戦艦三笠の苦悩 (樋口晶子)
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第1話

「ロシアに宣戦を布告する。常備艦隊は解散新たに連合艦隊を組織する」

「…」

「旗艦は三笠。お前だ」

「一つ条件があります」

「艦娘風情が軍の命令に条件だと」

「我々艦娘は一度戦争になれば軍令部の手足となって行動して見せます」

「当然だ」

「しかし現場での駆け引きは私に任せてもらいたい」

「おまえらごときに帝国の興廃を託せというのか」

「私は運の強い女ですから」



「なぁ朝日やっぱりバルチック艦隊は津軽を通ってくるんじゃないか?」

「そうね…今まで何の連絡もないということは…」

「三笠はどこから来ると思うんだ?」

「それは対馬よ」

「どうして」

「敵がここを通ると言って、来る」



「信濃丸より入電読み上げます。203地点ニテ敵艦隊ミユ以上です」

「軍令部に打電。敵艦ミユトノ警報二サイシ連合艦隊ハタダチニ出動コレヲ撃滅セントス。本日、天気晴朗ナレドモ波高シ送れ」

「いよいよね三笠」

「私達が昼となく夜となく訓練に明け暮れてきたのは実に今日、この時に巡り会うためよ。みんな…覚悟を決めなさい」

「敵、距離13000!」

「旗流用意、Z揚げ!伝達!皇国ノ興廃此ノ一戦二アリ各員一層奮励努力セヨ送れ!」

「もう後がないってか…上等!どこで戦をするんだ、三笠!」

「敵、距離8000!三笠提督!」

「150°左回頭!!全艦我の後に続け!!」

「三笠!!これじゃあ敵の的だぜ!ヤバいって!」

「全砲門開け!目標敵旗艦スヴォロフ」

「照準よろし撃つわよ!三笠!!」

「撃ち方用意…撃て!!!」






「降参だって言っているのに良く撃ってくれたわね?」

 

「あなた国際法を勉強していて?マストに白旗を揚げただけでは降伏と見なされないわ。機関を停止し主砲を反転させて初めて安全が保証されるもの。見くびらないで頂戴」

 

「…流石ね、アドミラル三笠いいわ今回は降参しておいてあげる」

 

「気が進まないのなら私達はあなたたちバルチック艦隊を全滅させるだけよ。言い方にお気をつけなさいな」

 

「…東洋の猿どもが!!」

 

「敷島姉さん、朝日姉さん」

 

「ああ!いつでもいいぜ!」

 

「照準よろし、目標第三艦隊旗艦ニコライ1世」

 

「…私達は以後貴官の完全指揮下に入る。」

 

「よい決断です。無駄に血を流させることは我が連合艦隊も望むところではありません」

 

「…一つ尋ねてもよろしい?」

 

「どうぞ」

 

「我がバルト、黒海艦隊はどうなってしまったの…一切連絡が取れないのよ」

 

「残念ですが、皇帝ニコライあなたちの艦隊は我々帝国連合艦隊がそのほとんどを撃沈、あるいは拿捕している状態よ…確認が取れているものだけでもスヴォロフ、オスラービア、アレクサンドル3世、ボロジノ、オリョール、ウラル。心中お察しするわ」

 

「………嘘。よね」

 

「いずれ公式記録と共に世界中に知られることになるわ」

 

「あなた達の被害は」

 

「水雷挺3隻が沈められたわ」

 

「何よそれ!私達の艦隊は全滅であんたら東洋の猿が無傷!?デタラメも大概にしなさい!」

 

「無傷なわけあるか!!」

 

「ぐっ!…」

 

「貴様らバルチック艦隊が対馬に現れるまで我が国民が旅順で遼陽、奉天でどれだけ死んでいったと思う!初瀬姉さん、八島さん…貴様らの国民もどれだけ死んだと思っている!!」

 

「…はっ…発言を…て、撤回…する!」

 

「…申し訳ない、捕虜に対する行いではなかった。ご同道いただきますニコライ1世」

 

「…感謝するわ」

 

「…ゴホ…ゴホ…」

 

「風邪?」

 

「貴官には関係のないことよ」

 

 

 

 

「三笠!」

 

「…敷島姉さん」

 

「ポーツマス講和成立したみたいだな!小村のおっちゃんもやるじゃんか!」

 

「…ええ。そうですね」

 

「浮かない顔だな、どうかしたか?」

 

「賠償金は取れないでしょうね」

 

「朝日姉さん…」

 

「おい、どういうことだよ朝日!俺たちは勝ったんだぞ?日清のときは全国に学校を建てられるくらい儲かったじゃねーか!」

 

「敷島、私達はロシアに勝ったのではないわ、バルチック艦隊に勝っただけなのよ。あの国の経済力我が日本はすでに借金まみれ、これ以上は戦えない。となると賠償金を手放してでも成立させた講和なのよ」

 

「なんだよ…それ…借金があるならなおさら金が必要じゃねーか!」

 

「信じましょう、この国の国民を…それに今回他国の干渉はないでしょう」

 

「そうね、三笠。これで日本は世界に認められた独立国になるわ」

 

「独立国か…いい響きだな!」

 

「姉さん、私はこれからも海軍で仕事をします。ドイツのヴィルヘルム2世彼は危険な男です、今回ロシアが南下政策を推し進めたのも裏に彼がいるはずです」

 

「そうね、おおよそフランスとロシアを恐れての事だと思うけれど」

 

「アメリカの動きにも目を見張らなければ」

 

「テディね…何を考えての仲介だったのかしら」

 

「彼はリアリストです今は我が国の海軍戦力に勝てない事を知っています…彼の後継にウィルソンが就任することがあれば…世界は悪夢を見るでしょう」

 

「それもそうだけどよ。一番危険な奴忘れてねぇか?」

 

「私達の故郷。イギリス」

 

「世界はかの国に巻き込まれ悲惨な運命をたどっていますインドしかり清国しかり。同盟を結んだ日本はイギリスを信じるべきか手を離すべきか」

 

「丁度いいわ、私も海軍大臣のポストに就任が決まったの。三笠、あなたはどこに就きたい?」

 

「後継を育てたく思います」

 

「ならば横須賀鎮守俯司令として着任はどうかしら。あそこなら最新鋭の艦娘を教育できるわよ」

 

「ええ、お願いいたします」

 

「おいおい、俺をおいて話進めるなよな!」

 

「うふふ、すみません敷島姉さん」

 

「敷島ももう少し勉強できたら次官くらいには推薦したのだけれど?」

 

「おい!朝日!そりゃどーいう意味だ!」

 

「何ってそのままだけれど」

 

「姉さん達!写真を撮りにいきませんか」

 

「写真?いいわね!」

 

「や、やめようぜ…だってあれ魂抜かれるって…」

 

「もう敷島姉さんたら…いつまでそんな迷信を」

 

「で、でもよお」

 

「いいからいいから!」

 

「お、おい!離せ!三笠!朝日!!」

 

 

 

 

「おい、まだかかるのか?」

 

「仕方ないじゃない写真はこういうものよ」

 

「ふふ、すみません私だけ座らせていただいて」

 

「やっぱ三笠ずりぃーぞ!俺が長女なんだから俺が座る!」

 

「ちょっと!敷島!動いた…」

 

「何回言わせるんだ!!うごくな!!」

 

「はい!すみません!」

 

「…ふふふ」

 

「では撮りますよ…はいもうよろしいです」

 

「はあ~どっと疲れたぜ…」

 

「綺麗に撮れているかしら」

 

「姉さん…私…………」

 

「どうした三笠…おい!三笠!三笠!!」

 

「三笠!!」

 

 

 

 

 

「…ん…」

 

「三笠!?」

 

「…敷島…姉さん…」

 

「よかった…お前写真の後に突然倒れやがってマジで魂抜かれちまったのかと心配したぜ…」

 

「…すみません…姉さん…」

 

「三笠!!」

 

「朝日…姉さん…」

 

「よかったわ目を覚まして…」

 

「すみません…ご心配おかけして」

 

「それはいいのだけれど…お医者の先生からお話があるそうよ…歩ける?」

 

「はい…」

 

 

「三笠様…救国の英雄にこんな診断を告げねばならないのはとても心苦しいのですが…」

 

「かまいません、続けてください」

 

「あなた様は末期の肺癌を患っておいでです」

 

「お、おい…そりゃ治るんだよな!!」

 

「…既に転移している可能性もあり…西洋の手術を行っても完治する可能性は…」

 

「ば、バカなこと言ってんじゃねーぞ!!このヤブ医者が!!」

 

「敷島!!」

 

「あ…朝日…信じるのか!このヤブ医者を!」

 

「…知っていたのね。三笠」

 

「…はい」

 

「お、お前!なんでそんな大事なこと俺たちに隠してたんだよ!!」

 

「三笠は私達に戦争の間心配をかけたくなかったのよ!長女なのにそんなこともわからないの!」

 

「そんな…そんなよぉ…俺たち…頼りないかよ…三笠?」

 

「三笠…なんでこんなになるまで放っておいたのよ…戦時中とはいえ。もうこうなってしまってからじゃ…」

 

「先生…ありがとうございました…ゴホ…ゴホ」

 

「お、おい待てよ!三笠!!」

 

 

 

「三笠!入院しましょう?漢方や西洋の薬を試すの!何より鎮守俯の仕事なんてさせないわよ!ただでさえ激務なのに、そんな体で!まずは安静にして滋養をつけるの!」

 

「朝日姉さん、私に残された時間は多くありません」

 

「だから!」

 

