比企谷君が私のお兄ちゃん? (ゼロ少佐)
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1話

学校生活…それは、子供が大人になっていく上で必要な知識を身につけ、周りの人と上手くやっていく為に人に合わせる力を育てていくための場である。

 

だが、実際は義務教育だからと甘えて、自分を高める努力もせず、人の足を引っ張ることしかない烏合の衆である。この私も、中学生活は醜い嫉妬や妬みなどから、色々酷いことをされていた…だがそれももう終わりだ。義務教育を終え、高校に入学。勉強をし、自分を高身へ目指す為の場所である。そしてこの学校にはあの比企谷君も居るのである……

 

そう考えただけで自然と頬が緩んでしまう

 

入学式では新入生代表挨拶をし、先生方からも期待をされているこの私、雪ノ下雪乃 高校一年生

 

入試も1位で合格し、

先生方からの信頼も厚い筈なのだが……

 

平塚「聞いているのか君たち!少しは場所を弁えてから行動しなさい!」

 

生徒指導の先生に怒られていた

 

八幡「すみません、ほら雪乃も頭下げろ」

 

雪乃「別に私は…悪いことだなんて…」

 

八幡「ゆ き の?」

 

ニッコリとしながら少し怒ったような顔でこちらを見ているのは比企谷八幡 高校二年生

 

1つ上の学年の先輩だ

 

雪乃「す、すみませんでした」

 

比企谷君を困らせたくなかったし…怒らせたくなかったので、頭を思いっきり下げ謝罪した

 

入学して約1週間…中々比企谷君を見つけることが出来ないまま数日がすぎ、やっと比企谷君を見つける事ができ、思い上がってしまい 後ろから抱きついてしまったのだが、

 

その瞬間をたまたまこの平塚先生という生徒指導の先生に見つかってしまったわけだ

 

平塚「はぁ…入学して1週間もしないうちからやらかしてくれるだなんてな…さすが陽乃の妹だな」

 

雪ノ下陽乃…私の姉で今は大学一年生

天真爛漫で頭も運動神経もいい完璧な人だ…外面だけは

 

本当はとても怖くてそして優しい人…自分の利益になる人やお気に入りの人だけは

 

平塚「それで君達はどういう関係なんだ?

比企谷が陽乃と面識があるのは知っていたがまさか妹の方まで手を出しているのか?」

 

八幡「手を出すって……妹みたいなものです、ついでに陽乃さんは困った姉みたいなものなので勘違いしないで下さい」

 

妹か…そう思われているのは知っているのだけれど、1人の女子として見られてないって言われるようで少し辛いわね

 

平塚「比企谷家と雪ノ下家は何か繋がりがあるのか?」

 

八幡「俺の父親と雪ノ下の父親が同級生で学生時代は仲が良かったみたいですよ」

 

平塚「そうか…それで」

 

 

でも、私達の父親が再会したのは偶然だ

 

 

 

本当にたまたま1人で遊んでいた比企谷君(当時10歳)を姉さんがいつもの調子で話しかけたがあっさり躱され、興味を持った姉さんが比企谷君に構っていると、たまたま妹の事で意気投合してしまい、そこから仲良くなったと聞いているわ…

 

そして比企谷君が雪ノ下家に遊びに来るようになり、その時にたまたま比企谷君のお父さんが迎えにきたのとお父さんが仕事から帰ってくる時間が重なってしまい、運命の再会という訳…

 

聞いてて頭を抱えそうだわ…あの頃からシスコンを拗らせていただなんて…

 

平塚「まぁ、君達が仲が良いのは問題ないのだが場所は弁えてくれ、それに血の繋がった兄妹じゃないから周りの目だってあるだろ」

 

私も比企谷君と周りの目なんて気にする性格では無い。あるのは自分とその他大勢…そして1部の大切な人だけ

それでいいと思っている

 

八幡「分かりました。以後気をつけます…」

 

平塚「……さっきから思っていたのだが雪ノ下の前では素直なんだな いつもはあんなに捻くれた事ばかり言っているのに」

 

八幡「…べ、別にそんな事ないですよ…俺はいつも真っ直ぐで」

 

平塚「ほぉ…」

 

平塚「なら、先週に君が書いた作文をここで読んでもいいか?」

 

先生はニヤッと悪い笑みを浮かべていた

 

八幡「すみませんでした!!それだけは勘弁してください!!」

 

頭を垂直に下げ、みっともない筈なのに清々しく思えるほどの謝罪…

一体何か書いたのかしら?

 

平塚「はぁ…普段からそういう風に生きれば友達もできるんじゃないのか?」

 

八幡「先生…俺だって友達を選ぶ権利くらいあると思うんですよ、別に作れないわけではなく、作らないだけです」

 

平塚「はぁ……君はどうにも反省してないようだな」ポキポキ

 

指をポキポキ鳴らし拳を握り比企谷君の頬を目掛けて拳を繰り出した

その拳は比企谷君の頬をかすめる程度だが

十分すぎるほどの威力があった

 

八幡「す、すみません…」

 

まぁ、その後比企谷君が先生に結婚の話題を振り見事腹に強烈な一撃を貰ったのは言うまでもないだろう

 

 

 

 

 

八幡「おい、怒られたそばからどうしてお前はくっついて来れるんだよ」

 

私たちは生徒指導室を後にし

下校をしていた

 

雪乃「学校の敷地ではないのだから何をしても問題は無いはずよ、それにあの教師自分が結婚出来ないからって、比企谷君に当たってるだけだし」

 

その比企谷君も少し結婚の事でからかい過ぎなのだけれど

 

八幡「ったくいつからお前はブラコンになったんだ…家ではいいが外では周りの目が痛すぎるぞこれ」

 

傍から見れば目の腐った男に美少女が擦り寄っているようにしか見えないだろう

 

雪乃「兄と妹が仲が良い事の何がいけないのかしら?」

 

八幡「いや、いけなくはないな…うん、むしろいいと思う」

 

その日は結局腕を組んだまま駅まで歩いて帰っていった



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2話

平塚先生に捕まった日以来特にこれと言ったことも無く時は過ぎGWになってしまった

 

本当はGW中に比企谷君とお出掛けでもしようと思い、誘おうとは思ったのだが…素直になれなくて結局誘うことが出来なかった。

 

雪乃「あの日…どうやって比企谷君に甘えれたのかしら…」

 

あの日というのは比企谷君に抱きついてしまい怒られた日だ。あの日は数ヶ月振りに会うことが出来、舞い上がってしまった…あの時の私は変なテンションで、腕を組んだりと色々したが、あれからというもの恥ずかしくてろくなコミュニケーションも取れなくなってしまった。

 

このままゴロゴロしてても埒が明かないわね…

 

そう思い、私は携帯を手に取り

小町さんに連絡をした

 

「はいはーい、小町ですよ〜」

 

数コールすると、相手が電話に出たのか

コール音がやみ、小町さんの声が聞こえてきた

 

雪乃「小町さん?今日カマクラに会いに行ってもいいかしら?久しぶりにモフりたいのだけれど」

 

大抵比企谷君の家にお邪魔させてもらう時はカマクラを言い訳にして遊びに行っている

我ながら情けない…素直に比企谷君に会いたいからと言えず逃げてしまっている

 

小町「はいはーい、お兄ちゃんをご所望ですね」

 

小町さんには私の本当の気持ちがバレている

だからこうやって時々からかってくるのだけれど…全く困ったものよね

 

少しオシャレをし都築に車を出して貰い比企谷君の家に向かった

 

 

 

雪乃「お邪魔します」

 

比企谷君の家に着きチャイムを鳴らすと小町さんが出てきた

 

小町「ようこそ雪乃さん!さぁさぁカマクラもお兄ちゃんもお兄ちゃんの部屋で寝ているから!」

 

家に入るとそのまま階段を上がらされ比企谷君の部屋の目の前まで来てしまった

 

雪乃「比企谷君…寝ているのよね…」

 

なんやかんやで彼が寝ている時に来るのは初めてだ

どんな寝顔をしているのか…

 

雪乃「お、お邪魔しまーす」

 

恐る恐るドアを開け中に入ると

 

カマクラ「なーご」

 

比企谷君のベッドの隅っこにカマクラが座っていた

 

雪乃「久しぶりねカマクラ」

 

比企谷君は布団にくるまり

スースーと寝息を立てていた

 

私はベッドの端に座りカマクラを撫でていた

 

雪乃「相変わらず殺風景な部屋ね…」

 

教科書や服はちゃんと整理整頓され、床にはゴミひとつなく、特にこれといって何も無い部屋だ

強いて言うなら本棚に大量の本が置いてあるくらいかしら

 

カマクラ「ふんす」

比企谷君の部屋を見渡しながらずっとカマクラを撫でていると嫌だったのか その場をたち比企谷君のお腹の上に乗ってしまった

 

八幡「うっ……」

 

一瞬声を出したが

すぐ寝息をたて出して

 

 

雪乃「慣れてるのかしら?…普通なら起きると思うのだけれど」

 

雪乃「比企谷君、起きなさい…」ペシペシ

 

カマクラが逃げてしまって暇になったので比企谷君を起こすことにしたのだけれど…寝顔って少し新鮮ね…目を瞑ってるのもあっていつもとは違う一面が見れて

 

八幡「んー まだ眠い…」

 

ゴロンと寝返りを打ち私の方へ体を向けた

カマクラがお腹の上に気づいて無いのだろうか…

 

 

カマクラ「んにゃ!?」

 

その時ゴロンとカマクラがベッドの上に落ち

またベッドの隅に戻っていった

 

八幡「んぁ、小町か?」

 

目をゴシゴシと拭き寝ぼけた表情でこちらを見ていた

 

まだ視覚はハッキリしておらず私のことを認知できていないようだ

 

雪乃「おはよう、比企谷君」

 

八幡「……は?」

 

目をぱちくり開け驚いた表情をしていた

 

八幡「な、な、な、な」

 

八幡「なんでお前がここに居るんだ!?」

 

目を覚ました比企谷君が口をぱくぱくさせながら言葉を発した

 

雪乃「別に私がどこで何をしようが比企谷君には関係ないと思うのだけれど」

 

八幡「いや、そうだけど…ここ俺の部屋だから 何勝手に入ってきてるんだ」

 

雪乃「ちゃんと小町さんに通してもらったし 私はカマクラに会いに来ただけよ たまたまカマクラがあなたの部屋に居たから私もここに居るの」

 

なんで素直に比企谷君に会いたかったって言えないんだろ…

 

八幡「分かった、分かったからカマクラ連れて早く出てけ」

 

そんな邪険にしなくてもいいと思うのだけれど…

 

雪乃「分かったわ、下で待ってるから」

 

八幡「え、何?二度寝したらダメなの?」

 

雪乃「ダメに決まってるでしょ… 今日は暑いから外に出るつもりは無いのだけれど カマクラとずっと遊んでても暇でしょ?」

八幡「分かったよ、相手してやるから とりあえず部屋から出ろ着替えられねぇから」

 

別に比企谷君の着替えなら見てもいいのだけれど…なんて言えるわけないわね

 

雪乃「分かったわ…」

 

そういいカマクラを抱っこしリビングに向かった

 

 

 

 

しばらくすると普段着に着替えた比企谷君がリビングにやって来た

 

八幡「ふぁ…眠い」

 

雪乃「一体何時に寝たの?あまり夜遅くまで起きるのは健康に良くないわよ」

 

八幡「録り溜めしてたアニメ消化してたんだよ…こんな時しか纏めて見れないからな」

 

アニメね…あまり見た事は無いのだけれど面白いのかしら?

 

八幡「雪乃、昼飯は未だだよな?」

 

雪乃「えぇ、まだ食べてないのだけれど」

 

八幡「んじゃ、纏めて何か作るか…小町の分も含めて3人分作るからお前も手伝え」

 

そう言い彼はキッチンの方へ向かっていった

 

そういえば彼…一応頭もいいし料理や家事もできたわね…流石専業主夫希望ね

 

雪乃「この前平塚先生が言ってたことなのだけれど、私がいる時の比企谷君は素直ってどういう事なのかしら?」

 

八幡「……別に意味なんてねぇよ」

 

八幡「(お前に真っ直ぐに育って欲しいからとか言えるわけねぇだろ…親でもねぇのに)」

 

雪乃「そう…」

 

少しの間沈黙が訪れたが それは2人の料理がスタートしてすぐに去っていった

 

八幡「たまごサンド作るから レタス切って後からしマヨネーズ作ってくれ 」

 

そう言い彼は鍋に水を貼り ゆで卵を作る準備をしていた

 

 

 

2人で一緒にご飯を作りながらたまに会話をしていると。あっという間に出来てしまった。時間はそれなりに経ってはいるのだけれど、比企谷君と話すのは楽しいから体感的にはあっという間だった。

 

 

 

それ程に私は彼の事が…好きなの

お願い気付いて…比企谷君…



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3話

むんむんとした暑さが蔓延る今日

私は珍しく外に出ていた

 

前々から気になっていた小説家の人の新作が出たので、内心興奮しながら本屋に向かっていた。

どんな内容なのだろうか

どのように、読者を惹き付けるのか

まだ本を買ってすらないのにドキドキが止まらない

 

そんな興奮の中私は駅前の本屋にやってきた

ここは別に家から近い訳でも無いのだが、レパートリーから、新刊の発売など、とてもいい店なのだ

 

新刊コーナーで気になっていた小説を手に取り、レジに持っていき、そして購入した。

 

早く家に帰って読もう

そう張り切っていたのだが

 

外に見えたとある二人組みの姿を見据えてしまい、私はそちらに気が傾いてしまった

 

 

 

「ごめーん、お待たせ 待った?」

 

そこには、オシャレをしいつもより少し嬉しそうな顔をしながら男の子の方へ向かっていく姉の姿があった

 

「待ちましたよ…こんな暑い中 何十分も」

 

相手の男性は面倒くさそうな声を出しながらも いつもとは違う姉の姿に 見惚れていた

 

そう、その男性は 私の兄みたいな存在で、初恋の相手……比企谷八幡がそこに居た

 

陽乃「ごめんってばー それに、八幡に可愛い姿見て欲しくて頑張っちゃったんだから〜」

 

そう言いながら姉さんは比企谷君の腕に抱きついた

 

え?八幡?前まで比企谷君って呼んでたわよね?

 

八幡「そ、そうだったんですね/// 可愛いですよ陽乃さん」

 

照れたような顔をしながら 姉さんの事を褒める比企谷君……

 

そこから2人はブラブラとウィンドウショッピングをし、喫茶店に入り 会話を楽しみ…そして

 

 

 

陽乃「んーっ!八幡今日はありがとね」

 

公園のベンチに座り、体を伸ばし

姉さんはいつもの調子で比企谷君にお礼を言っていた

 

八幡「こちらこそ…まぁ、楽しかったですよ 本当は暑くて外に出たくなかったですけど…」

 

彼は顔を少し赤くしながら

捻デレていた

 

そんなふたりが見つめ合い…そして

 

陽乃「八幡……」

 

八幡「陽乃……」

 

夕日に彩られた公園のベンチに座る美少女と平凡な男子

 

そのふたつの影が1つに重なろうとしていた

 

 

 

「ダメっ!!!!!」

 

私がその2人の間に割ってはいろうとすると

激しい光に襲われ目の前が真っ白になった

 

雪乃「はぁ、はぁ… あれここは?」

 

目を開けると知っている天井と彼の姿があった

 

八幡「おぉ、起きたか…魘されてたけど 嫌な夢でも見たのか?」

 

え?比企谷君?どうして…さっきまで姉さんと……もしかしてさっきのは夢?

