もしも幻想郷の住人が現世に来たら (ターメリック)
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霊夢編其ノ壱
この後続くように頑張ろうと思いますが不定期更新なのでご理解お願いします
ここはとある田舎のJ市。
首都圏に比べれば目を伏せたくなるほど田舎で遊ぶ場所も少ない。かと言って交通の便がいいわけでもなく各々が自家用車を持っているのがごく普通なところだ。
そして今日は遊び相手を探そうとイケイケなお兄ちゃん達が駅の近くでナンパをしていた所に俺は偶然鉢合わせてしまう。
「お、お姉ちゃんかわいいねぇ。こんな所で何してんの?もし良かったらさ俺らと遊ばね?」
「あんた達なんて興味無いわどっかいってくれない?」
「おいおいつれないこと言うなよ〜せっかくいい事教えてあげようとしてるのによぉ」
「だからいいって言ってんでしょ!鬱陶しいわよ」
「はぁ、仕方ねぇ無理矢理でも連れていかせてもらうぜ」
イケイケなお兄ちゃん達は数人で女の子に掴みかかりそのまま横に止めてある車に乗せようとしていた。
さすがに偶然とはいえ女の子が拉致られるのを目の前で見過ごす訳にもいかず止めに入る。
「まぁまぁお兄ちゃん達、今回は諦めときなよ」
「あぁ?誰だお前。つーか邪魔すんなし」
「寄って集って恥ずかしくないの?」
そういった時俺は胸ぐらを掴まれる。顔を近づけてガン飛ばしてくる。
ふとイケイケなお兄ちゃん達の顔を見てどこか見覚えがあると思った。
(あれ、こいつ確か俺の一個下のタツヤじゃないか?色々世話してやったのに俺の事忘れたのかな)
「おい、何黙り込んでんだよ!」
「お前、タツヤだよな」
「なんで俺の事知ってんだよ」
「馬鹿野郎!てめぇのこと散々目ェかけてやったのに忘れてんじゃねぇよ!」
その一言でタツヤは顔面蒼白になった。
それもそのはずタツヤは昔いじめにあっていてそれを助けて立ち直らせたのが俺だからだ。まさかこんな所で会うとは思わなかったがな。
「か‥‥カズマさん!?」
「やっと思い出したか。で、お前何女の子拉致ろうとしてんだ?」
「あ、いや、これは‥‥」
「なんだ?ナンパ失敗したから拉致ってやろうってか?お前はやられる方の辛い気持ちは痛いほどわかるやつだと思っていたんだが俺の見当違いか?」
「すいません!もう二度としません!だから今回だけこれで収めてください」
そう言ってタツヤは土下座して俺に謝ってきた。
まぁほんとに反省してるみたいだし今回だけと釘をさしてその場を収めた。
「あのさ、助けてくれてありがと‥‥」
「お姉ちゃんここら辺人少ないからあんまし女の子一人で出歩かない方がいいよ。まぁ気をつけて帰りな」
そう言って俺は近くに止めてあった自分の車に乗り込みその場を後にした。
ナンパされてた女の子を助けてからしばらくしてタツヤから連絡があった。
内容は俺に会いたい人がいるって話だった。
詳しくはあってから話すと言われたのでとりあえず待ち合わせ場所まで行くことにした。
とあるファミレス。
「あ、カズマさんこっちです」
「悪い待たせたな、それで俺に会いたいって言ってたのは‥‥!?」
タツヤと向かいの席に座ってる子を見て俺は驚いた。
それは先日タツヤのナンパから助けた女の子だった。
「どうしたんだ?お礼ならこの前言われたからそれで充分だったけど」
「実はあなたにお願いがあるの」
「お願い?」
そこでタツヤは気を利かせて席を外した。
2人だけの話し合いになった所で彼女は話を続けた。
「実はこの前のゴタゴタの時こっちに来るのが初めてでどうしたらいいのか分からなくてあんな事になっちゃったんだけどさ、しばらくの間でいいの、私をあなたの家に住まわせて欲しいの」
「‥‥はぁ!?どゆこと?J市に来たのが初めてでなんで俺のとこに!?目的があって来たんじゃないの?」
「それなんだけど‥‥私住んでる世界が違うの。幻想郷って言う世界の住人なんだけど突然知らない世界に来ちゃって‥‥」
「で、あの後タツヤ捕まえて俺に会いたいって言ったのか」
「そうなの」
俺はちょっと考えた。
(幻想郷‥‥異世界‥‥うーん現実味が全くないが実際彼女が言うことは間違ってはいないのだろう。なんせ格好がな‥‥)
ちらっと彼女をみる。服装は赤と白の2色カラーで統一された巫女服?のような格好をしていた。ここら辺でそんな格好するのなんかコスプレしてる子ぐらいだと思っていたがイベントでもないのに着る意味がない。
単なる俺の憶測でしか無かったが彼女が言うことは何やら信憑性があった。
「ん、とりあえずわかった。要はその幻想郷ってとこに帰れないから帰れる方法が分かるまでって感じでいいのか?」
「うん」
「まぁこれも何かの縁だろう。いいよ泊めたげる」
「ありがとう!」
彼女はそう言って頭を下げる。
そして俺は彼女を連れて帰ることにした。
車のところへ来ると彼女は不思議そうに俺の車を見ていた。
「どうした?俺の車になんかついてるか?」
「これはなに?」
ここから俺と彼女の住んでいる環境の違いにとことん驚かされていくのだった。
「え?もしかして車知らないのか?」
「だって幻想郷には無いしこの風景だって全く見たことないものしかないわよ」
「マジか、と、とりあえず乗って」
俺は助手席のドアを開けてシートに彼女を乗せる。俺も運転席に乗り込んで移動しながら話を始める。
「こっちの世界ではこれで移動するのね」
「ほんとになんにも知らないんだな。まぁいいかとりあえず忘れてたけど自己紹介するわ。俺は市村一真、一真って呼んでくれればいいよ」
「私は博麗霊夢。霊夢でいいわ」
「で、霊夢。これから俺の家に行くわけだけど家に着いてからまたしっかりと話しよう」
こうして俺達は帰路へと着いた。
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霊夢編其ノ二
帰り道は特に何も無くすぐに家に着いた。
霊夢を家に上げてリビングに招く。
「カズマって一人暮らしなの?」
「あぁ、そうだよ」
「それにしては随分大きな家なのね」
「まぁ色々あったからな。とりあえずそのソファ座ってて、お茶淹れるよ」
俺は霊夢をソファに座らせてキッチンへ移動する。そして戸棚から緑茶の茶葉と急須と湯のみを取り出し再びリビングへ戻る。
