「クソただいま」と、それだけを。 (安紀)
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「クソただいま」と、それだけを。

 あァおれは今から消えてなくなるんだな、とどこか他人事のようにのんびりと思った。

 最期の一服、とか、美女の膝枕だとか、死なんて遠くにあったときに思い描いていたようなことはどれ一つ現実にならなくて、だけどまァこんなモンだよな、だなんて始めからわかっていたかのように諦めがついているから、余計可笑しい。

 ぼんやりと霞がかっていく意識のなかで誰かの声が問いかけてきた、ように聞こえた。

 ——どこへ、行きたい。

 ハッ、おれァ神様の声でも聞けるような大層な奴にでもなったか、アホらしいと自嘲するも、けれど相手が神様でも幻でもいい、もう最後なんだ、一度くらい素直に言ったっていい、とも同時に思った。

 薄れゆく意識のなか、サンジ、黒足、コック、オールブルー、麦わらの一味、バラティエ、もうどこにも続いていかない一人の男の人生とその記憶、すべてが剥がれて消えてゆく直前に、小さく、呟いた。

 ——帰りたい。みんなの元へ、サニー号に帰りたい。

 途端、視界が明るくなった。目の前に広がるのは、ただただ、真っ白な光の空間。

 体が軽い。ジャケットの胸元をまさぐってみたが、煙草はない。

 仕方ねェさ、と軽く息をつき、歩き出す。行先などなかったが、とりあえず前に進めば何とかなる、という妙な確信はあった。

 何もない、ただ白いだけの空間を、サンジは迷いのない足取りで進んで行く——。

 

 *****

 

 ふぅ、とゾロは息を吐いた。ゆっくりと鐔を下ろし、何とはなしに空を見上げる。

 海の上、何も遮るもののない場所から見上げる星空は圧巻で、ずっと見ていると吸い込まれそうだ、なんて思わず考えてからガラじゃねェ、と一人で可笑しくなった。

 冬独特の凛として澄んでいる、この冷えきった空気は星を見るにも素振りをするのにも丁度良い。綺麗だなァと溜め息を吐き、まァてめェみてェな筋肉マリモにゃ星空の美しさなんざわかんねェんだろうがよ、と小馬鹿にした口調で吐き捨てたあの声が不意に脳裏によみがえり、ゾロは忌々しそうに顔をしかめた。

 いずれにしろいい夜っつーのに変わりはねェ、こんな夜に飲まねェのはウソだな、と独り言ちて船内を歩き出す。

 酒を取りに行く先は決まってアクアリウムバーだ。別に誰かに言われたわけでもなかった、けれどゾロはどうしても、もう一方の酒の置き場所を訪れる気にはなれなかった。

 あそこは、あいつの場所だ。もう主はいないのにあの部屋はずっと奴の帰りを待っている、そんな気がするのだ。

 

 コックが死んだ。麦わらの一味の誰にも看取られずに、ひっそりと、一人で死んだ。

 別に死の重みを分かっていなかったわけじゃねェ、けれどゾロは知らせを聞いて泣き崩れるナミやチョッパーをどこか冷めた目で見ながらへェそうか、としか思えなかった。

 悲しかったのか怒ったのか、それとも本当にただ無関心だったのか、それすらもわからない。

 追いつかない。

 ただ、どこかぼんやりとする頭の中をよぎったのは‘‘ゾロ’’は泣かねェモンなんだろうな、ということだった。そして今はまだきっと追いつかねェままの方がいい、と。

 それが何日前のことだったか忘れるくらいには、時が経った。

 当然ながらクルーたちの食生活は以前よりかはかなり荒れた。でも誰も新しいコックがほしいとは言わなかった。きっとみんな思っていたのだ、うちのコックはあいつだけだと。

 早朝、寝ずの番の交代の頃にはいつも明かりがついていたキッチンは暗いままで、腹が減ったと言ってたかりに来る野郎共にぶつぶつと小言を言いながらも、ほらよお疲れさん、とあったかくてうまいモンを作ってくれた奴は、もういない。