 

ここは比企谷君の部屋のベッドで…そして姉さんは居ない……完全に夢オチね。

 

でも本当に夢でよかった…

 

雪乃「ごめんなさい、あまり寝れてなくて」

 

八幡「一応陽乃さんに連絡したぞ 後で迎えに来てくれるらしいから 特にないと思うが準備だけはしとけよ」

 

姉さん……

 

さっきの夢の事を思い出し頭がズキッとした

比企谷君と姉さんは仲がいいし

姉さんも多分……比企谷君の事が好きなんだと思う

 

そういう素振りは見せたことが無いのだけれど、比企谷君以外で姉さんとここまで長く一緒に居られた人は居ないだろう。姉さんも比企谷君には気を許してるみたいだし…比企谷君の方は分からないわね…

 

中学時代 いろんな人から裏切られ

そして、少しずつ壊れていった

 

優しくされるだけで勘違いをし

酷い時にはクラス中で噂されたりと

辛い目にあっていたのだから

 

 

 

あの時は姉さんも私もどうして私達には好意を寄せてくれないのか本当に分からなかった

 

 

 

だけど今ならわかる

私達のことは家族同然のように扱ってくれていたからだ。比企谷君にはもう信頼できるのは家族しかいなかった。その比企谷君にとっての家族の輪の中に私たちが入り込んでいた…逆に言うと家族としてしか扱われていなかった。

 

 

皮肉な話ね家族同然に扱われるほど距離が近くなっているのに…私達のことを異性としてちゃんと認識してくれてないだなんて…

 

 

 

暫くするとチャイムがなった

多分姉さんが迎えに来たのだろうか

 

比企谷君が玄関の方に早足で向かっていき、

ドアを開けるとそこには

 

陽乃「ひゃっはろー!久しぶり!」ダキッ

 

八幡「うぉっ!陽乃さん!」

 

姉さんが比企谷君の胸に飛びつき

抱きついていた

 

比較的早くに2人は離れリビングに上がってきた

 

八幡「すごい荷物っすね、今までどこかに行ってたんですか?」

 

陽乃「あーこれね、これはーー」

 

もしかして…

 

陽乃「私と雪乃ちゃんの着替えでしたー!」

 

やっぱり、あの大きな荷物の時点で

怪しいとは思ったのだけれど

やっぱりそうだったのね…

 

雪乃「別に私は泊まるだなんて一言も言ってないのだけれど」

 

陽乃「んー?なら帰る?帰るなら帰ってもいいよ〜その変わり比企谷君は貰うけどね♪」

 

雪乃「……」

 

そう言って彼の腕に巻き付くかの如く

抱きついていった

 

八幡「は、陽乃さん当たってます…」

 

比企谷君が腕に力を入れ引き剥がそうとするが両腕を使って抱きついているので、腕が離れることは無かった

 

陽乃「比企谷君、当ててるのよ」

 

雪乃「姉さん!離れなさい!」

 

その姿を見て…私は声を荒げてしまった

 

陽乃「ビクッ…ど、どうしたの?」

 

八幡「おい、何怒ってるんだよ こんなのいつものことだろ?」

 

雪乃「…っ」ダッ

 

そのまま私はリビングを飛び出し、そのまま比企谷君の部屋に引きこもった

 

一体私は何がしたいのだろうか…何であんな事をしてしまったのか…

 

そんな疑念が私を襲ってくる

私は布団の中に包まり

そして私は夢の中に逃げ込んだ



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4話

4話のみ、八幡視点で話が動きます


「はぁ……」

 

雪乃が部屋を飛び出して少し時間が経った

流石の陽乃さんも、いきなりの事で驚いたような表情をしてた。いつもとあまり変わらないような絡み……いや、会うのが久しぶりで少しテンションが上がっていたのかもしれない…だけれど気にするほどではなかった

 

陽乃「最近雪乃ちゃんと何かあったの?」

 

ボーッと紅茶を注いでいると、陽乃さんがこちらにやって来て、質問をしてきた

 

何かあったか?無いこともないが 特にこれと言って理由になるものは無かった

 

八幡「平塚先生に絡まれた以外は特に…」

 

陽乃「そっか……」

 

陽乃さん方を見ると少し心配そうな顔をしていた

この人も大概シスコンで、妹の事を溺愛してるからな

 

紅茶を注ぎ陽乃さんの目の前に置き

ソファに腰かけた

 

八幡「実は昼前に雪乃が俺の部屋で寝ていたんですけど その時に魘されてたいたんですよね…大きな声で「ダメっ!」と叫び目を覚ましましたが」

 

あの拒絶の言葉がどういう意味なのか分からないし、聞こうとはしなかった。夢の内容を聞くなんて無粋な事をしようと思わなかったから

 

陽乃「へぇー雪乃ちゃんが魘されてたんだ……実は私もね、最近変な夢見るんだ…雪乃ちゃんととある男の子の話なんだけど」

 

そう始め彼女はとある物語を話し始めた

 

 

 

いつもと変わらない風景、つまらない日常

私を楽しませてくれるものなんて殆ど存在しない。そんな退屈な世界…

 

そんな私にも好きな事はある

可愛い妹や弟みたいな子と話したり出かけたり

ワイワイするのは楽しいと思う

 

だから、そんな2人が私抜きで二人きりでいる姿を見ると 胸がズキッとする…

 

雪乃「比企谷君、今度はあっちに行きましょ!」

 

八幡「おい、雪乃引っ張るなよ」

 

彼は困った顔をしながらも楽しそうな顔をしながら歩き、2人は手を繋ぎながらお出掛けしていた

 

私の知らない2人の表情…私の知らない優しい声

そんな2人の顔を見ていると…私はどうしてその中に自分が居ないのかと考えてしまう

 

 

その後2人はブラブラと歩きながらウィンドウショッピングを楽しんでいた

 

そして……

 

八幡「はぁー…疲れた」

 

とある公園のベンチに座り、コーヒーを口に含んだ

 

雪乃「ふふっ、こんな美少女とデートをしているのに、疲れただなんて 全く贅沢者ね」

 

楽しそうな表情をしながら彼の隣に座り

比企谷君の反応を見て面白がっていた

 

彼は彼で苦笑を浮かべながらも

楽しそうに笑っていた

 

そんな中私は…

 

私の知らない表情に嫉妬し…私がその円の中に居ない事を嘆き…そして悲しんだ

 

私はあの二人に…嫉妬心を抱いていた。

知らない2人の表情を見る度に私の嫉妬心は増加していく一方だった。

 

それ程に私は2人のことが好きだった

今まで私には 価値のあるものなんて無かったのに

2人だけは、違ったのだ

 

そんな大好きな二人の幸福を心から祝福本当してあげられずに…私は醜く嫉妬心を蔓延らせていた。

 

私は…そんな私自身の事が嫌いだ…

 

 

 

 

陽乃「こんな話なんだけどね〜」

 

と話が終わるといつも通りの陽乃さんに戻っていた。さっきの寂しそうな表情は何処へ行ったのやら

 

いや…まだ残ってるか、

 

少し眉がピクっと動いたり

瞬きが多くなったりしている

 

多分今のは陽乃さんの本性…本物の気持ちなのかもしれない

 

八幡「陽乃さん、俺は雪乃からも陽乃さんからも逃げたり、どちらかを区別しようなんてしませんよ

2人とも俺にとっては、大切な家族同然ですから」

 

そう言うと彼女はぽつりぽつりと涙を流していた

陽乃さんは高校を卒業し、大学生になった

 

そのせいで、俺とも雪乃とも時間が合わなくなり

仕舞いには全く会うことが出来なくなってしまった

 

それに加え 雪乃は高校に入学し、俺と過ごす時間も増えた…陽乃さんだけ除け者になり、俺たち2人で行動する時間が増えてしまったのは事実だった

 

陽乃「君が誰かを好きになったりするまででいいから…それまで私達のことをよろしくね」

 

彼女は涙を止め、笑顔で微笑んだ

その表情はとても綺麗で

不覚にもときめいてしまった



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5話

長そうでそこまで長くないGWも終わってしまい今日から学校だ……

 

結局比企谷君と二人きりになる事も出来なかった

あの後2人に謝り、普通に振る舞うことは出来たのだけれど、それだけで終わってしまった

 

あの後私と姉さんは比企谷君の家に1泊し、そして次の日の昼頃に帰っていった。それから比企谷君と連絡も取ることもなく今に至るわけだ

 

八幡「あ…おはよ」

 

学校に辿り着くと駐輪場の方から歩いてきた比企谷君とばったり会った

 

雪乃「おはよう、比企谷君」

 

互いに少し意識してしまっているのか少し動きがぎこちなくなっていた。

 

二人並んで下駄箱の方に歩いて行ったが、終始無言で、ただただ1人と1人がたまたま同じ道を歩くような絵面になってしまった。だけど私は気まづさなんてものは無かった。寧ろどこか落ち着くような…そんな気がしていた

 

八幡「んじゃ、また放課後にな」

 

雪乃「えぇ」

 

 

 

比企谷君と別れ、普段とおりに学校生活をすごし、終礼の時間になった

 

ピンポンパンポーン

 

「えー…1年J組の雪ノ下さん、2年F組の比企谷君、終礼が終わったら職員室に来てください」

 

またあの先生なのね…

姉さんは面白い人と言っていたのだけれど

平塚先生の事なんて結婚出来なくて私たちに愚痴をこぼす面倒な人位しか知らないのだけれど…

 

ため息をつきながら私は終礼を過ごした

 

放課後になり職員室に行くと、先に来ていた比企谷君と一緒に別棟まで連れていかれた

 

雪乃「あの…平塚先生ここは?」

 

平塚「まぁ、待てとりあえず中に入るぞ」

 

先生に言葉を遮られ、中に入った

そして後ろに纏めて置かれている椅子を適当にとり、適当な場所に座った

 

八幡「奉仕部……この部室まだ残ってたんですね」

 

奉仕部?聞いた事ないわね…部活動の一覧にも載っていなかったし…一体どういう部活なのかしら…

比企谷君は知っているようなのだけれど

 

平塚「比企谷、知っていたのか」

 

八幡「はい、陽乃さんが作るだけ作って、生徒会に入ったせいで休部状態になってしまった部活だと聞いてます」

 

平塚「うぐっ……はるの、陽乃か……なぁ比企谷、本当に陽乃と付き合ってないんだよな?」

 

陽乃という単語を聞いた先生は比企谷君に涙目で近づいていった

 

八幡「何度も言ってますけど、陽乃さんとはそういう関係では無いです…というか何でそんなに疑うんですか?」

 

平塚先生が目をうるうるとさせながら

携帯の画面を見せてきた

 

平塚「だ、だって…陽乃からこんな写真が送られてくるから…」

 

その写真には、姉さんが比企谷君に抱きついている姿があった。比企谷君は比企谷君で満更でも無さそうな顔をし、頬を赤く染めていた。

 

八幡「ぁ…えと…それはですね//」

 

雪乃「先生、ちょっと見せてください」

 

少し違和感を覚え先生か携帯を借り

写真を見た

 

雪乃「……やっぱり、この写真…多分数年前のものですよ…姉さんも比企谷君も少し雰囲気が柔らかいですし」

 

内心最近のもので無くて安心してしまった自分が居ることに私は気がついてしまった

 

平塚「そうなのか?」

 

八幡「これ、総武高の入学祝いをした時の写真です」

 

2年前…多分あの頃の比企谷君は姉さんの事を異性として好きになっていた時期だと思う……今思えばあの頃が1番姉さんと比企谷君の仲が良かった時期だ

 

でも比企谷君が高校に入学して半年位経った頃から姉さんは何故か彼から少しずつ離れて行った。当人は「理系の国立大学目指してるから〜一応ね」と誤魔化していたが、本心では無さそうだった。

 

そして元々姉さんが居たはずのポジションは気がついた時には私のモノになっていたのだが、彼は私を妹としか見なくなってしまっていた

姉さんに何を言われたのか…それとも彼が何を思ったのかは分からないけれど、比企谷君はある程度私達姉妹に線引きをするようになってしまった

 

最初は姉さんが離れて行った理由は模試や勉強に忙しいと思っていたのだけれど、多分姉さんは私の気持ちに気が付いて離れて行ったと思う……まるで比企谷君は雪乃ちゃんのものだからと言うように

 

予想は幾らでもできるけど、真実は謎のままだ

姉さんは姉さんで 聞いても誤魔化すし

比企谷君に聞くのは酷な気がして

聞けていない…

 

姉さんと比企谷君の空白の半年間…

この2人はなにを思い、何を結論付けたのか

私には分からないままだった

 

 

八幡「雪乃、どうしたんだ?写真みながら難しい顔して」

 

雪乃「少し昔の事を懐かしんでいただけよ」

 

姉さん……姉さんの本当の気持ちは何処にあるの?

 

平塚「ゴホン…話がそれてしまったな ここに連れてきた理由はだなーー」

 

八幡「奉仕部に入れか…雪乃お前はどうする」

 

雪乃「比企谷君も居ることだし、私は構わないわ」

 

姉さんが残したもの

それを再建するのもいいかもしれない

それで何が見えるのかは分からないけど

掌で踊らされてあげるわ

 

八幡「んじゃ、明日から活動するか」

 

平塚「あの……」

 

雪乃「活動するのはいいのだけれど、結局何をする部活なのかしら?」

 

平塚「だから……」

 

八幡「確か…困ってる人を助けるとかだったな 飢えた人に魚を与えるのではなく、魚の捕り方を教えるみたいな感じだ」

 

姉さんらしいわね

あくまで自力で何とかさせる

他人任せは許さない

そういう厳しい所は姉さんらしい

 

雪乃「そう…分かったわ」

 

平塚「……」

 

八幡「んじゃ今日は解散するか」

 

雪乃「そうね、携帯お返しします先生」

 

ずっと握ってしまっていた携帯を先生に返し、部屋を出ていこうとした

 

平塚「あぁ…気を付けて帰れよ」

 

雪乃「はい」

 

そうして私達は平塚先生をその場に放置し帰宅したのであった

 

 

 

 

 

平塚「しずかお家かえりゅーー!!!!!」

 

その日泣きながら車に乗っていく 人を見たとか見なかったとか



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6話

好きな人、気になる人にクッキーを送りたい。それは女子ならば1度は経験しそうな悩みであると私は思う

こんな私でも比企谷君になにかプレゼントをしたいという気持ちに駆られた事はあるし、本人が喜んでくれるとこちらも凄く嬉しいから

 

……だけれどこれはプレゼントどうこう言っている以前の問題なのだけれど……

 

 

 

 

奉仕部の活動を始めて何日か経った頃に平塚先生の紹介という事で初の依頼者が奉仕部にやってきた。

 

比企谷君は面倒だと言っていたけれど、クッキーを渡したい人が居て、作るのを手伝って欲しいという依頼だったので、手伝ってあげたいと少し思ってしまった……多分それが駄目たったのだろう。

 

優しさは時として自分に降りかかるとは言うけれど、これはさすがにこれは予想出来なかった

 

八幡「はぁ…どうしたらこんな木炭を生成出来るんだよ…」

 

比企谷君がため息まじりに 依頼者の由比ヶ浜結衣さんに声をかけた

 

結衣「うぅ…こんなはずじゃ無かったのに……」

 

 

頭を抱えながら、そこで呻いてる人は由比ヶ浜結衣さん、比企谷君と同じクラスの人で、今回の依頼者である

 

雪乃「その、私が1度手本を見せるからそれ通りに作ってください」

 

1度受けると言ってしまった以上私にも責任があるので、由比ヶ浜さんにも分かるように、ゆっくりと丁寧にクッキーを作っていった筈なのだが…

 

結衣「また真っ黒だー!!」

 

私が焼いた分は綺麗に仕上がったのに

由比ヶ浜さんが焼いたクッキーは真っ黒で

まるで炭のようになっていた

 

さすがの私もこめかみを抑え困り果てていると比企谷君が私の所に歩いてきた

 

八幡「雪乃、俺と二人がかりで一つ一つの作業を確認しながらやるぞ」

 

雪乃「そうね、その方が早いわ……」

 

まず由比ヶ浜さんに自主的に作らせるのがダメだったのね…

 

結衣「比企谷君と雪ノ下さんって…その、付き合ってるの?」

 

最近こういう質問多いわね…同級生からは 2年の人とどういう関係なのか?って聞かれたし、この前の平塚先生と言い…

 

八幡「ちげぇよ昔に少し縁があってな、まぁ妹みたいなもんだ…」

 

そんなにすぐに否定しなくてもいいと思うのだけれど

 

結衣「へぇーそうなんだ〜だから比企谷君と仲良いんだね クラスでは誰とも喋らないのに」

 

八幡「べ、別に好きで一人で居るだけだし…人に気を使ったりしなくて済むしな」

 

そんな気はしていたけど…やっぱりそうなのね

でも、本当は人と一緒にいることが好きで好きで仕方ない癖に……そうじゃないと私や姉さんの為にここまで時間を割いてくれる理由がないわ

 

結衣「でも雪ノ下さんは別って事でしょ?後元会長さんと」

 

八幡「陽乃さんな つーかなんで知ってるんだよ?」

 

結衣「1年の頃冴えない子と会長が特別仲がいいって有名だったからね〜 でも秋くらいからそうでも無かったよね、まぁ受験シーズンだから仕方ないと思うけどさ…あの頃喧嘩したんじゃないの?って比企谷君の事で話もちきりだったんだよ」

 

八幡「そうなの?つーか俺って有名人?」

 

結衣「うん、会長が卒業した後は新一年の子とイチャイチャしてるって男子たちが妬んでたし」

 

八幡「マジかよ…俺刺されるんじゃねぇの?」

 

あれ、平塚先生以外にも見られていたのね…

どこに目があるのか分からないのは怖いわね

 

雪乃「ゴホン……とりあえずクッキーを作りましょ あまりモタモタしていると下校時刻になるわよ」

 

結衣「次こそ成功させるぞー!」

 

そうして3人で作業を始め、その時だけ上手くクッキーが焼けたのは別の話

 

 

 

 



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7話

この前の木炭事件……クッキーの依頼を終え、数日が経った頃 由比ヶ浜さんが奉仕部に入部してきた

 

それからすぐに戸塚さんのテニスの依頼

恋愛相談や授業についていけないとか

そういう依頼が何件かきた

 

普段は3人で紅茶を飲みながら

それぞれ本を読んだり、会話したりしながら過ごした。想像以上に3人で過ごす時間は心地がよく、充実した時間であった

だけれど、一つだけ気になる事があった

 

雪乃「比企谷君、最近元気がないようだけれど何かあったの?」

 

それは比企谷君が最近急に元気がなくなってしまった

理由は分からないし、本当に突然な事だったので私も由比ヶ浜さんも対処に困っている

 

八幡「……この前、1つ下の後輩から告白された」

 

結衣「うぇええ!?ヒッキー告白されたの?」

 

少し驚きすぎじゃないかしら

確かに目は腐っていて、猫背で

顔は普通くらいで 国語だけは成績良くて

目が腐ってる比企谷君とはいえ

好きになる人くらい居ると思うのだけれど

 

その……私とか///

 

結衣「それで、どうしたの?」

 

八幡「勿論断ったよ…その子自体は物凄くいい子なんだけどさ、振る時に傷つけてしまった」

 

比企谷君が誰かを傷つける…?