霊夢は何やらキョロキョロとリビングを見渡している。
「どうした霊夢?」
「いや、初めて見るものばかりだからなんか慣れなくて‥‥」
「あぁ、そういう事か。なーにそんなに心配しなくても大丈夫だよ、使い方とかも教えるしすぐ慣れるよ」
そう言って急須に茶葉を移しお湯を注ぐ。
霊夢はじーっとそれを見ていた。
「これはポットって言ってお湯を沸かすものだよ」
「へぇ〜こんなにいいものがあるのね」
「それからこれは‥‥」
何やかんやでお茶を飲みながら部屋にあるもので使い方など必要なことを霊夢に話をしているうちに陽も傾いてきた。
そこでふと気づいたことがある。
それは霊夢の服についてだ。
さすがに今の服で出歩いたりするのも周りの目が気になるだろうから買ってあげないと行けないと思った。
「そうだ霊夢、服買いに行こう。さすがにこっちにいる間その格好じゃ色々不便だろうからな。ちょっと待ってて」
俺は携帯を使ってある人に連絡をする。
「もしもし、俺だけどさこれから買い物付き合ってくれないか?うん、そうそう、ほんと?助かるわ〜じゃあこれから迎えいくから待ってて」
連絡を取り終わってから霊夢に説明する。
「よし、霊夢行こうか。友達が霊夢の服選んでくれるってさ」
「でも私お金が‥‥」
「それは気にしなくていいよ、俺が出すしさ、ほら行くよ」
俺と霊夢は車に乗り込み友達を迎えに行く。
待ち合わせ場所はそう遠くないところなのですぐに着いた。
「お待たせ、急にお願いしちゃってごめんな」
「大丈夫だよ〜それでそっちの子がさっき話してた子ね」
「そうだよ、とりあえず乗ってくれ、服買う場所はお前の行きつけでいいよな」
「そうだね、あそこなら色んなのあるから余裕で揃えられるよ」
そう言って俺達は服屋へと向かうのだった。
移動中の車の中では‥‥
「自己紹介まだだったね、私は宮本明日香。アスカって呼んでね〜」
「私は博麗霊夢、霊夢でいいわ」
「それにしても霊夢ちゃんちょ〜かわいい〜♪何着ても似合いそうだよね〜」
「そ、そんなことないわよ‥‥///」
褒められてどうやら照れているようだ。
まぁアスカが言うことは間違っていない。顔立ちはもはやトップアイドルのようにかわいらしい、それに大和撫子を彷彿とさせる長い黒髪もとても艶やかで綺麗だ。
アスカと気が合うのかすぐに馴染んだようで霊夢は結構楽しそうに話をしていた。
そんな和やかな空気のまま服屋へと到着した。
「さぁ着いたぞ、とりあえず俺はほかの買い物してくるから二人で服買ってきな」
そう言って俺はアスカにクレジットカードを渡す。
アスカはちょっと色目で俺を見る。
「私も服欲しいなぁ‥‥チラッ」
「どうせ言うと思ったわ。まぁ頻繁じゃないからいいけどよ。アスカも好きなの買ってこいよ」
「カズマありがとう〜♪じゃあ霊夢ちゃん行こ♪」
「うん、行ってくるねカズマ」
「おう、また後でな」
こうして俺達は二手に分かれた。
俺が買おうと思っているものそれは‥‥寝具だ。
何故かって?そりゃ一人暮らししてる訳だから布団がひとつしかないんだよ。だからここで調達をしておかないと霊夢を泊めてあげられないからな。無論おれがソファで寝てもいいのだがやはり睡眠は大事なことであるがための買い物である。
「すいません、これとこれとこれをください」
「お買い上げありがとうございます」
「じゃあこれから運んで貰えますか?」
「承知致しました」
俺は寝具を設置するために一度家に戻った。
二十分程で設置出来たので霊夢達が買い物している服屋へと再び向かった。
服屋に到着するとアスカがちょうどお店から出てきた。
「お、いいタイミングだったね〜」
「ちゃんと服買ったか?」
「もうバッチリだよ〜ほら、霊夢ちゃんおいで〜」
アスカに呼ばれて霊夢がお店から出てきた。
俺はその姿を見てびっくりした。
「どうかな、似合ってる?」
霊夢の服装は大人の女性のような品のある落ち着いたコーディネートに仕上がっていた。その顔立ちと綺麗な髪がさらに際立つような服装に俺は少し魅入っていた。
「すごい似合ってるよ」
「ほんとに?ふふっ♪アスカ服選んでくれてありがとう♪」
「どういたしまして♪それじゃぁついでだからどこかでご飯食べて行こうよ!」
「そうだな、せっかくだし寿司でも食べに行くか」
こうして俺達は寿司屋へと移動する。
ちなみに服でかかった金額はおおよそ十万円程、レシートを貰って見たら意外と多く買ったみたいだった。
そして寿司屋て到着すると‥‥
「ねぇカズマ、寿司ってどんなものなの?」
「そうだなぁ百聞は一見にしかずってことでお楽しみにしときな」
そう言って中へ入る。
「いらっしゃいってカズマとアスカじゃねぇか、なんだデートか?」
「何言ってんだよ、買い物帰りだっての」
「そうそう、あんまりからかうもんじゃないよ〜」
「悪い悪い、ほらここ座ってくれ」
俺達は案内された席へと座る。
ちなみに板前の彼は俺の高校生の時の同級生で水野駿。アスカと遊んでる時に紹介してもらった友人だ。
「そういやそっちの子は?初めて見る子だが」
「この子は博麗霊夢、困っているとこを助けて今は事情があってうちに泊めてるんだ、そしてこいつは水野駿、見ての通り料理人ね」
「そうかそうか、いい女の子に巡り会えたな〜」
「お前またからかいやがって〜」
「まぁ、とりあえずよろしくね霊夢ちゃん」
「えぇ、よろしく」
自己紹介も済んだので俺達は注文をして待っていた。
しばらくして注文したものがテーブルに置かれた。
霊夢はそれを見て目を輝かせていた。
「わぁ〜すごい綺麗なのね」
「だろ?味も最高だぞ〜」
霊夢は寿司を箸でとり口に運ぶ。
口に入れた瞬間の表情がまたとてもかわいいんだこれが。
「ん〜♪美味しい♪」
「口にあったようだな」
「この寿司屋は日本一だからね〜」
この会話に駿もドヤ顔、会話も弾み楽しい夕食になった。
会計を済まし三人とも車に乗り込む。先にアスカを家まで送る。
「カズマありがとね〜」
「俺の方こそ助かったわありがとな。またなんかあったら連絡するわ」
「うん待ってるよ」
こうしてアスカと別れて二人で家に向かった。
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霊夢編其の参
