

 

紙に名前を書いて、ヒーローギアを手に入れた。

 

 

「むらびと、助かったよ。ありがとう。」

 

「ま、使わなきゃお金は金属と変わりないもん。使い時だから使っただけ。」

 

 

お金に関してはびた一文引く気はないと思っていたが、こういうこともあるようだ。

 

 

「あ、インクリング。」

 

「オリマー、いきなり呼んで何が… あっ」

 

 

インクリング達とオリマーと合流する。後からついて行っているリンクを見つけると手を振りあう。そして、先頭のインクリングはむらびとの持つギアに気づいたらしい。

 

 

「あわ、あわわわわ、わ、むら、むらびとそ、それ」

 

「知り合いの奴なんでしょ? 返すよ。」

 

「ホント? ありがとう! よかった、あたしの…じゃない、友達も喜ぶよ!」

 

 

マルスの詭弁を真実と思っているむらびとの言葉に乗るインクリング。駆け寄って受け取ろうとするが、

 

 

「三倍返し。」

 

「えっ?」

 

 

思わず手を引っ込めた。

 

 

「僕が立て替えてるから、返すのは普通だよ。」

 

「でも、三倍って」

 

「君じゃないからいいでしょ。はい、領収書。一緒に渡してね。」

 

 

ギアを受け取ったインクリングは地に手をつけた。ここでギアを受け取らない選択をしないのは流石と言うべきなのか。

 

 

「むらびと、あの、使い時って」

 

「さらなる儲けに繋げる時を使い時って言うんだよ。」

 

「多分言わないよ…」

 

「仕方ない。地獄の沙汰もベル次第だし。」

 

 

最後の言葉を理解出来る者はここにいなかった。インクリングの慟哭がやけに響いていた。




インクリング「三倍… 三倍って…」

オリマー「しかも三倍じゃなくても2割ほど盛ってないか…?」

むらびと「交渉による出費の分だよ?」

インクリング「新しいギア買おうとしてたのに…」


インクリング「じかいぃぃぃ!『波導の勇者対ハイラルの勇者』…!」


インクリング「鬼、悪魔、人でなし…! デブ、サディスト、ダウニー…!」

オリマー「ダウニーとはなんだ… 悪口なのか…?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二十三話 波導の勇者対ハイラルの勇者

moonのあらかじめダウンロードをポチッとしました。
風花雪月もまだ終わってないのに何してるんですかね。

久しぶりに波導の勇者ルカリオ見よう思ったんですよ。確かDVDあったと思ったんですけど見つからず… 探すかレンタルかするべきなのですが忘却の彼方にアナザーディメンション。
口調違っていたら申し訳ありません。


「新しいギア買おうと思ってたのに… 8号とカフェでもいこうと思ってたのに…」

 

「あの… インクリングさんがブツブツ言っていて怖いのですが…」

 

「むらびとー、なんとかしてよー!」

 

「しらなーい、僕わかんなーい。」

 

「一体何があったんだい?」

 

「俺は知らんぞ。シークはわかるか?」

 

「…彼女はとんでもない財産を失ったとだけ言っておくよ。」

 

「そしてここまで俺の話題ナシ!」

 

「りんく〜、はぁ〜い!」

 

「はーい! カービィ!」

 

 

ゲソを垂らして文句を続けるインクリング。何かあったか知らないので狼狽するしかないWii Fit トレーナー、マリオ、スネーク。知っている故に何とも言えない表情のロックマンとシーク。再会よりもむらびと事変のことを語らう現状を嘆くリンクとそれを聞いて話しかけるカービィ。

そして、そのお陰で会話の軸がリンクに変わった。

 

 

「助けられてよかった。正直に言うとマスターソードを相手にするのは緊張感が大きくて耐えられた物じゃないんだ。」

 

「そういう割には普段大乱闘では普通に戦っているように見えるよ?」

 

「酔狂のための戦いとは気の持ちようが違うよ。それも普段はこんな彼があんな風に…」

 

「えっ? 俺どんな風になってたの?」

 

「いずれわかるよ。いずれね。」

 

「ちょ、シーク、教えてくれよ、っておお…」

 

 

そこはサーキットコースであった。コースを見下ろす観客席もついていて、対戦する人がいればさぞ盛り上がったことだろう。

 

 

「マリオカートコースかな?」

 

「なんで自分の名前がついてるの?」

 

「メタナイトのハルバードも、自分のマスクがついてるじゃねえか。あれと一緒だ。」

 

「なるほど…」

 

「なるほどじゃないよ。」

 

 

ステージとなっているコースもあるが、今いるコースはそこほど狭くはない。

 

 

「コースがあるんだし、何か車に乗るべきじゃない? 乗ってみたい!」

 

「あ、ぼくも!」

 

「引かれる心配はないんだから普通にコースを通ればいいんじゃないかな…?」

 

 

乗車したいむらびとと、それに同調するロックマン。マルスは車の文化に詳しくない為、少年のロマンはわからない。なので、徒歩でコースを回ることを提案するが…

 

 

「ちょうど車がありますね…」

 

「どの道、車が邪魔で通れないや。動かすしかないね。」

 

「ぽ〜…」

 

 

どうやらちょうど車が道の真ん中にあり、人は通れそうにないようだ。

押してみたり、運転しようとしてみたが、動かなかったり、方法がわからなかったりといい成果はなかった。今は手分けして他に行ける道がないか調べている。

 

 

「しょぼぼ〜ん。全然動かないや。」

 

「ワイルドグースというのは名前でしょうか。やはり人の物ですね。ですが壊してしまうしかないのでしょうか…?」

 

「トレさん、それは駄目って言った筈だ。そもそも誰のものかもわからないし…」

 

 

未だ、四苦八苦中。

 

 

 

 

一方、二つの違う道を見つけたリンクとシーク。しかし、二つに分かれている地点には、三体のスピリットとファイターが道を塞ぐかのように存在していた。

 

 

「ふむふむ、なるほど。変なルールが加わるスピリット戦もあるってことかー」

 

「そう。まあ今回は相手がアイテムを持っていたってだけだったけどね。」

 

『ああ!? 地味で悪かったな!』

 

「そこまでいってないって…」

 

 

その内の一体に、リンクの研修も兼ねて、シークと二人で挑んだのだ。

 

 

「しかし、こいつがその… ワイルドなんとかってやつどうにか出来るのか?」

 

「ボク達では思いもつかない方法を編み出せるかもしれないし、それがなくても解放してあげないと…」

 

『おい、それワイルドグースじゃねえか?』

 

「あー、そうそうそんな名前だった…ってん?」

 

「知っているのかい?」

 

『知ってるも何もオレのもんだそれは』

 

「所有者が見つかったか… 後はファイターの体を借りて運転できる筈だ。案内するよ。」

 

 

シークはリンクの方に視線を移す。

 

 

「リンク、悪いけど…」

 

「言わないでもわかってる。こいつに勝てって言うんだろ?」

 

「うん。頼んだよ。」

 

「合点承知!」

 

 

リンクは戦場へ。シークは案内へ。それぞれ別れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『テンガンざん やりのはしら』。シンオウ地方を東西に分けるテンガンざんの頂上に存在している。あくまでこの世界のそれは、モデルがあり、そのまま再現している訳ではないので、細部で違う箇所もある。今現在のそこは『終点』化しており、現実のそれとは全く違う。

 

 

「うわー… 俺さっきまでこんなんだったの? そらあんな風とか言いますわー…」

 

『…』

 

 

はどうポケモンルカリオ。シンオウ地方で確認されたポケモンである。そして、彼自身はまだ人とポケモンが共に戦っていた遥か昔の古代に生きていたポケモンだ。

 

波導の勇者対ハイラルの勇者。

最後には必ず勝つ勇者の矛盾対決が始まった。

 

 

「はあっ!」

 

 

身体が万全の状態の時のみ、放つことのできる『ソードビーム』を撃つ。最初から飛ばしていかないのは彼自身も救助されて、まだ浅いからだ。自分の思い通りに体が動けるかは不明だった。

 

 

『…』

 

 

これはするりとかわされる。まあ、必然だ。工夫も何もなくただ撃っただけだからだ。『ソードビーム』自身は。

 

 

「へっ!」

 

『…っ!?』

 

 

剣撃に隠れた『ブーメラン』が姿を現した。気づいてすぐに、これも避けようとしたが、避けきれず横腹に当たってしまう。ルカリオを打った武具は回転を止めることなくリンクの元へ帰っていく。

 

 

「とりゃあ!」

 

『…!』

 

 

ルカリオの元へ走りながら、盾を持つ左手で器用にブーメランをキャッチすると、そのまま『ジャンプ斬り』をした。

まっすぐ退魔の刃はルカリオに吸い込まれた。だが、ルカリオもただでは済ませない。

 

 

「あ、まずっ」

 

『っ!』

 

 

厳しい体勢ではあったが、蹴り自体は成功している。そもそもこれは防がれると想定した上での攻撃であり、盾とブーメランの二つを持つ左手では、手持ちがかさばり、力が込められないので、必ず体勢を崩すのだ。

 

 

「がっ…」

 

『…!』

 

 

持ち直せず、ブーメランごと盾を落としてしまう。カランと金属の音が響き、腹にルカリオの膝がダイレクトに入った。ステージ端のギリギリでなんとか受け身を取って立ち上がる。

 

 

「いっつー… 参ったな。ブーメランは兎も角ハイリアの盾はポンポン替えが効かないんだよなあ…」

 

 

正直この程度の痛みは慣れている。手に攻撃されて、攻撃に影響する方が危険だったから、ここで良かったかもしれない。ただ、盾が落ちているのがまずい。

 

 

「さて、盾の回収っと。そんじゃ、こんなのどうよ?」

 

『…』

 

 

シーカーストーンから『リモコンバクダン』を取り出す。ルカリオに向かって投げるが、隙も大きく、当たらない。『しんそく』で一気に距離を詰めんとする。

 

 

「とうっ!」

 

『…っ!?』

 

 

だが、一歩目はリンクの方が早い。出来る限りのジャンプで飛び上がり、ルカリオを飛び越えた辺りで『リモコンバクダン』を起動する。

慣れた爆発音。だが、狙いは初めからルカリオではない。転がっていたハイリアの盾とブーメランだ。爆発で跳ね上がる。

 

 

「おっし!」

 

 

ブーメランをすぐしまうと、盾に足を置いた。代わりに取り出すは『弓矢』だ。

 

 

「っ!」

 

 

そして、世界は停止する。

実際はそう見えるだけだが、素早くなっていたルカリオすらも静止しているように感じた。

 

 

「はあっ!」

 

 

三本。引き絞った矢を射る。撃ち終えると先程までの感覚は霧のように消えていった。

 

 

『グオ…』

 

 

ジャンプの勢いは盾と大地との摩擦で消えた。停止すると、身を屈むことなく足だけで器用に盾を蹴り上げてキャッチした。盾を構えてニヤリと笑う。擦られたり、爆発程度のダメージでは女神の名を冠する盾は傷すらつかない。

 

 

「んじゃ、仕切り直し!」

 

 

飛び道具無しの真っ向勝負。横方向に剣を振った。少し体を引いてかわされた。左手から『はっけい』がくりだされる。体を動かしてかわした。髪が掠ってふわっと浮き上がる。

 

 

「はっ…!」

 

 

右上から左下へ。その刃の動きも見切られてかわされる。流れが変わったのはその直後。ルカリオの掌底に対して、剣も盾も間に合わない為に、比較的自由だった右足でいなそうとした。

 

 

「うわっ」

 

 

だが、流石に格闘術の対応はルカリオに分がある。咄嗟に狙う位置を変え、攻撃を当てつつリンクのバランスを崩した。

 

 

『…!』

 

 

ルカリオにとってはこれがチャンス。今度こそ外さないと、寄っている左半身目掛けて『はどうげき』をくりだそうとした。

 

 

「終わらせるかっ!」

 

『…!?』

 

 

なんと、重心を無理矢理右に寄らせ、ギリギリで回避したのだ。

 

 

「君は傷つくたびに強くなるけど、もう関係ないね!」

 

 

そのまま体を押し付けてタックル。

 

 

「これでっ、終わりだから!」

 

 

『スマッシュ斬り』からの『スマッシュ二段斬り』。強力な斬撃がルカリオを襲い、吹っ飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、大丈夫?」

 

『んっ… リンクか、ここは一体…』

 

「どっか! 俺もよくわからん!」

 

『そうか… 確かキーラの攻撃で私達は…』

 

「あー、そうそう。なんかカービィだけ逃げたみたいで他俺たち助けられてここにいる。」

 

 

このルカリオはピチューと同じポケモンだが、テレパシーを使い、人との会話が出来る珍しい個体だ。

 

 

「そんで、ファイター以外にもキーラにやられた奴がいて、そいつらはファイターからコピったボディを使って動いてるって、シークが言ってた。」

 

『つまり、ファイターと他の被害者を助け、キーラを倒すのが今の目標だと。』

 

 

まだ二人分のスピリットが残っている。それを睨んで言った。

 

 

「うん、そうそう。そんじゃまあ早速… あ、パックマン。」

 

 

黄色い伝説パックマン。自分を指差し、次にスピリット達を指す。そして、ルカリオを指した後にレース場へ戻る道を指した。

 

 

『他のみんなに顔出してきたら、と? …確かにそれもそうだ。任せていいか?』

 

「任された!」

 

 

パックマンも頷く。

レース場への道をルカリオが下っていくのを見守ると、それぞれスピリット戦へと動いていった。




リンク「ん〜… カービィ、パックマン通れる?」

マルス「無理言わないでくれ…」

リンク「そうだ! マリオ、キえマース!」

マリオ「今、連れてない!」

マルス「そうだ、ピタロックならどうにかなるんじゃ…」

リンク「俺は変態じゃない!」

マルス「そんなこと言ってないよ!?」


マルス「次回、『ふくつのこころ』!」


リンク「うわあああああああああああ!?」

マルス「一体リンクに何が…」

マリオ「RTA動画見たんだって」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二十四話 ふくつのこころ

ちなみにピコさんの口調もよく知りません。
可愛い名前してこのヤクザ口調よ。


『オラッ! 人なんか乗せたことないから、振り落としちまっても文句言うなよ!?』

 

「流石にこれは無理ですぅぅ…!」

 

「うぐぅ… 流れに…身をっ、まかせてっ…!」

 

「それどころじゃっ、ない…!」

 

 

搭乗者を取り戻したワイルドグースは音速を超えるのではないかと錯覚する程に高速で走り回る。狭い場所なのに事故をしないのは流石のテクニックといったところか。

 

 

『おめえらに任せるしかないってわかるからこんなことしたんだ。礼はいらんぞ。』

 

「ありがとう! 助かったよ!」

 

『いらんと言ってるだろ!』

 

「うう… マリオさん、元気ですね…」

 

「体を貸してたら割と楽だったよ!」

 

「……ぁっ…」

 

「うっ……」

 

「…マルスとシークは無理だったか〜」

 

 

乗り物といえば、精々馬車程度の彼らにとっては、F-ZEROマシンは未知の領域。まともに返事も出来ない程に消耗している。

 

 

「すみません… 私も乱闘は無理です…!」

 

「ええ… この数どうするのさ…」

 

『私も助太刀しよう。』

 

 

追ってきたのはルカリオだった。コースの車道を通って追ってきたのだ。

 

 

「あれ? ルカリオだ。無事だったのかい?」

 

『先程リンクに助けてもらった。この数を一人でさばくのは至難だが、二人なら早く終わるだろう。』

 

「いやー、助かるよ! ありがとう! トレさん、二人を頼むよ!」

 

「わかり、ました… まさかキャプテン・ファルコンさんはこれを乗りこなしているのですか…?」

 

 

未だ酔い中の三人を残して近場のスピリットから解放していく。

 

 

 

 

「これで最後か…」

 

 

レースに残ったのはファイターの誰か。他とは少し違う戦いの予感に、再び覚悟を決めて物体に触れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回のフィールドは、『ポートタウン エアロダイブ』。キャプテン・ファルコンの出身であるポートタウンをベースにサファイアカップのエアロダイブを再現している。ただし、例の如くというべきか、ここも『終点』の地形と化していた。

 

『…』

 

 

通称、キャプテン・ファルコン。超敏腕F-ZEROパイロットだ。普段、戦禍の中に身を置いているような他ファイターと比べても、その筋肉は劣らない。

普段は頼もしさすら感じる威風堂々の姿も、敵でいれば厄介な物だ。

 

 

『はあぁぁ……』

 

 

『はどうだん』の力を溜めていく。キャプテン・ファルコンは遠くを攻撃する技を持っていない。それだけで勝敗が決まってしまう訳ではないのだが、有利不利を分ける一つの要素には間違いないのだ。

 

 

『…』

 

 

キャプテン・ファルコンが勝つ為には、単純に近づいてインファイトに持ち込むしかない。敵の防御すらも砕く攻撃を与えるのだ。

 

 

『ハアッ!』

 

『…っ!』

 

 

キャプテン・ファルコンの膝とルカリオの腕が交錯する。そのままルカリオは足払い。だが、キャプテン・ファルコンも跳び上がってかわす。ルカリオの腕を足蹴にして、宙で一回転して一時、距離をとる。

 

 

『…!』

 

 

再び戦闘体勢を構え直すと、またルカリオに近づく。一方のルカリオもキャプテン・ファルコンの戦法を理解しているため、相手から近づかせて反撃するカウンター戦術でいく事にした。

相手に近づかせないのも一つの案だったが、ルカリオが出来る遠距離攻撃の『はどうだん』は連続で撃てるものではない。

 

 

『…はっ! ふっ!』

 

 

手刀を顔を動かしてかわし、続くローキックも跳ねてかわす。空中に浮いてるままにキャプテン・ファルコンの体に手を当て、『はっけい』をくりだす。密着して撃たれた攻撃が外れる筈もなく、仰け反り、大きな隙となった。

 

 

『…っ!』

 

『逃さない!』

 

 

思いっきり大地を蹴り出して、跳び蹴りを放つ。

 

 

『くっ…』

 

『…』

 

 

キャプテン・ファルコンのはったシールドが、ルカリオの攻撃を耐えきった。今度はルカリオに大きな隙が生まれる。

 

 

『ぐっ』

 

 

左肩と右腕を掴まれる。あばれて脱出しようとするも、腹部に強烈に打撃が入る。膝で腹を蹴った訳なのだが、ルカリオの体が同時にキャプテン・ファルコンの方に引っ張られたので、威力が上がっている。

二度三度同じことが繰り返され、掌底で突き上げられた。

 

 

『がはあぁぁ…!』

 

 

連撃の打撃のダメージが厳しく、体勢の立て直しが出来ていない。ピンチをわざわざ見逃してくれる筈もなく。キャプテン・ファルコンが迫ってきている。体勢が整わなければ回避もカウンターもできやしない。

 

 

『ぐふっ…!』

 

 

ようやく立て直しかけたルカリオに向かってキャプテン・ファルコンは膝を突き出した。低いベクトルで飛ばされ、ステージの外に投げ出される。

 

 

『…!』

 

 

ここで頭が少し冷静になった。恐らく、まだ追撃を仕掛けてくるだろう。それをみきり、対処して反撃をしなければならない。

そっと目を閉じる。視覚が無くとも見るべきものは見える。真下のレースをしている機体の存在を忘れ、ただ戦いの大地だけが見える。まだ動いていないのか、彼の姿は見えない。

まだ。

 

 

まだ見えない。

 

 

見えない。

 

 

 

 

 

『…ッ!』

 

 

見えた。

更なる追撃に来たるキャプテン・ファルコンの姿が。『しんそく』で、相手のアウトレンジを回ってフィールドに復帰する。

 

 

『………』

 

 

後ろに振り返らずともわかる。キャプテン・ファルコンは、『ファルコンダイブ』で復帰してくる。

 

 

『はあぁぁ!』

 

 

浮き上がった最高点。その地点に向かって『はどうだん』を放った。波導を感じて、予測もしたルカリオのはどうだんが外れる訳がない。

 

 

『…っ!』

 

 

キャプテン・ファルコンの動きに、なんとなく焦りが見えた。いや、確実に見えた。今のルカリオに誤魔化しは効かない。

 

 

『…カゥ!』

 

『…っ!』

 

『まだだ!』

 

 

同時に駆け出し、キャプテン・ファルコンの回し蹴りを腕で弾いた。そして、『はどうげき』をくらわせた。

 

 

『キーラを倒すまで負けるつもりはない! 相手が同じファイターとてな!』

 

 

ルカリオの心は折れない。

身体の傷が、自らの波導を高めてくれる。それ以上に冷静な己の心すらも湧き立たせる程の熱さを感じる。劣勢でも諦めぬ強い意志が、ふくつのこころが負けてたまるか。

 

 

『…っ!』

 

 

キーラの呪いで本来の思考が出来なくとも、伝わるルカリオの波導。感情の高ぶりに呼応するように膨大になっている。

真正面から受け止め、少し後ずさりした。その隙すらも見逃さない。

 

 

『…ゆくぞ。』

 

 

静かに攻防が始まる。いや、攻防と言えるほど拮抗していない。

 

 

『はぁ!』

 

『…く…あっ…!』

 

 

『しんそく』から始まった一連の連撃は、今のキャプテン・ファルコンには決して追いきれぬもの。見切ることも出来ず、気づいたら体に衝撃が走る、といった始末だった。

 

限界まで追い詰めてしまったルカリオと、ただ至上の命令だけを聞き戦うキャプテン・ファルコン。諦めるな、という声も今は聞こえないだろう。

 

 

『(ならば至急勝たなければ…)』

 

 

ダッシュの跳び蹴りがヒット。相手の肉体をステージ上に投げ出させる。

 

 

『…っ!?』

 

『…カゥ!』

 

 

『はどうさい』を撃ち放つ。最後まで相手はルカリオを見きれぬままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…くっ…!』

 

「ルカリオ! 大丈夫かい!?」

 

『…ああ、なんともない。』

 

「嘘です、戻ってくるなり膝をついて…」

 

 

空想の世界に戻った瞬間、ルカリオは膝から崩れ落ちた。確かにルカリオはダメージが多くなるほどに、波導を高めることが出来るが、ダメージが無くなる訳ではない。乱闘の場では気にならないが、終えた瞬間緊張が解けたのだ。

 

 

『それより、そちらが心配だ。酔いは覚めたか?』

 

「まるでお酒を飲んでいるような言い方だね… キミたちが時間をくれたから今は平気さ。」

 

「取り敢えずこの辺りは制覇したかな?」

 

「見渡す限りはもう誰もいないかな? 他のみんなは合流して、もう先に行っているみたい。キミがいたところをまっすぐ先にいったところ。」

 

『なるほど… ならば早く彼を元に戻して後を追うべきか。』

 

「あ、キャプテン・ファルコンさん。」

 

「だからここの辺りレース場になってるのかな?」

 

「…そう考えるとなんだか腹が立ってきたね。」

 

「その話は後にしよう。その道のりは…シーク、ルカリオ、案内してほしい。」

 

 

二人揃って力強く頷く。

 

 

「ああ。」

 

『了解した。』




ルカリオ『追いついたか… 無事だった… 無事ではなかったか。』

フィットレ「マルス、さんも… シークさん、も、喋れない…程には…」

マリオ「大変だねー!」

フィットレ「うっ… 他人事のようにっ…!」


マリオ「次回!『溶岩城へ』!」


フィットレ「どうやら…っ! キーラの前に、倒すべき相手が… いたようですっ…!」

マリオ「そんな味方側で暗躍させていた相手にいうようなことを!?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二十五話 溶岩城へ

やっべ、予約投稿し忘れた。
タイトルも次回予告も適当だし、黒歴史話確定ですね、これは…

キョダイマックスイーブイに慰めてもらいます。


「ぽゆ〜、ぽよっとにゃ!」

 

「ポチッとな…?」

 

 

少し古めのセリフを言いながら、青いボタンを押すカービィ。この前緑のボタンを押したが、今回も何も変わった様子はない。

 

 

「どこか見えない程遠くで何か起こっているのか…? 本当に無意味とは考えにくいが…」

 

「ぱゆ?」

 

「わからないな… 取り敢えず後を追おう。」

 

「ぽよ。」

 

 

激しい川の流れの所為で、川の真ん中にいるファイターはどうにか出来そうもない。ピチューが取り乱していたので、彼と同じ世界から来たファイターかもしれない。だが、今はどうすることもできない。

キャプテン・ファルコンとルカリオの乱闘が終わる少し前のことであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰だろう?」

 

「知らね。んじゃどこかの誰かさん、覚悟!」

 

 

インクリングとリンクが降り立ったのは、人の思いによって大きく形を変化させるステージ、『マリオメーカー』。とはいっても今は『戦場』の姿となっている。

 

 

『『『『…』』』』

 

「あ、いた。」

 

「ちっちゃい… ドンキーコング?」

 

 

この場にいたのはインクリングの半分程の大きさになった四体のドンキーコングだった。明るい茶色の偽物でも、小さな姿でも、目に宿る殺気は本物だ。油断は出来ない。

 

 

「ほーい! こんなのあげる!」

 

「なら、俺もこれあげる!」

 

 

『スプラッシュボム』と『リモコンバクダン』をぶん投げる。『スプラッシュボム』の爆発と同時にシーカーストーンを使って起爆した。四人まとめて吹っ飛んでいく。

 

 

「おおー、これ汚い花火だぜ…ってやつ?」

 

『…っ!』『っ!』

 

「ハハハ、なんだそれ… って来てる来てる!」

 

 

一番下のインクリングの場所に襲いかかってくる三体の敵。後ろにダッシュしながら『スプラシューター』で引き撃ちする。これ自体のダメージは些細なものであるとはいえ、インクが与える、ダメージを増量させる効果は、軽い相手には絶大な効果を発揮させるだろう。

 

 

『…っ!』

 

「2:2で相手出来ればよかったけど、ま、そう上手くはいかないか。ほらよっと!」

 

 

ジャンプでこちらの足場に移ってくる敵の一体を弓で射る。撃ち落とされた相手に対して、刃を地に向けて『下突き』を繰り出した。

 

 

『…っ!』

 

「あらよっと!」

 

 

小さい体では避けられてしまい、マスターソードが煉瓦の大地に突き刺さる。

しかし、なんとリンクはそのまま敵を斬り上げたのだ。刺さったままそんなことをすれば大地に斬り跡が残る。それでもなお、マスターソードには傷らしい傷はない。マスターソードが名剣なのもあるが、リンクの剣術レベルの高さも一つの要因だろう。それが無ければ、硬い煉瓦を斬るなんて不可能だ。

 

 

「うーん… あっ! いいこと思いついた!」

 

 

少し考え、思いついたのは数で勝る相手を纏めて拘束する方法だった。

 

 

「とりゃあああ!」

 

 

『スプラローラー』を取り出し、寄ってくる軍団目掛けて転がした。インクリングに向かっていた三体の敵が大地に埋まり、リンクの相手をしてた最後の一体も遅れて埋まった。

 

 

「おお、ナイスインクリング! はああ!」

 

 

仲間と離れている一体に向かって『スマッシュ斬り』。リンクとの攻防で、小さくなっている敵をぶっ飛ばすのには十分なダメージだった。

 

 

「やったー! へへん、あたしにかかればちょろいもん…」

 

『…』

 

「後ろ!」

 

「えっ? あいたっ!?」

 

 

インクリングの後頭部に拳が襲いかかる。追加で現れたもう一人の敵だった。この敵もまた、小さなドンキーコングの姿をしている。

 

 

「もー! どっから増えて…インクないし!?」

 

「えー!?」

 

 

『スプラッシュボム』で目眩しをしようと、ボムを取り出そうとするが、ボムは無く。インクリングの背中に背負ってあるタンクにオレンジのインクは殆どなかったのだ。インクの管理を忘れてしまい、リンクも驚いた。

 

 

「(埋まってた連中も抜け出した!)とりあえずインクの回復! 相手は俺がする!」

 

「う、うん!」

 

 

一番上の足場へ逃げ出してセンプクする。こうすることでインクの回復を行えるのだ。

 

 

『…』『…』『…!』

 

「三体は流石に無傷じゃ無理だ… ま、いいや、ちょっと怪我するぐらい!」

 

 

三匹から放たれるタイミングが違う攻撃は、剣と盾では全てを防げない。一人ならば、距離を取るなり方法はあるのだが、今距離を取るとインクリングに攻撃が集中してしまう可能性がある。インクの補充に長い時間がかかる訳でもない。多少の間ならば大きいダメージにはならないだろう。

 

 

「この…っ!」

 

 

それでも寄ってくる敵達に痺れを切らし、少し乱雑に剣を振るった。

 

 

「おっと、いつのまに!」

 

 

向かいの足場にインクリングを狙う最後の一体がいるのを見つけた。それはイカんと、『ブーメラン』で撃ち落とした。

それと同タイミングで、インクリングがイカ状態からヒト状態に戻る。

 

 

「オッケー! 満タンだよ!」

 

「おっし! さっきのもういっちょ作戦!」

 

「おー!」

 

 

今度はリンクが三体の敵を相手取り、インクリングが一体を相手取る。

 

剣を振るのは最小限で、敵の攻撃をひょいひょいとかわすリンク。インクリングも大袈裟とはいえ、一瞬イカになって被弾面積を小さくするなど、奇想天外な動きで相手を翻弄している。時々、『スプラシューター』で殴打したりと抜かりない。

 

 

「リンクー! そろそろいいかな?」

 

「おっけー、おっけー! 好きなタイミングでどうぞ!」

 

「それじゃあ、今、すぐ!」

 

 

相手をしていた一体をリンクの方へ、正しくは他の敵の方へぶん投げる。軽い体はいつも以上に遠くへ飛ぶ。

 

 

「はい、さよならー!」

 

 

『スプラローラー』を転がして敵全てにぶつける。全てが地面に埋まり、先程一人ぶっ飛ばした状況と同じになったのだ。跳んで回避していたリンクも戻ってくる。

 

 

「はい、さい、ならっ!」

 

 

上に向かって『三段斬り』。範囲の広い攻撃は、途中加入の一人を除く三人を吹っ飛ばした。もう一人は今抜け出した。

 

 

「ラスト一匹!」

 

 

ダッシュで寄るインクリング。敵はインクリングの攻撃をかわして反撃しようとするも、

 

 

「へっ!」

 

『…っ!?』

 

 

自らの近くに刺さる矢を反射的に避けてしまい、大きな隙を晒してしまう。

 

 

「これで、終わり!」

 

「うし、次行こうぜ!」

 

 

リンクが白い歯を見せてニカッと笑う中、インクリングの『ホットブラスター』が相手に炸裂した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キャプテン・ファルコンのフィギュア化を解除した別働隊の一行は、他ファイターの跡を追っていた。

 

 

「ほうほう、オレもそうやって助けてもらったわけか。」

 

「ああ、キーラはファイターとスピリット達を支配下に収めている。当分は彼らの救出がメインになるだろう。」

 

「なるほどな〜、で今どこに向かっているんだ?」

 

「別行動を取っていた他のみんながこの先に向かったと先程聞いたんだよ。だから今は彼らとの合流。」

 

 

解放されたばかりのキャプテン・ファルコンにマルスが事情を説明する。シークも加わり現状を理解できた。

 

 

「やっぱりルカリオさん、辛そうじゃないですか…」

 

『…せめて休息は合流した後だ。今は先に…っ!』

 

「ルカリオ?」

 

 

激流の川の真ん中、陸地の崖にあるファイターを見つける。あそこの辺りはまだ手をつけられていないようだ。

 

 

『…そうか、先程聞いた変な感覚というのはこれなのか…』

 

「…ルカリオ? ホントに大丈夫?」

 

『ああ、後で説明する。今は合流だ。』

 

 

己の体に鞭打って先を進む。

進んだ先には石レンガで出来た城のような建物を見つけた。

 

 

「なんか… すっごく見たことある建物だよ…」

 

「あ、みんな!」

 

「無事でなによりだ。」

 

「ロックマン! オリマー!」

 

 

その城の入り口近くにいたのはロックマンとオリマーだった。

 

 

「他のみんなは中に入っていったよ!」

 

「ただ、マグマがあって気温が高いから私達は外で待たせてもらっている。宇宙服が壊れたりしたら洒落にならないからな。」

 

「確かにメンテナンスも出来ないからね。」

 

「キャプテン・ファルコンさんならどうにか出来ますか?」

 

「う〜ん、専門外だな!」

 

「そうですか…」

 

「マグマ…?」

 

 

二人が残っていることに納得する中、マリオだけが何かの凝視感を覚えていた。

 

 

「ルカリオもここで残ったら? はがねタイプ… なんだっけ?」

 

『…そうだな。ここは任せる。』

 

「ようこそ、鋼鉄の楽園へー!」

 

「なんだ、それは…」

 

「任されました! みなさん、行きましょう!」

 

 

ルカリオを二人に任せ、Wii Fit トレーナーに従って溶岩城へ入っていく。内装自体はこの前の基地と違って外見と広さが一致しないということは無いように見えたのだが。

 

 

「ワーオ… これは…」

 

 

マグマに足場。クッパ城と全くの相違がなかった。マリオの耳に、永遠の宿敵の唸り声が聞こえた気がした。




CF「リンク、トゥーンリンク、こどもリンク、インクリング… ファルコにこのオレキャプテン・ファルコン… 似てる名前が多いな!」

フィットレ「マリオさんとかワリオさんとか…」

マリオ「ワリオはボクの悪人イメージだから…」

シーク「ピットとブラックピットも似てるよね。」

フィットレ「あれはさしずめ、の話で名付けられましたから…」


マルス「次回、『ボクだって何度も助けられたんだ』!」


マリオ「ルキナもマルスってそっくりな名前言ってたしね〜」

マルス「そっくりも何も僕の名前をつけてたんだから同じに決まってるから…」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二十六話 ボクだって何度も助けられたんだ

前回予約投稿忘れやがったので、今回早めの投稿です。



〜青獅子ルートが終わり、金鹿ルート突入〜

どういうことだイグナーツ…
お前レベル15なのに力一回しか上がってねえぞ…
皆さんはしっかり吟味しましょうね!


「えっと…」

 

「これは… なんというか…」

 

 

溶岩の量、足場の細かな模様に至るまで完璧にクッパ城を模倣された贋物がここにあった。

 

 

「これ、キーラがやったのかな…」

 

「十中八九そうだろうね…」

 

 

思わずため息が出るマリオ。宿敵の居城にそっくりな建物を制圧するとなるのは少し頭を悩ませてしまう。

 

 

「急げー!」

 

「ぽよ〜!」

 

「あっ、インクリングさん! カービィさん!」

 

「げっ! もう来た!?」

 

「…それどういう意味だい?」

 

「え、あ、いや、そんな深い意味はないのよ!? ここにいるのピーチじゃないかってスネークが言ったからマリオが来る前に助けとこうと思って…」

 

「ぷっ!」

 

「あっ! 全部言っちゃった!」

 

 

ヘマやらかしたインクリングに話すのをやめるよう、カービィが声を上げるが、時すでに遅し。目の前の仲間達はしっかりと聞いている。

 

 

「う、うん… えと…ありがとう?」

 

「あー! その微妙なフォローっぽいのが悲しい!」

 

「嘘つけないんだな!」

 

「キャプテン・ファルコン久しぶり! 今の忘れて!」

 

 

言葉の展開が早い。

マリオがごほん、と咳払いをして会話を止める。

 

 

「その気持ちは嬉しいけど、ボクも決めなきゃいけない時には決めるよ! ピーチ姫はボクが助けるものさ!」

 

「おお! かっこいいー!」

 

「よし! インクリング、案内して!」

 

「合点承知! さ、さ、おいで!」

 

 

解かれていると思わし仕掛けを抜け、ブロックの橋を渡り歩く。

 

 

「…いた。」

 

 

心の奥から湧き上がる不思議な感覚が教えてくれる。目の前のファイターは間違いなく自分の恋人だ。おしとやかと思いきや、行動力もあるピンク色のお姫様。

 

 

「あ、やっぱ合ってたんだ。」

 

「そうか、それでは編成を…」

 

「ダメー!」

 

 

キャプテン・ファルコンの側頭部を襲うスプラローラー。

 

 

「ぶへっ!?」

 

「ダメダメ! 恋人は自分で助けたいもんでしょ! 手出したらブルーファルコンをあたし色に染め上げてやるー!」

 

「わ、わかったって、オレが悪かった。」

 

 

キャプテン・ファルコンを脅す。彼女にとって人の恋愛というのは、お節介上等、邪魔する奴は許さないという価値観らしい。

 

 

「インクは時間で消えるから、あまり脅しにはならないと思うけど…」

 

「シーク、言わないでおこうよ…」

 

「恐らく完全な見落としですね。」

 

 

キャプテン・ファルコンに未だにあれこれ言っているインクリング、彼女の頭に乗ってハテナマークをつけているカービィ。まだ彼には恋のあれこれはわからないらしい。そして微笑ましく談笑を続ける三人。思わずマリオにも笑みがこぼれた。でもそれでいい。彼女が帰ってきた時に暗い雰囲気だと彼女が気にする。

 

 

「じゃあ、頑張ってくるよ!」

 

「いってらっしゃい!」

 

「先に合流しておくよ!」

 

「OK!」

 

 

暗闇の空間の中。ここにいる彼女に会うために、助けるために。マリオは一人、飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはどこだっただろうか。確か、『マリオUワールド』。それもクッパ城の中だ。二つの足場は回転で動いており、ちょっとでも足を踏み外すと、底も見えない闇に真っ逆さまだ。

 

既に戦闘は始まっている。空中を浮遊しながらカブを投げてきた。

 

 

『…!』

 

「ハア!」

 

 

手に炎の力を宿らせて、受け流した。カブは火をつけたまま底に落ちていく。逆側の手で『ファイアボール』を繰り出す。火の玉をピーチはするりとかわしていく。

 

 

「…インクリングにあんなこと言ったけど… やっぱり直接殴るのは躊躇しちゃうや…」

 

 

いつもの大乱闘ならばそんなことはないのに。彼女が被害者に過ぎないという認識の所為なのか。

 

 

「この世界で…」

 

 

故郷の世界と同じように救えたことはなかった。クッパとの間に色々と小競り合いはあったが、この世界ではどちらかというと自分を倒すことに専念していた気がする。

だからなのか? この世界では自分で助けられたことはなかった。亜空軍の時だって自分のいないところでフィギュア化されて、クッパに連れられて助けたのはスネーク達。先を越されたと悔しく思っているわけではないのだが、この世界では自分一人で助けられていない。

 

だからこそ、今回は一人で助けると思っていたのだ。だが、それがこのざまだ。ここで勝たなければ、攻撃しなければいけないのにどうしても戸惑ってしまう。

 

 

「…あっ!」

 

『…!』

 

 

実際には一瞬だけ。思考の海から強制的に浮上させられる。頭につけてあるクラウンで殴る『クラウンナックル』の攻撃をしてきた。飛ばされたが、靴底でブレーキをかける。

 

 

「…ううん、止まってちゃだめだ。後でめいいっぱい謝ろう。いっつもボクが助けてるけど、ボクだって何度も助けられたんだ。」

 

 

時には囚われた自分を救うため、時には隣に並んだ仲間として。いつも助けているのに、今だけ助けられないではいけないから。

 

 

「はあっ!」

 

『…!?』

 

 

今までの遠距離からの攻撃から一変。一気に距離を詰めてきたことに完全に反応が遅れた。スライディングで浮かせて、一回転しての蹴り。さらに引き時に『ファイアボール』で牽制するも、これはシールドで防がれた。

 

 

『…!』

 

「ほっ! やっ!」

 

 

『ピーチボンバー』をその場でひらりとかわし、炎を纏った掌底で攻撃しようとするが、そこにいたのは彼女の従者であるキノピオ。

 

 

「うわっ!?」

 

 

顔を中心に胞子がかかり、視界が塞がれる。それを横目に、ピーチは下に重なろうとする足場を捨てて、上の足場に乗り換えた。

 

 

「うう… 目が… !?」

 

 

目の周りの胞子を払い、なんとか状況が把握できるようになるも、その状況は後少しで足場が完全に重なり、自らは落ちる一歩前といった所だった。

 

 

「うわっ、危ない!?」

 

 

慌ててもう一つの足場に乗り換えようとする。ただそれを見逃すほど相手は柔ではない。それをマリオは一番知っている。

 

 

『…!』

 

 

再びの『ピーチボンバー』。とはいえ、もう二回目になる攻撃だ。

 

 

「やあっ!」

 

 

『スーパーマント』で僅かなダメージを与えつつも、ピーチの進行方向を真逆にする。足場へと向かっていった。着地隙に火の玉を二つ当て、少しでも多くダメージを稼ぐ。

 

 

「…っと」

 

『…っ』

 

 

足場に着地し、どたぐつが少し鈍い音を立てた。相手のピーチがこちらを睨んでいるのは現実か錯覚か。そこまではわからない。わからなくても勝つだけなのだ。

 

 

『…』

 

「…」

 

 

徐々に距離を詰めていく両者。急ぐことはせずにゆっくりと歩く。

 

 

『…!』

 

 

先に動いたのはピーチ。ダッシュからの『レディープッシュ』。突進しながら攻撃する。

 

 

「よっと、やっ!」

 

 

その場でかわし、すぐ後方にいる相手に『スマッシュヘッドバット』を繰り出す。体を後ろに逸らして、強烈な頭突きの攻撃だ。

 

 

『…あっ…!』

 

 

もろに食らった。ピーチの体が浮き上がっていく。

 

 

『…っ!!』

 

 

但しそれでも戦いだけを命令された以上、折れることは出来ないのだ。ピーチやデイジーの十八番である空中浮遊。魔法のように、重力に逆らい浮遊する。マリオの真下に行き、四段蹴りで踏みつける。

 

 

「いっつ…」

 

 

腕で防いでも、腕にダメージは入る。それでも好機を逃さぬように、体へのダメージを防いだ。

 

 

「…たあっ!」

 

『…!?』

 

 

ジャンプし、再びの回転蹴り。ここで先程と違うのは、まだ終わりではないということ。

ざざっと靴と足場が擦れ、少し砂埃が舞う。狙うは遥か上。

 

 

「とりゃああ!」

 

『…まっ…!』

 

 

『スーパージャンプパンチ』で追撃した。ピーチも蹴りで対抗しようとするが、華奢な足では限界がある。防げず、フィールド外へ押し込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふわあぁ… あら? ここは?」

 

「あり? 寝てた?」

 

 

右手を口に寄せて欠伸をして起床したピーチに少し呆然とした。

 

 

「ん〜… なんだかとっても長く寝ていた気がするわ…」

 

「あはは… 痛い思いさせちゃってごめんね。」

 

 

差し出されたマリオの手を取り、立ち上がるピーチ姫。

 

 

「痛い思い? 少し記憶が曖昧ね… さっきまで何していたのかしら…」

 

「…まあ、覚えてないならそれでもいいや。また冒険の旅に出るよ。」

 

「あら? それ本当なの? 次どこに行けばいいの?」

 

「多分あそこかな? ほかのみんなも待ってるよ。」

 

「はい、わかったわ。」

 

 

手を繋ぎながら、駆け出す二人。ピンクのスカートを少したくし上げながらのピーチ。少し遅めに走り、後ろを気遣いながらエスコートするマリオ。宿敵は目の前だ。




ロックマン「こっちの三体目はルカリオ!」

ルカリオ『………』

オリマー「悪いがこっちはバシャーモだ!」

ロックマン「嘘!? でもメガ進化しても、こっちの方が早い筈! メガ進化してインファイト!」

オリマー「残念、まもるだ!」

ロックマン「うげ、でももう一度… あっ、かそく…」

ルカリオ『………』

オリマー「上を取ってフレアドライブ!」

ロックマン「ぎゃー! 負けたー!」

ルカリオ『わざとなのか!?』


ルカリオ『次回、『たいりくポケモン』。』


ロックマン「待ち時間なんだしゲームしてもいいでしょ?」

ルカリオ『そこではない!』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二十七話 たいりくポケモン

唐突ですが、私が説明欄の注意書きに「攻略順の入れ替え」を書いている理由を説明します。本小説は出来る限り私の灯火の星初回プレイの攻略順に合わせています。分断して進めたり、二人以上での乱闘などの改変は小説としての面白みを加えるためでした。ですが、私が猛烈に馬鹿な所為で、助けられるのにすぐに助けなかったファイターが三人ほどいます。

まずはピカチュウ。流れが急な川のど真ん中にいるのですが、馬鹿な私は川をくだるのに何かスピリットが必要と勘違いしていました。
次にダックハント。電気プラントも属する森エリアにいるのですが、馬鹿な私は木々のビジュアル的に通れないと判断しやがりました。
最後にリュウ。池の真ん中からいけるエリアの最深部にいるのですが、馬鹿で下手くそな私はそこに行くのに必要なスピリットに勝てず、後回しにした結果、スピリットごと存在を忘れました。挙句救出したのはキーラを倒した後…


前者二匹はなんとなく理由をつけてプレイと同じタイミングで救出します。そしてリュウですが… 適当なタイミングに詰め込みます。要するに、攻略順云々は作者の尻拭いなのです。すみませんでした。




後、関係ないですが色違いニンフィアの厳選に疲れたので誰か癒してくださ(殴
ケンタロスに突進され続ける妹さんとミルタンクカワイソス


「ピチュッ! ピチュー!」

 

「…なんかちびっこがやる気満々だぞ?」

 

「ピッ!? ピチュチュピ!」

 

「さっきのリザードンの奴先取りされちゃったから気にしてたんじゃないか?」

 

「確かに。そっちにも確か反応してたよね?」

 

 

汗をぬぐいながら進んだ先のとあるスピリットの前で立ち止まる。ピチューが、電気を抑えきれずに電気袋から漏れ出している。少量ダメージがあるはずなのだが、それも気にならないほど目の前のスピリット相手に猛っていた。

 

 

「さて、編成どうする?」

 

「ま、少なくともピチューがこうしてるってことは、かなりの強者なんだろうな。」

 

「本人の希望は叶えてやろうぜ? まずピチューで!」

 

「ピチュ!」

 

 

続いて、パックマンも勢いよく手を挙げる。

 

 

「じゃあパックマンでどうよ?」

 

「ピチューとパックマンで? …なんか不安だな。」

 

「ピー!」

 

「痛っ! 悪かったって… お前も果物投げんな!」

 

「怒らせちゃった。よし、責任取って一緒に行ってこいー!」

 

「うんうん、僕らはシーカーストーン量産化計画に忙しいんだ。」

 

「初耳だぞー? それ」

 

「今考えただろ…! はあ… なんかイロモノばかりだがやるか…」

 

 

オーブに触れる。ここよりは涼しいステージだといいな、と半ば現実逃避をしながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スネークの願いは届かず。むしろ足場も発火しているのでもっと熱い。『ノルフェア』。惑星ゼーベスの地下に存在するエリアで、溶岩で満たされているため、熱さはどっこいどっこいだ。『戦場』にされたこのステージは、下の広い足場が燃え上がっている。

 

 

「あつっ!? なんだここ、めちゃくちゃ… 発火してる!? 熱い筈だ!」

 

「チュ〜!」

 

 

率直な感想を述べる。ピチューは渋い顔をして、パックマンも既にヘトヘトだ。スネークはこれならばもっと少数で行ってもよかったかもな、と舌打ちした。結果論ではあるのだが。

 

 

「おおっ… クッパか!」

 

 

相手は赤の甲羅を身につけたクッパだった。ただ、普段より巨大になっている。

この三人はわからないだろうが、その中身は伝説とも言われし、たいりくポケモン、グラードン。かつてカイオーガと争い、大陸を広げ大地の化身とも言われたポケモンだ。伝説故の威圧感はキーラに支配された今でもひしひしと伝わってくる。それはピチューはもちろん、違う世界出身のスネークやパックマンすらも威圧する。

 

 

『…!』

 

「っ!」

 

 

ピチューを小脇に抱え、パックマンと共に最高度の足場めがけて跳びだす。ちらっと後ろを見ると、その巨大な体躯を生かした『スピニングシェル』で足場全体が攻撃されていた。

 

 

「銃身の温度はここじゃ気にしなくてもいいんだが… あっちは足場の炎が効かないのが厄介だな…」

 

 

ピチューを降ろすと、敵の強みを調べる。こちらのみの動きを大幅に制限する炎上している足場。この存在が一番鬱陶しいのだ。

パックマンがリンゴを投げる。体が大きいことは、攻撃に当たる表面積も大きくなることだ。避けようとしたが、肩に当たった。しかし、それは体重が増え、ぶっ飛びにくくなることでもあるのだ。その大きくなっている相手が超重量級のクッパのボディならば尚更だ。

 

 

「ここで否が応でも長期戦にさせるってことか…」

 

 

その奥にはこの城の主。目の前の敵の姿の本当の持ち主が待ち構えているだろう。そんなタイミングで長期戦を余儀なくされたのは狙っていたのか偶然か。

 

 

スネークの四段蹴り、ピチューの渾身の電撃を浴びせるが、大したダメージには見えない。パックマンが敵に掴まれている時に、パックマンが建てた『消火栓』をスネークが蹴り飛ばして当てても応えた様子がなかったところで完全にピチューの怒りが極限突破した。

 

 

「ピィ… ピィ… ピチュー!」

 

「おい待て! 勝手に突っ込むな!」

 

 

スネークが制止させようと声を上げるがもう遅い。クッパの姿をした敵に目掛けて『かみなり』をよんだ。

 

 

パックマンも地面に引きずりながら後ろへ投げる。続け様の『かみなり』をかわして。

 

 

「ピッ!? プイ!」

 

 

敵のパンチでピチューを飛ばし、パックマンにぶつけた。共に下の足場に落ちていき、あまりの熱さに飛び上がる。

 

 

「ちっ…」

 

 

追撃しようとした敵の目付近に『リモコンミサイル』を飛ばし妨害すると、左側の足場から二人を引き上げた。

 

 

「冷静になれ!お前じゃすぐ飛ばされるぞ!?」

 

「ピー!」

 

 

それでもなお飛び出そうとするピチューを、パックマンが軽く叩いた。

 

 

「ピチュッ! ピッチュ!」

 

「ピチュッチュピ、ピチュ!」

 

「ピチュチュ… ピチュ!」

 

「(何話してんだこいつら)」

 

 

ピとチュだけとはいえ一応は声を出してるピチューは兎も角、そもそも言葉らしい言葉を出していないパックマンがどうやって会話を成立させているのか。最初は叩かれたことか止められたことに怒っていたようだが、諌められたのかだんだんその気勢が無くなっていった。

 

 

「ピチュ〜…」

 

「よくわからんが… 慎重に戦うぞ。」

 

 

反省したのかしょんぼりしているピチューを見て、パックマンの説得が効いたと感じたスネークが呼びかける。

 

 

「代わる代わる遠距離攻撃で弾幕を貼るんだ。あの巨体にはたまらんだろうな。」

 

 

炎と共に『でんげき』が走る。体が痺れる攻撃を受け、他の足場に上がりたいところだろうが、『手榴弾』が投げ込まれ、爆発も一緒に受けてしまう始末。だが、電撃を放つのと、手榴弾のピンを抜いて投げるのでは速度が違う。

 

 

『…っ!』

 

 

タイミングを見計らって抜け出せばいい話なのだ。『でんげき』の途切れたタイミングで浮遊している足場に上がる。これならば地面を這うように放たれている『でんげき』には当たらない。しかし、この弾幕はスネークとピチューの攻撃で成り立っていたもの。ならば後一人は?

 

 

「パックマン!」

 

『ッ!』

 

 

パックマンもまた、弾幕をはろうと『フルーツターゲット』の切り替えを始めていたのだ。今回相手に対して投げたのはボス・ギャラクシアン。投げられて暫く立つと一回転宙返りして上昇していくという変わった動きをする飛び道具だった。回転の途中で一回ぶつかり、上昇する時にもまたぶつかった。それでも流石の重量だ。ステージ外には押し込めなかった。

 

 

『…ッ!!』

 

「ピチューチュ!」

 

 

一番高い場所にいる、パックマンに凶爪が迫り来る。ピチューが声を上げるも、驚いて行動が遅れた。

 

 

「ちっ… ぐおおっ!?」

 

 

飛んで行ったパックマンに少し注意を移した途端に敵の攻撃がスネークとピチューにも襲いかかった。

 

 

「…! 掠ったか…」

 

「ピチュ?」

 

 

小さいピチューは避け切ることが出来たが、スネークは右足に当たってしまう。

咄嗟に『ロケットランチャー』を撃ってぶっ飛ばして距離を作った。

 

 

「ピチュピッ!」

 

「おお、まだ平気か。こっちもまあ、動くのは支障ない。」

 

 

飛ばされたパックマンが戻ってきた。

だが、一番ダメージが溜まっているのも彼だ。無茶は出来ない。

 

 

「ちびっこ、前頼めるか?」

 

「チュッチュッピ!」

 

「あー、もう悪かったって。だがこいつはもう無茶出来ない。俺は援護するからお前はとどめを頼む。」

 

「ピッチュ!」

 

 

やる気満々だ。相手は伝説程のポケモン。彼の闘争心を高ぶらせるには十分な格だったのだ。

 

 

「ピチュッチュ!」

 

 

足場をぴょんぴょんと移り、懐に入り込む。敵は爪での連撃を続けるが、ピチューはその小さな体を使って軽々とかわしていく。

 

 

『…ッ!』

 

 

咄嗟に足場をくぐり抜けて炎の大地に降りようとした。ピチューは炎を克服出来ない以上、ひとまず安心できるはずだった。

 

 

「降りさせはしない…!」

 

 

スネークのミサイルが、パックマンのベルが敵を襲う。クッパの姿をした相手はベルによって痺れて動けなくなったのだ。

 

 

「今だ、ちびっこ!」

 

「ピチューー!」

 

 

大地の化身にいかずちが襲う。この世界だから通じる攻撃が伝説にひとまずの終止符を打った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おつかれさんー、なんかピチュー膨れてるんだけど?」

 

「プゥー…」

 

「はあ? 勝っただろ? 何拗ねてんだ?」

 

 

そっぽを向いて頬を膨らませているピチューに対してスネークがぼやく。最後に言ったちびっこ発言のせいだとわかっているはずなのにしらを切っているスネークをジト目で見るパックマン。

 

 

「みんなー! やっと合流できた!」

 

「マルス達だー!」

 

 

飛び跳ねながら両手を振るむらびと。そんな彼にマルス達も手を振り返す。

 

 

「やあみんな! キャプテン・ファルコンの復活だ!」

 

「おおー!」

 

「インクリング達と合流してたんだな。…あれ? ルカリオとマリオは何処に?」

 

「ルカリオさんはダメージが大きかったので外でオリマーさん達と待機中です。後マリオさんは…」

 

「やっと追いついたよ!」

 

「みなさん!」

 

「ピーチさんと戦っていました。」

 

 

ちょうどいいタイミングでマリオとピーチも合流した。

 

 

「それじゃあ後は奥だけかな?」

 

「まあ、そうだろ。…本当にここにいたのか…」

 

「あら? 何か言ったかしら?」

 

「いや、なんでもない。」

 

 

一番奥にいるのは、まがい物の城の城主。永遠の宿敵との戦いに、マリオは緊張と気持ちの昂りが抑えられなかった。




リンク「あ、そうだ、これあったの忘れてた。」

むらびと「あちち… これってどれのこと?」

リンク「燃えず薬〜!」

スネーク「なんでドラえもん風に…」

リンク「人数分あるな… はいどうぞー」

パックマン「〜♪」

ピチュー「チュ…チュ…チュ…」

リンク「ゴクゴク… あっ、これ塗り薬だから」

被害者達「ブーー!」


リンク「次回! 『今回は一緒に行きますわ』!」


スネーク「飲む前に言えよ!」

むらびと「ていうか自分も飲んでんじゃん!」

リンク「効果は変わらんからいいじゃん?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二十八話 今回は一緒に行きますわ

テリー配信しましたが、ストファ勢のコマンドも出来ない私が使える筈もありません。私は使えませんが動画見る限りコンボはお手軽そうですね。
さて、来週はついにポケモン新作が発売します。シールドを買う予定です。先に言っときますがポケモンに夢中で投稿忘れたらごめんなさい。予約すら忘れたんだ。投稿ぐらい余裕で忘れるよ!(白目)


- 二十八話 今回は一緒に行きますわ -

ファイター全員、無意識にマリオを先頭にして階段を登る。本人もそれについて何も言わない。当たり前の待遇と思っているわけではないが、単純にそこまで考える余力がないのだ。

 

 

「……」

 

「(マリオ…)」

 

 

マリオのすぐ斜め後ろで心配そうに彼を見つめるピーチ。たまにクッパとの対戦を間近で見ることがあるが、その時する顔と同じ顔だ。クッパにとってマリオとの戦いは特別なものなのかもしれないが、マリオにとってもクッパとの戦いは特別なものなのかもしれない。

 

 

「………ん〜! あ〜! もう! この息苦しいの嫌い! もう着くよ! もっと話すことあるでしょ!」

 

 

沈黙に耐えきれずインクリングが声を上げた。これを皮切りに他のファイター達も声を上げてもいいという謎の許しが出たと認識する。

 

 

「話すことって言ったってなあ…」

 

「正直何を話すのですか?」

 

「えっとえっと… ほ、ほら! 誰が戦うのか、とか!」

 

「彼以外にいるのかい?」

 

「ピチュ。」

 

「あ、えっと…」

 

「当の本人もそのつもりだぜ? タイマンしかないぞ。」

 

 

えっと、と繰り返しているが、どんどん声が萎んでいく。インクリングは特に会話内容に意味は含めず、沈黙していた雰囲気をどうにかしたいと思っただけであり、なんとかして会話を続けたかったのだ。そんな中、突如凛とした声が上がる。

 

 

「いえ、マリオだけじゃない。私も行きますわ!」

 

「え?」

 

「は?」

 

「へっ?」

 

「キャー!」

 

 

参戦の意向を示したのは、ピーチだった。突然の発表にマリオを含めた大半のファイターが驚きの声を上げる。インクリングなど語るまでもないだろう。さっきまでの戸惑いが一変、頭の中恋色桃色ピンク色だ。

 

 

「いや、あのピーチ姫?」

 

「私も戦います。何故かはわかりませんが、私にも奥にいる方がわかります。行かせてくださいな。」

 

「このタイミングで言うか…」

 

「さっきまで宿敵との真剣勝負だー、って雰囲気満々だったのにな。」

 

「ピーチ姫、でもさ」

 

「先程、冒険の旅に出ると伺いました。ならば私だって戦うことに問題はないでしょう?」

 

「確かに言ったけど」

 

「行きます。今回は一緒に行きますわ。」

 

「…はい。」

 

 

仕方ない。拒否は許されなかった。

割と強気なところもあるが、今回は完全に主導権を握られていた。

 

 

「シーク、シーク。こういうのを尻にひかれるって言うんだよね?」

 

「ピチュチュ?」

 

「間違ってはないんだけどどうしてボクに聞くのかなあ…」

 

「ね! リンク!」

 

「んー? よくわかんないけどそうだと思うぞ?」

 

 

 

 

溶岩城の最深部、階段を登りきった先に居た、奴が居た。視認できるそれは周りと同じファイターの力に見えるのだが、勘違いに出来ない程に強いオーラを感じ、ファイター全員を気圧させる。周りは熱い筈なのに冷や汗すら流れる程に背筋に悪寒が走る。命を常に握られているような重圧を感じる。

 

 

「これはっ…!」

 

「マリオ、タイマンじゃなくて正解だったな… なんだこれ…っ!」

 

「ピッ…チュ…!」

 

 

ピチューはバチバチと電撃を漏れさせ、リンクは普段からは想像もつかないような真剣な顔で睨みつけている。他にも同じく睨みつけたり怯えたりと反応は様々だ。

 

 

「ワオ… これは…!」

 

「でも、行きましょう。行くしかない!」

 

 

二人は顔を合わせて同時に頷くと前に出る。徐々に重くなっていくような錯覚を押し退けてそれに近づくと、ぎゅっと互いの手を握る。決して別々の場所に離れないように。そして空いているもう片方の手でそれに触れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『終点』。光と闇の流れをここ一つに集束したかのような空。黒金に輝く大地。キーラに操られているとはいえ、あの宿敵がいる場所としてはあまりにも幻想的で、不釣り合いだった。

 

 

「ここは…」

 

「こんな場所に…っ!」

 

 

振り返ってそこに居たのはクッパ。己の永遠の宿敵だった。でも、違う。この重圧は。

 

倒れこむように両の手を地面に落とし、獣が吠えるかのような咆哮をあげると、みるみるクッパの体が変化していく。このステージの半分は占拠してしまえるほどに巨大な体躯。もう一回耳をつんざくような咆哮を上げた。

 

 

『ガアアアアァァァ!』

 

「ギガクッパですって!?」

 

「キーラがこんなことまで出来るなんて…!」

 

 

突然のクッパの強化に、流石に動揺を隠せない。今までも巨大化した彼とは戦ったことはあるが、まさかここでこんな形で戦うことになるなんて。

 

 

「とうっ!」

 

「えいっ!」

 

 

遠距離攻撃の手段である火の玉やカブを放つもあまり効いている様子はない。

 

 

「これはまさか…!」

 

「マリオ!」

 

 

火の息の『クッパブレス』を潜り抜け、『ファイア掌底』をぶつける。ダメージは入っている筈だが、やはり吹っ飛ぶどころか微塵も浮き上がる様子はない。

 

 

『…グオオオオォ!』

 

「うおっと!?」

 

 

甲羅に篭った回転攻撃、『バズソー』を繰り出された。冷気を持った攻撃を頭の帽子を抑えながら間一髪で退避する。

 

 

「大丈夫、マリオ?」

 

「ああ、平気さ! …やっぱり今のクッパはボク達とは違う。体力制が適応されているんだ!」

 

「まあ!」

 

 

大乱闘では基本、ダメージを溜めて、溜まったところをぶっ飛ばすというルールを採用している。但しこれが適応できるのはファイターのみであり、単純に体力を減らす体力制のルールはあるが、ファイター以外の者と戦う緊急事態は気絶させるまで戦うことになる。

今回のクッパの場合、クッパはファイターなのは間違いない。だが、ファイターの体を使ったスピリット達はファイターの性質を宿していて、普通のルールも体力制も適応されていた。クッパはファイターでもギガクッパは違うと言えなくもない。この微妙な立ち位置ゆえに少し迷っていたのだ。だが、この巨体をぶっ飛ばすことを考えると、体力制で助かったのかもしれない。

 

 

「ピーチ姫、あまり前に出過ぎないで。この大きさだと後ろを取るのも一苦労だ。追い込まれないように前衛は必要さ。」

 

「ええ。頃合いを見て出来そうだったら攻撃しますね。」

 

 

マリオがそう言って走り出して前に出ようとした時、ツノによる打ち上げ攻撃が来る。緊急停止して、後ろに引いて回避した。

 

 

「危ない… って、あっ! この一連の流れは…!」

 

 

自らの周りに影が出来てなんとか気づいた。この次はヒップドロップをしてくるのだ。反射的に前へ進んで退避するも、それで出来た状況はクッパによって二人が分断された現状だ。

 

 

「しまった!」

 

 

先程も本人が言った通りだが、あの巨体を飛び越えてピーチの所へ行くのは並大抵のことではない。ギランと普段より威圧感の増した気がする目がマリオを睨んだ。

 

 

 

 

「えい!」

 

「ぷー」

 

 

一方、分断されたもう一人。たまに土に潜って遊んでいるがために、まれに間違えて掘り出す『どせいさん』を投げるが、クッパはこっちを向かない。

 

 

「(マリオは無事かしら…?)」

 

 

心配になっていく。頭突きや火の息を吹いている様子を見る。こちらを向いていないということはこっちからは割と攻撃し放題なのだが、それはマリオの方に攻撃が集中しているということだ。あまり平常心でいられない。

虹の魔法で攻撃するも、やはりというか、こちらへ向く様子はない。そもそも眼中にないのだろうか。

 

 

「(どうにかしてこちらへ向かせます! 無視出来ないと認知させればそれぞれ攻撃が振り分けられる。そうすればお互いに動きやすくなる!)」

 

「もしもし、おひめさまですか?」

 

「…はい?」

 

「わー、おひめさまだったですー。さっきまでうまってました。ありがとうー。」

 

 

掘り起こして先程投げたどせいさんが何故か話しかけてきた。そういえば、ファイターすら残らずキーラに捕まったはずなのにどうして普通に存在しているのか。

 

 

「あの… ごめんなさい。今手が離せないの。」

 

「ごたぼうでしたか。ぼくもおてつだいしたいですー。」

 

「うーん… ダメよ。危険だから隅っこに居てね?」

 

「おひめさまなんでたたかうです?」

 

 

クッパとの戦いに再び乗り込もうとすると、どせいさんの素朴な疑問が投げかけられた。突然の質問に一瞬驚いて止まるが、答えを紡いだ。

 

 

「え? それはみんなを助けたいからよ。みんなを助けてキーラを倒して。いつもの日々を取り戻したいの。」

 

「おひげのひともいるです。おひめさまもたたかうことないです。」

 

「おひげのひと? ああ、マリオね。それはね…」

 

 

ピーチは少し話しだす。お姫様が冒険に憧れるのは興味や関心だけが理由ではないから。




インクリング「こんな近くにマグマだよ!Twitterに上げればいいね取れそう!」

シーク「これは本物なのかなあ…」

リンク「よし! 撮れ撮れ!」

インクリング「まずはマグマではいチーズ!」

リンク「次は二人ではいチーズ!」

CF「ブルーファルコンバックにはいチーズ!」

シーク「何混ざってるの!」


CF「次回! 『助け合い』!」


インクリング「大変だ! ブルーファルコンが邪魔でマグマが見えないよ!」

リンク「完全に邪魔だったな!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二十九話 助け合い

ああああああああああああ書きたいことが多すぎるぅ
取り敢えず作者の心の叫びから行きますー!
テリーカービィの声が可愛い過ぎるよおおおお
とろん、おーとひょーじゅん、ふぁるこーんぱーんち のボイス激かわ四天王ができたよおおおおおお でも、めらみ も可愛いよおおお選べないよおおおおお
ポケモン盾楽しいよおおおおお
まだバッジ二つだよおおおお ガラルポニータどこだよおおおおおお


ごほん。失礼しました。

Q.せっかくギガクッパとの対戦なのになんでマリオで行かなかったの?
A.カウンターが使えないからです。つまりはそういうこと(カウンターゴリ押し)です。



『グオオオオオ!』

 

「くっ…うっ…うう…!」

 

 

襲いかかる火の息を、シールドを展開して防ぐ。だが、シールドも無敵ではない。攻撃を防ぐ度にシールドは擦り減り、完全になくなると使用者に強烈な目眩を引き起こす。

 

 

『ガウッ!』

 

「おっ、うわああ!」

 

 

二回続けての爪での攻撃。一度目はなんとかかわしたものの、二度目の攻撃は、もろにくらってしまい、一気にマリオの体を痛めつける。

 

 

「うっ… はあ… はあ… 一撃で、こんな…」

 

 

元のクッパが攻撃力が高いのもあるのだが、巨大化に合わせてギガクッパとなっており、攻撃力は格段にパワーアップしている。

 

 

「(離れちゃったピーチ姫のことも気になるし、ここは隙をみて向こう側に動くべき? でもクッパを跳び越えるのは骨が折れるや。…そうだ! 攻撃中の低い体勢の時ならば!)」

 

 

巨大化しているとはいえ、基本的な攻撃の技に関しては平常のクッパと変わりはない。技の一つの、甲羅に引っ込んで回転して攻撃する技、『スピニングシェル』。これを繰り出している時ならば、飛び越えていけるかもしれない。

 

 

「(まずは攻撃を誘発させる! 近づいて戦うんだ!)」

 

 

『スピニングシェル』の特徴から、近づく相手を振り払うのに適していると判断したマリオは、接近戦に持ち込む。『スピニングシェル』を出させて、回避して向こう側へ跳び越える。だが、クッパには高火力至近距離の攻撃が多いので、我慢比べになるだろう。

 

 

「いっ… やあ!」

 

 

『ブルヘッド』の攻撃をかわそうとする。直撃はしなかったが、爆風が吹き荒れ、肌をチクチクと痛ませる。反撃の『マリオトルネード』でそれなりにダメージは入っただろうか。

 

 

『グウウウ…』

 

「(引っ込めた! 今だ!)」

 

 

鋼鉄の甲羅と突起に、強力な回転が加わり触れただけで相手を巻き込む『スピニングシェル』。だが、今はそれを一番待っていたのだ。

 

 

「とおおっ!」

 

 

今までで一番のジャンプ。ただただ高くを、ピーチを目指して山なりに跳べ。

 

 

『ッ!』

 

 

しかし、ここでクッパにこちらの狙いが気づかれてしまった。『スピニングシェル』を中断し、回転の勢いが死ぬ前に空に弧を描くように引っかき攻撃をした。

 

 

「ダメよ!」

 

 

この戦いはスーパースターだけではない。もう一人、スーパースターに相応しいプリンセスもいるのだ。助走までつけた『ピーチボンバー』がクッパの脇腹に直撃する。この攻撃によってクッパはふらつき、マリオへの攻撃は成立しなかった。

 

 

「ピーチ姫!」

 

「マリオ! 怪我はない? 大丈夫?」

 

「ああ、こんなのかすり傷さ!」

 

 

再会の言葉をかわす。

 

 

「おひげのひとだ。こんばんはー。」

 

「えっ? あっ、はい。こんにちは。」

 

 

アイテムにもなっているどせいさんが何故にここにいるのか、会話しているのか。先程まで戦意を抱いていたというのに唐突な挨拶に気が抜けてしまった。

ピーチの耳元で質問する。

 

 

「えっと… ピーチ姫?」

 

「また埋まってたみたいで…」

 

「たのしかったです。」

 

「楽しかったんだ…」

 

 

今までも普通に遊びで潜っていたのか。道理でいくら注意しても引っこ抜いてしまうわけだ。

 

 

『グオオオオオ!』

 

「あっ! 乱闘中だった!」

 

 

クッパの咆哮で意識が大乱闘に戻る。どせいさんとの会話に気を取られている場合ではない。

マリオはすぐにどせいさんを抱えると、出来るだけ遠くへ避難させる。

 

 

「たいへんです。おひげのひと。」

 

「ん? どうしたんだい?」

 

「うしろにぱんちがせまります。」

 

「え? っ!?」

 

 

やはり気が抜けていたのかもしれない。敵の目の前で背を向けるだなんて。回避もシールドも間に合わない。

 

 

「キノピオ!」

 

「!? た、助かったよ!」

 

 

ピーチが従者に命じ、マリオと拳の間に入れる。カウンターの胞子でやり返すことに成功した。

 

 

「おひめさま、たまにあるいっしょのぼうけんはちからになりたいそうです。」

 

「え?」

 

「いっしょにぼうけんはめずらしいからだそうですよ。」

 

 

おひめさまはピーチのことだろう。確かにいつもはクッパに拐われてばかりだが、同じ冒険に仲間として共に戦うこともあった。

 

 

「ピーチ姫…?」

 

「そう… 言っちゃったのね。」

 

 

聞いてしまったことをマリオが謝ると、別に隠していた訳ではない、と返し、続けた。

 

 

「後で私を助けるまでの旅路を聞くのは楽しいけれど、実際に見てみたいと思ったことは何度もあるわ。でも…」

 

 

『おひげのひともいるです。おひめさまもたたかうことないです。』

 

『おひげのひと? ああ、マリオね。それはね、私も力になりたいから。いつも助けてくれるから… って理由がない訳じゃないけど。仲間として頼ってくれるなら私はそれに応えたい。』

 

 

「一方的じゃない。助け合い… 私はこの関係がとっても素敵だと思うの。」

 

「ピーチ姫…」

 

 

助け合い。心の中で繰り返した。

自分はピーチを助けたいけど、ピーチも自分を助けたかったのだ。いや、それだけじゃない。

今まで助けたファイターだって助けたい人はいっぱいいるだろう。これから助けるファイターだって、助けたい人はいる。

そうやって片方ではなく双方から支え合う。確かに素敵だ。そしてそれは、

 

 

「それじゃあ、クッパも助けなきゃだね!」

 

「ええ! 頑張りましょ!」

 

「ふぁいとですー。」

 

 

きっとどんな悪にだって例外はない。降ろしたどせいさんの気の抜けた声援を受け取り、クッパと二人で対峙する。

 

 

「はあああ!」

 

『グルルル…』

 

 

両の手に炎を纏い、ダッシュで近づいていく。ピーチも跡を追って進む。

 

 

『グワォ!』

 

「はっ!」

 

 

大地を抉るかの如く強大な威力を発した拳がピーチを襲う。咄嗟に傘で浮き上がり、直撃は避けたが、風圧で少し後退した。

 

 

「とりゃああ!」

 

 

マリオはガラ空きの腹部に二連続で掌底を叩きつける。さらにバク転で後退し、跳び蹴りを放った。

 

 

「マリオ! またヒップドロップ! 気をつけて!」

 

「んっ! うわっと!?」

 

 

最初の角の突き上げをなんとかシールドでガード。ピーチのいる場所に目掛けて滑り込むことで再びの分断を防いだ。

 

 

「危ないなあ…」

 

「えいっ!」

 

 

頭に着けているクラウンで殴る。あまり変化がないように見えるが、ダメージは溜まっていると確信している。

 

 

「次は私が…!」

 

 

浮遊の魔法でクッパの目線の高さまで飛び上がる。一度身を引いて引っかき攻撃を掻い潜り、クッパの鼻っ面をヒールで踏んで攻撃する。

 

 

「じゃボクは足元!」

 

 

回し蹴りの要望で足払いをかける。足払いの効果はないだろうが、それでも多少なりとバランスは崩せるし、ダメージは入る。

 

しかし、それが頑丈な砦が崩れるための一穴となった。攻撃が殆ど同時になったとはいえ、マリオが込めた力以上にクッパがふらついたのだった。

 

 

「あと少し!」

 

 

上体を逸らして思いっきり頭突きを放つ。マリオのその一撃で完全にクッパはバランスを崩した。

 

 

「さあ、とどめ!」

 

 

ピーチのどこから取り出したのか全くわからないフライパンが思いっきりクッパを殴打する。

 

 

「はあ… はあ…」

 

 

ギガクッパの体が、紫色の閃光と共に崩壊していく。勝利を祝福するかのように、無限の空は白く光り輝く。

 

 

「おめでとーございますー」

 

「あっ… あの、あなたは…」

 

 

アイテムである以上、きっとどせいさんは一緒に戻れない。大乱闘というルールがどこまで適応されているか不明なため、下手するとここに一人取り残される可能性もある。

 

 

「ぼくはみんなのところにかえります。」

 

「帰れるんだね、良かった良かった!」

 

「むらにあそびにきてください。おふたりさまならだいかんげいですよー」

 

「…ええ。いつになるかわからないけど、必ず会いにいくわ。」

 

「さよーならー」

 

 

フィールドに移動する時のように視界の全てが真っ暗になり、戦いに挑む前の世界に戻る。違うのは、他のみんなが駆け寄ってきていて、目の前にクッパのフィギュアが転がっていること。これだけで、助けたという事実を肯定してくれた。




現ファイター

カービィ
マリオ
マルス
ピクミン&オリマー
パックマン
Wii Fit トレーナー
Dr.マリオ
インクリング
ピチュー
ロックマン
スネーク
むらびと
シーク
リンク
ルカリオ
キャプテン・ファルコン
ピーチ
クッパ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二章 まとめ

作者:地の文。進行役。全ての元凶とも言う。

パルテナ:メタ発言してもキャラ崩壊にならない人。口調もわかりやすく、とんでもネタでもやりかねない性格と可能にできる力を持つ創作者に優しい存在。

ベヨネッタ:鋭く意見を挟めるので、話の切り替えに便利。誰かに気をつかったり、恐れたりする相手があんまりいなそうなので、人によって態度を変えない存在。

ロイ:アクの強い他メンバー全員のツッコミ役。他メンバーが女性2名性別不明2名と肩身の狭そうなお方。常識人だがそのベクトルが最後まで持つだろうか。

ダークサムス:謎。



「………」

 

なるほど… じゃ、リーフィアで。

 

「アカネイア大陸」

 

「黒い巨塔です。」

 

「…もう始まっているわよ?」

 

 

おっと失礼、うっかりしりとりが白熱しました。

 

 

「作者がランターンで終わらせたかと思ったらパルテナがンギュア基地で続けるのは流石に予想外だったよ…」

 

「というかダークサムスの答えは作者にしかわからないので不正し放題ですよね?」

 

 

失敬な、ずるなんてしていません。話の方向性を見失わない内にファイター解釈のコーナーを進めてしまいましょう。

 

 

「はーい♪」

 

 

二章の初めから… むらびとくん。

普通の少年の感性はありますが、お金の話になると目の色が変わります。

 

 

「それであんなむらびと事変が起きてしまったのですね…」

 

 

いやあ… 私もどうしてあんな話を書いたのか… インクリングちゃんごめんね。

 

 

「それで、どこから守銭奴キャラが出来たの?」

 

 

2次創作ではよく、無表情で斧を振り回すサイコパスキャラとなっていますが、それよりは可愛いでしょう?

どうぶつの森シリーズを皮肉った結果、こんな金金のキャラが出来ました。皆さんもやったでしょう? とび森の無限増殖。

 

 

「懐かしいな… 出来たのいつだっけ…」

 

 

他にもローン返済の為に魚虫を取りまくり、時間の流れを弄る…

 

 

「もうやめなさい。読者も心が痛いわ。」

 

 

かくいう私も胸の古傷が痛みます。基本ファイターの時系列は最新作後をイメージしていますが、しずえさんがとび森出身者なので、このむらびともとび森からの参戦です。

 

 

 

さて、シークさん。…君かな?

ま、どっちでもいいか。このシークはトワイライトプリンセスの出身です。実はシークさんの登場作品は殆どないのです。Xとfor時代はトワイライトプリンセスの没デザイン。DXの時のオカリナが初登場の作品です。

 

 

「ゼルダ無双にも登場しますが、あれは無双の世界のゼルダだったりします。」

 

 

SPのシークはブレスオブザワイルドの装備の一つ、忍びの服を着ています。ブレワイリンクから服を貰ったという設定はここから取っています。

 

 

「………」

 

 

時オカゼルダではなく、トワプリゼルダと同一人物にした理由ですか?

 

理由はいくつかあります。

まず、ゼル伝キャラに亜空の使者の話を知る者がいなくなってしまうこと。まあ、ここはあまり気にしなくてもいいんですが。

 

二つ目。時オカシークならばそのデザインにする筈です。

 

 

「ですが、新作の要素を入れたかったという線もありますよ?」

 

 

服を抜いても時オカシークとは違うんですよね。比べればはっきりしますが、時オカシークには三つ編みがありません。

 

 

「えっ? ………本当だ…」

 

 

三つ目としては時オカシークではない方が面白いことになるからです。

 

 

「そんな理由で…」

 

 

聖地編を待て!

 

 

「続けばいいわねぇ。そこまで。」

 

 

うっさい、魔女。

 

 

 

次、リンク。まあ、文句のつけようもなくブレワイリンクです。

 

 

「逆にこの格好で四つの剣のリンクだったらびっくりしちゃいますよ。」

 

 

確かにそうですがそのチョイスはなんです?

よく見る2次創作の性格と本小説のリンクとでは対した違いはないですね。百年前は無表情な理想の騎士を目指していましたが、記憶が無くなって高が外れたためはっちゃけています。

 

 

「いや、はっちゃけって!?」

 

 

自撮りします。適当料理します。人生ポジティブシンキングです。精神年齢はインクリングとどっこいどっこいです。

 

 

「インクリングも低めじゃない?」

 

 

ぐぬぬ。反論出来ぬ…

 

 

 

お次はるかりーんじゃない、ルカリオです。ポケモン達もゲーム原作の固定の設定は持たないので半オリキャラ化しているのですが、スマブラルカリオは映画イメージと公式で明記されているので、本小説のルカリオは映画のルカリオと同一人物です。

 

 

「同じなんだ。」

 

「………」

 

「でも、それではあの映画のラストからどうやってここに来たのかとか、どうしてメガシンカ出来るのかとか色々と不明な点が…」

 

 

え、あー、はい。もしかしたらルカリオはアニポケの世界ではなく死後の世界から来ているのかも…? スマブラの世界から帰れないとかではアーロンと再会出来ないので個人的にもノーセンキューです。

 

メガシンカ?

…サトシかアーロンの絆説か、実はきずなへんげ説か、神速のゲノセクトに出るミュウツーと同じ原理説かお好きな方をどうぞ。

 

 

「ぶん投げじゃない。」

 

 

出来る限り辻褄は合わせていますが、どうにもならない物もありますよ。ルフレの切り札にてクロム分裂問題とか…

 

 

「あー…」

 

 

どっちか偽物の設定にするとか覚醒ファンに怒られますし、私も怒ります。フィギュア設定ならどうにか出来たんですがね。やはりクロムはスマブラにてネタ枠…

 

 

「ではルフレの最後の切り札はどうなるのですか?」

 

 

私の最後の切り札でどうにかします。最後の切り札『明言しない』。

 

 

「えーー!?」

 

 

はい、この話終了! 閉廷!

 

 

 

流石CF。キャプテン・ファルコン。

スマブラにて作品をまたごうが、一定のファンを持つかなりの強キャラです。ただ続編の一報がないので子供達からスマブラのキャラ認識されているだろう可哀想なファイターです。

 

 

「所々に毒があるのは仕様なのかな?」

 

 

新パルとマリギャラとポケモンレンジャーの新作はいつまでも待ちます。

 

 

「確かにきて欲しいですねー」

 

 

桜井さんの靴を舐め続けるのだ。

 

 

「…一切の誇張無しで本気でキモいわよ。」

 

 

はっ!? し、失礼しました。お見苦しいところを見せてしまいました。F-ZEROシリーズも作者はやってません。基本的にゲーム設定を使用させていただきますが、アニメの細かい設定は取り入れるかも?

 

 

 

そしてピーチ姫。ピーチはマリオと違って本編でもしょっちゅう喋っています。いたストでもいますがね。ですが、サンシャインなどの性格を使用させていただいています。

 

 

「………」

 

 

マリオはいたストの性格なのにって?

出来る限り本編の設定を使いますが限界はありますよ。それにいたストってたまに設定の改変が凄まじいのですよ。わかりやすい例はDQ5のフローラ。人の好みが分かれるのでピーチは本編の設定です。

 

 

「本編設定があるのに外伝作品の設定を使用するのもまた違和感があるし、まあ納得だよ。」

 

 

そうだ。このタイミングで本小説のカップリングについてのお話をさせていただきます。

本小説に出てくるカップリングは『本編ゲームシリーズ、またはスマブラシリーズで確認出来るカップリング』に限ります。

具体的に例を挙げるならば、マリオとピーチ、ルイージとデイジー、ルフレとルキナ、他にはマルスとシーダ程度です。

片想いの設定があるならば反映はさせます。ですが、その他は友情程度に納めます。

 

 

「なるほどなるほど… でもルフレとルキナですか…?」

 

 

参戦ムービーと特殊勝利会話の『痛くなかったかい?』の言い方は明らかに恋人にする言い方ですよ。

覚醒本編でもルフレ女でクロムと結婚、ルフレ男でルキナと恋人だとイベントが少し変化します。それもあって、個人的にスマブラではルフレ女はクロムと恋人、ルフレ男はルキナと恋人のイメージです。

でも、安心して下さい。私自身恋愛描写は苦手なのでストーリーを面白くするためのフレーバー程度にしか使う気はありません。

 

 

「ふぅーん…」

 

 

ifでも結婚システムはあるのですが、絶対必要のイベントではないので全員未婚の設定です。ただ、必要な場合… この次元でのクロムの妻とロイのお母様は設定上必要です。

 

 

「ふぇ!?」

 

「うーん、ロイにメタ発言への理解はまだ早かったですか。」

 

 

これも最後の切り札『明言しない』を使います。当然存在はしていますが誰とも言いません。メインヒロインニニアンの存在はありますが、メインだろうが選択肢がある段階で明言されない悲しい結果となります。

 

 

「…ぁぅ…」

 

「………」

 

「作者ー、ロイが限界ですよ?」

 

 

ちなみにニニアンは竜のハーフなのでニニアンが母の場合はロイ君クォーターになりますね。私個人的にもエリニニ推しですし? 竜ロイは創作意力を燻られる素晴らしい設定ですがエリウッドとの結婚相手が一人ではない以上使う訳にはいかないのです。まあ要するにロイとルキナの母親は想像にお任せしますってことです。

 

 

「………………」

 

「ついに喋る気力も無くしたじゃない。」

 

 

アッハッハッハ。

 

 

 

さあ、会話すらしていませんがクッパも紹介しておきましょうか。一人称はワガハイ。口調がわかりやすい子は大歓迎です。

 

 

「まだ出てないし… 話が膨らまないわ。」

 

 

基本的にはマリオ達を下に見てますが、ライバルとしてや、一人の人間としての信頼度は厚いです。息子さんに関しては溺愛はしていますが、しっかりした教育はしているでしょう。でなければ、クッパの嘘を見破る力はないでしょうしね。

 

 

 

 

よし。これで二章のまとめは以上です!

あー、疲れた。この二章とても短いのですが、それでも今話は、いつもの話と同等の文字数はありますよ。

 

 

「お疲れ様でーす♪」

 

「………」

 

「やっと終わったわね。」

 

「…ぁ………」

 

 

ロイ君はいつまで唸ってるの?

よし、焼肉屋にクッパ食べにいきましょうか。

 

 

「弄りかしら?」

 

「はーい♪」

 

「…………」

 

 

そういえばダークサムスはご飯を食べれるのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あっ、置いてかれてる。また、三章のまとめでお会いしたいですね。僕は後を追います。」




ンギュア基地:星のカービィ ロボボプラネットに出てくる中ボス。カービィシリーズ伝統のシューティング面にて画面横の部分を全て使う程の長さで登場。通常プレイでは特に難しい場所ではないが、RTAでは超密着して攻撃するので、ダメージだけ見れば一番走者を苦しめていると言えるかもしれない(苦しんでいるとは言ってない)

ランターン:ポケットモンスター金銀から登場したライトポケモン。モチーフはチョウチンアンコウ。種族値は体力以外ぱっとしないが、みず でんきと恵まれたタイプ。れいとうビームやマジカルシャインなどサブウェポンも悪くなく、かいでんぱ、ドわすれなど補助系も豊富。

黒い巨塔:新 光神話パルテナの鏡で登場する巨塔に所属する神器。黒色の四角柱が付いた棒のような形をしており、攻撃力は高く、誘導も強いが足が遅くなる。巨塔としてはスタンダートな神器。まあ、作者巨塔使わないんですが。

アカネイア大陸:アリティアなどがある大陸の名前。ようするに暗黒竜と光の剣やら紋章の謎とかの舞台。





リーフィア:ポケットモンスター ダイヤモンドパールから新たに登場したしんりょくポケモン。特性はしんりょくではない。イーブイが苔に覆われた岩の周りでレベルアップすると進化する通称ブイズの一員。HGSSでは岩がなくなったり、剣盾ではリーフのいしに進化方法が変わったりと相方のグレイシア共々不遇な扱いを受けている。が、レベル100にしたイーブイの進化先が増えたと考えると便利だったり。進化方法が変化したポケモンはグレイシア、ニンフィアの他にはミロカロスがいる。
全国図鑑470、シンオウ図鑑では169。特性はリーフガードとようりょくそ。130の防御力と110の攻撃力、95の素早さと物理方面に特化したブイズ。メインウェポンはリーフブレード。サブ候補はアイアンテールなどか。つるぎのまいも覚えるので積むもよし。天候を晴れにして、素早さを上げて上から殴るのもよし。
物理受けもよし。あまえる、あくびといったブイズ特有の豊富な補助技を駆使しながらこうごうせいで粘ろう。物理の不一致抜群程度なら大体耐えられる。イーブイ時代に覚えさせたバトンタッチでつるぎのまいやのろいを積んだ後に後攻バトンなども一興。つるぎのまいがあるとはいえ、この方法だとブラッキーに武があるか。
最初は71レベルでようやくリーフブレードを覚えるというひどい有様だったが、BW2から45になり、ストーリーでも使える程度に調整された。
新作ではフリーズドライを覚えた相方にガラルの希望である後輩に対してはたきおとすやつばめがえしが奪われたが、かわりにやどりぎのたねやソーラーブレードなどを習得。ポケモンホームが解禁されればやどりぎやはたきおとすが兼用できるので春を待とう。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三章 ほのかな鼓動を打つ
三十話 怒りのままに


皆さま、お聞きください。
この作者はまたやらかしました。当日に予約投稿すればいいか思考をやめない猿以下の知能。いや、ポケモンがね、楽しかったので…
でも、そのおかげで厳選が進んだよ!(白目)


そして安定の題名クオリティ。本文中から取ったせいでこの有様。ちょっと気取った方がタイトルに困らないと気づいたのは未来のお話なので暫く激ダサタイトルが続きます。


クッパを救出し、外にいたオリマー、ルカリオ、ロックマンと合流したファイター達。

再びキーラの結界が薄くなったのを確認すると、作戦の続きを切り出す。

 

 

「…それじゃあ、西方面の探索に行くのは僕、カービィ、インクリング、ピチュー、クッパ、ルカリオ、キャプテン・ファルコン、ロックマン、パックマン。他、周囲の探索はマリオ、オリマー、リンク、シーク、ピーチ姫、トレさん、スネーク、むらびと。この分担で構わないかな?」

 

 

人数も増えてきたので、二手に別れようという作戦だった。手を出せないのか、単純に放っているのか不明だが、己の護りが段々と崩壊しているのにも関わらず、キーラが直接何かしてくる様子はない。

二手に別れる策が現実的になる程の人数はいるので、実行することになったのだ。

 

 

「はい、問題ないです!」

 

「おおありだ! ワガハイとピーチ姫を同じグループに入れろ!」

 

「理由が私的なので却下〜♪」

 

「ピーチュー♪」

 

「ぐぬぬ… きさまら!」

 

 

クッパはインクリングとピチューを追いかけるが、彼は鈍重なため、彼女達に追いつかない。そんな光景をマルスは苦笑いで見ていた。

 

 

「あはは…」

 

「では、何かあったらここに戻ってこよう。」

 

「了解。それじゃ、行こうか。」

 

「マルス! せめてこのガキ共と一緒にするのはやめろ!」

 

「却下〜♪」

 

 

インクリングにおちょくられるクッパが怒りのままに先行する形でファイターの半分が進む。

 

 

 

 

 

 

「ガアアアアアアアアアアァ!」

 

 

一回吠える。それに答える者はなく、ただシュールに咆哮が響き渡っただけだった。

 

 

「少し落ち着こうか… こっちの方角はまだ行ってなかったかな? 地形的に言えばトレさん達が居た街の北辺りか…」

 

 

辺りを見渡しながら頭の中で地図を描く。

 

 

「まるす〜!」

 

「んっ? どうしたの、カービィ?」

 

「ぽよ!」

 

 

ハートの形をした湖の真ん中。かかった橋の先には赤いボタンがあった。今までも見つけたそのボタンの意味は不明だが、今まで緑、青のボタンを押している。

 

 

「ぱーゅ! ぽよよ!」

 

『三つ目でキリがいいからそろそろ何か起こりそう、か… そうかもしれん。』

 

「あ、ルカリオ、テレパシーで会話出来るんだった。…そういえばさ、えっと…歩道であれが誰かわからない?」

 

 

インクリングが指差すのはそのボタンをまるで護衛するかのように存在している一人のファイターだった。

 

 

『歩道ではない、波導だ。無理だな。キーラの力が強いのか、誰かまでは感知出来ない。』

 

「んー、そっか、残念。」

 

 

がっくりと肩を落とすインクリング。

 

 

「ふん、あれが捕まったファイターか! 弱っちい奴め!」

 

「おいおい、キミもそうだろ?」

 

「黙れ! だが、ちょうどいい。ワガハイのストレス発散に付き合ってもらおう!」

 

 

そういうと、クッパはファイターに向けて駆けていった。

 

 

「ちょっと待って… ってもう行っちゃった。」

 

 

ため息を吐く。幸先が別の意味で不安だ、とぼやきながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『惑星コーデリア』。ライラット系の大半の人口がこの惑星に集中しており、ライラット系の首都として発展している。普段はグレートフォックスの上に乗って大乱闘をするのだが、その機体は影も形も無い。かわりに『終点』の形の足場があるだけだ。

 

 

『…』

 

「フンッ」

 

 

コーデリア軍の主戦力として戦う、スターフォックスのリーダー、フォックス・マクラウドがクッパの目の前に立つ。

だが、それだけだ。相手を対策した戦法を取らねばとは思うが、基本相手が誰であってもクッパは関係ない。怒りをぶつけられる者であれば誰でもよかった。鼻を鳴らし、戦闘態勢を取る。

 

 

『…!』

 

 

フォックスが走り出す。ファイターの中でも、とても速い方に位置するフォックスの走りに、逆に下から数えた方が早いクッパが相手になる訳がない。その辺りはわかっているため、動かず迎撃の構えを取る。怒りに任せて切り裂きたいのは事実だが、負けたらさらに怒りが増量するだけだ。

 

 

「ムッ…」

 

 

走る体勢に、とある技の構えが加わったのをクッパは見逃さなかった。一時的に急加速する技、『フォックスイリュージョン』。

 

 

「ハアッ!」

 

 

シールドで阻まれ、急停止した相手に爪の攻撃をくらわせた。

 

 

『…!』

 

 

体勢を整える傍ら、すぐに後ろに下がると『ブラスター』を取り出す。背後から受けてしまえば気づかない程の低威力の攻撃ではあるのだが、連射力がとても高く、気づかぬうちに大きなダメージを与えられる。

 

 

「フンッ、そんな小細工通じるか!」

 

 

フォックス目掛けて、『クッパブレス』で攻撃する。放たれる火の息をかわすために飛び上がるフォックス。

 

 

『…っ!』

 

「…? 後ろか!」

 

 

流石のスピードだ。一瞬後ろに回ったことに気づかなかった。その一瞬が命取り。

 

 

「グオッ…!」

 

 

背後からの百烈キック。目にも止まらぬキックの連続を受ける。フィニッシュに、より一層の力が加わった蹴りを放ち、クッパを地に落とす。

 

 

「ぐっ…」

 

『…!』

 

 

フォックスの攻撃はまだ続く。

ダッシュで更に勢いをつけ、跳び蹴りを放った。

 

 

「ぐう…!」

 

 

回る視界の中で、再び『フォックスイリュージョン』の構えを見切った。

 

 

「馬鹿の一つ覚えか!」

 

 

シールドを張れる体勢ではないものの、身を翻してかわすことは十分出来る。体を捻って回避する。フォックスは通り過ぎていった。

 

 

「フンッ」

 

『っ…』

 

 

ドンッという重い音とスタッという軽い音。対照的な足音が同時に鳴る。

お互いに体の向きを変え、再び対峙する。

 

 

『…ハッ!』

 

 

再び先に駆け出したのはフォックスだった。

クッパはフォックスに足の速さで敵わないが、フォックスもまた、クッパにパワーで劣っている。少量のダメージから逆転される可能性があるのだ。クッパの重量もあって、積極的に挑んで、ダメージレースで勝利、ぶっ飛ばされる前にぶっ飛ばさなければならない。

フォックスから始まる攻防は、お互いの利害の一致で行われている。

 

 

ダッシュで近づくフォックスに拳をぶつけようとする。フォックスは走りながらも身を屈んで回避した。そして無防備になった腹部に彼の鋭い蹴りが襲う─

 

 

「グオ! チッ…」

 

 

思わず、後ろへ下がってしまう。

近距離戦はクッパに分があるかもしれないが、こう懐に入られてしまっては寧ろこっちが不利だった。反射的に吐いた火でフォックスはまた下がっていく。そして三度対峙する状況ができてしまった。

 

 

「(こ、い、つ…!!)」

 

 

理性的に抑えていた怒りが遂に頂点に到達した。

 

 

「もうやめだやめ! このまま引き裂いてくれるわっ!」

 

 

のしのし、と重厚な足音を鳴らし、爪を煌めかせ、先に仕掛けんと走り出す。ほぼ同じに相手も走り出す。

 

速度ではやはりクッパでは勝てない。本格的な攻防が始まる地点は、クッパの方が崖に近い位置となる。場所取りはフォックスに白星が上がる。

 

 

「くらえっ!」

 

 

脚部に思い切り力を込める。隙が大きい以外はパワーもリーチも強い『メガトンドロップキック』の動きだ。

 

 

『………っ!』

 

 

対するフォックスは炎を身に纏って突撃する『ファイアフォックス』を繰り出す。技が直接激突した。

 

 

「ぐう…」

 

『っ!』

 

 

勝者はクッパだった。技を繰り出す本人も、技のパワーもクッパが勝っていた。くらった技のダメージまで消えている訳ではなかったのだが、それはお互い様だ。

 

 

「なっ!?」

 

 

強力な攻撃に当たり、勢いも相殺できずにフォックスはぶっ飛んでいった。最後の一撃に競り勝ったと言えば、良い勝負だったと言えるのだが、一方的に倒したかったクッパにとっては後味の悪い乱闘になってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「離せっ! もう一回やらせろ!」

 

「あーん、もう落ち着けってばー!」

 

「ピチュッチュー!」

 

「なんなんだ、一体…」

 

「あはは… 気にしなくていいよ…」

 

 

再戦を強引に申し込もうとするクッパとそれを止める他ファイター。そんな光景を呆れた顔で見つめるフォックスと最近苦笑いが増えたマルス。

 

戻ってきた時、まだフィギュアだったフォックス相手に関節技を決めようとしていたクッパを必死にとめ、引き離してフォックスを元に戻したのだ。

 

 

「再戦ならキーラを倒してからにしような!」

 

『妬みで動いてもどうしようもないぞ。』

 

「黙れ!」

 

 

一歩踏み出した時の衝撃で、パックマンが倒れ、その体型のままに転がる。シュールに転がってきたパックマンを思わずフォックスは目で追っていた。

 

 

「あ、そうだ。カービィ、奥のボタンを頼むよ。」

 

「はあい!」

 

「あ、ぼくも押したい!」

 

「ぽよ、ぽよゆい!」

 

『ならば同時に、だそうだ。』

 

 

ロックマンとカービィは同時に赤のボタンを押す。だが、何も起こらない。

 

 

「えー、結局何も起こらないのー?」

 

「ぷー!」

 

「んー… 全く意味がないとは思えないんだけど…」

 

「まだ行ってない場所に何か変化があったんじゃないか?」

 

「うん、そうかもしれない。とりあえず探索を続けよう。フォックス、立てるかい?」

 

「ああ、問題ないぞ。」

 

 

マルスの手を取って立ち上がる。

 

 

「ふん、ようやく立てるようになったか。さあ、再戦だ!」

 

「………」

 

「だからまだ好きに乱闘出来ないって…」

 

「黙れ、小娘!」

 

「えっと… とりあえずクッパを鎮めてからね…」

 

「…ああ。」

 

 

クッパの怒りはまだ続きそうだ。




ロックマン「なんでフォックスはこんなファンシーな場所にいたの?」

カービィ「はーと?」

フォックス「いや、オレに言われても…」

インクリング「ほらほら! 彼女さんと来いってことだよ、恋だけに! キャー!」

フォックス「!?!?」

ロックマン「ほら『ク』から始まり?」

フォックス「やめろやめろ」

インクリング「『ル』で終わる?」

フォックス「聞きたくない!」


フォックス「じ、次回! 『光の神殿』!」


カービィ「…くるーる?」

三人「「「…………………」」」

フォックス「…もっとやめてくれ、カービィ…」

カービィ「ぽよ?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三十一話 光の神殿

スマブラSP発売1周年という日に遅刻した罰の早期投稿をしなくちゃいけないとか、実に私は馬鹿だなあ。

本当はピクシブの方に本小説とは無関係の短編でも投稿しようかな、とも思ったんですが色々な理由で頓挫。

なのでこれとは別に、いつもの時間にもう一話投稿します。
さて、私はポケモンに戻ります。(スマブラに行け)


フォックスを解放し、クッパの怒りもなんとか鎮めたマルス達はさらに西へと進んでいた。

 

 

「びっくりこいた! まるで日が落ちてないよ! クッパ慰めるのにすごい時間かかったのに!」

 

「なんだとっ!」

 

「よくわからないけど、火に油を注ぐなよー。」

 

 

太陽は空の真上に位置していて、動く様子もない。慣れてしまったのか、元々存在しないのか不明だが、日光特有の暖かさを感じられない。あの太陽も造り物の太陽なのだろうか。この世界に夜がくることは無さそうだ。

 

 

「ぽーよ、ぱゆー、ぷい?」

 

『…君の世界の太陽と月は随分と活動的なのだな。』

 

「ぱよ!」

 

 

駄弁りながらも進んでいくと、山岳を抜けると、青い色の土管を発見した。

 

 

「…土管だな。」

 

「どっかんー!」

 

「入ってみる? 地下行けるかもよ?」

 

「キーラからワガハイへの挑発ということか… ふん、良いだろう、乗ってやる!」

 

「えっ? パックマンも一緒に行くの?」

 

 

クッパが声を上げた後、パックマンも手を上げた。インクリングが当てずっぽうにその意図を答えると、正解だと言うように何度も頷いた。

 

 

「わかった。何も無かったら戻ってきてくれ。」

 

 

敬礼して、肯定の意を示す。クッパだけだったら戻らないかもしれないが、パックマンがいれば戻らないことはないだろう。二人いれば、土管の先で何かあっても対処出来るだろう。

 

クッパに続いてパックマンも土管に入っていく。暫くして、パックマンが戻ってきた。

 

 

「向こうはなんともなかったかい?」

 

 

コクコクと頭を縦に振る。

 

 

「よし、行こう!」

 

 

マルスを先頭に土管の真上に乗り、中に吸い込まれていく。中は暗いが等間隔で明かりがついている。重力が切り替わり、出口が見えてきた。

 

 

 

 

「よっ… ここは?」

 

 

日光が積もった雪に反射し、目に刺さる。土管を抜けるとそこは雪景色だった。

 

 

「…雪?」

 

「出口が見えてきたよ!」

 

「ん? うわあ!?」

 

 

マルスは土管を出てそのままの状態だった。故に後を追って出てくる他のファイターに押され、土管の上から押し出されたのだ。頭から飛び込み、積もった雪がクッションになった。

 

 

「あ! マルス大丈夫?」

 

「いたた… 平気だよ。ごめんね、すぐ退かなくて。」

 

「うわあああ… ピチュー、雪だよ雪!」

 

「ピチューピチュッ!」

 

「火山よりずっといいや!」

 

『お前たち、遊びに来たんじゃないんだぞ。』

 

 

雪を見てはしゃぎ始める三人だったが、ルカリオからの一喝で黙る。

 

 

「そう、遊ぶ暇などない。ワガハイはジュニアを助け、キーラを倒さねばならない!」

 

「ジュニアだけじゃないけどな。ほら、早速誰か居そうな場所だ。」

 

 

漂氷の漂う湖らしき場所に、神殿らしき建物が建っている。いかにも何かありそうな場所だ。

 

 

「うん、進もう。」

 

「あ、赤青緑の変な機械がある。あのスイッチってもしかして…」

 

「なにか壁でもあったんだろうよ。それが解除されたと。」

 

「なるほどー、じゃあ、何かキーラにとって大切な物があるのかも!」

 

 

神殿へ続く橋に、不釣り合いな機械のような物体を見つけた。今までカービィが押したスイッチの意味を知る。ここまで厳重に守られていたということは重要な何かがあるのだろう。逸る気持ちを抑えて中へ入っていく。

 

 

 

 

 

 

「ふーむ、まあ、典型的な神殿だな。」

 

『典型的な神殿は湖の水上に建っているのか?』

 

 

漂氷の散らばる湖の上の光の神殿。今までのと違い、外見と中の構造がちぐはぐということはない。外見通り円状の構造だ。

 

 

「スピリットいるし… あ、ファイターも一人。早く助けてあげよ?」

 

「ああ、任せてくれ!」

 

 

特に助けてもらったばかりのフォックスはやる気十分だ。ブラスターを磨き終わり、くるくると回して腰に下げる。

 

 

「ワガハイはこっちに行く。」

 

「一人で? あ、でもここそんな広くないよね。スピリットも少ないし…」

 

「ここは二人一組で動いても問題なさそうだ。パックマン、また悪いんだけど…」

 

 

サムズアップで、言いたいことはわかるとばかりに答える。クッパの後を追って走っていった。

 

 

「他も別れて… ん? 彼は…」

 

「マルス、知り合いいたの?」

 

「いや、僕は知らないけど… この感覚… 同じ世界の出身かもしれない。」

 

「あ、知ってる訳じゃないんだね。ぼく一緒に行っていい?」

 

「わかった。後、スピリット一人とファイター…」

 

『では私とピチューでスピリットに挑もう。』

 

「チュイ?」

 

「ファイターは?」

 

「オレに行かせてくれ!」

 

「それじゃあ、フォックスとオレだ。カービィとインクリングは留守番だな。」

 

「んー、まっ、いっか。」

 

 

ファイター達は分担してそれぞれの戦いへ挑んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗い暗い夜の世界。白銀の世界から一転、『終点』化した『悪魔城』にワープしてきたフォックスとキャプテン・ファルコン。

 

 

「おっと、シモンか。」

 

「シモンがここで待ち構えているのか…」

 

 

模倣品とはいえ、シモンが落とすべき悪魔達の根城に彼自身が待ち構えている光景は、とても違和感があった。まるで城の警護をしているかのように、その聖なる武器は二人に対して振るわれることになる。

 

 

「えっと… 普段の大乱闘とは変わらないんだよな?」

 

「ファイターとの乱闘はそうらしいな、オレも実は初めてでさ!」

 

「おいおい…」

 

 

自慢げに自慢にならないことを言うキャプテン・ファルコンにフォックスは呆れる。それを待ってくれる相手ではなく、鞭を振り回し襲ってくる。

 

 

『…』

 

「うおっと、待ってはくれないか。」

 

 

その鞭捌きは恐ろしく正確で、よっぽどのことをしないと絡まったりはしないだろう。鞭の先端がフォックスに襲いかかる。上体を逸らし、間一髪のところでかわした。

 

 

『… っ!』

 

「Yeah!」

 

 

『ブラスター』が二発ほど当たったシモンの頭上から『ファルコンキック』が迫りくる。いつのまにか空中を陣取っていたようだ。

大きく動いて回避したシモンに対し、フォックスもまた駆けてキックを繰り出す。

 

 

「おりゃりゃりゃ!」

 

『…っ!』

 

「とおっ!」

 

 

百連キックもまた同じ方法でかわされるが、挟む形でシモンの背後にいた『ファルコンナックル』がシモンを襲った。二人からの止まない攻撃に対処出来る限界がオーバーしたのだ。

 

 

『…!』

 

 

ジャンプでフォックスを跳び越え離脱する。『ブラスター』で追撃しようとするが、『聖水』を投げ込まれ身を引くことを余儀なくされた。

 

 

「鞭も厄介だが、それ以上にシモン自身の身体能力が高いな…」

 

「本当、何で絡まらないだろうなぁ?」

 

「あ、いや、そこじゃなくて…」

 

 

確かにあの鞭の腕前は一朝一夕で習得出来るものではないのだろうが。

 

少し駄弁っている間にシモンは次の行動に出ていた。二人に向け、かなり低めの位置で十字架が投げられる。

 

 

「「…!」」

 

 

喋っていたとはいえ、彼ら二人はこの世界が出来た初期から戦い続けていた存在だ。突然とはいえ対処は出来る。『クロス』を投げる攻撃にはそれ相応の隙が生まれるのだ。キャプテン・ファルコンは跳び上がりながら拳を握って襲いかかる。フォックスは最小限のジャンプで十字架をかわし、得意のスピードで一気に距離を詰めようと試みた。

 

 

「あぶなっ!?」

 

「うおっ!?」

 

 

だが、シモンもまた並のファイターではない。十字架はブーメランのようにシモンの元に戻るのだが、低い高度を保った『クロス』が浮き上がっていき、最終的にはフォックスの首辺りまで上昇して彼の背後を襲ったのだった。紙一重でかわしたものの、無理な体勢で回避した所為で着地も出来ず、石畳の大地に背中を打ちつけてしまった。

キャプテン・ファルコンの拳も鞭をぴんと張って弾かれてしまい、無防備な姿を晒してしまう。

 

 

「がっ!」

 

『…』

 

 

ヴァンパイアキラーの先が真っ直ぐにキャプテン・ファルコンの腹部に吸い込まれる。フォックスも助けに行ける状況ではない。

 

 

「くっ… (まずい… こっちは殆ど攻撃を当てられてないのに…)」

 

 

数的有利を取っているのにも関わらず、ペースを相手に握られているのだ。こんな展開が続けば先に負けるのはこちら側。ここから短期決戦。一発で逆転出来るような攻撃を当てなければいけない。一つ心当たりはあるが、フルパワーで繰り出すにはどうしても溜めが必要だ。

 

 

『…っ!』

 

「ハァ!」

 

 

襲いかかってくる鞭をブラスターに巻き付ける。これでシモンのメインウェポンは封じた。

 

 

「ナイスだ、フォックス!」

 

 

キャプテン・ファルコンの隆々な右腕に不死鳥が宿る。

 

 

「『ファルコンパンチ』!」

 

 

その拳がシモンに叩きつけられた。フィールドの外へぶっ飛んでいく。お互いに武器を離さなかったフォックスを連れて。

 

 

「確実に勝たせてもらう!」

 

 

完全に空中に放り出され、落下していく過程でようやくフォックスは手を放す。

復帰させないように外へ外へ。シモンを蹴り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ… これで… 痛っ!」

 

 

別れを告げた筈の銃がフォックスの頭に落下する。バウンドした銃はルカリオがキャッチした。

 

 

「一緒に落としたはずなのに戻ってくるんだな。」

 

「まさか今回も戻ってくるなんて思わなかったんだ…」

 

 

ルカリオから差し出された銃をありがとう、と礼を言って受け取る。既に他の者たちは乱闘を終えているようだ。

 

 

「フン、のろまだな。」

 

「それ自分のことっしょ?」

 

「うるさい、黙れ。」

 

「はあ… それでここはこれで全てなのかな?」

 

「でも、シモンしかいないなんて… えっ?」

 

 

本人の足元から青い光が放たれ、ロックマンの姿が消えてしまった。

 

 

「ロックマン!?」

 

「オレが行く!」

 

 

フォックスが宝石のような物を踏み込むと、同じ色の光に包まれ、同じように姿を消した。

 

 

 

 

 

 

大地に降り立ち、強風に身を縮めた。

 

 

「フォックス! これって…」

 

 

ロックマンの声が聞こえる。目を開くと、そこは天空に浮かぶ大地であった。




フォックス「そういえば今二手に別れてるんだよな? どうしてこんな組み合わせなんだ?」

ルカリオ『何か伝えたい時のために私はピチューやカービィ達と一緒にされたのだ。』

フォックス「あー。テレパシーか。」

パックマン「………?」

ルカリオ『チョコレートが食べたいそうだ。』

パックマン「!?」

フォックス「お前の願望じゃないのか!?」


ルカリオ『次回、『空に、天に誓った』。』


ルカリオ『フォックスも食べるか?」

フォックス「えっと… あ、ありがとう?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三十二話 空に、天に誓った

本日スマブラSP発売1周年記念で二本投稿しています。
これは今日二話目の方なので、まだ読んでないという方は前話から御精読くださいませ。


「ここは…」

 

『多分そういうことだな。守りは厳重なのに何もないなんてことはないと思ったが… こちらの方に何かあったのか。』

 

 

フォックスの後からついて来た他ファイターも周りの様子を見渡している。遥か上空に浮かぶ大地に神殿の残骸のような建物が建っている。

 

 

「うん、また分担して探索を…」

 

「ギャー!? 落ちるー!」

 

「えっ? いつの間に!?」

 

 

既に冒険を始めていて、勝手に落ちかけるインクリング。まるで止まると死ぬマグロのようだ。そのマグロはフォックスが引き揚げた。

 

 

「ったく… 気を付けろよ?」

 

「ゴメンゴメン。タチウオパーキングよりずっと高いや。足元注意だね。」

 

 

まともな足場となる広さの大地は三つほどで、その間には飛び石のように地殻が浮いているだけだ。倒れた柱が橋替わりになっている場所もあり、足元をよく見ていないと落ちてしまいそうだ。

 

 

「見たところ… 門の先に一人ファイターがいる。後は… あの光っている宝石が怪しいかな。」

 

「むらびとがいたら飛びついていきそうだな。」

 

「ここじゃないけどいるぞ?」

 

「そうなのか?」

 

「一緒じゃなくてよかったねー」

 

「ホント絶対許さない…」

 

「あはは…」

 

 

嘘に気づいていないとはいえ、あんな仕打ちを受けるだなんて。インクリングに同情したマルス。最近苦笑いが多くなったかもしれない、と現実逃避した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっと…」

 

 

橋替わりの柱の上に陣取っていたスピリットを倒し、ロックマンは謎の光を踏んだ。内側に門が開いていく。

 

 

「開いた! 次次!」

 

「ぽよっ!」

 

 

早速中に入っていくインクリングとカービィ。先程戦えなかった故にやる気満々だ。何も考えず突入していく。ここにストッパーはいない。

 

 

「おっとっと、あっちゃー… これだとあたしは通れないね…」

 

 

倒れた柱が通行の邪魔をしている。通れなくはないが、それはスピリットに勝ってからの話になる。

 

 

「カービィ、先に奥の子お願いしていい?」

 

「ぽーかい!」

 

「りょうかい、だよー。お願いね!」

 

「ぽよ!」

 

 

その軽い体で柱を飛び越え、奥へ進む。そして、ファイターを見つけると、

 

 

「ぷりゅ!」

 

 

ノンストップでファイターに触れる。

最早慣れてしまった感覚に身を委ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先程までの大地とは違う場所で、それでも周りの風景は殆ど同じの、雲の高さを超えた大空。遮るものがない日光が、容赦なく降り注ぐ。

冥府界からエンジェランドへ進む道中の世界である『天空界』。それが『終点』の形となった場所が戦場となる。

 

 

「あ… ぴっとー!」

 

『…』

 

 

パルテナ軍親衛隊隊長ピット。飛べない天使だが、パルテナ軍の最大戦力だ。今は違う存在のために腕を振るうことになってしまうのだが。その瞳は彼のコピーを彷彿とさせる程に赤く染まっていた。

 

 

「ぽよっ!」

 

『…!』

 

 

気合を入れ直し、接近して駆け出す。二対の短剣に分離した神弓が振るわれ、カービィはその柔らかい体を上手く使ってかわす。そしてそのままに『バーニングアタック』を繰り出した。

 

 

『……』

 

 

これはあまり効いていない。ピットからの攻撃をかわす為に助走の勢いが切れてしまったからだ。とはいえ、攻撃をかわせなかったとしても勢いは切れていただろう。これに関してはカービィに落ち度はない。

 

 

ぴょんぴょんと星を生み出しながら、後ろへ下がる。相手はここで『パルテナの神弓』から、青い光の矢を射った。

 

 

「ぽゆっ! たあっ!」

 

『…っ』

 

 

足元を狙う軌道の矢をジャンプでかわし、宙返りしての『エアカッター』。オーバーヘッドキックのように蹴った。柄になる部分でカービィのキックを防ぐピット。そのまま神弓を振り下ろそうとすると、体を後ろに逸らして回避した。

 

 

「ぽよ…」

 

 

届かぬだろう声の真実にわかっているとはいえ、カービィは少し寂しそうだ。だからこそ早く倒して、早く助けなければならない。

 

 

「ぱあああああああ!」

 

『…!』

 

 

突然勢いをつけて突進してくるカービィ相手に、咄嗟にピットは守りを固める。カービィの手には、少し大きめの木槌。

カービィの『ハンマー』と『衛星ガーディアンズ』が生成する障壁が正面からぶつかった。神々の力で作られた盾がひび割れ、勢いが殺されながらもまたもや攻撃がヒットした。

 

 

「りゅ…」

 

 

しかし、ピットも黙ってやられはしない。攻撃が当たった殆ど同じタイミングで、すれ違いざまに一つ蹴りを入れていた。

 

 

『…!』

 

「ぽっ…!」

 

 

後ろへ距離をとりながら矢を放つ。三本の矢が一斉にカービィへ襲いかかる。

一本目は左へ、二本目は右へ跳んでかわし、最後の一発は『ファイナルカッター』で無理矢理弾いた。

 

 

「ぽよ!」

 

『…っ!』

 

 

ピットの分離した短剣とカービィのカッターがぶつかり、カンッ、という綺麗な音を立てる。ピットはフリーになっているもう一つの剣をぶつけようとするも、その前にカービィに押し返された。身を翻し、砂埃が舞うほどに力強くサンダルでブレーキをかけた。

 

 

『…っ!』

 

 

そこをカービィは逃さない。遠距離戦では相手に利があるため、インファイトに持ち込もうと考えたのだ。ピットはそれを感じ取り、神弓の下半分の刃を内側に向けた。

 

 

「はあっ!」

 

 

超高速のパンチ、『バルカンジャブ』を繰り出すも、神弓を回して防御されてしまう。ジャブは防がれたが、カービィの攻撃はまだ続く。

 

 

『…っ!?』

 

「ぽよっ」

 

『いっ…!?』

 

 

ピットが反撃のため、回転している神弓をカービィ本人にぶつけようとする。だが、タイミングが偶然合い、カービィは次の攻撃に移ろうと、しゃがんでいて当たらず。逆に足払いを受けた。

 

 

「ぽっ、ぷりゃあ!」

 

 

後ろに足を回したキックを当て、足を戻し、『サマーソルトキック』のスマッシュ攻撃をぶつけた。

 

 

『…っ!』

 

 

浮き上がったピットは弓の向きを正位置に戻すと、地上のカービィ目掛けて弓矢を連射する。

 

 

「ぷゆっ、ほぁ、…! ああ!」

 

 

あっちこっち跳び回って逃げていたものの、すぐ目の前に着弾し、砂煙が巻き上がる。顔の砂を払い、正常になった視界に飛び込んで来たのは『豪腕ダッシュアッパー』を装着したピットの姿だった。

 

 

『…!』

 

「ぱあー!」

 

 

打ち上げられてしまうカービィ。

空中でなんとか姿勢を整えたものの、追撃は迫りきっていた。再び短剣に分離させ、天の力が叩き込まれる─

 

 

「ぷ! すううう!」

 

『…っ!?』

 

 

空中で『すいこみ』始めたのだ。突然の行動にびっくりするもここは足の踏ん張りが効かない空中。抵抗もできずにカービィに吸い込まれ、少しの間星型弾となってしまう。

 

 

『…っ!』

 

 

変化が解除されると、ステージの外だった。しかし、彼の復帰力は強い。吐き出しただけでは簡単に復帰されてしまうだろう。

だからこそ、カービィ本人も自信のある崖下の空中戦に持ち込んだのだ。

 

 

「ぽたぁ!」

 

 

ドリルのようなキックで相手を突き落とす。星は天より高い場所にあるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意識が覚醒する。周りは自分が普段見ている景色のようで、けれども細部が違っていた。

 

 

「んっ… あれ? ここどこ?」

 

「はあい!」

 

 

上体を起こすと、カービィが片手を上げているのが見えた。いつもやっている挨拶だ。

 

 

「…っ?」

 

「ぴっとー?」

 

 

ピシッという音がして、自分の背面を見る。水色の宝石がヒビが入って割れていった。日光を反射して飛び散った水色がとても綺麗だった。

 

 

「おいっす、ピット!」

 

「あ、大丈夫?」

 

「インクリング、ロックマン! えっと …あ!」

 

 

克明に思い出してしまった。自分の主人が、己達を逃すために単身でキーラに立ち向かい、そして児戯の如く負けてしまったこと。

 

 

「パ、パルテナ様は!? パルテナ様はどこにいるんだ!?」

 

「わ!? びっくりした!」

 

 

戦士としての身体能力が遺憾なく発揮され、神速と見間違うかの様に素早く立ち上がる。

 

 

「まだ見つかってないけど… きっとどこかにいるよ!」

 

「ど、どこか…?」

 

「うん、ちょっと別行動とってるけど… そもそも逃げ延びたの最初はカービィだけだったし…」

 

 

反射的に近くのピンク玉の方を見る。MVPレベルの行為をしたというのに彼自身はどこ吹く風だ。

 

 

「でも、多分もうここには誰もいないと思うから、いるなら外だと思うよ。」

 

「そうなんだ…」

 

 

右手をぎゅっと握る。あの時、例え結果が同じだったとしても彼女の側にいたかった。手を引いて共に逃げたかった。彼女を守りたかった。でも今となっては叶わぬ願望。

 

 

「(待っててください、パルテナ様。必ずお助けします。)」

 

 

空に、天に誓った。

 

 

「よし! 他にもいるんだっけ? 合流して次行こう!」

 

「おー!」

 

「こっちの方は探索終わったかな… って、ピット!」

 

「お、イケメン王子!」

 

 

近寄って合流する。太陽はいつも通り天使を照らしていた。




ピット「おおー、結構いる!」

CF「来てしまった! サイレンを鳴らすんだ!」

ピット「えっ!?」

フォックス「迎撃態勢を取るんだ! 第二級危険人物が来たぞ!」

ピット「それボクのこと!?」

マルス「くっ… ついにこの漫才次元にパルテナ軍が攻めてきてしまったか…!」

ピット「風評被害もいいところだよ! というか第一級は誰なんだよ!」

ルカリオ『当然、パルテナだ。』

ピット「パルテナ様は危険じゃないやい!」


ピット「次回!『そうはさせないよ』!」


CF「次回からの次回予告は爆笑間違いなしだな!」

ピット「変なハードル上げるのやめてよ!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三十三話 そうはさせないよ

ゲームアワードでもDLCの発表はなし。
一周年もスルーでいつ発表されるのか全く検討もつきません。
私の予想はインパクト重視ならばKHのソラ。安定択なら風花雪月のベレトスかクラッシュバンディーク。個人的推しならバンダナワドルディ ですね。ただ、彼ら全員に参戦を否定出来る根拠もあるので最早当たる自信なんてありません。

皆さんも良ければ予想、願望をコメント欄にてどうぞ。もし当てられたら… 何しましょうか?



神殿にいた全ての人を解放したファイターは、神殿より下った場所にある村に来ていた。建物あり、屋根もありで休められる場所ではあるのだろうが、その村にすらスピリットは設置されており、助けなければ気分良く休められない。

あのオーブのような何かが被害者であり、どこか別の世界で生きるものが大半とはいえ、それを尻目に休めるほと厚かましい人物はここにはいなかった。

 

 

「それで、キーラにヤラレチャッタのはボク達だけじゃなくて…」

 

「私たちファイターと同じ世界に住んでいるであろう者たちもいるという訳か。」

 

「そんであたし達から作ったパチモノの体を乗っ取ってる訳。」

 

「それを倒せば解放できるって訳だよ。」

 

「ピチュ。」

 

「わけ。」

 

 

訳からどんどん繋げて確認と説明をするファイター達。ピチューとカービィに至っては、訳としか言っていないようだ。

 

 

「そうか… では、ファイターだけではなく他の者達も救わなければならないな。」

 

「ああ、そうなんだ。たまに完全に知らない世界から来ている人もいるみたいだけど…」

 

 

誰がスピリットになっているかわからない。自分の親しい人がスピリットとなっている可能性は十分にありえる。また逆も然りだ。同じ世界から来ても時間が違うことはあるし、そもそもどのファイターとも同郷ではないらしい人もいた。

だからどうでもいい訳ではないが、何故かスピリットの特徴を乱闘に投影しているスピリット戦では、知っていることで大きな情報となり、乱闘の特殊ルールをある程度予想することが出来るのだ。当然知っている方がお得だ。

 

 

「あっ! トンネルがあるよ!」

 

「どこに繋がってるんだろう?」

 

「うーん… じゃあ、ここを攻略、後はトンネルの様子を見てからその先も攻略するか一度合流するか決めようか。」

 

「わかったよ! よし、ボク一番乗り!」

 

 

言うと、速攻で、一人だけいたファイターに触れる。少し目を離した瞬間の出来事だった。

 

 

「遊びではないんだぞ… 全く…」

 

「沈んでるよりいいだろ? はっはっは!」

 

『はあ…」

 

 

ルカリオのため息を合図に全員がそれぞれ散っていく。別の者を誘ったり、一人で戦いに挑んだり戦い方はそれぞれだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ポーキーの作り出したハリボテのトカイ『ニューポークシティ』。厳密に言えばここは、ポーキーの作った偽物ではなく、マスターハンドの生み出した偽物の偽物の模造品だ。『終点』化の影響により、その街並みは完全に背景としてしか活躍していない。

 

 

「ピット、サン、ジョー! それでどこここ?」

 

 

辺りをキョロキョロと見回し、討つべき敵を確認する。リュカ。ここのオリジナルを作り出した者に人生と家族を狂わされ、それでもまっすぐ強く生きた者。気弱でも優しく超能力PSIを扱うことのできる少年だ。

 

 

『…』

 

 

指先にPSIの力を宿し、ピットに向ける。戦闘体勢は整った。

 

 

「よし、負けるか!」

 

 

ピットも神器を構える。色んな神器があるが、なんだかんだで弓と一番付き合いが長いのだ。

 

 

「はあ!」

 

『…!』

 

 

迫りくる光の矢を、リュカは超能力で強化された跳躍力でかわす。そのまま空中で『PKフリーズ』を繰り出すも、ピットはシールドを貼って防いだ。

 

 

「うおっと…」

 

『…』

 

 

シールドを消したタイミングで、地上にいるピットにPSIの力をぶつけようとする。

 

 

「うわっ、ていっ!」

 

『…っ』

 

 

リュカが大地に足をつける前に、大地との間をくぐり抜け、すれ違いざまに足を切り上げる。

 

 

「むうぅぅ… ふんっ!」

 

 

サンダルと地面との摩擦で勢いを殺し、そのまま、腕の神器を豪腕に切り替えた。

 

 

『…』

 

「せいやあああ! って防がれた!? へぶっ!」

 

 

後ろ向きとはいえ、勢いをつけるための声のせいで何かしてくることはわかる。振り向きざまの木の棒でのフルスイングで、珍妙な声を上げながら、地に腰を打った。

 

 

「いってて…」

 

 

腰をさすり、体を捻って立ち上がった。その間もリュカは次の攻撃に移っている。ピットに向けて勢いよく突き出した右手からPSIの力が溢れ、それは幻覚などではない確かな炎となってピットへ撃ち出された。『PKファイヤー』だ。

 

 

「おっと、てりゃあ!」

 

『…!』

 

 

炎を横飛びでかわし、分離した双剣で二つ同時に斬りつける。腹部にヒットし、少し怯んだ。

 

 

「そお…いっ!?」

 

『…!』

 

 

地面に近い左の刃を、足払いのように動かす。そうして自分の足元に来た左手に、リュカはPSIの力を纏った蹴りで後ろに跳びながら攻撃した。

 

 

「いてて…」

 

 

根性で神器は落とさなかったものの、少し手が痺れている。これはしばらく戦闘に影響を及ぼすだろう。いつもより握力が低下して斬撃が弱くなるのもそうだが、弓の狙いもブレるだろう。多少の誤差ならば敵に向かって誘導されるが、それでも限界はある。痺れが取れるまで時間稼ぎをしなければ。

 

 

『…!』

 

 

拘束するため伸ばしてきた『ヒモヘビ』を大きく回避し、次の出方を伺いながら元の神弓の形へ戻す。

 

 

『…っ!』

 

「っ! 『飛翔の奇跡』!」

 

 

再び『PKファイヤー』の気配を感じ、大きく飛び上がる。パルテナが乱闘用に改良した奇跡は彼女がいなくとも、自由に使用することが出来た。

 

 

「あぐっ!」

 

『…!』

 

 

とはいえ使った後は一度着地するまで無防備になる。体を動かしてリュカから出来るだけ距離を取ろうとするも、ダッシュの勢いを加えて攻撃する『PKパームプッシュ』をしっかり当てられてしまう。

 

 

「っ、まもれ!」

 

 

追撃が来ると察知したピットは『衛星ガーディアンズ』の盾を展開する。それは何もないところから顕現した盾であるものの、物質で出来た盾にも負けない、とても強固なものだ。

 

 

「いけー!」

 

『…ぃ…!』

 

 

超能力を当てようとしたリュカを盾で押し出し、大きな隙を作り出すことができた。いつの間にか左手の痺れも取れたようだ。

 

 

「とりゃ!」

 

 

力を溜めた、強烈な二段斬りを繰り出した。大きくのけぞったリュカには防ぐことも避けることも出来ず、二つの斬りつけをまともにくらってしまった。

 

 

『…っ!?』

 

 

光の矢の追撃も後を追ってきており、『サイマグネット』を展開する隙すら与えられない。

視界が一転二転する状況では体勢の修正もできず、為されるがままに、ぶっ飛んでいく。

 

 

「多分これじゃあ届かないから、耐えて復帰しようとか思ってるだろうけど! へっへーん、そうはさせないよ!」

 

 

誰に話しているのか、茶目っ気たっぷりに言い放ちながら走り出す。通常の形態ではなく、片刃を逆に装着した神弓を持ちながら走る。

 

 

『…っ!?』

 

 

跳び込んでくる天使の姿が見えた。神弓の片方の先が向かってくる。慣れた手つきで回転させた攻撃が、リュカにぶつかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

重厚そうな音をたてて、少年のフィギュアが転がった。ピットの手が台座部分に触れる。金色の光を発して、少年は元の姿を取り戻した。

 

 

「う〜ん… んっ… ここは…」

 

「あ、起きた。」

 

「リュカー!」

 

「えっと、ロックマンにピットさん。どうしたんですか?」

 

「ん〜っと、話せば長くなるから、後で言うよ。」

 

「いや、でもぼくたしか…」

 

 

先程の乱闘を思い出す。目の前の天使と戦っていたのを朧げに思い出した。

 

 

「あわわわ、ご、ごめんなさい!」

 

「えっ? 何が?」

 

 

突然に慌てだし、唐突に謝られてもピットにはわからない。普段よく遊ぶ友達とはそれなりに対等な関係を作れていると自負しているが、そうではないファイターには未だに上がってしまう。田舎の狭い人間関係の中で生きてきた彼にとって、身内より外の人間など長らくいなかったからだ。

もっとも、ピットはそんなことを気にするような天使ではないのだが。

 

 

「おーい! バスが出るぞー! ここら辺は片づいたから次に行くぞー!」

 

「あっ、了解です! 次行くよ!」

 

「えっ、あの…」

 

「大丈夫、後で説明するよ。まずは乗ろう?」

 

「う、うん。」

 

 

ロックマンがリュカの手を引っ張ってバスに乗り込む。運転手はキャプテン・ファルコン、いや、彼のからだを借りているかっぺいだ。

 

 

『これで全員かい?』

 

「ええ、全員です。よろしくお願いします。」

 

 

バスが発進し、トンネルに入った。一部はバス体験にワクワクしている。

 

 

「ピチュー、見て見て! あたしの顔写ってるよ!」

 

「ピチュチュ!」

 

「すごい…」

 

「わあ…」

 

 

座席を離れ、バスの中を走り回ったり、椅子で立て膝している子供たち。その喧しさに堪忍袋の緒が切れた者がいる。

 

 

「やかましいぞ、お前たち! バスの中では座席から離れずシートベルトをつけるのだ!」

 

「座席二つ分使っててベルトつけれない癖して何言ってるんだ、焼肉屋に並べるぞー!」

 

「なぬっ!?」

 

「で、でも危ないのは事実だから座っていようね?」

 

「ちぇー」

 

 

そんなことを尻目に、最前席ではシモンがパックマンにシートベルトの使い方を教えていた。

 

 

「ぽっ…」

 

『…やけに静かだな、カービィ?』

 

 

疲れているのか、と思ったが、そうでもないらしい。彼の波導を読みとった。

 

 

『…そうか、彼のお陰で逃げ切ることが出来たのか。』

 

「ぽよ…」

 

 

どんどん助け、仲間が増えるのは嬉しいが、彼がいない、と不安になっていくのだ。

 

 

『きっとどこかにいる。気を落とすな。私も共に探そう。』

 

「…ぅん!」

 

 

自分の顔を叩く。弾力があって刺激があるように見えないが、効果はあるのだろう。

 

光が見えてきて、暗闇に慣れた目を塞ぐ。

目が開けるようになったその先には、先程の街よりも発展した集落があった。




ピット「リュカも助けたし、どんどん仲間も増えてきて賑やかになってきたなー!」

リュカ「…あっ、よかった…」

ピット「へ? 何が?」

リュカ「あの… ピットさんに忘れられているのかと思いまして…」

ピット「何を?」

リュカ「ぼくのこと…」

ピット「忘れてないよ!」


リュカ「じ、次回、『精一杯の力と思いを』」


リュカ「だってパルテナさんに、『あのファイターは誰だ』って…」

ピット「ゲームの仕様に言ってよ!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三十四話 精一杯の力と思いを

書きだめの方はだいぶ進んでいますが、書いてて思うのはワンパターンになっているな、ということ。
七十を越すファイターとの戦いを書き、テンポを速くするため面白い戦いのスピリット戦と会話回などを省き、その上で日常編の作れないストーリー設定だとこうなることは当然でしたね…
じゃあ増やせばいいじゃん、となりますが第二部に早く行きたいので…


私は、原作で助けられた側が助けたりとか、そういうの物を書きたい!
第一部はそれが少ないのです…


くっそどうでもいいですが、灯火の星むずかしいスキルツリー縛りを始めました。初回で自滅されて勝った相手がまた自滅してて草。何故か灯火の星こういうの多いです。




トンネルを抜け全員が降車する。

先程いた街より大きく、噴水を中心に円状に建物の並ぶ街並みだった。しかし、そこに行くには目の前のバリケードをどうにかしなければならない。

 

 

「ぐぬぬっ…! なんだこいつはッ! びくともせんぞ…!」

 

「やはり力技では難しいか…」

 

「なんだ、マルス! ワガハイに不可能はない!こんなもの…ッ!」

 

「あ、いや、そういう意味じゃなくて… 参ったな。全然聞いてくれない。」

 

 

バリケードはびくともしない。これはクッパの力不足などではなく、無理矢理こじ開けることなどできないように出来ているのだろう。

 

 

「頭脳派のあたしたちは確実に行こっ! 多分あの子を助ければここも開くよ!」

 

『今までも似たようなことはあった。単純な話ではあるが、恐らくここも同じように開くのだろう。』

 

 

ただ、クッパを除いたここのファイター達を簡単に頭脳派と分別するのは無理があるだろう。マルスやルカリオなどは問題ないが、言い出しっぺのインクリングが真っ先に疑問視されそうだ。

だからといって彼女が肉体派という訳でもないのだが。

 

 

「あ、あの」

 

「んー? どうかしたの?」

 

「今までのこと、聞きました。みなさん、助けてもらって、あ、ありがとうございます。」

 

「ノー問題! そんなことでわざわざお礼言ってたら最終的に礼の飛び交う一団になるよ!」

 

 

サムズアップするピット。未だに礼のない者もいるのに、直接助けてくれたピットだけでなく、全体に礼を言うなんてよくできた子だ。

 

 

「えっと、戦って勝てばいいんですよね?」

 

『その通りだが… 向かう気か?』

 

 

一人のファイターに手を向ける。リュカからこんなことを言うのは意外だった。乱闘が苦手とよく言っているのに。

 

 

「いいのかい?」

 

「はい、大丈夫です。」

 

 

パックマンがリュカを気遣って、自分が行こうか、という問いかけをジェスチャーで聞いてくる。それにリュカは首を振って答えた。音のない会話だが、PSIを持つ彼にはその真意が理解できる。

 

 

「確かにあんまり好きじゃないですけど、置いてけぼりは嫌だし… 助けなきゃいけないですから。」

 

「うん、ぼくも行くよ! ネスやトゥーンも助けなきゃ! 全員でまた遊ぶんだ!」

 

「うん!」

 

「話は纏まったか?」

 

 

キャプテン・ファルコンが微笑みながら声を発する。彼はそのヒーローのような外見から、子供たちからの人気が高い。

 

 

「ぼくとロックマンで一緒に戦います。少し待っててください。」

 

『ああ、その間に我々は…』

 

「ひらけゴマだー!」

 

『…彼を止めておくとしよう。』

 

 

未だにバリケードと戦っていたクッパ。人とは違う手で頭を抱えて呆れるルカリオ。ついに蹴り始めた音を背景に、共にフィールドにワープするため、それに手を触れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

眼下に広がるのは村の風景。彼らの友達の一人、むらびとが村長を務めている『すま村』だった。いつかここで遊ぼう、と軽く誘われたことがあったか。決して愛村心などからでた言葉ではなく、あくまで遊び場所の候補として挙げただけらしいが。

『終点』と同じ形のフィールドとなっているが、元々フィールドの形に特徴らしい特徴はなかったりするので、あまり変化したように見られない。

 

しゃらと、鈴の音が聞こえる。二人とも見つめ合うが、この音はどちらが出したものでもない。

 

 

「わー! しずえさんだ!」

 

 

すま村の秘書を務めるシーズー犬の住人しずえ。むらびとがしずえさん、と呼んでいるため、さんも含めて愛称として広まっていたりしている。(金銭関係を除いて)難しい事が嫌いなむらびとは、一人の村民として普通に暮らしたいそうなのだが、彼女がいるので中々サボることができないらしい。たまに愚痴られている。

 

でも、彼女は秘書の仕事に熱心なだけで、悪意から行動している訳ではないし、疲れた様子を人に見せずいつも笑顔で接してくれている。

だからこそ、感情を剥奪された今のしずえは驚きのものであった。それこそ、リュカが驚き、かたまってしまう程に。

 

 

『…!』

 

「…わっ!」

 

 

走って勢いをつけて、壺を投げてくる。まだ動けない後輩リュカを先輩ロックマンがカバー。『メタルブレード』を投擲し、リュカに届く前に砕いた。

 

 

「あっ…! ご、ごめん!」

 

「大丈夫大丈夫! 気にしないで!」

 

 

即座に謝るが、ロックマンはそもそも気にしていない。それでも反射的に謝罪の言葉が出てくるあたり、リュカ少年の人柄の良さがわかる。

 

 

「たあっ!」『…っ!』

 

「いっ!」

 

『…きゃ…!』

 

 

空中ではロックマンの『フレイムソード』と、思った以上に近距離で撃つことになったしずえのパチンコの弾がぶつかっていた。両者はお互いの邪魔をすることなく、敵とみなした相手にぶつかった。

 

 

「『PKサンダー』!」

 

 

電撃の塊を相手に飛ばす。この序盤の状況では一回の攻撃で何度もヒットさせることができる追撃が最適解だと思ったのだ。電撃がしずえに迫る。

 

 

「…っ!」

 

 

サンダーはしずえに当たらず、唐突に進行方向が変化してしまった。彼女は回避などしていない。電撃の操作を誤ってしまったのだ。

 

 

「あっ…」

 

「やあ!」

 

 

炎の剣による吹っ飛びの勢いのままに宙を飛ぶしずえに『チャージビーム』を撃ち込む。遠距離の攻撃ながら、強烈な攻撃力をも秘めた攻撃だ。

 

 

「よし!」

 

『…!』

 

「(きてる! 今度こそ!)」

 

 

無意識に震えていた手を無理矢理抑え込み、相手の次の動きを予測するため、しずえの一挙一足に全神経を注ぐ。

 

 

『…!』

 

「(寄ってくる、こっちに! じゃあ、『ヒモヘビ』で…!)」

 

 

伸ばした赤蛇の口は空を切る。畏縮して腰が引けた状態では、いつものようなリーチはなかったのだ。

 

 

「…えっ!?」

 

「リュカ!」

 

 

自分でも驚く不調をカバーすべく、飛び込んで『クラッカー』を引いてきたしずえとリュカの間に入るロックマン。後ろにリュカがいるがために回避することも出来ず、かといってシールドを展開する暇もなかった。

しずえのスマッシュ攻撃がもろにロックマンに入ってしまい、地面に倒れ込む。

 

 

「うわっ!」

 

「あっ! や、やああ!」

 

『…』

 

 

力任せに振るった『ぼうっきれ』はしずえに当たらず。逆に力み過ぎて体まで持っていかれてしまい、大きな隙を晒してしまった。

 

 

『…!』

 

「わわっ、いい…っ!」

 

 

同じく『クラッカー』でロックマンの隣まで飛ばされるリュカ。

 

 

「…っ! よし!」

 

 

立ち上がり、こちらの身を案じながらも『リーフシールド』を展開し、戦いに走るロックマン。

リュカはその後ろ姿を悲痛な思いで見ていた。

 

 

「(どうしても、戦わずに助ける方法がないかな、って思っちゃうや…)」

 

 

たとえ何に隔たれようとも、きっと声は届くと信じている。あの時、母の声は確かに兄に届いた。父の愛も、己の温もりも。だから今だって、夢を見てもいいだろう?

 

 

「…………」

 

 

別に勝つことで助けられると知っているのだ。拒む必要はない。そんなものはわかっているし、ロックマンやみんなの言葉を信用していない訳じゃない。

それでも本人の手が届かない領域に、害意のない相手との戦いを拒む自分がいる。

 

 

「えいっ! おっと、たあ!」

 

 

飛ばした『リーフシールド』を跳んでかわしたしずえに向けて上昇する竜巻を発生させる。相手は竜巻に巻き込まれたが、返しの『下カブ』でステージに叩きつけられた。

 

 

「いっ…!」

 

「あっ…」

 

 

戦い、勝って、解放する。それができるのならば、今自分が戦いを拒んでいる感情は単なるエゴではないのか。足踏みしている間にも、一緒に来てくれたロックマンは傷ついている。それは、タブーの事件での相方の姿を彷彿とされた。

 

 

「(戦う勇気… だよね、レッド?)」

 

 

恐怖を打ち払え。優しさを言い訳にして仲間が傷つくならば、それはただの自分勝手なのだから。

あの時とは違う。戦う意思は自分にもある。足は動く。涙は出ていない─

 

 

「避けてよ、ロックマン!」

 

「はい?」

 

 

電撃の念を飛ばし、しずえのいる真逆の位置から、自分自身にぶつける。

 

 

「うわああああ!」

 

「うわああああ!?」

 

『…っ!?』

 

 

『PKサンダー』の力を纏った自分がしずえにぶつかる。ロックマンは間一髪に飛び退き、ギリギリ回避に成功した。

 

 

「っ!」

 

 

飛ばされたしずえが重力のままに落ちていく姿を見る。一足先に足をつけていたリュカは、落下地点を予測し、一足早く動いた。

 

目の前には、あの島で抜いていったハリ。勿論実際にはそんなものはない。でも、心にあるそれは、あの時と同じほんものだ。

 

 

「たああっ!」

 

『…っ!』

 

 

精一杯の力と思いを込めて、目の前のハリを引き抜いた。




インクリング「へえ〜、ロックマン料理出来るだね〜。んー、うまうま〜」

ロックマン「元は家庭用ロボットだからね。」

ピット「おかわりー!」

ロックマン「全部平らげてからだよー!」

カービィ「おかわりー!」

ロックマン「お皿5枚も持ってこなーい!」


ロックマン「次回、『思いもつかない』!」


シモン「肉はないか… 少し壁を壊してくる。」

ロックマン「壁にお肉はありませーん!」

ルカリオ『デザートのチョコレートは…』

ロックマン「チョコレートはデザートに入りませーん!」

マルス「そこはツッコミどころじゃありませーん…」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三十五話 思いもつかない

今話で2019年の投稿は最後となります。
皆さま、ありがとうございます。予約投稿の忘れなどありましたが、なんとか初投稿から今まで基本週一投稿を続けることができました。
皆さまのご都合が合うならば、来年もここにお邪魔いただくと作者冥利に尽きます。

それでは良いお年を。




フィギュアが地面に落ちる。それと同時にリュカとロックマンも戻ってきた。

ロックマンは着地の時にガチャっと鉄甲が動く音がしたが、リュカは超能力で勢いを殺しながら音もなく着地した。

 

 

「おかえり〜」

 

「おかえり、 …やっぱり勝てば開くのか。どうやって連動しているんだろう。」

 

 

彼らが戻ってくると同時に、バリケードが開いた。クッパの手形足形に凹んでいたせいで、何かおかしな挙動があったものの、問題なく開くことができた。その元凶は不満気だ。大方力比べに負けたような気分なのだろう。

 

 

「みんな、先に探索を進めておいてくれ。僕達はしずえさんを元に戻して現状の説明だ。」

 

「了解! 任せとーき! ボク達でやっておくでー!」

 

「何で微妙に関西弁なんだよ…」

 

 

そうやって他のファイターが向かっていくのを確認すると、リュカがしずえの台座に触れる。

黄金色の光を発し、視界全てを埋め尽くす。最早慣れた光景だった。

 

 

「う〜ん…」

 

「しずえさん、大丈夫?」

 

「ん〜… はっ! ここはどこですかー?」

 

「ちょっと、説明が大変なんですけど…」

 

「あっ! わかりました! 皆さんが助けてくれたんですね! ありがとうございます!」

 

 

驚いた顔をしたり、花が咲いたような笑顔を見せたり、二転三転表情を変える。

 

 

「いや、僕は見守っていただけさ。お礼は二人に言ってくれ。」

 

「そうなんですか? ロックマンさん、リュカさん、ありがとうございますー!」

 

「ど、どういたしまして。えへへ… 照れるなぁ。」

 

「お互い様だよ。今は手分けしてるけどむらびともいるよ。」

 

「むらびとさん、いるんですか!? よかったです〜」

 

 

再び花が咲く笑顔を見せる。仕事の時は村長と呼ぶが、いつもは他の人と同じく、さん付けで呼んでいる。

 

 

「ただ… まだ捕まっている人たちがいる筈だ。当面は彼らを救いながらキーラの結界を破壊するために動く。」

 

「そ、それは大変ですね! わかりました、次いきましょう!」

 

「わわっ! しずえさん行動が早い!」

 

「彼女も優しい人だからね。」

 

「ぼくたちも、続きましょう!」

 

「うん!」「ああ!」

 

 

大股で、腕を大きく振って歩き始める。先程のコミカルな反応からは深刻そうに感じられないが、彼女はいつもこんな感じだ。

 

 

 

 

「終了、だ!」

 

『だが、今のは2分39秒。宣言したタイムに1分39秒も及ばなかったな。』

 

「なにっ!? くっ… 不覚だった…」

 

「というか、るかりん、その時間ホントウなのー?」

 

『る、るかりっ? …ゴホン。日頃の鍛錬の結果だ。正確な時間を計るぐらい問題ない。』

 

「へー。そうなんだ。」

 

『ああ、そして奥にいるのが…』

 

 

キャプテン・ファルコンが打ち破ったスピリットの奥には、一人ファイターがいた。行き止まりの一番奥。どう見ても隠す気満々だった。

 

 

「ここのファイターは彼だけかい?」

 

『ざっと見て回ったが、ファイターは見なかった。さっくり見ただけなので、隠れていなければここにいる者が最後だ。』

 

「わかりました! では行ってきますね!」

 

「うん、わかったー! 頑張ってね!」

 

「へっへーん、任せてください!」

 

『さて、では他のファイターの援護を…むっ?』

 

「んー、次はもうちょっとスピーディーに戦うべきか…むむっ?」

 

「また後で様子見に行こうか…むむむっ?」

 

 

三人がゆっくりと首を動かし、一人のファイターの方へ向ける。黄色い毛に包まれた小さな手が、それに触れ、黒い何かに覆われていく─

 

 

「わあー!? いっつの間に!?」

 

「何というか、自由だな!」

 

『流れで入ってきていたのか… 気づこうとも思わなかった…』

 

 

残していった三人に声をかけられ、返事をする。先程のありのままを説明すると、彼らも驚いていた。でも、仕事をテキパキとこなす、しずえらしいといえばしずえらしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃあ、び、びっくりしましたー!」

 

 

いつもと違うワープに驚いた。光の化身と謳っているというのに、そのワープは少し禍々しかった。

その禍々しいワープとはまた真逆に、暖かな日光が降り注ぐ。人間ととてもよく似ている生き物、Mii達の住まう島のマンション。そのマンションは『トモダチコレクション』と呼ばれた。『終点』化された影響で、マンションどころか、Miiの姿も見えないが。

 

 

「あっ、ソードさん、見つけましたー!」

 

『…』

 

 

剣を中心とした様々な武器を扱う武器の天才。彼もまたMiiだった。一見戦えるように見えないしずえに対しても敵意は消えず、カチャ、と剣を構える。

 

 

「あわあわ、こっちに来ますー!」

 

 

剣を片手に、距離を一気に詰めてくる。刺突の攻撃を間一髪で避け、傘を闇雲に振り回して反撃した。

めちゃくちゃな軌道とはいえ、一度引かせることには成功した。

 

 

『…』

 

 

卓越した剣技は風を生む。それは一つの竜巻となってしずえに襲いかかる。

 

 

「わ、えい!」

 

 

驚いたのも一瞬。『トルネードショット』を懐に『しまう』。実体も無ければ、触れると肌を裂くような風をどうやってそのまましまえているのか全くの不明だが、安易に飛び道具を使えないのは事実だ。

 

 

『…!』

 

「あっ… キャッ!」

 

 

低空で前転しながら突撃し斬りつける『変則急襲切り』。その名の通り、剣技の枠から大幅に外れた派手な技だが、威力は高い。

短く悲鳴を響かせ、尻餅をついた。

乱闘では流石に長く戦ってきたソードに武がある。やみの王を討伐した者の一人だ。

しずえの戦法は慌てながらも勢いで次の手を決める直感派だ。元の世界では戦いと無縁のため、時々戦略関係でしくじってしまうこともあるのだが、逆に戦いに慣れた彼らには思いもつかない戦法を駆使してくることもある。

 

 

『…っ』

 

「キャ!」

 

 

思いきりしゃがんで、左へ横方向に振るわれた剣を避ける。しかし、こんな避け方をしたら次の行動が遅くなってしまう。

 

だが、そんな動きが逆にやりにくさを感じさせているらしい。ソード自身も彼女とは戦ったことがある筈だが、今しずえと戦っているのは実質キーラだと言っていいだろう。

 

困惑しているようで、ソードも次の行動が遅くなった。振った剣をそのまま上に上げて振り下ろした。その前にしずえは間一髪で離れることができた。

 

 

「よし、ここから反撃行きますよ!」

 

 

ぐっ、と拳を握りしめ、気合を入れる。パチンコを引き絞り、ソードを狙い澄ます。とはいえ、露骨に狙ってしまえば、隙が生まれるし動かれ続けると中々当たらない。

それでも、しずえはソードに向けてパチンコを撃った。

 

 

『…』

 

 

弾はまっすぐ飛んでいったが、それが攻撃に繋がるかは別の話だ。簡単に回避される。

 

 

「これ、お返ししますねー♪」

 

 

しまっていた竜巻を『とりだす』。自分を生み出した主人の下へ進んでいく。パチンコの弾より、ずっと大きいその竜巻はソードを巻き込み吹き荒んだ。

 

 

『…っ!?』

 

「まだ行きますよー!」

 

 

浮きのついた釣り糸を相手目がけて放り投げる。風に巻き込まれた針は的確にソードを引っ掛けた。

 

 

「えーい!」

 

『ぅ…』

 

 

反対側に相手を放り投げ、おまけにパチンコを加えて攻撃した。

 

 

「よし、いい感じに戦えています! この調子ですね!」

 

 

最初はうまくいかなかったが、なんとなく慣れてきたように感じる。

だが、勢いに乗っている時にこそ冷静に行かなければ。この勢いを奪われる訳にはいかない。あまり乱闘が得意ではない彼女にとって、重要事項なのだ。

 

 

『…っ!』

 

「わわっ!」

 

 

逆に相手は優位を取るために仕掛けてくる。走る勢いのままに剣を振り下ろし、しずえを斬り刻まんとするが、展開したシールドが彼女の身を守る。

 

 

「えいっ!」『…!』

 

 

剣の刃とほうきの棒部分が交差する。斬れない不思議なほうきでも、加わる力は誤魔化せない。しずえの力では鍔迫り合いに勝てず、逆に押し返された。

 

 

「あわわっ」

 

 

ぐらつくしずえに更なる一撃を加えようと、ソードが踏み込む。瞬間、地面の何かが上昇する。

 

 

『…!?』

 

 

先程しずえがこっそり埋めておいたはにわくん型のミサイルだった。ソードごと打ち上がっていく。

 

 

「やりましたー! …はっ! これはチャンスですね!」

 

 

落下地点に向かうしずえ。落ちてきた時を見計らい、どこからか取り出した水入りのバケツを構えた。

 

 

「えーいっ!」

 

 

落下したソードに向けて『バケツ』の水をぶち撒ける。大地と平行に近いベクトルで飛ばされたソードはステージ上への復帰を試みるも、

 

 

『…っ』

 

 

ジャンプも届かず奈落へ落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソードは目を覚ますと、視界いっぱいにしずえの顔を見た。

 

 

「え、えーと… ワッツしてるの?」

 

「えっと、心配してました! 何ともなくて何よりです!」

 

「ふむむ… ドントウォーリー。それでここはウェアー?」

 

 

いつも通り英語の単語を盛り込んで話してくる。文法やらもめちゃくちゃなので理解するのに時間がかかり、会話のテンポが悪いのもいつものことだ。

行き止まりの場所から抜け出しながら、会話を続ける。

 

 

「…あら? 他の皆さんは別のところに行ってしまったのでしょうか?」

 

「へー、他のエブリワンもいるのか。」

 

「はい! マルスさんとロックマンさんとリュカさんと…」

 

「おっ! バスじゃん! ライド、ライド〜♪」

 

「あれ? ソードさん?」

 

 

見回すが、近くにはいない。

しずえの近くには。

 

 

「ソードさん!?」

 

「しずえさん、ちょっとドライブしてみるだけさ! アクセルこれかな…?」

 

 

既に乗り込んだソードがバスの窓から見える。

彼は運転をしたことがない。ただ興味本意のために乗り込んだだけなのだ。そんな彼が運転できるわけもなく。

 

 

ドガァーン!!!!