「ならば、この体。尽きるまで、私は死んでいった仲間のためにも平和に役立てたいのです」

 

「…三笠ぁ…三笠…なんでだよぉ…なんで俺に言ってくれないんだ…」

 

「敷島姉さん…姉さんがあのとき私の後に続いて回頭してくださらなかったら私はここにはいません…もう姉さんは私を救ってくださりました」

 

「…三笠ぁ…」

 

「朝日海軍大臣」

 

「…何かしら」

 

「私に横須賀鎮守俯司令長官の任を」

 

「…いつも勝手すぎるわよ…」

 

「お願いします」

 

「…わかったわあなたに横須賀鎮守俯司令長官の内示をだします」

 

「ありがとうございます…朝日姉さん」

 

「三笠!お前一人死なせねぇからな!絶対だぞ!」

 

「敷島姉さん」

 

「俺にはお前と朝日だけなんだよ…頼むから二人とも…俺を…一人にするんじゃ…ねぇよ…」

 

「今日は3人で過ごしましょう…今日だけ…今日だけは3人で」

 

「…はい」

 

 

 




明治38年(1905年)9月11日 三笠艦内後部弾薬庫にて爆発事故が発生。船体に穴が空き浸水、沈没
死亡2名生存不明者230名を出してしまう


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第2話

「ふぅ…懐かしい景色ね…あれは」

 

「Welcomehome!お帰りなさい三笠先輩!」

 

「ええと…あなたは?」

 

「申し遅れました私、ヴィッカースより今回ImperialJapaneseNAVY視察団の方々をご案内させていただきますドレットノートと申します!以後お見知りおきを」

 

「あなたが…初めまして。次期主力艦建造依頼視察団団長の三笠よ滞在中はお世話になるわね」

 

「存じております!かの日本海海戦で見事な指揮と艦砲射撃で宿敵ロシアのバルチック艦隊を撃滅なさったまさに英雄!同じヴィッカース生まれとしてこんなに光栄なことはありません!」

 

「それはそうとこんなに手厚い出迎えをしていただけるなんて」

 

「いいえ!盟友大日本帝国のしかも三笠先輩がいらっしゃったのです!本当はプリンセスにもお越しいただく予定だったのですが…」

 

「そんな!いいです…早速で悪いのだけれど視察団の技術士官を造船所に案内してもらえないかしら」

 

「かしこまりました!三笠先輩はヴィッカースの本社にご案内いたします!」

 

「ありがとう…ゴホ…ゴホ」

 

「三笠先輩、風邪ですか?」

 

「いえ、なんでもないわ」

 

「ではこちらの車に!」

 

 

 

 

 

「次期主力艦計画…」

 

「ええ、横須賀で薩摩を就役させたばかりなのにごめんなさいね」

 

「ドレットノートですか」

 

「かのイギリスで開発された新鋭艦。どうも我が国の造船技術は1歩遅れているわ」

 

「…日英同盟を建前に英国の技術共用を求める。ということですね」

 

「ええ、戦後のごたごたで後手に回っていたけれど議会の予算案がようやく可決されたの。三笠、あなたには英国に渡ってもらいヴィッカース、アームストロングどちらの建造技術に優位性があるか。そしてこれからの我が国造船技術飛躍のため技術提供の交渉窓口になってもらうわ」

 

「わかりました姉さん」

 

「…私からの忠告。英国のヴィッカースと独のジーメンスには不穏な動きがあるわ」

 

「…といいますと」

 

「私もすべてを把握しているわけではないから確かなことは言えないけれど。この伊号装甲巡洋艦計画落札した三井商事…裏でジーメンス、ヴィッカースとの黒い噂が絶えないわ。価格交渉の際は相手の出方に注意を払いなさい」

 

「どうにも…骨が折れそうです」

 

「出立は2か月後よ。ごめんなさい大病の三笠にこんな役目を」

 

 

 

 

 

 

「今回はアームストロングとうちの一騎討ちだそうですが…どうですか?三笠先輩の下馬評は!」

 

「…唐突に聞いてくるのね」

 

「はい!三笠先輩とはbusiness関係なくお腹を割ってお話したいので!」

 

「私からは何も言えないわ、技術力のある方に依頼する…それだけよ」

 

「三笠先輩は手厳しいですね!ははは…でもでも技術力なら我々ヴィッカースが一枚も二枚も上手です!!」

 

「たしかにそうかもしれないわね」

 

「はい!何を隠そうこの私、世界中に名前が轟いた弩級戦艦第一号なんです!」

 

「ええ、知っています」

 

「あらら…」

 

「排水量18000t最大船速21ノット30.5cm連装砲5基搭載。副砲を排除し片舷戦闘状態で4基8門の主砲砲撃が可能。単純計算で今までの戦艦火力の2倍を有している」

 

「当たりです!流石三笠先輩です私の事を知ってくださっているなんて!!私こんなに嬉しいことはないです!」

 

「でもアームストロングにも八島さん、初瀬姉さん最近では鹿島を発注しているわ彼女の訓練成績はなかなかのものよ。なのにスペックだけですぐにヴィッカースに依頼というのは国費で発注をする以上無責任すぎるわ」

 

「ごもっともです!…しかし…我がヴィッカースが弩級戦艦以上の火力をしかも速度もでる画期的な未来の戦艦を建造しているとしたら…?」

 

「…あなた!」

 

「さあ!つきました!ヴィッカース本社です」

 

「…ありがとう」

 

「いえ!ではまず我が社の取締役インヴィンシブルにお会いしていただきます」

 

「ええ、わかったわ」

 

 

「遠路遥々ようこそいらっしゃいました!アドミラル三笠」

 

「こちらも手厚い歓待ありがとうございますミスインヴィンシブル」

 

「ドレットノートの運転はいかがでしたか?あの子あなたに憧れていて是非案内をと…道中うるさくはなかったですか?」

 

「いえ、おかげで移動中にも有意義な会話ができ私も退屈しませんでしたわ」

 

「それは何よりですアドミラル三笠。早速ですがわが社の技術面は現地で視察されている貴国の方々の調査報告を待って頂いて私からは貴国の要望とご予算について全権であるアドミラル三笠。あなたと意見のすり合わせがしたい」

 

「ええ、こちらから提示させていただく条項は以下の通りよ」

 

一、次期主力戦艦伊号装甲巡洋艦をイギリス国内1社アームストロングあるいはヴィッカースに建造を発注するものである

 

一、伊号装甲巡洋艦は先にヴィッカースで建造された弩級戦艦と同等あるいはそれ以上の性能を有しているものとする

 

一、建造にあたり日本海軍技術士官立ち会いのもと、長期的に建造工程を視察するものとする

 

一、砲塔、機関、設備、船体の設計図を一式日本国内に持ち帰り以後の同型艦建造は日本国内で行う

 

一、建造予算は上限2000万円までとする

 

 

「…これはまた、随分と手厳しい内容ですねー」

 

「我が日本はあなた達の仇敵ロシアに勝利し弱体化させるに至ったわ。今後日英同盟があるかぎり貴国の技術共用を受けお互いに利ある軍事展開ができればイギリスにとっても良いことだと思うのだけれど」

 

「仰ることはごもっともです2項については異論ありません我々としても貴国は大事なお客様ですので、わが社の総力で最高の艦娘を建造いたします」

 

「ええ」

 

「ですが…3、4項につきましては…私としてはyesと今すぐにでもお返事したい!…ですが、これはロイヤルネイビーに確認をとらなければなりません。その結果しだいではご意向に添えないかもしれない」

 

「その点についてはご心配なく、すでにロイヤルネイビーとは折り合いがついているわ。あとは御社の判断次第なのだけれど?」

 

「そうでしたか!流石はアドミラル三笠抜け目がありませんね!…いいでしょう、貴国から提出された設計を元にわが社の技術を盛り込んだ今回の設計図。貴国にお渡しします技術士官の派遣も承認いたします」

 

「ありがとうミスインヴィンシブル」

 

「ですが第5項予算を2000万円ですか…」

 

「ええ、議会の承認を得られた上限一杯よ」

 

「あらあら…ふふふ、おかしいですね?私達の調べでは今回の伊号計画2500万円までの予算が降りたと聞き及んでいるのですが」

 

「ミスインヴィンシブル。どこでそのようなガセネタを掴んだのかは知らないけれど我が国が支払えるのは2000万円までよ。妙な言いがかりは御社の為にもならないと思うのだけれど」

 

「ふふふ…これは失礼いたしました。しかし…弩級戦艦のドレットノートでも日本円に換算して1700万円…これに新鋭技術に技術共用も含めると…弊社は赤字ですよ?アドミラル三笠はこんな無理を言われる方では無い。と信じています」

 

「信じるのはかまわないけれど伊号計画の予算は2000万円までよ。今日はこちらの条項を伝えに来ただけだから長居はしないわ」

 

「ああ、すみませんアドミラル三笠大したおもてなしもできなくて」

 

「いいえ、いいのよ」

 

「しかし…わが社が弩級戦艦をも凌ぐ戦力の開発に成功し、運用技術そして技術共用も視野に入れている…としたらどうです?予算の吊り上げは見込めるでしょうか」

 

「…あなたもなの?ハッキリ言ったらどうなの」

 

「ふふふ…私達ヴィッカースでは弩級戦艦の後継超弩級戦艦の開発に成功しています」

 

「…そんな情報」

 

「もちろんです!これは最重要機密。未だにどこの国にも伝えていない情報ですから…その名もオライオン級戦艦。速力はそのままに主砲34.5cm連装砲5基、10.2cm単装砲16門搭載この意味が…三笠さんにならご理解いただけますね?」

