【外なる英雄もどき】 (Ecoli@良性TYPE)
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1話

初めまして、Ecoliです。以前書いていた作品のデータが消えたので、改めて書きました。
よくある神様転生ですが、私は思いました。
周りと同じ存在なのに、チート能力の俺TUEEEEは飽きた!
神は髭生えたジジィや立川のアパートを借りているパンチとロン毛だけじゃない!
と、訳の分からないことを考えた結果がコレです。お酒に飲まれながら考えた第1話です。
つまらない!何だこの駄作は!
と思ってくれても構いません。
俺は繝九Ε繝ォ繝ゥ繝医?繝??の狂信者になるぞ!と言った方はぜひ、この作品を応援してください。

それでは【外なる英雄もどき】をご覧ください……


話をしよう……

あれは今から36分、いや、1分40秒前だったか?

まぁいい……

私にとってはつい先ほどの前だったが……まぁ、その、なんだ?

 

「……駅にいたはずだがここはどこだ?」

 

仕事帰りまっすぐ家に帰るべく、駅で電車を待っていた。私が乗る電車が向こうから見えてきたのは覚えている。そして手に持っていたスマホを内ポケットに入れた瞬間に感じた、背中の衝撃と浮遊感。

気がつけばこんな真っ白い空間に佇んでいたのだ。何故自分がこんなところにいるのか?一体あの時何が起きたのか?

 

そこから考えられることはたった一つ。たった一つの真実だ。

 

…………えっ死んだ?

 

そう、これが私の脳内会議から出された答えだ。

 

電車が来ていた。

背中の衝撃は何者かに押された衝撃。

浮遊感はホームから線路に落ちる際の重力。

 

この方程式の解は、

『線路に突き落とされ、そのまま電車に轢かれた』

だ。

他殺か事故かはわからないが、どちらとしても死んだことには変わりはない。

 

「うわぁ…マジか……繁忙期に人員が減るのはヤベェよ……いや、そんな事気にしてる場合じゃない、か……」

 

勤め先からしたら、忙しい時に何しでかしたんだ!?と、怒鳴られるほど忙しいからな……繁忙期以外は定時退社できるんだけどさ。私の仕事を誰かに任せるとなると、少し申し訳ないとは思う。

……ん?いや、待て……何かとても重大なことを忘れているよう…な……

 

「あ"!?」

 

忘れていた!あれは!あれだけは!!誰にも見せられない!!!

 

あのAV(ちょっとオトナ向けの理想郷)だけは見せられない!!!」

 

どどどどどうしよう!?私が死んだことはどうでもいい!問題はその後だ!家族や仲のいい友人が私の部屋を片付けるはず!となると確実にあの総て遠き理想郷(アヴァロン)が見つかってしまう!絶対ネタにされるよ!?お供え物にR-18要素のナニがあるよ!?家族私以外全員愉悦だから絶対そうなる!花京院の魂を賭けてもいい!未来永劫笑われ続けるのは嫌だァァァアア!!!

 

『君はさっきから何をしているんだい?』

 

「ナニがナニになりそうなんだ…よ……

 

声が聞こえる方を向くと、そこには女神様(言葉にできないほどドチャクソ美人)がいた。

日に焼けて健康的な褐色の肌。軽めのウェーブがかかったショートボブ。金色に輝く美しい瞳。全体的に痩せているものの、女性らしさが控えめにある。

 

つまるところ、私のタイプでした

 

口をだらしなく開け呆然としていると、その女神様が私に微笑む。

 

「ヴッ!?」

 

突然の一撃。膝をつき、胸を抑える。

眩しすぎて直視できない。胸が苦しい。呼吸が乱れる……!

当然だ。

こんな女神様がそんなことした暁には、私のような女性との一夜を過ごしていない男の子(童貞)には致命傷すぎる。

落ち着け…私は童貞でも、女性とのお付き合いはした事がある。仕事でも綺麗な人と話していた……ならばこれしきの事!何ともないはずだ‼︎

と、自分に言い聞かせて、顔を上げる。

 

「苦しそうだが……大丈夫かい?」

 

「………ヘァ?」

 

あと十数センチ前に顔を出したら、唇が触れてしまうそんな距離。そこには女神様がいた。

そして私の視界は真っ暗になった。その時感じた香りは、とてもとても、心地よく、そして深淵に引き込まれてしまいそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ……

 

 

柔らかい……

 

 

心が安らぐ……

 

 

暖かくて気持ちがいい……どれほど高級な枕なんだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おいおい、そこに顔を埋めないでおくれよ?流石の私も恥ずかしい。』

 

その透き通った声が語りかけてくる。

思い瞼を開け、今の状況を確認する。

今の私の体勢はうつ伏せ。顔は女神様の太ももに。手は抱き枕を抱えるように、彼女の腰に回している。

 

「………‼︎⁇っも!?申し訳ございませんでした‼︎」

 

咄嗟に目の前の女神様から離れ、そのまま土下座をする。その滑らかな動きは、後にもできないだろう。

 

『ふふ、やはり君は面白いね……私の見込んだ通りだ。なに、そう畏まらなくてもいい。』

 

「…………ハイ」

 

そして私は、女神様の言う通りに顔を上げる。

やはり何度見ても、何度見ても美しい(おそろしい)。人類が感じるべき事が総て、目の前の人物に凝集されている。

 

『おや、私の顔に何か付いているのかな?』

 

「いっ、いえ!美しいと思っていまして……」

 

『当たり前さ…なんせ私は神様だからね!君が感じ得る、最高の美にしたのさ。』

 

「神様…ですか……やはり私は………死んだのですね?」

 

『そうだよ。』

 

あぁ、やはり死んだのか。死んだ……のか……

まだやりたい事がたくさんあったんだけどなぁ……

 

『それにしても君……ホント女性運皆無だよね〜』

 

「えっ、『2年も付き合ってた彼女は結婚詐欺師で〜』ちょまッ!『次の彼女は三股してて、ホテル前でそれが発覚して〜』…ぁッ『学生時代には水着泥棒の冤罪になりかけたと!』ぅぅ……『そして今だに卒業してない(童貞)!!』嫌ァァァ‼︎やめてェェ‼︎」

 

やめてくださいしんでしまいます……

 

私の心が折れた。死んでも安らぐ事なく、女難を笑われる……いくら美しい女神様でもそれはダメだ……

もうやめて!と、私は目で女神様に訴えようとした。が、その女神様は、あるものを手にしていた。

 

『あはは!だから新しい出会いを求めることなくこんなモノで済ませているんだ?』

 

「…………そっ、それは……⁉︎」

 

『君のBlu-rayに入っていた性癖の塊(とてもえっちなビデオ)❤︎だよ?いい趣味してるね君♪』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うわああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくお待ちください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「殺せェ‼︎もう殺してくれェェ!!!地獄でもいいから‼︎そのまま釜茹での薪になるから‼︎私というこの世の恥部を消してェェェェ!!!」

 

『うわぁ……人間って追い詰められると自暴自棄になるけど……これはこれで面白い…じゃなくて愉快だ。やはり私の見込んだ通りだ。君は実に面白い!』

 

「貴女の愉悦のために呼ばれたんですか私は⁉︎」

 

『当たり前じゃないか。何か面白い人間(素材)はいないかな〜って探していたら、人違いで殺された君がいた。これはもう呼ぶしかないと思ってね。君は実に幸運だ!私と一緒に違う世界に行けるのだから‼︎』

 

……え、今この女神様は何て言った?

殺された?人違いで?

 

「私は……殺された?」

 

『そうだよ。君を突き落とした女は、「ワタシを捨てた彼ピッピに復讐したかった。駅で見つけたから突き落としたら人違いでした。テヘペロ♪」だってさ。あはははははは!こんな突っ込みどころ満載な人間は初めてだよ‼︎』

 

嘘だろぉ……

何なんだよ、怒りを通り越して虚無しかないよ……

私の人生ってホントロクなこと無いな……

どうして私は生きていたんだろう……

 

 

 

 

もう、いいや……

 

 

 

 

「……申し訳ございませんが、貴女と一緒に行くことはできません。」

 

『……おや?別の世界とはいえ、新たな人生を歩めるんだ。それを断るということは……分かっているよね?』

 

「はい、もう良いんです……もう……いっそのこと全てを投げ捨てたい…天国も地獄も、輪廻転生も解脱も……無に還りたいんです!深淵があるならそこに身を捨てたいんです‼︎…………もう嫌なんです…………」

 

これが私の本音だ。生きてても何も感じなかった。虚無だった。人が喜べることが喜べず、悲しむことにも悲しめず……

その場の空気で楽しめても、満たされることはなかった。

 

 

人としての感性が欠けていた。

 

 

生きるのがとても辛かった……

 

 

だからもう、全てを投げ捨てたい……

 

 

だから女神様の救いに手を伸ばすことはできない……

 

私の本音を聞いた女神様は少し驚いたような表情のあと、小さく溜息をついて話し始める。

 

『へぇ……そうか。じゃあ、仕方ないか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とでも言うか人間?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前に拒否権はない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前はすでに私の道具だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前の意思は不要だ!全て我が指示に従え!!

 

 

 

 

 

 

 

先ほどまでのような美しく優しい声ではない、人が聞いてはならない唸りがこの真っ白な世界に轟く。

否、真っ白ではない。黒を幾度となく塗り重ねた、悍ましい空間。

そして私の目の前にいる、理解し難いナニカ

それは女神様のような、優しいものではない。人間を弄ぶ、バケモノだった。

顔には深淵が覗き、今にも引き込まれそうな恐怖。

美、そのものだった肌は、ヒトが感じる嫌悪感の塊。

私の首を締め付ける歪な触手。

私の喉奥に入り込む鉤爪。

そのナニカは、私という、ちっぽけな存在を絶望という釜に放り込むことは容易いだろう。

誰もが恐れる存在。恐怖、死、後悔、絶望。ありとあらゆる負の感情が駆け巡る中、一つ、違うものが、鮮明に浮き出ていた。

 

「素晴らしい……」

 

ふと、溢れた、私の言葉。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

素晴らしい…だと?

 

 

 

 

 

 

 

 

ふふ……

 

 

 

 

 

 

 

 

ふははははは!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

これは驚いた!!

 

 

 

 

 

 

 

 

阿保みたいに崇めるだけの狂信者(消耗品)ではない貴様が!この私に感銘を受ける!

 

 

 

 

 

 

 

 

良い!実に良い!!

 

 

 

 

 

 

 

 

やはり私の目は正しかった!尚更君を連れて行きたくなった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それで良いかな?』

 

「えっ…………⁉︎」

 

気が付けば目の前の異形は元の姿……いや、女神様(別の姿)に戻っていた。しかも私の首に腕を回して密着していた。

 

「〜〜〜⁉︎⁉︎」

 

『ふふ…君の反応は飽きないね。しばらくは愉しめそうだ。』

 

だって!だって当たってるんだもん⁉︎こんな私の理想の女性(ドチャシコどストライクボディ)に密着されたらもうヤバイ(言葉に出来ない)!嬉しいもん⁉︎もう死んでも良いもん⁉︎あ、死んでたか……てか匂いが良い!もう……あーッ!抑えて!抑えて私のマイサァァァーン⁉︎

 

『おやおや?どうしたのかな?もしかしてこの私に欲情しているのかな?』

 

その通りでございます!!(YES!!of course!!)

 

あっ……

 

『ヘェ〜〜……なら、私の言「貴女様の全てに従います‼︎従わせてください‼︎」……交渉成立だ。では、少し場所を変えようか?」

 

そう神様が言った途端、まわりの世界が変わった。一言で言えば、よくある六畳一間の1R。床は畳、その上にくたびれた敷布団。家具も安っぽく、必要最低限のものしかない。

そして先ほどまでなかった感覚……篭った熱、ジットリとした湿度。急激な環境の変化に、すぐに全身から汗が出始める。それは目の前の神様も同じだった。褐色の肌を舐めるように滴る汗。湿り気により触れ合う肌がくっつく感触。様々なものが合わさった匂い。

 

しかし何故、蒸し暑いこの場所を選んだのだろうか……?

 

……ん?

…あれ?これ……

もしかして……

 

「……私の秘蔵の逸品(お気に入りAV)と同じシチュ?」

 

『もちろん!その方が君も乗り気になるだろう?それにこのような言葉を聞いたことがある……“据え膳食わぬは男の恥”ってね♪』

 

「ッッッ!?」

 

 

 

 

本能が叫ぶ。

 

 

神様と目合え(まぐわえ)

 

 

神様に残せと

 

 

この神様を抱けと!!

 

 

一つになれと!!!

 

 

『では……交わろうか……!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆうべは おたのしみでしたね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふぅ……いやァ、なかなかなものだったよ。人間との交わりとはこういうものだったのか……良い体験ができた。』

 

「…………」

 

『ふふっ、喋られないほどの快楽だったのかい?そりゃそうだ。君の望む事を全てしたからね。』

 

…ありがとう、ございました………

 

私はもう消えても良い(断言)

父さん、母さん、お二人にご報告があります。

 

 

無事に卒業できました。

 

 

29歳11ヶ月と、まだまだ若いのに逝ってしまったことをお許しください。そしてイってしまったことを祝ってください。

……さて、冗談は置いといて、だ。ひとつ、この人に聞きたいことがある。

 

「何故、私と……その、あの……『“交わったのか?”かな?』…ハイ。」

 

私の質問に対し彼女は微笑みながら答える。

 

『私の知り合いに万年発情期(スーパービッチ)がいてね。そいつは【人間とヤると、色んなパターンがあって飽きないの!!】とか言っていたんだ。それで君がいた。何もおかしくはないだろう?』

 

「話が繋がってません。」

 

『まぁそれだけじゃないんだけどね。言っただろう?面白い世界を見つけたから君を連れて行こうと思った。だが、ただ連れて行くだけじゃ面白くはない!私は考えた!どうすればもっと面白くなるのだろうと‼︎君と言う玩具で長く遊べるのだろうと‼︎で、さっき話した知り合いの言葉を思い出してね……私は閃いた!!!

人間の子供を産んで育てようと!!!

 

 

いや、その理屈はおかしい

そしてさりげなく玩具と言ったよこの体液まみれの神様。まぁ、まんざらでもないんですがね私は‼︎

ん?待てよ?まさかそんな……まさかね?

 

「……もう一つ、聞いてもよろしいでしょうか?」

 

『良いとも。』

 

「その世界へ行くまでに…どのくらいの期間を要しますか?」

 

『そうだね……人間の感覚で言えば〜…10ヶ月くらいかな?』

 

 

総てを察した

 

 

『さて、そろそろ……準備に取り掛かろう。君は眠るといい……』

 

そう言われた瞬間、強烈な眠気に襲われた。瞼が勝手に閉じる。数秒で視界が暗転し、声だけが頭の中に響く。

 

『まだ名乗っていなかったね……

 

 

黒い翼と三眼の煙(The Haunter in the Dark)

月に吠える血塗れの舌(BLOODY TONGUE)

無貌の神(The Faceless God)

星々に根付く種子(Ahtu)

黒いライオン(Black Lion)

理解を超えた直線と曲線の方程式(Kruschtya Equation)

ファラオを嘲笑うファラオ(Black Pharaoh)

機械仕掛けの男(Tick Tack Man)

真紅に染まる女王(Queen in Red)

 

 

そのどれもが私であり、総てを嘲笑する……

 

 

 

 

 

 

這い寄る混沌、Nyarlathotep(ニャルラトホテプ)!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……暗い

 

……暗いけどすごく落ち着く

 

……とても温かくて心地良い……

 

そして…………

 

 

 

どこだここ?

あの神様は?つーか口が開かない⁉︎それに水中だと⁉︎息が……できてないけど苦しくない?身体もあまり動かせないし………えっと、もしかして…………

 

《その通り、そこは私の胎内さ。》

 

神様ッ⁉︎一体どういうことか説明プリーズ⁉︎

 

《言っただろう?人間を産んで育てると。そのあと無事に妊娠して、今はこの世界の病院だ。もうそろそろ、外の世界に出れるだろう。》

 

はぇ〜……じゃあ神様は私の母親なんですねー……父親ってもしかして……?

 

《君に決まっているだろう?》

 

oh……何だろうこの背徳的な感じは。新しい扉を開いてしまいそうだ……

ん?病院ってことは……今分娩室です?

 

《その通り。だが、なかなか大変だな、人間の出産というものは。思った以上に痛むのだな。人間でいう…こう、ウ◯コみたいにプリッと出ないものかね?》

 

これから産まれてくる人をウン◯扱いしないでくれます?一応人間にとっての生命の神秘なんですよ?多分?

 

《私にとってミジンコも人間も同じ矮小な存在なんだけどねェ……》

 

そのミジンコレベルと興味本位で致したんですよアンタ。

 

《ハハハ!母親に対してそんな言い方はないだろう?》

 

父親でもあるんですけどね私〜!

ん、なんか頭の上あたりが騒がしいな……もしかして、そろそろですか?

 

《ああ、でも何か飽きてきたなぁ〜〜、こう、振ったシャンパンのようにポンッと出てきてくれないかなぁ〜〜》

 

わぁ、何を言っているんだこの人。待って、何か凄い震えてるんだけど?オイ⁉︎待て、待って!嫌な予感がする⁉︎シャンパンのコルクのようになりそう⁉︎

 

《いいね、やってみようか!》

 

え?待ってやめて!おやめください!あー!お母様、おやめくdあーっ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

生々しい音とともに、私の新たな生が始まった。それと同時に、前世の走馬灯が見えた。

周りがざわついている。当たり前だ。勢いよく産まれ射出されたのだ。しかも浮いているのだから。

え?何故わかるって?そりゃ謎の浮遊感があるんだもん。冷たい床も、暖かい人の温もりも感じない。ただあるのは、体験したことがない浮遊感だけだ。

 

それよりも、だ。

 

マズくないかこの状況。何せ赤ん坊が浮かんでいるのだ。奇々怪界どころじゃない。どう弁明するんだコレ……

 

そう思っていると、聞こえた第一声が、私の期待を裏切った。

 

「おめでとうございます!産まれたときから“個性”が発現している、元気な男の子ですよ!」

 

……は?どういうことだ?何故喜んでいる?説明プリーズ、マイマザー?

 

《コレが私が見つけた世界さ。この世界の人間は新たな能力を有している。その総称を“個性”というそうだ。どうだい?実に面白いじゃないか!》

 

“個性”、ねぇ……確かに前世よりも面白そうだ。だが大丈夫なんです?治安とか行政とか?

 

《その点は大丈夫さ。それは追々話すとしよう……しかし、いいのか?》

 

え、何がです?

 

《周りだよ。君、産まれてから産声を上げていないからさ……【人間】として呼吸していない事になるよ?》

 

…………あッ

 

意識を周りに向ける。

やはりこの世界でも、産声をあげない赤ん坊は無呼吸状態らしい。

さて、どうしたものか……恐らくこのままでは背中を叩き、無理に呼吸させるのか?

 

痛いのは嫌だなぁ……

 

……うん、仕方がない。恥ずかしいけどやるしかないか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぉ、おぎゃー……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが人ならざる存在から生まれた、私の新たな人生の始まり(人間の卒業)であった。




うん。素面で見るとヒッッッドイ文章でした。もともと日本語力が低いのに何故書いたんだ?
よく飲んだ後の一晩で書けたなーっと思います。
あと昔に比べてさまざまな機能が追加されてますね。色々な表現がしやすくなり、より邪神らしさを出せるかもしれません。

まぁ、とにかく、こんな邪神すら吐き気を催す駄文を最後まで見ていただき、誠にありがとうございます。
きままに書いていきますので、どうぞよろしくお願いします。


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2話

玉虫色の悪臭って……どんな匂い?


話をしよう。

あれは(以下略)

……と、いうことだ。え?略しすぎだって?まぁそうだろうな。話す気にならないし……だが、前回までのあらすじは言っておこう。

 

1、死んじゃった

2、脱童貞

3、新たな人生スタート

 

こんなもんだろう。これ以上、上手く言える気がしない。

さて、私が生まれ落ちてしまったこの世界について説明をしよう。この世界は、かつての私が知る世界とは異なるものだった。

 

まずは“個性”という存在だ。

これは人間に備わる『個性因子』によって発現、および発動するそうだ。かつては【異形】として恐れられ、差別の対象となっていたそうだ。だが今は“個性”そのものが人間の在り方と考えてもおかしくないだろう。“個性”=存在価値 といった式が成り立つといっても過言ではない。

次に『ヒーロー』という職業があることだ。不死身の俺ちゃんだったり、心がガラスの弓兵だったり、ア◯パ◯マ◯などといった、子供に夢を与える存在……だったのだが、この世界では“個性”を用いて人助けをする【職業】と、なっている。確かに、エラ呼吸ができる“個性”なら水難救助にもってこいだ。その事件事故に合った“個性”を持つヒーローが活躍していく。

もちろん、光もあれば闇もある。

“個性”を用いて罪を犯す人、ヴィランである。火を噴く“個性”であれば、火種を用意することなく放火ができる。と、いうように、“個性”の数だけ犯罪が簡単に起きてしまうのがこの世界だ。

かつて“個性”がまだ【異形】と恐れられていた時代は、まさに混沌、無秩序(母が喜びそうな世界)だったという。現在は“個性”に合った法が敷かれ、秩序が保たれている。

 

それ以外は……前世と何ら変わらない世界だ。

 

まぁ、隣にいるのが顔のない蝙蝠野郎(ナイトゴーント)でなければ……

 

『……む?もう吸わんのか?』

 

お腹いっぱいです。

 

『遠慮するでない、存分に味わうといい。』

 

夜鬼(ナイトゴーント)と一緒にしないでくださーい。

 

『……そうか。』

 

彼女は何故か惜しむような形で、乳房から私を降ろす。そして私がいたスペースに、夜鬼がすぐに飛びついた。

紹介が遅れた、立場上は私の【姉】にあたる存在、イブ=スティトル(忍耐強き、雌性神)だ。彼女は私にとっての乳母でもある。

ん、お母様(ニャルラトホテプ)はどうしたって?目星をつけた人間に魔道書をばら撒いてるってさ。やってる事がヴィラン以上にタチが悪いわ。あーあ、ヒーローの仕事が忙しくなっちゃうなー……

 

しかし、産んだ我が子を放置するとは……母親としてどうなんですかね全く。

 

『お前の言い分は理解できる。アレは混沌そのものだ。自分の愉悦を優先させる。しかし、それがアレにとっての当たり前なのだ。そこを理解しておけ。』

 

はーい。

 

そんなこんなで、乳幼児期は姉の元で過ごすことが多かった。初めてできた友達?が夜鬼ってのは……まぁいいか。姿が普通の人間ではない“個性”もいる。おかしい事は何もない。

 

 

 

そして少年期。何があったかはダイジェストで説明しよう。

 

 

 

 

 

 

 

『やぁ♪愛しい愛しい我が息子(面白可笑しい元人間)よ、久しぶりだね。』

 

「あぁ、お帰りなさい。何かやけに嬉しそうですね。良い玩具(狂信者)でも見つけたんです?」

 

『そうなんだ!数年前に魔道書を渡した奴なんだけどね、そいつが私を崇拝する団体を設立したんだよ!いやー、ワクワクするね!さて、また新しい団体も創りたいから行ってくるね!』

 

「いってらっしゃい。お土産よろしくお願いしまーす。」

 

 

 

 

 

 

 

だったり、

 

 

 

 

 

 

 

 

《ニア様、完成しました。我々ミ=ゴの技術を持ってすればいとも容易く再現できます。》

 

「マジで⁉︎やった!コレでダ◯ス・ベイダ◯ごっこができる‼︎」

 

母の崇拝している科学技術がすんばらしい種族、ミ=ゴのおかげで、ライトセイバーが完成した。ちゃんと音も色も再現している。かがくのちからってすげー。

あ、言い忘れていたが、この世界での私の名前は、【ニア=ナイアーラ】だ。完全に(ニャルラトホテプ)から取ってきただろうよ、この名前。

 

《ニア様のお名前ですが、我が神が人間のお姿の時の偽名のひとつでございます。》

 

「悪く言えばお下がり、よく言えば継承かな?ま、そんな事よりもだ。早速スター◯ォーズごっこしようぜ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

フォースの力を感じ取ったり、

 

 

 

 

 

 

 

 

テケリ・リ!テケリ!リ!!

 

「よぉぉぉぉぉ〜〜〜しよしよし、三頭か?肉厚な牛さんが三頭欲しいのか⁉︎このいやしんぼさんめ!!」

 

テケリ!!テケリ・リリリ!!!

 

 

 

 

 

ペットである、玉虫色の悪臭(ショゴス)。愛称【ショゴたん】と戯れたりと、こんな感じで自由気ままに過ごしている。ちなみに、母とは年に数回しか会わない。会うときは何かがあった時だけだ。この前は……確かこんな感じだったなぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふざけるな………

 

ふざけるなよ…………!

 

馬鹿野郎ッッ……‼︎

 

うわぁあぁぁぁぁぁーーッッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、叫んでいた。どうやら以前言っていた団体が生ける炎(クトゥグア)によって焼却されたらしい。ウケるわ。

 

 

 

まぁ、こんなことがありつつも、私は15歳になった。周りが外宇宙的存在しかいなかったが、人間的倫理は0にはなっていないから大丈夫だ。

前世の記憶と家庭教師のミ=ゴさんのおかげで義務教育は問題ない。高校レベルにも多少手を出しているから大丈夫だろう。

問題はそこじゃあない。

 

「何故高校の願書が……」

 

そう、問題は目の前にある書類。これは母から送られてきたものだ。メッセージ付きで。

そのメッセージにはこう書いてあった。

 

 

 

【ヒーローになろうか】

 

 

 

ちょっと何言ってるかわからない。

確かにこの世界はヒーローという職業がある。なるための養成校もある。だからといって、私がわざわざヒーローになる必要はない。むしろ身内がヴィランよりといっても過言ではない。

だがとにかく、書類には目を通しておこう。もしかしたらサポートアイテムの開発関係のやつかもしれない……

 

 

 

 

 

 

と、思っていた時期が私にもありました。

 

 

 

 

 

 

「完全にヒーロー科と書いてるし、雄英高校だし……日本最高峰じゃなかったか、ここ?」

 

書類を良く見る。完全に雄英高校ヒーロー科入学願書だ。完全に母の愉悦のために入れられるのか……落ちたらなぁ〜…嫌な予感しかしないしなぁ〜……

 

「……やるしかないか。」

 

どうあがいても母に振り回されるルートしかないため、観念して書類を書いていく。住所とかは、存在する偽造もので問題ない。家庭訪問されても大丈夫な仕様だ。門の創造で普通の部屋に繋がるようになっている。ただ無理に窓から出ようとすると……そこは夢の国(ドリームランド)だ。私の愉快なお友達(神話生物)がお出迎えしてくれるぞ♪

学歴は学校には行っていないため、訳ありの家庭でした的な感じで行けば問題ない。家族の仕事の都合で世界各地を転々としていたのも事実。深く追求されたら、その時は適切な対応をさせてもらおう。何とかなるさ。

 

「む、【“個性”記入欄】……何て書こうか。」

 

願書の必要事項の一つである【個性記入欄】。基本的に、国に申請した自分の“個性”を書くことになっている。一応私は、産まれたときから“個性”持ちであったため、出生届とともに申請してあるはずだ。

だが、申請した内容は覚えていない。

困っていると、愛しのショゴたんがメモを渡してきた。

 

 

『このメモを読んだということは、きっと“個性”が何なのかわからなくて困っているはずだ。』

 

 

「おいこれ、どこから見てるんだ?カメラか?どこかに仕込んでいるのか⁉︎」

 

辺りを見渡すが、ショゴたんがプルプルしてるだけで、カメラらしきものはない。その時、メモに続きがあることが分かった。

 

 

『君のことだから、バラエティ番組みたいに隠しカメラがあると思っているんだろう?残念でした♪それと言ったはずだ。君を見ていたと。君の行動はだいたい予想がつく。』

 

 

このニャル、ストーカーかな?怖いよマジで。

 

 

『“個性”だろう?大丈夫だ。君の“個性”は魔術書(スペルブック)だ。それで申請している。魔術書自体、君には不要だが、その方が面白いだろう?ほら、君が読んでた漫画にあったじゃないか、魔本を持った人と魔物の物語……』

 

 

激しく同意。あの漫画は素晴らしかった。好きだったなぁ、ビ○トリーム……

 

あっ!そうだ!あの漫画の術をまとめた本を作ろう!いや、作らなければならない‼︎ネクロノミコンとか人前に出すとヤベーやつしか持ってないからな‼︎“個性”使うたびに発狂する人が(面白いことが)増えてしまう!

なら早速作成に取り掛かろう‼︎

 

テケリ・リ!

 

どうしたショゴたん。え、まだメモがあるって?どれどれ……?

 

 

『追伸…このやり取りはLiveだぜ?君のショゴスの体内にカメラを仕込んだ。もう少し面白い反応してくれても良いんだけどなぁ……』

 

「…………」

 

テケリリ?

 

少しの静寂のあと……

 

 

 

 

「ショゴたん!?今すぐペッ!ペッしなさい!!」

 

テケテケリリ!

 

「ショゴたーーん!?」

 

 

 

 

カメラを取り出すのに2時間かかった。絶対許すまじ……

 

そんなやりとりがあったが、無事?に、雄英高校ヒーロー科入学試験日がやってきた。




主人公、ニア=ナイアーラのステータスをTRPG風に設定しました。

嘲笑する息子 ニア=ナイアーラ
STR:11 CON:10 POW:50
DEX:13 APP:17 SIZ: 11
INT:41 EDU:9
db:±-0

使用できる呪文
存在する魔術書に記載されている呪文全て。


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3話

え……評価されている……だと……!?
星10がある!?星9が四つも!?
(;つд⊂)ゴシゴシ
(⚭-⚭ )
(;つд⊂)ゴシゴシ
(⚭-⚭ ;)ウソジャナイ……

ありがとうございます!!!ありがとうございます!!!
▁▂▃▅▆▇█▓▒ (’ω’) ▒▓█▇▆▅▃▂▁


「すごく……大きいです…………」

 

それが私の感想だった。

(前世で通っていた大学もそこそこ広いものだと思っていたが、ここって高校だよな?何でこんなに大きくて広いんだ?土地代、建築費、修繕費、人件費その他諸々………ヒエッ

高校とはいえ、国立最高峰。今年のヒーロー科の倍率は300倍と、前世の受験倍率がゴミみたいに思える。あー…胃がキリキリしてきた。人混み嫌やわぁ〜…つーか『普通』の人間見るの久しぶりだわ。大丈夫かな?変な触手とかはみ出てないかな?顔真っ黒になってないかな?)

 

「ねぇ…大丈夫?」

 

「大丈夫だ、問題な……い……?」

 

私に向けられた声の方を見る。

顔が無かった。

いや、マイマザーのような無貌ではなく、透明で何も無かったが正しい。顔どころか、服以外は透けている。服装からして、女性だろう。

 

「なんかスッゴイ顔してたからキンチョーしてるかと思ったの」

 

(おいおい、女の子に心配されるっていつ以来だろうか。今日は死ぬのにいい日なのかもしれない)

 

「ええ、こんなにも受験者が居るとは思わなかったので。もしかしたら合格ラインギリギリで落ちる可能性もあるのでは…と、思ってしまいましてね。ですが貴女のおかげで気持ちを落ち着かせることができました。ありがとうございます」

 

「…ッ⁉︎え、うん!どういたしまして!あっ!私苦手分野の詰め込みするから!一緒に合格しようねーー……」

 

と、凄い勢いで会場に入っていった。

(何故だ……あぁ、そういえば今の顔(現世)以前の顔(前世)よりもかなりイケメンの部類に入るな。自分で言うのもあれだが、事実だから仕方がない。と、いうよりも、私の周りが人外レベルの美男美女だからなぁ……感覚がおかしくなっているなぁ……ある意味不安だよ。それに前世の女性運がまだ続いているのならば…………大丈夫じゃねーな。うん。

さて、ここで立ち尽くしていても仕方がない。会場に入って準備でもしておきますか。)

 

 

 

 

 

〜筆記試験〜

 

 

 

 

 

結論:日本語って難しいネ‼︎(国語以外余裕)あと超眠い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

筆記試験のあとは実技試験の説明がある。何か声がデカ過ぎるサングラスが何か言っている。しかし眠い、眠過ぎる。

それに説明の内容も資料に書かれていることと同じだろう……

 

………………

 

………

 

ふむ……

 

 

少し寝よう‼︎おやすみなさい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………よ」

 

……何か聞こえるな?

 

「……きろよ‼︎」

 

ったく、人が気持ちよく寝ていると言うのに……

 

「起きろって‼︎実技試験遅れるぞ‼︎」

 

「起きますよ!そんな耳元で叫ばなくてもいいでしょうが⁉︎」

 

「肩揺すっても起きねェんだから仕方ねえだろ!!!」

 

貴重な睡眠(私の娯楽)を邪魔したお節介焼きの姿を見る。銀髪で鋭い目つきの、熱血漢あふれる快男児だ。単純そうだが筋が通っている、まさしくヒーローに向いている感じがする。

 

「まだ試験の説明中ではないのですか?」

 

「んなわけねーだろ‼︎周り見てみろ!もうほとんど出て行っているだろ⁉︎」

 

彼に言われて辺りを見渡す。確かにほとんどいない。いたとしても、出口に向かっている程度だ。この場に残って喋っているのは私と彼しかいない。

 

「……なるほど、少々寝すぎたようですね。わざわざ起こしていただきありがとうございます。ですがこのまま私を置いていけば貴方の合格率も上がったと思いますよ?」

 

「そんな汚ねえことするわけねーだろが。ヒーロー以前に人としておかしいだろ!オラ!とっとと行くぞ!」

 

「……フフ、そうですね。ですが、その前に……」

 

小さく、誰にも聞き取れない声で呟く。

 

「ンー……何か言ったか?」

 

「いえ、私を起こしてくれたお礼ですよ。では、行きましょうか」

 

「?」

 

(彼なら気が付かないだろうし、もし気が付いても素直で真面目(単純)そうなので言いくるめるはずだ。

さて、試験内容は確か……4()()()のロボットを倒す事だったな。まぁ大丈夫か。ただ、この魔術書を初めて使うからなぁ〜……人に当てなきゃ良いか!)

そう自己完結したニアは試験会場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

そんで実技試験

 

 

 

 

 

 

 

「知ってた。そりゃ広いよなァ……」

 

指定された試験会場に辿り着いた。もはや街である。え⁉︎ここってただの試験会場なの⁉︎すごーーい‼︎ひろーーーい‼︎と、IQが下がるレベルで広い。

もしかして雄英ってバカなのか?いや、バカだな。やはりバカと天才は紙一重というのは正しかったようだ。

集合した場所にはすでに何百人と、実技試験開始を待つ受験者が溢れている。精神統一をする者もいれば、屈伸など軽い準備運動をする者もいる。しかし、ニアの場合はそれに当てはまらない。

彼は何も無かったはずの場所から、謎の白い文字らしき記号が書かれた本を取り出す。表紙は黒に黒を何重にも重ねた、誰もが考える、如何なるものよりも真っ黒であった。大きさにして、よくある漫画雑誌(週刊少年ジャンフ○)ほどの本だ。

 

 

(ロボット……仮想ヴィランの強度はどのくらいだろうか?馬力によるが、小さい機体ならば脆く素早い。逆に大きい機体ならば硬く遅い。

しかし、攻撃的な“個性”ではない人たちはどうするのだろうか?レスキュー向きならば怪我をした受験者の避難誘導はできる。だが、最低限の自衛の術を持たなければ無意味だ。教師陣は何を求めているのか?ヒーローらしさ?)