 

八幡「この前のテニスの時に 女子テニスの部員の子がたまたま見てたみたいなんだ」

 

 

 

あの時は比企谷君の一強常態だった

元々姉さんと私と一緒にテニスやっていたのだけれど、比企谷君のセンスだけは私も姉さんも持っていないものだった

 

1人で壁打ちしていたからこそできたあのコントロール技術に 姉さんが教えたスピン そしてどこにあるのか分からないあの持久力…

テニスだけは私も、姉さんも比企谷君に勝つことは出来なかった

 

その比企谷君が県選抜に選ばれた三浦さんとシングルスで戦い、圧勝した

 

その時の比企谷君は物凄くカッコよくて

私も、由比ヶ浜さんも見惚れる程のものであった

 

戸塚君も比企谷君にテニス部に入って欲しいと言っていたけれど、比企谷君は団体競技は嫌だということで断っていた

 

あの時…テニス部のコートのまわりに少しギャラリーが居たのだけれど、そこに居た子の1人なのだろう

 

 

 

雪乃「一体何をしたのかしら?」

 

八幡「最初は好意自体を疑ってしまってな…

何の罰ゲームだ?と言ってしまったんだよ。

その子は本気で俺の事が好きだと言っていた。

けれど、その時の俺は心から信じる事が出来ないし、面倒だったから、知らない子と付き合う気はないって言ったんだ」

 

結衣「うんうん」

 

八幡「でもその子がな それならこれから知ってもらえればいい…一緒にテニスして教えて貰いたいとか色々言い出してな」

 

結衣「うんうん」

 

八幡「それで、嫌になった俺は 他人に興味が無いし、一時の気の迷いで告白なんてするんじゃねぇって言って去ろうとしたんだよ」

 

八幡「でもその時見てしまったんだ

涙をポロポロと流しながら 笑顔で去っていく俺を見守り、手を振るその子の姿を」

 

八幡「多分その子は…本気で考えたんだと思う…だけど俺はそれを親身になってやれなかった…好意を信じてやれなかった…それが気残りでな」

 

過程は酷いものの、彼女は彼女で本気で比企谷君に当たりに行ったんだろう…だけれど相手にすらして貰えなかった。その事自体物凄く辛いだろうに

 

それでも彼女は笑顔で 比企谷君に見送った

 

そんな姿を見てしまって比企谷君は自分がやってしまったことを悔いた

 

人一倍優しい彼だからこそ、自分が許せなかったんだろう。だから最近はずっと少しつらそうな顔をしていたのだと私は思う

 

雪乃「考えすぎよ…確かに振り方は最低だけれど、その子が比企谷君に何か文句を言っているわけではないのでしょう?」

 

八幡「それは、そうだが…」

 

雪乃「もし、それでも自分が許せないのなら 謝りに行けばいいのよ 頭を下げてちゃんと謝罪会見すれば 少しは気がおさまるのではないかしら?」

 

結衣「流石にそれはやり過ぎじゃないかな?」

 

雪乃「あくまで、最終手段よ由比ヶ浜さん」

 

八幡「どうするかは自分で決めるけど、サンキュな…少し気が軽くなった」

 

雪乃「そう、なら良かったわ」

 

そうして今日の部活は終わりを告げ

各々自宅に帰宅した

 

 

 

 

 

 



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8話

7月7日 七夕の日

 

一般的には七夕の日として、短冊に願い事を書いたりするのだが、私達にとってこの日は姉さんの誕生日を祝う日であった。

 

八幡「陽乃さん、誕生日おめでとうございます」

 

雪乃「姉さんおめでとう」

 

毎年この日は比企谷君のお宅に集まって

私と姉さん、比企谷君に小町さんの4人でお祝いをしている。

 

雪ノ下家としてのパーティは基本別の日にやるという事で昔からこうやって、パーティをしている

 

私と小町さんで料理を作り、比企谷君にはケーキや他に必要なものを買いに行って貰っている

 

陽乃「あ〜ぁ せめてもう1年比企谷君と高校生活送りたかったな〜」

 

姉さんが不意にそんな事を言っていたが、いつもと同じカラカラと笑いながらだったので、多分冗談半分……本気も半分位かしら

 

八幡「……俺ももっと陽乃さんと一緒に居たかったですよ…」ボソッ

 

比企谷君がなんて言ったが聞こえなかったけど、姉さんは一瞬驚くような顔をしたがとても嬉しそな表情をしていた

 

陽乃「あははっ!比企谷君って本当に捻くれてるよね」

 

何か面白いことがあったかのように

珍しく声を上げて笑っていた

 

八幡「別に…俺にはそういう風に聞こえただけですよ」

 

その姿を見ながら私と小町さんはなんの事かと首を傾げていた

 

あの二人の会話は聞こえていても理解できない事が度々ある。言葉遊びが得意なのか、紛らわしい言い回しが好きなだけか分からないけれど、頭を使わなければいけない。

 

小町「えっと、お2人が仲がよろしいのはいい事なんですが、こまち達も仲間に入れて欲しいなーかというか 2人だけ盛り上がってずるい!」

 

小町さんが我慢できなくなったのか

二人の間に割って入っていった

 

陽乃「ごめんごめん、私もそんなつもりじゃ無かったんだけどね」

 

ペロっと舌を出しながらテヘッと謝っていた

 

 

 

それから、4人でパーティを楽しみ

あっという間にお別れの時間になってしまった

 

八幡「やっぱ、平日だと 時間がいっぱいいっぱいだな」

 

陽乃「そうだね、でも楽しかったよ 大学行ってからというもの、中々皆に会えなくて寂しかったし」

 

雪乃「次にこの4人が集まれるとしたら夏休みね」

 

小町「夏休みか…」

 

八幡「どうしたんだ小町?」

 

小町「お兄ちゃん達ってどうやって総武高に受かったの?」

 

八幡「勉強」陽乃「実力」雪乃「努力」

 

小町「はぁ……どうしてこの3人には出来るのに小町には出来ないのでしょうか」

 

陽乃「まぁまぁ、まだ時間はあるから」

 

雪乃「そうよ、まだ諦めるには早いわ」

 

2人で小町さんを励まし

元気を出させた

 

雪乃「そろそろ帰りましょうか」

 

陽乃「そうだね〜」

 

そうして私達は帰る準備を始めた

小町さんと比企谷君は片付けをし始め

私達は私達でその他諸々の片付けなど手伝った

 

その途中に比企谷君が何か姉さんとコソコソ話をしていたが、どんな内容か聞き取ることが出来なかった

暫くすると比企谷君は片付けに戻っていった

 

陽乃「今日は本当にありがとね」

 

小町「いえいえ〜また機会があれば集まりましょう!」

 

雪乃「そうね」

 

八幡「……」

 

雪乃「比企谷君どうしたの?」

 

八幡「あ、いやなんでもない…」

 

陽乃「それじゃね〜」

 

雪乃「さよなら」

 

八幡「おう、またな」

 

小町「さよならです〜」

 

それぞれ別れの挨拶を済ませて

私達は家に帰っていった



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9話

私は今…恋をしている

彼を見ているだけで胸の奥から暑くなってくるのが分かるほどに。今の私は彼と一緒に居るだけでとても幸せを感じられ…そして同時に罪悪感が私を押し潰そうとしてくる。

 

 

 

私の誕生日の日の夜…パーティが終わり私達が帰ろうとした時、彼は私にこっそり誕生日プレゼントを渡してくれた。

 

その時渡されたものは、小さな箱で、少しオシャレな感じがしていた

 

そのプレゼントを家に帰ってから開き、中身を確認した。彼から貰えるプレゼント…それを考えただけで小躍り出来そうな程嬉しいのに、わざわざ私の為に選んでくれたものとなると、もう私は嬉しくて嬉しくてたまらなかった。

 

もちろん みんなの前では平静を装っていたけれど、少し綻んで居たかもしれない

それ程にその日は私にとって嬉しい日であったのだ

 

小さな箱を開け、中身を見ると

そこにはネックレスが入っていた

 

ジャラジャラしているようなものではなく、清楚な感じが出ている私好みのものであった

 

ネックレスを手に取り、付けてみた

 

陽乃「比企谷君に見てもらいたかったな…」

 

鏡の前に立ち似合う自分の姿を見ると

不意にそんな事を思ってしまった

 

ネックレスを外し、箱の中になおそうとすると、箱の側面に小さな手紙を見つけた

 

その2つ折りで挟まれていた紙を広げると1本の花とメッセージがあった

 

「これが俺の気持ちです」

 

メッセージにはそう書かれてあり、一緒に包まれていた花はスターチスであった。

 

 

 

陽乃「………ずるいよ、こんなの諦めれなくなってしまうよ…」

 

 

スターチスの花言葉

 

 

変わらぬ心、永久不変

 

 

 

 

 

 

陽乃「比企谷君………ごめんね」

 

私の声は誰にも届くことも無く

虚空に消えていった

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ごめんなさい、比企谷君の事弟としか見れないの…」

 

私は1度彼を振った…

私は自分の心を偽り、彼を拒絶した

自分の為ではなく妹の為に…

彼を傷つけることで雪乃ちゃんに意識を向けさせようとした。それ自体は成功したのだが

 

彼は雪乃ちゃんの事を妹としてしか扱わなくなってしまった

 

きっと彼は雪乃ちゃんの事を好きにならないようにするため、彼は雪乃ちゃんに対して妹という壁を作った

 

「そう…ですか……俺にとって陽乃さんは、勘違いでもなく、紛いも無い本物でした…」

 

そういい彼はその場を去って行った

それからというもの、私から彼に近づいて行くこと、彼が私に近づいて来る事は極端に減った…いや減らしたのであった

 

それが私に出来る償いだと思っていた

彼を傷つけた私が 今更どの面下げて会えばいいのか分からなかった。

けれど、結果的にそれは…私にとっても比企谷君にも辛いモノとなってしまった

 

それから私は逃げるように高校を卒業し

GWまでたったの1度も比企谷君と連絡を取ることが無かった

 

だからGWの時に久々に比企谷君に会えた時は物凄く嬉しかった。何よりも彼が昔と同じように接してくれることが嬉しくて仕方なかった

 

あの件のことも気にしない様子で

以前と変わりないやり取りは私の心を救ってくれた

 

だけど、私は比企谷君に対して半分ほど嘘の混じった作り話をしてしまった。

 

当然、即興で思いついたものだから、中身はグダグダで、人の心を動かすものでは無いのだけれど…

何故か私には響いてしまい、そして、比企谷君にも響いてしまった。

 

あの話をもし本心にするのなら、2人に嫉妬ではなく…雪乃ちゃんに嫉妬し…そして円の中ではなく、本当は私が隣に居たいと思っていた…になってしまう…それ程に私は比企谷君の事が好きなのだ

 

でも彼はその話を聞いて、私が居なくなってからの数ヶ月間…辛い思いをしていたという事が違う意味で伝わった。

 

陽乃「我ながら酷い話ね……妹の為に好きな子を振ったのに、彼はまだ私の事を好きだと言ってくれるなんて……」

 

陽乃「でも、私が選ばれたら雪乃ちゃんは……」

 

姉として…私は妹の幸せを奪いたくない

だから焚きつけるような事もしたし

嫌われるような事もした

 

全ては雪乃ちゃんの幸せの為に…

 

でも、もし私が居なくなれば……2人は………

 

 



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10話

仲間はずれ…それは団体で行動する人間という生き物の習性を考えても、とても苦痛を感じるものだ

かくいう私も、何度もされた事がある

 

だけれど仲間はずれだけなら、私にとっては特に問題はないのだが…いじめとなると話は違う

 

ある人は私の容姿を妬み、ある人は好きな人が私の事を好きと言うだけで、無視するようになり、ある人はろくな努力もせずに、私の才能に嫉妬し、蹴落とそうとする。

 

だけれど、誰も真正面から私に何かを言う人は居なかった。その代わりに上靴や荷物を隠されたり、などの被害には多々あった。

 

私の話はこれくらいで置いておいて

本題に入るとしましょう

 

雪乃「つまり友達の悪口を書かれているから、それを根絶やしにして欲しい?そういう事よね」

 

とある平日の放課後…奉仕部に一件の依頼がやってきた。その内容はとてもくだらない事で……クラスの人にチェーンメールが回っていて、メールの内容に友達の事を悪く書かれ、それを見るのが嫌だから止めて欲しい。という事であった

 

隼人「あ、あぁ…」

 

彼は葉山隼人、比企谷君と由比ヶ浜さんと同じクラスで、比企谷君曰くトップカーストの親玉らしい

 

結衣「でも、なんで急に出回ったんだろうね?」

 

隼人「あの頃、何か問題になるような事でもあったかな?」

 

葉山君は同じクラスの由比ヶ浜さんと、出回った時期の出来事を思い出しているらしい

 

こういう時、私だけ違う学年で何も協力できないという事実がとても腹立たしい

 

まるで私は無力な人間のようだから

 

雪乃「一応、比企谷君も同じクラスなのだから、何か思い出せるようなことはないの?」

 

正直比企谷君にはあまり期待はしていなかった。クラスでいつも1人で居て、周りをあまり気にしないから

 

八幡「職場見学だろ…その3人はお前と一緒になりたい…だけれど職場見学は3人1組…1人余るわけだ」

 

驚いた…由比ヶ浜さんでも、葉山君でも何も思いつかなかったのに、彼が1発で確信に迫る解答を提示したのだ

 

隼人「でも、それって…あの中の誰かがチェーンメールを回しているって事なのか?」

 

八幡「分からんがな…でも俺にはそれしか考えつかない」

 

雪乃「……そうね、由比ヶ浜さん 葉山君 とりあえずその3人を監視して貰えないかしら?」

 

結衣「う、うん分かった」

 

隼人「分かったよ…だけど俺はあの3人を信じてるからだ、疑ってるわけじゃない 」

 

そう言い葉山君は部室を出ていった

 

 

 

八幡「おい、雪乃…なんか葉山に冷たくないか?」

 

雪乃「そうかしら?いつも通りと思うのだけれど」

 

もしかしたら少し強く言っていたのかもしれない

だけれど、そんな違和感を覚えるほどではなかった筈だ

 

八幡「何かあったのか?」

 

彼は優しい表情で尋ねてきた

言葉にはしていないが、嫌なら言わなくてもいいと言っているような気がした。

彼のそういう所…本当にずるいわ…

そんな事されたら…惹かれるに決まってるじゃない

 

雪乃「家の関係で少しね」

 

彼は「そうか」と一言口にし

本を取り出し、読書に戻った

 

普通なら、気になって根掘り葉掘り聞いてきてもおかしくないのだが、彼はそんな事をしない

それは、彼が自分の為ではなく、人の為に動く人だからたま

 

 

その後、葉山君の依頼は比企谷君の妙案により解決した。葉山君を3人とは組まないようにし、孤立させると、チェーンメールは止んだ。

やはり比企谷君の言っていたとおり、3人の誰かがやっていたのだろう

 

こうして、無事に依頼は完遂したのであった

 

 

 

 

布団の中に入り、今日のことを思い出していた

 

雪乃「ねぇ、比企谷君…どうして3人の誰かが犯人だと分かったの?あの時はヒントもまだ少なかったのに」

 

私はどうして彼がそんな事を思いつく事ができたか不思議だったので質問した

 

八幡「簡単な事だ、例えば俺と小町とお前と陽乃さんの4人の中から 3人と1人を作れと言われたら…俺は真っ先に1人の方へ行く、それをもし陥れてでも、3人の中に入るならって考えてみただけだ」

 

彼は平然とそんな事言っていたが

私には理解出来なかった

そんな自己犠牲なやり方…

そしてそんな考え方は私にはできないからだ

 

 

 

 

 

私はもっとあなたの事を知りたい…

もっと感じていたい…

 

そんな事を想いながら彼女は

そっと目をつむり、眠りについた



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11話

葉山君の依頼を終え、その後川崎さんの弟さんの依頼も比企谷君がスカラシップの事を川崎さんに教えて、無事に解決した

 

由比ヶ浜さんは……相変わらずだけれど 場の雰囲気を和ませてくれたりと、案外役に立っている?と思う

 

奉仕部の活動は順調に進んでいき

彼との仲も着実と良くなっている気がする

 

八幡「雪乃、放課後スーパー行くんだが一緒に行くか?」

 

部活中に珍しく彼から話しかけてきた

それは、ただスーパーに行くけど

一緒に来るか?という内容なのだが

私としては一緒に居られるだけで嬉しいので

大歓迎だ

 

雪乃「えぇ、今日は何を買うのかしら?」

 

八幡「カマクラの飯がもうすぐ無くなるからそれを買うんだよ」

 

たまにカマクラのご飯を買い忘れたり、少なくなったりすると 学校帰りにスーパーによって買って帰ることがある

 

元々、比企谷君が1人で行っていたものなのだけれど、私がカマクラとついでに遊ぶという名目でついて行ったりしている

 

結衣「いいなー 私も行きたいけど方向が逆だから」

 

由比ヶ浜さんともたまにお出かけしたりするのだけれど、如何せん住んでるところが遠いので、学校かえりなどは合わせにくい

 

部活を終えスーパーに行くと

見覚えのある姿があった

 

比企谷君は少し用を足しに行くから 先に行っておいてくれと言われたので 私ひとりで中に入ったのだけれど、どうやらスーパーの中に姉さんが居るようだった

 

雪乃「姉さん」

 

後ろから近付き、声をかけると

いつもの調子で姉は振り返ってきた

 

陽乃「あれー?雪乃ちゃんじゃん?今日は1人?」

 

振り返った姐の胸元には見慣れない

ネックレスが揺れていた

 

雪乃「いえ、比企谷君と来ているのだけれど……」

 

つい、ネックレスの方を凝視してしまった

 

普段姉さんはネックレスやイヤリングなどの装飾品はしない人間だ。その姉さんがネックレスを付けているという事実に私は頭を悩ました

 

陽乃「あ、これねーー」

 

そうしていると比企谷君がトイレから戻ってき、こちらにやってきた

 

八幡「待たせたな、雪乃……どうも陽乃さん」

 

彼はこちらを見たあと姉さんと目があい

そちらに向き直った

 

陽乃「ひゃっはろ〜比企谷君!こんな平日から2人で買い物だなんて 妬けるな〜」

 

わざとらしくウリウリとしながら

こちらをからかってきた

 

八幡「別にそんなんじゃないですよ………そのネックレス、ちゃんと付けてくれてるんですね」

 

姉さんの方を見る比企谷君の顔色が少し変わった。

どこか、照れくさそうで、嬉しそうな表情をしていた。比企谷君のその表情はこの私でもあまり見た事がない表情だった

 

陽乃「うん…君からの誕生日プレゼントだからね 大切に使わせてもらうよ」

 