 

 

「きゃあー!」

 

 

大きな衝突音をたて、近くの建造物に正面衝突した。バスの前方部分がひしゃげている。

 

 

「なんだなんだ!? 何があった!?」

 

「!? これはいったい?」

 

「ソードさんがバスを運転しようとして…」

 

「はあ!? アイツまたなんかしたのか!?」

 

 

フォックスとシモンが戻ってきた。

しずえの返答に、ソードの自由人っぷりに飽きてながらも急いで救出に向かう。変形した扉はフォックス一人では開けられなかったが、シモンが参戦してようやく開く。

 

 

「おい、ソード!」

 

「きゅ〜…」

 

「気絶してるか… 運び出そう。」

 

 

目を回した元凶が横たわっていた。フィギュア化はしていないようだが、なんてことをやらかしてしまったのか。

だが、これにより上がった黒煙が、二手に別れたファイター達を合流させることになるのを彼本人はまだ知らない。




ソード「きゅ〜…」

しずえ「大丈夫ですかね…」

フォックス「大丈夫だろ。しかし、本当に気絶してると、きゅ〜、とか言うんだな。」

シモン「寝言で、むにゃむにゃと言うよりはよっぽど現実的だが。」

ソード「…むにゃむにゃ…」

しずえ「あ、言いましたね。」

シモン「…本当は起きてないか?」

フォックス「言ったからってムキにならなくても…」


ソード「ねくつとぉ… 『足で飛んでいるのだ』…」


シモン「やはり起きているだろう…」

フォックス「流石に言い逃れできないぞソード…」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三十六話 足で飛んでいるのだ

あけましておめでとうございます。
作者はガキ使派でした。テンプレになっていた構成を崩して新鮮さをなくしたのはグッドでしたが、個人的には驚いてはいけないの破茶滅茶エンドがなかったのが悲しみでした。
令和初の笑ってはいけないでしたので心機一転するにはいいタイミングだったのでしょう。

さて、長々感想を駄弁ってしまったのですが今年も本小説をよろしくお願いします。


ソード君の設定おいておきますね。暫くマリオグループの話になりますが。

・剣術Miiファイター
名前はソード。姿技はデフォルト。趣味はガーデニング。英語もどきを会話におりこむ偽外国人。実際の出身地は不明。フリーダムで何事にも興味を持つ好奇心旺盛。Miiトリオは共に全てのやみのおうを倒した仲。



時は戻って別れたもう片方のチーム、マリオ、ピーチ、オリマー、Wii Fit トレーナー、スネーク、むらびと、リンク、シークは溶岩城周囲の細かな散策を任された。

未だ探索が済んでいない場所もある。恐らく見落としだってあるかもしれない。それらの解放が目的だ。

 

怒りに任せて突き進んでいったクッパと、それを追っていった他ファイターの背中が見えなくなると、パン、とマリオが白い手袋をつけた両手を叩く。

 

 

「さて! どこか行っていない場所の心当たりがある人はいるかい?」

 

「えっーと… オレ達はここを通っていて、オリマー、ここの辺りは行った?」

 

「どこだ? …そこらへんは行ったな。一人ファイターがいるんだがゲートが閉まっていて辿り着けなかったんだ。」

 

 

簡単な地図を地面に描き、指を指して確認する。新参者は古参に指摘されながらもそれぞれ意見を出し合う。

 

 

「でも、そこと城の間辺りはまだだな。さっき川のところに一人いたが、この広さ的にもう一人二人はいそうだな。」

 

「ふむむー、他なんかある?」

 

「ピチューがいた気味の悪い森とインクリングやトレさんのいた街へ行くために横道を通った森。ここはあまり探索できていないな。後、リンクがいたところにまだ道があった。」

 

「でも、そこは遠すぎます。後でいきましょうよ。」

 

「多分こっちの方は他のみんながやってくれるわよね?」

 

「多分ね。じゃあ、ボクらはこのへんだね。あの激流を超えれるスピリットが居ればいいけど…」

 

 

現時点での問題点を上げたシーク。川の真ん中の陸地にポツンと一人いるファイター。あの激しく流れる川がどうにか出来ないか、と悩む。カービィならば飛び越えれたのだろうが、今ここにはいない。さらに言えば、一人川を越えられても、もしそこで負けてしまったら、そこのファイター共々激流に囲まれ取り残されてしまう。

 

 

「あそこのファイターをどうするかというのは一つの課題だな…」

 

「でも今はどうすることもできませんね…」

 

「ん〜… 取り敢えず後回し! ここのへんから行こう!」

 

 

 

 

 

マリオが指した場所。点々と置いてあるカラフルな丘の上を歩き、虹の橋がかかっている。地味に高さがあるので落ちると面倒なことになる。

 

 

「おおー、メルヘンなところに来ました!」

 

「なんかお菓子みたいにも見えるな!」

 

「うーん… 言われてみれば。やっぱカービィいなくてよかったかもな。」

 

「確かに!」

 

 

こんなところの探索を任されていたら、知らぬ間にお菓子を平らげてそう…いや、これは本物のお菓子じゃない。それなら、いた方がよかった。

 

 

「むらびとー、そっちに一人いるよー!」

 

「あー、いた!」

 

「あら、あの子…」

 

 

適当に別れて付近を探索する。一人いたファイターに一番近いのはむらびとだった。

シークと探索をしていたピーチが声を上げる。彼女にはそのファイターの正体を把握したのだ。

 

 

「ヨッシー…!」

 

「ヨッシー… そうか。むらびと! ヨッシーの相手を頼む! ボクはマリオを呼んでくる!」

 

「ぼくが? んー… ま、いいよ。行ってくる!」

 

 

別に拒まなきゃいけないほど仲は悪くない。恨みと言えば、たまにお菓子をつまみ食いするぐらいだ。どうやらヨッシーの裏に道があるようだ。解放しなければ進めそうにない。意を決してファイターに触れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヨッシーはファイター達の知っている彼だけではない。確かにマリオ達と冒険に行ったり、ゲームで共に遊ぶ個体は彼だが、彼の故郷に行けばカラフルなヨッシー達をみることが出来る。

その故郷がヨッシーアイランドだ。但しここは厳密に言えば違う。ベビークッパによって絵本の世界に変えられた元楽園、『スーパーしあわせのツリー』だ。

ただでさえ偽物にされた世界なのに、それをマスターハンドの力で模倣したステージを作られ、さらに今は『終点』化している。とてもややこしい。

 

 

「本当にヨッシーだ… 僕もしずえさんを見つけたらわかるのかな?」

 

 

ピーチの言う通り、むらびとの相手はヨッシーであった。マリオの頼もしき仲間の一人だ。今は赤色の双眼をギラつかせているのだが。

むらびとがふとぼやく。同郷の者を見破る不思議な感覚はむらびとにはわからない。少なくともしずえ相手にはもうわからない。

 

 

『…』

 

「おっと、」

 

 

自分で産んだ卵をヨッシーは投げる。不思議なことにその卵の中身はなく、むらびとが余裕で避けた後、地面に激突して割れる。殻のみが飛び散り、そしていつの間にか消えている。

 

 

「よっと!」

 

 

『ハニワくんロケット』を用意し、発進させる。推進力を持ったロケットがヨッシーに向かって飛んでいく。

 

 

『…』

 

 

だが、ヨッシーはたった一つ踏みだしただけでハニワごとむらびとを越えてしまったのだ。

彼は飛べる翼を持っているわけではない。念動力で浮かんでいるわけではない。ただ、自分の身体能力だけで彼らの例に劣らないほどの空中での戦闘能力を持っている。飛べる力がなくとも、言わば足で飛んでいるのだ。

 

 

「あわっ…!」

 

『…』

 

 

後ろに回り込まれたむらびとの反応が遅れる。

先まで力を込めて、ぴんと張った尾がむらびとにヒットする。見た目はファンシーでも彼はドラゴン。この世界の影響で力が制限されているとはいえ、その一撃は重い。さらに後ろからの攻撃により、バランスを崩してしまい、次の動きも遅れる。

 

 

『…!』

 

「いっ…!」

 

 

追撃。後ろに引いて勢いをつけた頭突きが迫りくる。そのままの勢いでぶっ飛ばされ、顔から地面にダイブする。擦り傷が出来た。

 

更なる追撃をしようと寄ってくるヨッシーを、カブを振り回して退却させた。

なんとか引かせられたが、空中戦を挑めばまず勝てないであろう。パチンコで牽制する。だが数発当たっただけでは戦況は変わらない。

 

 

「どうしようかな… 別に僕も特別足が速いって訳じゃないし…」

 

 

とはいえ、陸上戦を強みとして押しつけられるほどむらびとは身軽ではない。あくまで空中戦より勝算が高いというだけである。

 

 

「ま、やるしかないか…」

 

 

小脇に植木鉢を抱えておく。そのまま先程の続きと言わんばかりにパチンコを撃つ。

 

 

『…』

 

 

何度も同じ攻撃をしても、牽制程度にしか使えない。人を乗せても素早く走り回る脚力を使い、放たれる弾幕を潜り抜けていく。そして、むらびとの目の前に来ると跳び上がる。今度は越えず、むらびとの真上の宙にいる。

 

 

「(『ヒップドロップ』!)っ! いっけっ!」

 

『…っ!』

 

 

相手のやりたいことを一早く理解したむらびとは一気に走り出す。そして、持っていた植木鉢を真後ろにぶん投げた。

上手くヨッシーに植木鉢が当たり、着地が乱れた。まるで先程の出来事がヨッシーに返ってきたかのようだ。

 

 

「よし、チャンス!」

 

 

取り出した傘でヨッシーを打ちつける。少年ならば傘を剣に見立てて戦いを模した遊戯をしたことはあるだろう。むらびとも例に漏れずだ。

 

さらにバランスが崩れた。いつの間にか両手に着けた赤のパンチンググローブで見様見真似のボクシング。数発殴られたところで体勢を立て直し、ヨッシーは拳の雨から離脱した。

 

 

「あー、抜けられた…」

 

 

出来るだけいっぺんにダメージを稼ぎたかったが、仕方ない。

もう少し押していけばぶっ飛ばせるはず。手を緩めるな。

 

 

『…っ!』

 

「…たっ…!」

 

 

ヨッシーの蹴りが、むらびとのシールドに激突する。シールドを足場のようにして跳んで距離を作る。そこでヨッシーは止まる。どこから何をしてきても対処できるよう集中しているのだ。

 

 

「…ならっ!」

 

『…』

 

 

『はなび』を握る。対応は万全というならば、やってみればいい。ヨッシーの目が鋭くなる。

 

 

「つあっ!」

 

『…ぇ』

 

 

なんとむらびとは打ち上げ花火でそのままヨッシーをぶん殴ったのだ。普通は下に置いて火花で攻撃してくる。それを逆手にとった奇想天外な攻撃だった。シールドも間に合わず、ヨッシーの視界がガクンと揺れる。

 

 

「おっけー!」

 

 

殴打に使っただけの花火の中身はまだある。殴った勢いのまま大地に置いて火をつける。

 

 

「…!」

 

 

耳と目を塞いで背を向ける。それでも聞こえた音が耳に響きながら、大乱闘の勝利を手に入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あのメルヘンなエリアに戻ってきた。ヨッシーのフィギュアは横たわっている。

 

 

「お疲れ様。怪我はないかい?」

 

「んーと… 後頭部と…」

 

「治療費はないからね?」

 

「ちぇ。バレてるよー。」

 

 

クスクスと手を口に当てて上品に笑うピーチ。そんな会話をしていると、誰かがこちらに渡ってくる。

 

 

「こちらの方は終わりました。そちらはどうですか…ってヨッシーさんですね。」

 

「おおー、小僧やるじゃないか。」

 

 

Wii Fit トレーナーとスネークが渡ってきた。他はまだどこかで戦っているらしい。

 

 

「それはどうもっと。ヨッシー戻してみんなで次行こうよ。」

 

 

金色の光を放つフィギュア。人をこうやって助けるのも悪くはない。恐らく助ける規模が多いのだから、勇者だの英雄だの言われるのだろう、とぼんやりとそんなことを考えていた。




オリマー「あの大きさの卵を生み出すには相当な時間と気力が必要なはずだが… 乱闘中にぽんぽんと産んでいる。」

ヨッシー「ん〜?」

オリマー「そもそも性別からして謎だ。ボクと言うが卵は産む。そういう趣向なのか、それとも雌雄同体?」

ヨッシー「どうしたのー?」

オリマー「あの舌でどうやって喋っているのか。オウムとかいう生き物が人の言葉を話せるのは舌が人の物と近いからであって、ヨッシーの舌は全く別のものだ…」


ヨッシー「次回!『一長一短、どっちもどっち』!」


ヨッシー「それじゃあフォックスとかファルコとかどうなのー?」

オリマー「…それもそうだな。」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三十七話 一長一短、どっちもどっち

ゲームがいしゃのみなさんはさいふをいじめるのがすき(遺言)


ゲームフリークさん!? ゼノブレリメイクとかスクランブルとか待機してるって知ってます!? まだドラクエ10の新パケも買えてないのだけど!?
ポケモン追加とか買うしかないなのですが!?


「へー、ボクが寝てる間にそんなことがあったんだ!」

 

「ここにいる全員寝てる間に何か起こった人だけどな!」

 

「むしろ、起きてたのカービィだけだよ。あのカービィだけだよ。」

 

 

ヨッシーを解放し、別れていたファイターが合流した。ヨッシーへの説明に定期的に茶々を入れる他ファイター達。マルス達のグループと違って人の言葉を話せる者が多い分、こういうやかましさがあるのだ。特に英傑。

 

 

「なるほどなるほどー。じゃあキーラよりもみんなを助ける方が大事だね!」

 

「正直手下をけしかける他、何もしてこないのが不気味ではあるが…」

 

「それは前に話してたな。結局あのビームには準備とパワーが必要という考えがでていた。」

 

「あー。そうか。そうかもしれねえな。」

 

 

今はその準備をしている状態なのかもしれない。

 

 

「…んっ? だが、最初逃げ切ったのはカービィだけだろ? あんなものまた用意しなくても一人ならどうにかできたんじゃないか?」

 

「…最悪カービィをフィギュアにするだけでも、キーラ的にはよかった筈だ。」

 

「(キーラは何かと戦おうとしている? 俺たち以外の何と…?)」

 

「何よくわからないこと話してるの? そろそろ次行こうよ。」

 

「まっ、今わからないならそれでもいいか。そもそもの情報が少ないしな。」

 

 

スネークは思考を諦める。それは今じゃなくても構わない。ゆっくり考えをまとめていけばいい。

 

先行したむらびとがリボンで出来たような穴に飛び込む。マルス達と比べてここの辺りがスムーズだ。警戒はスネークかオリマーがしてくれるだろう。

 

 

 

 

「よっ…と。ここは?」

 

 

滑り台のように滑っていくと、森森したところへやってきた。小川が流れていた。あの激しい滝とも言える川はここに繋がっているのかもしれない。だが、地形的に難しいか? いや、キーラの造る世界に常識を求めてはいけないかもしれない。

 

 

「どう繋がってるんだろ…「「やっはー!」」「ちょっと待ってリンク!」「ヨッシー!?」…おろ?」

 

 

背後から声が反響して聞こえてくる。先に言っておくが、むらびとは滑り切って立ち上がっただけで動いていない。マルス達と似た展開が始まるようだ。

 

 

「あっやべっ! 避けろぉ!」

 

「あっ!」

 

「うわああ!?」

 

 

ようやくリンクとヨッシーが状況を理解できたが、時既に遅し。慌ててむらびとが駆け出そうとするが、二人の体が激突する。むらびとが倒れ込む。

 

 

「いてて… むらびとさん! 大丈夫!?」

 

「お…りて…」

 

「あっ、悪りぃ!」

 

 

半分乗っている形となってしまった二人に降りるように促す。酷い怪我はしないのがファイターとしての力の一つだが、完全ではないとはいえ、二人の体重が子供に降りかかってしまった。

 

むらびとの位置を動かした後、リンクが促して他ファイターも合流する。むらびとはWii Fit トレーナーが見ており、リンクとヨッシーは正座して二人のプリンセスのお説教を受けていた。

 

 

「キミ、一体いくつなんだい? 呆れてものも言えないよ。普通はヨッシーを咎める立場なんだよ?」

 

「あなたを助けてくれたのは他でもないむらびとなのよ? ですのにこの仕打ちはなんです?」

 

「だって動いてないって」

 

「思わなかったんだよ…」

 

「「言い訳無用!」」

 

「「…はい」」

 

 

弁解すら被るこの状況。

 

 

「むらびとさん大丈夫ですか?」

 

「んー、平気。痛かったのはその時だけだし。それに…」

 

「それに…?」

 

「プラスかマイナスかで言えばプラスだし。」

 

 

懐から取り出したのは袋型の財布。だが、使い古されたそれは明らかにむらびとの物ではない。

 

 

「す、スリましたね!?」

 

「えっ? はっ? い、いつの間に!?」

 

 

そう、のしかかった時か動かした時か不明だが、いつの間にかリンクの財布を掠め取っていたらしい。

 

 

「転んでも… いや、転ばされてもただでは起きない男…」

 

「無料じゃないからね! ただじゃないね!」

 

「本当にたくましいな、あの小僧…」

 

 

別に泥棒したい訳じゃない、と医療費として半分ほどむらびとの財布に入った後、リンクの財布は持ち主に返された。財布が軽くなったのと足の痺れのダブルパンチにより、がっくりと項垂れるリンク。だが、後者は自業自得だ。前者もある意味自業自得だった。

 

 

 

 

「全く… いつまで現実逃避してるのさ。」

 

「あははは…」

 

 

むらびとによる被害者が増えてしまった現状。もう下手なことは出来ないだろう。

そんな中、順調にスピリットを解放していくファイター達。それでもまだ、リンクは完全に上の空だ。

 

 

「次ね。誰が行きます?」

 

 

リンクはダメだ。最早叩いても治らないアナログテレビ以下だろう。ピーチは実は先程行っている。

 

 

「それじゃあボクが行こうかな。…まあ、リンクは暫くほかっておこう。どうせすぐ忘れる。」

 

 

牧童出身でありながら、静かな気品を感じる勇者とは大違いだ。勇者ではあるのだろうが、シークのいる世界の勇者とはやはり性格が大違いだった。時代が違うからこうなのか。

 

ため息をつきながらその、スピリットに触れる。戦いの場へと向かう道だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ウーフーアイランド』。様々なフィットネスが楽しめ、島全体が一種のレジャー施設のようになっている島である。Wii Fit トレーナーが目を輝かせていた。

大乱闘のステージにおいては、移り変わっていく足場で様々な場所を巡っていくステージとなっている。

 

 

「っ! (シモンのボディが三人か。正直、誰かと一緒に戦う方が良かったな。)」

 

 

茶髪となったシモンの体一人に、銀髪に近い髪のシモンのボディが二人分。

 

そもそも、シークは多人数と同時に戦うのが苦手だ。スピードはあるが、パワーの足りていないシークは全員をぶっ飛ばす前にダメージが蓄積される危険がある。せめて誰かのサポートにつけれていれば楽にいけたか。

とはいえ、これは結果論。シークにとっての有利点は相手が復帰力の小さいシモンのボディだったこと。そしてこのステージがどんどん場所を移り変わっていくステージだということだ。

 

一長一短、どっちもどっち。ここは自分の有利点を生かそう。持ち前のスピードで動きながら復帰を妨害し、自分が致命傷をくらう前に早期撃破を狙う。シークの戦いの方針は決まった。

 

 

 

今は器状になっている大きな足場に、真ん中についている小さな足場。スタンダートなフィールドだ。

 

 

『『…』』

 

「…!」

 

 

二人の敵が、全く同じタイミングで斧を放り投げる。まるではじめから決めていたかのようにピッタリだ。

 

 

『…』

 

 

もう一人も遅れて斧を放り投げる。薄い足場ならば貫通する斧。上の小さな足場に乗っていたら大打撃だっただろう。

 

 

「(なるほどね…)」

 

 

スピリットとの戦いではそのスピリットの特性が影響される。どうやら元の世界では斧を武器として使っていたらしい。

 

シークは走り出す。

華奢な体躯に目にも止まらぬスピード。さらに風の抵抗を極限まで減らしたシーカー族の服。

斧ではられた弾幕を潜り抜け、一撃を与えるため、それらがフルパワーで襲いかかる。

 

 

『…っ!』

 

『…!』

 

「ハッ! (移り変わる!)」

 

 

一閃された敵のうち一人が反撃として『聖水』を投擲するも、軽くかわす。足場が動きだし、フィールドが変わっていく。

 

 

「海!」

 

 

海上を走るクルーザーの上が戦場となるこのフィールド。復帰させるのとは少し趣旨が違うが、落とせばいい分こちらも楽だ。ただこちらも海に落ちたら、クルーザーにはたどり着けないだろう。深追いは禁物である。

 

 

「やあっ!」

 

『…っ!?』

 

 

一人だけに狙いを絞り、宙にいた相手を外へ向けて蹴りだす。二段蹴りに飛ばされるがジャンプを駆使してクルーザーへ戻ろうとする。

 

 

「!」

 

 

だが、シークはそれを見逃さない。戻ろうとする相手を『跳魚』で押し出した。着水し、流されて赤い光となって消えた。

 

 

「よし、まず一人!」

 

 

クルーザーに着地しながら心の中でガッツポーズをする。だが言い換えればまだ一人だ。

 

 

「…! あぐっ…!?」

 

『…』『…』

 

 

背後から斧が迫る。背中にヒットした。相手だってファイターの体を使っているのは事実なのだ。それも、多くの戦いを潜り抜けてきたファイターの。

 

 

「っ!…やあっ!」

 

 

瞬間移動のように見せて移動する『浮身』の技で相手の目を眩ませ、一気に距離を詰め、斬りつける。

一人、茶髪の敵は反射的に張られたシールドに阻まれたものの、もう一人はクルーザーから追い出すことができた。そしてこのタイミングでフィールドの変化が発生する。

 

 

「(運が向いた!)」

 

 

浮かび上がっていく新たな足場に届かず、追い出された一人はそのまま置いてかれてしまった。新たなフィールドは大きな足場の端に小さな足場が浮いているシンプルなもの。

 

 

「これで後一人…」

 

『…』

 

 

クナイを構え直す。一対一ならば状況は悪くない。

 

 

『…!』

 

「またそれかっ!」

 

 

敵が選んだ行動は斧の投擲。ここまでくると、戦いの素人ではなく、何かのこだわりか一番信頼している武器が斧なのかと思ってしまう。だが、それは今は関係ないこと。

 

 

「!」

 

 

ダッシュの勢いを伴った鋭い蹴りが真っ直ぐ腹部に命中する。その勢いのままに吹き飛ばされ、落下。但しまだ浅く、復帰も難しくない距離だ。

 

 

『…っ!!』

 

 

一つの望みにかけて、精一杯手を伸ばす。だが、シークだってそれを黙って見ているだけな訳がない。

 

 

『…ッ!?』

 

 

崖側に配置された『炸裂丸』。そう。手が届いたところで、爆発に巻き込まれる。こんなところで妨害されては復帰できない。

 

爆発が後押しして、敵は奈落に落とされる。同時にフィールドは島全体を俯瞰できる位置へ動いていた。




リンク「俺のお財布… スッカスカ…」

フィットレ「リ、リンクさん…」

シーク「半分は入ってるでしょ。はあ… しかしルピーを一体何に使うの? キミの世界じゃ使えないでしょ?」

むらびと「飾る。」

リ フィ シ「「「(飾る!?)」」」


むらびと「次回、『飛べる限界はある』。」


むらびと「インテリアとして売り払うよ。」

シーク「お金すらも売る気なんだ…」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三十八話 飛べる限界はある

三十三話前書きより
>>安定択なら風花雪月のベレトスかクラッシュバンディーク。
>> 安定択なら風花雪月のベレトス
>> 風花雪月のベレトス



どうも皆様預言者です。

ごめんなさい調子乗りました。個人的にはジョーカーかテリー当てた人は預言者名乗ってもいいと思います。バンカズはなんだかんだで毎回出る出る言われてましたし。

最後のDLCでベレトス来ちゃいましたね。来ちゃいましたよ。
いい意味で色々ふざけた参戦ムービーに級長達の英雄の遺産。剣士が多いという意見をなんとかしようとした感じでしょうか。でも今のところこの三つが両立できるルートないんですよね。まさか風花雪月の方のDLCで…!?

第一印象はピーキーでプレイヤーの読みが一番影響でそうだなという感じでした。forのベヨネッタみたいにはならなそうですね。
既プレイ勢というのもあって大満足の出来でした。強いて言うならステージの背景にモブでいいからもっと人が欲しかったことですかね。

そして最後に風花雪月DLCの新情報。キャラの追加と服の追加とかその程度ならいいかなと詳しく調べもせずにスルーしてましたけどサイドストーリーやばそうです。三人級長使えそうで嬉しい限りです。確かに何してもわかりあえない関係というのも燃えるのですが。まあそれは兎も角、スマブラDLC六弾以降と共に頭の中の買い物カートに入れます。
あ〜あお金が消えていく〜


マリオ、リンク、スネークが、否、サジ、マジ、バーツが丸太を纏めて縛り上げ、橋を造る。急ごしらえの物とはいえ、これで十分だろう。Wii Fit トレーナーが足で確認するが、軋む様子はない。

 

 

『おう! これで通れるようになったぞ!』

 

「ああ、助かった。協力ありがとう。」

 

『しかし、マルス様こんな方々と一緒に戦っていらっしゃるのか。』

 

「あら、マルスの知り合いだったのね。」

 

『ああ、マルス様によろしく言っといてくれ!』

 

「わかったよ。伝えておく。」

 

 

橋が完成すると、三人は体から抜け出していく。肉体を貸していたファイター達は一瞬ガクッと揺れたものの、すぐに平常を取り戻した。

 

 

「はあ〜、慣れそうにないな。これは…」

 

「自分が動かしたんじゃないのに疲れたー。」

 

「うー、腕が痛いー!」

 

「お疲れちゃーん」

 

「マリオさん大丈夫?」

 

「んー、なんとか平気ー。そんでもってこれでっと、」

 

 

あのファイターの元へ行ける。渡るための橋が壊れていたため、戦いを挑むこともできない状況だったが、シークが解放した三人のおかげで橋がかかって進めるようになった。

 

 

「よし。でもあの三人は休んだ方がいいか… ヨッシー、行って。」

 

「ボクゥ!?」

 

「むらびとに激突してたじゃないか。それの分働いてよ。」

 

「う、うん。わかったよ。」

 

「ああ、当然リンク。キミも行くんだよ?」

 

「ええっ!?」

 

「ぷっ!」

 

 

突然指名されたリンク。三人は休んだ方がいい、とはなんだったのか。思わずスネークは吹き出してしまった。

 

 

「俺! いっぱい! 疲れてる!」

 

「そんな大きな声を出せるなら元気だよ。そもそも橋を架けたのはキミじゃない。」

 

「なあ〜!?」

 

 

片言で反論するも軽くあしらわれた。少なくともリンクでは口で勝てない。

 

 

「くっくっく… 俺の言伝を破って船の中を歩き回ってただけはある。流石だ、くくっ…」

 

「あら、懐かしいわねー。」

 

「何が流石なのかわからないけど、いつまでキミは笑ってるの。」

 

 

ガクッと項垂れながらトボトボと歩くリンクを慰めるヨッシー。疲れているのは本当らしい。

だが、それでも強行させたのは、ちょっとしたお仕置きをしたいという少しのいたずら心とそんなハンデを持ってしても負けないという信頼の現れだった。

 

実質罰ゲームのように言われたが、別に助けたくない訳ではない。一緒にそれに触れ、戦いの場へと移行する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼らの戦場になるのは『マリオUランド』。マリオが数多く冒険してきた世界の一つだ。

 

 

「ここ… マリオのとこじゃねえの?」

 

 

『終点』化はされていたが、マリオの世界にあるものだとはわかった。だが、リンクの疑問はそこではない。

 

 

「プリンだ!」

 

 

カービィと同じように丸々としたピンクの体。しかし三角の耳やカールはカービィにはないもの。大きくつぶらなひとみは赤く妖しく輝いていた。

 

 

「なんでここにプリンちゃんいるんですかね〜」

 

「ん? どういうこと?」

 

「もっとポケモンに合うステージがあるってこと。」

 

 

何故マリオの世界のステージであるはずのここにプリンがいるのか、と疑問に思ったらしい。自分は確かあの塔のステージにいた。シークは終点にいたらしいが、それはリンクの中ではカウントしていない。

 

 

「ん〜… まっ、いっか。勝てばいいだろ、勝てば。ほら、くるよ!」

 

「あわわわ!」

 

 

リンクは飛び退き、ヨッシーは襲ってきた両足揃えてのキックを卵の殻に隠れて防いだ。

 

 

「っ!」

 

『…』

 

 

『ブーメラン』を放るが、さらに高く飛んで回避された。戻ってきた武器をキャッチしながら考える。

 

 

「(どうしよっかなー。俺にプリンほどの空中戦は無理だし、ヨッシーでもちょっと大変そうだな…)」

 

 

リンクにはプリンが空中戦が得意、というざっくりとしたデータしかない。そもそも、プリンが大乱闘に積極的ではないからだ。元となる情報が少ないため、ざっくりの考察しかできない。

 

 

「んもうっ! 降りてきてよ!」

 

「ちょっとストップ!」

 

 

リンクの静止の言葉も届かず。ヨッシーは卵を生んでプリンに投げるが、右へ左へふわふわと動いて上手く当たらない。

 

 

『…』

 

「いっ! ベロッ」

 

「ったく!」

 

 

両足を揃えてドリルのように回転しながら落下して攻撃。攻撃に当たりながらも舌を伸ばすが、攻撃の衝撃を受けたままでは上手く狙いがつけられる訳ではなく、見当違いの方向へ飛んでいく。

それを見たリンクがプリンに『弓矢』を射る。これで取り敢えずの離脱に成功したと思いきや…

 

 

「あああっ! 引っ張らないで!」

 

『…!』

 

「うげっ! こいつひっでーことしやがる!」

 

 

矢が当たったプリンは必死に舌を掴み返していた。力の限り引っ張り、思わずヨッシーは悲鳴に近い声を上げる。舌を引っ張られているというのにどうして声が出せるのかというツッコミをする者はここにはいない。

 

 

「このっ!」

 

 

リンクが駆け出す。幸いかプリンに遠距離への攻撃の手段はない。リンクの動きに対応するにはヨッシーへの集中をリンクに移さなければならないだろう。だが、相手には舌で防御するという選択がある。防がれないような攻撃を加えなければいけない。

 

 

「っ!」

 

『…リッ!』

 

 

舌と地面の間を滑り込むようにスライディングを仕掛け、舌の下側からプリンを蹴り飛ばす。思わず手を離し、ヨッシーはひいひい言いながら舌を口に戻した。

 

 

「うー… た、助かったあ…」

 

「おー、大丈夫かな? あのさ、正直空中で戦っても勝てないと思う。地上で数撃っていこうぜ? プリン軽いしそれなりにすぐ飛んでいくだろ。」

 

「うん。そうだね! 迷惑かけてゴメン!」

 

「ヘヘッ、良いってことよ!」

 

 

白い歯を丸見えにしてニカっと笑う。これでも類稀なる戦闘センスを見せる。これは天性のものだ。おちゃらけているように見えて戦闘の指揮は筋が通っている。

 

 

「えいっ!」

 

 

またもや卵を放り投げるが、これは考えなしに投げているわけではない。いくら空中に強いプリンでも無限に飛べるわけではないのだ。

鳥類が大地の恵みを受けた者達を捕食し、疲労すれば休息に降りてくる。当然プリンも似たようなものだ。飛べる限界はあるのだ。

 

 

「とりゃあ!」

 

『…ッ!!』

 

 

ダッシュで跳び蹴りを入れる。ちょうど着地点で接触するように。プリンも『ころがる』体勢で迎撃しようとするが、ヨッシーの方が競り勝った。飛ばされていくプリン。

 

 

「もーらいっ!」

 

 

リンクの『下突き』だ。いつのまにかプリンの上を取っていた。プリンは逆方向へUターンしていく。

降り立つリンクに、纏う緑衣を幻視した。タブーとの一戦のとき、共に参った勇者。でも、その顔は厳しくも優しい顔とは違い、穏やかで茶目っ気のある顔で。

 

 

「ほらほら! チャンス!」

 

「はっ!? そうだね!」

 

 

今一緒に戦っているのは彼ではないけど。また会いたいとは思ってもいいだろう? 再び会うためにはキーラを倒し、この世に平和を取り戻さなければ。

 

 

「はっはっはっ…! えいやっ!」

 

『…ッ!』

 

 

ステージを飛び出して追ってくるヨッシーに反応はできたが対応できない。

 

ヨッシーの大きな頭で、少し傾いた角度で奈落に叩きつけられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金色の光を放ち、ふうせんポケモンが元の姿を取り戻す。きょとんとしながら大きな目をぱちくりさせた。

 

 

「おはよう、プリン。痛いところはないかしら?」

 

「プリ…?」

 

「平気かい? 多分リンクは手加減とかできないからね。」

 

「ひっど!? 無理やり行かせといてそれかよ!?」

 

「冗談だよ。ふふっ。」

 

 

むー、と不満げに頬を膨らますリンク。リンクは戦っていたのか? 一体誰と?

 

 

「プ…?」

 

「まあ、そこの辺りは追々説明するよ。今は置かれている状況からだね。まずキーラの攻撃から…」

 

 

その時、ドゴンと大きな音がする。空振を起こす程の巨大な衝撃。それがどこかで起きたらしい。

 

 

「おいおい、なんだなんだ?」

 

「あっちの方だね! 行ってみよう!」

 

「なんか黒い煙上がってるけど。」

 

 

天まで届く煙はまるで狼煙のようだ。

 

 

「ああ、行ってみよう。何かあったのかもしれないからな。」

 

「はい! プリンさん、説明は後です!」

 

「リュ〜…」

 

 

Wii Fit トレーナーに抱き抱えられ、プリンはあの黒煙の方へ行くこととなった。色々と聞きそびれた感はあるものの、今は身を任せて連れて行ってもらうしかなかった。




リンク「今日のハイライトはプリンに舌を掴まれた時ですねー。」

ヨッシー「あそこが勝負の分かれ道でしたっ。解説のスネークさんいかがですか!」

スネーク「いや俺知らねえから。」

リンク「そう。舌の下側をスライディング…」

スネーク「…はっ?」


リンク「次回!『純粋な殺意』!」


リンク「舌の下」

ヨッシー「舌の下」

スネーク「繰り返さなくていい!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三十九話 純粋な殺意


P5スクランブル「もうすぐだぞ!」

風花雪月DLC「こっちの方が早いぞ!」

あつ森「こっちもいるから!」

ファイターパス第二弾「誰が出てもどうせ全員買うなら早いうちに!」

ゼノブレHD「発売日発表マダー?」

ドラクエ10パケ5「もう売ってるこっちはスルーですかそうですか」


あの… 待って…


とりあえず設定ポーイ
・プリン
性別♀。おだやかな性格。にがいものが好き。バトルは好きではなく、あまり大乱闘に前向きではない。


「えーと… あの煙はなんだったんだ…?」

 

「ちょっとしたアクシデントさ! ノープロブレム!」

 

「確かに事故ではあったが…」

 

「むしろ事件とも言える程スムーズな展開だった。」

 

 

あはは、と快活に笑ってやり過ごそうとするソード。元凶が何をほざく。

 

 

「ピチュッチュー!」

 

『…プリン。』

 

「…プリュ。」

 

「あー! やっぱりマリオいた! ま、キミがいなきゃ大乱闘は始まらないよね!」

 

「ピット! あったりまえさ!」

 

「げっ! しずえさんだ! リュカ助けて!」

 

「えっ? えええー!?」

 

「リュカさんの後ろに隠れないでくださーい! むらびとさん! 帰ったら皆さんから要望の来ている公共施設の件に取り掛かってもらいますよー!」

 

「だから別に村長やりたくないって!」

 

「いつも通りのやかましさじゃないか。マルス、これを指揮してたのか?」

 

「で、でもこういう時だけだから…」

 

 

手分けした時にいなかったメンバーと交流を深め合う。ただ、垣根なしに騒ぐので耳に優しくはない。スネークが苦言を漏らす。マルスのフォローも説得力が欠けらもない。

 

 

「…さて、切り替えよう。思わぬ合流になっちゃったけどお互いどの辺りまで探索できたかな?」

 

 

パン、と両手を叩いて注目を集める。話が切り替わり、各々リラックスしながら情報を共有する。

 

 

「私達は… ここの辺りにヨッシーいて、さらにこちらの方にプリンがいた。それであの煙を見てここにきたんだ。」

 

「オレ、お手柄、鶏ガラってやつ!」

 

『偶然だ。調子に乗るな。』

 

「チェ〜」

 

 

茶々を入れるソード。あわよくば大事故につながるところだったのに反省の色など見られない。

 

 

「僕たちは、ここをこう進んで… そこからトンネルを通ってこの村にたどり着いたんだ。」

 

「あっ! そういえば土管でワープしちゃったから結局このお山は探してなくない!?」

 

「そ、そういえば!」

 

「ということは… 今いるのがここで… まだ行っていないのがその山と、ピチューがいた辺りの森、ガレオムがいた場所の北と、リンクがいた場所の隣か。」

 

「そこは私ちらっと見ました。大きな湖でしたが、残念ながら水泳具を持っていなかったので諦めました。」

 

 

水着があれば本当に泳いだのか。色々と謎である。

 

 

「ボートはありましたが… 私運転できないので。」

 

「それならかっぺいさんにお願いしたらどうですか? 彼はボートの操縦もできるんです!」

 

「ああ、バス運転してくれた人か。」

 

「僕はあの人がバスの運転できるってのが初耳なんだけど」

 

「すま村とは違う場所で運転していたらしいですよ。」

 

「そうだね、じゃあそこから行ってみようか。」

 

 

ファイター達を立ち上がらせ、歩き始める。

 

 

 

 

「そんなこんなで! ボク達空を飛んでいます!」

 

「エアプレーンでな!」

 

「ふえぇ〜…」

 

 

湖の真ん中に小島があり、そこには何かの裂け目のようなものができていた。そこにいつもの如くいきなり突撃していったところ、こんな場所にたどり着いた。一機あった飛行機に乗り込み、オリマーやフォックス、キャプテン・ファルコンの三人で何とか飛び立つことに成功した。ピットが飛行していることに有頂天になっても、結局は手柄は飛行機か、飛び立たせることに成功した三人のものだろう。ソードの容赦のない言葉に涙を流す。

 

 

「んー… まだ耳がキーンってします…」

 

「結構低いところ飛んでるつもりだったが… わるい、気圧の影響だな。オレ達には慣れたものだが。まあ耳抜きしておこうか。」

 

「ワガハイの耳も詰まっているぞ!」

 

「ってオマエもかよっ!?」

 

 

飛行機に乗ると起こる耳鳴りがリュカとクッパを襲っている。いくら腕っぷしが強くてもこれを滅する力はない。

 

 

「まさか世界はここまで進歩するのか…」

 

「羽ばたいてもいないのに空を飛んでいる。それもこんな大きなものがね…」

 

 

シモンとマルスがジェネレーションギャップに打ちひしがれている中、コックピットからキャプテン・ファルコンが出てくる。

 

 

「いたぞー! 今度はファイターだ!」

 

「ナイス。これで最後かな?」

 

 

飛行機を運転していく中で、散らばっているスピリット達を幾つか見つけている。とはいえその間に他の探索も出来ず、一々飛行機ごと留まっていたのだ。待機しているメンバーはかなり暇している。

 

 

「ちょうど退屈していたところだ。ワガハイが「ボクが行ってくるよ!」マァリィオオオ!」

 

 

ライバルの意気込みを遮るマリオ。

 

 

「だって… 何も知らない上にクッパの八つ当たりの相手にされるなんて… 可哀想だし…」

 

「本当にな…」

 

「小声のつもりか! 聞こえてるぞ、フォックス!」

 

『着陸するからいい加減席に座ってくれ!』

 

 

オリマーのアナウンスを受けて、同じタイミングで席に座ってシートベルトをつける。似たもの同士なのかもしれない。

着陸後、無理やり行こうとするクッパを主にフォックスが押さえつけてマリオは何とか大乱闘の場にたどり着くことが出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

差し込む夕日。ここはいつでもそうだ。少なくとも創造神の作品であるこのフィールドではすうだ。『朱雀城』。幼い頃からリュウが修行の場として使っていた場所だ。『終点』化している違いはあれど、その絶景は変わらない。

 

 

「…っ!?」

 

 

大きなプレッシャーを感じる。ゆっくり顔を上げて正面を見る。ここにいたのはやはりというかリュウであった。

 

 

「これは… 結構怖いかも…」

 

『…』

 

 

当然大乱闘で戦ったことはあるのだが、今はあれとは別人のように感じる。

腕を組み、赤くなった双眼でマリオを睨む彼は手加減無しの純粋な殺意を向けている。その威圧感は大きく、フィギュア化のルールが無ければ挫けていたかもしれない。

 

 

「すぅ…」

 

 

深呼吸。心を落ち着けなければきっとまともな戦いはできないだろう。

 

 

「やあ!」

 

 

勢いをつけて、跳び上がる。握った拳はリュウに狙いをつけて振るわれていく。

 

最小限の動きでかわしたリュウは拳を引いて、力を溜める。目の前に着地したマリオに向かって『セービングアタック』を繰り出した。

 

 

「うっ…く…」

 

 

思わず膝をついたマリオを蹴り上げる。そこから続く『昇龍拳』は身を捻って何とかかわす。だが、無理な体勢になった着地時に足を捻ってしまう。両膝と片手がついた状態になってしまった。

 

 

「うわっ…!」

 

『…!』

 

 

崩れる相手を見逃さない。リュウはまた迫ってくる。シールドも間に合わない。

 

 

「あぶっ…!」

 

 

振り下ろされる拳をさらに屈み、低い体勢になって回避する。

 

 

「わっ!」

 

 

続けて低い場所にも攻撃できるよう、なぎ払うように蹴るが、飛びはねてかわす。

 

 

「ひえ〜…」

 

 

ならばと、二つの攻撃の中間地点を狙って攻撃しようとするが、両手で体を押し出し、離脱したマリオにこれも当たらない。

 

 

「おっとと… 危ない… ソードじゃないけど鶏ガラ肌…じゃない鳥肌だよ…」

 

 

ようやく立ち上がれたマリオがそうやってぼやく。近距離戦はリュウの得意分野だが、遠距離で戦えない訳ではない。それはどちらかというとマリオもそうなのだが、マリオの得意とリュウの得意では差がありすぎる。生粋の格闘家たるリュウを格闘戦でどうにかするなど無茶だ。

 

『ファイアーボール』を限界まで撃ち込むが、数発当たっただけで有効打にはならない。『波動拳』を回避し、一瞬の時間で思考する。

 

 

「(うーん… ダメージ覚悟で突っ込むしかないのかな… クッパと一緒に行った方がよかったなあ…)」

 

 

地形の狭さを気にしなければ人数で押し切るのも手だ。しかし、後悔先に立たず。マリオ一人で頑張るしかない。

 

手に炎を宿らせる。リュウに勝てるとしたら、炎の力と多彩なアイテムの差しかない。

 

 

「いくぞー!」

 

 

マリオが走り出す。リュウは迎え撃とうと拳を握った。マリオが近づく。殴ろうとする。拳を振り上げ─マリオが消えた。

 

 

『っ!?』

 

 

マリオが消えた訳ではなく、自分の向いている向きが変わったのだった。『スーパーマント』の力だった。だが、今気づいてももう遅い。熱い掌底の打撃が背中を襲う。

 

 

『…っ』

 

 

空中で向き直す。『灼熱波動拳』を当て、追撃を防止する。

 

 

「いっ… たああ!」

 

『っ!』

 

 

『マリオトルネード』と『竜巻旋風脚』がぶつかり合う。双方回転が止まり、相手の攻撃で飛ばされる。痛み分けといったところか。

 

 

「っ… ま、まだまだぁ!」

 

 

正拳突きをかわし、懐に入って『スーパージャンプパンチ』。空中へ無理やり浮かした。

 

 

「(落ちてくる!)」

 

 

落下の勢いを足に乗せ、落下しながら蹴りを入れようとする。自慢の脚力を使って離脱する。着地地点の、床となっていた木の板は割れている。

 

 

「ひえ〜…」

 

 

威力が高い。当たったらひとたまりもなかった。思わず口から声が溢れた。

 

想像以上の火力に引きながらも、次の攻撃へ移る。

 

 

「はああ…!」

 

 

右手に炎を纏わせる。そのままダッシュで相手に向かっていく。

 

 

『っ! …!』

 

 

リュウも拳を握り込み、走り出す。

 

 

「『…っ!』」

 

 

中央で激突しようとする。拳が交差し─

 

 

「…だぁっ!」

 

『!?』

 

 

なかった。マリオは左足を身ごと引くことでリュウのパンチを回避していた。これでは右手で攻撃しにくいが、本命は右ではない。

 

 

「ハアッ!」

 

 

炎の力を左に移し、引いた位置から助走をつけるかの如く勢いをつけ、リュウの腹部に叩きつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…それでボク達はここにいるんだ!」

 

「各地のファイターの救出とキーラの討伐。これが今の私達の目的だ。」

 

「へー、そうなんだ!」

 

「プー…」

 

「そうか。俺は何もできずに… まだまだ修練が足りないな。」

 

「あれは修練でどうにかなるものなのかな?」

 

「た、多分足を速くすれば…」

 

「最速ソニックでも捕まってるんだけど?」

 

 

湖の場所へ戻ってきたファイター達。リュウと、なんだかんだでまだ言ってなかったソードとプリンにも共有する。

 

 

「オーケーオーケー! それで、ネクスト、どこいく?」

 

「近い所からでいいんじゃないかな?」

 

「じゃああの森森してるとこだね!」

 

「森森って…」

 

「ではいきましょう!」

 

 

Wii Fit トレーナーの一声でまた進み始める。ところで何か忘れていないだろうか?

 

 

「ワガハイの…相手をしろフォックスゥ!」

 

「だからこれ終わってからにしろって!」




リュウ「ふむ。少し小腹が空いているな。」

ヨッシー「ボクも! お腹すいた… プリンでも食べたい…」

プリン「プリッ!?」

リンク「あ、ヨッシーも? 奇遇だな俺もなんだよ。」

プリン「リ…」

オリマー「お前たち…」


ヨッシー「次回、『偽りはない』!」


リンク「あっ、でも桃とか果物もいいかも!」

プリン「プリィィ…!」

ピーチ「あら? どうしたの?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四十話 偽りはない

さてベレトス参戦しました。
私の使用キャラ全員と方向性が違うので使いたいけど使える気がしない。ぐぬぬ…

あまり動きが遅いパワーファイターを使ったことがないんですよね。まあ、剣以外の武器の元々の所有者が女ゴリラ、男ゴリラ、テクニカルゴリラだから仕方なし。あれ、なんでクロードまでゴリラって言われてるの…?

せっかくなのでこのまま風花雪月未プレイ勢置いてけぼりのDLCの話でもしちゃいましょう。未プレイって方は前書きを飛ばすか精神と時の部屋でプレイしてからお読みください。ネタバレはしないけど…




アビスルート選抜の要素を軽く考えてきました。
級長ゴリラ達は当然なので省くとしてまずはリンハルト。理由無しに本人が進んで関わるとは思えないので最初はなし崩しだったけどアビスに紋章関係の何かがあったのでしょう。籠手の新しい英雄の遺産は確認されている上に、周回特典には所持者がまだいない紋章の付与アイテムがある。製作側としては魔道に精通した者が多いとされるアドラステアから一人魔道士が欲しかったのだと思います。私的には回復役は二人ほど欲しいのですが果たして新キャラの中に信仰持ちはいるのでしょうか…

次にアッシュ。選抜メンバーの中で唯一の平民で紋章無しです。名前の由来の灰色と学級名灰狼の学級とかぶっているのが気になります。そういえばベレトスも灰色の悪魔とか異名がありましたね。単純に固有スキルで目をつけられた可能性も…? 選択制ではなく公式から選抜されたのですから級長以外の彼らにもスポットが当たって欲しいですね。

最後はヒルダちゃん。彼らの中では一番わからないです。斧キャラはエガちゃんが既にいますし、女性が欲しかったとしてもヒルダちゃんである必要はなし。他の金鹿女子が魔法系二人にクロードと被る弓使いなので消去法で選ばれたんでしょうか。シナリオ的にはムービーにもある通り導入を任され、仕方ないと言いながらついてってくれそう。ならせめてお兄さんの情報を頂戴… できればクロード母とカスパル父の情報も(ヨクバリス)


私最初はifの泡沫の記憶編のようにステータスすら固定されたコンテンツなのかと思いましたが二部でアビスキャラも使えるようになるらしいので少なくとも個別指導など兵種の選択はできるかもしれません。つまり二部で成長した姿も…!


リュウを解放したファイター達は、更なる未探索の場所へ動く。

まずは付近に緑のスイッチがあった森だ。街へ進むために、森の周りを通ったが、森の内部は未探索だった。

 

再び森を周り大体の面積を測ったが、それなりに深い森のようだ。

迷うことを考えたら全員固まって動いた方がいいのだが、時間がかかる上にトロトロ動くのが耐えられない者もいる。それでまた一悶着起きるぐらいならば適当に数人のグループに分かれて探索をした方がいい、と判断した。

 

 

「ん〜、空気が美味しいですね〜!」

 

「シティの街並みもグッドだが、たまにはフォレストも悪くないな〜!」

 

「魔なる者が生み出した、という前提がなければよかったのだが…」

 

「あー、確かに…」

 

 

バス事故の現場に立ち合ったしずえ、ソード、シモン、フォックスの四人は共に森の中を歩いていた。

 

 

「ぐずくずはしてはいられない。まだ半分も見つけられていないのだからな。」

 

「わあー、ストイックですね!」

 

「結構探してると思うが… そうか、まだ半分もいないのか…」

 

「そうかー、まだアイツラもいないもんなー。」

 

「…オレ的には早くソード達のストッパーの方が来てほしいんだが…」

 

「ハハハ! オレは誰でもウェルカムさ!」

 

 

笑い飛ばす。そんな中、一人のファイターを見つけた。

 

 

「あっ! いました! どなたでしょう?」

 

「フーム… わかんにゃい!」

 

「少なくともオレ達の世界の出身ではないようだが…」

 

「どこでも関係ない。救い出してしまえば問題などないからな。」

 

「おお… リアリー、クール!」

 

「本当にカッコいい、か?」

 

「イェス!」

 

 

鞭を両手で引っ張る。退魔の鞭は今日も的確に相手を打ち抜くだろう。

 

 

「(…もう遅れは取らぬ!)」

 

 

キーラに討たれ、キーラの手の者としてこの鞭を振るったのは彼にとって屈辱の極みであった。

それが帳消しになる、とまではいかないが、せめて償えるほどになるまでに人の役に立たなければ気が済まない。

筋肉がしっかりつき、がっちりとした左手がファイターに触れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このステージは『コンゴジャングル』だ。木々が鬱蒼と生い茂り、夕日を遮る。葉の隙間から差し込むオレンジ色が唯一の光源だ。ここもまた、『終点』化されているのだが。

 

 

「………」

 

 

彼は誰でも結局は助けるのだから誰が相手でも問題はない、と言っていた。この言葉に偽りはない。だからこそ、そこにいるドンキーコングにも変わった反応は見せなかった。この状況になってから、スピリットはともかく、ファイターとの対戦は初めてだったが、それでも動揺している姿はなかった。

 

 

「…」

 

 

無言で聖水やナイフをいつでも取りだせるように、手で確認する。互いに腹の探り合いから始まった。

 

 

『…』

 

 

双方すぐには動かない。静かに、しかし着実に距離を詰めていく。

 

 

「ハッ!」

 

 

シモンが先に動く。炎で敵を浄化する『聖水』を投げる。火柱が上がるが、ドンキーコングはジャンプしてかわす。大きく重めの体とはいえ、彼はジャングルで生きてきた。咄嗟の跳躍力は馬鹿にならない。

 

 

『…!』

 

 

飛び上がったまま、握り込んだ両の手でシモンを叩きつけようとする。その前に、ドンキーコングの真下を潜り抜けたシモンはすれ違い様にヴァンパイアキラーをぶつけた。鋭い先がドンキーコングの胸部に吸い込まれる。

 

 

『…っ』

 

「まだだ!」

 

 

地面を叩く形となったドンキーコングへ、更なる追撃が迫る。振り返ったシモンは鞭を振り回しながらの攻撃に移った。

ここはシールドで防がれる。防がれたことを認識すると、すぐに後ろへ跳び引いて鞭を戻す。

 

引き際に投げた『クロス』もそのまま防がれた。予想通りであったが。戻ってきた武器をキャッチする。

 

 

『…!』

 

「(仕掛けてくるか!)」

 

 

相手だって攻撃されっぱなしではない。乱雑に回転しながら殴る攻撃、『スピニングコング』に巻き込もうとしてくる。

 

 

「ならばっ!」

 

 

小振りの斧を投げる。投擲用のサイズだが、普通の斧程度には重い。それでもシモンは軽く投げられる。

 

 

『…』

 

 

だが、ドンキーコングはまるで意思を持ったこまのようにするりするりと移動してかわしている。

 

 

「これは!? ッ!」

 

 

突っ込んでくるというならば、やむを得ない。小振りのナイフを取り出す。最悪痛み分け、出来れば回避に動こうと、刃を握りしめて待機する。

 

 

『…!』

 

「がっ…!」

 

 

だが、ドンキーコングは『スピニングコング』での攻撃で決めず、中断して地面を打ちつけてくる。ドンキーコングの腕力で地鳴らしを行えば、それは立派な攻撃と言えるほどの威力を持つ。

浮遊感。着地をすればすぐ揺れる。そんな中でまともな反撃はできない。

 

 

「(まずは抜けなければ…!)」

 

 

とはいえ、終点の地形となっているこのフィールドでは自分の力しか頼れない。

 

 

「なら…!」

 

 

ドンキーコングの足に向けて、ヴァンパイアキラーを放つ。これは攻撃ではない。無防備だった左足を見事絡めることに成功した。

 

 

『ッ!?』

 

 

咄嗟の反応が出来なかった。攻撃をくらって跳ね上がるシモンの体に引っ張られ、派手にすっ転んだ。

 

 

「…くっ… (安くはなかったが… これで大きな隙ができた!)」

 

 

無理矢理にでもすぐ起き上がろうとするが、足を鞭で引っ張り、妨害する。

 

『クロス』を投げ、ダメージを稼ぐ。メイン武器の鞭は敵の行動を縛るのに使用しているため、攻撃には使えない。

 

 

「ハッ!」

 

 

だが、ダメージを与える方法が武器である必要はない。魔物達に負けない肉体で『スライディング』を仕掛け、蹴り込んだ。

 

 

『…ッ』

 

 

吹っ飛ぼうと体が動くも、巻きつく鞭がそうさせてはくれず、反対方向に戻っていく。さらに巻きついた鞭の先の棘鉄球が食い込み、ダメージを加速させる。

 

 

『…ッ!!』

 

「!」

 

 

相手もやられっぱなしではない。空中にいるまま、鞭を両手で掴み引っ張り上げる。その手応えに遅れをとり、二度目の着地のミスを生み出すことは出来なかった。お互いにヴァンパイアキラーを引っ張り合い、真正面からの力比べが始まった。

 

 

「…くっ…!」

 

 

シモンが引っ張られている。力ではドンキーコングに分があるようだ。別に意地を張る必要はない。どの道拘束したままでは最後の一撃にぶっ飛ばすことが出来ないのだ。

とはいえ、鞭が掴まれているこの状態では自由に動かすことはできない。力勝負でなくともその手は離してもらわないと困る。少しでも時間が出来れば、ヴァンパイアキラーはシモンの思う通りに動かすことができるだろう。

 

 

「(ならば!)」

 

 

シモンがドンキーコングへ飛び出す。対称的に均衡していた力の片方が唐突に消えてしまえばもう片方はどうなるか。

 

 

『ッ!』

 

 

自分の力と同じ分だけ、大きくバランスを崩した。掴んでいた両手に向かってシモンの蹴りが炸裂する。手が左へ動き、鞭が投げ出された。

 

 

「よし!」

 

 

鞭先の棘鉄球がシモンへ戻っていく。これでメインの武器が使用可能となった。

 

 

『…ッ!!』

 

 

ドンキーコングは張り手で反撃をするも、シモンは身を引き、攻撃は空を切る。

 

 

「…!」

 

 

そして、静かに放った鞭が鋭くドンキーコングを討った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フィギュアが倒れた音を聞いて、しずえとフォックスがこちらを向いた。近くのスピリットと戦っていたソードもちょうど戻ってきたようだ。

 

 

「おかえりなさい! シモンさん!」

 

「ああ。今帰った。」

 

「こっちもナイスゲームだったぜ!」

 

「…遊びじゃないぞ。」

 

「エヘヘ」

 

「エヘヘじゃないだろ… ま、取り敢えず」

 

 

フォックスの手が黄金色の台座に触れた。同じ色の光が発生して、しずえとソードはわーわー、言いながら目を覆った。

 

 

「ウー…」

 

「おい、ドンキー。目は覚めたか?」

 

「ここ、どこ?」

 

 

瞳を開いて、寝る体勢から立ち上がる。

 

 

「ウホッ! みんな、何してるの?」

 

「キーラに囚われ、各地に散らばったファイターの解放に動いている。」

 

「バリアはまだあるけど、ナウはモア探索してるんだ!」

 

「モア…?」

 

「もっと深く探索してるんだよ。」

 

「なるほど!」

 

 

ソードのよくわからない説明をフォックスが補足して理解した。説明役には向かない男だ。

 

 

「ん〜、取り敢えず他のみなさんと合流しませんか?」

 

「一人見つかったし… 他のグループは既に戻っているかもしれないからな。」

 

「ウホッ! 他のみんなもいるの?」

 

「ああ。まだ全員ではないがな。」

 

「よしっ! オレ、みんなのところに行く!」

 

 

先に走り出すドンキーコング。しかし、そこは集合場所と真逆の方向だ。

 

 

「ウエイト! みんなはこっちだぞ!」

 

 

そうやってソードが指すのも違う場所だった。

 

 

「いや、お前も違う!」

 

「こっちですよ、ドンキーさーん! ソードさーん!」

 

 

両手を振って一人と一匹を呼び止めようとする。そんな彼らをため息をつきながらも、シモンは満更でもない顔で見ていた。

少なくとも一人で悪魔城へ乗り込む戦いよりずっと楽しげなものであった。




しずえ「ソードさんってもしかして乗り物が好きなのですか?」

ソード「ワイ?」

しずえ「バスに乗り込もうとしてたのでお好きなのだと思ったんですが…」

ソード「別にそういう訳じゃないよ? ただ興味が湧くからね! そうだ、今度アーウィンにもライドさせてくれ!」

フォックス「誰がさせるか!」


シモン「次回、『兄弟か双子か恋人か』。」


ドンキー「じゃあ、趣味とかある?」

ソード「んむむ… ガーデニング!」

シモン「意外すぎる…」

ソード「依頼にあったフラワーを渡してバッジ貰ったり…」

フォックス「思った以上に普通に暮らしてるぞ…」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四十一話 兄弟か双子か恋人か

スマブラ参戦ファイター活動不能期間
ルカリオ 数百年
リンク 百年
こどもリンク 七年
ベレト 五年 ←NEW!
ピット 三年


やっぱ勇者は格が違った。


ドンキーコングを解放したファイター達は、土管を通ったことで未探索だった氷山を目指し、北へ進んでいた。

しかし、氷山の頂上にあったのは無惨にも壊れたグレートフォックスであった。

 

 

「あっ……あっ…あっ…」

 

『うわわわ! 何これ〜!?』

 

「あ、スリッピーじゃないか!」

 

 

受け止めたくない現実を前に語彙力がどこかにぶっ飛ばされたフォックス。

何処にいたのか唐突に出てきた、スピリットのスリッピーも驚きを隠せない。

 

 

「あれ? この機体ステージでも使われている物のオリジナル…だったよね?」

 

「なんかこれがローンの原因らしいよ?」

 

「フォックスさん、ローンがあったんだ…」

 

『ローンを組んだのはフォックスのお父さんなんだ。』

 

「わあ! び、びっくりしました…」

 

「機体を自分の物にするから返済義務が生じるんだよ。相続放棄すればよかったのに。」

 

「なんで小僧の年齢でそんなこと知ってるんだよ、金関係だからか、金関係だからだな!」

 

「一瞬で自己完結してないかい?」

 

 

貧困族のよしみなのか少し事情を知っているむらびとが話す。

 

 

「フォックス、この宇宙船どうにかして直せないのか?」

 

「………ハッ!? なんだオリマー、なんの話だ?」

 

「オレ、寒い…」

 

「ああ、寒いよな…」

 

「現実エスケープ。」

 

「いや、どうにかして直せないのかって。」

 

「…じっくり見ないとなんとも… 直るにしても時間がいりそうだ。」

 

 

オリマーが顎に手を当てて考える。これが直れば手の届かない場所の探索ができるし、上空にいるキーラのところへ行けるかもしれない。時間をかけてでも直す価値はありそうだ。

 

 

「スリッピーは言い出しっぺの私の体を使えばいい。フォックスに協力してくれ。」

 

『え〜… でもキミ小さいからなあ。』

 

「………き、君たちが大きいんだ…」

 

 

スリッピーとしては何気ない一言だったが、オリマーにしては相当ショックだったようだ。

結局スネークを指名したスリッピーとフォックスを頂上において麓の探索に向かった。

ソードがコックピットに向かおうとしたり、むらびとが手の甲を下に向けて親指と人差し指で丸を作りながら無言でスリッピーの方を見たり、それをしずえが止めていたりしていたのは余談だ。

 

 

 

 

「ウホッ! 森だ森だ!」

 

 

自然への帰巣本能か。否、普通に先に進みたかっただけだ。氷の上を滑って一番乗りした。

 

 

「でも、さっきのところと違ってなんか怖くなってるよ…」

 

「おっと、早いね。」

 

 

順にヨッシー、ロックマンも合流する。

そこで一番がファイターを視界に入れた。

 

 

「ウホッ! ファイター見つけた! オレ、行ってくる!」

 

「うわ! 早い早い!」

 

 

ロックマンが止めるが、既にドンキーコングはワープした後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この景色は先程までいた山の頂点によく似ているが、細かな細部と周りが異なっている。名前はそのまま『頂上』だ。とある二人組が踏破してきた多くの山々をイメージして創造されたステージだ。その山の上で戦っている訳ではなく、『終点』と同じ地形で今は戦う訳なのだが。

 

 

「ウウッ… ここも寒い…」

 

 

体毛があるとはいえ、裸同然なのだ。震えるドンキーコングの反応は同然のものだ。

そこにいかにも氷山らしい防寒着を着た二人組のファイターがいた。

 

 

『『…』』

 

「ホッ?」

 

 

二人の関係は兄弟か双子か恋人か。本人達にすらわからない。ポポとナナのアイスクライマーだ。山の麓に囚われていたのは登山家だった。

 

 

「オレ、助けるよ!」

 

 

ドラミングをして自らの気合を入れる。確かに彼は人間ではないのだが、悪を憎み仲間を助ける、人間と変わらない価値観は持っている。

 

アイスクライマーの最大の強みはそのコンビネーションだ。キーラに操られている今の状況ではコンビネーションとは言えないかもしれないが、古今東西の戦いにおいて、数が勝敗を分ける一つの大きな要因であることは間違いない。

個々で見れば、子供のために大した力はないが二人組で戦うことにより、歴戦の猛者達とも劣らぬ実力を見せるのだ。

 

そんな相手に勝つには、とにかく相手のペースに乗せないようにするべきだ。

 

 

「ウホホッ!」

 

『『…』』

 

 

ドンキーコングの両腕から打たれる地ならしを二人でかわす。そこから微塵も違わぬタイミングで『アイスショット』を放つ。二つの氷塊が迫ってくる。

 

 

「オウオウゥ…!」

 

『『…!』』

 

 

氷塊をかわしたドンキーコングにポポが飛びかかる。木槌を振りかぶり、打とうとした初撃をかわすが、丁度ポポの背後に隠れていた二撃目が彼を襲い、強かに頭部を打ちつけた。

 

 

「ウッ… グオッ!」

 

『っ!』『…!』

 

 

打たれた視界にもいたポポを掴み、背後へ放り投げる。ステージの外に出たポポを追いかけてナナが飛び出す。

自分達から大きく離れて戦うということをしないアイスクライマーの二人は、分断されるとどうにかして合流を目指すのだ。操られている現在でも体そのものに染み付いた癖は隠せないらしい。

 

 

「ウホッ!」

 

『…っ!』

 

 

合流はさせない。ポポとは逆方向へナナを蹴る。地面へバウンドして倒れる。ピンク色の厚着はショック吸収剤のように働き、バウンドした反動はあまりナナまでこなかったが、直接攻撃まで防ぐことはできない。それを見て、ポポ側も動き出した。

 

 

『…ッ!』

 

「ホッ…!?」

 

 

体ごと木槌を回転させる攻撃が背後から襲う。『トルネードハンマー』と呼ばれる技だった。

 

 

「ウ〜!」

 

 

フィニッシュでより強く打ちつけられ、宙へとんでいく。アイスクライマーの二人はステージ中央付近で合流した。

 

 

「痛いぞ… でもオレ、助けなきゃ!」

 

 

着地したドンキーコング。自らの怪我や痛みよりも、目の前の二人のことの方が優先だった。

両手も使って走り出し、巨体で前転して攻撃する。二人まとめて吹き飛ばし、再び空中に相手を投げ出す。

 

 

「オウッ!」『…ッ!』

 

 

二人を追い、自らもステージ外へ飛び出した。それに気づいたのはポポ一人。握り込んだ拳とハンマーが交錯するが、これは明らかなパワー不足だ。

 

 

彼らだって別に力がない訳ではない。山を飛び跳ねるかのように登る跳躍力。山登りで鍛えられた体力と体幹がある。

 

 

しかし、踏ん張りが効かない空中であること。

 

ジャンプの勢いを加えられるドンキーコングに対して、ポポはぶっ飛ぶ勢いに抗う方向へ木槌を振るっていること。

 

更には少し鍛えた程度では問題にならない程のパワーをドンキーコングが有していること。

 

何よりナナはまだドンキーコングの追撃に気づいていないこと。

 

 

ここまで不利な条件があればポポが力勝負で勝てる道理はない。

 

 

『…わ…!』

 

『…!』

 

 

無意識下で声が漏れ出し、ようやくナナも気づいた。力負けしたポポは先程よりも飛ばされた位置にいたが、二人が合流出来ない距離ではなかった。ステージの崖を蹴り、相方の元へ飛びだす。

 

 

「ホッ…!?」

 

 

勢いをつけたナナを、まだ攻撃した体勢から戻っていないドンキーコングでは反応することができなかった。二人で協力して高く飛ぶ連携技、『ゴムジャンプ』でドンキーコングにぶつかりながらステージへ復帰する。ここで少しドンキーコングは戸惑いを見せた。今のは完全にポポを助けるための行動だった。普段の二人ならば特別疑問にも思わないが、キーラに操られているとなると話が違うのだ。

 

ドンキーコングでは答えは出なかったが、彼らが一人になってしまえば、もう一人は次にならなければ復活できない。使い捨てたから補充、というわけにはいかないのだ。

さらに言えば、今回は最悪ナナが倒れても乱闘は続けられるが、ポポが倒れればその時点で終了だったから。だから無茶をしていたのだ。

 

 

「ん〜… ま、いいや! 負けない!」

 

 

そこまでには至らなかったドンキーコングは早々に思考を放棄した。今は勝つことだけ考えよう。

 

 

揃ったハンマーの打撃をシールドで防御すると、足元を払うようにビンタした。サイズの関係で足元には見えないのだが。

怯んだ二人を両の張り手で吹き飛ばす。再び崖側の空中戦となった。

 

 

「ウッ〜!」

 

『…』

 

 

二人を追って跳び上がる。狙うは青い服。ポポの方だ。

 

 

「叩きつける!」

 

『…ッ!』

 

 

底の遠い氷海へ叩きつける。その為に拳を握って頭上へ待機させた。ハンマーの頭部に片方の手を寄せて防御体勢に入るが、最早焼け石に水だった。木槌が叩き折れるかと錯覚するような勢いで奈落へメテオスマッシュされた。

 

 

『…ッ!!』

 

「…?」

 

 

置いてけぼりにされたナナが、撃墜により上がった光の柱を真っ直ぐ見つめていたのがとても印象的だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおっと…」

 

「あ!戻ってきた!」

 

 

何かを考えていたのか着地にバランスを崩したドンキーコング。目の前には待機していたロックマンと、アイスクライマーのフィギュアがある。二人一組のファイターである以上、出てくるフィギュアも一つで二人分なのだ。

 

 

「…? どうしたの?」

 

「んむ〜、まあいいか! 悪いことじゃない!」

 

 

またもや思考を投げ出した。本人とかけ離れた行動を取るならともかく、あの時は本気で片割れを心配していたのだろう。ならばよし。

 

仲良し二人組を元に戻す。平和に一歩前進した感じがして、ドンキーコングはウキウキした。




むらびと「ローン… ローンかあ…」

リュカ「まさか… むらびとその年で…」

むらびと「あいつ増築すると金せびってくるからね。ほんと油断も隙もありゃしない!」

しずえ「たぬきちさんは商売として普通のことをしているだけですよ!」

むらびと「これならリュウみたいに家無しでテント張って暮らしててもよかったなあ…」

リュウ「…まて、俺だって普段は普通の生活を送っている。家ぐらいあるぞ。」

むらびと「えっ」

リュカ「えっ」

しずえ「えっ」

リュウ「…え?」


しずえ「次回!『私の名は』、です!」


リュウ「俺はそんなに旅人のように見えるか…?」

ピット「ストファ勢でもそう見えるユーザーの方が多いんじゃない?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四十二話 私の名は

前書きに書きたいことが多すぎるのでダイジェスト

「作者、僕が言いたいことわかるよね? 風花雪月DLC、サイドストーリー煤闇の章。途中で下げたよね? 難易度。」

ごめんなさあいいい!
だってだって配信開始から一週間後にペルソナスクランブルがあるもん! 忙しいもん! ノーマルじゃなきゃクリアできる気がしなかったもん!
ちなみにまだやってない方もいると思いますのでネタバレはしません


後本編のことについてですが、何か足りないって?
物語としてカービィのボディがあること自体おかしいのです!
へ? 闇の世界のクイズ面? そこの辺りはしっかり考えておりますので文句があるならクソゲー投げて気持ちを鎮めてくださいいい


という訳でアイクラの設定で茶を濁します。

・アイスクライマー
語尾や言葉をよく二人で合わせる。年齢的にはまだまだ子供のようだが、二人の関係性は本人にすらわからない。


「えっと… ナチュレ、だよな…」

 

自分の中の胸騒ぎにも似た何かに従い、スピリット戦に挑んだピット。その相手は敵軍の頭であるナチュレだと見破ったのだ。この世界のルールが適応され、力がセーブされているとはいえ、自然の神すらもキーラは掌握せしめたとは。

だが、自分の上司であるパルテナすらも手も足も出なかったのだ。ならばナチュレが勝てる筈もない。身内贔屓が入っている考えだが、ファイターとしての力も得ているパルテナの方が、少なくともこの世界では力量が上なのは間違いない。

 

 

「ここあからさますぎるし…」

 

 

ピットの確信を更に高めたのは今回のステージだった。フィールドは『初期化爆弾の森』。

願いの種の覇権を巡り、起きた戦争の最前線へ。人間を自然へ還す為にナチュレが初期化爆弾を落としたその場所がモチーフだった。ナチュレのステージとしてはぴったりと言えよう。

 

 

「それで相手がソードっと…」

 

 

万人に顔が知られていないソードのボディは者によって外見が大きく変化するようで。サイドテールに杖の形状に似た剣。ナチュレに寄せた姿となっていた。性別すら正しく伝わっていないのか。

 

 

「とりあえず… 勝つ!」

 

 

そういえば混沌の使いとの騒動では随分と助けてもらっていた。本人の意識がないだろう今のうちに借りは返しておこう。後から色々言われたくない。

 

 

神弓を分離させ、駆け出す。地形と地形の隙間を飛び越え、敵の繰り出す竜巻を『衛星ガーディアンズ』の盾ではねかえす。

 

 

「たあっ!」

 

『…っ!』

 

 

返ってきた竜巻を避けた相手に、横に揃えた双剣が防御体勢の杖に飛びかかり、短い金属音と火花を散らす。

 

 

「な、なんだあ!? この音!?」

 

 

思わず叫んでしまった。一歩、二歩と下がり距離を取る。どうやら見た目が杖でもそれは普通に剣らしい。とんだ初撃だ。

 

 

「もう!」

 

 

分離させていた神弓を元の形状に戻す。その先に光の弦が張られ、引き絞って光の矢を放つ。ある程度ピットの意思で操ることのできる矢は本人の八つ当たりに答えたのか、敵の右手にヒットした。

 

 

「よしっ!」

 

 

再び神弓を分離させ、相手の体を目掛けて振るう。敵の反撃を、短剣を交差させて止める。

 

 

「たあ!」

 

『…!』

 

 

腹部に膝を入れる。剣撃の応酬の中、突如の体術には反応できなかった。腐ってもパルテナ軍の最高戦力。いつか討つことになるだろう自然王に負ける訳にはいかないのだ。

 

膝を入れられた敵は一瞬よろけるが、すぐに立て直そうと、砂煙を上げながらブレーキをかける。

 

 

「…!」

 

 

両手に握られている短剣を繋げる。但し神弓の形とは違い、片方の刃の方を真逆につけた。

 

 

「…! んぎぎぃ…!」

 

『…っ…!』

 

 

正面から刃と刃がぶつかり合う。ガキン、と音がして鍔迫り合いが始まった。

 

 

「せいっ!」

 

『…っ!』

 

 

体勢が良くなかったのでピットが競り勝った。剣を弾き、大きな隙を作った。

 

 

「ダッシュアッパー!」

 

『…!』

 

 

豪腕の攻撃が敵を襲う。防御のための剣が弾かれている為に直撃した。

 

 

『…、…!』

 

「あっ、うわっ!」

 

 

浮かび上がった所から、剣を真下に向けて急激な速度で落下する。当たった時の痛みは杖のそれとはかけ離れていた。

 

 

「…いっ…」

 

 

回転攻撃に特化した形状の神器を振って、引かせることで追撃は防ぐことができた。

 

 

「もう… 手間かけさせるなよな!」

 

『…!』

 

 

片足が滑りながらも走りだし、神弓の先を突き出す。敵は右足を後ろへ戻しながら最小限の傷で抑える。

 

 

「でも…っ!」

 

『…っ!』

 

 

ピットが腰を下げ体勢を低くするのと敵が剣を振りかざそうとするのは同時だった。狙いは脚部、背中。刃が振るわれる。

 

 

「…ぃ…あっ…!」

 

 

ダメージは肩に入った。真上の背中へ向けられた攻撃が左肩のど真ん中に入ったのだ。たがピットの攻撃にも確かな手応えがあった。

 

 

『…っ!』

 

「はあ…はあ…」

 

 

ピットの一撃により、相手は戦乱の火花が飛び交う虚空へぶっ飛ばされていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『しかしまさかおぬしが自ら戦いにくるとはのう…』

 

「まあ、混沌の使いの件では色々と助けてもらったしね。…敵に貸したままも嫌だったし。」

 

『…やっぱりおぬしら似た者同士じゃろ。』

 

「何が?」

 

『自覚なしか!? その程度自分で考えよ!』

 

「だから何が?」

 

 

霊体のナチュレはため息をついた。

勿論キーラに対しての怒りはあったのだが、悔しいがここでは自分ではどうすることもできない。一応自分の配下であり、ピットの似た者のファイターに任せるしかない。今はこの場にいないのだが。

 

 

「ま、いいや。取り敢えず他のみんなとも合流しよーと」

 

『ふん!』

 

 

ナチュレは見えなくなる。別の世界の人間だとしても本人、いや本神にとっては淘汰すべき災厄には違いない。不倶戴天の敵にこんな情けない姿を見せる気はなかった。

 

 

 

 

姿の見えない者もいるが、ある程度ファイターが纏まっている場所を発見した。だが、そこでもそこで一悶着起きているようだ。

 

 

「ピチュ! ピーチュ! チュピッチュ!」

 

『ここの辺りはあらかた片づいたんだから、そろそろあの工場みたいなところに行かせろ!…だそうだ。』

 

「うん、わかるけど… もう少し待とうか。もっと人が集まってから…」

 

「チュー! チュピ! ピチュー!」

 

「プリュー…」

 

『あそこの…ピカチュウは別のことを優先してスルーしたんだからそろそろいいだろ、と。』

 

「ピカチュウいたの!? オレ、気づかなかった!」

 

「もしかしてあそこの川の真ん中にいたのがピカチュウなの?」

 

「あれはあの川をどうにかする手段が少ないから手を出せなかっただけで… うん、言い訳だね。じゃあせめて後一人くるまで待とうか。」

 

「ピチュ!」

 

 

ちょっと膨れながらも座り込む。了承はしてくれたようだ。

 

 

「まだ行ってないところあったんだね。」

「これからそこに行くんだね。」

 

「「ねー!」」

 

「行ってない訳じゃないけど…」

 

「「屁理屈ダメだよー!」」

 

「う、うん…」

 

 

言葉がハモるアイスクライマーの二人。当然打ち合わせなどしていない。素でこうなのだ。

 

そこにピットと同じタイミングでWii Fit トレーナーがやってきた。

 

 

「みんなー!」「皆さんー!」

 

「ピチュッチュ!」

 

『来たんだから早く行くぞ、と』

 

「うん。わかってるよ。」

 

 

ピチューが後ろに倒れた反動で跳び上がって起き上がる。

 

 

「むらびとさんとしずえさんがファイターのどなたかと交戦しにいきました。私は報告に皆さんの元へ来たんです。」

 

「ふーん… ボクがいた方向のスピリットは大体解放されてたし… この森も大体いいんじゃない?」

 

「そうか。…そうだ二人とも、少し聞きたいことがあるんだけど…」

 

「何でしょう?」

 

「インクリングを見なかった? 一緒に居たんだけど気がついたらはぐれてて…」

 

「別に見てないかなー。トレさんは?」

 

「私も覚えはないですね…」

 

 

途中まで共に探索を進めていたのだが、少し目を離すといなくなっていた。自由なところがあるのではぐれること自体に違和感はないのだが…

 

 

「ピチュ。ピーチュー…」

 

『…結局待ちたいのか?』

 

 

ピチューの機嫌が悪くなるのだ。

本人達にしか知らぬことだが、一緒にリベンジすると約束した。なのに結局はこの様だ。約束などどうでもよかったのか。まさか先に行ってしまったのか。

ピチューの目が潤んできたその時だった。

 

 

「その涙は勝利の瞬間にとっておくんだ!」

 

「ピ?」

 

 

木々の頂点。そこに何者かの影がある。

 

 

「誰だ!」

 

 

ファルシオンに手をかけようとする。ここには自分達の仲間か敵かしかいない筈だ。

 

 

「私は怪しい者ではない。だが、問われたのならば答えよう!」

 

 

力強く振り返る。見慣れた顔と声色だが、服装はベストのようなものを着ており、オレンジ色だった筈の頭部は黄色になっていた。

 

 

「私の名は3号。君たちの知るインクリングは私の協力者。彼女に代わり旧友を助けに参った!」

 

「………ええ?」

 

 

ぶっちゃけただのインクリングだ。

思わずファルシオンの柄にかけていた力が抜けてしまった。





トレさん「パックマンさん、パックマンさん!」

パックマン「…?」

トレさん「そろそろ人数が増えてきて私たちの出番がなくなってきています!」

パックマン「…!?」

トレさん「どうしましょう… 私たち単独参戦組は今後の出番の保証がボス戦か数少ないスピリット戦ぐらいしかありません!」

パックマン「ワタワタ」

トレさん「慌てたってこの現実は変えられません! せめて忘れられたくはないです!」

パックマン「…!」

トレさん「えっ? このメモ… そうです! その手がありました!」


トレさん「次回、『とびだせ』です!」


トレさん「健康キャラであるからこそできること…! 皆さん! 外出後の手洗いうがいからしっかり行っていきましょう!」

パックマン「…!」

トレさん「またメモ… マスクの買い占めはどうせ使いきれないでしょうから程々にお願いします!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四十三話 とびだせ

ぶつ森ダイレクト中

緊急脱出サービス… 多分迷ってなくてもワープ目的で使われるやつなんやろなあ…


…ん? この口調…
リセットさん生きとったんかワレェ!?


畳まれている姿を見たヒーローギアが着られている。円錐形のイヤーカフのようなもの、ベストのような上。そして少しゴツい靴。だが、3号=インクリングなのは割とバレバレであって…

 

 

「…インクリング?」

 

「3号!」

 

「インクリングさん?」

 

「3号!」

 

「「インクリングー?」」

 

「3号!」

 

 

何をしているのか、という意味の本名連呼にも全く取り合わない3号。余程頑固のようだ。

 

 

「こほん。あた…私は3号。ナワバリバトルの裏に潜む闇を討ち、人知れず平和を守るNew!カラストンビ隊が一角!」

 

「つまり…伝説のヒーロー! こんな時に助けてくれるなんて!」

 

「えっ… ピット…?」

 

 

気づいてないやつが一人いた。ピット以外はわかっている。それこそヒーローギアのことを知らないアイスクライマーの二人やドンキーコングまで。彼らと条件は一緒とはいえ、気づいている様子はなく、ふおぉぉ、と興奮している。

そんな様子を見て満足そうに3号は頷く。

 

 

「ふっふっふ、じゃあ君には他との連絡を取る為にこの場に待機してもらおう。」

 

「かしこまり!」

 

 

紅潮した顔で敬礼する。それを確認すると3号は木を蹴り出して宙に飛び出す。

 

 

「あぶなっ…おわっ!?」

 

 

みんなは慌てるが、3号は器用に着地時の衝撃を殺して降り立った。そして片膝をつき、まだ呆然としているピチューと出来る限り目線を近くする。

 

 

「ピチュー、インクリングは来れなくて本当に心の底から謝っていた。だから私に代わりに戦うよう頼んだんだ。彼女には代えられないかもしれないが、私も君に合わせて全力で戦おう!」

 

 

片手を差し出す。そしてピチューの返答を待った。その小さい口から出た言葉は…

 

 

「…ピチュチュ、ピーチュチュッチュピー?」

 

『インクリングなんでそんな格好と口調してるの?』

 

「だから、3号!」

 

 

イメチェン程度にしか認識されていなかった。

 

 

 

 

一方、まだ森の中。周りをぐるりと見渡すむらびととしずえ。本当は一人で珍しいフルーツでもないか探したかったむらびとなのだが、運悪くしっかり者のしずえに見つかったのだ。

 

 

「むらびとさんから積極的に皆さんを助けに向かってくれているだなんて! なら私は秘書としてめいいっぱいサポートしますね!」

 

「あ、うん、そ、ソーダネー」

 

 

ややこしいので話に合わせておく。

一人でいるファイターは自分だけではないのに。ピーチを先に取られたクッパとか、乱闘自体好きではないが故に話の輪に入りにくいプリンとか。

その確率を潜り抜けて自分は見つけられた。村長になったのだって何かの手違いだろうに。運が悪い。

 

 

「あっ! 一人見つけました!」

 

「あっ、本当だ。」

 

 

氷山からの入り口から対称的な場所にある出口の近くにファイターはいた。先に見つけたしずえはかわいらしいドヤ顔を決めている。

 

 

「さてと! じゃあ…」

 

「一緒にいきましょうね、むらびとさん!」

 

 

内心変な顔をしながら先程の彼女の言葉を思い返す。確かにむらびとのサポートとは言ったが、本当に乱闘中のサポートのことを指していたらしい。

村長らしく命令もできない。何か村長の認識が間違っている気がするが。その内心を表には出さないように答える。

 

 

「あ、うん。そうしよっか。」

 

「はい! 私、むらびとさんの足引っ張らないようにしますね!」

 

 

やけくそ気分でファイターに触れ、乱闘の舞台へワープする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んー? あの二匹…」

 

「ダックハントさんですね!」

 

 

犬と鴨のコンビ、ダックハント。本人達曰く、トリオらしいのだが、もう一匹を誰も見たことがない。彼らの攻撃の銃撃はその謎の一人が放っているらしい。

 

このステージは『終点』化しているが、間違いなく彼らのホームグラウンド。名前も彼らからそのままとって『ダックハント』だ。

 

 

『…』

 

「わわっ!」

 

 

走り出したダックハントに驚くしずえ。正面から向かってくる相手に対し、むらびとは傘を広げて驚かし返す。

 

 

「わあー! むらびとさんありがとうございます!」

 

「この前野生の熊と遭遇したらこうするといいって聞いた気がする」

 

「ダックハントさんは熊じゃありませんよ!」

 

『…!』

 

 

まるでここまでが一連の流れのようにやりとりを続けるが、そんなこと今のダックハントに関係ない。

どこからか爆発する缶を取り出し、設置する。ここまでだと、ただ見え見えの罠を設置しただけだが、異次元からの射撃はここで終わらせはしない。器用に缶に射撃をして缶を動かしているのだ。

 

 

「うわ、こっちきた!」

 

 

パチンコを取り出し缶を撃ち返そうとするも、それと三人目の射撃では数も質も違う。

パチンコの弾によって軌道が狂うこともなく、むらびととしずえの間に入って起爆する。

 

 

「キャー!」

 

「いってー!」

 

 

缶から出来るだけ離れるが、爆発のダメージは少なからず入った。

 

 

「ちぇっ!」

 

 

思わず舌打ちをし、反撃の攻勢を整える。あの鴨はアイスクライマーとは違い、離れて攻撃しない。なので相手はトリオと言いつつも数では勝ってるようなものだ。数で優位をとっていこう。

 

 

『…!』

 

「後詰めお願い!」

 

「はい!」

 

 

再びダックハントが缶を蹴りだす。射撃に従い独特な軌道を描きながら飛んでくる飛び道具に近づいてしまった。むらびとの懐ならば三人目に狙われることはない。

 

 

「えーい!」

 

 

しずえから壺が投げられる。犬の頭部にヒットし破片が飛び散った。

 

 

『…っ!』

 

「まだ!」

 

 

遠くに引いたむらびとがあの缶を取り出し、ダックハントの近くに設置される。まだ起爆はしていない。慌てて距離を取るが、それも計算内だ。

 

 

「やあっ!」

 

「…っと!」

 

 

二人分のパチンコ玉が缶を移動させ、ダックハントの足元に転がり込む。黒煙を上げ爆発する。

 

 

「やったか?」

 

『パッ…! クァ…!』

 

「まだです!」

 

 

咳き込む二匹だが、まだ乱闘は続く。撃墜するかされるかまで続くのだ。

 

 

「ならっ…と!」

 

 

『ハニワくんロケット』を発射させ、追撃を狙うが、犬の低い体勢をさらに低くして潜り抜けた。鴨の翼は少し煤汚れている。目立った反応はなかったが、そっちは避けきれなかったようだ。

 

 

「んー… カスってない…? 鳥の方…」

 

「気のせいじゃないでしょうか…?」

 

『…ッ!!』

 

「わわっ!?」

 

 

当たってないぞと抗議するがの如くむらびとに飛びかかる。むらびとは少し過剰に下がり、ダックハントは彼を追い、また飛びかかる。

その時、ダックハントの足元から攻撃が起きた。

 

 

「『しかけハニワくん』。気づかなかった?」

 

 

しずえが設置していたハニワがロケットのように上昇する。

 

 

「むらびとさん気づいてたんですか!?」

 

「ファイターとしてはちょっと先輩だからね。」

 

「(す、すごいです…! 流石すま村の村長です!)」

 

 

自分で誘き寄せて罠を踏ませようとしたのだが、それは村長がやってくれた。

それにしてもこっそり埋めていたのにまさか気づいていただなんて。

しずえの中でむらびとの株が上がった。

一方のむらびと。

 

 

「(…ぜっんぜん気づかなかった…)」

 

 

冷や汗をかいていた。下がったらダックハントが罠を踏んだだけで、ヒットしたのはただの偶然であった。

 

 

「えーい、終わり良ければ全て良し! ここで決めてやるー!」

 

「はい!」

 

 

むらびとが懐から手探りで何かを探している。大きなチャンスだ。フリスビーの形に似たクレーを取り出し無防備なむらびとに一撃をくらわせようとした。

 

 

「ダメですよー!」

 

『…ッ!!』

 

 

しずえの『つりざお』の先が顎に引っかかる。突然の痛みで、『クレー射撃』の投擲に勢いが加えられなかった。

 

 

「あったあった。そおい!」

 

 

懐から『ボウリングのたま』を取り出し投げる。へろへろのクレーを難なく弾き飛ばし、ダックハントを襲い、吹き飛ばした。

釣り針を振り切り、ステージの外に飛んでいく。ここは逃せない。

 

 

「とびだせぇ!」

 

 

声と共にむらびとはダックハントを追ってとびだした。カブを取り出した姿を二匹は確認してしまった。

 

 

『…!』

 

「だああぁぁ!」

 

 

カブを振り回し、二匹を奈落へ叩きつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダックハントをフィギュアから元の姿に戻した二人は、匂いを嗅いで何かを探しているような様子のダックハントの後ろについていた。

 

 

「ハッハッハ…」

 

「何探してるんだろ?」

 

「う〜ん… わかりません…」

 

 

しょんぼりとした顔になる。二匹に関して相談していた時、ワン、と一鳴きしてどこかに走り出す。

 

 

「あ、行っちゃった!」

 

「追いかけてみましょう!」

 

 

森の出口へ向かうダックハントとそれを追うむらびととしずえ。途中、ピットが待機していた場所を通り抜ける。

 

 

「あ! マルス達がさ…」

 

 

天使に目もくれず走り去っていく。

 

 

「ちょっと無視するなよー! …どこ向かってるんだろ…?」

 

 

待機はしろと言われたが、それ以上に彼らの目的地が気になってきた。

 

 

「待ってー! ボクも行くー!」

 

 

むらびと達の背中を追いかけて走り出す。しずえが手を挙げて迎えるが、彼らはまだ止まらない。





ダックハント?「ミニチュアダックス、チワワ、シーズー、ダックスフンド… ライバルは沢山いるワン…」

ダックハント?「でも、負けないワン! 保健所の職員なんかに捕まらないワン!」

ダックハント?「ニンテンドックスへの友情出演枠を手に入れるのはボクだワン! イヌヌワンやツインベロスなんかに負けないワン!」


ダックハント?「次回、『電気色のインク』だワン!」


しずえ「何してるんですかー?」

ピット「うわあああああああああ!?」

ダックハント「イッシッシッシ」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四十四話 電気色のインク


花粉症のせいで執筆が進みません!(アホ)

後ペルソナをやっててもフォックスの声がクロムにしか聞こえないので集中できません!(難聴)


「ふう… ようやく戻ってこれた。」

 

 

電気プラント。以前ピチューを解放し、最深部のスピリット相手に撤退した場所だった。

 

 

「ピッチュチュ! チュー!」

 

『やる気十分といったところか。』

 

「ウホッ! ピチュー、インクリング、頑張れ! オレ、応援する!」

 

「あっはは、あたしも負ける気がしないよ!」

 

「キャラクターがブレブレだね。」

 

「ロックマンの言う通りだねー!」

 

「「ねー!」」

 

「ハッ!? ご、ごほん、失礼、インクリングの口癖がうつったんだ。気にしないでくれ。」

 

 

思わず素になりかけていた口調を戻した。

危ない、バレるところだった、と思っても既に手遅れなのだが。

 

 

全員で協力してデンチナマズを動かし、足場を設ける。もう他にスピリットはいないので、仕掛けを解いている最中も穏やかに会話をする余裕があった。ピチュー以外は。

 

リベンジの機会は自分で望んだものとはいえ、結局足場を流れる電流は何も解決していない。

ピチューでも、無策に突っ込んでいってもまた同じけっかになるだけだというのはわかっている。

 

 

「ピチュー、ピチュー。」

 

「ピッ…?」

 

「電撃のことなら、私に一つ考えがあるんだ。君はいつも通り戦えばいい。」

 

 

3号はそういうと、先に奥へ向かう。

具体的にどうするのか聞きそびれたが、大丈夫だろうという謎の信頼感があった。ならば言う通りに戦おう。足場がありながらも軽い体で穴を飛び越えショートカット。3号の背中を追って走り出した。

 

 

 

 

「ふう… さてと。」

 

「ピチュ…」

 

 

目の前のスピリットを睨みつける。本来の戦っている姿など見たことないが、一度ピチューが負けているのだから強いことには違いない。

 

 

「二人とも、激情に呑まれず冷静に戦うんだ。頑張ってくれ!」

 

「うん、ありがとう!」

 

「ピッチュウ!」

 

 

マルスが代表して激励の言葉を送る。そして向き直り、それに触れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

降り立ったのは見覚えのある『終点』化した『プリズムタワー』だ。相手が巨大なピカチュウのボディなのも足元が電流が走るステージなのも同じだ。

 

 

「ピチュッ…!」

 

「あくっ… そういうことか… それなら!」

 

 

電流の洗礼を受け、飛び上がる。だが、今こそ秘策を実行する時だ。

『スプラシューター』で地面に落ちるまでに出来る限り床を塗りたくる。追撃を警戒しながら塗る。塗る。

 

 

「着地!!」

 

「チュウー!!」

 

 

電撃の痛みに耐えようと歯を食いしばって着地しようとする。

 

 

「ピチュ…!?」

 

 

思っていた刺激は来なかった。多少の痺れは伝わったが、乱闘に支障が出るほどのものではない。何故だろうと周りを見るが、そこには3号がばら撒いたインクしかない。よく見れば少し金属の光沢に似た輝きをしているような気がしたインク。

 

 

「私のインクがある場所に着地すれば問題はない! 思いっきり戦うぞ!」

 

「ピチュ!」

 

 

頬袋から電気が溢れる。これならば完全とはいかなくとも、いつものように戦うことができるだろう。一体どんなタネがあるのかわからないが、今それはどうでもいいことだった。

 

 

「(…まあ、実際は反則レベルなんだけどさあ…)」

 

 

電気を通さないインクがあるのをご存知だろうか。普通は主に電化製品に色をつける用途で使われるものだ。携帯の色をつけるのにも使われ、流行りというものに敏感なインクリングという種族の彼女も微量ながら持っていた。光沢があるのは携帯につけるためのメタリックインキだったからだ。単体で使える程の量はなく、普通のインクと混ぜて使っているが為に完全に電撃をシャットアウトできてはないが、十分だ。

 

当然いつもの乱闘で使えば完全黒の反則ものだろう。これ単体で使ってしまえばピカチュウのボディ相手なんて完封できる。だが、床に電流を流しているのは相手側だ。先にやらかしているのは相手なのだから何も言わせない。

ファイター達を捕らえ、スピリット達を操り、戦闘をしない人々さえも戦わせるキーラを許してはいけない。一刻も早くあるべき日常を取り戻すため反則承知で掟破りの戦法を取ったのだ。

 

 

『…ッ!!』

 

「うわっ…と!」

 

 

飛びかかってくる相手を『スプラローラー』で防御する。どうやらタネがわかった、とまではいかなくても電流を防ぐ術を彼女が持っていることに気づいてしまったようだ。

実際、床の電流を確実に防ぐためにはインクが消えないように床を塗り続けなければならない。掟破りとは言ったが、対策の術がないほど完璧な策でもないのだ。

 

 

「ハッ!」

 

『…!?』

 

 

鍔迫り合いを続けている中、3号がイカになって後ろへ回り込む。突然対立する力が消えた敵はバランスを崩して転倒する。

 

 

「ピチュウゥゥー!」

 

『…!』

 

 

ピチューの呼んだ『かみなり』が敵に直撃する。同じ電撃とはいえ、自らも痛みつける電撃は敵に手痛いダメージを与えた。

 

 

「よっと!」

 

「ピチュッ」

 

 

敵の裏側の床も塗っていたインクリングの前方にピチューが降り立つ。流石に『かみなり』一つでは乱闘に影響が出る程のダメージはなかった。だが、未だに相手自身から攻撃を受けていない。初手の滑り出しは上々だ。

 

 

「…っ!!」

 

「チュ…!」

 

 

床のインクを蹴り出して二人は同時に走り出す。敵の放つ『でんげき』までは防ぐことはできないが、ならばかわしてしまえばいい話。右に3号、左にピチューが飛び退く。

 

 

「いけっ!」

 

「ピーチュー!」

 

『…っ!!』

 

「あっ!」

 

 

3号が『スプラシューター』の射撃、ピチューが『でんげき』を撃ち放つ。だが、本来のファイター以上の体を持つ相手には矮小な攻撃であった。体を丸めて攻撃の体勢に入ったことを認識するのは遅かったのだ。

 

 

「ああっ!」

 

「チュゥ!」

 

 

丸めた体で、電気を纏いながら回転する『ねずみはなび』。近づいていた二人を丸ごと吹き飛ばし、更なる追加攻撃と『でんこうせっか』で倒れた二人を風圧で打ち上げた。

 

 

「いっ… っ!」

 

 

空中でひっくり返りながらもピチューを引き寄せ、敵に対して『スプラッシュボム』を投擲する。

 

 

「ほっ、よっと!」

 

 

ブキを持たない左手を地につけ、体を押し上げて着地する。驚きの身体能力だった。

 

 

「ピー…」

 

「ほら、まだ来るよ!」

 

 

その声にハッとして即座に敵に向き直る。体と同じ色なので見づらいが、確かにインクの爆弾はヒットしているらしい。

 

 

「チュッ… チュ… ピチュッ!」

 

「…あっ!!」

 

 

電撃を織り交ぜたずつきが敵にヒットしようとしたところで、3号はこの策のとある盲点に気づいてしまった。

非導電インクは電気を通さない。あらゆる電気を弾くのだ。床に走る電流を、ピカチュウのボディから放たれる電撃を、ピチューの攻撃に使う電気を。

それを相手にかけてしまえば、電撃が効かず、ピチューの攻撃力は大幅に下がってしまう。軽く小さい体にある純粋な筋力など期待出来るものではない。

 

 

「(やっちゃった…!)」

 

 

慌ててフォローに走り出す。インクを使わない攻撃で敵との距離を作って立て直さなければ。

床に新しくインクを撃ちながらシューターを握りしめる。

 

 

「ピチュウ!」

 

「…あれ!?」

 

 

そんなことは、とっくに気づいていたのかもしれない。近づいた3号の目に写ったのはインクがかかっていないところに上手く攻撃を当てているピチューの姿だった。

 

 

『…ッ!』

 

「プイ、ピチュ!」

 

 

『ずつき』を屈んで避け、しっぽをふるってはたく。ただでさえ小さいピチューの相手が巨大化したボディだ。サイズが違い過ぎて距離感が掴みにくい。ピチューの強みである、軽さと小ささで当てては避けのヒットアンドウェイで上手く立ち回っていた。

更にいえば、黄色の体についた黄色のインク。遠くだと見分けにくいが、使用しているのはメタリックインキ。ステージの太陽光に反射して光沢を持つ。この相対している距離ならば見分けるのは難しいことではない。

 

 

「そうだよね! ピチューは子供扱いが一番嫌いだもんね!」

 

「チュッチュ!」

 

 

そう言うとピチューは振り返って返事をする。

気にする方が失礼に値するのだ。既に彼はヒーローにも負けない強さを持っている。

インクを溜めたバケツを頭の上からひっくり返す。最低限顔を拭って視界を確保する。

 

 

「よおし! あたしたちで一緒に倒すぞ!」

 

「チュー!」

 

 

後ろへ戻り、インクリングが手に持っている『バケットスロッシャー』にしがみつく。

 

 

「いけっ!」

 

 

勢いよく、上に向かって振り上げた。最高地点に到達し、飛び出す。

 

 

「チュピピー!!」

 

『…ッ!?』

 

 

敵の眉間に向かって『でんげきドリル』。地上のインクリングに届く程の電流とスピードが最高に乗った一撃が突き刺さり、相手は後ろ方向へ倒れていく。

 

 

「まだだあぁ!」

 

 

『パブロ』に持ち替えて走る、走る。転んだ相手に筆先をぶつけた─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電力プラントに戻ってきた。スピリットの気配が消え、また建物内の電気も消えた。辺り一面が真っ暗の中、デンキナマズの周囲だけが微かに光をおびていた。

 

 

「ウッ、ウホッ!? ま、真っ暗!」

 

「スピリットを倒した影響か? ピチュー、3号、いるか!?」

 

「ピッチュ!」

 

「ふふふ。ヒーローは時間が命。また会おう、英雄達よ!」

 

「えー、待ってどこいくのー!?」

 

「ナナー! そこ足場ないよー!」

 

「「うわああああ!?」」

 

 

アイスクライマーの二人が落ちかけている中、暗闇なのをこれ幸いに3号は退場する。

 

 

『どこにいく… いや、先に二人を引き揚げて外に出よう。』

 

「そうか、波導のお陰で暗闇でも見えるのか… 先頭を任せていいかな?」

 

『構わない。インクリングも先に外へ出たようだ。』

 

「うん、戻ろう!」

 

「ロックマンすごーい!」

 

「片手でボク達を持ち上げてるー!」

 

『乱闘でしょっちゅうやっているだろう… 全く…』

 

 

ルカリオが仕掛けを戻して進むことで、落ちかけることはなかった。眩しい光に目を細めながらも電力プラントから外に出ると、待っていたのはインクリング。

 

 

「いたいた、ゴメンね? ちょっとナワバリバトルにお呼ばれしちゃって。」

 

「ピチュ?」

 

 

3号がインクリングということを理解しているピチューにそんなことを言っても意味がわかっていないようだ。

 

 

「(今そのナワバリバトルが出来る人数が集められないと思うけど…)」

 

 

マルスは心の中だけで呟く。

ピチューは3号がインクリングだということを理解できている。だからこそ友情に亀裂が走ることはなかった。ならば余計なことは言わなくてもいいだろう。

 

 

「よーし! そろそろ飛行機直ったかな? フォックスのとこ戻ろうよ!」

 

 

歯を見せて、にかっと笑うインクリング。その頬には拭いきれなかった電気色のインクが残っていた。

 





ポポ「ボク達ー、」

ナナ「ワタシ達ー、」

アイクラ「「不思議に思ってたー!」」

インクリング「なんか宣誓みたいに聞くねー。」

ポポ「ヒーローの時も使うブキは普通のブキー」

ナナ「なんでヒーローブキ使わないのー?」

インクリング「…ミッション全部クリアするの大変なんだよ、ちょくちょく進めてるけど…」

ポポ「確かにー!」

ナナ「ブラシの時は大変だったー!」

アイクラ「「ねー!」」

インクリング「それは時代が違うけど…」


アイクラ「「次回ー! 『何もかもが異色』ー!」」


ポポ「ところでインクリングー?」

インクリング「何ー?」

ナナ「今のインクリングは3号じゃないよねー?」

インクリング「あばばばばばばっ!?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四十五話 何もかもが異色

あつ森への期待が日に日に高まっていく…!

地形のあれこれもいじれるとか後からよくよくやばばですよ!
ただ初期の地図に橋が見えないのですよね…
私川の向こう側の高地に家を建てたいのですが最初は建てられる場所が限られているのでしょうか…?


クンクンと足元の匂いを嗅いで何かへ向かうダックハントを追っていると、いつのまにか森を抜けて、Wii Fit トレーナーがいた街中に来てしまっていた。

 

 

「ハッハッハ…」

 

「ねえ、結局ダックハントは何追いかけてるんだ?」

 

「さあ…」

 

「私にもさっぱり…」

 

 

辺りを見回しているが、何か目ぼしいものはない。彼らは知らないが、ここは既に探索済みなのだ。故にスピリットもファイターもいない筈。肝心の本犬はバリケードを引っ掻いている。まるでその先に何かがあるのをわかっているかのように。

 

 

「何かあるのでしょうか?」

 

「うーん… なんだろう…っておっ?」

 

 

バリケードが開く。するとすぐにダックハントはその奥に入っていく。

オオデンチナマズを解放したことにより、電力プラントから供給されていた電力が消え、バリケードが開いたのだが、それは彼らの認知の及ばぬこと。先程から彼らの知らないところで話が進んでいっている。

 

 

「とりあえず追いかけてみるか。」

 

「はい、そうですね!」

 

 

奥にいたのは一人のファイターだった。匂いを感じ取り、ここまで来ていたというのか。

 

 

「あっれ〜? こんなところに残ってるファイターがいる!」

 

「うーん… どうして開いたのか知りませんが、今まで開かなかったならそもそも見つけられなかったんだと思います!」

 

「まあ、こんな奥にいるほどだしね。」

 

 

もう探索しきっていたと思われる場所に一人ファイターが残っていた。見つからない事態になったらどうなるかわからない。ダックハントがいなかったら見つかってなかったかもしれない。ファインプレーだった。

 

 

「うんうん… ところでその、ダックハントは?」

 

「…」

 

「…」

 

「…」

 

「「「先に行っちゃったー!?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無数のライトが一つの戦場を照らす。大きなモニターがついている『特設リング』。

オリジナルのものならばボクシングの試合に使われているだろうそれは、この世界の模造品では大乱闘の舞台として使用されている。

括りは同じ試合ということもあり、この場で戦っても違和感がないが、乱闘用に『終点』化している今のリングはボクシングには使い辛そうだ。

 

 

「ワンッ!」

 

『…』

 

 

ダックハントの対戦相手はリトル・マック。このステージのオリジナルには何度も立ったことがあるのだろう。他のボクシング選手と比べると頭一つは小さい身長だが、その分スピードで勝負する選手だ。大乱闘でもそのスピードで戦い抜いてきている。

何度も挫けても折れぬ不屈の闘魂に立ち向かうは異色の共演。脳裏にゴングの音が響いた。

 

 

「ワフッ!」

 

『…』

 

 

爆発する缶を蹴りだす。後はもう一人が動かしてくれる。更に呼び出すのは『ワイルドガンマン』。射程に優れたノッポを呼び出し、飛び道具の弾幕を作る。

リトル・マックはスピードはあるが、飛び道具のような絡み手はない。飛び越えられるような跳躍力もないため、この弾幕を潜り抜けるしかダックハントに攻撃を加える方法はない。

 

 

『…!』

 

「…ウゥッ!」

 

 

寄ってくる相手に対し、ダックハントも前進する。鋭い拳を屈んでかわし、犬にしては器用過ぎる前足でリトル・マックの服を掴んで身動きを封じる。殴って振り払おうとするも、腹の立つ笑顔で犬の方には当たらなかった。鴨の方の顔面には直撃して舌が思いっきり見えたのだが。

 

 

『…!?』

 

 

ノッポの弾丸がボクサーに当たり、銃撃で運ばれていた缶も近くで爆発する。ちゃっかりダックハントは抜け出し、遠くからまたもや腹立つ笑い方をしている。

 

 

「イッシッシックゥ!?」

 

「クーッ!」

 

 

避けるならばもっと上手く避けろ、の抗議に上にいる鴨からくちばしで突っつかれる。仲が悪いなら、どうして見えない者とでトリオを組んでいるのかわからない。

 

 

『…ッ!』

 

「…グウ!?」

 

 

軽い喧嘩をしてる隙に、飛びかかるパンチ『ジョイドブロー』がノッポごとヒットする。

リングのギリギリで落っこちることはなかったが、視界の隅にはひょうきんな目を向けて煽ってくる鴨。先程の意趣返しなのか。ただ、返す相手が違う。

 

 

「ワフッ!」

 

 

無視してクレーを投げる。けれども力を溜めていた『気合ストレート』はクレーを打ち砕きながら進む。

 

 

「キャンッ!」

 

『…!』

 

 

突き進む拳はダックハントの張ったシールドによって阻まれた。硬いシールドを殴った衝撃が腕へ伝わりしばらくまともに動けない筈だ。これは最大のチャンス。

 

 

「ワンッ!」

 

『…ッ!!』

 

 

ダックハントの合図でリトル・マックに射撃が襲いかかる。『ザッパー』と呼ばれる攻撃は見えない三人目が行うもの。ダックハントの合図でしか予測のできないこの攻撃は威力もあり非常に強力なものだった。

しかし、いかに強力といえどもまだ試合は序盤。グローブをはめた手で、ぶっ飛んだ体を起き上がらせる。カウントは数えられてもダウンは取られるものか。

 

 

「ウッ〜…」

 

『…っ』

 

 

再び睨み合いが起こる。ダックハントは四足歩行で、ただでさえ低い体勢をさらに低くして。

リトル・マックも重心を落として体の力を抜く。何が起きてもすぐ動けるように。

 

 

『…ッ!』

 

「クワッ!」

 

 

体勢の低いダックハントを救い上げるように拳を振り上げるアッパー。それは鴨が羽ばたいて避ける。別に犬の方が当たったって問題はないし、むしろ喜ばしいことなのだが、流石にそこまで堕ちていない。それに自分にも攻撃の余波がくる。それは勘弁だった。

 

 

「ククゥゥ〜ッ…!」

 

「ワンッ!」

 

 

当然鴨の翼が犬ごと飛ぶことに対応している訳がなく、段々と落ちていくコンビ。落ちながらクレーを投げ、リトル・マックを牽制する。着地を邪魔されぬようにし、いつも通り着地する。鴨を労わらないのも冷やかさないのもいつも通りだ。

 

 

『…ッ!?』

 

 

クレーを目の前で撃たれ、その炸裂に巻き込まれるリトル・マック。目眩しの役目を終え、敵方、ダックハントが体当たりしてくる。だが正面から突撃してくるのであれば、対応は簡単。目眩しがあっても、一瞬でもあればリトル・マックにとって対処は難しいことではない。

 

─それでも、彼らは何もかもが異色なのだ。

 

 

『…!』

 

 

突き出した右の拳は、更に右へ飛び込まれることでかわされる。

リトル・マックといえど、この大乱闘で戦ってきたことによって、普段のボクシングの相手とは特色の違うファイターとの経験を積んできている。

だが、このダックハントはリトル・マックより小さい所か、当然普通の人間より小さい。

それに加えて、十人十色のファイターでも少ない四足歩行なのだ。当然リトル・マックが防御しやすい位置に攻撃はそうそうこないし、二本の足より方向転換がしやすい。一見リトル・マックが有利に見れる近距離の戦いでも、一概にダックハントは勝てないとは言えないのだ。

 

 

「グルッ…!」

 

『…!』

 

 

かわしたダックハントがリトル・マックの横っ腹に激突する。まだ右手は殴り込んだ位置のままだ。防御に動かせる手はない。

 

 

『…!』

 

 

無機質なリトル・マックの顔に傷が増えていっている。こんなところを攻撃した記憶は彼らにはないが、そんなことを気にする者はここにはいない。

 

 

「ガウゥ!」

 

 

小さな犬の体躯では、大きく吹っ飛ぶことはなかったが、逆に好都合だった。そのまま彼の右足に噛み付いて動きを封じる。

 

 

『─ッ!』

 

 

自由な左足で蹴飛ばそうとするも、鴨がひょうきんな顔して翼を広げている。隙をつくるの覚悟で、でたらめに右足付近を蹴るも、上手くかわしているようで当たらない。焦るリトル・マックより先に犬がくぐもった声でワン、と鳴いた。

 

 

『ッ!』

 

 

この合図は、射撃。第三者にはわからない三者への射撃の合図だった。

ボクサーは弾丸に襲われ、モニターのKOの二文字だけが彼らを称えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すたっ、と四つの足で着地する。アスファルトの地面に爪を食い込ませ、周りを見渡してさっきまで近くにいた三人の顔を視認する。

 

 

「あ、戻った。」

 

「ダメですよ〜! お助けに行くのならまずは私たちに言ってください〜!」

 

「クゥ?」

 

「リュカならともかく僕ら言葉わかんないよ?」

 

 

こんなことを話しながらむらびとが金色の台座に触れた。

 

 

「うう… ここどこっスか…?」

 

「ボクは誰… じゃなくて、おいっす、マック!」

 

 

目覚めたリトル・マックに、記憶喪失定番ネタを言いかけたピットは寸前で止めて挨拶する。

 

 

「まあ、説明は後でしよう! 因みにキミを助けたのはそこにいるダックハント!」

 

「ええ〜… ま、いいか、あざっした!」

 

 

思いっきり頭を下げるリトル・マックに対し、歯を見せていつも通り笑うダックハント。助けてやったんだぞ、の態度なのか真偽は不明だ。

 

 

「そういえば、僕たちあそこの森を探索してたんだよね?」

 

「そういえば… 3号に待機って言われてたような…」

 

「修理の待ち時間だったような…」

 

「「「……… 戻るよ(りますよ)!!」」」

 

 

一体どのくらい経ったのか。

スピリットと戦い、ダックハントを解放し、ちょっと待機して、ダックハントを追って、リトル・マックとの戦いが終わるのを待って。

相当時間が経った筈だ。走り出す三人とついていくダックハント。

 

 

「え? あ? ちょ、ちょいと待つっス〜!」

 

 

彼らの影を追いかけるリトル・マック。

右も左も未だわからないけど、今はとりあえず追わなければ。

 




ピット「ダックハントのダックは鴨… じゃあ犬の名前はハントか!」

マック「どんな名前っスか…」

ピット「じゃあ一体どこの誰がマックなんだ?」

マック「リトルもマックもオレっスから!」


マック「次回! 『手を抜いてはいけない、目を逸らしてはいけない』っス!」


むらびと「別にマック小さくないと思うけどなー」

マック「デフォルメキャラに慰められても…」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四十六話 手を抜いてはいけない、目を晒してはいけない


今更ながら波導の勇者ルカリオ視聴しました。口調が大きく違っていたら目も当てられないところでしたが、そんなこともなかったので良かったです。

しかし、幼い頃映画館で見たものと同じものの筈なのに大分短いものに感じました。ポップコーンとドリンクがない所為なのか画面の大きさが足りないのか成長したからなのか…


そんな私、名探偵ピカチュウはスルーしましたがソニックは見るつもりです。


「はあ… 完全に寿命が縮まった…」

 

 

見渡す限りの星の海。グレートフォックスの運転席にフォックスは珍しく安堵の表情を隠さないままだらけ切っていた。勿論それを運転に投影させたりはしないのだが。

 

氷山の頂上に墜落していたグレートフォックスを見た時は心臓が止まるかと思った。直せない程の重傷だったら本当に立ち直れなかっただろう。ちなみに修繕費は当然スターフォックス持ちなので費用が嵩むことは変わりない。

 

そうやって直ったグレートフォックスに仲間のファイターを乗せて宇宙のような空間を散策している。

 

 

「確かに壊れた愛機を見た時は私も肝が冷えた… 結局まだ買い戻せてないが…」

 

「それは… オリマーも大変だな…」

 

 

助手席に座るオリマーとお互いの身の上話をする。借金のかたにアーウィンを持ってかれることなど想像もしたくなかった。

因みに他のメンバーは一部を除いて、各々くつろいでくれ、と伝えている。勿論この空間にも散らばるスピリットの救助のために体力を温存して欲しい、という意味もある。例外にカービィはコックピットではしゃいではいるが。

だが、話を聞いていなかったのかトレーニングしていたらしい。汗を拭きながらリュウがコックピットに入ってくる。

 

 

「りゅー!」

 

「休んでおいてくれと… まあいい、何か用か?」

 

「ああ、確かリトル・マックが戻ってきたと聞いたからトレーニング相手を頼もうとしたんだが見つからないんだ。」

 

「ああー、マックなら…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪が降り積もる山頂。四人がプラカードを首からぶら下げながら正座、二匹がそれを見て腹立つ顔して笑っている。

 

 

「なあ… 二人とも…」

 

「「…」」

 

「目を逸らすな! どうして俺まで留守番にされたのかわかってるんスか!」

 

 

急いで頂上に戻ったむらびと達だったが、集合に間に合わず。

その取り決めを知らないリトル・マックは罰を逃れるかと思いきや、むらびととピットの抜群な連携プレイで留守番の道連れにすることに成功したのだ。しずえの弁明すら挟ませない程の素晴らしい連携であった。

そんな彼らのプラカードには、私は遅刻しました、と書いてある。

ちなみにしずえは止められなかった自分も悪い、と自ら残っている。でなければ女性に雪山で正座させるなど許さない人がいるだろう。

 

 

「ほんっとインタレスティングだな〜!」

 

「あの… ソードさんまでどうしてこちらに?」

 

「出禁くらった!」

 

 

遅刻してはいない筈なのに共に残っているソードのプラカードには、厳重注意前科者、と簡潔に書いてある。

その姿にしずえは察してしまった。フォックスはまた壊される恐怖に怯えるより、危険を排除する方法を選択したのだと。

 

 

 

 

異形の翼に囲われるキーラが非常に大きく感じる。この空間はキーラに近いところにあるのだ。ここから奴との最終戦に臨めそうだが、バリアが残っているのははっきり確認できる。まずはあのバリアを剥がさねばなるまい。

グレートフォックスで砲撃する手もあるが、それでどうにかなるとは思えない上、下手に刺激を加えると向こうが迎撃してくる可能性がある。まだ触らぬ神に祟りなしを貫いておく必要があるのだ。

 

 

「おーい、そろそろ替わろうか?」

 

「キャプテン・ファルコン。別に長くやってる訳じゃないし別にオレは…」

 

 

コックピットへ入ってくるキャプテン・ファルコン。別にあてもなく動かしている訳ではない。そう長い時間運転することもないので断ろうとした時だ。

この感覚は。獣特有の鋭い五感とも違う感覚は。

 

 

「………」

 

「ふぉっくしゅー?」

 

 

無言で方向を変えてキーラが見えていた窓に違うものを写す。そう、こいつは。

 

 

「…やっぱり機体の安定は頼んだ。オレは行ってくる。」

 

 

コックピットから駆け出るフォックス。ここまでしてはオリマーとキャプテン・ファルコンも彼の思惑を理解できない訳がない。そんな二人を、首を傾けてカービィは見ている。

 

 

「そうか。頑張ってくれ…」

 

 

もう見えない背中にエールを送る。彼の気持ちはせめて理解していたいから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分もかつてキーラに囚われていた時、同じ場所で戦ったのだろうか。いまだに、クッパと戦っていたな、という朧げな記憶しか思い出せていない。

 

 

『…』

 

「ファルコ… 言葉は要らないよな?」

 

 

それでもリーダーは銃を取る。この『ライラットクルーズ』の銀河の舞台で。『終点』の姿となったこの地で、エースに銃口を突きつける。

 

 

『…!』

 

 

それに真っ向から応じるかのように、ファルコ・ランバルディも性能が少し違うだけの銃を向けた。

そして、ほぼ同時に。

 

 

『…ッ!』「…っ!」

 

 

二人は飛び出した。

フォックスの蹴り出した足とファルコの鋭い手刀が交錯する。ここで鍔迫り合いを続けると、片足を上げているフォックスの方が一方的に不利だ。それは本人もわかっている。

 

 

「…っ…!」

 

 

地につけている片足で、機体のような大地を蹴り、体を浮き上がらせる。『ブラスター』を乱雑に撃ちながら宙返りで距離を取った。

 

 

『…チッ!』

 

 

身を引いたフォックスを追ってファルコが走り出す。弾を乱暴に翼で弾きながら突き進む。

 

 

「…とっ…!」

 

 

回った視界が元に戻り、正面から迫る相棒を認識する。徐々に体勢が低くなっている。体術方面がキックに偏っているフォックスに対して、蹴り込んだ後の無防備な片足を狙う構えだった。

 

 

「ならっ!」

 

『…!!』

 

 

体勢は合わせない。振り下ろす勢いを攻撃に加えられる高めの体勢のまま、フォックスも走り出した。

 

『ブラスター』を握り込んだままの拳がファルコの頭部を殴打したのは、

ファルコの手刀がフォックスの脇腹を穿ったのは、殆ど同時だった。

 

 

「…っ…かっ…!」『ーっ!』

 

 

口の酸素が吐き出され、一瞬呼吸が出来なくなる。頭と視界が揺れ、一瞬意識が飛ぶ。

それでも彼らは無意識に次の攻撃へ動いている。

 

 

「…らあっ!」

 

 

下がった顔の左目、スカウターを巻き込む位置に回し蹴りを放つ。

 

 

『…ッ…ッ!!』

 

 

片腕は既に突き出している。動かす足を止めず、そのまま敵の腹部に向かって頭をぶつけようとした。

 

 

「…!(頭突き…!)」

 

 

その行動を見た瞬間、振るう足を膝から折る。一番力の入る場所が足の甲ではなく膝そのものとなるように。

 

 

「かぁ…!」『…ぁっ…!』

 

 

今度は双方大きく吹き飛ばされた。

腹部と頭部。肉体の構成的に弱い箇所に攻撃が集中し、攻防の時間以上に大きなダメージを二人に残していた。

互いに倒れ、攻防が一段落したことで脳内麻薬が切れ、感じなかった痛覚が雪崩のように襲いかかってくる。

 

 

「…ちっ… くう…」

 

 

銃をしまい、両の腕でなんとか体を起こす。

相手の方も起き上がろうとしている所だった。キーラの支配下にあれど、全ての感覚を無視して戦うことが可能という訳ではないようで、少し安心した。

 

ただ信じていたかっただけかもしれない。自分相手に全力を出して戦うファルコは、キーラの意思によって戦っている訳ではないと。

当然そんな事はないとわかっていた。でも理解と願望は別だ。そう言い聞かせた。

 

だが、理解できているということは今のファルコはキーラの意思によるものだと考えているということで──ファルコに対しての信頼を汚した自分の思考に腹が立った。

 

 

「…ふぅー…」

 

 

心を落ち着かせて息を吐く。

その汚点、拭いたかったら目の前の乱闘に手を抜いてはいけない、目を逸らしてはいけない。

今戦っているのはキーラではない。ファルコ・ランバルディなのだ。

 

 

「…ッ!」

 

 

ギリリと歯軋りをし、走りだす。ファルコも今立ち上がった。今度は動かず待ち構えている。

 

 

『…!』

 

 

高速の突進、『フォックスイリュージョン』。フォックスの足の速さはたかがパイロットと侮れないものがある。

しかしフォックスは手負い。今のファルコでも見切れる程にスピードが落ちていた。身を引いて回避し、そのまま『ブラスター』を放つ。

 

 

「くっ…!」

 

 

振り返ったフォックスも『ブラスター』で敵弾を撃ち落とそうとする。数に任せて一つ落とし、他の弾は横跳びで避けた。

 

 

『…!』

 

 

双方銃を手に持ったまま、再び激突する二人。お互いに本気を出さない選択肢など初めからなかった。そう思いながら、フォックスは体を沈めてスライディングをかけた。ブーツに当たり、ファルコの体は宙に投げ出される。

 

 

「う…おおおおぉ…!」

 

『…っ!』

 

 

振り返ってももう遅い。

不安定な体勢から体重全てをかけて跳び蹴りを背中にぶつけた。

 

 

「ぐっぷっ…」

 

 

情けない声を上げ、顔面からうつ伏せに倒れる。機体の冷たさに歓迎されて相手の動向がわからない。

決着がついたと知ったのは、元の場所に戻り体に伝わる冷たさが苦い砂に変わった時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グレートフォックス内部にファルコと共に引き上げられたフォックスは何度目かわからないため息を聞く。今回はファルコのものだった。

 

 

「…ったく、また無茶しやがって…」

 

「悪いな、不器用なんだよ。」

 

「お前のどこが不器用なんだよ…」

 

 

呆れ顔のファルコに言葉を返す。こればかりは性分だった。

 

 

「プリリ…」

 

「ん? プリンか。どうした?」

 

 

解放戦から帰ってきたと聞いて、今いるファイターの大半はコックピットに集まっていた。

満身創痍のフォックスを見て、涙目で寄ってくるプリン。一度フィギュア化したファルコと違い、未だ痛みが残っている。泣き止ますように頭を撫でて笑う。

 

 

「大丈夫だ。擦り傷だよ。」

 

「プリュ〜…」

 

 

それでもプリンは泣き止まない。

彼女は戦い自体が好きではないのだろうか。初期から共にいる数少ないメンバーの内の一匹だが、プリンが積極的に大乱闘に参加した記憶はない。本当は戦ってなど欲しくなかったのだろうか。

…それでも今回だけは引けなかった。

 

 

「…他の誰にも任せられなかったからな」

 

「プ…!」

 

 

フォックスの呟いたような一言に、驚いて目を見開いた。平和主義者よりもずっと甘い彼女に天啓が舞い降りた瞬間だった。





マリオ「おっ! みんな、そうめんが戻ってきたよ!」

ファルコ「誰がそうめんだ!」

オリマー「まあ、これを食べて落ち着け。」

ファルコ「だからそうめん…そばじゃねえかこれ!」

スネーク「おー、おかわりもあるぞー」

ファルコ「わ・ん・こ・そ・ば!」


ファルコ「あー、くっそ! 次回、『戦いが嫌いな理由』!」


フォックス「スマブラのネタ枠がどんどんFE勢に取られていくからな。そうめんももう十二年前だぞ?」

ファルコ「だからなんだ!? 取られちまえそんな枠!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四十七話 戦いが嫌いな理由


プリンちゃんについての超個人的解釈が入っています。

まあ、大乱闘にこんな子だっていてもいいでしょう?


それでは私は無人島に戻ります。


「プリー、プップッリ!」

 

「ピチュッチュッピ?」

 

『いいのか? 別に無理をする必要は…』

 

「プリープリー!」

 

『…わかった。任せよう。』

 

 

 

 

グレートフォックスでキーラへ接近する案はあったものの、橋を越えて向こう側の大地にも何かがあることに気づいた。

キーラを討てば囚われていた人々も全て元に戻るだろうが、戦力は多いに越したことはない。

機体から降り、留守番組と合流すると、崖を挟んだ向かい側へ進む。だが、その前に後回しにせざるを得なかった問題を解決することにした。

 

 

「この子をどうにかしなくてはね。」

 

 

ピーチがその『この子』に目線を向ける。荒れ狂う激流の真ん中にいる一匹のファイター。リュウがいた場所に向かう途中に湖を渡ったが、ここには船らしきものはない。

 

 

「仕方ない、俺が泳いでいくよ!」

 

「はあ… キミが身体能力について天賦の才能を持っていることは知ってるよ。それでも限度はある。」

 

「ギクッ… 確かにミファーが作ってくれた鎧は今持ってない…」

 

 

あの激流を渡る手段を話し合う。リンクの案は流石に危険なので却下された。

 

 

「やっぱり飛び越える方法が一番か…」

 

「リ…」

 

「カービィやファルコなら飛び越えられるかな?」

 

「プリュ…」

 

「なんだ? 早速こき使うのか?」

 

「はあい!」

 

「プリー…」

 

「別に喧嘩腰になる必要はないだろ…」

 

「プ…プリ…」

 

 

スネークへ、マルスへ。話しかけようと声を上げようとしているプリンだったが、小さな声で聞こえていない。俯いてしまったプリンにルカリオが助け舟を出す。

 

 

『少しいいか、その役目、プリンに譲ってやれないか?』

 

「えっ? プリンが?」

 

 

マルスがプリンに目をやる。彼女は戦いを嫌っている。大乱闘に挑む仲間を見るたびに縮こまるプリンの姿をマルスは認識していた。

だからこそ、先程もプリンを候補から外していた。カービィと同等以上の飛行能力があるにも関わらずだ。戦いなんて慣れるものじゃないとマルスは考えているから。

 

 

「でも… ピチューはいいの? だってあそこにいるの…」

 

 

インクリングがピチューにも声をかける。川の真ん中の小島にいるのはピカチュウだと、知っている筈だ。だが、ピチューは肯定をしめす。

 

 

『私たちで先程話し合った。プリンから、自分が救いたい、と言ってきた。そして私とピチューはそれを了承したのだ。』

 

「…わかった。」

 

 

ピチューが誰かと共に戦うことを知り、自分が誰かに頼ってもいいことを知ったように、プリンも何かを知ろうとしている。乱闘嫌いのからをやぶろうとしているのだ。

心配はするが止めはしない。

 

プリンは頷いて飛びだす。真ん中の小島、戦場に向かって。

 

 

「リュウさん…」

 

「リュカ、どうかしたか?」

 

 

リュウの道着を引っ張って話しかけるリュカ。

 

 

「戦いが好きな人って… 好きな理由は人によってそれぞれだと思うんです…」

 

「ああ。」

 

 

最強を目指す、ライバルを倒す、誰かに憧れて… 戦う理由もそれぞれなら戦い続ける理由もそれぞれだった。

 

 

「じゃあ、戦いが嫌いな理由もそれぞれ、でいいんですよね…」

 

 

リュカと正面から目を合わせる。

人が死んで欲しくないから、気弱で戦いに向いていないから。

ならば、あのプリンの、戦いが嫌いな理由はなんなのだろうか?

 

そういえば、リュカもポケモンと意思疎通のできる一握りの存在だった、とリュウは思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふわりとプリンがふうせんポケモンらしく着地したのは『ポケモンスタジアム2』。元々ノーマル時の地形は戦いやすいシンプルなものなので『終点』と同じ地形となったと言っても、フィールドに大きな違いはない。

 

でも、プリンにとってここは単なる戦場以上の意味があった。何故ならここはかつて外界に蔓延る恐怖から逃げるための部屋であったのだ。

 

 

『…』

 

「…プリ」

 

 

両頬の電気袋からバチバチと電気が漏れ出す。

でんきねずみポケモン、ピカチュウ。彼もまた、プリンにとって大きな存在だった。

 

 

「プリリ…!」

 

 

正直なところ、まだ戦いは怖い。手も足も震えて今でも逃げ出したかった。でも、キーラが世界も理も神をも掌握している現状は、逆にプリンから逃げ道を断ち、今の状態を作り上げているのだ。

─そうでもなければ、また逃げて、自分の認識が及ばないところで全てが終わるのを祈り続けていただろう。

 

 

『…!』

 

「プッ…!」

 

 

自分の事情など相手に関係ある筈もなく、攻撃にかかるピカチュウ。『でんげき』の走る大地。それに対してシールドを張るプリン。

 

 

「〜! プリュ!」

 

 

ジャンプで跳び上がって相手に近づき。

『はたく』を繰り出す。

一撃当たる。『ねずみはなび』で弾き飛ばされるが、ぶった感触は残っており、自らの短い手をまじまじと見つめていた。

 

 

「プ…」

 

 

痛かっただろう。自分も痛かった。

攻撃するのも攻撃されるのも苦手だった。娯楽であると知っていながらも大乱闘は痛いから。だから大乱闘も苦手だった。

 

ずっと自分が何故呼ばれ続けているのか疑問に思っている。何かを成し遂げた訳ではなく、戦いに興味があった訳ではない。最初からずっと、この世界の全てに馴染めなかったのだ。

 

 

『…ィ…!』

 

 

目の前にいる彼は最初にいる唯一の同郷のポケモンだった。基本一匹でいたプリンだが、誰と一番一緒にいたのかと聞かれたなら、ピカチュウを挙げるだろう。向こうから話しかけてくるしか交流はなかったけど。

今もそうだ。ポケモンの仲間は増えたにも関わらず、現在も話しかけてくる。それでも彼女から話しかけることは出来なかった。大乱闘で、彼らは誰かに攻撃しているという事実が頭にあったから。自発的ではないにしろ、自分だって同じだと言うのに。

 

 

「プゥゥウー!」

 

『…!』

 

 

目を瞑ったまま『ころがる』攻撃を当てる。『ずつき』を後ろに跳んで避けて、飛び蹴りを放つ。よかった、ちゃんと戦えている。

 

 

─この世界での全てを広げてくれたのはキミだったんだ。

 

初めて声をかけてくれたキミが、このステージにいる。亜空軍の事件が起きたとき、プリンが逃げこんでずっと隠れていたここにいた。攻撃するのもされるのも嫌だったから。

 

 

『…ッ! カ…!』

 

「プ…ゥ…!」

 

 

電気にしびれた体に鞭を打ち、『ロケットずつき』を正面から受け止める。筋力は寧ろない方だったが、前のめりの体勢になりながら体全体でスピードを殺した。

 

 

「プ!」

 

『…ッ!?』

 

 

抑えてた手をどけると同時に体を膨らませて弾いた。そもそも攻撃を止められた時点で隙を晒したピカチュウにこれに対処できる方法はない。

 

 

ファルコとの死闘の末、満身創痍になりながらもファルコを救助することに成功したフォックス。きっと自分も想像できないほど壮絶な戦いがあったに違いない、と心配で心の突っかかりも忘れて近づいた。

でも、きっと。例え止めたってフォックスは戦いに行ったのだろう。相手はファルコ、友だったから。彼を救う役は自分以外にいないと確信していたから。

 

 

「プリッ!?」

 

『…ァッ!』

 

 

『ショートでんげき』がプリンを襲う。どんなに堅い決意があっても、戦闘経験の差は覆せない。長く続くとその差は段々顕著になり、おいうちの『でんげきドリル』で場外へ飛ばされる。

 

 

自分が誰かを救わなければならないのだとしたら、その誰かはキミしかいない。自覚できないところで自分の世界を広げてくれた。

なら今度は、かつて自分が使っていた殻をやぶって、キミ自身を解放しに行くよ。

 

 

「プリィッ!」

 

『…!?』

 

 

ステージ外からピカチュウの真上を取り、両足を揃えてドリルのようにキックを打つ。苦痛に歪む彼の顔に心が痛む。でも既に傷んだ心は決まっている。

 

 

キミが戻ってきて、この大乱闘が終わったら。またこっそり泣いちゃうと思う。キミの痛みと自分の痛みも思って泣いちゃうと思う。

それでもきっと変わらず大乱闘は苦手だけど、大乱闘が苦手じゃないキミやみんなのことは苦手じゃないから仲良くしてほしい。

 

 

「プ〜プ〜リリ〜プ〜プ〜…」

 

『…ッ』

 

 

『うたう』で相手の睡眠を誘う。彼女の歌声を間近で聞いてしまえば、抗えない。

 

 

「プ…」

 

 

体を丸めて眠りについたピカチュウの頭を労わるように撫で、目をギュッと閉じて『ずつき』で彼を飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

川を渡り、近くの平地。

つぶらなひとみが開き、ピカチュウは目を覚ます。プリンの大きな瞳と目があった。

 

 

「ピカ…」

 

「プリー!」

 

「ピカチュウさん、調子はどうですかー?」

 

 

しずえが屈んでピカチュウに話しかける。後ろ足で立ち上がり、大丈夫だと、うなづいた。それを見て花が咲くような笑顔を見せるしずえ。

 

 

「よかったですー! プリンさんが助けてくれたんですよー!」

 

「ピィカ?」

 

 

ピカチュウ自身もプリンが大乱闘を苦手にしていることは知っている。その印象と自分に残る曖昧な記憶と辻褄が合わなかった。

真実をプリンに問いただそうと辺りを見渡すが、少し目を逸らした瞬間にいなくなっていた。

 

 

「ピカチュー?」

 

「あれ? プリンどこ行ったんスかね?」

 

 

しずえやリトル・マック、パックマンもキョロキョロと見渡すも見つからない。

そこでルカリオが口を開いた。

 

 

『私が見つけよう。後で合流する。』

 

「ピカッピカ?」

 

「ルカリオなら大丈夫っスね。じゃ、頼んだっス!」

 

 

人がまばらになっていく。

実際あの数瞬で遠くに行ける訳がない。波導を感じられるルカリオの目は誤魔化せない。近くの草むらに荒れた感情が感じ取れる。

 

 

『………』

 

「プリィ… ププリ…」

 

 

勝者であるプリンは泣いている。痛みを思って泣き、戦いに涙を流す。そんな感情の中に少し吹っ切れた感情があることも確かだった。





むらびと「あつまれどうぶつの森発売! 暫くぼくたちのターンだよ!」

しずえ「祝、です! でも村長業は怠らずに!」

むらびと「え〜…」

リュカ「新作かぁ…」

CF「オレたちに光はないのか…?」

ピット「ええい、新作はまだかー!」

オリマー「次回作でも主人公でいられるだろうか…」

フィットレ「リングフィットアドベンチャーは私の後輩でいいのでしょうか?」

マルス「ポケモンはDLC、ゼノブレイドはリマスターが待ってるけど、僕たちはエコーズから結構ハードだったからなあ… 暫く落ち着きそうだ。」

リンク「続報カモンー!」


マルス「次回、『あの手は掴めなかったけれども』」


マリオ「新作のことは心配だろうけど、今はむらびととしずえさんを祝おうよ!」

ピット「流石の余裕だよ!」

マリオ「ボクだから仕方ないよ!」

ピット「まったくもって正論だからなんにも言えない…っ!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四十八話 あの手は掴めなかったけれども

スマブラ DLC第六弾決定しましたね。
ARMSの誰か…という発表の仕方は斬新でした。スプラ2の影に隠れていましたが(実際私もスルー)世界でダブルミリオンなら新規タイトルとして成功した、と言えるでしょう。


ただ、何か匂います。このタイミングで、主人公がアシストにいるにもかかわらず、DLCで参戦させるのは中々の博打のような気がします。
但しこの報は参戦予想勢には混乱を呼びます。スプリングマンが参戦するならば、『はじめてアシストフィギュアとファイターを兼任するキャラ』が生まれます。似たような例はクロムがいますが、切り札で出てくるキャラと戦うアシストとは無茶のさせ具合が違います。

他キャラならば、『主人公を差し置いて参戦』かつ、『DLC初の主人公以外のキャラが参戦』となります。後者はミュウツーの立ち位置が不明瞭ですが、新規なのでスマブラ層に人気の土台が殆どありません。
そして、ARMSキャラは何人かスピリットに既にいるので、『スピリットとファイターの兼任』も初になります。

もしかしてファイター予想、相当荒れる?
それともARMS2の布石?



あ、ピカチュウの設定忘れかけてました。えっ? 設定に捻りがない?
・ピカチュウ
性別♂。まじめな性格。なんでもよく食べる。
ポケモン全体のまとめ役。正義感や責任感が強く、困った人は見過ごせない。


静かな足音とふわふわとした足音が、橋の前の人だかりに合流する。

 

 

「ププリー」

 

『すまない、待たせたな。』

 

「フン、いつまでワガハイを待たせる気だ? お前ら、遅いぞ!」

 

「大丈夫、そんなに待ってないよ。」

 

 

遅れてきたプリンとルカリオにご立腹なクッパと対照的に、彼らを柔らかく迎えるマルス。

プリンの気持ちがわかるからこそ、彼女もプリンのために人を掃けたルカリオも咎める気はなかった。

 

 

「ピーチュピチュ!」

 

「ピカッピカ!」

 

 

先に解放されていたピチューとなんらかの会話をしているピカチュウ。まじめな性格の彼はポケモン全体のまとめ役を自ら行なっている。

ピチューが色々話した後に驚いた顔をしたり、更に聞き込んだりしている。

 

 

「(恐らくは… 今回の件についてピチューを通して話を聞いているのだろうな。)」

 

 

二匹の動作や表情から会話内容を推測するオリマー。あの星の原生生物と比べて、ポケモンはわかりやすく動く。ピカチュウならいち早く状況を理解し先頭に立とうとしているのだろう。

そんなことを考えながら、周りに声をかける。

 

 

「さて… ここからは未知の土地だ。全員いつでもいけるように心構えをしておいてくれ!」

 

「他のエブリワンも探さないとね!」

 

 

ソードが付け足した。今までのようにこの先にもファイターがいる筈なのだ。

 

 

「まずはオレ達がこの先にゴーできるようにしないといけないよ!」

 

「ワーオ! でも橋の先に誰かいるよ!」

 

 

ヨッシーの言う通り、何者かのファイターがいる。避けて通ることの出来ない位置だった。

 

ファイター達を視線を動かすが、誰も声を上げない。相手が誰かわかれば対策もできるし、情報が無駄になることなどないだろう。だが、それがないのであれば仕方ない。そんなことを考えているマルスの服を引っ張る者がいた。

 

 

「ピカチュウ? どうしたの?」

 

「ピカッピッカカチュチュ?」

 

「ボクが戦ってもいい? だ、そうです。」

 

 

オドオドしながらもピカチュウの言葉を訳するリュカ。まだピカチュウは言葉を続ける。

 

 

「ピッカッチュウ! ピーカピカ!」

 

「口で聞くのと体験するのは違うって言うし、ボクもこれから頑張らないと! …って」

 

「ピーチュピチュ?」

 

「ピカピカピ!」

 

「あっ… 一匹で行くんだね。」

 

「ピカッ!」

 

 

他のファイター達から異論は無さそうだ。一番文句を言いそうなクッパも難しい顔をしているが反論はなさそうだ。早く道を開いて単独行動がしたいと考えているのかもしれない。

 

 

「うん、特に問題はなさそうだし、行っておいで。転移の方法はわかるかい?」

 

「ピカッチュ!」

 

 

彼は賢い。ピチューの見聞からでも十を想像できる。それだけじゃなく、自分で経験を積む謙虚さも持ち合わせている。

しっぽをふって戦いへ挑むピカチュウはかなり高めに評価されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピッカー…!」

 

 

寂しそうになきごえを上げる。ピカチュウにとって戦友、とも言える相手が目の前にいたから。そして、悲しい乱闘の相手となる人だったから。

 

 

『終点』化された『ブリンスタ』。そこにいたのはパワードスーツを見に纏うバウンティ・ハンター、サムスだった。

昔は特別関係が深い、とまではいかなかったが、亜空軍との戦いで暫くの間共に戦っていたのもあり、その後も良き関係が結ばれていた。まとめ役のピカチュウが一番頼りにする相手といったら彼女を挙げる。

 

 

『…』

 

 

冷たい眼光がピカチュウを射抜く。焼き尽くすような赤を瞳に宿しておきながら、感情が消えた視線は背筋が凍る程のものだった。

 

 

「ピ…ピカッ!」

 

 

少し怯えはしたものの、すぐに自らをふるいたてる様に声を張り上げる。頬から静電気が漏れ出す。通常の大乱闘ではあまり見られない本気の臨戦体勢だった。

 

 

「ピカッチュ!」

 

『…』

 

 

『でんげき』を放つ。深く考えず威力だけを引き出して放つピチューのそれより威力は劣るが自分へのダメージはない。弟のように思っている彼より堅実な技だ。

 

 

『…!』

 

「ピカッ」

 

 

直進する『ミサイル』を避けるために左へ跳ぶ。一つピカチュウには考えがあった。相手を正面にして左側、つまりサムスの右方向、もっと言えばアームキャノンのつく右を攻めるといったものだ。

 

 

「ピィ!」

 

 

電撃を纏い、とっしんすると見せかけて尻尾を右腕に当てる。浮いてるところを着地と同時に相手の足を足場にして蹴り出し距離を取る。

 

やはり、右半身はパワードスーツの装備に頼りにくい。彼女は超人すらも超える身体能力を持つためこれで完封できるなど思っていないが、装備の恩恵を薄めればそれだけ勝ちやすくなる。スーツを着ていればそれだけ足や機敏さを削がれているし、今の状態ならピカチュウはスピード勝負に勝てる。

 

 

「ピッカァ!」

 

『…』

 

 

しかし、パワーはまず負けるだろう。まず正面から力勝負してはいけない。『でんこうせっか』で一瞬のうちに股の間を通る。

 

 

『ッ!』

 

「ピッ!? ピッカ…!」

 

 

サムスは後ろへ振り返って回し蹴りを放った。読んでいたのか目で追うことができたのか。技の終わりにすぐ蹴られた。一瞬何が起きたか理解出来ずに痛みが後から襲ってくる。

 

 

「ピッ…カァッ!」

 

『…!?』

 

 

張り出した声が『かみなり』を呼ぶ。とばされたピカチュウの背後で天雷が落ち、溢れる雷撃が鋼鉄の外殻に襲いかかった。直撃はなかったが、追い打ちを防ぐためにできた最低限のことがこれだった。

 

 

「カッチュ!」

 

 

体を回して視界にサムスを捉える。ピカチュウの策が尽く対処され、優位に立つことができない。確かにパワードスーツを纏ったサムスにスピードでは勝てているがそもそものけいけんちが桁違いだ。パワーよりも、対応という面で劣っているのが致命的であった。

 

今だってサムスの戦法が攻撃寄りであったなら『かみなり』が当たっていたかもしれない。だが、生憎彼女は超がつくほど冷静だった。

 

 

『…!』

 

「…ッ!」

 

 

短いチャージのエネルギー弾が飛んでくる。相手の冷静さを砕ける程の戦闘センスも、柔軟な思考回路もピカチュウは持ち合わせていなかった。だから少し無茶をする。

 

─あの手は掴めなかったけれども。

─この手は掴み取るし、あの手だっていつか掴み直す。

 

 

勢いはつけず、ほうでんをすることで電気を直接身にまとう。いつもの火力にさらに電圧を高める。少し体に痛みが生じるが、あの外殻を一瞬で貫通する程の威力はいつも通りでは為せれない。

 

 

「カッ…チュッウ…!」

 

『…っ!?』

 

 

その状態のまま放った『ロケットずつき』が相手に向かって突き進む。チャージの短い『チャージショット』は纏った電撃だけで打ち消され、進路を塞ごうと動かした左手を弾き飛ばしてサムスに衝突する。

 

互いにノックバックで下がる。胴に強烈な攻撃をくらっても戦闘態勢を崩さないのは流石といったところか。

一方のピカチュウは身に纏った電撃が止まっている。熱いやかんに我慢して触れていたようなものなのだから、どの道長続きはしなかったのはわかっていたが。それでも再び電撃を纏って飛びかかる。その状態はボルテッカーに近かった。

 

 

当の本人は気づいていなかったが、戦闘経験豊富で操られているサムスに勝てるところがあるとすれば、決意の強さだった。

 

キャノン部分の突きを横飛びでかわし、くるりと体ごとしっぽを振るう。ローキックで蹴り飛ばされ、地に跳ねて体を強打した。

 

 

「ピ…カァッ!」

 

 

キーラに理解なんてしてほしくない。

確かにピカチュウが負けても他のファイターがいるため別の誰かがチャレンジすれば良い。

捕らえたファイターにしても奴には使い捨ての駒感覚に過ぎないだろう。

 

一度助けの手が途切れてしまえば、助けられる側は必ず後悔してしまうんだ。自分を置いていけばあの閃光は助かったかもしれないのに。

 

 

『…!』

 

「ピィッカ!」

 

 

『ボム』を投下して接近してくるだろうピカチュウを牽制する。遠くから『チャージショット』で撃ち抜く思惑だった。

的確に『でんげき』でボムを撃ち、害のない位置で起爆させる。常に電撃を纏っている状態ならこういう対処が少し早く行えた。

 

 

『…ッ!』

 

「ピ〜カァ〜…」

 

 

爆風を潜り抜けたピカチュウは電圧を高めていく。咄嗟に更に距離を取ろうとするが、ピカチュウの前進に間に合っていない。

 

 

「チュッ!」

 

『…!』

 

 

足に衝突するタイミングで電気を爆発させる。対処しにくい足に向かって放った今までで一番の攻撃。

 

それでも確実な致命傷にならなかったのは、衝突のタイミングで一気に身を引かれたからだ。直撃は避けられ、電気のダメージだけがサムスに伝わる。でも、それだけでも大きすぎるダメージになった。

 

 

「ピカチュー!」

 

 

ピカチュウは名を呼んだ。放ったらいげきと共に。深いところにいるだろう彼女本人にも届くように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

久しぶりの光に視界が悲鳴を上げて、反射的に目を閉じる。メットの緑の越しに周りの自然を知覚した。

 

 

「(ここは…?)」

 

 

最後の記憶は、光の本流の正面だった。

違う。それとは対極の漆黒の世界に、思考も出来ずに囚われていた筈だった。

今との違いに戸惑うサムス。視界の隅に少しだけ黄色の手が見える。視線を下に向けてみるとピカチュウが両手を振っていた。

 

 

「ピカチュウ? どうしてここに?」

 

「ピカッチュ!」

 

 

左手を伸ばしたピカチュウは傷だらけであった。自分が何をしていたのか察する。

 

 

「…いや、助かった。ありがとう。」

 

「ピカー!」

 

 

言いたいことはあったのだが、真っ先に口に出たのは純粋な感謝だった。手を伸ばして握り返す。ピカチュウがにこりと笑った。





ルカリオ『新作…か…』

ピカチュウ「ピカ? ピカーカピカ?(ん? どうしたのルカリオ?)」

ルカリオ『順当に行けば次はダイヤモンドパールプラチナのリメイクの筈だが… まだDLCが控えているからな…』

ピカチュウ「カー、ピチュピカチュピカピカー(あー、初の据え置き本編というのもあるし慎重になってると思うからのんびり待とうよ。)」

ピチュー「ピーチュチュ! ピチュチュチュピチュウピピー! (今なら言える! 光の軌跡のリメイクだ!)」

プリン「プリリプリ!? プー… プリリプ… (初代もバトナージも追い越して!? えっと… じゃあポケナガリメイク…!)」


ルカリオ『次回、『これで1回目の分』。』


ピカチュウ「ピカチューチュー、ピカピカ? (ミュウと波導の勇者ルカリオリメイク、期待してみる?)」

ルカリオ『話題的には水の都が妥当ではないのか…?』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四十九話 これで1回目の分

島クリエイト解放できました。
とりあえず評価が最大になるまで軽く道だけ作ってます。

それにしてもあつ森、無限増殖に神隠し引っ越しに風船バグと対応が早いですね。とび森の時代ではこんなに早かった覚えないです。

まるで環境がポンポン変わるポケモン剣盾ランクバトルみたいだ…


平原に建つには不自然過ぎる黒い迷路。青白い光と黒い壁のそれを敢えて表現するのならば、近未来という言葉が一番似合うだろうか。

 

 

「…パックマンが落ち着かないな。」

 

「ここと似たステージを知っている。パックマンと所縁のある場所なのかもしれないな。」

 

 

パックマンが露骨に動揺している。クッパと対峙したクッパ城そっくりの城砦といい、ここの世界には何か拘りのようなものが感じられる。

 

ただ、ここを創造した者はキーラ。

故郷の世界に意図的に似せているのか、こうでなくてはならない理由があるのか。いずれにしても本人達の神経を逆撫でしているようにしか感じられない。

 

 

「迷路になっているのか…? 移動できる魔法…か?」

 

「コレクト! 適当に踏んだら迷っちゃったぜ!」

 

「右に同じく!」

 

「以下同文!」

 

「おい、ソード、ピット、リンク。」

 

「アホ天使がなんかやらかしてるっス。」

 

 

ジェネレーションギャップを受けるシモンを傍目に壁を隔ててソードの声がする。興味を第一目標として脊髄反射で行動するソードはどのワープポイントを通ったか記憶しておらず、案の定迷ったようだ。更に恐ろしいことに追従する能無しがまだ二人いたことだ。

フォックスも呆れるしかない。リトル・マックは先程の恨みも乗っている。

 

 

「どこのポイントにワープするかは決まっているだろう。ワープを繰り返して記録していけば自在に動ける。」

 

「ワープだから迷路全体の位置どりを把握するのは難しいそうだけど… ここに誰かいると見落としやすい。気をつけた方がいいね。」

 

「ま、俺だったら一人ぐらいはここに置く。ただ、どこへ繋がるかわからない以上慎重になり過ぎて損はないな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数人が適当に振り分けられ、むらびと、リュカ、ロックマンの年少組と彼らに追いてきた形のしずえとサムス、ピカチュウのコンビ。ピチューもいる。そこにオリマーとリュウが加わり、一つのグループとして動いていた。

 

 

「あ、外が見える!」

 

「となるとここと先程のポイントが繋がり…」

 

「うおっと、合流できた!」

 

 

別のポイントから移動してきた迷子の三人が合流する。一応三人でかたまって動くという頭脳はあったようだ。

 

 

「全く… みんな揃って迷子とか困ったちゃんだな!」

 

「全くな!」

 

「君たちは…!」

 

 

オリマーの握られた拳がブルブルと震える。迷った、と自分で言っていたのに。

 

 

「あ、みんなちょっと来て!」

 

 

先に外の景色を見に行ったロックマンから声がかかり、オリマーの怒りも霧散していく。

暗い迷宮から抜け出し、眩しさすら感じる外は橙色の土管と海辺へ向かう道と分岐があった。

 

 

「更に分かれ道… よし、今度こそ棒切れで…!」

 

「…いや、周囲のスピリットを倒して道を確保しよう。数人で別れ、土管の先に進む者、海辺に行く者、ここに残る者…」

 

「じゃあ、リュカとロックマンと僕で… 土管の先に行こう!」

 

 

木の枝の先は土管の方に倒れた。子供のメンバーを誘うむらびとをサムスは考えながら見つめる。その顔にピカチュウが気づいた。

 

 

「ピーカッチュウ!」

 

「…! ああ、任せた。」

 

「ピカー!」

 

 

サムスの肩から飛び降り、進む子供達の背を追っていく。キョロキョロと辺りを見ていたピチューも少し遅れて彼らと共にする。

 

 

「私は残ります。情報の整理は得意なんですよー!」

 

「俺はいこう。体が鈍っていないか確かめたい。」

 

「では私としずえで残ろう。留めても聞かない三人の手綱を上手く握っておいてくれ。」

 

「…厄介ごとを押し付けられた感覚が…」

 

 

自分から志願したのに気持ちが沈むリュウと、はあ、と大きなため息を吐いて眉間に大きなシワを作るオリマー。当の本人達はよろしくー! と、呑気に言い放ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

橙の土管の先はまるで夢の中のような世界だった。桃色の雲は見た目よりずっとしっかりしていた。

そこに刹那、稲光が見えたかと思うと、戻ってきたのは二匹のねずみポケモン。辺りに散らばった六つのボディはすぐに金色の液体となって溶けていった。

 

 

「「ピー!」」

 

「ナイスゥ!」

 

 

むらびとがグッとサムズアップ。一人のファイターを守るかのように塞いでいたスピリットが解放され、ファイター戦に挑む権利を得た。

 

 

「じゃあ、あっちに行ってるロックマンを待って…」

 

「ご、ごめん、そのことなんだけどさ…」

 

 

リュカが口を開く。一回言い切って視線が集まったところで口を開く。

 

 

「ぼく… 一人で行くよ。そうしないと本当の意味で助けたって気がしないんだ「やだ!」

 

 

話の途中で拒否した。言われた本人はキョトンとして目を丸くしている。

 

 

「助けた気がしないって、それはネスに関係ないじゃん! 別にいいじゃん、頼っても。タダでいいからさ!」

 

「あっ…」

 

 

亜空間で戦った時も元の世界での時も、一人じゃ動くことも出来なかっただろう。

彼はあの大きな像から逃げていた際、一人で助けに来てくれたから。だからこそ自分も…と思ったのだが。

 

 

「………」

 

 

でも、リュカは知っている。一人で行く、ついてくるなと自分に言って、二度と戻らなかった兄を。それを知っていて、残されてしまった気持ちを知って、その提案を蹴ることは出来なかった。

 

 

「お願い…していい?」

 

「当然! どうせならロックマン戻る前に助けちゃおうよ! ピカチュウ、ピチュー、留守番よろしく!」

 

「ピカチュー!」

 

 

左右に揺れる短い手に見送られて、彼らは夢の世界へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このステージは先程居た周囲の世界によく似ている。桃色の雲が足場の幻想世界。夢の中の国をベースに『終点』化されたそこは『マジカント』と呼ばれていた。ネスの、自分だけの世界らしいが、その時の場所とは何故か外観が違うらしい。

 

 

「あ、ネス!」

 

 

むらびとが、支配下に置かれているネスを視認した。彼は亜空軍との戦いを人伝にしか知らない。まだ弱かった頃の自分を知らない。

戦う勇気もなかった時、一度彼を見捨てて逃げた事実を知ったらどう反応するのだろうか。

 

 

でも、そんなことはどうでもよかった。

 

 

『…』

 

「…行くよ。」

 

「わっ!」

 

 

同じ『PKファイヤー』がぶつかり合う。いち早く動いたリュカにむらびとは驚いた。リュカは好戦的な性格ではないと認識していたからだ。

 

 

「(あ、でもプリンも心境の変化?みたいなことあったし…)」

 

 

パチンコを撃って回避を誘発させながら、そんなことを考えていた。

でも難しく考えるものではない。前に助けられたから助ける。リュカの中ではそれだけだった。結局助けられた数は二度になってしまったし。だからこれで1回目の分。

 

 

「や!」

 

『…っ』

 

 

PSIの力を込めた蹴り。その威力は見た目以上に強力なものだ。むらびとの攻撃で隙が出来たネスに当たり、顔が歪んだ。

 

 

『…!』

 

「…ぅっ!」

 

 

そんな不安定な体勢でも、ココロの力であるPSIには関係ない。手から放たれたPSIがリュカを弾き飛ばす。

 

 

「今度はこっちだ!」

 

 

『きのぼう』を握り、相手に対して振りかぶる。やっていることだけを聞けばまるでただの子供の遊びのようだ。だが、

 

 

「ふべっ!?」

 

 

ヨーヨーがおでこにぶつかり、先に攻撃を受けた。いかんせん目の近くだったため、反射的に目を閉じてしまう。

 

 

『…、……!』

 

「…ぁっ…!」

 

 

『PKフラッシュ』の眩しい光が衝撃と共に襲い掛かった。視界が潰され、吹き飛ばされた。

 

 

「目が…眩しい…!」

 

 

気配で敵の位置を予測するなんて彼にはできない。むらびとはなんの力も持たない普通の子供なのだから。

しかし、相手は違う。今は意思を持たないとはいえ、ネスは力を持つ子供。この大きな隙を見逃す筈がないのだ。

 

 

『…!』

 

 

駆け出すネス。目が眩んでいるむらびとは冷静になれず、接近に気づけていない。このままでは崖から落とされる。今の状態じゃ復帰も難しい。

 

 

「『PKファイヤー』!」

 

『…!』

 

 

しかし、隣に飛ばされていたリュカが彼を阻む。教わった仲間の性格が反映されたのか、このPSIは爆発力が高く、相手を大きく吹き飛ばす。

 

 

「…あれ? リュカ?」

 

「大丈夫? 目、見える?」

 

 

薄っすらと目を開けるが、白に近い薄い桃色はまだ眩しく感じた。ぼんやり見える金髪と黄と赤でなんとなくリュカの位置がわかるだけだった。わっ、と声を上げて目を閉じる。

 

 

「(まだ駄目…かな?)」

 

 

その行動で答えは知れた。手を出させないように戦うしかない。

 

 

「っ! とおっ!」

 

『…!?』

 

 

左手の拳にヒットしたものの、同時に出したPSIの力を無理やり当てる。互いに近距離での攻撃で互いに仰反る。

そんな中、無理やり放った至近距離の『PKフリーズ』が爆発する。

 

弾足の遅い攻撃なのだが、避けられないほど近くで攻撃すれば問題はない。氷塊に閉じ込められた相手が外へ飛んでいく。

無意識に目線が相手を追って空へ動いた。

 

 

「…ううっ… (やっと目が…)」

 

 

ようやく視界が回復したむらびと。リュカの姿を見て、反射的に彼が見ているものと同じものを見る。

飛んでいった氷が飛んでいって、赤い光を生んだ。





ピチュー「ピチュピチュピッチュ!」

リュカ「もくもくくもー…」

むらびと「おおおー! 高い高い高い!」

ロックマン「綿飴みたいだー!」


ロックマン「次回!『さらに先の海』!」


ピカチュウ「ピーカー…!」

リュカ「ひえぇ… あ、遊んでてごめんなさい…!」

ロックマン「真っ黒になる…!」

むらびと「かみなりぐもだー!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五十話 さらに先の海


五十話突破! そしてタイトルセンスがこいの回!