アスカを家まで送り届けて家に向かってる途中霊夢が俺に話しかけてきた。
「ねぇカズマ、今日はほんとにありがとう。服買ってもらったり美味しいもの食べさせてくれたり。まだほとんど出会ったばっかりの私にこんなにしてもらってなにもお返し出来ないのがすごく申し訳ないの」
「気にすんなよ霊夢、まずこっちでの生活に慣れてもらえればって思ったからだしさ。それに俺を頼って頭下げて来たんだからそこはしっかりと応えてあげるのが人ってもんだろ」
「私がいた幻想郷ではね、そこまで助けてくれる人っていなかったの。出会った時の服を見れば分かるかもだけど私妖怪退治を生業にしている巫女なの。もちろん妖怪からも恐れられてて向こうでは敵もいなかった。だからなんだけど助けの手ってのはなかった。でもこっちに来てから力も失ったみたいでなにも出来なかった。でもカズマが助けてくれて衣食住も提供してくれてこんなに助けてくれる人に出会ったのは初めてだったの」
「そりゃ辛い話だな、いくら強くても助けてくれる人がいないんじゃ」
「でもカズマに会えたそれだけですごい気が楽になったの。慣れない世界でも大丈夫かもって思えた」
「そりゃ良かった、霊夢の事だし案外すんなりと馴染むかもな」
「そうなるといいわね〜♪」
霊夢はそう言うと最後にクスッと笑った。
ほぼ同時に家にも到着した。
「ほら買った服持っていくし霊夢先に上がってな」
「うん、わかった」
霊夢は先に家へと入って行った。
俺も車を駐車してから荷物を持って中へ入った。
霊夢はリビングで座って寛いでいた。
俺は荷物を部屋の端において風呂場へと向かった。
もちろんお風呂の準備をするためだ。
浴槽を洗いシャンプーなどを置いてる棚も一緒に洗う。そして浴槽の栓をして後は自動スイッチを押して蓋をする。
風呂が沸くまでにすることがまだある。霊夢のためのシャンプーやリンス、タオルを用意しておく。これでお風呂の準備は終わりだ。
ようやく俺もリビングに戻ると霊夢はソファでウトウトしていた。
「眠たそうだな霊夢」
「なんだか緊張の糸が切れたっていうのかな、結構疲れちゃって」
「そりゃ気苦労だな、慣れない環境に常にいたから無意識にストレスや疲れが溜まってたんだよ、とりあえずお風呂入ってきな。部屋着買ってきたんだろ?それ持ってってさ」
「うんありがとう。先に入らせてもらうね」
そう言って霊夢は部屋着を持ってお風呂場へ向かった。
俺は霊夢の寝る部屋に行き寝る準備をサクッと済ませる。
「にしても霊夢、帰る方法なんてあるのかな‥‥最悪の場合はずっと一緒か霊夢がいい相手を見つけるまでって感じだよな」
一人ぶつぶつ言いながらリビングでテレビを見ていたが特に面白い番組もやってなかったので直ぐにテレビを消してパソコンに向かい合う。
ちなみにこれは俺の普段の仕事だ。俗に言う株式投資である。
「さて、今日の利益は‥‥やっぱりこの株だったか!結構株価が上がってくれたおかげで今月も楽だなぁ」
株式投資を初めてからかれこれ二年程経つが過去一位の利益が出ていた。
始めたきっかけは今は亡き親父が投資家でノウハウを教えて貰っていたからだ。おかげで若いうちから楽な生活を送れている。
「知識ってのはほんとに最高の財産だな」
「お風呂ありがとうって何をしてるの?」
「おう上がったんだな‥‥!?」
俺は霊夢の方を見た瞬間思わず目線を逸らせてしまった。
そりゃそうだなんせあの可愛い霊夢がキャラクターパジャマ着てるんだからな。
「どうしたの?これおかしいかな‥‥」
「逆‥‥かわいいからな‥‥///」
「ほんと?これ私が選んだのよ♪」
「ほんとにこっちの世界に馴染むのが早いよな」
「そうかしら?」
「まぁとりあえず俺は今仕事終わったとこなんだ」
「仕事?でもカズマは今日ずっと私といたから仕事お休みだったんでしょ?」
「俺の仕事は時間があればどこでも出来る仕事なんだ」
「へぇ〜そんな仕事もあるのね。そう言えば私タダで住まわしてもらってるけど仕事とかはどうしたらいいの?」
「霊夢は俺といる間は仕事なんかしなくていいんだよ」
「そうなの?でもなんか申し訳ないわ」
「まぁ、強いて言うなら家の掃除とか手伝ってもらえればそれでいいんだよな」
「掃除なら私得意よ♪任せて♪」
「じゃあお願いしようかな」
そう言うと霊夢は嬉しそうに微笑んだ。
最初に会った時よりもさらに和やかな空気が我が家を包んだ気がした。
その後は俺は風呂に入りそのまま寝室へ向かった。
霊夢もどうやら自分の寝室に戻ったようで家の中は静かになった。
この後熟睡した俺達はそれぞれの部屋で朝までゆっくりと体を休めるのだった。
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霊夢編其の肆
次の日‥‥
俺はいつのものように朝八時に目を覚ます。
そしてリビングに行くとなんとリビングがピカピカになっていた。
「‥‥!?」
「あら、やっと起きたのね」
後ろから声がしたので振り返ると部屋着から着替えた霊夢が立っていた。
「リビング綺麗になってない?」
「見ればわかるでしょ?私が掃除したんだから」
あぁ、と納得した俺。昨日の夜に霊夢に掃除お願いしてたことを思い出した。
にしてもここまで掃除スキル高いとは思わなかったぞ。
「霊夢凄いな。清掃業者並に綺麗じゃないか」
「こう見えて私掃除とか家事は得意なのよ」
うん、霊夢は将来お嫁になったら絶対愛されるタイプだと思った。
「なるほどな〜とりあえず朝飯まだでしょ?今日は俺が作るよ。霊夢はまだこっち来たばっかりだからキッチンの道具の使い方分からないでしょ?」
「そうね、それなら横で見てていいかしら?使い方分かればなんでも作れるだろうしね」
というわけでキッチンへ移動し朝食作りを始める。
IHクッキングヒーターの使い方、調理道具の場所や調味料の入れてあるものなど説明しながら手際よく作っていく。
「へぇ〜やっぱりこっちの世界はとても技術が進んでいるのね!火を使わなくても焼いたり煮たり出来るんだ」
「電気でなんでも出来るんだぜ。幻想郷じゃどうやって作ってたんだ?」
「私は釜戸を使っていたわ。火加減とか全部勘でやってたけどこれなら勝手に調整してくれるから楽よね」
「なるほどなぁ、釜戸か‥‥懐かしいかも」
