Fate/Zero ───in Evolution (よこちょ)
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地球外生命体のRestart

どうも。これは前自分が書いてる途中で放棄したやつを上げたやつです。設定自体は練ってあるのでエタりはしませんが、こっちの投稿は不定期である以上に気分次第です。そのへんはご了承ください。
では、エボルトの暗躍第1話目、どうぞ!


日本にある冬木市。

別段他の街と変わった名所があるわけでもなく、どこにでもある普通の街。普通に生活する分には別に大したことも無い、平凡な街だ。

────そう。普通に生活する分には 、だ。

この街には、ある秘密がある。しかも、普通じゃ考えられないようなのがな。

その名も、「聖杯戦争」。魔術師同士の殺し合い。

過去に名を上げた聖人や戦士、作家、はたまた物語の英雄までを術式を通して「マスター」が呼び出し、「サーヴァント」としてこの世に現界させ、そいつら同士が戦う上、魔術師同士が殺し合う。そして、生き残った最後の1人だけが万能の願望器である「聖杯」を手に入れ、どんな願いでも叶えることが出来る…………といった儀式が行われる。

この儀式は俺──「間桐雁夜」が籍を置いている「間桐家

」、「アインツベルン家」、そして「遠坂家」の三家が協力して作り上げたものらしい。最も、それは200年以上前の話らしいがな。

そして、「始まりの御三家」と呼ばれる内の一角である間桐家、その子供であるこの俺もそのマスターの権限を持っている人の1人であった。

 

「さて、準備はいいかのう?雁夜。」

 

その雁夜の前で笑ういけ好かなくも不気味な老人、「間桐臓硯」。

俺の祖父でもある彼はこの家の主でもあり、何百年もの間生き続けている、いわば狂人であった。生にしがみつくその妄執は凄まじく、こうして目の前に立っているだけでも足が竦む。

俺はそんな男を前にし、突貫工事で鍛えた魔術師の身体をフラフラしながらもなんとか立たせていた。

 

「あぁ。いつでもできるさ。」

 

俺は今から、「バーサーカー」のクラスのサーヴァントを召喚しようとしている。

今は強がってはいるが、正直言うと今でもキツい。今からサーヴァントを呼ぶとなれば、最悪気絶する可能性だってある。

しかも俺自身に魔力は少ない分、戦うにはサーヴァントに「狂化」を付与して強化し、無理やりにでも戦力を上げておかないといけないという苦肉の策であった。そのせいで余計に魔力を食われる。この聖杯戦争中持ってくれるといいんだが………。無論、そこには臓硯の自虐的な趣味も含まれていることも見抜いてはいるがな。

クソっ、忌々しいやつだ!

 

「では、召喚するといい。貴様のサーヴァントをな。」

 

ニヤニヤと笑いながら後ろへ下がる臓硯を後目に、目の前に敷設された魔法陣の前に立つ。

そして、サーヴァントを召喚するための文言を唱え始めた。

左手を前に出し、魔法陣へと手をかざす。

それに応じて令呪が輝き、俺の身体から少なくない魔力が持っていかれる。それを補おうと体内の刻印虫が血肉を喰らい、暴れる。

血を吐き、霞む目を必死に開き、文言を唱え続ける。

魔力が回り、魔法陣は廻る。

バチバチと紫電が爆ぜ、薄暗い蟲蔵をいっそ神秘的なまでに照らし続ける。

そして、魔法陣に集まっていた魔力がある時を境に形を造り、人の形を取った。

 

「おぉ………これは………!」

 

後ろの臓硯も思わず声を上げているが、正直殆ど耳に入っていない。

薄ぼんやりとした視線の先には、さっき現界したばかりの人型が蠢いていた。

 

────────────────────────

ここで、少し別の話をしよう。

本来の世界線に置いて、彼が召喚するハズだったバーサーカーは、「ランスロット」。

円卓の騎士に名を連ねる剣士の1人であり、その冴え渡るような剣技は、他を圧倒するほどの凄腕であった。

そして、此度の召喚でも無事に召喚される─────

───はずであった。

これが正しい歴史であれば。

────────────────────────

 

「ふぅ………やれやれ。ようやく満足に動けるようになれたな………………。」

 

魔法陣から現れた人型は、円卓の騎士とかそういった高尚な類のものではなかった。

真っ白なシャツにベージュ色の上着。柔らかな印象を与えるソフトハットに、オシャレなサングラス。脇に不思議な箱を抱えた上、どこからともなくコーヒーの香りを思わせるその男は…………どうみても一般人だった。

しかも、狂化されているはずなのに言語を喋る所からして、そもそもバーサーカーすらも怪しかった。よもや失敗か…………?

そうも思ったが。だが、その佇まいは歴戦の戦士のそれであり、いくつもの戦いを経たことは容易に想像出来る風格を持っていた。

そして、その何もかもが怪しい男は、ゆっくりと周りを見渡し、ふわっと人の良さそうな笑顔を顔に貼り付け、流暢に自己紹介を始めた。

 

「Bonjour!お二人さん。俺の名前は『石動惣一』ってんだ。よろしく頼むぜ?マスター!」

 

彼の名は、「石動惣一」。

かつて別の世界において暗躍し、地球を破壊しようと目論んだ悪の存在であった。

 

「よろしく頼むぜ?ホントによぉ〜。」

 

そしてサングラスを上にあげ、高らかに笑いあげた。




次の話はエボルトについての詳細とか、色々設定とかを上げます。


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バーサーカーの目標〈ターゲット〉

予想外に反応が多かったので投稿したいと思います。みんなエボルトのこと好きすぎない………?
今回はバーサーカー陣営がお話してるだけなので、会話多めですのでご了承を。後書きのとこにエボルトの詳細乗っけときます。
では、本編どうぞ!