島の評価が四で停滞中… 物を置くスペースが足りてないです…
最初に調子に乗って限界まで住人を呼んだのが完全に響いている…


「う〜ん…」

 

 

自分を覗き込む誰かの気配を感じて、ネスは目を覚ます。日光の影になっていつもより暗い色に見える友達の姿を視認した。

 

 

「あっ… 大丈夫?」

 

「大丈夫? ふあぁ… うん。」

 

「ま、最初はよくわかんないよね。」

 

 

自分を心配するリュカの言葉に少し怪訝に思ったが、欠伸をしている内に意識を飛ばす前の出来事を思い出して返事をする。むらびとは自身がそうであった時のことを思い出していた。

 

 

「ちょっとぐらい待っててくれてもよかったのに…」

 

「あー… ごめん…」

 

 

先に行かれたロックマンの機嫌は斜めだ。結局こっちの方が遅かった。

 

 

「二人が助けてくれたんだね! ありがとう!」

 

「い、いや、ぼくは…」

 

「お望みならば代金を頂戴するよ?」

 

「う〜ん… いいかな。」

 

 

いつものむらびとの対応に軽く流すネス。遊びの中でも金銭関係に考えるのはよく見る光景だ。

 

 

「ネスは二人が助けたし後は…」

 

「ジュニアはクッパに任せようよ。というか多分『お前たちに任せられるかー!』とか言って話聞いてくれないよ。」

 

「そうだよね… お父さんだもん…」

 

「あれ、ってことは後は…」

 

 

四人の頭の中で緑服の少年の後ろ姿が描かれる。

 

彼らの中で唯一、剣という武器を持って戦う風の勇者。大層な肩書きを背負っていても、彼らの中ではただの仲のいい友達でしかなかった。こんな世界のどこに居るのか─

 

 

「ピィカピカー!」

 

 

四人を呼ぶ声がする。ピカチュウの声だ。その側でピチューが下を見ている。

 

 

「ピカチュウどうしたの?」

 

「ピカチュー、ピッカァ!」

 

「あっ…!」

 

 

ネスが声をかけると、雲の下を指して何かを訴えた。そちらを向くと今まで探索してきた世界が広がっていた。

 

 

「こんなに高いところに来たんだ…」

 

 

むらびとが思わず呟く。今いる空にもまだスピリットはいて、地上にもまだ見たことない場所があった。この世界はまだ広い。

 

 

「…あそこさっきの迷路じゃない?」

 

「えっ… 本当だ。こうなってたんだ…」

 

 

ロックマンの言葉に今まで迷っていた迷宮を見つけた。壁が厚く、思っているより広くなかった。

 

 

「よくわかんないけどあそこのこと教えれば…!」

 

「ここからは行けないっぽいし戻ろうか!」

 

 

残っているだろうサムス達に迷路の構成を教えれば、大きい情報となる。

救助したばかりのネスにもなんとなくわかったらしく、合流を急ぐ。

 

 

「ピチュー」

 

「(…あれ?)」

 

 

むらびとの目が迷宮のさらに先の海へ動く。

海の向こうには小さな島が存在していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ウーフーアイランド』の海の岩場。その狭く不安定な岩場が現在のリュウの戦場だった。

 

いつもより薄い青と水色の防寒具を着た二人、アイスクライマーのボディが小さな氷を木槌で飛ばす。ジャンプして避け、二人ごと跳び蹴りで海に落とす。

 

 

「(見た目よりハンマーの威力は大きい。更に言えば二対一。視界から外さないように気をつけなければ。)」

 

 

しばらくこの世界で戦ってきて、大乱闘はストリートファイト以上になんでもありだとわかった。

確かにリュウも現実離れした相手と戦ったことはあるが、犬と鴨で一人のファイターだったり、てもちに指示するポケモントレーナーだったり。そもそも目の前の相手は二人で一人のファイターだ。フィールド一つとっても平凡なものから広いもの、逆に戦いづらいものもあった。

 

確かに何もかもが予想もつかないような戦いだったが、まさかこんなことに巻き込まれるとは。

 

 

『…!!』

 

「っ!(しかし言っても仕方ないことだ。今は勝つのみ!)」

 

 

海から飛び出てくる二人に対して目を逸らさない。相手が戦闘に不向きだろうが、自分の意思で戦ってなかろうが、格闘家として加減する方が失礼に値する。

 

攻撃が先になったポポの姿の方のハンマーがこちらへ届く前に、二人まとめて体躯を蹴って吹き飛ばす。

スピリットの方は水に慣れている様子だったが、生憎宿ったのはアイスクライマーのボディ。

一度、海に入ってしまえば過剰過ぎる水分が着込んだ防寒具を襲う。たっぷりと水分を含んだ服は非常に重く、登山のためにそれなりに鍛えられた二人の体でも大きなハンデを背負うこととなったのだ。

 

 

『…ッ!』

 

 

もう一つの岩場まで飛ばされた二人は飛び込んでくるリュウを目撃した。先の足場よりは広いものの、狭い場所には違いない。だがやらないよりはマシということで岩場に登って出来る限り距離をとる。高さの違う岩で構成されている足場で高さをとって迎え討たんとする。

 

 

「はっ!」

 

『…!』

 

 

跳んで距離を詰めるリュウに向けて小さな吹雪を放つ『ブリザード』を撃つ。

 

 

「…!」

 

 

咄嗟に腕で視界を守る。流石に実体がないものを受け流すことはできない。これは当たったのだが、攻撃の隙はできてしまうのだ。

 

 

「せいやッ!」

 

『…ッ!?』

 

 

相手の付近に落ちながら地面目掛けて殴るかのように拳が振るわれた。

 

 

『…〜ッ!』

 

 

ここから勝てる道はなかった。ならばせめて一矢報いてやろう。反射的に手に握られた木槌が動く。

 

 

「はぁっ!」

 

『…ッ!!』

 

 

踏み込んで動いた足が、ボディの体に叩き込まれ─

 

 

「!」

 

 

同時にハンマーが空を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前の何かが目を覚ます。長い首ごと頭が動いて周囲を見る。リュウの知識からは海に住んでいた恐竜に形が近いポケモンだろうか、といった曖昧なことしかわからなかった。

 

 

「…大丈夫か?」

 

『クゥ…? クゥー…』

 

 

いざ首を上げるととても大きな生き物であるとわかった。2メートル半くらいはあるだろうか。その頭が上下して肯定の意を示す。

 

 

「次は真っ当な形で戦いたいものだ。最後まで諦めない根性は見事なものだった。」

 

 

首をくねらせて目を逸らす。照れているのか正面を見られなかった。

二手に別れた彼らは範囲を決めてそこにいるスピリットの救出に絞って動いている。こうでもないと言われていないことを言い訳にして突貫する者たちがいるからだ。

まだ奥に誰か囚われている者がいる。更なる乱闘に挑もうとした時、大きく張りのある声がした。

 

 

「みなさーん! ここにありましたー! 海岸にいきましょう!」

 

「むっ?」

 

 

しずえの声だった。彼女は待機して情報の整理に回った筈だったが、何かあったのだろうか。疑問に感じてリュウも海岸へ向かうことにした。

 

 

 

 

海岸に着くと、既にこの近辺を探索していたファイターは全員集まっていた。異質なのは残った筈のしずえだけだ。

 

 

「合流をかけてどうしたんだ。しずえは別れ道で残った筈だが。」

 

「んー、あーそれは」

 

「えーい!」

 

「「えええええええ!?」」

 

 

理由を問い、リンクが答えようとすると、しずえの可愛らしい掛け声と共に大きな波音が耳に響いた。どこからともなく出てきた立派なモーターボートにソードとピットが驚きの声を上げる。

 

 

「ええ、あ、あれ、あんなデカいの、どこにしまって」

 

「ふふふー。内緒ですー!」

 

「そんなゴムタイなー!」

 

 

謎の収納術に困惑する二人。何かを企むようなリアクションのしずえにソードは崩れ落ちた。

 

 

「…さっきはボートを探していたのか?」

 

「ああ、ここにあるかは賭けだったが…」

 

「俺がさ、海になんか見つけてさ、なんだろうって思ってシーカーストーンでズームして見てみたらなんとびっくり、島じゃねえか!って!」

 

「…そういうことなんだ。」

 

 

ハイテンションで身振り手振り、シーカーストーンも取り出して説明するリンク。大体のことは理解できた。

 

 

「しかし、手漕ぎにしては重そうだな。エンジンがあるのか。運転はどうするか…」

 

「はーい! 私少しなら運転できますよー! かっぺいさんの運転をたまに見せてもらってました!」

 

「そうか。ならしずえさんは確定だな。」

 

 

それならばリュウがいた場所に行くために人の力を借りることはなかったはずだが…

少しと言っているのだ。実際に運転したことはないのでは? しかし、この人手の少ない時にああこう言ってはいられない。こちらも自信はないがオリマーもヘルプに行くしかないだろう。

 

 

「私も行こう。後は…」

 

「「「はい! はい! はーい!」」」

 

「だろうと思った…」

 

 

一斉に声を上げる。予想通りすぎて涙がでそうだった。リュウも呆れている。

全員残すのもそれはそれで心配だから連れて行くつもりではあった。それにしてもピットはここまで考えなしだったか? 二人のノリが移ったのか、上司がいないからなのか。

そんな彼に残酷な現実を突きつける。

 

 

「なんやかんや適応力があるリンクと… ソードだな。」

 

「「ウィナァァァアアア!」」

 

「くっそおぉぉー!!」

 

 

一瞬で決まる勝者と敗者。天使、崩れる。

オリマーがリュウにこっそりと声をかけた。

 

 

「発見者のリンクはともかく、一人は頼んだ。正直どっちでもよかった。」

 

「…そうか。」

 

 

最早短く答えるしかなかった。その島に何人いるかわからない以上乗れるだけ乗る訳にもいかず、ここをほったらかしにする訳にもいかない。ピットを押しつけられる形になってもだ。

とりあえず待機しているサムスに伝えるか、と考える。

 

 

「さてと! よっしゃー! 行くぜー!」

 

「ああ!」

「イエス!」

「はい!」

 

 

リンクの掛け声に答える三人。後から思えばそこに何かがいることを薄々感じ取っていたのかもしれない。





リンク「ラ・プ・ラ・ス・に、のっ・て〜♪」

しずえ「…? これはボートですよ?」

リンク「えーとな、ラプラスって名前のボートなんだよ、今つけた!」

ソード「作者がラプラスの存在忘れてオレたちの体をスピリットが借りるって設定にしちゃったからな!」

オリマー「独自設定の矛盾をぽっと出のボートで救い上げるとは…」


オリマー「次回、『ブッ飛ばす』!」


本当に恥を晒しました。すみませんでした。

ソード「うわ、地の文が出てきた!?」

オリマー「次回予告は謝罪の場ではないのだが…」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五十一話 ブッ飛ばす


正直、半オリキャラだから自由にしすぎたとは思っている。
残る一人は常識人なので安心してください。えっ? ソードに比べれば大体誰だって常識人? せやな。


…ちなみに前回の前書きにFF7リメイクの話がなかったのは作者がPS4持っていない敗北者だからです。決して忘れてたわけでは…忘れてました…
KH3とかもやってみたいですし買いたい欲はあります。いや、PS2はあるんだしいっそのことオリジナル探すか…?


後申し訳程度のラプラス。


「うおおぉ…! 海だ! シーだ! 海水浴だ! ヒャッホオオオ!」

 

「きゃあああ!」

 

「馬鹿! ソード跳ねるな、揺れる揺れる!」

 

 

海のど真ん中で好奇心のままに動くソードは止まらない。つい口調が悪くなるのも仕方ない。こんなところで水没してたまるか。早くもソードを連れてきたことを後悔し始めていた。

 

 

「うおっと、ヒュー!」

 

 

リンクはリンクでこの状況を楽しんでいる。ひっくり返ったってこの性格は治らないだろう。転覆なだけに。

 

 

「なんとか、ならない、か!?」

 

「ここは波がひくのを待つんだよー!」

 

 

 

─数分後。

変わらない光景に飽きたのか嘘のように大人しくなるソード。登山でもしていた方が自分で動く分、本人には良かったのかもしれない。

 

 

「う〜… まだ〜…?」

 

「君が暴れてたせいで動けなかったんだ。全く…」

 

 

あまりの退屈さに顎を淵に乗せてとろけていく。何かが来なければ一生そのままだったかもしれない。ソードの視界が何かを捉えた。

 

 

「ん〜? ワッツ?」

 

 

何かがこちらへ向かって泳いでくる。とろけていた顔は一瞬で元の形に戻った。

 

 

「エブリワン! 何かがカモン! こっちにきてるよ!」

 

「…! それが何かわかるか?」

 

「なんか… どっかで見たことある…」

 

 

近づいてくる水色の体をした誰か。

 

 

「あー! ラプラスだこれ! レッドの図鑑で見たことある!」

 

『クゥ!』

 

 

その正体は、半透明ののりものポケモン ラプラスだった。

 

 

「ポケモンだったのか。どこから来たんだー?」

 

「あ〜… 実際に乗りたかった…」

 

 

撫でているつもりのリンク。肉体を持たない今の状況では実際に触れもしない。涙を流して現状を嘆く。

 

 

「オリマー! 連れてっちゃダメ?」

 

「………はあ… 大人しくしてたら構わない。」

 

 

条件つきの許可にソードは一気に破顔する。

 

 

「よっしゃあ!」

 

「だから、跳ねるな!」

 

「きゃあ!」

 

「アッハッハッハ!」

 

『クゥー!』

 

 

 

 

ソードの静止が多くを占めた船旅も終わり、リンクが発見した島郡にたどり着く。適当な砂浜にボートをつけ、近くの木に縄を繋いでボートを固定した。

 

 

「ヒュー。チラッと見るよりずっと森森してんなー!」

 

「島と島は… 繋がっている…のか?」

 

 

まるで通ってくださいと言わんばかりに砂浜が足場のようにつながっている。自然物のようでいてそうではない。

 

 

「わあー… 誰もいない無人島、いいですね! 休暇が取れたら遊びに行きましょうかね!」

 

「ラプラスー、ボートのガーディアン、頼んだよ!」

 

『クゥー、クゥー!』

 

 

長い首を撫でる。勿論実際には触れられないので悪魔で、つもり、だ。

 

 

「よし、っと。さてと、どうしようかな…」

 

 

確かに好奇心のままに動くソードだが、決して考えなしではなかった。

既に彼女の気配は感じ取れている。

 

 

「しずえさん! そっちの子お願いできるかい?」

 

「こちらの方ですか? お任せください!」

 

 

近くにいたしずえに他の戦いを任せて人避けをした。オリマーはリンクの方を向いている。こっちのことには気づいていない。

 

 

「ふう… ソーリー…」

 

 

せめて彼女の爆発を自分だけで抑えられますように。そう祈りながら小声で謝る。

嫌がっていてもどうせもう手遅れ。自分の余分な思考も彼女─ガンナも彼女のようにブッ飛ばす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハアアァァ〜…」

 

 

わざとらしく感じる程に大きなため息を吐く。今、この状況でガンナだけは戦いたくなかった。やること為すこと破茶滅茶な雷撃のような少女。

 

 

『…ッ!!』

 

「だからベリーバイオレンスゥ!」

 

 

右手に装着されたアームキャノンが、ソードのいた位置に爆発と共に叩きつけられる。『コトブキランド』の土が吹き上がり、思わず、ヒェー、と声が零れた。性格言動と、どこを取っても一般的な女性とほど遠いガンナの力押しの戦法はキーラの支配と相性がいいらしい。

 

 

「だからワッツ? って感じだけど…(でもせめて今の半分でもクイットだったらグットなんだよなぁ…)」

 

 

今ぼやいたら後で何か仕返しされる気がして心の中でぼやくも、そもそもソード自身も問題児だ。彼女が正気だったらそこも含めて倍返しにされそうだ。

 

 

「んーあー、要は後でボコボコにするのやめてね! ってこと! 負けちゃったそっちがバッドなんだから、なッ!」

 

 

体を回転させ、小さな竜巻を生み出す。

迎え撃つガンナは両腕を交差させて風に耐える。アームキャノンは中々の重量を持ち、竜巻を耐えきるのに大きな助っ人になった。

 

 

『…!』

 

「うおおぉぉ!」

 

 

竜巻に隠れて接近したソード。両手で握った剣を振り下ろす。

 

 

「うおっ、っ!」

 

『…』

 

 

キャノン部分に刃がぶつかり、音が響き渡る。

ガンナ製作のアームキャノンは様々な機構が仕込まれ、その分重量がかさむ。それを振り回すガンナが非力なわけがなく。

 

 

「んべぇっ!?」

 

 

武器を封じられたソードの右頬に手加減なしのストレートパンチが叩き込まれる。大きくぐらついたソードの守備はガタガタだ。

 

 

『…ぁぁっ!!』

 

「うぇっ…!」

 

 

先の左手の拳よりももっと重い右のパンチが脇腹に放たれた。タイミングよく爆発させて火力も上げる。

 

 

「いっ…ぐ… ぺっぺっ!」

 

 

草地を通り越して砂場にまで飛ばされる。口の中に入った砂を吐き捨て、ふらりと立ち上がった。空に輝く太陽とは対照的にガンナの視線は冷たすぎる。

 

 

『…』

 

 

キャノンをおろしたガンナがざっ、ざっと芝を踏みつけて近づいてくる。

 

 

「へっへっへっ…」

 

 

でもそれは。

 

 

「詰めがスウィートだよ!」

 

 

いつもとはほど遠い。

 

 

『…!?』

 

 

低空を前転させて斬りつける『変則急襲斬り』。あらゆる剣術の形に収まらないこの技の効果は大きかった。いきなりの反撃に、左の腕で防ぐしかなかった。下ろしたアームで防ぐには時間が足りない。

 

 

『…ッ!!』

 

 

炎を吹き上げながらのアッパーが体を捻らせてかわされる。逆に『カウンター』で斬り付けられた。

 

 

「ガンナはね、ヨウシャってワードと真逆にあるんだよ! な〜んでちょっとずつ近寄ってるんだい!」

 

『…ーッ!』

 

 

両手を上げてあーだこーだ言う姿は、子供が駄々をこねるかような幼稚な抗議だった。

 

その姿に反応したのか、ガンナが動きだす。今度は力任せの格闘ではなくキャノンから放たれるエネルギー弾だ。

 

 

「…ハッ!」

 

 

再びの竜巻。撃たれたエネルギー弾と打ち消しあった。相手の得物の得意分野では押し切るのは難しい。竜巻を生むのに予備動作が多く、多用すればいずれ読まれる。ならば先程のように接近戦に持ち込む。

 

 

『…!』

 

「うおとっ、と…」

 

 

近づこうとするソードを認識し、数を重視した弾幕に切り替える。『ガトリングショット』の弾を剣を振るって弾いた。細かな火花が飛ぶ。

 

 

「つぁっ…! まだまだァ!」

 

 

だが、完全には防ぐことは出来なかった。数発の弾がソードの頬を掠め、服を切り裂く。

とにかく止まっていては一瞬で蜂の巣だ。わざと周るように走りだす。

 

 

『…ッ!』

 

 

少しは当たっているとはいえ、決定打にはなり得ない。風のように飄々な男に照準を合わせるのは至難の業だ。

 

 

「とにかくっ…!」

 

『…っ』

 

「それ、ストップ!」

 

『…っ!』

 

 

手に持つ剣で大地を抉る。掘り起こし、土片をガンナの瞳目掛けてぶちまけた。

反射的に目を閉じてしまい、砲撃の手が緩んだ。

 

 

「恨みっこは〜…」

 

 

肩に乗せた剣の柄に左手が添えられる。

 

 

「ナッシングぅ!」

 

 

上半身ごと叩きつけられた刃が重い一撃となって雷撃をブッ飛ばす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恐る恐る、爆発物を扱うかのように祈りながら金の台座に手を触れる。

 

 

「…んっ …あ゛…?」

 

「え…えっと…」

 

 

解放した後のことは全く考えていなかった。言葉に詰まり、思考が停止し、沈黙が二人の間に流れる。

 

 

「あー、えーと、気分はドウデスカー…?」

 

 

抑揚のない、棒読みでなんとか返す。正面から見られず、両手の人差し指どうしでつつき合いながら目を逸らす。

 

 

「……………ハア?」

 

 

あ、だめだこれ。逸らした視線を元に戻すと、明らかに目尻が吊り上がっている。悪鬼の生まれ変わりと言われても信じてしまう程の悪魔がそこにいた。

 

 

「ウワワワワぶへっ!?」

 

「すこぶる最悪に決まってんだろ、エセ外国人があ…!!」

 

 

左手で顔を掴まれ、体全体が硬直する。ガンナの指の間から、怒気を放つ顔が見え、無意識のうちに両手を上げた。これは女性がやっていい顔じゃない。

 

 

「ちっ… とりあえず好き勝手やりやがったあの羽野郎は叩き潰す! 働けソード!」

 

「イ…イェース…」

 

 

顔を掴まれたまま連行されていく。機嫌は最悪だとはわかっていたからこそ、できるだけ損なわないようにと一人でやり遂げたと言うのに。

 

 

「こ、これが焼け石にウォーター… ヘルプ、ブロウ…」

 

「あー、ブロウも捕まってんのか? どっちでもいいか、羽野郎のついでにブッ飛ばしてやる!」

 

 

カチャっとキャノンを握りこむ。左手には仲間の剣士。探しだすのは格闘家。

 

ソードの顔面を片手で掴んだ状態を見たリンクが喉を痛めるほどに大きな悲鳴を上げたのは余談だ。彼曰く、「一瞬ライネルの亡霊か何かがソードを喰おうとしてるのかと本気で思った」らしい。





ソード「ガンナー、ガンナー、その喋り方どうにかならないの? まるでストームみたいだよ?」

ガンナ「おまえに言われたかねぇわ。つか、てめえだってヘンテコに英語混ぜてんじゃねえか」

ソード「これは! これは… ワイ? どうしてこんな喋り方してるんだろ?」

ガンナ「私が知ったことか! …つーても私だって別に理由とかねえけど…」


ガンナ「次回は『“また”なんだよ』だ!」


ソード「でもさ、せめてそこ言う時はもっと柔らかくいこうよー、まるでストームみたいだよ?」

ガンナ「おまえに言われたかねぇわ。つか、てめえだってヘンテコに英語混ぜてんじゃねえか」

ソード「これは! これは… ワイ? どうしてこんな喋り方してるんだろ?」

リンク「このやりとり、後二時間は続いたらしいぜ?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五十二話 “また”なんだよ

島評価がようやく星5になりました。鈴蘭はもっと欲しい。
マイデザインにもようやく手をつけてます。レンガブロックとかハテナブロックとかゼル伝のマークとか… 需要あります?


後ガンナちゃんの設定おいときますねー
・射撃Miiファイター
名前はガンナ。姿技はデフォルト。口が悪い上に怖いもの知らず。短気だが、中途半端は嫌い。機械に詳しく、自分の武器の制作や、ジェット機の運転も出来る。


「ふ〜ん… おまえらもとっ捕まってた訳なのか。」

 

「ああ、だからあまり深刻に考える必要はないぞ。それと… そろそろ離さないか。」

 

「か…顔がぁ〜…」

 

「なんで、俺まで…」

 

 

左手はソードの顔面を鷲掴みにし、右は肩に担ぐ形でリンクの首が締められている。視界は上下逆のまま、首から上がガンナの肩に寄りかかる形で担がれていて、体が進行方向と逆の後方を向いている。要は非常にきつい体勢で連行されているのだ。

 

 

「人の顔みるなり叫びだしてさ、おもしれぇこと言う口だなって思ったんだよ。あっ、こいつ喧嘩売ってるなって思ったねぇー。」

 

「はあ… そうか… もう十分だから離してやってくれ。」

 

「んー。まいいか、同じこと言うばかりで飽きるし。」

 

 

そういった途端、乱暴に二人を放り投げた。砂浜の砂が巻き上がる。

 

 

「「ぐべっ!?」」

 

「あわわ、ソードさん、リンクさん、大丈夫ですか?」

 

「オレのフェイス、指の形にへこんでないよねっ!?」

 

「絶対首、長くなった〜………」

 

 

それぞれ顔、首と心配な部位を触りまくる。特に何もなさそうだが、跡ぐらいは残っているかもしれない。

 

 

「とりあえず… ここは森…なのか…? 周りを見るには林の大きさにすら達していないように感じるが…」

 

「入るしかねえだろ。」

 

 

 

 

一応の道を通ると広い広い丘に出てきた。周りを囲うようにして生えている木もここは浸食しておらず、きりたった崖や、どこから流れているのかもわからない川など謎が多い。

地形を頭に入れるために、ふと周りを見渡すと、さっきまで生えていたはずの木々が見当たらない。いつのまにか違う場所に移動してしまったらしい。

 

だがそれよりも、ファイター達の目を引いたのは一体のドラゴンだった。赤と黒の鱗を纏い、大きな翼を持つ龍。今この世界に生身でいるのはファイターとキーラのみのはず。異質な存在にオリマーの警戒度は急上昇した。

 

 

「あれは一体…」

 

「お、恐ろしいです…」

 

「ああ、味方には見えない。だから…」

 

「叩きのめせばいいんだなっ!」

 

「ガンナ!」

 

 

キャノンを構える。彼女の短絡的な思考にそろそろ頭痛がしてきた。

 

 

「違う! まず気づかれないように気をつけながら他のスピリットを助けていくんだ。ファイターの誰かもあそこにいるみたいだからな。」

 

「はあ? 結局どっちもぶっ潰すんだからどっちが先でも一緒だろ? 」

 

 

東側には多くのスピリットがいる。ドラゴンのいる西側も別にいない訳ではないのだが、丘の天辺には誰かファイターがいることも確認できた。見るからにあのドラゴンは強敵だ。戦力は多い方がいい。

 

 

「…あー、やっぱり戦うつもりではあったんだ…」

 

「たりめーだろ、一から百までぶっ潰す。」

 

「んっ? それならあのドラゴン後にしても良くないか?」

 

 

全てと戦うというのならばリンクの言う通りどちらが先でも問題はないのだ。

 

 

「私は好物を先に食べる派なんだよ。」

 

「ソード、お守りを頼んだ。」

 

「イエッサー!」

 

「あ、おいこら! ソードてめえ!」

 

「はーい、オレと一緒にスマッシュしようぜ〜」

 

「こんのエセ外国人があぁぁ…!!」

 

 

子供じみた理由であった。これで通る訳がない。

ガンナは羽交い締めにされたままに近くの戦いに連れてかれていく。連行返しだ。

 

 

「ふう… 問題児が増えた… さて、他は三人で…」

 

「あー、そのことなんだけど」

 

「なんだ? リンク。」

 

「俺あっちいくから後よろしく!」

 

「あっち?」

 

 

リンクが指を指した先は崖の上だった。勿論登っていく道もあるのだが、他のスピリットが道を塞ぐように待ち構えている。

 

 

「それは構わないが、道が塞がれていて…」

 

「あー大丈夫。登るから」

 

「ですが、その登る道が塞がれているので…」

 

「だから道じゃなくて崖を。」

 

「えっ?」「はい?」

 

 

そう言うと崖の岩肌に手をかけて登り始めた。

 

 

「えっ〜〜〜!?」

 

「ちょ、まっリンク!?」

 

「危ないですよ〜!」

 

「だいじょぶ! 経験はあるし、もう待たせていられないしね!」

 

「待たせていられない…?」

 

 

もう静止は届かない。対話しながらも登り続け、既に中間ぐらいに差し掛かっている。もう止められないだろう。そう薄々感じながら、思わず反復した言葉の真意を図っていた。待たせていられないというのはファイターのことなのか。

 

 

 

 

「よっと…」

 

 

手をかけて登りきった。辺りは少しぼこぼこした大地であの謎の龍の姿もある。だが、今はそんなことどうでもいい。

 

 

「さてと」

 

 

普通なら橋の先に待ち構える形だったろう位置にいるスピリットを見て、そして奥にいるファイターに目をやる。もう何者なのか気がついている。ファイターも。スピリットも。

 

 

「…マジゴメン! ちょ〜っとだけ待っててくれ!」

 

 

ファイターに向けて手を合わせて謝罪しながらも、足はスピリットの方へ向かっている。

体も向き直り、手を伸ばせば彼女に届くだろうという場所で、一回足を止め、服のシワを伸ばし髪を留める位置がズレていないか確認する。

 

 

「よしっ、今…参ります。」

 

 

手は真っ直ぐそれに触れる。恐らくこの想いは百年前と何も変わっていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

記憶のない自分にとって、始まりというのはそのまま『始まりの塔』を指す。だからこんな名前がついているのか、はたまた全くの偶然なのかわからない。

 

 

「邪魔だァ!」

 

 

ピンク色のインクリングのボディを、『キルソード』を手に持つゼロスーツサムスのボディをまとめて叩き斬る。

 

自分との思い出も忘れ、能力すらも弱体化したというのに、それでもリンクを信じて百年も戦い続けてくれた彼女が待っているのだ。また、待たせてしまっているのだ。

 

 

「キーラのやつ…っ! ゼルダ様まで、巻き込みやがって!」

 

 

巨大なドンキーコングのボディが振り下ろす巨塔をマスターソードで受け流し、体ごと振りかぶって斬りつける。空中から襲ってきたファルコのボディには下を潜り抜けて背中に矢を射った。

 

いつも以上に口が汚くなっているのを自覚しながらも、戦う手は止めない。

 

 

「ちっ…」

 

 

後方にファルコの姿をした敵が、前方にはその他の三体がそびえ立つ。数では圧倒的に不利であったが、微塵も負ける気がしなかった。これは本当に根拠のない自信そのもので。

 

 

「待ってくれているんだよ! 一回、百年も待たせちまったのに、“また”なんだよ! 邪魔するなよ! 退けよ!」

 

『…!』

 

 

その覇気は普通の存在ならば圧倒されるものであったが、意思を持たぬ傀儡どもにはそれすらも感じられないのだ。何かを合図にしたのか四人が一斉に動きだす。

 

 

「このっ…!」

 

『…ッ!』

 

 

跳び蹴りでインクリングのボディを飛ばす。後方に飛ばされた敵の一人は力なく倒れ、消えていった。

 

 

『!』

 

『…っ!』

 

「…!」

 

 

左手の盾でファルコの姿の蹴りを防ぎ、右手のマスターソードで『キルソード』の一振りを防ぐ。

 

 

「らああぁぁっ!」

 

『『…っ!?』』

 

 

勢いの止まった二人を『回転斬り』でまとめて弾き飛ばした。彼ら二人も消えていく。

 

 

「っ、つあぁ!」

 

『…っ!』

 

 

残る一人もタックルで体勢を崩させ、懐目掛けて振った剣がとどめを刺す。

 

 

「………」

 

 

四人の敵勢力が消えて、自分だけが残される。だが、まだ剣を下さなかった。

 

 

『…』

 

「ゼルダ様!」

 

 

現れたのは異なる時間の姫の姿をした本人。そして─

 

 

『…』

 

「……やっぱ出てくるか」

 

 

彼女の護衛として、自分役が出てきた。服が違うだけの、鏡を見ているようで同じと認めたくない存在。

眉間にシワを寄せて目の前を睨むと、左のハイリアの盾を放り捨てた。必要に感じなかった。

 

 

「…はあっ!」

 

『…!』

 

 

二つのマスターソードがぶつかり合う。相手の斬撃を受け流し、隙を見つけたと振るったところで防がれる。自分の肉体から生まれた存在なのだろう。剣技だけ言えば互角の腕だ。

 

 

『…!』

 

「っ!」

 

『…!』

 

 

援護に放たれた『ディンの炎』の爆発を後ろに跳んでかわす。反撃とばかりに自分の姿をした相手に向けて足を踏み込んで振りかぶる。

相手もそのまま振り下ろす位置に剣を動かし、リンクの急所を狙う─

 

 

「…らあ!」

 

『…!?』

 

 

腹部を斬り裂くリンクの攻撃の方が僅かに早かった。自らの首の近くで、崩れる音が聞こえる。

 

 

「あと少し!」

 

『…っ!』

 

 

召喚したファントムを一太刀に斬り捨てる。完全に具現できなかったので耐久も相応に脆い。

 

 

「ゼルダ、様!」

 

『…!?』

 

 

敵に向かって走り出したリンクに対して閃光の魔法を撃ちだすも、避けることなくそのまま向かってくる。戦いを強制されている御身を思えば攻撃など痛いうちに入らない。

 

 

「たぁ!」

 

『…っ!』

 

 

フリーの左手で腰の留め具を掴み、剣も捨てた右手で宙へ、外へ投げ飛ばす。

 

 

「っ! 申し訳、ありません!」

 

 

一言誠意を見せて謝る。流石にこの行動はとどめにはならなかった。自らも空中へ飛び込む。

 

 

「…たっ…っ!」

 

『…!?』

 

 

かなり無理なことであったが、無意識下でも出来るだけ痛い想いはしたくなかった。

まともに戦っていれば楽に決めれたかもしれなかったのに。彼女は聡明であられるのだから理解してくださるとは予想がついた。それでもこの戦法をとったのはただの自分勝手だ。

ただ一撃、彼女を蹴り落としただけでも起きた、心が抉れたような胸の痛みを無理矢理意識から外した。





マリオ「さあ、リンクとゼルダの運命やいかに!?」

マルス「…僕たちどこからこんなこと話しているんだろう…」

マリオ「メタ発言はキミには早い。後、もっと素直になって、ガチャから出てきて!」

マルス「ヒーローズやってるんだ…」

マリオ「最近はじめたんだ! 任天堂ソシャゲの課金の星! 後、キミと蒼炎アイクと男カムイとベレスだけだから!」

マルス「揃えたいんだ…」


マリオ「次回! 『同じ名を冠する者』!」


マリオ「…って作者が言ってた。」

マルス「君の話じゃなかったんだ!?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五十三話 同じ名を冠する者


ここのゼルダはまだ長髪のイメージです。




動かない太陽は常に大地に光を届けていて、草むらに落ちた剣と盾を輝かせていた。しかし、それには目もくれず精神体の彼女を気遣う。触れられないにも関わらず、体を支えようと手を出すことはやめられなかった。

 

 

『あうっ… ここは確か…』

 

「ゼルダ様、無事でございますか?」

 

『リンク…? 確かあなたを送った後に…』

 

 

体を起こし、座った体勢になる。それに合わせてリンクの腕も動く。

 

 

「…大変申しにくいのですが俺たちは一度キーラに敗北しました。貴女の身が今この状態なのも全て俺の力不足が原因です…」

 

『いえいえ! 謝ることはありません。また助けられましたね。ありがとう、リンク。』

 

 

気にするなと伝えつつも、彼の性格上それは無理だろう。百年前の記憶を失う前の彼もストイックだった。姫と護衛という関係が消えても尚こうして自分のために戦ってくれる彼には感謝してもし足りない。

 

 

『私も何かあなたの役に立てればいいのですが… これではどうしようもないようです。私はまたあなたに託すしかない。』

 

「ゼルダ様…」

 

 

ゼルダは立ち上がり、残る彼の方へ振り向く。リンクも放っていた剣と盾を持ち直し同じ方向を向いた。実体のないゼルダをすり抜けて、風がリンクの髪を揺らした。

 

 

『大海原をかける風の勇者─ あなたと同じく勇者で、偶然か否か同じ名を冠する者』

 

「…はい」

 

『その英雄譚をここで終わらせてはいけません。彼を…お願いします。』

 

「はい、かしこまりました!」

 

 

当然だと言わんばかりに、気さくにウインクする。過剰に感じるほど真剣な表情に少し不安もあったものの、口角を上げた顔に安心する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ウーフーアイランド』の火山。その頂点の火山口すらもマスターハンドにとっては戦場の一つにできる。

 

 

「熱いし… つか、戦いにくっ!?」

 

 

山に申し訳程度についている金網型の足場と火山口に半端な蓋をするかのように設置させられた二つの足場。隙間から火山内の溶岩が見え、体感温度を上昇させる。ぐいっと額の汗を拭った。

 

 

「!」

 

 

視界に、こっちへ向かってくる一矢が見える。防御に回ったマスターソードの刃に勝てるはずもなく、勢いは完全に死に、矢は火山に吸い込まれていった。

 

 

「まったく… ゼルダ様に心配させないでくれよー」

 

『…』

 

 

大きな目が赤く光る。リンクとは違う時空で勇者と呼ばれた緑衣の勇者。体に対して大きな弓矢を構えながらこちらを睨んでいる。トゥーンと呼ばれるリンクだった。

 

 

「もー… ここでこいつ相手に戦うのはちょっと辛いな…」

 

 

自分も決して動きの鈍い方ではないのだが、体躯が小さなトゥーンリンクと比べると見劣りするのは確かだ。

そんな彼を相手に、足場の悪いこのフィールドで戦うのはきついものがある。ましてや相手にはその身の軽さも備わっており、小さな足場を生かして戦うことができる。相性がいいとは言えない。

 

 

「………でも、ゼルダ様直々に頼まれたんだ。負けるわけにはいかないんだよ!」

 

 

投擲された『ブーメラン』を跳ね返した。矢とは違い、歪な回転を加えながらもなんとか身を乗り出したトゥーンリンクの手に収まった。

 

 

「チャーンス♪」

 

『…っ!』

 

 

お返しとばかりにこちらも『弓矢』を射る。反撃したいが、トゥーンリンクは身を乗り出したことで体勢が崩れていた。左手の盾でどうにか矢を弾くが、連鎖的に立ち直りにくい体勢になっていく。

 

 

「たああっ!!」

 

『…ぃっ!』

 

 

その隙を逃さず、向かいの、トゥーンリンクが立つ足場に跳んで『ジャンプ斬り』をしかける。反応こそできたものの、防ぎきれる体勢ではなく退魔の刃による傷が直接伝えられた。

仮に、剣の防御が間に合っていても、互いに使う武器はマスターソード。時こそ違えど振るう得物は同じもの。同じものであるならば、基本的にパワーのあるリンクに軍配が上がる。

 

 

『…!』

 

「…!? あぶっ!」

 

 

飛ばされた空中からこちらに向かって『バクダン』を投げられる。咄嗟に腕で鼻と口を塞いだ。爆風は気管に入って火傷する方が危険だ。

 

 

「けほっ… !?」

 

『…っ!』

 

 

煙が晴れると、右腕に『フックショット』の鎖が巻きつかれており、復帰のために利用されようとしている。

 

 

「このっ…!」

 

『…』

 

 

順手で持っていた剣を逆手に切り替えて、マスターソードで鎖を斬ろうとした。

その瞬間にトゥーンリンクが自分を引き上げ、互いの額が正面衝突、お互い頭突きが決まった。

 

 

「いっつー!」

 

『…っ!』

 

 

また最初の足場に飛ばされた。手を離してしまったマスターソードは『ブーメラン』を投げて巻き込むことでなんとか火口への紛失は防いだ。しかし、未だに『フックショット』の鎖は巻きついたまま。

 

 

「けどここまで来たらこっちのもんだ!」

 

 

鎖を手繰り寄せ、思いっきり引っ張る。すぐにトゥーンリンクは抵抗しようと引っ張り返すも、パワーで負けている上に踏ん張れるような足場ではない。すぐに引っ張り上げられ、慌てて腕の鎖を解き、フックショットをしまった。

 

 

『…っ!!』

 

「はあああっ!」

 

 

空中から体ごと振り下ろされたマスターソードと腰辺りの位置から振るわれるマスターソードがぶつかり合う。

 

 

「…んん…! ぎい、い…!」

『………っ……!』

 

 

刃が擦れ合い、火花が飛び散る鍔迫り合い。

単純な力ではリンクに分があるが、落下による勢いと体重全てが剣にかかっているので互角の領域に持ち込めていた。

 

 

「こ、のっ!」

 

『…!』

 

 

それでもなんとか小さな体を弾き飛ばした。向かいの足場に着地し、右の道具をしまって盾を構え直す。

 

 

『…!』

 

「っと…」

 

 

『下突き急降下』に対して後ろに引いて避ける。足場が限られている故に避ける場所も自ずと絞られやすい。

 

 

『…っ!』

 

「…! たっ…!」

 

 

続けて斬り込まれた『スマッシュアッパー』に足を踏み外し、

 

 

「…くっ…!」

 

 

体が投げ出された。

足場にかかる左手が最後の支えだ。

 

 

「…っ」

 

 

すぐにトゥーンリンクはここに着く。位置的に圧倒的にこちらが不利だ。右腕はまだ下がっている。剣を防御に向かわせるにはギリギリ間に合うかもしれないが、この状況ではちょっと時間稼ぎが出来るだけだ。

 

 

「だったら!」

 

 

自ら左手を離した。

風が吹き、自分の体が落ちていくのがわかる。

 

 

『…!?』

 

 

流石に虚は突かれただろう。だが、あのままではジリ貧だった。盾を持つ彼の意表をつくための布石。

 

 

「くらえっ!」

 

 

空中で引き絞った一矢は、

 

足場の隙間を通って、

 

 

 

トゥーンリンクの右足に突き刺さった。

 

 

『ー!?』

 

 

驚く場所からの狙撃に傷以上に姿勢を崩す。

その間に空を跳び復帰する。

 

 

「悪いなっ!」

 

『…っ!』

 

 

戻ってきたリンクに対して乱暴に剣を振るうが、荒れた剣は当たらない。悠々とトゥーンリンクを飛び越え、背後に立つ。

 

今更顔だけ振り向いても何もできない。無防備な背中に『二段スマッシュ斬り』を仕掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは誰かの顔だろうか。ぼんやりしていて何も見えない。そのまま微睡む本心に任せて意識を眠らせる…

 

 

「こらー! 起きろぉー!」

 

「うわあああああああああああ!?」

 

 

なんてことはなく、両肩を掴まれてぐらんぐらんと揺さぶられる。

 

 

「あれ!? リンク? どうしたの?」

 

「どうしたも何もぐっすりなお前を起こしにきたんだよ!」

 

「えっ、嘘、また!? またやっちゃった!?」

 

「? また? 何が?」

 

「え、あ、うん、大したことじゃないから…」

 

「???」

 

 

ハテナマークを浮かべるリンク。恥ずかしいことではあるが、別に話さなきゃいけないことじゃない。

 

 

『リンク! そんな乱暴な起こし方…』

 

「うえっ!? キミ誰!?」

 

「指指さない!」

 

 

人差し指で指す左手を下げられる。

そういえばこの姿に関しての知識は解放されたばかりのトゥーンリンクにはないことを思い出した。

 

 

『ごめんなさい、名前をまだ… 私、ゼルダと言います。』

 

「? ゼルダ? テトラ?」

 

「お前のとこの姫とは別人だぞー」

 

「あ、そうなの。ボク、トゥーンリンク! トゥーンでいいよ!」

 

『ええ、よろしくお願いします! 事態に収束が着いたらそちらの時代の話も是非聞かせてください!』

 

「あれ? そういうのいいのかな?」

 

 

古物や歴史の研究を異時間からの知識に頼ってもいいのだろうか。でもそれを取り締まる創造神は生憎とっ捕まってる。

 

 

「ちょっといいですかー? ってあっ! トゥーンさん、無事でよかったです!」

 

「しずえさんだー! 無事だよー!」

 

 

しずえが登ってきた。当然道を通ってきた。崖を登る能力は誰しもが持っている訳ではない。

手を振るしずえに振り返すトゥーンリンク。

 

 

「何かあった?」

 

「はい、ここにいる人達を全員助けたらあつまろうとなりまして!」

 

「もうここはいないし… オッケー今から行く!」

 

「はーい! わかりました!」

 

 

戻っていくしずえを見送る。

 

 

「…ここにはまだ敵がいます。倒したら戻りますので安全な場所にいてください。」

 

『…わかりました。二人とも無事でいてください。』

 

「おっし! いくぞトゥーン!」

 

「おー!」

 

 

それぞれパラセール、デクの葉で空を飛んでいく二人の背中を眺める。

気持ち的には自分だってリンクの役に立ちたかった。だが今のこの体。非力な今では何もできないどころか足を引っ張りかねない。

 

 

『どうか… 無事でいてください…』

 

 

両手を合わせる。空へ祈り、大地に願った。

 





ソード「はい!パンはパンでも食べられないパンとはワッツ?」

しずえ「わかりますよ! フライパンですよね! 」

オリマー「パンモドキか? 食べるものでは… ルーイくんはなんと言っていたか…」

リンク「食べられない… 食べられない…?」

トゥーン「乾パンとか…? ずっと海にいると虫がたかってたりするし…」

ソード「随分とインタレスティングなアンサーがいっぱい! リンクはハーリーね!」


ソード「ネクスト!『大空の王』!」


ガンナ「コテンパンだろ? もしくはパンチ。」

ソード「バイオレンス…」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五十四話 大空の王

ちょっと原作再現をつけた結果、ちょっとボスが強化されたのはどうでもいいことです。
FEHの新キャラ闇アイクが殺意リュウにそっくりなこともどうでもいいです。


闇カムイくん!
我が性癖にドストライクすぎて無課金の掟を破りかけたよおおおおおおおおおおおおお!

というか召喚士はわざわざカムイくんのとこに通い妻してるんですか


道具を使用して、歩くより先に降りたった二人のリンク。どうやって葉で飛べるのか謎だがこれを言ったら他のファイター達も謎だらけだ。

 

 

「おー、きたきた」

 

「お待たせー!」

 

「よっと!」

 

「これは…! グライダー!? すげー!」

 

「トゥーンがいたのか… これで何人ぐらいになるだろうか…」

 

 

退屈して胡座をかいているガンナ。パラセールとデクの葉に興味が移ったソードを尻目にオリマーは物思いにふける。

 

 

「三十…五…くらい?」

 

「え!? つまりまだ半分くらい捕まってるの!?」

 

「そういうことになる、か…」

 

 

たかが半分。されど半分。受け取り方には個人差がある。彼らが望むのは誰一人欠けることのないハッピーエンド。犠牲者を出したエンドをハッピーと呼べるかもまた、人次第だが、全員欠けることなく勝つのが最良の選択だ。

 

 

「(…? 全員…?)」

 

 

ここで一つ、オリマーは突っかかりを感じた。

キーラが創った世界は無限ではない。今まで言った場所で大部分は占めている筈だ。

ファイターの人数に対して圧倒的に世界の面積が足りていない。自分達の迎撃に動かされていないファイターがまだいる。一体どこに?

 

 

「みなさ〜ん!」

 

「しずえさ〜ん!」

 

「遅刻だよー! ハリーハリー!」

 

「すみませ〜ん!」

 

 

自分達を呼ぶ声に思考が無散する。

飛んできた二人に対して徒歩で来たしずえが遅れてやってきた。膝に手を当てて息を整える。

 

 

「さて、ここにいる全員が揃ったか。」

 

「あれ? まだ何かあるの?」

 

「すっごいクールなドラゴンがいてなー!」

 

「あれ? 全員ですか? ガンナさんはどちらに?」

 

「えっ?」

 

 

ソードの隣には誰もいない。途端に彼の顔が青くなっていく。

 

 

「ソード!」

 

「えっ、なんで、いつの間に、そうか! グライダーに目を惹かれてる時に!」

 

「やっぱソードの所為!?」

 

「リンクも同じシリーズだよ!」

 

「えっ? 何、どうゆうこと?」

 

「同類ってことか? いや、もうどうでもいい! 加勢するぞ!」

 

 

西方面、丘と呼ぶにより近いところから爆発音が聞こえる。既に戦闘は開始されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グガアアアアァァァァ!」

 

 

竜の咆哮に、腕を構えて耐え切る。開けた視界に襲ってくるのは一面の火球。横に跳んで直撃は避けた。焼かれた場所と同じく、服についた火を乱暴に、舌打ちしながら鎮火してアームキャノンを竜に向ける。

 

 

「おらっ! くたばれやっ!」

 

 

ガトリングのように細かなエネルギー弾を空を飛ぶ竜に当て続けるが、痛手になっている様子はない。

 

 

「っ!」

 

 

空中から急降下し、猛毒を持つ後ろ足が蹴りつけようとする。足の間を通って切り抜ける。

 

 

「がばっ…!」

 

 

振り向いた体に合わせ、回転した尾がガンナに叩きつけられる。一瞬呼吸が止まり、受け身を取ることも出来なかった。

 

 

「チッ…!」

 

「ギャアアアァァァ!」

 

「…は? アイツどこ撃って─」

 

 

こちらへの追撃に備えるが、なぜか竜は飛び上がってあらぬ方向へ火球を飛ばす。

 

 

「ウソだろ!? 隠れながら行ったのに!」

 

「きゃー!」

 

「まずっ、二人は!?」

 

 

ジャンプで避けて飛び出してきたのはリンク、ソード、しずえの三人。

 

 

「ケホッ、ケホッ… ええっ!?」

 

「なんという威力だ…!」

 

 

二人もギリギリで避けていた。咄嗟に盾を構えたトゥーンリンクを引っ張って回避していたのだ。着弾点の草むらを贄に燃え続ける炎に、あの一撃の威力を思い知る。これは直撃できないものだ。

 

 

「このっ! それやめろこのデカトカゲ!」

 

「てえい!」

 

 

視線の外れたガンナが『ガンナーチャージ』を、トゥーンリンクが『ブーメラン』撃ち放つ。胴体が大きく当てることは難しくないが、生命力的には大きなダメージには見えない。人間で言えば爪楊枝に刺されたようなものなのか。ヘイトも今はリンク達に向いている。

 

 

「ヴァルー様みたいー!」

 

「あまりはしゃいでる場合じゃない。…後ガンナ、君は勝手に…」

 

「ちげー、あのデカトカゲめちゃくちゃ目いいんだよ。多分ここに来た時点で私達に気づいてた。敵と認識してなくて襲ってくる様子が見えなかったから戦いにこなかっただけだ。そのつもりで近づいてたら全員で先手くらってた。」

 

 

そういえば、と思い出す。既にガンナと戦闘中だった相手に、遠くから来てた自分達の居場所がバレていた。ガンナへの攻撃の後でなかったら直接攻撃に転じていただろう。

 

 

「飛べる上に視力もいいのか…!」

 

「飛行能力も舐めたもんじゃねえ。さらに言えばあんな火ィまで吐ける。」

 

「つまり耐火性もそれなりということか…! 近くにいたらまたまとめて叩かれる! 何かわかるまで個々で戦おう!」

 

「うん!」

 

 

竜相手に至近距離で戦う残りの三人。相手に比べて小さな体を活かして渡り合えているものの、戦況をひっくり返すきっかけを掴めず、小さな擦り傷は増えていっている。

 

 

「ぐべっ!」

 

 

突進にソードが巻き込まれ、走った勢いのままに飛び上がる竜。

 

 

「ソード!」

 

「あったれー!」

 

「えーい!」

 

 

ガンナの声と、トゥーンリンクとしずえの懇願の声。完璧に当てるつもりで撃った矢とパチンコが、両翼で起こした風で落とされ、旋回してかわされる。

 

 

「…ってあっ! リンクさんがドラゴンさんの上に!」

 

 

体を回転した時を見て気づいたことだった。赤黒い鱗に張り付いた目立つ水色の服。首の中間辺りにしがみついていた。

 

 

「こんのっ!!」

 

「ギュガアアアアッ!」

 

 

頭部の鱗を剥ぎ取るように聖剣を振った。前々の攻撃に比べて手痛い攻撃に悲鳴に近い咆哮を上げる。

 

 

「うお、うおっ、うわっー!」

 

 

右に左に体を回転させ、リンクを振り落とした。マスターソードも手放してしまい、突進のダメージも抜けないソードの近くに突き刺さる。

 

 

「おっと… ひえぇ〜…」

 

 

パラセールを開いて落下を防ぐ。こんな死因は流石にカッコ悪い。

 

滑空し、低空飛行で突進してくる。ガードか回避か、リンクのように攻撃に転じるか。狙いはピクミンを連れたオリマーだ。

 

 

「来るか………ッ! リンク! それを閉じろ!」

 

「えっ?」

 

 

迎撃に備えるオリマーだったが、あることに気づき、上空のリンクに向かって叫ぶ。少し間抜けな顔をしたリンクは気づいていない。

 

 

「…うわああっ!」

 

「ぐぐうっ…!」

 

 

巨体が近くで低空飛行することで予期しない強風が吹き荒れる。パラセール自体に飛行能力はない。リンクは吹き飛ばされ、目の見えない遠くの木々まで墜落し、忠告に気が向いてしまったオリマーもぶっ飛ばされ地面に倒れ伏す。

 

 

「ああっ…! リンクさんが!」

 

「人の心配してる場合か、おまえ…!」

 

 

息を切らしながらパチンコを撃ち続けるも、意識が吹き飛ばされたリンクの方へ向いていて集中し切れていない。

 

 

「ギュガアアアア!」

 

「きゃー!」

 

 

至近距離からの咆哮。二度目のガンナは装備の重量もあって耐え抜いたが、体力が尽きかけているしずえは踏ん張れずに吹き飛ばされた。

竜の狙いはしずえ。黒い爬虫類のような目が倒れ込んだしずえを睨んでいるのをガンナは感じ取った。

 

 

「チッ…! ソード、援護!」

 

「ラジャー!」

 

 

足止めを仲間に任せ、背後へ走り出す。

任せれたソードは『竜巻』を発生させるも、矮小な人間一人が生み出した風など飛竜にはそよ風も当然だった。ただ一度羽ばたいただけでかき消されてしまった。

 

 

「ワッツ!?」

 

「くそっ、伏せろ!」

 

 

回避行動は間に合わない。しずえを腕の中に入れ、地面に出来る限り接地する。

 

 

「やめろー! このっ!」

 

「ギャアアアァァァ!」

 

 

目と思われる場所に向けてトゥーンリンクの矢が撃たれる。人と同じ構造をしているという仮定ならば、いくら硬い鱗で身を包んでいても瞳は硬くない。

痛みか、突然の攻撃か。ともかく攻撃に横やりを入れられた竜は体勢を崩し、女性二人への攻撃は空振りに終わった。

 

 

「…大丈夫か! …!」

 

 

距離があったオリマーが起き上がって駆けつける。その時、爆炎が起こり接敵していたファイター四人がぶっ飛ばされる。口の中に炎を蓄えたまま頭を振るったことで広範囲に爆発を起こしたのだ。

 

 

「はあ… うん、なんとか…」

 

「…ノープロブレム、だいじょぶ!」

 

「あったりめーだろ… ぜえ…ぜえ…」

 

「…はあ…はあ…はあ…」

 

「(…いや、まずいな…)」

 

 

強気の発言が返ってきたものの、女性陣の消耗は無視できるものではない。基礎体力が低めのしずえ、戦闘時間が他より長い上に装備が重いガンナは他二人よりもダメージが大きかった。特にしずえはまだ立てていない。

それに加えてリンクの不在。落とした退魔剣はソード達と共にこちらへ飛ばされたものの、肝心の使い手が帰ってこない。頭でもぶつけて動けないのか、それともフィギュア化してしまったのか。

 

 

「…!!」

 

 

動かない太陽を遮る位置で火竜が羽ばたいている。口から燃え盛る炎が漏れ出ている。自分たちを見下して大空を舞うその姿はまさしく─

 

 

「天空の、王者…」

 

 

飛竜リオスの雄竜。飛竜の王とも謳われ、赤い甲殻に身を包む大空の王。

 

彼らも知らないとある世界では、リオレウスと呼ばれる存在であった。





シーク「…キミたちが決して軽くはない絆で結ばれているのは知っているよ。」

アイクラ「「…ブルブル」」

シーク「家族… 下手すればキミたちにとってはそれよりもっと強い関係なのかもしれない。」

アイクラ「「…ガクガク」」

シーク「多少しょうがない部分もあるだろう。いつも一緒にいるのだから。でも、それとこれでは話が違う。」

アイクラ「「…フリフリ」」


スネーク「次回、『数と指揮能力』。」


シーク「だから… トイレの時ぐらい離れよう?」

アイクラ「「やだぁー!」」

スネーク「なんだこれ…」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五十五話 数と指揮能力

こんなに活躍してても実際のプレイで使ったキャラは(略

ペーパーマリオ新作のゲリラ発表…
えっ、しばらく唐突なゲリラ発表にガクブルしながらワクワクして待機してなきゃいけないんですか…?


あっ、フェス復刻するのにスプラさわってないや。エヘヘ


「………ッ!」

 

 

雄々しく空を舞う姿に状況も忘れて見惚れてしまう。風が吹き、小石が頬に当たったことで我に帰る。

 

 

「離れるんだ! ソードもしずえさんを頼む!」

 

「あ、オーケー!」

 

 

剣を鞘にしまい、しずえを担いで離れる。ガンナはソードを追い、オリマーはトゥーンリンクと共に逆方向へ逃げる。

 

 

「ガンナ、は、一人でラン、できる?」

 

「けっ… 誰に言ってん、だ…!」

 

「すみません〜…」

 

 

しずえが申し訳なく思う傍らで、Miiの二人が軽口を叩き合う。

ガンナはわかりやすい性格だ。一度敵として戦うのならば、リタイアは有り得ない。後先考えず、根気だけでも戦い抜くだろう。

 

 

「(だが、しずえさんの体力はもたない… この状況でどうやって勝つ?)」

 

 

火炎弾を吐くリオレウスに集中する。先に戦ったガレオムのようなロボットとは違う野生生物。敵と獲物だけを殺し、生きるために戦うドラゴン。

 

 

「(どこかに… 何か弱点があるはずだ…!)」

 

 

生き物として存在している以上、欠点が無いわけがない。痛みがあるのだから、死に対する恐怖がある筈なのだ。これは死を知っている。死に繋がる何かをリオレウスは有しているはず。

 

 

「トゥーン… 少し相手をしてくれ。戦わないというわけではないが… あのドラゴンの弱点を考えてみる。」

 

「…うん! わかった、ボクに任せて!」

 

 

オリマーの頼みに一瞬トゥーンは怪訝に思うも、頼りにされているとわかり、強気な笑顔でリオレウスに立ち向かう。

 

 

「(やはり、耐火性能と飛行能力… 特筆すべきはこの二つか。とはいえ、戸惑いのようなものは見られない。少なくともこの個体は普段からこのような場所に生息している。)」

 

 

自分についてくるピクミンのうち、赤いピクミンを見つめる。戦闘に長けた彼らの力も、残念ながら今回は期待できそうにない。

火を使う相手だから青ピクミンの水の力が有効… そこまで単純ではなさそうだ。体が発火している訳ではなく、口から吐いてばかりだ。恐らく内臓器官に火を生成する器官がある。水が弱点かは断言できない。

飛行、高いところと言えば黄ピクミンだが、今は一匹しかいない。数と指揮で戦うのがピクミン。この一匹の力だけではあまりにも心細い。

 

 

「(ダメだ! 他は? 発達した視力に毒を持つ足の爪…)」

 

 

頭の中に特徴を思い浮かべながら思考する。尻尾の付け根に青ピクミンと黄ピクミンを貼りつけ、距離を取る。きっかけが掴めない。どうすればいい?

 

 

「…チッ… このくそやろおぉ!!」

 

「ガンナ、ウエイト!」

 

「えっ? うぇっ!?」

 

 

しずえとの回避に専念していたガンナが我慢の限界を超えた。駆け出し、肉薄して弓で足を狙っていたトゥーンリンクを踏み台にし、跳び上がる。

 

 

「吹き飛べェ!」

 

 

リオレウスの頭にしがみつき、顔面にアームを突きつけて爆炎を起こす。

 

 

「グギャアアアアッ!」

 

「うおっ… ぐっ、うわっ!」

 

「…! 今のは…」

 

 

今まで見なかった程に苦しみ、頭と尾を振り回す。その勢いでガンナとピクミン達は振り落とされるが、その時の反応をオリマーは見逃さなかった。

 

 

「明らかに他の攻撃と手応えが違う。これは…」

 

 

ガンナがいつも使っている足元に爆発を起こす技。なんでことはないただの攻撃の一つだ。

 

 

「(だが、炎は… 違う、炎じゃない?)」

 

 

爆炎ではない。ガンナのアームの構造をオリマーは知らないが、火を吐く竜の耐火性を超えられる温度の爆発を起こす道具を、あのサイズに収めるのは現実的ではない。世界によって文化は違うからできないとは言い切れないが、そこまでの爆発を起こせるなど聞いたことがない。

 

 

「(…ッ! そうか!)」

 

 

ならば答えは一つしかなかった。

 

 

「光か!」

 

「えっ? ライト?」

 

 

リオレウスは視力が良い。遠いファイター達を見つけ、隠れて進んでいても炎で攻撃された。

そこまで精度の良い目ならば頼りきってもおかしくない。

 

 

「視力が良すぎる弊害で光に弱い。トゥーンが目に当てたダメージが大きかったのも頼っていた感覚に傷をつけられたから…というのが仮説だ。」

 

「ここまで来てカセツなの?」

 

「今理由はどうでもいい。光が効くという事実があるからな。」

 

 

とはいえ光を発せられるものといえばガンナの攻撃ぐらいしかない。なんとか近づき至近距離で爆発させなければいけない。だが、相手が野生生物と言えども、何回も同じことを繰り返せば当然学習する。そもそもそれを何回もできる程にガンナの体力が残っていない。

 

 

「(…後一回だ。それで決める。)」

 

 

所々赤い鱗が剥がれ、唾液が口から流れている。今までのダメージも無駄じゃない。確実に残っている。これならきっと決められる。

 

 

「ガンナ、後一回だ! 後一回、トゥーンを乗せて跳べるか!?」

 

「いっつ… 誰に言ってんだ、ガキだろうがなんだろうが乗せれるぜ!」

 

 

作戦の肝のガンナから強気の返事がくる。色々と複雑なアームキャノンは製作者のガンナ本人にしか扱えない。彼女が動けなかったらこの作戦は白紙になるところだった。

 

 

「私も… 大丈夫です。少し、休憩できました!」

 

「しずえさん、…ガンナが隙を見て跳び上がる。ソードと一緒に両手で踏み切り台を作って欲しい。できるか?」

 

「やります! ご迷惑をかけちゃったので頑張りますよー!」

 

「オーケー! オリマーは?」

 

 

了承を取ると、前線へ駆ける。すばしっこく動いて前線に残っていたトゥーンリンクに声をかけた。

 

 

「トゥーン、ガンナのところまで引いてくれ!」

 

「え? なんで?」

 

「とどめはキミに任せる。私が隙を作ろう!」

 

「ボクが!? うん…やる!」

 

 

やる気満々に戻っていくトゥーンリンク。オリマーの前には、オリマーの十倍はありそうな巨体のリオレウス。相手の方が大きいのはいつものことだ。こっちの方が数が多いのもいつものことだった。心なしかピクミンもやる気を見せている(気がする)。

 

 

「…こいっ!」

 

 

挑発ではない。自分を奮い立たせるためにこの言葉を放った。倒す必要はない。隙を作れば後はなんとかしてくれる。数と指揮能力で今まで野生と戦ってきたのだ。

 

 

「グゴオオオォォ!」

 

 

その言葉の意味を図れたのか、敵意が増幅したのを感じ取ったのかは不明だが、天へと頭を上げて咆哮を放つ。翼をはためかせ飛び立ち、火炎弾を撃つ。

 

 

「…いけっ!」

 

 

横跳びで弾道から外れ、炎に強い赤ピクミンを投げる。頭に取り付いたピクミンはピチピチと頭の花で叩く。

 

 

「…グヴッ!」

 

「! くっ…」

 

 

頭を振った衝撃で赤ピクミンは死んでしまった。こんな小さな命などリオレウスには軽く蹴散らせる。簡単に死んでいったピクミンに悔しさはあるが、止まってはいられなかった。補充した紫ピクミンを見て一つ思いついた。

 

 

「この大きさでも頭を揺らせば!」

 

 

未だに低い場所で飛んでいたことに救われた。重く、力のある紫ピクミンで殴打されれば、

 

 

「グガアァ!」

 

 

短く吠えてふらつく。口から無意識に炎が漏れ出す。これがオリマーのつくった隙。

 

 

「緑のガキ! 落ちんじゃねえぞ!」

 

「うん!!」

 

 

ガンナの肩に足を乗せて立つ。その前方には互いの手を組むソードとしずえ。

 

 

「らあっ!」

 

「いっけー!」

 

「ゴー!」

 

 

ガンナの右足が踏みつけた途端に手を思いっきり上げる。助走もあって、今までで一番、大きく大きく跳び上がった。だが、

 

 

「ガアァ…!」

 

「あちっ…!」

 

「ああっ!」

 

「剣が…!」

 

 

運悪く左手を炎が掠め、マスターソードを手放してしまう。しずえとソードもその異変に気がついた。

 

 

「(…それ以前に! 速度が足りていない! あと少しで届くのに!)」

 

 

落ちながらオリマーが気づく。

リオレウスは更に高い空へと羽ばたいていた。自分の意識が安定しない以上、敵の手が届かない場所へ移動するのは当然だった。ガンナの跳躍のスピードが足りずこのままでは最高高度に到達した頃にはリオレウスは遥か上空だろう。

悔しくリオレウスを睨みつけるオリマーの視界に突然入ってくる横槍、否横矢。迷いなくリオレウスの翼に突き刺さる。

 

 

「ゴオオオォ…!」

 

「…! リンクか!」

 

 

翼を撃ち抜いたことでリオレウスの上昇するスピードが下がった。

彼が落ちていっただろう林の方向を向く。木の上の水色。遠くて見えないが、きっと今世紀最大のドヤ顔をしているところだろう。

 

 

「はあ、はあ、トゥーーーン!」

 

「っ!」

 

 

ソードは地面に突き刺さっていたリンクのマスターソードを抜き、小さな勇者の元へ投擲。

投げにくい形ではあったが、まるでマスターソードそのものが援助してくれたかのようにトゥーンリンクの手に吸い込まれていった。

 

 

「よっしゃ、落ちやがれトカゲェッ!」

 

「ガアアアァァァ!」

 

 

作戦通りにリオレウスの顔近くで爆発を放った。視界が一気に白に染まり、苦しみもがく。

 

 

「とおっ!」

 

 

強く目を瞑って光を回避していたトゥーンリンクがガンナの肩からとびだした。長さも全く違うのにリンクの聖剣は自分のそれと同じように扱えた。

 

 

「やあああぁぁぁッ!」

 

「ギャアアアァァァァ…!」

 

 

リオレウスの脳天をマスターソードが貫く。力の入らない翼が動かなくなり、竜の亡骸が落下していく。

 

 

「うおっ…」

 

「ガハッ…!」

 

「うわわわわ、うべっ…!」

 

 

オリマー、ガンナが落ち、骸と共に落ちたトゥーンリンクもバランスが取れずに転んだ。

 

 

「よ…ようやくやっつけられました〜…」

 

「あー、ダメ。合流の前にちょっとブレイクタイムにしよー…」

 

 

しずえが座り込み、ソードが派手に寝転がりながら提案する。本当ならばすぐにでも合流するべきなのだろうが、

 

 

「そうしようか…」

 

 

力なくオリマーが肯定する。キーラの最後の結界が崩壊するのを見届けながら草原の緑を体全体で感じ取った。

 

リンクが戻ってきてもしばらく動かなかった。

ここは、さっきまでの戦場と同じ場所とは思えないほどに静かな場所だったのだ。




現ファイター

カービィ
マリオ
マルス
ピクミン&オリマー
パックマン
Wii Fit トレーナー
Dr.マリオ
インクリング
ピチュー
ロックマン
スネーク
むらびと
シーク
リンク
ルカリオ
キャプテン・ファルコン
ピーチ
クッパ
フォックス
シモン
ピット
リュカ
しずえ
Mii 剣術タイプ
ヨッシー
プリン
リュウ
ドンキーコング
アイスクライマー
ダックハント
リトル・マック
ファルコ
ピカチュウ
サムス
ネス
Mii 射撃タイプ
トゥーンリンク


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三章 まとめ

スプラトゥーン復刻フェスですよー

ピカチュウはケチャップ派、そして私もケチャップ派。
えっ何… 今回六千字とか嘘やろ…?

という訳でいつにも増して内容適当です。


はいはいはーい! 三章、完!

というわけでおまとめのお時間ですよー!

 

 

「随分と久しぶりな気がしますね。今回取り扱うのは十九名です。」

 

「三章は合計二十六話。プロット的には最長の章だね。予定だけどクイズの章すらも超えてるよ。」

 

「……………」

 

「ギガクッパ討伐から神殿、宇宙、オオデンチナマズリベンジ、森丘って詰め込みすぎね。」

 

 

この小説、作者の初プレイを物語的に仕上げたものですからね。そもそも最初はプレイ日記風にまとめてましたから。小説前提でプレイしていないのです。

 

 

「プロットは完全に完成しているのですか?」

 

 

完成はしてますけど必要に応じて修正したりしてます。最近はマスターハンド戦だのクレイジーハンド戦だのを削ろうかなとかも考えてますが…

 

 

「…ちょっと待って。僕達の出番ラスボス戦だけになっちゃうんだけど…」

 

 

そうそれ。だから悩んでるのです。

まあこんな裏事情はいいのです。ただでさえ人数多いのですからサクサクいきますよー。

 

 

 

というわけでフォックスからやっていきましょう。実は中退生。ここでは64以降の性格を採用しています。正直Pixivかニコニコ百科あたりで調べた方がいいかと。

 

 

「身もふたもない…」

 

 

原作に忠実にやってるとね、そんなこともあります。あと字が汚い。読めないほどじゃないけど見ると何コレってなる。

 

 

「作者みたいね。」

 

 

あれよりは… あれよりは綺麗… 多分。

 

 

「…………」

 

 

 

次次、シモンー。古い作品故か昔はデザインが安定していなかったり。悪魔城ドラキュラシリーズの時系列的には実は最初のベルモンドではないのです。

 

 

「ゼルダの伝説も初代=一番昔ではありませんからねー♪」

 

 

そういえばピット君がシモンやリンクと同い年ってことはパルテナ様とも同い年…

自分に厳しく、人には優しく。ただ外見からして近寄りたがい雰囲気は出ちゃってるのかと。

 

 

 

「次、ピットですね。」

 

 

はーい。実はようやく自分が使えるファイター出てきてここまでプレイが大変でした。

 

 

「そうなの? そういえば作者が使えるのって…」

 

 

ピット、ブラピ、トゥーンリンク、ルフレカムイですかね。半分が闇の世界からです。まあ、ネット対戦しないのであくまで比較的ですが。

 

Xの時についたイメージは強い。今でも敬語キャラの2次創作見ます。ちなみにパルテナ様に友好的な神に対しては原作でも敬語を使ってます。ポセイドン様とか。ただラーズはそうでもなし。線引きがよくわからない。聞いてきて。

 

 

「今捕まってますからね〜」

 

 

いや、そういう設定だけど…

次回予告のネタに困ったら頼ります。基本的にはボケだけど自分よりもボケ倒す人にはツッコミ。芸人としてハイスペックです。

 

 

「何の話なんだ!?」

 

 

 

リュカ。気弱っていうところから2次創作では敬語キャラですね。私それに違和感ありまして、そんな敬語使ってたかなーって。ちょっと原作確認してみたんです。

 

 

「そう。それで結果は?」

 

 

こいつ… 身内としか話してねえ…

 

 

「…………」

 

 

まあ、確かにリュカが主人公の章はドラクエ勇者並みに無口だから仕方ないんですけど。

その結果うちでは、友人や近しい人には臆病ながらも子供らしく喋りますが、距離近くもないような人には人見知り発動して敬語になる。そんな感じになりました。

 

 

「原作の時間軸はどうなってるの?」

 

 

あー… 多少違和感ありますがエンディング後ということにしてください。

後… PSIってココロの力なので精神が不安定だったら上手く扱えなくなるのかなーとか思ってます。ラストバトルとかそうとも取れそうなので。

 

 

 

しずえさーん、祝、あつ森内定オメデトー!

 

 

「今更!?」

 

 

言っときたくて… むらびとはあれですがしずえさんは原作設定です。ですがむらびとがあれなのでちょっと口煩くなっています。

そもそもとび森で村長かと聞かれた時、肯定の選択肢すらなかったんだけど、どういうことなんですかね。

 

 

「…………」

 

 

……………知らねっ!

 

 

「えっと… パルテナ、今作者なんて…」

 

「『確かに村長なのにむらびとじゃん…』ですって。」

 

 

ナチュラルに心読まないで!?

 

 

「今まで気づかなかったのね。」

 

 

 

剣術Miiファイター、うちではソードという名前です。外見含め、全てデフォルトの設定です。

 

 

「アドベンチャーで解放すると使える設定そのままでいいのかな?」

 

 

はい。金髪青目なので外国要素を入れようとした結果、ルー語のキャラになりました。口調をもっとスマートにするとソニックのそれと被るので意図的に違和感を出しています。ちなみに作者が苦手な教科は英語です。

 

 

「その情報いる?」

 

「英語と言えばこの小説のタイトル…」

 

 

『The One Story of Ours』ですね。私的には『私達の中のとある一つの物語』って感じの訳にしたつもりです。間違ってたら泡を吹いて倒れた後、何食わぬ顔でタイトルとここらへん一帯を修正して黒歴史にぶち込みます。

 

 

「証拠隠滅が手慣れている…」

 

 

うるせー! いいじゃん、英語かっこいいし!

 

 

「…………」

 

「あはは… 後設定の趣味ガーデニングって何なの?」

 

 

設定に詰め込んだすれちがい関連ですね。

Miiの三人はすべてのやみのおうを討伐した三人ですが、普段は別々に生活しています。ソードはガーデニング屋やっているのです。メタ的に言えばすれちがいガ〜デンの要素を取り入れています。

 

 

「未プレイなのにまたとにかく詰め込めの精神ね。」

 

 

まだ有料追加コンテンツに抵抗があった時代なので… 他の二人も色々詰め込んでますが数のバランスより設定のバランスを取っています。

後、世界観が壊れるピース探しの旅と辻褄が合わないすれちがい合戦と情報の少ないサクッとシリーズは取り入れられなかったのでご了承を。

 

 

「ピース探しは確かに。でも合戦もそうなの?」

 

 

なんで一国の王が別の国の王様のために命かけて戦うのかと考えると疑問になってしまいました。

Mii関係の要素を全部詰め込めばホントよくわからないことになりそう。

 

 

「レジャー施設、島のマンション、パーティゲーム…頭回ってきますね〜」

 

 

なんか楽しそうに言うなあ。

後は…アタリメ司令戦と時にチラッと言った伝承が曖昧というものは、母体から生まれたボディが違う姿をしていることの理由づけです。

もっと言ってしまえば、カムイの『噂で聞く姿が定まっていない』という設定を流用していただきました。ルフレにも使えます。これで女性の彼らが出てきても大丈夫だね!

 

 

「女性の彼ら…」

 

「…………」

 

「覚醒の異界設定も便利よね。」

 

「大体これで説明つきますね♪」

 

 

 

お次はえっーと… ヨッシー改めでっていう。

 

 

「あのー… 逆…」

 

 

ヨッシーの性格は割と安定している気がします。温厚で好奇心旺盛な男の子寄りの性格の食いしん坊。多分中性です。

 

 

「多分って…」

 

「じゃあカービィの性別は? あまり触れられてませんがメタナイトの性別も謎と捉えられても違和感はないはず。」

 

「えっ… それもそうか…?」

 

 

曖昧にして読者の想像に任せるのは任天堂でもうちでもやってるってことですよ!

 

 

「あなたは説明がつかないことを明言しないことで矛盾を作らないようにしてるだけじゃない。」

 

 

…………

 

 

「…………」

 

 

 

ジグリーパフ。日本語名をプリン。そもそも戦いが苦手な上に怖いという臆病な子です。マルス的には人が死ぬのが嫌という思考ですが、ここのプリンは戦い自体が嫌いなのです。

 

 

「似せてるようで少し違うのか。」

 

 

似せる意図はなかったのですがね。

通称亜空遅刻組の遅刻理由づけからプリンの性格を組み立てています。彼女の場合は戦いに参加したくなかったためずっとポケスタに引きこもっていたのです。

 

 

「それであそこにいたということにしたのですね。」

 

 

ちなみにトゥーンリンクの理由は寝坊でウルフの理由は仲良しこよしでやってられっか、です。

 

 

「どういうこと!?」

 

 

トゥーンリンクは見たまま。ウルフはまあ全滅寸前に追いやられていたことを知れば駆けつけてくれたでしょうか。この二人は深い理由ではないので裏設定扱いです。

 

 

「まったく…私を見習って欲しいですね〜」

 

 

亜空の使者でピット君が旅立った後何してたの?

 

 

「乱闘自体よく思っていないので基本的に人に近寄れずに大体一人でいます。別に人見知りという訳ではないですね。」

 

 

スルーせんでくれません?

 

 

 

リュウ。プレイ時では、必要なかっぺいを後回しにした結果、かっぺいごとエリアの存在を忘れてしまった、作者が謝罪しなければならないファイターです。

 

 

「実際に倒したのはキーラ戦後よ。物語の構成上、見栄えが悪くなるから先に回されたけど。」

 

 

本当にすいませんでした。

蜘蛛が苦手だったり、どこでも寝られたりとちょっと使いにくい設定があります。トワプリのスタルチュラぶつけてみたい。

 

 

「漫画のカービィみたいな過剰反応はないと思いますよ?」

 

 

ぎゃ、ギャップ萌え…

 

 

「それキャラ崩壊って言わない?」

 

 

 

ドンキーコング! 公式の性格設定ありそうでそんなになかった! いつも通りのいたストの設定です!

 

 

「あはは… そういえば最初のムービーでディディーを投げて逃がしたという考察もあったね。」

 

 

まったくの妄想とも言えません。空に逃げる時明らかに地面の方を向いてましたので自分を逃がしたドンキーコングを案じて見ていたと想像することもできます。

まあ、都合よくタルジェットつけてたのかとかディディーが庇われるのを了承したのかとか突っ込めるところはありますが。

まあ、確定事項ではないので触れない方針で。

 

 

 

お次はお次はアイスクライマー。ポポとナナのコンビです。

 

 

「それでこの二人の関係は本人すらもわからないってどういうことよ。」

 

 

そのままの意味です。ちょっとよくわからない設定があったけど特に明かされることなく終わった感じのアニメキャラをイメージしました。

 

 

「なんてイメージだ!?」

 

 

 

後犬鴨。異次元の狙撃手はどう扱えばいいのでしょうか。

 

 

「コ○ン映画みたいな言い方ですね。」

 

「○っている?」

 

「漫画原作だから出禁くらっているのよ。」

 

「…………」

 

 

多分これも、よくわからない設定があったけど特に以下略です。

 

 

「略してる…」

 

 

 

巻きで進行せよ!リトル・マック!

がっつりボクサーなので体育会系の性格になりました。アメリカ出身なのだから語尾が『〜っす』っておかしいんじゃないかなとちょっと後悔。

 

 

「けど後悔先に立たずね。」

 

 

まったくもってその通り。普段は高い相手と戦ってるのでガッツはトップクラス。デブマックは知らん。結局あれパラレル扱いでいいのんですか?

 

 

 

次、そうめん…じゃなかった。リーバル…でもない。ファルコ・ランバルディ。

 

 

「やっぱりそのいじりはあるのか…」

 

 

スターフォックス原作知らなくて。設定的にはフォックスより飛行技術高いのに性格で損する男。クールなように見えて割と熱い男ですね。というか、ファルコに限らずだけど後ろ取られすぎじゃない?

 

 

「そういうゲームですから。」

 

 

それはまあ、そうですけど…

 

 

 

後五人! みんなの電気ネズミピカチュウ。

お気づきの方もいるでしょうが、ピカチュウに限らずポケモン回では所々意図的に技名や特性を織り混ぜています。

 

 

「ふくつのこころの辺りはわかりやすかったかしら?」

 

 

ピカチュウの性格としてはよくも悪くもまとめ役気質ですね。割と方向性がバラバラなポケモン達をまとめていく感じです。ただ、今は導くものとして格上のマルスがいますのでそちらの方面の能力は発揮できそうにないです。

まとめ役気質とは言いましたが、カリスマ性があるというよりは、人に寄り添える子だから人が認めてくれる、クラスの委員長的な存在です。

 

 

「だから乱闘が苦手なプリンが自分から助けに行こうとしたのですね。」

 

 

そゆことそゆこと。

一応アニポケのマサラ人の相棒と同一とかは考えていましたが、こっちがいいかなと没。

 

 

「…………」

 

 

アニメで揃えたら、ガオガエンとポケトレどうするんだってなりません?

 

 

「…………」

 

 

そうそう。

 

 

「(これ喋ってるのか…!?)」

 

 

 

サムス。パワードスーツは彼女の意思一つで着脱可能というのは公式設定です。動揺して解除してしまった描写があります。

これとX時代のゼルダシークを思い出し、じゃマリオとDr.マリオも同じ感じにしちゃえばいいじゃん! となり、マリオの複雑な捏造設定が生まれました。

 

 

「そ、そう…」

 

 

母性ある人ですが口調は男寄り。正しい意味で洗脳された人にも銃を向けられる強い人です。

だからちょっとメンタル弱めのアザーエムは評価の良くない作品ですが、私はこういう人間ドラマ好きなのでそういったシーンも入れる予定です。彼女の精神を揺らすのにうってつけの方もいますしね。

 

 

「正しい意味でってどういう意味かしら?」

 

 

カービィとはやってることは同じでも思考回路が違うのですよ…

 

 

 

Motherの元祖… ではなく2の主人公のネスです。元祖の主人公はニンテンというデフォネームがあります。Motherシリーズはちょっとややこしい。

 

 

「このシリーズは妙な状態異常がありますよね、ホームシックをはじめとして。」

 

 

お兄ちゃんであること、子供組としてはファイター歴最長とのことで子供内ではリーダーっぽく振る舞っています。ですが、持病のホームシックがあるので甘えたくなることも。

 

 

「持病…!?」

 

 

 

 

射撃のMiiファイター、ガンナちゃん。問題児です。技も外見もデフォルト。

 

 

「Miiファイターの紅一点をどうしてこんな…」

 

 

理由としてはMiiファイターで一番重量級なことから。当然装備の所為ですがその装備を持って戦ってるのは彼女自身。それなりの握力を持つ子が後ろ向きの性格なのは違和感あります。

更に言えば、ダッシュ攻撃とか空Nとか掴み攻撃とか… 膝蹴り入れたりキャノン本体で叩くような攻撃なんですよね。そんな攻撃するなら、ってこんな攻撃的な性格に仕上げました。

 

短気ではありますが一度やったことはやりきるタイプで、接戦より完全勝利を目指すような子です。

 

 

「…………」

 

 

ふむ…例えば道場破りに行くとして、一番の強者との一戦ではなく、道場にいる全員と戦うような人です。

 

 

「…うわ……」

 

「ちょっと作者ー、ロイ君引いちゃったじゃないですかー」

 

 

ちょっと男子ーみたいに言わないでください…

設定的には、すれちがい伝説の他にシューティング、ゾンビを踏破済みです。

スマッシュアピールに置いて特許を取れるかとあったのであのキャノン自作なんだろうなと思っています。SFっぽい技術なのですれちがいシューティングをチョイスしました。ゾンビは適当です。

 

あー、それと名前は見たままにソードマン、ガンナー、ブロウラーからとってます。ブロウの名前は本人出てくるまで隠そうと思っていましたが、態々隠すものでもないな、と考えを改めました。

 

 

 

長かった… ラスト、トゥーンリンクです。

二次創作では、稀に一人称おいらなんかも見ますが大体僕かな…?

ここではトゥーンリンクをボク、こどもリンクをぼく、と対象にしています。

 

 

「へえー… 何か理由があるの?」

 

 

特に深い理由はありませんね。

リンク戦の話において、シークの回想として先行登場しています。ゼル伝シリーズのあれこれは追々聖地編でやっていく予定なので気長にお待ち下さい。

ちなみにむらびとが勇者に憧れていますが、別にトゥーンリンクは憧れとかありません。そもそもあの緑衣嫌そうな顔して受け取ってましたし、マイペースな所があるんでしょうか。

 

 

「挙げ句の果てには二周目で見えなくなるわね。」

 

 

それに対してもなんとも言えないあの顔だよ。

 

 

 

はあ、はあ… ふぃー! 終わった… ちゅかれたもお〜!

 

 

「幼児退化しないで。締めに入るわよ。」

 

 

うん… じゃ、よろしく〜…

 

 

「よろしくって… 誰が…」

 

「…………」

 

「ダークサムスがするのですね、よろしくお願いします♪」

 

「…………」

 

「…………えっと…」

 

「…………」

 

「…パルテナ、ベヨネッタ…」

 

「…………」

 

「はい、そうですね…」

 

「多分同じこと考えてるわ。」

 

「…………」

 

「作者の人選ミスだよねこれ…」

 

「作者はどこにいきましたか?」

 

「…疲労を理由に適当に切り上げたわね。」

 

「…………」

 

「次回は短めになりそうです」

 

「作者、次回覚えていらっしゃい」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四章 朽ちる明星か尽きない宵闇か
五十六話 球体と平面


五月二十七日にクロムの誕生日(マイユニ組には縁のない)と初代ドラクエ発売日が入り、二十九日にゼノブレイド ディフィニティブエディション発売!

作者が忘れん坊なので買ったゲームはともかく発売日とかの祝いはいつのまにかすぎてるんですよね。一度まとめた方がいいかな…
ちょっと忙しくてまだゼノブレイド起動できてないのです。



他に言うこと…
あっ、pixivに投稿忘れてらあ!


海へ渡り、リオレウスを討伐した時より、少々時間は遡る。二手に別れ、迷宮のようなものの構造を探っていた他のファイター達。

 

外に出れる道を見つけても、あえて残ってここの捜索を続ける者がいた。名をパックマン。ここら辺一帯がパックマンの生まれた世界にあった場所にそっくりだったのだ。ここを初めて見た時の狼狽っぷりは記憶に新しい。

 

 

「パックマン、ずっとここにいるよ!」

 

「外の道、他にも見つけたのに出ないもんねー」

 

「あ! もしかしてスネークが言ったこと気にしてるんじゃないかな!」

 

「言ったこと? ええと、たしか…」

 

 

なんとなく一緒に来たヨッシーとインクリングが会話する。ソードほどではないが、二人も退屈は嫌いな方であった。

マリオが一つ思いついたことがあり、口に出す。ピーチがマリオの言葉を反復すると…

 

 

「スネークが言ったことー」

「『俺だったら』ー」

 

「「『一人ぐらいはここに置く』ー!」」

 

「そうそう、そう言ってたわね。」

 

 

アイスクライマーの助け舟に、完全に思い出したピーチは両手を合わせる。

 

 

「でも、誰も言わなかったらマルスは残ると言い出してたと思うぞ! パックマンが残ったからここを任しただけだ!」

 

「そうなのー!? ヨッシー、びっくり!」

 

「イッシッシッシッシ」

 

 

一時的に指揮を任されているマルスも見落としの線は追っていたようだ。何もかも気づいていなかったヨッシーは両手を上げて驚いた。そしてダックハントに笑われた。更に一人。

 

 

「(そうだったんだ…)」

 

 

同じく気づいていなかったインクリング。声を上げていたら自分がヨッシーの立場にいたのだ。

 

 

「でもさそれなら、ここにいると思うから残って〜、って言えばよかったんじゃないかな?」

 

「それでも結果は変わらなかっただろう。だがな、フォックスがファルコとの戦いを自分から望んだように、自分の手で助けたい、という人もいるだろう?」

 

「ルイージとか、デイジーとか?」

 

「その二人に限らずさ。こんな狭いところより外の方がいる可能性が高い。マルスはそれをわかってたんだろうな。」

 

「でもパックマンはここの人を助けたかったから… うん、みんなハッピーだね!」

 

「ああ、そういうことだな!」

 

 

ヨッシーが納得して笑顔を見せる。キャプテン・ファルコンもそれに答えて白い歯を見せて笑った。

 

 

「ん〜、でもそろそろいないじゃあ… あっ、そっち行く?」

 

 

悩み始めたマリオの肩を、パックマンが叩いて一つのポイントを指し示す。どうやらそこに行きたいと伝えているようだ。

 

 

「OK! みんな、動くって!」

 

「はーい♪」

 

 

マリオの呼びかけに対して真っ先に反応したのはピーチだった。ちょっとした遠足気分なのかもしれない。

 

 

「はい、つい…たったった… わっ、本当にいた!」

 

 

パックマンが飛び跳ねて喜びを表現する。何回目かのワープを繰り返してようやく一人、ファイターを見つけることができたのだ。

 

 

「…っと… うわあ、詰まってる詰まってる!」

 

「うわ、うわあ!」

 

 

先頭のマリオとパックマンを押して、続くファイターが次々に入ってくる。

この迷路はそこまで狭くないのだが、壁も床も黒一色なので広さがわかりづらいのだ。

 

二人を押し倒してしまった後続達も囚われたファイターを視認した。

 

 

「いた! スネークの予想、大当たりじゃん!」

 

 

インクリングが予想の的中に驚く中、キャプテン・ファルコンがパックマンに話しかける。

 

 

「さて、パックマン。」

 

 

黄色い球体の顔を傾げる。何かの用なのか聞いているようだ。

 

 

「キミがここの捜索を言い出したのだから…」

 

「言ってないよー!」

「言ったのルカリオー!」

 

「…ルカリオが代理で、キミがここの捜索を言い出したのだからどのように挑むかはキミが決めるべきだ。オレ達も自由に使ってくれ!」

 

 

指を当てて考えた後、一人ファイターの元に近寄ってサムズアップを取る。

 

 

「ソロか。よし、パックマンが戻ってきたら合流を目指そう! オリマー達の方も気になるしな!」

 

「わかった! ともかくパックマン頑張ってね!」

 

 

右手で振り返し、左手で挑戦権を握りしめる。実際の心境はどうあれ、自分に付き合ってくれた人のためにも、必ず勝ち抜くと決意を抱いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どこかの平面世界、『フラットゾーンX』。ここにいる間は立体感がなくなるという謎の多いステージだが、こんな世界に住んでいるだろうファイターもトップクラスに謎が多いので、結局その世界が謎だらけということなのだろう。

 

 

『…』

 

 

流石に驚きはしなかった。『終点』化されたここにいるだろうとは予測できていた。Mr.ゲーム&ウォッチ、通称ウォッチ。亜空軍の戦力が厄介となるきっかけとなったファイターだ。

今回も敵に利用されているのだが、カービィ以外もそうなので非を責めることはできない。というかそういうのは理解できないだろう。

 

 

『…っ』

 

 

パックマンが蹴り飛ばした『消火栓』をふわりとジャンプしてかわす。その平面っぷりが体の軽さにも繋がっていた。

 

 

『…!』

 

 

そのまま宙で接近し、亀を武器にしてパックマンに突き出した。攻撃に一瞬怯んだが、そのまま足を狙って蹴り出した。

 

 

『…ッ!』

 

 

体の軽さは一方的な長所にはならない。たった一度の攻撃でもそれなりに距離を稼げる。少し後ろに引いただけのパックマンに対し、体一つ分は下がったMr.ゲーム&ウォッチ。素早く動けるが、一つの攻撃も致命傷になりやすくなる。

 

だからこそ、パックマンは先手を取ってガンガン攻めることにした。相手に有利を取られないように、スピードを活かせないように戦うことにする。

まずは近寄る助走を活かして『ダッシュパックバイト』。腕と足は何処へいったのか、欠けた球体になって突進する。

 

 

『…ッ』

 

 

攻撃を受けたばかりのMr.ゲーム&ウォッチには対応できる余地がなかった。宙に浮き上がり、そのままの体勢で追撃したパックマンの回転に巻き込まれる。

 

 

『…!』

 

 

だが相手もやられるばかりではなく、下向きに構えた鍵を刺され、変身が解ける。地面に着地するが、痛がる暇はない。鍵とともに着地したMr.ゲーム&ウォッチに向かって『フルーツターゲット』のイチゴを投げた。

 

 

『…』

 

 

一直線に向かってくる飛び道具を避けきり、それを追う形で走ってくるパックマンの攻撃に対応するために構える。

 

 

『…!』

 

 

球体と平面がぶつかる。

パックマンのパンチをシールドで防ぎ、『ジャッジ』のハンマーを振った。ランダムに出てくる数字によって攻撃の質が変化する技。数字によっては、パックマンにとどめを刺す技にも自身の首を絞める技にもなる。出た数字は4。

 

 

『…』

 

 

パックマンは叩かれた筈なのに身を斬られたような感覚に陥る。一撃必殺級の数字を引かれるよりはマシだった。そしてこの攻撃、そこまで破壊力のある攻撃でもなく、何とかその場に踏みとどまることができたのだ。

 

 

『…!』

 

 

トラクタービームでMr.ゲーム&ウォッチを捉える。左手に軽い体を掴み、張り手で突き飛ばす。体を飛ばされ、こちらは踏みとどまれなかった。

 

 

『…っ!』

 

 

両手を左右に突き出し、手の先に呼び出した『ピンキー&グズタ』のピンキーが、相手を平面の外へ弾き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を覚ました…かどうかは体全体が真っ黒なためにわからないが、あちこちを見たりしているところから、意識は取り戻しているようだ。関節もわからない手足を使って立ち上がる。

 

 

「ふふふ、お久しぶりね。気分はどう?」

 

 

未だピコピコと電子音のような音を鳴らしながら周囲を見渡す。亜空軍の件で彼を気に入ったピーチが話しかけた。

ちなみにパックマンはやってやったぞ、と言わんばかりにマリオとハイタッチしている。

 

 

『…? ピーチ、ピーチ、ぼく、ここだよ。』

 

「…あら? ごめんなさい。周り真っ黒だったから間違えてしまったわ。」

 

 

壁、床がMr.ゲーム&ウォッチと同じ黒色で、彼がいる場所を間違えてしまっていたようだ。

 

 

「ワッハッハ、それじゃあこんな真っ黒なところ早く出ちゃおうか!」

 

『ところでここどこ?』

 

「ボク、説明してあげるよ!」

 

 

状況の読めないMr.ゲーム&ウォッチ相手にヨッシーが先輩風を吹かす。

 

 

「…ん?」

 

 

後方で後を追おうとしていたインクリングがスルーしかけていたある事実に気づいてしまった。

 

 

「(…………喋れるの、あの子!?)」

 

 

唖然としたインクリングの背後で笑うダックハントの声すら耳に入らないほどの驚愕だった。





ヨッシー「まっくろくろすけ出ておいでー!」

ピーチ「これ大丈夫なのかしら?」

マリオ「まあ大丈夫なんじゃないかな? ここ、ニジソウサクってやつらしいし!」

CF「ワッハッハ、出てきてもここじゃあわからないと思うぜ!」

ヨッシー「アワワワワ… それもそうかー」

ウォッチ『でておいでー!』

インクリング「あれー? ウォッチどこー?」


ウォッチ『次回、『背中を押してくれた』だよ!』


ポポ「ウォッチの霊圧が…」
ナナ「消えた…!?」

ウォッチ『ここにいるよー!』

ダックハント「イッシッシッシッシ」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五十七話 背中を押してくれた

突然ですが!
うちの島のイカれた(イカれてない)メンバーを紹介するぜ!

初期メンバーの片割れシルビア!(もう一人は既に引っ越し済み)
白い体に赤いお目々ルナ!(部屋に実用性を感じない)
ナルシストは遠い目で見つめるキザノホマレ!(黄金レシピ頂戴)
初対面と印象が全然違うニコバン!(意外にランク高くてびっくり)
唯一の椅子が椅子じゃないキャロライン!(バランスボール)
今んとこ一番の推しフララ!(かわいい)
しょっちゅう物落とすエスメラルダ!(8割はポーチ)
怖い系が欲しかったジョン!(ジュンじゃないよ)
初めてあだ名つけられたプースケ!(後頭部には空気用の穴)
一番の新参リリィ!(狼系が欲しかった)

以上だ! 何か質問は!?
え? ゲムヲの設定?

・Mr.ゲーム&ウォッチ
通称ウォッチ。悪意や敵意などを持たないある意味純粋な存在。それ故に誰も嫌わないのだが、本人も悪意や敵意を感じられないのがたまに傷。



一方、海の向こうへの島へとソード達を見送ったピットとリュウ。他に残っていたスピリット達を解放していた。

軽く近辺を片付けたところでサムスを伴った子供達と電気鼠組が合流してくる。

 

 

「あっ! そっちどうだった?」

 

「あっ、はい! えと…」

 

「ネスがいたんだ!」

 

「うん? うん、ぼくがいたよ?」

 

 

前後の話がわからないのでクエスチョンマークが混じるが、とりあえずネスは肯定しておく。

 

 

「むらびとが海の向こうに島が見えたと言っていたが… それについては他が解決してるんだったな。」

 

「ああ、リンクが携帯みたいな物を触っていたら見つけたそうだ。」

 

「え、じゃあ情報料は!?」

 

「ZERO〜♪」

 

「そんなぁ!?」

 

 

無駄にいい声で金額を教えるピット。むらびとは驚いた後、ショックで膝をつき、ロックマンが慰めていた。

 

 

「情報料のことはともかく、彼らが戻ってくる前に出来る限り開拓は進めておこう。」

 

「ともかくじゃないよ…」

 

「まあまあ…」

 

「それじゃあ、あっちだ!」

 

 

ピットが橋の向こうを指差す。その橋の手前には一人のファイターがいたのだ。

 

 

「ふむ、まるで通り道を塞ぐように… いや、実際塞ぐために置いているのか。」

 

「ピカッ?」

 

 

サムスがそのファイターの方を目をやり、自然とピカチュウもそちらへ目を向ける。そして、耳をピンと立たせた。

 

 

「ピーカチュッ!」

 

 

急いでリュカの前へ行き、何かを訴えるように前足を動かしてピカピカと鳴く。

 

 

「えっ… 本当?」

 

「ピカチュ!」

 

「ピッチュウ!」

 

 

何かが伝わり、ピカチュウが頷く。ピチューはピカチュウの意図を理解し、リュカの腰を頭部で押そうとしている。

 

 

「…うん! ごめんなさい! ぼく、行きます!」

 

「あ! あの連戦…」

 

 

むらびとの静止も聞かずに走っていってしまう。

 

 

「ピカチュウ、一体何を伝えたんだ?」

 

「ピカァ…」

 

 

ピカチュウは少し悩んでジェスチャーで伝えることにした。

まず、両耳の先を帽子のつばのように顔の前で繋げる。

そこから少し間を空けて、耳を下ろし四足歩行になって尻尾の先を丸める。

また間を空けて、先程より低い姿勢の四足歩行で尻尾が体の下へしまわれ、口を鈍角の形にとんがらせる。

更に間を空けると、後ろ足で立ち、前足を翼のようにパタパタと動かして何かを吐くかの如く顔を動かした。

 

 

「…なるほど、そういうことか。」

 

「ああ、わかった。」

 

「へえ〜…」

 

「それでリュカが…」

 

「ボクでもわかった!」

 

「ふむふむ…」

 

 

ピカチュウのジェスチャーのクオリティが高く、四回やったことなどもあって全員が彼の正体を理解できた。ネスに通訳してもらえばよかったというのは後に気づいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『終点』と同じ形になった『戦場』。シンプルが故に地力が求められる。自分の戦闘能力に自身のないリュカには不安が残るステージだった。

 

 

「レッド…!」

 

『…!』

 

 

ピカチュウの言っていたことを疑っていた訳ではない。やっぱり信じたくなかっただけだ。客観的に見ればそれほど歳の変わらないはずの彼に頼もしさを感じていて、ネスと同じく強い人間の象徴だったのだ。

 

 

『…ァー!』

 

「! ゼニガメ!」

 

 

初めて出会った頃からレッドと共にいた彼の最初のパートナーをくりだす。彼は自分自身は戦わず、後方から指示を出して戦わせる異質なファイターの一人。

 

目の前のポケモンを倒した後に、レッドの方は元に戻るのか一抹の不安はある。操られているとはいえ、戦闘能力を持たない彼相手に戦える自信はない。

 

 

「(でもとりあえず勝たないと…)」

 

 

でもまずは目の前の問題だった。もしそうなったら後で考えよう。爪先で地面をつついて靴の奥に足を入れる。

 

 

「てい…!」

 

『…!』

 

 

掌から放出したPSIをぶつけようとする。しかし、レッドの指示通りにしっぽで叩かれ、手は見当違いの場所に動いた。

 

 

「…! せいっ!」

 

『…っ!』

 

 

それを認知した即座に足を出す。年相応の小さな足であったが、PSIの力で強化されたキックは年に合わず力強いものであった。

 

 

『…ェッ!』

 

「よ…」

 

 

後方へ飛ばされるゼニガメは『みずでっぽう』を吐き、リュカは『サイマグネット』で対処した。それを見てゼニガメが突っ込んでくる。水を巧みに利用して移動するので、かめのこポケモンでありながら走行速度は割と速い。

 

 

「『PKファイヤー』!」

 

 

パイロキネシス。火柱を噴き上げるPSI。向かってくるゼニガメに対して撃ったはずなのに、そこに敵の姿はなかった。

 

 

「こうたい…!」

 

『…ィッ!』

 

 

ゼニガメが主の元へ戻り、次のポケモンへとバトンタッチ。たねポケモン、フシギソウ。ポケモンの交代時に生じる誰もいない時間を使ってリュカの攻撃を回避したのだ。

ボールから飛び出した勢いのままにとっしんして攻撃した。

 

 

「いっ…!」

 

『…!』

 

 

リュカの体には13キロの重さは辛い。肺の中の空気を吐き出し、小さな体躯が転がる。

 

 

「げほっ… げほっ…」

 

 

無理に呼吸をして咳き込んだ。急いで息を整えるが、相手がわざわざ待ってくれるはずもない。じきに追撃がやってくる。

 

 

『……!』

 

『…!』

 

 

トレーナーの指示に従い、フシギソウは立ち上がったリュカに『はっぱカッター』を放つ。

 

 

「…と!」

 

 

先程と同じ技で葉を炭にする。鋭い斬れ味を持った葉だが、葉である以上、炎で燃えることは変わりない。

だが、数で勝てない。上がった火柱を避けて三枚の葉が飛んでくる。

 

 

「あっ…!」

 

 

それを認識してすぐにシールドを張る。ギリギリ間に合ったシールドは葉をはじき、リュカを守る。護りを解いてすぐにリュカは動いた。

 

 

「『PKフリーズ』ッ!」

 

『…ゥ…!』

 

『…』

 

 

冷気を込めた弾を当てる。弾速は速くはないが、凍りついたフシギソウはしばらく動けない。そんな状況でも眉一つ動かさないレッドを見て、とても悲しくなった。

 

 

「…っ!」

 

『…!』

 

 

氷塊になった相手に飛びかかる。PSIの力を持って強化された蹴りは氷を砕いて本人の体にダメージが通った。

しかし、それは相手との距離を詰めたことになる。本人が状況を理解できないのならば、離れるなりすればいいだけなのだが、生憎相手には優秀な指揮官がついている。

 

 

『………!』

 

『!』

 

「あうっ…!」

 

 

両腕に二本の『つるのムチ』が絡まり、身動きが取れなくなる。そのまま強く地面にたたきつけられた。

 

 

「うう…」

 

『…!』

 

『……アァッ!』

 

 

衝撃で起き上がれないリュカに、レッドはポケモンを入れ替えた。一番爆発力のあるエース、リザードン。強力が故に自身すらも傷つける技、『フレアドライブ』を命じた。まさにとどめに相応しい大技。

 

 

「…っ! ダメ…!」

 

 

その技を撃とうとするのを見た。それに当たればどうなるか予測もできる。立ち上がる暇はない。急いで両手にPSIの力を溜める。

 

 

「ああっ…!」

 

『…!』

 

 

それを地面にぶつけ、爆発の衝撃で飛び上がる。子供の体は簡単に浮き上がった。

 

 

「おっと… いてっ…」

 

 

自分で起こしたこととはいえ、爆風まで細かく計算できず、着地に失敗して尻餅をつく。すぐ頭を振って立ち上がった。

 

 

『ゥゥ…』

 

 

唸り声を上げるリザードン。冷たくにらめつけるその目。初めて戦った時と違ってレッドは隣じゃなくて向こうにいた。

この戦いは一人を救う戦いではなく、一人と三匹全員を救うための戦いなのだ。

その戦いに、ピカチュウとピチューは知っていて背中を押してくれた。さっきからみんなには我儘を聞いてもらってばかりだ。

 

 

「(恵まれてるよ…! ぼくやレッドのためにここまで…)」

 

 

プレッシャーすら吹き飛ぶ程に尽くしてくれて、ここまでやってくれたら、もう負けちゃいけない。

 

 

『…ゥ!』

 

「っ!」

 

 

リザードンの口から吐き出される『かえんほうしゃ』をジャンプしてかわす。PSIが込められたジャンプは通常よりも高く跳ぶ。

 

 

『……!』

 

 

当然、後を追うリザードン。翼を持つ彼にとって空だって得意な戦場の一つだ。

 

 

「いっけー!」

 

 

リュカの指先から放たれる電撃が、リザードンの右翼を撃ち抜いた。

 

 

『…ァ…!』

 

 

片方の翼が痺れ、バランスが取れずに墜落していく。

 

 

「ああぁ…!」

 

 

全開の力を込めて、回避もできないリザードンを蹴りつけた。確かな手応えを感じ、彼を視認する前にリュカの視界は黒に染まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ッ!」

 

「─ッ!」

 

 

騒がしい声が聞こえる。ああ、また二匹が喧嘩しているのか。早く起きなければ。

─あれ、なんで寝ちゃってたんだっけ?

 

 

「あっ─」

 

 

「グオ、グオオッ!」

 

「ゼニー! ゼッニ!」

 

「ソウ、ソゥ!」

 

 

「ピーカチュウ!」

 

「ダメだってば…」

 

 

いがみ合うリザードンとゼニガメ。二本の蔓で二匹の間に入るフシギソウ。よく見れば他にも見覚えある顔が喧嘩を止めようとしていた。その中の一人、リュカが起きたこちらに気づいて近寄ってくる。

 

 

「レッド、大丈夫?」

 

「あー、あんまり覚えてないけど… また助けられたな。」

 

 

ガレオムを倒した後、呆気なく気絶した自分を助けてくれた。あの時は素直に感謝していたが、後から思うと恥ずかしくなった。

その時と同じように手を差し出される。

 

 

「でも… 最初に助けられたのはぼくで… 今もみんなに助けられたんだよ。」

 

「そうか…」

 

 

差し出された手を握り返す。

まだ、キーラは生き残っている。

 

 

「一緒に頑張ろう?」

 

「ああ!」

 

 

また共に戦おう。

立ち上がり、まずは喧嘩真っ最中のあの二匹を鎮めることにした。





リュカ「ボク一つ思ったんだけど…」

レッド「ん? どうした?」

リュカ「多分ポケモンを操ってたのはキーラだよね? なんでレッドに指示させてるんだろう…?」

レッド「確かに…」

ピット「ふふふ… 名探偵コ…ピットが当てて見せよう!」

レッド「うわ、出た!」

ピット「出たって失礼だなぁ!?」


レッド「次回、『最高に怒り狂っている』!」


レッド「ま、いいか… で、なんでなんだ?」

ピット「キーラはごっこ遊びが好きなのさ!」

リュカ「それは… そうかもしれない…」

レッド「パックマンのとことか再現してるもんなあ…」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五十八話 最高に怒り狂っている

青バラはドコー? 紫ヒヤシンスドコー?
血管爆発しそうになりながら花に水をかけ続ける私は紛うことなき変質者。


さて、もうすぐポケモン剣盾DLC配信しますがちゃんとパス買いましたか? 私はまだです()

というわけなので(?)
ポケモントレーナーことレッドくん達の設定でございます。

・ポケモントレーナー
名前はレッド。チャンピオンを目指すトレーナー。野宿の経験があり、意外と家庭的な旅人である。

・ゼニガメ
性別♂。やんちゃな性格。からいものが好き。レッドの初めてのポケモン。リザードンとは仲が悪く、しょっちゅう喧嘩する。

・フシギソウ
性別♀。すなおな性格。なんでもよく食べる。しっかり者で、よく喧嘩する二人の仲裁役。

・リザードン
性別♂。なまいきな性格。にがいものが好き。ゼニガメとは仲が悪く、喧嘩の絶えない。


地鳴りのようなものが起き、喧嘩も中止されて空を見上げる。

 

キーラの周りの空気がガラスのように割れるのを見た。

 

 

「ピチュー…」

 

「あ、今の…」

 

「誰かがボス的なやつ倒したんだよ!」

 

「あっ、マリオ。」

 

 

先の道の脇からマリオやパックマン達が声をかける。どうやら迷路の出口の一つがつながっていたらしい。

 

 

「ボス的?」

 

「辺りのスピリットより、うーんと強いんだ!」

 

「スピリット?」

 

「それなんだ?」

 

「あ、そういえばレッドとネスはまだ知らなかったね…」

 

 

疑問を浮かべる二人を見て、リュカが思い出したように言う。まだこの二人には詳しい事情を教えていなかった。

 

 

「う〜ん… つまりそのボス的なやつを倒したのは…」

 

「私達と別れて孤島に行ったオリマー達か、」

 

「知らない土地を見ているマルス達だわ。」

 

 

ここにいない誰か。

それはお互いにわかった。後は合流してキーラの元へと向かうだけ。

 

 

「それじゃあここで待つか、マルスとかを探しにいくかぶわあ!?」

 

「「インクリング!?」」

 

 

インクリングの言葉が途中で叫び声に変わる。彼女の頭を通過点に通っていった炎。

出所の方を見るとリザードンの口がこちらへ向いていた。ゼニガメは少し違うところで着地している。いつのまにか喧嘩が再開されていて、ゼニガメが避けた結果、インクリングに火が当たってしまったそうだ。

真っ黒の顔で恨めしそうに睨みながらインクリングはケホケホと黒い煙をはいた。

 

 

「なあにしてるんだっ!!」

 

「ゼニャー!」

 

「グワウォ!」

 

 

こいつが悪いと主張する二匹にレッドのかみなりが落ちる。ピカチュウと、身内のフシギソウも加わり、大説教会が始まる。それはオリマー達が彼らを見つけるまで続いた。

 

 

 

 

レッド達のいる場所から遥か遠く…ではない。割と近い場所。マルスが見上げる空には、守る結界がなくなり、丸裸になったキーラがいる。

 

 

「(どこで誰がやったのかわからないけど… これでキーラを討つことができる。)」

 

 

防壁が完全に消えても、キーラは何かをしてくる様子はない。ファイター達の刃が届くところにあるにも関わらずだ。

一体奴は何がしたい?

ファイター達を捕らえたのは自分達の抵抗を防ぐ他に何か理由があるのだろうか?

 

 

「マルス? 何かあったのか?」

 

「シーク、ごめん、少し考え事をしてたんだ。」

 

「…ああ、キーラのことか。リベンジの時は近いね。」

 

「うん。今度は負けない…!」

 

 

仲間が助けられずに散っていく。そんな光景はもう御免だ。勝利する確率を少しでも上げるため、被害者を救うためにジャングルの森林へと入っていく。

 

 

 

 

鬱蒼と木々の生えるジャングル。長い一本道が敷かれ、スピリットは道なりに配置されてあったのだ。

 

 

「…おっ? よう、大将。何してたんだよ?」

 

「ファルコ。少し考え事をね。」

 

「考え事だぁ? はあ… それよりコイツなんとかしてくれ。」

 

「ジュニアアアァァァ!」

 

「うるせぇ!」

 

 

背後で息子の名を叫ぶクッパに、元来短気なファルコの足がでた。回し蹴りを手で防ぎ、あわや一触即発だ。

 

 

「落ち着けってば…」

 

「まあまあ…」

 

「はあ…」

 

 

急いで戻ってきたフォックスがファルコを、マルスがクッパを諫めにいく。シークは動かずにため息をついた。

 

 

「(なんでこんな…)」

 

「(さっきの荒野っぽいところで探索が打ちきりになっただろ? それでちょっと荒れてるんだ。)」

 

「(ちょっとどころじゃないよ…)」

 

 

線路の敷かれた荒野。迷路を抜けた先の世界。そこで捜索をしていたのだが、徒歩でいける場所には限界があった。スピリットにもファイターにもなんとか出来るような人材はなかったので先にここのジャングルに来たのだった。

 

 

「(奥には誰か行ってる?)」

 

「(結構人数行ってるぞ。先頭はドンキーだな。ここにはアイツの世界の住民が多くいたらしい。)」

 

「(…! ということは…)」

 

 

変に拘りの強いこの世界。

きっと最深部には─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

両手に持っている『ピーナッツ・ポップガン』の引き金が引かれる。襲いかかる落花生。

手も地面につけての四足歩行で図体の割に素早く動いて弾幕を潜り抜ける。拳が届く距離になった。

 

 

「ホッ!!」

 

『…!』

 

 

振るった拳は長い尻尾をかすめるだけだった。ドンキーコングの胸部を足場にして跳躍するディディーコング。

 

『終点』の形の『コンゴジャングル』ではドンキーコングとディディーコングの相棒同士の乱闘が既に始まっていた。

 

 

「ゥゥ…ホッオオー!」

 

『…ッ!』

 

 

両手を次々と地面に叩きつけ、地震かと錯覚する程の揺れを起こす。唸り声に空気が揺れ、相手も思わず膝をついた。

 

ドンキーコングは今、最高に怒り狂っている。

 

 

『…ッ!!』

 

 

柔軟な足腰を活かして跳びかかる。スピードと軽さで劣っているのはどう足掻こうと変わらない。

 

 

「ウゥゥゥ…!」

 

『…ィッ…!?』

 

 

だが、誤魔化すことはできる。相手は相棒。その速さは意図せずとも記憶している。ならばまっすぐ飛んでくるディディーコングを捉えることは難しいことではない。

 

蹴りのために向けられた足を掴み、地面に向けてヘッドバット。一瞬の間に逆方向からも衝撃がくる。

 

 

「…!」

 

 

地に伏せる相手の背に、熱を持った何かが垣間見える。これは『バレルジェット』か。攻撃を中断し、後ろへ跳んで離れる。

夕焼けの空を見る状態ながら、ジェットを器用に動かして立ち上がる。

 

 

「……ゴオォォォォ!」

 

 

ドンキーコングが吠える。吠える。

胸を叩いて闘気を隠すことなく、見せつけた。身内の状況を見て、ようやく完全に理解できた。彼の火山が噴火し、溶岩が噴き大地を燃やした。元凶が相棒にやったこと、この怒りをまだ直接元凶にぶつけられないこと。

 

本音を隠して穏便に済ませる知恵を持つ人間と違い、彼は野生の中で生きてきた。だからかあまり感情を隠すことはせず嫌なものは嫌だとはっきり言う。それでも今回は過去最高レベルだった。

 

 

『…!』

 

 

操られている筈のディディーコングも気圧されたような仕草を見せる。そんなものドンキーコング本人には今はどうでもよかったのだが。

 

 

「ウゥ!」

 

『…ッ!?』

 

 

両腕を振り回し、相手を捻じ伏せる。大車輪のような回転に巻き込まれ、軽いディディーコングは簡単に吹き飛ばされる。速さとは違い、ドンキーコングが勝るパワーでは正面勝負ではまず勝てない。

 

 

「ゥゥ…!!」

 

 

吹っ飛ばされた体躯に前転のタックル。この攻撃は避けることは出来なかったが、頻繁に揺れる視界でなんとか位置取りの把握ができた。

 

 

『ィー…!』

 

「ウッ…!?」

 

 

空中を足場にしてドンキーコングに跳びかかる。先程と違い、前転していたドンキーコングに対処の時間はない。顔につかみかかられ、視界が潰れた。

 

 

「ウオォォ!」

 

『…!』

 

 

狼狽するドンキーコング、チャンスとばかりに顔面を引っ掻くディディーコング。

顔面の痛みで状況がわかり、頭を振って振り払った。ディディーコングの体が離れていく。

 

 

「グウッ!」

 

 

そしてその離れていく感触をドンキーコングは見逃さなかった。

敵の体に貼りつく戦法は諸刃の剣のようなもの。攻撃し放題だが、され放題とも言える。

今は相手、でもこれが終われば─

 

 

「ウウゥッ!」

 

『キィ…!?』

 

 

『ダイナクラップ』。両手で挟み潰す攻撃は的確にディディーコングを襲った。

飛ばされた相棒が離れていく─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…んで、この珍獣共は何してんだよ?」

 

「やめなさい…」

 

 

今現在、救出された全てのファイターがジャングルの最深部に集まっている。何故かバナナが山積みにされたそこには食いしん坊共が平らげている。ドンキーコング、ディディーコングの他、カービィやリンクの姿もある。クッパは未だにファルコと口喧嘩していた。ガンナが苦言を漏らすのも無理のない光景だった。口は悪いのは相変わらずだが。

 

 

「ウキキ、ウキキキ?」

 

「ウホッ! よくわからないけどここにあったんだ!」

 

「ばななー!」

 

 

一気に皮が量産されていく。もう何を言っても聞きやしない。彼らは放っておいて話を進めることにした。

 

 

「巨大な…ドラゴンのようなものがいた。恐らくそれが最後の砦だったのだろう。」

 

「そうか、君達が倒してくれたのか… ありがとう。」

 

「じゃあキーラにレッツゴー! だね!」

 

 

オリマー、マルス、マリオなどが中心になって今後の行動を決める。

 

 

「ああそれなんだけど、まっすぐは行かない。未探索の場所をまわっていくつもりだ。もしかしたらまだ誰かいるかもしれない。」

 

「あー、そのことだけどよ、」

 

 

ガンナが声を上げる。視線が彼女に集まる。

 

 

「ファイターまだこんだけしかいねえの? 半分ちょっとってとこじゃん?」

 

 

ファイター達の空気が凍る。確かにガンナは無駄に隠し事をするような性格ではないが、ここまではっきり言うのか。

 

 

「そんなはっきり言うことないじゃないか!?」

 

「ああん? なんだ鶏ガラ。」

 

「天使だよ!!」

 

「…もしかして、やっとキーラと戦えるという状況で未だ半分ほどしかいないのか、ということか?」

 

「当たり。」

 

 

オリマーが自分も考えていたことを補足する。どうやら同じことを思っていたらしい。

 

 

「…ああ、まさか俺たちに気づけてないとは思えない。ならあの時と同じようにビームみたいなもん使えばいい。」

 

「残りの人がまだ探索していない場所にいるのは… いえ、流石にありませんね…」

 

「うーん… こういう時は… 戦力とっときたいのかな?」

 

「戦力…」

 

 

インクリングの言葉に何かを考えるマルス。同じようなことは自分も思っていた。

何故か? 直接対決の時にぶつけるつもりか?

ならばこの世界にファイターを置く必要はない。カービィ相手に他全員をぶつければいいだけだ。自分達相手に身を守る必要はあったけどある程度の戦力は欲しかったということか?

 

 

「キーラには… 僕たちを倒す以外に何か目的があるのかもしれない。」

 

「目的って…なんの?」

 

「それはわからない。でも戦力がいる目的だ。」

 

「キーラ自身何かと戦ってるんじゃないのか?」

 

「…そうかもしれない。僕たちを倒すだけならボディを複製させる理由が見つからない。」

 

 

スネークの予想が一番納得がいった。だが、あくまで予想である。根拠はない。

 

 

「…でもどの道キーラは倒さなきゃな。」

 

「うん。方針を変える必要はなさそうだ。このまま行こう。」

 

 

予想は予想。考えていてもわからないことだった。助けられる人を助けない理由はない。今は前進するしか道がなかった。




ソード「合流出来たよー!」

フォックス「分断すると広くスポットは当たるけど合流シーンも書かなきゃいけないから大変だな…」

ソード「ハハハ、ところであっちのスリーパーソンズは何してると思う?」

ファルコ「不意打ちして乱入とかいい度胸してんじゃねえか、あ゛あ゛?」

ガンナ「私は混ぜろと言った。それを不意打ちっつーならおめえらがただ鈍チンってだけだろ」

クッパ「キサマの癖に生意気だなあ? ワガハイを誰だと思ってる?」

ガンナ「カメとトリ以外のなんなんですかあ〜?」


フォックス「次回、『あいがと』!」


ファルコ「んだとォ!! この暴力女!」

クッパ「ワガハイの恐ろしさを教えてやる…!!」

ガンナ「上等だ、てめえらの冗談みたいな面、二度と元に戻らねえようにしてやる…!」

ソード「いやー、ピースフル!」

フォックス「何見て言ってるんだよ…」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五十九話 あいがと

あーーーーーあかんべ完全に忘れてたああああああ
これだから予約投稿しろとあれほどおおおおおおおおおおおおお


ポケモンDLCもARMSの使い方も前書きで語ろうと思ったのにこれは禊確定


 

密林を抜け、更なる大地を捜索する。空に浮かぶ雲の一つに光の足場のようなものがかかっているのを妹の望遠鏡でトゥーンリンクが見つけた。

 

これにより最終的な目的地が判明し、そこへ向かうのがキーラへの道しるべとなる。

勿論、道中にいるスピリットやファイターの解放も忘れてはいけない。不自然な自然の中に配置された被害者を救うことも目的の一つだ。

 

 

「んー…」

 

 

望遠鏡の覗き込む方とは逆側から大きな猫目が見える。トゥーンリンクが見ているのは滝の水源となるだろう崖の頂。しかし、距離的な問題ではなく、角度的な問題で頂点は見えなかった。

 

 

「むうー…」

 

 

自分が見つけたファイターのことが気になったが、汽車の整備に自分の体を貸してほしいというのを思い出し、離れる。徒歩では捜索に限界があったらしく、スピリットの力がほしいとのことだった。

一度振り向くが、こちらが先決とばかりに始発駅の方へ向かう。

 

 

 

 

トゥーンリンクが見つけたファイターの目の前。ルカリオは座り込みながら彼の到着を待っていた。側にはレッドの姿もある。

 

 

『…ようやく来たか………』

 

「ぽよ?」

 

 

ルカリオの待っていたのはカービィだった。ここ一帯の解放戦の一員として参加していたもの。ここまで来れなければ何のためにレッドを止めていたのかわからない。

 

 

「待ってたのってカービィなのか?」

 

『ああ、とりあえず行け。話はそれからだ。』

 

「…ぽぅ。」

 

 

未だ不思議そうな顔をしているが、言われた通りにファイターの解放に挑みにいく。ワープしていく彼の後ろ姿を二人は見ていた。

 

 

「…もしかしてわざと負けてたのか?」

 

 

そう、ルカリオは一度目の前の相手に敗北していた。フィギュアになっていたところをレッドが元の姿に戻したのだった。続けていこうとするレッドをルカリオはずっと止めていたのだ。

 

 

『私の中に迷いはあったのかもしれないが… 負けようと思って負けた訳ではない。』

 

「そう、なのか…」

 

 

カービィと同郷のものだったのか? この状況についての経験が足りないレッドは不思議そうにしていたカービィの様子を疑問に思うことはできなかった。同郷ならば本人だって感覚でわかるのだ。

 

 

『しかしあの感情… 操られているとは思えないほど強かった…』

 

「感情って…何の?」

 

 

レッドの素朴な疑問。波導を感じ取れるルカリオだからこそわかったもの。短く、簡潔に彼は答える。

 

 

『…………後悔。そして─』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その平原は広く、夜空の星が見下ろしている。大地の上に大地のあるその場所は神の骸。そこにすむ種族達は『ガウル平原』と呼んでいた。同じものでもなく、『終点』型の模造品ではあるが。

 

 

「あっ…」

 

『…!』

 

 

ルカリオが自分に勧めた理由を一瞬のうちに理解してしまった。そこにいた金髪の青年…シュルクは自分がここにいれる要因をつくってくれた者で。少し前にルカリオに助けたいと挙げた人だった。

 

青白い光の刃は既に起動しており、ルカリオとの戦いの後遺症か疲弊しているように見える。

でもそれすらも上回る存在感を出すたった一つの激しい感情。そのようなものに疎いカービィにはわからなかった。

 

 

『…ッ!』

 

「ぽよっ」

 

 

横薙ぎの一閃をしゃがんでかわす。その状態から跳び上がっての頭突きがシュルクの胸部に吸い込まれる。当たりはしたが、膝で蹴られ転々と地面を転がる。

 

 

『…!』

 

 

うつ伏せ状態のままのカービィを尻目にモナドの力が解放される。シュルクの能力を一時的に特化させる技『モナドアーツ』。斬の力、バスターは与えるダメージを上げる技。ここからとどめに繋げるためにダメージを溜めるつもりだろう。軽めのカービィには致命傷となる。

 

 

「ぽ〜… うわっ!?」

 

 

対策をじっくり考えさせてもくれやしない。紫色の光が宿ったモナドに斬りかかられる。咄嗟に『ファイナルカッター』で防ごうとするも、相手が神が使った剣となると流石に武が悪かった。

 

 

「うにっ…!」

 

 

とばされるカービィに対してシュルクは攻撃の手を緩めない。斬り上げる形で更なる一撃を加えようとする。

 

 

「ぷいっ、すおおぉぉ…!」

 

『…ッ!!』

 

 

横にとんでシュルクを『すいこむ』。斬りあげの体勢、つまり重心が上にあるシュルクに足で踏ん張って抵抗する暇は残されていなかった。

カービィのどこからかからシュルクがとびだした時には、カービィの背中にシュルクと同じ赤い剣が背負われていた。

 

ようはモナドにはモナドで対抗しようというハンムラビ法典リスペクトの単純な攻略だった。しかし、同じアーツを使ってもリーチは、武器を扱うシュルクが上な以上、工夫しなくては押し切られるだけだ。ここは─

 

 

「…はしるっ!」

 

 

走力の強化。赤い足に水色の光が宿った。走り出すカービィにその場で迎えうつシュルク。

 

 

『…っ』

 

「とっとっとっ!」

 

 

防御に構えるモナドを避けて、三段蹴りをいれる。もう一撃はシールドで防がれた。

モナドはそれなりの重量があり、シュルクも基本は両手で持っている。故に素早い攻撃には対応が難しいのだ。

同時にアーツの時間切れが訪れ、強化の光が消えていく。双方すぐさま次のアーツを選んだ。

 

 

「とぶっ!」

 

『……ッ!』

 

 

カービィは翔、シュルクは盾。

カービィ自身が得意な飛行能力を更に強化し、シュルクは防衛に挑む。

アーツは一方的な強化ではなく、弱体化する能力もある。通常ですら追いつけるかわからないのに跳躍力を下げられたら敵うはずもない。

 

 

「ぷぃ!」

 

『……!』

 

 

遥か上空からの『ストーン』を歯を踏ん張って耐えるシュルク。敵うまいと初めからわかるならば無駄に追いかけず、対応に集中できる。カービィの強化が無意味なものになりかけていた。

 

 

『…ッ!』

 

「うわぁっ…!」

 

 

元の姿に戻ったカービィに背後から『バックスラッシュ』を仕掛けた。今、シュルクは攻撃力も下がっているが、カービィも守備力が下がっていて大体プラマイゼロ。いや、『バックスラッシュ』を背中で受けたのでシュルクにはプラスになってしまった。短い強化もお互いに解ける。

 

 

「ょ…!」

 

 

とばされたまま、根気で体をひっくり返す。鈍足も解けてありのままのスピードで走るシュルク。いや、また『モナドアーツ』の切り替えをしている。そろそろ勝負を決めようとしているのか。ならば─

 

 

『……ゥッ!』

 

「まもりゅ!」

 

 

黄色の光、シールドのアーツがカービィの体を包む。空中でシールドは張れないし、回避も難しい。ならば耐えきるしかない。

シュルクのアーツはスマッシュ。シールドのアーツを選んでなければ仕留められていただろう。

 

 

『……!!』

 

「いぃ…!」

 

 

今は耐えるしかなかった。ぶっとばし力が底上げされている今のシュルクの攻撃は一発でも致命傷になりえる。鈍足な今の身では回避も難しくなり、シールドを広げて連続斬りを耐える。

 

 

『………───ッ!!!』

 

「…!? しゅるく…!?」

 

 

らしくない乱雑で勢い任せな戦い。

支配されているはずのシュルクの目に、明らかに拒絶の色が見えたのだ。それこそカービィでもわかるほどに。身に覚えのないカービィとしては困惑するしかなかった。

 

 

「…! ぷぃ!」

 

『…!』

 

 

アーツの制限時間をさとり、『ハンマー』を振って乱打に使われていたモナドを弾く。モナドに傷などつかないが、使い手がこれでは負けよう。

振った勢いそのままに一回転して今度はシュルク本人に当てる。ステージ外までとばされ、それと同時にアーツも消え去る。

 

 

「……」

 

 

背中に背負っている小さなモナドを両手で構える。

優しい救い方を彼は知らない。シュルクの本心に一言伝えるために、今は加減をしないだけ。

 

 

「すまぁっしゅっ!」

 

 

中心に撃の字が浮かび、赤い光が手に宿る。

復帰しようとするシュルク。カービィはモナドを背負い直し、木槌を握る。

 

 

『…!!』

 

「いけえぇぇ!」

 

 

ステージを蹴り出し、空へ飛び出す。

『ハンマー』に炎が燃え上がる。

たった一振りで彼の身を撃ち飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………く…」

 

 

声?

誰の?

 

 

「…ゅ…くー?」

 

 

呼んでる?