 

ヒーローとは何か……

 

弱き人を守る存在?

悪を倒す正義の味方?

 

定義が曖昧すぎる……

 

 

『ハイ スタートー‼︎』

 

……ん?スタート?始まったのか。なら行きましょかー

 

適当に体を浮かして先に進む。ニアの動きを見たからなのか、それともプレゼント・マイク(声のデカい人)の言葉に催促されたからなのか、他の人たちも一斉に走り出す。

 

「ヴィ〜ラ〜ンちゃーん、あっそびっましょ〜〜」

 

初めてこの魔本を使うため、超ルンルン気分なニア。

適当に探していると、ピー○・ウォ○カーのパチモン(2ポイントヴィラン)が現れた。

 

『ヒャッハー!!ココハトオサネエゼー!!』

 

「え、世紀末?」

 

喋った内容など、ツッコミたいところがあるが今は我慢。まずは手始めに……

ニアは口角を上げる。すると彼が持っている魔本が光り始める。

 

「パクリではありますが、使わせていただきましょう。第1の呪文……」

 

片手を仮想ヴィランに向けて呟く。

 

「ザケル」

 

そう唱えた瞬間、彼の掌から金色の電撃が放たれた。

電撃に包まれた仮想ヴィランは内部回路がショートし、そのまま動かなくなった。

結論から言おう……

 

 

 

最高にハイってやつだァーーッ‼︎

 

 

 

(やっべェ!!ファンタジーな感じの魔法だ!!アザトースの呪詛とか萎縮とかアウトなやつじゃない!!ワクワクが止まらねェェエ!!)

 

(…おっと、少々取り乱してしまった。いや、取り乱さない方がおかしい。だって愉しいんだもん‼︎)

 

と、こんな感じでニアはテンションアゲアゲで仮想ヴィランを薙ぎ払っていく。その一部をダイジェストでお届けします。

 

 

 

『ハァイジョージィ……』

それが見えたら終わり(ザケル)!?」

『IT‼︎』

 

 

『オレ、サンジョウ!!!』

こぼれ落ちる砂のようにー(ザケルガ)

『モモタ□スッッ!?』

 

 

『野郎ブッコロシテヤァァ「コ○ンドー(テオザケル)!!!」ウブォァ‼︎』

 

 

 

 

 

(いや、ネタ多すぎじゃね?製作陣どうしたん?

あと相手を磁石にするアレ(ジケルド)を撃ったら大惨事になった。大量得点だけど。)

 

 

『さぁ残り2分切ったぞ!!最後まで気張っていけェェ!!!』

 

 

(おお⁉︎ビックリした。あの声の大きい人は苦手だなぁ……

あと2分か、どれくらい稼いだっけ?40……いや50は行ったかな?しかしまだ3種類しか見てないなァ…………ん?)

 

 

ズン……ズゥン……

 

 

何か聞こえるな。

 

 

ズゥン……ズゥゥン……!

 

 

うん、何か近づいてる。

 

 

ズゥン!ズガァン!!!

 

 

デカい何か?あっちからだな……

 

 

ズガン!バギィ!!!ズガァンッッ!!!

 

 

……えッ?

 

 

ドガァァァーーンッッッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、人類(受験者)は思い出した。

 

ヤツ(4種類目)の存在を……

 

 

 

デカァァァアァイッッ!!!説明不要ッッッ!!!!

 

 

 

「金かけすぎィィ!?」

 

(嘘だろ⁉︎これが4種類目⁉︎ザ○とかボー○とかの可愛い奴らと遊んでたらビグ○ザム降臨しちゃったよ⁉︎ア・バオア・○ーからソロ○ンに来ちゃった❤︎みたいな感覚で現れたよコイツ⁉︎)

 

周りを見渡すと、他の人たちは皆逃げ出している。確かに、圧倒的脅威から逃げ出すことは間違いではない。勝算がないのにも関わらず、戦いを挑む脳筋はゲームであれ現実であれ、バカがやることだ。

しかし、ヒーローを志す以上、このような災害規模のヴィランか現れてもおかしくはない。逃げてばかりでは被害が大きくなるだけだ。協力することで被害を抑えることもできるだろう。

 

(ん、待てよ?今コイツから逃げていないのは私だけ……つまり人的被害が及ばない。つまりつまり、私は今、この技を試すときがきたというわけだ!ならばやってみせよう!フフ、フハハ!フハハハハ‼︎考えるだけでワクワクが止まらねえ‼︎)

 

 

ニヤケが止まらない。口角が釣り上がる感覚がある。

当たり前だ。愉悦部(ニャルラトホテプ)の血を引くのだから。

手に持つ魔本に魔力を回す。すると黒い魔本が輝きを増していく。あのデカブツの狙いはニアだ。そしてニアの狙いはあのデカブツだ。

しっかりと狙いをつけて、詠唱を始める。

 

 

雷の龍よ姿を現せ、汝の怒りのままに悪を喰らい尽くせ

 

 

 

 

 

バオウ・ザケルガ

 

 

 

 

 

次の瞬間、試験会場に金色の龍が現れた。目の前の巨大な仮想ヴィランをと同じサイズのそれは、真っ直ぐに仮想ヴィランに突っ込む。そして頭と思われる部位を噛み砕き、大破させた。

崩れゆく仮想ヴィラン。その末路を見届ける褐色肌の美少年(ニア=ナイアーラ)は呟いた。

 

「あぁ、愉しかった……!」

 

誰もその言葉を聞く者、この時の彼の表情を見た者は誰一人いない。

だがこの時、ニア=ナイアーラは確かに、確かに嗤っていた。

無貌、そして歪につり上がった口元で……

 

 

 

 




以前、ここに呪文のリクエストをしましたが、どうやら運営の規約に反することが確認できました。
誠に申し訳ない……


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4話

前話に書いた後書きによるリクエストは、ハーメルンの規約違反になることが判明しました。
これによる被害を受けた方には大変申し訳なく、この場を借りて謝罪申し上げます。

今後もこの作品を楽しんでいただけたらと思います。


『ニアよ、合格通知が届いた』

 

「勝手に見ないでくださいよ姉上。そしてサラっと言わないでください。てか受かったのですか私……まぁ落ちる気はありませんでしたしね」

 

イブ=スティトルに合格宣告され受験後のドキドキ感を奪われてしまったが、別にどうってことはない。

ちなみに今回のイブ=スティトルは人間の姿だ。黒のロングヘアのメカクレ。スタイルは出てるところは出ており引っ込むところは引っ込んでいる。モデルもびっくりな唆る体型だ。そして雰囲気を一言で言うなら……そうだな……

 

薄幸美人の未亡人(薄い本向け属性)

 

と、いったところだ。こんな美人の乳を頂いていたんだぜ?有難うございました。ただたまに……いや、ここで言うのはやめよう。

 

『あと添付されていた機械をお前のショゴスにぶち込んでおいた。あとで確認しておくように』

 

「人のペットをなんだと思ってるんですか!?」

 

『何か変だったか?下級の奉仕種族だろう?私がどう扱おうが別に良いだろう』

 

「そういうこと言ってるんじゃないんですよ⁉︎ハッ‼︎今行くからねショゴたーーーーーーン!!!

 

 

 

今回は1時間で取り出すことができた。やったね!

 

 

 

ショゴたんの細胞にまみれた機械を机の上に置く。見たところ……何かの記憶装置に見える。適当に弄くり回していると、電源が入りモニタが現れた。そこにはスーツを着た筋肉モリモリマッチョマンの変態(No. 1ヒーロー)、オールマイトがいた。

 

「おや、オールマイトじゃあありませんか。何故、雄英に?」

 

書類に目を通しながらモニタに浮かぶオールマイトを見る。

 

『うゥン……!ちょっと待って、ノドが……ゲホッゴホっ‼︎……ゥン』

 

初手グダグダかよ。撮り直ししなかったんかい。

 

『テイク2?オッケー!!……え、もう入ってる?マジで?』

 

待って?ホントに撮り直さないの?もっとこういうところに力を入れるべきだろ……

 

『やぁ‼︎ナイアーラ少年!!!私が投影されたぞ!!時間が無いので諸々割愛させてもらうが……良いよね!?まず‼︎入試主席合格おめでとうッッ!!!』

 

わーい、いちいだ〜……何を割愛したんだ?

 

『筆記は国語以外満点!問題文をよく読んでいれば全教科満点だったって!!このウッカリ屋さんめ!!』

 

ガチムチにウッカリ屋さんって初めて言われたよ。こういう時、どうリアクションすればいいんだってばよ……

 

『そして実技‼︎あらゆる能力が試されるなかで君はどれも高評価だった!敵P(ヴィランポイント)が51ポイント!そして人を助けることがヒーローの本質‼︎救助P(レスキューポイント)32ポイント‼︎よって合計83ポイントの1位通過だ!!!』

 

「……なるほど、そういう採点基準もあったのですね。しかし…あのデッカいロボットは一体何ポイントだったのでしょうか……?」

 

『私もビックリしたよ‼︎まさかあのデカくてお邪魔虫だった0()()()()()()()()()()()()を倒しちゃうなんてね!!!……え、もう時間ないから〆て?そうなの?うん……まぁ何はともあれ!合格おめでとう!!ここが君のアカデミアだッッッ!!!』

 

と、ビシッと指をさされてモニタの電源が落ちる。

 

「……え、0ポイント?マジで?」

 

まさかそんなー

 

そう思い、入試の資料を読む。

4種類の仮想ヴィランを制限時間内に倒す。

1、2、3ポイントと、0ポイントのギミックが試験会場にいる。

受験者の妨害行為は禁止。

 

と、いったところだ。オーマイガー……

 

「……ま、第4の術(バオウ・ザケルガ)を試せたからいいか〜」

 

威力も十分だったし、魔力もそこまで使わなかった。この結果が得られれば問題ぬぁい。

(●´σ‥`)ホジホジ

さて、合格が決まったことだし……準備をしましょうか。やるべき事が多い。引っ越しもあるし……ん、待てよ?

 

「ショゴたんはペットとして扱っていいのか?」

 

『お前は何を言っている?』

 

「いやいや、何をおっしゃる。私は大切な可愛い可愛いショゴたんと住みたいのですよ?そこに何の問題があるのです?いや、あるはずがない!」

 

『もう一度言う……お前は何を言っているんだ?ショゴスは矮小な存在(人間)が理解してはならない生物だ。半分は人間であるお前なら重々わかっているはずだ』

 

「ええ、理解してますよ。あ、この部屋は……む、ペットは小型までか……」

 

『おい、話を聞け』

 

「聞いてますよ姉上。私はそこまで人間性を捨てていませんよ。たーだ家族と過ごしたいだけですよ。あ、ここなら大丈夫かな?あとで電話しましょうか……」

 

『家族と…か。そうか、そうだったのか……』

 

と、何故か悲しげな表情をするイブ=スティトル(未亡人系美人)

 

 

【家族と過ごしたい】

 

 

彼女たち外なる神には持たない考えなのだろう。いくら人間らしさがない(人間もどき)でも、元は人間。どうしたって捨てられないのだ。

すると姉がポツリと呟く。

 

『お前は悩んでいたのだな……我が母(ニャルラトホテプ)と共に過ごせぬ、その苦しみ。人間の在り方、心を知らぬ……知ることのできぬ私と過ごすことが辛かったのだな……』

 

「……いえ、そのようなことh『言わずともわかるぞ』」

 

分かってないですやん。

えっと……何か地雷踏みました、私?

 

「だかr『私は夜鬼に乳をやる(流れ作業の)ようにお前を育ててしまった。その所為でお前は我々ではなく、下級の奉仕種族を選んだ……』

 

聞いて、人の話。

貴女にはむしろ感謝しか無いのですが……

ある種の育児放棄をされていた私をここまで育ててきたのは、紛れも無い、私の姉(イブ=スティトル)だ。例え、元人間の私と生まれた時から神である姉……何があろうとも、私は貴女を家族と思っている。

 

(しかし、この感じ…私の言葉足らずによる勘違いを起こしている。姉とショゴたん。私にとってどちらも大切な存在……いや、とにかく今はこの誤解を解かなくては!)

 

「あのですね姉上、わたs『だから私は考えた!』

 

どゔじでばなじぎいでぐれないのぉぉぉ

 

私何かやらかした?怒らせるようなことした?

 

『母と同じような事をすれば良いのだと!!』

 

「え?」

 

待って、凄い嫌な予感がする。前世と同じことが起きそう。

 

『だからニアよ‼︎私を娶れ‼︎』

 

「何でだよォォォオオ!?何なの?どうして神様ってそう言う方向に持っていこうとするの?わからない!わからないよ‼︎国語の問題と同じ‼︎作者の気持ちを書きなさいと同じ!!!意味がわからない!!!」

 

自分は心が無いと自覚しているニアでも、こればかりは心にくる。どうして周りの女性(邪神)はまともじゃないのか。そもそも、まともとは何か?誰か私に教えてください。

……ここで文句を言っても何も始まらない。落ち着け、落ち着くんだ。もっと冷静になれ、coolになれ……

 

「ふぅ、だいぶ取り乱してしまいました。一応聞きますが……何故その必要があるのです?」

 

『簡単だ。姉として、母親代わりとしてお前を育てた。だがそれでは駄目だった……ならば夫婦になれば良いと思ったのだ』

 

うーん、考えが極端すぎる。誤解がここまで拗れるとは思わなかった。誤解を解こうにも相手は神、素直に聞いてくれるはずがない。

説明は無意味。仕方がないが、妥協するしかないようだ。

 

「はぁ……わかりました。では向こうで同居、という形にしましょう。私は高校に通うために日本に住むが、家族とも過ごしたい。姉上は私と夫婦になりたい。ならばその間をとって、姉弟で部屋を借りましょう。日本の法律上、私はまだ結婚できませんし、姉弟の夫婦は認められません。貴女の思う通りにはなりませんが……もし、承諾しないのであれば、私は今後、貴女との接触を二度としないと宣言しておきましょう」

 

『何…だと……!?』

 

イブ=スティトルの表情が絶望に染まる。

正直そこまできているとは思わなかった。思いたくなかった。ニャルラトホテプは私のことを放置している。逆に、彼女は過保護なのだ。それも重度……いや、依存していると断言しても良い。隙あらば、あらゆる身の回りの世話をしてこようとする。人間の姿でそんなことされたら……もうヤバイよね。

 

「嘘じゃありません。さァ……どうします?妥協か拒絶か!」

 

『う…うぅ〜………わ、分かった。分かった‼︎今回は我慢するから一緒にいてくれ。頼むからァ……

 

その姿(未亡人系美人)で泣き憑かれたらヤバイ。落ち着くんだ我が股間の紳士よ……!あと胸が柔らかくてありがとうございます!

 

まぁ、こんな感じで私とイブ=スティトルは日本に引っ越すことになった。私がいない間は邪神としての務めを果たすだろう。果たすよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういったトラブルがあったが、無事に入学式の日を迎えることができた。そんで玄関での出来事。

 

『ニア、忘れ物はないか?人間と接することができるか?私の乳を飲むか?』

 

「はい落ち着いてくださいねー」

 

日に日に悪化してますね。これはもう末期です。手遅れです。

今度お薬でも出しておくべきか……

 

『今日はいつ帰ってくるのだ?今日こそは一緒に寝てくれるか?お風呂に入ってくれるか?』

 

「お薬出しておきますねー」

 

前言撤回。

作ろう。姉専用の特効薬を作ろう。魔術書ではなく薬学書でも読みましょう。おかげで胃痛が大変です。消化器内科を探さなくては……!

てかこんな事してる場合じゃねえ‼︎

 

「時間ないんで行ってきますね‼︎あと一緒に入りません寝ません‼︎では!!!」

 

バタンと勢いよく扉を閉める。閉まった扉の向こうから何か悲しげな声が聞こえるが仕方がない。俺は悪くねぇ!!!

え、門の創造で行けば良いだろって?

(´<_` )フッ

それじゃ愉しくないだろう?

だから私は歩いて行くのさ。え?電車とか自転車とか使わないのかって?簡単さ。前世で嫌なことがあったからね!仕方ないね‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはりデカイですね。これが教室の扉?」

 

ニアは自分のクラスのドアの前にいる。予想していた通り、デカイ。見上げるレベルでデカイ。“個性”の影響で普通のドアじゃ入れない人もいるのだろう。バリアフリー対応はしっかりしていると見られる。

ここで驚いてはこの先やってられない。

そう決意したニアはドアを開ける。

 

「お!お前も合格したんだな‼︎」

 

「おや、やはり貴方も合格しましたか。お久しぶりですね」

 

教室での初コンタクトは、入学試験にてニアを起こしたあの熱血漢だ。

 

「そういやあの時自己紹介してなかったな!俺ァ鉄哲徹鐡(てつてつてつてつ)‼︎よろしくな!!!」

 

スッと手を差し出す鉄哲。これを断る理由はどこにもない。ニアも快く手を差し出す。

 

「ニア=ナイアーラです。こう見えて半分は日本人ですので気軽に接してください」

 

鉄哲(人間)ニア(人外)は握手を交わす。それを見たのか、他の人たちも彼らの会話に加わる。

そしてニアは、運命的出会い(あーあ、出会っちまったか)を果たす。

 

「やあ、僕も仲間に入れてくれないかな?」

 

人当たりの良さそうな、金髪イケメンがやってきた。

そしてニアは気付いてしまった。

こいつも同じ分類(心がアレ)なんだと……!

 

「僕は物間寧人。これから3年間よろしく頼むよ」

 

彼もスッと手を差し出す。それが純粋な友好ではなくとも。

 

「はい、こちらこそよろしくお願いします」

 

握手を交わし、他愛のない話をする。

中学校の時の思い出、憧れのヒーロー、出身など、本当に他愛のない話だ。

 

しばらくすると、コスチュームを着たガッチリ体型の巨漢が現れた。

 

「うむ、初日から元気なのはいい事だ。俺は諸君らの担任であるブラドキングだ。新しい生活に不安を抱えていると思う。ヒーローになるために辛いことも苦しいこともあるだろう……だが!俺はお前たちなら大丈夫だと信じている‼︎この場にいる21人全員で!切磋琢磨して立派なヒーローを目指していこう‼︎」

 

ブラドキングの熱血さに感化されたのか、鉄哲をはじめ、男子の多くが賛同した。女子も少し困惑しながらも、自分たちの目標のために頑張ろうという決意が見られた。

一方ニアはというと…………

 

(暑苦しい、嗚呼暑苦しい、暑苦しい……ニア、心の俳k……川柳か?ま、どうであれやっていけますかね私〜〜)

 

と、別の不安に煽られていた。それでも、面白そうなこの世界を愉しめるなら安いものだ。彼はそう思い心を躍らせている。これから起こる、悲劇(愉悦)を知らずに………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やぁ、久しぶりだね!みんな大好き這いよる混沌ニャルラトホテプだ‼︎

 

ん?どうしてここにいるんだって?オイオイ、そんな些細なことはどうでもいいだろう?

 

さて、私の息子は無事にヒーロー科に入学し(私の思い通りになっ)た。これは祝うべきなことだ。

 

そして愉しみなんだよ。ニア(元人間)がどちらにも成れない、誰とも分かり合えない愚者となる悲惨な末路(ハッピーエンド)が!!!

 

ま、そうはならなそうなんだ……この世界にも私の知り合いがいるからね。

 

 

さて、君たちにはひとつ、考えてもらいたいことがある。

 

 

日本最高峰のヒーロー養成学校、【雄英高校】の新しいヒーローの卵の中に、不要なモノ(外なる神の子)が混ざったのだ。どうなると思う?

 

………………

 

…………

 

……

 

…ふむ、なかなか面白い考えだ。

では、そうだな……

もしも……もしもの話だ…………

 

彼がヒーローではなくヴィランでもない、人類の脅威となれば、彼らにとって言葉にするのは恐ろしい末路になるだろう。一つの判断でどちらにも動くことができるのさ。

もしそうなれば……最後に嗤うのは我々(外宇宙の存在)だ。

 

さて、ここでもう一度考えてもらいたい……

 

我々はどちら側かと……

 

そして結末は君たち人間が握っているのだと……!

 

 

 

 

 

ま、こんな話はどうでもいいか!面白ければ良いのだからね!

 

では私はこれにて……

 




相変わらずヒロアカ成分少ないでござんすね。
そしてニアはB組にしました。ヒーロー科1年は41人の2クラスで行きます。


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5話

難産でした。そして原作要素が少なめ?そしてキャラの口調が曖昧なんじゃ……


入学式。

それは新たな生活の始まりを知らせ受け入れる大切な儀式(退屈な時間)だ。クソだるい校歌や校長の長ったらしいお話が聞ける、素晴らしいほどつまらない催しだ。

 

「帰りたい」

 

「まだ始まってないよ?でもこういった式はシーン!としてるはずだよね。何でだろ?」

 

と、隣にいる吹出 漫我。彼は顔が漫画の吹き出しになっており、様々な擬音を表すことができる。“個性”はコミックと言うらしく、擬音(オノマトペ)を具現がすることができるらしい。表現によっては様々な効果を帯びているという。『ドッカーン!!』なら爆発的な破壊力を持ち、『ヌルヌル』ならローションのような擬音となる。『あーちーちーあーちー』なら燃えているんだろう(○ひろみ)となるんだろう。すごい愉しそう。

おっと、話が逸れた。

確かに入学式らしいざわつきではない。というよりも原因は1-B(我々)の隣にあるだろう。

何故なら1クラス分の空間があるのだ。恐らく同じヒーロー科の1-A。初日からボイコットなんて凄い愉しそうです。羨ましい。

そして教師陣の表情から、原因はわかっているようだ。おそらくいつものことだと思われる。自由だなー。

そんな自由な感じで、入学式は終わった。まさか喋るねずみが校長だとは思わなかった……喋るねずみなんて夢のk(○ッキー)……おっと、誰か来たようだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、いうわけで初日が終わりました」

 

「君は何を言っているんだ?そして誰に向かって言っているんだ?」

 

「おや、物間くん。いきなりどうしたんだい?」

 

放課後、教室に残ったニアと物間。彼は異物を見るような目でニアに聞いた。

 

「どうしたも何も、凄い割愛したじゃないか」

 

「だって喋るねずみを見たら『ハハッ♪』しか思いつかないじゃないか。そりゃ割愛(消去)されるに決まっているだろう?だが、その方が面白いと私のシックスセンスがやれとシャウトしたんでね。やるしかないだろう?」

 

「…………」

 

「おっと、そんなゴミを見るような目で見ないでくれ、照れるだろう」

 

「ハハハ!まさか初日からクラスメイトに殺意を覚えるなんて思いもしなかったよ!!!」

 

「「ハハハハハ!!!」」

 

「うるさい!」

 

「ぐぇ⁉︎」「ゔぼぁ⁉︎」

 

高笑いしている2人の頭部に衝撃が走る。叩かれた所を抑えながら後ろを振り返る。

 

「あのなぁ……いくら放課後だからってはしゃぎすぎだろ」

 

「おやおや、オレンジ色のサイドテールで男勝りな性格なのにもかかわらず、かなり良いスタイルをお持ちの拳藤さんじゃあありまsジェバンニ⁉︎

 

巨大な拳でゲンコツをくらい、床に顔面を埋めるニア。当の拳藤は顔を赤くしている。

 

「あれれェ⁉︎初日からそんなことしてもいいのかなァ⁉︎暴力行為なんj「ふん‼︎」うぇ⁉︎

 

後ろから鉄哲の拳をくらい、ニア同様、床に顔面を埋める物間。

まだ初日だというのに、この2人(ルーニー)の扱いが決まった。ニアと物間を除くB組全員はこれからの生活に不安を感じざるを得なかった。

見た目だけはカッコいいこの2人、B組内で、見た目だけは1位2位を争うイケメンなのに中身がカッコよさに反比例して酷い。俗に言う残念なイケメンなのだ。

 

「イタタ……もう、いきなり殴るのはどうかと思いますよ。私はただ事実を言ったまで。何も悪いことはしていませんよ?」

 

何事も無かったかのような起き上がるニア。物間は鉄哲に引きずられて教室を出る。奴は愉悦四天王の中でも最弱……

 

「事実って……あのなぁ……」

 

小さくため息を吐く拳藤。この時点で彼女は苦労人ポジションを得たのだ。おめでとう!

 

「ま、それはさておき…私に何か用でも?」

 

「あぁ、ブラドキング先生がこれから職員室に来いってさ。それを伝えに来た」

 

「私まだやらかしてませんよ?」

 

「やらかす予定なのかよ……とにかく!私は伝えたからな!」

 

そう言って拳藤は教室を出る。ニアはめんどくさそうにしながらも、職員室へと向かった。

 

そんで職員室。呼び出しをされた時の絶望感はなかなか味わえないだろう。体育教員室への呼び出しは学生時代の死刑宣告と同義だ。用があって入るだけでも勇気がいる。

 

「失礼します」

 

「おお、来たか。そこに座ってくれ」

 

ブラドキングに言われた通り、椅子に腰かける。

 

「それで、私に何か用でも?まだ何も問題を起こしてませんよ?」

 

「起こす前提はやめろ」

 

「それほどでもありませんよ」

 

「褒めてないわ‼︎」

 

初日からコントをするニア(ボケ)ブラドキング(ツッコミ)。これからの生活にある種の不安を抱えるブラド先生。頑張れ!負けるなブラドキング‼︎

 

「ゴホン!ナイアーラ、お前の入学手続きの書類を見ていたんだがな……気になる点が見つかった。この書類のこの部分だ」

 

ブラドキングに指差されたところを見る。

 

「コスチュームのデザイン申請ですか……どこか不備でもありましたか?」

 

「内容の書き損じは無かった。だがな、コスチューム作製の提携先が聞いたことがない会社なのだ。何だ、『ユゴス』というのは?」

 

ユゴス

 

これは神話生物ミ=ゴが拠点としている惑星の名称だ。冥王星と同義される場合もあれば、別の惑星として呼ばれている場合もある。

ミ=ゴは科学と医療技術が非常に優れており、人間とは比べ物にならないほど技術が進歩している。代表的なものは【脳缶】だろう。

そしてニアはミ=ゴを従えている。そのため、自身のコスチュームの作製を依頼している。

 

また、コスチュームは国に認可された企業のみが作製可能となっている。それ以外の作製行為及び販売は違法とされている。

 

「ユゴスですか?これは私の知り合いが経営している企業です。必要な申請はもちろん、認可もされていますよ。と、いいましてもつい2ヶ月前に設立した企業ですので、先生が知らないのは普通かと」

 

さも当たり前のように説明をする。この言葉に嘘はない。嘘はないが怪しさはある。何故ならニアが説明したからだ。

そしてこの言葉は真実でもない。

そう、ナイアーラならね。

 

「もし学校側で許可が降りなければ、別の企業にしますが?」

 

「いや、大丈夫だ。変に疑ってすまなかったな」

 

「いえいえ、他に話はありますか?」

 

「コスチュームの件だけだ。何かやることでもあるのか?」

 

「特にありませんよ。あとは帰るだけです。では失礼します」

 

そう言い、職員室を出るニア。そしてそのまま自宅へと向かった。あの姉がいる家へと。

 

 

 

 

『おかえりなさい。ご飯にする?お風呂にする?それともワ・タ・シ?』

 

「部屋間違えました」

 

ガチャン。と、玄関の扉を閉めるニア。そして深呼吸してから、再び扉を開けて確認する。

 

どうして閉めるの……?

 

「…………」

 

何てこったい。幻覚じゃなかった。幻聴でもなかった。

まさか姉が裸エプロンでスタンバっているとは思わないだろう。いや、すでに末期であれば、こうなることはわかっていたはずだ。クッ、姉の依存性を侮っていた……!

 

「と、とりあえずご飯にします。あと裸エプロンはやめましょう。見ているこっちが寒いです。そしてどこで裸エプロンという知識を得たのですか?」

 

至極単純な質問をする。

 

『母が教えてくれたぞ?』

 

「オーマイファ○ク!!!」

 

やりやがったあの邪神‼︎どうして私を酷い目に合わせようとするんだ‼︎

あ、普通だったよ。それが当たり前だったな。いやー、参った参った。

 

………………

 

…………

 

……

 

どうしようか……マジでどうしよう……

 

『どうしたニアよ?早く部屋にあがれ』

 

姉であるイブ=スティトルに促されるニア。何故安息の地であるはずの家の玄関で、こんなやり取りをしなければならないのか。コレガワカラナイ。

 

(どうするッ?このままでは姉の思い通りになってしまう⁉︎もしもだ!もしも用意されたご飯に変な物が入っていたら!私は失ってしまう!おそらく多分きっとmaybeで残っているはずの人間性が喪われてしまう‼︎考えろ……考えるんだニア=ナイアーラ……!)

 

そこで問題だ‼︎

姉というヤベェ邪神を相手に!ニアはどう対処する‼︎

3択 ー ひとつだけ選びなさい

 

①無駄無駄…無駄なんだ……このままゴールインするしかない。現実は非情である。

②彼女を娶れ。然すれば汝、現世における人間(童貞)を脱するだろう……現実は非情である。

③うーん、現実は非情である。

 

(おい選択肢ィィィィィ⁉︎待って⁉︎選択肢が選択肢してないよ⁉︎嫌だ!まだ私死にたくない‼︎)

 

頭の中が真っ白……というよりもパーリナイしているニア。だがこのままではバッドエンド真っしぐらだ。

この小説も『俺たちの戦いはこれからだ!!!(打ち切りエンド)』となってしまうだろう。

 

 

だが、救世主が現れた……‼︎

 

 

テケリリ?

 

「!?」

 

部屋の奥にいるショゴたんだ。ニアが帰ってきたため、出迎えにきてくれたそうだ。

愛しのショゴたん。いるだけでみんなを幸せにしてくれる素晴らしい存在。ただそれだけで……ニアは頑張れる。

 

(ショゴたん……!私は逝ってはならない!生きねばならない!そう!そこにショゴたんがいるのだからッ‼︎選択肢全て、現実は非情である…だった。だが!そこに第4の選択肢を増やしてはならないとは決まっていない‼︎だから私はッッ!こうするんだッッッ!!!)

 

ニアは玄関に入る。そして彼はイブ=スティトルを優しく抱き寄せた。

 

『なっ⁉︎なななな何をっ⁉︎してっ⁉︎』

 

(よしっ!これはいける!いけるぞ‼︎)

「……おや?何故そこまで動揺をしているのですか?私はただ、ただいまのハグをしただけですよ?」

 

耳元で囁く。

すると顔を真っ赤にしているこの未亡人系、立つことが困難になり、へなへなと座り込んでしまった。

 

「ほら、そこでそんな格好をしてますと風邪をひきますよ」

 

そう言いながら、ニアは部屋に入る。そして部屋の扉に背中を預けて座り込む。

 

(あっっっぶねぇぇぇーー!!!いやマジで危なかった!!!一か八かの大勝負に勝てて良かった!)

 

ポーカーフェイスから、作画崩壊するほどの焦り顔になるニア。

そう、彼が起こした第4の選択肢……それは『自分から攻める』ことだった。彼は賭けた。普段から攻め寄るイブ=スティトルは逆に攻め寄られるとは思っていないだろうと。責め(S)は打たれ弱いのだと!そう考えた彼は、あの行動を起こした。そして無事に賭けに勝った。

 

(言葉だけは積極的だったのでまさかとは思いましたが……あれほど初心(ウブ)だとは思いもしませんでしたよ……だがおかげで暫く我が身の安全は確保される!)

 

勝利の余韻に浸りながら呼吸を整え、制服から部屋着に着替える。

 

(ありがとうショゴたん。おかげで私は苦難を乗り越えることができました。あとで目一杯愛でてあげましょう‼︎)

 

その後ご飯を食べ、1時間ほどショゴたんを愛でまくったニア=ナイアーラであった。

 

 

 

 

今宵はここまで……

 




次からは原作に沿っていけるかな?期待はしないでおくように‼︎
そしてガチャは悪い文明だ‼︎


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6話

だいぶ長らくお待たせしました。今回は個性把握テストという名の体力測定編です。


「お前達にはこれから体力測定をやってもらう‼︎」

 

入学式の次の日、体操着に着替えてグラウンドに集合した1-Bに対し説明をするブラドキング。

 

「内容は中学校の時にやったであろう【個性無し】の体力測定を、“個性”有りで行う。これにより何が出来て何が出来ないかが分かる……そしてそれぞれの課題を、今後の授業で克服してもらうということだ!」

 

熱血スイッチが入り、力強い説明となった。それに感化され、鉄哲を始め、半数の男子が高ぶっていた。『ちょっと男子〜?熱くならないで〜〜』みたいな感じで。

だが、盛り上がるのも十分理解できる。公共の場での“個性”の使用は原則禁止とされている。だが、花に水をやるために【水を出す“個性”】を使うことは、違反ではあるが、そこまで厳しく取り締まらない。せいぜい軽い注意を受けるだけだろう。現に常時“個性”が発動している人もいるのだ。高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対応しているのだろう。

そんな環境から一変、授業において“個性”を制限なく使えるとなると、誰だって興奮する。中には「面白そう」といった、考えが遊びよりに捉えられる言葉を発する者もいた。そんな浮ついている空気の中、

 

 

 

「バカモンッッ!!!」

 

 

ブラドキングの怒声がグラウンドに響く。その一喝により、全員が静かになる。

 

「そのような心構えでヒーローになれると思うな!一瞬の気の緩み!慢心‼︎それが命取りになることもあるんだ!それだけではない、救える命も救えなくなる。それこそヒーローとしてあるまじき行為だ……」

 

ブラドキングの言葉で、反省したのか目線を下に向ける者もいれば、感銘を受けて相槌をうつ意欲的な者もいる。

その様子を見たブラドキングはさらに言葉を続ける。

 

「思い切り“個性”を使えるのであれば、面白そうだと誰もが思う。その点ではお前たちは間違っていない。だからこそ、今回の考えを改めて、立派なヒーローになってもらいたいのだ。俺はお前たちならなることが出来ると確信している!この3年間、我々教師陣はお前たちに苦難を与え続ける。そして乗り越えろ‼︎これが雄英高校の校訓、

Puls ultra(更に向こうへ)だ‼︎」

 

「うぉぉーーっっ!!ブラド先生ェェェーーッッッ!!」

 

感動して涙を流しながら賞賛の叫びを上げる鉄哲。

鉄哲ほどではないが、無言で涙を流しながら拍手をする泡瀬。

「ああ、なんて私は浅はかだったのでしょう……」

と、祈りをしている塩崎。

『。゚(゚´Д`゚)゚。』

と、顔文字になっている吹出。

 

様々な反応をしている。

 

(なんとまぁ、個性豊かなクラスメイトなんでしょう。私はとても愉しみです)

 

と、至極真顔なニアだった。

いざ体力測定を始める。内容は

 

・ボール投げ

・50m走

・立ち幅跳び

・長座前屈

・上体起こし

・反復横跳び

・握力

・持久走

 

といった、ごく一般的な体力測定だ。“個性”有りとなれば、素の身体能力での取り組みよりも好成績を収めることができるだろう。

 

「ではまずはボール投げだな。出席番号順で行うから、泡瀬はこの円に入って準備をしてくれ」

 

「はい!」

 

威勢のいい返事とともに、体力測定が始まった。

泡瀬や鉄哲のような“個性”では素の身体能力で行うしかないが、塩崎は荊の髪の毛でハンマー投げのように飛ばし、100mを余裕で超えた。手が巨大化する拳藤は、1回目は巨大化した手で普通に投げたが、思った以上に成績が伸びなかった。しかし2回目はボールを投げるのではなく、殴ることで1回目の倍以上の成績を残した。

 

「あれで殴られたらひとたまりもありませんね……」

 

「ハハハ、それは同感。でもあのやり方は参考になるなァ……」

 

物間はいい笑みを浮かべている。そういえば色んな人と握手などでボディタッチをしていたが……何か関係あるのだろうか?まぁ、すぐにわかるだろうとあまり気にしなかった。

だがしかし!!!