 朝になってみんな起きてもキッチンは暗いままだ。

 んナミすゎぁああん、ロビンちゅわぁああん、と無駄に喧しい声ももう聞こえてこない。

 昼になりゃあもう次の日の晩メシのことを考える奴だった。そろそろ一周まわるから次はお前のリクエストだ、何が食いてェかと尋ねられ、なんで今から次の晩のことを、と問い返すと、そりゃあお前、仕込みが要るだろうが、と事もなげに言う。聞きつけたルフィが肉! と答えるとおめェのリクエストで昨日肉にしたばっかだろ、明日のリクエストはマリモのだと呆れた顔をしてみせるから、いや、いい、おれの要望ってことで肉にしてくれと言うと、まったくお前は、と更に呆れかえった顔で見てくる。そんな会話もなんだか既に遠い過去のことのようだ。

 夜はいっそう静かになった。

 遅くまで灯る明かりと仕込みの包丁の音、上機嫌な鼻歌、月や星が美しい日にはうまい酒と二人分のコップを持って鍛錬に勤しむゾロの元へふらっと現れることも少なくなかったが、今ではそのすべてがまるで始めからなかったかのように、しん、と静まりかえっている。

 喧嘩もない。

 船は前よりずっと、静かになった。

 コックのいない生活にみんながそろそろ少しずつ慣れてきた中、ゾロだけはこうして今更少しずつコックの死を実感し始めている。

 悲嘆にくれるクルーたちを見ながら無意識に誰かが要にならねェとこいつら空中分解しちまう、おれだけでもしっかりしてにゃあと思っていたし、実際ゾロの言動は随分と冷静で落ち着いたものだった。

 いつかこの船がまた先に進む力を取り戻すまで、少なくともそれまではおれは‘‘ゾロ’’として振舞わなきゃならねェ、だから、まだ追いつくな、おれはまだ自分の感情を知っちゃいけねェんだ、と気を張っていた。おれは、コックが死んで悲しいのか怒ってんのか清々してんのかはたまた関心もねェのか、まだ、知りたくねェと。

 そしてコックのいない風景が少しずつ日常になってきた、今頃になって追いついてきた。

 一つ一つの些細な記憶がやけに懐かしく思い出されて、そのたびに怒りとも悲しみともつかない言いようのない感情に襲われて唇をきつく、噛みしめた。何も変わらない一日にかえってコックの不在をひしひしと感じた。

 仲間が死ぬってのァどういうことか、んなことァわかってたつもりでいたのに、別に長い年月を共に過ごしたわけでもねェのに、失ってみてそれが自分にとって意外にも大きな存在だったことに気づかされる。

 なんでだよ。

 おれァ今までずっと一人でいたじゃねェか。

 誰にも言えない重苦しさを抱えて、ゾロはまたきつく唇を噛みしめた。じんわりと血の味がする。

 んだよ、クソコックが。てめェがいねェせいでこっちァみんな調子狂わされっぱなしなんだよ、てめェラブコックなら女泣かすんじゃねェよ、んだよ、この、クソ野郎が。

「……帰って、来いよ」

 思わず漏れ出た呟きは、なんだこりゃと自分でも驚くほど頼りなく弱々しい声で、らしくねェ、らしくなさすぎる、と今度は思いっきり鼻で嗤った。本当に、調子を狂わされっぱなしだ。

 ——考え事をしながら歩いていたせいか、なぜか、アクアリウムバーじゃないところに着いた。おかしい。アクアリウムバーへ行く方向に歩いてたはずだ。この船がデカすぎんのが悪い、などと明らかに自分に非があるのを分かっていながら棚に上げてみたりする。

 かと言って今辿り着いた部屋がどの部屋か分からないわけじゃなかった。むしろ痛いほどよく知っている。畜生、なんで、今日、よりによってここなんだ。ゾロはまた忌々しい気分になって舌打ちをしかけたところで、ふと大きな違和感に気づいた。