 

「…本人を見ないと信じられないわ」

 

「はい!もちろんです明日はアームストロング視察のお帰りにオライオンと共にお待ちしています」

 

「では」

 

「イギリス視察どうぞごゆっくり…ふふふ」

 

 




1906年12月2日
ドレットノート級戦艦が就役
これ以後戦艦の兵器としての運用が大幅に見直された
艦橋に照準システムを設置する事で同一目標への着弾率が上昇
元来18ノット程度の速力をタービンの革新で21ノットに引き上げ
火力を2倍にした結果
距離の支配権という概念を確立
アウトレンジ先方の先駆けともいうべき革新的な戦艦であった


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第3話

「今日はよろしくお願い…」

 

「お待ちしておりました三笠様私、アームストロング社…っ!?」

 

「初瀬!!初瀬姉…っ!姉さん!!」

 

「あ…あの…」

 

「姉さん!!」

 

「ひ、人違いでは…?」

 

「…え」

 

「私はアームストロング社スウィフトシュア級戦艦2番艦トライアンフと申します」

 

「…」

 

「今日は三笠様の交渉窓口をさせていただきますので。よろしくお願いいたします」

 

「…失礼しました。視察団団長三笠です今日はよろしくお願いいたします」

 

 

「そうでしたか…確かにあなたの国の初瀬はここアームストロングで建造されました。そしてわたしも当時の設計図を元に生まれています、三笠様がお間違いになるのも無理はありません」

 

「申し訳ありません…」

 

「ふふ、いいんですよ…正直に申し上げて。私達の技術では貴国の要望には答えられないでしょう」

 

「それは!」

 

「次期主力戦艦として速力21ノット30cm砲となると…恥ずかしながらわが社では取り組んだことがありません」

 

「そう…ですか」

 

「わざわざ遠いところ来て選定していただいたのに…申し訳ありません」

 

「あの…あの石碑はなんですか?」

 

「ああ、わが社で建造し退役もしくは散っていった艦娘の名前を刻んでいます…彼女達を忘れないようにと」

 

「側に…近くで見せていただいて、よろしいでしょうか」

 

「…はい、そうしてさしあげてください」

 

 

 

「…吉野…高砂、久しぶりね。八島さん……初瀬…姉さん」

 

「彼女達は今も海に?」

 

「…はい、あのときは曳航などしている余裕はありませんでしたから。吉野は春日と衝突、八島さん初瀬姉さんはロシアの機雷で」

 

「…ご冥福を」

 

「私が…私が指揮していたのです…あれほど平和を愛していた初瀬姉さんを!」

 

 

 

 

「三笠、あなた自動販売機のジュース飲んだことある?」

 

「じどう?ジュース?それはなんですか初瀬姉さん」

 

「さっき街に出かけたらね、ひとの行列があって何かなーと思って並んでみたのよ!そしたらみんなこのくらいの木箱にお金を入れて蛇口から出る飲み物をコップ一杯分注がれるのを待ってるのよ!で、それを飲み干すとみんな幸せそうな顔で帰って行くの!ふふ…どんな味だと思う?」

 

「飲み物…ですか…ではお茶のような」

 

「ぶっぶー!!正解はとっーても甘いの!りんごと葡萄の味がするのよ!」

 

「りんごと葡萄…ですか」

 

「ええ!とっても美味しいんだから!三笠も今度一緒に行きましょうね!」

 

「それはそうと初瀬姉さん。これで積みです」

 

「あー!!また負けた…これで何連敗?」

 

「残念ながら1度も姉さんが勝ったことはありません」

 

「やっぱり将棋は三笠に勝てないか…」

 

「囲碁もカルタも負けたことはありません」

 

「ふふ、そうね!三笠…私はね、こうやってあなたと将棋したりあんパンを食べたりジュースを飲んだり…毎日過ごしたいな」

 

「…初瀬姉さんそれは」

 

「わかってる。みんなが安心して自動販売機に行列を作れるような毎日を守るのが私達の役目」

 

「姉さん」

 

「大丈夫!勝ち負けに滅法強い三笠がいるんだもの!今回も勝てるわよ」

 

「ロシアは簡単な相手ではありません」

 

「そうね!…でも」

 

「でも?何ですか?」

 

「誰も死なない戦争があったらいいわね!」

 

 

 

 

「…姉さん…もうあなたの笑顔は記憶の中にしか…ありません」

 

「三笠様…」

 

「申し訳ありませんミストライアンフ…商談中に」

 

「いえ」

 

 

 

「三笠様、今回はご期待に添えず申し訳ありません」

 

「こちらこそお手間をおかけしました」

 

「わが社はいずれヴィッカースに吸収されます」

 

「ミストライアンフそれは!」

 

「資本主義の社会ですから仕方のないことです」

 

「…」

 

「私達戦艦は最早過去のもの…ヴィッカースの弩級戦艦が生まれ次は何が生まれるのでしょう。そして誰が死ぬのでしょうか」

 

「あなた…」

 

「願わくば悲劇を繰り返さないことを」

 

 

 

 

「アドミラル三笠!再再訪問ということはヴィッカースに発注の依頼を決めてくださったのですね!」

 

「ミスインヴィンシブル。大日本帝国海軍次期主力戦艦建造依頼は視察団の技術士官調査報告書、御社のオライオン級戦艦様々な要因を検討した結果。ヴィッカースに委託する事を決めました」

 

「三笠!本当にありがとう!三笠ならわが社にしてくださると信じておりました」

 

「調印を済ませたいCEOのプリンセスロイヤルはいらっゃる?」

 

「はい!調印の準備でしたらすでに!…しかし」

 

「何か問題でも」

 

「プリンセスがご自身でお話がしたいと」

 

「かまわない通していただこう」

 

「かしこまりました」

 

 

 

「Yourwelcome!アドミラル三笠待っていたわ」

 

「プリンセスロイヤル、ご多忙ななかお時間をいただきありがとうございます」

 

「いいのよ!他でもない大日本帝国のしかもヴィッカース生まれ私達の先輩、三笠の為だもの」

 

「ミスインヴィンシブルから契約の内容について話があると聞きましたが」

 

「ええ!その話ね…技術共用のことだけれど。これについてわが社も一つ条件があるわ」

 

「というと」

 

「日本の三井商事わがヴィッカースこの2社による資本で日本に製鉄会社を開きたいの。ついてはその斡旋と音頭取をお願いできるかしら?」

 

「民間に口出しするのは海軍の仕事ではない。我々にできることはないと思うが」

 

「だーかーらー政府に働きかけてほしいって言ってるの!そっちの三井とは話纏まってるんだから」

 

「それは政府内における海軍の発言権の外にあることよ」

 

「えー!それさえしてくれたらあなた達のお願いぜーんぶ聞いてあげるよ?」

 

「できない相談ね。第一に新規の会社はそれぞれ出資比率は何%かしら」

 

「あら~?民事不介入じゃないの?」

 

「それすらも聞けぬのならここで出せる返答はない」

 

「いいのかなー?このままじゃ伊号計画の予算はカットされちゃうんじゃない?」

 

「それは御社に関係ない」

 

「あるわよ!お客様の財布なんだから。ふふふ…今回の伊号装甲巡洋艦2410万8600円にしてあげる」

 

「この交渉は決裂だ!」

 

「人の話は最後まで聞きなさいよね!」

 

「まだあるのか」

 

「そんなに怖い顔しないで?ここからはあなた達のメリットよ。1隻目の伊号艦についてはここバローで建造、あなたの国の技術士官を何人派遣してもいいし何年いてくれても構わないわ。そして2隻目はこちらから技術団を派遣、材料も提供するし設計図もあなた達のものよ?どうかしら?」

 

「…そのための合弁会社だと」

 

「正解正解!私達としても日本の海軍力を強くしたいのよ!この熱意。わかってもらえる?」

 

「伊号戦艦2隻分で2410万8600円でいいんだな」

 

「もちろん!それ以上は頂かないわ!」

 

「…その性能は」

 

「もちろん!現環境最高水準の超弩級戦艦をプレゼントするわ!この設計だと…そうね排水量26000t速力27ノット、主砲45口径35.6cm連装砲4基、副砲50口径15.2cm単装砲16基!世界最強じゃない!」

 

「納期は」

 

「ヴィッカースの総力を持って取り組ませてもらうわ!そうね…2年で仕上げるわ!」

 

「…了解した、竣工後の納品は我々の手で行うスエズの通行許可も合わせてお願いする」

 

「ええ!じゃあ…私達のお願い聞いてもらえるってことでいいのね?」

 

「御社にどんな思惑があってそんなことをするのかは解らないが善処しよう」

 

「三笠!befriend!ではこの契約書類に仲良く調印しましょう!」

 

「仲良くは余計だ。それと合弁会社についてだが海軍が仲立ちする以上、設立にも関与し違法性がないか監視させていただく」

 

「はいはいご自由に~もう!ツンデレさんなんだから~!あ、そうだ今回ヴィッカースを選んでくれてありがと~という気持ちを込めて三笠と朝日海軍大臣にそれぞれ日本円で40万円ずつお礼を配りたいの!受けとってくれるわよね!」

 

「わが大日本帝国海軍軍人はいかな謝礼も受け取らない!見くびるなよ小娘」

 

「…ふふ、話の通じる人だと思ってたのに…まあいいわ。要らないというなら無駄な出費がないもの。さっさと調印しましょ」

 




伊号装甲巡洋艦
後の金剛型巡洋戦艦の計画名です
本作では諸説ある金剛の建造費ですが
2410万8600円を採用しました
現在の価値で4821億7200万円ほどです
いかに帝国海軍がこの戦艦と英国の造船技術を欲しかったかわかる数字です