後日行われる戦闘訓練であんな事件が起きるとは、誰も思わなかった!!!

それはまた別の機会にお話ししよう……

 

「次!ナイアーラ!」

 

「わかりました」

 

ニアは指示された通りに円の中に入り、ボールを受け取る。そして空いた手にあの時の魔術書を取り出すと、それは同様に輝き始めた。

 

「では手始めに……出てきなさい、ゴーレム」

 

そう呟くと、円の内側の土が盛り上がり形をつくる。1.3mほどの人型の土塊はボールを掴み、足を高く上げ、全力で投げつけた。

 

「記録……1.2m」

 

全力で投げつけた。地面に。

周りは「え、何してんの?」と訝しげな表情をしたり、「真面目にやれニアァァァア!!」と、ちょいおこである人もいる。

 

「ナイアーラ、真面目にやれ」

 

ブラドキングも呆れて注意する。

 

「いやぁ、ぶっつけ本番でもいけるかなーと思ったのが間違いでしたね。新たな課題ができました」

 

「なぜいけると思った……記録は2回とる。もう一度真面目にやるんだ」

 

ニアが反省しているのかしていないのか、判断つかないブラドキングは顔を抑えて軽くため息をつく。そしてもう1つのボールをニアに渡す。

ニアも「わかりました」と告げて、再び円の中に入る。

そして再び魔術書が輝き始める。それと同時にニアは誰にも聞こえない声で唱え始めた。

 

「開け、門よ……」

 

すると彼の目の前に銀に光る小さな靄が現れる。そしてニアはボールをその靄に入れる。そしてブラドキングに言う。

 

「どうですかね記録は。おそらく1000±1mに飛ばしたのですが?」

 

「……1000.4m。色々と確認したいことがあるが、ナイアーラ。それは()()か?」

 

「いえ、今回はノーリスク、微調整可能な範囲で飛ばしました」

 

「……全力ならばどこまでいける?」

 

「そうですね、後先を考えずに限界まで遠くに飛ばせるのであれば……

 

 

 

 

宇宙の果てまでですね

 

 

 

 

『!?』

 

ざわつくクラスメイト。いくら汎用性のある非常に優れた“個性”であれ、規模が異次元なのだ。

 

「そうか……」

 

ブラドキングも驚愕のあまり、薄いリアクションを取らずにはいられなかった。そして同時に、ナイアーラを

()()()()()()()()

を考えなければならなかった。自分の生徒の安全を。

 

 

魔王(アザトース)までが遠くても100億光年。それでもまだ私には余裕がある……そもそもの宇宙の果てが464億光年と言われているが、その先は一体何があるのだろうか?ん、なぜ在るものだと仮定したのだ私は?あったとしても、それは何だ?魔王すら知らない次元なのか?何はともあれ、行く価値は……十二分にある)

 

1人思考を巡らせクラスメイトと合流するニア。彼を見る周りの目は、畏怖なのか感心なのか?それを知る由はない。

と、まぁ、こんな感じにサクサクとビスケットを食べるが如く、ダイジェストで体力測定を行っていった。

 

 

・50m走

 

「よっこいしょ」

 

卍(゜ロ゜卍)「ブイィィィーーーーン」

 

ニアの記録

1秒07!!!

吹出の記録

3秒02!!!

 

ニアは門を創り、それを跨ぐ感覚でゴールに移動。一緒に走った?吹出はスピードが出そうなオノマトペに乗ってゴール。

そしてブラドキングの適切な判断により、門による移動は禁止となった。

 

 

 

・立ち幅跳び

 

グオン!!!

 

「なっ⁉︎座ったままの姿勢!膝だけであんな跳躍を‼︎」

グオン!といってパパウ!と飛ぶなんて!そして着地はメメタァだっ!!!」

「最期は身体が真っ二つになりそうだね……」

「それとアイツ、どこまで飛んでいく気だ?」

 

「戻ってこいナイアーラ‼︎」

 

ニアの記録

(無限)!!!空も飛べるはず〜

 

「どうせなら魔法使いっぽく箒に乗ってほしかったな」

 

「箒ですか?一度やりましたが……まぁ事故って私の偉大なる黄金の双玉(キ○タマ)を強打したのでね。二度とやりませんよ?男性の皆さんならわかるでしょう?」

 

『…………』

 

男子生徒全員、顔を引きつらせたり青ざめたりと、想像してしまったようだ。下からの衝撃はやばいぞ!やばいぞ!!!

 

 

 

・握力

 

「フンッ‼︎」

 

ニアの記録

38キロ

 

「普通だな」

「逆にスゲー」

「むしろ身体能力は高くないんだな」

「身体鍛えろよニア‼︎」

 

「んー?聞こえんなぁ〜?」

 

 

 

・長座前屈

 

「……クッ」

 

ニアの記録

43.8cm

 

「「「「普通だな」」」」

 

「珍妙なものを見るような目をしないでください」

 

 

 

・上体起こし

 

「つ、疲れました……」

 

ニアの記録

27回

 

「ここまでくるとさっきの記録がおかしく思える」

 

「おっと、心は硝子ですよ?」

 

 

 

・持久走

 

「飛べるって素晴らしい」

 

ニアの記録

1分45秒

 

「箒の上で寝ながら飛ぶとか……」

「何かムカつく」

「ん」

「同意するー」

「oh!コレが激おこプンプンマル!というやうデスネ‼︎」

「その使い方だいぶ違う」

 

女子たちのコメントに対し、

 

「当たり前じゃないですか。行動で煽っているのですから」

 

「最低だな、お前……」

 

「愉悦部員ですから」

 

 

 

・反復横跳び

 

「クハハハハ!!!」

 

いい笑顔で行ったので58回。

 

「意外に好成績だ……」

「何か違和感しかない」

 

「そうですね……真面目に答えるのならば、私は基本、やろうと思えば大抵はできます。しかし素の身体能力では皆さんよりも劣っているため、後方支援が最適です。ですが現実はそんな甘くはありません。攻撃的な“個性”でも救助活動は必然ですし、その逆も然り。ならばその両方に必要とされる判断力、機敏性はあった方が良い。そう私は考えています」

 

周りは鳩が豆鉄砲を食らったように驚いている。そして最初に口を開いたのは鉄哲だった。

 

「ニアがまともな事を言ってるだと⁉︎」

 

「鉄哲?それは心外です」

 

「まだ2日しか経ってないけど、ナイアーラはねぇ……物間と同類だわ」

 

と、取蔭が切り込む。

 

「アレレェ⁉︎どうして僕にまで飛び火してるのかなァ⁉︎」

「そうですよ。彼は心がアレなだけで、私は心が無いのですよ?」

 

「「「ダメだろそれ‼︎」」」

 

複数のツッコミが入る。しかしニアは平然としている。それが彼なのだから。

そんなこんなで全員の“個性”有り体力測定が終了した。ブラドキングは端末を使いモニタを展開、21名の成績を出した。10個もない内容であるため、自身の実力を発揮できない者もいれば、発揮できる部分だけでは好成績を残している者もいる。

 

「今回の結果から自分が出来ること、出来ないことを改めて実感しただろう!中には上手く実力を発揮出来なかった者もいるはずだ。しかし‼︎お前たちはまだ未熟だ!未熟だからこそ伸び代しかないのだ‼︎これを機に、お前たちには努力してもらいたい‼︎」

 

「「「「「ハイ!!!」」」」」

 

「以上!これにて体力測定を終了する。各自着替えてから教室に戻るように!」

 

 

こうして、雄英高校、第1の試練が終わった。

それぞれ己の長所、短所を理解し次に繋げようと、簡単な反省会をしながら教室に戻った。

 

 

 

 

HR(ホームルーム)が終わり、ニアはさっさと帰ろうとする。すると彼に声をかける人が現れた。

 

「ニア!一緒に帰ろーぜ‼︎」

「駅までだけど俺も一緒にいいか?」

 

「ええ、いいですよ」

 

鉄哲と泡瀬とニアの3人で帰宅した。その道中、今日の体力測定の話になる。

 

「そういえばふと思ったんだけどよォ、ニアの“個性”って何だ?魔法なのか?」

 

「あー、俺もそれ気になった。でも始まった時に本が現れたから……それが魔力源みたいな感じか?よくあるだろ、ゲームの装備とか」

 

その質問に対し、ニアは当然のように答える。

 

「そうですねェ……まず、私の“個性”は【魔法】ではなく、正確には【魔術書】というものです。かつて存在したと言われている魔術書を自在に取り出すことができるのですよ。そしてそこに記載している魔術を使うことが出来る、というわけです。魔術書は1つだけではないので、様々な魔術を使えるのですよ」

 

「マジか!魔術書ってゲーム内だけじゃないのか⁉︎」

 

「驚くのも無理はありません。ですが……そうですね………【本当に存在していたから】ゲームでも魔術書があると私は考えていますよ。魔女だって同じです。かつて存在していたから、恐れられていたから魔女狩りという歴史があるのですよ」

 

「「へぇー」」

 

2人が興味ありげに話を聞いている。すると鉄哲があることを聞いてきた。

 

「じゃあよ、身体能力を上げる魔術もあるんじゃねーの?」

 

「確かにそうだな。そうすりゃもっと良い記録を残せたよな」

 

「ええ、確かに自己強化の魔術はあります。ですがそれを使うと、他の魔術が一切使えなくなるデメリットがあるのですよ。それに効果時間は一定ではなく、さらに使用後の筋痙攣が起きてしまうのでね……使わないようにしたのですよ」

 

「そうなのか。確かに現場で筋痙攣して動けなくなったらマズイもんな」

 

「まぁ、改良することは不可能ではありませんので、今後の課題の1つにしますよ。あ、すみません2人共。私家がこっちなので……ではまた明日会いましょう」

 

「オウ!じゃーな‼︎」

 

「また明日な!」

 

そうして2人と別れ、帰路につく。

 

 

 

 

 

 

「ただいま帰りました」

 

『お帰り!そして久しぶりだね我が息子(玩具)よ!元気にしていたかな?』

 

ハウス(一昨日きやがれ)

 

玄関開けたらヤベーやつ(ニャルラトホテプ)がいた。なんの前触れもなく登場するこの邪神、ニアの胃に穴を開ける行為を喜んでするのだ。

 

『もうっ!親に向かってそんなこと言ってると……消しちゃうぞ

 

「……本気でイラッとしたので本音が出てしまったことを謝罪しましょう。それで、突然現れたのは……私に用があるのでは?」

 

部屋に入りコーヒーを飲む。そして母の要件を聞いた。

 

『流石!とは言っても、一言伝えるために来たからね』

 

「一言ですか?わざわざ会いに来るほど?」

 

ニアはコーヒーを含みながら警戒する。もう嫌な予感しかしないのだ。彼の第六感がやっべぇぞ!と囁いている。

そして案の定、爆弾発言を残した。

 

『そろそろ妹が出来るから♪』

 

「ブッ‼︎ッゲハゴホ⁉︎っお"ェ"!?ン"っ!!?」

 

『じゃ、そーゆーことで!アデュ〜!』

 

愉悦部名誉会長(ニャルラトホテプ)は一瞬で霧散し消えた。ニアが吹き散らしたコーヒーを残して。

ニアの悩みのタネが増え、自分にも胃薬を処方しなければならなくなったことは、まだ誰も知る由はない。




B組の皆さんの口調が判らぬ……判らぬのだァ!


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7話

ハーメルンよ、私は帰ってきたァァ!!!

3ヶ月ぶりですね、本当に申し訳ない……
いや、色々あったんですよ。疲れとやる気の無さ、その他諸々。ちょっと小説どころじゃねーなー……みたいな感じになってました。あと内容も浮かばなかったんです。

今回は救助訓練のオリエンテーションとなっています。あとキャラ崩壊?もあると思いますね、ハイ。
ではどうぞ……最新話でございます。


雄英高校ヒーロー科の1日は忙しい。

午前中は至って普通の授業だ。国語、数学、理科、社会、英語……高校生がやるべきものだ。

 

「実用英語と授業の英語って違うから変にだるいんですよねぇ……」

「Me too!!私もそう思いマース‼︎」

 

英語余裕のニアとポニー。下手したら英語担当のプレゼント・マイクよりも教えるのが上手いのかもしれない。頑張れひざし!じゃなくてマイク‼︎

 

「そういやニアって、英語以外にも喋れるのか?」

「ええ、魔術書は様々な言語で書かれていますからね。ラテン語やドイツ語、他にも読み書き会話は余裕ですよ」

「マジかよ。今度教えてくれねーか?」

「もちろん良いですよ」

 

こんな感じで、至って普通の高校生のような会話をした。

 

 

 

昼休み

ランチラッシュという【食】で人々を救うプロヒーローの料理を食べることができる。しかも学生向けのお手頃価格で。もし【食材を出現させる】“個性”がいれば……もはや敵なし。いやむしろ食品系業界の人にとっては悪となるだろう。

胃袋掌握(ストマックキャッチ)☆2人はプリ○ュア‼︎

と、なる。自分でも何言っているかわからない。

 

 

 

午後

待ちに待った【ヒーロー基礎学】の時間だ。ざっくりいえば、ヒーローになるための必要科目だ。単位数も最も多い。

そして予鈴とともにブラドキングが教室にやってきた。

 

「諸君にはこれから、救助(レスキュー)訓練を行ってもらう」

 

救助(レスキュー)訓練!これぞヒーローの本質‼︎腕がなるぜェ‼︎」

「ふむ、ヴィランを捕まえても一般市民を救えなければ本末転倒ですな」

「頑張ろっか」

「ん」

 

皆が盛り上がるのは当然だ。救助活動をしないヒーローなんて、ルーがないカレーライスだ。最早存在価値なぞない。

しかし救助活動の内容は様々あるため、直ちに最適な選択をすることは難しい。だから考えうる限りで訓練をするのだ。

当然、質問をする人も現れる。まだ学び始めたばかりの人にとっては無茶が過ぎるのだから。

 

「先生ー、質問いいですか?」

「なんだ?」

 

回原が質問する。

 

「まだ座学しかしてないのに、いきなり救助訓練なんて大丈夫何ですか?」

 

回原がそのように言うのも不思議ではない。座学で大体の概要しか学んでおらず、その概要も表面だけと、まだまだ知識面でも足りない。

そもそも入学して1週間も経っていないのだ。即実践となると、誰もが不安になる。

この質問に対し、ブラドキングは、

 

「確かに回原の言う通りだ。救助訓練はあらゆる知識と技術が必要になる。対し、諸君らもまだ学び始めたばかりの卵である。だからこそ即実践的なことを行うのだ。行ってみて自分に何が出来そうで何が出来ないのかを理解してもらいたい!」

 

「ッハイ‼︎」

 

回原はブラドキングの意図を理解し、元気よく返事をした。

続けてブラドキングが説明をする。

 

「だが、まずはこれを着てもらう!」

 

手に持ったリモコンのスイッチを押すと、壁から番号が振られたスーツケースが出てくる。

 

「お前たちが入学前に書いてもらった“コスチューム作製依頼書”をもとに用意した、お前たちのヒーローコスチュームだ‼︎」

 

その説明とともに歓喜の声があがる。

 

「それぞれの出席番号が振られたケースを持って更衣室に移動。その後、体力測定を行ったグラウンドに集合だ。お前たちのカッコいい姿を待っているぞ‼︎」

 

 

そう指示されたB組は更衣室へと移動し、それぞれのコスチュームに着替えた。その際、壁に貼られたポスターの裏に覗き穴を見つけたニアは、あとで誰かに教えようと考えていた。

 

そして着替え終わった彼らは、指示された場所に集合した。

 

「うむ!カッコいいぞお前たち‼︎まだ学生であるが、コスチュームを着たのならば、肝に銘じておくんだ。その瞬間から……お前たちはヒーローだと‼︎」

 

それぞれのコスチュームを見てみる。骨抜は考え方や行動の柔軟さからは考えにくい、アイア○マンのようなパワードスーツを。鉄哲は動きやすさを重視したものを。物間は燕尾服を纏った紳士のようなものを。どれもこれも、素敵なコスチュームだ。

そして女子。ボディラインがはっきりしているタイプのコスチュームが多い。制服の時でも素晴らしいスタイルの持ち主たちが、そのようなコスチュームになる。特に取蔭……もはや何も言うまい。

だが、どうであれ、自身の“個性”を最大限に活かすデザインとなっている。

そのことに対しニアは、

 

(しかし、この“世界”でのコスチューム。ボディスーツのようにラインがはっきりしているものを身につけるヒーローが多い。最近デビューした『Mt.レディ』や、No. 1ヒーロー『オールマイト』。そしてその次の実力を持つ『エンデヴァー』も、そういうタイプである。次元が異なると感性も異なるのか?)

 

前世と今世を比べ、何が同じで何が違うのかを考えている。

この世界で唯一かもしれない存在である、彼の愉しみの1つだ。

するとブラドキングが用意されたバスに乗るように言う。どうやらこの雄英高校、私有地が予想以上にとんでもなく広い。そのため授業を受けるには、移動車に乗らなければならない。

そしてバスの中……

 

「なぁ……ニアのコスチュームなんだけどよォ、見えてんのか?それ」

 

鉄哲がニアの顔を見て聞く。当たり前だ。ニアの顔には“穴が開いていない白い仮面”が付いているからだ。口の部分も目の部分も、ましてや鼻の部分にも穴はない。見れば見るほどその白一色に飲まれそうになる。

 

「これですか?ええ、見えてますよ。表からだとそう見えるように加工してあるのですよ。付けている側としては普段と変わらない視界、呼吸で活動ができるものとなっています。他にも水中での呼吸や防塵防毒マスクの機能も付いている優れものです。まぁ、これだけではないんですがね、それは別の機会にでも話しておきましょう。その方が考察もできますしね。あとデザインも良い!」

 

「思ってた以上にスゲェ‼︎」

「ナイアーラ氏の“個性”の汎用性からすれば、適していると言えますな」

「でも夜中に出会ったら怖いよな、その仮面……」

「デザイン以外すごいノコ」

「ん」

「デビューしたら怖い話のネタになりそう……」

 

と、なかなかの高評価だった。デザイン以外は。

そしてここでニアのコスチュームについての説明をしよう。

一言で言えば、某魔法学校映画の○フォイ達が所属するクラスの制服とローブ一式だ。ローブの下は黒のスラックスに、白のワイシャツとネクタイ。その上にカーディガンを羽織っている。

その一式装備に上記のマスクをしていると思ってもらえば良い。もちろん、装備一式、ユゴス製だ。魔力が大量に組み込まれているため、魔術の行使にも優れている。

 

「私だけではなく皆さんのコスチュームも素晴らしいと思いますよ。“個性”を補助するものから汎用性を高めるものまで、多種多様です。改めてサポート会社を凄いと思います」

 

と、和気藹々の雰囲気の中、バスは走る。そして目的地に到着した。

 

「スゲェ‼︎USJみてぇ‼︎」

「ん〜…ん?」

「商標権的に大丈夫かなぁ?」

「まぁ校長が○ッキー○ウスみたいなもんですから、それと比べれば問題ありませんよ」

「おっと、それ以上はいけない」

「(●ΦωΦ●)✧ハハッ♪」

「おいバカやめろ吹出ィィ!?」

 

と、若干アウト気味の感想も出るなか、正面入り口に、宇宙服を着た人物が現れる。

 

「皆さんお早うございます、救助訓練を担当する13号です!訓練を行う前に、皆さんに話さなければならない小言が1つ2つ、3つ……」

 

と、だんだん増えていく。

 

「まず、僕の“個性”はブラックホールです。この“個性”で災害時に多くの人を救うことができました。ですが同時に、簡単に人を殺してしまう“個性”でもあります。皆さんの中にも、殺すまでいかなくても簡単に人を傷つけてしまう“個性”を持っている人がいると思います。ですがここでは、そのようなことが起きないように…そして救える命を増やすために学ぶことができます!ですので皆さん、このUSJ(ウソや災害の事故ルーム)で有意義となるように学んでいってください!ご静聴ありがとうございました‼︎」

 

ぺこりとお辞儀をする13号。素晴らしい演説を聞いた生徒たちからは拍手が起こる。そしてやはりUSJだった。ネーミングセンスぅ……

 

「訓練を行う前に、簡単に施設を紹介していきます。では皆さん付いてきてください」

 

生徒たちは13号に案内され、USJを回っていく。

 

・土砂崩れエリア

 

「いざ救助となると、どこに助けを待っている人がいるか分からないよな……」

「場所を把握できる“個性”のヒーローが居ればだいぶ楽なんだけどな。そんな都合よく居るわけないし……うーん」

「私の鼻なら分かるかもしれませんな。ただ正確な位置までは難しいですぞ」

「重機で地道にやるしか浮かばないノコ。でもそれじゃ重機を用意したりならないし、不安定な場所だと倒れて二次災害になって手遅れになるノコ」

「かといってチンタラしてたらまた土砂崩れが起きる可能性だってあるんだぜェ?」

「僕のオノマトペで周りを安定させるのはどうだろ?でもどうしても隙間があるから逆に不安定になりそうだー」

「ニアならどうする?」

「私ならば土砂でゴーレムを創りますね。その分土砂は減りますし力仕事も可能となります。ですがすぐには助けられないでしょうね……鉄哲ならどうします?」

 

「漢なら気合で土砂を掘る‼︎」

 

「それダメなやつだろ……」

 

様々な意見が出る。すると13号が、

 

「皆さんすごいですね!僕が話そうとしていた事まで考えているなんて……僕が学生の時なんて“個性”で何とかなるとしか思ってませんでしたよ。まぁそれはさておき……皆さんの考えている通り、土砂の中に救助を待っている人が埋もれているとしたらすぐに助けなければなりません。ですが土砂崩れが起きるということは大抵、大雨が降っていると考えられますので、重機での救助は二次災害に繋がる恐れがあります。ですのでナイアーラ君や吹出君の考えは良い案ですね。宍田君も自分で言った通り匂いでの判断もできますが、場合によっては有毒ガスの発生もありえます」

 

13号の説明に、宍田は考え込みながら別の答えを出した。

 

「むぅ……それで倒れてしまったら本末転倒ですな……ならば私は動く前に状況を判断しなければなりませんな!」

「その通りです!何よりも状況をしっかりと把握することが大切です。そして自分ができることをしていくことが救助に必要だということを理解してください」

 

 

「「「「ハイ!!」」」」

 

 

そして土砂崩れエリアを離れ、次のエリアへと向かう。

 

 

・水難エリア

 

「海上で動けなくなった船の船員の救助かぁ~。どうするよ?」

「泳げればいいけど……救助はできなくなるしな。やっぱ別の船で向かうのがベストか?」

「でもよ、ヴィランがいたらどうするよ?簡単には近づけねぇ」

「優先第一は救助だね。ヴィランと戦っている最中に状況が悪化する可能性もある……なら分担することが最善だと思われる」

「俺の“個性”だと錆びちまうッ!でもだからなんだ!俺ァ救助もヴィラン退治もする‼︎」

「二兎を追う者は一兎をも得ずって諺を知っているかい鉄哲?庄田の言う通り、救助を優先するべきだ。君の場合、全身を金属化することが出来るんだろう?ならば君はヴィランの攻撃から守ってやるのが1番だと思うね」

「おお!確かに物間の言う通りだな‼︎守ることなら任せろッ‼︎」

「頑張ってください鉄哲」

 

そんでお次の場所へと向かう一行。

 

・火災エリア

 

「「「「熱ッッ!!!」」」」

 

轟々と燃える炎の熱気が生徒たちを襲う。いくら訓練施設とはいえ、実際の現場と同等の状況を用意できるのは、改めて凄いことだ。

 

「炎は効かねェ‼︎なぜなら俺は鉄だから‼︎」

「お前は相変わらずだな……でも普通の火災現場なら鉄は溶けないか」

「あ"あ"〜“個性”が溢れるぅ……」

「うぉ⁉︎大丈夫か凡戸⁉︎」

「ほう……白くベタついた、熱い液体ですか」

「「「「「「………………」」」」」」

「ナイアーラ、それはダメだ」

 

ニアの発言に汚物を見るような目をする女子と、彼の肩に手を置き、首を横に降る骨抜。

 

「何デスカ?白くベタついた熱い液体トハ?」

「ポニー、それ以上はいけないよ」

 

ポニーの純粋な質問に対して、取蔭が静止させる。

 

「おやおや、私は凡戸君の様子を見た感想を言っただけですよ?まるで『ピーーー!!!』

「「「「よくやった吹出ィィ!!」」」」

 

吹出の“個性”により、視覚的にも聴覚的にもニアの放送禁止ワードを防いだ。その後はブラドキングにこっぴどく叱られるのであった。

他にも山岳エリアなども見て回り、授業は終わった。本格的な授業は次からとなる。

そして更衣室での出来事。

 

「回原君、君の“個性”について1つ、疑問に思ったことがあります。よろしいでしょうか?」

「お、おうどうした?」

 

ニアは一呼吸おいて、口を開く。

 

「チ○コも回転するんですか?」

「「「ナイアーラ!?」」」

 

ニアの発言に対し当然ツッコミが入る。

 

「いや、彼の“個性”を見たら誰だってそう思うでしょう!私はただ純粋な質問をしただけですよ⁉︎」

「純粋じゃねーよ⁉︎むしろ不純だよ‼︎」

「てことはアレか。純粋に不純ってことか」

「柔軟な考えですが何か違う気がしますぞ?」

「でもそう言われたら気になってきた……」

「収集がつかねぇぜェ……」

 

そのように騒ぎ、そして問い詰める。

 

「では答えを聞きましょうか回原君……○ンコは回転しますか?それともしないのか?」

 

その問いに対して回原は……

 

「……考えたことなかった。今晩風呂で試してくるわ……‼︎」

「「回原⁉︎」」

 

と、新しいおもちゃを見つけた子供のようなキラキラした目で答えた。いつだって男子はこういうものなのだ。

 

〜後日〜

 

「回らなかった……」

「そうですか……」

 

と、残念そうにするニアと回原であった。

 




原作とストーリーの進め方をかなり変えています。
その理由として、本来原作に存在しないニア、および外なる神などがいるためです。
原作にいない存在が介入することで、原作にズレが生じ、次第に大きなズレとなっていきます。
なので「原作と違う」といった考えもあると思いますが、その違いが正しいのです……


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8話

文章能力が劣悪なので、H.P.ラヴクラフト集を読んでおきます。
狂気山脈(英語版)はあるんだけどなぁ……


救助訓練の次の日の朝、学校の正門が騒がしい。カメラとマイクといった機材を持った騒がしい存在、マスコミ(人類悪)押し寄せて(顕現)いた。

そしてその矛先がニアに向かった。

 

『オールマイトの授業の感想をお聞かせください!!』

 

「申し訳ございませんが、まだ彼の授業を受けていないのです。ですのでマスコミの皆様のご期待に応えることができません…」

 

と、頭を下げる仕草をするニア。ニアにしては丁寧な対応をされたマスコミたちは納得したのか、一歩下がる。

 

「あ、それはそうと……そこのお姉さん?」

「え、私……?」

 

美男子(APP17)の微笑みをしたニアは、1人のマスコミを指して置き土産を残した。

 

「昨日はお楽しみだったようですね?うなじに愛し合った痕跡(キスマーク)がありますので、ファンデーション等で隠した方が良いと思いますよ。では私は授業がありますので失礼します」

 

「えっ⁉︎嘘⁉︎ちゃんと確認したn………あっ」

 

気まずい空気にすることができて満足げな表情をする。

そしてそれを見ていたクラスメイトの取蔭に、

 

「ナイアーラ…アンタさぁ……」

「おや、おはようございます取蔭さん。どうかしましたか?」

「あ、おはよー…じゃなくて。さっきのマスコミの対応さ、アレは酷いよ……」

「どこがです?私なりに丁寧な受け応えをしたと思いますが?」

「そのあと!なーんで余計なことを言うのさ?あのマスコミのお姉さんが可愛そうじゃん、プライベートがバレて……」

「ああ、その事ですか……そりゃ面白そうだと思ったからですよ。逆にあんな堂々とキスマークを残されちゃあ、誰だって指摘しますよ。私はただ!周りの仕事仲間にバレたらどんな反応をするのかな〜という考えがあっただけで、別に彼女を陥れようとはしてませんよ。まぁ強いて言うなら、愛し合った相手と朝帰りしたような反応をしてくれたら百点満点でしたがね」

「…………」

「ま、そもそも朝から仕事があるのにも関わらず身支度を怠った…それを指摘したまでですよ?それにオールマイトの授業はまだ受けてませんしね。アレ?何か悪いことしましたかね、私?」

「ふーん……じゃ、一言で纏めると?」

「愉悦♡」

 

満面の笑みで答えると、脛を蹴られたニア。その場で蹲りフルフルと堪える。

 

(別に悪いことしてないはずなんですがね……痛い)

 

 

 

そんなこんなで教室にたどり着き、HRが始まる。

そして担任のブラドキングが真剣な顔をして言い放つ。

 

「これから学級委員長を決めてもらうッッ!!!」

 

「うおおおおおおお!!!」

 

クラス中が盛り上がる。本来、学級委員長なぞクラス代表という名の雑用係だ。流石ヒーロー科、誰もが自分が自分がと手を挙げ、立候補する。

 

「うむ、全員やる気に……む、お前は立候補しないのかナイアーラ?」

「ええ、私は遠慮させてもらいます。そのような役職には向いていないと自覚していますのでね……あ、ですが面倒くさいからやらないというわけではありません。委員長が困っていたらちゃんと助力しますよ」

「む、そうか。無理に立候補しろとは言わない。だが何故だ……お前がそう言うと逆に不安になってきたぞ」

「何故に⁈」

 

担任にも不審がられているニア。

 

「裏から助言するってアレだよな。裏ボス的な感じだよな」

「悪の親玉」

「ホラー映画にいても違和感0」

「ん」

「推理小説の犯人に助言しそう」

「雄英のモリアーティ」

「校門前のマスコミが1人犠牲になったばかりだしね」

「うわぁ……」

 

さらに追い討ちをかけるクラスメイト。愉悦に情けは不要なり。

するとニアはいつの間にか眼鏡をかけ立ち上がり、言い放つ。

 

「どうしてなんだ……私はただ他の人のために行動した……!まともなのは私だけか⁉︎」

 

「「「「いや、それはない」」」」

 

クラスメイトには息ぴったりのツッコミを受け、

 

「ボートを用意しろ。1人分で良い」(超低音ボイス)

「何……だと………⁉︎」

 

ニアの茶番の抑止力、吹出がノってくれた。

 

「茶番は済んだかナイアーラ?お前は『まとも』という言葉を辞書で調べて線を引いておけ」

「わかりました」

 

と、いつもの表情に戻り着席する。

 

「さて、皆さんから見た私の評価がボロクソだったところで、さっさと決めちゃいましょうか」

 

そしてB組の学級委員長は拳藤、副委員長は骨抜が就任した。

午前の授業を終えて昼休み。基本的に教室で弁当を食べるか、ランチラッシュが作る学食を食べるかとなる。

 

「ニア‼︎メシ食いにいこーぜ!!!」

「すみませんが遠慮させてもらいますね。今日はコレがありますので」

 

と、机の上にある弁当箱を指差すニア。鉄哲は「それなら仕方ねーな‼︎」と、納得して骨抜と泡瀬とともに教室を出る。彼らと入れ替わりに、吹出と凡戸がやってくる。

 

「一緒に弁当食べよ〜」

「(▭-▭)✧僕もいるぜ!」

「ええ、構いませんよ」

 

3人は机を合わせて弁当を食べ始める。

 

「ねぇ、それってナイアーラ君が作ったの?」

「コレですか?そうですよ。姉が作ることもあれば、今日のように私が作ることもあります。どうです?折角ですし、おかず交換しませんか?」

「(*´ω`*)ヤル」

「いいね〜」

 

そんな感じで和気藹々と昼休みを過ごしていく。そして事件は起きた。

吹出がニア特製の卵焼きを食べた瞬間にだ。

 

「びゃあぁああゔm」ウゥーーーー!!!

 

突如と鳴り響く警報音。それにかき消される吹出君渾身のボケ。ほら、吹出君の頭部がシワシワピ○チュウになっちゃってるよ。

 

「何〜これ〜⁉︎」

「警報音です。」

「違うそうじゃないよ〜。何の警報音なんだろ〜⁉︎」

「どうする?他のクラスの人はドワァーーーッッと避難してるっぽいけど……」

「今避難すれば人の雪崩に巻き込まれる可能性があります。現に廊下でちょっとしたパニックになっているでしょう。待機して先生たちの指示を待ちましょう」

 

ニアの提案を受け入れる2人。しかし警報のアナウンスは、屋外に避難しろと言う。なので3人は人混みが落ち着いてから避難をする事にした。

暫くすると騒ぎが落ち着いた。原因は勝手に侵入したマスコミだという。ヴィランより害悪では?と思ったニア。パニックを引き起こして怪我人が出たら大問題だ。ニャルラトホテプよりたちが悪い気がする。

放課後、鉄哲と何気ない会話をしていると、実に面白い話を聞くことができた。

 

「なぁニア、最近発生してる妙な事件知ってるか?」

「妙な事件?」

「何でも、世界各地で発生してるんだってよ。見てみろよコレ」

 

鉄哲からスマホを受け取り、画面のニュース内容を見る。

タイトルは『怪奇⁉︎世界各地で失踪相次ぐ!』と記載されている。内容も、それについて様々な考察や被害者数といった、ごく一般的な記事であった。

 

「ふむ、至って普通の失踪事件ですが……確かに被害者の失踪時刻、国柄等の共通点がありませんね。この日に限っては5件も発生しています。ですが何故この記事を私に?まさかとは思いますけど……私がやったと思ってませんか?」

「いや‼︎ニアはこんなことはしねぇ‼︎やるならもっと大胆にやる気がする‼︎」

「確かに私なら不特定多数ではなく対象の情報を手に入れてから……じゃなくて。さらっと容疑者にしないでくれます?」

「すまん、でもニアの意見を聞きてぇんだよ。どう思う?」

「どう、と言われましても……仮に犯人が分かった場合、貴方はどうするおつもりですか?免許を持ってない貴方がどうこうできる事件ではありません。逆に何故そこまで知っているのか?と思われて疑われてしまうかもしれませんよ?」

 

ニアの言葉に鉄哲は黙り込む。そしてニアは真剣な顔から一変して、笑顔になる

 

「ハハハ!そんな真剣にならなくても大丈夫ですって。ちょっと意地悪したくなっただけですよ」

「ッ!ニア!お前って奴は……‼︎」

「それが私ですから気にしないでください。お詫びに私の意見を聞かせてあげますよ。そうですね……直結に申し上げますと、私なら不可能ではありません。体力測定で使った『門の創造』を応用すれば、筋が通ります」

「何だと⁉︎」

「嘘ではありません。ただ、この事件を見るに()()()()()()()()とでも言っておきましょう。もしかしたら触れてはいけないナニカがあるかもしれませんね。ま、あくまで私の考え、愉悦を愛するイケメンの戯言だと思っていてくださいな♪では私は帰らせていただきます。アディオス!

