パラダイス・ロスト Champion of the Earth (若奈)
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プロローグ

夏本番といった暑さをどうやって回避しようか。

 

街に出ていた私は避暑地を求めて彷徨っていた。

灼熱の地獄のごとく、アスファルトからの照り返しが私に集中しているのではないか、と思うほどの暑さだ。

 

その暑さもどこか懐かしく思えた。

あの時の暑さに比べればマシなのか。

 

それにしても、あれからどれくらい経ったのだろう?

1年?2年?いやもっと?

 

そんなに経ってないと言われればそうかもしれない。

それだけ濃密な時間を過ごした。

 

様々な出来事。

色々な人との出会い。

別れ。

 

色々なことがあった。

あの時、一緒に過ごした者。

 

あの時、共に戦った者。

 

あの時、敵だった者。

 

ふと、街を見渡す。

行き交う人々は見渡す私に目もくれず、ただその場を通りすぎる。

 

サラリーマンは汗をぬぐいながら目的地へと向かう。

下校途中の女子高生たちは友達と駄弁りながら買い食いする。

無邪気に走り回る子供。

 

昔から変わらない光景。

 

活気あふれる街は昔から変わらないのだ。

本質が変わろうとも、見かけは変わらない。

それが現象として起きた時に初めてそれを理解せざるを得ないのである。

理解したとき、人は変わってしまう。

初めからその思考がなかったかのように、180°変わるのだ。

 

本質が変われば、その者も変わる。

多くの者がそうしてきた。

本能に抗うことを止め、理性なんて言葉はいらなかった。

争いをやめる理由などない。

それが生きるため、仲間のため。

自分たちが掲げる理念、野望。

それを成し遂げるために突き進むだけ。

 

根本的に変わったこの世界。

私は後悔などしていない。

ただ平穏に暮らせる世の中になって欲しい。

 

そのために行動したまでだ。

 

まだこの争いは終わっていない。

いつまで続くのか。それは誰にも分からない。

行く末を見守る者たちを守りながら、私たちは殲滅しなければならない。

諸悪の根源は私たちなのか?

敵からすればそれが答えなのだろう。

しかし、私たちからすればそれは不正解。

 

背負うものは大きい。

だからこそ、完遂した暁には成し遂げた快感が待っているのだろう。

それを得るために私たちはやり遂げたい。

 

空を見上げる。

青く澄んだ綺麗な青空。

 

地球という星に生まれた私たち。

生まれたからには何かしらの理由がある。

しかし、誰も何が正解なのか知らない。

 

だから正解を見つける。

この地球という母なる星から与えられた課題なのだ。

 

互いに正解を求め合い、争い、ぶつかり合う。

生き残った者が答えを見つける。

 

そうしてようやく我々がこの星の 覇 者 となるのだ。

 

 

 

 



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1章
1話


ようやく本編開始?です。


ミーン ミーン ミーン

 

灼熱のグラウンドを学生が走っている。

 

「おらぁ!お前らシャキッと走らんか!」

 

金髪の白人女性が流暢な日本語で生徒たちに檄を飛ばす。

 

「走って何の意味があるんだ…」

「体力つけるためじゃない?」

「こんなクソ暑いのに…死んじまう」

「う~ん…」

「もうダメだ…死んだ」

「でも、あながち間違てなくはないよね…」

 

長い髪をローポニーテールに結わえた黒髪の少女と肩にかかるくらいのミディアムショートの少女が息を切らしながらも会話する。

 

「こらぁ!てめぇら50周追加するぞ」

 

私語をする2人に教官が怒鳴りつける。

 

「ちっ。ゴリラのくせに」

 

ミディアムショートの少女がボソッと悪態をつく。

 

「おい!そこ聞こえてるぞ!」

教官がより一層大きな声で怒鳴る。

 

「ひぇ。地獄耳」

「も~私語はやめようよ」

 

後ろから声を掛けられる。

 

「もう2人とも、昔からそんなんだから、色々目を付けられるんだよ」

「ふん。いいじゃん別に」

 

2人にセミロングをおさげにした少女が声をかける。

 

「だから!お前ら!」

「やっべ」

 

教官の顔は益々赤くなっている。

ただまああの様子じゃまだ理性はあるといったところか。

 

おさげの少女が速度を緩める。

 

「よしあと5周頑張りなさいよ~」

「え?もう終わり?」

「うん。2人が最後だよ」

「くそ。また晒し者かよ」

「ま~頑張りたまえ~」

 

笑顔で見送るおさげの少女。

よく見ると若干引きつって見える。

喋りながらだといっぱいいっぱいだったのだろうと、表情から読み取れる。

 

 

「よーしお前らようやく終わりだ。まったく何分掛かってると思ってるんだ。そんなのではダメだ!」

 

「ったく、走り終えたらこれだぜ」

「もう。また怒られるよ」

「へいへい」

 

教官は教官でかつての自分の武勲を語っている。

まあいつものことだ。

 

私たちは高校生だが普通の高校生ではない。

軍人だ。

教官はもちろん現役の軍人。

候補生や訓練生みたいなものだが、目まぐるしく動く情勢を考えると、普通の軍人と同じ扱いだろう。

有事の際は駆り出されることは承知している。

すでに出動するということも過去に何度かあった。

 

3年前のあの日から自分の全てが変わった。

あの日から私の周りは全く別物になったと言っても過言ではない。

いや、私の節目がそこであっただけであって、それ以前から少しずつ見えないところで見えない何かがうごめいていて変化していっていたのだろう。

 

しかし上辺だけで見ればなんら変化のないように見えた。

実際、普通に生活していれば以前となんら変わりのない生活を送ることができる。

無論大多数がそのような感じだろう。

 

軍人であるが故に私たちはその変化を最も目の当たりしているのだろう。

国民が安全に暮らせる社会と秩序を守るために私たちは結成されたのである。

 

ここ最近はテロなのが頻発している。

ますます私たちの存在意義を問われるだろう。

 

「命あれ」「形あれ」「姿あれ」

 

私たちはこれを理念に掲げている。

そして・・・

私たちの目標は

 

「人間解放軍の殲滅」「旧人類の淘汰」

 

to be continued…




さてさて、お久しぶりです。
中々投稿できずに申し訳ありません…
話はいくつか書けていたり、こういう話を書きたいってのもあるんですが、いざ投稿するかってなると順番をどうしようか…
と悩んでます(;'∀')
悩んで、今回はこの話をプロローグの次に持ってきたわけですが、今後どうつなげていこうか…笑

割と見切り発車で投稿を始めたということもあり、今のところ基本月に1本ペースで投稿していこうかなーって考えています。
今月はあと1~2本出来たらいいかな(;'∀')



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2話

「よーし、やっと昼飯だ」

 

3人で学食へ向かう。

 

「ったく、もうクタクタ」

「はぁ、疲れた…」

「本当マジ…あのゴリラムカつくな!」

「もう、2人とも訓練中に私語するからだよぉ」

「今日のご飯は何にしようかな」

 

髪が肩にかかるくらいの少女、有杭 真希(うくい まき)が語気を強める。

それをおさげの少女、唐田 須美(とうた すみ)が咎める。

そして、それを一切気にしない長い髪をローポニーテールにしているのが、酒浦 依玖(さかうら いく)だ。

 

「ほう。そのゴリラというのは私のことか?」

 

3人は歩みを止め、ビクッと肩を震わせる。

ゆっくりと後ろを振り向く。

 

「きょ、教官!」

 

先ほど、2人を晒した教官、エルフリード=ゲルグ大佐だ。

凛とした、金髪碧眼の女性。

当然外国出身なのだが、日本にいる期間がかなり長いらしく、日本語は達者だ。

むしろ、出身国の言葉を喋れないとか何とかという噂もあるらしい。

 

「貴様ら、私は教官であり、上官でもある。その私を侮辱…」

 

「はっはっは!ゲルグ大佐!彼女らを許してやってくれ!」

 

エルフリード=ゲルグ大佐の後ろから、私たちと同じ制服を着た女子生徒が豪快な笑いと共にやってくる。

 

「ん?貴様は4年の椎名か」

 

椎名と呼ばれた女子生徒。

彼女も凛としており、身長は170㎝程で黒い髪をポニーテールに結わえ、所謂武士のような出で立ちの少女だ。

 

「こいつらは少し不器用なんだ。いつもゲルグ大尉のことを慕っているぞ!はっはっは!」

 

満面のスマイルでゲルグに言う。

 

かくいうゲルグはめんどくさいやつが来たなという表情を一瞬見せたのち、「ふんっ」と妖しく笑う。

 

「良かったな、今日は勘弁してやる」

 

そう言うと、ゲルグは踵を返しカツカツと音を鳴らし、去っていく。

 

「先輩!ありがとうございます!」

「助かりました~」

「はっはっは!可愛い後輩が困っていたら助けるのが筋だ、気にするな」

 

椎名先輩は豪快だなぁと思いつつ、困惑する私。

 