本作品ではヴィッカースが技術共用を渋りましたが
史実ではとても日本に好意的で率先して提供したそうです


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第4話

「三笠あなた正気なの!こんな条件を本部通さずに決めてくるなんて!何をやっていたの!あれほど三井との動きは注意なさいって」

 

「朝日姉さん、お怒りはごもっともですが調印のとき断っていれば今回日本は品物を買わせてもらえない国になっていました」

 

「そんな面子の話!」

 

「それが国というものではなくて?アームストロングは技術面で不安。なれば、多少強引であってもヴィッカースにて次世代戦艦2隻を実質1隻分の値段で購入できました。技術共用のおまけつきで」

 

「三笠!!」

 

「日露戦役にて表面上戦勝国の我々が同盟国から船を買わせて貰えなかった。そんな出来事はあってはならないのです」

 

「この三社合同の子会社北海道炭礦汽船株式会社…それぞれ出資比率は何%?」

 

「不明です」

 

「三笠!!おそらく三井とヴィッカースは癒着している。となれば今後造船が進む我が国で建造費が支払われるたび材料の発注を受けたこの会社は、出資比率の優遇を受けたヴィッカースに円を流す!これがどういうことかわかってるの!2410万8600円どころの話ではなく日本は未来永劫イギリスに搾取し続けられるということなのよ!」

 

「はい」

 

「ならどうして!」

 

「三井で足りない額は海軍から補填すべきかと」

 

「あ…あな、た…み、民間に手を出すということ…」

 

「いいえ三井には33%を出資させ残り34%を海軍の秘密口座から株式会社名義で出資します。設立時の出資額は国内5割、多くて英33%になり円の流出を最小限に留めることができます」

 

「…それには海外企業と癒着している三井を引き剥がし出資比率を聞き出しヴィッカースと波風を立てない。という無理難題を背負うことになるのよ?」

 

「朝日姉さん、それよりも私には別の考えがあります」

 

 

 

 

 

「鹿島、香取留守中あなたたちに迷惑をかけてしまったわね」

 

「いえ!三笠司令、この度のイギリス視察ご苦労様でした」

 

「私達も聞き及んでおります」

 

「そう、留守中の横須賀で変わったことはなかった?」

 

「日露戦役にて接収した艦娘6名が本国からの身柄引き渡し要求があった際、我々に抵抗。これを鎮圧いたしました。」

 

「すべてこちらの訓練日誌に記載しておりますが日露戦利艦であるポルタワ、ペレスヴェート、ポベータ、レトヴィザン、オリョールをそれぞれ丹後、相模、周防、肥前、石見と命名。第三艦隊に編入し訓練を続けております」

 

「そう、戦利艦だからと言って手荒にしていないでしょうね?」

 

「…しかし三笠提督彼女達は!」

 

「彼女達は帝国海軍横須賀鎮守府所属の艦艇よ無意味な指導は私が許さないわ香取」

 

「…かしこまりました」

 

「…お茶を…淹れました」

 

「ありがとうございます壱岐さん」

 

「屈辱よ!その名前で呼ばれる度にお前を殺したくなる!!」

 

「貴様…身の程を!!」

 

「鹿島!!」

 

「三笠司令…」

 

「壱岐、私はあなたを壱岐としか呼ばないわ」

 

「…ふ、ああいいさ!好きなだけ呼べばいい!どうせ私は祖国に帰ったとしても銃殺刑だ…ここでなぶられることと変わりはない。生きている分マシか否か私にはわからん」

 

「壱岐…」

 

「まだ言うか!私はニコライ、ニコライ1世だ!」

 

「貴女のその名前は長崎の南にある島の名称で日本の歴史書古事記には天比登都柱という名前で登場するわ。古代日本の国、邪馬台国には統治する女王卑弥呼がいたそうよ。その娘の名前が壱岐、貴女の名前。決して侮辱するための名前ではないことだけは覚えて頂戴」

 

「…東洋の猿に言いくるめられたりはしない!必ず貴様らに復讐する!」

 

「三笠司令。ご命令を」

 

「三笠提督。この香取が始末を」

 

「…他の報告が先よ」

 

「はい、国産の戦艦河内がまもなく竣工を迎えます」

 

「そう、二人ともありがとう後は私のほうでやっておくわ」

 

「しかし!」

 

「戦艦鹿島、香取両名に命令」

 

「はい!あのロシア娘を!」

 

「来る3月3日より半年にわたり皇太子裕仁親王殿下がヨーロッパを外周訪問あそばれる」

 

「え…」

 

「両名はそのご訪問に同行し裕仁親王殿下の玉身を警護せよ」

 

「…それは」

 

「…ここを離れよ。と?」

 

「そうよ鹿島あなたは御召艦、香取は供奉艦をそれぞれ勤めなさい」

 

「三笠司令!この不満分子が跋扈する鎮守府をお一人で統率なさるおつもりですか!」

 

「聞けません!三笠提督の御身をお守りいたします」

 

「畏れ多くも」

 

「はい!」

 

「今は亡き明治帝のお孫様であられる裕仁親王殿下におかれましては国内の反対派を意にかえさず欧州をご訪問あそばれたいと直々に我が海軍を頼っておいでよ。殿下は御自ら和平の使者として日本に戦火を招かぬよう各国代表と会談を希望されているにも関わらず。貴女達は殿下の叡慮を蔑ろにするというの?」

 

「しかし!」

 

「そう、なら貴女達二人を反逆罪としこの場で斬って棄てる…私にそんなことさせないで頂戴」

 

「三笠司令…」

 

「貴女達が帰ってくるまでには鎮守府を平穏にしておくわ。元よりそれが私の仕事よ今までよくやってくれたわね…今上帝を御召した鹿島ならできるわね?」

 

「…戦艦鹿島一命懸して殿下を御召いたします」

 

「香取不束ながら供奉艦勤めさせていただきます」

 

「二人とも明日から作法見習いとして宮城へ赴きなさい。殿下が二人にご挨拶されたいそうよ」

 

「はい!」



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第5話

「ありがとう…これ、何を入れたの?」

 

「ふん!ロシアの酒ウォッカを淹れてあげたのよ!どう?体の芯から温まるでしょ!」

 

「私はお茶を頼んだのだけれど…」

 

「三笠は毎日大変みたいだからね~工廠や軍令部との往復。司令がほとんど鎮守府にいないのはどうかと思うけど?まぁそのまま過労でぶっ倒れればいいわ」

 

「なるほど、壱岐なりに気を使ってくれたというわけね」

 

「はぁ?私はただあんたに死んでほしいだけ。あのときあんたの手を取ってここに連れてこられたけど…殺しておくべきだったわ」

 

「ふふ、まだ諦めていなかったのね」

 

「当然でしょ!いつか絶対にあんたを殺すわ」

 

「ほら手が全然動いてないわよ、いつになったらその書類終わるのかしら?」

 

「貴様!人の話を!」

 

「あ、そうだ壱岐少し街に出ましょう」

 

「はぁ?何を言ってるの!私は接収艦よ!軍施設以外での行動は制限されてることくらい知っているでしょ!」

 

「私が監視しているから大丈夫よ。さぁ行きましょ」

 

「ちょ、ちょっと!私に気安く触るんじゃない!」

 

 

 

 

「で?なんで私たちはこんなところで並んでいるの」

 

「壱岐は短気な性格?」

 

「何のために並ばされているの!」

 

「それよりほら見て。みんなワクワクしながら並んでいるでしょ!私も初めてきたから実はすごく楽しみなのよ!」

 

「はぁ?まったく答えになってないし…ふっ、東洋のサルがこぞって並ぶとは!ここは密林のジャングル?それとも動物園」

 

「日本人よ。壱岐知っているかしら差別主義者とは個別の事例を思案できない頭の悪い人のことだって」

 

「貴様!」

 

「公衆の面前よ控えなさい」

 

「…」

 

「ロシア人も日本人も同じホモサピエンスの遺伝子を持つ同種の生き物よ。あなたそこに優劣があると本気で信じているの?」

 

「祖先は同じでも国の偉大さは桁違いよ!ロシアのロマノフ王朝はいずれ世界を統一する。その時お前は私の考えうるもっともむごい殺し方でなぶってやる!覚悟しておくのね」

 

「あなたのその敵意は劣等感ね」

 

「なに」

 

「戦前のプロパガンダとして相手を卑しめ士気を上げるこれは理解できるわ。だけれどあなたはにはもう必要のないことだもの、植え付けられた思想だとしても聡明な壱岐のことよもうどこかで気づいているのではないかしら?」

 

「おまえ」

 

「あ!私たちの番よ!」

 

「ちょ!離しなさい!」

 

「へぇーこれが自動販売機」

 

「む…何よこれ」

 

「初瀬姉さんが言うにはここにお金を入れて…コップを置いて…蛇口をひねると!」

 

「む、水?」

 

「いいえ!これはじゅーすというものらしいのとても美味しいみたいだけれど…壱岐は何味にする?」

 

「味?味があるの」

 

「ええ、えーとりんご、バナナ、みかん、ブドウがあるわね」

 

「…では、みかんを」

 

「はい!コップは持ち帰れないから今ここで一気に飲むのよ!」

 

「え、ええ」

 

「いただきます!」

 

「…」

 

「…美味しい!!」

 

 

 

 

 

「なぜ今日私を連れ出したの」

 

「知って欲しかったのよ日本という国を。ね?この木村屋のあんパンも美味しいでしょ?」

 

