五等分の勇者の混沌記 (藤林 明)
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出会いとはじまり編
はじまりは唐突に


「……ここは何処だ?」

 

上杉風太郎が目を覚ました際の第一声である。

それもそのはず。ついさっきまで中野姉妹のお世辞にも広いとは言い難いアパートの一室で家庭教師をしていたのだから。

 

「こんな前例聞いた事もないぞ…早く王様へ報告せねば!!」

 

「あ、おい!!」

 

風太郎の質問を無視して目の前に居た魔術師のコスプレ(実際は本物の魔法使いだがその事実を風太郎は知らない)をした人物はこの怪しげな部屋(石造りのいかにもな感じの一室)から出て行った。

 

「……本当に何なんだ?」

 

「う、うーん…」

 

「…あれ?」

 

「……フータロー?」

 

「ふあぁ~っよく寝たー…ってここ何処ですか!?」

 

「上杉君…これは一体…?」

 

魔術師のコスプレをした人物が出て行った扉を見ていた風太郎に後ろから5人の声が聞こえた。そう。風太郎が家庭教師をしている問題児こと中野姉妹である。

(ちなみにかなりそっくりな世にも珍しい五つ子である)

 

「……お前らが1人も欠けずに居るということは、あの部屋に居た全員が飛ばされたって事か。……面倒な事になったなこれは」

 

「それよりこの状況でよく冷静でいられますね…」

 

そう風太郎に声を掛けたのはアホ毛と星のヘアピンが特徴の中野家末っ子こと中野五月。

 

「……どっかの誰かさん達のおかげで想定外の事には慣れた、って感じだがな。…だがまぁ、流石にこの状況には驚いている」

 

「そんな風には見えないんですけど…」

 

風太郎の返答に対して苦笑気味に答えたのは緑色のリボンをウサギの耳のように付けている中野家の四女、中野四葉。

 

「もしかしてフータローは今どんな状況かわかるの?」

 

風太郎の方を見ながらそう質問するのは首にかけたヘッドホンと前髪で片目を隠しているのが特徴の三女、中野三玖。

 

「まぁ、ある程度は理解したが納得してはいないってところだがな」

 

「それでも理解できる辺りがあんたらしいわ…てか一花はそろそろ起きなさいよ」

 

風太郎の返事に肩をすくめながらも隣で未だに目を覚まさない長女を起こしているのは大きなリボンでハーフアップツインにした髪形が特徴の中野家次女、中野二乃。

 

「う~ん…あと5分…」

 

そして、こんな状況でも目を覚まそうとしないショートカットの髪型に片耳のみのピアスが特徴の中野家の長女、中野一花。

彼女は昨日夜遅くまで女優の仕事(今回は映画の撮影)があって睡眠時間が少なかったこともあり絶賛寝不足なのである。

 

「……家ならこのまま寝かせておきたいとこだけど」

 

「こんな所で寝てたら風邪引いちまうしな。…あとこんな所で全裸になられても困る」

 

「そうね……ほら一花!」

 

「…も~…うるさいなぁ…てここ何処!?私いつの間にか夢遊病に!?…それとも撮影の途中?あれ!?」

 

「落ち着け一花。お前が夢遊病な訳でも撮影の途中で寝たわけでもない」

 

起きてから自分の置かれた状況に混乱気味の一花に風太郎が声を掛ける。

 

「そうよ。あたしも正直今の状況なんてさっぱりだわ。だからこのおかしな状況を理解したみたいなこと言ってるあいつがむしろおかしいのよ」

 

「おかしいってなんだよ……まぁいい。それよりもお前ら、想像以上にまずい状況だぞ」

 

「「「「「えっ?」」」」」

 

「落ち着いて聞いてくれ。……今、俺達は<異世界>にいる可能性がある」



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情報を整理してからだな1

注:本作は以降台詞前に名前を入れていきます。
(登場人物が多過ぎる為と会話フェイズが多い為)


一花「…異世界って、それは流石にそれは無いんじゃ…」

 

風太郎の言葉に一番最初に正気に戻った一花が動揺しながらも聞き返すも風太郎は

 

風太郎「いや、間違いないと思う」

 

と断言した。

 

風太郎「疑問点はいくつかあるがまず、この場所だが恐らくは何らかの儀式場であると予測できる。…その理由としてお前達が寝ている時に魔術師みたいな格好をした連中が何人か居たからだ」

 

五月「その人たちは何処に?」

 

風太郎「この部屋から既に出て行ってる。何でもイレギュラーらしいから王様へ報告が必要らしい」

 

二乃「……続けて」

 

風太郎「あぁ。…そもそも俺達の時代に王様なんて概念ほどんど無いだろ?」

 

三玖「うん、少なくとも日本には無い」

 

五月「そうですね…外国の一部国家ではまだ王制がありますが…」

 

風太郎「そう。そこで次の疑問、何故相手の言葉が分かるのか?という点だ」

 

四葉「あ!そっか、外国だったらそもそも言葉がわかりません!!」

 

風太郎「その通りだ四葉。通常海外で外国語を理解できる条件はその言語に精通しているかもしくは生活したことがあるかの二択。だが俺はどちらも該当しない」

 

一花「待ってフータロー君。君から声は掛けたの?」

 

風太郎「そりゃかけたさ。気づいたら見知らぬ場所だぞ?近くの人間に声くらいかけてみるさ」

 

三玖「結果は?」

 

風太郎「……正直何とも言えん。相手は相当焦っていたし、すぐに出て行ってしまったからな」

 

五つ子「…………」

 

一花「…話しをまとめると、

   ●気がついたら神殿っぽいところにいる

   ●魔法使いみたいな格好の人を見た

   ●ここは王様がいる国みたい

   ●外国なら相手の言葉は分かるけど相手がこっちの言葉をわかるかはわからないというのはおかしい

   …と、こんな感じかな?」

 

風太郎「あぁ。こんな事現実でありえるか?…って考えてふと一花がこの前出てた映画の内容を思い出してな」

 

一花「あー、あれかな?主人公がいつの間にかいた異世界で活躍するやつ」

 

三玖「確か図書室で読んでた本から異世界に召喚されちゃったやつだよね」

 

風太郎「そうそれ。…フィクションの内容とはいえこの状況はアレに酷似し過ぎてないかと思ってな」

 

二乃「…………どうなのよ一花」

 

一花「……」

 

二乃から指摘を受けて一花は辺りを見回してみる。

 

一花「……細かい所は少し違うけど、…うん。ここはあの映画の舞台となった世界にあった儀式場と同じ」

 

四葉「じゃあ…!」

 

二乃「……」

 

三玖「ここは」

 

五月「異世界。それも御伽噺の中という事になりますね」

 

???「皆様」

 

姉妹「!?」

 

風太郎「…なんだ?」

 

???「王がお会いしたいとの事ですので謁見の間までご同行ください」

 

風太郎「…一花」

 

一花「ついて行こう。あのお話の通りなら今は多分大丈夫」

 

風太郎「わかった」

 

???「ではこちらへ」

 

こうして一行は謁見の間へと移動した。



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謁見は面倒くさい

追記
():小声描写。ひそひそ話し。あと心の声


神殿から謁見の間へ向かう道中…

 

風太郎(あの神殿城の一室だったんだな)

 

一花(うん、そこもお話通りだったよ)

 

三玖(じゃあこの後の展開も…)

 

風太郎(いや、おそらくかなり変わるはずだ。何故なら俺達というイレギュラーがいるからな…)

 

三玖(なるほど)

 

風太郎(だから原作を知っているからと油断するなよ)

 

三玖(わかった)

 

一花(…ねぇ、でも性格自体は変わらないはずだから皆に聞いてもらいたい事があるんだけど)

 

二乃(何よ突然)

 

一花(王様と<第一王女>に気をつけて。あの二人は)…っ!」

 

???「どうしましたか?」

 

一花「い、いえ何でも…」

 

???「もうじき着きますので今しばらくの辛抱を」

 

四葉「大丈夫です!!疲れてはいませんので気にしないでください!」

 

???「そう言って頂けると幸いです」

 

一花(…この続きは後で言うね)

 

==============================

謎の魔術師風の格好をした人物に案内されて到着したのは王城の一室<謁見の間>。

そこには城の兵士と、玉座には王様と思われる老人がいた。

 

???「ほう、こやつ等が例のイレギュラーか……ワシはこの国の王、オルトクレイ=メルロマルク32世だ。お前達は何者だ?」

 

風太郎「…俺は上杉風太郎。ただの学生だ」

 

一花「ちょっ!?フータロー君!?…もー…」

 

風太郎のぞんざいな挨拶を聞いて焦った声を出す一花だったが居住まいを正すと

 

一花「このものが大変失礼しました。僭越ながら私はこちらにおります姉妹達の長女をしております中野一花と申します。どうぞお見知りおきください」

 

と控えめなカーテシーをしながらの見事なまでの挨拶をする。

 

二乃(なんだかよくわからないけど、一花がああするってことはここで変な態度は取らない方が良いってことね…)「次女の中野二乃と申します」

 

三玖「中野三玖。三女」

 

四葉「はいはーい!私は四女の中野四葉です!!宜しくお願いします王様!!」

 

五月「私は末っ子の中野五月と申します。宜しくお願いします」

 

オルトクレイ王「うむ…さて、まずはこちらの事情を説明せねばなるまい」

 

王の話を要約するとこんな感じである。

●現在この世界には終末の予言と言うものが存在する。

●いずれ世界を破滅へ導く幾重にも重なる波が訪れる。

●その波が振りまく災害を撥ね退けなければ世界は滅ぶ。

●その予言の年が今年であり、そこで呼び出したのが<四聖勇者>である。

 

オルトクレイ王「という訳なのだが、過去に勇者召喚の際に4人以上召喚されたというケースが無いのでな」

 

風太郎「それで俺達をここに呼んだって訳か…なるほどな」

 

オルトクレイ王「話を理解してもらえた所で、問おう。お前達は何者なのだ?」

 

風太郎「…………」

 

一花(フータロー君、ここは私に任せてもらえないかな?)

 

風太郎(何か考えでもあるのか?)

 

一花(うん)

 

風太郎(わかった。任せたぞ)

 

一花(ありがと)「…王様、宜しいでしょうか?」

 

オルトクレイ王「何だ」

 

一花「私達姉妹は5人、勇者様は確か男性4人だったはず。そしてこちらの男も合わせれば男性は5人となります」

 

オルトクレイ王「確かにそうだが、それが何だというのかね?」

 

一花「恐らくですが、波が最大級である可能性があり、召喚勇者1人につきサポートパートナー1人が召喚された可能性があります。勇者同士でパーティが組めない以上、短期でのレベル上げが必須である今回の波がそれに当たるのではと愚考致しましたが…いかがでしょうか?」

 

オルトクレイ王「なるほどな……では、誰が誰のパートナーとなるのかを今夜中に決めよ。明日には勇者共は出発する故な」

 

一花「承知しました。では勇者様方と顔合わせをしたいのですが…」

 

オルトクレイ王「うむ」

 

一花の提案にオルトクレイ王は頷き、近くの大臣へと目配せをする。

 

大臣「はい、それでは皆様こちらでございます」

 

一花「ありがとうございます。それでは王様、一旦失礼致します」

 

オルトクレイ王「……」

 

王様へ向けて挨拶をしてから一行は大臣に連れられて勇者の居る部屋へと向かうのだった。



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ご対面

すいません。本作は最新話を何度か修正していくスタイルなので表現やら何やらが変化している可能性がありますがご容赦下さい。


大臣に案内されて移動している道中・・・

 

一花「みんな、抑えてくれてありがとうね」

 

三玖「あの王様嫌い」

 

二乃「あら、珍しく同意見ね。あたしは一花が居なかったらキレてたわ」

 

風太郎「お前らなぁ…」

 

大臣「申し訳ありません。実は…………」

 

大臣は話す。王の過去を。そして盾の勇者についてを。

 

――――そして、1人の少女は決意した。

 

大臣「という訳なのです。皆様には大変ご迷惑をおかけし申し訳ございません」

 

風太郎「…………」

 

四葉「……決めました」

 

五月「え?」

 

一花「まさか……」

 

二乃「はぁ…」

 

四葉「私は――」

 

====================================

大臣「着きました。こちらです」

 

城の一室をノックした大臣は、そう言って一行を勇者達が会議をしている来客室へと誘った。

 

???A「誰だ?」

 

???B「ヒューゥ♪」

 

剣を腰に挿した風太郎達と歳の近そうな少年がこちらへと懐疑的な質問をし、槍を持った年上の男が五つ子を見て口笛を鳴らず。

 

大臣「こちらの皆さんは、本日勇者様同様に召喚された者達でございます」

 

???A「なるほど…サポートキャラみたいなものか…」

 

???C「そういうことなら、自己紹介でもしましょうか」

 

???D「…………」

 

大臣「それでは失礼致します」

 

大臣はそう言って退室した。

 

???C「じゃあまずは僕から。僕の名前は川澄樹。年齢は17歳、高校生です」

 

大臣が退出した後、最初に自己紹介したのは、弓を持った若干パーマが掛かったウェーブヘアーが特徴の大人しそうな少年樹【いつき】。

 

???B「じゃあ次は俺だな。俺の名前は北村元康、年齢は21歳、大学生だ」

 

次に自己紹介したのは軽い感じのお兄さんと言った印象だがその実面倒見の良いお兄さんのようにも感じる槍を持った男元康。

 

???A「俺は天木錬だ。年齢は16歳、高校生だ」

 

次に自己紹介したのは剣を持った少年錬。外見は、美少年と表現するのが一番しっくり来る感じで、切れ長の瞳と白い肌がいかにもクールという印象を与える。

 

???D「……岩谷尚文。年齢は20歳、大学生だ」

 

最後に自己紹介したのは盾を着けた青年。……だが、ついさっきまで勇者同士で話し合った内容のショックが抜けてないのか若干放心状態での挨拶となってしまった。

 

風太郎「じゃあ今度はこっちだな。俺は上杉風太郎。歳は川澄と同じ17歳で高校生だ」

 

一花「私は中野一花。歳は川澄君と同じ17歳で高校生だよ。ヨロシク~♪」

 

二乃「あたしは中野二乃。…色々面倒だから言っちゃうけど、アイツ以外は姉妹で五つ子よ」

 

三玖「中野三玖。五つ子の三女。よろしく」

 

五月「私は中野五月【いつき】です。そちらの樹【いつき】さんとは名前が同じなので呼びやすい様に呼んで下さい。…で最後が…あれ?四葉?」

 

それまでずっと黙っていた四葉に五月が声をかける。

 

四葉「……はっ!す、すいません!私は、中野四葉です。宜しくお願いします」

 

声を掛けられた四葉は慌てて自己紹介をした。

…実は四葉、少々緊張していたので反応が遅れたのである。

 

元康「さて。自己紹介も済んだし早速意見交換をしようか!」



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君に決めた

槍の勇者元康の提案でお互いの情報交換を行った一行。

その最中、一花がふと思いついたように話し始めた。

 

一花「あ、そうそう。せっかくだから皆聞いて欲しいんだけど」

 

風太郎「さっきのか」

 

一花「そう。4人も聞いて欲しいんだけど、…あの王様の言うことはあまり信用しない方がいいよ」

 

錬「どういうことだ?」

 

一花「実はね――」

 

そう言ってから自身の知ってる物語の概要を話した。

勿論核心的な部分は隠してだが。

 

一花「――これが私の知っている事。だからこの先行動には気をつけて欲しいの」

 

樹「…なるほど…それが本当なら、尚文さんへの陰謀のひとつやふたつありえそうですね…」

 

錬「そうだな…」

 

一花「あと、元康さん」

 

元康「ん?」

 

一花「冒険者のマインという女には気をつけてください。その女の正体はこの国の第一王女、マルティという卑劣な女なので」

 

元康「えっと…一花ちゃんだっけ?何で俺にだけ忠告すんの?他の奴にはいいのか?」

 

一花「……あまり初対面の年上の人に言いたくないのですが、元康さんは女性に弱そうなので…」

 

錬「確かに元康なら、何にも疑わずに女の意見を信じそうだな」

 

樹「こちらの世界に来た理由も女性関係の問題でしたし、見る人が見たら分かるってやつなのでは」

 

元康「ちょっ…!お前らなぁ…!!」

 

一花「あはは…とりあえず、明日の謁見の際に同行者を派遣されると思うからその時に赤い髪の身なりがしっかりした女に気をつけてください」

 

元康「お、おう…一花ちゃんがそう言うなら…」

 

一花の言葉に渋々という感じに同意した元康を見て手を挙げた者がいた。

 

二乃「ねぇ」

 

風太郎「どうした二乃」

 

二乃「あたしがそいつ見張ってようか?」

 

元康「んなっ!?」

 

一花「二乃?」

 

二乃「どうせあたし達、勇者1人に1人ついて行かなきゃならないでしょ?…ならあたしがそいつと組んで変な風に動かないか監視してれば良いんじゃない?」

 

五月「二乃、あなたはそれで良いんですか?」

 

二乃「……そりゃあ、あたしだって風太郎と行きたいわよ。…でも、一花がこういう時に名指しで忠告する時ってだいたい言っても聞かないだろうって時が多いの。なら、あたしの役割は皆の危険を減らすために動く。でしょ?」

 

一花「二乃……」

 

風太郎「…………さっきも言った通り、こいつら全員誰かのパートナーとして付ける様に王様から言われてる。だから勇者側の面々もそのつもりでいてくれ」

 

元康「……わかった。こんな可愛い娘と一緒だし、理由はあれだが俺はそれで構わない。これからよろしく二乃ちゃん」

 

二乃「…ふん。まぁ、よろしく」

 

風太郎「さて、あとは…」

 

風太郎が話を進めようとした時、不意に四葉が尚文の前へと歩いていった。

 

四葉「…岩谷さん」

 

尚文「……なんだ?」

 

四葉「私は、岩谷さんとパートナーになりたいです。…良い、ですか?」

 

尚文「……俺のレベル上げは大変だぞ?それでも良いのか?」

 

四葉「はい!勿論ですっ!!困ってる人は放っておけませんから!」

 

五月「四葉のこと、よろしくお願いしますね。岩谷さん」

 

尚文「…あぁ、よろしくな!」

 

樹「残りは僕と錬さん、風太郎さんですね。どうしますか?」

 

錬「…他に姉妹の中で希望がある奴はいるか?」

 

錬の言葉に一花、三玖、五月は逡巡した後

 

一花「じゃあ、三玖はフータロー君とだね」

 

三玖「一花!?」

 

五月「ええ、私もその方が良いと思います」

 

三玖「五月まで!?…どうして…」

 

一花「どうして、って…」

 

五月「この中で一番人見知りなのは三玖ですからね。その点、一花は仕事で慣れてますし私もこの二人なら上杉君の時よりもうまくやれそうですから問題無いですし」

 

風太郎(五月のやつ…あの時の事未だに恨んでやがるな…)

 

三玖「……そこまで言うなら……わかった。よろしくね、フータロー」

 

風太郎「お、おう。よろしくな」

 

一花「さて、あとは私と五月だけど……」

 

五月(一花、すみません。私ちょっと天木君とは……)

 

一花(わかってる。似てるからでしょ、フータロー君に)

 

五月(はい…すみませんが…)

 

一花(いいって別に!お姉さんに任せなさい)

 

五月(ありがとうございます)

 

錬「……話し合いは済んだか?」

 

一花「うん、こっちはオッケーだよ。ということで、私がレン君と一緒に行くね」

 

錬「そうか…これからよろしく頼む」

 

樹「では僕の方が」

 

五月「はい、私という事になります」

 

樹「わかりました。よろしくお願いしますね」

 

こうして、パートナーが決まった一行は明日に備えて寝る事になった。

寝室に関して少々問題が発生したが、それはまた別のお話である。




次話でひとまず1章終わります(章の名前変えるかもです)


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パートナーと仲間

予定通り今話で一章が終わります。


翌日、勇者一行と中野姉妹+風太郎は朝食を終えて、王様からお呼びが掛かるのを待っていた。

そんな中、こんな一幕があった。

 

樹「そういえば、風太郎さんは勇者なんですか?」

 

風太郎「あー、それなんだが…これを見てくれ」

 

そう言って風太郎は懐から一冊の本を取り出した。

 

樹「これは?」

 

風太郎「昨日川澄や天木から教わったステータス魔法とやらで確認したところ、こいつは伝説の魔導書という武器らしい」

 

錬「……魔導書って事は後衛職か?」

 

樹「恐らく魔法を得意とするジョブではないかと」

 

元康「ってことは、パートナーが必然的に前衛職で時間を稼いでその間に魔法の詠唱をして攻撃するって戦法になる感じかぁ。…っておいおい、こんな可愛い女の子に最前線やらせるとか酷くねぇか?」

 

三玖「っ!」

 

四葉「三玖……」

 

三玖「…大丈夫。フータローは、私が守るから」

 

錬「……まぁ、レベルが上がればものすごく戦力になる事は間違いない。レべリング頑張れよ風太郎」

 

風太郎「あぁ……」

 

兵士「勇者様方、王がお呼びです」

 

そして、呼び出しを受けた一行は謁見の間に向かった。

 

==========================================

謁見の間に到着した一行を出迎えたのは多数の兵士と、色々なジョブ(戦士や魔法使い、武闘家や踊り子などなど)の格好をした男女数名だった。

 

風太郎(おい一花)

 

一花(うん。どうやら予想通りみたい)

 

樹(まさか本当に一花さんが言ってた通りの人達が居るとは思いませんでした…)

 

錬(なら、話し合いの通りでいこう。…元康、気をつけろよ)

 

元康(わ、わかってるよ…)

 

オルトクレイ王「さて、早速だが勇者の同行者として共に進もうという者を募った。どうやら皆の者も、同行したい勇者が居るようじゃ。さあ、未来の英雄達よ。仕えたい勇者の元へ行くのだ」

 

そう王様が言うと並んでいた男女がこぞって勇者達の元へと来て後ろへと並んだ。

ちなみに人数は

錬、4人

元康、4人

樹、4人

尚文、0人

風太郎、0人

である。

 

尚文「やっぱ俺のところはゼロ、か…」

 

四葉「岩谷さん……」

 

事前に一花から聞いていたとはいえ現実を見た尚文は皮肉気味に呟き、そんな尚文を心配する四葉が声を掛ける。

そして、そんな2人を無視する様にオルトクレイ王は話を続けた。

 

オルトクレイ王「さて、次にそこの姉妹達はどの勇者と共に行くのだ?」

 

一花「私は僭越ながら剣の勇者様と参ります」

 

二乃「あたしは槍の勇者様と行きます」

 

そう二乃が言うと、後ろの方から小さく舌打ちが聞こえた。…もちろんそれには気づいたがあえて気づかないフリをする勇者一行と五つ子達。

 

三玖「私は風太郎と一緒」

 

五月「私は弓の勇者である川澄君に同行します」

 

オルトクレイ王「ふむ。では盾の勇者と共に行くのは」

 

四葉「私です!」

 

オルトクレイ王「……よかろう。それでは支度金を配布する。仲間の居ないナオフミ殿には銀貨800枚、他の勇者殿には600枚用意した。これで装備を整え、旅立つが良い」

 

四葉の声に渋い顔をした王様だが、気を取り直して支度金を配布した。…だが

 

三玖「王様」

 

オルトクレイ王「なんだ」

 

三玖「フータローには支度金無いの?」

 

オルトクレイ王「勇者に対しては支度金を用意したが、勇者以外の者に払う金は無い」

 

三玖「フータローは勇者。その証拠はある」

 

三玖がそう言うと、後ろから風太郎が魔導書を出して王様へ見せる。

 

オルトクレイ王「……この様な伝説の武器は見た事も無いが…確かに伝説の武器と記されているな」

 

風太郎「ま、俺たちの存在自体イレギュラーなんだ。こういう事もあると分かって頂けるとありがたい」

 

オルトクレイ王「……仕方あるまい。おい、そやつにも支度金を用意せよ。仲間もおらんから銀貨800枚だ」

 

大臣「か、かしこまりました」

 

そう言うと大臣は財務の担当者と思わしき人物と共に退出した。

 

オルトクレイ王「…イレギュラーな事態ばかりだが、皆の者。健闘を祈る」

 

一行「はっ!」

 

王様へ一礼した後、謁見の間を退出した一行は城門まで移動したのだった。

 

次章へ続く。



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盾の勇者の冤罪編
情報を整理してからだな2


両方の原作知らないと分からないニュアンスばっかりになってしまう…
初見バイバイみたいになってしまってすいません…


風太郎が貰い忘れた支度金(要求したのは三玖だけど)を取りに戻るというトラブルはあったがなんとか城門まで移動してきた一行。

そして、各々が出発しようかなとなっていた矢先にある人物が動き始めた。

 

???「あの、槍の勇者様」

 

元康「ん?どうした?」

 

???「私は攻撃手段を持ってない盾の勇者様の下へ行っても良いと思っているのですが…」

 

元康「君は…えーっと…」

 

???「…そういえば自己紹介がまだでしたね。私はマイン=スフィアと申します」

 

元康「!」

 

樹(赤髪で名前がマイン…この人が一花さんの言ってた…)

 

錬(あぁ。警戒すべき第一王女の特徴と一致している)

 

元康が名前を聞いて驚く中、樹と錬の2人は声を潜めて認識合わせをする。

そう。この女こそ要注意人物の1人である第一王女、マルティ=S=メルロマルクである。

 

一花(本当に冒険者に扮してるなんて……じゃあこの後の展開次第では…)

 

錬「一花」

 

一花「ほあっ!?」

 

錬の近くで元康とマインのやりとりを見ていた一花は、不意にかけられた声に驚いた声を出す。

 

錬「?どうした?」

 

一花「い、いや~いきなり声掛けられて驚いちゃった…あはは」

 

錬「……それで、お前が言ってたのはあいつで間違い無いんだろうな?」

 

一花「…うん。間違いないよ」

 

錬「そうか…なら」

 

一花「うん。とりあえず打ち合わせ通りでお願い」

 

錬・樹「わかった」

 

 

元康「……俺は別に構わないが…あとは尚文次第だな……おーい、尚文。ちょっといいかー」

 

尚文「なんだ元康。大きな声出して」

 

元康「いや、俺の仲間のマインがお前との同行を申し出てきたんだが…」

 

尚文「!……なるほど。…一応俺には四葉が居るから1人ではないとはいえ仲間が多いに越したことはないからな。一緒に来たいのなら歓迎するよ」

 

マイン「ありがとうございます。これからよろしくおねがいしますね」

 

尚文「ああ」

 

そんな感じで尚文とマインはお互い握手をしていたが、その光景を

 

二乃「……」

 

四葉「……」

 

2人はじっと見つめていたのだった……。

 

========================================

風太郎「さて、情報を整理しよう」

 

頃合を見計らって風太郎はそう切り出した。

その言葉を合図に全員が集まり、錬が地図を出して確認を始めた。

 

錬「あぁ。まずは活動範囲だが、昨日の打ち合わせ通り俺が東、樹が北、元康が南、風太郎は西でそれぞれレベリングを行う。…尚文は城下の周辺で行う事になるが構わないか?」

 

尚文「まぁ、俺だけ攻撃手段皆無だし当面はそれで構わない」

 

風太郎「俺達も武器と防具買ったら一旦城下周辺で練習しよう。正直西へ移動する前に色々と確認しないとやられかねないからな」

 

錬「……その辺は任せる。だがくれぐれも近くで狩りはするなよ?経験値が入らないとかシャレにならないからな」

 

風太郎「わかった。……お前らもあんまり無茶すんなよ」

 

二乃「あんたじゃないんだから大丈夫よ」

 

一花「フータロー君が私達を心配するなんて明日は雪でも降るんじゃないかな?」

 

風太郎「お前らなぁ……」

 

五月「…上杉君、今回はあなたが無茶をすると三玖に負担を掛ける事になります。その事を忘れないでくださいね」

 

三玖「五月。心配しなくても大丈夫だよ?フータローはそこまで無鉄砲じゃない」

 

樹「中野さん達は本当に仲が良いんですね。僕は一人っ子だったので羨ましいですよ」

 

風太郎「……とにかく。次の波までどれくらいか分からん以上、効率的に動く必要があるから行動には気をつけろよ」

 

元康「んじゃ、あとは各々のパーティで行動するってことで良いか?今のところ問題無さそうだし」

 

二乃「待ちなさい元康」

 

話し合いがまとまった所で二乃が突然話し出した。

 

二乃「勇者4人に言っておくわ。…あたしの姉妹にもしもの事があったら、その時はあたしがあんた達をこの手で殺すから覚えておきなさい!!…あと三玖」

 

三玖「なに?」

 

二乃「今回はフー君の隣を譲ってあげる。でもあたしだって諦めた訳じゃないわ…だから、ちゃんと2人で生き残りなさい」

 

三玖「二乃……わかった。約束する」

 

二乃「…ならいいわ。あたしからはそれだけよ」

 

元康「じゃ、今度こそ出発だな!また波で会おうぜ!!」

 

全員「おう(はい)!!」

 

こうしてそれぞれの道へと進んでいったのだった。

…そして。

 

四葉(私が…岩谷さんを悲しい不幸から救い出してみせます!!……あんな目には、絶対っ!…たとえ、この手を血に染める事になったとしても!)