「貴様ら、今から飯か?」

「はいそうです」

「私は済ませたのだが、食堂か?」

「ああそうだよ」

「ちょっと~、昔からの馴染みだけど~、先輩なんだから敬語使わなきゃだめだよ~」

「はっはっは!別に気にしていないさ!」

「相変わらず豪快ですね…」

「ん?それは褒め言葉として受け取っていいのか?」

「で、食堂がどうかしたんですか?」

「あぁ、今は混んでいるから時間がかかるぞと言っとこうと思ってな」

「わざわざ、ありがとうございます」

 

「おーい、茜音!」

 

椎名先輩の後ろから、呼ぶ声がする。

 

「ん?」

 

ポニーテールを揺らしながら振り返る先輩。

 

「何やってんだよー。早く行くぞー」

「おう。今行く! ・・・すまんな、友達を待たせてるんだ」

 

ではといった感じで、椎名先輩は去っていった。

先輩をリスペクトして、髪形を同じにしているのだが、先輩は気付いてくれているだろうかと、野暮なことを考える。

 

「ったく、毎回嵐のような人だな」

「昔っから変わらないよねぇ~」

「ホントホント」

 

うんうん、と賛同する私たち。

 

「あっ、早く行かないと休み時間終わっちゃうよ?」

「それもそうだな。金はあるんだからもっと広くしろよなー」

 

頭の後ろで手を組み、学校への不満をぶちまける真希。

 

「ん?結構人だかりができているな?」

「みんなテレビに夢中だねぇ~」

 

食堂の入り口に差し掛かり、中を覗いてみると、かなりの混雑だ。

しかし、中央に設置された100インチは超えるであろう、大きな薄型の液晶テレビ。

そこに集中して人だかりができている。

 

「ん~?今日は何かあったかな~?」

 

to be continued…




いやいや、やっと登場人物の名前決まりました笑
考えるのも一苦労…

前話を見ていれば、お分かりかと思いますが、彼女たちを含め出てきた登場人物はみんなオルフェノクなのです。
なんのオルフェノクかわかりましたでしょうか?
当てた方には・・・







何もありません(;'∀')
すみませんm(_ _)m



時間は掛かりますが、名前考えるのは楽しいです笑
茜音は絶対に当てられないと思います(;'∀')
思いますというか、無理です。
なにもヒントがない状態です(;'∀')
ただモチーフは決まってます。
答え合わせは、どこかのお話で笑

では、また次回よろしくお願いします!


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3話

「ん~?今日は何かあったかな~?」

 

須美がのほほんと、人差し指を当て首を傾げる。

 

食堂の中央に設置された100インチはあるであろうテレビに多くの生徒が集っている。

 

「おい、ないやってんだよ?」

「ん?今SeaAquaのライブ始まるんだよ」

 

SeaAqua

 

トップアイドルとも言える、今となっては知らない人はいないのではないかという大人気の3人組だ。

 

「はーい!みんなー!元気いっぱい!肉食系女子!ReiCaでーす!」

 

「ん。みんなの妹。Shihoだよ」

 

「冷たい女?クールなだけだよ。MiO」

 

水着を纏った少女ともいえる年齢の子たちが舞台でスポットライトを浴びて立っている。

 

ReiCaこと網浜 麗華(あみはま れいか)

【挿絵表示】

 

Shihoこと朝沼 志保(あさぬま しほ)

【挿絵表示】

 

Mioこと井沢 水魚(いざわ みお)

【挿絵表示】

 

 

この3人で構成される「SeaAqua」

 

「みんなごめんね。今日はライブじゃないんだ」

「そうそう。お兄ちゃん、お姉ちゃんたちごめんね」

「でも、今日はもーっと楽しいことやりますよー!」

 

舞台の後ろに大きなスクリーン。

そこにバーンと

「処刑」

デカデカと表示されている。

 

「「「うおーーーーー!!!!!!」」」

 

食堂からは獣たちの雄たけびかと思うほどの生徒たちの歓声が響き渡る。

 

「今日の獲物はこいつだー!」

 

スクリーンには床にへたり込み、泣きながら許しを乞うようなしぐさを見せている女性。

足には足枷が装着され、逃げれないように鎖でつながれている。

 

「い、いやだ…ゆ許して!」

 

ボロボロの衣服を身に纏った女性。

化粧っ気のない顔に憔悴し痩せこけているが、見覚えがある人が大半だろう。

 

かつて、今の「SeaAqua」と引けを取らない人気を誇ったアイドルグループの一人だ。

 

「へーあいつまだ生きてたんだ」

「お前ファンだったろ?」

「あ?もうあんなのに興味ねーよ。Shihoちゃんの方が何兆倍もかわいいよ」

「お前、Shiho推しかよ」

「ああ?わりーかよ!Shihoは俺の妹なんだよ!」

「本当の妹じゃねーだろw」

「お前の推しメンはだれだよ?」

「ReiCaに気なってんだろ?」

 

笑いながら話す男子生徒たちはかつてファンだったらしい。

 

 

「私はMioちゃんかな~?2人は?」

 

釣られて須美が私たちに問いかける。

 

「俺様は断然Shihoだぜ。あれくらいの妹を愛でてやりたいぜ」

「ん~私はReiCaかなー?あの大胆さは見習いたい」

 

「見事に分かれたね~」

 

あちらこちらから3人について語り合っている。

生徒たちにも例外ならず、この「SeaAqua」の人気の高さが伺える。

 

「いいな~私はMiOちゃんになら冷徹に嬲り殺されたーい」

「俺はShihoちゃんに罵られながらがいいな」

 

「す、すっげぇな」

「味方には殺されたくないよね…」

「いろんな性癖を持つ人がいるんだね~」

 

特殊な性癖を持つ奴らもいるらしい。

 

「それじゃあ今日はどうする?」

「うーんっとねぇ?」

「はい!はーい!」

「何?ReiCa?いい案があるの?」

 

ReiCaは笑顔で両手を腰に当てる。

 

そして、ReiCaの周囲の空気が一変する。

 

to be continued…




やったー!
3週連続で更新できたぞー!

キャラ画像も載せてみました!
これでキャラクターに対する想像力を働かせられるかなーっと笑

3人が何をモチーフにしているのか、当ててみてください!
私もキャラクターを考える上で、色々楽しみながら描けるので、小説を描く段階で楽しさが倍増しています笑

次回は未定ですが、どう動くのかお楽しみください!


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4話

「はい!はーい!」

「何?ReiCa?いい案があるの?」

 

ReiCaは笑顔で両手を腰に当てる。

 

「Ladies&gentleman!今からこのReiCaが素晴らしいパフォーマンスをお見せしまーす!」

 

そして、ReiCaの周囲の空気が一変する。

 

 

人間はこの時何かとてつもなく嫌な空気を感じ取る。

例え様のないおぞましい何かが、そこに纏わりつく…

と…でも言うのか。

身体の奥底から、警鐘を鳴らす。

冷たく、温かさなど一切感じない。

 

目が妖しく白濁する。

 

ReiCaの身体を僅かに纏う過激なビキニ。

 

それを除く全身。

 

見える素肌という素肌。

 

それに何かを縁取るような模様が少しずつ浮かび上がってくる。

 

ニマっという笑みを見せるReiCa。

 

何か形容し難い音とともに身体が膨張する。

 

あの模様に沿って身体が灰色に大きくなる。

 

今、眼前に立つ灰色をした大きな怪物とトップアイドルのReiCa。

似ても似つかない。

 

明るく、騒がしいReiCaだが、目の前の怪物は灰色の鎧を纏ったように冷たく、とても同一人物には見えない。

が、まぎれもなく同一人物なのだ。

 

スポットライトに当たる、灰色の怪物の影が形を変える。

そこには青白く、ReiCaの裸体が現れる。

 

『さーて、こいつはどう遊ぼっかな?』

 

「ReiCa、テレビの向こうのみんなを楽しませてよ?」

 

『解ってるって!』

 

「来ないで!」

 

ボロボロの衣装を身に纏う女性に向かって歩みよる。

 

片腕を掴み上げ、悠々と持ち上げる。

 

ふーん。

と、言わんばかりに足先から頭までを舐めるように見渡す。

 

『よくそんなので、アイドルできてたね』

 

無理もないだろう。

かつてはチヤホヤされていたが、今は見る影もなく痩せこけている。

栄養状態もよくなさそうだ。

放って置けば、長くはなさそうだ。

 

だが、彼女はかつては人気を誇った一アイドル。

社会的関心が高い。

それ故スマートブレインは彼女をこの場で処刑するということを考えた。

 

今現在の国民の娯楽といえば、人間や裏切り者の処刑を楽しむのに他ならない。

 

ドサッと元アイドルの女性を地面に落とす。

 

ReiCaであった灰色の異形。

全体的にビキニアーマーを纏っているよう。

それに普段のReiCa同様、面積が少なく、どこかセクシーさを醸し出している。

 

顔は鋭い目つき、肉食さを表しているのだろうか。

小さく開いている口らしきものは鋭い歯がびっしりと窺える。

 