 

と、笑顔で教室を出るニア。

1人で帰る彼は、周りに誰も居ないことを確認するとスマートフォンを取り出し電話を掛ける。

 

「……もしもし、私です……ええ、少し調べて欲しいことがありまして…………世界各地で発生してる失踪事件についてです………はい、見当は大体ついています。何、私自身干渉する予定はありませんが少し気になりましてね…………ええ、お願いします。では……」

 

通話を終え、彼は再び歩き出す。いつになく、愉しみに満ちた笑顔と共に。

 

 

 

学級委員長を決めた数日後のこの日、1-Bのヒーロー基礎学は座学だ。担当は18禁ヒーローのミッドナイトだ。年齢は確か……おっと、謎の寒気がしたな。くわばらくわばら……

それはさておき、授業内容は、コスチュームに関する法律やそれに関する歴史。他にもヒーローの必要性及び必要になった出来事などの概要といったところだ。

コスチュームに関してなかなか面白いところがある。

目の前の三十路ナイト……じゃなくてミッドナイトの“個性”は『眠り香』だ。肌から即効性の睡眠作用を持つ成分を出せる。そのため、衣服で肌を隠すほど効果が薄まるという。かつては18禁に恥じぬコスチュームを身につけようとしたらしいが、それはただの露出狂である。それに武器が鞭だって?完全にSMですねわかります。

きっと中にはビキニで良いだろう!と、言う人もいるかもしれない。

だがしかし‼︎

この言葉を聞けば老若男女問わず!納得するだろう……

 

 

「ロマンですね?」

「そう!ロマンよ‼︎」

 

 

やはりそうだったか。ロマンを求めることに善悪なぞ不要。

ロマンという『夢』を求める『行動』こそ万人に必要なのだ。自分を信じ続ければ、夢はいつか必ず叶うって偉い人が言ってた。

そんな感じで授業をするミッドナイトに、連絡が入った。その内容を聞いた途端表情が険しくなる。

 

「全員教室で待機‼︎いいわね⁉︎」

 

突然の指示に困惑するクラス。しかしミッドナイトの表情から察するに、緊急事態が起きたのだろう。すぐにざわつきが収まり、彼女の指示に従う。

 

(気のせい……ではありませんね、この感じは。心地良くて親近感が湧く魔力、魔導書…のようなレプリカですか……)

 

窓からその感覚がする方を見る。

ああ、運が悪かった。是非とも会ってみたかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって雄英高校敷地内施設USJ、そこに『ヴィラン連合』を名乗る集団が襲撃した。彼らの目的はオールマイトの殺害だったが、授業を受けていた1-Aとオールマイト、そして雄英で教師をしているヒーローたちに敗北した。

主犯格と思われる2人は逃げたものの、その他を一斉逮捕することができたそうだ。

だが、事件は終わらなかった。

逮捕したチンピラたちは縄に繋がれて警察に連行されていく。その中の1人の男が声を荒げる。

 

「おい!テメェさっきからうっせーんだよ!!!ぶち殺されてぇのか⁉︎」

「おい!黙って歩けッ‼︎」

「だったらこいつを静かにしろよ‼︎」

 

警察官に指摘されるが、男は後ろに繋がれている汚いローブの人物に文句を言い続ける。それに対しローブの人物は俯いたままブツブツと何かを呟いている。

 

「静かにしろ‼︎」

………みよ……で…ね………」

「おい聞こえているのか⁉︎」

……こそ世界に…………す…

 

警官の言葉に一切反応せず、呟き続ける。その瞬間、顔を上げて天を仰ぐ。

 

「お、おい⁉︎何をしている⁉︎」

 

ローブの人物は男だった。しかしその瞳に光は無く、虚である。だが“死んで”はいなかった。そして男は叫ぶ。

 

「おお…!おお……!今こそ世界に混沌を!悪意に満ちた貴方様にぃぃ!我が身を捧げんんんん!!!」

 

異常

 

その一言を表した狂気に、その場にいる全員が男を見る。いや、見てしまったのだ。身体の穴から血を吹き、それでも喜びに満ちた笑みを。

 

「しっ、静かにっっ⁉︎ぐぶちっ……ぁ?」

 

拳銃を構えて近づいた警察官の首に、()()()()()()()()()()()()痕が残る。数瞬遅れて警察官の肉面から血が噴き出し、力無く地面に崩れ落ちた。ビクビクと痙攣を起こすが、すぐに事切れる。

何が、あった……?

疑問はすぐに晴れる。

周りは警察官からローブの男に目を向けると、彼に付けていた手錠と縄は千切れている。だが、それだけなら良かった。

 

彼の掌から、ぐちゃ、ぐちゃと肉を汚く噛む咀嚼音が聞こえる。

彼の掌から、鉄臭い、粘性のある赤い液体が滴り落ちる。

彼の掌から、鋭い牙が生え、長く汚い舌が見える。

 

「神よ!我が神よ!!我が神イゴーロナクよ!!!」

 

その狂喜の叫びとともに、男の首が落ちた。

そして身体はブクブクと膨れ始め、男が着ていたローブが千切れる。肌の色が肌色から白熱した青白い巨体。掌には涎を垂らし続ける口が悍ましさを表している。

 

 

ついに目覚めた。

 

 

無知なる者よ、知る時だ。

無知なる者よ、恐れる時だ。

理解せよ、理解せよ、理解せよ……

目の前にいる異形こそ、支配者なのだと……

 

しかしそれはまだ、深淵の一端でしかない。

 

 

 

 

 




鉄哲が見せてきたニュースですが、分かる人には分かるかもしれません。
ええ、奴です。
これに関しては後々に絡ませますよ。


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9話

突然ですが、あのキャラクターの登場だ‼︎口調が変だバカやろうこのヤロウ‼︎という文句があるならちょうだいちょうだい!!!
あと、USJ襲撃事件は割愛します。


雄英高校襲撃事件。

敵連合(ヴィランれんごう)と名乗る集団がUSJ(ウソの災害や事故ルーム)を襲撃。当時、授業を受けていたクラスが居たが、教師と生徒たちの活躍により撃退することに成功。主犯格2人を逃すも、その他大勢を一斉逮捕することができた。

しかし、連行中に1人のヴィランが“個性”を暴走させ、警察官2名とヴィラン4人が死亡してしまう。ヒーローと警察による鎮圧の末、そのヴィランを取り押さえることができたが死亡した。原因は『“個性”を暴走させたことにより個性因子と臓器が損傷。多臓器不全を発症し死亡』と断定された。

この発表により、マスゴミ…はゴミに失礼なのでマスメディアとする。

マスメディアは、警備に不備があった。生徒を危険な目に合わせた職務怠慢。そして暴走の末死亡したヴィランは、ヒーローたちの鎮圧が死亡に繋がったのでは?と、注目すべきではないことを題材とした、ヒーロー叩きの記事を掲載した会社もある。

 

「そりゃそうでしょう。学校に神話生物が招来したことを表に出せば大惨事(レッツパーリィ‼︎)ですもんね。で、その原因である貴女はどう思っているのか、お聞かせください」

『愉しみたかっただけで遊びたくはなかった』

「ちょっと何言ってるかわかりませんね」

 

ヴィランの襲撃で二日間の臨時休校になったニアは、自宅で新聞を読んでいた。目の前に諸悪の根源であるニャルラトホテプがいるのは気にしないでおく。

え、何でいるかって?サプライズだそうです。元々ヴィランだった人物に、魔導書もどきを渡したらどんなことをしてくれるのかワクワクしてたらしい。なんと偶然にも息子が通う学校を襲撃すると聞き、ちゃんと翻訳したものを渡して使い方もしっかりと教えたという。

 

確信犯です。

 

しかし息子のクラスではなかったのは少し残念だと。私をどうするつもりだったのですかね⁉︎

 

「で、何の魔導書をプレゼントしたんです?おおよその目星はついていますが、レプリカだったので断定は出来ませんでしたので」

『グラーキの黙示録だよ』

「……何版の何巻です?」

『手稿本12巻』

「ゴローさんですか。なら大丈夫ですね……とはなりませんよ?貴女よりもある意味厄介な奴じゃないですか。もちろん退散の呪文なんて?」

『教えるわけないじゃん♡』

「ですよねー」

 

和気藹々と親子の会話を愉しんでいる。ほのぼのとしているが内容は殺伐。こんなに狂気に満ち溢れた会話はここでしか聞けないぞ。

 

え、グラーキの黙示録って何?ええ!知らないの⁉︎

んもぉ〜仕方ないなぁ〜

簡単に説明しよう‼︎

まず、グラーキの黙示録の概要は、フォリオ版9巻からなるシリーズと手稿本12巻もしくは11巻からなるシリーズに分類される、狂信者が書いたまとめ本だよ!グラーキっていう神様を崇拝する信者に授けられた予言とか命令とか書かれているんだ。1巻1巻内容が異なるから、自分の好みを見つけるまでには少し時間がかかっちゃうかもね!

今回ニャルえもんがくれたのは手稿本12巻。これにはイゴーロナクという神様についてとそれに関する呪文がまとめられているんだ。イゴーロナク(以下ゴローちゃん)は悪行と堕落を司る首のないデブで、素質がある人間を唆して悪行とかをさせるんだ。そして堕落した人間はゴローちゃんを崇拝するようになり司祭となる。そうすれば後は簡単♪自分の名前を呼ばせればゴローちゃん参上‼︎というわけさ!正確に言えば、既にゴローちゃんは参上していて、素質がある人間を支配するんだ。いつでも変身できるんだよね。だから襲撃したときには人間の姿だったけど、連行中に変身したってわけ。

あとは悪意の概念がある限り現れ続けるから、刺激的な日々が送れるようになるんだ!

まぁ何人か死んじゃったけど、人間でも何とか勝てる神様だからno problem‼︎

この説明じゃわからない人は○oogle先生に聞くか、TRPG用サプリメントを購入しよう!

 

 

「ゴローさんはどうでもいいとして、1つお聞きしますがよろしいです?」

『ん?いいよ?』

「……そこにいる男性と少女はどちら様です?」

 

ニアはリビングのソファに座っている人物を見る。1人は背が高くスラッとした体型の中年の男性。もう1人は、まだ幼さが残る、11〜12歳の少女だ。

 

『彼らかい?たまたまとある場所で出会ったんだ。話を聞いていると興味が湧いちゃってね。そのまま意気投合して今に至るってわけ』

「あぁ、貴女の興味でここに来てしまった哀れな方ですね。可哀想に……」

「もうっ!そんなこと言っちゃう愚息にはお仕置きだぞ♡」

「え?…ッァア”ア"ぁぁあ“!?

 

ニャルラトホテプが指でフイッと、何かをなぞる仕草をする。その瞬間、ニアの右腕が酷い悪臭を放ちながら黒ずみ始め炭化した。ニアはすぐさま、自分の肩に向けて呪文を唱える。すると彼の肩がスパッと切れ、床に落ちた。落ちた腕はみるみる炭化をしていき、ついには完全に黒い粉末へと崩れていった。

ニアは肩の切断面に向けて別の呪文を唱え止血をし、ニャルラトホテプの方を睨む。だが既に、邪神の姿は無かった。

 

「…ぁ"あ“クソったれ‼︎本気で殺すつもりですかコノヤロー‼︎」

 

大きく舌打ちをして、自分の右腕だったものを処分する。とりあえず、痛むだけで、ほかに問題はない……いや、重心がズレて違和感がある。あとでミ=ゴに義手を作ってもらおう。

あ、2人のことをすっかりと忘れていた。

 

「あぁ、失礼。あなた達と同じく母に弄ばれてしまっただけなので。遅れてしまいましたが自己紹介をば…私はニア=ナイアーラ。這い寄る混沌の血を半分引く者です。あなた達の名前をお聞きしたい」

 

すると中年男性が立ち上がる。

 

「……私はランドルフ・カーター。弁護士兼学者をしているが、今はこの娘を連れて様々な世界を旅している。ほら、アビゲイル、自己紹介しなさい」

「えっ…その…あぅ……

 

カーター氏に促された少女は、先程の茶番(お仕置き)を見てしまい、怯えている。

当たり前だ。いきなり目の前の人物が笑いながら、息子を名乗る人物に『手足の萎縮』を施したのだから。下手したら死ぬ魔術を、水をかける感覚で浴びるのを見れば誰だって怯える。なんということをしてくれたのでしょう。

ニアは自分の目線を彼女の目線よりも、少し低い位置になるように屈み、満遍の笑みで優しく手を差し出す。

 

「初めまして、ニア=ナイアーラです。先程の見苦しいところをお見せして申し訳ありません……ですが私自身、貴女のような可愛らしいお嬢さんに危害を加えることは一切ありません。私はただ、あなた達と仲良くなりたい……よろしければ、貴女のお名前をお聞かせください……」

 

少女はオドオドしながらも、ニアに目を合わせて応えた。

 

「アビゲイル・ウィリアムズ……です」

「アビゲイルですか。素敵な名前ですね」

「ぁぅ……あ、ありがとう…」

 

彼女は恥ずかしそうにモジモジしながらも、ニアの手を取って握手をする。袖越しではあるが、それがまた可愛い。めっちゃ愛い。

 

自己紹介をして互いに打ち解けた後は、それぞれの境遇や思い出などを話していった。

特にアビゲイル……アビーの話はとても面白いものだった。

セイレムという土地での事象、遠い場所から来た劇団の存在。そして親愛なる友との別れ……どれも今の彼女を構築するものだ。

カーター氏には、

「本当に這い寄る混沌の血を引いているのか?」

と、疑われている始末。公私を弁えているを答えたら、なんとも言えない顔をされたのは……いや、されてもおかしくはないか。

あと、私が15 歳と答えた時の2人の顔が面白かった。

『何言ってんだコイツ?』

って言葉が見えたほど困惑していた。嘘じゃないヨ?ホントダヨ?

 

そして夜、アビーは疲れから眠ってしまいソファーで横になっている。

彼女を除けば、この家にはニアとカーター氏とショゴたんしかいない。

ちなみに、母はいつも通り。姉のイブ=スティトルはしばらく邪神としての活動をすることになったため、家を開けるようになった。

男2人は椅子に座り、アビーについて話をしている。

 

「それでカーターさん…彼女は“何者”です?平行世界との接続および移動に時間の跳躍……12歳の少女がノーリスクで行えるとは思えない。話を聞く限り、時間という概念を解明した偉大なる種族ではない……私でさえその概念の禁忌を犯せば番犬に追われてしまいます。ならばその番犬に属するモノを持っている…またはその血を引く混血種では?と、思いましたが、その特徴は見受けられない。と、なると、考えられるのはただ一つ……

 

副王の関係者ですね?」

 

カーター氏は目蓋を閉じ、軽く息を吐く。

参った。

そう小さく呟き、言葉を続ける。

 

「その通りだ。正確には、その存在を降ろすことができる巫女というべきだな。ニッポンで言う、神降しに近い形だろう」

「神降し…ですか。その口ぶりからして、()()()()ことがあるのでは?」

「そうだ。彼女の話にあった劇団の人たちが止めてくれたために被害は最小限で済んだのだ」

「劇団が?ほほぉ…何とも興味深い話じゃあありませんか!それはまた後で聞くとして……しかし副王をその身に宿すとなれば負担も計り知れませんし、そもそも門と鍵が必要なはずでは?うーん、案内人ではありませんし……謎が深まるばかりですね」

「君の言う通りだ。だがもっとシンプルに考えれば、全てが繋がる」

 

カーター氏の言葉から、さらに考える。そしてすぐに、答えが見えた。

 

「まさか彼女自身が…(しろがね)の鍵だと言うのですか?」

「うむ、そして門でもあるのだ」

「何と……アビー1人で副王をその身に降ろすことができると。いや、その姿を謁見することも可能だと?」

 

カーター氏は首を縦に振る。信じたくはないが、彼がニアのように嘘を愉しむような性格をしているとは思えない。つまるところ、この話は全て真実だということになる。

ニアは椅子の背もたれに身体を預け、ため息混じりに天井を見る。

なるほど、あの邪神が2人を連れてくるわけだ。下手したら地球…いや、太陽系が崩壊してもおかしくはない存在なのだから。こんなにハラハラして愉しめることはなかなかない。

 

「本当に申し訳ない……母が愉悦のためにあなた方を連れてきたのは確定的に明らかです。ですが半分、アレの血を引いているのか……私自身もワクワクしてどうしようもないのですよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……

ですが残りの半分は人間です。そちら側の生活も楽しくてどうしようもないのですよ。ですので先程言ったように、私自身があなた方を害するつもりは一切ありません。約束しましょう」

 

カーター氏はニアの表情などから、おそらく本心だろうと。

そう思った彼は真剣な表情から朗らかな表情になる。

 

「分かった。せっかく這い寄る混沌に連れてこられたのだ。しばらく世話になるよ。この世界を歩き、見て回りたいのは私の本心だ。アビゲイルもきっとそうだろう。もし私の手が空いていない時は、彼女にこの世界を見せてやってくれ」

「もちろん。喜んで引き受けましょう」

 

2人は握手を交わし、この日を終えた。

 

次の日、ニアはミ=ゴに一時的な義手を用意してもらうことになった。失った右腕は、彼の細胞から培養させた後手術でつけるという。後遺症も残らないそうだ。ユゴスの医学技術はァ世界イチィィイ!!!

カーター氏とアビーは、近くの街を見て回るそうだ。是非とも楽しんでほしい。

 

 

 

余談ではあるが、こんなことがあった。

 

「あの…ナイアーラさん……」

「どうしましたかアビー?」

「その……貴方のお母様が……」

「ニャルが?うわ、嫌な予感しかしない……それで、彼女が何と?」

 

アビーは少し恥ずかしそうにしながら、こう言った。

 

「貴方のことを……お兄様って呼べば喜ぶって……」

「…………」

「あ、その……ナイアーラさんが嫌だったらやめるわ……」

 

と、少し残念そうにする彼女を、ニアは無言で抱きしめる。

 

「きゃっ⁉︎えっ⁉︎な、ナイアーラさん⁉︎」

 

強く抱きしめた後、呟いた。

 

 

 

 

 

 

「めっっっっっっちゃ愛い」

 

 

 

 

 

 

そしてニャルラトホテプに、心から感謝した。

ありがとう、それしか言う言葉が見つからない……!

 

 

 

 

 

 

 




新しいキャラクター、Fate/grand orderより、アビゲイル・ウィリアムズが登場しました。
めっちゃ可愛いですよね。良い子の時と悪い子の時、どちらもめっっっっっっちゃ愛い。まぁ作者は持ってないんですけどね。

あ、今話ですがヒロアカ要素はほぼありません。ご注意ください。
あと現在行なっているアンケートですが、12日の朝に締め切ろうと思います。
ちゃーんとアンケートの結果を踏まえた話を書きますので。お楽しみに(愉悦)


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10話

読者のニアのイメージって何ですかね?


襲撃事件による臨時休校は、なかなか充実したものになった。

アビーを連れてパンケーキ屋に行ったり、ミ=ゴが作った新しいアイテムのプレゼンテーションとテストをしたり……とても有意義であった。

アビーのパンケーキにおける話は、もはや論文発表だった。本当に12歳?というレベルだ。凄い。

 

ミ=ゴの開発した玩具の中で、

『何故作ろうと思ったので賞』の最優秀作品に輝いたのは、

 

【H&K G11(5.56mmタピオカ入りミルクティー)】

 

だった。このミ=ゴはかつてライトセイバーを作り、ニアとス◯ーウォーズごっこをした存在である(ニアがダースベイ◯ー役、ミ=ゴがル◯ク役をした)。

制作理由を聞くと、

 

「人間の失敗作と話題の物を合わせることで最強に見えるから」

 

だという。

ちなみに性能はというと、ミ=ゴの科学技術と魔術回路を組み込んだシステムのため、火薬を未使用。熱による磨耗と暴発を防ぐことが可能。さらに最大射程は100m程度で、10m以内であれば1cm厚の鉄板を容易く貫通できるという。

兵器として使わないのであれば、手動で『茶番モード』に切り替えられる。このモードの時は市販の水鉄砲の要領でタピオカミルクティーが発射されるため、誤嚥が起こらない限り死ぬことはない。さらに手動切り替え部分は、誤って兵器モードにならないよう二重構造のフェイルセーフとなっている。

試作品であるためタピオカそのものを入れないと使えないが、今後は原料を入れるだけでタピオカミルクティーが発射されるように改良するという。

タピオカなら土に還るため、従来よりも自然に優しくなっている。これには他のミ=ゴ達からも好評だった。

ちなみにタピオカミルクティー自体は不評だった。

 

また、ニアの義手について、いくつかの候補があった。

 

「……これは?」

『ハイ、こちらは普通の腕と見分けがつかないようになっているシンプルなものとなっております。しかしただそれだけであるため、ニア様のお好みには合わないかと』

「なるほど、普通の義手としては満点ですが、あなたのいう通り、面白さが皆無です。次はどんな義手ですか?」

 

別のミ=ゴがカートを持ってきて、上のものを説明する。

 

『こちらは先程の義手に一手間加えたものとなります。外見こそ先程のものと同じですが、この部分を押しながら引っ張りますと…このように腕部分が取れます』

 

ミ=ゴが説明した通りに義手を引っ張る。すると腕の部分が取れ、あるものが現れた。

 

「……コレってもしかして?」

『ハイ、サイコガンです。それ自身に魔力を込めているため、装着者自身の負担が軽減されます。一種のアーティファクトと思っていただければ』

「………それは紛れもなく奴さ?」

『『『『コ〜ブラ〜〜』』』』

「コブラじゃねーか」

『ナイスツッコミ、ありがとうございます。そして並行開発していた装備がこちらになります』

 

プレゼンターミ=ゴの鋏が差す方を見る。そこには全身赤タイツと葉巻、金髪のカツラがあった。

 

「コブラじゃねーか!」

 

素晴らしいものだったが、ニアが失ったのは右腕。コブラは左手がサイコガンだったので却下された。

先程の赤タイツとカツラもアーティファクトであり、同時装備で威力が3倍になるという。力の入れどころは百点満点だった。

そして次の義手はというと……

 

機械鎧(オートメイル)でございます。もちろん我々の技術をモリモリ注ぎ込んだため、ちょっとした錬金術が使えます』

「え、普通に凄いんですが。これに『しかしですね……』……何か問題が?」

 

ミ=ゴがニアの言葉を遮り、説明した。

 

『一回錬成する毎に、身体の何処かのパーツが消えてしまうんですよ。現在調査中ですが原因は一切不明でして……申し訳ございません』

「わぁーお…等価交換…………ん、何故消えてしまうということが判明したのですか?」

『……あちらをご覧ください』

「あっち……わぁーーお……」

 

ニアが見たのは、ジオ◯最高のマスコット(アッガイ)だった。

 

『ニアさま、たましいいがいもっていかれました!!どうですか?いっそのことぜんしんとりかえてみませんか!?』

「自分の心配をしなさい‼︎」

 

と、いった感じで遊んでいた。ブレード状の義手もあれば、指鉄砲で薄口醤油が出る、卵かけご飯専用の義手もあった。美味しかったです。

で、最終的には最初の義手に決まった。シンプルイズベスト。

 

 

 

2日間の休みが終わり登校する。

教室ではやはり、襲撃事件が話題になっていた。新聞にも載っていたしニュースにもなっていたしね。

ただ、“個性”の暴走による死傷者についてはウチの母が原因です。サーセン。

朝のホームルームでもその事件について説明されたが、本題はそこじゃない。

 

「襲撃事件が起きてしまったのは……我々教師陣の対応が不十分だった

ことが原因だ。お前たちを不安にさせてしまって申し訳ない……だが過ぎたことをいつまでも引きずる場合ではない。何故ならば……」

 

ブラドキングは一呼吸置き、目を開かせた。

 

「体育祭があるからだ!!」

 

『っしゃあああぁぁぁ!!!』

 

全員が盛り上がり、鉄哲なんかは椅子の上に立ち上がっている。彼らにとってはそれほど大事なイベントなのだから。

雄英体育祭はかつて存在していた、オリンピックに匹敵するほどの巨大イベントだという。オリンピック自体、“個性”が発現したことにより身体能力の差別化が進み、衰退していった。その代わりに“個性”をフル活用できる祭事として、ヒーロー養成校の体育祭が現れた、という話だ。

そしてこの体育祭、お茶の間だけではなく全国のプロヒーローも観る。卒業後の相棒(サイドキック)の人材確保も兼ねているのだ。優秀な人材は多くの事務所が欲しがり、そうでなければ声がかからない。

つまり目立たなければ死ぬのだ。

 

「落ち着けお前たち。気合いと根性だけでは勝てるものも勝てなくなってしまう。体育祭まであと2週間、この2週間で己を磨き、自分たちこそ未来のヒーローだと世間に知らしめてほしい‼︎」

 

『はい!ブラド先生!!』

 

元気で何より、お後がよろしいようで。

 

 

 

 

 

そして今日のヒーロー基礎学は特別だ。何故なら……

 

 

 

 

 

 

「わ〜た〜し〜が〜〜」

 

「扉から来たッッ!!!」

 

『オールマイトだぁぁぁ‼︎』

 

そう、今日のヒーロー基礎学はあのNo. 1ヒーロー【オールマイト】が担当するのだから。

画面の向こうからでしか見たことがない存在が、みんなの憧れの存在が教師として指導してくれるのだ。

画風も違うし筋肉もモリモリしている。

 

(私はこの筋肉にウッカリ屋さんと言われたんですね……何か腹立ちます)

 

そう考えていると、オールマイトは授業の説明をする。

 

「今日は戦闘訓練だ‼︎ではさっそく、行ってみよー!!」

 

 

 

 

 

〜少年少女移動中〜

 

 

 

 

 

 

「今日の戦闘訓練は室内における戦闘を想定しているぞ!チームはくじで決める2対2、内容は『核を盗んだヴィランがビル内に立て篭もる!ヒーローは時間内に核を確保するかヴィランを捕縛するか』だ!確保にはこの捕縛テープをヴィラン役に取り付ければ捕縛したことになるよ。じゃあさっそくやっていこう‼︎」

 

そして全員がくじを引き終える。

 

「……オールマイト先生、これは一体?」

 

ニアが引いたのは何も書かれていない札だった。正確にはペア番号である英文字ではなく、星マークが描かれていた。

 

「おめでとう!今回の当たり枠はナイアーラ少年に決まったぞ‼︎B組は21人だから、2人1組だと1人余っちゃうんだよね」

「……つまるところ、ぼっち…ということですね?」

「…………」

「目を逸らさないでくださいオールマイト先生」

「まぁ、その〜……ほら!ナイアーラ少年は今回の入試で1位通過だったから、ね?」

「それとこれとは関係ないと思いますが?」

「ウッ……」

「あとお尻のポケットからカンペが見えてますよ?」

「えっ⁉︎あ、本当だ⁉︎……あ」

「おやおや、No. 1ヒーローがこr「いい加減にしろ‼︎」ぬ"ッ⁉︎」

 

拳藤の手刀で意識を刈り取られるニア。無様にのびる姿はお笑いだった。

 

「ごめんなさいオールマイト。ナイアーラはこれが普通ですので……」

「あ、そうなんだ……ブラドキングから聞いていたけど、まぁ……気を取り直して訓練を始めよう‼︎」

 

そんな感じで訓練が始まった。ちなみにニアは1人となっているが、よく考えてほしい。

1年B組は21人。2対2で進めていくと、1人だけ何もせずに余ってしまう。

 

……本当にぼっちとなるのだ。

 

そのことに気が付いたオールマイトは急遽2対3の変則マッチにしようと提案したが、誰もニアと組みたいという人物は居なかった。

鉄哲は、

 

「もう訓練しちまったから組めない!2回も訓練すると抜け駆けしたみたいだからダメだ‼︎すまねぇニア‼︎」

 

と、彼らしい返答だった。

他にも

「ナイアーラだからなぁ……味方すら巻き込んで独り勝ちしそうだからなぁ……」

「味方を犠牲にして勝ちに来そう」

「寧ろ挑んでみたい。というかぶちのめしたい」

「切り刻みがいがある」

「ナイアーラって何かそこら辺のヴィランよりもヴィランっぽいから、より実戦的だから挑みたい」

 

と、いった感じだ。

 

「ナイアーラ少年って嫌われてる?」

「いやだなぁオールマイト先生、それだけ愛されているのですよ。扱いはともかく」

 

このままでは拉致が開かない。そうなった時、物間がある提案をした。

 

「オールマイト先生、ナイアーラ君は入試試験を1位通過したと仰いましたが、それは本当ですね?」

「うん、筆記もダントツで1位通過だったね!」

「ならば彼の実力は僕たちよりも遥かに上だと思うのです。まだ高校生活を始めて間もないですが、彼の能力はそれほど素晴らしいものなんです」

「そうなんだね。ブラドキングから聞いていたけど性格以外は非常に優秀だってね‼︎」

「ちょっと待ってください、それどういうこt「ナイアーラ、今は僕が話しているんだ」…おっふ……」

 

ニアの言葉を遮り、物間は結論を言う。

 

「だから僕からの提案です。ナイアーラ君は1人チーム、そしてまだ戦闘訓練をしていない2ペア…4人を1チームとした変則マッチにしませんか?」

「大胆な提案だね物間少年⁉︎でもそれじゃバランスが崩れそうだと思うんだが……」

「そうしなければバランスが良くならないのですよ。それほど彼の能力は秀でています」

「うーむ、そこまで言うなら許可するけど……ナイアーラ少年が受け入れてくれるかどうか次第だよ?」

「それについては僕に任せてください」

 

物間はニアの前に立って話を始める。

 

「ナイアーラ、君の実力は素晴らしいと思う。僕らが簡単に対処できるもんじゃない……」

「おやおや、それは嬉しいですね。それで?」

「本来ならばうまく調整して2対3が普通だ。しかし君をどちら側のチームに入れるかどうか、それを決めるのに時間が必要になる。まっ、くじで決めればすぐ解決する問題だね。でもそれじゃあ…………

面白くないだろう?」

「……ほぅ?」

 

ニアの口角が上がる。されど話は続く。

 

「君の性格から推測した、僕自身の考えだ。気分を悪くしたら申し訳ない。君は()()()()()()()()()()()()()はずだ。ならば2対3よりも、1対4の方が面白みが増すんじゃないかな?」

「ええ、その通りです。私は今を愉しむ事を最優先とします。これは誰にも干渉されたくない、私自身の性質です。それを踏まえた、物間君の提案は実に素晴らしいものです。しかし…どなたか1人くらい、私のペアになってくれても良いはずでは?流石の私でも4人相手では愉しむ余裕が…ね?」

 

なかなか合意に至らない。

だが、すぐに決着がつく。

物間はヘラヘラした表情(煽りモード)で、

 

「おやおやァ?楽しむことよりも保身に走るのかな〜〜?それは自分自身の性質を否定することになっちゃうんじゃないのかなぁ〜?」

「…………」

 

物間は止まらない。

 

「あぁ‼︎もしかして僕らに負けるかもしれないと思ってるんだ⁈そうかそうか、それじゃあ仕方ないかぁ……」

 

物間は振り返りオールマイトにその旨を説明しようとする。しかし物間の肩を掴み止める者がいた。ニアだ。

彼の肩を掴んだニアは、険しい表情をしている。

 

「なかなか言うじゃありませんか。ですが私はそういった挑発には乗りませんよ?」

 

それに対し、物間は無言のまま表情を変えない。だからなんだ?と言わんばかりの表情だ。

 

「(物 •´∀•` )」

「( ニ ˙-˙ )」

 

数秒の間……

 

「(物 •´∀•` )」

「( ニ ^ - ^)」

 

また数秒の間……

 

「(物 •´∀•` )」

「( ニ ^ω^)」

 

さらに数秒の間……

 

「(物 •´∀•` )」

「( ニ ^ω^)」

 

そして数秒後……

 

「やってやろうじゃありませんかコノヤロウ!!!」

 

「えぇ……」

 

No. 1ヒーローのオールマイトは困惑していた。

クラスが険悪なムードだと思えば、どこかのスポーツ王で見た茶番が繰り広げられたのだから。

 

「オールマイト先生、こうなったらナイアーラと物間は止まりません……訓練始めませんか?」

「……そうだね」

 

拳藤がそう言い、オールマイトも了承する。

こうして、1対4の変則マッチが始まろうとしていた。

そして組み分けは、ヴィラン側がニア1人。対するヒーロー側は、茶番実践の物間、茶番原案の吹出、B組委員長の拳藤、今回の茶番を高く評価した取蔭の4人となった。

 

関係ないが、ニアがヴィラン側に決定した瞬間、B組のほとんどが哀れみの目をヒーロー側4人に向けていたという。




やめて!ヴィラン側になったナイアーラの“個性”で戦闘訓練を始めたら、ヒーロー側4人の精神まで茶番で擦り切れちゃう!
お願い死なないで物間!あんたが今ここで倒れたら、ニアとの茶番と拳藤の手刀の生贄はどうなっちゃうの⁉︎
SAN値はまだ残ってる。ここを耐えればまだ茶番は続けられるんだから!

次回、物間死す。訓練スタート‼︎


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11話

この話は4545文字でお送り致します。


「では、本日最後の戦闘訓練、始めようか‼︎」

 

オールマイトの合図とともに、ヒーロー側の4人は動き始めた。

拳藤を主軸に、吹出は中・遠距離で拳藤のカバー。取蔭は“個性”で視覚、聴覚、嗅覚をもって索敵。そして物間は己の“個性”の汎用性から、オールラウンドに動く形だ。

全員それぞれの役割をはっきりさせ、それに徹することは、即席のチームプレイには必要なことだ。不得手なことを無理にやろうとすると、相手が有利な立場になるからだ。

彼らはこの短時間でそれを理解し実践した。大変素晴らしいといえる。

 

「うーん、1階は居なさそう。物間〜、そっちはどう?」

「2階はこの部屋で最後だ。ナイアーラ及び核は見当たらないね。それにしても取蔭…君の“個性”って変な感覚がするね」

「余計な一言だっての」

 

物間は取蔭の“個性”をコピーし、索敵をする。しかし使い始めた取蔭の“個性”は目や耳といった感覚器官を分離して使うため、物間にとっては奇妙な体験となる。

 

「じゃあ次は3階に行こうか。しかしナイアーラの奴、罠すら設置しないなんてどういうことだ?」

「ニア君のことだからぎょわーん!みたいなエゲツないのしてきそうなのにね!核を爆発させるとか」

「流石に……するな、アイツなら」

「(σ * ॑꒳ ॑*)σソレナ♪」

 

ある意味、信頼されているのであった。良かったね!