姉さんは姉さんでどこか切なそうな顔をしながらネックレスをいじくっていた

 

その後2人は少し雑談をし、別れた

 

そんな、2人の姿を見ていたら

私の胸はチクチクと痛み見始めた

 

ただ比企谷君が姉さんに誕生日プレゼントをあげただけなのに…比企谷君から貰ったものを姉さんが身につけているだけなのに…たったそれだけの事なのに…私は酷く傷心してしまった

 

 

 

買い物を終え、比企谷君の家に行き

カマクラと遊んでいた…

けれど、私は心ここに在らずという感じだった

 

頭の中にあるのは、照れくさそうな、嬉しそうな顔をしている比企谷君の姿と 嬉しそうで…どこか切なそうな姉の姿だけであった

 

八幡「雪乃、どうしたんだ?さっきからボーッとして」

 

雪乃「べつに…なんでもないわ」

 

八幡「そうか、ならいいんだが もし困ったことあれば 言ってくれ、できる限り協力するから」

 

彼はどこか心配そうな目でこちらを見ていた

その目はまるで妹を心配する兄のような目で

 

今の私にはそういうふうにしか見ることが出来なかった



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12話

何時からだろう?私が比企谷君のことを好きになったのは。気がついた時にはいつも、隣に比企谷君が居た。何処に行くにも、何処で遊ぶにも比企谷君が一緒に居て、私もそれを許容していた。彼と一緒にいる時間がとても好きだった。

 

何時からだろう…比企谷君の恋人になる事を諦めようと思うようになったのは…

 

それは、雪乃ちゃんの視点でものを考えてみるようになってからだ。つい、興味本位で雪乃ちゃんがどのように感じとり、どのような事を思って日々を過ごしているのかと考えてしまったのは。

 

その時に気がついてしまった

雪乃ちゃんがいつも見ている先には

私の大好きな彼…比企谷君が居ることに

 

それに気がついてしまった私は…あれだけ待ち望んでいた…比企谷君からの告白を断った

 

その日の晩は初めて枕を濡らした

 

今まで、泣くという事すらあまり経験していなかった私が号泣した

 

後悔した、運命を呪った

 

だけれど、1番辛いのは比企谷君の筈だ

 

そう思ってしまった私には…

もう泣く事すら許されなかった

 

自分より辛い思いをしているのに

それを耐えてる彼が居る

 

他人は他人と考えればそれで終わりなのだが、私にとって比企谷君は家族そのものであった…

 

それだけ近かったからこそ 2人して傷ついた

 

それが、全ての始まりだ

 

 

 

雪乃「姉さん…姉さん!」

 

朝、目を覚ますと

目の前に雪乃ちゃんが目の前にたち

私の体を揺すっていた

 

陽乃「…雪…乃ちゃん?」

 

雪乃「凄い魘されていたけれど、大丈夫なの?」

 

体を起こし、ベッドに座ると

雪乃ちゃんが心配そうな顔でこちらを見ていた

 

 

 

どうして私が雪乃ちゃんの家に居るかって?

 

雪乃ちゃんは高校に入ってから一人暮らしを始めたんだけど…母さんが毎週金曜日は私が泊まりに行くように命じられているからだ…

 

そして今日は土曜日…

普通の大学生ならバイトやら、遊びに行ったりしているのだろうが…私はそうではない

 

基本家で過ごすか…たまに出かけたり、家の用事で動いたりと…くだくだ過ごしている

 

陽乃「ごめん、少し嫌な夢見ちゃって」

 

こうして、たまに今のような夢を見ることがある…まるで私にこの気持ちを忘れさせないように

 

雪乃「………比企谷君の夢?」

 

陽乃「え?」

 

突然比企谷君という単語が出てきて

私は固まってしまった

 

雪乃「姉さん…魘されてる時に ごめんね…比企谷君って言ってたから」

雪乃「姉さん、数ヶ月前 比企谷君と何があったの?」

雪乃ちゃんが真剣な表情でこちらを見つめながら昔あったことを尋ねてきた。

 

……雪乃ちゃんに言えるわけないじゃない。雪乃ちゃんの為に身を引こうとしただなんて

 

そんな事を言ったら雪乃ちゃんはきっと、思い詰めてしまう。私が比企谷君の事を好きになったから…と

 

陽乃「雪乃ちゃん、私にも……比企谷君にも人に言えない秘密事くらいあるんだよ」

 

そう言い私は部屋を出た

 

誰かに言えないではない、雪乃ちゃんに言えない事

雪乃ちゃんを傷付けたくないから

比企谷君によって、やっと自我をもった雪乃ちゃんを変えさせたくないから

 

何よりも雪乃ちゃんに幸せになって欲しいから

 

 

 

私の気持ち…彼に気付いて欲しいのに

気が付かれたくない…

彼の事が誰よりも好き…

この気持ちはきっと抱いてはいけなかったのだろう。けれど私は抱いてしまった。

 

私がこういうことを感じられるようになったのも…君のおかげだね…たくさんの感情を貰い…そして楽しい時間を貰った…君は認めないだろうけど、私たち姉妹は君に救われてるんだよ

 

 

だから、もう一度…助けに来て……比企谷君



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13話

最近…夜に寝ようとすると何故か寝付きが悪い

そのせいで若干寝不足気味なのだが、日常生活において今のところら支障はない

 

それに寝付きが悪い理由も分かってる

 

この前姉さんがしていたネックレス…

あの、今までどんなプレゼントを貰っても装飾品だけは付けなかった姉さんが…比企谷君に貰ったネックレスを付けていた

 

普通の人なら、プレゼントして貰ったからと言えるのだろうが…姉さんとなると話が違う

 

それも比企谷君から貰ったというのがネックだ

私も毎年誕生日を祝ってくれるけれど、そういう装飾品系のプレゼントは貰ったことが無かった

 

もし、その意味が独占欲やそういう意味が含まれているのだとしたらきっと…比企谷はまだ姉さんの事が異性として好きということになる

 

目を瞑るとそんな事を永遠と考えてしまう

だから最近はよく眠れていない

 

 

 

それにこの前の姉さんの寝言…

あれがどういう意味なのかは分からないけれど

多分半年程前の事を思い出していたのだろう…そう勝手に思った

 

だってそれしか思い当たる節が無かったから

 

 

 

 

 

雪乃「おはよう比企谷君」

 

朝学校に行くと久しぶりに校門前で比企谷君に遭遇した。普段比企谷君は学校にギリギリに来るから会うことはあまり無いのだけれど 今日は珍しく私がギリギリになってしまったのでエンカウントしたのだ

 

八幡「よう、雪乃がこの時間に登校だかんて珍しいな」

 

雪乃「少し寝不足でね…」

 

殆ど貴方のせいなのだけれど…

 

八幡「あまり、無理するなよ 体強くないんだから」

 

優しく頭を撫でながら笑顔でそんな事を言っていた

 

「また妹扱いなのね…」

 

八幡「え?あっ悪い…嫌だったか?」

 

彼は突如撫でる手を止め謝ってきた

 

え?私今の声に出てたかしら?

 

雪乃「あ、え、そ、その」

 

私は想定外の事にあたふたしていると比企谷君が

 

八幡「…悪かったな」

 

そう一言だけ言って駐輪場の方に去っていった

 

別に妹扱いが嫌なわけではないのだけれど、たまには一人の女性として見て欲しい。とその一言が比企谷君に言えなかった

 

 

 

放課後になり部活の時間になったのだが、部室に行くか少し躊躇った。

 

だけど部長として…ちゃんと部活動をしないといけないので、私は気を引き締め 部室の鍵を取りに行き そして部室な向かった

 

部室の前につくと 比企谷君の姿があった

 

雪乃「早いのね…」

 

八幡「いつも通り位だろ」

 

雪乃「そうかしら」

短く端的に会話をし部室に入っていった

 

それから少し時間がたち、由比ケ浜さんがやってくるくらいの時間帯になってきた

 

八幡「雪乃、朝は悪かったは…嫌がるとは思って無かった」

 

雪乃「その、その事なのだけれど…比企谷君にはいつも通り接して貰いたいの…あの時の私は少しおかしかっただけだから」

 

八幡「そうか…お前がそういうのなら そうする」

 

なんとか以前の関係に戻すことは出来たが…進展なんてものは全くなく…少し歯痒く感じた



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14話

旅行……私は今までそれ程行ったことは無いのだけれど… 普通なら観光をしたり、家族や友人または恋人と楽しんだりするものなのだろうと私は思う…

 

もし、それが比企谷君と二人きりで行けたのならどれだけ良いものなのだろうか…そんな事を考えるが現実はそう上手くは行かない…

 

比企谷君と旅行という点はある意味あってはいるのだろうけれど、敢えて言いたいことがあるわ

 

どうしてこうなったの?

 

 

夏休み期間のとある日私と姉さんは暇潰しに比企谷君の家に訪れていた。

 

といっても小町さんは受験勉強しているから、騒がしくするとかそういう事はしないのだけれど……リビングで3人ゴロゴロと過ごしていた

 

こうしてみると本当に兄妹のようだ

姉さんと兄さんと私の3人仲良く……もし比企谷君が姉さんと結婚したら本当にそうなるのかもしれない

 

だけれど、私はそんな結末は望んでなどいない

出来ることなら……いえ私が比企谷君と結婚してこういう関係を築くのが私の望んでいる事なの

 

でもそれは多分姉さんも同じ気持ち…なのかもしれない。正直言って最近の姉さんの事がよく分からないわ…比企谷君に対して好意を抱いているのは私でもわかる…だけど、どこか違和感を感じる…本当に比企谷君の彼女になりたいのか…なりたいとしても どうしてそんな回りくどい事をするのか 私にはわならなかった

 

 

 

陽乃「あっ!そうだ!」

 

ゴロゴロしながらカマクラを撫でていると姉さんが何かを思いついたのか…飛び上がった

 

八幡「どうしたんですか?」

 

それに反応した比企谷君は栞を挟み本を閉じた

 

……何で私こんな所まで見てるのかしら…

 

陽乃「明日、旅行行こうよ!運転は私するから」

 

唐突に姉はそんな事を言ってきた

さっきから黙り込んでスマホを扱ってると思ったけどそういう事だったのね…

 

私ははぁ…と溜息をつき口を開いた

 

雪乃「また、唐突ね…」

 

陽乃「いいじゃん!どうせ比企谷君も雪乃ちゃんも暇なんだしさ」

 

またこれだ…何も言ってないのに予定がない事がすぐバレる…たまに感じることがあるのだけれど姉さんの勘はサトリかって思うほどによく当たる

 

八幡「え…ほら、明日は…」

 

何か断るための言い訳を探しているようだけれど…もう無駄よ 姉さんを出し抜くには予め何かを用意しておかないと…

 

私は心の中でそう思い…諦めていた

 

陽乃「ないよね?」

 

八幡「はい…」

 

 

 

彼はあっさりと負けを認めてしまった

私としてはもう少し比企谷君があれこれもがくのを見ていたかったのだけれど…

 

雪乃「それで、何処に行くのかしら?」

 

陽乃「んー 雪乃ちゃんも比企谷君も人混みは苦手だしね〜温泉なんてどう?」

 

温泉ね…それはそれでいいかも知れないわね

ただそうなると

 

雪乃「比企谷君はどうするのかしら?」

 

どうすると言うのは 行くか行かないかではなく 1人だけ男性というその状況に対してのものだ

 

八幡「俺は1人でいい…どうせ寝る前までは一緒の部屋に居るんだろ?」

 

陽乃「うんうん!物分りがいいのはお姉さん的にポイント高い♪だけど、比企谷君が寝るのは私と雪乃ちゃんと同じ部屋だよ」

 

八幡「えぇっ!?」

 

流石の比企谷君も今の言葉に驚きを隠せない様子だった。だけれど姉さんはさっきと同じ調子で口を開いた

 

陽乃「だって、2部屋取ったら割高だし、そ、れ、にいつも私達の一緒に居るし 今更一緒に寝る位平気よ?」

 

姉さんはウィンクをしながらコッチをみた

 

多分姉さんはこれを機に距離を詰めるつもりなのかしら?いいわ、その挑発乗ってあげるわ

 

雪乃「そうね、一部屋でいいわ」

 

そうして姉さんが宿を探し

どうやったのか知らないけれど…

こんな夏休み真っ最中なのに宿の予約が取れてしまった

 

電話している時に雪ノ下と言う単語を強調していたのは 聞かなかったことにしましょう

 

 

こうして楽しい楽しい旅行が計画されたのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「なぁ、小町は本当に行かないのか?」

 

俺は小町の部屋に行き旅行の件を話した

一応陽乃さんにも雪乃にも小町も来ていいよとは言われているのだが…小町は乗り気では無かった

 

小町「もぅ、小町は受験生なの!小町だって本当は行きたいの我慢して断ってるんだから!」

 

そう言われ部屋を追い出されてしまった

 

…受験の為か……お土産ちゃんと買ってきてあげないとな…それと小町が合格したら 何処か連れて行ってやりたいな

 

そう思いながら妹の部屋を去っていった



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15話

花も枯れるんじゃないかと思わせるような猛暑日…私は薄着で、バックを持ちマンションの前で姉さんを待っていた。暫くすると1台のワンボックスカーがマンションの目の前に止まった

 

その車の窓が開き

一人の女性の顔が見えた

 

陽乃「ごめーん 渋滞してて遅れちゃった 後ろ乗っちゃって〜」

 

雪乃「まぁ、この季節だものね」

 

渋々後ろの席に座ると 助手席の方から声が聞こえてきた

 

八幡「おはよ、暑かっただろ ほら飲みもの」

 

彼が後ろ向きに手を伸ばし 冷えているお茶をこちらに渡してきた

 

雪乃「ありがと」

 

 

 

どうして比企谷君が後部座席じゃないで助手席かというと…姉さんから無理やり詰め込まれたらしい

後ろで2人でお話ししたりできると思ったのに…

 

 

少し肩を落としながら、比企谷君から貰ったお茶の蓋を開き、口をつけた

 

数時間車に揺られ、昼前に目的地に到着した

 

私は冷房の効いた涼しい空間に居たせいで気がついたら眠っていた。

 

後々比企谷君に聞いたことなのだけれど 私が寝たあと位から姉さんからのセクハラにあっていたらしい

 

太ももに手を這わされ、脇や横腹とかをまさぐられたりしていたと……羨ましいわ

 

陽乃「んーっ 気持ちいい〜」

 

ここは何処かの山の上らしく、とても空気が澄んでいた

 

姉さんは体を上に伸ばし胸が物凄く強調されていた

 

雪乃「チッ」

 

私はつい舌打ちをしてしまい、比企谷君に怒られてしまった、そしてついでに お前にもまだ希望はあると…何の根拠もないことを言い去って行った

 

 

 

どこからか「夏だ!海だ!花火大会だ〜〜!!烈花火大会!」という声が聞こえてきたのだけれど…それ確かパチンコの海○語の奴よね…

 

八幡「人がゴ……ゴホンゴホン 賑わってんな〜 さっさとチェックインしようぜ」

 

今あの言葉を言おうとしたわよね?

確かにロビーには人がゴミのように居るのだけれど

 

陽乃「すみませ〜ん 雪ノ下という名前で予約しているんですが」

 

姉さんが雪ノ下という名前を口に出した瞬間 周りの空気が凍りついた

 

この反応ってこの辺にいる人達って……まさか…

 

八幡「雪乃…これって」

 

雪乃「えぇ… 多分比企谷君が思ってる通りよ」

 

多分ここにいる人達は 社長さんや役職についてる人達ばかりなのだろう…

 

陽乃「よし!行こっか」

 

姉さんが比企谷君の腕に抱きつき歩き始めてしまった

 

雪乃「ちょっ、まっ、待ちなさい!」

 

私も荷物を直ぐに手に取り後ろを追いかけた

 

その間周りから比企谷君に対しての視線が物凄かったのは言うまでもないだろう

 

八幡「……予想はしてたけど これはすげぇな」

 

案内された部屋を見回すと、ものすごく広く…いかにも和風というお部屋だった。

 

「VIP部屋になります…ごゆっくりどうぞ」

 

 



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16話

旅館につき、お昼ご飯を済ませ私たちは外に出ていた

山の上なので景色も物凄く良く、絶景であった

 

外をブラブラと歩き、夕方頃部屋にまた戻ってきた

 

八幡「たまにはいいな…こういうのも」

 

今日1日まったりとすごし、私達は自然に癒されていた。

 

朝出かける時は暑かったが、ここに着くと少し冷たい風が吹き気持ちがよかった

 

雪乃「そうね、あまりこういう機会もないから…たまにはいいかもしれないわね」

 

陽乃「うんうん、2人が楽しんでくれてお姉さんも嬉しいな〜」

 

少し雑談をしながら休み、ゆっくり時間を過ごした

 

 

 

陽乃「そろそろお風呂行こっか」

 

雪乃「そうね…」

 

姉さんのその言葉に反応し私達はイソイソと準備を始めた

 

元々ここの温泉には興味があったので

内心ワクワクしていた

 

八幡「んじゃ行くか」

 

途中で比企谷君と別れ、私は姉さんと浴場に向かった

 

 

 

陽乃「ふぁ〜気持ちいい……」

 

姉さんは珍しく私の前で完全に気を抜いていた

こうしてみると本当にいつも姉さんは気を張っているのがよく分かる…表情の一つ一つや言動…不意打ちをくらわない限り完璧に見せる徹底ぶり…

 

いつもならボロを出さないけど…もしかして今なら

 

雪乃「姉さん隣失礼するわね」

 

陽乃「ん〜 珍しいね、雪乃ちゃんから近づいてくるだなんて」

 

雪乃「別にいいじゃない、旅行先くらい甘えたって」

 

陽乃「ふふっ、雪乃ちゃんが甘えるか〜 最後に甘えられたのなんて何年前だろうね」

 