「よろしく頼むぜ?マスター!」

 

目の前の男──「石動惣一」は片手をあげ、気さくに挨拶をしてくる。

そのフランクな様子は、今からの聖杯戦争を勝ち抜こうと意気込み、必死にやってきた自分を否定されたような感覚を与え、雁夜神経を逆撫でした。

 

「お前っ………!」

 

その激情に身を流され、胸ぐらを掴む。

雁夜の心中にはこれからの戦いにおける不安やサーヴァントに対しての不満、そしてなにより焦りが綯い交ぜになっていた。

 

「ちょ、悪かった。悪かったから!とりあえず手ぇ離してくれよ!せっかくの一張羅がシワになっちまうだろうが!」

 

対する石動はその剣幕をサラリと受け流し、その上で上着の心配までする始末。

さして応えた様子もなく、シワになりかけたシャツを必死に整えている姿に毒気を抜かれた雁夜は、疲れがどっと押し寄せ、その場にへたり込む。

 

「…………はぁ。最悪だ……………!」

 

自分の魔力もなく、魔術も貧弱。おまけに扱うサーヴァントは最底辺という始末だ。

今までの苦労が倍になって一気に来たような感覚に陥った気がし、これから先を危ぶんでいた。

 

「ったく。そんな顔すんなって、マスター。これからの方針でも話すとしようぜ?」

 

「お前が原因なんだよ…………」

 

早くも胃のあたりがキリキリと嫌な痛みが上がる雁夜は、蟲蔵を出る。後ろを追従する石動は物珍しそうな様子で辺りをキョロキョロと見渡しているが、特に面白いものもなかったのかいつの間にか普通の様子に戻っていた。

臓硯は興味を無くしたのか、いつの間にか闇へと消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、だ。お前の真名は把握してるんだが…………そのほかのことを教えてくれ。でないと戦略の立てようが無い。」

 

「…………先に言っておくべきことがある。」

 

雁夜は自室へと移動し、戦力の把握を始める。

しかし、深刻そうな表情をした石動の口から出た言葉は─────謝罪だった。

 

「……………スマン!実は俺、ちゃんとしたサーヴァントじゃないんだよ!」

 

「……………はい?」

 

思わず聞き返す雁夜。

 

「ちゃんとしたサーヴァントじゃ…………ない?」

 

「あぁ。正確に言えば、サーヴァントではあるんだが………………半分召喚に成功してないんだよなぁ。」

 

「どういうことだよ」

 

「要は疑似サーヴァントみたいなもんだ。俺は生まれが近代だからよ。ちょっとばっかし霊基が弱いんだよなぁ…………。んで、ちょいとばっかし弱体化してるってわけ。」

 

サーヴァントの弱体化。

更に告げられた最悪の宣告に、思わず頭を抱えた。

 

「安心しろって。そこは俺の生前の経験でなんとかするさ。」

 

「お前の生前って、なにやってたんだよ。」

 

「驚くなよ?………………実は俺、宇宙人で地球侵略に来てたんだよ!」

 

「はぁ!?それ本当かよ!?」

 

「いや、嘘だ。」

 

「嘘かよ。」

 

「本当はカフェのマスターだ。」

 

「余計にダメじゃないか…………」

 

先程から話の主導権を握られっぱなしの雁夜を見て、大声で笑う石動。

雁夜の肩をポンポンと叩きながら、慰めるように撫でる。

 

「まぁそんなにガッカリするなって。これでも俺、強いんだぞ?」

 

「…………信用できねぇな。」

 

「おいおい!そんなこと言われたら俺がウルっときちまうだろうが。俺泣いちゃうぜ?」

 

サングラスを外し、目を抑えてあからさまな泣き真似をする。

その様子をうっとおしそうに見て、いっそ令呪でも使って黙らせようかとも一瞬考えてしまうが、思考を振り払う。

そして次の質問を投げかけようとした瞬間、石動の方から質問をしてきた。

 

「なぁマスター。先に聞いておきたいんだがよ。お前が聖杯に懸ける望みって…………なんだ?」

 

ドキリ、と心臓が跳ねる。

自身が聖杯に懸ける願い。

雁夜は、この間桐家に養子に出され、今もなお蟲蔵で魔術師としての辛い調教を受けている桜を解放する為に聖杯戦争に参加している。

思えば、自分自身が願おうなどとは一切考えておらず、ただ聖杯を求めて戦いに挑もうとしていた。

 

「俺には………望みはない。」

 

そう、言うしかなかった。

魔術を嫌い、家を飛び出し、逃げ出した自分。

そしてその挙句に自分の想い人とその子供のために戻り、自らを嫌いな魔術の道へと堕とした馬鹿な男。

自らをそう考える雁夜にとって、願いなどは最初からあるものではなかったのだ。

 

「…………ひとつ忠告しとくぞ?マスター。」

 

その様子を見た石動は目を細め、険しい表情になる。

 

「願いとか信念とか。そういうのがない人間は…………目標を達成することは出来ない。」

 