 

1人の少女の固い決意には、誰も気づかなかったのだった。




サブタイトルが詐欺っぽい内容ですが、とりあえず今話で全員一緒編が終わり各ルートへといきます。
…とはいえ一度に全部はやりません。当面は主人公(風太郎・尚文)に分岐かなと思ってます。


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サイド尚文:装備でひと悶着1

この話以降はどの視点での出来事か分かるようにサブタイトルに「~サイド」と入れます。


風太郎達と別れた尚文、四葉、マインの3人は今後について話しながら歩いていた。

 

マイン「これからどうします?」

 

尚文「まずは武器とか防具が売ってる店に行きたい。これだけの金があるのなら良い装備とか買えるだろうからまずは皆の装備を整えたい」

 

マイン「じゃあ私が知ってる良い店に案内しますね」

 

尚文「お願いできる?」

 

マイン「ええ」

 

尚文「四葉もそれで良いか?」

 

四葉「…………」

 

尚文「四葉?」

 

四葉「えっ?」

 

尚文「えっと、これからマインの案内で武器屋に行くけど良いよな?」

 

四葉「あっはい!私もそれで大丈夫ですよ」

 

マイン(あの女…ずっと私の事を見てるわね…)「それではこちらです」

 

マインの案内の元、武器屋へと到着した3人はマインを先頭にして店へと入った。

 

武器屋の親父「いらっしゃい」

 

四葉「おおー…これが武器屋ですか…正しくファンタジーですね岩谷さん!」

 

尚文「へー……これが武器屋かぁ……確かに四葉の言う通りだな」

 

武器屋の親父「お、お客さん初めてだね。当店に入るたぁ目の付け所が違うね」

 

尚文「ええ、彼女に紹介されて」

 

武器屋の親父「ありがとうよお嬢ちゃん」

 

マイン「いえいえ~この辺りじゃ親父さんの店って有名だし」

 

四葉「…………」

 

武器屋の親父「!……オホン。それで、お嬢ちゃん達は何者なんだい?変わった服装をしてるようだが…」

 

四葉の雰囲気の変わり様に武器屋の親父は話題を変えるようにそう切り出した。

 

マイン「親父さんも分かるでしょ?」

 

武器屋の親父「となるとそっちのアンタは勇者様か!へー!…じゃあそっちのお嬢ちゃんは?」

 

四葉「私はどうやら勇者様を助ける為に召喚されたみたいです。私以外にもあと4人居ますよ!」

 

そう言っていつもの調子で答える四葉。

 

武器屋の親父「ほー!長年商売をやってるが、補佐が召喚されたとか聞いたことねぇなぁ」

 

尚文「やっぱこの世界でも珍しい事なんだな」

 

武器屋の親父「あぁ、勇者が召喚されたって話は何度かあるが…補佐なんてのはそっちのお嬢ちゃんみたいな冒険者がなるもんって決まってるからな」

 

四葉「なるほど…勉強になります!」

 

武器屋の親父「おう!…ところであんちゃん」

 

尚文「なんだ?」

 

武器屋の親父「いきなりで何だが、予算はどれくらいで考えてるんだ?…3人ってなるとそれなりの額になっちまうが……」

 

尚文「うーん……とりあえず、四葉とマインの武器を優先したいんだが、相場はどんな感じなんだ?」

 

武器屋の親父「そりゃあピンからキリまで性能によって色々あるが…初心者なら剣がオススメだから銀貨200枚前後だろうな」

 

尚文「って事は、2人で400枚くらいかぁ……防具まで入れたら今の手持ちじゃ厳しいか?」

 

武器屋の親父「まぁ、今後もご贔屓にして貰えるんなら防具に関してはある程度オマケしてやるよ。こっちも商売だからな」

 

尚文「すまない、助かるよ」

 

四葉「ありがとうございます!親父さん!」

 

武器屋の親父の言葉に四葉は満面の笑みでお礼を言うと、尚文と武器屋の親父はその笑顔に思わず見惚れてしまう。

その光景を面白く無さそうにマインは見ていた。

 

武器屋の親父「……っと。いいって事よ嬢ちゃん!んで、どんな武器を使ってみたいんだ?」

 

四葉「んー…じゃあ親父さんがさっき話してた剣で!あと盾も欲しいですっ!」

 

武器屋の親父「あいよ。…そっちのお嬢ちゃんはどうする?」

 

マイン「……私も剣でいいですよ。あ、盾は要らないです」

 

武器屋の親父「あいよ。んじゃちょっと持って来るから待ってな」

 

そう言って武器屋の親父は後ろへ下がって行った。

 

マイン「…ヨツバさん、でしたか?」

 

四葉「はい?」

 

マイン「貴女今色目を使って店主を誘惑しようとしてたわね」

 

四葉「色目?」

 

尚文「いや、四葉は普通に話してただけだろ」

 

マイン「勇者様は男性ですから気づかなかっただけですわ」

 

四葉「岩谷さんを悪く言わないでください」

 

武器屋の親父「待たせた…な…?」

 

武器と防具をある程度揃えて出して来た武器屋の親父は、その場の雰囲気に驚きを隠せなかった。

…堪らず尚文へ何があったと問いかけるも気にしないでくれと言われて仕方なく仕事をする事にした。

 

武器屋の親父「…とりあえず、そっちのお嬢ちゃんにはこの魔法鉄の長剣だ。んで、そっちの元気なお嬢ちゃんにはこの鋼鉄製の剣とこの特製盾だ!」

 

マイン「ありがとうございます。流石店主、良い剣ですわ」

 

四葉「…あれ?この盾、あまり重さを感じないんですが…」

 

武器屋の親父「おっ!気づいたか!!そう、その盾は<隕鉄の盾>と言って素材は隕石を使ってるから重さがほとんど無い優秀なモノだ」

 

四葉「!?…あ、あの、こんな凄いものだと高いんじゃ…」

 

性能を聞いて狼狽える四葉だったが親父は豪快に笑って四葉の肩を叩きながら

 

武器屋の親父「心配すんな。ソイツは俺からの気持ちだ!受け取っておけ!…勇者のあんちゃんの事、しっかり助けてやれよ!」

 

そう言った。

 

四葉「親父さん……はい!この盾と剣で岩谷さんのサポート頑張ります!!」



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サイド尚文:装備でひと悶着2

尚文「へぇ、隕石製の盾かぁ…俺も持って良いか?」

 

四葉「良いですよ!」

 

尚文「ありがとう…ん?何だ?…イッテっ!!」

 

四葉から借りた盾を持ってみると、視界の真ん中にスキル習得を示すメッセージが出たと同時にまるで静電気が発生したかの様な反応で盾をとり落す。

 

武器屋の親父「おいおいあんちゃん。出来れば雑には扱わないでくれ…」

 

尚文「す、すまない…けど、何だったんだ?」

 

四葉「まるで持ってはいけないモノを持ってしまった様な反応でした」

 

マイン「…………」

 

尚文「なぁマイン、何か知らないか?」

 

マイン「すみません勇者様。武器に反発されるなんてケース見た事がありませんので何とも…」

 

尚文「そっか……じゃあ他でも試そうか。四葉悪い、剣を貸してくれ」

 

四葉「はい!どうぞ」

 

尚文「ありがと…っ!?イテっ!!…他の装備は持つ事も無理なのか…」

 

剣を持った直後に、先程とは比べ物にならない強さの電撃を受け、仰け反りかける。

衝撃から立ち直った尚文の視界には次のメッセージが表示されていた。

 

『伝説武器の規則事項、専用武器以外の所持に触れました』

 

そのメッセージを見た尚文は急いで内容を確認する。そこにはこう書かれていた。

 

『勇者は自分の所持する伝説武器以外を戦闘に使うことは出来ない』

 

尚文「……えっと、どうも俺はこの盾の所為で武器が持てないらしい」

 

四葉「えっ!?じゃ、じゃあ岩谷さん自身は攻撃手段が無いんじゃ…」

 

武器屋の親父「…どんな原理なんだ? 少し見せてくれないか?」

 

そう言ってから武器屋の親父は盾を見ながら小声で何かを呟くと、盾に向かって小さい光の玉が飛んでいって弾けた。

 

武器屋の親父「……ふむ、一見するとスモールシールドだが、真ん中に核となる宝石が付いてるだろ? ここに何か強力な力を感じたから鑑定の魔法で見てみたんだが……何故かうまく見ることが出来なかった。呪いの類なら一発で分かるんだが、その反応すらない。何かおかしいが、原因はさっぱりだな」

 

尚文「そうか…それじゃあ仕方ない、か。…四葉、マイン。すまないが俺の分まで攻撃を任せる事になる」

 

四葉「大丈夫です!!その為に私が居ます!」

 

マイン「…そうですね、なので勇者様にはその盾で守って貰って、その間に私たちで攻撃するようにすれば大丈夫でしょう」

 

尚文「ありがとう。助かるよ二人とも」

 

武器屋の親父「話はまとまったみてぇだな。んじゃ、防具でも買うかい?」

 

尚文「はい、お願いします」

 

武器屋の親父「おう。んじゃ、ちょっと待ってな」

 

そう言って武器屋の親父はまた裏へと探しに行った。

 

マイン(はぁ……先が思いやられますわ…それにしても、あの娘ずっと目線を私から離さないわね…どうしたものか…)

 

四葉(ここまでは一花の出てた映画の内容とほとんど同じ。…って事はやっぱり夜までは牽制してても特に意味は無いかな?…けど油断は出来ない)

 

尚文(今度は会話無いけどお互い睨み合ってる……居心地悪いけど、あの話が本当なら仕方ないか)「…はぁ」

 

四葉「岩谷さん、ため息は幸せが逃げちゃいますよ」

 

尚文「あ、あぁ…そうだな」

 

マイン「…勇者様を困らせてる貴女に対してのため息なんじゃないのですか?」

 

四葉「……そうだとしても、貴女にだけは言われたくありません」

 

武器屋の親父「待たせた…な…?」

 

武器屋の親父は、その場の雰囲気に(またか…この2人仲悪いんかな…)と頭を抱えながら尚文へ問いかけるも、さっきと同じような感じです…とだけ言われ仕方なく仕事をする事にした。

 

武器屋の親父「……とりあえず、あんちゃんにはこれな」

 

そう言って渡したのは鎖でつながれた服――くさりかたびらだった。

 

武器屋の親父「くさりかたびらが冒険者の入門向けだがどうよ?」

 

尚文「じゃあこれをください」

 

武器屋の親父「まいど!んじゃ、約束通りオマケして全部で銀貨500枚にしとくぜ」

 

尚文「ありがとう。ありがたく使わせてもらうよ」

 

武器屋の親父「いいってことよ!これからもご贔屓に!」

 

尚文「はい」

 

武器屋の親父にお礼を言ってから3人は店を出た。




※幕間作ってそこで各キャラクターの装備と簡単なステータスは更新していく予定です。


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サイド尚文:さぁ実戦だ!

※質問にあったウエポンコピーは現時点では誰も使ってない(もしくは知らない)のでプロフィールには入れてません。
情報隠蔽癖は相変わらずなのです…。

※尚文の口調についてご指摘ありがとうございます。
実は尚文が少しグレ気味なのには理由があります(ヒントは一応本編や幕間にあったりします)。なので実は仕様だったりするのでご容赦頂ければと思います。

コメ返全部出来ずすいません。
感想頂いた皆様ならびに評価して頂いた方、ありがとうございます!


店を出た一行は途中の服屋で四葉の冒険用の服(学生服では動きにくいのとスカートの丈が短くて見えそうなのが尚文には我慢ならなかったので)を購入してから尚文共々着替えを行なってから街近くの草原へと出た。

 

四葉「んーっ!空気が澄んでて気持ちいいですねー」

 

尚文「そうだな!さて、それじゃあ早速戦闘をしたいんだけど…」

 

そう言って尚文はマインの方を向くと

 

マイン「えっと…あ、居ました。あそこに居るのはオレンジバルーン……とても弱い魔物ですが好戦的です。アレなんてウォーミングアップにはちょうどいいですが…」

 

オレンジ色の丸い球体に怖めの顔がある物体を指差しながら提案をするが

 

四葉「えいっ!」ズバッ

 

パーンっ!!

 

マインが言い終わる前に四葉が切りつけ一撃で葬ってしまった。

 

尚文「…………」

 

マイン「…………」

 

四葉「あれ?あっさり倒せちゃった…」

 

マイン「えっと…勇者様の実力を測りませんと、今後の戦闘に影響が…」

 

尚文「…確かに、俺も戦闘は初体験だしな…どれくらい戦えるか知らないといけないか。よし!試しに次は俺1人で戦ってみるよ」

 

そう言ってから目の前に出てきたオレンジバルーンの群れに突っ込んでいった。

 

尚文「オラオラオラオラオラ!」

 

――――――――それから5分間、ひたすらに殴り続けた結果なんとか1体を撃破した。

 

尚文「はぁ……はぁ……」

 

四葉「えっと……残りのバルーンはどうしますか?」

 

尚文「……任せた」

 

四葉「わかりました!!」

 

そう言ってから四葉はバルーンの群れに突っ込んだ。

しかし、

 

四葉「てえいっ!」ブウン!!

パパパパーン

 

わずか一振りで全滅させた。

 

マイン「」

 

尚文「……もはや理不尽だ…」

 

四葉のあまりにも場違いな攻撃力にマインは開いた口が塞がらず、尚文は苦笑いした。

 

四葉「あの、このバルーンの残骸どうやら何かに使えるみたいですよ」

 

そう言って四葉は回収したバルーンの残骸を全部尚文に渡した。

 

尚文「ん?盾が反応してる…?」

 

尚文が盾を近づけると、淡い光となって吸い込まれた。

 

四葉「おおー」

 

マイン「これが伝説武器の力ですか?」

 

尚文「うーん…変化させるには一定の物を吸い込ませると良いみたいだな」

 

四葉「なるほど」

 

尚文「んじゃ、行ける所まで行くか」

 