雪乃「そうね、彼に…比企谷君に会う前は私達仲悪かったものね…10年は甘えてないんじゃないかしら…」

 

比企谷君のお陰で仲直りは出来たものも…私が意識しすぎてとくにこれといったことは無かったから

 

陽乃「もう、そんなにもなるんだ〜」

 

雪乃「えぇ、比企谷君には感謝してもしきれないわね…」

 

陽乃「そうだね」

 

姉さんと話していて気がついたことがある。風呂の時は頭で考えてというより、来た内容に対して直感的に返してるようだった

 

いつもみたいな維持の悪そうな笑顔や企んでるような表情もまるでない 雪ノ下陽乃そのもののような気がした

 

雪乃「姉さんは比企谷君の事異性として好き?」

 

陽乃「当たり前でしょ、好きに決ま……!?」

 

ここで一瞬姉さんの顔は強ばり、そして何事も無かったかのように話をそらそうとした

 

でも、もう手遅れよ…途中で気がついたようだけど もうそこまで言えばさすがの私も分かるわ…姉さんは比企谷君の事が好きな事くらい

 

陽乃「…雪乃ちゃん、計ったわね」

 

姉さんは少しこちらを睨みつけ、警戒していた

もし、姉さんがボロを出さなくてもそんな事をされたら分かってしまうのに…今の姉さんにはそんな事も分からないほど頭が回ってないのだろう

 

雪乃「別に計ってないわ、ただ姉さんが比企谷君の事をどう思ってるか聞いただけよ」

 

陽乃「確かにそうだね……でも雪乃ちゃんがそんな事を知ってどうするのかな?」

 

雪乃「何もしないわ…ただ知りたいだけよ…何故姉さんが比企谷君に対して1歩距離を置いているかを」

 

姉さんは私に対しての警戒を強めていた

これ以上何も悟らせないと言わんばかりに

 

雪乃「……私の気持ちに気がついたから、かしら…」

 

その時姉さんの眉がピクっと動いた

 

雪乃「比企谷君が姉さんにアタックしていた頃…私はいつも遠目で2人のことを見ていた。私も比企谷君の隣に居たいって、でもそれは数ヶ月で叶ってしまった。姉さんが比企谷君と距離を取ることで」

 

比企谷君が姉さんに恋をしていたのは多分彼が中3の終わり頃から高1の秋頃まで…

 

陽乃「前にも言ったはずよ、知らなくていいこともあるって」

 

雪乃「確かにそうかもしれない…だけどもし、このまま比企谷君の恋人になれたって私は後悔する…彼の事は大好きだけど…私は姉さんの事も大好きだから」

 

初めてだった

 

私が姉さんに対して思いをぶつけたのは

 

こんなにも清々しいものだと私は知らなかった

 

 



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17話

少し前まで私は…比企谷君の隣に居られればそれでいいと思っていた。どんな犠牲を払おうとも彼の恋人になりたいと思っていた。いや、今でも思っている…だけれど最近違う気持ちも抱くようになった

 

姉さんの事だ…もし私と比企谷君が恋人になったら姉さんはどうなるのだろうか…

そう思った時…私はふと1つの事を過程建てた

 

もし、姉さんが去年の秋に同じ事を思ったのなら…もし姉さんが私の気持ちに気がついているのなら

 

そう考えるといろいろ辻褄があった

 

陽乃「……大好き…かそんな事言われたの久しぶりだなー」

 

陽乃「やっぱ、雪乃ちゃんには適わないや、私に持ってないものを沢山持ってる…だからかな、私の代わりに幸せになって欲しいと思えたのわ」

 

姉さんの代わりに私が幸せに…

 

雪乃「姉さんらしくないわね」

 

陽乃「私らしいって何なんだろう…雪ノ下の為に生きてきた私に…私らしさなんて…」

 

姉さんは私の代わりに来賓の席や、宴会、などたくさんの行事に参加していた。両親が忙しくて、出れないものは全部姉さんに回ってきていた

 

そしていつしか、姉さんは雪ノ下の道具になってしまっていたのかもしれない

 

雪乃「いつも、私や比企谷君の事を守ってくれて、優しくて、完璧で、私に負けず劣らずの負けず嫌いでとても意地の悪いのが姉さんじゃない」

 

陽乃「最後悪口入ってなかった?」

 

雪乃「とりあえず、姉さんは家の事も、私の事も心配しなくていいから、自分に素直になってもいいんじゃないかしら?それでも比企谷君は私が貰うけれど」

 

陽乃「……あーぁ まさか雪乃ちゃんにこんな事言われる日が来るなんてな〜でも雪乃ちゃんのお陰で目が覚めたよ…まぁ比企谷君の事は恨みっこなしだからね」

 

陽乃「まぁ、雪乃ちゃんが私に勝てると思わないけど〜」

 

雪乃「あら、今から勝負を始めたとしても 私の方が有利だと思うのだけれど。同じ学校、同じ部活…姉さんとは違ってかれと一緒に居れる時間は圧倒的にこちらの方が上よ」

 

分かっている…姉さんがそういう事を言っているわけじゃ無いことくらい

 

陽乃「スターチス…と言えば分かるわよね?誕生日プレゼントで貰ったの」

 

スターチス?確か……永久不滅だとか変わらぬ心とかそういう意味だったかしら?

 

雪乃「えぇ、でも私が彼の心を射止めればいいだけの話しよ」

 

陽乃「そうね、でも私がすぐに手を出してしまったら 射止める暇も無いんじゃないかな?」

 

確かにそうかもしれない…でも比企谷君はかなりの奥手…そうそうに決着がつくはずがない

 

雪乃「好きにすればいいわ…受けてたっ………」バタリ

 

陽乃「雪乃ちゃん!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪乃「あら、ここは……?」

 

八幡「おぅ、起きたか」

 

目を開けると目の前に比企谷君が居た

 

あれ、さっきまで温泉につかってた筈なのに…

そっか…私倒れたのね

 

話が盛り上がって気が付かなかったけれど…体力のない私が長い時間温泉に入れるわけないし…

 

八幡「話が盛り上がるのはいいが、あんま無理はすんなよ、心配したじゃねぇか」

 

雪乃「ごめんなさい、気をつけるわ」

 

私は微笑んで彼に言葉を返し

また目を瞑った

 

 



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18話

雪乃ちゃんを部屋に運び、私は外で一息ついていた

雪乃ちゃんに言われた言葉を思い出しながら私は、たまに微笑み…そして少し喜んでいた

 

雪乃ちゃんが成長した事、私の事を好きだと言ってくれた事…そして

 

私が比企谷君の事を好きでいる事を認めてくれた事

 

今まで私ひとりで悩み続けていた事がたったの数分の事で全て消え去った。そんな心の余裕も出来たからと

言ってもキリがないほどあるのだ

 

 

 

陽乃「ふふっ♪︎」

 

私は軽快なタップを踏み、そしてガードレールがある所で背をもたれ掛かった

これからどうやって比企谷君を落とすか考えながら私は機嫌よく景色を眺めていた

 

自然に囲まれ、木々の間からから見える綺麗な景色に鳥のさえずりなど、私の心を癒してくれる…

 

いつも気を張っているから、こうしてくつろぐのは本当に癒される…

 

 

 

八幡「こんな所に居たんですね」

雪乃ちゃんの看病を終えたのか、比企谷君が外に出てきた

 

陽乃「雪乃ちゃんは?」

 

八幡「ぐっすり眠ってますよ」

 

いいなー私も比企谷君に看病して貰いたいなー

今度風邪ひいたら頼んじゃお

 

陽乃「そっかそっかー 無事でよかったよ」

私はあっけからんとした表情のまま比企谷君と話をしていた

特に中身なんてない会話を続け

暫くして一息ついた頃…

 

 

 

陽乃「比企谷君」

私は1度大きく息を吸い、口を開いた

 

八幡「なんですか?」

 

彼はキョトンとした表情でこちらを見ていた

 

陽乃「…好きだよ」

 

私は自分の気持ちを真っ直ぐ彼に伝えた

その時彼はどんな表情をしていただろうか

 

 

 

 

 

目を覚ましたのはいいけど、誰も居ないわね

姉さんと比企谷君は散歩でも行ったのかしら?

 

気分が良くなった私はムクリと起き上がり

部屋を出ていった

自販機で飲みものを買っていると姉さんと比企谷君が外から帰ってきた。のだが、少し違和感を感じた

姉さんはいつも通りなのだけれど比企谷君は少しやりにくそうで少し気まづそうな雰囲気を出していた

 

雪乃「どこに行ってたの?」

陽乃「ちょっとお散歩してただけだよ〜景色もいいし、風も気持ちいいしね」

 

雪乃「そうね」

 

姉さんはそのまま部屋に戻っていき、比企谷君は途中で方向を変え、ロビーのソファに座っていた

 

どこか思い詰めたような…訝しげな表情をしていた

 

 

 

雪乃「姉さん、比企谷君に何があったの?」

 

私は部屋に戻り、1番に姉さんの所へ向かった

比企谷君のあの異様なほどの思いつめ方

姉さんがなにかをしたかに決まってる

 

陽乃「比企谷君に告白しただけだよ

比企谷君の事が好きだーって」

きっと姉さんはこうなる事を最初から予見していた筈だ

なのによりによってこのタイミングで…

 

姉さんの意図が読めない

 

陽乃「理由なんてないよ 私がすっきりしたかっただけ」

 

そう言いながら姉さんは薄く笑みを浮かべた

 

陽乃「雪乃ちゃん、容赦しないからね」

 

きっとこれは、姉さんからの宣戦布告なのだろう

本気で比企谷君を落とすということに対しての

 

きっと

比企谷君にした事も、私が姉さんに問い詰めようとするのも、全てよみきっていたのだろう

そして私はまるで手のひらでころばすかのように、全てを読み切った姉さんの遊びに付き合わされてしまった

 

 

本当に私は姉さんに勝てるのだろうか…

 

久しぶりに私は姉さんに警戒心を抱くことになった



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19話

私の今の状況は圧倒的と言えるほど不利だ……

姉さんに先手を打たれ、比企谷君は今現在姉さんのことで頭がいっぱいだろう。そんな状態で何か行動を起こしても、無意味に終わる可能性が高い…

 

 

実質的に私は何も出来なくなってしまった

今だけを見ると詰身という言葉が相応しいのかも知れない

だけれどココは現実世界、何が起こるか予測不可能

 

だから私はそのイレギュラーに掛ける

比企谷君が旅行中に答えを出すか分からないけれど、絶対に姉さんの思いとおりにはさせない

 

 

そう決意をかため私はひとりでに拳を握り力を込めた

 

 

しばらくすると

 

八幡「戻ったぞー」

 

さっきとは打って変わり、いつも通りの状態の比企谷君が戻ってきた。

 

いや、いつも通りというのは語弊があるわね。

いつも通りに似せたというのが正しいかしら

 

陽乃「遅かったね〜 ささ、ご飯食べよっか」

 

机の前に座り私達はご飯を食べだした

席順は私と比企谷君が隣同士で姉さんが向かい側となっている。普段の姉さんなら比企谷君の隣に来ようとするのに今日は敢えて向かい側に座っていた

 

食べ終わると姉さんはベランダに出ていき、比企谷君は椅子に持たれかかるように座っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は……陽乃さんの事が好きだ…ずっとそう思っていた

いや、今も多分好きなんだと思う

だけれど、陽乃さんの事を考えると頭の隅で雪乃の事を考えてしまう自分が居る

 

俺は…雪乃の事が好きなのか?と思う自分が居る…

自分の中に、雪乃の事が好きな自分と陽乃の事が好きな自分が共存してしまっている

 

これは俗に言う二股というやつなのかもしれない

同時に2人以上の女性を好きになってしまった俺が言うのだから 多分間違いはないだろう

 

いつからだろうか…雪乃の事を愛おしく感じるようになったのは

いつからだろうか…陽乃さんの事を本気で好きになったのは

 

いや、今更そんなのは関係ないか

いつからなんて関係ない…

 

大切なのはどちらの方が好きなのかだ…

日本では重婚は認められていないし、俺も望んではいない

 

八幡「はぁ…どうしたらいいんだよ……」

 

俺はついため息混じりに声を出してしまった

だが、雪乃は布団に潜って眠り、陽乃さんは…まぁどうだろうか…起きてるのかもしれない

つ〜かなんで俺が真ん中なんだよ…どっち向いても美女が居るとか眠れないだろ

陽乃「んっ、まだ起きてるの?」

 

隣の布団がモゾモゾっと動き 陽乃さんがこちらを向いてきた

布団からひょっこりでてる顔に一瞬ドキッとしてしまったが、すぐに心を落ち着かせることが出来た

 

八幡「陽乃さん…少しいいですか?」

 

陽乃「ん?何かな?」

 

俺は陽乃さんの布団に入り込み彼女を抱きしめた

 

陽乃「えっ!ひ、比企谷君!?」

 

あぁ…落ち着く…昔はよく抱きしめられて慰めてもらってたな

あの頃は2人のことも姉や妹のようにしか見てなかったからな

 

昔から本当に色々……

八幡「今まで、色々ありがとうございました」

 

俺は小さな声で呟き

眠りについた

 

 

 

陽乃「こっちこそ、色々振り回してごめんね」

 

次の日雪乃に夜に何があったか根掘り葉掘り聞かれたのは別のお話し



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20話

全くこの歳になって添い寝だなんて…

 

まぁ比企谷君が寝相悪かったのは知らなかったし、姉さんからではなく比企谷君から抱きつきに行ったみたいだからまだいいのだけれど…いや、良くないわ…意識がない状態とはいえ比企谷君は私ではなく姉さんを選んだという事…もしそれが本能的に動いたという事と考えると…やはり比企谷君は姉さんの事が好きという事になる。

 

……いえ、これこそ考えすぎね

 

はぁ…比企谷君が絡むと頭の残念な子みたいな感じになってしまうのはなんでなのかしら…

それほどに比企谷君のことが好きと言うことなのだろうけれど…まさか私がこれ程に人を好きになることがあるなんて…

 

 

 

昔は姉さん以外の周りの近い年齢の人達を見下していた…自分を高める努力もしようとせず、周りの足を引っ張りながら無駄な時間を過ごす有象無象の衆と思っていた…

 

 

特に男子なんて本当に馬鹿ばっかだと思っていたのだが…そんな時に姉さんが比企谷君を家に連れてきた

 

人とは違う考え方を持ち、自分というものをしっかりもっている歳の近い人に初めてであった

 

最初の頃は男子なんて…と思って敬遠していたが、いつの間にか彼だけは特別だと思うようになった

 

そして、彼にもとうとう思春期がやってきたが…結果は散々だった…

 

それでも彼は 私達にだけはいつもと変わらぬ姿を見せてくれた……いえ、少しだけ捻くれが増していたかもしれない

 

だけど根は変わらない 優しくて頼りがいのある大好きなお兄ちゃんだった

 

雪乃「こんな昔の事を思い出して何がしたいのかしら……」

 

自分に自問するが答えは返ってこない

 

八幡「何ブツブツ独り言言ってんだよ」

 

雪乃「ひっ!?」

 

後ろから急に話しかけられたから、驚いて変な声が出てしまった

 

八幡「なんだよ…そんなに驚いて」

 

雪乃「べ、別になんでもないわ…それより姉さんとお土産見に行ったんじゃ無かったのかしら?」

 

そう、あの後(添い寝の件)姉さんと比企谷君はお土産の下見に出ていった

私も誘われたのだけれど あまり歩き回りたくないから断ったのだ

 

八幡「あぁ、だから行ってきたぞ それでいい店あったからお前を呼びに来たんだよ。一店舗なら特に問題ないだろ?」

 

スマホで呼べばいいのに…わざわざ歩いて迎えに来るなんて……やっぱり比企谷君はあざといわ

 

八幡「ほら行くぞ」

 

グイッと腕を引っ張られ

無理やり連れていかれるような形で歩いていった

 

雪乃「やっぱり…ずるいわ」ボソッ

 

八幡「……俺が1番分かってるっての」ボソッ

 

そのまま手を繋いだまま私達は姉さんの元に歩いて向かった



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21話

比企谷君に連れられ、お土産屋を周り

一通りものを買い、部屋に戻ってきた

 

 

それから、朝食を取り…千葉に帰る準備をしていた

 

本当はあと1泊したい所だったけど、予約の問題上1泊2日が限界だった

 

 

でもそれだけの時間で充分だった

姉さんの本音を聞けて、比企谷君とも長い時間一緒に居れたから

 

片付けを終え私達は車に乗りこみ

千葉に戻って行ったのだが…

 

 

 

八幡「陽乃さん!危ない!!」

 

キキィ〜〜〜!!

 

陽乃「えっ!?」

 

 

キキキィィ〜〜!!ドォォォンン!!