「俺が過去に見た人間の中で成功したヤツらは、総じて『夢』とか『希望』とかを持っていた。逆に、半端な覚悟とか信念とかの状態じゃ絶対に成功はしない。これは俺の経験則だ。先人の言うことはよく聞いとけよ?」

 

石動が語る『信念』。

それは一体何をさしているのか……………雁夜にはわからない。

だがこの言葉の重みは、確かに時代を生き、死んでいった者のそれであった。

その『格』の違いに、否応もなく目の前の存在が確かに『英霊』であることを自覚させられる。

思わず背筋が伸びた。

そして、自然と口からこぼれた言葉。

 

「お前の………お前の望みはなんなんだ?」

 

それは、目の前の存在が持つ『信念』。

自分には無いそれを持つ石動に、聞かずにはいられなかったその言葉は、石動に届く。

そして、答えが返ってきた。

 

「俺のの望み、か……………。笑わないで聞いてくれよ?」

 

ごくりと唾を飲む雁夜。

勿体ぶるように間を開けた石動は頭を掻き、恥ずかしそうにこう答えた。

 

「もう一度会いたいんだよ。俺が生前に出会った『正義の味方』に。」

 

それは、少年が持つような夢。

あまりにも純粋すぎて、あまりにもギャップがあったその答えに、思わず吹き出す。

 

「オイオイオイオイ!笑わないでくれって言っただろ!?くっそ、誤魔化しときゃよかったぜ!」

 

「いや、だって………いい歳した男が、正義の味方って………!」

 

「あーもう、いいだろ別に!そんだけ思い入れがあんだよ。『アイツ』には。」

 

ひとしきり笑い終えた雁夜は、心の中に光が灯ったような気がしていた。

目の前のコイツだってこんな純粋な夢を持ってるんだ。だったら───俺だって。

 

 

俺だって願いを持ってもいいんじゃないかな?

 

 

 

そう思える程には心に余裕ができていた。

そして、そう思えるようになった頃には自分の引き当てたサーヴァントがとてつもなく頼もしく見えていた。

 

「改めて名乗らせてもらおう。俺の名は間桐雁夜。俺は────俺の救いたい人を救ってみせる!」

 

「おぉ!いいねぇ〜。その意気だぜ?やっぱ人間はこうでなくっちなァ!では俺も改めて。サーヴァント、バーサーカー。石動惣一だ。よろしく頼むぜ?マスター。いや、雁夜!」

 

「あぁ。こっちこそ!」

 

がっしりと握手を交わす2人。

そこには時代や生死の差はあれど、確かに結ばれた手があった。

今ここに、バーサーカー陣営が完成したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

その夜。

誰もが寝静まっているであろう時間帯。

バーサーカーである石動惣一。

否、エボルトは間桐邸の屋根の上に座り、1人星を眺めていた。

 

「間桐雁夜、か。なかなかに面白い男じゃないか。」

 

片手に『変身煙銃・トランスチームガン』を弄びながら、独り言を呟く。

鈍色に光を受け止めるトランスチームガンはどこまでも暗く、まるでブラックホールのように光を吸い込む。

 

「ハザードレベルは2.1。まだまだ弱いが…………あの時は2.3。中々に見込みがあるじゃないか。」

 

彼がハザードレベルを測ったのは2回。

最初に肩を触った時と、最後の握手。

雁夜は最初ハザードレベルが低かったが、自分の信念、つまり、『感情』によってハザードレベルが上昇していることになる。

 

「俺の半身である万丈ほどじゃぁねぇがな…………。しかし、この『身体』も難儀なもんだなァ。」

 

自分の胸に手を当てながらごちる。

 

(俺の今のハザードレベルは4.5、か…………。ちっ、随分と減っちまったなぁ。)

 

「ま、暫くはブラッドスタークで充分だな。」

 

ニヤリと嫌な笑みを浮かべ、トランスチームガンをしまう。そして変わりに体内から1本のボトルを、思い出したように取り出した。

 

「そうそう。お前にも礼を言っとかなきゃ行けねぇなァ。『バーサーカー』さんよォ?」

 

持ったボトルに刻まれた模様は、正に『狂戦士』。

獣のような風貌に、屈強な腕を持ったレリーフの象られたボトルには今にも溢れそうな程エネルギーが詰まっており、溢れんばかりだ。

それを握りつぶすようにして取り込んだエボルトは勢いを付けて立ち上がり、背伸びをする。

 

「さぁて。身体もあるし………いっちょ奪ってやりますか!聖杯とやらをなァ。」

 

「…………………待ってろよ?『桐生戦兎』。また、お前らと遊べる日を楽しみにしてるぜ?」

 

降り立った蛇は、昏く笑い、今は会えぬ『正義の味方』へと再会を誓った。

 




いやー石動って良い奴ですね(白々しい)。
これぞまさに英雄。(鬼畜)
では、次回から本格的にエボルトの暗躍が始まりますので、よろしくお願い致します。
では次回の投稿まで!