四葉・マイン「はい」

 

~~~~~

その後、日が傾く少し前まで草原を歩き、遭遇するオレンジバルーンとその色違いイエローバルーンと戦った。

 

マイン「もう少し進むと少し強力な魔物が出てくるのですが、そろそろ城に戻らないと日が暮れますね」

 

四葉「そうですね、流石に初日から野宿は厳しいですし宿を探しましょうか」

 

尚文「お、おう…」(正直もう少し戦っておきたかったが……この後の事を考えたら四葉の体力をあまり消耗させるのは得策じゃないからいいか)

 

こうして尚文一行は1日目の冒険を切り上げ、俺達は城下町の方へ戻るのだった。



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サイド尚文:夕暮時に蠢く闇

四葉は事実上のメインヒロイン…だけどみんなヒロイン

それがこの世界


草原での戦闘を終えて城下町へと戻って来た一行は、一件の宿を取って今後について話をしていた。

 

尚文「今日、俺達が戦っていた草原はここだよな」

 

地図を広げてからそう切り出した尚文。

なお、宿の部屋は3部屋にして今は尚文の部屋へと集まっている。(はじめは1部屋案、2部屋案を出したがマインと四葉に却下されて今に至る。)

 

マイン「はい。そうですよ」

 

尚文「じゃあ次の狩場は草原を抜けた森辺りになるのかな?」

 

マイン「ええ、この地図には載っていませんが私達が行こうとしているのは森を抜けたラファン村です。村を抜けた先あたりが初心者用ダンジョンがあるので当面はそこでレベルアップを行う事になりますね」

 

尚文「ふむ……なるほどね」

 

マイン「まぁ、ヨツバさんはかなり強いですしそこまで長い滞在にはならないと思いますが準備だけはしっかりと行わないといけませんね」

 

四葉「では私はこれから街で買出しに行って来ますのでお2人は先に食事でもしててください。…あ、何か欲しいものとかありますか?」

 

尚文「俺は特にないかな?マインは?」

 

マイン「私も特にはありませんね」

 

四葉「わかりました、では行って来ます!」

 

そう言って四葉は部屋を出て行った。

 

尚文「……じゃ、お言葉に甘えて夕飯でも食べに行くか」

 

マイン「はい、では酒場へ案内しますね」

 

そう言って二人は広げていた地図を片付けてから酒場へと向かった。

 

=========================================

サイド:四葉

 

宿を出た四葉はとあるお店に向かっていた。

そう。その店とは・・・

 

武器屋の親父「いらっしゃ……って昼間の嬢ちゃんじゃないか」

 

四葉「こんばんはです!親父さんの盾、すごく役に立ってますよ~!四葉チェック星三つです」

 

武器屋の親父「そうかい、そりゃ良かったよ。ところで今回は…」

 

一花「こんばんは~親父さん」

 

二乃「こんばんは」

 

五月「大人数で来てしまってすみません」

 

そう言って現れたのは一花、二乃、五月だった。

 

武器屋の親父「……俺は夢でも見てるのか…?」

 

中野家の五つ子のうち4人が集まったのを見て頭を抱える武器屋の親父。

 

一花「実は私達五つ子の姉妹なんです」

 

武器屋の親父「姉妹ぃっ!?…そ、そりゃあそっくりさんな訳だ…」

 

五月「驚かせてしまいすみません。それとこちらを集合場所にしてしまった事も謝罪します」

 

武器屋の親父「……そりゃあ構わねぇが」

 

風太郎「…全員揃ってるな」

 

三玖「遅くなってごめん」

 

武器屋の親父「…………」

 

姉妹の5人目と風太郎を見てついに悟りの境地となった武器屋の親父は無言で黄昏た。

 

風太郎「さて。それじゃ情報の交換といこうか」

 

一花「そうだね。…四葉、あの女はどんな感じだった?」

 

四葉「うーん…やっぱりというかなんと言うか、昼間は特に怪しい行動は無かったよ」

 

一花「そっか…じゃあやっぱり夜が正念場になりそうだね」

 

四葉「うん」

 

二乃「…四葉、これ持ってなさい」

 

そう言って二乃は1つの袋を四葉に渡した。

 

四葉「これは…」

 

二乃「恐らく仕掛けてくるからいざって時に使いなさい」

 

四葉「ありがとう二乃!」

 

一花「じゃあ改めて作戦会議しようか」

 

風太郎(…俺、この場に要らないんじゃね?)

・・・

そんなこんなで作戦会議も終わって各々が帰路に着く中、四葉も街で食料と薬を購入してから宿へと戻ると、部屋の入り口にマインが立っていた。

 

マイン「ヨツバさんおかえりなさい。買い物はどうでしたか?」

 

四葉「…必要なものは買えました。ところで岩谷さんは?」

 

マイン「勇者様でしたら先ほど部屋で休まれました」

 

四葉「そうですか…」

 

マイン「ヨツバさんはお夕飯はどうしますか?」

 

四葉「私は屋台で買って済ませました」

 

マイン「そうですか」

 

四葉「では私は岩谷さんへ報告してきますので」

 

マイン「…報告は明日の朝でも良いんじゃ…」

 

四葉「いえ。こういうのは早めに済ますのが正しいですから。それでは」

 

マイン「…………はい」

 

ドスッ

 

四葉「!?ど…こ…から…っ」

ドサッ

 

マイン「おやすみなさい。厄介な女狐さん」

 

その言葉を聞いたのを最後に四葉の意識は闇に堕ちていったのだった。



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サイド風太郎:フータローは私が守る1

ステータスの幕間は話数を追加する形で対応します。
(1話を更新していく形だとわかりにくい為)


解散してすぐ、風太郎と三玖は武器屋へと向かっていた。

 

三玖「あった。ここだよフータロー」

 

風太郎「おう。んじゃ、入るか」

 

武器屋の親父「いらっしゃい!…あれ?さっきの嬢ちゃんか?…だが微妙に雰囲気が違う?」

 

三玖「?」

 

武器屋の親父「っとすまねぇ。お客さん見ない顔だがもしかしなくても勇者様か?」

 

風太郎「まぁそんなところです。初心者用の武器と防具が欲しいんですけど」

 

武器屋の親父「なるほど。ちなみに予算はどれくらいで考えてるんだ?」

 

風太郎「…相場がわからないので何とも言えないですけど、銀貨700枚までなら出せます」

 

三玖「フータロー!?」

 

武器屋の親父「あんちゃん…交渉下手過ぎるだろ…」

 

風太郎の隣で驚いた表情の三玖と、呆れた様に頭を抱えてため息混じりな親父がツッコミを入れた。

 

武器屋の親父「いきなり全財産伝えたらダメだろ…」

 

風太郎「いや、全財産は伝えて無いですよ!」

 

武器屋の親父「そうなのか……ところであんちゃんは何の勇者なんだい?」

 

風太郎「…俺はこの魔導書が伝説の武器らしいです。何か聞いた事無いですか?」

 

武器屋の親父「魔導書……俺は聞いた事無いが、魔法屋なら何か分かるかもな」

 

風太郎「そうですか……」

 

三玖「…あ、あの!」

 

武器屋の親父「ん?どうしたんだ嬢ちゃん」

 

三玖「えっと…その…わ、私にも使える武器はありませんか!!」

 

武器屋の親父「…嬢ちゃん、こう言っちゃなんだが…戦った事あるのか?」

 

三玖「……無い、です…けど、フータローは私が守る…ううん。私が守りたいんです。…お願いします!」

 

武器屋の親父「嬢ちゃん…」

 

風太郎「三玖…」

 

俯いて、握った拳を震わせながら懇願する三玖に何も言えなくなる風太郎と店主。

 

風太郎「……店主、こいつが使えそうな盾と武器ってありますか?」

 

三玖「!」

 

武器屋「……無い訳じゃねぇが…良いのか?」

 

風太郎「えぇ。三玖が自分で考えて出した結論なのでこれ以上俺から言うことはありませんよ。…それに」

 

武器屋「それに?」

 

店主の言葉に少し間を空けてから風太郎は

 

風太郎「…女に泣かれるのは面倒だし」

 

そう答えた。それに対して店主は

 

武器屋の親父「(素直じゃないねぇ…)…ま、そういう事にしといてやるよ。準備すっからちょっと待ってろ」

 

生暖かい対応をしてあげたのだった。

 

〜〜〜〜

店主が裏に行ってる間、2人の間に会話は無くただただ無音の世界が続いていた。

 

三玖(フータローの事、困らせてるな私。…勉強は出来るようになって来たけど、運動はからっきしだし…はぁ…こんな事なら運動しておけば良かったなぁ……今だけは、四葉が羨ましい…)

 

風太郎(気まずい……だが何故か、不思議と居心地の悪さは感じない……やはり、こいつら五つ子にだいぶ毒されてきてるな俺も)

 

武器屋の親父(…コイツらはさっきの奴らより気まずい空間作りやがるな…どうして今日はこうも面倒な客ばかりなんだ…)「待たせたな。これなんてどうよ?」

 

そう言って出してきたのは銀鉄製の盾に、見慣れない形をした武器――片腕に嵌めるタイプのボウガンだった。

 

風太郎「……これ、もしかしてボウガンか?」

 

武器屋の親父「あぁ。嬢ちゃんは戦いの経験が浅い上に運動能力が高い訳じゃないから主な戦い方はその盾で守りながら隙を見てボウガンでけん制する感じの方がいいだろうと思ってな!」

 

風太郎「なるほど、それで盾のサイズが大きいんですね」

 

武器屋の親父「そういう事だ。基本は盾を両手持ちにして使うし要はあんちゃんの詠唱時間を稼げれば良いから別にソロで倒す必要も無い。攻撃も基本は敵の陽動程度できればいいわけだからな」

 

三玖「…………」

 

武器屋の親父「……ま、あとは嬢ちゃん次第だな。どうする?」

 

一通りの説明を終えた店主は三玖に問いかける。

 

風太郎「三玖……」

 

三玖「……うん、これでいい。どのみち盾を扱えない時点でフータローを守ることが出来ないから…」

 

武器屋の親父「おう。しばらく戦闘してみて慣れてきたら武器を変えるなりすればいいさ。何、焦る必要はないぜ」

 

三玖「うん。ありがとう親父さん」

 

風太郎「…とりあえずこれで決まりな訳ですけど、いくらなんですか店主?」

 

実は風太郎にとっては、三玖が戦えるかよりも装備にかかる金額の方が心配だったりする。

 

武器屋の親父「…とりあえず、あんちゃんにもこのマントを付けてやって…オマケして銀貨600枚だな」

 

三玖「!」

 

風太郎「高っ!?」

 

武器屋の親父「そらその盾がかなりの高価な商品だからな。…ちなみに本来の値段なら金貨3桁クラスだからな」

 

風太郎「…………」

 

武器屋の親父「ま、嬢ちゃんの気持ちに免じてツケといてやるからよ。頑張ってこい!」

 

三玖「うん!」

 

風太郎「………頑張ります」

 

こうして、装備を整えた2人は城下町を出たのだった。




次話書いたら尚文サイドへ行く予定です。

6/9 投稿順間違えてた為訂正。一部言葉訂正。


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サイド風太郎:フータローは私が守る2

武器屋を出た風太郎と三玖は、武器屋の親父から教わった魔法屋へと赴いていた。

 

魔法屋「いらっしゃい」

 

風太郎「すいません、武器屋の店主から魔法に関してはこちらで聞くよう言われて来たのですが…」

 

魔法屋「あらそうだったのね…じゃあ早速だけど、何を聞きたいのかしら?」

 

そう促された風太郎は魔法屋へ魔導書を見せる。

 

魔法屋「これは?」

 

風太郎「これは伝説の魔導書という勇者の武器です」

 

魔法屋「魔導書…という事は魔法の事が書かれてるのかしら?」

 

風太郎「俺もそう思ってページを開いたら…」

 

そう言ってから魔法屋へ魔導書のページを開いてみせる。

だが

 

魔法屋「…白紙?」

 

そう。最初から最後までページには何も書いていない。いわば白紙の本の様な状態だったのだ。

 

風太郎「そうなんですよ。それで、魔法について詳しい魔法屋へ聞くのが早いと言われて…」

 

魔法屋「ここへ来たと。…わかったわ。じゃあ簡単に説明するわね」

 

そう言ってから魔法屋は1から魔法について教えてくれた。

魔法の詠唱や属性、強さの基準などを細かく説明され、わからないところは都度質問をするといった事を繰り返した。

…余談だが、初歩の説明の段階で三玖はついていけず、近くの露店でお昼ご飯を買って食べていたのだった…。

☆☆☆☆☆

それから体感で約3時間後、説明をひと通り聞き終わった頃

 

魔法屋「…さて、それじゃあ2人の魔法適正を見てみましょうか」

 

風太郎「適正を見る?」

 

魔法屋「そうよ。この水晶で貴方達の得意な属性が何か分かるの」

 

風太郎「なるほど…」

 

魔法屋「じゃ、早速だけど覗いてみてくれる?」

 

風太郎「わかった」

 

講義の中で仲良くなった為、いつの間にか普段の口調に戻った風太郎は魔法屋の指示通り水晶を覗き込んだ。

 

魔法屋「…ふむふむ…貴方は全ての属性が得意の様だけど…1番適正が高いのは<風>の様ね」

 

風太郎「風か…ん?」

 

適正を魔法屋から聞いた風太郎の目の前に突如インフォメーションが出てきた。その内容は

 

info:新しいスキルを習得しました。

スキル

ウィンドカッター

トルネード

 

だった。

 

風太郎「……どうやら知る事でスキルが得られるみたいだな」

 

魔法屋「あらそうなの?…そういう事ならコレ持って行きなさいな」

 

そう言って手渡したのは一冊の本だった。

 

風太郎「……これは?」

 

魔法屋「それは初級魔法の書かれた本よ」

 

風太郎「……俺、この世界の文字わからないんだが…」

 

魔法屋「あらそうだったの?…でも貴方頭良さそうだし、大丈夫よきっと」

 

風太郎「おいおい…」

 

三玖「フータローなら大丈夫だよ」

 

風太郎「……ま、やるだけやってみるよ。ありがとな魔法屋」

 

魔法屋「良いわよ。でも、中級以降の本は買ってね?」

 

風太郎「あぁ。必要になったら来るよ」

 

魔法屋「えぇ。待ってるわよー」

 

こうして、魔法の知識を習得し、ついでに術も習得した風太郎は三玖と共に魔法屋を後にした。…次はいよいよ実戦である。

 

〜〜〜〜〜〜

 

三玖が一旦武器屋へ寄りたいと言ったので1度武器屋へ行き、そこで姉妹会談を終えた後、2人は夕方の草原へと来ていた。

 

三玖「いよいよ実戦…」

 

風太郎「そうだな…だが無理はするなよ三玖、俺たちはそもそも戦闘とは無縁だったんだ。慎重にいくぞ」

 

三玖「うん。フータローは私が守るからね」

 

風太郎「あぁ、頼りにしてるぞ。…まぁ俺たち体力無しコンビだがな」

 

三玖「もう…フータローのいじわる…」

 

そんな軽口も最初のうちで、2人の口数はフィールドを進むごとに無くなっていった。

…そして、突然オレンジ色の丸い物体ーーオレンジバルーンが二体現れた。

 

風太郎「これが武器屋の親父が言ってたモンスターか…よし、やるぞ三玖!」

 

三玖「うん。頑張る」

 

言葉を合図に風太郎は後ろへ、三玖は前へと出た。

それを見たバルーンは三玖へと突っ込んだが

 

三玖(…あれ?思ったより衝撃が無い…?)

 

三玖は持っていた盾で受け止めた際、あまりの衝撃の無さに疑問が浮かんだが、これならいけると思い直しバルーンを引きつける事に集中した。

そして

 

風太郎「力の根源たる俺が命ずる…理を今一度読み解き、かの者を切り刻め…ファストウィンドカッター!」

 

予め魔法屋から聞いた詠唱を行い発動させた風の初級魔法であるウィンドカッターでバルーン二体をまとめて倒した。

 

三玖「…ふぅ」

 

風太郎「お疲れ三玖。初めてやったにしてはすごく良かったぞ」

 

三玖「うん…フータローもお疲れ様。魔法凄かったけど、風船が耳元で割れたみたいでビックリした」

 

風太郎「そうか…それは悪かった」

 

三玖「ううん。多分何回かやれば慣れるから、このまま頑張ろう?」

 

風太郎「…あぁ!この調子でいくぞ」

 

三玖「うん!」

 

こうして、2人は夜になるまでバルーン相手に戦い続け、2人のレベルが2へと上がる頃には三玖も盾で守るだけでなく片手に装備したボウガンでの援護も少し出来る様になっていたのだった。




三玖の魔法適正は後々判明します。
次回は尚文サイドの予定です。


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普段怒らない人をキレさせたらアカン

四葉「……ん、んんっ…んぅ…あれ?」

 

朝、四葉は宿屋で借りた自身の一室のベッドの上で目を覚ました。

 

四葉「…あれ?…私は…確か…っ!?」

 

段々と意識がはっきりしていくなかで、気付く。――今、何時だ?と。

そして窓の方に意識を向けて、気付いた。

 

四葉「もう朝!!…って事はっ!?」

 

あの事件は確か朝発覚するはず。つまり

 

四葉「岩谷さん!?」

ガチャッ

 

四葉「そ…そんな…っ!」

 

尚文の部屋へと行くも、そこには誰もおらず、荷物すらも無かった。

怖くなった四葉は宿屋の店主に聞いた。

 

四葉「すみません!!私と一緒に泊まった連れがいないんですけど何か聞いてますか?!」

 

宿屋の店主「うおっ!…誰かと思ったらあの兄ちゃんの連れか。…あの兄ちゃんは朝早くに城の兵士に連行されてったよ。何でも、もう1人の連れに乱暴働いたらしくてな」

 

四葉「!!」

 

宿屋の店主「…まぁ、あの兄ちゃんの事は忘れて…」

 

四葉「ありがとうございます急ぎますので失礼します!!」

 

店主の言葉も話半分にして四葉は荷物(自室に隠していた剣と盾)を回収した後、急いで城へと向かった。

 

=============================

 

一方、四葉が城へと急行している中、城の謁見の間では理不尽な糾弾が行われていた。

 

尚文「そうだ! 王様! 俺、枕荒らし、寝込みに全財産と盾以外の装備品を全部盗まれてしまいました! どうか犯人を捕まえてください」

 

王「黙れ外道!」

 

尚文「!」

 

王「嫌がる我が国民に性行為を強要するとは許されざる蛮行、勇者でなければ即刻処刑物だ!」

 

尚文「だから誤解だって言ってるじゃないですか! 俺はやってない!」

 

二乃(ちょっと!四葉はどうしてここに来てないのよ)

 

五月(わかりません。昨日の会議では徹夜で見張るって言ってましたが…)

 

三玖(四葉がこんな時に寝坊するはずない。多分)

 

一花(あの女に何かされた可能性が高い!…ごめん、皆。私あの女の事甘く見てた)

 

風太郎(いや、一花が悪いわけじゃない。切り替えて次の手を考えよう)

 

一花(フータロー君……)

 

姉妹と風太郎が小声で会話している中、王と尚文(一応錬や樹、元康も)との会話は続いていく。

 

王「こんな事をする勇者など即刻送還したい所だが、方法が無い。再召喚するには全ての勇者が死亡した時のみだと研究者は語っておる」

 

勇者3人「……う、嘘だろ……」

 

尚文「このままじゃ帰れないだと!ふざけやがって!」

 

王「…………」

 

尚文「で? 王様、俺に対する罰は何だよ?」

 

王「……今のところ、波に対する対抗手段として存在しておるから罪は無い。だが……既にお前の罪は国民に知れ渡っている。それが罰だ。我が国で雇用職に就けると思うなよ」

 

尚文「あーあー、ありがたいお言葉デスネー!」

 

ドンッ!!!

 

そんな喧騒を一瞬で鎮めたのは

 

一花・風太郎「四葉!?」

 

四葉「…………」

 

大きな扉を蹴り開けた中野家の四女・四葉だった。

 

王「……なんのつもりだ?」

 

四葉「……なんのつもり、だと……?」

 

王の言葉に答える四葉の手には剣と盾が握られており、ゆっくりと玉座へと進む四葉からは他の姉妹が見た事も無いような雰囲気が感じられた。

 

四葉「あんたが、私の大事な人に濡れ衣着せようとしてるのを止めに来た事が、なんのつもり、だと…?」

 

一花「よ、四葉…?」

 

四葉「…ごめん皆。私がポカしたせいでこんな事になっちゃって。……岩谷さんも、ごめんなさい」

 

尚文「四葉……お、お前は信じてくれるのか…?」

 

四葉「当たり前じゃないですか…私は、あなたのパートナーですよ?そんな私が、岩谷さんの事を信じない訳無いじゃないですか…」

 

そう言って、四葉は尚文に笑顔を向け、そして

 

四葉「例え、ここにいる全ての人間を殺すことになったとしても…姉妹を手にかけることになったとしても、…私は、あなたの味方です」

 

そう言い切った。

 

尚文「四葉……ありがとう」

 

四葉「いえいえ。むしろ、こんな状況にしてしまってすみませんでした。…さて」

 

尚文から視線を王へ向けた四葉は、先ほどと一変して鋭い表情で睨みつけた。

 

四葉「この騒ぎの落とし前、どうつけてもらいましょうか…ねぇ、王様?…いや、マルティ王女?」

 

マイン「!?」

 

そして持っていた剣を王からマイン––もといこのメルロマルクの第一王女、マルティ=メルロマルクへと向けて言い放った。

 

尚文(マインが王女…という事はあの長女の言う通りだったのか……くそっ。てことは俺はただの道化じゃねぇかよ…)

 

マルティ「……何処から気づいていたの?」

 

四葉「最初、一花から話を聞くまでは何かわからなかったけど…あんた、ずっと勇者の皆さんを見てましたよね?」

 

マルティ「なっ!?」

 

四葉「視線が丸分かりでしたよ。…まぁ、そっちも私がずっと監視してる事に気づいてたみたいでしたけどね。まさか、不意打ちされて朝まで気絶させられるとは思いませんでしたよ」

 

マルティ「…………」

 

四葉「さて、話はもう終わりです。こうなってしまった以上、アンタを生かしておく訳にはいかないので…」

 

そう言って四葉は満面の笑みを浮かべながら宣言した。

 

四葉「アンタをこの場で殺しますね?悪の王女様♪」




温厚な性格の人程大切な人の為に堕ちやすい。


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元康はやっぱり元康だな

タイトルまんまな展開です(笑)


マルティ「!?あ、あなた自分が何を言っているかわかっているの!?」

 

四葉「ええ。あなたに言われなくてもわかってますが?…何ですか、もしかして怖いんですか?」

 

王「貴様、マルティを王女とわかって尚殺そうというのか!!」

 

四葉「そうですよ?…もしかして、アンタも死にたいんですか?モノ好きですねぇ…ししし」

 

会話をしながら四葉が玉座へと一歩一歩と近づくにつれ、マルティは一歩下がり、王はたじろぐ。

だが、そんな四葉の前に2人の勇者が立った。

 

風太郎「一旦落ち着け四葉」

 

尚文「そうだ。こんな奴らにわざわざ手を下さなくてもいい」

 

尚文と風太郎はそう言って四葉の説得を試みたが

 

四葉「……上杉さんと岩谷さんがそう言うなら、きっと殺さない方が良いんだと思います」

 

風太郎「そうだ。だから…」

 

四葉「ですがあの王と王女は、こんなイレギュラーばかりの状況でも何一つ変わらなかった!!…岩谷さんに、酷い事をした!!…これなら、この先だってコイツらがやる事は変わらないしみんなが不幸になるっ!……それがわかってて躊躇する程、私は馬鹿でもお人好しでもないっ!!」

 

風太郎「四葉…」

 

一花「…ごめんフータロー君。私も四葉に賛成かな」

 

激昂する四葉を目の当たりにして何も言えない風太郎。

だが、この状況で酷く冷静に一花が、中野家の長女が妹の過激過ぎる意見に同意した。

 

風太郎「一花まで何を言い出すんだ」

 

一花「私はこの先あの女が何をしでかそうとしてるのか知ってる。…そして四葉が言う様に、私達五姉妹やフータロー君というイレギュラーがいるのにここまでほとんど相違点が無いの」

 

風太郎「だからって…」

 

一花「うん。だからって殺す必要は無いって、そう言いたい気持ちは私だってそう。…だけどねフータロー君、現実は私達が思ってる程甘く無いんだよ」

 

風太郎「一花……」

 

尚文「……確かに、コイツらは一生クズのままかもしれない」

 

風太郎「……だからって…」

 

尚文「あぁ、風太郎の言いたい事は分かる。わざわざ四葉が手を下す必要は無い。俺もそう思うし、何より四葉」

 

四葉「…!」

 

尚文「…お前の姉妹、みんながお前に殺って欲しくないって思ってるんだ。何もお前1人で罪を背負う必要無いんじゃないか?」

 

尚文が指差した先に居たのは二乃、三玖、五月の3人であり、それぞれが否定的に、…そう。誰もが四葉に殺して欲しくないと願う様な仕草をしていた。

 

四葉「……でもっ…それでも私は…っ!」

 

そんな姉妹達を見た四葉は涙ながらに訴える。

 

四葉「大切な人達を今度こそ守りたいんですっ!!だからっ!!止めないでくださいっ!!」

 

尚文「なら俺は、俺の事を信じてくれたお前の幸せを守る為に止める!」

 

四葉の叫びに、尚文は負けないように声を張り上げ、そしてそのまま四葉を抱き締めた。

 

四葉「!?」

 

尚文「ここでアイツ等を殺せば、お前だけじゃなくてお前の姉妹全員が下手したら殺人犯として扱われるかもしれない」

 

四葉「!!…っ!」

 

尚文「それは四葉。お前だって望まないだろ?」

 

四葉「…はい」

 

尚文「ならさ、今動くのはダメなんじゃないか?」

 

四葉「じゃあどうしたら…っ!」

 

尚文(大丈夫だ。だから一旦落ち着け、な?)

 

四葉「……はい」

 

尚文の説得によって少し冷静になった四葉。

周りの空気も少し落ち着いた頃、この男が空気を読まずに手をあげた。

 

元康「なぁ、ちょっといいか?」

 

そう。何を隠そう槍の勇者こと元康である。

 

元康「マインちゃんと四葉ちゃんに何があったか知らないけど、尚文のパーティに居るのが問題ならウチのパーティにマインちゃん戻してもいい?」

 

尚文「……は?」

 

風太郎「……え?」

 

マルティ「元康様ぁ〜」

 

元康「いや、だってよ?元はと言えば最初にウチのパーティに居て、人数が少ない上に大変そうだからマインちゃんが気を利かせて尚文のパーティに参加しただけだし、必要無いなら戻してくれって話なだけで別に違和感無いよなーって思っただけなんだが…そんなに可笑しな話か?」

 

呆ける風太郎と尚文に対してさも当たり前の様に話し出す元康に、マルティは感極まった様な声を出す。

 

マルティ「流石は真の勇者様ですわ〜。どこぞの盾や女よりも見る目がありますわ」

 

四葉「……」

ブチッ

 

王「そうだな。では槍の勇者元康殿に我が娘マルティを付け、国より手厚い加護を施す事を約束しようではないか!」

 

錬「…何?」

 

元康「あ、それは別に良いわ」

 

王「!!…何故じゃ?」

 

元康「いや、別に元の鞘に戻っただけで優遇されても錬と樹に悪いと思っただけだが…?」

 

王「むぅ…まぁ、確かにそうじゃが…」

 

元康「だろ?だからま、ここは俺に免じて何も無かったって事で頼むわ。…尚文もそれで良いだろ?」

 

尚文「…俺は構わないが…」

 

元康「んじゃそゆことで!…二乃、マインちゃん行こうぜ、他の仲間が待ちくたびれちまう」

 

そう言って、元康は何事も無かったかの様に出口へと向かって行った。




結論
四葉は怒らせちゃダメ
※実は四葉は王と尚文以下勇者達とのやり取りをドア越しに聞いてたりする。


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冤罪の代償

まとまらなさすぎて長くなってしまった…orz


あらすじ:朝目覚めた四葉が城で起きた冤罪劇にブチ切れたが尚文の説得で落ち着いたと思ったら元康が奇怪な言動に走って……

 

四葉「…岩谷さん。離してもらえますか?そいつら殺せない」

 

尚文「お、落ち着け四葉!な?」

 

一花「四葉いーなー…じゃなくて!四葉、私とちょっとお話ししよ?ね?」

 

マルティの一言でほとんど我を忘れかけている四葉を抱き締めてあやす尚文に、四葉の状況に羨ましさを感じつつも妹の尋常ではない状況に焦りを感じて慌てて説得に入る一花と、謁見の間はかなり混沌としてきた。

 

風太郎「……これ以上ここに居るのは不味いな」

 

五月「はい。このままでは四葉が限界です」

 

樹「そうですね。いくら演技とはいえ…というより、四葉さんもしかして忘れてるんじゃないですかね…?」

 

三玖「四葉ならありえる…」

 

錬「おいおい…ただ忘れてたってだけの理由で皆殺しにされるとか笑えないぞ…」

 

五月「正直、あそこまで我を忘れて怒る四葉は見た事がありません」

 

錬「なん……だと……!?」

 

風太郎「……四葉は基本ずっと笑ってる、というか能天気な奴だ。仮に怒ってもそこまで本気で怒る様な奴じゃない」

 

三玖「うん」

 

樹「…それが本当なら、今の彼女は」

 

錬「正しく暴走状態、だな。……一花!何とかなりそうか?」

 

一花「うん!大丈夫ー!レン君達は城の外で待っててー」

 

錬「わかった!…という事だ。俺達は一度外に出よう」

 

王「これ!何処へ行く!!まだ話は…」

 

風太郎「王よ!今はそれどころじゃないんだ!!また日を改めて来るから今は帰らせてくれ!!」

 

王「じゃが…っ!」

 

四葉「…」

 

王「……やむを得んな。次は1ヵ月後の波に召集する。例え罪人やその仲間であっても貴様らは勇者なのだ。役目から逃れられん。それだけは覚えておけ」

 

樹「えぇ、勿論分かってますよ。それでは」

 

王の皮肉に樹が答え、一花、四葉、尚文、風太郎の4人以外の人間は謁見の間から退出した。

 

一花「……王様…状況が分からないのですか?」

 

王「なんだと…?」

 

一花「…今回の件、女王様へ報告するって言ってるんですよ私は」

 

王「なっ…!?」

 

四葉「一花…」

 

尚文「ま、そういうこった。残念だったなクズ王?」

 

王「ぐぬぬ…貴様らぁ…!!」

 

風太郎「尚文さん、アンタまで余計な挑発するなよ…さ、俺達も行こう。四葉」

 

四葉「……はい」

 

こうして、盾の勇者冤罪事件は城内と城外で内容の違う噂が流れるという結果となった。

この時、勇者一行と城の兵士の中ではこの様な噂が流れた。それは

 

”盾の勇者の仲間の女戦士をキレさせたら国が滅びる”

 

というものだった。

…だが、城下町では盾の勇者は仲間の女に性的暴行をした最低な人間という噂が民衆の間で拡散してしまっていた。

そんな中、城の外に出た面々は城下の雰囲気がおかしい事に気付いた樹と、パートナーである五月が二手に分かれて情報収集に出た。

それからしばらくした後……

 

五月・樹「戻りました」

 

情報収集を終えた二人が帰って来て錬へと結果を話した。

 

錬「何かわかったか?」

 

樹「街の雰囲気がおかしかったのは尚文さん…ここでは盾の勇者ですね。が仲間に強姦したという情報が城から通達されたのが原因みたいですね」

 

五月「私の方も同じでした。…幸いなのはあくまで盾の勇者の話だけで四葉の件が知られてないって事でしょうか…」

 

錬「……この展開も一花が話していた通りか…だが今回は尚文には四葉が居るし、元康も女の話を否定したりしないだろうから今後の展開は変わるハズだ」

 

三玖「それは一花も話してたけど…」

 

風太郎「すまない、遅くなった」

 

四葉「…………」

 

尚文「…その様子からすると、やはり…」

 

錬「ああ。…残念ながら、一花の言っていた話通り城下町では尚文の噂が広まっている様だ」

 

尚文「そうか…」

 

一花「やっぱり、三勇教を何とかしない限り変わらないのかな……そう考えると、フータロー君とナオフミさんには感謝しないといけないね」

 

そう言ってから一花は尚文と風太郎に向かって頭を下げて

 

一花「…私の大切な妹を止めてくれてありがとう」

 

と言った。そんな一花へ尚文は頭を掻きながら

 

尚文「えっと…一花、だっけ?俺はお礼を言われる様な事はしてないよ。…むしろ俺は、四葉にお礼を言いたいくらいさ」

 

と答えた。

 

四葉・一花「え?」

 

尚文「……正直に言うとな、俺一花の言ってた話そこまで信じてなかったんだよ」

 

一花「あらら。やっぱり初対面の相手じゃ信用無いかぁ」

 

尚文「すまないな。でだ、そんな半信半疑な俺に対して四葉はずっと信じてくれてたし、何よりあの城で俺のこと表立って庇おうとしてくれたのがすごく嬉しかったんだ」

 

四葉「岩谷さん…私は…」

 

尚文「四葉、だからこそ俺があの時伝えた言葉に嘘は無いし、ありがとうと言いたいんだ」

 

四葉「でもっ!」

 

尚文「あれだけ怒ってくれたのは俺のことを思ってのことだってのは今の俺なら分かる。…今更だけど、一花の話が本当だって信じてるしさ。だからもし、さっきの件で自分はそばに居る資格は無いって思ってるなら、その考えは捨ててほしい」

 

四葉「…岩谷さん……わかりました。岩谷さんがそう言うなら従います。私はみんなが幸せになれる様に頑張ります。これからもよろしくお願いしますね」

 

一花「ナオフミさん、この先大変だと思いますが四葉の事、宜しくお願いします」

 

尚文「あぁ。任せろ」

 

風太郎「…四葉」

 

四葉「上杉さんも、色々ご迷惑をおかけしてすみませんでした」

 

風太郎「大丈夫だ。お前の成績に比べたらこの程度迷惑のうちに入らん」

 

四葉「相変わらず手厳しいですね。…ですが上杉さんらしいです」

 

風太郎「…それよりもだ。今錬達に聞いたが、どうやら街の方では物語同様盾の勇者が強姦魔だと言う噂が流された様だ」

 

四葉「…という事は、やっぱり三勇教が…」

 

風太郎「落ち着け四葉。…そこでだ。尚文さんと共に奴隷商の所であの娘を購入するんだ」

 

四葉「あの娘って…映画に出て来たヒロインの子ですよね?…確か…」

 

風太郎「ああ、そいつで間違い無い。…ここまで沿ってしまった以上、いっそのことその通りに行動した方が分かりやすいかもしれん。…状況的に一番大変だろうが、四葉。お前なら出来るって信じてるからな、必ず生きて帰って来い」

 

四葉「上杉さん……わかりました!岩谷さんとしっかり生きて帰って来ます!…上杉さんも、三玖と一緒に頑張って下さい!」

 

風太郎「ああ。帰れる日まで頑張って生き残るぞ!」

 

錬「……どうやら話はまとまった様だな」

 

四葉、風太郎、尚文、一花の会話が落ち着いたのを見計らって錬が残りのメンバー(元康パーティを除く)を代表して声を掛ける。

 

尚文「ああ、待たせてすまなかったな。…次にみんなが集まるのは波の時になると思うが、生きてまた会おう」

 

錬「当然だ」

 

樹「勿論です」

 

尚文の言葉に錬と樹が応え、五月、三玖、一花が頷く。

…だが、尚文の言葉だった事もあり、錬と樹の仲間は特に反応を示さなかった。

 

そして、各パーティ毎に取り決めた方角へと旅立ったのだった。




全パーティがいる時はサイドは入れない感じでいきます。(前回までのタイトルは修正済み)


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三勇者一行の今日

長くなり過ぎた…
分ければ良かった…


剣の勇者、弓の勇者、盾の勇者。そして魔導書の勇者がメルロマルクの城から旅立ち、錬が東へ、樹は北へ。そして風太郎は西へと赴き各々レベリングを行った。

ちなみに元康一行は南へ向かったという情報は流れて来ていた(何故かわからないが中野家の面々が持つスマホだけは使えた為一花が二乃へと連絡してわかった)のでとりあえずバッティングすることは無いだろう。

そして尚文と四葉は、四葉の提案で奴隷商の所へ行き、そこで亜人奴隷の少女<ラフタリア>を購入してその日は城下近くの広場(キャンプが出来そうな位の広さがある川辺)にて野宿をした。

 

今回は三勇者のパーティの城を出てから翌朝までの間について、ここに記す…。

 

@@@@@@@@

先ずは剣の勇者一行へと視点を当てる。

彼らは城を出てからずっとレベリングに勤しんでいた。

勿論、錬のパートナーである一花もレベリングに参加していた。

そして、その日の夜…

 

一花「ふぅ…やっぱり慣れてないと疲れちゃうねー」

 

錬「…とか言って、俺よりも手馴れてるじゃないか」

 

一花「いやいや〜、それほどでも〜…なんてね。本当は君をイメージして動いてただけだよ」

 

錬「フン…そういう事にしておこう」

 

一花(あ、ちょっと嬉しそう…)「素直じゃないなぁ」

 

錬「…なぁ」

 

一花「ん?」

 

錬「お前は…一花は、俺たちの未来を知ってるんだろ?」

 

一花「……まぁ、それなりには」

 

錬「…なら、未来の俺たちがどうやって強くなったのか教えてほしい。俺は…強くなりたいんだ」

 

一花「…………」

 

一花は考える。

確かに自分はこの先の未来をある程度は知っている。…だが同時に未来を話す事で未来が変わってしまうというリスクがあるのではないかと。

だが一花は決めた。自身のパートナーの想いに応えようと。何故なら

 

一花(…フータロー君と同じ声に聞こえるレン君の為に何かしてあげたくなっちゃうなんて…悪い癖ってわかっててもやめられない辺り私も重傷だね…)「…良いよ、教えてあげる」

 

錬「助かる!…それで、先ずは何をすれば良いんだ?」

 

一花「まずはね––」

 

その日の夜、一花と錬は寝ずに強化方法の話をし続けた。

朝日が昇ってくる頃、二人はようやく徹夜した事に気付き仲間からあられもない疑いを向けられてしまうがそれはまた別のお話…。

 

@@@@@@@

一方、弓の勇者一行は適度なレベリングを行い、夜は親交を深める為の宴会をしていた。

 

「イツキ様。今日も一日お疲れ様でした」

 

樹「はい、皆さんも今日は一日お疲れ様でした。今夜は親睦を深める意味も込めて、このひとときを楽しんでください」

 

「はい!」

 

〜〜〜

 

五月「…………」

 

樹「中野さん、こちらにいらしたんですね」

 

それなりの時間が経った頃、宴会をしている酒場のテラス席で一人食事をしていた五月の元へと樹は来ていた。

 

五月「川澄君、その年齢でお酒を飲んではいけませんよ…って、ここは異世界なんでしたね…」

 

樹「そうですね。本来なら僕も未成年なのでお酒は良くないとは思いましたが、せっかく異世界へ来たんですし楽しまないとって思いましてつい…」

 

五月「…楽しむ、ですか…」

 

樹「……中野さん、皆さんと別れてからあまり元気が無い様ですが、何か心配事でもあるんですか?」

 

五月「…心配、といえば確かに心配ですが…あまり、姉妹達と離れてた事が無いので不安があるのは確かです」

 

樹「皆さんとても仲好さそうですからねぇ…」

 

五月「はい。…とは言え、割と最近かなりの大ゲンカをしましたけどね」

 

樹「えっ!?…想像出来ませんね。どんな感じだったんですか?」

 

五月「そうですね…あれは丁度期末試験前くらいの頃になりますが––」

 

そうして語ったのは試験期間中にあった二乃と喧嘩をして家出した話だった。また、この件が和解済みである事も併せて話したのである。

 

樹「……そうだったんですか…」

 

五月「はい。なのでいくら仲のいい姉妹とは言え喧嘩をする事は割とあるものなのですよ」

 

樹「…僕は、ひとりっ子だったので喧嘩出来る姉妹がいるのは羨ましいですよ」

 

五月「……そうですね…もし、私が川澄君と同じ状況だったらそんな感想を漏らすかもしれませんね」

 

樹「……ですが、元気の無い理由は姉妹が心配だからというだけでは無いのではありませんか?」

 

五月「!…流石に気付かれてましたか」

 

樹「まぁ、僕は弓の勇者なのでどうしても後ろから皆さんを見る形になりますからね」

 

五月「…すみません。気を遣わせてしまいましたね…」

 

樹「いえ、それは構いませんよ。…それに、あなたに何かあったらあなたのお姉さんに殺されちゃいますしね」

 

五月「……そうですね。二乃ならやりかねませんし、皆さんの足を引っ張らないようにしつつ無事に波まで生き延びなければいけません。…なのでご相談なのですが…」

 

五月が相談した内容は自身の立ち位置…戦い方についてだった。

仲間のほとんどが前衛職なので自分も魔法使いとして後衛で戦いたいというもの。

勿論樹も二乃の件があったのであまり前では戦わせたくなかったので二つ返事で了承した。

 

樹「––では中野さんは明日から僕と後衛をやるという事で皆さんには僕から言っておきますね」

 

五月「いえ。出来れば私からも話したいので明日の朝食の席でお伝えしてもいいでしょうか?」

 

樹「…中野さんがそう言うなら僕はそれで構いませんよ」

 

五月「ありがとうございます」

 

樹「では、僕はもう少し中で皆さんと交流して来ますので、中野さんも気が向いたら入って来て下さいね」

 

五月「はい」

 

こうして、彼らの夜は更けていった。

…この2人のシーンを快く思わない1人の男がいたが、それはまた別のお話。

 

@@@@@@@

槍の勇者パーティの一行は、レベリングもそこそこに早い段階で宿を取って各々の過ごし方をしていた。ちなみにマインは、二乃の圧力に負けて仲間の女性陣を連れて近くの温泉へと行っている。

そして、元康以外の唯一の男である細剣使いは街へ着くなり一人で酒場へと行っており、現在宿の部屋には元康と二乃しかいない。

 

二乃「……元康」

 

元康「おいおい…そんな怖い顔しないでくれよ。俺は言われた通りマインの言う通りにはしてないだろ?」

 

元康の言う通り、今の二乃は普段よりも険しい表情で元康の事を睨みつけている。

 

二乃「……確かに、アンタは間違って無かったわ。…四葉の怒り方からして多分アタシ達との話し合いの内容を忘れてる可能性が高いし」

 

元康「だ、だよな!」

 

二乃「けどねぇ!アンタは勇者だからって1人で戦い過ぎなのよ!!少しは仲間を頼りなさいよ!」

 

元康「そ、それは…お、女の子に前に出て戦わせるなんて男の風上にもおけないじゃないか!」

 

二乃「…確かに、アンタが何もしないでアタシ達にだけ戦わせてたらそうね。けど!アンタは前に出て戦ってるじゃない。ならそれをサポートするくらいはさせなさいよ!!」

 

元康「!!」

 

二乃「……今は仮にもパートナーで仲間なのよ…」

 

二乃が元康へ怒っていた理由。それは、元康が何から何まで全部独りで動いていたからである。

城での展開も、本来なら自分と元康の2人で四葉や王を説得してマインをこのパーティで監視する予定だったが、あろう事か元康は四葉のヘイトを自分へ向け、あまつさえレベリングの際は元康が独りで戦闘を行うという事実上のソロプレイをした事にあった。

それは、家族を誰よりも大切に想う二乃にとってとても許せるものではなかった。

 

元康「……二乃ちゃん……俺は……」

 

二乃「…反省、してるならいいわ。…アタシはまだ言う程アンタに協力出来る能力なんて無いし」

 

元康「そんな事は無いよ!」

 

二乃「いいわ。別に慰めて欲しい訳じゃないし」

 

元康「二乃ちゃん…」

 

二乃「というか、その二乃ちゃん呼びやめてよ。普通に二乃でいいわ」

 

元康「あ、あぁ…わかった」

 

二乃「…ま、役に立てる様にアタシも頑張るから、アンタも頑張ってアタシ達を頼れる様になりなさい。…尤も、あの男以外で役に立ちそうな奴は居るか怪しいけどね」

 

元康「……それは、一花ちゃんの言ってた未来の話か?」

 

二乃「…それもあるけど、さっきのアイツら見たら期待なんて出来ないでしょ?」

 

元康「それは…まぁ…」

 

二乃「とにかく、アンタはアイツのペースにならない様に気をつけなさい。…レベルを上げるのも大事だけど、一番は戦った数が重要だって事を忘れない様にね」

 

元康「…わかってるよ。じゃ、俺も少し外に出るわ」

 

二乃の説教に耐えきれず外出しようとした元康。しかし

 

二乃「待ちなさい。ならアタシもついていくわ」

 

元康「なっ!?」

 

二乃「アタシの目的はアンタを監視する事よ。独りで出掛けさせないに決まってるでしょ?」

 

二乃は姉妹との約束を守る為同行する旨を告げた。

そんな二乃に対して元康は大胆な事を言い放った。

 

元康「…じゃあ、寝る時も同じベッドで同じ部屋で過ごすって事か?」

 

二乃「!……えぇ。必要とあらばそうするわ」

 

元康「!?」

 

元康は驚いた。まさか異性と同じ寝室で寝るという事に肯定されるとは思ってなかったから。…そして二乃からのカウンターを受ける事になった。

 

二乃「実際、まだ何も役に立ってない以上何かしないとアンタにばかり要求して束縛する事になるでしょ?…だからまぁ、戦闘に参加出来る様になるまではその…い、一緒に寝てもいいわ」

 

元康「!?!?」

 

二乃「…元康?おーい…」

 

元康「」

 

二乃「……はぁ」

 

こうして、元康は二乃によって撃沈され、翌朝まで目を覚まさなかった。

…いくら女慣れしている元康と言えど、流石に刺激が強過ぎた様で、翌朝目を覚ました元康が「あんなタイミングで言われるとは思わなかったよ」と苦笑いで二乃と会話しマインに嫉妬の感情を向けられるのだが、それはまた別のお話である。

 

@@@@@@@

最後に風太郎と三玖の2人についてだが、この2人は仲間をスカウトせずに自力でレベリングをすると初日に決めていたので進めるだけ進んだ先で狩りをしようと考えたが、体力が人並み以下なこのコンビは途中の村にたどり着いた段階で宿を取って休んでいた。

 

…もちろん、三玖にとっては2人きりというある意味では願ったり叶ったりな展開ではあるが、やはり体力不足プラス慣れない戦いで風太郎を守りながらという状況は、現状の三玖にはとても酷だった為着いてすぐに眠ってしまった。

 

風太郎「飲み物買って来たが何がい…い?」

 

一方、風太郎は魔法を使って後ろで戦っていたので比較的体力には余裕があった。

その為宿に荷物を置いてから近くの露店で飲み物を買って来たのだった。

 

風太郎「……まぁ、今日の三玖は色々と大変だったしな。ゆっくり寝かせるか」

 

風太郎は、買って来た飲み物を部屋のテーブルに置き三玖の眠るベッドの横に腰を下ろした。そして

 

風太郎「お疲れさん。また明日も宜しくな」

 

そう言って、三玖の頭を撫でた。

その後、椅子へと移動して自分の分の飲み物を飲みながら、初日に手に入れた魔法書をある程度読んでから眠りに就いたのだった。




本章はこれで終わりです。…少し駆け足ですがご容赦願えれば幸いです。
次章はついに第1回の波になります。


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波との戦い編1
〜1か月後〜陰謀渦巻く波の戦い1


導入難しい……
今話から新章突入です。


勇者が旅立ってからひと月が経ち、波が訪れようとしているある日の事。

城下町や周囲の集落からとある噂話が城へと舞い込んだ。その内容は

 

"兎耳の聖人"と呼ばれる猛者が慈善活動をしている

盾の勇者はあらゆる病気を治す名医

盾の勇者の従者は困ってる人を例え身を削ってでも必ず助ける

 

と言った内容のものから

 

魔導書の勇者に教わった生徒は灰色の頭脳を得られる

魔導書の勇者は灰色の頭脳の持ち主

魔導書の勇者の従者は闘技場の覇者

 

という様に、2人の勇者と従者に関する好評が殆どであった。

 

そして、波発生の当日の朝を迎える。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

尚文「いよいよ、か…」

 

空を見上げながら、尚文はそう漏らす。

その言葉に2人の従者――今や大切な仲間――が応える。

 

ラフタリア「はい。ナオフミ様」

 

四葉「そうですね…けど!私達は負けません。皆で無事に帰ってくるってエルハルトさんとも約束しましたから」

 

尚文「…そうだな。ってか四葉、エルハルトって誰の事だ?」

 

四葉「え?武器屋の店長さんですけど…」

 

尚文「……あいつの名前、エルハルトっていうのか…知らなかった…」

 

四葉「えぇ~…」

 

ラフタリア「ナオフミ様らしいです……」

 

四葉「ラフタリア、あんまり尚文君を甘やかしちゃダメだよ。放っておいたらこの人朴念仁になっちゃうからね」

 

ラフタリア「あはは…流石にそこまで酷くはならないんじゃ…」

 

尚文「四葉!ラフタリア!無駄話してると置いてくぞ」

 

ばつが悪くなった尚文は2人にそう声を掛けてその場を後にする。

……余談だが、四葉と尚文は城での一件やラフタリアを含めた三人での旅の間に絆が深まり、四葉の呼び方が<岩谷さん>から<尚文君>へと変わった。また同時にラフタリアは尚文の事を最初は<ご主人様>と呼んでいたが途中から<ナオフミ様>へと変わり、四葉に対しては最初<ヨツバお姉ちゃん>と呼んでいたが成長してからは<ヨツバ姉さん>と呼ぶようになった。

 

波まであと 00:15

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

三玖「いよいよだね、フータロー」

 

風太郎「あぁ。そうだな」

 

風太郎と三玖のコンビは、商業都市”ゼルトプル”の闘技場の前で佇んでいた。

 

三玖「この日の為に私達は頑張ってきたんだよね」

 

風太郎「ああ、そうだ」

 

三玖「……私、生きて帰れるかな…」

 

風太郎「不安か?この闘技場で女王とまで言われても」

 

三玖「それは言わないで。恥ずかしいから…」

 

そう。三玖は腕試しと思って挑戦した闘技場で初出場・初優勝という快挙を成し遂げてしまったのだ。

元来、人見知りで恥かしがりやな三玖にとってあの満員の観客からの歓声にただただ恥かしかったので三玖個人としてはただの黒歴史なのである。

 

風太郎「……とは言えだ。あれだけ強い連中と戦って勝てたんだから自信を持て。それに、だ」

 

三玖「?」

 

風太郎「…お、俺はそんなお前を信じている。お前は、…三玖は絶対負けないよ」

 

三玖「フータロー……うん、ありがとう。……フータローの事は私が絶対守るから。必ず生きて帰って来ようね!」

 

そう言って二人は手を繋いだ。――この世界に来てから自信の持てない三玖に対して、勇気を与える戦いの前の儀式でもあるが。

 

風太郎「なぁ三玖」

 

三玖「うん?」

 

風太郎「もし、何事も無く帰ってこれたら――――」

 

三玖「!!」

 

波まであと 00:05

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

エルハルト(嬢ちゃん達の装備はしっかり整えてやった。コンディションも悪くはないだろう。…だがそれでも不安が尽きないのはきっと…)「……生きて帰って来いよ。勇者共」

 

武器屋のカウンターで店主は五つ子と勇者の無事を祈っていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

オルトクレイ王「いよいよか……」

 

教皇「そのようですね」

 

オルトクレイ王「……この戦いで盾の悪魔が消えてくれればよいのだが……」

 

教皇「流石に最初の波で浄化はされないでしょう。アレは悪魔なですから」

 

オルトクレイ王「むぅ……」

 

教皇「まぁ、今回の勇者がどれほどのものか見せてもらいましょう」

 

オルトクレイ王「そうだな……」

 

教皇「では、手筈通りに頼みましたよ王」

 

オルトクレイ王「分かっておる」

 

王とメルロマルクの国教である三勇教の教皇が暗躍の序曲を奏でる。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

勇者一行と五つ子姉妹の未来はいかに!

 

波まであと 00:00




サブタイは変わるかも


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サイド尚文:リユート村救出大作戦

最初は尚文ルート(=原作視点)から。


00:00となった瞬間、それぞれの勇者と仲間が一斉に転送された。

そこは、空に大きな亀裂が生まれたかのようにヒビが入っており、不気味なワインレッドに染まっていたのだった。

 

=====================

 

ラフタリア「空が……」

 

四葉「ここは……」

 

尚文「リユート村の近くのようだな…っ!2人ともあれを見ろ!!」

 

場所を確認した尚文はリユート村の方を見て叫ぶ。そう、村の方から火の手が昇っているのだ。

 

四葉「もう避難は済んで――」

 

尚文「済んでる訳無いだろ!出現場所が不特定なんだぞ!」

 

四葉「っ!!――急ぎましょう!!」

 

尚文「ああ!」

 

ラフタリア「はい!」

 

盾の勇者パーティはリユート村へと急行した。

 