 

少し時間は戻る。

戦闘訓練開始直後のニア……

 

「さて、まずはハリボテの核を爆発するようにしましょう」

 

設定した時間に、とある成分が散布されるように細工をする。なに、魔法使いの彼ならチョチョイのチョイさ。

そして消毒用アルコールを床に撒き、と小さな水晶を取り出す。呪文を唱えると、アルコールが撒かれた場所に光の空間が開く。ハリボテの核を丁寧に持ち、その空間に入れようとした時、インカムに音声が入った。

 

『ナイアーラ少年、今何をしようとしているのかな?』

「何って……門の創造してそこに核を移動させるだけですよ?」

『うん、モニタからそれは確認できているよ。ただね、そのモニタで確認できた光なんだけど、私の隣にも現れたんだが……』

 

場所は変わり、オールマイトおよび戦闘訓練をしていないB組の生徒がいる部屋。

ここでは、設置されたカメラを通して戦闘訓練の様子を見ることができるのだ。オールマイトは戦闘訓練中の生徒全員と会話をできるため、ニアと話をしている。

何故なら突然、この部屋に……と、いうかオールマイトの隣に突然、光の空間が広がったのだから。

すると答えはすぐに返ってきた。

 

『ええ、門には入口と出口がありますからね。そちらに繋げたのですからあるに決まっているじゃありませんか』

「そっか。じゃあ君が持っている核はどうするのかな?」

『もちろんこうしますよ。プレゼントフォーユー♪』

 

ニアが核を門に入れると、オールマイトの隣から核が現れた。そしてほぼ同時に、門は消えた。

 

「ナイアーラ少年⁉︎」

『安心してください。非殺傷の爆発だけですので』

「少年ッ⁉︎」

『おや、電波が悪いのでしょうか……何と言っているか聞こえません。一旦切りますね』

「待て!待つんだ!!少年ッ!少年〜〜⁉︎」

 

いくら呼び掛けても、一切の応答は無かった。ふと、隣を見れば、しっかりとタイマーが動いている核(ハリボテのはず?)が置かれている。

訓練をしていない生徒たちは、顔を青ざめ、核から離れる。

 

「皆、おち、おちつ落ち着くんだ!部屋から出れば大丈夫だって!」

「そそそそうだよな⁉︎俺扉開けるよ!」

 

泡瀬が皆を宥め、円場が扉を開ける。

 

 

 

 

 

 

しかし、そこには、闇が広がっていた。

床も、壁も、天井も、真っ暗な闇が一面に広がっていた。踏み出せば二度と、戻れないだろうと、彼らの本能に警鐘を鳴らす。

 

「…………」

 

円場は無言で扉を閉める。そして一呼吸を置いて、扉を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

しかし、そこには、闇が広がっていた。

床も、壁も、天井も、真っ暗な闇が一面に広がっていた。踏み出せば二度と、戻れないだろうと、彼らの本能に警鐘を鳴らす。

 

「…………」

 

再び無言で扉を閉める円場。

オールマイトを含め、全員が無言になる。そして……

 

『ふざけるなァァ!!!』

 

B組全員が怒りを露わにした。

 

「ナイアーラァァァァ‼︎」

「鬼!悪魔‼︎ナイアーラ!!!」

「この外道ォォォォ!!!」

「ま、まだ慌てるような時間じゃない」

「非殺傷って言ってるからまだ大丈夫……大丈夫?」

「ん……」

「こんのド畜生が!!!」

「f○ck you!!!」

「絶対ぶった斬ってやるぜェェ!!!」

「皆さん……報告しなければならないことがありますぞ」

 

宍田が鼻を摘みながら話し始める。彼の目には、薄らと涙が浮かんでいた。

 

「お、おい…どうした宍田。そんな顔のパーツを中心に寄せたような表情は……」

 

聞かれた宍田はそんな表情で答えた。

 

「唐辛子の匂いがプンプンしてますぞ……鼻がぁ…目がぁ……」

『…………』

 

誰もが無言になる。

唐辛子か……なんだ、ただ辛くて目に染みるだけか……

と、思いたいが、ここは密室。換気しようにもニアのせいで出来ない。

無限の辛さに襲われるのだ。救いなんて一切ない。

そして再び、この密室空間は阿鼻叫喚に包まれる。

 

 

 

 

 

『ナイアーラァァァ!!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、核も移動しましたし……そろそろ彼らが来る頃でしょう」

 

呑気にヒーローチームを待つニア。モニタールームの惨事を招いた張本人とは思えない落ち着きっぷりだ。

手に持った魔本をペラペラと捲っていると、わずかな気配を感じた。正確にいえば、視線を感じた。

その方を見ると、柱の陰から覗く、目およびその周辺のパーツが浮かんでいた。ニアに気付かれたせいか、すぐに彼がいる部屋から出て行く。

そしてすぐにヒーローチーム4人がやって来た。

 

「おやおや、皆さまお揃いで……暇でしたので核は別のところに隠しましたよ」

 

余裕のある対応でヒーローを迎えるニア。

 

「意外だよ。てっきり私たち4人が来たら問答無用で爆発させると思ってたけどね」

「確かに、それも一つの方法です。あの大きさなら1km圏内に甚大な被害を与えられたでしょう。しかし()()()4()()のために爆発させるのはもったいない。なので1()7()()もいる部屋に移動させました。もちろんタイマーは作動させています」

 

数秒の沈黙のあと、取蔭が叫ぶ。

 

「あんたバカなの!?」

 

そう言われても悪びれる様子は一切ない。取蔭は顔を押さえてため息をつく。こんなやつを相手にしなければならないのだから。

 

「本来は要人や国の責任者のもとに送りますが、あくまで訓練。正確な場所としてイメージできたのがモニタールームだったのです。何も問題はありません」

「酷すぎる……」

「ヴィランならどうするか、そう考えた結果です。別におかしくはありませんよ?」

 

拳藤は顔をしかめる。これ以上話しても意味がないと判断したのか、“個性”で手を巨大化させ、臨戦態勢に入る。吹出も彼女のカバーができる位置に移動する。物間と取蔭はニアの死角に立つ位置に移動する。

4対1。

実力に差はあれど、数では圧倒的に劣る。常に視野に入れることは困難であり、4人の連携次第では一瞬の隙ですら致命的となる。

 

「ふん!せいっ!とりゃっ‼︎」

「ハハハ!動きが単調ですよ?それではこんなふうに……」

「ッ⁉︎」

 

拳藤の攻撃を最小限で躱し、一瞬の隙をついて足払いをする。

バランスを崩した拳藤に追い討ちをかけようとするも、

 

「ズババババ!!」

「むぅ、中遠距離からの攻撃は厄介ですね」

 

吹出のオノマトペが、拳藤を守るようにニアを襲う。

 

「僕も忘れちゃいけないなァ‼︎」

 

拳藤の“個性”をコピーした物間が、ニアに反撃をさせないように攻める。

そこに体勢を整え直した拳藤が攻撃に加わり、一切の反撃を許さない波状攻撃となる。

だが、

 

「テオザケル」

 

「がぁ⁉︎」

「うわぁッ⁉︎」

「拳藤!物間!」

 

ニアは自分ごと巻き込む、広範囲の電撃を放つ。巻き込まれた拳藤と物間は意識はあるものの、まともに動ける様子ではない。

ニアは動けない2人にとどめを刺そうと、手のひらを向け、口を開く。

 

「させないし!」

 

取蔭は可能な限り身体をバラつかせ、ニアの動きを牽制する。

その間に吹出が2人を引っ張って部屋から出る。取蔭も牽制しつつ、部屋から出ようとするが、

 

「ラシルド」

「嘘⁉︎出口が⁉︎」

 

部屋の唯一の出入り口が、雷を纏う巨大な盾により塞がれた。

マズい……

そう思った時、後ろから奴が近づく音が聞こえた。

 

「見事な連携でした」

 

パチパチと拍手をしながら近づいてくるヴィラン(ニア)

その仮面の下はほくそ笑んでいるに違いない。そう思った取蔭は顔を引きつらせる。

1対1……

4人ですらまともに攻撃できない相手と、闘わざるを得ないこの状況。もはや絶望だ。もし、これが訓練でなければ、ヴィランは容赦しないだろう。

 

殺されるか、生き地獄を見るか……

その2択となる。

 

 

 

 

 

それがどうだというのだ。

 

取蔭切奈()はヒーローを目指しているんだ。諦めてたまるか!今は目の前にいるナイアーラ(外道)を何とかしなきゃ……‼︎)

 

取蔭は全身を可能な限りバラバラにして、ニアを囲むように展開する。

 

(捕縛テープさえ巻けば勝ちなんだ……やるしかないね‼︎)

 

覚悟を決めた取蔭は、可能な限りの全方位からの攻撃を仕掛ける。

視野を奪い、死角から捕縛テープを取り付ける。単純ではあるが、最善手でもある。

 

「グラビレイ」

「きゃあ⁉︎」

 

たった一言で、彼女の全身は地面に沈んだ。メキメキと彼女を抑える重力は、自由を奪うには十分過ぎる威力だった。

 

「あ…ぐぅ……」

 

呼吸もままならない。そしてついには、取蔭は意識を手放した。

気を失ったことを確認したニアは取蔭を抱きかかえ、そっと壁に寄り掛からせた。

 

「さて、残る3人はどこで…………は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ……取蔭……」

「想像以上に強いね……4人で攻め続ければイケると思ったんだけどな……」

「ニア君ってああ見えて優秀なんだね、改めて知ったよ。2人とも動ける?動けるならビューン!って取蔭さんを助けに行こう!早くしないとモニタールームも大惨事に……もうなってないよね?」

「「……早く行こう」」

 

取蔭の救出とモニタールームの安全のため、3人はすぐに立ち上がった。

既にモニタールームが異空間に閉じ込められているとは、思わないだろう。

 

「でもどうする?近距離も遠距離もあいつは対応してくるからな……」

「やるしかないっしょ。今の僕らは()()()()なんだぜ?ニア君(生粋ヴィラン)を倒そうぜ( •̀ω•́ )✧」

 

吹出の鼓舞により、拳藤は自信を持って挑む決意をする。

 

「ナイアーラを倒すにはさっき以上の“策”を練らなきゃならない。それも飛び抜けたものをね……」

 

物間が立ち上がり、2人に語る。

 

「どうするのさ?」

「簡単さ。僕がナイアーラの“個性”を使うんだ。目には目を、歯には歯を。外道には外道をぶつけるんだよ」

「だけどアイツの“個性”はコピーしてないんじゃないのか?」

 

ニヤリと笑う物間は言葉を続ける。

 

「してあるさ。“個性”ありの体力テストでね。コピーした“個性”はストックできる。使わない限りしばらくはね……だから、このように…ね!」

 

物間はニアの“個性”を発動した。

それが物間の人としての過ちだとは知らず……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出てきたのは、皮製で幅が約60cmの大きな巻物だった。




物間が出した魔導書が分かった方は、訓練された探索者です。分かった方はそこに記載されている存在と契約してください。
あと前話の後書き詐欺ではありません。話が長くなるために分割しただけです。


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12話

サンタ婦長の照れ顔で私のナニカが爆ぜました まる


「何だ、これ……」

 

現れたそれを手に取る物間。しっとりとした質感。だが、皮にしては歪で滑らか、古くとも劣化が見られない()()な代物だった。

彼はニアが普段使っている、真っ黒な魔本が出るだろうと思っていた。

 

 

 

だが、そうはならなかった。

 

 

 

なるはずがないのだ。

 

 

 

何故ならばあの魔本は、ニアが前世の記憶と今世の魔術をもとに創ったオリジナルなのだから。

 

 

 

それを知らない物間は、それに対して違和感を感じるが、

ニアの“個性”だ。そう考えたら何もおかしくはない。

そう言い聞かせて、巻物を開こうとする。

だが、それを止めるように、物間の手を抑える人物がいた。

 

「(|||O⌓O;)開けちゃダメだ。絶対に」

 

吹出だ。彼の見た目上、真剣なのかふざけているのか、表情が伺えない。しかし、彼の声は本当に怯えているようだった。

 

「私もそう思う……怖いんだ、それが……!」

 

拳藤も何かに怯えたような表情で物間に言う。

2人の怯えっぷりに、物間も頷き、その巻物を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みつけた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「⁉︎」

「どっどうした物間⁉︎」

「ヾ(・ω・`;)ノぁゎゎ」

 

突然、何かが聞こえた。すぐにその方を見るが、何も無い。

いきなり何もない方を振り向いたため、2人は驚いている。

 

「……聞こえなかったのかい?」

「な、何をだよ…やめてくれ、心臓に悪いから……」

「(;´Д`)アビャア~」

 

どうやら拳藤と吹出には聞こえていないようだ。こんな状況で嘘をついているとは思えない。

とにかく、今はこの巻物をどうにかしなければ。(ニア)が来てしまう。

 

「みつけましたよ」

「え?」

 

振り向けば、白い面の魔術師がいた。すでに目の前に飛び込んでいる。それが戦闘訓練、最後の記憶だった。

物間はニアに蹴り飛ばされ壁に激突し、意識を失った。

 

「物間ァ‼︎」

 

拳藤はすぐに“個性”を発動させる。だが手遅れだ。

 

「貴女も眠ってください」

「がはッ……」

 

いつの間にか懐に潜り込んでいたニアの拳を鳩尾に貰い、倒れた。

そしてすかさず、吹出に投げ技を決める。

 

「あとは吹出君、君だけです。私としては降参して欲しいと思っています。抵抗するのであれば直ちに彼らと同じ目に合わせます」

 

ニアは吹出の胸ぐらを左手で掴み地面に押さえ込んでいる。そして右手は吹出の首元に当てている。抵抗した瞬間、意識を刈り取られるのは明白だ。

 

「くぅ……分かった。これ以上皆に何もしないなら降参するよ」

「受け入れましょう。交渉成立です。オールマイト、訓練終了の合図を!」

『え、あ、うん……ロンリーヴィランWin!!あと早く核を止めてほしい!部屋から出られるようにもね!』

「それはやってますので、今から2人を送ります」

 

オールマイトのお願いを軽く遇らい、インカムを切る。

 

「吹出君、4階の部屋に取蔭さんを寝かせてありますので、モニタールームまで運んであげてください。少しばかり確認しなければならないことがありますので。よろしいですね?」

「うん…でも、それって……」

「ええ、ですが内容を話すわけにはいきません。ご了承ください……」

「……分かった。話せるようになったらいつでも話してよ?僕ら友達だからね‼︎じゃあ行ってくるぜ!!ε=┏(・ω・)┛」

 

吹出はニアに言われた通り、取蔭のところへ向かう。

その間に、気を失っている拳藤と物間を門の創造によりモニタールームに送る。

1人残されたニアは自己強化の魔術が切れたことを確認して、別の魔術を唱える。小さな静電気が走る音が一瞬鳴る。

 

「さて、コレは誰にも見られてはいけませんからね。しかし、よりによって遺言を引き当てるとは…運が良いのか悪いのか……」

 

やれやれと小言を呟きながら、地面に落ちている巻物を拾い上げる。ハラハラとわずかに積もった埃を払い、“個性”にてしまう。

見たところ、巻物を開いて読んだ形跡は無かったため、彼らに及ぶ被害は無いはずだ。しかし原本となれば……どうなるか予想がつかない。なんせ()()()()が憑いているのだから。

 

「ま、それはそれで愉しそうですがね」

 

仮面の下で笑みを浮かべていると、再びインカムが入る。

 

『ナイアーラ少年!評価を付けたいから戻ってくるように!あと君がいるフロアの映像が映らないんだが、壊したのかな?故意だったら反省文だぞ‼︎』

「まさかそんなことしませんよー。正直戻りたくはありませんが仕方ありません、今向かいます」

 

モニタールームの皆に何と言い訳をしようか。ま、無駄でしょうね。

1人腹を括り、モニタールームに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『何か弁明はあるかナイアーラ?』

「いやアレはですね?ヴィランならどうするかを考えた結果であって合理的な行動をしたまでです。ヴィランだったらそうします。なら私もそうします。何も問題はありません。なので鎌切君、私の首に当てている刃を納めてください」

「断るぜ」

「oh!手厳しい!」

 

モニタールームに戻ると同時に、裁判が始まった。

ニアの話は一切聞かない、有罪確定の裁判だ。宗教裁判もビックリだぞい。

 

「ほら、トロッコ問題と似たようなものですよ。核の力で4人のヒーローを確実に始末し自分は逃げ果せるか、人気が多い他の場所に核を落とし自力でヒーローを何とかするか。私は後者を選んだだけです。つまり私は悪くない!なので鎌切君、私の首に向けて刃を構えないでください」

「黙ってろ」

「なんてこったい」

 

どう足掻いても絶望。口を開けば開くほど、罪が重くなる。だがニアは喋らねばならない。だってニアだもの。

そこに骨抜が入る。

 

「まぁ皆、落ち着こう。ナイアーラだって真剣に取り組んだ結果だと思うんだ。確かに核を爆発させる細工をしてこっちに送ったのは良くないが、実際にこういうヴィランもいるかもしれないしさ、俺たちの成長のためだと考えることもできるんじゃね?」

「あー、確かに。こんなケースもあり得るかも」

「なら……まぁ、今回だけは許そうかな?」

「ナイアーラ氏ですし、次も何かやらかしますな。その分私たちも成長できると思えば許すこともやぶさかではないですぞ」

 

骨抜の柔軟なフォローにて空気が良くなっていく。

 

「骨抜少年の言う通りだ。ナイアーラ少年のように過激なヴィランも少なからずいる。それをどう止めるかもヒーローには欠かせないぞ!今回はナイアーラ少年がMVPだ。無駄がなく最小限の動きで相手を翻弄する。そして部屋での戦闘を想定して核を別の場所に移すこともGOODだね!内容はえげつなかったけど!そしてヒーローチームの4人も素晴らしい連携だった!限られた時間でそれぞれの役割を果たしヴィランを追い詰める。これは現場でも非常に大切なことだ!即席のチームアップでの連携は、授業じゃなかなか学べないからね!やっぱMVPはヒーローチームの4人かな、これ?さて、これにて戦闘訓練は終了だ!各自、何が良かったか、そして何が足りなかったか分かったはずだ!それぞれの反省点を踏まえて、今後の授業に励んでほしい!今日はお疲れ様‼︎各自着替えて教室に戻るように‼︎」

 

『ハイ!!!』

 

オールマイトは授業を終えるとすぐに部屋を出ていく。とても忙しそうに見えるほどにだ。

残されたB組は、被告人のニアを許す方に傾いていた。

だが、

 

「いやぁ、骨抜君とオールマイト先生には感謝ですよ。皆さんにとっては訓練になりますし、私も愉しめましたしね。まさにWIN-WINですよ」

 

仮面を取り笑顔でそう言った瞬間、これまた笑顔の骨抜がニアの肩に手を乗せる。

 

「……沈んどけ

「え?ちょっと骨抜君?骨抜くぅーーーん⁉︎」

 

ニアは首から下が地面に沈み、身動きが取れなくなる。

 

「よし、じゃあオールマイトも言ってたことだし…皆、教室に戻ろうか」

『はーい』

「OK、わかりました、もう一度弁明させてください。なので皆さん私を置いて行かないでくだ」

 

 

 

 

無慈悲にもモニタールームの扉は閉められ、ニアは1人残された。

 

 

 

 

 

「……やり過ぎはダメだよ?」

「善処します」

 

 

 

 

 

その後、忘れ物を取りに来たオールマイトに救出されたのでした。チャンチャン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、鉄哲がA組に行くと言い始めた。何でも、ヴィラン襲撃を乗り越えたクラスだから、その話を聞きに行くのだという。

 

正直、どうでもいい

 

それがニアの考えだった。たかがヴィランたちが襲撃してそれを何とかしただけだ。最後のゴローさん招来?アレはノーカン。

逆に何故、襲撃されないものだと思うのだろうか。未来のヒーローたちを未熟のまま潰せるのだ。多くのプロヒーローが在籍する雄英高校とはいえ、ヴィラン側としてはデメリットよりもメリットの方が多い。

今回はヴィランたちが未熟だったということになる。

これを口にしたら、B組の皆に何をされるかは目に見えている。今回のナイアーラは賢いからね。お口チャックなのさ。

 

「ニアは入試一位通過なんだから行こうぜ‼︎」

「一位は関係ないでしょう?それに良いんですか?先程の戦闘訓練はやり過ぎだかもしれないとほんのちょっぴり反省してますが……これから私がやろうとしていることとは別ですよ?加減なく、温情なく煽りに煽りますよ?やめろと言われても私が満足しなければやめません。やるからには徹底的にです。それでもよろしければ、行きますが?」

「おおう……わかった」

 

ニアは鉄哲の誘いを断り、帰る準備をする。

いざ帰ろうと教室を出ると、A組の前が騒がしい。ヴィラン襲撃を乗り越えたクラスを見ようと考えているのは、他のクラスも同じだったようだ。

 

(話だけでも聞いておきましょうか……)

 

ニアは人混みに紛れ込んで観察を始める。

するとA組の1人が、

 

「意味無ぇからどけ、モブども」

「知らない人の事をとりあえずモブって言うのやめなよ!」

 

と、挑発する声と静止する声が聞こえた。すると有象無象の中から、ヌッとクマが凄い男子が割って出る。

何でも、普通科やその他学科には、ヒーロー科の受験に落ちた人がいるそうだ。そして体育祭の結果によっては、ヒーロー科への編入が検討され、その反対もあるという。

 

「調子のってっと足元ゴッソリ掬っちゃうぞっつー宣戦布告しに来たつもり」

 

何と素晴らしい向上心なのでしょうか。調子には乗っていないと思われるが。

煽りたい気持ちを抑えて観察を始める。

 

「隣のB組のモンだけどよぅ‼︎ヴィランと戦ったっつうから話聞こうと思ってたんだがよぅ‼︎エラく調子づいちゃってんなオイ!!!」

 

(何してんですか鉄哲ぅ?)

 

煽りにもならない発言に引っかかるのはまさかのクラスメイト。

ニアと物間(煽りの二大巨頭)と過ごしているはずなのに、どうして引っかかるのだろうか?答えは、

熱血単純な鉄哲だからじゃね?

だ。ここまでの模範解答は無い。このままいても面白くないと思った時、この騒ぎの発端のなった男子が放つ一言が、実に素晴らしかった。

 

「上に上がりゃ関係ねえ」

 

そのまま彼は人混みを押し除けて教室を出る。

 

(クマの凄い彼とは違う向上心……これほど大きなものは見たことがありませんね。大きくて輝くその心……壊したらどうなるのでしょうかね?さて、用件は済みましたし…帰りましょう)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…ハァ……!」

 

暗闇の中、走る男子がいる。

怯えた表情でひたすら走っている。

その様子はまるで、何かに追われているようだった。

 

「ハァ…ハァ…クソっ!来るなっ‼︎」

 

暗闇の中、彼以外に色は無い。

だがその男子は明らかに、何かを見て、逃げている。

 

「ハァ…ハァ…っあ」

 

その男子は転んだ。転んでしまった。

痛みは無い。ならばすぐに逃げなければ……

男子は立ち上がろうとした時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みつけた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ⁉︎来るな‼︎来るなァァア!!!」

 

男子はさらに表情を歪め、その何かから逃げ出そうとする。

だが、逃げることが出来なかった。

 

「あ…足がぁ……⁉︎」

 

男子の脚が、膝から下が塵と化していたのだから。

次第に塵に侵食されていき、ついには胸から下が塵と化した。

 

逃げられない。

男子が悟った時だった。

 

 

みつけた

 

 

………!

 

声のする方を見た。見てしまった。

子どもよりも小さなそれは、カラカラに干からびた人型のような存在だった。干からびた腕をまっすぐと伸ばし、こちらに近づいてくる。表情という概念すら無い貌は、確実に男子を見つめている。

男子は恐怖からか、声が出なかった。

 

 

わがかごをあたえん

 

 

何かを呟いたと思えば、その腕が男子の胸に触れる。

その瞬間に、男子の残った身体は塵となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁあぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

男子は目を覚ました。

まだ夏でもないのに、びっしょりと汗をかいている。

 

「……ゆ、夢?夢か……」

 

あたりを見渡すが、どこも異常は無く、ただただ動悸がするだけだった。

 

「起きなさい寧人!」

 

部屋の外から女性の声がする。

時計を確認すれば、いつも起きる時間から、10分ほど過ぎていた。

 

「……あー…今起きたところ‼︎」

 

彼はベッドから出て、身支度をする。

アレはただの夢だ。凄く気味の悪い夢なんだ。気にしてはいけない。すぐに忘れよう……

 

今日のヒーロー基礎学は救助訓練のはずだ。気を引き締めなければね……

 

身支度を済ませた彼は、部屋を出る。

彼は“夢”に向かって頑張っているのだ。この先、どんな困難があろうとも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼には見えてなかった。

彼のベッドのそばには、小さな塵の山に、小さな2つの穴が出来ていたことに……




深淵を覗いた時には、もう既に深淵に入っていると思うんです。


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13話

今回は短めでございます〜


「選手宣誓?私が?」

「そうだ。毎年行われる雄英体育祭の選手宣誓は、入学実技試験の1位がすることになっている。俺としては非常に不安だが、やってくれるか?」

 

A組視察の次の日、ニアは職員室に呼ばれた。そしてすぐに、校長室へと移動した。

先日の戦闘訓練で隠しカメラを壊したことがバレたのか?そう考えていたが、内容は別のことだった。

 

「やぁ!雄英高校の校長は誰か?それはこの私、喋るネズミこと、根津さ‼︎」

「え、○ッキー?」

「ハハッ!面白いことを言うね!それは禁忌だよ、消されたくなければね‼︎」

 

D社はマズい(迫真)

 

「さて冗談はさておき、こうして話すのは初めてだね!君の話は聞いているよ。優秀な問題児だってね!」

「優秀なのは知っていますが、問題児とは心外ですね。まだ大きな事はやらかしてはいない気がしますが?」

「自覚なしとは驚きだ!まぁそれはいいや。君に話すことは2つあるんだ。まずは雄英体育祭の選手宣誓をしてもらうよ!」

 

そして初めに戻る。

確かに筆記試験でも実技試験でも1位だったのは事実だ。別に恥ずかしいとか、面倒くさいからやりたくないといったことは無い。

 

「まぁ、断る理由はありません。しかし、B組の私がやるよりも()()()()()()()()()()()()A()()の誰かがやった方が面白いと思いますが、どうでしょうか?」

「理由を聞いてもいいかな?」

「もちろん。確か雄英体育祭は日本全国、いや、世界から見ても大きな行事だと聞いています。当然、多くのメディアが取りあげます。ならば話題性のあるA組の誰かが選手宣誓をした方が面白い。それが私の理由です」

 

根津校長は静かに頷き、そして口を開く。

 

「そうか。じゃあこう捉えられてもおかしくはないね!A()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってね!」

「校長?」

 

根津の予想外な発言に反応するブラドキング。

 

「ほう?」

「ナイアーラ?」

 

当然、面白さに関する挑発をされれば反応するニア。ブラドキングはこれから起こる茶番に困惑をしている。

 

「私は面白ければ方法や結果なぞどうでも良いと考えています。確かに、A組と比べて我々B組は話題性に欠けています。ならば導き出される答えはただ一つ……A組よりも目立てば良いだけです。今回の選手宣誓、お任せください」

「交渉成立だね!よろしく頼むよ‼︎」

 

ニアと根津校長は握手を交わす。ブラドキングは困惑している。

 

「選手宣誓に設ける時間は?」

「3分以内であれば大丈夫さ!まぁ毎年1分くらいで終わるね」

「ほうほう、ならばその3分間で全てが決まると……真面目な宣誓を30秒以内、そして残りはずっと私のターンですね?良いでしょう!」

「生放送だから放送禁止用語や行動はNGね!以前“個性”で全裸になった生徒がいたからね‼︎」

「その話を詳しく」

 

「……校長、次の話をしませんか?」

 

完全に忘れられていたブラドキングの一言で、1人と1匹は話を止める。

根津は軽く咳払いをして、真剣な眼差しで話し始める。

 

「もう一つの話というのは、君から聞きたいことなんだ」

「何でしょうか?話せる事であれば」

「先日のヴィラン襲撃事件についてさ。君はどう聞いている?」

「ニュースで報道されていた通りですよ。何でも“個性”が暴走したとか。それくらいしか知りません」

 

 

嘘です。

原因も招来した邪神も知ってます。

だからといって話したら、非常に面倒なことになるのは間違いない。下手したら内通者として疑われてしまうのがオチだ。

 

「そうか……うん、分かった。話は終わりさ!」

「わかりました、体育祭当日はお任せください。では、失礼致します」

 

そう言ってニアは校長室を出る。

 

(だいぶ怪しんでいましたね……まぁバレたらバレたで、面白くなればいいんですがね。しかし選手宣誓か……どう煽りましょうかね?)

 

面白ければ何でもいい。そのために彼は動くのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「ナイアーラ、少し話がしたい……」

「……場所はこちらで用意しておきましょう。ついてきてください」

「あぁ……」

 

その日の放課後、ニアは物間に呼び止められた。彼の表情を見た瞬間、ニアは全てを察し、彼を連れて行く。

その行き先は駅近くの公園だ。しかし、ニアが入った途端に人気は一切無くなる。

 

「人払いは済ませました。此処なら私たち以外に聞かれることはありません」

「……公共の場での“個性”の使用はダメなんじゃ?」

「そんなことは些事です。それよりも……何を聞きたいのですか?」

「………………」

「まぁ、何を聞けば分からない。それが今、物間君に置かれた状況でしょう。では私からハッキリとお話ししましょう。それでよろしいですね?」

 

物間は無言で頷く。

了承は得た。ならば全てを話しましょう。

 

 

「まずは、そうですね……貴方が取り出した魔導書、アレは大変危険なものです。私でさえソレには触れません。というかよくソレを選びましたね……どのようにソレを取り出したか教えてくれませんか?」

「どうって……君が使ってる本を出そうとしただけさ。そしたら…アレが出てきた。危険なのは身に染みたよ。拳藤と吹出がすごく怯えていたからね」

「ほうほう……本当に開かないで正解でしたよ。数行読んだだけで10年近く歳を取りますからね」

「10年⁉︎読んだだけで⁉︎そんなのは有り得ない‼︎」

 

物間は声を荒げる。あの時、吹出が止めていなければソレを読んでいたかもしれないのだから。

 

「有り得ない?いえいえ、それは大きな間違いです。貴方は知らないだけだ。逆に何故、有り得ないと言い切れるのですか?」

「それは……」

「ならば私はこう宣言しましょう!〔有り得ないなんて有り得ない〕と!それにこの状況で嘘をつくほど、私は落ちぶれてはいませんよ」

 

ニアはカラカラと笑い、話を続ける。

 

「物間君、貴方が取り出したのは【カルナマゴスの遺言】という魔導書です。そしてソレにはとある存在の加護が授けられています」

「とある…存在……まさか!」

「……その反応、もしかして()()のですね?」

 

頷く。

冷や汗を流す物間を見て、嘘ではないと確信する。

 

手遅れだと……

 

そして物間は声を震わせながらニアに訊ねた。

 

「ナイアーラ……分かるんだ、もう取り返しがつかないってことを。なぁ!僕は!どうすればいい⁉︎そして君は何者なんだ‼︎」

 

それは今にも壊れそうな叫びだった。

認めたくない。

信じたくない。

受け入れられない。

だが全てが現実だ。

 

もう、どうしようもない……救いを求めるものだった。

 

「何者…ですか。ふむ、ならばこう答えましょう。私はニア・ナイアーラ、ただただ()()()()()()()だけの愉悦部員です。そして物間君、君はすでに、その存在……クァチル・ウタウスに魅入られています。手の施しようがありません」

 

物間はニアの言葉を聞くと、項垂れる。

 

「認めたくないのは当然でしょう。君は悪くないのだから。しかし……ただ、運が無かった。それだけです。これからどうするのかは……君次第です。さぁ、どうしますか?今置かれている状況を受け入れず自暴自棄になるか、最期まで醜く足掻くか!」

 

ニアは物間を心配しているわけではない。

愚者(物間)が、どう行動する(苦しむ)のかを愉しんでいるだけだ。

それがニア・ナイアーラ(無貌の息子)なのだから。

 

「…ナイアーラ、教えてくれ……そのクァチル・ウタウスについて、そしてそれに関する知識も!」

「ほう?その理由を聞いても?」

「僕はヒーローを目指しているんだ。たかが悍ましいものに魅入られただけで怖気ずくわけにはいかないんだよ!僕は僕の目指すヒーロー(未来)のために!こんなところで諦めたくない‼︎だから‼︎教えてくれ……‼︎」

 

覚悟を決め、懇願する。

それは人間から離れていくことを宣言したも同然だ。

 

「良いでしょう!ならば私も貴方のご期待に応えましょう!!」

 

素晴らしい、実に素晴らしい!

これだから人間は愚かで面白いんだ‼︎

 

 

 

welcome to outside(ようそこ、こちら側へ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして体育祭の日がやってきた。

各クラスに割り与えられた控室にて、1年B組は待機をしている。

 

「ついにやってきたな……この時が!」

「プロに実力を見てもらえるんだ……やってやる……!」

「⁽⁽◝(๑꒪່౪̮꒪່๑)◜⁾⁾≡₍₍◞(๑꒪່౪̮꒪່๑)◟₎₎」

「落ち着け吹出」

 

こんな感じで気合が入っている。

この日のために作戦や技術、実力を磨いてきたのだ。彼らはやるしかないのである。

 

「ニア‼︎」

「はい?どうしましたか鉄哲」

 

鉄哲がニアに向かって指を差す。

 

「今日俺は!ニア、お前に挑む‼︎」

 

ニアへの宣戦布告。同じクラスとはいえ、互いに優勝を目指す敵同士。仲良しこよしだけでは、この体育祭に意味は無い。

そして入試1位、そして戦闘訓練で見せつけた実力から、この場にいる全員はニアよりも下となる。

故に、鉄哲の宣戦布告は正しい。

当の本人、ニアはキョトンとした後、すぐに口角を吊り上げて笑みを浮かべる。

 

「わかりました。ならば私も全力でいかなければなりませんね?」

「当然‼︎ここでやらなきゃ漢が廃るぜ‼︎」

「ふふふ、素晴らしい……あ、そうそう。他の皆さんも如何です?私に挑みたいのであれば受けて立ちますよ?」

 

ニアは周りを見渡す。

全員にその闘志があるようだ。ならばそれに応えるまでだ。

すると放送にて入場のアナウンスが入った。

 

「よし、じゃあ皆!行こっか‼︎」

『おう!!!』

 

拳藤を筆頭に、1年B組は入場する。

 

 

 

雄英高校体育祭、スタート!!!