以下、エボルトの詳細

バーサーカー

真名;石動惣一/エボルト

属性;悪/混沌

かつて地球を破壊しようと目論んだ巨悪の存在。
本来召喚されるはずだったバーサーカーに成り代わって出現した。
人類悪に匹敵する程の悪性を秘めた彼は、本来ならばサーヴァント足りえぬ程の霊基しか持ち合わせないはずであり、英霊の座にも登録されないはずだった。
だが、なんのイレギュラーか彼は第四次聖杯戦争へと姿を顕す。


スキル

対魔力(×)
魔術に対する耐性。
科学しか無い世界にいた彼には大した対魔力は存在しないが、

狂化(E-)
バーサーカーの基本スキル。
彼自身が不完全な召喚に故か、狂化はほぼかかっていない。

単独行動B-
マスターを失っても活動できるスキル。
本来はアーチャーのクラススキルであるが、生前単独行動の多かった彼は所持している。

扇動A+
軍略とは似て非なるスキル。
彼は生前、3つにわかれた国でそれぞれ扇動を繰り返し、戦争に引き金を引いた。
故に、彼はこのスキル所持する。

単独顕現EX
本来は獣の権能を表すスキル。
彼自身は人類悪ではないが、なぜか彼は所持している。
これが表すこととは………?





宝具


「今は開かぬ滅亡の匣」(パンドラボックス)

彼が常時保持している、立方体状の箱。
だが、中身は空であり、フルボトルは1本もハマっていない上、彼自身「バットロストボトル」のみしか持っていない。故に現状はただの箱であり、殴ったら痛いくいの効果しか持っていない。
…………………そう。ボトルが存在しない今は。


「変身煙銃」〈トランスチームガン〉

彼愛用の武器兼ブラッドスタークへの変身に用いるデバイス。スチームブレードもセット。
彼はこの聖杯戦争において、この力を使って暗躍を始める。


「破壊の腰巻」(エボルドライバー)

彼を彼足らしめている破壊の塊。星狩り族として彼が破壊に用いていたドライバー。
これを使えばあらゆる惑星を一瞬にして破壊する程の力を手に入れることが出来る。
また、「コブラエボルボトル」、「ライダーシステムエボルボトル」、「エボルトリガー」も所持しているが、ハザードレベルが足りないため、使用はできない。
これを持っていることは誰にも話していないため、実質的なジョーカーとなり得る存在でもある。


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戦闘前のMeeting

どうも、よこちょです。
言い忘れていましたが、石動ことエボルトは霊体化ができません。理由は不完全な召喚のせいだと思っておいてください。
さて、今回までは間桐家でのお話です。
次回からは本格的に聖杯戦争の中身へと入って行きますので、楽しみにしておいてください。
では、第3話をどうぞ!


「遠坂時臣に言峰綺礼、衛宮切嗣にウェイバー・ベルベット、か。色んなマスターが居るもんだねぇ。」

 

時は夜。

コーヒーをすすり、のんびりとくつろぎながらレポートのような紙を見ているのは、バーサーカーの石動。

その紙には、臓硯から提供された現在わかるだけのマスターの情報が書かれていた。

経歴を見ると、これでこそ聖杯戦争と言うべきか。一般人からすると全く馴染みのない仕事ばかりが並んでおり、石動の心を踊らせた。

最も、彼が関心を寄せているのはその職業の特異性ではない。

 

(こいつらのハザードレベルはどれくらいなのか。そいつを調べてみたいもんだがねぇ………)

 

関心事項は、「ハザードレベル」。

彼がいくら星々を渡り破壊してきたブラッド族であっても、「魔術師」という存在とはついぞ出会うことは無かった。故に彼は魔術師のハザードレベルに対し、かなりの興味を示しているのだ。

 

「…………マスターは魔術師というかほぼ一般人だしなぁ。」

 

「悪かったな。こんなへっぽこなマスターで。」

 

「あ、聞こえてた?すまんすまん。別に悪い意味じゃねぇよ。」

 

どうやらいつの間にか声に出ていたらしく、若干不機嫌そうになった雁夜。

 

「そんなことより、戦況が動いたぞ。アサシンが殺られた。」

 

手をあげて謝ると、少し機嫌を取り戻したのか、使い魔に監視させていた情報を共有した。

 

「………なんだと?」

 

だがそれは、一番予想外の出来事だった。

アサシンは、その名の通り「暗殺者」のクラス。気配遮断スキルを持っており、襲われるまでその存在に気が付かないこともある。故にマスター自身が一番警戒すべき存在だったのだが───雁夜曰く、脱落したらしい。

 

「それ本当か?」

 

「あぁ、間違いない。あんなに派手に剣やら斧やらを叩きつけられてたんだ。あれで死んでなきゃそれはもうサーヴァントの枠組みを超えてるよ。」

 

「なるほどねぇ…………。」

 

どうやら相当派手にやられたらしい。

だが石動の頭には妙に引っかかっていた。

とりあえず自分の中ではアサシンがまだ生き残っていると仮定しておこうと決めたところで、部屋のドアが開く。

 

「あぁ、桜ちゃんか。どうしたんだい?こんな時間に。」

 

空いたドアから表れたのは、間桐桜。

紫色の髪をした幼女であるが、目にハイライトが点っていない。遠坂の家からの養子であり、間桐の魔術に染めるため蟲蔵に入れられた影響である。

雁夜が聖杯戦争に飛び入り参加した理由のひとつにもなっていることからも、かなり悲惨な境遇であることは伺えた。

 

「雁夜おじさん、その人、だあれ?」

 

「ん、俺かい?可愛いお嬢ちゃん。俺は石動惣一っていうんだ。雁夜とは仕事でできた友人でね。冬木市で仕事をするから、しばらくここに世話になることになってるんだ。挨拶が遅れてすまなかったな。」

 