 

 

「しゅるくー!!」

 

「わっ…!?」

 

 

聴覚がクリアになって、後を追う様に視覚と意識が鮮明になる。

 

 

「う…あ…」

 

 

でも体はついてこない。どうにか上体を起こし、言葉にならない音を喉から搾り出す。

 

 

「…カービィ?」

 

 

目を潤ませるピンクの悪魔。そんな態度を取られる覚えはなく、ただ状況に戸惑う。

 

 

「ぷぅ〜… ぷぅやあぁ…!」

 

「うわっ!?」

 

 

突然号泣されながら飛びつかれ、起きた上体はまた地面と仲良く雑魚寝状態だ。全くもって何がなんだかわからない。

 

 

『カービィはデデデやメタナイトだけじゃなく、ずっとお前も探していた。』

 

「ルカリオ…」

 

 

どうしてここにいるんだろう。

ルカリオは避けきれずに、後ろのレッドは押しきれずにあの光に呑まれていったはずなのに。

 

 

「そんな… でも僕は未来を」

 

 

変えられなかった。

言葉は出ずに、代わりに涙が溢れてくる。

みんなの敗北を二度見た。避けきれず、押し切れず、逃げきれなかった仲間の姿。もうみたくなくて、ただひたすらに孤独でありたいと願ったことだけは鮮明に覚えている。

 

 

『お前が未来を見たおかげだ。そのおかげでカービィはいち早く離脱することができたんだ。』

 

「えっ…」

 

 

言葉が詰まる。起き上がれず、顔を出来るだけルカリオの方へ向ける。

 

 

『見た未来は変わらなかった。でも更に未来は変えたんだ。お前と、カービィのおかげで…』

 

「………」

 

 

空を仰ぐ。

ルカリオの伝えた事実にまだ実感が湧かない。

 

 

「しゅるくー」

 

「カービィ…」

 

 

体にくっついていたカービィが視界に入るところまでよじ登ってくる。少し顔を上げた。彼の鮮やかなピンク色が見つめてくる。

 

 

「あいがとっ!」

 

「あっ…あっ…」

 

 

舌足らずで単純な言葉。

それがなにより頭に響いてきて。

後悔の涙はすぐに嬉し涙に変わっていって。

 

 

「はは… 言えてないって… 言えてないよ…カービィ…」

 

「ぷ?」

 

 

腕で目を隠して照れ隠しで返す。

カービィはよくわからないままにすまし顔で首を傾けた。





カービィ「たたく! とぶ!」

シュルク「カービィ、それ… 僕の真似?」

カービィ「あそぶ! ねむる!」

シュルク「あはは、あるといいね、そんなアーツも。」


シュルク「次回、『負けてはいられない』!」


カービィ 「たべる! うたう!」

シュルク「やめてえぇー!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

六十話 負けられない

ミェンミェン参戦、ポケモン新作アプリ、FEif発売記念日に64発売記念日にソニック映画公開にああああああああああああ追いつかないよおおおおお

字幕で見ようとしてたけど地元じゃ吹替しかやってないよおおおお
あと本日投稿早いけど先週忘れやがった禊だよおおおおおおおお
この辺り詰め込みが激しくなるよおおおおおおおおおおお
相変わらず青薔薇は咲かないよおおおおお紫ヒヤシンスは意図してないところで咲いてびっくりしたよおおおおおおおおおおおおお


 

ガタンとレールによる揺れが、乗っている自分にも伝わる。すっかり懐かれてしまい、膝の上で寝ているカービィを撫でながら、ぼんやりと外を見つめていた。

 

 

「おーい、おいおーい、シュルクー? なにお外をルックしてるのー?」

 

「ソード、いや特に理由はないよ。色々あったなあ、って思ってただけ。」

 

 

前方の席に座るソードがひょっこり顔を出しての問いに意識は外に向いたまま答える。

こんな変な世界に呼ばれて、なんの因果かとっくに手放したモナドを握って、果てはキーラと戦っている。今更ながらに不思議なことばかりだった。

 

 

「??」

 

「おい、エセ外国人。これに乗ってる理由忘れんなよ。」

 

「スピリットのサーチ!」

 

「私の相手の捜索だ、バカが。」

 

 

わかっていないソードの隣に座るガンナの俺様気質は止まることを知らず。根っからのバーサーカーのとんでも理論である。

 

 

「んなこと言ってるお前がバカだろ。」

 

「ソード、お前の認識であってるから。後ファルコ、そんな口いれると…」

 

「鳥頭が何様ぁ? 実に遠回しな自己紹介だあっ!」

 

「んだとコラァ!?」

 

「こうなるだろ!?」

 

 

両手を広げ道化のように反撃するガンナに、シュルクの席とは通路を挟んで隣のファルコが立ち上がる。

互いに窓側だったのが幸いに暴力はなかったが、そのかわりに口喧嘩に発展した。非常にうるさいのでシュルクは遠い目をしながら聞き流す。

 

 

「しかし、カービィはよく起きないな…」

 

「うん… どんな夢見てるんだろう… カービィ、それハンバーグじゃなくて僕の手」

 

 

撫でてた手に食らいついていたカービィ。シュルクの言葉に口を開く。結局聞こえてるんだか聞こえていないんだか。

 

 

「えっと… 後一つ聞きたいことが…」

 

「なんだ?」

 

「なんでソードは縛られているの?」

 

「イット、イット!」

 

 

前の座席からまたソードの顔が飛び出す。胴体はロープでぐるぐる巻きだ。完全同意のソードに向けられたフォックスの視線は冷ややかなものだった。

 

 

「前科あるじゃないか…」

 

「前科ァ!? ナッシング! ナッシング!」

 

「(前科…!? 何したんだ一体!?)」

 

 

 

 

まあ、こんな一幕があったかはさておき。

 

 

『終点ー、ナントカ火山ー、これ以上は進めないから降りてねー』

 

「ふむ…」

 

 

運転席のトゥーンリンクから、スピリットが抜け出し、程なくして他ファイターたちも汽車を降りる。隅々まで周った結果、火山の麓までしかレールが敷かれていなかった。

 

 

「火山か…」

 

 

流れでる溶岩すら見えている火山。あらゆる環境に耐えれるように作られているパワードスーツ。それを着ているサムスは我慢すれば済む話だが、どうしようもない者だっている。

 

 

「「暑ううぅいよぉ〜…」」

 

「大丈夫!?」

 

 

特にしっかり着込んでいるアイスクライマーの二人は想像を絶する暑さだろう。他もどれだけ持つかわからない。二人を心配するマリオも口にはしないが厚めのオーバーオールだ。

ファイター全員が帽子を脱いだりとできる工夫はしているが焼け石に水状態だ。速く抜けなければもたない。

 

 

「申し訳ないけどひとまず先に進めれる人だけで進もう。アイスクライマーの二人がもちそうにない。」

 

「「そうする〜…」」

 

「ガアッハッハッハ! 情けない奴らめ!」

 

 

クッパが笑うが、反応できる余力などない。汽車のある麓まで戻っていく。

 

 

「そっか、じゃあ真っ先に進むんだね!」

 

「キサマに言われるまでもない。有象無象などワガハイかかればチョチョイのチョイだ!」

 

「じゃあ先頭を頼んだ。」

 

「まかせろ! うおおおお!」

 

「扱いやすいな…」

 

 

マリオの挑発にも似た煽りに乗っかってスネークが先に進ませる。自分でやっておいて率直な感想を漏らした。

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

思わず無言になってしまう。目の前の自分にどう反応したらいいものか。

 

道を塞ぐスピリットを倒し、開けた不思議な場所についた。今頃ピカチュウあたりが一声かけに行ってくるだろう。ならば他がすることといえば、開通させる過程で放置した他スピリットの解放。そう判断したサムスは一人いたファイターの元へ向かったのだが…

 

 

「はあ…」

 

「…あ〜…」

 

 

マリオが微妙な顔をしたサムスを見て、何かを察したようだ。この二人には一人で二人分のファイターの顔を持つという共通点があった。だからこそ、サムスが話さずとも理解できたのだ。

 

 

「よし! スーパースターのボクにまかせて! 手っ取り早く…」

 

「いや、構わない。私がやろう。自分の癖は自分が一番知っている。」

 

「オォ…」

 

 

自分の時は、Wii Fit トレーナーに任せたマリオが膝から崩れ落ちる。そのことを知らないサムスは疑問に思いながらもこちらが優先と彼を残して挑む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(さて…)」

 

 

目の前の自分に銃口を向ける。パワードスーツを着た自分とは違い、己の身体能力と少ない武器で戦う自分。速さでは勝てないだろうが、武装はこちらが上だ。

 

『終点』の形をした『ブリンスタ深部』で二人のサムスが激突する。

 

『チャージショット』を、走りながらも屈んで避ける。相手が自分でも、サムスは冷静に判断できた。相手が銃を持つ手を上げる。次は─

 

 

「(『プラズマウィップ』!!)」

 

『…!』

 

 

銃から放たれたしなる電撃を、モーフボール状態になって回避する。電撃が引いたタイミングで元に戻り、アームの銃口を向ける。

 

 

「ハッ!」

 

『…っ!』

 

 

先端から爆発が起きる。この距離ではそう簡単に避けることはできない。

 

 

「(手応えがあまりない。爆発の直前に後ろへ跳んだのか。)」

 

 

足の踏ん張りが効かなくなった結果大きくぶっとばされるが、直撃を受けず体への衝撃を流せるのでダメージが小さくなるというからくりだ。いつでも使えるものではないが、あるに越したことはない。

 

 

「…! ─っ!」

 

『…っ!』

 

 

痺れる弾丸、『パラライザー』が飛んでくる。それをわかっていながら、歯を食いしばって無理やり突っ込む。多少はスーツで防げるだろう。走りだした勢いそのままにタックルでぶつかる。しなやかな肉体は容易く吹き飛ばされる。

 

 

『…!』

 

「うっ」

 

 

ブーツのジェットが噴射し、飛ばされた勢いに逆らいそのまま蹴りだす。彼女の筋力にジェットの勢いが加わり、パワードスーツを着たサムスも大きく仰反るほどの威力となった。幾らサムスが冷静に戦えても、自分と自分を比べたことはないのだから仕方ないのかもしれない。

 

 

『……』

 

 

そして、その攻撃を放った相手もまたサムス。こんな大きな隙を逃す訳がないのはサムス自身わかっていた。わかってはいたが、どうしようもない。スーツ込みでこのスピードに追いつけるわけがなかった。

 

 

「…─っ!」

 

 

蹴りとジェットの衝撃が同時にくる。同一人物であるからこそ能力の差がなく、スーツや武装の違いによる得手不得手が如実に現れるのだ。

 

 

『…!!』

 

 

銃を上げて距離を詰める。ジェットによりさらにスピードが上がる。だが、その素早さは手に入らなくてもスーツのメリットで戦えばいい。

モーフボールで跳び上がる。ジェットまでついてしまえば速くはなるが方向転換ができない。

 

 

『…!』

 

 

無意識に視線はサムスを追い、置かれた『ボム』の存在には気づかなかった。腰を捻って背後の爆風に向けて『ミサイル』を発射する。武装の多さは選択肢の多さ。選択肢の多さは強さにつながる。

 

 

「…!」

 

『…っ!』

 

 

爆風を抜け、足を構えるゼロスーツサムス。腕を組んで構えるサムス。

 

 

「『…─っ!」』

 

 

防御に回った腕と回し蹴りがぶつかり合う。腕を押し出し、吹き飛ばす。飛ばされた側はスタッとスマートに着地した。

 

 

「…っ!」

 

 

まっすぐ飛ぶ『スーパーミサイル』を跳び上がってかわし、空中で撃った『パラライザー』がサムスに当たり、しびれされる。とどめと言わんばかりのゼロスーツサムスのかかと落としが迫りくる。

 

 

「………」

 

 

 

 

「悪いな。私達は負けていられない。」

 

 

 

 

『…!?』

 

 

それは誰かに対する謝罪だったのか、それとも深い意味のない独り言か。ゼロスーツサムスの真下をくぐり、背後からキャノンの殴打がとぶ。ぶっ飛ばされた自分をサムスは静かに見つめていた。





アイクラ「「あつい…」」

オリマー「そんな服着てるから… 一度脱ぎなさい。」

アイクラ「「でもお揃いがいいー…」」

ルカリオ『…そういえば聞いたことがある。』

ロックマン「何を?」

ルカリオ『とあるライバルの服を無理やり脱がして潜入作戦を台無しにしたトレーナーの話だ。』


ロックマン「次回! 『意趣返しだ』っ!」


ルカリオ『男だろうが女だろうが関係なく剥いだそうだ。』

オリマー「…そんな犯罪者とは縁を切りなさい。」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

六十一話 意趣返しだ

Q.海に潜れるようになりましたが?
A. 嬉。

Q.ミェンミェン参戦しましたが?
A. 嬉。

Q.持ちキャラ超強化されましたが?
A. 嬉。



 

自然の力が生まれたての双葉に注ぎ込まれ、芽吹いただけの緑はたちまち天まで届く蔓となった。

 

 

『ふん、勘違いするでないぞ。今は手を貸した方が有益なだけじゃ。』

 

「いや、何も言ってないけど…」

 

 

人間の体を借りるのは流石に嫌だった自然王ナチュレはピットの体を借りて植物を急速に成長させたのだ。

 

 

「え、あのえと… これ…登るの…!?」

 

「探してないの空ぐらいだしな。崖登るのと大した差ないだろっ!」

 

「どっちもキツいよ!」

 

 

インクリングが悲鳴を上げる。軽く流すのはリンク。しかし登るしかないと、一部は悲鳴を飲み込みながら手をかけた。

 

 

 

 

「ようよう、鳥なのにお空も飛べないファルコくん。そんな爪のないおててで登れるんですかぁ?」

 

「あ゛あ゛!? テメエこそ武器外して奇襲されたらどうするんだよ?」

 

「えっ、何? 持たざる者の僻みってヤツ? うすのろくんはそんなことでしか張り合えないのかなぁ!?」

 

「んだと!?」

 

「お前ら!!」

 

 

短気同士なファルコとガンナが登りながらに煽り、下からフォックスが咎める。そんな彼らは実は中間辺りの速さだ。

インクで道を作ったり風船を使ったり様々な工夫をして登っているファイター達。握力故か速くはないが疲れを見せないロックマンと、かぎツメロープとデクの葉を活かして登るトゥーンリンクが追いついてきた。

 

 

「ロックマンとトゥーン、平気か? 他はどうしたんだ?」

 

「うん、ぼくは平気。むらびとやネス達は先に行っちゃった。」

 

「マジか、気づかなかった…」

 

「ボクの方はあんまり… ピーチ姫背負ってるマリオほどじゃないけど疲れた…って」

 

 

ふと横を見ると、カービィの上に乗るシュルクとプリンの上に乗るピカチュウ。思わず漏らした、あっ、という声が聞こえた。

 

 

「ずるーい!!」

 

「バレた! カービィ、スピードアップ!」

 

「んー!」

 

 

くぐもった声と同時に上昇速度が上がる。

トゥーンは結局二人の喧嘩声を聞きながら、地道に登るしかなかった。

 

 

 

 

 

第一回ジャックと豆の木大会の優勝者は波いる強豪を押さえつけて勝ち抜いたまさかのダークホースだったが、それは別の話。

 

疲れて寝てしまったカービィを肩に乗せてシュルクは雲の上を散策する。

 

 

「すぅ… すぅ…」

 

「キーラはあっち… 他にできることは…」

 

 

次負けてしまったら今度は誰かが逃げきれる保証はない。未来視は受動的にしかできないのも難点だった。

 

 

「んぅ… ぽ…? わあああぁ…!」

 

 

匂いを嗅ぐ空気の音がしてカービィが見ている方向を見る。完璧に覚醒したカービィはよだれを垂らしていた。

 

 

「りょーりー!」

 

「えええ!? ちょっとー!?」

 

 

走りだしたカービィを追って走り出す。大声で誰か察してくれるのを祈り、雲と雲を渡る。

 

 

 

 

 

「なんだろう、ここ…」

 

 

カービィを追って星型の飛行船へと飛び込むと、あみだくじのような迷路のスタート地点にでた。何故か道中に食べ物が置いてある。

 

 

「オッホー! シュルクもお腹空いたの?」

 

「いや、こいつはカロリーメイトとかで済ませるタイプだ。お前と一緒にすんなよ。」

 

「えっ? カロリー…?」

 

 

満腹のヨッシーとまだ食べてるスネークとの間に何か文化的な差が垣間見える。

 

 

「そうだ、カービィを…」

 

「チクショウ! 木登りでも負けっ! 今カービィにも負けたっ! 俺は敗北者だあ!」

 

「リ、リンク!? なんなのこのテンション…」

 

「くっそーー!!」

 

 

悔しさのあまり慟哭するリンク。たち膝で空を仰いで叫ぶ姿にドン引きするが、カービィの単語を聞き逃さなかった。

 

 

「カービィがこっちにきた?」

 

「リンクとどれだけ多く走りながら食えるか、って勝負してたんだよ!」

 

「じゃあこの先のゴールに…」

 

 

大食いどころか逆に小食気味の自分にこの二人と同じことをしろと? 青ざめるシュルクは追い討ちとなるサラダの存在を見逃さなかった。

 

 

「…これはダメだ……」

 

 

カービィが自分で戻ってくるのを願った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ファイナルカッター』の斬撃が木槌を掠め、空を斬る。振り下ろした木槌をバックステップで避け、槌を焼き尽くすほどの心意気で『バーニングアタック』。

 

 

「ぽっ!」

 

『…っ』

 

 

巨大な図体すらも後ろへ退けずらせるほどの威力がデデデを襲う。

 

シンプルな『終点』と同じ形の『夢の泉』。オリジナルのこの場所のスターロッドを巡ってデデデと戦った時をカービィは思い出していた。そういえば、その騒動で初めてメタナイトに会った気がする。三人の因果はそこから始まったのかもしれない。

 

 

「よっ…」

 

 

水が溜まった池をバウンドするゴルドー。部下を平然と投げるその姿はキーラの力の影響を…いや、正気の時にもこんな態度だった。

ほとんどぺったんこ状態のしゃがんだカービィには当てられなかった。

 

 

「ぷぃ、でででー!」

 

『…ッ!!』

 

 

それでもカービィは知っている。彼はしょっちゅうみんなの為に悪役に買って出るのだ。亜空軍の件も、彼が動いてなかったらソニック一人では手に負えなかったかもしれない。

キーラに抵抗できなくてもいい。それは求めていない。ただ声を届かせたい。それだけのために彼の名を呼んだ。

 

肉薄し、デデデに掴みかかる。デデデごと飛び上がり、地面に叩きつけた。『いづな落とし』だ。大きく水飛沫が上がり、赤い服が水を吸って濃くなる。

 

 

『…!!!』

 

「んーっ!」

 

 

素早く起き上がるデデデと距離を取ったカービィの『すいこみ』対決。側から見ればカービィが力負けするように見えるが、カービィには負けられないという意志と元祖としてのプライドがある。一番の大口を開けて全神経を集中する。足場が水場で踏ん張りにくいデデデは徐々に引き寄せられていく。

 

 

『…っ!!』

 

「…ぃ!?」

 

 

だが、操られているデデデは勝利のために的確な判断をした。『すいこみ』を中断し、代わりにゴルドーを放り込んだ。突然口に入った異物に動揺したカービィは即座に吐き出す。その動作は痛すぎる隙となった。

 

 

『…ぁっ!!』

 

「ぷいぃっ!!」

 

 

デデデのハンマーが展開し、内部の機械構造が見える。ジェットによる噴射を加えた一撃がカービィに激突する。ぶっ飛びながらもギリギリで崖を掴んで事なきを得た。

 

 

「…んぷい!」

 

 

復帰したカービィが取り出したのはデデデと同じハンマー。いつかデデデがやってくれたことの意趣返しだ。

カービィがハンマーを構えると、デデデも受けて立つとのようにハンマーを握りしめた。二人の中ではもはやここは電流の走るリングだ。

 

 

「はあっ!」

 

『…!!』

 

 

カービィのものより一回り大きいハンマーが振り下ろされる。小さな体躯のカービィはデデデの懐に入りこみ、体ごと回転させたハンマーをぶち当てる。無防備なところに当たり、思わず仰反るデデデ。更にカービィのハンマーが燃え上がる。

 

 

「ていやーっ!」

 

『ッ!!』

 

 

そのまま同じ脇腹に『鬼殺し火炎ハンマー』。カービィが今できる技で最大の威力を持つ攻撃だ。暗い宇宙を彷彿とさせる空へぶっ飛ばされようとするも、持っている得物の重さでそこまでには至らなかった。

 

 

「んむう」

 

『…ッ!』

 

「えぇい!」

 

 

仕留めきれなかったことに頬を膨らませるも、すぐ切り替えて『スーパーデデデジャンプ』を後ろに跳んでかわす。

 

 

「んにぃ!」

 

 

すぐさまハンマーを握る。飛ばなかったのならもう一度当てるのみだ。着地時にスライディングを当てて軽く浮かす。

 

 

『…っ!!』

 

「せいっ!」

 

 

そこを狙った『鬼殺し火炎ハンマー』は─

 

 

 

当たらなかった。ギリギリ体を捻らせて炎が空をきる。

 

 

「んー… とりゃああー!」

 

『…ッ!?』

 

 

でもカービィはへこたれない。空振りした勢いのままに体を回転させ、ハンマーを放す。手から離れたハンマーはデデデを直撃し、共に夜の空へ消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視界の隅で何かが動き、フィギュアを持ったピンクが戻ってくる。ゴールからスタートに戻るワープ地点があったらしい。

 

 

「カービィ」

 

「しゅるくー!」

 

 

星のような笑顔を見せ、フィギュアを置いて元の姿に戻す。

 

 

「んー… ここはどこだ…?」

 

「でででー!」

 

「うおっ!? カ、カ、カ、カービィ!?」

 

 

まだ寝ぼけた目をしているデデデの両手をとり、ぴょんぴょんと飛び跳ねる。

 

 

「ふん、大王をつけろ、大王を!」

 

「だいおーででで?」

 

「逆だ逆だ!」

 

 

目覚めたばかりのデデデにいつもの調子が戻ってくる。それ以上にいつも通りのカービィのおかげだ。

 

 

「デデデ、キーラのことについてちょっと話長くなるんだけど…」

 

「むっ、そうか。キーラめ、オレさまをコケにしやがってぐぬぬ…」

 

 

シュルクの言葉にはっきりと思い出したのか青い顔が真っ赤に染まっていく。

 

 

「おのれキーラ! オレさまが成敗してやる! いくぞ、カービィ!」

 

「はーい!」

 

「元気だなあ…」

 

 

すっかり定位置になってしまったシュルクの肩にカービィが乗りながら返事をする。

 

 

「よし、そろそろいくぞ。」

 

「ええー!? ヨッシーまだ食べたいよー!」

 

「お前はそのしかばね拾ってくれ。」

 

「敗北者… 一生敗北者…」

 

「まだへこんでたのか…」

 

 

未だに崩れ落ちてるリンクをヨッシーが背中に乗せ、進みだす。

 

 

「何してる!? オレさまについてこい! キーラに目に物見せてやるんだ!」

 

「ぽよ!」

 

「ははっ… 行こうか。」

 

 

キーラの喉元はすぐそこだ。





リンク「おっしゃー! 勝ったー!」

リュウ「むう… 登るのに必要なのは握力だけじゃない。体幹のバランスや経験も必要だな。全身をムラなく鍛えられそうだ。」

ピチュー「チュー!!」

リンク「へっへっへ、何言っても俺がトップ…ウ?」

リュカ「あ… えっと…」

リンク「先に… 先にいた…?」

ネス「……いた。」


リュウ「次回、『覚悟を…』。」


ルカリオ『そうか。テレポーションか。まっとうに登っては勝てるわけもない。』

リンク「ンガアアアアア!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

六十二話 覚悟を…


おてての怪物の回となります。



後神装ルフレがまた好みにドストライクです助けて




「あっちの方は誰が行ったっスか?」

 

「うん。ヨッシーとかスネークとかが奥に進んでいるのを見たよ。」

 

 

リトル・マックとマルスがキーラを目指して先へ進む。特に深い理由はない、スピリットに挑めず待機していた内の一人だった。

 

 

「あれ、こっち行くとキーラに行くんじゃないっスか?」

 

「うん。そうだね。

 

「え、でもキーラは一人で敵う相手じゃ」

 

「大丈夫。今から僕が戦うのはキーラじゃない。マスターハンドの方だ。」

 

「ええ!?」

 

 

リトル・マックは思い出す。キーラに与するように大量のマスターハンドがいたことを。

 

 

「きっと、こっちにぶつけてくる。詳しいことはわからないけどマスターハンドも無事に解放しなければ、ファイターが全員揃ってもこの世界はどのみち終わりだ。」

 

「ああ〜、それで… オレはあんまり役立てそうにないっスけど…」

 

 

浮遊するマスターハンド相手にリトル・マックは相性が悪い。下手に手を出せば足手まといになりかねない。

 

 

「だいじょぶ、だいじょぶ! マックはキーラ戦で大活躍してくれるのだ!」

 

「ピッチュ!」

 

 

リトル・マックの肩を叩いたのはインクリングと彼女の頭に乗っているピチュー。

 

 

「マルスマルス、一人じゃ厳しいしだろうし一緒にいこう!」

 

「そうか… 三人で…」

 

 

少しの思考の末に結論を出す。

 

 

「頼ってもいいかな?」

 

「ピチュ!」

 

「もっちろん! 死ねば諸共だよ!」

 

「死んじゃダメっス!」

 

 

まともに捉えすぎたリトル・マックのツッコミが入る。

キーラの元へ向かおうと光の階段に足をかけると、突如として現れたのはマスターハンド。

 

 

「やっぱりでた!」

 

「チューッ!」

 

「うん、いこう!」

 

 

二人と一匹が階段を駆け上がり、マスターハンドへ飛び出す。同時に暗い移動の力が辺りを包んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

細かな装飾デザインは違えど、正気の時もかの創造神と戦う際にはいつもこの『終点』だった。そして、今回も。

 

 

「…」

 

 

高笑いをして舞い降りてきたマスターハンド。見た目は白い右手用の手袋にしか見えないが、この世界を、スマッシュブラザーズを作った者であり、会うこともできなかったであろうファイター達が邂逅することになった立役者である。

 

 

「そんな方までキーラに囚われていたとは最初は思わなかったけど…」

 

「まー、確かにそうだけど… 来るよ!」

 

 

ファルシオンを構え直し、ピチューは頬から電気を溢れ出す。

マスターハンドが指鉄砲の形に折り曲げる。どこからか巨大な弾丸が放たれた。

 

 

「…せいっとっ!」

 

 

マルスとピチューは前へ飛び出し、一番奥にいたインクリングはイカ状態になり被弾面積を小さくして避けきる。

 

 

「(動き自体は変わらない。なら今までの戦いの経験で相手の行動を予測できる!)」

 

 

使う技自体はあまり正気の時と変わりない。ならばどんな攻撃か予備動作でわかる筈。

人差し指一本を立てて上を指して、指を回す。これは─

 

 

「チャクラム!」

 

 

速度を上げ、ピチューを追い抜く。高めと低めの二方向に放たれたチャクラムの一つは自分達に当たる高度。

 

 

「っ… たああっ!」

 

 

ファルシオンを両手で持ち、チャクラムを受け流す。マルスにとっては巨大なサイズの武器であったため、かなりの重労働であった。一対一であれば普通にかわしたのだが、そうはしなかった。マルスは今一人ではないのだ。

 

 

「ピチュー!」

 

 

強力な電撃がマスターハンドを襲う。

ほぼ最短距離で神の元へ辿り着けたピチューの攻撃を避けることはできなかったが、一撃程度で創造の化身の威光は崩れはしない。

 

次にマスターハンドが創造したのは水色の球体。何やら膨らませた風船のようにも見える。

 

 

「なんじゃありゃ?」

 

 

ポツリと漏らしたインクリングを含めた三人に向けてその球体が放り投げられる。

 

 

「んみぃ!?」

 

「…っ!」

 

「チュイ!」

 

 

それはペイント弾だった。

マルスとピチューは精々マントや尻尾が少し汚れただけで済んだが、インクリングには直撃した。

 

 

「インクリング!」

 

「んぺっ、ぺっ、パクられたぁ! 許さないもん!」

 

 

口に入ったインクを吐き出す。この状態でオレンジのインクリングとは言えないだろう。

 

 

「(もし、あの塗料… インクリングのそれと同じものだったなら狙われる!)回避に専念してくれ、きっと狙ってくる!」

 

「えっ、あたしを!?」

 

 

口では驚いているが、素早く視界を確保して体勢を低くする姿は戦士と言えるものだった。

 

 

「はっ、たあ!」

 

 

五本の指先から放たれるビームを掻い潜り、手首に位置する場所を剣先で斬り裂く。跳んで更なる攻撃を図るも、マルスでは届かない高度へ浮遊する。

 

 

「…!」

 

「ピチュッチュウ!」

 

 

いきりたち、戻ってこいとばかりにピチューが叫ぶも、敵の言うことを聞く必要はない。五角形の角の位置に火球が生み出される。

 

 

「火が飛んでくる! 気をつけて!」

 

 

マルス自身にも飛んでくるため、他のフォローに入る余裕がない。一つ避け、もう一つを一刀両断。

 

 

「この…!」

 

 

少し後方にいたインクリングにも同じ火球が迫りくる。『ホットブラスター』の爆風で、二つの火球の進行を妨げ、インクリングの隣を通って虚空に消えていく。

 

 

「…!?」

 

 

目の前には拳が迫る。

爆風のせいで自ら視界を狭めてしまったのだ。

 

 

「まずっ」

 

 

直感に頼って避けようと前に跳ぶが、少し遅かった。

 

 

「んぶっ!?」

 

 

体の後ろにあった左足へ拳が打ち込まれ、バランスを崩して落ちかける。手を伸ばしてなんとかギリギリ落ちることはなかったが。

 

 

「ピィチュ! ピッ!?」

 

 

他より敵弾が一つ少ないのもあって難なく回避できたピチューが落ちかけているインクリングの元へ向かう。だが、それを迎えたのはマスターハンドの白い手だった。

 

 

「プィチュウー…!」

 

「…! ピチュー、最大火力だ!」

 

 

右手に握り締められるピチューが見えない。

仲間二人が危険な目に遭っているのを見て即座に指示をだし、まずはインクリングを引き揚げる。

 

 

「ピジュウウウゥ!」

 

 

手の中から電撃が漏れ出し、思わずマスターハンドも手を開く。自らの電気によるダメージもあるが、まだ戦えるとばかりに目を鋭くする。

 

 

「無理はしちゃダメだよ?」

 

「ピチュ!」

 

 

軽く注意するだけにした。否定した方が冷静さを失いそうだ。

 

 

「インクリング、足は大丈夫かい?」

 

「うん、問題なし!」

 

 

水色がとれていく。

足首を回したり軽くジャンプする姿は強がりではなく、本当に問題なさそうだ。

 

 

「…!」

 

 

相手はテレポートを繰り返す。あちこちに現れては消えてを繰り返して混乱させるつもりか。

 

三人は無意識に背中を合わせる。どこへ出てもすぐに対応出来るように。

 

 

「…! そこ!」

 

「ピ…!」

 

 

ピチューの正面、だが彼の目線より遥かに高い場所に姿を見せた創造神。高いところと言えば『バケットスロッシャー』だ。

 

 

「さっきからいいとこ無しだもん! 大人しくあたしにやられちゃえ!」

 

 

白が橙に染められ、同時に居場所がバレる。

 

 

「ピチュー!」

 

「たあ!」

 

 

ピチューの『かみなり』が、マルスの『ドルフィンスラッシュ』がマスターハンドにぶつかる。

 

 

「…!」

 

 

再びテレポートをして距離を取る。近いマルスだから気づいた。

端に寄った場所に顕現し、手首のスナップを後ろへ曲げて手のひらが反るような形になる。不味い、これは。

 

 

「たたきっ…!」

 

 

言葉は続かない。足だけを払われる形になったマルスは空中でバランスを崩し、着地に失敗。強かに四肢を打ちつけた。

 

 

「なにもう! さっきからあたしばっかり狙ってきて!」

 

 

小さなピチューはそもそも当たっていないが、地面に足をつけていたインクリングは体ごと空中へ放り出された。

 

 

「全く… あっ」

 

 

空中で見たのは、開いた手全体。まるで時間の流れが遅くなったかのように。不気味に心臓の鼓動が穏やかになっていく─

 

 

「インクリングッ!」

 

「─っ!」

 

 

手を伸ばしながら飛び出したマルスの声で己の状況にようやく気づいた。インクリングの手を握り、はたき落とすマスターハンドを足場にしてフィールドへ舞い戻る。

 

 

「あう…… 自分から名乗り出たのに全然役に立たないや… 足手まといだよ…」

 

 

ガックリと肩を落とす。スランプなのかな、とぶつぶつ言い出した。あまり活躍できていないと嘆くインクリングの肩にマルスが手をかける。

 

 

「まさか。君には本当に助かっているよ。足手まといなんて思っていない。」

 

「でも、あたしがいなきゃもっと楽に戦えたかもしれないじゃん…」

 

「楽だったなんていう保証はないよ。今となってはもしもの話だ。それで後悔する必要はない。」

 

「そう? そう、かな…」

 

 

顔が上がって前向きになってきた。表情も柔らかくなっている。明るいところは本当にインクリングの美徳だ。

ああ。彼女達に、みんなに出会えて本当に良かった。

 

 

「ピチュー、足止め頼んだよ!」

 

「ピチュー、ピチュー!」

 

 

左手でマルスの手を握り、ピチューにマスターハンドとの一騎討ちを頼んだ。頬から溢れる電気がより強くなっている。

 

 

「ピチュ…」

 

 

相手の動きを予測し、それに合わせて敵を阻止しろ。幸い巨大な手の姿をしているマスターハンドは動きがわかりやすい。

 

中指を残して人差し指と薬指が曲げられる。

飛行機を形取った指の形。

 

 

「ピチュウゥ!」

 

 

浮き上がるマスターハンドの進路へ先回りし、頭部に電気を溜める。上から下へ、回転しながらのずつきに出鼻を挫かれ、地面に落ちていく。

 

 

「んみぃっ!」

 

 

白い手を飛び越え、『スーパージャンプ』をするのはイカ状態のインクリング。相手の真上を取れたところで、マルスと繋いでいた手を離す。

 

 

「…!」

 

 

神剣の剣先を地面に、否傀儡の創造神に向ける。

 

 

「覚悟を…!」

 

 

ダウンしていたマスターハンドへまっすぐ剣を突き刺す。それがとどめとなった。

爆風に似た衝撃で剣ごと体が離れる。力のない骸は爆風で跳ねながら底のない空に落ちていった。




マリオ「ついにきた… 最後の戦い…!」

リンク「今まで散っていった数多くの仲間達…!(死んでない)」

ドンキー「覚悟ぉ!」

カービィ「かくごお!」

ヨッシー「面白そう! ヨッシーも混じっていい?」

フォックス「やめとけ、やめとけ。」

ピカチュウ「ピカチュ…」

サムス「はあ…」


マリオ「次回、『光の化身』…」


リンク「ゲームとかだとさ、実は黒幕は別にいてラスボスだと思ってたら前座に過ぎなかった! って感じのあるよな?」

マリオ「そんなゲームみたいなこと実際には起きないよ!」

ヨッシー「そうだね!」

三人「ワッハッハッハ!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

六十三話 光の化身

ここまで来て言うことは… ああ、ここのキーラ地味に強化されています。そもそもこっち側の人数多いからね。仕方ないね。


それよりクリスくんちゃん実装されるのか…
正直ヒーローズのサービス終了まで出てこないと思っていました。勿論引いてみせましょう。マイユニット愛好家としては外せない。




「おし! 倒した…!?」

 

「これは… そうか。同じだったのか…」

 

 

キーラの近くでのたうちまわるマスターハンドが溶けていく。白い物体が金色になって破裂する。これはスピリットを解放した後のボディが死ぬ時の現象と同じものだった。

 

 

「えー!? 無駄足!?」

 

「無駄じゃないさ。どのみち倒さなければキーラと戦えなかったんだ。」

 

「パチモンだろうとなんだろうといいわ。全部ぶっ倒せば同じこと。」

 

「はーい、ガンナ、シャラップ。」

 

「ああ!?」

 

 

今いる全員が揃う。しかし、未だに姿を見ない者もいる。

 

 

「うー、パルテナ様が見つからないー!」

 

「ピカッチュ…」

 

「ロゼッタとデイジーと… あっ、ルイージもいなかったね。」

 

「キーラめ! 早くジュニアを返すのだ!」

 

 

とはいえ、近くにいない以上助けることもできないのだ。キーラの討伐と共に救出できると信じるしかない。

 

 

「多分今戦えるのはここにいる全員だね。よし、頑張ろう!」

 

「ああ、正直キーラは何してくるかわからない。けどオレ達は負ける訳にはいかない!」

 

 

マリオに続いてフォックスが声を張り上げた。もうあんな敗北をする訳にはいかない。

 

ファイター達が近づくとキーラは空高く浮遊する。皆が唖然としている間に、敵対勢力全員を何処かへワープさせたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…!?」

 

 

そこは終点に似てはいたが、それよりもずっと広く所々の宙に小さな足場が浮いていた。大戦場と終点を足してスケールをかけたような場所。

突如仕掛けたキーラに驚きながらも各世界の英雄達は周りの状況を素早く把握した。

 

 

『─────!』

 

 

機械音にも似た響き。それは現存するどんな言語とも似つかわない振動。それでいてこれは生物で言うところの雄叫びのようなものなのだと本能で理解してしまった。

 

 

「けっ、先手必勝だ羽野郎!」

 

「オメエは引っ込んでろ! オレの獲物だ!」

 

「たくっ、二人だけで行くな!! 散って包囲網を作ろう!」

 

 

真っ先に飛び出したのはガンナとファルコ。フォックスは二人に注意しながらもファイターに提案をした。反対意見は出なかったので採用されたと見ていいだろう。

 

 

「「くらえっ!」」

 

「ていっ!」

 

 

『ガンナーチャージ』が放たれ、遅れてファルコが中心の球体へ跳んで蹴りを入れる。

エネルギー弾とトゥーンリンクの撃った矢が取り囲む翼のような物体に阻まれた。ファルコのキックはそのまま通る。

 

 

「っ! 本体は中心の球体だったか…」

 

「狙撃の援護が欲しいところだね。」

 

「わかった。俺が集める。」

 

 

サムスの事実確認、マルスの分析に付随して、スネークが遠距離攻撃にかって出た。既に戦闘中の中、人を集めて回るのは簡単なことじゃない。

 

 

『─────!』

 

 

ましてや、その相手が一度負けた相手ならば尚更だ。甘く見るという概念そのものが存在しないかのように、まるでただの工程のように攻撃を生み出す。空高くに巨大な電撃弾。分裂した電撃が雨のように降り注ぎ、無差別にファイター達を苦しめていく。

 

 

「『サイマグネット』…! 嘘!?」

 

「効かないっ…!」

 

 

エネルギーを自身の生命力に変化させる超能力も規格外なのか通用しない。

 

 

「しまえもしない…!?」

 

「そんなっ…!」

 

 

雷撃を防ぐ方法を使っていたファイター達が今更回避に動ける余裕はない。

 

 

「…っ、いけっ!」

 

 

友を案じながら、純粋な悪に向けての言葉が口汚くはなっているが、それでも比較的冷静なままのロックマンは質より数だと言わんばかりに『リーフシールド』を撃ち放った。

確かに葉の一つは本体に当たったが、相手が巨大すぎてキリがない。

 

 

 

「ああん、もう! チャージャーがあれば簡単に本体叩けたのに!」

 

「…! ピチュッ!!」

 

「ん…? …!」

 

 

地団駄を踏むインクリングへ、接近の機会を伺っていたピチューの激しい声がかかる。彼女へのバックスラッシュは先の乱闘でのダメージが残っていたインクリングを物言わぬ像へと変えてしまった。

 

 

 

「これは…! 紛い物かっ!」

 

 

全身水色の光で構成されているファイター達。シュルク、リュウ、リトル・マック、Wii Fit トレーナー、Mr.ゲーム&ウォッチ、プリンの形をしたキーラが生む偽物達。

 

 

 

「空飛ぶキーラにも役割ないとは思ってたっスけど…! 偽者まで使っていいとは言ってないっスよ!」

 

 

自分と同じ形の偽者の左ストレートをかわし、渾身の『K.O.アッパーカット』。しぶとく生き残る偽者とのマッチに拳を構えた。

 

 

 

『もらうねー!』

 

「気を抜くなっ!」

 

 

灼熱波動拳をバケツに溜めたMr.ゲーム&ウォッチだったが、深く考えない彼はその後のことを何も考えていない。純粋に喜ぶ平面に向かう正拳突きを本物が足で弾く。

ふらついたところを『昇竜拳』で打ち上げる。まだ体力は残っていたが、視覚外の矢の狙撃で消滅した。

 

 

 

「ふう… 折角集められたっていうのにこれじゃあキーラどころじゃないぜ…!」

 

「そっちはどうだ?」

 

「微妙。幾つか当たるけど明らかに威力足りてない…!」

 

 

スネークが突発的に集めた狙撃部隊。力強く矢を射てるリンクと、弾を操作出来るピットとスネーク自身。

偽者を生み出され、混戦になっている状況では近距離で戦える者が少なくなる。遠距離の弱点をカバーしづらくなるのだ。

 

 

「…! このっ!」

 

 

遠距離の弱点、それは距離を詰められては辛いこと。打撃戦と射撃戦の武器が同じピットがギリギリで片足バランスウォークを防ぐ。まだ神弓を分離していない状況で押し返して近距離戦の構えを撮ろうとすると、流星の様に落ちてくる者がいた。

 

 

「『ファルコンキック』!」

 

「キャプテン・ファルコン!」

 

「助かったぜ!」

 

 

無言ながらも白い歯を見せてサムズアップする。

 

 

 

「ゼニィ…!」

 

「! 戻れ! ゼニガメ!」

 

 

手負いのリュカ達を守る形でレッドがプリンとMr.ゲーム&ウォッチの偽者に立ち向かう。ジャッジで出た8のハンマーで後ろへゼニガメが飛ばされていく。ここで前線を下げるとリュカ達に危害が及ぶ。後ろ手でゼニガメを戻し、フシギソウを出した。しかし、戦況は辛いままだ。

 

 

「ぷぃ!」

 

「ソウ!」

 

「大丈夫かい!?」

 

 

プリンを飲み込み額にカールをつけたカービィと先程からモナドを閉じていないシュルクが助太刀に入る。数の有利を取ったことで狭まった視野が広がっていく。

 

 

「チュイ…!」

 

 

攻撃対象をキーラからシュルクの偽者に切り変えたピチューが肉薄して接近戦に挑む。両手剣に近いモナドを振るうシュルクに小柄なピチューは相性がいいのだ。通常ならば。

 

羽のような物体がドリルのように地殻を抉る。ちょうどいいところで本体の攻撃が跳んできて攻撃を中断せざるを得ないのだ。それでも連発はできまい。

再び接近したとき、偽者達が明滅するという異変が起きる。

 

 

「ピチュ…!?」

 

「まさか…! フシギソウ、『つるのむち』!」

 

 

手持ちを抱えてレッドは走り出す。抱えられたフシギソウが蔓を伸ばし、偽者と戦っていたピチューとキャプテン・ファルコンに絡みつき無理やり戦線を離脱させた。

 

 

「ねすー! りゅかー!」

 

「むらびと、しずえさん! 畜生っ…!」

 

 

まだ動けない四人にレッドが構えない以上、二人でどうにかしなければならない。だが、ここにいる偽者は二人。偽者のプリンがこちら側に来る以上、二人には一体でも止めるしかできなかった。前のシュルクがアーツのシールドで構え、カービィがシュルクの足に全体重をかける。

 

 

「……ごめん!」

 

「リュカ…!?」

 

「「ええっ!?」」

 

 

『PKファイヤー』をネスに撃って無理やり爆風圏内から抜けさせる。次にむらびととしずえをと振り向いたところで視界が白に染まっていく。リュカが意識の最後に見たのは金色の光を放つむらびととしずえだったのだ。

 

 

 

「まずい…! どんどんやられて…!!」

 

 

爆発自体はなんとか耐えたリトル・マックだったが、周りを見ている状況で真上から来るドリル状の翼を避け切れる訳がなかった。意識すらできぬままにリングから降りることを余儀なくされた。

 

 

 

 

だが、どこもかしこも絶不調という訳ではなかった。キーラの周りを囲む翼が攻撃に回っていることで直撃させることが容易になっているのだ。

 

 

「みんなはっ、大丈夫かな!?」

 

「今はやるしかない! なんのための狙撃部隊だ!」

 

 

当然キーラが攻撃に移ることは見えていたし、違う場所では苦戦しているのだろうとは爆発音などで想像できた。しかし、攻撃を続けなければ勝てないのだ。ひたすら本体に撃ち続けるしかない。

 

 

 

「これは…! まずい…!」

 

 

被害が把握しきれなかった。仲間が多いのもそうなのだが、大体が自分の好きなように戦っているのでどこに誰がいるのかわからないのだ。挑む前に作戦を練るべきだったとマルスは後悔する。

 

 

「!」

 

 

正面からドリルが迫る。キーラの周りを浮遊する翼のようなもの。だが、避けるのは難しくない。横へ跳んで進路から外れる。

 

 

「ふんぬううう…!!」

 

「クッパ…!?」

 

 

自分から攻撃に近づいて翼を受け止める。重量があるのもあって負けてはいるが抑え込むのには成功している。

 

 

「これで攻撃を防げるということは…! 実体はあるのだろうッ!」

 

「…!」

 

 

一部が戻らなくてアンバランスになったキーラに対してキーラへの攻撃は順調だった。『リモコンミサイル』を翼で防いだ結果、フォックスの『ファイアフォックス』が直撃しているのを見た。

 

 

「なるほど、それならば難しくはない!」

 

「サムス!」

 

 

話を聞いていたサムスがキーラへ走り出す。

 

 

「キィーー!!」

 

「ウホッ、サムス、手伝う!」

 

「ああ、後一つを誰か頼む!」

 

 

グラプッリングビームを翼の一つへ放ち、引き寄せる。キーラ側が抵抗し、サムスの方が浮き上がるもドンキーコング、ディディーコングが力勝負に加わり翼が剥ぎ取られていく。

動揺しているようにブルブルと本体が震えた。

 

 

「ならば! オレさまを忘れるなぁ!!」

 

 

ジェットの勢いを加えたハンマーが翼を潰す。空を飛び、高所からの叩きつけで地面へめり込んだ。ピクピクと抵抗するところへガンナが押さえ込みに参加してとどめを刺さんとした。

 

 

「よしっ! 今だ!」

 

『はーい!』

 

 

フォックスが声を張って全員に届くように叫ぶ。

丸裸になったキーラへ、Mr.ゲーム&ウォッチの『オイルパニック』とパックマンの投擲したカギが飛んできた。双方強力な攻撃だ。

 

 

「はあ、はあ… カービィ!!」

 

「んんんんっー!!!」

 

 

空中の足場にいた、ネスの『PKサンダー』による電撃とリザードンの『かえんほうしゃ』の炎が『ころがる』カービィにまとわり、カービィ自身にダメージが入りながらも飛んでくる。荒い息をつきながらのシュルクの声に応えるようにキーラへ激突した。

 

 

「当然最後はボクが決めるんだ!」

 

 

大きいダメージを受けたキーラを揺らすように空中から拳で叩きつけた。赤い帽子のスーパースターがふらふらしながらコピーの剥がれたカービィの隣に着地する。キーラ本体は綺麗な音をしながら地面に落ちる。

 

 

「ぷぃ〜…」

 

「カービィ! ごめん、無茶させたな…!」

 

 

リザードンに乗るレッドとネス、そしてマリオに置いてかれたピーチが近くに寄る。

誰かが大きく息を吐いたのを合図にしたのか羽を押さえていた二人から怒号の声が響いた。

 

 

「カ、カービィ! キサマいっつもいいところばかり…!!」

 

「マリオそこはワガハイが決めるところだろう!? ワガハイの活躍を取りやがって!」

 

「ええ!?」

 

 

そんなことを怒っていたのか。自分から抑えに行っていたのに。ファルコやガンナもそうだが、彼らもつくづく理不尽だ。驚いて後、一周回って呆れてしまうフォックス。そんな空気が蔓延していたからか、後ろでキーラが強く発光しているのに誰も気づかなかった。

 

 

「うぐぅ…!?」

 

 

突然の突風に襲われ、フォックスも含めてファイター達はぶっ飛ぶ。少し気が抜けてた状態では抵抗できなかった。翼も解放されキーラが本気になる。

 

 

「うわ、エブリワン、ノープロブレム!?」

 

「これは…!」

 

 

後ろへ吹き飛んだことでフィギュアになっている者を除いたファイター全員が大体同じ場所にいる。フィギュアとなったファイターは飛ばされてしまっただろうか。

 

 

『─────!』

 

 

キーラ本体の暴力的なほどに眩い光にファイター達の目が眩む。殲滅せんとする光の化身は本当の力を誇示し始めたのだった。





CF「前回の次回予告は64組だったが今回は64の隠しファイターなんだな!」

ネス「作者が意図せず、六十四話で区切りがついてビックリしてたよ! 僕もビックリした!」

プリン「プリ! プリプリ!」

CF「という訳で長いのはちゃちゃっとすませてしまおう!」

ネス「OK!」


CF「次回! 『決着を』!!」


ネス「あれ? なんか足りないような…?」

CF「ん〜? 気のせいじゃないか?」

プリン「プ〜リ〜! プリーリ!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

六十四話 決着を

いやー、ここまで長かったー、あっぱれあっぱれ(棒)
今更言うことないでしょう。恐らく今いるファイターはなんらかの形で全員出せていると思いますが、細かく確認はしていませんのでご了承を。そして多分今後全員出すのはできません。


『─────!』

 

 

機械音の雄叫びを上げ、更に激しく光るキーラは再び偽者のファイターを呼び出す。

 

 

「っ! またか!」

 

 

クナイの攻撃を回し蹴りで受け流す。グローブをつけた拳を握り直して正拳突きを喰らわせた。

 

 

 

「っ! またカオスなことに〜!」

 

「対処するしかないか…!」

 

 

近くにいたソードとシークが即興で組む。剛毛に覆われた豪腕の一撃を跳んでかわし、トルネードに乗せた『炸裂丸』を当てて目眩しと攻撃を同時に行なった。

 

 

 

「プリィ〜…」

 

 

先程も見た平面と体操講師の偽者の攻撃をふわふわとプリンは避けていた。なんとかサポートできないかと後ろの方でまごまごしていたのだが、戦線が下がったことで彼女も攻撃対象に狙われてしまったのだ。戦いたくないのもそうだったが、それ以上に二人での攻撃を避けるので精一杯だった。

 

 

「うらぁっ!!」

 

「プリ!?」

 

 

平面の体を蹴飛ばし、女性の脳をアームキャノンで揺らした。更に『フレイムピラー』で焼き尽くす。唐突なガンナの乱入だった。

 

 

「本体も叩くがパチモンも叩く。おい、ヘボ。囮ぐらいできんだろ?」

 

「プ… プ!?」

 

 

あんまりな言い方だった。彼女にだって並程度のプライドはある。涙目になりながら偽者に立ち向かう。

 

 

 

『傀儡か… 会話どころか波導も存在しない…』

 

 

はどうポケモンルカリオは目の前の自身の偽者と対峙していた。だからこそ彼らの正体をみやぶることができた。心も体も存在しない形を取り繕っただけの紛い物。手を抜く必要はない。細身の体に『はっけい』を打ち込む。

 

 

 

「えいっ! …でもこれは厄介ね。」

 

 

自称大王の巨体が投げたゴルドーをゴルフクラブで撃ち返す。今は敵勢力の数が増えて混戦中になっているが、その偽者は時限爆弾のようなもの。味方の大半が入り乱れているこの状況のまま爆発したら多くの味方が巻き込まれる。これはピーチじゃなくてもわかることで。

 

 

「離脱できる者から離脱する! ピチュー、悪いが飛んで行ったフィギュアは後だ!」

 

「ピチュー…!」

 

 

フィギュアにはなっていないが目を回しているトゥーンリンクを運ぶピクミンと手負いのピチューを咥えるピカチュウを率いて離脱しようとする。しかし、簡単に思い通りにはいかない。足の速さを活かして回り込んだのはゼロスーツサムスの偽者だった。

 

 

「ピカッ、ピー…カアッ!」

 

 

口に咥えていたピチューをピクミンに任せ、『ロケットずつき』で攻撃する。邪魔はさせないとばかりに頬袋から電気を洩らしていかくする。

 

 

 

「はっ!」

 

 

『ダンスのポーズ』で小さな勇者の偽者に攻撃する。一瞬のけぞりはしたが、すぐに立て直してWii Fit トレーナーの横腹へ向けて剣を振るおうとする。

 

 

「あっ、シモンさん! ありがとうございます!」

 

「礼はいい。この紛い物… 思ったより頭が回るようだ。」

 

 

左手に向けて打った鞭は敵をしっかり弾く。武器が減ったと対の短剣となった弓を斧で防いで体勢を崩させた。

 

 

 

「どうしよー!」

「近づけないよー!」

 

「アウアウアウ…」

 

 

ひたすらに竜巻を起こすソードの偽者に手を焼くのはヨッシー、アイスクライマー、ダックハントだ。風が邪魔で近距離の戦いに持ち込めず、かといって撃ちだした氷も投げた卵も爆発する缶も全て竜巻に遮られ届かない。

 

 

「んもー! ヨッシー、堪忍袋が切れたよー!」

 

「「緒が抜けてるよー!」」

 

「ヨッシー、風なんかに負けないもん… アワワワワー!?」

 

「「負けてるー!?」」

 

「イッシッシッシッシ」

 

 

竜巻相手にぶっ飛んだヨッシーをダックハントが笑うが、そもそも笑っている場合ではない。

 

 

「はあっ!」

 

「「マルス!」」

 

 

ファルシオンの剣先がソードの偽者に突き刺さり仰反る。反撃にと無理な体勢から振るった剣をひらりとかわす。

 

 

「数の利を活かすんだ。正面から戦う必要はないよ。」

 

「かずのり…うん、わかった!」

 

 

ダックハントが投げたクレーの回避隙に跳び蹴りを合わせる。怯んだところを二人の『ブリザード』で凍らせる。

 

 

「やったよナナー!」

「ナイスだねポポー!」

 

「あれー? ボクはー?」

 

「イッシッシッシッシ」

 

「あはは…」

 

 

 

跳魚のかかと落としを手首辺りで受け止める。反動で背後に着地する技なのは理解していた。

 

 

「『灼熱波動拳』!」

 

 

回避できないタイミングで技を放つ。とばした遠くで偽者の体が明滅する。

 

 

「っ! 爆発か!」

 

 

先程と同じく、付近を巻き込んで自爆する鉄砲玉。それを認識して離脱する準備にかかるが、このタイミングでキーラが動きを見せた。

 

 

「! これは…!」

 

 

十字に交差した模様がある謎の白い球体。それが空中に地面すれすれにと、付近に不規則に散らばっている。

その物体にフォックスは野生のカンに近い物が働いた。訳の分からない物体だったが自分の命を握られたような冷たさを感じたのだ。

 

 

「丸い物体に気をつけろ! 多分危険だっ…!」

 

 

そう叫んだ途端に鼻先すれすれに爆裂する球体。高密度の爆風が無差別に無慈悲に襲い続ける。

 

 

「「いたっ…」」

 

「っ…!」

 

「キュウウン!」

 

 

アイスクライマーの二人は離れざるを得なくなり、マルスのマントの一部が焼け焦げ、ダックハントの尻尾を掠めた。

 

 

「アウアウアウッ!?」

 

「ヨッシー!」

 

 

連携で偽者一体を封じたことから、油断してしまったヨッシーが爆風に直撃する。それで最初も負けてしまったというのに手答えがあったという結果が慢心へと導いてしまった。その姿が報いだと言わんばかりにヨッシーの体は銅像へと成り果てた。

 

 

『ハッ…!』

 

「ふえっ!?」

 

「キー!?」

 

 

ネスとディディーコングを抱えて爆風の嵐を『しんそく』で抜けたのはルカリオだ。目に見えぬものをも回避する彼は多少密度が濃いからって、この攻撃は避けられないものでもなかった。

とはいえ、図体の大きさも身体能力も千差万別なのがスマッシュブラザーズ。この攻撃、人によってはそもそも避けられるものじゃないのだ。

 

 

「グウウウ… おのれ…!」

 

「このッ…! 舐めた真似しやがって…!」

 

 

体の大きく、自分が避けられる隙間を見つけられなかった者達。

 

 

「い…一撃ぐらい… 問題ないさ、大丈夫…だ、リザードン…!」

 

「ウウゥ…」

 

「ちょっと当たっちゃったわね…」

 

 

身体能力が低くて厚い弾幕を避けきれなかった者達は少なくないダメージがあった。

 

 

「チッ… こいつらぶっ飛ばされるまで戦わせてくれないとかマジでムカつくんだけど、せめて死んでから爆発しろっつーの…!」

 

「プリプリリッ!」

 

 

爆風を抜けてたガンナと片耳だけを握られるというあんまりな持ち方をされているプリン。偽者がいなくなったのでキーラに攻撃する以外の道はない。一番最初にキーラに向かったのはこの二人だった。

 

 

 

「ばたんきゅ〜……… ハッ、ここは誰? ボクはどこ?」

 

「逆だトゥーン… 後、ピチューそこで電気を放ってはいけないぞ。」

 

「ピチュ…!」

 

 

完全に目が覚めたトゥーンリンク。爆風で目を回していたが、この度ようやく元に戻った。

ピクミンから降りて状況を確認する。

 

 

「ピーチ、ピーチ! 大丈夫かい!?」

 

「ええマリオ、大丈夫…」

 

 

見栄なのは見抜いていた。本当ならばすぐに彼女を連れて戦線離脱したいところだが、そもそも遠くにいたところで遠距離攻撃は届くのだ。一度戦場に立った者をキーラは逃さない。

 

 

 

「後ろのことは気になるけど…!」

 

「今は前をどうにかしねえと…!」

 

 

パイロットとして、軍人として余すことなく鍛えた脚力を最大限に活用する。誰かが攻撃を当てなければジリ貧なのだ。スターフォックスの二人は後ろを他に任せてとびだし、そして驚きの光景を目にする。キーラの本体が三つとなっている。幻か、それとも分裂したのか。その増えたキーラが乱雑にぶち撒ける火炎弾。

 

 

「うおっ!?」

 

「クソッ、だいぶへばるんじゃねェか!?」

 

 

眼前で放たれる火の雨に咄嗟に『リフレクター』を展開する。いつもは蹴り飛ばすファルコも今回はそんな余裕がなかった。それでも自分達の心配より後ろの方が心配だった。エネルギー弾に対応できる技を持つ者は平気かもしれないが、果たしてどれだけの人数が残っているか。

 

 

「プリー!!」

 

「ケッ、相討ちしても数は減らそうってか? 上等だコラァ!!」

 

「プリッ!?」

 

 

後方の仲間を心配するプリンがガンナの言い方に驚く。ガンナのおかげで助かったのだが、それでも看過できない言葉だった。だが、次の言葉で意図に気づく。

 

 

「言っとけどなあ、んな出任せな攻撃じゃあ半分も削れねえんだぞ!?」

 

 

黒煙が晴れ、見えてきたのはネスの『サイマグネット』だった。後方にいた大半の者たちは彼の後ろにいる。

 

 

「ピーチが自分はいいからってボクをこっちに回してくれたんだ! その期待を裏切る訳にはいかない!」

 

「ゼルダ様が見送ってくださったのに負けて帰るとかありえないっしょ…!」

 

 

一部が焦げた『スーパーマント』を持つマリオと、剣をしまいハイリアの盾での防御に全力を注いだリンク。ネスが防ぎきれなかった分は彼らが対応したそうだ。

キーラが、たじろいだように見えた。

 

 

「よし、行けー!」

 

 

トゥーンリンクが『クローショット』を構え、キーラの翼をガッチリ掴む。オリマーとピクミン、ピチュー、ピカチュウが助太刀に入るがパワーが足りない。

 

 

「オレ、チャンス、逃がさない!」

 

「たくっ、散々な立ち位置だ!」

 

 

鎖部分を握りしめ、ドンキーコングとデデデが引っ張り合いに参加する。それを皮切りに数多くのファイターが防壁を削ぐことに参戦する。

トゥーンリンクの顔が真っ赤になった頃、翼が剥がれてきた。

 

 

「逃すかっ!」

 

 

自由な右腕のアームから『チャージショット』を撃つ。武装の影響で、右手は鎖を持てないがその分攻撃に手を回せる。標準は核本体に向けられている。

 

 

「ここで決めてやるぜ!」

 

 

ブラスターを構え、ファルコが飛び出す。彼も存外熱くなりやすい性格だった。

 

 

「っ!」

 

 

空中に敷かれる細い白の線。鼠の一匹だって死ぬ間際に抵抗し、猫に噛みつくことがある。それはキーラの最後の抵抗だった。

 

 

「まずい、離れてっ!!」

 

 

マルスが叫ぶ。この線を沿って光線が撃たれるならば固まっているこの場所は明らかな危険地帯。一網打尽にされる。

 

 

「えっ? あぶっ…!?」

 

 

クローショットを外す暇もなく回避の為に動いた。背を反らし顎を引っ込める。垂れた緑の帽子が少しかすった。割とどうでもいい。

 

 

 

「へっ、ここで決めなきゃオレじゃねえよ!」

 

 

予告線も気にせずにまっすぐ向けたブラスターが彼の手元を離れていく。

ファルコの手に光線が撃たれた。後方へ放り出してしまい、手の届かぬところへ落ちていく─

 

 

「ッ!! ヤベッ…!」

 

「キィー!!」

 

 

ディディーコングのすばしっこく小さな体躯が落ちたブラスターを蹴り飛ばす。光線を潜り抜け、ファルコの落とした銃はまっすぐフォックスの元へとんでいった。

 

 

「…っ! そうか、これなら…」

 

 

無差別に通るビーム。隕石の群れも敵の砲撃も、鋼鉄の翼に乗ってかわして討ってきたのだ。その翼がなくてもやることは変わらない。

トゥーンリンクが強引に残ってくれたお陰でキーラの元までたどり着けば攻撃は届く!

 

 

「はあっ!!」

 

 

柔軟な身体能力で、鍛えぬかれた脚力であそこまで辿り着け。両手に『ブラスター』を握ったまま光線のトンネルを潜り抜ける。光線のハードルを飛び越える。

 

 

「今度こそ…! 決着をぉ!!」

 

 

限界を超えた速度でキーラ本体へ向けて一心腐乱に撃ち続ける。

 

 

「やれェ!!」

 

 

頼りの相棒の声が耳を通り抜けるほどに激しい光しか目に入らない。

 

 

『───────!!』

 

 

悲鳴の声が聞こえた気がして、光線の消えた戦場に腹を打ちつける。翼が崩れ、掴む物が壊れたクローショットがガチャという音を立てて落ちた。

 

 

「やった…のか…?」

 

 

ポツリとマリオの声。

崩れていくキーラ。妖しく綺麗な羽を模した物体も崩壊し、見るも無残な状態になっていく。

 

 

「な…なんですか、あれは…!?」

 

 

だが、キーラのいる真反対に位置する空。文字通り空がガラスのように割れていく。

 

 

「あれは… 破壊神か!?」

 

「こちらも見ないと思っていたら…!」

 

 

一つの穴となって見えた天空の向こう側に見えたのは黒を塗りたくった闇と、マスターハンドと対をなす大量の破壊神、クレイジーハンド。

 

 

「なんだ… あいつ…!?」

 

「グウウウウ…!!」

 

 

そして、爬虫類の如き鋭い目玉。

 

 

─光の化身キーラを破ったことで抑えられていた闇が暴走した

 

 

「マスターハンドがあんな簡単に!?」

 

 

キーラは配下に置いたコピーのマスターハンドに突撃させたが、主たるキーラが弱っている上に破壊の化身が相手では接戦とすら言えず一方的な戦いになる。

 

 

「ボコボコかよ… っておい! あのクソ羽野郎逃げやがったぁ!!!」

 

「待て、パルテナ様を返せー!!」

 

 

勝機はないと判断したキーラは小さな光となって空の向こうへ消えていく。大半のマスターハンドのコピーという戦力すら己の存在には変えられなかった。

 

 

─瞬く間にこの世界の一部は漆黒に落ちた

 

 

「ぐおおっ!? なんだこれは!?」

 

「空に吸い込まれ…! くううっ…!」

 

 

空が割れ、そこへファイター達は吸い込まれていく。キーラ戦でのダメージが残り、そのキーラすらも児戯にすらならなかった存在相手にろくな抵抗も出来ず、フィギュア化した仲間を手繰り寄せるので精一杯だった。

 

 

「こいつは… 一体…!」

 

 

妖しい赤と黒の触手が空を破壊し、全体が見えた混沌の根源が失墜の闇となった空を支配する。

 

 

─ファイターとスピリッツを配下にこの世界の掌握を狙うもの

 

 

一つだけの眼でファイターが消えていった空を睨む。

 

 

─混沌と闇の化身 その名は

 

─ “ダーズ”

 




現ファイター

カービィ
マリオ
マルス
ピクミン&オリマー
パックマン
Wii Fit トレーナー
Dr.マリオ
インクリング
ピチュー
ロックマン
スネーク
むらびと
シーク
リンク
ルカリオ
キャプテン・ファルコン
ピーチ
クッパ
フォックス
シモン
ピット
リュカ
しずえ
Mii 剣術タイプ
ヨッシー
プリン
リュウ
ドンキーコング
アイスクライマー
ダックハント
リトル・マック
ファルコ
ピカチュウ
サムス
ネス
Mii 射撃タイプ
トゥーンリンク
Mr.ゲーム&ウォッチ
ポケモントレーナー
ディディーコング
シュルク
ゼロスーツサムス
デデデ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四章 まとめ


夢見の館復活うれちい…





 

あの… えっとこれどういう状況ですか…?

なんで私簀巻にされているんですか…?

 

 

「前回のまとめ、覚えてないの? この喋れない子に任せてトンズラしちゃったじゃない?」

 

「……………」

 

 

いや、だって一章まとめが女性二人エンドで二章まとめがロイエンドなら三章まとめはダムスエンドなのが普通じゃないですか…

 

 

「あれ僕エンド扱いなのか…!?」

 

「やってることはともかく言ってることは変ではありませんし、今回を作者エンドとすることで許しましょう?」

 

 

ぐぬぬ… 私エンドは需要あるのか…?

まあ、いいか、今回は逃げないので解いてください。

 

 

「仕方ないわね。」

 

 

ふう…

ゆうなまの魔王の気持ちがわかった…

さて、今回はゲムヲからデデデのファイター。ゼロスーツサムスを除いて五人の紹介です。

 

 

「前回の三分の一以下ですか。」

 

 

バランス、悪いよね。でも仕方ありません。

 

Mr.ゲーム&ウォッチ、通称ウォッチ。物語の中でゲムヲゲムヲ言われるのはかわいそうなのでまともな愛称をつけさせていただきました。

 

 

「しゃべるんだ…」

 

 

一応しゃべるゲームはありますのでググってみて下さい。その喋り方を踏襲してかわいい口調になりました。

性格については亜空の使者の設定から善悪の感情がよくわかっていないというものをそのまま取ってます。キーラが悪だから倒すのではなく、みんなが戦ってるから一緒に戦っている。そんな感じです。

 

 

「ようは成り行きってことね。」

 

 

まあ、そうですね。

 

 

 

ポケモントレーナー。このレッド君は物語途中なので無口ではありませんし、粗もあります。具体的にどこまで進んでいるかは考えていませんが、エンディング前ということは頭に入れていただきたい。

 

 

「でもゼニガメとリザードン、仲が悪そうでしたね。」

 

 

三人組の負の面を上手く描写できればな、と思っています。前まではちょっと張り合う程度でしたが、最初のパートナーはゼニガメなのにforにおいてリザードンだけが続投したので二匹の仲の悪さは決定的になりました。

後、レッドのフシギバナ雄なのにここのフシギソウ雌設定ですが許してください。

 

 

 

ディディーコング。こちらもいたスト仕様ですがディディーコングはいたストにしては珍しく性格が違いすぎていない子ですね。

 

 

「……………」

 

「…通訳お願いします」

 

 

翻訳がない…

ええ。ファイター達はメタ視点を持っていないのでカッコ内の翻訳はありません。ぶっちゃけ書くのめんどくさい。必要になったらMother組かルカリオに通訳させます。テレパシーって便利!

 

 

「ついに本音を隠す気もなくなったわね。」

 

 

 

シュルク君。普段は穏やかなのですが戦闘だとかなりのハイテンションです。原作ゼノブレイド を未プレイの方は穏やかなのかと疑問に思うでしょうが、彼は元々研究員ですから。

 

 

「穏やかかはともかく友人の武器を作ったりと兵士志願ではないのは確かです。」

 

 

そしてカービィに懐かれました。毛虫嫌いという共通点もあります。この二人は書いてて和むのでもっと書いていきたいですね。

 

 

 

ラストはデデデ。環境破壊とか歴史はスタジオとかアニメの迷言の印象が強いと思いますが、一人称ワシ、語尾にゾイはアニメの設定でゲームだと違うんです。

 

 

「毛糸のカービィとかその設定を使っている作品はあるのだけどね。」

 

「……………」

 

 

外伝なので大目に見てあげて… 基本的にゲームだとオレさまです。

漫画だと関西弁だったりとより一層フリーダムになっていますが。

 

 

 

「え…? 待って、もう終わりなの?」

 

「嫌ですね〜、五人って言ったじゃないですか♪」

 

「確かに言いましたけど…」

 

 

まあ流石にここで終わるのもあれなので私が解釈したプロローグの解説でもしましょうか。

 

 

「環境が整っている方は是非、最初のムービーを一時停止しながら閲覧してください。」

 

 

まずは全員が勢揃いしているシーン。初見は嬉しい悲鳴をあげました。ストーリーないとか嘘つき! とも言いました。

 

 

「結局ここは亜空の使者でのエンディングの場所と同じなのでしょうか?」

 

 

そんなことより一人だけ離れて立っているリザードンの方が気になります。喧嘩したんでしょうか。

 

 

「初期は別のファイターだった? いや流石にそれは…」

 

「謎ね。」

 

 

謎ですね。

そして謎ビームの溜めですが、あれマスターハンドのコピーに使っていた力を取り込んだのではと。

 

 

「そしてシュルクのビジョン発動。」

 

「……………」

 

 

何故か見た未来の時系列が遡る形になっています。これもシュルクの行動の結果なのでしょうか。原作だとこんなことありません。

全員が咄嗟の判断でカービィを逃がすために動いたという考察も広がっていましたが…

 

 

「ここではそんなこともありませんね。何故でしょう?」

 

 

ここは主人公格ばかりが集まっている弊害が出ているのではないかと思います。

まず自分の力でなんとかしようとする。サムスやリンクなんかは基本一人旅なのでより顕著なのではと。

FE勢などは適材適所が身についているとは思いますが彼らがあのビーム相手に何か出来たかと言われるとちょっと…

 

 

「…ゼノブレイドの戦闘システムには即死級の攻撃を未来を見て回避するというシステムがあるわ。見た未来をシュルクに伝えてもらってそこから何かしら行動を起こして回避する。」

 

 

シュルクが全員に伝えようとした結果、いち早くカービィがその意図を読み取ったということかなと解釈しました。

 

 

「ええ。因みに私は非常に怒っています。」

 

 

ああー… 反射板で防げなかったのに二回防いだハイリアの盾。結局正面から負けてないからね…

 

 

「ところで気になっていることがあるのですが…」

 

 

どうぞどうぞ。

 

 

「レッドの抵抗って三位一体ではないんですか? ハイドロポンプ、ソーラービーム、だいもんじ…」

 

 

どう見ても大の字じゃないのでかえんほうしゃになりました。ちゃんちゃん。

 

 

「ちゃんちゃん!?」

 

 

あとインクリングが負けるところ。ムービーでは男のインクリングもいるんですが、じゃあその子いつ出すの? となったので一人減らしました。今作初の捏造描写。

 

 

「次にファルコを挟んで私達が登場します!」

 

 

何気に奇跡の同時使用って初ですか?

 

 

「オーラムやヒュードラーの中ボス辺りが惜しいところですね。」

 

 

あれはフェロモンをつける最初のみ力を使うのか継続して使い続けるのかで話変わってくると思うのですがそこのところどうなのですか?

 

 

「謎です。」

 

 

またかっ!?

 

ちなみにプロローグを書く上で、悩んだ上に吹き出しそうになったところはスネーク、フィットレの『公式が明らかにネタとして作っている箇所』です。だから曖昧な描写になりました。

ちなみにマルス算は話題になりすぎて公式から説明があったので苦労はしませんでしたね。吹き出しそうにはなりました。

 

 

「あはは…」

 

 

ドーナッツマン、なくはないです。、ロイ参戦、兄様が姉様、マルス算、そういう手できおったかとFE勢スマブラではっちゃけ過ぎじゃない?

 

 

「待ってください、大半が冤罪です!」

 

「本編がかなりシリアス寄りだからねえ。」

 

「本当に大変そうですね〜♪」

 

 

あなた達は原作ではっちゃけてますがな。

 

 

「……………」

 

 

とまあ、少し短いですが今回はここで区切りとします。

 

突如現れた新たな敵ダーズ。

奴の目的とは?

未だ見つからないファイターは何処に?

そしてキーラの行方は?

待て次回!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五章 どこまでも流れゆく光
六十五話 今が無茶をする時だ


数分程度の投稿忘れでも私は遅れた、と言います。
自分に甘くしちゃダメですよね! 自らへの戒めにもなりますし。


まあ、それでも学習しないところが一番愚かなのですが。

ゲームの方は… ミニマムサイズにしただけとはいえこのタイミングで新ステージ追加!?




「う… くっ…」

 

 

口を開いても喉から出てきたのは呻き声だった。視界がぼんやりする。頭が重い。

 

 

「ぽよ〜!!」

 

「ん… あっ… カービィ…?」

 

 

桃色の小さな手に体を揺さぶられ、ようやく顔を上げられた。体を起こし、あの偽物の空とは全く違う黒が目に入ってくる。

 

 

「…! ここは!?」

 

 

謎の世界。

確かキーラを討ったと思ったら空が割れて、そこからクレイジーハンドと謎の存在が現れて─

 

 

「そうだ、みんなは!?」

 

 

辺りを見渡す。先程まで共に戦っていた仲間がいた。気絶したままの者もいれば既に起きている者もいる。

 

 

「あっ、シュルク。起きたんだね。」

 

「マリオ…」

 

 

起きていたマリオと偶然目が合う。最後の戦いと思っていた時にこんな目にあったためか、先程と比べて覇気がない。

 

 

「フィギュア化はしてないみたい。気絶で済んでよかったよ。」

 

「でもさっきの戦いでフィギュア化したみんなは?」

 

「うーん… 同じ場所に飛ばされているとは思うけど…」

 

「シークやソードが捕まえていた。全員かまでは確認できていない。」

 

 

真っ先に目を覚ましていたリュウが答える。フィギュアになってしまった仲間も気になっていたが、気絶していた他も放って置けずここに留まっていたのだ。

 

 

「なんだったんだろう、あれは…」

 

「目的は不明。キーラと戦っていたからキーラの敵ではあるようだが、俺たちの味方ではなさそうだ。」

 

「でもあんな簡単に負けるなんて…!」

 

 

あの存在はキーラよりも強いということになる。幾ら自分達と戦って消耗していたからと言っても、あまりにも一方的すぎる戦だった。

苦労して撃破した相手故にショックも大きかった。

 

 

「いつか言っていた、戦力の温存。本当のことなのかも知れないね。」

 

「ああ。」

 

「いつか…?」

 

 

つまり予想はしていたということだったのか。いつかというのはシュルクにとっては不明だが、それはわかった。

ちなみにカービィはその時バナナを一心不乱にたいらげていた。

 

 

「うん。取り敢えずみんなを起こしてフィギュアになった人たちを…!?」

 

 

気配を感じて振り返る。宙に浮いていたのは破壊欲の化身クレイジーハンドだった。

 

 

「クレイジーハンド!?」

 

「くっ…!」

 

 

気絶したところを仕留めんとする破壊神に冷や汗が止まらない。どんどんとこちらへ近づいてくる。

 

駄目だ。

ほとんどの人が戦える状況じゃない。

今が無茶をする時だ。

 

 

「…っ!」

 

「シュルク!」

 

「他のみんなをお願い! ここは僕が止める!」

 

 

三叉に分かれた道。一番右の道からから近づいてくるクレイジーハンドの行方を阻む。

 

 

「クレイジーハンドッ! 僕が相手だっ!」

 

 

ヘイトを貰うことはあまりしないが、今は仕方ない。その発言に反応するように、黒い力が辺りを包む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『終点』のような場所。背後から現れるのは破壊欲の化身。マスターハンドと対をなす左手の姿をしている者。どうやら自分は神と呼ばれるものに良い縁がないらしい。

 

 

「このっ…!」

 

 

モナドを開く。スナップを利かせてなぎ払うようにひっぱたく左手を跳び上がって回避し、背後を斬りつけようとしたところで背後から飛び出してきた何かを見て反射的に手を引っ込める。

 

 

「やあっ!」

 

「カービィ!?」

 

 

『ファイナルカッター』の斬撃がクレイジーハンドを襲う。それに一層破壊衝動を滾らせたように感じた。

 

 

「いつの間に… あー…」

 

 

自分のフードに居たのか。幾ら緊急事態だからといってまさか気づかないなんて。確かにカービィは軽いが感触すら感じなかったとは。熱くなっていた石に突然冷水をかけられた気分だった。

 

 

「でも… 今は二人で戦うしかないっ!」

 

「ぽよ!」

 

 

冷やされた熱は再びその熱さを取り戻す。それを受けてかクレイジーハンドの親指以外の指先が重なる。上空へ向けて跳び上がった。

 

 

「ぷい!」

 

「っ!」

 

 

左右に別れて回避する。クレイジーハンドが間に入ってカービィの方を向いた。

 

 

「『バックスラッシュ』!」

 

 

背中を狙えば威力が増す攻撃。かの破壊神に背面という概念があるかわからないが、あるとすれば間違いなく手の甲の方だろう。そう考えて斬り伏せる。

 

 

「ぷゆ…!」

 

「カービィ!」

 

 

それでも応えた様子はなく、シュルクへヘイトを向ける訳でもなく一頭身の桃色を握りつぶす。指の間からくぐもった声が聞こえた。

 

 

「離れろおおぉ!」

 

 

全力で斬りつける姿にモナドも答えた。余すことなく解放された力に握られた手が離れる。

 

それも計算の内だったのかすぐに別の攻撃の動作に入った。浮き上がるクレイジーハンド。

 

 

「これはマズイ…! 走る!」

 

 

『モナドアーツ』を使用し、シュルクの足が青く光る。雨のように落下してくる爆弾を避けながら頭に花を咲かせたカービィを拾う。

 

 

「ぷぃやあ!」

 

「追ってきてる!?」

 

 

シュルクの腕の中からカービィが後ろを見て叫んだ。反射的にシュルクも背後を見る。

通常レベルの速さはないが、確実にこちらを狙ってきているクレイジーハンド。地形のそこらじゅうが黒煙を上げていく。このままでは完全に視界が消える。

 

 

「やめろ!」

 

 

カービィを高く投げ、モナドを構えて『エアスラッシュ』で斬りあげる。反動か、爆弾の雨は止んだ。

 

 

「ふんううう…!!」

 

 

爆煙は高いところへ飛んだカービィが『すいこみ』で晴らす。充満していた煙はあっという間にカービィの腹の中だ。

 

 

「っと… カービィそんなもの吸い込んで大丈夫?」

 

「んゆ!」

 

 

ごくんと飲み込んで、得意げに舌舐めずりをする。どう考えても美味しくないだろうに。

 

 

ぐっと拳を握り直すと、指先から放たれるのは青白い光線。自由に動く指は造りものの大地を簡単に焼く。

 

 

「…! これは…!」

 

 

アーツがもつ時間はもう長くなかった。避けている途中に切れたら大きな隙をつくるかもしれない。ならばいっそのことスピードは切り上げて別のアーツを纏った方がいい。

 

 

「バスター!」

 

 

ダメージを上げるアーツだ。隙をついて攻撃を狙うことにした。

 

 

「ぷぃ、ぽよっ!」

 

 

小さな光線の隙間を上手く掻い潜るカービィ。クレイジーハンドの真下にたどり着き、持てる脚力を生かして頭突きを放った。ビームを止められ、大きく崩れる。重石代わりに10トン分銅と変化したカービィが押しつぶす。

 

 

「ナイス! 畳みかけていくよ!」

 

 

今は切れ味を上昇させているも好機だった。白い左手を思い切り斬りつける。だが、相手とてこのままでいるものか。

 

 

「っ!? マズ…!」

 

「いっ!

 

 

横になった体勢のまま、幼児のように感情の任せて暴れ回る。幼子がすれば微笑ましい光景となるが、神が用いれば凶悪な技の一つになる。

カービィは投げ出され、シュルクも逃げようとするも追いつかれ、指にはたかれてぐわんと視界が揺れた。

 

 

「う…」

 

 

頭がクラクラする。平衡感覚が無くなり、今どんな体勢でいるのか、立っているのか浮いているのかもわからない。

 

 

「しゅるくっ!」

 

 

飛行機を真似して貫くクレイジーハンドに対してカービィがシュルクを『すいこみ』で寄せて離す。

 

 

「…ん!?」

 

 

何かに体をはりついたような感触が、シュルクの意識を完全に覚醒させる。みっともなくカービィにはりついた姿だった。口には入らなかったがこれはこれで恥ずかしかった。思った以上にカービィの体はぷよぷよしている。

 

 

「ごめーん、カービィ! よ、よし、立て直していくよー!」

 

「ぽよーい!」

 

 

反射的に上半身を引いて自分の力だけで立つ。誤魔化すようにわざと大きな声を上げる。カービィが単純で助かった。

 

 

「!」

 

 

青い光。走馬灯のような感覚。指の関節が蜘蛛の足の様に曲がる。確かこの形は。

 

 

「カービィ、飛んで! 『ビジョン』が!」

 

 

うぃ、と返事をするとピンクの体を膨らまして飛び上がる。ろくに情報を与えられなかった最初の時もシュルクの意図を素早く読み取ったカービィは今回も把握した。

 

 

「やってみるしか…ないっ!」

 

 

見えた未来に従いモナドを振るう。人差し指と中指を斬りつけ、自分は指の間を潜り抜けた。

 

 

「んんーぅ… とりゃああああ!」

 

 

炎を纏いし木槌が薬指と小指の付け根を狙う。完全に体勢を崩されたクレイジーハンドは親指だけを下に入れて倒れ伏す。

 

 

「しゅるくー!」

 

「OK!」

 

 

モナドを展開。足の位置はそのままに振り返り思いっきり振りかぶった。

 

 

「『バックスラッシュ』!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん、勝手に…」

 

「めーん」

 

 

シュルクが頭を下げる。緊急事態だったとはいえ、急に飛び出してしまった。ちなみにカービィは真似しているだけのように見えて申し訳ないとは思っている。彼の場合逆もありえそうではあるが。

 

 

「そんな怒ってないよ!カッコ良かったよシュルク!」

 

「ああ、気にしていないよ。助かった。」

 

 

軽い気持ちで襲撃されて更に悪い状況になる方が危険だった。シュルクの判断は間違っていない。

 

 

「…結局さっきのあれはなんだったんだろう。」

 

 

ネスの疑問で討論は原初の議題に戻る。漁夫の利を得る形で乱入してきた謎の存在。キーラには異質な神聖さが感じられたが、謎の存在には様々な悪意が混じり合って知覚できない何かを感じる。

 

 

「なんでもいい。あの黒茨は叩き潰す…!」

 

「ガンナァ!?」

 

「悪い案とは言えない。あちらにだって私達に害意はあったのだろう。そうでなければ今私達はここにいない。」

 

「フン、同調する気はないが仲良しこよしもごめんだ。黒茨もワガハイが倒してやる!」

 

「パクんじゃねーよ、グズでノロマな亀さんよぉ?」

 

「なんだとこの武器を使う臆病者が!」

 

「武器使う=臆病って図式が陳腐だとしか言えないね。私が作ったものを私が使って何が悪い?」

 

『落ち着け、二人とも。』

 

 

あわや一触即発といったところでルカリオが間に入る。

 

 

「三つの道に分かれてはいるが… 流石に分断するには情報が足りないな…」

 

「それじゃあさっきのクレイジーハンドがやってきた右の道から行ってみよう!」

 

 

異論はなかったので言い出しっぺのマリオが自然と先頭になって進む。

謎の軍勢はなんだったのだろうか? キーラの現状は? 疑問は尽きないがそれを明かすためにもファイター達は前へ歩き出すのだった。




デデデ「ラジオチャンネルDDDの時間だ! 司会進行はプププランドの大王たるこのオレさまデデデと!」

ウォッチ『まっくろなぼくがおとどけするよー!』

デデデ「ゲストであることを添えろ! オレさまがこんなイロモノばかりと仲良くしているように思われるじゃないか!」

ウォッチ『まっくろなゲストがおとどけするよー!』

デデデ「うむむ… まあ、いいだろう。さあ、便りを読むんだ。」

ウォッチ『ペンネーム、DDDだいすきさんから! 「いつもきいています!」あれ、これしょかいじゃなかったっけ? 「もっとデデデだいおうさまのでばんをください!」』

デデデ「ほんとにな!」


デデデ「次回! 『ダーズ』!」


ウォッチ『いうほどすくないかなー?』

デデデ「しっーー! 余計なことを言うな! こういう意見を混ぜれば実際出番が少ないように見えるだろ!」

ウォッチ『じかいはみていー! やらせがうたがわれてうちきりしちゃうかもー!』

デデデ「だから余計なことを言うなあぁぁ!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

六十六話 ダーズ



皆さまお魚がプレイするポケモンルビーを知っていますか?
私も別に真剣に見てる訳ではないのですが、たまにチラ見しています。
いやー、発想がすごい。と、一見感心したのですが私ふと思いました。

お魚といい捕まえたポケモンの体重分移動する動画といい最初の草むらでレベル100といいルビーだのオメガルビーだのには超人にしか集まらんの?



これまでに起きたことを心の中で思い返しながらマルスは思考の海を泳いでいた。

 

討つべき標的が謎の存在へ置き換わってからファイターたちは闇の世界を進んでいた。確かにキーラの居た世界とは違い、この世界の全ては違和感に満ちていた。空は絵具を塗りたくったように真っ黒だし、宙に浮かぶ大地は所々崩れているものの落下していかない。まるで重力という概念が存在しないかのようだった。

 

 

「(おかしいのは世界そのものだけじゃない…)」

 

 

この闇の世界にも多くのスピリットが囚われていた。瞳の色と仕える主が違う以外はキーラのそれと同じようだった。

奴が元の世界で何かしたとは聞いたことがない。危害を加えたのはキーラの方だ。逃げ出した形のキーラと何か関係があるのだろうか。キーラから戦士を奪いとる時といったらそのタイミングしかない。

 

 

「(ならば… 他のみんなもこの世界のどこかに?)」

 

 

キーラからスピリット達の支配権を奪いとったなら、ほぼ同じ状態のファイターがここにいてもおかしくはない。

そう考えながらどんどん奥へ進む。今のところファイターは見つけていない。

 

 

「うひゃあー! ピチューピチュー、でっかい歯車がいっぱいだ! 動くの? 動くよね!」

 

「ピチュー…!」

 

「動いたら困るんだが… 落ちないように。」

 

 

他に足場らしい足場は存在しない。つまり奥を調べる為にはこの歯車の群れを渡っていくしかない。恐る恐る片足を伸ばし動かないか確認しようとするも。

 

 

「ぐるぐるだよ!」

 

「大揺れ… しないっ!?」

 

『もはや予測できても止められないな…』

 

 

そんな石橋を叩く行為を無駄にする者がいるため、先行隊を先へ行かせる。

 

 

「勝手に動いたりはしないようだけど… 一応人数絞って行こうか。」

 

「つまり重量級ボクサーは待てってことッスか?」

 

「リトル・マックはー?」

 

「適度に絞ってるんで問題ないッス!」

 

 

先に行ってしまった者達の人数を考えて前方から適当に数を決めて進む。

 

 

「暗い…」

 

「足を踏み外さないように気をつけないとね!」

 

 

歯車の中央部を歩く。屋根のようについた一回り小さい歯車がファイターの視界から光を奪っている。所々破損しているのか、中々思い通りの場所にはたどり着けない。その時、ピカッと照らされる。

 

 

「おーい! これで見えるかなー?」

 

「インクリングー!」

 

 

離れた場所からインクリングが携帯の懐中電灯を使って照らす。足元が照らされて道が判明した。彼女の元へたどり着く。

 

 

「ふう… ありがとうインクリング。助かったよ。」

 

「えへへ、気にすることないない!そうそう、あそこなんだけど…」

 

「…! あれは!」

 

 

先程までいた世界にもあった転移の光。違う場所へ移動する扉。

 

 

「マリオ、みんなを呼んできてくれ。あそこへ行こう。足元に気をつけて。」

 

「OK! 任せてよ!」

 

 

走って元いた道を戻っていく。あとは他を待つだけだった。

 

 

「いや、待って! あっちは…!」

 

 

気づかないところだった。向かい辺りに何かがいる。インクリングに灯りを頼むとそちらへ歩き出す。歯車の下を通って見つけたものは。

 

 

「ルキナ…!?」

 

 

キーラだけではなかった。奴もまたファイターという戦力を欲していたのか。キーラのそれとは違って人型の駒には触手のようなものが巻きついている。

 

彼女も。全員を助けなければ。意を決してそれに触れる。キーラのそれよりも黒い黒に包まれ、自分の体がここではない何処かへ飛んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『終点』の『闘技場』。王族たるマルスが観覧席に座ることはあれど、戦士として戦う経験はなかった。それもこの世界で慣れてしまったが。この戦いを見ている者はいるのだろうか。きっとあの元凶は遥か上で見ているのだろう。

 

 

「…っ!」

 

『…』

 

「ルキナ! なんて姿に…!」

 

 

初めて会った時にえらく感涙されて、まるで壊れ物を扱うかのように慎重に握手された姿を覚えている。でも今は。

聖痕を宿した左目ごと瞳は薄い紫に染められ、赤黒く痛々しいオーラを纏っていた。一筋の希望として振るわれていた彼女の刃が今度は絶望として振るわれる。彼女の憎んだ邪竜のように。

 

 

「… ごめん。僕はこんなやり方しか知らないんだっ…!」

 

 

本意で戦っていない女性に剣を向けるなどやってはならないことだろうが、別の方法を考える暇などなかった。実際彼女に憧れられるほど力量も技量も差はない。未来の歴史書には載ってないだろうが、何も自分一人の力で戦った訳ではないのだ。

 

振り下ろした神剣が弾かれ、左肩を狙った裏剣による刺突を腰から捻ってかわす。横薙ぎの脇腹を狙った攻撃が当たり、突き出された刃が横へ移動し。互いを傷つける。

 

 

「っ…!」

 

『…!』

 

 

ルキナを突き飛ばし、距離を取って一時休戦をとる。彼女は優しい子なのだ。どうしようもなく絶望にまみれた世界で生きてきたというのにそれでもだ。

 

それなりに打ち解けられたある時にふと彼女の口から溢れた謝罪。勝手に自分の名前を名乗ったことの懺悔だった。

彼女から見れば自分は遥か昔に亡くなっている先祖だ。偶然にも本人と邂逅する機会があったとはいえ、自分の名前を使うことに難色を示す者などルキナ本人しかいない。

 

でも。そんな絶望の未来で、自分の名前を名乗ることで少しでも彼女の救いになっていたのならばこれほど嬉しいことはない。

 

 

「見ていてくれ…!」

 

 

彼女の光になれるなら何度だって剣を握ろう。彼女の言う英雄王に相応しいマルスとなるように。掲げるは光の剣。

 

 

「っ、ハッ!」

 

『……ッ!』

 

 

剣先をルキナに向けると、相手も応えるように剣先を向けた。足を踏み出し、すれ違いざまに互いに斬りつける牙が音を立てる。左足で踏ん張ってすぐに体の向きを変える。上空から体ごと振り下ろした剣を受け流し、そのまま剣先を上げて腕の内側に刃を入れる。

 

 

『…っ!?』

 

 

ルキナの顔が歪んだ錯覚が見える。でもそれはどこまでいっても錯覚でしかなくて、マルスの願望だった。…戦うしかないのだ。

 

体勢を立て直したルキナが背後から剣を振るのを感じとってシールドを張る。シールドが削られて小さくなるのが見えた。

 

 

「…っ! やあっ!」

 

『…!!』

 

 

振り向いた勢いのままに鍔迫り合いが始まる。拮抗する実力。彼女はそこから逃げて膝を入れ込む。

 

 

「く…ふぅ…!?」

 

 

思わず入れていた力を逃し、腹部を押さえて後ずさる。汚く勝つのはルキナの方が得意だった。裏剣を両手で持ち、頭の上から振り下ろす。

 

 

「っ!」

 

 

でも、今のマルスには負けられない理由がある。即座に神剣で受け止めて上へ打ち上げる。ファルシオンが手から離れ、勢いをつけたままにルキナの胸へ吸い込まれる─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルキナの顔は真っ赤だった。憧れの人物に多大な迷惑をかけてしまった。それでも今言うべきはそのことではなかった。

 

 

「今の目標はその突然現れたものの討伐になる。どうして現れたのかわからないけど君がここにいるってことは他のみんなもこの世界のどこかに居るんだと思う。」

 

「混沌と、闇の化身です…」

 

「ルキナ?」

 

 

突然降ってあらわれた二つ名。思わず空を仰ぐ。闇と称された空は暗く見る者を不安にさせる。

 

 

「頭の中に響いたんです。私に従えと。直接声を聞いた訳ではないのですが、キーラを倒せ、ファイター達を始末せよと。そればかりが頭に入って…」

 

「そう… ごめん。早く助けられたら良かったんだけど…」

 

「いえ、マルス様は悪くありません! 誰もあんな目に合うなんて予想できませんよ! お父様もルフレさんも誰も責めたりしません!」

 

「うん、ありがとう。それであれは…」

 

 

同じくルキナが闇の空を見上げる。

まるでその奥に潜む何かを睨みつけるように。

 

 

「光の化身キーラと対をなし、調和を保つ存在。この世界の終末を目論む混沌と闇の化身。ダーズと名乗った…気がします。」

 

「ダーズ…」

 

 

その名を口走った途端、睨まれているような感覚に陥った。宣戦布告のように睨み返した。





ルキナ「よくよく考えてみれば、私=覚醒のマルスって大き過ぎるネタバレですね… スマブラでは今更ですが…」

シュルク「そんなに気にすることでもないと思うけどなあ。」

ルキナ「公式のCMで躊躇なくネタバレしたゼノブレイドから言われても…」

シュルク「ネタバレの仕方にも色々あるし、発売後の話なら許容範囲じゃないかな?」

ルキナ「そう、なのでしょうか…?」


ルキナ「次回、『打ち倒すだけだ』!」


シュルク「ネタバレの許容範囲はゲームによって違う!」

ルキナ「もしかして… 全部ピットさん達が悪い?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

六十七話 打ち倒すだけだ


ポケモン界に衝撃のニュースが飛び込む…!?
レートで上位ポケモンが禁止される…!?
今までスペシャルルールで厨ポケが使えないといったことはありましたがそれはあくまで外伝ルールだったんですよね。このルールが続くのだったら彼らの出番はフリーのみになってしまう…!?

遊戯王みたいな規制の仕方をポケモンがしてくるのは衝撃的でした。ただでさえリストラで一騒動あったので尚更。まあ、本編で使えない訳でもないのでまた話が違うのですが。
フェスの話題も虫取り大会の話題も全てぶっ飛ばした…!




 

「暗い…」

 

「うん、ここは夜だからな… それよりここって…」

 

「ああ… 細かい構造は違うがまるでドラキュラ城そのものだ…!」

 

 

シモンが苦虫を噛み潰したような顔をする。シモンは実物を見たことがあり、他の一同は実物をモチーフにしたステージを知っているのでわかったのだ。

外は意味不明な地形で建物らしいものもなかったのである意味で油断していたのかもしれない。

 

 

「ダーズもそうだが、ここにもし親玉が潜んでいるのならばベルモンドの一族として見逃す訳にはいかないな。」

 

 

静かに燃える闘志を隠し、石畳の路を進む。

城の門番として立ち塞がるは一つのスピリット。

 

 

「ヒギャアアアデタアアアア!」

 

「悲鳴上げながら楽しそうにしてんじゃねえよっ!」

 

 

笑顔で叫んだソードの頭をガンナがアームキャノンでぶん殴る。大きなたんこぶをつくりながらも彼はこんな状況を楽しんでいるように見える。

 

 

「だい、だい、だいじょぶだいじょぶ、シオンタウンに比べれば全然…」

 

「おっ、小僧の肩に乗ってる白い手はなんだ?」

 

「ギャーーーー!?」

 

「レッド、そんなのいないよ…!」

 

 

スネークが入れた茶々にレッドが怖がり過ぎて逆に冷静になったリュカ。入り口前なのに既に阿鼻叫喚である。

 

 

「リンクわかる? あれはボク達の世界の魔物だよね?」

 

「そーらしいね。生憎心当たりはないけど。」

 

 

そう答えるリンクはシーカーストーンでウツシエを撮っていたりと彼は彼で楽しんでいた。

 

 

「どこの者だろうが、私は魔なる者に加減はしない。悪しき者を打ち倒すだけだ。」

 

「ヒュー! カッケェ流石ベルモンド! そうだ一枚撮っとくか…」

 

 

褒めてくれるのは純粋に嬉しかったが、後半は答える必要性を感じなかったので無視した。勝手に撮る分には構わなかったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『戦場』と化した『ハイラル城』に並び立つ黒いミュウツーの姿をした者たち。そこへ並ぶのはヴァンパイアハンター シモン・ベルモンド。

 

 

「ふんっ!」

 

『…』

 

『…っ』

 

 

四匹全員まとめて『クロス』でなぎ払おうとする。確かにヒットしたのは見えたのだが、応えた様子はなかった。そして歩みを始める相手の足はいつものミュウツーよりずっと遅い。

 

 

「(鈍足で… 鈍感か。なるほど…)」

 

 

ゾンビに似た敵リーデット。いつかのハイラル城を闊歩していた魔物。このような相手の戦いは経験がある。痛みに鈍い奴らは多少の攻撃ならば耐えて反撃ができる。近距離戦を得意とするファイターでは苦戦を強いられるだろう。

 

 

「はあっ!」

 

 

だが、シモンならその問題は解決できる。

ヴァンパイアキラーの先が先頭にいた敵一匹の横っ面を打ち抜き、帰り際にもう一匹をなぎ払った。

中距離メインのシモンの戦法では反撃できるような間合いに入らせないのだ。敵が四匹いる以上完璧にとはいかないのかもしれないが、被弾回数が減るのは確かだ。

 

 

『…!』

 

『…』

 

 

とはいえ此奴らは本当の姿ではなく、最強の遺伝子の肉体を使っている。数に任せた『シャドーボール』が弾丸のように襲いかかった。

 

 

「むっ…」

 

 

鞭を回転させて敵弾を弾きながら横移動で逃れようとする。空いている片手で『聖水』を取り出し敵が密集している場所へ投げ込んだ。落下し割れたビンから炎が噴き上がる。

 

 

『…っ!』

 

 

被害の少なかった一匹が『かなしばり』を撃つも、届かない。たやすくヴァンパイアキラーに沈む。

 

 

「…! くるかっ!」

 

『……!!』

 

 

その他の三匹がタイミングを合わせて襲いかかる。一人は上の足場を利用して、他は分かれて両サイドから念力を手に纏わせる。

 

 

「…!」

 

 

カッコがつかない戦いでも勝つ。それは両方で共通していたことだった。

上空から襲ってくる敵には『斧』を投げ、地上の敵には片方だけに対して『スライディング』をかけて強引に窮地を潜り抜けた。

 

 

「…っ!」

 

『!!』

 

 

だが一人、波状攻撃に加わらなかった結果、動きを予測される形で回り込まれてしまった。スピリットの性質を真似ているからか割としょっちゅう使ってくる『かなしばり』をくらってしまう。体が限界以上に緊張し、まるで体が動かない。

 

 

「ぐぅ… ううう…!」

 

『…!!』

 

 

そんな状態で背後の攻撃を避けれるわけもなく、『サイコキネシス』で捕らえられ、大量の『シャドーボール』と共に空へ放り投げられた。

 

 

「…ッ!」

 

 

投げ出され、ようやく体が動くようになった。追い討ちの弾丸は弾き、急降下の『ジャンプキック』で敵を蹴りながら着地する。

 

 

「散れ!」

 

『…!?』

 

 

浮き上がった敵一匹に鋭い鞭先がぶつかる。踏ん張りの効かない空中で強力な一撃をくらってしまったならもはや耐えられない。異質な青空へ消えていく。

 

 

「まずは一つ…」

 

 

仲間を潰されたと認識した他の敵が襲いかかる。『テレポート』で近づいてきた敵にはしなる鞭で吹き飛ばし、足場を渡ってきた敵は『聖水』の火で足止めして体術で後ろへとばす。

 

 

「ふんっ…!」

 

 

二匹と距離をつくったおかげでもう一匹への道がまっすぐ空いた。また鋭い鞭捌きで最初の一匹の後を追わせた。

 

 

「後はお前たちで最後だ!」

 

『…』

 

『……っ』

 

 

両脇を固めるようにサイドから攻めてくる。焦っているのか、単なる攻撃本能しかないのか。

 

 

「…!」

 

『『…!?』』

 

 

ギリギリまでおびき寄せ、前方へ飛び出す。シモンを見失ったしもべは互いにぶつかり合って目を回した。

 

 

「甘いっ!」

 

 

足を狙った攻撃は二匹まとめて叩き飛ばした。

悪魔城へ乗り込むヴァンパイアハンターは止まらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

城内に入ったファイターはエントランスのような場所に着く。玄関を抜ければエントランスなのはさほどおかしいことではないのだが、絨毯や壁がボロボロなのが異彩を放っていた。

 

 

「何かが先の道を塞いでいますね…」

 

『なにー? これなにー?』

 

「えっ、えっーと… なんなんでしょう?」

 

 

螺旋階段に立ち塞がる黒い影。スピリットともファイターとも違う何か。Wii Fit トレーナーに聞いたところでわからない。

 

 

「なんでも構わん! オレさまの道を塞ぐな!」

 

 

振り下ろした木槌は影に当たることなく素通りした。錯覚なのだが、デデデにはその影が自分を笑っているように見えてしまい、一人でいきり立つ。

 

 

「ぐうおおー! オレさまは大王だぞ! そこをどけー!」

 

 

乱暴に振り回すハンマーは当たらず、それでもデデデの体は通さない。

 

 

「ハンマーは当たらないのになんで体は通さないのさ!! これはご都合主義ってやつか!?」

 

「ピットさん、落ち着いてください…」

 

 

ルキナが止めるが、いくら叫んだところで状況は変わらない。大人しく別の方法を考えるしかなさそうだ。

 

 

「みんなー! ちょっとこっちー!」

 

「シュルク」

 

 

階段の上からシュルクの呼ぶ声がする。上へ上がると、ガンナが何かの鉄塊を弄っていた。

 

 

「これは?」

 

「たいほー!」

 

「うん、これ使えないかなって思ってガンナと直してたんだ。」

 

 

カービィの言葉を肯定するシュルク。このピンク玉の興味は大砲へ向けられていた。

 

 

「タイホウ?」

 

「それってなんですか?」

 

「うーんと、ざっくり言えば鉄の玉を撃ち出す武器だね。火薬へ火を回して生まれた衝撃で弾丸を撃つんだ。」

 

 

マルスの世界ではそこまで文化が発達していなかった。ルキナの時代ですらそこまで行っていないのだ。

 

 

「そーいやさ、ルキナあの黒茨のこと知ってんだっけ?」

 

「黒いば…? ダーズのことでしょうか? 知っているというか頭に流れ込んできたというか…」

 

「まーどっちでもいいわ。うっわ思い出したらムカついてきた。私の獲物を途中から… 羽野郎には逃げられるし。チッ」

 

 

ガンナの完璧な舌打ち。

背後でソードを差し出そうとするリンクに抵抗するソードのぎゃあぎゃあと喚く声が聞こえる。それがよりいっそうガンナを苛立たせ、血管が爆発寸前になる。

 

 

「ぽ〜?」

 

 

大砲を挟んで向かい側のカービィからは無言で導火線を見つめるガンナの顔がバッチリ見えた。

 

そして彼女はそのまま。

 

なんの躊躇もなく導火線に火をつけた。

 

 

狙うは謎の黒い影。デデデ達が未だそこにいるにもかかわらずだ。

 

 

「ぐおおっ!? なんじゃこりゃー!?」

「きゃあああ!?」

『わー!』

 

 

他のファイターは彼らの悲鳴と大砲から出てくる煙でようやく事の次第を把握できた。というかガンナの動きが自然すぎて止める声も上げられなかった。

 

 

「ふうー、ちょっとスッキリしたわ。オケオケ。」

 

 

なにもオケオケじゃないが。

カービィもカービィだ。必死こいて助けたデデデが爆散しているがそれでいいのか。

 

 

「…んだよ、進むんじゃねーの?」

 

「あ、ああ…」

 

 

なんとか応えられたのは誰だったのか。

思考が固まってそれを理解することも出来なかった。





デデデ「とーおーせ! オレさまを誰だと思っている!?」

ピット「ペンギン!」

デデデ「な〜んだとっ!?」

フィットレ「でもこのままじゃあ通れませんね…」


フィットレ「次回、『泥臭い勝利をもぎとれ』です!」


ピット「ハンマーは通す、ゴルドーも通す、デデデは通さない。」

デデデ「キマリ扱いかぁー!?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

六十八話 泥臭い勝利をもぎとれ


ダイレクト!ダイレクト!ダイレクト!おめでとう!


キンハーの音ゲーもいいけどそろそろ新ファイターの情報カモン!
一弾と違って一年に三人ペースだから待つ時間が長いッ!




やらかしたこと(誰がとは言わない)の印象が強すぎたこともあり多くの者が見逃していたのだが、あの黒い影は大砲を当てることで消えていった。これで先へ進めるようになったのだ。

 

城内を進んでいくが、いかんせん分かれ道がなく、ほとんど一本道なので誰かがスピリットと戦っている時は大半が待機せざるをえないのだ。複数でスピリットと戦えば多少は待機時間も短くなるが完全に解消することは出来ず、ダラダラと牛歩のような遅い攻略が続いた。

そして、ようやく外、屋上の空が見えるところへ辿り着いたのだ。

 

 

「ふぃー… やっと外だ…」

 

 

欠伸しながらリンクが洩らす。散々外から城壁を登ることを提案してきた者なので相当飽きていたようだ。待機中も剣の稽古をしていたりとじっとしていられない性格らしい。

 

 

「同感、同感ー… っておおっ!? ファイターはっけーん! 確認されたし!」

 

 

ビシッとインクリングが指刺した先にはファイター。先程見た黒い影が道を塞ぐように存在していた。

 

 

「あの子って…!」

 

「デイジーだ!」

 

 

マリオとピーチが顔を見合わせて確認する。この感覚が嘘をついたことは一度もなかった。

 

 

「また大砲直してぶっ潰せばいいんだな? おし、任せろ。」

 

「ストッパーソード!」

 

「ノー!? ムリィ!」

 

「そのデイジーごとぶっ飛ばせと」

 

「ノーノーノー!」

 

「冗談に決まってんだろ、頭にまで花咲かせてんのか?」

 

「そろそろアングリーしてもいいと思うんだよね…!」

 

 

ソードの顔も三度まで。それはともかく現状黒い影をどうにかする方法が大砲を使うしかない以上、彼女などの機械構造に詳しい者の知識は必要だった。

 

 

「んで… これでいいだろ?」

 

「流石に二度目だと早いね。」

 

「中身がぐちゃぐちゃなだけで部品は足りてたしな。構造も簡単だし余裕余裕。…で、誰が砲弾持ってたっけか」

 

「俺が持ってるぞ。」

 

 

スネークが砲弾を補充すると、ガンナが射線に誰もいないことを確認して火をつける。やはり先の事件は故意で起こしたものらしい。ドカンと音が鳴って蝙蝠の影が飛び散っていく。

 

 

「やはり奴がいるか…」

 

「マリオ、私に任せてもらっていいかしら?」

 

「う〜ん… いいよ! ボクが行ったらなんでルイージじゃないのって言われそうだし!」

 

 

シモンが決意を新たにする傍らで彼女の身内が和気藹々と話す。戦う人は同郷の者たちで決めようというのが暗黙のルールとして一部を除いた全員に伝わっている気がしていた。

 

 

「まー、私じゃないなら誰がやろうと誤差だわ。私別の道行ってくる。」

 

「ウエイト! ちょっとトークすることが」

 

「めんどいからパス」

 

「ノオオオオオ!?」

 

 

そうやって階段を降りていくガンナをジト目で見つめるファイター達。マイペースなピーチはそれに目も暮れずまっすぐファイターに触れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら? ここは…」

 

 

ピーチは覚えていないようだが、彼女がキーラの手先としてマリオと戦った時のフィールドと同じ場所だった。『マリオUランド』のクッパ城内。グルグルと回り続ける足場だ。

 

 

『…!』

 

「きゃ…!」

 

 

よそ見をしていたら何かが腕にぶつかる。咄嗟に身を引くとデイジーが頭のクラウンで叩いていたらしいと推測できた。

 

 

「もう、せっかちさんね」

 

 

何処からかカブを引っこ抜いて投げる。ウインクをした茶目っ気のある顔が橙色の姫君にぶつかって落下していく。

 

 

「チャ〜ンス♪」

 

 

隙のできたデイジーを掴み、お尻で突き飛ばす。その間にピーチは別の足場に移る。

 

 

『…っ』

 

 

流石にダメージがまだ溜まっていないので彼女が復帰するのは容易だ。とはいえ早く復帰しないと足場が重なって手が届かなくなる。スカートを押さえて出来るだけ早く目的の場所へ行ってなんとか崖側に手をつけられた。

 

 

「むっ」

 

 

ちょっとだけピーチがむくれる。ダメージはあまりなかったとはいえ、思ったより復帰が早かったのだ。顔はそのままに両手に魔法の力を纏って走る。

重なる足場に上がろうとするデイジーに『レディープッシュ』を仕掛ける。傘でガードされた。彼女の傘も見かけ以上の頑丈さを持っている。

 

 

「…きゃ!」

 

『…!!』

 

 

開いた傘を押し付けられては距離を取らざるを得ない。足場に上がらせない作戦は中々上手くいかないようだ。同じ目線に立たれてしまった。

 

 

「せい!」

 

『…っ!」

 

 

テニスラケットがぶつかり合い防ぎ合い。戦闘力が拮抗しており得手不得手も殆ど同じなため戦闘の起点が作れないのだ。互いに思う。自分が優位に立つためには相手より先に仕掛けなくては。

 

 

「えいっ」

 

 

ヒップアタック、『ピーチボンバー』を仕掛ける。この至近距離ならば避けるのも防ぐのも間に合わないだろうという判断だった。

 

 

「えっ…」

 

『…!』

 

 

しかし、相手にぶつかる衝撃はこなかった。デイジーは浮遊の魔法により宙へ浮いていたのだ。だが攻撃を見てからでは間に合わない筈。幸運にも相手は同じ考えを持っていたのだ。そして彼女は浮遊して空中戦を仕掛けることを考えたのだ。

 

 

「いっ…」

 

 

地面に上手く着地できなかったピーチは尻餅をついて苦痛の声を洩らす。そして、それは相手にとっては絶好のチャンス。

 

 

「あぅ…! たっ、ううっ…」

 

 

真上からの四段蹴りを対処する術はない。体を打ち抜かれ顔を歪める。

 

 

「んっ…!」

 

 

片腕を起こし、転がりながら抜け出す。続けた連続キックは地面だけを踏み抜いた。桃色のドレスが二転三転して起き上がる。お姫様に似つかわぬ泥臭い勝利をもぎとれ。

 

 

「せぇい!」

 

『っ!?』

 

 

ゴルフクラブに打たれた肉体が上に上がる足場へ飛んでいく。手に持った物はそのままにピーチもそちらへ向かっていく。

 

 

『…っ!!』

 

 

咄嗟に投げたカブはゴルフクラブで打ち返されてあらぬ方向へ向かっていく。

それを見たデイジーは飛び道具は効かないと判断したのか、空中へ浮いてこちらへ向かってくる。

 

 

「だとしたら…!」

 

 

スカートの中が見えてしまうと思われるほどに片足を高く蹴り上げる。空中に浮かんでいたデイジーに届くほどに。

しかし、怯みはしたが浮遊は絶やさなかった。

 

 

「(そう… なら私は…!)」

 

 

ピーチもまた同じ魔法を使い、戦場を空中に切り替えた。真下の暗闇がより一層濃くなったように感じる。

 

 

「えい!」

『…!』

 

 

互いに虹の魔法がぶつかり合い、相殺して消え去る。ハートとヒナギクが拮抗して互いに弾かれ地に足をつける。

 

 

「やっぱり互角かしら… でも負けていられないわ!」

 

 

駆けるデイジーを足払いの要領で転ばせる。体勢が崩れ、体が落ちていくところをドレスのスカートを回転させて飛ばす。足場と足場が重なり、狭い場所での一手。追撃は相手方の少し乱暴な防御で断念せざるを得なかった。

 

 

『…ぅっ!!』

 

「近づけない…」

 

 

オレンジのパラソルを振り回すデイジーにピーチは近づけない。粗末な防壁だが、近づけさせないという点に関してはその機能をこなしていた。何か打開策はないかと引っこ抜いても普通のカブ。投げても弾かれるだけだ。

 

 

「…! そうだわ!」

 

 

カブを持ったまま走り出すピーチ。

それを視認したデイジーは剣のようにパラソルを振り下ろす。

 

 

「えいっ!」

 

『…!?』

 

 

傘が捉えたのは金髪の乙女ではなくただのカブ。せっかく引っこ抜かれたというのに傘に潰されてしまっては目が点になるのも無理もないだろう。元からだが。

 

 

「はあぁ…!」

 

 

隙だらけになった相手に『レディープッシュ』で押し出す。魔法の威力が加わった攻撃が無防備な体躯に押し付けられたことで堪らずぶっ飛ばされてしまう。足場に残れないほどに。

 

 

『ッ!!』

 

 

それでも負けてはいけないと頭の中で誰かが囁く。それは今の彼女にとって何よりも優先すべき至上の命令だった。だから諦めてはいけない。

 

痛みもダメージも無視して手を伸ばす。

 

 

周り続ける足場へ向かう。

 

 

回る足場はあざ笑うかのように上に上がる。

僅かに届いた指先を掬わずただ回った。

 

 

最後まで綺麗に命令に従った傀儡は綺麗に落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ…」

 

 

重たい目蓋が煩わしい。喉から声が洩れながらようやく開いた瞳には見慣れた赤とピンクが映った。

 

 

「デイジー、大丈夫かしら?」

 

「…あれ? ここどこなの?」

 

「ダーズの作った世界だよ!」

 

「ダーズ… あ、そういえばそいつ知ってるわ! 聞いたもの! 本人から!」

 

 

ルキナと同じく彼女にも伝わっていたようだ。フィギュアから戻って目を覚ましたデイジーがその旨を伝えた。

 

 

「うん、キーラを倒したと思ったところに現れたのがダーズ。今はそいつの世界を回りながらみんなを探してるんだ!」

 

「なるほどね。いいわ、アタシの体を勝手に使った罰は重いわよダーズ! 次はどこにいけばいいの?」

 

 

快く協力してくれそうだ。プリンセスに似合わないガッツポーズ。混沌の世界に一輪の雛菊も咲いた。

 





デイジー「アタシ達スマッシュブラザーズは闇の世界に潜っては見たものの、じめじめしていて嫌だった… ので! 」

ピーチ「すぐさま地上へと取って返し、卑怯にもダーズの背後を突いて壊滅させてやりました!」

マリオ「次回予告で終わっちゃった!?」

ピーチ「かくして、次回からは普通の日常編となります! お楽しみに!」

マリオ「嘘だよ!」


デイジー「次回!『覚えてるか』!」


デイジー「熱き闘志に、チャージイン!」

マリオ「これわかる人どれぐらいいるの!?」

ピット「最近作者がちょっとハマっちゃったんだよ」

マリオ「それ言うためだけに出てきたの!?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

六十九話 覚えてるか


サンシャインリマスター!?
ギャラクシーもついてくるし、神ゲーを三つつけるとか神ゲーにしかならないやん!?


ゑ?
今月発売…? マジ…?



 

ぴょんと戻ってきたパックマンの足元からボディが溶けていく。そのまま急いで道の先のレバーを逆の向きに倒した。

すると壁になっていた一箇所が傾き、壁が天井のようになったところで静止した。階段から上に上がる道が開く。

 

 

その道を邪魔するスピリット達をファイターは倒していく。

 

 

「おまたせしましたわ。現状を教えてください。」

 

「今どんな感じなの?」

 

「ピーチ、デイジー。二人とも無事でよかったよ。」

 

 

様子を見ていたシークに声をかける。彼女とシークは亜空軍の一件からの縁だった。

 

 

「むっ、それは私の実力が足りないと言っているのかしら?」

 

「まさか。キミの実力は知っているよ。ボクが守る必要もなかったように感じた。それでも心配ぐらいしたって構わないだろう?」

 

「ま、それならいいわ。それで結局どういう状況なの?」

 

 

膨れたピーチを押しのけてデイジーが聞いた。彼女にとってはそれが一番気になることだった。

 

 

「今はキミがいた向かい側にいるスピリット達と戦っているところだ。一本道だから中々進まなくてね…」

 

「ええー!? 遅いじゃない! もっと手っ取り早くできないの!?」

 

「この城壁を乗り降りできるのは数少ない。無視してっていうのは流石に無理だ。」

 

「んむー… 仕方ないわね…」

 

「でも、残りはスピリット一つとファイターだけだそうだよ! そんなに待たないよ!」

 

 

頬杖をつくデイジーをマリオが諫める。ルイージを助けるまでは自分が彼女を制御しなければならない。その後は当然弟に丸投げだ。

 

 

「ええ、そうよ。ほら、もっと近くで見れば…」

 

「………はあ? あいつワリオなの?」

 

「…あ、本当だわ。」

 

「んー… そういえばそうかも!」

 

 

近くに寄ったことではっきりとわかった第六感。連続で働いた、または初めて働いたからか少し動揺が湧いた。

 

 

「それについてはまだ説明していなかったや!」

 

 

同郷の世界の出身者であれば第六感に似た感覚が頭の中を走る。それだけを話した。詳しく説明しろと言われて事実だけを説明できても理論は説明できない。

 

 

「ふーん… 変なの…」

 

「どうする? デイジー行ってみる?」

 

「臭いからイヤよ。出来るだけ関わりたくないわ。」

 

「そんな直球な… おっ、デデデが動いた。」

 

 

クッパが挑もうとするのをデデデが止めている。理由は自分がワリオと戦いたいからだ。

 

 

「あの時の仕返しがまだだったからな! ここはオレさまに譲ってもらおう!」

 

「そんなのワガハイの知ったことではない! そこを退け!」

 

「まあまあ… ぼく、大人の余裕を見たいなー…なーんて…」

 

 

ネスがなんとかクッパを説得しようとしている。だが、効果は渋いようだ。

 

 

「んー… どうしよう」

 

「クッパはさ、ジュニアを頼むよ。僕たちの友達なんだ。もしかしたらこの先にいるかもしれないよ? クッパの子供だよ? 万全じゃなくても勝てる保証あるの?」

 

「グム…? それもそうか。仕方ない、ならば今回は譲ってやろう! ヤツがどうなっても構わんしな!」

 

 

むらびとの説得が効いたのか気分をよくした。

ドガッと大きな音を立てて塀に座る。構造が違うとはいえ、お城というものを好いているのかもしれない。

 

 

「グワッハッハ! 流石オレさまが見込んだガキだ! よく丸め込んでくれたな!」

 

「ううん、むらびとが上手くやってくれたんだ。ぼくは何もしてないよ。」

 

「報酬は?」

 

「いいだろう。全部終わったらオレさまの元に来い。まずはこっちだ!」

 

 

ビシッとファイターの元へ向かっていくペンギン大王。

 

 

「あのクッパを丸め込んじゃったよ!」

 

「ふふふ、まあいいじゃないか。デデデの帰りを待とう?」

 

 

驚愕を隠しきれないマリオをシークが軽く抑える。これは後で荒れるなと確信を得ながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『メイド イン ワリオ』。まるでゲームのようなそのステージはワリオが金儲けの為に自作したゲームをイメージして創造されたステージだ。本来は残機がなくなるまでとことんミニゲームをクリアしていくゲームなのだが、このステージはミッションをクリアすれば自らに有利な景品を獲得できる。

だが、『終点』化したこの世界。残機は己の身一つ。ミニゲームはない景品もない。ゲームを導く筈のエレベーターは開かないのだ。

 

 

「フンッ!」

 

 

巨大なハンマーが振り下ろされ、ワリオが飛び跳ねる。太っているように見えて彼は中々に素早く動けるのだ。

 

 

『…!』

 

 

ワリオの得意技の一つ『ショルダータックル』を木槌が地面にめり込んで隙だらけのデデデに放つ。ここから避ける素早さはデデデにない。

 

が、それでも出来ることはあるのだ。

ハンマーを動かして両手でタックルをガッチリと受け止めた。速さはないがパワーはある。なんせいつも振り回している木製のハンマーの中身はオートマチック、要するに機械仕掛けなのだ。

 

 

「ぐんぬぅう…!」

 

『…ッ』

 

 

手袋をつけた指先に力を入れて相手の体を動かす。足腰を低くして投げ飛ばした相手を上に上げてゴルフのスウィングのようにかっ飛ばした。

 

 

『…!』

 

 

コースアウトさせるのが狙いだったが、バンカーでもペナルティエリアでもなくフィールドに残る球。次の手番はワリオだ。

 

 

『…!』

 

「むっ…」

 

 

『ワリオバイク』を取り出し、フィールドを爆走する。流石にこれを正面から受けるのは堪らない。空中へ退避する。Uターンで進行方向を変えてくるワリオ。思いっきり跳ねあがる機体。

 

 

「ぐうぅ…!?」

 

 

空中で轢かれ、地面に堕ち。タイヤにすり潰される感覚がする。体が削られる錯覚を覚え、生存本能が反射的に攻撃を選択した。

 

 

「舐めるなぁっ!」

 

『…ッ!』

 

 

体全体を使って、ジェット機構も使用してハンマーを振り上げる。

バイクごとワリオは弾き飛ばされた。機体は破壊され無残にもパーツが飛び散った。

ナットや折れた鉄塊を潜り抜けた先で、デデデがワリオを指差している。

 

 

「タブーをとっちめた時のこと覚えてるか!? 背後から突然襲ってきおって! 今回はその時の借りを返してもらうぞ! ガーハッハ!」

 

 

首を反らすほどの笑いを上げる。

元はと言えば、フィギュア化した二人をワリオが持っていこうとしたところをデデデが荷台車ごと奪っていったことから始まったのだが、更に遡れば亜空軍の片棒を担いでいたワリオとタブーの奥義を知って希望を残す為に動いていたデデデ。どちらが悪いかといえばワリオの方が悪いに決まっている。

別に借りを返すのは今でなくても構わないが、ついでなのでいいだろう。更に言えば何回返してもデデデは構わない。

 

 

「ハッハッハー! いけ、ゴルドー!」

 

 

ゴルドーをハンマーで打ち出す。バウンドしながらまっすぐ進むそれを潜り抜けて迫ってくる。

 

槌を軽く回して迎え撃つデデデへ、まるで巨大化したかのような錯覚を思わせる『げんこつ』が向けられる。

 

 

「んぐっ… ふん、その程度か?」

 

『…』

 

 

顔面に吸い込まれた拳はそのままだ。

大地から大地へ、全力で振り下ろされたハンマーをワリオは後ろへ跳んでかわした。そして着地と同時に地面を蹴って跳び蹴りをくらわせる。

 

 

「フンッ、今までのはハンデだ!」

 

 

もちろん大嘘であるのだが、それを指摘する者はここにいなかった。

突き出された左足を掴んで上空へ放り投げる。

その体躯に向かってハンマーをグリグリと回した。

 

 

『…っ』

 

 

体を回転させての攻撃で追撃しようとしてきたデデデを弾いてこれ以上勢いづかれるのを防ぐ。

 

 

「むう… 簡単ではないか… むっ…臭いぞ貴様! ウォーミングアップのつもりか!?」

 

『…』

 

 

袖口についた臭いを嗅ぎとる。

どうやら放屁が溜まってきているようだ。漏れ出た異臭が服についたらしい。

 

 

「させるかぁ!」

 

『…ッ!?』

 

 

これ以上臭くなるとか冗談にならなかった。近くに落ちていたバイクの成れの果て。前輪のホイールをくりぬきゴム部分だけをワリオへ打ち出した。見事に髄部にはまり動けなくなる。

 

 

「これでどうだ!」

 

『…ぅ!』

 

 

自由に動けないワリオへ向かって『ジェットハンマー』を振るった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フィギュアとなったその姿を、デデデは微妙な顔で見ていた。

 

 

「このまま置いていきたいんだが…」

 

「でででー…?」

 

「わかってるからシュルクの肩からそんな目で見つめるな!」

 

「はは…」

 

 

シュルクを挟んで行われる視線の戦争に巻き込まれた第三者はタジタジで笑うしかない。

リュカも微妙な反応だった。フィギュアとなっている彼にいい思い出がないからだ。

 

 

「だが、それでは納得… いや」

 

 

両手でフィギュア化したワリオを持ち上げる。

 

 

「くらえー!」

 

「「「!?」」」

 

 

ガンと石の床に叩きつけた。

大きな音が響くがフィギュアには傷一つない。

 

 

「ふうー、少しは気分が晴れた。さあ、オレさまの為に働いてもらうぜ!」

 

「やってることクッパと同レベルだなあ…」

 

「なんだとマリオー!!?」

 

 

マリオがふと漏らした言葉に本人がいきりたつ。彼としては率直に感想を言っただけだが、それが気に食わなかったのだ。

そんな背後のやりとりを無視してデデデは金色の台座に触れた。





ネス「んむう… デデデちょっと臭い…」

デデデ「臭い…? あー! まだ残ってたかこの臭いー!?」

しずえ つファブリーズ

むらびと つ消臭力

デデデ「やめんか貴様らー!!」


リュカ「次回、『知りたくなかった』、です」


ロックマン「えっと数値は…」

デデデ「数にだすな!」

トゥーン「ブタの匂いがついたら気にならなくなるよ多分!」

デデデ「家畜と一緒にするなー!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

七十話 知りたくなかった


ゑ…?
ブレワイの前日談…? ヤバ…
安易にアドベンチャーにせず、ミッション方式の無双ゲーにしたのはいい判断ですね。リンクの強さと自由に動けない立場を設定として盛り込めます。

って、感じに冷静に分析してるように見えて内心めちゃくちゃ心臓バクバクしている。その調子で覚醒の断章ルートのお話とかゲームにできません?(強欲な壺)



 

「おまえ…! しつこいぞ! 勝負はもうついただろう!」

 

「うるせえ! オレ様が知らないからノーカンなんだよ!」

 

「くそうるせえ…」

 

「ガンナ… ハウスハウス…」

 

 

城の塔から地上を通り過ぎてはるか下。地下では木材によって支えられた空洞の地下室。大砲や影も存在しているそこでデデデとワリオの言い争いが起きていた。地下の空洞ではいつも以上に響き渡り、ガンナでなくともフラストレーションは溜まる。

思わず大砲を二人へ向けようとしたのも共感はできる。ソードが止めたのもガンナが強行しなかったのも後で更にめんどくさくなるのがわかっているからだ。

 

 

「なんかゴメンねー、でも割って入っていってもさらに煩くなるし…」

 

「…いや、わかっている。こういうのは無視が一番いい。」

 

「置いていこうか。静まったら追いかけてくるよ。」

 

 

マリオが謝るが彼は何もしていない故に何もできない。サムスとロックマンと共に先に進んでいる。

 

 

『おーい!』

 

「ピカチュー!」

 

「ウォッチにピカチュウじゃないか、どうしたの?」

 

 

トンネルのような抜け道から二人が手を振って呼んでいる。三人はそこへ向かう。

 

 

『ここにひとりファイターがいたんだよ!』

 

「そうかー、じゃあスーパースターのボクが行ってこよう!」

 

「あ、待って、ぼくもいくよ。暫く何もしてないから。」

 

 

マリオとロックマンが駆け出す。二人の勢いにやられてMr.ゲーム&ウォッチがグルグルと回転して目を回した。

 

 

「まったく… …ッ!?」

 

 

二人の後を追って囚われたファイターを視認した途端、サムス・アランは全身の血が凍りつくかのような錯覚に陥った。瞳孔が開き、足元が崩れていくかのような感覚。覚悟はしてた筈だ。でもこいつは─

 

 

「ピカチュウ!?」

 

「待てッ!!!」

 

「「えっ?」」

 

 

自分でも驚くほどに大きな声を出すがもう遅い。二人は移動しかけている。せめて自分も…と滑り込むように走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『終点』化された『ブリンスタ深部』でサムスは毛を逆立てるように全てを警戒していた。

 

 

「サムス!? 一体どうして…」

 

「警戒しろッ!」

 

 

サムスの口から出たとは思えない程の怒声に反射的に二人は警戒を強めようとした。だが、戦闘体勢に移るその一瞬。

 

 

「…!」「わっ…!?」

 

「おい…!」

 

 

何かをかっさらうような風切音が聞こえて反射的にそちらへ向いた。直後、視界が爆炎に染まる。

 

 

「くぅ…!!」

 

 

奴が火を吐いたんだ。呪いかと思われる程散々戦ったのだからこれぐらいわかる。

二人は? 二人はどうしている? 身に危険が迫っているとすれば、急がなければ。スピードが必要だ。

 

 

「リドリィィィッーー!!」

 

『…ァッ!!!』

 

 

なんとなく予想はできていた。奴は見た目とは裏腹に知的且つ狡猾だ。今だってサムスを狙うことはできた。警戒していたからというのもあるだろうが、何故二人を狙ったのかはというと、サムスを絶望させるためだ。ならば二人はもうこの戦いから脱落しているだろう。あの鋭い槍のような尾にやられたのか。

 

自らの意思を失ってもなお、リドリーは怨敵を苦しめることを選択している。これは単なる恨みではない。遺伝子にまで刻まれる程の深い憎悪だった。そしてそれはサムス・アランにとっても同じだ。一体こいつに何度家族と呼べる存在を奪われたのか、数えたくもない。

 

パワードスーツを脱いだゼロスーツのサムス。彼女の怒りに染まった目を直接見て、リドリーもまた、ない筈の意思が虐殺を求める。その殺戮本能だけは何も変わらなかった。

 

 

「っ!」

 

『…!』

 

 

撃った『パラライザー』の光弾が羽を掠め、頭の場所へ尻尾の槍を突く。チリっという音がしたので髪が少し斬れたのだろう。でもそんなものどうでもよかった。

 

 

「ふんっ!」

 

『…ッ!!』

 

 

靴のジェット噴射を活かして奴の体躯に強烈な膝をたたき込んだ。

頭でタックルされ、スーツの重さがなくなった分より大きく後ろへ仰反る。両足を踏み込んで衝撃による後退を最小限にすると、迫りくるリドリーの姿が見える。行動が早いリドリーに地面に押しつけられ、ステージ限界まで縦横無尽に引きずる。

 

 

「ぐぅ…!!」

 

 

スーツがない分ダメージが大きく、今はピカチュウの支援もない。痛みを無視し、その常人離れした身体能力で敵の腕部を蹴りつけた。手が離れた隙に空中で一回転。両足をリドリーの体につけてジェット噴射と、攻撃と退避を同時に行った。

 

 

「はっ…」

 

『ゥゥ…』

 

 

のけぞったリドリーと着地したサムスが睨み合う。互いにファイターとして能力を制限されているとはいえリドリーに立ち向かうのにスーツもない武装は心許ない。もう少し早くあの二人の所在を予想できれば決断を急ぐことはなかったのに。今スーツを着ようにもその隙を狩られるだけだ。

 

 

「いつもおまえは私の邪魔をしてくる…ッ! 私を殺したければ私だけを狙えばいいものを…!」

 

『グ……』

 

 

例え相手が格上でも戦いに飢えているとしても、能力を制限される、実際には死なないというこの世界に奴が好き好んでやってくる訳がない。サムスがここにいると知っていたから奴はファイターとなったのだ。サムスを殺すためにここに来たのだ。いつも人が嫌がることをやって、周りを苦しめて…

 

 

「くっ…!」

 

 

覚悟した筈だった。この戦いは奴を救うことになってしまうのだと。自分だってわかっている。そんなことを言っていられる状況ではないのだと。でもこいつだけは…!

 

 

「このぉ!」

 

 

ジェットでの急加速によるキックに奴はついてきた。右足を腕で防ぎ、口元から爆発を発生させる。だが、歴戦のバウンティ・ハンターはそれに動じず至近距離から『パラライザー』を撃つ。

 

 

『…ッ』

 

「─ッ!!」

 

 

光弾を間近で受けて痺れるリドリー以上にサムスの顔は歪んでいた。悪夢を振り払うように顎へとジェット噴射を当てる。そのまま上体を一回転させ地を蹴って構え直した。

 

 

「まだやるか…!?」

 

『ゥゥ…』

 

 

当然だと言わんばかりに微かな唸り声が聞こえる。終わりたいのはサムス自身なのかもしれなかった。

 

 

『ォォ…!』

 

「…っ!」

 

 

大きく両翼を大地に叩きつける。風圧が起き、思わず顔を両腕で覆う。髪が激しく踊り、リドリーが飛び立った。空中から空襲の如く振り撒く火の玉。

 

 

「…っ」

 

 

右へ左へ前へ後ろへ空中へ。立体的にステージを使い逃げ回るサムス。一部掠めて熱くなるが気にしていられない。呆然一方に見えなくもないがチャンスはある。

 

 

「今だ!」

 

『…!』

 

 

リドリーとて無限には飛べない。高度が落ちてきたところで電撃の鞭が奴の足を捕えた。グイッと引っ張りバランスを崩して落下したところで助走までつけた蹴りを入れ、鞭の拘束が離れるとその鞭で強烈な一撃を叩き込んだ。

 

 

『ゥゥォォ…!!』

 

 

一心に睨め付けるリドリー。その眼が人類のものであったならとっくに充血していただろう。

 

 

『ゥゥ…!!』

 

「っ…!」

 

 

体全体を使った突進に足が大地と離れ、体が吹き飛ばされる。元の世界でくらえば内臓までダメージが響いていただろうか。

 

 

「くぅっ…!」

 

 

なんとか体を屈ませ、リドリーから離れる。ジャンプで飛び上がり電撃の鞭でステージから離れる。フィールドから離れたなら復帰に掴むのは崖。

 

 

「…っ…」

 

 

サムスが雑兵と同じく奴に対抗する力のない人間だったなら。リドリーもここまで執着を見せなかっただろう。でもその場合は奴諸共ここには居なくて…

 

 

「……っ! ううううぅぅ!」

 

『…!?』

 

 

崖に掴んだ手へと急降下のキックを撃ちつけた。ありもしない未来を振り落とすが如く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先に戻っていたマリオとロックマンをMr.ゲーム&ウォッチに任せたピカチュウはじっとリドリーのフィギュアとサムスを見ていた。サムスの表情は見えず、ただ背中がいつもより小さく見えた。

 

 

「ピカチュウ…か…?」

 

「ピカチュー…」

 

「…悪いがしばらく一人にしてほしい。…頼む。」

 

「ピカ…」

 

 

可愛らしい足音を鳴らしてピカチュウは出て行ったと見せかけて物陰に隠れる。ほっとくことなんてできなかった。いつもなら気づける距離なのに、彼女は本気でピカチュウが未だいることに気づいていない。

 

 

「…っ…」

 

 

倒れている金色の台座に手を伸ばす。

 

 

「…ッ!」

 

 

怨嗟の声が聞こえた気がして伸ばした手を引っ込めた。サムスの親だけではない。奴が殺した人間は沢山いる。その全員が奴を見捨てろと言っている。

 

 

「(私は…! 彼らのようにはなれない…!)」

 

 

思い出すのはタブーとの決戦前に当時のリンクとゼルダがガノンドロフのフィギュア化を解除したこと。戦力は多い方がいい。奴はプライドが高いから身に起こったことを話せばダーズの討伐に参加してくれるだろう。

それでも、その選択を選べない。こいつに一体どれだけの人間が苦しめられたのか。死人の思いをたやすく無碍にできるほどサムスは非情ではなかった。

 

このフィギュアをどこか取り返しのない所へ捨ててしまえばこの呪いのような関係も終焉を迎えるだろう。

…そして、ファイターの仲間達は二度と友と見てくれなくなるのだ。

 

 

暗い銀河の中でも手に入れることができた友は本人が思っている以上に重要な位置に置いていたのだ。でも、心のどこかでリドリーが救われるのを許せない自分がいる。

 

 

「…くそっ……」

 

 

静かに吐き捨てるように口から発していた。

自分がこんなに弱いとは知りたくなかった。

 

 

「ピカチュ…」

 

 

俯いた姿が自分ですら滑稽だと自覚していた。





リンク「まさかの前日談キターー!」

シーク「反響がすごいね… ブレワイが流行ってからオープンワールドのゲームも増えた気がするし、ましてや同じリンクで三作目なんて…」

ルキナ「オープンワールドですか… 羨ましいです!」

リンク「聖戦の系譜がある意味そうじゃなぁい〜?」

ルキナ「マップが広いだけではオープンワールドとは言えませんよ!」

シーク「完全に調子に乗ってるね…」


リンク「ヒャッホウ! 次回『自分のためにならない』!」


シーク「しかし、まさか無双ゲーも来るとは…」

リンク「俺の時代… キタアァァァーーー!!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

七十一話 自分のためにならない


モンハンが二作も発表…!
そして3DS生産終了…!

携帯ゲーム史は一旦ストップと言っていいかもしれません。やっぱりSwitchは据え置きの印象が強い。

せっかくなので思い出きろく帳覗いてみました。
プレイ時間トップはFEifでした。769時間。forでFEが気になって発売日に買ったのですが、ガッツリハマりましたね。遊んだ回数もトップ。
二位はとび森、三位がポケモンウルトラムーンでした。
ひょあー、懐かしい。

お暇でしたら皆さんも感想欄に書いていってくださいな。




 

「…ピカ」

 

 

何かを決心したようにピカチュウがサムスから離れる。ルカリオを連れてすぐに戻って来た。

 

 

「ピカチュー!!」

 

「っ! ピカチュウ…!?」

 

『一体何を…?』

 

 

ピカピカとピカチュウがルカリオに話す。幾ら心を通わせていても言っていることの全てを理解することはサムスにはできない。

何かを説明しきるとルカリオはわかった、と了承した。すると、ピカチュウはまっすぐリドリーのフィギュアの方へ向かう。

 

 

「ピカチュウ!?」

 

「ピカー!!」

 

 

口では止めるような言葉を発していたが、宿敵を元の姿へ戻すその行為をサムスは止めることができなかった。光が発せられその像は生物らしい動きを取り戻した。

 

 

「ああん? ここは…」

 

「リドリー!」

 

「ん? サムスじゃねえかッ!」

 

「ピカッピカチュ!」

 

 

咄嗟に戦闘体勢に入る双方の間にピカチュウが割り込んでくる。

 

 

「ピカチュウ、退いてくれ!」

 

「テメェから食っちまうぞ〜?」

 

「ピカチュー、ピカー!!」

 

『まあ、待て二人とも。これから私がピカチュウの話している言葉をそのまま伝えよう。』

 

 

ピカチュウに続いて一歩引いたところでルカリオが声を上げた。

 

 

「ピカチュウ、ピカピカピー、ピカッピカチュ。」

 

『サムス、自分でもわかっていると思うけど今はファイター全員でこの世界をあるべき姿に戻すべきなんだよ。恨みはここで発散するものじゃない。』

 

「………」

 

「ピカッピカピカ、チュピカチュウピッカー!」

 

『リドリー、君もそれは後にして欲しい。このままだと僕たちにこの世界だろうと元の世界だろうと未来はない!』

 

「未来とか考えんのは後でいいんだよ。オレはコイツを痛ぶりてえだけだ!」

 

「ピカピー、ピカッチュピーカー!」

 

『恨みも憎しみも世界が続かなければ意味がない。だからこの一件が終わるまで君たちの乱闘は僕が止める。どっちが始めたかとか関係ないからね!』

 

「! ピカチュウ…」

 

「ハア〜? なんでそんなこと守らなきゃいけねえんだよ? オマエがオレに勝てるとでも思ってるのか?」

 

「ピカ、ピカッチュー」

 

『思ってるよ。そもそもこの状況で乱闘を始めることはないからね。大局も見抜けない訳じゃないだろう。君だってわかってる筈だ。』

 

「ほう? ある程度評価はしてるようだな。」

 

 

一瞬リドリーは考えて。

 

 

「いいぜ、コイツを絶望に染めるのは後にしてやる。ついでに小鼠、オマエもまとめて地獄に葬ってやる。」

 

「ピカチュッ!」

 

『それでかまわないよ。全部終わったらその時に戦おう。』

 

「だが、オマエらと仲良しこよしする気はないぜ。オレが手を貸すのはダーズ相手だけだ。」

 

「リドリー! お前は!」

 

「ああん? まだ文句あんのか?」

 

「…いや、ない」

 

 

心の中で苦虫を噛み潰した。ここが最大限の常歩案なのだろう。それだけ言うとリドリーは飛び立っていく。

 

 

「…ピカチュウ、何故…」

 

「ピカチュ、ピカチュー、ピカッピカッチューピカチュウ、ピカッピカッ。」

 

『誰かはそうしたとか考えなくていいよ。サムスはサムスなんだ。リドリーも僕も許さなくてもいいよ。僕がリドリーの力がいると判断した、それだけだよ。だから何かあったら僕のせい。』

 

「…すまない。」

 

 

このしっかりとした性格にどれだけ救われたのかわからない。自分の不甲斐なさを噛み締めるようにギュッとピカチュウを抱きしめた。

 

 

 

 

マリオはむくれていた。ロックマンは機嫌が斜めだった。負けたと思って、意識を取り戻したらいつの間にか上の階に上がっていたのだ。全部Mr.ゲーム&ウォッチの仕業だった。

 

 

「せめてさ、サムスを待たせてよ! 一人に任せちゃったのは申し訳ないけど別にそれぐらいいいでしょ!?」

 

『えー? でもピカチュウがふたりつれてはなれててってジェスチャーしてたんだよ?』

 

 

ロックマンの抗議にもコクリと顔を傾ける。何が悪かったのか本気でわかっていなかった。善悪についての判断もわかっていないのに誰かに対しての善行が誰かにとっての悪行になりうるだなんてわかる筈もない。

 

 

「まあまあ、いいじゃない。悪気があった訳じゃないんだし。」

 

「ピーチはウォッチに甘すぎるよぉ!」

 

 

マリオの慟哭に似た悲鳴。相手の味方がいるのが嫌なのか、想い人が相手の味方なのが嫌なのかわからない。

 

 

「グワッハッハッ! ワガハイはとても機嫌がいいぞ!」

 

 

宿敵の不幸は蜜の味。

すぐそばでもまた宿敵との戦いが始まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『終点』化、『朱雀城』。

姿形はほぼ同じだが、中身の違う人間が互いに拳を交わしていた。

白い道着の人物が、灰色の動画の人物が振り下ろした拳をバックステップでかわし『波動拳』を撃つ。反撃の『旋風脚』を正面から受け止めて距離を取った。

 

 

「口で語ることもないな。拳で語ろう」

 

『…』

 

 

届いているかもわからないが、相手が豪鬼ならば答えられなくとも届いていそうで言い放った。

 

彼とリュウの関係は先のサムスとリドリーの関係に近いものがある。

豪鬼にリュウの師匠は瀕死の重傷を受け、一時は本当に殺されたものだと思っていた。

だが、憎悪に呑まれて殺意の波動を振りかざしてはいけないと知っている。それは何より自分のためにならないのだ。

 

同情している訳ではないが、自分の現状を彼自身はどう思うか。死合いができれば問題ないのか。否、自分がそれを感じられないのだから受け入れないだろう。

 

 

「ふんっ!」

 

『…っ』

 

 

飛び蹴りはまっすぐ腕に突き刺さる。

確かに気分の良い相手ではないが、それが戦わない理由にならない。強くなるため自分の糧にする。それが助ける以上に大きな理由だった。

 

 

『!』

 

「…!」

 

 

足払いをジャンプでかわして反射的に動いた肘打ちは受け止められた。見た目は自分そのものに見えるが、豪鬼が中に入っているからか一撃一撃が重く、腕力が上がっている。単純な身体能力では相手の方に武があるだろう。

 

だが、今の奴には意志がない。戦う理由も勝つための根気もないのだ。

 

 

「芯のない戦いだ…」

 

 

小声でボソッと呟く。

止められた肘を押しつけ、バランスを崩し体勢が崩れる。

 

 

「『昇龍拳』ッ!」

 

『…ッ!!』

 

 

神へ、ダーズへ拳を向ける必殺技。

着地はぐらついて消耗が手に取るようにわかるが、リュウも絶好調とは言い難い。確かに今の相手が常時より強いとは言えないが、決して弱くもないのだ。

 

跳んで空中から振り下ろされた拳を受け止め、接近戦が始まる。リュウの拳が相手の腕によって防がれる。相手の当身を弾いて受け流し急所を外す。回し蹴りを屈んで避け、再度握り込んだ拳をまっすぐに相手の頬へ向けて飛ばした。

 

 

「…っ、せいっ!」

 

『…ッ』

 

 

相手の腕に阻まれた手を道着へ動かし、敵の体を大きく引っ張った。背中が地に着き、上げた左足と共に敵を背後へ投げる。『巴投げ』という投げ技だ。そもそもが道着を着ている者相手を前提とした技である為、他の相手よりスムーズに技が決まった。

 

 

『…!』

 

 

すぐに立ち上がり相手の動きを伺う。投げられた敵は一度背中を打ちつけながらも即座に起き上がる。そこは流石に闘士といったところだ。その事実だけは錆びなかった。

 

 

「ハッ!」

 

『…!!』

 

 

振り上げた足と、勢いがついた正拳突きがぶつかり、双方にダメージが入る。互いに弾かれ後ろへ下がる。

 

 

『…ッ!!!』

 

「っ…!」

 

 

その空いた距離感を活かして踏み込んで打たれた拳がリュウに叩き込まれる。

勢いもつけた拳は決して小さくないダメージであった。だが、距離を活かせるという点はリュウにとっても同じだ。痛みに耐えながら体を動かす。

 

 

「くらえっ…!」

 

『…っ…!!』

 

 

カウンターのように打ち込まれた『セービングアタック』。我慢を力に変えたかのような重い一撃に相手は崩れ落ちていった。





マルス「誰か! ドラゴンキラー持ってきて!」

リドリー「テメェとこのへなちょこと一緒にしてんじゃねえよ」

ピット「まあまあ、これには訳があってね」

リドリー「んだよ」

ピット「ヴィランズは愛嬌がないと本編で出しにくいんだ。助けるなんて柄じゃないからね」

リドリー「正論ではあるがムカつくなぁ!?」


ピット「次回、『言葉は必要ない』!」


ピット「という訳でエイリアンスレイヤー! カモン!」

ドンキー「ウッホッ! まだいないロボットの分も、がんばる!」

オリマー「久しぶりだね…」

CF「とりあえずブルーファルコンの弁償を」

ディディー「ウキー!」

リドリー「死んでからのこと言ってんじゃねえ!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

七十二話 言葉は必要ない

情報がっ! 多くてっ! 頭が混乱するんだよぉー!!!
ハアハア… おちつけ…

要するにゼルダ無双の新情報がかぼちゃ育てられるようになりレスラー登場してスープレックス系涙目になったメロディオブメモリーの中で風花雪月のサントラが流れるんでしょ、かんたんかんたんー!




「…ふうぅ…」

 

 

大きく、深く吸って吐いて。

豪鬼を下したリュウは深呼吸をして精神統一と休息を兼ねていた。

 

 

「リュウじゃない。行かないの?」

 

「そういう訳じゃない。だがケンの実力は知っている。だから少しでも万全の状態に近くなければ。」

 

「ああ! そういう考えもあるわね。」

 

 

返答にデイジーは納得した。

早くあの呪縛から解き放ちたい、助けたい。その考えは素晴らしいものだ。だが、負けたら元も子もない。ケンの実力を認めているから休息を取っているのだ。これも一つの信頼の形だった。

 

 

「全然思いつかなかったわ、早く助けてあげなきゃとしか考えてなかったもん。」

 

「俺もそれは否定しないぞ。」

 

「ふふ、ありがとっ!」

 

 

ウインクして手を振って別の場所へ行く。

通路のような場所にはまだ数多くのスピリットが囚われているのだろう。まだ先もある。そこにもスピリットは必ずいる。

デイジーは自分の考えに従ってそれらを助けにいったのだ。スカートの長いドレスを着ていながらも心は普通の少女と変わりなかった。

 

 

「………そうだな、そろそろ行くか。」

 

 

まっすぐ対戦相手となるものを見る。

全快とまでいかなかったが、ふと今行こうと思えたのだ。デイジーに感化されたかもしれない。それでも構わない。自分が行けると感じた時が一番のベストタイミングなのだ。

 

通路から抜けて、城の外となるバルコニーのような場所。正面に見えるのは巨大な塔と最大のライバル兼親友。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは何度も来た。『終点』化されている『朱雀城』。模造品と知っていても感動する、赤く輝く夕日は見事なものだ。軽い性格のケンにとっては木造の古風な城よりも、ボクシングのリングのような場所を好みそうなものだが、そもそもフィールドを選べるものではないのだろう。

 

 

「…いくぞ」

 

『…』

 

 

言葉は必要ない。拳と拳を合わせて、競い合う方がリュウは多くの物事を語れた。感じられた。ぶつけた体から様々な意思や感情が伝わるのだ。

 

敵愾心も、情景も、殺意も、友情も。

 

戦いから伝わる全てが必要なもので望まぬ戦いも少なくはなかったが、それすらも真の格闘家になるための大切な一戦だった…と考えられるようになるのは、その境地に辿り着いた後になるのだろう。

 

 

「っ!」

 

『…!』

 

 

仮に全てがそうでなかったとしても、意思を縛られ無表情に戦わざるを得ない友を救うための戦いが全くの無駄なんてことあるわけが無い。

 

横腹へと振るった足を下げた左腕で止められる。

ケンのカウンター、茶色のグローブを握りしめた拳が動かした顔を掠め、頭部に置いてかれた鉢巻を射抜いた。拳がとらえるにはあまりにもそれはつかみどころのない。

 

 

「ふんぬっ…!」

 

『…っ』

 

 

左の拳が相手の胴を打つ。防御に回せる余裕はなく力ある一撃がケンの胴を打ち抜き、僅かながらに姿勢を崩させる。

 

それは本当に僅かなもので、戦いと縁の薄い者たちには見逃してしまいそうな程に微々たる違い。だが、リュウはそれを認識した。そして、これを挽回する為にケンは動けることも予想できた。リュウと同じ師の元で共に教えを学び、ライバルと謳われる格闘家。全米格闘王という称号とて容易に手に入るものではないのだ。

 

だからあえて攻撃ではなく、さらに相手の体勢を崩すことを選択した。その二脚へ向かってほぼ180°の軌道で足払いを仕掛けた。

 

 

『…!!』

 

 

ケンはそれを耐える。木材に踏み込んで脚部に力を入れたことで、崩しの技は単なる攻撃のキックに成り果てた。技を打ち終わったリュウの腹部へ向けて『波動拳』を叩き込んだ。

 

 

「…っ!」

 

 

両腕を組んで受けたリュウが後ろへ動かされる。その技もかなりの威力があったが、相手が裸足ではノックバックもさほど大きなものではない。それが良いものかどうかは捉え方と相対する敵次第になるだろう。

 

 

「はぁッ!」

 

『…ッ!!』

 

 

白の足と赤の足が交差し、Χの字に似たものを形作る。衝突する打撃から衝撃が生まれ、髪を、服を揺らした。だが互いの足はバランスを保つための本能的な震えすらなかった。

二人の足は重力に従い降りていき、ぐっ、と材木を踏みしめた。まっすぐな左の拳たちがぶつかり再び辺りに風圧を巻き起こす。

 

 

「むっ…!」

 

 

リュウの手刀が、戦いによっていつもよりはだけた道着から見える、鍛え上げられた胸部を打つ。横薙ぎの刀に斬りつけられ反射的に身を竦めた姿をしっかりと見ていた。

 

 

「ふんむッ!」

 

『ッ』

 

 

追い討ちの回し蹴りは、滑らかな球体に防がれる。ケンがシールドを張ったのだった。

基本的には元の世界でも戦いに身を置いている者ほどどうしてもシールドの頻度は少なくなる。元の戦いの方に慣れているからだ。

中には使えるものはなんでも使うの精神を持つ者もいるが、ケンはその例外に当てはまらなかった。

当然ながらダーズはそんな事情など知ったことではない。誰かにとってどれほど重要な意味があろうと、人の感情など興味もない。

 

 

「! 『波動拳』!」

 

 

シールドを蹴ってバックステップ。しかしこれは攻めのための引きだ。前傾姿勢で『波動拳』をうつ。

 

だから勝手にリュウが元の世界の戦い─ストリートファイトに似た戦いをする。

ギブアップはない。観客もいない。

ラストは場外まで飛ばすか飛ばされるか。

限界はあるが、大乱闘は極力しない。つまり、シールドは可能な限り使わない。

 

 

『…!』

 

 

元はカウンター狙いだったのか、被弾覚悟でシールドを解き、正面から迫ってくる。右足に炎が上がり、辿った軌跡に小さな火柱を立てる。

 

 

「…ッ!」

 

 

親指を握り込み、ぐっ、と力を入れる。

強烈な拳と灼熱のキックがぶつかるが、よっぽどの力の差がない限り、キックの方が力強い。ジン、と腕に痺れが走った。しかし次のことを考えると適解なのは拳の方だ。

 

 

「…! 『昇竜拳』!」

 

『ッ!』

 

 

上げられた足を痺れた右腕で退かし、空いていた左の拳でかちあげる。利き手でない分多少威力は減るだろうが、強力な一撃であることは間違いない。はじめてファイターの背が地面につくが、幾ら自分の中で割り切っていようがこれは大乱闘。まだ勝敗は決まっていない。

 

 

『…!!』

 

 

すぐに立ち上がり、『波動拳』を打ち返す。

半身を引いて容易にかわした。これはこれからの攻勢をつくるための一歩。気の塊に隠れた左足が燃え上がっているのをリュウは見逃さなかった。

 

 

「…!」

 

 

次の攻撃を受けるために左腕を動かした。

そこで動いた相手の右腕。派手に火が上がる左脚は単なる視線誘導だと気付いた時には遅かった。

 

 

「う…っ!?」

 

 

頬に限りなく近い顎が穿たれた。

蹴ろうとしていた体勢を無理に右のパンチに変えたのだから当てようが当てまいが大きな隙ができる。だが、結果的にその一撃を当ててしまえばその隙は帳消しになる。強かに打った衝撃を殺せずにリュウは倒れる。頭に近いところが揺れた影響か視界が回って見える。

 

 

「…ッ!」

 

 

そんな状態でも、無理矢理体を起こして立ち上がる。試合中に寝たまま、手足が満足に動けない状態で居続けるよりずっとマシだった。

 

互いに1ダウン同士だ。次を決めて勝つと両者の中で通じあったかのように正面から睨み合う。

 

 

「…!」

 

『…!!』

 

 

接近したのは同時。

リュウの蹴りが腕に阻まれる。

ケンの拳が弾かれる。

リュウの肘打ちが止められる。

ケンの足払いがかわされる。

近距離戦の攻撃のどれもが決定打にならない。

 

 

「竜巻…」

 

『…!』

 

 

右足を回そうと上げるリュウを見て即座にシールドを張る。これを阻んでカウンターでスマッシュ。そう動くつもりだった。

 

 

「ふんっ…!」

 

『…!?』

 

 

違う。蹴りではない。守りの型を崩す掴み技。『背負い投げ』。フェイントに使われた足はそのまま投げの威力を上げる為に自在に動き、相手を宙へ放った。

 

 

『…ッ!』

 

「これで決める…ッ!」

 

 

『昇竜拳』。今度は利き手で放つ全力の技。

己に宿る気合いと同じくらいに彼は叫んだ。それらに応じるように場外へ打ち上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金の台座に触れると、それは人らしい暖かさを取り戻した。こじ開けた瞳に親友が映る。

 

 

「ううっ… なんだここ…」

 

「気づいたか、ケン」

 

 

意識のない時が気がかりで、無意識に記憶を辿る。そして朧げなそれを認識した。

 

 

「あんまりよく覚えてないが… また迷惑かけちまったな」

 

「気にするな。今いる殆どの人がそうだからな。次に戦う時に勝つ!」

 

「ダーズ、か…」

 

 

不鮮明な記憶の中で唯一はっきり覚えている存在。どの道それを倒してこの世界を元に戻さなければ家族の元には帰れない。

 

 

「首を洗って待ってろよ、ダーズ!」

 

「ああ!」

 

 

拳と拳を重ね合う。

不安もあったが、それ以上にケンは負ける気がしなかった。




ケン「いやー、やっぱりスマッシュブラザーズは美人揃いだ! 眼福ってヤツだな!」

デイジー「…」

フィットレ「…」

シーク「…」

ケン「つ、冷たい視線ッ!? 待ってくれ、俺何かしちゃったか!?」

フィットレ「ケンさん… あなた既婚者でお子さんもいらっしゃると聞きました…」

シーク「それでボク達に言い寄ってきたなんてね…」

デイジー「サイテーね!」

ケン「えっ、なんで誰から… まさかピットか!? ピットだな!」


ケン「次回、『借りがあるのはこっちの方だ』!」


ケン「ルキナちゃーん… 慰めてくれ…」

ルキナ「アズールで多少慣れていますが… すみません、好ましくは思えないです…」

ケン「フラれたッ!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

七十三話 借りがあるのはこっちの方だ


ゑ? スティーブ参戦…!?
格は充分だけどモーションの少なさとか諸々の理由で、ないと思ってた枠なんですけど…!? えとあの、何かのコラ画像か何かっスかね…!? えっ、真実? そうですかはい

しかしまあ、プログラム辛そうですね、ブロックもおけるのか…
頭バグってるせいか、強いのか弱いのか全く想像つかないのは初めてですわ… クモの声でやっとわかって驚き以前に笑いしか出ませんでした



参戦の衝撃高くて、言い忘れかけてたですけど今話で軽く説明したいことがありまして。
ここでの捏造設定として亜空の使者の裏設定と作者の考えた灯火の星の設定とが軽く繋がっているところがありまして。
当初は「あれ、いいんじゃね? こんな発想できた俺SUGEEE!」とか思っていたのですが、今見直すと「あれ、これ無理やりじゃね?」と思いました。今話でこれを説明したのはその設定の影響が出ているからなのです。今は何処とは言いませんが。
という訳で後々その設定が本格的に出てきた時は「強引じゃねえか!」などの意見は心の内に止めていただくと幸いです。うっかりコメントに書いた暁にはガードブレイクしたプリンの如く、作者がどこかにぶっ飛びます。



 

 

「──ッ!」

 

 

それは予感。その感覚を感じたのは、偶然と呼ばれるよりも必然と言われた方が納得がいった。まるで自分の中の一部が抑えられているようなそんな感覚。

 

地下から上がって二階のフロア。ここに来るまでは全く感じなかった束縛感に似た何かが心の奥から湧き上がってきた。

 

 

「…上?」

 

 

目に見えるのは石の天井だけだ。しかしその向こう側を、厳密には向こう側にいるそれをピットは正確に感じ取ったのだ。

 

 

「暖炉…!」

 

 

大理石だろうか。白い石材の暖炉。使われているはずがないのに使われているかの如く煤が残っている。

ただ偶然目についた訳ではない─と、どこかで確信があった。

 

 

 

 

パックマンがじっ、と暖炉の中を見つめているのにWii Fit トレーナーはようやく気づいた。

 

 

「どうしたんですか? パックマンさん。」

 

 

パックマンが両手で暖炉周りの床を指差す。そこには溢れた煤が散らばっていたが、何か擦れたような跡がある。それは暖炉の中に続いていた。

 

 

「まさか、誰かが先に入ってしまった…!? ど、ど、どうしましょう、私この中登れるでしょうか…!?」

 

 

狭い空間の行き来に彼女は自信がなかった。縋り付くような目線をパックマンに向けるが、彼もがっくりと肩を落とす。そこへ来たのはとある二人組だった。

 

 

「あれー? トレさんだー!」

「あれー? パックマンもいるー!」

 

「「二人ともどうしたのー?」」

 

「ポポさんにナナさん、どうやら暖炉の中を誰かが登ってしまったようで…」

 

「なるほどー」

「そういうことかー」

 

 

アイスクライマーの二人は顔を合わせてうなづいた。

 

 

「「ぼくたちに任せてー!」」

 

「救世主…! よろしくお願いします!」

 

 

パックマンも大きく首を縦に動かした。

ポポが先に暖炉へ入り手足を使って登っていく。それにナナも続いた。

彼らの本業とはベクトルが違ったが、鍛えた手足と小さな体はスルスルと登っていった。

壁に穴が開いて、自然光が漏れているのを見て、二人は屋上のような場所へたどり着いた。妖しい夜空の下に。

 

 

「着いたねっ!」

「サンタクロースみたいで楽しかったよっ!」

 

「「ねー!」」

 

 

顔を傾け合わせ、ニコッと笑う。暖炉登りは割と嫌いではないようだ。

 

 

「終わりッ!」

 

「「うわわわー!? ビックリー!」」

 

「うわっ!」

 

 

前方のオーブが消えて、天使が戻ってくる。突然に目の前で変化があったので、アイスクライマーも驚いた。その驚いたのに揃っている声でピットもまた驚く。

 

 

「「脅かさないでよっ、ビックリしたなー!!」」

 

「えっ、あっ、えっとゴメン!」

 

 

二人揃えば声量も大きくなる。ピットは思わず二人へ顔を動かした。白い衣や翼に目立つ黒い煤を指摘され、すぐ適当にはたき落とす。

 

─ピットが先のファイター戦に意識がいっていたこと。

─アイスクライマーがピットの帰還に驚いてしまったこと。

 

それが重なり、ピットは先ほどまで戦っていた相手、テレサの違和感をすっかり忘れてしまった。

 

 

「そうだ、ブラピ! ボクは大丈夫だから先行ってて!」

 

「「せっかく来たのにぃー!」」

 

 

会話もそこそこに、続けて奥のファイターに挑む。正直彼ら二人に構う余裕はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フィールドだけではない。

遥か下の手が届かぬ場所でも戦争が起きていた。神々が起こした噂の元に人の醜い戦いが始まっている。槍が投げられ砲弾が大地に落ちて爆発する。

そこへ初期化爆弾を落としたから『初期化爆弾の森』。しかし、『終点』化のルールではその余波はこちらにまで及ばない。人の戦いはどこまでいっても人との戦いで、勝者も敗者も平等に出さず、全てを殺すのは自然王。

 

そんなものは並び立つ二人にはどうでもいいことだった。失われる命すら偽物なのだ。生き物でなく、ただの背景。本物だとしたら敬愛するパルテナの意に従ってピットは動いていたのかもしれない。

 

 

「とぉ!」

 

『…!』

 

 

互いに体が射抜かれる。回避を捨てて射撃しているのだから当然と言えば当然だ。

 

 

「んっ、はあ!」

 

 

一矢をかわし、神弓を分離させてクロス状に斬り裂く。真ん中にシルバーリップを挟ませることでブラックピットは同時の攻撃を防いでいた。

 

 

『…』

 

 

そのまま敵の武器を軸に弓を回転させる。下からの刃を認識したピットはバックステップで距離をとった。

 

今パルテナによる支援はない。情報を教えてもらうこともなく、奇跡の援護もない。正真正銘の一対一。そのルールでの勝率は本当に五分五分といったところか。

 

 

「ブラピ、ボクが1でキミが5。この数わかるか!?」

 

 

『剛腕ダッシュアッパー』の打撃と『衛星ガーディアンズ』の防壁が拮抗しあう。ガリガリという音が聞こえてピットが根性で盾を破った。しかし、衛星本体がブラックピットを守って本人には被害がいかなかった。

 

 

「互いにっ、助けた、数ッ!」

 

 

バラバラに三本、『パルテナの神弓』で矢を放つ。神の祝福を受けた神器の矢は敵とみなした存在を追尾する。別々の軌跡を描いて一点に収束する。

 

 

『…ッ』

 

 

衛星は先程壊れたのでしばらく使えない。かわすかシールドで耐えるかだが─ピットなら回避を選択するだろう。同じ思考をとると…予想してもう一本矢を放つ。

 

 

『ッ!』

 

「─っ!」

 

 

回避隙に射られた一本がブラックピットの胴を撃った。それを合図にピットは駆け出し、接近戦を仕掛ける。相手もそれに応じるかのように銀の弓を分離させる。

 

 

「うおおおぉぉぉ…!」

 

『───!』

 

 

分離させた二対の刃が互いに攻撃を防ぎ、その守備を貫くように力を込める。

正面から睨み付ける相手の目は、自分と真逆の色ではない。闇の眷属の証たる薄い紫。

 

 

「たった一回だよ…! まだキミに全然返せちゃいないぞ…!」

 

 

ギリィと刃がずれる。

ナチュレに二度目の飛翔の奇跡を要求して、翼が焼き落ちて軽くなっていくのを感じながら。落ちていくブラックピットを掴んだところまでしかピットは覚えていない。気づいたらあの泉にいたのだ。その間の事を知ったのはパルテナから全てを聞いた時。

 

 

「借りだって…!? 違う! 借りがあるのはこっちの方だっ!!」

 

『ッ!?』

 

 

ブラックピットと同質の思い。これだけは傀儡には真似させない。できない。実力が互角でもこの思想で僅かながらに競り勝った。短刀だからこそできる素早い剣技がブラックピットを斬り裂く。衝撃に飛ばされ、大地を踏んで勢いを殺した。

 

 

「… !いっつ…」

 

『…』

 

 

だが、あくまでもこの場で僅かに上回っただけだ。実力差がほとんどないという事実は変わっていない。紫の矢がピットに当たり、興奮していた頭が冷えた。

 

 

「当たるかっ…!」

 

 

二本目三本目と追撃にかかる攻撃は回避した。誘導性の低い弾はギリギリまで引きつけた方がいい。

 

 

「…護れ!」

 

『…!』

 

 

回避の隙をついて迫ったブラックピットが薙いだ神弓を光の盾で受け止めた。

両方の衛星に力を込めて、強度のアップと同時にブラックピットを押し出して体勢を崩させた。転ばぬようにと無意識に体が動き、結果前方からの攻撃に無防備になってしまった。

 

 

「つああっ!」

 

『─ッ!』

 

 

懐に入り込んで斬りかかる。分離させる時間も惜しく一本の剣のように腹を斬りつけた。

防御に動けず、手酷いダメージに。少しできた距離の向こうで、ブラックピットが膝をつく。

 

 

「よっしゃ…あっ…!」

 

 

ガッツポーズをとっていたピットもまた崩れる。翼の付け根辺りからくる痛み。さっきの刹那に彼方もまた攻撃を選択していたのだ。持っていた弓を突き刺して。

攻撃していたピットも無防備であったことは間違いなかったから。防壁の類も丸ごと貫くつもりではいたが、防御ですらないものは対処できなかった。

 

 

「んむー… 転んでもただでは起きないって…?負けられないって…? そんなのこっちだって…!」

 

『……』

 

 

互いに神弓を杖代わりに立ち上がる。遠距離からチクチクとはいかない。

例えるなら夕方河原で行う喧嘩のような。

男と男の殴り合いのような。

 

 

「うおおおおおぉ!」

 

『──────!』

 

 

回避も防御も捨てて、あらん限りの力を込めて振るった双方の刃は互いに干渉することなく裂くべき体躯に迫っていく───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目をパチクリと動かす。闇色の空。背中から伝わる石造りの床の冷たさ。

 

 

「あれ…?」

 

 

背中に痛みはなかった。体は嘘のように軽く、自分はフィギュアになっていたのだと自覚した。

 

 

「えっ! ボク負けたの!?」

 

「わあぁ!?」

 

 

突然発した大声と突然飛び起きたピットにナナが驚いた。

まさかこんなところで負けてしまうなんて。あろうことかその相手が… と思考の海に潜ったピットをポポが止めた。

 

 

「ううん…」

 

 

声の方向を探るために反射的に後ろを見た。

 

 

「「引き分けだと思うー」」

 

「うるせぇ…」

 

 

流れるように視線が下へ動いた。

そこに横たわっていたのは自分と瓜二つのしかめっ面。ブラックピットが耳を塞いで横になっていた。その目は正気の色を取り戻している。

 

 

「ブラピだ! いつものブラピだ!」

 

「だああー! ブラピって呼ぶんじゃねえ!」

 

「「ブラピー!」」

 

「おまえらがブラピブラピって呼ぶから他の奴らにも移ったんだよ!」

 

「それボクのせい!?」

 

「あったりまえだ!」

 

 

ぎゃあぎゃあと響く喧嘩の声。収まるにはもう少し時間がかかりそうだ。





ブラピ「おまえが1でオレが5…」

ピット「1は21章のやつで5は9章、20章、21章、22章、23章でね!」

ブラピ「…パンドーラのヤツは?」

ピット「あれは互いのやりたいことが一致しただけだからノーカンノーカン!」

フォックス「…なあ、そうめ…ファルコ」

ファルコ「オイ、何言おうとした今」

フォックス「メタとパロディが合わさると一周回って本編の解説やりだすんだな…」

ファルコ「それコイツらだけだろ」


ブラピ「次回、『救うための剣』」


ファルコ「オレたちだって割とギリギリなところ攻めてるじゃねェか」

フォックス「スリッピーがな…」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

七十四話 救うための剣


前回マイクラ参戦について色々前書きに書き殴りました。
でもなんか引っかかってたんですよね。他にもっと書こうと思ってたことあったような… と。


アカシアの感想だー!? あんなエモい映像を忘れられるなんてマイクラの印象やばすぎるだろ!?