 

 

 




おめでとう物間君!君は偉大なる一歩を踏み出すことに成功した!
もう戻れないけどね‼︎


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14話

アトランティス……
アトランティスゥゥ……
アトランティスゥゥうあぁ!!!



私は尊死した。


『さあさあ!今年も盛り上がっていくぜ雄英体育祭!!!準備はいーかマスコミにヒーロー?どうせお前らの目的はコイツらだろ!!1年!A組!!』

 

プレゼント・マイクのアナウンスにて雄英体育祭が始まった。

やはり、ヴィランと遭遇し乗り越えた1年A組が注目される。それに続いてニア達B組、普通科、そしてサポート科が入場していく。

経営科は雄英体育祭に参加することはほとんどない。彼らにとって雄英体育祭とは、将来活躍するであろう未来のヒーローや、誰もが目に留まるアイテムを開発するエンジニアをどう売り込んでいくか考える、限られたイベントなのだ。

同じものでも、プレゼンの仕方で価値が変わる。

社会にて身につけたいことの一つでもあるかもしれない。

 

「しかし……やはりA組が目立つ感じですね。同じヒーロー科として目立てず釈然としません」

「仕方ないさ。実際はどうか分からないけど、()()()()()という実績がある。それに対して僕らB組には話題が無い。ただそれだけさ……でも僕らだってA組の誰よりも強く、ヒーローを目指しているはずだ。それをこの体育祭で証明しよう。調子に乗っているA組の、伸びきった鼻をへし折ろう」

「ええ、私たちが目立ち愉しめるよう頑張りましょう」

「……ん?」

「……はい?」

 

ニアと物間は妙に噛み合わない会話(アンジャッ○ュ)をしながら整列する。

生徒全員が並び終えると、18禁ヒーローのミッドナイトが壇上に立つ。今年の1年担当は彼女のようだ。

……全国放送で18禁は良いのか?いや、良きかな良きかな。

 

「では1年生代表による選手宣誓‼︎1年B組、ニア=ナイアーラ‼︎」

「はい」

「「「「「ハァ!?」」」」」

 

ニアが選手宣誓に呼ばれると、B組の何人かが驚いていた。

実力はあれど、歪みに歪んで逆に真っ直ぐな性格をしたニアが生徒代表というのは、あまりにも不安すぎるのだ。

驚愕の声を上げたクラスメイトをスルーして壇上に上がり、マイクの前に立つ。

自分以外の生徒がこちらを見ている。

期待の目、不満の目、敵対的な目、お願いだから自重してくれみたいな目など、様々な視線が刺さる。

その視線を浴びながら彼は口を開く。

 

「宣誓、我々選手一同は己の実力を存分に発揮し、プロにも劣らぬ精神をもって最後まで全力で戦い抜くことを誓います」

 

「おい!ナイアーラがまともだぞ!?」

「嫌な予感しかしない」

「何かもう慣れましたぞ」

「これ知ってるノコ。上げて落とすやつ〜」

「もしかしてさ、私たちにも飛び火するんじゃね?」

「やめてくれ、頼むから!」

「嗚呼、なんと憐れな……」

 

宣誓が終わるとともに会場は拍手に包まれる。

だが、良い雰囲気は、つくった本人によりすぐに崩された。

 

「と、まぁ建前はこれで済みました。ここからは私個人から言わせていただきます」

 

ざわつき始める会場。B組は「あぁ、やっぱり今回もダメだったよ」みたいな顔をしている。

 

「まずはそうですね……そこの貴女。そうそう、『たるい』とか戯言を吐いた貴女です。邪魔ですのでボッシュートです」

 

ニアが指を鳴らすと、ニアに指された女子生徒は地面に開いた光の中に落ちていった。

これにより会場はさらにざわつき、不穏な空気になる。

 

「この体育祭はかつてのオリンピックの代わりと聞きました。世界各国の代表が様々なジャンルごとに頂点を目指す催し事が、たった1カ国のたった1校、たったの1日の行事と同レベルだと?正直言って、馬鹿馬鹿しい

 

馬鹿馬鹿しい

 

その一言で、ニアへとブーイングが飛び交う。

しかし彼は気にせず、言葉を続ける。

 

「そりゃそうでしょう。先程の彼女のように『たるい』と口にするレベルなのですから。私としては、かつてのオリンピックに対して、申し訳ない気持ちでいっぱいです」

 

ヨヨヨ……と、涙を流すような仕草をするが、それがかえって反感を買うことになった。

で?

みたいな感じでニアは止まらない。

 

「まぁぶっちゃけ、それはどうでも良いとして……私は皆様に問いかけます。この場にいる全員、目標をもって全力で取り組みますか?ヒーロー科だから勝って当たり前?普通科だからどうせ良い成績を残せない?そんな考えを持つゴミはこの場にいる意味は一切ありません。今すぐボッシュートしてあげますので挙手してください」

 

満遍の笑みでそう言うが、それに応える者はいない。

それを確認したニアは言い放つ。

 

「ふむ、この場にいる全員が全力で取り組むということですね?よろしい!学科も!個性も!性差も!性質も一切関係ない‼︎全力で目標に向かって足掻きましょう‼︎」

 

声を張り上げ、宣言したニアは満足げだ。

会場はニアに対する反感がほとんどと、全員を巻き込む演説という僅かな評価などで盛り上がる。

主審のミッドナイトがニアを壇上から降りるよう促すと、彼は忘れていたかのように一言を言い残した。

 

「まぁ、有り得ないと思いますが、もし、私と勝負している際に、()()()()()()()ようなことがあればその時は……

覚悟してくださいね?

 

 

ぞわり

 

 

その瞬間だけ、ニアの口調が悍しく聞こえた。この場にいる全員がそう感じるほどに。

そして観客席の人たちもそう感じた。それと同時に、彼らはニアに対してこう思った。

 

 

こいつ(ニア)はあまりにも危険だと 

 

 

「えーと、そろそろ良いかしら?あと移動させた普通科の子も戻してあげて?」

「はぁ……仕方ありませんね。よいしょっと」

 

ニアは露骨に嫌がりながら門を開き、ボッシュートした女子生徒を元いた場所に落とした。何故か異常に震えているが、ニアはそれを気にすることなくB組のところへと戻る。

彼は周りから憎悪と怒り、そして敵対的な目を浴びる。多少はクラスメイトにも飛び火しているが気にしない気にしない。

ちょっとやり過ぎだと注意されるが、逆にいつも通りで何故か安心してしまったという声もあった。だって自重しないルーニーだから。

 

「色々あったけど早速競技に取り掛かるわよ‼︎まず最初はこれ!」

 

ミッドナイトが指差すモニタには、

障害物競走

と表示されていた。

 

「外周約4㎞のコースを一周してもらうわ‼︎コースさえ守ってくれれば()()()()()のレースよ‼︎ただし次の競技に進めるのは上位42名。ここで多くの生徒が涙を飲むわよ!!(ティアドリンク!!)じゃあ皆、位置につきまくるのよ‼︎」

 

その言葉で準備を始める生徒たち。より有利になるように、スタートラインの前方に向かうのが大半だった。

密集したなかで、B組の大半は中盤辺りにいた。何故なら彼らには作戦があるからだ。

 

「皆、作戦は覚えているね?」

 

物間の問いに、作戦に乗ったクラスメイトは頷く。

 

「僕らはA組より注目されていない。体育祭を見ている人たちはA組しか見ないだろう。おかしいよね、僕らだって同じヒーロー科として、ヒーローを目指して日々努力しているのにさ。違いなんてヴィランと遭遇したかしてないかだろう?……なら見せつけてやろうよ。僕たち(B組)の方が優れているってことに……!」

 

彼らは彼らなりの戦い方がある。そして勝利をもぎ取るのだ。

 

そうして、いざスタートするかと思えば、アナウンスが入った。

 

『HEY!ナイアーラ!お前にはブラドキングからの激励を預かっているゼ‼︎()()使()()()()()()()()()ってさ‼︎じゃあミッドナイト!あとはヨロシク〜!!』

「……なんと」

 

ニアに制限が課されたところで、ミッドナイトはスタートの合図を進めた。ニアの反論は認めないようだ。

ニアはスタートラインからだいぶ離れた、最後方にて準備をする。門が使えないのならどうするか。様々な手段はあれど、自分が()()()なければならない。

ならば()()をやろう

そう考えていると、スタートランプが点灯する。

 

 

ピッ…

 

 

ピッ……

 

 

ピッ………

 

 

『スターーーーート!!』

 

プレゼント・マイクの合図で、生徒全員が走り出した。

 

「ってスタート狭すぎだろ‼︎」

 

唯一の通路は、横に10人ほどしか歩けないほどの通路だ。

そこを200人近くの生徒が一斉に通るとなれば、進むに進めない。

そしてこれが最初のふるいとなる。

 

「何だこれ⁉︎冷た‼︎」

「うっ、動けん⁉︎」

 

スタートしてすぐに地面が凍りつき始めた。先頭にいるA組の生徒が仕掛けたようだ。

大半の生徒が巻き込まれるが、A組は全員回避し、B組も殆どが回避に成功した。巻き込まれたとしてもすぐに脱出した。

 

『いきなり轟が仕掛けたーー‼︎だが当然ヒーロー科の奴らにゃ足止めにもならないよーだゼ‼︎あ、遅れましたが実況は私、プレゼント・マイクと、解説のミイラマンこと、イレイザーヘッドでお送りします。アーユーレディ⁉︎』

『無理やり連れてきたわけはコレか。俺は寝る』

『冷たい反応!これは堪えるぜ‼︎おっと‼︎先頭が第一関門に到着!さぁさぁ乗り越えてみろよエヴリワン‼︎ロボ・インフェルノォォォォ‼︎』

 

入試時における0ポイントの仮想ヴィランが何台も立ちはだかる。おまけ程度だが、他の3種類も存在しているため、突破するには厄介極まりない。

しかし、先頭にいる生徒。氷を張った張本人、轟焦凍は何故か険しい顔つきで小さく呟いた。

 

「もっとすげえの用意してもらいてえもんだな……クソ親父が見てるんだから……」

 

右腕から発せられた冷気が、一体の0ポイント仮想ヴィランを一瞬で凍らせた。

その隙に間を潜り抜けた。他の生徒もそれに続こうとするが不安定な体勢で凍らせたため、0ポイントは倒壊した。下手したら死傷者が出そうだが、自由が売りの雄英高校。平然とやってのけるのだ。

 

『フゥゥ〜♪さすが推薦組!やる規模が違うな!

……ってオイオイオイオイ⁉︎どうしたナイアーラ⁉︎スタート地点から動いてないぜ⁉︎』

 

プレゼント・マイクが指摘すると、モニターに彼の姿が映し出される。手に魔術書を持っただけで、スタート位置から一切動いていないのだから。

そのため、選手宣誓であれほどの大口を叩いたくせにそれは可笑しいだろうとヤジが飛ぶ。

それでも彼は動こうとはしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すでに動いていたのだ。

いかに目立ち、場を沸かせるのか。

尚且つ、己が愉しめるのか。

それを模索し、行動を終えていたのだ。

 

手にした魔術書が光りだす。

 

「陣地作成完了、魔力充填済み……では、創りましょう!」

 

彼の目の前に、どの分野にも属さない幾何学模様が展開される。それは妖しく光り輝き、()()が構築された。

 

無から現れた木は車輪と車体に形を変えた。

 

2つの輪はあらゆる戦場を駆け回ったかの如く荒々しく

車体は無駄を削ぎ、疾ることだけを追求する

 

だが、これだけでは動きはしない。

ならば創るだけだ。

コンクリートの地面が盛り上がり始める。それは次第に形を成し、誰もが知っている動物として生まれた。

 

大きく捻れ曲がった一対の剛角。全てを蹴散らすことが可能な隆起した筋肉。地面を蹴るたびに雄々しさが伝わる蹄。

 

 

「「ブモォォォオオオ!!!」」

 

 

天に向かって轟く咆哮は、すべての観客の注目を浴びた。

ニアによって創られた二頭の(ブル)は、木製のそれと繋がれる。

完成した。

 

古代において戦場を蹴散らし、そして歴史に消えた兵器。

 

戦車(チャリオット)だァァ!?何も無いところからたったの1分で完成させたァァァ!やはりこの男只者じゃねーよ!』

『最初の渋滞を考え、アレの作製に専念した。無駄な動作が一切無い、実に合理的な選択だ。スタート地点で後方に居たのも、邪魔が入らないようにしたようだな』

 

実況と解説を尻目に、ニアは戦車に乗る。

そして手綱を手に取り、嗤う。

 

「では……蹴散らしましょう‼︎」

 

腕を大きく振るい、戦車を走らせた。

愛された外道(ニア=ナイアーラ)、今、スタート(招来)!!

 




煽り文章を作る才能が欲しい。
どうやったら人を腹立たせられる文章を作れるんですかね?
ニアに磨きを掛けたいんです。外道っぷりを高めたいんです。


あと本編には関係ない茶番ストーリーも考えています。だいぶ先になりますが、無限の茶番をぶつけましょう


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15話

新年明けましておめでとうございます。
なんやかんやで2020年。色々ありますが引き続き、この小説をお楽しみください。


第一関門であるロボ・インフェルノ。

そこで足止めを喰らう生徒たち。中には協力して突破を試みようとする者もいれば、己の力で試練を乗り越える者もいる。

先程、轟が凍らせた0ポイントの倒壊に巻き込まれた鉄哲は“個性”によりほぼ無傷だった。その隣にはA組の生徒も“個性”によってほぼ無傷だった。

似た“個性”だ。なんとも言えない感じになる。

 

『さぁオマエら‼︎後ろに気を付けろよ〜?アイツが来るぜ!』

 

プレゼントマイクのアナウンスで、何人かの生徒は後ろを見る。

 

奴が来た、猛る暴牛と戦車とともに。

 

「む、邪魔ですね。轢きましょうか」

 

スピードを下げることなく戦車を走らせるニア。進行方向にいる生徒は、それを避けるか、避けれずに轢かれるかだ。

と、いうか既に轢いた。

安心したまえ。

ミッドナイトは()()()()()と言った。それに戦車は0ポイントよりも物理エネルギーが低い。

死にはしないだろう。ならば問題ない。

他の生徒を蹴散らしていると、ゴールへの最短距離には避けきれない0ポイントの仮想ヴィランが立ち阻む。

 

「あれは……壊したほうが速いでしょう」

 

ニアは手綱を離し、本を構える。 

すると本は銀色の輝きを放ち始める。

 

「ソルド・ザケル」

 

そう唱えると彼の手には“柄”が現れる。そして白銀の雷が出現した。

その雷は巨大な剣となり、0ポイントの仮想ヴィランを両断し破壊した。

 

『ヘイヘイへーーイ‼︎さすがナイアーラ!こんなんじゃ足止めにもならねーってか⁉︎なら次の関門はどうよ⁉︎先頭組は辿り着いたな?落ちれば即アウト‼︎ザ・フォール!!』

 

プレゼントマイクが示す場所は、底が見えないほどの深さがある崖の群だった。崖から崖へは一本のロープがあるため、飛べないから突破できないということはない。

しかしロープに頼るということは、それだけ時間をかけてしまうことになる。

 

「フフフフフ!今こそ私のベイビーをお見せする時です!」

 

サポート科の女子生徒がワイヤー等を使い、崖を飛び越えていく。そして着地にはクッション性のあるシューズを展開した。

数あるサポートアイテムを使うことにより、企業へのアピールが出来る。

もはや就活だ。たくましい。

 

先頭組が進み始めているなか、後方から蹄の轟音が鳴り響く。

 

「崖ですか。だが無意味です」

 

ニアはスピードを緩めずにザ・フォールへ走らせる。

 

そして戦車は宙を駆けた。

 

『飛んだ!?飛んだぜ!!戦車がよォォ!!このままじゃ全てを持ってっちまうんじゃねーのか!!他の奴らも気張れよ気張れよ〜?』

 

他の生徒も負けじと空を飛んだり、ロープを伝いゴールを目指す。

 

「順位は……10位くらいですかね?確実に次に進めるでしょう……うーん、妨害しますか……サイス!」

 

ニアは掌をロープに向けて唱える。

半透明な三日月型のエネルギー体が現れる。そして崖とロープの間を寸分の狂いもなく、切断した。

もちろん、進行方向側にある部分をだ。これにより進むことは難しくなり、かつ、ロープを渡っている途中の生徒は物理法則に従い、振り子のように逆戻りする。

 

「どんどんいきますよ〜、サイス、サイス〜」

 

笑顔でロープを切り落としていくニア。

そして最後の一本を切ろうと、呪文を放つ。

するとその射線上に1人の男子生徒が飛んできた。その生徒はお腹からレーザーを発射して空を飛んでいる。

しかしその飛び方では前方が見えなくなる。見えたとしても限界がある。

 

「あふん★」

 

彼はニアが放ったエネルギー体を躱すことなく直撃し、ザ・フォールの闇へと落ちていった。

 

『青山が落ちた⁉︎残念だがここでリタイアだ‼︎つーかナイアーラのやつ、エゲツなーい‼︎』

『ナイアーラの行動は相手の動きを制限するものだろう。さらに見たところ無駄が見当たらない、実に合理的な行動だ。青山もそれに囚われることなく動いていたが……前方不注意が招いたことだ。今後の課題の一つとして受け止めておくように』

『つまり運が無かったってことだな!オーケー‼︎お前らも気を付けろよ⁉︎』

『……………』

 

実況が1人でに盛り上がる。

プレゼントマイクの言う通りだ。彼は運が悪かったのだ。

そしてニアはザ・フォールを超え、次の関門へと到着する。見たところただの地面だが、関門入口そばにはドクロマークの看板があった。

 

『この障害物競走も決着がつきそうだ‼︎待ち構えるの最終関門は【怒りのアフガン】だーーーッッ‼︎一見ただの更地だが、よく目をこらせ?辺り一帯に大量の地雷が仕掛けられてるぜ‼︎威力は大したこと無いが爆音は超絶派手だからな!下手すりゃ失禁もんだぜ⁈先頭は轟に爆豪!少し後ろからは塩崎が迫っているぅ!だがコイツを忘れちゃいけねぇ‼︎最下位という最果てから怒涛の進撃!止まるんじゃねーぞ?ニア=ナイアーラだァァ!!!』

 

「……来たか」

「チッ‼︎」

「やはりそうなのですね……」

 

轟、爆豪、塩崎が最後の関門を進む中、ニアが迫る。

このまま直進すると思いきや、彼は急に曲がり、先頭3人から離れるように遠回りをし始めた。

 

「流石に動く爆発源に炎と氷のカーニバル、塩崎さんに近づくなんて愚行はしませんよ。この選択の方が確実に早くゴールできますからね」

 

ニアは器用に手綱を操り、戦車を走らせる。

否、戦車を滑らせる。俗に言うドリフト走行だ。

地雷が連続して爆発する中を疾走する姿はアクション映画さながらのものだ。

それにこの程度の爆発であれば、ゴールする前に壊れることはない。()()によって守られているのだ。しかしその障壁は無敵ではないため、先頭の3人を避ける必要があった。

このまま行けばゴール手前で追い抜き、一位へと上り詰めることができる。

 

 

 

BOOOOOM!!!

 

 

 

だが、そうはいかなかった。

 

『怒りのアフガンに鳴り響く爆音‼︎マジかよマジかよ⁉︎ここで来たか緑谷出久‼︎怒涛の猛追だァァァァ!!!!』

 

緑のモジャ髪でパッとしない男子生徒、緑谷が飛んできた。

彼は集めた地雷の山に、第一関門にて拾った仮想ヴィランのパーツを叩きつけたのだ。1つでも凄まじい威力のものを複数、一気に爆破したのであれば、人ひとりを吹き飛ばすには十分過ぎる。

緑谷はより早く、1()()()()()()()()、ゴールへ一直線のルートを選んだ。

そこには轟、爆豪、塩崎がいる。この3人に並ぶことができた。

しかし、抜かすにはまだ足りなかった。

普通であれば、そのまま着地。あとは走るしかないと、誰もが思うだろう。

だが彼は違った。着地まで数秒もない短い間に、次の一手を考え、実行したのだ。

緑谷は空中で身を一回転させ、持っていた仮想ヴィランのパーツを轟たちの間の地面に叩きつけた。轟たちは緑谷を咄嗟に避けてしまい、その爆発に巻き込まれる。

そして当の本人は爆発の中心部に居ながらも、誰よりも前へと突き進んだのだ!

ボロボロになりながらも、最後まで諦めなかった少年の精神を盛大に讃えよう‼︎

 

『誰が予想したか!この怒涛の番狂わせを!ナイアーラ?違う、轟?違う!爆豪?違う!塩崎?そうじゃねぇ!!誰よりも貪欲に一位を取ろうとしたのはこの男だ!!

緑谷ァ出久ゥゥゥゥ!!!!』

 

この障害物競走を制したのは最後の最後に猛追した緑谷となった。続けて轟、爆豪、塩崎とゴールをする生徒が現れる。しかし悔しさを露わにした表情だけではなく、どこか困惑しているかのような表情も見える。

その答えはすぐに判明した。

 

『ん?おい、ナイアーラはどうした?』

『慢心か油断か、それともただ運が無かったのか……あそこを見てみろ』

 

イレイザーヘッドが指差すモニターには、左手を前に出してうつ伏せに倒れる(希望の花を咲かせた)ニア=ナイアーラがいた。

しっかりと左手の人差し指をゴールに向けて(止まるんじゃねぇぞをして)いる。

 

『ナイアーラが死んだ⁉︎』

「この人でなし!!」

 

会場がツッコミををしてしまうほど、彼は綺麗に倒れていた。

何があったのかというと、以下の通りになる。

 

 

1、緑谷が2度目の爆発ジャンプをする

2、彼の手から離れた仮想ヴィランのパーツが戦車の車輪に巻き込まれる

3、急激なブレーキが片方の車輪にかかり横転、ニアは投げ飛ばされる

4、落ちた先に地雷、そして障壁はたった今、効果が消えた

5、ふん、汚ねえ花火だ……

6、追い討ちと言わんばかりに、轟爆塩の2位争いに巻き込まれる

7、何やってんだよ団長ォォォォ!!

 

 

運が悪かったのだ。QED。

 

 

その後、ニアは這いつくばりながらも、8位に入ることができた。

ちなみに戦車(チャリオット)は曲がることができない構造をしている。曲がるには機動源である牛を上手く操る必要があるのだ。牛が曲がりながら走り、車体はドリフト走行をしなければならない。

さらに戦車は、横からの衝撃に弱い。いきなり横から車輪の動きを止められたら大惨事になるのは間違いないだろう。走っている自転車に傘が引っかかって事故るのと同じだ。

ただし速さと重さが段違いであるため、自動車事故レベルになる。みんなも安全第一だぞ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ、私のことですから死にはしませんよ」

「いや、頭から血ぃ流してる奴に言われたくねーよ⁉︎早くリカバリーガールのとこ行け‼︎」

 

泡瀬に言われ、渋々リカバリーガールのところへと歩いていった。ちゃんと治してもらいました。

 

これにて第一種目、障害物競走が終了した。上位42名が次の種目へと進むことができる。

なんか1人だけヒーロー科から予選落ちした生徒がいるらしい。いったい何があったというんだ。恐ろしい……

 

「準備はいいかしら?これより本線開始よ。予選落ちしちゃった子も大丈夫、決勝前にレクレーションという見せ場は残っているわ‼︎じゃあ第二種目の説明をするわね‼︎次の種目はコレよっ‼︎」

 

モニターに、【騎馬戦】と映し出される。

 

『上位42名で自由にグループを組んで騎馬を作ってもらうわ。ひとグループ2〜4人!ルールは普通の騎馬戦と同じだけど、一つだけ違う点があるわよ!さっきの第一種目の順位が持ち点になるわ!騎手にはグループの合計スコアのハチマキが支給されるわよ。42位は5ポイント、41位は10ポイントと5ポイントずつ増えていくわ……そして1位の緑谷君には〜〜……

1000万ポイント!!

が、支給される‼︎ついさっき手にした栄光は全員に狙われる!下克上サバイバルよ!!!チーム編成に15 分、試合は時間は15分、で行うわ。試合終了時にポイントを多く持っていた4グループが決勝戦進出よ‼︎みんな頑張りなさい?じゃあ今から15分、グループ決めの開始!」

 

そしてモニターに15 分のカウントダウンが始まった。

 

「さて、誰と組みましょうかね。物間君たちは何かを企んでいるようですし……やはりここは愉しむためには1位の彼と組みましょうか!」

 

そう決めたニアは緑谷の方へと歩み寄る。緑谷自身も、1000万ポイントという足枷のせいで組む人が居なさそうなため、ニアにとっては非常に都合が良い。

ただし“彼”に声を掛けられるまでは。

 

「なぁ、ちょっと良いか?」

「はい、何でs…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「15分経ったわ、準備はいいかしら⁈もう一度ルールを確認するわよ!15分間の騎馬戦バトルロワイヤル!終了時に持っていたハチマキの合計得点の上位4チームが決勝トーナメントに進出よ‼︎ただし騎馬をわざと直接攻撃するのは一発アウト‼︎あくまで騎馬戦、じゃあカウントダウンするわよ?

3………2………1………!」

 

 

 

「START!!」

 

 

 

ミッドナイトの合図で騎馬戦が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺たちも動くぞ」

「…………」

「…………」

「…………」

 

 

 

彼の声に従順な騎馬の3人。目は虚になり、生気があまり感じられない。

側から見れば、操り人形に見える。

騎手は逆立ったボサボサ髪でクマが凄い生徒だ。彼はA組に対して宣戦布告した人物でもある。

 

心操人使

 

彼の“個性”は【洗脳】だ。

“個性”を使いながら相手に話しかけ、それに応じると洗脳することが出来る。

そのため、入試のような機械相手では()()()()()()()“個性”だが、対人戦ではかなりの脅威である。さらに、初見ではほぼ確実に洗脳することができるため、このような機会では存在感を出すにはうってつけなのだ。

そして、この“個性”でヒーローになる。

そう決めた彼は、勝ち上がるために3人の駒に声を掛けた。案の定、引っかかって今に至る。

 

(すれ違う別のチームを洗脳、その隙にハチマキを奪う。シンプルでこれしか作戦がないが、これで勝ち上がってやる!)

 

そう考えていたが、現実は甘くはなかった。

 

「この私を選んだ貴方、良いセンスだ。何か作戦でもあるんですよね?」

「あぁ、もちろ…ん……え?」

 

洗脳していた馬の1人、ニア=ナイアーラが笑顔で話しかけてきたのだから。

 

 

 

 

 




障害物競走の順位はニアが8位で、それ以下は原作とほぼ同じです。
青山は犠牲になったのだ。ニアの愉悦のためにな‼︎


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16話

騎馬戦は書きにくかったです。


「…………」

「おや、どうしました?そんな驚いたような顔をして」

 

何事も無かったかのように話すこの男、ニア=ナイアーラは呆然としている心操に訊ねる。他の2人は虚なままだが、この男だけは違った。

 

(何故解けてる⁉︎洗脳が浅かったのか?ならもう一度……)

 

「いや、何でもない……それよりも準備はいいか?」

「ええ、もち……」

 

再びニアは虚な表情に戻る。

 

(よし、これで大丈夫なはずだ……)

 

そう安堵していたのも束の間、それはすぐに消えた。

 

「……なるほど、呼びかけに応じると洗脳されるのですね。実に素晴らしい“個性”じゃありませんか。あ、私のことは気にせず愉しんでいきましょう」

「なっ⁉︎どうして⁉︎」

 

ものの数秒で洗脳が解けてしまったことに、心操は動揺を隠せない。

彼の洗脳は、彼自身が解除する。もしくは一定以上の衝撃を与えることで解除することができる。

しかし、そのことを周りに話したことはほとんど無い。ましてや雄英に入学してからは誰にも話したことがない。

それなのにも関わらず、この目の前にいる褐色の男、ニア=ナイアーラは2度の洗脳を()()()解除している。

 

「時間が無いので一言で済ませます。精神力ですよ。貴方の洗脳よりも私の精神力が上回った。それだけです」

「クソっ……何だよそれ……」

 

心操は自分の“個性”が効かないことに、焦りと苛つきを感じていた。

考えていた作戦が完遂できない。

そう思っていると、その原因の男が話しかけてきた。

 

「それにもう始まっているのですよ?貴方は騎手、私は騎馬……指示が無ければまともに動くことはできません。作戦はあるのでしょう?」

「……あったけどアンタがそれじゃ上手くいくかは分からない。けど諦めたわけじゃない。勝ちにいく」

「よろしい。ならばこのナイアーラ、存分に力を奮いましょう!」

 

大袈裟に振る舞うニアを見て心操は再び苛立つが、それ以上に頼もしいと思えた。

 

(コイツは俺を何とも思っちゃいない。だったら俺は存分に利用させてもらう!)

 

ギラついた眼でニアを見たあと、周りを見渡す。半分近くが1000万ポイントを取りに行っている。1000万ポイントさえ取れば、確実に次に進めるのだ。

だが、物間をはじめB組のいくつかのチームは、1000万ポイントを狙うような大きな動きをしていない。好機を伺っているように見える。

 

(そいつらを狙うか?)

 

そう考えるが、ニア=ナイアーラ(選手宣誓をした要注意人物)を味方にしている今、B組狙いは悪手になりうることもある。現に騎馬戦が開始してから全く狙われていないのだ。

ならば1000万ポイントを狙っているチームから掠め取ることが最善手だと。

 

「決まった…1000万に群がる奴らから奪うぞ」

「承知しました。上手く奪ってくださいね?」

 

そして心操チームはやっと動きはじめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「動き始めたかナイアーラ」

 

物間はニアの方を見て呟いた。

アレに挑むのはまだ早い。それに騎手が知らない奴だ。あのナイアーラを差し置いて。警戒をした方がいいだろう。

そう思いつつ、物間は自身の作戦通りに動きはじめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

騎馬戦が始まって10分が経過した。その時点での順位はこうなった。

 

1位…緑谷チーム

2位…轟チーム

3位…心操チーム

4位…物間チーム

5位以下0ポイント

 

1000万ポイントを持つ緑谷チームは殆どのチームから狙われているのにも関わらず、上手く対処し回避をしている。ひたすら粘り続ける緑谷チームに、油断も隙も無い。

2位の轟チームは、いくつかのチームからポイントを奪い2位を維持。

3位は心操チーム。ニアという要注意人物と彼を騎馬にしている心操に警戒をするが、心操の【洗脳】という初見殺しよりポイントを稼ぐ。奪われそうになってもニアの魔術により防がれる。

4位は物間チーム。物間の作戦により1000万ポイントを狙うチームからポイントを奪う。ポイントを奪われた爆発ボンボヤージュこと爆豪は、騎手でありながら騎馬から離れ宙を飛ぶが、物間チームの騎馬にの1人、円場の空気凝固によりポイント奪還ならず。激おこプンプン丸である。

残り5分。

突然、緑谷チームの周りを氷の壁が覆う。

 

「行くぞ、緑谷……」

「轟君……!」

 

緑谷チームと轟チームが睨み合う。攻防、機動力に優れる轟チームに対し、緑谷チームは4人の連携により1位を保っている。

 

「……轟君、残り3分弱、僕はまともに動けなくなる。だから1000万ポイントを必ず獲るんだ」

「おい、どういうことだ?」

 

 

DRRRRRRRR!!

 

 

真面目メガネの男子から、けたたましいエンジン音が鳴り響く。

そして次の瞬間、轟チームは緑谷チームの後ろまでに走り出していた。

 

レシプロバースト!!

 

「なっ⁉︎」

 

突然のことに緑谷は何もすることが出来なかった。

そして頭に巻いてあった1000万ポイントのハチマキが無くなっており、そのハチマキは轟の手に握られていた。

 

「言っただろう緑谷君……僕は君に挑戦すると!」

 

『ついに奪われたァァーー!飯田のスーパーダッシュが炸裂ゥゥゥゥ!!緑谷チーム!一気に0ポイントにダウン‼︎つーか4位以下が0ポイントって⁉︎どうしたどうした⁉︎』

『心操チーム、物間チームは、緑谷たちを直接狙わずその周りから奪っていった。1000万を取らなくても他が0ポイントならば次に進めるからな』

『そいつは良い作戦だな!だがまだ2分も時間があるんだぜ⁈終了のブザーが鳴るまで走り続けろよエブリワーン!!!』

 

喧しい実況の中、生徒たちは更に熱を上げ、激戦となる。

緑谷チームはすぐに1000万ポイントを奪い返そうと攻めに走るが、轟の氷によって妨げられる。それでも諦めず、攻め続けることで一本のハチマキを奪った。

 

「位置を変えておきましたの!緑谷さんならば、必ずハチマキの位置を把握していると!」

 

緑谷が奪ったのは1000万ポイントではなく、別のチームのハチマキであった。そして緑谷チームの順位は4位……いや、5位であった。

1位が轟、2位が心操、3位が爆豪、4位が物間となっていた。

 

 

 

〜 ほんの少し前 〜

 

 

 

「周り見なさすぎなんだよA組は」

「なっ⁉︎」

 

物間チームは1000万ポイントを狙う爆豪チームからハチマキを奪った。爆豪はすぐさま取り返しに反撃するが、物間はコピーした【爆破】で迎撃。迎撃できない攻撃には【硬化】して防ぐ。

 

「俺と同じ“個性”も⁉︎」

「アホが……パクリやがったな……!」

「正解。僕の“個性”はコピーさ。君とは色々と話がしたいけど、僕らは君らを相手するほど暇じゃないんだ。本戦で当たったら聞かせてよ、()()()()()()()()()()……あ、このままじゃ本戦に出れないか!」

 

高笑いしながら爆豪チームから離れる物間チーム。ハチマキが奪われて0ポイントとなった爆豪は、わなわなと怒りに震えている。

 

「作戦変更だァ……」

「は⁉︎今からか⁉︎」

「えー、どうすんのさーー!」

 

爆豪は一呼吸置いて、鬼の形相で両手を爆破させた。

 

アイツ(物間)を殺す‼︎」

 

爆豪は騎馬から離れ、爆破を器用に操り空を飛ぶ。目標は物間チーム。

物間も爆豪の猛襲に気付く。

 

「円場!防御‼︎」

「おう!フッ!