 

 

一般道を走っている途中…横から物凄い勢いで飛ばして来た車と衝突しそうになった

 

間一髪の所だったが比企谷君が車が見える前に音で察知してくれたお陰でぶつかる事は無かった

 

 

 

 

車を路肩に止め私達は警察を呼びその場で待機していたのだが…

 

陽乃「ぁぁ………」ブルブル

 

姉さんが肩を竦ませ、ブルブルと震わせながら蹲っていた

あんな、人生最大級のトラウマシーンを

それも運転中に見てしまったのだから無理もないだろうけれど

姉さんにもあぁいう姿はできたのねとつい思ってしまった

 

その姿を見かねた比企谷君が

 

八幡「陽乃さん、大丈夫ですから…」

 

比企谷君が姉さんの前で中腰になり、姉さんの肩をさすりながら優しく言葉を掛けていた

 

陽乃「うぅ…怖かったぁ…怖かったよぉ…!」

 

姉さんは比企谷君の背中に手を回し抱きしめていた

比企谷君はそんな姉さんの頭を優しくて撫でていた

 

 

 

しばらくすると警察の方々がやってきて、色々事情を聞かれたが

比較的早く開放された

 

姉さんも何とか落ち着きを取り戻したが

流石に車の運転をするのは怖くて、出来そうになかったので

近くのホテルまで警察の方に運転してもらい

もう1泊することになった

 

一応明日に都築が迎えに来て貰えるので

安心なのだけれど…あれからずっと姉さんと比企谷君がくっつきっぱなしなのは少々癪に障った

 

 

本当はこんな気持ちを抱いてはいけないと分かっているのに…どうしても2人の姿を見ていると 嫉妬してしまった

 

 

 

 

 

 

 

八幡「あの、陽乃さん…いつまで手を握っているんですか?」

 

事故があった後から陽乃さんは、俺から離れなくなってしまった。どこに行くにも手を握りっぱなしで

 

離そうとすると涙目で嫌だと訴えかけてきた

正直言って可愛かったのだが…そろそろ俺も我慢するのがしんどくなってきた

 

陽乃「……」

 

八幡「あの、本当に漏れそうなので トイレ行かせてください!!」

 

言いたくはなかったがこのままでは色々とピンチだったので

本当のことを言い何とかなんを逃れた

 

……あの時の雪乃の冷たい視線は………忘れよう

あんなゴミを見るような目のことは

 

用を済ませ、部屋に戻ると……

 

八幡「…何してるんですか?」

 

陽乃さんが雪乃を抱きしめていた

雪乃は抵抗を諦めたのか

 

目のハイライトを消し、ぼーっとしているようだった

 

昔雪乃が言っていた…陽乃さんの抱き癖ってこういう事なのだろうか?もうとっくに解消したから!って陽乃さんは言っていたけど…なんだか蘇ってしまったようだ

 

雪乃はこちらを見て「助けて…」と言っていたが

俺は聞こえてないふりをした

 



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22話

「あっ、そこっ!比企谷君…上手よ…んんっ いいっ もっと…」

 

 

我ながら中々に変な声を出していると思う

だけれど…それ程に比企谷君が上手なのだ

 

 

「んっ、そこっ入ってる……あっんっ 気持ちいい…」

 

 

 

 

 

あの後姉さんを何とか引き剥がし、疲れた私は比企谷君に整体を頼んだ

 

肩と腰、背中周りだけなのだけれど、それでも準備過ぎるほど気持ちよくなれる

 

八幡「雪乃って案外凝り性なんだな…少し疲れたわ」

 

 

陽乃「えー?雪乃ちゃんって凝り性なの?意外〜」

 

姉さんは私の方を見ながら…何故か胸を強調してきた

あの、由比ヶ浜さんにも勝るとも劣らないほどの豊満な胸を主張し、比企谷君は目のやり場に困っているようだった

 

 

 

 

 

陽乃「…ねぇねぇ雪乃ちゃん 比企谷君ってもしかして性欲ないのかな?」ボソッ

 

姉さんがこちらに来て、耳元でボソッと話したかと思ったら まさかの下の話だった

 

雪乃「一応比企谷君も人間なのだから、あるとは思うのだけれど…」

 

実際これだけ長一緒に居るのに

比企谷君が欲情した姿などたったの1度も見た事ない

 

わざとでは無いとはいえ 私もいやらしい声を出していても反応していなかったし

もちろん姉さんのアピールでも…

 

少し心配になるレベルで彼のそういう姿を見た事がない

 

あれ、比企谷君のそういう所している姿自体想像がつかないわね…

 

陽乃「雪乃ちゃん…顔赤くしてどこまで考えてるの?」

 

ふと我に返ると姉さんがジト目でこちらを見つめていた

 

陽乃「ふーん、あの雪乃ちゃんがね〜」

 

雪乃「ち、違うの!べつに比企谷君が慰めているシーンとか考えてなんかいないわよ!」

 

八幡「は、はぁ!?」

 

さすがに今のは比企谷君にも聞こえていたらしく

酷く驚いていたようだった

 

そりもそうよね 自分の自慰行為の姿を想像されるとか

私は絶対に嫌ね

 

陽乃「へぇ〜そんなことまで考えてたんだ〜」ニヤニヤ

 

墓穴をほってしまった

前にも言ったけど…私ってこんなに残念な子だったかしら

 

頭を抱えながらそんな事を考えるも

やはり答えは出てこない

 

成績優秀…とある三十路教師以外からの評価も高く、完璧に近い成績をたたき出しているのにも関わらず、この残念さだ

 

 

 

八幡「と、とりあえずこの話は終わりだ 明日ははやいし早く寝るぞ」

 

比企谷君のお陰でなんとかこの話は終わったのだが

恥ずかしい思いをした

 

次の日になり都築が姉さんの車を運転し無事に千葉に帰ることが出来た

 

だけど、一時姉さんは運転をするのを物凄く嫌がるようになってしまった

 

 

 

 

 

 

八幡「ただいまー」

 

小町「あ、お兄ちゃんお帰り〜どうだった?なにか進展した?」

 

八幡「ん?まぁ色々な」

 

小町「色々?あっ!ちょっと待ってよ!その色々って何!聞かせてよ!」

 

八幡「また今度な、疲れたから寝る」



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23話

夏休み中盤頃由比ヶ浜から旅行に行ってる間犬を預かって欲しいと頼まれたので、預かったのだが…

 

雪乃「ひ、比企谷君!だめぇ何処にも行かないで…」ガクガク

 

家に遊びに来た雪乃が震えていた

忘れてた…コイツ犬苦手だったな

 

珍しく陽乃さんは来ず、今日は雪乃1人だった

確か親の代わりにパーティか何かに出てるって言ってたな

 

全く休みの日にご苦労な事だ

 

八幡「ほーらサブレー飯取って来るから大人しくしとけよ」

 

キャン!

 

何故だろう…何故か小町の声と似ている気がする

いや、これに触れたら何かやばそうだから

これ以上はやめよう

 

ご飯を与えると少し落ち着いたのか 静かになった

 

八幡「雪乃、どっか行くか?」

 

雪乃「え、えぇ…外に行きましょ」

 

流石にこのまま家に居るのは可哀想なので 雪乃を外に連れ出すことにした

 

八幡「流石に外は暑いな…」

 

服をパタパタさせながら汗を拭った

 

とりあえず特に行くところもなかったので 雪乃の提案でららぽに向かった

沙希「ん?比企谷じゃん、あんたがこんな所に居るなんて珍しいね」

 

ららぽの中を歩いていると川なんとかさんと出会った

 

八幡「…まぁたまにはな」

 

雪乃「お久しぶりです川崎さん」

 

そうだ!川崎だ!すっかり忘れてた

沙希「確か雪ノ下だったか?大志の件の時は世話になったね」

 

雪乃「いえ、あれは比企谷君が勝手に……」

 

沙希「あんただって色々解決しようと動いてくれたんだろ」

 

雪乃「ま、まぁ…多少は」

 

沙希「だから、お礼言ってんの」

どうも雪乃は川崎の事が苦手らしい

 

八幡「川崎は何か買いに来たのか?」

 

とりあえず意識を雪乃から逸らすために

話しかけたが…こういう時に上手く話に入っていけれればな…元ぼっちには無理か

 

沙希「ん?あぁ新しい裁縫道具を買いに来たんだよ あんたらは?デート?」

 

八幡「そんなんじゃねぇよ、強いて言うなら妹と買い物?」

 

まぁ、歳の差的にも妹みたいなものだしな…うん!周りからも怪しまれないように やっぱり妹というのが一番いいな

 

沙希「妹ねぇ……まぁ、あんたも頑張りなよ」

何故か川崎は雪乃の肩をぽんと叩きその場を去って行った

 

八幡「なぁ、今のどういう事なんだ?」

 

雪乃「比企谷君、世の中には知らなくてもいい事もあるのよ」

 

知らなくてもいい世界か。確かにこの世の中を見れば知りたくなかったこととかも山ほどある。だけれどこの状況では気になってしまう、人間というのはそういうものではないだろうか?

 

雪乃「ほら、比企谷君 早く行くわよ」

 

雪乃に手を引っ張られ、人混みの中を歩いて行った。目的地はやはりペットショップだった。

 

そこで雪乃は猫と戯れ ある程度長い時間をそこで潰した

 

 

 



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24話

彼は決して私達を拒む事は無い。我儘や、自分でやるべき事どは自分でしろと言うが、お出掛けや旅行…私達が急に泊まりに来ても、準備から何から何までしてくれる。それは彼の優しさからなのだろうか?

 

たまに心配になる事がある。私たちの存在が彼に迷惑をかけているのでは無いか?無理をさせているのではないか?そういう風に思ってしまう時がある。

 

陽乃「比企谷君〜アイス持ってきて〜」

 

比企谷君のベッドの上で足をパタパタさせながら本を読んでいるのは私の姉で、今の私にとって1番のライバル的な存在である

 

八幡「はいはい、雪乃もいるか?」

 

雪乃「え、えぇお願いするわ」

 

かく言う私もすぐ彼を頼ってしまうわけで、姉さんの事を咎めることも何も出来ないのであった。

 

比企谷君が居なくなり、静寂の訪れたこの空間。別に一緒の部屋に居るのは姉なわけで気まづい訳ではないのだが…何故か姉さんの事を意識してしまう。だが、姉さんは変わらず足をパタパタさせながら本のページを捲っていた。

 

だが、比企谷君の足音が聞こえなくなった時、姉さんはパタリと本を閉じ、ムクリと起き上がりヘッドから足だけを降ろし、こちらを向いて座った

 

雪乃「どうかしたのかしら?」

 

陽乃「この前…比企谷君とデートしてたよね?」

 

この前というのは、サブレを比企谷君の家で預り…私が怯えていた日の事である。でも…姉さんにはその時の話はしていないし、知り合いにあったのも川崎さんだけ…

 

雪乃「えぇ、したわよ二人きりで昼前から夕方までららぽに」

 

陽乃「ずっるーい!!私も行きたかった〜!なんでこういう仕事は全部私に回ってくるのよ!」

 

姉さんはかなり忙しい人間だ。時には雪ノ下家の長女として、時には優秀な大学生としての仮面を付け 色々と面倒事をこなしている

 

雪乃「仕方ないじゃない…私には社交性とかそういうのは無いのだから」

 

陽乃「なら…今度の花火大会の挨拶回り雪乃ちゃんがやってくれる?本当に挨拶して回るだけだから 社交性とかそういうのは必要ないし」

 

花火大会…出来ることなら比企谷君を誘って行きたかったのだけれど…姉さんもそりゃ行きたいわよね……

 

陽乃「あ、ごめんごめん無理して変わらなくてもいいのよ?そりゃ私だってたまには比企谷君と行きたいけど…元々私の仕事だから」

 

毎年毎年って訳ではないけれど…姉さんが高校に上がってから2年連続姉さんが挨拶回りに行っていた。一昨年も去年も私と比企谷君の二人で行き、花火が始まる頃に合流する。これがいつもの流れであった

雪乃「べ、別に無理では無いのだけれど……」

 

正直言って私は渋っていた。もしこの一日が原因で比企谷君が姉さんのものになってしまったら…とつい考えてしまう。

 

 

 

八幡「あっつ……アイス持ってきたぞ」

 

タイミング悪く比企谷君が帰ってきてしまった。実際エアコンを付けているのはこの部屋だけで カマクラもこの部屋のベッドの上で丸くなって寝ている

 

陽乃「ありがと〜」

 

雪乃「ありがと」

 

とりあえず話は中断し私達はアイスを食べる事にした



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25話

あれから特にこれといったものはなく、そのまま私達は比企谷君の家に一泊して帰った。なぜ1泊したかというと、突然の大雨で帰れなくなったから。2人揃って泊まるということで私と姉さんどちらが比企谷君の部屋で寝るか論争が始まると思っていたのだが、珍しく姉さんが小町さんの部屋で寝るからーと私に比企谷君と一緒の部屋で寝る権利を譲ってくれたのであった。

 

 

まぁ、だからと言って彼と特別進展があった訳では無いのだけれど…風呂に入っている間に布団が敷かれてあり、その後いつも通り彼がドライヤーで髪を乾かしてくれて、お話ししながら本を読んだりするいつも通りの光景だった…

 

普通に考えると夫婦や恋人のように見えるのかもしれないけど、彼はかなりの世話好きでなんやかんや言いながら色々してくれるのだ。

 

 

少し前の私なら布団に潜り込んだりしてみたのだけれど、今はそんな気分ではなかった。彼のことは好きだけれど、姉さんが私に譲ったことが気がかりだったから。その後普通に睡眠をとり、朝になると小町さんに起こされ、4人で朝食をとり、昼過ぎに迎えを呼び私達は帰宅した。

 

陽乃「雪乃ちゃん、比企谷君と居ると飽きないわねー」

 

雪乃「そうね、彼みたいに変わった人はそうそういないもの」

 

車中姉さんと少しの雑談はしたけれど昨日の花火大会の話みたいな重い話は1度もしなかった。このまま有耶無耶にしていい話ではないのだけれど、私から聞くことが出来なかった。

 

できることなら私だって彼と一緒に行きたいし、少しでも長く一緒にいたい。それは姉さんも一緒のはず。

 

 

 

そんな事を延々と考えながら私は一日を過した

 

 

 

 

八幡「はぁ…俺もそろそろ決めねぇとな」

 

2人が帰ったあと俺は自室に戻り黄昏ていた。美少女2人から言い寄られ、俺はその2人の子…両方とも好きになってしまったのだ。

 

俺は溜息をつきながら椅子に座り自分自身に呆れていた

 

八幡「つーか2人とも可愛すぎだろ!!あんなん選べって言う方が無理だろ!」

 

1人で不満をぶつけるものの、俺の声は虚しく空気に溶け込んでしまった。その後布団に潜りその日はこの事を考えるのをやめた。

 

 

 

 

 

朝日が登り、日光が俺の顔に目掛けて攻撃をしてきた。昨日の夜窓を開け、黄昏ていたせいかカーテンを閉めるのを忘れていたようだ。俺は重い体を起こし、カーテンを閉め二度寝するために布団に潜った。これで俺の睡眠の邪魔をするものは居なくなった。そう思っていたのも束の間、珍しく俺の携帯に電話がかかってきた。

 

 

 



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26話

ざぁーっ ざあーっ

 

天気予報では雨とはなっていなかったが、外は物凄い土砂降りになっていた。

 

夜の9時を回ろうかという時間、殆どの人は帰宅し、今更こんな時間に大雨が降ってもどうって事はない…と普段なら思うだろう

そう、今日を除いては…

 

 

 

花火大会…結局俺は雪ノ下姉妹とは行かなかった。今の俺にはどちらか一方だけを選ぶ勇気がなかった。だから今年は行かないつもりだった。あの電話があるまでは…

 

「もしもし」

「あ、もしもしヒッキー!」

 

あの日電話を掛けてきたのは由比ヶ浜だった。

 

「なんだ?」

 

「なんだ、って…まぁいっか あのね、今月の終わりにある祭りあるじゃん もし良かったらさ…一緒に行かない?」

 

「祭りか…」

 

俺はこの時断るつもりだった。雪乃から誘われても陽乃さんから誘われても…どちらか一方を選ぶ勇気がなかった。つい残された方のことを考えると…

 

「もしかして、ゆきのんに誘われてた?ごめんね…この話は忘れて」

 

「ち、違っ!まだ、誰と行くとか決めてない…」

 

「ほんと!!?ならさ、一緒行こ!!詳しい話は今度メールするから!」

 

こっちが、なにかを言う前に由比ヶ浜は電話を切り、俺の意見なんてもはやないも等しい感じだった

 

八幡「由比ヶ浜とか…まぁ悪くはねぇか」

 

毎年雪乃と行ってるがたまには違う人と行くのもいいかもしれない…行かないのが1番楽で良いんだが

 

こうして俺は由比ヶ浜と祭りに行くことになった

 

それから何度かメールでやり取りをし、当日になった。

 

少し早めに家を出り、集合場所の駅に向かった。待ち合わせの場所に着いたのは30分前だったのだが、由比ヶ浜は俺が着いた5分後くらいにやってきた

 

結衣「あ、ヒッキー!こっちこっち!」

 

八幡「……まだ待ち合わせまの時間まで20分以上あるぞ」

 

結衣「ほら、私から無理やり誘ったみたいな所あるし、待たせたら悪いかなー?とか思って」

 

自覚あったのかよ…

 

結衣「ちょっと早いけど行こっか!」

 

八幡「おい、引っ張るなって!それにそんな早く歩いてるとコケるぞ」

 

結衣「へーきへーき、毎年履いてるから!きゃぁ!?」

 

フラグ回収早すぎだろ!?