ということで映像中瞬きしなかったんじゃないかと思うほどにヤバかった。公式Twitterもオタク丸出しのツイートしてたよ…
トウヤくんがめちゃくちゃカッコ良かったです! BWは赤緑の次に優遇されてるイメージががががが
曲もしっかりどハマりしました。流石TOAのカルマ歌った人!(情報原が別ゲー)



 

剣先が震える。しっかりと持っている筈の剣は今までの誰を目の前にするよりも震えている。

駄目だ、せめて楽に終わらせると言ったのに。こんな剣では余計に苦しませてしまう。

 

鼻の奥がつんとする。泣く権利なんて自分にはなかった。泣きたいのは自分が今剣を向けている想い人だろうに。

見捨ててしまった人々への罪悪感と責任感。それを考えればこんなこと考えることもおこがましい筈だ。それでも思ってしまった。

 

─どうか、死にたくないと言って欲しい。

 

こんな悲劇の運命に囚われないで。

世界を救うためだったとしても自らを投げ出さないで。

 

せめて抵抗してくれれば、考える前に終わらせてあげられるかもしれない。後からどれほど後悔しても遅いのだから。

 

でも、彼はそんな一概の望みも裏切って。私に向かって、優しそうに笑って答えるのだ──

 

 

「………… ああ、わかった。」

 

 

 

 

大人数であちこち探し、集まったのは砲弾二球。しかし、古びた塔の中に蔓延る影はその倍いた。回る巨大な歯車もあって渡るのは無謀だった。

 

 

「一匹一弾計算では足りないか… 大砲の射線は変えられるか…」

 

「むぅ…」

 

 

逸る気持ちを抑えてルキナは目の前の影を排除する方法を考える。早く向こう側にいるあの人を助けたい。その焦りが思考を遮っている。

オリマーの横でうんうんと唸っていると、梯子からシュルクとガンナ、付き添いのカービィが降りてきた。

 

 

「お待たせ、とりあえず手の届く範囲の大砲はしっかり作動するよ。」

 

「あー、しっかしな、やっぱ正攻法じゃ無理っぽい。」

 

「ありがとう二人とも。しかしどうするか…」

 

 

更に唸る。大砲の向きを変えてまとめて撃破するのは少し無理がある配置だ。

 

 

「正攻法じゃ、って言っただろ? あのレバーも面白く動いてくれたし。つー訳で砲弾とカービィ借りてくなー」

 

「ぷぃ!?」

 

「えっ!? ちょ、」

 

 

了承は聞かずに三球を持って梯子を降りていく。不安はあるが他に案もない。一度任せてみるかとため息をついた。

 

 

「しかし、あのレバーが何を…!?」

 

 

ゴゴゴと何かが軋む音が階下から聞こえてきて、本能的にそこを見る。びゅんと下から上がってくる砲弾は歯車を破壊し塔を揺らす。

 

 

「「うわあああ!?」」

「キャァァー!?」

 

 

立っていられず座り込み、揺れに備える三人。

揺れが収まってようやく異変の場所を見るとそこには、破壊された歯車が散らばりその動きを止めていた。邪魔な影の魔物も崩壊に巻き込まれた模様。

 

 

「な、なんて力任せな…」

 

「…ルフレさん!」

 

 

呆然としていた三人の中ではルキナが一番復帰が早かった。破壊された歯車を足場にファイターに近づく。

 

 

「急かすなよ、王女サマ。邪魔な最後の一体も軽く倒す。カービィ、あっちの塔まで飛んでレバー切り替えてこい。」

 

「うぃ」

 

 

カービィをワリオがいた塔まで飛ばし、レバーを動かす。すると通行の邪魔だと横にしていた巨大なバーが縦になった。ガンナが放った砲弾がバーで跳ね返り、最後の影を倒す。

 

 

「反射した…」

 

「まあ、こんなもんだろ。裏方ばっかりで飽きたからスピリットの方は私がいただく。」

 

 

ハッ、と我に帰る。少し古めの梯子を上がり、彼の元へ辿り着く。

 

 

「…ルフレさん」

 

 

聖痕を目蓋の奥に閉まって。何かを思うように。祈るように彼に触れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの絶望の未来で、記憶を失ってなかったであろうルフレは自身の運命を知っていたのだろうか。それとも何も知らずに朽ちていったのだろうか。

その時間軸の彼のことをほとんど思い出せないルキナには答えのでない問いかけだった。思い出せるのは人伝いで聞いた彼の才能や父との絆。

 

でも、その全てが間違いなく本物で、最後の瞬間まで彼はクロムを裏切ってなんかいなかった。不本意のまま、半身を殺し人を殺し世界を殺し。

その時代の彼を救うには、ギムレーごと滅ぼすしかなかった。

何かが違って自身がギムレーを滅ぼすことができたとしても、彼自身が器として覚醒した時点でこの結末にしか辿り着けなかったのだろう。

 

 

「でも… でも今のあなたは違います。まだ間に合う。救えます。」

 

『…』

 

 

ギムレーの血の色とも違う、ほのかな闇を宿した目は手遅れにはならない。させない。

一度こことそっくりな『闘技場』で戦った時には湧き上がらなかった感情。救恤の意思。

まだ、手は届く。ここが『終点』にはさせない。

 

裏剣を構えなおし、その黒いローブへ向ける。

あの時のような震えはない。迷いも、ない。

 

 

「これは… あの時とは違う、救うための剣です!!」

 

『…!』

 

 

まっすぐ素早い刺突がルフレのローブを掠めた。素早くファルシオンを引いて青銅の剣の攻撃を防ぐ。

相手がルフレなのだから、すぐ引いてくる。男女の力量の差を差し引いても、イーリスの国宝と使いやすさを重視した市販の剣では質が桁違いだから。

 

 

『──!』

 

「くっ…」

 

 

左手の魔道書で風を呼び起こす。人一人も吹き飛ばす力を持つ『エルウインド』は緊急時の退避にも使えた。場所がよければ目眩しも行える。風に耐えるように左腕を構えた。

 

 

『─ッ!』

 

「…!」

 

 

突如腕に走る痺れ。雷の魔道書を使用したのだろう。この隙をみすみす逃す訳にはいかない。剣に影響はない。だから構えたのは左腕だけにしたのだ。

 

 

「私は、負けません!」

 

 

体を屈めながら駆け出した。被弾面積を減らしながら接近する。『ギガファイアー』であがる火柱を無視して突進する。

もちろん熱さはあったが、それよりもルフレが手に届かない所へいってしまうのが辛かった。彼は優しいから、また必要があれば自分を贄に捧げてしまう。もう二度とあんな想いはしたくなかった。

 

 

「えぇい!」

 

『…ッ!』

 

 

青銅の剣を構えようとする右手を柄で弾き、『マーベラスコンビネーション』で激しく斬りつけ刺した。愛した顔が歪んだような気がした。

 

 

「まだッ!」

 

『…!』

 

 

更なる剣技へ移ろうとしたファルシオンが止まる。抑えられたのはサンダーソード。剣でありながら所有者の魔力を纏う雷撃の刃。

 

 

『──!』

 

「きゃああ…!」

 

 

刀身をいなしてルキナの体を一閃、斬りつける。彼の剣は素早さこそないが的確にダメージを負わせる剣。彼は稀代の軍師であり優秀な魔道士でもある。その魔力が宿る刃は決して軽くない。

 

 

「うっ… ッ! くっ…」

 

『…』

 

 

尻餅をついたルキナへ襲いかかるサンダーソード。剣の質で優っていても、それ以外の条件が悪すぎる。ファルシオンは折れそうもないが、ルキナ自身が保たない。

 

 

「はぁ!」

 

 

サンダーソードを受け流し、体を横へ回転させて苦し紛れに剣を振るう。首元へ動いた剣は、彼が顔を上げ後ろへ体を引くことで何かを裂くことはなかった。

 

立て膝から立ち上がり、剣先を向ける。

ルフレの軍師の才能は一対一にも応用が効く。相手がどう動くのかという予測が上手いのだ。

ルキナは、読み合いについて特筆する程得意ではない。そんな中で彼女は兎に角相手に距離をつくらせないと考えた。

剣一本のルキナは遠くを攻撃する術をもたないため、遠距離に行ったら好き放題に攻撃される。それを回避するために剣が届く間合いを取り続ける。

 

 

「(単純ですが… 手が読めない以上自分の得意な距離を押しつけるしかない!)」

 

 

バチン、カキンと、剣がぶつかる音と電撃が弾ける音が響く。隙ができたと打ち込めば、逆に頬に薄い傷をつけられた。

 

 

『…!!』

 

「っ! まずい!」

 

 

回避のために体を竦めた一瞬をついて、バックステップで距離を取られた。サンダーソードを辺りに浮遊させ、左手に持つは黄色の魔道書。

 

 

「っ!」

 

『──!』

 

 

それを確認した途端、ルキナは走り出す。ルフレが得意な雷の魔法。ここで決めることも視野に入れてのことだろう。肉薄したルキナに向けて詠唱されたるは『ギガサンダー』。

 

 

「うおお!」

 

『ッ!?』

 

 

詠唱されて間もないからできたこと。電撃の塊を捉え、ファルシオンを振るって無理やり霧散させたのだ。

そのままの勢いで振られた剣をなんとかルフレは鍔迫り合いで凌ごうとする。だが、力を入れる隙もなかった剣が耐えられる訳もなかった。振り上げたファルシオンがサンダーソードを弾く。

 

 

「─ッ、ルフレ、さん!!」

 

 

飛び上がり、剣ごと体を回転させ、落下して振り下ろした。体重と速度が加わり強力な威力を持つ父親譲りの技飛流斬。悲痛な思いと共にルフレの体はぶっ飛んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──レさん、ルフレさん!」

 

「んっ… くぅ…」

 

 

壁にもたれかかっていたルフレの目が覚める。肩を揺すって起こした恋人は二度寝を許さない雰囲気でこちらを見ていた。まだ少し視界がぼやけている。でもその長い青は間違えようのないもので。

 

 

「ルキ、ナ…? ここは… 僕達はどうなった…?」

 

「ルフレ、さん… う、ううっ…」

 

「ルキナ…!?」

 

 

青い瞳からぽろぽろと涙が零れ落ちる。ルフレはそんなただならぬ様子に驚いたものの、すぐに微笑んでルキナを優しく抱き寄せた。

 

 

「大丈夫、僕はここにいるよ。苦労、かけちゃったみたいだ。…痛くなかったかい?」

 

「いえ、いえ、そんなことは… 私…」

 

 

終わらせてくると頭を撫でて、二度と戻らなかった人がいた。でも、もう違う。

父は死ななかった。彼は戻ってきてくれた。

その事実を噛み締めるだけで、ルキナは非常に満ち足りた気分になれるのだ。それで充分だった。

 





ピット「ラスボス系主人公三銃士を連れてきたよ!」

レッド マリオ「「ラスボス系主人公三銃士!?」」

ピット「絶望をもたらす邪竜ギムレーの器! ルフレ!」

ルフレ「いや、ピット!? ギムレーは僕じゃなくて違う時間軸の僕だからね!?」

ピット「巨神界の命全部自分の物! シュルク!」

シュルク「ラスボスは僕じゃなくてザンザだよ!」

ピット「ミキサー壊してのびて、乗っ取られてまたのびた! 3号!」

3号「あたしラスボスじゃないし!」

レッド「突っ込むとこそこ!?」


ピット「次回! 『純粋な対抗心』!」


マリオ「では3号にかわる三銃士は…あっ」

レッド「お、俺! ラスボスじゃなくて裏ボス!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

七十五話 純粋な対抗心


最近のDLCファイター複雑になっているな、とは薄々思っていたけどスティーブはトップレベルでややこしい。ルフレレベルでややこしいな、と思っていた過去はもう戻ってこないのです…

勿論私は難し過ぎて使えません。正直参戦ムービーの時点で確信していました。




 

ルキナが決死の思いでルフレと戦闘していた頃、大勢の足音が響いてきた。疲れきったガンナとカービィ、二人の耳に響く。

梯子を上がってきたのは三人が置いてきたシュルクとオリマー。そして彼らと合流したのだろうシモンとレッドだった。

 

 

「レッドに… シモン? あんた、どこ行ってたんだ? お前が先頭走らないでどうすんだよ?」

 

「カービィとガンナか、少し探索に時間がかかってしまった。それに… 君は…」

 

 

ガンナとカービィが戦ったのであろう相手。

青白い肌、銀色の長い髪、貴族らしい服装。吸血鬼に連なるだろう存在なのは理解できた。だが、不思議と敵意は湧かなかった。

 

 

『そうか、ラルフの子孫… ベルモンドの血族か…』

 

「…!」

 

 

相手側も手に持つ武器を見て、シモンの素性を把握したようだ。

 

 

『アルカードだ』

 

「シモン・ベルモンド。私の先祖とともに戦った吸血鬼の話を聞いたことがある。君なのだな。」

 

『ああ、それにリヒターとも…』

 

 

そう言ってアルカードは話を続けようとしたが、言葉を紡ぐことなく黙り込んでしまった。

 

 

『…二人に助けられた。手間をかけてしまったな。』

 

「ぷぃ?」

 

 

ちょっとの沈黙の間、唐突に話を変える。その不自然さにシモンは気づいていたものの、追及することはなかった。

 

 

「見るからに大物だが… 二人で?」

 

「…カービィいなきゃ危なかったよ畜生」

 

 

オリマーの問いかけに対してガンナがぶっきらぼうに答える。事実は気にくわないものの、受け止められないほど子供ではなかった。

 

 

「それでカービィ傷だらけなんだね。」

 

「へぇー、 強そうだなー! チャンピオン目指して俺も強くならなきゃな!」

 

 

無邪気に笑うのはレッド。リザードンのボールを握りながら気合いを入れるように腕を上げる。

 

 

『この先には我が父ドラキュラ伯爵、そしてリヒター・ベルモンドがいる。父を倒してくれ。そしてリヒターを見ていて欲しい。…今の私にこれ以上の助けはできないだろう。』

 

「わかっている。充分だ。私は一人ではない。だが…」

 

 

全員に振り返って言う。

 

 

「リヒターについては私一人に任せて欲しい。ベルモンド家の問題を他に任せるつもりはない。」

 

「うん、構わないよ。でも、カービィとガンナは疲労が激しいから…」

 

「………チッ」

 

「はあい…」

 

 

反対意見は出せなかった。足手まといになるかもしれないのは事実なのだから。

 

 

「うん、ルキナや他のみんなを待っていて欲しい。頼んだ。」

 

 

カービィの片足を掴んで梯子を降りていく。上下逆さまになっているのも気にせず手を振るカービィに振り返す。

 

 

「リヒターを救出したらすぐに進むつもりだ。そのように備えていてくれ。」

 

「任せろ!」

 

『………』

 

 

階段を登るシモンは振り返らずに言った。

それに威勢よく返すレッドに、アルカードは何かを感じていた。あの時のリヒターに近い何かを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周りの景色は、先程までいた場所と殆ど変わらない。だが、『ドラキュラ城』は戦いやすく地形が変わり、『終点』の形となっている。シンプルだからこそ、ファイター自身の腕や相性差がモノを言う。

 

 

『…』

 

「……勝機は薄いのだろうな。君は強い。」

 

 

ベルモンド家最強のヴァンパイアハンターと称させるリヒター・ベルモンド。単純に考えれば彼の先祖たるシモンよりも強いということになる。それはこの世界に来れたからこそ知れたこと。

 

しかし、それを知っていてなお負けられないという闘志が湧き上がってくるのだ。これは、子に易々と追い抜かれたくない親心に似ているだろうか。

先にベルモンドの姓を受け継いだ者として、先にヴァンパイアキラーを握った者として。

闇との戦いの先駆者はただ純粋な対抗心を燃やしていた。

 

 

「…ふんっ!」

『……!』

 

 

双方の右腕が激しく動き、聖鞭が放たれる。

しなる鎖が打ちつけ合い、互いの攻撃を逸らしあった。

 

 

『…!』

 

「…っ!」

 

 

後ろへ仰け反った鞭が手元に戻るのも待たず、シモンに対して『スライディング』を仕掛けた。鍛え上げられた肉体に違わぬ鋭い一撃を足元へ仕掛ける。

 

シモンは咄嗟に跳びながら『クロス』を投げるがリヒターは止まらず、屈んだ状態からの飛び蹴りが腰を打った。骨に響いて痛みが暴れる。

 

 

「好きなようにはさせない…!」

 

『…ッ!』

 

 

苦しげに放った『聖水』はリヒターの胸部で中身を散らした。上がった火柱は流石に無視できず、床を蹴って距離を取る。敵の方を向きながら、左手で乱暴に払って鎮火させた。

 

 

「………」

 

 

一方のシモン。先祖という少々偉大に感じる肩書を持ってはいるが、やはり実力はリヒターの方が上だった。鍛え上げられた肉体に宿る力を十全に振るっており、武具を扱う腕も見事なものだ。体に染み付いた戦闘技術は操られている身でも遺憾なく発揮されている。

 

 

「ハッ!」

 

 

そんな最強相手に勝てるものがあるとしたら、心持ちと気合いだろうか。ああ、それなら。勝てる見込みはありそうだ。負けたくないこの気持ちは本物なのだから。

 

まだ手が空いていない左側へ、鞭先の鉄球を走らせる。シールドに弾かれるも、それで防いでいる間はあちらも攻撃はできない。

 

 

「っ!」

 

『……!』

 

 

再び『聖水』を取り出し、リヒターの足元を狙って投げた。上がる火柱を飛び越え鞭をしならせるリヒターを目で追う。

 

なぎ払うような軌道の鞭を左手で掴む。掌で受け止めたことで肩に到達するほどの刺激を感じ手を離しそうになるが、気合いで抑え込んだ。

 

 

『…ッ!』

 

 

武器の一つを抑えられた敵は『斧』を投げた。利き手とは逆の手ではあったが、手斧は正確に狙ったところへ吸い込まれていく。

 

 

「…!」

 

 

そこはヴァンパイアキラーを抑えているシモンの左肩。狙うだろう箇所は予想通りだったので最低限動いて回避した。

足元へ振るう鎖。石の床ごとリヒターの膝をぶつ。同じことはさせないようにと左側を避けてぶつける。

 

 

『…ッ、─!』

 

 

遠距離から手を離させるのを諦めたのか、リヒターは手に持つ武器をそのままに走り出す。

 

 

「─ッ!」

 

 

相手の意図に気づいたが、もう遅い。

左手に敵の武器を、右手に自分の武器を握るシモンは自由な手がなく近距離の攻撃を防ぐことが困難だった。

絡み手を使えぬ距離で肉弾戦に持ち込まれてしまえば身体能力の差が如実に現れる。

左の拳が顎を捉えシモンの脳髄を揺らす。瞬間視界が暗転し、抑えていた相手側の武器を手放してしまった。

 

 

「─ッ!?」

 

 

それでもラッシュは止まらず、足払いをかけられシモンの体勢が崩れた。宙に浮かぶ体が首から地面に叩きつけられる。鋭い手刀は的確にシモンの首を打ち、肺の中の酸素を吐き出す。

 

 

「…ッ、うおおっ!」

 

『……』

 

 

倒れ込んだ体勢で、ヴァンパイアキラーを振り回した。後ろへ跳ばせて距離を作り、起き上がる。

 

 

「ゲホッ、ゲホッ… ハァハァ…」

 

 

空気を取り込み、思わずむせた。

近づけてはならないと再認識する。普段の相手が悪霊の類であるため目立たなかったが、筋骨隆々の肉体は格闘術にも優れていた。

 

 

「…待て、焦るな…」

 

 

自分に言い聞かせるかのように呟く。

相手にとって優位をとれるのが近距離ならば、また隙をつくって距離を詰めてくるだろう。

 

 

「( ならば鞭の軌道は…!)」

 

 

なぎ払うように鎖が動く。左から右へ持ち手が動き、鞭もそれに従う。

 

 

「通れッ!」

 

『…ッ!?』

 

 

鞭の軌道を潜り抜け、シモンの武器の先についた鉄球が腹部ど真ん中に直撃する。

走る痛みに一瞬目を閉じて。再び開いて目に入ってきたのは赤い火柱。今度は目眩しの『聖水』。

 

 

「食らえッ!」

 

『!!』

 

 

炎を裂いて飛び込んできた『フルスイング』の鉄球がリヒターの胸部を打ちつけた。防御体勢も整わないまま不意に撃たれた一撃はリヒターの体を軽々と宙へ誘った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何かに座った体勢から唐突に意識が戻っていく。はっとすると飛び込んできたのは真顔で自分を見つめる御先祖様。

 

 

「あ、あれ? シモン? 俺は何をしてたんだ?」

 

「目覚めたか、リヒター」

 

 

いつもの自分にも他人にも厳しそうな顔から、自分が何かをやってしまったということは理解した。朧げにしかない記憶に答えがあるのだろうか。

 

 

「えっーと、」

 

「後で詳しく説明するが… 今は君の力が必要なんだ。」

 

 

シモンの背後のオリマーが声を上げる。更に後ろにはレッドとシュルク。不思議な組み合わせだった。

 

 

「とりあえず登ろう。この先にいるんだよね?」

 

「ま、どう考えてもラスボスって雰囲気だしな…」

 

 

そう言いながら、先にいく他のファイター達を疑問に思いながらもリヒターも立ち上がって階段を上がっていく。

 

 

そこにいたのは。

 

 

 

 

『………』

 

「「ドラキュラ…!」」

 

 

悪魔城の主。ドラキュラ伯爵が人を見下すように玉座に座っていたのだ。





ルキナ「いえ、いえ、そんなことは… 私…」

ガンナ「なんでこんな時に…(ヒソヒソ)」

カービィ「るき…ぶっ」

ガンナ「やめろ! こんな時に口出すもんじゃねえって! わかんねーのか、桜餅ぃ!(ヒソヒソ)」

リュカ「ガンナさっ…ぶっ」
ネス「カービィも…ぶっ」
むらびと「何して…ぶっ」

ガンナ「こいつら次々きやがって…(ヒソヒソ)」


ガンナ「次回『これが奴の真の姿だ』… 今言わなきゃダメか!?(ヒソヒソ)」


ロックマン「あっ、先がある!」

トゥーン「いこ! もう戦ってるかも!」

ガンナ「くそっ! 腕が足りねえ!防衛線突破しやがったぁ!」

ルフレ「ガ、ガンナ!?」

ルキナ「居たなら言ってくださいよ!?」

ガンナ「私は悪くねえ!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

七十六話 これが奴の真の姿だ


冠の雪原、配信開始!

相棒がリストラされていた多くの実況者様が生き生きしていらっしゃる! 私の好みのポケモンは殆ど初めからいたのでDLCを気負い過ぎずに待てました。

強いて言うなら初色違いのパチリス連れて行きたかったです。
ダイパリメイクを気長に待たなければ。



 

異様なほどに白い肌。長く鋭い歯。美しい銀の長髪に血のような赤い目。伝承や御伽噺に存在するような吸血鬼。

目の前のそれと違いはなかった。しかし、ダーズの支配下にある冷たい瞳。人を家畜以前に単なる障害物程度にしか認識していなかった。

 

 

「なんでコイツが…!?」

 

「ダーズが復活させたか、復活していた時代から連れてきたのか… いずれにせよ討たねばなるまい。」

 

「まあ、そういうことだよね!」

 

 

蘇った仇敵の存在に一瞬面食らったものの、一瞬のうちにヴァンパイアキラーを構える。ドラキュラが立ち上がり戦闘体勢になるのを見て、シュルクがモナドを開いた。それに倣い、他のファイターも戦闘体勢を取った。

 

 

「よっしゃ、先手必勝! ゼニガメ、『みずスクリュー』!」

 

「ゼニガー!」

 

「…! 待て!」

 

 

シモンの静止も届かず、水流を纏って飛び蹴りを放つ。まっすぐドラキュラの足元へ。

 

 

「…ガッ!?」

 

「何っ!?」

 

 

間違いなくドラキュラの足元に当たった筈なのに手応え一つなく、ゼニガメはドラキュラをすり抜けた。まるで霧にたいあたりを仕掛けたように何にも当たることがなかった。

 

 

「危ない!」

 

「ゼニッ…!」

 

 

『モナドアーツ』でスピードを上げ、ゼニガメとドラキュラの間に入り込む。

 

 

『……!』

 

「んぐっ…!」

 

 

三叉に分かれた炎の弾が襲いかかる。モナドを用いて炎を防ぐが、勢いまでは抑えられない。が、ゼニガメが後ろにいるのでかわすことも出来なかった。

 

 

「こっちだ! この世界はお前のいるべき世界ではない!」

 

 

頭を打ち抜いた、覚えのある刺激にそちらを見る。リヒターの真剣な顔。憎きベルモンドの血筋。邪魔をしてきたシュルクよりもそちらへ視線を動かした。

 

 

「ドラキュラは実体が薄い。頭の方にしか攻撃が効かないんだ。」

 

「先に言って欲しかったな…」

 

「すまない…」

 

 

逸っていたのか、らしくないミスだった。オリマーの言う通りで謝るしかなかった。

 

 

「ゼニガメ! 頭を狙うんだ! 『たきのぼり』!」

 

「『バックスラッシュ』!」

 

 

それならばと、頭を狙って背後から奇襲する。リヒターが図らずもヘイトを勝ってくれたのだ。それを活かさない理由はない。

二つの攻撃はそれなりにダメージを与えた。

斬りつけたシュルクと頂まで登ったゼニガメが見上げたのは、向きはそのままに冷たい眼差しでこちらを見る吸血鬼。

 

 

『─!』

 

「…う、わあ!」

 

「ニー!!」

 

「ゼニガメ!」

 

 

心配するレッドの声が上がった。前後構わず全方位に暗黒魔法の球を放つ。攻撃終わりの隙を突かれた攻撃を後方の二人は避けることができなかった。

 

 

「うわおああ! 心配してる暇ない!?」

 

「…っ!」

 

 

前方の四人にも攻撃は届いており、特に本人は戦えないレッドは避けるのに必死で指示を飛ばすこともできない。

 

 

「レッド! 私の後ろに回れ!」

 

「助かるゥ! ゼニガメ、戻れ!」

 

「…ッ!? ニィガ」

 

 

ぶっ飛んだゼニガメが何かを抗議するような声が突然途切れ、モンスターボールに収まる。

シールドを張ったシモンの後ろに隠れたレッドの元へ戻っていった。このまま遠くにいても的確な指示が出せないという判断だ。

 

 

「うおおりゃああっ!」

 

 

耐えようとする他ファイターに対して、リヒターだけは魔法を受けながらも攻撃することを選択した。鞭でなぎ払い、ドラキュラの首を力強く打ちつける。

魔なるものに対する特効は手痛く、ドラキュラは仰け反り、息をつくように肩を上下に動かしている。厄介な魔法攻撃も止められた。

 

 

「力押し!? でも、助かったよ!」

 

 

赤ピクミンを投げ、長い髪に貼り付ける。ペチペチと音は軽いが、赤ピクミンの力と炎で気づけば大きなダメージを負っているだろう。そして、ピクミンに気を取られていれば─

 

 

「フシギソウ! 『つるのむち』!」

 

「フッシー!」

 

「滅せよ!」

 

 

二番手にモンスターボールから登場したフシギソウがドラキュラを縛りつけ、動けなくなった相手にシモンが『クロス』をぶつける。

 

 

「よし、離すなよフシギソウ!」

 

「ンンシィ…!」

 

「ピクミン 、戻ってくれ! 二人共チャンスだ!」

 

 

四足に足の爪。全身に力を入れて耐えるフシギソウを労い、オリマーがはりついていた赤ピクミンを戻した。

 

 

「ゆけっ!」

「食らえっ!」

 

 

二人のベルモンドが放つ刺鉄球は同時にドラキュラの頭部へ向かい、打ち抜く…筈だった。

 

 

「フシッ…!?」

 

「なっ…!?」

 

 

力強く縛り上げていた感覚が唐突に消え去ったのをフシギソウは感じた。驚愕に開いた眼には赤黒い蝙蝠が無数に飛び立っているのが入った。それはこちらに向かってくる。

 

 

「ソウ…!」

 

「わあああぁ…!?」

 

「うぐぐ…!」

 

「あああ…!」

 

「みんな!!」

 

 

フシギソウ、レッド、シモン、オリマーが無数の影の群れに巻き込まれ、全身に細かい傷がついていく。シュルクの心配する声が飛ぶが、あんな数の敵だけをどうにかする方法をシュルクは持たなかった。だけどせめて、彼らを救わなければ。

 

 

「モナド…シールド! やめろぉ!」

 

 

走りながらモナドを解放する。

蝙蝠の群れから手を突っ込み、オリマーとレッドを無理やり引っこ抜き、両手でフシギソウを拾い上げて後方へ飛ばした。最後にシモンを、というところで蝙蝠が収束し、元の姿を取り戻す。

 

 

「大丈夫か!?」

 

「ああ… 問題ないッ!」

 

「数で勝っていてもこれか…!やりがいがある…!」

 

 

リヒターが交戦的な笑みを浮かべて、先祖の目の前に立つ宿敵を睨みつける。

 

 

『…』

 

「…っ この圧…!」

 

「…ッ!」

 

 

鋭く、冷たく刺さる視線。それに耐えれずオリマーは身を竦めてしまう。レッドも巨大なプレッシャーに後退りしそうになったが、こんじょうとまけんきで無理やり耐えていた。

そんな視界に突如として光が入ってくる。

 

 

「いけぇぇ!」

 

『…!』

 

「! 『チャージショット』!? ロックマン!」

 

 

左腕のバスターを掲げて乱入してきたのは青きメタルヒーロー ロックマン。

突然の乱入者にドラキュラは再び蝙蝠になり、部屋の奥に陣取る。

 

 

「読み通りだ…! 『トロン』!!」

 

 

更にその背後から黒いローブの軍師が雷の魔道書を持って参戦する。まっすぐな光線のような最上級の雷魔法は戦場となっている部屋を横断し、既に戦っていたファイターの隙間を通っていく。元の姿に戻った直後のドラキュラを綺麗に撃ち抜き致命的な一撃となった。

いや、そこに来ると予測していたからこそ、元に戻る前に発動できた。だからクリティカルになった。

 

 

「皆さん、無事ですか!?」

 

「レッド…!」

 

 

他に登場したのはルキナ、ネス、リュカ、トゥーンリンク、むらびとだ。

大きな戦力の登場にファイター達は気勢を取り戻す。

 

 

「ならば… ルキナとトゥーンで前線を張ってくれ! 他は… シュルクを引かせてくれ、ダメージを受け過ぎている」

 

「なっ… まだ僕は!」

 

「無理しすぎだ。ここは引いて欲しい…」

 

「それなら… 僕からも頼む。この流れを奪われたくはないんだ。」

 

 

アーツの効果時間が切れ、無視できていた痛みが襲ってくる。この戦いでゼニガメを庇い、暗黒魔法を間近で受け、蝙蝠の群れからオリマー達を助けている。

せっかく勢いを手に入れたというのに誰かが敗れればまた失うかもしれない。軍勢での戦いでは勢いも重要なことをルフレはよく知っていた。

 

 

「…わかった。迷惑かけてごめん…」

 

「こちらこそ。もっと早く来れればよかった。」

 

「シュルク、こっち!」

 

 

振り向く余裕もないが、謝罪の意は示す。申し訳ないと思っているのは事実なのだ。

シュルクはネスの呼ぶ声に従い、小走りで階段を降りていく。

 

 

「フシギソウ、戻れ! 行けー! エース、リザードン!」

 

「グウワオ!」

 

 

レッドも少々無理させたフシギソウを戻し、リザードンをくりだした。短く咆哮するかえんポケモン。

 

 

『…!』

 

「わ! 火柱だ!」

 

 

ドラキュラの正面からファイター達に向かって上がる火柱。天井まで届く程の高さにトゥーンリンクがビクッ、と体を硬らせた。

 

 

「待ってください、それだけじゃないです! 注意を!」

 

 

近くにいたルキナだからこそわかったもう一つの攻撃への予備動作。危険予知に似た、心臓を握り潰されようとされているような感覚。絶望の未来を生き抜いた彼女にはそれが備わっていた。

 

 

『…!』

 

「魔法まで…!」

 

 

先程のそれより巨大な暗黒魔法が火柱の隙間を縫うように飛んでくる。火柱で視界が塞がり、回避すらも制限されている。シールドだって長くもつ訳ではないのだ。

オリマーが愕然とする。同時に二つの攻撃を行う器用さ。今までの敵とは明らかに違う挙動だった。

 

 

「いたっ… っ! これは迷惑料ね!」

 

 

魔法の一つにぶつかったむらびとは少し憤り、別の攻撃をしまってドラキュラの方へ投げた。

 

 

『…ッ…!』

 

「今だ! 『フレアドライブ』!」

 

「グオオ!」

 

 

自分の攻撃はさぞかし痛かったのか、それともむらびとの非常識な戦い方に面食らったのか膝をついた。

 

 

「くらえ!」

 

 

後隙を気にしない渾身の一撃。

 

リヒターの操るヴァンパイアキラーが鋭く強かに。そして突き刺さるようにドラキュラの頭蓋を直撃した。

燃えるように体が散っていく。

 

 

「おっしゃ!」

 

「いや、まだだ!」

 

 

思わずガッツポーズをとったレッドにシモンが待ったをかける。

崩れた体に質量が戻る。増えていく。悪魔でも人と同じ形を取っていた怪物が、明らかに人を超えた怪物になっていく。

緑の毒々しい体躯に二本の大きな角。鋭い爪に赤い異形の翼。

 

 

「なに…これ…?」

 

「これが奴の真の姿だ…!」

 

 

震えて出てきたリュカの問いにシモンが答える。グッとヴァンパイアキラーを握る手に力が入った。





リドリー「ケッ、なにチンタラしてるんだか。サムスとつるんでる訳だし、それなりにつえーんだろうに。」

デデデ「カービィは留守番か? は? 疲労で…? おいおい、オレさまとカービィがいれば一瞬だろうに!」

クッパ「ガハハハ! ワガハイが来るまで待っていろ、ドラキュラ! で、マリオはどこだ?」

ブラピ「既に五十近くいる訳だし、多少出番なくてもいいだろ… オレ達はまだ寝てるんじゃないか?」


リドリー「次回、『同じ筈だ』ッ!」


リドリー「コイツらと仲良くなんてごめんだぜ〜? オレはダーズの奴を倒すだけだ。他がどうなろうが知ったことじゃないな〜」

デデデ「働かざるもの食うべからずだぜ!」

クッパ「ワリオでさえ、一緒にはいると言うのにおまえときたら…」

ブラピ「ニートか」

リドリー「食っちまうぞ!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

七十七話 同じ筈だ


社長も社長で屑でした。




『───ッ!!!!』

 

 

悪意の咆哮が戦場全体に響き渡る。鼓膜そのものに怨嗟の念が伝わり、それだけでほとんどのファイターが立っていられなくなる。

 

 

『─ッ!』

 

「あの巨体で跳び上がるのか…!?」

 

 

レッドが驚愕する。

高貴な服を捨てた怪物はより巨体となったというのに先程より身軽だった。本気ではなかったというのか。それでも流石は未来のチャンピオン。リザードンに乗ってそらをとぶことで先に回避していた。

 

 

「…あっ…!」

 

「むらびとっ!」

 

 

先の悪意を間近に浴びて、それでも動けるような胆力をむらびとは持っていなかった。トゥーンリンクが動くが、彼の足では間に合わず、ただ被害が増えるだけ─!

 

 

「─ッ! くぅ…!!」

 

 

そんな二人の体をさらい、二転三転と転がる姿があった。シモン。ドラキュラの悪意を受け慣れているのは間違いなく彼だ。動けないなんてことがある訳がない。

 

 

「つぁ! 流石ご先祖様だぜ!」

 

「人を褒めている場合ではありませんよ!」

 

 

緑の肉を鞭で打つリヒターが尊敬の言葉をあげ、隣に並んで剣を構えるルキナが叱責する。

なぜなら相手はあの巨体。あの力。あの素早さ。ファイター達のような小さな体では数人程度で前線を保つことなどできない。簡単に後衛に攻撃される。

 

 

「さっきのような魔力もあるはずだ。隙がない…!」

 

「どうしよう…!」

 

 

『メタルブレード』、『ギガファイアー』を足に当てるが、敵にとってはあまりにも矮小な反逆だった。

ドラキュラの能力を見て、それを表すように表情を歪めるルフレ。数の利を活かしてダメージを蓄積していくしかないが、それをどこまで許してくれるのか。

 

 

「させるかッ! リザードン、『かえんほうしゃ』!」

 

「フグオオォ!」

 

「レッド! 深追いは駄目だ!」

 

 

低空を飛ぶ二人。せめて目を潰そうと顔面へと火を吐く。

レッドには多対多の知識が劣っていた。だから前線を維持するのが困難なのだと理解できなかった。

 

 

「グワウオッ…!」

 

「うわっ…」

 

 

鋭い爪がリザードンの翼を切り裂いた。苦痛に目を細め、だがなんとか端へ行こうと落ちていく体を鼓舞して翼を動かす。

 

 

「…っ!」

 

「うぐっ…」

「わっ…!」

 

 

そして流れるように二連爪を振るう振るう。

ルフレのローブを裂き、ロックマンとリュカの身をまとめて切り裂く。

 

 

「リザードンッ! しっかりしろ!」

 

「グウオ…! フガウゥ…!」

 

 

きゅうしょにでも当たったのか。なんとか主の離脱に成功したリザードンの体力は限界のようで、立つのも難しい。

 

 

「…っ 休んでてくれ。まだおまえの力が必要だ。」

 

 

リザードンをモンスターボールへ戻す。あの巨体を倒すためにはパワーのあるリザードンが必要だった。その時まで他の手で耐え切る。

そう考え、リザードンのボールをバックに戻し、ゼニガメの入ったボールを取り出す。

 

 

「頑張れ、ゼニガメッ!」

 

 

体ごと回転させて投げたボールからかめのこポケモンゼニガメが出てくる─

 

 

「はっ…!?」

 

 

ことはなかった。地面に落ちたモンスターボールは軽い音を立てて転がるだけだ。

 

 

「ゼニガメ…? なにやってんだよ!? 出てこいって!」

 

 

声を張り上げ、怒気を含めても懇願するように言ってもボールは開かなかった。

 

 

「レッド! 危ない!」

 

「…!?」

 

 

リュカの焦りを含めた声にハッと我に帰る。眼前に広がるは炎の矢。身を守る術のないレッドにはどうしようも無い─

 

 

「ごめん、レッド…! 『PKサンダー』!」

 

「んべぇ!?」

 

 

電撃のPSIを見に纏ったリュカが勢いのままに突撃してくる。ふいうちに近い形になり、受け身一つ取れなかったレッドはまともに受けてしまうが、肝心の炎の矢は誰もいない地面を焼くだけで済んだ。

 

 

「ご、ごめん! だ、だ、大丈夫!?」

 

「ない、ぞうが… ごほっごほっ…」

 

 

手加減したらレッドを飛ばせない可能性があったとはいえ、味方に向けるような攻撃ではなかった。頭もクラクラしている。

 

 

「『エルウインド』! レッド! 考えてる暇はない! ポケモンを出すんだ!」

 

「…っ! フシギソウ!」

 

「フシッ…!」

 

 

風の魔法で炎の軌道をズラすルフレの声が響き、反射的にフシギソウを出した。

フシギソウとて、先程のダメージが完全に回復している訳ではない。だが、ゼニガメが出てこず、リザードンも満身創痍であっては出て来ざるを得なかった。

リザードンとゼニガメの喧嘩に巻き込まれ、彼女は二人の仲介役と尻拭い。いつものことだが、今回のはいつも以上に根が深いとフシギソウは何となく感じ取っていた。

 

それでも今は自分しか戦えない。

だから戦うしかない─

 

 

「…っ、はあ!」

 

 

火の矢をかわし、股の下に潜り込んだルキナは潜りながら内側からドラキュラの右足を斬りつける。足を奪えればという判断だったが、結果は芳しくなかった。

たったの一撃では楊枝を刺した程度のダメージなのか。

 

 

『──ッ!』

 

「ふぐぅっ!」

 

 

それでも相手が気づかない訳がなく。

緑の尾が可動域全体に振るわれ、乱雑な攻撃がルキナを襲う。どうにかファルシオンで防いだものの、勢いは収まらず壁に激突した。

 

 

「…! やーい、カモーン! こっちだよー!」

 

 

小さな風の勇者が弓矢を敵の顔面に射りながら両手を振ってヘイトを稼ぐ。

視野を潰されそうになっては無視も出来ず、ルキナにとどめを刺そうとした視線は彼の方へ向く。その隙に、ルフレが壁に埋まりかけていたルキナを救い出す。

 

 

「さあ、行け、ピクミン達!」

 

 

統率のとれた連携で、赤黄青のピクミンが離れていく。尾の反撃も届かない、角に近い場所へ黄、赤の順番で投げる。高さが足りず貼り付けなかった赤を黄が手伝い、後頭部へ攻撃する。

 

 

「─ッ! えっ、ピクミン …?」

 

 

足元についた小さな手形の感触にふとレッドは視線を落とす。青ピクミンが持ってきていたのは投げたままになっていたゼニガメのモンスターボールだった。

 

 

「あ、ありがとう…」

 

 

何も誰かを指揮して戦うのはレッドだけではない。オリマーはピクミンを指揮して戦うし、ルフレの戦術の才能は今も遺憾なく発揮されており、うまく動けていない子供達のカバーをしている。

 

彼ら二人は他者を使って戦う者。それはレッドも同じ筈だ。

 

なのにどうして、上手くいかないのだろう。ゼニガメはからに閉じこもっているのだろう。

レッドにはわからなかった。

 

 

『─!』

 

 

二匹のピクミンが送る攻撃の一つ一つは矮小な威力であったものの、塵も積もれば山となるし、それでも気の一つは散らすことができる。後頭部のピクミンに危害を加えようとしたら、他の人がその隙を狩れる。

 

 

「やーい、やーい! デカブツー! ヴァルー様の方がよっぽどカッコいいやーい!」

 

「えぇ…」

 

 

如何にも子供らしい煽りにむらびとが引き気味である。トゥーンリンク、妹がいるとは思えないぐらいには子供らしい。子供からもそう思えるぐらいには。

 

 

『───!!!』

 

「トゥーン、君なら上手くかわせる筈だ!」

 

 

雷書に魔力を込めながらルフレが言う。

ドラキュラが頭上から振り下ろした腕を叩きつける。全身を使った攻撃。当たったらひとたまりもない程に強力な。

 

 

「うわあぁあぁ!?」

 

 

 

大きな振動と風圧が発生するが、風圧で軽い体が吹き飛ばされた程度で済んだ。最もそれのせいでやたら響く悲鳴が聞こえるのだが。

 

 

「いや、よくやったよ。充分過ぎる… 『トロン』!!」

 

 

ルキナを背後に庇い、魔法を発動させる。雷の上級魔法、肉体すらも貫通するほどの雷の槍!

 

 

『──ッ!?』

 

 

振り下ろした後の右腕に突き刺さる雷撃。消耗していたドラキュラの体を刺し貫いた。激しく動いた影響でピクミンの攻撃が止む。

 

 

「僕を使うんだからっ、後で給料お願いねっ!」

 

「手持ちからで悪いけど!」

 

 

貫通した魔法をむらびとが『しまう』。互いに軽口をかわしつつ、もう一本の腕に向かって『トロン』を『とり出す』。

 

 

『──ッ!、』

 

 

二度貫通した魔法は、壁にぶつかり、ようやく掻き消える。その時ドラキュラは両手を地に置き、我をなくした獣のような眼で前方を睨んだ。更に閃光が走る。

 

 

「『PKフラッシュ』! ゴメン、遅れちゃった!」

 

「思わぬ援軍…!」

 

 

シュルクの離脱に付き合っていたネスがようやく戻ってきた。予想外の一手であったが、彼らにとっては幸運だった。腕に加えて、視界も潰せた。

 

 

「覚悟はいいかッ! ドラキュラ!」

 

「─ッ!」

 

 

リヒターのヴァンパイアキラーが項垂れた頭蓋へ。

シモンのヴァンパイアキラーが内に隠された心の臓へ。

 

決して並ぶはずのなかった二対の妖鞭が血族の宿敵へ突き刺さる。

 

 

『────────ッ!!』

 

 

赤い蝙蝠が霧散し、苦しみの声が音にもならずに聞こえる。緑の巨体は破裂し、霧のように消えていった。

 

 

「イエイッ!」

 

「勝った…でいいんですよね?」

 

「…ああ、これでダーズを守る牙は一つ消えた筈だ。」

 

 

一度形を変えたからか、ルキナが恐る恐る確認するように声を漏らした。

 

 

「ふう… 流石ご先祖様だな! 一緒に戦えて光栄だぜ!」

 

「……」

 

「シモン?」

 

 

健闘を称え合う言葉を出した一方、無言でこちらを見つめるシモンに困惑するリヒター。

 

 

「…いや、なんでもない。」

 

「ん? そうか。さて、次は誰が相手かな〜?」

 

 

気分上々で去っていくリヒターの背中をシモンはじっと見ていた。

 

 

「…シモン。気づいていたのか?」

 

「先程、アルカードにリヒターを見ていて欲しいと言われた。その意味がわかった気がする…」

 

「あれは… 多分気づいていなかったよね。」

 

 

シモンだけではなく、オリマーとルフレも気づいていた。二人は視野が広いからノーヒントでも気づけたのだ。

 

リヒターの武器が振るわれるその瞬間。まだ後頭部には赤ピクミンと黄ピクミンがいたのだ。それにも関わらずリヒターは頭を狙った。彼がピクミンの命を軽視したのではない。単純に気づいていなかったのだ。平和以外の、別のものを享受するかのように。

 

 

「(いや、リヒターにとっても同じ筈だ。ドラキュラは宿敵なのだから。…考えすぎなのか?)」

 

 

あの大きな背中が、まるで戦いそのものを楽しんでいただなんて。

 

 

シモンの予感は的中する。

彼の手の届かない未来で、リヒターは戦いを求めるがあまりドラキュラの復活に手を貸してしまうのだ。

 

しかしそれはまだ、彼にとっても未来のお話。






現ファイター


カービィ
マリオ
マルス
ピクミン&オリマー
パックマン
Wii Fit トレーナー
Dr.マリオ
インクリング
ピチュー
ロックマン
スネーク
むらびと
シーク
リンク
ルカリオ
キャプテン・ファルコン
ピーチ
クッパ
フォックス
シモン
ピット
リュカ
しずえ
Mii 剣術タイプ
ヨッシー
プリン
リュウ
ドンキーコング
アイスクライマー
ダックハント
リトル・マック
ファルコ
ピカチュウ
サムス
ネス
Mii 射撃タイプ
トゥーンリンク
Mr.ゲーム&ウォッチ
ポケモントレーナー
ディディーコング
シュルク
ゼロスーツサムス
デデデ
ルキナ
デイジー
ワリオ
リドリー
ケン
ブラックピット
ルフレ
リヒター


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五章 まとめ


ガラルスタートーナメント掛け合いが胸熱ですねっ!

ただ、ハテナのゲストが謎の変な髪型兄弟なのはどうにかならなかったのか…


 

ここの「まとめ」という題名どうにかならないかなと、考えている作者です。

 

 

「だったら、最初からしっかりと考えておいて欲しいと、ロイです…」

 

「こんなところだとしても出番があって嬉しいと、パルテナで〜す♪」

 

「………」

 

「この子の存在に疑問が浮かぶと、ベヨネッタよ。」

 

 

ついに闇の世界に入り、同シリーズ内での解放戦が増えてきました。私はこういう人間ドラマを書きたいのだった…!!

 

 

「作者の性癖はどうでもいいわ。色々捏造があったのだし、その釈明はするべきじゃない?」

 

 

返す言葉もございません…

という訳なので…

デュエル開始の…じゃない… とりあえず開始の宣言をしろ、ダムス!

 

 

「………」

 

「人選ミスだ…!」

 

 

 

 

はいはい、まずはルキナちゃん!

前にも話した通り、ここではルフルキ前提です。理由をもっと深掘りしたいと思います。

覚醒本編でルフレが操られてクロムを殺すのだと知ってしまったルキナがルフレに剣を向けるシーンがあります。

 

 

「抵抗するかしないか… どちらかを選択できますが、いずれにせよクロムが止めに入ります。」

 

 

ですが、女ルフレがルキナの母親だった場合、もしくは男ルフレとルキナが恋人だった場合このシーンに少し変化があります。

どちらの場合でも少し問答が続いてルキナが自ら剣を下げることになります。

 

 

「FEではエンディングやルートが分差することがあるからそれの延長みたいなものかな。封印の剣でも、成長率でルートが変わったり神将器が足りないと『真の戦いはこれからだ!』エンドになるんだ。」

 

「そのセリフはDXが先に発売された関係もあるわよ。」

 

 

これを使わない手はないだろうと言うこともあり、二人はめでたく結ばれました。

ちなみにここでは「抵抗しない」を選択し、ギムレーへのとどめはルフレが刺している、通称犠牲END前提となります。その方が私イメージのルフレと合っているからですが、詳しくはルフレの欄で。

 

 

 

お次はデイジーちゃん。

設定通りにおてんばな元気っ子。まだ検索では某アヒルの方が強いかな。マリオとかマリオシリーズとかを後ろにつけてググりましょう。

 

 

「ヨッシーやワリオよりも登場は早いのね。」

 

「………」

 

 

昔は、親友であるピーチとの差別化が大変だったようです。ダッシュファイター制度が無ければスマブラ参戦もなかったのかもしれませんね。とはいえ、ピーチとは踏んできた場数が違うので今後はその辺りが上手く描写できればな、と考えています。

わがままとのことなので、少し臆病なルイージなどとは相性がいいのですね。最近はルイージあんまりそういった面を見せていない印象ですが。ルイマンシリーズぐらい?

 

 

 

ワリオ。

私ちょっと下品なネタ苦手なので扱い方に困っております。

 

 

「何の報告!?」

 

 

女っ気より金気とわかりやすい性格ですが、下品ネタをどこまで私が使えるのか…

ワリオは悪どい方法も金のためならする印象ですが、むらびとは一応論理は通っています。それが悪と捉えられるかは置いといて。軽口のように金出してー、とは言いますがね。

 

 

「適正価格を知らないんでしょうね。3号のあの事件とかは最早やり口が転売屋のそれです。」

 

 

非売品なのでセーフです! 多分

 

 

 

「次はリドリーね、任天堂の中でもトップクラスの悪い子ちゃんだわ。」

 

 

お、おう。口調性格は漫画で出てきた『〜』を多用する、一見ヤクザやチンピラみたいなものを採用しています。でもあれ、初代は洗脳されてたとかどっかで聞いたような…

 

 

「サムスがトワプリ組のように割り切れないのも無理がありません。彼女は直接的且つ身近な存在が救いもなく殺されている上に八つ当たりの如く何度も蘇って戦っていますから。」

 

 

メトロイドシリーズを追うのが大変という方はスマッシュアピールかピクシブ百科あたりを閲覧ください。

 

 

 

ケン。リュウと違って軽い男です。パンチは重いけど。

 

 

「………」

 

 

上手いこと言ったでしょう? 褒めてもいいんですよ?

 

 

「PXZなどでは少し天然の入ったリュウのツッコミもしています。まるでピットみたいですね。」

 

 

どういう意味ですか。

作者、ストファのこと調べたんですが、時系列全くわかりませんでした… くやちい…

もしかしたら、時系列的におかしなことかもしれませんがここではお子さん既に生まれている設定でお願いします。

こいつどのツラ下げてナンパしてんだ?

 

 

「アズールとか、ラズワルドとか… エムブレマーなら慣れてるって…」

 

 

 

次次次ー! ブラピですよー! パルテナ様カモンヌ!

 

 

「はーい♪ まるで三者面談みたいですね。」

 

 

子供役に位置するブラピいませんがねー! ブラピって言い放題ですよ!

 

 

「…早く進めて頂戴?」

 

 

おっとっと、眉間に一発は御免ですね。

身体能力はピットと同じ。おまけにピットが指輪に封じられていた時彼にも意識がなかった(海外版参照。ちなみに作者は未確認)とか、この手のキャラクターでここまで同一存在なことが強調されるなんて逆に珍しいのでは?

どう思います? この手のキャラクターのダムスさん?

 

 

「………」

 

 

うんうん、真逆の存在でもなく、個を認める訳でもなさそうですし、ここは面白いですね。

ピットの本質をブラピの性格から考察したり、その逆もあり。借り云々は完全に前者のパターンです。

 

 

「ブラピ呼びはファイターの中でも流行っています。そもそも公式でもブラピ呼びで更にパロられてるぐらいですし問題ないですよね?」

 

 

まあ、そんなこんなでパルテナの奇跡がなかった影響でピット対ブラピ戦は引き分けで終わらせておきました。小説だからできること。

 

 

「二つの話を同時に進めてる…!」

 

 

 

「次に軍師の坊やだけども… さっき言ってたあなたイメージのルフレって何かしら?」

 

 

現実人間。軍師なんて現実見れる人しかやんねーよ、とか言われればそれまでなのですが。

 

 

「………」

 

 

それは先に言った抵抗するしないの場面にあります。覚醒本編をやった人ならわかると思うんですが、ここでこの選択肢があること自体ちょっと、ん?ってなるんです。

 

 

「何故?」

 

 

ルキナから伝えられた未来、そして自身の夢から策を講じた結果、彼はクロムを殺さずに済んだ、というのが未来のターニングポイント。

そして、上の場面では既に策を講じている最中なのです。うまくいけば、殺されなくともクロムは死にません。

 

 

「あっ…」

 

 

では何故、ルフレに抵抗しないという選択肢があるのか。私はこう思いました。『絶対成功するとは限らないから。』

他にも犠牲ENDのセリフ、クロムの『また会おう』に対してルフレは『また会いたいな』。

ルフレが戻ってこられる可能性が薄いのは先にナーガ様が話した通り。だからこそこの発言ではないかと感じました。

 

 

「ロイ、ロイ。ナーガ様って私に似てませんか?」

 

「唐突に何ですか!?」

 

 

………

まあ、解釈なんて人の数だけありますが、ここでのルフレはこういう子だと認識してください。

 

面白いのは上記の例はあくまで自己犠牲寄りの選択肢から分析したものです。プレイヤーが思う性格を考察できるのもマイユニットとして素晴らしいものですね。

 

 

 

ラスト、リヒター!

唐突ですが、アイク、クラウド、リヒターの共通点ってなんだと思います?

 

 

「………」

 

 

男? そんなもんは誰だってわかるわい。

 

 

「1Pのカラーと一番新しい時系列の姿が一致していない… かしら」

 

 

ベヨ姐正解!

実は結構ここの設定悩んだんですよね。姿が変わっているとか、見た目だけとか色々考えました。

 

 

「で、その結果、時系列の方を合わせる形にしたのですね。」

 

 

その通り。簡単に言えばここのリヒターは闇堕ち前のリヒターです。裏設定ですが、アルカードは夜想曲後です。なのでリヒターを気にしているんですよね。

 

 

「…ん? でも、シュルクのモナドは作中で進化するし、トゥーンのマスターソードはエンディングで海の底じゃ…」

 

 

………

うるせー!!! 公式が曖昧なのが悪いんじゃーー!!!

 

 

「責任逃れだぁ!?」

 

 

ゴホンゴホン。

時系列的には月下の夜想曲でベルモンド家の闇堕ちは三回目です。仏の顔も三度まで。ヴァンパイアキラーも三度目はベルモンドを拒絶したということです。

 

 

「確か人の魂が宿っている… だったかしら?」

 

 

そんな感じそんな感じ。

 

 

 

 

 

しゅーりょー!

今回は結構語ったんじゃありませんか?

 

 

「今までと比べて独自解釈が増えたね。」

 

「初見さんお断り度が上がってきたわ。最初からわかってたことだけど。」

 

 

スマブラ本編でもマインクラフトが参戦し、面白くなってきましたね!

最早無理だろうと言い切れるのが、ゲーム以外の原作キャラとSONYキャラぐらいじゃないですか? ヤバくないですか!? やり過ぎィ!

 

 

「おいで、おいで〜♪ おいでよ、ファイターの森♪」

 

「森要素は何処に!?」

 

 

後書きに彼らを採用したのは、最後で出番が少ない、登場するのが一番最後固定なのもあるけど、掛け合い方式においてバランスがいいというのもあります。ダムスの使い方はわかんない。

 

 

「………」

 

「あの… 少しいいかな?」

 

 

ロイくん、どうぞ?

 

 

「僕たちが一番最後に登場するって… スマブラを持っていない人にはネタバレになるんじゃ…」

 

 

……………あ……

 

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ!!

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

六章 立ち上がり踏み出して明日へ進みゆく
七十八話 母は強し



メロディオブメモリー買いました終わりました。

いやー、続き楽しみですね。
基本スタンダードで進めていたのですが、最終戦で展開が熱かったのと続きが気になりすぎて全く集中できずにビギナーで終わらせたことはみんなにはナイショだよ。


 

暗く古びた悪魔城からファイター達は抜け出した。ダーズの配下たる城主を討ち滅ぼした以上、あそこにとどまる意味はなかった。

入り口とも言える、混沌とした闇の世界に戻り、別の道を進むことになったが…

 

 

「長い… 長い長いながーい!! なんで何にもないところばっかりこんなに長いのっ!」

 

「落ち着けよ…」

 

 

道中、呟いた愚痴が大きな言霊になってインクリングの口から飛び出した。参加出来なかったハイカラスクエアのハロウィンフェスの代わりにと悪魔城の探索をと肝試し気分で楽しみにしていたのに、いつの間にか門番は倒れていたのだ。消化不良である。

ここの辺り一帯は別れ道が多くて広々としている。更に所々スピリットが道を塞ぐように配置されており、飛行能力や跳躍力を持っているファイターが先に進んでいた。インクリングとフォックス、ファルコなどは一々スピリットを倒して牛歩で進むしかなかったのだ。

 

 

「ディディーのヤツは先にいっちまった。ドンキーのヤローもな。あんな見た目で跳べるんだな…」

 

「野生児ってところか。オレ達も頑張れば飛び越えられなくもないかもだけど…」

 

「やっぱ野生であることが関係あったりする?」

 

「どういう意味だガキィ!」

 

「ふぇ!? 違うの!?」

 

 

雉も鳴かずば撃たれまいとはいうが、この場合鳴かずば雉に撃たれまいだ。インクリングの余計な一言でファルコが胸ぐらを掴んで激怒する。

 

 

「……あっ、野生といえば」

 

「話逸らしてんじゃねェぞ!」

 

「違う違う!? レッドの手持ちってフシギソウとリザードンが野生で捕まえたんでしょ?」

 

「そんなこと言っていたな。ゼニガメが最初のパートナーだって。」

 

 

胸ぐらを掴まれたまま、ただゼニガメのボールを見つめるレッドの方へ視線を向ける。

 

 

「………」

 

 

リザードンは飛べるので、レッドは先に行っていてもおかしくなかった。だが、彼は戦うことも出来ずここにいる。あれからゼニガメのモンスターボールは一度も開いていなかった。

ドラキュラとの戦いに参加出来なかった人々の中にもその異様な雰囲気を敏感に感じ取っている者はいたのだ。

 

 

「えと…」

 

 

レッドの近くでまごまごしているのはリュカ。何かしなくてはいけないが何をしていいのかわからない。声一つもかけられなかった。

 

 

「嫉妬しちゃってるのかな?」

 

「そのことか… 余計な手だすなよ、つーか、必要としてねえだろ。」

 

「なんで!? なんでー!?」

 

 

インクリングに制しておく。このファルコという男、仲間思いで熱血漢なのだ。

 

 

「トレーナーとポケモンつー関係の他に色んな関係をアイツらは持ってるんだ。第三者が入る余地はねえだろ。」

 

「んむむー…」

 

 

真の意味で彼らの関係に共感できる者はいない。ここにポケモントレーナーは一人しかいない。彼らの間に積み重なる関係は多過ぎる。ポケモンを仲間と捉えるも家族と捉えるも相棒と捉えるも当人次第なのだ。

 

 

 

 

 

悩めるポケモントレーナーがいる場所の奥。塞がれた道を飛ばして先に進んでいた先行隊。

四又の道に分かれた分岐点に幾人かのファイターが集まっていた。

 

 

「ウホッ! それじゃ、オレはこっち!」

 

「ウキキッ!」

 

 

ドンキーコング、ディディーコングが選択したのは一番右の道。

 

 

「ん〜… じゃ、俺はその隣で!」

 

 

リンクは真ん中の右。ドンキーコング達が行く道の隣を選択した。

 

 

「ならば、私は左を行こう。ウォッチとダックハントは…」

 

『みんなとおなじでいいよ!』

 

「それだと困るんだが…」

 

「イッシッシッシッシ」

 

 

亜空軍の一件で善悪の概念を教えるために色々しているが、進展の気配がなくこういう意見を求めると決まって同調してしまうのだ。彼には難しいことなのかもしれない。ため息をつきながら残った道を指し示す。

 

 

「この道を進んで欲しい。危なくなったらすぐに引き返すんだ。」

 

『はーい!』

 

「ワフッ」

 

 

心配はあったが、先に進む道は一つしかない筈。

 

 

「(運悪く彼らが道を当てる… そんなことないだろう。)」

 

 

そう考えながらオリマーは自分達で決めた道を行く。確かに彼らは先の道を見つけなかったが、当たりを引いたのは確かだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上空どころか真下を見ても、真黒の空にぽつぽつと光る星が散りばめられている。まるで球体のプラネタリウムの中に浮いているような光景だ。

 

 

『わー! おほしさまー!』

 

「クウー」

 

 

明らかな宇宙の光景にMr.ゲーム&ウォッチはピョンピョンと跳ねる。足元から浮くと一瞬彼がどこにいるかわからなくなる。ダックハントの犬は慣れぬ宇宙の風景に少し怯え気味だった。

 

 

『…』

 

『んー? あれ? ロゼッタだ、どうしたの?』

 

「ワンッ」

 

 

マリオが救った銀河、『マリオギャラクシー』が昔の思想の如く平らに『終点』の形となった惑星に彼女は立っていた。水色のローブドレス、ミルク色に近い髪。でも、その目には確かに闇があって、付き従う星の子チコの瞳もどこか虚だった。

 

 

『…!』

 

『わー!? わー!? なんでー!?』

 

「グワフッ!」

 

 

飛ばしたチコから殴られる。小さな体の割に攻撃は手痛いものだ。ダックハントが投げたクレーで母の元へ撤退する。

 

 

『もー、らんとうするならいってよね!』

 

「クバッ!?」

 

 

どうやら、彼女の現状を全く理解していないようだった。彼の中ではいつもの大乱闘と変わりないのだろう。あまりの能天気さにダックハントですら笑うを通り越して驚き呆れるしかなかった。

 

 

『よし、それならボンバー!』

 

『…ッ』

 

 

跳び出して空から爆弾を落とす。

チコの献身的な防御を潜り抜ける爆風を起こし、まとめてダメージを与えた。

 

 

「ワンッ!」

 

「グワワ!」

 

 

犬から鴨が離れてチコをクチバシで弾き出す。後は第三の狙撃手がロゼッタ本人を撃ち抜くのだ。

 

 

『…!』

 

『きれい!』

 

 

チコの力を借りて、ロゼッタが大きく飛び上がる。狙撃の弾を潜り抜けて高く飛び上がった。鴨が弾いたチコも慌てたようにロゼッタの方へ戻る。

 

 

『…』

 

 

攻撃から離脱し、ロゼッタは即座に振り向いた。彼女は自らの魔力により、少し浮いている。多少ならば体勢を無視して動けるのだ。

なので、鍵を突き刺そうと駆けてきたMr.ゲーム&ウォッチに対してもシールドを張って防ぐことができた。

 

 

『─!』

 

『うきゃあ!?』

 

 

側にいたチコが『スターピース』をばら撒く。顔面にクリーンヒットし、珍妙な叫びと共に大きく仰け反った。

 

 

「ヴヴヴゥ…」

 

 

ダックハントが困ったように唸り声を上げる。即興の相方が何も考えず戦っているのでダックハントお得意の絡み手が使い辛い。無理に使えば射線や爆発にMr.ゲーム&ウォッチを巻き込んでしまうのだ。

 

 

「ワン、フワン!」

 

「グワー!」

 

 

ならいっそのこと遠距離からの援護を諦めてしまえ。そう伝える。二匹の近距離攻撃は主に鴨クチバシがメインである。

 

 

『…!』

 

『わー! こわいー!』

 

 

ロゼッタ自身は一歩下がり、チコが直接平面の人間と相対する。チコの回し蹴りを咄嗟にマンホールでガードし、流れるように振り回して縁がチコの側頭部らしき箇所へ殴打する。

 

 

「ワンッ!」

 

『ふべっ!』

 

『…ッ!』

 

 

背後からMr.ゲーム&ウォッチの頭を踏み台にしてロゼッタに接近する。その姿を認めたロゼッタは杖を構えた。

 

 

「ガー!」

 

『ッ…』

 

 

空中を舞いながら、鴨が素早くクチバシで突っつく。ロゼッタの持っていた杖で弾くも、全ての攻撃を防ぐことはできない。ロゼッタの陶器のような素肌に傷がついていく。

 

 

「ワフー!」

 

『─ッ!?』

 

 

犬が鴨と離れ、その足に噛み付いた。突然の痛みに足と杖を振り回しダックハントを弾き飛ばした。

その後に目を向けたのはフラフラとしたチコとMr.ゲーム&ウォッチ。

 

 

『うわわっ』

 

 

体を横に倒しての両足蹴りでMr.ゲーム&ウォッチを蹴散らす。

 

 

『いたーい、つよーい!』

 

「ウウゥ…」

 

 

母は強し。

操られていようが、本質は変わらないのだ。

未だに能天気なMr.ゲーム&ウォッチに呆れ果てる。ダックハントが人間だったらとっくに頭を抱えていた。

 

 

『でもどうすればいいのかわかったよー!』

 

「クゥ?」

 

 

えいっ、と気の抜ける掛け声で、Mr.ゲーム&ウォッチはバケツをチコに被せる。

 

 

「バウッ!?」

 

『かわりにおさえてー!』

 

 

一瞬固まったものの、衝動的に動いて地面に押しつけたバケツの上に乗った。平面であるが故に中でジタバタしているチコを視認できるが、脱出することはできないらしい。

 

 

『…ッ!!』

 

『せいっ!』

 

 

明らかに動きが悪くなったロゼッタ相手に椅子を横薙ぎにする。非道な方法で相手の動揺を誘ったことに対する戸惑いは彼の中にはない。善悪の判断がつかないMr.ゲーム&ウォッチはこういう策を普通に使う。

 

 

『もえちゃえ!』

 

『…ッ!』

 

 

だが、実際効果的だった。

視線がチコの方へ向いている。目の前の敵に集中できていない。隙だらけの体躯に燃え盛る松明が突き刺さった。

 





オリマー「なんだこの変な生物は…」

リンク「外れたぁー!!」

オリマー「リンクか。この生き物… 四角の体に… こんな体格で立てるのか…?」

リンク「でた、オリマーの生物考察。」

オリマー「癖みたいになってしまったな。最初の冒険は遭難してしまったから、できるだけ情報は欲しかったんだ。」

リンク「へー」


オリマー「次回、『指導者を求める』…」


リンク「それで… この四角は食えるのか? 油揚げみたいでうまそうだぞ。」

オリマー「ルーイ君みたいなことを言うんじゃありません…」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

七十九話 指導者を求める


ガッツリメロメモやってました。星コンプリートしました。
しばらくヴァニタスの曲聞かない(トラウマ化)

実のところ、音ゲーまともにやったのはじめてなんですよね。
家族がPS2の太鼓の達人をちらーとやってたのと友達にリズム天国貸してもらったぐらいで苦手意識を感じていました。


助走つけて勢いよく押してたこっちが悪かったのですが、今思えば、小学生でDSのリズム天国とかできませんよね、マッタク。(鬼判定)



 

「はい、わかりました。今はこれで全員なのですね…」

 

「やる気のないリドリーもいるんだけどねー」

 

「………ッ」

 

 

ドンキーコング、ディディーコングが見つけた異空間への入り口。その手前で今動けるファイターのほとんどが集まっていた。インクリングが発した例外の名前に、サムスが無意識に顔をしかめる。ヘルメットを被っていてよかった。

解放されたばかりのロゼッタはその聡明さでいち早く状況を理解する。チコはわかっていないのか体を傾けていた。

 

 

「俺たちハズレ組だったよ、ちきしょー…」

 

「イッシッシッシッシ」

 

『あたったよー!』

 

「私を勘定に入れないでくれ。それと人の有無で当たり外れを判定するのは失礼になるからやめなさい…」

 

 

父親らしく、オリマーが咎めるように叱る。

 

 

「カンチョー?」

 

「勘定だ、馬鹿が」

 

「とりあえず進んでみよう。今までの出来事を聞くに突然の不意打ちは無さそうだし、油断させる為だとしても対処はできる。」

 

「うん、そうだね。でも、注意を払うことは忘れずに行こう。」

 

 

天使二人のジャブ的な漫才を無視して、ルフレが言う。戦略的な進軍においてはルフレが稀代の才を持っている。マルス達より慎重且つ大胆に、そして勝機を逃さず負け筋を潰しながら戦線を広げるのだ。

 

 

 

 

は? と惚けた声を漏らしたのは誰だったか。その世界は現実的のようでそうでなかった。

大木が、ビルが、闘技場が、誰かが見たことあるようなものが統一されず、乱雑に散りばめられていた。それらがブラックホールに吸い込まれるように渦巻いた状態で静止している。まるで時が止まったかのように。

 

 

「えっと… この… 何? なんですかこれ…」

 

 

Wii Fit トレーナーの困惑した声がやけに響く。

今までどこかの世界を模して作られていただろう異空間が突然常識を覆すかのように意味不明空間になってしまったのだ。

 

 

「これがダーズなりの不意打ちなら大成功だな!」

 

「これなら普通に背中を狙ってきた方が良かったかもな… どうやって奥に行くんだ…?」

 

 

ハキハキ意見を言ったキャプテンファルコンに対してスネークは現実主義だ。後のことを考えて少しうんざりしている。

 

 

「でも先に行かなきゃ! ここにも誰かいるよ!」

 

「うぬっ! ハズレなんかにへこたれぬ!」

 

 

大きく声を張り上げるのはヨッシー。リンクは両手で自身の頬をパチンと叩く。

短いように見える別れ道に差し掛かったところで進んでいたヨッシーの目の前に文字が現れた。

 

 

「うわわわっ」

 

「おっと、なにこれ…」

 

「どうしたの?」

 

 

微妙な顔をしているだろうことは唸り声で想像がつく。それを不思議がってデイジーが声をかけた。同時にリンクの元に歩いていく。

 

 

「えーと、『この中で空中に浮くことができるスピリットはどれ?』…って、ホントに何よ、クイズ?」

 

「クイズっぽいわね…」

 

 

人差し指の先を口に近づけてピーチが思案しながら言う。その疑問文は誰がどう見ても三択の問題文だった。

 

 

「どれ? って言われても戦わなきゃわかんないっスよ!」

 

「いや… 彼らはピクミン達だな。私にはわかる。」

 

 

そう、同じ世界の出身であったら、そのスピリットが何者なのかは本能でわかる。つまり同じ世界の出身であればこの問題は解けるのだ。

 

 

「それならわかるねっ! そして空を飛ぶピクミンと言えば羽ピクミン!」

 

「羽ピクミンは右だ。ここは私が行こうか。」

 

 

ここまでヒントを与えられればオリマーでなくとも問題は解ける。マリオが無事に言い当てた。

 

 

「ですが、他のピクミンさんはどうしましょうか?」

 

「勿論戦うよ。一応、オリマーが正解のピクミンを助けた後にしておこうか。それと、後にどんな問題が来てもいいように、同じ世界の出身は一人残っておこう。」

 

 

ルキナの心配する声にルフレが答えた。

要するに既に同じ世界の仲間を救出済みの誰かが不正解のスピリットへ挑もうということだ。

 

 

「それでは、私がいきます。」

 

「ボクも残るよ。道が開け次第みんなは先に進んでくれ。」

 

 

他のスピリットの救出はピーチとシークが志願した。これで今後の方針は決まる。

 

 

「じゃあ、次ボクが残る!」

 

「それじゃ、その次俺!」

 

「リンク、キミはダメだ。ボクが追いついてからね。」

 

「またハズレ引いたー!」

 

「君はまだ言うか…」

 

 

記憶喪失だったとしても、程があるだろう。とオリマーが内心呆れながらも冷静になれた。お陰で身内との対決も落ち着けて挑めたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『再開の花園』とアルフ達は呼んでいたようだ。オリマーもここに来たことはある。『終点』化したとはいえ、その面影は色濃く残っており懐かしさを感じている。

 

 

『……!』

 

「っと…!」

 

 

背後から近づいていたプリンのボディを赤ピクミンで叩き落とす。その相手は小さめなオリマーより小さいが、数多くいる。一匹やられたからかもう一匹追加された。

 

 

「今いるのは四匹か… 数は… いや、互角だ。私にはピクミンがついているからな。」

 

 

ピクミンを相手に戦ったことはほとんどない。ボケナメコの胞子を浴びたピクミンとは不本意ながらも戦ったことはあるが。

 

 

「(あの操られたピクミンにもこのピクミン達にも攻撃するのに、色が違うからという理由で攻撃はしないんだな…)」

 

 

ピクミンの謎がまた一つ増えた。長い付き合いだというのに未だに不明な部分が多い。

 

 

「それは後にしよう。敵は何匹いるのか… 百匹は…ないと信じたいが。」

 

 

オリマーが恐れているのは、相手にどれほどの数がいるのかだ。ピクミンの強みは数だ。一匹一匹がどれほど弱かろうと、数の力で巨大な相手を上回るのがピクミンだ。それを彼はよく知っている。

 

 

「だが、それでも戦うしかない…!」

 

 

どの道勝敗が決まらなければここから出れはしない。ならば、戦うしかないのだ。

 

 

『『『『─!』』』』

 

「…む!」

 

 

空中から、群で襲いかかる敵達。しかし、単調だった。突くように伸ばされた短い桃色の足はシールドにより全て防がれた。

 

 

「たぁ!」

 

『『…!?』』

 

 

思いっきり振りかぶったパンチは四匹全てを貫く。味方の体がクッションのように作用して、一撃死を免れた後列二匹以外はパンチに耐えれずその体が崩れる。

 

格闘技の類は未経験だったが、この世界でも戦ってきたことで威力は上がっていたようだ。

 

 

「ふふ… 私もまだ捨てたものじゃないな。」

 

 

機嫌良くなったのか、心底嬉しそうに笑う。この才能気づいたのがもっと早ければ格闘技の道に進んだかもしれないと、意気揚々だ。

 

と、勢いづきつつも相手の様子を観察することは忘れない。今三匹を倒し、残った分と追加された分で計七匹。

 

 

「ぬっ…」

 

 

追加されたばかりの二匹がこちらへ迫ってくる。一匹はオリマーの身長をも超える程度の高さから。もう一匹は空を飛ばず地上から走って。

 

 

「ならば…!」

 

 

空の相手には黄ピクミンを投げて撃ち落とす。他ピクミンで走る相手を掴んで、奥に潜む残りのスピリットへ放り投げた。

直接当たった敵と投げた敵を纏めて屠り、このタイミングで黄ピクミンがもう一匹の体力を削りきった。

 

 

「まだ追加が来るか…! これで十匹!」

 

 

ダーズも無尽蔵にボディを生産できるとは思いたくないが、追加の敵はどんどん来る。

 

疲弊していた一匹を蹴っ飛ばして消滅させ、一匹に狙いを定めて赤ピクミンで撃ち抜く。

 

 

「よし、戻れっ…え!?」

 

『『…!』』

 

 

赤ピクミンを呼び戻すために笛を吹く。

目的は達成させられたが、それ以上に効果が響いたのか敵であるはずの操られた羽ピクミンの体が止まり、こちらの方へ向いた。その動作に驚きはしたものの、反射的に赤ピクミンをぶつけ一匹をぶっ飛ばした。

 

 

「もしや… 囚われてもなお指導者を求める性質は変わっていないのか?」

 

 

ダーズの戦えという単純な命だけではピクミンにとって足りないのだろう。

オリマーのピクミンにあって、この羽ピクミンにないもの。それは指導者だ。前線に立つリーダーがいなければピクミンの数がいようとも圧倒的な力の前にねじ伏せられてしまう。

 

 

「早く救うしかない…か。ちょうど頭打ちのようだし。」

 

 

倒した一匹の追加はこない。つまり、今いる三匹を倒せば勝ちだ。赤ピクミンと黄ピクミンを投げ、二匹を消耗させる。

そして、最後の一匹は。

 

 

「すまないな…!」

 

『…ッ!?』

 

 

青ピクミンでなぎ払い、一匹を浮かせる。そこを拳で打ち抜いた。踏ん張りの効かない空中でぶっ飛ばされ、空中へ消えていく。

そして、オリマーのピクミンにも固まった相手など敵にならなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前にばら撒かれた小さなプリン型のフィギュアが溶けていく。先の道が光の筋で繋がっていった。

 

 

「彼らは…」

 

「どうかしましたか?」

 

 

ロゼッタの隣のチコに目が向いた。チコも指導者がいなければ、戦えなかったりするのだろうか。

地下の洞窟にいた寄生したピクミンとは違い、彼らピクミンは原生生物を指導者として定めたりしない。指導者がいなければ簡単に数を減らせるピクミンは、自分やアルフ達のように偶然たどり着いた知的生命体を指導者と認識する。

 

 

「(偶然…?)」

 

 

もし、誰も惑星にたどり着けなかったら?

知的生命体が指導者に適していなかったら?

待っているのは絶滅しかない。運に頼らなければ絶滅するような生物など、生物として破綻しているのではないか。

 

 

「まさか…!?」

 

 

自分が遭難したこともアルフ達が墜落したことも偶然ではなかったら?

それを引き起こしたのは─

 

 

「オリマー? 大丈夫かい!?」

 

「はっ…!」

 

 

マルスの少し荒げた声でオリマーは我に返った。思考を吹き飛ばすように頭を振る。

 

 

「少し考えごとをしていた。先に進もう。」

 

「…本当に大丈夫かい?」

 

 

怪しむマルスに再度大丈夫だと示す。

馬鹿なことを考えた。疲れているのかもしれない。もしそうだとしても、一介の生物がどうやって隕石を呼んだというのだ。

 

偶然なんだ。その豪運に感謝するだけなのだ。

 





しずえ「あっ、怪しい人!」

むらびと「答えはつねきちかー」

ロックマン「知り合い?」

むらびと「うん、偽物の中に本物の美術品を混ぜてお金稼いでるんだ。」

ネス「悪い人だ…」


むらびと「次回、『報われればよかったのに』。」


むらびと「全く、守銭奴の風上にもおけない。僕はもっと良心的だよ。」

インクリング「リョウシンテキ…!?」

むらびと「何? その目は…」

インクリング「……ソウダネー…」

むらびと「なんで棒読み」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

八十話 報われればよかったのに


ちょっぴりシリアス?
そんな感じの回です。




 

「ヒュー、ここの辺ややこしいなー!」

 

「全く! こんなに物があるのに金になりそうなものはありゃしない! どういうことだ!」

 

 

キャプテン・ファルコンが辺りを見渡す中、ワリオは価値のないガラクタを集めては地団駄を踏んでいる。

 

 

「毎日コツコツ、チャンスを逃さないは基本だよ。おっ、鉱石あるじゃん。」

 

「…勝手にチャンスにされた…」

 

 

小声で文句をたれたのはインクリング。高値をふっかけられたのは忘れていない。財布の中身を思い出し、しばらくナワバリバトルをやっていないという事実に絶望した。

 

第一問に正解した道の先は単純な別れ道だった。一方の道にあった問題を正解した先に、小島のような剥がれた土地があったのだ。

 

 

「そこにあるは一人のファイター… で、誰行く?」

 

 

やけくそ気味に始めた芝居がかった口調を即行でやめて会話する。

ここで誰も何も言い出さなかったので、少なくともここにいる誰かの同郷ではなかったようだ。

 

 

「誰も言い出さないのならば私が行こう! このキャプテン・ファルコンがね!」

 

「「「「おお〜っ!」」」」

 

「カッコいいですっ〜!」

 

 

白い歯を見せて笑い、サムズアップをするキャプテン・ファルコンに子供達から感嘆の声が上がる。しずえがどこからかクラッカーを鳴らして演出しており、まるで特撮アニメの一部分を切り取ったかのようだ。

 

 

「ヒーローならば、ヒーローショーでも開け。そうすれば世間知らずのガキからたんまりと銭を…」

 

「うわ〜…」

 

「そこはさりげなくでしょ…」

 

 

ワリオの悪どい妄想は童心の子供達には非常に受けが悪かった。インクリング、ネスは声も出さない。

 

 

「ま、まあ、確かに先立つものはお金ですよね!」

 

「先どころか後にも先にもカネが一番だ! ガッハッハッハッハッハ!」

 

「しずえさんのフォロー台無しにしてんじゃん…」

 

 

しずえの言葉も崩し、同じ女子から厳しい意見も飛んでくる。だが、その程度のことをワリオは気にしない。

 

 

「ま、相変わらずだな!」

 

「ブレませんね〜」

 

 

フォローを無碍にされても、しずえはほんわかスマイルを崩さない。

 

 

「それじゃあ、しばらく頼んだよ、しずえさん!」

 

「はい! お気をつけて〜!」

 

 

ニコニコと笑いながら、しずえは手を振り返していた。視線を戻して、対峙するべき存在を視界に認めて進んだ。黒いバイザーの奥の瞳が光った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元凶を倒し、倒された仲間も戻ってきて完全なるハッピーエンド。陳腐でありふれた結末だが王道だ。誰もがそんな結末を目指しているのだろう。それを手にするために頑張っていた。

 

その頑張りが、報われればよかったのに。

 

 

 

 

とあるビル、『レッキングクルー』。その『終点』バージョンはまるでそのビルの屋上だった。でも、その足場は重力に依存しない。完全な別物だった。

 

 

『…ィ…』

 

「おやおや、よりによって君か。少しやりづらいなぁ…」

 

 

両腕を広げて、ため息をついた。

そのレーサーの目の前にいたのはロボット。ファイターの中では唯一だろう。この世界出身のファイターだった。最後の一機というべきの。

 

一方的かもしれない。

それでも今まで進展させられなかった関係があった。万が一悪い方向に進んでしまったら怖かったのだ。

 

 

『…ッ!』

 

「うおっと、」

 

 

ロボットの乗っ取られたその瞳から放たれる赤いビームがキャプテン・ファルコンの胴があった場所を通り抜けていく。

事情があるとはいえ、それを表に出すことをしなかった。だから誰もこの悩みを知らない。誰も解決できないのだから今の今まで全く進展しなかったのだ。

 

 

「『ファルコンキック』!」

 

『…ガ…!』

 

「(そろそろ晴らすべきなのかもしれないな…)」

 

 

この悩みは自分で考えてみても破滅的だった。こんなこと、仲間を全て喪った直後の彼にはいえなかった。当初はそれが理由だったのに。

 

回転するアームを両手で受け止め、後ろへ投げ飛ばす。ガシャンと嫌な音がするが、その程度で壊れないことをキャプテン・ファルコンは知っていた。なんなら、背中へビームを撃ってくるほどだった。

 

 

「そろそろ… 打ち明けるべきか、君を正気に、戻したら…!」

 

『…ィ!』

 

 

正拳突きを止められ、アームの殴打を止める。残った足で、回し蹴りをして頭部を蹴った。構造上、アームを塞がれてはロボットはどうしようもない。

 

停滞していた関係を無理やりに動かしたのはダーズだった。皮肉にもそれを進展させたのは運命という名の偶然だった。

 

 

「散っていった君達の仲間に見せる顔がないからね! このキャプテン・ファルコン、負けやしないのさ!」

 

『…!』

 

 

ギュッと拳を握りしめ、ビシッと指差した。それを受けたロボットが一瞬、後ずさったように見えた。

 

 

亜空軍を討ち滅ぼした。タブーはもうこの世界のどこにも存在していない。世界は平和になった。亜空間に飲み込まれたエリアは元に戻った。世界を取り戻す物語は終わったのだ。

 

だが、その代償のようにロボットの仲間と故郷は元に戻ることはなかった。

 

 

たまに哀愁を漂わせ、海の果てにある空を見つめるロボットの姿が忘れられない。

 

 

「(俺たちはその仲間達にはなれない。代わりにしかなれないんだ…!)」

 

 

欠けた物は別の物で埋め直す事しかできない。穴が空いている事実は消すことが出来ず、破片すらも世間という大地に呑まれ見えなくなった。

 

 

「忘れろ、とは言わないさ。一生引き摺っていても構わない。だから約束してくれ!」

 

 

火の鳥を拳に纏わせ、ロボットのアームと正面から激突する。

 

 

「もう二度と、自分の命を諦めるなッ!」

 

『…ッ!!!』

 

 

隼の意思と名を継ぐパンチが、相手の拳に打ち勝った。アームがひしゃげたのではないかと錯覚するほどの強烈な一撃に踏ん張り切れず体ごと吹き飛ばされる。

 

 

『…ッ!』

 

 

飛ばされて、横に倒れゴロゴロ転がる。脊髄を曲げて、人間のように手をつけて立ち上がった。

 

 

「まだ座っててもらうぞ!」

 

『…!』

 

 

この機を逃すまいと走ってタックルをかますキャプテン・ファルコンを滑るようにかわす。

 

 

「…ッ!?」

 

 

ロボットが背後に回ったことを認めると、即座に振り向く。その目に映ったのはジェット機構の噴出口。

 

 

「…ぅっ!?」

 

 

視界を爆炎と煙が占めた。バイザーが無ければ目が潰れていたかと錯覚するほどの熱い衝撃が飛び込む。急所にも等しい場所への攻撃にのけぞった。

 

 

『…!』

 

「(とりあえずシールドッ…)うっ!」

 

 

追撃を警戒し守りに入るが、人は慌てるほど単純になる。その思考を読むのは容易だった。

首元のスカーフを掴まれ、ロボットごと宙へ浮いた。その後に体に響いたのは衝撃と急変した視界。地面に叩きつけられたのだと認識したのはバウンドして体が跳ね上がった時であった。

 

 

「負けるかっ…!」

 

『!』

 

 

空中で体勢を変え、右手を握りしめ後ろへ引く。その拳に宿る炎。

ロボットもまた、両腕を組んで防御の体勢に移る。

 

 

「ファールコーン…!」

 

『…!』

 

 

炎が、青空に映える。それを纏うキャプテン・ファルコン。

 

 

「パーンチッ!!!」

 

『ッ!?』

 

 

不死鳥の拳が、ロボットのガードを貫いた。細い脊髄にクリーンヒットし、立っていられない。足が地面から離れて宙へ飛んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仲間と共に逝こうとするロボットを無理やり連れてきたのはドンキーコングだ。だが、彼らを救う道を早々に諦めて脱出を謀ったのは自分だった。その判断が間違っているとは思わない。ただ、正しければ万人の心が救われる訳ではないのだ─

 

 

『…ずっと悩んでいたのデスカ。』

 

「情けないことだがな。正しいことではあったかもしれないが、君にとっては何もして欲しくなかったのかもしれない、と。」

 

 

合流を目指し、進むファイターの少し遅れて最後尾。

ロボットはそこまで聞くと項垂れた。機械ではあるが、彼には感情が宿っている。仲間を想う気持ちは本物だった。だからこそ悪に染まるしか無かった。

 

 

『…当時はそう思ってイマシタ。彼らはワタシの迷いに巻き込まれただけなのによりにもよってワタシだけが生き残ってしまったのダト。』

 

 

キャプテン・ファルコンの悩みは真実だ、とロボットは話す。子供達の笑い声が遠のいて聞こえる。

 

 

『仲間はもう戻りマセン。そして吹っ切れることもないデショウ。』

 

「ロボット…」

 

『ですから忘れマセン。仲間達を忘れないワタシがここにいれば、今後ずっと生き続けていれば、彼らの存在は永遠になるのデス。』

 

「おお…」

 

 

ロボットの決意に驚愕とも呆れとも取れる声が漏れた。彼の言葉は仲間達の死を永久に引きずり続けるのと同義だ。…もう救われない。

 

 

「いいのか? それは…」

 

『歪なのは理解してイマス。前を向いて生きるのが正解なのデショウガ… ワタシは正しくなくとも仲間が救われる道を選びます。』

 

「…それなら正解の一つだな。」

 

 

誰かが報われるなら、それはそれで正解なのだ─

 

 

『まあ… ですからワタシの存在を消すダーズは許せマセン。ワタシも頑張りますのでよろしくお願いシマス。』

 

「おう!」

 

 

二人は上を向いた。

悩んだ上に出した答えは、この不可思議な空間のように歪で善とも悪とも捉えられるもの。

だが、その答えこそが理不尽な世界を一人ぼっちで生きていくたった一つの理由なのだ。





CF「追い討ち要員だぜ!」

ロボット『追い討ちですカ…?』

リドリー「なんか文句あるのかぁ?」

ドンキー「ウホッ、ロボットがやらないなら、オレ、やる!」

CF「働かざる者食うべからずって言ってな! 要するに働かないものにはなにしもいいんだぜ!」

ロボット『そんなコト…』


ロボット『次回、『俺がわからないとダメなんだ』デス。』


ロボット『本編のアナタはどこにいるのですカ?』

リドリー「分岐点のところで寝てる」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

八十一話 俺がわからないとダメなんだ


スピリット戦は閑話が多い。せいぜい伏線張るぐらいしかできない。
でも書かなきゃ… ここまででもだいぶスピリット戦削っている…
薄味な回かもしれませんが許してください。

え? もうすぐスマブラSP二周年? 嘘だろ…


 

「………」

 

 

惰性のように彼らファイターの後ろをとぼとぼと力ない足で歩く。見下ろした右手のモンスターボールは何の反応も示さない。

 

 

「レッド!」

 

「…っ!」

 

 

前が見えず、道端の単なる石ころに躓いた。前のめりになった体を右足が支える。危うく転ぶところだった。

 

 

「大丈夫…?」

 

「うん… 少し考え事してただけさ。」

 

 

リュカの心配する声に応えた。そこまで注意力が散漫になっていたとは。

 

 

「レッド、レッド」

 

「どうした?」

 

「ゼニガメの言うこと… 僕ならわかるよ。出してみて?」

 

 

確かに手っ取り早く解決するにはリュカのテレパシーに頼るのが一番だろう。どれだけレッドがポケモンと心を通わしても、それだけはできない。だが…

 

 

「ダメだ… 俺がわからないとダメなんだ… そうじゃないと俺はもうゼニガメのトレーナーを名乗れない…」

 

「レッド…」

 

 

ごめん、とか細く謝罪するレッド。

リュカは自分に苛立ってしまった。その配慮のなさに。言っている言葉がわかれば、なんて。人は隠し事をするのだ。その真意は本人が言わない限り、決して他人にはわからない。ゼニガメの心も、レッドの苦悩も。その中に踏み込むことを許されていないリュカにはわからないこと。外野から応援するしかないのだ。

 

どれだけ仲が良くても、崩れる時は容易く崩れる。願わくば、タツマイリ村のみんなや自分の家族のようにならないように。

 

 

 

 

今度は三択の問題だった。岩山が道を三つに分けている。

 

 

「『ノポン族のスピリットはどれ?』ですって。なんか遊ばれてるみたいで嫌ねー…」

 

 

デイジーが目の前に現れた文字を大声で読む。後方のファイターにも聞こえるように。

 

 

「ノポン族は…! 僕の世界に居る種族だっ…と」

 

「なごっ!」

 

 

シュルクが後ろから潜り抜けて来た。無理に押し分けたせいで一部ファイターはご立腹である。頭の上のカービィはマイペースにスピリットを呼んだ。

 

 

「後の一人は… イエロースターだ! 久しぶりだねっ!」

 

 

残念ながら和やかに談笑できる空気ではないのだが、それも構わずマリオは呑気に声をかけた。

 

 

「残りは一択になったが… 合っているか?」

 

「うん。彼本人に会ったことはないけどノポン族自体は知ってるからね。特徴はそっくりだ。」

 

 

確認を求めると、シュルクは肯定する。身近なノポン族を思い出し、心のままにスピリットの姿を感じ取った。

 

 

「だからどうしても僕じゃないということは…」

 

「「はい!はい、はいはい!」」

 

「…ない…けど…も…」

 

 

急激なダブルリンクの挙手にシュルクの言葉が失速する。二人に言い寄られてタジタジだ。

 

 

「こほん、とりあえず先に残ると言ったのはトゥーンだ。まずは君に任せるよ。リンクは…シークが戻るまで待っててくれ。」

 

「イエイッ!」

 

「おのれマルスー!」

 

 

見かねてマルスが助け船を出した。先程話した順番に従っただけだと言うのに。

 

 

「だからガキか、って。動いてないと生きていけねえのか? テメェ脊髄で動いてんのか?」

 

「それはガンナのことじゃなくて?」

 

 

呆れたようにガンナが毒を吐いた。彼女にとっては停滞している方が嫌いらしい。

 

 

「他二つも誰でもいいからさっさと決めてくれ。コイツが死んじまう。」

 

「いっー! イッー! 死んじまうってガンナが、ブレス! ブレスゥ!」

 

 

一瞬のうちにソードの背後に回り、腕を交差させて首を締め上げる。ガンナがやっていることと伝えたかったのに、痛みがそれを許してくれなかった。だが、見たままの情報で十分だ。

 

 

「なんて見苦しい… トゥーン、先に正解のスピリットへ行ってくれ。他のスピリットについては後で決めておく。」

 

「そうなの? わかった!」

 

 

見るに耐えてオリマーが背中を押した。彼は完全に蚊帳の外であったため、いてもいなくても変わりないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわあぁ…! やっぱりここ凄いや!」

 

 

『ガウル平原』。シュルクの世界の土地をマスターハンドが創造して作ったものではあるが、トゥーンリンクは、地平線まで広がる程の巨大な原を見たことない。海に囲まれた島しか知らない彼にとってここはお気に入りの場所だった。

 

 

「やっぱりハイラル王国を作るならこういうところがいいなー! そうだ! 船みたいな乗り物を作っていろんなところに行けるようにしよう! それで、風に当たりながら見えるところまでどこまでもっ…!」

 

 

相手のことも忘れて背景に興奮しきっているトゥーンリンク。突然風が揺れたのを感じて、咄嗟に屈んだ。

ビンタをかわしたトゥーンリンクが慌てて距離を取り敵のいる場所へ振り向いた。

 

 

『『…』』

 

「二対一…!」

 

 

青いドレスを着たデイジーのボディと、小さなプリンの形をした敵。

数的に不利な状況だが、トゥーンリンクは不利な状況に燃えるタイプだった。

いつまでもテトラになよなよしてるなんて言われないように男らしくなければ。でも居眠りぐらいは許してほしい。

 

 

「ふんっ!」

 

 

バックステップで距離を取りながら『勇者の弓』を放つ。狙いは後方のプリンのボディだ。なるべく二人を近くに居させたくない。連携を取らせたくなかった。

 

 

『…!』

 

「それ怖いって!」

 

 

振り回したゴルフクラブをマスターソードの柄で止める。それでもお構いなしにクラブを振り回す。トゥーンリンクはその棒状の物を知らなかったが、本人やピーチから受けたことがあるので怖さは知っている。しかし、問題はそこではなかった。

 

 

「(攻撃できないよぉ!)」

 

 

本来攻撃を防ぐ筈の盾は役に立っていない。左利きのトゥーンリンクは盾を右手に持っている。相手の右手の打撃を盾で受け止めるには体を捻らなければいけないが、そこまでしたところで隙を晒すだけだ。トゥーンリンクは武器で防ぐしかない。盾を前に構える暇がなかったことが響いていた。

 

 

「でも、ここは直線のステージじゃないし!」

 

 

この平原はひたすらに広いステージだ。

終点とは違って逃げ道は前か後ろか上なんていう単純なものではない。

 

 

「とっ!」

 

『!』

 

 

転がり込むように飛び降りる。下にもしっかりした足場があり、そこ目掛けて落下する。デイジーも後を追って飛び降りた。

 

 

『… ッ!?』

 

「置き逃げー!」

 

 

追ってくるだろうと予感したトゥーンリンクは爆弾に火をつけて宙へ放った。重力に導かれるままに動く敵に避ける術はないだろう。

 

 

「ってぶわぁ!?」

 

 

しかし、トゥーンリンクにも避ける暇はなかった。近くなくとも自身の起こした爆発に巻き込まれ、口に煙が入ってくる。

 

 

「げほっ、げほっ… 砂が口の中でジャリジャリする…」

 

 

咳き込んで体外へ出そうとするが、飛び散った砂片が口の中に入ってしまったようだ。異物を咥えた不快な感覚にえづく。

 

 

『…!』

 

「おええっ!?」

 

 

ダーズの眷属には気持ちを整えることすら許されなかった。突き刺さるようなキックが額に刺さり、頭が強制的に上を向いた。吐き出しかけた砂が喉の奥へと入っていく。

 

 

「気持ち悪いって…」

 

 

爆発を受けていたデイジーのボディが追いついた。トゥーンリンクの背後を取り、挟み撃ちにする。

 

 

「言ってるだろー!!」

 

『っ!』

 

 

怒りのあまりに繰り出した『回転斬り』が二人まとめて吹き飛ばす。感情が爆発したせいか、目が回っているのを自覚していない。

 

 

「このやろっう!」

 

『…ッ!』

 

 

体を反らし、デイジーのボディに対して斬りあげるように思いっきり剣を上げた。吹き飛ばされていくボディは力を失い、光となって消滅していった。

 

 

「最後はそっちだー!」

 

『…っ!』

 

 

仲間がやられたからか、ビシッと指差すトゥーンリンクに気圧されているようにも見える。それを気づく者はいなかったが。

 

 

『…!』

 

 

フワッと飛び上がる。空中ならば軽いこちらの方が有利だと言わんばかりだった。

 

 

「好きにさせない!」

 

『…ッ!?』

 

 

小さい体の口に、何か遺物が入り込む。フックショットの先かと判断したのは自分の口からトゥーンリンクの右手に向かって鎖が繋がっていたからだ。

 

 

「とりゃー!!」

 

『…!!』

 

 

フックショットを外し、身動きの取れない相手を宙へ蹴り出す。空中へ飛び出したトゥーンリンクが剣の刃と共に突き刺すように落ちてくる。

 

避ける手段もなく、偽りのからだは奈落へ落ちていった。

 





リンク「せめて! せめて一緒に!」

マルス「どうして止めているのかわかってないのかい…?」

ソード「そろそろ…! 止めてくれないと…! 確実にダイ!」

ガンナ「確実に日々? ついに英語もおかしくなった?」

ソード「ちがーう! 死ぬ死ぬ!」

シュルク「あのー… そろそろ決めたら…?」


シュルク「次回、『わかんねぇよ』!」


デデデ「なんと醜き争いかー!」

ファルコ「鏡見ろや」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

八十二話 わかんねぇよ


えっはっえっセフィロス?
確かに色んな参戦予想にあがってましたが、既存タイトル(FEみたいにシリーズが同じだけとかそういうのでもない)、主人公じゃない、FFという三重苦で、個人的には除外してた枠なので虚を突かれて一日、白昼夢だったの? とか思ってました。

Twitterとか回って落ち着いた結果、マリオ串刺しにしてたら今度こそ永遠に出禁だったな…、とか映像作ってるのそもそも任天堂側やん…、とか思い出の中と外で反復横跳びしてる…とか思って、最終的に遂にスマブラにもストーカーしてきたな…に落ち着きました。自分で言ってて訳わかりません。


KHMoMやってたから、BGMにもしっかり反応できました。
ところで新ステージらしきもの、ディシディアで見た覚えがあるんですが、オリジナルであった場所なんですかね? 有識者の方教えてください。
今後、参戦予想は無駄になる前提で考えた方がいいのかもしれない…




 

スピリット、トラを解放し、先に進んだファイター達。合流したシークの言葉によって次の問答、『影の世界の王は誰か』という問いを危なげなく正解することができた。(ついでにリンクの平静を取り戻した。)

シークと彼女が知るガノンドロフとこのようなところで再開したことは完全な余談である。

 

その正答の先、大きな桜の木を横目に進んだ道。一本道のそこを立ち塞がるように彼はいた。

 

 

「ゲッコウガ…!」

 

 

スマッシュブラザーズの中で、彼と同じ世界に生を受けながら唯一人であるレッドがその名を呟いた。

彼は野生の筈なのに、どこかトレーナーがいたような面を見せる。元は誰かのポケモンだったのかもしれない。否、訳あってトレーナーの元を離れているような。

 

 

「ここは俺に行かせてくれ。」

 

 

気づけばその言葉を発していた。

それは強いポケモンと戦いたいというトレーナーの本能か。または離れているにも関わらず良好な関係を続けているのだろう誰かへの嫉妬か。

 

 

「で、でも、ゼニガメはまだ…」

 

「ああ、出てこない。でも止まっていてはなにも進まない…!」

 

 

リュカが心配の声を上げるが、レッドの意思は固かった。モンスターボールを握りしめて、まっすぐに相対する敵の方を見る。

 

 

「まあ、ドラキュラの時もなんとか出来たしリザードンもいるしな。なんとかなるだろ。あんまり気負うなよ!」

 

 

宿敵は既に屠ったからか、リヒターは楽観的だ。ドンドンと背中を叩かれ、息が途切れ途切れになる。

 

 

「(まだなにもわかってない… どうしてゼニガメが戦わなくなったのか… だから多分出てこないだろう…)」

 

 

だが、前に進もうとしただけでまだ進んではない。進展していないのだがらゼニガメは動かないとレッドは判断した。

 

 

「…でもきっと。答えはバトルの中にある。」

 

 

誰にも聞こえないだろう小声で決意を固める。リザードンのボールを握り、前に、進む。

 

 

「あれ…」

 

「どうかしました…?」

 

 

子供の感情の機敏に、鋭くロゼッタが反応した。屈んで優しく頭を撫でた。なにがあったのか言って欲しいと言わんばかりに。

 

 

「リザードン…」

 

「ええ、リザードンを使うようです。それが何か…?」

 

「えっと… なんだろ、えっと…」

 

 

違和感がある。モヤモヤと頭を埋め尽くし、言葉で表現するのが難しい。できない。

リュカは考える。一体この正体はなんだろうかと。それをほっとくことなどできず、ロゼッタは共に考えた。

 

 

「ゼニガメは使えない。彼は三匹の仲間と戦うのにその一角が抜けている… 単純に戦いにくくなってしまいました…」

 

「うん… ゼニガメが出てこないから始めからリザードンを使う訳で…」

 

「ゼニガメが出てこないから…? 確かに彼の先鋒はゼニガメであることが多いですが…」

 

「………あっー!!」

 

 

パズルの最後のピースが埋まった音がして、リュカは大きな声を上げた。多くの者が肩を上げ、視線をそこへ動かした。

 

 

「そうだそうだ! レッドのポケモンといえば何!?」

 

 

いつもの人見知りをかなぐり捨てて周りに問う。日常とは全く違うその姿に一部のファイターはギョッとし、Wii Fit トレーナーがおずおずと口を開いた。

 

 

「何って… リザードンさん、ですよね?」

 

「それだよ、トレさん!」

 

「は、はいぃ!?」

 

 

異論はなかった。リュカ以外は。だからこそ彼は気づけたのだ。その根本的な認識の違いに。

レッドが行ったそこへ目を向ける。

 

 

「違う… 違うんだよレッド… そうやって戦ってもゼニガメは出てこないよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レッドも目指すポケモンリーグ。高みを目指すポケモントレーナーなら殆どの者がその頂点を目指すだろう。地方ごとに存在しており、カロス地方にあるポケモンリーグが『カロスポケモンリーグ』なのだ。

 

 

「ポケモンリーグ…」

 

 

四天王とチャンピオンが待っている場所。『終点』化され、偽物でしかないとしてもトレーナーとしてここに立つ以上、緊張するなと言う方が無理だった。相手がそれらのポケモンに匹敵するだろう実力を持っているのだから尚更。

 

 

『……!』

 

「…っ! いけっ、リザードン!」

 

「グアウオッ!」

 

 

タイプ相性は悪いが、それはどうとでもなる。リザードンの実力は疑う必要もない、レッドにとって頼れるきりふだだった。

 

 

『…クゥ、!』

 

「『みずしゅりけん』! とべ、リザードン!」

 

 

水で固められた手裏剣が三枚飛んでくる。ゲッコウガの代表的な技だ。

飛び上がって避けることを命じられたリザードンは空中を飛び、ゲッコウガの上空を陣取る。

 

 

「ふみつけろ!」

 

「ウゥッ!」

 

『…!』

 

 

急降下で地面に足で降りる。地響きが起き、床が抉れたのではないかと錯覚する。しかし、ゲッコウガは素早い身のこなしでかわしていた。

 

 

「『かえんほうしゃ』!」

 

「グオォォ!」

『…、…!』

 

 

後ろへ引きながら、その口から炎を吐いた。『みずくない』で切り裂きながら距離を詰めようとするも、炎の勢いの方が僅かながらに上回っている。

 

 

『…!』

 

「後ろに回った!」

 

 

するとゲッコウガは力押しを諦め、リザードンの巨体をも飛び越える跳躍力で背後を突いた。

咄嗟に動かした翼と振り下ろしたクナイが激突する。

 

 

「グゥ…!」

「コゥ…!!」

 

「いたみわけ…! リザードン!」

 

 

両者ともに吹き飛ばされたが、身軽なゲッコウガの方が立ち直りが早かった。未だ立ち上がれないリザードンへとびげりをかます。

 

 

「戻れっ、リザードン! ……くっ」

 

 

リザードンをボールへ戻し、いつもの癖でゼニガメのボールを投げようとする。だが、やはりうんともすんとも言わない。

 

 

「がんばれ、フシギソウ!」

 

「ソウ!」

 

 

空をきったゲッコウガへ『つるのムチ』でたたきつける。いざという時にトレーナーの命令抜きに最善手をとれるのはフシギソウだ。

 

 

「『はっぱカッター』!」

 

「シィ!」

 

 

威力は度外視し、乱雑に大量に。素早いゲッコウガを捉えるための最善策。

 

 

『…ゥ…!』

 

 

がまんが限界になり飛び出したゲッコウガの蹴りをくらいつつも、つるで受け身を取って起き上がる。そのまま地面を叩いた反動で高く跳び上がった。

 

 

「ゼニガメ… 聞こえるか?」

 

 

再び『はっぱカッター』を周囲に撒き散らし、空中から雨のように降らせる。

 

 

「ゼニガメもさ、大切な仲間なんだ。かけがえのない存在で… チャンピオンになるのに必要な一匹なんだ。」

 

 

しかし、この攻撃は二度目。忍者の身のこなしでかわしていく。それを読んでいたのか、フシギソウは流星のように体を落下させた。

 

 

「はじめてのポケモンでさ、喧嘩した時もあったよな。勝つ時も負ける時もあった。」

 

 

着地したフシギソウをクナイで斬り捨てようと動いた。咄嗟につるを前に出して即席のシールドを生み出した。つるに傷がついてしまうが、そのほかの弱点を突かれるよりずっとマシだった。

 

 

「なのにさ… 俺、わかんねぇよ。閉じこもってちゃゼニガメのことわからない。俺はどうすればいい? このままじゃあ喧嘩一つできない…」

 

 

フシギソウのボールとは逆の方に握ったモンスターボール。閉じこもったまま出てこないゼニガメに呼びかける。返事は… ない。

 

 

「ンシィ…!!」

 

『…ゥゥ!』

 

「ッ! フシギソウ! ぶんまわせッ!」

 

 

傷ついたつるでゲッコウガを捕らえた。苦しげにしながらも、トレーナーの指示通り自身を軸にして回り出す。

ゲッコウガももがいてはいるが、腕も縛られ、自由に動けない。

 

 

「放り投げろ!」

 

「フッシー!」

 

『ッ…!』

 

 

砲丸投げの要領で空中へ放り出す。

手負いのフシギソウをボールに戻し、取り出すは左手のゼニガメではなく、持ち替えたリザードン。

 

 

「チャンスだ! 『フレアドライブ』!」

 

「ゴゥア!」

 

『…!?』

 

 

投げ出されたゲッコウガに対して最高威力の炎技を命じた。敵は飛ばされ光となってしまう。

 

 

「はあ… はあ… 勝った!」

 

「ンガウッ!」

 

 

鼻息を荒くするリザードン。勝者は俺だと誇示しているようにも見える。

 

 

「でも… なにもわからなかったなぁ…」

 

 

強者との戦いに熱くなっていたのは認める。だが、不甲斐なさに嫌気が差したわけではないらしい。自分でも上達しているとわかる。

 

 

「ゼニガメ…」

 

 

勝った筈なのに心の内は曇ったままだ。

わからないままだった。

 





ロボット『今北産業デス』

ピット「レッドポケモンバトル中
リュカ何かに気づく
あわあわ慌てて阿波踊り」

ロボット『最後が全くわかりまセン…』

ブラピ「思ったことそのまま言ってるだけだぞ」

CF「本能で喋ってるってやつだな!」

ピット「ランチの写真Twitterに上げてるのも本能?」

CF「どっちでしょうね?」


ピット「次回! 『もう終わったこと』! 大切なことなので一度しか言いませんッ!」


ブラピ「このレーサーどこ向かってるんだよ…」

ロボット『続編まだデスカ?』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

八十三話 もう終わったこと


Miiコスチュームは想定通りでしたので、一番最初にやったんですね。
後BGMの件。スクエニのやる気が感じられないとかどこかで愚痴ってごめんなさい。いや、ここで謝っても仕方ないけど。

後マルク全年齢引っかかってて草。
目玉ポロポロとか細胞分裂モドキとかやっててまだマイルドだったんかい!


ゲッコウガの設定置いときますねー

・ゲッコウガ
性別♂。がんばりやな性格。なんでもよく食べる。よく一人でいるのだが、とっつきにくい訳ではなく、強い正義感を持っている。



 

リザードンと共にレッドは強豪ゲッコウガを倒し、ダーズの呪縛から解放した。しかし、彼自身が望む答えは得られなかった。

 

 

「もーうッ! なんなんだよぉー!」

 

「あわあわ…」

 

「コウ…?」

 

 

悩みを吹き飛ばすようにレッドは思いっきり叫んだ。謎の空間に虚しく響き渡る。その答えを見つけたらしいリュカは、レッドの本意を無視してでも伝えるべきか迷っている。何も知らないゲッコウガからしたらいい迷惑だ。

 

 

「あんまり上手くいかなかったっぽい?」

 

「そうみたいだな。リュカがなんか気づいたみたいだが…」

 

「聞く気ゼロかよ」

 

 

未だに、うおー、うぎー、と意味のない言葉を呻いている。ストレスの発散程度にしかならず、周りにとってはただの騒音でしかない。

 

 

「無駄なことをギャーギャーと… ワガハイはそろそろ我慢の限界だ…!」

 

「これ以上喚くならカービィの歌一時間耐久だぜ…!」

 

「お前直接危害加えなくていいの?」

 

「エアーをリード! ステイステイ!」

 

 

眉間にシワを寄せているだろうクッパ、デデデ、ガンナの三人に対して、普段ストッパーではないソードでは役不足だ。

 

 

「ったく、アイツら…」

 

「ッ! おい、フォックス…」

 

 

呆れているフォックスの肩をかがめ、聞こえていないというのに思わず小声で話す。

 

 

「なんだよ?」

 

「あれ見ろ、あれ…」

 

 

ファルコがあれ、と称したそれは一つのスピリットだった。おちょくるようにクイズ形式になっている選択肢の一つ。確かあの問題は科学者を問うものだった。

そこにいたのはいつか倒した科学者。いや、支配を目論んだ悪の皇帝。

ダーズが生み出す世界に進軍してから、リドリーや豪鬼といった誰かの宿敵が立ち塞がることが増えたような気がしている。他のことは知らないが、彼らからして見れば、もう終わったことだった。無理やりほじくり返されていい気はしない。

 

 

「アイツ…!」

 

「やっぱあの右手胡散臭いんだよ…」

 

 

既に倒した筈の奴がここにいるということは、倒す前の時間からマスターハンドが呼び寄せたことに他ならない。

善悪など関係ない… ではなく、生物の中で語られるような一般論の善悪など創造神にとってはどうでもいいのだ。そうでなければクッパやデデデは兎も角、リドリーまでファイターに認めたりしない。

なのに自身や自身の作品たるこの世界に危機が訪れた時は、その元凶を悪だと捉える。究極の自分本位だ。この不信感に気付いているのは確実にファルコだけではない。力を持たない身だったら確実に常識に呑まれていただろうに。

 

 

「チッ… ムカついてきた…」

 

「おい、ファルコ…」

 

「悪いがフォックス、コイツはオレの獲物だ。戦いたきゃ他を当たれ。」

 

 

鋭く、猛禽類にも似た目を向け、敵意すらも隠さない。こうなってしまったら、決意は揺るがないことを知っていた。

 

 

「わかったよ、無茶するなよ?」

 

「ケッ、どの口が言ってやがる。」

 

 

軽口を叩いて戦場に赴く。

既に許容範囲は超えている。堪忍袋の尾は既に切れていた。ライラット系を脅威に曝したアンドロフも、それを放っているマスターハンドも。

 

奴を解放したところで過去の自分達が奴を倒す。許すつもりで解放するのではない。ましてやマスターハンドのためでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ステージの名前は『惑星ベノム』… とは名ばかりに、その星を進むグレートフォックスを足場にして戦うステージだ。

 

 

「チッ… 戦いにくいことこの上ねえな…」

 

 

機体と翼を足場にするこのステージは、お世辞にも動きやすいとは言えない。だが、それは相手も同じこと。翼を踏み締め、相手の居場所を予測する。恐らく向かい側にいるだろう。

 

 

「…ッ! めんどくせぇ!」

 

 

機体の後方から、白い面のような生命体が現れた。アシストフィギュアだ。呼び出した者の味方となって戦うアイテムだが、ファルコが呼び出した覚えはなく。誰が奴の敵かは一目瞭然だった。

 

 

『…!』

 

「チッ!」

 

 

そんな事情などお構いなしに相手は襲ってくる。紫の肌をしたガノンドロフのボディ。アシストフィギュアのことを気にしているばかりにはいられなくなった。トップクラスのパワーは無視していいものではない。

 

急降下をしながらの強烈なキック、『烈鬼脚』が上空から襲いかかる。ファルコは後方へ身を引きながら『リフレクター』を蹴り飛ばして牽制しようとした。

 

 

「んなッ!?」

 

 

地面に足がつくのが遅すぎる。高く跳びすぎたのではない。明らかに感じる重力が減っている。早く着地しようと、反射的に足をバタつかせてしまった。

 

 

「だッ…!?」

 

 

アシストフィギュアが吐いた、板のような物体がファルコの体に当たる。単純に二対一。しかも一方には攻撃が届かず、重力が低いという、ファルコにとっては不利な条件が揃っていた。

 

 

「コイツら…!」

 

 

腕を伸ばして上翼に掴まる。

普段宇宙にいるのだから慣れているだろうと思われるかもしれないが、グレートフォックスやアーウィン内は反重力システムを搭載しているので、実はそうでもないのだ。

 

 

「(動き続けるしかねぇか…!)」

 

 

近づくボディを確認すると、ファルコは手を離して下翼に降り立ち、『ブラスター』を構える。予想通り追ってきた相手に二発撃ち込み、また上翼に回る。

 

 

「しつけえな…」

 

 

板による攻撃をかわす。低重力により、足も遅くなっているのでいつもより早めに。

 

 

「ッ!」

 

『…!?』

 

 

上がってきた相手を足払いで転ばせる。重力が低く、狙いやすいのは双方同じだ。浮いたところを蹴り飛ばす。グレートフォックスの外壁にぶつかり、ボディの重量でへこんだ。本物ではないので心も懐も痛まない。

 

 

「ただ、アイツが鬱陶しいんだよ…」

 

 

アシストフィギュアの存在が、攻め切れない状況を作っていた。撃墜できればいいのだが、生憎攻撃の届かない場所に陣取っている。

 

 

『──ッ!』

 

「…! しくじっ」

 

 

言葉は最後まで紡がれなかった。アシストフィギュアについて考えている内に、敵は起き上がり、ファルコに掴みかかっていた。慌てて跳ぼうとするも、低重力のことが頭から抜け落ちており、ついいつものタイミングでかわそうとしてしまった。

 

 

「この…!」

 

 

左足首を掴まれ、身動きが取れなくなる。自由な右足で顔を蹴るが─

 

 

『…』

 

「ぐっ… ああっ…!?」

 

 

握り潰されるかと錯覚する程に力を込められ、攻撃どころではなくなった。こうしてる間にもアシストフィギュアからの攻撃は迫ってくる。

 

 

「離せ…!」

 

『ッ!』

 

 

『ブラスター』で相手の左手を撃つ。怯んだ隙に右足で蹴り飛ばして、ようやく自由になれた。

 

 

「ッ!」

 

 

顎を蹴り飛ばして、一回転。奴の体が浮き上がる。両足揃えてのドロップキックで再び外壁までぶっ飛ばした。

 

 

「ッ…! このォ…!」

 

 

集まり始めていたアシストフィギュアの攻撃をかわす為に前に走る。

力を込められ、左足はまだ自由には動けない。だが、重力がないお陰で力を込めなくともある程度動かせた。ここで重力を味方につけることができたのだ。

 

 

「…ウオォォ!」

 

『…ッ!?』

 

 

蹴り出された体は壁を登るかのように浮かんでいき、上空に投げ出された。重力のないこの場ならば、翼の折れた鳥もまだ羽ばたける。

 

 

「ッ!」

 

 

唸り声一つあげる間も無く、残った右足で蹴り飛ばした。高く、高く、それこそ宇宙よりも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ッ!」

 

「おい、ファルコ!」

 

「わー!? お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんかー!?」

 

 

戻ってこれたファルコが崩れるのをフォックスが咄嗟に支えた。慌てふためくインクリングの声を背景に会話を続けた。

 

 

「だから無理はするなって…」

 

「それは毎回こっちが言いてえんだよ…! ちょっと歩きづれえだけでかすり傷だ…!」

 

 

あわわわ、という声は耳に入らず、いつも通りに強がるファルコ。だからフォックスもまたいつも通りに答えたのだ。

 





ガンナ「んっ? あ、コイツいつぞやの派手骨じゃん。コイツも来てたんか。」

ソード「いつか話してたゴールデンボーンってやつ?」

ガンナ「大体そんな感じの名前だったな。」

ワリオ「ゴールデンだと? そいつ金持ってるのか!?」

ガンナ「まあ確かに金ピカだったな」

ワリオむらびと「金!」

ソード「食いついた!?」


ガンナ「次回、あー、『今までも、今もスターフォックスは戦っていた』… なげぇ。」


むらびと「ちょっと戦ってくる」

ガンナ「別にいいぞ」

ソード「えっ」

ワリオ「金を剥がしてぼろ儲けだ!」

ガンナ「別にいいぞ」

ソード「えっ」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

八十四話 今までも、今もスターフォックスは戦っていた


2020年の投稿は最後になります。
意図的に世間の現状は書かないようにしていたのですが、色々ゲームの開発やニンテンドーワールドが延期になったのはやっぱり辛い。

来年はもっと穏やかな年になりますように。
では、良いお年を。



 

「それじゃあオレは先を見てくるから、他の奴らが戻ってきたら出迎えてくれよ」

 

「合点承知の助!」

 

 

ピシッと敬礼するインクリングに、疲弊したファルコを任せ、先の道を進む。

 

繋がった光の道筋に任せるがままに進むと、現代的な飛行機の左翼に降り立った。

以前光の世界でリュウがいた場所に着くため乗り込んだのを思い出す。外見をまじまじと見ていなかったので断定は出来ないのだが、もしかしたら同じ機体なのかもしれない。

 

 

「っておいおい…」

 

 

飛行機の尾翼の方。感じるあの凝視感。

顔も姿も形すら見えない筈のそれをフォックスは正確に読み取っていた。無意識に体の毛が逆立つ。ウルフだった。散々ぶつかり、死闘繰り広げてきたライバル。

 

 

「さて、どうするか…」

 

 

このまま自分が戦うにしても、一度戻って何があったか伝えた方がいいのはわかっている。だが、そうすると誰かがついてくるかもしれない。流石にこの状況、彼だけは無事だったなんて言い訳が通じるとは思っていないが、それでもこんな姿を直接見られるよりはマシなのではないか。このような形でウルフの尊厳を貶める趣味はなかった。

 

 

「…そうだな! やっぱりオレ達だけで決着をつけたい…!」

 

 

今のファルコは連れて行ける状態ではないし、他の誰かを連れて行こうとも思わなかった。

 

何度か助けてくれたのは事実なのだ。スターフォックスとの決着をつけるのが彼の望みならば、部外者を連れて行くのは野暮というものだろう。

 

黙ってそのまま戦うことにした。

後で怒られるかもしれないな、と考えながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隕石の間を駆け抜ける、高速宇宙艇プレアデスに似た『終点』。この空間は見慣れた宇宙。『ライラットクルーズ』。アーウィンに乗っているかいないかの違いがあるとはいえ、フォックスにとっては、もはや慣れた戦場で一番冷静に戦えるフィールドだった。

 

 

即座にブラスターを構える。相手の銃口がこちらへ向き、自分の銃口もまた相手に向いた。ガチャ、という音が静かな宇宙に響く。二度音はならなかった。全く同時に構えたのだ。

 

 

「いくぞ、ウルフ!」

 

『…ッ!!』

 

 

眼帯に隠れ、片方の目しか見えないが、ダーズの闇を宿したそこから感じられるのは確実な闘志。

 

 

『…!』

 

 

ウルフの『ブラスター』から放たれる赤い光弾がフォックス目掛けて放たれる。

ファルコのそれよりも連射と速度を犠牲にして火力を上げたもの。

 

ぴょんと跳ねてかわす。弾丸が砕いたのは足場だけだった。

 

 

「…ッ!」

 

 

走って距離を詰めながら、構えた『ブラスター』を撃つ。

フォックスのそれは威力はあまりないものの、速度と連射性能は全ファイターを見てもトップクラスだ。

 

フォックス自身のスピードもあって、回避は至難の業だが、ウルフは精々数発当たった程度だ。躱された光弾が足場を少しだけ焦がした。

 

 

 

走り出した双方がすれ違う。

視線だけが、お前には負けない、と語っていた。

 

 

 

靴の底を擦り減らし、ブレーキをかけるとフォックスはすぐに飛び出した。低い姿勢でいつでも全力のキックができるように。

 

ウルフは低く腰を下げ、両手の爪をギラつかせる。正面から打ち破ってやろうという魂胆だった。

 

 

「(乗ってやる!)」

 

 

択は無限にあったが、あえてのることにした。全身に闘志の炎がつき、触れるだけでダメージを受けるような危険な領域に移行する。『ファイアフォックス』だ。

 

ウルフは腕を引いて、その一撃に力を込める。勢いをつけて切り裂けば、その爪は深く体を抉るだろう。

 

 

「ファイアーッ!!」

 

『──ッ!』

 

 

速さと鋭さ。二つがぶつかり合い、しのぎ合う。風圧すら感じさせるのではないかと思うほど力のこもったこの鍔迫り合い。

 

 

「うぐっ…!」

 

『…!!』

 

 

双方が後ろへ飛ばされ、地に伏せる。

ぶつかり合いは相討ち、痛み分けで終わってしまった。

 

どちらも簡単に立ち上がれないほどに消耗している。この攻撃にしか被弾していないようなものだというのにこの有様だ。一撃に集中しすぎて消耗が激しかったのだ。

 

それでも、ノコノコと相手が攻撃をやめてくれるような甘い世界ではない。すぐに立ち上がらなければ。

 

 

「─!」

 

 

先にウルフが動いた。とはいっても彼もまだ立ち上がっていない。完全に立ち上がっていないままに、倒れているフォックスへスライディングを仕掛けてきた。

 

仰向けに倒れていたフォックスは咄嗟に両肘で地面を思いっきり叩き、体を浮き上がらせる。体の下へ、ウルフの片足が入っていくのを感じた。

 

 

「まだ、だ!」

 

 

咄嗟に下半身を横にしてキックを飛ばした。不完全な体勢のキックはウルフの右腕に防がれる。互いに不安定な体勢のままにこの攻防を繰り広げていたのだ。

 

 

しかし、ここは無重力な宇宙ではなく重力のある紛い物だ。翼もない彼らはそらにとどまることができないのだ。

 

 

浮き上がらせたフォックスの体が落ちていく。体の下にはまだウルフの片足が滑り込んだままだ。

 

 

「う゛っ」

 

 

左足で蹴り上げられ、フォックスは短い呻き声を上げた。攻撃を続けたフォックスにはこれ以上防ぐ手立てがなかった。

 

 

「…っ!」

 

『ゥ…!』

 

 

体を捻らせ、なんとか着地するフォックス、低い体勢のままに体を起こすウルフ。

 

 

『ァァ!』

 

 

ウルフの脚が動いた。鋭い爪をギラつかせ、肉薄する。咄嗟に『ブラスター』を取り出して対応するが、右へ左へかわし続けるウルフにはあまりダメージにはならなかった。

 

 

「!」

 

 

凶爪が襲い掛かろうとするタイミングで『リフレクター』を作動させる。レーザー光線などをはね返すための道具だが、接触した相手を弾き飛ばすぐらいはできるのだ。

 

 

「とりゃあ!」

 

『ッ!』

 

 

爪が弾かれ体勢を崩したウルフへ、振りかぶった蹴りを入れる。隙をつかれたウルフはステージ端まで押し飛ばされた。

 

 

「(…! そうだな、オレは一人で戦ってるんじゃない…! ここにいないだけでスターフォックスとして戦ってるんだ…!)」

 

 

今両手に持っているブラスターは、リフレクターは、顔も知らない誰かが作った市販品ではないのだから。

 

ファルコ、スリッピー、ペッピー、クリスタル、ナウス。

 

 

そう、この場にいないだけだ。

今までも、今もスターフォックスは戦っていた。

 

 

「勝てる…!」

 

 

気づいたからにはもう負けない。負けるビジョンが見えない。ごく自然に体が動いた。

 

 

宇宙にふさわしい静寂が世界を支配し、異質な空気だけが辺りを満たす。

 

嵐の前の静けさというべきか、臥龍が眠っているというべきか。

 

そんな思考すらも、まとめて『フォックスイリュージョン』が切り裂いた。

 

 

『…!?』

 

 

すれ違い様に身を斬られるような痛みを受け、体を浮かされ飛ばされたウルフは、再び銃口をこちらへ向けるフォックスの姿を認識した。

 

反射的に『リフレクター』を起動させ、身を守る。上空を狙って撃たれた光弾は雨のようにフォックスへ降り注ぐはずだった。

 

 

「…!」

 

 

予感していたフォックスは自慢の俊敏性で自ら放った弾丸をかわしていた。

自分で撃った弾なのだからはね返る軌道も想像がつく。予想がついたこともあって、簡単ではないが難しいものでもなかった。

 

走りながら再び『リフレクター』を作動させ、自分の身を守りながら猛追した。

 

 

「うおおぉ!!」

 

『───ッ!!』

 

 

相手の抵抗、反抗の痛み全てを抑え込み、身を護って蹴りつけた。

シールドとシールドのぶつかり合いに矛が加わる。赤い守りは貫かれ、本体に衝撃が叩き込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…なんてザマだ、フォックス」

 

「誰のせいだよ…」

 

「…チッ」

 

 

意識が正常ではない間に頭に入ってきた知識により、自分に起きたことを理解したウルフ。フォックスを揶揄するような口調だったが、内心苛立っていたのは己に対してだ。

 

操られていた自分を正気に戻すためにフォックスが自分と戦っていたのはわかる。

気がついたら、フォックスが傷だらけの状態で近くにいたのだから。

 

無様に操られた自分も、フォックスをここまで追い詰めたのが正気の元ではない自分だった事実も、ウルフには腹立たしいことだった。

 

 

「停戦だ。」

 

「えっ?」

 

 

フォックスよりも先に倒すべき相手がいる。

 

 

「キサマを倒す前に、ダーズとかいうヤツを始末してやる。キサマと決着をつける前にこの世界を奪われてたまるか!」

 

「協力してくれるのか? 助かるよ」

 

「仲良しする訳じゃねえぞ。オレがヤツを許せねえだけだ。」

 

「理由はいいさ。」

 

 

礼は言わない。今まで相対してきて、性格は掴めてきたのだ。

 

混沌の化身に爪を立てんと、謎の空間に獣の咆哮が響いた。

 





インクリング「はーい! 動かないでねー、オーキューショチするからー!」

ファルコ「お前やったことあんのかよ…」

インクリング「シオカラ節歌えば元気になるんだよ!」

ファルコ「…マリオ連れてこい」

インクリング「だって人体のコウゾウ? って難しいじゃん!? ホネって何!?」

ファルコ「経験以前の問題だったか…」


インクリング「次回! さらば、愛しのファルコ!」

ファルコ「ンなわけあるか! 次回、『想う』!」


ガンナ「魚じゃないんだし、鳥のたたきとかどうなんだよ…」

ファルコ「んだと、コラァ!!」

ソード「ワオ、エナジー!」

インクリング「やっぱ元気があればなんでもできるんだね!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

八十五話 想う


明けましておめでとうございます。
あつ森で島を作り替えております。このお正月、ほぼ書きだめの執筆が進みませんでした。ごめんなちゃい。


それと、今回歌詞つけたいと思っていたのですが、原作の主題歌使用許可が出てませんでした… 急遽手直ししたので無理矢理感ありますが見逃してください。もしくは脳内再生か3DSやCDを引っ張ってきてください。

章タイトルですか? 命の灯火は任天堂の版権なので任天堂二次創作のガイドラインを侵さなければ大丈夫という判断です。新年早々ちょいと生々しい話しちゃってごめんなさい。



 

ジッと見つめ続けていた。

左右のポケモンなど気にならない程に、赤い帽子を被った少年を見続けていた。

 

予感があったのだ。この少年なら、自分を高みへ連れて行ってくれると。

 

 

最初は互いに未熟だったが、どんどん強くなっているのを感じる。頂点だって目指せるかもしれない。そう感じさせる程だったのだ。

 

 

仲間が増えるのも別にいい。自分一匹ではどうやっても限界があるだろう。どれだけ仲間が増えようと自分が最初のパートナーだということに変わりはないのだから。

 

そう、思っていたのに。

 

 

 

 

ひとり、想う。

親を、子供を、恋人を、友を。あるいは─

 

 

 

 

科学者が誰かを問う問題を尻目にそのまままっすぐ進んだら先に進むだろう道。そこにはまたクイズがあった。揶揄われているのだろうか。

 

しかし、真っ直ぐ進まなければ雲の道。躊躇していた者がいるのも無理はないが、見た目とは裏腹に人を支える硬さと質量はあるようだ。

 

 

「こういう文化の違いは慣れないんだよなぁ…」

 

 

パラシュートもなしに雲の上にくるだなんて。乱闘中は深く考えないが、スネークは躊躇して進めない。その他にも戸惑っているファイターがいる。

 

 

「ガーハッハッハ! 軟弱者めが!」

 

「あ、クッパは乗らないでね、重さで落ちちゃうよ!」

 

「なんだとマリオッ!」

 

 

狭いところでクッパがマリオを追いかけ回す。ドンドンと幅を取りながら走るので他ファイターは良い迷惑だ。

そんなひと騒ぎの中でシュルクの肩からカービィが飛び降りて足場になることを証明した。

 

 

 

 

「大丈夫ですか?」

 

『ええ、ありがとう。私は平気よ。』

 

 

その他多数が先に進んでいる中、少数が残りその雲の上にいたスピリットを解放していく。

鮮明な姿が記録に残らず噂による姿が安定していない故に、女性の姿をしていたカムイのボディを倒し、スピリットアクアを救出したルキナ。白くてひらひらとした服は仲間の恥ずかしがり屋な踊り子を彷彿とさせた。

 

 

「こうやって少数の方に別れればよかったんだな!」

 

「全く君は…」

 

 

成り行きでついてきたものだと思ったが、そういう打算があったとは。

太陽の如く笑うリンクにルフレは苦笑するしかなかった。アクアの目がルフレの方へ向く。

 

 

『カムイ…?』

 

「えっ?」

 

『いえ… ごめんなさい、どうして間違えたのかしら…』

 

 

ルキナの隣のルフレを見ながら、違う名前を口にする。しかし、その名は彼らも知っている名だった。

 

 

「いや、構わないよ。僕達から見ても何故か他人の気がしないんだよね。」

 

「そうなんですか? 初耳です。」

 

「隠してた訳じゃないけど自分から口にするほどのことじゃなかったからね。」

 

 

そう言いながら奥のファイターに目を向けた。噂をすればというものだった。動いた視線に従いアクアもそこへ目を向けた。半透明な瞳孔が驚きにより開く。

 

 

『カムイ…!?』

 

「君だけじゃないんだ。この状態に陥っているのは…」

 

 

慌てて駆け寄るが、彼女に助ける権限はない。それを理解してしまい、俯いてしまう。

 

 

『私じゃどうする事もできないのね…』

 

「ごめん…」

 

『貴方が謝ることじゃないわ。気にしないで』

 

 

どうすることもできなかったとはいえ、ルフレは謝る。カムイがこの場で囚われていることは事実なのだ。だったら助けなければ。そう思い、ルキナに彼女を任せようとした時だった。

 

 

「待ってルフレ! 俺に行かせてくれ!」

 

「…! レッド!」

 

「んなぁにー!?」

 

 

大声でルフレを止めたのはレッドだった。側にいるリュカが何故か二つモンスターボールを持っている。

 

 

「おのれ、レッド! 略しておのレッド! お前さっきゲッコウガにもがもが」

 

 

くってかかろうとするリンクの口を塞いでルフレが話した。

 

 

「大丈夫かい? 今ゼニガメは…」

 

「大丈夫! 預けてある!」

 

 

サムズアップで答えるレッド。

 

 

「まあ、構わないけど…」

 

「OK! 行ってくる!」

 

 

駆け出したレッドは振り返らなかった。

 

 

「預けてあるって… それじゃあ何も変わらないんじゃ…」

 

「だ、大丈夫です、僕、預かってるって言っても」

 

 

ゼニガメじゃないんです、と続けた言葉に残るファイター三人は驚いた。確かにリュカが持つモンスターボールは二つだが。

 

 

「原点に戻る、って。知らないかもしれないですが、レッドの最初のポケモンはゼニガメなんです」

 

「マジ? 知らなかった… リザードンだと思ってた…」

 

「そう! それなんですよ!」

 

 

人見知りを忘れたのか、リンクにグッと近づいたリュカ。ワーワーと騒ぐファイターから離れたところからアクアはレッドの行った先を見ていた。

 

 

『原点に… きっと届くわ。だから私もできることをする。』

 

 

もうあのペンダントはないけども。きっとカムイに届いてくれる。信じて口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『攻城戦』の『終点』化。シンプルゆえに実力が現れるバトルフィールド。

神祖竜の血を引く相手カムイを目に捉え、唯一持ってきたボールを放り投げた。

 

 

「頼むぜ、ゼニガメ」

 

「………」

 

 

静かに呟いて。

ボールから出てきたはいいものの、ジト目でレッドを見つめるとそっぽを向いた。

 

 

『…!』

 

 

竜穿、神祖竜の力を操るカムイは左腕を竜のそれへと変貌させる。上を取って『跳槍突』だ。その鋭さは大地にも突き刺さる。

 

 

「かわして『たきのぼり』 …!」

 

「ニィ!」

 

 

体の小ささを活かして内に入り込み、竜化した腕を尾ではたいた。明らかに聞こえていながらレッドの指示を無視している。

 

 

『…!!』

 

「ニィガ!?」

 

 

しかし、常人よりも硬くなった腕を払うのにゼニガメの攻撃は火力不足だった。

フリーだった右手の夜刀神・終夜で地殻ごと斬りつけられた。後方へ吹き飛ばされる。主が駆け寄った。

 

 

「ゼニガメ! …! 飛び道具がくる! まもる!」

 

「ンニィ!」

 

 

まるで竜の大口のように変化した両腕からは水の塊が放たれる。トレーナーの指示を無視して『みずてっぽう』をくりだした。

真正面からの力勝負、威力自体はカムイのそれの方が上だが、ゼニガメは本人が後押しし続ける。そのおかげで相打ちに終わった。

 

打ち消したゼニガメはからにこもり、辺りに乱雑に水を撒き散らした。それは寄っていたレッドにもかかり、うっかり吹き飛ばされそうな気すらした。

 

 

「ゼニガメッ…!」

 

『…ッ!』

 

 

それは流れ弾が当たったことによる苦渋の声か、指示を無視されたことによる屈辱の声か。

そんなことどうでもいい側のカムイは両腕を変化させたまま水の攻撃を切り裂いた。

 

 

「ニィ…!?」

 

 

攻撃の奔流を裂き、道を切り開いた鋭い牙がゼニガメへ裂傷を穿たんとする時、何かが横へ通り過ぎていく。

 

土壇場でゼニガメの体をさらって攻撃から守ったのはレッドだった。獲物を見失った牙は地面深くへ突き刺さった。

 

 

「いっつ… とっしんだ!」

 

 

地面を擦ってできた擦り傷を痛がりながら、指示を出してゼニガメを勢いよく放つ。

 

 

「ゼニィ…!」

 

 

だが、ゼニガメは真っ直ぐはいかず、カムイの側面からとびげりを放った。隙ができたため当たると思われてた攻撃は背中から変化した翼に阻まれ、吹き飛ばされた。

 

 

「ニ… ゼニィ! ニィガ、ガーガッ!」

 

 

抗議するように何かを捲し立てるゼニガメ。伝えたい内容をレッドは見事に感じ取っていた。

 

 

「お前がこっちの方がいいって思ったんだろう? なら俺はお前の判断を信じる!」

 

「ゼ…!」

 

「俺の最初の仲間はお前なんだ。フシギソウもリザードンもお前も。俺の大切な仲間なんだ。パートナーなんだよ!」

 

 

リュカ以外の全員が、レッドのポケモンといえばリザードンを上げる。最終進化系で実力があって。彼が相棒だと思っていた者も少なくない。

それでもレッドだけでもわかってくれていたのなら、それでよかったのだ。

 

 

「『からにこもる』だ! 右へ回れ!」

 

 

高速で突き進む甲羅。腕の防御を潜り抜けてカムイの脇腹に突き刺さった。

ゼニガメもレッドの判断を信じたのだ。

 

 

『…ッ! グワアアア!』

 

「…くっ! それでもパワーの差が…!」

 

 

脇の衝撃を感じて、全身を竜に変えた。周囲に激流を撒き散らしレッドもゼニガメも吹き飛ばした。

指示そのものは戦力を変える力を持たない。力の差をカバーすることはできるが、差そのものをなくすことはできないのだ。

 

 

『…』

 

 

胴体と刀を持つ右手以外は竜の肉体のままで、こちらを冷徹に睨みつけている。細くなった両足の先を近づけて立つ姿は神聖さすら感じられる。でも呪縛はそこにあった。

 

 

「くそっ…!」

 

 

打つ手無しか。せっかく信じてくれたのに。そう思ったその時だった。

 

 

─♪

 

 

「…? 歌声…?」

 

『…?』

 

 

今が乱闘中だと言うことも忘れてそっと耳を澄ました。何かが聞こえる。何故かカムイも何かを感じるように上空を見上げた。

 

 

「もしかしてあのスピリットの女の人…? ってそれどころじゃない! 水を辺りに撒き散らすんだ!」

 

「ニィ!」

 

『…!?』

 

 

『スプリンクラー』のように水を吐く。カムイがハッとした時には、自身が起こしたものも併せてステージ全体がびしょびしょになっていた。

 

 

非常に無防備になっていた頭部にずつきをくらう。辺りに水があるからか、ゼニガメの総合的な移動速度が素早くなっていた。

後ろへ回ろうとしていたゼニガメに狙いを定めて夜刀神を斬りつけるも水飛沫を上げるだけだった。レッドの声もよく聞こえないほどに何かがカムイの心をざわつかせる。何処からか聞こえる歌が何故か非常に懐かしい。

 

 

上手く体が動かない。魔法の類は込められていない筈。戦うことのみ許された体が、歌声に無意識に反応している。

ホースの口のように、弾を小さくすることで『みずてっぽう』の威力を上げる。動揺している隙をつき、右手の夜刀神を手放してしまった。水流に巻き込まれ、後方へ飛んでいく。

 

 

両手を口のように変化させて、小亀を喰らおうと噛みつく。ゲッコウガの『ハイドロポンプ』の如く水流で緊急離脱された。

腕を払い、腹部に尾をぶつけられる。先程の攻撃と威力が全く違う。いや、痛いのは体じゃない。

 

いつだったか、今と同じように自分のための歌を聞いた気がする。

 

 

 

 

そうだ、あの時。母が殺された時、嘆きの中で内にある獣の衝動を抑えきれなくなった時だ。

その時もこうやって正気の元にいない自分を想ってくれたのだ。

 

ステージに溜まった水には、レッドとゼニガメ、自分の姿。その中に彼女もいた、気がする。

 

 

 

小ささを生かして完全に懐に入られた。辺りの水を足して、強力な『みずばしら』が上がりカムイの体はスピードを持って打ち上げられた。

 

 

『(また… 助けられちゃった…)』

 

 

大切な仲間を、想う。

 





ルフレ「何かレッドと話してたのかい?」

リュカ「えっと… ひ、ヒント、です」

ルキナ「ヒントですか? どのように出したのですか?」

リュカ「あの、その、最初のポケモンなんだ、って」

ルキナ「リザードンではないのですか!?」

リュカ「違うんです… ゼニガメが、レッドの最初のポケモンで、フシギソウとリザードンは別で手に入れたんです…」

ルフレ「驚いたな… 僕はフシギダネ派だ。」

ルキナ「私ヒトカゲ派です。」

リンク「だが、俺はゼニガメ派!」

リュカ「好みの話じゃないんですぅ…!」


ルキナ「次回、『くらえッ!!!』!」


ルフレ「ここに三人の主人公がいるじゃろ?」

リンク「ルフレブラック、リンクブルー、リュカイエローだな!」

リュカ「あわわわわ…」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

八十六話 くらえッ!!!


箸休め回です。
全体的に薄味。


 

 

「ごめん、アクア。また助けられちゃった…」

 

『いいえ、私は何も出来なかったわ。彼らがいなければ何も…』

 

 

カムイがそちらを向いた。へへん、とレッドは鼻をかく。照れ隠しもあったのだろう。

 

 

「ありがとう、あと傷つけちゃってごめん…」

 

「気にすんなって! 俺もリュカに助けられたし!」

 

「僕もルキナに助けられた。スマッシュブラザーズみんながそうだよ。」

 

 

だから重く感じる必要はないと、語る。そうだ、まだ戦いは続いている。きっと誰かが悲しんでる、傷ついている。

それならば道を選ばなければ。この手が届く全てを救ってみせる。甘いと言われても、もう誰も溢さないから。

 

 

 

 

まるでここは闘技場。先程の問題もインクリングが来なかったらわからなかったが、ここで出題される問題もこの場にいるファイターではわからないものだった。

 

 

「『クロムの妹は誰か』って… クロムに聞けよー!!」

 

「トゥーン、クロムの妹がわからないから聞いてる訳じゃないと思うよ」

 

 

うぎー、と抗議するトゥーンリンクをシークが治める。論点が少々ズレているような気がしなくもない。

 

 

「こういうのってさぁ、プライバシーの侵害だろ? 関係ない人の妹まで巻き込んでさ」

 

「多分クソどうでもいいぞ、あいつにとっては。…おい、マルスわかるか?」

 

 

この場にいるクロムと同郷の者、マルスにブラックピットは話を振った。手を顎に当てて苦い表情をしている。

 

 

「どれが誰まではわかるけど… 誰がクロムの妹までかは… 一番左と一番右のスピリットの方はアイクの話から聞いたことあるけど…」

 

「チッ、仕方ねえか」

 

 

結果は芳しくないものだった。だが、ここまで絞れただけ頑張ったというべきだろう。ルフレかルキナかを呼んでくるべきだ。

 

 

「フン、絶妙に役に立たん! もっと精進しろ!」

 

「ごめん…」

 

「マルスだって頑張ったのに、どうしてそんな酷いことを言うの!」

 

「そうだぞ、マリオ!」

 

「クッパに言ったんだぞ!」

 

 

マルスを野次るクッパに怒るピーチ。想い人に言われた言葉を受け流し、マリオへやった。勿論、口論になったのは言うまでもない。

 

 

『それで、真面目な話どうしますカ?』

 

「…でも、真ん中の右の子な気がするんだ。」

 

『根拠ハ?』

 

「服装。クロム達と並んでどっちが似合ってるかと考えたらこっちの子だった。」

 

「あー」

 

 

どこからか納得したような声が上がる。

 

 

「なるほど、納得した。私はそれに乗ろう。」

 

「ボクもー!」

「ワタシもー!」

 

 

どれを答えとするかは決まった。後は誰が戦うかだ。適任はクロム、次いでルキナ、ルフレだろうが、全員ここにいない。誰か希望を聞くしかなさそうだ。

 

 

「それじゃあ、バックついてオレが!」

 

「オレ全然戦ってないっスよ!」

 

「ボクも実は暫く戦ってなかったり!」

 

「何が裏ついてなんだか… この腕足ボールもやるってさ。」

 

 

ソード、リトル・マック、マリオ、パックマンが立候補し、四人がガヤガヤと輪になって論争になってしまった。

 

 

「女の子剣で斬りつけるとかないない!」

 

「フィストでぶん殴るのもバットだろ?」

 

「グローブつけてるんで! 問題ないっス!」

 

「こっちも手袋つけてるよ!」

 

 

フルーツを掲げて喋れないながらも自己視聴するパックマン。全員が引かないので平行線にしかならない。相手を下げる意見しかしないのならば、意地にしてしまうばかりである。

 

 

「めんどくせぇ。全員でいけばいいだろ」

 

「「「それだー!」」」

 

「えぇっ!?」

 

 

ガンナの一声に口を揃えて叫んだ。なんてことだ。支配から解き放つためとはいえ、女の子1人に対して男4人とは。散々扱いに対して口論していたというのに最悪な方向へ行こうとしている。

 

大きな声を上げたマルスを横目に進んでいく。呆然として止める言葉が出なかった。

 

 

『がんばってねー!』

 

 

今日ほど、Mr.ゲーム&ウォッチぐらいの常識知らずだったらと思った日はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大陸の北に位置するフェリアが所有する闘技場、だから『フェリア闘技場』。大乱闘にコロシアムは似合い過ぎている。

 

 

「ねえ、ねえ」

 

「まあ、言いたいことはわかるっス。」

 

「しずえさんのお供にクロムとルフレがついてるね」

 

 

パックマンが丸をつくった。マルスの予想は当たりだったようだ。しずえのボディ、クロムのボディ、ルフレのボディ。これで間違えだったら流石に困る。とりあえず、1人の少女に4人が、という酷い絵面にはならないようだ。

 

 

「よし! クロムの方はオレにエントルスト! 任せろー! 剣士だからね! 女の子に剣は向けられないね!」

 

「それじゃあボクはルフレの方! 女の子は手袋ごしとはいえ殴れないよ!」

 

「は? えっ? はあぁぁーー!?」

 

 

さっきまでの口喧嘩はなんだったのか。まさか結託しておちょくっているのか。この2人だ。あり得そうで困る。

 

 

「くそ、もうヤケだ! 一緒にしずえさんのボディ倒すっスよ!」

 

 

パックマンが頷いたのを確認すると、駆け出していた2人に遅れて戦いへ向かう。

 

 

「このやろっ!」

 

『…っ』

 

 

右ストレートがかわされ、左のパンチを叩き込む。更に連続でパンチをくらわせるが、これは防がれた。

 

 

「次頼む!」

 

 

守りの姿勢に入ったのを見計らって、後ろに控えていたパックマンにチェンジ。トラクタービームで相手の体を掴み、上へ放り投げた。

 

 

「よし! いい連携…って、」

 

『…ッ!』

 

 

しずえのボディが持っていたのは止まれの標識。しかし、持ち方的にどう考えても普通のしずえの使い方はしない。

 

 

「ヘブッ!?」

 

 

パックマンとリトル・マックは振り回した標識に巻き込まれた。想像以上にアグレッシブだ。

 

 

「いっつ… そうか、クロムの妹だもんな… 納得しちまった…」

 

 

迫り上がってきた柱にぶつかったリトル・マックは問われた題名のお陰で納得する。訓練中しょっちゅう物を壊し、それを開き直っている者の妹だ。破天荒で当然なのだ。

 

 

 

 

「ハッ!」

 

『…』

 

 

隙をついたと伸ばした剣に、相手の剣が立ち塞がる。

防がれたと認識した瞬間、距離をとって竜巻を起こす。シールドで防がれるが、視界は奪った。一気に詰め寄り左手を伸ばす。

 

体勢を崩そうと伸ばした腕は逆に掴まれ、背負い投げの要領で叩きつけられた。

痛みに歪んだ顔を空に向けて、迫る剣先に驚いて腰を捻ってかわす。立ち膝から低い体勢へと体を起こして剣を構える。互いにダメージはあっても、中々大技は決まらなかった。

 

 

 

 

「もう! あんまり逃げないでよ!」

 

『…』

 

 

一方、ルフレのボディと戦っているマリオは攻めあぐねていた。足が遅いとはいえ、完璧に逃げに徹されれば攻撃は当たらない。

飛び道具を使ってはいるが、『ファイアボール』は少し小粒だ。冷静に剣で弾かれるので足止めにならない。

 

こっちへ攻撃してこないので、隙を作らない。戦いに変化を作らないことで相手にチャンスを与えない。相手はルフレ本人ではないから策を用いない、という先入観のせいで罠にハマったという自覚すらマリオにはなかった。

 

 

 

 

「…! フィールドが変わる!」

 

 

大地から何か盛り上がり、あっという間に地殻が変わる。中央にT字の足場が生え、左右中の空中に吊るされた足場が現れた。

左右に敵味方合わせて分割される。

 

 

「うし、偽者より俺たちの方がここで戦ってきたって教えて…っ!」

 

 

突如走る電撃。理解できぬ突然の痛みにリトル・マックは吹き飛ばされ、パックマンの後ろへつく。

 

 

『…』

 

 

リトル・マックを襲った電撃は、『ギガサンダー』だった。フィールドの形が変化するのを待っていたのだ。魔法で狙撃できる高い場所に足場ができるのを。

 

 

「この!」

 

 

『スーパーマント』を構えながらマリオが向かうが、『サンダーソード』で叩きつけられた。

ソードの元へ落とされる。

 

 

「「…! とりゃあ!」」

 

 

『翔流斬』でまとめて斬りつけようとするところを、二人が一斉に迎撃する。

 

 

「マリオー、相手チマチマ回復してる気がするし、これチェンジした方がいいんじゃない?」

 

「奇遇だね、ボクも同じこと考えてた!」

 

 

マリオはそのまま肉薄し、剣撃をいなす。生身な分、出だしの動きは早いのだ。

剣の攻撃を防ぎ、思いっきり蹴る。攻撃そのものは防がれたが、威力が高かったために後ろへ仰け反った。

その隙を逃さない。手に炎を宿し、駆け出す。

 

 

 

 

「ほいや!」

 

『…ッ』

 

 

トルネードで足場を揺らすと、流石に魔法の狙撃の余裕はない。攻撃対象をソードに変え、『サンダー』を撃つ。竜巻の中でも突き進む魔法。更なる風を起こし、視界を潰した。

 

 

「落ちちゃえ!」

 

 

空中で体を回転させながら、ボディではなく足場を斬り落とした。立っている敵ごと落ちていく。その着地点にはソード。空から落ちてくる敵を討とうと剣を構えた。

 

 

 

 

「このッ!」

 

 

素早いストレートが耳を掠める。痺れた影響で少し速さが落ちてしまったかもしれない。

蹴りを止められたパックマンが咄嗟に頭突きするが、『クラッカー』を近くで鳴らされ、ごろごろと後ろへ吹き飛ばされる。

 

 

「…!」

 

 

後ろを向いて味方を案じる暇はない。傷だらけの顔を見せながら、素早いジャブを繰り出そうとする。

 

その瞬間、背後から重い何かが弾む音が聞こえ、反射的に横へ動いていまう。

『消火栓』だった。パックマンが蹴っ飛ばしたそれはしずえのボディを直撃する。

 

 

「ナイスセコンド!」

 

 

腰を捻って体全体で打ち込むそれはアッパーカット!