 

円場の空気凝固により爆豪は見えない壁に阻まれるが、大きく振りかぶった右腕を振り下ろし、壁を破壊。そのままハチマキを奪った。

宙にいる爆豪を、騎馬の一人である瀬呂が肘からテープを射出し、爆豪を回収。

 

「まだだ‼︎」

 

爆豪は吠えた。

彼が手にしているのは1本だけ。しかも点数がかなり低いものだ。これだけでは本戦に出れない。

しかし、彼はそれを目標としていない。

体育祭における爆豪の目標は()()()()()()()1()()

こんなところで手間取っている暇は微塵も無いのだ。

爆豪は騎馬に指示を出し、物間チームに迫る。その指示は非常に的確かつ無駄が無かった。

その勢いのまま、物間のハチマキを全て強奪した。これにより爆豪チームは3位に浮上。この順位であれば、本戦へ出場できるが、爆豪はまだ止まらない。

 

「次ァ1000万だ‼︎」

 

爆豪の声に、騎馬の3人は強く返事をした。

 

「「「おう!!!」」」

 

 

 

 

 

 

そして現在に至る。

残り1分を切った中、緑谷チーム、そして爆豪チームが1000万ポイントを持つ轟チームへと攻撃する。

だがそこに、不穏な影がやってきた。

 

「愉しそうですね。私たちも混ぜてくださいよ」

 

『1000万争奪戦についに登場!心操チームが乱入だァァ!!!』

 

ニアは不敵な笑みを浮かべている。騎馬の心操は苦笑いしているが。

4チームによる乱戦。現にポイントを持っているのはこの4チームだけなのだ。

 

「ナイアーラ……その作戦で良いのか?」

「ええ、他のチームがどうしようが2位は維持できます。それに貴方の“個性”はタネが分かれば勝ち目がない……これ以上目立つのは貴方にとって枷となり得るのでね。今は我慢しましょう。お2人もよろしいですね?」

 

その問いに尾白と庄田は不本意ながらも同意する。

そして試合が動く。

緑谷、爆豪、轟チームはニアたちを警戒し、動きが一瞬だけ止まる。だが、それが決着を付けたのであった。心操は声を上げた。

 

「引くぞ!」

 

心操の声により騎馬の3人は乱戦から距離を取る。そして宙に浮かばせている魔本が光出す。

 

「ギガ・ラ・セウシル」

 

ニアが唱えると、緑谷、爆豪、轟チームの周りを透明な半球が覆う。

 

「セウシル」

 

続けざまに呪文を唱えたニアの周りにも、同様の半球が覆う。

 

『どういうことだコリャ⁉︎強固なシールドで3チームを守った⁉︎』

 

プレゼントマイクが困惑していると、爆豪がそのシールドに向けて爆破した。

しかしその爆風は()()()()()、彼らを襲った。

 

「言うのが遅くなりましたが……一定以下のエネルギー量は全て跳ね返します。気をつけてくださいね?」

 

緑谷、轟チームは爆豪チームを見て動くことができなくなった。0ポイントの他チームも、そのシールドを壊そうとするが、ヒビが入るだけで壊すまでにはいかなかった。そのままポイントは変動することなく、タイムアップとなった。

 

『試合しゅ〜〜りょ〜〜!!!最後はまさかの動き無し‼︎ナイアーラがエゲツない⁉︎つーか上位4チームが進出だけどポイント持ちが4チームしかいないって何じゃこりゃ?まぁだがお疲れ様だぜと伝えておくゥ!1位!轟チーム!2位心操チーム!3位、爆豪チーム!そして4位に緑谷チームが本戦出場だぜ‼︎出れないからといってもう終わりじゃあない‼︎レクリエーションがあるからまだまだ出番はあるぜオイ!んじゃ昼休憩を挟んでからのレクリエーション、そして本戦の開始だゼ‼︎てなわけでイレイザーヘッド、メシ行こ〜』

『……Zzz』

『え、寝てる……?』

 

 

こうして騎馬戦が終わった。

 

ニアは休憩しようと歩いていると、心操に話しかけられた。

 

「どうしましたか?」

「……ひとつ、聞かせてくれ。アンタは何でヒーローを目指している?」

 

その言葉に目を見開くニア。そしてすぐに目に笑みを浮かべ口を開く。

 

()()()()()からですよ。私の存在意義(ロール)を果たすためにね。ただそのためだけならば、ヒーローもヴィランも関係ないのですが…私にも大切な人たちがいますからね……ならばこの環境は最適であると。それが理由です」

「……………そうか」

 

心操はこれ以上、話すことなくこの場を去ろうとする。

 

「では私からもお聞きしましょう。貴方はどうしたい?」

 

ビクッとした心操はその場で立ち止まり、ニアに背を向けたまま答えた。

 

()()()()()()()()()。憧れたんだ……悪いか?」

「いえ、大変素晴らしいと思いますよ。せいぜい諦めず足掻きなさい。私から言えるのはそれだけです。本戦で愉しみにしていますよ」

 

そうしてニアもこの場を去った。

 

 

 




つぎからやっと本戦トーナメントだー……


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17話

次回がトーナメント戦です。今回はその前のお話ですー


「何でも、女子生徒はチアリーダーの格好して応援しなければならないらしいですよ。A組の方がそう話しているのを盗み……盗み聞きしまして」

「そこ言い換えないんだ。盗み聞きってはっきり言うのか……って何でそれを私らに?」

 

ニアはクラスメイトの女子たちにそう話す。

先程、A組のビリビリ金髪とチビぶどうが必死に説明していたのを耳にしてしまったことが、今回の提案の始まりである。

拳藤をはじめ、B組女子たちに話すが、拳藤はやりたくなさそうな表情をする。

 

「てかそれって多分、嘘だよね?チアの姿が見たいがための。流石に騙されないっしょ」

「でしょうね。ですが盗み聞きした感じ…おそらく着替えると思うのですよ。そして騙されたと知ったとき……どんな表情をするか、見てみたいですね」

「いつも通りの外道っぷりだね。いつか痛い目見るぞ?」

 

拳藤に愛想をつかれるニア。すると拳藤の肩を触る人がいた。

 

「どうしたの唯?」

「ん!」( *˙ω˙*)و グッ!

「……え?」

 

目をキラキラさせて親指を立てている小大。どうやら着てみたいそうだ。

 

「面白そーじゃん。プロヒーローでもテレビCMに出るし、その練習ってことで着てみよ?」

「取蔭⁉︎」

「ワタシもcheerleaderやってミタイデス‼︎」

「ポニーも⁉︎」

「恥ずかしさでウラメシイけど……」

「絶対に可愛いノコ‼︎」

「2人とも⁉︎し、塩崎は⁉︎」

 

最後の頼みである塩崎に聞くと、彼女は恥ずかしそうに答えた。

 

「無闇に肌を晒すのは良い行いとは言えません……しかし、許されるので有れば……私も着てみたい…です……

 

拳藤以外が意外にも乗り気であることが分かった。

 

「さて、どうしますか?皆さんは乗り気なのに委員長である拳藤さん、貴女がやらないのは……どうでしょうか?まぁ、これは強制ではありませんので……恥ずかしいから無理。そう断るのは……貴女の自由です」

 

露骨に残念そうにするニア。いつの間にか拳藤以外も、残念そうな表情をする。

 

「そーだよね。無理にやらせるのも拳藤に悪いし……似合うと思ったんだけどなー……」

「ん、一佳なら似合う」

「仕方ないノコね。私たちだけでもやろーよ」

 

そう話していると、拳藤が吹っ切れた感じで頭を掻く。

 

「わかった!わかったよ!私も着る‼︎」

 

拳藤がチアコスを了承した。そしてニアは後ろを見て声を上げた。

 

「言質は取りました!ではA()()()()()()!こちらへお願いします!」

「「「「「「え?」」」」」」

 

すると死角に居たであろう、チアリーダーの格好をしたA組女子たちがやってきた。

 

「任せてくださいまし‼︎やるなら徹底的にですわ‼︎」

「やったろやったろ‼︎」

 

すでに吹っ切れてしまったA組チア軍団。

すでに仕組まれていたことに気が付いた拳藤たちはニアに詰め寄る。

 

「申し訳ありません。どうしても自分を抑えられませんでした。何故なら私は愉悦部員ですから!」

「あ〜の〜な〜〜!」

「本当に申し訳ないと思っていますよ。ふむ、まぁせっかくですし……こうしましょう!八百万さん、服を8着お願いします」

「8着ですね!分かりま……あら?7着ではありませんの?」

 

ニアの依頼に八百万が首を傾げる。

 

「ええ、7着ではなく8着でお願いします………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ!休憩中だが本場のチアリーダーたちのダンスがあるぜ‼︎……って、何だアリャ⁉︎どーーしたヒーロー科女子ィ⁉︎』

 

そこにはチアリーダーの格好をしたヒーロー科女子が並んでいた。A組B組の両方が。

どこからか『ヒーロー科最高!』という声が聞こえたが、気にしてはいけない。

 

『何やったんだアイツら……まぁ楽しめればいいだろ。ブラド、お前のクラスもこういうのやるんだな』

『知らなかった。だが……ひとつ、ひとつだけ言わせてくれ……』

 

いつの間にか実況席にいたブラドキングがだるそうに指摘をする。

 

『お前は何なんだ、ナイアーラ』

 

「何って……愉しんでいるだけですが?」

『違うそうじゃない、そうじゃないんだ……俺が聞きたいのは()()()()()()()()()()()()()ということだ』

「チアリーダーの格好をするならば、この方が似合うからですよ?ねぇ皆さん」

「……ソーダナ」

 

拳藤はツッコミを放棄して答えた。

そりゃそうだ。クラスメイトが目の前で女性になったのだから。しかもめっちゃ美人なのだ。出てるところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる。

 

『……程々にな』

「任せてください」

 

ブラドキングは机に突っ伏し、頭を抱える。

これ以上、ニアのボケに付き合うのは精神に影響する。そう判断したブラドキングは、今日の夜ご飯のことを考えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、最後の最後で元の男性の姿でフィニッシュしたニアは、男性陣から多大なブーイングを受けたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺、辞退します……」

「尾白君⁉︎」

 

昼休憩も終わり、生徒たちはステージに集合する。ミッドナイトが発表した本戦の内容は、1対1のトーナメントとなった。

騎馬戦の上位4チーム、計16名による本戦が始まろうとしたとき、ニアと共に騎馬をしたA組のまともそうな男子、尾白が辞退を申し出た。

 

「理由を聞いても?」

「何もせずに勝ち上がった自分が許せないんです。必死に勝ち上がろうとした人が出れなくて、何もしなかった自分が出るのが……悔しいんです……!」

 

パッとしない尾白は、悔しそうにしながら、自身の本心を曝け出す。すると彼と同じように、庄田君も申し出る。

 

「僕も彼と同じです。気が付いたら終盤に差し掛かっていた。そして勝ち上がってしまった。努力をせずにトーナメントに出る事は、この体育祭の趣旨に反するのではないのかと……!」

 

2人の申し出を聞いた主審のミッドナイトは、険しい表情で告げた。

 

「そういう青臭いのは……好み!!2人の申し出を受理します‼︎」

 

好みで判断するミッドナイト。とても興奮している。

辞退することになった庄田はニアに言う。

 

「ナイアーラ、君に挑戦出来なくなったことを心から詫びる。でも君は選手宣誓でこう言った。()()()()()()()と。僕はそれが出来なかった。これは僕なりのケジメだ。次こそは正々堂々と君に挑む」

「分かりました。今回はお預けです。次を愉しみにしています」

「あと君はいつまでそのその格好(チアコス)をしているんだい?」

「似合うでしょう?」

「答えになっていないが?」

 

ドヤ顔のニアと苦笑する庄田は握手を交わす。それを見たミッドナイトは身体をくねらせて興奮している。その格好でその動きは子供には見せられませんよ?

 

「辞退した2人の枠が空いたのだけど5位以下が0ポイントなのよね〜……クジで決めちゃいましょう!」

 

いつの間にか用意されている箱。残りの2枠を26人から選出されることになった。

そしてクジの結果、選ばれたのは……

 

「第1枠、鉄哲徹鐡!」

「ッシャオラァ!!」

 

全力でガッツポーズをする鉄哲。本当に嬉しそうだ。

 

「そして第二枠……物間寧人‼︎以上この2名が本戦へ出場します‼︎」

「っ⁉︎……良しッ!」

 

まさか自分が本戦に出れるとは思っていなかった。だが、運良く、選ばれた。これで入場前に交わした約束を果たすことができるかもしれない。

 

「早速トーナメントの組み合わせも決めちゃいましょう!」

 

ジャン‼︎とステージモニターに映し出されたトーナメント表。16人の名前がランダムに位置付けられた。

 

一回戦

第一試合……緑谷出久vs.心操人使

第二試合……瀬呂範太vs.轟焦凍

第三試合……物間寧人vs.ニア=ナイアーラ

第四試合……上鳴電気vs.発目明

第五試合……芦戸三奈vs.飯田天哉

第六試合……常闇踏陰vs.八百万百

第七試合……鉄哲徹鐡vs.切島鋭児郎

第八試合……麗日お茶子vs.爆豪勝己

 

このような形で決定した。組み合わせによって様々な表情をする生徒たち。その中で、ニアは物間に声をかけた。

 

「控室での言葉……忘れていませんよね?」

「当たり前さ。僕が君に勝てる可能性は非常に低い。それぐらい実力差がハッキリしているからね。それが何だ?僕は僕が出来る、あらゆる手段で君に勝つ。だから手を抜くという事はやめてくれよ?」

「ふふ……それでよろしい。愉しみにしていますよ」

 

そう言ってニアは歩き出す。

 

「あとそのチアリーダーのコスプレはいつまで着ているんだい?」

「似合いませんかね?」

「うん、軽く殺意が沸くから着替えるんだ」

「……似合わないか…………」

 

笑顔に青筋を浮かべた物間に言われたので、渋々ジャージに着替え直したニアであった。

本戦が始まる前にレクリエーションがある。大玉転がしや借り物競走など、楽しめるものだった。しかし備品は経営科とサポート科が共同開発した物。普通じゃなかった。

大玉転がしの玉は、不規則で様々な効果が現れる謎過ぎる玉だ。電気が流れたり、立方体に変形したり、ローションが溢れたり。終いには脚が生えてスタート地点に戻るといったカオスっぷりだった。

 

「参加するべきでした……!」

「お前だけだよ、こんなに悔しがるのは」

 

ニアは本戦のために借り物競走だけ参加することにしていたが、これほどなものだとは思わず、後悔している。

それに対して参加した円場は冷たい対応をする。彼は脚が生えた大玉にドロップキックをされてダウンした被害者だったのだ。

蹴り飛ばされた瞬間は絵になりましたよと伝えたら殴ってきたので、ニアは円場の拳を躱し、アームロックを決める。それを見ていた鱗飛竜はこう言った。

 

「それ以上はいけない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

借り物競走

それはお題に書かれた物を誰かから借りてゴールする、ユニークな競技だ。コミュ力が無いと少し大変かもしれない。というか作者は現実で借り物競走を見たことがない。

それはさておき、ニアは何となく面白そうだと第六感が囁いたので参加した。

ニアの番となり、スタートラインにつく。他に走るのはA組の峰田、上鳴、瀬呂。そしてニアの4人だ。

そしてスタートの合図が鳴り、彼らは走り出す。その先にある、お題が書かれた紙を手に取り確認する。

 

「……何ですか、コレ?」

 

ニアはお題を見る。

 

【ウエボス・ランチェロス】

 

何かの技名か?それとも神話生物?

そう思っていると、誰かがゴールをしたらしい。

1位には瀬呂が入った。お題は【リュック】だったため、すぐに借りることができたと言う。

2位は上鳴でお題は【時計】。これもすぐに借りることができた。

そして残るは峰田だが、彼は手をついて落ち込んでいた。

 

「何なんだよ!借り物競走でお題が【背油たっぷり!豚骨ラーメン】って⁉︎ゴールさせる気ないだろ⁉︎」

 

コレは酷いと思ったニアは彼に歩み寄る。

 

「何故諦めるのですか?まだ手にする方法があるじゃありませんか」

「うるせぇ!イケメンの同情なんていらねーよ!つーか何で女の姿じゃねーんだよ⁉︎あのおっぱいは⁉︎くびれは⁉︎ふざけるなァァ‼︎」

「ちょっと拗らせすぎでは?しかしこれは酷い。お題を決めた人は何を考えているんだか……というか貴方はまだ良い方ですよ。私なんて知らない単語が出てきましたもの。何ですかウエボス・ランチェロスって⁉︎せめて誰もが知っているものにしてくださいよ!」 

 

無茶難題に文句を垂れるニアと峰田。

 

『ウエボス・ランチェロスはメキシコ料理だな。そういえばお前、前に食っただろ?』

『おう‼︎美味かったから名前を覚えててな!んでミッドナイトから借り物競走のお題にしちまったゼ‼︎ついでに背脂ラーメンも俺が書いた‼︎』

 

犯人が自白した。

ここでプレゼントマイク(グラサン野郎)に向けてバオウ・ザケルガを撃っても良いが、それじゃ後々面倒だと判断したニアは、『窓』を創り、そこからお酒と宝石を取り出す。

 

「面倒ですが仕方ありません。ちょっと行ってきます。あ、峰田君でしたか?お土産は何が良いです?」

「え、じゃあエロ本」

「わかりました」

 

お土産のリクエストを聞くと、地面にお酒を撒き呪文を唱える。そこに門が開いた。手にした宝石は瞬く間に塵となる。

 

『何処に行くつもりだ?』

「メキシコです。時間が無いので私は行きます」

『おい⁉︎待てっ⁉︎』

 

会場がざわつく中、ニアは誰の声も聞き留めることなく、その門へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

〜30分後〜

 

 

 

 

 

 

 

 

門がミッドナイトのところに現れ、そこから紙袋と料理が乗った皿を手に持ったニアが出てくる。

 

「ナイアーラ君⁉︎どこ行ってたの⁉︎」

「メキシコですが?ほら、馬鹿馬鹿しいお題をクリアするためにね。これが私のお題のウエボス・ランチェロスです。んで、こっちの紙袋が……峰田君、コレでよろしかったですかね?」

「え……こ、これはッッッ⁉︎…………ありがとう、お前は良いイケメンだ」

「喜んでもらえて良かった」

 

2人は硬い握手をする。

 

「2人とも青春っぽいことしてるところ悪いけど……ナイアーラ君、時間切れで失格よ。それと私からマイクにキツく言っておくわ。あとあの馬鹿に依頼した私からも謝っとくわ。ゴメンなさい」

「いえいえ、ミッドナイト先生が謝る必要はありませんよ。それに私はお題をクリアするために行動しただけですから……」

 

そう言ってニアは借り物競走の会場を後にする。

峰田もニアから貰った紙袋を大事そうに抱えて、満足げな顔をして会場を後にする。

 

 

 

 

 

 

日本時間において雄英体育祭が行われている時、メキシコではとある事件が発生した。

内容は2件。1つは不定形の粘液体がコンビニ強盗をした事件。もう1つは民間人宅への襲撃事件。

どちらも監視カメラに、【不定形の化物】が映っていたことから判明したが、被害者は皆、口を揃えてこう言った。

 

『とても素敵な人が困っていたから手を貸してあげた。化物なんか見ていない』

 

と……




ニアのプロフィールを簡単に纏めておきます〜

ニア=ナイアーラ(15)前世は享年29歳
誕生日 7月7日
身長  174cm
個性  魔術書……魔術書なる本を自由自在に取り出せる。魔導書と書く場合もあるが気にするな!
好きなもの  愉悦、茶番、面白いもの、家族
嫌いなもの  つまらないもの、家族に害する存在
外見  瞳は金色、褐色肌、ウェーブがかかった黒髪
……分かりやすく言えば、FGOのバーソロミュー・ロバーツとD.Gray_manのティキ・ミックを足して2で割った感じかなぁ……


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特別企画 【ナイアの部屋】

お気に入り登録者数1000人突破しました。誠に有難うございます。
こんな茶番と外道を読んでくださる皆様がいるからこそ、私はこの作品を書いていけるのです。

それはさておき、今回は特別回として茶番劇100%となります。

本編とはほぼ無関係ですので、心ゆくまで茶番にお付き合いください。


ルールルールルル♪

ルールルールルル♪

ルールールール⤴︎ ル~ルルー♫

ラーララーラララ♪

ラーララーラララ♪

ラーラーラーラーラー♫

ラララーラーラーラーラッラ⤴︎

ラーラーラーラ~~♫

 

「皆様こんにちは。ニア=ナイアーラでございます。今回から不定期でやらせていただくことになりましたこのコーナー…【ナイアの部屋】です。何故こんな事を始めたかと言いますと、2020/02/19時点でお気に入り登録者数が1000を突破しましたのでね、その記念というなの茶番をしたいなと、ここの作者が思いました。これに関しては私からも多大なる感謝の意を申し上げます。で、たまたまやってた○子の部屋風にしよう!それがこれです。まぁ基本的にほぼ会話分でやっていきますのでね、読むのだるいって方は本編に戻っても問題ありません。時系列もさほど気にしなくても大丈夫です。何か矛盾があれば過去に戻って【内容がティンダロス出動案件のため、伏せさせていただきます】をして【副王も激怒する時空干渉内容】をすれば大丈夫ですのでご安心ください。では早速、第一回のゲストをお呼びしましょう。どうぞお入りください!」

 

ニアの呼びかけでやってきたゲスト。

太った裸の中年男性のような身体が白熱しており、掌からは牙と舌、滴る悍しい涎。その身体には頭はないが、確実にこちらを見ている恐ろしい視線。

旧支配者(グレード・オールド・ワン)、イゴーロナクだ。

 

『我が名はイゴーロナク…堕落と悪意を司る神なり……って感じで構わぬな?無貌の息子よ』

 

「大丈夫ですよ。短いコーナーですのでちゃちゃっと始めちゃいましょう。ではまず……この小説は【僕のヒーローアカデミア】と【クトゥルフ神話】のクロスオーバー…のはずです、多分。それで明確なヴィラン側としては初登場の邪神であるイゴーロナクさん、で、よろしいですかね?」

 

『うむ、大体合っている。しかしきっかけは貴様の母である無貌の神だろう?奴はヴィラン側ではないのか?』

 

「アレは規格外ですハイ。自分自身がヴィランじゃないと思えばヴィランじゃないんですかね?よくわかりませんよ私の母は……」

 

『苦労しているのだな。そもそも何故貴様はヒーロー側なのだ?性格はこちら側だろうに』

 

「最初は母になれと手紙で言われたからですよ。でなければミ=ゴたちと色んなアイテムの開発をしていたと思います。まぁどうであれ、今の生活はとても愉しくて仕方がありません。そこに関しては母に感謝していますね」

 

『そうか。む、話が逸れたな……確かに我はある男を唆し司祭として取り入れた。其奴が貴様の学舎へと襲撃したが失敗、そして我が名を口にしてこの身を現したのだ。人間が偉く多かったのは珍しかった』

 

「なるほど。それでフルボッコにされたと」

 

『……認めたくはないがな。しかし我も驚いた。この次元の人間は奇々怪界な術を有しておるのだな。“個性”といったか。我らが有する魔術とは異なる……身体機能の一部だと』

 

「まぁそんな感じです。中には人を簡単に殺せる“個性”もありますからね。大抵は無意識に抑えると思いますが、中には殺すために“個性”を使う輩もいます。もしかしたら…いや、もしかしなくても()()()()()()()()()()“個性”もあるでしょう。殺すつもりはなくても“個性”の所為で殺してしまい、ヴィランとして追われる……そんな悲劇である喜劇がこの世界には充実しているんですよ。私は非常に満足していますね。んで、ゴローさんはこの世界についてどうお考えで?」

 

『我か?そうだな……その“個性”の有無で考えるのであれば、我は素晴らしいと断言しよう』

 

「ほうほう」

 

『“個性”が存在しない次元の人間でさえ…否、人間である限り悪意は存在し、“個性”があるが故にさらなる悪意をもたらす。その悪意につけ込むのが(イゴーロナク)という存在だ。そして司祭として取り入れ、我の思うがままとなる……が、我がこの身を顕現する時間は短くなるのもまた事実……』

 

「“個性”でのフルボッコですね」

 

『……あれは我も引く所業だ。5分も経たずして身を潜めなければならなくなったからな』

 

「ご愁傷様です。でもいつでも来ますよね?」

 

『うむ、いつでも行けるぞ。悪意と我が名を知る者がいる限り我は存在する。例えどのような秩序ある英雄であれ、人間であれば堕落させることは容易い』

 

「なるほど。行為の大小関係なく、悪行をした時点であなたの思うがままに……改めて思いましたね、あなたが偉大な旧支配者であると」

 

『然り。だがまぁ、黄衣の王や大いなる海神と比べれば劣るのも事実。正直言って我も信者が欲しい……崇拝されたい』

 

「心中お察しします。そういえば母が手渡した黙示録の写本…アレはどうなったのでしょうか。何かご存知です?」

 

『あれか。あれは司祭の部屋に保管されていたようだが、警察が押収したようだな。唯一の証拠になり得るからな』

 

「へぇ、しかしあれって日本語訳だと母から聞きました」

 

『うむ、日本語だ』

 

「警察の人が読む恐れは?」

 

『あり得るな』

 

「……そういえばあなたに身を捧げた司祭の最期はどのような状況でした?」

 

『我への祈りと共に我が名を讃えたな』

 

「……もしかしてだけど〜!もしかしてだけど〜〜!それって周りに人が居たんじゃないの〜?」

 

『その通りである!』

 

「『hey‼︎』」☆-(ノ゚Д゚)ハ(゚Д゚ )ノ-☆

 

………………

 

…………

 

……

 

「ただいま適当な茶番が入りましたが、気にせずにいきましょう」

 

『うむ』

 

「そうだ、ゴローさんは今後も顕現する予定はありますか?」

 

『それは未定だ。しかしいつでも現れることは容易い。我を讃え崇拝する者がいるならば我は赴くぞ』

 

「それは愉しみですね。む、時間となりましたか。では名残惜しいですが、ナイアの部屋はこれにて終了となります。今後も不定期で放送しますのでSAN値を十分に保ったままお茶の間で寛いでいてください。ではまたご機嫌よう、さようなら〜」

 

『(* ̄▽ ̄)ノ~~ 』

 

 

 

ラーラーラーラ~~♪♪




※この作品の神格及び神話生物はキャラ崩壊をしています。ご了承ください


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19話

新クトゥルフ神話TRPGのルルブを買いました。
だいぶ内容が変わっていると思いましたね。しかし呪文の部分が非常に分かりやすくまとめられていたと思います。


「よし……完成だ」

『ありがとなセメントス‼︎待たせたなリスナー!雄英体育祭1年生部門も佳境に入った!ここまで勝ち上がった16人の(つわもの)によるガチンコトーナメント‼︎誰が今年の頂点に立つ⁉︎そんじゃ早速、1回戦を始めるぜ‼︎障害物競走を1位で勝ち上がったこの男!緑谷出久‼︎vs.ナイアーラを騎馬に迎え入れた隠れた名将、普通科からやってきた実力者!心操人使‼︎さぁやってくぜ〜?試合…開始ィィ‼︎』

 

プレゼントマイクのアナウンスでトーナメント第一試合が始まった。

結論から言うと、勝ったのは緑谷だ。最初は心操の“個性”にかかった緑谷は命令されるがままに場外へ向かって歩いていったが、あと一歩のところで緑谷の指が暴発。洗脳が解けてしまった。

その後はヒーロー科で鍛えた緑谷が有利となり組み合った結果、投げ伏せられ、場外に出たのは心操となった。

心操はこれで終わりとなってしまったが、普通科なのにも関わらず、ヒーロー科に立ち向かった勇気、そして“個性”が認められ、会場は彼を強く評価した。

 

「あらら、惜しかったですね。もっと鍛えていれば勝てたかもしれません」

「普通科だから俺たち(ヒーロー科)と比べたら鍛えてないから、素の身体機能は劣るもんな。でも洗脳って良いよな。誰も傷付けずにヴィランを捕まえられるし」

 

観客席から観戦していたニアは少し残念そうにしていた。しかし彼が十分な訓練と経験を積めば、素晴らしい逸材になることは間違いないと確信する。

 

「ナイアーラは洗脳されたのか?」

「ええ、ですが体質でしょうか?何故かすぐに解けたんですよ。“個性”にも相性はありますからね。それでも洗脳はされましたので、その間に私を無力化することもできると、断言しましょう」

「相性かぁ……俺の“旋回”だと鉄哲みたいに硬い相手やヘドロ事件のヴィランみたいな全身液体の相手だと厳しいな。もっと筋肉つけたほうがいいな」

「肉体あってこその“個性”ですからね。それでも厳しければサポートアイテムを取り入れる方法もありますから、今度パワーローダー先生に相談してみるのはいかがでしょう?」

「だな。今度聞いてみるわ。次の試合は……A組同士か。確か轟ってあのエンデヴァーの息子だよな?こりゃ轟が勝ちそうだ」

 

回原がそう確信めいたことを言っている隣で、ニアは思考を巡らせていた。

 

(轟焦凍…エンデヴァーの息子。ならば“個性”を引き継いで炎を扱えてもおかしくはないはずだが……何故氷のみしか使わない?使えない……とは考えにくい。“個性”の中には外見にも影響するものがあるはず…彼の髪の毛は白と赤。そして氷を使うのはその白髪側である右側からしか確認できていない。それに騎馬戦の時もそうだ。緑谷君が仕掛けた時も………ん?確かあの時、緑谷君は左側を執拗に攻めていたように見えた。炎が使えないことに気が付いたからか?)

 

考えれば考えるほど、疑問が深まる。

すると第二試合が始まった。だが、すぐに決着がついた。

轟が対戦相手の瀬呂を一瞬で凍らせ動きを封じたのだ。その威力はスタジアムをも超える氷の高さ。観客席にも届くほどの威力。とても凄まじいものだった。

 

「オイオイ、マジかよ……」

 

隣で回原が驚愕しているが、その氷の塊は急に溶け始めた。轟の左手から発せられる()によって。

それを見たニアは確信した。(轟焦凍)()()扱えると。そして()()()()()と。

 

「ナ、ナイアーラ…次の試合、お前じゃないのか?」

「……おっと!私としたことが少々ぼーっとしてしまいました。回原君、ありがとうございます」

 

ニアは席から立ち上がり、会場へと向かう。

 

(何なんだ……あいつ(ナイアーラ)のあの顔は⁉︎何で俺はこんなに怖がっている⁉︎)

 

歩いて行くニアの後ろ姿が、あまりにも恐ろしく感じてしまった回原。

彼は悪くないしおかしくもない。ただ見てしまっただけなのだから……

そして会場の準備が整い、第三試合が始まろうとしている。

ニアは物間に訊ねた。

 

「物間君、先程の言葉……嘘ではありませんね?」

「当然」

 

たった一言、言葉を交わしただけ。

だがそれで十分だ。

それだけで、十分、愉しめる。

 

『そんじゃ第三試合にいくぜ‼︎今度はB組同士の戦いだ!あらゆる“個性”を物にするテクニシャン!物間寧人‼︎vs.借り物競走の件はすみませんでした。今度はどんなことをしてくれるのか⁉︎ニア=ナイアーラ‼︎試合ィィ〜開始‼︎

 

「ザケルガ」

 

試合開始とともに魔本を取り出し、物間へ向けて電撃を放つ。速度、直進性、貫通力に優れた一撃は物間に直撃した。

 

「鉄化してなきゃ死んでたかもね…凄い痛いや……」

 

物間は鉄哲の“個性”を使って耐えたが、電撃を受けた腕からは僅かな出血を引き起こしている。

 

「でしょうね。薄い鉄板程度なら貫通できる技ですから。それだけ貴方に期待しているのですよ?」

「ハッ!口だけは達者だ…なぁ‼︎」

 

続け様に髪の毛を茨に変化させニアに伸ばす。1人を完全に飲み込むのにはあまりにも多すぎる茨は、まるで津波のようだ。

 

「アイアン・グラビレイ」

 

ズンッ!!!

 

広範囲に重力が加わり、伸びた茨はニアに届くことはなかった。

だがすでに、物間は“個性”を解除し茨を切り離していた。ニアから可能な限り距離を取っていた。

 

「ピカッ!」

 

物間が叫んだと思えば、叫んだ擬音(オノマトペ)が現れ、会場が眩い光に包まれた。唐突なバルスを喰らった観客席から多人数による某大佐の悲鳴が聞こえる。

不意をついた閃光により、ニアは腕で目を塞ぐはめとなる。

 

「ドン!ドン!ドン‼︎ドン‼︎ドン!‼︎」

 

続け様に放たれた、爆音とともに現れた擬音(オノマトペ)が動けないニアを襲う。ステージの床が削れ、凄まじい衝撃が響く。砂埃が舞い、ニアの様子がわからなくなる。

 

「危なかった、実に危なかった……」

「チッ……」

 

砂埃が晴れる。

現れたのは円形の巨大な盾。ニアが繰り出した雷の盾(ラシルド)半球体の壁(セウシル)とは別の防御技。しかし前述したものよりも、遥かに強硬であると直感的に分かるだろう。

ステージをも半壊させた一撃を防がれた物間は舌打ちをする。

 

「見事な攻撃です。視界を奪いつつ高火力を叩き込む……セウシルでは砕けていましたね。しかし閃光による視界を奪えば、貴方自身も動きが制限されてしまうため背後に回り込むことが出来なかった。さて、次の手は何でしょうか?」

「ハハ……こっちは必死に倒そうとしてるんだけどね。寧ろ今ので倒してたら逆に恐ろしいよ」

「褒め言葉として受け取りましょう」

 

余裕の笑み(ニア)必死が故の苦笑い(物間)

互いに距離を取り、次の一手を考える。後手であれ先手であれ、2人には策がある。

 

「ジュロン」

 

先に手を出したのはニアだ。

一言呪文を唱えると、足元から人間の胴ほどの太さがある樹の根が鞭のように物間を襲う。

だが、その樹木の根は綺麗な断面を見せることとなる。

 

「凄い切れ味だ。流石だよ鎌切」

 

物間の腕からは鋭い刃が出ていた。それを器用に振りながら根を切断しニアに接近する。

 

アトゥのおれたえだよ、わがてに

 

ガキンッッ!!!

 

地面から突如として生えた一本の槍が物間の攻撃を防いだ。

物間が使う鎌切の“個性”ですら切れないその木製の槍。刃も木刀のようにひと繋がりの木製で出来ており、装飾として金色の巻き枝が非対称に絡まっている。その巻き枝には所々に透明な結晶が散りばめられている。

それが()()であると物間は何故か感じ、すぐに数歩下がる。

ニアはその木製の槍を手にし手慣れたように回す。手にしていた魔本は側に浮かばせる。

 

「……これは愚策だったかなぁ?」

「いえ、最適解です。知っているでしょう?身体強化の呪文を使わなければ、私の肉体は人並みだと。筋力も柔軟性も……ならば技術を身に付けるまで。接近戦は不得手ではありますが……誰も出来ないとは言っていませんから…ねぇッ‼︎」

「ぐっ…!」

「まだまだ‼︎」

「ガっ‼︎」

 

ニアは大きく踏み込んで、物間の胴に突きを入れる。咄嗟に刃で防ぐことができたが、ニアが横に薙いだ一撃が物間の側頭部に重たく入った。

そのまま吹っ飛ばされたが、場外まであと数mのところで堪えた。

 

「ギガノ・レイス」

「ッ⁉︎おわぁ⁉︎」

 

容赦ない追撃が物間を襲う。彼はひたすらに逃げ続ける。

 

(次の一手、次の一手を考えるんだ!)

 

思考を回し続ける。止めてはいけない。止めたら負ける。

その結果、最後の一手が浮かんだ。

 

「これならどうだ!」

 

落ちていたステージの欠片を拾い投げ付ける。そしてニアの目の前で“個性”を発動させた。

 

ボボボボン!!