 明かりが、ついている。

 んなわけねェだろ、なんでだよ、ありえねェだろが、だって、ここは——。

 キッチン、だぞ。

 ナミとロビンがつくったメシを食ってからみんなで片づけた。床を掃き最後に明かりを消したのはゾロだった。消し忘れはねェはずだ。

 ルフィか、と思い至り少しだけ苦笑いを浮かべる。なんだ、あいつが死んだのをこの期に及んで女々しく引きずってたのァおれだけか、と自嘲した。

 もうキッチンには夜中でも明かりがつく。あいつのいなくなった場所が埋められていく。

 ——と、部屋の中からルフィなら立てねェはずの音がきこえてきた。金属ががちゃがちゃと鳴る音、フライパンか鍋か。あいつ何やってんだ、盗み食いじゃねェのか。

 訝しがるゾロの耳に突然、けたたましい音が飛びこんでくる。「パァ──ーンッ!!」

 フライパン落としやがった! 何やってんだ、寝てる奴ら起こす気か、と腹立ちまぎれにキッチンのドアを勢いよく開けた。

「おい、ルフィ、———」

 目を疑った。ルフィはいなかった。いや、誰もいなかった。なのに、フライパンが床に落ちている。

 なんだ、こりゃあ。呟いた自分の声はひどく間抜けている。

 どういうこった。キッチンの明かりがついている、しまったはずのフライパンが床に落ちている、なのに人は誰もいねェ。よく見りゃあ盗み食いの跡もねェ。どういう、ことだ。

 ——と、突然、風が吹きこんできた。いや、風か? 冬なのに、どこかあたたかい空気がキッチンに流れこんでくる。よくわからねェ、けれどその一陣の風が肌を撫でていった瞬間、ゾロはなんだか泣きそうになった。オイオイオイ、らしくねェの極みだ、と自分でも思うのになぜか平静を保っていられない。

 その場にしゃがみこみ顔を伏せた。泣きそうだと思っていたが不思議と涙は出てこねェ。

 そうだな、と思う。これが、おれらしい。

 はは、と気が抜けたように笑う。なんだか急にどっと疲れた。

 あいつがいなくなってからいつもどこかよそよそしいような気がしたこの部屋が、今日は妙に暖かくて優しい。その意味を考える暇もなく、にわかに睡魔に襲われたゾロはゆっくりと意識を手放した。

 

 *****

 

 パァ────ンッ!! 

 甲高くけたたましい音でゾロは目を覚まし、がばりと身を起こして怒鳴る。

「るせェッ!」

 それからきょろきょろと周囲を見渡す。そうだ、昨日はアクアリウムバーに行こうと思ってなぜかキッチンに辿り着いて、そのままここで寝たのか……って、オイ、待て。

 今のうるせェ音は何だ? 

 大の字になって眠りこけていたゾロの上には見覚えのあるエプロンがかかっている。煙草のにおいが染みついたそれは、ナミのものでもロビンのものでもない。

 昨日開け放したままだったドアが閉まっている。

 ……誰が? 

 ふと前を見遣ると、フライパンがひとりでに浮き上がろうとしている。おかしい、おかしいはずなんだがなぜかもうあまり驚かなかった。フライパンはよろよろと少しだけ浮き上がる。お、頑張れ、とゾロは心のなかで応援する。少し、また少しとフライパンは危なっかしく浮き上がる。50㎝ほど浮き上がったところで、力尽きたようにフライパンは床に落ちた。「パァ───ンッ!!」

 耳を塞ごうとしたが間に合わず、ゾロはまた怒鳴りつける。

「だぁ──っ!! やかましいッ!」

 フライパンはまるで抗議のように床の上でガタガタと鳴りだした。てめェの方がうるせェだろッ! という怒鳴り声が聞こえてくるようだ。あんだと! と怒鳴りかけてやめた。その代わりに、ふ、と軽く息をつく。

 なんだかだんだん可笑しくなってきて、ゾロはそのまま、ふっ、はは、と小さく肩を震わせた。部屋の中がなんだか更にあったかくなったような気がする。はははっ、とついにゾロは大きな口を開けて笑った。コックが死んでから初めて、声を上げて笑った。