「ええ、美味しい…ってそうじゃなく!」

 

「壱岐にも知ってもらえたと思うわ日本人は江戸から維新。近代化するため自らの民族、文化、政府を淘汰し新時代を開いてからも慢心することなくのまず食わずで独立をてに入れた。そんな彼らがあんなに幸せそうな顔でジュースやこのあんパンを食べて明日からも頑張る。そこに優劣は有るのかしら?自らの幸せのために生きるロシアの方々もそうなのではなくて」

 

「…正直に話そう。私はこの国に来てから驚かされることばかりよ…水は水道から供給され家庭の蛇口を捻れば何事もなく水が使える。みな医者に診てもらえ、その気になれば大学へ行き教師にも官僚にも医者、軍人にもなれる。ロシアではこうはいかない自由に職業が選べるのはロマノフ家と仲のいい貴族だけ、平民はみなその日のパンをもとめ肉体労働を極寒の地で強いられる…だから植民地を求め奴隷を集める。この国にはそんなもの無縁みたいね」

 

「貴女の国の話を聞かせてもらえないかしら」

 

「…ええ、ロシアはとにかく寒いのよ。だからみな強い酒を飲むそうすれば凍えないし、いい夢も見れる。王家はフランスと親戚でサンクトペテルブルクのエカテリーナ宮はヴェルサイユを参考にして建てられたの…でも国民の不満も大きくて。レーニンという自称革命家が日々あちこちで事件を起こしていて王家も頭を悩ませているわ」

 

「…そう」

 

「…その、ごめんなさい。発言を撤回する日本人は立派な民族よ、決してロシア人にも負けないくらい強い人々」

 

「…明石元二郎大佐。ご存知かしら」

 

「知らないわね、誰?」

 

「…いえ、知らなかったらいいのよ」

 

「何?今日の三笠はいつにも増して変なかんじ」

 

「さあ!まだまだよ!次はアイスクリンとそーだを頂きにパーラーに行きましょう!」

 

「くりん?ってちょっと!まだ食べるの?」

 

「もちろんよ!」

 

「はいはい!仕方ないわねぇ…ふふ帰ったらみんなでウォッカ空けましょ!」

 

「ええ、いいわよ!」

 

「飲みくらべよ!まあ三笠なんかあっという間に目を回しちゃうでしょうけど!」

 

「臨むところね?壱岐が倒れたら介抱してあげるわ」

 

「それはこっちのセリフよ!」

 



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第6話

「…ゴホ」

 

「三笠…血が…」

 

「大したことはありません…それより」

 

「Hiya!mybestfriend三笠!久しぶりね会いたかったわ!」

 

「遠いところようこそミスロイヤル。予定より大分遅い到着歓迎します」

 

「もう!相変わらず時間に厳しいわね!この娘がスエズを通れなかったからケープタウン周りをしたのよ?」

 

「こ…コンニチハ…」

 

「待っていたわこれから貴女の上官になる三笠よ」

 

「ヨロシク…オネガイシマス…」

 

「ふふ、日本語。勉強してきたのね」

 

「ハイ…少しですガ」

 

「とても上手よ。私たちなんて自然に話せるまで2年かかったわ」

 

「三笠も外国から来たのデスか?」

 

「ええ、日本語はとても奥深い言語よ。大事になさい」

 

「そうシマス!」

 

「どう?新造艦の出来栄えは!ああそうだ。三笠、そちらの方は?」

 

「紹介するわね、大日本帝国海軍大臣の戦艦朝日よ」

 

「初めまして、貴女の名前は決まっているのよまたあとで話しましょうね。ようこそプリンセスロイヤル、うちの三笠が貴国でお世話になったわね」

 

「とんでもないですわ!朝日海軍卿。こうして日本とよい関係になれたのも全部三笠のおかげよね?三笠」

 

「では車を手配しているので三井までお送りします」

 

「Thankyou!よろしくお願いするわ。あ、三井での会談が終わった後楽しみにしているわね!この娘の妹の件もあるし!」

 

「それはよい報告を期待しています。」

 

「ええ!期待してて!」

 

 

 

 

「鹿島、香取」

 

「はい」

 

「この娘を横須賀まで連れて行ってあげて。私は姉さんと鹿鳴館に行くわ」

 

「かしこまりました」

 

「三笠はどこか行っちゃうデスか?」

 

「心配しなくていいわ、私はすぐに戻るからそれまではこの鹿島、香取について回りなさい。これからあなたが暮らす鎮守府を案内してもらえるから」

 

「ワカリマシタ…」

 

「朝日大臣」

 

「どうしたの?鹿島」

 

「彼女の名前は…」

 

「ああ、そうね彼女の名前は金剛。金剛型巡洋戦艦一番艦金剛よ」

 

「…コンゴウ?」

 

「そうね…英語ではDiamondそして由来は金剛山。金剛は判官贔屓という言葉を勉強したかしら?」

 

「何デスか?それは」

 

「日本人は強きに刃向かう弱きを応援したがる民族なのよ」

 

「はぁ…」

 

「かつて日本を統治していた鎌倉幕府から政を取り戻そうと後醍醐天皇が兵を起こしたのだけれどその戦力は20対1勝ち目のない戦いだったそうよ。それでも帝に忠義を尽くし悪党と罵られてもただ一人戦った楠木正成…金剛山はその楠木正成の居城があった山よ。あなたにはそんな願いが込められているのかもしれないわね」

 

「なんだかよくわからないデース」

 

「ふふ…いいのよ」

 

 

 

 

「ご来賓の皆様。お忙しい中、海軍主宰の迎賓会鹿鳴館にお越しいただきありがとうごさいます。ご紹介しますイギリスよりお越しいただいたヴィッカース社CEOプリンセスロイヤルです」

 

「ありがとう、三笠!初めまして日本の皆さん今日は歓待ありがとうございます。今後の日英両国の発展を…」

 

 

 

「三笠、今日の会合で話合われた取り決め。理解しているわね」

 

「朝日姉さん。ええ、事実上の建艦管理です」

 

「アームストロングを巻き込んだ3社連合よ出資も綺麗に3分割それも事実上子会社の資本を使って。これじゃあイギリスから買うのと同義だわ」

 

「それが狙いでしょう。政府は警戒して予算を削る…そして海軍を弱体化させる」

 

「私も覚悟が決まったわ」

 

「遅いですよ…あ、見て姉さん。伊藤公よ」

 

「ああ、近々朝鮮総督として日本を離れるらしいわ。その前にイギリスとパイプを持ちたいってところじゃない」

 

「ロシアとの外交に失敗した方が良く来れたものね」

 

「三笠」

 

「あれ…姉さん、西園寺公も招待したの?」

 

「するわけ無いでしょ。どこから聞き付けたのか開場30分前には来てたわよ」

 

「山縣さんも…」

 

「まったく…陸軍はどれだけ面の皮が厚いのかしらね。ジーメンスと癒着していてこの上、ヴィッカースとも繋がる気かしら」

 

「それより姉さん今日の装い。素敵ですよ」

 

「三笠こそ、今日くらいドレスで来ても良かったのよ?」

 

「いえ!私には姉さんみたいに着こなせませんから」

 

「あ、私ちょっと挨拶してくるから…もう仕上がってるのよね?」

 

「はい」

 

 

 

「…みーかーさ!」

 

「あ…ロイヤル。いかがですか来日されたご感想は」

 

「ふふ、ええ!とってもたのしいわ!次のビジネスに繋がるお話もいっぱいいただけて」

 

「…そうですか。金剛型の2番艦ですが」

 

「うん!どうする?うちのドックで建造する?」

 

「いえ、国内の建艦技術向上のためにも私の横須賀で着手いたします」

 

「わかったわ!設計図は渡してあるけど技術者の派遣はどうする?」

 

「それもお気持ちだけいただくわ。自分たちでやらないと意味がないでしょ?」

 

「わかったわ。その話は置いといて…楽しみましょ!」

 

「私、こういったところが苦手なのよ」

 

「何よー!主宰してくれた海軍の三笠がそんなんじゃダメじゃない!ホストはゲストを楽しませてくれなきゃ。その前に主宰自身楽しまなきゃ!お酒が足りないなら私とって来るよ!何がいい?」

 

「お気遣いありがとうロイヤル」

 

「うふふ!そう!三笠には笑顔が似合ってるよ!」

 

「ありがとう。ゲストに気を遣わせてしまったわね、反省しなきゃ。でもお酒は遠慮するわ」

 

「え、どうして?」

 

「うふふ…酔っていられない状況に日本があるからよ」

 

「…ふふ、どういうことかしら?」

 

「政友会に痛く気に入られたみたいね?」

 

「ええ!西園寺公には鉄道に使う製鉄も依頼いただいたわ!」

 

「陸軍ともパイプを持って何をするつもりかしら」

 

「大砲が欲しいって言うのよー!だから吸収したアームストロングを紹介しようと思ってるの!ふふ」

 

「それは良かったわね?これでジーメンスを出し抜くことがてきたってわけ」

 

「ええ!本当に日本は楽しい国だわ~!」

 

「もう少し頭の回転が早い小娘だと思っていたのだけれど…買いかぶりだったようね」

 

「何?挑発してるつもり?もうこの国はイギリスの鉄に頼らないと生きて行けない国になったの。もう何をしても遅いのよ?お.ば.さ.ん!」

 

「それはどうかしら?」

 

「はぁ?何?負け犬の戯れ言なんて聞きたくないんだけど?」

 

「三笠司令!」

 

「あら、鹿島どうしてここに?」

 