まるでウツボの様を表しているような怪物。

そう。トップアイドルReiCaはウツボの特質を備えたモーレイオルフェノクだ。

 

ブチっ

 

足枷と地面をつなぐ鎖を噛み千切る。

 

『ほら、逃げないの?』

 

「えっ?えっ?」

 

女性は戸惑いながらもコロシアムの出口へとゆっくり、ゆっくり…

そして、一目散に駆け出す。

 

扉が眼前に迫る。

ガチャガチャとドアノブを引こうとも押そうともビクともしない。

 

『開くわけないじゃーん!』

 

モーレイオルフェノクは嘲笑うかのように語り掛ける。

 

そして、二本足で立っていた形態が一本の鰭に纏まる。

ひらひらと靡かせながら、空中を浮遊する。

 

一目散に女性目掛け飛びつくように迫る。

 

「いやあああああああ」

 

響き渡る断末魔。

 

女性が最後に見たのは、自分に目掛けてやってくる怪物。

その口は裂けるように大きかった。

 

鮮血が舞う。

 

モーレイオルフェノクは女性の首に噛みついていた。

 

その力はとてつもなく強く。

少し、横に捻ると勢いよく千切れ飛ぶ。

 

モーレイオルフェノクはいつの間にかReiCaの姿に戻っていた。

 

吹き出る新鮮な血を浴びるReiCa

 

「ReiCaお姉ちゃん、こんなにしちゃって、後片付けのスタッフさんが大変だよ?」

「ReiCa…もっと面白くできなかったの?」

 

「へへっ!シャワー浴びてくる!」

 

to be continued…




ついにオルフェノクが登場!
というか、みんなオルフェノクなんですけどね(;'∀')

網浜麗華→網麗→もうれい→モーレイでした笑

4週連続更新!
どこまで伸ばせるか頑張ります(;'∀')



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5話

「あーあ、やっぱ人間相手だと呆気ねーよな」

「しょうがないじゃん」

「裏切り者との闘いだともっと盛り上がるんだけどな」

「まっ、SeaAqua見れただけどもいいんじゃないー?」

 

テレビの周りに集っていた生徒たちからはやや不満げな意見がちらほら。

それでもSeaAquaを見れただけでもヨシっというほど人気の高さ。

 

「SeaAquaやっぱ人気だねぇ~」

「嫌いな奴いないんじゃない?」

「今はSeaAquaはいいから、飯を食おうぜー」

「今日は何にしようかな~」

 

「おい!貴様ら午後の授業が始まるぞ、とっとと教室へ戻れ!」

 

怒声とも言える、ゲルグ大尉のよく通る声が食堂に響く。

 

「え?」

 

時計を見るとあと3分で昼休みが終わり、午後の授業が始まる。

 

「は?嘘だろ?」

「あらら~あと3分で始まっちゃうね~」

 

嘘であってほしそうな真希と相も変わらずのほほんとしている須美。

 

「ホントだ…」

 

わらわらと教室へ戻り始める生徒たち。

やがて、ほとんどの生徒が解散する。

 

「ふんっ。貴様らなぜ戻らない?」

「昼飯まだだからだよ」

「有杭!貴様…口の利き方に気をつけろ」

「すみません~すぐ戻ります~」

「貴様らいつも目に余るな。気をつけろよ?午後も訓練で鍛えてやる。遅れるなよ!」

 

カツカツと勇ましい足音を鳴らしながら、去っていく。

 

「ちっ。あのゴリラめんどくせーな」

 

「おい!有杭!お前は特に鍛えてやるからな!」

 

廊下からゲルグ大尉の声が聞こえる。

 

「も~真希も学習しようよ~」

「ホントホント。私たちも目を付けられるからやめてよね」

 

真希はバツの悪そうな顔をし、何も答えられなかった。

 

午後はトレーニングセンターでの授業だ。

少し食堂から離れている。

急がなければ。

 

 

 

 

 

「酒浦!唐田!有杭!遅いぞ!」

「す、すみません!」

「ふんっ。酒浦と唐田は大目に見てやる…が、次から気を付けろ」

「あ、ありがとうございます!」

「それでだ。有杭。貴様には特別メニューだ」

 

ゲルグは妖しく哂う。

ごくりと生唾をのむ真希。

普段は物怖じしない真希だったが、今回ばかりは何をされるのだろうかと臆している。

 

「ほかの者たちはここでトレーニングだ。放課になれば勝手に解散してもらっていい」

 

「はーい」

 

「有杭はこっちだ」

 

ゲルグにガチっと腕を掴まれ、トレーニングセンターから出ていった。

 

 

 

 

「真希遅いね~」

「もうしょうがないんじゃない?私たちは通常メニューで済ましてくれたけど、あれだと一方的にやられてんじゃない?」

 

時計の針は4時を指している。

 

昼飯を食べそびれた依玖と須美は食堂でかなり遅い昼ご飯を頬張っていた。

遅い真希を心配しつつも、空いたお腹を満たすため箸を進める。

 

「お…終わった…ぞぉ…」

 

ゾンビのようにフラフラの真希は2人の座るテーブルに倒れるようにして座る。

 

「おかえり~」

「ずいぶん扱かれてたようね?」

 

「あっ、あいつは鬼だよ…ごっ」

 

何かを言いかけた真希の口を片手でふさぐ。

 

「もう。学習しなさいよ」

「また、ゲルグ教官が来ちゃうよ~?」

 

「ほら、お腹空いてんでしょ?なんか買ってきてあげる」

「おぅ…サンキュな…」

 

その後、真希は5分も経たずしてものの見事に平らげたそうな。

 

to be continued…




5週連続更新!
ギリギリです(;'∀')

SeaAquaの人気は凄そうですねw
この世界ではそういったことが娯楽なのです…

次回は案の定また未定ですが、お楽しみに!!


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2章
1話


「おーい、風香手伝ってくれー!」

 

「はーい。今行くー」

 

お父さんから呼ばれると、エプロンを付けながら一階へ降りてくる。

 

「おっ。風香ちゃん」

「もう高校生になったんだねぇ」

 

「それ昨日も言ってたよ!」

 

「「はっははは」」

 

落ち着いた雰囲気の喫茶店。

古びたアンティークが置かれ、時間がゆっくりと流れる空間。

自然と人が集まり、談笑できる場所。

私はここが好きだ。

 

 

「じゃあ風香。これを3番さんに」

「はーい」

 

常連のお客さんたちといつものやり取りをしつつ、お客さんの頼んだものを運ぶ。

 

「お待たせしましたー。ホットコーヒーでございます」

 

テーブルに置くと、お客さんを見る。

 

コクっ。

 

軽く会釈してくれる。

見かけない顔だ。

私と同じくらいだろうか?

 

片田舎なせいか、常連のお客さんが7割占めている。

残りの3割は一見さんかなんか見たことあるような?って言う感じだ。

ただ、一見さんにしても同年代の男の子が一人でいるというのはかなり珍しい。

 

 

「マスターよ、早紀ちゃんは?」

「早紀はまだ帰ってきてないよ」

「なんでぇ、てめぇは早紀ちゃん派かよ」

 

早紀というのは私の姉の一人だ。

私たちは3姉妹。

一番上の姉と末っ子の私とは10個離れている。

 

常連のお客さんの相手をしていると、

 

カランコロン

 

入り口のドアが開く。

少し露出の目立つ茶髪の女性が立っている。

 

「いらっしゃ…あ!千夏ねぇ!!」

 

少し、雰囲気は変わったけど、私の姉だ!

 

「おっ!千夏ちゃんだ」

「おぉー久しぶりだねぇ」

 

「千夏。お帰り」

「うん。ただいま」

「千夏ねぇどうしたの?」

 

千夏ねぇと呼ばれた女性。

 

この家の長女・千夏。

東京の有名企業に転職し、上京して2年。

忙しいらしく、なかなか帰省できなかったが、ようやくできたようだ。

 

「どうしたんだい?連絡なしに?」

「うん。ちょっと驚かせようと思って」

「もー千夏ねえ。連絡してよー!」

「早紀、おかえり」

「早紀ねぇ、いつの間に⁉」

「へへっ。裏口からー」

 

後ろから千夏に抱き着く。

 

いつものようなこの雰囲気。

ゆっくりと時間が流れるが、いつの間にやら、もう店じまいの時間だ。

 

「はい、じゃあここに置いとくからー」

「この人にツケといてー」

「釣りはいらねぇえよ」

 

常連のお客さんが続々と帰る。

 

「あっ。はい。お会計ですね?350円です!」

 

同年代らしき子も会計を済まし、店を後にする。

さっきより、なんだか雰囲気が違うような…?

