テイマーの世界に蝶は舞う (ルルー)
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テイマーの世界に蝶は舞う

「エリカ~皆を寝かせてきたよ~」

 

 ここはデジタルワールドに存在するエリアの一つ、デジモンが生まれそして旅立っていく場所、始まりの町。

 そこには多くのデジタマや幼年期デジモンそれを世話する芋虫型のデジモンや雪だるまのようなデジモンそして……一人の人間の少女がいた。

 

「ご苦労様、ワームモン」

 

 彼女の名は御島エリカ、EDENネットワークと呼ばれる電脳空間で様々な依頼を解決するハッカーチーム、フーディエの一人だった少女。

 

「ユキダルモンは手がっぱいだっから大変だったよ、元気いっぱいなのも困っちゃうね」 

 

 エリカに話しかけてきた芋虫のようなデジモンはワームモン、エリカのパートナーデジモンであり()()()()()()()()()()()()

 

「たまにコロモン達と一緒に騒いてたくせに……」

 

「う……それは一緒にいて楽しくなってきちゃったというかなんというか」

 

 ワームモンにエリカの視線が刺さりワームモンは体をくねらせていた。

 

「……はあ、まあいい。 依頼はもう終わりだから、ユキダルモンたちに挨拶してからみんなのところにもどるよ」

 

「うん!」

 

 ワームモンの返事とともに二人の存在が0と1にプログラムの光に変換される、光のバーコードが二人を包み込み光が消えると一体のデジモンが現れた。

 

 (ジョグレス進化~てね)

 

 (私たちは合体だと思うけど)

 

 蝶と人間の女性の姿併せ持つデジモン……フーディエモンはユキダルモンたちに依頼の報告を終えてから背中の翼をはためかせ自分たちの住処へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 始まりの町があるエリアから離れた場所そこに彼女の暮らす家がある。

 

 

 デジタルワールドにはさまざまなエリアがあるが元人間である彼女が暮らしていくにはちょうどいい住処になる場所はあまりなかったはなかった。

 なのでこの家は彼女とデジモンたちが協力して建てた家である。

 ちなみに完成するまでに様々なドラマがあったが今回は割愛する。

 

 そんな家の前に一体のデジモンが立っていた。

 どうやら彼女の帰りを家の前で待っていたらしい。

 家に着いたフーディエモンはエリカとワームモンに戻り家の前に立っているデジモンを見る。

 

そのデジモンはフーディエの一人である人物が彼女が寂しくないようにと一緒に送り出したデジモンたちの一体。

 両腕にドラモンキラーと呼ばれるかぎ爪を身に着け背に勇気の紋章が刻まれている盾ブレイブシールドを装備した究極体デジモン、ウォーグレイモンだ。

 

「おかえり、エリカ」

 

「ただいまウォーグレイモン」

 

「今日の依頼はなんだったの?」

 

「始まりの町でユキダルモンたちの手伝い」

 

「つかれた~」

 

「はは、それは大変だったね」

 

「みんな元気すぎー」

 

 イーターの事件から数か月、デジタルワールドは復興に向けて活動していた。

 イーターの捕食により穴だらけになってしまったデジタルワールドだが、イグドラシルの復活とその配下であるロイヤルナイツ達による尽力により修復が進み元の姿を取り戻しつつあった。

 エリカたちは修復中のデジタルワールドで起こる様々な問題ごとを解決するトラブルバスター、つまりデジタルワールドでのフーディエとして問題解決に奔走していた。

 

「それで次の依頼は何?」

 

「それなんだけど……ミレイからだよ」 

 

「御神楽ミレイから?」

 

 御神楽ミレイ、デジタルワールドにエリカたちが来た際に一番最初にあった人物である。

 最初は何者か怪しんだエリカだったが一緒にいたデジモンたちが親しく接していたので悪い人物ではないとはわかったが、その雰囲気からか若干苦手にしている人物である。

 

「どんな依頼?」

 

「ええと読むね……”並行世界に流れて行ってしまったデジタマの回収をお願いしたい”だって」

 

「並行世界にデジタマが?……詳しい内容はミレイ本人に聞くしかないみたいね」

 

「明日の朝マスティモンが迎えにくるって」

 

「わかった、なら今日はもう寝ることにする」

 

「以来のことは僕からみんなに話しておくよ」

 

「ありがとうウォーグレイモン、じゃあおやすみ」

 

「うん、おやすみエリカ、ワームモン」

 

 エリカは明日に備え寝室へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそデジラボへ寝過ごさなくて何よりだわ」