~~~~~

 

村に着くと、丁度、波から溢れていた化け物たちが暴れていた。

駐在していた騎士と冒険者が辛うじて化け物たちと戦っているが、多勢に無勢……防衛線は決壊寸前という状況に、即決した四葉に対して感謝をした。

 

尚文「流石四葉だな!」

 

四葉「褒め言葉はここの村民の避難誘導が終わってから聞きますよ!――ラフタリア、村民の避難誘導をお願いします!!」

 

ラフタリア「は、はい!」

 

四葉「私と尚文君は」

 

尚文「避難が終わるまで敵を惹き付ける!だよな」

 

言葉もそこそこに3人は動き出した。

ラフタリアは避難誘導をしている村人と合流し、四葉は防衛線に駆け出しイナゴの群のような魔物へ剣を振るい、尚文はそんな四葉を盾で援護した。

 

四葉「せいっ!」

ザシュッ

 

「よ、ヨツバ様?」

 

四葉「はい!……皆さん!私達が引きつけている間に体制を立て直してください!!」

 

「は、はい!」

 

「た、助け――!!」

 

尚文「エアストシールド!」

 

「……あ、ありがとう」

 

尚文「早く逃げろ!」

 

そうして2人は避難誘導が終わるまで住人を助け続けた。

しばらくすると突然火の雨が降り注いできた

 

尚文「くっ…四葉!」

 

四葉「きゃっ!」

 

四葉を自身の盾で守りながら火の出所を見ると騎士団が到着し、魔法が使える連中が火の雨をこちらに向けて放っていたのだった。

 

尚文「おい! こっちには味方がいるんだぞ!」

 

「ふん、盾の勇者か……頑丈な奴だな」

 

騎士団の隊長らしき人物は、尚文を見るなりそう吐き捨てた。

 

四葉「……おい」

ガキン!!

 

騎士団の隊長らしき人物の台詞が聞こえたと同時に吐き捨てた人物へと四葉が剣を振りかぶり鍔迫り合いになった。

 

四葉「あんた達さぁ、尚文君だって知ってて魔法使ったでしょ?」

 

「盾の勇者の仲間か?」

 

四葉「そうだよ。…私も危うく死ぬところだったな」

 

「五体満足なのだから良いじゃないか」

 

四葉「……いい加減殺してもいいかな…?」

 

「!?」

 

殺意全開の四葉の殺気に騎士団の隊長らしき人物はふと思い出した。この少女は城で王の殺害宣言をした奴だと。

しかし、様子を見ていた一人の騎士が四葉の死角から攻撃しようとしたのが見えた尚文はすかさず

 

尚文「シールドプリズン!」

 

盾の牢獄に閉じ込め、四葉の援護をした。そして多勢に無勢を働こうとした騎士達を睨む。

 

「な、貴様――」

 

尚文「……敵は波から這いずる化け物だろう。履き違えるな!」

 

「犯罪者の勇者が何をほざく!」

 

尚文「なら……俺は移動するから、残りはお前達だけで相手をするか?」

 

「ぐっ…!」

 

ラフタリア「避難誘導完了しまし…た」

 

尚文「ありがとう助かった」

 

ラフタリア「いえ…それよりも、これは一体…」

 

尚文「気にすんな。それよりもまた四葉の事頼めるか?」

 

ラフタリア「は、はい!」

 

指示に従い、ラフタリアは四葉の元へ走っていった。

それと同時に牢獄の効果時間が切れた。

 

「くそ! 犯罪者の勇者風情が」

 

尚文「そうか。お前は……死ぬか?」

 

「…………」

 

尚文「…それでいい」

 

@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

 

その後、波から溢れ出た化け物の処理はある程度完了した。

ラフタリアが前線に復帰した事で想定よりも早い段階で駆逐に成功し、今は防衛戦に徹している。

 

四葉「…皆、大丈夫かな?」

 

尚文「まぁ、四葉が知っている映画の展開よりは良くなっているだろ」

 

四葉「そうだと良いんですが……」

 

ラフタリア「ヨツバ姉さんのご家族ですか?」

 

四葉「うん。これが終わったらラフタリアにも紹介するね」

 

ラフタリア「はい、楽しみにしてます」

 

そして、空の亀裂が収まったのは数時間も後の事だった。




次回は風太郎視点です。


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サイド風太郎:衝撃の真実

ちょっと呼び方に矛盾があるかもしれないです。
気づき次第訂正していきます。


風太郎「おい一花!村の方へ行かなくて大丈夫なのかよ!?」

 

転送して直ぐに尚文と同じくリユート村の状況を察した風太郎は一花へと電話をかけて捲し立てる。

 

一花『うん、今回の波なら四葉も居るし大丈夫。それよりも私達の方が大変かもよ』

 

風太郎「?…どういう事だ?」

 

一花『それは合流したらわかるよ…あ、戦闘が始まるから切るね!また後で』

プツ…

 

風太郎「あ、おい待て一花!…くそ」

 

三玖「一花何だって?」

 

風太郎「…今回の波なら四葉と尚文さんで充分村の避難は可能らしい」

 

三玖「そうなんだ。じゃあ私達は早くボスを倒さなくちゃね」

 

風太郎「あぁ。いくぞ三玖!」

 

三玖「うん!」

 

2人は閃光弾の見えた方角へと走って行った。

道中の魔物へは三玖がボウガンで対応し、風太郎の魔法は可能な限り温存した。

そして、勇者一行が戦う戦場へとたどり着いた時に見た光景にただただ驚いた。––押されているのだ。勇者陣営が。

 

三玖「みんな!!大丈夫!?」

 

五月「三玖と上杉君ですか!?…丁度良かった、これから魔法を使うので援護お願いします!」

 

三玖「え?うん、わかった」

 

風太郎「俺も魔法を使う。いつも通り頼むな」

 

三玖「任せて!」

 

そう言ってから三玖は一度離れた。そして

 

三玖「ヘイトリアクション!!」

 

スキルを発動した。

スキルの影響を受けてボスの周りにいた小物を全て引きつけた。そこへ

 

風太郎「力の根源たる俺が命ずる…理を今一度読み解き、かの者達を風の刃で切り刻め…ツヴァイトエアスラスト!」

 

風太郎の出した風の刃が三玖に集まった化け物達へと襲いかかりほとんど全てを切り裂き

 

三玖「シングルシュート三連打!!」

 

三玖のボウガンが残りを掃討した。その間約3分

五月は自身の詠唱を忘れて呆けてしまい、我に返ってから話し出した。

 

五月「…………2人とも強くなり過ぎではないですか?」

 

風太郎「…そうか?これでもまだ準備運動くらいなんだがな」

 

五月「こ、これで準備運動…」

 

三玖「五月、みんなは?」

 

五月「あちらで戦っています。ですが…」

 

風太郎「苦戦してんのか?勇者が3人も居て」

 

五月「……正直なところ、戦闘が出来てるのは実質天木君と一花くらいというのが現状です」

 

そう。尚文、風太郎以外の勇者はボスの出現場所を知っていたので早い段階で到着・交戦していたのだが、ここで予想外の事実を知ることになる。それは––––

 

風太郎「どういう事だ?…北村さんには二乃、川澄にはお前が付いていたのに何故そんな事になってる?」

 

五月「……私は…いえ。私達はあの方を見くびっていた様です。…あの人の策略にかかり北村さんのパーティはレベルが一桁、川澄君の、…私達のパーティはレベルが不十分に加え私はこの通り別で戦わされていましたのでそもそもの経験値が低いからボス戦では無力に等しいのです…!」

 

三玖「嘘…」

 

風太郎「クソッ!そこまでやるかあの女っ!…だが一花と錬はどうして戦えてるんだ?」

 

五月「それは一花が天木君に未来の天木君が行う強化方法を教えたからです。…本来なら未来の情報を開示し過ぎると現在に影響が出てしまうので良くない、と川澄君は言ってましたが…」

 

風太郎「……つまり、今現在の状況は最早映画のシナリオとしても逸脱した展開、という事か…」

 

三玖「そんな…!」

 

風太郎「落ち着け三玖。…とにかくボスの元へ急ごう!手遅れになる前に」

 

三玖「うん!」

 

五月「こちらです!」

 

風太郎、三玖、五月の3人は道中の化け物を蹴散らしながら、五月の案内でボス戦が行われているフィールドへと急行したのだった。




次回、ボス戦!


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風太郎サイド:VS次元ノキメラ1

小出しっぽくなってるけどこのキメラさんには頑張って頂きたいのでね…


戦場では正に勇者3人と仲間、中野姉妹が戦闘中だった。

 

樹「ウィンドアロー!」

 

元康「ライトニングスピアー!!」

 

グルアァァァァァァァァアァ!!!

 

樹「全然効いてないですね…」

 

元康「くそっ!これじゃあいつまで経っても終わらないぞ!!」

 

錬「お前が弱すぎるからだ――紅蓮剣」

 

ギシャアァァァァァ!!

 

樹「……ズルをしているとは言え錬さんと一花さんが強くて助かりましたよ」

 

錬「なっ!?」

 

一花「たはは~、一本取られたねぇレン君♪」

 

二乃「ちょっと一花!話してる場合じゃないでしょ!?」

 

一花「はいはい――――レン君スイッチ!!」

 

錬「スイッチ!!」

 

一花「せやあっ!!」

ザシュッ

 

ギシャアァァァァァ!!

 

五月の言っていた通り、錬と一花の2人以外の攻撃が全く効いていない様で苦戦を強いられていた。

そこへ、息を切らせながら走ってきた風太郎と三玖、そこまで疲労の無い五月が戦場近くへ到着した。

 

風太郎「はぁ、はぁ……本当に一花と天木の攻撃しか効いてないな…」

 

三玖「…そう…だね…ふぅ…」

 

五月「……2人とも息上がりすぎでは…?」

 

三玖「う…うるさい…な…」

 

風太郎「…い、1ヵ月で体力なんて…はぁ…付くわけ…はぁ…ねぇ…だろ…っ!」

 

三玖「そうそう…っ」

 

五月「はぁ……わかりました。私が到着を伝えてきますから少し休んでてください」

 

@@@@@

 

ボスから少し離れた所に勇者一行の前線基地(という名の野戦病院)がありそこに居た二乃へと声を掛けた。

 

五月「二乃!!」

 

二乃「!?…五月じゃない、ゾンビ達の相手は終わったの?」

 

五月「私の所は上杉君と三玖が一掃してくれました」

 

二乃「!…フー君が来てるの?」

 

五月「えぇ。ただ、ここまで来るのにずっと走って来たのもあって少し休んでからの参戦になります。それを伝えに来ました」

 

二乃「なるほどね…わかったわ、伝えておく」

 

五月「お願いします」

 

そう伝えた後、五月は三玖達の下へととんぼがえりした。

――――しかし、五月が戻った時には既にそこには誰も居なかったのだった。

 

@@@@@

 

グルアァァァァァァァァアァ!!!

 

一花「ぐっ!!」

 

錬「!?一花!!」

 

その頃、最前線では非常に不味い事態に陥っていた。

素早く動いて翻弄しながら攻撃と回避をしていた一花がついに相手の攻撃を受けてしまったのだ。

 

「大丈夫ですかイチカ様!!」

 

一花「っつ~……ごめん、大丈夫とは言えないかも…」

 

「!……ここは我々に任せてお下がりください!あなた様に何かあったらレン様が平静ではいられません」

 

一花「うん…わかってる。…レン君の事お願いね」

 

「はい!!」

 

思ったより重症だった一花は仲間に任せて一度下がる。

しかし、それが仇となり

 

「ぐわあぁぁぁぁ」

 

「きゃあぁぁぁっ」

 

城で得た仲間達が大ダメージを受けて倒れてしまう。

 

錬「何故だ……何故、これだけ強くなっても守れないんだ…っ!?」

 

元康「動揺してる場合か!来るぞっ!!」

 

元康の声がスイッチとなり今回のボス――――次元ノキメラ――――が突進攻撃を仕掛けてきた。

そこへ――――

 

風太郎「――――ツヴァイトトルネード!!」

ギシャアァァァァァ!!

 

「!!」

 

強力な二つの竜巻が次元ノキメラを襲った。

 

風太郎「すまん、遅くなった!」




仲間のピンチに颯爽と登場するのが英雄(主人公)


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風太郎サイド:VS次元ノキメラ2

ボス戦の続き。
…史実とは微妙に違うのです。


錬「……風太郎、か?」

 

風太郎「遅れてすまない。まだやれるか?」

 

錬「ああ、勿論だ……だが、一花が…」

 

三玖「!」

 

風太郎「……生きてはいるんだよな?」

 

錬「勿論!生きてるっ…だが」

 

風太郎「…なら今はいい。話はコイツを倒してからだ」

 

錬「!……すまない」

 

三玖「その言葉は一花に言って。今は戦いに集中」

 

錬「…わかった」

 

その言葉を最後に錬と三玖は走り出し、風太郎は魔法を使うべく集中した。

 

グルアァァァァァァァァアァ!!!

 

三玖「くうっ…!」

 

グルアァァァァァァァァアァ!!!

 

三玖「ひゃっ!?」

 

風太郎「三玖!」

 

突進攻撃の予想外の強さに盾ごと弾かれ尻もちをついた三玖へ次元ノキメラは更なる追撃をかけようとした。しかしそれは

 

錬「雷鳴剣!!」

 

ギシャアァァァァァ!!

 

風太郎「力の根源たる俺が命ずる…理を今一度読み解き雷よかの者を打ち貫け!――――ファストライトニング!!」

 

ギシャアァァァァァ!!

 

錬のスキルによって阻止された。

更に追い討ちをかける様に風太郎の魔法攻撃が炸裂し、次元ノキメラは怯んだ。

 

錬「…大丈夫か?」

 

三玖「……うん、大丈夫。ありがとう」

 

風太郎「……大丈夫だと思うが無理はするなよ」

 

三玖「わかってる。…だからごめんフータロー、盾を両手持ちに変えるから攻撃全般は任せるよ」

 

風太郎「!…わかった。天木、三玖を壁にしながら隙をみて攻撃。いけるか?」

 

錬「……それは構わないが、大丈夫なのか?」

 

風太郎「問題無い。むしろここからが三玖の本領発揮だ」

 

三玖「……」

 

錬「…わかった。いくぞ!」

 

風太郎「ああ!」

 

三玖「うん!」

 

〜〜〜〜〜〜

 

一方、樹と元康のパーティは少しボスから離れて中ボス級の巨大化け物と戦っていた。

 

樹「…どうやら風太郎さんと三玖さんは合流したみたいですね」

 

元康「…っ、その様だな」

 

樹「これでなんとか波のボスは大丈夫そうですね…サンダーシュート!!」

 

元康「ライトニングスピアー!!……クソッ!どうして俺の攻撃が効かないんだっ!!」

 

…………。

 

樹「…そんなの、あなたのレベルが低過ぎるからですよ。何ですかレベル9って」

 

元康「くっ…!!」

 

元康のレベルが低いのには理由がある。

それは、マルティの策略によって元康の仲間にいた女性陣がレベル上げを全くしない(むしろレベル上げ不参加率のが高かった)上に、レベル上げの際は元康ではなく二乃と細剣使いの男にしか戦わせないというメチャクチャを通り越して杜撰な事しかしていなかったのだ。

挙げ句の果てにはレベル上げの時間は1日2時間。どこの小学生と言わんばかりの状況に戦闘をしながら聞いていた樹は最早呆れ果ててしまったくらいだ。

――――余談だが、元康パーティは既に野戦病院送りとなっていたりする。

 

樹「…まぁ、僕もあまり他人の事言えませんし、ここは小物を倒して経験値を稼ぎながらボスと戦いましょう」

 

元康「……クソッ!」

 

勇者達(?)の戦いは続く。




キメラさんには馬車馬のように働いて貰います(笑)


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風太郎サイド:VS次元ノキメラ3

ダラダラと続いた最初の波編のラスト


一方、野戦病院(仮)はというと……

 

「「うー…」」

 

「こ、こんなハズでは…」

 

二乃「はいはい…良いから大人しくしてなさい」

 

元康パーティの冒険者が呻きながら倒れており、樹パーティのリーダー格である重騎士は現状に対してありえないと悔しそうに呟いているのを二乃に流されている、という状況である。––勿論レベルが低過ぎるので当然の結果である。

ちなみに二乃はレベルこそ1桁(元康と同じ9)だが、魔法適正が回復だったので日頃から治療院の仕事を手伝ったりレベリングの際に回復役をしていたので練度は高かったりする。

 

二乃(……ボスのレベルが想像してたより高過ぎる…元康達じゃ話にならないのは確実。…けど分からないのは五月達のパーティがレベル低い事よ。あの女と元康は監視してたから何かしてたらアタシがわからない訳無い。…ならどうして…?)

 

樹パーティのレベルは平均して30程度である。

––ちなみに錬が50なので差は歴然だったりする。

 

二乃(……考えてても分からないわ。後で五月に聞いてみるか)

 

一花「二乃……」

 

二乃「一花!?」

 

考えに耽っていた二乃の元へ前線で負傷した一花が来た。

一花の負った傷は攻撃を受けた左腕の骨折と背中を強打した打撲、右脚の擦り傷となかなかの重傷であった。

 

一花「ごめん、しくじっちゃった」

 

二乃「待ってなさいすぐに治すから!––力の根源たる二乃が命ずる。真理を今一度読み解き、かの者の傷を癒せ––ツヴァイトヒール!!」

 

二乃が回復魔法を唱えるとたちまち重傷だった傷跡が綺麗さっぱり治った。

 

一花「…ありがとう二乃」

 

二乃「お礼は後にしなさい、今まともに戦えるのアンタと天木しかいないんだから…ってあ」

 

一花「?」

 

二乃「……フー君と三玖が来たこと伝えるの忘れてた…」

 

一花「……わかった、伝えておくね。フータロー君と三玖が来てるならレン君も大丈夫かな」

 

二乃「フー君なら変な陰謀には巻き込まれない…と思うし、三玖がいれば大丈夫でしょ。…まぁ別の意味で心配ではあったけど」

 

一花「それは私もだよ。なんせ2人とも体力無いからなぁ……のたれ死んでないかだけはお姉さん心配だったよ」

 

二乃「それは多分姉妹全員がそう思ってたと思うよ––ツヴァイトヒール」

 

一花「ありがと。もう大丈夫だから他の人をお願いね」

 

二乃「はいはい」

 

二乃に見送られる形で、回復魔法での治癒を終えた一花は前線へと駆け出したのだった。

 

@@@@@@@

 

錬「ハンドレッドソード!!」

 

風太郎「ツヴァイトエアスラスト!!」

 

グオオオオッ!

 

主戦場ではボスと直接対決している錬、風太郎、三玖、樹、五月、元康の6人が、あと少しのところまで追い詰めていた。

 

ガオォォッ!!

 

三玖「させない!!––大盾!!」

 

次元ノキメラの突進を真正面から受け止める三玖。

この時発動した大盾というスキルは重攻撃を軽減し、受け止められる様にするものだ。

 

五月「三玖…いつの間にあんな強く…」

 

風太郎「関心してる場合じゃ無いぞ!ここで一斉に攻撃して終わらせるからな!」

 

五月「わ、わかってます!」

 

樹「では僕から!––––ウィンドアロー!!」

 

錬「紅蓮剣!!」

 

元康「ライトニングスピアー!!」

 

風太郎「ツヴァイトファイアストーム!!」

 

五月「力の根源たる五月が命じます。理を今一度読み解き、かの者に炎の玉を降らせよ––––ファストファイアボール!!」

 

ギシャアァァァァァ!!