「すみません!ですがこの新聞記事を見てどうしたらいいか!」

 

「…そう」

 

「…新聞…見せなさい!!」

 

「ちょ!プリンセス!」

 

「いいのよ鹿島」

 

「はぁ…三笠司令!我々海軍は!」

 

「…あ、あなた…み、三笠。こ、これどういうことよ!!」

 

「さあ?私には検討も」

 

「しらばっくれるんじゃないわよ!!」

 

「司令…嘘ですよね…こんな…でたらめ。ですよ…ね」

 

「鹿島。それを判断するのは国民よ」

 

「…はい」

 

「こ…こんな…ふざけるんじゃないわよ!!あんたでしょ!!こんな記事書かせたのは」

 

「うふふ…どこに証拠があるのかしら」

 

「こんなこと内部のトップしか知り得ない情報でしょ!!」

 

「うるさい小娘ね…周りをみなさい。あなたの迎賓会をあなた自身が壊してどうするの?」

 

「…こんなことしたらあんただってただじゃすまないのよ!!」

 

「私は軍人よ。いつでも腹を斬る覚悟くらい持ち合わせているわ」

 

「この…」

 

「いいのかしら?こんなところでお酒なんか飲んでて」

 

「帰るわ!」

 

「ふふ、道中お気をつけて」

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…海軍に贈収賄容疑 横須賀鎮守府司令長官イギリスへ視察の際造船会社ヴィッカースに便宜を図り選定に意図を加えたことの対価として金36万円を受け取りさらに軍務局担当、兵器科担当に戦艦金剛を発注した際の代金から賄賂を横流し。同様に陸軍もジーメンスとの癒着で…もはや一大スキャンダルね?怖くて外も歩けないわよ」

 

「慣例となっていた軍の癒着は奇麗にはがされるでしょう。今まで賄賂を受け取っていた軍人の名前もリークしましたから…あとは国内の製鉄をどう運営するか。ですね」

 

「それなら心配ないわ三笠。昨日の閣議で国有化が決定したから」

 

「イギリスも民意によって弾劾された会社に利益は求めないでしょう。適正価格で売り渡すはずです」

 

「三笠。あなたは横須賀にとどまりなさい」

 

「姉さん…金銭を受け取った名簿に私の名前も載せました。責任は追及されるはずです」

 

「三笠は受け取っていないじゃない…なんで自分まで弾劾するのよ…」

 

「国民に海軍という組織その在り方、実情に疑問を持ってもらわないと。今回のように製鉄所を廃業に追いやるだけの民意は育ちません。そのために」

 

「そう…それでもよ。この事件は私のところで抑えるわ。あなたがいなかったら金剛や比叡、鹿島に香取、これから生まれる扶桑や山城はどうしたらいいの?」」

 

「鹿島と香取は立派な艦娘になりました。私はもう」

 

「欧州のバルカン半島。ロシアが再び黒海を狙っているとの情報があったわ」

 

「であれば私よりも姉さんが」

 

「私は2.3年海に出てから戻ってくるわ。だから三笠」

 

「わかりました…」

 

「何かあったら敷島に相談しなさい今は連合艦隊の旗艦だから」

 

「はい…」

 

「あ、電話…大臣室…ええ繋いで…はい…そう…わかったわ今から向かうわ」

 

「どちら様からです」

 

「内閣書記官長。権兵衛さん首相を辞任したわ」

 

「では総辞職ですね」

 

「ええ、私も辞表を提出に行ってくるわ」

 

「長い間、ご苦労様でした」

 

「海に出た時は連絡ちょうだい」

 

 

 

 

 



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第7話

「八四艦隊計画?」

 

「ええ、敷島姉さん昨日予算案が議会で可決されました。新造艦の設計もある程度完成しているのでこのまま何もなければ2、3年以内に艦隊を大幅強化できます」

 

「三笠それよりもあの鳳翔って新人、あれはどうやって運用したらいいんだよ?」

 

「あの娘の実力は付随兵器の開発を待たなければなりません。それまでは鳳翔を空母を主軸においた陣形の開発をお願いします」

 

「いやだから!あいつは何をする艦なんだよ!」

 

「軍令部では索敵能力の強化としか思っていません」

 

「索敵なら今まで道理警戒惘を水雷挺にさせれば済む話じゃねーか」

 

「いえ、これからは航空機による空からの索敵で敵艦隊より早く発見しいかに有利な戦闘を展開出来るかが勝敗を分けます」

 

「だけどよ?そんな遠くの艦隊を見つけても先制できるかわからねーだろ」

 

「私が考えているのはそこです。航空機に爆弾や魚雷を装備して艦砲射撃の届かない位置から敵を発見し殲滅できれば作戦の成功率は上がるはずです」

 

「おい、海軍の前提は斬減作戦だぞ?敵艦隊の殲滅は戦艦の役目だろ」

 

「航空攻撃が実用されればその前提が覆ります」

 

「なるほどな…つまり俺は鳳翔を護衛する艦隊を組めばいいってことだな」

 

「ええ、お願いします」

 

「どれどれ…こいつらが新しい戦艦か!」

 

「はい、八四艦隊計画1号艦長門、2号艦陸奥、3号艦天城、4号艦赤城、5号艦加賀、6号艦土佐、7号艦高雄、8号艦愛宕」

 

「頼もしい面構えのやつらだな!」

 

「ええ、これは模型だけれど完成すれば今までの戦艦を優に越える能力を持っています」

 

「なあ三笠、民主化ってのは正しいことなんだよな?」

 

「…議員内閣制ですか」

 

「国民の血で戦争に勝ったからその見返りに参政権をってことだろ?護憲運動ってよ。その結果総理が大隈さんだぜ?」

 

「知らないのでしょう、かつて彼がアメリカに宣戦を布告したことなど」

 

「全うな世の中になると思ったら議員連中は支持母体の利益だけを考えるしよ。桂さんや伊藤さんが正しかったとは言わねぇけど。あの二人は戦争の落とし所を見つけてから開戦したぜ?」

 

「大隈さんは日露のときモスクワまで攻めいれと支離滅裂な過激派だったことを国民は知らないのでしょう」

 

「民主化は早かったかも知れねぇな」

 

「私達の役目は代わりありません」

 

「ま、日本は良くも悪くも海に囲まれた国だ!海軍がはいと言わない限り頭沸いてる首相が何言おうが戦争にはならねぇよ!つまり。三笠お前次第だ頼むぞ」

 

「ふふ、姉さんは連合艦隊旗艦なんですよ?私は一鎮守府の長官に過ぎません事あれば姉さんの指揮下なんです」

 

「だから!有事にはお前の意見を採用するって言ってんだ!」

 

「それは…越権行為です…」

 

「んなこときにするかよ!…あ、今オーストリアのお客さん来てるんだったよな?」

 

「はい、エリザベート皇后なら金剛、比叡あと進水を終えた榛名、霧島とで街に出ています」

 

「おいおい…国賓の護衛をあいつらに任せて大丈夫なのかよ」

 

「もうそろそろ戻る時間ですから」

 

 

 

 

 

「扶桑と山城は東京浅草方面、鹿島と香取は上野、天龍と竜田は東京駅、万世橋駅を重点的に捜索!残りの全員で三浦半島全域に非常警戒惘を敷くわよ!」

 

「はい!」

 

「必ずあの5人を見つけ出してちょうだい!総員かかれ!!」

 

 

 

「三笠、こっちはダメよ手がかり無し」

 

「そう…ありがとう壱岐」

 

「大丈夫よ!あの5人ならそのうちケロッとした顔で帰ってくるわよ!」

 

「もし…もし野盗や襲漢に襲撃されていたら…もし!拉致なんてされていたら!…私の責任だわ…何も考えずあの娘達を…」

 

「冷静になりな?三笠…第一にそこらの賊に襲われても金剛達なら返り討ちだって!」

 

「じゃあ何で帰りがこんなに遅いの!なんで連絡もないの!」

 

「…三笠」

 

「…ごめんなさい」

 

「…あれ?みんな揃ってどうしたんデスか?」

 

「ただいま帰りました!みんなのお土産も気合い入れて!買ってきましたよ!」

 

「ふふ、とっても楽しかったです!金剛さん比叡さん、榛名ちゃん霧島ちゃん今日はありがとう」

 

「榛名もエリーさんと一緒にお出かけ楽しかったです!」

 

「…むにゃ」

 

「Hahaha!霧島も楽しかったって言ってマース!」

 

「…」

 

「…お…おかえり~」

 

「ただいまデース壱岐!」

 

「わ…私はみんなに知らせてくるね…」

 

「Oh?一体どうしたデス?」

 

「エリザベート皇后、早急にお部屋にお戻りください」

 

「え、三笠?でもまだ金剛達と」

 

「…お早く」

 

「え、ええ…じゃあまた明日ねみんな」

 

「Godnight!」

 

「明日もまた遊びましょう!」

 

「お休みー!エリーさん」

 

「じゃあ私達ももう寝るネー!お休み三笠!」

 

「うふふ…待って金剛」

 

「なんデスか!もう眠いデ…す…よ?」

 

「まずは何処に行っていたのかから…聞きましょうか」

 

「も…もしかして…angry…?」

 

「Yes♪」

 

「ひ…ひえぇ~」

 

 



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第8話

「とても美味しいです!三笠」

 

「ありがとうございますエリザベート皇后」

 

「これはなんという飲み物なのですか?」

 

「抹茶という飲み物でございます。日本ではこうして客人を茶室にお招きして茶を仕立て寛いで頂く。こうした習慣をおもてなしと申します」

 

「おもてなし…日本は情緒的で色鮮やかね!」

 

