無限ループって怖くね? 〜フラグを踏めなきゃやり直し!!〜 (ACS)
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ループ 1

ISループものをやりたかった、後悔はしていない。


俺がそれに気が付いたのは中学三年の時だった。

 

特定の人物に対する会話や行動によって同じ一日中がループする、時には会話の内容をぶった切って朝まで逆戻り。

 

初めは何が起きていたのか分からなかった、というか二、三日目同じ日がループしてなければループ自体にも気付けなかった。

 

今日ですら俺の中ではTake57、もうかれこれ二ヶ月近い時間を同じ朝に費やしてるからいい加減にして欲しい、早く明日来ないかな?

 

「ようやっさん、今日もいい天気だな」

 

「……久野木か」

 

 

彼女は最近転校して来た安永、剣道部に所属しているポニーテールが似合う巨乳のかなりの美少女なのだが、最早57回も同じ朝を繰り返させられてるいい加減なんの感慨も湧かなくなる、つかそもそもループの始まりはコイツが転校して来た時だったしな。

 

あの時はビビった、転校して来たけど特に何も会話しなかったら時間が巻き戻ってたんだから。

 

んでそれを何回か繰り返してたからとりあえず安永さんに話しかけてみたらループの起点すこーしだけズレた、具体的には朝起きる所がカットされて転校の時の自己紹介のところに。

 

そんで分かった、ループには何かしらの条件があって、それが達成出来たら次の日に行けると。

 

つまり俺はこのやっさんと仲良くなんないと永遠に明日を迎えられない、とまぁそー言う訳だね。

 

だから超頑張ったよ、何せちょーっとでも言葉選びをミスったりやっさんの気に障る事やった瞬間、朝一からやり直しだからさ、本気で俺なんかやった?

 

一応その日一日の中にヒントはあるっぽいんだけど、通学の時に乗る電車の吊り下げ広告の内容だとか、窓全開で歌垂れ流してる車の歌手とか粗探しとか言うレベルじゃないから困る。 今回もヒントが分からなさ過ぎて公園のゴミ箱漁って来たからな、やれる事やんないと一日が進まない。

 

 

「ところでやっさんは好きな人っていんの?」

 

「ブフッ!? き、急に何を言い出すんだお前は!?」

 

 

おや? 当たりっぽいぞ? やっと時間が進んだ!! 後は慎重に会話を増やして一日を過ごすんだ俺!!

 

「あ、もしかしてやっさんの好きな人って俺?」

 

 

つい嬉しさのあまりそんな事を言ったのだが、目の前が真っ暗になったかと思ったら噴き出しながら顔を真っ赤にするやっさんのリアクションが見れた所からやり直しになっていた。

 

判定が短過ぎる!? もう少し会話の余地をくれよ!! まだ学校の玄関前だぞ!? 俺はいつになったら授業受けられるんだよ!?

 

ふざけた俺が悪いとは言え、こっから会話を膨らませるのは至難の業だった。

 

ハズレた瞬間ループだからどんな言葉が当たりっぽいかとかをやっさんの反応から見る事も出来なかったし、十数回目の時に漸く正解にたどり着いた、今回の当たりは『居るんなら早く吐いちまえよ、その顔は居るって言ってるようなもんだぜぇ?(世紀末モヒカン風に)』だった、分かるかんなもん!!

 

「その、そいつは私の幼馴染なんだが、強くて優しい男でな? 昔いじめられて居た私の為に喧嘩をしてくれた事があって、それから……」

 

「ほえー、王道っちゃ王道だなぁ、んでんでその人とは今もやりとりしてんの?」

 

「…………事情があってな、今は疎遠だ」

 

 

沈んだ顔をしたやっさん、一瞬ループを身構えた俺だったが幸いなことにまだループはしない段階のようだ。

 

けど俺は経験的に知ってる、このパターンは慰めて欲しい女の子パターンだから肯定的な事を言って励ますのが必須、さーがんばるぞー。

 

 

「やっさんは今もその人が好きなんだな」

 

「む、ま、まぁ、な」

 

「しっかし、そいつも罪な男だねぇ、やっさんみたいな美人に思われてるなんてさぁ」

 

「そう、思うか?」

 

「たりめーじゃん!! もしも再会したらイチコロだって、絶対にそうだって、なんなら向こうから『綺麗になったな』とか『こんな美人が幼馴染とか俺幸せだなぁ』言ってくるレベルだからさ!!」

 

 

そう言いつつチラッと横目でやっさんを見ると、物の見事に口元が緩んでだらし無い表情をしている。

 

というか多分妄想に浸ってんだろう、口からその片思いの相手らしき男の名前が漏れてるのでしばらくおだてまくってご機嫌を取らなきゃなぁ。

 