 

錬「やったか!?」

 

樹「それより三玖さんは大丈夫なんですか!?」

 

風太郎「三玖なら問題ない。あのスキルがあるからな」

 

五月「あのスキル…ですか?」

 

風太郎「あぁ。…まぁ見てろ」

 

五月「?」

 

次元ノキメラへ一斉攻撃を仕掛けた勇者達だが、次元ノキメラを盾で受け止めている三玖を巻き込んでの攻撃だったので五月は心配になるも、風太郎は心配無いと言い切る。その理由は土煙が収まった際にわかった。

 

三玖「…………」

 

樹「!?」

 

元康「無傷だって!?」

 

そう。同じ様に攻撃を受けたハズの三玖は無傷で立っていたのだ。

––––次元ノキメラは今の総攻撃で絶命したのに。

 

風太郎「な?大丈夫だったろ?」

 

五月「……そう、ですね……」

 

一花「みんなお待たせ…ってあれ?終わっちゃった?」

 

三玖「今終わったところ」

 

一花「あ、三玖本当に間に合ってたんだ。…そっかー、お姉さんの活躍で華麗なる勝利を〜って思ってたんだけどな〜」

 

錬「一花!怪我は大丈夫なのか!?」

 

一花「あ、レン君!ごめんねー足引っ張っちゃって。私はこの通り大丈夫!二乃の回復魔法でね」

 

風太郎「へぇ、あいつが回復魔法ねぇ…」

 

三玖「失礼」

 

五月「それよりも三玖ですよ!あなたどうして無傷なんですか!?」

 

三玖「え?…あぁ。そういえば話してなかったね」

 

樹「僕も気になったので知りたいです」

 

元康「俺もだ。盾の勇者の尚文ならまだわかるけど、どうして三玖ちゃんが––」

 

三玖「モトヤスは黙って」

 

元康「あはい…」

 

三玖「…はぁ。じゃあ話すけど、無傷だった理由はスキル<プロテクション>を使ったからだよ」

 

五月「プロテクション?」

 

錬「魔法がモチーフのゲームではオーソドックスな防御魔法の名前だな。漢字にすると障壁と書く」

 

樹「それを三玖さんは習得してたから受けきれたと、そういう事ですね?」

 

三玖「うん。そうだよ」

 

風太郎「さて、ボスも倒したし、後は残った怪物を一掃すれば良いか?」

 

樹「えぇ、おそらくは」

 

風太郎「じゃ、とっとと片付けようぜ。俺は早く帰って寝たい」

 

こうして、最初の波はなんとか勝利という形で終結した。




次回は混成編


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事後処理と真実

会話パート
あと高評価頂いた皆様ありがとうございます。この場を借りて御礼申し上げます。


その後、勇者一行は残党を片付け終わり、リユート村へと集まっていた。空は何時ものような色に戻っている。やがて夕日に染まるだろう。

そこへ城の騎士が現れた。

 

「よくやった勇者諸君、今回の波を乗り越えた勇者一行に王様は宴の準備ができているとの事だ。報酬も与えるので来て欲しい」

 

ちなみにこの兵士は尚文達へ難癖を付けて攻撃してきた連中の1人ではなく、ボス戦後半(尚文達は防衛戦の最中)に到着した援軍として来た部隊の隊長である。

 

風太郎「…………」

 

錬「…どうする?」

 

樹「僕は行きます」

 

元康「俺も行く。…というより行かざるをえないだな」

 

尚文「…俺も付いて行こう」

 

風太郎「!?」

 

錬「…良いのか?」

 

尚文「あぁ。…例えしょぼかろうと、金が貰えるなら行く。…四葉にあまり苦労をかけたくないからな」

 

四葉「尚文君……無理してないですか?」

 

尚文「…そりゃあ城に行きたく無いとは思ってるさ。だが、実際金が必要になってくるのも事実だからな」

 

ラフタリア「ナオフミ様…」

 

錬「…わかった。風太郎はどうする?」

 

風太郎「俺も尚文さんと同じ意見だ。…と言いたいが、実はあまり金には困って無いんだよな」

 

一花「え!?フータロー君のくせにお金に余裕があるなんて…!!」

 

風太郎「…一花が俺の事をどう考えてんのかはわかった。…だが正直俺も驚いてんだよ実際」

 

樹「なら来ないんですか?」

 

風太郎「いや、付いては行く。…俺の目的はお前たちとの情報交換だ」

 

元康「なるほどな」

 

風太郎「…特に北村さんトコのなんだがな」

 

元康「俺か!?」

 

樹「あ、それは僕も同じです」

 

錬「俺もだ」

 

元康「お前らもか!?」

 

三玖「裁判長、被告への裁判を執り行う事を提案します」

 

一花「よろしい。では城に戻り次第、裁判を行います」

 

元康「ちょっ!?」

 

尚文「はぁ…付き合ってられん」

 

そう言ってから尚文はその場から離れていった。

すると、リユート村の連中が尚文を見るなり話しかけてきた。

 

「あ、あの……」

 

尚文「なんだ?」

 

「ありがとうございました。あなたが居なかったら、みんな助かっていなかったと思います」

 

「あなたが居たから、私たちはこうして生き残る事が出来たんです」

 

尚文「いや、そんな事は無いだろ。なる様になったと思うぞ」

 

ラフタリア「ナオフミ様」

 

四葉「尚文君、ここは皆さんの感謝を素直に受け取るべきですよ」

 

尚文「…………そう思うなら勝手に思っていろ」

 

「「「はい!」」」

 

村の人々は一度頭を下げた後、帰って行った。

 

ラフタリア「ナオフミ様やりましたね。みんな感謝してますよ」

 

尚文「……そうだな」

 

ラフタリア「これで、私の様な方が増えなくて済みました。…ナオフミ様の、お陰です」

 

尚文「…………」

 

四葉「ラフタリア……」

 

ラフタリア「私も……頑張りました」

 

尚文「ああ。お前も四葉も、良く頑張ってくれたよ」

 

ラフタリア「一杯化け物を倒しました」

 

四葉「はい。ラフタリアは、よく頑張りましたよ。……だから、今だけは我慢しないでください」

 

ラフタリア「…っ!」

 

四葉の言葉に、それまで我慢していたラフタリアは尚文の腕の中で泣いた。

 

四葉「…ずっと、我慢してたんでしょうね」

 

尚文「……かもしれないな。…だが、四葉のおかげでラフタリアとの接し方を間違えずに済んだよ。…ありがとうな」

 

四葉「……今お礼を言うのは反則です…」

 

その後、しばらく泣いていたラフタリアが落ち着いてから勇者一行は城へと向うのだった。




次回は茶番になる…かも?


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茶番(仮)の前の前座

お城での宴と決闘前のくだりです。


陽も落ち、夜になってから城で開かれた大規模な宴に王が高らかに宣言した。

 

王「いやあ! さすが勇者だ。前回の被害とは雲泥の差にワシも驚きを隠せんぞ!」

 

ちなみに死傷者は一桁に収まる程度だったとの事。――それが誰の成果なのかは火を見るより明らかではあるが。

 

樹「一花さんの話では、僕と錬さん、元康さんは誰の活躍で被害が少なかったかを理解せず自惚れていたそうですが…一体どうしたらそんな状態になるんでしょうかね…?」

 

錬「……大方、褒められた上にすんなり事が進んだせいでゲーム感覚で戦ったからじゃないかと思うぞ。…実際、俺はこの世界に来た当初は浮かれてた自覚があるからな」

 

一花「レン君……大丈夫、それが理解出来てるならきっと間違わないよ!これからもっと強くなろう?」

 

錬「…ああ、そうだな。これからも宜しく頼む」

 

樹「……随分と仲が良いですね。何かあったんですか?」

 

錬「…別に」

 

五月「一花、不純異性交遊はダメですからね!」

 

一花「もー、五月ちゃんは固いな〜」

 

そんな感じで正史では交友が無い2人は思い思いの過ごし方をしていたのだった。

一方で

 

ラフタリア「ご馳走ですね!」

 

尚文「食いたければ食って良いぞ」

 

ラフタリア「はい!」

 

尚文「四葉も…」

 

四葉「んむぅ?」モグモグ

 

尚文「……そうだな。お前はそういう奴だったな」

 

尚文達も隅っことはいえのんびりとこのひとときを過ごしていた。

すると突然元康から声を掛けられた。

 

元康「おい尚文!」

 

尚文「ん?どうした?」

 

そして手袋を投げられこう宣言された。

 

元康「決闘だ!!」

 

@@@@@@@

 

尚文「いきなり何言ってんだ、お前?」

 

尚文は困惑していた。正史ではヴィッチことマルティ王女の陰謀によって仕組まれた決闘を、まさか元康自身から言われるとは思ってなかったというのが大きい。

 

元康「聞いたぞ! お前と一緒に居るラフタリアちゃんは奴隷なんだってな!」

 

尚文「あぁ、そうだが…」

 

元康「人は……人を隷属させるもんじゃない! まして俺達異世界人である勇者はそんな真似は許されない!…これは、誰でも無い俺自身の意見だ」

 

尚文「…………そういう事か。というか何を今更だ。生憎ここは異世界で奴隷だって存在する。お前らみたいにこの世界での仲間が居ない俺が使って何が悪い」

 

元康「開き直るんじゃねーよ!俺が勝ったらラフタリアちゃんを解放しろ!」

 

尚文「なんでそんな勝負しなきゃいけないんだ?俺が勝ったらどうするんだよ?」

 

元康「その時は…ラフタリアちゃんの事は今後何も言わない」

 

尚文「話にならないな」

 

オルトクレイ王「待て」

 

尚文「……何だ?」

 

オルトクレイ王「モトヤス殿の話は聞かせてもらった。勇者ともあろう者が奴隷を使っているとは……噂でしか聞いていなかったが、モトヤス殿が不服と言うのならこのワシが命ずる。決闘せよ!さもなくば奴隷を没収する」

 

ラフタリア「ナオフミ様!」

 

尚文「…………!」

 

尚文が気付いたときには既にどこからか兵士達がやってきてラフタリアが兵士達に捕縛されていた。

 

尚文「……チッ!決闘には参加させられるんだよな?」

 

オルトクレイ王「決闘の賞品を何故参加させねばならない?」

 

尚文「な! お前――」

 

四葉「――待てよ」

 

オルトクレイ王「!?」

 

オルトクレイ王が決闘場所を指定しようとした矢先、その場に居た誰もが聞こえるような声で遮ったのは四葉だった。

 

オルトクレイ王「な、なんじゃ」

 

四葉「その決闘、私も参加するけど文句は無いよね?」

 

オルトクレイ王「何を言う。これは勇者同士の決闘であって――」

 

四葉「黙れ。…尚文君に戦う力が無いのを知っててそういう言い方すんの?…あとさぁ」

 

オルトクレイ王「な、なんじゃ!まだあるのか?」

 

うろたえるオルトクレイ王へ最大限の声量で言い放った。

 

四葉「私の可愛い妹を茶番の景品にされて黙ってられるほど今の私は馬鹿じゃないからな!!覚悟しろよ腐れ外道共!!!!」




四葉はラフタリアを溺愛してたりする。
そこがキーですが果たしてどうなるか…。
次回、デュエル開始!!
もとい決闘開始!!


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決闘!槍の勇者 VS 盾の勇者前編 ~茶番で終わるハズだった~

この展開は避けられなかった…


尚文「……おいそこの兵士。ラフタリアを離せ、今の四葉を止められるのはそいつしか居ない」

 

四葉の大声に周囲の人間全てが呆然とする中、尚文はラフタリアを捕らえていた兵士へそう告げた。

 

「は、はい!」

 

言われるがままに兵士はラフタリアを必要最小限動けるようにしてから解放した。

 

尚文「ラフタリア!四葉を頼む!!」

 

ラフタリア「は、はい!」

 

~~~~

 

城の庭は今、決闘会場と化し、辺りには松明が焚かれ、宴を楽しんでいた者達がみんな勇者の戦いを楽しみにしている。――訳でもなく

 

一花「…そんな…どうして…」

 

錬「…避けられない運命、ってやつか」

 

樹「とは言え一時はどうなるかと思いましたが、まさかあの状態の四葉さんの抑止力になれてるなんて。…あの亜人の女性は一体何者なのでしょう?」

 

五月「…それについては直接本人に聞いてみないとわかりませんが…ひとつ言えるのは、私達姉妹と上杉君、岩谷さんと同じくらい四葉が大切に想ってる人だと言う事でしょう」

 

風太郎「いずれにせよ、四葉と二乃が戦闘に参加する事態を避けられたのは良かったが、セコンドとはいえ下に居て大丈夫なのか?」

 

三玖「それは、始まってみないとわからない。…けど、嫌な予感がする」

 

不参加の勇者とパートナーの中野姉妹はそれぞれ不安や戸惑いを隠せずに、二階の観客席で様子を見守っている。

 

元康「…レベルは俺の方が低いかもしれないが、負ける気は無いからな」

 

尚文「…俺もちょっと負けられない事情があってな。悪いが勝たせて貰う」

 

「では、これより槍の勇者と盾の勇者の決闘を開始する! 勝敗の有無はトドメを刺す寸前まで追い詰めるか、敗北を認めること。では――」

 

その合図によって構える両者。

 

「勝負!」

 

元康「うおおおおおおおおおおおおお!」

 

尚文「でりゃあああああああああああ!」

 

こうして、決闘の火蓋は切って落とされた。

 

@@@@@@@@@@@@@@

 

二乃「……ねぇ四葉、聞いてもいい?」

 

四葉「なに、どうしたの二乃?」

 

決闘が始まってすぐに、二乃は四葉に疑問だった事を聞くことにしていたので早速問う。

 

二乃「あんたは何で1対1の決闘をOKしたのよ?……正直レベルに差はあるけど攻撃力の無いアイツが勝てる様には見えないんだけど」

 

四葉「あぁ、その点なら大丈夫だよ。……確かに私も頭に血が上っちゃってあんな事言っちゃったけど、冷静に考えたら尚文君がそもそも対人戦で負けるわけ無いんだったの忘れてたんだ」

 

二乃「負けるわけ無いってあんた、攻撃ができないのにどうやって戦うのよ!?」

 

四葉のあっけらかんとした言いように思わず二乃の語気を強めてしまった。

だが四葉の台詞が本当であるとすぐに分かった。何故なら――

 

ガブガブガブ!

元康「いて、いて!」

 

尚文「オラオラオラ!」

 

――闘技場と化した城の庭にバルーンが現れ、元康に食いついていたからだ。

…その正体は尚文がマントの下に潜ませていたオレンジバルーンな訳だが。

 

四葉「ね?大丈夫でしょ?」

 

二乃「呆れた……まさか、自分を噛ませた魔物で攻撃するなんてね」

 

四葉「最初に見たときは流石に私もどうかと思ったんだけど…一花から決闘の話を聞いてた尚文君が攻撃手段に困るのは目に見えてたから私も仕方なく、って感じだったんだ」

 

二乃「ふぅん。……あいつ、思ってたより賢そうね」

 

四葉「間違いなく私達よりは頭良いよ!大学生だし」

 

二乃「いや、そういう意味じゃ……っ!?」

 

四葉「!」

 

その時、誰にも分からないレベルの風が尚文を襲った。

 

尚文「ぐあっ……!」

 

尚文が後ろを振り返ると、観客席からは影になっている入り口にマルティ王女が立っており、尚文たちの方へ向けて手をかざしていたのだった。

 

~~~~~~~~~~

 

三玖「今の…っ!」

 

風太郎「あぁ。間違い無いな」

 

錬「…何が起きたか分かるのか?」

 

一花「ウイングブロウ。確か風の魔法だったと思うけど…フータロー君」

 

風太郎「あぁ。一花の言う通り、あれは風魔法の初級にあったウイングブロウだ」

 

五月「という事は……!!」

 

樹「えぇ、これは恐らく陰謀でしょう」

 

観客席から見ていた一行は魔法までは特定できても、その犯人までは見えなかった。

――だが、犯人が見えていた人物は、尚文以外にも2人いた。

 

そう。セコンドとして戦場に居た四葉と二乃である。




次回は衝撃の展開です。……きっと


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決闘!槍の勇者 VS 盾の勇者後編 ~茶番で終わるハズだった~

ひとこと。
ラフタリアは今回の決闘では空気です。ごめんなさい。


二乃「あいつ…っ!」

 

魔法を放った犯人であるマインを見て二乃は睨みつけるも、当の本人はしてやったりという笑みを浮かべ、あっかんべーと挑発していた。

 

二乃「くっ!四葉、あいつの…ってアレ?」

 

四葉を連れてマインの所へ行こうとしたが、ふと四葉がいない事に気付いた。

そして、悲劇は起きた。

 

「きゃああああああっ!」

 

1人の観客の悲鳴が、目の前の現実を現実たらしめたのだった。

 

=================

 

――――時は少しだけ遡る。

 

尚文「てめえええええ!」

 

マインが自身に対して魔法を放った事に気付いた尚文はそう叫びながらマインの方へ動こうとした矢先、元康がバルーンを全て倒し終えて攻撃を仕掛けてきた。

 

元康「うおおおおおおおおおおおおお!――ライトニングスピアー!!」

 

――恐らく現時点で最強であろう槍のスキルを放ってきた元康の攻撃を

 

尚文「ぐああああっ!!」

 

まともに受けてしまった。

 

元康「はぁ……はぁ……俺の、勝ちだ!」

 

尚文「ぐっ…まだ…だ!」

 

……正史では、レベルが高い元康の攻撃で力尽きていたが、現実は尚文の方がレベルが高かった事もありなんとか持ちこたえた。

 

元康「はんっ。しつこいな…そのまま倒れていればいいものを」

 

尚文「うるせぇ…何が勝ちだ、卑怯者!」

 

元康「何の事を言ってやがる。お前が俺の力を抑えきれずに立ち上がらせたのが敗因だろ?」

 

尚文「お前の仲間が決闘に水を差したんだよ! だから俺はよろめいたんだ!」

 

元康「負け犬の遠吠えか?」

 

尚文「こいつ…っ!」

 

元康「まっ、負け犬の遠吠えは後で聞いてやるから、今はおとなしくくたばりやがれっ!!」

 

尚文「っ!!」

 

立っているのがやっとの尚文に対して止めを刺さんと元康が突っ込んでくる。

勿論、今の尚文には受けれるだけの余裕は残っていない。

――しかし、その凶刃が尚文を捉える事は無かった。何故なら

 

ザクッ!!

元康「な…っ!?」

 

「っ!……ごふっ!」

 

尚文「え……?」

 

攻撃を受ける直前に、尚文を後ろへ突き飛ばし、代わりに槍で体を貫かれたひとりの少女がいたから。

そう。

 

尚文「四葉ぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

咄嗟に身代わりとなった四葉のおかげで。

 

@@@@@@@@@@@@@@@@@

 

五月「よつ……ば……?」

 

三玖「なんで…っ!?」

 

一花「うそ…でしょ…?」

 

二階の客席から惨劇を見てしまった姉妹は放心状態で、現実を受け入れられず

 

錬「…………」

 

樹「こんな事になるなんて……」

 

風太郎「あいつまた…っ!!」

 

ここが現実であると見せつけられた事で絶句している錬と樹に対して四葉の過剰な自己犠牲を気にしていた風太郎は取り乱す。

客席は、混乱と困惑で満ちていた。

 

~~~~~~

 

二乃「あの馬鹿っ!!」

 

周りの声で我に返った二乃は、四葉の元へ走って行った。

 

~~~~~~

 

元康「何…を」

 

四葉「はぁ……はぁ…っ……い、痛い…なぁ…」

 

元康「何故…そいつを体張ってまで庇ったんだ…」

 

元康は困惑した。何故、決闘を文字通り体を張って止めたのか?…と。

 

四葉「……それは…あの女が…っ…ごふっ…この試合に…反則…したから…だよ…っ…ごほっ!」

 

元康「!!」

 

尚文「…………」

 

この時、尚文は身体の底から沸騰するような怒りが全身を駆け巡っていた。

そして、以下のメッセージが表示されると同時に、盾から鼓動を感じた。

 

”カースシリーズ ――の盾の条件が解放されました”

 

そして、心の底から溢れるドス黒い感情が盾を侵食していくのも感じていた。

しかし――

 

四葉「尚…文…君っ…」

 

尚文「!」

 

四葉「自分を…見失わな…い…で…ね…」

 

そう言って、四葉は意識を手放した。

 

二乃「元康どけ!!」

 

元康「ぐあっ!」

 

横たわる四葉へと駆け寄って来た二乃は邪魔な元康を蹴飛ばすと

 

二乃「――力の根源たる二乃が命ずる。真理を今一度読み解き、かの者の傷を癒せ––ツヴァイトヒール!!」

 

治癒魔法での治療を始めた。

 

二乃「……良かった。致命傷にはなってない!もう一度っ!力の根源たる二乃が命ずる。真理を今一度読み解き、かの者の傷を癒せ――ツヴァイトヒール!!」

 

尚文「……生きてる、のか…?」

 

二乃「そうよ!!だからあんたは、四葉に言われた通りしゃんとしなさい!!――ツヴァイトヒール!!」

 

元康「……後味が悪いな」

 

二乃「お前は後で覚えてろよクズ!」

 

元康「す…すいませんでした…!」

 

二乃「アタシに謝るな!…今じゃなくて良いから、岩谷と四葉にちゃんと謝りなさい!!…それで許してあげるわ」

 

元康「……ラフタリアちゃんが洗脳されている疑惑はどうすんだよ」

 

二乃「あ?」

 

元康「ヒィッ」

 

二乃「…あの子は望んで奴隷になったのよ。それなのに、勝手に早とちりして決闘なんかして…」

 

元康「…………」

 

二乃「…よし終わり。…岩谷!四葉をお願いね。アタシはコイツに色々話さないといけないから」

 

尚文「あ…あぁ…」

 

そう言ってから、元康を連れてその場を離れようとする二乃。そして

 

マイン「……ちぇっ! おもしろくなーい」

 

オルトクレイ王「ふむ……非常に遺憾な結果だな」

 

決闘に決着がつかなかったのをいい事に、言いたい放題言って城へと引き上げる王と王女。

――しかし

 

オルトクレイ王「む?」

 

マイン「何よ?あなたたち」

 

錬「悪いな」

 

風太郎「ここから先は」

 

樹「通行止めです」

 

そう言って、城への通路を封鎖する勇者が3人と

 

五月「こんな事になって」

 

三玖「黙ってられる程」

 

一花「私達はお人よしではないので、…先に手を打ちたいと思います」

 

そのパートナーである3人の姉妹が修羅の形相で待ち構えていたのだった。




さて、元康と王族コンビはどうなることやら…


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警告

今回はついに…って感じです。


オルトクレイ王「……何の真似じゃ?」

 

風太郎「何の真似、とはご挨拶だな。心当たりが無い訳じゃないんだろ?」

 

城への通路で王と王女を止めた勇者達と中野姉妹の一花、三玖、五月。それに対して王は不機嫌さを隠さずに言うが、風太郎達は臆せず話し出す。

 

樹「王様。あなたはあなた自身の道楽の為にこんな見せしめみたいな行為を行いました」

 

錬「しかもその女が反則行為をしたせいで怪我人まで出た訳だが…この責任、どう取るつもりだ?」

 

マルティ「ちょっと!私は何もしてないわよ!変な言いがかりは––」

 

チャキッ

一花「悪いけどあなたは黙っててくれないかな?」

 

マルティ「ヒッ!?」

 

オルトクレイ王「マルティ!!」

 

マルティの発言を遮る様に一花は一瞬で回り込んで短剣を首元へ突きつける。

 

三玖「四葉が動いたのが、あなたが犯人である証拠」

 

五月「四葉は部活に力を入れてました。だから勝負事が正々堂々行われている限りは止めようとはしません」

 

風太郎「あの時、二階席の俺たちからは魔法は見えても犯人までは分からなかった。…だが二乃と四葉の視線が犯人が誰かを教えてくれたよ。入り口の隅から見える、アンタのその目立つ髪がな!!」

 

マルティ「なっ…!?」

 

錬「さ、これで言い逃れは出来ないぞ」

 

オルトクレイ王「き…貴様ら!この国の王女にその様な真似をしてタダで済むと思うなよ!!」

 

樹「…状況を本当の意味で理解していないのは、むしろあなたの方だと思いますが?」

 

オルトクレイ王「何っ!?…っ!!」

 

マルティを事実上人質に取られた状況でまだ自分の置かれた状況を理解してない王にため息混じりに樹がボヤく。

そして

 

オルトクレイ王「ぐおっ!」

 

三玖「……いい加減、あなた達の罪を認めて。…次は、外さない」

 

オルトクレイ王「おのれ…!––ぐあああっ!?」

 

王の態度に怒りが頂点に達した三玖が、ハンドボウガンを最初は顔を掠める様に。そして、次弾で肩を撃った。

 

マルティ「パパ!?…あ、あなた達何をしたのかわかって––」

 

一花「…………」

ザシュッ

 

マルティ「!!」

 

王に対し攻撃をした三玖へ糾弾するマルティに、首に突きつけた短剣ではなくもう一振り持参していた短剣で、腹部を刺す一花。

 

マルティ「ぐっ…あ、あなた…っ!」

 

一花「…アンタの暇潰し感覚で、うちの妹が死にかけたんだ。この程度の一撃、別に気にする程でも無いでしょ?」

 

マルティ「くっ…!」

 

オルトクレイ王「貴様ら!!勇者の分際でワシらを傷つけた事、万死に値する愚行だと思い知らせてくれるぞ…!!覚悟しておけぇ!!」

 

風太郎「…あ?」

 

全員「!?」

 

…その時、この場にいた全員が驚きに満ちた表情を浮かべていた。

そう。風太郎の雰囲気が唐突に変わったからだ。

 

風太郎「お前ら、さっきの話聞いてねぇだろ」

 

マルティ「さぁ…?何のことかしら?」

 

風太郎「…じゃあわかりやすく教えてやる––その気になればお前らをこの場で殺せる。そう言ってんだよ!!」

 

オルトクレイ王「むぅ…っ!」

 

マルティ「ヒィッ!?」

 

風太郎が魔力を向けながら凄むと、王族2人は怯んだ。

 

錬「……王。これは警告だ」

 

オルトクレイ「…な、何?」

 

樹「今後一切、尚文さんを含め僕たち勇者にちょっかいを出さないでください。もちろんマインさんも」

 

五月「もし、あなた達がまた卑怯な手を使ったら」

 

三玖「その時は」

 

マルティ「…………」

 

一花「どうなるか、わかるよね?王女様?」

グイッ

 

マルティ「ぐひぃ…っ!!…わ、わかったわ!!や、約束するから殺さないで!!」

 

オルトクレイ「ぐっ……わかった。約束しよう…だからマルティを解放してくれ」

 

マルティに対して軽く刺していたナイフを少し押し込むと、王族2人はアッサリと白旗を揚げた。

 

風太郎「……口約束じゃなけりゃいいがな。…一花、離してやれ」

 

一花「ん。わかった」

 

風太郎の一言で、一花は拘束していたマルティを解放した。

––短剣は刺したままで。

 

マルティ「ぐっ…うっ…」

 

オルトクレイ「マルティ!!大丈夫か?」

 

解放されたマルティへ駆け寄る王へ、樹が最後通告をした。

 

樹「先に言っておきますが、もし約束を守らなかった場合はあなた達の命はないものだと思ってください。…勿論、誰が何と言おうとこれは決定事項なので、行動や発言には気をつけてくださいね」

 

オルトクレイ「…………」

 

マルティ「…………」

 

樹が言い終わると同時に錬、風太郎、一花、三玖、五月、そして樹は城へと歩いていった。




次回は二乃と元康、尚文と四葉とラフタリアのお話
…の予定。


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サイド尚文:大切な人たち

今回は尚文チームだけのお話。
エアタリアではないお話…(笑)


風太郎達が王と王女へ制裁を加えている頃、城の庭では尚文が四葉を抱きかかえたまま座っていた。

そこへ

 

ラフタリア「ナオフミ様!!」

 

王族達の元で捕らえられていたラフタリアが尚文達の元へと走ってきた。

 

尚文「ラフタリア!無事で良かった!」

 

ラフタリア「はい、先ほどニノさんと槍の勇者が私を解放するようにと…――それよりヨツバ姉さんは大丈夫なのですか!?」

 

尚文「……この通りだ。あいつの…二乃のおかげで、一命は取り留めたよ。今度お礼をしないとな」

 

ラフタリア「そうでしたか……少し安心しました」

 

そう言ってラフタリアは、尚文の腕の中で眠る四葉を撫でた。

 

~~~~

 

ラフタリアが合流してから少しして、四葉が目を覚ました。

 

四葉「…ん……んうっ…あれ…?」

 

尚文「四葉!!」

 

ラフタリア「ヨツバ姉さん!!」

 

四葉「……ラフタリア…無事だったんですね…よかったです…」

 

ラフタリア「はい…ヨツバ姉さんのお姉さんに助けて頂きました。…それよりヨツバ姉さんは怪我の具合は大丈夫なんですか?」

 

四葉「怪我…?……あぁ、うん、痛みも無いしだいじょ…う…ぶ…っ!?」

 

四葉は刺された部分を見て気付いた。――――傷口が塞がっていたがその部分の布が無いこと。そして――

 

四葉「ど、どど、…っ…どうして私尚文君に抱きかかえられてっ!?」

 

自分の置かれている状況に気付いた。

 

尚文「……さて、四葉も目が覚めたし、一度城に戻るか」

 

四葉「ちょっ!?」

 

ラフタリア「ナオフミ様!?」

 

尚文「ラフタリア、これは四葉に対する罰だ。何も言うな。…それに四葉もだ!自分が何をしたかここで反省しろ。……心配かけやがって…」

 

四葉「う……」

 

ラフタリア「ナオフミ様……わかりました」

 

尚文の言葉と表情を見て、ラフタリアは頷き、四葉はばつが悪そうにそっぽを向いた。

そして、城の一室へと向かったのだった。

 

=================

 

尚文「さて、それじゃあ――」

 

ラフタリア「お待ち下さい」

 

最初から用意されていた部屋に着いて早々に四葉へと事情聴取しようとした尚文に、ラフタリアがストップをかけた。

 

尚文「…なんだラフタリア。俺はこれから――」

 

ラフタリア「何だ?じゃありません!!どうしてナオフミ様はあんな無意味な決闘を受けたんですか!?受けなくても、私とヨツバ姉さんが居ればあんな連中くらい蹴散らして逃げれたハズですよ!?それを何でわざわざ…」

 

尚文「ら、ラフタリア…?」

 

ラフタリア「姉さんも姉さんです!!ナオフミ様の防御力ならあの程度の攻撃でダメージなんて受けないのに何でわざわざあんな重傷になる様な受け方をしたんですか!?普段は私に危ないことはするなとか命を大事にとか散々言っておいてなんですか!!少しは自分を大事にしてくださいとあれ程言っていたのに…私の…お願いは聞いてくれないのですか!?」

 

四葉「ラフタリア……ちが…っ!私は…そんなつもりじゃ…っ!」

 

ラフタリア「私……ヨツバ姉さんが死んじゃうんじゃないかって…怖かったんですからね…っ!?…グスッ」

 

四葉「!!……ごめん…ラフタリア」

 

涙ながらに怒るラフタリアの言葉を聞いて、ハッとなった四葉は、ラフタリアを抱き締め、謝った。

 

四葉「……私は、許せなかっただけなんだ。あの時、不正が行われたのに気付いて…こんな不正が無かった事にされて尚文君が負けて小馬鹿にされるのかって。……何より、ラフタリアと別れる事になるって思ったら、いてもたってもいられなくなっちゃった……だから、ごめんね。心配かけて。…それと、ありがと」

 

尚文「…………」(…こんな事言われたら、怒るに怒れないじゃないか……ま、それだけ四葉がラフタリアを大切にしてて、ラフタリアも大切に想ってくれている証拠だろうけどな)

 

ラフタリア「……ありがとヨツバ姉さん」

 

四葉「良いって良いって!…それよりラフタリア、尚文君にも言いたい事あるんでしょ?逃げられる前に言っときな!」

 

ラフタリア「あ!そうでした…ってあれ?」

 

四葉「あれ!?いつの間に居なくなったんだろ??」

 

~部屋のドア前~

 

尚文(これは捕まったら朝まで説教コースになりそうだ…っ!逃げよう!!)

 

~室内~

 

クンクン

四葉「…あ!部屋の前に居るよ!!捕まえるよラフタリア!!」

 

ラフタリア「はい!!ヨツバ姉さん!!」

 

@@@@@

その後、日が昇るまで追いかけっこは続き、最終的に四葉に捕まった尚文は、ラフタリアから逃亡についてを含めた説教を謁見の間に呼ばれるまで受け続けたそうだ。




次回は二乃と元康のお話。
そしてこの章の終わりです。


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二乃サイド:放っておけない奴

今回は二乃と元康の話


四葉の治療を終えた二乃は、元康を引っ張ってその場から離れた。

その後のお話……

 

元康「…………」

 

二乃「…………」

 

マルティ「モトヤス様!」

 

2人が入場口へ戻った時、そこには今回の主犯である第一王女・マルティが仁王立ちをしていた。

 

元康「…マイン?」

 

マルティ「何故最後までやらないのですか!?あと少しで勝利出来たものを…」

 

元康「勝てた…ってお前あの状況で戦えと!?」

 

マルティ「それは当然ですわ。これは――」

 

二乃「ふざけんじゃないわよ!!」

 

マルティのあまりにも自分勝手な言い分に隣で聞いていた二乃はキレた。

 

二乃「アンタ!人が1人死にかけたのに何よその言い方は!?」

 

マルティ「…何を言い出すかと思えば。今日ここでモトヤス様が犯罪者を倒し華麗なる勝利を挙げる事で、三勇者の中で一番優秀である事をしらしめる事ができるのですよ?」

 

二乃「そんな事に何の意味があるのよ!?アンタの頭どうかしてんじゃないの?」

 

元康「…悪いが俺も同感だ。人を殺してまで名声を欲しいとは思わない。…それが例え尚文だろうがな」

 

マルティ「モトヤス様!?」

 

元康「それに、…二乃ちゃんの妹を殺したくはない」

 

マルティ「!!…くっ……ふんっ!」

 

元康の表情と言葉を聞いたマルティは面白く無さそうにその場を後にした。

 

二乃「……元康、アンタ…」

 

元康「……」

 

二乃「…少し、部屋で話しましょう」

 

元康「…ああ。わかった」

 

元康の雰囲気を察した二乃はそう提案し、先に歩き出した。また、それを追う様に元康もゆっくり歩き出した。

 