殺気というのだろうか、なんだか重い空気感を醸し出している。

 

「はい。丁度。ありがとうございましたー!」

 

最後のお客さんを見送ると、そそくさと店じまいをする。

 

「お父さん。ご飯食べたーい」

「はいはい。ちょっと待っててね」

 

早紀ねぇが椅子に座り、

ぶらんぶらん

足を動かす。

 

「ねえ、千夏ねぇいつまでいるの?」

「うーん。しばらくかな?」

「やったー!じゃあ東京の話聞かせて!」

「あっ、私も聞きたーい!」

「千夏も疲れてるだろうから、後にしてあげて」

「「はーい」」

 

久々に会った千夏ねぇ。

都会に馴染んだのか、この片田舎にいた時とは少し違い、大人びた印象。

雰囲気も変わったように思える。

しかし、なんだろうさっきから背筋とでもいうのか何か冷たいものが…

風邪の前触れだろうか。

 

それはさておき、千夏ねぇからどんな話を聞けるか、楽しみだ。

 

to be continued…

 




6週連続(ry
というわけで、今回から新章になりました。

ん?全くと言っていいほどパラロス感もないし、555感もないw
さてどのようなお話になるのか…
私自身も楽しみです(*'▽')

3人のビジュアルはできてます( *´艸`)


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2話

「ごちそーさまでした!」

「千夏、久々の実家でのご飯はどうだった?」

「うん。お父さんのご飯はやっぱおいしいよ」

「ねー千夏ねぇ、東京の話!東京の話!」

「うん。お母さんに挨拶してからね」

 

千夏はそういうと、リビングから隣の和室に入る。

 

「お母さん、帰ってきたよ」

 

目を瞑り、手を合わせる。

 

仏壇の写真には千夏、早紀、風香に似た女性が微笑んでいる。

 

もちろん。彼女たちの母親だが、風香の小さいころに病気で亡くなっている。

 

 

「さっ、東京の話聞きたい?」

「うん!じゃあ、東京って人いっぱいなの?」

「もう一杯も、一杯よ。減らしても文句なしってくらいいるよ」

 

そこからは風香と早紀の質問攻めだった。

 

「彼氏できた?」

「もう、作ってる暇なんてないくらい忙しいよ。それはそうと早紀は処女を卒業できたの?」

「なっ!?」

 

早紀の顔が赤くなる。

 

「早紀ねぇはねぇ、去年卒業したよ!」

「ちょ、いらないことを…」

「ふふ。よかったね、早紀。私が上京するときは、初心(うぶ)な娘だったけど、大人になったんだね」

「い、今は千夏ねえのこと聞いてるんだから」

「私だって、この町のこと2年間知らないんだから、聞きたいな?」

「じゃあ、何でも聞いて、千夏ねぇ」

 

千夏が聞きたいことを2人に質問する。

 

「へーそうなんだ。まだ続いてんだ」

「い、ぃぃじゃんんか…」

「やっぱ、まだ初心だね」

 

彼氏のことを問い詰められ続けた早紀のライフはゼロに近かった。

 

「千夏ねえこそ、なんか雰囲気変わった?」

「そうそう!私も思った!」

「そうかしら?」

「絶対、男だと思ったんだけどなー」

「ふふ。残念。そんな暇ないのよ」

「なんていうか、纏う雰囲気違うよね」

「こんな、露出のある服とか着てなかったじゃん!ちょっとずらせばおっぱい丸見えだし」

「都会はみんなこうだよ?やめて、引っ張んないで」

「都会ってすげえや」

 

そう言いながら、千夏の服をずらそうとする早紀。

 

ものともせず、ビンタを繰り出す千夏。

 

バチーン!といい音を奏でる先の左頬。

 

「う、うーん。なんだろうね?」

「新しい私に生まれ変わった…かな?」

「なんだよーそれー」

「ははは」

「ふふ」

 

軽くあしらわれる早紀を千夏と風香が笑う。

 

「千夏ねぇはいつまでいるの?」

「ん?期間はまだ決まってないよ」

「お休みなのに?」

「うーん…お休みってよりはお仕事も兼ねてるかな?」

「お仕事なの?」

「そうそう」

「そういや、」千夏ねえはどんな仕事してるの?」

「ないしょー」

「えーいいじゃんか」

「まあ、そのうち分かるかもね?」

「えー。どういうこと?」

「ないしょー」

「またそれかよー」

 

その時、下の階から電話が鳴る。

しばらくすると、お父さんが話す声が聞こえるが、何を話しているか分からない。

 

そして、数分経った頃

階段をトントントンと、上がってくる音がする。

 

「早紀。風香。高校から電話だったんだけど、生徒さんの何人かが行方不明だそうだ。

明日、全校集会あるみたいだから、早めに登校するようにってそうだ」

「行方不明?」

「なんだ、それー?」

「詳しいことは話してなかったから、分からないけど、心配だね。3人とも気を付けなさい」

「「「はーい」」」

 

「行方不明ってなんだろうね?それに何人かってのも…」

「物騒ー」

「まっ、詳しいことは明日の全校集会でわかるんだろうけどー」

「怖いわね…」

「この片田舎にしては珍しい。老人が徘徊して行方不明ってのはたまに聞くけど、同じ学校のやつがね…?」

「物騒な世の中だね」

「さっ、明日も早いし、お風呂入って寝るか」

「うん」

 

3人は不安を抱きながらも床に就いた。

そして、風香はどこかしらからか何か変な空気が漂っているように感じた。

それと同時に例えようのない悪寒を感じる。

背中に何か冷たいようなものが落ちてくるかのように…

 

to be continued…




7週連続!
続けていきたいですね(;'∀')

2話にして何やら不穏な空気が…
次回以降どうなっていくのか、私にもわかりません…(まだ書けてない)

それでは次回もお楽しみに^^


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3話

「で、あるからして…」

 

つまらない数学の授業。

いや、つまらないのはこの町か。

 

今朝の全校集会。

つまらなかったこの町に事件を呼び起こさせる。

何かワクワクするようなこと。

 

生徒が何人か行方不明となったそうだ。

その生徒たちも素行が悪かったせいか、生徒たちには思ったほど深刻ではない空気が流れていた。

教師たちの間にも心配する素振りを見せる者もいるが、大多数は手のかかる生徒がいなくなって清々しているのではないだろうか。

この集会も学校側のポーズだろう。

 

ただそれだけだった。

集団で家出しただの拉致されただの、とにかく警察が捜査しているから君たちは心配しなくていい。

それから、下校はなるべく友達と帰ることと夜道は一人で絶対に出歩かないとのお達し。

 

それだけ。

つまんない。

もっとも、刺激が足りていない私にとってはワクワクを返せと思うのだが、

その他大勢の生徒にとっては気にも留めていない様子だ。

 

ガッカリ、残念。

 

「あーあ、東京行きてぇ」

「ねぇねぇ」

「ん?」

 

右隣の生徒から話しかけられる。

友達のあーこだ。

 

あーこってのはあだ名で別に本名じゃない。

 

「千夏さん帰ってきたって本当?」

「あぁ、帰ってきたよ」

「東京行ってから初めてじゃない?帰ってくるの」

「そうだよ」

 

そういや、あーこも千夏ねえによく遊んでもらってたっけ?

 

「で、あんた卒業後はどうするの?」

「ん?東京行こうかな…」

「えー地元残らないの?」

 

「早紀は東京行くんでしょ?」

 

不意に背後から声をかけられる。

 

「晴美!」

「え、お前授業中だぞ?」

「もうとっくに終わって昼休みだぞ?」

 

周りを見渡すと、ざわざわとしている。

空席も目立つ。

いつの間にやら昼休みになっていたようだ。

 

「ホントだ…」

「それより昼飯食べよう」

「さんせー」

 

「ねぇねぇ、どう思う?」

「何が?」

「今日の集会の話!」

「別に、期待外れって感じ」

「なんでー?」

「なんでって…そりゃあつまらなかったからでしょ」

「もう、早紀はこの町が好きじゃないの?」

「うん」

「即答…」

「あ゛ぁーーーーーー東京いぎでぇ・・・・」

 

そういいながら、空気の抜けたように机に突っ伏する。

ダラーンと両腕が垂れる。

 

「なんで、そんなに東京いきたいの?」

「ここがつまんないから」

「私はここにしかいないよ!」

「あーこ、つまんないからいらない」

「え゛っ…」

「東京なんて人が多いだけじゃん」

「そ、そうそう」

「人が多い分なにかありそうじゃん?」

「千夏さんについてったら?」

「そうしたいよー…」

「てか大学受験どうするの?」

 

そうだ。

私今高校3年生だった。

 

「うーん…」

 

完全に思考が止まってしまった。

つまんないとか考えている場合じゃなかった。

 

「まっ、大学なら東京でもいいと思うけどね?」

「それと早紀の彼氏はどうするの?」

「あっ…」

「えっ」

「忘れてたの…?」

「そ、そんなことはない」

 

悩ましい。

刺激を求めるなら絶対に東京の大学だ。

そこは生憎千夏ねえがいるから、一緒に済ませてもらえれば大丈夫だろう。

 

まずは千夏ねえに相談だな…

それから、お父さんに相談してみようか…

 

 

to be continued…




あー途切れてしまった…
と言うわけで、また一から続けてみます(^^;

どんどんキャラが出てきますが、だれがどんな人生を送るのか、まだ私にもわからない…

早紀ねぇはどうなるんでしょうねw
また次回もお楽しみに('ω')ノ


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4話

「えー今日は突然ですが、転校生を紹介します」

 

担任にそう言われ、少しびっくりする。

そこには少し茶色がかった髪に鋭い目つきの少年。

 

「それじゃあ、自己紹介して」

 

「…タクヤ」

 

なんだか不愛想な感じだなというのが第一印象。

お前らとは馴れ合いたくねーよ、という雰囲気を醸し出している。

 

というか、声が小さすぎて苗字聞こえなかった。

 

「じゃ、じゃあ冴島の後ろの席に座ってね」

 

私の後ろかよ。

 

「よろしくね。私は冴島風香」

 

ウスってな感じで首を縦に振ってくれた。

あれ?でもどこかで…?