––––そんな事を考えながら、俺はやっさんの恋バナを聞きつつ57回繰り返した朝を乗り越えた。

 

 

そのご褒美なのか、転校して来てから約一年間友人をやって来たやっさんが次の日には居なくなっていた。

 

もう中3も半ばで時季外れだけど、先生曰く急に転校する事になったとの事、コレでやっさんに合わなくて済むと言う安堵感はあるものの、せっかく仲良くなったんだからちょびっとくらいは転校する事教えてくれても良かったのにとは思う。

 

 

しかしこの時俺は知らなかった、俺の進学先が魔の巣窟に強制的になる事を……。

 




安永=箒さん。

一応ループにはメインとサブ条件があり、メイン達成で日付が進みサブ達成で関係が進展します。

それと活動報告で下の様なループ条件を募集。


〜ループ解除条件〜

①篠ノ之箒に恋愛系の話題を振る。[達成済]

②篠ノ之箒に一夏が自分を褒めている姿を妄想させる。[達成済]

〜特別解放条件〜

①篠ノ之箒と一定以上の友情を築く。[達成済]

②篠ノ之箒に恋愛系の話題を振った後、自分の事をアピールする[未達成]


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ループ 2




––––今の世の中に出回ってるIS、コイツは元は兎も角現在超兵器として扱われてる代物なんだけど、不思議な事に女にしか扱えないらしい。

 

そのせいで世の中女尊男卑の世界になった訳なんだが、何でも例外ってのがあるんだな。

 

昨日高校受験が終わって家に帰ったら初の男性操縦者が現れたとか言う話で何処のテレビ局も話題になってた、ここまでは別にいい、俺には関係の無い話だし。

 

けどこっからが問題だ、他にももしかしたら居るんじゃね? 的な事を考えた連中が全世界一斉調査をやるって話になって、俺の学校でもその調査が始まったんだけどな、コレが問題だった。

 

ん? 何が問題かって? 勿論無限ループに決まってんだろぉぉぉお!? 何、何なの? 『はーい次の人触ってー』とか言う試験官の声を俺は何回数えたらいいんだよ!?

 

テイク数? 100超えた辺りから数えるのやめたよ!! IS触って何も起きなかったらループ、んで列からはみ出てもループ、なんか喋ろうとしたらループ、そもそもISに触る以外の動きをしたらループ、ふ・ざ・け・ん・な!! 気合いで動きゃ苦労しないんだよ!!

 

 

「はーい次の人触ってー」

 

「だぁらっしゃぁぁあ!!」

 

 

イラッと来たので膝立ちのISに飛び蹴りをかましたらこっちに倒れて来た、うそん。

 

いやいや待つんだ短絡的になるんだ、無心で触ればきっとISが起動出来る筈だきっと行ける!!

 

 

「はーい次の人触ってー」

「クソがぁぁぁあ!!」

 

 

落ち着くんだ俺、植物の様な心を持ってISを触ればいいんだ、大分精神的にヤられてるからダメなんだろう、全てを無にすればきっと大丈夫、この短期間を延々ループするような事態はそう起きるものじゃないからきっと平気、だからぁぁぁぁあ!! 早く起動してくださいませんかねぇ!?

 

 

「はーい次の人触ってー」

 

「IS様!! お願いしますだぁ、あっしの様なチンケな小僧をお乗せ下さいませ、何でもしますから!!」

 

 

媚びを売るようにISの前で土下座した俺に、周りの連中のドン引きした目線が刺さるけど知ったこっちゃない、俺はもうそろそろ時間を進めたいんだよ!!

 

その願いが通じたのか見事にISの起動に成功!! 『いっよっしゃぁぁぁあ!!』と絶叫しながら気の遠くなる回数繰り返した甲斐があったと考えたのも束の間、何でもします発言がしっかりと言質取られてたらしく、別室に移動させられたかと思ったら麻酔嗅がされてそのまま手術台行きだった。 いや、確かになんでもするとは言ったけども!?

 

 

「はーい次の人触ってー」

 

「俺は女俺は女俺は女俺は女俺は女ァァァァア!!」

 

 

今度は自己暗示作戦、女にしか動かせないのなら精神的に女になったらワンチャンいけるんじゃね!? ISに対しての土下座交渉が成功したみたいにさ!!

 

が、結果は全然ダメ。

 

このループの何がムカつくって? こんだけ同じ事繰り返してたら気が狂いそうなのに、精神的にしんどいくらいの疲れしか持ち越されない所だよ!! 気の利かせ方はそこじゃない!!