咄嗟に嘘で誤魔化し、バツが悪そうに謝りながらも友好的な視線を崩さぬ石動の態度に少し安心したのか、石動達のいるテーブルへと近づく。

 

「この紙はなぁに?」

 

「おっと、桜ちゃん。これは仕事に使う大事な書類なんだ。だから見ちゃダメだぜ?」

 

「……うん。わかった。」

 

「そうか!素直で良い子じゃァないか。おっと、もうこんな時間か。良い子はちゃんと寝なきゃダメだぜ?夜更かしはレディの敵だぜ?」

 

「うん。じゃあおやすみ、雁夜おじさん。石動おじさん。」

 

「うん。おやすみ。桜ちゃん。」

 

「おやすみ。…………あと、俺はおじさんって歳じゃねえぞ?」

 

寝室へと向かった桜を見送った2人は、書類を見ながら情報の精査を続ける。

 

「………なぁ、マスター。これからどうするつもりだ?」

 

だが沈黙は苦手なのか、手は休ませずに質問をする。

聞かれた雁夜は、少し悩むような素振りを見せ、しばらく考えた後に、答えをだす。

 

「………しばらくは様子見かな。他陣営がどう動くかもわからないし。それに、まだ体調だって万全じゃないしな。」

 

雁夜自身は戦わないとは言え、いざと言う時に蟲が使役出来なければ呆気なく殺られてしまうだろう。

そうならないようにも、極力最高のコンディションにしておくべきなのだ。

 

「そうか。じゃ、俺もちょっとばっかし仕込みをしとくかねぇ。」

 

「仕込みってなんだよ?」

 

「そいつは言えねえなぁ。ま、楽しみにしとけって。」

 

「なんだよ。教えてくれたっていいだろ?」

 

だが、石動は笑ったまま書類を見るだけで答えない。

不満そうに作業に戻ろうとした雁夜の脳内に、直接声が届いた。

 

(そう不満そうにするなって。声に出したら臓硯に聞こえちまうだろ?それは良くないのはお前が一番よく分かってるはずだ。)

 

(臓硯に聞こえちゃまずいって…………。……………お前まさか!?)

 

(あぁ、その通りだ。俺は臓硯を殺すつもりだ。)

 

目に義憤の光を浮かべ、憤るように念話で言う石動。

心做しか念話の声にも力が篭っているように感じられた。

 

(俺は…………桜に対して虫けらを使って人体実験をする臓硯を許せない。)

 

石動は今桜が置かれた現状を知っている。

だからこそ、ハッキリと宣言した。

 

(俺が見た正義のヒーローなら、絶対に見逃さないはずだ。『アイツら』がいない今、俺がやるしかない。)

 

アイツら、というのが誰を指すのかはわからないが、雁夜にもその熱い思いは充分に伝わっていた。

 

(俺にもなにか手伝えることは無いか?)

 

(とりあえずは絶対に口に出さないようにしてくれ。どこから情報が漏れるか分かったもんじゃねえからな。)

 

思わず聞く雁夜に釘を刺し、席を立つ石動。

不服そうにする雁夜を宥めつつドアへと近づき、半身を滑り込ませて退出する。

 

「じゃ、しばらくはそういうことで頼むぜ、マスター。Ciao〜」

 

退出際にはなった挨拶はこの上なく軽く、さっきまで話していた重い話が嘘のように感じられた。

そう思った雁夜は、思ってた以上に自分が緊張していることに気づいた。そんな自分に苦笑を漏らしつつ、背を伸ばす。

パキパキという背骨に時間の流れを感じ、ぼんやりと頭を休めていると、机の上で握られた自分の手の甲に光る令呪が目に入った。

 

(………思えば、まだ全然時間が経ってないんだよな。)

 

手を握ったり開いたりする動作にも問題はなく、自分のしてきた厳しい生活がとうの昔に感じられるが、実はまだそんなに時間は経っていない。その驚異的な回復力はマスター故の特権だったりするのだろうか。

そんな役体の無いことを考えてはみたものの、現状は変わらない。

 

(もう始まってるんだよな。聖杯戦争は。)

 

そう。現状の、「聖杯戦争に勝利し、桜を助ける」という目標は何も変わっていないのだ。

握られた拳に更に力が入る。

 

(でも、前の俺とは違うんだ。)

 

手に光る令呪、そしてサーヴァントと繋がるパスこそがその証拠だった。

 

(俺は絶対に、桜ちゃんを救ってみせる!)

 

再び決意を新たにし、顔をあげる。

その決意は闇夜に溶け、月明かりだけがそれを吸い込んだ。




次回は港からのスタートになります。
気長にお待ちください。
では、次回の投稿まで!Ciao〜


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集いし5人ののServant

どうも。お久しぶりのよこちょです。
投稿遅れた原因は大体FGOと滅亡迅雷netのせいなので悪しからず。水着とかで忙しかったんや………
あっそうだ(唐突)。この作品は一応「ハッピーエンド」を目指して書いています。しかし本当にハッピーエンドになるかは私の脳内エボルトの行動次第なので───もしかしたらダメかもしれません。その時は「こいつ脳内エボルトに負けたんや」って思ってください。
では、第4話をどうぞ!


side雁屋

 