でも、まあいっか。

 

誰とも馴れ合わないぞ、という雰囲気を醸し出しながら、座席に座る。

近寄りがたい雰囲気のせいか、特に会話もなくそのまま昼休みを迎えた。

 

いつの間にやら、転校生のタクヤはどこかへ消えていた。

 

 

「おーい、風香ご飯食べよっ」

 

友達の友子がいつものように誘ってくる。

そして、後ろの席に座る。

私は後ろに向いてお弁当を広げる。

 

「ねえねえ、千夏さん帰って来たんだって?」

「あーそうなんだよー。突然帰ってきてビックリした」

「東京行ってから初めてだもんね」

「あれ?何で知ってるの?」

「え、あ、なんか近所の人が見かけたって、お母さんが言ってた」

 

あのカッコは目立つよねと思いつつ。

田舎特有の情報網だな…

早紀ねぇはそういうところとかが嫌って言ってたなぁ…

 

「てかさ、この時期に転校生ってかなり珍しくない?」

 

そう言われてみればそうだ。

高校一年生の7月の夏休み突入する直前という、正直意味の分からない時期。

高校生になって3か月しか経ってないし。

 

「なにかやらかしたのかな?」

「んー。若干不良っぽいのかもね?」

 

「お前らには関係ねーよ」

 

ビクッと友子と一緒に肩を震わせる。

 

「あ、ごめんね」

 

友子は席の持ち主が帰って来たことによって、席を返さなければいけない。

 

「昼休み終わるまで、席を外すから座っててもいいぞ」

「あっ、まっ…」

 

一言謝罪を入れようとするが、席の持ち主はそそくさと立ち去っていった。

 

その後は放課後までまたもや特に会話はなかった。

 

「ん~…終わったー」

「おーい。タクヤ君」

 

「なんだよ?」

「さっきのお詫びに校内案内してあげよっか?」

「いや、いらねぇよ」

「えーいいじゃんーせっかくなんだからさ!」

「えっちょ…」

 

嫌がる素振りを見せるタクヤを半ば強引に腕を引っ張り、校内を引きずり回すようにあちこちと巡りまわる。

 

教室に戻ってきた頃には日が傾き、教室を茜色に染めていた。

 

「あー終わっちゃったね…」

「もう、下校時間過ぎそうだよー友子、張り切りすぎ」

「ごめんごめん」

ペロッと舌を出して謝るお茶目な一面を持っている。

 

「タクヤ君も友子がごめんね」

「いや、いいよ。俺友達とか作るの苦手だし、いい経験になった」

 

恥ずかしそうに頬を少し掻くタクヤ。

 

「友達か…」

「?どうしたの?」

 

少し意味ありげに言う友子に風香は恐らくそうであろうと、

 

「ま、友達からでもいいんじゃない?」

 

そっと、小声で言う。

 

「そ、そんなんじゃないよ!」

「ん?どうした」

「いや!何でもないから!じゃあ、私帰るね!」

「あ、ちょっと友子!」

 

頬を染めた友子は嵐のように去っていく。

 

残された二人。

 

「それじゃっ、帰ろうか?」

「ああ」

 

to be continued…




タクヤ!
巧じゃないよ( *´艸`)

恋が始まる予感??
あれ?これラブコメだっけ??

次回もお楽しみに~


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5話

「あら、そう。そのまま監視をお願いね」

 

くらい廃工場。

通話を終えると、女性は正面に向き直る。

 

そこには縛られた男女2人。

 

「さてと、このエージェントさんたちはどうしましょうか?

ふふ。こんばんは。あなたたちは東京から来たエージェントかしら?」

 

両足と後ろ手に縛られ、猿轡をされた2人は女性を睨めつけることしかできない。

廃工場の屋根がところどころ抜け落ちていて、2つのスポットライトのように2者を月明かりが差す。

 

黒を中心に上下にターコイズブルーの線が入ったチューブトップに白のショートパンツ。

これが女の服装だ。

豊満な身体を持つ女は幾度となくハニートラップに使ってきた。

 

「さてと…」

 

拘束する男にチューブトップから覗かせた双丘を押し付ける。

 

「ねぇ?あなたたちは東京から来たのよね?それで目的は私?」

 

男は「ヴうううう」と猿轡をされているせいで、答えようにも答えられない。

さらにギュッと頭を胸に包み込む。

心なしか男の呼吸がさらに荒くなっていく気がする。

身体全体をジタバタさせるが、女はそんなの関係ないと言わんばかりに胸を押し当てる。

男は涙目になりながらも抗おうと必死だ。

 

そうしているうちに、男は大きく目を見開き、下半身がビクッと大きく跳ねる。

そして、ビクンビクンと継続して痙攣するかのように跳ねている。

やがてそれが、ゆっくりになっていく。

 

「ふふ。どうだった?」

 

女の問いかけは優しかった。

包み込まれるような優しさ。

 

ドンと男を床に押し倒す。

 

「さて、次はどう逝きたいかしら?」

 

馬乗りになり、ギュッと男の耳元でささやく。

猿轡されている男には唸るような声を出すことしか許されていない。

女は男の目線を辿る。

 

「そっちはさっきイッたでしょ?本当はもっと楽しみたいのだけど…」

 

女は憂いを帯びた表情を見せると、

立ち上がり、グイっと右手で男の胸ぐらをつかみ上げる。

 

なかなか体格の良い方の男だが、それに対し女はヒョイっと軽々と片手で持ち上げる。

左手で髪を掴むとそれを一気に捻る。

 

ゴキッ

 

乾いた音が廃工場に響く。

 

ドサッ

 

男を地面にひれ伏せさせると、もう一人の方の女性エージェントの方に問いかける。

 

「生憎、あまり時間がないのよね…貴女はどうしましょう?」

 

「ヴううんんん」

 

涙を流しながら、必死に髪を振り乱す。

 

「誰?」

 

女は入り口物陰に目を向ける。

 

入り口に月明かりが差している。

そこには修道服を身にまとった、女性とも女の子ともとれる人物が立っていた。

 

それはとても美しい。一つの芸術作品として完成された光景。

青白い月明かりがピッタリ似合う人物だ。

銀色の髪に青い目。

 

迷える者たちを今まで幾度となく導いてきたのだろうか。

しかし、その瞳の奥底からは冷たく、冷徹な印象も受ける。

 

「その者をどうするのですか?」

 

あくまでも修道女(シスター)

その問いは慈愛にあふれ、先ほどの女と似通った、包み込まれるような感覚が突き刺さる。

 

「貴女は……敵…?それとも味方…?」

「初めまして。冴島千夏さん。私はシスター・エレーナ。皆さんはそう呼びます」

「……?シスター…エレーナ…?」

「えぇ。そちらの男性は旅立たれてしまったのですね。さあ、旅立ちにお祈りを捧げましょう」

 

シスター・エレーナと名乗るシスター(修道女)は両手を組み、祈りを捧げる。

 

「何のつもりか知らないけど、敵なの?味方なの?」

 

千夏と呼ばれた女性に問いかけられると、祈りを止める。

 

「私はあなたがおっしゃる敵か味方か分かりません。ですが、私はスマートブレインに使える者であるということはハッキリしています」

「スマートブレインに使える者…じゃあ、味方っていうことでいいわね?」

「ええ、貴女もそうであるのなら」

「じゃあ、とっととこいつを始末しないと」

「それはなりません」

「どうして?」

 

千夏はなぜ?と言わんばかりに問いかける。

 

「彼女の命は十二分に価値があります。我々は慈愛あふれる存在。それも人間に対して一番発揮されるのです」

「価値?」

「ええ。彼女が持っている秘密を色々聞かせてほしいだけなのです」

 

シスターエレーナは拘束されている女性エージェントを軽々と持ち上げる。

いつの間にか気を失っているようだった。

クルっと千夏の方へ振り向く。

 

「貴女もついてきます?」

 

to be continued…




いやーー
フェロモンやばそう( *´艸`)

ていうか、千夏ねぇ!
そう…そうなのね…

謎のシスターも出てきたり、謎の組織のエージェントも…
この章も動き出しそうな予感!