 

「はーい次の人触ってー」

 

「やれやれ、こんな事さっさと終わらせて帰りたいなぁ」

 

 

今度はやれやれ系作戦、もしかしたら主人公っぽいムーブすればイケるかもしれない、いやむしろコレは俺にIS学園でハーレム王になれと言う神のお達しに違いない!!

 

「はーい次の人触ってー」

 

「ですよねー」

 

 

思い出せ俺、このループは絶対に超分かり辛いヒントがループ内にあるんだ、それを探せばこの地獄から解放される!!

 

動かせたのが一回だけ、それもISに対する土下座交渉の時だけって事はだ、ISに心の底から頼み続ければワンチャン!?

 

 

「はーい次の––」

 

「IS様ァ!! あっしの様な卑しい雄豚にどーかご慈悲をくだせぇ!! おねげぇしますだぁ!! おねげぇしますだぁ!!」

 

床に頭を擦り付けながらISを拝み倒し、周りのドン引きを無視してでも全力で頼み込みながら触ったけどうんともすんとも言わない、これ本当にIS動かすのがループの条件なのか?

 

あらゆる方法でISを拝み倒し、頼み倒してもぜんっぜん反応しない、一応何回か前の何でもしますパターンを合間合間に挟んでみたけど、手術台コースにはなるので動かせない訳では無いらしい。

 

言葉のフレーズが関係してるのか? けどそれじゃ他の人にやらせても動かなきゃおかしいし……いや待てよ? この検査を受ける前にISにも意識のようなものがあるって説明されてたな。

 

つまりこれは、ISを口説き落とすか超同情を受ける事が出来ればOKって事か!?

 

 

「はーい次の人触ってー」

 

「動け動け動け動け……動いてよぉ!!」

 

 

最早何回繰り返してるのか分からないからか、段々俺の方も頭が回らなくなって来たらしく、殆ど何も考えずにそんな事言ってISにへばり付きながらずっとぶつぶつ言ってたら急に視点が高くなった。

 

 

「う、動いた? 二人目、二人目が見つかりました!!」

 

 

一気に周りが騒がしくなったけど、それ以上に新しい展開になった事に安堵感を覚えた俺は多分すっごい虚ろな目してんだろうなぁ。

 

しばらくして黒服を着た人が来て俺の両脇を掴んで別室に連れてかれたけど、流石にもう抵抗する気になれない。

 

もうどーにでもなーれ。

 




〜ループ解除条件〜

①ISを起動する[達成済]

〜特別解放条件〜

①ISに気に入られる[未達成]

②ISに同情される[達成済]

③ISに愛される[未達成]


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ループ 3

ISを動かせる二人目、何と言う最高の肩書きだろうか。

 

家族はなんとか保護システムで一家離散、進学まで後一ヶ月二ヶ月の段階で志望校とは全く別の専門的な知識の必要とされる学園に入学する事になった、いやぁ素晴らしい肩書きです。

 

今俺は何してるかって? あっはっは、勉強に決まってんだろ? 何の勉強って? IS動かす勉強だよ!!

 

 

『じゃあ久野木君、起動したISを動かして見て下さい』

 

「ダメでーす、一歩も動きませーん」

 

 

そう、俺はあの一件以降ISを起動出来る二人目として有名になったけど、肝心なのはISを動かせるんじゃなくてISを()()出来る二人目と言う点。

 

確かに俺はISを展開出来るようになった、なりはしたけどその実態は飛ぶ事はおろかホバー移動も通常歩行も出来ないと言う物だった。

 

一応めっちゃ頑張れば足が動くけど、子供が歩くよりも遅い一歩だったり、二歩目が異様に早くてすっ転んだりとお世辞にも操縦できるとは言えないレベルで俺はループ持ち、後は分かるな?

 

 

はい、何時もの無限ループのお時間です。

 

しかも今回は単位が一ヶ月で、ループの起点がズレる事も無いのでループした瞬間一ヶ月の努力が水の泡。

 

このループさぁ、強くてニューゲームとかじゃなくてセーブ&ロードだからどんだけ頑張ってもループした瞬間全部やり直しなんだよ……マジで辛い。

 

努力して走れる様になったのにループしたらまた歩行訓練からやり直し、しかもなまじ記憶は引き継がれてるからその感覚で身体を動かして転倒とかもうね?