 

八幡「危ない!」

 

目の前に段差があるのに気がついてない由比ヶ浜は膝がガクンと折れ転けそうになったが、なんとか腕を掴むことに成功し無事に済むことができた。

 

結衣「あいたた…ごめんね、ヒッキー…」

 

八幡「全く…気をつけろよ」

 

結衣「じゃ、じゃあさ手繋いでいい?履きなれない靴だと危ないし」

 

八幡「ほらよ、人多いし離れるなよ」

 

断ろうと思ったがこいつを見ていると小さい頃の雪乃を思い出した。



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27話

夏祭り、普段の俺から考えると縁遠いもののように感じるかもしれないが、これでも毎年のように参加しているのだ…相手は妹みたいなものなんだけど…だからこそ、違う人との祭りは少し新鮮であった。これがもし陽乃さんとか違うやつなら凄くドギマギしていたんだろうなーと思う。由比ヶ浜はアホの子前回なおかげで同級生の女の子とデートみたいなシチュエーションよりも、近所の子と遊んであげてるみたいな感じの方がするまでもある。

結衣「ねーねー!ヒッキー!次はあっちの屋台行こ!」

まるで初めて祭りに来た子供のようにはしゃいでいる由比ヶ浜の後を着いていき一緒に祭りを楽しんだ。意外にも由比ヶ浜はスーパーボールやヨーヨーすくいなどの遊びは凄く上手かった…こんな量どうするんだって程に。

 

結衣「えへへ〜大漁だね〜」

 

八幡「大量な、それだと魚になるだろ」

 

折角祭りに来たから挨拶回りに来ている陽乃さんに挨拶しに行く事にした。

 

結衣「ゆきのんのお姉ちゃんか〜どんな人なんだろ」

 

八幡「色んな意味で凄い人だぞ」

 

そう、本当に色んな方向ですごい人だ。スタイルや外面もだけど、あの性格…

 

結衣「そういえばゆきのんは来てるのかな?」

 

どうだろ?あいつあんまりこういうの来たがらないし

 

八幡「どうだろうな、由比ヶ浜は夏休みの間雪ノ下と遊びに行ったりはしたのか?」

 

あいつら姉妹、夏休みの半分くらいうちで過ごしてるし…

 

結衣「んーとね、2回くらい遊びに行ったよ」

 

あいつもちゃんと友達として由比ヶ浜の事認めてるし、少しは成長したんだな…

 

結衣「ヒッキーって、ゆきのんの本物のお兄ちゃんみたいだよね」

 

八幡「そうか?」

 

結衣「うん!ヒッキーって面倒見いいし、文句言いながらも何でもしてくれるし、そして……すごく優しいから」

 

八幡「……」

 

結衣「私ね、ヒッキーのそういう所大好きなんだ」

 

八幡「え?」

 

結衣「あっ!そそそそういう意味じゃなくて!!頼りがいのあるお兄ちゃんみたいでいいなー!とか あはは」

 

そうこうしてるうちに来賓席が見えてきた

 

雪乃「え?由比ヶ浜さんに比企谷…君?」

 

後から声が聞こえ振り向くとそこには雪乃の姿があった

 

八幡「よっ、雪乃も来てたんだな」

 

結衣「あ、やっはろー!ゆきのん!」

 

雪乃「え、えぇこんにちは たまにはって事で姉さんと一緒にきたのよ」

 

八幡「そうか、じゃあ陽乃さんも来てんのか」

 

雪乃「えぇ…それより比企谷君今年は来ないんじゃなかったのかしら?」

 

八幡「あーいや、それはだな」

 

結衣「私が誘ったの」

 

雪乃「そう…」

 

その時雪乃は少し悲しそうな表情をしていた気がした

 

陽乃「もう雪乃ちゃん遅いよ〜心配して来ちゃたじゃない〜」

 

雪乃「あ、姉さん」

 

結衣「姉さん?こ、この人がゆきのんのお姉ちゃんなんだ!凄い美人さんじゃん!ねーヒッキー!!」

 

八幡「あ、あぁそうだな」

 

陽乃「ん〜そこに居るのは?もしかして比企谷君の彼女さんかな〜?」

 

結衣「か、か、かかかか彼女!?ち、違いますよ!」

 

陽乃「あちゃ〜違っちゃったか〜ごめんね」

 

結衣「い、いえ!えっとゆきのんとヒッキーの友達で同じ部活仲間の由比ヶ浜です!」

 

陽乃「私は陽乃、雪乃ちゃんのお姉ちゃんだよ〜」

 

結衣「ほへ〜 ヒッキーが陽乃さんのこと凄い人って言ってたから どんな人かと思っちゃったけど、とっつきやすい人で良かった〜」

 

八幡「ちょっ!おまっ…」

 

陽乃「へーそんな風に言ってたんだ私の事」

 

陽乃「これでも昔比企谷君に告白された事あるんだよ〜」

 

結衣「えぇ!?ひ、ヒッキーが告白!?」

 

八幡「昔の話だ…」

 

雪乃「姉さん、そのくらいにしてあげて…比企谷君の目が潤ってるわ」ボソッ

 

陽乃「あっ、そっちにもダメージ行っちゃったか…反省反省」

 

 

しばらくしたら花火が打ち上げられた

来賓席で4人で並んで花火を見ていた

しばらくすると、雪乃が俺の手を握ってきた。それに反応し雪乃の方を向くと、今にも泣きそうな表情でこちらを見つめていた

 

 

 

雪乃「ねぇ、比企谷君 由比ヶ浜さんと一緒に花火来るのなら言ってくれれば良かったのに…どうして何も言ってくれなかったの?」

 

八幡「…分からん」

 

雪乃「そう……私と行くのを断った理由…貴方のことだからどちらか一方を選べなかったんでしょ?」

 

八幡「…」

 

雪乃「それでも、私は…どちらか選んで欲しかった」

 

八幡「すまん」

 

雪乃「私は貴方のことが好きよ」

 

八幡「あぁ」

 

雪乃「答えは、出してくれるの?」

 

八幡「いつか、必ず…」

 

雪乃「逃げね」

 

八幡「そうかもな」

 

雪乃「貴方は…ずるいわ」

 

八幡「そういう人間だからな」

 

雪乃「知ってるわ」

 

八幡「軽蔑するだろ」

 

雪乃「しないわよ…だっていつか絶対に答えを出してくれるんでしょ?」

 

八幡「……」

 

雪乃「待ってるから」

 

八幡「あぁ」

 

陽乃「なーに2人でコソコソ話してるのかな?」

 

話してるうちにいつの間にか花火が終わったようで陽乃さんが覗き込むような形でこちらを見ていた

 

雪乃「な、なんでもないわ」

 

八幡「そんな事より早く帰りましょ 早く行かないと電車混むので」

 

陽乃「そうだね、私達は車だけど比企谷君とえーとが浜ちゃんは乗ってく?」

結衣「ヒッキーどうする?」

 

八幡「いや、俺達は電車でかえります」

 

由比ヶ浜にあの車は酷だろうし…

 

俺は一年ほど前とある1匹の犬を助ける為事故にあった

幸い怪我は軽くで済んで良かったのだが…その犬の主人が由比ヶ浜だったのだ…俺も思い出したのは最近だったし、わざわざ今更なにかいうつもりも無いが…由比ヶ浜にとってはトラウマものだろう…自分の不注意で事故を起こしたとか思ってそうだし。

 

陽乃「あー…そっか じゃあまたね〜」

 

陽乃さんは多分気がついてくれたのだろう。あの車の中に乗ってたのは陽乃さんだし…

 

雪乃「さよなら、比企谷君 由比ヶ浜さん」

 

こうして俺達は各々帰宅するため別れたのだった



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28話

どうしてこう上手くいかないものなのか…それもまた人生というものなのかもしれない…だけど、これはあんまりだろ!?

 

雪ノ下姉妹と別れ駅に向かっていると突如大雨が降り始めた。とりあえず近くにコンビニがあった為直ぐに傘の調達は出来たのだが…どうやら電車が止まってしまったらしい。

 

八幡「由比ヶ浜、お前家この付近か?」

 

結衣「ううん、歩いて帰れるような距離ではない」

 

だよな、まず駅で待ち合わせた時点でそんな気はしたけどさ

 

八幡「タクシーは捕まりそうにないし、バスは待ちが多すぎる、だからといって電車は脱線事故の為運休」

 

これ、詰んでね?

 

八幡「由比ヶ浜、親呼んで車で連れて帰ってもらえ」

 

結衣「ヒッキーはどうするの?」

 

八幡「まぁ、最悪ホテルにでも泊まる」

 

結衣「そう…私もそうしよっかな お母さん免許持ってないし、お父さんはいま出張で今居ないから」

 

まじかよ…そういう俺も良心ともに今は居ないんだが

 

結衣「ホテルってこの辺あるの?」

 

八幡「今探してる……あっ」

 

結衣「ヒッキーどうしたの?」

 

やばい、これはまずいですよ!

 

八幡「……」

 

八幡「この付近ラブホしかない…」

 

結衣「ラブホ?……ラ…ブ…うえぇ!!?」

 

流石にこれは駄目だろ…

 

八幡「ま、まぁ最悪別々に入って違う部屋取れば言い訳だし…流石に外で1泊は嫌だろ?」

 

結衣「う、うぅ…確かに……でもぉ」

 

八幡「まぁ、嫌なら外で1日潰すしか無いが…つーかこの辺ネカフェも無いってどういうことだよ」

 

結衣「そ、外は嫌!ジメジメしてるし…」

 

八幡「ってやべ、急がねぇと空き部屋なくなるぞ」

 

結衣「あ!ちょっと待ってよー!」

 

 

いざラブホの受付に行ってみると

 

「すみません、あと一部屋しか空いてないんですよ…」

 

八幡「由比ヶ浜、お前泊まれよ俺は駅で過ごすから」

 

結衣「ヒッキーとならいいよ?」

 

八幡「は?」

 

結衣「2人で入ります!」

 

「ふふっ、分かりました」

 

なんか由比ヶ浜に引っ張られとうとう部屋まで来てしまった

 

八幡「案外部屋は普通なんだな」

 

結衣「そうだね〜」

 

とりあえずベッドに座り一息をつく

 

結衣「変なイメージ強かったから敬遠してたけど殆どビジネスホテルと変わんないから良かった」

 

八幡「……」

 

それでも机の上とかにはゴムとか置かれているわけで、その辺にはできるだけ意識しないといけないな

 

とりあえず由比ヶ浜、俺の順番でシャワーを浴びベッドで横になっていた

 

結衣「まさかヒッキーと同じ部屋に泊まる事になるなんて想像もできなかったなー」

 

八幡「そうだな」

 

結衣「ヒッキーテレビ付けていい?邪魔になるなら付けないけど」

 

八幡「俺の事は気にしなくていいぞ」

 

結衣「ありがと」

 

ん?あれ…ここラブホだったよな……あ!?

 

八幡「由比ヶ浜付けるな!」

 

結衣「ふえっ?うわわわぁあ!?」

 

すぐにリモコンを取上げテレビを消す

 

八幡「…すまん配慮が足りんかった」

 

結衣「ううん、付けたの私だし…」

 

その後もなんやかんやと恥ずかしい出来事はあったがなんとかその日は寝ることが出来たのであった



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29話

確かに悪いことをしたら説教をされるのは当たり前だし、それは然るべきバツだと思う。人間誰しも失敗するし、そうして経験を経て人間は成長をしていく。いい事と悪いことの区別をつけ、自分で感情をセーブし、大人になっていく。だが、世の中なは理不尽な説教というものもある。自分のミスじゃないのに怒られたり、イラついてる上司からの八つ当たりなどなど……

 

今回の件は一体どうなるのか?

 

 

 

雪乃「比企谷君!ちゃんと聞いているのかしら!」

 

ドンッ!と机を叩き怒気を孕んだ声で怒鳴ってくるのは、キュートでみんな大好き雪ノ下雪乃であった。

 

八幡「はい」

完全に萎縮し、正座をして縮こまってる俺は小さく返事をし俯いていた。だって俺悪くないもん

 

陽乃「比企谷君、1から10までちゃんと説明してもらうまで逃がさないから、さっさと白状した方が身のためよ」

 

後ろには魔王雪ノ下陽乃が君臨していた。いつものなにか含んだような笑顔ではなく、足を組み真顔でこっちを見ていた

 

 

先日のお祭りの日俺と由比ヶ浜は大雨に会いやむ無くホテルに泊まった。当然間違いなんて起きることも無くその件は一段落したのだが…どういう訳かこの姉妹にバレてしまった

 

八幡「なぁ、雪乃…俺はどうしたら良かったんだ?」

 

雪乃「そうね、確かに貴方がした行動は間違ってはいないわ、でも私や姉さんに頼るという選択肢もあったでしょ?そ、それに…男女がホテルで同じ部屋なんて……」

 

最後の方ゴニョニョ言っていたが、それなら俺が雪乃と寝るのもアウトじゃねぇか。と突っ込みたかったがそういう空気ではなかったので噛み殺した

 

陽乃「兎に角、雪乃ちゃんは手を出す出さないじゃなくて、私たちをどうして頼ってくれなかったのかを聞きたいの」

 

どうしてって…そんなの迷惑かけたくなかったからに決まってるだろ…いつもこんな俺にも優しくしてくれて一緒にいてくれるだけですごく感謝してるのに

 

八幡「心配させたくなかったんだよ」

 

雪乃「そう、貴方らしいわね でもね比企谷君…頼られないってかなり辛いのよ」

 

陽乃「雪乃ちゃんね貴方が帰ってこないって心配してたのよ?」

 

八幡「ちょ、ちょっと待て、なんで俺が帰ってきてないことを知ってたんだ?」

 

あの日は小町も友達の家泊まりに行っていたから誰にも連絡してないはず…まさか

 

陽乃「合鍵貰っちゃったから来ちゃった♪」

 

犯人は小町か…まぁ小町は後で説教するとして…

 

八幡「2人とも正座」

 

雪乃「どうしてかしら?今は貴方の説教を」

 

八幡「雪乃」

 

雪乃「っ……ご、ごめんなさい勝手に家に入りました」

 

雪乃が涙目で反抗してきたが睨み返し、少し声音を変えるとしゅんと大人しくなった。後は

 

八幡「陽乃さん俺のパンツ返してください」

 

陽乃「あれ、なんで私が盗んだって分かったの?」

 

まずこの人以外有り得ないだろ

 

八幡「何故かパンツが1着だけ無くなってたから不審に思ってたんですよ、それに雪乃にそんな度胸があるようにわ思えないし。という事で早く返してください」

 

陽乃「比企谷君、私に勝とうだなんて100年早いわよ」

 

八幡「はい?」

 

この時の発言を俺は人生で初こんなにも後悔をすることになるとは思わなかった

 

 

 

 

陽乃「映画」

 

八幡「はい?」

 

陽乃「恋愛」

 

八幡「!!?」

 

陽乃「秘蔵 パスワード 0107…雪乃ちゃんの1月生まれと私の7日の誕生日を合わせて…」

 

陽乃「そしてまさか私たち姉妹の画像をあんなに持ってる上に隠してたなんて悪い子ね」

 

八幡「す、すみませんでしたぁー!」

 

どうしてパスワードまでバレたんだ!?その前に違うパスワードでPC自体にロックかけてるのに

 

陽乃「比企谷君、確かにおかずにしていいよって半裸の画像送った事あったけど…流石にお気に入りに入れられてるのは……」

 

八幡「これ以上はやめてください!死にたくなるから!!」

 

その後俺は陽乃さんに急所を付かれまくって精神的にやられたのは別の話



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30話

久々に…いやもう何年ぶりか分からないけれど、その日は久しぶりに私は寝坊をした。

夏休みももう終わりに近づきそろそろ生活のリズムを戻さないといけない時期に差し掛かったこの頃、比企谷君から珍しくデートのお誘いを受けた。待ち合わせは朝11時の駅前で2人きりでとの事だった。

 

そのお誘いを受け年甲斐もなくはしゃぎそして当日……寝坊をしてしまった。

いつも朝の7時には目を覚ましゆっくりと朝食を取り余裕を持って生活をしているのに今日に限って寝坊をしてしまった。

急いで携帯を手に取り時間を確認すると、現在時刻は正午ピッタリ、そして30分前に比企谷君から一通の着信履歴だけが映し出されていた。

 

雪乃「こんな筈じゃ無かったのに…」

 

昨日からわざわざ来ていく服やバックなどを考え折角お洒落しようと思っていたのに……そんな事よりまず早く連絡して謝らないと…きっと彼の事だから今も駅で待ってそうだし

 

電話帳から比企谷君を選び電話を掛ける。そうすると、すぐに通話は繋がり息遣いの荒い比企谷君が出てきた。

 

八幡「今どこにいる!何かあったのか!?」

 

あぁ彼はきっと私が事故かじけんにでもあったと思って、必死に探し回っていたのね…

 

雪乃「ごめんなさい…いま、起きたの」

 

八幡「はぁ……」

 

電話越しに深いため息が聞こえてくる…きっと呆れられたのね…こんな私じゃ姉さんにも敵わないし比企谷君から見捨てられてもおかしくないもの。

 

八幡「お前が無事でよかった…マジで心配したんだからな」

 

怒声または呆れた声が聞こえてくると思っていた。でも彼から出てきた言葉はすごく優しいものだった。声音もすごく柔らかくなり、いつまでも聞いていたいと思えるようなものだった。

 

雪乃「えっ」

 

八幡「今お前の家の近く居るから今から向かうわ、走り回って汗かいて暑いし」

 

雪乃「……怒らないの?」

 

私は何より彼がどうして叱責してくれないかが疑問だった。時間の管理もできずに人に迷惑をかけ、挙句の果てに寝ていたなんて…もし私が反対の立場なら罵倒が飛びそうなものなのに。

 

八幡「怒らねぇよ誰にだって失敗ぐらいあるだろ、それに俺なんかしょっちゅう寝坊して小町に怒られてるしな」

 

彼のこういう所…私は本当に好き。誰に対しても優しくそして温かい。少し捻くれた所もあるけれど、それでも真っ直ぐと芯の通った人間。そういう所に私も…姉さんも惹かれたのよね。

 

雪乃「そう、ありがとう比企谷君」

 

八幡「今更礼なんて言うなよ、どう返したらいいか分からん」

 

今ここに居ないけど彼がいたら頬をポリポリと掻きながら照れているような気がした

 

雪乃「私、これから準備するから切るわね」

 

八幡「おう、俺も後10分くらいで着くからな。それじゃ」

 

そう言って電話はプツリと切れた。私は布団から体を起こし身支度を始めた



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31話

嫉妬とかそういうものではないのだけれど、ここに来てライバルが増えるなんて思ってもみなかった。彼の事を分かってくれる人はそうそう居ない、少なくとも好意を寄せるほどに彼のことを知りえるのは私と、姉さんと由比ヶ浜さん位だと思っていたのだけれど……

 

「比企谷君〜一緒に行きましょ♪」

 

「ねぇ、なんで無視するんですか?私の事嫌いなんですか?」

「さりげなく優しく接して私を落とすつもりですか?ごめんなさい私葉山くん一筋なので!」

 

「あっ!ちょっと待ってくださいよ〜」

 

最近事ある毎にとある先輩が比企谷君に付きまとっていて、その間私は蚊帳の外。私も比企谷君も文化祭の実行委員になったのに、その先輩も比企谷君と一緒に実行委員になりまた私は蚊帳の外。最近はそんな事ばかり…新学期が始まりまた一学期の時のように一緒に居られると思っていたのだけれど、現実はそう甘くはなかった。

 

放課後になり部室に鍵を取りに行き、職員室からでてくると向こうからとある2人の話し声が聞こえてきた。そのうちの1人は比企谷君でもう1人はあの亜麻色髪をした女子だった。

 

「お、重い…どうして教師ってこう重たいものは生徒に運ばせようとするんですかね」

 

八幡「自分が楽したいからだろ、ほらダンボールもう1個貸せ、前ちゃんと見えてねぇだろ」

 

「でもそうすると比企谷君が」

 

八幡「ほら、こうやって片手ずつ持てば大丈夫だから早く上のせろ」

 

「あ、ありがとうございます…」

 

そんなやり取りをしながら比企谷君達が職員室の方に向かってくる

 

八幡「あ、雪乃部室の鍵取りに来たのか??」

 

雪乃「えぇ、比企谷君は日直の仕事かしら?」

 

八幡「まぁそんな所だ、これ職員室に運んだら終わりだし一緒に部室行くか?」

 

雪乃「え、えぇそうね そうしましょう」

 

そう言って彼は職員室の中に入り、後に続いて亜麻色の髪をした先輩がこちらに会釈をしにっこり顔で職員室に入って行った

 

 

 

 

 

 

比企谷君と二人で雑談しながら奉仕部へ向かうと先に由比ヶ浜さんが部室の前へ来ていた。

 

結衣「珍しいね〜この時間にゆきのんが部室着いてないなんて」

 

雪乃「ごめんなさい、お待たせしたわね」

 

八幡「あーそれ俺のせいだわ、さっき職員室前で会って引き留めたから」

 

結衣「あーなんか重たそうな荷物いっぱいあったね、そういえばヒッキー 最近一色さんと仲良いよね?」

 

一色さん?あの亜麻色の髪の人の事かしら?