それでは次回もお願いしまーす!


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6話

「さぁ、着きました」

 

町はずれの寂れた教会。

2人組の女性の姿がある。

片方はシスターだが、もう片方は露出の激しい格好をし、この場所にそぐわない。

シスターも服装は違和感こそないが、別の女性を肩に担いでいることによって、怪しさ満点だ。

 

キィ…

 

使われなくなった外観をしていたが、木製の扉を開けて中に入ると奇麗に整頓されている。

整列された椅子を両側にその間を祭壇に通ずる通路が設置されている。

祭壇の上に祭られているのは十字架…

 

 

ではなく絡み合った3つの矢。

 

 

彼女たちの身体にも例外なく刻まれている。

 

祭壇へ向けて、シスターが歩みだす。

歩みを進めるごとにコツコツと教会に足音がよく響く。

中は広い空間のせいか、真夏の夜という蒸し暑い時期にもかかわらず、ひんやりとしている。

 

後ろを追従するように女性が歩き出す。

 

たゆんたゆんという効果音が聞こえてきそうなほど、揺れている。

 

「それはなんとかなりませんか?」

「貴女もだけど?」

 

シスター自身も胸元が見える修道服を着ているせいか、同じく揺れているのが確認できる。

 

「まあいいでしょう」

 

自分から投げかけてきてなんだろうという疑問を抱きつつ歩き出す。

 

祭壇の後ろに扉があり、それを開ける。

 

中を覗く。

 

そこにはベッドの上に全裸の女性が寝かされ、上から男が覆いかぶさり一生懸命腰を振っている。

 

「なんだ!?てめぇら!」

「え?なに?」

 

女性も上体を起こし、開けられた扉を注視する。

 

「あら。不埒ですね」

 

「へっ。シスターかぁ。ってかそっちの女エロくね?」

「ちょっと私がいるでしょ!ここ使われなくなってたと思ったのだけど…」

 

シスターはお祈りするように両手を組み目を瞑る。

 

「あん?何祈ってるんだ?」

「あなたたちの冥福をです」

 

シスターは組んでいる両手をシュッと振りほどくと、金色に輝く光線が発射される。

裸の男女を貫く。

 

胸のあたりに青い炎をあげたかと思うと徐々に肌色が灰色に変化する。

身体が徐々に灰色の細かい粒子となって、サラサラと崩れ去っていく。

2人は崩れ去る自らの身体を最後の一粒となるまで、驚愕の表情で見つめながら舞い散っていく。

 

控室のような小部屋には先ほどまで2人の生きた人間であった灰が舞い上がっている。

 

「へぇ、シスターはオリジナル?」

「ええ、まあ」

「少し汚れていますが、こちらへどうぞ」

 

シスターはさっきまで男女の営みが行われていたベッドに担いでいた女性を横たえさせる。

 

「さて、この女についてですが…」

「奴らのエージェントでしょ?」

「ええ。そのようです。あの男はただの人間だったようですが、この女の素性は知れてませんね」

 

ちらっとエージェントの女に目をやる。

 

「男だったら、ここで楽しめるんだけどなー」

「ここは聖なる場所です」

「性なる場所?」

「貴女には教育が必要のようですね?」

「じょ、冗談よ…」

「でも、あながち間違いではないのかも知れませんね。

先ほどの者たちのように使われなくなったと勘違いして侵入するものがたまに存在します」

「まっ、ラブホ代わりには使えるよね。ベッドもあるし」

「ここはこの町の迷える者たちのためにあります。

力を使おうとしないものを導くための場所」

「ってことは、ほかにもいるんだ?」

「ええ。少し離れたところで共同生活しています」

 

シスターはその場所であろう建物がある方向を見やる。

 

窓の外は月明かりが青白く照らしている。

それを暗い小部屋に明かりの代わりに窓か照らしている。

 

それも相まって、シスターは酷く冷酷な印象をさらに増す。

 

「さてと、そろそろこの女性から話を聞かなければなりませんね」

 

すっと立ち上がり、ベッドに横たえている女性の前に立つ。

 

to be continued…

 




9月最後の投稿です。
R-18タグつけといたほうがいいのかな?
という展開も期待しつつ…

今後ですが、基本週一回の投稿で月4話投稿できたらと考えています。

次回はもしかすると、今週中に投稿するかもです。
週一回投稿するとして、曜日固定の方がいいのか…
それならば、何曜日がいいのでしょう…


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7話

あの全校集会から3週間。

この町の行方不明者は増え続けているようだ。

 

いつからか、都市伝説的な噂が流れていた。

 

この町には灰色の怪物が密かに襲ってくるというのだ。

それは人間に擬態して、時には親しい人、まったく見ず知らずの人。

そうやって、近づいてくるらしい。

出会ってしまうと、もれなく襲ってくる。

襲われた人間は灰になって死んでしまうとも、怪物が自分に擬態して成り代わって生活をして人間を襲い続けるやら自分自身が同じ怪物となってしまうとも言われている。

 

早紀ねぇがワクワクするような話題だけど、あんまり興味がないらしい。

何度かこの話題を話したけど、毎回素っ気なかった。

 

今日は友子が休みだ。

それに先生のお使いやら頼み事で遅くなってしまった。

 

「あっ、タクヤくん!」

「あぁ、冴島か」

「今日は友子が休みだったから一緒に帰る人いないんだー。タクヤくん一緒に帰らない?」

「ああ、途中までならな」

 

丁度良かった。

 

「こんな時間まで何してたの?」

「ちょっと野暮用だ」

「あっ、そういえばタクヤくん知ってる?」

「何がだ?」

「都市伝説だよ!都市伝説!」

「都市伝説?」

「うん!何かねこの町って最近行方不明者が多発しているでしょ?」

「…ああ、そうだな」

「?」

 

なんだろ?タクヤくん歯切れ悪いな。

いつも、ぶっきらぼうで不愛想なタクヤくんだけど、話題を振れば最低限答えてくれる。

外見も相まってクラスのみんなはあまり近寄りがたい雰囲気だ。

いけ好かない奴だななんてことも。

まっ、最初に行方不明になった不良たちがいたら確実に校舎裏に呼ばれていただろうな、とは思う。

 

「あれってね、こういう夕暮れ時や夜遅い時間に灰色の怪物が現れて人間を襲ってるんだって!」

「そうか」

「それでね、襲われた人間は灰になって死んでしまうとも灰色の怪物になってしまうんだって!」

「…」

「その怪物は普段は人間に擬態していて、それは全くの見ず知らずの人だったり、親しい人だったりすんだって!」

「さっきからだってばっかりだな」

「だって、都市伝説だもん!」

「都市…伝説か…」

 

少し溜めて、どこか何か思うことがあるのか、その一言が印象に残る。

 

「タクヤくんはどう思う?」

「悪いことは言わねぇ。あんまり関わるな」

「もしかして、タクヤくんってこういうの好きなの?」

「そういうわけじゃねぇんだ」

「なんか、タクヤくん変だよー」

 

私は笑いながら歩みを進める。

タクヤくんとはたまに一緒に帰ることはあるけど、頑なに家を教えてくれないんだよね。

もうすぐ、いつも分かれている三叉路だ。

周りは田んぼだらけの畦道。

すごく田舎臭いし、早紀ねぇの気持ちも少しはわかる気がする。

すっかり日が落ち、田んぼだらけの畦道ということもあり、かなりの暗さだ。

田んぼの向こうに建っている民家のぼんやりとした明かり。

その三叉路のY字になっているところにポツンと街灯が建っている。

 

「ん?」

 

街灯の下にだれか立っている。

 

「あっ、友子!」

 

見知った顔があり思わず駆け寄る。

 

「どうしたの?今日休んじゃって」

「あぁ、風香もいたの?私タクヤによって用があるの」

「おい、そいつから離れろ!」

「え?」

 

タクヤくんの叫び声にふり返る。

が、目の前の友子から発せられる嫌な雰囲気を感じ取り、対面にいる友子の方に向き直る。

 

愕然とするよりも理解しがたい光景が広がっていた。

 

友子の目が白く濁ったかと思えば、顔に奇妙な模様が浮かび上がってくる。

浮かび上がったも模様が縁取られていき、友子の身体が激しく鈍色に発光する。

発光とともに形容しがたい音が聞こえ、縁取りが膨張。

それに呼応して、友子の身体も膨張し、肥大化する。

 

やがて発光が止むと、その場には友子とは似ても似つかない存在が立っている。

人間よりも大きい体躯にゴツゴツとした鎧を身に纏った灰色の異形。

 

これって、都市伝説の…

 

「オルフェノク!!」

 

to be continued…




友子…お前…
今回は風香視点でのお話でしたが、まさかのオルフェノクにw

次回もお楽しみに!