冬木市外れにある倉庫街。

港としての機能も持ち普段は船が行きかい、仕事をする人の多いこの場所では今、普通に生きていれば聞くことのない音が鳴っていた。

それは金属同士がぶつかり、火花を散らす音。つまるところ、「剣戟」と呼ばれるものだ。

場所はおろか時代すら間違えていそうな行為。

その行為を行っているのは、風に包まれた得物を振るう金髪碧眼の美少女「セイバー」と、二本の槍を巧みに扱って得物をいなす黒子が特徴の「ランサー」。

2人は聖杯戦争の参加者であり、この戦争において初めて剣を交えた存在であった。

 

 

「………すごい」

 

 

少し離れたコンテナの裏からその戦いを見ている雁屋の口からは、感嘆の呟きが漏れていた。

苛烈、されど美麗。一切の隙を見せず、小細工無しに真正面から武器をぶつけ合う。そこにいるのは、己の武勇を信じる戦士。

目の前で繰り広げられている戦いは正に騎士道精神を具現化させたようなものであった。

だが、それと同時に畏怖する。

今からこんなやつと戦わねばならないのか、と。

そんな心配を胸に横を見やる。

横にいる石動はいつもと変わらぬ様子で戦いを観察しているようで、時折「ほほぉ」とか「うーむ」とか唸っている。それを見るとさっきまで畏怖していた自分が馬鹿らしく思えてくるのは、石動の人格がなすゆえだろう。

 

そうやって戦いに魅入り、暗闇目が慣れ始めていた時だった。

上空から眩い雷鳴と共に戦車が降りてきたのだ。

このタイミングにこの現象、なによりもそれが持つ圧倒的なまでの魔力量。間違いようがなかった。

 

「あれは…………新しいサーヴァントか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

sideエボルト

 

 

「我が名は征服王イスカンダル。此度の聖杯戦争においては、ライダーのクラスを得て現界した。」

 

「何を考えてやがりますか!この馬鹿はぁあああああ!」

 

突如として現れ、本来秘匿すべき真名を独断で堂々と晒しあげたライダー、「イスカンダル」。

横で騒ぐマスターをデコピンで沈め、先に戦っていた2人へ問うた。「聖杯を譲る気は無いか」、と。

当然のように却下する2人へ更に交渉を持ちかけるも、一蹴されていた。

ちなみに復活して早々ぽかぽかと胸を殴るマスターはガン無視されていた。不憫だねぇ。

そんなマスターへと、拡声魔術によって声がかけられていた。

内容を整理すると、どうやらそのライダーのマスター、「ウェイバー・ベルベット」は講師である「ケイネス・エルメロイ・アーチボルト」の聖遺物をパクり、それを使って聖杯戦争に参加したらしい。それに憤慨したケイネスは魔術師として課外授業をしてやるとか言っていたが、当の召喚されたイスカンダルからすっぱりと拒絶されていた。なんでも、姿を隠しているような輩は自分とは不釣り合いなんだと。相変わらず王ってのは何考え始めるかわかったもんじゃないねぇ。

俺が自分の兄であり、ブラッド族の王であった「キルバス」のことを思い出していると、突如イスカンダルが大声を出した。

 

「おいこら!他にもおるであろうが。闇に紛れて覗き見をしておる連中は!」

 

…………まずいな。

ここで姿を見せなければ、恐らくイスカンダルからの印象は非常に悪くなる。俺は別段構わないのだが、ハナっから敵対心を植え付けておくようなことはしたくない。基本的に好印象な方が利用もしやすいしな。

 

「バーサーカー。」

 

声をかけられてそちらを向くと、マスターが覚悟を決めた顔をしていた。

 

「行ってこい。だが、あんまり無茶はしないでくれよ?」

 

俺を完全に信頼した目で、出陣を促してきた。まだ一緒に過ごす月日だってそう長くはなかったのにねェ。

…………これだから人間ってのは面白い。

そう考えた俺は懐からトランスチームガンとコブラロストボトルを取り出す。

 

「了解だ。マスター。じゃ、ちょっくら行くとしますかねぇ!」

 

『コブラ!』

 

「蒸血!」

 

『ミストマッチ!!コブラ………コッコブラ……………ファイヤー!!!』

 

煙が俺を包み、姿を変えていく。

煙が晴れた時にそこに居たのは、真紅の蛇だった。

毒々しい紅に蛇の意匠を持ったこの姿──ブラッドスタークになった俺は小さく笑い、肩を回す。

 

「さ、初出陣と行きますかァ!」

 

ちょっくら気合いを入れ直し、まずはコンテナから姿を表すことにした。胸が踊るねぇ!

 

────────────────────────

 

第三者side

 

「どうも御三方、Bonjour!さっきまでは覗き見なんて真似して悪かったな。」

 

暗闇から姿を表したのは、紅い蛇、ブラッドスターク。

スタークはセイバー達の目の前まで歩くとバイザーの縁を撫で、恭しく礼をする。

 

「あんまりにも2人の戦いっぷりが綺麗でよ。思わず見とれちまってたんだ。だから許してくんねぇかな?」

 

なあ頼むよ〜、と人懐っこい笑み(仮面で見えないが)を浮かべるスタークに対して向けられる目線は懐疑的なものが混じっていた。

だが、出てくるよう呼びかけた本人は快活に笑っていた。

 

「うむ。覗き見は褒められた物ではないが、こうして出てくるその心意気や良し!お主もまた聖杯に導かれし英霊だということであろうな。ところで問うておくが、お主は余に聖杯を譲る気は────」

 

「悪いが俺にもマスターがいるんでね。そいつァできない相談だ。すまねぇな。」

 