「懐かしいってどういうこと?」
「あぁ、俺の実家ではまだ釜戸があって祖母がまだ使ってるんだよ。小さい時手伝ってたからちょっとは使えるけど霊夢みたいに毎日使ってたわけじゃないから今はどうか分からないけどな。今度実家の方にも行く用事あるから一緒に行くか?」
「そうだったのね。いいの?いきなり私みたいなのがついて行っても?」
「なーに実家の家族はみんな人がいいから大丈夫さ」
なんてちょっと昔話をしているうちに朝食が完成する。
それぞれのお皿をリビングのテーブルに移動させて食事の準備を済ませる。
「霊夢の口に合うか分からないけどとりあえずどうぞ」
「いただきます♪」
霊夢は朝食のおかずを口に運ぶ。
霊夢のその所作ひとつとっても上品な振る舞いでつい見惚れてしまう。
「どうかな?」
「ん〜♪美味しい♪」
「そりゃ良かったよ」
「カズマってほんとになんでも出来るわよね」
「そうかな?料理は普段通りやってるだけだし今まで人と一緒に朝ご飯食べたのほとんどなかったからなぁ味の保証とかなかったんだけど霊夢が美味しいって言うなら良かったよ」
すると霊夢は何やらムスッとした表情になる。
俺なんかまずいこと言ったかな‥‥と少し心配になる。
「自分で作って食べてた時不味いって思わなかったんでしょ?それなら大丈夫に決まってるじゃない。何をそんなにネガティブになる必要があるのかしら」
「ま、まぁな」
「なら自信もちなさいよ。それに‥‥」
「それに?」
「‥‥なんでもないわ!それよりも冷めないうちに他のも食べましょ」
「そうだな」
お茶を濁されてしまったが俺にはそんなに気にならなかった。なんせ美味しいと言って貰えたことがとても嬉しかったからだ。
なんだかんだで朝食も終わり後片付けを霊夢が率先してやってくれたので俺は少しリビングのソファに座ってゆっくりしていた。
「洗い物終わったわよ。それで今日はどうするの?」
「そうだなぁ、昨日は買い物だけだったしな、たまには思いっきりはしゃぐのもありだろう。よし決めた!霊夢遊園地へ行こう!」
「遊園地?どんな所なの?」
「それは行ってからのお楽しみさ、早速準備して出かけようか」
うんと頷き霊夢は自室へ戻った。俺も準備のために部屋へ戻り準備をする。
ふとタンスの中を見た時に紙が二枚入っていた。
俺はそれを手に取りみるとなんと遊園地の優待券だった。
「お、そう言えばこれはシュンからもらったペアチケットじゃん。こんな所に入れっぱなしだったのか。そう言えば前にアスカを連れていこうと思っていたけど予定合わなかったせいで残ってたんだな。期限もまだ残ってるから大丈夫だな」
そう言えば女の子と二人で遊ぶのってアスカ以外では初めてのような気がする。
アスカは普通に友達だから何がしたいとか自然に分かるんだけど今回は霊夢との初めてのデートみたいなものだからな‥‥頑張ってエスコートしてあげないとな。
そう思いながら準備を済ませリビングへ戻る。
霊夢はまだ準備をしているようだったので今日の段取りを考えることにした。
「とりあえず遊園地までざっと一時間、十時頃には着くだろう。午前中と午後で回るルートをある程度絞っておかないと遊び足りないってことになりかねないからな、まぁ霊夢がいいって言うもので俺は十分満足なんだがな。お昼はあそこのお店にしておこう」
「カズマごめんね待たせちゃって、それじゃぁ行こっか」
「あぁ、それにしても霊夢相変わらずかわいいよな」
「何を言ってるのよ。アスカの選んでくれた服のおかげでしょ?」
「そんなことないよ、服ってのは飾りみたいなものだ。着る人が魅力あるからこそ服もその本領を発揮する。つまり霊夢自体が魅力のある女性だってことさ」
「‥‥よく真顔でそんな恥ずかしいこと言えるわよね」
「‥‥悪い」
「‥‥でも嬉しいけどね」
俺は最後霊夢が言った言葉を聞き取れなかったが何やら笑顔になっていたので気にしなかった。
いよいよ出発のため家の鍵を閉めて車に乗り込む。
これからまた華やかな一日が始まる。
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霊夢編其の伍
車を走らせること約三十分、道のりの半分ほど走ったところで一旦コンビニに寄って休憩をする。
「霊夢、休憩するけど何か飲みたいものとかある?」
「私はお茶でいいわ」
「じゃあ買ってくるからちょっと待っててな」
俺は車を降りて店の中へ入る。
霊夢のお茶と自分用のコーヒーを持ってレジへ向かう。
「いらっしゃいませ〜ってあれ?カズマ君じゃない♪」
「あれ?ミホちゃん!?どうしてここに居るの?」
「私まだ大学生なのよ、今は時間ある時にここでバイトしてるの」
「そうだったんだね」
レジで話してる女の子は高校の同級生のミホちゃん。クラスの高嶺の花で男子からの人気は学年一と呼ばれるほどの美少女だ。
今はこの近くの大学に通っていて寮生活をしているようだ。
「カズマ君は確か高校卒業してから何してるのかみんな知らないって言ってたから元気かなって思ってたんだけど元気そうで良かった♪」
「あぁ、そう言えば高校以降あまり同級生とも会ってないからね」
「暇な時また連絡してね〜♪バイトないと私暇だからさ」
「うん、分かったよ」
買い物を済ませてミホちゃんと別れ車に乗り込む。
「ちょっと時間かかってたわね」
「あぁ、高校の同級生に会ってな、ちょっと話してたんだわ」
「カズマって意外と顔広いわよね」
「まぁ、高校の同級生とか結構いたし今の仕事関係でも交友は広くなったからなぁ」
「そう言えば霊夢は今歳っていくつなんだ?」
「私は十五歳よ」
「え!?そんなにおれと歳離れてたの!?てっきりもう二十歳くらいだと思ってたのに」
「あら、そんなに驚くことかしら?」
「いや、こっちの世界ではその歳だとまだ中学生と同じなんだぞ?ある意味俺って犯罪者‥‥」
「そうなの?」
「と、とりあえず霊夢、今は歳を誤魔化して二十歳って言っててくれな。じゃないと俺捕まっちゃうから」
「分かったわ」
俺はめちゃくちゃ動揺していた。まさか霊夢が中学生と同じ歳だったとは、でも歳を言わなければ童顔でもれっきとした大人の女性と何ら遜色ないよな。あぁ、頼む神様、どうかこのまま何事もなく無事に霊夢の帰る方法が見つかるようにしてくれ!