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8話

「オルフェノク!!」

 

タクヤくんはとっさにそう叫ぶ。

それと同時にグイっとタクヤくんに腕を引っ張られる。

 

「痛っ」

 

ドスンと尻もちをつく。

 

「悪い。後で謝る」

 

そういうと、カバンからガチャガチャと何かを取り出し腰に巻き付ける。

 

二つ折りのガラケーみたいなものを3回プッシュし、

 

 

「変身!!」

 

 

それを腰に巻いたベルトのようなものに装着。

 

タクヤくんの身体が光に包まれる。

 

そこにいたのは戦隊ヒーローとでもいうのか、そういった存在が立っている。

 

『ファイズ…ベルトをよこせ!』

 

街灯に照らされた怪物の影が青白く発光し、友子の裸体が投影されるかのように映し出す。

 

ファイズと呼ばれた存在。

もとい、タクヤくんはそれに反応せずに先制攻撃をする。

 

バチンっと火花を散らすかのようにパンチを繰り出すが、怪物も一筋縄ではいかない。

防戦の一方だった。

 

一瞬のスキをついてファイズに蹴りをかます。

それでも、ファイズには効いてはいない様子。

 

怪物はそれに驚いたのか一瞬たじろぐ。

 

そこからは呆気なかった。

 

怪物の下腹部に3つの矢のようなものが絡み合った紋様があるのを見て取れる。

ファイズは重い一撃をそこへパンチとして繰り出す。

 

『うっ…』

 

怪物は一瞬うめき声をあげたかと思うと、背後の街灯に直撃する。

反動で、街灯は少し斜めに折れ曲がる。

 

直撃した怪物はそこから1秒もなかった。

青い炎をあげたかと思うと、苦しそうなうめき声をあげながら、サラサラーっと灰となって崩れ去った。

 

気が付くとファイズと呼ばれた存在はそこになく、ベルトをギュッと片手で握りしめたタクヤが立っていた。

 

「タクヤくん…」

 

そう一言絞り出すのがやっとだった。

 

「おい、冴島」

「なっ、何?」

「ごめん。それと、約束守れるか?」

「え、う…うん」

「なら、今のことは誰にも話すな。それと忘れろ」

「忘れろって、無理だよ!友子は?友子はどこに行ったのよ!!」

 

気付けば、タクヤの胸ぐらを掴んでいた。

タクヤは涙目になりながら自分のことを掴んでくる少女の顔を見れなかったのだ。

まあ無理もない。

その少女の親友の命を消してしまったのだから。

 

うっ、うっ、と涙を流し始めた少女にどう答えたらいいのか分からない。

タクヤ自身、幾度となく戦いに身を投じてきた。

それ故、この少女を巻き込みたくなかった。

 

「わりぃ…今はそれしか言えないんだ」

「今はそれだけって…」

「今日はもう遅い。明日放課後に時間あるか?うちに来い。話す。それでいいか?」

「…うん」

風香はコクっ頷く。

 

「じゃあな」

 

それだけを言うとタクヤはスタスタと、自分の家があるであろう方向に歩き出した。

風香はタクヤの姿が小さくなると、急に一人になった心細さと恐怖心からすぐにその場を後にする。

 

家に帰ってからも、頭の中がもやもやする。

明日になれば分かるのだろうけど、今日あったことを忘れろだなんて絶対に無理だ。

 

親友が化け物になって襲ってくる。

都市伝説は本当だったの?

友子…生きてるよね?

 

もう、グシャグシャになりそうな思考で頭はパンク寸前だった。

そうして、考えているうちに強制的なシャットダウンかのように眠りについていたのであった。

 

to be continued…




タクヤなに一人にさせてんだよと思いつつw
友子ー!なぜだ・・・

とまあ何も知らない風香ちゃんはこれからどうなっていくのか。
知らずに生きていくのか、タクヤと共にするのか・・・
それとも・・・

さて、いろいろ展開が思いつきそうですが、今日はこの辺で。
次回もよろしくお願いします。


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9話

次の日。友子は学校に来ていなかった。

連絡を取ろうとしても電話には出ないし、既読もつかない。

 

他の友達に友子と喧嘩でもしたのか?

と投げかけられるが、正直「友子」というワードを聞くとビクッとする。

 

なんとか、それを一日乗り切って放課後を迎える。

 

他のクラスメートは意気揚々と部活動へ行ったり、家に帰ろうとしたりといつもの光景が広がっている。

 

「おい、冴島」

「う、うん」

 

タクヤに促され、後をついていく。

昨日とは打って変わって、お互い無言。

気まずく、重い空気が流れている。

 

しばらく歩くと、あの三叉路に差し掛かる。

まだ日があり、街灯には光は灯っていない。

 

斜めに傾いた街灯。

昨日、友子が変化した怪物。

それが、直撃したところから斜めに傾いている。

 

分かっていたことだけど、昨日あったことは夢じゃない。

本当にあったことなんだ。

 

でも、あの怪物が友子だったとしても来ていた服も全く痕跡を残さずに灰と化して消え去った。

怪物だったその灰も今は全くない。

恐らく風で流されたのか人が通るたびに灰が踏まれ、地面の土と同化してしまったのだろうか。

 

三叉路をいつもとは違う方に進む。

通り過ぎても一言も交わさない。

それどころか、心臓の動悸が激しくなる。

 

「着いたぞ」

「ここが…」

 

学校以来の会話だ。

 

2階建てのいたって普通の家だ。

タクヤが入れと言わんばかりに入り口を開けて待っている。

 

「お邪魔します…」

 

控えめに小さくそういうと、玄関で靴をそろえ上がる。

 

「おい、帰ったぞ」

 

タクヤがそう言うと、家の奥から女性が一人出てくる。

雰囲気はタクヤに似ている。

金髪に黒のメッシュがかった髪。

容姿だけでも不良っぽさを醸し出している。

 

風香と目が合うと少し「あっ」という表情を見せた。

 

「そうか、この子が…」

「あの、冴島風香です…えっと、タクヤくんとはクラスメートで…」

「聞いてるよ。さっ上がりな」

 

女性に促され、応接間のようなところへ案内される。

 

「どうぞ。ジュースでよかった?」

「は、はい」

 

目の前にジュースを置かれ、それを一口飲む。

 

「それじゃ、ごゆっくり」

 

一言そういうと女性はパタリとドアを閉める。

 

「ね、今のお母さん…じゃないよね?」

「ああ、俺に両親はいないからな。あいつは親戚の従姉だ」

 

風香は納得がいく。

母親にしては若かったが従姉ということで、割と合点行くが何か色々複雑な事情があるのだろう。

 

「それで、そんなことを聞きに来たんじゃんないんだろ?」

「そう…そうよ!友子は!あの怪物は!なんなの!」

 

「おい、あんまり大声を出すな」

「ご、ごめん」

「順番に話していくから安心しろ」

「うん…」

 

「そうだな…冴島はゾンビって知ってるか?」

「え、死んだ人間が甦るっていうか、噛まれたりすると自分も感染してゾンビになるっていうやつだよね」

 

アメリカのB級映画でよく見る奴だ。

それと何か関係があるのだろうか?

 

「あいつらはオルフェノクっていうんだ」

「オルフェノク…?聞いたことない…」

「だろうな。知っているとすれば、お前も奴ら側だからな」

「で、そのオルフェノクってのとゾンビがどう関係あるの?」

「ゾンビと同じだ。死んだ人間がオルフェノクとして甦る」

 

死んだ人間が甦る…

 

「奴らは人類の進化系と自称しているが、実際は人間を襲う怪物だ」

「でもなんで人間を襲おうとするの?」

「さあな。オルフェノクになったに人間は力に溺れるのさ」

「力に…」

「それと、奴らに襲われて死んだ人間もオルフェノクとして甦る。灰となって死ぬ奴の方が多いがな」

 

あれはオルフェノクという存在らしい。

死んだ人間が怪物となって甦った結果。

ゾンビとは違い、人間と同等の知能を持っているのが厄介だそうだ。

奴らは仲間を増やすために人間を襲っているらしい。

人間を襲って、殺害するとオルフェノクになるが、なれない人間もいる。

なれなかったらどうなるか。

灰となってこの世から消え去ってしまう。

あの灰色の怪物に襲われてしまえば最後。

自分も灰色の怪物になるか灰になるかだ。

 

「じゃあ、あの怪物は友子自身だったってこと?」

「ああ、気の毒だが、事実そうだ」

「そんな…」

 

思わず涙が零れる。

一縷の望みをかけていたが、あの怪物は友子自身で、私たちを襲ってきた。

 

「あの様子だと覚醒したばかりだな」

「じゃあ、最近友子の身に何かあったってこと?」

「あぁ、大方そうだろうな」

「一昨日まで今まで通りだったのに…」

「そういうことだ。オルフェノクとなっても元の人間の姿で紛れ込んでいる」

「学校にもいるの…?」

「それはわからねぇ。ただオルフェノクになったやつがいる限り、警戒しておかないとマズイ」

「怖いよ…いやだよ…」

「安心しろ。俺がいる限り守ってやる。さっきも言ったが、オルフェノクとなった人間の大半は力に溺れ、人間に対して牙を向く」

「友子も?」

「例に漏れずといった感じだ。しかし、あいつは『ベルトをよこせ』と言っていた。恐らくあいつをオルフェノクに覚醒させた奴がけし掛けたり、命令したんだろう」

「夢じゃないんだよね…」

「ああ、現実だ。もう遅い、送っていくから帰れ」

「まだ聞きたいことがあるけど、また今度いい?」

「ああ」

 