「うーむ、そうか…………。残念だなぁ。」

 

心底残念そうにするイスカンダル。

横にいるウェイバーは、もう突っ込まないぞと言わんばかりに座り込んでいた。

 

「っと、そういや自己紹介がまだだったな。俺の名はブラッドスターク。バーサーカーのサーヴァントだ。以後、お見知りおきを、ってね。」

 

そしてその自己紹介に、場の全員が驚愕した。

イスカンダルに続き、自らの真名を晒したのだ。

しかも、クラスがバーサーカー。

その理性的な振る舞いから、残りの枠のキャスターかアーチャーだと考えていた一同の度肝を完全に抜いた形になった。

 

「待て………お前が、バーサーカーだと!?」

 

ランサーが動揺し問いを投げるが、サムズアップでにこやかに返される。しばらく何かを言おうと口をパクパクしていたようだが、諦めてしまったようだ。

 

「待て、バーサーカー。貴公のその振る舞い、狂化がかかっていないのか?」

 

「いや、かかってはいるんだがどうも弱くてな。おかげでステータスも中途半端にしか上がってねぇ。とんだ災難だぜ。」

 

後を次ぐ形でセイバーがした質問にも、肩を竦めておどけるながら答える様子に、「情報を与えてしまった」というような焦りはない。それどころかそれでも構わないと言ったような態度からは、その真意は読み取れなかった。

だが、自分と同じように自ら名乗りを上げたものがいた事に気分を良くしたのか、イスカンダルは更に叫ぶ。

 

「うむ。お主の気概やよし!しかし全く情けない。情けないのう!セイバーランサーの剣戟を覗き見し、余とバーサーカーの名乗りを聞いてなお姿を表さぬ小物がいるとは。それでも冬木に集った英霊豪傑か!とんだ腰抜けもいたもんだわい。」

 

「全くだよなぁ!英霊サマが聞いて呆れるぜ!」

 

そしてスタークが便乗し、煽り立てる。

それに益々機嫌を良くしたイスカンダルは声を張り上げ、高らかに叫ぶ。

 

「聖杯に招かれし英霊は、今!ここに集うがいい。なおも顔見せを怖じるような臆病者は、征服王イスカンダルの侮蔑を免れぬものと知れ!」

 

そして訪れる静寂。普通の思考回路なら、これ以上絶対にサーヴァントは表れない。そう考えるのが普通のこの状況。

だが、その静寂は一瞬で無へと帰った。

 

「我を差し置いて王を名乗る不埒者が一夜のうちに2匹も涌くとはな」

 

静寂を破ったのは1人のサーヴァントだった。

そのサーヴァントは黄金の甲冑を身に纏い、虚空から出現した。輝く甲冑は闇夜にあってなお煌めき、闇によってより映えていた。

紅く燃える双眸は侮蔑の色に染まっており、眼下の石動達を見下ろしていた。

彼の真名は「ギルガメッシュ」。

世界でも名を知らぬ人は居ないと言っていほどに有名であり、その武勇は数々の物語にも影響を与えている。最も、今この場にいる者は誰もその真名を知らないのだが。

 

「難癖つけられてもなぁ………。イスカンダルたる余は、世に知れ渡る征服王に他ならんのだが。」

 

「たわけ。真の王たる英雄は天上天下に我ただ独り。あとは有象無象に過ぎんわ。」

 

まさに唯我独尊。

自分以外のすべては有象無象だと言い切るその態度は尊大であり、ある意味最も王らしいと言えた。

だがそんな態度は寛容に流したのか、イスカンダルは特に気にした風もなく問いを投げた。

 

「そこまで言うんなら、まずは名乗りをあげたらどうだ?貴様も王ならば、まさか自分の真名を言えんとはいうまい。」

 

「問いを投げるか。たかが雑種風情が。」

 

だが軽く流したイスカンダルとは違い、は激情を露わにする。

理屈を抜きにした感情的な癇癪は理屈を抜きにした威圧感があり、放たれる殺意は他を圧倒していた。

そして殺意に当てられ、両者間の間に不思議な拮抗が生まれる。

正に一触即発。

極度の緊張状態にあってなお、余裕を崩さないスタークは少し不機嫌そうに話しかける。

 

「オイオイ、お前は人を見下さねえと話もできねぇのか?これだから王様ってのはタチが悪ぃんだ。」

 

真っ直ぐに上空のサーヴァントを見つめるバイザーは一切の光を灯さず、黄金の甲冑とは対照的だった。

 

「……………ほう。貴様、何者だ?」

 

黄金のサーヴァントは目から侮蔑の色を消し、訝しげ、そして大いに好奇心を含んだな目線を当てる。

 

「なんだその匂いは。悪性、とも違うか。それに見通せぬ。貴様は本当に『こちら側』の存在か?」

 

鋭い目付きで睨む。悪性、見通せない、『こちら側』。

色々と気になる単語を零す黄金のサーヴァント。

対するスタークは肩を竦め、僅かに低くなった声で話す。

 

「…………さてな。わざわざ自分のことをべらべらと喋る気はないな。それに、今の俺はただのバーサーカーだ。それ以上でもそれ以下でもない。」

 

トントンと肩をスチームブレードで叩きながら返すスターク。その様子は飄々としており、余裕ぶった態度は崩れない。

 

「狂犬風情が我の問いに答えぬか。その不敬、万死に値する!」

 