 

 

今回でもう22回目のループ、信じられるか? 感覚的には2年近くよちよち歩きの歩行訓練やってんだぜ? やってられっか。

 

まだ歩行訓練だけならいいさ、けど例のなんちゃらプログラムの所為で家に帰れねーわ、倉持技研に軟禁状態だわでぜんっぜん気が休まらねぇ。

 

しかもこの必読って書かれた参考書!! 電話帳並みに分厚いし、中身は明らかに専門知識齧ってる事前提の内容だから全く分からないわ、ループ利用して覚えようにも『読んだ記憶』はあるのに『内容の記憶』が引き継がれ無いから意味が無い。

 

そーいや毎回毎回初日にループするとメガネ掛けた女の子に睨まれるんだよなぁ、無視してもループしなかったからほっといたけどいい加減気になって来た。

 

ちらっとベッドに横たわって時計を見るとそろそろ秒針が0時になる、今回のループは日付が変わるのがトリガーらしいので諦めて視界の暗転に備える。

 

 

「ここがしばらく君が生活する場所だ。 窮屈な暮らしを強いる事になるが、可能な限り要望を叶えるので我慢して欲しい」

 

 

この研究所に来て初っ端に言われた言葉を聞き、ループが始まって23回目の朝に戻って来たのを実感する。

 

このまま暫く家族のその後とか自分の進学先とかの話がダラダラ続くのだけど、流石に23回目にもなると聞きたい事なんて無い。

 

そんな事よりもこの後すれ違う女の子だ、殆ど変わりばえのしない一ヶ月を延々と繰り返してるから変化が切実に欲しいのと、もしかしたらワンチャンIS動かす事が達成条件じゃないかも知れないからな。

 

「なあ、何で睨んでんだよ? 俺なんかした?」

 

「…………別に、あなた達は悪くない。 ただ私があなたともう一人が嫌いなだけ、だから話しかけないで」

 

 

…………冒険心なんて出さなきゃ良かった、いきなり罵倒とかやっさんよりやさぐれてね?

 

まぁいいや、俺も出会い頭に罵倒されてまで関わろうとは思わないし、それ以上にループ解除に忙しいから気にしてもいらんない。

 

そう思ってさっさと行こうと思ったんだけど、今までの経験からコイツと仲良くなるのが条件な気がして来たので、速攻で土下座した。

 

明らかにビビられたし、怪しい奴を見る目で俺を見てるけどそんな事知った事じゃない、もう体感時間で2年もカンズメは辛いんです。

 

 

「お願いします!! ISの動かし方を教えて下さい!!」

 

「どうして私が? あなたの事は嫌いだと言ったはず」

 

そ・こ・を・何とか!!お願いしますッ!! お願いしますッ!!」

 

「大声で叫ぶの辞めて……!!」

 

お願いしますッ!! お願いしますッ!!

 

「……教える、教えるから!!」

 

 

そう言って慌てて俺に立つ様に言う眼鏡っ娘、初日から二人目を土下座させてる姿を周りに見られたくないんだろう、俺は23回目だがな!!

 

しっかし土下座交渉最強だなぁ、ISにも効いたし初対面のこの子にも効いたし、マジ万能。

 

とりあえず勢いで協力を漕ぎ着ける事は出来たけど、これからどーすっかなぁ。

 

俺のIS適正は前代未聞のE、今まではCが最低ラインとか言われてたらしいけど俺はそれを大幅に下回ってたらしい、Dすら居ないのにEってなんだよ? 今は初日だからまだ判明してねぇけどさぁ。

 

適正Eがどんだけヤバイかってのは身を持って知ってる、ISのサポートが殆ど受けられないから歩く事すら困難、腕を上げるのだって重っ苦しいし、指の動きも緩慢だから武器も使えない。

 

かと言って無理矢理走ろうとしたら何故か瞬時加速(イグニッション・ブースト)が発動して壁にめり込んだり、飛ぼうとしたら急加速して天井にぶっ刺さっるとか、兎に角挙動が不安定なんだよ。

 

あーあ、早く来月にならねぇかなぁ……。

 

 




〜ループ解除条件〜

①ISでの歩行が可能になる[達成済]

②ISでの飛行が可能になる[未達成]


〜特別解放条件〜

①更識簪に話しかける[達成済]

②更識簪にISの指導を受ける[達成済]


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ループ 4

俺を睨んでた娘––––更識簪さんは日本の代表候補生?とか言う奴らしく、指導を受けたお陰か大分早い段階で走れる様になった、態々ISを二機使ってマンツーマンの訓練をしてくれた更識さんには感謝の言葉しかない。

 

けど結局まともに走れる様になるまで丸三日かかったからなぁ、根本的に適正Eなのが響いてる気がする。

 

 

「……はぁ、はぁ、はぁ、これで、いい?」

 

「うん、じゃあ次はホバー移動を教えて?」

 

「……それも、出来ないんだ……じゃあ、あなたは一体何が出来るの?」

 

「えっ? ISを起動出来るだけ?」

 

 

文字通り起動するしかできないから四苦八苦しながら訓練してるんじゃないか、他の人が感覚的にやれる事をやれないのは俺だって辛いんだぞ!?