俺は今神に祈るしか出来なかった。
なんだかんだで車を走らせてようやく目的地の遊園地に到着した。
霊夢は車を降りて遊園地を見ていたがその目はなんだか子供のように輝いていた。
「遊園地って凄い広いのね!なんかみんな楽しそうだし面白そうなのがたくさん!カズマ早く行こう!」
「そんなにはしゃがなくても遊園地は逃げないぞ〜ってはしゃぐなって言う方が難しいか」
こうして俺と霊夢は遊園地へと入っていく。
パンフレットを入口でもらいそれを見ながら霊夢にどこから回るか相談する。
「このジェットコースターっていうのに乗ってみたい!」
「よし、じゃあ早速行くか〜」
ジェットコースター乗り場に行くと意外と並んでる人は少なくすぐにでも乗れそうだった。
「案外すんなり乗れそうだな」
「ワクワクするわね♪」
ものの数分で順番が来たので二人で並んで搭乗する。
安全バーが降りてきていよいよ発進だ。
絶叫マシンに乗るのは意外と久しぶりだがそんなに怖くは感じなかった。霊夢も結構楽しんでたようで怖がる様子もなかった。
「あ〜楽しかった〜♪結構スピード出るものなのね〜」
「初めてで怖くないってのも凄いな」
「あら、これくらいなら幻想郷にいた時の私の移動スピードより遅いくらいよ?」
「おいおい、霊夢どんな移動の仕方してたんだよ」
「私は飛んで移動してたわよ」
「へぇ〜飛んでたんだ〜ってふぁ!?」
飛ぶってどゆこと!?幻想郷って飛ぶのは日常茶飯事なのか!?
そんなんできるならライト兄弟がやり遂げた飛行機制作の意味ねぇじゃん。
最早常識というものは当てはまらないのだと俺は悟った。
「ねぇ、それよりも次行こうよ」
「そうだな、それじゃぁ次は‥‥」
こうして俺と霊夢は様々なアトラクションに乗りたくさん笑って楽しんだ。
そんなこんなで時間はお昼を回りお腹もすく時間なる。
「お腹すいてきたな」
「そうね、どうしよっか」
「あのレストランに行こう。色々あるし美味しいって評判なんだよ」
「じゃあそこにしましょ♪」
俺と霊夢は次にレストランへと向かった。
中へ入るとなんともオシャレな雰囲気のお店でメニューも盛りだくさんだった。
「初めてこんな感じのお店入ったかも」
「そうか、霊夢はこっち来てからあまり経ってないから無理もないな」
「でも好きかも、なんだかワクワクするって言うんだろうね楽しい気持ちになれるから」
「霊夢の年頃ならそう思って当然だろ、こっちじゃ当たり前のようなものだし」
「そうなのね」
こうして霊夢と話をしながらゆっくりとランチを済ませ再び外へとくり出す。
やはり遊園地というものは楽しいもので並んでいても退屈になることはなく終始霊夢も笑顔だった。
そして楽しい時は過ぎるのが早いもので他のアトラクションを回っているうちにすっかりと日は傾いていた。
「すっかり夕方になっちまったな」
「そうね、でも沢山遊べたから良かったかな♪」
「そりゃ良かったよ、俺も久しぶりに楽しめたし」
「連れてきてくれてありがとうカズマ」
「礼には及ばないよ、さぁそろそろ帰ろうか」
「えぇ、そうね」
こうして俺と霊夢の楽しい一日は終わり帰路に着いた。
遊び疲れたのか霊夢は帰り道すやすやと眠っていた。俺はその姿を見てホッとした。
「ふぅ、霊夢が楽しそうで良かったよ。俺も少しだけ昔を思い出せたかもな」
ぼそっと呟きながら車を走らせる。その夜は一日を思い返しながら眠りについた。
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霊夢編其の六
霊夢とのデートから早くも一ヶ月、彼女もこっちの生活に慣れてきてある程度のことはわかるようになってきていた。
だが普段の生活のみでは知ることができないものも多いため必要なことを教えるためこの一ヶ月ほぼ出かけてはいない。
「ねぇカズマ、今度アスカと遊びに行ってきてもいい?」
「いいじゃないか、二人で遊んできな」
「ありがとう♪それじゃ早くアスカに連絡しなくちゃ♪」
そう言って霊夢はスマホを取り出してアスカに連絡を取り始める。
ちなみに霊夢の持っているスマホは俺が買ってきたものだ。
なにせ連絡手段がないと心配っていうのがあるし彼女もそのうちどんどんいろんな友達と仲良くなって連絡とる時に固定電話なんてかわいそうだと思ったからだ。
それにしても霊夢は現代に馴染むのが早過ぎるような気がする。
スマホもちょっと使い方教えただけでもうすでに使いこなしているから最早ぐうの音も出ない。
だが馴染むのが早いお陰で教えることも少ないし生活も楽になった。
そしてしばらくして霊夢は部屋に戻った。
時間はまだお昼前、これはもしやたら思ったらお洒落をした霊夢が部屋から出てきた。
「お洒落してみたんだけどどうかな?」
「すごくかわいいよ霊夢」
「ふふっ、ありがとう♪それじゃあ行ってくるね♪」
「気をつけてな、なんか有ればすぐ連絡してくれよ」
「えぇ♪わかってるわよ♪」
上機嫌な霊夢は楽しそうに出かけて行った。
久しぶりに一人になった俺はガレージへと向かう。
「思えば霊夢に出会ってからというもののこいつに手をかけるのが出来なかったんだよな」
ガレージの奥に布を被った車が一台置いてある。
その横には車のパーツや工具などがたくさん棚に収められていた。
俺の趣味の一つである車の改造。
気に入った中古車を買って自分で整備しドレスアップをするのが一人の時にずっとやっていたことだ。
もちろんこのことは霊夢も知らない。知っているのは付き合いの長いアスカとシュンの二人と車好きの仲間たちくらいだ。
「もう少しで完成ってとこまで行ってたからサクッと仕上げてドライブでも行ってこよう」
俺は早速作業に取りかかる。
ジャッキで車体を上げてタイヤを外し足回りの調整から始める。
一時間ほどで調整が終わるとメーターパネルを見て警告灯が付いていないか確認する。
「うん、問題無しだな。後はショップへ持っていって最終調整と点検してもらうことにしよう」
俺は車に乗り込みエンジンをかける。
心地よいエンジンサウンドを聞きながらショップへと向かうのだった。
街中を走っているといろんなところから目線が集まる。