「皇后…昨夜は金剛達が失礼いたしました。私の責任でございます」

 

「いえ!私が金剛達を連れ出しました!あのような時間まで…榛名ちゃんや霧島ちゃんはまだ幼いのに心配して当然よね」

 

「皇后の御身に何かあったらと心配しておりました」

 

「三笠、金剛達は今日どうしてるの」

 

「自室謹慎中で処分は追って通告致します」

 

「そんな!ではもう会えないの!」

 

「これ以上皇后の身に危険が及ぶような行動をさせるわけには参りません、どうかご理解を」

 

「そんなの嫌です!日本にいる間は金剛達が護衛なのでしょ?直ぐに謹慎を解いてください!」

 

「皇后…ご無理を仰らないでください」

 

「一緒にいて凄く楽しかった…彼女達だけです。訪問先で私を客人としてではなくエリザベートとして友達として一緒にいてくれたのは!私なんです、夜遅くまで彼女達をつれ回したのは…だから」

 

「皇后は国賓で各国を巡りその目的は親善であるということをご理解されていますか」

 

「もちろんです!」

 

「であれば遠い異国でお友達をお作りになる以前にオーストリアハンガリー帝国の国益になる工作を日本にいる間されるべきだと僭越ながら思います」

 

「三笠の言う通りです…でも!友達がいない国と親善なんて…友好な関係なんて結べるのでしょうか?私…夫のヨーゼフと世界中を巡って思いました。親善と言いながらヨーロッパでは大国同士で利権を巡り争っていますそういう人達に限って必ず笑顔で豪華なパーティーを開いて上部だけの関係を築こうとします…でも金剛達はそうじゃなかった!私を一人の友達として一緒にいてくれる…私そんな国はじめてなんです」

 

「…皇后のおっしゃる通りかもしれませんね」

 

「では!」

 

「それは話が別です金剛以下4艦は帝国海軍揮下の艦艇。命令違反には処罰がございます」

 

「ですからそれは!私が無理を言って!」

 

「ですが、皇后が訪問中の日本で公務以外のお時間何をされましても私の看過する事ではありません」

 

「え…」

 

「あの娘達もそろそろ退屈している頃でしょうからよろしければ行かれてみてはいかがでしょうか」

 

「ありがとう!三笠!」

 

「…ふぅ」

 

 

 

「三笠提督」

 

「あら香取いらっしゃい」

 

「イギリス政府から日本海軍に要求があったという情報が入りました」

 

「…どうかしら」

 

「はぁ…」

 

「いえね、花を活けていたのよ香取はこれどう思う?」

 

「私は花のことは解りませんがとてもきれいだと思います」

 

「ふふ、ありがとう。香取お茶はいかが?」

 

「いただきます」

 

「お菓子をどうぞ」

 

「…いただきます」

 

「お一方様ですのでお一人でどうぞ」

 

「お点前頂戴いたします」

 

「…」

 

「お粗末様でございました」

 

「提督、ロイヤルネイビーは金剛、比叡の貸与を目的とした交渉を政府としています」

 

「そう」

 

「海軍としてはどのような対応を」

 

「黙殺よ」

 

「わかりましたでは私と鹿島は引き続き海防の任にもどります」

 

「お願いね」

 

 

 

 

 

 

「…エリーさん…オーストリアに帰っても榛名のこと忘れないでください!」

 

「忘れないよ!榛名ちゃん…お見送りありがとう…もう泣かないで?」

 

「…でも…でも…」

 

「エリー!」

 

「っん…比叡ちゃん…」

 

「比叡…頑張ります!海軍で頑張ってエリーのいるオーストリアに旅行できるくらい頑張って…絶対にエリーに会いに行きますから!」

 

「うん!待ってるから!」

 

「榛名も比叡お姉様も大げさですね日本からオーストリアまでたった9000kmです。今生の別れでもないのに」

 

「ふふ…じゃあ霧島ちゃんも会いに来てくれるのね」

 

「当然です!絶対に!」

 

「…金剛」

 

「…もう行くデスか」

 

「…ありがとう金剛ちゃん」

 

「お礼言われるようなことなんてしてないデス」

 

「ねぇ?金剛ちゃん」

 

「…なん…デスか」

 

「私とずーっと友達でいてくれる?」

 

「…日本語って難しいデスよね、でもこうゆうときいてくれる?なんて遜った言い方したらダメだヨー!」

 

「…そうだね!」

 

「手紙、書きマス」

 

「私も」

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたの?あなた達にしては静かね。紅茶冷めてしまうわよ」

 

「なんだかネー…エリーがいないからさみしいデス」

 

「…はい…今頃どうしているのでしょう」

 

「今頃は青島ね…あなた達がマカロンを食べないなんてよほどなのね」

 

「三笠司令!榛名、エリーちゃんに会いにいきたいです」

 

「はい!どうしたらまたエリーにあえますか!」

 

「比叡…そうね、外交交渉を任されるようになるか…あるいは陛下を護衛する御召艦としてオーストリアまで行くことがあれば叶うのではないかしら」

 

「Mysister!お茶してる場合じゃありまセン!訓練頑張りマスよ!」

 

「はい!お姉様!」

 

「あらあら…うふふ」

 

 

「み!三笠司令!!」

 

「あら鹿島もお茶にする?」

 

「し、至急電です!」

 

「…確認…始まったわね」

 

「ご命令を!」

 

「非常警戒宣言、艦隊を第二戦闘配備で待機させなさい。敷島に事態を報告。私は海軍省に向かうわ…あと余計なことは言わなくていいから」

 

「はい!」

 

「…サラエボでフェルディナント皇太子暗殺、セルビアに対しオーストリアが宣戦を布告…か」

 

 



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第9話

「司令、今回の法案に関する資料と野党からの質問状それに対する規定回答です」

 

「ありがとう鹿島」

 

「後ろに控えておりますので何かあれば」

 

「ええ、大丈夫よ」

 

「喚問のお時間です」

 

 

 

「帝国海軍横須賀鎮守府司令長官三笠君」

 

「お答えします。イギリスからは今回の件に関し海軍に何かしらの連絡は受けておりません」

 

「では海軍はオーストリアとセルビアどちらと戦うおつもりか」

 

「憲法11条統帥権の独立により戦略的な発言は控えさせていただきます。加えて国権の発動たる戦争におきまして海軍が独自に戦闘行為をすることはあり得ません」

 

「イギリスはすでに参戦のため船を増やしていると聞いています。イギリスから打診を受けたのではないですか」

 

「質問が重複しておりますが重ねて回答します。イギリスからは連絡を受けておりません」

 

「金剛を派遣するとなれば国防はどうなるのですか!」

 

「そのような計画はございません」

 

「今回、海軍陸軍から提出された大臣現役武官制の復権ですが海軍の現場指揮官としてどのようにお考えですか」

 

「可決されるべき法案と考えています」

 

「それは軍部の政治独占と戦争がしやすいからということですか!」

 

「回答します。まず軍部という組織は存在しません有るのは陸軍と海軍でございます。国益の最終行使が戦争ですそこに行いやすさなど存在しません。今回の大臣現役武官制は予備役の大将で首相に都合の良い人物が推挙される現行法を改善する法案です。予備役の軍人では組織への責任がなく現代戦の知識が乏しい為、勝てない戦を国家主導で行ってしまう恐れがありますが。現役武官であればできない戦争を起こすことはありません。前首相身内の山本権兵衛が残した悪法でございますこと議員の皆様にはお詫び申し上げます」

 

「あなたの答弁が真実であるなら現政府に不都合な法案という訳ですが、なぜこの法案を通されようとしているのか」

 

「戦争をしないためにでごさいます」

 

「であれば軍の予算は必要ないということですか」

 

「陸軍は承知しかねますが海軍ではFleet in beingという思想がございます。海軍は狭義の国防であるところのため最小限の戦力の保持を有するが、あくまで防御であり他国を侵略するものではあり得ない。ですが広義の国防である国益を求める場合に台湾や朝鮮、南の委任統治領までを防備すると現存の戦力では手に余るものであります。つまり予算は足りておりません」

 

「海軍は現役武官制にして都合の良い内閣を作ろうとしているのではないか!」

 

「失礼ですが。海軍に都合の良い内閣があるのであれば見てみたいものです」

 

「海軍は戦好きなのではないか!」

 

「海軍は戦を好んで行ったことはありません。望むのは政府あるいはこれから未来、国民が豊かさを求め戦争を始めるかもしれませんが大臣現役武官制はその波を食い止めるものであります。このあとの評決では野党の皆様にもこの事をご理解頂きたく思います。」

 

 

 

 

 

「で?俺が大臣で三笠が軍令部総長か」

 

「はい、敷島姉さんにはご苦労おかけしますが」

 

「朝日を戻せばいいじゃねーか」

 

「朝日姉さんは戻るにはまだ早すぎます」

 

「連合艦隊はどうするんだよ。それに横須賀の連中はどうなるんだ」

 

「連合艦隊は解散。横須賀を軍令部の直轄組織として統合します」

 

「はいはい…わかりましたよっと」

 

「宜しくお願い申し上げます」

 

 

 

 

 

「三笠司令?」

 

「あら、河内どうぞお入りになって」

 

「私が…第一艦隊旗艦とはどういう」

 

「今の時勢にはあなたしかいないと思ったからよ」

 

「新型艦の金剛や比叡がいるのに…ですか」

 

「あの娘達はまだ若すぎるわ。改修もあるし」

 

「では…私は代打…というわけですか」

 

「河内、あなたはいつも悲観的で自分を過小評価してる」

 