~~~~~~~~~~~

 

「槍の勇者様のお部屋はこちらになります」

 

元康「あぁ、ありがとう」

 

「それでは失礼致します」

 

部屋を案内したメイドは一礼してからその場を辞した。

そして、部屋には元康と二乃、2人だけとなった。

 

二乃「…………」

 

元康「…………」

 

そして、部屋内には静寂が訪れた。

 

二乃「……ねぇ」

 

元康「……二乃ちゃん。すまなかった…俺は…」

 

二乃「はぁ…やっぱり気にしてたのね……。いい?アレは事故よ事故。故意でやったんじゃないんならそんなに気にしなくてもいいわ。結果的には死人が出なかったんだし。それにアンタに対しての制裁はちゃんとしたし、アンタも受けたわ。…勿論、後で四葉に謝る前提だけどね」

 

元康「二乃ちゃん……俺は……俺は……」

 

二乃「…ええ。人を殺しかけて、平静な人間なんていないわよね。…この世界では当たり前でもアタシ達の世界ではニュースで見る位で日常の光景じゃないわ。…ましてや、自分が殺人犯になりかけたら怖くなるのも当然よね…」

 

そう言って、元康を抱き締める二乃。

 

元康「…怖かった…俺が……俺がゲーム感覚でロールプレイしたせいで殺してしまったんじゃないかって…!」

 

二乃「やっぱりね……それにアンタ、最初から勝つ気無かったでしょ?」

 

元康「……バレてた…のか…はは…情けねぇな、俺」

 

二乃「……別に情けなくはないわよ。その…あんな事が無ければアタシとしては……ねぇ」

 

元康「…………」

 

二乃「……今日は、その……一緒に寝ましょうか」

 

元康「……二乃ちゃんが…良いなら」

 

@@@@

 

夜、ベットにて。

元康と二乃は大きいベットで二人、背を向けて布団に入っていた。

 

元康(……二乃ちゃん、震えてる…無理もないか。身内が殺されかけたんだもんな……それなのに…俺に気を使ってこうして…いや、違うか。二乃ちゃんも怖かったんだろうな…)

 

二乃(はぁ…フー君とも寝た事無かったのに、元康とはこれで何回目よ…!……でも、しょうがないわよね…あんな事があって、コイツが平然としてられないって知っちゃってる以上、ほっとけないわ……ってアタシ本当にお人好しね。フー君にも言われた事あったけど、ダメね。気になっちゃうわ……はぁ。アタシも四葉の事言えないな…)

 

こうして、2人の夜は更けていった――




次回から新章です。


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不穏な動き編
お城でひと悶着


今回は全員パート。
城でのやり取りです。


さて、前回と同じく10時頃に謁見の間に通された勇者一行だが、状況は険悪そのものだった。

それもそのはず。昨夜王族に対して事実上の夜襲と何ら変わらない事をしたのだから。

 

オルトクレイ王「……では、今回の波までに対する報奨金と援助金を渡すとしよう。…おい」

 

「はい」

 

王が命じると、ツカツカと金袋を持った側近が現れる。

 

オルトクレイ王「ではそれぞれの勇者達に」

 

そうして、各勇者へと金袋を渡していった。

 

オルトクレイ王「…まず、モトヤス殿には活躍と依頼達成による期待にあわせて銀貨4000枚、…と言いたい所だが、先の決闘で自ら勝ちを捨てた失態の分を差し引き、銀貨3000枚とする」

 

元康「…………」

 

二乃「…………」

 

オルトクレイ王「次にレン殿。やはり波に対する活躍と我が依頼を達成してくれた報酬をプラスして銀貨3800枚…だったが、先の愚行に対する罰金を差し引き銀貨2000枚とする」

 

錬「……ふん(アイツが王女のお気に入りだから……と分かっていてもこの差は……くっ)」

 

一花「…………(あちゃー…やり過ぎた…レン君に申し訳ないよ…)」

 

オルトクレイ王「そしてイツキ殿……貴殿の活躍は国に響いている。よくあの困難な仕事を達成してくれた。…だが昨日の一件を止めなかった分を差し引き、銀貨1800枚だ」

 

樹「…仕方ないですね。この辺りが妥当でしょう(夜襲に関しては満場一致でしたが……この展開は一花さんから聞いてませんね……どういうことでしょう…?)」

 

五月「…………(一花の反応からして…もしかして、この展開は知っているものとは違うのでしょうか…?)」

 

オルトクレイ王「それと魔導の勇者には依頼をしたくても出来なかったから報酬は無しで援助金として銀貨500枚…からレン殿と同じく先の愚行に対する罰金を差し引き銀貨400枚とする」

 

風太郎「ま、貰えるだけマシか」

 

三玖「ごめん…」

 

風太郎「構わん。三玖のおかげで金には困ってないしな」

 

オルトクレイ王「ふん、…盾にはもう少し頑張ってもらわねばならんな。援助金だけだ」(やりたくはないが口実が無かったからな…)

 

尚文「ははは…名前ですら呼ばれないとはな…」

 

四葉「…………」チャキッ

 

ラフタリア「ヨツバ姉さん落ち着いてください……あの、王様」

 

オルトクレイ王「なんだ? 亜人」

 

ラフタリア「……その、依頼とはなんですか?」

 

オルトクレイ王「我が国で起こった問題を勇者殿に解決してもらっているのだ」

 

ラフタリア「……何故、ナオフミ様は依頼を受けていないのですか? 初耳なのですが」

 

オルトクレイ王「盾に何ができるというのだ?」

 

四葉「…いい加減にして!!尚文君が何をしたって言うの!?」

 

オルトクレイ王「ふん!貴様らに援助金を渡すだけありがたいと思え!それとお前は期待外れもいい所だ。それが手切れ金だと思え」

 

尚文「っ!?…はいはい。じゃあ俺達はいろいろと忙しいんでね。金さえ貰ったらここには用がないんで行かせて貰う。…四葉、ラフタリア、行くぞ」

 

ラフタリア「はい、ナオフミ様」

 

四葉「…うん」

 

そして、尚文を先頭にラフタリアと四葉は退出していった。

 

~~~~

尚文チーム視点

 

ラフタリア「そういえば次の波は何時来るのでしょう?」

 

城門を出た辺りでふと、ラフタリアが思い出した様に質問した。

 

尚文「ん? ああ、ちょっと待ってろ。…えっと、…っ!?」

 

四葉「どうしたの?」

 

尚文「…45日と14時間。一ヵ月半も先みたいだ…」

 

四葉「うわー……また随分と先なんだねぇ…」

 

ラフタリア「ですが時間があるのは良い事だと思います」

 

尚文「それもそうか。……とりあえず、ここでの用事は済んだって事で大丈夫か?」

 

ラフタリア「はい、私は大丈夫です」

 

四葉「うーん……多分大丈夫。もし何かあったら電話出来るしね」

 

尚文「そうか。…じゃあ、飯でも食ってからレベル上げに行くか」

 

ラフタリア「はい!」

 

四葉「うん!(あれ?何か忘れてるような……まいっか。大事な事ならそのうち思い出すよね)

 

こうして、3人は城下にある行きつけ(?)の食事処へと向かった。

――それと同時に、正史との相違が起きてしまっている事に、誰も気付いてはいない…

 

@@@@@@@@@

 

一方、謁見の間に残った勇者4人は、尚文達が出て行って直ぐに自室として割り当てられた部屋の一室――錬の部屋――へと集まっていた。

 

錬「さて、話し合いを始めようか。…一花、今後はどうすればいい?」

 

開口一番に錬は一花へと話を振るが…

 

樹「待って下さい。今回の報酬減額の件、一花さんの話にはありませんでしたが、その辺りを説明してもらえますか?それで納得できない場合は、この先の話をされても信用できません」

 

錬「なっ…!?」

 

一花「……五月ちゃんも同じ意見かな?」

 

五月「…そうですね。私は直接お話を知ってる訳ではないので一花の言葉通り動いてきましたが……もしかして今の状況、一花にとって予想外の事態なんじゃないですか?」

 

一花「…………」

 

風太郎「一花、俺からも良いか?」

 

一花「何?フータロー君」

 

風太郎「一花の言う通り、ここはお前達の知るお話の世界と似ているのは間違いない。…だが、前にも言った通り俺やお前ら姉妹というイレギュラーが存在する事で違う世界になってるんじゃないか?」

 

樹「つまりここは並行世界…パラレルワールドだと、そう風太郎さんは言いたいのですね」

 

風太郎「ああ。……だからここからは各々で動くのが最善じゃないかって俺は思う」

 

錬「……一花…」

 

一花「……そう、だね…うん。じゃあ皆には注意事項だけ教えるね!」

 

そう言ってから一花は樹、元康が今後気をつけないといけない点を説明した。

 

樹「……話は分かりました。その時は気をつけますが、果たしてそんな事態になるのでしょうかね…?」

 

五月「川澄君…」

 

元康「ま、そん時にならないと実感沸かないだろうし、忠告として受け取っておこうぜ」

 

二乃「元康にしては聞き分けが良いじゃない」

 

元康「そりゃあ二乃のお姉さんの言葉だからな」

 

二乃「ふーん」

 

風太郎(なぁ、あいつらいつの間にあんな仲良くなったんだ?)

 

三玖(わからない…けど、二乃は元々面食いだからきっと気が変わったんだと思う。フータローの時もそうだったでしょ?)

 

風太郎(…………そういえばそうだったな……)

 

錬「……他に何かあるか?」

 

錬の言葉に全員が沈黙で返す。

 

錬「……無い様だな。じゃあまた、波で会おう」

 

樹「ええ」

 

元康「おう」

 

風太郎「ああ」

 

こうして、各勇者パーティは各々また旅に出たのだった。




次回は外伝の予定。
…ここからの分岐と視点は悩みますな…


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風太郎サイド:2人の日常の一コマ1

今回と次回は風太郎たちの日常になります。
(完全オリジナルの部分なので一部ご都合主義もあるかと思いますがご容赦ください)


商業国家ゼルトブル。――メルロマルクから船で四日の位置にあるそれは別名”傭兵の国”と呼ばれる共和国的な方針の国であり、コロシアム、フィロリアルレースなど、フォーブレイとは別のベクトルで栄えている都市国家である。

この国の生業は、傭兵の国と言われる様に傭兵業なのだが、先に述べた国の名物であり様々な場所で開催されるコロシアムで腕試しや賞金稼ぎを行ったり、賭博も行われている。他にも大食い大会やフィロリアルレース等多種多様な方法で栄えていた。

 

――余談だが、錬、樹、元康、一花の知識としてはこの国の武器屋の武器は優秀で隕鉄シリーズはここに来なければ手に入らないそう。(武器屋の店主が何故隕鉄の盾を持っていたかは謎で誰も知らなかった)

 

閑話休題

さて、そんな殺伐とした国へと来ているのは風太郎と三玖のコンビなのだが…正しくは帰って来た、という表現の方が正しかったりする。

そう。このコンビは城を出てから1ヶ月、ここゼルトブルでレベリングと生活基盤の確立をしていたのだ。

(今は既にマイホームを持っていたりする。傍から見れば新婚生活に見えたりもする)

 

今回は、そんなコンビの視点である。

 

====================

 

城から出発して4日目、自分達の拠点へと戻ってきた風太郎と三玖は、装備を外して寛いでいた。

 

三玖「なんか、久々に戻ってきたって感じするね」

 

風太郎「…そうだな。実際は一週間くらいしか経ってないハズなんだが」

 

三玖「色々あったもんね…お疲れ様」

 

風太郎「三玖もな」

 

自宅の一室で、そうお互いに労うのも、2人にとっては日常だったりするので最早違和感も無く言葉を交わす。

 

三玖「今日はこれからどうする?」

 

風太郎「そうだな…流石に今日はこのまま休んで、明日からまた再開でいいだろ」

 

三玖「うん、私もそれで良いと思う」

 

そう言ってから三玖は立ち上がってから「お茶入れてくるね」と台所へ向かった。

 

~~~~

 

三玖「お待たせ」

 

風太郎「おう」

 

そう言った風太郎の前に出されたのはこの世界に来てからよく飲んでいる抹茶のような緑茶。

味が濃いのだがそれが気にならない様に調整してくれている三玖も愛飲しているこの家での定番飲料である。

 

風太郎「…最初にこれ飲んだ時は、味が濃すぎてよく噴出したものだが…まさかこんなに飲みやすいものに変わるとはなぁ…」

 

三玖「私頑張った!」

 

そう言って胸を張る三玖。

 

風太郎「そうだな……今じゃ料理の腕も二乃より上なんじゃないか?」

 

三玖「流石にそこまで上達はしてないけど…フータローにそう言って貰えるのは嬉しいよ」

 

三玖の家事スキルは、目に見えて上達していた。

掃除や洗濯、買い物等は5人であのアパートに暮らしていた頃からそれなりに出来ていたが、こと料理に関しては絶望的に不得手だった。しかし、風太郎とコンビを組むようになり料理を自分が行う機会が増えた事によって目覚しい上達をしたのだ。

…勿論、本人の言う通り料理エキスパートの二乃程は巧くなっている訳ではない。そして風太郎は重度の貧乏舌であるのであくまで風太郎視点での評価であるのも事実だが。

 

――それでも、褒められて嬉しく思うのは、きっと惚れた弱みだろう。

 

閑話休題。

 

風太郎「……なあ三玖」

 

三玖「ん?」

 

風太郎「今後の事で一花は何か言っていたか?」

 

三玖「…………」

 

風太郎「…俺には言えない話、か?」

 

三玖「……うん。ごめん」

 

風太郎「三玖が謝る必要はねぇよ。…どうせアイツの事だ。また1人で何かしようとしてるんだろ」

 

三玖「フータロー……」

 

風太郎「…まぁ、三玖との関係の事もあるし、他の連中程邪険にはしないつもりだが…いずれにしても、事が起こってからで対処出来るものかどうか、だな…」

 

そう言ってソファーに寝っ転がる風太郎を、複雑な表情で見つめながら三玖は。

 

三玖(多分、あの時話してた内容をフータローが知ったら、きっと……だからこそ、言えない…今は、まだ…)

 

そう、考えていた。




余談ですがステータス更新はもう少し先になります。


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風太郎サイド:2人の日常の一コマ2

スローペースになってきたな…
やっぱりオリジナル展開は難しい…


翌日、風太郎と三玖はそれぞれ準備をしていた。

 

三玖は戦闘用の大盾とハンドボウガンを装備して、腰には短剣を挿した。

風太郎は、学生服に数冊の本――この世界での教科書――を背中のリュックに仕舞い、三玖が作ってくれた昼食用の弁当をこれまたリュックへと仕舞っていた。

 

そう。この2人の行き先は異なるのだ。

 

風太郎「じゃあ、行って来るな」

 

三玖「うん、いってらっしゃい」

 

先に出て行った風太郎が向かうのはこの都市にある学校の様な所。

そして三玖は––

 

三玖「…さて、私も行くか」

 

そう呟いた三玖は、最早慣れ親しんでしまったこの国の名物であるコロシアム––闘技場––へと向かったのだった。

 

〜〜〜〜

 

「あ、せんせーだ!」

 

「ホントだー!」

 

風太郎「おう。お前ら元気そうだな」

 

久しぶり(と言っても実質1週間程度しか留守にしてないが)にこのゼルトブルにある学び舎へと赴いた風太郎の元へ、生徒である少年少女が駆け寄って来た。

 

––ゼルトブルへ着いた風太郎は、生活する為に必要な基盤を築く事を考えていた。

しかし、駆け出しの勇者でこの世界の情勢に疎い自分と三玖では真っ当な仕事を探す事も難しかった。

そこで考えたのが、自分の最も得意な勉強を教える事––すなわち家庭教師のバイトみたいなことをしようというものだった。

 

初めは難解だと思ったこの世界の文字については、まさかの勇者能力(後で一花に確認したら曖昧な返事だった)で割とすんなり習得出来たので後は書物を手当たり次第読みまくり覚えた。

そして、何の因果かそんな風太郎はこの世界でも奇異の目で見られていたのだが…そんな中、1人の老紳士に声を掛けられた。

 

––もしよかったら子供達に読み書きを教えてみないか?

 

と。

風太郎は仕事としてその提案を受け入れ、無事定職にありつけ今に至っている。(もちろん自身が勇者である事も伝えたが、そこで龍刻の砂時計が複数ありここゼルトブルにある事も知って利用させて貰ってたりする)

 

––余談だが、実はこの老紳士。闇ギルドの上級幹部の一人だったりするが、その事実を風太郎は知らない。

 

@@@@@@@

 

一方の三玖だが、こちらは色々と複雑な状況である。

––事の発端は、風太郎とのレベリング中に自分が全くと言っていい程戦えなかった事だ。

城を出てすぐの頃は何とか風太郎を守りつつ自身も攻撃出来たのだが、ゼルトブルに近づくにつれ、攻撃どころか守る事すら出来ず何度もピンチになった。

風太郎はゆっくり慣れていけばいいと言ってくれていたが、三玖自身はそんな自分が嫌で、毎晩泣く日々が続いていた。

 

そんな時にゼルトブルに着いた三玖は、自由行動の際に見つけたコロシアムに、とても興味を持った。

そして、初参加をした対人戦(魔物と戦う方を選んだハズが、誤って人と戦う方を選んでしまうミスをした事にリングインしてから気づいて焦った)で、驚きの成果を上げた。

 

そう。初参加で優勝してしまったのだ。

 

理由は割とシンプルだった。

まず、その試合に有名な上位選手が一人も参加してなかった事。

次に、戦う相手が全員男性で、三玖の容姿(見える部分)に意識が向いて集中してなかった事。

そして最後にルール(枠内で戦闘し、枠外に出たらリングアウト負け)に助けられた事。

この三点に尽きた。

 

そしてその試合でつけられてしまったのが<新人女王>(ルーキークイーン)という二つ名であった。

本人的にはコロシアムの活気付いた雰囲気が苦手で、試合が終わってからも色んな人に注目されるのも元来の性格上苦手な為、一時期トラウマとなりかけた程嫌だったりする。

 

そんな三玖だったが良かった事が無い訳でもない。

 

「あら~、ミクちゃん帰ってたんだね~」

 

三玖「ナディアさん。お久しぶりです」

 

ナディア「も~、敬語なんて使わなくていいって言ってるのに~」

 

三玖「ナディアさんは私の師匠ですから」

 

サディナ「あらあら~」

 

そう。三玖はこのコロシアムで師匠と呼べる人物と出会っていたのだ。

 

三玖「今日からまた宜しくお願いします」

 

ナディア「はいはい~」

 

2人は挨拶が終わるとコロシアムの中へと入っていったのだった。




次話でなんとかゼルトブル編を終わらせたい…


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風太郎サイド:2人の日常の一コマ3

説明長過ぎて終わらなかった…


三玖とナディアのペアはこの闘技場ではそれなりに有名である。

理由は割りとシンプルだったりする。それは――

 

・・・・・

ナディア「じゃあミクちゃん、いつも通りでね~」

 

三玖「はい!」

 

――カンッ!!

 

ゴングが鳴ると、檻の中からウルフ系の魔物が5匹出てきた。

 

三玖「ヘイトリアクション!」

 

スキルを発動すると、ウルフの集団は三玖へと突進していった。

 

三玖「っ!」

ガンッ!

ガンッ!

ガンッ!

ガンッ!

ガンッ!

 

そして三玖は全ての突進を盾で受けきった。そこへ

 

ナディア「力の根源たる我が命ずる…真理を今一度読み解き我らに仇なす敵へ雷を降らせよ!――――ツヴァイトライトニング!!」

バチバチッ!!

 

ギャン!!

 

ナディアの魔法がまとまっていたウルフの集団へと決まる。

 

ナディア「今よミクちゃん!」

 

三玖「はい!――ダブルシュート!!」

パシュン!

 

ギャン!!

 

そこへ三玖の攻撃が決まり、ウルフの集団へトドメをさした。

 

――カンッカンッカンッ!!

 

うおおおおおっ!!

 

「おーっと!早いっ!正しく瞬殺だぁーっ!!この最強ペアには倒せない魔物はいないと言っても良いほどに強過ぎるーっ!!」

 

ナディア「ほらほら~、ミクちゃんもお客さんに応えないと~」

 

三玖「……恥かしい…!」

 

「おぉ…」

 

「恥らう姿もいいなぁ~」

 

暢気に手を振るナディアに対して三玖は手で顔を覆い縮こまってしまうのだが、その姿み見入ってしまうお客もいるので結果的に三玖は目立ってしまう。そして…

 

「バトルクイーン(闘技場女王)の称号は彼女にこそ相応しいよなぁ~」

 

「いやいや、彼女はバトルプリンセス(戦闘姫)の方がいい!」

 

観客同士の言い合いが始まるのもまた、最近のコロシアムでは名物となっていた。

 

・・・・・

閑話休題。

つまり、この2人は単純に強いのである。

 

三玖「ナディアさん、今回の試合どうでしたか?」

 

ナディア「そうねぇ~、…やっぱり波での戦いを経験したからか、前よりも怯えみたいなのが無くなったわ。…きっと、ミクちゃんが努力し続けたからだわ」

 

三玖「いえ…私なんてまだまだですよ…」

 

ナディア「あらあらー、謙遜しすぎよ~…前にも言ったけど、謙遜し過ぎるとただの卑屈になるわ。だからね?ある程度の自信を持つ事は必要なのよ」

 

三玖「ナディアさん……」

 

ナディア「……それでも、まだ気になるなら最後の攻撃を受けた時、次の反撃に繋げる様に受け流せるようにしましょうね」

 

三玖「……はい。ありがとうございます」

 

ナディア「さて、それじゃあ次の試合も頑張りましょうね」

 

三玖「はい!」

 

――――この様に、三玖はナディアと仲良くなってからは日中はずっと闘技場で腕を磨いているのだった。

 

@@@@@@@@@@@@@@

 

風太郎「――――と、こんな感じでここの問題は解くんだ。分かったか?」

 

「「「「はーい!」」」

 

――――キーンコーンカーンコーン

 

風太郎「…よし、午前の授業はこれで終わりだ」

 

「「「ありがとうございました!!」」」

 

風太郎「…さて、弁当食ったら久々に魔法屋にでも行ってみるか」

 

そう呟くと、風太郎は職員室(正確には荷物置き場)へと向かった。

 

~~~~~

 

三玖が闘技場でトレーニングをしている間、風太郎はというと、午前中は学校(寺子屋?)での授業、午後はゼルトブルの魔法屋で魔法の書を読むか、購入して自宅で読むかという感じで過ごす様にしている。

……実は到着したばかりの頃に一人でこっそりレベル上げに行った事があるが、その事に気付いた三玖に帰宅してから号泣され、泣きつかれた為レベル上げをする際は三玖と一緒に行く様にしているのだ。

 

風太郎「……ここに来るのも久々だな」

 

店の前で懐かしむように呟くと中に入って行った。

 

魔法屋「いらっしゃ…あらまぁ久しぶりじゃないの」

 

風太郎「お久しぶりです。新しいの何か入りましたか?」

 

魔法屋「そうねぇ……初級のが少し入ってきたけど、中級と上級は代わり映えしてないわ」

 

風太郎「そうですか……じゃあその本ください」

 

魔法屋「はいよ」

 

魔法屋が用意した2、3冊の魔法書を中身を確認せずに購入した。…これも、ゼルトブルに来てからの風太郎の習慣である。

 

風太郎「ありがとう。また来るよ」

 

魔法屋「はいはい。…あんまり連れのお嬢ちゃん泣かすんじゃないよ」

 

風太郎「う……わかってますよ…」

 

…そんな会話も、この2人にとっては割りと普通の会話である。

実は先述のソロプレイの際に、三玖は魔法屋と武器屋へ半泣きで風太郎の所在を知らないか聞きに来た経緯があるので会う度にこの話を振られるのだ。

 

そして、風太郎は食料や日用品を市場に買いに行く担当でもあるのでその足で必要な物を買って行く。

…これに関しては風太郎が三玖の高級嗜好を警戒した結果であり、同時に三玖1人に家事をやらせるのはどうかと考えた末の案である。(この部分に関しては最初三玖は自分がやると言っていたが、ある言葉を聞いて納得したという経緯があったりする)

 

風太郎「…さて、そろそろ帰るか」




次回で最後。
…終わらして本編戻るんや…


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風太郎サイド:2人の日常の一コマ4

だいぶ空いてしまった…
だが、これで――


一通りの買い物を済ませた風太郎はこの世界での家へと帰宅した。

…勿論帰宅は風太郎の方が早いので購入した本を読んだり荷物整理をして三玖の帰りを待つのも風太郎の日常となっている。

だが、今日はどうやら<遅く帰る日>の様で、夕方になっても帰ってくる気配が無かったので風呂の用意をしてから新しく買った魔法書を読みながらお茶を飲んで待つ事数時間。

 

三玖「ふぅ…ただいまー」

 

風太郎「おう。おかえり三玖」

 

少し急いだのか、少しだけ息を切らせて三玖は帰って来た。

 

三玖「遅くなってごめん。すぐにご飯準備するね」

 

風太郎「気にすんな。それより先に風呂入って来いよ…今日は結構派手にやったみたいだしな」

 

風太郎の言った通り、三玖の服は部分的に汚れたり破れたりしていた。

 

三玖「う……ごめんフータロー。久しぶりだったから師匠張り切っちゃって…」

 

風太郎「あーあの人かー…なら仕方ねぇよ。断った方が面倒だしな」

 

三玖「うん……それでもごめん…」

 

風太郎「必要以上に謝る必要ねぇっていつも言ってるだろ…」

 

三玖「でも…」

 

風太郎「はぁ…。とにかく、先に風呂入っとけ。俺はもう済ましてるから遠慮すんな」

 

三玖「……わかった。ありがとうフータロー」

 

風太郎「おう」

 

軽く凹んでいる三玖を風呂へ促すと、苦笑しながらも三玖は風呂へと向かった。

 

~~~~~~~~~

 

三玖「…おまたせ」

 

風太郎「ああ」

 

三玖「ご飯何がいい?」

 

風太郎「そうだな……何か軽めので頼む。明日も早いんだ」

 

三玖「ん。わかった」

 

・・・

 

三玖「お待たせ。サンドウィッチで良かった?」

 

風太郎「ああ、今日はこれで充分だ。…いただきます」

 

そう言って食べた三玖のサンドウィッチ、その中身はシンプルなものだ。

緑の葉野菜と干し肉(旅の残り物)を長めのパンにはさんだものだが、さりげなく混ぜられた香辛料がアクセントとして良い味を出した、三玖の自信作のひとつだったりする。

 

風太郎「……うん。美味いな…何度食べても」

 

三玖「サンドウィッチだもん…何度も作ってたら上手くもなるよ」

 

それでも二乃よりは劣ってるだろうけど、と苦笑いで続ける三玖に対して風太郎は至極真面目な表情で

 

風太郎「何言ってんだよ。お前の努力が実った結果じゃねぇか。…確かに二乃の作った料理の方が美味いかもしれないが、これはお前が俺の為に作ってくれた料理なんだ。”想い”っていうスパイスが効いてる分俺にとっては三玖が作ったこれの方が数段美味いよ」

 