 

八幡「別に良くはねぇよ」

 

結衣「そうなの?傍から見たら凄く仲良さそうだけど、」

 

八幡「同じ委員になって少し接点が出来ただけだ」

 

結衣「でも一学期の時クラスでもそんなに目立つ子じゃ無かったのに最近かなり変わったよね、前はつまらなそうに1人で居た感じだったのに」

 

八幡「中学の時同じ周り女子から可愛いからって理由で虐められてたんだと、それであんまり人付き合いとかしなくなったらしい」

 

周りからの嫉妬や妬み…私も何度も経験したことはあるけれど、割り切れなかったらかなり辛いものだと思う。私は比企谷君と言う心の支えがあったし同級生に微塵も興味がなかったから。

 

八幡「まぁ悪いやつじゃねぇしお前らも構ってやれ、あいつ結構人懐っこいし」

 

たまに見せるあの優しい表情。それはよく私たち姉妹に対してしていた表情だ。もしかしたら彼女…一色さんはもう私達と同じくらいの距離に立ってしまっているのかもしれない。何年もかけて築き上げてきたこの場所に。

 

八幡「どうしたんだ?さっきから黙って」

 

雪乃「いえ、貴方がそこまで気を許していることに少し驚いていただけよ」

 

八幡「気を許すって…別に俺ピリピリしたりしてないだろ」

そういう意味ではないのよ…本当に鈍感なんだから。そうこうしているうちに下校時刻になりその日は各々帰宅をした




皆さんお疲れ様です作者の少佐です。やっと一色いろはが出せませた!いやぁここまで長かったですw 2ヶ月ほど前にとあるYouTuberさんのライブでこの作品にいろはが出てきて欲しいと言われ悩みに悩みながら出すことにしました。ですが原作とは違い八幡と同級生で同じクラス。各種設定を軽く変えて一色いろはではあるが違う人でもある 所謂キャラ崩壊したキャラとして採用しました。人によっては不快に思うかもしれませんがご了承ください。ではまた新話で会いましょう


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32話

いろは「雪ノ下さん…だよね?」

 

数日後私はあの一色さんに呼び出されていた。話したいことがあるから放課後に屋上に来てと言われて。

 

雪乃「えぇ、はじめまして一色先輩」

 

屋上に着いた瞬間からなにかピリピリとした空気が流れているような気がした。生唾を飲み込み私は警戒心を抱きながら挨拶をした。

 

いろは「そんなかしこまらなくてもいいですよ、たった1年早く生まれてきただけですし」

 

雪乃「そう、分かったわ。それでどうして私を呼び出したのかしら?」

 

無駄に長々と時間を使い、相手のペースに引きずり込まれる前に私は先手を打った。これなら、こちらのペースに持っていきやすいし質問をしやすい。

 

いろは「率直に聞きますが雪ノ下さんと比企谷君ってどんな関係なんですか?」

 

前に見たキャピっとしていた雰囲気とは違い、少し重苦しい感じがした。これが彼女の素の部分なのだろうか。姉さん程ではないにしてもここまで皮を被ってるなんてある意味凄いわね。

 

雪乃「そうね、恋人と言ったら貴方はどうするのかしら?」

 

質問を質問で返すていう愚行。だけどこれはこれで挑発として使える。昔同級生に問い詰められた時に正論で問い詰め返したら泣いて帰って行かせることに成功した程に強力なのだ。

 

いろは「それならそれでもいいと思います」

 

雪乃「え?」

 

私は彼女の意外な返答に困惑してしまった。だって彼女のあの行動は比企谷君を異性として好いているものにしか見えなかったから。

 

いろは「私、実は違うクラスの女子から虐められていたんですが比企谷君が助けてくれたんです」

 

いろは「顔で勝てないからって精神的に追い詰めるとか…本当にクズみたいな女だなって私を虐めてた子達に言ってくれたんです」

彼らしいわね。私も何度も助けられてきた。それは姉さんもおなじ。彼にはたくさんのものを与えてもらった。

 

いろは「そんな優しい彼だから、報われて欲しいと思ったんです。少しでも楽しく過ごして欲しい、私を助けてくれた恩返しをしたいって。だから私は彼が幸せならそれでいいんです。」

 

雪乃「貴方は、それでいいの?」

 

いろは「え?」

 

雪乃「自分の気持ちを押し殺してまで無理して辛くないのかしら」

 

いろは「……」

 

雪乃「私は貴方のことを知らないし分からないけれど、私だったら嫌、自分の好きな人が違う女子と一緒に居るだけで胸が張り裂けるような痛みを感じる程に辛いもの」

 

いろは「ぽっと出の私が雪ノ下さんや由比ヶ浜さんに適うわけないじゃないですか!それも雪ノ下さんに関しては雪乃ってフランクな感じに呼んでもらえるほど近しい存在なのに 私の入れる余地なんて何処にあるんですか」

 

私とあんまり変わらないのね…

 

雪乃「私だって最初は入る余地なんて無かったわ…比企谷君は姉さんの事が好きで 傍から見たら両思いにしか思えないほどに仲がよかったんだもの」

 

いろは「両思い?」

 

雪乃「えぇ、その頃の比企谷君は姉さんの事しか見えてなかったわ」

 

いろは「それからどうなったんですか?」

 

雪乃「姉さんが私に気を使って比企谷君の事振ったの。そこからね比企谷君が一人に固執するようになったのは。でも何とか持ち直したけれど」

 

いろは「それなら、どうして比企谷君はいつも1人なんですか?」

 

雪乃「1人?」

 

いろは「どこか寂しげな表情で外を見たりしてますよ、たまにですが、戸塚君や由比ヶ浜さんが話しかけたりしてるけど、昼休みも普段1人で何処かに行っていますし」

 

雪乃「あんまり気にする事はないわ、比企谷君自分の時間を邪魔されるの嫌いだから」

 

いろは「そうなんですか?」

 

雪乃「えぇ、面倒な人でしょ。我儘で自己中で捻くれて、それでも根はすごく優しくて」

 

八幡「悪かったな自己中で捻くれてて」

 

何故か帰したはずの比企谷君が出てきた。

 

いろは「ひ、比企谷君!?」

 

雪乃「いつから聞いていたのかしら?」

八幡「雪ノ下さんだよね?の所から」

 

という事は全部ね…

 

雪乃「はぁ…盗み聞きなんて呆れるわ、罰として今日はあなたの家に泊まらせなさい」

 

八幡「一色 すまんな色々気を使わせて 俺のことは気にしなくていい、俺はやりたいようにやってるだけだから」

 




長くなりそうだから キリ悪いけどここで切ります
次話で続き描きます!


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33話

あの後雪ノ下には先に下に降りてもらい一色と2人きりになれる状況にしてもらった。俺自身一色がそういう事を思っていたなんて思って無かったし、どうせ文化祭が終われば切れてしまう関係だと思っていたからだ。

 

八幡「一色、俺はお前にどうこうされるほど不幸せなやつでも無いし、される義理もない」

 

いろは「…」

 

八幡「はぁ…そんな暗い顔するなよ つまりだな、助けられたからとかそういうのじゃなくただ単に…」

 

俺はここで1度深呼吸をした。呼吸を整え、一色の方を真っ直ぐと向き彼女の目を見てから口を開いた。

 

八幡「友達になって欲しい」

 

少し前後の会話がおかしかったかも知れない。だけど一色にはちゃんと伝わったみたいだ。

 

いろは「もう、比企谷君のバカ。そんなの断れるわけないじゃないですか」

 

彼女は涙を流しそうな顔で、しかしながらちゃんとこちらの顔をしっかりと捉え、返事をした

 

 

 

 

 

一色との件も無事に終え俺は家に帰ってきた。とりあえず疲れたのでシャワーを浴び、着替え、そして夕食までの間仮眠をとることにした。

 

「…………い……ん」

 

「お……い……ゃん」

 

五月蝿いな…こっちは眠いのに

 

小町「おにいちゃん!!」ドンッ

 

八幡「こ、小町!?」

 

小町の声と共に体に鈍痛が走った。おもわず俺は起き上がり何が起きたか確認しようとした。

 

小町「いってて…ごめん大丈夫?」

 

どうやら小町がバランスを崩し俺の上に倒れ込んできたようだ。全く…わざわざ布団の上に乗って起こそうとするからだ。

 

八幡「わり、もう飯できたのか?」

 

小町「それはもうすぐできると思うけど…というかお兄ちゃん!また新しい女の子に手出したの!?」

 

はぁ?何を言ってるんだこいつは?

 

小町「うわぁ…お兄ちゃんのジト目頂きました〜」

 

八幡「新しい女ってなんだよ、生まれて此方彼女すら出来たことねぇんだぞ」

 

小町「それじゃあキッチン見ておいで、小町が言ってること分かるから」

 

小町に言われ渋々キッチンに向かった。確かに誰かがいるようだ。明かりがつき、ガスが使われているような音がしていた。

 

八幡「……」

 

部屋に入り誰がいるのか確認するとそこには

 

いろは「あ、比企谷君お邪魔してま〜す」

 

雪乃「起きたのね、お寝坊さん」

 

八幡「えっと警察は110番だったよな」

 

スマホを取りだし家に不法侵入しているやつを追い出すためにスマホの画面をタッチする。

 

いろは「ま、待って下さい!私です!一色いろはです!通報しようとしないで!」

 

俺のスマホからピッと音がなった瞬間泣き叫ぶような声で一色が制止してきた。

 

本気で通報するつもりは無かったがここまで反応してくれるとこっちも楽しいな。まぁそんな事より…

 

八幡「お前らここで何してる」

 

雪乃「何って、あなたの家に泊まりに来たのよ。学校で言ったじゃない」

 

いろは「私は雪ノ下さんについてきました〜」

 

こいつら……

 

 

 

この時今夜は一波乱起きそうだなと心のどこかでそう確信した



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34話

俺に人権というものはあるのだろうか…ふと俺はそんなことを思った。家にいても勝手に上がってくる魔王とその妹。俺の許可無く勝手にpcの中身やおかしなどを漁りそして当然のように俺の部屋で眠りにつく。こんな事を野放しにさせておいて本当に大丈夫なのだろうか。いいや、大丈夫な訳が無い。実際陽乃さんには前歴がある訳で、これ以上俺の扱いが酷くなるのは勘弁だ。

 

八幡「おい、当然のように俺のベッドで寝ようとするな。リビングか小町の部屋行け」

 

布団をバサッと取り上げ我儘姉妹にそう伝えた。いつもいつも勝手に俺の部屋を使われこっちの身にもなれって話だ。まぁこいつらに何を言っても折れてくれないからこっちから引き下がるしか無いんだが…

 

陽乃「さむーい返して〜」

 

雪乃「そうよ、風邪ひいたらどう責任とってくれるのかしら」

 

一色と雪乃が作ったご飯を食べたあとこいつらをどう帰そうかと1人画策していたのだが、運悪く陽乃さんが泊まりに来てしまった。基本暇人である陽乃さんそこそこの確率で金曜日になると家に遊びに来るのだ。いつもなら夕飯だけ食べて部屋でゴロゴロし9時過ぎ位に帰るのだが今日は何故か泊まる気できていた。もうそれからは察しがつくだろう。それがこの結果だ。

 

八幡「もういい、俺がリビングで寝る」

 

幸い一色は小町の部屋で寝ているのでリビングには誰も居ない筈だ。このままだと俺の理性がやばいし、そして安寧に過ごすことができない。

 

陽乃「もう、拗ねちゃって本当に比企谷君は可愛いな〜」

 

陽乃さんに腕を捕まれ布団に押し倒された。

 

八幡「んっ!?く、苦…し」

 

引っ張られた時にバランスを崩し陽乃さんの胸に埋もれる形になった。柔らかくて、凄くいい匂いが鼻腔を擽るような気がしたが段々息が苦しくなり始めてきた。とりあえずなんとか陽乃さんの胸の中から逃れる事ができた。

 

雪乃「比企谷君、時には諦めも肝心よ」

 

これで安心出来るとおもった瞬間、横から雪乃が腕にするすると巻きついてき、今度は本格的に逃げられない形になった。

 

八幡「おい、こんなの小町や一色に見られたらどうするつもりなんだよ」

 

陽乃「その時はその時に考えよ」

 

雪乃「そうね」

 

改めて思い知った。こいつら姉妹が手を組むと俺にはどうも出来ないらしい。何を言っても流され、逆に俺がなだめられる。俺がいくら作を講じようがこいつらには効かない。それならいっそ諦めた方が楽なのかもしれない。

 

八幡「はぁ…もう好きにしろ」

 

そうして俺は諦めて2人のおもちゃおなるのであった……

 

 

 

そして後にこの状況が大波乱を呼ぶのはまだ知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 



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35話

ハーレムというのはいつもどこかで躓いてしまうものだ。多数の女の子を侍らせ自分は特定の1人を選ぶことなく、独占する。もしかしたらその中でも上下があるかもしれないが、俺にはそんなの関係ないしまずハーレムエンドなんて望んでないからだ。なのに何故…こうなってしまったんだ………

 

 

 

「それで、八幡君何か言い訳はありますか?」

 

八幡「ないと言えば嘘になりますが、特に無いです」

 

「はぁ…大体貴方は……………」

 

昨日結局あのまま寝る事になり諦めて俺も寝ていたのだが、次の日の朝雪乃と陽乃さんの様子を見に来た雪ノ下母にあの惨状を見られてしまった。何故俺の家にいるか分かったかと言うと。殆どの場合土曜の朝にマンションに2人が居なければ俺の家に居るからだ。

 

 

 

いろは「比企谷君って雪ノ下さんのお母さんから嫌われてるんですか?」

 

雪乃「えぇ…かなり嫌われてるわ」

 

いろは「昔になにかあったんですか?」

 

雪乃「…手を抜いたのよ」

 

いろは「へ?」

 

雪乃「彼、母さんと将棋で勝負してる時たった1度だけで態と母さんに勝たせたのよ」

 

いろは「はぁ…それが嫌われてる理由ですか?」

 

雪乃「プライドの高いお母さんには十分過ぎたのよ。馬鹿にされた。プライドを傷つけられたって姉さんが言ってたわ」

 

いろは「なるほど〜(雪ノ下家族はプライドの塊なんですね)」

 

 

 

それから、小一時間程説教が続いた。雪ノ下母はまるで自分の子供に対して怒るかのように勉強や普段の私生活も注意された。全く説教されるこっちの身にもなって欲しいものだ。あいつらはいつの間にか俺の部屋からスマ〇ラ持ち出して遊び始めてるし。

 

八幡「つ、疲れた…」

 

「それはこっちのセリフです…」

 

なんとか今日の小言(長時間)は終了しやっと開放された

 

陽乃「お疲れ災難だったね」

 

八幡「まぁ、グダグダしてる俺にも原因あるんですけどね」

 

雪乃「比企谷君、紅茶よこれで少しリラックス出来ると思うわ」

 

「(彼も彼なりに努力してるのね、いつも1人で居ることに固執して少数の人物にしか心を開かなかったのに)」

 

「八幡君暇な時でも雪ノ下家に来なさい。私の手が空いていれば相手してあげますから。それと…」

 

八幡「え?あっ!はい!!」

 

こうして大魔王事ままのんが帰って行った

 

陽乃「それで〜最後帰り際にお母さんから何を耳打ちされたのかな?」

 

やっぱりバレていた。俺の隣を通り過ぎると同時にほぼ違和感もなくされたのにこの人にはバレていた。

 

雪乃「耳打ち?」

 

八幡「2人には関係ない事ですよ」

 

流石に「早くどちらかを選んであげなさい」って言われたとか言えるわけないだろ…

 

こうして朝から続いて修羅場?はお昼前に終わったのであった



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