 

 

「「「くらえッ!!!」」」

 

 

奇しくも全く同じタイミングで闘技場に三つの星ができた。

 






マルス「ところで今誰がわかれてるの?」

マリオ「知らねっ! だってノリと勢いで書いてるんだから深く考えてないよ!」

マルス「そんな雑な…」

ソード「だって考えるのめんどくさいしー! いつ合流したかとか時系列とかあんまり考えてなーい!」

パックマン「コクコク」


マリオ「次回、『暴論で根拠のない信念』!」


ソード「ナウはカムイ救出隊とかが離れてる状態! リドリーはサボタージュ中! スタフォの辺り? 合流したよ! 他は適当! 深く考えるとビリーがブレイクだよ!」

パックマン「コクコク」

マルス「そんなー…」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

八十七話 暴論で根拠のない信念


ポケモンスナップ新作発売日決定おめでとおおおお
あのあの、株ポケさん
森については心配してないんですが、深海のフィールドはありますか?(ランターン好き)

後なんか最近頭のネジ抜けてるのが話にも影響してる気がします。
ていうか色々忙しいですタスケテ



 

正解のスピリットを倒して繋がった光の架け橋を渡り、ファイター達は先に進む。誘導されているかのような気はしなくもないが、進む方法がないのだから仕方ない。警戒は続けながら、敢えて進んでいくのだ。

 

 

細い道に辿り着く。二人は横に立てれないほどの小さな舗装された街道だった。

 

 

「うわあ! 狭いー!」

 

「バカ押すな、これが限界だ!」

 

「うわ、臭! ニンニク臭!」

 

「臭くないだろ! いい匂いと呼べ!」

 

「デデデ、横幅取りすぎだろー!」

 

「オレさまにケチつける気かー!?」

 

「前が見えない背が足りないー!」

 

 

渡ると言っても、光の架け橋は否が応でも滑る。強制的に前へ前へと滑り、ドンドンつっかえるのだ。

ちなみに一部のファイターは進んでもない。こんなお間抜けな目には死んでも合わない。

 

 

「マルスー! 先の敵をなんとかしてー!」

 

「後ろの方の人は一旦戻って! 話し合ってる暇ないか…!」

 

 

道の先を塞いでいたのはアイク。姿形は実際には見えないが、頭の中にはありありと浮かんでくる。

幸運にも先頭の方にいたマルスは、後ろを抑えながらも彼を捉えることができた。その分後ろから迫る圧力に対応しなくてはいけなかったが。

最後尾あたりは戻ることを提案する。ルフレ達が合流して来たら、また被害が増えることになる。だから誰かにバックして欲しいと言っているのだが、この喧騒の中で届くのだろうか。手前の者には届いているはずなので伝言ゲームの要領で伝わることを信じよう。

 

 

「とにかく…! 乱闘を始めないと…!」

 

 

先にも進めない。少し後ろにいたマリオに許可を得たことだし、急いで手を伸ばしてそれに触れた。一度大乱闘が始まれば、触れた相手を垣根なしにワープさせることはないだろうという判断だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『終点』化した『闘技場』で二つの剣が交差する。

 

片や、神龍ナーガの牙で作られた刃、アリティアの始祖アンリが使用した剣、神剣ファルシオン。

片や、英雄オルティナが愛用したとされる双剣の片割れ、ベグニオンの至宝、ラグネル。

 

 

腕力の差に弾き飛ばされ、屈みながら土埃を上げて着地する。剣を水平に傾け、相手の肩へ剣先を突きつける。

ラグネルは長く重いから、どうしても防御へ回るのに時間がかかる。問題は攻撃の後だ。

すぐに剣を引き、シールドを貼る。横に払われた剣がシールドを削り、防いだというのに大きく仰け反った。

 

 

片や、暗黒戦争、英雄戦争と二つの戦乱を終結に導いた郡の英雄、マルス。

片や、ベオグ、ラグズの和を取り持ち、正の女神アスタルテを討つ蒼炎の勇者、アイク。

 

 

だが、この場では肩書きも経歴も意味を成さない。数多の敵兵を屠った老兵も穢れぬ手を持つ新兵も、刃が心の臓を貫けば死ぬ。戦士として立った以上万物の区別もなく、戦うしかないのだ。

 

 

だが、そんな事はわかりきっていた。死んだ者は生き返らないように、この世界の理として決して抗えぬものなのだ。

 

 

だからこそ戦う。失ったものを取り戻すために。大切なものを守り抜くために。誰かに報いるために。

 

 

偽の陽光が刃に反射しキラリと光る。素早く突きを連続で繰り出す。速さで勝負すれば攻撃は当たる。数で勝負すればいくつかは当たる。明確な有効打にはなれない。

 

後に最強の英雄と評されることもあるアイクに、個人で立ち向かうには少し武が悪かった。それでも勝機が無いわけではない。激情家な面が消えたのもそうだが、最強と評されたのはこの時代のアイクではないからだ。

少し変わった呼び方をされているため、アイク自身は自分が呼ばれたのが三回目だということを知らない。

いずれわかることだから、とマルスは自分からは言わないことに決めた。彼がわかる頃には自分がわからなくなっているだろうが。

 

 

「…うッ!」

『…!』

 

 

互いの剣が振るわれ、互いに邪魔せずに相手の肉体へぶつかる。マルスの一撃は鋭く、アイクの一撃は重い。単純な一々交換とは言えまい。

痛みを我慢して首筋付近へと振るった刃は最小限に身を引くことでかわされた。一度大きく距離を取る。

 

 

「やっぱり… 強い…!」

 

 

時代が違うと言っても強いことに変わりはない。それもそうだ。傭兵として生きてきたのだから、命の危険があった回数なんて自分と比ではない筈だ。

 

 

「それなら…! 防御に専念しよう。負けなければいつか勝てる!」

 

 

根性や言葉だけで全ての戦いが回避できて、誰もが平和に過ごせる世界だったらよかった。

願うだけで全ての悲しみが消えて、誰も殺す必要も奪う必要もない世界だったらよかった。

 

それが最善だと望んでおきながら、不可能なことだと割り切っていた。

 

 

「それしか敵うものがないのなら…! みっともなくとも気力に縋る! 僕は負けない! 操られている君に負けるはずがない!」

 

『…!』

 

 

暴論で根拠のない信念。誰かを説得させるにはあまりにも物足りないもの。それでも何かが響いたようだ。

 

 

頭の霞を振り払うかのように、大きい動きで放たれた一振りは屈んで避ける。その隙をついての足元への剣撃は跳んでかわされた。

 

 

「…のッ!」

 

『っ』

 

 

低い体勢からの決死のタックル。だが、慣れぬ荒々しい体術への躊躇いと体格の差が原因で押し返されてしまった。

 

 

「…ぁッ…!」

 

 

腹部へ横一線に斬られ、意味を為さない声が洩れる。足の踏ん張りが効かず力強い一撃に吹き飛ばされた。崖を捉え、左手を伸ばして落ちる寸前で留まる。

 

 

「…うくっ…!」

 

 

ファルシオンを握った右手を上げ、先程斬られた腹に力を入れてステージへ復帰した。

 

 

「(思い出せ! 彼の戦い方を! 正面からも後ろからも見ていた筈だ!)」

 

 

亜空軍との戦いで共に戦っていた三つの刃。その二つがマルスとアイクだった。

半月を描くように斬りあげるラグネルを横から逸らす。神剣を押しつけて逸らした軌道は空中へ。

 

 

「はぁ!」

 

『…!?』

 

 

支えていた左手を離し、まっすぐ上から剣を降り下ろした。額から鼻先へ斬りつける。『カウンター』だ。一番鋭い剣先がぶつかり、はじめてアイクの体勢が揺らいだ。

 

その機を逃さず、ラグネルを握った右手へ突き攻撃を繰り出した。一瞬力が緩んだのを見て別の技へ移る。

 

 

「(『マーベラスコンビネーション』!)」

 

 

速さ、流麗さ、鋭さ。その全てを生かした連続攻撃。突きと剣撃の合わせ技。だが、

 

 

『…ッ』

 

「(最後は防がれた…!)」

 

 

最初は肉に当たった感触があったが、後の方は金属音が鳴った。防御が間に合ったということか。

 

 

『…!』

 

「(剣を投げ…ッ!)」

 

 

放るために斬り上げられたラグネルが防御の姿勢を取れないマルスを傷つけた。小傷の一つもつかないファルシオンを得物として使っていても支えがなければ容易に押し負ける。ファルシオンを押し退け、マルスへ浅くないダメージを与えた。

 

 

「(剣を離した… 違う! これは…!)」

 

 

『天空』だ。アイクの得意技。剣を上空へ放り投げ、空中で取り、重力と共に斬りつける。

回るラグネルも跳ぶアイクも何故か遅く動いているように見える。

 

 

「(避け… いや!)」

 

 

次に行動を読めるのはいつになるかはわからない。ならばここで決着をつける。柄に左手をかけて刀身を上げる。

 

 

「(タイミングを見誤るな…)」

 

 

この技は何度も見た。亜空軍に与えた最初の一矢。それがはじめ。そこから大乱闘で。鍛錬の末に行き着く果ても。

 

 

「ここだっ!」

 

『…ッ!』

 

 

突き上げるように一突き。振り下ろされる剣の間を縫うようにまっすぐにアイクへ突き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい… 大丈夫か」

 

「うん… だい、じょうぶ。」

 

 

嘘だ。無愛想だけど仲間想いの彼だから。気を使わせないように見栄を張った。気づいていたとしてもそうしたかった。

 

 

「…俺がやったんだな」

 

「気にすることじゃないよ…」

 

 

否定は出来なかった。自分が傷ついているのは事実だ。アイクは複雑な顔をしている。それが彼の心境をそのまま表していた。

 

 

「そうだとしても俺は自分が許せない。勝手に気にする。」

 

 

マルスに手を差し出し、立ち上がらせる。少しふらつくが、探索に問題はなさそうだ。

 

 

「…ところで他のやつらはどうしてこの辺で寝転がってるんだ?」

 

「気にすることじゃないから…」

 





マルス「…うん。カムイのはまだマシ。ルフレと比べるなら。」

カムイ「そうなんだ…」

ルフレ「中々上手くいかないね…」

マルス「クリス以外にこの味を生み出せる人がいるなんて思わなかった。まさしく鋼の味…」

カムイ「リンクやピーチに聞いてやったんだけどなあ…」

ルフレ「レシピ通りにやったはずなのに…」

マルス「確かにその二人は料理するの代名詞だけど、片やなんでも食材にしてなんでも鍋で作る人、片や調理工程が合ってれば食材が洗剤だろうと見た目だけは料理として成立する人だからね?」

ルフレ「調理の域を飛び越えている…」


カムイ「次回、『三つの刃。最後の一本』」


カムイ「それでもカービィに負けるのは納得いかない…」

マルス「食材も調理工程もすっ飛ばしてるからね…」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

八十八話 三つの刃。最後の一本

そろそろニンテンドーダイレクト欠乏症になりそう…
ゲームごとにバラバラに情報を出されると情報収集大変なんですよね…

そういえばあつ森に使ったカタログチケットまだ一本分残ってるんですよ。ポケモンスナップか3Dマリオかゼノブレ2か… 三月が有効期限なので使わないと忘れそうです。良ければオススメ書いてください。



「あんたは少し休んでいろ、状況はなんとなくわかった。」

 

「ごめんね…」

 

 

立ち上がったアイクを見上げるようにして誤った。この状況で何を言っても簡単に言い負かされる気がして、マルスは素直に引いた。

 

 

「なんか随分と理解が早いね!」

 

「そっちの理解は諦めたがな…」

 

「早く上の奴どけや、吹き飛ばすぞ!」

 

 

ファイター達は既に細道から抜け出している。しかし、一部のファイターはまだ取り残されている。

前後のことを知らない状況では一部のファイターが山のようになっている現状など意味不明だ。マリオは最下層にも関わらず、元気である。

 

ちなみに先程ファイターの山を見て、合流したカムイが面食らっていた。

 

 

「まだ全員は見つかってないか… ならダーズよりも先にそっちを見つけないとな」

 

「僕も頑張るよ!」

 

 

救われたばかりの二人がやる気を露わにする。先の道は二手に分かれていて、さらに先へ行く道にファイターが一人、行き止まりの道がスピリットを挟んでファイターが一人だ。

 

 

「めたないとっ!」

「あ! ルイージじゃない!」

 

 

前者をカービィが、後者をデイジーが反応した。

 

 

「メタナイト…か」

 

「えっ? ルイ「ほう? ルイージか」

 

 

メタナイトに反応したのは、連続で共闘した仲間が現れたマルス。ルイージに反応したのは意外にもデデデだった。兄の声は被さられた。

 

 

「さっきも言っただろ、あんたは休んでろって。アイツの相手は俺がする。二人はそれでいいか?」

 

「カービィ?」

 

「うゆ」

 

 

シュルクの頭にくっついていたカービィは、シュルクの確認する言葉になんとも取れない曖昧な表情で返す。だが、止めてはなかったので問題はないらしい。

 

 

「デデデはどうだ?」

 

「オレさまか? オレさまはメタナイトなんかより緑の小僧のほうと戦うぞ!」

 

「ちょっと!? おデブのおっさんが何しゃしゃり出ようとしてんのよ!」

 

「あの、ちょっと」

 

 

デデデの方はと言うと、メタナイトよりルイージの方が気になるらしい。案の定デイジーと口論になってしまった。マリオは山の中にいたため、完全に出遅れた。要するにメタナイトについてはアイクが受け持ってもいいらしい。

 

 

「別にいいなら俺が行こう。」

 

「うん、余計なお世話かもしれないけど頑張って」

 

 

ラグネルを担いでアイクは一人進んでいく。

デデデとデイジーの口論の中、取り残されたのはカムイ。

 

 

「えっと…」

 

 

世界から遠ざかったかのような静寂の中、二人の怒鳴り声と他の止める声が他人事のように遠くに聞こえる。

 

 

「じゃ、じゃあ僕は露払いでも行ってこようかな…」

 

 

普段無視されることのないカムイにとって新鮮な体験だったが、二度と味わいたくないと感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『戦艦ハルバード』を背景に、離陸するのは『終点』の大地。

 

 

『…』

 

「あんたもやっぱりそうなってるんだな」

 

 

一見冷徹とも受け取れる言葉だが、彼の率直な感想だった。

 

メタナイトほどの剣士も操られてしまっているのだな、と。

 

亜空軍との戦いで、最初にマルスと共に行動を共にしていたのはアイクだけではない。

 

 

三つの刃。最後の一本。

マルスのそれは速さ、流麗さ、鋭さ。

アイクのそれは重さ、力強さ、豪快さ。

メタナイトのそれは─

 

 

「…っ!」

 

 

早さ、軽さ、自在さ。

個々の技がまるで繋がっているかと錯覚するように出だしが素早い。

彼の攻撃に重さがないので、防がれてもすぐに別の攻撃に移ることができる。

身のこなしが軽いのもそうだが、翼で飛びまわれるので縦横無尽に攻撃できる。

 

何連撃かもわからない攻撃を防ごうとラグネルを構える。

体に届いた数は思ったよりも少なかった。両手剣に見えるほどのラグネルは相応に長かったため、防御範囲が広いのだ。

 

 

「見つけた…!」

 

 

辛うじて捉えた丸い姿に、咄嗟に足を出した。

 

 

『…!』

 

 

マントに包まれ、メタナイトの姿は一瞬で移動した。空振りした足を戻し、構え直す。剣に比べて体術は得意でないことは間違いない。だが、剣の重さに囚われない格闘を織り混ぜていかなければ、メタナイトのスピードにはついていけないのだ。

 

 

腰から曲げて、ラグネルを横から振る。カキンという金属音がして火花が飛ぶ。そのまま押し切ろうと力を込めた。抜けられると自殺行為になる。だが。

 

 

『…ッ』

 

 

抜けられない。

マントごと足を踏まれていて大きな動きができないのだ。不利な鍔迫り合いをメタナイトは続けるしかない。それも長くは続かない。空中や軽さという利点を失えば、必然的に力が勝るアイクが勝つ。

 

ラグネルを振り切っても、メタナイトは吹き飛ばない。足は抜けても、まだマントは踏まれ続けている。

次はすくい上げるかのような軌道でメタナイトを斬り上げる。マントが斬られ、今度こそ彼は吹き飛んだ。

 

 

『…!』

 

「! 早い…!?」

 

 

常に得物を持っているメタナイトは目立たないが、頭身が低いのも彼の強みの一つだ。

状況によっては弱点にもなりうるが、基本的には重心が低いために立て直すのが早い。

そう、今のように。

足を踏み込んで、一気に肉薄した。彼自身もなかなか足が速い。懐へ入り込んでギャラクシアを振り抜いた。『胴抜き』だ。

 

 

「くそっ…!」

 

 

目にも留まらぬ三連攻撃。アイクは一回剣を振るのと同じ程度の時間で、メタナイトは三発も攻撃できる。手数の多さは圧倒的に負けている。どうしようもない。

 

止めようもないなら、やらせればいいのだ。

剣を構えて待機する。

 

相手は? また近づいてきている。

 

自分は? 防御の構えに動いている。

 

それを見て相手はどうする?

 

そして自分はどう動く?

 

 

「(『カウンター』)!」

 

 

『マッハトルネイド』!

竜巻にも負けぬ、反撃の一撃。

力すらも吹き飛ばす、刃の暴風。

その激突は引き分けに終わる。

 

竜巻は止められてしまったし、反撃は止められた。攻撃は受けてないが、攻撃が当たらなかった。どちらを勝者にしてもケチがつく。

 

だが、次に繋げやすいのはメタナイトだ。

羽を広げ、急上昇で斬りあげる『シャトルループ』だ。続けて様々な死角を狙って飛びまわりながら斬りつけた。

 

 

「キレがない…」

 

 

だがそれらの攻撃に、はじめの時のような早さは失われていた。ラグネルでも防御が間に合うほどに。

豪快に剣を振り切って、地形の端までぶっ飛ばした。鉄の音を鳴らして勢いを止める。

 

 

「半分賭だったが… 上手くいったようだな。」

 

『…ッ!?』

 

 

メタナイトのマントは翼となる。

ならば、マントを傷つければ翼に傷がつくのと同義。

 

はじめて会った時、エインシャント卿の熱線が翼に当たり、追跡を断念していたことをしっかり覚えていた。

しかし、効果的な作戦として組み込むには、知識が不足していた。マントの状態で傷をつけても同じ効果が得られるのか。治るのにどのくらい時間がかかるのか。

 

 

半分賭と言ったのはこのような事情が関わってくる。それでも結果としてできたのだ。どのような細い勝ち筋を辿ったとしても勝ちは勝ちなのだから。

 

 

例え、百回に一回しか勝てないとしてもその一回を初回に持ってくればいい。

 

 

『…ッ!!』

 

 

自らの足で走るが、蝙蝠のような自在さ速さは翼が機能しているのが前提だ。今の状態ならば見抜くのは容易だ。

 

頭身の低さを利用した足元への攻撃をシールドで防御し、体勢を崩させて『天空』で斬り伏せる。

 

 

半ば無理やり突き攻撃を繰り出したが、大したダメージにはならない。

 

どんなに劣勢でも、傀儡の絶対的存在には従うしかないのだ。

 

 

「 むっ、」

 

 

端が切れたマントに身を包み、メタナイトの姿が消えた。十八番の瞬間移動、否、見えなくなっているだけ。やはりいつもよりキレはない。

 

 

「ぬぅん!」

 

 

素早い移動、そして『居合斬り』。一閃に地形を横断した斬りは姿の見えないメタナイトを確実に斬りつけた。その身が放り出される程に。

 





デデデ「デブとはなんだ!? オレさまはプププランドの大王だぞ!」

デイジー「デブにデブって言って何が悪いのよ! あなた自称じゃない!」

デデデ「ふん! おまえだって姫らしい要素登場作とかっこ以外にしたか? テニスしかしてないだろ!」

デイジー「そういうあなただって食べ物奪ったりとか意地汚い! 大王らしくないじゃない!」


マリオ「アワワ… 次回、『だが安心しろ』!」


マリオ「ふ、二人とも! ここは間をとってスーパースターのボクが!」

ダブルのデ「「あなた(おまえ)は黙ってて(いろ)!!」」

マリオ「酷いっ! シンプルに酷い!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

八十九話 だが安心しろ


リアルが少し忙しくて意欲はあっても執筆時間がなかなか取れない…
もう少し余裕を持たせたいんですけどね…
ゲームも出来てないです…



 

ふう、と張り詰めていた息を吐いた。

一つの戦いが終わり、また一人自らの意識を取り戻したはず。頬の汚れを手で拭いながらカムイは他が待機しているだろう場所へ顔を向けた。

 

 

「道を塞いでたスピリットは倒したよ。次は…」

 

 

「「じゃーんけーんポンッ!!!」」

 

「ルイージなのになんでモテモテなのかな?」

 

 

山のように積み重なっていたファイターはとっくに崩れており、輪のように散らばっていた中央には、デイジーとデデデがジャンケンしていた。ちゃっかりマリオが審判の立ち位置に立っている。ぼそっと辛辣な言葉を吐きながら。

 

 

ピーチを味方につけたデイジーと、ネスを味方につけたデデデ。二人は共に同じくチョキを出している。

 

 

「これは… どうなってるの?」

 

「カムイ、お疲れ。さっきまで口での勝負が続いていたんだけど、もっと平和的に解決しようってなって」

 

 

ルフレが少し遠い目をしながら答えている。

ネス、ピーチは最前線で声援を送っており、ワリオとむらびとは遂に賭けを始めた。ルキナもまたいつの間にか熱くなっていて、どんどん近くに寄っていっている。気づいているのかいないのか。

 

 

「それでジャンケン…?」

 

「三十回は数えたんだけどね…」

 

「さっきから決着がついてないの!」

 

 

デイジー寄り派のヨッシーが応えた。

流石にたかがジャンケンとはいえ、ここまで長く続くと人を熱くさせるものらしい。

 

 

「というか、なんでレッドのポケモンまで喧嘩してるの!? 狭いよ!」

 

「見てたら白熱しちまったらしい!」

 

 

ゼニガメとリザードンの叩きあいが他所で始まっていた。止めようとしているフシギソウとカムイの疑問に大声で答えたレッドが間で揉みくちゃにされている。

 

 

「あ! こら、やめろ!」

 

 

痺れを切らしたゼニガメが遂に口からみずてっぽうを飛ばした。レッドの静止も間に合わず、撃たれた水は首を動かしてかわしたリザードンを通り抜ける。

 

 

「ルキナ!」

 

「ん? どうしたんですか、ルフレさ…きゃあ!」

 

 

仕留められなかったげきりゅうは綺麗にルキナの顔へ命中した。危機を伝えるための呼びかけが裏目に働いて顔から真っ正面にかかってしまう。

 

 

「ふえ… なんですかこれ、濡れていて…」

 

 

状況の読めないルキナ。水で急撃に冷えて、あの生理現象が起こる。

 

 

「ふぇ… ふぇ…」

 

「じゃーんけーん…」

 

「ヘックションっ!」

 

「ポンッ…!?」

 

 

近くで起きたルキナのくしゃみで遂にデイジーの集中が切れた。つい力を込めてしまい、指が握られ、出したのはグー。相手は全ての指を広げたパーだった。

 

 

「うそっ!?」

 

「ガーハッハッハ! 常にオレさまは勝つんだ!」

 

「やった!」

 

 

勝敗は決まり、事の成り行きを見守っていた周りは様々な反応を見せる。

 

 

「ルキナ、貴女ねぇ!」

 

「す、すみません! わざとじゃないです、ごめんなさーい!」

 

 

デイジーの怒りはルキナの方へシフトする。恋する乙女は怖いのだ、と自身も恋人がいる身でルキナは思ってしまった。

 

 

「デイジー、ルキナだってわざとじゃ…」

「そもそもことの発端は…」

 

 

ルフレ、レッドがルキナに助け船を出す為に、ルキナの元へ進む。取り残されたカムイはその場で苦笑いをするしかなかった。

 

 

「フン、よくやったと褒めてやるぞ、カムイ」

 

「あっ、デデデ大王…」

 

「おまえはオレさまの道を切り拓いた。そうだな… オレさまの次の次の次の次ぐらいに凄いぞ!」

 

「えぇ…」

 

 

通りすがりに褒めたかと思いきや、随分と微妙な位置だった。褒めてもらうため戦ったわけではないが、褒めるならわかりやすく言って欲しい。

 

 

「ガンバレー!」

 

「ふん、待っていろ、緑ー!」

 

 

ハンマーを担ぎなおしてドカドカと走るデデデをネスが両手を振りながら見送った。

 

 

「(デデデ大王と… ネス? なんで?)」

 

 

カムイは知らない。

この二人がどういう繋がりか。引いてはルイージも含めた三人がどういう繋がりか。

あの時の絶望は、カービィが一人取り残された絶望のはじまりと、どちらの方が最悪なのか。

カムイは知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルイージがオバキューム片手に、兄を探しにいった建物を覚えているのだろうか。あの建物はとっくの昔に消え去ってしまったが、『ルイージマンション』はこの大乱闘の場に再建された。『終点』の地形ははからずも屋上にそっくりだった。

 

 

「ぬうわぁー!」

 

『…』

 

 

大地ごと砕くような槌がドシンと揺らす。

それを得意のジャンプでかわしたルイージは『ファイアボール』を撃ちだす。バウンドして進む緑の炎は3つ、デデデに襲い掛かった。

 

 

「ふんぬぅ!」

 

ブンブンと軽々ハンマーを振り回し、灯火のような炎を無理やりかき消した。ゴルドーを飛ばして、ダッシュする。

 

体ごとヘッドスライディングし、ルイージの体に当たって跳ね返ったゴルドーを更に跳ね返し、二度相手にぶつけた。

 

 

『…っ』

 

 

滑り込んだ後には多大な隙が生まれる。カービィとの戦いでも使っている程の慣れた攻撃とはいえ、起き上がる隙は中々消せないのだ。

先手を取れたはずなのに、走り込んでの『ミドルキック』になんとかシールドでの対処が間に合った程だ。

 

シールドを解いて相手の動きを封じる為に片手を伸ばして捕らえようとするも、うまくかわされ、キック、パンチ、キック。三連撃だ。

 

 

「ぐぬぬぬ… フンガー!」

 

 

攻撃を耐えて、力任せのフルスイングを放った。体ごと回転するような、回るコマのような。フィールド全体を暴れまわるような縦横無尽の攻撃。

 

 

「グヌワッ!?」

 

 

しかし、それは隙に入り込んだルイージの『ルイージロケット』で中断される。爆発的なスピードの頭突きが腹部に突き刺さった。

 

 

「グッハッハ… 流石はオレさまが見込んだ男だ… 臆病だが、芯は強い。」

 

 

あの無差別且つ無慈悲な攻撃に対抗するには己一人ではダメだと感じて、見かけたルイージをフィギュアにして隠した。見込んだと言いながら、無差別だったが知らない。

 

 

「だがッ!」

 

『!?』

 

 

背後に周り、再びのフルスイング、ジェットも添えて。

 

背中を強かに打たれたルイージは空高くへぶっ飛ばされる。

 

 

「オレさまにはまだ遠い! だが安心しろ! おまえは十分強い! オレさまの次の次の次ぐらいにな! ガッハッハッハッハー!」

 

 

何時ぞやと同じように。ハンマーを肩に担ぎ、キメ顔を決めたかと思いきや、腹を抱えて笑い出した。

しかし、上空からの『ドリルキック』に対してシールドで止めることでなんとか防いだ。

 

 

『…ッ!』

 

「フン、流石に前と同じようにはいかんか」

 

 

シールドを解くと同時にルイージを弾き飛ばす。

 

今回新たに掃除機のような武器も持ってきていたし、彼自身も成長したように感じる。カウンターの要領で前と同じような攻撃こそ当てられたが、それが決定打にはならなかった。

 

 

「いいだろう、ならばオレさまがカービィに勝つ為に手に入れた力を見せてやる!」

 

『…!』

 

 

大きく振りかぶったハンマーをいいタイミングかわそうとルイージは攻撃を見極めている。避けるルイージを邪魔しようがない。故に悠々と回避できるはずだった。

 

しかし、かわせなかった。

振り下ろす瞬間に、デデデは手を頭部へ近い場所に移動させたのだ。軌道が変化し、攻撃が速くなったのだ。柄を短く持っているので威力は落ちるが、元々重い木槌なのでそれでも十分な威力があった。

 

 

『…ッ!!』

 

 

吹き飛ばされたルイージの体はステージ外へ飛ばされる。ホバリングでデデデが追う。カービィとの差を埋めるために身につけた技能。

 

 

「フゥムウ!」

 

『…ぅ!?』

 

 

口を閉じてくぐもった声で勢いをつけながら、底見えぬ奈落へと叩き落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ということ。何かわからないことあるかな?」

 

「うーん、じゃあなんでルフレは上を脱いでるんだい?」

 

「へっぷちっ!」

 

「気にしないで。他には?」

 

「私からはない。」

 

 

何故かローブを脱いでいるルフレは、今後に関係ない質問を綺麗に流した。可愛らしいくしゃみをしながらルフレのローブを羽織っているルキナも同様にだ。

 

 

「迷惑をかけた。ここからは私も参戦しよう。」

 

「別に気にする必要はないが… 助力してくれるならば拒否する理由もない。」

 

「うん、カービィ以外みんなこうだったからね…」

 

「…カービィか。通りで私たちが救われた訳だ」

 

「めたないとっ!」

 

 

三剣士と特別ゲストカービィ&シュルクを加えて打倒ダーズへ決意を固める。

 

 

「当然おまえも来るよな緑!」

 

「緑…!? まあ、行くけど…」

 

「ガッハッハッハー!」

 

「がっはっはっはー!」

 

 

ネスと共にルイージの肩をデデデが叩く叩く。

 

 

「もう! あたしのこと忘れてんの? 全部終わったら覚えてなさい!」

 

「げっ… デイジー…」

 

「げっ、って何よ! やっぱり後でお仕置きね!」

 

「ノォォ…」

 

 

そこへデイジーが割り込んできた。ルイージからの言及がなかったのが気に食わなかったようだ。

 

 

「…やっぱりボクの弟がこんなに人気者なのはおかしいと思うんだ」

 

「肝心の兄は本人に容赦ないんだなぁ…」

 

 

スーパースターの意外な一面を見てしまい、レッドは微妙な気分になる。

異空間の中でデデデと彼を真似したネスの笑い声が響き渡った。

 





ピット「昔、Lの上下逆のアルファベットが本当にあると思ってたなあー」

ブラピ「戦艦ハルバードはよく落ちると言われているが、落ちない作品の方が少ないし、なんならUSDXでメタナイト本人が落としてるぞ」

ピット「キノコが出たらすぐ加速に使ってた幼い頃!」

ブラピ「参ドロのボスバトルでトリプルスター使って雲の地形ぶっ壊した奴正直に名乗れ」

ピット「小さい頃は壁キックができませんでしたァァァ!」

ブラピ「ミラー、リーフ、スナイパー辺りが最強コピーだと思ってる奴は大体ビビリ。そしてセクトニアに突き落とされて絶望する」

シュルク 「何やってるの…?」

ピット「マリオシリーズとカービィシリーズのあるある合戦!」


ブラピ「次回、『存在してはいけない姿』」


ピット「というかブラピ詳しくない?」

ブラピ「おまえと違ってオレは純粋な異母兄弟みたいなもんだからな。リスペクトはする。スーパースターを踏み台にしたおまえとは違う」

ピット「何年言われるんだよぉ!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

九十話 存在してはいけない姿


あら奥さん聞きまして?
FEHの英雄総選挙、マルスを差し置いて門番さんがトップだということですよ?
え、どうでもいい?

それじゃこれは如何です?
ポケモン剣盾の今シーズン、禁止伝説を一体だけ使えるのですよ?
シンオウチャンピオン ディアルガという鳥肌立つ字面がランクマッチで見れるのですよ?
え、どうでもいい?


上の話は読み流しても構いませんが、ここからは少々重要なお話です。
ブラピ戦の話でなんか色々あった怪しい記述はこの話に繋がります。まあ、辻褄合わせに近いのでここから謎が判明した時には「いや無理あるだろボケェ!」というツッコミをお願いします。



 

肩に乗っていたカービィも話に入りたいだろう、と平静なメタナイトの側にいたシュルク。とはいえ付き添いの彼は話に入りづらい。シュルク自身、誰に対してでも話しかけれるような性格ではなかった。

 

やることもなくぼーっと辺りを見回していると、一本の行き止まりを見つけた。なんとなくそれを見つめていると、その先に光の道が続いているのを見つけた。

違う、行き止まりではない。こっちにも道があったのだ。

 

 

「みんな、あっちにも道がある…!」

 

「えっ? 本当だ… 危ない、気づかないところだった」

 

 

メタナイトが塞いでいた道とは別の道。わかりづらい方向にあり、先を進もうとしていたら気づかなかったところだ。

 

 

「そうだ! せっかくだしこのメンバーでそっちの道進めない?」

 

「いいんじゃない? ボク賛成一票だよ!」

 

「ええ… 行くのはいいけどもう少しメンバーを吟味してからの方が…」

 

「よし行こう、今すぐ行こう、すぐ行こう」

 

「はあ… ちょっと待って、もう少し人を呼んでくるから…」

 

 

ということで、ネスの思いつきに乗ったマリオの、思い立ったら即行動の理念により、一部ファイターが巻き込まれる形で別の道へと進んでいく。

 

たどり着いた先は、大木を倒して皮を剥いで道にしたような見た目をしていた。枝や根が裂けて5択の道をつくり上げている。

 

 

「次のクイズはどんな感じかな?」

 

「えっ? クイズ?」

 

『カービィが吸い込むことのできない者は誰か、と』

 

 

マリオのクイズという言葉に思わず、繰り返してしまったルイージ。しかし、ルカリオが真面目に答えているので本当にクイズを出されているのだと知って唖然とした。

 

 

「まさか本当に問答を出してくるとはな…」

 

「俺はこういうのは得意じゃない」

 

 

メタナイトも呆れ、アイクは難しい顔で早々に匙を投げた。

 

 

「キー! キャキャキャ!」

 

「ウホッ! でも、カービィの友達、みんないる!」

 

「だな、ちょうどいいや!」

 

 

ディディーコング、ドンキーコングが真理に気づいている。リヒターもこれ幸いとばかりに歯を見せて笑った。

 

 

「メタナイト、わかる?」

 

「ああ、カービィが吸い込めないといったらスカーフィだ。奴は吸い込もうとすると怒って襲いかかってくる。」

 

 

メタナイトが、わからないだろう異郷の者にも説明する。なのでデデデも城内に配置することがある。そして、5択のうちの一つにスカーフィがいることをメタナイトは確認している。

 

 

「…そうだな。体が鈍っていないか確かめたい。奴の討伐は私に任せてもらおう。」

 

 

彼は許可を取った訳ではない。宣言をしただけだ。あくまで自分の剣を振るうのは自分なのだから。

振り返らずに彼はそこへ進んだ。

 

 

「それじゃ僕らは待機を…」

 

「ぷっ…? ぽりょぽりょうにゃあー!」

 

「うわっ…!?」

 

 

突然何かを見つけたカービィが暴れ出し、シュルクの肩から飛び降りた。

 

 

「えっ何…?」

 

「ぽよぽよぽよぽよ…」

 

「う、うーん?」

 

 

目の前で両手を動かしながら、何かを説明するかのようにぽよぽよと喋っている。しかし、シュルクには何を伝えたいのかわからなかった。

 

 

「おーい! ルカリオー!」

 

 

困っているシュルクを見てマリオがルカリオを呼んだ。テレパシーで通訳してもらおうという魂胆だ。

 

 

『ふむ…』

 

「ぽよぽよぽよ…」

 

『ウィスピーウッズも吸い込めない! と』

 

「むむっ? そういえばそうだな」

 

 

リンゴをその身に実らせる巨木の生命。スカーフィは吸い込まれないが、ウィスピーウッズは巨大な幹と大地にはった根のせいで吸い込めないのだ。

 

 

「こういうこともしてくるか… ダーズも考えたね…」

 

 

ルフレが少々呆れたように言った。定形ができているからか、少し油断していたようだ。

 

 

「ふあいゆ!」

 

「カービィの友達だからね… よし、僕も行こう。みんなは他をお願い」

 

 

すっかり定位置になったシュルクの肩へ飛び乗り、共に進む。その戦場で予想だにしていなかった現象に遭遇するなど、誰にもわからなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『グリーングリーンズ』はウィスピーウッズが根をはる森だ。毛糸になろうが機械になろうが幾多も戦っていた場所。相手が相手なのでどこで戦うかはカービィには予想がついていた。それをシュルクに伝えるという考えがないのがカービィというべきか。

 

 

「ええっと、確かこのステージってブロックがあって…」

 

 

シュルクはこのフィールドの地形や特徴を確認した。中央の大きな小島と左右に小さな小島。それらを橋、いや壁のように隔てているのが星のマークがついたブロックと爆弾のマークがついたブロック。

今二人はその中央の地形にいる。周りに敵は見えない。つまり、

 

 

「(壁を乗り越えての奇襲がくる!)」

 

 

星ブロックを乗り越えて、敵が襲ってくる。ちょうど太陽との間に入るように飛び込んできており、影で敵の形しか見えない。

丸く小さな図体の割に巨大な得物を振り回し、シュルクへ勢いよく当てようとしたところで、モナドのガードが間に合う。攻撃を防いでいる今がチャンスだ。

 

 

「カービィ!」

 

「ぽっ…!?」

 

「カービィ? っ! とりゃあ!」

 

 

カービィに隙をついて攻撃するよう促すも、本人は何かに驚いたかのように動かなかった。そんな反応に戸惑いより驚きの方が勝ち、相手を弾き飛ばしてカービィへ近寄る。それでも呆気に取られたまま動けない。

 

 

「どうしたの!? 何かあった!?」

 

「ぷ…!」

 

 

カービィの腕が動かした先は先程弾いた相手。星ブロックの壁のぶつかったはずだ。

 

 

「ん…? えっ…!?」

 

『…ッ』

 

 

シュルクもまた、驚愕する。

そこにあったのは、存在してはいけない姿。

赤く丸い体。だが、プリンにもメタナイトにも似ていない。横にいる友達、カービィの姿だったのだ。

金槌で殴られたような衝撃。

カービィのボディが存在しているはずがない。キーラがつくっているはずがない。

だったら自分達は今ここにいない。

ならば、目の前のボディはなんなのだろうか。

 

 

『…!』

 

『『…』』

 

 

困惑に反応するかのように敵が三体に増えた。数の利が向こうに取られる。

 

 

「…ッ! ダメだ! とりあえず勝つ! 勝ってみんなで考える!」

 

「ぅん!」

 

 

気持ちを軽く切り替える。勢いに呑まれては駄目だ。

 

モナドを解放し、リーチを活かして二体を斬りつける。当たらなかったもう一体はカービィが二回の蹴りでカバーした。

 

 

「『エアスラッシュ』!」

 

 

二体を星のブロックごと斬りつけ、奥にあった少し違うブロックが表層に現れた。

 

 

「カービィ、チャンスだよ!」

 

「うぃやあ!」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()一体をかわしきり、表層に現れた爆弾ブロックに『ファイナルカッター』の斬撃を浴びせた。衝撃によって引き起こされた爆発はシュルクによって隅に追いやられていた敵二体を巻き込み、耐え切れずに飛ばされていった。

 

 

『…!』

 

「『バックスラッシュ』!」

 

 

背後を急所とする一撃が、爆発の方角へ向いた残り一体を仕留める。

 

 

「よしっ、これでヘブっ!?」

 

「うゃ!?」

 

 

終わったと思って気を抜いたシュルクの頭上に小さなドッスンが落ちてくる。追加の二体のうち一体が無防備な頭にストーンでお仕置きしたのだ。カービィも慌てて手足をバタバタさせている。

 

 

「んべっ!」

 

 

二体を吸っては吐き、吸っては吐き。邪魔者を退かしてシュルクへ駆け寄る。

 

 

「しゅるくー!」

 

「頭、クラクラするけど… だい、大丈夫」

 

 

視界が安定しないが、根性でモナドを握り構える。流石に真上からの重りはかなりのダメージだ。

 

 

「んむっ!」

 

 

残る二体を睨め付ける。なかなかしないしかめっ面をしていると、突如強風が吹いたのだ。しかめっ面は即座に戻った。

 

 

「うわわわわ!」

 

「風…!」

 

 

強風に体をさらわれないように足を踏み締めるが、強風の影響を受けない敵の対処が疎かになってしまう。

 

 

「だったら… 一か八か…!」

 

「ぷ! うん!」

 

 

アーツはスピード。強風の流れに乗り、思いっきりモナドを振りかぶった。

カービィも合わせてハンマーを握った。

 

 

「いっけえええ!」

 

「とりゃあ!」

 

『『…ッ!?』』

 

 

スピード強化、強風に身を任せてのスピードアップにより、敵の想像を超えて速くなったのだ。風の影響はないせいで風を利用してくることを考えなかった。タイミングが遅すぎた。

強烈な会心の一撃は的確に一撃一体ずつ当たり、嵐にさらわれたかのように吹き飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな! ちょっといいかな?」

 

「シュルクにカービィ」

 

 

何かを話し合っているかのように固まっていたファイター達に向けて声をかける。どうやらメタナイトも既に戻っていたようだ。

 

 

「さっきまで戦っていた相手のことなんだけど…」

 

「…! まさか君達もカービィの姿をした敵と戦ったのか?」

 

「えっ!? メタナイトも?」

 

 

マントで下半分が覆われた顔がコクリと頷いた。さらにルフレが難しい顔をする。

 

 

「カービィのボディがダーズの手下になっていた… ということですよね?」

 

「そういうことになる筈だけど… キーラに捕まっていないカービィのボディがあるはずないのに…」

 

「実はとっ捕まってたんじゃないの?」

 

「それだったらボク達ここにいないよね…」

 

 

デイジーの言葉に反論したルイージの言葉通り、一度捕まえたのならばみすみす逃がす必要はない。

とっ捕まってたとの言葉に、むっとするカービィを見ながらシュルクも考えるが、この果ての見えない混沌とした空のように答えは浮かばなかった。





マルス「メタナイトが夜な夜な食べてるパフェ…」

アイク「メタナイトが夜な夜な食べてるパフェ…」

メタナイト「………」

マリオ「メタナイトが夜な夜な食べてるパフェ…」

リンク「メタナイトが夜な夜な食べてるパフェ…」

メタナイト「─っ!」

リュカ「メタナイトが夜な夜な食べてるパフェ…」

レッド「メタナイトが夜な夜な食べてるパフェ…」

メタナイト「言いたいことがあるなら早く言え!」


メタナイト「次回、『なり得なかったのだ』…」


ルカリオ『メタナイトが夜な夜な食べてるパフェ…! 今度行くか!』

メタナイト「!?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

九十一話 なり得なかったのだ


次回予告で前回前書きの書かなかった想いを暴露しております(作者ではなく本人が)





 

ファイター達に大きな謎を残しながらも、最優先のダーズ討伐に動く。そのためには未だに囚われているファイターを見つけなければならない。

 

先程の問題に答えが二つあったということは、二つの道があるということ。残るスピリットの解放を任せた者以外は二手にわかれて進むことになる。

 

 

メタナイトが解放した道を進むと、さらに問題が現れた。アルカードと共に戦った者を問う問題だった。

 

 

「アルカードって誰だ?」

 

「シモンの知り合いっぽいアイツだな」

 

 

アイクの疑問にレッドが可能な限り答える。彼はダーズによって造られた偽りの悪魔城にて本人と会っているのだ。

 

 

「ウホッ! リヒター、わかる?」

 

「まあな、御先祖様の英雄談ぐらい残ってるって! まかせろ!」

 

「こういうこと残されるのは仕方ないんだけど少し恥ずかしいんだよね…」

 

 

残される側だからこその恥じらいはどうやら後の人々には理解できないらしい。子孫となる人に敬愛される身のマルスとしては、姿も知らないリヒターの先祖に同情した。

 

 

「さてと」

 

 

少し前に出て、仁王立ち。自分の先祖の姿を探す。四択のスピリット。どうやらその全員が自身と故郷を同じとするようだ。

 

 

「OK、みっけーっと」

 

 

気負いせず軽い気持ちで右奥にその正解を導きだした。まさか不完全とはいえ、先祖となる人間と戦うことになるだなんて。無意識に口角が上がっていく。

 

 

「少しいいか?」

 

「ん? なんだメタナイト」

 

 

妙に逸る気持ちを抑えて声のした方へ振り向いた。

 

 

「目的を忘れるな、ダーズの討伐が主であってそのほかはあくまで手段でしかないぞ。」

 

「はあ? なんじゃそりゃ、わかってるって」

 

 

メタナイトの言葉の真意を理解できなかったが、心配はしているのだなとは理解し適当にあしらってスピリットへ挑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自身がダーズに囚われていた時にも『ドラキュラ城』でシモンと戦っていた。しかし、リヒターはそれを思い出せていない。大雑把な性格なのでどこで戦ったのか、程度は気にしないのだ。

 

 

『…』

 

「ってあれっ? てっきり俺かシモンのボディが相手だと思ってたんだが」

 

 

その予想は静かに佇む赤い服を着たシークのボディを視認したことで覆される。

しかし大雑把なリヒター、それを対して気にしなかった。

 

相手に向かって手斧を投げつける。ただ、素早い相手に対しては有効打であるとは言えない。

小刀を手に潜り込まれる。が、その肉迫はブオンと鈍い音で振るわれたヴァンパイアキラーに防がれた。この程度は読みきっているのだ。

それに慌てたせいか、咄嗟に放った『炸裂丸』を弾き、相手のこめかみへと鋭い回し蹴りを放った。

 

 

『…ッ!』

 

 

目付近に衝撃が走ったことにより、頭が、視界が、揺れてぐわんと体勢を崩した。

 

 

「辛いか? だったら戻してやる!」

 

『─ッ!』

 

 

もちろん大きな隙を逃す理由はない。

先程当てたこめかみの逆側へと鉄球を打った。更に近寄り、横薙ぎに鞭を振るう。重点的に頭から上を狙い続けているのだ。

揺れ続ける視界で乱雑に射った『仕込針』は避けられず、何本かは弾いたものの、その多くが右上腕をはじめとする上半身へ突き刺さった。

 

 

「…ちっ、だがその程度で負けん!」

 

『…!?』

 

 

痛みを耐えて、全身を動かし放った強烈な一撃がシークの姿をした相手を打ち抜いた。

空へと光の筋を生み出したのを確認すると、体に刺さったままの針を抜こうと試みる。それを邪魔するのは三連続の青き光弾。

 

 

『…』

 

「連戦ってところか… いいじゃねえか…!」

 

 

一人相手を屠ると現れたのは、青い服を着たパルテナのボディ。ダメージをそのままにリヒターは彼女とも戦わなくてはいけない。

だが、リヒターは逆に燃えていた。本人はまだ自覚していないのだが、戦いそのものを楽しんでいる節がある。強敵相手に臆せず、逆に闘志が湧いているのだ。

 

 

『…─!』

 

「ほっと、」

 

 

『爆炎』の奇跡で攻撃する。リヒターの目の前が爆発し巻き込まれたかと思いきや、割と平気な様子で爆煙を振り払っていた。ヴァンパイアキラーを振り回して煙を撒くと同時に次の攻撃の威力を上げることになる。

 

 

「はああッ!」

 

『─っ』

 

 

弧を描くような軌道をした先の鉄球は、赤い盾に防がれた。武器と防具がぶつかっているとは思えないほどの綺麗な金属音が鳴り響く。

防がれたと判断した瞬間に、左手で手斧を投げつけた。しかし、利き手ではなく体勢も非常に悪い。杖で軽くぶつけるだけで手斧はあらぬ方向へ飛んでいった。

 

 

「うぐっ」

 

 

手の開いた杖の先が煌めきを放つ。胸部付近で炸裂した光はリヒターの体を吹き飛ばした。

 

 

「なるほど、やるじゃないか」

 

 

ザリザリと足でブレーキをかけて勢いを殺す。

湧き上がる闘志は既にマックスだ。それでも上がるのだ。

 

器用に片手で『聖水』を取り出した。それも三本まとめて。一本だけを左手に移し、乱雑に投擲。三本の聖水はそれぞれバラバラな軌道を描きながら相手がいる場所付近へ向かっていく。

 

 

『…!』

 

 

一本は敵の足元手前で落下し、一本はかわした。最後の一本は『反射板』で跳ね返した。リヒターのいる場所へ戻っていき、青い火柱を上げた。

しかし、そこにリヒターはいなかった。左右を見渡してもいなかった。ということは、

 

 

「上だ!」

 

『…!?』

 

 

『聖水』の瓶が雨のように降っており、その上には雲ではなくリヒターがいた。

妖鞭の一撃が瓶の一つに当たり、破裂させて火を上げる。それに連鎖するように他の瓶も割れる。多くの火柱が相手を焼く。

 

 

「せやッ!」

 

『─ッ!!』

 

 

ズレたところに着地したリヒターは、引き締まった掛け声で蒼炎の中の相手を貫く。そのボディもまた、例外なくぶっ飛ばされた。

 

 

『…』

 

「おっ…と、真打ち登場か」

 

 

正真正銘のラスト。

シモン、そしてリヒターの先祖、ラルフ・C・ベルモンド。

黒い髪をしたシモンの姿は、まるで見定めるかのように静かにリヒターを睨みつけている。

 

 

「上等! かかってこい!」

 

『─!』

 

 

リヒターの挑発に反応したか、相手が動いた。ヴァンパイアキラーを振るい、その先をリヒターへとぶつけようとする。リヒター自身も同じようにヴァンパイアキラーを振るった。

 

互いに考えていることは同じ。

相手へと攻撃が届くように。決して絡まったりせぬように。凡人には不可能な条件だが、彼らにはそれができる技術があった。

 

 

「…んぐっ…!」

 

 

得物を振るっていた右腕に痛みが走る。

最初の敵、シークのボディにやられたまま抜いていなかった針。今まで庇って戦っていたが、実力の高い敵相手に、その余裕がなくなっていったのだ。

 

 

「このくそっ!」

 

 

無事である左手で思わずぶん殴った。相手の体勢が崩れた瞬間に、バックステップで距離をとる。歯を食いしばって痛みに耐えながら針を引き抜いた。

 

 

「たくっ、どうするか…」

 

 

抜いた針を放り捨てて、呟いた。

相手が強いのは言うまでもない。更に言えば、リヒターは連戦なので今までの疲労やダメージがそのまま継続しているのだ。スピリット自身がいつもと同じ戦法を取れるのも一つの要因になっている。

 

 

「ならば、方法を変えてやろう!」

 

『─ッ!』

 

 

大きく腕を振るい、それに応えて鞭もまた大きくうねる。先程のような防具の隙間を縫って攻撃を当てにいくような戦法ではなく、防具ごと打ち砕くような攻撃。相手はそれを防ごうと動いたものの、防ぎきれず手痛いダメージを受けた。

 

リヒターの右腕は負傷しているはず。だというのにその攻撃は十全な動きと原色ない。

 

 

彼はベルモンド最強のヴァンパイアハンターと謳われた。単純に考えたら勝ちは決まっている。連戦という不利であるはずの弱点は彼の勝利を危ぶませる一因にはなり得なかったのだ。

 

悪魔城を照らす満月。

その月下でリヒター・ベルモンドは再びの荒い攻撃により、この戦いに幕を下ろしたのだった。

 





マルス「第17回FE組会議、緊急招集! ロイとクロムは仕方ない! ベレトの存在は次回予告ゾーンの影響により知っていることとする!」

アイク「前提が多いぞ… それで今回のお題はやはり」

マルス「ファイアーエムブレムヒーローズ第五回英雄総選挙の結果についてだ!」

アイク「まあ、確かに… とんでもない快挙だがあんたからすれば複雑か」

マルス「いや、門番さんに負けたことについては特に気にしてないよ。確かに中間結果では僕が一位だった分悔しさはあるけどそれだけ彼が人気だったってだけだから。それに贅沢を言うのは僕に投票してくれたみんなに失礼だしね。」

ルキナ「私は悔しいです! お父様がまた一歩届かなかった! 女性一位よりも票をもらってるんですから実質勝ちでしょう!?」

ルフレ「僕は男女共に7位か… まだ全然だね…」

アイク「一喜一憂してるな…」

ルキナ「今は煩わしさしかありません! この勝ち組が!」

アイク「お前はロイや俺と同じタイミングで総選挙入賞しただろ…」


マルス「次回、『ジャングルのベストパートナー』!」


カムイ「ずいぶんと次元の高い話をしてるね…」

ルフレ「カ、カムイ…」

カムイ「どうせ総合52位だよ… マイユニットなのに男性部門トップ20にすら入れなかったよ… 実装が絶望視されてた先輩とは違うんだよ…」

マルス「いやあのそれってクリスのことじゃ」

カムイ「大体if限定の人気投票でも女性の方は女性部門一位で僕の方は五位だったけどさ、FE無双じゃメイン取られるし勝ち上がり乱闘の絵には何故か彼女の方が載ってるし闇堕ちバージョンも伝承英雄も彼女に先越されるし公式のifのキャラアイコン彼女だし彼女は今回五位だったからさ次回次次回あたりには男女の後輩と一緒に入賞するだろうしそもそもスマブラでもどうせみんなほとんど彼女の方を」

ルフレ「わー! ストップストップ! これ以上はまずいって!」

ルキナ「どうしましょう!? 基本男性の方が優遇されてるルフレさんではカムイを止められません!」

ルフレ「ルキナ、一言多い!」

アイク「アレどうするんだ…」

マルス「他には女性部門エイリークが二位か。古めの作品からもランクインしてるのはいいことだね。」

アイク「無視するな。…こんなこと起きてるが、作者はそこそこ男性のカムイを応援してるからな」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

九十二話 ジャングルのベストパートナー


【悲報】レックスくん、第二のクロム扱いされる

冗談はさておき、マジで主人公云々は度外視で考えていますね任天堂…
その点ではセフィロス以上の衝撃です。レックスくんが既参戦なら衝撃も薄かったんですが。ルフレ? いやあれダブル主人公…
私の漠然とした予想ではもう一人ぐらい万人の予想を外したキャラが出てくるんじゃないかと。最後の一人はやべー他社キャラかなと。
ちなみにそれ以外のことは次回予告で叫んでいます。




 

リヒターが正解を導き、拓けた道を進む。しかし、そこは根元から折れた二つ分の船の帆が足場になっているという、おおよそ道とは言えない場所だった。

 

 

「流石にこれは…」

 

「さっきのドラキュラ城はマシだったんだなー」

 

「他は不安定な場所じゃないんだな。安心した」

 

「うーん、危ないけど行かなきゃダメだよね…」

 

 

ルイージの言う通り。いくら腰が引けてもここは進まなければいけない。

なぜなら、その帆の支えを渡った先にはファイターがいるのだ。見捨てることはできない。

 

 

「なんか工事現場みたいな縄あるし、掴まりながら行ったらいいんじゃね?」

 

 

レッドは帆の柱に絡まっている、金具のついた縄を外そうとしながら答える。それはまるでクレーンが荷物を持ち上げる時に使う縄のようだ。確かにこれを巻いていれば、落ちかけても引き上げることができるだろう。

 

 

「レッド、考えてくれているのは嬉しいけど、そんなに深く考えなくても…」

 

「私が飛べる。同じように戦って倒せばいいのだな?」

 

「あ、そうだった」

 

 

メタナイトが翼を広げる。何も必ず地に足をつけて渡る必要はない。翼があるのだから、普通に飛べばいい。

 

 

「ウホッ! でも飛ぶ必要、ない! オレたちのこと!」

 

「キキー!」

 

「って、野生コンビか。別に危ない橋渡らなくてもいいんじゃないか?」

 

 

しかし、彼を差し置いてドンキーコングとディディーコングが立候補をしたのだ。もしかしてあのファイターに関して心当たりがあるのかもしれない。

だがそれを差し引いても、不安定な道とも言えない足場を態々踏んで進む必要はない。飛べるメタナイトに任せればいいのだ。

 

 

「ウホッ、オレたち、問題ない! いける!」

 

 

そうレッドに答えるや否や、器用に支えの木材を跳び回る。両手足で木材を掴みバランスが崩れるかと思いきや、既に別の足場へ渡っている。あっという間にそのファイターの元についてしまった。

 

 

「うん! 二人はいつももっと険しい足場を渡ってるからね! このぐらいは楽勝だよ! ボクもスゴイけど!」

 

「なんか… 野生って凄いね…」

 

 

メタナイトを推していたマルスがボソリと呟いた。細い足場をあんなに軽々と。自分には一生できそうにない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウオオオオオッ!」

「ウキャーァッ!」

 

『───ッ!』

 

 

赤いボクシンググローブをつけた、深緑の鱗に覆われた拳。それがドンキーコングの剛腕にディディーコングの華奢な腕とぶつかり合う。

三つがぶつかった衝撃で起こる風圧が『海賊船』を揺らす。彼らの世界にあった船とは違うが、確かに船の上で戦ったことはある。

 

 

「ウキャッ、」

 

「グゥ…」

 

『…!』

 

 

三匹が着地した。

ダーズに囚われたファイターは船首の方へ引いたまま臨戦体勢を崩さない。一方、二匹は船尾の方まで弾き飛ばされていた。

 

一般的なワニとは違う、寸胴で巨体な体躯。ダーズの呪い以前に充血して血管の浮き出た眼。太陽光を反射して光る簡易な王冠。

クレムリン軍団を率いる親玉キングクルール。ドンキーコングたちを目の敵にする宿敵だ。

 

 

「グゥ… ディディーは、上から!」

 

「ウキッ、」

 

 

相手はドンキーコングすらも凌ぐほどのパワーの持ち主。

でも相手は単独。こちらの隣には一番信頼できる相棒がいるのだ。何を恐れる必要があろうか。いつしか元の世界で対峙した時と同じように、二匹で戦えばいいのだ。

 

マストに合わせて設置されている足場へ、ディディーコングは跳ぶ。要は上空と地上で畳み掛けるというのだ。ドンキーコングは甲板から四肢を使い突進していく。

 

 

『ゥ…!』

 

 

それに対してキングクルールは『パイレーツキャノン』をドンキーコングを目掛けて発射した。確かにキングクルールにはパワーがあるが、力に頼って戦わなくてはいけないわけではないのだ。

 

弾速はそれほど速くはなかったが、全力で走っていたドンキーコングでは避けることができない。弾自体の質量もあったために軽くはないダメージだ。

 

 

「キー!!」

 

 

ドンキーコングへの追撃を防ぐために、上の足場から飛び降りるディディーコング。狙いはキングクルールの顔面だ。跳びかかって引っ掻いてやる、と言わんばかりに両手を伸ばした。

そんなディディーコングの思考を止めたのは、彼の顔面にかかる衝撃だった。重力に逆らい体が浮くと理解する。キングクルールの右アッパーで自分は打ち上げられたのだと。

 

 

「ウクウウ…!」

 

 

甲板に不時着したディディーコングの体をキングクルールが踏みつける。相当な重力をかけており、ディディーコングの口から呻き声が漏れている。ディディーコングの筋力ではキングクルールを退かせない。

 

 

「ウホッ!! ディディーを返せ!」

 

 

それを見たドンキーコングは鉄球のダメージを無視して、先程よりも速く走り出した。

キングクルールは再びラッパ型の銃を取り出し足元のディディーコングに向ける。脅しか。そう思ったドンキーコングは奥歯を噛み締めるがキングクルールの動きは止まらなかった。

 

 

「ウキャッ?」

 

 

呆気にとられたような声を上げてディディーコングが銃の中へ吸い込まれていく。相手が何をしようとしているかはわかったが、どうしても頭が追いつかなかったのだ。

 

 

「ギィィー!?」

「ウッホ!?」

 

 

ドンキーコングへ向けて発射され、彼の体はディディーコングに巻き込まれて吹き飛ばされた。両手で受け止めようとしたが、受けきれずに後ろへ飛ばされる。

 

これがキングクルール。

ドンキーコングに匹敵するパワー。

ディディーコングにも劣らない武装。

二匹とも持たぬもので打ち負かされた。してやったりと言うべきか、無表情のはずがニヤリと嘲笑われているように感じる。

 

 

「ディディー、大丈夫!?」

 

「キィ…!」

 

 

敵の攻撃に利用されたことよりも、自分が頼れる相棒を傷つけた事実が我慢ならない。

これでは逃してくれたあの時と変わらない。結局自分だけじゃ何もできなくて誰かに協力してもらったあの時と。もっと強くなりたい。自分を助けてくれたみんなを助けられるくらいに。

落ち込んでいる暇はない。ドンキーコングの体から退いて相手を睨みつける。

 

やはりアイツは気に食わない。日常ではそこそこに仲がいいものの、異常時は全く息が合わないのだ。大体その異常時の原因はアイツが原因であるのだが。帽子のつばを後ろへ回して広い視界を確保。相手の挙動を見逃さぬように睨みつける。

 

 

「負けない! 負けない!」

「キーッ!」

 

 

思いは一つ。

小さな体の勇気は剛腕の拳に。

大きな体の力は引き金にかける指に。

負けるはずがない。

同じ能力を持っていても、

同じ数の武器があっても、

結局、相手は孤独でこちらは二匹。

こんな条件が揃っていながら、ジャングルのベストパートナーが負ける理由があるだろうか!

 

 

『─ッ!』

 

 

金に光る王冠が向かってくる。投げられて十分な威力を持つそれはドンキーコングがはたき落とした。

普段ブーメランのように返っていくはずの王冠は戻らず落ちた場所に置き去りにされた。右腕をグルグルと回しながら肉迫する。

 

 

「ウウウ!」

 

 

相手は両足を揃えての跳び蹴りで迎え撃つ。隙や踏み込みを気にしなければ全力の攻撃である。幾らドンキーコングでもまともにぶつかったら勝ち目はない。

しかし、それは小細工抜きの場合だ。両足片手で支柱に登りつつディディーコングが放った『ピーナッツ・ポップガン』がキングクルールの視界を潰す。

 

 

気を散らされたキングクルールは力を込められず、僅かな差で打ち負けてしまう。

体勢が崩れて膝をついたところを『スピニングコング』で弾き飛ばした。船首の先へ追い詰められる。

 

 

「キィー!」

 

 

ディディーコングが自慢の脚力で跳びだした。キングクルールの視界を覆うように四肢を使ってしがみつく。

 

 

『──ッ!!』

 

 

引き剥がそうとする間にドンキーコングによって船から蹴り落とされた。手を伸ばすも届かずに海へと落ちていく。

ディディーコングが船へ戻る際に足場代わりに踏みつけられて海の底へと沈んでいく。

 

 

「キィイ!」

「やった!」

 

 

船に戻り、ハイタッチを決める。

偽物の自然ではあるけれど、今は樹木の葉が風で擦れる音ではなく、大海原のさざなみが祝福してくれた。

 





インクリング「ヒャッハー! トリは頂いた!」

シュルク「えっと、じゃあ最初は頂いたー、ある意味僕ら二人で勝ち組だね。後レックスはドンマイ」

むらびと「そういえばマリオとコラボするって話あったね。よろしく」

マリオ「こっちこそ! さらにボク達久々のゴルフだよ!」

ネス「若い人たちは元気があっていいね」

CF「新作情報が出るたびに取り残されたような感覚に陥るからな… というかそんなおじさんみたいなこと言うもんじゃないぞ!」


インクリング・シュルク「「次回! 『世界には満ちているのだと』!!」」


リンク「おっしゃー! 遂に俺も… えっ、エキスパンションパス? 新作の情報は? まだ漬物?」

サムス「ここにもっと熟成されている漬物がいるぞ…!」

リンク「ゴメンって!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

九十三話 世界には満ちているのだと


なんかこう、書きたいことに対する思いが強すぎてすごい(語彙)
ダイパリメイクがついいにに来たぞおおおお
年代バレそうですが気にしないので言います。はじめてのポケモンはサファイアなんですが自分で欲しがったポケモンで、記憶に残ってる一番古いのがダイヤモンドなんです。剣盾にディアルガは送れてもドラピオンは送れてもドダイトスは送れないのが悲しくて。
シンオウの過去話もめちゃ気になるん。やっぱりなんかこうマジヤバイ。

もう一つ。本日久々に本作品の小説情報を覗いたところ評価バーに色がついていました。もしかしたら気づいてないだけでずっと前に色ついていたかもしれないんですけどそれでも本当に嬉しいですありがとうございます!

後最後。私ちょっと前からキングダムハーツユニオンクロスやってたんです。そのソシャゲが四月いっぱいでサービスが終わることになりまして喪失感が凄いです。半年ちょっとしかやらなかったんですけどソシャゲでガッツリやったのはじめてで。でも終わるまでは楽しもうと思います! ヴェン君可愛いし出番あるの嬉しいけど苛めないでください。



 

時間はリヒターが自身の先祖へと戦いを挑んでいる時間へと遡る。カービィとシュルクが解放した道を通って、別れたファイターは進む。

先程の問いがあった木の幹よりももっと細い、成長に従い自ら落としたかのような小枝と落ち葉の塊。道とも言えぬ短い道は捜索のための数すらいらなかった。

 

 

「ルフレ、これあんまり数いらなかったね」

 

「結果論、だけどね。仕方ない、戦う本人以外は他のみんなを追ってもらおうか。」

 

 

何しろ問題に正解した後は、その他前座はなしにいきなりファイターがいたのだ。シュルクの言う通りだろう。

 

 

『ならば彼は私に任せてもらう、誰なのか私にはわかる』

 

「ポケモンだったんだ、ってことはガオガエンかミュウツーか…」

 

 

名乗りを上げたのはルカリオだった。ここにいたのはポケモンであったようだ。

特に異論はでないのでそのままルカリオに任せることになる。

 

 

「よし、それじゃあ僕たちは他に向かおうか。まずは残してきたさっきの場所のスピリット」

 

「はあい!」

 

「カービィ、それじゃあ僕もそっちにまわろうか。どうせなら大王さまも一緒にどう?」

 

「うーむ… 人の案に乗るのはしゃくだが、カービィと共にいるべきとオレさまのカンが告げている… いいだろう! オレさまに全部任せておけ!」

 

「いや、一人一回で十分…」

 

 

苦笑いしながらも、話を進めるために咳払いしてルフレは自分に視線を集める。

 

 

「残りの僕、ルキナ、マリオ、ピーチ、ネスは道を戻ってカムイ達を追おう。ルカリオとシュルク達もひと段落着いたらそっちに来てくれ。」

 

「ルイージの兄ちゃん達の方はいいの?」

 

「カムイ達は僕たちを追ってきていない。つまり最深部、一番奥に続く道はカムイ達が進んでいる道だと思う。だったらルイージ達が行っている道はそう長くはないはずだよ。」

 

「それにマルス様も蒼炎の勇者もついています! 万一があれば私たちを呼んできますよね!」

 

「そう、だから底が見えない本筋へ向かうべきだ。」

 

 

ほえーと間の抜けた顔をして納得するネス… とマリオとシュルク。かの稀代の名軍師様が見抜けるのは人の能力だけではないようだ。

 

 

「まあ、何かあってもルイージだし」

 

「え?」

 

「それじゃあボク達もみんなのところに合流しようか!」

 

「みんな後で!」

 

 

ルフレの言葉でそれぞれが散り散りになり、それぞれの戦場へ向かっていく。果たして何事もなく無事合流できるのか。それを阻むのは目の前の戦いだけではないことを今の彼らは知らなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはシンオウ地方のとある山頂の遺跡。『テンガンざん やりのはしら』。心臓の鼓動を時とする神、呼吸で空間を安定させる神、裏側のやぶれたせかいにて万物を静観する神の顕現した場所。その事情の裏には悪の組織の手があったとはいえ、そう聞くと神聖なものを感じる。

『戦場』化の影響を受けてしまっては風情も何もないのだが。

 

 

『シンオウ地方か…』

 

 

伝説や伝承を重んじているシンオウ地方には、もしかしたら太古の昔、人とポケモンが共に戦争をしていたという歴史も人々の頭の中にあるのかもしれない。シンオウ地方に縁の薄い彼にとってはその程度の感想しか浮かばなかった。

 

それよりも彼が気になるのは、相手だ。ポケモンの中ではルカリオと彼だけがテレパシーにより人と直接言葉を交わせる。そんな共通点があるとはいえ、互いに深く関わってはこず、そもそも共通点というのも意識したことはなかった。

 

 

『……』

 

 

いでんしポケモン、ミュウツー。人間に造られたポケモンということしかルカリオは知らない。

友人だと語るには遠い関係。だが、何故か単なる知人に留まるようには感じられなかった。

 

 

『くらえ!』

 

 

威力を犠牲にし、数を増やした連続の『はどうだん』を撃ち放つ。この距離が得意とは言えないが、正面から近づくには抵抗があったのだ。

 

 

『…、』

 

『…きえっ!? 後ろか!』

 

 

視認していたミュウツーの姿が消える。瞬間移動、『テレポート』でルカリオの背後をとったのだ。空気の流れが変わったのを敏感に感じとり、完全に姿が現れる前に相手の存在を認め振り返る。

手から溢れ出す暗黒を咄嗟に止める。暗黒のダメージは止められないが、ルカリオの方も咄嗟に波導を撃ち込んだのでいたみわけといったところか。

ミュウツーの尾によるなぎ払いを、腰を落としてかわす。そこから軽くしゃがんだ勢いを利用して細身の体へ『はっけい』を打ったのと、ルカリオの両眼近くへ向けて『シャドーボール』を撃ったのはほぼ同時だった。

 

 

『─ッ!』

 

 

視界が潰れ、後ろへ軽く吹き飛ばされる。目はしばらく使い物にならないだろう。しかし、ルカリオからすればそれは何の問題もない。

土煙が掻き消えて現れたのは、両眼を自ら瞑り触角を横に立てているルカリオの姿だった。本当に知るべきものは目や耳で理解する必要はない。波導を感じれば彼には全てが視えるのだ。

 

ミュウツーの瞳には、ルカリオの走り出した姿がまるでかげぶんしんのように複数にブレて見えた。『シャドーボール』で迎撃しても、残像でしかないのか通り過ぎてしまう。

ルカリオはミュウツーの目の前につくと、跳び上がりミュウツーの頭上から拳を叩き込んだ。

 

 

『…ッ!』

 

 

頭蓋に直撃し、否応なしに視界が揺れる。それでも本能的に相手へ伸ばした手から『ねんりき』が発せられ、ルカリオの体を弾き飛ばす。

 

 

『まだだ… 』

 

 

柱に激突する前に身体を翻し、石柱に足をかけ足場にしてミュウツーへとびかかる。勢いをつけて放ったとびひざげりを打ち出す。自在な尾で受け止められたが、尻尾はものを受け止めるようにできていないので大きなダメージとなった筈だ。だが先程よりも早く、ねんりき、否『サイコキネシス』がルカリオを襲った。

 

 

『グオウゥッ!?』

 

 

先程よりも強い念、ズレたタイミングにより今度は対応できずに石柱へぶつかった。重力に従いルカリオの体は落ちていく。

片手を地面につけながらも立ち上がって、回復した目を開く。遠くからこちらのようすをうかがっているミュウツーの姿を見て、ストンと府に落ちた。

 

なんとなく近しいように感じたのは偶々ではない。近いように感じた理由はルカリオもミュウツーも同じくファイター達から一線を引いていたからだ。

太古の戦争を知識ではなく記憶として所有するルカリオが完全に馴染めるはずもない。

それならば人に造られたという彼もきっとそうなのだろう。同じく遠い場所から見ていてそれが共通点となったのだ。

 

人は同じなのだろうか。数百年の時が経とうと何も変わらないのか。ポケモンを自分達の欲で利用する。

それでも信じているのだ。

自分と主のような絆が、

あのトレーナーとポケモンのような絆が、

世界には満ちているのだと。

 

皮肉にもミュウツーという被害者の存在がルカリオの決意を強めることになった。

 

 

『過去は過去だ。全てを呑み込んで前に進める』

 

 

ルカリオがミュウツーに言えるのはそれだけだった。

無意識に熱い体を冷やそうと、口から息を吐く。ルカリオの感覚は波導と共に極限まで高まる。勇者なんていうほどの大きな力はないけれど、せめて1は救いたい。

 

 

『しんそく』で瞬時に距離を詰める。そのスピードは瞬間移動かと錯覚するほどのルカリオのゼンリョクの移動だった。

 

 

『…ッ!?』

 

 

いつの間にか近づいたルカリオの蹴りを相手はシールドでギリギリ防いだ。更にルカリオは拳、回し蹴りと技を繋げる。あまりの速さにシールドを解いている暇すらない。

その素早い格闘技の応酬は正しく、全力無双激烈拳と呼ぶに相応しいものだった。

 

シールドとて無限ではない。ルカリオの攻撃を受けるたびに小さくなっていく。これではジリ貧なのだ。どうにかして抜けるか、勝負に出るかの2択しかない。

 

 

『─ッ!』

 

『くらえっ!!!』

 

 

暗黒の力と波導を込めた最後の一撃がぶつかり合う。

衝突で起こった衝撃が尾や触角を揺らす。

青い炎が爆散し、相手を吹き飛ばし競り勝った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はあ、はあ…』

 

 

即座に息を整える。受けたダメージよりも全力の全力を出したことによる精神的疲労の方が大きかった。

 

倒れていたミュウツーのフィギュアの台座に手を触れる。金色の光が放たれ、片膝をついたミュウツーが現れる。ゆっくりと目を開き、尻尾が揺れる。

 

 

『正気に戻ったか』

 

『……』

 

 

ミュウツーは無言のままだった。囚われていたのが気に食わないのか。だが、その感情は程度の差こそあれど誰しも抱いているものだろう。ルカリオは気にせず続ける。

 

 

『今、私たちはダーズの討伐と被害者の救助を目的として動いている。気を休めたならばおまえも…』

 

『…くる』

 

 

そう呟いたミュウツーの感情の変化をルカリオは感じとった。確かになにかの悪意の塊のようなものを感じる。ミュウツーが顔を動かして見ている先をルカリオ自身も向いた。

 

 

『なっ…!?』

 

 

ルカリオが見たのはまるで悪魔のような形相の化け物。感じたことのないほどの狂気に冷や汗をかき、無意識に後退りをした。

 





ルイージ「ねえ、これって…」

マルス「…ごめん、後のこと考えてなかった」

リヒター「しくじったなー」

ディディー「ヴギギギー!」

ドンキー「落ちる落ちる! 見てないで、助けて!」

アイク「奴のフィギュアも含めて唐突に戻されると落ちそうになるんだな」


ルイージ「次回は『そのツケは払わなければならない』、だよ!」


マルス「メタナイト、ゴー」

メタナイト「私はレスキュー隊ではないのだが…」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

九十四話 そのツケは払わなければならない


レックスがクロム枠に収まったのはモノリスソフトの悪ノリだったか…
元はレックスも参戦できる予定だったからこそアピールにも登場できたんですね。もしも8人乱闘ができなかったら参戦できた可能性が微レ存…? レックス君ファンは次回作に期待してもいいかもです。

それにしても主人公でさえも一般応援客の如く扱われるのか…





 

「ふん、むざむざ操られてワガハイと戦うことになるとは! 全く情けない!」

 

「ワ〜オッ! きびしい!」

 

 

クッパ軍団の一員を問う問題によりクッパがジュゲムに喝を入れる。自分も同じような目に遭っていたのを棚に上げての言動だ。

それを見てピットとブラックピットが小言を言っていたのは完全なる余談だ。おまえも部下にはあんなもんだろ、そうかなあ。

 

巨大で折れている土管を渡り、たどり着いたのはブラックホールのように渦を巻いている何か。中央へ向かって吸い込んでいるように感じるが、さすがにそれを調べにいく勇気はなかった。

 

 

「え? うそ、ここで終わり!? そりゃないでしょ!」

 

「あ、皆さん! ここもクイズらしいですよー!」

 

 

インクリングが辿り着いた果てに見つけたものに怒っている傍でしずえが目敏く問題文を見つけていた。

 

 

「なんて書いてあるんですか?」

 

「えっとですねー、『亜空軍を作りファイターたちを襲ったのはどのスピリット?』だそうです! トレさん、亜空軍ってなんですか?」

 

「いえ、私にはわかりません…」

 

 

その亜空軍だが、Wii Fit トレーナーには心当たりがなかった。だが、一部のファイターには懐かしくも疎ましい響きだった。

 

 

「亜空軍!? 亜空軍がいるの!?」

 

 

最初に驚きの声を上げたのはピット。彼はスタジアムから飛ばされたマリオと共にデデデを追って皆と合流していた。

 

 

「そういえばずっと前にデュオンってやつと戦ってたな…」

 

「デュオン…!?」

 

「アイツもいたのか… チッ」

 

『ひさしぶりだったね!』

 

 

ロックマンの呟きに反応したフォックスとファルコ。ドンキーコングの救出に協力し、そのまま戦艦ハルバードの奪取に動いていた。ディオンをはじめとする影虫を生み出していたMr.ゲーム&ウォッチには緊張感のかけらもない。

 

 

『亜空軍とはかつてこの世界を亜空間に染め上げ支配しようと企んでいた軍隊のことデス。』

 

「ロボット、君が言わなくとも…」

 

『いえ、ワタシだから言いマス。その亜空軍の主… タブーはマスターハンドやワタシを使い侵略を続けていたのデス。』

 

 

人間のように表情や仕草が非常に判別しにくいロボットの感情は、事情の知らない面々にはわからず、簡潔に話したためにそれが何かもわからなかった。だが、事情を知る者には理解できた。そのおぞましいとすら感じる憎悪を。

だからこそ、サムスはフォローに入ろうとしていたのだ。

 

 

『アイツは少し遠いと言えどもワタシと同じ世界で生まれた存在デス。ワタシにはわかル。』

 

 

つまり、あんな強敵に対して自ら一人戦いにいくというのだ。そんな自殺行為、許されるものか。

 

 

「ならば私も行こう。あの場で何も出来なかった私には行く権利があるだろう。」

 

「おっと、先言われちまった。このキャプテン・ファルコンも仲間と共に戦うぞ!」

 

『二人とモ…』

 

 

サムス、そしてキャプテン・ファルコンもその戦いに立候補した。命に逆らえずに散っていったロボットの仲間達。ただの一機すら救えなかったのだから。

 

 

「ピカチュ…」

 

「…本当は私達も行くべきなんだろうが、五人は流石に多いな。そもそもあの渦を潜り抜けれなければ意味もない。」

 

 

その三人と共に戦っていたピカチュウとオリマー。共に戦いたいが様々な問題が立ちはだかっていた。

 

 

「だから… 託したぞロボット、私たちも離れているドンキー達も応援しているからな。」

 

「ピカピッ!」

 

『…! ありがとうございマス…!』

 

 

渦の中にある一つのスピリットに狙いをつける。肩にかかった二人の手は重さなんかではなく頼もしい暖かさ。共に渦へ飛び込み、ジェット噴射で調節しながら三人で手を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの時の冒険の『終点』はここ、いやコイツであった。メタル化した昔の姿のベヨネッタのボディには憎い禁忌が宿っている。

自分は静かに暮らしていただけだったのに。そうだ、コイツが他でもないコイツが、故郷を。自分を。仲間達を。

 

 

「落ち着け」

 

 

サムスの一声が異常なほどに響いた。レンズ越しのカメラとヘルメット越しの目が合う。優しくも厳しい目は自分の心理を見透かしているようで。

 

 

「戦えないほどに憎いのならば、そんな感情は捨てるべきだ。私も人のことは言えないが…」

 

「でも私もサムスも、オリマーやピカチュウ、ドンキーやディディーも背中を押すぐらいはできるさ!」

 

 

共に戦ってくれる二人。

背後で応援してくれる二人。

少し離れた場所で戦っているだろう二人。

 

ロボットは気づいた。この戦いは他の二人のケジメでもあるのだ。

 

 

サムスは憎しみに抗えず、状況を無視してリドリーを消し去ろうと考えた。そのツケは払わなければならない。

キャプテン・ファルコンは思いを見れず、状況を理解してロボットの仲間達を見捨てた。そのツケは払わなければならない。

そして、ロボットは仲間を見捨てられず、状況から目を逸らせずにその原因を今も憎み続けている。そのツケは払わなければならない。

 

 

『…ありがとうございマス、二人トモ。ですが…』

 

 

銃を構えた相手より速く、彼の思いに答えた最大火力の『ロボビーム』が鉄の塊なだけの体を貫いた。

 

 

『たまにはワタシにも背中を押させて下サイ、ワタシはただのガラクタではありませんノデ。』

 

「そうだな、共に行くぞ!」

 

 

キャプテン・ファルコンは拳を握りしめ、サムスはアームキャノンを構える。ダーズ戦前の前哨戦だ。

 

 

『くらいなサイ!』

 

 

『アームスピン』がタブーが張ったシールドをゴリゴリと削っていく。バックステップで後ろへ引いた敵を仕留めるための炎のパンチは魔人の拳で防がれた。しかし、二人の頭上から撃たれた三機の『ミサイル』が容赦なくタブーを襲った。

 

 

『─!』

 

『まだデ…!?』

 

 

爆撃も恐れぬロボットが爆風を無視して突貫する。その時、タブーから見覚えがあるような波動が放たれる。三人は急に疲労が増える。

突然の不調に体が硬直し、隙をつくってしまったロボットとキャプテン・ファルコンが魔人の蹴りで後ろへと吹き飛ばされる。

 

 

「おいおい、今のは…」

 

『何時ぞやのOFF波動デスカ… あれ程の威力はないようデスガ…』

 

「準備動作がない。これでは避けようがないか…!」

 

 

万全のタブーが使用したOFF波動は正しく初見殺しだった。まさか調整版とはいえ、それが今になって立ちはだかるとは。

ソニックが弱らせてくれた時よりもずっと威力は減っている。しかし技の出が早く、まず避けられないだろう。

 

 

「ならば常に勢いを取らせてもらおう!」

 

 

ダメージから逃げられないのであれば、上回るダメージを与えていくしかない。タックルを当てて、相手の体を浮かせる。地から天へ届かせるように高速のパンチを放った。

 

 

「うりゃりゃりゃりゃりゃ!」

 

『………っ!』

 

 

しかし、全てではないものの多くのパンチが防がれている。タブーが宿るボディもまた、そこそこに速い攻撃ができるのだ。それどころか、攻撃という名の防御を潜り抜けてキャプテン・ファルコンまで攻撃が届いてもいるのだ。

 

 

『何処を見てイル?』

 

「私達もいるのだぞ!」

 

 

更に上を取ってのかかと落とし。それを『バットウィズイン』が発動し、敵の体が蝙蝠の群れとなった。サムスとキャプテン・ファルコンの攻撃が空を切る。

元の姿へと戻ったところでロボットの『AirN』が発動した。ジェット機能の熱が相手を襲い、本能的に背中の蝶の羽で空中へ逃げようとする。

 

 

「逃すかっ!」

 

 

サムスのアームから放たれたグラップリングビームが相手の足首を捉えた。逃げようともがく敵に引き摺られながらも両足を踏み締める。それは『バレットクライマックス』で体中撃たれながらも変わらなかった。スーツの防御力で無理やり堪える。

 

 

「サムス!」

 

「助かる…!」

 

 

キャプテン・ファルコンがサムスと敵との間に入り、シールドを張った。これでサムスに銃弾は届かない。それならば、と銃口をビーム部分へと動かす。それが─ロボットには一番癇に障った。

 

 

『成る程… 貴方にとってワタシ達は扱いやすかった以上のものではなかったト』

 

 

反抗するなら片付けてしまえばいい。味方とも言えなかったのかもしれないが、敵というほど眼中になかった。そこまでの関心は無かった。

 

捕まった相手に向けて、『S3』、短距離ビームを撃つ。溜まったものを全て放り捨てるが如く。

 

 

『だったら無関心のままで、二度とワタシ達の視界に入るナ。ワタシ達に興味がないまま一生朽ちてイケ!』

 

 

ボロボロと体が崩れながら、奈落の闇へと落ちていく。ロボットはそこまで見ずに二人の方へ向かって言った。

 

 

『ありがとうございマス、サムス、キャプテン・ファルコン。戻ったらまだあの渦があると思いますノデ…』

 

 

はやく自分に捕まって欲しいということだった。二人はロボットの肩と思わしき部分へ手を置いた。

 

 

「行きはともかく帰りは大丈夫なのか? ロボットも疲れ… 疲労? していないのか?」

 

『大丈夫デス。本気を出せば二人ぐらい問題ありまセン。亜空間爆弾も結構…!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一戦が終わり、元の謎の空間へと戻っていた。しかし、ロボットの言葉を止めたのはそれではない。タブーを倒したというのに悪寒が止まらない。この空震はなんだ。

 

 

『…っ、急ぎマス!』

 

 

嫌な予感がし、最大火力で他のみんなの元へ向かおうとする。急げ急げと自らを急かす。

 

 

「うっ…ぐ!?」

 

「なんだ…!?」

 

『…!?』

 

 

渦の中心から何かが飛び出して、飛んでいたロボット達を吹き飛ばす。

三人は見た。道化師の頭に異形の翼。派手な見た目は何故か恐怖心を煽っている。悪魔とはコイツのことを言うのだろう。

 

狂気の温床、マルク。

かつて面白半分でポップスターを自分のものにしようとした化け物である。

 





ロボット『亜空軍とはかつてこの世界を亜空間に染め上げ支配しようと企んでいた軍隊のことデス。』

サムス「…だそうだが、聞いているか元凶その一。」

クッパ「ふん、ワガハイよりあの時のガノンに言うんだな!」

CF「…と責任転嫁しているがどう思う! 元凶その二!」

ワリオ「オレさまは好きなように動いていただけだ!」

リュカ「…!!」

オリマー「リュカが凄い顔をしてるぞ…」


ロボット『次回、『誰だと思ってんだ』、デス』


ロボット『罰として他のスピリットは貴方達が片づけなサイ』

CF「レジェンド級ばかりだけど頑張れ!」

クッパ・ワリオ「「うるさい!!」」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

九十五話 誰だと思ってんだ


ユーザー辞書にて『じゅうだん』と打ってみたところこんなの出てきました。

(≧∇≦)σ──O))`Д゚)〜☆


当時の私は何を考えていたのでしょうか



 

「ピカチュ…ッ!?」

 

「何事だ…!?」

 

 

世界が揺れる。空間が震える。

まるで狂気に当てられたかのように。

三人の帰還を最前線で待っていたピカチュウとオリマーは崩れそうになる体を支えて渦に目を凝らした。

 

 

「三人とも!」

 

 

少し遠い位置にその姿を見つける。全然届かないとわかっていても手を伸ばした。

 

 

「───っ!」

 

 

吹き荒れる強風に遮られて、何を話しているのかもわからない。無理にでも駆けつけるべきかと考えていると、何かが渦の中心から飛び出してくる。あの悪魔はなんだ。あの怪物は。

 

 

『──!』

 

「ロボット!」

 

 

足にロボットの脊髄が鷲掴みにされる。ジェットの噴射で暴れて抜け出そうとするもなんの効果もなかった。

それだけではない。上空へ飛び、所構わず何かの種をばら撒き始めた。それは三人を待っていた団体の方にも襲いかかる。

 

 

「─ッ! みんな、散らばれ! 束になっていたら一網打尽だ!」

 

 

マルスもルフレもいない現状、フォックスが声を張り上げた。白兵戦の指揮などほとんど行ったことはないが、今の固まっている状況がまずいのは理解できる。

散らばっていくファイターを確認して、化け物を睨んだ。空へ飛ばれては手を出せるファイターすら限られる。囚われている三人も、着陸のことを考えると安易に手を出せないようだ。

種の埋まった場所から生えてくる茨を避けながら、化け物が近づいてくるのを確認する。掴んだまま茨に突き当てる気なのか。ならば三人を救うチャンスだ。

 

 

「離せ!」

 

 

フォックスの『ブラスター』から撃たれた赤い光弾と紫色の光弾が足に当たり、三人を手放した。三人は竜の姿になって飛んだカムイが回収している。

 

 

「ウルフ!」

 

「考えることは同じか…」

 

 

『ブラスター』をしまうウルフが不機嫌そうに呟いた。

 

 

「みんな! 大丈夫!?」

 

「ああ、助かった…」

 

 

竜は三人を背に乗せながら、五又の木道へと着地する。カムイに助けられた三人は肉体以上に精神が疲労しているように見えた。どう考えても今回の復帰は無理だ。

 

 

「三人とも無事!?」

 

「首尾は良くないってところかな…」

 

 

四人の元に来たのはその他の掃討戦をしていたシュルク、カービィ、デデデとミュウツー、ルカリオ。彼らの元へ手分けしていたマルス達が合流する。

 

 

「って、ちょっと待て!? アイツは…」

 

「まるく!」

 

『知っているのか?』

 

 

その化け物の姿にデデデ、カービィが驚く。マルク、という怪物はそこら中に回る斬撃を生み出していた。苦戦の声が辺りから聞こえる。

 

 

「マルクだ。昔遊び半分でポップスターを自分の手にしようとしていたものだ。銀河でカービィに倒されたと聞いたが…」

 

「ガレオムもキーラの手によって復活していた。そういうことなんだと思う。」

 

 

メタナイトの説明と疑問にマルスが答える。

過去の時間からこの世界に来たか復活させられたか。いずれにせよ番人の一角として立ちはだかった以上、倒さなければならない。

 

 

「おーい! みんな!」

 

「まりお〜!」

 

「アレが出てきて私たち慌てて戻ってきたんです!」

 

 

カービィ達と分かれたはずのマリオ達が戻ってきた。この非常自体に散らばるべきと判断したのはフォックスだけではない。更に後ろへ戻るべきだ。

 

 

「よし! リザードン、ルフレを乗せて飛んでくれ!」

 

「グウワォ!」

 

「ありがとう! みんなの居場所は把握しておきたいからね…」

 

「メタナイト、君は牽制を頼めるかい?」

 

「承知した」

 

 

空を自在に素早く飛べる人材は貴重だ。

リザードンとメタナイトはその代表的な例。戦略眼のあるルフレの補佐にリザードンを任せ、メタナイトには主な迎撃を任せてもらうことにした。

 

 

「ふん、何も速く飛べなきゃダメなんてことはないだろ。やるぞ、カービィ!」

 

「ん?」

 

 

首を傾けたカービィをデデデが吸い込む。突然のことに周りは唖然として固まる。その行動の意図を読めたのはメタナイトだけ。デデデはほうばったカービィをマルク目掛けてはきだした。

 

 

「うっそぅ!?」

 

「全く…」

 

 

飛んでいったカービィを見ながら、メタナイトも後を追うように飛び上がった。

 

 

 

 

生えた茨を器用に登ってはみたものの、空気を足場に空へ登ることはアイスクライマーの二人でもできない。各地から飛び道具がマルク目掛けて飛んでいるものの、二人には攻撃の手段がなかった。

 

 

「どうしよ〜」

「届かない〜」

 

「届かないならそれでいいだろ! こういうことはマリオ辺りに押しつけりゃいいんだ!」

 

 

やろうと努力はしているポポとナナに対して、ふんぞりかえってニンニクにかじりつくワリオ。喋りながら咀嚼しているが、二人は気にしていなかった。

 

 

「そうだ!」

「いいこと思いついた!」

 

「「オナラなら届くんじゃないー?」」

 

「断る! なんでオレさまがそんなことを」

 

「あ! そういえば」

「むらびとがマスターハンドを助けたら」

「お給料貰うって」

「言ってたよね!」

 

「まかせろ! オレさまにかかれりゃあんな奴屁でもない!」

 

「「やったー!」」

 

 

人知れず登山家が一人のやる気を出させる。しかし、悲しいかな。理由は欲望にまみれたものであった。

 

 

 

 

『リモコンミサイル』がマルクの近くまで撃たれて、ふわりとかわされる。反撃と生み出された回る斬撃はソードが生み出した竜巻で相殺された。

 

 

「むー、フライすんなー! オレの出番返せー!」

 

「そういうな。防御にまわってくれてるから俺たちは攻撃に専念できるんだ。」

 

 

裏方に回っているソードは不満げだ。スネークとガンナの護衛をしているので役には立っているのだが、本人からは愚痴が出る。

 

 

「チッ、これじゃキリがねえ。アイツでけぇ癖にすばしっこいんだよな」

 

「んー、でも… ワッツ!?」

 

 

どこからかぶっ飛んできたカービィがマルクの背中に貼りつく。振り落とそうと暴れる最中、回避まで動けず他所からの弾幕に当たった。

 

 

「カービィ! それなら俺たち外野はサポートを…」

 

「ぶっ飛ばす!」

 

「ガンナア!?」

 

 

くっついているカービィごと射抜く勢いで、最大火力の『ガンナーチャージ』を撃ち出す。マルクには当たったが、もう少しでカービィにも当たるところだった。

 

 

「何やってんのぉ!?」

 

「このまましょっぱいの当ててたっていつ終わんのかわっかんねーぞ。ねえんだよ、決定打が」

 

「まあ、カービィがいつ振り落とされるかわからんが…」

 

 

確かに飛び道具によって体力は減っていくだろうが、パワーがあるような攻撃はそうそうできない。そして、それもかわされたら意味がないのだ。

 

 

「同感だ。このまま重りになってもらおうぜ」

 

「そーゆうことだ。軽く邪魔してればいいんだよ」

 

「うーん…」

 

 

カービィがはりついているだけでマルクの行動は鈍くなる。それを指摘して駆けてきたウルフが同調する。ソードは納得していない。スネークも言いたいことはわかるのだが、どちらかというと否定的だ。

 

 

「それに、マジで重りにしかなんねー訳ねえだろ。キーラから唯一生き残ってんの誰だと思ってんだ」

 

 

 

 

『キャハハハハハハハハハハハ!』

 

「うぅ…!」

 

 

マルクは暴れ狂っている。どいつがどんな敵かもわからない。だが、背中にくっついているピンク玉が一番警戒すべき存在だと本能が語っていた。

 

地形や敵に激突しながら、荒れ狂う波でサーフィンをしているかのように手を離しそうになるが、カービィは根性で喰らい付いている。

 

 

「んむぅ!」

 

 

体を岩へと変化させ、自重を増やす。バランスを崩し、マルクの体がグラリと揺れた。

 

 

「はあっ!」

 

 

その隙をついて、メタナイトがマルクの片翼を斬る。音速を超えているかのような連続斬りに更にマルクの体が落ちていく。

 

 

『ギァアウガアラウ─ッ!!!』

 

「うっ!?」

 

 

言語化も難解になってきた叫び声と予測不可能な挙動についにカービィが振り払われる。

 

 

「カービィさんを!」

 

「はーい、ママー!」

 

 

吹き飛ばされそうなカービィをキャッチしたのは星の子チコ。そして箒星の魔女ロゼッタ。

本人の性格とチコ達のメンタルケアもあってか解放後はあまり戦闘に参加していなかったが、ここぞというタイミングでカバーに入った。

 

 

『─────ッ!!!』

 

「復活… なんだろうな。カービィを苦戦させたのだからもっとまともな自我があったはずだ。」

 

 

空間を裂く叫び声に、メタナイトは哀れみを感じていた。しかし、敵は敵だ。手加減する理由にはならない。

 

 

「まうくっ!」

 

 

キャッチされたチコから飛び出して、再びはりつこうとするカービィ。しかし、向かう場所たるマルクがテレポートによって消える。

 

 

「うぃ!?」

 

「後ろだ!」

 

 

空中で翻して見たのは、マルクの体が真ん中から割れる姿だった。そしてその中身は。

 

 

「ブラックホール! 逃げなさい!」

 

 

ロゼッタの声が真っ先にチコの元へ届き、逃げ出した。メタナイトも引力に抗うのに精一杯だ。カービィは。

 

 

「いやー!」

 

「カービィ!」

 

 

マルクの体から生まれたブラックホールへ吸い込まれていく。完全に姿が見えなくなった時、マルクが現れ、彼の真下からカービィが突き落とされるように現れる。

 

 

「…!」

 

 

落ちるカービィの真上からトドメとばかりに冷気を纏う鉄球が吐かれる。

 

その行動の根源は、恨みか、妬みか、憎悪か。

最早誰にもわからない。だが一つ言えることは狂気に染まるカウントダウンが迫りつつあったということだ。

 





メタナイト「マルクだ。昔遊び半分でポップスターを自分の手にしようとしていたものだ。カービィに倒されたあとソウル化してまた襲ってきたかと思いきやドリームフレンズで全く反省しないまま登場してドノツラフレンズしているぞ。そして今回また敵に回ってる」

マルス「…えっ? なんて? ドノツラフレンズ?」

メタナイト「どの面下げてフレンズとか名乗ってんの? の略称だ。」

マルス「いや、それ蔑称じゃあ…」

デデデ「またあいつ敵対したのか? 懲りないな」

カービィ「ぷよ、」

マルス「慣れてる!?」


メタナイト「次回、『アレ』。アレとは…?」


デデデ「ノヴァに激突して爆発する出番が何度でもあるんだから満足すればいいものを…」

マルス「いや、それMAD!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

九十六話 アレ

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ!!
ニンテンドーワールドがオープンじだよ!

い゛き゛た゛い゛!!
私も一緒にづれでってぇ!



「どうしたもんかねー、生粋のインファイターには縁遠い相手だぜ」

 

「遊びじゃないぞ… せめて足場がもっと穏やかならやりようもあったが…」

 

 

ケンが退屈そうな顔で、戦っている敵と味方を見ている。不真面目にも見える態度を軽くリュウが指摘したが、仕事がないのも事実。

あの空へ届く攻撃も、空を飛ぶ手段もないファイターにあの戦いに参加する権利はない。先程までは他ファイターのサポートに動いていたが、カービィへの対処に忙しく外野へ攻撃が向わなくなったのだ。故に彼ら一部のファイターは見守るしかできない。

 

 

「リュウ! ケン!」

 

「ルフレ!」

 

 

かなり下がって、闘技場のような場所までいた二人をルフレが見つける。リザードンに跨がって飛んでいたようだ。成る程、そういう手があったのか。

しかし型が重要な格闘家にとっては、例えリザードンがもう一匹いたとしても戦力に加わるのは難しいだろう。

 

 

「僕はみんなの居場所の確認をしてるんだ。散らばるしかなかったから…」

 

「俺たちより下がってるのは居るぞ。ただそれが誰かまでは…」

 

「っておいッ!」

 

 

ケンが思わず声を荒げる。彼が向いている方へ顔を動かす。そこにあったのは追い討ちを受けようとしているカービィがいた。

 

 

「まずいっ!」

 

 

 

 

 

目を瞑って慌てていたカービィの片手を握り、急上昇する影がいた。メタナイトだった。流石に冷静で判断が早い。近くにいたことも幸いした。しかし、代償はあった。

 

 

「…っ」

 

 

カービィを仕留めようとした冷気は代わりにメタナイトの翼を掠めていた。先が凍てつく。このままで牽制は為しがたい。少々ふらつきながらもどこかへ着地しようとする。

 

 

『─────ッ!!!!!』

 

 

当然それを逃す通りは相手にはない。追い討ちをかけようとしたマルクの前に出たのはルフレとリザードンだった。メタナイトの状況を見て、アドリブで前に出たのだ。

 

 

「リザァードーンッ!! 攻撃はいいから回避に専念してくれッ!」

 

「グオウ!」

 

 

レッドの大声での指示が聞こえる。自分を乗せている分動きが鈍重になる。ならば回避だけに専念させるのは当然。

マルクの眼球が黒くなり、ポロポロと落ちて襲いかかってくる。その不気味な攻撃に若干怯みながらも魔導書を構えた。

 

 

 

 

 

 

「無事か?」

 

「ぽうよー」

 

 

若干気の抜けた返事が返ってくる。問題はこちらだ。少し右翼の調子が悪い。冷えたからだろうか。二人が落ちた先は─

 

 

「メタナイト冷えたー?」

「大丈夫ー?」

 

「アイスクライマーに… ワリオか」

 

 

二人を心配して寄ってくれているアイスクライマーに夢中でニンニクを食べるワリオ。三人が決定打の準備をしていた場所だった。

 

 

「羽が冷えてるー!」

「暖めなきゃー!」

 

「んっぐ、仕方ないか…」

 

 

暖めるためだと言うが、防寒着を着た二人が翼を挟んで抱きしめるのは相当気恥ずかしい。

 

 

「メタナイトー、」

 

「るいーい」

 

 

ルイージが息を切らせてやってきた。デデデ達の元にいた筈だが、全速力で追ってきていたらしい。

 

 

「ヒィー… ヒィー… で、デデデからっで、伝言… 『次にマルクに隙が出来たらアレをやるぞ』だって…」

 

「…! わかった。」

 

「隙…!」

「これだ!」

 

「ぅん!」

 

「あ?」

 

 

抽象的な伝言だが、メタナイトには伝わったようだ。そして、アレを実行する為の隙。まだ戦えるとカービィは強く頷き、ワリオは聞いてなかったように鼻をほじった。

 

 

 

 

 

「横に来てるぞ! 回って振り切れ!」

 

 

ルフレの上を、リザードンの足元を通り追ってくる弾をぐるりと一回転して振り切る。二人の目が届かないところをレッドがカバーしているのだ。一度振り切られ、再び追おうとした弾は外野からの援護で打ち消された。

 

 

「(正直助かる…! ドラゴンの扱いは得意ではないし…)」

 

 

何かに乗っての戦闘はあまり得意ではなかった。リザードンにしがみつくだけで割といっぱいいっぱいなのだ。相手の牽制はできているが、決定打がないと嘆いていた状況に戻ってしまった。

 

 

「『エルウィンド』!」

 

 

隙を見て風の魔法を放つが、それが決定打には繋がらないだろう。ルフレが高威力の技を出すには魔力を溜める必要がある。しかし、リザードンの上にいる現状、そんな暇がないのだ。

 

 

「うおおおお!」

 

「っ!? 『サンダー』!」

 

 

何かが迫ってくるかのような声がして、咄嗟に雷の魔法を放つ。せめてもの足止めになったようでワリオの『ワリオっぺ』からの『とんそくキック』が突き刺さった。

 

 

『────────ッ!?』

 

「ういゆっ!」

 

「リザードン、ワリオを!」

 

 

ワリオの一撃で体勢の崩れたマルクにホバリングで追いついて再び張りついたカービィ。振り落としたくてめちゃくちゃな動きをする。

リザードンを促し、ワリオを拾ったルフレはカービィに対して過敏に反応しているマルクを見た。

 

 

「(ドラキュラがシモンやリヒターと対峙した時だってここまで露骨な反応はなかったのに。まるで子供だ…)」

 

 

自分の思い通りにするために駄々をこね、時には蟻を望んで潰すような幼児。そんな印象をルフレは受けた。

 

 

「でかしたカービィ!」

 

「本当はカービィを倒す為のものだったが… 仕方あるまい!」

 

 

ルフレが離脱し、カービィだけになった空中へと二人の宿敵がゆく。

 

跳び上がるデデデ。

飛び上がるメタナイト。

 

マルクを下にして、手を取り回転を始める。

 

 

「ぽよ!?」

 

 

それは二人がいつの間にか編み出していた技。宿敵を退けるために紡がれた、深き絆の盟友の技。

 

回転は紫電を纏う橙色の斬撃を生み出す。マルクのかわす隙など与えぬほどに多く、もっと多く、そして速く。

 

 

「「はああああッ!!」」

 

 

その姿はまるで雷霆の如く。ハンマーとギャラクシアがおちる。カービィが足を上げて丸見えとなったマルクの背中へ突き刺さった。

 

 

『ギャアアァァァ─────────ッッッ!!?』

 

 

鼓膜につんざく悲鳴が聞こえる。両翼が引き裂かれ、重力のままに落ちる。デデデは目を回していて自力では動けまい。刃を抜いたメタナイトはすぐにデデデを拾って飛び立つ。カービィは未だにマルクの体にくっついたままだ。

 

 

「─っ! はああ!」

 

 

マルクの落ちる場所に逆らい、カービィは両手でマルクの体を掴み、一回転して別の地点に叩きつけた。『いづな落とし』だ。

これで落下地点はカービィに委ねられた。その行先は比較的安定した地形。もっと詳しく言えばノポン族のトラや羽ピクミンのスピリットと戦った、この空間の入り口に近い場所だ。

 

 

「ぽよっ」

 

 

めっ、と軽く叱るようなイントネーションで地面に激突したマルクに声をかけるカービィ。

彼は総じて能天気だ。マルクの持つ悪意や狂気が微塵も理解できないほどに。

 

あしたはあしたのかぜがふく。

 

悩むこともあるけれどそれを引き摺ったりはしない。だからこそ人の執念に疎いのだ。

 

 

『──────────ッアアアアア!!』

 

「!」

 

 

マルクの両眼が肥大化する。虹彩は細かくブツブツと増え、出鱈目に幾筋ものビームを撃ち続ける。慌てて跳んだりしゃがんだりとかわし続ける。

 

 

「これは…!」

 

 

それだけではない。もがれた翼のあった場所から、毛細血管のようなものを伸ばし始めた。

標的はないが、見境もない。

躊躇はないが、容赦もない。

辺り一面が管とビームで焦がれ、空からの援護はできない。仮面の奥でメタナイトは苦虫を噛み潰した。

 

 

「んんっ!」

 

 

勝敗の行方はカービィに託されたのだ。

カービィとて、この攻撃が半死半生でうち放つ最後の足掻きであることは理解していた。

しかし、それが乱雑で精密性に欠けるかと言ったらまた別の話。

 

マルクにとどめを刺すには近づかなくてはならない。ビームと毛細血管の網を掻い潜って。しかも時間をかけるごとに攻撃の密度は増していく。

 

 

「あちち、あちち!」

 

 

ほら、ビームを避けようとして管に当たった。

燃えるような痛みが側頭部に走り、慌ててさっきの位置に戻る。

 

これ以上の援護は期待できない。自分の力でなんとかするしかない。

何ができる?

どうすればこの攻撃を抜けられる?

 

カッター? ハンマー? ストーン? ファイア?

ファイター? スープレックス? ニンジャ?

 

いや、アレだ。

 

 

「むうっ!」

 

『───────ッアアアアアア!』

 

 

このままでは命の果てる限り、攻撃を続けるだろう。逆に言えば、それ以外の行動に対しての抵抗は格段に弱くなっている。

 

両手を上に上げて走り出す。

伸びてくる管を横跳びでかわす。

降りてくるビームを逆方向へと横移動。

正面から迫る管を飛び越え、腕にビームが掠めた。小さな呻き声を喉の奥で噛み殺す。

流れ星のような綺麗な軌道ではないけれど、カービィの意思は幼子の願い事に匹敵するほど純粋だった。

 

 

「うわっ」

 

 

回避に必死になって、つまずき転ぶ。それでもバウンドしたまま、手を使うことなく起き上がった。

 

カービィの足元を、追い詰めるように動く二本のビームをジャンプでかわし、原初の技を繰り出した。

 

 

「はああああああ!」

 

 

『すいこみ』。がんばり『すいこみ』を。

 

防備も回避もできない今のマルクは抗えない。管もビームも収束するようにカービィの口へ吸い込まれていく。

お腹いっぱいに頬張った後は。こんな悪い夢なんてポイだ。

 

 

「ぺえぃ!」

 

 

巨大な化物はカービィの口から星となって飛んで行った。黒い空へ、銀河へと。

カービィは一人、その星が見えなくなるまで目が離せなかった。

 




現ファイター

カービィ
マリオ
マルス
ピクミン&オリマー
パックマン
Wii Fit トレーナー
Dr.マリオ
インクリング
ピチュー
ロックマン
スネーク
むらびと
シーク
リンク
ルカリオ
キャプテン・ファルコン
ピーチ
クッパ
フォックス
シモン
ピット
リュカ
しずえ
Mii 剣術タイプ
ヨッシー
プリン
リュウ
ドンキーコング
アイスクライマー
ダックハント
リトル・マック
ファルコ
ピカチュウ
サムス
ネス
Mii 射撃タイプ
トゥーンリンク
Mr.ゲーム&ウォッチ
ポケモントレーナー
ディディーコング
シュルク
ゼロスーツサムス
デデデ
ルキナ
デイジー
ワリオ
リドリー
ケン
ブラックピット
ルフレ
リヒター
ロゼッタ&チコ
ロボット
ゲッコウガ
ウルフ
カムイ
アイク
メタナイト
ルイージ
キングクルール
ミュウツー


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

六章 まとめ

ピクミンGOが出るとは言っておりますが、ポケモンGOのようなアプリにはならんとです。そのようです。
万歩計みたいになるか、画面に可愛らしいピクミンを映すことで歩くのを楽しんでもらうとかそんな感じだと予想します。事前予約はしました。楽しみですね。



「えっ…? あの、待って、前回の何?」

 

「何ってなんですか?」

 

「題名! もっとなかったのか!?」

 

 

いや、相応しいのはもっとあったんでしょうがね、最新と原初の対比がいい味出してるんじゃないかと思いまして。

カービィがどうとどめを刺すか考えて、メタナイトとデデデに連携技使わせるの思いついて、だったらカービィは初代から存在してるすいこみがどうかなって思ったんですよ!

 

 

「振り切ってるわね、でも原作スマブラではこんなこと全くできないのよ。カービィゲーマーのための演出じゃない。」

 

「……………」

 

 

まあ、正直演出のための設定無視なんて今に始まったことじゃないですけどね。

 

 

「ここの作品原作準拠なのか無視なのかどっちつかずだなぁ」

 

 

それを言われると否定できない。

でも熱ければヨシ! という訳でファイター解説いってみよぉ!

 

 

 

ロゼッタさんからです。

スマブラ丁寧語系が多い気がががが

マリオギャラクシーとマリオギャラクシー2はパラレル扱いなんですが、ロゼッタとの絡みの関係上無印ギャラクシー軸になるのかな。

マリオシリーズは時系列とか気にしないように設定が曖昧なんですよね。だから正直あまり気にしなくても良いかと。

 

 

「どの作品からでも手をつけやすいように、との製作者の配慮です。嬉しいですね」

 

「覚えておかなくても構わないからね」

 

 

チコたちに見せる母性は他所の子たちにも見えますね。ハブみハブみ。

 

 

「……………」

 

 

 

 

お次はロボットです。

亜空の使者にてエインシャント卿と名乗っていた者と同一人物になります。…人物?

 

 

「あまり気にしなくても…」

 

 

特記事項としてはロボット、スマブラの世界、通称この世界の出身者ということです。

つまりはタブーと同郷なのです。

 

 

「複雑ねー…」

 

 

タブーは一生許さない。絶対許さない。

仲間を返せ! みんなを返せ! 日常を返せ!

とまあ、こんな感じです。ちなみに彼、トワプリガノンも許した覚えはないです。

 

 

「絶許宣言いただきマシタ。あ、ロボットくんさん、こんな感じで喋りマス。」

 

 

語尾の一部だけ、カタカナになりマス。

 

 

 

 

ゲッコウガ。えっ? 設定が適当?

最初はオリジナル設定でいこうとしました。ですがきずなへんげできる理由が思いつかなくて。

 

裏設定を暴露すると、マサラタウンのサトシ君のゲッコウガと同一設定です。

 

 

「えええええ!?」

 

 

リーグ終わってカロスに残っている時期の個体なんです。サトシと別れてジガルデと残ってる時期の。

性格設定はサンムーンの体験版で貰えた固定性格をそのまま使ってます。まあ、個人的に残していた訳ではなく、画像検索で探したものだったのでもしかしたら間違っているかもしれません。

 

 

「ご存知の方もいると思いますが、元々ゲッコウガは人気が出そうという理由で参戦した話があります。実際人気投票で二連続一位を取っているので流石ですよね!」

 

 

 

 

ウルフ・オドルネ。あっ違う、オドネル。

パルテナプレイ勢からしたら、当初はおもしろ成分を抜いたブラピみたいな印象だったのですが、今ではマジモンの狼みたいな印象ですね。

実力が伴わない者には厳しい通り越して排除してる訳ですが、オラオラ系のリーダーシップを慕ってスターウルフが形成されているんじゃないかって。

 

 

「ライバルにはツンデレ要素がないといけない決まりでもあるのでしょうか? アサルトで顕著ですね」

 

 

ちなみに裏設定では、亜空の使者に遅刻した理由は『仲良しこよしは断る』とかそんな感じです。フォックスも含めて全滅寸前まで追い込まれたと知っていれば出陣したんでしょうが知る手段がなかったので遅刻です。

 

 

 

 

次はカムイ君になります。男の子もええぞ!

このカムイ君透魔王国ルートで、既に即位済みです。つまり王様です。

 

 

「大団円エンドが正史のように扱われるから、大団円ルートを作らなかったと風花雪月関連で言われたことがあるけど… 確かに…」

 

 

そういえばFEのオールスター系のゲームにソシャゲのヒーローズとFE無双がありますが、本作の時系列的には存在しないことにしました。これどこかで言ったっけ?

私が忘れてるから言ってなかったことにしよう。

 

 

「そんな適当な…」

 

 

ですが、支援会話など参考にはしています。

そこで言いたいのは、カムイ君はED前に即位済みだからマルスがカムイ君を呼ぶ際には『カムイ王』が適切ではあるんですってこと! しかし違和感の塊!

 

 

「人それぞれだと思う…」

 

 

まあ、あの状態の透魔王国がすぐ体裁が整うとは思えないので? 王子と呼ばれるのもいいよね! うん、いい!

 

 

「言い訳はいらないのだけど」

 

 

ごめんなちゃい!

お人好しで人を惹き寄せる魅力を持つ青年…

そうだ、カムイ君ってルフレの前前世って知ってる?

 

 

「え…? それ本当…?」

 

 

とある人との支援会話で判明する裏設定です。

時系列的にはカムイ→クリス(新紋章のマイユニット)→ルフレとなりますね。

これを踏まえて、ルフレとカムイをお互い他人の気がしないという印象を与えています。

マルスは二人のことを何故かクリスに似ている気がすると感じています。そういう風に落ち着きました。

 

後何故女マイユニの方が人気なのかとか長々語りたいのですが、長くなるのでまた別の機会にしましょう。

 

 

「(まだ語る気だったのか…)」

 

 

 

 

次にアイクですね。彼もリヒターと同じくめんど… 難解な時系列となっています。

 

 

「今面倒って」

 

 

時系列は1Pカラーに合わせることにしたので彼の時系列は厄介なことになっております。

蒼炎→X→SP→暁→for という時系列です。

全く、どうしてこうしてしまったのか。

 

 

「無愛想な熱血漢… ヒーローズでは最強の英雄とかなんとか言われてるわよ?」

 

 

公式には、アイクは格上みたいな扱いされてるんですよね。暁でゴリラになるから?

for時代のアイクは何も言いませんでした。なのでSP時代、周りは何も言ってません。そういう背景にしております。

 

 

 

 

「次はメタナイトですね」

 

 

ネタ成分を抜いたアニメメタナイトと感じていいかと。公式のネタ供給が高いですが本人からはそんなことしませんからね!?

あ、でも設定がアニメ版とは違うのでそこら辺の差異はあります。デデデ、カービィよりも二次創作とかアニメとかでの性格の違いがないのであんまり語ることないんですよ。

 

 

「ならこの回いる?」

 

 

いる。

 

 

「……………」

 

 

 

 

ルイージです。イジリ激しいけどキャラは立ってます。最近臆病というよりはオバケが苦手なだけな気がしてきました。

 

 

「クッパだ、怖いー! なんてことにはなってないですものね」

 

 

彼の行動方針は、『兄の役に立ちたい』『でもたまには自分も活躍したい』となります。

でも、肝心のマリオからの扱いはアレです。まあ、原作でもどさくさに紛れてLの足踏んづけてるし。

 

 

 

 

お次はキングクルールですが… ちょっと話の構成の都合上出番をなくしてしまいました。これは流石に土下座案件。本当にごめんなさい。

 

 

「……………」

 

 

ごめんなさい!

本当に迂闊でした。

えっと、公式から見る限り、卑怯というか狡猾というか。そんな感じの印象ですね。名前の由来から残酷だけど作風的にリドリーほどではない。そして口調が荒い。そんな感じ。

 

 

「適当だな…」

 

 

露出が昔だと情報が手に入れにくいの! 昔は台詞までしっかり設定されてるゲームそんなにないから…

ほんとごめんね!

 

 

 

 

ミュウツー。語るまでもないかもしれませんが、ミュウツーの逆襲と同一の個体です。

彼も殆ど喋らせてあげられませんでした。サイコキネシスでサポートとか色々考えていたのですが、とどめをカービィシリーズとする都合上、出番を増やしているうちに他の子の出番がなくなりました。多分シャドーボールで援護しております。

 

 

「本当に雑ですね」

 

 

人数多いんだよぉ! 多すぎて捌ききれないの!

 

 

「そんなこと簡単に想像できたじゃない。それこそ最初から」

 

 

はあ…

ぐうの音もでない…

 

 

 

 

まあ、そういう訳なので、ようやく最後が見えてきたというところです。

 

 

「次は聖地編。ゼルダの伝説シリーズを中心に話を進行していく予定ですよ」

 

 

結構書きたかったところでした。主役になるのは当然あの子です。今はいない子。

 

 

「何か言い残すことはあるかしら?」

 

「言い方! 他に予告しておくことはある?」

 

 

そうですね…

ゼルダシリーズの時系列、通称ゼルダ史を予習しておくともっと楽しめるかと思います。というか知ってる前提で予定しています。

それでは皆さまお達者で!

 

 

「……………」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

七章 悠久の彼方まで
九十七話 こんじょうとばかぢからくらべ



前回大ポカやらかしたので早期投稿です。
何やらかしたかは聞かないでください。
感想欄辿ればわかるけど。


 

狂気の温床を滅しても、終わらない。

まだダーズは残っている。逃亡したキーラと護衛の数が同じなら、眼前に示された三つの道が護衛の数と同じなら、あと一回。その護衛を倒せばダーズへの道が開く筈だ。

 

交通道路の表面を剥がしただけの道を進み、立ちはだかるスピリットを倒して進む。途中から道路を支柱が支え、辺りには崩れたビルが建っていた。荒廃した都市部のようだ。

そこを更に進むにつれて大木が侵食し続け、火山地帯が、更に先には巨大な水晶のようなものが見える。

 

 

「ピチュ」

 

 

しかし彼、ピチューが行きたいのは違う場所。所々別れ道になっているここにはそれなりにスピリットがいる。自身の興味からか、小さい体を活かしての探索を先行して行なっていたのだが。

 

ああ、戦いたい。

あそこにいたファイター。自分にとっては憧れの一匹。こんな状況だけど、たまには真剣勝負で横槍は一切無し。そんなルールで戦いたい。

 

 

「ピー…」

 

 

周りを見渡す。戦いたいとアピールしたいが、近くに自分が戦いたいということを伝えられる人、わかってくれる人はいるだろうか。

 

 

『腕は落ちていないか…』

 

「ふん、クズゴミが! オレさまの相手にはならないぜ!」

 

 

あれは解放されたばかりのミュウツーとキングクルール。どこかのスピリットを倒した後だろうか。ミュウツーはテレパシーで自分の意思が伝わるが、別に近寄りがたいところである必要はないので他をあたることにした。

 

 

「あわわわわ… あの子もいるし… バレちゃうかもじゃん…」

 

 

友達のインクリングは何か取り乱しているらしい。彼女の視線の先にはスピリットがいるが、知り合いなのだろうか。取り込み中のようなので後にしておこう。

 

 

「大丈夫? 遅くなっちゃってごめん…」

 

『いえ、マルス様がきっと助けてくださると信じていました! どうかお気になさらないで』

 

 

ピチューが戦いたい相手の方を見ると、毒の沼の手前でマルスがスピリットの女性に話しかけていた。

その女性はタリスの王女でマルスの婚約者シーダ。王族同士の婚姻とはいえ、二人の仲は超良好だ。インクリングが見ていれば草葉の陰で盗み見守っているところだが、ピチューはその辺りは微塵も興味無し。だからこそ二人の元へ平気で寄れるのだ。

 

 

「ピチュゥ!」

 

「ピチュー? どうしたの?」

 

 

しかし二人とも温厚な性格なので、その程度のこと気にしない。平然とピチューを受け入れた。

 

 

「ピチュチュ! ピーチュッ!」

 

「…! 先にいる子を頼めるかい?」

 

「ピチュチュ!」

 

『あ、あの!』

 

 

任せとけ、と言わんばかりに胸を張るピチューをシーダが止めた。

 

 

『どうしても戦わなくてはならないのですか…?』

 

「ピチュ、」

 

「ごめん、君には受け入れ難いと思うけど…」

 

『マルス様の責任ではないでしょう、私だって理解はできてますから』

 

 

その志はマルスのそれと似ていた。

成る程、番になる訳だ。根っからの野生であるピチューはその辺の考え方が妙に生々しかった。

 

しかし、色気より闘気。

誰が好きか? 大乱闘。

 

だから戦うのだった。それ以上の理由はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦う場所はミュウツーの時と同じく、『テンガンざん やりのはしら』の『終点』化。

ピチューはルカリオ以上に遺跡に興味がない。ここは雰囲気にすら静謐さを感じられるが、そんなところピチューはご勘弁だ。ピチューが望むのは戦い甲斐のある障害物の多いフィールドか、歓声の響き渡る派手で熱気溢れる闘技場。

 

 

「ピチュピーチュ!」

 

『…ウゥ』

 

 

高らかに宣誓布告を掲げた。

ガオガエンはピチューと気の合うポケモン。ヒールポケモンという分類のガオガエンは根っからの悪役レスラー。卑怯でも使えるものは使って戦う姿勢はピチューが気にいるものだった。

趣向も似通っていて、仲が良い。はじめに子供のように思われて乱闘に気が入らなかった時には癇に障ってボコボコにしてやった。

 

それからは手を抜いてないので水に流した。

今だって本気で戦ってくれているのだ。操られているとはいえ、その事実があればいい。

 

 

「ピッチュ!」

 

『…!』

 

 

『こうそくいどう』でガオガエンの裏へ回り込み、ダッシュでずつきをくらわせた。掴まれぬように電撃を纏いながら。

だが、それはお互い様だ。ガオガエンもまた炎を纏って『リベンジ』だ。するどいめでいかくするその姿は人を怯えさせる。

それでもピチューは動じない。二匹のレベルは高水準で同程度。小さな体にきもったま。今更怯えるものか。

 

 

「ピチュチュチュ!」

 

 

地面から走る『でんげき』。数に任せた攻撃がガオガエンへあたる。カウンターが来ると知っているからだ。

 

『…ッ!!』

 

「ピチュ!?」

 

 

でも気にしない。シールドで守るでも回避でもなく、まるで何でもないように耐えている。その姿に冷静さを失い、飛びかかって『でんげきドリル』を繰り出した。

 

 

「ピッ…!」

 

 

パチンと頬を覆うように両手の感触が生まれる。掴まれたと思った時にはもう遅い。回転させられ遠心力でぶん投げられた。『タイガースイング』はピチューの軽さもあってか大きく投げ飛ばされる。

自身のスペックの高さを見せつけ、おいうちふいうちだましうち。何でもするのが彼の戦闘スタイルだ。

 

 

「ピィ…! チュウ!!」

 

 

体が回りながら飛んでいく。しかし、それより重要なのは追撃に来るだろうという事実だ。出鱈目に電撃を放ち、近寄らせないようにする。ピチューは確認できていないが、電撃に当たってはいるのだ。

しかし、そこはモンスターレスラーといったところか。電撃による不回避な攻撃相手にも耐えて格を見せつけようとするのは十八番とも言うべきか。お構いなしと言わんばかりにピチューを叩き落とそうと飛び上がった。

 

 

「ピチュ…!」

 

『…!?』

 

 

叩き落とされたらリタイアになる。

反射的に身を翻し、ガオガエンを下にしてしがみついた。

 

 

「ピチュウゥゥゥ!!」

 

『…ッ!!』

 

 

その状況を数瞬遅れて理解すると、大きく声を張り上げて『かみなり』を呼んだ。

雷霆の稲光が質量を持ったように、ガオガエンに重量を与えた。空間が揺れるほどの一撃でピチューはガオガエンを足場に大地へ跳び乗った。

 

 

「ピチュ…」

 

 

体を起こしたピチューは大きく息を吐いた。体の小ささを活かして攻撃は食らっていないが、自身の電撃の反動は大きかったのだ。

そうやって気の緩んでいたピチューを何者かが掴んだ。

 

 

「ピチュ…!?」

 

『─ッ!』

 

 

崖に掴まっていたガオガエンがピチューを片手で掴んだのだ。小さな体をキリキリとにぎりつぶす。電撃を放つも想定していたガオガエンはそれで手を離すことはない。

掴んだ手は大きく挙げられる。思いっきり突き落とそうとの判断だ。ピチューは身のある抵抗もできず、振り落とされ─

 

 

「チュゥ…!」

 

 

なかった。短い足の爪でガオガエンの毛を掴み、尻尾は指にまきつく。ギリギリのところでピチューは投げ落とされていなかった。振り落とそうとするも、ピチューは離れない。

 

 

「ピヂュウッーーーー!!」

 

『…ッ!!』

 

 

今度こそ全力全開の電撃だ。電撃以外に良い戦法のないピチューは電撃を放つしかない。電撃がくると予想できるガオガエンは初撃で手を離すことはない。つまり持久戦だ。

 

 

「ヂュッーーー!!」

 

 

振り回された反動で、両手も赤い腕に届きしがみつき、持てる限りの電撃を放つピチュー。

 

 

『───ッ!!!』

 

 

フィールドに使っていた地形にピチューをぶつけて落とそうとするガオガエン。

 

 

「ヂューー…!!!」

 

 

こんじょうとばかぢからくらべの、

 

 

『──…ッ!!』

 

 

その結末は。

 

 

『…ッ…!』

 

 

崖から赤い手が離れた。体力の限界で落ちていく体を伝い、こねずみポケモンは足を踏み外しながらもなんとか大地に上がったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピチュ!」

 

「ガウ…」

 

 

ガオガエンの意識が戻った時、真っ先に目にしたのはボロボロのピチューだった。本人が気にしていないとはいえ、自分の預かり知らぬ所で自分がここまでさせてしまったことに罪悪感を感じる。

 

 

「ピチュ、ピッチュ!」

 

 

気にしていないと、とびはねてアピールする。ガオガエンは納得しきれていないようだが、非常事態であることは理解していた。複雑な表情で立ち上がる。拳を差し出したピチューに対して難しい顔がようやく崩れ、拳を合わせた時、遠くから大きな声がした。

 

 

「ちょっと待ったぁ!」

 

「ピ…?」

 

 

どこかで聞き覚えがある声だ。どこだろうか。それを確かめるように飛び出し、ガオガエンもそれを追った。

 





ルキナ「ルフレさん、ルフレさん、もしかしてあの方は…」

ルフレ「マルスのお嫁さんかな。ということは」

ルキナ「私達のご先祖様…!」

ソード「そーとも限らないんじゃない?」

ルキナ「っ!? どうしてそんなことを言うんですか…!」

ソード「だってイフ、ウワキしたら…」

ルキナ「とおっ!」

ソード「ングベッ!?

ルフレ「顔面ストレート…」


ルフレ「次回、『憧れたんだ』。」


ソード「いやいや、オレが言ってるのは確率のプロブレムで…」

ルキナ「せぇい!」

ソード「ングドバッ!?」

ルフレ「鳩尾にクリーンヒット…」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

九十八話 憧れたんだ


ヒーロー・リターンズ。

リメイクの流れに従ってアドベントチルドレンがリマスターされるそうですね。ぶっちゃけFF7系列はシリーズ多くて把握できない。



 

「う〜ん…?」

 

「ど、どうしたの?」

 

「さっきここら辺にインクリングがいた気がしたんだけど見間違いだったのかな?」

 

 

辺りを見回すネスにリュカが聞いた。

枯れ果てた大木を道代わりに進み、別の道への境界にいたのは一人のスピリット。ネスはそれをインクリングが見ていた筈と語る。

 

 

「後でいいだろ、どうせすぐに合流してくる」

 

 

その呟きを偶然拾ったブラックピットは興味なさげにそう言った。態々気にするほども仲良くないからだ。

近くに一人いたファイターは既に取り掛かっていると聞いた。他に道はなかったので、このスピリットの先が目的地の筈だ。そう思い、手を伸ばした時だった。

 

 

「ちょっと待ったぁ!」

 

「っ! 誰だ!」

 

 

遠くから引き止める声が聞こえて、反射的に手を引いた。後ろへ振り返ると、黄色のゲソに目立つベストの種族インクリングがいた。

 

 

「私は怪しい者ではない。だが、問われたのならば答えよう!」

 

 

くるりと一回転し、決めポーズを決める。

 

 

「私は3号。ナワバリバトルの裏に潜む闇を討ち、人知れず平和を守るNew!カラストンビ隊が一角!」

 

「またあなたは…」

 

「人知れずなのに名乗っていいのか?」

 

 

どこかで聞いたフレーズに呆れるのは、二度目の登場を見たWii Fit トレーナーだ。そしてガンナが空気を読まずにつっこむ。この状況、ふざけている場合なのか。

 

 

「ヒーロー… でもインクリングさんじゃ」

 

「3号!」

 

「インクリングだよね?」

 

「3号!」

 

「もうわかってますから…」

 

「3号!」

 

 

どうしてヒーローのお約束がわっかんないの、と小声でぼやくのが聞こえる。そう、ヒーロー3号とはインクリングのことだ。ほとんどはそれを知っている。所で何か忘れてはないだろうか?

 

 

「インクリングがヒーロー3号…? 友人って言ってたじゃん… だからふっかけたのに…」

 

 

むらびとだ。3号のヒーロースーツを買い取る際、三倍で返してもらうように言ったのだ。インクリングの友人へ、とのことだったのだが、同一人物だなんて聞いていない。

隅でブツブツと考えた結果、ヒーローのお約束とはいえ、黙っていたのが悪いという結論を出した。お金が絡むとリアリストだ。所で何か忘れてはないだろうか?

 

 

「はあ? なんだこいつ…?」

 

「ブラピブラピ、わあ!とも、フーとも、しないから耳貸してみて」

 

「何罠に嵌めようとしてんだ… たく、なんだよ」

 

 

3号の正体を知らない存在のことを。

何故かピットはわからない。悩まないとは言われているが、頭が足りないとは言っていない筈なのに。

ブラックピットに内緒話をする。すると彼の目がまん丸になるかの如く、驚きの表情を見せた。

 

 

「ヒーロー…ね。まあ、手を貸してくれるなら遠慮なく貸してもらう」

 

「えっ」

 

 

ブラックピットが言い放った言葉に、むらびとが思わず驚きの声を上げてしまった。まさかわからない人がもう一人いたとは。ピットのようにベタな憧れはないものの、同一人物だと認識していない。

古典的なヒーロー系コミックでは、正体を知ってる人と知らない人の比率が逆ではないのか。

 

 

「当然だ! 何しろ君の目の前に居るのは我が同胞、New!カラストンビ隊の一人、8号だ! 私が決めた!」

 

「無許可かよ」

 

「だから私に任せろ!」

 

 

無慈悲なツッコミはNGだ。勢いのあるツッコミなら許可しよう。

『スーパージャンプ』でブラックピットの前まで跳び出し、そのまま大乱闘への権利を獲得したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いの場となる『ミッドガル』は、どことなく彼女と初めて会った場所、深海メトロを思い出す。とはいえそこでは話す時間もなく、いつの間にか気絶していて、しっかり会話できたのは地上へ戻った後だったのだが。

 

 

「まったく、こんな暗いところ嫌だよね〜」

 

『…』

 

 

返事はない。自分の同族と同じ姿をしている彼女は例外なくダーズの支配下だったのだ。

 

 

「ハチまで巻き込んでさ、ほんとに…

───調子に乗らないでよ」

 

『─ッ!?』

 

 

『スプラシューター』から放たれたピンクのインクを回り込んでかわし、鳩尾に足を叩き込んだ。

 

 

「ハチには悪いけど、私は全部本気なんだよね。まったくもって負ける気しないんだよ… 聞いてる? ダーズ?」

 

『…ッ!』

 

 

本能が危険を知らせている。あの攻防でインクの滴一つも当たってないなんてあり得ない。でも目の前のファイターはそれを実現している。

別の人がいたら、本当にあのインクリングと同一人物なのかと思うだろう。

8号とは別の誰かは寒気を感じた。少し気を逸らしてしまう。その瞬間に3号は消えていた。

 

 

『…!?』

 

 

どこにいる、と辺りを見回すがあの黄色はどこにもいない。後見ていないのは上だけだ。

 

 

「遅い」

 

『…ッ!?』

 

 

視界が真っ暗だ。『バケットスロッシャー』の口を目に押しつけているのか。すぐに取り払おうとするも、それより先に何かぶつけられる。『パブロ』か。

 

 

『…!』

 

 

視界が安定しない。それでも何か動かなければ勝てない。そうだ、上から攻撃していても、顔に押しつけているのだから目の前に居る筈。ならばと『スプラローラー』を取り出した。

 

 

『─ッ』

 

 

押しつぶすように叩くが、既に3号はいなかった。重力に従い、落ちた筈のバケットスロッシャーもない。全ての動きが速すぎる。捉えたと思ったらもういない。

既に3号は背後へと回り込んでいた。何かが背中に強打する。吹き飛ばされた先に、『スプラッシュボム』が落ちて爆発する。黄色のインクまみれになりながらも思考だけは止めない。

 

 

「……」

 

 

『スプラローラー』を握る3号。これが本当の使い方だと言わんばかりのタイミングは意趣返しか何かか。

相手は一人だというのに、コンビネーションプレイを相手にしているかのようだ。実際には、上の足場を活かしてボムの爆発タイミングを遅らせたに過ぎない。

口で言うのは簡単だが、一人でできるようなものではない。速すぎる。

 

 

『…っ』

 

 

ならば爆風で擦り傷一つ加えるくらいは。『ホットブラスター』ならば捉えさえすれば範囲攻撃が当てられるだろう。死角を敢えてつくるのだ。そこに誘導して─

 

 

「だから、遅い」

 

 

両眼にとびかかる黄色のインク。死角だらけになってしまった。誘導なんて隙はない。

黄色と暗闇以外見えない筈の目には、何故か『ホットブラスター』を構えた憧れの人の姿があった。

 

─そうだ、ただ最高のバトルを繰り広げたからあの人に憧れたんじゃない。

─イカした少女の面と強さを併せ持つからこそ、彼女に憧れたんだ─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─ぬんにゃら ほうべらにょろめら にぃめらに…

 

 

「彼女は私に任せてくれ、今は先に進むんだ」

 

「へいへーい、ゲソ女に言われるまでもないって」

 

「だから3号!」

 

 

この声は、あの人。

 

 

「コホン、驚かせたか? 8号。」

 

『…3号サン、デスカ?』

 

 

辿々しくイカの言葉で話す。聞くのは兎も角、話すのはまだまだだ。イイダのようにはまだできない。

 

 

「ああ、君は… 問題ないね?」

 

『ハイ、助ケテクレテアリガトウゴザイマス。』

 

 

素顔が出始めた3号にお礼を言うと、八重歯が見える程の笑顔を浮かべた。

 

 

「まったく問題なし! そもそもハチと初めて会った時なんか攻撃しちゃってたし、デンワの時なんて覚えてないけど大変だったらしいじゃん!」

 

『攻撃シタノハオ互イ様デス。私ハソノ時ヲ忘レチャイマシタガ… デモ、ネリモノニサレカケタ時ハ助ケテクレタジャナイデスカ。』

 

「………」

 

『………』

 

 

しばし沈黙。目を合わせ続けていた。

 

 

「…ぷっ」

 

『フフフフ…』

 

「そういやそうじゃん! お互い様か! そうか!」

 

『…! デモ、今回ノコトハドウシマショウ!?』

 

 

慌てる8号に3号、インクリングはこう返したのだった。

 

 

「よし! それじゃ全部終わったらみんなでナワバトしよ! そういえば私に後輩出来たんだよ!」

 

『3号サンノ後輩…!』

 

 

未来への約束。

無力で何も出来なくても、それでもそれがあればいつまでも待てる気がした。

 





ミュウツー『タイミングが悪かったか。これはあまり期待しない方がいいか』

クルール「オイコラ待て! 期待しない方がいいとはどういう意味だ!」

ミュウツー『ここから聖地編に移行する以上、我々の出番は当然少なくなる。だが、私は公式からの供給が多いから痛くも痒くもないが』

クルール「んだとゴラァ!?」


クルール「次回だ! 『何一つだってないんだぞ』!」


ミュウツー『ヴィランズミーティングでもしたらどうだ』

クルール「ほう? 成る程な… クッハッハッハーッ!!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

九十九話 何一つだってないんだぞ


今回より本格的に聖地編へ入ります。それにより、今回から登場する子を意図的に絞っています。全員動かすのは諦めた。

あとPS5が当たらないです助けてください




 

これは何…?

ぼくたちはキーラと挑んだ。そして負ける。

辺りから聞こえる阿鼻叫喚の声がまるで遠い場所からの音のようだ。

そんな時のこの映像。これは… 走馬灯?

死ぬ直前にどうにか生き長らえるために見るものとどこかで聞いたことがあるけども、違う。死を回避する手段はこの時にはない。

 

 

二度目にこの世界での大乱闘が企画された時。それでその時のファイターが集まってた時。

同じ世界から来た人を喜び、怒り、違う世界から来た人と呑気に話す自分を遠い目で見ていた。

 

この光景を見るのは二度目。

二度しか開催されていない企画に三度も呼ばれたのはどこの世界を探しても(ぼく)だけだろう。

 

だから、この後の出来事もわかってる。遠い所で見ていた(ぼく)に一番最初に気づいたのが、よりにもよってぼく()だった。近づいてくる。話しかける。

 

何も知らないひたすらに呑気な自分。

ゼルダも居て、深く考えずに笑っていた自分。

宿敵が居て、ひたすら怒ってた自分。

未来のことなんか知らないから当然だと言うのに、それすらも一周回って滑稽だ。でも一番滑稽なのは(ぼく)だ。

 

そっくりな格好をした子供に対して、未来で時の流れに翻弄されるぼく()が、屈託なく笑って名前を聞かれた。

それに対して(ぼく)は、未来を憂い、過去を嘆き、とびっきりの自嘲を込めてこう返されたのだ。

 

 

「よろしく… ()()()リンクだ。」

 

 

お前が幸せに感じる要素なんて、何一つだってないんだぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スピリットが大勢いた敷地を突破し、先のドラキュラ城、謎の空間のようにどこかへ転移すると、そこは何処かの地形だった。

謎の空間のように語りにくいような場所ではないが、先の二つが特徴的過ぎて語るようなことがないのだ。それでもどこかにある聖なる力を敏感に感じ取っている者は少数ながらも居たのだ。

 

 

「……」

 

「ルキナ、クロムのことが気がかりなのはわかるけど休めるうちに休んだ方がいいよ。」

 

「はい、わかってます…」

 

 

入り口から西南西に行ったあたりには一つの集落のようだった。久々に自然らしい自然と触れ合える場所で急速をとっていたのだ。

 

 

「それにしても、ルフレ!」

 

「何かあった?」

 

「何かあった、ではない!あの胡散臭い像の言うことを信じる気か! やれ真実を語るだの、知恵と勇気を求めるだの!」

 

「信じるというよりは、情報のつもり。間違えるというよりは情報とは異なるかも、とは考えるよ。」

 

 

クッパの言葉にルフレは涼しい顔をして答える。

この大地に建っていたふくろうの形の石像。それに近づくと声が聞こえたのだ。それは所々にあるようで、この集落にもいくつか見つけた。

『時に囚われた王家の守り手知恵に通ず』

『松明の灯は時を示す我が語る時を刻め』

集落にある石像はこう残した。石像を囲むように並ぶ橙色の火を灯す内周の松明、青色の火を灯す外周の松明。だがそれぞれ一つにしか火は灯らず、別の火を灯したら古い火は消えてしまう。

 

 

「時を刻め… 時計なのか…? 内周は短針、外周は長針か?」

 

「…! きっとそうですよ! 我が語るって、つまり別の石像さんが時間を教えてくれるんです!」

 

「出来過ぎだ! 絶対罠だ!」

 

 

謎が解けたと喜ぶルキナにあくまで陰謀論を唱えるクッパ。

 

 

「12時10分だってさー」

 

「行ってきます!」

 

「待てと言うのに!」

 

 

話を聞いていたのか、リンクが時刻を語る。敬礼して飛び出したルキナを止めようとするが、もう止められない。テンポが速い。

 

 

「仮に罠だったら他の場所にも置いてあるって… おっと、出てきたね。これが『時に囚われた王家の守り手』かな」

 

 

理論で返そうとするルフレの背後、集落、時計の中央に現れた一つのスピリット。

 

 

「時… 時ね…」

 

「何かあったのかい?」

 

「こっちの世界で時の勇者がどうのこうのって聞いたことがある気がするんだよな」

 

「それは「戻りました! 手応えありです!」

 

 

大きく手を振りルキナが戻ってくる。少々不満げなクッパに対してリンクが油を注いだ。

 

 

「罠じゃないっぽいけど何か言うことある?」

 

「フン、ワガハイもそうではないと思っていたところだ! しかし、そんなことよりジュニアを見つけなければ! まだ見つからんのか、この!」

 

 

ドダドダと大きな足音を立ててどこかへ走り去ってしまう。この騒動でルフレは何を聞こうとしていたのか忘れてしまった。

 

 

「でも… そうですよね、散々探し回ったのですからお父様はきっとここの辺りにいるはずです。今のうちに鈍った体を起こさなければ! 私がお相手してもいいでしょうか?」

 

「うーん、俺も動いときたいけどなんか胸騒ぎするんだよな… 休んどけってやつなのか?」

 

「じゃあ、頼んでいいかな? 僕は情報の伝達と少し聞きたいことができたから」

 

 

立ち去ろうとするルフレにルキナが問いかけた。

 

 

「聞きたいことですか?」

 

「シークとトゥーンにね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リンク、トゥーンリンク、シーク。

同じ世界の出身と言われているのに、彼らにそんな様子は見られなかった。

そもそも、同じ名前を冠している者が勇者と呼ばれる存在なんて偶然にしては出来過ぎている。そもそもルキナがはじめに参加した時など─

 

 

「(あー! もう! わかりません! こういうのはルフレさんにお任せします!)」

 

 

早々に小難しい話を投げた。全くわからん。

ならばわかることをしよう。知恵に通じるという守り手を倒そう。ここは安心できる場所ではなく、戦いの場として選ばれた『神殿』なのだから。

赤い服を着たシークのボディの『仕込み針』を斬り落とす。相手の初撃を防いだルキナは突きの攻撃を狙うため、剣を構え直して走り出した。

 

 

『…っ!』

 

「…! 後ろ!」

 

 

『浮身』を利用して爆発と共に背後に回ったのを本能で感じたルキナはすぐに腰を捻らせファルシオンを振り抜いた。相手が構えた小太刀とぶつかる。

 

 

「…ッ!? 何っ」

 

 

なんと両足を右腕に組みついてきたのだ。

肘が押さえつけられ、曲げる事が出来ずに力が入らない。鍛えてはいるが片腕で人一人の体重は支えられない。腕が下がっていく。

 

 

『!!』

 

「ぐふっ…!」

 

 

しなやかな右足が腹部を蹴りつけ内臓を揺らす。一瞬呼吸を忘れ、酸素が口から飛び出るも、自分のやる事は忘れない。

片足が攻撃に動いたことで右腕の可動域が増えたのだ。これで力を込められる。

 

 

「はああ!」

 

『…ッ』

 

 

大きく振りかぶって右腕を回し、相手ごと地面に叩きつけた。相手の力が抜けた瞬間を見逃さず、右腕を抜いた。強い力で圧迫されたからか、軽い痺れが残っている。

 

 

「(なんとなくわかってきました… 無力化してからこちらを消耗させてくる… 守り手というのが比喩でないのなら納得です。)」

 

 

正面からは仕掛けてこないのだ。常に相手の隙をつき、反撃を封じた上で攻撃してくる。あまり経験のない戦法だ。それ故に対処が難しい。

 

 

「突きではなく面での攻撃… それも一撃離脱がいいですね。抑えられたくありません」

 

 

それでも攻略法をつくる。ここで立ち止まってはいられないのだから。

 

『炸裂丸』を打ち返し、かわした相手を、アーチを描くような軌道の剣で斬る。予想できていた故に先を越すことができた。腕には届かない。

 

 

『…っ』

 

 

体勢を低くして、離脱し、相手の出方を見る。今度はどう出てくるか。『浮身』で再び消える。今度はどこへ消える。後ろは先にやった。上もやったのだ。

 

 

「左ですか!」

 

『…!?』

 

 

先程から飛び道具を剣で撃ち落としているのだ。得物を持つ右側は外してくる。上も背後もやったなら、残るは左側しかなかった。

 

構えた剣が蹴りそのものを受け流す。後退して勢いを殺し、振り抜くは裏剣ファルシオン。

 

 

「はああ!」

 

『ッ!?』

 

 

強烈に振るった『カウンター』の一撃。蹴りをくらわそうと力を入れた真逆の方向へ斬り飛ばされていった。

 





ミュウツー『前回予告でヴィランズミーティングをやれとは言ったが、早速やれとは言ってない』

クルール「クッハッハッハー! 悪は急げだ! おまえらライバルに対しての鬱憤をはけー!」

デデデ「またグルメレースで負けた! 後人を洗脳常連客みたいに扱うな!」

クルール「しょっぱい! 次!」

ウルフ「何が鬱憤だ、オレ様はヤツと戦いたいだけだ。」

クルール「そんな答え求めてない! 次!」

ブラピ「ウルフに同じく。」

クルール「めんどくさがり屋が! 次!」

リドリー「あの小娘の存在そのものが許せねえ〜んだよなぁ!」

クルール「え? 怖…」

リドリー「テメェホントにヴィランか!?」


ミュウツー『次回、『まるで、この時を知っていたかのように』』


クルール「…たく、ガノンは?」

ミュウツー『未だに捕まってるぞ』

クルール「……クッパは?」

ミュウツー『息子を探しにいった』

クルール「まともなヴィランがいねぇ!」

ミュウツー『まともな悪役とはなんだ。それとお前もどっこいどっこいだ』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

百話 まるで、この時を知っていたかのように


百話! 到達!
なんかもうここまで続けられるなんてびっくりです。
これからもどうかよろしくお願いします!