と伝えると、三玖は照れながらもありがとう…と答えた。

 

~~~

 

夕食を終えた2人はいつもより早くベットに入った。

理由は、疲れたから。

 

そして、2人の寝室にはダブルベットが1つ部屋の中心に置かれている。――つまり、2人はひとつのベットで寝ているのだ。

この事は他の姉妹には秘密にしていたりする。理由は……言わずもがな。

 

風太郎「…今日も、生き延びたな」

 

三玖「そうだね…」

 

そして2人はこちらの世界に来て、ここゼルトブルで共同生活(同棲ともいう)をしてからずっとしている会話を2人同じ布団で交わす。

 

風太郎「…三玖の事は、俺が守る。そして一緒に元の世界に帰ろう」

 

三玖「…うん…私も、フータローの事を守る。皆と約束したから」

 

風太郎「三玖……なぁ、波の戦いに行く前に話した事、覚えてるか?」

 

三玖「…うん」

 

風太郎「…俺は本気だ。だから、三玖の気持ちの整理がついたら、…聞かせてくれ」

 

三玖「……ありがとう、フータロー。…待たせる事になっちゃってごめんね?」

 

風太郎「気にすんな。…さて、寝るか」

 

三玖「うん……おやすみ、フータロー」

 

こうして、2人の夜は更けていく――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

============

 

風太郎「なぁ三玖」

 

三玖「うん?」

 

風太郎「もし、何事も無く帰ってこれたら……」

 

三玖「来れたら?」

 

少し間を空けて、告げた。

 

風太郎「…………け、結婚しよう!」




本編(尚文サイド)へいける…っ!


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尚文サイド:四葉と卵クジ1

時間かかり過ぎた…



城を出た尚文チーム(四葉とラフタリアしかいないが)は、ラフタリアの希望もあり城下にある治療院へと来ていた。

 

医者「……ふむ、刺されたという部分に特別異常は見られませんね…むしろ、本当に重傷を負っていたのか疑う程だ」

 

ラフタリア「…そうですか……良かったです…」

 

四葉「もー、ラフタリアは心配症だなぁ…大丈夫だって言ったのに」

 

尚文「四葉……お前はもう少し反省しろ」

ポカっ

 

四葉「あたっ!?」

 

四葉を心配するラフタリアに対して苦笑する四葉へ、尚文のゲンコツが炸裂した。

それはそうだ。何せ文字通り身体を張って尚文を守り、重傷を負ったのだ。むしろ今の様にピンピンとしてる方がおかしい。

挙句、本人にまるで自覚が無いのである。その為、事前に四葉の学力が壊滅的である事を聞いていた尚文は言い聞かせるのは難しいと悟り、こう結論付けた。

 

"身体で覚えさせるしかない"

 

と。

 

ラフタリア「そうですよ!姉さんはもう少し自分を大事にしてください!!」

 

四葉「くぅーっ…って、2人とも酷くないですか!?私頑張ったのに怒られるだけとかおかしくないですか!?」

 

ラフタリア・尚文「むしろお前(姉さん)の感覚がおかしい」

 

四葉「ううぅ……刺される(物理)より刺される(精神)方が辛い……」

 

そんな即興コントをしつつも医師へお礼を言って外へ出た一行。

しかし、診療所から少し街中へと歩く道中で尚文はずっと気になっていた事を話し出した。

 

尚文「…前々から気になってたんだが、お前自分を犠牲にし過ぎてないか?」

 

四葉「えっ?」

 

尚文「いや、えっ?、って…お前気づいてないのか?」

 

四葉「ええと……どういう意味ですか?」

 

尚文「どういう、って…お前…」

 

ラフタリア「…ヨツバ姉さん」

 

四葉「ん?」

 

ラフタリア「ヨツバ姉さんは、魔導書の勇者…フータロー様の事が好きなのではないですか?」

 

四葉「っ!!」

 

ラフタリア「…しかもその事を隠してまでナオフミ様の仲間になった。自分の気持ちを隠してです。……これを自己犠牲と言わずに何というのですか?」

 

四葉「…………」

 

尚文「……沈黙、って事はラフタリアの言ってた通りか」

 

四葉「…言ってた、というのは?」

 

尚文「さっきラフタリアが言ってただろ?…実はラフタリアから相談はされてたんだが……正直言って俺にはどうしようもない事だし、四葉に決めてもらうしかないんだが、これだけは言える」

 

ひと息入れてから、尚文は告げた。

 

尚文「四葉。もし本当に俺の境遇に対して同情して、自分の気持ちを偽ってるんなら、…俺がお前を風太郎のパーティに入れる様にする。それが俺の義務だからな」

 

四葉「!!……ま、待ってください!」

 

尚文「だがまぁ、四葉だっていきなりこんな事言われても困るだろうし、……今日1日考える時間をやるから、自分自身と向き合え。いいな?」

 

四葉「…そんな事、いきなり言われても…私は…」

 

尚文「……行くぞ、ラフタリア」

 

ラフタリア「…はい」

 

告げ終えた尚文は街の外れに向かい、ラフタリアはそれに付いて行った。

----そして、それを呆然と見送った四葉は

 

四葉「……私に…どうしろって言うんですか…尚文君……」

 

そう呟くとその場で崩れ落ち俯いた。

 

@@@@@@@

 

ラフタリア「…良かったのですか?ナオフミ様」

 

尚文「…さぁな…こればっかりは俺も分からん」

 

ラフタリア「……私は、ああは言いましたがヨツバ姉さんと離れたくはないです。…ナオフミ様も…」

 

尚文「…そうだな。俺個人としては四葉との旅は続けたい。…だが」

 

ラフタリア「…今は姉さんを待ちましょう」

 

尚文「そうだな…」

 

ラフタリア「ではナオフミ様、姉さんの決断を待つ間にやれる事をやってしまいましょう」

 

尚文「あぁ」

 

ラフタリア「では最初に奴隷商の所へ行って奴隷紋を再取得を…」

 

尚文「待て待て!確かに奴隷商の所へ行くがあくまでフィロリアルの卵を買いに行くのであってだな…」

 

ラフタリア「……朝も言いましたが、私はナオフミ様に信用されている証が欲しいのです。だから止めないで下さいナオフミ様」

 

尚文「……はぁ。わかった、そこまで言うなら止めないがあとで後悔するなよ?」

 

ラフタリア「ありがとうございます。では行きましょうか」

 

尚文「はいはい…(全く。この強引さは誰に似たんだか…)」

 

☆☆☆☆☆

 

奴隷商「これはこれは勇者様!本日はどの様なご用件でしょうか?」

 

尚文「今日は魔物の卵を買いに来た。…それと」

 

ラフタリア「私の奴隷紋を再び刻んで貰いたいのですが…」

 

奴隷商「ほほー…あの痩せこけて死にかけていた奴隷がこれ程の上玉に!…驚きの変化ですが…」

 

奴隷商はそう言うと、ガックリと肩を落として

 

奴隷商「もっと私共のような方かと思っていたのですが期待はずれでしたな」

 

と言うが、それに対して尚文は少しドスを効かせながら

 

尚文「お前の知る奴隷とは使い捨てるものなのだろうな。だが生かさず殺さず、それでいて品質を上げるのが真なる奴隷使いだと知れ」

 

奴隷商「……ふふふ。そうでしたか、私ゾクゾクしてきましたよ」

 

尚文の回答に満足した奴隷商は早速道具を持って来て対応を始める。

その際、ラフタリアは恥ずかしそうに胸当てを外して胸を露出させ

 

ラフタリア「あ、あの…どうでしょうか?」

 

と問いかけるも

 

尚文「ん?どうしたんだ?」

 

と返されてラフタリアがため息を吐く、という茶番はあったが無事奴隷紋は復活した。

 

尚文「さて、後は…」

 

そう言ってから尚文はテントの隅に卵の入った木箱に視線を移し

 

尚文「おい奴隷商。アレがフィロリアルの卵か?」

 

と問いかける。

 

奴隷商「いえ、銀貨100枚で一回挑戦出来る魔物の卵くじですよ!」

 

尚文「ん?…そう、なのか…」

 

奴隷商「確かにフィロリアルも含まれてはおりますが、全てではありませんよ。…まぁ、フィロリアルの卵を御所望でしたら別に用意する事も可能ですが…」

 

尚文「ふむ……」

 

尚文は困っていた。

その理由はシンプル。

そう、詳細は四葉しか知らない為どうしていいのか分からないのだ。

…だが

 

ラフタリア「ナオフミ様。ここは卵クジの方にしましょう」

 

ラフタリアはそう尚文へと進言した。

 

尚文「……理由は?」

 

ラフタリア「前に姉さんが卵クジ楽しみだな〜って言っていたからです」

 

尚文「はぁ〜…」

 

意外な事にラフタリアが答えを知っていた事に訝しみ聞いてみたが案の定、本人から聞いた情報だったので頭を抱えため息を吐く尚文。

 

ラフタリア「ナオフミ様?」

 

尚文「…なんでもない。奴隷商、1個買わせて貰うが良いか?」

 

奴隷商「ありがとうございます! 今回は奴隷の儀式代込みでご提供させていただきます」

 

尚文「随分と太っ腹だな……よし、これにしょう!」

 

尚文が選んだのはなんとなくの直感で、右側にある一個。

それを取り出し奴隷商へと尋ねた。

 

尚文「この後はどうしたらいい?」

 

奴隷商「では、その卵の記されている印に血を落としてくださいませ」

 

尚文「わかった」

 

奴隷商の指示通りに血を落とすと、ラフタリアの時に出てきた設定項目が出てきたのでラフタリアの時より厳しめに設定を入れた。(ちなみにこれは一花からの指示だったりする)

 

尚文「もしも孵化しなかったら違約金とかを請求しに来るからな」

 

奴隷商「ハズレを掴まされたとしてもタダでは転ばない勇者様に脱帽です!」

 

尚文「はぁ……これで用件は済んだ。行くぞラフタリア」

 

ラフタリア「あ、はい」

 

奴隷商「勇者様のご来場、何時でもお待ちしております」

 

こうして、尚文は魔物の卵––既にフィロリアルと分かっていたりする––を手に入れた。

 

孵化するまで、あと24時間。



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尚文サイド:四葉と卵クジ2

職場変わるとバタバタするなぁ…

さて、原作では14巻で完結という衝撃発表と、風太郎が…っていう展開ですが、本作はマイペースに進行します(誰エンドとかもまだ決めてませんし)
まぁ、まだ原作も確定展開という程ではありませんが、次週の展開次第では血の雨が降りそうな予感ですね☆


尚文とラフタリアが奴隷商のテントで卵クジをしていた頃、四葉は行くあてが思いつかなかったので武器屋の親父ことエルハルトのところへと来ていた。

 

エルハルト「嬢ちゃん…アンちゃんと何かあったのか?」

 

四葉「……わかりません。正直、いきなり過ぎてどうしていいのか……ご迷惑おかけしてすいませんエルハルトさん」

 

エルハルト「俺は別に構わねぇんだが……」

 

エルハルトは困っていた。

少し前に突然やって来て無理矢理作った笑顔で「お手伝いさせてください!」と言って来たのを宥めようとしたら突然泣き出してしまい、それから少し経った今ようやく落ち着き今に至っている。

 

エルハルト「……なぁ?嬢ちゃんは盾のアンちゃんの事どう思ってんだ?…もちろん本心でだ」

 

四葉「……正直に言うと、自分でもよくわかりません。…最初は尚文君の境遇が許せなくてなんとか助けてあげたい!って、思ってました。けど」

 

エルハルト「けど?」

 

四葉「…一緒に旅していくうちに、段々と楽しくなってきたんです。でも私は…尚文君とラフタリアの言う通り、上杉さん…風太郎君の事が…好きでした」

 

エルハルト「…ん?でした、なら今は好きじゃねぇのか?」

 

四葉「…正しくは、好きでいてはいけない。ですね。…私は、約束ひとつ守れないダメな子、ですから…」

 

そう言った四葉は、苦笑しながらエルハルトを見て

 

四葉「…すいません、つまらない話をしました。これ以上は営業妨害になってしまうので失礼しますね」

 

そう言って店を出ようと手をかけたが

 

エルハルト「待ちな」

 

エルハルトに呼び止められた。

 

四葉「?」

 

エルハルト「…嬢ちゃんは嬢ちゃんで色々悩んでんのはわかった。ついでに言えば、俺がアドバイス出来ねぇのも理解した。…でもよ、今の嬢ちゃんにしてやれる事ならある」

 

四葉「えっ?」

 

エルハルト「こんな店で良ければ手伝うか?…身体動かしてれば考えもまとまるだろうよ」

 

四葉「!…は、はい!!ありがとうございます!是非お願いします!」

 

そんなこんなで、四葉はしばらくの間武器屋の看板娘(お客さん命名)として働くのだった。

 

@@@@@@@

 

尚文「はぁ…」

 

ラフタリア「一緒に魔法を覚えましょう」

 

奴隷商のテントを出た尚文とラフタリアは薬屋、魔法屋と渡り歩き、それぞれの店主からお礼として本を三冊貰った。

…もらったはいいのだが、読めないのだ。

なので嬉しい、というよりどうしたらいいのか途方に暮れてしまった。そこで冒頭に戻る訳だが

 

尚文「俺はこの世界の文字が読めないんだよ……」

 

ラフタリア「ええ、ですから一緒に覚えて行きましょうよ」

 

尚文「まあ……そうなるよな」

 

尚文が萎えてる中、ラフタリアは何故か物凄くやる気になっていた。

 

尚文「はぁ……ま、頑張るしかないか…」

 

ラフタリア「はい!…あ、そういえば次の波は何時来るのでしょう?」

 

尚文「ん?…ああ、ちょっと待ってろ」

 

ラフタリアの話題転換に乗った尚文は視界の隅にあるアイコンを弄り、波の襲来時期を呼び出す。

 

次回の波発生まで…45日と14時間。

 

尚文「45日もあるぞ」

 

ラフタリア「思ったよりも余裕ありますね」

 

尚文「だな。…他に用事は無いよな?」

 

ラフタリア「そうですねぇ……奴隷紋の再登録にフィロリアルの卵、薬の処分に…お礼の本も貰いましたし、当面はありませんね」

 

尚文「そうか。…なら、あとは」

 

ラフタリア「はい」

 

尚文とラフタリアは頷き合い同時に言葉を発した。

 

尚文・ラフタリア「武器屋に行って四葉(ヨツバ姉さん)と会うだけ(です)」

 

そう言ってから2人は武器屋の方へ歩いて行った。

 

 

卵孵化まで、あと18時間



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尚文サイド:四葉と卵クジ3

オリジナル展開で詰まる傾向あるのになかなか対策出来ない駄作者でございます。
そんな私でも一言ボヤきたい。
感想欄にわざわざ「読むのやめる」って書く必要あるんかな…?
理由が気になる……


四葉「いらっしゃいませー!」

 

メルロマルクの城下町に、元気な女の子の声が響く。

––そう。何を隠そう武器屋の親父ことエルハルトの店で働く四葉の声だ。

そんな2人は今絶賛冒険者達を相手に接客中である。

 

女冒険者「なんだい、親父の奴ついに嫁でも貰ったのかい?」

 

エルハルト「ちげーよ、この嬢ちゃんは臨時の助っ人だ!あと余計なお世話だっての」

 

四葉「あはは…」

 

男冒険者「にしても随分とまぁ可愛らしい娘だなー…これだけ美人なら仕事にも困らないだろうに、なんだってこんな寂れた店で働いてんのさ?」

 

エルハルト「ほー、店主の前でバカにするたぁいい度胸だな!」

 

四葉「まぁまぁ…落ち着いて下さいエルハルトさん。…えっと、実は私色々と訳ありでして、私の方から無理言ってお願いしてるんですよー…あはは」

 

女冒険者「なるほどねぇ…あぁそういえば、勇者一行に顔の同じ五人の女が居るとか何とか聞いた事あるわねぇ…」

 

男冒険者「お、その噂なら俺も聞いたな!何でも非道な行いをした王族に天誅を下した男女の女の方が同じ顔の三人組だとか、勇者を庇って刺された女と、それを治癒した女が同じ顔してたとかな!」

 

四葉「へ、へぇ〜ソウナンデスネー…フシギデスネー…」

 

冒険者達の噂話を聞いて冷や汗を流し片言で返す四葉。基本嘘を吐いたり誤魔化すのが苦手なので表情や態度に出てしまう。

そんな四葉を見かねた店主は

 

エルハルト「嬢ちゃん……悪りぃけど倉庫にある剣いくつか持って来てくれ。こっちは適当に捌いとくから」

 

四葉「あっはい!わかりましたー…(すみませんありがとうございます)」

 

さらっとこの場から外す様に指示を出した。

…この時ばかりは意図を察した四葉は素直に従い、すれ違い様に小声でお礼を言って倉庫へと向かった。

 

エルハルト「さて、今日は何の用だ?剣のメンテはこの前したばっかりだろ?」

 

〜〜〜〜

 

一方の尚文・ラフタリアコンビはというと––––

 

ラフタリア「な、ナオフミ様…これは一体…」

 

尚文「……犯人はなんとなくわかるがな……」

 

武器屋の前まで来ていた。…のだが

 

ラフタリア「人が並び過ぎてて入れそうにありません……」

 

そう。以前来た時の倍以上の人が居る…というより、列を作って並んでいたのだ。これではそもそも店に入るのに何時間も掛かりそうな雰囲気である。

 

尚文「……仕方ない。出直すか…」

 

ラフタリア「……そうですね……では閉店する頃に来ましょうか」

 

尚文「そうだな……」

 

このままでは入れないと判断した2人は一度出直す事にしたのだった。

 

@@@@@@@

 

四葉「ありがとうございましたー!!」

パタン

 

エルハルト「ふぅ。…やっと終わったか…」

 

四葉「お疲れ様です!エルハルトさん」

 

現在は夕暮れ時、時間にして19時頃。漸く最後の接客を終えた2人はひと息入れる。

 

エルハルト「……嬢ちゃんは元気そうだな…俺なんかめちゃくちゃくたびれたが…まだまだいけそうだな」

 

四葉「あはは……これでも体力だけは自信があるので。それよりすみません、接客ほとんど代わって頂いてしまって…」

 

エルハルト「いいってことよ、それを含めて了承したのはこっちだ。…それより、装備品の運び出しさせちまってすまなかったな。結構重かっただろ」

 

四葉「いえ、そこまで重くはなかったので大丈夫です!むしろお役に立てたなら良かったですよ」

 

エルハルト「そうか。…今日は本当に助かったぜ。ありがとな嬢ちゃん!」

 

四葉「いえいえ、こちらこそ今日一日ありがとうございました。良い経験させて頂きました。感謝です」

 

そう言って満面の笑みを向ける四葉。

 

エルハルト「…さて、今日働いて貰った給金だが…」

 

そんな四葉を直視出来なくなったので別の話題を向けるエルハルトがそう言ってから出したのは、金貨の入った革袋だった。

 

四葉「そんな!私が無理言ってお手伝いさせて頂いて、その上お金まで貰うなんて出来ませんよ!!」

 

エルハルト「嬢ちゃん……でもよ…」

 

四葉「……それでも、というなら私のお願いを聞いて頂けませんか?」

 

エルハルト「…言ってみな」

 

四葉「今日のお給料分で、尚文君かラフタリア…亜人族の女の子の装備を見繕って頂けませんでしょうか?」

 

エルハルト「!嬢ちゃん、何を言って…!!」

 

四葉「お願いします…今の私にはそれくらいしか出来ませんので…」

 

そう言って頭を下げた四葉を見て、エルハルトは腕を組みながら考える。

 

カランカラン

 

そんな時、ふと来客を知らせるベルが鳴って扉が開いた。




次回でこのタイトル終わらせて次いきたい…orz


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尚文サイド:四葉と卵クジ4

だいぶご無沙汰になってしまいました…
そして気付きました。

いろいろ端折り過ぎて読者の方に想像補完して貰う事を強要している事に。

すいません…


四葉「すみません!今日はも…う…」

 

唐突に鳴った来客を告げる音に対して、四葉が対応しようと扉の方へ顔を向けると、そこには四葉の見知った男女2人がいた。

 

男「よ、半日ぶりだな」

 

2人のうちの男の方がそう声を掛ける。

 

女「姉さん…」

 

女の方は四葉を見ながら心配そうに遠慮気味に声を掛ける。

 

四葉「……尚文君…ラフタリア…」

 

2人の正体――男の方が尚文、女の方がラフタリア――である事に疑いの余地は無いが、正直に言うなら今一番会いたくない2人でもあった。

 

四葉「どうして…ここにいるってわかったんですか?」

 

ラフタリア「実は……街を歩いていたら”武器屋の親父に春が来たらしい”って会話が聞こえてきて…」

 

尚文「正直、そんな浮いた話聞いた事も無かったんだ。そんなわけあるかって思ったんだが…その話に出てきた女の特徴が四葉そのものだったからな。だから近くから店の様子を見ていた」

 

事情を聞いた四葉は「あの人たちかぁ…」と、遠い目になりながら納得した。

――話を聞いていた武器屋の店主ことエルハルトは「あいつら…」と頭を抱えつつ「とりあえずアンちゃんは後で一発殴らせろ」と負のオーラを纏いながら呟いたが、誰も聞いていなかったのは余談である。

 

尚文「…それで?噂話の真偽はともかく、気持ちは決まったか?」

 

四葉「…………」

 

ラフタリア「ナオフミ様…少々急かし過ぎなのでは?」

 

尚文「確かに、ラフタリアの言う通り結論を急ぎ過ぎている事は否定のしようがない。だが、俺達はこれから波と戦うんだ。強くなる為の時間が有限である以上は、仕方ない事なんだよ…」

 

ラフタリア「ナオフミ様……私は…」

 

尚文「…まぁ、そうは言っても簡単な問題じゃないんだ。俺は親父と奥で話しをしてくる。2人でゆっくり話しでもしててくれ」

 

ラフタリア「!……はい!」

 

ラフタリアの返事を聞きつつエルハルトに「今後の相談がしたい。奥で話をしよう」と提案し、「こっちだ」とエルハルトは尚文を先導して店の奥へと歩いていった。

 

=========================

ラフタリア視点

 

ナオフミ様と親父さんが奥の部屋と移動してから、少しの間静寂が訪れた。

そして、姉さんは

 

四葉「…ごめん、お店の閉店作業が少し残ってるからやっちゃっても良いかな?」

 

ラフタリア「あ…は、はい!私も手伝います」

 

四葉「…ありがと。じゃあ――」

 

そう言ってから作業を始める私と姉さん。もちろん作業中は事務的な会話しかしない。

…正直、私自身姉さんと話すのが怖かった。姉さんの口から直接別れの言葉を聞きたくなかった……だから私はヨツバ姉さんに声をかけられなかった。

 

そうして約30分後、作業も終わってまた静寂が店内を支配した。

 

四葉「……ラフタリア」

 

私の心情を悟ってか、それとも姉さんの中で覚悟ができたのか。苦笑気味に姉さんの方から声を掛けてきた。

 

四葉「ごめんね、心配かけて。いっぱい、不安にさせちゃったよね。…でも、もう迷わない!私は尚文君とラフタリア、2人について行くから。ラフタリアを買った時にした【貴女をひとりにしない】って約束を果たすから」

 

そして、決意の篭った目で私を見ながら、そう言ってくれた。

 

そう言ってくれただけで、私の涙腺は限界だった。

 

=========================

視点戻り。

 

夕日が落ちきり、宵闇が支配をする頃(時間的には21時)

尚文とエルハルトが奥の部屋から店内へ戻ると、床に座る四葉に膝枕されて眠るラフタリアという図がそこにあった。

 

四葉「あ、お2人とも遅いですよ。残ってたお店の閉店作業、私とラフタリアで終わらせておきましたから」

 

エルハルト「お、おう。…すまねぇな嬢ちゃん、助かったぜ」

 

尚文「…ラフタリアは?」

 

四葉「…ついさっき寝ちゃいました。…身体は大人でも中身はまだ子供のこの子に、私はなんて無責任な事をしそうになっていたんだろうって、思い知らされました。だから尚文君」

 

四葉「私は、貴方について行きます。ラフタリアの為に、私の為に…。これは、私が決めた、私の意志です!」

 

そう言って四葉は尚文へと視線を向ける。――それは、決意の篭った真剣な瞳だった。

 

尚文「……わかった。お前が自分で考えて決めた事だ。俺は四葉、お前の意志を尊重するよ」

 

四葉「!!……ありがとうございます!」

 

エルハルト「よかったじゃねぇか嬢ちゃん」

 

四葉「はいっ!!…あ」

 

ラフタリア「んむぅ~……あれ~?話し合いは終わったんですか~?」

 

四葉の声量に反応して寝ぼけ眼でラフタリアが問いかける。

 

尚文「あぁ。ちょうど今終わったところだ」

 

エルハルト「ははっ!嬢ちゃんもこんな状態だしな!今日は泊まってけよ」

 

尚文「良いのか?」

 

エルハルト「一日くらい良いって事よ!それに、嬢ちゃんには今日一日世話になったからな。んじゃ、部屋用意してやっからちょっと待ってろよ」

 

四葉「ありがとうございます!この恩は必ず返します!」

 

エルハルト(おいおい、お人好しにも程があるだろ…ま、それが嬢ちゃんのいいところか)

 

 

こうして、尚文パーティの賑やかな一日は終わったのだった。




や、やっと進める…

原作のエンドは個人的には良かったです。
(本作に影響させるかはさておき)


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幕間
幕間~各陣営のステータスver1.0


9話時点でのステータス。
※随時更新予定


<盾の勇者の成り上がりサイド>

 

名前:天木錬

ジョブ:剣の勇者

装備:伝説の剣、学生服

状態:高揚

 

ステータス

Lv:1

HP:100

MP:100

SP:100

攻撃:100

防御:  1

速さ: 10

魔力: 50

命中:100

回避: 20

隠蔽: 10

幸運:  0

カース: 0

適正:A

 

備考:原作より冷静(一花に浮かれてると思われたくない為だが既に気づかれてる)

パーティ

・中野一花

・武道家♀

・魔法使い♂

・短剣使い♂

・重戦士♂

 

スキル:なし

 

名前:川澄樹

ジョブ:弓の勇者

装備:伝説の弓、学生服

状態:高揚

 

ステータス

Lv:1

HP:100

MP:100

SP:100

攻撃:100

防御:  1

速さ: 10

魔力: 50

命中:150

回避: 30

隠蔽: 20

幸運:  0

カース: 0

適正:S

 

備考:五月の事は中野さん、それ以外の姉妹は名前で呼ぶ事にした。

パーティ

・中野五月

・重騎士♂

・槍使い♀

・魔法使い♀

・戦士♂

 

スキル:命中、絶対音感

 

名前:北村元康

ジョブ:槍の勇者

装備:伝説の槍、私服

状態:高揚

 

ステータス

Lv:1

HP:100

MP:100

SP:100

攻撃:100

防御:  1

速さ: 10

魔力: 50

命中: 80

回避:  5

隠蔽:  0

幸運:  0

カース: 0

適正:A

 

備考:二乃に監視されている為原作よりはナンパ頻度は低め

パーティ

・中野二乃

・踊り子♀

・魔法使い♀

・細剣使い♂

 

スキル:ナンパ

 

名前:岩谷尚文

ジョブ:盾の勇者

装備:伝説の盾、くさりかたびら

状態:ストレス小、マインと一花に疑心暗鬼

 

ステータス

Lv:1

HP:100

MP:100

SP:100

攻撃:  1

防御:100

速さ: 10

魔力: 50

命中:ーーー

回避:  0

隠蔽:  0

幸運: 90

カース: 0

適正:?

 

備考:四葉のおかげである程度立ち直った。

パーティ

・マイン(魔法剣士)

・中野四葉

 

スキル:【流星盾】

 

 

=====================

<五等分の花嫁サイド>

 

名前:上杉風太郎

ジョブ:魔導書の勇者

装備:伝説の魔導書、学生服、携帯電話

状態:ストレス小、高揚

 

ステータス

Lv:1

HP:100

MP:100

SP:100

攻撃: 10

防御: 10

速さ:  1

魔力:100

命中:100

回避:  0

隠蔽:  0

カース: 0

幸運:100

適正:B

 

備考:勉強は得意だが実践ははたして……

パーティ

・中野三玖

 

スキル:???

 

名前:中野一花

ジョブ:かけだし女優

装備:学生服、携帯電話

状態:普通?

 

ステータス

Lv:1

HP:100

MP:100

SP:100

攻撃:???

防御:???

速さ: 10

魔力:???

命中:???

回避:???

隠蔽:???

カース: 0

幸運: 10

適正:ーーー

 

備考:<盾の勇者の成り上がり>のお話を知っている(ただし、一花たちの世界で映画としてやった部分だけの為細かい部分までは知らないし内容も微妙に異なっているので正確には分からない)

パートナー:天木錬

スキル:変装

 

名前:中野二乃

ジョブ:女子高生

装備:学生服、携帯電話

状態:監視中

 

ステータス

Lv:1

HP:100

MP:100

SP:100

攻撃: 10

防御:???

速さ:???

魔力:???

命中:???

回避:???

隠蔽: 10

カース:10

幸運:-10

適正:ーーー

 

備考:元康を監視する為に同行したが本心は……

パートナー:北村元康

スキル:料理、変装

 

名前:中野三玖

ジョブ:女子高生

装備:学生服、携帯電話

状態:緊張<強>

 

ステータス

Lv:1

HP:100

MP:100

SP:100

攻撃:???

防御:???

速さ:  1

魔力:???

命中:???

回避:???

隠蔽: 90

カース: 0

幸運:100

適正:ーーー

 

備考:風太郎と2人きり状態と風太郎を守りながら戦う事の二重の意味で緊張中

パートナー:上杉風太郎

スキル:ポイズンクッキング?、変装、風林火陰山雷!?

 

名前:中野四葉

ジョブ:女子高生

装備:学生服、携帯電話、鋼鉄の剣、隕鉄の盾

状態:元気だけど軽度闇落ち

 

ステータス

Lv:1

HP:200

MP:100

SP:100

攻撃:110

防御:100

速さ:150

魔力:???

命中:???

回避: 40

隠蔽:ー100

カース:10

幸運:???

適正:A

 

備考:武器のせいで速さダウン。けど身体能力が高い結果恐ろしい数値に…

パートナー:岩谷尚文

スキル:四葉スマイル(元気になれる)、四葉チェック

 

名前:中野五月

ジョブ:レビュアー(女子高生)

装備:学生服、携帯電話

状態:空腹(朝食が少なかった為)

 

ステータス

Lv:1

HP:100

MP:100

SP:100

攻撃:???

防御:???

速さ:???

魔力:???

命中:???

回避:???

隠蔽:???

カース: 1

幸運:  0

適正:ーーー

 

備考:樹の事は川澄君と呼ぶ事にした。(そもそも五月は苗字呼びなので最早備考ですらないが一応…)

パートナー:川澄樹

スキル:大食い

 

<その他>

名前:マイン=スフィア

ジョブ:冒険者(魔法剣士)

装備:魔法鉄の剣、軽装メイル

状態:ストレス中、中度怒り

 

ステータス

Lv:???

HP:???

MP:???

SP:???

攻撃:???

防御:???

速さ:???

魔力:???

命中:???

回避:???

隠蔽:???

カース:30