 

そーいや一人目は適正Bらしい、何この格差? しかも研究所の人間の話だとあっさり空も飛べてたとか、俺は23回のループ通しても飛べてないんだけど? もう一回言うけど何この格差?

 

取り敢えずその日は更識さんが疲れたので彼女には帰って貰い、その後も一人で自主練を続けてるんだけど、ここ最近の行動が朝起きてメシ食ってIS動かして昼メシ食ってIS動かして夕飯食ってIS動かしてから日付変わる前にシャワー浴びて寝るの繰り返しになってる事に気が付いた。これって何処のルーデル?

 

凹みたいけど凹んでたら一生ループが続くので気合いを入れ直し、今日も今日とてIS訓練に全力をぶつける。

 

その甲斐あって見ろ!! この100m16秒前半の俊足を!! ISに乗って漸く此処まで走れるようになったんだぞ!! 遅いとか言った奴はISパンチ喰らわせてやる。

 

更識さんも俺の成長に涙が出てるみたいだ、ハイパーセンサーがイマイチ機能してないからピントが合わなくてどんな表情か分かんないけど。

そして念願のホバー移動、イメージはスケートに近いらしいけどやった事無いから分からん。 えっ? 普通はそんなイメージとかしなくても出来る? 俺は普通じゃないんだよ!!

 

 

「……私が手を引いてるから、そのままゆっくり身体の力を抜いて?」

 

「分かった、全身の力を抜けばいいんだな?」

 

 

更識さんの乗る打鉄に手を引かれながら地面から僅かに浮いたところで滑る様に移動する俺達、ゆっくりと機体を慣らすような軌道で試験場をしばらく移動していたかと思うと、突然手を離された。

 

転けると思って目を瞑るが衝撃は来ない、恐る恐る目を開くと俺の機体がふよふよと浮いているではないか!! 変なテンション? ほっとけ、体感時間で2年かかってるんだぞ!?

 

 

「イヤッッホォォォオオォオウ!! やった、やったぞ!? 遂にやった、遂に俺は浮く事が出来たんだ!! フハハハハハ!! 早いぞー!! 凄いぞー!!」

 

 

念願のホバー移動が出来る様になった俺は滑る様に移動する感覚に快感を覚え、試験場内を全力で動き回っていたのだけど、ぐんぐんと加速する機体のブレーキ方法が分からない。

 

今まではソロプレイだったから対処法が当てずっぽうだったが、今の俺には更識簪様という偉大なる日本国代表候補生様がいらっしゃる、こんな問題はお茶の子さいさいで解決してくれる筈だ。

 

 

「更識様!! 助けて下さい、げ、減速出来ません!! 更識様!!」

 

「……両足で踏ん張ればいい、あと様付けはやめて」

 

「よし分かった、踏ん張るんだな!? 踏ん張ればいいんだな!?」

 

 

更識さんのアドバイス通りに両足を踏ん張ったら、何故か真上にすっ飛び、天井に突き刺さる羽目になった。更識さんの嘘つき!!

 

膝を付いて『……なんで……そうなるの……』とか言われて悲しいけど、一番何より悲しいのは俺だからね? その辺りの気持ちも汲んでくれると嬉しいかな? だってほら、ね?

毎度の事なので天井に突き刺さるのは慣れてる俺は、一旦自分を引き抜いて着地すると、ある重大な事に気が付いた。

 

「なぁ更識さん」

 

「……なに?」

 

「浮けない」

 

「……さっき浮く感覚は教えたよね?」

 

「教えてもらったのに浮けないんだけど?」

 

「……なんで?」

 

 

そんな事は俺が知りたい。

 

とりあえず分かった事は誰かしらの手を借りて暫く浮いてないとホバー移動が出来ない事と、減速が非常に難しいと言う事の二つ。

 

普通なら乗って数分で出来る内容らしいけど、その後も月末まで更識さんに付き合って貰った結果、何とかそれらの課題をクリアする事が出来た。ほんっと長かったなぁ……。

 

今は赤ん坊がよちよち歩きするくらいのスピードで地上三メートルくらいを飛んでるんだけど、管制室らしき場所で更識さんが涙を流しながら手を叩いて喜んでくれていた。

 

気分良く地面に降りた俺はその足で早速御礼を言いに行ったんだけど、めちゃくちゃ良い笑顔で『……御礼なんか要らないから、もうこんな事に付き合わせないって約束して?』と言われて無言で頷くしか無かった。

 

…………だって、目が殺し屋みたいな目してて全く笑って無かったもん。

 