それもそうだろう。なにせ住んでいるところが田舎なだけに俺の車はとにかく目立つのだ。他の車好きの仲間達と比べてもかなりチューニングされているのもある。
しかし俺はその視線がむしろ嬉しかった。
こんなに注目される完成度に仕上げられたからだ。
しばらく車を走らせると目的地のショップへ到着する。
「お、あの車もしかして」
俺の車を見て近づいてくる若者が一人。
「久しぶりじゃないかカズマ」
「元気そうだなヤス!」
彼の名は日向ヤスアキ、通称ヤス。
このショップのオーナーで俺の専属のメカニックだ。
ヤスのショップはサーキットを走るためのレースカーを仕上げるチューニング専門のショップなのだ。
「ついに仕上がったか、いつ持ってくるか楽しみにしていたが案外早かったな」
「まぁな、とりあえずこいつの最終調整と点検頼むぞ」
「おう、まかせとけ!と言ってもほぼ調整なんてしなくてもいいと思うけどな」
「足回りとかだけ重点的に見てもらえれば後は問題ないと俺も思う」
「よし、早速始めるぞ!」
ヤスは俺の車に乗り込みピットへと車を移動しリフトに上げて下回りなどを見て回る。
「にしてもカズマもよくここまで金かけれたなぁ」
「その車にかけたのはざっと三百万くらいかな」
「そりゃここまで仕上がるわけだ」
なんて話をしながら足回りの点検へと移るヤス。
データを数値化するために別の検査ラインへ車を動かし専用の道具を取り付ける。
「カズマ、これだったらこのままでも良さそうだぞ」
「そうか、ならこれで完成だな!ほらヤス、今日の支払いな」
「おいおいカズマこんなにもらわなくても充分足りてるぞ?」
「なに、俺からの気持ちだ。いつも世話になってるからな。もう一台も今度車検頼むわ」
「カズマがそういうなら受け取らせてもらうわ」
そう言ってヤスは封筒を受け取り見送ってくれた。
完成した車で俺はドライブへ。
一方霊夢の方はというと・・・・・・
「あ!霊夢ちゃんこっちこっち〜」
「ごめんねアスカ待たせちゃって」
「大丈夫だよ〜それに集合時間より早かったんだしね♪」
「ありがとう、それじゃ行きましょう」
アスカと合流して街に遊びに出ていた。
街中を歩いていると周りから注目を集めていてヒソヒソと声もちらほら聞こえている。
「なぁ、あの二人かわいくね?」
「そうだな、どっちも顔は整ってるしスタイルも良すぎだろ」
「俺は黒髪の子がいいかな」
などなど様々な反応をされている。が、よく聞いていると霊夢のことばかり言われている様な気もしていた。
霊夢自身もうっすらと気付いていた。
「なんかやけに注目浴びてる気がするわね」
「だって霊夢ちゃんかわいいもん♪」
「アスカだってかわいいじゃない」
なんて何気なく話をしながらも歩みを進め目的の場所へ到着した。
この時霊夢はこの後自分の身に起こる事について全く気づくことはなかった。
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霊夢編其の七
霊夢達はショッピングモールへ向かう。
「ほら、霊夢ちゃん、ここがショッピングモールだよ〜」
「すごい広い!それに色んなお店が集まってるのね!」
「そうだよ♪とりあえずあのクレープ食べよ♪」
アスカと霊夢はクレープ屋さんへ向かった。
「いらっしゃいませ。あら、アスカじゃない珍しいわね、お友達連れてきたの?」
「そうだよ♪霊夢紹介するね私のお母さんだよ。そしてこっちがお友達の霊夢ちゃんだよ」
「初めまして、博麗霊夢です」
「あらあら可愛らしい子じゃないの♪アスカの母の麻里子よよろしくね霊夢ちゃん♪」
クレープ屋にいたのはまさかのアスカの母だった。これには霊夢も驚いていたが愛想のいい母親ですぐに馴染めた。
「ほらアスカ、いつものやつよ。サービスしてあげるから楽しんでらっしゃい」
「ありがとうお母さん♪ほら霊夢ちゃん行こ♪」
「麻里子さんありがとうございます♪」
そう言って二人はお店を後にした。
次に向かったのはゲームセンターだ。
クレーンゲームや音楽ゲームなど様々なゲームが置いてある。
「これ全部ゲームなの?」
「うん!これはクレーンゲームって言ってこのアームで掴んで取るやつだよ、こっちは音ゲーって言ってリズムに合わせて叩いたり踊ったりするやつ、こっちにあるのがプリクラって言うんだけどこれは写真みたいな感じだけど普通の写真とはちょっと違うんだよ!女の子はみんなプリクラ撮るから私達も撮ろうよ!」
「へぇ〜なかなか面白そうね、プリクラ撮りましょ」
二人はプリクラ機の中へ、そしてしばらくして出てきた。
「こっちで色々付け足したり出来るんだけどとりあえずやってみせるから見ててね」
アスカはタッチペンを持ってプリクラで撮った画像に加工を施す。
霊夢も見ていて途中から一緒に加工をし始める。
「そうそう!霊夢ちゃんセンスあるね〜」
「それにしてもプリクラってこんなに変わるのね」
「女の子はやっぱり可愛く見えないとね!」
その後出てきたプリクラを二人で眺めながら笑いあっていた。
他にもクレーンゲームや音ゲーも遊び霊夢が意外にも音ゲーが上手いことにアスカはびっくりしていた。
「霊夢ちゃんは音ゲーのセンスもあるね!これなら練習すればもっと難易度の高い曲とかも出来そう」
「クレーンゲームは苦手ね、音ゲーは結構ノリノリで出来るから楽しくていいわね〜♪」
なんだかんだ色々ゲームをした後服を見たりアスカのオススメのカフェに行ったりと充実した一日を過ごしていた。
「あー楽しかった!」
「楽しかったわね♪」
公園の方を歩いている二人は楽しそうな顔をしていた。
するとアスカが急に立ち止まってしまう。
霊夢はそれに気づき振り返る。
「ねぇ、霊夢ちゃん.......霊夢ちゃんはカズマのことどう思ってるの?」
「え.......?」
「この一ヶ月あなたがカズマとずっと生活していて、カズマに色々してもらって、カズマのこと好きなの?」
「私は.......」
霊夢は言葉が詰まってしまう。アスカは更に追い討ちをかけるように言葉を放つ。