風香はすっと立ち上がり、玄関へ向かう。

 

「話はもう大丈夫なのか?」

「はい…お邪魔しました」

 

ペコリと頭を下げる。

 

「そう…また何かあった来なよ」

「ありがとうございます」

 

タクヤの従姉に再び頭を下げると、玄関を出る。

 

茜色の空が広がっている。

もうすぐ日が完全に沈む。

 

「奴らは日が落ちると活発になる」

「うん、わかった…」

 

あの三叉路まで差し掛かる。

 

「もう、ここまでくれば大丈夫だよ。ありがとう」

「いいのか?送ってくぜ?」

「大丈夫大丈夫!それじゃあね」

 

脱兎のごとく駆け出す風香。

 

「おう、気をつけてな」

 

聞こえたかはわからないが、昨日とは反対にタクヤは風香の姿が小さく見えなくなるまで見送った。

 

to be continued…




お待たせです。

お気に入り登録者が10人超えてました!
それと評価が3つも付いてます!!
ありがとうございます!!!!!

さて風香とタクヤ、この二人は今後どうなっていくのでしょうか。

次回もよろしくお願いします。


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10話

「あら、そう。友子ちゃんファイズにやられたのね。あなたもこちらに戻ってきていいわよ。ああ、それとあれは回収しといてね」

 

携帯電話を切る。

 

「ファイズはやはりこの町に?」

「そうみたい。私を追ってきたのかしら?」

「後始末は楽そうね。ご家族はすでに友子ちゃんに処分してもらっているし」

「ベルトはどうするのですか?」

「うーん。この町はもう用済みかなー?東京に戻ろうかしら」

「ファイズを野放しにするのですか?」

「まっ、無駄に戦って、せっかく手に入れた戦力を減らすのもね」

「確かにそうですね」

 

町はずれにある教会の一室。

露出のある女性とシスターが会話をしている。

 

ぱっと見れば、露出のある女性が懺悔しに来たのだろうかとも思える一面だが、なにやらそうではなさそうだ。

 

 

「この数週間で行方不明者は50人以上か…」

「そろそろ隠し切れませんね」

「この女も用済みかな?」

 

椅子に縛られたエージェントの女性。

 

「あんたたちになんか屈しない!」

「ふぅーん。ふふ。これはまだ序章の序章よ。これからもっと面白いことになるよ」

「そんなことはさせない!」

「ファイズの秘密を教えてもらいたかったけど、もういいや」

 

パチンと指を鳴らす。

 

バン

 

ドアが開く。

 

部屋に入ってきたものはおおよそ人間の形をしていない。

灰色の大きな鎧を身に纏ったような存在。

 

「くっ」

 

エージェントの女は苦虫を潰したような顔を見せる。

 

「最後に聞きますが、こちら側へ来ませんか?」

「行くわけないでしょ!」

「そうですか…では、おやりなさい」

 

シスターの一言が合図となり怪物は椅子に縛られている女性に襲い掛かる。

 

突進を喰らう。

 

弾みで木製でできた背もたれが破壊される。

エージェントの女は瞬時に両腕を拘束されている縄から脱する。

 

駆け出し、教会の本堂へ向かう。

 

クルっと振り返り、銃を構える。

 

「ふん。そんなの効かないのわかってるでしょ?」

「戦いたければ同じ姿で戦いなさい」

 

「嫌だ!!私は人間だ!」

「ふふ。お馬鹿さん」

 

叫ぶ女に一瞬奇怪な模様が浮かび上がるが、すぐに消える。

 

そして、

 

パン!

 

乾いた音が鳴る。

 

怪物に向けて銃弾を発砲したのだ。

 

パン!パン!パン!

 

全弾とも怪物に命中するも、鎧のような表皮が全て弾く。

 

「くっ…」

 

分かっていたことだが、いざ目の当たりにすると現状を理解するのにも十分すぎるほどだ。

 

『ぐぉおおおおお』

 

「シスター帰ったよー?」

 

雄たけびを上げる怪物をよそに後ろから声がする。

 

そこにはシスターと呼ばれる女と同じように修道服を身に纏った少女がいた。

 

「なになに?おもしろそうじゃん!」

 

修道服の少女は嫌な空気を纏うと、異形の鎧を身に纏った。

 

『これ、もういいの?』

 

「ええ」

 

『それじゃあ、おやすみっ』

 

異形の怪物は女にのしかかると、烈火のごとくパンチを繰り出す。

 

『いぇーい、ふぉーお、てぇーい』

 

奇声を発しながら全力でパンチを繰り返す。

 

『ふぅ…』

 

事を済ませたように怪物が天を仰ぐような仕草を見せると、嫌な空気が振り払われる。

 

灰色の異形がいた場所には元の修道女がいるだけだった。

そして、エージェントの女は人間の形を成していない、肉塊へと変わり果ていた。

 

やがて、肉塊は青く淡い炎をあげ、灰と化し、女の痕跡を全く消し去った。

 

to be continued…




エージェントの女は何オルフェノクだったんでしょうね?
こういった、正体不明ってのが割と出てくるかもです…

何とか今月も4話投稿完了です。
ギリギリだけど(;'∀')

多分いつか、加筆修正すると思います(;'∀')

この章ももう少し続く予定なので、よろしくお願いします。
基本的に章が変わると、時代や場面が変わるといった感じです。

では、次回にまたお会いしましょう。


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11話

「え…?」

 

「フフッ」

 

「?」

 

「遅かったね?風香?」

 

落ち着いた雰囲気の喫茶店。

もっとも、普段見慣れた風景の一つだ。

木でできたアンティークの数々にニスの艶に電球が反射して、落ち着いた空間を作り出している。

 

モノトーン

 

辺り一面びっしりと灰色と化している。

 

食べかけの料理。

飲みかけのコーヒー。

 

まだ少し暖かさを感じる。

突然、一瞬のうちに人だけがその場から消えたように見える。

 

しかし、その上からは灰が覆いかぶさっている。

 

「どうしたの?風香?押し黙っちゃって?」

「千夏ねぇ?どうして?ち、違うよね?」

 

風香はそんなんことはない。

あってはならないし、あって欲しくない。

 

「そうよ?違うよ?私じゃないもの」

「そ、そうだよね…」

 

必死に否定したかった。

そうだよね。とは言ったものの、この景色や現状の答え合わせにはなっていない。

いろいろな思考が脳内を駆け巡る。

 

「ふふ。さて風香はどうなるかしら?」

「⁉」

「お姉ちゃんね、東京に帰ることにしたの」

「東京へ…?」

「そう。もうこの町は用済みってわけ。ね、早紀?」

 

そうだ。

早紀ねぇは?お父さんは?

 

店の奥から早紀ねぇが出てくる。

少しうつむき口元以外の表情は読み取れない。

 

「…」

 

「さ、早紀ねぇ?」

 

私がそう問いかけると、早紀ねぇの口元が緩む。

ゆっくりと顔をあげる。

早紀ねぇの顔は狂気に満ちたほどニヤッとしている。

 

「早紀、どう?」

 

「あぁ、最高だよ…これが本当の私だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

思わず耳を塞ぐほどの咆哮。

 

早紀ねぇの周りの空気が一変する。

嫌な空気が早紀ねぇを包み込む。

それと同時に目が白濁する。

肌という肌に奇怪な模様が浮かび上がってくる。

 

早紀ねぇの身体が鈍色に発光する。

水音のような形容し難い音を発しながら、早紀ねぇは灰色の異形―――オルフェノクへと変化を完了させた。

 

顔の両側には垂れ下がった大きな耳が特徴だ。

まるでウサギのように…

垂れ下がった耳は両胸を隠すほど大きい。

 

「そ、そんな…」

 

思わず両手で口を覆う。

昨日の友子に続いて、早紀ねぇまでオルフェノクだったなんて。

 

照明がオルフェノクの影を作り出している。

それが少し縮み、青白く早紀の裸体を映し出す。

 

『私はこの町が嫌いだ。周りの人間は落ち着いているからこれくらいがいいとぬかしやがる。どこがだよ?田舎くせぇし、何にもねぇ。私はこんな町で終わるつもりはさらさらねぇ!それにお前の芋臭さは前から腹が立ってんだ。この町みたいで大っ嫌いなんだよおおお!』

 

早紀ねぇが変化したラビットオルフェノクは再び咆哮のような叫びを放つ。

 

カランコロン

 

入り口のドアに設置した鐘が来訪者を告げる…

 

to be continued…




早紀ねぇ!
すごいことになっちゃいました…
もうちょっと続きます。


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