 

「時の勇者かい?」

 

「うん、リンクは曖昧なようだけど二人は知っているかい?」

 

 

ルフレの問いにシークは口元に手を近づけて考え始めた。難しい表情を見るにいい結果は期待できないか。

 

 

「はいはい! ボク知ってるよ!」

 

「教えてくれるかい?」

 

「んーと、ボクの島ではね、」

 

 

トゥーンリンクの語る内容はこうだった。

昔は神々の力が眠るという王国があった。

その力を狙って生まれた悪しきものガノンドロフをどこからかやって来た時の勇者が封じたという。

時が経ち、再び悪しきものが蘇った時、時の勇者は現れず大地ごと海に沈めることでガノンドロフを封じたとか。

 

 

「でも、伝説はまだ残ってるんだ。時の勇者と同じ歳の誕生日には同じ服を着てお祝いするの。でも、ボクこの服暑苦しいからヤダ…」

 

「あはは…」

 

「ガノンドロフが封じられた…? 時の勇者に…?」

 

 

驚きに目を見開いた顔でこちらを向いてくる。何か違っているのだろうか。

 

 

「賢者達によって処刑するも失敗して影の世界へ封じたとボクは聞いてるけど」

 

「えー!? 赤獅子のおじいちゃんが嘘つく訳ないじゃん!」

 

「ボクもミドナやリンクが嘘をつくとは思えないけど… そもそもボクは時の勇者なんて知らない。」

 

「そうか…」

 

 

交わらない知識。交わらぬ歴史。

その大きな違いをどちらも嘘を言っておらず、真の話だと仮定すれば。合わせきれない矛盾を生むことになる。

 

 

「(未来を変えた…?)」

 

 

それは運命に抗ったルフレだからこその結論。未来を変えたとしても、元の未来が一つの時間軸としてそのまま残っているのだとしたら二人の知る伝説が噛み合わないことも納得がいく。

 

 

「(だから、()の勇者…!?)」

 

 

でもそれならば、結果的とはいえどちらの歴史でもガノンドロフを封ずることは出来た筈だ。失敗した軸が複数あるならばともかく、どうして成功した軸が複数あるのだろうか。

 

 

 

 

「ああ、ここかー」

 

「あのファイターが『知恵』なのでしょうか?」

 

 

先程まで岩で塞がれて通れなかった場所。その裏にファイターが居ただなんて。

集落の中央から離れたところにあった道。進めなかったそこの道が開いたのだ。

 

 

「ああ、ゼルダ姫か、違う時間の」

 

「ややこしいですね…」

 

「ルキナもマルスって名乗ってた時期があったって聞いたけど」

 

「ルキナに改名した訳ではありませんからね!?」

 

 

生まれてからずっとルキナで一時期のみ勝手にマルスと名乗ってただけです! 、抗議の声を尻目にリンクは自然と足を進める。

シークもトゥーンリンクもいないのだから自分が全部引き受けても構わないだろう。

 

聞いてるんですか!?

いいえ、全く。

 

軽い気持ちで、解放するための重い戦いに臨んだ。知恵、勇気、力。その戦いの当事者であるのは間違いないというのに彼はその神々の力を持たない。それだからなのか、彼は誰よりも深く考えなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『終点』化された『神殿』に並び立つ。

ファイター側の戦力には、リンクの名を継ぐ復活の英傑。当然ファイターの資格を持ち実力も申し分ない。

しかし言うならば、退魔剣に選ばれた勇者とはいえ彼自身は人間なのだ。尋常なほどに強くとも神に選ばれていても神の力を使うことはできないのだ。彼の知るゼルダとは違う。

 

では、その対戦相手はどうなのか。ハイラル王国の姫君にして七賢者の末裔の一人、リンクのよく知るゼルダとは違うゼルダ。

彼女も神の力を宿すことはなかった。それに触れたのは彼女の知るリンク。その力を彼は行使した後、なんの因果か彼女に『知恵』が宿ったのだ。

 

まるで、この時を知っていたかのように。

 

 

「はあ!」

 

『…』

 

 

気合の一振りで放った『ソードビーム』をまるで滑るようにかわす。そのままに放った炎の魔法による爆発をバックステップでかわした。次の動きを予測するためにゼルダの体全体を満遍なく視界に捉えたリンクはここで異変に気づいた。

 

 

「(なんだこれ?)」

 

 

ゼルダの右手の甲が光り輝いている。それは自分のよく知るゼルダが力を行使した姿を彷彿とさせた。不思議とその力そのものに邪悪な意思は感じられない。こんな状況だというのにむしろ懐かしくよく見知ったかのような感覚にリンクは戸惑うしかなかった。

 

 

『…!!』

 

「うおっつぉ!?」

 

 

それが仇となった。ゼルダの魔力により召喚されたファントムは直進した斬り上げによってリンクの体勢を崩していた。

確かに感じる力の性質と彼女の現状のチグハグさをリンクは自身の中で表現しきれない。

 

無意識に防御に動いた盾と剣を打ち上げられる。自分でもわかる無防備さを呪う暇すらなく幻影の剣は手堅く横腹を穿った。

 

 

「(ダメダメダメ! 落ち着け落ち着け!こんな気分で勝てるか!)」

 

 

痛みで心を冷静にさせろ。

意識を逸らすな。

鎧の繋ぎ目へ、斬り落とすように肩部分を斬るとファントムであった鎧はバラバラになって動かなくなった。動かした剣を止めることなく体ごと回転させる。一回転して振り返った時には振り絞った弓は発射されていた。

 

 

『…ッ!』

 

 

一心で放った一矢は一の腕に突き刺さる。一時身体を強張らせるが、足元に転がる『リモコンバクダン』を確認するとすぐに跳び上がった。青い爆発が起こる。

 

 

「くそっ、外れた!」

 

 

シーカーストーンを手に持ちながら悔しがる。すぐに駆け出し、マスターソードを回して逆手持ちに切り替えた。重力に従って落ちていくゼルダに向かって斬り上げる。

 

 

「…っ」

 

『……』

 

 

ぶつかったのはただのサンダルと足ではなく、雷の魔法を宿したキックである。

華奢な身から放たれているとはいえ、それでも強力なのだ。押しきることを諦めて弾き飛ばす。

 

 

「たく、少しは手加減して欲しいぜ、ゼルダ姫…!」

 

 

マスターソードを持ち直すと、牽制にと飛んだ『ディンの炎』を斬る。ならば再びと撃たれた炎を『ブーメラン』は吹き飛ばす。否、貫通する。そこには灼熱を纏った武具があった。

 

 

『!? …っ…!』

 

 

炎のブーメランが自身へと向かってくるのを見たゼルダは即座にシールドを放った。防壁に弾かれ、上空へブーメランは飛んでいく。それでも安心はできない。何故なら、リンクが迫っているからだ。

シールドに対してやってくるのは防御無視の掴み攻撃だろう。ならばやるべきはシールドを解除しての回避。シールドが消えて後ろへと身を引く。

 

 

「まだまだだね!」

 

『…!!』

 

 

しかし、リンクはその先へ行く。戦士として高い能力を持っているリンクは当然戦闘時の駆け引きにも強い。それについてはまだまだ経験不足なゼルダは勝てなかったのだ。

硬い皮膚をも貫く鋭い突きはゼルダの腰辺りへと吸い込まれた。次の攻撃に移るために刃を引くと、ゼルダは『ネールの愛』で簡易的な防御を謀った。

 

 

『…!』

 

 

マスターソードを棒のように見立てて、高飛びの要領でリンクは上を飛び越えていた。戦時とは思えないほど唖然とその姿を目で追っていた。

 

 

「それじゃ、覚悟…!」

 

 

弾け飛ぶ結晶のかけらを物ともせずに、剣を構えてリンクはにやりと笑う。当たっているはずなのに。ここを逃してはならないと堪えているのか。

 

 

「てええやあああ!!」

 

『…ぅっ…!!』

 

 

上空へと上昇しながらの『回転斬り』はゼルダを巻き込み、見えぬ空の彼方までぶっ飛ばしていた。技を出し終わって着地したリンクは飛んでいった空の向こう側を眺める。

 

 

「結局、あの光はなんだったんだ…?」

 

 

ゼルダの手の甲の光は、回転斬りで場外へぶっ飛ばす最後の瞬間も、ぶっ飛ばされた後も最後まで光り続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手甲を貫通して輝いていた光、『知恵』のトライフォースが消えていく。なくなったわけではない。その力を行使し終えたから再び体へと眠っただけだ。

 

 

「消えた… なんだったんだ…?」

 

「ねえ、シーク、これってさ…」

 

 

トゥーンリンクならわかるだろう。でも、自分で使ったわけではない。もう一つの『知恵』になにかあったのだろうか。

辺りを見回す。今まで辿った道の方を振り返ると、そこには。

 

 

「……!」

 

 

『知恵』の力が、刻まれていた。

 





カービィ「ぽ〜!」

マリオ「百話… だって…!? あの飽き性が… 100まで続けたって…!」

ピット「作者が一番びっくりしてるんだよね、まあ、そんなこんなで記念回の次回予告はメタ代表のピットが勤めさせていただきます!」

マリオ「メタ代表」

ピット「まずは最初の分岐点兼ガレオム討伐者、ファイアーエムブレム代表マルス!」

マルス「話すのも随分久しぶりな気がするよ、長い付き合いだ。最後までよろしくね。」

ピット「ギガクッパ討伐者! 全ゲームのヒロイン代表ピーチ姫!」

ピーチ「う〜ん、私ももう少し出番が欲しいのだけどね〜」

ピット「リオレウス討伐者! 物語的にはオリマーの方が目立ってた! トゥーンリンク!」

トゥーン「その言い方はなに!? ボクは聖地編でそれなりに出番があるからね! ね!」

ピット「キーラ討伐者! ある意味始まりのひと! フォックス・マクラウド! 」

フォックス「ありがとな? ま、まあもう少し続くからよろしく!」

ピット「ドラキュラ討伐者! でもレッドとリヒターの問題と並行してたから空気! シモン・ベルモンド!」

シモン「言い方に刺があるな… 見てくれて感謝する」

ピット「マルク討伐者! スマッシュブラザーズを愛しスマッシュブラザーズに愛された男、カービィ!」

カービィ「ぷやうい! んぽぱ! ぷゅ!」

ピット「最後の最後で人選ミス!」


マリオ「次回、『お友達になりたくて』!」


マリオ「という訳で良ければダーズ倒すまでよろしくね!」

カービィ「はぁーい!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

百一話 お友達になりたくて


ポケモンスナップやべえ… とりあえず推しを見つけて一息つきました。

リーフィアランターンが可愛いのはもはや語るまでもなく人類の思考そのものに張り付いていることなのではぶきます。
野生の姿を見て新たに魅力に気づくことができますね。ネマシュ可愛い

そして、これだけは言っておきましょう。
任天堂、株ポケ、そしてブロスター先生ありがとうございます!!!



 

「消えた…?」

 

「どうなってんの? ゼルダ姫の力でしょ?」

 

「私にも何が何だかわからないわ…」

 

 

フィギュアとなってからも、姿を取り戻してからも手の甲にある光は収まらなかった。

しばらく光り続けて、たった今ようやく消えたのだ。

 

 

「わっかんねーけど、とりまみんなのとこ戻らない? まだここ探索し終わってねーの、北の方は霧が濃くて行けないし」

 

「ルフレさんならわかるでしょうか? とりあえず戻りましょう」

 

「わかったわ、案内をよろしくね」

 

 

不自然に優雅に立ち上がったゼルダの真っ直ぐな瞳を見て一度合流することに決めた。未だに南東の方角に鬱蒼とした森がある。そこに向かっているだろう仲間達と合流することを決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そちらも光ってたの?」

 

「うん、ボクが持ってた知恵のトライフォースがね。でも、悪いようには動いてないと思う。それが想定外なのかダーズの計算のうちなのかはわからないけど」

 

 

シークの意見はただの見解に過ぎない。真実はどうなのか誰も知らない。それでもゼルダが納得したのは、それが神の力であるからだろう。

 

 

「ここの地形は三角形になっている。南西もとい左下には、知恵、ゼルダがいた。ならば右下に位置するこの森には勇気、リンクが捕まってると思う。」

 

「でも、ボク達ここにいるよ!」

 

「そうだそうだー!」

 

 

リンクとトゥーンリンクの幼稚な反応にわかりやすくため息をついた。わかっている癖に言わせてくる。

 

 

「こどもリンクだよ。勇気は勇者の魂に従う。そういうことさ。」

 

 

今度はゼルダも加わって三人で首を傾げる。それには頭を悩ませなかったのは、自身が知る歴史とは差異があることを知ったからだ。

知らない人相手にどう説明しようか悩んでいると、ガンナとソードが彼ら六人に近づいてきた。

 

 

「石像あったぞ! フレンドが待ってるんだって!」

 

「友を待つ少女の願い『勇気』に通ず、だってよ、後隠し道っぽいのもあった」

 

 

この場所に関係しているのがトライフォースだとわかると、それに関わる者達に自然と決定権が託されていった。とはいえ、完全にそうだというわけではない。クッパやピットは探し人を見つけるためにかなり自由に動いている。この二人も同じだ。

 

 

「隠し道か… そこにこどもリンクがいるかもしれない。行ってみようか」

 

 

特に反対する理由もなかったため、ソード、ガンナも引き連れて、石像の案内に従った隠し道を進む。

木々や茂みに覆われた道を抜けると、元から見えてた道へ着く。ガンナが憤慨していると新たに石像が現れたのだった。

 

 

「北、西、北、そのまま北… それで着いたのは湖ですか…」

 

「エブリワンがロードのスピリット倒してくれてたからスムーズだったね!」

 

 

現れた石像の案内で進んでたどり着いた先は池のような水溜り。案内された方角には進んだのだから後は─

 

 

「勇気を持って飛び込め、か。まあ、そういうことなんだろうな」

 

「魔導書が悪くなりそうだ。ローブだと水も吸っちゃうし、僕は残るよ」

 

「あ、ならば私も残ります。今のうちにお父様を探さなくては!」

 

「ガンナ、ウォーターで機械壊れたりしない?」

 

「舐めんな馬鹿タレ。水で壊れるようなシロモノじゃねえぞ!」

 

 

ルフレとルキナを残して、リンク、トゥーンリンク、シーク、ゼルダのほかにソードとガンナがついていくことに決めた。

 

 

 

 

トンネルのようになっていた池の底へ沈んでいくと、ほんのちょっとだけ開けた場所に到着する。そこにあったのは一人のスピリット。

 

 

「ん? もしかしてこどもリンクの友達?」

 

「隠れているのがこどもリンクならそういうことになるだろうね。」

 

 

ソードが体を震わせて水を飛び散らせたせいで周りの怒りを買っているのを背景に、一番乗りしたトゥーンリンクの質問にシークが答える。

『友』がこどもリンクなら、目の前の彼女はこどもリンクを待っていることになるのだ。

 

 

「よし、ここはボクが戦うよ。こどもリンクすごく強いからさ、体力キープ! ボクはまだ戦えるから!」

 

「それならば彼のことは私に任せてもらっていいかしら? えっと、その…」

 

「どうかしたのかい?」

 

 

ゼルダは他所を見ながら顔をほんのり赤くして手をまごつかせている。本当に小声でこう言った。

 

 

「お友達に… なりたくて…」

 

「「「………」」」

 

「あ、そういうのじゃないの」

 

 

万人が覚えたまさか、というのを即座に否定する。それだったらそれはそれで大問題だ。

 

 

「とりあえず行ってきまーす!」

 

「あ、ちょっと」

 

 

逃げるのか、という意味合いでのシークの指摘を無視して球体状のものに触れた。その関係で弄られているのは自分も同じなのは内緒だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トゥーンリンクは記憶を辿り、足元の地面からフィールドを把握する。確かここは『再会の花園』だった。少し自信がないのには訳がある。

 

 

「(見えない…)」

 

 

周囲に立ち込める霧だ。それが判別を難解なものにしているのだ。個人で良かったのかもしれない。少なくとも同士討ちの心配はないのだから。

 

 

「(誰かいる!)」

 

 

『勇者の弓』を引き絞り撃つ。当たった手応えはなかったが、霧を縫って射られた矢を誰かが避けるのを確認した。体躯はトゥーンリンクとそこまで変わらない。

相手の場所が見えづらいのは敵も同じ。声を出して居場所をバラす必要はない。そう考えてトゥーンリンクは声を発していなかった。だが、このフィールドを用意したのは相手側。それを考慮すべきだった。

 

 

「うわっ」

 

『…!!』

 

 

しずえの姿をしたスピリットが箒を手に飛びかかってきた。後ろへ下がろうと咄嗟に動いた結果、声が漏れ出てしまいもう一人の敵から火を燃やす矢を突き刺さされてしまった。

 

 

「…っ! (この矢は!)」

 

 

この攻撃で敵の詳細がわかった。相手はしずえとこどもリンクの姿をした者。そして、しずえはこの霧の中でも目が利くらしい。見えづらい視界の中、ニ対一だ。

 

 

「そうだ!」

 

 

スパァンと横一閃に箒の柄を斬りながら、声を上げる。こうなれば音を頼りに攻撃を放っている敵の的になるが。

 

 

『…!?』

 

 

しずえの形の相手の背を『ブーメラン』が抉る。音の方へ攻撃しているので、もう一人が近くにいれば必然と誤射もしやすくなるのだ。

おまけと言わんばかりに攻撃が放たれた方向に『バクダン』を投げ込む。当たったかはわからないのが短所だ。

 

その作戦を知ってか、一人が距離を取って霧の中へと姿を隠す。トゥーンリンクもそれを追った。

薄く見える影と離れていく鈴の音でどこに逃げているのかわかる。跳び上がった姿を見て更にスピードを上げるトゥーンリンクの片足が空を切った。

 

 

「うわっ!」

 

 

地続きではないフィールドであることがわからずに空中へと足を踏み外したのだ。咄嗟に漏れた声に従い、後ろから爆風が起きる。背中を押すように起爆した『爆弾』はトゥーンリンクの体を傾けさせた。

 

 

「(ダメっ)」

 

 

無意識に手を伸ばしたのはもう一人の敵も足場にした缶箱だ。敵が乗ったことにより重量で下がっていたのだ。その影を目印に手を掛けられた。

 

 

「こんのッ!」

 

 

崖から登りつつも待ち伏せしていた敵を斬る。声を出したことで再び他所から『ブーメラン』が飛んでくるが、

 

 

「…ッ!」

 

 

飛んでくるだろうとわかっていれば防ぐのは無謀ではないのだ。それにより位置を特定したトゥーンリンクはジャンプして『フックショット』を放つ。鋭い先に確かな手応えを感じた。

 

 

「うりゃあ!」

 

『─ッ!!』

 

 

引き寄せ、足下へと振り回す。何かにぶつかる感覚があった。きっと足場にいたもう一人にヒットしたのだろう。

 

 

「チャンスだ! いっけええー!」

 

 

フックショットを短く纏めると左手のマスターソードを後ろへ引く。そして上昇とともに一気に振り回した。

 

プツプツと綱が斬れる音が四つ。そのあとに空気を裂く音がした。支えられて天秤のようになっていた足場を敵ごと斬り落としたのだ。霧で見えない故にトゥーンリンクが何を為そうとしているかもわからなかった筈だ。

 

 

決戦の結末は霧の中へ消える。

だが、霧の中で彷徨い続けるように生き腐っている存在がいることを本人以外は誰も知らなかったのだ。

 





リンク「速い…! 泳ぎとはいえ負けるなんて…!」

トゥーン「海賊舐めるなってこと! 泳げなきゃやってらんないよ!」

ゼルダ「泳げない海賊の漫画、どこかになかったかしら?」

シーク「あるよ、あるからそれ以上は裏でやって…」


トゥーン「次回! 『規格外だっただけだ』、だよー!」


ソード「だから大丈夫か、って言ったのにー!」

ガンナ「壊れてねえよ! 水が中に入っただけだっつーの!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

百二話 規格外だっただけだ

この章の主軸になる子が登場です。
ポケモンスナップ超楽しい一生遊べるってこれ前回も言ったなようなそうでもないような


リンクは戦慄する。冷や汗が滝のように止まらない。腰を抜かした老人の如く座り込む姿が、戦士として無様で見苦しいにも関わらずそんなことを考える余裕もない。一緒に戦っている筈の二人を勘定に入れる暇もない。

剣技の腕の差ではない。見た目は自分より遥かに若いのに自分よりも明らかに戦い慣れている。

何が起きてる? 目の前の人間は本当に人間なのか?

 

剣の質は明らかにこちらに分があるのに、それでもなお自分を圧倒する彼はなんだ。

絢爛さと動き易さを併せ持つローブドレスを着た姫が自分にかけていた声がようやく届いた頃には短い刃が振り下ろされていた─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえり。どうだった?」

 

「かんっぜんに戦力過多だった。あいつ一体しかないとか聞いてない。」

 

「そういえばゼルダは角の隅の方にいましたね…」

 

「あっ! 同じ場所だったのか!?」

 

 

ルフレとルキナが池から上がってきた仲間を出迎える。ゼルダがいたのは三角の左下の方だった。だったら同等扱いの勇気は右下の隅にいるのが道理だ。

 

 

「他のみんなはどうしてる?」

 

「中央にあった山に登ってる。そこにもスピリットはいるし、頂上なら不思議な力で見えない北の方も見えるかもしれない。」

 

 

移動しながら他のみんながどうしているのか気になったシークが聞いた。先に捜索の範囲を広げていくとルフレに伝えたのはマルスとフォックスだった。

 

 

「さて、こどもリンクがいるんだっけか。どう戦うつもり? 彼は強いよ。普段は手を抜いてるようだけど」

 

「え? そうなのですか!? 全然気づきませんでした…」

 

「ルフレもこどもリンクの本気を見たことあるの?」

 

「そういう訳じゃないかな」

 

 

人の能力をステータスのように数字でわかるルフレにはお見通しだった。トゥーンリンクはこどもリンクの実力をどこかで見たことがあるらしい。

 

 

「でもあれは敵を舐めているというよりは興味がないというべきかな… 敵自身も勝敗もどうでもいいって思っているような…」

 

「ん〜、兎も角油断は禁物ってヤツだな! よし、決めた! ゼルダ姫、俺も一緒に戦う!」

 

「えっ? 本当? 助かるわ、ありがとう!」

 

「キミも行くのは心配だな… ボクもついてこう」

 

「ちょっ、どういうことだよソレ!」

 

「へえ… 手ェ抜いてたのか気になるなあ」

 

「まあまあ、ここはトリニティで任せようよ」

 

 

戦う相手は決まる。ちょうどそのファイター、こどもリンクの元へ辿り着く。三人でそれに触れるが、これでも戦力が足りなかったのだと間もなく知ることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして冒頭に至る。

空の開けた『神殿』の『終点』。ここにいたのは予想通りこどもリンクだった。覚悟の上だとはいえ、小さな子供相手に数で攻めるのは少し気が引ける。そう思えたのは一瞬だった。

 

数を増やして撃った『仕込み針』は数瞬のうちに全て斬り落とされ、『フロルの風』で姿を消しつつ奇襲を行なったゼルダは盾でガードされた挙句蹴飛ばされた。

それを見て即座にリンクは斬りかかるものの、木の皮ごと剥ぎ取ったような盾で流され柄で柔らかい脇腹をぶん殴る。怯んだ隙に背後へと回り込まれて背中を斬り刻まれた。

 

 

「(なんだこれ…)」

 

 

リンクが感じたのは恐怖だけではない。

 

 

「(なんなんだこれ…!?)」

 

 

深淵、のようなもの。ダーズの支配下にあるという理由だけでは納得できない程の深さ。十にも満たない子供がどうやってこれを育ててきたのだろう?

 

座り込む形となって下手人を見上げる。確かに勇者の証たる勇気は左手の甲に光っているのにそんなこと考える余裕はない。意識を少しでも逸らしたらそれだけで決着がついてしまいそうだ。決して彼らは油断していない。彼らが警戒する以上に相手が規格外だっただけだ。

 

 

「っ! 立って!」

 

「ああ…!?」

 

 

振り下ろされるコキリの剣を叱咤されたシークが小刀で受け止める。それに従って立ちあがろうとするリンクがようやくそれに気づいた。

いつの間にやら足元に設置してあった『爆弾』。こどもリンクがバックステップで退避する中リンクとシークは二人まとめて吹き飛ばされた。

 

 

「ダメだわ…! 近づいたら負ける!」

 

 

二人の援護に向かわなければならない。しかし、背中に這い寄る恐怖がゼルダの思考を後ろ向きにする。『ファントムアタック』で遠距離から狙うことを選ぶが、

 

 

『…!!』

 

「い…!? いち、げき…!?」

 

 

大きく振りかぶっての一撃で幻影は崩れ落ちた。幼い体躯もあってか力は決して覆せない差があるわけではない。力の使い方が上手いのだ。そして技と速さ。レベルが違う。ルフレが漏らしていた、手を抜いていたというのは事実だったのだ。ファントムをも両断する剣士相手にどうすればいいのか。こちらへ迫ってくる。

 

 

「やめろッ!」

 

『…ッ!!』

 

「ゼルダ姫さぁ…! 友達になりたいんじゃなかったのかよ…!? ここで折れていいのかよ!」

 

「…!」

 

 

横から入ってきたリンクの一太刀をこどもリンクが抑える。鍔迫り合いはリンク優勢だ。こどもリンクの力が見た目にそぐわないと言っても、体躯の勝るリンクを上回るほどではない。リンク自身も腕力は鍛えているからだ。

 

パキンと距離をとって双方相手へ剣を向ける。勝てるのが単純な力だけなんて認めない。

それこそ記憶がない時から守る為に磨いてきた刃なのだから。

 

 

剣先を横に振るう。服に掠れる程度に最小限の動きで回避したこどもリンクは連続で突き攻撃を繰り出す。首を傾け体を捻らせ盾を前に構えて防ぎきる。

 

 

「(深追いしてこない… そう簡単に隙を見せないよな…)」

 

 

突きと言っても身を引いたリンクへ押し込んだりはしていない。かわされたらすぐに次の技にいくのだ。ならばと今度はこちらが突きを繰り出す。リーチが違う攻撃は避けきれないと判断したか、盾で守られた。

 

 

「チャンス!」

 

『…!』

 

 

剣を突き刺した盾を封じ、右足で回し蹴りを放った。個人的な勝ちより全体の勝利を狙った攻撃だったが─

 

 

「!?」

 

「あの技…!」

 

 

回転する足の下を転がって通り、後ろへ回られた。そして背中を斬られた。リンクには何が起きたのかわからない。だが、他の二人にはどのような攻撃なのか見えた。

 

 

「折れない… ええ、わかったわ! やってみせましょう!」

 

「ちょ…!? 俺ごといく!?」

 

 

 

『ディンの炎』を技終わりのこどもリンクに当てる。近くに居たリンク諸共だ。だがようやくまともに攻撃が通った。

 

 

「(ゼルダ様とは別ベクトルでアグレッシブだな…)いや、やっぱ気にすんな! 俺ごといけェー! シークもな!」

 

「…! それは…!」

 

 

咎めようとする言葉をシークは飲み込んだ。良心が痛むが、まともにやっても埋められない差があるのだ。

防御を捨てて盾を背にしまうと、こどもリンクへ組みついた。初手のように数を重視して撃った『仕込み針』はリンクの肩にも突き刺さるがそれ以上にこどもリンクに刺さった。

 

 

『…ッ!』

 

「いっ… この!」

 

 

脇腹の脆いところへ肘打ちされるが、気合で耐える。攻撃は二人に任せ、押さえつけるのに専念する構えだ。

 

 

「このまま押さえつけてて!」

 

 

ゼルダが駆け出す。足に稲妻が走り、速度も上げていく。

 

 

「はあ!」

 

 

こどもリンクへ跳び蹴りを放った。リンクがいるというのに一切の躊躇もない。完全に仕留める気のゼルダにリンクは早くも先の発言を後悔し始めた。

 

 

『…!!』

 

「ちょ… 外して…!?」

 

 

青褪めているリンクを正気に戻したのはボキッという音だった。こどもリンクの右腕がスルリと抜けていく。肩の骨を外して拘束を解いたのだ。そう理解できたのは一瞬だった。

 

 

「どわっ!?」

 

「嘘ッ」

 

 

まだ動く左手を使って巴投げをしたのだ。無防備なままポーンと投げられたリンクの背中に、やめられない止まらないイナズマキックが突き刺さった。リンクには致命傷である。

 

 

『…ッ』

 

 

後ろへと跳び上がって窮地を脱したこどもリンクだったが、最後の一人が立ちはだかった。

 

 

「悪いけど…! ここまでやってくれたらボクも応えない訳にはいかない…!」

 

『ッ!!!』

 

 

咄嗟に振るった剣はシークが体を張って止めた。短い腕に絡みつく。シークの自重が軽めでもこどもリンクの力が強くとも、この状態でなんでもないように得物は振るえない。ダメ押しで刃部分をシークが覆った。剣としての攻撃は無理だ。右手は肩を脱臼したままで使えない。

 

 

「はあああああああ!」

 

『…』

 

「(…! 力が抜け…?)」

 

 

リンクの意志を踏み台として高く高く舞い上がる姫。稲妻を帯びたままのキックがシークごとこどもリンクを撃ち抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ…」

 

「お疲れ様。辛勝ってところかな。」

 

「やっぱりこどもリンク強いでしょ!」

 

 

ルフレが彼らを労い、トゥーンリンクはまるで自分のことのように胸を張った。三体のフィギュアを前にゼルダは座り込んでしまった。

 

 

「でもゼルダ、これでこどもリンクを助けられましたよ!」

 

「そういえばまだ光ってる… ってリンクとシークを戻さなきゃ!」

 

 

左手を見続けたトゥーンリンクだったが、仲間外れは寂しかろうと慌てて二人を元に戻した。

 

 

「うー… ここはどこ?」

 

「ボクは乗らないからね」

 

「なんでェ!?」

 

 

そんなどうでもいい漫才が頭に入ってこないほどゼルダは落ち着きなく歩き回る。

 

 

「なんて声かけたらいいのかしら? 大丈夫? いや、助けたのは私よ? これはダメ!」

 

「なんだコイツうぜえ」

 

「ガンナ、シッ!」

 

 

恥じらいか戸惑いかなかなか手が進まないゼルダに対して短気なガンナが待てる筈もなく。

 

 

「おっせえわ」

 

「待ってまだ心の準備が!」

 

 

傍から台座に触れて元へ戻すことにした。静止は完全に間に合わず、幼い勇者は鼓動を取り戻した。左手の光は収まっていく。

ビクッと跳ね上がり、何を話していいかわからなくなる。

 

 

「えと、あの、その」

 

「………何?」

 

 

こどもリンクは怪訝な目でゼルダを見ている。目が覚めたら目の前でまごついているのだから怪しむのは当然かもしれない。見かねてルキナが助け船を出した。

 

 

「ゼルダがあなたを助けてくれたんです。」

 

「えっ、ちょっと待って」

 

「リンク、シッ」

 

「………そう。」

 

 

それを聞いてもこどもリンクはそれまでの対応を崩さない。

 

 

「あの、こどもリンク」

 

「これどういう状況なの?」

 

「…ゼルダに何か言うことあるんじゃないの?」

 

「………」

 

 

こどもリンクの、言葉を意図的に遮る態度にシークが苦言を述べる。だが、こどもリンクはゼルダの方を見ずに言った。

 

 

「これはこれはお姫サマ。随分とご苦労なことで」

 

「なっ…!」

 

 

慇懃無礼。流石にこの態度はない。思わずシークが立ち上がるがこどもリンクは気にすることもなくただ状況を聞いている。

 

 

「………」

 

 

唖然とするファイター一行の後ろでゼルダは少し俯いていた。

 




ゼルダ「どうしてあなたはこどもリンクという名前なのかしら?」

こどもリンク「はあ? そういうファイター名だし…」

ゼルダ「けれども、まるで悪口のようで…」

こどもリンク「………」

ガンナ「不満あんなら私が考えてやるぞ。んーと… ガキリンク!」

こどもリンク「こどもリンクでいい!」


こどもリンク「次回、『手を伸ばす為の戦い』」


こどもリンク「あんたは知らないだろうけど、ぼくがそう呼べって言ったの!」

ゼルダ「何故…」

こどもリンク「ちっ……………」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

百三話 手を伸ばす為の戦い


や っ て し も う た 。


今まで投稿が遅れることがあっても日を跨ぐまではいかなかったのに…
本当に申し訳ない…


 

ルフレが中心となってリンク、ゼルダが動く、いわゆる切り込み隊。ならばその他ファイターで構成された部隊は掃討隊とでも云うべきか。

東南の森のスピリットを目に見える範囲で解放した彼らは三角の中央へと向かっていた。そこにあるのは崖と錯覚するほどの険しい山だった。

 

 

「ピチュッピチュ!」

 

「フガアアァ!」

 

 

ピチューとガオガエンが大きく声を上げた。おおかた、勝利の雄叫びというべきか。

ピチューはガオガエンを救出した。この闇と混沌に満ちた世界で見事助け出したのだ。

ニコニコとその様子を見守るのはピカチュウ。最初は先輩として、内気なプリンの分もあれやこれやと世話を焼いていた過去が懐かしい。巣立ちには寂しさもあるが、それ以上に成長が嬉しかった。だからこそ自分のことに専念できる。

 

 

「ピカッチュウ…」

 

 

プリンはピカチュウと戦った。臆病ながらも自分がやるべきこととして。

ピカチュウにはそのやるべきことが多かった。サムスを助け出した後もリドリーのことだって残っている。でももう一人、自分が成さねばならぬことが残っている。

 

ピカチュウと彼は同郷ではない。だから彼の気配はわからない。それを当てることができたのは、空白である中央にトライフォースに連なる者はいないだろうという予想と願望だった。

 

 

「ピカチュ!」

 

 

意識が断絶する直前の刹那、伸ばされた手に応えることすら出来なかった。あれがなかったら彼だって逃げきれたかもしれない。そうすれば全てカービィに任せなくてもよかった。

しかし、理由はどうあれそうはならなかった。それが現実だ。現実を生きるしかない。進むしかない。

 

だったら、遅くてもいい。こちらも手を伸ばす。これは懺悔のための戦いではない。後悔の一撃は出さない。伸ばされた手に向かって手を伸ばす為の戦いなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

囚われているファイターと戦うフィールドは大体、そのファイターに所縁ある地である。その場所が一番慣れているからだろう。

運要素を絡まないフィールドの『終点』。ステージの原色を保ちながら戦いをできる限り公平にするため、『グリーンヒルゾーン』はそこと同じ形になっている。

何が言いたいかというと、基本的にダーズ側が有利になるように仕組まれているわけだ。

 

 

『…!』

 

「ピカッ」

 

 

丸まっての『ホーミングアタック』を間一髪で回避した。相手はソニック・ザ・ヘッジホッグ、世界最速のハリネズミ。スレスレとはいえ初撃を避けられたのは幸運だった。

 

 

「ピカチュッ!」

 

 

捉えた青い影に向かって『でんげき』を放つ。当たった。いや外した? 速すぎてそれすらもわからない。技の速さ以前に出す判断が遅い。一点に向けて撃とうとしたら既に違う場所にいるのだ。

影は跳び上がり、ようやくその顔をはっきり見られた。

 

 

「ピカチュウ!」

 

『…』

 

 

呼びかけてみる。反応はない。

今まで同じことをした者は多くいただろうにそれでも思わず声を上げずにはいられなかった。

でも、憎むべきはダーズ。悪いのは声が届かないほどソニックを速くしたダーズなのだから。

 

 

「ピカッ!?」

 

 

影が目の前を通り過ぎたと思ったら蹴られた。速すぎる。先手を取るのは諦めた方がいい。ならばどうすればいい?

 

ソニックだっていつも最高速でいられはしまい。方向転換やジャンプをすれば数瞬遅くなる。

そして速度に目が慣れたとしても攻撃を当てられなければ意味がない。カウンター、もしくは範囲攻撃ならばどうだろう。しかし、そのどちらもピカチュウは経験があまりなかった。

 

 

「ピカ…!」

 

 

そうだ。ソニックは遠距離から攻撃できない。サムスのような武装はなく、己が身一つで戦っている。それを圧倒的なスピードでカバーしているだけ。

 

青い影が近くに来ている。それに気づいたピカチュウはどこを狙うこともせずただ辺りに電撃を撒き散らした。

 

 

『…ッ』

 

 

近づいてきたソニックが少し離れた場所で止まる。ぽんぽん急には止まれない。ピカチュウの周りには電撃がバリアのように溢れている。

ピカチュウがやっていることは単純だった。ピチューは電気の扱いに慣れていないからこそ、必要以上に電気を強くしている。結果、あのパワーと自分へのダメージだ。つまりピカチュウだって普段やらないだけで同じことができるのだ。

 

周りに常に強力な電気を帯びる。せいでんきなんて目じゃない。しかし、自分へのダメージを最低限にしてるとはいえ、消耗するまで粘られたら負ける。

 

 

「ピカァ!」

 

『…ッ!』

 

 

『でんこうせっか』がボルテッカーほどの威力を持っている。初めからマックススピードを出すのはいくらソニックでも無茶だ。

だが、ピカチュウもぶつかった時に眉間に一発食らっていた。痛みで電気の放出をやめてしまったが、即座に電気を放つ。スライディングしてきた相手に張りついて『かみなり』を呼んだ。

 

 

「ピカピカ…!」

 

 

誰も見ていないが、得意げに笑う。

ピカチュウは確信は出来なかったが、予想はしていた。退屈なのが嫌いなソニックが持久戦なんてできるものかと。それは操られているから消えるものではなく、ソニックの本質だからこそ消えないのだと。

 

 

『ゥッ!!』

 

「ピィー…!」

 

 

離さない。届きすらしなかったあの時とは違う。体が徐々にちぎれそうになるようなピリピリとした痛みが走る。だが相手はそれ以上のダメージになっている筈だ。

 

 

『…ッ!!』

 

「イィ…カ…!」

 

 

それだけではない。力では勝てないとでも踏んだのか、振り落とそうと、どんどん加速してきた。両足は既に離れ、両手でなんとか腰にしがみついている状況だ。

周りの景色が様々な色の線にしか見えない。これがソニックの世界。もう少し見たいと思ったが目が回ってきた。もう保たない。

 

 

「カァッ!」

 

『…!』

 

 

腹筋を使って両足をプルプルと手繰り寄せ、ソニックの片足を挟んで転ばせる。ズザザザと草に滑り込んだ場所はちょうど崖近くだったのだ。

 

 

「ピィカ!」

 

 

大地を蹴り、しがみついたまま身を投げだした。いくらソニックでも空を足場にはできないはず。あの超高速のスピードも宙では出せない。出来るだけ、奈落にほど近くなるまで手を離すな。

 

 

『ッ!!』

 

「ピィィ…!! カアァ!!!」

 

 

目がまた回る。無理やりまるまって突き落とそうというのか。ほとんど無意識に呼び出していた『かみなり』が二匹を貫いていた。ようやく手を離して一匹のみが落ちていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピカァ…」

 

「無事か?」

 

 

思わず座り込みそうになったピカチュウ。サムスの心配する声が、両足の力を留めてくれた。

黄色い爪先が金色の台座に触れる。色を失っていたその姿はたちまち深い青へ戻っていった。

 

 

「フア〜ア、何だ? ここ…」

 

「ピカッピ!」

 

「oh! って、ピカチュウか。そういやあんなことがあったな…」

 

 

座り込んだ状態から少しへそを曲げて寝っ転がるソニック。両手を頭の下に組んで、不可思議な空を見上げる。

 

 

「ま、とにかく無事で良かったな! にしても何でこんな…「ストップ、ストォップ!」what?」

 

「ピ?」

 

 

目を閉じながら徹底的に無視しているような素振りのこどもリンクをなんとか引き止めようとしているソード。完全にそっぽを向いている。

 

 

「連帯責任はゴメンだぜ〜…」

 

「何かあったのか?」

 

「ゼルダのことこどもリンクが無視したらシークがカチンときたらしくてさ、無視させない謝らせるって何故かソードと俺まで巻き込まれてさ… あ、逃げた」

 

 

抜け出してきたリンクにサムスが事情を聞くと疲れた顔をして答えた。そうこう言ってる間にこどもリンクが逃げ出してソードが追っていく。

 

 

「成る程な… OK! 捕まえてくるぜ!」

 

「マジで!? 助かる、サンキュー!」

 

 

と、お礼を言った時には既に一陣の風が吹いて、ソニックの姿はなかった。

ピカチュウとサムスはしばらく目を合わせると相変わらずだな、と笑い合った。

 





デデデ「第二回ラジオチャンネルDDDの時間だ! 司会進行はプププランドの大王たるこのオレさまデデデと!」

ウォッチ『にかいめがあるとはおもわなかったぼくとルイージでおおくりするよー!』

ルイージ「えっと、緊張するな、よろしく」

デデデ「コラー!! キサマを呼んだ覚えはぬぁい!」

ウォッチ『まきじたしすぎー』

デデデ「黙ってろー!」


ルイージ「じ、次回『誇りを持って』」


デデデ「出てけこのペラペラー!」

ウォッチ『どうしておこってるのー?』

ルイージ「ボク… 何のために呼ばれたんだろう…」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

百四話 誇りを持って

先週投稿が遅れたので早めに投稿します。
いい加減に懲りろよ…



「Hey、princess! とっ捕まえてきたぜ!」

 

「まあ、ありがとう!」

 

「この世話焼き野郎…!」

 

 

ソニックに抱えられたこどもリンクはあるがままにゼルダに差し出されるしかなかった。

ソニックが追っ手に加わっていると知ったこどもリンクは早々に隠れることを決めたのだが、その前にソニックに捕まったのだ。

 

 

「手荒な真似をしてごめんなさい。」

 

「謝るぐらいなら最初からやるな」

 

 

ぶっちゃけ事情を聞いたソニックが勝手に捕まえてきたのでゼルダは悪くないのだが、それでも謝るゼルダにこどもリンクの対応は冷淡だ。

 

 

「何かしようと言うわけではないの、友達になりたいの」

 

「ぼくはなりたくない。」

 

「そんなこと言わないで」

 

「あんたには友達が少なそうだから教えてあげる。世の中にはどうしてもわかり合えない人が存在するんだ。あんたの場合はぼくでぼくの場合はあんただ。」

 

「そんなの… わからないじゃない」

 

「うん、あんたはぼくのことをわからない。少しも知らない。わざわざ教える気もない。だからわかり合えない。」

 

「………」

 

 

突っぱねた対応に段々とゼルダは俯いていく。少し涙が浮かんでいる。ちなみにシークは友達が少なそう発言から既に血管が浮きでている。

 

 

「オイオイ、それは流石に…」

 

「もういいでしょ? ぼくいくよ」

 

「Oh!?」

 

 

腕を捻って拘束を外すと瞬時に姿を消した。誰も追えなかった。

 

 

「まったく… へそ曲がりにもほどがあるぜ」

 

「難儀だな…」

 

「ピカチュ…」

 

 

黙って聞いていたサムス、ピカチュウもこどもリンクの対応に渋い顔をしている。

 

 

「本当に彼と友達になりたいの? 相手は選んだ方がいいと思うよ」

 

「だって…」

 

 

シークが諭すようにゼルダに言うと彼女はぽつりと呟いた。

 

 

「だって… あんなに苦しそうなんですもの…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

崖のような山を登った頂上にあったのはリンクには見覚えのあり過ぎる剣とそれを番人のように守るファイターだった。

 

 

「ひえー、最後の試練… みたいな?」

 

「じゃ、任せたリンク!」

 

「また抜かなきゃダメなの…?」

 

 

あれ疲れるんだよ、と語るが、抜いて疲れたものはリンクの背中にある。

 

 

「もう仕方ないな…」

 

「ねえ、君たちちょっとオハナシがあるんだけど…」

 

「「ヒョエエエ!?」」

 

「じゃ! 期待に沿えるように頑張りまーす!?」

 

「リンクが! リンクがエスケープ!?」

 

 

背後からおどろおどろしく話しかけてきたこどもリンクへの恐怖に慌てて乱闘へとチケットをもぎ取った。任したのはソードだもの。仕方ないね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

完全に逃げるようにして移動したこのステージは『ミッドガル』を見下ろす『終点』の世界。

そこにいたのはクラウド・ストライフだった。誰よりも大きく、厚い大剣を軽々と使いこなす剛腕の持ち主だ。見た目はリンクとさほど変わらないというのに、人は見た目によらないものだと平然と崖を登る自分を棚に上げて思った。

 

 

『…!』

 

「おっつぉ!」

 

 

初動を飾ったのはクラウドの『破晄撃』だった。緑に光る斬撃を跳び上がって回避する。クラウドの得物は剣一本だというのに攻撃はえらく多彩だ。

 

 

「らぁ!」

 

 

跳び上がって振り下ろしたマスターソードと横に構えたバスターソードがぶつかり合う。

カキンと金属音が鳴り響く。力比べはギリギリと拮抗し火花が飛び散る。

 

 

「こんのッ!」

 

『…!』

 

 

地面に降り立ったリンクは全身を捻って回り、刃を振り切る。後ろへ飛ばれて剣先が僅かに掠れただけだった。

 

 

「はあ、はあ、簡単にはいかないか…」

 

 

クラウドはソルジャークラス1st相応の実力を持っている。セフィロスを止めた実力もあり、リンクが定められた伝説の勇者であろうと遅れは取らない。

ましてや、リンクは戦闘開始時点で全快ではないのだ。すばしっこいこどもリンクを追いかけていたからだ。先の戦いでも彼にいいようにやられていたプライドは完全に戻ってはいない。

時代が違えど、知恵の存在とともに戦い、自らとともに屠るしか勝つ手段がなかったのだから。

 

 

なんの工夫もなく射った『弓矢』は全て弾かれる。飛び道具で上回ろうとしてもそう簡単にはいかない。だって銃より遅いから。

 

 

「(いや… やっぱりダメだ… 剣で勝とう。そうじゃなきゃダメだ。次もこんな戦いを続けるつもりか?)」

 

 

楽な方法へ逃げようとした自分を恥じる。次の相手が遠距離攻撃の面で上回れるとは限らない。剣術を極めたクラウドに剣で勝てないと頭の中の霧は払えない。

 

 

『…ッ!』

 

「つーわけなんで! 剣で勝つからよろしくな!」

 

 

大剣の振り下ろしを受け流し、地面へと激突させる。横一閃に剣が動き、クラウドへ切り傷をつける。今までの自分とは違うのだという意味で改めて挨拶をした。更に突き攻撃で相手へと先が迫る。

 

 

「チッ!」

 

 

左手の腕でマスターソードが退かされ、進行方向がズレる。気を取り直して腹部へ膝を入れようとするも、復帰した大剣がリンクの横っ面をはたいた。

 

 

「ぶべっ!?」

 

 

口はよく動くも、戦闘体勢は解かない。立膝から即座に立ち上がり、剣を構える。お互いが走り、刃を眼前で交わし合う。

 

 

「このッ…!」

 

『…ッ…!』

 

 

拮抗する刃。どちらが諦めたのか、双方が距離を取って引き分けにする。

 

 

「(…そうだ! クラウドは両手剣だから防御は不向きだ! 防ぎにくい攻撃を!)」

 

 

そう。盾と剣を持つリンクに比べて、両手で大剣を使うクラウドは少々防御へ回りにくい。

横へステップして回り込み、背中を回りながら刻む。こどもリンクが先程の戦いで使っていた奥義。この土壇場で模倣したのだ。

彼は天才だが、リンクも間違いなく天才だ。

 

 

「うらああ!」

 

 

死角からの攻撃に体勢を崩したクラウドの背中に『二段スマッシュ斬り』を叩き込んだ。真正面に剣先を向ける構え方は背後の敵の対処が遅い。

 

 

『…ェッ…!!』

 

 

それでも一方的にとはいかない。剣を向けて滑り込むクラウド。マスターソードを横になんとか防ぎ切るが、足元の地面がズザッとえぐれるほどの威力だった。崖間際まで追い詰められる。

 

 

「嫌な、位置だな!」

 

 

と言いつつも足を狙った剣。斬りはしたものの、振り終わるところで進行方向に置かれたバスターソードが帰還を防ぐ。すぐに引こうとしたところ、腹から蹴っ飛ばされた。しかし、斬られたばかりだからかそれ程の威力はない。

 

 

「はあ、ああああ!」

 

『…!!』

 

 

再び剣が交わされる。気合いと想いを込めた一撃が風圧を生み出す。ガキンという音が聞こえた直後。双方共剣を持っていなかった。

 

空高くに弾かれ、打ち上がった二つの刃。力を込めたからか、マスターソードはクラウドを飛び越え遠くへ飛んでいく。リンクに近いのはバスターソードの方だった。

 

 

「(仕方ない!)」

 

 

幸い、リンクは槍や斧でも相応に戦える。これほど大きな剣も扱えるだろう。跳び上がってバスターソードを手に持った。その時、何か聞こえた。

 

 

『…む…! ……ウドを………戻………れ!』

 

「!」

 

 

聞き覚えのない声が聞こえる。幻聴だろうか?

そもそも誰の声なのか? そんな考えは瞬時に消えた。不明瞭なはずの声でも、何故かその全容が理解できた。

 

 

「うらあああ!」

 

『…ッ!?』

 

 

まっすぐに、大胆に、誇りを持って。

巨大な刃は振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白熱していた戦闘で忘れていた呼吸を思い出す。厚かった剣は主の元に帰り、手には退魔の剣が戻っていた。

 

 

「はあ… はあ… はあ…」

 

「あ、終わった。」

 

 

用済みだと言わんばかりにソードの胸ぐらを手放した。こどもリンクが近づいてくる、と思いきやクラウドもリンクも放って先に進んでいく。

 

それを不思議に思うが、それは後にしてクラウドを元に戻すことにする。

 

 

「…!」

 

「だいじょぶ? 名前言える? 歳は? 出身は?」

 

「言える… 言えるから少し離れろ…」

 

 

顔を急接近させてアレやこれやと聞いてくるクラウドは居た堪れなくて目を逸らした。完全な意識はなかったものの、何があったのかは大体わかる。

 

 

「すまん、苦労をかけた」

 

「悪いと思ってるならさ、ダーズ倒した後にまた勝負しようぜ! 今度は変な力抜きでさ!」

 

「興味ないね」

 

「持ってよ!」

 

 

ぶー垂れたリンクを呆れた目で見つめるクラウド。そんな目線に知らん顔するリンク。突然はっと思い出した口を開いた。

 

 

「そういやさ、いろいろあってクラウドの剣握った時に知らない声したんだよな。」

 

「知らない声?」

 

「正気に戻してくれ、って声。あれなんだったんだろ?」

 

「声…」

 

 

ふと背中に背負った剣を見る。これは元は自分のものではない。大切な友のもの。

 

 

「(…ありがとう。)」

 

 

その時、クラウドが薄く口角を上げたのを誰も知らない。

 




こどもリンク「ねえ何やってるの? ぼくは何もわからず付き纏われてものすごぉ〜く疲れたんだけど?」

ソード「シークが捕まえてこいって…」

こどもリンク「君聞く必要無くない? 何? 弱みでも握られてんの?」

ソード「ウー…」

こどもリンク「よしんば握られてたとしてもぼく関係ないよね? 自分だけでなんとかすべきだよね? ぼくはあのお姫サマと関わりたくないんだけど」


ソード「ネクスト、『易々と超えられてはならないのだ』…」


トゥーン「どうしたの?」

こどもリンク「んー? 別になんでもないよ。ちょっとオハナシしてただけ」

ソード「キャット被ってる…」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

百五話 易々と超えられてはならないのだ


三十五周年だからドラクエ関係の大盤振る舞いがすごい…!
新作にテンのオフラインバージョン、ドラクエトレジャーなる新作(モンスターズじゃなかった)、ポケモントローゼ的な新アプリと… どうしよう全部やるかも。
ダイパリメイクとアルセウスも発売日決まりましたね。もっと先だと思っていたのに嬉しい誤算。でもお金足りるかな… つい先日PS4とKHシリーズ買い揃えたばかりだしテイルズ新作も欲しいし。そして歓喜の傍らで静かに最終回を迎えるユニオンクロス。



 

クラウドが立ち上がっている背後で、こどもリンクはそれに触れようとする。握っていた聖剣にそっくりなその剣は左手甲の聖三角に反応し、ひとりでに抜けた。上空へと上がっていくそれは二つのトライフォースと共に、あっという間に光を帯び、大地の闇を晴らしたのだ。

 

 

「(見たかよ、お姫サマ)」

 

 

その心中を知る者は誰もいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上空へと上がった剣が大地の霧を払った。

その報告が広まると、即座に全員が合流した。力にあたる上部のトライフォース。彼らは勇気側と知恵側の二方向から攻めていくことに決めたのだった。

 

 

「こ、こどもリンク、私もご一緒していいですか?」

 

「駄目。ぼくは森方面からいくからあんたは逆からいけ」

 

「そ、そんな…」

 

「いくよ、トゥーン。」

 

「キミは…」

 

 

ここまで来ると、シークは怒りを通り過ぎて戸惑いを覚える。

自分を無条件に慕ってくるような人間を無碍にし続けることは難しい。良心の呵責が引き起こされるはず。でも、彼はそれを続けている。

彼がそうしたいのではなくて、そうし続けなくてはならないとでも思っているかのような。トゥーンリンクも自分に対する対応の差にオロオロとしている。

 

 

「ちょっと待ち! 俺もいくよ!」

 

「あんたは… まあ好きにしたら?」

 

「…!」

 

 

後を追うリンクはシークの方に目配せした。シークもそれに気づく。

 

 

「(頼んだよ、リンク)」

 

 

悔しいが、ゼルダやゼルダに肩入れするシークではその理由を聞けそうにない。ゼルダを慰めながら、リンク達を見送ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこは荒れた荒野だった。そして奥に行けば行くほど不穏な力が強まっていく。その奥に奴がいるのは全員考えなくてもわかることだった。

スピリット一つとっても強敵揃いになっていく敵達に進行速度は遅くなっていった。

 

 

「『森の宝 その中に 聖痕の剣士への道在り』…!」

 

「間違いないです…! お父様…!」

 

 

「04:40…? それだけか? …ああ、このヒントの地味さ、ブロウしかいねえ。」

 

「ミステリーな信頼! でもそんな気がする!」

 

 

そんな中で、大切な誰かを望む者がその道への片道切符を続々と手にする。彼らは今だけ探索者。

そして、ここにも一人、探していた者を見つけた人がいた。

 

 

「クッパー! ジュニア見つけたよー!」

 

「ホントかマリオォー!?」

 

「来るのはや!?」

 

 

普段の鈍重さが信じられないほどの素早さ。マリオからは豆粒のようにしか見えなかったというのに一瞬のうちにここまできた。長年ライバルをやっているが、ここまで速いのは覚えがない。

 

 

「クッパJr.見つかったってー!」

 

「あ、本当? よかったー」

 

 

ネスが近くにいたむらびとを呼び寄せる。トゥーンリンクとリュカは別陣営なので不在だった。周りもそれを聞いたファイターが駆け寄ってくる。

 

 

「なんだ? うるさいのが増えんのか? ンなことより先進むぞ?」

 

「そっちがうるちゃーい!」

 

「ぬお!?」

 

 

ネスの『PKフラッシュ』をキングクルールが避けようとしたところでミュウツーの念動力に捕まった。ネスが下手人にサムズアップのいい笑顔だ。

 

 

「ガッハッハッハー! ジュニアはいい友を持ったものだ! ワガハイが出るまでもないとはな!」

 

「行かないのかい? 前にジュニアに助けてもらったからクッパの意思を尊重してるんだけど」

 

「やるに決まっておる! マリオなんぞジュニアの相手になるはずがないからな!」

 

 

ガッハッハッと上機嫌になるクッパから背を向けて、マリオはとりあえず血管が爆発しそうなキングクルールが追うネス達三人をどう救出するか考えることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もしも、マリオを救出する時にクッパが相手をしていたら? クッパは殴る。情けない、無様と煽りながらいい笑顔でぶん殴り続ける。

もしも、ピーチを救出する時にクッパが相手をしていたら? クッパは殴る。良心を痛めながらも殴るだろう。そこら辺はドライである。

 

では、もしクッパJr.を救出する時にクッパが相手をしていたら?

 

 

「うおおおおぉぉ〜!!! ジューニアァー!!」

 

『…!?』

 

 

涙腺がぶっ壊れながら、炎の息を吐くクッパ。器用な男だ。涙を滝のように流しながら、嗚咽を吐きながら、ブレスを繰り出している。

そう、相手が自分の息子なら。クッパは殴る。泣きながら、謝りながら。

 

操っているダーズが悪い?

その怒りはダーズ本体にぶつけるべき。目の前に息子にぶつけるのはただの八つ当たりだ。

 

巨腕の鋭い爪がクラウンごと裂く。錯乱しながらもその攻撃は強力だ。

『いにしえっぽい王国』という場所で『終点』化された場所で。クッパは吠える。涙を吹き飛ばし、真の心に響くように。

 

 

「グウオォォォ!!」

 

『…!』

 

 

取り出したるは『メカクッパ』。自動走行が可能の小型爆弾だ。更にキャノンも撃ち、爆発のタイミングを早める。

 

 

「フン、甘いわ!」

 

 

『スピニングシェル』を出し、爆弾も大砲も弾き飛ばす。そのまま進んだ方向を引き返した攻撃はギリギリ間に合ったシールドで弾かれた。

だが、終わりではない。

 

 

「ゲキ甘だ! これならマリオと一緒に戦っていた時の方がマシだったぞ!」

 

 

走り寄っての『ジャンピングキック』だ。シールドを解除していたクッパJr.は大きくぶっ飛ばされる。

 

 

「…だが! ダーズなんぞにジュニアの力を引き出せるはずもない! 劣っているのは当然だ!」

 

 

勝手に自分の中で解決する。爪をギラつかせる野蛮な目は立ち上がる息子の姿を捉えていた。

 

 

「根性はいいようだな、こい!」

 

 

息子はいずれ父を超えるもの。クッパはその時を楽しみにしている。それが父親というものだ。

だが、易々と超えられてはならないのだ。簡単に乗り越えられる壁であってはならない。乗り越えた後に何かを得られたのだと実感できるような存在でなくてはならない。

今のクッパJr.はクッパには遠い。

 

 

『…ッ!!』

 

 

『カートダッシュ』で迫り来る。カーブを繰り返しているものの、何の工夫もないのに当たるわけもない。スピードもクッパでも充分捉えられる速さだ。ならばどうするのか。

 

 

「ムゥ…!」

 

 

クッパクラウンから離脱する。クラウンは起爆し、飛び上がったクッパJr.はトンカチを握りしめている。つまり上と下での同時攻撃だ。

まずは爆発。少々遅れて武器での打撃がクッパを襲う。

 

 

「悪くはない。だがまだまだだ!」

 

『…!!』

 

 

対処されぬようにほぼ同時に攻撃したのはいいが、それはクラウンという防壁を失ったことになる。まだまだ小さい体を片手で掴み、腹と大地で押し潰す。『ダイビングプレス』だ。

 

浮き上がった体に炎を浴びせて蓮撃が切れる。フン、と鼻を鳴らして自分を誇示するが、まだ終わらないことはわかっていた。

クラウンが復活し、武装が整った上でまだ立ち向かうクッパJr.。

 

 

「そう、それでいい。ワガハイの息子だ! この程度で挫けるものか!」

 

 

理由はそれだけだ。

それを大真面目に真剣に信じている。

自己評価の高さがそのまま息子への信頼に繋がっていた。

 

 

『…ッ!!!』

 

 

ドンドンドンと、クラウンの口から大砲弾が三発放たれる。飛んでいく方向も速度もバラバラだ。そして放った後、再び『カートダッシュ』を行う。弾と弾の間を隠れながら。

 

 

「ムッ」

 

 

まずクッパが見たのはクラウンの口から出ている円型のノコギリ。次に見たのは長い舌。撹乱している。間違いない。どの武器で向かってくるのだ。

 

 

『…─ッ!!』

 

 

飛び出したクラウンの口には何もない。あるのは横だ。

 

 

「グウゥ…!」

 

 

クラウンのサイドから飛び出た大きな『フォーク』はクッパの体を突き刺していた。少し、少し苦悶の表情を浮かべる。

相手を騙し、敵の不意をつく。マリオが同じことをしていたらクッパは引っ掛からなかったかもしれない。だが、クッパの僅かに残っていた甘えが原因だとしてもクッパJr.が一矢を刺したのは事実。

 

 

「当たってはいるが… それでもぬるい! 次の手も考えるのだ!」

 

『…!!』

 

 

フォークを引き抜く。ガシャガシャ操作している音は聞こえるものの、クッパの腕力の前では動かない。最後の手段として『自爆ジャンプ』を試みた。しかし、それも想像できていたのかクラウンで本体をうち飛ばす。復帰手段を失ったクッパJr.を崖下の奈落へ叩き落としたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涙腺の脆さは遺伝だった。抱き合い泣き合う親子二人を見てマリオはそう思っていた。

 

 

「お、おとうさぁーん!!」

 

「ジュニアァー!」

 

 

お互いの存在を確かめるように強く抱きしめる。もちろん下のクラウンも泣き顔だ。キーラとの最初の戦いでレッドと一緒にやられたクッパは息子とは離れ離れで囚われたのだ。不安は計り知れない。

 

 

「前はどうやらジュニアがワガハイの目を覚ましてくれたようだからな! 親であるワガハイができないことではないのだ!」

 

「あれー? もう一人、赤いスーパースターがいなかったかな?」

 

「そうだよね! マリオやボクができるならおとうさんもできるよね!」

 

 

茶々を入れるマリオも含めて、ネスは家族っていいなとしみじみ思う。冒険の中でも何回も助けてくれた母、父、妹… おっとこれ以上はホームシックになりそうだ。無理やり思考を止めた。離れ離れは駄目だ。家族は一緒にいなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、もう一人。

 

 

「大丈夫… 大丈夫です… ルフレさんの時と同じように…」

 

「ルキナ…」

 





カービィ「ぽよ〜」

ネス「どうしたの、カービィ? そんなにクッパを見つめて…」

カービィ「ぷぃや! ぽよんあ! ぽよっぽい!」

ネス「さっきのクッパのスピードを見たことがあるって? いつなのかは思い出せないんだ」

カービィ「んんん〜… ぽ!」

ネス「え? ガノンに鬱憤ばらしした時…?」


ネス「次回!『こんなところで寝ると風邪をひくよ』!」


ネス「そんな時と今で同じスピードを出すんだ…」

カービィ「ぱやぱや〜」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

百六話 こんなところで寝ると風邪をひくよ


ゼル伝関係の箸休め回。第一回目の内容はタイトルでわかりますよね?

後五月終わりから虚無感がすごい…
俺のユニオンクロス… 終わっちゃった…
自分の分身であるようなアバターキャラクターにあそこまで感情移入したのは初めてでした。プレイヤーくんちゃん、救われろ!



 

ルフレはルキナの手が震えているのを見逃さなかった。これから戦おうとしているのは父だ。彼女はギムレーの復活を阻止し、クロムの命を救うために過去へ飛んできたのだ。それほどに大切な存在と、戦おうとしている。

 

 

「ルキナ、辛いなら僕一人でも…」

 

「…いえ、私は大丈夫です。戦えます…」

 

 

強がりだ。ダーズによって支配されているという前提を知らなかったら彼女は立つことすら出来なかっただろう。

 

 

「わかった… でも無理はしないで」

 

 

そう言うので精一杯だった。ルフレが無理やり止めなかったのは、自分が他でもないルキナに解放してもらったという負い目があったからだ。今のルキナがどれだけ戦えるかはわからない。その分自分がやらなくては。

 

 

「ルフレも無理してない? 別にボク達に任せてもいいんだよ?」

 

「大丈夫。僕がクロムを一番知ってる。地の利は取られてるんだ。その他の利は逃せない… というか、どうして君達もついてきてるんだい?」

 

 

石像からクロムのものと思わしきヒントを聞いたルフレとルキナはすぐさま森に引き返した。そこにあった宝箱は隠し通路があり、そこを通ってようやく彼の元へ辿り着いたのだ。

そして、二人に何故かリンク、トゥーンリンク、こどもリンクが着いてきたのだ。

 

 

「あのお姫サマとばったり出くわすのが嫌だった」

 

「ボクはこどもリンクについてきた!」

 

「右に同じく!」

 

「そ、そうなんだ…」

 

 

緑、緑、水色の勇者達が理由を述べる。重要な戦いの前だというのに気が抜ける。

気持ちを切り替えるために大きく深呼吸をする。そしてルキナの方を見た。

 

 

「ルキナ、準備はいい?」

 

「…はい、いつでも。」

 

 

震える手を握る。少しでも気を楽にさせるため。悪いが、クロムはルキナの親であると同時に自分の半身で相棒なのだ。助けたいという強い想いはルキナにも負けるつもりはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、少し聞いていいか?」

 

「何?」

 

 

二人の姿が消え、少し静寂が続いた後。リンクが口を開いた。

 

 

「どうして… あんなゼルダ姫に厳しく当たるんだ?」

 

「…差し金かよ。」

 

「バレテーラ!?」

 

 

シークに大見栄張ってきたのがバレていた。慌てるリンクに偶然か否か、助け舟を出すことになったのはトゥーンリンクだった。

 

 

「でも、ボクや他のみんなも気になってると思うよ。すっごく露骨だし。だから教えて!」

 

「まったく… でもあんたらならいいか… ちょっと違う部分はあるけど時の勇者の話がちゃんと伝わってるトゥーンとまだよくわからないリンクなら。」

 

「わからないって…」

 

 

がっかりしているリンクを無視して話をしようと口を開く。トゥーンは興味深々だ。

 

 

「ぼくは… あの女を… あの女だけは認めるわけにはいかないんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルキナは一度、父クロムと戦ったことがある。まだマルスを名乗っていた時。フィリアの王を決める一戦。元の歴史では仲間となる男剣士と父が戦うところを先回りして代表を勝ち取ったのだ。

 

でも、それとは違う。

 

何も知らないクロムを試すようなものでもなく、剣術を学ぶ為の稽古でもない。

命の危険はないけれど──代わりに思いやりもない。そんな冷たい大乱闘だった。

 

 

振り切った剣を受け、力を流しきれず後ろへ下げられる。一度戦った時と同じ『闘技場』のなんの起伏もない『終点』化。地面が土ならもう少し粘れたか。

下がったルキナに剣を刺すため、伸ばした腕に『ギガサンダー』が走る。

 

 

「しっかり!」

 

「…っ、はい!」

 

 

再び構える。

目の前のクロムは、たかが一度雷の魔法で焼かれたところで止まるような存在ではない。

今度は攻撃をしてきたルフレに対して剣を向けてきた。両手を柄に添えての振り下ろしに青銅の剣で体の横へ流した。

 

 

「だめっ… 駄目ですお父様!」

 

『…!』

 

 

あの時、ルキナが元いた未来で、自意識がないままに父を殺してしまったルフレのことを思えば、クロムにルフレを相手にさせるなんて出来なかった。

ほとんど無意識のままに振った剣がクロムの右腕を斬りつけた。その隙を逃さずルフレが隙だらけのクロムの前方に『ギガファイアー』を撃ち込む。

 

 

『…っ!』

 

「ぁ…っ!」

 

「くっ…」

 

 

焼かれる感触が反射的に剣を動かした。近場にいた二人を巻き込み合わせて斬り飛ばした。

ルフレは勢いを殺して着地したが、後のことを考えず攻撃したルキナは転がり倒れた。

 

 

「うぅ…」

 

「………」

 

 

起き上がれないルキナを見て、遂にルフレはポツリと言葉を零した。ルキナとクロムの間に立つ。

 

 

「下がって、ルキナ。ここからは僕が一人で戦う。」

 

「…! そんな…! お父様にルフレさんを攻撃させる訳には…」

 

「それを言うなら、クロムに君を攻撃させる訳にはいかない」

 

「…っ!」

 

 

ルフレが抱いていたのは、ルキナが否定した可能性と同質のもの。だからこそ何も言い返せなかった。

 

 

「君はずっとクロムの背中を追っていたんだろうけど、僕はずっとクロムの隣にいたんだ」

 

『……』

 

「さっきも言ったけど、僕がクロムのことを一番知ってる。だから負けない。」

 

 

青銅の剣を持ち替えてサンダーソードを半身に向ける。バチバチと漏れる魔力が電撃となって腕まで届くが、不思議と痛みはなかった。

 

駆け出し、距離を詰めてくるクロムを『エルウィンド』で牽制する。一直線に飛ぶ風の刃はひらりとかわすクロムを捉えることはできなかった。

 

 

「あぁっ!」

 

 

迫る封剣はルフレの首元へに吸い込まれる─ことはなかった。サンダーソードで受け止めたルフレは頭上を通るように受け流した。鳩尾への拳も魔導書が受け止める。

 

 

「はあ!」

 

『…ッ!?』

 

 

受け流しに使ったサンダーソードをクロムの胸元へ叩き込む。雷の魔力はルキナの方までその風圧が届くほどに練り上げられたものだった。

 

 

「すごい…」

 

 

長い青髪を揺らしながら、ルキナはポツリとつぶやく。サンダーソードでもそうそうイーリスの至宝には敵うまい。相手が他でもないクロムならばその数はさらに限られたものになる。

更に言えば、単純な力はクロムに劣るだろう。魔力では勝るとはいえ、魔力はぶつけられなければ意味がない。

 

 

「(いえ… 考えてみれば… 言うほどおかしくはない…)」

 

 

彼らは真の絆で結ばれた友だ。二人で一人… 半身なのだ。同じ戦場で共に戦っていた、共に稽古をしてきた、違う意見でぶつかった。

ダーズの支配がなんだ。積み上げられた過去は、思い出は、そんなもので隔てられるものではない!

 

 

「…っ」

 

『─!』

 

 

『マーベラスコンビネーション』が細かな傷をつける。炎の魔法を応用して起こした小さな爆発で剣筋を逸らし、ダメージを最小限にしていたのだ。とはいえ全ての攻撃に反応できたものではなかったが…

 

 

「そこだ…! 『エルサンダー』!」

 

『…ッ!』

 

 

少し距離を取ってルフレが放ったのは雷の上級魔法。 相手の顔スレスレに放たれた魔法は腰を沈めて剣を構えたことで彼方へ飛んでいく。

 

 

『─ッ!!』

 

「いけぇー!」

 

 

低い体勢から放ったファルシオンがルフレの腰辺りへと振り払われる中、サンダーソードもまた相手を捉えていた。

ルフレの気迫に押されて、爆発するような膨大な魔力が刃を駆け巡る。まるで雷そのものが落ちたかと錯覚するほどの。

 

 

『…ッ!?』

 

「っ…!!」

 

 

胴体を両断するような斬撃は瓜二つの横槍によって阻まれた。競ることもなく、サンダーソードのみが相手の体を撃ち抜いた…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そっと視界が開く。日当たりの悪い場所とは理解したが、それでもしばらく光が届かなかった眼には随分と眩しく感じる。

目に映ったのは大切な二人だった。

 

 

「ル、フレ、ルキ、ナ」

 

「お父様…!」

 

 

口にした名前は思ったよりも滑らかにならなかった。情けない。

記憶は朧げであっても何があったかはわかる。自分は仲間に剣を向けたのだ。よりにもよってこの二人に─

 

 

「ふふふっ、こんなところで寝ると風邪をひくよ?」

 

「…!」

 

 

深い海の瞳が溢れてきそうなルキナとは対象的にルフレは柔らかく笑う。右手を差し出された。激しい後悔に溺れそうなクロムは一気に引き上げられたのだ。

 

 

「…ったく、行き倒れるのはおまえだけで十分だ。」

 

「失礼だよ、クロム」

 

 

差し出された右手を取る。

そこにはもう運命を導く破滅の痕はない。ようやく再会できた時からその理由を聞いたことはなかった。だって、聞くまでもない。ルフレが運命に抗った結果なのだから─

 

 

「お父様…!!」

 

 

とびついてきたルキナを、開いていた左手で優しく包んだクロムの顔も優しく笑った。

 





ルフレ「あれ、どこに行ったんだろう?」

クロム「他に誰かいたのか?」

ルキナ「スリーリンクです! リンクいたもん…」

ルフレ「ごめん、そのネタわかりづらいと思う」


クロム「次回、『ゲームオーバーだ、地味面』!」


クロム「となりのリンクか」

ルフレ「イーリス王族はそういうのが流行ってるの…?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

百七話 ゲームオーバーだ、地味面

FF7リメイク二作目でましたね。
PS5確保できてないので対岸のゲーム状態ですが。なので実感がないというか。

ちなみに買おうか悩んでたゲームプログラミングソフトは悩んでるうちに発売しました。きみは実にばかだなあ。



ぼくが救ったのはぼくから見て七年後の世界。まだ幼かったぼくはマスターソードを抜いた時に七年間眠っていたんだ。

 

え? 歳が合わない? 時の勇者は十二歳?

それは多分だけど、若く伝わっちゃったんじゃないかな? 幼い天才なんて如何にも世間が好みそうな話じゃないか。

 

七年後の世界でガノンドロフを封じて元の時代に戻ったから、みんなぼくのことを知らない。ぼくの世界にいたゼルダと会う前に戻っちゃったからぼくの冒険はなかったことになった。

 

 

………

………………

それでも… よかったんだよ。ナビィ…一緒に冒険してくれた妖精が覚えてくれている。それでよかったんだ。

でも、ナビィはいなくなった。ぼくに何も言わずにどこかに行っちゃった。元の世界じゃ惰性でナビィを探して旅をしてたけど、何も言わなかったってことは二度と会う気がないってことなんだと思う。

 

その後に訪れた月が滅ぼそうとしているあの世界みたいに、時の勇者の冒険を証明するのはぼくの記憶だけになった。

 

勇者っていうのはほんの少しの見返りも求めちゃいけないのか?

それを求めただけでここまでされなきゃいけないのか?

どうしてぼくは記録すらも残せない?

 

 

ぼくにとっては記憶だけが最後の柱だ。

それをあの女の存在は折ろうとしてる。時の勇者が負けた時間軸で生まれたお姫サマは、最後に残ったぼくの記憶すらも否定しようとしている。

 

ぼくの記憶を否定したら、ぼくの仲間達が命懸けで戦ったことは本当になかったことになる。

 

それはできない。何を差し出されても譲れない。だからあの女の存在をぼくは否定し続けなくてはいけない。あんたがシークに何を言われたかは知らないけどぼくはこの行動を改める気はないからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

知恵の村、時を刻む篝火の元に戻ってきたのはソードとガンナだけではなかった。

 

 

「フォーティーミニッツ…」

 

「40分と、なんで着いてきてんだ? 見せもんじゃねーぞ?」

 

 

着いてきたのはゼルダとシークだ。少し離れた場所にいる。

 

 

「ああ、気にしないでただの作戦会議さ。邪魔をするつもりはないよ。」

 

「作戦…? ああ、チャイルドリンクのこと?」

 

「チャイ… まあそうだけど」

 

 

謎解きを解いたにも関わらず話し続ける。

 

「あんまりイヤイヤ言う子に近づいてもどうかと思うけどナー」

 

「やはりそうなのかしら… 今まで友達なんていたことないからわからないの…」

 

「ソードの言うことも間違ってはないんだろうけど… 納得できない。」

 

 

神妙な面持ちでシークが俯く。彼女の存在そのものを否定するようなあの物言い。ただ嫌っているだけであそこまでいかない。何か理由があるはず。

 

 

「あ、ごめんなさい… おふたりはブロウのことに集中していいわ。私の問題は私達で解決するから。」

 

「そーだな。オラ、行くぞ」

 

「んにゃ? でもでも、三人寄れば…」

 

「おまえみたいな頭パッパラパーが何になるって?」

 

「あ、ノー… なんでもないです…」

 

 

外れに登場したファイターへ向かっていくのをゼルダは見つめて、はあ、とため息をついた。どうしてあの三人みたいに上手くいかないんだろうか。

 

 

「ゼルダ…」

 

『きみはもう少しあの子のことを知るべきじゃないかな? 自分を知って欲しいなら自分もしらなきゃ』

 

「…! あなたは…!」

 

 

聞き覚えのある声。誰よりも信頼している声。

素朴ながらも真っ直ぐな目をした不思議な雰囲気を持つ緑衣の勇者。

 

 

『よっ姫さん、久しぶり。』

 

「リ、リンク…?」

 

 

ゼルダのよく知るリンクがそこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『終点』の空は早送りをしているかのように目まぐるしく変わる。暁の空から星々の光る夜へ。その夜は寂しいものではない。星が照らすどこかに仲間がいるのだから。

乱打を刃で防ぎ、シールドを両断するように力を込めて振り下ろす。膠着状態を破ったのは刃の後方から放たれた『ガンナーチャージ』だった。

 

 

「ワッツ!?」

 

『…!?』

 

 

慌てて跳んだソードが邪魔で判断が遅れたブロウに『ガンナーチャージ』が直撃する。

 

 

「ちょっと!? フレンドリーファイアはどうなのさ!?」

 

「お前はこんぐらい避けんだろ? 当たらなきゃ誤射にはなんねーよ」

 

「そういうプロブレムじゃない!」

 

 

プンスコ怒るソードに対してガンナはあくまで淡白な対応だ。でも、それはソードの能力を知っているからこその発言だ。口を動かしながら体も止めずに動かしている。

ソードの生み出した『トルネード』に『ガンナーチャージ』を合わせて急加速させた。こうすることで狙撃と錯覚するほどの速さを持った弾を撃てる。

 

 

『…っ』

 

 

腕を組んでのガードすら間に合わない。歯を食いしばって耐えた後はソードが迫る。

二人いるのだから遠距離攻撃と近距離攻撃で分かれて連携した方がいいのは自明の理だ。ブロウはガンナの遠距離攻撃をやり過ごしながらソードと対面しなければならない。

 

 

『─!』

 

「んべっ!」

 

 

足払いでソードを転ばした後、右腕を掴んで後ろ蹴りで蹴り飛ばす。崖へ飛んでいくソードを見て振り返るとそこには何かの機械。

 

 

『っ!?』

 

 

それが銃口だったと気づいたのは目の前で爆発が起きた後だった。

 

 

「いつもとはやっぱちげーんだな。単純に考えすぎだっつーの。」

 

 

別にガンナは近距離戦闘ができない訳ではない。同様にソードも飛び道具がない訳ではない。武装から見て勝手にそう結論づけただけ。

ガンナの言う通り、普段つるんでいるならば簡単に気づいたはずなのだ。

 

 

「そのとおぉーー…りっ!」

 

『…!』

 

 

背中へと飛んできたのはソードだ。『変則急襲斬り』と名付けられたその技は積極的マイペースのソードお似合いの技だった。

 

 

「こんなのでビクトリーしたと思うなよな! スイート見過ぎなんだぞ!」

 

「そーだそーだ、ブロウの癖して生意気だぞー」

 

 

同調して煽る二人。洗脳されているのだから効かないのだが。いや、これはただの性格だ。

 

 

「いっつも潮風に当たってるとブレインまで干物にってワッツ!?」

 

『─ッ!』

 

 

両手に鉄球を持ち、二人に向かってぶん投げた。球速は遅いが鉄球だけあって当たったら痛いでは済まない。向こうから仕掛けてきたのだ。決して煽りに乗った訳ではない。

 

 

「チッ」

 

 

横飛びで回避したガンナを蹴り上げて踵落としをくらわせた。『天地キック』だ。アームで防御しようとしたが、上手くずらされ腕を強打した。

 

 

「─ッ、舐めんなぁッ!」

 

『……』

 

 

咄嗟に回し蹴りで対処するが、動きが鈍い。武装が重いのもあるが腕の痛みを庇って体が遅く動いているのだ。

それでも『ボトムシュート』を撃ちまくる。上昇力を生むほどの爆発は簡単に辺りを黒煙だらけにした。辺りを見渡したブロウの目は近づく影を見落とさなかった。

 

 

『─!』

 

 

殴りかかってきた腕を受け流し、腹に正拳突きをあびせた。くの字に曲がって煙地帯を飛び出した姿をはっきりと確認した。

 

 

「キューー!!」

 

『…!?』

 

 

ソードだ。彼が何も持たずに格闘戦を挑んでいたのだ。あり得ない。武器も持たずに近接戦を挑んでくるなんて。

 

 

「ゲームオーバーだ、地味面…!」

 

『…ァ…!?』

 

 

煙が晴れ、ガンナはブロウに狙いを定めていた。それだけではない。斜めに突き刺さった剣の柄と鍔は、ダメージを負ったガンナの腕を支えていた。即席の固定砲台だったのだ。

引き金を引いて放たれた全力の『ガンナーチャージ』はブロウを撃ち飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっさと起きろやテメェ!」

 

「ホベッ!?」

 

 

ブロウに穏やかな目覚めは存在しない。最初は肩を揺すっていても、短気なガンナは早々に暴力での解決を図った。

 

 

「何すんだガンナ!!」

 

「何すんだじゃねえよ! 起きんのおせーわ!」

 

「顔面踏んで起こしてんじゃねえよ超絶猛烈に痛かったんだが!?」

 

「揺すっても起きねえから仕方ねえだろ!?」

 

「もっと方法あるだろ!!」

 

 

ここまでされることをした覚えはない。付き合いは長いが普段離れていたらそんなものなのか。違う、アイツらが意味不明なだけだ。それでも引くつもりがないのはわかっている。

 

 

「はあ… まあそれはそれとして助けてくれたのはあんがとよ。何したかは大体わかってるつもりだ。」

 

「アフター何をするのかも?」

 

「ダーズを倒せばいいんだろ? とりあえずお前らだけじゃないだろ? 合流するぞ」

 

「なんかテンポ速くない?」

 

 

ソードが問うと、ブロウは心底呆れた、そしてめんどくさいという顔で答えた。

 

 

「………どうせ俺がいない間他所に激烈爆裂に迷惑かけたんだろ? 謝罪行客しねえと…」

 

「マイナスにシンクしてるとハゲるよ?」

 

「誰のせいなんだよ…!!」

 

 

拳はブルブル震えてどうにか殴る方法ないかなと考えている内にもう一方のトラブルメーカーが何かを嗅ぎつけた。

 

 

「ん…? 知り合いがいるな、さっさと行くぞ、取られちまう」

 

「そーなの? それじゃゴー!」

 

「ちょと待てどこ掴んでんだ俺は病み上がりだあぁぁァ!」

 

 

ブロウの叫びは簡単に消えていく。

 




ソード「服がいっぱいあるのは面白いけどさ、ワンドを剣だと言い張るのはどうなのさ?」

ガンナ「変な骨っコロといいコップお化けといい私のコスよくわからんの多くね?」

ソード「よくわからんのって!? むしろ一番恵まれてるでしょ! グレイトなゲストみんなガンナが独り占めしてるんだよ!」

ブロウ「よくわからんというのは俺のこと言うんだろ… なんか絶妙微妙な立ち位置のやつばっかだぞ…」

ソード「いーないーな!」

ブロウ「お前もかなりいいとこ貰ってんだろうが嫌味か!」


ブロウ「次回… 『どこかにいるのだから』…」


ソード「バクレツゲキレツに嫌味だよ?」

ブロウ「デリートしてやる…!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

百八話 どこかにいるのだから


格ゲーからもう一人くるとは…! というか鉄拳ってスマブラと相性悪いとか言われてましたよね? そこら辺は使い方で話してくれるのかな?

個人的にE3ダイレクトで一番嬉しかったのがダンガンロンパ。ダンガンロンパは神ゲーなのでグロ系苦手じゃなかったら是非やろうね!

ブロウの設定になります。この後に載せるの、格ごと落ちない?
・格闘Miiファイター
名前はブロウ。姿技はデフォルト。趣味は釣り。言葉使いが特殊。アクの強い二人の手綱を持つ、ツッコミ役の苦労人。冷静そうに見えるが別にそんなことはない。


後どうでもいいことですが…


スピリット戦今話で最後でぇす!



 

「…あの子、ずっと辛そうなの。何もかも諦めちゃってるみたいで… 誰でもいいから友達が欲しい訳じゃない。あの子の助けになりたいの。友達になったら話してくれるかなって思って…」

 

『成る程成る程…』

 

 

半透明なリンクにゼルダは理由を話した。

彼女にとっては誰よりも信頼できる相手だった。危険なところを助けてくれたし、自分を追って闇の世界にまで来てくれた。

 

 

『…別に姫さんだけじゃないよ、僕だってたまに見かける程度だけどあんまりいい目で見られてなかったし… シークって言ったっけ? 君はどう思う?』

 

「諦めているっていうのは的を得ていると思う。彼を解放する乱闘でボクは彼を押さえつけてたんだけど、急に力を抜いたような気がして… 後、」

 

「後?」

 

「ゼルダを否定しなければならない。そう思っている気がするんだ。」

 

「どうしてそんな…」

 

 

ゼルダは更に落ち込む。そんな使命感で拒否られていてはどうすることもできないじゃないか。

 

 

『彼がやったことを真似してみよう。』

 

「えっ?」

 

『どうして僕たちを否定しなければならないのか、あの金髪の男の子が言うように無理に迫るのは良くないかもしれないけど、それぐらい知ってもいいでしょ?』

 

「やったこと…」

 

 

少しの間思考して思いつく。彼の最後の敵を倒せばいい。二人で倒すのだ。

 

 

「リンク! 一緒に戦ってくれないかしら!? あの子と同じことをするの!」

 

『僕としては構わないけどこんな体じゃ…』

 

「だったら…」

 

 

シークの言葉に二人とも目を丸くした。二人では思いつかない提案だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スピリットを倒していくうちに左右に分かれたファイター達は合流していた。底辺の角付近から上へ上へと進んでいったのでいずれ合流するのは当然だ。その頂点にいるファイターのことも、誰も話さなかったが予測するのは楽だったのだ。そして、その一人が最後の鍵であるだろうとも。

そこへ向けて道中のスピリットを倒していた途中に起きたことだった。

 

 

「ちょっと通りますよお亀サマー!!」

 

「グバアァ!?」

 

「おとうさーん!?」

 

 

たった今スピリットに挑もうとしたクッパの横っ面に跳び蹴りをかましたのはガンナだ。そのインパクトが凄すぎてついてきたソードと首根っこ掴まれているブロウには何も浮かばない。

 

 

「キサマー! 何をする!」

 

「あったま悪いな、こいつは私達の獲物だってことだろ」

 

「な、何も蹴ること無かろうが…」

 

 

ヘロヘロだが、常識人のブロウはツッコミを忘れなかった。その声でスルーしかけたブロウにようやく気づく。

 

 

「って、ブロウも見つかったんだね、よかった」

 

「こ、この度はこの問題児二人が皆様に激撃なご迷惑を…」

 

「ホントだよ…」

 

 

バスをぶっ壊し、射線を気にせずというかむしろ人がいるのをわかった上で大砲をぶっとばす。ご迷惑で済むのだろうか。

 

 

「ってアレ!? ガンナこのこと知ってたの!?」

 

「カンだ、バカ。」

 

「このことってなんだカンってなんだ、少しは説明しろぉぉー!」

 

 

ブロウの悲痛な叫びは届かない。届いてはいるのだが届かない。

 

 

「大変だね…」

 

「苦労人の匂いが…」

 

 

常識人のマルスフォックスはあの二人にはついていけなかったが、ブロウだけは話が合う気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初の出会いは囚われたという王を助けにいくという冒険であった。もちろん他にも報酬名声秩序を求める勇者はいたものの、最後まで残ったのは結局三人だけだった。

 

ソードは知っている。二人は知的で冷静だということを。

ガンナは知っている。二人は強くて頼もしいことを。

ブロウは知っている。二人を誰よりも信じていることを。

 

それぞれの道を進んでも、どこかにいるのだから何も心配していないことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『すれちがい伝説』。彼らにとっての最後の場所。バラバラの道を再び歩み出した場所。でもそれは決して悪い意味ではない。

 

燃えさかる火球をあっちへこっちへとステップでかわし続けるブロウ。目の前にいるのは何時ぞやのラスボス、全てのやみの王。巨大な緑色のリドリーの現し身をダーズからもらっていた。

 

 

「ウオオオォ!」

 

 

リドリーの背後から斬り落とすように巨躯な翼に剣を振り下ろす。が、

 

 

「カッタッ!? ワイ!?」

 

『…!』

 

「ぼさっとすんなグズが!」

 

 

刃は体に入らなかった。本当に斬り落とせるとは思わなかったが、それでも手応えが薄い。

空中でのけぞったソードへ向かって振り回された鋭い爪は『フレイムピラー』によって軌道をずらされ直撃は避けられた。

 

 

「ダメージがないわけじゃないな。ブワワワンと狙いがズレた」

 

「鈍くなってんだろ、スーパーアーマーか面倒だな…」

 

 

左側の大地でブロウが、宙吊りになった檻の上でガンナが意見の交換を手早く済ませる。

吹っ飛びにくくもなっているのでより多くのダメージを与えなければ勝てやしない。ブロウが動いた。

 

 

「ソード、後ろで気ぃ引いとけ! 正面は俺がいく!」

 

「イェス!」

 

 

背後から思いっきり斬り上げたソードに反応して背後へと首が曲がる。それと同時に伸びた鋭い尾を受け流し、『カウンター』で尻尾を斬る。

 

 

『……ゥ…ッ!』

 

「よそ見してちゃいけねえな?」

 

 

ガンナのアームキャノンから弾が撃ち続ける中で、ブロウは『飛び二連キック』を頭へと叩きつけた。それなりのダメージにはなったはず。だが、

 

 

『グゥ…!!』

 

「まだ猛撃炸裂に攻撃しなきゃならんか…!」

 

 

未だにピンピンしている敵の頭部に鉄球を投げるが、ブロウにとっては重くとも巨大な相手にとってはそうとは限らない。ダメージはあるだろうが、目眩しにもならなかった。

 

 

「ガッ…!?」

 

 

正面から接近していたのが災いし、巨腕一本に掴まれ地面を引き摺られる。後頭部から背中全体に痛みが走り、まともにものを考えられない。

 

 

「ブロウ!」

 

 

近くなったソードの呼ぶ声の後にカキンという音がした。その後にガシャンという音も。

宙吊りに使われていた鎖が斬られ、敵の頭上へ檻が落ちてきたのだ。中身、ガンナの自重も合わせた攻撃はいくらスーパーアーマー状態と言えども無視できないダメージとなった。

 

 

「おっしゃ、離れろブロウ!」

 

 

そう言う前にブロウは力の弱まった異形の手から抜け出していた。そして背後からの発射音。ガトリングのような連射音で何が起きているのか見なくとも大体わかる。

 

 

「(やっぱ仲間が頼もしいと楽でいい…)」

 

 

照れ臭いから口では言ってやんない言葉。

元の世界で戦った時だって一人だったら勝てていたかもわからない。

グオオオオオ、と絶叫とも咆哮とも取れる声を上げ、質量を持った波紋が鼓膜を揺らす。その声に上に乗っていたガンナが弾き飛ばされた。檻という一つの足場を失い、受け止めるものがない。

 

 

「ガンナ!」

 

「うるせえお前らなんとかしとけ!」

 

 

なんとかしておけ、そう数瞬を二人で稼げというのだ。できない筈ない。

 

 

「任せとけ!」

 

「やってヤラァ!」

 

 

『くい打ちヘッドバット』で起き上がりかけた敵を再び地に沈め、『変則急襲斬り』で斬り刻む。

 

 

「アリャ? 足りない!?」

 

「トドメのつもりだったのかよ…!」

 

 

しかし、それでもとんでいかない。ソードはガンナの帰還を待たずして勝負を決めるつもりだったのだ。

 

 

「勝手に終わらせてんじゃねえ!」

 

 

装着されているアームキャノンが頭部を大きく揺らす。足元がふらつき、前後が疎かになった。戻ってきたガンナの攻撃だ。

 

 

「うおおおおおぉぉ!!!」

 

『…!?』

 

 

高速で駆け出し『瞬発百烈キック』を繰り出す。連打、連打、連打。ブロウの最後の蹴り上げは相手の質量を度外視するように真上へと叩き上げられたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おととい来いやっと」

 

「鈍ってはねえみてえだな」

 

「イェーイ! エブリワン見てたー!」

 

「俺たち以外見えねえからな!」

 

「あはは…」

 

 

戻ってきた三人の小漫才はさておき、この地のスピリットは全ていなくなった。後に残るは頂点に君臨するファイター一人。とはいえ討伐すべき勇者はここに戻っていなかった。

 

 

「どうしよう?」

 

「私は連戦でかまわん」

 

「横取りした分際で生意気な!」

 

「そうだそうだ!」

 

「隙を見せたお前らが悪い」

 

「ンな訳ねえだろ!」

 

「皆さん待ってくれるかしら!」

 

 

喧嘩が始めた三人を止める声がした。

ガンナとソードについて行っていたゼルダとシークだった。

 

 

「今度は私が戦う。魔王ガノンドロフは私が倒して見せましょう!」

 

 

強い意志を含む眼差し。それは遥か過去を映している。その傍らに立つシークは誰にも知られず静かに、異なる光を宿していた。

 





リュウ「むっ?」

ケン「へえ〜! 格ゲーにもう一枠くれるんだな!」

サムス「プライムではなかったが… 19年ぶりの2D…! メトロイドヴァニアの名誉を取り戻した…! ちょっとシモンとリヒターに自慢してくる!」

マリオ「マリオパーティだー!!」

リンク「ようやく新作の情報がキターー!! ついでに俺たちマブダチになったな!」

ウォッチ『マブダチってなに?』

ワリオ「オイオイオイ! 今回の主役はオレだよ! ワリオだよ!」


リュウ「次回、」

ケン「『時の迷い子』、だぜ!」


CF「で? 何か言うことは?」

マリオ「Twitterで流れてきた、『FZERO民は毛糸のFZEROでも大喜びする』ってツイートが面白かったよ!」

カービィ「むいぃ…」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

百九話 時の迷い子


FF9、アニメ化ってガセだと思ったらマジだった…
FFで一番好きなシリーズです。ただ、懸念点は低年齢向けってところですね。FFって結構設定が難解ですし思い切って深夜アニメでも面白かったとは思うのですが。

クラウドとかスコールだと子供達が感情移入しにくいのかな?
FF9は世界観が王道なファンタジーなので、子供向けって考えると選択肢がなかったのかもしれません。



 

「私が戦うって…」

 

「ええ! いいでしょう? リンク達はここにいないのよ? ならば私が戦うことになっても問題ないはず!」

 

 

理屈はもちろんわかるのだが、女性の二人にガノンドロフと戦わせてしまって大丈夫だろうか。

 

 

『問題ないよ、女性だけじゃなければ大丈夫なんだろう?』

 

「まさか…! キサマらも横取りか! ジュニアに父親としての威厳を見せてやろうと思っていたのに!」

 

「クッパ、ないものは見せられないだろ」

 

「なんだとガンナー!!」

 

「なんでお前はわざわざ口を出すんだよ!」

 

 

クッパの怒りの矛先がガンナに向いたところで二人が通り過ぎて進もうとする。

 

 

「待って二人とも、僕も行こうか? 強敵なのは間違いないし…」

 

「いいえ、これは私たち二人でなくてはならないこと! 我儘であるのは知っているわ。それでもどうしても私達が戦いたいの!」

 

『一回だけいいかい? 一度負けたら諦めるから』

 

 

返答すら待たずに二人は通り過ぎていく。少々不安そうに見えるマルスの視界隅に映るのは喧嘩を止めようとしているブロウ。彼が気づいた。

 

 

「ん? シークってこんなやつだったか…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、森での乱闘が終わり再会を果たしたクロム達三人とリンク三人衆は他の仲間との合流に動いていた。こどもリンクの足が重い。

 

 

「はあ…」

 

「そ、そんなに会いたくないの?」

 

「当たり前でしょ、さっきのこと聞いてたでしょ? 視界に入れたくもない。」

 

「さっきのこと…? なんの話だ?」

 

「クロム気にしないで、こっちの話だから」

 

 

雑に話を切ったこどもリンクはそれでもとぼとぼと最後尾を歩いていた。少しでも合流を遅くしたい。

 

 

「そういえば… そろそろガノンドロフと誰かが戦ってるかな?」

 

「ガノンがいるのか?」

 

「はい、おそらく。隅っこにゼルダとこどもリンクがいたので。リンク達がここにいるならお相手になるのはゼルダかシークでしょうか」

 

 

ガンッ!

大きく崩れ落ちる音がして五人は咄嗟に後ろを向く。こどもリンクが木に寄りかかって膝をついていた。突然の異変に五人は慌てて駆け寄る。

 

 

「ちょ!? どうしたん!?」

 

「こどもリンク!」

 

「うううゥゥ…ッ! ハア…ハア…!」

 

 

顔も視界も真っ赤になり頭に血が昇る。体温を低くしようと無意識に荒い息を吐くが気休めにもならない。

 

 

「おい! 大丈夫か!? こどもリンク!」

 

「関わってくるな…! 穢すな…! ぼくの記憶を否定するなああああああああああ!!!」

 

「こどもリンク!」

 

「(ヤバイって…! ゼルダ姫本気でどうにかするつもりなのか…!?)」

 

 

絶叫の傍ら、リンクは別の意味で焦っていた。仲良くなるのは悪いことではないが、肝心のこどもリンクがこれではこっちが先に壊れてしまう。やめさせるべきなのかもしれない。その思考を現実に戻したのは一つの野太い声であった。

 

 

「いい加減にしろっ! お前の事情など俺はこれっぽっちも知らん! だからこそ言える! 今お前はここにいるんだ! それだけでお前の存在は肯定されているんだ! 同じようにゼルダがいようとお前の存在の否定にはならん!」

 

 

叱咤するのはクロムだった。普段はここまで歳の離れた子供にきつい言葉は浴びせない。だが、こどもリンクが名前とは裏腹に長く生きてきたような感じを覚えてつい、対等に言葉を浴びせたのだった。

それでもこどもリンクの止まった時は動かない。錆び切った目でクロムを見つめる。他人に言われただけで考えを変えたならこれほど頑固にはならない。

 

 

「あんたらはifの世界線を自分じゃないって否定できていいね。そういえばあんたの娘さん未来を変えるために来たんだっけ? 自分で自分の娘が生まれた未来を否定した… どういう神経してんだよ…」

 

「なっ…!!」

 

 

それに憤ったのはクロムよりもルキナだった。どんな気持ちで仲間達が戦って…!!

 

 

「あいつはぼくが負けた世界線の人間だ! 時の勇者もなかったことになってハイラルごと海に沈んだ! ぼくは何も残せなかった!! じゃあぼくはなんだったんだ!? 世界を救うためだけの人間だったのか!? 唯一残った自分の記憶を守って何が悪いんだよッ!!!」

 

 

何も言えなかった。

ルキナが自分自身を否定しても、まだ仲間がいる。世界は守ったし歴史にも残るだろう。

それなら彼は? 自身すらも騙せるのが人間なのだ。そんな不安定な記憶で証明するしか方法はない。

 

 

「もうぼくは勇者じゃない… 敢えて言うなら時の迷い子だよ。」

 

 

一人どこかへ去っていく背中はずっと小さく見えて。思わずルフレは「こどもリンク!」と呼びかけた。

 

 

「人が残すのは記憶じゃない! 歴史でも世界でもないんだ!」

 

 

ちゃんと聞いたか無視したか。

それはルフレ達にはわからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこにいたのは万人の予想通りガノンドロフであった。ゼルダは自身の世界で封じられていたガノンドロフしか知らない。はじめて会った時は話が通じるものなのかと驚いたぐらいだ。

 

『終点』化した『オルディン大橋』はまるで一部分を切り取られたかのような形だった。そこで足を踏みしめ立つ。強靭な魔力を持つ力の持ち主、七賢者に並び立つ知恵の持ち主。そして━

 

 

『少し騙すみたいで嫌だったな…』

 

「うーん… でも詳しく説明している暇もなかったし… とにかくお願いね。━━━リンク。」

 

『期待はしないでよ?』

 

 

そう。シークの体を借りることでリンクはゼルダの隣で戦うことが可能になったのだ。聞いた時は度肝を抜かれたものだ。

 

 

『念のためもう一回言っておくけど、同等の戦闘力はないからね?』

 

 

だが、それをすることでの利点はほとんどない。ダーズの支配から逃れたリンクは他人の体をうまくコントロールできない。通常のリンクやシークと同じようには戦えない。

 

 

「ええ、わかっているわ。共に頑張りましょう!」

 

 

だからそこからはゼルダの頑張りが左右する。どれだけリンクをカバーできるか。その開戦の音はやる気満々のゼルダが放った『ファントムアタック』が告げた。

ガキンと大きな音を立てて剣が止まる。ガノンドロフもまた大剣の持ち主だった。

 

 

『いけ!』

 

 

リンクが放ったのは『仕込針』。隙は狩るべきだが、いきなり近距離で戦いたくはないリンクが選んだ技だ。放たれた一矢は狙いの顔面から逸れて首へ向かう。やはり慣れない。

 

 

『……ッ!』

 

 

ファントムを斬り捨てたガノンドロフはそのままリンクへと剣を振るった。背後へ飛んで回避したものの、まだ止まぬ振動に冷や汗をかく。

 

 

『(強い。僕が知ってる魔王より…)』

 

 

長く封じられた結果大きく力が落ちていたのか。それでも信じて託してくれたシークに応えねば。

『雷打』をわざと喰らい、次のタックルを繰り出したのを確認すると、想像よりも速いスピードで背中側へ回り、容赦ない踵落としをくらわせた。

 

 

『…!?』

 

 

そして前方に落ちているのは『炸裂丸』。背へと移動する前に置いていたのだ。爆発し前が見えなくなっているだろうタイミングで『フロルの風』を起こしたゼルダが爆炎ともども吹き飛ばそうとした。

 

 

「ぃあっ!」

 

『…ッ!!』

 

 

でも吹き飛ばない。当たったはずなのに吹き飛ばない。タフな相手だ。首元を掴まれ宙へ浮かんだゼルダはニヤリと笑う魔王の顔を見たような気がした。

 

 

『姫さん!』

 

 

即座にリンクが気づき、巨腕に手刀を振り下ろした。ピクリともしない。力が足りないのだ。

 

 

「ひゃあぁ!?」

『ぐうぅぅ…!』

 

 

手刀の体勢で止まったリンクに向かってゼルダが放られた。受け止める姿勢にはなれなかったリンクはゼルダ共々倒れ込む。

慌てたゼルダは見えずとも、下敷きになったリンクははっきりわかった。先程使っていた剣で叩き斬ろうとしているのだ。

 

 

『ダメだ!』

 

 

咄嗟に投げた『仕込針』はこの状況に応えてくれたのか、ガノンドロフの双眼に突き刺さった。

 

 

『━━━ッ!!!』

 

『まずっ!』

 

 

ゼルダごと転がって難を逃れたリンクをガノンドロフは視界に捉えることはできない。剣はまっすぐ、二人がいた大地に刺さっていた。

 

 

「ご、ごめんなさい!」

 

『気にしないで、僕の方が役に立ってない。力の使い方が違うんだ。格闘技ができてない』

 

 

格闘技など経験もないリンクが手刀や蹴りを入れてもあまりダメージを与えられない。直前に軽く習った投擲武器の方が役に立っていた。だがそれは決定打にならない。勝負を決めるにはどうしてもゼルダの力が必要だった。

 

 

「そうね… 私が頑張らないと…」

 

 

時の勇者が、こどもリンクがこの魔王とどんな戦いを繰り広げたのかゼルダには知らない。だからゼルダとリンクの二人で戦っているのだ。

彼はそうやって戦ったのだろうと思うから。リンクには無理を言った自覚がある。シークもわざわざ付き合ってくれた。だから自分がやらなくては。

 

 

「くらいなさい!」

 

 

放たれるは『ディンの炎』。ハイラルの血と共に受け継がれた膨大な魔力は強き決意に応じ、三つの火球を生み出した。

 

 

『…ッ!!』

 

 

威力のこもった魔法はガノンドロフの張ったシールドを削り続ける。全てを受けきればシールドが破壊されてしまうだろうと思うほどに。だからシールドを消してその身で受けるしかなかった。着弾した肉体から黒煙が上がる。

 

 

「これで決めるわ!」

 

『…!!』

 

 

片足に宿る稲妻。華奢な足だと侮れない。魔力の込められたキックは普通の蹴りなど非でもないぐらいに手痛いのだ。それを知ってかガノンドロフは剣を構えて振りかざす。

 

 

『━このッ!!』

 

 

そこに割って入ったのはリンクだった。シールドがギリギリと削れていく。

 

 

「リンク!」

 

『構わない! 跳んで!』

 

 

小さくなったシールドを足場に上へ跳び上がる。完全に割れたシールドは最早目に入らなかった。

 

 

「やああ!」

 

 

ただ標的に向けて右足を突き出すだけ。

足はしっかりとガノンドロフの眉間を貫いた。

 





ガンナ「ちっ… あの守銭奴やろうたんまり持ってる癖して拾い物ひとつまけねーのかよ…」

ソード「ヘイ! ガンナ、何してるんだ?」

ガンナ「むらびとのやろー、いいガラクタ拾っておいて高値提示してくんだよ。」

ブロウ「まあ、売るかどうかは本人次第だろ。嫌なら買わなきゃいいし。」

ガンナ「やっぱここは『私はガンナだからタダにはならんのか?』ぐらい言うべきか。」

ブロウ「お前の名前に一体何の箔があるんだよ、その自信はなんなんだ!」


ブロウ「はあ… 次回、『永遠に消え去る物語』…」


ガンナ「しゃーねー。銃口突きつけて…」

ブロウ「脅迫やめろ!」

ガンナ「撃つかどうかはあいつの態度次第。ようは撃たせたむらびとが悪い。」

ブロウ「ンな訳ねーだろ!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

百十話 永遠に消え去る物語


はい、キングダムハーツハマってこの有様です。
また、遅刻です。せめて早めに投稿予約しておく脳ないのかな…


鉄拳シリーズは未プレイですが、使い方の動画を見るにゲームスピードの差と原作再現のバランスを取るのが難しかったのかな、と勝手に。



 

『今お前はここにいるんだ! それだけでお前の存在は肯定されているんだ!』

 

『人が残すのは記憶じゃない! 歴史でも世界でもないんだ!』

 

『何かしようと言うわけではないの、友達になりたいの』

 

『だって… あんなに苦しそうなんですもの…』

 

 

「(世間知らず共が…)」

 

 

彼の時が進むたび。戦っていた姿に近づくたびに。彼の時間はズレていく。

友達も故郷も戦いも。こどもリンクの頭の中でしか証明できない。彼らは知らない。

みんな命懸けで戦ったんだ。泣いたり苦しんだり失ったりして、それでも勝ったんだ。

 

それをアイツは崩してくる。巨大な世界が用済みの勇者を押し潰そうと、存在すらもなくそうとしてくる。

 

 

「(アイツらは運がいいだけだ… 世界から否定されたことがないだけだ…)」

 

 

こどもリンクの存在だけが、あの戦いを証明する。仲間が闇に抗ったことを証明している。だから生き続けている。

 

 

「(そうやって生きて…)……その…あとは…?」

 

 

思考を妨げたのは咆哮。目の前にいたのはかつて倒した怪物。あの本物にはもう勝ったからと興味も持たなかったが。

 

 

「おまえもか…!! おまえもなのかダーズゥッ!」

 

 

精神を揺さぶられた今現在は到底看過できなかった。

 

 

 

━お前たちがぼくを否定し続けるというならば

 

━ぼくの存在を消してみろ。かけらも残さず無くしてみろ

 

━時と共にいつか失われるぼくを、永遠に消え去る物語を、今この場で幕を下ろしてみろ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あっ! 今の…!」

 

「この声は…!」

 

「ぬぅ…!」

 

 

遠くで鳴り響く咆哮をたしかに聞いた。ゼルダとシークは驚きに染まった顔で振り返り、元の姿に戻ったばかりのガノンドロフはこれ以上ないほどに苦い顔をした。

 

 

「聞き覚えがありすぎる。でもどうして…」

 

「難しい話ではない。俺とは違う時間の存在を連れてきたか再現してるかなだけだ。」

 

 

立ち上がったガノンドロフが、二人の知恵を見る。シークは慣れたものだが、ゼルダはまだ慣れず少々怯えている。

 

 

「…礼はいらんぞ。」

 

「必要ないよ」

 

 

短く話を切り上げ、ファイターの人混みを突っ切って三人は走り出した。いざあの運命の場所へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巨大な怪物が闇の力を纏って突進してくる。体力が桁違いだからこそできる真正面からの攻撃。読まれやすいそれはこどもリンクには効かなかった。七年後の姿よりも軽いので逆にかわしやすかったのだ。

 

巨大な双剣の二連撃でもあの小さな姿を捉えられない。股下から潜り抜けたこどもリンクは緑色の特徴的な尾を斬りつけた。

 

 

『グウゥゥ…』

 

「帰れよ… ぼくみたいに元の時代に…!」

 

 

負けない。負けられないではなく、自分が負ける確率など存在しない。驕りでも気持ちの昂ぶりでもなくこどもリンクはただ事実としてそう考えた。

こどもの姿でも、あの決戦の時より更に強くなっていたのだ。これで負けろという方が難しいだろう。

 

 

「こどもリンクー! 遅れてゴメンー!」

 

「まったせたな! 英傑様の御登場だぜ!」

 

「(あんたたち…)」

 

 

飛び入りで参加したのはリンクとトゥーンリンクだ。こどもリンクを追っていた二人は合流も早かった。

 

 

「…ま、いいけどさ」

 

 

別にいい。あの女じゃないなら助っ人は大歓迎だ。出来るだけ早くこの怪物をここから追い出したい。だからこそ目の前の敵のことを話すことにした。

 

 

「あの怪物はガノンドロフが本気を出した時の姿。時の勇者の最後の敵。」

 

「へぇー…」

 

「えっ!? あんなに大きいのが!?」

 

「緑の尻尾が弱点。ダウンさせれば他もいける。図体の割に素早いから気をつけて。」

 

「ガッテン承知の助!」

 

 

簡潔だが、彼らには充分。マスターソードと盾を構える。

時の勇者に倒される前の時間軸から連れてこられたもう一人の魔王ガノンドロフ。あたりには城のかけらが散らばっており、火事まで起きている。本当に何もかもが同じでこどもリンクは腹が立っていた。

 

 

『ウガアアァァァ!!』

 

 

ジャンプと共に叩きつけられた剣は三人の中で一番力のあるリンクも受けようと思わなかった。こどもリンクとトゥーンリンクが背後へ回り、リンクが弓矢で応戦する。効かないのは知っているが、気を引き続けるつもりだ。

 

 

「てやああ!」

 

「……」

 

 

トゥーンリンクの『回転斬り』に続いて、こどもリンクは大きく跳び上がって斬りつける。

後方の敵に斬りつけてきた攻撃はこどもリンクが注意を促すことで二人とも回避できた。

 

 

「逃さないぜ?」

 

「このまま袋叩きにしてやるー!」

 

 

ガノンドロフを中心に三角形状に立つ。これならどこを向いても誰かが攻撃を加えられる。

 

 

『グオオオォ!』

 

「…っ!」

「うわあ!」

 

 

しかし、所詮は人間の浅知恵なのか。振り回した大剣が突風となり、三人を襲う。咄嗟に剣を突き刺しその場にとどまれたのはリンクだけだった。軽いこどもリンクとトゥーンリンクは吹き飛ばされ、地面に転がる。

 

 

「くそっ!」

 

 

振り上がった刃を認めるとすぐに判断をする。

刺した剣を抜く間もなかった。かと言ってここまで大きさに差があれば受け流すことも出来ず、回避も間に合わぬ。土壇場で選択したシールドが割れる音はリンクに否が応でも自身が戦った厄災との比較をさせた。

 

 

「(まったく! リンクはのびてるしトゥーンはどこまで吹き飛んだかわからないし!)とりあえずリンクをどっかに退避させないと!」

 

『グウ…!』

 

 

永遠の宿敵の魂。幼かろうとその魂だけは見間違えない。目眩を起こしてふらふらな目の前のリンクより、小さく素朴な剣と木を剥いだような盾を持つ少年へと武器は振われた。

 

 

「ッ!」

 

 

地面も抉るような一撃を避け、怪物の頭上へ跳んだこどもリンクはその頭に向けて剣を振り下ろした。効かないのは誰よりも知っていたが、視覚の状況を一瞬だけ遮ることができる。そして一瞬だけ有れば充分だ。

 

 

「でりゃああっ!」

 

『─グウウ!』

 

 

完全に背後に回り、弱点に向けて『回転斬り』を放った。後ろへ向けて放たれた二連斬りを最小限の動きで軽々と避ける。まだ剣は届くぐらいの至近距離。

 

 

「おりゃああ!」

 

 

ジャンプ斬りを大きく超えた勢いで叩きつけられた剣は怪物の意識を刈り取った。

 

 

「今のうちに! こっち!」

 

「うっ…!」

 

 

リンクの手首を掴み、瓦礫の陰へと誘導させようとしたその時だった。

 

 

「せぇい!」

「ハァ!」

「どりゃあぁ!」

 

 

ゼルダのイナズマキックが、シークの踵落としが、ガノンドロフの拳が怪物へと落とされる。

 

 

「っ!?」

 

 

駆け出していたこどもリンクは硬直した。今までやろうとしていたことも、戦闘中なことも忘れ、ただ視界が真っ赤に染まっていく。

 

 

「ギリギリ間に合ったってところかな?」

 

「ぐうぅ… 胸糞悪いわ! よもや自分自身の模倣をされようとはッ!」

 

「大丈夫? こどもリンク、助けに来たわ!」

 

「来んなよッ!!」

 

 

意識もせず、突然大声を張り上げた。まるで時が止まったかのように三人は硬直した。

 

 

「なんで来るんだよ、なんで関わってくるんだよ!お前が嫌いだって何度も言ってるじゃん! ぼくは勝てるんだよ! お前なんかいなくてもッ!!」

 

「こどもリンク…!?」

 

 

シークがなんとか声にした名前も彼を止めるには至らなかった。

 

 

「ぼくは勝ったんだ! ゼルダと一緒に! みんなと一緒に! 何が悪かった? 何がいけなかった? おまえが出る幕はない! おまえは! 時の勇者が負けた世界は! 必要ないんだよッ!」

 

「負けた世界だと…?」

 

 

何も口に出せない。何も言い返せない。燻げに口を出すガノンドロフに彼らの心象は察せない。

 

 

「わかってるんだよ…! ぼくの記憶でしか証明できないぼくの冒険は… ぼくが死ねば本当に消えてしまう…! みんなが頑張った事実すらも…! だからってその事実を報われなかったことにするのは違うだろうがあッ!」

 

 

リンクを捨て置き、ゼルダの方へ駆け出し剣を抜く。突然のことに驚いたゼルダは構えることすらできない。守りに入るシークの腕を踏み抜いてゼルダの頭上を超えていく。

ダウンしていた怪物を斬り伏せた。一体この数瞬に何回斬ったのだろう。

 

 

「負けない…! ぼくは戦って勝ったんだから! おまえなんかに負けるかぁ!」

 

 

刃先は起き上がった怪物の方を向いていた。しかし、鋭い全てを拒絶するような目は確かにゼルダに向いていたのだ。

 





ソニック「ハァ…」

クラウド(こいつがため息なんて珍しいな…)

ピカチュウ「ピカ〜?」

ソニック「Hey、ピカチュウ。満を辞しての登場なのにな、やれゼルダ勢やら覚醒やらMiiやらでろくに話が進まなかったじゃないか」

クラウド(たしかに)

ソニック「あーあー! はやくダーズをぶっ飛ばしたいぜ!」


ソニック「次回! 『To be continued to』!』


クラウド「どうせ全員に平等に出番が渡らないなら… ってことでメインで出すキャラクターを絞ったらしい」

ソニック「そういうの、まとめで言えよなー」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

百十一話 To be continued to

先週またもややらかしたので、この時間での投稿ry

多分これ終わるまで治らないな…

そして、この章最終話になります。



「すまん、これはあの六人の戦いにしてやってくれないか!」

 

 

大勢のファイターの前でクロムは頭を下げる。一部のファイターは微妙な顔だった。ここの一帯を陣取る相手は易々と勝てる相手だとは思えない。戦力は多い方がいいのはわかってる。しかし、部外者を掃けたい理由があるのだ。援護するようにルフレが語る。

 

 

「僕からも頼むよ。この時を逃したら… きっともうこどもリンクの時は動かなくなる。今しかないんだ。」

 

 

人の能力を見透かすその目はひたすらにまっすぐだった。善性を持つファイターは彼らの言葉に傾き始めている。

 

 

「それがなんだよ! ボク達はやく進みたいんだ! トゥーンに手を貸してやらなきゃいけないんだ!」

 

「ジュ、ジュニア…」

 

 

全員がそうだとも限らない。子供ゆえの無知さと純粋さは彼らの意図を汲み取れるとは限らない。

 

 

「マ、いーんじゃない? オレ達だってスピリット相手にユーがやるべきだーウンタラカンタラやってたし」

 

「俺は復帰する以前のこと知らねえからな… でも別に拒否する理由ないし」

 

 

クロムとルフレの背中を押したのはソードとブロウだった。彼らはこどもリンクではなく、ゼルダの真意に近づいていた者だった。

 

 

「あの姫さんがあんなに必死こいてんだ。檄撃に応援してやろうぜ」

 

「ブロウ…! 助かる!」

 

 

一人がクロム達側についたことで、彼らの想いに寄り添う方向に傾いた。後はその想いを繋げるだけ。

 

 

「(そうだ… 人が残すのは想いだ… 人はそれを繋いで生きていくんだよ…)」

 

 

ルフレ達が失ったものは多かったし大きかった。それでも進むしかない。今この瞬間に生きているのだから。生きながらに死んでるなんて認めてたまるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こどもリンク!」

 

「うるさいッ!」

 

 

ダウンから復活し、起き上がる怪物の視界に既に彼はいなかった。一瞬のうちに背中側に回っていたこどもリンクは乱暴に剣を叩きつける。

 

 

『グウオオォォッ!』

 

 

リンク達のそれのように回転斬りが辺りを襲う。ゼルダとシークは素早く範囲外に逃げるが、他は違う。ガノンドロフはシールドを張ってもなお、大きく引きづられ、こどもリンクが放棄したリンクは防ぐ手立ても出せず直撃する。

 

 

「こどもリンクは!?」

 

『あそこ!』

 

 

小さい姿を探すシークの手助けをしたのはゼルダのよく知るリンクだった。ガノンドロフとの戦いの時にシークの体を借りて戦っていた彼は、離れるタイミングを逃し、未だ彼女の手助けに残っていた。

半透明な肉体が指したのは空だ。飛び上がった怪物にまだくっついていたのだ。一振り、徹底的に弱点を狙い続けるこどもリンクは振り払われ、怪物から離れた場所に着地した。

 

 

「駄目… 一人で戦う必要なんてないの…」

 

「ゼルダ…」

 

『頭に血が昇ってるね』

 

「…!」

 

『大乱闘には私情を持ち込んでないから冷静には戦えてるけど、こちらの話は聞く耳持たずだね。』

 

「こどもリンクの頭冷やせばいいの?」

 

「トゥーン、いつの間に」

 

 

このタイミングで吹き飛ばされていたトゥーンリンクが復帰する。多少の傷はあるものの、まだまだ戦えそうだ。

 

 

「…いや、ボクはこどもリンクを連れて一時的に離脱する。二人にはその間戦っていて欲しい。」

 

「りょーかい!」

 

「私も?」

 

「キミがいたら、冷静にはならないだろうからね。」

 

「そう…」

 

 

少し不満げだが、仕方なく戦場に渡っていく。残されたシークは未だに戦い続ける小さな体を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふん、だらしない。仮にもこの俺に挑んだ男か? あの程度の言葉で動揺するとはな」

 

「………」

 

「無視ってるぅ!?」

 

 

前線はガノンドロフ、こどもリンク、リンクの三人となり、陣営も崩れていく。トゥーンリンクとガノンドロフとではやれる事が大きく違う上に彼自身に協力する気がないのだ。自分の利になれば協力はするだろうが、積極的にする気はない。そういうことだ。

 

怪物が空へ剣を掲げると雷が落ちる。剣を振り下ろすと共に放たれた雷の弾は三人のファイターへ迫る。偶然にもいつかの勇者のような攻撃だった。

 

 

「ぐう…」

 

「うへっ!?」

 

 

動きの遅いガノンドロフはよりにもよって足に当たってしまう。リンクはギリギリながらもかわした。こどもリンクは、

 

 

「こ…のッ!!」

 

「うそーん!?」

 

 

なんと、小さな、いかにも脆そうな木の盾で攻撃を弾き返したのだ。この場で見てきた二人は驚愕する。ここまでのことができるのか。

 

 

『グウオオォォ!!』

 

「…ッ!」

 

 

自分の撃った攻撃が相手に当たってもなお、怪物の攻撃は続いた。宿敵、時の勇者に向けて猛烈に突進してきたのだ。それを見たこどもリンクは得物を前方に構えて対処しようとする。

 

 

「ハッ!」

 

「…ッ! シーク!?」

 

 

その突進から救ったのはシークだった。横抱きにされたこどもリンクはシークの手によって怪物から離れた遠くへ移動させられる。

 

 

「私達は負けてはいられないの!」

 

「ふん、遅れだけは取るな!」

 

「リンクリンク! ちょっとやりたいことがあるんだけど!」

 

「おっ? 戦いながら聞くぜ?」

 

『オオオオオォォォ!!』

 

 

咆哮は鳴り止まぬ。宿敵が消えてもその本能は消えることはない。目的も知らずに戦い続けるその姿はまるで怪物だった。

 

 

 

 

「…何のようだよ?」

 

「少し冷静になってもらおうと思ってね。」

 

「…ぼくはこれ以上ないくらいに冷静だけど」

 

「そうは見えないけどね」

 

 

予想に反してこどもリンクは抵抗しなかった。いつでも抜け出せるということか。でも無理に逃げないのはシークにとって都合が良かった。

破損した城の外壁に身を隠して話し出す。どうやら他の四人の相手でここまで目線が届いていないらしい。

 

 

『ちょっと僕からもお話したくてね、少し時間いいかな?』

 

「…! あんた…!」

 

 

こどもリンクの目線は一気に敵意を含んだものとなる。この勇者は自分とは一番相容れぬ存在だ。

 

 

「あんたには関係ない」

 

『そうかな? 君が負けたのが世界で、君が撃ち漏らしたアイツを倒したのは僕だ。十分に関係者だと思うけど?』

 

 

シャキン!

半透明のその姿に剣を振われた。刃は何も斬り裂かず、空だけを貫く。リンクは変わらぬ表情でこどもリンクを見つめ続けていた。

 

 

「攻撃を受けないからって随分言いたい放題だね…? 間違った歴史に住むあんたらにあれこれ言われる筋合いはないんだけど?」

 

『僕にとっては真実だ』

 

「じゃあぼくにとっては虚構だ」

 

『違う。僕は僕の進んだ歴史を君のせいだとは思ってない。寧ろ感謝してるんだ。僕にはたくさんの人が助けてくれたけど、最後は一人で戦ったんだ。』

 

 

こどもリンクは驚いて目を見開き、力なく左腕を下ろした。剣はリンクの足を貫通している。

 

 

『そんな僕がアイツに勝てたのは君達の頑張りがあったからだよ。君に会わなかったら僕はずっと勘違いしてた』

 

「だからなんだよ… おまえが倒したんだからおまえの成果だろ… ぼくは何もしてない」

 

『あそこ、見て』

 

 

実体のない指は戦場を指さした。そっちの方を見る。

 

 

「ゼルダ! 足止め!」

 

「わかったわ!」

 

「うおおお!」

 

 

トゥーンリンクの呼びかけに応じたゼルダは『ファントムアタック』で片足を留める。動きが止まった時、リンクは前転で背後へ回り込み、体を捻りながら舞うように斬り伏せた。

 

 

「あの技… 背面斬り…?」

 

 

こどもリンクが扱っていた剣技の一つだった。今までの大乱闘で使っていたのをいつの間にやら覚えていたのか。

 

 

「おっーし! 次行くぞー!」

 

「大ジャンプ斬り…」

 

 

ダウンした怪物に飛び上がったトゥーンリンクは斬りつける。これもこどもリンクが使っていた技だった。未だに起き上がれぬ怪物は無数に火の弾を放った。

 

ゼルダとガノンドロフはシールドや回避で防いでいるが、リンクとトゥーンリンクは盾で跳ね返した。─盾アタック。

 

そのままトゥーンリンクは飛び上がってすれ違いざまに頭部を斬りつける。─兜割り。

 

リンクはいつの間にやら納刀しており、背中に背負った鞘から剣を抜いた勢いのままに斬りつけた。─居合い斬り。

 

 

「─っ!」

 

 

ダウンしたガノンドロフの遥か上空。飛び出してきたのは一陣の風。一つの小さな影。それはこどもリンクだった。

 

 

「(ぼく… いつの間に動いてたんだ? なんで動いてるんだ?)」

 

 

気がついたら、体が勝手に動いていた。左手の剣を器用に動かし、刃先が怪物の頭部に向けられた。

 

 

『今お前はここにいるんだ! それだけでお前の存在は肯定されているんだ!』

 

『人が残すのは記憶じゃない! 歴史でも世界でもないんだ!』

 

 

脳裏に聞こえたのはあの言葉だった。なんの脈絡もなく思い出したそれは何かを目覚めさせたのだ。

 

 

「(ああ… そういうことなのか。)」

 

 

この魂は、みんなが戦った証だ。この剣技はぼくが戦った証だ。ぼく一人でみんなの想いが繋がる筈がない。繋いでくれる人がいて。

 

 

「はあああぁぁぁぁ…ッ!!!」

 

 

─初めて繋がっていくんだ…!!

 

とどめを、刺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫色の炎が散っていって、一際大きな炎が化け物の肉体と共に消えていった。その中心にいたこどもリンクは盾と剣を背中にしまう。

 

 

「こどもリンク…」

 

「うるさい、ぼくはあんたみたいな人の都合も知らずにグイグイくる人間が苦手だ」

 

「ううぅ…」

 

 

一番に近づいたゼルダにこどもリンクは冷たく接する。ゼルダは最早涙目だった。

 

 

「でも」

 

「嫌いではないよ」

 

 

一言区切った言葉はゼルダを満面の笑みにさせるのに十分過ぎる言葉だった。

こどもリンクもあんなに刺々しかった顔がほんのちょっとだけ優しくなった。

 

 

「ふん、つまらん」

 

「ありゃあ? そんなこと言っちゃってライバルが強くなって嬉しいんじゃん〜?」

 

「そうだそうだ!」

 

「たわけが」

 

 

ガノンドロフを徹底的にいじる二人のリンクに今度はガノンドロフの怒りが爆発しそうだ。

 

 

『まあ、姫さんの機嫌が直ってよかったよ』

 

「う〜ん…」

 

『どうしたの?』

 

「やっぱりあの剣技見覚えがあるんだよな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あんなことがあったのは最早どれほど前なのだろうか。

 

果てしない時を迷い続けたこの肉体はとうの昔に朽ち果てた。それでもなお、この魂は残り続けたのだ。

 

でもそれももう、終わるのだ。

 

 

『勇者として生をうけながら後世にそれを伝えることの出来なかった我が無念も、ようやく晴らすことが出来た』

 

 

気高さと獰猛さを併せ持つ今代の勇者。彼の道の未来には果たして何が待ち受けているのだろうか。

 

どうしようもない痛みがあるのかもしれない。

途方もない別離があるのかもしれない。

 

 

『幾多の戦いを経てなお、曇りなき眼で未来を見据えるそなたなら、必ずや、このハイラルを在りし日の神々が愛でた大地に戻すことが出来るだろう』

 

 

それでもきっと前に進むことができる。繋がれた想いがあるのだから。

 

 

『…さらばだ!』

 

 

白んでいく視界の中、光の勇者はその骸の騎士に何故か似ても似つかわぬ幼な子の姿が見えたのだった。

 

 

「怯まず進め、我が子よ!」

 

 

 

 

To be continued to ‘Twilight Princess’

 




現ファイター

カービィ
マリオ
マルス
ピクミン&オリマー
パックマン
Wii Fit トレーナー
Dr.マリオ
インクリング
ピチュー
ロックマン
スネーク
むらびと
シーク
リンク
ルカリオ
キャプテン・ファルコン
ピーチ
クッパ
フォックス
シモン
ピット
リュカ
しずえ
Mii 剣術タイプ
ヨッシー
プリン
リュウ
ドンキーコング
アイスクライマー
ダックハント
リトル・マック
ファルコ
ピカチュウ
サムス
ネス
Mii 射撃タイプ
トゥーンリンク
Mr.ゲーム&ウォッチ
ポケモントレーナー
ディディーコング
シュルク
ゼロスーツサムス
デデデ
ルキナ
デイジー
ワリオ
リドリー
ケン
ブラックピット
ルフレ
リヒター
ロゼッタ&チコ
ロボット
ゲッコウガ
ウルフ
カムイ
アイク
メタナイト
ルイージ
キングクルール
ミュウツー
ガオガエン
ゼルダ
こどもリンク
ソニック
クラウド
クッパJr.
クロム
Mii 格闘タイプ
ガノンドロフ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

六章 まとめ

 

 

お疲れ様です。遂にここまで来ました。次回から最終章… はやる気持ちを抑えてまとめといきましょう。特にこの章は補足が多いです。

 

 

「好き放題するからよ。ゼルダ史を知らない人はちんぷんかんぷんね。」

 

「この六章、影の題名は『ゼルダの伝説 覚醒とMii組を添えて』となってます〜♪」

 

「えっ…? ジュニアとかソニックとかもいたのに…」

 

 

まあ、細かいところはさておき、ファイター説明に移りましょ。早く登場したいでしょ?

 

 

「…………」

 

 

 

 

ガオガエンからですね。実はこの子サンムーン発売前に発表されているポケモンなんですよね。剣盾だと御三家の最終進化は発売までわかりませんでした。

 

 

「ああ… 懐かしいな、メッソンがみずドラゴンになるとか予想されてたっけ…」

 

 

基本的にそのサイトに載ってる説明から肉付けして本作の設定にしています。ピチューと仲がいいというのも、幼いポケモン子供には優しいという説明からですね。

 

 

「怒りますよー、ピチュー」

 

 

ただ状況が状況なので気分屋な面は出てないですね。本作は公式の説明より好戦的です。

 

 

 

 

この章のヒロイン枠となりますゼルダ。衣装は神トラと神トラ2の折半と言われてはいますが、本作では神トラエンディング後から呼ばれております。

 

 

「つっこまれてたわよ、トライフォースのこと。」

 

 

うぐ…っ

神トラではリンクが最後にトライフォースの力で犠牲になってしまった人々を蘇らせてます。つまり、そもそもこのゼルダは知恵のトライフォース宿してないのが正解なんですね… ですが切り札でも使っているし、本作ではエンディング後にダーズの一件のために、ゼルダに宿ったのではないかと無理やり理由をつくってます。こどもリンクも同じように。そもそもトワプリガノンにトライフォース宿ってるんだからそこら辺ガバガバでいいでしょ、トゥーンリンクも以下同文。

 

 

「……………」

 

 

うるせー!

そんなこと言ったらシュルクは第一段階のモナド持ってるしビジョン見えるし、スマブラだからって理由でいいんだよ!

 

ぜえー…ぜえー…

最初のムービー見る限りパルテナやフィットレと同じような丁寧語だと思うんですけど… あまりにも丁寧語キャラが多いので風花雪月のエーデルガルトのような、〜わ的な女口調を採用しました。

 

人との付き合いが少々下手ですが、王族故の人間関係の少なさが災いした結果で決して悪い子ではないのです。実際こどもリンクはあそこまで強引にいかないと変わらなかったでしょう。

 

 

「あ、あと神トラリンクについても少し補足! ゲーム上、あそこのあたりで壁画リンクのスピリットが手に入ったので本作で神トラリンクとして登場させました! 素朴ながらも不思議な雰囲気を纏った感じのキャラクターです。」

 

 

それは神トラ2のリンクだって? アハハハハ

 

 

 

 

続いてはこの章において主人公と言ってもいいこどもリンクとなります。DX時代の話で、二度開催された大会に三度呼ばれたというのがわかりにくいと思うので補足します。彼視点の時間軸はこのようになっています。

 

時オカ子供時代→時オカ大人時代道中→64→DX(リンクとして参戦)→時オカ終了→ムジュラ→DX(こどもリンクとして参戦)→SP→トワプリの骸骨騎士

 

その他二次創作ではムジュリンとか呼び方に苦労している印象がありますが、本作のこどもリンクはスレているので自分でこどもと名乗っています。

 

 

「確実にリンクより精神年齢上だわ」

 

 

実際そんな感じで書いてますからね。まだ無邪気な時代では一人称俺ですが、スレた後はぼくです。トゥーンリンクと対照的にする意図もありますが、大人ぶることに興味をなくしたという理由もあったりなかったり。

 

強さにも興味ないため、大乱闘では適当に手を抜いています。でも本気ならめちゃくちゃ強いと思う。諦め癖等問題はありますが、その強さの片鱗は彼の解放戦やボス戦で少し見えています。ようは戦闘面は実は強いし、精神面も強く見えるけど急所を突かれると弱い。

 

最後に彼から他のゼルダ勢に対する心象と実は区別していたリンク達のゼルダへの呼び方について載せて締めとしましょう。

 

 

リンク→普通。というかブレワイの時間軸がわかってない為特別何も思うことはない。

トゥーンリンク→友好的。時の勇者の話が唯一残ってるため自覚あるぐらいには甘い。よく子供組に巻き込まれる。

シーク→少し複雑。嫌いよりの普通。お節介はやめてほしい。

ゼルダ→苦手。改善はしたが、そもそもグイグイくる相手自体苦手。

ガノンドロフ→興味ないね。自分からすればとっくの昔に倒した相手。

 

自分の世界のゼルダ 神トラゼルダ

リンク ゼルダ様(昔は姫様) ゼルダ姫

トゥーン テトラ ゼルダ

こども ゼルダ 姫サマ

神トラ 姫さん /

 

 

 

 

お次はソニックですが… しっかりゲーム内で喋るし、特に話すこともないんですよね。だからおさらいというか紹介というか。そんな確認みたいなことしかできません。

 

 

「割とそういう人多いですよね、私とか」

 

 

そうですねーあなたとかー

自由を愛する曲がったことが大嫌いな世界最速のハリネズミ。せっかちさんでとあるゲームではプレイヤーがしばらく放置してると急かしてきたり、勝手に場外に走って行っちゃう面白い小ネタもあります。

 

 

「…………」

 

「そういえば、少し彼について話したことがあるね。ソードと同じく日本語と英語を織り交ぜて話をするけど、彼より自然って」

 

 

はい、それにソードはカタカナですが、ソニックはきちんとアルファベットという違いもあるので見間違うことはないかと。

 

 

 

 

後はリメイクが出てるクラウドですが…

時系列はなるべく1Pカラーに合わせるのでまだアドベントチルドレンには至っていません。ディシディアシリーズも2作ほどでしかないかな? そもそもあれもスマブラと同じく本人じゃないとかなんとか…

 

 

「ねえ、リメイクの扱いはどうなのかしら?」

 

 

そう! それですよ!

分作ということで本当ならばオリジナルとのいいとこ取りをするのがベストなのですが!

リメイク一作目からしていい意味できな臭い!オリジナルと同じルートを通る気がしない! なんなら二週目とか言われてる!

 

な・の・で!

はっきりするまで本作での扱いは保留! オリジナル一辺倒でやらせてもらいます!

 

 

「…………」

 

 

 

 

クッパJr.です。クッパ共々任天堂の親子キャラ代表として見守り機能のCMに登場してますよね。サンシャイン以降もパーティゲームやらの常連になってます。

 

 

「随分と甘えん坊… という考えもありますが…」

 

 

個人的には成長してると思います! 私が証明しましょう! クッパ様! 息子さんの教育は順調です!

 

 

「また熱くなっちゃって」

 

 

まず初登場のサンシャインから父親の嘘を見抜くほどに聡い子です! RPGDXではワガママな一面も出ましたが、成長してるんです! オリガミキングやフューリーワールドでもマリオの力を借りる冷静さもありますからね!

 

まあ、私が言いたいのはワガママなだけで成長してるんだ、ってことです。他の二次創作ではほとんど見ませんが、私はロックマンとこどもリンク共々子供組で一纏めにしてます。

 

 

 

 

続いては俺は魔剣… じゃなかった、なくはない…でもない、残念だったなさんです。

 

 

「クロムね、最後まで名前出さなかったわね」

 

 

ファンファーレはぶられおじさんです!

 

 

「とっくの昔にアップデートで変わったよ!」

 

 

まあ、冗談はさておき、ルキナルフレの欄でチラッと言いましたが、クロムも娘さんと同じく理想家だと思ってます。

 

前も話した場所、ルフレの策によって運命が変わるところですが、クロムがその策を知っていたようには見えないんですよね。ちょっと判断に迷うところですが。

それにクロムは未来からきたルキナや夢で見ていたルフレと違って未来のことを人伝にしか知りません。二人より軽く考えていてもおかしくありません。それにメタ的な考えだとクロムに演技ができるとは… いや、でも結局攻撃くらってから倒れたフリするまでは演技だな…

 

 

「…………」

 

 

ま、いいや。

実は男ルフレと女ルフレで支援会話の内容が違います。ほとんど別物。簡単に言うと失礼な上にラッキースケベをかまします。

 

 

「ほとんど答えだー!?」

 

 

 

 

 

そして最後のMii組ブロウです。名前だけはガンナ登場回で登場済み。本当はもっと癖のないキャラだったんですが、ガンナとソードがここまでキャラ濃いならこれは埋もれると思った結果、直前に言動が少し変だという設定が加わりました。なお、ほとんど意味はなかった模様。

 

 

「あっ、自覚はあったんだ」

 

 

三人全員ボケはあかんだろ! ってことで三人の中でのツッコミ兼常識人になりました。

えっと、設定としてはすれちがい伝説後にすれちがい迷宮を経験して、今はとある理由でスレチガ諸島、ようするにすれちがいフィッシングをしています。

 

 

「とある理由?」

 

 

すれちがい迷宮の話の中で、俗に言う良くないアイディアチェックに成功してしまったとだけ伝えておきます。

 

 

それと登場時期の関係上、覚醒の三人組とは関係性が対比になっておりまして。

覚醒組が仲間として共に困難を打ち克つのならば、Mii組は信じているから助けがなくとも困難に打ち克てるだろ、というものです。

よく言えば強いから大丈夫という信頼、悪く言えば放置気味です。双方にいい面悪い面がありますね。

 

 

 

 

今回のトリを飾るのはガノンドロフです。もちろん時オカの時期から呼ばれており、最終決戦前の封印される前の時間軸です。

 

 

「そういえばこどもリンクは…」

 

 

ええ、こどもリンクにとっては既に勝った相手ですのでほとんど興味を持っていません。

ですが、ガノンドロフにとってはトゥーンリンクがいること、そして自分の知る勇者とあまりにも性格がかけ離れていることから警戒以上に戸惑いがあります。

 

性格は… 自分に自信がある武人タイプとでも言いましょうか。でも彼は一族の長なので、そういうリーダーシップはあります。それと女性免疫も。

 

 

「ああ、ゲルド族はほとんど女性ですからね、」

 

 

 

 

 

 

さて、いよいよあなた達の出番ですが…

身だしなみ化粧得物の調子服装体調等々大丈夫ですか?

 

 

「そうか! もう出番なんだ…!」

 

 

ダーズ戦を挟んで最終決戦ですね。あ、もちろんこことは関係ない次元の話なのでここで話したことがどうとかは全く関係ないですが。

 

 

「ふふふ、覚悟はいいかしら?」

 

「全国三兆人のパルテナファンの皆さん、待っててくださいね〜♪」

 

「…………」

 

 

若干最後怖くなりましたが、エンディングまでどうか御精読をお願いします。再びまとめで会える時は全てが終わった後になりますね。それではさよーなら!