「霊夢ちゃんも知ってると思うけど私とカズマは幼なじみなの、小さい頃からずっと一緒だった。カズマは優しいしかっこいい、私はカズマの事が好きなの!でも霊夢ちゃんが来てからカズマは私よりもあなたの事ばかり、私には見向きもしてくれなくなった!ホントなら遊園地だって私を誘ってくれてたけど結局は霊夢ちゃんと行っちゃったし.......お願い、私のカズマを取らないで!」
「それは.......」
「お願い.......もう.......カズマに近づかないで.......」
そこまで言うとアスカは涙を流し走り去ってしまった。
霊夢はアスカに言われた事が頭から離れず動けなかった。
その悲しみを悟ったかのように天からは雨が降ってきた。
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霊夢編其ノ八
アスカと霊夢の問題を知らないカズマは車仲間と集まってカーミーティングをしていた。
「急にSNSに飛ばしたのにこんなに集まるとは思わなかった」
カズマがSNSにミーティングをすることを投稿したのが一時間前なのだがもう既に五十台程集まっていた。
「久しぶりカズマ、やっと完成したんだなその車」
「お、アキラ!久しぶりだな。さっきヤスのところで最終点検して問題なかったからな」
彼は永山明、高校とかは別のところだったんだが自動車学校で車好きということもあり意気投合、チームを立ち上げた仲間の一人、因みにメンテナンスしてくれてるヤスもチームのメンバーである。
「チームのトップがやっと帰ってきたとありゃみんな集まるだろうな!」
「いやいや、俺なんてみんなが居なきゃこの立場になってないよ」
「ほんとにカズマは謙遜しすぎだよな〜もっと胸張っていいのによ」
「まぁ俺らのチームは暴走族とは違うってことだけは下の連中にもちゃんと伝わってるよな?」
「当たり前よ、なんせ俺とヤスが徹底的にやってるからな。全員の車にドライブレコーダー付けてデータを全部こっちのパソコンに飛んでくるようにしてあるしデータもマメにチェック済みだ。警察に世話になるバカは一人もいないよ」
「助かるよ、誰か一人でも捕まったらチームは解散って取り決めだからな」
その後ほかの車仲間が続々と集まってきてはカズマと話をしていた。
かなり集まってみんなで話をしていると警察が巡回でやってきた。
「警察来たみたいだぞ大丈夫か?」
「誰もエンジンかけて他の人に迷惑かけたわけじゃないだろう心配するな」
警察はパトカーから降りてカズマの方へ歩いてきた。
「あれ?カズマさん、この集まりはどうしたんですか?」
「いや、俺の車完成したからみんなでのんびりドライブ行こうかって話をしていて仲間みんな集まるの待ってたんですよ。もちろん他の人に迷惑かけないように来たらすぐエンジン止めろって全員に伝えてあるので安心してください」
「いや、そんな心配してませんよ、なんせカズマさんにはこちらもちょっと世話になったりしてますから」
その言葉を聞いて皆目が点になった。
「え!?カズマどういうこと!?」
「あー、それなんだけど去年この車直す前の事なんだけどあまりにも迷惑かけるやつ多かったから俺がまとめて警察に突き出してやった時があったんだよ。そしたらさ表彰されて今では警察の人とは仲良くさせてもらってるんだ。だからと言って迷惑かけないようにルールを作ってるんだよ」
「そういう事です。カズマさんのお仲間さんでしたら何かあれば連絡してもらえばいくらでも協力しますのでみなさん気をつけてドライブ行ってください」
そう言って警察は何事もなかったように帰って行った。
そんな頃雨もあたり初め結局ドライブはどうするかの話になった。
みんなで話をしているとカズマの携帯に一本の電話がかかってくる。
「悪いちょっと電話出るわ」
仲間から少し離れたところで電話に出るカズマ。相手は霊夢だった。
「もしもし霊夢か?どうしたんだ?雨降ってきたから迎えいこうか?」
「カズマ.......ごめんなさい.......勝手で悪いんだけど私のことはもう忘れてくれるかしら.......」
「ちょっ.......霊夢!?何言ってんだよ!!」
「恩を.......仇で.......返すような感じに.......なって.......ほんとに.......ごめんなさい.......」
そこで電話は切れてしまった。
あまりにも唐突なことでカズマは急いで車に走った。
「お、カズマ電話は.......」
「悪い、急用が出来たからドライブはまた今度にしてくれ、後アキラ、警察に電話してくれ、俺の名前出してちょっとだけ交通違反しちゃうけど重大事項だから今回だけ目を瞑ってくれって伝えてくれ!もし納得しなければ俺に直接電話くれってのも伝えて」
「わ、分かった!」
そしてカズマはエンジンをかけて風のように駐車場を走り去った。
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霊夢編其ノ九
駐車場を飛び出したカズマは霊夢の最後の着信の残った場所だけを特定してそこへ向かった。
距離はそう遠くない位置だったので一般車を避けながらも10分程で到着した。
車を降りて辺りを探すが霊夢の姿はどこにもなくGPSで探そうにもどうやら位置情報を切ってあるようだった。
「くそっ!霊夢どこ行ったんだよ!歩きだからそんなに遠くへ行ってないはずなんだが.......」
再び車に乗り込み車を走らせる。
市街地の方へ向かって走っていると見慣れた姿の女の子を見つけた。
「おい!アスカ!お前一人で何してるんだよ!霊夢はどうしたんだ!?」
「え?カズマ.......どうしてここにいるの?」
「どうしてじゃないよ!霊夢からさっき連絡あって私の事忘れろとか言ってたんだよ!」
「え.......」
アスカはそれを聞いて血の気が引いたように顔が青白くなる。
「とりあえず乗れ!お前も傘刺さずに歩いてたら風邪引くっての!」
「う、うん.......」
アスカを車に乗せてタオルを渡す。
「飛ばすからシートベルトしっかり締めて捕まってろ」
アクセル全開で発進するとそのまま市街地の方へ向かう。
一方霊夢は.......