〜ループ解除条件〜

①ISでの歩行が可能になる[達成済]

②ISでの飛行が可能になる[達成済]


〜特別解放条件〜

①更識簪に話しかける[達成済]

②更識簪にISの指導を受ける[達成済]


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ループ 5

特別解放条件の全達成ボーナスとして[コネ・更識簪]を手に入れました。


IS学園、それはIS関連の道へと進む人達の学び舎であり、基本的に女性にしかISが使えない以上、実質女の園と呼べる場所である。

 

そんな場所に俺は強制的に入学させられる事になり、奇異の視線を受けながら真っ先にやった事は––––HR前に一人目である織斑に詰め寄る事だった。

 

「お前が織斑だな?」

 

「そうだけど……なんか用か?」

 

「唐突だけど俺はお前が嫌いだ」

 

 

ああそうとも、俺は体感時間で2年も前からコイツに面と向かってそう言いたかった、漸く会えたな織斑ァ!!

 

 

「なんだよ、俺が何かしたか?」

 

「ふん、その答えが知りたいか? だったら言ってみろよ、お前のIS適正を」

 

「えっ? 適正はえーっと、Bだったな」

 

「そう、お前のIS適正はB。俺はそれがとても憎いぃぃ!!」

 

「はぁ!?」

 

「まぁ聞け、聞けよ織斑。信じられん。俺が、俺が全身全霊をかけて一ヶ月特訓して得られた成果を同じ男子であるお前は何の苦も無く達成出来た。ただIS適正がBってだけでだぞ!? 出来てしまった!! 信じらんねぇ!! 適正ってなんだよ、同じ男だろ!? なんで俺は前例がなかった適正Eなんだよ!? こんな理不尽許されるのか!? 何つー不合理!!」

 

「お前それタダの八つ当たりだろ!?」

 

 

あ、ヤバイ、なんか変な涙出て来た。

 

俺の頭の中に駆け巡るこの一ヶ月の記憶、起動した直後に歩こうとして瞬時加速(イグニッション・ブースト)が何故か暴発した瞬間の更識さんの目、壁や天井に突き刺さる度に呟かれる研究員の『これで何回めだよ』という呟き、そして23回に及ぶ同じ一ヶ月間のループ。

 

織斑に八つ当たり気味の不安をぶつけるだけのつもりだったけど、 かなりブルーな気持ちになったのでそのままトボトボと自分の席に座ってうつ伏せになる。

 

下手に泣いたり騒いだりすると即ループする事が今までの人生何度もあった、人にループする事を相談しても巻き戻る事が多々あるから限界が来ても口を紡ぐしか無い。

 

織斑からは変な奴を見る目で見られてるけど、一応ループは発動していないっぽい、発動したらしたでこいつもやっさんと同じ悪魔認定だったけど。てかやっさん、何時の間にフルネーム変えたんだよ?

 

昔話にでも花を咲かせようかと思ったところで、非常に素晴らしいプロポーションをした女性が教室に入ってきた。

 

副担任の山田真耶と言う彼女は童顔に似合わないその胸部装甲を持っていた為、健全な男子高校生の性なのか今までの悩みも一発で吹っ飛んでしまった、土下座したらあの人おっぱい揉ませてくれないかな?

 

と、そんな事を考えてたら織斑が出席簿で引っ叩かれたり、担任の織斑千冬に対して黄色い歓声が挙げられたり、時間が無くなったから自己紹介を巻きで行けとのお達しがあったりと中々のHRだ。

 

 

「えっと、じゃあ次は久野木君? 自己紹介してくれるかなぁ?」

 

 

お願いする様に手を合わせる山田先生、小柄で童顔なのも相まって非常に安心する笑顔を浮かべている、この人天使だわ。

 

彼氏いんのかな?とか、年下は射程範囲内かな? とか考えてたけど、織斑先生の目が早くしろって言ってるから一旦普通に立ち上がり、ごく普通の挨拶をした瞬間だった。

 

 

「えっと、じゃあ次は久野木君? 自己紹介してくれるかなぁ?」

 

 

あ、これループ始まったわ。天使が一瞬にして堕天した瞬間である。

 

アンタもループ持ちなのかよぉぉぉお!? やっさんみたいにちょっとでも機嫌損ねるような事したらダメなパターン!? てか今俺普通に名前と誕生日と趣味を言っただけだぞ!? 何がどう不満なんだ!?

 

まて、落ち着け。 そういえば今朝テレビを付けたら丁度星座占いがやってたところだった、なるほど自己紹介に星座を入れてなかったのが悪かったんだな?