 

「セウシル!」

 

物間の投げつけた欠片は、ニアを大きく上回るものへと巨大化した。その巨大化した欠片がニアを襲う。

咄嗟に半球体の壁で防いだが、その欠片の大きさ故に前が見えなくなる。

 

ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!

 

欠片の向かうから、その欠片を叩く音が聞こえる。

ニアはその意味を理解してすぐさま回避行動をするが、既に手遅れだった。

 

「発動ォォ‼︎」

 

大きな欠片に、更なる衝撃が加えられる。その衝撃で半球体の壁にヒビが入った。

 

「ぬぁぁぁぁあああ!!!!」

 

「……見事!」

 

巨大化させた欠片を飛び乗った物間は大きく跳躍する。そして自身の掌を巨大化させた。勝利を掴み取るための雄叫びをあげ、その巨大化させた両手を合わせ手槌を振り下ろした。

 

 

バリィィィン!!!

 

 

『物間の怒涛の攻撃が炸裂ゥゥ!!!これを耐え切れるかナイアーラ⁉︎』

 

物間の一撃によりニアのセウシルは破壊された。そしてそのまま物間の攻撃を躱せずに直撃する。

その勢いにより、再び2人を砂埃が包み込む。

 

『さぁどうなった⁉︎クラスメイトの“個性”と共に勝利を掴みにいく物間か⁉︎それともあらゆる手段で攻めるナイアーラか⁉︎』

 

プレゼントマイクの実況と観客たちのざわつきが会場を包む。

そして砂埃は晴れていく。

 

「………素晴らしい、実に素晴らしい技だ!」

「随分と余裕そうだね。決めに行ったつもりなんだけど」

 

体操着が汚れ、額を切り血を流すニア=ナイアーラが立っていた。どうやら物間の振り下ろした拳の直撃を免れたようだ。

 

「……なんて奴だい君は…………」

 

頬を痙攣らせる物間。

何故ならば、ニアが笑っていたのだから。

しかしその笑いは、相手を嘲笑うものでも己が愉しむものでもない。ただただ単純に喜んでいるのだ。

 

「嬉しいんだよ。私を()()と見做してくれたことに。そして君が私の()()であることに!ならば最上級の祝詞(魔術)を贈呈しよう‼︎」

 

浮かばせていた魔本を手に取りページを開く。

強い光を発するそれは、見るもの全てに()()()()()と確信させた。

物間もそれに気が付きニアを止めようとしたが、手遅れだった。ニアに呪文を唱えさせてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ZIGAAAAAA……(ジィガアアアァァァァ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………は?』

 

プレゼントマイクが実況を止め、絶句する。観客すら、その規模に言葉を発することは出来なかった。

それは神秘的であり恐怖を覚えるほどだ。

それを名付けるのであれば、雷帝が相応しい。

巨大な砲門を持つ下半身に、剛角を生やす人間の上半身。その人間の腕は翼であるも、羽ばたく素振りは一切無い。

その巨大な砲門の周りには五つの雷太鼓の紋様が刻まれている。そしてその紋様がひとつ、またひとつと光りだし、五つ全てが強く光出す。

 

「……これは…やられたな………」

 

物間は小さく笑い、覚悟を決めた。

事の重大さを知った教師たちはニアを止めようと動く。だが、既に発動してしまった。

 

 

 

 

 

 

さがれ

 

「なッ⁉︎お前は……!」

 

すると物間の目の前に、干からびた旧支配者(クァチル=ウタウス)が突如として現れた。以前と全く同じ。脳内に直接響く不快な言葉。物間は驚きのあまり、行動が遅れてしまった。

最後に聞こえたのは、ニアの声だった。

 

 

 

 

 

 

 

「ジガディラス・ウルザケルガ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

砲門から一筋の雷撃線が発射された。ステージを飲み込むその一撃が物間を襲う。

そして雷帝は消え、ステージの状態が見えるようになる。

焼け焦げ、砕け、もはや焼け野原といえるものだった。

 

『オイオイオイオイ⁉︎物間は無事か⁉︎』

 

プレゼントマイクの声が響く。だがその心配はすぐに消える。

 

「イタタ……負けちゃったか……」

 

場外の壁に寄りかかり座っている物間がいた。体操着がだいぶ焼け焦げているが、大きな怪我もなく意識がハッキリとしている。

 

「も、物間君の場外により…勝者、ニア=ナイアーラ‼︎」

 

ミッドナイトのコールで試合が終わり、会場は、命の危険があったのではというざわつきと、2人の接戦による盛り上がりで包まれる。

ニアは焼け焦げたステージのとある一箇所を見つめる。

そこには塵を踏むもの(クァチル=ウタウス)がニアを見つめているのだから。

 

 

『ニャルラトホテプの血を引く者よ……我が司祭に手出しはさせぬ』

「……そうですか」

 

旧支配者は一言告げると、姿を消した。周りの様子を見る限り、誰も旧支配者を見ていないようだ。

ニアは物間の方に歩み寄り、座り込んでいる物間へ手を差し出した。

不意による青春的な行動がミッドナイトを襲う。彼女はスッゴイ喜んでいる。

そんな彼女はさておいて。ニアと物間はステージを出て廊下を歩く。

 

「見事でした。まさかクラスメイトの“個性”をフル活用するとは……こちらも大変でしたよ」

「まだストックしてるのもあるんだけど負けちゃしょうがない。次また戦うときは負けないさ」

「それは愉しみだ。さて……」

 

ニアは歩くのをやめ、一呼吸置いて話す。

 

「来ましたね、クァチル」

「来ちゃったね、あのミイラ」

 

2人はため息を吐く。

ニアもまさかクァチル=ウタウスがやって来るとは思っていなかったし、物間自身も呼んだつもりは一切無い。奴が勝手に2人の前に現れたのだ。

 

「物間君、貴方どれだけの業を積めばアレに気に入られるんです?完全に貴方を庇いましたよね?」

「僕が知りたいよ!コンクリートが焼け焦げる熱線をほぼ無傷で済んだんだぞ⁉︎」

「私だって初めてですよ⁉︎旧支配者が人間を庇うなんて!しかも対価を求める事なく!……まさか契約したんですか⁉︎遺言読んだんですか⁉︎」

「そんなのするわけないだろう⁉︎不老不死にはなりたくないし歪な背骨になろうとは微塵も思わないさ‼︎」

「契約してたらすぐさま契約解除して馬鹿にしてやりますよ!……ハァ、これ以上は疲れるだけです。戻りましょう……」

「……そうだね」

 

2人は予想だにしない出来事で焦るも、どうしようもないのでリカバリーガールのところへと向かった。

その後、ニアはブラドキングにやり過ぎだと軽く怒られましたとさ。




えー、先に言っておきます。察しの良い方なら分かってるかもしれません。

轟ファンの方、本当に申し訳ない

まぁ、その〜…うん。この小説書き始めたときから決めてたんだ。悲しき運命なんだ……


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20話

半年ぶりだな、元気にしてたか?
私はダメです。
環境が変わったからです。
4月から社会人、知らぬ土地、慣れない環境。新しい章、新しいゲーム、TRPG、ガチャ爆死……
ありとあらゆることでいっぱいいっぱいだったんです。え、後半関係ないって?(´・ω・`)そんなー
さて、御託は置いときまして……半年以上更新せず申し訳ありませんでした。
最後の更新からちまちまと書いていたんですけど、なかなか話が纏まらないのもありましてね?
一旦更新やめよう!!!!
て、なったんじゃよ。うん。
でも一応最後まで描きたいなぁ……エンドも考えてんだよなぁ……でも文章にするのめんどくさい……じゃなくて大変だなぁ……

気が付いたら半年。書いていた文章やら設定やら忘れちゃったや。

……うん、本当に申し訳ない‎( ᐡ ´ᐧ ﻌ ᐧ` ᐡ )


とりあえず更新したから……ね?「あれ?キャラこんな感じだったっけ?」てなると思いますが許してね?


ニアの一撃で焦土と化したステージはセメントスによって新品同然に修復された。そのまま一回戦第4試合が始まる。

ヒーロー科の上鳴vs.サポート科の発目、1対1の勝負なら上鳴の速攻での勝利だろう。誰もがそう思っていた。

だが、そうはならなかった。

上鳴は発目に言いくるめられたのだろうか、彼女が用意したサポートアイテムを装備していた。基本的にアイテムの持ち込みは禁止だが、申請していれば問題はない。さらに上鳴曰く、

 

「正々堂々やるなら彼女の提案に乗らなきゃダメっしょ!」

 

と、いった感じだ。コイツ女に弱いな。と思われただろう。

そして試合が始まり、決着が付いた。

結果的には上鳴が勝ったのだが、試合の流れは完全に発目の独壇場だった。15分間のプレゼンテーションはとても聞きやすく、プロでも欲しがるような機能を有していた。これを見ていたサポート会社もかなり食いついていただろう。

15分のプレゼンが終わり、彼女は満足げに場外に出たのだ。上鳴?あぁ、あいつは良いやつだったよ。勝てたんだからな!

 

「発目さんですか…ふむ……」

 

ニアはその試合を見ていたが、これはミ=ゴたちに教えようと考えていた矢先、そのミ=ゴたちからのメールが届いた。

 

【彼女が欲しい!】

【声かけておきますか?】

【流石ニア様!そこに痺れる憧れるゥゥーーーッ‼︎じゃ、よろしくお願いします。もし女の子に話しかけるの恥ずかしくてできな〜いってことがあればこちらにお任せください!】

【おや、煽ってます?】

【当然じゃありませんか】

【はぇ〜  ま、彼女には伝えておきますよ】

【お願いしまーす】

 

携帯をしまい、次の試合を観る。第5試合は芦戸vs.飯田によるA組同士の戦いだ。

開始と同時に芦戸は酸を発射するが飯田の機動力の前には敵わず、レシプロバーストにより場外へと掴み投げ出された。彼女には速さが足りなかったようだ。

 

続いて第6試合、こちらもA組同士の戦いとなる。

常闇vs.八百万

結果は常闇の勝利となった。八百万も剣と盾を出して攻めに入るが攻めきれず、常闇の“個性”、黒影(ダークシャドウ)には及ぶことはなかった。

 

「中距離を得意とする“個性”。一手一手が精密で素早く、さらに自我もある……強すぎるだろ」

「アレが最高速度なら切り刻める…だが実体はあるのか?本体へのダメージはあるのか?」

「攻撃できてんだから実体はあるんじゃね?」

 

と、B組はB組で常闇の対策を考えていた。

 

「じゃあ物間とナイアーラならどうする?」

「僕かい?そうだな……アレが影なら()()()()()()()()空間に閉じ込めるか、無影灯のように()()()()()かな。どちらも影ではなくなるからね」

「私は本体そのものを無力化します。その方が楽でしょう?」

「なるほど〜」

 

どの“個性”であれ、考え、実行できれば対策は可能となる。ただし、考えたことに対して実力が伴わなければならないことは頭に入れておいて欲しい。

 

 

そんなこんなで第7試合が始まる。

鉄哲vs.切島

どちらも身体が硬くなるという“個性”。さらに性格も熱血漢と被りに被っているもの同士の戦いとなる。

向かい合う漢2人。もはや言葉は不要だと、彼らの目が語っている。

 

 

『次の試合は()()()のガチンコ勝負‼︎互いに最強の盾を持つもの同士……どちらが最後まで砕けないか見せてくれよ⁉︎アーユゥレディ……ファイッッ!!!

 

 

ガギン!!!

 

 

プレゼントマイクの合図と同時に互いの拳がぶつかり合う。

殴る、殴る、殴る、殴る、殴る……

ただひたすら殴り続ける2人。防ぐことは一切しない。何故ならば己の身体が最硬の盾なのだから。

観客は2人の戦い(誇り)を見守るだけ。殴り合う音が響き続ける。

その殴り合いが10分も続いた。

 

「……ハァ……ハァ……」

「ぜぇ……ぜぇ……」

 

焦点すら合わないほどに体力を消耗した切島と鉄哲。立っているのがやっとだというのに、彼らは立ち向かい、拳を交わす。

 

 

カン……

 

ドサッ……

 

 

硬いもの同士が軽く触れ合った音の後、両者は力なく倒れた。

そして動く様子は見られない。これ以上は2人の身が危険だと判断したミッドナイトが止めようとした時だ。

 

「「まだ……だ……!」」

 

切島と鉄哲、両者が立ち上がったのだ。もはや己の根性のみで身体を動かしている。

 

「なぁ……次で……決め、よう…ぜぇ……!」

「……あぁ…やってやらぁ……!」

 

互いに同意し、距離を詰める。互いの拳のみを“個性”で鉄化、硬化させる。

そして2人は、ニィ……と笑い、同時にパンチを繰り出した。

拳は的確に顔面を捉え、2人の動きは止まる。

この試合を観ている観客たちは息を呑み、ただ見守る。

 

「…漢……らしい……ぜ……」

 

そう言い残して地に伏せたのは切島だ。

 

「おまえ……こそ……漢……だ!」

 

ゆっくりと拳を天高く掲げた鉄哲。今、決着が付いたのだ。

 

「切島君、戦闘不能!勝者、鉄哲君‼︎」

 

主審のジャッジが下され、試合が終了、大歓声が2人を包み込んだ。

そしてすぐさま2人は救護用ロボットによって搬送された。

 

「最後まで立ち上がるって、強いんだな」

「ですね……実に見事でしたよ。さて、少し席を外します」

「ん?次の試合は観ないのかナイアーラ?」

「いえ、すぐに戻りますよ」

 

ニアは立ち上がり観客席を離れる。

 

彼が向かったのは治療室。この体育祭を無傷で終わることはない。続出するであろう怪我人を治療する人物が必須となる。

それが雄英高校の保健教諭、リカバリーガールだ。

 

「失礼します」

 

治療室の扉を開く。切島と鉄哲の2人はリカバリーガールの治療を受けている最中だった。彼女の“個性”によるキスは患者の自己治癒能力を活性化させ回復するものだ。そのため重症であればあるほど身体に負担がかかってしまうという。

ニアが部屋に入ったことで治療を中断し、来室の理由を訊ねた。

 

「なんだい、今治療中さね。用があるなら後にしな」

「おお!ニア‼︎」

「お前は選手宣誓の……」

 

ニアが入ってきたことで反応した怪我人の2人は起きていた。が、身体中包帯やらで手当てされていた。

「いえ、治療の手伝いをしに伺いました。鉄哲と…切島君でしたか?2人の試合に心が奮えましてね、良いものを見せてもらったそのお礼ですよ。では……サイファジオ」

 

ニアは魔本を取り出し呪文を唱える。そして現れたのは巨大な剣だった。しかしその剣はハートマークや天使の羽のようなデザインが施されており、とてもニアには似合わない可愛らしいものだった。怪我人の2人はまさかのデザインのせいで呆気にとられている。

 

「アンタ……そういう趣味なのかい」

「まさか。それとも死神が可愛く見えるような禍々しいデザインにしましょうか?」

「遠慮しとくよ。それでどう治療するんだい?」

「簡単ですよ。では鉄哲、動かないでくださいね?」

「お、おう…わかった?」

 

鉄哲の了承を得た途端、ニアはその剣を鉄哲の腹に突き刺した。

突き刺したのだ。怪我人にとどめを刺すと言わんばかりの勢いで。その勢いで鉄哲はベッドに倒れ動かなくなる。

 

「鉄哲ゥゥーーー⁉︎」

「何してくれたんだい‼︎」

 

切島の叫びとリカバリーガールの怒号が治療室に響くが、ニアは全く気にする様子をみせない。それどころか、いつの間にかもう一振りの剣が構えられていた。と、いうか投げられた。

 

「お前なんtブフぁ⁉︎」

 

切島の胸部に可愛い大剣が突き刺さる。

すると鍔に生えた天使の羽がハートの周りを回転し始める。パァーと、優しい光に包まれる二人の傷が徐々に癒えていくのが確認できる。

 

「いかがでしょうか?どこか痛むところはありますか?」

「……あれ?全然痛くねぇ!つうか身体が軽い!」

「俺もだ⁉︎怪我治ってるぞ⁉︎」

 

ほんの少し前まで包帯だらけで動くことが困難だった2人は、腕をグルグル回して体の調子を確認する。骨折や裂傷、擦り傷もあったとは思えないほど、爽快に身体を動かしている。

 

「回復はしましたが、一応念のために検査をお願いします。では私はこれで」

「……ありがとさね。でも怪我人に説明もなくアレを刺すのは良くないよ。現場だったら後々問題に繋がりかねないからね」

「ええ、よく覚えておきます」

 

軽く頭を下げて治療室を出るニア。

その姿を見送ったリカバリーガールは、ため息をつく。

 

「……恐ろしいよ、選手宣誓の時も入試の時も。全く躊躇いがないってのは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戻りました」

「お帰り〜、んで。どうだった?」

「2人とも問題ありませんでした。リカバリーガールの処置が適切だったようです。それで……今はどのような状況で?」

 

ステージを見れば、爆豪vs麗日の試合が行われていた。いや、一方的な攻防戦といえる。爆発という近中距離の攻撃力に優れている“個性”に対し、近接戦でしか戦えない“個性”ではその差は歴然。

さらに爆豪の優れた身体能力及び天才的なセンスは、麗日を追い詰めるには過多である。

 

「どーゆー動きしてんだよ爆豪って奴……完全に動き見てから反応してるよなぁ……」

「戦闘面では学年内で一二を争うでしょう。真正面からの戦闘だと正直勝てる気がしませんよ」

「ナイアーラが言うほどかよ。うへぇ、俺も勝てるビジョンが浮かばねぇ……しかも“個性”無しでもあのパワーだぜ?俺の壁も壊されたしさ……」

 

顔を下げてため息をつく円場。

 

「ただの壁では壊されるのがオチですからね。ならば壁ではなく“檻”だったり“枷”のようにすればよろしいのでは?あとは強度を高めるとなお良いでしょう」

「おお、なるほどな!それなら必要以上に傷つけなくても取り押さえられるな!」

「それに硬くそして薄くできるのであれば……あと速度もあると良いでしょう。四肢や首の切断……まだとはいかなくとも生命活動に重要な血管の切断もいけますね。見えないほど対処しにくいものはありません。先手必勝ならぬ先手必殺に優れていると思いますよ?」

「ヒーロー向けのアドバイスから暗殺者向けのアドバイスになるのはどうかと思う」

 

そんな会話をしていると、観客からブーイングが飛び交う。客観的に見てもあれは嬲って楽しんでいるようにしか見えない。

しかしイレイザーヘッドの一喝がブーイングを止める。良いこと言うじゃありませんか。

そして試合が動き出す。

麗日の捨て身の一撃、瓦礫の流星群がステージに降り注ぐ。

 

 

 

BOOOOOOOM!!!!

 

 

 

それを一撃で吹き飛ばす爆豪。

圧倒的な実力差、それを覆さんとする捨て身の奇策。

それが一瞬で消し飛ばされ、麗日の表情が曇り出す。

爆豪はこれからだと言わんばかりに歩を進め、麗日も抵抗しようとするが、彼女の身体から力が抜け倒れてしまう。どうやら心身そして“個性”ともに容量限界(キャパオーバー)してしまったようだ。主審のミッドナイトの判断により試合を止め、爆豪の勝利となる。

 

「素晴らしい……!」

「いきなり歓喜の声をあげないでくれるかい気持ち悪いぞナイアーラ」

 

口角を吊り上げて言う感想に対して、ストレートな罵倒を浴びせる物間。

 

「気持ち悪いとは心外ですね。私はただただ感心しただけですよ?爆豪くんの徹底ぶり。あれはあらゆる事において通ずる才能だ。()()()()()()……いや、それは無いか…………それに麗日さんでしたか、彼女も素晴らしい」

「と、いうと?」

「勝率がほぼ無い、圧倒的強者に弱者が挑むには奇策が必要です。考えて考えて考え抜いた策を!たった一瞬で‼︎無かったことにされる‼︎その時に彼女は何を感じた⁉︎絶望?後悔?否、勇気だ!」

 

ニアは声を少し荒げるが、そしていつもの落ち着いた冷たい口調で告げた。

 

「……だからこそ素晴らしい。そう思っただけですよ」

「……そうかい、それは良かった」

 

物間も軽くため息をついて話を止めた。

周りのクラスメイトは、なんだ、いつものナイアーラか。と、思っているだろう。だが、彼は違った。そうは思えなかった。

 

(……僕も毒されてるね。何で気づいちゃうかなぁ……)

 

爆破や流星群やらで破壊されたステージを見つめる。それでも気付いてしまった事実は消え失せない。

 

(やっぱ歪んでるよ君は……顔に出てたぜ、()()()()()()()()ってさ……)

 

 




( ^o^)<ツカレタンゴオオオオオオオ


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21話

ンンンンン!
お待たせしましたァァァァン!!
書いては消して放置して、書いては消してイベント周回して、書いてはイベ回してtrpgして。

なーにしてんだか。
まぁとりあえずですね。見ていってください。
あとtrpgでガチ泣きした。誰か癒して。


1回戦が終わり、ステージの修復も終わる。

続いて2回戦の第一試合、緑谷vs.轟。

轟の氷による一撃での決着……とはならなかった。緑谷は自身の指を犠牲にしながら衝撃波を飛ばし、氷を砕く。轟も負けじと氷の壁という物量で攻めるが、それすらも砕かれる。激しい攻防は観客を盛り上がらせる。

何やら言い合っているようだが、緑谷の衝撃波によって音がかき消されてしまう。

そしてついには五本の指が壊れてしまった。もうデコピンによる衝撃波は飛ばせない。このまま轟の優勢、勝利になるかと思われた。

 

 

DOOOOOOM!!!

 

 

轟が放った一撃が粉砕された。

緑谷はまだ諦めていなかった。

まだ壊れていない指を内頬に引っ掛け、弾き、衝撃波を飛ばした。当然、その指は壊れ、痛々しく腫れ上がる。4本、3本と使える指は減っていく。

緑谷は止まらなかった。

全ての指が砕けようとも、その拳を握り、隙だらけの轟の腹部に一撃を決める。そして緑谷は轟に向かって何かを叫ぶ。

観客からは何を言っているかわからない。挑発しているようにも見えるし、諦めてないぞという雄たけびかもしれない。

 

 

 

 

 

ゴウッッッ!!!

 

 

 

 

 

突如と現れる炎。

これが轟焦凍の真髄だ。炎と氷。相反する属性を使える……それだけで脅威なのだ。何故かその炎を使おうとしていなかったが。

そして2人は最後の一撃を放つと、会場は凄まじい突風と爆発音に襲われた。轟の氷で冷やされた空気が炎の熱により一気に膨張。そして緑谷が放った衝撃波が被害を大きくさせた。

埃と蒸気が晴れると、両者ともに倒れていた。しかしステージ内には轟が。場外の壁付近には緑谷がいた。よって場外判定により轟の勝利となった。

 

「やべーよマジで。マジ何だったんだ……いきなり炎が出たと思えば爆発して終わるしよ。やべー……」

「死んでますよ語彙力」

「(꒪ཀ꒪)」

「それはどういう表情ですか?」

 

あまりの激戦に脳が溶け始めた2人に突っ込みを入れるナイアーラ。

ため息を吐くも、これでやっと愉しめると思い始め口角が上がりそうになるが、それを抑える。

そうこうしているうちに、熱風と衝撃波で壊れたステージの修理が終わる。

 

『続いて第二試合!選手の入場だァァ‼︎さっきは女の子に良いように弄ばれたビリビリボーイ!上鳴電気‼︎vs.その“個性”は未知数!もう会場は壊さないでくれよ⁉︎ニア=ナイアーラ……っていねぇ⁉︎』

 

「てか次ナイアーラの試合じゃん!早く行けって⁉︎」

「……おや、そうでした。すっかり忘れていました。では、行ってきます」

 

一言呪文を唱えると、身体がフワリと浮かび出す。そして階段を一段一段と、降るように空中を歩き、ステージへと降り立つ。

登場の仕方もエンターテインメントとして提供すれば、会場は勝手に盛り上がる。

 

「イケメンのくせに登場の仕方までカッケェってずりーよ!お前モテるだろ⁉︎」

「モテる…かどうかはわかりませんが……恵まれた顔立ちだとは自覚してます」

「自覚してるくせにわからないって嫌味か⁉︎嫌味だな‼︎チクショー!勝ってやるゥゥゥゥ!!!」

「ハハハ、面白いヒト(人間)ですね、貴方は……これは期待しましょう」

 

試合前のやりとりもまた、愉しむ事ができる。実力に天と地の差はあれど、どう足掻いてくれるのかと思うと、笑みが浮かんでしまう。

 

『2人とも準備はいいな⁈そんじゃ試合開始ィィ‼︎』

 

「これでもくらいやがれ‼︎」

 

上鳴は両腕を前に突き出し、放電する。

わずかではあるが、その放電はニアを襲う。

 

「クレイシル」

 

魔本を取り出し呪文を唱えると、地面から土の壁が現れる。上鳴の放電を防ぎ、焦げた匂いとともにその土壁は崩れ落ちる。

 

「土ィ⁉︎お前どんだけ技あるんだよ⁉︎お前も才能マンか⁉︎」

「さて、どうでしょうか?しかしここではこの系統の呪文は不向きですね。想定より多くの魔力を消費してこの強度……場所も考えねばなりませんか」

 

ニアは少しだけ眉を潜め、考え込む。そして思い出したかのように上鳴に訊ねる。

 

「そういえば貴方、その電撃は操作できますか?」

「それが出来れば苦労してねーよ‼︎オラァァァ‼︎」

 

再び両手をニアに向けて放電する。

ニアは片手を前に出すと、電撃が手先から避けるようにして消え入った。

 

「クレイド」

 

そう一言唱えると上鳴の足元が液状化し、膝上あたりまで沈んでいく。

 

「オルダ・アクロン」

 

そして液状化した地面が鞭のように動き、上鳴の身体を縛る。上鳴は必死に抜け出そうとするがびくともしない。

もがいている彼の前までニアは近づき、再び訊ねた。

 

「もう一度聞きましょう。その電撃は操れるのです?はい、か、いいえで答えてください」

「ハァ⁉︎何で教えなきゃなズパン!!……え?」

 

反論しようと声を荒げた瞬間、上鳴の頬の横を何かが振り下ろされ、砕ける音が聞こえた。恐る恐るその方を見ると、セメントスが造り上げたコンクリート製の地面が砕けていた。そしてそれを成したのは、現在上鳴を拘束している、泥水の鞭だった。

 

「では聞きましょう。その電撃は操れるのですか?」

 

百点満点の笑顔で同じ質問をするニア。そして察した上鳴の顔は見る見るうちに青くなっていく。質問は既に拷問に変わっていた。

 

「操れないですゥゥゥゥ‼︎ナイアーラさんがやってたようにやれば少しは期待してましたァァァァ‼︎」

 

さっきの威勢はどこへ消えたんだと言わんばかりに、簡単に白状する上鳴。当然会場はポカンとしている。

そして質問(拷問)は次へと進む。

 

「ほう、では貴方はただ放電することしか出来ないのですか?発電方法は?静電気によるもの?または体内に電気を貯める?さぁ、教えてください」

 

ズパンズパンと、泥の鞭が空を鳴らす。

ニアの平和的説得により上鳴は自身の“個性”について洗いざらい話してしまった。

 

「なるほど、普段はコンセントから電気を溜めると。ふむ、ではこうしましょう……上鳴くん、“個性”を伸ばしたいですか?」

「えっ?あ、あぁ!伸ばしてーよ‼︎でもそう簡単に出来るもんなのか?」

 

唐突な“個性”伸ばしの提案に困惑する上鳴だが、素直にその提案を受け入れる。

返事を聞いたニアは魔本を光らせる。泥の鞭が上鳴の口の中に突っ込まれる。

 

「直接電撃を浴びせても良いですが、表皮の電気抵抗を考えると…やはり内部からの方が効率が良いでしょう。では覚悟は宜しいですね?」

もがッ⁉︎もがごごがッ(えっ⁉︎まだ何も言っ)

「分かりました、お望み通り存分にやらせていただきますね」

むがぁぁぁぁぁも!!!!!(ちがぁぁぁぁぁう!!!!!)

 

準備が整ったニアは上鳴の足元の泥水に手を入れ、アルカイックスマイルで告げた。

 

「これから貴方に苦難を与えます。貴方は押しつけられる側です。なるべく耐えてくださいね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

途中でミッドナイトに止められニアの勝利となるが、やり過ぎだと警告を受けた。しかしニアはとても満足そうな笑顔だった。

なお、止められるまで続けられた訓練(拷問)は上鳴を確かに成長させたのはまた別のお話である。

 

 

 

 

2回戦第3試合、飯田vs.常闇は両者どちらも攻め続ける形となる。

試合が始まって10分くらいが経った頃、試合が動いた。

 

「レシプロバースト!!」

 

飯田が騎馬戦で放った必殺技、レシプロバーストによる急加速で常闇の黒影(ダークシャドウ)を躱す。そして常闇の襟元を掴み、身体を大きく捻ることで発生する遠心力で投げ飛ばした。

そのまま場外に投げ飛ばされ、勝負が決まったと思われた。

 

黒影(ダークシャドウ)!!」

 

彼は地面に着く前に己が“個性”の黒影を飛ばす。黒影はエリア内の地面を掴み力を込める。

 

「俺を喚び寄せろッッ!!!」

「アイヨっ‼︎」

 

掛け声で常闇の身体は場外に落ちることなく復帰した。

そしてそれだけではなかった。

黒影をゴムのように操り勢いよく飛んだ彼は、レシプロバーストの反動による“個性”の使用困難の隙を突き、そのままタックルした。

ゴロゴロと2人は掴みあったまま転がり、その勢いのまま、2人揃って場外に落ちてしまった。

 

「2人とも場外!これよりビデオ判定に入ります‼︎」

 

決着の瞬間を捉えたカメラ全てを確認する。

そして協議の結果、先に地面に触れたのは飯田だった。

その差わずか0.08秒。

常闇が勝者となった。

 

「……負けてしまったが、非常に清々しい気分だ。良い勝負だったよ」

「同感だ。あれはどちらが勝っても可笑しくはない戦いだった。飯田、お前の想いを背負い、俺は次へと進む」

 

2人は固い握手を交わす。

 

「ブラボー!おぉ‼︎ブラボー!!」

 

海老反りで拍手をする、昂ったミッドナイトはさておき、2回戦第4試合が始まる。

鉄哲vs.爆豪

両者すでにやる気満々だ。

 

『2回戦最後の試合!ミスター・アイアン鉄哲徹鐡!vs.一圧倒的戦闘センスの爆豪勝己!いざ尋常にぃぃ〜しょ』

「ちょっと待ったァァァァ!!!」

『……え?』

 

プレゼントマイクの合図を掻き消した鉄哲。そして彼は爆豪に向けて指を差して言い放った。

 

「爆豪ッ!!俺はお前を殴らねェ!!!」

「ナメてんのかテメェ!!!!」

 

突然の宣言にキレる爆豪。

しかし鉄哲の言葉にはまだ続きがある。

鉄哲は全身を鉄化し、四股を踏んだ。すると足は地面に突き刺さり、しっかりと固定された。

 

「俺の“個性”は鉄!!誰よりも硬くて()()()()!!だからお前の攻撃すらも耐える!!お前が攻撃できなくなるまで俺は耐えて次に行く!!!」

 

仁王立ちからのこの宣言。それでは試合にならないだろうと思われる。だが、そんなの関係ないと、爆豪は不敵に笑みを浮かべる。

 

「ハッ!だったらやってみやがれダダ被り野郎‼︎テメェ如きやれなきゃオールマイトを越えられねえからなァァ!!!」

「かかって来いやァァァァ!!!!」

 

教師陣の合図を完全に無視して試合が始まった。

宣言通り、鉄哲は仁王立ちのまま一切攻撃せず、爆豪の爆破を全身で受け止める。対して爆豪は容赦なく、徹底的に攻撃を続ける。

止まらない爆音と煙。観客はただその試合の行末を見届けることしか出来なかった。

10分、そして20分経過する。鉄哲は姿勢を崩してはいないが、既に虫の息。爆豪も手を休めることなく爆撃を続けていたために掌が焦げている。

すると爆豪は攻撃を止め、右手を鉄哲に向け、左手で支えるように構える。

 

「……来いや!!」

「くたばりやがれェェェェ!!!」

 

 

 

BOOOOOOM

 

 

 

特大の爆撃が鉄哲を飲み込んだ。

かつて戦闘訓練で爆豪がやった、人には向けてはならない威力の攻撃。それはコスチュームの機能により自身への反動を抑えることで、初めてまともに放てる一撃だ。

それを生身で放てば、どうなるか彼自身も十分理解しているだろう。

 

「…〜〜ッッッ!!!」

 

苦虫を噛み潰したような、苦悶の表情を浮かべる爆豪。

ダランと力無く垂れ下がる右腕は明らかに脱臼していた。さらには掌からはボタボタと血が滴っている。

 

「……⁉︎」

 

この一撃ならばと、油断を一切せずに放ったはずだった。

煙が晴れ、周りが響めく。

 

「…………‼︎」

 

爆豪の一撃を喰らった鉄哲は姿勢を崩していた。足を突き刺していた地面をも吹き飛ばされたために、仁王立ちは保てなかった。

しかし、場外に出まいと、四つん這いになりながらも指を立て爪を立てて。それはもはや執念と言わんばかりに耐えた。

そしてゆっくりと立ち上がり、再び仁王立ちする。

 

「……上…等だァ………‼︎」

 

爆豪はよろよろと鉄哲に近づき、まだ動かせる左腕を彼に向ける。

またあの一撃を放つのかと判断した教師陣は爆豪を止めに掛かろうとする。

 

「⁉︎………クソが……おい、審判‼︎」

 

しかしそうなることは無かった。

踵を返し、ステージから出ようとする。主審であるミッドナイトは鉄哲の状態を確認すると、彼は既に意識を失っていた。すぐに試合終了のジャッジを下し、爆豪の勝利となった。

 

されど倒れず、ここは死しても通さないと。誰もが鉄哲から、そんな()を受けたのだ。

彼の在り方を、誰もが称賛した。

そしてそれをも超えた爆豪にも、賞賛の嵐が巻き起こる。

 

 

『2人とも最高だったぜ!!今年は金の卵のバーゲンセールだぜ!、てかブラド!!お前の生徒もスゲーな⁉︎どーゆー教育してんだよ?』

『俺は授業の内容くらいしか教えてない。アイツらが切磋琢磨して頑張っているだけだ。もしやり過ぎだと思えば止めるし、挫けそうになっているなら全力で支えるだけだ。そして最後に一言言わせてもらおう……

よくやったぞ鉄哲ゥゥ!!!!』

『お、おう……やっぱり生徒想いだな……まぁとにかく!これで2回戦4試合、全て終わった!!次は準決勝!まだまだ盛り上がっていこうぜYEAH!!!』

 

しかしプレゼントマイクの言葉通りにはならなかった。

狂気はすぐそこにあるのだから。




だいぶ前に取ったアンケートは職業体験後に回収します。
皆様が選んだ結果をお待ちください。

あと新しくアンケートを取ろうと思います。


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