 

「私は寝坊助なんかじゃない」

 

「ふふ、ごめんなさい」

 

 次の日の朝、迎えに来たマスティモンと共にエリカとワームモンはデジラボにやってきていた。

 

「で、並行世界にデジタマが流れていったってどういうこと?」

 

 エリカは依頼人であるミレイに詳しい事情を聴き始めた。

 ミレイは、エリカとの間の空間に地球儀のような球体を出現させた。

 エリカがその球体をよく見て見ると、どうやらそれは現在のデジタルワールドでの様だった。

 ミレイは静かに話し出す。

 

「知っての通りあなたのいるデジタルワールドはイグドラシルとロイヤルナイツ、ほかにも多くのデジモンたちの手によって修復にされて行っているけどまだまだ空間が不安定で、時折穴が開いたりするみたいなの」

 

「穴? その穴が並行世界に繋がってるの?」

 

「ええ、これを見て」

 

 ミレイがデジタルワールド地球儀を消して、いくつかの画像を映し出した。

 そこには、エリカにはよく知る場所が映し出されていた。

 

「……もしかして新宿?」

 

「マスティモンに軽く調べてもらったら、どうやら並行世界の新宿みたいでね、あなたならちょうどいいと思って依頼した次第なの」

 

 エリカは少しばかり驚いていた。

 並行世界だというのだからその場所は地球なのだとは思ってはいたが、寄りにもよって新宿だとは思わなかった。

 それと同時に、また新宿の大地を歩けるのかと思うと少し不思議な気分だった。

 おそらくそこにフーディエはないのだろう、だけどそこで活動していた者としては同時に感慨深い気持ちにもなっていた。

 並行世界とは言え、ある意味里帰りのような物だろうかとエリカは思った。 

 

「それともう一つ、流れて行ってしまったデジタマのことを話しておこうと思う」

 

「もしかして、ただのデジタマじゃないの?」

 

 エリカとワームモンの頭に浮かぶのは、ゆらりゆらりと楽しそうに揺れる様々な模様のデジタマ達だった

 ユキダルモンやほかのデジモンたちが甲斐甲斐しくお世話をしていたことを覚えている。

 ミレイが言うデジタマとは、二人の知らない何かがあるというのだろうか。

 

「そう、数は七つ。そしてそのデジタマというのが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 周囲へと焼きたてのパンの匂いを漂わせる店がある。

 看板にはまつだベーカリーと書かれていて、並べられたパンは総菜パンや菓子パンなど様々な種類の物が置かれているようだった。

 その中でも子どもにオススメ! と宣伝されているパンは、恐竜のような形をしたパンだった。

 店の中の工房を覗いてみると、二人の夫婦が生地をこねてパンを作っていて、そして一人の少年が手伝いをしているようだった。

 

「タカトーこれ並べてきてー」

 

「はーい」

 

 タカトと呼ばれた少年が母親から焼き立てのパンを受け取り、店に並べようとした時だった。

 

「ん?」

 

 彼は突然、近くの窓から空を見上げた。

 空には雲が浮かんでおり、曇り空となっている。

 

「どうしたのタカト」

 

 突然止まった息子に、母親が心配して声をかける。

 

「え? あっ何でもないよ、気のせいだったみたい」

 

「あらそう? じゃさっさと並べてきてちょうだい」

 

「はーい」

 

 そう言って少年は焼き立てのパンを並べに向かった。

 パンを並べる少年のエプロンの下のベルトには、金色のスキャナーのような端末がうっすらと輝いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新宿上空、雲に紛れて深い霧が現れる。

 それは、デジタルゾーンと呼ばれる特殊空間だ。

 その空間はデジモンが現れる際に生み出される特殊な空間だった。

 

 デジタルゾーンの中に現れたのは、蝶のような姿をした人型デジモン、フーディエモンだった。

 

「無事についたみたいだね」

 

 雲の中からこの世界の新宿を見下ろした。

 

(広いなぁ……見つけるの大変そう……)

 

(弱音を吐いてる場合じゃないよ、早く見つけないとこの世界も危ないんだから)

 

 ワームモンと会話しながら、エリカはミレイが言ったこと思いだしながら一言つぶやいた。

 

「……七大魔王デジモンか」

 

 エリカの胸中には、小さな不安の種が生まれていた。




七つの大罪を司る、強大なデジモンたちのデジタマ
それが今、この世界へと流れ着く
テイマーとフーディエ、この二つの会合の日は近い。


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