 笑いがおさまると、ゾロはずりりとエプロンを引き上げる。

 懐かしい、においがした。

 穏やかな口調でそっと呟く。

「おい、エロガッパ。いるんだろ」

 ふわっと暖かい風が頭を撫でた。ドアも窓も閉まっている、だからこの風はきっと———。

「空気じゃあ、殴り合いはできねェな」小さく笑う。

 やおら立ち上がり、パンッと腰をはたく。落ちたままのフライパンを拾い上げる。確かにずっしりと重い。

「てめェ落とす度にアレうるせェからもう持ち上げんのはさすがに諦めろ」と片付けながら言うと、暖かいくせにやたら鋭く強い風が腹のあたりに吹き当たりやがる。

 地味に、痛ェ。

 どうやら血の気が多いのは死んでも治らなかったらしい。

 無駄に知能の高い空気だ、とげんなりしながらゾロはある可能性を密かに抱き始めていた。何だ何だ、と訝しがる空気コックにまァ待ってろ、と口角をにやりと上げてみせる。ゾロが気配に敏いのもあるのだろうが、どうもこのコックは空気になったくせに気配がやたらとうるさい。現に今、カッチーン! とイラついたのが手に取るようにわかる。

 だからこそ賭けてみる価値はありそうだ。

 お前ちょっと待ってろよ、どっか行くんじゃねェぞ、とキッチン内に向かって声をかけゾロはキッチンを後にした。

 

 ***

 

 なあ、ゾロ、と声をかけ、こんなモンでいいか、と見せて尋ねると、ゾロは満足そうに頷いた。おう、ありがとうなフランキー、と言うゾロに、あ~う、今週のおれはス~パ~だからな、と親指を立てる。手渡したそれをしっかりと手に持ち歩き去る後ろ姿を見ながら、アイツなんであんなモン急に欲しくなったんだ、と思わず考えこんだ。作ってほしいモンがあんだ、廃材でいい、と急に言われた物を聞いたときにはスーパー驚いたが……

 考えても何もピンと来るモンはなく、後でゾロに聞いてみるか、と青く明るみ始めた空を見上げながらフランキーは軽く首をかしげた。もうじきみんな起きる、そうしたら朝メシだ。

 

 ゾロはそれも持ってキッチンへと向かう。これで、あの可能性が実現したらいい。

 ドアをがちゃりと開けるとやはりキッチンの中だけ暖かい。

 無言でずかずかと中へ進み、テーブルの上にごとりと置いたのは、——五十音図。

 フランキーにつくってもらった、と言いながら指先でくるりと一文字だけひっくり返す。

 表にも裏にも同じ文字が彫ってあり、表にだけ濃く色が塗られている。

「おめェ、空気のくせして頭だけは割合ちゃんとしてるみてェだからよ」

 だから、賭けてみた。もしかしたらコックと会話できるんじゃねェか、と。

 風がふわりと首元をくすぐる。あったかい。

 ゾロのひっくり返した文字盤がひとりでに裏返って元に戻る。文字が、次々と鮮やかに現れる。

「よ」「け」「い」「な」「お」「せ」「わ」「だ」「ま」「り」「も」「へ」「つ」「と」

 浮かび上がる文字を読み上げる。余計なお世話だマリモヘッド。

 いかにもこいつが言いそうなことだ。んだと、と腹を立てながらも頭のどこかではいまだに信じられねェでいた。コックが今、ここにいる。今更かよ、と顔をしかめた。

 文字がまたからからと音を立てながら戻っていく。一面同じ色に戻ってから再び覆り始める。

「あ」「り」「か」「と」「う」「な」

 読み上げてから静かに息を吐く。今おれは泣きてェのか笑いてェのか怒りてェのか。多分全部だ。

 きっと大層情けねェツラしてんだと自分でもわかる。空気相手に無駄かもしれないが、顔を見られたくなくてゾロは頑なに俯いた。

「ったく、どっちだってんだ、ハッキリしねェ奴だな」

 ハッ、と笑って早口で呟きそれきり、押し黙る。

 乾いた木の音だけが途切れ途切れに鳴り響く。まるで逡巡するかのように文字がひとつずつ、ゆっくりと覆る。

「く」「そ」「た」「た」「い」「ま」

「……おう」

 ゾロはきつく、唇を噛みしめた。ゆっくりと言葉を紡ぎだす。

「遅ェ、クソおかえり」

 風が、ゾロを暖かく撫でた。

 