だが逆にギルガメッシュは激昴。

つい先日遠坂邸で見せた黄金の波紋から武器を覗かせ、スタークへと照準を定めた。

それを見たスタークは肩を竦め、手を上げてため息をつく。

 

「はぁ………。なんでこう王様ってのは自分勝手なんだろうなァ。俺の兄も王だったが、自分勝手過ぎて手に負えなかったんだよなぁ。」

 

余裕ぶったその態度が逆鱗に触れ、顔を憤怒の表情に染め上げるギルガメッシュ。

 

「いいだろう………!貴様のその余裕ぶった態度、どこまで続くか見せてみよ!」

 

そういうが否か、波紋から無数の武器が射出される。

剣、槍、槌、斧、薙刀、刀。

その種類は一定ではなく、時代も出自もバラバラの物だった。だが、共通しているのはそれが全て宝具であること。そしてそれが全てスタークを狙っているということだけだった。

 

(あれは食らったらまずい!避けろ!石動!)

 

スタークの脳内には、雁夜からの警告の念話が届く。

それに反応する隙も与えまとしたのか、一斉に飛んでくる武器の群れ。

その煌めきは流星のように華麗でありながら一発一発が即死級。当たれば一溜りもないことが容易に想像出来た。

そして、一番槍で飛んできた槍がスタークに当たる寸前に、スタークがトランスチームガンにフルボトルを刺した。

 

『ロケット!スチームアタック!』

 

音声が流れでて、銃口が光る。

飛び出したエネルギー弾は不思議な軌道を描き、数本の武器に着弾。大爆発を起こして全ての武器を爆風が飲み込み、軌道をズラした。

 

「ほう。少しはやるようだな。では、その小癪な手癖で何処まで生き延びられるか、見せてみるがいい!」

 

それに怒ったギルガメッシュは更に黄金の波紋を展開。100に達するのではないかと思われるほど多くの波紋から飛び出した武器は更に厚い弾幕となり、死を運ぶ。

 

「これはちょっと不味いかァ」

 

そうつぶやくと、紅いオーラを纏い始める。

そして着弾する瞬間に瞬間移動と見間違うほどの速度で動き、その全てを避ける。それどころか飛んできた武器の数本をキャッチし、それを振るって武器を叩き落とすなんていう芸当までやってのけた。

 

「中々やるではないか狂犬。」

 

見ているセイバー達の口から思わずため息の出る程華麗な立ち回りはギルガメッシュの口角を少し上げることに成功していた。

そして次に現れた黄金の波紋は先程の数を遥かに超え、先端を覗かせる武具の輝きはより一層増していた。

当たれば霊基どころか座の情報すら吹き飛びそうな威圧感を放つそれらに、思わず身構えるスターク。

しかし、それが発射されることは無かった。

 

「………お前如きの忠言で我が引くとでも思っているのか?時臣よ。」

 

ギルガメッシュの脳内に届いたのは、マスターである遠坂時臣の言葉。「この場はどうか撤退して欲しい」という内容の忠言だった。普段なら激昴し、令呪でも使わない限り絶対に引くことは無かっただろう。だが、今回は違った。

 

「フン。まぁ良かろう。今の我は機嫌がいいのでな。おい雑種共、次に我と見える時までに有象無象を間引いておけ。我と矛を交えるのは一級の英霊のみで充分だ。それと、スタークとやら。我に武器を向けたこと、ゆめ忘れるでないぞ。」

 

そう言い残し、黄金の粒子となってその場を去っていった。

 

 

 

 

 

 

「全く。急に現れて掻き乱すだけ掻き乱してどっか行きおったか。まぁ、マスターの度量は小さかったようだし、仕方あるまいか。」

 

一気に空気の重圧感が消え去り、肩から特大の鉛が消え去ったような錯覚を覚えていると、イスカンダルがごちる様に呟いた。

 

「で、今夜はどうする。余はこのまま矛を交えても良いが……?」

 

ニヤリと笑うイスカンダル。しかし、他の陣営はそうでもなかったようだ。

 

「………今夜のところは止めておきましょう。」

 

「そうだな。我々も一旦体制を建て直したいと思っていた所だ。」

 

そういうが否や一礼をし、去っていくランサー──真名を、ディルムッド・オディナ。

後を追うように一礼をし、アイリスフィールを伴って去るセイバー──真名を、アルトリア・ペンドラゴン。

その場に残されたのは、頭をぼりぼりと頭をかくイスカンダルと、スタークのみだった。

 

「俺も帰らせてもらおうかね。流石に今の状況じゃイスカンダル大王を倒すのは厳しそうだ。チャオ!」

 

だが、残り一基まで煙と共にその場を去ってしまった以上、イスカンダルは矛を交える相手がいない。

 

「はぁ〜。ま、今夜のところはしょうがない、か。おい坊主!帰宅するぞ!」

 

そういう訳で、イスカンダルもチャリオットに乗り込み、居候しているマッケンジー宅へと帰還して行った。

あとに残ったのは派手にぶっ壊されたコンテナと布団のようにひっぺがされたアスファルト。そして戦いの余波の残る熱を帯びた風だけだった。




というわけで既に原作から逸れ始めています。
主だった点としては、やはり令呪でしょう。この場で本来ならケイネスもトッキーも令呪使ってますが、本作ではどちらも使っていません。
はてさてこれがどう影響してくるのか………?
では、次回の投稿まで!


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