 

 

「え? 僕達の分も話すの!?」

 

 

あったりまえじゃないですか。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

八章 新たなる命が包むこの大地で
百十二話 混沌



最近はもっぱらキングダムハーツやってます。現在2のやり込みしてるところですね。グミシップでてんやわんやしてます。




 

「みんな、準備はいいかい?」

 

「待ってー!」

「インクリングがいなーい!」

 

 

マルスが念のために全員に呼びかけるが、思わぬところで声が上がった。アイスクライマーの二人だ。あのオレンジが見当たらないことにキョロキョロと見渡しながら気づく。

 

 

「ハッハッハー! インクリングはいないが私ならここにいる! New! カラストンビ隊が一角3号! 名乗りの時間はないのでイカ省略!」

 

「はぶいた!?」

 

「どうせ話が長いって割愛されるんでしょ? まったく、ヒーローがなんたるかをみんなわかってないんだから!」

 

「なんで勝手に拗ねてんだよ」

 

 

ファイター達が集まる団体の真ん中に3号は降り立つ。唯一正体をわかっていないピットとブラックピットが軽くツッコミを入れる中、他は思い思いの感情で彼女を見ている。

 

 

「ほ〜う? ずいぶんとのろまちゃんだったんだな? ようやくオレ様の出番か」

 

「…ッ! リドリー!」

 

 

ようやく決戦が始まるとかぎつけて、どこかにいたリドリーが顔を出す。その姿に苦い顔をするサムス。ヘルメットがなかったら周囲にバレていただろう。

 

 

「ピカピカ、ピカチュ!」

 

『…わかってると思うけど倒すべきなのは』

 

「おまえみたいな小動物にわざわざ言われなくともわかってるぜ? サムスを何回でもぶっ殺せるこの場所をわざわざくれてやるつもりはないからな〜?」

 

 

ピカチュウの言わんとすることをルカリオが翻訳すると、それを遮ってリドリーが喋った。誰にも褒められたものではないが、一応彼にも彼なりに戦う理由があるのだ。

 

 

「うん! みんな大丈夫だと思うよ! いざとなったらスーパースターのボクに任せてくれ!」

 

「頼もしいね、でも僕も頑張るよ」

 

 

全員の準備ができていることを確認したマルスはゆっくりとその場所に進む。

 

そこはかつてキーラを打ち負かした時、ダーズの手によって飛ばされた場所。三つに別れる道の始点だったのだ。その地面を抉り出すようにできたそこにはギョロギョロと蠢く一つの眼があった。確かにファイター達を視認するとブルブルと震えだし、あたりは失墜の闇に堕ちる。

 

 

「…! ここは!?」

 

「移動… したの?」

 

 

キーラとの戦いにはいなかった面子が驚いて辺りを見渡す。

 

そこは先程いた場所より遥かに上空のように感じる。闇を感じる空がすぐ近くにあったからだ。終点のそれに近い足場は、広い大きな足場と宙に浮かぶ薄い足場に別れている。

 

 

「こっちの方が全力を出せるからいい。それに… くるぞ!」

 

 

アイクがそれを言い終わった途端、空中にダーズが出現する。

 

 

『─────!』

 

 

圧倒的な存在感を示すダーズとの戦い。おどろおどろしく鳴り響く怨霊にも似た声、のようなもの。それとの開戦を告げたのは奇しくもキーラにトドメを刺したものと同じ銃だった。

 

 

「オラァ!!」

 

 

ファルコの『ブラスター』から放たれた光弾。ダーズの本体たる目を狙ったそれは周りに存在している黒い触手に弾かれる。

 

 

「チッ! またこれかよ!」

 

「落ち着けファルコ、こっちだって人数は増えてるんだ!」

 

 

そう励ましながらフォックスも『ブラスター』を撃つが、綺麗に全て防がれた。連射力と弾速が速いフォックスの銃で防がれるのならば、工夫なしでは当てることもできないと思った方がいい。

 

直接当たっていないとはいえ、こちらへ攻撃されていることに腹を立てたかのようにダーズは迎撃してくる。辺りに陸空関係なく球型の物体を設置してくる。その攻撃は、一部のファイターには見覚えがあった。

 

 

「これってキーラのと同じものだ!」

 

 

発言をしたロックマンだけではなく、キーラとの戦闘経験がある者たちはその球型の物体、爆弾に向けて攻撃する。それを壊せることを知っているからだ。

 

 

「そうか…!」

 

「ふーん〜… なるほどなぁ?」

 

 

その行動で未経験者の一部も気づいた。この攻撃は阻止できると。近くにある爆弾を壊していく。しかし、それでも数が多すぎた。

 

 

「ぬうう…」

 

「ぐっ…」

 

 

密度の高い弾幕はファイター達に襲いかかる。キーラの十字の爆発とは違う、Xの字の爆発。全員がほぼ万善の状態だったから被害は少なかったとはいえ、体の大きなファイターの中には爆発が掠めた者もいた。

 

 

「むっ… ならばっ!」

 

 

ファイター達がひしめく中、メタナイトの姿が消える。数が多い中で、それに気づくものはいない。

 

 

『─────!』

 

「…! コゥ!」

 

 

ダーズの触手が目玉を中心に、長方形のような形をかたどっていく。それに気づいたゲッコウガは声を上げ、注意を促す。何かしてくると。

 

 

「甘い…!」

 

 

ダーズの体が、僅かに、一瞬だけ揺らぐ。『ディメンジョンマント』での奇襲攻撃だった。ギャラクシアがダーズの本体を斬りつける。

 

 

『ハァ!』

 

「ウラァッ!!」

 

 

僅かな隙。だが、隙は隙。ルカリオの『しんそく』が、ウルフの『ウルフフラッシュ』が交差しながらダーズを傷つける。

 

 

「いっけー!」

 

 

それとほとんど同じタイミングで、トゥーンリンクが動いた。キーラの時と同じように、クローショットで触手による防壁を剥がせないかと考えたのだ。

 

しかし、ヌルヌルと縦横無尽に動く触手を掴むことはできなかった。クローショットの先が力なく落ちる。

 

 

『─────!』

 

 

銃口のように向けられた触手の先から、紫色の光弾が無数に発射される。嵐の如く放たれた弾幕は素早く、避けるのも困難だった。

 

トゥーンリンクの前に出たこどもリンクが、垂れた鎖を鞭のようにうねらせ、光弾を撃ち消す。

翼で体を覆って守るが、その代償に飛行能力が落ちていく。

攻撃の後隙を狙われ、『リフレクター』が間に合わない。

 

 

「これでなんとか… うわあ!」

 

 

『サイマグネット』で光弾をやり過ごしたネスにダーズの触手が襲いかかった。強烈に叩かれる。反射や吸収に甘えたファイター達をダーズは見逃さない。その巨大な面での攻撃や、先についた鋭い爪が縦横無尽に迫ってくるのだ。

 

 

「オラァ! このオレさまの邪魔をするなぁ!」

 

 

キングクルールが、自慢の拳で触手を叩き落とす。が、大地に落ちたものの、それ以上にこたえた様子はなかった。

 

 

「そっちじゃダメだ! 目ん玉の方を狙わないと!」

 

「インクで潰したら目見えなくなるかな…」

 

「そんなことわかってるんだよ! だが、周りの雑魚共なんとかしないとダメだろうが!」

 

 

キーラ戦を経験済みのピットは初めから神弓での遠距離でチクチクとダメージを重ねていた。中心を狙わなければダメだと語るが、キングクルールの言うことにも一理あるのだ。

 

 

「! それなら! テキザイテキショだよね!」

 

 

キングクルールの再びのパンチ、そして3号の『スプラローラー』が触手を捕らえる。触手の動きを封じればその分攻撃も防御を薄くなる。

 

 

「…! クロム、ルキナ! 触手の方を頼む!」

 

「ああ!」「はい!」

 

 

最高クラスの雷魔法『トロン』をダーズに撃つ隣で、ガオガエンが絞めている触手の先を二人で斬り落とす。

 

フィールドを制圧していた触手に対応し始めていたのを敏感に察知したのか、ダーズは次の行動に出る。

至るところから噴き上がる闇の柱。乱雑に撃たれた攻撃は、触手の対処と合わさり回避を困難なものにする。

 

 

「もう! 同時に攻撃してきて! ヤになるわ!」

 

「でも、どうしよう… どうにかして攻撃を止めないと!」

 

 

デイジー、ルイージもまた柱を避けながら触手をなんとかしようとするが、いかんせん火力が足りていない。どちらかの攻撃を防ぐのは勿論だが、これならばダーズ本体に攻撃した方がいいのではと思い始める。

 

 

「ええい、しゃらくさい! 俺がいく!」

 

「えっ? ぶふっ!?」

 

 

ブロウがルイージ自体を踏み台にして、高く飛び上がる。一度、空中に浮いた足場に着地し、その勢いも衰えぬままにダーズへ飛びかかった。眼前に聳えるのは触手の壁。

 

 

「させぬっ!」

 

「止まれ!」

 

 

壁となっていた触手をシモンが鞭で引き剥がし、身軽さを意識したゼロスーツサムスの蹴りが触手の軌道を逸らす。

 

 

「っ! まだ」

 

「ゴー! そのままゴーッ!!」

 

 

それでも止めようとする触手からブロウを守ったのはソードだった。剣で防御しようとしたが、体ごと締め付けられる。だが、ブロウを守るという目的は達成できた。

飛びかかって『瞬発百裂キック』を放つ。ダーズ本体が少し仰反るほどの打撃を浴びせ、触手、柱の攻撃ともに僅かに止まる。

 

 

『ここがチャンスデス!』

 

 

精密な目はその僅かな隙を逃さない。本体に向けて一直線に最大火力、『ロボビーム』を撃ち出す。赤いレーザーは何事もなく進み… いや、触手の目の前に阻まれ…

 

 

「はあ!」

 

 

ロゼッタの『スターキャプチャー』で見た目に合わぬ軌道でグルグルと回り、ダーズ本体とソードを捕らえていた触手にぶつかる。解放されたソードは重そうにしながらチコに回収された。

 

 

「ヒエェ… ヘルプった…」

 

『なんですカ、その文法ハ。ロゼッタさん、支援ありがとうございマス。』

 

「いえ、お気になさらず。今は共に戦っているのですから…っ!?」

 

 

空気が裂けるように、近くで風切り音が聞こえた。三人もろとも触手の手痛い一撃によって斬り裂かれたのだ。

 

─違う、いや違わない。

それだけなら誰もが納得できた。それだけ、ではないのだ。

 

 

「(落ち… ない…?)」

 

 

ゆっくりと、まるで慣れた星空の先のように落下が遅い。そう考えた音は言葉にならない。いや、言葉が遅い。塞がれている訳でもないのに口が動かなかった。ようやく思ったのは未だ見つからぬファイターの一人、彼女の特技。

 

 

「ここから… 本番だね…!」

 

 

赤い帽子のスーパースターは重い重圧の中でなんとか口を開く。暗かった空はさらに暗黒へ、さらに闇へ。

 

 

『───────ッッ!!!』

 

 

ダーズの放つ、雄叫びのような音に呼応して現れる。破壊の化身の模造品、そして十体の闇の人形達。

 

その思念の導くままに、大乱闘を混沌へと叩き込んでいく──

 





ピット「実はここのダーズ戦、どこに入れようかだいぶ迷ってたんだよ。聖地編のラストバトルにするか、新章のはじめにするか… 結局後者になった!」

ブラピ「突然話しかけてなんだと思えば… そもそもメタ発言=オレ達っておかしいだろ…」

ピット「と、言うと?」

ブラピ「ペーパーマリオとか操作説明でだいぶメタいだろ? スマブラではみんなカメラにぶつかるし、オレ達の専売特許なのおかしいだろってことだ。」

ピット「あれ? 電池が切れたかな?」

ブラピ「おい」


ブラピ「次回、『闇は闇の前に沈んだ』」


ピット「詳しくは遊び方で! なんだかんだでボクもヤラレちゃってますからね!」

ブラピ「ここぞとばかりに原作のメタ発言するのやめろ!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

百十三話 闇は闇の前に沈んだ


えっ、ポケモンスナップアプデでステージ増えるんですか!?
ないものだと勝手に思ってたから驚いた…

そして、試合数が増えるだけだからと省いたクレイジーハンドル戦。こうすることでなかったことにはしませんでした。



 

「これはマズイ! これでさっきみたいな攻撃をかけられたら…!」

 

「てえぃや!!」

 

 

シュルクは焦っていた。ダーズだけでも厳しい戦いだというのに、キーラも使っていた偽物のファイター、それにクレイジーハンド二体というラインナップなど絶望以外の何者でもない。

これに加えて、先程まで苦しめられた同時攻撃も合わせれば… と考えると─

 

後ろ向きな想像を振り払って、闇の眷属が一人に狙いを定める。振り下ろされた剣をモナドで防ぐ。手が空いたカービィは『ハンマー』を振り回し、回避させることで相手を引かせた。

クロムの姿をしたそれをカービィと二人で封じる。それがシュルクが思いついた対抗策だった。

 

 

 

 

クラウドの偽物は、同じ大剣使いのアイクが相手をする。質量の差もあってか、アイクが押され気味だった。

 

 

「くっ…」

 

「無事か」

 

 

その間に入り込んだのは本物のクラウドだった。助太刀を見て、アイクもまた立ち上がる。

 

 

「ツキがなかったな、俺一人ならばもっと戦えただろうに」

 

 

 

 

増援の姿を見たルフレは、極めて冷静に行動を始めた。軍師が平静さを失えば、勝てる試合も勝てなくなる。

クロムとルキナに二人組で眷属を相手するように言い、ルフレは空中に浮かぶ足場に登って高いところから戦場を見渡す。

 

クロムの偽物はシュルク、カービィと対峙している。いつの間にそんなに仲良くなったのか知らないが、コンビネーションもいいので余程のことがなければ抑え込めるだろう。

クラウドの偽物はクラウド、アイク。前二人と違って即席のコンビだが、本物がいるおかげか優位に戦えている。

ルイージ、ゼルダ、ケンの偽物と対峙するのは、メタナイト、スネーク、リュウだった。数の優位が取れてない上にメタナイトは手痛い傷を負っている。そこに向かうべきか… いやクロムとルキナが行ってくれた。ならば問題はないだろう。

 

リドリーの偽物はピチューが抑えている。逆に助けなんていらないと返されそうだ。

プラックピットの偽物は本人が止めている。これも自分の力で倒したいと思っているのだろう。

ブロウの偽物はガンナが抑えている。相性と本物を知り尽くしているから問題なさそうだ。

ソニックの偽物はソニック本人が止めている。あのスピードについていけるのは本人ぐらいしかいないため、そもそも助太刀しにくい。

ミュウツーの偽物はレッド達が抑えている。こんな状況でも格上相手とのポケモンバトルは楽しそうだ。

 

となると、自分が加勢すべき場所は─

 

 

「そこだ! 『ギガファイアー』!」

 

『…! ルフレ!』

 

 

全身を竜化させたカムイが、ややくぐもった声でルフレの名を呼んだ。

破壊神の偽物が飛行機の形でカムイへ突っ込んでいるのをルフレは見逃さなかった。かわせばほかのファイターが轢かれてしまう。だからどれほど分が悪くても、カムイは受け止めるしか選択肢がなかったのだ。

どんなパワーファイターでもまず無理なことを、カムイは全身を竜化させることで可能にしようとしていた。結局はパワー負けしていたのだが。ここまで踏ん張れただけでも健闘したと言えるだろう。

 

指を鳴らしてテレポートしようとしていた敵を背後からマルスが攻撃して止める。

これで三人。これで戦いになる。

 

 

「準備はいいかな?」

 

「ああ!」

 

『うん!』

 

 

カムイとマルスとルフレの共闘。その二人は姿も中身も違うというのにマルスの親友を彷彿とさせる。負ける気がしなかった。

 

 

 

 

一方、もう一匹顕在している眷属の破壊神。

前者三人に比べて、こちらの三人… 三匹は随分と仲が悪い。

 

 

「おおい!? 今のはオレさまがぶん殴っていればクリティカルだっただろうが!? おまえが攻撃したせいでオレさまの攻撃が当たらなかったんだぞどう責任とってくれるんだアァ!?」

 

「ウホッ! そんなこと言って避けられたらどうするの! 攻撃、当てられる時に当てないとダメ、卵からやり直せ!」

 

「ウッキャッキー!!」

 

 

拳は相手へ、口は仲間へ。

口喧嘩では、思想の違いで殴り合っているが、クレイジーハンド相手にしっかりダメージを与えられている。仲が悪いは撤回しよう。喧嘩するほど仲がいいというやつだ。

 

 

 

 

援軍の相手は数の優位を活かして戦っている。ダーズ相手に不確定要素は少ない方がいいため、他に手を出させずに、できる限り完封することが求められる。

この一部のファイター以外は全員ダーズを相手取ることになる。69から20を引いて49人。その20はアイコンタクトや呼びかけ程度で集まり、黒子役を自ら引き受けた数だ。故に連携はさほど心配しなくてもいい。真に心配するのは残った49の方だった。

 

 

「ちぃッ!」

 

「ギャハハハ! 邪魔だ!」

 

 

ゼロスーツサムスの射線に巨大な体躯が入る。リドリーは初めから連携する気などないのだ。蹴りによって防御が弾かれるダーズではなく、射線に入ったリドリーに対して舌打ちをした。

偶然、ではないだろう。わざわざ遠回りしたくないから最短を選んだ結果、射線に入っただけだ。

─撃ちたければ撃てばいい。

そういう考えが伝わってきて尚更表情を苦くする。死ぬほど認めたくはないが、今は共に戦っているのだ。誤射でも当てるわけにはいかない。仲間、同志という言葉を使わないのはせめてもの抵抗だった。

 

 

「オラオラ!」

 

『───────ッッ!!』

 

 

リドリーの尾による、高速刺突。しかし、それは行手を阻む茨のように防がれた。それでいい。サムスから見て正面に触手が集中しているのならば、裏はその分無防備な筈だ。奴が意図していたかは不明だが、上手く進んでいるならばいい。

 

 

『───────ッッ!!』

 

「─ガッ!?」

 

「ぐっ…!!」

 

 

ダーズの触手が、クロスするように空間を裂く。先程ソードとロゼッタ、ロボットが受けていた周囲の時間の流れを裂く力。

ダーズは動けなくなったサムスとリドリーを放っておいて、他のファイターの方へ眼球を動かす。

 

 

「ピカチュ〜!」

 

「(ピカチュウ! 助かった…)」

 

 

戦闘から抜け出してきたピカチュウが時間操作の及んでいないギリギリの場所から、サムスの足を引っ張り出す。バランスを崩して転びかけるも、なんとか膝をつかずに立つ。

 

 

「ピカー!」

 

「ッ!? ピカチュウ!?」

 

 

サムスだけではなく、リドリーの尻尾を掴み彼もまた脱出させる。時間が正常に戻ったリドリーは自分より下のピカチュウを睨みつける。

 

 

「テメェ… ど〜ゆうつもりだ? いつかは雷浴びせた癖して今度は勇者気取りか?」

 

「………」

 

 

何も答えない。

どうせ何も伝わらないから黙っている… というわけでもなさそうだ。

その反応に飽きたのか、ケッ、と吐き捨てながらダーズに向かって翼を動かす。

サムスは今の複雑な顔を隠すため、スーツをつけてピカチュウの隣に並び立つ。

 

 

「私は… 大人げないのかもしれないな…」

 

「…………ピ…」

 

 

ピカチュウは何か言おうとした。でも言えなかった。

 

 

 

 

「全く… 嫌になるなっ!」

 

「何が?」

 

 

キャプテン・ファルコン。この世界が生まれてからずっと闘っている歴戦のファイター。だが、彼もまた押され気味だった。

隣のこどもリンクは割と涼しそうな顔だった。余分に動いて他のファイターにいく攻撃を撃ち落とす余裕すらある。

 

ダーズが、行動を変えるのを敏感に察知した。

闇の柱をところ構わず起こし、無数の触手は空間と空間を移動して予備動作なしでの攻撃を開始した。そして、ダーズ本体は。

 

 

「ヤッホー! ボク人気者!」

 

「ふざけている場合ではないぞ…!」

 

 

ムカデのように曲がりくねった軌道で、一本の触手と共にマリオをつけ狙う。シモンが呑気なマリオを叱咤しながら後尾の本体を『クロス』でダメージを与える。マリオもわかっている。強がりが半分の言葉だった。

 

 

『このまま逃げ続けろ。私たちは狙える時に狙う。』

 

「もっちろん! わかってるよ!」

 

 

ミュウツーがテレパシーで簡単な作戦を伝える。その通りマリオは従い、前方を遮る火柱と瞬間移動攻撃を避けることに専念する。

 

 

「と、言われてもぉ!?」

 

「避けるのに手一杯だわ…!」

 

 

Wii Fit トレーナーやゼルダといった一般人の域をでない人々や、動きが鈍重なファイターは、いつ噴き上がるかわからない火柱、どこから来るかわからない攻撃に対処するだけで限界だった。

 

 

「くそっ…!」

 

「ウワッと!?」

 

 

被害は援軍と対峙していた者たちまで響く。援軍を対ダーズ部隊に合流させないようにするのは難しくないが、ダーズの攻撃を対援軍部隊に届かせないのは無謀だったのだ。

 

 

「ちっ… どうする? 何人かこっちによこしてもらうか?」

 

「…いや、仲間を信じる! あいつらはきっとやり遂げる!」

 

 

スネークの提案。しかし、それには乗らない。絶対に勝つのだ。それしかないのだ。

 

 

「それなら… 一撃必殺だ。それしかない。動きを止め、邪魔者を排除する。」

 

 

目をぎらつかせ、魔王が降臨する。ダーズが起こした闇が、何故か歓喜しているようだ。

 

警戒していたパックマンが、背後からの空間の歪みに気づいた。すぐに声を上げようとするが、戦場は混沌としており出ない声に気づく者はない。しかし、その様子を直接見ていれば別だった。パックマンを飛び越して登場したのは三人の人影だった。

 

 

「ここらが年貢の納め時だぜェ!」

 

「も・ち・ろ・ん、現金でね!」

 

「いきますよ〜!」

 

 

リンクの剣から、むらびととしずえの懐から、対魔の光が放たれた。『しまう』を活かした同時攻撃でダーズの触手のほとんどは切れて使い物にならなくなる。

 

 

「頼むぜ、パックマン!」

 

 

コクリと頷き、僅かに生き残っていた触手の一本を『消火栓』で下敷きにする。弱っていたからこそできたものだった。

まだ残っていた触手にロックマンの『フレイムソード』とピーチのパラソルが突き刺さる。

 

 

 

「ワオー!」

 

「ヨッシー、上に!」

 

 

マリオを乗せたヨッシーがフィールドをあっちこっちに駆け回る。足場に飛び乗り、ダーズを置き去りにするように駆けていた。

 

 

「この!」

「えい!」

 

「「はずれたー!!」」

 

「ふざけてる場合じゃないっス!」

 

 

ポポとナナが時間差で攻撃を仕掛けても、するりするりとかわされる。ヨッシーの足に追いつくようにか、先程より速くなっている。

 

 

「はあ… はあ…」

 

「ちょっと! そろそろヨッシーが限界だよ!」

 

 

そして迎えた限界。ようやく追い込んだとばかりに一つしかない目をマリオへ向ける。そこへ機械音が鳴り、近づく誰かが。

 

 

 

 

「キィーッ!!!」

 

「ウホッ! ナイス、ディディー!」

 

 

ディディーコングが、クレイジーハンドの中指部分に両手足でしがみつき、エビ反りの要領で拘束する。それに合わせて、ドンキーコングも両手で、手首部分を叩きつけた。破壊欲の化身が沈む。

 

 

「ウオオオオ!」

 

 

空中へ飛び上がり、手の甲へと思いっきりのボディプレスを仕掛けた。キングクルールの硬い腹部からの衝撃が、紛い物の全身に広がっていく─

 

 

 

 

上空のクレイジーハンドがどこからか爆弾を落とす。それを三人は避けていた。

 

 

「うう… しつこい…!」

 

「二人とも平気かい?」

 

「…少し厳しいかな。」

 

 

ここで見栄を張っても何にもならないため、思うがままにルフレは伝える。武装は多いし、厚手のコートでは、二人ほどのスピードはでない。回避一つでも割といっぱいいっぱいなのだ。

 

 

「仕方ない… マルス、賭けに出よう! 乗って!』

 

「…! わかった!」

 

 

言葉の途中で全身を竜化させて、マルスを乗せる。爆弾の雨を潜り抜け、破壊神に鋭い腕を突き刺した。マルスもカムイから飛び降り、手の甲へファルシオンを突き刺す。体勢を崩された相手は攻撃をやめてしまう。その隙を逃すものはここにいなかった。

 

 

「(二人が作ってくれたチャンス…! 無駄にはしない!)いけっ!」

 

 

最高の魔力を込めたサンダーソードが、その手に突き刺さる─

 

 

 

 

あわや追いつかれるというタイミングで、ダーズを止めたのはロボットだった。接続部から嫌な音を上げながらも、アームでの押さえ込みをやめることはない。

 

 

「アワワワ… ロボット…!」

 

『ググググ… 何故だかこのダーズを見ているとムカムカするんデスヨ! お願いしマス!』

 

「よくやった、とは言ってやろう」

 

 

その腕には膨大なまでの魔力と闇が込められている。その腕は拳を握りダーズに叩きつられようとしていた。

 

 

「うおお!」

 

「うわ…」

 

 

魔人の拳が穿たれた。

闇は闇の前に沈んだのだ。

 

 

 

 

ダーズの肉体は所々消滅し、トンネルのように闇を形作ってその奥へ消えていく。逃がさない、と追おうとすると、どこからか完璧なる光がそこへ入っていくのが見えた。

 

 

「ッ!? キーラか!」

 

 

トドメを刺したフォックスはその光の正体がかつて退けたキーラであることを見逃さなかった。

 

 

「…行こう」

 

 

やけに静かなマリオを先頭に、闇の先へ進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこは、今までの世界のどことも似つかわない、場所だった。立ち向かうファイター、支配されたスピリット達、遠目に見える同胞。

不思議な力で作られた足場がそれら全てを支えていた。

 

宙に浮いているのは数えきれないほどのマスターハンド、クレイジーハンド。そして元凶のキーラとダーズだった。

ビームを撃ち合い、配下を向かわせ争わせている。キーラが倒された時と違い、その戦いは互角に見える。光色の空と闇色の空がその勢力図を表しているようだった。

ファイター達、スマッシュブラザーズがここまでたどり着いたのに気づいたのか、こちらへ本体を向ける。

 

 

「これが本当の最終決戦、か…」

 

「ここまで来たらどっちも敵だ! やってやろうぜ!」

 

 

リュウ、ケンの格闘コンビが再度決意を固める。

 

 

「うん、これが本当の──だから! 私達は絶対に負けない!」

 

 

インクリング、否、3号がどこからか取り出した黒いマントを羽織る。そこには3の数字と似た記号が書かれていた。

 

 

「それはキーラとダーズも同じ… ですよね。ならば近くにまだ助かっていない方もいるはずです」

 

「っ! そうね、まだ見つかってないのよね…」

 

「イッシッシッシッシ」

 

 

ルキナが未だ敵対しているものの可能性を挙げると、ゼルダがそれを思い出す。ダックハントはそのおとぼけを見て笑った。妙に緊張感がない。

 

 

「まだ、見つかっていないのは… パルテナ、ロイ、ベヨネッタ、ダークサムスか」

 

「あの、その人達と誰が戦うか、あらかじめ決めていた方がいいんじゃないですか…?」

 

 

オリマーがこの場にいない者の名前を言うと、リュカがそれに追従して提案をする。それを聞いて、動きが一番早かったのはピットだった。

 

 

「ハイハイハイ!! ボクがパルテナ様を助ける! ブラピ、ベヨネッタお願い!」

 

「ッ!? ざっけんなッ! オレにあの魔女を押しつけんじゃねえ!!」

 

「……俺が行こう」

 

 

口論になりかけた天使二人はあの魔女を恐れているらしい。まあ、文化の違いというやつだ。ベヨネッタと同じ世界にいるファイターはいないため、率先してクラウドが手を上げた。一応、ほとんど同じ時にこの世界の仲間に加わったのだ。無縁ではないはず… と自分の中で言い訳をした。

 

 

「ロイの相手は… 僕がするよ。」

 

「それなら私がダークサムスを引き受ける」

 

「ピカ…?」

 

 

ロイの相手にはマルスが名乗りを上げ、ピカチュウに心配されながらもサムスが立候補した。

 

 

「じゃあ、他のみんなはスピリットの相手と四人の援護だね」

 

「仕方ねぇな」

 

 

ルフレの言葉に渋々肯定したのはウルフだった。四人に割って入る理由はなかった。

 

 

「…うん! それじゃいくよ! スマッシュブラザーズ!」

 

 

全ての始まりの一人。

マリオが上げた声で、最終決戦の幕が上がった。光と闇が入り混じる世界で、スマッシュブラザーズの反撃が始まったのだった。

 





シモン「キーラとダーズと私達の三つ巴か…」

ルフレ「彼らにとって僕らはおまけ扱い… この戦局、どうするか…」

カムイ「う〜ん… とりあえず…」

ルフレ「何かいい策があるのかい?」

カムイ「両軍に同時に攻撃を仕掛けてみたらどうかな?」

ルフレ「!?」


カムイ「次回、『今の僕は本当に負けず嫌いなんだ』!」


クロム「そうか!」

アイク「なるほど」

リヒター「それじゃやるか!」

ルフレ「真面目に受け取らないでって! カムイも歌姫の片鱗が垣間見えてる!」

シモン「だが、原作的には正解…」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

百十四話 今の僕は本当に負けず嫌いなんだ


最近忙しいのでなかなか書き進められません… 気づいたら一週間経っている…

というわけなのでもし、更新が滞っていたら「こいつ、執筆サボってるでヤンス」って言ってやってください。



 

「邪魔邪魔じゃーま! どいてどいてぇ!」

 

 

それぞれスピリットを倒すために散って行ったファイター達。マルスの前を走っているのは、どこに隠し持っていたのか黒いマントをつけたインクリング… 3号だった。破竹のスピードで敵を倒していく姿はまさにヒーローといっていいだろう。

 

 

「…? これは…」

 

 

マルスは上空で戦っている光の闇の均衡が崩れていっているのに気づく。闇が押され始めているのだ。

 

 

「もしかして… キーラ側のスピリットばかりが減っているから? 3号!」

 

「ん? 何?」

 

「バランスだ。多分キーラとダーズの軍勢をバランスよく倒すのが最適解なんだ。しばらくダーズ軍の相手をして欲しい。」

 

「んー… そうなんだ、わかった。あたしあっちまわるよ… じゃない、私はダーズ側の戦力を相手にしよう。」

 

「「それじゃあ代わりにボク達がマルスのサポートするー!」」

 

「うん、ありがとう」

 

 

離脱する3号に代わってアイスクライマーの二人がカバーにまわる。道を塞ぐスピリットがいたら、彼らが戦うことになるのだ。しかし、3号や他のみんなが倒していたからか、もう道を塞ぐスピリットはいなかった。

 

 

「着いた、ロイ…」

 

「これ、守ってるってことかなー?」

「そういうこと、だよねー」

 

 

マスターハンドの分身の前に、そのキーラの配下は立ち塞がっていた。心拍数がはやまるような気分に見舞われ、本能的にそれを彼だと理解する。配置的にロイを創造の化身の護衛に置いているのは明らかだった。

つまり、ロイ相手に勝った後でマスターハンドと戦わなければならない。

 

 

「マスターハンドのことは任せてー」

「マルスはロイのことお願いー」

 

「え、いいのかい?」

 

「「ロイはマルスが助けるって決めたでしょー!」」

 

 

何を当たり前のことを言っているんだとばかりに膨れっ面になる二人。そのそっくりな顔に思わず笑ってしまった。

 

 

「「なんで笑うのー!」」

 

「ごめんごめん、僕は本当にいい仲間がいるんだなって」

 

「ボク達にもいい仲間いるよー!」

「だからマルスもいい仲間ー!」

 

 

その言葉に、優しく柔らかく笑って、ありがとう、と返した。代わって戦いで起きる風圧でマントがはためき、マルスにしては珍しく、戦いが始まる前から剣を引き抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

剣と剣がぶつかり合う音。早くに剣を抜いたマルスと競うかのように、始まりは一瞬だった。どっちがどっちの剣を受け流したのか、それもわからないほどの早さだった。

先が下を向いていたファルシオンを即座に持ち上げ、先はロイの方へ。アリティアの刺突は逆手に持ち替えた封印の剣が防いだ。

 

 

「やっぱり… 強いね、君は」

 

『………』

 

 

たった数手で理解した。彼はまだ発展途上だ。その若さゆえにまだまだ成長の余地がある。ロイはその上で大陸全土の存亡をかけた戦いの将軍を任されていたのだ。マルスが同じ歳の頃といえば、匿われて何もできない時だった。

彼と同じような力があれば、もっと仲間を助けられたはずなのに。自分より若いロイが自分以上の能力を持っていたことに少しだけ、醜い感情を持っていたことも事実ではあった。

 

 

「(最初は… 君のこと、あんまり好きじゃなかったと思う)」

 

 

全面的にマルスが悪い。ただの僻みだった。同じぐらいの力があれば犠牲なんていらなかったなんて。まるでロイが何も犠牲にせずに勝ったみたいじゃないか。そんな甘い世界じゃない。

 

戦争はどこまでも残酷で、飛ぶ鳩は簡単に焼き落とされる。『攻城戦』が繰り広げられ、この光景が本物ならば、多くの命が散っていただろう。戦場から隔絶された『終点』での戦いのみが本物だった。

 

 

「お互いあまり得意じゃないと思うけど… 今の僕は本当に負けず嫌いなんだ」

 

『………』

 

 

最善策がどうなんて、後から考えるそれは反省以上の意味を持たない。

 

まず先にファルシオンが煌めき、剣先がロイの体を掠める。上体を動かして、反撃を回避する。同時に振われた剣が弾かれ、再び振り下ろした攻撃は鍔迫り合いになる。

 

 

「……ッ!」

 

『……!』

 

 

ほぼ互角。いや、ロイの方が僅かに押している。足ごと後ろに押され、手遅れになる前に次の行動へ移った。

刃を滑らせ、封印の剣を地面へ向けて誘導すると、隙とみなして斬りかかる。しかし、相手も対応が早く、不完全な体勢のままに得物を動かした。咄嗟の動きは防御にはならなかったものの、攻撃にはなった。

 

 

『「……ッ」』

 

 

互いの刃が互いの体に傷をつける。流れ出るはずの血は出てこない。ここでは死なないのだ。誰も犠牲にならない。だからこそ、誰も犠牲にはしない。

 

一度後ろへ跳んで体勢を整える。柄を身に寄せたまま駆け出し、数多の剣撃を繰り出した。『マーベラスコンビネーション』で目にも止まらぬ突き攻撃だ。ロイの張ったシールドをガリガリ削っていく。それを見て、即座に『シールドブレイカー』に移ったが、溜めの少ない技ではシールドを削り切ることは出来なかった。

 

 

「しまっ…!」

 

『─ッ!!』

 

 

両手で握って繰り出した『パワースマッシュ』が避けられないマルスに繰り出された。剣の根本、マルスの剣とは対極の強さを持つ封印の剣がマルスに斬り裂いた。持ち主の意思に応える剣は持ち手に近い根本の方が強いのだ。

 

 

「くう…」

 

 

吹き飛ばされる中、剣を地面に突き刺すことで踏みとどまる。石床でもその切れ味は変わらない。神竜の牙でできた神剣ファルシオンは反対に、剣先での攻撃に長けている。細かなリーチはマルスに軍配が上がるのだ。

 

 

「……っ」

 

 

向かい合う二人。マルスは様子見を行った。先程くらわせた一撃は、少しは効いてる様子がある。でも流石にマルスほどのダメージではない。もっと頻繁に攻めなければ。ロイに勝る機動力がダメージの蓄積で衰えてしまえば、それこそ勝ち目がなくなる。

 

構えたマルスに合わせるように、ロイもまた剣を構える。その戦意に呼応するように封印の剣から炎が吹き出した。

 

 

「はあッ!」

 

『─ッ』

 

 

すれ違い様の攻撃は、身軽なマルスに軍配が上がった。封印の剣は空を斬る。

互いに振り返った勢いで振った剣はぶつかり合って弾かれる。更に二回、三回と続けて振るわれる剣はダメージにならない。はじきあって相殺される。

 

 

「こ、のっ!」

 

『…!!』

 

 

打ち上げる技の『ドルフィンスラッシュ』と『ブレイザー』が同時に放たれた。競り勝ったのはロイ。僅かなパワーの違いが勝因だった。

 

 

「─ッ! 諦めない!」

 

『…ッ!?』

 

 

技をくらったことにより、元の体勢に戻れたマルスは着地隙のあるロイに対して、『ドラゴンキラー』を放った。防ぐ手段のないロイは崖側まで追い込まれる。

 

追い討ちの為に、ダッシュしながらの突き攻撃。それをマルスごと飛び越えてかわしたロイは、頭上から全力で剣を振り下ろす。逆に追い込まれたマルスは剣ではなくシールドで防いだ。

 

 

「(…! 一撃でこんなにシールドが!)」

 

 

そのパワーに内心ヒヤヒヤしながらも、動くことはやめない。二度目の正直、『ドルフィンスラッシュ』で相手を弾き飛ばす。思った以上に飛んだ相手は相当のダメージを追っているようだ。

 

片膝をついたロイに向けて、横一閃に放った攻撃は、ギリギリの防御が間に合う。そのまま目眩しに『エクスプロージョン』で噴火のような火柱を起こした。マルスがバックステップでかわしたことにより、ロイは立ち上がる。

 

 

「(ここがチャンスだ!)」

 

 

足払いのように振った剣は、ジャンプでかわされる。突き出された剣は上体を反らすことで皮を掠めた。

 

 

「ここだぁ!」

 

『……!?』

 

 

マルスの指先から伝わる力、それはファルシオンの剣先まで届き、封印の剣がマルスへ届く前に、ロイの体を突き刺していた。

必殺の一撃に等しき攻撃が相手を襲い、その体をぶっ飛ばした。気持ちの交わらない戦いはやはり清々しくはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まるで底知れぬ暗闇の中に、沈んでいた意識は浮上する。逆に長い間囚われていたからか、前提の知識や記憶は残っていたからか、それとも本人の知性が成せる技か… 不思議そうに辺りを見回しても混乱はしなかったロイは自分を覗く人に気がついた。

 

 

「…! マルス…!」

 

「大丈夫、ロイ?」

 

「…はい!」

 

 

差し出された手を握る。

そうだ、止めなければ、無意味な戦いを。

たとえ、自分よりも強大な存在でも。

守り、守られる仲間が、いるから。

 





ロイ「あ、クラウド」

クラウド「オニオンナイト?」

ロイ「えっ…と誰?」

マルス「クラウド、今後の進軍についてだけど…」

クラウド「フリオニール?」

マルス「誰…?」


クラウド「…次回、『同じことがどうしてできないんだ』。」


クラウド「ロイ、マルス、先程はすまない、声が似てる知り合いがいたんだ。」

ロイ「父上?」

クラウド「…え?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

百十五話 同じことがどうしてできないのだ


執筆は進んではいますよ!(はやいとは言ってない)


ただ、投稿するのを忘れていただけです()



 

「それで僕たちはずっと… ありがとうございます、マルス。」

 

「うん、今は本当に最終段階。最後の戦いってところだ。」

 

「随分と遅かったんですね、僕…」

 

「そんなに気にすることはないよ、遅くなったっていっても配置的にどうしようもなかったし…」

 

「「とりゃあ!」」

 

 

辺りで戦いが続いている中、情報共有をしていた二人。マルスは疲弊しているため、その休息も兼ねて、といったところだ。なので、マスターハンドの模造と戦っていたのは、

 

 

「やったー!」

「勝ったー!」

 

「お疲れ様、ポポ、ナナ」

 

「ありがとう。怪我、しなかった?」

 

「そりゃあ、少しはしたけれど」

「そんな深刻じゃないよー!」

 

「「ねー!」」

 

 

仲のいい二人にほっこりしている中、少し離れた場所に新たな道ができていた。アイスクライマーが門番の一人を倒したことで開けた道だった。

 

そして、もう一つ。対称となる場所にも道が現れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スピリットが大勢いる場所を一人と一匹は駆けていた。サムスとピカチュウ。亜空軍の一件でも長らく共に戦っていた。

 

 

「案内、助かった」

 

「ピ…」

 

 

先にファイターを見つけたピカチュウはサムスを呼びに行っていたのだ。他の三人の可能性もあったが、ドンピシャだったようだ。

しかし、ピカチュウが心配していたのはそこではなかった。ダークサムスは、サムスの敵だ。ピカチュウは知らないが、ダークサムスはサムスの仲間を洗脳して戦わせた、宿敵の一人だった。またリドリーのように葛藤と戦うことになるぐらいならピカチュウが代わりに─

 

 

「安心してくれ」

 

「ピカチュ…」

 

 

スーツの下からでもわかる、その暖かさ。そんな手で頭を撫でられて、何も言えなくなった。

 

 

「………」

 

 

サムスは振り返らない。その姿が何を意味するかピカチュウにはわからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理解は、まだしてない。おそらく、一生できない。宿敵を助けるなんて。自分でも気が触れたのかと思う。だからといってこの世界では仲間だという言い訳も無理だった。

 

『終点』の形の『フリゲートオルフェオン』。複雑な想いで戦っているサムス。色々とチグハグで理解できない。

それでも、ようやく答えを見つけられた。

 

 

「…!」

 

 

右腕のアーム部分から生み出した爆風同士がぶつかり合う。空中で距離を取りながら『チャージショット』と『ミサイル』を撃ち放った。

追尾する『ミサイル』をかわすが、『チャージショット』がヒットし、その影響で二、三発ミサイルが当たる。

迷いを振り切ったサムスは強くて冷静だ。

 

 

「(少々強引でも、筋を通せば納得できるんだな。まったく、これではアダムに叱咤されてしまう)」

 

 

外からヒントは貰っても、最終的に答えを見つけたのは彼女自身だ。サムスが自分の悩みを答えへと昇華させたのだ。

 

サムスは戦ってきた。たとえ相手が洗脳された仲間だとしても戸惑いなく引き金を引いた。銀河の平和のために。

同じことがどうしてできないのだ。この世界を守るために敵の力を借りることが。考えてみたら驚くほど単純なことだった。

 

 

「(右のアームで打撃、からの)」

 

 

手刀のようにまっすぐ突き出されたダークサムスの右腕。それを左手の甲で外側へ弾いた途端に爆風が起こる。後ろへ離脱するタイミングで『ボム』を投下し相手を巻き込む。

 

平静を取り戻したサムスにとって、ダークサムスは勝った経験のある相手でしかない。加えて物質にあるまじき生き汚さも策を謀る生存本能すらもダーズの手によってかき消えている。宇宙最強のバウンティハンターであるサムスに勝てる道理などない。

 

 

距離を取った上で撃った『チャージショット』は張られたシールドによって違う方向へ弾かれ飛んでいく。ここでダークサムスが反撃へ動いた。宙を浮き、滑るように移動するとタックルを繰り出した。

 

 

「……!!」

 

 

かわさずに両腕で受け止める。浮いているために落ちない勢いはサムスによって殺される。その状態のまま腹部に膝を入れる。ダメージは与えられてもそもそも構造が人とは違うので咳き込んだりはしない。だが、押さえ込んでいるためサムスはまだ攻撃できる。脛で今度は胸部を蹴り上げて後ろへのけぞらせた。そのまま崖近くまで蹴り飛ばす。

 

 

『……!!』

 

 

吹き飛ばされながらも放った『ミサイル』をサムスは避けられない。所々体に当たり、小さな爆発が起きる。声を漏らしもしなかったサムスは必要経費と割り切っていたのだろう。腕を振って煙を払う。

 

 

「…!」

 

『……ッ!』

 

 

相手の『チャージショット』に合わせて、サムスも『チャージショット』を撃つ。長くエネルギーを溜められた分相手の方が威力は高い。だがうち消すには十分。

互いに走り出した結果、ステージの中央で二人のキックがぶつかりあって交差する。身を翻し、相手に向けたアームから『ミサイル』を撃ったサムスに対して、ダークサムスは宙に浮ける体を利用して手早くアームから爆発を起こす。二つの攻撃は邪魔することなく相手に当たり、視界が爆煙で覆われる。人が人を見れない中、煙を掻き分けて電撃のビームが飛び出す。そのビームはダークサムスの首元を掴んだ。

 

 

『─!!』

 

「ようやく捕らえた…」

 

 

あの爆煙の中でグラップリングビームを撃っていたのだ。相手を拘束し、身動きを封じる。そして、距離を縮めていく。

 

 

『─!』

 

「…ッ!!」

 

 

距離が近くなった瞬間、ダークサムスも左手でサムスの首元を掴む。ヘルメット越しに睨み合い、動きを封じ合う。だが、動く部分はある。

 

ダークサムスがアームを向けようと右腕を動かした瞬間、サムスが空いてる左手で右腕を捻りあげた。発射口はあらぬ方向は向き、抵抗を封じる。ピクリとした僅かな動きを瞬時に読み取って動いたのだ。手早すぎる対処だ。

 

 

蹴飛ばして突き放し、腕を離させる。だが、アームからのグラップリングビームはまだついたままだ。サムスは右腕を振り回し向かい側の崖まで放り投げた。

 

 

「これで… どうだ!!」

 

『……!?』

 

 

空を浮いたままのダークサムス。その頭部と思われる箇所を飛び膝蹴りで蹴りつけた。ビームの拘束を解いた体はその勢いのまま、遠くへと飛ばされていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピッカチュ!」

 

「待っててくれてたのか? すまないな、迷惑をかけて」

 

 

戻ってきたサムスの姿を見て、ピカチュウはすぐに駆け寄る。しゃがんでもなお見上げる視線の先にある、メット越しの穏やかな表情にピカチュウはようやく笑うことができた。

 

 

「はやく戻してやろう。他の戦線に加わらなければな。」

 

 

フィギュアが光りだし、元の動を取り戻した瞬間、黒いスーツがアームを振るう。ピカチュウが気づいて駆け寄った時には、既にサムスが抑え込んでいた。

 

 

「状況を見ろ。あれだけ的確に戦力を揃えておきながら、このタイミングでは私怨の戦闘など言語道断だと。理解できないとは言わせないぞ。」

 

「………」

 

 

意思らしい意思を持たない相手には正論で訴えるしかない。先程の乱闘と同じように指を動かせる左腕で相手のアームを捻りあげる。

ダークサムスもしばらくして状況を理解できたのか、それ以上の抵抗はしてこなかったし、抑えた腕にも動きが消えて力が抜けていく。サムスが手を離してもなおダークサムスは何もしなかった。

 

 

「…………」

 

 

しばらく何も動かずにいた後、突然後ろへ振り返り、クレイジーハンドへ向かっていった。

 

 

「ピッカァ!」

 

「いや、大丈夫だ。」

 

 

後を追おうと駆け出すピカチュウをサムスは手を広げて止めた。向きはダークサムスが走っていった方向を向いたままだ。

 

 

「別に全員と仲良くする必要はない。無理にそうする必要もな。水と油のままでもいいんだ。同じ目的のために戦えたらそれでいい。」

 

「ピカ…」

 

「だが、」

 

 

それで一旦言葉を止める。少し言葉を選んで続けた。

 

 

「君の思想は決して間違ってない。たった一つの筋道を見失うな」

 

「ピッカッチュ!」

 

 

ピカチュウはニコッと笑った。サムスが戦っているのは復讐のためではなく、この笑顔を守るためだから。

 





ダムス「…………」

パックマン「ペコリ」

ダムス「…………」

パックマン「ジー」

ダムス「…………」

パックマン「オロオロ」

サムス「誰だこの二人に任せたのは」


サムス「次回、『前しか見えない全力少年』 …スキ○スイッチ?」


サムス「これがサイレント小説… いや音は元からないか…」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

百十六話 前しか見えない全力少年


先週投稿遅れたのでお昼の投稿です。
18分ってwww遅れてる内に入らないwww みたいなこと思われるかもしれないけどですが、こっちの気分が落ち着かないのでご了承ください。


祝、ちかつうろ生存確認!!
本編そっちのけでめちゃくちゃやってました。ポケモンの巣なんてものがありますしブリリアントダイヤモンド、楽しみです。連れ歩きもあるぅ! アルセウスの方も楽しみです! ヒスイのすがた…! ワンチャン剣盾に連れて行けない…!?

あと今話、いつもにもまして原作寄りです。
主にノリが。



 

「はあ、はあ、はあ、はあ」

 

 

全力など、とっくに出し切っている。それでも走る速度を緩めたりしない。アクセルペダルを踏み切った車のように、彼の心が限界以上の彼の肉体を駆り立てている。

止まらない、終わらせない。一度、不甲斐なく混沌の使いに封じられた自分を、三年も信じて戦い続けていてくれたのだ。今回だって絶対待っている。それは確信などではなく、翼を持たない人間は飛べないといった決定的な理に等しかった。

 

 

パルテナ軍の最強戦力にして親衛隊長の天使ピット。彼はキーラ側の陣営に現れた新たな陣地を走っていた。マスターハンドの偶像を倒したことで現れたそこはまだスマッシュブラザーズの攻略が進んでいない。だから道を阻むスピリットも多かったのだが…

 

 

「…! やあっ!!」

 

 

彼は想いの強さだけでスピリットの大群を潜り抜けていた。戦うことすらせず飛び越えたりかわしたり。時たま落下しかけて、側から見ていた者をヒヤヒヤさせる様子であった。でもそんな細かいことどうでもよかった。

 

 

上空ではキーラとダーズがこちらのことなどお構いなしに戦いあっている中、彼はようやくたどり着いた。最愛の人がいる場所。決して恋愛的な意味ではないが、その深さは長年愛し合った老夫婦にだって負けやしない。膝に手をつけて荒れた息を整える。

 

 

「先についてたのか」

 

「そっちこそ!」

 

 

別方向からきたのはブラックピット。先の混沌の使いの件でも共闘していたピットの鏡。

ピットは知らない。自身のコピーだということは彼もまたパルテナを敬愛しているということを。当然自分の手で助けたいと思うわけだ。

 

 

「足、引っ張るなよな!」

 

「そっちこそ!」

 

 

あまりにも自然でピットは気づかない。協力を断って一人で挑むという選択肢もあったはずだったのに、二人が揃った時点でその考えはなくなってしまった。

不本意ながらも対峙してしまった時とは違い、世界のルールに縛られているとはいえ、彼女に消耗はない。だが、難易度が高いからという理由ではなく、まるで当たり前のように同時に戦うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬、手が震える。それを本人達は認識できただろうか。それは天に使える者としての本能か。主たる神に刃を向けるのは許されぬことか。

 

 

「「(それでも… 救う。)」」

 

 

たとえそれが拭いきれぬ罪咎だったとしても、看過できぬ背徳だったとしても、そんなの知ったことか。

 

 

『………』

 

「…っ、ピット、参ります…!」

 

「……」

 

 

悲壮と覚悟を決めた声とは対照的にブラックピットは無言でシルバーリップを構える。

以前のとは違い、『エンジェランド』は綺麗ではあるが、『終点』化の影響もあって無機質な美しさだ。まるで人工的に作られた球型のようだ。

 

 

「…っ!」

 

 

駆け出して肉薄する。分離して二対の双刃になった神弓を振るう。だが、杖で弾かれる。いまいち精度が悪い。ピットには自分が感じる怒りを上手く処理できないのだ。一番簡単な対戦相手にぶつけるといったこともできない。相手が相手だから。

 

 

「チッ、足手まといが」

 

 

舌打ちをしたブラックピットは外れるように『神弓シルバーリップ』を撃つ。普通に狙ったところで対処されるかピットに当たるかが見えているからだ。ならば、誘導させるか誘導するかして攻撃した方がいい。

 

『爆炎』の予備動作を見て、狙われていると感じたブラックピットは飛び上がってその場から離れる。先程までいた場所から焼きつく爆風が流れてきた。

 

 

「(何してやがる…!)」

 

 

高く飛び上がったことで二人の姿がよく見える。双刃を真逆に取り付けることで先程までとタイミングをズラすものの、そもそも問題はピットの方にあるため、大した変化にはならなかった。手を抜いているつもりはないが、本気を出しきれずほとんどダメージが入っていない。

 

 

「ううっ…!」

 

 

以前、真に狙うべき相手がいたことが自分にとってどれほど幸運だったのか今になって知ってしまった。激情にかられているというのに体が動かない。

 

 

『…!!』

 

「ぐう…!」

 

 

後光を翼に変えて放つ一撃でピットは背後へ吹き飛ばされる。本人とて上手く動かない自分の体に戸惑っている。

 

 

「戦えねぇならはじめっから言い出してんじゃねえ!」

 

 

マイナスな考えに凝り固まっていたピットは目の前に着地したブラックピットに驚いた。

 

 

「ブラピ!?」

 

「だからブラピってなんだよ! マトモに戦えねえなら引っ込んでろ! 遊びじゃねえから手を抜けないんだろ!」

 

 

いつもの見世物の大乱闘ではないのだから。負けちゃいましたで終われない。そんなこと知ってる。割り切れないから困っているのだ。

 

 

「パルテナ様を助けられるのは俺たちファイターだけだ! お前の意思に、そいつらは任したんだ! みっともない姿をオレに見せるな!」

 

「………」

 

 

思い出すのは、キーラに大敗を喫したあの時。守るはずだった自分は守られる立場にいた。神の奇跡がなす術もなく負ける姿を見ることしか出来なかった。

 

 

『…!』

 

「っ!? しまっ…」

 

 

よそ見していたブラックピットへ、『オート標準』で飛んできた弾がぶつかろうとする。味方の事ばかり気にして相手のことを気にしていなかったのだ。

 

 

「(シールド! 間に合え…!)」

 

「守れェ!」

 

 

すぐに守りの体勢に入ったブラックピットの前に躍り出たのは、護りに特化した神器『衛星ガーディアンズ』だった。溜めた射撃が天使を守る盾となる。

ピットは今、衛星だけではなくパルテナの神弓、豪腕ダッシュアッパーと現在持っている神器をフル装備しているのだ。

 

 

「なっ…!? お前別の意味でみっともないぞ!」

 

「知らない! 遊びとか意思とかどうでもいいし! 今のボクは前しか見えない全力少年!」

 

「ひ、開き直りやがった…」

 

 

確かに悩みのない奴だが、この吹っ切れ方は想定外だった。だが、実際効果はあった。豪腕でぶん殴り、神弓の刃を振り回す。動きが雑な衛星はピットの周りをブンブン回っている。その動きが逆に相手の計算を狂わしている。先程までは当てても大したダメージにならなかったのでマシだろうか。

 

 

「(ただ、防御は二の次になったか… まあいい)」

 

 

2対1だから、守り重視よりは攻撃に特化した方がいい。しかし、接近戦をすると真面目に暴走しているピットに巻き込まれる可能性があるので、遠距離から矢を浴びせる。この間もピットは神弓を乱雑に振り回し、衛星をぶつける。杖で殴打されてもカウンターくらっても微塵も気にしないで豪腕でぶん殴った。神器の特性により、真上にぶっ飛ばされる。

 

 

『…!』

 

「ぐぅ…!」

 

 

上空へ飛ぶパルテナに狙いを定めた紫色の矢は『反射板』によって跳ね返される。跳ね返った矢は辺りの地面をブラックピットごと荒らした。

 

 

「まだだ!」

 

『………』

 

 

それでもピットは引かぬ、媚びぬ、省みぬ。ひたすら前進し続ける。豪腕の攻撃が防がれたなら、左の神弓には対応できないはず… カキン、と音がして相手の得物に防がれた。杖の先を動かして反対からの攻撃にも対応されたのだ。ならば… 衛星。頭上から下へ、覆い被さるように動いた打撃はパルテナの体勢を崩した。

 

 

「(よしっ…)パルテナ様ぁ!」

 

『………』

 

 

自身の志に連動するように喉から張り出た声が辺りに響く。だから気づかなかった。

 

 

『─ッ!』

 

「わぁ…!? うっ…」

 

 

終点の真ん中に『光の柱』が立ち上る。体勢が崩れたんじゃなくてこの攻撃を狙っていたんだ。光に焼かれて、ピットは吹き飛ばされ地面に背をつく。コツコツとヒールの音が聞こえ、杖が振り下ろされる。

 

 

「させるかっ!!」

 

 

銀色の刃が間に挟まり、杖の進行を妨げた。ブラックピットが間に割って入って庇ったのだ。しかし、左手に持っていた盾で鳩尾を強打される。

 

 

「ぐぶっ…!」

 

「…ッ!」

 

 

強制的に酸素を吐き出し、神弓がカランカランと音を立てる。心配で呼んだ名前をピットは口に出せなかった。ただ、体が動いていた。

 

豪腕と衛星を放り出し、少しは身軽になったところで拾い上げたのは神弓シルバーリップ。盾のない方へ回り込んだ。

 

 

「う、おおおおー!!」

 

『!?』

 

 

ワンステップ、素早い動きで二つの神弓を構えたピットに反応が遅れる。金と銀の軌跡が場違いなほどに綺麗で、クロス字に通った傷の痛みは遅れてやってきた。ふわっと浮き始めた体。斬り刻む姿を相手の目に映しながら、この戦いは終わる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パルテナさまっ!」

 

「はいはい、ここにいますよピット」

 

「ぱ゛る゛て゛な゛さ゛ま゛っ゛!゛」

 

「何を言ってるのかわかりませんよ?」

 

 

この状況でよくもまあ、滝のように泣きじゃくれるものだ。ブラックピットは少し離れたところにいた。同類だと思われたくない。

座っているパルテナに抱きついてピットは号泣中だ。下心はないと思う。絶対。きっと。多分。

 

 

「あなたにも助けられましたね。ありがとう、ブラックピット。」

 

「ッ!? お前…!?」

 

 

まさかパルテナからフルネームで呼ばれるとは思わなかった。随分と久しぶりな気がする。彼女も彼女なりに今回のことを気にしているのかもしれない、

 

 

「あ、ごめんなさい、ブラピ、でしたね♪」

 

「っておい!」

 

「助かったよブラピ!」

 

「〜ッ!! ふざけんなぁ! おまえら一回地獄に落ちろぉ!!」

 

「神と天使を相手にまあ惨い♪」

 

「大丈夫です! 地獄でもボクがパルテナ様を守ります!」

 

 

いつも通りのズレた会話。しかし、負けるなブラックピット! お前も当然同類だ!

 





パルテナ「ふふふのふ、このパルテナが来たからにはもう安心です。パルテナグランドスーパーレーザーがあればキーラやダーズの1体や10体など恐るるに足らず! 一人で十体なんて楽勝です!」

ピット「パルテナ様そんな必殺技ありましたっけ?」

パルテナ「いえ? 無いですけど?」

ピット・ブラピ「んがっ!」

マリオ「おお… 遂に揃った… あれは…」

ルイージ「あれは?」

マリオ「原作において数々のプレイヤーをゲームに集中させないというゲームキャラクターあるまじき行為を涼しい顔で行ってた漫才師が遂に」

ルイージ「漫才師じゃないよ兄さん!」


パルテナ「次回!」

ピット「『孤高の強者』!」

ブラピ「別々にやるなよ」


ピット「でもパルテナ様の出る幕はありませんよ! ボクがキーラもダーズもやっつけます!」

パルテナ「いえいえ、ピットは下がっててください、遅れた分は挽回しなければ!」

ブラピ「…じゃあオレが」

パルテナ・ピット「どうぞどうぞ」

ブラピ「だから漫才師じゃねえんだよ!」

マリオ「ブラピも乗っちゃうあたりね?」

ルイージ「あはは…」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

百十七話 孤高の強者


KH3のリミカを続けております。
今ちょうど折り返しってところなんですけどアライズ発売までに間に合うかな…



 

クラウドをあまり知らない人は意外に思われるかもしれないが、彼は人見知り気味である。クールな印象ゆえに向こうから話しかけてくる人もなかなかいない。故にスマッシュブラザーズの中で彼が自分でどうしても助けたい、と思うほど親密な人はいなかった。いたとしても、そういう人には大抵もっと仲の良い友人がいるもの。声を上げることもせず譲っただろう。

ならば、どうしてクラウドはベヨネッタの相手に立候補したのか。

 

 

「(…スピリットとダーズとしか戦っていない。救われておきながらこの体たらくはまずい。もう少し活躍しないと…)」

 

 

助けられた負い目ではなく、どう思われているのかわからない、という人付き合いの無さからくる怯えだった。

仲間や友人とならばもっと砕けた対応ができるが、まだスマッシュブラザーズとはそこまで打ち解けていない様子。単純に皆には冷静な自分の印象が強いだろうという理由もある。

 

 

「それにしてもクラウドやるのね、ベヨネッタちゃんプライド高いから、私みたいなのが相手しちゃうと気にしちゃいますもの。あなたなら口が硬そうですし、ベヨネッタちゃんも少しは気も収まるかしら」

 

「…そんなつもりはなかった」

 

「あらそうなの?」

 

 

この状況下でるんるんと隣を歩くのはピーチだ。戦うスピリットがいればすぐに離れるだろうが未だに見つからない。というか、この空気をはやくなんとかしてほしい。恋人がいる女性と二人っきりとかどうしていいのかわからない。ピーチから一方的に話している時間がしばらく続く。

 

 

「ちょっとピーチー! 手伝って欲しいのだけどー!」

 

「あらデイジー。ということなので、私は抜けます。頑張ってください♪」

 

「…ああ。」

 

 

救世主。ちょうど囚われたファイターの前でピーチが呼び止められて離れていく。できればもっとはやく呼んで欲しかった。クラウドは図々しかった。

 

 

「………」

 

 

特に会話することもない。ただ戦闘準備だけ整える。バスターソードを背から抜き、左手で大乱闘へのチケットを手にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『終点』型の崩れた時計塔が落下していく。そんなところで戦うなんてと最初は思ったが、模造品ゆえに永遠に墜落することはない。落下していると思わされているだけだろう。高度に従って落ちていっているのは地形だけだ。

『アンブラの時計塔』だが、時計の円盤を周りの建築物ごと崩れてバトルフィールドになっている以上、初見で時計塔だと気づくのは難しい。辺りにはまるで魔物のような姿をした天使が飛び回っていた。

 

 

「はあ!」

 

『……』

 

 

見た目にそぐわぬ大剣の大振りがかわされ、ベヨネッタに側面へ回り込まれる。二丁の銃撃は防いだ。巨大な得物がこんなところで役に立った。流れるように体ごと横一直線に切り裂く。確かな手応えを感じたクラウドの目には、大きく映る銃口。

 

 

「…ッ!」

 

 

咄嗟に首を後ろへ逸らして回避した以上、反射的に回避を選択した以上、クラウドには続く攻撃に対処する方法がない。崩れた体勢に容赦なく体術を叩き込んだ。

 

 

「容赦なし、か!」

 

 

五度目のパンチで首を戻すと、大振りで相手を引かせた。目論見通りヒールの音が離れた場所から響いた。遠く離れた相手に『破晄撃』を撃つと、ベヨネッタの姿は無数の蝙蝠になって消える。その蝙蝠の群れがクラウドに向かってくることに嫌な予感がした。

 

 

「(このまま攻撃!!)」

 

『…!!』

 

 

クラウドの予感は当たる。元の姿に戻った時には既に『ヒールスライド』の狙いを定めていた。シールドで受け止めていたクラウドは、攻撃が止まると同時に『凶斬り』をくり出していた。吹き飛ばす時に銃撃をくらってなければ完璧だった。両手だけでなく、両足にもつけられた銃を完璧に防ぐのは無謀であった。

 

再び距離の離れた相手に接近していく。空中を滑るように移動し、半端な攻撃をかわしていく。しかし、牽制としては機能していた。クラウドは飛び上がって剣を振り回す。ひらりとかわして放った回し蹴りを腕で受け止める。そこから蹴りを放つが、上体を逸らして回避された。

 

 

「……ッ」

 

『…』

 

 

ベヨネッタはその自信あり気な言動に違わず強い。思わず睨みつけるも、返ってきたのは冷たい瞳。元より口で語るタイプではないので仕方がないだろうと動じることはなかった。

 

 

「はぁ!」

 

 

地面に着いたままの左足を軸にして体ごと剣を振り回した。回転する都合上峰での攻撃だが、重さがあるのでかなり手痛い。タダで帰すのは趣味ではない。きっちりツケは払ってもらわなければ。

 

 

『……─ッ!』

 

「…! ならば…!」

 

 

ベヨネッタが飛び上がっていったのを見ると、クラウドも遅れて飛び上がる。バスターソードを回し、構えながら。

 

右から左へと一線に振われた剣は手に持っていた二丁の銃によって弾かれる。見た目の頑丈さは圧倒的に上回っているのに、刃を真正面から受け止めた。

 

 

「(これは一度引いて… いや、手数を減らしては逆に攻め込まれる! 比較で劣っていても降りてはいけない!)」

 

 

想像以上の守備に驚いたクラウドは引くことも考えたが、強力な一撃をくらわせることに固執していては向こうの攻撃をくらうだけだと感じた。故に斬り続ける。

 

 

『……っ』

 

 

実際に当たった攻撃は僅かだが、相手側は攻めあぐねている。身の丈ほどの剣を扱うクラウドは体全体で剣を振り回している。そしてそれを自覚しているため、一ヶ所に留まらないのだ。大きく動いて、攻撃が終わったら違う場所にいる。それでも完全に予測できない訳ではなかった。

 

 

「ぐぅっ…!」

 

 

攻撃の終わりを狙って2、3発くらったクラウドは反射で動いた防御の構えのせいで地上へ落ちる。着地の時は動けない。クラウドの脳天を揺らすほどの踵落としが決まった。ふらつく敵に手加減する理由はなく。

空中から連続の拳にクラウドの意識は一気に戻ってくる。彼がシールドを貼ったことでベヨネッタは引いた。

 

 

「(…強い)」

 

 

孤高の強者。クラウドが受けたそんな印象はクラウドの理想そのものだった。そうやって嘘で固めて自分自身も騙していた。相手がそんな理想だった存在だと考えると、途端に負けられないと思えるようになってきた。今のクラウドに足りなかったのはそれだったのかもしれない。

 

 

「はああっ!!」

 

『──ッ!』

 

 

走りながら振るった剣と振り上げた足がぶつかり合う。ギリギリと拮抗しあう。あまりクラウドはいい顔ではない。そもそも支えの足りないキックが剣と拮抗している時点でおかしい。しかし、相手がクラウドの理想に近い存在ならば、いわば過去の自分と近い相手と戦っているようなもの。それならば、クラウドは限界を超え更に向こうへ行ける。

 

 

───『画竜点睛』。

 

 

「はああッ!!!」

 

『─ッ…!』

 

 

剣を振り回し、生まれた風がベヨネッタを吹き飛ばす。これは決定打。過去の自分と決別した時のような決定打だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどねぇ… 随分あいつらにはお世話になってたのね…!」

 

「…ああ。」

 

 

これは付き合いの浅いクラウドでもわかる。ベヨネッタは目が笑ってない。怒っている。誰だ、理想に近いとか思っていたのは。

 

 

「そういえば、あなたでラストなんじゃないの?」

 

「あら、そういえばそうなのね」

 

 

そしてお姫様二人。キレてる人に対してその談笑でも始めそうな態度はなんだ。とてもクラウドにはできない。

 

 

「そうね、私がラストってことはキーラとダーズの他にいるのはこのいけない神サマ達ね」

 

「…好きにしてくれ」

 

「あら、ありがとう」

 

 

まあいいか。どうせ誰かが戦うことになる。止める理由もなければ止められるとも思わなかった。そこでふと考える。

 

 

「マスターハンドの方はどうなっている?」

 

「そういえば…」

 

「どうなってるのかしら?」

 

 

対局にあるチャレンジャーの姿はここからでは見えない。だが、誰かが戦っているはず。もうすぐ、届く。

 

 

遂に欠けていた全員が揃ったスマッシュブラザーズ。後救うべき者は─支配人たる化身とその対となる化身だけだ。

 





ピーチ「────だから、」

ベヨネッタ「────ね。」

デイジー「───────よ!」

クラウド「(何か話している…? 揉めてるのか? それとも…)」

デイジー「だ、か、ら、急所はダメージが大きいけどこっちにもダメージがくるのよ、精神的に!」

クラウド「(急所? キーラとダーズのことか? だが、精神的?)」

ベヨネッタ「蹴ったとしたらダイレクトに感触が伝わるものね。」

ピーチ「でも、咄嗟にはそこ以外狙えないと思う。余裕があればなんとか… なのかしら?」

デイジー「それでも嫌よ、正当防衛でも男の急所を狙うなんて!」

クラウド「(っ!?)」


クラウド「じ、次回、『恐るるに足らずですよね』ボソボソ」


ベヨネッタ「まあ、私はそれほど気にしないけど、もしそれ以外がいいなら目がいいわね。」

ピーチ「脛はどうかしら?」

デイジー「蹴ったらこっちも痛いわよ」

クラウド「(聞かなかったことにしよう…)」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

百十八話 恐るるに足らずですよね


パルテナ組回はどうやら執筆する際に頭のネジが外れるようです。
それはさておき、リミットカット含めて、現在出てるキングダムハーツシリーズを完走しました。いずれDSのdaysとかcodedもプレイしたい… とりあえず九月下旬のDR完結まで待ちかな…

息抜きに3のリミカボスの個人的主観を載せておきます。難易度はスタンダード。レベルマックスで特に縛りは無し。でも一応リンクは使いませんでした。裏ボスは使ったケド。
I:ジュニアメダルのフリーズガードが驚愕の大活躍。それでも攻略法見るまで大技以外の隙が見つからなかったぞ!
II:何故か一発クリアできた枠。至近距離でガードと攻撃を繰り返しててスタイリッシュで楽しかった。でも二度とできる気がしない。
Ⅲ:前半対処できてたのに後半では上手くいかず回復足りなくなってジリ貧パターンが相次ぐ。全方位レーザーを回避できた時は生きててよかったと実感。
Ⅳ:攻撃の違いがわからず、隙が見破れず長丁場に。未だにわかってない。
Ⅴ:目押し苦手民としては2の時より簡単だった。でもゲームやっぱ嫌い。
Ⅵ:兎に角速い。ゴリ押しと忍耐で勝ったかな?
Ⅶ:2の時とだいぶ変わってて少し悲しくなりました。死の宣告の時ゴリ押ししてたのは内緒だよ。
Ⅷ:兎に角スタンばっかで辛かった。ガード不攻撃ばっかだし。ナノギア使えば楽だったのはクリア後知りました。
Ⅸ:ガード不可ガード不可ガード不可… 攻略がわかってもどちゃくそ苦戦した…
Ⅹ:一番槍。ほとんど覚えてないけど一応一発クリアだったかな…? この難易度で縛りなしだとゴリ押しでも結構勝てる。
Ⅺ:この難易度だと大技よりタイミングずらす火球の方が苦戦した… 耐えれるから避けられなくても割といけるし…
Ⅻ:弱い。攻撃隙わかりやすいし、攻略サイトで星3とかもらってたのがびっくり。Ⅵとかの方が苦戦したんやけど…
XIII:先人に偽りなし。戦ってて楽しかった。ある意味一番理解できた相手かも。唯一おかわりした。



 

「ということなので! 二人ともゆっくり休んでいてくださいね♪」

 

「待ってください! 何がということなんですか!?」

 

「何を言っているんですか、割愛したということはさほど重要ではないということです。なので察してください。」

 

「無理です!!」

 

 

超速で話を進めるパルテナに対してピットはツッコミを入れるのが精一杯だった。話に一区切りがついたところでピットが本題を言う。

 

 

「じゃなくて! パルテナ様は復活されたばかりじゃないですか! ここはボクが行きます!」

 

「それでは最終戦には不参加ということでよろしいですか?」

 

「いや、それは…」

 

 

流石に長い付き合いだからか丸め込み方を知っている。精神的にはパルテナの方が優位だ。

 

 

「前にも言ったでしょう? 天使にできて女神にできないことなどありません。捕まった時は失敗しましたから、今度こそあなたを守らせてください」

 

「うー…」

 

 

納得はできても心の理解が追いついていないのか、唸りながらしかめっ面をしている。

 

 

「………」

 

「あなたは反対しないんですね?」

 

「は? なんでオレがそんなことしなくちゃいけないんだ。どうせコイツは反対するんだからオレが喚いたところで労力の無駄だ。」

 

「あら現実的。まあ、あなたが反対したところで私の意思はバリカタですから、本当に労力の無駄ですが。あっ、メンマだくが好きです」

 

「…ラーメンのことなんか聞いてねえよ」

 

 

軽くツッコミを入れるとすれ違い際に肩をポンと叩かれる。

 

 

「ピットのブレーキ役、お願いしますね♪」

 

 

ピットのブレーキ役。アクセルのブレーキ役。連想ゲームのように思いついた言葉を反復しながら、ぼーっと立ち去っていく後ろ姿を見る。

 

 

「…オレがストッパーか!?」

 

「は? ストッパー?」

 

 

凄まじい形相でこちらを睨みつけるピット。その顔に恐れを成した…のではなく、面倒になったブラックピットは。

 

 

「ばっくれるか…」

 

 

その結果は語るまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パルテナさまぁー!!」

 

「ピット!? 休んでいてと言ったでしょう?」

 

「ボクはパルテナ様の矛であり盾ですから!」

 

 

夜を思わせる、背景。『終点』の世界に当たり前のように登場したピットは、パルテナが驚きながらも少し嬉しそうな顔をしたのを見逃さなかった。

 

 

「あれ? なんか嬉しそうですね?」

 

「そうです、ね! あんまり同じ場所で戦うことないですから」

 

 

手のひらをパーの形で叩く攻撃を避け、『オート標準』で光弾を浴びせる。ピットも少し遅れて矢を射った。

 

 

「そういえば、奇跡で援護されることはあっても、同じように戦うことはあんまりないですね」

 

 

確かにエンジェランドから遠隔で戦うことは真の意味で共に戦っているとは言えないのかもしれない。この形で満足はしているものの、新鮮だということだろう。

 

 

「新鮮さいっぱい! フレッシュな気持ちで臨んでいきましょう!」

 

「はい! とれたてピチピチですね!」

 

 

マスターハンドが放ってきた鉄球を、神器と奇跡で跳ね返す。棘が掠めるがあまりダメージはなさそうだ。しかし、既にピットは攻め込んでいた。

 

 

「くらえ!」

 

 

反射した鉄球の陰に隠れて、マスターハンドへ近づいていた。真下を潜り抜け、すれ違い際に矢を放つ。

 

 

「よしっ!」

 

「ピット、油断しないで!」

 

「えっ? あうっ」

 

 

ピットの視界に火花が散る。指パッチンで鳴った音は低い姿勢で次に動こうとしていたピットに目眩を起こさせる。頭を上げていられず、両手を地につけた。

 

 

「…! 『爆炎』!」

 

 

動けないピットを援護するため、パルテナはマスターハンドに対して爆発を引き起こす。これで狙いは逸れただろうか。

 

 

「…違う! 注意して、ピット!」

 

 

マスターハンドが宙に設置した反射板。その一つにビームを撃つとあちこちで反射してフィールド全体を焼く。パルテナのところにもとんできたのでピットに構う余裕がない。

 

 

「ピット! 無事ですか、ピット!」

 

「だい、じょうぶです!」

 

 

先程いたところにピットがいなかったのでヒヤヒヤしたが、どうやらぶっ飛ばされた衝撃で崖までとんでしがみついていたようだ。崖から上がり、その姿を見られてほっと息をついた。

 

 

指で地面をなぞり、一角を剣山とすると、飛行機の形となったマスターハンドは飛び立った。

 

 

「体を飛行機の形にすることで空を飛ぶ… ですが、翼があっても飛べない人もいるものです。見てくれだけではダメだということですね。」

 

「なんかいいこと言ってる風ですけど、ボクのことを悪く言う必要はあったんですか!?」

 

「趣味です」

 

「ノオオォォ…!」

 

 

今後を決める戦いだとは思えない程に口は余計なことを話す。だが、そのおかげで自分のペースを保っていられる。マスターハンドがパルテナに激突する瞬間、最小限の動きでかわし、杖の輝きで『カウンター』をくらわせる。その結果マスターハンドは力なく落ち、慣性の法則で地面を引きずられる。

 

 

「ピヨりました! 今です!」

 

「ボッコボコにしてやる〜!」

 

 

チャンスとばかりに双剣を握ったピットは自分のできる最速の動きで相手を斬り刻む。十の数を数えたあたりだったか。マスターハンドがダウンから復帰する。

 

 

「きゃあ!?」

 

「んがっ!?」

 

 

そしてすぐに手を振り回し、二名を弾き飛ばした。宙で跳ぶピットと宙と呼ぶには低すぎる位置で静止するパルテナ。急降下し、クロスした双刃で刻む。

 

 

「攻めるは構いませんが、後のことを考えてますか?」

 

「いえ、全く! まだ全力少年中です!」

 

「嘘をつかなかったことしかいい点がありませんね…」

 

 

三連続で弾丸を撃った方向は、攻撃してきたピットの方。着地で避けられないピットの間にパルテナが割って入り、『反射板』で防ぐ。

しかし、その会話に気を取られたのか、即座に近づく影に反応が遅れてしまう。マスターハンドは二人をまとめて握りつぶす。ギチギチと絞まる体。

 

 

「「はあっ!!」」

 

 

しかし、指の隙間から青色の光が漏れ出し、それが創造の化身を弾き飛ばす。杖と神弓の回転がマスターハンドの握り込んだ内部で暴れたのだ。

 

 

「よっしゃー! ボクとパルテナ様がいればマスターハンドなんて恐るるに足らずですよね!」

 

「では次回作は私とピットのダブル主人公でいきましょうか」

 

「そんな〜! ボクの出番が〜!」

 

 

主君が戦闘に出てしまったら、自分の活躍がなくなるではないか。それを心配しているピットは半泣きであった。

 

 

「こうなったらボクだけでも充分ってところを見せなきゃ! かかってこい!」

 

「あっ! ちょっと待ってください!」

 

 

意気込んだピットはマスターハンドの投げてきたペイントボールに狙いをつける。パルテナの静止は間に合わず。矢に射抜かれ、水色のペンキが辺りに飛び散る。視界を潰しながら。

 

 

「んべっ!?」

 

「…っ、引きなさい、ピット!」

 

 

全身にペンキのかかったピットはパルテナの声に慌てて後ろへ下がるも、ペンキに足を取られた結果、足がもたつき、捕まってしまう。

 

 

「んぎぎぎぎ…!」

 

「ピット!」

 

 

頭だけを外に出して、より一層強く締め付ける。先程力技で抜け出られた結果だろう。自力での解放は難しい。パルテナが動くしかないが、高威力な技を下手に使うのはピットを巻き込むことになる。回り込んだパルテナはマスターハンドの手首部分を盾で強かに打ちつけた。

 

 

「へぶっ!?」

 

 

握っていたピットが端へ投げ捨てられる。これはパルテナの攻撃で離したというよりは離してもらえたというのが正しいのだろう。放られるピットから視線を戻し、パルテナは『テレポート』で移動する。

 

 

「痛いでしょうが少しお灸を添えさせてもらいます!」

 

 

移動先はマスターハンドの上。杖の先から赤い光が溢れ、『爆炎』となって吹き飛ばす。吹き飛ばされた支配人は爆発しながらフィールドから遠くへと飛ばされていく。

 

 

「ピット!」

 

 

再び『テレポート』で瞬間移動すると、飛ばされていたピットを回収しフィールドへ着地する。

 

 

「無理はいけませんよ、ピット」

 

「うう… おっしゃる通りです…」

 

「ヒロインみたいでしたね♪」

 

「た、たまたまです! ちょっと調子が悪かっただけで…」

 

「やはり次回作は私が主人公ですね♪」

 

「そんなー!?」

 

 

半べそ通り越して完全に泣いているピットを見ながら、お茶目な女神はクスクスと笑うのであった。

 





ピット「天使を十字架にかけるなんてなかなか洒落てますね!」

ブラピ「どこがだ!! いい加減降ろせ!」

パルテナ「私のこと、むーしー、しましたよね?」

ブラピ「了承もしてねえのに勝手に押し付けんな!!」

パルテナ「拒否しなかったじゃないですか」

ブラピ「する暇もなかったんだよ!」

パルテナ「ふっふっふ… はじめてですよ、私をここまでコケにしたおバカさんは…」

ブラピ「怖いからやめろ!」


ブラピ「次回ぃ!? 『過去の過ぎ去りし戦い』ッ!」


ブラピ「というか二次創作だからといって、原作以上のネタ範囲を見せるのやめろ!」

パルテナ「えー…」

ピット「えー…」

ブラピ「なんで残念そうなんだ!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

百十九話 過去の過ぎ去りし戦い

テイルズオブアライズ、メイドインワリオ新作発売!!
スマブラの小説書いててあれですが、私はアライズ買いました。ノーマルなのに恐ろしい難易度でヒーヒー言ってます。



 

「まったく、いけない子ね。私たちより先に捕まっちゃって」

 

 

ふう、と妖艶な息を銃口にかける。両手に構えた銃を向けるのは、創造の化身でありこの世界の支配人であるマスターハンドの対となる存在。破壊の化身、狂気の支配者クレイジーハンド。どこかで戦っていたマスターハンドと同じく、『終点』を戦場にする神との一戦。狂気をしめすように、その手癖は落ち着きがない。

 

 

「貴方みたいな子を私に守らせてたなんてダーズもいい趣味してるじゃない。貴方ごとぶっ飛ばしてあげるわ!」

 

 

その姿を蝙蝠の群れへ変化させると、クレイジーハンドの近くで煽るように飛ぶ。反射的にその群れを掴もうとしても、蝙蝠は指と指の間をすり抜ける。それらが集まった先はクレイジーハンドの上だ。姿を戻したベヨネッタは蝶が舞うように華麗に踵落としを決めた。

 

一回転しながら飛び退いたベヨネッタは両手のバレットアーツを連射する。だが、この程度のダメージはクレイジーハンドには効かない。

 

 

「ま、神サマなんだしまだ元気よね、私はありんこみたいな子でも構わなかったけど」

 

 

ぺろりと艶やかな唇を舐めてうるおす。退屈はしなさそうだ、と。

親指以外の指先から青白いビームを撃ってくる。それにもベヨネッタは動じず、艶めかしい動きでビームをかわす。そこに速さはなく、なめらかに美しく。ポールダンスをしているかのような芸術性があった。

 

だが、彼女本人も言った通り、クレイジーハンドは神のような存在だ。避け続けて勝てる、というほど簡単ではない。

 

 

「…! これはっ…!」

 

 

クレイジーハンドが二つ、ブラックホールのような小さな球をうみだす。本物ではないだろうが、人一人を吸い込むには充分である。抵抗が間に合わなかったベヨネッタは球の中に吸い込まれ、数秒の後フィールドに叩きつけられる。

 

 

「…っ!」

 

 

それはまさにはたき落とされるような勢いで、受け身をとる暇もない。肺の中の酸素をなくしてしまった。即座に呼吸を整え、蝶の羽で羽ばたいて立ち上がる。みっともない立ち方はしない。

 

はたくように動かした体。大きくしなって飛んできたクレイジーハンドに対してベヨネッタは片手を握って突き出す。

 

 

「ふきとべっ!」

 

 

荒々しくなった口調で、魔人マダム・バタフライの腕を召喚する。魔法陣から殴りかかる形で登場した拳はクレイジーハンドを逆に弾き飛ばした。

 

 

「まだまだね」

 

 

髪の魔力を解きながら、本心からそれを言う。距離の離れたクレイジーハンドに追い討ちで連射する。慈悲は当然ない。

 

油断ならぬ相手だと感じたのか、テレポートを繰り返す。何回かあちらへこちらへと瞬間移動を繰り返し、ベヨネッタを惑わせる。

 

 

「(瞬間移動… でも、私の意表をつくのが狙いなら…)」

 

 

視界の右上で消えた後、出てこなくなる。いや、出ていないのではない。本命で叩くつもりなのだ。ならば─

 

上体を斜めに逸らし、体を回転させてダイナミックに方向転換。そのままノールックで銃を撃った。手応えはある。なんせクレイジーハンドはたしかに真後ろにいたからだ。

 

いたはいいが、不意をうつことが目的である以上攻撃はしてくる。5本の指から飛ばされてきたのは五つの青い炎。ベヨネッタの銃撃は確かにクレイジーハンドに傷をつけたが、炎もベヨネッタを傷つけた。

 

 

「…っ」

 

 

ほんの少し顔を歪ませながら、両腕を前にしてダメージを最小限に抑える。クレイジーハンドがすぐに動いたのを確認すると、ヒールだというのに軽やかに飛び上がる。背筋を逸らし優雅にジャンプ。その掠れるギリギリのところを相手はクモを模した指遣いで通っていった。

 

 

「ふふっ… それが全力?」

 

 

今現在真下に位置するクレイジーハンドに、バレットアーツを発射しながら二発三発と蹴りつける。たまらずテレポートで姿が消え、回転蹴りがからぶった。

 

 

「またそれかしら、同じ味ばかりだと飽きちゃうわよ?」

 

 

何回か先程のようにテレポートを繰り返す。今度はフェイントの中に背後への移動も含んでいるが、それだけではベヨネッタは動じたりはしない。むしろ単純だと笑ってやりたい。

 

 

「さて… お楽しみはこれからよ!」

 

 

ヒラヒラとした服の飾りを揺らし、足踏みをしてヒールの音を響かせる。

一点に向けて、銃撃を放つ。今までの戦いでダメージを受けていたクレイジーハンドはそんな銃撃だけでわずかに隙をつくった。本当に僅かだったが、ベヨネッタはそれを見逃さない。フェイントだといっても実際に現れているのだから攻撃は当てられる。向こうの流れを一気に崩した。

 

背中の蝶の羽根で高さを稼ぎ、目にも止まらぬ蓮撃をくらわせる。それだけではない。拳が動くと同時に銃弾も共に撃たれているのだ。単純に威力も上がっている。そして、反撃されるのも彼女の中では折り込み済み。

 

 

「させてあげないわよ!」

 

 

小指と薬指以外の指で丸をつくろうとする動作をベヨネッタは見逃さなかった。その中心に現れるのは眼球型のライトだ。そこになんの躊躇いもなく鋭く足を突っ込んだ。

 

 

「当たれッ!!」

 

 

確かな一撃により、ふらついたクレイジーハンドに、女性のものではない、魔人の拳が天に向かって突き出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白と黒、光と闇がぶつかり合う世界。そこに二柱の神が降臨する。

 

片方はこの世界の創造者。支配者であり創造欲の化身、マスターハンド。

片方は狂気の破壊者。マスターハンドの対となる存在、クレイジーハンド。

 

 

『ようやく自由を手に入れた… 私たちを手駒に随分と好き勝手やられたようだ。』

 

『へっ、こういう殺伐とした世界は嫌いじゃないが、それは自分でやってこそだな。それにオレを操っていたのも腹が立つ。』

 

 

マスターハンドは静かに怒りに燃え、クレイジーハンドは苛立ちを隠そうとしない。

 

 

「ご無事でなによりです」

 

「世話が焼けるわね、操られてた分はきっちり働いてもらうわよ」

 

『ああ、世話をかけたな、パルテナ』

 

『ケッ、オレはオレがぶっ壊したいものをぶっ壊すだけだ。』

 

 

解放された場所それぞれで短く会話をする。長く井戸端会議している暇はない。こうしてる間にも状況は変化している。未だ化身達の模造品は上空で争い続け、スピリットは残っている。

 

 

『まずは魂達か…』

 

 

マスターハンドが手首のスナップを効かせて指を鳴らすと、白黒のオーブから虹色の魂が飛び出てくる。それに続いて戦っていたファイターも現れ、オーブが消え去った。

 

 

「うわああ!?」

 

「敵が消えたぞ!?」

 

 

戦っていたファイター達にとっては突然相手が消滅したように見えたらしい。そこら辺の配慮ができないのが、上位の者たる所以というわけか。

 

 

『私が選んだスマッシュブラザーズよ、まずは私たちが囚われている間も、この世界のために戦ってくれたことを感謝する。』

 

「…上から目線かよ」

 

「ファルコ、しー」

 

 

フォックスがファルコを咎める。ファルコはマスターハンドに対していい印象を持っていないようだ。

 

 

『奴ら… キーラとダーズを倒すためにもうしばらく力を貸して欲しい… クレイジーハンド。』

 

『んー、リョーカイ。任せときなぁ!!』

 

 

クレイジーハンドが空へ飛んでいき、宙に爪をたてる。すると空にヒビが入っていき、脆くなった部分が生まれた。そこへ拳でぶつかる。

 

 

「うわっ…!?」

 

「これは…!」

 

 

キーラとダーズの勢力図を表すかのように光と闇が拮抗していた空は破壊され、黄金色の輝きを放つ、あえて言うなら黄昏のような空が広がった。

 

 

『こんなもんで終わらせられねえな、もっと暴れさせろ!!』

 

『まだ待て、ここからは私の番だ』

 

 

再び、指を鳴らすとキーラとダーズが戦う場所へ続く足場が生まれる。創造の化身たる存在がこのようなものを作るのは造作もないことだ。

 

 

『私の最高傑作を好き勝手に荒らした罪は償ってもらわなければな。キーラとダーズをここで仕留める。皆、この足場から登っていってくれ。』

 

「待って、少し聞きたいことがある。僕らはキーラのこともダーズのこともほとんど知らない。知らないまま戦ってきた。マスターハンドは知っているのか?」

 

『さすがにマルスは聡いな。ああ、私も多少は知っている。移動しながら、戦いながら聞いてくれ。』

 

 

スピリットが使い物にならなくなったからか、キーラとダーズは戦闘でも使用していたファイターの偽物を生み出してきた。至るところに現れ、スマッシュブラザーズの足止めをし、あわよくば討ってしまおうということだ。

 

 

『なんせ、奴らの登場は君達スマッシュブラザーズも無関係ではない。全てあの時から始まっていたのだ…』

 

「あの時…?」

 

 

次に続く言葉を誰もが待っている。偽物達と戦っているはずなのに心臓が静止してしまったのように頭が働かない。

 

 

『亜空軍が襲来し、この世界は闇に堕ちかけた… その事件の黒幕、タブーが討たれた時だ。それら全てが繋がっていたのだ。』

 

「「「「「!?!?」」」」」

 

 

スマッシュブラザーズに驚愕が広がる。過去の過ぎ去りし戦い。それらがほじくり返されることに衝撃を覚えない者はいなかった。

 





マルス「タブーとの戦い… それがどう繋がっているんだ…」

ロイ「僕がいない時のことですよね。なので人伝にしか知りませんが… 残党がいたんでしょうか?」

マルス「もしかして僕たち百十九話にしてはじめて真面目に次回予告してる?」

ロイ「ありそうで困る…」

Dr.マリオ「やあ! 百十九話、つまり119だから流れをぶった斬ってやってきたよ!」

マルス「さようなら」

Dr.マリオ「え、ちょ、そんなー」


Dr.マリオ「次回… 『両方同時に倒してしまえばいい』…」


ロイ「結局いつものおふざけ予告だよ…」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

百二十話 両方同時に倒してしまえばいい

この回は原作ではマスターハンド操作して戦うところにあたります。
そして私的考察のアンサー…ということになります。



先を進む父が差し出した手を娘がとる。上の足場へ引き上げる傍らで、ルフレが光の軍勢を焼き上げた。

 

 

『どういうことか説明してくれませんカ? キーラとダーズがあの… タブーと関係しているトハ?』

 

 

クロムの背後から襲いかかってきた複製が赤いビームに撃ち抜かれる。ジェット機で浮き上がっていくロボットは穏やかな声をしていない。彼の場合はタブーの方にその激情が向いているのだが…

 

 

『キーラとダーズは我らのように対となる存在だ。キーラは全てを焦がす光を司り、ダーズは全てを呑み込む闇を司る。表裏一体の存在なのだ。』

 

 

マスターハンドはそう語りながら自ら戦う。スマッシュブラザーズという共通の敵がいても尚争い続ける光と闇の軍勢をビームでまとめて薙ぎ倒す。

 

 

『しかし、奴らは互いを自分の力で押さえつけている。奴らが持つ大いなる力が拮抗し合うことで世界の光と闇のバランスは成り立っているのだ。』

 

「カッコウ?」

 

「きっこう、です。つまりキーラとダーズの力のバランスが取れている時は平和が続く、ということです。」

 

「ああ、なるほど〜」

 

 

チコを操り、守りながら、ロゼッタはネスとともに戦う。周りを確認すると、人数の差にヨッシーが慌てているので、ネスを促して下っていくことにする。

 

 

「そういえば… そもそもダーズが現れたのはキーラを一度倒した後だ!」

 

「なるほどな、キーラを弱らせた結果、ダーズが暴れにきたってことか…」

 

 

つまり、キーラやダーズを倒しても、もう片方が強くなるだけで根本的な解決にはならなかったということだ。それを裏づける情報。フォックスが過去の戦いを思い返し、事実を知ってファルコが歯軋りした。

 

 

「それで互いが戦っているのだな」

 

「だが、ダーズが現れることに心当たりはあっても、最初キーラが現れたことに心当たりはない。」

 

 

常戦の構えで敵を蹴散らしながら上へと登り続けているリュウの言い分も正しい。この最終決戦にキーラが乱入してきたのはダーズを苦しめたから。それ以前にダーズが登場したのはキーラと戦ったから。ならば一番はじめ、この戦いの火種となったキーラの登場は?

 

 

『リュウ、君には心当たりはないだろう。心当たりがあるのは… せいぜいここにいる半分程度といったところか』

 

『半分…程度…? ま、マサカ…!』

 

『そう、タブーだ。』

 

 

事実を冷淡とも感情的とも取れない、ただ淡々とした様子で語ったマスターハンド。その言葉に、その半分に動揺が走る。

 

 

「タブー… ってなんだ?」

 

「以前、この世界の所々で亜空軍という敵勢が現れたんだ。タブーはその亜空軍を率いていた。私たちはそいつに危うく全滅しかけたんだが…」

 

「オレさまのおかげだぜ!」

 

「(本当にそうだから返答に困る…)」

 

「ピカー…」

 

 

ケンが近くにいたサムスに聞く。その答えに被さってデデデが割り込んできた。確かに全滅を回避できたのはデデデのおかげなのだが… サムスはピカチュウと共に呆れた目をした。

 

 

『亜空軍を率いていたファイターは当時のスマッシュブラザーズから離反していた者であり、私自身不覚を取ってタブーにいいようにされた。』

 

『あの時のダサさったら… ぷくくく…!』

 

『黙れ、クレイジーハンド。そして亜空軍の元となっていたのはMr.ゲーム&ウォッチの生み出してた影蟲だった。』

 

『えっ? なになに?』

 

「テメェのことだよ、ペラペラ、グチャグチャにしてやろうか?」

 

「やめんか!!」

 

 

無自覚で反省してるとも思えないMr.ゲーム&ウォッチにガンナが割と洒落にならないことを言う。ブロウに小突かれてなかったら本当にやっていたかもしれない。

 

 

「アワアワアワ…! そんなトークしてる場合じゃないって… うわあ!?」

 

「要するに、そのタブーって子だけ出自がハッキリしてなかったってことね。」

 

 

数の暴力を受けかけているソードを、ベヨネッタがソードごと蜂の巣にする。近くにいたお前が悪い。

 

 

「その出自がダーズに関係していたってことか…」

 

『ああ、もっとも自覚があったかは不明だが… そのタブーですらもダーズにとっては一つの先兵で、力の一部分でしかなかった。僅かでも均衡が緩めば送り込めるほどの』

 

「オイオイオイ… 冗談キツイぜ…」

 

 

こどもリンクが独り言のように呟いた言葉にマスターハンドが反応した。タブーですら、ダーズの一片でしかない。ソニックが軽く現実逃避に走るのも無理はないだろう。

 

 

「そうか… カービィのボディ… というかデータの方が近いのか。OFF波動でフィギュア化された時に作られた偽物。あれと同じようなものなのか。」

 

「あっ!? そういえばブラピ助ける前にカービィのボディがいた気が…!」

 

「おい」

 

 

あのクイズがあった謎の空間に、倒したはずのタブーがスピリットとして存在していたのも、これで説明がつく。ガレオムは亜空軍の作った機械であり、デュオンは影蟲から生まれたモンスターだった。Mr.ゲーム&ウォッチやロボットがキーラに捕らえられていたことを考えれば、キーラの陣営に存在していてもおかしくなかった。

ダーズの陣営にタブーがいたのも、タブーの力の元凶がダーズそのものなのだから、寧ろこっちの方がより納得できるだろう。

 

 

『矮小過ぎて、すぐに光と闇の戦いに影響を出さなかった。ようやく出たのが私が捕らえられた時だ。』

 

「なるほどな、それで…」

 

 

『サイファー』で上昇していくスネークはキーラとダーズの様子が変わったことに気づく。光と闇が集まり、力を蓄えているような…

 

 

「それでは、キーラにもダーズにも勝てないということですか?」

 

「っ!? そっか! 片方を倒してももう片方が強化されちゃったら…!」

 

 

ピットが顔を真っ青にする。これではイタチごっこで終わりがない。平和なんか生まれない。

 

 

『ああ、普通の方法では勝てない。それどころか、片方を倒せばもう片方がこの世界を牛耳るだろう。』

 

『だが、好き勝手やられて負けちゃいましたなんてありえねえよな?』

 

 

集まっていた光と闇が、束になって襲いかかる。この二対の神を現在の最大の障壁と認識して。その光と闇は、よく見れば辺りに大量にいるスマッシュブラザーズの模造品達だった。

 

 

「プ…! プリリ!」

 

『後ろだ!』

 

 

平和主義のプリンが慌てて声を上げ、ルカリオが明確に注意を促した。でも遅い。二柱は光と闇に包まれる… ことはなかった。

マスターハンドは空気を斬る程のアッパーで、クレイジーハンドは大地を抉る程の突進で、造作もなく敵意を蹴散らしたのだ。

 

 

『難しい話ではない。キーラもダーズも両方同時に倒してしまえばいい。私が選んだ精鋭達なのだ。むしろイージーゲームだろう?』

 

『へっ、お前らが潰れた時にはオレが代わりにやってやるよ。だから潰れてもらってもいいんだぜ?』

 

 

できない、とは言わせない。言うとも思っていない。はっきりと断言した言葉に少し面食らった者もいた。

 

 

「ひえー… 簡単に言うよなー…」

 

「大丈夫! ボクがいる! だから勝てるよ!」

 

「ぽよーい!!」

 

「あ、ちょっと…」

 

 

その面食らったメンバーのインクリングの肩をポンと叩きながらマリオが通り過ぎていく。カービィも気楽な笑顔で通り過ぎる。

 

 

「…そうだね! 負けない! 負ける気がしないもん!」

 

 

背中のマントとヒーローコスチュームが勇気をくれる。もっと戦える。3号はそう感じながら最後の足場を登る。そこには全てのスマッシュブラザーズが揃っていた。

 

 

『私たちは私たちの偽物を倒しておこう。本丸は任せたぞ。』

 

『ひっさしぶりにぶっ壊し放題だ! 暴れまくってやるぜ!!』

 

 

そういうと、未だ上空に点在している敵と戦いに空を飛ぶ。この大勢が戦うのに十分すぎる足場はマスターハンドによるものであろう。

 

 

「よし、これで本当に最終決戦…って、なんスかこれぇ!?」

 

「イッシッシッシッシ」

 

 

突然目の前が光と闇で眩みだす。かっこよく決めようとしたところ、出鼻を挫かれたリトル・マックは確かにダックハントに笑われる声を聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…! みんな!?」

 

「この場所は一体…」

 

 

マルスがはじめに仲間の無事を確認するように声を荒げ、ロイが辺りを見回す。故郷では見られないような金属でできた壁。誰かには見覚えがあるような…

 

 

「こいつは…!」

 

「ガレ…オム…!」

 

 

ドシンと巨大な何かが落ちてくる。それは鋼鉄の体を持つ巨人。亜空軍との戦いで遭遇した経験のあるアイクとリュカの反応が早かった。

 

 

「キーラの配下としてのガレオムは倒した… 他のみんなは別の敵と戦ってるのか?」

 

「多分そうだろうな、まずはここを乗りきってからだ」

 

 

マルスが周りを見渡しても、明らかに全員はいない。合流を目指すべきだが、ワープされているのだから歩いて合流できる保証はない。ならばスネークの言う通り、復活したガレオムを倒すことで道が開けるかもしれない。

 

 

ガレオム

VS

マルス アイク リュカ スネーク ロボット アイスクライマー ネス ルフレ ルキナ クロム カムイ ロイ

 

 

再々戦と再戦は思わぬ場所で始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

闇は至るところから現れる。ついさっき戦った時と同じように、再び勇気と力と知恵はめぐりあう。

 

 

「…飽きないの?」

 

「俺に言うな…」

 

 

記憶にも新しい魔神、ガノンドロフ。スマッシュブラザーズの一員の姿とは違う。巨大なモンスター。リベンジというにも早すぎる再開にこどもリンクとガノンドロフは自分達の関係も忘れて呆れるしかなかった。

 

 

「ですが、私たちにとっては新顔です! 油断はいけません!」

 

「わわわ、頑張ります!」

 

 

Wii Fit トレーナー、しずえ。戦いとは縁遠い者も臨戦体勢を取る。その前へ出てくる者がいた。

 

 

「ふっふっふ… さっきはトドメ取られちゃったから、今回はみんなの出番を潰す勢いで大・活・躍してやるー!」

 

 

背中からマスターソードを抜いてギラつく瞳で前を見据えた。やってやるさ、今の自分はイケイケモードだ。

 

 

魔王ガノン

VS

こどもリンク ガノンドロフ ゼルダ リンク トゥーンリンク シーク ソニック Wii Fit トレーナー しずえ むらびと パックマン ロックマン

 

 

闇はどこにでも潜むもの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわ、またこいつか、飽きないの?」

 

「おい、こいつのこと知ってるのか?」

 

「ファイアドラゴンでフラッシュがウィークポイント!」

 

 

戦った経験があるガンナとソードの二人。それを言動から見抜いたウルフが聞いてくるが、わかるようなわからないような。

見かねたオリマーがピクミンを引っこ抜きながらわかるだけの情報を語る。

 

 

「火を吐いてくるドラゴンのようだ。足の爪には毒があり、身軽に宙を飛び回る。強い光が弱点のようだ。」

 

「りょーかいっス。てか、ダックハント聞こえてたっスよ!!! どこだゴラァ!」

 

「ハハハ! それは後だな!」

 

 

空中から飛んできたリオレウスが砂埃を撒き散らしながら堂々と着地する。各々がバラバラのタイミングで戦闘体勢に入った。

 

 

リオレウス

VS

オリマー ソード ガンナ ブロウ フォックス ファルコ ウルフ ピット パルテナ ブラックピット キャプテン・ファルコン リトル・マック

 

 

猛々しく咆哮が鳴り響くものの、身を竦める者はいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さすがのしつこさ、ということか…」

 

「何度でもこいよ! 倒してやるぜ!」

 

 

ダーズによって復活させられたドラキュラ伯爵。一番血気盛んなのは当然ながらシモンとリヒターの二人であった。

 

 

「ふん、悪の大魔王如き、この3号の敵ではない!」

 

「インクリングちゃ「3号!」3号ちゃん! サムスちゃん! ベヨネッタちゃん! 俺が守るぜ!」

 

「必要ない!」

 

「あら、じゃあ頑張ってね」

 

「はあ…」

 

 

ケンがいつも通りの悪癖を見せた裏で、リュウが密かにため息をついた。だが、すぐに切り替えて構える。その速さは流石の対戦経験だろう。

 

 

ドラキュラ伯爵

VS

シモン リヒター インクリング サムス ベヨネッタ リュウ ケン クラウド ダックハント Mr.ゲーム&ウォッチ ダークサムス リドリー

 

 

余裕とも取れる高貴な仕草は全員のヘイトを集めるのに十分であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピットが言ってたよ! これが天丼ってやつだね!」

 

「なんか腹が立つぞ!マリオめ、少しはだまれ!」

 

「なんかちょっと違うよ兄さん…」

 

 

この世界以外でも交流のある団体を迎え撃つのはギガクッパ。しかし、クッパはスマッシュブラザーズ側として健在だ。おそらくマスターハンドやクレイジーハンドと同じように偽物がいたのだろう。

 

 

「アワワー! モンスターだー!」

 

「モンスター!? オレさまよりでしゃばるな!」

 

「倒せばいいんだろ! 倒せば!」

 

「ウホッ! 頑張ろう!」

 

「ええ、頑張りましょう」

 

 

以前、マリオとピーチで戦った時とは違い、フィールドは比べものにならないぐらい広くなっている。十二人全員が戦うのに十分なほどに。

 

 

ギガクッパ

VS

マリオ クッパ ピーチ ルイージ クッパJr. デイジー ロゼッタ ヨッシー ドンキーコング ディディーコング キングクルール ワリオ

 

 

全員がそれなりに関係を結んでいるため、団結力はピカイチだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「またか…!!」

 

「最早金切り声も上がらないか…!」

 

 

うぎー、と文句を垂れるデデデ。相手の事情を即座に見破ったメタナイト。偽物である以上、声を上げることも無理だと。

 

 

『またか… だが、このフィールド。今回は我々も思う存分戦える。』

 

「プリ…」

 

 

ルカリオが少し安堵する。一度目の対戦とは違い、しっかりした地面がある。相手は変わらず空を飛んでいるものの、これならば飛べずともやりようはある。

 

 

「よし! これなら僕も戦える! いくよ、カービィ!」

 

「ぅん!」

 

 

舌足らずな声でもその意思ははっきり聞こえた。この戦いが、この世界が生んだ絆がある。

 

 

マルク

VS

カービィ メタナイト デデデ シュルク レッド ピカチュウ ピチュー プリン ミュウツー ルカリオ ゲッコウガ ガオガエン

 

 

それを守るために。

スマッシュブラザーズはその得物を握りしめた。

 




パルテナ「第一回、マスターハンドとクレイジーハンドってしゃべるの?講座ー! わーい、わーい! パチパチパチパチー!」

リドリー「んだよ、これ」

パルテナ「みんな気になってる創造欲の化身と破壊欲の化身について、私が軽く説明しますよ。ゲストは適当にSP初期参戦組をお連れしました。」

インクリング「わーい! みんな見てるー?」

デイジー「2回目があるの?」

パルテナ「多分ないですね」

インクリング「んがッ!?」

リドリー「…………めんどくせえ」


リドリー「あー、次回、『これが最終決戦だ』」


パルテナ「あー! ちょっと、何締めようとしてるんですか!?」

リドリー「次回もオタノシミニー」

デイジー「なにも講座はしてないわね」

インクリング「あるのかな、第二回」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

百二十一話 これが最終決戦だ


ワクチン接種一回目、行ってまいります。予約投稿の都合上これ投稿されている頃には既に打った後になりますが。
副反応で御陀仏しませんように!!



 

「『PKファイヤー』!」

 

 

ネスがミサイルを焼き尽くす。眼前で爆発し、炎で辺りの気温を上げた。撒き散らされる爆煙の中、それを突っ切って駆けてきたのはクロムとアイクだった。

 

 

「「うおおおおっ!!」」

 

 

両アームに向かって振り下ろされた剣は、ガレオムが回転することで弾き返された。二人は離れた場所で勢いを殺して着地する。

 

 

「ったく、よく突っ走るな」

 

「もう慣れちゃったけどね」

 

 

『エルサンダー』、『リモコンミサイル』で遠距離からダメージを与える。オーバーヒートでもしてるのか、単なる怒りを表現しているだけなのか機体の赤いガレオムはその二つの攻撃を潰すように拳を振る。地面が抉れるが、爆発するミサイルと実体のない魔法が潰れるはずがない。

 

 

「いくよー!」

「せーのっ!」

 

「「よっ!」」

 

 

その地面に接地したアームから軽々と登っていくアイスクライマー。すいすいと頭上に跳んだ二人はタイミングよく頭部を木槌で叩いた。金属の割れる音がする。振り落とそうとガレオムが暴れるが、どうも様子がおかしい。

 

 

『頭部が潰れてカメラが損傷しましたカ!』

 

「「うわあああ!」」

 

「ポポ! ナナ!」

 

 

遂に振り落とされたアイスクライマーの二人。ルキナがその名前を呼ぶ。壁に当たったら痛いで済まない。

 

 

「大丈夫だ、ルキナ!」

 

「問題はない」

 

「お父様! アイク様!」

 

 

飛ばされた二人は離れていたアイクとクロムが受け止めていた。しかし、ルキナの声に反応したのか、そちらに向かって、変形して突撃してくる。

 

 

『ルキナ!』

 

「こっち、です!」

 

 

彼女の前に竜に姿を変えていたカムイが割り込んできた。竜の力を持って無理やりタックルを止めるが、流石に押され気味だ。ルキナはリュカが連れ出して車線上から外れる。

 

 

「カムイ! そのまま受け止めてくれ!」

 

 

納まっているファルシオンを握り、ガレオムにトドメを刺そうと駆け出すマルス。その存在を認識したのか、腕の変形のみを解き、近づく相手を握り潰そうとする。

 

しかし、それは為されなかった。2本の腕は途中から斜めに斬り込みが入る。その傷に走るのは─炎。

 

 

「…マルスの邪魔をしないでください。」

 

 

ロイが封印の剣を納める背後で、柄から抜かれた刃がガレオムの頸部を貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

付近に刺さり、倒れている崩れた柱を青い閃光が通り過ぎる。その後には雷の弾が柱を破壊する。ソニックが本気でかわしてしまえば、巨体の攻撃など掠りもしないのだ。

 

その閃光を目で追う背後でWii Fit トレーナーの『ヘディング』で飛ばしたボールとロックマンの『チャージショット』が魔王ガノンの尾を撃ち抜く。

 

 

「ソニックさんがヘイトを買ってくれているおかげでとても戦いやすいです!」

 

「うん! こいつ、キーラとかみたいにあたり構わず攻撃したりしないし!」

 

 

戦闘経験の薄いからこその慢心と優勢だからこその油断が命取りになる。体を捻って振り回す剣に気づけても反応できない。

 

 

「ったく、甘くないぜ!」

 

「「ソニック(さん)!?」」

 

 

駆けていたスピードのままに二人を押し出し、剣の軌道から外れさせる。ただ、これでソニックは軌道に入ってしまった。痛みを想像してきつく目を閉じる。

 

 

「ってうわっ!?」

 

「甘くないのはどっちだよ、自分が残っちゃうなら最初っからやるな」

 

 

何かに引っ張られるような感覚があって、目を見開く。こどもリンクがフックショットで救出してくれていたのだ。

 

 

「代わりにこっちなんとかしてー!」

 

「きゃー!」

 

 

相手のジャンプ斬りを慌ててかわすのはむらびととしずえだ。ソニックが止まって標的が変わったらしい。

 

 

「よし! ならボクがってちょっと!?」

 

 

こどもリンクの時と同じように、クローショットで二人を救出しようとするトゥーンリンクの前を影が通り過ぎる。パックマンだった。ボス・ギャラクシアンを相手の目の前目掛けて投げる。不可解な軌道をする飛び道具に警戒を外せない。この隙にシークが二人を離脱させる。

 

 

「ふん、こんな偽物を二度も使うとはな、随分と戦力に余裕がないと思える。」

 

 

ガシッと尾を掴んだのはガノンドロフ。2回も自分の偽物と戦わされて、内心憤っていた。

 

 

「やれっ!! 勇者ッ!!」

 

「雷よ─」

 

「うおぉぉお!!」

 

 

ゼルダの魔法の支援を受けて、雷を纏った巨大な斬撃を振り下ろす。マスターソードの刀身はおろか、魔王ガノンも超えるほどの斬撃は尾だけでなくその肉体すらも真っ二つにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「飛んでる相手はちょっと…」

 

「私もそこまで得意ではない。今黄ピクミンは一匹しかいないからな…」

 

 

戦闘体勢は崩さないままでも、やれることは少ないかもしれない。飛び回るドラゴンを見ながら、リトル・マックがボヤいた。

 

 

「ファルコくぅん、その自慢の翼で飛び上がって… おっと悪いな」

 

「どういう意味だテメェ!」

 

「お前空中でも、喧嘩売る余裕あんのかよ!?」

 

「ファルコも相手に、するなっ!」

 

 

リオレウスの横っ面をブロウが殴り、フォックスが蹴り上げる。ガンナがガトリングを掃射する中、口から出した火炎弾をファルコが『リフレクター』で跳ね返す。

 

 

「…ぐっ……」

 

「流れ矢、飛んできましたね」

 

「…黙って戦え」

 

 

横でニヤニヤと笑うパルテナは兎も角、間接的に喧嘩を売ってきたガンナを撃ちたいという欲求を抑えつつ、振り絞って翼を射抜いた。その巨躯が地面に落ちる。

 

 

「二人とも! 今がチャンスだぞ!」

 

「うっし! やってやるっス!」

 

「ああ!」

 

 

ここぞの出番にキャプテン・ファルコンが二人を焚き付ける。出遅れることはなく、飛び出した。

 

 

「ファルコーンパーンチ!!」

 

「決めてやる!」

 

「頼むぞ!」

 

 

『ファルコンパンチ』、必殺の『K.O.アッパーカット』、三匹のピクミンに命じた突撃でリオレウスを削る。だが、まだ撃破には至らない。そのまま飛び去ろうとしていく。

 

 

「ちょっと!? フライはノットだよ!」

 

「逃げられると思うなよ!!」

 

 

ソードがその尻尾を斬り落とし、ウルフがその頭部を破壊する。断面が見え、頭は鱗が所々剥がれている。そのダメージに耐えかねたのか、再び墜落するリオレウス。

 

 

「これで、」

 

 

右手に構えるは豪腕。叩くは竜。

 

 

「終わりだあぁあ!」

 

 

振り上げる右腕は勝利の証。

ピットの『豪腕ダッシュアッパー』がリオレウスの頭部を無惨にぶち壊した。

 

 

「後、ガンナ! ボクはお前を許さない!」

 

「神経質かよ、お前」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月の光だけが妖しく輝く闇の世界。優美にベヨネッタは攻撃を繰り返す。巨大な怪物と化したドラキュラの拳を避けながら。

 

 

「上だけじゃない。射撃はどこからでも飛んでくる…!! やっちゃえ、ウォッチ!!」

 

『はーい!』

 

 

黄色のインクが飛び出すスプラシューターを撃つのは3号… Mr.ゲーム&ウォッチ。最低限のインクを込めて撃った射撃では、3号に限り誤射してもダメージはない。射撃しながら同じ方向から攻撃できる。至近距離で『ホットブラスター』を爆発させると、バックステップで元の場所へ戻り、ブキを返してもらう。明るい色のインクは夜の帝王にはあまりにも不釣り合い。

 

 

「バウっ!」

 

「見た目はコミカルだが、その有効性は知っている。知らないのはお前だけだ」

 

 

そう、このインクは見た目に反してかなり強い。かかればかかるほどかかった者に対してのダメージが上がる性質を持っている。ダックハントの『ワイルドガンマン』による射撃も、クラウドの『メテオスラッシュ』もいつも以上のダメージとなる。

 

 

「さっすが3号ちゃん! やるなー!」

 

「お前もサボっていないでまじめに戦え!」

 

「わかってるって!」

 

 

悪癖を発動させたケン相手にサムスの叱咤が飛ぶ。撒き散らされる炎弾を相手の周りを走りながら駆け抜ける。『ミサイル』を撃ちながらだ。度重なる攻撃が蓄積され、怯んだところにケンが『竜巻旋風脚』を決めた。

 

 

「次! 頼むぜ!」

 

「まかせろ!」

 

 

蹴りの衝撃を受けきれず、体が傾いたところへ飛び出してきたのはリュウ。『灼熱波動拳』を撃ち、傾くで済んだ筈の状況を完全に倒れさせた。

 

 

「…………」

 

「ヘッ、つまらん戦いだ」

 

 

無感情のままに射撃を続けるダークサムスに、心底やる気なさげに火の玉を吐くリドリー。勝負は決まった。自分の頭がそう導いた時、攻撃すらもやめた。

 

 

「あら、ラストは… 適役かしら」

 

 

薔薇の花弁を出して着地したベヨネッタが見た先には二人の適役がいた。ベルモンドの血と名を継ぐ者達。一斉に打ち出した鞭は絡み合い─

 

 

「どうだっ!!」「くらえっ!!!」

 

 

一つの弾丸の様に、魔獣の頭部を貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドンキーコングが足元を狙って放った攻撃の最中、彼の背中を足場にヨッシーが跳び上がる。うーんと踏ん張ってギガクッパの後ろへ超えながら、蹴り続ける。それに反応したのか吹き飛ばすほどの咆哮を上げた。

 

 

「アワワワワー!?」

 

「しっかり…!」

 

 

吹き飛ばされたヨッシーは、ロゼッタが杖で導いたチコによって受け止められる。しかし、警戒は解かず、横目で相手の同行を確認した。吐いてきた火のブレスを、シールドで防ぐ。

 

 

「ふんだ! こんな奴がオレさまの相手になるか! オレさまのスペシャル攻撃をくらえ!」

 

 

一方向へ攻撃していれば、他からは格好の的。ワリオのスペシャル攻撃、最大火力の『ワリオっぺ』を解き放った。その匂いはたまったものではない。

 

 

「うっ…!? 集団戦でコレやるの…?」

 

「臭いぞー!!」

 

「うるせえ! オレさまの戦いにケチつけるな!」

 

 

ルイージのしかめた顔にクッパJr.の率直な非難。それらをワリオは一蹴する。

そんなことどうでもいいとばかりに果敢に攻めるのはキングクルール。硬い腹部を激突させるタックルで敵を崩そうとするが、敵が巨大すぎる。デイジーが株をぶつけて気を逸らした。

 

 

「もう! パワーじゃ勝てないのわかるでしょ!」

 

「あ゛ぁ゛!? 生意気なって、おい!」

 

 

株を投げて気を逸らしたということは、デイジーに気が向いているということ。押し潰そうと拳が迫る。

 

 

「きゃ!?」

 

 

思わず、目を閉じて腕で守ろうとするデイジーを誰かがさらっていった。来ない衝撃に目を開く。宙に浮いている?

 

 

「よそ見はダメよ?」

 

「ご、ごめんなさい。でも、また来るわ!」

 

 

ピーチの『ピーチパラソル』で空中へ離脱していたのだ。しかし、まだ攻撃は続いている。伸ばした両手で二人まとめて掴もうとする。

 

 

「キキー!」

 

 

ディディーコングが両足揃えたキックで片腕を蹴り飛ばした。僅かに動いた腕を何かのアームが捕らえる。

 

 

「うぎぎぎ…!!」

 

「気張れ! 気張れジュニア!!」

 

 

腕ではない。指の一本をクッパJr.のクラウンが捕らえていた。力負けしそうなところをクッパが体ごとクラウンを掴んで押し負けない程度まで盛り返した。

 

 

「どう、だ!!!」

 

 

そこへ駆ける赤い帽子。マリオは足に炎を蓄えて飛び上がる。地面に焼け焦げた跡が残るほどに駆け抜け、その巨体を思いっきり踏みつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四方へと、飛ぶカッターがファイターを雑に斬りつける。どこかの異星のように不気味な大地を抉る。スマッシュブラザーズは避けるだけではなく、この攻撃そのものをどかしていた。

 

 

「リザードンはかえんほうしゃ、ゼニガメはみずでっぽうで狙いを逸らせ! フシギソウはつるのむちでカバーだ!」

 

「グゥオ!」

 

「ニー…!!」

 

 

真正面からとんでくるカッターに炎と水を当て、上空へと逸らす。そこから降ってくる茨の種はフシギソウが弾いて明後日の方向へ飛ばした。

 

 

『む… 先の戦いでも思ったが… すばしっこいな。』

 

「ああ。テレポートもするし、広範囲への攻撃もある。隙はないぞ。」

 

 

背中合わせに情報を語るルカリオとメタナイト。彼らの足元が闇で覆われる。互いに跳んで回避した後には虚空から現れたマルクが嗤っていた。目を黒く染め上げ、ポタポタと落とす。

 

 

「プリ、ププリ…!」

 

「ピカチュッ!!」

 

 

戦闘の経験が薄いプリンはその追尾性の高い攻撃を避けるので精一杯だった。危うく当たりそうになっていたところをピカチュウが弾き落とす。

 

 

「コゥ… ガァッ!!」

 

 

『みがわり』で上手く背後へ回り込んだゲッコウガが水のクナイで斬り伏せる。マルクの体が回転するほどの威力。その激しい動きの中、未来を見た。

 

 

「ダメだ…! みんな! かわして─」

 

 

シュルクの声は届かない。彼の見た未来の通りにぷくっと膨れた頬の口からビームが飛んでくる。まだ体は回っている。新体操のリボン、いやそんなに綺麗なものではない。そこら辺に無作為に振り回されたビームは敵や障害物の違いなく、自分以外の全てを焼き尽くす。

 

 

「こんなの…! 無理だ…!」

 

 

一番酷いのはレッドだ。即座に仲間はボールに戻したものの、本人にかわす術はない。ギリギリで避けていて致命傷はないが、続けられたらいずれバテる。

 

 

『コレを止めなければ…! 二体とも強力な一撃を叩き込め!』

 

「ガゥオ!!!」

 

「ピチュー!!」

 

 

ミュウツーが『テレポート』させたピチューとガオガエン。掴みかかってしめつけ、『かみなり』を落とす。ガス欠か、衝撃故か、ビームが止まった。

 

 

「ここがチャンスだ、カービィ!!」

 

「ぅん!!」

 

 

ガオガエンとピチューが横に避け、デデデとカービィがとんできた。宿敵の振り下ろした槌がこの戦いの幕も下ろす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待たせたな」

 

「僕たちで最後かな?」

 

 

マルクと戦っていたシュルク達が辺りを見渡すが、特にいない者はなさそうだ。それと同時に周りが広くなった終点のステージのようなものを見つけた。散らばった足場も踏まえて、マスターハンドが用意したのだろう。

 

 

「…いくよ。」

 

 

静かにそう呟いたのは誰だったのだろうか。

互いに戦っていたキーラとダーズがこちらに気づく。

 

 

─さあ、これが最終決戦だ。

 




インクリング「ニンダイの打ち上げだーい!!」

メタナイト「昔にお蔵入りした箱庭3Dが出てくるとはな、私が出れるかは怪しいが…」

マリオ「うん! スーパースターの奢りだよ!ところでなんでメタナイトいるんだい?」

メタナイト「カービィは話せないからな」

カービィ 「ぷ?」

ベヨネッタ「トリを飾れるなんて私のゲームも随分成長したわね」

サムス「ドレッドの情報あんまりなかった…」

むらびと「新ファイターもちょっと伸びたね。それもだけどあつ森ダイレクトも楽しみ! 喫茶店!」


インクリング「次回!!『白に染め上げられた』!!」


インクリング「昇格しました! 新作では司令だよ!」

マリオ「これが司令で大丈夫?」

メタナイト「これが司令で大丈夫なのか?」

ベヨネッタ「これが司令で大丈夫かしら?」

サムス「これが司令で大丈夫か?」

むらびと「これが司令で大丈夫なのかな?」

カービィ 「ぽよよよよ」

インクリング「ちょっとー!?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

百二十二話 白に染め上げられた

 

七十二のファイター達。空中で戦い合うキーラとダーズ。さらにその上では奴らが生み出した偽者達に本物のマスターハンドとクレイジーハンドが既に戦いを始めている。対なる敵がスマッシュブラザーズを認識した。こちらに敵意を向けていることも。

 

これまでの戦いでも使用してきたファイターの偽物を呼び出す。しかし、その量、数えきれるほどではない。前までの戦いで呼び出した模造品の比ではない。

 

 

「…ッ、んだよこの数…!」

 

 

普段勝気なガンナすらも思わず身を竦める。キーラとダーズが生み出した複製はスマッシュブラザーズ全員分を軽く超えるほどの数だった。それらの相手をしながらさらに二つの化身まで倒さなければならない。

 

なよ竹のかぐや姫は求婚してきた男達に五つの難題を与えたという。この戦いはその難題よりも遥かに無謀な戦いだった。

 

 

「くっ… 空中戦が得意な者は積極的に本体を狙っていこう! その他はこの偽者の対処! 決して個人で戦うな!」

 

「わかった!」

 

 

状況を把握したルフレの近くにいたリュウが共闘状態に入る。剣を剣で受け止め、拳で受け流す。遠くに小さくしか仲間が見えない。誤射を気にして大規模な魔法は使えず、取り囲む敵を少しずつ相手にしていくしかなかった。

 

 

「ねえ! キーラとダーズ、どっちが狙いやすいと思う!?」

 

「どっちもどっちでしょ! 比べることに意味なんてない!」

 

「それ本末転倒だよ! せめて倒しやすい奴から…」

 

「むらびと忘れてない!? キーラとダーズ、"同時に"倒さなきゃいけないんだよ!?」

 

 

トゥーンリンクとむらびとは絶句する。珍しく声を荒げて必死に戦っているこどもリンクの言葉。キーラを滅ぼすには、ダーズを滅ぼすには。同時に。難易度が高すぎる。奴らにたどり着くことさえ、至難の業だというのに。

 

 

「このっ…!!」

 

「あっ、待ってください!」

 

 

やぶれかぶれで飛び出したシークはリュカの静止も間に合わない。ダーズの本体を蹴り飛ばそうとして、茨の触手に遮られて弾き飛ばされる。孤立したリュカの元にはロゼッタがなんとかたどり着いた。

 

 

「…いや、違う。こんな難しい話じゃない。」

 

「カムイ? どうした…?」

 

 

呟いた言葉を拾ったオリマーを四肢の下に隠す。竜化したカムイは翼を広げて複製達を吹き飛ばした。そのまま尾で光の軍勢を二人掴み、闇の軍勢の群れへと投げ飛ばした。

 

 

「キキー!?」

 

「うわあ!? こっちに押しつけないで… あれ?」

 

「ハッ、そういやそうなるよな」

 

 

闇の複製の刃が投げ飛ばされた敵を叩き斬る。ディディーコングとルイージは驚くが、その様子を見たリドリーが自分に呆れたように言い捨てた。

 

 

『そうか、キーラとダーズが敵対しているならば… 当然その配下も、本体も…』

 

 

ミュウツーの視線を追ってパックマンが同じようにそこを見る。そこには三つに本体が分裂したキーラが火炎弾をダーズに向けて発射している。その攻撃は闇の軍勢にも向けられているし、ダーズもガトリングのような砲撃でキーラを攻撃している。

 

敵の数や最終目的の難易度ですっかり頭から抜けていたが、キーラとダーズが敵対しているのならば、狙われるのはスマッシュブラザーズだけではない。一時期白夜王国も暗夜王国も敵に回し、ニ国の戦争に乱入したことだってあるカムイだからこそ、非常事態でもその本質を忘れなかった。

 

 

「それならば、もっとやりようはあるな!」

 

 

デデデが闇の複製らを『すいこむ』と、キーラに向けて星形弾を吐き出した。キーラの目の前で元の形を取り戻した複製は翼のような物体で撃ち抜かれ消えていった。

 

と、ここでキーラとダーズに動きがあったことに気づく者がいた、レッドだ。手持ちのポケモン三体に指示を出すために状況を広く見る彼だからこそ気づけたその変化。これは確か、前兆。

 

 

「爆弾の…!?」

 

 

しかし、確信できず大声を上げて注意することができなかった。キーラの十字爆弾とダーズのX字爆弾が自分の敵のみを焼き尽くす。

 

 

「きゃああ!?」

 

「ギャアアアァァァ! やりやがったな!?」

 

 

あちこちで悲鳴や叫び声の類が聞こえる。デイジーが足を焼かれる近くで、キングクルールが反撃に付近の敵を殴りかかる。見れば、随分と敵の数が減っていた。

 

 

「さっきの攻撃で複製の大半がやられたのか!」

 

「代償は大きいが…!」

 

 

光の複製はダーズの爆弾に、闇の複製はキーラの爆弾に巻き込まれて数を減らしていた。マルスは好機が生まれたと語るが、ガノンドロフはそこに至るまでの対価だって大きいことを知っている。マルスとてそれはわかるが、それでもようやく状況が動いた。それでも、減ったとしてもかなりの数の敵がいるが…

 

 

『なっさけねえーの』

 

「あなた… クレイジーハンド!」

 

 

パルテナの驚きに、クレイジーハンドは満足そうにケタケタと笑う。登場だけで三体ほどの複製を潰した。

 

 

『オレがパチモンたちも軽く相手してやればいいか? 雑魚雑魚戦士どもが』

 

「なんだお前! ワガハイ達を舐めおって!! いいだろう! キーラもダーズも倒せばいいんだろう!?」

 

「ガアアアア!」

 

 

クッパとガオガエンが一番に飛び出す。キーラとダーズの戦いに向かっていく。

 

 

「ああ! ウエイト! オレもゴー!!」

 

「奴らの元へ行ける奴から行くぞ!」

 

 

後を追ってソードが飛び出し、後続にはアイクが呼びかけた。

 

先に飛び出した二人。ガオガエンは足の遅さのせいでダーズの闇の柱に引っかかる。見た目に似合わずそこそこ俊敏なクッパはダーズを思いっきり爪で引っ掻く。攻撃をしていたダーズは防御に回れない。はじめてスマッシュブラザーズがまともなダメージを与えることができた。それが合図になったかのように、後続もどんどん乱入していく。

 

 

「プ! ププリ!」

 

「ピッチュッ!」

 

 

プリンの上にピチュー。キーラもダーズも超えた空中からピチューが『こうそくいどう』で落ちてくる。小さな体でキーラの防御を潜り抜け、『でんげきスクリュー』をお見舞いしてやった。続いてダーズも… というところで気づく。ダーズがいない。違う? 本体だけ?

 

 

「チ゛ュゥ!?」

 

 

ダーズの触手が異空間から現れて空中にいたピチューを呑み込む。

 

 

「プリ…!!」

 

 

更に上空にいたプリンも呑み込み、フィールドを蹂躙し続ける。キーラはダーズ目掛けて大量のレーザーで触手そのものを焼こうとするが、動きが鈍重なダーズ本体には当たっても、動き続ける触手はするりするりと隙間に入ってかわしていく。

 

 

「キーラまで…! うわああ!?」

 

「キャイン…!!」

 

「くっ… これでは…!」

 

 

キーラの動きに目を引かれてしまったロックマンもダーズに呑まれ、近くにいたダックハントも巻き込まれてしまう。メタナイトは舞い上がって回避しようとするも、キーラのレーザーに翼を焼かれ、落下地点のダーズに呑み込まれた。

 

 

「危ねえ!!」

 

『わっ!?』

 

 

足をレーザーに貫かれたソニックは、自分が狙われているのを感じて、近くのMr.ゲーム&ウォッチを押し出した。触手が周りを囲って逃げ場を失う。

 

 

「くそっ… 人気者は辛いぜ…!!」

 

 

タブーの力を大きく削いだからだろうか、一人に対して執拗に迫ってくる触手に空中へ打ち上げられた。おそらく自分もあの触手に呑まれて…

 

 

「そっちに攻撃が入んねえなら、本丸叩けェ!」

 

 

遠くからのファルコの声。本体の大きなダメージに触手はぷるりと震える。そしてたまらなくなったのか、異空間から本体の元へ戻っていった。呑まれていた五つのファイターは辺りに撒き散らかされる。

 

 

「無事ですか? ソニックも…」

 

「No problem… とは言い切れないなぁ…」

 

「くそ…! 被害は大きいか…!」

 

 

ロゼッタとクロムが駆けつける中、Mr.ゲーム&ウォッチは空気を読まず、他の人を立たせている。体を労わる気はない。立たせようとしているだけ成長したと言うべきか。

 

一方、キーラとダーズはそれぞれ槍とハンマーのような物を形作り、それぞれと戦っていた。

ダーズの一振りに震え、キーラの一突きを掠め…

 

 

「ウワーオ…! ボク達も混ざった方がいいのかな…?」

 

「命が惜しかったらやめろ、潰しあってくれるならそれに越したことはねえ。」

 

 

ヨッシーがそれに混ざろうとするのを止めたのはウルフだ。コイツが混ざって矛先がこちらへ向いたら面倒だ。更に言えば、

 

 

「あの攻撃… まともに受けたらたまったもんじゃねえ… 混ざるのは無鉄砲な奴だけだ」

 

 

生存本能か。アレに混ざれば命はない。そう直感した。フィギュア化のルールで、本当に死んだりはしないが、戦力を減らしにいってどうするのだ。

 

 

 

 

 

ただ─

それで完遂できる目標ならば難しいとは考えぬ。

 

何回かの死闘の末、ダーズの槌はキーラの核をクリティカルで潰した。

 

 

綺麗な球は潰れて楕円型になる。

ハンマーの面の真ん中に当たってその様子は見られなかった。

 

 

キーラが全てを焼き尽くす太陽のように光を溜め込んでいたことも、誰も確認出来なかった。

 

 

その光の衝撃波に、スマッシュブラザーズの視界は白に染め上げられた。

 





「負けられる…か…! 諦める…もんか…!!」

「この世界で会えたんだ! だから負けるはずないよ! ボク達はスマッシュブラザーズなんだから!」

「くぅらえぇぇぇ!!」


次回、『スマッシュブラザーズ』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

百二十三話 スマッシュブラザーズ


ファイターフィギュア化→ファッ!? どういう状況? タブー? いやまさか…
炎の剣→フェッ!? アルフェン!? 早すぎだろ、風花雪月も半年なのにいやまさか…
キーチェーン→あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!
オーケストラ版光→浄化
お待たせ!→いやほんっとに待ってたあ…
サークライ→いやこっちがええ!?なんだが?(正気)


今週色々起き過ぎて情緒不安定になってますが、ここはスマブラの小説なので話題はこれで…



 

立っている者はいない。

回避もカウンターもシールドも間に合わなかった。

 

レッドがてもちを戻そうとしたのも間に合わなかった。尾の炎が弱々しく揺れて、蕾は萎れて倒れている。しっぽも手足も上がらない。

 

─今、立ち上がっている者はいない。

 

 

それはタブーが使っていたOFF波動に似た技だった。何もわからないうちに致命的なダメージを受けてしまったという点がそっくりだ。

 

 

「何が… 起きた…!?」

 

 

起きあがろうとするサムスがスマッシュブラザーズの疑問を代弁する。不意打ちのせいで何が起こったのかわからない。

 

 

「キーラが何かしたように見えたが… どうなったかは…!!」

 

 

スネークがなんとか立ち上がる。大丈夫だ、やりようはある。当たれば即死だったタブーのものとは違う。段階的に衝撃を受けていた。数を上げている分威力は下がっているのだ。敢えてそうしたのか、こうでしかできなかったのか不明だが、まだ体は動かせる。戦える。ダーズだって今ので大きなダメージを受けている。残っているのだってあとは光の軍勢だけだ。まだ…

 

 

それは理論上の話だ。今のスマッシュブラザーズにどれだけ戦える数がいるのか。その判別すら至難なのだ。

 

 

「これでは… まるで絶望の…!」

 

「クゥオォ…」

 

 

嫌な凝視感の正体。討つべき相手は自分達など歯牙にかける必要もないぐらいの差があって。遥かな上位の存在だ。こんな存在相手に人が立ち向かうなどどうかしている。無理だ。近くでいかくを続けるゲッコウガの唸り声がやたら遠くに、他人事のように感じてしまって、刃を地に落とした。

 

 

「や…だっ!!」

 

 

その手はその声に驚き… 無意識にまた剣を握っていた自分にもまた驚いた。神弓を棒代わりにピットがゆっくりと立ち上がる。背中の翼は土や砂で汚れていても目の輝きは失っていない。

 

 

「負けられる…か…! 諦める…もんか…!!」

 

 

二体で戦いを続けるキーラとダーズに狙いを定め… 痛みで上がらない腕はブラックピットが走ってきて持ち上げた。

放たれた2本の矢。人智を超えた力で曲がった矢は二つの化身を撃ち抜いた。

 

ただ、それだけ。それだけでもスマッシュブラザーズの道になった。

 

 

『甘いな。私の世界を汚すには脆すぎる。』

 

「マスターハンド…!」

 

 

マスターハンドのチャクラムが全ての光の軍勢を斬り刻む。複製はただの模倣でしかなく、それが創造に敵うはずもないのだ。

 

 

「まだです…ね… 未来は変わるんです、ここから…!」

 

 

ルキナが立ち上がる。いや、ルキナだけではない。

 

 

「そうですね…! 得意ではないと言っている場合じゃありません…!!」

 

 

Wii Fit トレーナーもまた立ち上がる。己の力量が力不足だと気づいていながらも。

 

 

「ボク達は、会えたんだ…」

 

 

ケンがロボットの肩を借りてなんとか立ち上がる。そのロボットも接続部から火花が飛んでいて被害は甚大だ。

 

 

「世界も常識も時も超えて…」

 

 

剣を突き立てて立ち上がるクラウドに、腕を庇いながらも戦意をなくしていないリヒター。

 

 

「この世界で会えたんだ! だから負けるはずないよ! ボク達はスマッシュブラザーズなんだから!」

 

 

眉を吊り上げて叫んで、言葉の途中で口角が上がる。最初の数字を与えられた者。はじまりの戦士。だから誰よりも彼は、マリオは知っていたのだ。みんなの強さを。

 

 

「ふぁゆ!」

 

 

マリオの隣に立ったのはカービィだった。この最終決戦。カービィは最初っから本気モードだった。ポップスターを救ったように、この世界も救うのだ。

 

 

「流石ね… 前を向かせてくれてありがとう、スーパースター」

 

「スーパースター? 今更そんな当たり前のこと言わないでよ!」

 

 

ピーチが小洒落て話すとマリオもそれに答えてて見せた。ダーズの触手での刺突の攻撃を走りながらかわし続ける。

 

 

「マリオ!」

 

「やあっ!!」

 

 

ピーチが上げたパラソルを踏み台にして、最後の一突きの触手についていた本体を叩く。更に魔法でピーチが追撃をかけた。

 

 

「そう、だよな! 負け、られるかあぁ!!」

 

「……………!」

 

 

力任せに足で触手を纏め、マスターソードで斬り落とす。その側に空中を滑るように移動し、フェイゾンの力を押しつける。

 

 

「キーラもくる!!」

 

 

キーラの周りに浮遊する翼が槍のように鋭くなり、ファイターに追尾してくる。声を出したマルスが跳び上がり、体を捻らせて避けきる。

 

 

「ウホッ!! 受け止めて!」

 

「「押し留めるよ!!」

 

 

ドンキーコングが力づくで翼の一つを押さえ込む。回転しているところを掴んだせいで、摩擦によって両手の平が焼けるほどに痛いが根性で抑える。そこにアイスクライマーの二人が杭のように打ちつけることで抜けなくする。

 

 

『そうだ、それでいい。』

 

『守りを薄くして本体をぶち壊すってことか、単純だが、悪くはねえ』

 

 

マスターハンドとクレイジーハンド。彼らがいいたいのはこうだ。キーラの翼とダーズの触手、防御や攻撃に回せるそれらを最初に削ぎ、そこから大技を叩き込む。わかりやすい作戦だった。

 

 

「OK! とにかくこの付属品を押さえ込めばいいんだな!」

 

「簡単に言うけど、超越的に難しいことわかってんのか!? ほらまたきた!」

 

 

キャプテン・ファルコンが快活な笑顔で語るが、その難易度にブロウは悲鳴をあげる。武器もなければ特殊な力もないならば敵の武具を捕らえるのは、更に難易度が上がるのだと。その流れを察されたのか再びあの複製を生み出してきた。

 

 

「だがっ、みんな頑張ってんのに俺だけ腑抜けんのはカッコつかねえよな!!」

 

 

手頃な敵に鉄球を放り投げる。頭を強かに打った相手は当分動けないだろう。その勢いのまま飛び出し、触手を撃ち続けていたダークサムスとリンクの元へ乱入する。

 

 

「ガハハハ!いくらオレ様が有名だからって何も言わずに真似るのはよくないぞ!」

 

「こんな時にも調子いいんだから…」

 

 

ワリオが自らの複製を前に一気に上機嫌になる。それでも自慢のパンチやタックルで戦う中、ネスがその様子を見て呆れていた。中々言葉に表しにくい関係性の二人だが、共通の敵がいる以上、それを持ち込んだりしない。

 

他にも、ファイターの複製に立ち向かいながらキーラとダーズの得物をどうにかしようと機会を伺う。

 

 

「わわわ! ダメですー! 捕まえられませんー!」

 

『やはり警戒はされる…! 慢心してはくれないか…!!』

 

 

しずえがパニックゆえに慌ててクラッカーをかき鳴らす。キーラの翼を追っていたが、複製のファイター達に囲まれてしまったのだ。ルカリオが助けに入って難を逃れたが、押されている。敵の数が増え、戦闘経験の薄さが露呈し始めていたのだ。

 

 

「ポンポン出てきちゃ幾ら戦ったって意味がないっスよ!!」

 

「ううう… 挫けちゃダメだ…」

 

 

まだ折れてはいないが、押されているのは変わらない。グローブで殴り続け、キーラの翼を狙ってクラウンの砲弾を撃ち続けるが、当たらない。

 

 

「これでは… もう…」

 

「いや、勝ち目はあるよ」

 

 

だが、ロイには見えていた。キーラの敵はダーズとファイターで、ダーズの敵はキーラとファイターなら─

 

 

「キーラの味方もダーズの味方もいないんだ…」

 

 

奴らは一人だ。仲間はいない。

 

幾らスピリットを支配しても、

幾らボディを作り出しても、

幾らファイター達を従えても、

幾ら複製を生み出しても、

 

 

奴らは一人なのだ。何をしてても一から百までその全てが独り遊びなのだ。

 

 

『孤独に戦っても遊んでも、なんの面白みもない。つまらない。楽しくない…』

 

 

「留めろおおぉ!!」

 

「驚いて泣いちゃダメよ!!」

 

3号の持ったローラーに触手が絡みつく。そこから召喚した魔人マダム・バタフライの両腕がローラーごと押さえつけるように握りしめる。強い圧力がかかり、3号が引き摺られかけるも地に足つけて食いしばった。

 

 

「チュウウゥウウッ!!!」

 

「いっけええぇええ!!」

 

 

ピカチュウがほうでんをし、動きを弱らせた翼をシュルクはモナドで地面に突き刺した。彼が纏う黄色の光は、ピカチュウの電撃を耐えて攻撃をしたことを表していた。

 

 

「弾いて…ッ! 頼む、シモン!!」

 

「ああ! フォックス!!」

 

 

嵐のように襲いかかる触手の進行方向に回り込んだフォックスは、リフレクターで上空へ弾き飛ばそうとする。仲間の作った武装は悲鳴をあげながらもその役割を全うした。シモンはその触手の束を縛り上げる。

 

 

『─────ッ!!!』

 

『───────!!』

 

『崩れた! 今だ! 受け取れ!』

 

 

キーラとダーズの前に、スマッシュボールが現れる。正真正銘、この世界の最後の切りふだ。創造者の力と支配者の権限を利用した、掟破りの二つのカードだ。

 

 

「ふんむぅ!!!」

 

「いくよ! カービィ!!」

 

『───!! ──!!!』

『────────!!!』

 

 

ピンクの悪魔、星のカービィ。

Mr.ニンテンドー、スーパーマリオ。

上空を飛び出し切りふだを握った二人は、最後の大技を繰り出すキーラとダーズに迫り来る。

 

キーラは全てを焼き尽くす巨大な火球を。

ダーズは全てを引き裂く鋭い双牙を。

 

 

「「「「マリオ!!」」」」

「「「「カービィ !!」」」

 

 

カービィは神をも斬り裂く刃を!

マリオは神をも焼き尽くす炎を!

 

ウルトラソードは火球を真っ二つに斬り捨て、

マリオファイナルは爪のついた触手ごと燃やす。

 

 

「くぅらえぇぇぇ!!」

「おおおぉぉおおおおっ!!!」

 

 

光は右と左に斬り離され、闇は炎を残して黒く焼かれる。

 

 

二人がそれに気づいた時には力が抜けていた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

エピローグ 戦い交わる全ての人たち
命の灯火



(まとめはあるけど)最後だし何も語らず本編に移行しようと思ったら、あつ森ダイレクトで胸焼けするほどの情報出してきた… アップデートしたら後半年は平気で遊べるんじゃ…?
(後ワクチン接種2回目行って参ります)



 

残っていた複製が崩れていく。化身の骸、残骸が光と闇に戻っていく。その目にすることができた根源もまた、滅びつつあった。

 

キーラの翼、赤と青に輝いていたそれが色を失い、輝きの無くしたキーラが重力に従って、海へ落ちていく。全ての力を無くした抜け殻は理を超越する手段などないと。

ダーズも虹彩の区別がつかないほどに黒く色が消えていく。途切れかけの触手も、ほのかな紫もなくしていた。虚ろな存在は消えて、崩れて。

 

 

海に沈んだ二対の化身。着水した跡から波紋のように波動が広がる。世界に光と闇が還っていく…

 

 

 

ようやく見えた黄昏に、魂が昇っていく。

 

 

「あれ、なんだろう?」

 

「多分… スピリットだよ。みんな、元の世界に帰るんだ」

 

 

それにネスが気づき、リュカが結論を出した。その魂を追うように多くのスピリットが渦を巻く。

 

 

「はあーあ… 今回ばかりは疲れたよ…」

 

「帰ったら特盛のパフェでも用意しましょうか」

 

「またこいつらは呑気な…」

 

 

そのスピリット達は雲よりも高く、宇宙へまで飛び続ける。ボヤいたピットが眺めながら言った。

 

 

「しかし、私たちはキーラ達のいた場所で戦ってたはずだが…」

 

「きっとマスターハンドがやったんだ、サプライズ、大好きだからな!」

 

 

理屈で考えるオリマーには人智を超えた力がわからない。それでもその力の元に集い、今も助けられた。キャプテン・ファルコンは気にしなかった。

 

 

「はあ、マスターハンドからいくら貰えるかな…?」

 

「オレさまを働かせたんだ、ふんだくってやろうぜ!!」

 

「そ、村長!? ワリオさんまで!? またそんなこと言ってー!!」

 

「相変わらずだなあ」

 

 

そろばんを叩き始めたむらびととワリオを早速しずえが非難する。ロックマンが気づいた。ようやく日常が帰ってきたのだと。そう感じたからか、既にメットを外していた。

 

 

「綺麗…」

 

「あの一つ一つが命なんて凄えよな」

 

「命の灯火、か」

 

「これでテトラやみんなも助かったよね!」

 

「例えスピリットが残っていても、キーラもダーズも倒したから自力で戻れるさ」

 

「ふん、似合わんことをした」

 

 

大量の魂が、七色の光を帯びて星の先へ向かっていく。トライフォースに集った彼らもこの戦いの使命を終えた。

 

 

「同感だ。これでようやく貴様と決着をつけられる!」

 

「やっぱりそれが目的だったか…」

 

「打算つきの脳筋かよ、」

 

「空中毒に言われたくないと思うぜ」

 

「ああん!?」

 

「ファイッ」

 

「ファイッじゃねえ! 煽るなソード、煽るなガンナ! 乗るなファルコ! そしてせめてもう少し休んでからにしろおお!!」

 

 

余計なことを言ったせいでファルコガンナだけではなく、ウルフにまで絡まれたブロウ。助けは来ない。

 

 

「これで仲良しこよしもハイ、お〜わりだ。次は念入りに八つ裂きにしてやるからな?」

 

『……………』

 

「やってみろ、なんならまとめて来てもいい」

 

 

超至近距離で煽るリドリーにサムスの態度は冷静だ。後ずさることもしなかったサムスは怨敵の存在をこの世界で程度なら軽く流せるくらいの胆力はついたようだ。

 

 

「ピカチュ!」

 

『ああ、もう大丈夫。だな』

 

「みんな、お疲れ様。君達もおいでよ」

 

「ゼニー…」

 

「グウウ…」

 

「フッシ!!」

 

「プ〜!」

 

「コウゥ」

 

『…人が作ったものはいい。』

 

「グアアウ!」

 

「ピチュ!!」

 

 

僅かながらもレッドがキズぐすりを持っていたので、ポケモンだけでも、とみんなを呼ぶ。

ゼニガメ、リザードンは不満げだが、フシギソウがそれを止めた。トレーナーのいたゲッコウガと痛いの嫌いなプリンは躊躇いなく来たが、人が嫌いなミュウツー、施されたくないガオガエン、ピチューは拒否した。サムスの様子を見ていたピカチュウ、ルカリオも遅れてやってくる。

 

 

『おわりー?』

 

「終わりだよー!」

 

「流石にしばらくオフにするっス…」

 

 

余裕があるのか、そういう性格ゆえか、まだまだ行けるような様子を見せるMr.ゲーム&ウォッチとヨッシーとは逆に疲労困憊な姿を隠さないリトル・マック。突っ込む様子すら見せなかった。

 

 

「ウホッ! でもみんな、無事でよかった!」

 

「まっ、それに尽きるよな」

 

「ウキャ、キャ!」

 

「どうしてオレがここまで働かなきゃアカンかったのだ…!」

 

「今更よ。ワニちゃんのいい運動になったんじゃないかしら」

 

 

一時は全滅一歩手前まで来ていたというのに、ここまで持ち直した。それを喜ぶドンキーコングとディディーコング 。同意するスネーク。真反対に愚痴るキングクルールだが、愚痴るのが流石に遅すぎる。ベヨネッタには軽く流されていた。

 

 

『…ここは、仲間がいた場所と似ている気がしマス…』

 

「オレは詳しく知らねーけど、きっと喜んでると思うぜ?」

 

『…ハイ……生きなければいけませんカラ。』

 

「よーし、暗くなっちゃったからロボット胴上げだ!」

「ソニックも一緒にねー!」

 

「OK! よしきた!」

 

『え、ちょっとマ…」

 

 

ロボットの弁明なんて聞かない三人は胴上げを始めた。いきなり浮かされたロボットは手をバタバタさせている。

 

 

「イッシッシッシッシ」

 

「待ってください! 落として腰でも打ったら…!」

 

 

笑うダックハントは止めない。止めるのは相手がロボットなのにも関わらず健康を気にするWii Fit トレーナーと単純にどうすればいいのかわからず慌ててたパックマンだった。

 

 

「綺麗な空だ。…ギムレーが消えた後の空もこうだった。」

 

「えっ?」

 

「偏った光も闇もなく、ただ綺麗な空… おまえはギムレーを倒した後の空は知っていても、直後の空は見ていないだろう?」

 

「そういうことに、なるね…」

 

「まさか、また見れるとはな…」

 

「クロム…」

 

「いつまでも、見ていたい、です…」

 

 

みんなから離れた場所で三人空を見る。ルフレが消えた時の悲しみを思い出し、ふと一筋、ルキナの涙が溢れる。大丈夫。大切な人の温もりは自分の手にある。

 

 

「新参者も、役に立ったでしょ?」

 

「おーい3号、演技忘れてるぞー」

 

「え、え、え、演技ではにゃい!!」

 

「…噛んでるぞ」

 

 

すっかり素に戻っていたインクリングをリヒターがからかった。シモンの指摘はこれまた素だ。

 

 

「ふふっ、でも実際頑張ってくれたよ。ありがとう。」

 

「かなりまずい状況でしたが…」

 

「なんとかなったね」

 

「きつい戦いだったがな」

 

 

それでもマルスは役に立ったと感じたので、インクリングの自信満々の言葉も否定せず、素直に返した。終盤に救出されたロイやカムイ、アイクは自分で頑張ったとは言えない。そのものさしで計るなら一番頑張ったのは…

 

 

「全部カービィのおかげになるか」

 

「他が逃げられたかと言われると… 微妙だな」

 

「おーおー! よくやったな、偉いぞー!!」

 

 

リュウの言葉を聞いて、ケンはまるで息子にするように雑に頭を撫でる。あまりに手加減なしに撫でるものだから、カービィはぴょんぴょんと逃げ出してシュルクの後ろに隠れた。

 

 

「あはは… カービィ、ありがとう。未来を変えてくれて。」

 

「…? あいがと…?」

 

「あ、り、が、と、う」

 

「ありがと… みんにゃ、ありがとう!」

 

「フッ…」

 

「そういえばおまえらいつの間に仲良くなったんだ?」

 

 

この場所だからこそ生まれた絆がある。

 

 

「うーん… よし! 聞いてルイージ! 私鍛え直すわ! 付き合ってよね!」

 

「ええ!? 突然どうしたの!?」

 

「ママー! 頑張ったよー!」

 

「ふふふ… お疲れ様でした」

 

「おとうさーん! ボクも頑張ったでしょ?」

 

「あったりまえだ! 偉いぞジュニア!」

 

 

この場所で深まった絆がある。

 

 

「あはははは…!」

 

「? どうして、笑っているの?」

 

 

聞いて来たピーチにマリオは満面の笑みで答えた。

 

 

「いや? ただ… みんなここにいるんだって!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ま〜た、おまえ助けられちまって、なっさけねーの』

 

『今回のことに関しては一方的に言われる筋合いはないぞ、まったく…』

 

『あーあ、でもこれで今期はこれ以上面白いものないよなー』

 

『そうでもないぞ』

 

『おおっ? 1、2、3… 前回のミュウツーやらベヨネッタやらと同じ感じか?』

 

『後十人は欲しいな。スマッシュブラザーズの闘志も上がるだろう。』

 

『ほおー? そりゃ今後も楽しみだな?』

 

 

支配人は心底嬉しそうに、新たなファイターを選出するため、他の世界を覗くのだった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

七章 まとめ


正真正銘のラストになります。
ソラの使い心地ですが、簡単そうで結構難しいというところです。空上だとコンボできないんだよおぉ…

あ、そうそう。
ここを閲覧した方はヴェントゥスのスピリットを10は集めてくださいね。ヴェンは末っ子可愛いマジ天使ソラよりは年上なのが最高テラとアクアに末っ子かわいがりされてる分年下に対してお兄ちゃんぶってるとか想像したら最高そんな小説ありませんかというか弁空もっと増えろ雨乞いみたいに踊るぞゴラァダクロではやく彼の行方知りたいというか一番爆弾抱えてるけどつまりようするに私が言いたいのはヴェンくん可愛いぃぃい!!


 

長い間の閲覧ありがとうございました。ここが最後になるのは賛否両論あると思いますが、まあ、どうせなら最後までお付き合いください。

 

 

「ああ… やっぱり僕たちの分もやるんだ…」

 

 

当然! 逃れられぬカルマだぞ!

 

 

「無視されるよりいいんじゃないでしょうか?」

 

 

というわけなので、まずは彼ら四人の紹介。ついでに本作におけるマスターハンドとクレイジーハンドの設定についてお話しします。

クレイジーハンドって一気に打つと予測変換にクレイジーハンドルだのクレイジーバンドだの出てくるうちのスマホどうなってるんですかね。

 

 

「……………」

 

「荒ぶってるわね」

 

 

運転がかあ!?

 

 

「はーい、まずはロイの紹介です♪」

 

 

アッハイ。

フェレ家の嫡男。若き獅子、エレブ大陸に予言されし炎の子… そして現在FEシリーズ主人公の中で唯一父親が生存しています。

 

 

「あのー… 最後の必要でした?」

 

「作者が忘れてなければ唯一ね」

 

「どうしてスペランカー並みに死んでしまうんですかー」

 

 

スペランカーとはちょっと違うけど…

FE主人公の父親の散りざまはこの辺りに大体わけられるでしょうか。

 

①物語の起点になる。

②主人公に後を託す。

③敵対して倒される。

 

スマブラ参戦ファイターだけ見てみても、マルスアイクカムイ(白夜父)ベレトが①、②にはマルス辺りも含まれ… ③はカムイ(暗夜透魔父)ルフレがそうです。主人公じゃないですが、ルキナ視点では①がそれですし、クロムの姉エメリナもほぼ①②の役割をこなしてます。(ちなみにクロム父は物語開始時点で既に死亡済み。いい親ではありませんでした。)

 

こうやって主人公が目指すもの、としての父親を死なすことで主人公の成長を促すことになるんですね。主人公とほぼ同性の父親が。

 

それに比べてロイは、FE主人公で一番有能と言われてますし、成長の余地がなく父エリウッドが病弱である以上わざわざ殺す理由がなかったのでしょう。ちなみにその代わりは父の親友ヘクトルが務めてくれます。

 

 

「さっきから一言多い…」

 

「スマブラの二次創作で、本編とはまるで違う性格になっているのは有名な話ですね。原作よりスマブラDXの方が発売が早かったからです。」

 

「最近じゃ逆にあまり見ないわよ」

 

 

有名になりましたから…

 

 

 

 

次はダークサムスですね。知らない人にはよくある勘違いですが、ダムスの中身… 所謂ダークゼロスーツサムス的なものはありません。中身自体はありますが、サムスと似たようなもの想像してると内蔵吐きますよ?

 

 

「スマッシュアピールでもありますが、放射性物質のフェイゾンがサムスのスーツの情報を読みとって形作ったものです。プライムシリーズでのボスを務めます」

 

「…………」

 

 

だから私は上みたいに喋れないのを想像してます。喋る創作ではいかにも女って感じの性格をしていたりすることも。これはサムスの逆の性格を想像した結果でしょう。

 

 

 

 

「次にパルテナです。お茶目な女神略してお茶女神… ピットの上司で光の女神の…」

 

 

真似しても鉤括弧でバレますからね?

自分を自分で解説しない。

 

 

「あら、バレてしまいましたか」

 

「バレるよ、普通…」

 

 

例に漏れずボケもツッコミもできますが、ボケの比率が高い… あれ? ゲームキャラの解説ですよねこれ。

 

 

「今更、です。」

 

 

アッハイ。

神様である以上、この世界の知識やマスターハンド達の事情に少し詳しいです。ファイターである以上、彼らほどではありませんが、他よりも親しくはあります。

 

 

「…………」

 

 

マスターハンドのことどう思っているのか、ですか。詳しくは後で。彼女自身割り切ってはいます。

 

 

 

 

 

ファイターラストです。ベヨネッタ。

ドS系でわかりづらいですが、彼女が本気で不機嫌な時や焦っている時は割と露骨で、少しお茶目な部分があります。小動物とかには優しかったり。

 

 

「2の冒頭のことかしら?」

 

 

はい。友人が死ぬ瀬戸際なら誰だってそうなるだろ、と言われればそこまでですが、ベヨネッタでもこういう場面があるんだとわかってもらえばってあばばばば!? 撃たないで!

 

 

「わかるかしら? 今がこういう場面よ」

 

 

さーせんでした!!

戦闘場面では、泥臭い少年漫画のようにならないよう気をつけてます。ただそれだと拮抗している場面が作りにくいというジレンマ。らしくないってところがあっても許してください。

 

 

 

 

 

そして、マスターハンドですね。この世界の設立者であり、支配人でもあります。ファイターの選別や大乱闘の日程、システムの調節からファイター達のフィギュア化システム出力調整などを一手に引き受けてます。忙しい。

 

 

「ブラックですね〜♪」

 

 

あんたのとこ程ではない。それに言ってしまえば趣味みたいなものですからね。

 

化身、神である故に人間の倫理観や善悪にあまり興味がありません。自分の作品であるこの世界をより面白くするためには人を騙したり無碍にしたりします。サムスの心境を慮らず、リドリーやダムスを参戦させたのもその気質のせいです。

しかし、自分の作品に手を出すものには全くの容赦がありません。悪だと決めつけますが、結果的に寝返ったりした相手や面白くするためならば、許す柔軟さも持っています。

 

 

「ようは自分本位ね」

 

 

まあ、そんな感じです。神様なんてそんなものでしょう。人にばかり都合のいい神様なんていないと思ってますので。

 

 

「あっ、後ろ…」

 

「そうですか、作者後でお話ししましょう」

 

 

あっ、しまった完結したら手加減する理由がない… 南無。

 

 

 

 

その反対で対となるクレイジーハンドですが、気狂いではあるものの、マスハンのような超越感はないのでむしろこちらの方が交流しやすいです。個人差はありますが。

 

 

「(遂に略した…)」

 

「…………」

 

 

まあ、その通りです。

その性格がアレなので、友人になれるかどうかはまた別のお話ですが。実は彼、この世界の運営には関わっておらず、楽しそうという理由でちょっかいを出しています。なのでつまらなくなったらこの世界でも壊しにかかるでしょう。その時がマスハンとの決裂の瞬間にはなりますが、当分それはないと思っています。

 

 

「亜空軍の一件で手を出してこなかったのはこの世界に対して責任がないからなのですね」

 

 

どこかで見てはいたでしょう。

 

 

 

 

これでDLCを除く全ファイターとマスハンクレハンのご紹介を終わります。ついでに本作の捏造設定を軽く紹介しましょう。

 

 

「キーラの正体、ダーズの正体。原作で語られていないから捏造まみれよ。」

 

 

タブーがダーズの僕であるのもそうですね。タブーがスピリットにいること、カービィがボディにいること。これで全部解決する! 天才か私は! …と考えた時には思いましたが、後から考えると強引だったかな… と。

 

 

「聞きたいんだけど、最初にタブーが現れたのはどうして?」

 

 

ファイター達にはヴィラン少ないでしょう? つまりそういうことです。

 

 

「…………」

 

 

私の初回プレイ時の最終決戦において選んだファイターはピット、マリオ、カービィです。自分贔屓、任天堂の主人公、スマブラの主人公という選抜基準です。ピットは少しわかりにくかったですかね。

 

 

それと俗に言う光エンド、闇エンドですが… シュルクのビジョンで片付けること考えもありましたが、どちらか一方やるならもう片方もやらなきゃですし、二回も繰り返すとくどいし長いし。という理由で小説の中ではやってません。

 

 

「他… 語ることはないかな」

 

 

あらかた語りきったと思います… あっ、ボディのカービィと戦った時、ダッシュ攻撃が違うの覚えてますか? あれはX時のカービィのデータを使った結果です。カービィも一時フィギュア化して偽物出てましたから。

 

 

「あったじゃない、忘れん坊ね」

 

 

あはは…

でもこれで本当に終了ですね。

 

 

「少し寂しいですが… これからも私たちは画面の中にいます。DLCが終わったからってスマブラ終了ではありませんからね!」

 

「……………!」

 

「お疲れ様でした! 長い間の応援ありがとうございました!」

 

「私たちの原作も遊んでちょうだいね」

 

 

全ての読者の皆様、本当にありがとうございます!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あっ、でも君たちもっと出番欲しいだろうし、私もDLC組のことかきたいので、この世界はもう一波乱おきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………えっ?」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

続編 予告

 

彼らはスマッシュブラザーズ。何度も開催されていたこのイベント。今までのファイター全員と今まで以上の追加メンバーを増やした今回は究極で特別なものとなっていた。

 

 

 

─スマッシュブラザーズがキーラとダーズを滅ぼして一ヶ月。マスターハンドによってその大戦の爪痕は大半が消えていた。

 

 

 

「種類… ですか?」

 

「うん、軍とか町とかでも言い換えれるかな」

 

 

「どせいさんの村… この世界にあったなんてね」

 

 

「わかりました。その方々はどちらに?」

 

「ここじゃない、特別な場所さ。少し不思議な場所に僕が呼ばれているのはクリスも聞いたことがあるだろう?」

 

 

「釣りでもしたら良さそうな池だな」

 

 

「ピット、大事なものを忘れてます」

 

「えっ? なんですか、しっかり確認したのに…」

 

「ユーモアです♪ これがなければあなたはただの鶏みたいなものですから」

 

「いや、あの、パルテナ様?」

 

 

 

─大乱闘の賑わいを取り戻すため、呼ばれたファイター達。新たな仲間とともにぶっ飛ばし、ぶっ飛ばされの大乱闘は盛んに行われていた。

 

 

 

その戦いの本当の開戦を知らせるかのように、空中に現れた虹色に輝くボール。

 

 

 

─その賑わいがようやく落ち着き、スマッシュブラザーズはようやくまとまった休暇を取れる。

 

 

 

また、巻き込まれた。

 

 

「見つけた! なに寝てるんだカービィ! 帰ったらグルメレースで勝負だと言っただろうが!!」

 

 

「ガンナあぁ!! 人が釣りしてる池に入り込むんじゃねえ魚が逃げてがらんどうになってんだよ!」

 

「意気地なしだな」

 

「お・ま・え・が、脅かしたんだろうが!!」

 

 

「ジョーカージョーカー、ちょっといい?」

 

「雨宮蓮、だからな?」

 

 

 

─しかし、次なる戦いの火種は既に忍び寄っていた。

 

 

 

白夜王子タクミは戦慄する。目の前にいるのは本当に自分の兄なのかと。

 

 

自分がしたことに後悔はない。どうしても大切な人を助けたかった。だから消えるかもとわかっていても前に進んだ。怖くはなかったのだ。助けるという目的があったから。しかし、その目的を達成したから。今は怖い。自分がどうなっているのかわからない。この場所は楽しい夢に過ぎないのではないかと。

 

 

会える訳がない。2度と話すこともできない。償う方法すら知らない。俺の存在ごと忘れてもらった方がいい。

 

 

誰もいない。自分しかいない。確実に誰かを感じるのに。

 

 

 

─散り散りにされたスマッシュブラザーズは未知の軍勢と戦う。

─その結末とは?

 

 

 

「(まさか… どうして…!)」

 

 

 

 

 

─大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle

 

─2021年11月6日 21:00 ハーメルンにて公開予定

 

 

どんな世界がまっているのだろうか

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。