幸運:-90

適正:B

 

備考:原作と違い四葉がいるせいでやりたい事ができずイライラしている。これが後にどう響くか…

パーティ

・岩谷尚文

・中野四葉

 

スキル:交渉術?

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

※以降、登場キャラクター追加毎に増やします。

※ステータスはレベル毎に変化します。(最大1000、最小ー100。幸運だけ最大100)

※【】内は使用できないスキルもしくはだいじなもの

 

注:ステータス項目は作者が勝手に設定しています。なので原作とは微妙に異なってますが気にしないでください。



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幕間~各陣営のステータスver1.1

現時点での更新は尚文サイドと風太郎サイドのみです。
他の陣営の更新は冤罪の章が終わってからになります。


<盾の勇者の成り上がりサイド>

 

名前:天木錬

ジョブ:剣の勇者

装備:伝説の剣、学生服

状態:高揚

 

ステータス

Lv:1

HP:100

MP:100

SP:100

攻撃:100

防御:  1

速さ: 10

魔力: 50

命中:100

回避: 20

隠蔽: 10

幸運:  0

カース: 0

適正:A

 

備考:原作より冷静(一花に浮かれてると思われたくない為だが既に気づかれてる)

パーティ

・中野一花

・武道家♀

・魔法使い♂

・短剣使い♂

・重戦士♂

 

スキル:???

 

名前:川澄樹

ジョブ:弓の勇者

装備:伝説の弓、学生服

状態:高揚

 

ステータス

Lv:1

HP:100

MP:100

SP:100

攻撃:100

防御:  1

速さ: 10

魔力: 50

命中:150

回避: 30

隠蔽: 20

幸運:  0

カース: 0

適正:S

 

備考:五月の事は中野さん、それ以外の姉妹は名前で呼ぶ事にした。

パーティ

・中野五月

・重騎士♂

・槍使い♀

・魔法使い♀

・戦士♂

 

スキル:命中、絶対音感

 

名前:北村元康

ジョブ:槍の勇者

装備:伝説の槍、私服

状態:高揚

 

ステータス

Lv:1

HP:100

MP:100

SP:100

攻撃:100

防御:  1

速さ: 10

魔力: 50

命中: 80

回避:  5

隠蔽:  0

幸運:  0

カース: 0

適正:A

 

備考:二乃に監視されている為原作よりはナンパ頻度は低め

パーティ

・中野二乃

・踊り子♀

・魔法使い♀

・細剣使い♂

 

スキル:ナンパ

 

名前:岩谷尚文

ジョブ:盾の勇者

装備:伝説の盾、くさりかたびら

状態:ストレス小、マインと一花に疑心暗鬼。

 

ステータス

Lv:2

HP:110

MP:100

SP:105

攻撃:  1

防御:120

速さ: 11

魔力: 52

命中:ーーー

回避:  0

隠蔽:  0

幸運: 90

カース: 0

適正:?

 

備考:今後の展開に不安を持っている状態。

パーティ

・マイン(魔法剣士)

・中野四葉

 

スキル:料理、交渉術

【流星盾】

 

 

=====================

<五等分の花嫁サイド>

 

名前:上杉風太郎

ジョブ:魔導書の勇者

装備:伝説の魔導書、学生服、携帯電話、マント

状態:ため息

 

ステータス

Lv:2

HP:101

MP:110

SP:105

攻撃: 10

防御: 15

速さ:  3

魔力:110

命中:101

回避: 10

隠蔽:  0

カース: 0

幸運: 90

適正:B

 

備考:異世界でも事実上の借金を抱えて落ち込んでる。

パーティ

・中野三玖

 

スキル:ウィンドカッター、トルネード

 

名前:中野一花

ジョブ:かけだし女優

装備:学生服、携帯電話

状態:心配

 

ステータス

Lv:1

HP:100

MP:100

SP:100

攻撃:???

防御:???

速さ: 10

魔力:???

命中:???

回避:???

隠蔽:???

カース: 0

幸運: 10

適正:ーーー

 

備考:ここまでシナリオ通り過ぎて妹が心配な様子。

パートナー:天木錬

スキル:変装

 

名前:中野二乃

ジョブ:女子高生

装備:学生服、携帯電話

状態:監視中

 

ステータス

Lv:1

HP:100

MP:100

SP:100

攻撃: 10

防御:???

速さ:???

魔力:???

命中:???

回避:???

隠蔽: 10

カース:10

幸運:-10

適正:ーーー

 

備考:元康が大人し過ぎて拍子抜けしている様子。

パートナー:北村元康

スキル:料理、変装

 

名前:中野三玖

ジョブ:女子高生?

装備:学生服、携帯電話、銀鉄の盾、ハンドボウガン

状態:高揚

 

ステータス

Lv:2

HP:105

MP:105

SP:110

攻撃: 30

防御: 80

速さ:  2

魔力: 15

命中: 75

回避:  1

隠蔽: 50

カース: 0

幸運:100

適正:A

 

備考:割と早い段階でボウガンの扱いに慣れた模様…

パートナー:上杉風太郎

スキル:ポイズンクッキング?、変装、風林火陰山雷!?

    シングルシュート

 

名前:中野四葉

ジョブ:女子高生戦士

装備:学生服、携帯電話、鋼鉄の剣、隕鉄の盾

状態:元気だけど軽度闇落ち

 

ステータス

Lv:3

HP:310

MP:120

SP:180

攻撃:200

防御:105

速さ:250

魔力: 80

命中:428

回避: 50

隠蔽:ー100

カース:10

幸運:???

適正:A

 

備考:武器のせいで速さダウン。けど身体能力が高い上に武器防具のせいでさらに恐ろしいステータスに…暴斧のなんちゃらさんにならない事を祈りたい。

パートナー:岩谷尚文

スキル:四葉スマイル(元気になれる)、四葉チェック

 

名前:中野五月

ジョブ:レビュアー(女子高生)

装備:学生服、携帯電話

状態:空腹(中)

 

ステータス

Lv:1

HP:100

MP:100

SP:100

攻撃:???

防御:???

速さ:???

魔力:???

命中:???

回避:???

隠蔽:???

カース: 1

幸運:  0

適正:ーーー

 

備考:まともな人を演じてるのか割と大人しい。(内心は不明)

パートナー:川澄樹

スキル:大食い

 

<その他>

名前:マイン=スフィア

ジョブ:冒険者(魔法剣士)

装備:魔法鉄の剣、軽装メイル

状態:ストレス中、中度怒り

 

ステータス

Lv:???

HP:???

MP:???

SP:???

攻撃:???

防御:???

速さ:???

魔力:???

命中:???

回避:???

隠蔽:???

カース:50

幸運:-90

適正:B

 

備考:権力にモノを言わせてヤッちまった人。色々待ったなし。

パーティ

・岩谷尚文

・中野四葉

 

スキル:交渉術?、影行使??

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

※以降、登場キャラクター追加毎に増やします。

※ステータスはレベル毎に変化します。(最大1000、最小ー100。幸運だけ最大100)

※【】内は使用できないスキルもしくはだいじなもの

 

注:ステータス項目は作者が勝手に設定しています。なので原作とは微妙に異なってますが気にしないでください。




この幕間は不定期で上げていきます。


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幕間~各陣営のステータスver1.2

遅くなりましたが現時点での皆さんです。


<盾の勇者の成り上がりサイド>

 

名前:天木錬

ジョブ:剣の勇者

装備:伝説の剣、学生服、レザーアーマー

状態:過剰な向上心

 

ステータス

Lv:3

HP:190

MP:112

SP:130

攻撃:190

防御: 50

速さ: 40

魔力: 59

命中:130

回避: 32

隠蔽: 22

幸運:  3

カース: 0

適正:A

 

備考:誰よりも強くなりたいという願望が強い為、一花へと師事してしまう。結果がどうなるかは神のみぞ知る…

パーティ

・中野一花

・武道家♀

・魔法使い♂

・短剣使い♂

 

スキル:自動調合、スラント

 

名前:川澄樹

ジョブ:弓の勇者

装備:伝説の弓、学生服、レザーガード

状態:冷静

 

ステータス

Lv:2

HP:110

MP:100

SP:120

攻撃:108

防御: 27

速さ: 20

魔力: 60

命中:200

回避: 40

隠蔽: 24

幸運:  2

カース: 0

適正:S

 

備考:二乃の宣言を気にしており、五月を何が何でも戦わせたくはないが、本人の意思を否定する事も出来なかったので同じ後衛にするということで妥協した。

パーティ

・中野五月

・重騎士♂

・槍使い♀

・魔法使い♀

・戦士♂

 

スキル:命中、絶対音感、自動調合

 

名前:北村元康

ジョブ:槍の勇者

装備:伝説の槍、私服、くさりかたびら

状態:困惑

 

ステータス

Lv:1

HP:100

MP:100

SP:100

攻撃:100

防御: 21

速さ: 10

魔力: 50

命中: 80

回避:  5

隠蔽:  0

幸運: 50

カース: 0

適正:A

 

備考:二乃の覚悟と真っ直ぐな気持ちに思考が追いついていない様子。だが――――

パーティ

・中野二乃

・踊り子♀

・魔法使い♀

・細剣使い♂

 

スキル:ナンパ、ウェポンコピー

 

名前:岩谷尚文

ジョブ:盾の勇者

装備:伝説の盾、マント、インナー

状態:四葉へ軽度依存症

 

ステータス

Lv:2

HP:110

MP:100

SP:105

攻撃:  1

防御:120

速さ: 11

魔力: 52

命中:ーーー

回避:  0

隠蔽:  0

幸運: 90

カース: 0

適正:A

 

備考:四葉に対して依存症気味。原作ではラフタリアだったのだがこれがこの先どう影響出るのかは未知数である。

パーティ

・中野四葉

【ラフタリア】

 

スキル:料理、交渉術、薬剤調合、【ウェポンコピー】

【流星盾】

 

 

=====================

<五等分の花嫁サイド>

 

名前:上杉風太郎

ジョブ:魔導書の勇者

装備:伝説の魔導書、学生服、携帯電話、マント

状態:疲労(中)

 

ステータス

Lv:3

HP:102

MP:115

SP:108

攻撃: 10

防御: 20

速さ:  4

魔力:115

命中:104

回避: 15

隠蔽:  3

カース: 0

幸運: 93

適正:B

 

備考:自分の体力の無さに落ち込んでいる。

パーティ

・中野三玖

 

スキル:ウィンドカッター、トルネード

 

名前:中野一花

ジョブ:かけだし女優

装備:インナー、鉄の剣、レザーアーマー、携帯電話、【インナー】

状態:???

 

ステータス

Lv:3

HP:112

MP:112

SP:115

攻撃:130

防御: 42

速さ:100

魔力: 30

命中:150

回避: 30

隠蔽:???

カース: 0

幸運: 40

適正:?

 

備考:錬を見てると風太郎を連想してしまい、つい何でもしてあげたくなってしまっている。戦闘スタイルは映画で登場した錬(剣の勇者)を模倣している為盾なし片手剣で戦闘をしている。

パートナー:天木錬

スキル:変装、スタイルコピー

 

名前:中野二乃

ジョブ:女子高生

装備:学生服、携帯電話

状態:監視中

 

ステータス

Lv:1

HP:100

MP:100

SP:100

攻撃: 10

防御:???

速さ:???

魔力:???

命中:???

回避:???

隠蔽: 10

カース:10

幸運:-10

適正:ーーー

 

備考:元康に対して対等であろうとするあまり大胆な言動が――――

パートナー:北村元康

スキル:料理、変装、尾行

 

名前:中野三玖

ジョブ:女子高生タンク

装備:学生服、携帯電話、銀鉄の盾、ハンドボウガン

状態:高揚

 

ステータス

Lv:3

HP:110

MP:105

SP:115

攻撃: 40

防御:120

速さ:  2

魔力: 20

命中: 80

回避: -5

隠蔽:  0

カース: 0

幸運:100

適正:A

 

備考:割と早い段階で戦いにも慣れてきた模様。盾の影響で回避と隠蔽がダウン。でも体力は相変わらずで……

パートナー:上杉風太郎

スキル:ポイズンクッキング?、変装、風林火陰山雷!?

    シングルシュート、ヘイトリアクション

 

名前:中野四葉

ジョブ:女子高生戦士

装備:インナー、携帯電話、鋼鉄の剣、隕鉄の盾、【学生服】

状態:中度闇落ち

 

ステータス

Lv:3

HP:310

MP:120

SP:180

攻撃:200

防御:105

速さ:250

魔力: 80

命中:428

回避: 50

隠蔽:ー100

カース:50

幸運:???

適正:A

 

備考:武器のせいで速さダウン。けど身体能力が高い上に武器防具のせいでさらに恐ろしいステータスに…暴斧のなんちゃらさんにならない事を祈りたい。(余談だが、沸点が若干低くなっているのが周囲の懸念事項)

パートナー:岩谷尚文

スキル:四葉チェック

 

名前:中野五月

ジョブ:レビュアー(女子高生)

装備:学生服、携帯電話

状態:黄昏

 

ステータス

Lv:?

HP:???

MP:???

SP:???

攻撃:???

防御:???

速さ:???

魔力:???

命中:???

回避:???

隠蔽:???

カース: ?

幸運:  ?

適正:ーーー

 

備考:仲間からの評価が気になったので戦闘へ参加する事を伝えたが、最初は樹に拒否されたがその後に協議した結果、後衛職になる事で解決した。

パートナー:川澄樹

スキル:大食い

 

<その他>

名前:マイン=スフィア(マルティ)

ジョブ:冒険者(魔法剣士)、第一王女

装備:魔法鉄の剣、軽装メイル

状態:?

 

ステータス

Lv:???

HP:???

MP:???

SP:???

攻撃:???

防御:???

速さ:???

魔力:???

命中:???

回避:???

隠蔽:???

カース:50

幸運:-90

適正:B

 

備考:元康のパーティに戻るも、二乃に監視されている為原作程暗躍するのは難しい様子。だが――――

パーティ

・北村元康

・中野二乃

・踊り子♀

・魔法使い♀

・細剣使い♂

 

スキル:交渉術?、影行使??

 

名前:ラフタリア

ジョブ:亜人奴隷

装備:???

状態:病人

 

ステータス

Lv:1

HP:100

MP:100

SP:100

攻撃:???

防御:???

速さ:???

魔力:???

命中:???

回避:???

隠蔽:???

カース:???

幸運:???

適正:―――

 

備考:奴隷商から尚文が購入した奴隷の少女。現時点では原作通りの状況である。

パーティ

・岩谷尚文

・中野四葉

 

スキル:なし

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

※以降、登場キャラクター追加毎に増やします。

※ステータスはレベル毎に変化します。(最大1000、最小ー100。幸運だけ最大100)

※【】内は使用できないスキルもしくはだいじなものと装備してない持ち物。または自覚の無い所持スキル。

 

注:ステータス項目は作者が勝手に設定しています。なので原作とは微妙に異なってますが気にしないでください。




注:尚文のパーティはラフタリアを購入した日はレベル上げをしていない状況です。


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幕間~各陣営のステータスver1.3

今回は第一回の波までの状況です。
(波でのレベルアップも込みです)


<盾の勇者の成り上がりサイド>

 

名前:天木錬

ジョブ:剣の勇者

装備:伝説の剣、ドラゴンプレート、【学生服】

状態:軽度依存

 

ステータス

Lv:52

HP:5080

MP:402

SP:351

攻撃:580

防御:215

速さ:230

魔力: 80

命中:500

回避:311

隠蔽:435

幸運: 20

カース: 0

適正:A

 

備考:一花に師事してからは一花に対して少し依存気味。けど全勇者中最大のレベルを誇る。

 

パーティ

・中野一花

・武道家♀

・魔法使い♂

・僧侶♀

 

スキル:自動調合、ウェポンコピー

    スラント、紅蓮剣、雷鳴剣、ハンドレッドソード、バーチカルアーク、氷月翔閃、爆砕斬

 

名前:川澄樹

ジョブ:弓の勇者

装備:伝説の弓、ミスリルガード、旅人の服、【学生服】

状態:困惑

 

ステータス

Lv:33

HP:2910

MP:200

SP:303

攻撃:278

防御:157

速さ:120

魔力: 89

命中:660

回避: 71

隠蔽:444

幸運: 18

カース:10

適正:S

 

備考:誰にも話してないが実は五月の安全を最優先するあまりレベリングが疎かになってしまった。

 

パーティ

・中野五月

・重騎士♂

・槍使い♀

・魔法使い♀

・戦士♂

 

スキル:命中、絶対音感、自動調合

    ウィンドアロー、サンダーシュート、凍牙、ピアシスライン

 

名前:北村元康

ジョブ:槍の勇者

装備:伝説の槍、くさりかたびら、騎士服、【私服】

状態:劣等感、ストレス中

 

ステータス

Lv:15

HP:1500

MP:200

SP:250

攻撃:250

防御:100

速さ: 10

魔力: 50

命中: 80

回避:  5

隠蔽:  0

幸運: 50

カース: 0

適正:A

 

備考:自分のレベルが低過ぎた事に焦りを覚えて突撃したがあえなく玉砕・・・になりかけた。(パーティメンバーが身代わりになった為生存)その事を割りと気にしている為心を入れ替えようとまで考えたが果たして……

 

パーティ

・中野二乃

・魔法使い♀

・魔法使い♀

・細剣使い♂

 

スキル:ナンパ、ウェポンコピー

    ライトニングスピアー、みだれづき

 

名前:岩谷尚文

ジョブ:盾の勇者

装備:伝説の盾、マント、インナー、蛮族の鎧

状態:四葉へ中度依存

 

ステータス

Lv:25

HP:2115

MP:199

SP:215

攻撃:  1

防御:450

速さ: 55

魔力:137

命中:100

回避:  0

隠蔽: 69

幸運: 90

カース:20

適正:A

 

備考:四葉に対して依存しているからか、原作程ラフタリアの言動にストレスは感じていない(それどころか同情している傾向も見られる)が、周囲や王族に対しては嫌悪感を持っている。

 

パーティ

・中野四葉

・ラフタリア

 

スキル:料理、交渉術、薬剤調合、【ウェポンコピー】、採取

    エアストシールド、シールドプリズン、【流星盾】

 

 

=====================

<五等分の花嫁サイド>

 

名前:上杉風太郎

ジョブ:魔導書の勇者

装備:伝説の魔導書、携帯電話、【マント】、【学生服】、ルーンローブ

状態:疲労(大)

 

ステータス

Lv:45

HP:3702

MP:495

SP:297

攻撃: 20

防御:220

速さ: 50

魔力:575

命中:188

回避: 45

隠蔽:100

カース: 5

幸運: 75

適正:???

 

備考:三玖との1ヶ月共同生活中に色々変化があったりなかったり。

 

パーティ

・中野三玖

 

スキル:ウィンドカッター、トルネード、ファイア、ファイアボール、ライトニング、エアスラスト、ファイアストーム

 

名前:中野一花

ジョブ:かけだし女優

装備:インナー、魔法鉄の剣、ミスリルアーマー、携帯電話、【私服】

状態:思案中

 

ステータス

Lv:53

HP:5001

MP:449

SP:501

攻撃:400

防御:155

速さ:155

魔力: 55

命中:300

回避:110

隠蔽:???

カース:??

幸運: 53

適正:SS

 

備考:片手剣のみで敏捷性重視で戦っているが今回の件で限界を感じた為スタイルチェンジを企画中。

 

パートナー:天木錬

スキル:変装、スタイルコピー※

※現在は錬と同じスキルが使用可能。

 

名前:中野二乃

ジョブ:女子高生

装備:学生服、携帯電話、魔法の杖

状態:劣等感と使命感が顕著

 

ステータス

Lv:9

HP:900

MP:320

SP:109

攻撃: 19

防御:  1

速さ: 20

魔力:190

命中:ーーー

回避: 90

隠蔽: 90

カース:39

幸運:-50

適正:S

 

備考:魔法屋で回復魔法の適正が高い事を知った事で日頃から鍛錬していた結果、レベルこそ低いが魔法スキルの錬度はかなり高い。(レベルが上がる事でどうなるかは未知数)

 

パートナー:北村元康

スキル:料理、変装、尾行、感知、隠蔽

    ヒール、ヒールウィンド

 

名前:中野三玖

ジョブ:バトルクイーン(闘技場女王)

装備:インナー、携帯電話、銀鉄の盾、ハンドボウガン、皮の鎧+5、【学生服】、【私服】、【ローブ】

状態:風太郎への中度依存

 

ステータス

Lv:48

HP:4839

MP:139

SP:395

攻撃:293

防御:480

速さ: 39

魔力: 99

命中:100

回避:  0

隠蔽: 10

カース: 0

幸運:100

適正:A

 

備考:盾の影響で回避と隠蔽がダウン。体力は風太郎より上になったがそれでも平均よりは下。だが闘技場での試合で結果を出した事で実は有名人になりかけてたりする。(本人にとっては黒歴史でもありとある布石でもある)

 

パートナー:上杉風太郎

スキル:変装、風林火陰山雷!?

    シングルシュート、ヘイトリアクション、ダブルシュート、小盾、大盾、プロテクション

 

名前:中野四葉

ジョブ:兎耳の聖人

装備:インナー、携帯電話、魔法鉄の剣、隕鉄の盾、【学生服】、皮の鎧

状態:不安定

 

ステータス

Lv:???

HP:???

MP:???

SP:???

攻撃:???

防御:???

速さ:???

魔力:???

命中:428

回避:???

隠蔽:???

カース:??

幸運:???

適正:AA

 

備考:この1ヶ月間で成長が顕著だった1人。ラフタリアの面倒を見ながら困ってる人を片っ端から助けて回っていた為、民衆からは”兎耳の聖人”という異名で呼ばれている。相変わらず城の関係者(騎士)を見るたび豹変するようになってしまったが、ラフタリアの加入によって抑止力が働くようにはなった模様。

 

パートナー:岩谷尚文

スキル:四葉チェック

    ???

 

名前:中野五月

ジョブ:魔法使い

装備:ローブ、携帯電話、魔法の杖、【学生服】

状態:???

 

ステータス

Lv:24

HP:1755

MP:245

SP:105

攻撃: 50

防御:150

速さ: 35

魔力:255

命中: 95

回避: 45

隠蔽: 55

カース: 5

幸運: 50

適正:C

 

備考:魔法の習得には成功したがレベル上げが間に合わなかった事を気にしている。

 

パートナー:川澄樹

スキル:大食い

    ファイア、ファイアボール、ウォータ、アクアエッジ

 

<その他>

名前:マイン=スフィア(マルティ)

ジョブ:冒険者(魔法剣士)、第一王女

装備:魔法鉄の剣、軽装メイル

状態:?

 

ステータス

Lv:???

HP:???

MP:???

SP:???

攻撃:???

防御:???

速さ:???

魔力:???

命中:???

回避:???

隠蔽:???

カース:70

幸運:-90

適正:B

 

備考:陰謀の一部が明かされたが懲りてはいない。

 

パーティ

・北村元康

・中野二乃

・魔法使い♀●

・魔法使い♀●

・細剣使い♂

 

スキル:交渉術?、影行使??

    ヘルファイア

 

名前:ラフタリア

ジョブ:亜人奴隷

装備:魔法鉄の剣、私服

状態:成人化

 

ステータス

Lv:28

HP:2600

MP:220

SP:170

攻撃:259

防御: 98

速さ:277

魔力:142

命中:133

回避: 67

隠蔽:300

カース: 0

幸運: 77

適正:B

 

備考:奴隷商から尚文が購入した奴隷の少女。四葉の指導と尚文の薬によって原作よりも頼もしいステータスを得た。原作通り盾の勇者である尚文に対して淡い恋心を抱いているが――――

 

パーティ

・岩谷尚文

・中野四葉

 

スキル:???

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

※以降、登場キャラクター追加毎に増やします。

※ステータスはレベル毎に変化します。(最大1000、最小ー100。ただし幸運は最大100、HPは最大10000とする)

※【】内は使用できないスキルもしくはだいじなものと装備してない持ち物。または自覚の無い所持スキル。

 

注:ステータス項目は作者が勝手に設定しています。なので原作とは微妙に異なってますが気にしないでください。




次の更新はいつにしようか……


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外伝~女子会での出来事~

波の魔物を退治し、城へと向かう道中の中野姉妹です。
……ちなみに、ラフタリアは尚文と一緒にいます。護衛大事。


これは、城へ向かう途中の姉妹達の会話である・・・

 

四葉「皆に会うの久しぶりだね!」

 

三玖「うん。電話で話せるとはいえこうして顔を話せるのは久々」

 

二乃「そうね。…それで一花?何でわざわざあたし達だけで馬車に乗る事にしたのよ」

 

一花「うん。この後の事をちゃんと皆で話し合っておきたくてね」

 

五月「それならグループ通話でも良かったのでは?」

 

一花「寂しい事言わないでよ五月ちゃん。たまにはこうして会いたいじゃない」

 

二乃「そうよ!本当なら家族が離れるなんてありえないんだから!」

 

三玖「二乃、本音は?」

 

二乃「あんたとフー君が二人きりでずっと一緒に居るのが嫌!あたしと代われ」

 

一花「あはは…」

 

四葉「二乃はブレないねぇ…」

 

五月「はぁ…」

 

三玖「この編成にしたのは二乃でしょ?文句があるなら最初からそうすれば良かったのに」

 

二乃「し、仕方ないでしょ!?アイツを見張れるの、一花とあたし位だったんだし」

 

三玖「じゃあ何で一花に頼まなかったの?」

 

二乃「はぁ……気付いてないの?あんたは」

 

三玖「?」

 

四葉「どういう事?」

 

二乃「天木錬。あいつは危険よ」

 

五月「普段クールを装っている人程何を考えているか分かりませんが…それ程ですか?」

 

二乃「ええ。……あいつ多分、厨二病よ」

 

四葉「チュウニビョウ?」

 

二乃「そうよ。あいつは自分だけが特別だと思い込んでいる節があるわ。だから正直、あいつにも監視が必要だったのよ」

 

一花「それで私か五月ちゃんだったんだね」

 

二乃「ええ。…とはいえ、博打だった部分が多かったのは否めないけどね。四葉とか」

 

四葉「ふえ?私?」

 

二乃「そうよ。あとは三玖」

 

三玖「何?」

 

二乃「あんたをフー君と一緒にするのは個人的にはリスキーだったのよ。…流石にフー君から手は出さないと思ってたけど、あんたからならあり得なくはないからね」

 

三玖「…………///」

 

二乃「はぁ……ま、その様子だと無さそうね。それで四葉については――」

 

一花「ちょっと待って二乃」

 

二乃「……何よ」

 

一花「……三玖、ちょっとお姉さんとOHANASHIしようか?」

 

三玖「!」

 

二乃「……なるほど。そういう事ね」

 

四葉・五月「?」

 

三玖「…………死んでも話さない」

 

一花・二乃「逃がさない!」

 

・・・・・・

 

三人が戯れ始めた辺りで、不意に五月は四葉へと話しかけた。

 

五月「ねぇ四葉、ひとつだけ良いですか?」

 

四葉「ん?」

 

五月「あの亜人の女性は?」

 

四葉「あぁラフタリアの事?」

 

五月「そうです。…私が聞いていた話では亜人の少女と聞いていたのですが…」

 

四葉「私も最初は驚いたよー。まさかレベルが上がると身体まで成長するとは思わなかったからさー」

 

五月「それが彼女の特性、という事でしょうか…?」

 

四葉「いや、亜人という人種がそういう特性を持ってるみたいだよ?」

 

五月「なるほど……」

 

四葉「……五月、無いとは思うけど、実験材料にしようとか思わないでよ?」

 

五月「思いません!!」

 

四葉「食べようと――」

 

五月「しません!!」

 

四葉「……五月、理科が得意だからなぁ…」

 

五月「冤罪ですよ…」

 

四葉「……五月」

 

五月「……何ですか?」

 

四葉「ラフタリアはさ、私にとって大切な人だから、何があっても必ず守るよ。――例え」

 

――――命を懸ける事になったとしても

 

そう告げた四葉の顔は、五月の知る限り<あの時>以来の、思い詰めた表情だった。

 

・・・・・・

 

それからしばらくの後、城が見える位に近くなってきた頃

 

三玖「……」(…フータロー…私、頑張って耐えたよ…)

 

三玖はありとあらゆる拷問・尋問(笑)を見事に耐え切った。

 

二乃「くっ…思ったより粘るわね…」

 

一花「三玖……しょうがない、三玖の頑張りに免じて、この続きはお風呂まで持ち越そうか」

 

二乃「……仕方ないわね」

 

三玖「!!」

 

一花「さて、そろそろ本題に入るね」

 

二乃・三玖・四葉・五月「!」

 

一花「この後の展開なんだけど…多分、ここからが分岐点…つまり私の知らない内容になる可能性が高い。だから皆には覚悟してもらう必要がある」

 

二乃「……どういう事よ?」

 

一花「それは、姉妹同士が戦う可能性と、死ぬ可能性。そして――」

 

――――争う可能性だよ。

 

そう言って、一花は自虐的な笑みを浮かべた。

そして、話し合いは進み、城へと到着する頃には姉妹達の今後の方針は決まったのだった。




最後濁したのは本編ネタバレがどっぷりだからです。仕様です。


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