 

 

「はい!! 俺の名前は久野木飛鳥!! 誕生日は11月11日の蠍座の男、血液型はAB型だ!!」

 

 

ふっ、今回のループは非常に分かりやすくて助かった。まぁそんな何回も2桁3桁のループを繰り返してたまるかってんだ。

 

 

「えっと、じゃあ次は久野木君? 自己紹介してくれるかなぁ?」

 

「ファッキュー!!」

 

 

思わず立ち上がりながら中指立てた俺は悪くない、なんだこの人? 俺の何が不満なんだよ!? 顔か? 顔が織斑以下だからかコンチクショー!!

 

そう怒鳴ろうにも立ち上がって中指立てた瞬間に無慈悲にループ、まーた自己紹介からやり直し。

 

星座占いじゃなかったらなんだ? 念のため血液型も付け加えたんだぞ!? これ以上何を紹介すれば良いんだよ!!

 

「えっと、じゃあ次は久野木君? 自己紹介してくれるかなぁ?」

 

「はい!! 久野木飛鳥15歳!! 血液型はAB型!! 誕生日は11月11日の蠍座の男!! 好きな物は二週目がある系のゲーム!! 嫌いな物はありとあらゆるエンドレス系の物全般!! IS適正は人類史上初のE!! 彼女は居ません!! 絶賛募集中です!! 家族構成は父と母の三人暮らしでした!! 今は一家離散中、安否も分かりません!! ちなみに本来の入学予定の学校は倍率の高い勝ち組進学校でした!!」

 

どうだ今度は個人情報の漏洩だぞ? 流石に自己紹介なんだからその内容がループ原因になってるはず、余す事なく答えたんだから今度こそセーフだろ!? セーフだって言ってよバーニィ!?

 

「えっと、じゃあ次は久野木君? 自己紹介してくれるかなぁ?」

 

マジでどーすりゃいいんだよ!? ヒントなさ過ぎて分かんねーんだけど!?

 

こうして、俺のIS学園生活の初日はHRの無限ループから始まるのだった。





〜ループ解除条件〜

①篠ノ之箒と会話する[未達成]

②自己紹介でネタに走る[未達成]

〜特別解放条件〜

①織斑一夏と会話する[達成済]

②織斑一夏に篠ノ之箒への好意の有無を聞く[未達成]


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ループ 6

「ふっふっふ、この邂逅は世界の選択せし定め。我が名はアスカ・クノギ!! このIS学園の頂点に立ち、世界を制する者!! 必殺技はイオナズン!! ちなみにそこで澄まし顔してる篠ノ之箒ことやっさんとは中学時代の同級生だったぜ!!」

 

「私を巻き込むんじゃない!!」

 

「いいだろやっさん!! お前クラスから浮くの得意だしさ!!」

 

「いままさに孤立してるのはお前だけだ!!」

 

 

82回目のループ、もう自己紹介のネタが完全に枯渇した為後々の学園生活なんか投げ捨てた挨拶をしてみたところでループが解除されたらしい、一瞬にして堕天した山田先生の言葉がループしなかった証拠だ。

 

もうここまで来ると周りの生暖かい目は全く気にならない、同じ瞬間を82回も繰り返してりゃ当然の事だけどさ……。

 

疲れてないのに精神的な疲れがどっと来た俺は、電話帳サイズの参考書を捲りながら、SHRが終わって目の前で織斑と一緒に教室から出るやっさんを見つつ『ああ、織斑がやっさんの好きな人かぁ』などと考えていたら、金髪のお嬢様ちっくな子がこっちに来た。

 

 

「ちょっと、よろしくて?」

 

「あっはい。なんざんしょ?」

 

「なんですの、そのふざけたお返事は?」

 

 

ふざけた返事なのは分かってるけどさ、何がきっかけでループが始まるか分からないんだからこれぐらいのおふざけが無いと人生やってらんないんすよ。

 

相手の表情から察するに女尊男卑万歳なお方なんだろうけど……確か名前はセシリア・オルコットだっけ? さっきの自己紹介で自信満々だったから何となく印象に残ってる。

 

 

「えーっと、イギリス代表候補生のセシリア・オルコットさんでしたよね? あっしに一体何の用でしょうか?」

「ふふん、流石に極東の猿でもわたくしの事は知っている様ですわね? そう、わたくしはイギリスの代表候補生にして入試首席のセシリア・オルコットですわ!!」

 

話通じねー。まぁそら自分の自己紹介をあんな自慢する様にしてりゃ嫌でも印象残りますからな、あーでも何しに来たんだろこの人? 自慢しに来たなら別の誰かにしてくんない? 82回の自己紹介で脳みそ沸騰してて参考書の中身が全然頭に入って来ないんで。

 

 

「見たところ知識不足でお困りの様子、ISを操縦できる男性と聞いてましたから多少の知性を期待していたのですけれど、頭を下げてどうしてもと頼むのなら優しくしてあげますわ」

 

「お願いします!! どうしても分からないので勉強見てください!!」

 

 

なんて優しい人なんだオルコットさんは!! あんな誰もがドン引きする様な挨拶した相手にこんな事言うなんて!! そんなもん誰がどう考えても土下座して個人レッスンを頼むに決まってんだろ!?