「それは…私が不幸だから」

 

「演習では全滅を覚悟した突撃、不利と判断したときの撤退どれも合格よ」

 

「私は…」

 

「正直に話すわ。艦隊には大海令の軍令部の言う通りに行動してもらわなきゃ困るの。けれど現場での駆け引きに秀でた者でなきゃ勤まるはずがない。どちらも持ち合わせているのがあなたよ」

 

「司令…」

 

「最悪、全艦沈んでもあなたに任せたいの」

 

「わかりました」

 

「提督!」

 

「香取、落ち着きなさい」

 

「ドイツがオーストリア陣営に、ロシアがセルビア陣営にそれぞれ参戦を表明しました!」

 

「落ち着きなさい香取」

 

「三笠提督!」

 

「焦っても良いことはないわよ?」

 

「でも!」

 

「オーストリア、ドイツを撃つわよ」

 

「は…はい?」

 

「ドイツ領山東半島に対する占領作戦を陸軍と協調して立案なさい」

 

「は…はい!」

 

「河内」

 

「…」

 

「艦隊を率いて舞鶴に向かいなさい」

 

「わかりました」

 

「司令!」

 

「鹿島…今度は何?」

 

「イギリスの海軍卿戦艦デュークが非公式に三笠司令との会談を要求してきました」

 

「いつ日本に来るの」

 

「2日後には到着する模様です」

 

「早いわね」

 

「日本の参戦についてでしょうか?」

 

「わかったわ準備を進めて」

 

「はい!」

 

 

 

 

「三笠!なに考えてるデスか!!」

 

「そうです!ついこの前まで一緒にいたエリーの国に宣戦を布告するなんて!」

 

「まだその段階にないわ。作戦を立案しなさいと命令しただけよ」

 

「なんで準備する必要があるの!!」

 

「オーストリアは友好国だけれどセルビアにロシアが介入したそのロシアとはフランスが同盟を結んでいてフランスはイギリスと条約を交わしている。あとはわかるわね?」

 

「そんな謎理論でどうしてエリーと戦争しなきゃならないの!」

 

「ドイツを撃ちたいからよ」

 

「はぁ?」

 

 

「ロシアが参戦した時点でこの戦争の勝敗はついてるわ。それにドイツの山東半島は朝鮮の防備のためにも抑えておきたい土地よ、元々三国干渉で野放しになっていたのだけれどそれにドイツには大きな借りがあるわ。今ここでかの国を叩くメリットが大きいの」

 

「三笠は…三笠だけはこんな世界嫌だって…そう考えて行動してる偉い人だって思ってたのに…」

 

「私は聖人君子ではないのよ?日露戦役はドイツの宰相ヴィルヘルム2世が名誉欲の為にロシアを唆して起きた戦争。そんな下らないことのために初瀬姉さんは…」

 

「…敵打ちってこと?」

 

「ええ、私はドイツが憎い。初瀬姉さんを私達を死地へ追いやったあの国を私は絶対に許さないわ」

 

「三笠…」

 

「あなた達にも逢わせてあげたかったわ。初瀬姉さんは私の自慢の姉なのよ…およそ戦艦らしくない人なのだけれど、優しくて平和を愛していて。だけどもうどこにもいない」

 

「三笠…初瀬さんは三笠に復讐なんて望んでないデスよ」

 

「そうね、初瀬姉さんなら望まないわ」

 

「なら!」

 

「私がヴィルヘルムの首を望むのよ。姉さんの意思は関係ないわ」

 

「三笠!あなた!」

 

「金剛!抜錨するわよ!」

 

「河内待ってくだサイ!」

 

「戦列を乱すな!早く戻りなさい」

 

「いってらっしゃい」

 

「三笠…」

 



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第10話

「急な会談要請。ごめんなさいね?」

 

「いえ貴国の性格は重々承知しておりますから、驚くことではありません」

 

「ふふ…日本政府にも貴官宛にも何度も打診したのだけれど明確な回答が得られなかったからこうして直接お話しにきたのよ」

 

「ああ、あの文書ですか…ロイヤルネイビーが何を仰っているのか要領を得なかった為通信障害と判断し返答はいたしませんでした」

 

「三笠司令官はイギリス生まれなのに英語も読めないのかしら?」

 

「そちらの電文に文脈的誤りがあったとお考えになる頭脳をデューク海軍卿は持ち合わせていないようね」

 

「うふふ…そんな態度では日英同盟も風前の灯火のようね。本国では日本との同盟を解消すべきだとの声もあるのよ?日本は英国に同盟国としての責務を果たしていない不誠実な国だとね。そんな議会を抑えているのがロイヤルネイビーだというのにずいぶんな言い様だこと」

 

「イギリスが誠実を語るとは…っ!あははは!」

 

「…」

 

「この三笠、生まれて一番面白い冗談を伺いました…デュークはとても面白いセンスをお持ちのようですね」

 

「金剛と比叡をわがロイヤルネイビーに合流させなさい」

 

「…まぁ、貴国もお困りのようですからお話だけはお伺いしましょう」

 

「わがイギリスはフランスからの要請で連合側としてドイツに宣戦を布告するわ。ロイヤルネイビーの戦力として巡洋戦艦を1隻でも多く戦線に投入しドイツ艦隊を撃破。中央同盟の通商を破壊し勝利を納めるわ。その為に日本の金剛、比叡を貸与してほしいというイギリス政府からの正式な要請よ」

 

「いかなる理由があるにせよ私の一存で決定出来ることではありませんね。この件は私がお預かりして然るべきときに海軍大臣に相談し決裁が頂ければ議会の審議にかけ政権のご支持を頂戴できましたら時期を決定し派遣の部隊を編成して準備をさせて頂きます」

 

「つまりあなたではお話にならないということかしら」

 

「私以外では窓口になり得ないということですが?いかがしますか」

 

「日本も対ドイツ戦参加したいでしょ?」

 

「はて…戦争をしたい国などあるのでしょうか」

 

「強がらなくていいわ!山東半島…青島は日本に譲りたいとイギリスは考えてるのよ?金剛だけでもいいわ今日決裁が貰えるならイギリスの要請ということで日本の参戦を認めてあげるのもやぶさかではないのよ」

 

「貴官は交渉に使えるカードを履き違えているようだ…金剛、比叡は日本政府が国費によって建造したもの。その際民間経済に欧州の論理を持ち込み国防事業から多額の利益を得ようとしていた国が今度は売った艦を貸せと…しかもその見返りが参戦と…ご都合主義にも程があるのではないか!」

 

「勝ち馬に乗るのは貴国も望むところでしょ?同盟国の勤めを果たしなさい!」

 

「長旅になるでしょう。お早めにお帰りなさい」

 

「後悔するわよ」

 

「後悔したことがないの」

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ三笠、議会からも陸軍からも海軍の出兵はまだなのかって散々言われてよぉ…俺は胃がキリキリして議会行きたくねぇよぉ」

 

「今、ドイツ領を攻めることは国際法に抵触し我が国は危うい立場に立たされます。陸軍には説得のため鹿島を派遣しておりますので今しばらくご辛抱ください」

 

「しかしよぉ連合に入って参戦するにも当のイギリスは二転三転するしよぉ?もういいんじゃねーか?」

 

「いえ、この戦争必ず日本は参戦しなければこの先未来はありません」

 

「なんでだよ?」

 

「青島の租借権はもちろんのこと戦場のヨーロッパへの物質輸出による特需により日本の経済は急成長できます。そして戦勝国になった場合、世界の覇権を握る一翼となりアジア太平洋地域は日本の統治するところになります。つまり大国になることができる千載一遇のチャンスなのです」

 

「…三笠…」

 

「そのためにもやむ終えず同盟国としての大義名分が参戦には必要になります。どうかご辛抱を」

 

「…だ、だとしたらイギリスがそんな日本の利益になる参戦を許すわけなくねーか?」

 

「遠いアジアの地では何事も日本無しでは達行きませんよ」

 

「大臣!」

 

「入れ」

 

「あら香取なにか動きはあった?」

 

「至急大臣と軍令総長に大本営出席要請です」

 

「姉さん」

 

「ああ」

 

 

 

 

 

「書記官として海軍戦艦鹿島が読み上げます。本日15時付け発信イギリス政府、宛日本政府。一つドイツ領山東半島青島攻略に当たり同盟国大日本帝国の助力と連合国としての戦争参加を希望する。二つ欧州戦線にも陸上戦力の投入を希望する。三つ太平洋沿岸警備、ドイツ船籍による太平洋上通商破壊を懸念し日本海軍に洋上護衛を希望する以上です」

 

「私は海軍の派遣部隊編成のため席をはずさせていただきます。姉さんあとは宜しくお願いします」

 

「あ、ああ…わかった」

 

「鹿島」

 

「はい!」

 

 

 

「先ずは第2艦隊を旅順に派遣するわよ」

 

「編成はいかがしますか」

 

「周防、石見、丹後、沖島、見島、磐手、八雲、常磐予備戦力として高千穂を編成しなさい」

 

「…それではほぼ主力が接収艦になります!」

 

「まずはあの娘達で様子を見るわ」

 

「しかし…」

 

「イギリスがどう動くけわからないわ戦力は温存するわよ」

 

「…かしこまりました」

 

「オーストラリア方面に伊吹、矢矧。アメリカ方面に肥前、浅間、出雲。欧州方面に駆逐艦隊を派遣する準備をなさい」

 

「はい!」

 

「香取に戻ったら南西諸島の警戒任務に当たるよう」

 

「はい!」

 

「私達も日本海に出るわよ」



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