 空気になったからって女の風呂覗くんじゃねェぞと釘をさすと、願ってもできねェのさ、と不満そうだった。おれァどうやらこの部屋に縛られてるみてェだ、と。じゃあキッチンに来りゃいつでもてめェがいるわけか、と渋い顔をつくってみせると、だからてめェはキッチンに来んな憎たらしい緑頭なんざ見たくねェ、とまた憎まれ口を叩いてくる。相変わらずベラッベラと無駄に口ばっかりが達者な奴だ。

 あいつら驚かせてやろうぜ、とニッと笑いかけると、いいぜ乗った、とコックが気配でニヤリと笑い返した。

 そろそろ朝メシの時間だ、みんなここに揃う。いったん五十音図を隠しながら、何人くれェこのやたら気配のうるせェぐる眉空気コックに気づくだろうかと考え、ひとりで楽しくなってきた。

 

 *****

 

 がちゃり、とキッチンのドアが開く。今日も朝いちばん乗りだと思っていたナミは先客に驚いた。

「あら、ゾロ。珍しいこともあるもんね、あんたが早起きなんて」

 それになんだかかなり機嫌が良さそうに見える。朝なのに。何かあったのかしら? 

「それにしても」とナミはキッチンの中をきょろきょろと見まわす。

「この部屋、なんだか暖かいわね、不思議」

 ゾロはあたかもまるで関心がなさそうな声でへェそうかよ、と返したがその表情はどこか満更でもなさそうで、さらに言うなら少し面白がっているようだった。ふぅん全くなんなのよ、と少し面白くなかったけれどこんなに楽しそうなゾロはあまりに久しぶりに見たから、まあいいかと思ってしまう。

 そう、サンジ君が死んでからは初めてなのだ。

 せっかく早起きしたんだからあんたも手伝いなさいよ、と声をかけナミは朝食を作り始めた。

 その香りにつられてメシィ~~! とキッチンに飛び込んでくるルフィに静かに待ちなさいよ! と叱りつけている間に、塩が一つまみフライパンの中にひとりでに入っていったことにナミは気づいていない。パンツ見せてもらってもよろしいですか? と朝からセクハラをしてくるブルックを撃退している間に、隠し味のソースの小瓶が勝手に浮き上がって傾いていたことにも。その一部始終が見えていたゾロは笑いをこらえるのに必死だったのだが。

 そんなこんなでなんとか朝食を作り終えたナミがゾロに手伝わせて皿を運び、全員食卓についた。一口料理を口に運んだルフィが目を見開く。

「ナミ、お前メシうまくなったな! サンジがつくったみてェな味する!」

 ゾロは思わず噴き出しかけた飯を慌てて飲み込む。

 アホでいい加減のようでいて肝心のところでは恐ろしいほどに鋭い、さすがはルフィだ。

 確かにそうだな、懐かしい味する、とウソップとチョッパーもうんうんと頷きあう。ナミは少し複雑そうだ。ロビンはふふふ、と笑いそういえばこの部屋だけ不思議と暖かいわね、と言う。フランキーは五十音図の行方が気になるようでゾロに物言いたげな顔をして見せた。ブルックは居心地良さそうに目を細めている。いや、彼に細める目はないのだけれど。

 全員、この心地のいい違和感に少しずつ勘づいているようだった。

 ゾロは席を立ち、五十音図を片手に戻席に戻る。フランキーがひょいと片眉を上げる

「あのな、———」とゾロは口火を切った。

 

 Fin.




その後の話。

多分冬の朝には「さっみぃ〜!!」って言いながらルフィやらウソップやらが飛び込んできて「人を暖房代わりにするんじゃねェ!」って空気の蹴りが入ったり、小さく欠伸をしながらオハヨーなんて言いながらナミが入ってくると五十音図が無駄に勢いよくからから回りだして「んナミさんおはよ〜いやー今日も一段とお美しいっ」とか言って美辞麗句並べ立てるんです、多分。


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