「私何してるんだろ.......こっちじゃ何も出来ないくせにあんなことカズマに言っちゃったし.......アスカとは溝が出来ちゃったから連絡取ろうにも繋がらない.......」
ふと辺りを見回した霊夢は見覚えのある景色に立ち止まる。
「そう言えば、ここで連れていかれそうになった時にカズマに助けてもらったのが初めて会った時だったよね.......」
そう呟くと後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「あれ?もしかして霊夢さん?」
「あなたは.......」
後ろを振り返るとそこにはカズマの後輩のタツヤだった。
霊夢はタツヤに事の発端を伝えるとタツヤは少し考え込んだ。
「つまりアスカさんにスッパり言われてカズマさんの所に帰る勇気がないってことでいいですか?」
「そうなの.......」
「とりあえずそのままだと風邪引いちゃいますし服乾かすのにうちに来ますか?」
「そうさせてもらうわ.......」
タツヤは車を回し霊夢をのせて自宅へと向かった。
「カズマさんの家程豪邸じゃないですが上がって下さい」
「え、えぇ.......」
明らかにカズマの家とは違う豪邸が霊夢の目の前に飛び込んできた。
「ただいま」
「おかえりなさいませタツヤ様」
「霊夢さんの服を乾かしてくれ、後彼女に別の服を用意して」
「かしこまりました。それでは霊夢様こちらにどうぞ」
「あの、タツヤくん?これは.......」
「大丈夫です、うちの専属メイドです。皆女性なので心配ありません。終わったら客間に通してくれ」
「そ、そうなのね.......分かったわ」
こうして霊夢はタツヤのメイドについて行き着替えることが出来た。それと同時にお風呂も浸からせてもらって新しい服に着替えた。
そして客間へ通された霊夢はソファに座る。
しばらく待っているとタツヤと彼の両親が入ってきた。
「霊夢さん、とりあえず家に招いたので両親を紹介しようかと思いまして」
「いきなりの登場で申し訳ない、ただタツヤから話を聞いたのでこれからに関して話をしたいと思ったのでね、おっとその前に私は父親の宝条将光と申します。こっちが妻の摩耶です」
「霊夢さんよろしくお願いしますね」
「博麗霊夢です、よろしくお願いします」
「それで本題に入ろう、まず衣食住はこちらがちゃんと提供させてもらう。無論霊夢さんはうちの施設を自由に使ってもらって構いません。霊夢さんの心の傷が癒えるまで存分にお過ごしください」
「でもそれでは申し訳が.......」
「いいのよ霊夢さん、これも何かの縁、人はお互いに助け合って生きていかなくてはこの世の中を生きていくことは至難です。私達は由緒ある名家、地元を助けていく義務があります。それはすなわち地元で生活を送っている人たち皆を助けていくことなのです。霊夢さんが困っているのでしたら私達が手を差し伸べなくてはこの義務に反しますのよ」
「という訳なんですよ霊夢さん。うちの両親もこう言ってます。今は落ち着くまでうちでゆっくりしていってください」
すると霊夢は涙を流した。
彼女が今までこんなにも厚意を貰ったことが無いからだ。
「ありがとうございます.......」
タツヤの母は霊夢を抱きしめて、
「泣きたい時は泣いていいのです。我慢せず存分に」
こうして霊夢はしばらくタツヤの家にお世話になることになった。
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霊夢編其ノ十
霊夢を探していたカズマ達は結局霊夢を見つけることが出来ず車の燃料を入れるためガソリンスタンドにいた。
「アスカ、お前は送ってくから帰れ」
「で、でも.......」
「でもじゃない!誰のせいでこうなったと思ってるんだ!霊夢は.......霊夢は!この知らない世界に来て寂しい思いをしてるんだ!それなのにお前は霊夢に酷いこと言って。俺は霊夢が元の世界に帰れるまで助けてやるって決めたのに.......」
給油を終えてカズマは車を走らせる。
アスカの家の前まで着くと.......
「早く降りな、俺はまだやること残ってるんだ」
「カズマ.......変わっちゃったよね。あの子が来る前は私とよく遊んでくれたりしてたのに.......霊夢ちゃんのせいでその関係が壊れちゃったんだよ!私は.......私は!カズマの事がずっと好きだったのに!」
そう言ってアスカは車を降り家に入っていった。
カズマは無言で車を走らせ再び市街地の方へ向かう。
「っ.......!わかってるよ、アスカがずっと俺の事好きだったのは、でも他にお前のこと好きなやつがいるって知ってたから俺は付き合うことはしなかった。付き合えばそいつとの仲は溝が出来るだけだったから.......」
親友の思いを尊重して付き合うことを拒んでいたカズマはここで後悔をしていた。いや、正確にはどうすればよかったのか分からなかったのだ。
一方霊夢は.......
「失礼します。霊夢さん、夕飯の支度が出来ました。一緒に食べませんか?」
「ごめんなさいタツヤくん.......今はちょっと食欲がなくて.......」
「そうですか、もし時間が経って食べれそうならその鈴を鳴らしてください。メイドが来ますので食事を用意させます」
そう言ってタツヤは静かに部屋を後にした。
霊夢はベッドに横になり涙を流しながら、
「ねぇ.......カズマ.......あなたに会いたい.......あなたのことを.......考えるだけで胸が痛いの.......」
霊夢はカズマへの気持ちを一人呟く。
この気持ちをどうするべきなのか悩んでいた。
「私は.......どうするべきなの.......?」
夜も明けて早朝にカズマは家に帰ってきた。
そのまま寝室へ向かいベッドに横になる。
何も無い天井を見つめ霊夢のことを考えていた。
「なぁ、霊夢。どこ行ったんだよ.......まだ出会って一ヶ月くらいしか経ってないけどさ、俺嬉しかったんだぜ?わからない世界で初めて会った後すぐに頼ってきてもらって、こっちの世界のこと色々教えて買い物したり出かけたり、それだけで俺は満足だった。独り身の生活に華がある生活に変わったから。それなのに.......」
カズマは泣いていた。短い時間の中にたくさんの出来事があったからそれが全て嘘だったかのように無くなってしまったと思ってしまったから。
カズマはしばらく泣いて泣き疲れそのまま眠ってしまった。
カズマが目を覚ましたのはもう既に夕方になる頃.......
「あぁ、いつの間にか夕方まで寝ていたのか.......」
ふと携帯を見ると何件もの不在着信があった。チームのメンバー、アスカ、タツヤなど様々な人から来ていた。
「全く、誰から連絡したらいいもんかな」
とりあえずチームのメンバーから順番に連絡することにした。
「もしもしアキラ?電話出れなくてごめんな、どうしたんだ?」
「カズマ!急用は大丈夫だったのか!?一応警察は大丈夫だったが後で理由を聞かせて欲しいって言われて、一度警察の方へ行ってもらえるか?」
「あぁ、分かったありがとなアキラ」
そう言ってアキラとの電話を切った。
次にアスカに電話をする。
「もしもし、アスカなんか用か?」
「あのね、カズマ.......昨日はごめんなさい.......それで私ね、引っ越すことにしたの」
「ど、どうしたんだよ急に」
「私カズマに怒られて分かったの、いつまでも昔のままじゃダメなんだって、私変わるために地元を出るの」
「そうか、止めてもダメそうだな。アスカは決めたことに二言はないもんな」
「うん、だけど霊夢ちゃんに何も言えないままだと後味が悪いから伝言お願いしたいの」
「あぁ、わかった」
「霊夢ちゃん、ごめんね。こっちに来てようやく慣れてきたかなって頃に酷いことたくさん言っちゃって、もう会えないと思うけどもし許して貰えるなら、私達友達でいたいな」
「それでいいのか?」
「うん、お願いねカズマ.......」
電話越しにアスカが泣いているのにカズマは気づいた。
本当はこんなことしたくなかっただろうにと思いながらもアスカの思いを受け止めたカズマだった。
「いずれまた顔を合わせることになるんだ、たまには連絡しろよな」
「うん、わかった。それじゃねカズマ.......」
「あぁ」
そう言って電話を切った。
そして最後にタツヤに電話をかけるカズマ。
このタツヤとの会話でカズマは驚きを隠せなかった。
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