 

「……ふぅ、やはり殿方というものはプライドも何も無いんですのね」

「あはは、機体の基本的な制御に1ヶ月と武装の訓練に更に1ヶ月掛かってるから全然勉強する時間が無かったんですよ」

 

 

あっはっは、プライド? そんなもんあったらあんな挨拶する訳ねぇだろ? プライドを捨てなきゃ生きてけないんだから殆ど死んでるも同然の人生なんですよ、クソッタレが。

 

凄く冷たい目をしていたオルコットさんは溜息を吐きながらも、俺の席の前に立って嫌味混じりだけども専門用語の解説をしてくれた。

 

かなり毒がキツイけどそんなもん気にしてる暇が無い、ISの最低限の制御をする為に1ヶ月どころか2ヶ月掛かってる落ちこぼれだからなぁ。

 

「おのれ織斑め……俺はこんなに地獄を見てるのに貴様はやっさんとイチャイチャラブラブ乳繰り合ってるだとぉ? 流石IS適正B!! 入学前の2ヶ月で予習も完璧ってか!?」

 

「さっきからぶつぶつと恨み言ばかりで人の話聞いてますの!? 折角このわたくしが教えて差し上げてますのに!!」

 

「サーセンッしたァ!! あっしが悪ぅ御座いました!!」

 

 

おのれ織斑ァ!! 逆恨みだろうと何だろうと知るか!! お前を恨んでなきゃ学園生活やっていけんのだからなァ!!

 

そんな恨み言を心の内側で溜め込んでいた俺の参考書片手の個人レッスンは、始業のチャイムであっさりと終わった。

 

そして二時間目、どっかり積まれた教科書5冊を読んでるフリをしながら俺は冷や汗をだらだら流していた。

 

やっべぇ……ぜんっぜん分かんねぇ。完全に勉強不足なのが目に見えてるけど、オルコットさんから勉強教わってる手前、分かるフリしとかないとダメだ。

 

お茶を濁す様に分かるフリをして頷いていた俺だったが、織斑がやけに挙動不審で周りを見渡している。

 

それに気が付いたのか、山田先生が『わからないところがあったら訊いて下さいね?』と優しく聞いてくれたのだが、それに対する織斑の回答は––––。

 

 

「殆ど全部が分かりません!!」

 

「えっ……全部、ですか……?」

 

「……織斑、入学前の参考書は読んだか?」

 

「古い電話帳と間違えて捨てました」

 

「必読と書いてあっただろ馬鹿者」

 

その答えと共に出席簿で弟の頭を引っ叩く織斑先生と非常に困り顔の山田先生、つーか織斑お前勉強完璧だからやっさんと話してたんじゃねぇの!? まぁ参考書は電話帳みたいな厚さだからその気持ちは分からんでも無いけど。

 

しかーし!! コイツは俺の憂さ晴らしをするチャンス!! 性格が悪かろうが知ったことか!!

 

 

「ぶはははは!! やーいやーい引っ叩かれてやんの!!」

 

「ぐっ、しょうがないだろ!! 捨てちゃったもんは!!」

 

「……久野木、そう言うお前はどうなんだ? 勿論理解出来ているんだろうな?」

 

「ふっ、愚問ですよ織斑ティーチャー」

 

 

ふざけた瞬間ちびりそうな眼光が俺を貫く、あっこの人冗談通じない人ですね、分かりました。

 

だが織斑ティーチャーの質問は愚問だとも、何故ならば!!

 

 

「––––参考書は読みました!! けど何一つ分かりません!!」

 

「俺よりひでぇじゃねぇか!?」

 

 

織斑のツッコミと共にクラスメイト全員がづっこけ、ティーチャーの出席簿が俺の頭にも直撃した。仕方ないだろ!? 読んだ記憶はあるのに内容全く覚えてないんだからさ!?

 

この後、俺と織斑は一週間以内に全て内容を丸暗記しろと言われるのだった……ループ案件じゃねぇよな?

 





〜ループ解除条件〜

①篠ノ之箒と会話する[達成済]

②自己紹介でネタに走る[達成済]

〜特別解放条件〜

①織斑一夏と会話する[達成済]

②織斑一夏に篠ノ之箒への好意の有無を聞く[未達成]


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